117 :
急転:2007/11/29(木) 12:09:15 ID:394jt3yH
『我、訴え、喚起せん』
『我、訴え、喚起せん』
突如降り落ちる無数の声。
呪の詠唱は多重に響きわたり、辺りの空気を塗り変える。
「『黄金郷』だと?!」
誰かの叫び。
即座に執事がエッケルザクスを解いた。魔力持ち3人が高速詠唱、結界が彼等を取り囲む。
次の瞬間。
宵闇に沈む公園に、あまたの『神』が降臨した。
118 :
一方その頃:2007/11/29(木) 13:07:31 ID:394jt3yH
「さかなさかなさかな〜♪ってやつかい?」
「みんなで食べる気にはならないけどな」
一流の軽口に、鐘も笑って返す。
公園に入った途端、二人は『名状しがたきものども』に出迎えられていた。待っていたところは忠実らしい。
「鐘、ここは任せて先に行け」
「え、でもいっちー……」
友人の正体を知らない鐘は躊躇する。彼からみれば、一流は運動神経が優れているだけの一般人だ。
しかし同時に、任せても平気だと鐘の直感は告げていた。一流は、この程度では死なない、と。
「君には待ってる姫がいるだろ。早く行ってやれよ」
「わかった。無理するなよ」
「何、その時は先輩仕込みの逃げ足を見せてやるさ」
そりゃ安心だね、と言って鐘は駆け出した。他より大きく開いた隙間、会話の間に見い出したそこを襲い、敵の肉壁を突破する。
せめて一流を押さえようとする『名状しがたきものども』をぎりぎりで避けながら、一流は鹿のように逃げ回る。
そして、鐘が充分距離を開くのを確認すると。
「よし」
したっ、と飛んで、
したっ、と着地。
その時には全てが変わっている。
太刀を抜いた剣豪のごとく、戦いに最適化された肉体へ。
「さあ……理解しあおうではないか!」
黒づくめの忍者装束で、少年は獰猛に笑った。
119 :
1/5:2007/12/01(土) 20:14:01 ID:YKzZOAG8
「ねえ、オブシディア」
神が迫る。3人が同時発動した結界は神の一柱や二柱なんなく妨げただろう。
ただ数が多い。黄金郷が仕掛けた罠はここにいる戦力を確実に殺すレベルの力を持っていた。
神との距離が縮まる。
しかしこんな時であるのに空は気軽に聞く。
「何、こっちは今忙しいのですわよ」
オブシディアは忙しいといいながらも冷静に対処している。
空はその様子を確認し、聞く
「このことも前に会ったこと?」
「ありましたわ」
「その結果どうなった?」
「全部追い払いましたわ。ただし黄金郷の介入の結果、わたくしを含む魔術師はほぼ行動不能。
……今回もそうなる可能性が高いですわね」
「そりゃそうよねえ。私だとあれ一柱すら倒せそうにないものね」
「腐っても神ですわよ。いくら黄金郷に使役されるような弱い神でもね」
「すごいわね。で、あれが歌で言うところの壁になるのかな」
「いえ、あれは壁ではありませんわ」
「そっか、じゃ、"壁"って何?」
「……わかりませんわ」
「?」
「その時々によって"壁"は変わりますのよ。だからそれが起こることが分かっていても
どのように起こるのかがわからない。ゆえに止めることができないのですわ。
唯一止められるのならそれは3人が出会わないことでしたが……今回はどうなりますか」
「じゃ、もう一つ。萌絵のお父さんや執事さんがここに来ることは必然だった?」
「……ええ、立場や能力は違いますけれど、ここにいたことは確かですわ」
「ってことは配役も決まっているってことね」
「これも運命というものですわね……結末は変わらないのですわ」
120 :
2/5:2007/12/01(土) 20:16:50 ID:YKzZOAG8
オブシディアの言葉にしばし黙り、空は口を開く
「それじゃ最後の質問」
「今度はなんですの?」
「私は前もいた?」
数瞬の沈黙の後オブシディアは告げる。
「そういえば、いませんでしたわ」
「じゃあ、私はこの話に本来ない要素なのよね」
「……ええ。そうですわね。おかしいですわね。わたくし、普通に受け入れていましたわ」
オブシディアの疑問に空は答える。
「ま、私はもともとこの世界の人間じゃないからね。いなくて当然よね」
「……? どういうことですの」
「ほら、前にこっちに遊びに来た子がいるでしょ。バナナちゃんって子。
私はどっちかって言うとそっちに近いのよ。私の世界はとっくに無くなっちゃったけどね」
オブシディアは空の言葉に苦笑いを浮かべる。
「空、親友とか言いながら秘密が多すぎますわよ」
「それはお互い様でしょ。あ、そうだ、これ持っててもらうとうれしいかな。これ私の命綱だから」
そういって空はオブシディアに"運命"を放り投げる。
「空? 武器を手放してどうするつもり」
「今有効なのは、武器じゃなくて情報だからね。結界もうちょっと頑張って」
「まったく、今度は何をするつもりかしら?」
「すぐにわかるわよ」
空は携帯を取り出しながらオブシディアに振り向く。
「あの時、私にだけ聞かせてくれた最後の歌詞。あれ本当はなかったのね。
あれが起こったことなら、世界が殺されることもなかったものね」
「ええ……あれはわたくしが希望を歌ったものですわ。おかしかったかしら?」
オブシディアは素直に認め、空に告げる。空は笑みになりオブシディアへと話す。
「絶対叶えようね。私、この世界が好きだから」
「……空?」
いつもの空とどこか違う。そう思い思わず問いかけるが、すでに空はこちらを見ていない。
121 :
3/5:2007/12/01(土) 20:20:11 ID:YKzZOAG8
空は携帯を操作し、目的の番号へとつなげる。出てきた相手は開口一番、
『こんなこともあろうかとー!』
『地下3000メートルだろうが結界の中だろうがどんな状況でも通話通信可能な携帯。名づけて――』
「どうでもいいから彼女に代わって」
『ひ、ひどい! 前口上くらいいわせてくれたっていいじゃ――』
『――はい。かわりました。最近空が遊びに来てくれなくて少しいじけ気味の――』
「ごめんねー。でも今の状況わかって言ってる? 結構ピンチ状態なのよ」
『分かってますよ。携帯通して見てますから』
「分かってるなら端的に頼むわね。"インデックス"としての力を貸してほしいの」
『分かりました。そこにいる"神"の情報。全部一気に送りますね』
「ん、これで全部……オーケー。攻略法ありがとうね」
『お礼は大晦日までに遊びに来ることでいいですね。約束ですよ』
「……分かったわ」
『その一瞬の沈黙はなんですかー?』
「大丈夫よ。なんとか予定あけるから。じゃ、切るわね」
Pi!
という音と共に携帯を切り、空はみんなに声をかける。
「それじゃ、ここにいる"神"には丁重に帰ってもらいましょうか」
一つの名前を聞き、旦那は空に聞き返す。
「"インデックス"だと……黄金郷から消えた彼女が王道財閥に?」
「王道財閥の切り札の一つってところね。もちろんその意味だけでいっしょにいないわよ?」
「それは分かっている。そうでなければ萌絵を王道学園になど通わせない」
「それであれにはどう対処するのですか?」
オブシディアの問いに空は口の端だけで笑いながら言う。
「敵味方の戦力分析をもとに行動指針を立てたわ。
これから私の言う通りに動いて。琉も動いてくれるかな?」
「……萌絵を守るためだ。従うよ」
「それで充分よ。今だけは休戦にしといてね」
空は結界の中心に立ち、指示を飛ばす。
122 :
4/5:2007/12/01(土) 20:22:22 ID:YKzZOAG8
「オブシディア。右、30°から50°にかけて念動力」
「執事さん。左25°に向けて一撃を見舞って」
「萌絵。目の前の空間に向けて幻視。範囲3mで」
「萌絵のお父さんは後ろ幅3Mの結界をゆるめて」
その指示に4人は躊躇なく行動する。
一つの指示、ひとつの行動で神の動きはゆるまり、集まり、逸れていく。
だが――
「"神"の一柱。攻勢結界を突破しましたわ」
「萌絵。3秒後、前方5mに召喚魔法」
神により少しずつ追い詰められ、迫って来ている。
「空、このままじゃまずいですわよ」
「もう少し……琉、準備してて」
「何を?」
「考えられる限りの最強の攻撃方法を」
「……わかった」
神は迫る。15m……10m……5m……
空は動く。まるで詰将棋のように琉に指示する。
「琉。目の前の空間へむけて10秒後、"殺して"」
「!……知っていたのか?」
「教団がやってきたことから推測しただけ……3、2、1。今」
瞬間、琉によって一発の銃弾が放たれる。
なんてことはないはずの、"神"にとってはかゆくもないはずの銃弾。
しかし、いつのまにかその空間に押し込まれた"神"が、その一発の銃弾により"殺される"。
「……これはあのときの小僧と似た力……か?」
敵戦力の急激な減少。しかしそれでも神の軍団は止まらない。ひるまない。
神が萌絵に迫る。距離はゼロ。どうやっても止まらない距離。
間に合わないはずの距離と時間、神は触手を振り上げ……
123 :
5/5:2007/12/01(土) 20:24:33 ID:YKzZOAG8
銃声とともに"神"に銃弾が叩き込まれ、神は一瞬よろめき、
「ハッ!」
琉の一撃によって殺された。
一瞬後、銃声のした方角から一人の少年が飛び込み萌絵の前に立つ。
その少年はまず萌絵に声を掛ける。
「萌絵、遅くなってごめん」
「鐘……」
「そこっ! 見つめ合ってないで戦いに戻って! まだまだわんさかいるんだから!」
二人は戦場にて再会する。二人の運命はまだ分かれ道にすら立っていない。
GJそして乙
鐘が到着してしまったねえ。
空はどうする気だろうねえ。
あと大人組、シスターは変身してそうだね。
誰か書かないか長耳。
同じ顔から自分への殺気を感じるというのは、どうにも気分のいいものではない。
まして何も知らぬまま背中を合わせ、強大な敵と戦っている最中では。
カートリッジを叩きいれ、それが最後であることに鐘は舌うちした。元々予備の拳銃だ、弾はそう多くない。
「お兄ちゃん。3時の方角に連射」
空の指示に体が勝手に動く。そう感じるほどスムーズに指は動き――引っ掛かった。
(ジャム!)
一瞬の隙、追い込まれていた『神』がそこにねじこみ攻めんとする。
「退け!」
同時に琉が鐘を引き倒し、『神』に向けて連射。それでも詰めに2手加算された。
「鐘、大丈夫?」
「ああ、平気だよ」
心配する萌絵に、鐘は笑って答える。だが、うまく笑えたか自信はなかった。
引き倒された瞬間、確かに聞こえた。
自分によく似た、
冷笑する自分によく似た声で、
彼はこう言ったのだ。
また『できそこない』か、と。
「使いな」
僧服の少年は鐘に銃を放ると、胸の十字架からナイフを引き抜き、投擲で"殺した"。
放られた銃を受けとり、鐘の指はまた指示通りに弾を打ち込んでいく。
――鐘の心の奥深く、沈めていた疑問が浮き上がる。
事態は終盤に入っていた。
――『騎士』はもう、必要ないのではないかと。
空の指示が、的確に状況を詰めていく。
――自分が『騎士』である必要は、ないのではないか、と。
オブシディアの魔術が、確実に"神"の戦意を削っていく。
――追い掛けても追い掛けても、『姫たち』は遠くて。
萌絵の魔力が、近づく敵を押し退け続ける。
――だから憧れた。守りたかった。守れる自分になりたかった。本当に本当に憧れていたんだ……貴方に。
そして、見慣れた顔の知らない少年が、最後の2柱に止めを放つべくナイフを構える。その後ろに萌絵をかばい、萌絵もまた口を開いて
「駄目えええええっ!」
叫んだ。
「あの子たちは友達なの、殺さないで!」
「それ以前に人質取られちゃ、下手に動けないけどね……」
そう、全てを退けてなお残っていたのは、メイド姉妹を拘束した、しょごす君とビヤーキーだったのだ。
久しぶりの登場だというのに、目が完全にイッている。
127 :
1/4:2007/12/09(日) 18:56:51 ID:WHijzPae
イッチャッた眼をした二匹と対峙しうろたえる萌絵。
慎重に間合いを測る琉。
そして、
「あれ…? みんなどうしたの?」
萌絵は何故か溜息を吐いている空、オブシディア、旦那を見る。
琉や鐘も疑問符を浮かべている。
それを見てオブシディアは説明する。
「あのしょごすとビヤーキーは萌絵、あなたに召喚されているのですわよ」
「?」
「……まあ、あの下手な演技でどうこうしようって言うのが間違いですが」
「え、と……つまり?」
「つまり、あの2匹は別に操られているわけではありませんわ」
「……しょーごーすークーン」
低く唸り始めた萌絵に対し、露骨にうろたえ出す、しょごすとビヤーキー。
どう見ても演技でした。本当にありがとうございます。
その様子に捕まっていた演技をしていたメイド姉妹は、あっさりしゅごすから
抜け出し萌絵の前にくる。
「萌絵お嬢様。このことについてはオラから話すだべ。
これから話すこと、しっかり聞いて欲しいだ」
メイド姉の言葉に、黙る萌絵。
128 :
2/4:2007/12/09(日) 18:58:35 ID:WHijzPae
「しょごす君とビヤーキーがこんなことをした理由、
簡単に言ってしまえば萌絵お嬢様から離れたくなかったんだ。
萌絵お嬢様が"教団"に行くことは、離れ離れになってしまうことなんだ。
だからこんな芝居をうったんだべ」
「で、でも……私は」
「それにオラもまだ、萌絵お嬢様とは離れたくないだべ」
「……!」
息をのむ萌絵にメイド妹が続ける。
「そうですよ。私たちは萌絵お嬢様をそれこそ赤ん坊の時から見てきたのですよ。
こんなことを言っては失礼かもしれませんが。萌絵お嬢様を妹として見ていました」
「オラは、本当のことを言うと萌絵お嬢様を自分の娘をして見てただべ……」
「……」
「だから、萌絵お嬢様と離れ離れにはまだなりたくないです」
「萌絵お嬢様が不幸になるような選択はさせたくないだべ」
「……」
すっかり黙り込んでしまった萌絵に旦那から声がかけられる。
「萌絵。私はまだ萌絵の父親でいたい。だから、教団に行くことはやめてくれ。
萌絵が殺されに行くなんて耐えられん。これは一人の父親としての頼みだ」
三人の父親と母親の言葉に萌絵は黙りこむ。
目には涙を浮かべ、自分がどうすればいいかもわからない。
129 :
3/4:2007/12/09(日) 18:59:32 ID:WHijzPae
見てしまったものがある。
――死んでいった沢山の『二人』。
――まるで操り人形のように繰り返し繰り返し、それは起こり続ける
――眠ってしまった"私"の悪夢が現実に侵食し泡のように禍をばらまき弾ける
――たくさんたくさんたくさんたくさん視えない糸で操られ
――見えない結果に向けて動き続ける
――私は、眠ってしまった"私"は悪夢という名の糸を紡ぎ、うなされ涙を流す
それは遥か昔に起こり、いまも続いている事実。
知ってしまった気持ちがある。
――お父さんの私を大切に思う気持ち
――お姉ちゃんたちの私を大切に思う気持ち
――琉の後悔と絶望と、それでもあきらめない希望の心
――オブシディアの友達として私に向けられた気持ち
――鐘の……
それは決して操ることのできない気持ち。
分かってしまった自分の心。
――お父さんを大好きな私の気持ち
――お姉ちゃんたちを大好きな私の気持ち
――琉を今度こそ救いたいと思う私の気持ち
――オブシディアと仲良くしたいと思う私の気持ち
――鐘への……
それは決して騙すことのできない気持ち。
130 :
4/4:2007/12/09(日) 19:01:09 ID:WHijzPae
さまざまな矛盾の中、萌絵は動くことができなくなる。
だれも動こうとしない中、一人だけ唐突に動き出す。
「しょうがないか……。姫は強引にでも連れて行くよ」
声とともに動くは琉。萌絵の手を引っ張り、連れ出そうとする。
萌絵はその行動に反応することができない。
しかしそれと同時に全員が動き出す。目の前に立つはメイド姉。
「ダメだべ。絶対連れて行かせないべ」
両手を広げ、目一杯邪魔をするように立ちふさがる。
「邪魔だよ」
それを一蹴しようとし、止め、方向転換し、再び動き始め、目の前に立つ違う人間に刃を向ける。
「鐘、おまえならいいか。ほかの人を傷つけたら萌絵が怒る。
ただ、おまえならたとえ怒られても構わない」
「……わかった。相手になるよ」
鐘は静かに答え、ナイフを持ちかえる。
その言葉を出すのにないまぜになった感情を押し殺し、ただ無機質に言いきる。
「琉、その行動がどういう意味をもっているか分かっているの。また、繰り返す気?」
オブシディアの言葉に、琉は頭を横に振る。
「大丈夫。鐘にだけは力を使わない。そうすればきっとあれは起こらない」
言外に鐘以外で直接邪魔をする人間には"殺す"力を使うこと、
また力を使わなくても鐘に勝てるという自負が込められている。
オブシディアは何も言えなくなり、ただ立ち尽くす。何が起こってもいいように力を溜めながら。
旦那も準備行動を終え、いつでも行動を起こせるようする。
メイド姉妹はどうすることもできずにただ、見守る。
鐘、琉、萌絵を中心として円陣が組まれる。
二人の戦いが始まろうとしている。
乙ー。
締め切り迫ってて今回はちと無理そう。
……書いてたら笑ってやって。
萌絵をさらった鐘そっくりの少年・琉は教団に作られ記憶を受け継いだ、かつての萌絵の騎士だった。
かつて彼が鐘と争い、萌絵を殺してしまったことで始まった悲劇は、萌絵の我が儘――琉も鐘も救いたい――のために繰り返され、世界は何度も滅びてきた。
その事実を知るオブシディアは、しかし3人が揃ってしまった今、悲劇を防ぐ手だてを持たない。
一方イレギュラーである空は、あちこちに死亡フラグを立てつつ何かを決意しているようだった。
その頃シスターはバーテンと長耳に、教団に伝わる歌と3人の関係を説明しながら、公園に向かう。
また、鐘とともに動いていた一流も、鐘を先に行かせ、忍者姿になってひとり戦っていた。
2柱の邪神は干渉せず、教団は静観し、黄金郷は何の目的か大量の『神』に萌絵たちを襲わせる。
空の指揮のもと屋敷のメンバーと子どもたちが協力し、『神』をなんとか追い払ったが、それは核心に向かう序章でしかなかった。
これまでの『二人』を見てしまった萌絵は、罪悪感から教団に向かうことを一度は決意するが、屋敷の人々の説得によって、本当の望みに気づいてしまう。
けれども琉は萌絵を連れて行こうとし、その場を納得させるために、鐘に勝負をふっかける。
何も知らない鐘はそれでも承諾したが、心の内に迷いを抱えたままだった。
萌絵が戦うと決めた今、彼女よりも弱い自分が、なお騎士として萌絵の側にいる意義はあるのだろうか、と。
存在意義が揺らいでいる上、同じ顔の琉に「出来損ない」と断じられた鐘は、果たして勝機を掴めるのか。
そして悲劇への完全な引金となる「壁」は何を指すのか。
今度こそ、「壁」をうがち悲劇を回避することはできるのか――
物語は、未だ語り手を求めている。
……ってところだと思うんだけど、どうでしょうかね?
追記する前に送っちゃったよ。
萌絵は矛盾する意思で固まって動けなくて、琉は鐘なら傷つけても後悔しないと考えてます。ついでに本気を出さなくても勝てると判断してます。
……ものすごい不利じゃなかろうか、鐘。
ああっ、いかん。考えてしまうっ!
134 :
1/2:2007/12/14(金) 23:15:12 ID:8egQUXH3
琉が仕掛ける。鐘が避ける。
琉が仕掛ける。鐘が避ける。
攻防は、空の目にはそうとしか映らない。まして周囲は、執事たちくらいしか追い付いてないだろう。
「…馬鹿よね」
鐘は避け続けていた。
琉が誘っても、のらないままで。
「ほんと、バカ」
琉も仕掛け続けていた。
急所にならないところばかりを。
「ねえ、思わない?」
見えている空には解る。
まったく、何て素直でない優しさなんだろう。何て馬鹿馬鹿しいほどの人の好さなんだろう。
これは二人の時間稼ぎだ。
決められない萌絵に考える時間を与えるための、不器用な選択。それでも教団の支部が近いここでは、琉にできるギリギリのことなのだろう。
そして鐘はそれに乗った。事情なんてほとんど話してないのに、オブシディアの言葉通りなら、何も覚えていないはずなのに。
命がけに見える戦いは、全てを知る琉と何も知らない鐘の、姫にささぐ滑稽な踊りなのだ。
「思わない?だからこそ、好きだって」
そう言って、空は親友二人に笑いかける。
虚をつかれた顔のオブシディアと。
泣き濡れそうな瞳の萌絵に。
「空…先ほどからおかしいですわよ。何が言いたいのです」
「うん?言いたいのはひとつだよ。
今の萌絵は嫌い。
こんだけ愛されて守られて……なのに、難しいからって、難しいからってその先考えるの止めてるっ。全部を、全部を望むなら望みなさいよ。教団に行くならそう、そう言えばいい。誰に止め、止められても進める、進める力があるくせに……一体何を悩むのよ?!」
彼女の声は震えていた。
「空ちゃ」
「選びなさい、選びなさいよ!全てが終わる、終わる前にみんな、みんな選んで、そいで進むしかないんだからっ!」
台詞が、その後も続いたのかはわからない。
空は唐突にくずおれたから。
彼女の背には、ボウガンの矢があったから。
「空ちゃん!」
萌絵の叫びに、いくつかの事態が動く。
振り向く鐘を取り押さえる琉。
狙撃手に向かう"牙"とタオル。
萌絵を押し倒すしょごす。
メイド姉妹をかばう旦那と庭師。
そして、
けれど、
敵は、消えた。
まるで、邪魔なものを掃除した、それだけだったように。
まるで、世界を滅ぼすシナリオを、邪魔させないかのように。
「まったく、『神』の次はメイドロボ?物量だけは尊敬するわね」
「『黄金郷』の名は伊達じゃない。金にものを言わせるだけの、権力も広げているしな」
裏社会での有名人は、会話しながらメイドロボに銃弾を叩き込み続ける。
「ほらエロ耳、ちゃんと伏せてないとまとめて撃つわよ」
「何を言うんだ、ぺたんこ可憐メイドVS豊満美人シスターなんて、こんな状況見逃せるわけないじゃないか!うわあ萌え萌えなのにもったいないパンチラ嬉しいけどもったいない服裂けも素敵だけどもったいない〜っ」
「……まとめて撃ったほうが世界のためかしら」
心底悲しそうな長耳に、シスターはぼそりと呟いた。
バーテンは賢く沈黙を保った。
彼らが見逃した一体が、空の背を撃ち抜いたことを知るのは、もうしばらく先のことになる。
>>132 まとめ乙。
なるほど、そうなってたのか。
あらためてみると、矛盾ありそうで怖いな。
>>134 乙ー
空、終了のお知らせ。
ちなみに便利すぎは仕様でした。
それ自体が死亡フラグというネタ……。(自分でネタばらし格好悪い)
俺、ひどいやつだなあ。
……これは自分が考えてた三通りの展開のうちの一つに決まったかも。
138 :
1/5:2007/12/15(土) 20:03:41 ID:NoJ/+2gl
赤く染まる――。
萌絵は見る。空の体から赤い模様が広がっていくのを見る。
ただ、見る。空の服が赤一色に染まっていくのを。
「あ……あ……」
鐘は見る。空の肌から血の気が失っていくのを。
琉に抑えられながら、空が生気を失っていくの見る。
「……う……あ」
オブシディアは聞く、空の言葉を。
かすれていく最後の言葉を
「あ……とは……まか……せたわよ……オブシ……」
止まる。空の言葉が。止まる、心臓の打つ音が。
「そ……ら……?」
オブシディアの呟き。その眼には涙が伝い、空だったものを見る。
「あなたは、どこまで分かっていましたの? こうなることも予測していましたの?
答えなさい……答えなさい……答えて!」
その言葉はやがて慟哭となって周囲に響く。
139 :
2/5:2007/12/15(土) 20:05:45 ID:NoJ/+2gl
「なんども……」
萌絵のつぶやき。その中に含まれるぞっとするような響きに旦那と執事は振り返る。
「萌絵?」
萌絵の目は空に向けられながら、しかし空を見ていない。
萌絵は呟き続ける。
「何度も何度も何度も何度も繰り返し。最後にずっと独りきり。
目が覚めるといつも独りきり。ずっとずっと独りきり」
「萌絵? 僕がいるよ? 僕が守るって、今度こそ守るって約束したよ?」
琉の言葉に萌絵は言う。
「大丈夫だよ。今、決めたんだ。みんな、私が守るんだ、今度こそ失わないように」
萌絵の異常にメイド姉妹は気づき、もう一度呼びかける。
「萌絵?」
しかし萌絵は反応せず、呟く。
「誰もいない、独りきりでいる私。そんなのはいや。
新しく出会っても、みんなすぐにいなくなってしまうの。
"教団"が"黄金郷"が"神"が、みんなわたしからたいせつなひとを奪っていくの。
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
だから、決めた。みんなとたのしく暮らせるように、わたしが独りにならないように」
「まずはきょうだんをこわすの」
140 :
3/5:2007/12/15(土) 20:07:31 ID:NoJ/+2gl
「萌絵? 本当にそんなことを考えているのか?」
旦那は言う。しかし萌絵はすでに聞いていない。
ただ黙って、歩き出す。目の前の教団へと。
"ひび割れた"眼鏡を掛け直し、歩き出す。一歩一歩ゆっくりと。
誰も声をかけられない。止める声を出す人間もいない。
その雰囲気の中
「萌絵」
しかし、一言で萌絵の歩みを止めた。
声の発生者は鐘。琉をゆっくりと押しのけ、萌絵に語りかける。
「萌絵の騎士になりたかった」
「ううん。しょう、はわたしのきしだよ、いまだって」
「でも、萌絵ははるかに強い力を持っていて、僕が守る必要なんてなかったんだよね」
「ううん。そうじゃないよ。わたしも、みんなをまもりたいだけなんだよ」
「……そっか。今でも僕は萌絵の騎士かな?」
「うん。そうだよ」
「ありがとう。それじゃ、行こうか?」
「うん。うれしいな、いっしょにいこう」
「うん。……萌絵は絶対守るよ。空の分も」
二人は連れ立って歩きだす。その様子に琉だけが我にかえる。
「ダメだ! そんなことをしたら二人とも本当に殺されてしま――」
琉は言い、二人の前に立ち、見た。
萌絵の目を
ひび割れたガラスの向こうにある目を
今は悲しみの色に揺れているがそれだけのはずの目。
だが
141 :
4/5:2007/12/15(土) 20:11:23 ID:NoJ/+2gl
「は」
一音。
「はは」
二音
「ははは」
三音
声を出すほどに壊れる。
騎士としての自分。教団員としての自分。
男としての自分。琉としての自分。
自分が自分たらしめているすべての要素が、
静かに、しかし速やかに壊れていく。
ただ萌絵の目を見ているだけで、すべてが壊れる。
そこに映るは深淵。それを殺すために作られ、それゆえ対処できるはずの心が壊れる。
――頭に響く声がある。
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
永遠に繰り返される呪詛の声なき声――
「ははははは……うっくっ!」
視界は塞がれて何も見えない。かすかな一肌のぬくもりを感じ、
琉はオブシディアに抱きかかえられるようにして立っている自分に気づく。
琉が気づいたとこを察知したオブシディアは琉から離れる。
142 :
5/5:2007/12/15(土) 20:13:54 ID:NoJ/+2gl
すでに二人はいない。
ただ立ち尽くしている面々の中に、二人だけがいなかった。
「二人は?」
「教団の中に入っていきましたわ……今の二人を止めるすべはわたくしにはありませんわ」
「そうか……?」
「わたくしも同じようにしたいぐらいですから」
「……そうか」
「それにしましても、よくあの死線にさらされて戻れましたわね」
「僕は"神"も殺せるんだよ? いくら力があっても"神"に精神が耐えられなければ意味がないよ」
「そうですわね」
やせがまんを言う琉にオブシディアは軽く答える。
音が変わり教団の中の音が慌ただしくなる。
その音を聞きながら。琉は言う。
「……変わったな。未来が」
琉の言葉にオブシディアは頷く。
「ええ、空が変えました。ただし最悪な形で、ですわね。
いえ、お父様にとっては最良の形かも知れませんが」
オブシディアは教団を見つめながらつぶやく。
「あの時に言えなかった壁、分からないとごまかしてしまった壁。
……萌絵の中にある"心の壁"は、ある意味最悪の形で崩されましたわ」
「すべての敵に死を。か……はは、僕が言うのもなんだけど。もうどうしようもないかもな」
それを最後に二人は黙りこくり、時々悲鳴の聞こえる教団の施設を見る。
事態は最悪に向かって進んでいる――
143 :
6/5:2007/12/15(土) 20:16:57 ID:NoJ/+2gl
「息子が間違った方向に進もうというのなら、叱ってやるのが親というものだな」
その声にオブシディアは振り返る。そこにいるのは元殺、長耳、シスターの面々。
「琉様、遅れてしまい申し訳ありません」
「シスター。いや、いい。これはどうしようもなかったこと」
謝るシスターに声を掛ける琉。その様子を見て長耳が一言。
「なるほど。シスターって以外としょ……いたっ、て、ぶったー!」
「ええい! 気色悪い声で気色悪いこと言うな!」
あまりにもいつも通りのやりとりに、困惑するオブシディア。
この最悪な状況。なのにこの人たちは変わらない。
そこに
「そうだな。いくら大事な娘といっても、叱らないのはダメな親だ」
「そうだべ。旦那様、ひとつきつく叱るべ」
「お姉ちゃん。ほどほどにね」
旦那、メイド姉妹の声がかかる。
「それで、君達はどうする?」
元殺はオブシディア、琉に質問する。
元殺の目を見、オブシディアはその質問に即答する。
「鐘と萌絵を止めますわ」
「分かった」
元殺は頷くと教団のドアを開ける。二人を止めるために。
希望とともに物語は巻き戻らず先へと進む。この先に決められた道筋はない。
赤く 赤く 流れていく
それは まるで 夕暮れの
鉄錆の におい
蛍光灯の、白い光が空を照らす。
ぐっしょりと赤く濡れていた背は、固く茶色くこごっている。
青い肌に、かたまった髪がひと房たれていた。
「間に合わなかった」
忍び姿の少年は、それだけしか言わなかった。
背の高い彼女の幼馴染みは、自分の拳を壊しそうなほど、固く握って。
泣くことを許せないのだと、わかってしまったら責められなくなった。
あなたのせいじゃないわ、とも、言えなかったけれど。
数年前を思い出す。
太陽の下を歩けないからと、狭い書の館に閉じ込められていた私に、彼女は地下の居所をくれた。
陽光を絶やした空間で、私は彼女と同類と、研究の中で時を過ごした。
いつか、彼女が年老いて。
同類が、ゆっくりとくちて。
私だけが幼いまま、けれど時折思い返しては、誰かに語るのだろうと思っていた。
なのに。
あまりに早すぎる終わりに、私は息を切らしながら呆然としていた。
これは、約束を守ったということなの?
それとも、もう忘れてる?
「みんなして放置していったの?」
同類が珍しく声を尖らせる。少年は首をふって、
「僕が…運ぼうとしたら……」
「覚え書きのようなものが落ちたので、従うことにしたのです」
暗がり、そのさらに暗い場所から声がした。
壮年というには若く、
少年と呼ぶには育ちすぎた声が、
告げる。
「死後30分以内に青色が来たら、娘になると」
息をのんだのは、私だったか同類だったか。
だって、何という無謀。
「時間は?」
白衣を翻して同類が尋ねる。
「もうすぐ、30分になる」
では本当に分の悪い賭けだ。
けれど同類が仰向けた顔は、穏やかに力を失っていた。
誰かにもたれるように。
……期待、されている。
「きーちゃん」
同類が、呼び掛ける。
私の背中を押すために。
――押されて私は、空の前に膝を着いた。
「何を……?」
怪訝そうな声が届く前に、
私は屈みこんで、牙を立てた。
唇から、私の赤く黒い血がにじむ。
「あなたを迎えたくはなかった。
あなたには陽の下を歩いてほしかった。
けれどあなたが、あなた自身の責任において、求めるのならば応えよう。
生まれ堕ちなさい、我が娘よ――」
そして、
私は血を与えた。
「何をしてだがふっ!」
「こんなこともあろうかとー!」
騒ぎをよそに、私はがくがくと飛び跳ねる手足を押さえる。彼女のそれは抱えられるほど小さく、細かった。
死後30分弱経過後の、しかも血を流しすぎての転化……正直に言えば、化け物にならないだけで恩の字だ。まして空自身の記憶など――
「うっ、ク」
意思を持った動きを感じ、私は押さえていた力を抜いた。ゆっくりと彼女の瞼が開き、23度瞬いて焦点を結ぶ。
暗がりのさらに奥で、声の主が慄く気配がした。まして少年と同類は、息を詰めて彼女が起き上がるのを見ているしかない。
上を向く彼女の小さな顔が、大きな瞳が私を捉えて。
「……いい加減髪洗いなさいよ。青色が濃くなってるじゃない」
「流れる水はぁ、ニガテなのですよー」
「問題ない血族でしょうが!」
――かくて、イレギュラーは死にきり。
手乗りタイガーは、大人への道を止めた。
「……貧乳ロリが確定したな、王道」
「う、うるさいうるさいうるさい!そっちこそ衣装の丈足りてないくせに!(ぽかぽか)」
「いーんだよ育ち盛りなんだか、て、ちょおま力つよすぎゃあああああっ!」
男ツンデレ好きだからまだ見たいんだよねー。
自分で書くのは下手なんだけどねー。
そんな超個人的事情により空復帰。
……冷静に考えりゃ、王道の病院運びこんで奇跡の復活でも良かったのな。
あと二人はフラグ臭気になって駆け付けたってことにしてください。
空、終了のお知らせ(SF的な意味で)ですな。
乙、と言いたい所だが、ここにいないで卒論を書きあげるんだw
いや、逃避エネルギーが働くのはわかるけどね。
一日経ってから一文抜けてることに気づいた。今は見てないだろうけど。
あと少しだ、頑張れー。
オワタ
一眠りしたら続き考える。
151 :
1/4:2007/12/22(土) 20:20:24 ID:4v0hzdxI
月の光の入らぬ通路。蝋燭の明かりで照らされた場を歩く一人の女がいた。
その女は手にはロザリオを持ち、きょろきょろと必要以上に周囲を警戒する。
祈りのお言葉を口ずさみながら歩いていく。その声は震え、恐怖と必死に戦っている。
侵入者が現れた。それだけの情報により全員が配置についた。
いや、そのはずだった――
暗い教会の内部は不気味な静けさの中時折叫び声がこだましている。
女は手に汗を握りながら、とどまることはせず、歩き続ける。
女は恐怖と戦いながら、侵入者を迎撃するために移動する。
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
一歩歩くごとに足跡が響く。
足は震え、静かに歩こうとしてもそれすら叶わない。
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
あれは人間の姿をした化け物だ。
入口に配置された迎撃部隊が一瞬で壊滅した。
その様子を見た人間はそう報告し、それを最後に連絡が途絶えた。
いや、化け物というだけなら問題などない。
問題は
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
どう考えても勝てない、その一点のみである。
それでも教団のため女は戦いに向かう。
カカツン、カカツン、カカツン、カカツン
音が重なる。その音は自分以外が発する音。
152 :
2/4:2007/12/22(土) 20:23:32 ID:4v0hzdxI
女は止まる。息を殺し、じっと耳を澄ます。
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
足音は止まらない。
女は精神を集中し、いつでも攻撃できるように銃を向け、音のする方を向き、待つ。
敵を迎撃する。勝てないと分かっていてもそれでも立ち向かわなくてはならない。
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
短く、長い時間。
一瞬が無限に引き伸ばされた感覚のなか、女は待つ。
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
そして
『それ』と目が合った。
ヒトの形をした深淵そのものを。
「いやああああああああああああぁぁぁぁぁっ!」
女は理性を吹き飛ばされ、すべてが深淵に塗りつぶされる。
153 :
3/4:2007/12/22(土) 20:28:54 ID:4v0hzdxI
二人、萌絵と鐘は並んで歩く。
二人とも無言。ただ、手を軽く握り合い、自然体で通路を歩く。
時折向ってくる教団員。しかし一瞬で意識を失い倒れ伏す。
目の前には目があっただけで倒れた女性もいる。
二人は無言。ただ寄り添って歩く。
銃撃音が響くが弾丸は二人に当たる前に壊される。
撃った人間も次の瞬間倒れ伏す。
二人は無言。その気持ちも寄り添って、ただ違いだけがある。
一人は破壊を望む。これ以上失わないために。
一人は守る事を望む。これ以上失わないために。
邪魔するものなどない。邪魔など誰にもできない。
二人はそれぞれの目的のため、そこに向かう。
教団中枢部。教団を仕切る場へと。
扉が壊れる。そこには1人の人間が座っていた。
教団内で絶対の権力を持つ1人。それを萌絵が視る。
決して一枚岩ではないという教団。しかしその中において最上の位を持つ者。
それは教団内で教皇と呼ばれた人間だった。
その人間は二人を見て語りかける。
萌絵を見ても、その眼を見ても変らずそこにいる。
154 :
4/4:2007/12/22(土) 20:35:06 ID:4v0hzdxI
「長かった……本当に長かった」
「……」
「はじめましてかな。萌絵、そしてその騎士殿よ」
「……」
二人は無言で教皇の前にいる。
「ようやく我々の計画が完成する。
あの、我々にとって殲滅対象でしかない偽りの神ではなく、人により育てられ、人の心を持った神。
我々の信仰する本物の神が、神の上、神を超える本物の神が生誕する」
「……」
二人は言葉を発しない。そして教皇はそのことを気にしない。
「さぁ萌絵。いや、新世界の神よ。今こそ世界を作り変えようではありませんか。
すべての人を幸いへと導くために」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
来週は帰省するため多分来れない。
ついで、仮にここのキャラでギャルゲー作る場合下手でも立ち絵あった方がいい?
それとも下手な絵ならむしろない方がいいだろうか?
……まぁそもそも製作期間、気力が続くまで+忙しいと中断だから完成しないと思うけどね。
155 :
イラストに騙された名無し:2007/12/29(土) 16:25:23 ID:9EjIhsCw
hosyu
すまん、続きはあるんだが長すぎる上に今携帯しか繋がらない。
明日調子がよければ書く。
立ち絵はAAだと楽しいとおもう。
一方その頃、保護者集団は建物内を『洗浄』していた。
残留する萌絵の気配は、それだけで常人を狂わせるに充分だったのだ。
シスターは聖別された弾丸で聖魔法を唱え、琉は異能で『殺して』いく。
その傍らで。
「幻想生成!」
「イマジン・メイカー!」
渋い低音と楽天的な声によって放たれた力が、萌絵の撒いた『毒』を押し潰していく。
それは浄化とは異なる、力に対してさらに圧倒的な力で抑え込む所業だった。
「概念空間を利用してとはいえ……」
「凄まじいとしか言いようがないな……」
父親組が複雑そうに頷きあう。その後ろでは
「いやああああああ」
「オブシディアさん、しっかりするだべ」
「まだトラウマだったんだな……」
「怒りますってあれは」
そう、それは古代から続く、人間が邪を圧倒する手段のひとつ。
観念存在への純粋な愛――萌え萌えぱぅわ〜が『毒』を圧倒しているのだ。
幻想使いの二人からは、全国の名無しさんから発せられる、こうばしい力強さがみなぎっていた。
「さすが、コミケ最終日はひと味違うね!」
「何の話よ」
担当区域を『洗浄』し終えたシスターが突っ込む。
「それにしても、これほどまっすぐトップのところに向かうとはね。我が娘ながら大胆だ」
「無駄に害したくはなかったんだろう。ほとんどが気絶か」
気狂いだ、とは言えなかった。
「余力もそれほど割けないし……ちょっと遠回りになるけどこのルートで行きましょう」
シスターが汚されていないだろう迂回路を挙げ、琉が頷く。
その顔に若干疲労の色が浮かんでいることに、オブシディアは気がついた。
ごめんやはり携帯は手が辛いですわ。
来週職人さん帰るらしいけど、一応結末まで書いといてネットつないだら書き込みます。
できるの8日だけどな! しかも早くてだけどな!
結局クリスマス越しちまったし……すまぬ。
あけおめことよろ(遅)
>>157 GJ
ああ、そういや最終日だったね。
シリアス雰囲気吹き飛ばすおバカな二人に和んだ。
>>158 wktkして待ってます
ごめん、復旧まで当分かかりそうだよ……
できたら学校から書くが、気になるなら進めても構わん。
実は最後まで書けてないしな<オイコラ
技研少女「それにしても空、もし私が来なかったらどうするつもりだったのですかー?」
空「うーん? 病院行って奇跡の復活?」
技研少女「心停止から45分は過ぎてるんですがー」
空「そこはほら、カエル顔の医者がいたりとか」
技研少女「ヘブンキャンセラー?」
空「新宿の医師でも可」
技研少女「メフィスト先生ですか?! パワーバランスおかしくなるから禁止ですよ。きっと」
空「注文多いわね。ま、冗談はともかく策はあったわよ」
技研少女「本当ですかー?」
空「いや、普通命の危険がある所に行くのに策なしじゃいかないから」
名門「で、何があった?」
空「それはね……」
技研少女「…………」
空「な・い・しょ……って何3人とも呆れた顔して見てるのよ!」
技研少女「本当はないのですのねー。期待して損しました」
名門「まったくだ。期待して損した」
空「む〜。ちゃんと死亡フラグ立てながら復活フラグも立ててたんだから!」
技研少女「はいはい」
名門「死亡フラグ立ててた自覚はあったんだな」
ぎっしー「そう何個も用意できますかー?。邪気眼的に」
空「だから、一発勝負は好きじゃないのよ。ま、そっちだと名前変わっちゃう予定だったからね」
技研少女「……でもそれって正確には蘇生じゃないですよー」
空「だから復活フラグなの」
技研少女「……間に合ってよかったですの」
空「うん、ありがとうね」
技研少女「どういたしまして」
名門「二人で納得してないでくれ。途中から意味がわからなくなったんだが」
空「いいの、気にしなくて。また、そのうち必要になるかも知れないから今は内緒なのよ」
技研少女「まったく、必要にはならないで欲しいです」
ごめん、まじでごめん。そしてありがとう。
ネット復活したけど書き込み拒否られて、そのままずるずるとやたら忙しく……てか卒論中より忙しいのは何故!?
うわあんモトカとマリーとか黄金卿とか萌絵の問答とかあるのに! あるのに!
……データなくしたダメな私を力一杯なじってくれ。いっそ思いきり殴ってくれ。むしろ慰めてくれ。
「そりゃあ災難だったな。
だけどまぁ、また書く楽しみができたと、そう考えたらどうだい?」
バーテンはそっけない調子で言うと、カウンターにグラスを置いた。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| さあ、こっちきて一杯飲みな。 |
| こいつは俺の奢り……いや |
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日 凸 ▽ ∇ U |/ [] [] [] □□
≡≡≡≡≡≡≡≡ ∧∧ ≡≡≡≡≡≡≡≡
U ∩ [] % 曰 (,゚Д゚,) 三 三 ニ 三
_______▼_と ∽ )_______
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 ̄ ┻  ̄| あんたがこれから見せてくれる物語の対価、前払い分だ |
\________________________/
なにこれ
一言で言うと「鐘」と「萌絵」を主人公として赤ちゃんの時から育てるスレ。
最近はライトノベルネタをパロりつつ、リレーSSをしながら成長して、中学生時代に突入中?
ネタジャンル広くて(クトゥルフまで混じってる)ので原作把握すらままならないがなー。
登場人物も多くて今からだと把握大変かも。
できるだけ過去のネタ拾いつつ結構好き勝手やってるけどね。
興味持った人はまとめWikiに過去ログあるから見て欲しい。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| もしかして私一年以上でてないのかしら。
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| / /
∨ | アンタは出番あっていいわよね。
日 凸 U | ______
≡≡≡≡≡| / __■■__ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
U ∩ [] ∨% (゚Д゚;) < ……そういう問題か? それより何で俺がここにいる?
__ ∧∧___∧_∧|つ∽)_ \_____________________
( #`<)日( )∇ /
― / つ―( つ―― _ _ 。〇 私、鐘君たちのこと忘れて帰ってきちゃいました。
(___ノ ━┳━) ァく`!〕 ヾ] | ……どうしましょう。
━┳━ └ ┃-・ | K/ ノノ)ノ)〉 \_________________
 ̄ ┻  ̄ ̄ ┻ ̄ ̄ ̄| l、!;゚ヮ゚ノ |
l l.([l卯l]) |
舞台裏ってことで、目ぇつぶってくだされ。
あと説明乙。