ラノベ・ロワイアル Part2

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1イラストに騙された名無しさん
"こ の ス レ を 覗 く も の 、 汝 、 一 切 の ネ タ バ レ を 覚 悟 せ よ"
(参加作品内でのネタバレを見ても泣いたり暴れたりしないこと)

※ルール、登場キャラクター等についての詳細はまとめサイトを参照してください。

ラノベ・ロワイアル 感想・議論スレPart,6
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1111935740/l50

まとめサイト(MAPとタイムテーブルもこの中に。特に書き手になられる方は、まず目を通して下さい)
ttp://lightnovel-royale.hp.infoseek.co.jp/entrance.htm

前スレ
ラノベ・ロワイヤル
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1111848281/-100

――――【注意】――――
このサイトで扱っている企画、ならびにリンク先のスレッドでテーマとなっている「ラノベ・ロワイヤル」は
40ほどの出版物を元にしていますが、この企画立案、まとめサイト運営および活動自体はそれらの
出版物の作者や出版元が携わるものではなく、それらの作品のファンが勝手に行っているものです。
この「ラノベ・ロワイヤル」にはそれらの作者の方々は関与されていません。
話の展開についてなど、そちらのほうに感想や要望を出さないで下さい。
2テンプレ2 参加キャラクターリスト1/2::2005/03/29(火) 12:13:03 ID:T4CEyDmn
Dクラッカーズ】 物部景 / 甲斐氷太 / 海野千絵 / 緋崎正介 (ベリアル)
【Missing】 十叶詠子 / 空目恭一
【されど罪人は竜と踊る】 ギギナ / ガユス / クエロ・ラディーン
【アリソン】 ヴィルヘルム・シュルツ
【ウィザーズブレイン】 ヴァーミリオン・CD・ヘイズ / 天樹錬 ×
【エンジェルハウリング】 フリウ・ハリスコー / ミズー・ビアンカ / ウルペン
【キーリ】 キーリ / ハーヴェイ
【キノの旅】 キノ / シズ / キノの師匠 (若いころver) / ティファナ×
【ザ・サード】 火乃香 / パイフウ / しずく (F) / ブルーブレイカー (蒼い殺戮者)
【スレイヤーズ】 リナ・インバース / アメリア・ウィル・テラス・セイルーン / ズーマ× / ゼルガディス / ゼロス×
【チキチキ シリーズ】 袁鳳月 / 李麗芳△ / 李淑芳△ / 呉星秀 / 趙緑麗
【デュラララ!!】 セルティ・ストゥルルソン / 平和島静雄 / 折原臨也
【バイトでウィザード】 一条京介× / 一条豊花×
【バッカーノ!!】 クレア・スタンフィールド / シャーネ・ラフォレット / アイザック・ディアン / ミリア・ハーヴェント
【ヴぁんぷ】 ゲルハルト=フォン=バルシュタイン子爵 / ヴォッド・スタルフ×
【ブギーポップ】 宮下藤花 (ブギーポップ) / 霧間凪 / フォルテッシモ / 九連内朱巳 / ユージン×
【フォーチュンクエスト】 トレイトン・サブラァニア・ファンデュ (シロちゃん)
【ブラッドジャケット】 アーヴィング・ナイトウォーカー / ハックルボーン神父
【フルメタルパニック】 千鳥かなめ / 相良宗介 / ガウルン / クルツ・ウェーバー× / テレサ・テスタロッサ
【マリア様がみてる】 福沢祐巳 / 小笠原祥子 / 藤堂志摩子 / 島津由乃× / 佐藤聖
3テンプレ2 参加キャラクターリスト2/2::2005/03/29(火) 12:13:28 ID:T4CEyDmn
【ラグナロク】 ジェイス
【リアルバウトハイスクール】 御剣涼子×
【ロードス島戦記】 ディードリット× / アシュラム (黒衣の騎士) / ピロテース△
【陰陽ノ京】 慶滋保胤
【終わりのクロニクル】 佐山御言 / 新庄運切 / 出雲覚 / 風見千里 / オドー
【学校を出よう】 宮野秀策 / 光明寺茉衣子
【機甲都市伯林】 ダウゲ・ベルガー / ×ヘラード・シュバイツァー
【銀河英雄伝説】 ×ヤン・ウェンリー / オフレッサー
【戯言 シリーズ】 いーちゃん / 零崎人識 / 哀川潤 / 萩原子荻 / 匂宮出夢
【涼宮ハルヒ シリーズ】 キョン× / 涼宮ハルヒ× / 長門有希 / 朝比奈みくる× / 古泉一樹
【事件 シリーズ】 エドワース・シーズワークス・マークウィッスル (ED) / ヒースロゥ・クリストフ (風の騎士)
【灼眼のシャナ】 シャナ / 坂井悠二 / マージョリー・ドー
【十二国記】 高里要 (泰麒)
【創竜伝】 小早川奈津子 / 鳥羽茉理△ / 竜堂終 / 竜堂始×
【卵王子カイルロッドの苦難】 カイルロッド / イルダーナフ / アリュセ / リリア △
【撲殺天使ドクロちゃん】 ドクロちゃん
【魔界都市ブルース】 秋せつら△ / メフィスト△ / 屍刑四郎 / 美姫
【魔術師オーフェン】 オーフェン / ボルカノ・ボルカン / コミクロン / クリーオウ・エバーラスティン / マジク・リン×
【楽園の魔女たち】 サラ・バーリン△ / ダナティア・アリール・アンクル

△は未登場者、×は死亡者。
4テンプレ4 作中ルール1/2:2005/03/29(火) 12:14:01 ID:T4CEyDmn
4:テンプレ4(ルール1)
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
 開催場所は異次元世界であり、どのような能力、魔法、道具等を使用しても外に逃れることは不可能である。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給される。
 「多少の食料」「飲料水」「懐中電灯」「開催場所の地図」「鉛筆と紙」「方位磁石」「時計」
 「デイパック」「名簿」「ランダムアイテム」以上の9品。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「開催場所の地図」 → 白紙、禁止エリアを判別するための境界線と座標のみ記されている。
 「鉛筆と紙」 → 普通の鉛筆と紙。
 「方位磁石」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前がのっている。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが一つ入っている。内容はランダム。


5テンプレ5 作中ルール2/2:2005/03/29(火) 12:14:26 ID:T4CEyDmn
※「ランダムアイテム」は作者が「エントリー作品中のアイテム」と「現実の日常品」の中から自由に選んでください。 
 必ずしもデイパックに入るサイズである必要はありません。
 エルメス(キノの旅)やカーラのサークレット(ロードス島戦記)はこのアイテム扱いでOKです。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。

【「呪いの刻印」と禁止エリアについて】
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「呪いの刻印」を押されている。
 刻印の呪いが発動すると、そのプレイヤーの魂はデリート(削除)され死ぬ。(例外はない)
 開催者側はいつでも自由に呪いを発動させることができる。
 この刻印はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
 24時間死者が出ない場合は全員の呪いが発動し、全員が死ぬ。
 「呪いの刻印」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
 下手に無理やり取り去ろうとすると呪いが自動的に発動し死ぬことになる。 
 プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると呪いが自動的に発動する。
 禁止エリアは2時間ごとに1エリアづつ禁止エリアが増えていく。

【放送について】
 放送は6時間ごとに行われる。放送は魔法により頭に直接伝達される。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去6時間に死んだキャラ名」「残りの人数」
 「管理者(黒幕の場合も?)の気まぐれなお話」等となっています。

【能力の制限について】
 超人的なプレイヤーは能力を制限される。 また、超技術の武器についても同様である。
 ※体術や技術、身体的な能力について:原作でどんなに強くても、現実のスペシャリストレベルまで能力を落とす。
 ※魔法や超能力等の超常的な能力と超技術の武器について:効果や破壊力を対個人兵器のレベルまで落とす。
 不死身もしくはそれに類する能力について:不死身→致命傷を受けにくい、超回復→高い治癒能力
6テンプレ6 書き手用テンプレ :2005/03/29(火) 12:14:53 ID:T4CEyDmn
【本文】
 名前欄:タイトル(?/?)※トリップ推奨。
 本文:内容
  本文の最後に・・・
  【名前 死亡】※死亡したキャラが出た場合のみいれる。
  【残り○○人】※必ずいれる。

【本文の後に】
 【チーム名(メンバー/メンバー)】※個人の場合は書かない。
 【座標/場所/時間(何日目・何時)】

 【キャラクター名】
 [状態]:キャラクターの肉体的、精神的状態を記入。
 [装備]:キャラクターが装備している武器など、すぐに使える(使っている)ものを記入。
 [道具]:キャラクターがバックパックなどにしまっている武器・アイテムなどを記入。
 [思考]:キャラクターの目的と、現在具体的に行っていることを記入。
 以下、人数分。

【例】
 【SOS団(涼宮ハルヒ/キョン/長門有希)】
 【B-4/学校校舎・職員室/2日目・16:20】

 【涼宮ハルヒ】
 [状態]:左足首を骨折/右ひじの擦過傷は今回で回復。
 [装備]:なし/森の人(拳銃)はキョンへと移動。
 [道具]:霊液(残り少し)/各種糸セット(未使用)
 [思考]:SOS団を全員集める/現在は休憩中
7テンプレ7 書き手&読み手心得 :2005/03/29(火) 12:17:44 ID:xEi3uK5S
7:テンプレ7(書き手&読み手心得)
 1.書き手になる場合はまず、まとめサイトに目を通すこと。
 2.書く前に過去ログ、MAPは確認しましょう。(矛盾のある作品はNG対象です)
 3.知らないキャラクターを適当に書かない。(最低でもまとめサイトの詳細ぐらいは目を通してください)
 4.イベントのバランスを極端に崩すような話を書くのはやめましょう。
 5.話のレス数は10レス以内に留めるよう工夫してください。
 6.投稿された作品は最大限尊重しましょう。(問題があれば議論スレへ報告)
 7.キャラやネタがかぶることはよくあります。譲り合いの精神を忘れずに。
 8.疑問、感想等は該当スレの方へ、本スレには書き込まないよう注意してください。
 9.原作者の方に迷惑をかけないようにしましょう、メールを送るなど言語道断です

 【投稿するときの注意】
 投稿段階で被るのを防ぐため、投稿する前には必ず雑談・協議スレで宣言をしてください。
 雑談・協議スレで宣言された順番で投稿していただきます。
 前の人の投稿が全て終わったのを確認したうえで次の人は投稿を開始してください。
 自分の投稿の順番になってから15分たっても投稿が開始されない場合その人は順番から外されます。
8各種リンク:2005/03/29(火) 12:20:23 ID:T4CEyDmn
検討・感想・雑談スレ:ラノベ・ロワイアル 下準備スレPart,6
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1111935740/

まとめサイト
http://lightnovel-royale.hp.infoseek.co.jp/entrance.htm

MAP (1マス=500m×500m、8マス×8マス)
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/bd/86c045dd54145e2bb6113dc3f31c7b6c.png

過去ログ
ラノベでバトル・ロワイアルができるかどうか考えてみるスレ
http://lightnovel-royale.hp.infoseek.co.jp/log/log_1110555929.html

ラノベ・ロワイアル 下準備スレPart,2
http://lightnovel-royale.hp.infoseek.co.jp/log/log_1111150476.html

ラノベ・ロワイアル 下準備スレPart,3
http://lightnovel-royale.hp.infoseek.co.jp/log/log_1111332282.html

検討・感想・雑談スレ:ラノベ・ロワイアル 下準備スレPart,5
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1111753570/
9イラストに騙された名無しさん:2005/03/29(火) 16:19:39 ID:kJWbDHZr
テンプレの修正入ります。
なお現在の投下予約は以下の通りになってます。
壱◆PZxJVPJZ3g
弐◆l8jfhXC/BA
参◆ZlP49.IyQM
四◆xSp2cIn2/A
10イラストに騙された名無しさん:2005/03/29(火) 16:21:48 ID:kJWbDHZr
"こ の ス レ を 覗 く も の 、 汝 、 一 切 の ネ タ バ レ を 覚 悟 せ よ"
(参加作品内でのネタバレを見ても泣いたり暴れたりしないこと)

※ルール、登場キャラクター等についての詳細はまとめサイトを参照してください。

ラノベ・ロワイアル 感想・議論スレPart,6
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1111935740/l50

まとめサイト(MAPとタイムテーブルもこの中に。特に書き手になられる方は、まず目を通して下さい)
ttp://lightnovel-royale.hp.infoseek.co.jp/entrance.htm

前スレ
ラノベ・ロワイヤル
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1111848281/-100

――――【注意】――――
当企画「ラノベ・ロワイアル」は 40ほどの出版物を元にしていますが、この企画立案、
まとめサイト運営および活動自体はそれらの 出版物の作者や出版元が携わるものではなく、
それらの作品のファンが勝手に行っているものです。
この「ラノベ・ロワイアル」にはそれらの作者の方々は関与されていません。
話の展開についてなど、そちらのほうに感想や要望を出さないで下さい。
11参加者リスト1:2005/03/29(火) 16:26:01 ID:kJWbDHZr
【Dクラッカーズ】 物部景 / 甲斐氷太 / 海野千絵 / 緋崎正介 (ベリアル)
【Missing】 十叶詠子 / 空目恭一
【されど罪人は竜と踊る】 ギギナ / ガユス / クエロ・ラディーン
【アリソン】 ヴィルヘルム・シュルツ
【ウィザーズブレイン】 ヴァーミリオン・CD・ヘイズ / 天樹錬 ×
【エンジェルハウリング】 フリウ・ハリスコー / ミズー・ビアンカ / ウルペン
【キーリ】 キーリ / ハーヴェイ
【キノの旅】 キノ / シズ / キノの師匠 (若いころver) / ティファナ×
【ザ・サード】 火乃香 / パイフウ / しずく (F) / ブルーブレイカー (蒼い殺戮者)
【スレイヤーズ】 リナ・インバース / アメリア・ウィル・テラス・セイルーン / ズーマ× / ゼルガディス / ゼロス×
【チキチキ シリーズ】 袁鳳月 / 李麗芳△ / 李淑芳△ / 呉星秀 / 趙緑麗
【デュラララ!!】 セルティ・ストゥルルソン / 平和島静雄 / 折原臨也
【バイトでウィザード】 一条京介× / 一条豊花×
【バッカーノ!!】 クレア・スタンフィールド / シャーネ・ラフォレット / アイザック・ディアン / ミリア・ハーヴェント
【ヴぁんぷ】 ゲルハルト=フォン=バルシュタイン子爵 / ヴォッド・スタルフ×
【ブギーポップ】 宮下藤花 (ブギーポップ) / 霧間凪 / フォルテッシモ / 九連内朱巳 / ユージン×
【フォーチュンクエスト】 トレイトン・サブラァニア・ファンデュ (シロちゃん)
【ブラッドジャケット】 アーヴィング・ナイトウォーカー / ハックルボーン神父
【フルメタルパニック】 千鳥かなめ / 相良宗介 / ガウルン / クルツ・ウェーバー× / テレサ・テスタロッサ
【マリア様がみてる】 福沢祐巳 / 小笠原祥子 / 藤堂志摩子 / 島津由乃× / 佐藤聖
12参加者リスト2:2005/03/29(火) 16:28:49 ID:kJWbDHZr
【ラグナロク】 ジェイス
【リアルバウトハイスクール】 御剣涼子×
【ロードス島戦記】 ディードリット× / アシュラム (黒衣の騎士) / ピロテース△
【陰陽ノ京】 慶滋保胤
【終わりのクロニクル】 佐山御言 / 新庄運切 / 出雲覚 / 風見千里 / オドー
【学校を出よう】 宮野秀策 / 光明寺茉衣子
【機甲都市伯林】 ダウゲ・ベルガー / ×ヘラード・シュバイツァー
【銀河英雄伝説】 ×ヤン・ウェンリー / オフレッサー
【戯言 シリーズ】 いーちゃん / 零崎人識 / 哀川潤 / 萩原子荻 / 匂宮出夢
【涼宮ハルヒ シリーズ】 キョン× / 涼宮ハルヒ× / 長門有希 / 朝比奈みくる× / 古泉一樹
【事件 シリーズ】 エドワース・シーズワークス・マークウィッスル (ED) / ヒースロゥ・クリストフ (風の騎士)
【灼眼のシャナ】 シャナ / 坂井悠二 / マージョリー・ドー
【十二国記】 高里要 (泰麒)
【創竜伝】 小早川奈津子 / 鳥羽茉理△ / 竜堂終 / 竜堂始×
【卵王子カイルロッドの苦難】 カイルロッド / イルダーナフ△ / アリュセ / リリア △
【撲殺天使ドクロちゃん】 ドクロちゃん
【魔界都市ブルース】 秋せつら△ / メフィスト△ / 屍刑四郎 / 美姫
【魔術師オーフェン】 オーフェン / ボルカノ・ボルカン / コミクロン / クリーオウ・エバーラスティン / マジク・リン×
【楽園の魔女たち】 サラ・バーリン△ / ダナティア・アリール・アンクル

△は未登場者、×は死亡者。
13ゲームルール1:2005/03/29(火) 16:31:22 ID:kJWbDHZr
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
勝者のみ元の世界に帰ることができる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
開催場所は異次元世界であり、どのような能力、魔法、道具等を使用しても外に逃れることは不可能である。

【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給される。
「多少の食料」「飲料水」「懐中電灯」「開催場所の地図」「鉛筆と紙」「方位磁石」「時計」
「デイパック」「名簿」「ランダムアイテム」以上の9品。
「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
「開催場所の地図」 → 白紙、禁止エリアを判別するための境界線と座標のみ記されている。
「鉛筆と紙」 → 普通の鉛筆と紙。
「方位磁石」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。
「名簿」→全ての参加キャラの名前がのっている。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが一つ入っている。内容はランダム。
14ゲームルール2:2005/03/29(火) 16:33:34 ID:kJWbDHZr
※「ランダムアイテム」は作者が「エントリー作品中のアイテム」と「現実の日常品」の中から自由に選んでください。 
必ずしもデイパックに入るサイズである必要はありません。
エルメス(キノの旅)やカーラのサークレット(ロードス島戦記)はこのアイテム扱いでOKです。
また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。

【「呪いの刻印」と禁止エリアについて】
ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「呪いの刻印」を押されている。
刻印の呪いが発動すると、そのプレイヤーの魂はデリート(削除)され死ぬ。(例外はない)
開催者側はいつでも自由に呪いを発動させることができる。
この刻印はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
24時間死者が出ない場合は全員の呪いが発動し、全員が死ぬ。
「呪いの刻印」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
下手に無理やり取り去ろうとすると呪いが自動的に発動し死ぬことになる。 
プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると呪いが自動的に発動する。
禁止エリアは2時間ごとに1エリアづつ禁止エリアが増えていく。

【放送について】
放送は6時間ごとに行われる。放送は魔法により頭に直接伝達される。
放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去6時間に死んだキャラ名」「残りの人数」
「管理者(黒幕の場合も?)の気まぐれなお話」等となっています。

【能力の制限について】
超人的なプレイヤーは能力を制限される。 また、超技術の武器についても同様である。
※体術や技術、身体的な能力について:原作でどんなに強くても、現実のスペシャリストレベルまで能力を落とす。
※魔法や超能力等の超常的な能力と超技術の武器について:効果や破壊力を対個人兵器のレベルまで落とす。
不死身もしくはそれに類する能力について:不死身→致命傷を受けにくい、超回復→高い治癒能力
15投稿ルール1:2005/03/29(火) 16:35:01 ID:kJWbDHZr
【本文】
 名前欄:タイトル(?/?)※トリップ推奨。
 本文:内容
  本文の最後に・・・
  【名前 死亡】※死亡したキャラが出た場合のみいれる。
  【残り○○人】※必ずいれる。

【本文の後に】
 【チーム名(メンバー/メンバー)】※個人の場合は書かない。
 【座標/場所/時間(何日目・何時)】

 【キャラクター名】
 [状態]:キャラクターの肉体的、精神的状態を記入。
 [装備]:キャラクターが装備している武器など、すぐに使える(使っている)ものを記入。
 [道具]:キャラクターがバックパックなどにしまっている武器・アイテムなどを記入。
 [思考]:キャラクターの目的と、現在具体的に行っていることを記入。
 以下、人数分。

【例】
 【SOS団(涼宮ハルヒ/キョン/長門有希)】
 【B-4/学校校舎・職員室/2日目・16:20】

 【涼宮ハルヒ】
 [状態]:左足首を骨折/右ひじの擦過傷は今回で回復。
 [装備]:なし/森の人(拳銃)はキョンへと移動。
 [道具]:霊液(残り少し)/各種糸セット(未使用)
 [思考]:SOS団を全員集める/現在は休憩中
16投稿ルール2:2005/03/29(火) 16:36:06 ID:kJWbDHZr
 1.書き手になる場合はまず、まとめサイトに目を通すこと。
 2.書く前に過去ログ、MAPは確認しましょう。(矛盾のある作品はNG対象です)
 3.知らないキャラクターを適当に書かない。(最低でもまとめサイトの詳細ぐらいは目を通してください)
 4.イベントのバランスを極端に崩すような話を書くのはやめましょう。
 5.話のレス数は10レス以内に留めるよう工夫してください。
 6.投稿された作品は最大限尊重しましょう。(問題があれば議論スレへ報告)
 7.キャラやネタがかぶることはよくあります。譲り合いの精神を忘れずに。
 8.疑問、感想等は該当スレの方へ、本スレには書き込まないよう注意してください。
 9.繰り返しますが、これはあくまでファン活動の一環です。作者や出版社に迷惑を掛けないで下さい。
 10.ライトノベル板の文字数制限は【名前欄32文字、本文1024文字、ただし32行】です。
 11.ライトノベル板の連投防止制限時間は20秒に1回です。
 12.更に繰り返しますが、絶対にスレの外へ持ち出さないで下さい。鬱憤も不満も疑問も歓喜も慟哭も、全ては該当スレへ。

 【投稿するときの注意】
 投稿段階で被るのを防ぐため、投稿する前には必ず雑談・協議スレで
「>???(もっとも最近投下宣言をされた方)さんの後に投下します」
 と宣言をして下さい。 いったんリロードし、誰かと被っていないか確認することも忘れずに。
 その後、雑談・協議スレで宣言された順番で投稿していただきます。
 前の人の投稿が全て終わったのを確認したうえで次の人は投稿を開始してください。
 また、順番が回ってきてから15分たっても投稿が開始されない場合、その人は順番から外されます。
17最後に:2005/03/29(火) 16:37:17 ID:kJWbDHZr
張り忘れてた。

避難所。
避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/4216/
18意志ある者達(1/3) ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/29(火) 16:40:18 ID:kJWbDHZr

「そこを動くな、銃で狙ってるぜ」

林の中をゆく二人の人間に向かって、イルダーナフ(103)はそう後ろから声をかけた。
だが実際には銃を持っているものの、彼等に照準を合わせてはいなかった。
イルダーナフは、もとからこんなゲームに乗るつもりは無いのだ。

そんな考えを知ってか知らずか、目の前の二人はそれをブラフだと彼に宣言した。
ブラフだと決めつけたその根拠に始まり、双方の肉体面及び精神面・装備面による
強さ、このまま戦いを始めた場合のイルダーナフが生きている可能性を二人の人間は
端的に述べた。
(ガキの癖してよく見てやがるぜ)
イルダーナフは心の中でそうつぶやく。
そして目の前の彼等は最後にこう語った。
「僕達に戦う意思はありません、もし誰かを捜しているのであればそれを手伝ってもいい
と思っています」

イルダーナフはその提案について思案する。
まだむこうでは《あの方》の本体がまだいる。あれをそのままにしておけば、いずれ世界
は終わってしうだろう。それを止めるには何としてもあの卵王子を向こうへ連れて
帰らねばならない。
どうするかなど、考えるまでもなかった。
19意志ある者達(2/3) ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/29(火) 16:41:27 ID:kJWbDHZr


「さっきは悪かったな。俺の名はイルダーナフだ、そう呼んでくれ」
銃を服の中に仕舞いながら、イルダーナフは右手を差し出す。
「いえ、こういう状況ですし用心するに越したことはありませんから」
黒いジャケットを着た方がイルダーナフの手を掴んだ。
「ボクの名前はキノ、そしてこちらがヴィルヘルム・シュルツさんです」
「ヴィルと呼んで下さって結構です」
「そうか」
ヴィルも一応、イルダーナと握手を交わす。
「それじゃあ俺の捜してる奴の特徴を教えておこう。まずはカイルロッド、こいつは──」


そうして時間は過ぎてゆく。
20意志ある者達(3/3) ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/29(火) 16:42:31 ID:kJWbDHZr

『トリオ・ザ・ガンナー?』
【キノ (018)】
装備アイテム:『カノン』
所持アイテム:支給品一式

【ヴィルヘルム・シュルツ(010) 】

装備アイテム:ベネリM3(残り6発)
所持アイテム:支給品一式

【イルダーナフ(103)】
装備アイテム:ヘイルストーム(出典:オーフェン、残り20発)
所持アイテム:支給品一式×2(ブルー・ブレイカーの分)

行動方針:イルダーナフの知り合い(カイルロッド、リリア、アリュセ)を捜す。


【備考】
ヘイルストームの初期支給弾数は25発、内5発を試射で使用

【D-4/一日目・林の中/05:00】
【残り98名】
21Miss a chance(1/1)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/29(火) 16:45:08 ID:blEAPx4i
灯台の下に男の姿を見つけ、俺は気配を殺して樹の影に身を隠した。
一房臙脂色が混じった、長い銀の髪。
架空小説に出てくる勇者のような容姿。
このような服装をした奴らは、最初の部屋で何人も見た。
最初の青白く光る門もそうだが、俺のいた世界での文化や常識は当てにしない方がいいかもしれない。
ただ、一つ気になる点があった。
「あれは犬だよな?」
人影の隣に白い犬がいる。それはいい。
……先程から男と犬がしゃべっているようにみえるのは気のせいか?
声もおぼろげだが二人分聞こえてくる。
「……」
しばらくすると二人は灯台に入っていった。……武器もない状態で接触するのは避けたい。
いや、弾は入っていなくとも外見はリボルバーだ。脅しには使えるか?
……まて。自分の文化や常識を当てにしない方がいい。
リボルバー──もとい、銃器のこと自体を知らないかもしれない。
──やめておこう。
灯台から遠ざかるように、俺は南西に向けて歩き出した。


【残り98名】

【A-7→B-6(南西に移動中)/砂浜/一日目・0:50】

【ガユス・レヴィナ・ソレル】
 [状態]:健康 (体力が少し落ちていることを確認)
 [装備]:リボルバー(弾無し)
 [道具]:支給品一式
 [思考]:南西に向かう、呪いの刻印を外す、
 能力制限を解除する方法を探す、協力者を探す
22我らヒーローズ!(1/4) ◆ZlP49.IyQM :2005/03/29(火) 16:48:21 ID:LdTF658G
「誘拐!?」
 随分と元気を取り戻した要は、素っ頓狂な声を上げた。
 というのも、白い犬と戯れていたところで、
 「あ、要が笑ってる!」「笑ってるね!」「ロシナンテ効果だな!」「アニマルテラピーだね!」
 と口々に喜びの言葉を言いながら戻ってきたアイザックとミリアにいきなり告げられた言葉が、

『聞いてくれ要、俺たちは参加者たちを誘拐することにした!』
『ゲームをぶちこわすんだよ!』

 というものだったからだ
「そう、誘拐だ!」
「誘拐だよ!」
「わんデシ!」
 褒められるのを待つ子供のような笑顔で頷くアイザックとミリア、
 おまけに腕の中の白い犬まで、同調したように吠えるではないか。
 要は頭が痛くなった。
 確かに誘拐≠ニいう言葉は穏やかではないにしても、おそらくこの二人は参加者たちを逃がす、という意味合いで言っているのだろう。
 それはわかる、わかるのだが……
23我らヒーローズ!(2/4) ◆ZlP49.IyQM :2005/03/29(火) 16:49:02 ID:LdTF658G
「アイザック、なんだか私達ってヘンタイヒーローみたいだね!」
「ヘンタイヒーローって何だ?」
「ジャパンのヒーローだよ! それぞれの性格にあった色違いの全身タイツを着て、悪い奴らをやっつけるんだって
 ちなみにリーダーはレッドみたいだよ」
「よし、じゃあミリアがレッドだ!」
「わぁい! じゃあアイザックはピンクね! リーダーの恋人の色」
「OK、レッドは俺が守ってやる!」
「わぁい、ピンクかっこいい!」
 昔の戦隊ヒーローは、ピンクが人質担当だという話だが。
「チーム名とかもあるみたいだよ、何とかヘンタイって」
「うーん、義賊ヘンタイとか?」
「変態じゃなくて戦隊ですよ!」
 要は耐えきれなくなって声を上げた。
「二人のやりたいことはわかる、むしろ賛成です。
 でも、いくら何でも計画が薄すぎます! 第一その誘拐≠するなら一人一人しなければならないでしょう?、
 それなら他の人を誘拐するとき、先に連れてきた人をどうするんですか、
 連れて行くんですか、それともどこかで休んでもらうんですか?
 休んでもらうんだったら、どこか拠点になるようなところを作っておかないと……そうだ、こことか!」
 つい意見を続ける要をぽかんと見ていた二人は、しばらくの沈黙の後、
「……知性派だ」
「知性派だね」
 目を輝かせてつぶやいた。
「……え?」
24我らヒーローズ!(3/4) ◆ZlP49.IyQM :2005/03/29(火) 16:49:37 ID:LdTF658G
「すごい、すごぉい、ケンセツテキ意見だよ要!」
「くやしいが俺の負けだぜ!」
「要はイエローだね! 知性派の色」
「ミリア、何でイエローなんだ?」
「ええと、哲学的なことを考えながらカレーを食べるから、どんどん食べこぼしちゃってタイツが黄色くなったの」
 それはただのだらしない人だ。
「へえ、要はカレーが好きなのか」
「……違いますよぉ、知性派はブルーですよ」
「あ、ロシナンテはどうするよ、ミリア?」
 聞いちゃいない。
 泣きそうになった要を、ロシナンテことシロが慰めるように見上げている。
「やっぱりホワイトだよ、白いもん」
「……わ、わんデシ?(また名前が変わったデシか?)」
 シロは目を丸くした。
「よぉし、義賊戦隊デ・ラ・マンチャ誕生だ!」
 由来はあの妄執に取り憑かれた老人の名前、ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ……二人は未だにこのネタを引きずっていたらしい。
「誕生だね!」

 呆れるイエローとホワイトを尻目に、レッドとピンクは高らかに声を上げる。

 未だ暗い倉庫の中には、悲壮な空気などもはや微塵も見られなかった。
25我らヒーローズ!(4/4) ◆ZlP49.IyQM :2005/03/29(火) 16:50:08 ID:LdTF658G
【E‐4/工場倉庫/一日目04:40】
【アイザック】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「いっちょ元気に誘拐活動だ!」

【ミリア】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:なんかかっこいいね、この拳銃 (森の人・すでに一発使用)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「そうだね、アイザック!」

【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)】
[状態]:健康
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:「こんなゲーム中止デシ!」

【高里要】
[状態]:元気を取り戻したが別の意味で疲れ気味
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:アイザックとミリアに同行させられる
「ところで凪ちゃん」
「初対面の奴をちゃん付けで呼ぶか?ふつう」
 言われてしまった。はて?そんなにおかしなことだろうか。
「だって君は僕より年下だそうじゃないか。ぼくはこれまで年下の子には
 例外なくちゃん付けで呼んできたんだよ。」
 もちろん適当である。どんな風に呼んでいたかなんて覚えているわけ無いではないか。
だいたい対人記憶能力に重大な欠陥を持つ僕にしてみれば名前を覚えている人なんて
あの島で、ともに壮大なるラブストーリーを繰り広げた千賀ひかりさんだけだ。(一部脚色あり)
嘘だけど。
「ふぅん、まぁいいや。それより今のうちに寝ておけよ、やっと落ち着いた状況になったんだ。
 どうせこれまで一睡もしてないんだろ?」
 そのとおりである。しかしぼくは寝顔を他人に見られるのが嫌いなのだ。
春日井さんがぼくのアパートに来た時も、そのせいでよく眠れなかった。
「やっぱり、ぼくには孤独が似合ってる……か」
 戯言だ。
この状況、何人かでかたまっていた方がいいに決まっている。
それを考えると、ダナティアさんとはぐれたのは痛かったな、美人だったし。
凪ちゃんもかなり美人だが、ダナティアさんにはどこか、怪しい大人の魅力があった。
「その点で考えてもやっぱり痛いな」
「あ?どうした。なんか言ったか?」
「あぁ、零崎、参加者名簿を見せてくれないか?さっき言った通り、何も持ってないんでね」
 零崎は あぁ、と言うと、デイパックの中から名簿を取り出し放ってよこした。
ぼくは参加者名簿を覗き込む。やはり知らない人ばかりだ、単純に忘れているだけかもしれないが。
って、ぼくの名前いーちゃんってなんだよ。普通愛称で書くか?
零崎に、あぁ、哀川さんも参加しているようだ。これはもう優勝者は決まったも同然だな。
そして、
「なっ!」
その下に、ありえない、名前を、みつけた――
「子荻……ちゃん……」
そんな、ありえない。確かに子荻ちゃんは姫ちゃんに殺されて、ばらばらになって――
死んだはずだ!
ぼくは確かにこの眼で見ている。子荻ちゃんの頭部が胸部が腹部が肩が腕が手が
指が腰が尻が脚が足が、輪切り状に、飛び散るのを。
ぞっとするほど冷たい視線でぼくを見据えながら名乗りを上げる子荻ちゃん。
クロスボウでぼくを狙う子荻ちゃん。
ぼくを無為式と呼んだ子荻ちゃん。
ぼくの言葉に顔を真っ赤にする子荻ちゃん。
さまざまな子荻ちゃんがぼくの中でフラッシュバックする………
そんな、そんな馬鹿な。それこそ、戯言だ、先月の助教授でもあるまい。
「そんな……」
ばか…な…奴らは……あの優男は……
「死者……を…生き返らせることが……できる…?」
【残り98人】

【F−4/森の中/1日目・04:30】
【いーちゃん(082)】
[状態]: 健康 子荻ちゃんの名前を見て錯乱中
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: お互いに見張りあい体力を回復

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:とりあえず隠れて体力を回復、および状況の変化を待つ

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁
[道具]:デイバッグ(支給品一式)サバイバルナイフ
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。体力を回復

周囲には糸で作られたトラップが張られている。触れると3人が気付くが触れた人間は気付かないしくみ。
29 ◆Tqj41pFNVk :2005/03/29(火) 20:31:40 ID:HtP5RmeY
「もう行きますよ、オーフェン。」
そう言って、つややかな黒い髪を持つ、妙齢の女性は階段を下り始めた。
「って、おい、ついさっき登ってきたところじゃねーか!」
オーフェンと呼ばれた男が慌ててその背中に向かって言う。
「あんた達、まだ話は終わってないわよ!」
先ほど分厚い本を拾い上げて――突如宙に浮かんだそれに腰掛けた『弔詞の読み手』マージョリー・ドーの鋭い声が飛ぶ。
「私たちはもう闘う気はありません。めんどうですし、あとはご勝手に。」と白けた返事が返ってきた。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「ヒャーッハッハッハー!あの雰囲気、誰かさんにそっくりだな、我が唯我独尊、マージョリー・ドー!!」
「おだまり、バカマルコ」「ブッ」
「何なんだよ、まったく」とあきれた顔をしてオーフェンはすたすたと階段を降りていく女性の後を追った。

「ったく・・・。ところであんたは?」
「私はミズー・ビアンカ。」
「ヒヒ、ここまで運んできてくれた麗しき運搬人だ。」
「そう、一応礼は言っとくわ。それじゃ。」
「ちょ、待ちなさい。その本は一応私の支給品よ。ただであげるとは誰も言ってないわ。」
「そうね、・・・そういえば私の鞄にはこれが入ってたわ。これと交換しない?」
そういって懐から眼鏡のようなものを取り出す。
「なにそれ」
「私も良くわかんないのよ。説明書が付いてたから勝手に読んで。」
「まぁいいわ。それじゃ、そういうことで。」
そう言って、受け取ったミズー・ビアンカは踵を返し立ち去った。
「さて、これからどうするんだ?殺し合いか?我が殺戮の美姫マージョリー・ドー」
「まだ決めてない。・・・そういえば名簿にあのチビジャリの名前があった。少し興味あるし探してみるわ。」
「ヒヒヒ、『炎髪灼眼』か。どういう風の吹き回しだ、我がゴブレット。」
30離散(2/2) ◆Tqj41pFNVk :2005/03/29(火) 20:33:00 ID:HtP5RmeY
【B-5→D-5/長い石段/1日目・2:30→3:40】

 【キノの師匠 (若いころver)(020)】
 [状態]:正常
 [装備]:パチンコ
 [道具]:デイバッグ(支給品入り) ダイヤの指輪
 [思考]:南へ向かう
 【オーフェン(111)】
 [状態]:かなりの疲労
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(支給品入り)
 [思考]:師匠について行く。

【B-5/長い石段/1日目・2:30】
 【ミズー・ビアンカ(014)】
 [状態]:ちょっと疲労
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(支給品入り) 、知覚眼鏡(クルーク・ブリレ)
 [思考]:不明
 【マージョリー・ドー(096)】
 [状態]:肋骨を一、二本骨折
 [装備]:神器『グリモア』
 [道具]:デイバッグ(支給品入り)
 [思考]:シャナ探索。
【残り98人】
31まれびと1/3:2005/03/29(火) 20:38:06 ID:QiMjPhy3
「ああ、くそっ!ついてねえ」
 ジェイスはこぼした。ずっと森の中を歩いているが誰一人見つからない。
今はH-2地区あたりだろうか。
「殺しあう以上楽しみてえんだがなぁ」
 改めて地図を開くと、H-1地区には神社があった。
きっと誰かが隠れているに違いない。
「もう後には戻れねぇ・・・」
 ひとりでに唇の端がつり上がる。
 ジェイスは疾走した。まだ見ぬ獲物を求めて。
32まれびと2/3:2005/03/29(火) 21:04:13 ID:QiMjPhy3
 オドーは思考していた。仲間との合流を急ぐか、それとも見知らぬ者と手を組むか。
「どちらにしろ、どちらにしろ単体行動は危険だ」
 イカれたゲームの中とはいえ油断はできない。
 敵が複数の場合は、いくら自分に「悪臭」(指ぱっちん)があっても
不利なのは確実である。
「とりあえず、とりあえず協力者が必要だ」
 しかし、さきほどからG-1,G-2,H-1地区を歩き続けているのに、
人の気配すら感じない。突然。
「!!」
 オドーは悲鳴と破壊音を聞いた。声は十代女性。
「たしか、たしか向うには日本の神社と呼ばれる建築物があったはずだ!」
 戦いを止めねばならない。
「己の、己の信じる正義と自由のために」
33まれびと2.5/3:2005/03/29(火) 21:48:40 ID:QiMjPhy3
 オドーの向かう先では、鉄パイプを持ったかなめとジェイスがにらみ合っていた。
自分が目覚め、しずくと会話していると、いきなり剣を持つ男が飛び込んできたのだ。
「朝っぱらから失礼なやつね、デリカシーってもんがないの?」
 日々宗介といるおかげで、デリカシーゼロの人間と付き合うのも、
襲撃者との戦闘も体験したが、今回はなかなかヘヴィな状況である。
 しかもしずくは、飛び込んできた男に剣で吹き飛ばされて倒れている。
 援護は無く、今は虚勢で相手になめられようにするので精一杯だ。
「千鳥かなめ絶体絶命の危機ってヤツね、これでいったい何度目なのよ」
 相手に聞かれないようつぶやき、今は居ない戦争馬鹿を思う。
「何が祭られてるのかしらないけが。ここの神に祈ってみるかお嬢さん?」
 自分の心を見透かしているかのように男は笑う。ガウルンを思い出すのは
気のせいだろうか?宗介は今どうしているのだろう?だめだ、今彼を思うのは危険すぎる。
「けりつけようぜ、お嬢さん」
 男が跳躍した。かなめは僅かに動揺し、見上げることしかできなかった。
 次の瞬間死の使いが振り下ろされた。



34Bioody Rose ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/29(火) 22:19:51 ID:iloseHtT
「もう目、覚めたんだ」
千絵は時計を見る、04:30…まだ2時間しか眠ってないのか?6時間は眠ったような感じがするが
「うん、アメリアも少しでもいいから寝たほうがいいよ」
「私は大丈夫、こういうの慣れっこだから」
スィリーは未だに暢気に眠りこけている…千絵は少しため息を吐いた。
「見張りならこいつにさせればいいと思うんだけど」
「いいよ、2人ともまだ眠ってて…というか」
そこから先は口にするのは憚られた、下手に起きて手伝うとか言われるよりは
自分1人の方が戦いやすい、とは
(リナさんならはっきりと言うんだろうなぁ)
先ほどの千絵と同じように少しため息をつくアメリア…そんな2人と一匹を高架の上から
舐めるように眺める影が一つ。

「欲しい…」
その影の主はいまや吸血鬼と化した佐藤聖だった、やはり犬猫の血では満足できず、
かといってお目当ての獲物にありつくまで我慢できなかったのだろう。
その瞳は爛々と熱を持って輝いていた。
下まで10メートル…今の自分なら何とかなる。
聖はゆっくりと高架の手すりの上に立ち、そこからゆっくりと体を傾けていく。
その体の傾斜が高架の柱と平行になったかと思った瞬間、聖は眼下の獲物に向かって柱を伝い
急降下を開始した。

(思ったそばから敵襲!!)
上空からの気配にいち早く気がつくアメリア、案の定千絵はまだ気がついていない。
見ると柱を伝い猛ダッシュをかましてくる、女性の姿、その動きは樹上に潜む猫科の猛獣を彷彿とさせた。
(狙いは千絵さんっ!やっぱり)
アメリアはようやく気がついた千絵を思い切り突き飛ばす、そして次の瞬間たった今まで千絵がいた
地点で聖の爪が空をきる。
35Bioody Rose ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/29(火) 22:20:40 ID:iloseHtT
哀れなスィリーがよけ切れず返しの裏拳を受け、近くにあったコンクリートの柱に叩きつけられる。
脳震盪でも起こしてしまったのだろうか、そのままピクリとも動かない。
聖はくるりとアメリアの方を振り向く、爛々と光る赤い瞳、そして唇から覗く牙…
(ヴァンパイア!?)
そう思うや否やアメリアは呪文を唱える。
「振動弾!」
相手がヴァンパイアなら長期戦になる、呪文の無駄遣いは…
しかしその相手はいつまでいつまで経ってもやってこなかった…
聖はアメリアの気弾を受けてとうにノックダウンしていた、いかに身体能力が強化されていても
戦闘技術は所詮素人だった。


「この人」
千絵とアメリアは気絶した聖の顔を眺める。
アメリアには見覚えがあった。
あの時、リナさんが去った後も泣き崩れる金髪のエルフ…皆気の毒だとは思ったが何も出来ずにいた
そんな中、そのエルフを慰めながらそっと人ごみの中につれて戻ったあの人だ。
見ると首に傷がある…
「かまれちゃってますね」

選択肢は2つ、このまま浄化するか…それとも解呪するか 
まず解呪だが…この場合は彼女を噛んだ主の魔力との勝負になる。
主の実力は首の傷跡を見ればわかる…しかし
これほど鮮やかな傷を刻めるのは…創造するだに恐ろしいが魔王クラスの吸血鬼に違いない。
出来るのか?力も満足に使えない今の状況で。
36Bioody Rose ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/29(火) 22:21:22 ID:iloseHtT
なら…殺すか?
アメリアの手に白い光が宿る、この光を彼女の心臓に撃ちこめばそれで彼女は灰になる。
だが…アメリアにはどうしてもそれを行う気にはなれなかった。
確かに可能性は低い、しかしいかに困難であろうとも自分たちは、
これまで何度も乗り越えてきたではないか
「ですよね、リナさん」
アメリアの瞳にもう迷いはなかった。

夜の闇の中で、アメリアの呪文の詠唱が続く
それを固唾を飲んで見守る千絵、ちなみにスィリーはもはや忘れ去られている。

朝になる前に解かなかれば、この人が灰になってしまう。
アメリアはさらに魔力を集中しているつもりだが、
だが焦りと1人でいることの不安が集中を乱し、上手く呪文を織り上げることができない。
それに彼女は重大なミスを犯していた。
もしこの場にリナやゼルガディスがいたなら、聖の両手足を必ず拘束してから解呪に及んだだろう。

解呪の最中は完全に無防備になってしまう、その時に攻撃を受ければひとたまりもない。
アメリアとてそんなことは承知している。
しかし急を要するのと、ホールでの出来事での第一印象…彼女はきっといい人に違いない
この人は被害者なんだ、早く助けてあげないと…。
その思い込みと性善説に基ずくお人よしゆえ、彼女はその大前提を怠ってしまっていた。

息が乱れ、眩暈が止まらない。
アメリアはそれでも必死で残りわずかな魔力を集中させる、
しかし解呪が成功すれば消えるはずの聖の喉の傷跡はまるで変わらない。
やがて…膨らみに膨らんだ風船が萎むようなイメージが脳裏に浮かんだと同時に
文字通りガス欠状態になってアメリアはへたり込んでしまった。
37Bioody Rose ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/29(火) 22:22:20 ID:iloseHtT
そして…。

今まで自分を戒めていた厄介な光が薄れていく、薄目を開けて周囲を伺う聖
袖の下に隠していた剃刀をそっと掌へ滑らせ、そしてやはり猫のように鮮やかに右手を一閃する。
狙いは、あの白い服の女の子だ。
完全に不意を討たれたアメリアには対応するすべがない、ただわずかに眉を動かしたのみだ、その時、
「危ない!!」
アメリアの眼前でカバーに入った千絵の喉を剃刀が一閃、血煙が周囲を赤く染める。
さらに返す刃が、アメリアの顔面をも縦にざっくりと斬り裂いていた。
「あっ…ああっ」
「ああああっ」
「あああっ…ああっ…うわああああああっ!!」
3人の視界が真紅に染まる。

聖は噴水のように噴き出る千絵の血飛沫を顔面に浴び、恍惚の叫びを上げる。
千絵は激痛とショックでごぼごぼと声にならない悲鳴を上げる。
そしてアメリアの叫びは、自分に対する怒りとそして絶望の叫びだった。
アメリアは絶叫と同時にふらふらと立ち上がり聖に殴りかかるが、今度は形勢が完全に逆転している。
まして足元もおぼつかない状態では話にならない…、軽くいなされさらに背中に一撃…
そして足を滑らせ彼女はごろごろと崖下へと転がり落ちてしまっていた。
38Bioody Rose ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/29(火) 22:23:54 ID:iloseHtT
(リナさんリナさんリナさんリナさんリナさあぁん)
顔をざっくりと斬り裂かれ、さらに背中も斬られ…白い僧衣は真紅に彩られ、
そんな状態でアメリアはふらふらと森をさ迷っていた。

だが…それでも彼女は思う。
「わたし…間違ってませんでしたよね?」
血を流しすぎたか?意識が薄れる…だれかに気がついてもらえないと危ないかも…
大木にもたれかろうとして背中の痛みに顔をしかめ、うつぶせに地べたに倒れこむアメリア
「ゼルガディスさん、私のこと褒めてくれるかなぁ?」
最後にそれだけを言い残し、アメリアの意識はそこで途切れた。


一方、高架下からやや離れた路上では、
「ころしてぇ!!ころしてよぉ!!」
「気持ちはわかるわ、でも辛いのは最初だけだから、ね」
泣き叫ぶ千絵を慰める聖、千絵の唇からは…やはり牙が覗いていた。
そう、彼女は聖の洗礼を受けてしまったのだ。

泣き叫びながらも急激な渇きを覚え、ペットボトルを取り出す千絵…しかし
「ぐぇっ!」
蛙のような声を上げて全て吐き出してしまう。
「無駄よ…私もそうだったから…でもね」
聖は自らの顔にこびりついた血を両手の指でぬぐい、片手のそれを舐め取りながら
もう片方を千絵の口元に持って行く。
「舐めなさい…楽になれるわよ…ほら」
顔を背ける千絵を無視するように、聖は千絵の口に指を突っ込む。
ぞれでも最初は拒絶していた千絵だったが、やがてぴちゃぴちゃとみだらな水音が響いてくる。
聖は聖で指先の心地よい感触にうっとりと目を閉じ、しおりぃ…などと呟いている。

「これじゃ足りないわよね…2人で舐めましょう、うふふ」
千絵は差し出されたアメリアと、そしてまだ人間だった頃の自分の血で濡れ光る剃刀の刃に、
泣きながら舌を這わせる。
39Bioody Rose ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/29(火) 22:31:56 ID:iloseHtT
「これじゃ足りないわよね…2人で舐めましょう、うふふ」
千絵は差し出されたアメリアと、そしてまだ人間だった頃の自分の血で濡れ光る剃刀の刃に、
泣きながら舌を這わせる。
脳裏を貫く甘味と同時に人の心が溶けてなくなっていくような感覚に必死で耐える千絵
だがそれも時間の問題だろう…。
(物部くん…早くあたしを見つけて、そして…早くあたしを…殺して!)

【D−4/森林近く路上/1日目・05:00】
『No Life Sisters(佐藤聖/海野千絵)』

【佐藤聖 (064)】
 [状態]:吸血鬼化/身体能力等パワーアップ
 [装備]:剃刀
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:吸血、己の欲望に忠実に(リリアンの生徒を優先)/そろそろ寝床を探す

【海野千絵】
[状態]: 健康/吸血鬼化
[装備]: なし
[道具]: なし(支給品は高架下に放置、ペットボトルはポケットに入れていたと思いねぇ)
[思考]: 物部景に殺してもらう
(スィリーは放置状態)

【C−4/高架近くの森/1日目・05:00】
【アメリア・ウィル・テスラ・セイルーン】
[状態]: 重症・気絶
[装備]: なし
[道具]: 支給品一式+獅子のマント留め@エンジェル・ハウリング
[思考]: 不明/仲間を探し→主催者を倒す
40闇妖精の依頼(1/3):2005/03/29(火) 22:36:29 ID:KSw0oOTr
 蒼い機体が高速で離れていく。
 それを確認して、男は銃を下ろした。
「おや、行ってしまいましたね。あなたの出番は無かったようですよ」
 その男――秋せつらは、近くの木に向かってそう呼びかける。
 と、陽炎が揺らめくようにその木の周辺が一瞬ぶれ、耳が長く黒い肌の闇妖精が姿を現す。
 アシュラムに仕えるダークエルフ、ピロテースであった。
 蒼い殺戮者の不意を突こうと、姿隠しの魔法で身を隠していたのだ。
「構わない。あのような面妖な輩、意思疎通ができるかどうかも怪しい」
「ぼくは少し残念です。配線の一本でも頂戴できれば"糸"の代用品として使えたのですが」
 さして残念でもなさそうにそう言うと、銃をしまい、ピロテースの前まで歩いていく。
「さて、妙な闖入者が来たおかげで商談が中断してしまいましたが。
 ピロテースさん、あなたの依頼はアシュラムという方の捜索、でしたっけ」
 その言葉にピロテースは頷いた。
「そうだ。私はアシュラム様の臣下。あの方をお守りせねばならない」
「なるほど。で、報酬としてぼくはこの銃を戴いてよろしいんですね?」
 銃をしまった懐をぽんぽん叩きながら問う。
 その言葉にも、ピロテースは頷いた。
 精霊は鉄を嫌う。また、使い方も分からないので、どのみちピロテースには無用の長物なのだ。
 それになにより――
41闇妖精の依頼(2/3):2005/03/29(火) 22:37:32 ID:KSw0oOTr
「大体、私はお前に敗れた身だ。力ずくで強奪しても良いところを……」
 そうなのである。
 蒼い殺戮者が近辺に現れる前に、この二人は戦闘を繰り広げていたのであった。
「いやぁ、不意打ちを食らったときは、さすがのぼくももう駄目かと思いました」
「よく言う……最初から気づいていたのだろうが」
 頭をかきながら笑うせつらに、ピロテースは半眼になった。
「しかも、その倒した相手の人探しを引き受けるとは……変わった男だ、お前は」
「無益な殺生はしない主義なんです。まぁ、任せておいてください、
 これでも新宿では少しは知られた人捜し屋ですから。本職はせんべい屋なんですけど。
 あ、おせんべい食べます?」
 デイバッグからせんべいの詰まった袋を取り出し、一枚ピロテースに差し出す。
 見たことの無い食べ物に、思わず警戒した面持ちになる。
「支給品として入っていました、ぼくの店のせんべいです。
 どうせ自分の持ち物が支給されるなら、こんな状況では"糸"のほうが有難かったんですけど」
 さぁさぁとばかりに差し出されるせんべいの香ばしい匂いに、さすがに少し食欲が刺激される。
 ピロテースはそれを受け取ると、しげしげと眺めてから口にした。
「……硬いな」
「でも、おいしいでしょう?」
「……まずくはない」
「それはなにより」

 そして二人は歩き出す。
 二人の気配とせんべいをかじる音が、夜の森に溶けていった。


【残り98人】
42闇妖精の依頼(3/3):2005/03/29(火) 22:38:25 ID:KSw0oOTr
【人捜し屋さんチーム】
【F-2/森の入り口付近/1日目・03:30】

【秋せつら】
[状態]:健康
[装備]:強臓式拳銃『魔弾の射手』
[道具]:デイパック(支給品一式/せんべい詰め合わせ)
[思考]:ピロテースをアシュラムに会わせる

【ピロテース】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:アシュラムに会う/邪魔をするものは殺す


[備考]:F-2 → F-1方面へと移動します。
    BBを銃撃したのは秋せつらです。

出典:
秋せんべい店のせんべい@魔界都市ブルース
魔弾の射手@機甲都市伯林
(強臓式による機能は本来の持ち主でしか発動出来ないため、普通の拳銃と変わりありません)
(本来の持ち主はエントリーされていません)
43まれびと3/3:2005/03/29(火) 22:46:49 ID:QiMjPhy3
「つまらん、つまらんぞ。貴様は」
 声とともにかなめは3つの音を聞いた。
1つは神社の入り口に居る男から
1つは自分の頭上で男の頭を砕いた時のもの
1つはその力がそのまま剣を砕いた時のものであった
 そして聞いた順に音は大きく神社の中に響いた。
 下を見ると今さっき自分に切りかかった男が倒れている。即死だ。
「手加減、手加減できぬ左手でな。本命を使うしかなかった、許してくれ」
前を見た。入り口には体格の良い老人が立っている。
「なに?今の?」
 安堵とともに今までしまっていた恐怖が湧き出てきた。
しかし彼女の口から出た言葉は、ウィスパードとしての好奇心から来るものだった。
「簡単な、簡単な手品と言っておこうか、私は悪臭と呼んでいる。
そして私はオドー、協力者を探している」
「ならもうここに一人居るわ。私は千鳥、千鳥かなめよ」
「ここにも居ますよ。戦力外ですが」
吹き飛ばされたはずのしずくが立ち上がる。
「こう見えても頑丈でして」
「それは、それはなによりだ。ところでこの男は何者だ?危険なので排除したが」
「ゲームに乗った奴じゃないの?とりあえず助けてくれてありがとう。
感謝するわ」
「それは、それはかまわん。信念に従ったまでだ。だがこれからどうする?
今の音は響いたはずだ。近くの者が集まるぞ」
 こういう時のかなめの行動は早い。荷物をまとめ始めた。
「移動しましょ。とりあえず公民館目指して。日が昇り始めてるし、
ぐずぐずしてると見つかるかも」
「その道は、その道は安全だ。私が飛ばされたとき近くに人は居なかった。
海沿いに進むのが良かろう」
 荷物をまとめながらしずくが答える。
「もしかするとBBが拾ってくれるかもしれません。そろそろ6時になりますね」
「6時って言えば放送・・・」
まさにその時声が聞こえてきた。
44相伝 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/29(火) 22:59:16 ID:HtP5RmeY
階段を降り終えた二人、師匠とオーフェンが近くを歩いている三人の人影を見つけた。
なにかを一瞬考えた師匠が、突然大声で言う。「とまりなさい!」
気づいた三人は警戒しているが、師匠は遠慮なく近づいた。
「おや、キノじゃないですか。」
「なんだ?」「知り合いか?」
オーフェンと、三人のうちの一人イルダーナフが同時に言った。
「え?どこかでお会いしましたか?」
呼ばれたキノは意外そうな顔で聞く。
「師匠の顔を忘れるとはいい度胸ですね。」
口元をニヤリと動かして脅すように言う。
キノの顔色が変わった。
「ま、まさか師匠?ええ、でも、その・・。」
「ええ。なぜかこの世界に来てから体が昔のように、そう、若返ったようです。何故かはわかりません。」
キノはかなり驚いた顔を作る。
「そ、そんな。名簿で見たのでいるとは思ってましたが、まさかこんな・・・。信じられない。」
「気に入りませんか?」
「いえ、そんなこと・・ないです。」声が徐々に小さくなった。
ふと師匠はなにかに気づいて、
「おや、そのパースエイダーは・・・。」
キノはうなずいて、
「ええ、前に師匠からお借りしたものです。ここでも運良く手に入れられました。」
「そう、それは良かったですね。」
45相伝 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/29(火) 22:59:41 ID:HtP5RmeY
気を取り直したキノが笑顔で言う。
「・・・・・そうだ、師匠、一緒に行動しましょう!」
さも当然そうに、
「それはできません。」
「え、何故ですか?!」
「あなたはここで私に殺されて死ぬからです。ここでは最終的に一人しか生き残れない。あなたも知っているでしょう?」
「で、でも一緒になんとかすれば!」
「いいえ、だめです。こんな不可思議な世界で、“なんとか”なんて通用しません。
私とあなた、最後に残る可能性があるのはどちらか一人です。」
そう言って一度言葉を切る。
「・・・・・・・・」
師匠が優しそうな笑顔で続けた。
「・・・・何度も教えたはずですよ、キノ。生き残るためには、そのときできる最大限の努力をしろと。誰かを殺めることになっても遠慮などするなと。」
「そう・・ですけど・・・師匠と殺し合いなんてできない!」
「あなたがなんと言おうと、私はここであなたを殺します。・・・決闘をしましょう、キノ。わかりましたか?」
少しも相手の意思など聞いてはいない様に言う彼女のその眼が、彼女が本気であることをキノに告げた。
「ルールは以前教えたことがありましたね。ではその通りに。」
「・・・・・はい。わかりました。」
もはやなすすべはないと悟ったキノは言った。
「っでもアンタ、」なにかを言いかけたオーフェンにすかさず師匠が怒鳴る。
「オーフェンっ!!・・・あなたはそこで黙って見てなさい。」
ヴィルとイルダーナフの方を向いて、少し落ち着いた声で、
「あなた達も。これは私とキノの問題です。手出し、口出しは無用です。」
そう言いながら右目で微かにウィンクした・・・様にヴィルには見えた。
46相伝 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/29(火) 23:01:19 ID:HtP5RmeY

向かい合う二人。
「師匠、パースエイダーは?」
「ええ、ここに。」と懐に手を入れて師匠が言う。
そして二人は背中をあわせた。
「いいですか、数えますよ。・・・・」
「・・・3!」
二人は一歩前に出る。
「2!」
もう一歩。
「1!」
二人は呆れるような速さで振り向き、構え、撃った。

―――ズドン!!

キノは眉間に、目と目の間のど真ん中に、猛烈な衝撃を受けて後ろに倒れた。
「ッぐ!」揺らぐ視界。途切れる思考。

師匠は、腹のど真ん中に、猛烈な衝撃を受けて後ろに吹っ飛んだ。
腹部から入った弾丸が背中と一緒に破裂する。まるで背から真っ赤な花が咲いているようだった。

そしてほんの数秒――キノには永遠とも思える時間だった――が過ぎる。
(・・・・・生きている?)
目の前を転がる石をぼーっと見る。そして気づく。
「ま・・さか・・!」
ふらつく頭を押さえながらキノが駆け寄る。
47相伝 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/29(火) 23:01:58 ID:HtP5RmeY
「師匠!!どうしてっ!!!」
額の痛みも忘れて自分の師匠の肩を掴む。
「・・キノ・・・甘いですよ・・・。狙いはきっちり眉間を・・・」
パチンコを手にした師匠がか細い声で言った。
「そんな、師匠!!師匠らしくないです!!」
地面を真っ赤な液体が、容赦なく広がる。
「いいですか・・・?キノ。必ず・・必ず、最後まで生き残りなさい。どんなことをしても。」
静かな笑顔でそう言って、駆け寄ってきたヴィルとイルダーナフに、
「この子をよろしくお願いしますね。最後はこの子のために死んであげてね。」
と本気か嘘か、わかりかねる言葉を、
いたずらそうな、穏やかな笑顔で言った。
そして、息を引き取った。

そして時間は過ぎる――
師匠をその場に埋めて、一人で淡々と、黙って墓を作ったキノは、
「しばらく一人で・・」
そうつぶやいてとぼとぼと歩き出した。
察したヴィルとイルダーナフ、そしてオーフェンは、その後を、少し距離をとって、追い始めた。

48相伝 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/29(火) 23:02:42 ID:HtP5RmeY
 【キノの師匠 (若いころver)(020)】
 [状態]:死亡
 [装備]:なし
 [道具]:ダイヤの指輪(墓の中)

 【オーフェン(111)】
 [状態]:普通
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(支給品入り)
 [思考]:とりあえずキノ達について行く。

 【キノ (018)】
 [装備]:『カノン』 師匠の形見のパチンコ
 [道具]:支給品一式
 [思考]:ショック状態

 【ヴィルヘルム・シュルツ(010) 】

[装備]:ベネリM3(残り6発)
[道具]:支給品一式
[思考] キノを追う

 【イルダーナフ(103)】
[装備]:ヘイルストーム(出典:オーフェン、残り20発)
[道具]:支給品一式×2(ブルー・ブレイカーの分)

[チーム行動方針]:イルダーナフの知り合い(カイルロッド、リリア、アリュセ)を捜す。

【C-5/階段上り口付近/1日目・05:30】

49まれびと3/3結果:2005/03/29(火) 23:03:43 ID:QiMjPhy3
【正義と自由の同盟】
【H-1/神社付近/1日目・05:55】
【オドー】
[状態]:健康
[装備]:デイパック一式とアンチロックドブレード(戯言シリーズ)
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:協力者を集める。知人と合流。仲間を守る。

千鳥かなめ
[状態]健康。オドーに感謝。
[装備]陣代高校の制服、鉄パイプのような物(バイトでウィザード、「団体」の特殊装備)
[道具]デイバック一式。
[思考]戦う意思は無し、宗介・テッサと合流したい。公民館へ向かう。

しずく
[状態]健康。機能異常は無いがセンサーが上手く働かず。
[装備]上下一体の白いスーツ、エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん)
[道具]デイバック一式。
[思考]戦う意思は無し、BBと合流したい。二人についてく。

[備考]:H-1→D-1目指して移動中
【残り97人】

50風と泡(1/4) ◆ZlP49.IyQM :2005/03/29(火) 23:04:21 ID:04Wmgfda
「――危険だ」
 不意にボーイソプラノの声がかかり、ヒースロゥ・クリストフは足を止め顔を上げた。
 湖の畔に、少女とも少年ともつかない容姿の人間――ブギーポップが立っている。
 彼はなにやら思案するような顔で、ヒースロゥを見つめていた。
「……失礼だが、俺に何のようだ?」
 特に敵意があるようにも思えない。
 しかし彼酷く浮世離れた雰囲気と、自分に向けられた「危険だ」という言葉に、ヒースロゥは思わず木刀に手をかける。
「顔も知らない者達への怒りと憎しみが君の中には渦巻いている。これは非常に危険だ」
 ヒースロゥの問いに答えず、ブギーポップはつぶやき続ける。
 その言葉は己に向けているのか相手に向けているのか今ひとつ判断が難しかった。
「お前は何者だ、俺に何か用があるのか?」
 だがヒースロゥは無視されているにもかかわらず、何故か不快感は無かった。
 かといって警戒が解けるほどでもなかったが。
「顔すら知らぬ者の事情を勝手決めつる、罪を断定する、己が断罪者になろうとする。人である君が人を裁こうとする。
 これは傲慢だと思わないかい? 
 そんなものが少しでも許されたら危険だ。その少し≠ェ積もり積もって、やがて常識≠ノなるのだから。これは危険だ。非常に危険だ」
 ここで言葉を止め、ブギーポップはすぅっと目を細める。
51風と泡(2/4) ◆ZlP49.IyQM :2005/03/29(火) 23:05:17 ID:04Wmgfda
「君は――世界の敵≠ゥ?」
 言葉が終わった途端、ブギーポップの姿が消えた。
「!」
 ぞくり、と背筋に悪寒が走り、ヒースロゥは横に飛ぶ。
 ヒュッ!
 ブギーポップが繰り出した手刀により、頭のすぐ横で空気を引き裂く音がした。
 そのまま流れるようにヒースロゥに飛びかかる。
 ヒースロゥは着地と同時に、とっさに木刀をかざす。
 ガツッ!
 その木刀をつかみ飛び越えヒースロゥの喉元を掴もうとするブギーポップを
 ヒースロゥは木刀ごと、渾身の力を込めて投げ飛ばす。
 所詮少女の体であるブギーポップは、そのまま湖の中に落ちる。
 バシャァッ……と派手な音としぶきが上がった。

「……訊きたいことがある」
 岸に泳ぎ着きしがみつくブギーポップの背中を踏みつけ、ヒースロゥは冷ややかに問いかけた。
「お前はこのゲームを楽しんでいるのか?」
「いいや」
 ブギーポップは無表情で答えた。
「では、何故俺に襲いかかった?」
「君が世界の敵だと思ったからだ。僕の仕事は、世界の敵を倒すことなのでね」
 圧倒的有利な状況であるというのに、ブギーポップはおどけたように答えた。
「仕事で、か?」
「ああ、そうさ」
「そうか、それならいい」
 ヒースロゥは足をどけ、ブギーポップの腕を掴み引き上げると、
 そのまま鳩尾に拳を叩き込んだ。
52風と泡(3/4) ◆ZlP49.IyQM :2005/03/29(火) 23:05:52 ID:04Wmgfda
 『危険だ』
 『人である君が人を裁こうとする』

 気絶したブギーポップを茂みの中に隠しながらも、ヒースロゥはブギーポップの言葉が耳から離れずにいた。

 『これは傲慢だと思わないかい?』

(確かにこれは傲慢かもしれない。しかし俺が、いや、気づいた者がやらねば誰がやるというんだ?)
 彼の心に迷いはない。しかし、振り払っても振り払っても彼の言葉が離れない。
 ――一体何故?
(――ああ、そうか)
 しばし、考え、ヒースロゥは思い当たる。
(なんとなく、あいつに似ているせいか)
 ヒースロゥは、あの仮面を付けた、風変わりな友人を思い出した。
(そういえばあいつも、このゲームに参加しているはずだ)
 ほんの少しあっていないだけなのに、妙に懐かしい。
(あいつが今の俺を見たら、この人物と同じことを言うんだろうな)
 ヒースロゥは苦笑いを浮かべた。
(きっと心の奥底で激しい怒りを燃やして、毒を盛ってでも俺を止めるだろうな。あいつならやりかねん)
 しかし、今更決意を改めるつもりはない。
 そこまで考えて、大きく息をつく。
(――あいつとは、顔を合わせられないな)
 少しばかり寂しさを感じながら、ヒースロゥは友人とどこか似た雰囲気を持つ人物を隠し終えた。
53風と泡(4/4) ◆ZlP49.IyQM :2005/03/29(火) 23:06:23 ID:04Wmgfda
【残り97人】
【D-7とE-7の間/時間(一日目・02:03) 】


【ヒースロゥ・クリストフ(風の騎士)】
[状態]:健康
[装備]:木刀
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:マーダー狩り


【ブギーポップ(宮下藤花)】
[状態]:気絶中
[装備]:ブギーポップの衣装
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:世界の敵を探し出し、排除する
54イラストに騙された名無しさん:2005/03/29(火) 23:13:38 ID:qcduIKO1
森の中を男が歩いている。
彼の体には血が付いているが顔にはとても今さっき人を殺したとは思えない笑みを貼り付けている。
『あ〜あ、さっきのガキとっとと殺っちまったかのはまずったなぁ、もうちょっと楽しんでから殺すんだったな。
どいつもこいつも馬鹿みたいに馴れ合いやがって・・全く反吐がでるぜ。
カシムの野郎も奴らみたいになってんだろ〜な〜、たく俺の様になれば楽なのによ〜。』
益々笑みを深くする。
目の前にまるで本人がいるかのように呟く。「なあそうだろう?一緒にゲームを楽しもうぜカシムゥ〜。」
益々笑みを深くする。
ふと向かい側の方に人影が見える。
気配を消しもせずにまるで散歩をしているかのように歩き回っている。
『おめでたい奴め。』先ほど殺した獲物から奪い取った銃を
55イラストに騙された名無しさん:2005/03/29(火) 23:15:04 ID:qcduIKO1
ためらいなく撃つ、距離は10m、弾は相手の眉間を打ち抜いた・・筈だった。
だが少年は気にすることもなく歩みを止める気もない。
『ああん?外しちまったのか?』
向こうから声がした
「隠れてないでてきたらどうだ?」
「ちぃ!」
姿を表すと同時に3発放つと同時に義手の充電を始める。
「待っていてやる。」
その男の姿はごく普通だった、体にフイットした服には汚れ一つついていない、・・この森の中で。
「天に召されな!」
容赦のない一撃が彼を襲った、骨すら残っていないだろうとガウルンは確信した。
「おお神よ、またしても哀れな子羊が・・」
言いかけたところで彼の義手が・・弾けた。「なにぃ!?」
新たな敵が現れたかと思ったところで彼は驚愕した。
目の前に男が立っていた、先程葬り去った筈の男が。
「どうした、まさかそんなもので俺を殺せると本気で思っていたのか?」
冷ややかな目で見下ろす彼の雰囲気は普通の少年のそれとは明らかに異なっていた。
「貴様ぁ・・。」
「そんな程度で自惚れていたのか・・お山の大将にもほどがある。」
少年は怒っていた、彼が人を殺したことにではなく、
56イラストに騙された名無しさん:2005/03/29(火) 23:15:44 ID:qcduIKO1
彼のような弱いものが自分に向かって来たその行為に対して。
『カシムゥ、ケリは地獄でつけようぜ。先に行って待ってて・・』
彼の思考が途切れた
「俺と対等なものは一体どこにいるんだ?」
歩いていく彼の後ろには左腕と首から上のない死体が一つ、まるで赤い花のように咲いていた。

(C-2/1日目/3:00)
【死者】ガウルン
【残り人数】97人

【フォルテッシモ】
【状態】やや不機嫌気味。
【道具】ラジオ
【装備】荷物一式(食料は回復する。)
【思考】
強者を倒しつつユージンを探す、一般人に手を加える気はない。
57イラストに騙された名無しさん:2005/03/29(火) 23:19:52 ID:qcduIKO1
すいません、題名は『狂戦士の会合』で。
58傑作シリーズ開幕? ◆cCdWxdhReU :2005/03/29(火) 23:32:46 ID:+L6Up7/H
「萩原子荻……」
僕はショックを隠せなく、その名を呟いた。
死者の蘇生。
あの男が言っていたのは事実だったのか。
それとも……
「あん? 萩原?」
僕の呟きを聞き零崎が声をあげる。
「知ってるのか?」
「いやまぁ一度やりあったからな。あれだろう『策士』とかいう卑怯臭い手を使う女。結局あのときは殺せなかった」
一度やりあった? こいつ子荻ちゃんと戦ったことまであるのか?
あの男が最高と言える評価もしていたわけだし、底が知れない。
「ああ、彼女は僕の前で死んだ。だがこの名簿に載っているんだ」
「死んだねぇ。まぁここなら何があってもおかしくないんじゃねーか。なぁ凪」
零崎はそう言い、凪ちゃんに同意を求める。
「そうだな。最初の剣士然り、呪印しかり、それについさっきのあのこともな」
「あのこと?」
「そう、さっきって言っていいくらい前な」
「ちょうどいい。説明してやれ零崎」
「ああ」
そう言って零崎は今までの経緯、凪ちゃんと会ってからのことを話し始めた。
59傑作シリーズ開幕? ◆cCdWxdhReU :2005/03/29(火) 23:34:55 ID:+L6Up7/H
さーてやーっと俺の出番ってわけだぜ。
凪やら『欠陥製品』にばっかりおいしいところ持ってかれたくねーかんな。
え? いったいなんのことだって?
気にすんな世の中にゃいろいろ事情があんだよ。まったく傑作だよな。
これからは戯言遣いのお話じゃなく、人間失格のお話をしようじゃないか。
時を遡ること約2時間ってとこか
俺と凪が同盟、同盟ねえ、普段は使いやしない言葉をこんな状況で吐けるなんて皮肉なもんだ。
まぁとにかく同盟を組んですぐの時間に遡る。

「しゃーねー、おまえの提案に乗ってやらぁ」
かははと笑いながら俺は言った。
あの『欠陥製品』が今の俺を見たらどんなことを言うんだろうか。
笑うか? 笑うだろうなあの鏡面は。
「で、おまえの名は? 人の名前を聞いたんなら自分も名乗るのが礼儀ってもんだ」
俺は黒髪の女に尋ねる。
「俺の名は霧間凪、よろしく頼もうか。零崎」
いきなり呼び捨てかよ。まさかこの殺人鬼が女子高生に呼び捨てされるとはな、
さっきの凪の杖にしてもこのゲームにしても、まったく体験したことないことばかり体験させてもらえるぜ。ほんと傑作だよ。
「なぁ、凪、あんたその格好からすると高校生だろ? 一応俺の方が年上だと思うんだが」
ささやかながらの抵抗を俺は講じてみる。
「あぁ高校生だ。別にいいだろ。まさか零崎さんなんて呼ばれたいのか?」
「いやそれは流石に嫌だが――」
瞬間強烈な破裂音が俺の鼓膜を振動させた。
銃の音、日頃聞き慣れていた。俺にとっての日常、普通の人間にとっては非日常の音が轟いた。
「!?」
音に反応して俺と凪は警戒する。
「近いな。かなり近くで誰かが銃を撃ったのか?」
「へっ、どうやらそうらしい。
俺やおまえみてーにゲームに乗らない人間ばっかりってわけじゃねーようだ」
「そんなこと言ってる場合か。外の成り行きを見て、問題なければ行くぞ零崎」
60傑作シリーズ開幕? ◆cCdWxdhReU :2005/03/29(火) 23:35:44 ID:+L6Up7/H
そう言って凪は俺が蹴飛ばして開け放たれたままの扉の横の壁にくっつき、ことの成り行きを探る。
5分。
体感した時間としちゃ、そんくらいの時間を倉庫の中で凪と待つ。
その間にこの辺りを何人かが歩く走る音が聞こえ、その足音はそのまま遠ざかっていった。
「どうやら今出て行けば問題はなさそうだな。どこかに行ってしまったようだし」
そう言って凪は扉をを足早に出ていく。
外はまだ暗く、この闇の中を逃げるのは楽だ。逆に追うのは難しいって意味でもあるんだがな。
まぁ夜目が効く俺ならば、この程度の闇、問題なく殺しきってみせる。
暗くたって人を殺す。明るくたって人を殺す。それが殺人鬼、零崎一賊だ。
「おい待てって凪」
そう言いながら俺も凪の後を追い、駆ける。

凪の後を追い駆ける。ことになったのは数秒で終わっちまった。
説明させてもらうと、俺らがいた倉庫っつーのは家に設けられたガレージのようなもんだ。
家のサブって言った方がいいくらいの大きさで、その民家の庭に家と併設する形で建てられている。
そんでまぁその庭を通って外にでようとしたら、女の子がいたってわけだ。
たぶん中学生って感じだろうか、背が低くて大人の色気ってもんが無いまだまだガキだ。
頭の上に天使のわっかみてーな巫山戯たアクセサリーをつけてやがる。
そいつがなんだと思う? 鉄パイプ持って立って寝てやがった。
まったく立って寝るなんて真似、流石に兄貴でもやんねーぞ。
ホントに器用なガキだなこいつ。
「おい大丈夫かおまえ?」
凪が女の子に声をかける。
「待て凪」
それを俺が止める。
「なんだ零崎、女の子をここに置いておくのは危険だろう」
苛立たげに凪は振り向いた。
61傑作シリーズ開幕? ◆cCdWxdhReU :2005/03/29(火) 23:36:22 ID:+L6Up7/H
「そうじゃねえ」
「何?」
瞬間、凪の頭に向かい鉄パイプの突きが向かう。
「――っ!?」
当たれば頭蓋骨くれーはイっちまう勢いのその突きを、頭で動くんじゃなく既に体に刻まれた感覚で凪は体を捻り避ける。
凪の美しい漆黒の髪が数本鉄パイプに触れる。まさに間一髪ってか。
「ぴぴるぴー」
そのまま袈裟懸けに鉄パイプを振るい、凪を狙うガキ。
杖で受け流し、バックステップして俺の横まで下がり、凪は杖をガキに向かって構える。
「いったい、なんだこの女の子は? 錯乱してるのか。ぴぴなんだ?奇声を発してるし」
「下がれ凪」
俺が手で凪を制す。
「こいつは人間じゃねえ」
「何?」
出刃包丁を右手で弄びながら言う。
「俺を誰だと思ってる? 生粋の殺『人』鬼だぜ。
こちとら数えてらんねーほど人を殺してる。人かそうじゃねーかくれーわかる」
「ぴぴるぴー」
ガキは今度は俺をターゲットにロックオンしたようだ。
やってくれるぜ、この零崎人識に喧嘩を売るってことがどうなるか、教えてやろう。
「へへへ、今まで何人も人外の力を持った人間を殺してきたが、人外はさすがに久しぶりだぜ」
「殺すな、零崎」
「さーてな?」
「おい!」
少女が俺に向かって鉄パイプを振り上げ斬りかかってくる。
相対するように俺は駆け抜ける。
62傑作シリーズ開幕? ◆cCdWxdhReU :2005/03/29(火) 23:37:11 ID:+L6Up7/H
そしてすれ違って数歩進んで俺は止まる。
「ぴぴ……ぴ――」
血を撒き散らして崩れ落ちるガキ。
「ま、こんなもんかね。どうだ? 俺の実力って物を実か、グゲっ」
凪に杖で思い切り殴られた。バットを持つようにしてスイングされた杖は俺の頭に綺麗にヒットする。
さっきの動きといい、この女、やっぱり腕はかなりいい。
とっさに力をずらさなきゃ、怪我してるとこだ。
「零崎ィっ! 殺すなって言ったろうが!」
「つつつ、何すんだよ凪。殺してねー、殺してねーって」
「何?」
「見てみろよ。血が酷いが急所は切ってねー。足の腱と利き腕の腱を斬ってやったんだよ」
そう。
起きてこないのはショックで気絶しているからだろう。
一応これからのことを考えれば、人間じゃない上にゲームに乗ろうとしてるやつを殺すべきだ。
だがまぁ一応凪の頼みだってんだからな。
「譲歩してこれくらいでいいだろ。まぁこれから歩けねーし利き手で物も持てねーが。本人も文句ねーだろ」
文句あると思うが、と呟く凪を無視して獲物の出刃包丁を振るい、血を払う。
「やっぱ殺してバラして並べて揃えて晒さねーとなんかしっくりこねーな」

「俺も人のことは言えないが、おまえ予想外のことしすぎだ。こういうことするならこれからは前もって言えよ」
そう言って凪は怒った顔をして先に行ってしまう。
それを見送りつつ、俺は背後の少女を見下ろす。
さっき斬るときに気付いたが、このわっか、どうやらかなりの切れ味の刃物らしい。
俺のコレクションに勝るとも劣らないだろう。
丁度いい、正直この出刃包丁だけじゃあ心細かったからな。
俺はそっとわっかを親指の腹と残りの4本の指で挟むように掴む。
その両刃のわっかは普通の人間が持てば手を深く切ってしまうだろう。
だが刃物のスペシャリストの俺ならば実戦で使いこなすことも可能だ。
俺はデイパックにそのわっかを納める。
63傑作シリーズ開幕? ◆cCdWxdhReU :2005/03/29(火) 23:37:43 ID:+L6Up7/H
「わりーな。命あるだけましと思ってくれ」
そう言ってわびるように少女に向かい片手をあげる。
「おい零崎! なにしてる。置いていくぞ!」
凪の声が響いた。
「へいへい。お嬢さんは短気なこって」
そうぼやきつつ俺は彼女の後を追う。


「でまぁそのあと森の中を散策してたらおまえに出会ったってわけだ」
目の前の鏡面、『欠陥製品』に今までのことの次第を説明し終えた。
「……………………………………」
「なんだ? 『欠陥製品』? そんな変な顔して。わかっただろ、俺の今までのこと」
鏡面は俺のことを見続けるだけでなにも言わない・
「あのさー零崎」
「? なんだよ」
「その女の子からわっか取ってきたこと、凪ちゃんに言ったかい?」
「いや?」
「君の後ろでさー」
瞬間背後の怒気を感じる。殺気ではない、怒気だ。だが俺には殺気よりもこっちのほうがよっぽど怖い。
「ぜーろーざーきー」
「かはは、なんだよ凪、だってあの場で言ったらまたなんか言うだろ?」
またも杖が俺の頭に飛んできたのは言うまでもない。


【残り96人】
64傑作シリーズ開幕? ◆cCdWxdhReU :2005/03/29(火) 23:38:43 ID:+L6Up7/H
【F−4/森の中/1日目・05:00】
【いーちゃん(082)】
[状態]: 健康 子荻ちゃんの名前を見て錯乱中
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: お互いに見張りあい体力を回復

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:とりあえず隠れて体力を回復、および状況の変化を待つ

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁 天使の輪
[道具]:デイバッグ(支給品一式)サバイバルナイフ
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。体力を回復

周囲には糸で作られたトラップが張られている。触れると3人が気付くが触れた人間は気付かないしくみ。

【【D-3/住宅街/1日目・02:55】】

【ドクロちゃん】
[状態]: 頭部負傷。ぴぴるモード。道に放置。右手腱、左足腱を斬られている。天使の輪もない。
    また、傷が深いのでぴぴるを使ってもかなりの時間は治ることはない。出血もけっこう。
[装備]: 鉄パイプ
[道具]: 無し
[思考]: 不明。もしかするとぴぴるモード切れたかな?
  ※能力値上昇中。少々の傷は「ぴぴる」で回復します。
65Crazy ◆wkPb3VBx02 :2005/03/29(火) 23:54:06 ID:YtLH/b+m
天樹錬を殺害した後、長髪の男ことジェイスはデイバックを漁っていた。
男は水や食料には目もくれず、支給されたアイテムのみを求めていた。
水や食料は必要になってから奪えばいいが、支給されたアイテムは話が別だ。盗られる前に盗る、殺られる前に殺る。早い者勝ちだ。
デイバックから出てきたのは一枚の紙切れ。二つ折りにされたそれを開くと、こう印刷されていた。
『AM3:00にG-8』
三時にG-8に来いということだろうか、と考えていると地面にぶちまけた荷物の中に光る物を見つけた。
拾い上げると、それが何かの鍵であることが分かった。
「……ククッ」
男は舌の奥で何かを転がすように嗤う。もしかしたら俺は最高についてるかもしれない、と。
鍵をポケットに捻じ込み男は歩き始める。右手に血塗られた剣を下げ、狂喜から来る嗤いを堪えながら。


懐中電灯でマップを照らしながら、長髪の男はG-8を目指して歩き続ける。
今いるのがG-7辺りだなと思案しつつも、唇の端が歪むのを止められない。
先程、咽喉を裂かれて絶命した少女(021 ティファナ)の死体を見つけた時、男は確信した。
自分以外にもこのゲームに乗った奴がいる、と。
大抵そういう奴は自分の腕に自身がある奴だ。臆病者にはその資格が無いのだから。
そして俺は、その臆病者どもを狩ってやろう。死人はただ腐りながら臆病者を嘲笑ってやる。屍を踏み砕き、血を浴び、命乞いをする奴の首を嗤いながら刎ねてやる。
そのためには必要な者がある。もし、もし俺が目指す先に期待通りに物があるとすれば、
66Crazy ◆wkPb3VBx02 :2005/03/29(火) 23:55:03 ID:YtLH/b+m
(俺はこのゲームで生き残っちまうかもしれない)
また自嘲する。死人が生き残るとは傑作だ。死に場所は裏切り者には用意されてないのかもしれない。
男は気付いていなかった。彼を後ろから、こっそりと尾行している者がいることに。また、尾行している者も気付いていなかった。自分が尾行している相手が、どれほど狂気と危険に満ちているのか。
男は足を止め、前方を見て嬉しそうに口の両端を吊り上げてぶるると震えた。
「クククッ……」
男は唇の両端が裂けてしまったような禍々しい笑みを浮かべながら前に進み、感嘆の溜息を吐く。
彼の目線を釘付けにする物が、目の前の草原にぽつりと置かれていた。
それは白く、それは大きく、それは屈強で、力強い。
「クックックッ……クハッ」
哄笑は堰を切ったかのように口から溢れ出し、大津波の如く空間を満たしていった。
男の前にそれが停まっている。男はそれが自らに語り掛けてくるような錯覚に陥った。
―――思 い っ き り ト バ し て く れ
「ああ、いいぜ」
―――思 い っ き り 使 っ て く れ
「ああ、勿論だ」
―――思 い っ き り 、 楽 し ん で く れ
一拍の間、深呼吸の間を置いて、
「当然だ」
と男は答えた。

男の眼前にある物、それは降り積もったばかりの新雪のような色を持つ一台のトラックだった。

(G-7/1日目/3:12)
【残り人数】96人

【ジェイス】
【状態】身体に問題は無いが精神は錯乱気味。
【道具】断罪者ヨルガ、トラック
【装備】荷物一式
【思考】見付け次第殺害する
67狂人と奇人の選択(1/6):2005/03/29(火) 23:59:01 ID:MKxYM1KE
 ――いかんな。
 詠子と向き合うこと十秒。佐山の頬に一筋の汗が流れる。
 今までに出会ったことのないタイプの奇人だ。
 会った途端に魂のカタチときた。これは真性かもしれない。
(いや、交渉役としては第一印象を重視しすぎるべきではないな)
「――まず聞こう。君の名は?」
「私は十叶詠子。詠子って呼んでいいよ、佐山君」
 そう言うと、詠子は再び透明な笑みを広げた。
 そして笑みを消すことなく、少し拗ねた様子で続ける。
「もっとお話したいんだけど、銃を下ろしてはくれないのかな?」
「無礼は承知の上だが、状況が状況なのでね。
 では詠子君。無礼ついでにその血についても説明してはもらえないだろうか」
 そこで初めて血に気付いたようで、詠子は納得したように頷いた。
「死に顔は綺麗な方がいいかなと思って拭いたんだよ。紛らわしくてごめんね」
「……その人は、君が殺したと?」
「まさか。私が見たときはもう手遅れだったんだよ。白い髪が綺麗な子だったんだけどね」
 白い髪、という情報で自分の探し人でないことに安堵し、次いでその安堵を恥じる。
 死んでいい人間などあってはならないのだから。
 ともあれ、躊躇いのない言葉に裏は感じられない。
 血の件については信用しても問題ないと佐山は判断し、銃を下ろした。
68狂人と奇人の選択(2/6):2005/03/29(火) 23:59:50 ID:MKxYM1KE
「申し訳なかった。改めて自己紹介しよう。私は佐山御言――この世界においても中心に座する人間だ」
「それは凄いね。じゃあここが世界の中心なんだね」
「そうとも。この通り、四方を見渡してもどこも途切れてはいないからね」
 ――新鮮な突っ込みも快い。なかなかに素晴らしい人だね。
 満足げに頷くと、促すように自分のハンカチを砂浜に広げた。
 詠子も警戒なくその上に腰を下ろすのだった。

「さて、敵意がないのならお互い情報交換といこうではないかね、詠子君」
「うーん……構わないけれど、私が分かっていることはあまり多くないよ?」
「恥ずかしながら私も手持ちのカードは不足しているが、目的は明確だ。
 新庄運、風見千里、不死身バカ、この二人と一匹には会わなかったかね?」
「さっきの子を除くとニンゲンは佐山君が一人目だよ。小人さんや妖精さんはたくさんいるけどね」
「それはロマンに溢れて素晴らしいことだと思うが、小人さんや妖精さんとは?」
「うん? 今もたくさん私たちを見てるよ。ほら、そこにも」
 指さす先を見ても、もちろん波が砂を洗っているだけだった。
69狂人と奇人の選択(3/6):2005/03/30(水) 00:00:56 ID:UYbYPlTI
 佐山は内心の動揺を封じて黙考する。いや、沈黙は許されない。沈黙は刺激だ。
「……サナトリウムに興味はあるかね?」
「あそこはあそこで面白いけど、やっぱりヒトが多い所の方が物語も多いからね」
 ね?と同意を求める詠子に爽やかな笑顔を返し、
(……世界は広いものだ)
 実に見事な切り返しだと判断し、素直に称賛する。
 だがやはり刺激は避けようと決断した。
「君の目的はそのお友達を見つけて帰ることだね?
 私の方は単にできるだけ早く帰りたいだけだけど……
 ――あなたみたいな子を見てると、もう少しここにいたい気もするかな」
 これはまた大胆な人だ、と佐山は襟元を整える。
 今のような異常事態。人肌のぬくもりが恋しくなるのも道理だろう。
(――さあ、私の胸でよければ飛び込んできたまえ)
 両腕を広げる佐山をじいっと見つめ、詠子はぽつりと呟いた。
「“裏返しの法典”、かな」
「ふふふ、それは君一流の告白かね?」
「だから、貴方の魂のカタチだよ」
 これはかなり本気でサナトリウム生活のプランを考えねば、と佐山は唸る。
70狂人と奇人の選択(4/6):2005/03/30(水) 00:02:11 ID:UYbYPlTI
「んー、こっちじゃ少し見えづらいからはっきりとは言えないんだけどね」
 照れたように頬杖を突き、詠子は佐山の全身を眺める。
「“裏返しの法典”は自分が間違ってることを知った上でみんなを正しく導くの。
 逆しまの言葉でみんなを煽り、率い、誤りを以て世界を矯正する。
 言葉力を持つって点じゃああなたこそが魔女なのかもね。
 でも、それはとても立派な生き方だと思うよ。
 問題を提起して、遺恨を全部背負って英雄に倒される悪役は、必要だけどみんなやらないものね」
「……君は、何者かね」
 腕を広げたまま表情を改め、佐山は詠子を見据える。
 悪役、と彼女は言った。その己の在り方を会って間もなく見抜いた。
「私は“魔女”だよ。杖も箒もないけど、水晶玉を持ってる魔女。
 ――ねえ、あなたはどうして間違えていこうと思うの?」
「佐山の姓は悪役を任ずる。それが祖父の教えであり、今私が望むことなのでね」
 その答えに、詠子の顔がぱっと明るくなる。場違いなほどの喜色を隠そうともしない。
「凄い凄い。あなたは自分の望むままのカタチを持って、それを自覚してるんだね。
 “夜会”に招待する必要もないくらい完成してる。
 “影”の人たちともいいお友達になれそうだね」
71狂人と奇人の選択(5/6):2005/03/30(水) 00:03:22 ID:UYbYPlTI
 相変わらず理解し難い詠子の言葉だが、それら全てを妄言とはもはや思わなかった。
 確信に満ちた言動は、ヒトの幻想が見える概念でも持っているのかとさえ思わせられる。
「一つ、間違えているね詠子君。私はまだ悪役としては発展途上のいわば第二形態だ。
 そしてその超進化は私と対になる、常に正しく在る人がいてのものだ」
 新庄の姿を思い出すと、佐山は厳かに虚空を揉みしだいた。
「それが新庄か風見って人? それとも不死身バカって子?」
「正しく名詞を記憶してくれて嬉しい限りだ。そう、新庄君こそ私に必要な人だ」
 そして新庄もまた自分を必要としている。故に一刻も早く見つけたい。
 立ち上がり砂を払い、佐山の手が詠子に差し伸べられる。
「さて詠子君。目的が相反しない以上、セメントS気質魔女にも性悪な人妻ドイツ魔女にも私は助力を請うが――
 君は、私に助力を請うかね?」
 慣れない状況にきょとんとするのも束の間。
 やがて邪気の欠落した笑みを浮かべ、詠子はその手を取った。
「うん。……君の探してる人にも興味があるからね。魔女は悪役に誑かされるとするよ」
 魔女の立ち上がる動きに合わせ、周囲の闇が動いた。
(――ここでもいい物語が出来そうだね)
72狂人と奇人の選択(6/6):2005/03/30(水) 00:04:10 ID:UYbYPlTI
【座標H−6/海岸/時間(一日目・2:50)】

【佐山・御言】
[状態]:健康
[装備]:Eマグ
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:1.仲間の捜索。2.言葉が通じる限りは人類皆友達。私が上でそれ以外が下だが。

【十叶詠子】
[状態]:健康
[装備]:メス
[道具]:支給品一式、閃光手榴弾1個(ティファナから拝借)
[思考]:1.元の世界に戻るため佐山に同行。2.佐山の仲間の魂のカタチも気になる。
73イラストに騙された名無しさん:2005/03/30(水) 00:12:13 ID:W9VC1oEJ
>>54は4:00にC7に変更でお願いします。
74狂戦士の邂逅:2005/03/30(水) 00:32:05 ID:W9VC1oEJ
森の中を男が歩いている。
彼の体には血が付いているが顔にはとても今さっき人を殺したとは思えない笑みを貼り付けている。
『あ〜あ、さっきのガキとっとと殺っちまったかのはまずったなぁ、もうちょっと楽しんでから殺すんだったな。
どいつもこいつも馬鹿みたいに馴れ合いやがって・・全く反吐がでるぜ。
カシムの野郎も奴らみたいになってんだろ〜な〜、たく俺の様になれば楽なのによ〜。』
益々笑みを深くする。
目の前にまるで本人がいるかのように呟く。「なあそうだろう?一緒にゲームを楽しもうぜカシムゥ〜。」
益々笑みを深くする。
ふと向かい側の方に人影が見える。
気配を消しもせずにまるで散歩をしているかのように歩き回っている。
『おめでたい奴め。』先ほど殺した獲物から奪い取った銃を
75狂戦士の邂逅 その2:2005/03/30(水) 00:33:05 ID:W9VC1oEJ
ためらいなく撃つ、距離は10m、弾は相手の眉間を打ち抜いた・・筈だった。
だが少年は気にすることもなく歩みを止める気もない。
『ああん?外しちまったのか?』
向こうから声がした
「隠れてないでてきたらどうだ?」
「ちぃ!」
姿を表すと同時に3発放つと同時に義手の充電を始める。
「待っていてやる。」
その男の姿はごく普通だった、体にフイットした服には汚れ一つついていない、・・この森の中で。
「天に召されな!」
容赦のない一撃が彼を襲った、骨すら残っていないだろうとガウルンは確信した。
「おお神よ、またしても哀れな子羊が・・」
言いかけたところで彼の義手が・・弾けた。「なにぃ!?」
新たな敵が現れたかと思ったところで彼は驚愕した。
目の前に男が立っていた、先程葬り去った筈の男が。
「どうした、まさかそんなもので俺を殺せると本気で思っていたのか?」
冷ややかな目で見下ろす彼の雰囲気は普通の少年のそれとは明らかに異なっていた。
「貴様ぁ・・。」
「そんな程度で自惚れていたのか、お山の大将にもほどがある。」
少年は怒っていた、彼が人を殺したことにではなく、
76狂戦士の邂逅 その3:2005/03/30(水) 00:35:34 ID:W9VC1oEJ
彼のような弱いものが自分に向かって来たその行為に対して。
『カシムゥ、ケリは地獄でつけようぜ。先に行って待ってて・・』
彼の思考が途切れた
「俺と対等なものは一体どこにいるんだ?」
歩いていく彼の後ろには左腕と首から上のない死体が一つ、まるで赤い花のように咲いていた。

(A-5/1日目/4:45)
【死者】ガウルン
【残り人数】96人

【フォルテッシモ】
【状態】やや不機嫌気味。
【道具】ラジオ
【装備】荷物一式(食料は回復する。)
【思考】
強者を倒しつつユージンを探す、一般人に手を加える気はない。

まとめサイトの人すまないが>>54からの狂戦士の会合は無しにしてくれ。
77 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/30(水) 00:53:47 ID:19A+msz0
唐突ですが、私はキノの師匠です。
そしてある青年の師匠でもありました。
それ以上でもないし、それ以下でもありません。故に名乗らずとも良いでしょう。

とにかく私は今オーフェンを弟子…いえ、仲間とし、
この殺し合いの地から脱出するために行動しています。
彼はどうやら焔を操ることが出来るようです。さながら小説、夢物語のようですね。
ある程度は私も頼りにはしていますが……果たして………。

しかし、それよりも私には気になることがあります。
それは金目の物でも無い、これからの状況判断のためのヒントでも無い。
他ならぬ、キノの事です。

あなたの事です。
これは推測ですが……恐らくはこの状況に慣れたつもりで、受け入れたつもりで、苦しんでいる事でしょう。
何故ならキノ、あなたは数年前まではごく普通の少女でした。「師匠」の言葉の意味も知らない子どもでした。
「今は違う」。そうでしょう。ですがそれでも元はあの少女です。
きっと、きっと焦っているでしょう。

私はキノに殺し合いの手段を教えました。ですがそれはやはり護身の範囲内です。
今は殺し合いをしなければならない。「生き残る為」なのは同じです。ですが、旅の途中での話とは訳が違う。
だからきっと……器用に動くことが出来ないと思うのです。

私の見たキノは、涙を流した事がありません。
私の見たキノは、欲に狩られ愚かな間違いをした事もありません。
私の見たキノは、人の命を軽く感じたり、暴力のみでの解決を望んだりした事もありません。

ですから、きっとギリギリまで人を殺めようとはしないでしょう。
……今のキノがどうなのかは、知りませんが。
78Good Bye,「the Beautifhl World」(2/4) ◆h8QB1rxvpA :2005/03/30(水) 00:55:27 ID:19A+msz0

ですが、これだけはわかります。

今から、キノと私は道を違います。
私は確かにこの地からの脱出を考えていました。
ですがもしその手立てが見つからなかった場合は、私は人を殺すでしょう。
と言う風に……最初から先程までそう考えていました。自分の事だから、わかるのです。

ですがキノは、絶対そうは考えないでしょう。
人を殺す事は仕方が無いと思っていようが、内心は違うでしょう。
ここで話は最初に戻るわけです。「だからきっと……器用に動くことが出来ないと思うのです。」と。

私はさっきの戦いで知りました。
戦うものがいる事を知りました。
私は"最悪の場合の想定"をしてしまいました。
体が「仕方が無い」と言うのです。
頭が「脱出の手立てが無い」と伝えたのです。

こうなればもう、私はただの殺人鬼と化すでしょう。
私の後ろを歩くオーフェンもいつかは殺すでしょう。しかもうんと利用してから、です。


道を、違えたという事です。


ですからキノ、あなたにお願いしたいことがあるのです。
いつか私たちが出会ったら、殺し合いをしましょう。そう、「決闘」です。
そして私を乗り越えてください、私をこの無粋で浅はかな想いごと撃ち落して下さい。
その出会いが早くても遅くても同じ事を願い続けます。
この10分後でも、1時間後でも、3日後でも……そうしてください。
79Good Bye,「the Beautifhl World」(3/4) ◆h8QB1rxvpA :2005/03/30(水) 00:56:21 ID:19A+msz0

あなたが私を乗り越えるためなら、私はどんなことでもするつもりです。
私のこの強固で頑固な意志がどうしても纏わり付くなら、最期に格好の良い言葉でも遺してあげましょう。
私を敵だとどうしても思えないなら、あの罪も無いオーフェンを目の前で殺してあげましょう。
狂人を気取ってあげましょう、道化を気取ってあげましょう。なんでもしてあげましょう。


今の私は悪です。
私はもう、このゲームに乗ってしまった。
けれど正直私は、キノを殺す事など出来ないのです。

散々「必要であれば殺しも躊躇うな」と言った私が、なんという様でしょう。
たったあれほどの短い戦いで、こうも意見が変わって丸くなってしまうなんて。
あなたが今の私の姿を見たらどう思うでしょうね……いえ、視覚的にではなく精神的な部分をです。
笑うでしょうか、なんとも思わないでしょうか。「師匠らしくない」と一喝されるかもしれませんね。


―――さて、これ以上私が何を思おうがもうどんな事にもならないでしょうね。
ですが最後にもう一つだけ言わせてください。

キノ、私はあなたの事がとてもとても好きなのですよ。
そして、そんな大好きなあなたの手を紅く染めさせようとする私を……許してください。

という訳で、私はこれからキノに殺されに行きます。
それまでは私も絶対に死にませんから、キノも絶対に死なないでくださいね。

思いは正しく伝わらない。
けれど、私のこの「想い」は遺りますように……。


いつか、さようなら……キノ。
80Good Bye,「the Beautifhl World」(4/4) ◆h8QB1rxvpA :2005/03/30(水) 00:57:58 ID:19A+msz0


【B-5/長い石段/1日目・4:30】

 【キノの師匠 (若いころver)(020)】
 [状態]:正常
 [装備]:パチンコ
 [道具]:デイバッグ(支給品入り) ダイヤの指輪
 [思考]:南へ向かう キノに再会し、そして×××××。

 【オーフェン(111)】
 [状態]:かなりの疲労
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(支給品入り)
 [思考]:師匠について行く。

【残り96人】

【補足】
この時間軸は師匠死亡前です。
この話から>>44-48へと続きます。
81 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/30(水) 01:00:05 ID:19A+msz0
タイトル変更のお知らせ。
誤植が見つかりましたので訂正です。

>>77-80の話のタイトルは

Good Bye,「the Beautiful World」

です。
申し訳ありませんでした。
82lonely dog 1/2  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/30(水) 01:06:05 ID:4ulP4yY6
「ハァ……ハァ……ハァ……」
一本の木の根元、腰を下ろし、幹に体を預けて荒く呼吸している者がいる。
甲斐氷太。彼は住宅街から全力で数百メートルの距離を駆け、草原(E−3)に到達していた。
走る間に興奮も冷め、落ち着いた甲斐は自分が圧倒的苦境にあることを改めて自覚する。
武器も無く、支給品も無くし、あるのはただ煙草のみ。
――これで殺し合いをしよう、なんつってもなあ?
自嘲の笑みを浮かべ、煙草を取り出し口に咥えるが、
「チッ、火がねえんだった……」
煙草を箱に戻し、自分が体を預ける巨木を見上げる。
それは、太く大きな巨木だった。
幹の直径は5メートル、木の高さは20メートルはありそうだ。
――奇妙なもんだなあ、おい。
見える範囲に、他にもぽつぽつと木が生えているが、どれも大した大きさではない。
「これもココの異常さってやつかよ……」
ポツリと呟く。
天使と名乗る少女。ウィザードを連れ、躊躇無く銃を撃つ謎の格闘女。
彼が出会った人間は、景を除けばわずかに二人。
しかしその二人ですら、『悪魔』なんて常識外れな力を使う自分から見ても、
十分常識外の存在に思えた。
「しっかし、どうすっかねえ……」
地図も何も無い状態で下手に動き回るよりは、明るくなるのを待って行動するのが得策。
かと言って、巨木の根元なんて一際目立つ場所に留まるわけにもいかない。
住宅街に戻ることを考え、
「……いや、無理だな」
十数分前、一瞬で修羅場と化した家のことを思い出す。
考え、……そして甲斐は一つの考えを得た。
立ち上がり、辺りを見回すが動くものは皆無。
そして、再び木を見上げる。
83lonely dog 2/2  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/30(水) 01:07:21 ID:4ulP4yY6
「木登りなんて、ガキの頃以来だな。……よっ!」
甲斐はゴツゴツとした木の表面に手を掛け、よじ登り始めた。
近くの枝を掴み、体を引き上げる。
ある程度太い枝に足を乗せれば、あとは簡単なものだった。
あっという間に木の上層まで登り、一際太い枝に座る。
「はっ、思ったより快適じゃねえか」
周りを見回せば、鬱蒼と茂る枝葉が内部を外界から切り離している。
身を隠すにはうってつけの、この空間はまるで、
――秘密基地、か。本当にガキの頃と同じじゃねえか。
ガキ大将と呼ばれた過去を思い出し、わずかに笑う。
ここなら、少なくとも夜明けまでは誰にも見つからずに済むだろう。
――こんなデケエ木を登ってまで人を探すようなのがいなければ、な。
いるわけねえか、と甲斐は笑い、煙草を取り出して、……そしてまた戻した。

 【残り96名】


 【E−3/草原・巨木の上/一日目 03:05】

 【甲斐氷太 (002)】
[状態]:平常
[装備]:無し
[道具]:煙草(残り14本)
[思考]:夜明けまで休息
84世界の王 ◆cCdWxdhReU :2005/03/30(水) 01:18:24 ID:q36irBiD
「待っていろシャーネ。俺が今すぐお前のところに行って抱きしめてやる」
クレア・スタンフィールドは井戸の中から飛び出す。
中に紐が垂らされていたが彼にはそんなもの必要ない。
連続で壁を蹴り、一気に外界へと降り立つ。
それは映画やコミックの中ではありえることだが、類稀な才能、そして相応の努力によって手に入れた彼の力だ。
いったいここはどこだ?
クレアは右手をを見渡す。
そこは周りは森、鬱蒼とした木々の並ぶ森であった。
……どこだかわからんな。これでは。
しかしその考えは左手を見たとき打ち消される。
「これは……」
目の前には広がるのはこの暗闇の中ライトアップされる巨大な派手な建物。
クレアは持っていた地図を見る。
「どうやら西側の辺りらしいな」
目の前の光景を説明する場所は地図に一つしかない。E-1 F-1に渡り作られたその巨大な建物に彼は驚嘆を隠せない。
「海洋遊園地か、殺し合いなんてくだらねぇゲームにこんなものを入れるなんて、あいつら何考えてるんだ?」
だがしかし、そのセンスはクレアの趣味に合うものであることをクレアは誰も居ないのに口には出さない。もしも彼の恋人、シャーネであればわかったであろうが。
「とりあえずあの中に行ってみるか。シャーネもいるかもしれないからな」
クレアはその巨大な遊園地へと歩みを進める。
後にその場所が後に殺戮世界になろうとも、彼は笑って中に入っていっただろう。
なぜなら世界は彼のために出来ているのだから。
85世界の王 ◆cCdWxdhReU :2005/03/30(水) 01:19:08 ID:q36irBiD
【残り96人】
【F-2/F-2の西端/一日目3:00】

【クレア・スタンフィールド】
[状態]:健康
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:シャーネを探す E-1 F-1に渡って作られた海洋遊園地(水族館と遊園地合わ    せたようなもの)に向かう
【井戸の底に居るため現在地不明】
86 ◆cCdWxdhReU :2005/03/30(水) 01:20:35 ID:q36irBiD
上の最後の行、【現在地不明】は間違いです
87深夜の闖入者 ◆3LcF9KyPfA :2005/03/30(水) 01:54:38 ID:y6mc2xw/
「それにしてもあれだな……俺の知ってる人間が参加していないというのは不利だよな。
いや決して寂しいとか心細いとかではなくてだな。単純に「敵」「味方」と断定できる相手がいないというのが……」
エドゲイン君の試射をしてからしばらく、なんとはなしに南東へと森の中を進んでいたコミクロンだったが、不意にまだ名簿を読んでいないことに気付いて足を止め、そこで読んだ名簿の感想がその第一声だった。
「……そうだな、おそらく名前の響きからして……しずく、クレア、いーちゃんとかいう奴等は無害だろうな。なんとなくそんな気がする。とりあえずその三人でも探してみるか」
名簿を読み終えて黙考した後、自称科学者であるはずのコミクロンが発した言葉は、なにやら非科学的なものだった。
尤も、本人が既に魔術士であるので、そもそも科学的云々という話でもないと言えなくはないが。
「あーぁ、せめてティッシかアザリーでもいれば簡単なんけどなぁ。キリランシェロは一々ケチつけてくるからいなくて正解だ」
と、そこまでひとしきり愚痴をこぼしたコミクロンが更に続けようとした時――
「なんだ? 誰かいるのか?」
不意に、声がかかる。
88深夜の闖入者 ◆3LcF9KyPfA :2005/03/30(水) 01:55:43 ID:y6mc2xw/
(しまった、油断した!)
思った時には、反射的に魔術の構成を編んでいた。エドゲイン君を構えるのは間に合いそうもない。
上手く構成が編めないことに苛々しつつも、コミクロンは時間を稼ごうと声を出す。
「あぁ、いるいる。ここにいるぞ。だがしかし、早計にも攻撃しようとしているのならやめることを勧めよう。
大陸最大の魔術士になるかもしれない世紀の大天才にして科学者であるこの俺を殺すと世界の危機だぞ。
どれくらい危ないかというとティッシを怒らせるよりも怖いかもしれない……いや、ティッシを怒らせる方が世界の危機か……?」
最後はよくわからない自問になりつつあるコミクロンを見て安全だと判断したのだろうか。
声をかけてきた相手が嘆息しつつ、姿を現した。
「あー……まぁ、こんなとこで大声で独り言してるくらいだから、ゲームに乗った奴じゃないとは思ってたが……」
こんな変な奴だったとはなぁ。と声に出さずに口だけを動かし、天を仰ぐ。
「俺の不運はどこまで続くんだ……」
小声で言うと、何かを決意したように頭を前に戻し、言う。
「ま、これも何かの縁だと思うことにしよう。問答無用の殺人者じゃなかっただけマシだな」
そして、相手の容姿に気を取られて呆けていたコミクロンに向かい名乗りをあげた。
ヴァーミリオン・CD・ヘイズ、と。
89深夜の闖入者 ◆3LcF9KyPfA :2005/03/30(水) 01:56:17 ID:y6mc2xw/
【G-6/森の中/一日目/03:00】

【コミクロン】
[状態]:健康
[装備]:エドゲイン君1号
[道具]:デイバッグ一式
[思考]:ヘイズが即座に襲ってこなかったので安堵。戦力になりそうかどうかを考える。

【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:健康
[装備]:尖った石
[道具]:デイバッグ一式、有機コード
[思考]:とりあえずコミクロンと情報交換をしつつ、休息と紋章の解析。
[備考]:紋章による盗聴、その他機能に気付いている。
90イラストに騙された名無しさん:2005/03/30(水) 02:20:45 ID:eYlpnem3
本スレは白紙ってまさかテンプレのやつか?
あれは書き手が見るヤツだから物語の物とは関係ないヤツだぞ
91再開と、会戦(1/5) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/30(水) 02:24:26 ID:jIrLPut2
「おい、戯言遣い、起きろ」
「ん……」
ぼくは凪ちゃんの声で目を覚ます。どうやら寝てしまったようである。
「どうしたの凪ちゃん?もしかして夜這い?」
「何かがトラップにかかった。今零崎に確かめさせてる」
凪ちゃんは、あえて「誰か」とは言わず「何か」と言う。
ってぼくのギャグは無視ですか?
「そりゃぁ大変だ。零崎なんかを確認に行かせたら、もれなく惨殺死体をプレゼント、だ」
思ったことを口にする。
「とりあえず釘を刺してはおいた」
なかなか抜かりは無いようだ。
ぼくは零崎から借りた時計を見る。5:30.なんと30分も寝ていたようだ。
我ながら、自分の図太さに感心する。しかし凪ちゃんと零崎に、寝顔を見られたのは迂闊だった。
そこに、木の上から何かが落ちてきた。零崎である。
「よぉ。起きたか欠落。おまえはどうやら緊張感ってのも欠落してるみたいだぁな」
かはは と笑う零崎。いや、否定はしないけどさ。
「で、誰だったんだい?そのトラップにかかった「何か」は」
「ガキと女、それと驚け!なんとだな……」
そこで零崎は大きく手を広げると、焦らすように間をおく。
前にも思ったが、零崎はかなりリアクションが大きい。
「なんと、匂宮の『人食い』だ!」
92再開と、会戦(2/5) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/30(水) 02:25:20 ID:jIrLPut2
「へぇ、出夢くんか。そういえば名簿には載ってたな」
しかし、あの出夢くんが誰かと組むとは以外だった。
「あ?なんだよ知ってるのか?『人食い』の匂宮兄妹を?」
「知ってるも何も、一度殺しあった中だよ。それに今は兄妹じゃぁないよ、理澄ちゃんは
 死んでるからね。」
もっとも、生き返ってる可能性は否定できない。
「は?理澄が死んでる?二重人格なんだろあいつら」
どうやら零崎はトリックを知らないらしい。
「あぁ、単純な入れ替わりトリックだよ。あれは……」
そう、あのトリックは、気づいてみれば実に簡単なトリックだった。
全く、あんなのに気づかないなんて、戯言遣いの名折れだった。
看護婦さんでも分かったのに。
「俺には話が全然見えないが、そろそろこっちに来るぞ。二つ目のトラップに反応があった」
凪ちゃんが、すこし声をひそませて言った
「あぁごめん。とりあえず出夢くんなら話し合う価値はあると思う。殺し屋だけど、もう隠遁生活に入ってるはずだから」
説明はあとだ。まぁ出夢くんなら、いきなり襲ってくる心配は無いだろう。
とりあえずぼくたちは、各々武器を持って警戒だけしておく。
(零崎が金色のわっか、凪ちゃんが、倉庫から持ってきたというサバイバルナイフ。ぼくは同じく零崎の分のナイフで武装した。)
ちょうどそのとき、三つ目のトラップが作動する。こちらが風下なので、遠くからガサガサと草を掻き分ける音が聞こえてきた。
93再開と、会戦(3/5) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/30(水) 02:26:09 ID:jIrLPut2
「ストップ」
出夢は唐突にそう言うと、手で長門と悠二を止める。
「どうしたんですか?出夢さん?」
「くそッ、さっき誰かに見られてるかと思ったが、やっぱり待ち伏せてやがった」
苦々しげに吐き捨てる出夢。
「え?じゃぁ、引き返すんですか?」
心配そうに訊ねる悠二。長門は相変わらず無表情で突っ立っているだけだ。
「いや、もうとっくの昔に気づかれてると考えていい。相手がやる気ならもう逃げられないぜ」
出夢の言葉にますます顔を引きつらせる悠二。しかし、それも一瞬。全身を引き締める。
「戦闘なら、ぼくが狙撃銃で……」
「ぎゃはははは!頼もしいねぇ。だが断る。相手はかなりやるようだからな。
 チッ!ぼくは殺戮は一日一時間って決めてるんだけどな」
さらっと恐ろしいことを言う出夢。 
出夢の言葉に、悠二は内心ほっとする。こんなことを言っても、やはり殺し合いなんてしたくない。
それが素直な心境だった。
「それじゃぁ逝ってきまぁっす!」
出夢はそういうと、デイパックを置いて跳躍しようと身をかがめる。そのとき、
「おーい!出夢くん!とりあえず話し合おう!今のところ、こっちには戦う気は無い!」
今まさに跳ぼうとしていた方向から声が聞こえた。
その声に、出夢は一瞬きょとんとする。
「ぎゃはははは!まさか、こんなところでお兄さんに会うなんてな。僕たち案外、赤ぁい糸で結ばれてたりしてな」
出夢はまた、ぎゃはははは!と笑うと、ニヤニヤ笑いを浮かべて、悠二に言った。
「で?どうするよ?悠二くん?」
94再開と、会戦(4/5) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/30(水) 02:27:10 ID:jIrLPut2
 ぼくが呼びかけてから数分して、出夢くんと、銃を抱えた男の子、そして全く無表情の女の子が出てきた。
「やぁ、久しぶり。出夢くん」
「また会ったねぇ、おにーさん」
しかし、まさかこんなところで出夢くんに会えるとは思わなかった。
もしかしたら、ぼくたちは、紅い糸で結ばれているのかも知れない。
血で真っ赤に染まった、紅い糸に。
「……戯言だ」
「あ?何か言ったかい、おにーさん」
「いや、べつに」
そう言って、ぼくは出夢くんと一緒に出てきた子達を見る。
銃を抱えた子は、未だに警戒するような目で僕たちを見ている。
思ったよりしっかりしている子のようだ。
と、男の子と目が合った。数秒間ほど見詰め合っただろうか、ふと、男の子が口を開いた。
「あの、そちらは戦う気は無いと言いました。それは信じていいんですね?」
「あぁ、こっちに戦う気は無い。俺たちはむしろ、何とかしてここを脱出しようと考えている」
凪ちゃんが答えた。まぁ、
「とりあえず自己紹介とでもいこうか?ねぇそこに隠れている君も」
ぼくは2メートルほど先の、茂みの中に向けて言った。
同時に、零崎と出夢くんが茂みの向こう側に飛び込んだ。
【残り95人】
95再開と、会戦 ◆xSp2cIn2/A :2005/03/30(水) 02:28:46 ID:jIrLPut2
【灼眼戯言ポップの憂鬱】
(坂井悠二/いーちゃん/零崎人識/匂宮出夢/霧間凪/長門有希)
【F−4/森の中/1日目・05:45】
【いーちゃん(082)】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: 隠れている何者かの捕縛

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:隠れている何者かの捕縛

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁 天使の輪
[道具]:デイバッグ(支給品一式)サバイバルナイフ
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。何者かの捕縛

96再開と、会戦+α ◆xSp2cIn2/A :2005/03/30(水) 02:29:55 ID:jIrLPut2
【長門有希】
[状態]:かなり疲労。
[装備]:ライター
[道具]:デイバック一式。
[思考]:情報収集/ハルヒ・キョンの安全確保

【匂宮出夢】
[状態]:平常
[装備]:???
[道具]:デイバック一式。
[思考]:生き残る。 何者かの捕縛

【坂井悠二】
[状態]:疲労と動揺
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック一式。
[思考]:いーちゃんをちょっと不信に。シャナの捜索。
97吼える男達 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/30(水) 03:12:37 ID:/pOgRKaJ
(殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、

殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、

殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、

殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、

殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、

殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、

殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、

殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、

殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、

殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す)
98吼える男達 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/30(水) 03:13:18 ID:/pOgRKaJ
平和島静雄は怒っていた。ゲームの主催者に、ゲームそのものに、臨也の存在に

このゲームに乗った連中に、数少ない友人であるセルティがここにいることに。
だからこそ、静雄は吼える。
「殺す、絶対殺す、確実に殺す、臨也も!このゲームを企画した馬鹿も!このゲ

ームに乗った奴も!完全に殺し尽す!」
そう吼えなければ、自分自身の怒りで自分の体が壊れてしまう。
真実、静雄はそう信じていた。
吼えることにより怒りを、衝動を、自分の中で溜め込むことで静雄は何とか理

性に沿って行動ができる。
本当なら開放してしまえばいい、怒りを思う様に、ここでならそれは許される。
だが、このゲームに乗るような行為を静雄自身が許せない。許せるわけがない。
怒りの無限循環は静雄に更なる力を与えつづける。
「とにかく、まずはセルティを探すか」
吼えた事により多少落ち着いた静雄はまず、この狂った空間で唯一の友人を探す事にした。
99吼える男達 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/30(水) 03:14:24 ID:/pOgRKaJ
しかし人生とはままならない物だ。しばらく歩いてると静雄とは逆方向から複数

人の声が聞こえてくる。
やけに尊大な声と、困ったような少女の声。
やがて少女と、何かを力説している、やけに小柄な少年と、何故か気絶している少年の姿が静雄の視界に映る。
少女も静雄を確認したのか、緊張にその動きがぴたりと止まる。
しかし、少年は止まらない、なにしろ、何も見えてはいないのだ、色々な意味

で。なんといってもぐるぐる動き回りながら、倒れてる少年と、静雄の登場で若干怯えたような表情になった少女にわめきちらしているのだ。
それはまるで運命のように、静雄の体にぶつかった。
ぶつかる事でようやく静雄の存在に気づいた少年が静雄に吼える、どうやらぶ

つかった事に怒っているようだ。

「何ぼーっと、この俺様の進路に突っ立ってんだコラっ!畳の上で正座し殺すぞ!」

ボルカノ・ボルカンだった。
100吼える男達 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/30(水) 03:15:57 ID:/pOgRKaJ
【E-6 一日目 2:15分】

【平和島静雄(037)】
[状態]:健康
[装備]:山百合会のロザリオ
[道具]:通常の初期セット
[思考]:とりあえず、自分を殺すとか言ってるのを・・・・・・


【闘犬ご一行様(キーリ・ボルカン)】
【キーリ】
[状態]:正常
[装備]:超電磁スタンガン・ドゥリンダルテ(撲殺天使ドクロちゃん)
[道具]:デイパック(支給品入り) 
[思考]:ハーヴェイを捜したい、ゲームから抜け出したい。

【ボルカン】
[状態]:正常
[装備]:かなめのハリセン(フルメタル・パニック!)
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:キーリについて行く。打倒、オーフェン。

【古泉一樹】
[状態]:気絶状態
[装備]:なし
[道具]:デイバック一式。
[思考]:SOS団の合流
 三人に踵を返して、ミズー・ビアンカは嘆息した。全く、ろくな人間がいない。
 そしてろくな武器もない。マージョリー・ドーと協力できればよかったのだが――やはりマルコシアスの知り合いなだけあって、協調性がない。
(それはわたしも同じか)
 あの三人のうち――黒ずくめで目付きの悪い彼とは、少しは分かり合えそうな気がしたが。いずれまた会う事になるだろう――敵として。
 彼からは何か、格別に運の悪そうな感じを受けた――そう、例えば戯言しか言わないマグスに付き纏われているような。
 途中にあった川を飛び石伝いに越えて、ミズー・ビアンカは先へ進む。
 遮蔽物の無い平原は、誰かに見つかる可能性が高い。どうするか、と見渡した時、森が見えた。
(森までいってから、休憩する)
 胸中でそう決める。体が休息を求めたいた。先程、マルコシアスに念糸で接続して力を送ったせいだろう。
 自在法。存在の力。歩いていけない隣の世界――彼はそういうことを語った。ほとんど理解はできなかったが。
 彼の言葉をふと思い出して、ミズーは立ち止まった。
「……寂しいの? わたしは」
 自嘲する。ハート・オブ・レッドライオンが、あの陽気で騒がしい本と離れて寂しがるとは!
(当然か。ここのところのわたしは、ほとんど一人じゃなかったから)
 ファニクやジュディアの顔を思い出して、癖で肩に触れる。
 獅子のマント留めは、そこに無い。
「ギーア」
 獣精霊の名を口に出し、ため息をつく。
 と――
「――ミズー・ビアンカ!」
 こちらを呼ぶ声がした。聞き覚えのある声だ。
 それは殺人精霊に魅入られた男の声であり、自分が殺したはずの男の声であった。
 ウルペンだ。
 月灯がつくる視界の中、木々の陰から隻眼の男が抜け出るように現れる。
「……!」
 ミズーは咄嗟に腰に手を伸ばし――気付く。武器はない。
 ……念糸の技量では、負けている……!
 また、獣にならなければいけないのか。考えて、かぶりを振る。
「精霊アマワ……お前にくれてやる一瞬は、もうない」
 言い、ウルペンを見据えた。
 歓喜の笑みを浮かべる彼は、無手だ。どこかに武器を隠し持っているようには見えない。
 ……ハズレを引いたのね。
 その事が可笑しく、笑う。顔に出る感情は快いものだ。
 ウルペンが疾駆してくる。ミズーは拳を握り、自らも駆けた。接近戦ではこちらに分がある。
 視界の中、次第に鮮明になるウルペンの顔が笑っていた。快い笑みだ。
 拳を握り、歯を剥き、足を動かし、ウルペンが叫ぶ。
「二度目の最後を始めよう――ミズー・ビアンカ!」
「死者は蘇えらない。失ったものは取り返せない。――還りなさい、ウルペン!」
 叫びあう、二匹の獣。互いの手が届く瞬間。
「――ダメだよっ……!」
 意思と、力が来た。
 二人の間、地面が何かの力で穿たれた。声の方を、見る。
 一人の少女がいた。抜刀された剣を持ち、顔に恐れと、しかし強い意志を浮かべた少女だ。
 彼女を見て、ウルペンが苦々しく呟く。
「先程の娘か……」
「殺し合いなんて、いけないよ……!」
 声を張り上げる少女が、剣を手にこちらへと駆けて来る。
 ウルペンが表情を変えて、こちらを見る。彼は苦笑を浮かべていた。
「いいだろう。二度目の最後はあとだ、ミズー・ビアンカ。――最後まで生き残れ」
 言い捨て、義兄は森の中へと走り去った。

【B-6/森近くの平原/一日目3:10】

【ミズー・ビアンカ(014)】
 [状態]:疲労
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(支給品入り) 、知覚眼鏡(クルーク・ブリレ)
 [思考]:フリウとの合流

【新庄・運切】
[状態]:健康
[装備]:蟲の紋章の剣
[道具]:デイバッグ(支給品一式) ウルペンの落としたグルカナイフ
[思考]:1.佐山達との合流 2.殺し合いをやめさせる

【ウルペン】
[状態]:健康
[装備]:無手
[道具]:デイバッグ(支給品一式) 
[思考]:C-6へ移動。 蟲の紋章の剣の障壁を破れる武器を調達してくる。
104呪いに対する陰陽師的見解 ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/30(水) 03:47:17 ID:xQd3Yp/j
B−2の砂漠地帯にセルティと共に待機している慶滋保胤は
夜明けを待つ間、呪いの刻印について考えていた。

「呪い」という言葉は広義的にはあらゆる術、法の全てを指す場合もある。
この刻印についても「呪い」という名前はついているものの、本質的な意味での
呪いとは全く別のものではないだろうか。
少なくとも、保胤の考える呪いとは全く異なるものである可能性が高い。
呪いという物は本来、「積み重ね」ていくものである。
対象にたいし長い時間をかけて呪いをかけ続け、精神的、身体的苦痛を
じわじわと与え続けることで最終的に死に至らしめる。
ある人間を呪うというのは大変な執念が必要なのだ。
一日やそこらで出来るものではない。

「人を呪わば穴二つ」という言葉がある。
これは、他人を呪うとその呪いが自分にも跳ね返ってくる、という意味合いもあるが、
人を呪うには、自分の残りの人生や死後の安楽すらも捨ててなければならない、
ということを表してもいるのである。
それだけの代償を払ってまで相手を呪おうという怨念が必要なのだ

ところが、今回の刻印からはそういった呪い特有の「怨念」が感じられない。
呪いというよりは、術により体に打ち込まれた「枷」「戒め」の類に近い。
呪いの場合、元(呪いをかけてる側)を断たなければ止めることが出来ないが
この刻印は必ずしも元を断つ必要はないだろう。
105呪いに対する陰陽師的見解 ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/30(水) 03:47:57 ID:xQd3Yp/j
問題はかけられている術の内容だが、
陰陽道の術とはあきらかに系統が異なるため、保胤の現在の知識と技術だけでは細かい解析は無理である。
晴明や陰陽寮の精鋭達ならあるいは可能かもしれないが、この場にいない者を頼りには出来ない。
自分の解る範囲内で解明していくしかないだろう。
まず、刻印が発動すると魂がデリート(削除)されると説明されたが
これは魂魄の切断を意味していると考えられる。

「魂」とは精神を司る気、「魄」とは肉体を司る気とされる。
人の命は「魂」と「魄」の2つの要素で構成されている。
命がついえると「魂」は天に上り、「魄」は地に還る。
魂魄が完全に分離するということは死を意味するのだ。

呪いの刻印は視覚することも出来るが、
実態は魂魄自体に「打ち込まれている」と考えたほうが良いだろう。
外部からの干渉に対してなら一時的に結界を張って防ぐという対応策もある。
しかし、この刻印は内側に存在しながら外部に様々な情報を送り続けているようだ。
結界等でそれを遮断したところで、刻印自体は内側に残ってしまうのであまり意味がない。
そもそも、下手に外部と遮断すると自動的に刻印が発動してしまう恐れもある。
結界を使うのは上策とはいえないだろう。

結局、刻印に対して打てる手は今のところはないか。
ひとまずそう結論を出すと保胤は少し仮眠をとることにした。
となりではセルティが横になっている。
首から上がないため寝ているのかどうかは解らないが(そもそも、寝るのだろうか?)
たぶん、体を休めているのだろう。

わずかにだが空が白み始めてきた。
夜明けはもうすぐそこである。
106イラストに騙された名無しさん:2005/03/30(水) 03:49:15 ID:xQd3Yp/j
【B−2/砂漠の中/一日目・05:30】
 【慶滋保胤(070)】
 [状態]:正常
 [装備]:着物、急ごしらえの符(10枚)
 [道具]:デイパック一式、 「不死の酒(未完成)」と書いてある酒瓶
 [思考]:セルティと一緒に行動。夜明けまではこの場所に留まる予定。
[行動]:仮眠中

 【セルティ(036)】
 [状態]:正常
 [装備]:黒いライダースーツ
 [道具]:デイパック一式 (ランダムアイテムはまだ不明)
 [思考]:保胤と一緒に行動。夜明けまではこの場所に留まる予定。
 [行動]:横になっている(寝ている?)
107呪いに対する陰陽師的見解 ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/30(水) 03:50:12 ID:xQd3Yp/j
失礼。106だけ名前を入れるの忘れてましたorz
108傷物の心 ◆cCdWxdhReU :2005/03/30(水) 04:18:47 ID:hn2dDjo1
九連内朱巳は支給された名簿を見ながら考える。
自分の知り合いがいるのか。
それはYESだった。
一人は統和機構内でも『最強』と呼ばれる男
フォルテッシモ。
そいつに狙われた人間はほぼ確実に死ぬといってもいい男。
名前自体が恐怖さえ持つその男が参加している。
これはある種このゲームのキーの一人であるだろう。
もし会ってしまったら死を覚悟するしかない。
なにしろ相手は『最強』なのである。
MPLSなど持ち合わせない自分が出会ったらまず終わりだ。
そしてもう一人、
自分と縁のある人間が混じっていた。
「まさかこんなとこでこの名前を聞くとはね」
私が名づけた名、炎の魔女。
霧間凪。
唯一私に対抗できた存在。
能力者を前にしても動じないその勇気。
他にも評価する点はたくさんあるが、彼女もたぶん生き残るだろう
一度会って話をしてみたいが会うことなんてできるんだろうか?
「それよりも生き残れるかってことよね、このアイテムで」
私は自分のバッグに入っていたテーブルゲームセットを見る。
トランプに10面ダイスが2個、20面ダイスも2個、そしてなぜかドンジャラ。
他にもなにやらいろいろあるが武器になりそうなものはなく。私は確認するのをやめてしまった。
109傷物の心 ◆cCdWxdhReU :2005/03/30(水) 04:19:23 ID:hn2dDjo1
かなり本格的というか高級な作りのものではあるが、自分はハズレを引いたんだなとため息をつきたくなる。
でも、私にはこの頭脳がある。そしてポーカーフェイスが。
このアイテムもいつかきっと使う日が来る。
そう私は確信する。
「ガサガサうるせーよ。静かにしろ」
隻眼の男、屍刑四郎の声が飛ぶ
「うっさいわね。いろいろ考えてんのよ」
朱巳は刑四郎に言う。
まずこのアイテムを役立たせる時まではこの男と居なければ。
それが今の私のとり得る最良の手段だ。
110傷物の心 ◆cCdWxdhReU :2005/03/30(水) 04:19:55 ID:hn2dDjo1
【D-7/平野/1日目・1:00】

 【九連内朱巳(050)】
 [状態]:正常
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(支給品入り) テーブルゲームセット(トランプ、10面ダイス2個、20面ダイス2個、ドンジャラの他にもあるらしい) 
 [思考]:屍に付いてく 休憩 ハズレのこのアイテムを当りにしてみせる

 【屍刑四郎(111)】
 [状態]:正常
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(至急品入り)
 [思考]:休憩
111緋色の聖人 1/3  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/30(水) 06:27:27 ID:FEhhLvWs
なんと嘆かわしいことだろうか。
目の先で諍いあう少年達を見てハックルボーン神父は天を仰ぐ。

「てめぇ、ここら一面に生えてる草、口の中につっこんで詰め殺すぞ!」
「あぁ!? 今ので42回目だよなぁ?てめぇは殺して殺して殺して殺して殺
して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺
して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺
して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺
して殺して殺して殺して殺す!!」
「なんだと!おまえこそ、早口言葉言わせて舌噛させ殺すぞ!」
「てぇーめー!!今ので43回目だよなぁ?てめぇは・・・・・・」

殺す殺すを連呼する少年らの周りを萎縮した少女が右往左往している。
そして彼らの足元には顔立ちの整った少年が眠るように倒れている。

このような状況だ。心弱き者は混乱し不要な爪を立ててしまうだろう。
どうやら彼らは先ほどのような物の怪の類ではなく人間のようだ。
ならば神の使途である私が救わなければなるまい。
112緋色の聖人 2/3  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/30(水) 06:28:10 ID:FEhhLvWs
「・・・殺して殺して殺して殺して・・・? な、なんだぁ!?」
「てめぇなによそ見して、うおぉっ!」

傷だらけの巨漢が向こうからのっしのっしとやってくる。
その顔に慈愛を浮かべて。

「神は全ての人々に公平に救いをもたらします。」

神父の登場で初めて諍いあう二人の意見が一致した。

「「うさんくせぇ・・・」」
113緋色の聖人 3/3  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/30(水) 06:29:00 ID:FEhhLvWs
【E-6 一日目 3:30分】

 【ハックルボーン神父】
 [状態]:健康
 [装備]:宝具『神鉄如意』@灼眼のシャナ
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:争いをやめさせなければ/万人に神の救いを

 【平和島静雄(037)】
 [状態]:健康
 [装備]:山百合会のロザリオ
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:・・・殺すかぁ?

【闘犬ご一行様(キーリ・ボルカン)】
 【キーリ】
 [状態]:正常
 [装備]:超電磁スタンガン・ドゥリンダルテ(撲殺天使ドクロちゃん)
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:ハーヴェイを捜したい、ゲームから抜け出したい。

 【ボルカン】
 [状態]:正常
 [装備]:かなめのハリセン(フルメタル・パニック!)
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:キーリについて行く。打倒、オーフェン。

 【古泉一樹】
 [状態]:気絶状態
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:SOS団の合流
114凡人と美少女と ◆3LcF9KyPfA :2005/03/30(水) 07:34:32 ID:y6mc2xw/
「どうかギギナの馬鹿に遭いませんように。
どうかギギナの阿呆に遭いませんように。
どうかギギナの畜生が勝手に死んでいますように。
ついでにクエロの武器が生卵とかだったりしますように」
そんなことをぶつぶつと呟きつつ、俺は慎重に森の中を歩いていく。
自分でも馬鹿げているとは思うが、どうにも神様にでも祈っていないと一番会いたくない馬鹿に遭ってしまいそうな気がしてならなかった。
尤も、神様なんぞ信じてはいないが。
「いや、でも……」
口にして改めて考える。
瞬間移動だの呪いの紋章だの異世界人だのがいるくらいだ。
もしかしたら億に一つくらいの可能性としては神様もいるかもしれない。
少なくとも今この瞬間くらいは。
……そう考えると人間、欲が出るものだろう。
いや、決して俺個人が欲深いとかではなく、一般的にそういうもののはずだ。絶対そうだ。
という訳で更に祈ってみる。言うだけなら無料だし。
「どうかこれから最初に遭遇する相手がこんな殺戮ゲームを否定していてそれでいて戦闘能力もそこそこあってついでに美少女でありますようにっ!」
よし、完璧。
咒式も無い。まともな武器も無い。知覚眼鏡も無い。おまけに女運も無い俺だ。
もうそろそろ何かいいことがあってもいいんじゃないか?
「っと、森を抜けちまう前に目的地をとりあえず決めるか。
……西と南は川、東は湖、川の先は市街地か道を挟んで森……」
どうしようかね。まぁ、夜明けまでまだ時間もあるし、無理に歩き回るよりは休憩も兼ねてここで少し考えてみるか。


「殺し合いなんて、いけないよ……!」
「――っは!?」
突然聞こえてきた声に、俺の身体が反射的に強張る。
どうやら、休憩のつもりが少し眠っていたらしい。考え事の途中から記憶が無い。
しかし、今の声は……
考えろ、考えるんだガユス。もしかしたら千載一遇のチャンスかもしれない。
115凡人と美少女と ◆3LcF9KyPfA :2005/03/30(水) 07:35:04 ID:y6mc2xw/
ケース1:罠。
わざと殺人否定をする声を張り上げることで、戦闘力を持たない者や弱者だと勘違いして油断した殺人者を誘き寄せている。
ケース2:普通の美少女。
“美”が付くかどうかは解らないが、声は少女のものだった。
例えばギギナの様な殺人狂と出会い、なんらかのトラブルに巻き込まれている。

考えた。即決。とりあえず様子を見に行こう。別に美少女かもしれないからじゃない。
もしかしたら役に立つ武器を引き当ててるかもしれないからだ。そう自分に言い訳をする。
「我ながら情けないな……」
それでも女の声に勝てる男はいない、と俺は思う。
とにかく、行ってみよう。どの道このまま誰とも会わずに過ごし続ける事はできそうもないし。


そして、森を抜けて俺が目にしたものは……
「ああ、神様有難う……もしかしたら俺は今日から宗旨変えしてもいいかもしれない」
俺が目にしたものは、美女と美少女と、俺の知覚眼鏡だった。


【B-6/森近くの平原/一日目/03:10】

【ガユス・レヴィナ・ソレル】
[状態]:健康
[装備]:リボルバー(弾数ゼロ)
[道具]:支給品一式
[思考]:美女と美少女と眼鏡! 美女と美少女と眼鏡!

【ミズー・ビアンカ&新庄・運切と接触】
116Bullets(1/4)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/30(水) 10:38:46 ID:L7vnG2my
砂漠を抜けて平地へ。
クリーオウを挟むように、しんがりをゼルガディス、そして先頭をクエロにして南東の学校へと向かっていた。
そこで小休止した後、ゼルガディスの知り合いを探しに行くようだ。
クリーオウに彼女の仲間を捜すことが後回しになってしまったことを謝ると、
「気にしないで。オーフェンとマジクならきっと生き残っててくれるもの」
笑顔でそう言った。だが、やはり不安の色は隠せないようだ。
こちらとしても戦力の入手が遠のくのは出来れば避けたかったのだが、あの状況ではしょうがない。
それに──見たところゼルガディスはかなりの使い手だ。魔術師の入手の遅延と天秤にかけても十分に釣り合う。
「お前さんは誰かいないのか?」
「いるにはいるんだけど、……ちょっとね」
「……そうか」
表情を曇らせてやる。“憎むべき敵”として紹介してやってもいいが、まだ無闇に身の上を語って──騙ってよい時期ではない。
「ところで、そっちの──クリーオウの支給品はなんだ?」
「ああ、この子のはこのナイフ。貸してもらってるの。私のはこれ。弾丸みたいね。それにしてはちょっと大きいけど」
デイパックから咒弾を取り出す。
「ダンガン……とはなんだ?」
「…………、そうね、まずこの弾を射出するものがあるんだけど──」
どうやらここには、自分のいた世界とはまったく違った世界の住人もいるらしい。
ゼルガディスは火器全般を知らなかった。一応聞いてみると、クリーオウは拳銃を知っていた。
(文明が遅れてる? ……いや、その代わりに何かが発達していると考えた方がいい)
たとえば、それこそ魔術──。
ここで彼の戦闘能力について聞くのは怪しまれるだろうか?
「ゼルガディスさん、あなたの武器はその剣?」
「そうだ。この剣は特殊なものだが知っているので問題はない。それに精霊魔術もある」
「精霊魔術?黒魔術じゃなくて?」
「俺は黒魔術は使えんぞ。……いや、クリーオウ、お前さんの言っている黒魔術について教えてくれないか?」
117Bullets(2/4)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/30(水) 10:39:45 ID:L7vnG2my
二人の情報交換をまとめると──
ゼルガディスの世界では、“黒魔術”“白魔術”“精霊魔術”があるということ、
そしてクリーオウの世界では、“黒魔術”“白魔術”があり──ただしそれは音声魔術という区分に入り、“ドラゴン”ならばもっと特殊な魔術が扱えるとのことだ。
…火器がなくともまったく問題なかった。
(……化け物だらけね、ここ)
クエロは嘆息した。ゼルガディスの探している仲間もその魔術の使い手らしい。本当にマーダーに先走らなくてよかった。
「私の世界では咒式ってものがあって私も使えるんだけど……特殊な武器がないと使えないのよ」
もちろん、咒弾のことは黙っておく。これは切り札だ。誰にも渡すわけにはいかない。
──と、風に乗って嫌な臭いが流れてきた。おそらくは血と、肉が腐る臭い。
「…………」
クリーオウが顔をしかめた。
「ちょっと様子を見てくるわ。ゼルガディスさん、クリーオウをお願い」
「わかった」
その場に二人を残し、デイパックを持ってクエロは死臭のする方向へ足を向けた。

高台の上に上り、見つけたのは少女の死体。
それに嘔吐の後と、食料と水が──おそらく支給武器も──なくなっているデイパック、血まみれの服。
少女の目は閉じられており、それだけ見れば眠っているようにも見える。
(殺した後この服を脱ぎ捨てたか……もしくはこの子の目を閉じさせて汚れたから捨てたのか)
どちらでも大して自分たちには影響がないが。
死後硬直し始めているところを見ると、二時間程度は経っているようだ。犯人はここにはいないだろう。
(さっさと戻りましょ────っと)
南に、ゼルガディスが言っていた学校が見える。そして、今そこから人影のような者が出て来るのが見えた。
遠すぎて、何かが動いている──程度にしか見えないが、南に向かっているようだ。
(鉢合わせはしないだろうけど……これは伝えておくべきね)
胸中でつぶやくと、クエロは踵を返して二人のところに戻っていった。
118Bullets(3/4)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/30(水) 10:40:47 ID:L7vnG2my
【残り95人】


【C-2/高台の上/1日目・03:05】
【クエロ・ラディーン】
[状態]: 健康
[装備]: ナイフ
[道具]: 高位咒式弾、支給品一式
[思考]: 人影についてゼルガディスに報告、ゼルガディスについて行く、学校に行く、小休止
+自分の魔杖剣を探す→後で裏切るかどうか決める(邪魔な人間は殺す)

【C-2/高台の下辺り/1日目・03:05】
【クリーオウ・エバーラスティン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]:クエロを待つ、学校に行く、小休止
ゼルガディスについて行く

【ゼルガディス・グレイワーズ】
[状態]:健康、クエロを少し疑う
[装備]:光の剣
[道具]:支給品一式
[思考]:クエロを待つ、学校に行く、小休止
リナとアメリアを探す
119Bullets(4/4)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/30(水) 10:41:34 ID:L7vnG2my

【D-2(学校外)/03:05】
【相良宗介】
状態:健康、殺人聖者モード
装備:コンバットナイフ、スローイングナイフ数本
道具:支給品一式(水、食料×2)
思考:1、火器類の確保 2、千鳥、テッサの保護 3、クルツとの合流 4、探索は夜、昼は仮眠
行動:南へ
120新しい朝に希望はあるか? ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/30(水) 13:58:10 ID:DkrS2Zdt
アメリアは目を覚ました。
あれからどのくらい意識を失っていたのだろう。
あたりはまだ暗いままなので、それほど長い時間ではないようだ。
立ち上がろうと腕に力を入れるものの全然力が入らない。
無理やり立ち上がろうとすると背中に鋭い痛みがはしった。
意識が遠くなりかける。立ち上がるのはとても無理だ。
アメリアは顔に手を当てた。顔は血だらけだった。
顔の傷からの出血はまだ続いている。
地面には血だまりができていた。かなりの量だ
(こんな所では絶対に死なない・・・・リナさん、ゼルガディスさんと合流しないと・・・
絶対に死なない・・・絶対に・・・)


(む?)
なれない場所でなかなか眠れず、まどろんでいた子爵はなにやら違和感を感じ目を覚ました。
なにやら近くで人の気配がする。
弱々しく今にも消え去りそうな気配が・・・
どうやら崖下らしい。
子爵はふわふわと空中に浮くと石段を使わず、直接崖下に降りていった。
そこには瀕死のアメリアが倒れていた。
地面には血の跡が連なっている。ここまで這ってきて力尽きたようだ。
121新しい朝に希望はあるか? ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/30(水) 13:59:06 ID:DkrS2Zdt
(ふむ、まだ息はあるようだな。できれば助けてやりたいのだが)
子爵には他人の傷を癒す能力はない。
支給された荷物も調べてみたが傷の手当ての出来そうなものは入っていなかった。
ちなみに、割り当てアイテムは「教育シリーズ 日本の歴史DVD 全12巻セット」だった。
DVDに少々興味をそそられた子爵であったが、今はそれどころではない。

手当ての出来る場所まで運ぶしかないのだが、
力を消耗している現状では、人間一人を運ぶのもままならない。
(さて、どうしたものか・・・)
子爵が思案に暮れていた、

その時

――放送が始まり、それと同時に東から太陽があらわれた。夜が明けたのである。
――――そして、子爵は力を取り戻した。

【D-4/石碑近くの崖下/1日目・06:00】
【ゲルハルト・フォン・バルシュタイン子爵】
 [状態]:体力が回復し健康状態に
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック一式、 「教育シリーズ 日本の歴史DVD 全12巻セット」
 [思考]:アメリアを傷の手当ての出来そうなところへ運ぶ。
【アメリア・ウィル・テスラ・セイルーン】
 [状態]: 瀕死、重傷
 [装備]: なし
 [道具]: なし
 [思考]: 生きる/リナ、ゼルガディスと合流する

※アメリアの所持品(支給品一式+獅子のマント留め@エンジェル・ハウリング)
 はC−4の高架近くの森に落ちてます
122王子さまはティーが好き(1/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/30(水) 15:55:09 ID:jIrLPut2
 ブン!
 ブン!ブン!
 薄暗い住宅地に、剣を振る音が響く。
「1761………1842…」
 ブン!ブン!ブン!
 ブン!ブン!ブン!ブン!
 音は、全く遅くなることはなく、むしろペースアップしていた。
「1903………2000!」
 ブン!
 そして、一際大きい音を出し、止んだ。
「やはり、不慣れな武器は扱いづらい……か……」
 先ほどまでレイピアを振っていた青年。シズは、誰ともなしに呟くと、
レイピアを、腰のベルトに挟んだ鞘に収め、数メートル先にある喫茶店に入って行く。
 カランカラン
ドアについているベルが乾いた音を鳴らす。
シズは喫茶店のカウンターの中に入っていくと、湯を沸かし始めた。
 お湯が沸くまでの間、腰からレイピアを引き抜き、裏の倉庫にあったもので簡単にレイピアの手入れをする。
デイパックの中に入っている斧も、同じように手入れをしてテーブルの上に置いた。
 シズはしばらく何かを思考するように、窓の外を眺めていたが、お湯が沸いたのでカウンターに戻る。
上品なカップにティーパックを入れ、お湯を注ぐ。
お茶を入れると、上品な仕草で味わうように一口お茶を飲み、デイパックからパンを取り出すと、
一切れちぎって口の中に放り込む。特に感慨も無く租借し、嚥下すると、
また一切れ口の中に放り込み、残りをしまう。
残りのお茶も一気に流し込むように飲み込み、先ほど倉庫から物色してきたものをテーブルに広げる。
テーブルの上には、
簡易救急セット、紐の束、目の細かい布、数本のナイフ、ジッポー、そして先ほど磨いた斧が乗っていた。
 シズは、一つ一つを丁寧に調べるとデイパックに全て戻した。
「さて、あと10分で6:00か……行動を起こすならその後だな」
シズはそう言うと、何をするでもなく手を組み合わせて思考をめぐらす。
123王子さまはティーが好き(2/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/30(水) 15:56:16 ID:jIrLPut2
 さっき名簿を見たが、ティーの名前があった。当面は彼女を探すことにしよう。
あとキノさんの名前もあったな。
彼女ならこんなゲームに乗ることは無いだろうから、彼女のことも探そう。
そういえば陸はここに来ているのだろうか?もし来ているのなら、
早く見つけないと自分を探して無茶をしかねない。
 しかし、こんな状況で探すべき人物が結構多いことに、自分でも驚く。
俺に、こんなに頼るような、もしくは守るような人物が居ることが少しうれしく感じる。
なんだか自分が孤独では無いように思えるのだ。
 そうだ、キノさんを見つけたら、エルメス君も探さなくては。

そこまで思考を進めたところで、唐突に思考が停止させられた。
頭の中に、ノイズのようなものが響く。
シズは時計を見た。6:00 
そう、一回目の放送が始まったのだ。
そしてシズはこのあと、探すべき人物が一人減ったことを、知る。
124王子さまはティーが好き(3/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/30(水) 15:57:00 ID:jIrLPut2
【シズ】

【A-3/住宅街の喫茶店/1日目・6:00】
[状態]:正常
[装備]:レイピア
[道具]:2人分のデイバッグ(支給品入り)斧、
    簡易救急セット、紐の束、目の細かい布、ジッポー(ライター)。
[思考]:キノ、ティー、陸、エルメスを探す。(ティファナが死んだことを知らない)
    自分の命を狙うものには説得を試みますが、
    通じなかった場合は相手を躊躇無く殺すつもりです。
125お嬢様の憂鬱(1/3):2005/03/30(水) 16:05:07 ID:dlj4zvgD
 ……納得がいかない。
 砂浜と草原の境目。その低く、しかし入り組んだ崖の隙間で鳥羽茉理は身を縮めていた。
 いきなり殺し合いに放り込まれ、その上ワープである。
 が、何しろ月まで飛行していった従兄弟達を持つ茉理である。多少の怪現象は無視した。
 当初は四人姉妹の残党が自分たちを殺しにかかったのかとも思ったがどうにも腑に落ちない。
 超人である竜堂兄弟ならともかく、自分は身体的には至って普通の女子大生である。
 わざわざこんな回りくどい方法をとるのもおかしな話だ。
(……ひとまず、状況の把握よね)
 名簿を見る限り、最も信頼のおける四人のうち二人がこの島にいる。
 竜堂始。竜堂終。
 彼らに守られ、対価として文化的生活を営ませるのがライフワークである自分としては、
 一刻も早く彼らと合流したい。
 地図とコンパスを照らし合わせ、ここが島の北端だと判断する。
 彼らのいる所には必ず騒動が起きるのだから、なんとかなると思う。
 頷き、さらに岩の窪みに身を沈める。
 砂浜からも上の草原からも、その姿は見えない。
126お嬢様の憂鬱(2/3):2005/03/30(水) 16:05:38 ID:dlj4zvgD
 ……出来れば夜明けを待って行動したい。
 夜目は利く方ではない。何しろ「鳥」羽なのだから。
 そんな冗談にくすりと笑い、すぐにため息をつく。
(……大丈夫。始さん達ならこれぐらい何ともないんだから)
 支給品を胸に抱き、胸中で呟く。
 その支給品だが、よく見ても用途の分からない厄介なものだった。
 金色の編み髪に似た装飾を持つ、長い柄。
 柄とは言っても刀身は無く、柄尻に何かの接続端子があるだけだ。
 一緒に入っていた電池のようなものがぴったりはまったが、何も起こらない。
 あまり弄くるとむしろ危険かもしれないと思い、今は電池を外している。
 何の役にも立ちそうにないが、色々と造詣の深い従兄弟なら何か分かるかもしれない。
 時計を見ると、五時三十分。
 夜明けは近い。

 三十分後に地獄のような現実を告げられることを、彼女はまだ知らない。
127お嬢様の憂鬱(3/3):2005/03/30(水) 16:06:37 ID:dlj4zvgD
【座標A-2/海岸沿いの岩間/時間(一日目・5:30)】

【鳥羽茉理】
[状態]:健康
[装備]:強臓式武剣“運命”、精燃槽一式(出典:機甲都市伯林)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:竜堂始と竜堂終の捜索。
128Refrein&Limited Heart(1/1)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/30(水) 16:48:49 ID:57Cg1xeY
たとえば、まだあいつが研究会に入って間もなかったとき。
依頼人をナンパするわ尾行の邪魔をするわで最悪だった。
それでいて、いつも自分よりも真実に近づいていて。
歯痒い思いが胸に詰まっていた。

たとえば、みんなが景のことを忘れてしまったとき。
あのときの水原の言葉は本当に痛かった。
本当に自分しか覚えていないのだと、想っていないのだと、立ち向かえないのだと痛感されて、打ちのめされた。
久々に味わった孤独は、とてもつらかった。

たとえば、DDの連中と協力して『王国』側の悪魔と戦ったとき。
あのとき水原が来てくれて、本当に嬉しかった。
でもまず怒ってやった。その方が自分らしい。
そしてすべてが終わって──風邪と恥ずかしさでぼろぼろになりながら、二人で物部くんと梓さんを探しに行った。

死にたいなんて、一度も思ったはない。
『王国』に関わったことで出会った人たち。
今度は彼らと一緒に日常をつくっていこうと、そう決意していた。

──死にたいなんて、一度も思ったことはなかったのに。
129Refrein&Limited Heart(2/4)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/30(水) 16:49:22 ID:57Cg1xeY
「ぅあああ……ああぁ……あ」
千絵は慟哭していた。
なぜこんなときに走馬燈のように思い出してしまうのだろう。
必死に戦っていたあのとき。すべてが終わり、明日に向けて歩いていたあのとき。
梓と、景と、そして水原と一緒にいたあのとき。
──死にたくなかったあのときのことを。
(殺して……お願い……)

ぼろぼろと涙を流しながら、剃刀の血の跡を舐めている今このとき。
優しく笑っている少女を睨み付けながら──それでもまだ血を求めている今このとき。
──ただひたすら死を求めているこのときに、なぜ思い出してしまうのだろう。
「そんなに睨まなくてもいいのに……。一度受け入れてしまえば、楽になるのよ?」
「うう……ぅ……」
死にたい。
「うーん……しょうがないわね」
死にたい。
「……じゃあ、これでどう?」
死に────────────────────────



ぶつんと、何かが切れた気がした。
130Refrein&Limited Heart(3/4)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/30(水) 16:50:16 ID:57Cg1xeY
たとえば、まだあいつが研究会に入って間もなかったとき。
依頼人をナンパするわ尾行の邪魔をするわで最悪だった。
それでいて、いつも自分よりも真実に近づいていて。
歯痒い思いが胸に詰まっていた。

たとえば、みんなが景のことを忘れてしまったとき。
あのときの水原の言葉は本当に痛かった。
本当に自分しか覚えていないのだと、想っていないのだと、立ち向かえないのだと痛感されて、打ちのめされた。
久々に味わった孤独は、とてもつらかった。

たとえば、DDの連中と協力して『王国』側の悪魔と戦ったとき。
あのとき水原が来てくれて、本当に嬉しかった。
でもまず怒ってやった。その方が自分らしい。
そしてすべてが終わって──風邪と恥ずかしさでぼろぼろになりながら、二人で物部くんと梓さんを探しに行った。

あのころはつらかったけど、楽しかった。
でも今の方がずっといい。
脳に駆け抜ける鋭い快楽と、身体全体を包み込むような甘さ。
カプセルを服用したときもこんな感じなのだろうか。まぁ、もうそんなことはどうでもいいのだけれども。
ただ──────水原の血が飲みたいな、と千絵は思った。
131Refrein&Limited Heart(4/4)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/30(水) 16:50:50 ID:57Cg1xeY
自分の手首から溢れる血を啄むように舌を這わせる千絵を見て、聖はほほえんだ。
「やっぱり素直になるのが一番いいわ」
そうつぶやき、千絵の頭をそっと撫でてやった。
「でも……そろそろ夜が明けるわね。やっぱり吸血鬼に太陽はだめよね? あの倉庫の中で夜を待ちましょうか」
こくりとうなづく千絵がかわいくて、そっと頬にキスをした。


【残り95人】

【D−4/森林近く路上/1日目・05:30】
『No Life Sisters(佐藤聖/海野千絵)』

【佐藤聖】
 [状態]:吸血鬼化/身体能力等パワーアップ、左手首に切り傷(徐々に回復中)
 [装備]:剃刀
 [道具]:支給品一式
 [思考]:倉庫に行って夜まで休む
 吸血、己の欲望に忠実に(リリアンの生徒を優先)

【海野千絵】
[状態]: 吸血鬼化/身体能力等パワーアップ
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: 聖についていく
※スィリーは同じ場所で気絶?中
132不信感:2005/03/30(水) 17:15:47 ID:kFyJfInq
 こっそりと抜け出し――気付かれているだろうというのは承知――森の奥へと移動した。
 一旦停止し、悠二は後ろへ振り向く。
 長門が立ち止まっていた。当然だ。悠二が話がある、と呼び出したのだから。
「長門さんはあの人達を信用できると思う?」
 言葉の裏に僕は信用していないという意味合いを含めていた。
 そもそも悠二は出夢でさえ成り行きで行動をともにしていたが、信用できるとは思っていない。
 自称とはいえ、『殺人鬼』と名乗る者を信用しろという方が無茶なのだ。
 それになにやら知っているらしい仲間。この人たちも人を、殺すのだろうか。
「――――僕は信用していない。それに彼等とは目的が違う」
 目的。彼らは脱出と言った。
 その目的は僕も同じだが、それより優先して「仲間探し」という目的があるのだ。
 それに、僕は見てしまった。戦う気のないと言う彼らの包丁につく『何者かの血』を。
「長門さんも仲間探しするんだったら、一緒に行かない?」
 僕が長門さんを呼び出したのはこの為だ。
 彼らは罠を張っていた。動きだす予定がないのは明確だ。
 動くのならあんな罠を張る必要はない。
 仲間を探すためにも、行動したい。
「………」
 長門は無表情のまま、悠二を見つめていた。
 しばらく経ち、長門は自分の思考を纏め静かに頷いた――――。
133不信感:2005/03/30(水) 17:16:43 ID:kFyJfInq
【チーム・いとうのいぢ】
(坂井悠二/長門有希)
【F−4/森の中/1日目・05:55】【残り95人】

【長門有希】
[状態]:かなり疲労。
[装備]:ライター
[道具]:デイバック一式。
[思考]:情報収集/ハルヒ・キョンの安全確保/

【坂井悠二】
[状態]:疲労。
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック一式。
[思考]:彼らを信用はできない/シャナの捜索
134戦地調停士の見解(1/2):2005/03/30(水) 17:27:55 ID:W9VC1oEJ
『つまりは・・。』
EDは頭の中で自分の考えをまとめていた。
『まずは最初の一見だが・・最初の剣士の攻撃を防いだもの、彼らの前に生じた壁はおそらく防御紋章で間違いないと思うが・・いささか厄介なものだな。』
専門ではないがあの防御紋章の威力はかのムガンドゥ3世のそれぐらいのレベルだった。
『さらにあの呪文、印象迷彩がかかっていたのか、紋様のようなものがなかった・・。』
仮面を叩く指に力がこもる。
『そして我々の体につけられている呪い、だが複数の人間に同時にあのような呪いをかけることが・・。』
そこまで考えて彼は思い直した、あの部屋にいた人物のほとんどは同じ世界にいる人間の文化とは異なるいでたちをしていた。
文明そのものの違いがあるならば自分の世界の常識が通じる筈がない。
『主催者側との交渉は・・不可能か。』
自分の職業とする戦地調停士は文字通り戦地を鎮めることが役目となるが、
『彼らからみて我々は敵ではない・・モルモット。』
交渉する必要がない。
『となると交渉する相手は・・。』
仮面を叩く手が止まる。
135戦地調停士の見解(2/2):2005/03/30(水) 17:28:27 ID:W9VC1oEJ
この行動も予想の範囲だろう、このゲームに乗って殺戮を楽しむものもいるだろう、だが我々のとる道はこれしかない。
主催者を倒し、元の世界に帰るにはこれしか。
『・・同盟の結成、しかないか・・。』

(B7/小さな島/5:30)
残り95人

【ED(エドワーズ・マークウィッスル)】
【状態】健康
【道具】薬品セット
【装備】荷物フル
【思考】日が上ったら移動、同盟の結成、ヒースロゥを探す。
136赤く染まりし薔薇の休息 1/3  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/30(水) 17:38:44 ID:4ulP4yY6
小笠原祥子は、一条豊花を殺害した後、海へと向かって歩いていた。
人を殺したというショックからか、その歩みは遅い。
それでも彼女は歩き続ける。愛しい妹――祐巳を守るために。
海岸線が見えてくる頃、祥子は別の物に気付いた。
「……あれは?」
左手側、数百メートルは離れている所に、小さく建物の影が見える。
――このまま海まで行っても意味が無いわね。
祥子は、その建物へと歩みを進めた。

約十五分後、祥子は建物――公民館に到着。
玄関からそっと中に忍び込む。すると、

「――――っかし嬢ちゃんも災難だな。こんなモンに巻き込まれてよ」
「――ええ、災難です。ですが、……わたくしはこんなことで死ぬわけにはいかないのです」
「そうかい。なあに、俺様も協力するさ。力になるぜ」
「気持ちだけ受け取っておきます。さ、早く行きましょう」

――誰かいる? ……いえ、こちらに来る!?
祥子は慌てて、しかしリリアンで身に着けたスカートを翻さない静かな走りで、
声がする方とは別の廊下の影に隠れる。
狭い玄関ホールを窺ってみれば、胸にラジオを下げた少女が、
自分と入れ替わりに外に出て行くところだった。
――声は二人分。後ろに誰かいるのかしら……。
祥子は息を詰め、気配を殺す。
しかし、十分経っても他の人間は来なかった。
それどころか、わずかな物音すらしない。
どういうことなのかと疑問に思うが、警戒を緩め、ふうと息を吐く。
137赤く染まりし薔薇の休息 2/3  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/30(水) 17:40:50 ID:4ulP4yY6
その後祥子は、時間を掛けて館内を調べた。
さっきの少女の他に誰かまだ隠れているのでは、
と戦々恐々としていたが、全部を見て回っても祥子の他には猫一匹いなかった。
もっとも、今の彼女なら猫一匹でも悲鳴を上げていたかもしれない。
安全を確認した祥子は、給湯室で緑茶のティーバッグを淹れて飲んだ。
味などまったく解らなかったが、それでも温かい飲み物は
異常事態に緊張しきっていた彼女の心を落ち着かせてくれた。
――でも、いつまでもこうしてはいられないわ。
自分は今、一時的とはいえこうして安全な場所にいるが、
果たして祐巳はどうしているのだろうか。
もし、凶悪な殺人鬼に襲われでもしたら……。
不吉な想像を、祥子は振り払う。
「……マリア様、愛しい私の妹祐巳に、どうか御加護のあらんことを……」
手を合わせ、祈りを捧げる。
その姿は殺人者のそれではなく、リリアン女学園の紅薔薇そのものだった。

緑茶を飲み終えた祥子は、地図を広げて行き先を検討し始めた。
地図に示された建造物の中で、ここから近いのは二つ。
南の海洋遊園地と、東の学校。
――もし祐巳なら、どちらを選ぶ?
悩んだ末、祥子は海洋遊園地に目的地を決めた。
祐巳は夜中の学校なんて、嫌うような気がしたから。
それに狭い学校よりは、広くて隠れる場所も多い遊園地の方が安全なはず。
地図を畳み、祥子は静かに立ち上がった。
「待っていてね祐巳。貴方は私が絶対に守るから……」

この選択が二人の距離を大きく離したことを、祥子は知る由も無かった。

【残り95人】
138赤く染まりし薔薇の休息 3/3  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/30(水) 17:43:21 ID:4ulP4yY6
 【D−1/公民館/1日目 02:00】

 【小笠原祥子(061)】
[状態]:殺人のショックで、やや精神的疲労状態
[装備]:銀の短剣
[道具]:デイパック(支給品一式/食料&水二人分/ソーコムピストル)
[思考]:海洋遊園地(E−1)へ移動。
    祐巳と自分が生き残り、最後に自害する。


 【光明寺茉衣子】
[状態]:健康
[装備]:ラジオの兵長
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:ハーヴェイ、キーリ、宮野を探し移動
    ※公民館から移動済み。
139千里の判断:2005/03/30(水) 18:26:32 ID:kFyJfInq
 いーちゃんが茂みの中に飛び込む。
 隠れていた人物を捕獲して戻ってきた。
 ただし――飛んできて、だ。
 正確には『何者か』をぶつけられて飛ばされたらしい。
「あ。しまった――――」
 茂みの方から声が聞こえた。
 零崎と出夢が茂みに飛びこみ、その投げた人物を確認する。
 そこにいたのは少女、風見千里だった。
「………お前は戦う意志があるか?」
 零崎が警告を発した。
 戦う意志があるとしても仲間を投げるのはどういう了見か。
 やや疑問を浮かべつつ、しかし警戒は止めない。
 血の付いた出刃包丁を握り締め、千里を睨みつけた。
 千里はこっそり銃に手を伸ばした。
「ある、と言えば?」
「お前を殺すことに躊躇いはないぜ、殺りあうか?」
 零崎の背後から感じる怒気(誰のかは想像がつくが)を今は無視する。
140千里の判断:2005/03/30(水) 18:27:32 ID:kFyJfInq
「どうせ、ないと言っても信用しないでしょ」
「いや、こっちに戦う気は無い。ここを脱出しようと考えているくらいだ」
 凪が零崎の代わりに答えた。
「……そう。まぁ私には関係ないわね。探す人がいるの。
 出雲覚、佐山御言、新庄運切――――知らない?」
 これだけの人数がいれば一人くらい、と思ったが残念ながら誰一人縦には振らなかった。
 この辺りにはいないのかな、と考えながら先ほど自分が投げ飛ばした景を取りに行く。
 投げ飛ばしたせいか、意識が飛んでいた。当たり所が悪かったのかもしれない。
 こうしてみると出雲はやっぱり頑丈ね、とノロケ(?)ながら再び景を背負った。
「脱出に協力しないか?」
「やめておくわ。仲間の捜索が先だもの」
 千里はそう言って、再び森の中へ姿を消した。
「ぎゃはははは! ふられたな、お兄さん」
「まぁ、とりあえず自己紹介とでもいこうか?」
141千里の判断:2005/03/30(水) 18:28:20 ID:kFyJfInq
【灼眼戯言ポップの憂鬱】
(坂井悠二/いーちゃん/零崎人識/匂宮出夢/霧間凪/長門有希)
【F−4/森の中/1日目・05:45】
【いーちゃん(082)】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]:自己紹介。

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:自己紹介。

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁 天使の輪
[道具]:デイバッグ(支給品一式)サバイバルナイフ
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。
142千里の判断:2005/03/30(水) 18:28:45 ID:kFyJfInq
【長門有希】
[状態]:かなり疲労。
[装備]:ライター
[道具]:デイバック一式。
[思考]:情報収集/ハルヒ・キョンの安全確保

【匂宮出夢】
[状態]:平常
[装備]:???
[道具]:デイバック一式。
[思考]:生き残る。 何者かの捕縛

【坂井悠二】
[状態]:疲労と動揺
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック一式。
[思考]:いーちゃんをちょっと不信に。シャナの捜索。

*不信感の前の出来事と考えてください。
143渚の思索 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/30(水) 18:51:30 ID:SaPGIG5+
 蒼い殺戮者は思考する。
 命令が途絶えた今、自分のとっての最優先事項は正常な命令系統への復帰だ。
 そして、参加者名簿には同様に命令系統から切り離されたと思しきしずくの名がある。
 無論同名の別人という可能性もあるが、断言できない以上は捜索せねばならないだろう。
 そして、この見知らぬ空間――このような空間での任務の経験はあるが、脱出の手段は自分の知識には無い。
 島を探索して情報を探り、他の参加者――火乃香、パイフウの名もあった――たちと協力するべきだろう。
 ――だが、夜は危険だ。
 武器を持ち、ゲームに乗って人を襲おうとする者――そう、先程の銃撃の主のような者――は、夜闇に紛れたがるだろう。
 関節部に銃撃を喰らえば動きは制限されるし、当たり所が悪ければ培養脳が破損する可能性もある。
 蒼い殺戮者は己の蒼の装甲を茂みに紛れさせる。
 遮蔽装置は起動できないため、複合センサの感度をやや上げる。
 そうして、蒼い殺戮者は朝を待つ。


【F−1/海岸沿いの茂み/一日目4:37】

【蒼い殺戮者(025)】
[状態]:飛行ユニットの翼に弾痕あり、ただし飛行に関しては問題無し
[装備]:梳牙(くしけずるきば)
[道具]:無し(地図、名簿は記録装置にデータ保存)
[思考]:1.しずく、火乃香、パイフウの捜索 2.脱出のために必要な行動は全て行う心積もり
144不信感@改訂:2005/03/30(水) 19:00:54 ID:kFyJfInq
 皆が人影に気を取られている間にこっそりと抜け出し、森の奥へと移動した。
 何人かには気付かれているかも知れないが、今は誰も追ってこない。
 隠れ潜んでいたのが誰かは知らないが、気を使っている暇はない。
 逃げる隙を作ってくれたことに感謝する。
 あれはシャナではない、シャナが近くにいればすぐに分かる。
 あのフリアグネの時のように。
 この時、悠二は零時迷子の力に制限が掛かっていることを気付いていなかった。
 悠二は長門さんの手を引いて、少し離れた場所まで走る。
 ある程度離れた場所まで移動し、長門さんの方へ振り向いた。
「長門さんはあの人達を信用できると思う?」
 言葉の裏に僕は信用していないという意味合いを含めていた。
 そもそも悠二は出夢でさえ成り行きで行動をともにしていたが、信用できるとは思っていない。
 自称とはいえ、『殺人鬼』と名乗る者を信用しろという方が無茶なのだ。
 それになにやら知っているらしい仲間。この人たちも人を、殺すのだろうか。
「――――僕は信用していない。それに彼等とは目的が違う」
 目的。彼らは脱出と言った。
 その目的は僕も同じだが、それより優先して「仲間探し」という目的があるのだ。
 それに、僕は見てしまった。戦う気のないと言う彼らの包丁につく『何者かの血』を。
「長門さんも仲間探しするんだったら、一緒に行かない?」
 僕が長門さんを呼び出したのはこの為だ。
 彼らは罠を張っていた。動きだす予定がないのは明確だ。
 動くのならあんな罠を張る必要はない。
 仲間を探すためにも、行動したい。
「………」
 長門は無表情のまま、悠二を見つめていた。
 しばらく経ち、長門は自分の思考を纏め静かに頷いた――――。
145不信感@改訂:2005/03/30(水) 19:01:31 ID:kFyJfInq
【チーム・いとうのいぢ】
(坂井悠二/長門有希)
【F−4/森の中/1日目・05:45】【残り95人】

【長門有希】
[状態]:かなり疲労。
[装備]:ライター
[道具]:デイバック一式。
[思考]:情報収集/ハルヒ・キョンの安全確保/

【坂井悠二】
[状態]:疲労。
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック一式。
[思考]:彼らを信用はできない/シャナの捜索
146イラストに騙された名無しさん:2005/03/30(水) 19:23:37 ID:kFyJfInq
「千里の判断」はNGでお願いします。
147指し手の思惑 ◆cCdWxdhReU :2005/03/30(水) 19:48:07 ID:aqtnLhXp
「それで折原さん。 戦力の把握というのもっとも大事なことの一つです。
あなたの支給アイテムはなんです?」
ビルの一室で動かず、長い時が流れたとき。少女、萩原子荻はふとそんな質問をした。
「支給アイテム?」
「そうです。まさか見てないんですか?」
「いや、静雄に会ったりでバタバタしてて。そういえばそんなものあったね」
彼女と行動を共にすることになった男。
こんな状況でも笑みを絶やさないその男の名は、折原臨也。
情報屋と名乗ったその男は、彼女の問いにそう返した。
「知らないで今まで平気な顔をしてきたんですか? 
ちょっとあなたに対する認識を改めなければいけないかもしれませんね」
子荻は呆れて言う。キレ者であると感じた私の直感は間違いだったのであろうか。
「君のライフルがあれば当面は大丈夫と思っただけさ」
臨也はあははと子荻の気持ちも知らず笑う。
「はぁ、それで貴方のアイテムはなんなんです? デイバックを開けてみてください」
そう言うと臨也はわかったよといい傍らのデイバックのジッパーを開き、手を突っ込む。
「えーと、いいのが入ってるといいんだが。お、これかな?」
臨也が手を子荻に向かって突き出す。
その手の中には光沢を持ったジッポーライターがある。
「…………これですか?」
「そうみたいだね。他にはそれらしいものは何も入ってないみたいだし」
別段ショックを受けたわけでもなく臨也はそんなことを言ってのける。
「たぶんかなりハズレの類だと思いますよ。これは」
まぁ仕方ない。手に入ったもの全てが当りアイテムの類ばかりってわけではない。
そのうち有効な武器も手に入るであろう。
148指し手の思惑 ◆cCdWxdhReU :2005/03/30(水) 19:48:51 ID:aqtnLhXp
子荻はそう判断し、そのことについてはもう追求しないことにする。
「それは貴方が持っていていいですよ。好きにしてください」
そう言って子荻は疲れたように壁に背をつける。
とりあえず少しだけ寝よう。
常に神経を張ったままでは後半になる頃には保たなくなってしまう。
いまやれることはこれだけだ。だがあとで絶対生きてくる。
子荻はそう判断すると眸を閉じた。


どうやらこのライターが支給品だと思ってくれたようだな。
折原臨也は決して表面に出さず、胸を撫で下ろした。
先刻この少女、萩原子荻に見せたライターは元々偶然持ち合わせていたものに過ぎない。
そして彼の本当の支給武器は胸ポケットに隠されていた。
薄い携帯電話のようなモバイル。
小さなデイスプレイ、番号とアルファベットが刻まれたボタンが付いたそれには説明書が付いていた。

『【禁止エリア解除機】
 このアイテムは3回だけ指定した禁止エリアを一定時間解除します
 一回は1時間。一回は3時間。一回は6時間です。
 なおこのアイテムを使用した瞬間にエリアは解除されますが、
 解除中に放送を挟む場合は解除されたことと残り解除時間が放送されます』

このアイテムは萩原子荻的に言えば『当り』に該当するものだろう。
しかしこれが本当に生きるのは後半戦。エリアが増えてきたときだ。
それまではこのアイテムはこの少女にも知らせずに文字通り自分の胸の中に秘めておこう。
さっき萩原子荻の言った戦力の把握はたしかに正しい。
149指し手の思惑 ◆cCdWxdhReU :2005/03/30(水) 19:49:13 ID:aqtnLhXp
だが自分は相手の戦力(道具類)については把握済みだ。
情報というのは高価なものなんだよ萩原くん。
臨也はそう心の中で呟いた。
その時だった。
頭の中に声が響こうとしていたのは。

【残り95人】
【C−4/ビルの2階/一日目、06:00】

【折原臨也(038)】
 [状態]:正常
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)ジッポーライター 禁止エリア解除機
 [思考]:ゲームからの脱出? 萩原子荻に解除機のことを隠す

【萩原子荻(086)】
 [状態]:正常 臨也の支給アイテムはジッポーだと思っている
 [装備]:ライフル
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:ゲームからの脱出?
150魔女の直観1/2 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/30(水) 21:15:18 ID:SaPGIG5+
 佐山達は互いの情報を交換すると、岩陰を利用しつつ、海岸線に沿って西に移動を開始した。
 そして――
「……やはり、ゲームに乗った馬鹿者はそれなりに居るようだ」
 眼前には、事切れた少年の遺骸。
 頭部をかち割られている――凶器は剣、だろうか。
 周囲を調べれば、足跡と少年のものではない髪の毛。
「今から二時間くらい前、かな? 髪の長い男の人が殺したみたい」
 死骸と犯人のものらしき足跡から離れながら、ぽつり、と詠子が呟く。
 黙祷を終えて隣を歩く佐山は、その呟きに首を傾げる。
「分かるのかね?」
「うん、ここにいるくねくねした人が教えてくれたよ? ありがとうね、くねくねさん」
 何も見えない空間に向かってそう言う詠子の奇矯な言動。
 ……やはり真性なのか?
 その言葉が単に霊感少女の類を装っているだけの推理なのか、それとも実際に何かを見ているのかは不明。
 だが、今はそんな事は気にするべきではない。
「やはり朝を待ち、森伝いに街へと移動するべきだろうかね」
 その呟きに、詠子が頷く。
「うん。あと、お城には近付かない方が良いかもね――何だか危ない気がするから」
 遠方に聳える黒い影を見ての言葉に、佐山は考える。
 詠子の言葉を信じるべきだろうか、と。
「……信じよう。この近辺の森で朝を待ち、そのまま森伝いに北上して北西の市街地を目指す。城近辺は迂回。――良いかね?」
「“魔女”はもう“裏返しの法典”――“悪役”に誑かされるって決めたから」
 詠子が微笑み、透明な狂気と純粋な闇が、ほんの少しだけ蠢いた。
 佐山は気付かず、ゆえに動じない。
151魔女の直観2/2 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/30(水) 21:22:11 ID:SaPGIG5+
「あ、そうだ。これをあげる――白髪の子が持っていたの。私には使えないし、使う気も無いし」
 そして荷物の中から手榴弾を取り出し、佐山へと。
「助かるよ――有り難う」
「どういたしまして」
 二人は微笑みを交わし、そのまま海岸沿いの森へと。
 ――朝はまだ、遠い。


【座標H−5/海岸沿いの森の蔭/時間(一日目・3:01)】

【佐山・御言】
[状態]:健康
[装備]:Eマグ、閃光手榴弾一個
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:1.仲間の捜索。2.言葉が通じる限りは人類皆友達。私が上でそれ以外が下だが。

【十叶詠子】
[状態]:健康
[装備]:メス
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:1.元の世界に戻るため佐山に同行。2.佐山の仲間の魂のカタチも気になる。
152彷徨う紅薔薇 1/2  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/30(水) 21:24:59 ID:4ulP4yY6
小笠原祥子は、一条豊花を殺害した後、海へと向かって歩いていた。
人を殺したというショックからか、その歩みは重く、のろのろとしている。
それでも彼女は歩き続ける。愛しい妹――祐巳を守るために。
海岸線が見えてくる頃、祥子は別の物に気付いた。
「……あれは?」
左手側、数百メートルは離れている所に、小さく建物の影が見える。
――このまま海まで行っても意味が無いわね。
祥子は、その建物へと歩みを進めた。

約十五分後、祥子は建物――公民館に到着した。
玄関からそっと中に忍び込む。中へと足を進めるが、
――誰かいる? それも、……複数?
祥子は慌てて、しかしリリアンで身に着けたスカートを翻さない静かな走りで、公民館の外へと戻る。
玄関脇の植え込みの影に座り、聞こえてきた声を思い出す。
声は男と女の二つ。つまり、先ほどの少女――一条豊花――のように、
簡単に殺すことは出来ないだろう。
――長居は無用ね。
殺せないのならば、一旦無視して祐巳を探すべき。
祥子は中から人が出てこないのを確認し、地図を開いた。
玄関の明かりに地図を照らし、次の移動先を検討する。
地図に示された建造物の中で、ここから近いのは二つ。
南の海洋遊園地と、東の学校。
――もし祐巳なら、どちらを選ぶ?
悩んだ末、祥子は海洋遊園地に目的地を決めた。
祐巳は、夜の学校なんて怖がって嫌うような気がしたからだ。
それに狭い学校よりは、広くて隠れる場所も多い遊園地の方が安全なはず。
地図を畳み、祥子は静かに立ち上がった。
「待っていてね祐巳。貴方は私が絶対に守るから……」

この選択が二人の距離を大きく離したことを、祥子は知る由も無かった。
153彷徨う紅薔薇 2/2  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/30(水) 21:25:24 ID:4ulP4yY6
 【残り95人】

 【D−1/公民館/1日目 02:00】

 【小笠原祥子(061)】
[状態]:殺人のショックで、やや精神的疲労状態
[装備]:銀の短剣
[道具]:デイパック(支給品一式/食料&水二人分/ソーコムピストル)
[思考]:海洋遊園地(E−1)へ移動。
    祐巳と自分が生き残り、最後に自害する。
154 ◆Sf10UnKI5A :2005/03/30(水) 21:26:54 ID:4ulP4yY6
なお、>>136-138『赤く染まりし薔薇の休息』は、
キャラの行動に齟齬が発生するためNGとします。
>>152-153『彷徨う紅薔薇』と差し替えて下さい。
155暖かな金色の導き 1/3 ◆69CR6xsOqM :2005/03/30(水) 21:30:21 ID:68cMnJ5s

「これで気絶中に殺戮者に見つかる等ということはないだろう」

ヒース・クリストフはブギーポップを茂みの中に隠し終えると、独白し、立ち去っっていく。
そしてその背中が見えなくなった瞬間、ブギーポップは眼を覚ました。いや、瞼を開いた。
「行ってくれたか。本調子でないとはいえ悪いことをしてしまったな」
無言で立ち上がり、濡れた外套と帽子を脱いで軽く絞った後デイパックに仕舞い込む。
先ほどの自分は確かにおかしかった。
自動的であるはずの自分が相手に世界の敵であるかどうかを問いかけ、しかも誤認。
武器を持った屈強な戦士を相手に無手で正面から打ちかかったのも、
宮下籐花の身体能力を引き出しきれなかったのも通常ではないことだ。
しばしの間黙考し、一つの結論を出した。
『僕の能力ではない…僕という存在そのものに…制限が加えられている』
恐らくは、宮下籐花を介さずに長時間浮かび上がり続けたせいで思考にノイズが混じったのだ。
そのせいで力も充分に引き出せず、戦術をも誤った。
今現在も、ブギーポップの意識は薄く消えかかってきている。
このゲームが開始されて初めて自分が浮かび上がったのは0時半頃。
それから考えるに、自分が連続で浮かび上がり続けられる限界は約3時間。
3時間ごとに一度、宮下籐花に戻らねばならないらしい。
そして再び浮かび上がることのできるまでの時間は不明。
世界の敵を前にして自動的に浮かび上がってしまう自分には少々不利な制限だ。
だがそれも今更どうしようもない。不気味な泡はそっと瞳を閉じ、呟いた。
「宮下籐花。竹田くんのためにも君の健闘を祈るよ」
そして頭をたれる。
156暖かな金色の導き 1/3 ◆69CR6xsOqM :2005/03/30(水) 21:31:41 ID:68cMnJ5s

しばらくの沈黙の後、宮下籐花は眼を覚ました。
「あれ?…ここは」
森の中にいたはずの自分が突然、湖の湖畔の茂みに濡れ鼠でうずくまっている。
しばしの困惑。そしてしばしの間黙考し、一つの結論を出した。
『私、あの変な人に驚いて逃げちゃったんだ。
 慌てていて、それで湖に落ちて、ここまで這い上がったけど気を失っちゃったのね』
そう都合のいいように記憶を改竄し、立ち上がる。
今はまだ気温が低い。何かで身体を温めないと風邪をひいてしまうかもしれない。
背負っていたデイパックを開く。ブギーポップの衣装がたたまれて入っていたが、籐花は気にも留めない。
防水加工はされているらしく、衣装以外に濡れてしまったものはないようだ。
しかし肝心の火をおこすものがない。誰かとあって交渉するしかないのだろうか。
籐花は今の自分の状況を佐山・御言から逃げ出す前に伝え聞いて理解していた。(そう記憶を改竄した)
今のこの異常な世界の中で誰かと会うのはとても怖い。
しかし自分から動かなければ状況は変えようがない。
「先輩。頑張りますから。だから、帰ったらご褒美下さいね」
そして小さく震えながら南の森の中へと入っていく。少しでも人目を避けるためだ。
人に会いたいからと簡単に見つかるように移動しては怖い人の不意打ちを喰らうかもしれない。
籐花は自分が先に相手を見つけなければと、目を爛々と輝かせて周囲を見渡しながら歩いていく。
そして数分の後に、深夜の森の中焚き火であろう暖かな灯りを見つけた。
飛び上がって喜びそうになったが慌てて両手で口を押さえ、声を抑えこむ。
爆発寸前の鼓動を強引に押さえつけ、相手を確認しようと恐る恐る籐花は灯りへと近づいていく。
木々の間から覗き込むと、焚き火の明かりに紅く照らされた少女が見えた。
黒い髪に金のメッシュ。金の瞳に金色の道服を着込んでいて、その腰には警棒のようなものを挿していた。
157暖かな金色の導き 3/3 ◆69CR6xsOqM :2005/03/30(水) 21:32:22 ID:68cMnJ5s

「そこにいるのはどなたさん?気配バレバレなんだけどな」
「うひあっ?」
金色の少女はにこやかに籐花のほうを振り向いた。
見ると籐花は腰を抜かしてその場にへたり込んでいた。
デイパックを抱きしめて完全に硬直している籐花を見て苦笑する。
「ごめんね〜、敵意は感じないし脅かすつもりは…ちょっとあったんだけどね。
 そこまでのリアクションされるとは思わなかったな〜」
「あ、あ、あっあののの、わ私はは…」
少女はやさしく諭すように籐花の肩に手を置いた。
「はい、落ち着こう。深呼吸して、はい、スゥ〜〜〜」
「あ、ははい、スゥ〜〜〜、………ハァ〜〜〜」
「わたしは李麗芳。あなたのお名前は?」
「み、宮下籐花といいます!」

こうして、二人は出会った。この出会いが何をもたらすのか…まだ誰も知らない。

【E-7/森の中/一日目、03:35】

 【宮下籐花(ブギーポップ)】
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式。デイパックの中にブギーポップの衣装
 [思考]:麗芳との会話/ゲームからの脱出

 【李麗芳】
 [状態]:健康。
 [装備]:凪のスタンロッド
 [道具]:支給品一式
 [思考]:宮下籐花との会話/ゲームからの脱出
158糸口へのプロローグ(1/4) ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/30(水) 21:36:16 ID:FCiHg5wc
「……」
「……」
「……」
「……なんていうか、やるせないですよね。こういうの」
「そうだな……」
「あんたらがもっと早くここに来てりゃ、こうはならなかったかもな」
「おいおい、それじゃあ俺達が来るのが遅かったからあの女は死んだって言いたいのか?」
「いや、そういう意味じゃねえよ。ただな……」
「ただ、何なんですか?」
「あんたらと会う前に、こっから上の方で女二人とやり合ったんだよ。その後からなーんかあの女の様子が変わってな。だから、その前にあんたらと会えば、回避出来たんじゃねーかってな」
「話を聞いた感じじゃ分からねえが、それはねえと思うぜ俺は」
「なんだよオッサン、俺の考えが間違ってるって言いてぇのか」
「いや、そうは言ってねえよ。多分俺等と合流しても、俺等が誰かと戦えばあの二人が決闘するハメになったと思うぜ。あと俺にはイルダーナフって名前があるんだ、ちゃんと名前で呼んでくれよ」
「あの二人の決闘は避けられなかった、という事ですか?」
「ああ、あの女は結局行き詰まってたんだろうよ。このゲームに乗って人を殺して勝利するか、誰も殺さずにここから脱出するか、相反する意志の挟間でな」
「……」
「……やるせねえよな、こういうの」
「そうだな……」
「……」
「……」
「……」
159糸口へのプロローグ(2/4) ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/30(水) 21:37:52 ID:FCiHg5wc
「なぁ」
「何ですか?」
「このゲーム、何の意味があると思う?」
「このゲームの意味……」
「100人以上の人間を、一人になるまで殺し合いをさせる事にか?」
「ああ」
「あいつ等の道楽じゃねえの?」
「それはないな、わざわざ俺達を集める理由がない」
「……」
「違う世界に住む奴らを集めて、死と絶望と悲劇をばらまく。その理由は何だ?」
「戦わせる事に意味がある、とか……」
「たとえば?」
「参加者の誰かが特殊な力を持っていて、その力を目覚めさせるとか。或いは」
「或いは?」
「或いは、最後に残った一人になにか用があるとか」
「流石にそれはないんじゃないか?」
「ほう、それはまたどうしてだい?」
「最後に残った一人が全く人を殺さず、ずっと何処かに隠れたとして、そんな奴にあいつ等が興味を持つとは思えねぇ」
「確かにそれは一理あると思います」
「あいつ等はなんだか知らねぇがとにかくヤバい。多分人を殺した人数も両手じゃきかねえはずだぜ」
「……何かの儀式、ってのは考えられねえか?」
「儀式って何のだよ?」
「そこまでは分からねえさ。だがあいつらにとって意味のある儀式だろうとは思うぜ」
「……結局は何も分からずじまいか」
「仕方ありませんよ、なぜ僕達がここに連れて来られたのかの理由も分からないんですから」
「……」
「……」
160糸口へのプロローグ(3/4) ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/30(水) 21:38:53 ID:FCiHg5wc
「それで、この後はどうするんだ?」
「どうするって……」
「言われてもなぁ……」
「……」
「……」
「……」
「とりあえず後を追うか」
「だな」
161糸口へのプロローグ(4/4) ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/30(水) 21:40:33 ID:FCiHg5wc
【キノ (018)】
[装備]:『カノン』 師匠の形見のパチンコ
[道具]:支給品一式
[思考]:ショック状態

【ヴィルヘルム・シュルツ(010) 】
[装備]:ベネリM3(残り6発)
[道具]:支給品一式

【イルダーナフ(103)】
[装備]:ヘイルストーム(出典:オーフェン、残り20発)
[道具]:支給品一式


【オーフェン(111)】
[状態]:普通
[装備]:なし
[道具]:支給品一式


[チーム行動方針]:とりあえずキノを追う/イルダーナフの知り合い(カイルロッド、リリア、アリュセ)を捜す。


【備考】

今の会話はキノには聞こえていません。また残りの三人は、キノを捕捉できる位置にいます。

【C-5/階段付近/1日目・05:45】
162Crimson ◆jB1onXN0Ak :2005/03/30(水) 21:48:45 ID:HcMdUKg/
開始直後、支給品をチェックするのは暗殺者ズーマだ。
ズーマは自分の支給品である液体の入ったビンと、それに関する説明書を入念に読むが
一つだけつまらなさそうに鼻息を立てると、それを無造作に投げ捨ててしまった。
それを使えば自分にとって非常に有利に状況が進むことは理解できる。
しかし自分は己の体術と魔術のみで暗殺者の頂点に上り詰めた男、プライドが許さない。

そして自分の前方を歩く金髪のエルフの姿を発見した時には、もうそのアイテムのことは
忘れていた。

それから2時間後、
「何かしら?」
小笠原祥子がズーマが捨てた瓶を拾う、その瓶にはKCNと記されていた。
さらに2時間経過し、疲労しきった顔で商店街を歩く祥子、
結局、足を棒のようにして歩きまわっても祐巳を見つけることはできなかった。
「商店街なら人がいるかもと思ったけど…」
ため息をつく祥子、眠気もつよくなってきた、ここで一眠りしようかとシャッターの開いている店を、
探し始めた祥子だったが、その時だった。
「お嬢さん、お困りのようですね」
びくっ!と肩を跳ね上げながらぎこちなく振り向く祥子、そこに立っていたのは1人の少年だった。

「申し遅れました、僕は」
少年が指をパチリと鳴らすとどこからともなく薔薇の花が降ってくる。
「未来の天軍を担う人呼んで美少年ルーキーにして南斗大理星君、呉星秀という者です」
その星秀はご丁寧にも棘を一本残らず抜いた薔薇の花を一輪、祥子に差し出しながら続ける。
「まぁ、控えめに言わせていただくのならば、一種の超天才というやつですか、時々僕も己の実力が
恐ろしくなる時がございまして…というわけですからお近づきの印に一つ麗しき貴方のお名前をぜひ伺いたく…」
祥子はまるで滅びかけた国家の古臭い宗教歌を聴いているような、そんな珍妙な気分で
その”生き物”を見つめていたのだが、
「ああ、いくら僕が美しいからといっても、そんなに見つめてもらっては、君のハートを奪いたくなってしまうよ」
星秀はまるで気がついていなかった。
「というわけでこの僕がついているからにはもう安心だよ、マイハニー」
163Crimson ◆jB1onXN0Ak :2005/03/30(水) 21:49:18 ID:HcMdUKg/
(あと3本…)
祥子はビールの残り個数を目で数えながらタイミングを測る。
星秀のつっぷしてるテーブルには缶ビールの残骸がいくつも転がっている。
一目見た瞬間、星秀の殺害を決意した祥子、あれからとんこつラーメンのごとくクドい星秀の
アプローチに適当に相槌を打ちながら頭の中で殺害計画を入念に練っていた。

(さすがに寝る場所を探してると話したときの、その情熱的かつ迅速なアプローチ!
 キミって見かけによらずダ・イ・タ・ン・だ・ね、のセリフを聞いたときはこの場で殺害計画など
 かなぐり捨てて刺し殺そうと一瞬思ってしまったが)
ともかく、シャッターを壊して進入した居酒屋の中、彼女は着々とそのプランを完成に近づけていた。
居酒屋の厨房には期待していた食料は何も入ってなかった、ただ冷蔵庫にはビールが何本か入ってはいたが
未成年を理由に断られたらどうしよう…そう考えて不安になった祥子だが、
このガキがそんな理由で、ましてとびきりの美少女の勧めを断るはずもなく
いまや星秀はすっかり出来上がってしまっていた。

「ああそうともさ!そうともさ!!どうせ僕は自分でえらいってそう思っているだけの半人前さ!!」
絡み上戸なのだろうか?半泣きになりながらビールをあおる星秀
ここに来る前、彼は「そこのエキゾチックなお嬢さん」とピロテースに声をかけたのだが、
遅れてついてきたせつらの顔を見るなり、勝ち目なしと退散してしまったのだった。

「何でこんなに世の中は不公平なんだ!!ねぇ君もそう思わないかい!?」
なれなれしくも祥子の肩をぶんぶんとつかんで揺さぶり叫ぶ星秀、
それだけでも万死に値する行為だというのに…命知らず&身の程知らずにも程がある。

そろそろか?祥子は揺さぶられながら、KCNと書かれたビンの中身をそっと封を切ったビールの中に入れる
そしてそれを何食わぬ顔で星秀が飲み干したその時だった。
「きっ…君っ、何を…」
164Crimson ◆jB1onXN0Ak :2005/03/30(水) 21:52:35 ID:HcMdUKg/
突然の激痛にもだえ出す星秀、無理もない…先ほどの液体の正体それは、
KCN、正式名称シアン化カリウム、別名青酸カリ!
「どうして…どう…し…て」
致死量を超える青酸カリをかっくらっていながら、なおも祥子にすがりつこうとする星秀
祥子は無言で星秀の背中超しから心臓めがけ思い切り刃を突き刺した。
星秀の口からさらに大量の血が溢れ出す。
その苦悶の表情を見た瞬間、祥子は反射的にさらに力をこめてザクザクと星秀の背中を何度も何度も刺し貫く。
(こんなの…こんな最期、僕のキャラじゃない…これは…夢なんだ)

死の苦痛の中でぼんやりと考える星秀。
(きっと目が覚めると鳳月がいて、麗芳ちゃんがいて淑芳ちゃんがいて、緑麗ちゃんがいて…)
「な、わけないよな」
心残りはありまくりだが、その中でも特に…
(志摩子ちゃん…どんな子だったんだろ?)
そして呉星秀は死んだ。

朝の日差しが暗かった町並みに差し込む中
祥子は相変わらずの暗い気分のままで、ふらふらとさ迷っていた。
祐巳を助けるため・・・祐巳を生き残らせるため・・・仕方がなかったの
戦う術を持たない自分はこんな方法でしか戦えない、これは弱者の戦法なの…。
心の中で何度も自分に言い訳をする祥子、心の中のもう1人の自分が尋ねる、本当か?と
目の前の少年が人を殺すような人間にお前は見えたのか?と

「でもっ!もしかしたらそうかもしれないじゃない!!」
違うだろう?本当は殺したくって・・・殺した
「違う違う!違う!…うぇ」
電信柱の影で嘔吐する祥子、どうやらまだ彼女はは眠れそうになかった。
165Crimson ◆jB1onXN0Ak :2005/03/30(水) 21:53:34 ID:HcMdUKg/
【小笠原祥子】
[状態]:健康、ただし精神汚染進行中
[装備]:銀の短剣 青酸カリ
[道具]:デイパック(支給品一式/食料&水二人分/ソーコムピストル)
[思考]:祐巳と自分が生き残り、最後に自害する。

【残り94人】
【呉星秀 死亡】
【E−1/遊園地前商店街/1日目 05:55】
166雪は風を諭す その1:2005/03/30(水) 22:43:42 ID:W9VC1oEJ
草むらに隠したあとも風は思案にくれていた。
『人が人を裁くというのは傲慢じゃないか?』
その言葉は影のようについてくる、確かにそのとおりだろう、どんなものであっても勝手に一人の一存で裁かれていいわけがない。
『俺は間違っているのか・・いや、そんなことは初めから分かっていた、だがならば正しき答えは一体なんなのだ?』
「答えは出たの?」気配もなく声がした、驚きつつも振り返るとそこに女がいた。
女というよりは少女というべきだろうか、顔はまだあどけなさを残している。
「あなたの進む道は決まった?」
もう一度彼女は尋ねた、攻撃を仕掛けてくるつもりはないようだ。
「分からん・・俺が本当にすべきこととは一体・・。」
風は質問を返した、役割が逆転する。
「自分がやるべきだと思ったことをすればいいわ、それがあなたにとっての答えよ。」
彼女は答えた。
「だがしかしそれは・・。」
先程と何一つかわらないと言おうとしたところで言葉を遮られた。
「さっきまであなたがやるべきだと思っていたこと、それは本当にあなたが自分からやりたいと思ったことなのかしら?」
不意に胸をつかれた気がした。
「・・・。」
167雪は風を諭す その2:2005/03/30(水) 22:44:21 ID:W9VC1oEJ
彼女は続ける。
「他のものから与えられた意思を自分の意志と取り違えてしまうのはあなた達の悪いくせよ。・・さっきまでのあなたはあの少年の意思に動かされていただけ。」
「なるほど・・だがいかなる場合でも他のものの意思は介入してくるものではないのか?」

「確かにその通りよ、人はいつも意思に流されている・・だけどただ流されるだけというのが一番タチが悪いものでもあるわ。」
「確かに・・歯止めを知らないからな。」
風も納得する。
「そう・・そしてそんな人たちを彼は・・世界の敵と呼ぶ。」
「それがさっき俺にあいつが攻撃してきた理由か。」
「まああなたには無縁の話だったかしら、あなたはどちらかというて流れがどんなに強くても踏ん張ろうとする人だから。」
彼女は微笑んだ。こんなにもただ“笑う”ことができるのかと思うほどの笑みだった。
「褒めてるのかけなしてるのかわからないな。」
風も苦笑した。
「さて、これからあなたはどうするつもり?」
影は最後に尋ねた。
「とりあえずは友を探すとしよう、あいつは危険だからな、ほっとくとどこで何をするのかわからん。
そして・・あとは俺の体に任せるとしよう。」
168雪は風を諭す その2:2005/03/30(水) 22:44:55 ID:W9VC1oEJ
とるべき行動はもう体に染み付いている、2度と自分を見失いはしない。
「あなたはやはり、世界の敵にはなれないわね、むしろそれと対極に位置するもの。」
『でも彼なら突破できるかもしれない・・世界を。』
「礼をいう・・ところであんたは何者だ?」
「私はイマジネーター・・彼に世界の敵と認識され、殺されたものよ。」
そのとき草原に強い風が吹いた、ヒースロゥが目を開けた場所に彼女はもういなかった。

雪を運ぶ風はその行く先を知らねど

【D7とC7の間/草原/4:00】

残り95人
【風の騎士(ヒースロゥ・クリストフ)】
【状態】ふっきれた。
【装備】木刀
【道具】荷物一式
【思考】EDを探す、あとは風のゆくままに。
169『竜』対『修羅』(3/4・改訂):2005/03/30(水) 23:07:00 ID:xX3nI96h
「どういうことだ?」
 会話はうまく進んでいた。
 なにより、このアーヴィング・ナイトウォーカーと青年からは敵意が全く感じられなかった。
 なのに、この結末だ。
 額の血を拭い、アーヴィーを見る。
 右手にはまだ狙撃銃を握ったままだ。
 とりあえず武装解除しようと近づき、かがみ込もうとした時――またアーヴィーの右手が跳ね上がった。

「な」という始の言葉と銃声が同時。
 始の身体が銃弾に弾かれ、のけぞる。
 着弾した額には、淡く光る、だが幾分欠けた竜の鱗。
 相殺しきれなかった衝撃に、その内側から新たな鮮血が舞った。
(!……やはり、力が弱まっている! まずい!!)
 そう思った始の鼓膜に、再び銃声。先ほどと寸分違わぬ位置に、再び衝撃。
 欠けた鱗に明らかなひび割れが走る。
 普段ならばどうという事はない衝撃に脳が揺さぶられ、足の動きが始の意思を離れる。
「ぐぅっ!?」
(この…、男は……!)
 そして、始は見た。
 白目をむき、よだれまで垂らして、明らかに気絶しているアーヴィーの顔と。
 神業的な速度で排夾し、三度照準を合わせる二本の腕の、非現実的なアンバランス。
 その銃口の向く先は――
(すまん……茉理ちゃん! 終!)

 ――銃声。

 最後の銃声で少しだけ意識が回復した。
 朦朧としたままのアーヴィーの瞳に大輪の紅い花が映る。
 アーヴィーは「きれいだな」と感想を漏らし、「きれいだね」と傍らでミラが言ってくれたような気がした。

【竜堂始 死亡】
【残り102名】
170神父と狂気な仲間達 1/2  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/31(木) 00:38:52 ID:N2W/fXnO
そろそろ明け方も近い薄暗い中、草原の中を通る1本の道の上を奇妙な集団が通っていた。

先頭は生々しい傷跡を全身に持つ巨漢。
(神よ我等迷える子羊どもを導きたまへ・・・)

その巨漢からやや間を置いて追随しているのは、その内側に狂気を満たした青年。
(・・・・・・・・・さっきは毒気を抜かれたが、こいつもどいつも後で皆殺しだ・・・)

さらにその後を歩くのは、獣の毛皮をかぶった少年とやや陰気な少女。
(なんだかわけのわかんねぇことになってんなぁ・・・)
(神様・・・かぁ・・・、でもあの怖い人はあの教義を振り回すだけの人々とは違う・・・気がする・・・)

そして一番後ろを戸惑いついていくのは顔立ちの整った少年。
(気絶している内に殺されなかったのは幸運でしたが・・・これはどうとればいいんでしょうかね・・・)

先頭を行く巨漢が薄闇の中に浮かび上がる大きな影に気付く。
それは周りを森に囲まれ、ひっそりと建つ西洋風の城だった。
171神父と狂気な仲間達 1/2  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/31(木) 00:40:36 ID:N2W/fXnO
【残り 95人】
【G-4/城の前/1日目・04:30】

【神父と狂気な仲間達】
【ハックルボーン神父】
 [状態]:健康
 [装備]:宝具『神鉄如意』@灼眼のシャナ
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:万人に神の救いを
【平和島静雄(037)】
 [状態]:健康
 [装備]:山百合会のロザリオ
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:・・・・・・・・・殺す・・・
【キーリ】
 [状態]:正常
 [装備]:超電磁スタンガン・ドゥリンダルテ(撲殺天使ドクロちゃん)
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:ハーヴェイを捜したい、ゲームから抜け出したい。
【ボルカン】
 [状態]:正常
 [装備]:かなめのハリセン(フルメタル・パニック!)
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:キーリについて行く。打倒、オーフェン。
【古泉一樹】
 [状態]:気絶状態
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:SOS団の合流
172Stranger ◆wkPb3VBx02 :2005/03/31(木) 00:45:55 ID:/73rgGMt
「―――!」
獣の咆哮のようにエンジン音が夜気に響き渡り、それに続く形で男の笑声が後を追う。
地面の凹凸に合わせて車体が跳ね上がり、搭乗者の長髪が揺れる。
男は自分の運転がどれだけ危うげあろうと一向に構わず、アクセルを踏み砕かんばかりの勢いで踏み込む。
白い軽トラックの前面には既に目を覆いたくなる有様であり、運転手の技術が疑われる程傷ついている。
猪のように猛進する軽トラの速度は時速80キロを優に超えており、事故が発生すれば加害者・被害者ともに無事ではすまないだろう。
だが、男の目的こそがそれだった。
(誰でも、誰でもいい!誰でもいいから轢いちまえ!)
男の狂気を孕んだ双眸がバックミラーに映る人影を捉える。月明かりに照らし出された人物の特徴は銀髪に長身。
黒く露出の多い服を身に包んだ人影は片手に何かを持ち、こちらに向かって懸命に距離を詰めようと駆け寄ってくる。
(……車に勝てると思ってんのか)
男は人影を獲物と認識し、ハンドルを切ってほとんどスリップするかのように反転、慣性に逆らいながらさらに強くアクセルを踏む。
絶叫に近い音を上げながら軽トラックは加速、両者の距離を確実に詰めていく。
彼我との距離が十メートルまで肉薄した所で、男は人影の特徴を捉えた。
銀嶺の髪と瞳に右目を跨ぐ龍と炎の刺青、鍛え上げられた肉体もさることながら目を奪われたのは手に握る物とその表情。
一振りの美しい剣を携え美しい男が、嗤いながら追い駆けてくる。鋼の視線が男の視線と交わった。
悪寒。氷塊が背を滑り落ちたような感覚に怖気が立ち、眼前の美男子が只者ではないことを確信する。
次に来るべく衝撃に男は身構えた。が、衝撃はこない。
(避けられた?まさかあの距……)
突如、衝撃と共に目の前に下向きに突き出す剣先。前髪と伊達眼鏡が断ち切られ、視界の中央を大きく占めた。
「うぉッ!?」
座席がもう少し前にあったら、頭をばっさりと一刀両断されていたかもしれない。
「上か、クソッタレ!」
男は振り落とそうとブレーキを掛けるが、その直前にまた衝撃、美男が屋根から飛び降りる。
また反転し激しい衝撃に体が揺れ掛けていた眼鏡が外れたが、気にしている余裕は男にはない。
正面を見ればフロントガラスを挟んだ向こう側、月を背景に銀髪の男が剣を担いで立っていた。にやりと嗤い、口を開く。
173Stranger ◆wkPb3VBx02 :2005/03/31(木) 00:47:25 ID:/73rgGMt
「―――剣と月の祝福を」
先程の物とは比べられない程の危機感に全身の感覚が悲鳴を上げたのを男は聞いた。全身が粟立つ感覚が皮膚を支配する。
銀髪の男が動き出す前に長髪の男はアクセルを踏んだ。急発進した軽トラックが美男と肉薄し、金属同士の甲高い共鳴音。
トラックの側面に刃が突きこまれ、回転するタイヤが削り取られていく。
美男の顔が曇り、後方に剣を引きつつ跳躍しトラックと距離を置く。
男はこの好機を逃さなかった。と言っても攻撃に転ずるのではなく銀髪の男の横を通り抜け、そのまま振り返らず走り去っていった。
「……つまらぬ」
紅い焔のような口唇が鋼の嘆息を紡ぎ出し、端整な顔が失望と嫌悪に歪む。
「やはり眼鏡によい縁がないな」
その独白は相棒に当てたものだったが、相棒も同じようなことを考えているとは知る由も無かった。
「……つまらぬ。弱き者を斬った所が何の足しにもならぬ」
銀髪の美男は侮蔑を込めて自らを恥じるように呟き、その場を後にした。


「……クソッ……タレッ……!!!」
衣服の所々に裂傷を作りながら長髪の男は立ち上がった。
あれから死に物狂いで逃げ続け、追跡の気配がないことに油断してハンドル操作を誤ってしまい、海に落ちかけてしまった。
ボコボコの使えなくなったトラックが沈んでいく様はもの哀しく、男は武器を一つ失ってしまった。
上手く使えばもっと楽しめたかもしれないものを、と拳を握り締め剣を杖代わりにして体を支えた。
「あの銀髪、どんな手ェ使ってでも殺してやる」
先程逃げ出したとは思えぬほど、怒気を孕んだ口調で男は吐き捨てる。
溜まった鬱憤を晴らすため、男は獲物を求めて森の方に向かって行った――
174Stranger ◆wkPb3VBx02 :2005/03/31(木) 00:48:09 ID:/73rgGMt
【H-4/森/4:00】

残り95人
【ジェイス】
【状態】軽傷、欲求不満
【装備】断罪者ヨルガ
【道具】荷物一式
【思考】誰でも良いから殺す

【H-7/草原/3:40】

【ギギナ】
【状態】健康
【装備】魂砕き
【道具】荷物一式
【思考】強い者と闘う/他の場所に移動
175一回目の放送 ◆SonaWF4JWA :2005/03/31(木) 01:02:02 ID:vgFUyv+Y
唐突に参加者達の頭の中に老人と子供が一緒に喋っている様な声が聞こえてくる。
「諸君、静粛に。これより死亡者の発表を行う。手を止めて耳を傾けてくれ。
 興味の無い者はそのまま殺し合いを続けてくれても結構だが。

012天樹錬、020(キノの)師匠、 021ティファナ、028ズーマ、030ゼロス、034呉星秀、039一条京介、040一条豊花、046ヴォッド
051ユージン、057ガウルン、058クルツ、063島津由乃、066御剣涼子、065ジェイス、067ディードリット、079へラード
080ヤン・ウエンリー、087キョン、088涼宮ハルヒ、090朝比奈みくる、101竜堂始、115マジク・リン

……以上、23名。皆、我々が思っていたより正確にこのゲームの趣旨を理解してくれている様で喜ばしい限りだ。
次に禁止エリアを発表する。一度しか言わないから間抜けな亡骸を晒したくなければメモしておいてくれ。
7:00よりH-6が、9:00よりG-2が、そして11:00よりH-2が禁止エリアとなる。
長々と話を聞いて貰って済まなかったな。では、諸君の健闘に期待する。精々頑張りたまえ」
最後にくぐもった笑い声を残して、それっきり声は聞こえなくなった。
176彼の屍を越えてゆけ ◆lmrmar5YFk :2005/03/31(木) 02:21:28 ID:Tnfd+g12
『―101竜堂始―』
突如、頭の中に響き渡った放送に、鳥羽茉理は思わず手にしていたペットボトルを取り落とした。
投げ出されたボトルから貴重な水が地面へと染み込まれていくが、そんなことを気にする余裕もない。
竜堂始。自分が最も頼りにする従兄弟の一人であり、少なからぬ個人的な好感(それはむしろ『愛情』と言い換えてもいい)を抱いている人。
その彼の名前が、今、確かに呼ばれた。
…嘘よ。そう思い、茉理は「ふふ」と笑おうとした。
しかしその笑い声は、喉の奥からまともに出てきてはくれず、
「うっ」という押しつぶされたような声が嗚咽と共に吐き出されるのみだ。
喉が何者かに締め付けられたかのように苦しく、身体が自然と震えだす。
…何かの冗談に決まっているわ。だってあの人が、始さんがそう簡単に死ぬわけがないもの。
だって、だってそうでしょう!?
私ですらまだこうして生き延びているっていうのに、竜になったり宇宙に行ったりさえできるような人間が、
たった四人で世界各国の軍事組織と互角に渡り合ってしまうような人間が…死んだ、ですって?
茉理は、愛しい従兄弟の常人離れした強さを思い出すことで何とか平静を保とうとした。
けれど、脳裏に浮かぶのはなぜか彼が血まみれになって倒れている姿だけで、
どんなに頭を振っても、その想像図はかたくなに消えてはくれなかった。
「…さん」
だくだくと流れ落ちるミネラルウォーターが、彼女の足元に小さな水溜りを作る。
そこに、頬を伝って落下した茉理の大粒の涙がぴちゃんと混じった。
「始…さん…はじめ、さ…」
そう呼ぶ声は弱々しく掠れ、そこには普段の気丈な彼女の面影は残っていなかった。
177彼の屍を越えてゆけ ◆lmrmar5YFk :2005/03/31(木) 02:24:17 ID:Tnfd+g12
どれだけその場にいたのだろう。ふと気づくとペットボトルは空で、辺り一面が雨でも降ったように水浸しになっていた。
それがボトルから流れ出た水なのか自分が泣き腫らした跡なのか、茉理には判別できなかったが、そんなことはどちらでもよかった。
洋服のポケットに入っていたままの手鏡を取り出して顔を見れば、目はウサギの様に赤く、頬には涙の伝った痕がしっかりと残っている。
それを手のひらでごしごしと擦ると、彼女は、ふらふらとおぼつかない足取りで立ち上がり、前へと歩き始めた。
歩を進めるたびに、地面の草や石ころに足を取られ転びそうになるが、それでも確実に一歩ずつ前へと進んでいく。
自分でもどこに向かっているのかは分からない。
…ただ、始の亡骸を看取っておきたかった。
たとえその場に辿り着けたところで何ができるというわけではないかもしれない。
けれど、どうしても始の最期に会っておかねばならない気がした。


始を失った茉理にとって、いつもと変わらぬ精神状態でいろというのは無理な注文だったかもしれない。
しかし、彼女はせめてもう少しだけ冷静でいるべきだった。

―ここで禁止区域についての一切を聞いていなかった事が、後に彼女の明暗を分ける。

【残り 95人】
【A-2/1日目・6:30】

【鳥羽茉理】
 [状態]:健康だが精神的に少々問題? 禁止区域の情報を知らない
 [装備]:強臓式武剣"運命"、精燃槽一式(出典:機甲都市伯林)
 [道具]:デイパック(支給品一式) 手鏡
 [思考]:始の亡骸を見つける

どの方向に向かっているかは、お次の方にお任せします。
「鬼ごっこは終まいや、嬢ちゃん」
 夜闇を振るわせるその音を聞いて、フリウは逃げ切れないことを知った。
 足を止め、後ろを振り返る。
 水辺を行けば誰かに――願わくばあのミズー・ビアンカに――遭遇するかもしれない。
 そう思い、砂利道を走ったのは完全に失敗だった。
 明らかなオーバーペースともあいまって疲労は深刻な域に達している。
 荒い呼吸を無理やり落ち着けようとしても、肩が上下するのを止められない。
 手足は鉛を巻いたように重たい。軽度だが頭痛も感じる。
 喉の奥が焼けたように熱く、それがフリウをいっそう不安にさせる。
(やっぱり、どっかで曲がればよかったのかな)
 川に固執せず、方向転換するべきだったかもしれない。
 苦々しい後悔が胸中を満たす。
 フリウの片側だけの視界の中、闇をくぐって、ワインレッドの影が進み出る。
 フリウとは対照的に、男――――緋崎正介は疲れた様子もない。
 フリウが右手に正介が左手に川を置く形で両者は対峙した。
「だいぶ疲れとるようやな。悪いが今から第二ラウンドや。今度は逃がさへんで」
「あたしだって、もう……逃げない」
「さよか。なら、手っ取り早く済まそうや!」
 叫ぶと同時、正介が大きく踏み込む。
 足場の悪さを感じさせない、軽やかな動きだ。
 一瞬でフリウに肉薄し、右手で容赦なく殴りつけてくる。
 一方フリウの反応も迅速だった。
 ハンターに喧嘩は付き物だ。フリウ自身が殴り合いを演じたことこそ少ないが、場慣れはしている。
『絶対に相手から目を逸らすな。そうすりゃあ大抵の動きは見えるんだよ』
 同い年の少年から教わった話を思い出す。
 フリウはくぐるようにして攻撃を交わすと、大きく左に跳びながら念糸を放つ。
 銀の糸が闇を滑った。
 正介は糸をかわそうともせずにまっすぐフリウへと向かう。
 掴みかかろうとするその右手に、念糸が絡みつく。
「あたしの方が、速い!」
 フリウは叫んだ。
 そして見た。
 正介の両目が、鮮烈な赤に染まるのを。


「――――!?」
 目の前で弾けた炎にフリウは声なき悲鳴を上げた。
 紅い炎は一瞬だけ闇を払い、同時にフリウの視界を奪う。
 それだけで念糸は無効化された。
 意思の伸ばしてたるフリウが隙を作ってしまった。
 その機を逃さず、正介――――否、ベリアルが肘を叩きつける。
 念糸能力者。精霊使い。いかに特殊能力者であろうとも、フリウの体は14歳の少女のそれだ。
 フリウの頭蓋を衝撃が突き抜け、たまらず体が宙を浮く。 
 わずかな浮遊感の後、硬い地面に激突した。
「悪魔がもうちっとまともに使えるんなら、もっとスマートにやれるんやけど……悪いな、嬢ちゃん。
 ここでは悪魔の力が制限されとるようでな、おかげで鬼火一個だすのが精一杯や」
 フリウは体をまるめ、ひたすら痛みが去るのを待った。
 全身が熱く、骨だけが冷えている。
 頭の中にはいくつも音が反響しているし、視界は夜なのに真っ白だ。
「あ…う」
 水の音も聞こえない。なのに近づいてくる足音だけが鮮明になる。
 一歩。また一歩。一定のリズムで進み……止まった。
 頭を蹴られる。
 打ち所が悪かったのか、意識が混濁してくる。
 考えがまとまらず、倦怠感だけを確かに感じる。
 何も考えられない。何もしたくない。
 ふいに髪を掴まれ、上を向かされた。
 ぼんやりとした視界。
男の後ろに、赤い、こぶしくらいの火の球が浮かんでいる。
 その火に、フリウは惹きつけられた。
 思い出す。
 彼女とは自分の村で初めて会った。
 彼女とは帝都で再会した。
 それだけだ。
 ほんの少しの間、道が交わっただけの他人。
 それなのに、同じ痛みを抱えていた人。
 あの火と同じ色の髪をした人。
 彼女の名前は、


「ミズー・ビアンカ……」
「ん?」
 意識も虚ろな少女が漏らした名前にベリアルは訝しげな表情を浮かべた。
 少女の目は焦点が定まっていない。
 まあ、手加減なしで頭を打たれたのだから無理はないが。
 今ベリアルの手には手ごろな大きさの石が握られている。
 これを2、3度頭に叩きつければ、この少女は絶命するだろう。
 多少後味が悪いのは確かだが、それを割り切れる程度には彼は『悪党』だった。
 ベリアルは石を叩きつけようと持ち上げて……
 少女と、目が合った。
 

 フリウはベリアルの襟を掴むと、思いきり彼の顔を殴りつけた。
 こぶしがひどく痛んだが、まったく気にしなかった。
 意外な反撃にベリアルが思わず仰け反る。
 自分の髪を掴んでいる手を爪で引っかき、腕に噛み付き、ひたすら暴れる。
 念糸は使えない。
 発動までのタイムラグは、今の自分には致命傷だ。
がむしゃらに四肢を動かすと、ベリアルがフリウを解放して距離をとった。
 いつの間にやったのか、端正な顔に大きな引っ掻き傷が出来ている。
 体が燃えるように熱かった。
 さっきまでが嘘のように意識が鮮明だ。
 ミズー・ビアンカ。その名前が、フリウに力をもたしていた。
(あの人に会うまで、あきらめない!)
 フリウはデイバックを下ろし、素早く剣を取り出した。
 鞘に納まった剣を見てベリアルが警戒をあらわにする。
 フリウは剣を鞘から抜いた。
 重い剣をなんとか両手で支える。
 不可視の刀身が夜気に触れる。ベリアルが怪訝な顔をした。刃が見えないのだ。
 フリウは身を捻った。ベリアル目掛けて、両手に抱えた剣をぶん投げる。
「ちいっ!」
 ベリアルは機敏な動作で回避に移った。
 しかし刀身の長さを測りきれなっかったのだろう、ガラスの刃が肩付近を大きく裂く。
 ベリアルは肩の痛みに耐えながら、反撃に転じるために崩れた体勢を立て直す。
 赤い瞳がフリウを射抜く。
 フリウは眼帯を外した。


「通るならばその道。開くならばその扉。吼えるならばその口」
 開門式を唱える。
 白い眼球に大気が触れる。
「作法に記され、望むならば王よ。俄にある伝説の一端にその指を、慨然なくその意志を。もう鍵は無し」
 ベリアルが火玉を呼び出しフリウへと投げつけた。
 腕に焼けた痛みが奔る。熱い。じくじくとした痛みが腕を這い回る。
 しかしフリウはそれを黙殺し、最後の一文を唱えた。
「開門よ、成れ」
現れたのは銀色の巨人だった。
 その体は力に満ちている。
 削られた氷河のように荒々しく、鍛えられた刃物のように美しい。
 音もなく。気配もない。
 それが自然であるかのように、巨人は世界に溶け込んでいる。
「なんや、それ……」
 ベリアルは呆然と呟いた。その存在は、彼が今までみたどんな悪魔よりも強大だった。
 フリウは答えない。
(まずい……とんでもなくまずいで…)
 ベリアルはすぐさま逃走を選んだ。
 ただで見逃してくれるとは思わない。腕の一本や二本は捨てる覚悟だ。
 巨人の左に回りこみ、一気に駆け抜けようとして――――
 銀色の巨人は、彼に一切の時間を与えなかった。
 ベリアルが反応するよりも速く、振り上げられたこぶしが叩きつけられる。
 瞬時に大気が荒れ狂う。
 衝撃が地面を抉り、水面にぶつかって盛大に飛沫をあげた。
 それだけだ。
 その一動作で、すべてが終わった。
 あとには抉れた地面だけが残り、ベリアルの姿は存在しない。

 わずかな静寂は挟んで。
 フリウは静かに閉門式を唱えて、破壊精霊を封印した。
 左目の世界が閉じる。
 必要なときに呼び出し必要なくなれば封じる。精霊使いとして完璧な制御だった。
 封印が終わると、再び頭がぼんやりとしてきた。
 疲労が一気にぶり返してくる。
「なんか……疲れちゃったね」
 体も、心も。
 今だけは何もかも忘れて眠りたい。
 フリウは気を失った。
「やってくれるわ、あのガキ……」
 地面に転がったまま、ベリアルは悪態をついた。
 全身が水に濡れそぼり、長い銀髪も前髪が顔に張り付いている。
 銀の巨人の攻撃は直撃だった。
 あの一撃で右腕が折れて、あばらも数本やられている。止血はしたが、血もかなり流した。
 衝撃で川に放り込まれ、どうにか岸に上がれたのは奇跡だった。
「どこまで流されたんか知らんが、生きてるだけ儲けもんか」
 正介は歴戦の悪魔持ちだ。今まで様々な相手と戦い、そのほとんどを討ち滅ぼしてきた。
 その経験から言えば、あの巨人の攻撃を受けて自分が生きてるのは不自然だ。
 肉片すら残らず消滅していてもおかしくはない。
 それだけの力を確かに感じた。ということは……
「あの化け物も、悪魔と同じように制限を受けている?」
 そういうことなのだろう。
 ならば、やり方によっては互角に渡り合えるはずだ。
「もっとも、もう会わんようにするのがベストやろうな。それ以前に、どっかで治療せんと、まずいわ」
 ベリアルは苦痛を堪えて起き上がると、ゆっくりと闇へと消えていった。

【残り95人】
【B−5/川辺/1日目・02:25】
【フリウ・ハリスコー】
[状態]: 気絶。右腕に火傷。
[装備]: 水晶眼(ウルトプライド) 、ガラスの剣はその辺に放置されてます。
[道具]: デイパック(支給品一式)
[思考]: ミズーを探す。殺人は避けたい。

【川のあるエリアのどこか/1日目・02:30】
【緋崎正介】
[状態]:右腕骨折。あばらも少々。血も流してます。
[装備]:探知機(半径50メートル内の参加者を光点で示す)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:ケガの治療をしないと死にそう。
184最強は風の中に稲妻を見る その1:2005/03/31(木) 03:36:06 ID:3DnCUUh/
何をするわけでもなく男が鉄骨に腰を下ろしている。
彼のとりあえずの目的は結局達成せずに終わってしまった。
だが彼は気落ちなどはしていなかった、むしろテンションは上がっている。
『決着はつけれなかったがまあそれはしょうがない、だが恐らくやつを殺したやつはまだ生きている筈だ。』
思わず笑みがこぼれる。が、彼の予想は間違っていた、彼を殺したものは既に殺されていた、というより消滅させられていた。
何故この場所を彼は動かないかというと、ここは思いでの場所に似ていたからであった。
『これで雨でも降ってたら完璧だったんだが、そう都合よくはいかねーか。』
彼に唯一敗北を味合わせた男、彼とその男が初めてあったのはこんな場所だった。
『そういやアイツは名簿にいなかったな、どういう基準で選んでんだ?』
軽く舌打ちをしたところで彼は気配を感じた。
『・・この気配は・・。』
向こうから現れた男の雰囲気は似ていた、その男に。
「すまないが人を探しているんだが・・。」いいかけたところで相手も彼の雰囲気に気付く、腰の木刀を構えた。
185最強は風の中に稲妻を見る その1:2005/03/31(木) 03:36:36 ID:3DnCUUh/
「くくっ、そいつがおまえの剣か・・いいぞ、ますます気に入った。」

ヒースロゥは先程の会話を思い浮かべていた。
『体に任せる・・か。』
この敵には全神経を集中させなくてはならない、そう体は訴えかけていた。
「どうした、こないのか?こないならこちらからいかせてもらうぞ。」
ビュッという音とともにヒースロゥの頬が切れた。
『・・風の呪文か・・?いや、これはあくまで牽制、狙いは別か。』
傷は2つ3つと増えていく、このままではじり貧となる、ならば・・。
『敵の狙いどおりだとしても・・』
決心は固まった。
「ハァアアア!!」
いったん横に飛び一気に相手との距離を詰める。
スキを突いたと思ったその瞬間、相手のスキが・・消えた。
「なっ・・!?」
とっさに剣をひき距離を取る、しかしその木刀は根元から断たれていた。
「ほう・・鼻先一つ掠らなかったか、やつはこれで目を潰したんだが・・。」
満足そうにうんうんと頷く。
『どうする・・やつの攻撃が見えん・・。』落ちていた鉄パイプを持ち身構える。
相手の笑いがさらに大きくなる。
「こいつは傑作だ、ここまでそっくりとはな!おいおまえ、名前は?」
186最強は風の中に稲妻を見る その2:2005/03/31(木) 03:36:59 ID:3DnCUUh/
「くくっ、そいつがおまえの剣か・・いいぞ、ますます気に入った。」

ヒースロゥは先程の会話を思い浮かべていた。
『体に任せる・・か。』
この敵には全神経を集中させなくてはならない、そう体は訴えかけていた。
「どうした、こないのか?こないならこちらからいかせてもらうぞ。」
ビュッという音とともにヒースロゥの頬が切れた。
『・・風の呪文か・・?いや、これはあくまで牽制、狙いは別か。』
傷は2つ3つと増えていく、このままではじり貧となる、ならば・・。
『敵の狙いどおりだとしても・・』
決心は固まった。
「ハァアアア!!」
いったん横に飛び一気に相手との距離を詰める。
スキを突いたと思ったその瞬間、相手のスキが・・消えた。
「なっ・・!?」
とっさに剣をひき距離を取る、しかしその木刀は根元から断たれていた。
「ほう・・鼻先一つ掠らなかったか、やつはこれで目を潰したんだが・・。」
満足そうにうんうんと頷く。
『どうする・・やつの攻撃が見えん・・。』落ちていた鉄パイプを持ち身構える。
相手の笑いがさらに大きくなる。
「こいつは傑作だ、ここまでそっくりとはな!おいおまえ、名前は?」
187最強は風の中に稲妻を見る その3:2005/03/31(木) 03:37:35 ID:3DnCUUh/
「・・ヒースロゥ=クリストフだ。」
「聞かない名だな、まあいい。俺はフォルテッシモ、呼びづらいならリィ舞阪とでも呼ぶがいい。」
『フォルテッシモ・・(とても強い)だったかな?』
音楽は趣味じゃないがそれくらいは覚えている。
「さて、俺の能力だが、見るやつから見れば空間には無数のひび割れがある、俺はそいつを広げられる、といったところだ、おまえは?」
「能力?そんなものは持ち合わせていない。」
彼のいう能力とは剣術が強いとか知力がたかいとかそういうことではないのだろう。
「能力なしで俺の攻撃をかわしたのか?」
「そんなもの、感覚を研ぎ澄ませれば自然とわかる。」
話している間にお互いの距離は縮まってきている。
「ほう・・ならば、こいつはどうだ!?」
いい終わった時にはヒースロゥのいた場所が弾け飛んでいる、が、そこに彼の姿はない。「せいっ!」
持っていたパイプを投げつける。
フォルテッシモの目の前で鉄パイプが砕ける、正面にヒースロゥの姿はない。
188最強は風の中に稲妻を見る その4:2005/03/31(木) 03:42:47 ID:3DnCUUh/
フォルテッシモの後頭部に鉄パイプが降り下ろされる、が、途中でその動きを遮られる。
「甘いな。」
言うと同時に鉄パイプは砕けヒースロゥは吹っ飛び壁に衝突する。
「ガハッ!」
「お前の負けだ。」
体の動かないヒースロゥにフォルテッシモが近付く。ヒースロゥは殺されるだろうと思い、頭を垂れた。

「お前には見込みがある、あの男と同じように、俺の敵になる見込みが。」
唐突に彼がいった。
「おまえはまだやつに会ってない、その殻を破る前に死んでしまうにはあまりに惜しい。」
ヒースロゥは激昂した。
「貴様、俺に生恥をさらせというのか!?」
フォルテッシモは応える。
「おまえはあるものを探せ、そいつは十字架のペンダントの形をしている・・。そして再びあったとき、今度こそ望み通りに息の根を止めてやる。」
そして最強は風に背を向け歩き出す。
その顔にはこれ以上ないほど凶暴な笑みがはりついていた。
それに対し風は怒っていた、情けをかけた敵に対し、何よりも弱い自分に対し。
その心はその昔似たような場所で似たようなことをした男のそれによく似ていた。

189最強は風の中に稲妻を見る その5:2005/03/31(木) 03:43:53 ID:3DnCUUh/
【A3/廃工場/6:30】
【フォルテッシモ】
【状態】興奮
【装備】ラジオ
【道具】荷物ワンセット
【思考】ブラブラ歩きながら強者探し。早く強くなれ風の騎士

【ヒースロゥクリストフ(風の騎士)】
【状態】自分に対し激昂、3か所の切り傷、背中に軽い打撲。
【装備】鉄パイプ
【道具】荷物ワンセット
【思考】ED探す、風まかせだがエンブリオが気になる。
190イラストに騙された名無しさん:2005/03/31(木) 03:45:11 ID:3DnCUUh/
>>185は無視で。
191暫しの平穏 1/4  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/31(木) 04:15:00 ID:kaL9iuJk

「――――に期待する。精々頑張りたまえ」

突然頭の中に直接響いてきた声。
雑貨屋の一室で眠っていた景は、その声に起こされることとなった。
解った事は、死者が参加者の六分の一以上と多かったこと。
そして、自分の知る三名の名が、死者の中に無かったこと。
軽い痛みを背に感じながら体を起こすと、ペンと紙を持った風見が目に入った。
彼女も目覚めた景に気づき、
「――おはよう。私の方は知ってる名前は無かったわ。アンタも?」
「おはよう。こっちも無かったが、素直に喜べないな」
「……例の甲斐氷太と、緋崎正介ってヤツ?」
「ああ。『乗った』のかはまだはっきりしないけどな」
「そうね。……背中の方は?」
「大分良くなった。大人しくしている分には大丈夫そうだ」
実際にはそういうわけでもないのだが、気を遣わせまいと景は少しだけ強がった。
風見は、そりゃ良かったわね、と一言感想を述べ、景から目をそらし少し間を置き、
「……とりあえずトイレでも行ってきたら?」
「…………お気遣い、有り難く受け取っておくよ」
「気にしないで。見慣れてるから」
「……………………」
深く考えないことにして、景は部屋を出た。

「見える範囲には誰もいなかったわ」
外の様子を調べてきた風見はそう報告した。
そして、放送を書き取った紙と、地図を見比べながら相談をする。
「禁止エリアってのは、今の段階では無関係ね。もうしばらくは安全かしら」
「これだけ南から南西に密集していると、そっちの方の人間が北や東へ移動する可能性はある。
まだ閉鎖されていないエリアも多いから、大丈夫だろうとは思うが……」
「ま、考えすぎてもしょうがないわね。九十人の行動を読むなんて不可能だし」
「九十人、か。……随分と減ったものだな」
192暫しの平穏 2/4  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/31(木) 04:16:12 ID:kaL9iuJk
どこからともなく集められた119名の人間が、
一人ずつ確実に亡くなっているという、非現実的な現実。
景の脳裏に浮かぶのは、森で見た頭の潰れた少女の姿。
自分や知人、それに目の前の相棒ですら、いつそうなってもおかしくない。
「……狂っているな。異常としか言い様が無い」
ぽつりと呟く。
「……そうね。私も常識外れの世界で生きてるけど、にしてもこれはおかしいと思う。
どうにかしたいとは思うけど、G-sp2が無きゃ私は平凡な美少女高校生だもの。
現時点ではどうしようもないわ」
「その『平凡な美少女高校生』も冗談なのかい?」
「失礼ね。女が自分を褒めてる時は、男は黙って同意しとけばいいの」
異常な状況を理解しながら、それでも――だからこそ、軽口を叩き合う二人。
その顔には、自然と笑みが浮かんでいた。

相談の結果、昼の放送まではここに留まることに決まった。
「どうせ確実に安全な場所が無いなら、か」
「ええ。大人数に囲まれでもしない限り、逃げ道は確保出来てるしね。
明るくなって人が集まってくるかもしれないけど、知り合いが来る可能性もあるわ。
マーダーが寄ってきたら、……その時は、その時」
「その時はその時、ね……」
――やっぱり、似ているな。
景は、この島にいない幼馴染のことをまた思い出す。
出会って一日と経っていない女性とこうして会話しているのを見たら、
彼女はどんな反応をするだろうか。
――……何で、こんな馬鹿な事を考えているんだ?
悪魔の使えないただの高校生が、こうして殺し合いの場に放り込まれているというのに。
「……まだ余裕がある、ってことか?」
風見千里。大切な幼馴染――姫木梓にどこか似た少女。
彼女との関係は、生き残るための協力相手。
それ以上でも、それ以下でもない。
193暫しの平穏 3/4  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/31(木) 04:17:08 ID:kaL9iuJk
「どうかした?」
「いや、何でもない」
物思いにふける景に風見は声をかけるが、景はただ一言返事をするだけだ。
そんな彼に風見は、
「何でもないなら、アンタとっとと寝なさい。
怪我人はじっとしてろって、さっき寝る前にも言ったでしょ?」
「いや、次は君が寝る番だろ。交代で寝ようと……」
風見は景の言葉を無視し、彼に近づく。
――そして唐突に彼の背中を叩いた。
「!? くっ……」
背中全体に激痛が走るが、なんとか景は悲鳴を呑み込んだ。
それでも、顔に浮かぶ苦しみの色までは消す事が出来ない。
「やっぱり全然治ってないじゃない。こんな状況で痩せ我慢がカッコイイわけないでしょ。
大体まだ二時間ちょっとしか経ってないのよ? とっとと寝て、少しでも回復させなさい」
「……それじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
「ええ、精々甘えてちょうだい。
後になって、その怪我のせいで大事になったりしたら、どうしようもないんだから……」
――参ったな。これじゃ僕が頼りっぱなしだ。
「それと、迷惑かけてるなんて思わないでよ?
アンタと私じゃ鍛え方が全然違うんだから、気にすること無いんだからね?」
「……そいつはどうも」
「どういたしまして」
――本当に参ったな。
考えを見透かされ、フォローまでされてしまった。
かなわないな、と素直に思う。
景は横になって毛布を被り、そしてまたすぐに眠りに落ちた。


 【残り94名】
194暫しの平穏 4/4  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/31(木) 04:17:40 ID:kaL9iuJk
【C−3/無人の商店街、雑貨屋/一日目/06:15】

【物部景(001)】
[状態]: 睡眠中。背中に打撲傷。(処置済み)
[装備]: 折り畳みナイフ、頑丈な腕時計
[道具]:リュックサック(水入りペットボトル一本、支給食料(半分)、缶詰一個、地図、方位磁石、懐中電灯、救急箱)
[思考]: 1.交代で仮眠をして疲労を取る。 2.知人とカプセルの捜索

【風見千里(074)】
[状態]:見張り中。心身ともに健康。
[装備]: グロック19、及びその予備マガジン一本、頑丈な腕時計
[道具]: デイパック(水入りペットボトル一本、支給食料(半分)、缶詰三個、筆記具、懐中電灯、ロープ、弾薬セット)
[思考]: 1.景を休ませる。 2.知人の捜索
195湖の変異 ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/31(木) 06:06:14 ID:Mz5tnnwl
EDはB−7湖の中の島で放送を聞いていた。
死者の数が予想以上に多い。
疑心暗鬼による突発的な殺し合いも中にはあるだろうが、それだけでこの死者の数にはならないだろう。
この「お遊び」を真面目に楽しんでいる奴は自分が考えているよりも多いのかもしれない。

禁止エリアのメモも終え、移動のため水に入る用意をし始めた時、その変異は始まった。
最初、それは湖面の小さい渦巻きにすぎなかった。
それが見る見るうちに巨大になっていく。
EDのいる島もたちまち渦巻きの影響下に入ってしまった。
それと同時に湖の水位が少しずつだが下がっていく・・・


――10分後


湖の水はそのほとんどが何処かへ行ってしまった。
所々に少し大きめの水溜りがある程度だ。湖底の岩肌が完全に露出してしまっている。
何が起こったのかは不明だが、ようは「湖の栓」が抜かれてしまったようだ。
いや、さすがに湖に文字通りの「栓」と「排水溝」があるとは思えないが、
原理としてはそういうことだろう。

ともかく、いつまでもここにいても仕方がない。
EDは湖底に降りると南西方向に歩き出した。
196湖の変異 ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/31(木) 06:06:54 ID:Mz5tnnwl
【B−7/水のなくなった湖底/06:15】

【ED(エドワーズ・マークウィッスル)】
【状態】健康
【道具】飲み薬セット
【装備】仮面
【思考】同盟の結成/ヒースロゥを探す
【行動】島を出発して南西方向に歩いていく

注:この時刻をもって、北東にある湖の水はなくなりました。
197イラストに騙された名無しさん:2005/03/31(木) 06:25:47 ID:taJOfmtJ
寝て起きたらなんてステキな展開になってるんだ。
まさか、こんなところでFFとイナズマの再戦を見る事になるとは。
自分はヒースロゥのキャラは知らないが、今後の展開に期待だ。

これは言ってしまっていいのか悪いのか分からんが、今回はエンブリオの十字架と別に
山百合会のロザリオがある。ヒースロゥがどっちを先に手にするかどうかは知らんが
間違えてロザリオを先にゲットしてFFと戦ったら、思いきし罵倒されるだろうなw

ともかく宮野、命狙われてるかもしれないからガンガレ。
198イラストに騙された名無しさん:2005/03/31(木) 08:41:53 ID:sR45isDM
199世界の中心が観覧車で呟く ◆E6WVGx0C.w :2005/03/31(木) 10:32:44 ID:jQ0nKz2l
「ほぉ、これが遊園地ってやつか」
遊園地の入口で、クレア・スタンフィールドが感嘆の声を漏らす。
「思ったより楽しそうだな」
若干の笑みを浮かべながら遊園地に入っていく。
中にはいろいろなアトラクションがあるが、作動している物は一つも無い。
「ん〜?誰もいないのか?」
辺りには人気が感じられず沈黙だけが遊園地内に漂っていた。
クレアはひとまず観覧車の方へと向かう。
途中いろいろなものがクレアの視界に飛び込んでくる。
どれも初めて見るものばかりで、驚きの連続だった。
と、そうこうしているうちに観覧車に到着した。
「おぉ〜。でかいな〜」
しばらく何かを考え、そして走り出した。
観覧車のふもとまで全力で走り、ジャンプした。
人間業とは思えないようなスピードで観覧車を一つずつ飛びわたっていく。
やがて一番上に位置するところまで来ると、ようやく止まった。
「ふぅ、結構いけるもんだな」
下界を見下ろしながら言う。
島内はクレアが考えていたよりも広く、この中からシャーネを探すのは大変手間がかかりそうだった。
「おっ。誰かいる」
クレアの視力は常人よりもかなりいい。
おかげで遊園地前の商店街にいた小笠原祥子をクレアの目はとらえることが出来た。
「だいぶ疲れてるみたいだな」
小笠原の歩き方を見て判断する。
かなり疲労がたまっているのだろう。
足を棒のようにして歩いている。
「まぁ、俺には関係ないか」
そういってクレアは小笠原から視線を戻す。
「さて、どうするかねぇ」
呟き、そして空を見上げた。
200世界の中心が観覧車で呟く ◆E6WVGx0C.w :2005/03/31(木) 10:33:34 ID:jQ0nKz2l
【残り94人】
【E-1//海洋遊園地観覧車/一日目5:00】

【クレア・スタンフィールド】
[状態]:健康
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:シャーネを探す これからの行動を考える
201力 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:29:47 ID:BUPsS5dg
「そんな……由乃ちゃんが、信じられない」
あの保健室でのとき、廊下に出ていた潤さんの様子が少しおかしくなり、
理由は言わず「ここはなにかやばい」と言って私を連れて学校を出、東へ移動したのでした。
そしてここの位置は……石段があるので地図と照らし合わせてみると多分D-4だと思います。
私は放送というまるで実感のない手段で死を知らされた少女のことを思い浮かべる。
昨日まで一緒に机を並べ、一年生の頃からの大事な友達が。
心臓の手術をして、元気になって微笑んでいたあの少女が。
「私たち親友だよ」そう言った彼女が。
今はもういない。死んでしまったというのだ。
「知り合いがいたのかい?」
潤さんが心配そうな目で私を見つめる。
「……ええ、親友が」
「……そうか」
多弁なはずの潤さんはそれきり何も言いません。
「潤さん、私、私どうしたらいいかわかりません。
由乃ちゃんはなんで死ななきゃいけなかったんですか?
 他の人もなんでそんな簡単に人が殺せるんですか?
 どうして殺しあわなきゃならないの……」
「祐巳……気持ちはわかるが、あたしたちも、あんたのお姉さまとかいう人も、
こんな馬鹿げた状況にもう巻き込まれちまったんだ。
なぜこんなことになってるってのは誰にもわかんねーだろうな。
だからこそ『なぜ』じゃなく『どう』するかを考えようぜ。
後ろ向きに考えるな。おまえはお姉さまを探すんだろ」
潤さんは私の眸をじっと見つめ、真剣な表情でそう言いました。
きっと私のことを真剣に心配して励ましてくれているんでしょう。
202力 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:30:19 ID:BUPsS5dg
「でも、でも私は、潤さんみたいに強いわけじゃないただの女子高生です。
そんな人間があんな吸血鬼までいるこの島から生きて脱出できるわけないじゃないですか!」
私の眸から一粒の涙が今頃忘れていたかのように零れ落ちる。
由乃ちゃんの死を聞いたときに流れるはずだった分の涙が、堰を切ったように流れ出す。
由乃ちゃん。楽に死ねたんだろうか? それとも苦しんで死んだのだろうか?
彼女は心臓の病でもう十分に苦しんだのに。マリア様は何故こんな仕打ちをするのだろう。
「私は、無力です。負け犬です。由乃ちゃんの代わりに私が死ねば良かったんです。
今だって潤さんに守ってもらっていなければすぐに野垂れ死んでます。
お姉さまに会ったって、私がしてあげられることなんてないんです。
ただ不安だから、心配だから一緒にいたい。そう思っただけなんです」
私は心の中の言葉を、思考せずそのまま口から放つ。
そんな私を見て潤さんはさらに私の顔を見つめる。
「……祐巳、あんたの言ってることは事実かもしれない。
だけどな、こんな状況で誰かのために涙することができるってのはすげーことなんだぜ。
たしかにあんたはその吸血鬼なんかよりは弱いかもしんねー。だけど心はずっとつえーよ」
そう言いました。
「でも、――」
そのときでした。

【ブラボー!おお…ブラボー!!】

私と潤さんの前に血の文字が浮かび上がってきたのは。
「きゃぁっ!!」
驚いてとっさにその血文字を避けて私は潤さんに抱きつく。
「む、手前ぇ! 新手のスタンド使いか!? チャリオッツか? チャリオッツなのか?」
潤さんは私を守るようにそのまま背に隠すと、なにやら変なことを叫びました。
203力 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:30:41 ID:BUPsS5dg
【いやいや待たれよレディ達、
私はただ単にそこの赤いお嬢さんの言葉に感動して賞賛をあげたままに過ぎない】
そのまま赤い文字が素早く動き、上のような文字になります。
「……生き物なのか? これ?」
流石の潤さんもこの血文字には驚いたのか、驚嘆の声を漏らします。
【ふむ。これは確かに私は生き物であると言えよう。
だが赤いお嬢さんもまた生き物であり、後ろのかわいらしい看護婦、
いや正確には看護師であったかな? 
とにかく看護師さんもまた生き物だ。
また、私たちの周りにある草木も生き物と言っていいであろうし、
それならば私たちが暮らすこの地球も生きていると言っていいのではないかね】
「おまえ最後の方、血が足りなくなって文字が霞んでるぞ」
【これは失礼。何時間かぶりに自由に動けるので思わず長く喋りすぎてしまったよ】
また血文字が綴らていきます。まるで魔法でも見ているようです。
「……あの、潤さん。この人、って言っていいのかわかりませんけど、敵意はなさそうです」
「そうみたいだな。ただし極度のお喋りみたいだが」
そう言って潤さんは張り詰めていた警戒を解きました。
【わかってもらえて何よりだ。私はゲルハルト=フォン=バルシュタイン子爵、
お嬢さん方と同じようにこのゲームに巻き込まれた一人の紳士だ。
子爵と呼んでくれたまえ。美しきレディたち】
子爵さんはそう文字を紡ぐとそのまま文字を分解、
血の塊になりペコリとお辞儀の形になりました。
「生きた血なんて初めて見るぜ。本当に漫画の世界に入ったみたいだな」
そう言うと潤さんは敬礼するように右手を頭の横に構えて
「哀川潤だ」
「えっと、福沢祐巳です。よろしく子爵さん」
204力 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:31:07 ID:BUPsS5dg
私は先刻よりは幾分落ち着いた心で、子爵に言います。
【よろしく、祐巳くん。君の心から少しは悲しみは逃げてくれたかね?】
……私はその時になって気付きました。
さっきまで抑えきれなかった悲しみの荒波は消えてはいませんが、
落ち着いたお陰で抑えきれない激情はなくなっていました。
「あの、子爵さん。ありがとうございます」
【別に私は何もしてはいないよ祐巳くん。君を元に戻したのは君自身だ】
「あーっと、ご歓談のとこ悪いんだが子爵、それでお前はなんであたしたちに声をかけてきた?」
潤さんがそう疑問を口に出す。
【それは先刻言ったように君の祐巳くんに対する言葉に感動して声を……おお、そうだった、
頼みがあってきたのだ。私にはどうにも出来ないことができてな】
「三点リーダまで律儀に付けることには敢えてツッコまないでおくぜ。それでなんだ?」
【ちょっと着いて来てくれたまえ。来てもらえればわかる】
そう子爵に言われれるままに私と潤さんは子爵について行きます。
そして石段の前の草叢の影、一本だけ大きな木が生えた気の根元に私たちを案内します。
そこには一人の傷だらけの女の子が横になっていました。
あまり見たこと無い格好をしたその女の子は気を失っているようです。
「酷い……この女の子は?」
【崖の下で発見して運び込んだのだよ。
あんなところに置いておくよりはこの場所のほうが少しはましだろうと思ってね。
しかし私は治療する能力も道具も持ち合わせていない。
そこに消毒液の香りをさせた看護師がきたというわけだ】
「匂いもわかんのかよ。すげーな。それであたしたちに治療して欲しいってわけね」
たしかにこの女の子の状態は酷いものだ。
虫の息という言葉がしっくりくる。私はそう思った。
205力 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:32:05 ID:BUPsS5dg
「わかった。目の前で死なれるってのも夢見がわりーかんな。
あ、一応言っとくけど治療するのはあたしがするよ。
祐巳はナースじゃなくてナースのコスプレってだけだからな」
【そうであったか。どちらにせよ感謝するよ潤君】
「あ、あの私コスプレじゃっ!」
【わかっているよ。祐巳くん。これでも私はジャパンの文化には興味があって知識も豊富なのだ。
ジャパンではコスチュームプレイは一般的に恥ずかしいということなのであろう? 
人の趣味は様々だ。私は応援するよ、祐美君】
ほくそ笑むように子爵さんの文字が揺れます。
「いや、違うんですってば私は」
「静かにしろ祐巳これから治療始めんだから」
潤さんはそう言ってバックを開き、保健室から持ってきたメディカルキットを取り出した。
「あ、潤さん。私に手伝えることありませんか?」
きっとこの女の子の治療は時間がかかるだろう。私は潤さんに少しでも力になってあげたくてそう言った。
「いや、あたし一人で十分だ。
祐巳みたいな女の子にはちょっと見せらんないくらいグロいことになるかもしんねーからよ」
【そうだな祐巳くん。君は私とあちらのほうで見張りをしていよう】
子爵はそう言って『あちら』を起用に血で『⇒』と書いて指し示しました。
「でも……」
【それが今の一番の仕事なのだよ祐美くん】
「……はい」
私は子爵とともに崖と反対方向に歩みを進めます。
「おい子爵! 祐巳ちゃんがあんまりかわいいからってセクハラしたりすんじゃねーぞ」
潤さんがそう声をあげます。
【私は紳士だそんなことはしないから安心したまえ】
潤さんには見えないので子爵は私に向かって文字を紡ぎました。
206力 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:32:37 ID:BUPsS5dg


「さーて、んじゃ頑張りますか。哀川潤の治療術とくとご覧あれ」
誰に向けるわけでなくそう言って、哀川潤は女の子、アメリアの治療を開始した。


「あの、さっきのコスプレってのは」
草原に座り、私は子爵に弁解を試みる。
【わかっているよ。おおよそ服の代わりがなくって
仕方なく着ているといったところだろう?】
「わかってたんならそう言ってくださいよ」
子爵も聖様のように私をからかうのか。なんで私ってこうからかわれやすいんだろう。
そう考えたとき、私の脳裏に聖様の姿が浮かぶ。
目の前で牙を剥き出し襲い掛かってくる聖様。
涙を流しがらも吸血の衝動を抑えきれず
自分を襲った彼女を救ってやることもできず、私は逃げた。
私は、卑怯者だ。
聖様に血を捧げればいいとそこで考えを放棄した。
死ねばその後のことは考えなくてすむから。
【どうしたのだ祐巳くんっ。また突然泣き出して。からかったのは悪かった。
泣き止んでくれないか、紳士がレディを泣かせたとあっては子供たちに顔向けが出来ない】
「う、くっ、えぐ、違うんです」
私は今までにあった事柄をすべて子爵に言った。
聖様が吸血鬼になってしまったこと。その聖様を救うことができず逃げ出したこと。
お姉さまをさがしていること。潤さんに出会ったこと。そして、由乃ちゃんが死んだこと。
【ふむ、君の先輩が吸血鬼になったというのか。そしてお友達が死んだ】
207力 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:33:05 ID:BUPsS5dg
「私は、無力なんです。聖様を助けられないことを自分の弱さのせいにして、
行動することを放棄しました。泣きながらごめんねって言ってる聖様を救えなかった」
【それは君のせいではないんではないかね?】
「いいえ。なにもしなかったことが私の罪です」
【君は本当に今時の娘とは思えないくらいまっすぐな娘だね】
「……力が欲しいです。お姉さまを守れる力が。聖様を救う力が。
由乃ちゃんの分も生きる力が。でも、私にはそんな力ない」
私がそう呟くと子爵さんは少しの間考えているような、黙り込んでしまった。
【………………………………】
【…………祐巳君。君は本当に力が欲しいかね?】
「――はい。無力なままの私では、潤さんの足さえ引っ張っています。そんな自分はもう嫌です」
いったい子爵さんはなにを言っているのだろう。まさか一緒にいてやるとか言うのではないだろうか?
だがそれは私の力ではない。
【もう一つ聞こう。祐巳君、君は覚悟があるかい? 力をもつことの。
力を得るということは何か捨てなければいけない。
それは例えば尊厳だったり、私のように姿を失うということでもあるのだよ】
……捨てなければいけないこと。私は一瞬の思考の後すぐに答えを出す。
「それは聖様を救えなかったり、お姉さまを守れなかったり、
友達を亡くすことより酷いこと? 
私は何かを失ってもいい。
この目を失っても、耳を失っても、鼻を失っても、手を失っても、足を失っても、口を失っても。
だから、力が欲しい」
【……わかったよ祐巳くん。君の覚悟、しかと見せてもらった】
そう言うと今までと違い子爵は時間をかけ達筆な文字へと変化した。
【君に、力を与えよう】
208力 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:33:31 ID:BUPsS5dg
【残り94人】
 【チーム紅と赤】
 【D−4/草原/一日目、06:35】
 
 【福沢祐巳(060) 】
 [状態]:看護婦
 [装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服
 [道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)、
 [思考]:お姉さまに逢いたい。潤さんかっこいいなあ 聖への責任感、由乃の死によりみなを守れる力を欲する

 【哀川潤(084)】 
 [状態]:アメリアを治療中
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)、メディカルキット
 [思考]:小笠原祥子の捜索 アメリアの治療

【ゲルハルト・フォン・バルシュタイン子爵】
 [状態]:体力が回復し健康状態に 
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック一式、 「教育シリーズ 日本の歴史DVD 全12巻セット」
 [思考]:どこまでも真っ直ぐな祐巳に対し、好感を持つ
【アメリア・ウィル・テスラ・セイルーン】
 [状態]: 瀕死、重傷 哀川潤により治療を受ける どの程度まで回復するかはあとに任せる
 [装備]: なし
 [道具]: なし
 [思考]: 生きる/リナ、ゼルガディスと合流する

※アメリアの所持品(支給品一式+獅子のマント留め@エンジェル・ハウリング)
 はC−4の高架近くの森に落ちてます
209祐巳の決意 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:34:12 ID:BUPsS5dg
「もしかしたらボケちまった子爵のたわ言かもしれないんだ。
やめといたほうがいいんじゃねーか?」
後ろでそう言う潤さんの言葉を無視して、
私はその平地を子爵に教えられた位置に向かって歩き続ける。
そして目印と言われたクレーターを発見しその周りを歩き回り、
ついに子爵の言っていたものを発見した。
「あった」
よかった。子爵の言うとおり灰にはまだなってないようだ。
そこにあったのは吸血鬼、いや子爵の言葉を借りれば
成長する吸血鬼――半鬼半人、ダムピール。
ヴォッド・スタルフの死体だった。


「食鬼人(イーター)?」
私、福沢祐巳は突然子爵が言い出したことに驚きを隠せなかった。
【左様、さっきも言ったとおり私はこんな形をしているが、
君の先輩を襲った人物と同じ吸血鬼だ。
そして私たち吸血鬼を狩る者、そう『ヴァンパイアハンター』の中でも、
最も恐れられるものが食鬼人というわけだ】
「それ、強いんですか?」
【強いな。私の知り合いに一人食鬼人がいたが、
この私を一時は封じれたかもしれない力をもち、息子を誘惑までしたよ】
息子さんのことはあまり関係ないなどとのツッコミも言わない程、私は真剣に子爵の話に聞き入っていた。
【無論私があったときにはその食鬼人はすでに
数え切れない量の吸血鬼を屠ってきたのだがね】
210祐巳の決意 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:38:33 ID:rTWf9klH
「それで、その食鬼人にはどうやってなれるんですか? 
厳しい訓練なんて受けてる暇はないんですよ」
【簡単だよ。しかしある種普通の人間には究極的に難しく、どうしようもなく不可能なんだがね】
私は子爵の言葉の意味がわからず混乱する。それでは矛盾ではないか。
【ふむ、その顔は疑問だといった顔だね。無理も無い。
私自身こんな状況だからこそ、この手段を思いついたのだからね】
「講釈はいいですから、早く教えてくださいっ」
私は我慢しきれなくなりつい声を荒げる。

【わかった。完結に言おう。

 それは吸血鬼を食べることだ】

「――ぇ?」
瞬間私の頭は思考停止を余儀なくされる。
食べる? もしかして今食べるって言ったの?
【古来吸血鬼を狩っていたもの達が創めたことらしい。
私は今食べると言ったが、血を飲むのが一番有効な方法だ】
「でもそんな……」
私は動揺を隠せない。子爵の言うことは全て私の予想の斜め上をいく答えばかりだ。
【これは迷信や噂などではなく、本当のことなのだよ。
なぜ食鬼人がヴァンパイアハンターとして最強かわかるかい? 
それは食べた吸血鬼の力だけを己が内に取り込んでしまうからだよ。
しかもその吸血鬼の力を持ちながら吸血鬼特有の弱点は無いのだからね。】
吸血鬼を食べる。そうすれば私が望んだ力が手に入る……。
211祐巳の決意 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:38:56 ID:rTWf9klH
「じゃあ私が子爵を食べればいいんですか?」
【おいおい、勝手に食べないでもらおうか。
流石に光の蓄えが無い今、君に一部分でも血を分け与えると命に関わるのでそれは無理だよ】
「じゃあ無理じゃないですか、
まさか聖様を吸血鬼にしたやつから奪えって言うんですか? 無理ですよ、そんなの」
私は子爵に抗議の声をあげる。結局話がしたいだけだったんじゃないか。
【誰も自分の血とは言ってないよ。さて話を戻そう。
さっき言った私を狙った食鬼人、実は彼女は今現在は人間ではないんだよ。
ある吸血鬼に血を吸われてね。吸血鬼になったんだ。
つまり数十の吸血鬼の力を取り込んだんだね、その食鬼人から。その吸血鬼の名だがね】
子爵は私のまん前でその名に変化する。
【ヴォッド・スタルフ――先刻の放送で死亡が発表された男だよ】
「……………………」
【ヴォッドは半吸血鬼で光に対しても耐性があるから遺体が灰にはなっていない。
そして吸血鬼の体は腐敗のスピードが人間より異常に遅い。
今からその血を飲んでも十二分に効果は発揮される。
そして私はヴォッドの遺体の場所を知っている】
「………………」
声が出ない。子爵の言葉が全て本当であれば私は食鬼人になれる。
【なんだ、今更怖気づいたのかね。人をやめて鬼となることに恐怖するのかね? 
吸血鬼の血肉を口に運ぶことに嫌悪するのかい?
私は聞いたはずだ。覚悟はあるか? と、あれは嘘だったのか?】
私はお姉さまの顔を思い浮かべる。いつも私のために笑顔を向け続けてくれる憧れの人を。
聖様の悲痛な涙を。由乃ちゃんの声を。
212祐巳の決意 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:39:28 ID:rTWf9klH

「その遺体はどこにあるんですか?」

なぜかそのとき、私は顔が無いはずの子爵の笑顔が見えた気がした。


サングラスを掛けたその怖そうな顔の外人の青年は苦悶のままの表情で事切れていた。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
胸を境に真っ二つになったヴォッドの遺体に手を合わせる。
ヴォッドの胸、心臓の周辺を見ると真っ二つにされてからも修復を行ったのか、治癒の後が見られる。
というか心臓自体は回復していた。
しかしその治癒の甲斐なく、ヴォッドはダメージの高さに治癒が追いつかず死んだようだ。
しかしとその切断面を見る。
よく見ると治癒し、出血が続くのを抑えるところでその体の生命を終えているのがわかる。
そしてその肌だけを見れば、生きているといっても問題ないかもしれない。
――これなら血が吸える。
私は手の震えを抑えつつ、メディカルセットに入っていたメスを握り締める。
震えが止まらない。
どうしたんだ福沢祐巳? おまえは力が欲しかったんだろう? 
お姉さまを守るんだろう? 聖様を守るんだろう? 由乃ちゃんの分も生きるんだろう?
……そうだ。私は力を得るんだ。みんなを守れる力を!
「……いただきます」
両手で無理やり持ったメスを持ち、スっと塞がった心臓に通す。
途端まだ固まっていない血が溢れだす。
慌てて祐巳は直接口を心臓に近づける。
錆びた鉄の味が口いっぱいに広がる。
213祐巳の決意 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:39:52 ID:rTWf9klH
「――っ!?」
その口内を刺激する感覚に私の体が拒否反応を起こしそうになる。
飲め、飲み込むんだ。私。
ゴクリ、喉の中を濃厚なカクテルが流れていく。
その刺激でさらに嘔吐感を覚えるがもう祐巳はそんな感覚を全て無視することにした。

ゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリ
ゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリゴクリ

『ごちそうさま』

10分後、祐巳の『力』を得るための儀式は終了した。

「ほらよ、ハンカチ。顔を拭え。今のおまえ、まるで吐血したみたいだぞ」
「ありがとうございます」
ヴォッドの埋葬を終えた私はハンカチを受け取り
私が儀式をしている間、周りを見張っていてくれた潤さんに礼を言い、顔を拭った。
「気分悪くなったりしてねーよな?」
「最初はそうでしたけど、今はもう治まりました。早く子爵の所に戻りましょう潤さん」
そう言って私は子爵の待つ石段まで先頭を切って歩いていく。
『力』を手に入れた実感はまだない。
だが世界は少しだけ違って見えた。
214祐巳の決意 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 11:40:17 ID:rTWf9klH
 【残り94人】
 【E-4/草原/7:30】
 【福沢祐巳(060) 】
 [状態]:看護婦 食鬼人化
 [装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服
 [道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)、
 [思考]:お姉さまに逢いたい。潤さんかっこいいなあ みんなを守ってみせる 聖様を救う 食鬼人のことは秘密

 【哀川潤(084)】 
 [状態]:健康
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:小笠原祥子の捜索 祐巳の力はまだ半信半疑 祐巳の食鬼人のことは忘れたことにする
 
 【ゲルハルト・フォン・バルシュタイン子爵】
 [状態]:体力が回復し健康状態に 今はアメリアの看病をしている
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック一式、 「教育シリーズ 日本の歴史DVD 全12巻セット」
 [思考]:こんな状況でもどこまでも真っ直ぐな祐巳に対し、好感を持つ  食鬼人の秘密を教えたのは祐巳だけであり、他者には絶対に教えない

 【ヴォッド】
 血がほとんど無くなった状態で埋葬される

※食鬼人(イーター)
 吸血鬼の血液を摂取したものがなれるヴァンパイアハンター。普通吸血鬼は死亡後灰になる、
 そのため血液をとることは不可能のため人間がなることは難しい。
 別に吸血鬼だけに特化したわけではなく、吸血鬼のリスク(吸血衝動、光に弱いなどなど)を全てなしで取り込んだ吸血鬼の力を持つもの
 ヴォッドを取り込んだ祐巳はヴォッドの能力を持ち、怪力と瞬発力は吸血鬼クラスを超える。(木島閑音をヴォッドが取り込んでいるため)
215終わった事と……(9/10改訂) ◆eUaeu3dols :2005/03/31(木) 11:56:44 ID:SnIgHAVq
「……ところで、新しい用事って何なんですか?」
いーちゃんの問いに何も答えず、ダナティアは歩き出した。数十m歩いてすぐに止まる。
「居るんでしょう? 出ていらっしゃい」
………………。
「一時間ほど前に大きな爆音がしたわ」
…………。
「その後、あなたは爆音のした方向から来た」
……。
「森の入り口の茂み……片面とはいえ見通しが効いて良い場所ね」
「ファイア・ボール!」
茂みから火球が顔面目掛けて飛んできて炸裂……させない。
一瞬だけ膨れ上がった炎は、ダナティアの元まで届かずに立ち消えた。
炎を真空で消火するのは彼女の得意技だ。
その隙によろめきながら逃げようとしていた娘をしっかりと目視し、術を放つ。
「しま……っ!!」
そよ風の繭が彼女を包み込み、動きを封じた。

「あなたは、開始の時の……」
彼女は繭の中で藻掻いている。
「確か、死んだガウリィという男の仲間ね」
だが、逃れられない。魔法は使い果たしているのか、魔術を使う様子も無い。
「目的は復讐かしら」 「あなたに何が判るっていうの!」
リナがデイパックから取りだしたデイパックより長い剣が、風の繭を切り裂いた!
「!!」 「生き残りの座は渡さない!」
ダナティアが続け様に放った風の衝撃波を切り裂きながら間合いを詰める。
「その為に100の死体を積み重ねる気?」 「そうよ!」
最早、2人の間合いは5mも無い。リナの剣技は格闘の素人に避けられる物でもない!
「ガウリィを殺した奴らを皆殺しにしてやる!」
そして、剣が振り下ろされた。
216過疎地脱出(1/8) ◆eUaeu3dols :2005/03/31(木) 12:02:15 ID:SnIgHAVq
………………。
「ぅ…………」
リナが小さく身じろぎし――それだけで、ダナティアは仮眠から目覚めた。
(この娘、もう少しで目覚めるわね)
必要とあればサソリと同室して熟睡できる図太さを持つ彼女だが、
家庭の事情により暗殺者の魔の手に晒され続けた彼女の五感は極めて鋭敏だ。
特にこういった戦地で有れば、常に神経の一本は張り続けている。
(いーちゃん……は、居ないのだったわね)
結局、名前を聞けていないあの少年は、トイレに行ったきり戻ってこなかった。
最初は朝比奈みくるの二の舞かと焦ったが、近くに争った形跡は無く、
崖の下から、崖の上に戻ろうともしない方向に進む足跡を見つけた事から、
どうやら自分の意志で立ち去ったらしいと判断した。
理由は判らないが、今は関わらずとも良いだろう。
(デイパックと妙な物体くらいは持っていっていいでしょうに)
ダナティアはエルメスを見た。……モトラドには目が無いのに、目が合ったのを感じた。
「おはよう、起きたんだね殿下」
「起きたわ。おはよう、エルメス」
ダナティアはエルメスが何なのかよく判らなかった。
喋る乗り物。性質と使い方は判ったが、一体どういう仕掛けなのかは判らなかった。
彼女が居た世界では、機械仕掛けの類はまだ発達していなかったのだ。
(サラなら仕組みが判ったかもしれないわね)
おそらく今もこのどこかに居るであろう鉄面皮の親友を頭に浮かべる。
まだ生きているかどうかは判らない。
そう簡単に脱落するタマではないが、戦場での生き死に保証など置けないのだから。

「ん……ぅ…………」
「……そろそろ起きるかしら」
ダナティアはリナを見守った。
217過疎地脱出(2/8) ◆eUaeu3dols :2005/03/31(木) 12:06:30 ID:SnIgHAVq
夢の中――彼女の目の前に、赤い髪の剣士が立っていた。
彼女が終わりを与えた、共に戦った事もある仲間でもあった。
「今なら、あなたの気持ちが判るわ。あなたが言った事も」
「あんたはそうなる前から俺の事を判ってくれてたじゃねえか」
「……そうね。でも、実感する事になるなんて思ってもいなかったわ」
「誰だってそうさ。そんなの想像できるかよ」
彼、ルークは、最愛の恋人を殺され、暴走した人間だ。
恋人が死んだ全ての原因を憎み、殺し、それでも憎しみを止められず……世界を憎んだ。
そして、今や彼女、リナ・インバースもそうだった。
最初は薔薇十字団が憎いだけだと思っていた。だが、違った。
ダナティアと戦った時に気づいた。自分一人で生き残った所で、勝率は薄い。
彼らに復讐するなら、複数での生存手段を捜した方がまだ成功率が高い。
それなのに何故、それに気づけなかったのか。
「あたしは、この殺し合いの参加者全て、世界全てを憎みつつあった」
「そうさ。あんたが俺に警告したように、限りない憎しみはやがて矛先を世界に向ける」
「ガウリィを殺した奴。そいつの仲間達」
「その時に何もしなかった奴。力及ばなかった奴」
「ガウリィを殺した奴に従う奴。従わされる奴」
「全ての人間。世界の全て」
「「そして、自分自身」」

だから、それを一人でも多く殺せるやり方を選んだ。
ガウリィを殺した奴を殺したい。参加者全てを殺したい。自分を殺したい。
例えそのやり方がガウリィを殺した奴を喜ばせるとしても、どうでもよかった。
だけど、リナは“知って”いる。その先には何も無い。自らの満足さえも無い事を。
「俺は世界を憎み、だけど、あいつと出会えた世界が愛おしくて……自分を滅ぼした」
夢の中のルークは、最期の時の様に、疲れ果てた、そして安らかな瞳でリナを見つめた。
「あんたは、どうなんだ?」
「ガウリィが死んで悲しいのに、これ以上、悲しい終わりを積みたくないわ。それに……」
リナは寂しげに答え――拳を握りしめた。どろどろとした憎しみが炎に転じ、怒りとなる。
「あいつらをぶち倒すのに失敗なんてできない。仲間を集めて、絶対に打ち倒す!!」
それが彼女の答えだった。
218過疎地脱出(3/8) ◆eUaeu3dols :2005/03/31(木) 12:08:03 ID:SnIgHAVq
彼女はぼんやりと瞳を開いた。うっすらと明るい周囲。茂みの匂い。
そして、目の前に座っている、金髪の女性。
「…………起きたようね」
「おはよう」
ダナティアに続けて、エルメスが馴れ馴れしくおはようを言った。
「……おはよう」
挨拶をし、すぐさま続けて訊いた。
「なぜ、あたしを殺さなかったの?」
夢を見て、決意は決めた。だが、それはリナ個人の話だ。
目の前の彼女が何故自分を殺さなかったのかがまるで判らない。
「殺すか、殺さないか。それはまだ決めていないわ。……掴みなさい」
ダナティアは、騎士剣“紅蓮”をリナの手に握らせた。
「な……!?」
「あなたの道に誤りが有った事は既に指摘したわ。主催者と戦うならば、勝ち残る意味は無い。
それを踏まえて、答えることね。あなたの選ぶ道を」
ダナティアは問うた。全てを殺す道を選ぶか。全てを活かす道か。
「……あたしがこの剣で斬りかかったらどうする気?」
「あたくしも自らの全力で戦い、今度こそ叩き潰すわ」
(……正気なの?)
数時間前の戦いではリナの魔力は枯渇していた。
今は全快とは言えずとも、あの時よりは格段に回復している。
世界が違っても、同じように魔術師であるダナティアは当然それを理解している。
その上、ダナティアの左手には厚く布が巻かれていた。剣の刃を掴んだ代償だった。
右手が残っているが、どちらにせよ剣を掴む奇策など最早通用しない。
――それでも尚、彼女は勝つと宣言した。
「さあ、選びなさい」

リナは思わずくすりと笑った。何処か滑稽であり、そして、同時にその意志に敬意を抱いた。
既に答えは決まっていた。その挙げ句に、彼女はこんな無茶な問い掛けまでしたのだ。
「良いわ、共同戦線よ。一人でも多くの生存と、主催者の打倒の為に」
「決まったわね」
2人の右手がしっかりと握り合わさった。
219過疎地脱出(4/8) ◆eUaeu3dols :2005/03/31(木) 12:09:21 ID:SnIgHAVq
「亀降って地下に溜まる、だね」
「誰!?」
リナが振り返った先には……変な物が有るだけで、誰も居なかった。
「……何処にいるの?」
「何処って、ぼくはここに居るじゃないか」
変な物ことエルメスは抗議の声を上げた。
「ああ、紹介が遅れたわね。それはエルメスという名前の……もとらど、だそうよ。
あと、エルメス。それを言うなら雨降って地固まるだわ」
「……もとらど?」
リナの居た世界はダナティアの居た世界より更に魔法寄りの世界だったので判らなかった!
「あたくしもよく知らないけれど、意志のある乗り物だそうよ。喋る馬みたいな物かしら」
「なんで2人とも判らないかなぁ。いーちゃんなら、ベスパって呼ぶけど知ってたのに」
「いーちゃん?」
そういえば戦いの時、彼女の後ろに青年が居た気がする。
「彼なら去ったわ。……そうね、互いの自己紹介をしながら、食事にするわ。
朝食だけはこれから頂いておきましょう」
ダナティアは、いーちゃんの残したデイパックを開いた。

争いというのは何がキッカケになって起こるか判らないものである。
いーちゃんのパンと水を配分し(ダナティアは倹約したが、リナは一日分近く食べた)、
互いに自己紹介をし、それぞれと仲間の事を話し、挙げ句に談笑モードにまで突入した。だが。
「くっ。それにしても、なんでそんなに小食で、そんなに大きいのよ……胸」
悔しげに呟いたリナの一言により、ダナティアの機嫌は急直行大墜落した。
「単に今は倹約しているだけよ。それと、胸の事は言わないでちょうだい!」
「言われなくても口が滑っただけよ、誰か言うもんですか。
……まさか、あんた巨乳なのを気にしてるんじゃないでしょうね」
「ええ、そうよ。重いわ嵩張るわ蒸れるわ注目されるわ肩が凝るわで良いこと無しだわ」
「な、胸の重みで肩が凝るですってぇ!? も、持つ物の論理を!」
「あら、良いじゃない。その胸には邪魔にならないという利点が有ってよ!」
「お、おのれぇ! 覚悟は出来てるんでしょうねえ!?」「やる気かしら? 受けて立つわ!」
2人とも己の胸に強烈なコンプレックスを抱いていたのだが、そんな事は互いに知る由もなく。
せっかく同盟を組んだのに割と本気バトルが発生しかけたその時に、時計の針が6時を指した。
220過疎地脱出(5/8) ◆eUaeu3dols :2005/03/31(木) 12:11:07 ID:SnIgHAVq
「……多すぎるわ」
放送により公開された死亡数。23人という数字は、ほぼ5人に一人が死んだ計算になる。そして……
「涼宮ハルヒ、それに……」
朝比奈みくるが話していた彼女の友人の名前が二つも出てきた。
彼女の所属していたSOS団という集まりは半分以上が死亡していたのだ。
「さっき話してた、死んだ女の子の友人達ね。……月並みだけれど、運が悪かったのよ」
「……ええ、そうね」
ダナティアは無表情に頷いた。
5人に1人が死亡したという結果から見れば、1人は死亡していてもおかしくない。
だが、5人中3人もの死者が出た事は、不幸が偏ったとしか言いようがなかった。
「あたくしとあなたの仲間達は、概ね生き残ったようね」
「…………ええ、一応はね」
しかし、知り合いの範囲なら、リナの知り合いはガウリィを除いて3人死亡していた。
他ならぬリナが殺した暗殺者ズーマ。
まだ日が浅い事から話し忘れた、別世界の魔術師オーフェンの弟子、マジク・リン。
そして、リナに対し中立の立場を取る事が多かった魔族、獣神官ゼロス
(能力に制限は受けてたんだろうけど、まさかあいつを殺せる奴が居るなんて……)
ゼロスの強さはよく知っている。正直、彼が居る事を知った時は寒気がした。
彼より強い魔族を打ち倒した事は何度か有るが、それは相手が自殺願望を抱いていたか、
あるいは有利な条件が重なりまくった挙げ句に自分より強大な助力が有った時だけだった。
(……つくづくよく生きてるな、あたし)
この戦いで敗れた時も、普通の相手ならそのまま殺されていた公算が高い。
自分の悪運に感謝する。
(とにかく、ゼロスを殺せる奴が居るんだ。警戒しなきゃならない)
そのゼロスを殺した男、ハックルボーン神父が気絶中に近辺を通過した事など知る由も無かった。
221過疎地脱出(6/8) ◆eUaeu3dols :2005/03/31(木) 12:11:57 ID:SnIgHAVq
「禁止区域はこの三つね」
指定された禁止区域にチェックを入れ、禁止開始時間を書き込む。
ついでに、いーちゃんのデイパックの地図にも書き込んでおく。
「それで、これからどうする気?」
「……普通なら幸いなんでしょうけど。あたくし達の周囲300mには誰も居ないわ」
ダナティアの透視は大きく制限されていたが、それでも自分の居るエリアはカバーしていた。
その透視を持って確認した所、このエリアには誰も居なかったのだ。
「じゃあ、人が多い所に行くんだね?」
エルメスが訊く。
「問題はそれが何処か判らない事だけど、普通は禁止エリアに近づきたくないはずよ」
誤って侵入すれば死んでしまう見えないライン。そんな物に近づく物好きは少ないだろう。
禁止エリアに隣接したエリアを除外すると……
「南西の城に集まる可能性が有るわね」
「それじゃ、次の目的地はそこね」
2人と1台は移動を開始した。
「そうそう、そういう風に。曲がる時はハンドルを傾けて。転ばないように」
エルメスのモトラド授業を受けながら。
222過疎地脱出(7/8) ◆eUaeu3dols :2005/03/31(木) 12:12:39 ID:SnIgHAVq
何処か、モニターの沢山有る部屋で。
「で……どうするんだい、これは?」
ディートリッヒが愉しげに嗤う。
「この娘達、本気で僕らの打倒を考えているよ? こんなのも放っておくのかい?」
「ああ、放っておく」
ケンプファーが生真面目に答えた。
「この状況だ、我々の打倒を考える者など山ほど居る。
このリナという娘の仲間のアメリアもそうだ」
それは事実だった。主催者に刃向かおうという者の数はそう少なくない。
「だが、計画は予定以上に順調に進んでいる。6時間に約2割は多いと言っていい」
それも事実だ。
もしもこのまま2割ずつ死んでいけば、僅か24時間で人数は約50人になる。
「もう一度言う。間違っても下手に干渉して台無しにするな。
それよりも、刻印の方に注意しておくんだ」
「はいはい、判ったよ」
ディートリッヒはやれやれといった仕草で了承した。
223過疎地脱出(8/8) ◆eUaeu3dols :2005/03/31(木) 12:14:10 ID:SnIgHAVq
『目指せ建国チーム』
【F−5→G4の城へ/エルメスに二人乗りして移動中/1日目・06:15】

【ダナティア・アリール・アンクルージュ(117)】
[状態]: 左腕の掌に深い裂傷。応急処置済み。
[装備]: エルメス(キノの旅)
[道具]: 支給品一式(水一本消費)/半ペットボトルのシャベル/ランダム支給品(不明)
[思考]: 群を作り、それを護る。その為に多数の人との合流。
[備考]: ドレスの左腕部分〜前面に血の染みが有る。左掌に血の浸みた布を巻いている。

【リナ・インバース(026)】
[状態]: 竜破斬はまだ使えないが疲労はかなり回復した。
[装備]: 騎士剣“紅蓮”(ウィザーズ・ブレイン)
[道具]: 支給品一式
[思考]: 薔薇十字騎士団の討伐/その為の仲間集め及び複数人数での生存。

F−5の森の入り口付近に、パンと水が半分に減り、
地図にチェックマークが入っているデイパックが残されました。
ダナティアのドレスの血の染みについては前回書き忘れた物です。
224虚無使いの異世界考察(1/3) ◆3LcF9KyPfA :2005/03/31(木) 12:58:33 ID:x1D/Ey0X
(まずったな……)
一回目の放送が終わって、ヴァーミリオン・CD・ヘイズは嘆息する。
天樹錬なら生き残るだろう……そう考えていたが、甘かったようだ。
「俺の方は元から知ってる名前はなかったが……そっちは、いたか?」
と、考えていたらコミクロンが訊いてくる。
正直に話すかどうか一瞬迷い――
「……天樹錬が、知り合いだった。もう知り合いはいない」
「……そっか」
だが、落ち込んでばかりもいられない。
或いは、光明が見えてきたかも知れないのだ。ここは割り切らねばならないだろう。


――時間は二時間程前に遡る。
互いに今までの経緯や、元居た世界の話をしている最中にそれは起こった。
「黒魔術……か。ちょっと、それを見せてもらえないか?」
「あぁ、構わんぞ」
彼らの使う魔術に興味を覚え、ヘイズが言う。
そしてコミクロンが答えると、その表情が変わる。
彼が言うには、どんな些細な魔術であろうと気を緩めるわけにはいかないらしい。
「――っつ!?」
と、突然I−ブレインにノイズが走った。
この世界に来てからの制限とは違う、微弱だが確実に異質な雑音。
「……コンビネーション1−7−2」
その声が合図だった。
コミクロンの手の上30センチ程の場所に小さな光球が現れたかと思うと、パッと散ってしまう。
同時、I−ブレインに響いていたノイズが止まる。
「……やはりおかしいな。
効果そのものの制限はともかく、構成が変に歪んで少し編み難い。
さっきまでは普通に編めたんだが……」
コミクロンの独白を聞いて、ヘイズの中で何かが閃いた。
225虚無使いの異世界考察(2/3) ◆3LcF9KyPfA :2005/03/31(木) 12:59:24 ID:x1D/Ey0X
もしかすると――
「なぁ、コミクロン。今度は俺の『破砕の領域』を見てもらえないか?」
「ん? あぁ、そうだな。俺ばかり見せたんじゃ不公平というものだしな」
言うが早いか、I−ブレインの出力を上げた。
<システム起動。動作効率を60%に設定>
I−ブレインが受けた制限の正確な強度が解らないので、少し余分に動作効率を上げる。
別に戦闘状態でもないので、効果範囲は直径10センチ程に絞って演算する。
<予測演算終了。『破砕の領域』展開準備完了>
I−ブレインからの報告を受け。
右手を手近な木の幹へと寄せると、ヘイズは指を鳴らす。
 ――パチンッ
音によって揺れた空気分子がヘイズの演算通りに動き、配列を変え。
そして論理回路が組み上げられた。
「――なにっ!?」
木の幹に拳大の穴が開くのと同時、コミクロンが驚愕の声を上げる。
(やっぱりそうか!)
「おい、ヴァーミリオン……今の、構成…魔術を、声を出さずに……?」
「視えたんだな? 『論理回路』が」
「ろん、り、かいろ?」
「あぁ、いや、なんでもいい。とにかく、『何』が木の幹を破壊したのか、視えたんだな?」
「……視えた。さっきのがヴァーミリオンの世界での『魔術』なのか?」
「あぁ、そうだ――って、ちょっと待て。なんだそのヴァーミリオンって。
普通は面倒がってヘイズって呼ぶ奴が多いのに……珍しいな」
「気にするな。世紀の大天才にして科学者たるコミクロン様には容易いことだ。
……キリランシェロなんていう舌を噛みそうな名前の知り合いもいるしな」
「……そうか」
それはともかく、これで決まった。
「変な奴」だと思っていたコミクロンだったが、もしかしたら「当たり」かもしれない。
おそらく、魔法士の情報制御理論と魔術士の構成は、根本的な部分で同じ、或いは同等の構造をしているに違いない。
魔法士は論理的に、魔術士は直感的に情報の改竄をする。
226虚無使いの異世界考察(3/3) ◆3LcF9KyPfA :2005/03/31(木) 13:00:44 ID:x1D/Ey0X
ヘイズのI−ブレインのノイズや、彼の構成を編む速度が落ちているのも、その辺の相互干渉である可能性が高い。
ヘイズはそう結論した。

そして、このゲームに天樹錬が参加している。
ヘイズの予測が正しければ、どの種類かは解らないが、最低でも一本。
騎士剣の類が誰かの支給品に入っているに違いない。
もし先程の仮説が正しければ――
「最悪錬に会えなくても、剣が手に入ればコミクロンが簡単な情報解体くらいは使えるかもしれん」
――生き残る可能性が、またひとつ上がることになる。


――時は戻って現在。
「それで、これからどうする、ヴァーミリオン?」
「……『騎士剣』と呼ばれる武器を探す」
「探すとどんなメリットがある?」
「タイムラグによる接近戦での不利、という黒魔術の弱点が補強される」
「…………ふむ」
コミクロンが少し考え、告げる。
「いいだろう。だが、その騎士剣とやらが見つかったら、俺の協力も頼みたい」
今度はヘイズが考える。
「……わかった。それで何がしたい?」
「しずく、クレア、いーちゃんを探す」
自分の勘を信じきっている馬鹿が一匹、ここにいた。
227虚無使いの異世界考察α ◆3LcF9KyPfA :2005/03/31(木) 13:01:17 ID:x1D/Ey0X
【G-6/森の中/一日目 06:15】

【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:健康
[装備]:尖った石
[道具]:デイバッグ一式、有機コード
[思考]:騎士剣を探す。コミクロンに協力する。
[備考]:呪いの紋章の概要を把握
付近で魔術士が構成を編むと多少影響を受ける

【コミクロン】
[状態]:健康
[装備]:エドゲイン君1号
[道具]:デイバッグ一式
[思考]:ヴァーミリオンに協力する。勘で選んだ三人を探す。
[備考]:付近でI−ブレインが作動していると多少影響を受ける

【残り94人】
228危険なる訣別(1/3) ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/31(木) 13:31:27 ID:taJOfmtJ
頭の中から、死者の名前を告げる声がする。

幸いにしてシャナの名前がなかった事に、悠二は安堵を覚える。
「長門さん、行こう」
悠二は長門の手を取って森の中を進む。
だが悠二は気付いていない。あるいは既に無くなった彼ならば気付いただろう。
彼女の表情の僅かな変化に。そしてこれが、二人の命運を分ける事となる。


「ごめんなさい」
長門の声が唐突にそう告げた時、悠二は彼女が何を言っているのか理解できなかった。
「私は貴方と一緒に行く事は出来ない」
「どうしてさ!?」悠二が長門に理由を問い質す。
「本来私がここにいるはずがないから」
どうしてと、更に問いかける悠二に長門は自分のことを全て話した。
長門自身の正体、その主たる『情報統合思念体』、世界を変える力を持つ少女『涼宮ハルヒ』と
彼女によって集められた仲間たち、そしてその仲間の正体をも。
「そんな……、長門さんが宇宙人だったなんて……」
その事実にショックを受けた悠二は、よろよろと背後の樹にもたれかかる。
「でもそれが事実」
あくまで淡々と語る長門。
「だから私は貴方と離れて、残った古泉一樹を捜しだして対策を立てる」
「でも、僕と一緒に捜した方が効率が──」
「それは無理、貴方を間違って殺してしまう可能性があるから」
先程よりも強力なショックが悠二を襲った。
229危険なる訣別(2/3) ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/31(木) 13:32:23 ID:taJOfmtJ
「私の中には、彼女達が殺された事に対するノイズが存在する」

長門は自身の事を淡々と語る。

「このノイズの正体は恐らく、彼女達を殺された事に対する『怒り』と『悲しみ』。今はまだ何の
問題もないノイズだけど、それはおそらく私自身の行動を支配していく」

ただその声音は、長門にしてはとても優しげで──

「もしそのノイズに私が完全に支配された時、私がどんな行動を取るか予測できない。もし貴方と
一緒に行動していたら、貴方を殺してしまうかもしれない」

まるで悠二を諭しているようにも見えるその姿は──

「──だから私は貴方と離れ、一人で行動する」

だけどその顔は、僅かに寂しそうにも見えた。


予め持ってきていたデイバッグをしっかりと持って、長門は北の方へと歩きはじめた。
その姿を、悠二はただ見ている事しか出来なかった。
(なにか、言わなくちゃ……)
頭の中ではそう考えてはいるものの、身体全体が石のように全く動かない。
「長門さん……」
辛うじて名前を呼ぶ事はできたものの、その声はあまりにもか細くて彼女に届きそうはない。
そしてふと、彼女がこちらの方を向いて何かを言った。
悠二には、長門が何と言っているのか聞こえなかった。
でも、なんとなく、何をいったのかは分かった気がした。



それはきっと、永遠の別れの言葉。
230危険なる訣別(3/3) ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/31(木) 13:34:22 ID:taJOfmtJ
【F−4/森の中/1日目・06:08】

【長門有希】
[状態]:かなり疲労/僅かに感情らしきモノが芽生える
[装備]:ライター
[道具]:デイバック一式
[思考]:現状の把握/情報収集/古泉と接触して情報交換/ハルヒ・キョン・みくるを殺した者への復讐?

【坂井悠二】
[状態]:疲労。
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック一式
[思考]:シャナの捜索

【備考】
悠二がどう行動するかは不明、その辺は次の書き手さんにおまかせ。
長門暴走の可能性が出てきました。


【残り94人】
231最強は風の中に稲妻を見る(修正版) その1:2005/03/31(木) 14:25:27 ID:3DnCUUh/
何をするわけでもなく男が鉄骨に腰を下ろしている。
彼のとりあえずの目的は結局達成せずに終わってしまった。
だが彼は気落ちなどはしていなかった、むしろ気持ちは高まっている。
『決着はつけれなかったがまあそれはしょうがない、だが恐らくやつを殺したやつはまだ生きている筈だ。』
思わず笑みがこぼれる。が、彼の予想は間違っていた、彼を殺したものは既に殺されていた、というより消滅させられていた。
何故この場所を動かないかというと、ここは彼の思い出の場所によく似ていたからであった。
『これで雨でも降ってれば完璧だったんだが、そう都合よくはいかねーか。』
彼に唯一敗北を味合わせた男、彼とその男が初めてあったのはこんな場所だった。
『そういやアイツの名前は名簿になかったな、どういう基準で選んでんだ?』
軽く舌打ちをしたところで彼は人影を見た。
『・・アイツは・・。』
向こうから現れた男の雰囲気は先程まで考えていた男のそれと瓜二つだった。
「すまないが人を探している・・。」
言葉を言いきる前に相手も彼の雰囲気に気付く、腰の木刀を構えた。
232最強は風の中に稲妻を見る(修正版) その2:2005/03/31(木) 14:25:58 ID:3DnCUUh/
「くくっ、そいつがおまえの剣か?・・いいぞ、ますます気に入った。」
『アイツも剣にはこだわってなかったからな。』
鉄骨から降り、相手と向き合う。

ヒースロゥは先程少女とかわした会話を思い浮かべていた。
『体に任せる・・か。』
この敵には全神経を集中させなくてはならない、そう体は訴えかけていた。
動かないでいると相手が言った。
「どうした、こないのか?こないならこちらからいかせてもらうぞ。」
ビュッという音とともにヒースロゥの頬が切れた。
射程距離ギリギリで空間を断ち、それを利用しカマイタチを発生させたのだがそんな事彼がしるはずもない。
『・・風の呪文か?・・これはあくまで牽制、狙いは別と見るべきか。だが・・』
傷は2つ3つと増えていく。
『このままではじり貧となる、ならば・・敵の狙いどおりだとしても!』
決心は固まった。
「ハァアアア!!」
距離は8m程、いったん攻撃から外れるため相手からみて横に飛び・・一気に相手との距離を詰める!
木刀を完全に叩き込めると思ったその瞬間、相手に生じていたスキが・・消えた。
「なっ・・!?」
233最強は風の中に稲妻を見る(修正版) その3:2005/03/31(木) 14:26:41 ID:3DnCUUh/
驚きつつもとっさに剣を引き距離を取る、しかし引くのが遅かったのか、その木刀は根元から断たれていた。
「ほう・・鼻先一つ掠らなかったか、やつはこれで目を潰したんだが・・。」
満足そうにうんうんと頷く、どうやら彼にとっては十分すぎる結果だったらしい。
『どういうことだ?やつの攻撃が見えなかった・・。』
軽く動揺しつつも落ちていた鉄パイプを持ち身構える。
何がおもしろいのか、相手の笑いがさらに大きくなる。
「こいつは傑作だ、ここまでそっくりとはな!おいおまえ、名前は?」
わけが分からない、と思いつつ彼は答えた。
「・・ヒースロゥ=クリストフだ。」
相手の世界ではなかなか聞くことのない名だ。
「聞かない名だな、まあいい。俺はフォルテッシモ、呼びづらいならリィ舞阪とでも呼ぶがいい。」
『フォルテッシモ?・・(とても強い)だったかな?』
彼にとって音楽は趣味ではないが、それくらいは覚えているらしい。
「さて、俺の能力だが、見るやつから見れば空間には無数のひび割れがある、俺はそいつを広げられる、といったところだ、おまえは?」
フォルテッシモは自分の能力について喋りはじめた、ある男に話したのと同じように。

234最強は風の中に稲妻を見る(修正版) その3:2005/03/31(木) 14:29:33 ID:3DnCUUh/
「能力?そんなものは持ち合わせていない。」
ヒースロゥは答えた。
相手のいう能力とは剣術が強いとか知力がたかいとかそういうことではないのだろうと悟って。
「能力なしで俺の攻撃をかわしたのか?」
意外そうな顔をする、それほどまでの相手には彼は出会ったことがなかった。
「そんなもの、感覚を研ぎ澄ませれば自然とわかる。」
だが実際のところ、わかってはいなかった、さっきはただ体が自動的に動いただけだった。
話している間にお互いの距離は縮まってきていた。
「おもしろい・・なら、こいつはどうだ!?」
いい終わった時にはヒースロゥのいた場所が弾け飛んでいる、が、そこに彼の姿はない。相手の意思を読み、とっさに横に跳んでいたのだった。
「せいっ!」
横に持っていたパイプを投げつける、この攻撃の狙いは当然、敵に当てるためではない。
フォルテッシモが目の前で鉄パイプが砕く、鉄パイプが目眩ましとなり一瞬正面が見えなくなる、目眩ましが効果を失った時、正面にヒースロゥの姿はない。
フォルテッシモの背後から鉄パイプが降り下ろされる、完全に決まったはず・・が、途中でその動きは遮られた。
235最強は風の中に稲妻を見る(修正版) その5:2005/03/31(木) 14:30:14 ID:3DnCUUh/
「甘いな。」
空間を遮断し壁を作ったのだった。
そして彼が指を軽く動かすと同時に鉄パイプは砕け、ヒースロゥは吹っ飛ばされ壁に激突する。
「ガハッ!」
たたき付けられた衝撃で声が漏れる。
「お前の負けだ。」
目の前に、最強が立ち塞がった。
ヒースロゥは殺されるだろうと思い、覚悟を決めた・・。

「お前には見込みがある、あの男と同じように、俺の敵になる見込みが。」
唐突に彼がいった。
「おまえはまだあるものにあっていない、その殻を破る前に死んでしまうにはあまりに惜しい。」
見逃された、その行為にヒースロゥは激昂した。
「貴様、俺に生恥をさらせというのか!?」騎士としてそれは屈辱に他ならなかった。
フォルテッシモは無視して続ける。
「おまえはあるものを探せ、そいつは十字架のペンダントの形をしている・・。そして再びあったとき、今度こそ望み通りに息の根を止めてやる。」
そして最強は風に背を向け歩き出す。
その顔にはこれ以上ないほど凶暴な笑みがはりついていた。
『いわばもう一人のイナズマよ、楽しみにしてるぞ。』
236最強は風の中に稲妻を見る(修正版) その6:2005/03/31(木) 14:30:55 ID:3DnCUUh/
それに対し風は怒っていた、情けをかけた敵に対し、何よりも弱い自分に対し。
その心はその昔似たような場所で似たようなことをした男のそれによく似ていた。

A3/廃工場/6:30】
【フォルテッシモ】
【状態】興奮
【装備】ラジオ
【道具】荷物ワンセット
【思考】ブラブラ歩きながら強者探し。早く強くなれ風の騎士

【ヒースロゥクリストフ(風の騎士)】
【状態】自分に対し激昂、3か所の切り傷、背中に打撲。
【装備】鉄パイプ
【道具】荷物ワンセット
【思考】ED探す、風まかせだが彼のいう十字架が気になる。
237最強は風の中に稲妻を見る(修正版):2005/03/31(木) 14:31:54 ID:3DnCUUh/
>>185-190はなかったことに。
238Pursuer(1/2)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/31(木) 17:24:56 ID:m3M8WQyU
煙草を吸う気にはなれないまま、甲斐は神経を尖らせていた。
そしてそのまま数時間が経った後、突然甲斐の頭に直接嫌な声が響き渡った。──定時放送。
『……090朝比奈みくる、101竜堂始、115マジク・リン───』
「……いねぇみてぇだな」
そこにウィザードや海野千絵、ベリアルの名前はなかった。
ゲームに乗ることを決めた甲斐にとっては、敵──参加者は少ない方がよかったのだが。
『……次に禁止エリアを発表する。一度しか言わないから──』
「……やっべ」
地図も紙も鉛筆もあの家に置いてきてしまった。頭で覚えるしかない。
それでも現実に境界線が書いてあるわけではないので、大まかに避けるしかない。
とりあえず南西と南東の方には行かない方がいいだろう。

6時になりだいぶ明るくなったところで、甲斐は巨木から降りて東に向かった。
北の方に建物と畑らしきものが見えたが、誰かが待ち伏せているかもしれないのでやめておいた。
そしてしばらく行ったところで、半身がない死体と放り出されたデイパック──そして奇妙なものを見つけた。
「おいおい、これは……」
やばすぎるんじゃねえか──言葉を飲み込み、甲斐は戦慄した。
焦げ跡を残した、大人数人がすっぽりと入る大きさのクレーターがそこにあった。
近くにある死体の半身は、これが出来たときに消えてしまったのだろう。……跡形もなく。
異常すぎる。
誰かの武器に、これほどの威力をもつ爆弾があったのか。
「それとも“悪魔”か……? いや、これはいくらなんでも強すぎる」
何であろうと、自分の敵になることは確かなのだが。
「くそ」
こんなことで怖じ気づいている場合ではない。生きて帰るには、これを使った人物とも戦わないといけないのだ。
「……地図だけでももらっておくか」
焦る気持ちを抑えつけ、デイパックを漁る。武器はもう持ち去られているだろう。
中には地図や日用品がそのまま入っており、そして────
239Pursuer(2/2)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/31(木) 17:26:35 ID:m3M8WQyU
「……クッ…ククククク……」
甲斐は思わず笑いを押し殺した。本当は大声を出して笑いたいところだったが、それはかろうじてこらえた。
「……やっと俺にもツキが回ってきたみてえだな」
デイパックには、見慣れたカプセルが大量に詰め込まれていた。
しばしの間、興奮に身を任せた。あのクレーターの恐怖などどこかに吹っ飛んでしまっていた。
そして落ち着いた後、カプセルを五錠ほどポケットに忍ばせて──はっきりとした声で、言ってやった。
「ウィザード、俺はやるぜ」
どこかにいる好敵手に宣戦布告をして、甲斐は住宅街の方へと歩き始めた。

【残り94人】

 【E-4/平地/一日目 06:30】

 【甲斐氷太】
[状態]:平常
[装備]:カプセル(ポケットに五錠)
[道具]:煙草(残り14本)、カプセル(大量)、支給品一式(ヴォッドのもの)
[思考]:元いた住宅街(D-3)へ、ゲームに乗る、ウィザードと戦いたい
240 ◆l8jfhXC/BA :2005/03/31(木) 18:23:42 ID:m3M8WQyU
238の、
煙草を吸う気にはなれないまま
を、
煙草も吸えずにいらいらしたまま
に変更します。
241自己紹介(1/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/31(木) 18:26:35 ID:kSObaQIy
「それじゃぁまず………って、あれ?あの子達は?」
さっきの女の子達が去った後、自己紹介をしようとして周りを見渡した僕は、
出夢くんが連れてきた子等がいないことに気づいた。
「おいおい、気づかなかったのかよおにーさん」
出夢くんが馬鹿にしたように言う。
って、気づいてたなら止めろよ。
「俺たちがあの少女を捕まえた時だな、居なくなったのは。気付かなかったのか?」
「て言うか、俺とかさっきの奴らに気づいてなんでそれに気付かないんだ?俺にはそれが疑問なんだが」
凪ちゃんと零崎に言われてしまった。
「ぼくは基本的に臆病だからね。自分を誰かが見てる気配には敏感だけど、敵意がないものは気付かないんだよ」
それにしてもなんで行ってしまったのだろうか?大勢で居る方が安全なのに……
――あぁ、そうか……
ぼくは木の下に転がっている、血のついた出刃包丁を見て気付いた。
なんと簡単な理由だろう。彼は、きっとぼくたちが信用できなかったのだろう。
そりゃぁそうだ。こんな状況で、殺人鬼やら殺し屋なんて名乗る奴が信用できるわけが無い。
でも……それもしかたがないのだろう。見たところ、彼らは普通の高校生だった。
人を見かけで判断するのはどうかと思うけれど、(だってほら、姫ちゃんとか)それなら不安になってもしょうがない。
考えてみれば、ぼくの『戯言遣い』や『欠陥製品』だってかなり怪しい……と思う。
「じゃぁ、凪ちゃん。彼女……じゃ無くて彼は匂宮出夢くん。殺し屋で――」
そこまで言った時、唐突に老人と子供が一緒に喋っている様な声が聞こえてきた。
242自己紹介(2/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/31(木) 18:27:29 ID:kSObaQIy
ふむ、どうやら知り合いに死者は居ないようだ。
「凪ちゃん。君の知り合いは?」
「いや、今のところ居ない」
凪ちゃんは、地図の禁止エリアに時間を、名簿の死者に×を書き込むと、言った。
「とりあえず伸ばし伸ばしになっちゃった自己紹介でもしようか」
「そうだな、とりあえず禁止エリアもあまり関係が無いようだから無理に移動することも無いだろう。
 自己紹介するぐらいの時間は十分にある。それじゃぁまず俺から。俺は霧間凪。『炎の魔女』霧間凪だ」
うわ、なんか凪ちゃんかっこいい。
「ほのーのまじょ?ぎゃはははは!聞いたことねぇな。僕は『人食い』(マンイーター)の匂宮出夢。殺し屋だ」
出夢くんは相変わらずだ。
「さて、もう一度トラップを張りなおすか」
凪ちゃんの言葉に、ぼくと零崎はげっそりした。
243自己紹介(3/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/31(木) 18:28:30 ID:kSObaQIy
【戯言ポップ】
(いーちゃん/零崎人識/匂宮出夢/霧間凪)
【F−4/森の中/1日目・06:13】
【いーちゃん】
[状態]: 健康
[装備]: サバイバルナイフ
[道具]: なし
[思考]:ここで休憩しつつ、トラップにかかった者に協力を仰ぐ

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:上に同じ

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]: 天使の輪
[道具]:デイバッグ(支給品一式)血の付いた出刃包丁
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。

【匂宮出夢】
[状態]:平常
[装備]:???
[道具]:デイバック一式。
[思考]:生き残る。いーちゃんに同じ
「良かった……皆、生きてる」
「最悪だ……奴ら、生きてる」
 対照的な二人の声を聞いて、ミズーもほっと息をついた。フリウ・ハリスコーは死んでいない。
 至極無念そうに呟いた男――ガユス・レヴィナ・ソレルは、ウルペンが逃亡した後に遭遇した。
 一悶着あったが、彼に特に戦意がなかったため、同行している。
 ちなみに、マージョリーとの交換で手に入れた眼鏡――ガユスが言うには知覚眼鏡――は、持っていても意味がないので彼に渡した。もともと彼の持っていたものらしい。
 代わりに持っているのは大振りのナイフだ。ウルペンとの戦闘時に乱入してきた少女――新庄・運切から受け取ったもので、ウルペンが彼女を襲った際に落としていったものらしい。腰に下げてあるそれを軽く叩いて、苦笑する。彼は、わざわざ鞘まで落としていったらしい。
 森に入り、数時間の休息後に放送があった。誰の知人にも死者はおらず、禁止エリアは離れている。
(もしかしたら、運がいいのかもしれない)
 思いながら、手に持った枝で焚き火をかき回す。火は念糸でつけた。日が出てきており、煙は枝葉で隠れるので見つかる可能性は低いだろう。
 誰も彼もが戦うつもりが無いわけではない――いくら強固な障壁をつくる剣があるとはいえ、慎重に行動すべきだ。障壁を破れるものだって、いるだろう。
 ミズーは持っていた枝も焚き火にくべて、顔をあげた。地図を見ている二人に、言う。
「――行き先は決まった?」
 うん、と新庄が呟き、地図を示した。
「西、かな?」
「理由は?」
「このあたり、建造物がちらほらある。もしかしたら何か役立つようなものがあるかもしれない。……って、思う奴もいるはずだ」
「佐山君頭いいから、そういう風に動くんじゃないかなって」
「そう。……では、行きましょうか」
 頷く二人を見てミズーは立ち上がり、焚き火に砂をかけた。
【B-6/森近くの平原/一日目/06:15】
【西=B-5へ移動】

【ミズー・ビアンカ(014)】
 [状態]:健康
 [装備]:グルカナイフ
 [道具]:デイバッグ(支給品入り) 、
 [思考]:フリウとの合流

【新庄・運切】
 [状態]:健康
 [装備]:蟲の紋章の剣
 [道具]:デイバッグ(支給品一式)
 [思考]:1.佐山達との合流 2.殺し合いをやめさせる

【ガユス・レヴィナ・ソレル】
 [状態]:健康
 [装備]:リボルバー(弾数ゼロ) 知覚眼鏡(クルーク・ブリレ)
 [道具]:支給品一式
 [思考]:二人に同行。あわよくばギギナとクロエが死んでますよーに。

【ウルペンはC-6に移動しています】
246重要事項:2005/03/31(木) 19:09:54 ID:+fEftk1X
千里の判断>139-142は、>146の通りNGとなっています。
これにより、それ以降の時間軸で書かれた
自己紹介>241-243についても、NG、または、要修正となります。
自己紹介についての結着が着くまで、戯言ポップメンバーに関しての書き込みを控えてください。

千里、景については、書き込んでいただいて大丈夫です。
247礼 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 21:52:59 ID:mVuhY/E3
子爵のいる石段に向かい歩き始めたが、すぐに祐巳は足を止めてしまった。
「どうしたんだい祐巳、やっぱり気分でも悪くなったのか?」
未だ心配な目で哀川潤は祐巳を見つめる。
祐巳の先ほどまでの行為と、その決意を知っているのだ。無理も無いだろう。
「いえ、忘れ物をしました」
「忘れ物?」
祐巳は振り向き、ヴォッドを埋葬した跡に向かう。
さっき埋めたばかりなので、まだ土が湿ったままのそこには一着のコートが置いてある。
漆黒のレザーコート、ヴォッドの着ていたそのコートは、今は亡き主を待つかの如くぽつんとそこに残されていた。
血を飲むときに邪魔になるので脱がせたのだけど、
このままここに放置していくのは祐巳にはやっぱり抵抗が感じられた。
私の一方的な我侭のために彼の骸を汚してしまった。
祐巳はコートを手に取る。
裾が少し破けただけで、内側に少し血の跡が残っている。
これならば十分着れる。

バサリ、

その漆黒のコートを天に向かい掲げ、翻し、コートを身に着ける。
「あなたの形見、私が引き継がせてもらいます」
今は土の中に眠るヴォッドに告げ、私は振り返る。
「そいつを着るのかい?」
「ええ、男性モノで私には大きいかもしれませんが。これが彼への供養になると思うんです」
そう、どういった経緯で彼、ヴォッドさんがその一生を終えたのかはわからない。
だが彼にとってその死は決して納得のいくものではなかっただろう。
248礼 ◆cCdWxdhReU :2005/03/31(木) 21:53:42 ID:mVuhY/E3
だから、せめて形見の品だけでも私が使い、ヴォッドがくれた力を共に見せてあげよう。
それが祐巳にできる彼へのお礼だ。
「いいんじゃねーの? 無駄に短いスカートのナース服よりもちょいとチラリズムって感じで、
おじさん大興奮だ。それにそのコート、……いやまぁこれはいいか」
そう途中で言葉を切り
「それじゃあ今度こそ行くぜ」
今度はさっきと逆、哀川潤が先頭になり子爵の待つD-4へと二人は向かったのだった。

 【残り94人】
 【E-4/草原/7:35】
 【福沢祐巳(060) 】
 [状態]:看護婦 食鬼人化
 [装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服 ヴォッドのレザーコート
 [道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)、
 [思考]:お姉さまに逢いたい。潤さんかっこいいなあ みんなを守ってみせる 聖様を救う 食鬼人のことは秘密
D-4に向かう
 【哀川潤(084)】 
 [状態]:健康
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:小笠原祥子の捜索 祐巳の力はまだ半信半疑 祐巳の食鬼人のことは忘れたことにする
     D-4に向かう
249【魔術師と人形遣い】 ◆wkPb3VBx02 :2005/03/31(木) 21:58:46 ID:/73rgGMt
モニターが壁の一面を埋め尽くしている部屋がある。
外に出て扉のプレートを見ればその部屋が警備室であることが分かった。
その部屋の中央、椅子に腰掛けた長い黒髪の男が細葉巻(シガリロ)の煙を燻らせながら手に持った書類を一枚一枚捲っている。
男の名はイザーク・フェルナンド・フォン・ケンプファー。"魔術師"と呼ばれる男。
唐突にノックを欠いて扉が開き、天使と見紛う程美しい少年がゆったりした歩調で入ってくる。
「部屋に入る時はノックくらいしたまえよ"人形遣い"」
少年の名はディートリッヒ・フォン・ローエングリューン。"人形遣い"と呼ばれる少年。
男は振り返えもせずに言葉を投げかけ、休むことなく書類に目を通していく。
「よく入ってきたのが僕だと分かったね"魔術師"」
"人形遣い"と呼ばれた少年は芸術的とすら言える顔を驚きの表情にして"魔術師"に答える。
「そこのモニターに映っていたよ」
"魔術師"はさしたる感慨もなく答え、空いた手で細葉巻の灰を落とす。
少年は「ああ、そう」と適当に返事をして、男に近づく。その視線は男の持つ書類に注がれていた。
「……それは何の書類だい?」
「六時まで生存者の詳細だよ。思ったより減っていたのでね」
男が手に持っているのは二十枚弱の書類。その一つ一つに姓名や経歴など個人情報が細かく書き込まれている。
少年は曖昧な相槌を打った後に思い出したように男に尋ねた。
「イザーク、君は誰に賭けたんだい?」
「賭ける?」
男の訝しむ返事に少年は「あれ?」と声を上げ、男の疑問に答える。
「他の皆は誰が生き残るか賭けをしていたのに、君はしなかったのかい?」
「生憎私はビジネスに私情を挟まないのでね。仕事として取り組んでいる」
男の乗り気でない返答を軽く聞き流して、少年は男に改めて問うた。
「で、イザーク。君は誰が優勝すると思う?」
250【魔術師と人形遣い】 ◆wkPb3VBx02 :2005/03/31(木) 21:59:16 ID:/73rgGMt
ソファの横に立った少年を見ずに、男は書類を机の隅に置きながら答えた。
「さてね。君は誰かに賭けたのかね?」
「僕は54番の彼が有力だと思うんだけどね。随分と強そうだし」
少年は重なった紙の中から一枚を抜き出し、男に見せた。紙面には『054 ハックルボーン』と書かれており、その横に屈強な男の顔写真が載せられている。
「ああ、それならば私は彼女を推そう」
男が手にしたのは『026 リナ・インバース』と書かれた紙。男と少年は互いに見せ合うと微笑しながら机の隅に重ねた。
「一体どうなることやら」
少年の口調はどこまでも暢気でどこか他人事として傍観している節があった。
「"自分一人で石を持ち上げる気がなかったら、二人でも持ち上がらない。"―――ゲーテ。
生き残るにしろ逆らうにしろ、彼等は結束するだろう。私達は観ているだけで良い」
男は癖とも言える格言の引用をしながら細葉巻を灰皿に押し付けて消した。
「……ああ、そうだ。さっきの娘の話、聞いてみようよ」
少年は楽しげに微笑みながら、机の中央を占める機材へと手を伸ばした―――

【一日目 6:12】
251失った者たちの鎖 1/3 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/31(木) 23:32:57 ID:1xw6+ZKX
シズはただ黙っていた。
ティーの死を知り、現実を知り、故に黙っていた。

護れなかった。その現実を今知った。
故に黙っていた。だがやっと口を開く。

「大馬鹿者だな、俺は―――」

大きく溜息をつき、目の前を見据えた。
これ以上悲しむわけには行かない。
これ以上人を悲しませるわけには行かない。
だから動かねばならない、そう思った。

だが、自分は何をした?
恐怖に駆られた少女を、説得も出来ず殺しただけ。
馬鹿な道化だ、偽善者だ。

いっそ人の夢も希望も壊してしまう立場になってしまおうか。
今の自分にはお似合いだろう、と自嘲する。
だがそうするわけには行かないのも事実だ。
ここで自分は闇に負けてはいけないのだ。そう言い聞かせた。

「せめて、償わせてくれ……ティー」

そう呟いたと同時に、入り口のベルが鳴った。
252失った者たちの鎖 2/3 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/31(木) 23:34:12 ID:1xw6+ZKX

シズがその音に気づくと、すぐにレイピアを手に取った。
そして警戒し、入り口をじっと見つめた。

「………誰?」

見るとそこには女性がいた。更には自分に話しかけている。
まずは名乗るべきか。何にしても始まらない。
シズはカウンターから立ち上がった。

「俺の名前はシズだ。このゲームを止めようと思っている。
 まぁ既に人を殺してしまったけれど、ね。ただの偽善者だ……宜しく」
「……私の名前は茉理。鳥羽茉理よ。
 私も……私も、偽善者かも……知れない……」

そう言うと茉理は、ぺたりとその場に座り込んでしまった。
それを見て、シズは手を差し伸べようとしたが……やめた。
罠かもしれないというこの状況に似合う思考は持っていたし、
大体何も知らない今の自分が差し伸べる手などに誰が答えようか。

「お願いがあるの……。私の今までの話を、聞いて……。
 そして、できれば仲間になって……お願い、お願い」

茉理は言った。
感情の捌け口が欲しかったのだ。全てぶちまけたかったのだ。
だから今、彼女は枯れたはずの涙をまた両目に浮かべ懇願した。

「わかった、聞こう」

シズはそう言ってレイピアを置き、今度こそ本当に手を差し伸べた。
茉理はその差し伸べられた手に答えた。
253 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/31(木) 23:35:03 ID:1xw6+ZKX


【A-3/住宅街の喫茶店/1日目・7:24】

【シズ】
[状態]:正常
[装備]:レイピア
[道具]:2人分のデイバッグ(支給品入り) 斧
     簡易救急セット 紐の束 目の細かい布 ジッポー(ライター)
[思考]:キノ、陸、エルメスを探す 鳥羽茉理の話を聞いてあげる
[備考]:自分の命を狙うものには説得を試みますが、
     通じなかった場合は相手を躊躇無く殺すつもりです。

【鳥羽茉理】
[状態]:健康 精神的に弱っている模様
[装備]:強臓式武剣"運命" 精燃槽一式(出典:機甲都市伯林)
[道具]:デイパック(支給品一式) 手鏡
[思考]:始の亡骸を見つける 今までの自分の思った事、行動をシズに話す
[備考]:禁止区域の情報を知りません

【残り94人】
254そんな大事なものなんだ……これ ◆xSp2cIn2/A :2005/03/31(木) 23:39:30 ID:kSObaQIy
「かはは!やっぱりか!」
 人間失格の殺人鬼は、茂みに飛び込み影を見た瞬間、確信したようにつぶやいた。
そこに居たのは中学生くらいの、やけにグラマーな少女だった。
その少女は、手に持った鉄パイプを杖のようにつきながら、左足を引きずっている。
「ぼ……ボクの…わっか……かえし…て」
「ぎゃはははは!何のことだかしらねーが、とりあえず寝てもらうぜ」
出夢はそう言うと、一瞬で少女に肉薄し、鳩尾に拳を叩き込む。
「ぼ…ボクのわっ……」
ドズン!
「うっ!」


ドズン!
すごく嫌な音が、僕の耳に響いた。
出夢くんの一撃を喰らって体が半分に千切れてなければいいけど……
物凄い音の後、肩に小柄な少女を担いだ零崎と出夢くんが、茂みの中から出てきた。
「凪、やっぱりあいつだったぜ」
あいつ?知ってる人かな?
「あー糞ッ!ここまで手加減するとこっちが気持ち悪くなる」
なんだかとんでもないことを言ってる出夢くんは置いといて。
「知り合い?それにしては随分乱暴に扱ってるけど」
放り投げるように少女を木の下に置いた零崎を見て、ぼくは凪ちゃんに聞いた。
「あぁ、さっき言ってた「ぴぴるぴ」のガキだ」
零崎が答える。
え?と言うことは、こんな風にしても意味が無いんじゃないのだろうか?
ぼくの思っていることを察したのか、零崎がさらに答える。
「あぁ、本当は殺っちまおうかと思ったんだが、今回はさっきと様子が違ったんでね」
「様子が違った?」
「あぁ、さっきは「ぴぴるぴ」しか言わなかったんだが、今度はわっかを返せだの何だの
 言った上に、殺気が全く感じられなかった」
255そんな大事なものなんだ……これ ◆xSp2cIn2/A :2005/03/31(木) 23:40:17 ID:kSObaQIy
?どういうことだろうか?しかし、わっかをここまで取り返しにくるということは、
あの零崎が持っているわっかは、かなり重要なものなのだろう。そう、少女の生死にかかわるような。
そのとき。
「ん……うぅ………ハッ!」
さっき気絶させたばかりなの少女が、勢いよく立ち上がった。
「なッ!どういう体してんだよ!」
零崎が驚愕の声を上げる。
「チッ!」
再び駆け出そうとした出夢くんを、凪ちゃんが止める。
「まて、今のあの子なら会話が成立するかもしれない」
「ボクのわっか……かえして」
立ち上がった少女は、視界に零崎を捉えると、今にも泣き出しそうな声を出す。
うぅ!なんだか凄まじい罪悪感がっ!
「わかった、俺の質問に答えたら返してやろう」
凪ちゃんの言葉に振り向く少女。おぉかなりの美少女だ。
「こたえる……ボク答えるから……はや…く……うぅ!」
なんだかぼくたちが寄ってたかって、あの娘を虐めてるようだ。ていうかエロい。
「まず、なんでそんなに、あのわっかが欲しいんだ?」
「ぼ、ボク達天使は…うぅ!天使のわっかが無いと……」
そこで少女は顔を赤らめる……って!天使って言いましたか?あの娘は!
「げりぴーになっちゃうんだ……」
うわぁ………げりぴーって………
「「「「やな天使」」」」
ぼく達四人の声が見事にハモった。
256そんな大事なものなんだ……これ ◆xSp2cIn2/A :2005/03/31(木) 23:41:27 ID:kSObaQIy
【戯言ポップ】
(いーちゃん/零崎人識/匂宮出夢/霧間凪)
【F−4/森の中/1日目・05:45】
【いーちゃん】
[状態]: 健康
[装備]: サバイバルナイフ
[道具]: なし
[思考]:ドクロちゃんに質問。休息をとる

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:上に同じ

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]: 天使の輪
[道具]:デイバッグ(支給品一式)血の付いた出刃包丁
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。

【匂宮出夢】
[状態]:平常
[装備]:???
[道具]:デイバック一式。
[思考]:生き残る。いーちゃんに同じ
257そんな大事なものなんだ……これ ◆xSp2cIn2/A :2005/03/31(木) 23:45:03 ID:kSObaQIy
【ドクロちゃん】
[状態]: 頭部の傷は軽症に。右手腱、左足腱は、杖を使えばなんとか歩けるまでに
    天使の輪もない。
[装備]: 鉄パイプ
[道具]: 無し
[思考]: ボクの天使のわっか返して!
  ※能力値上昇中。少々の傷は「ぴぴる」で回復します。

「そんな大事なものなんだ……これ」はNGになった「自己紹介」の前の話になります。
詳しくは>>246をどうぞ
また、改定版「自己紹介」は避難所の修正スレに再投下します。
258竜意の顕現(1/3) ◆J0mAROIq3E :2005/03/31(木) 23:58:38 ID:Qocaij1P
――101竜堂始、115マジク・リン

……以上、23名。

「冗談……だろ? 始兄貴が……?」
 竜堂終はあまりのショックに手にしていたペットボトルを取り落とす。
 茉理の無事だけ確認しようと気楽に聞いていた放送は、有り得ない名前を告げていた。
 竜堂始。
 竜堂家の長兄にして家長。
 失職中の元講師にして、終にとっての小遣い管理人。
 殺しても死なないはずの、終が絶対に勝てないと思う三人のうちの一人。
 聞き間違いと思うには彼の聴力は優れすぎていたし、聞いたときの心も平常だった。
 自分が化け物と交戦していなければ一笑に付していただろう。

 ドクン。

 心臓が熱い。湧き出す感情は悲しみよりむしろ怒りが大きい。
 説教ばかりしてすぐ小突く兄。自分のB級映画好きを遥かに超える古書マニアの兄。
 兄弟には強いくせに茉理には頭の上がらない兄。
 そんな始の姿を一つ思い出すたびに、吐き気がするほど大きく心臓が震える。
259竜意の顕現(2/3) ◆J0mAROIq3E :2005/03/31(木) 23:59:33 ID:Qocaij1P
「っく…落ち着けっておれ……」
 胸を押さえても感情は荒ぶるばかりで少しも鎮められない。
 そして最悪なことにその状態に終は心当たりがあった。
「竜に…なっちまう……」
 健康的に焼けた肌が、波打つように光る。
 余分な思考が削ぎ落とされ、自分が何故怒っているのかすら忘れそうになる。
 まずい。
 初めて竜身を現したとき、その竜はただの猛獣として荒れ狂った。
 始の精神と繋がっていて初めて制御できた竜への変化。
 加えて力を制限するこの島。抑える意志さえ制限されたように歯止めが効かない。
 どうなるのか想像などできなかった。
「家訓曰く怨みは十倍返しとはいえ……うっかり人殺しちゃったら……始兄貴、怒るだろうな……」
 その寂しげな言葉と裏腹に、瞳は凶暴さを増し、全身が光に包まれる。
 次男に堪え性がないと評価された精神は、簡単に竜としての本能に浸食される。
 東京都中野区在住・竜堂終としての思考が途切れる直前、終の脳裏にはまだ無事な従姉妹の姿が浮かんだ。
「茉理ちゃんだけは……助けないと……」
 閃光。
260竜意の顕現(3/3) ◆J0mAROIq3E :2005/04/01(金) 00:01:06 ID:Qocaij1P
 最強の獣の気配に、近くの森から全ての鳥や虫が慌てて逃げ出す。
 終の皮膚を、最高級の真珠を思わせる美しい白鱗が覆い尽くす。
 精悍な瞳が爬虫類のそれへと変貌する。
 しかし、何かに阻まれるようにその変化は急停止した。
 閃光の後に残ったのは人身のまま竜の鱗と凶貌を持ち合わせる、異形の生き物だった。
 不完全な竜への変化。
 “それ”は自らの無様な姿を見、怒り狂うように咆吼した。
 ヒトの声帯からは不可能なその咆吼は広域に広がり、海面さえ震える。
 靴を突き破った爪が砂浜を噛むと同時、彼は獲物を求めるように駆け出す。
 ――マツリチャンヲ、マモル。
 その意志だけを残し、猛竜は北へと疾駆した。

現在位置 【E-7/海岸/一日目、06:02】

【竜堂終】
[状態]:竜への不完全な変化(精神的にはかなり竜寄り)
[装備]:ブルードザオガー(吸血鬼)
[道具]:なし
[思考]:1.茉理を守る 2.それ以外の一切は動物的本能(攻撃する者は殲滅)
261己が使命、生きる意味(1/3):皇紀2665/04/01(金) 00:39:21 ID:XwoGw227
 脳裏に響いていた、死亡者の名前と禁止エリアの発表が終わった。
「よかったぁ……みんな無事みたい」
 大きく安堵の溜息をつく。
 海岸に座礁している大きな難破船の一室に、その少女はいた。
 ゆったりとしたローブを着た、幼い少女。
 出雲・覚が見たら、アリュセと同じ服装、同じ顔立ちであることに驚いたことだろう。
 違いといえば、アリュセがしっとりとした黒髪であるのに対し、この少女は鮮やかな金色の髪をしていることか。
 少女の名は、リリア。
 フェルハーン大神殿の誇る、ウルト・ヒケウと呼ばれる長命な大魔導師三人娘の一人である。

「うん、アリュセも王子もイルダーナフも、そう簡単にやられたりしないもんね」
 今まで休んでいたベッドの上からぴょいと飛び降り、立てかけてあった長い金属製の槍に手を伸ばす。
 その杖にはコンソールがあった。
 リリアが手に取ると同時に、そのコンソール部に文字が表示される。
『オハヨウ』
「うん、おはよう。え〜とぉ……、G−sp2(ガスプツー)!」
『アタリ』
「えへへ、やっと覚えられた」
 リリアの支給品として配られた、意思を持つ概念兵器。
 対話のできるこの槍と一緒だったことで、皆と離れ離れになった今でも、不安に押しつぶされることはなかった。
 自分の身長よりも長いG−sp2に魔術を掛け、重さを軽減する。
 肩に担いで何とかバランスを取ると、ドアを開けて廊下に出た。
 色んなところにG−sp2を引っかけながらも、外を目指す。
『カナシイノ』
「ごめんなさい、ちょっと我慢してね。そういえば、G−sp2のご主人様?……何だっけ?」
『チサト』
「そうそう、その人も無事みたい。一緒に探しに行きましょうね」
『ウレシイノ』

262己が使命、生きる意味(2/3):皇紀2665/04/01(金) 00:41:16 ID:XwoGw227
 そうこうしているうちに、甲板に出た。
 日は昇りかけているようだが、この甲板からではまだ太陽は見えない。
 小さな入り江になっているこの海岸は、周りを低い崖で覆われており、周辺からは死角になっているのだ。
 普段なら、日常的に使用している飛行魔術で崖の上までひとっ飛びなのだが、今は自前の足で坂道を歩くしかない。
「む〜、王子がいれば抱っこしてもらえるのに……」
『メンドイ? メンドイ?』

 崖の上に出ると、そこはかなり広い草原だった。
 一気に視界が広がったが、見える範囲に人の姿はない。
 朝露に濡れた草の匂いが心地よい。
 海風が草を揺らし、さわさわと音を立てていた。
(殺し合いが行われてるなんて、まるでウソみたい……)
 そう思えてしまうほどに、その風景は平和そのものだった。
 だが、先ほどの放送で読み上げられた二十人以上もの名前は、確かにこの数時間足らずで失われた命があるという証なのだ。

 胸いっぱいに朝の空気を吸い込み、気を落ち着けるように一度大きく深呼吸。
 ウルト・ヒケウであることの意味。
 来るべき災厄から人々を守る、そのために自分たちは生きてきたのだ。
 そして、それはこの世界でも変わるまい。
 心は決まった。
 
「さ、行こう。G−sp2!」
『ガンバルノ』


【残り94人】
263己が使命、生きる意味(3/3):皇紀2665/04/01(金) 00:42:00 ID:XwoGw227
【B-8/海岸沿い/1日目・06:20】

【リリア】
[状態]:健康
[装備]:G−sp2
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:できるだけ多くの人々と共にこの世界から脱出/アリュセ・カイルロッド・イルダーナフ・風見千里を探す


出典:
G−sp2@終わりのクロニクル
264未知との遭遇 ◆lmrmar5YFk :皇紀2665/04/01(金) 02:39:26 ID:e2JNF3ad
…痛い。
福沢祐巳は、脳内でがんがんと響き渡る痛みを気にしないようにして、前を行く哀川潤を追った。
潤の歩行速度は、一般女性と比べると相当に速い。本人は普通に歩いているつもりなのだろうが、やはり元々の身体能力の差なのだろう。
ただ『歩く』というだけの動作であっても、彼女のそれには一歩一歩に全く隙や無駄が見当たらないのだ。
リリアンでスカートの裾を翻さないよう徹底的に躾けられてきた祐巳にとってみれば、彼女から離れないようについて行くだけでも精一杯だった。
そのうえ、先ほどから異様に頭が痛む。ぐじぐじと脳に何かが染み込んでいくように、ぎりぎりと頭骨を万力で締め付けられるように、ただひたすら痛い。
その理由が、先刻口にした吸血鬼の血液による作用なのかは、祐巳には分からなかった。
あの部屋に集められてからこっち、半日以上も緊張のし通しだったのだ。単に疲労が出ただけなのかもしれない。
それに、あの人(人といってよいのか疑問だけれど…)も何も言っていなかったし…。
『吸血鬼』。その響きに、祐巳は改めてぶるりと肩を震わせた。
自分はもはや人間ではない。それは自分が決めたことで、その選択自体には後悔はない。
けれど、異形の者になってしまった自分を、お姉さまが見たら一体どう思うのか。…それだけがとてもとても心配だった。
気味が悪いとはねつけるだろうか、それとも、それでも変わらず私を抱きしめてくれるだろうか?
最も慕う女性にはねのけられる光景を想像し、祐巳は顔を青ざめさせた。
それは、少なくとも彼女にとっては、世界で二番目に(― 一番はもちろん祥子の名が放送で流れることだが―)過酷な想像だ。

「…どうした、祐巳ちゃん。ちょっと休むかい?」
ぼうっとその場に立ったままの祐巳に、彼女の眼前を歩いていた潤が心配そうに問う。
その言葉に、祐巳は両手を大きく顔の前で振って返事をした。
「い、いえ! 大丈夫です!」
265未知との遭遇 ◆lmrmar5YFk :皇紀2665/04/01(金) 02:40:12 ID:e2JNF3ad
これ以上潤さんに迷惑をかけてはいけない。祐巳はそう思い、精一杯の強がりで返す。
しかし、相手は『人類最強の請負人』こと哀川潤である。祐巳ごときのついた嘘が見破れぬはずもない。
「あたしに嘘をつこうなんて1万とんで38年くらい早いね。疲れたなら疲れたってちゃんと言いなよ?」
そう言って祐巳の頭をぽんぽんと叩いた潤が、驚いたように叫ぶ。
「…祐巳ちゃん、すごい熱じゃない!」
潤が驚くのも無理はない。祐巳の身体は、いまや確実に変化を遂げていた。いや、それは進化と呼ぶべきなのかもしれない。
人から怪物へと。ただの女子高生から、恐るべき『食鬼人』へと。
ふつふつと沸き立つ血肉が、細胞の一つ一つが、彼女の脆弱な身体を別のものへと作り変えるべく作業している。
その過程は、少女の想像以上に辛い物だった。
「えーと、この辺だと…。よし、とりあえずここ行こう」
手にした地図を数秒眺めると、潤は祐巳を一旦休ませられる場所のあたりを付けた。
はあはあと荒い息を吐く祐巳をいとも軽々しく抱えあげると、その力強い背にひょいと背負う。
「看護婦で熱と来たら『先生、私も身体が熱いんです…。診て貰えますか?』だな。ドクターに向けて胸をはだけるナース、そして!」
一人でくだらないことをぶつぶつと呟きながら、潤は先ほど以上のペースで足を進める。
その速さは、細身とはいえ一人の少女を背負っていると、にわかには信じられない程だった。

「ここ、か」
潤は、祐巳の身体を背負ったまま、E-4地区の工場倉庫前に立っていた。
地図で見た限り、祐巳に休息を取らせられそうなのは、この辺りでここだけだ。
子爵たちの元に戻ってもよかったのだが、距離を考えると、戻る前に少しでも疲れを取らせたほうがいい。
閉ざされたその扉を潤が開け―ようとした瞬間、その扉はまるで自動ドアのようにひとりでにするりと開いた。
266未知との遭遇 ◆lmrmar5YFk :皇紀2665/04/01(金) 02:40:57 ID:e2JNF3ad
ヤバい! よりによってこんなときに敵かよ!?
そう思った潤が後退しようとした刹那、聞くだけで気の抜けそうな声が、彼女の耳に届いた。
「あとは、グリーンだよ。やっぱりヘンタイヒーローは五人そろってヒーロなんだから!」
「ミリアの言うとおりだな! 五人いないヒーローなんて詐欺だ!」
「捕まっちゃうね!」
「死刑だ!」
「嘘!? アイザック、死刑は厳しすぎるよ!」
「そうか…。それじゃあ無期懲役だ! 死ぬまで牢屋! 食事は三食ポップコーン!」
「さっすがアイザック! 素敵な罰だね! それなら一生入ってたいよ!」
そのあまりにテンションの高い、そのうえひどく破綻気味な会話に、哀川潤は思わずその場で固まる。
…なんだこいつら。一応敵意はなさそうだが装ってるだけか? いやでもこの空気は罠とかそういうものでなくあくまで天然みたいだし…。
しかし、次の瞬間、目の前の二人が嬉しそうに発した言葉に彼女の脳神経は再びフルに動き出す。多分に混乱しながら。
「おい、ミリア!」「ねぇ、アイザック!?」
「「グリーン発見!」」

 【残り94人】
【E‐4/工場倉庫/一日目8:00】
【アイザック】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「グリーン発見!」

【ミリア】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:なんかかっこいいね、この拳銃 (森の人・すでに一発使用)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「グリーン発見だね!」
267未知との遭遇 ◆lmrmar5YFk :皇紀2665/04/01(金) 02:41:41 ID:e2JNF3ad
 【福沢祐巳(060) 】
 [状態]:看護婦 食鬼人化 熱で朦朧とする
 [装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服 ヴォッドのレザーコート
 [道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)、
 [思考]:お姉さまに逢いたい。潤さんかっこいいなあ みんなを守ってみせる 聖様を救う 食鬼人のことは秘密

 【哀川潤(084)】 
 [状態]:健康
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:「こいつらは何なんだ!?」
小笠原祥子の捜索 祐巳の力はまだ半信半疑 祐巳の食鬼人のことは忘れたことにする
祐巳の様子を見る
268二万年前の知略(1/2) ◆ItrRAf7SNk :皇紀2665/04/01(金) 03:15:37 ID:bqHulKZF
以上、23名。
「なっ何だと!」
灯台の中で仮眠を取っていたオフレッサーは、その言葉が頭に響いた瞬間に叫んでいた
ヤンが死んだ事に驚きはない、彼はヤン・ウェンリーと直接戦う立場には無い。
別に死者の数が多過ぎるとも思ってない、
事実この男を同じ時間だけ戦場に放り込んでおけばこの十倍以上の敵を屠っているだろう。
「この俺が出遅れただと!」
それは宇宙での艦隊戦主体の文明の中、尚且つ家柄重視のゴールデンバウム王朝にあって
白兵戦で直接流した血の量だけで最高幹部にまでなった帝国軍装甲擲弾兵総監オフレッサー
上級大将にとって最大級の屈辱であった。
「クソッ俺のバトルアックスさえあれば、いやあの場での殺し合いなら一時間で終わっていたものを」
悪態をつきながら禁止エリアのメモをする、その顔に再び笑みが浮ぶ。
「そこと此処か、つまり……」
もう一度地図を見、G-1をチェックする。
「ガハハハハ!この位置なら確実に獲物に出くわすという事だな」
どうでもいいがオフレッサー、その位置は絶対間違ってるぞ。
269二万年前の知略(2/2) ◆ItrRAf7SNk :皇紀2665/04/01(金) 03:18:28 ID:bqHulKZF
【Aの7/灯台/06:03】

【オフレッサー】
[状態]:健康
[装備]:水晶の剣 出典:卵王子カイルロッドの苦難
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:皆殺し、G-1に移動

※水晶の剣
《語らぬもの》が最終巻でカイルロッドに与えた長剣、憎悪の渦を切ったり
かざす事で衝撃波を防いだりしている事から魔法や魔法生物に対しても
有効であると思われるが、オフレッサーにその知識は無い。
270 ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/01(金) 03:56:57 ID:zwme50Z0
今日も今日とて投下宣言。
生活パターン崩壊中。
271大佐と逃がし屋の決意 1/3  ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/01(金) 04:00:40 ID:zwme50Z0
朝日が差し込み始めた森の中、土が盛られた場所がある。
盛り土の中央には折られた枝が立てられている。
それは、酷く簡素な墓。
横には黒衣を纏った男、ダウゲ・ベルガー。
少し離れた所には、木に背をもたれて眠るテッサことテレサ・テスタロッサ。
――もう朝か。早いものだな。
シュバイツァーを埋葬させた二人だが、
ロクな道具も無く人一人埋める穴を掘るのは、随分な大仕事だった。
途中でテッサを寝かせたのだが、果たしてそれは一体いつ頃だっただろうか。
軽い疲労を感じながら、ベルガーは呟いた。
「……仇くらいは取ってやるさ。だから成仏しろよ、へラード・シュバイツァー」
そして数分後、放送が流れる。

「――051ユージン、057ガウルン、058クルツ、063島津由乃――――では、諸君の健闘に期待する――」
死亡者と禁止エリアを紙に書き取り、
この声はテッサにも聞こえていたのだろうか、と彼女を見やる。
どうやらその通りらしく、テッサは目を覚まし、――その小さな体を震えさせていた。
「そんな……ウェーバーさんが……」
「おい、どうしたテレサ。まず落ち着け。何があった?」
その一言で、テッサは――表面上だけでも――落ち着きを取り戻す。
どんな異常事態にあっても、彼女は軍人であった。
「058番、クルツ・ウェーバー。彼は有能な軍人で、……私の部下でした」
彼女が名乗った『大佐』という肩書きをベルガーは内心疑っていたのだが、
それを抜きにしても、彼女にとってクルツという男が大切な人間だということが理解出来た。
272大佐と逃がし屋の決意 2/3  ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/01(金) 04:02:04 ID:zwme50Z0
「君も親しい人を失ったのか……」
何か考えるように少し間を置いて、ベルガーはまた口を開いた。
「聞いてくれ、テレサ・テスタロッサ」
呼びかけに、少女はうつむいていた顔を上げる。
「放送が事実ならば、この島で既に23人もの人間が死んでいる。
ということは、俺達を襲ったあの大男のような殺人者が他にもいると考えていいだろう。
――質問だ、テレサ。君は、生きて帰りたいと思っているか?」
「と、当然です。何故そんな……」

「親しい人を見殺しにしてでも逃げる。君にその覚悟はあるのか?」

「………」
長い沈黙が続き、そしてテッサは答えた。
「……私は、仲間を何度も失っています。私を守る、そのためだけに死んだ人もいます」
過去の痛ましい事件を思い出し、言葉が詰まる。
「……ですが、私はただ守られるだけの人間でいたつもりはありません。
まだ生きている二人の友人と、共に帰りたい、……いいえ、絶対に帰ってみせます」
そう答える彼女の目には、強い意志の光が宿っていた。
その光が、歴戦の中で培われてきたことをベルガーは知らない。が、
――歳の割りに良い目をしているのは、あいつと同じだな。
ヘイゼル・ミリルドルフ。この島にいないベルガーの恋人は、
十五歳の時に一つの戦争の中心に立たされた。
平凡な女学生だった彼女も、自分で進む道を選び、成長していったではないか。
そのことをベルガーは思い出す。
「……自分の命を大切にしなければならない場面では、その答えは零点だ。
だが、だがな、テレサ・テスタロッサ」
言葉を一度切り、そして続ける。
「他人を救おうとする人間は、その時点で既に『強さ』を持っている。
そして、他人と自分、両方を救うことが出来た時、その人間は真の『強者』となる。
こんなふざけた島から逃げるとしたら、それを成せるのは強者だけだ。
二度は言わない、忘れるな」
273大佐と逃がし屋の決意 3/3  ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/01(金) 04:04:13 ID:zwme50Z0

「ところでテレサ。俺は昔、『逃がし屋』なんて商売をやっていてな」
ベルガーは立ち上がり、大太刀『贄殿遮那』を腰に差し直す。
「君が友人と逃げたいと言うのなら、それに協力させてもらおう。
今回限りの特別サービスで、料金はタダにしてやる」
「え? ですが……」
「この島に共に連れてこられた、たった一人の友人はもはや土の下だ。
最後の一人になるための殺し合いに参加するつもりも無いし、
それならば精々他人のために働いてやるさ。
君みたいな少女を一人にするわけにもいかないしな」
「……ありがとうございます、ベルガーさん」
頭を下げるテッサに向けて、ベルガーは軽く手を振ってみせた。


【残り94人】


【G−3/林の中/06:05】

【ダウゲ・ベルガー】
[状態]:心身ともに平常
[装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ 黒い卵(天人の緊急避難装置)@オーフェン
[道具]:デイバッグ×2(支給品一式)
[思考]:テレサ・テスタロッサを護衛する。
・天人の緊急避難装置:所持者の身に危険が及ぶと、最も近い親類の所へと転移させる。

【テレサ・テスタロッサ】
[状態]:心身ともに平常
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式) UCAT戦闘服
[思考]:宗介とかなめを探す。
274死色の逃避(1/4) ◆3LcF9KyPfA :皇紀2665/04/01(金) 04:56:06 ID:H1WLV0HZ
「「グリーン発見!」」
アイザックとミリアが勢いよく叫ぶ。ビシッと擬音が聞こえそうな程に指を突きつけながら。
「誰がグリーンだ誰が! しかもヘンタイヒーローって……よく解らないがそこはかとなくムカつくな、なんか」
潤が不満と胡散臭げな視線を二人に向けるが、当の本人達は一向に気にする様子も無く、
「これでヒーローが揃ったな!」
「完璧だね!」
ひたすらにはしゃいでいる。
「……なんなんだこいつら……」
そのハイテンション……を遙かに超えたアッパーテンションに潤が頭を痛めていると、倉庫の奥から声がかかる。
「誰か、来たんですか……?」
恐る恐る、といった感じで現れたのは、要少年だった。
彼は潤を見つけると一瞬ビクッと後退さったが、次の瞬間には今にも泣きそうな顔になって潤に訊ねてくる。
「あ、あの……その背中の人は?
どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「――はっ!?」
その言葉で我に返った潤は、背中の祐巳のことを思い出す。
アイザックとミリアが当てになりそうもないと悟った潤は、要少年の近くまで歩いていくと口早に告げる。
「そう、そうなんだ。連れの娘が急に熱出して倒れちゃってね。
すまないがちっとばかし休ませてもらえないかな」
聞くや否や、大慌てで倉庫の奥へと引き返すと、要少年が促す。
「勿論です! どうぞこちらへ!」
そして自分の服を一枚脱ぐと、バッグからタオルを取り出し服に巻いて、即興の枕を作る。
「さぁ、どうぞ」
「サンキューな。助かるよ」
その枕に頭が乗るよう祐巳を寝かせると、潤は礼を言う。
275死色の逃避(2/4) ◆3LcF9KyPfA :皇紀2665/04/01(金) 04:56:39 ID:H1WLV0HZ
「それと……もしよかったら、少しこの娘を診ててくれないかな?
周囲に怪しい奴がいないかどうか、少し見回ってきたいんだが」
「それは構いませんけど……大丈夫ですか? 気をつけてくださいね?」
「あぁ、大丈夫。任せときなって」
言って立ち上がろうとした潤の傍らに、いつの間にかシロがやってきていた。
祐巳の顔を見ると、心配そうに鳴く。
「わんデシ……」
「………………」
微妙に胡乱気な目で犬を一瞥すると、潤はアイザックとミリアに視線を移す。
「どうしようアイザック、六人になっちゃったよ?」
「う〜ん、どうしようか……?」
二人はよく解らないことで悩んでいた。
「………………」
うんうん唸っている二人から視線を外すと、潤はもう一度シロを見つめる。
いや、むしろ凝視すると言った方がいいだろうか。更には――
「……じーっ」
変な擬音までついた。

「じーーーーっ」
更に声を出す。

「じーーーーーーーーーーっ」
しつこく擬音を繰り返す。

「……わ、わんデシ?」
遂に潤の視線と擬音に耐えられなくなったシロが潤の方を向くと、
「がしっ」
またもや擬音付きで、潤がシロの頭をホールドした。
276死色の逃避(3/4) ◆3LcF9KyPfA :皇紀2665/04/01(金) 04:57:11 ID:H1WLV0HZ
そして、ぐりぐりと頭を撫でつつ、潤が呟く。
「なぁ……お前本当は普通に喋れるんだろう?」
「わ……わんデシ?」(気付かれたデシか……?)
「そんでさぁ……本当は白い竜とか、そんな感じの生き物でさぁ……」
「わんデシ!?」(バレてるデシ!?)
「ついでに、幸運とか運んでくるんだよ……」
「――っ!?」
潤のその言葉に、シロは首が取れてしまうのではないかというくらい思い切り、首を横に振る。
だが、潤はその様子が見えているのかいないのか、更に言葉を続ける。
「で、あたしを乗せて遠くまで連れてってくれるんだよな……
ネバーでエンディングな世界とかにさー」
「……デシ?」
「それでよぉ、あそこの馬鹿みてぇにテンションの高い二人は、象牙の塔の住人なんだよなぁ?」
「…………」
最早シロには、何を言っているのかさっぱり解らない。
「…………よし、そういうことに決めた。というわけでもういいや」
どうやら、アイザックとミリアに対する接し方を決める為の儀式的逃避に、シロが使われたらしい。
「それじゃあ見回り行ってくる。そいつら頼んだぜ、ファルコン」
そう言って倉庫から出ていった潤の後に。
またもや名前の変わったシロが所在無さ気に取り残されていた――

【E‐4/工場倉庫/一日目8:15】

【アイザック】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:困ったな、六人になったぞ。
277死色の逃避(4/4) ◆3LcF9KyPfA :皇紀2665/04/01(金) 04:57:47 ID:H1WLV0HZ
【ミリア】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:なんかかっこいいね、この拳銃 (森の人・すでに一発使用)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:困ったね、六人になっちゃった。

【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)】
[状態]:健康
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:あの赤い人はなんだったんデシか?

【高里要】
[状態]:やや平常
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:祐巳の看病をする。赤い人が危険な目に遭ってないか心配。
[備考]:上着を一枚脱いでいる。

【福沢祐巳(060) 】
[状態]:看護婦 食鬼人化 熱で朦朧としている
[装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服 ヴォッドのレザーコート
[道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)
[思考]:お姉さまに逢いたい。潤さんかっこいいなあ みんなを守ってみせる 聖様を救う 食鬼人のことは秘密

【哀川潤(084)】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:周辺の偵察。怪しい奴がいたらひっ捕らえる。殺人者がいたらぶっ殺す。
小笠原祥子の捜索 祐巳の力はまだ半信半疑 祐巳の食鬼人のことは忘れたことにする
278世界の王子 ◆GeFsM/0AQ. :皇紀2665/04/01(金) 09:37:29 ID:dQZaXFwd
一回目の放送を聞き、クレア・スタンフィールドは立ち上がった。
放送の中にシャーネの名前が無かったということに少し安心する。
「まぁ当然だろうな、俺の選んだ相手だ。俺が死ぬまで死なないだろう」
そういって観覧車の頂上から辺りを見渡す。
ここからならかなりの範囲を見渡すことが出来る。
一通り見渡すと、クレアは地図を広げ、それから景色を交互に見る。
「ちっ、何で俺が禁止エリアなどに行動範囲を奪われなきゃいけないんだ・・・」
そしてまた辺りを見回す。
「休憩はもういいだろう。そろそろ行くか・・・って行っても何処にシャーネがいるか分からないんだったな・・・・・・」
しばらく考え、そして何かを思いついたようにして言った。
「ふふふ・・分かったぞ」
自信に満ち溢れた顔で続ける。
「シャーネは俺の結婚相手、つまりは俺にとってのお姫様って分けだ。だが今その姫はいない。
悪い怪物に捕まってるかもしれない。
この場合悪い怪物はこの分けのわからん大会の主催者だな。それを倒し姫を助け出すのは昔から結婚相手・・・王子ってことに昔からなってるはずだ。今回その王子は俺だろうから・・・・・
俺がシャーネを助け出すのか!!そして助け出したら二人で愛を語り合う!最高のシチュエーションだな!」
「・・・そうと決まれば、早速行くぞ!」
一人でどんどんテンションを上げながら話終えると、すぐさま観覧車から飛び降りた。
まるでサーカス団員のような動きで軽やかに一台ずつ渡り降りていく。
やがて下の方に来ると、そのまま一気に地面まで跳んだ。
「姫がとらわれている所と言えば城か塔な・・・今回は城だ!城が俺を呼んでいる!!」
さらにテンションを上げ、颯爽と走りだした。
両手には大型ハンティングナイフが握られている。
ナイフを両手に持ち、目を輝かせながら走っていくその様は、殺しを前にした殺人鬼のようだった・・・・・・
279世界の王子 ◆GeFsM/0AQ. :皇紀2665/04/01(金) 09:38:08 ID:dQZaXFwd
【E-1//海洋遊園地/一日目6:30】

【クレア・スタンフィールド】
[状態]:絶好調
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:城に行く 姫(シャーネ)を助け出す
280殺し屋と殺人鬼 ◆lmrmar5YFk :皇紀2665/04/01(金) 16:11:38 ID:e2JNF3ad
城に向かって、クレアは一直線に走っていた。常人では考えられないようなスピードだ。
この島では、誰しも能力に制限がかかるはずなのだが、天性の才能とそれを凌駕する努力の日々とで獲た彼の肉体は、それくらいの抑制に負けはしない。
風を切り、むしろ彼自身が吹きすさぶ風のようになって、ひたすら走り続ける。
ん…?
その彼が不意にぴたりと足を止めた。周囲から微かに感じる何らかの違和感。人の気配と、それ以上の何か―。
ぎょろぎょろと眼球を動かして、己の周りを詳細に確認する。その瞳が、彼の数メートル先に仕掛けられた罠を捉えた。
彼の超人的な視覚でなければ気づかなかっただろう。足元に張り巡らされた細い糸は、草に綺麗に紛らせてあって一見しただけでは全く分からない。
普通の人間が歩いていれば、まず確実にうっかり足を引っ掛けてしまうことだろう。
シャーネか…? クレアは愛しい婚約者の顔を思い浮かべた。テロリスト集団にいたこともある彼女なら、これくらいの罠を仕掛けるのは容易いことだろう。
自分の勘では彼女は城の中にいるはずだし、この辺りから感じる気配は彼女のそれとは違っているのだが、まあ万が一ということもある。
…それに、そもそも相手はこんな罠を作る人間なのだ。おそらく掛かった者は問答無用で殺すつもりなのだろう。
こいつをこのままにしておけば、シャーネに何らかの危害を及ぼすかもしれない。
…まあ、シャーネが、俺の選んだ女が、このくらいの罠を見抜けないこともないだろうけどな。
そう思うものの、やはり心配な気持ちは募る。
いくら彼女が強いとはいえ、たとえば相手が複数だったら、あるいは先日戦ったクリストファー・シャルドレードのような変人で奇人で狂人で強靭な奴だったら、無事でいられるかどうか分からない。
シャーネの顔に傷一本でも付けた奴ぁ、俺の手で皆殺しだ。
シャーネの顔に傷一本でも付ける可能性がある奴も、俺の手で皆殺しだ。

281殺し屋と殺人鬼 ◆lmrmar5YFk :皇紀2665/04/01(金) 16:12:42 ID:e2JNF3ad
クレアは、手にしていたハンティングナイフを用い、手近な糸を一本ぷつりと切った。
すぐさまその場を離れ、ろくに手も使わず常識はずれな跳躍力だけで近場にあった樹上へと登る。
生い茂った木の葉がちょうどよい目くらましになり、下から自分の姿は見えないだろう。
かさりと手で葉を掻き分け、眼下を見下ろす。
その視線の先に現れたのは、刃や柄にべったりと鮮血の纏わりついた出刃包丁を持った一人の青年だった。

【F-4/森の中/一日目6:50】

【クレア・スタンフィールド】
[状態]:絶好調
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:城に行く 姫(シャーネ)を助け出す シャーネに害をなすものは殺す

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]: 出刃包丁
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。 罠に掛かった奴を探す
282たんぽぽの綿毛 ◆wEO8WH7kR2 :皇紀2665/04/01(金) 16:35:52 ID:UveFd4mU
「あなたの気持ちはわかります。しかし、全てはもう終わったことです。あなたはもう死んだのです。」
ここはA−1エリア島津由乃の墓の前。
慶滋保胤は優しげな微笑を浮かべたまま、その墓の前にたたずみ何やら独り言をぶつぶつと言っている。
はたから見ればかなり怖い図である。
「未練を残すのはおよしなさい。静かに成仏するのが一番です。怨霊となり苦しむだけです。」

数十分前、保胤とセルティはA−1エリアについた。
発表された禁止エリアが南側にかたまっていたことから
南下すれば他の人間と鉢合わせする可能性が高くなる。
二人はそう判断して、とりあえず北西の端のこの場所までやってきたのだ。

この場所には出来たばかりの簡易な墓が一つあった。
保胤はその墓の前に座すと、死者を弔うためと言って般若心経を唱えだした。
彼はどうやら仏法にも造詣が深いらしい。
ところが般若心経は途中で止まった。
そして、保胤は墓と「会話」を始めてしまったのだ。


セルティはそんな保胤を少し離れた背後から見て、ふと思った。
(不思議な男だな。)

夜の会話で、保胤が陰陽道の道士であることは聞いていた。
陰陽師は一昔前にブームになり、テレビドラマや映画にもなった。
そのため、セルティは知識としてなら陰陽師が不思議な術を使ったり
常人には見えないはずの霊と会話をしたりするのは知ってはいたが、
こういう情景を目の辺りにすると、すごいものだ、と感心してしまう。
283たんぽぽの綿毛 ◆wEO8WH7kR2 :皇紀2665/04/01(金) 16:36:57 ID:UveFd4mU
だが、この男の不可思議なところは、こういった能力とはまた少し違ったところにもあった。
化物であるはずの自分に対しても、今こうやって墓に向かって話しかけている時も
同じ微笑をいつも浮かべているのだ。
見たことはないが、たぶん普通の人間と会話をするも同じなのだろう。

六時の放送で23人の死者が出たことを聞いた時、保胤は一言
「23人・・・」
とつぶやいた。
それだけだったのだが、彼の持つ雰囲気は、その時一変した。
見た目は何も変わらないのだが、保胤は何やら鬼気迫る雰囲気をまとっていた。
セルティはその時、保胤の細い目から鋭い光が出るのが見えた気がした。
しかし、その変化も一瞬だけで、次の瞬間には今までの保胤に戻っていた。

その時を思い出すと、セルティは背筋がぞっとした。
(あれは一体なんだったのだろう?)
保胤は今、優しげな表情のまま墓と「会話」をしている。
(本当に不思議な男だ。)


保胤は島津由乃の霊に対して未練を捨てて成仏するよう、必死で説得していた。
彼女の霊はこの世に未練を残しているらしく、まだこの場に留まっているらしい。

未練を残してこの世に残っている霊はそのまま放っておくと、怨霊や鬼と化してしまう。
彼女の場合、恨みによりこの世に留まっているわけではないようだが、
霊のような思念だけの存在は、生前よりもあらゆる想いが強烈となり暴走しやすい。
284たんぽぽの綿毛 ◆wEO8WH7kR2 :皇紀2665/04/01(金) 16:37:51 ID:UveFd4mU
人は、嫌いな相手だけでなく好きな人に対してもどこかで恨みを感じているものだ。
いや、むしろ好きな相手に対する恨みのほうが大きいのかもしれない。
それは独占欲から来る場合もあるし、嫉妬である場合もある。
また、この世の留まっているうちに、生ある存在の全てを憎むようになる場合もある。
「自分は不幸にも死んでしまったのに、何で他の皆は幸せに生きているんだ」と言うわけだ。
ましてや、彼女は殺されたのだ。殺した相手に思うところが何もないはずはない。
どれも醜い感情だが、人である以上どんな聖人君子であれ、こういった感情は多かれ少なかれあるはずだ。
こういった感情が、何かの拍子で暴走すると怨霊と化してしまうのである。

わざわざ説得しなくても、術を用いれば強制的に成仏させることも可能ではある。
だが、それを行うと彼女はものすごい苦痛を感じてしまう。
その苦痛も一瞬のことではあるが、保胤としては無理やりではなく納得した上で自ら成仏してもらいたい。
しかし、彼女はかたくなにこのまま成仏することを拒み、保胤の説得に応じない。
一緒にこの世界に送られた仲間の今後と、その仲間に一言の別れも言えずに
逝ってしまったことに未練を感じ、このまま成仏は出来ないというのだ。

だが、死とはそういうものだ。
親しい人をこの世に残して逝ってしまうことに、後ろめたさを感じない者はいない。
死ぬ前に親しい人間に別れを告げることが出来るのは、むしろ少数派かもしれない。
彼女が言っていることはわがままにすぎないのだ。

保胤はそのことが解っていた。解ってはいたが、彼女にそう言うことは出来なかった。
彼女がここに来る前、どのような毎日を送っていたのか保胤は知らない。
だが、少なくとも彼女は仲間たちと一緒にそれなりに幸せに暮らしていたようだ。
それを無理やりこの世界に連れてこられ、この殺人ゲームに参加させられ、そして、殺された。
そんな彼女に、わがままだ、ということはできなかった。
285たんぽぽの綿毛 ◆wEO8WH7kR2 :皇紀2665/04/01(金) 16:38:52 ID:UveFd4mU
保胤は立ち上がると墓の横にはえていたタンポポを摘み取った。
白い綿毛がいっぱいに付いている。あとは風に種を運んでもらうだけ、という状態だ。
保胤は真っ白なタンポポを左手に持ったまま、右手で印を結びながら何かを唱えた。
それは一瞬だった。
死んだはずの島津由乃がそこに立っていたのだ。

「このタンポポを依り代として、仮の人の姿をあなたに与えます。
 制限時間は10時間です。10時間たった時、私はこのタンポポの種を飛ばします。
 このタンポポから全ての種が飛び去った時、あなたはこの世から消え去ります。
 その時までに、あなたがやり残したことを為して下さい。
 仲間を見つけてお別れの挨拶をするくらいのことは出来るでしょう。
 ただし、これだけは忘れないでください。
 あなたを殺した相手とこの世界の管理者への恨みは捨て去りなさい。
 恨みの気持ちが強くなると、貴方は怨霊と化し永遠に苦しむことになります。
 また、相手を強く思いすぎることも同じように危険です。
 難しいとは思いますが、自重してください。
 思念だけの今の貴方は、ただでさえ暴走しやすい状態となっているのです。
 10時間たった時、成仏できるかどうかはあなた次第です。
 それでも成仏できなかった場合、私は容赦なくあなたを祓います。
 どうか、この世に未練を残さないよう、この10時間を大切に使ってください。」

保胤の話が終わると島津由乃は
「あ、ありがとうございました。」
と保胤に頭を下げ、時間を惜しむように南の方角へと走り去っていった。
あとには、優しげに微笑む保胤と少し離れて佇むセルティが残された。
286たんぽぽの綿毛 ◆wEO8WH7kR2 :皇紀2665/04/01(金) 16:39:46 ID:UveFd4mU
【A-1/島津由乃の墓の前/1日目・07:00】

【島津由乃(063)】
 [状態]:すでに死亡、仮の人の姿(一日目・17:00に消滅予定)、刻印は消えている
 [装備]:なし
 [道具]:なし
 [思考]:生前にやり残したことを為す
 [行動]:南の方角へ向かう
※仮の人の姿について(バランスを崩さないために、少し原作とは設定を変更)
 人の姿はしているが実体はない。そのため、物に触れることはできない。
 出来るのはせいぜい、人と話をすることくらい。

チーム名『紙の利用は計画的に』(慶滋保胤/セルティ)
【慶滋保胤(070)】
 [状態]:正常
 [装備]:着物、急ごしらえの符(10枚)
 [道具]:デイパック(支給品入り) 「不死の酒(未完成)」 、綿毛のタンポポ
 [思考]:これからどう動くかセルティと話し合う/ 島津由乃が成仏できるよう願っている

【セルティ(036)】
 [状態]:正常
 [装備]:黒いライダースーツ
 [道具]:デイパック(支給品入り)(ランダムアイテムはまだ不明)
 [思考]:これからどう動くか保胤と話し合う
287朝の食卓1/5 ◆a6GSuxAXWA :皇紀2665/04/01(金) 21:51:07 ID:VOEkCnhc
 微かに聞こえた油の弾ける音と、何かの焼ける香ばしい匂いに、景はむくりと起き上がった。
「…………?」
 寝惚けた頭が、状況の把握を拒否している。
 順番に、確認を開始。
 殺し合いをしろと言われたことは覚えている。毛布の中で眠ったことも覚えている。
 背中の痛みも確かにあるし、幸い湿布は剥がれていない。
 視界には扉に壁に天井。
 窓が無いため薄暗いが、それでも扉から漏れてくる光は――
「何時だ……?」
 腕時計を確認するが、どうやら午前九時の手前のようだ。
 と、廊下が軋む音が聞こえる。足音だ。
「目、覚めた?」
 ひょいと扉の影から顔を除かせた風見に、景は一言。
「――料理はマズいだろう」
「失礼ね。マズい料理を作るような女に見える?」
 見える、と言ってやろうかと、よほど考えた。
 が、後が怖いので結局何も言わない。
「私は料理は得意なのよ? ――音も抑えてるし、換気扇も回していないわ」
 窓から入る光があれば、夜と違って食料を探すのも簡単だ。
 そしてもちろん、料理も。
288朝の食卓2/5 ◆a6GSuxAXWA :皇紀2665/04/01(金) 21:52:24 ID:VOEkCnhc
 あっと言う間に部屋にちゃぶ台が持ち込まれ、並ぶ皿、皿、皿。
 食べ過ぎるといざと言うときの行動に支障が出る、そんな景の抗議をタッパーをちらつかせて黙らせつつ、即席の食卓は完成した。
 ふわりと湯気を立てる白米に、甘辛い香りが鼻腔をくすぐるアジの開き。
 綺麗に火の通った卵焼きに、豆腐とわかめとネギの入った味噌汁。
 レタスの葉に滴がきらめくサラダ、薩摩芋の甘露煮まであった。
「……まあ、確かにマズそうではないな」
「そういう台詞は物欲しそうな目をしないで言うものよ」
「む――」
 雑貨屋の台所は、まるで昨日まで人が居たかのような状況だった。
 では恐らくは、他の家屋もそうなのだろう。
 そんな事を言いながらも、二人は割り箸を取って一言。
『いただきます』
 ぱきり、と乾いた微かな木の香りが、食卓に添えられた。
289朝の食卓3/5 ◆a6GSuxAXWA :皇紀2665/04/01(金) 21:52:59 ID:VOEkCnhc
「確認しておきましょうか。何かあったら私を起こす、良いわね?」
 景は玉子焼きを口に入れたまま頷く。
「あと、基本的には臨機応変にだけど――窓を破る音か扉に積んだ椅子が崩れる音がしたら、可能な限りは呼びかけて害意の有無を確認すること」
 言うと風見は、静かに味噌汁を啜る。
「……扉をノックしてくるようならば、君が勝手口から回り込んでいる間に僕は出入り口で扉越しに応対」
 玉子焼きを飲み込み、景。
「扉越しに撃たれる可能性もあるわ。射線に身は晒さないで、壁の影からよ?」
「分かってる」
 互いに言って、サラダを咀嚼。
「――相手がゲームに乗っていたら、状況にもよるけど無茶はせずに逃げるわよ」
「……ああ。その際は出入り口や窓周辺にトラップが仕掛けられていないか、最大限の注意を払う」
 ご飯にほぐしたアジの身を乗せて、口に。
 物騒な会話を交えての食事だが、何故だか空気は穏やかだった。
『ごちそうさまでした』
 しばらくして、二人分の声が揃って響いた。
290朝の食卓4/5 ◆a6GSuxAXWA :皇紀2665/04/01(金) 21:53:38 ID:VOEkCnhc
 空の皿を集めつつ、景は苦笑。
「しかし、何というか……こんなゲームをさせられているのに、暖かい食事にありつけるとは思わなかった」
「なら、私に感謝しておきなさい。そしたら午後もお弁当にありつけるわよ?」
 冗談めかした風見の物言いに、景の苦笑が深くなる。
「はいはい、ありがとうございました。まあ、ともあれ――早めに寝たほうが良い。疲れは取れるときに取っておくべきだ」
「分かったわよ、でも片付けをしてから……」
 景は溜息を一つつくと、タッパーを手に取る。
 更にもう片方の手で毛布を取り、風見にそれを押し付けた。
「君は働きすぎだ。いざという時に君がバテていては、二人ともども死ぬ事になる」
 そのままタッパーに残りの食事を詰めつつ、放たれるのは皮肉と心配を織り交ぜた声。
「――そうね。アンタみたいのと揃って死ぬのも癪だし……まあ、少し休ませて貰うわ」
 嫌味の無い笑みを含んだ声と共に、風見は部屋の隅へ。
 枕もとに銃を置いて丸くなる風見の様子を眺めつつも、景は黙々と後片付けを続ける。
 やはりそれなりに疲労はあったのか、すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。
「しかし、まさか再会するとは……大した腐れ縁だ」
 ふと、景は己のウィンドブレーカーとクロスを見つめた。
 あちこち擦り切れた、青い、失ったはずの魔法使いの外套。
 夜の街を駆け回っていた頃、幾度と無く助けられたクロス。
 その目には、再会を懐かしむような、哀しむような、そんな光が宿っていた。
291朝の食卓5/5 ◆a6GSuxAXWA :皇紀2665/04/01(金) 21:55:40 ID:VOEkCnhc
【C−3/無人の商店街、雑貨屋/一日目/09:31】


【物部景(001)】
[状態]: 見張り&後片付け中。背中に打撲傷。(処置済み)
[装備]: 折り畳みナイフ、頑丈な腕時計、食事を詰めたタッパー
[道具]:リュックサック(水入りペットボトル一本、支給食料(半分)、缶詰一個、地図、方位磁石、懐中電灯、救急箱)
[思考]: 1.とりあえず昼の放送まで休息 2.知人の捜索

【風見千里(074)】
[状態]:睡眠中。心身ともに健康。
[装備]: グロック19、及びその予備マガジン一本、頑丈な腕時計
[道具]: デイパック(水入りペットボトル一本、支給食料(半分)、缶詰三個、筆記具、懐中電灯、ロープ、弾薬セット)
[思考]: 1.とりあえず昼の放送まで休息 2.知人の捜索
292今一度の最後のために ◆7Xmruv2jXQ :皇紀2665/04/01(金) 21:58:20 ID:JXTQLpdc
『では、諸君の健闘に期待する。精々頑張りたまえ』

 最後にそう締めくくって放送が終わった。
 ウルペンはつまらなそうに地図を一瞥すると、四つ折りにしてバックへと放り込む。
 読み上げられた名前に興味はない。
 彼の知った名前は二つしかなく、その両方がこの世の絶対者だ。
 自分ごときが心を配る必要はない。

 鬱蒼とした森の中、ウルペンは思考する。
 残念ながらミズー・ビアンカとの戦いは持ち越しとなってしまった。
 彼女と戦うためには、まずは先ほどの少女が持っていた奇妙な剣、あれを突破する必要があるだろう。
 もっとも、あの剣にどれだけの防御能力があるかはわからない。

 ……ナイフの投擲を弾いた。

 ……念糸を防いで見せた。

 持ち主の少女は反応したようには見えなかった。
 ということは、剣そのものが自動的に防御しているということだろう。
 不意打ちさえも通じない可能性が高い。
 どう対応するべきか。

「正面から打ち破ればいい」
 
 ウルペンは簡単に結論した。
 そのための道具はすでに用意されている。
 ベスポルドの娘、フリウ・ハリスコーの左眼。
 水晶眼に囚われた破壊精霊。
 理解できないもの、未知なるものでありながら、精霊はいつも人の側に存在する。
 安易な力として。
 あるいは全てを奪う災厄として。
293今一度の最後のために ◆7Xmruv2jXQ :皇紀2665/04/01(金) 21:58:55 ID:JXTQLpdc
 自分が帝都を、完全な世界を滅ぼした力を欲するというのは出来すぎた皮肉ではあった。
 しかしその皮肉すら、今は心地いい。
 
「……あらゆる偶然が契約者を守る。
 面倒なことだ。
 契約者同士が殺し合うには、まず舞台を整える必要がある」

 アマワはこの殺し合いを覗いているだろうか?
 ウルペンには判断がつかなかった。
 ともすれば契約自体が無効になっている可能性もあるだろう。
 自分が敗れた後何が起こったか、それを知る術はないのだから。
 勝利したミズー・ビアンカが精霊アマワを破壊した。
 そんな理想でさえ、現実になる余地はある。

「それでも俺の心は変わらないさ。
 あらゆる偶然が契約者を守る。
 俺もミズー・ビアンカも、死ぬことは許されていない。
 俺たちは、約束したのだから」

 全身の血がざわめいている。
 あの瞬間。
 愛した者のために自分の死力を尽くすあの瞬間。
 愛した者のために互いの命を握りあうあの瞬間。
 一度終わったはずのそれが、もうすぐ始まるのだ。

「俺は泣かずに逝けたが……はたしてお前はどうだろうな、我が義妹」

 群青色の空に囁いて、ウルペンは歩き始めた。


 ――――まずは、フリウ・ハリスコーを見つけなくては。
294今一度の最後のために ◆7Xmruv2jXQ :皇紀2665/04/01(金) 21:59:34 ID:JXTQLpdc
【C-6/森/一日目6:05】 
 
【ウルペン】
[状態]:健康
[装備]:無手
[道具]:デイバッグ(支給品一式) 
[思考]: 蟲の紋章の剣を破るためにフリウを探す。
295Prologue ◆Wy5jmZAtv6 :皇紀2665/04/01(金) 23:08:17 ID:MxsWnXX7
砂浜で鳳月と志摩子は無言で朝食を摂っていた。
由乃の死を知った志摩子は無言で涙をぽろぽろと零し、
幼馴染にして同僚の死を知った鳳月は海に向かい畜生と泣き叫んだのだが、
今はとりあえず落ち着いていた。
で、彼らの方針だがとりあえずここが禁止エリアとなるギリギリまでとどまって休息する、というものだった。
志摩子にしてみれば憔悴しきった鳳月の姿は見るに耐えないものがあったし、
鳳月にしても志摩子を置いて自分の想い人を探しに行くような真似は出来なかった。
ともかく正午の放送を待って、それから改めて考える・・・例え誰が死んでいてもこの判断に関して後悔はしない、
という約束事も2人は交わしていた。

朝の眩しい日差しに目を細める2人、彼らのの眼前にはさえぎる物一つない砂浜が広がっている、
このロケーションなら奇襲を受ける心配はまず無いし、
狙撃されるような高台も隠れ場所も見当たらない、むしろこの状況で狙撃を受けるなら、どこへ逃げても無駄だろう。
鳳月は薪に使ったボートの残骸を志摩子に示す。
「寝ろよ、あそこなら丁度日陰になるからさ」
「鳳月さんこそ寝てください、私は大丈夫です」
「いや、頼むよ君が寝てないのに俺が寝るわけにもいかないからさ」
つい本音が出てしまう鳳月、一人っ子の志摩子は、そんな彼を見て、
何だか弟が出来たようなそんな不思議な気持ちになるのだった。

そんな妙にほんわかとした時間が過ぎていく、浜辺だったが…
鳳月が浜辺の向こうに目を見張る
「緑麗!緑麗かっ!」
向こうも気がついたようだ…信じられないような速度でこちらに駆けてくる。

あれからの彼女の行動をかいつまんで説明すると
祐巳を介抱している間に地滑りに巻き込まれてしまった彼女、何とか祐巳だけは
安全な場所にとっさに移したが、自分自身は生き埋めになってしまっていた。
「で、何とか脱出してここまできたというわけか?」
泥だらけの緑麗の姿を見て大変だったなあと言った感じの鳳月。
296Prologue ◆Wy5jmZAtv6 :皇紀2665/04/01(金) 23:09:49 ID:MxsWnXX7
「あと、人身に転生してたので分からなかったが、多分東海青竜王の死体を見つけたぞ、埋葬しておいたが」
「うーん、もう少し粘れなかったのかなぁ?頑丈さだけがとりえなんだからさ」
緑麗の話に苦笑いする鳳月。
「拳銃でズドンだ、あの頑丈な竜種ですら一撃だからな、それがしたちの防御力も相当低くなっているはずだ」
なりは子供でも彼らは破軍星と貪狼星、れっきとした天界の神々の一員だ。
もっとも神々といっても仕組みがちいと違う人間といってもいいので
溺れたり、毒を受ければ死ぬのだが。

「ところで星秀だが…」
知ってる、と顔を背ける鳳月、
「大方わぉ美少女発見!とか何とかいってホイホイついていった挙句、
 一服盛られてジタバタしてる間に背中をぐさりとやられたんじゃないのか…」
まるで見てきたような感想を述べる鳳月、ホント最期までバカな奴だよ…そう呟き
また涙をぬぐう鳳月。
「こんどはそちらの話も聞かせてほしい、この夜の出来事を…」

「なるほど…」
お互いの情報を交換し終えた3人、
「では、お姉さまを吸血鬼に変えたのも…」
「その白い服の女だろう」
緑華は祐巳のことはあえて話さずにおいていた。
今の志摩子に話しては却ってトラブルの元になると思ったのだ。
事実気丈に振舞っているが志摩子の心中はいかばかりか…
志摩子は思う…ああ神よ、何故私はこんなに無力なのでしょうか?
由乃が死んだと聞いたときもそうだった…自分の無力が嘆かわしい
もっと強くなりたいと…そのためならば…
297Prologue ◆Wy5jmZAtv6 :皇紀2665/04/01(金) 23:10:58 ID:MxsWnXX7
その時だった、声が聞こえる…
志摩子は声の主を探す、声は自分の胸ポケットから聞こえてきた。
そこから出てきたのは紫水晶のサークレット、あまりにもきれいなので
ディバックではなくポケットに入れていたのだった。
また声が聞こえる…力が欲しいかと、我を受け入れるならば我は与えん、至高の叡智をと
今度は鳳月と緑麗にもはっきりと聞こえた。

魅入られるように志摩子はサークレットを手に持つ。
【そうだ…それでいい、そなたの肉体を我が心に与えよ】         
「体を…あなた…に?」
「力が欲しいのだろう、わたしがかわりにそれを行ってあげると言っているの」
声がはっきりと聞こえてくる、女性の声だ。

【あなたは見ているだけでいい…わたしがかなえてあげる】
志摩子の脳裏にリリアンでの日々、山百合会での楽しい時間がプレイバックしてくる。
【それが全てまた帰ってくるかもしれないのよ?あなた1人の犠牲で…】
たまらず鳳月が志摩子に手を伸ばすが、見えない何かによって弾き飛ばされてしまっていた。
志摩子はサークレットを捧げ持ったままだ…もう声は聞こえなくなっていた。
そして志摩子は…その手を…

「でもっ…でもっ!そんな…ちからっ…いりませんっ!!」
志摩子はサークレットを砂地へと投げ捨てた。
「人の道をっ!心を捨ててまで強くなりたいなんて私は思わない!間違ってる!!」
「人の世界を捨てた者が人を救うことなんてできるはずがない!!」
志摩子はギリギリの所で誘惑を断ち切った。
298Prologue ◆Wy5jmZAtv6 :皇紀2665/04/01(金) 23:12:08 ID:MxsWnXX7
【もっとも困難な道を選ぶというのね…それもまた一つの選択】
その声が聞こえたかと思うとサークレットは波にさらわれいずこかへと流されていった。
はぁはぁと呼吸を整えたあと、
「きっと誰だってそう…大切な誰かをそして自分を失いたくない、そんな恐怖の中
 悪魔に踊らされているだけ…力を力で祓ってもまた悲しみが巡るだけ…だから私は力なんていらない
 たとえ弱くても優しいままでいたい…」
にっこりと笑う志摩子、ああ、これほどの悲しみを背負っていながら
どうして彼女はこんなに美しく笑えるのだろうか?

「お願いがあります・・・」
「手伝ってください、どうしても会いたい人がいるんです」
カタカタと身体を振るわせる志摩子、この娘はもう自分の姉が悪鬼となり果てていると
悟っていながら、まだそれでも最後の最後まで救うつもりでいるのだ。
「そして戻れないと知れば・・・お姉さまは、いえ佐藤聖は私が討ちます!」

志摩子にとって彼女が・・・聖が罪を重ねるのも辛かったが、それ以上に聖が他の誰かに殺されるのが辛くてたまらなかった。
それこそ彼女がもっとも憎む悲しみの連鎖に他ならない。
(たとえ祐巳さんでも、それだけは譲れない)
もしそうなれば納得はするが、一生涯自分は祐巳を恨み憎み続け、
そして親友に罪を背負わせた自分自身をも恨み憎むことになるだろう。
この感情だけは理屈や信仰で解決できる類のものではないのだ。

「だめだ!そんなことさせられるわけがないだろう!!」
叫ぶ鳳月、姉と慕うほどの大切な相手を討たねばならない・・・これほど残酷で悲惨なこともそうないだろう。
だが気持ちはわかる、自分も志摩子と同じ立場ならば・・・麗芳がもしも魔の手に落ち
敵となって向かってくれば・・・それを討つのは自分以外にはいない。
他の誰かが彼女を討ったとすれば、納得こそすれ一生涯自分はその誰かを恨み憎み続け、
そして自分自身をも恨み憎むことになるだろう、何よりその誰かに罪を着せたくなかった。
299Prologue ◆Wy5jmZAtv6 :皇紀2665/04/01(金) 23:15:40 ID:MxsWnXX7
志摩子には聞こえないように小声でささやく緑麗、
「聖という者を見つければ、それがしは討つぞ」
「この者の手と何より心を血で汚させたくない・・・恨みは全て引き受ける」
それが志摩子の心に反することと知りながら、決意を打ち明ける緑麗。
「お主は早く行け、麗芳どのが心配なのだろう?」
少しだけ迷うそぶりを見せたが首を振る鳳月、
「この子を置いていったら、きっと麗芳は怒る…」

その時だった…不意に拍手が聞こえる。
「この絶望の島もまだ捨てたものではないな」
はっ、と振り向く3人、背後は波打ち際のはずなのに…
そこに立っていたのは、信じられないほど美しい白衣の男だった。
「失礼」
完璧な身のこなしで男は、すい…と3人の前まで進み出る。
「話は聞かせてもらったよ…志摩子君だったか…君は正しい…だが貫けるかね?」
「君の選ぼうとしている道はもっとも険しくそして困難な道だ、安易に強くなれる方法など
 いくらでも転がっているが、君は何故選ばない?」
志摩子は満面の笑顔で応じる。

「言ったとおりです、力の連鎖は悲しみしか生み出しません」
「もちろん許せぬ悪も、倒さねばならぬ者も現れることは承知しております…ですが
 力で祓う前に出来ることがあるはず、強すぎるそれは…その道を閉ざしてしまう、だから」
男は志摩子の顔をまた見つめ、クスリと笑った。
その美しさ…またそれを目の当たりにして志摩子はある話を思い出していた。

「聞いたことがあります、魔界と化した新宿に信じられないくらいきれいで凄腕のお医者様がいるって
あなたのことなのでしょう? ドクター!ドクターメフィスト!」
メフィストと呼ばれた男はふっと微笑んだ。
「どうか力を貸してください!」
300Prologue ◆Wy5jmZAtv6 :皇紀2665/04/01(金) 23:17:23 ID:MxsWnXX7
「無論だ、私は女性の頼みは聞かないのがモットーだが、
 君がその気高さを、優しさを失わない限り…私は君たちのそばにいよう」
白衣の医者はにこりと笑った。
「休息が終わったら行こう、今これよりこの地に集う者全てが私の患者となった、
 そしてそれを治療するのが私の役目だ」

【藤堂志摩子】
[状態]:健康
[装備]:カーラのサークレット(紛失)
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:争いを止める/

【袁鳳月】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具];デイパック(支給品入り)
[思考]:志摩子を守る/

【趙緑麗 】
 [状態]:健康
 [装備]:スリングショット
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:志摩子を守る/

【Dr メフィスト】
 [状態]:健康
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:病める人々の治療(見込みなしは安楽死)/志摩子を守る
301Prologue ◆Wy5jmZAtv6 :皇紀2665/04/01(金) 23:31:41 ID:MxsWnXX7
これは面白いことになった。
ケンプファーは細煙草をくゆらせ唇をゆがめる。
「相反する道を選んだ親友同士か…このままならば激突は避けられまい」
福沢祐巳、そして藤堂志摩子のデーターを閲覧しながら紫煙をゆっくりと吐き出す。
片や力を得るため人を捨て、片や人でいるために力を捨てた。

「しかも互いの守り手は人類最強の請負人と魔界医師じゃないか…これは楽しみだね」
ディートリッヒが横から口を挟む。
「どちらが正しいかと聞かれたら君ならどう答える?」
「どっちも正しく、そして間違っている…かな?」
「少なくとも彼女たちは自分の信念に基づいて選んだ、もう交わることはないだろうね」

そう言って執務室を後にするディートリッヒ。
「余計な手は出すな、答えはまだ決まったわけではないからな…」
見透かされたのだろう、ケンプファーの鋭い突っ込みに肩をすくめる彼だった。
302Prologue ◆Wy5jmZAtv6 :皇紀2665/04/02(土) 00:13:55 ID:/M+fTcRw
補足
現在位置【H−6/海岸/一日目、07:00】
(禁止エリア化時間ギリギリ、10:30まで休息)
303Prologue ◆Wy5jmZAtv6 :皇紀2665/04/02(土) 00:26:57 ID:/M+fTcRw
補足
現在位置【H−5/海岸/一日目、07:00】
(10:30まで休息)

304ラッキーな受難 ◆lmrmar5YFk :皇紀2665/04/02(土) 02:14:17 ID:TA1Z7rVo
クレアは樹上から、包丁を手にした青年を眺めていた。
自分と似た、明らかな血の匂いの空気を周囲に持つその青年を。
…ところで、懸命なる読者諸兄は既に気づいていることだろう。
そもそもなぜ、クレア・スタンフィールドが今、この場にいるのかと。
走り出した彼が考えていたのは『一刻も早く城に行く』事の筈であり、彼の平時からの性格を考えれば迂回などする訳もない。
それなのに、こんなところにいるのはおかしいではないか―。
貴兄達がそう思うのはもちろんだし、何があって進路を変更したのかを知りたいのも尤もだ。
しかし、この間に起こった話はクレアにとって相当に不名誉なエピソードであるので、知りたいというのなら、それなりの覚悟を持ってして聞いていただきたい。
―貴兄の記憶を失わせんと、『葡萄酒』が襲って来たところで、こちらは一切関知できないのだから。
…おっと、脅かすのはこの程度にして、そろそろ彼がここにいる理由を簡単に説明しよう。
それは、ひとえに彼の身に起こったちょっとした不幸によるものだった。
海洋遊園地を抜けたクレアは、南東の方向へほぼまっすぐに走っていた。本来、彼はそのまま最短距離を通って城へと向かう予定だったのである。
しかし走り始めてすぐに、彼は一人の少女を発見した。正確には、彼の人類にしては発達しすぎている視覚が発見してしまった。
彼女は、井戸(このゲームのはじめにクレアが抜け出したあの井戸である)の横に一人で立ちすくみ、休憩を取っているところだった。
転びでもしたのか、身に付けている衣服は泥などが付着してやたらと汚れている。しかし、見たところ怪我などは無いようだった。
クレアは彼女から離れた位置に体を隠し、様子を伺っていたが、別段怪しそうな動きもないのを見てとる。
パンや水を口に運び、時折地図を眺める以外には何をするわけでもない。
辺りに気を配っているのは感じられるが、そのくらいはこのゲームの最中なら当然のことだろう。
…ただの女みたいだな。ゲームに乗ったわけでもなさそうだ。
そう思い、目を離そうとしたまさにそのとき―

少女はおもむろに服を脱ぎだした。
305ラッキーな受難 ◆lmrmar5YFk :皇紀2665/04/02(土) 02:15:29 ID:TA1Z7rVo
井戸のそこにわずかに残っている水を釣瓶でくみ上げて、汗をかいた体を拭こうとしているのだということは理解できた。
距離と視力を考えれば、彼女の視界の中では、周囲に誰もいないのだということも理解できた。
しかし、それを見たクレアはなぜか一人でやたらと慌てふためいた。
(…なっ!)
クレア・スタンフィールド。アメリカ全土をおびえさせる天性の殺し屋であり、『世界最強』との呼び声も高い青年。
彼はシャーネと恋仲になるまで、一人として恋人が出来た事はなかった。
そして、そのシャーネとはいまだ口付けすらもろくに交わしたことのないプラトニックな関係だ。
これらの情報から当然結論付けられるのは―クレアはこれまで女性の裸を直に見たことがなかったという事実。
彼は、眼前で繰り広げられるそのラッキーな光景を、まじまじと見詰めた。
…まあ、最強の『葡萄酒』も所詮男だということだろう。
…しかしこの幸運。こういう所が彼曰く、『世界は俺の都合のいいようにできている』なのだろうか…。
ひとしきり目の前の少女を見ていた後、クレアははっと我に返った。
(すまない、シャーネ…! …とにかくすぐ助けに行く!)
クレアは再び放たれた矢のように飛び出した。
しかし、どうしても少女の側を通ることが出来ず―仕方なく脇へと迂回した。
もっとも、彼の走る速度なら、彼女に気づかれずに近くを通ることはかなりの確立で可能だったし、たとえそうでなくても、多少大回りして直線ルートを通ればよかったはずだから、やはり多少の混乱は残っていたのだろう。
はじめてみた女体の神秘と、婚約者に対する申し訳なさとで。
もっとも、当の本人は、
「…まあ、いい。考えてみれば、ナイトは正々堂々と正面から城の門をくぐるものだからな。眠り姫が起きるまで俺は茨の道を行くさ」
などと、彼の主観では崇高な、しかし傍から見れば言い訳にしか聞こえないことを呟いていたが。
306ラッキーな受難 ◆lmrmar5YFk :皇紀2665/04/02(土) 02:16:34 ID:TA1Z7rVo
【E-2//井戸前/一日目6:38】

【クレア・スタンフィールド】
[状態]:絶好調
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:城に行く 姫(シャーネ)を助け出す


【李淑芳】
[状態]:通常
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:不明(仲間との合流?)
307禁止エリアのもたらすもの 1/6  ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/02(土) 02:33:45 ID:PoDxMeRb
禁止エリアの発生により、大きく影響を受ける者達がいた。
一つは、蒼い殺戮者(ブルーブレイカー)。
もう一つは、オドー、千鳥かなめ、しずくの三人。
さらに一つは、ダウゲ・ベルガー、テレサ・テスタロッサの二人。
最後の一つは、出雲覚、アリュセの二人。


青い殺戮者は、放送を聞いてしずく達の名が無い事に安堵した。
しかしその後、G−2、H−2の禁止エリアの壁が自身の近くに出来たことを理解する。
南へ行っても意味が無いと判断し、彼は移動目標を中央に定めた。
――それが彼としずくとの距離を離す決断だったことを、彼は知る由も無い。


オドー、千鳥かなめ、しずくの三人は、自分達の現在地が
禁止エリアの壁により行き止まりとなることを知った。
次の禁止エリアによっては、完全に閉じ込められる可能性もある。
一刻も早く移動する必要があるのだが、
「――いいか、いいか、移動経路は二つだ。
海岸線沿いを北上し、この遊園地の方へと進むか、
禁止エリア化するまでの時間を利用し、森を東へ抜けるか。二つに一つだ」
地図の上を指でなぞりつつ、オドーが二人に説明する。
「こっちの北上ルートの方が移動は楽ですけど、でも……」
「最悪、殺る気のある奴らが移動してくる可能性もあるわ。
オドーさんの実力は見せてもらったけど、出来るだけ戦闘は避けたいわね」
かなめは思う。
もし宗介と同レベルの戦闘狂に会ってしまったら、自分達二人は足手まといにしかならない。
308禁止エリアがもたらすもの 2/6  ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/02(土) 02:36:49 ID:PoDxMeRb
「確かに、確かに禁止エリアを抜けるこのルートは、
寄ってくる殺人者の予想を裏切ることとなるだろう。
だが、だがお嬢さん方」
オドーは顔を上げ、二人の顔を見て話す。
「私はこの森を抜けてきたが、起伏もあり、女子供には少々厳しい。
それでも、それでも大丈夫かね?」
その言葉に、かなめはフンッと鼻息を荒くする。
「馬鹿にしないでよオッサ……オドーさん。
生きるか死ぬかって非常事態に、歩く道の快適さを気にする人間がどこにいるの?」
かなめの言葉に、オドーは大きく頷いた。
「その通り、その通りだ。
日本の高校生は軟弱者が多いと聞いていたが、やはりそれは間違いのようだな」
自分が認めた若者達――全竜交渉部隊の面々を思い出し、オドーはそう呟く。
「わ、わたしも大丈夫です! こう見えても体力には自身があります!」
自分が機械であることは明かさないが、
足手まといになる気が無いことをしずくは表明する。
「結構、結構だ! お嬢さん方の意気は理解した。
ならば行くとしよう、生存のために!」
オドーが締めくくり、三人は移動準備を始めた。
309禁止エリアがもたらすもの 3/6  ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/02(土) 02:38:38 ID:PoDxMeRb
「いいかテレサ。友人を探す前に、まずは敵に見つからないことが重要だ」
シュバイツァーの墓の横、上着を返してもらったベルガーと
UCAT戦闘服を着込んだテッサが話し合っている。
「崖沿いに移動するのは襲われた時に逃げ道が無い。
西に抜けるのは、三時間後に禁止エリアになることを考えると避けるのが無難だ」
「南は行き止まり。ならば、東へ行くしかありませんね。
ですがベルガーさん。この城というのは……」
ベルガーは、わずかに間を置き答える。
「……微妙だな。いかにも人が集まってきそうな建造物だが、
殺る気の連中も一緒に寄ってきそうな解りやすい建物だ」
「やはり、避けるべきでしょうか?」
「いや、あんたの探す友人もいる可能性がある。それで、まずはこう……」
話しつつ、ベルガーは指で地図をなぞる。
「森の中を東南へ移動して、大回りに城に接近する。
南から城の様子を見て、静かなら一度中へ入る。ヤバかったら東の森へ退避だ。いいな?」
確認するベルガーに、テッサは肯定の頷きを返す。
「私も、それが一番安全だと思います。それで行きましょう」
話は無事まとまった。
しかし、ベルガーにとって一つだけ予想外のことがあった。
テッサは、……極度の運動音痴だったのである。
彼女は森の中を移動中何度も転倒することになるが、ベルガーはまだその未来を知らない。
310禁止エリアがもたらすもの 4/6  ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/02(土) 02:39:54 ID:PoDxMeRb

「こいつぁ随分ヤバいことになっちまったな……」
地図を見ながら、出雲は苦悩する。
死者の中に自分とアリュセ(やっと自己紹介をした)の知る名が無かったのは幸いだったが、
崖だけでなく禁止エリアまでもが、彼らの移動の邪魔となってしまった。
「ねえ、これからどうする?」
「どうするも何も、まずはここから移動しないといけねえ。
ほれ。食いながらでいいか?」
出雲は立ち上がると、山ほどあるうまい棒からアリュセに一本差し出す。
「うん、大丈夫だよっ」
「よーしいい子だ。そいじゃ、行くとするか」
出雲はバニースーツをデイパックに戻すと、二人分のデイパックを持ち上げた。
「ふぇ? わたし、自分で持てるよ?」
「いいんだアリュセ。今日はたっくさん歩くことになりそうだからな。
荷物は俺様のスーパーパワーに任せて、お前は体力温存しとけ」
出雲は放送内容を思い出す。
23人という死者数。それは相当な殺人者がいることを意味する。
安全な場所を確保するのは、簡単なことではないだろう。
「そう? それじゃ、お願いするねっ」
足取り軽く、アリュセは歩き出す。
そして、出雲もその横に並んだ。
――こんな年端もいかねえ子、殺させるわけにゃいけねえよなあ……。
守ってやらねば。
出雲はそう思いながら、彼女の横を歩くのであった。


【残り94人】
311禁止エリアがもたらすもの 5/6  ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/02(土) 02:41:10 ID:PoDxMeRb
【F-1/海岸沿いの茂み/1日目 06:05】
【蒼い殺戮者(ブルーブレイカー)】
[状態]:飛行ユニットの翼に弾痕あり、ただし飛行に関しては問題無し
[装備]:梳牙(くしけずるきば)
[道具]:無し(地図、名簿は記録装置にデータ保存)
[思考]:島の中央方面へ移動。
    しずく、火乃香、パイフウの捜索。脱出のために必要な行動は全て行う心積もり


【H-1/神社付近/1日目 06:05】
【千鳥かなめ】
[状態]:平常
[装備]:鉄パイプのような物(バイトでウィザード、「団体」の特殊装備)
[道具]:デイパック一式。
[思考]:宗介、テッサと合流したい。
[行動]:H−2経由でH−3へ移動。

【しずく】
[状態]:機能異常は無いがセンサーが上手く働かず。
[装備]:エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん)
[道具]:デイバック一式。
[思考]:BBと合流したい。二人についていく。
[行動]:H−2経由でH−3へ移動。

【オドー】
[状態]:平常
[装備]:アンチロックドブレード(戯言シリーズ)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:協力者を集める。知人と合流。仲間を守る。
[行動]:H−2経由でH−3へ移動。
312禁止エリアがもたらすもの 6/6  ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/02(土) 02:43:33 ID:PoDxMeRb
【G−3/林の中/06:10】
【ダウゲ・ベルガー】
[状態]:心身ともに平常
[装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ 黒い卵(天人の緊急避難装置)@オーフェン
[道具]:デイバッグ×2(支給品一式)
[思考]:H−3経由でH−4、城へ移動。テレサ・テスタロッサを護衛する。
・天人の緊急避難装置:所持者の身に危険が及ぶと、最も近い親類の所へと転移させる。

【テレサ・テスタロッサ】
[状態]:心身ともに平常
[装備]:UCAT戦闘服
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:H−3経由でH−4、城へ移動。宗介とかなめを探す。


【H-3/海岸沿いの崖下/1日目・06:05】
【出雲・覚】
[状態]:左腕に銃創あり(出血は止まりました)
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式)×2 うまか棒50本セット バニースーツ一式
[思考]:東へ移動。UCATの面々と合流 アリュセの面倒を見る

【アリュセ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:東へ移動。リリア、カイルロッド、イルダーナフと合流 覚の面倒を見る

313 ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/02(土) 02:44:48 ID:PoDxMeRb
1のタイトルのみ『禁止エリアのもたらすもの』
になっていますが、『禁止エリアがもたらすもの』
に統一して読んでください。
314 ◆Sf10UnKI5A :皇紀2665/04/02(土) 02:45:57 ID:PoDxMeRb
さらに訂正。

【アリュセ】
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
 ↓
【アリュセ】
[道具]:なし

です。連レススマソ。
315平和島静雄のスタンス 1/3  ◆gfFjaqv/HU :皇紀2665/04/02(土) 02:46:54 ID:dOA0MdFB
 西洋風の城の中、2階の吹き抜けから下を除きながら平和島静雄は思案を巡らせていた。
 入口から入ってすぐのホールでは先ほど彼らを強引に連れてきた神父が筋トレをしている。
 ここに着いて中を一通り調べ食事にした後から続けているから、最低でも一時間以上にはなるだろう。
 まるで機械のようにペースを落とさず続けている。
(あれだけ鍛えりゃ、あーいう風になるのか・・・サイモン以上だな)

 神父に引きつられてたどり着いた城は、その時には無人だった。
 いや、正確に言うと生きている人間はいなかった。
 いたのは死人。おそらく隠れていたのだろう、奥まった廊下の先の部屋の中で殺されていた。
 城の中の一部は嵐が通り過ぎたのかのような有様だったが、幸いなことに殺戮者は行った後のようで
 それ以外の姿は見られなかった。

(あのおっさんが一緒にいれば安全だろう・・・けどな)
 さっきは尋常ではない雰囲気を持った巨漢の迫力に押されて半ば流されるようについて来てしまったが、
 冷静に考えなければ、最後の一人まで殺しわなければならないのである。

 同行者の方を見やると彼らも同じように神父のトレーニングを見ていた。
 獣の毛皮をかぶった背の低い少年、暗い雰囲気の少女、そして穏やかな雰囲気の少年。
 彼らはどう考えているのだろうか。
316平和島静雄のスタンス 2/3  ◆gfFjaqv/HU :皇紀2665/04/02(土) 02:47:49 ID:dOA0MdFB
「おい、チビ」
「な、なんだとてめぇ」
「おまえらよぉ、ずっとアレと一緒にいんのか?」
「あ、あれ?あれってあのおっさんか?」
「どうなんだ?」
「・・・・・・・・・・・・さぁ」
「わかってるよな?これが殺し合いだってこと」
「・・・・・・・・・・・・わかってる」
 ボルカンの後にいるキーリが発言する。
「でも神父さんは全員助けてくれるっておっしゃられました」
「・・・さっきの放送を聞いたろ?マジモンなんだぜこれは」
「・・・それは、わかってますけど・・・」
 さっき頭の中に響いた声によるともう20人以上が死んでいる。
 その内一人は奥の部屋の中だ。血塗れで確実に死んでいた。これは冗談ごとではない。
「じゃぁ、どうすってんだ?少なくとも今は安全だろあのおっさんと一緒にいれば」
 ボルガンも混乱している。
 あの神父は全員救う、争うなと言ったがそれでは済まないということは死体を見て
 実感していた。いずれこの中でも殺し合いが始まる。
「おまえはどうしたいんだよ?」
 平和島静雄はきびすを返し奥へと歩いていく。
「お、おいどこいくんだよ」
「わりぃけど俺は抜ける。後をよろしくな」
 これだけ大きな城だ。どこからでも出られるだろうと平和島静雄は城の奥へと消えた。

【残り 94人】
317平和島静雄のスタンス 3/3  ◆gfFjaqv/HU :皇紀2665/04/02(土) 02:48:41 ID:dOA0MdFB
【G-4/城の中/1日目・06:20】

【神父と狂気な仲間達】
 【ハックルボーン神父】
  [状態]:健康
  [装備]:宝具『神鉄如意』@灼眼のシャナ
  [道具]:デイパック(支給品一式)
  [思考]:神に捧げるトレーニングは怠ることができない。
 【キーリ】
  [状態]:健康
  [装備]:超電磁スタンガン・ドゥリンダルテ(撲殺天使ドクロちゃん)
  [道具]:デイパック(支給品一式)
  [思考]:ハーヴェイを捜したい。神父を信じたい。
 【ボルカン】
  [状態]:健康
  [装備]:かなめのハリセン(フルメタル・パニック!)
  [道具]:デイパック(支給品一式)
  [思考]:キーリを護る。打倒、オーフェン。
 【古泉一樹】
  [状態]:健康
  [装備]:なし
  [道具]:デイパック(支給品一式)
  [思考]:ハルヒとキョンが死んでどうすればいいのかわからない。
-----------------------------------------------------------
 【平和島静雄】
  [状態]:健康
  [装備]:山百合会のロザリオ
  [道具]:デイパック(支給品一式)
  [思考]:つるむのはしょうにあわない。
318夜会の準備1/3 ◆a6GSuxAXWA :皇紀2665/04/02(土) 02:56:31 ID:Z0eCsR1A
 十叶詠子は樹に背を預けて空を見上げていた。
 周囲には、たくさんの“友達”が自分を心配して集まっている。
 友達たちには、時間も空間も世界も何も、関係は無い。
「うん、小人さんも空飛ぶ顔さんも、そんなに心配しないで? 私はだいじょうぶだよ」
 そして詠子は考える。
 どうやってここを出ようかと。
 ここに来てからは、自分の願いに力を貸していた“名づけられし暗黒”神野陰之との接触は切断されている。
 なら――うん、この世界だと心のカタチも見えにくいし……引っ繰り返しちゃおう。
「“裏返しの法典”さんはあの子の荷物を取りに行っちゃったし――」
 裏返しという言葉に、ふと詠子は微笑んだ。
 周囲の“友達”が、小首を傾げる。
「……うん、私一人じゃ無理だけど、“みんな”が居ればなんとかなるよ」
 大規模な異界を発現させるには、それなりの範囲に『物語』を広めねばならない。
 しかし――
 呪いの刻印は、さかしまになって効果を維持するのだろうか?
 この変な世界は、さかしまになって効果を維持するのだろうか?
「鏡は御扉、時の移りのあわいに開く」
 そう、鏡の精さんにまた力を貸してもらおう。
「海は水鏡、時の移りのあわいに光る」
 水の鏡と月の光と、あとは日の切り替わる、今日でも明日でも昨日でもないその一瞬。
「全てを引き込みさかしまに」
 全てを飲み込ませてさかしまにしてしまうのだ。
「全てを引き出しさかしまに」
 そう、『物語』に関った全てを鏡の世界と入れ替えて、反転させてしまおう――
319夜会の準備2/3 ◆a6GSuxAXWA :皇紀2665/04/02(土) 02:58:24 ID:Z0eCsR1A
 紙と筆記具を取り出し、『物語』を書く。
 白髪の子の遺骸の位置を書き、次いで『物語』を。
『1日目と2日目の境。狭間の時間。鏡の中と外が入れ替わる。そうして、もう二度とは元の形に戻らない――』
 読み飛ばされないように、一番大切な骨格だけを。
 そうして、次に黒髪の子の遺骸の位置を書く。
 知人のものではないかと、遺骸の目撃に関する情報を得たがる参加者は多い筈。
 それに紛れて、『物語』を書き記す。
 その紙の幾枚かを風に乗せて飛ばし、残りを畳んでポケットに。
 あちこちばらまけば、きっと誰かが目にする。
 その誰かが同盟を組めば、妙な紙を見たと『物語』は更に広まるだろう。
 行く先々で、人の目に留まるところにこれを置く。
 そうすれば――
「やはりあったよ。あの少年のデイパックが――少し離れた場所に落ちていたので、見落としていたようだね」
 戻ってきた。
 “裏返しの法典”さんが。
「おかえり。そろそろ朝だねえ」
「ああ、そうだね。動く準備をしておこう。――それと」
 持っていたまえ、と渡されたのは、黒檀の絵が施された大振りの短剣だった。
「あの少年の支給武器だったようだが……君に渡しておこう。万が一の際には使いたまえ」
「じゃあ、これはいらないね――お礼に貴方にあげる」
 メス――既に血を拭ったそれを渡すと、佐山はそれをハンカチで包んでポケットに。
「ありがたく頂こう」 
 ちなみにその短剣とは、アセイミ――魔女の短剣と呼ばれる品である。
 ある意味で最も相応しい主に巡りあったその短剣の柄を、ぬらりと月光が滑り落ちた――
320夜会の準備3/3 ◆a6GSuxAXWA :皇紀2665/04/02(土) 02:59:58 ID:Z0eCsR1A
【座標H−5/海岸沿いの森の蔭/時間(一日目・5:48)】

【佐山・御言】
[状態]:健康
[装備]:Eマグ、閃光手榴弾一個、メス
[道具]:デイパック(支給品一式+食料と飲料水をもう一人分)
[思考]:1.仲間の捜索。2.言葉が通じる限りは人類皆友達。私が上でそれ以外が下だが。

【十叶詠子】
[状態]:健康
[装備]:魔女の短剣、『物語』を記した幾枚かの紙片
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:1.元の世界に戻るため佐山に同行。2.物語を記した紙を随所に配置し、世界をさかしまの異界に

出展:魔女の短剣(アセイミ)@Missing
「……うーん。でも佐山君の方がおかしいかなあ」
「いやいや。ギギナのアホの方が筋金入りだって」
 知り合いの変人度で張り合う二人の会話で、ミズーは知り合いのマグスのことを思い出した。
 名前はなんといっただろうか――記憶に霞がかかったように、思い出せない。
 と――
 唐突に、音が消えた。視界が白くなる。
「――!?」
 全てが――音そのものが死に絶えたような静寂。
 視界から景色が消え、絵具で塗りつぶしたかのようなのっぺりとした白が広がっている。
「久し振りだね、ミズー・ビアンカ」
 聞き覚えのある声は背後から。ミズーは振り向きながらナイフを引き抜き、念糸を伸ばそうとして――気付く。ナイフがない。
 念糸も放たれなかった。無手のままで背後を向き、そこにマグスを見つけた。思い出せない名前は確か、
「……アイガイオン?」
「アイネスト」
 言い直され、ようやく思い出す。アイネスト・マッジオ。帝都で死んだはずのマグス。
「ここはどこ? どうしてここにいるの?」
「ここは君の無意識だ。君がぼくのことを思い出そうとしたから、ぼくにも介入することができた。イマジネーターや<囁き>ならもっと楽なんだろうに」
 矢継ぎ早のミズーの問いに答え、アイネストは微笑んだ。やさしく言う。
「終点に行き着くのに走るのはマグスの流儀じゃないけど、率直に言おう。ミズー・ビアンカ。
 君は、君達は偽者だ」
「何を――」
「契約者の一人、君が殺したはずのウルペンが生き返ったことに疑問はなかったかい?
 君達は偽者なんだ、ミズー。本来の君達の情報を元に、複製された偽者」
「――それを、信じろと?」
 押し殺したミズーの声に、アイネストは歩き出した。変わらぬ笑みを顔に貼り付けて、言う。その一言。
「心の実在を証明をできるかい?」
「――っ」
 歯噛みする。その行為に目を細めながら、彼はミズーの周りを歩く。コツ、コツ、と足音を立てて。
「多頁世界の頁を新しくつくり、その中に複製した多数の個性を集める。そして極限状態の中で“突破”させる――これは実験なんだ、ミズー。
 “世界の敵”が本当に世界を打倒できるのか、という実験。刻印で機能が制限してなかったら、情報統合思念体端末の彼女は気づいていただろうけど」
 彼の言っていることは相変わらず分からなかった――だから、必要なことをミズーは聞いた。
 右手、黒の紋様の浮かぶ甲を彼に見せて。
「この刻印は何? 外し方はあるの?」
「ぼくの話を聞いてないだろう、ミズー。いいけど」
 コツ、コツ、コツ。足音は石に水滴が当たるような、硬い音。一定のリズムで、それは刻まれる。
「その刻印は、精神に寄生する精霊のようなものだ。通常ならば殺せない。魂砕きで宿主ごと砕くのは簡単だけど意味がない。
 君なら、獣を起こせばそれで済む。硝化に硝化をぶつければより強い方が勝つ。『修羅』の少年が良い例だ。既に彼の手に刻印はない」
「わたしに――獣を起こせというの? アストラはもういないのよ!?」
 ヒステリックに、叫ぶ。二つで一つ。それが絶対殺人武器の理だった。
「アストラがいない今――たった一つのわたしは、殺人精霊になってしまう! たとえ不完全であろうとも、きっとそうなる!」
「その通り。だからもう一つの方法を教えよう」
「……それを先に言いなさい……!」
 紡がれたアイネストの言葉に、反射的に拳を放とうとして思いとどまった。
 握られた拳を見て、笑みの口元を隠すアイネスト。
「もう一つの方法。それは“突破”することだ。“突破”が目的であるこの実験で、“突破”したものを制限する必要はないから」
「……“突破”というのは、何」
「卵の殻を破る事だよ、ミズー。ああ、分からなくてもいい。君はもう“突破”している」
「――!」
 告げられた瞬間、何かが啓けたのを感じた。手を見ると、黒の紋様は既にない。
 茫然としていると、アイネストが続ける。
「既に“突破”した状態で居る連中は多いよ。“鋼の後継”の彼とかね」
 コツ、コツ。音が死滅したような中で、言葉ではない足音が嫌に響く。
「必要なのは認識することなんだ。気づくこと。知ること。それが出来れば“突破”は容易い。“世界の敵”になることも」
「“世界の――」
「“世界の敵”とは世界を収束させるもの。自動的な死神が敵とするもの」
「わたしは“世界の敵”?」
「いいや」
 はっきりと否定して――アイネストの足が止まる。顔を近づけ、彼は言った。
「殺人精霊は確かに“世界の敵”だ。だが君は君だろう? ミズー・ビアンカ」
「……ええ。そうよ」
 答えて、頷く。アイネストも満足そうに頷いた。また歩き始める。
 コツ、コツ、コツ、という音の中、ミズーは問う。
「この世界から逃れる方法は?」
「君達はただの複製なんだけどね。まあいいよ、教えよう。――幾つもある」
 アイネスト・マッジオは言う。謡うように。
「この世界は一つの結界のようなものだ。完全なる閉塞を求めた結界。“鋼の後継”ならそれで気付く。
 『零時迷子』ならその場所を知るのは容易い。小さくて通れないなら『最強』に広げてもらうか、“野犬”の“運命”で切り開けばいい。
 そんなことしなくても、超弩級聖人が神を降臨させればそれで容量を超えて吹き飛ぶだろう。
 デモン・スレイヤーズの片割れが金色の魔王の呪を使っても同じことだ。黒夢団の彼が“突破”すれば、もっと平和的に抜け出せる。
 いま言ったのはただの例だよ。抜け出す方法は無数にある。知識を集めて思考すればいい、ミズー。もっと愛想を良くした方がいいよ」
「大きなお世話よ」
 最後の言葉にだけ言い返して、ミズーは胸中で安堵した。抜け出す方法は、あった。
 ふと見ると、アイネストが立ち止まっていた。いぶかしむ。コツ、コツという硬い音はまだ続いている。
「ここは君の無意識だ、ミズー・ビアンカ。ぼくを殺した最強の存在。君がぼくとの会話を、少しでも覚えていることを祈ろう」
「……アイネスト?」
 呟いて。
「どうしたの?」
 きょとんとした顔で、新庄・運切がこちらを見ている――草葉のざわめく音。風の流れ。空の青。どうしようもないその世界の、それは風景だった。
 ふと、立ち止まっていたことに気付き、ミズーは再び歩みだした。
「なんかぼーっとしてたみたいだが、どうかしたのか?」
「いえ……なんでもないの。少し疲れが出たみたい」
 ガユスの問いに適当に答えると、新庄が不安げにこちらを見ている。
「疲れたなら、休憩した方がいいよ?」
「平気よ。それに……あなたも早く恋人に会いたいでしょう?」
「そ、それは……っ!」
 赤面して慌てる新庄に微笑を返し、ミズーは一つの単語を思い浮かべた。
(――“突破”――)
 ふと、右手を見る。
「…………」
「せっかく会った美少女が彼氏持ちというのは何かの呪いだろうか……」
「その、美少女、って言い方やめようよ……」
 二人の会話を聞き流して、ミズーは拳を握りこんだ。
 そこに、黒の紋様は、ない。

「二人とも、今から大事な話があるんだけれど……」

【B-6/森近くの平原/一日目/06:20】

【ミズー・ビアンカ(014)】
 [状態]:健康/刻印解除
 [装備]:グルカナイフ
 [道具]:デイバッグ(支給品入り) 、
 [思考]:フリウとの合流

【新庄・運切】
 [状態]:健康
 [装備]:蟲の紋章の剣
 [道具]:デイバッグ(支給品一式)
 [思考]:1.佐山達との合流 2.殺し合いをやめさせる

【ガユス・レヴィナ・ソレル】
 [状態]:健康
 [装備]:リボルバー(弾数ゼロ) 知覚眼鏡(クルーク・ブリレ)
 [道具]:支給品一式
 [思考]:二人に同行。
326 ◆E1UswHhuQc :2005/04/02(土) 05:08:18 ID:IJQyfs20
>>321-325 アイネスト・トーク(マグスの戯言)は、いくらなんでも展開早すぎるのでNGです。
書き手の皆様は、無かったかのようにお続けください。
327銀と銀の邂逅……なんつって 1/5 ◆69CR6xsOqM :2005/04/02(土) 07:21:26 ID:78bKfSFq
カイルロッドは灯台から湖に沿って南下していこうとしたが、幾分もしないうちに微かな少女の声を聞いた。
「カイルロッド」
「ああ、聞こえたよ。東側の海岸のほうからだったな」
地図で言えばB-8にあたる場所だ。
本当に小さくにしか聞こえなかったので確かなことは言えないが助けを求めているようにも聞こえた。
もしそうであれば、ほおってはおけない。
「陸。何て言ってたかわかるか?」
「助けを求めてましたね。しかしこんな状況で無用心過ぎる気もします。
 罠かもしれませんが、どうしますか?」
「行ってから考えよう」
そう言って銀に輝く髪を翻し、カイルロッドは駆け出した。


パチパチと焚き火が爆ぜる音がする。
薪の組み方も本格的で火力もかなり高く、それは藤花の着ている服と
何気なくデイパックから取り出した濃紺の外套、帽子をも乾かすに充分だった。
「その衣装は何なの?」
「さあ?私のデイパックから出てきたところを見るとこれが支給品みたいなんですけど…」
困ったような顔をして答える藤花に苦笑する麗芳。
「あっちゃ〜そりゃハズレたね。あはは、ご愁傷様」
「そういう麗芳さんはどうなんですか?」
少しムッとして尋ね返す。
「わたし?わたしのは…これ」
そういって道服の腰に挿し込んでいたホルダーから鉄棒を取り出す。
「最初は雷霆鞭の類の武宝具かと思ったけど、ぜ〜んぜん見込み違い
 力入れても何にも起こらないしただの鈍器だわ。ま、素手よりマシだけどね」
肩を竦める。
しかし不思議そうに鉄棒を見つめる藤花に疑問を抱く。
「どうしたの藤花ちゃん。この武器知ってるの?」
「え、…はぁ、多分。少しそれ貸してもらえますか?」
麗芳はつい何気なく藤花に棒を手渡した。
表面上は変化はないが、この時少し麗芳は緊張する。
328銀と銀の邂逅……なんつって 2/5 ◆69CR6xsOqM :2005/04/02(土) 07:21:59 ID:78bKfSFq

もし武器を手にしたとたん、相手が豹変して襲い掛かってきても対応できるように。
『ちょっと考えなしだったかな?また淑芳ちゃんに馬鹿にされそう…。
 でもこの子弱そうだし、いざとなったら圏もあるしね。うん、おっけ問題なし!』
そう、麗芳の得意とする武器、「圏」(長さ一尺ほどの鉄輪)は普段は金の指輪として麗芳の指に嵌っているため
主催者側が武器と判断できずに没収されなかったのだ。
麗芳のそんな心配をよそに藤花は棒を受け取ると柄の部分についているスイッチを押した。
バチィッ!!
「きゃっ」
「うひあっ?」
いきなり鉄棒に雷が迸り、驚いて間抜けな声を出す麗芳。
藤花もまた、予想以上の電撃に驚いて思わず鉄棒を取り落とす。
「な、ななななななんなの、これ?」
「吃驚したぁ〜、だ、大丈夫でしたか麗芳さん?」
「う、うん。それより…」
「え〜と、これスタンガンです。多分。
 いや、これはスタンロッドっていう奴かなぁ」
「すたんがん?すたんろっど?」
聴きなれない言葉に思わず問い返す麗芳。
藤花はスイッチに触れないよう、落ち着いてスタンロッドを拾い上げる。
「ここにスイッチが付いているでしょう?ここを指で押すことで芯に電流が流れる仕組みになってるんです。
 普通は人が気絶するくらいのものなんですけど…」
「いや、気絶じゃすまないって絶対。象でもパツイチで昇天しそうな勢いだったよ?」
抗弁しかけて、はたと麗芳は気が付く。
『や、やば。圏じゃ防ぎきれないし、もしかして今麗芳ちゃんピンチ!?』
しかしそんな心配は杞憂だった。
藤花はそのスタンロッドを普通に返してきたからだ。
「はい、扱いに気をつけないと自爆しちゃいますよ?」
「え?あ、ありがと」
麗芳はきょとん、とロッドを受け取ると腰のホルダーに収めた。
そしてため息をつき、藤花の肩を軽く叩く。
「ハァ〜〜〜藤花ちゃん、あんたいい子だねぇ〜〜」
329銀と銀の邂逅……なんつって 2/5 ◆69CR6xsOqM :2005/04/02(土) 07:23:14 ID:78bKfSFq
藤花を疑ったことをちょっぴり反省する麗芳であった。
「どうしたんですか、いきなり?」
麗芳は何でもないと手を振り、再び焚き火の傍に腰を下ろす。
「変な麗芳さんねぇ」
「あ…」
その言葉にふと麗芳は藤花を振り返り、まじまじと見つめる。
その少し寂しそうな表情に藤花は首をかしげた。
「あ、いやぁ…今の、淑芳ちゃんの言い方にすごく似てたからさ。
 ちょっとビックリしちゃって」
「しゅくほう…さん、ですか?」
「うん、わたしの双子の妹。わたしの金の部分をそっくりそのまま銀にしたら淑芳ちゃんの出来上がり。
 あ、わたしよりかは身体の発育は遅いんだけどね。嫌味言うのと男の人に惚れるのが趣味でさ…」
そんな風に楽しげに語る麗芳を見て藤花は微笑む。
悪し様に言いながらも、その妹に対する愛情が伝わってきたからだ。
しかしあることに思い至り、藤花は顔を曇らせると恐る恐る口を開いた。
「あの、それで淑芳さんはこの島に……」
麗芳の口の動きがパタリと止まる。少し俯いて静かに答えた。
「いるよ。だから、絶対に見つけ出さなくちゃ。
 あの子は頭いいし、術も得意だけど腕っ節はからきしだからね。
 …わたしが、守ってやらないと…」
金の瞳に決意を宿らせて誓いの言葉を吐き出す。
この世界に落とされた麗芳は光遁の術を使って空を飛ぶ雲を呼び出そうとしたが、
全く発動せず、仕方なしにしばらく全力疾走しながら数時間、淑芳を探し続けたらしい。
しかしどんな不運か誰にも会うこともなく、この森で力尽き夜営していたのだ。
神仙の中でも高名な太上老君の弟子、金仙華児たる自分がこれくらいで疲労してしまうことで
麗芳はこの世界において自分の力が制限されていることを強く感じてしまったという。
語りながら自分の無力さに歯噛みし打ち震える麗芳。
藤花は居たたまれなくなり、夜空を見上げた。夜明けは…近い。
麗芳の呟きが聞こえる。
「淑芳ちゃん、きっと今も泣いているわ…」
330銀と銀の邂逅……なんつって 4/5 ◆69CR6xsOqM :2005/04/02(土) 07:23:49 ID:78bKfSFq

「ふえ〜〜ん、誰かぁ〜〜〜助けてぇ〜……麗芳さぁ〜〜ん!」
島の東側の海岸線、そこに座礁している難破船のメインマストの頂上に淑芳は引っ掛かっていた。
数時間前の話。
B-8の海岸線に飛ばされた淑芳は手持ちの紙と鉛筆で十数枚の呪符を書き上げると、
麗芳たちを探すために行動を開始した。
しかし光遁の術で上空から麗芳を探そうと格好つけて崖から飛び降りたところ、
術が発動せず、まさに海へと死のダイブを敢行した形になってしまったのだ。
「うっきゃあ〜〜〜! り、臨兵闘者以下略っ、天風来々急々如律令ぉぉ!!」
慌てて作ったばかりの呪符をばら撒き、適当な呪文と共に突風を起こして身体を巻き上げたが、
術の威力も持続時間も足りずにあさっての方向にぶっ飛んでしまった。
そして偶然傍にあった難破船のマストに襟元が引っ掛かり、あやうく窒息しかけたものの、
何とか身体を支えて事なきを得た…が、今度はそこから降りられなくなり今に至る。
「ああ、何て不幸なわたし……美少女薄命とは私の為にある言葉なのね…
 いいえ、違うわ。そう、ここは超美形でたくましい運命の王子さまが白馬とともに現れて
 薄幸のヒロインであるわたしをを颯爽と助けてくださるに違いありません!
 そうに決まってますわ!」
『淑芳…遅れてごめんよ。愛してる…』
『ああ、私の王子さま…永遠の愛は確かにここにあるのですね…』
「なーんちゃって、なーんちゃって!」
妄想をかき消すようにジタバタと手を振り、マストの上で器用に暴れる淑芳。
そんな淑芳を崖の上から遠巻きに見つめる二つの影があった。

「なぁ、陸。あれって助けたほうがいいのかな?」
「さぁ、あのままにして置いたほうが幸せかもしれませんね……」
331銀と銀の邂逅……なんつって 5/5 ◆69CR6xsOqM :2005/04/02(土) 07:24:30 ID:78bKfSFq

【E-7/森の中/一日目、04:15】
 【宮下籐花(ブギーポップ)】
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式。デイパックの中にブギーポップの衣装
 [思考]:麗芳と会話しながら服を乾かす/ゲームからの脱出

 【李麗芳】
 [状態]:健康
 [装備]:凪のスタンロッド
 [道具]:支給品一式
 [思考]:宮下籐花と会話しながら体力の回復/淑芳を探す/ゲームからの脱出

【B-8/海岸の崖、その直下の難破船/一日目、04:15】
 【李淑芳】
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式。配給アイテム不明。
 [思考]:なんとかこの状態から抜け出したい/麗芳を探す

 【カイルロッド】
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式。陸(カイルロッドと行動します)
 [思考]:とりあえず目の前の少女を助けよう/陸と共にシズという男を捜す
     /イルダーナフ・アリュセ・リリアと合流する
332 ◆69CR6xsOqM :2005/04/02(土) 07:54:43 ID:78bKfSFq
訂正

【E-7/森の中/一日目、04:15】
【B-8/海岸の崖、その直下の難破船/一日目、04:15】

【E-7/森の中/一日目、05:15】
【B-8/海岸の崖、その直下の難破船/一日目、05:15】

時間を1時間修正します。失礼しました。
333雌伏する暗殺者、能動する殺人者(1/3):2005/04/02(土) 10:30:28 ID:pQscuvM+
 一人、二人、三人、四人……五人。
 そして恐らくその中に、ほのちゃんはいない。

 出れなかったというのもあるけれど、この城を戦場と想定して正解だったようね。
 これほど目立つ建造物なら、放っておいても人が集まってくる。
 城の構造は把握した。
 ある程度は狙撃ポイントも割り出した。
 一時間ほど仮眠も取った。
 そして得物は使い慣れたウェポンシステム。
 用意は万全に近い。
 ……ただ、うまく気を練れないのが気がかりね。
 龍気槍は使えないかもしれない。
 龍気圏を構築するのに、恐らく普段の倍以上の時間がかかる。
 これが必要になるほどの使い手がいないことを祈るしかないわね。

 この城にはもう一人いたけど、あの赤毛の彼女は私の相手をするより外に出る道を探すことを選んだようだ。
 私の存在には気づいていたようだけど。
 私も、彼女の相手をするよりも準備を整えることを選んだ。
 彼女が外との接点を作ってくれれば、私にとっても都合が良かったから。
 彼女の気配は、今いる五人が城の中に入ってから感じ取れなくなっている。
 城門が開いているのは確認した。彼等をやり過ごして外に出たのだろう。
 タイミング的に、城門を開けたのはあの五人。
 私も一度確認したけど、アレはそう簡単に開けられるものじゃない。実際、赤毛の彼女も開けられなかった。
 返せば、あの城門を開けるだけの力を持つ者が、少なくとも一人はいるということ。
 単なる力馬鹿ならいいのだけれど。


 ……一人、別行動を取った。
 行きましょう。


334雌伏する暗殺者、能動する殺人者(2/3):2005/04/02(土) 10:32:46 ID:pQscuvM+
 ずっしりとした重みが右手にある。
 やっぱり全弾装填されていると安心する。
 Eマグなら、もっと良かったのだけれど。

 起きたら目の前に『頭欠』の屍体があったからびっくりした。
 多分、寝る前に会ったあの男の人。
 きっと神様のバチが当たったんだ。
 俺にウソを教えて、ミラを隠そうとしたんだから。

 彼の名簿を見せてもらったら、本当にミラの名前は無かった。
 それで分かった。
 あの主催者たちがミラを隠しているんだ。
 ミラは俺のママになってあげると言ってくれたんだ。
 二人で街を出て、遠く東の国まで旅をするはずだったんだ。
 けれど、当日の朝目を覚ましたら、俺はあの会場にいた。
 あいつらが俺とミラを引き離したんだ。
 ということは、この男の人も騙されていただけなんだな。
 神様、バチを当てる相手を間違ってます。
 だから代わりに俺がバチを当てます。
 そしてミラを助け出します。

 『頭欠』の彼にお別れを言って、また森を歩いていたんだけど、まさかお城があるとは思わなかったな。
 こんなの物語の中でしか見たことないや。
 物語では、悪の大ボスは大体こういうところに隠れているものだった。
 ここにいるかな。あいつらと、ミラは。


 行ってみよう。
 待っていて……ミラ。


【残り94人】
335雌伏する暗殺者、能動する殺人者(3/3):2005/04/02(土) 10:33:25 ID:pQscuvM+
【G-4/城の中/1日目・06:20】

【パイフウ】
[状態]健康
[装備]ウェポン・システム(スコープは付いていない)
[道具]デイバック一式。
[思考]主催側の犬になり、殺戮開始/この五人を皆殺し/火乃香を捜したい。



【G-4/城門前/1日目・06:20】

【アーヴィング・ナイトウォーカー】
[状態]:情緒不安定/修羅モード
[装備]:狙撃銃"鉄鋼小丸"(出典@終わりのクロニクル)
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:主催者を殺し、ミラを助ける(思い込み)

336素人と専門家 その1:2005/04/02(土) 13:55:41 ID:7RW3zzga
遊園地の茂みをよく見て見ると男がいた、まるで背景と一体化しているようで、その姿は遠くからではまるで見えない。
いつもに比べてもムッソリ具合を増した顔は注意深く辺りを見回す。一旦は南に向かおうとしたが途中地図を見てより隠れやすいだろう遊園地にいくことにしたのだ。
先程までいた男は観覧車の上にいて、奇襲を仕掛けるのには不便だったので様子を見ていたが、少し前にどっかへ走りさっていった。
ふと視界の隅に人影が見えた、どうやら女のようだった。
だがいくつかの要素が彼をためらわせている。
1つは単純に武器のこと。
ここから見ても殺傷力に優れた剣を装備しているのが見て取れる。
さらに相手は切り札を用意しているようだった、おそらく拳銃の類だろう。
2つ目は相手の雰囲気だ。
一見優雅な立ち振る舞いをしているが・・その目には明らかな殺意が宿っていた。
3つ目、これが彼にとって最大の理由かもしれないが・・彼女の容姿は彼の知り合いに似ていた。
どうやら本人ではないようだが長く綺麗な黒髪、モデルのような長い足などはどうにも彼女を意識してしまってやりづらい。
だがしかしそのためらいを振り払い、彼は茂みから飛び出した。
337素人と専門家 その2:2005/04/02(土) 13:58:39 ID:7RW3zzga
相手が自分の姿に気付いた時にはもう遅い、彼の一撃は彼女の剣を弾き飛ばしていた。
そして即座に後ろに回り、コンバットナイフを首筋につきつける。
先程までの彼ならば即座にその首をかっきっていたがやはりどうにもやりづらいのでとりあえず解放すると質問してみる。
「君に似た容姿の子を知らないか?名前は千鳥かなめという。」
彼女は緊張しながらも表面上は冷静に振舞いながら答えた。
「あった記憶はありませんわ。私も人を探しています、赤い髪をツインテールにしている女の子で祐巳というのですが・・。」
「見てない。」
簡潔な答えが返ってきた。
「そうですか・・できればあなたと一緒に行動しながら祐巳を探したいと思うのですがよろしいでしょうか?このような場所に1人では不安で・・私、小笠原翔子と申しますわ。あなたのお名前は?」彼女が名乗り、相手の名を訊く。
「相良宗介、階級は軍曹だ。確かに探索任務は単独でやるよりペアを組んだ方がやりやすい、肯定する。」
少し変な答えがかえってきた。
「とりあえずは移動しませんか?このような場所では発見されやすいでしょうから。」
「肯定だ。」
と言って茂みに彼は茂みに戻ろうとする。彼の後ろには・・ソーコムピストルを構えた小笠原翔子の姿があった。
338素人と専門家 その3:2005/04/02(土) 14:17:46 ID:7RW3zzga
『ごめんなさい、これも祐巳のためなの・・。』
目をつぶりながらも躊躇はせずに引き金をひく、彼は凶弾に倒れた・・はずだった。
祥子が目を開けたその先に相良宗介の倒れた姿はなかった。
「え?」
と声を漏らした直後、彼女の視界は回転した、地面と口付けしてしまいそうになる。
「味方になったと見せかけ隙を作って攻撃するのはいいが・・仕掛けるのが早すぎる、さらに目も開けずに拳銃を撃つなど、テロリストとしても軍人としても三流だ。」
みしみしと彼女の骨が軋む、拳銃は既に相手の手の中だ。
「どうやって・・狙っているのが・・分かったの?」
痛みに耐えながらも問う。
「あの訓練施設にあったのを拝借してきた。」
彼が指す先にあったもの・・ミラーハウスだった。
『祐巳、ごめんなさい、あなたは頑張って生き残るのよ。』
宗介がナイフを構えた、そして・・何かに弾き飛ばされた。
「宗介、あんたまた何やってんのよ!」
彼にとっては良く聞いた声、彼女にとっては初めて聞く声。

千鳥かなめが、そこにいた。
339素人と専門家 その4:2005/04/02(土) 14:18:31 ID:7RW3zzga
【E1/海洋遊園地/7:30】
【赤薔薇パニック!】残り94人

【小笠原祥子】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】荷物ワンセット(毒薬のみ)
【思考】誰だろうこの女性。

【相良宗介】
【状態】健康
【装備】ソーコムピストル、コンバットナイフ、スローイングナイフ
【道具】前と変わらず
【思考】かなめ?

【千鳥かなめ】
【状態】健康
【装備】?
【道具】?
【思考】あんた何やってんのよ、宗介!

かなめが他のメンバーと離れたかどうかは次の人にお任せします。
340イラストに騙された名無しさん:2005,2005/04/02(土) 14:35:37 ID:7RW3zzga
素人と専門家は無しの方向でお願いします。
341竜を殺す者、諭す者(1/8) ◆J0mAROIq3E :2005/04/02(土) 15:42:45 ID:rx/45PMd
「――クエロはともかく、ガユスが死んでいないとはな」
 G-6南東部の木の上で休息を取っていたギギナは無表情に呟く。
 攻性咒式士としては並以上のガユスとはいえ、魔杖剣を取り上げられれば無力だ。
 それこそ眼鏡の付属物といっても過言ではない。
 眼鏡まで取り上げられていたとしたらそれこそ何も残っていないだろう。
(そうか、つまり眼鏡を取った時点で存在が消えたのだからわざわざ放送で呼ばなかったのかもしれんな)
 それは我ながら納得のいく理由のように思えた。
 
 休息は十分と判断し、ギギナは音もなく森へと下りる。
 恐らく島の中心部に人間が集まるだろうという予測の下、ギギナは北西へと歩を進めた。
 闘争の予感に戦意は高揚し、同時に思考と感覚は氷のように冷めていく。
 そして、
「……いるな」
 鋭敏な聴覚はすぐに自分以外が落ち葉を踏む音を捉える。
 強敵であることを望み、ギギナは急ぎもせずそちらへと歩んだ。
342竜を殺す者、諭す者(2/8) ◆J0mAROIq3E :2005/04/02(土) 15:43:53 ID:rx/45PMd
「――新庄君や風見が無事で何よりだが、馬鹿もなかなかどうしてしぶとくて結構なことだ」
 H-5の森の中、死角となる木々の間で佐山はやれやれと呟く。
 しかし、思った以上に死者が多い。
 殺さなければ死ぬという煽りは、陳腐だが有効だったようだ。
「詠子君、君の知り合いは無事かね?」
「うん。一人しかいないけど名前は呼ばれなかったよ」
「その人の名は? 探すのであれば助力は惜しまないが」
「空目恭一君。うーん……私はあの子が気に入ってるから探してあげたいんだけどねぇ」
 もっとも向こうは私に会いたくはないだろうから、と詠子は苦笑する。
(片思い、いや、別れた恋人という線もあるか)
 妄想を逞しくし、佐山は深く俯く。
(極限の状況下で二人はすれ違い、しかし目覚めた野性は思いを素直な言葉へと換えてああっ、ああっ!!)
 くねくねと奇怪な動きをする佐山に詠子は首を傾げる。
「……おっと失敬。では北上しようか。疲労はまだあるかね?」
「大丈夫だよ。森の散歩はよくしてるからね」
 では行こう、と背を向けた佐山を追わずに詠子は先ほど手に入れたアセイミを取り出す。
 人差し指に刃を軽く突き立て、膨れた血の球を森に一滴だけ落とす。
 異様なほどに紅い魔女の血。それは柔らかな腐葉土へとささやかに染み込んだ。
 それを見届け、僅かな血を同じ色の舌でゆっくり舐め取ると、何事もなかったかのように歩き出す。

 そして、二人と一人は遭遇した。
343竜を殺す者、諭す者(3/8) ◆J0mAROIq3E :2005/04/02(土) 15:44:42 ID:rx/45PMd
「……初めまして、だね?」
「……貴様は?」
「貴様と呼ばれる屈辱を噛み締めて貴様に答えよう。
 私は佐山・御言。好きなものは新庄君で趣味は新庄君、好物は新庄君という慎ましやかな男だ」
(ハズレか。いや、万が一強かったとしてもこれはハズレだ)
 持って回った言い回しが嫌な人間を連想させる。
「ギギナ。ドラッケン族の剣舞士だ」
 言って、抜き身の大剣を見せる。
 が、白髪混じりの少年と、こんな状況で微笑みを見せる少女は逃げ出す素振りも見せない。
「ふむ……ギギナ君、といったね。君はこのゲームに乗っているのかね?」
 もっともな質問だった。嘘をつく理由もなくギギナは正直に答える。
「そうとも言えるし違うとも言える。私の興味は強き者との闘争にのみある」
 貴様はどうだ? とばかりに緩く構えると、佐山は一つの動きを見せた。
 苦笑。
「やれやれ。この状況でブレードハッピーとは呑気なものだね」
「それが我らドラッケン族というものだ。……そもそも貴様が言えたことか」
 少なくとも緊張感という意味ではギギナ以上に佐山の方が欠けている。
 さらに言うなら木の上の鳥を珍しげに見上げている少女にそんなものは存在しない。
 この場にガユスがいたならギギナの美貌にまるで見とれないことに驚愕しただろう。
 刃を前にしてこの脱力、それは余裕なのか無知なのか。
「問うよりは……試すべきだな」
 呟きは神速の斬撃と共に放たれた。
344竜を殺す者、諭す者(4/8) ◆J0mAROIq3E :2005/04/02(土) 15:45:17 ID:rx/45PMd
 竜殺しの一族に相応しい重く速い斬撃。
 魂砕きの刃はコンマ以下のぶれもなく佐山の肩口へ降り注いだ。
  
「……何故避けない?」
「当てる気のない攻撃を避けることに何の意味があると?」
 黒い刃は、佐山のスーツの生地を傷つけることなくその肩に触れていた。
 ギギナの美しい貌が歓喜に歪む。
「……成る程。馴らし程度の相手にはなりそうだな」
 それは取りも直さず殺し合いの申し出だった。
 対する佐山はつまらなそうに鼻を鳴らす。
「つまるところ、君は私と戦いたいのだね?」
「そういうことになるな。少なくとも場慣れはしているよう……!?」
 刃を鬱陶しがるように横に一歩動いた佐山の姿が掻き消える。
 歩法と呼ばれる2nd-Gの技能をギギナは知らない。
 よもや背後を取られたかと振り返ると、さらに背後……元の場所から肩を叩かれた。
 殺気を込めて再び正面を向くと、佐山の爽やかな笑顔があった。
「……だが断る」
345竜を殺す者、諭す者(5/8) ◆J0mAROIq3E :2005/04/02(土) 15:46:22 ID:rx/45PMd
 何なのだこいつは……!?
 ギギナは不理解に苛立つ。
 煽るように姿を消してみせ、不意打ちできる状況を作りながらも軽く流して戦う意志はないと言う。
 行動に一貫性がない。まるで相棒の眼鏡のようだ。
「まぁ落ち着きたまえギギナ君。私は寛大だが礼には厳しくてね。
 刃物を人に向けてはいけないというのは子供でも守る礼儀だよ?」
「このゲームはそういうものだろうが」
「ならば私と君に限っては違うということにしたまえ。まずは平和的に行こうではないか」
 底の見えない佐山に警戒感は高まるばかりで、戦闘態勢は解けない。
 が、ペースを意図的に乱されていることには気付けもしない。
「ドラッケン族と言ったか。察するに異世界の戦闘民族と見るが……
 戦闘行為に誇りを抱く類の種族かね?」
「その通りだ。故にこのゲームとやらは非常に都合が良い。……楽しめる人間も多そうだしな」
 常人なら迷わず逃げ出す威圧感を、佐山は受け流す。
「ならば尚更剣を収めたまえ。戦う意志のない者への一方的な戦闘に誇りなどあるまい」
「……貴様ごときがドラッケン族の誇りについて語るな」
「では問おう。その誇りは何に因るものかね。まさか弱い者虐めに因るものではあるまい?」
 嘲るような言い回しに火が点きかけると同時、後ろにいた少女が喋った。
「誇りというよりはプライドなのかな。ちょっとしたニュアンス違いだけど。
 竜殺しの血族に生まれながら普通の人の血が混ざってることへの反発心、とか
 だから他のみんなより強者であることを結果で示したいんだね?」
 瞬間。ギギナの敵意はすぐさま少女へと向けられた。
346竜を殺す者、諭す者(6/8) ◆J0mAROIq3E :2005/04/02(土) 15:47:23 ID:rx/45PMd
「……娘。貴様は私を知っているのか」
「ううん、初めましてだよ。私はただ“見えた”だけ」
 切っ先を向けられ、少女はやはり微笑むだけで動じない。
 一見常人に見える二人の異常性にギギナの苛立ちは募るばかりだった。
「ああ、紹介が遅れたね。そちらは詠子君。私の友人で夢いっぱいの不思議少女なのだよ」
「名前などどうでもいい! ……貴様、私の何を見たというのだ」
「見えちゃうのは不可抗力だから怒らないでほしいんだけどな。
 ふふ、血に刻まれた物語に歪められて自分を律する辺りはガラスのケモノさんにそっくりだね。
 さしずめあなたはツルギのケモノさんかな?
 優しさに苛立ちを、悪意に殺意を、慰撫に刃を返す飛び切り攻撃的なケモノさん」
「知ったような口を……!」
 だが、少女の唇から紡がれる言葉は妙に納得のいくことばかりだった。
 ガラスのケモノ云々は分からないにしても、何故初見でここまで見破れるのか不気味なほどだった。
 佐山が眼鏡の相方なら、見透かすような詠子の口調はどこぞの眼鏡枢機卿を思わせる。
「竜殺しとはまた物騒な話だね。竜とも交渉する平和主義者には理解できない世界だ」
「竜が人間側の視野に存在する世界か……行ってみたいなぁ」
 それぞれ好き勝手に話す言葉の一つ一つがギギナの闘争心をぼかしていく。
「……その、口調」
「芸風だが癇に障ったなら謝罪しよう」
「……眼鏡をかけてたら叩き斬っていたところだ」
 消えはしない攻撃性だが、少なくともこの二人はもはやどうでもいいような気がしていた。
347竜を殺す者、諭す者(7/8) ◆J0mAROIq3E :2005/04/02(土) 15:48:44 ID:rx/45PMd
「さて、では結論を聞こう。……君はお気楽ゆるるんの我々と事を構えるつもりかね?」
「興が一切合切削がれた。いかに強かろうと貴様らとは二度と会いたくない」
「嫌われたものだ。どう思うね詠子君?」
「悲しいことだけど、馴れ合いを嫌うのはケモノのサガなんだなぁ」
 付き合ってられん、とギギナは裾を翻す。
 その背に尚も言葉は浴びせられる。
「1日目と2日目の境。狭間の時間。鏡の中と外が入れ替わる。そうして、もう二度とは元の形に戻らない――」
 奇妙な節で歌うように紡がれた言葉は、その不明さにも関わらずギギナの耳に残った。
「……どういう意味だ」
「“魔女”は気紛れだから、言うこと全てに意味があるわけじゃないよ。
 今の時点ではただの……そう、ただの戯言とでも思っていてほしいかな」
 嘆息し、ギギナは足早に北上する。
 長いリーチの歩みはその姿をすぐ見えなくした。

「……では私たちも予定通り北上しようか」
「ツルギのケモノさんも行っちゃったけど、いいの?」
「なに、問答無用の不届き者は彼がいい感じに露払いしてくれるだろう。小狡く行こう」
 ごく自然なペースで移動を開始し、そういえばそろそろ切君の時間だなと佐山は思った。
 詠子もまた歩き出し、ついでにまた一滴だけ血の雫を島へと染み込ませた。
348竜を殺す者、諭す者(8/8) ◆J0mAROIq3E :2005/04/02(土) 15:50:04 ID:rx/45PMd
【座標G-5/森/時間(一日目・6:20)】


【佐山・御言】
[状態]:健康
[装備]:Eマグ、閃光手榴弾一個、メス
[道具]:デイパック(支給品一式+食料と飲料水をもう一人分)
[思考]:1.仲間の捜索のため北上。2.男装の運君だったのか女装の切君になるのか、ああっ、ああっ!

【十叶詠子】
[状態]:健康
[装備]:魔女の短剣、『物語』を記した幾枚かの紙片
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:1.元の世界に戻るため佐山に同行。2.物語を記した紙を随所に配置し、世界をさかしまの異界に
出展:魔女の短剣(アセイミ)@Missing

【ギギナ】
[状態]:健康(不機嫌)
[装備]:魂砕き
[道具]:荷物一式
[思考]:強くて戦意のある者に会うため北上
349COPY or ORIGINAL(1/3) ◆MejjzMCJQo :2005/04/02(土) 16:25:02 ID:haDa8iyH
平和島静雄を尻目遣いで見送る。すぐに見えなくなった。

放送が終了してからというもの、古泉一樹は一人思案に暮れていた。
______まさかすでに3人も亡くなっていたとは・・・。
でも、これで確信が持てました。

去年の冬休みの合宿。雪山遭難時に館であの人が打ち明けてくれたことを思い出す。

___朝比奈さんと長門さん、そしてあの人、計3人はもう一度過去に戻らなくてはいけないことが
決定している。これは揺るがすことが出来ない規定事項だ。
もし、この企画に参加した彼らが完全オリジナルの彼らであったならば、ここで死ぬのはおかしい。
いや、絶対にあってはならない。過去に行けないという矛盾が生じるからだ。
つまり少なくとも、すでに亡くなっている朝比奈さんとあの人は異世界にコピーされた存在である可能性が高い。
そうなると涼宮さんもコピーだったと考える方が妥当かもしれませんね。

___まぁ、直接関係のない僕がコピーかオリジナルかは分かりませんが・・・。
未来人である朝比奈さんは何か知っていたんでしょうか? と言っても、もう知るすべはありませんし、
例え知っていたとしても禁則事項ですとか言って教えてはくれないんでしょうけどね・・・。

顔を上げる。そこには、いつものさわやかな微笑み。
彼らがコピーである可能性を見出し、安心しているようにも見受けられる。

___とりあえず今後の方針は決まりました。本来なら最初からそうすべきだったんですが・・・。
気絶したのは大きな痛手でしたね。

「至急探さなくてはいけない人が出来ました」
350COPY or ORIGINAL(2/3) ◆MejjzMCJQo :2005/04/02(土) 16:28:42 ID:haDa8iyH

「「えっ?」」
突然の発言に目を丸くするキーリさんとボルカンさん。
神父さんは城門を閉めてからずっとトレーニングを怠りません。話はもちろん聞こえているでしょう。

「僕も別行動をとらせていただきます」
「でも・・・古泉さん、武器も持たないで危険すぎます!!」
間髪を入れずキーリさんが阻止する。大きな不安と心配が見て取れた。

「そうですね。でも、こんなに大きなお城ですから、厨房に立派な包丁の1本や2本はあるでしょう。
 使いたくはありませんが・・・少しお借りしてから出発するとします。扉は僕の力では開きそうにないので
 平和島さん同様、適当な場所から出ようと思います」

本来自分はそんなに行動派ではないのだが、仕方ありませんね。
___涼宮さんと、朝比奈さん、そしてあの人まで居なくなってしまった今、
状況を共有できるのは長門さんだけですから。
あの方なら僕よりも的確に判断が出来るでしょう。今度の対策も話し合わなければいけません。

「気絶中の介抱、感謝します。もし、みなさんのお探しの人に巡り合えたら此処にいると伝えましょう。」
古泉一樹はデイバックを肩に掛け、告げる。

と、丁度その時、ガラスが割れる音に次いで銃声が広い城内に響き渡った。
351COPY or ORIGINAL(3/4) ◆MejjzMCJQo :2005/04/02(土) 16:30:17 ID:haDa8iyH
【G-4/城の中/1日目・06:22】

【神父と仲間達】
 【ハックルボーン神父】
  [状態]:健康
  [装備]:宝具『神鉄如意』@灼眼のシャナ
  [道具]:デイパック(支給品一式)
  [思考]:神に捧げるトレーニングは怠ることができない。
 【キーリ】
  [状態]:健康
  [装備]:超電磁スタンガン・ドゥリンダルテ(撲殺天使ドクロちゃん)
  [道具]:デイパック(支給品一式)
  [思考]:ハーヴェイを捜したい。神父を信じたい。 古泉を心配。
 【ボルカン】
  [状態]:健康
  [装備]:かなめのハリセン(フルメタル・パニック!)
  [道具]:デイパック(支給品一式)
  [思考]:キーリを護る。打倒、オーフェン。
 【古泉一樹】
  [状態]:健康
  [装備]:なし
  [道具]:デイパック(支給品一式)
  [思考]:厨房で武器調達後、長門有希を探す。
352COPY or ORIGINAL(4/4) ◆MejjzMCJQo :2005/04/02(土) 16:30:48 ID:haDa8iyH
【G-4/城の中/1日目・06:22】

【パイフウ】
[状態]健康
[装備]ウェポン・システム(スコープは付いていない)
[道具]デイバック一式。
[思考]主催側の犬になり、殺戮開始/この五人を皆殺し/火乃香を捜したい。
(銃を撃ったのはパイフウと思われる)

【G-4/城の中/1日目・06:22】

【アーヴィング・ナイトウォーカー】
[状態]:情緒不安定/修羅モード
[装備]:狙撃銃"鉄鋼小丸"(出典@終わりのクロニクル)
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:主催者を殺し、ミラを助ける(思い込み)
   (城門が開けられなかったので、ガラスを割って侵入を試みたと思われる)
353 ◆MejjzMCJQo :2005/04/02(土) 16:33:45 ID:haDa8iyH
すみません。>>349-350はそれぞれ1/4と2/4でお願いします。
354下手な嘘 その1:2005/04/02(土) 17:58:48 ID:7RW3zzga
『さっきのあれは・・』
荷物をまとめて出発しようとしているとき、しずくの頭の中には取っ掛かりがあった。
普通の人間なら見えなくて当然の距離だったが、生憎彼女は人間ではなかった。
『さっきのあれは・・BB?』
進路を決めていたとき、遠く離れた空に微かに見えたもの、彼女から見てそれは確かにBBだった。
「どうかしたのしずく?さっきから変よ?」
かなめが声を掛ける、すぐ後ろにはオドーもいた。
「いえ・・なんでもありません。」
こんなことを話しても意味はない。
しずくは黙っておくことにした。
「あんた嘘が下手ね。話してみなさいよ、黙ってたっていいことないわよ。」
少し考えてから、しずくは話すことにした。
さっき北の空に何かが見えたこと、それが彼女の探していた人物に見えたことを。
「そう・・。」
かなめは話を聞き終えると、オドーの方向き直って言った。
「ねえオドーさん、あたし実はさっきの戦闘のとき足を挫いちゃったの、それで・・。」
「かなめ、おまえも、おまえも嘘が下手だ。」
オドーが少し笑いながら言った。
355下手な嘘 その2:2005/04/02(土) 18:00:30 ID:7RW3zzga
「かなめさん、オドーさん!」
自分のただの勘のために危険な道を歩かせるわけにはいかないと思い、しずくは止めようとした。
だがその言葉をかなめが遮る。
「しずく、たまには勘で動くのもいいものよ。」
にっこりと笑っていう。
「それに、いざとなったらオドーさんが守ってくれるしね。」
自分が足手まといになったときには自ら命を絶つつもりだ。
という言葉は言わなかった。
「ああ、ああ安心しろ、お嬢さん方を守るのは俺の、俺の役目だ。」
オドーからも頼もしい言葉が発せられた。
「かなめさん、オドーさん・・ありがとう。」
心から感謝の礼を述べた。
「さて、行きましょうか。」
かなめが出発の声を掛ける。
そして3人は北へ向かった、その先に待ち望んだ再会のあることを信じて。
356下手な嘘 その3:2005/04/02(土) 18:02:14 ID:7RW3zzga
【H-1/神社付近/一日目6:10】
【正義と自由の同盟】
残り94人

【しずく】
【状態】機能異常はないがセンサーが上手く働かない。
【装備】エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん)
【道具】荷物一式
【思考】オドーとかなめに感謝、BBを追う。
【行動】E1経由で中央部へ

【千鳥かなめ】
【状態】いたって健康。
【装備】鉄パイプのようなもの(バイトでウィザード、団員の特殊装備)
【道具】荷物一式
【思考】しずくの勘を信じる、宗介、テッサに会いたい。
【行動】E1経由で中央部へ。

【オドー】
【状態】健康
【装備】アンチロックドブレード(戯言シリーズ)
【道具】デイバック(支給品一式)
【思考】しずくの勘を信じる、協力者を募る、知人との合流、二人を守る。
【行動】E1経由で中央部へ。
357脱出の鍵(?) ◆/91wkRNFvY :2005/04/02(土) 18:06:16 ID:9LIwqRbl
 先ほどの放送には茉衣子の名はなかった、だからといって安心できるわけでもないが。
 直線距離なら1時間もかからずに行けたものを、森だ行き止まりだ曲がり道だで1時間を超えてしまった。
 
 茉衣子くんは無事であろうか、よもやこの奇怪なシナリオに踊らされているということはあるまいが。
 
 もう殆ど明けきった空の下、ぼんやり思案していると白塗りの建物が見えてきた。
「あれか」
『おっ、やっとかい?お前のお弟子さんがいるかもしれんってヤツはよぉ』
「そのようだな、いると決まったわけではないが、それでも私はいると確信している」
『けけっ、お前のその自信はどこからくるんだ? これで誰もいなかったらお笑いじゃねえか』
「少し黙っていたまえ、いきなりキミの様な面妖なモノを見たらさしもの茉衣子くんでも卒倒しかねない、
 あれで彼女は結構繊細なのだ。まぁ、一度慣れきってしまえば良いのだが」
 『おっと!こりゃ失礼』
 おどけた調子でエンブリオは静かになる。
 いつぞやのコピー人間騒ぎで、シム人間と名づけられた想念体は、わずかな間で爆発的に増え、結局は全方位EMP攻撃で消滅した。
 その際、大量に発生した茉衣子くんズ、彼女が始めてみたときには他の寮まで響き渡る悲鳴だったが。
 このエジプト十字架が喋るのを見たときにはどのような悲鳴を上げるのであろうか。

 思っている間にガラス張りの入り口を抜け、1階を見渡してみるが人の気配はしない。
「ふむ、2階のようだな」
『ホントはいないんじゃねぇのかぁ?』
「エンブリオ」
『・・・』
 諌めてみたものの、またいつ喋りだすかわかったものではない、どうやら彼は常に話していないと気がすまない性質のようだ。

 2階に上がった宮野は、ある部屋の前で立ち止まる。
「ここか、ふむ、では!」
358脱出の鍵(?) ◆/91wkRNFvY :2005/04/02(土) 18:09:19 ID:9LIwqRbl
「やぁ!茉衣子くんっ!待たせ・・・、うのおぁっ!?」

 大声と共に扉を開け放った宮野、しかし出迎えたのは茉衣子の歓迎の言葉では無く、
 無数の蛍火の光球と「何か」の力だった。間一髪避けた宮野の後ろでは、壁に穴を空けていた。

「は、班長!?」
「茉衣子くん!酷いではないか!?せっかくこの私が迎えに来たというのに、この仕打ちは無いだろう!」
 ずかずかとオーバーアクション気味に手を広げつつ茉衣子に近寄る。
「班長こそ、いっつもいっつもいっっ━━━━つも、入るときはノックをしろとあれほど・・・、
 まぁ、もう良いですわ。申し訳ありませんでした、事情が事情ですのでちょっと殺気だっていたようですわ」
「うむ、さすがにこのような状況に追い込まれるとはこの私でも想定していなかった。
 透湖くんたちの手によるものでも無さそうだしな」
「透湖? いつぞやの誘拐騒ぎの時の音透湖さんのことでしょうか? 何故ここで彼女の名前が?」
 年表干渉者(インターセプタ)=音透湖、この構図を知っている人間は少なくとも2人。
 宮野秀策、そして、時の円環に嵌った少年。
「今はそのことはヨソに置いておくとしよう!とりあえずだな、茉衣子くん・・・」
 宮野がこれからについて話し出そうとした時、

『なぁ、茉衣子、こいつがあんたの知り合いなのか?』
 茉衣子が首から下げているラジオから声がした。

「これはまた面妖な!ラジオが一人で喋っているというのかね!」
「えぇ、わたくしも初めて見た時は気がおかしくなったのかと思いました、実際おかしいのはこの世界なのですが」
『そこまでおかしいおかしい言われるのも気分が良いもんじゃないが、確かにこの世界は変だな』
「それについては同意である。だが茉衣子くん、驚くのはまだ早いぞ!エンブリオ、出番だ!」
 宮野らしく、両手を広げて言う。

『よう、あんたが俺を殺してくれるっていう、宮野のお弟子さんかい?』
 宮野が首から下げているエジプト十字架から声がした。
359脱出の鍵(?) 3/3 ◆/91wkRNFvY :2005/04/02(土) 18:09:53 ID:9LIwqRbl
【今世紀最大の魔術師(予定)とその弟子】
【残り94人】
【Dの1/公民館/時間(1日目・6時25分)】
【光明寺茉衣子】
[状態]:健康
[装備]:ラジオの兵長
[道具]:通常の初期セット
[思考]:宮野と合流できて安堵。

【宮野秀策】
[状態]:健康
[装備]:自殺志願(マインドレンデル)・エンブリオ
[道具]:通常の初期セット
[思考]:茉衣子くんに殻を破ってもらう。
360イラストに騙された名無しさん:2005/04/02(土) 18:29:52 ID:7RW3zzga
>>336-339
『素人と専門家』のNGを取り消しにしてください、お騒がせしました。
361刃こぼれした刃(1/7) ◆eUaeu3dols :2005/04/02(土) 18:59:48 ID:5Kf5QtRR
一台のモトラドが、城へと向かって走っていた。
「……少し、揺れが激しかったわね。でも、慣れない乗り物を乗りこなす事は誉めて遣わすわ」
「ぼくの教え方が良いからだね。何度か冷や冷やしてるけど」
「うるさい! 次はあんたが運転しなさいよ」
「あら、あたくしあなたが斬りかかったせいでまだ片手が使えなくてよ。
あなたが運転するのは必然の理ではなくって?」
「こ、このぉ……!」
少々賑やかに。
「それで、着いたらエルメスはどうする? 止めとく?」
「あ、ぼくも入れて欲しいな。キノの時は、ホテルだって一緒に入ってたんだ」
「……似合わないわ」
ダナティアは想像した。……それは何やら、とてもシュールな光景に思えた。

「……待って」
城が大きくなってきた時、ダナティアはリナを制止した。
「右手を見て。真右のずーっと向こうの方」
「右? 別に何も……むむっ」
マップを取りだし、二人して覗き込む。
そして、二人して手で顔を覆い「あちゃー」と盛大に顔を歪めた。
「……見逃していたわね」
「……見逃していたわ」
「ねえ、何を見逃してたのさ?」
「「崖」」
マップへの記載が細かかったとはいえ、色々と人生経験豊富な2人が見逃した事は
あんまし意味の無い運命の悪戯と言ってもよかった。
そのまま気づかなければ行動に変化が出ていた辺り、実に中途半端な偶然である。
崖の存在は、南北間の移動を大きく制限していた。
北に抜けようと思えば、今彼女達のいる道を通るか、東の森を通るしかないのだ。
そして、南西からの移動者全てを見通すポイントが一つ存在した。東の森の南西端だ。
元々、城の確認もそこが移動の要だったからに過ぎない。そして、そこからは城も見える。
彼女達は城を前にして左折し、森へと向かった。
362刃こぼれした刃(2/7) ◆eUaeu3dols :2005/04/02(土) 19:00:56 ID:5Kf5QtRR
(悠二のせいだ……)
悠二が自分に気づかずに城を脱出する時に取り残された。
挙げ句に強い殺意を持つのに何故か“殺し”の気が読みにくい女
――誰かに強制されているようだ――と城に取り残された。近づかなかったが。
その事を思い返すと、少し呼吸が苦しくなり、腹の奥がズキズキする。
(どこ行ったのよ……!?)
城門はまるで開かず、炎の翼を作って飛び越えようとしたが、それもうまくいかない。
もう何度も使い慣れたはずの炎の翼がまるで作れず、ようやく作れた小さな翼は、
城壁を目前に何か薄っぺらい壁のようなものにぶつかり、へし折れた。
(せっかく脱出したのに……)
1時間以上手こずった後、外から力ずくで城門が開かれた。
が、5人のよく判らない一行が入った後、すぐ閉じられた。
しかし、一度開放された事で城壁の壁もまた弱まったのに気づき、更に30分以上、
物陰で城壁相手に炎の翼で激闘を繰り広げ、何度も墜落しながら脱出に成功した。
だが、そこで途方にくれてしまった。
東・西・南・北。少年がどの方向に移動したのかまるで判らなかったのだ。
(悠二……置いて行かないでよ)
一つでも方向を潰そうと、まず東に走った。
感覚は乱されていたが、さっき一度、著しく接近した事により、
《次は、近づけば判る》――根拠は無いが、そんな気がした。
しかし、東は外れだった。
何か禍々しい気配と、青龍堰月刀を携えた男を見つけ、東は無いと確信した。
感知力に優れた悠二があんな禍々しい気配に近づくはずがないからだ。

それなら城の時に自分の存在にも気づいたはずだ、とは思い当たらなかった。
シャナの思考と判断は確実に鈍っていた。
悠二にあと一歩まで近づきながら、彼が自分を置いていってしまった。
その焦りが、彼女を城の他の出口を簡単に捜しただけで諦めて城門に挑戦させ、
危険人物パイフウの居る城内に侵入した5人を放置し、
本来ならフレイムヘイズである彼女が放っておかない美姫の存在を無視させていた。
(おいていかないで! 悠二!!)
シャナは、悠二は東に居ないと判断し、城の方角へ転進した。
363刃こぼれした刃(3/7) ◆eUaeu3dols :2005/04/02(土) 19:02:14 ID:5Kf5QtRR
ダナティアとリナはG−5エリアの森の南西角に簡単な拠点を構築する事にした。
「霊呪法(ヴ=ヴライマ)!」
モコモコと大地からゴーレムが生まれ、そのゴーレム達が組み合わさる。
これぞリナちゃん簡単お手軽三分間クッキング。もといビルディング。
「……趣味が悪くてよ」
「そんなこと言うなら、あんたが装飾しろ」
間違っても住まいにはしたくない気持ち悪さ抜群の小屋だった。
心地よさではおそらく廃屋とどっこいどっこいであろう。
「言われるまでもないわ。――風よ」
ダナティアの術が、森の奥から落ち葉を吹き寄せ、土小屋にへばりつく。
これまた楽ちんカモフラージュであった。
こうして、拠点小屋の屋内のランクは廃屋から激安アパート程度にランクアップした。

(……これ、何?)
それに遭遇し、半ば暴走状態に有ったシャナも流石に立ち止まった。
ほんの1時間と少し前には何もなかった場所に異常な物がそびえている。
見た目は葉の塊。森の外からこれを見つける事は難しいだろう。それは良い。
だが、その形は無骨な人型が組合わさったような箱形であった。
……芸術的なまでに歪だった。例を挙げるとムンクの叫び。
「…………悪趣味」
「言わないでちょうだい!」
「ちょっと、これの何処が悪いのよ!」
シャナはムンク達に遭遇した。
364刃こぼれした刃(4/7) ◆eUaeu3dols :2005/04/02(土) 19:04:18 ID:5Kf5QtRR
ムンク小屋に戦意を削がれたシャナは、ダナティアとリナと割合平和的に会話していた。
「それじゃ、坂井悠二は知らないのね?」
「知らないわ」「知らないわね」
「それじゃ、さよなら」
立ち去ろうとするシャナの手をリナが掴んだ。
「待ちなさい。アテは有るの?」
「東には居なかった」
「それだけ?」
「……3時間前に、城から出た」
「3時間有れば島の逆隅まで行けるじゃない」
「………………」
(これは……イケる)
リナの目が光った。ダナティアに目配せをし、この交渉を取り仕切る。
「あたし達は主催者と戦う為の力を集めているわ」
ダナティアが少し渋い顔をした。
ダナティアの目的はより多数での生存。リナは主催者を倒す為の戦力の集中。
その目的も手段も極めて似通っていたが、微妙に違いが有るのだ。
「わたしには関係ない」
「闇雲に捜しても見つかる可能性は低いわ」
「…………」
「あたし達は群を作るつもりよ。多くの人に出会えば、情報も多く集まるわ」
「自分でも訊いて回るからいい」
「見たところ、交渉が得意には見えないわね」
確かにシャナは、これまで他の参加者と殆ど会話せずに走り続けていた。
「この場所の意味は判るかしら?」
「え?」
「あたくしが説明してあげるわ」
手持ち無沙汰にしていたダナティアが地図を広げ、解説する。
この場所の意味。禁止区域の発生とそれに伴う通過人数の増加。
シャナの表情が引き締まる。
確かに、ここは合理的な場所だった。
365刃こぼれした刃(5/7) ◆eUaeu3dols :2005/04/02(土) 19:06:07 ID:5Kf5QtRR
「正午まで付き合いなさい。損はさせないわ」
「……………………判った」
(よーっし、交渉成功!)
リナは内心でガッツポーズを取った。
彼女のなけなしの名誉の為に断るなら、別に悪意は無い。
坂井悠二が城から脱出した3時20分頃にまだ禁止区域は発表されていない。
それを考えれば、南や西方面に移動した可能性は十分に存在し、
その場合、ここを通って北に移動する可能性も低くはないと見ていた。
かつ、正午まで体力を回復しながら通行人の様子を見る事ができる。
もちろん、自分達にとっても戦力の充実(正午には一緒に北に移動すれば良い)、
見張り番の交替など、大きなメリットが存在する。
あくまで互いに利益のある交渉結果を引き出したに過ぎないのだ。
坂井悠二が僅かに北西の森に居るなど完全に考慮の外だった。

「それじゃ、早速……」
シャナは壁の見張り所に歩み寄り、しかしダナティアがそれを止めた。
「……何?」
「待ちなさい。あなた、そんな様で見張りをするつもり?」
(そんな様?)
首を傾げる2人に、ダナティアは溜息を吐いた。
「リナ、抑えなさい!」
「え……!?」
困惑しながらもリナはシャナを抑えこむ。
「こ、この程度……!」
振り解こうとするが、何故かまるで力が出ない。
ダナティアはシャナの服に手を掛けると
「や、やめ……」
一気にまくり上げた。
366刃こぼれした刃(6/7) ◆eUaeu3dols :2005/04/02(土) 19:08:48 ID:5Kf5QtRR
「なによこれ、内出血してるじゃない」
「え……」
シャナの腹部には無数の赤い斑点が浮き出ていた。
きょとんと首を傾げる。しばらく考えて思い出した。
もう4時間以上前に、腹部に至近距離から散弾銃の直撃を受けていた事を。
だが、それはもう治りかけていたはずだ。
それを話すと、ダナティアは呆れた。
「よく生きているわね。それだけでも称賛物だわ。
で……その後、強い衝撃を何度も受けたり激しい運動をしたわね?」
した。
城内の遭遇では粉砕された床から階下に墜落し、
脱出時には炎の翼で城壁と激闘し、何度も墜落した。
ずっと走りっぱなしだったし、さっきまで一息に5km以上の距離を走り回った。
「疲労の方の主な原因はそれね。痛みは感じなかったの?」
感じなかった。悠二の事で頭がいっぱいで他に何も考えなかった。
いや、一度だけ、腹の奥でズキズキとした痛みを感じた。
精神的な物だと思いこんでいた。
ダナティアは心配2割、呆れ8割でシャナに診断結果を告げた。
「あたくし達には応急処置しか出来ないけど……とりあえず、しばらく安静になさい。
あなたの体内には散弾の欠片が無数に突き刺さっているわ」
367刃こぼれした刃(7/7) ◆eUaeu3dols :2005/04/02(土) 19:09:52 ID:5Kf5QtRR
『目指せ建国チーム』
【G−5/森の南西角のムンクの迷彩小屋で休憩&見張り/1日目・07:00】

【ダナティア・アリール・アンクルージュ(117)】
[状態]: 左腕の掌に深い裂傷。応急処置済み。
[装備]: エルメス(キノの旅)
[道具]: 支給品一式(水一本消費)/半ペットボトルのシャベル/ランダム支給品(不明)
[思考]: 群を作りそれを護る。/正午になれば北上
[備考]: ドレスの左腕部分〜前面に血の染みが有る。左掌に血の浸みた布を巻いている。

【リナ・インバース(026)】
[状態]: 少し疲労有り
[装備]: 騎士剣“紅蓮”(ウィザーズ・ブレイン)
[道具]: 支給品一式
[思考]: 仲間集め及び複数人数での生存/正午になれば北上

【シャナ(094)】
[状態]:かなりの疲労/内出血。治癒中
[装備]:鈍ら刀
[道具]:デイパック(支給品入り) 
[思考]:しばらく休憩後、見張り/正午になっても悠二の情報が入らなければ北上
[備考]:内出血は回復魔法などで止められるが、腹部体内に散弾片が残っている。
     手術で摘出するまで激しい運動や衝撃で内臓を傷つける危険性が有る。

G−5エリアの森の南西角に、土ゴーレムが組合わさり葉っぱを表面を付けた、
ムンクの叫びのように歪で奇怪な迷彩簡易見張り小屋が出現しました。
周囲の落ち葉の数が大幅に減っています。
368GRAVE DIGGER(1/2) ◆PZxJVPJZ3g :2005/04/02(土) 19:39:48 ID:E+f0Uj0h
『世界に挑んだ者達の墓標』

その石碑には、参加者の名前とともにそう書かれていた。
"蒼い殺戮者"はその碑文の意味について考える。

世界に挑むとはどういう事なのか? その者達の墓標とは如何なる事か?
自分のような只の自動歩兵がなぜ参加させられるのか? 火乃香やパイフウのように気の力を
使える訳でもなく、しずくのようなオーバーテクノロジーを持っていない自分が。

浄眼機に一度、自分と他の自動歩兵の違いを問うた事があった。浄眼機は「そういう事を考える
事が最大の違いだ」と言っていた。
その言葉の真意は、未だに理解できていない。

"蒼い殺戮者"は改めて石碑に刻まれた文字を観察する。
そこに刻まれているのは、参加者の名前。先程の放送で名前を呼ばれた者達の名前には、線が
刻まれていた。
その中には当然、彼の名前も刻まれていた。STW-9000"蒼い殺戮者"、ナンバーとともに彼の
名前がそこにそう刻まれていた。

"蒼い殺戮者"のマニピュレータが、石碑に刻まれた名前に触れる。


突如、大地が轟音を鳴らし始めた。
"蒼い殺戮者"は危険を察知してスラスタを全開、空へと逃げた。

安全圏へと待避して、改めて石碑の方を見遣る。

石碑のあった広場を縦に、亀裂が走っていた。
石碑は土台ごと階段の方へ移動し、その下に隠されていた亀裂が現れる。
その亀裂──もとい、扉が轟音を上げて開かれた。

扉の下にあったのは、地下への階段だった。
369GRAVE DIGGER(2/2) ◆PZxJVPJZ3g :2005/04/02(土) 19:40:56 ID:E+f0Uj0h
【D-4/石碑上空/1日目 08:35】
【蒼い殺戮者(ブルーブレイカー)】
[状態]:飛行ユニットの翼に弾痕あり、ただし飛行に関しては問題無し
[装備]:梳牙(くしけずるきば)
[道具]:無し(地図、名簿は記録装置にデータ保存)
[思考]:地下に行くかどうか考え中
    しずく、火乃香、パイフウの捜索。脱出のために必要な行動は全て行う心積もり



【備考】
石碑の碑文の内容が判明、参加者の名前が刻まれています。
石碑の下に隠された入り口が解放、中がどうなってるかは次の書き手におまかせ。
入り口が開放された時の音と震動が、1キロ四方(C-3,D-4及びD-4に隣接するエリア)に響き渡りました。

【残り94人】
370ホワイト隊員の思考(1/3):2005/04/02(土) 21:10:09 ID:L9Oa7PAW
 ボクの名前はシロちゃんデシ。
 ほんとの名前はトレイトン・サブラァニア・ファンデュっていうんデシけど、ずっとずっと忘れてたんデシ。
 けど、その時出会った人にシロちゃんって名前を付けてもらったんデシ。いい名前デシ?
 最近ロシナンテとかホワイトとか、ファルコンとかっていろんな名前で呼ばれてちょっぴりしんどいデシ。
 でも、ボクはシロちゃんなんデシ。
 ボクは幸運の白い竜って呼ばれるホワイトドラゴンデシ。
 おっきくなったり飛んだりいろんなことが出来るんデシ。えっへんデシ。
 ボクは今ちょっぴり悩んでるんデシ。
 その原因は苦しそうに寝てるこのお姉しゃん。
 さっき変な赤い人がつれてきたんデシけど、きっと重い病気に違いないデシ。
 熱を出してすっごく苦しそうデシ。
 要しゃんが時々汗を拭いてあげてるんデシけど(優しいデシ!)後から後からとまらないんデシ。
 このまんまじゃ干からびちゃうデシ。
 ううん、干からびなくてもこのまま死んじゃうかもしれないデシ。
371ホワイト隊員の思考(2/3):2005/04/02(土) 21:10:38 ID:L9Oa7PAW
 アイザックしゃんとミリアしゃんも、

「どうしようアイザック、この人死んじゃうよお! 私たちが六人は困るって言ってたからかなぁ?」
「うわあ、死んでまで五人ヘンタイにしなくたっていいんだぞ!?」
「そうだよ! 責任感じちゃダメだよぉ!」
「別にいいんだぜ? 隊員じゃなくても博士とか色々あるんだしよぉ!」
「六人でもいいよぉ! 一生三食ポップコーンにするからぁ!」

 って、すっごく心配してるデシ。
 要しゃんも

「違いますってば……」

 って言いながら元気がないデシ。
 要しゃん、せっかく元気になってくれたのに……つらいデシ。
 そこでボクは考えたデシ。
 ボクはさっき言ったとおり、いろんなことが出来るんデシ。
 その中の一つに、ボクの「血」があるデシ。
 ボクの血を一滴でも飲むと、怪我や病気がたちどころに治るんデシ。
 きっとこのお姉しゃんも元気になってくれるに違いないデシ。
372ホワイト隊員の思考(3/3):2005/04/02(土) 21:11:12 ID:L9Oa7PAW
 だから、ボクがドラゴンだってことを打ち明けてしっぽをちょっと切ってもらうデシ。
 みんないい人だから大丈夫デシ。
 今は見回りに行ってるあの変な赤い人のことはよく知らないデシけど、ボクがドラゴンだってことは知ってるみたいだから大丈夫デシ。
 ファルコンしゃんっていうドラゴンしゃんと間違えてるみたいデシけど。

 だけど一つ問題があるデシ。

 ……誰に切ってもらえばいいデシか?


 
【E‐4/工場倉庫/一日目8:30】

【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)】
[状態]:健康
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:お姉しゃんを助けたいデシ
373サッシー捜索隊(1/4):2005/04/02(土) 22:55:20 ID:f/bNLZEy
刃物娘とのコンタクトから40分ほど経過し、佐山と詠子は小さな小屋の中にいた。
 あれからさらに北上を続けると、次第に森が開け背丈の低い草や薮が広がる草原に出た。
 草原を北へ進むと東西に走る道があり、二人はその道を渡った先にある森の中にいた。
「詠子君、この辺りで一つ休憩にしないかね?」
 という佐山の提案に対し、
「……待って、この奥に小屋があるみたいよ」
「ほう、それは確かかね?」
 問われた詠子は、右手にある木の根元を軽く指差して
「この子が言ってる… じゃだめかな?」
 もちろん佐山には何も見えない。が、不思議少女には不思議少女なりの能力か何かがあるのだろうと納得し
「ではそこで休むとしよう」
 という塩梅で二人はこの小屋の中にいる。
 小屋は約4m四方の正方形で、高さは約2m半、ドアは南側で、東側の壁には備え付けの棚らしきものがあるが、
 壁や床一面、ボロという言葉では片付けられないくらいに腐敗が進んでおり辛うじて小屋の形を留めているという感じだった。
 外壁にはびっしりと苔がついており、遠目には小屋かどうか判別するのは難しい。
 室内には工具らしきものが無数に散乱していたが、みな錆びていてとても使えそうもなかった。
374サッシー捜索隊(2/4):2005/04/02(土) 22:56:00 ID:f/bNLZEy
 それらを一通り見回した佐山は、部屋の真ん中にある辛うじて使用できるロッキングチェアに座り、しばらく虚空を捏ねたのち
「……ふむ」
「それは体操か何か?」
「いや、さすがに恋しくなってくるものだね」
「ふーん」
 よく分からない行為に没頭する“裏返しの法典”を視界から外し、詠子は部屋を見渡した。
 朽ち果てた工具一つ一つの傍らにはずんぐりむっくりがおり、みな一様に酸素に汚染された金属を見ている。
 それらの中でとりわけひょろひょろしたのが何かをじっと見つめていた。
 何だろうと思い傍へ行くと、ひょろひょろの視線の先にはブリキの箱があった。拾い上げ箱を開くと中には数枚の紙片が乱雑に入れられていた。
 その大半は変色し、何が書いてあったのか判別できなかったが、その中で比較的変質の進んでいない二枚の紙を手に取り
「これは……地図、かしら」
 一枚目にはゲーム開始時に支給された地図と似たような図が描かれていたが、地図の右上にある湖のまわりに書き込みらしきものが多数あり、
 湖からは細い線がいくつかの枝分かれをしながら、左の方にある市街へと延びていた。
 市街の中心には湖のような描写がされており、そのまわりにも書き込みらしきものがいくつかあった。
 もう一枚には地面を輪切りにしたような図が描かれており、右上から左下に掛けて線が延び、左下には空洞のようなものが描かれていた。
375サッシー捜索隊(3/4):2005/04/02(土) 22:56:44 ID:f/bNLZEy
「ねえ、悪役さん」
「何かね? 今私はトレーニング中で忙しいのだが」
「んーとりあえずこれ、見てもらえるかな」
 世話しなく手を開いたり閉じたりしている佐山を無視して詠子は地図を渡した。佐山はそれをしばし眺めたのち、ふむと小さく呟き
「地図だね。だが、上半分に不可解な点と線と文字がある。想像力を掻き立てられるね?」
「でしょう? あなたの想像、聞きたいなあ」
「ふふふ、詠子君は大胆だね。では特別に披露しよう。
 これは地図だ。だが地上の地図では無い。地下の、恐らく地下水脈の類だろう、その地図だ。
 そしてこれを見る限り市街地の下には大きな空間がある。何かは分からないが探ってみるのも一興だろう」
 よし、と佐山は一息つき、
「食事を取ったら市街地に向けて進もうか。新庄君の事は当然のように気掛かりだが、あの空間も気になる。
 行って調べて怪獣の一つでも見つけてやろうでは無いか。ははは、私の名前をとってサッシーとでも名付けてやろうか」
 そう言ってデイパックを漁り始めた。
「そうね、面白そうね。ふふふ」
 ……地下空間、閉鎖的な闇と静寂。素敵な『物語』が書けそうね。
376サッシー捜索隊(4/4):2005/04/02(土) 22:58:04 ID:f/bNLZEy
【残り94名】
【E-5/北東の森の中の小さな小屋の中/1日目・07:10】

【佐山御言】
[状態]:健康
[装備]:Eマグ、閃光手榴弾一個、メス
[道具]:デイパック(支給品一式)、地下水脈の地図
[思考]:1.仲間の捜索。2.珍獣サッシーを捕まえて新庄君の賞賛を!

【十叶詠子】
[状態]:健康
[装備]:魔女の短剣、『物語』を記した幾枚かの紙片
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:1.元の世界に戻るため佐山に同行。2.物語を記した紙を随所に配置し、世界をさかしまの異界に

※B-7から消えた水は市街地の下に流れ込んだと思いねえ。
377御前様がみてる(1/3) ◆J0mAROIq3E :2005/04/03(日) 00:01:42 ID:7e1VeO29
「ふぉーーーっふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ!!」
 爽やかな朝の草原に、くぐもった哄笑がこだまする。
 殺人ゲームの会場に配置された鳥たちが、死んだような無垢顔で背の高い木から落ちていく。
 挫けることを知らない心身を包むのは、ボンタ君量産型。
 隙は見せないように、しかし威圧感を損なわないように、ゆっくりと歩くのが彼女のたしなみ。
 もちろん、彼女を止めようなどといった、命知らずな人間など存在していようはずもない。
 小早川奈津子。
 鎌倉の御前プレゼンツのこの女傑は、剛き日本をつくろうという、伝統ある極右お嬢様である。
 E−6の草原。ゲーム開始時の面影を未だに残している緑の多いこの地区で、
 管理者に見守られ、脱ぎ捨てられたボン太君量産型が落ちている普通の園。
 時間は移り、時計の単身が六を指した放送時刻でさえ、三十×年育ち続けた黒社会育ちの純粋培養お嬢様が
 着ぐるみ入りで哄笑する、という現象が実際起こっている貴重な場所である。

 ……ともかく、早朝に拾い、伸縮性が高いので着てみた着ぐるみが脱げなくなって怒り狂っていた奈津子は、哄笑している。
 理由は簡単。
 六時の放送は、彼女の仇敵の黒幕たる竜堂始が没したことを告げていた。
378御前様がみてる(2/3) ◆J0mAROIq3E :2005/04/03(日) 00:02:33 ID:7e1VeO29
(以下は着ぐるみ内の生の声をお届けします)

「をーーーーっほほほほ!! やはり! やはり悪は滅びましたわお父様!!
 どこかにおわした正義の戦士よ、見つけたらばワタクシが全身を以て愛してさしあげますわーーっ!!」
 ボン太君を通してさえその声は大気を鳴動させる。
 喜びのあまり踏みならした足が地面を陥没させる。
 もはやアラストールは話し掛けるのをやめ、着ぐるみの内側にぶつかるままに黙っている。
(……どうやら、敵が死んだようだな)
 奈津子の事情など知らないため、その人物が誰かも分からず、何の感慨もない。
「ああっ、後は後はあの小生意気な小娘と大生意気な三男坊を滅せばここに留まる理由もありませんわね!
 邪魔な軟弱非国民どもを滅殺し、帰還の後に次男坊と末っ子の首を刎ねる!
 さすればアタクシは何の憂いもなく愛のマホロバの創設に乗り出せるという寸法よ!」
 感極まり、怪獣さながらの咆吼が背後の森を震わす。
 奇しくもそれは近くのエリアで残りの宿敵、竜堂終が上げた竜咆と重なり、二人はお互いの存在に気付かなかった。
 一通り猛った後、電池が切れたように奈津子は沈黙した。
 こうしている場合ではない。
 早く日本へ帰り、軟弱な国家を矯正しつつ美少年牧場を作らなければならないのだ。
「ああ忙しい忙しい! 正義の天使に休む暇なし!
 お父様、奈津子は頑張ります! どうかお空で見届けてくださいまし!」
 うるうると空を見上げ(何故かボン太君の目が潤み)、亡き父の祝福を祈った。
379御前様がみてる(3/3) ◆J0mAROIq3E :2005/04/03(日) 00:03:23 ID:7e1VeO29
 奈津子は勘を頼りに西南西へと走り出す。
 中の人でこうも違うのかと思うほど禍々しい雰囲気のボン太君は、過密地帯へと向かう。
 その胸中に灯る思いは一つ。

 この二つの拳でもって帰りの切符を。

 アラストールの制止の声も聞かず、歓喜に打ち震える自称愛の戦士は疾走する。
 
【E-6/平原のど真ん中/1日目・6:03】
【小早川奈津子】
 [状態]:絶好調
 [装備]:コキュートス(アラストール入り。アラストールは奈津子の詳細を知らず)
     ボン太君量産型(脱衣不可能)
 [道具]:デイバッグ
 [思考]:1.竜堂終と鳥羽茉理への天誅。2.正義のための尊い犠牲をこの手で
380剣の咆哮(1/6) ◆3LcF9KyPfA :2005/04/03(日) 00:35:42 ID:XZSFqMtu
「面白くないな……」
つい今しがた佐山達と別れたギギナは、不機嫌を隠そうともしない仏頂面で歩いていた。
「既に23人も死んでいるというのに、未だ強き者と戦えんとは……」
ぶつぶつと呟きつつ、あまりにも不機嫌が煮詰まり、
いっそ見晴らしのいい平野へ出てみようかとギギナが考えたその時。
南東の方角から、話し声が聞こえた。こちらへと向かいつつ。

「だからだな、この世紀の大天才にして智略家のコミクロン様としては、
やはり商店街や学校なんかよりも城へ向かうべきではないかと思うのだが」
「大天才にして科学者なんじゃなかったのかよ……」
「些細な問題だな。なにしろ大天才だし」
言って、コミクロンは自信満々に腕組みをする。
「……まぁいい。だが城は駄目だ。あまりにもあからさま過ぎて、逆に危ない奴が集まってるかもしれん」
「しかしだな……学校というのはその……
いや、決して学校に良い思い出がないからとかそういう訳でないぞ、念のため」
「良い思い出だろうが最悪な思い出だろうが、とにかく北西だ。
食料はともかく、飲み水を確保できる場所は見つけておかなきゃならんしな」
「くっ……まるでキリランシェロと話してる気分だ……」
「……あぁ、オレもそのキリランシェロとやらに同情するぜ……」
「ちょっと待て、それはどういう――っ!?」
言いかけて、コミクロンが不意に立ち止まる。
ヘイズも同様。進行方向正面を凝視し、微動だにしない。
その視線の先にあるのは――
「貴様等は、強き者か?」
銀髪の美丈夫が、漆黒の剣を携えて立っていた。
381剣の咆哮(2/6) ◆3LcF9KyPfA :2005/04/03(日) 00:36:12 ID:XZSFqMtu

「さぁ、な。そいつはお前さん次第だろうよ」
ギギナが声をかけた二人のうち、赤髪の方が答えてくる。
(良い傾向だ。視認より先に直感で感じたか。
そして臆してもいない。良いな、実に良い)
ギギナはそう判断すると剣を構え、名乗りを上げる。
「我は誇り高きドラッケン族の戦士、
ギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフ。貴様等の名を聞こう」
わずかの沈黙。ギギナとの話し合いが成立しそうにないと判断したのか、二人が名を告げる。
「欠陥品の魔法士、ヴァーミリオン・CD・ヘイズ」
「牙の塔、チャイルドマン教室の大天才にして科学者、コミクロン」
「ではいくぞ、強き者よ」
歓喜の笑みをその美貌に張り付かせ、ギギナは疾走する。

――迅い!?
零から瞬時にトップスピードへと移るギギナを見て、ヘイズは焦る。
(I−ブレインの動作効率を60%から95%に再設定!
くそっ、演算間に合うか!?)
上手くギギナを切り抜けても、また別の殺人者に遭うかもしれないと温存を考えていたヘイズだが、
そんな悠長な事を言っていられる相手でもなさそうだった。
それでも動作効率を95%より上げないのは、せめてもの譲歩だろうか。
……だが、おかしい。何かがヘイズの焦りを後押ししている。
と、考えている内にもギギナとの間合いが詰まっていく。現在3メートル。
とてもではないが、手に持った石の破片程度では一時凌ぎにもなりそうにない。
(演算まだかっ!?)
<予測演算成功。『破砕の領域』展開準備完了>
「――ハァッ!!」
ヘイズの焦りとI−ブレインの演算完了とギギナの踏み込み、その全てが同時に放たれた瞬間――
世界が、壊れた。
382剣の咆哮(3/6) ◆3LcF9KyPfA :2005/04/03(日) 00:36:39 ID:XZSFqMtu

「コンビネーション4−4−1!」
ギギナの剣がヘイズに届こうとした瞬間、コミクロンの魔術が炸裂する。
――空間爆砕。
一定範囲の空間そのものを歪ませ、その圧力と、
空間が元に戻ろうとする反作用のエネルギーで対象を吹き飛ばす力技。だが……
(ちっ! こーいうのはアザリーやキリランシェロの専門だろうが!)
コミクロンの視線の先、一見して大した外傷も無く、ただ爆圧に圧されて吹き飛ぶギギナが見えた。
能力の制限に加え、元々あまり得意でない構成だったために、思っていた程の効果は発揮されなかった。
そして、
「おい、コミクロン! もっとスマートな技はないのか!?」
余波を受けて飛ばされたヘイズが叫んでくるが、無視。更に追い討ちの構成を編もうとして――
「うそだろ、おい!?」
コミクロンが、戦慄の声を上げた。

コミクロンに不満を叫んだ直後、ヘイズは自分の焦りの原因を悟った。
「……やべぇ」
ヘイズの目には、空中で身を捻り、激突するはずだった木を足場にして、
コミクロンへと向かい加速するギギナの姿が映っていた。
そして、I−ブレインからは恐るべき内容の演算結果が送られてくる。
(奴の周囲にある空気分子の動きがおかしい……この結果を信じるなら、
オレと同じような体格で体重が三倍以上ある計算になるぞ……
一体どんな細胞密度してやがんだ、くそっ!)
「コンビネーション2−5−2!」
考える間にも、コミクロンが魔術を放つ。が、ギギナは疾走状態から更に身を低くし加速すると、
コミクロンの放った光熱波を紙一重で避ける。
383剣の咆哮(4/6) ◆3LcF9KyPfA :2005/04/03(日) 00:37:13 ID:XZSFqMtu
(戦闘技術……いや、戦闘経験も洒落になってないな。二足歩行する、知能を持った猛獣ってとこか……?)
四の五の言ってる場合ではなくなった。I−ブレインの過負荷を考えていたらこの場の命も危うい。
<I−ブレインの動作効率を120%に再設定。『虚無の領域』展開には演算速度が足りません>
最大の武器が使えないが構わない。
この場を切り抜けても、I−ブレインが過負荷でシャットダウンしてしまうがそれも構わない。
とにかく、全力でギギナを退けなければならない。
I−ブレインを全開にすると、コミクロンを援護するべくギギナへと疾走を開始する。

「「――オォォォォォォ!!」」
コミクロンとギギナの声が重なる。
ギギナは、疾走の勢いを殺さないままに身を捻り、加速度と遠心力と己の筋力の全てを剣に乗せ、真横に一閃。
コミクロンは気合を魔術の媒体とし、光の網で作り上げた盾をギギナの剣閃にぶつけると、後ろへと跳ぶ。
ギチ、と嫌な音を立てギギナの剣が一瞬止まるが――
「オオオアァァァァァァ――!!」
構成の練り込みが足りなかった。
裂迫の気合と同時、ギギナの剣が盾を抜け、コミクロンへと牙を突きたてる。
「――ァァァァ!!」
ギギナが放った気合の残滓の中、コミクロンの目に斬り飛ばされる右腕が見えた。
だが、それはただ飛んで行く右腕が見えたというだけ。コミクロンの認識が追いつかない。
そして――
「っぐあ!? あ……あぁ……うぅ」
コミクロンの中で、何かが弾けた。心が壊れる。精神が喰い破られる。
一拍置いてコミクロンが右腕の痛みを自覚した時には、膝から力が抜けていた。

(ちっ! 間に合わなかった!)
眼前、腕を斬り飛ばされたコミクロンを見つつ、ギギナの方へと腕を伸ばし――
<予測演算成功。『破砕の領域』展開準備完了>
ヘイズが、指を鳴らす。
384剣の咆哮(5/6) ◆3LcF9KyPfA :2005/04/03(日) 00:37:36 ID:XZSFqMtu
パチンッという小気味良い音が広がり、音の波が論理回路を形成していく。
そして理論回路が完成すると同時、コミクロンに止めを刺そうとしていた剣が弾かれ、
ギギナ自身も苦悶の声を上げて片膝をつく。
「貴……様、何をした……」
ギギナの声は無視。コミクロンと右腕を拾い、肩に担いで逃げ出す。
腕と一緒に飛ばされたコミクロンのデイバッグまで拾っている余裕はなかった。
脱兎の勢いで、ヘイズはその場を後にする。


「ふふ……ははは、最後に逃げ出したことはいただけないが、強き者だったな。
奴等がまともな武器を手にすれば、次はドラッケンの誇りを賭けるに相応しい闘争が望めるかもしれん」
ヘイズ達が視界から消え、ようやく身体の痺れが完全に抜けたギギナが呟く。
「……いいだろう、今は時間をくれてやる。精々良い武器を探すがいい」
ギギナは魂砕きを拾うと、その場を後にした。


「……コンビネーション1−1−9」
ギギナから逃れ、ようやく精神的なダメージから復帰したコミクロンが、魔術で腕を繋げる。
傷口が塞がり、腕には古傷のような引き攣れが残るだけになったが……
「駄目だな、これは。右腕はもう動かないだろう……くそっ! なんなんだアイツは!?
一体どこの怪人だ畜生!」
コミクロンが叫ぶ。右腕を全力で動かそうとしてみるが、指先が僅かに動く程度で、鉛筆すら掴めそうになかった。
こと医療関係の構成にかけては、予定ではなく大陸一を自負していたコミクロンだったが、
それでも腕を繋ぎ傷口を塞ぐだけで精一杯だった。
「それにあの剣、情報硬度が異常に高かった……俗に言う“魔剣”ってやつか?」
ヘイズも呟く。最後の最後、I−ブレインの凍結と引き換えに放った全力の『破砕の領域』だったが、
ギギナは勿論、その武器さえも壊すことが出来ずにいた。
「なんにせよ、オレ達はこれで戦闘能力が殆ど無くなったな……」
「あぁ、流石の大天才も、もうこれ以上の戦闘はできん。どうする、ヴァーミリオン?」
「……とりあえず、デイバッグを拾いに戻るのは却下だな……」
ギギナが追ってこないとも限らないので、二人は更に移動する。
385剣の咆哮(6/6) ◆3LcF9KyPfA :2005/04/03(日) 00:38:23 ID:XZSFqMtu
【F-5/森の中/一日目06:40】

【ギギナ】
[状態]:軽傷(戦闘行動に支障はない)
[装備]:魂砕き
[道具]:支給品一式
[思考]:更なる強き者を探し、放浪

【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:やや疲労、I−ブレインが休眠(約三時間)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式
[思考]:少しでも遠くまでギギナから逃げる
[備考]:刻印の性能に気付いています。現在I−ブレインが使えません。

【コミクロン】
[状態]:かなり疲労、軽傷(傷自体は塞いだが、右腕が動かない)
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考]:少しでも遠くまでギギナから逃げる
[備考]:出血多量につき、激しい運動をすると貧血を起こす可能性があります。
魂砕きによる精神的ダメージが完全に抜けていないので、大規模魔術が使えません。
服が赤く染まっています。

【F-5の森の中に、コミクロンのデイバッグ(エドゲイン君1号入り)が落ちています】
【ヘイズとコミクロンの逃げた方向は、次の書き手に委ねます。ただしサッシー捜索隊に支障が出るので北は不可】
386気付かぬ再会:2005/04/03(日) 00:57:49 ID:Kshv8jde
 遠のいていく長門の姿を見つめながら、このまま行かせていいのかと自問した。
(いいはずが、ない)
 彼女が最後に見せた表情は、本人がそう望んでいるように見えたか。
 違う。望んだことなら寂しそうな表情はしない。
 追わないと、彼女を。追わないと――追う?
 僕を殺すかもしれないと宣言した少女を、僕が?
 シャナを見つけることだって叶っていないのに、長門さんを優先するのか。
 それでも気がつけば僕は長門さんを追っていた。
 草などが折れており、方向は検討がついている。
387気付かぬ再会:2005/04/03(日) 00:58:26 ID:Kshv8jde
 追いながら長門さんの事を考えていた。
 彼女を説得できなければ追いつこうが意味はない。
(そういえば未来人とか言ってたな……)
 前にシャナが世界は矛盾や衝撃に弱いと聞いたことがあった。
 未来人がここで死ぬのは問題がないんだろうか。
 ここの参加者がトーチのようによく出来た紛い物だったらどうだろう――いや、違う。
 トーチの如く紛い物だけなら作れるだろうが、自分に蔵された零時迷子はどうだろう。
 秘宝中の秘宝と言っていた零時迷子を複製できるだろうか。
(……どうせ複製するんだったら生前の僕を作ったほうが楽なのに)
 些細なことで紛い物説を否定しながら、新しい説を考えてみる。
(……だめだ。でもシャナや長門さんなら分かるかも――――)
 そこまで考えて、悠二は自分の考えに驚いた。
 いつのまにか此処で初めて会った少女をこんなにも頼りにしている。
 長門さんの名をシャナを、無意識とは言え同列に並べた。
 そのことに色々と頼りになったからなぁ、と誰に言う訳でもなく言い訳しながら苦笑した。
388気付かぬ再会:2005/04/03(日) 00:59:17 ID:Kshv8jde
 森を抜けたところで、長門さんの足跡は辿れなくなっていた。
 今まで東に突き進んでいたのだが、どうやら足跡を辿っているのを気付かれたらしい。
「……長門さんはどっちだ?」
 地図を見ると、このまま東へ突き進むと海があるようだ。
 このまま直進はしないだろう。
 だとすると、南か北へ移動へすることとなる。
 南は城。城から逃げたことを考えると――――北か。
 悠二は北東の方へと(森を抜けてから直角に曲がるとは思えない)突き進み、人影が見える。
 人影に向かって悠二が叫んだ。
「長門さん!」
 駆けより、近づいてみるとそれは長門さんではなかった。
 正確に言えば人でもない。
「ふぉーっふぉっふぉっふぉっふぉ」
 それ――ボン太君が叫んだ。
(痴れ者め……貴様には探す者が他にいるだろう)
 そうアラストールが考え、口に出したが――――
「ふぉふぉふぇふぉふぇ」
 悠二にはボン太君が二度喋ったようにしか聞こえなかった。
「なんだ、これ……」
 あまりにシュールな光景に、悠二は呟く。
 中にアラストールがいることなど、当然知る由もなかった。
389気付かぬ再会:2005/04/03(日) 00:59:57 ID:Kshv8jde
【F-5/平原(北東辺り)/1日目・6:30】
【小早川奈津子】
 [状態]:絶好調
 [装備]:コキュートス(アラストール入り。アラストールは奈津子の詳細を知らず)
     ボン太君量産型(脱衣不可能)
 [道具]:デイバッグ
 [思考]:1.竜堂終と鳥羽茉理への天誅。2.正義のための尊い犠牲をこの手で

【坂井悠二】
[状態]:かなり疲労。
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック一式
[思考]:1.なんだこりゃ……。 2.長門さんとシャナの捜索
390見ることの出来ぬ敵 1/5  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 02:23:11 ID:sXON7cIb
ミズー、ガユス、新庄の三人は、地図に記された橋を渡るため
森伝いに北西へと移動していた。
しかし、A−5からB−5にかかる森を完全に抜けたところで、
新庄が一つの異常に気付いた。
「……水が、無い?」
見れば、川から水が一切無くなり、ただの幅広い溝と化していたのである。
「いよいよオカルトじみてきたな。一体どんなトリックだ?」
ガユスの知覚眼鏡に表示される情報は、ほんの小一時間前まで
川に水が満ちていたことを示していた。
――高位の咒式を使ったって簡単に出来ることじゃねえぞ……。
いぶかしむガユスをよそに、ミズーは周囲を見回し安全を確認すると
すぐに川底へと下りてしまった。
「考えても仕方が無いわ。今は、時間の短縮が出来たと喜ぶべきよ」
それだけ言って歩き出す。
ガユスと新庄は顔を見合わせ、
「……そうなのかな?」
「……だろうな」
確かに、深く考えても始まらない。二人も川底に下りて、ミズーの後を追うのであった。

「大分距離が短縮出来たけど、どこのエリアに行く?」
三人は川を抜けた後、高架下の影に腰を下ろし地図を広げていた。
予定ではA−4の橋からB−3へと移動。
そのまま南下して市街地を調べようということになっていた。
しかし今は、高架と川の位置関係からしてB−4の北西あたりにいるらしい。
「まあ、予定通りでいいんじゃないか? 人捜しをするってのなら、端から順番に潰していくもんだ」
どうせ敵と遭遇する可能性は大して変わらないしな、とガユスは内心で付け足した。
「じゃあ、このB−3のビルかなあ……」
新庄が指で示す。
391見ることの出来ぬ敵 2/5  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 02:24:25 ID:sXON7cIb
「決まった? なら、早く行きましょう」
ミズーの声に二人が振り向くと、彼女は既に立ち上がっていた。
「おいおい、そんな焦る事は無いだろ。少し休憩でも……」
「別に焦ってなどいないわ。建物まで行ってから休む方が安全ってだけ」
ただそれだけを言って、ミズーは歩き出した。
「協調性のない奴だな。ギギナのバカを思い出すぜ」
「でも、言ってることは正しいから……」
ぼやくガユスに対し、ミズーをかばう新庄。
二人は立ち上がり、またしても少し離れてミズーを追う形となった。

焦っているとガユスに言われ、ミズーはそれを否定した。
しかし、彼女の中には確かに焦り、もしくはそれに似た感情が存在した。
ほんの少し、平常時とわずかに違うだけの自分の精神。
自分という存在を熟知した、彼女にすら解らぬ極小の異常。
――フリウ・ハリスコー。彼女を見つけないと……。
ミズーの精神の異常が、歩く速さのわずかな上昇という形で表に出る。
とはいえ、後ろを歩くガユスと新庄の距離はさほど変わらない。
約五メートル。ミズーと二人の間には、それだけの距離が開いていた。

さあっと、一陣の風が吹く。

その瞬間、ミズーの左肩から鮮血が舞っていた。

「――ぐっ!!」
ミズーは、左肩を押されたようによろめき、そのまま尻餅をついた。
「!? やっ……」
新庄は目の前の光景に悲鳴を上げそうになるが、なんとかそれを堪える。
ガユスは、知覚眼鏡に映った情報から、何が起こったかを一瞬で理解する。
――銃撃!?
各人の反応にわずかに遅れて、ターン、と微かに銃声が聞こえた。
392見ることの出来ぬ敵 3/5  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 02:25:49 ID:sXON7cIb
「――逃げるぞ新庄! 援護しろ!!」

叫び、ガユスは立ち上がろうとするミズーに向かって駆け出す。

また風が吹いた。
ガユスの腿が削れる。
そしてまた遅れて届く銃声。

「やめてぇっ!!」

新庄が剣を構えて、そう叫ぶ。
羽音。地面に着弾する小さな音。――そしてまた銃声。

「ミズーさん! ガユスさん!」
「大丈夫、問題無いわ」
血が流れる肩を押さえながら、ミズーが新庄の叫びに答える。
「敵は左手側だ! 悪いが新庄、向こうのビルまでそうやっててくれ!」
ミズーが撃たれた時の血の飛び散り方から、ガユスは一瞬で敵の位置を判断していた。
「う、うん!」
ミズーは左肩を、ガユスは右腿を押さえつつビルへと急ぐ。
新庄は左手側を見ながら、二人のすぐ後ろを走る。
――でも、どこから!?
新庄は思う。
近くに見えるのは小さな建物ばかり。しかし、動く影は無い。
その向こう、はるか遠くに高い建物が見えるが、
――いくらなんでも、遠すぎる……。
新庄は、近くの建物に意識を集中させた。

三人はそのまま、四度目の銃撃を受ける事無く目標のビルに辿り着いた。
393見ることの出来ぬ敵 4/5  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 02:26:48 ID:sXON7cIb


「――この私とした事が、鈍ったものです。
この程度の距離で、わずかな風程度で標的を外すとは……」
「…………」
とあるマンションの屋上。
狙撃銃を構えた萩原子荻と、彼女を見る折原臨也の姿がある。
二人がここに来たのは、ほんの四十分ほど前のこと。
『明るくなりましたし、出来ることをするとしましょう』
そう子荻が話し、屋上へ移動。
彼女が四方を狙撃銃のスコープで覗く間、臨也は屋上に一つしかない出入り口の番をしていた。
そして、『見つけました』という声が上がったのが五分前。
北へ向けて子荻は三発の銃撃を放ち、――そして先ほどの言葉を呟いたのだった。
――どうも、予想以上の腕前のようだね……。
臨也が彼女の狙撃に助けられた時、時間は真夜中だった。
闇夜の中、赤外線スコープも無しに静雄へ正確な銃撃を浴びせた彼女。
そして今、臨也には見えていない標的を、どうやら射撃したらしい。
「……外したってことは、そいつらはここに来るのかい?」
「いいえ、北東のビルに退避したようです。
仕留めることは出来ませんでしたが、三人の内二人には手傷を負わせています。
もし動けても、まずはこのマンションまでにある建物を疑うことでしょう。問題ありません」
――とんでもない子がいたものだ。
あのイカれた街、池袋にだって、こんな子はいなかった。
――味方である内は、これほど頼もしい子はいないな……。
「さて、次の標的を探します。貴方は引き続き周辺と出入り口の監視を」
「了解」
会話が終わり、二人はまた元の状態に戻った。
394見ることの出来ぬ敵 5/5  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 02:29:28 ID:sXON7cIb
【B-3/ビルの一室/一日目/07:05】
【ミズー・ビアンカ(014)】
 [状態]:左肩に銃創(重症。左腕を動かすと激痛)
 [装備]:グルカナイフ
 [道具]:デイバッグ(支給品入り) 、
 [思考]:銃創の処置。フリウとの合流
【新庄・運切】
 [状態]:健康
 [装備]:蟲の紋章の剣
 [道具]:デイバッグ(支給品一式)
 [思考]:1、二人の治療 2、佐山達との合流 3、殺し合いをやめさせる
【ガユス・レヴィナ・ソレル】
 [状態]:右腿に銃創。(軽傷。歩けるが、大きな負荷はかけられない)
 [装備]:リボルバー(弾数ゼロ) 知覚眼鏡(クルーク・ブリレ)
 [道具]:支給品一式
 [思考]:やっぱり神様はいなかった……。
     二人に同行。あわよくばギギナとクエロが死んでますよーに。

【C−4/ビルの屋上/一日目/07:05】
【折原臨也(038)】
 [状態]:正常
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)ジッポーライター 禁止エリア解除機
 [思考]:周囲の警戒 ゲームからの脱出? 萩原子荻に解除機のことを隠す
【萩原子荻(086)】
 [状態]:正常 臨也の支給アイテムはジッポーだと思っている
 [装備]:ライフル
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:狙撃対象をスコープで捜索 ゲームからの脱出?
   ※:子荻は原作で約1、5キロ先から、しかも夜間に、超精密な狙撃を行っています。
395見ることの出来ぬ敵 補足  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 02:31:23 ID:sXON7cIb
※C−4エリア付近に三発分の銃声が響きました。
396挿話(1/3) ◆CSZ6G0yP9Q :2005/04/03(日) 02:33:19 ID:ub5y+pgG
 それにしても、幽霊ってのは本当に居るんだな。
 ハルヒが何かをやりやがったせいかもしれないが、とりあえず俺がそうなってるという事実は変わりそうに無い。
 しかし、宇宙人だの超能力者だの未来人だの、そんな奴らの仲間入りをするとは思わなかった。溜息の一つくらい吐いたって良いよな?

 俺が幽霊になった時、俺の死体の隣で、豆腐を食ってる奴が居た。どうも、そいつが俺を殺したらしい。
 正直、痛いだの怖いだの感じる暇も無かったせいで、自分が死んだって実感が沸かない。
 どうしようもないので、俺を殺したらしい男についてきて今にいたるというわけだ。
 目の前の男は、うずくまると、デイパックから地図を取り出した。休憩みたいだ。
 地図からするとE−2の森辺りか。
 にしても、頬に傷があって物騒な雰囲気を醸し出してる、こいつは何者なんだろうか。
 俺は死ぬまで、というか、死んだことにも気づかなかった。
 学生服を着ているから高校生、で納得できるのはハルヒくらいのものだろう。
 そんな事を考えていると、声が聞こえてきた。
397挿話(2/3) ◆CSZ6G0yP9Q :2005/04/03(日) 02:34:25 ID:ub5y+pgG
 ――彼にも、千鳥のように、多くの友人が居たのだろうか――
 俺はどこから声が聞こえてきたのか、辺りを見回すが、見えるのはうっそうと茂る森だけだった。
 ――彼にも、守るべき人が居たのだろうか――
 また、声が聞こえる。目の前にいる男以外に人は見当たらない。もしかして心の声ってやつなのか?
 だとしたら、彼って言うのは俺のことなんだろうか?
 ――彼にも、平和な日常があったのだろうか――
 いや、平和とは言えなかったな。ハルヒが次から次へと厄介事を持ち込んできやがったし。
 まぁ、友達と言ってよい奴は数人居たな。
 朝比奈さんという天使のような方を守ってあげたかったが、もうそれも出来そうに無い。
 そういえば、長門には守ってもらったことがあったか……。
 古泉は……まぁ、いいだろう……。
 一つ一つ律儀に俺は考えを巡らせた。
398挿話(3/3) ◆CSZ6G0yP9Q :2005/04/03(日) 02:36:17 ID:ub5y+pgG
 ――俺は兵士として間違った選択はしていない……なのに――
 おいおい、間違いで人を殺すなよ。
 つい、頭を掻こうとするが、頭を手が貫通してしまう。
 ――俺は……どうしたら……どうすべきなのか――
 どうも、俺を殺した事で悩んでいるらしい。
 悩むくらいならやるな、と言いたかったが、あいにく声帯はないらしい。
 ――俺は…………千鳥を探そう――
 男はそこで思考を打ち切って、音も立てずに体を起こした。
 休憩は終わりらしい。
 足取りが先程より少し、ふらついている気がした。
 このままついていっても仕様がないし、俺はどうするべきか。
 これからの事を考えていると、頭の上から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
 どっかの騒がしい馬鹿の声と、愛らしい天使のような声。
 見上げると眩い光に俺は包まれる
 なんとなくそんな気はしていたけど、どうやら、あいつと彼女も死んでしまったみたいだ。
 死んだ後も、俺はあいつに付き合わないといけないらしい。
 まぁ、いいさ。どこかでそんな気はしてた。
 そして俺は、頭上の光の源へと吸い込まれていった。

【E−2/森の中/5:45】

【相良宗介】
【状態】健康/自分を建て直し中
【装備】コンバットナイフ、スローイングナイフ
【道具】前と変わらず
【思考】1、千鳥の捜索 2、今後の行動方針 3、変化した自分への戸惑い

【備考】>>336->>339へ続きます
399もぉにんぐ ◆mou/7gFuMA :2005/04/03(日) 03:00:28 ID:4ALhx/6d
「ガハハハハ、誰だか知らんが気の利いた事をしてくれる」
水の引いた川の底を歩くオフレッサー、彼にとっては水源が無くなった事よりも
川を泳いで渡る必要が無くなった方が嬉しいらしい。
靴に川底の泥が大量に付いているが今の所気にした様子はあまり無い。
「それにこんな物まで拾えるとはな、このゲームの勝者はフアァァァァ」
更にその辺で拾ったガラスの剣を携えて大欠伸、まぁ一時間しか寝てない彼にとっては
無理の無い事ながら。
ビチャ、ビチャ、ビチャ、ブニュ、ビチャ。
「うん?」
そんな泥だらけの靴で人を踏むのはよくない。

【B-5/枯れた川/06:23】

【オフレッサー】
[状態]:健康、やや眠い
[装備]:水晶の剣、ガラスの剣
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:皆殺し、G-1に移動

【フリウ・ハリスコー】
[状態]: 右腕に火傷。顔に泥の靴跡
[装備]: 水晶眼(ウルトプライド)
[道具]: デイパック(支給品一式)
[思考]: ミズーを探す。殺人は避けたい。

※フリウは踏ん付けられて目が覚めましたw
400侵食〜Lose Control〜:2005/04/03(日) 03:15:27 ID:YSEXvf3T
竜堂終は走っていた、何もわからない何ももうわからない…
壊さなきゃ壊さなきゃこの間違っているもの全て、そんな彼の目に1人の人物の姿が映った。
「とりあえず誰もいねーみたいだな」
周辺の見回りを終えて一息つく潤、人影こそいくつか見かけたがみな倉庫からは離れていったようだ。
これでしばらくは休める、そう思った矢先…潤の耳に風の震えのような音が聞こえる。
「なんだあ?」
振り向くとそこには、まるで恐竜の出来損ないのような不恰好な生き物がいた。
そいつは不機嫌なうなり声をあげて潤をにらんでいる…やる気のようだ。
「早速かい?でも相手が人間じゃねーのが幸いだな」
「これで遠慮しなくてすむ!!」
終が吼えると同時に衝撃波、それをひらりと恐るべき跳躍力で避ける潤!
「甘いっ!」
しかし…、
「うぷ」
鈍い音が聞こえたと同時に潤は地面に墜落してしまった。
終の放った衝撃波は林の大木を切り裂いていた、そいて折れた幹が、
ちょうど跳躍した潤の後頭部にジャストミートしたのだ。
とっさに体をひねって下敷きだけは避けたのだが、脳震盪は免れずううーんと、
一声うなると潤は気絶してしまっていた。
ちなみに通常なら頭蓋骨が陥没してもおかしくないほどの衝撃を受けてである。

そして潤を退けた終の目に倉庫が映った、窓の中に影、
終は吼えた。

祐巳は夢を見ていた。
暗い暗い土の中、そこには自分と同じく生き埋め同然の姿の多くの人々…、
30人くらいはいるだろうか?
タスケテクレ、ナンデコンナメニアウンダ
人々は口々に嘆きの言葉を吐く。
そこに1人の少女がやってくる、手に刃物をもって、少女は1人ずつ人々の体を断ち切ると
その血を器に集め飲み干していく…
悲鳴はだんだん少なくなっていく、少女が刃を振るうたびに…そして。
401侵食〜Lose Control〜:2005/04/03(日) 03:16:30 ID:YSEXvf3T
「!!」
すぐ近くで不気味なうなり声が聞こえた。
顔を見合わせるアイザックとミリア、と倉庫のガラスがいっせいに割れる。
「ひいいいいいっ!」
頭を抱え逃げ出すアイザックとミリア…それから要も遅れて飛び出す。
可哀想にも祐巳はほったらかしだ。
シロが祐美のコートのすそをくわえて引っ張ろうとするのだが、重くて持ち上がらない。
どうしよう、どうすればいいデシか?

割れたがガラスがじゃらじゃらと音を立てる。
それを見てあることを思い出すシロ、シロは割れたガラス片で自分の手を切ると、
そこから滲む血を祐巳の口元に持っていく
「ちょっとでいいから飲むデシ、これですぐ元気になれるデシ」
鉄の匂いが祐巳の鼻腔を刺激し、喉が動く…ごくりごくり…。


おりしも倉庫の扉がぶち割られ、禍々しいシルエットの魔物が姿を現す。
その時だった。
祐巳の目がカッ!と開いたのは…。
「やった!効いたデシ、さぁ逃げ…」
シロはそれ以上言葉を続けることは出来なかった…なぜならば。

「な…なによあの子…なんなの」
物陰から様子をうかがっていたミリアが呟く。
ゆらりと立ち上がった祐巳の姿、瞳は赤く輝き、髪はまるで静電気を受けたように逆立ち、
顔は謝肉祭のマスケラのように固まった笑顔を浮かべている。
「らあああっ」
終に向かい咆哮する祐巳
吸血鬼の血を受け入れたとはいえ、それが体になじむまでには時間がかかる。
いわば彼女は蛹の状態だった、しかしそこに竜というさらなる異種族の血液が混ざることによって、
彼女はひどく不完全な形で人間とも食鬼人とも違う第三の存在として覚醒してしまったのだった。
402侵食〜Lose Control〜:2005/04/03(日) 03:18:03 ID:YSEXvf3T
祐巳の咆哮に呼応するように終もまた吼え叫び、戦いが始まった。
「ぐるるるる…らあああああっ!」
まずは祐巳が動く番だった、叫びと同時に跳躍、その鋭い動きに終ですらついていけない。
渾身のかかと落としが終の肩に叩き込まれるが硬い皮膚に阻まれ。逆に祐巳の肉体が
機動力についていけず悲鳴を上げる。
それでも祐巳は構うことなく終の体に今度はパンチの乱打を浴びせ続ける。
手の皮膚が破れ、血が拳を染めるが構うことなく、
煩げに尻尾を一閃され、払いのけられるがそれでもゆらりと立ち上がる祐巳、
その姿は終以上にまさに人間離れしていた。

終の、いや生物としての本能が危険信号を送る。
こいつは危険だ、引けと。
理性が少ない生物ほど危険には敏感だ、こうして終は最後のオマケとばかりにもう一声吼えると
そのまま南西の方角へと走り去っていったのだった。

「…?」
それから数分後、祐巳は不思議そうに周囲を見渡す。
私はいったいどうしてしまったのだろう?歩いていて気分が悪くなって…
「あの…ここはどこでしょうか?」
荒れ果てた倉庫内、自分を見つめる幾人かの視線。
掌にぬるりとした感触…血にまみれた己の両手を目の当たりにして悲鳴をあげる祐巳。

「これ私がやったんですか!?、何があったんですか!?」
そしてさらなるアイザックたちの視線が自分に突き刺さる。
お前何者だなんてことしやがる怖いこわいコワイ化け物ばけものバケモノ…
「ちが…ちが…うう」
祐巳の脳裏が赤くスパークして意識が消えた。
403侵食〜Lose Control〜:2005/04/03(日) 03:19:37 ID:YSEXvf3T
「ちっくしょう」
ふらふらと起き上がった潤、おぼつかない足取りで倉庫へと向かう。
そこで彼女が目にした物は、北東に向かい恐るべき速度で走り出す何者かの姿…
「祐巳っ!」
倉庫へ走る潤、そこには何が何だがといった表情で顔を見合わせている3人と1匹がいた。
「おい祐巳、祐巳はどこにいる、おいっ!まさかあのさっきの変な奴にっ」
「あれが…そうだよ、あれが祐巳さんだよ…」
誰かが絞り出すような声で呟いた。

気がつくとそこは海だった。
「わからない、わからないよ…」
海の波に向かって救いを請うように叫ぶ祐巳。
記憶がまるでない、あの目を見たとき…嫌だなと思ってそしたら…
「私どうなっちゃったの?これからどうすればいいの?…助けて…」

【アイザック】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:なんだったんだ、今の

【ミリア】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:なんかかっこいいね、この拳銃 (森の人・すでに一発使用)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:なんだったの、今の
404侵食〜Lose Control〜:2005/04/03(日) 03:20:15 ID:YSEXvf3T
【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)】
[状態]:健康
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:なんだったんデシか?

【高里要】
[状態]:やや平常
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:何だったんだろうか?
[備考]:上着を一枚脱いでいる。

【哀川潤】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:怪しい奴がいたらひっ捕らえる。殺人者がいたらぶっ殺す。
小笠原祥子の捜索 祐巳の捜索

【E‐4/工場倉庫/一日目8:45】
405侵食〜Lose Control〜:2005/04/03(日) 03:21:09 ID:YSEXvf3T
【A‐4/海/一日目9:15】
【福沢祐巳】
[状態]:看護婦 魔人化 記憶混濁
[装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服 ヴォッドのレザーコート
[道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)
[思考]:お姉さまに逢いたい。潤さんかっこいいなあ みんなを守ってみせる 聖様を救う 食鬼人のことは秘密
私どうなってしまったんですか?    

※祐巳の状態について
自分に対する敵意、悪意を明確に認識した場合、自動的に覚醒・無差別攻撃を開始
覚醒中の記憶は一切保持できません、姿が変わるのは覚醒中のみです。
力(怪力・瞬発力など)は覚醒中のみ使用可
406初めての電話 ◆lmrmar5YFk :2005/04/03(日) 03:28:28 ID:XDqN5Y+Y
静雄を探したい。セルティのその願いに、保胤は快く了解した。
セルティの話を聞いた限りでは、静雄は彼女の無二の親友らしい。その上、とにかく物凄く強く、味方についてくれれば何よりも心強いそうだ。
この島に保胤自身の知人が一人もいない事を考えれば、同盟を組んだ彼女の友人を探すのは重要事項と言って良い。
夜を明かした海岸近辺から南東の方向へと進んでいた二人は、視線の先に何かが落ちているのを発見した。
「誰かの支給品のようですね」
『一時的に置いてある、とは考えにくいな』
その荷物は木陰や建物の中などではなく、草の間に無造作に放置してあったので、セルティがそう思うのは尤もと言えた。
ちなみに、それはシロちゃんことトレイトン・サブラァニア・ファンデュが中も見ずに置いて来たデイパックであったのだが、彼らがそんなことを知る由もない。
周囲を見渡し、特に罠などでなさそうなことだけ確認すると、袋へとおもむろに手を伸ばした。
『中身を見たほうがいいな。武器や食料が残っているかもしれない』
セルティの提案により、デイパックを空けた二人が最初に目にしたのは全く手付かずの食料だった。
『これだけでも十分幸運だな。…持ち主はどうしているのか知らないが』
言外に、本来の所有者が死んでいるかもしれないとの思いを含ませて、セルティが書き連ねる。
パンとペットボトルを自分たちの荷物に詰め替えるセルティの横で、保胤がデイパックの底に手を入れた。
「まだ何かあるようですが…?」
硬く冷たい板のようなものの感触が手に当たったのに気づきそう呟くと、探り当てた『何か』を指の間に挟み込んで袋の中から摘み出す。
「!」「?」
目を見開くセルティと首をかしげる保胤。二人の反応の差異が、彼らの間に本来流れている筈の年月を如実にあらわしていた。
『静雄の携帯だ』
407初めての電話 ◆lmrmar5YFk :2005/04/03(日) 03:29:11 ID:XDqN5Y+Y
手元の紙に手早くそう書くセルティ。その書体は先ほどまでと比べると所々荒く、彼女が混乱しているらしいことがよく分かった。
しかし、一方の保胤は平安時代の人間である。いくら彼が聡明とはいえ、1900年代に発明された機械を知っているわけはない。
彼は、不思議そうな顔でセルティに尋ねた。
「この板が一体どうしたのですか?」
『ん…? ああそうか。知らないに決まっているな』
そこから数分、セルティが講師を務める「誰にでも分かる・初めての携帯電話使い方教室」が開かれた。

「…つまり、これを用いれば離れた場所にいる相手とも会話ができる、と?」
『まあ、そう言うことだ』
「信じられません」
こんな板が、とでも言いたげな保胤に、セルティは応える。
『私も信じられないよ…』
セルティは、保胤から渡された携帯電話を震える手で操作した。
その手の中にあるのは、見慣れた平和島静雄のものに間違いなかった。前面の特徴的な塗装の剥げには、確かに見覚えがある。
電話はなぜか圏外ではなく、利用可能地域を示すアンテナが表示されていた。
だが彼の電話帳に登録された番号に手当たりしだい電話をかけてみても、ざぁざぁという雑音が聞こえるばかりで、一向に繋がる気配はない。
しかし、とここでセルティは思った。この携帯電話は単なる外れアイテムなのだろうか?
いや、それはない。このゲームの『主催者』たちがそんな意味を成さないことをするとは考えがたい。
つまり、私の推測が正しければ―。
『聞いてくれるか。この携帯には私の番号が登録されている』
「はい?」
セルティが何を言いたいのか分からない(と、いうかそもそも何を言っているのかもよく分からない)保胤が微かに困り声で返事をする。
『簡単に言うとだな、この島のどこかに恐らく私の携帯がある。その一機とだけ、この携帯は繋がるはずだ。
誰が持っているかは分からないが、相手が話を聞く人間なら、私たちの仲間になるかもしれない』
408初めての電話 ◆lmrmar5YFk :2005/04/03(日) 03:30:19 ID:XDqN5Y+Y
「私がですか? しかし…」
『仕方ないだろう。私は声が出せないのだから』
そう言うと、セルティは頭部の欠けた自身の首の上を、立てた指で示した。
セルティ本人は普段メールにしか携帯を使わない。しかし、こんなときにメールを打っても誰かに見られる可能性は低い。
その上、たとえ誰かが見てくれたとしても、まともに返信が返ってくるかどうか保証はないし、好きなことを書いて送れるメールでは、偽証も容易い。
それよりは、直接相手の声を聴いて交渉することのできる電話のほうが、同盟を組む相手を探すには都合がよいだろう。
そう思っての決定だったのだが、喋れない自分に電話がかけられるわけもなく、仕方なく保胤に頼むことになったのだ。
『頼む。静雄か、味方になってくれる誰かを見つけたいんだ』
「…分かりました」
セルティのその言葉に、保胤はとうとう首を縦に振った。
未知なる物への好奇心は確かに人と比べて強い方だろうが、千年以上も先の文明の機械など正直奇怪でしかない。
それでも、彼女の頼みが切実であることは分かっていたから、断ることなど不可能だった。
『ありがとう。感謝する』
保胤に優しげな字でそう礼をすると、セルティは、画面を見ながら自分の登録番号を呼び出した。
―鬼が出るか、蛇がでるか、はたまた救いの神が出てくれるか?―
ピ、ピポパポ、ピ。
セルティが指で突起を押すたびに流れる機械音。それらは不意に「プルルルル…」という音の連続に変わった。
『これで、繋がるだろう』
セルティは一言だけそう書くと、持っていた電話を重々しく保胤に手渡した。
409初めての電話 ◆lmrmar5YFk :2005/04/03(日) 03:30:43 ID:XDqN5Y+Y
【B-2//1日目・07:45】
チーム名『紙の利用は計画的に』(慶滋保胤/セルティ)
【慶滋保胤(070)】
 [状態]:正常
 [装備]:着物、急ごしらえの符(10枚)
 [道具]:デイパック(支給品入り) 「不死の酒(未完成)」・綿毛のタンポポ・携帯電話
 [思考]:静雄の捜索・味方になる者の捜索/ 島津由乃が成仏できるよう願っている

【セルティ(036)】
 [状態]:正常
 [装備]:黒いライダースーツ
 [道具]:デイパック(支給品入り)(ランダムアイテムはまだ不明)
 [思考]:静雄の捜索・味方になる者の捜索
410白竜王の暴走1 ◆Aoc3zcD1/Y :2005/04/03(日) 06:42:42 ID:qR+UcgKf
竜身いや、いまや竜人と化した竜堂終は西へと走り出す。

目の前の森に突入し、木々をなぎ倒しながらも突き進む。
森の破壊される音と時折あげる竜の咆哮は、聞く者の魂を震撼させた。

「今のは竜王の気配!?、まさか…!?」
「悲しみとやり場のない怒りのこもった叫び声だね。世界の敵となる可能性がある。」
「えっ?、藤花ちゃん何を言っているの?」
「えっ。私何か言いました?」

森をぬけ茂みを抜け、草原を疾走し、それでも竜人は止まらない。

現在位置 【E-5/草原/一日目、08:25】

【竜堂終】
[状態]:竜への不完全な変化(精神的にはかなり竜寄り)
[装備]:ブルードザオガー(吸血鬼)
[道具]:なし
[思考]:1.茉理を守る 2.それ以外の一切は動物的本能(攻撃する者は殲滅)

>>400-405(侵食〜Lose Control〜)へ続く
411白竜王の暴走2 ◆Aoc3zcD1/Y :2005/04/03(日) 06:46:59 ID:qR+UcgKf
竜人はE-4の倉庫を出た後も西へ西へと走り続ける。
一声吼えると、分厚い空気の膜を体に纏わせ、行く手を阻む木々等をなぎ払いながら突き進む。
遊園地に突入し、アトラクションの一部を破壊し、そのまま海上を突き進む。

しかし、いつ終るとも知れない竜人の暴走も唐突に終わりを告げた。

数百メートルほど海上を進んだ所で、見えない壁のような物にぶち当たる。
竜人は理解した、これが自分達を閉じ込めている檻の柵だと。

再度全力でぶち当たる。膨大なエネルギーをもった一撃。
この世界の界面がほんのわずかに揺れた。
世界の状態を感知できる能力者がいたとして、それでも感じ取れるかどうかという些細な影響。

たった、それだけ。

そして、腕の刻印が冷たい光を発し輝きだす。
刻印の効力で急速に力を減じられ、命の火が燃え尽きた竜人は海に落下していく。
412白竜王の暴走2 ◆Aoc3zcD1/Y :2005/04/03(日) 06:50:59 ID:qR+UcgKf
薄れ行く意識の中で、終は長兄の姿を見ていた。
「ごめん始兄貴、なにがあっても暴走して意味もなく破壊して回るなんて、家訓に反するよなぁ。」

「だけど俺許せなかったんだ。こんな世界も、始兄貴の助けになれなかった自分も…。」

「茉理ちゃんを頼むって?嫌だよ、兄貴が自分でやれよ。それに俺はもう…。」




気がつくと、砂浜に打ち上げられていた。
「ここはどこだ?俺は…始兄貴に助けられたのか?」
「腹が減ったなぁ。地図も時計も何とかしないと。」

今回の件を仕組んだ相手を許してはおけない。
必ず一発殴らないと気がすまない。
だが自分1人の力では無理ということも身にしみてわかった。
腕の刻印もそのままだ。
茉理を保護し、協力者を探し、反撃の手段を考えないと。
しかしまずは15歳の健康な男子の旺盛な食欲を満足させないといけない。

現在位置 【C-3/浜辺/一日目、09:30】

【竜堂終】
[状態]:通常/空腹
[装備]:ブルードザオガー(吸血鬼)
[道具]:なし
[思考]:1.食料調達 2.茉理の捜索 3.地図や時計などの入手or協力者との接触
413イラストに騙された名無しさん:2005/04/03(日) 06:55:41 ID:qR+UcgKf
間違いました。
×現在位置 【C-3/浜辺/一日目、09:30】
○現在位置 【C-1/浜辺/一日目、09:30】
414池袋最強と世界の中心(1/3) ◆GeFsM/0AQ. :2005/04/03(日) 10:43:13 ID:SeOOi0+V
途中、人識に見つかりそうになりながらも何とかのりきりクレアは城に続く道にたどりついた。
別に人識が強そうだったから闘わなかったわけではない。
闘っても余裕で勝てるという自信はあったのだが、何の理由もなしに人を殺すのはクレアの方針にそぐわない。
それに、闘っていたら無駄に時間と体力を消費することになると考えたのだ。
「この道を行けば城だな・・・シャーネ。今からこのクレア王子が助けに行くぞ!!」
言い終えるのと同時に走り出す。
颯爽と走るクレアの両手には大型ハンティングナイフが握られている。
王子の武器としては合わないが、クレアはまったく気にしていない。
むしろ気に入っているくらいだ。
何しろ自分の結婚相手、シャーネの愛用の武器だから・・・
「そうだ、姫を助け出したらこのナイフは返してやらなきゃな」
大型ナイフを両手に持つ姫。
奇妙な組み合わせだが、これもまたクレアは気にしない。
───普段もキレイだが、ナイフを持っている時のシャーネはさらにキレイに見えるんだよなぁ
などと考えていると、周りを注意していなかったため、誰かと肩がぶつかった。
415池袋最強と世界の中心(2/3) ◆GeFsM/0AQ. :2005/04/03(日) 10:44:30 ID:SeOOi0+V
平和島静雄は歩く。
城から出る時は誰かが入るときに破ったと思われる窓があったので簡単だった。
しかし、出たまではよかったのだが、何処にセルティが居るのか検討もつかない。
とりあえず静雄は城から続く道を歩いて行く事にした。
「糞。イライラする。何で俺がこんな所にこなきゃいけないんだ?」
毒づきながら歩く。
「そうか、臨也か。あいつがまた俺をはめやがったに違いねぇ。あいつが全ての元凶か」
顔に血管が浮いてくる。そうとう怒っているようだ。
「絶対殺す。殺しても殺したりない。殺した後殺すか?それがいい。とにかく死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
抑えきれなくなり、溢れ出てきた怒りを言葉にして表す。
と、最悪のタイミングで静雄に誰かがぶつかった。
相手は走っていたらしく。静雄の肩にぶつかってもとくに気にしないまま走りさろうとした。
だが静雄がそれを黙って見過ごす分けが無い。
「おい待てこらてめぇ!人にぶつかっといて謝りもしないとはいい度胸じゃねぇか!!一回死ね。俺が殺してやるから死ね!!」
尋常じゃない殺気を向けられたので流石に男・・・クレアは立ち止まった。
そして振り返り、
「あぁ、悪い。だが今忙しいからお前にかまってる暇は無い。俺は王子。今から姫を助けに行くんだ。かっこいいだろ?俺」
言い終えるとすぐさま身をひるがえしまた走り出す。
「おいおいおいおいそれだけかよ。全然謝られた気がしねぇ。何だあの顔は、糞。やっぱりあいつから殺す。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」
相手は両手に大型ハンティングナイフを持っていたが、そんなことは気にしない。
静雄はクレアを追い、ただ怒りに身をまかせ城に向かって走りだした・・・・・・
416池袋最強と世界の中心(3/3) ◆GeFsM/0AQ. :2005/04/03(日) 10:45:10 ID:SeOOi0+V
【F-4/城に続く道/一日目7:15】

【クレア・スタンフィールド】
[状態]:絶好調
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:城に行く 姫(シャーネ)を助け出す


【平和島静雄(037)】
[状態]:怒り爆発
[装備]:山百合会のロザリオ
[道具]:デイパック一式
[思考]:あいつは殺す!
417食鬼人の憂鬱(1/2):2005/04/03(日) 11:12:59 ID:UdeDmcnT
 コートが波に濡れるのも構わず、祐巳は泣きじゃくっていた。
 気がついたら血だらけだったなんて普通じゃない。なにかおかしな力が働いたに違いない。
 自分は化け物になってしまったのだ。倉庫の中の彼らの視線がそう言っていた。
 じっくり見たわけではないけれどそうに決まっている。
 少なくとも好意的じゃなかったのだから、絶対そうだ。化け物に見せる目つきは恐れと軽蔑しかありえない。
 祐巳が食鬼人になったことを知っているはずの潤だって、きっとそう思ったに決まっている。

 ――祐巳っ!

 あの駆けだした自分へかけた声のなんと鋭かったことか!
「……どうして?」
 涙で枯れた喉は、しゃがれた声しか許してくれなかった。
(私は力が欲しかっただけなのに)
 みんなを守る力を、殺すためでも傷つけるためでもない、正しい力を望んだのに。
 ――何かがおかしい。
 あの子爵にだまされたのだろうか、と思い祐巳は慌てて首を振った。
(そんなはずないわ、子爵はいい人だったもの)
 ――でも、それならどうして?
 未だにあふれる涙を拭いながら、祐巳は考える。
 しかし、考えても考えてもわからない。
418食鬼人の憂鬱(2/2):2005/04/03(日) 11:13:24 ID:UdeDmcnT
 自分は食鬼人については子爵から聞いた話しか知らないのだから当然なのかもしれないが、彼の話と自分の状態とは酷く食い違うのが気になる。
(かつてヴォッドさんの血を飲んだ方は、こんなことにはなっていなかったようだけど……)
 祐巳は、はっと思い当たった。
(ひょっとしたら私の身に、子爵も思い当たらない何かが起こったのかもしれないわ)
 子爵に会いに行こう。そしてこのことを相談しよう。
 食鬼人について知っているのは彼しかいないのだから。
 祐巳は涙を拭い地図を確認すると、子爵のいたところを通り過ぎていたことに気付き慌ててかけだした。
 
【A‐4/海/一日目9:30】
【福沢祐巳】
[状態]:看護婦 魔人化 記憶混濁
[装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服 ヴォッドのレザーコート
[道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)
[思考]:食鬼人のことは秘密  私どうなってしまったんですか? 子爵に会いにD-4へ行こう 魔人化したことには気付いていない   
419お人よしの殺し屋(1/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/04/03(日) 13:10:26 ID:yKZ5DARy
「やっぱ僕はあいつらを追いかけることにする」
 零崎がトラップに引っ掛った誰かを見に行ってから、出夢くんが言った。
「次の放送であいつらの名前が呼ばれたら寝覚めが悪いからな」
「えー! 出夢くん行っちゃうの?」
ドクロちゃんが残念そうに出夢くんの手を引っ張る。
「もっとボクと○×△やろうよ〜」
「あんな僕が一方的に不利になるゲームなんて二度とやりたかねーよ」
 苦笑しながらいう出夢くん。○×△とは、マルバツ(3×3のマスに交互に○と×を書いていき、
同じマークを縦・横・斜めに三つそろえた方が勝ちというあれだ)の改造版で、
○の人はさらに△を書き入れられるというものだ。ちなみに、△は○として扱われる。もちろんドクロちゃんが○だ。
「出夢くん、本当に行くのかい?」
「まぁな、ぎゃはははは!心配してくれるのかい?おにーさん」
出夢くんは、殺し屋とは思えないような笑顔を浮かべて言う。
僕は凪ちゃんに訊く。
「凪ちゃん。君の意見は?」
「出夢の意見ならそうしたらいいと思うぞ、オレは。確かにオレもさっきの奴らは心配だからな」
木の幹に身体を預けていた凪ちゃんは、こちらに歩いてきながらさらに続ける。
「ただし、もし二人を説得できるのならここにもう一度戻ってきてくれ。脱出するにも大人数の方が有利だ」
「ぎゃははは!わかったよ、二人を説得してみる……さて、零崎がかえって来る前に行くとするか。
 やっぱり、あいつは好きになれそうにねーや。じゃぁな、炎の魔女におにーさん。それと三塚井、
 妹が戻ってきたみたいで楽しかったぜ……あばよっ!」
出夢くんはそう言うと、二人が居なくなった方向に歩いていく。
「あぁそれと。これ、僕は使わないからやるよ」
出夢くんはデイパックの中から細長い何かを取り出すと僕たちのほうに放り投げ、今度は本当に行ってしまった。
420お人よしの殺し屋(1/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/04/03(日) 13:12:18 ID:yKZ5DARy
「出夢くんって本当に面倒見がいよな………殺し屋だけど」
 ぼくはしばらく出夢くんの去った方向を見ていたが、
「あ!エスカリボルグ!」
 ドクロちゃんの声に、視線を出夢くんが放り投げたものに移す。
それは、いかにも凶器といった感じの釘バットだった。しかも普通の釘バットではない。たいてい釘バットというものは、
木でできたバットに鉄の釘を打ち込んだものなのだが、ソレはなんと金属バットから釘が生えていたのだ。
よく見ると打ち込まれているのではなく、元からバットに釘が付いた状態で作られたのがわかる。なんて禍禍しい凶器だろう。
「あれ?これエスカリボルグじゃない」
 まだ足が治っていないドクロちゃんが、木の幹に背を預けながら左手で釘バットを振り回しながら言った。
そうなのだ、これは後から零崎に聞いた話なのだが、その釘バットの名前は『愚神礼賛』(シームレスパイアス)零崎一賊の殺人鬼
零崎軋識の愛凶器なのだそうだ。
 しかしドクロちゃん…まだ右手が治ってないからって左手でそんなに重そうな凶器を軽々と振り回さないでよ。
ぼくは、左足の腱が切れているはずなのに、杖を使えばもう歩けるまでに回復した謎の天使にむかって、心の中で突っ込みをいれた。

 しばらく木と木を飛び移りながら、超人的な速さで足跡を追っていた出夢だったが、森を抜けたところで足跡が一つ減っているのに気付く。
「はっ!味な真似をしてくれるぜ」
 出夢は言うと、地面に降りて足跡をよく観察する。森の中に少し戻っていったところで片方の足跡――小さいので長門であるということが分かる―
が一つだけ深くなっていることに気付く。まるで二度踏んだかのように。
出夢はそこから少し先の茂みを掻き分けて進むと、やがて一人分の足跡が唐突に始まっているのを見つけた。
「さて、どっちを追うべきか……」
出夢は腕を組み、思考する。
421お人よしの殺し屋(3/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/04/03(日) 13:15:19 ID:yKZ5DARy
【戯言ポップぴぴるぴ〜】
(いーちゃん/零崎人識/霧間凪/三塚井ドクロ)
【F−4/森の中/1日目・07:00】
【いーちゃん】
[状態]: 健康
[装備]: サバイバルナイフ
[道具]: なし
[思考]:ここで休憩しつつ、トラップにかかった者に協力を仰ぐ

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:上に同じ

【ドクロちゃん】
[状態]: 頭部の傷は軽症に。左足腱は、杖を使えばなんとか歩けるまでに 回復。
    右足はまだ使えません。
[装備]: 愚神礼賛(シームレスパイアス)
[道具]: 無し
[思考]: このおにーさんたちについていかなくちゃ
  ※能力値上昇中。少々の傷は「ぴぴる」で回復します。
422お人よしの殺し屋(訂正) ◆xSp2cIn2/A :2005/04/03(日) 13:19:24 ID:yKZ5DARy
すみません。>>420は(2/3)です。
あと、
【ドクロちゃん】
[状態]: 頭部の傷は軽症に。左足腱は、杖を使えばなんとか歩けるまでに 回復。
    右足はまだ使えません。
は、右足(↑)ではなく右手の間違いです。
 ご迷惑をおかけしました。
423恐怖を知らぬ者(1/4):2005/04/03(日) 14:45:04 ID:UdeDmcnT
「祐巳を探してくる」
 潤は要の説明を聞くやいなや、短く告げた。
「そ、そんな! 一人じゃ危険ですよ。僕も行きます」
 要は震える声で潤を押しとどめる。
 確かに暴走した祐巳は怖かった。あの様は化け物としか言いようがない。
 しかし、潤をそんな人間の元に一人で行かせるのも抵抗があった。
「そうはいってもね、その二人の面倒を見てやるやつが必要だよ。あの状態じゃあねえ……」
 と、潤は座り込んだままのアイザックとミリアを顎で示した。
 二人は祐巳の走り去った方向に呆けた顔を向けている。
 確かに、このまま放っておくのは危険であった。 

 その時、
「ブラックだ……」
「ブラックだね……」
 赤ん坊が知らない人間を凝視するような顔でぽかんとしていた二人が呟いた。
「あ?」
 意味の通らない言葉に、潤は眉をひそめる。

「ブラック発見だな!」
「ブラック発見だね!」
 しかしそんな潤には構わず、二人は喜びに満ちあふれた表情で立ち上がった。
424恐怖を知らぬ者(2/4):2005/04/03(日) 14:45:30 ID:UdeDmcnT
「他の隊員とちょっと違う力、危なくなったら助けてくれるさりげない優しさ、
 そして何より孤独を求めて走り出すシャイさ加減!」
「どこをどう見てもブラックだね!」
 そのまま興奮のあまり二人は踊り出す。
 しかしそれは、ワルツ、タンゴ、サンバがごちゃ混ぜになったダンスともいえない奇行であった。
「よし行こうぜレッド、イエロー、ホワイト、グリーン!」
「だれがグリーンだ!」
「知性派はブルーですってば!」
「わ、わんデシ!(ボクはシロちゃんデシ!)」
 思わず二人と一匹は首を振る。
 しかしミリアは聞いちゃいない。
「よしみんな、リーダー命令だブラック隊員を迎えに行こう!」
「いやあの……」
「聞けっての!」
「おーーーっ!」
 レッド隊員の号令に潤と要の抗弁と、ピンクの大声が続いた。

 
「……あのさ」
 こめかみを押さえた潤が呟いた。
「……はい?」
「こいつ等殴っていい?」
「……………………ダメです」
 かなり迷って、要は首を振った。
425恐怖を知らぬ者(3/4):2005/04/03(日) 14:45:56 ID:UdeDmcnT
【E‐4/工場倉庫/一日目9:00】

【アイザック】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:待ってろよブラック!

【ミリア】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:なんかかっこいいね、この拳銃 (森の人・すでに一発使用)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:待っててねブラック!

【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)】
[状態]:健康(前足に切り傷)
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:あのお姉しゃんはどうしたんデシか?

【高里要】
[状態]:やや平常
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:祐巳は怖いが他のみんなは心配だ
[備考]:上着を一枚脱いでいる。
426恐怖を知らぬ者(4/4):2005/04/03(日) 14:46:18 ID:UdeDmcnT
【哀川潤】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:怪しい奴がいたらひっ捕らえる。殺人者がいたらぶっ殺す。
小笠原祥子の捜索 祐巳の捜索 誰がグリーンになるか
427初めての電話side-B ◆lmrmar5YFk :2005/04/03(日) 15:36:26 ID:XDqN5Y+Y
前衛芸術的な装飾の施された小屋の中、シャナは体を横に倒して目を瞑っていた。
やはり、体内に残っていた散弾の与えた負傷の影響は大きかったのだろう。
いくら超人的な回復力を誇るとはいえ、あんな傷を受けたままでずっと走ってきたのだから、彼女が疲弊するのは当然だった。
おまけに、この島内ではもともと持っている力が相当鈍る。少し休息を取らねば、彼女と言えどそのうちばたりと倒れてしまいそうだった。

シャナから少し離れた場所で、リナとダナティアはこれからどうするのかを話し合っていた。
正午まで、とは言っても実質的にあと四時間程度しか残っていない。
その間に少女の探し人についての情報が入る可能性は、正直薄いと言わざるを得なかった。
「だから、この道を…」
リナが口を開いたそのとき、プルルルル…と小屋の中を機械的なメロディが鳴り響いた。
座っていたリナとダナティアがとっさに跳ね起き、小屋の周囲に人影がないかを見渡す。
しかしその音源がもっと近いところにあるのに気づいたリナは、足元に置かれたダナティアの荷物を指差した。
「…ねえ、この音…あんたの袋からするみたいよ」
「…あたくしの?」
困惑した声でそう言って、がさがさとデイパックを探るダナティア。
そこから出した右手に握られていたのは、銀色に光る二つ折りの板だった。
プルルル…という機械音は、どうやらその板から響いているらしい。
「何よ、これ」
「あたくしの支給品だわ。でも、何に使うのかさっぱり」
それは、平和島静雄の物と対になるセルティの携帯電話であり、殺傷力こそないとはいえ仲間を探し出したい者からすれば『大当たり』と言っても良いアイテムだった。
しかし基本的に剣と魔法の世界の住人である彼女にこれが何なのか分かるはずもなく、開始直後に確認した後は、その存在すら記憶から消えていた。
428初めての電話side-B ◆lmrmar5YFk :2005/04/03(日) 15:38:00 ID:XDqN5Y+Y
「武器なの?」
「さぁ…」
「ふーん。ちょっと貸して」
困った顔でそう言うダナティアの手からその板を奪うと、リナは閉じていた携帯電話を開いた。
その画面には『平和島静雄』との名前が、時折点滅しながら画表示されている。
「この名前…」
どこかで見たような気がして、慌てて名簿を確認する。彼女のその記憶は正しく、その男の名前は確かにそこに書かれていた。
手の上のものが何なのかはいまだに分からなかったが、リナはとりあえず手当たり次第に表面の突起を押した。
「リ、リナ、危険よ! 爆発でもしたらどうするの」
慌てて止めるダナティアにはお構いなしで、光っているボタンを適当に押していく。
その彼女の指先が、偶然通話ボタンを掠めた。
『…も、もし…もし? …あの、本当にこれで聞こえているのですか?』
突然、謎の板から何かの声が響く。それはセルティが紙に書いた文章を忠実に読み上げる保胤の声だったのだが、そんなことを知らない彼女らには銀の板そのものが喋ったように見えた。
「うわぁっ!」
思わず電話を取り落とすと、二人は仰天して顔を見合わせた。
「い、今、声がした」
「…ええ、あたくしも確かに聞いたわ」
「これもエルメスと同じようなものなのかな?」
「そう…かもしれないわね」
大きすぎる勘違いだ。しかし、『話すモトラド』にそろそろ慣れたところだった二人は、これも『話す何か』なのだろうと勝手に決め付けた。
床に落ちた携帯電話を恐る恐る覗き込むと、リナがそろそろと話しかける。
「あんた何?」
429初めての電話side-B ◆lmrmar5YFk :2005/04/03(日) 15:38:29 ID:XDqN5Y+Y
突然の電子音とその後の騒がしさで、シャナははっと身を起こした。頭が重い。どうやら気づかないうちに少しばかりまどろんでいたようだ。
ふと見れば、リナとダナティアは小屋の中央で何かに向かって声を上げている。何事かと二人の後ろから覗き込んだシャナは、彼女たちの視線の先にあるものを見て思わず声を上げた。
「携帯…電話…?」

『目指せ建国チーム』
【G−5/森の南西角のムンクの迷彩小屋で休憩&見張り/1日目・07:45】

【ダナティア・アリール・アンクルージュ(117)】
[状態]: 左腕の掌に深い裂傷。応急処置済み。
[装備]: エルメス(キノの旅)
[道具]: 支給品一式(水一本消費)/半ペットボトルのシャベル/ 携帯電話
[思考]: 群を作りそれを護る。/正午になれば北上 /この板は一体?
[備考]: ドレスの左腕部分〜前面に血の染みが有る。左掌に血の浸みた布を巻いている。

【リナ・インバース(026)】
[状態]: 少し疲労有り
[装備]: 騎士剣"紅蓮"(ウィザーズ・ブレイン)
[道具]: 支給品一式
[思考]: 仲間集め及び複数人数での生存/正午になれば北上 /この板は一体?

【シャナ(094)】
[状態]:かなりの疲労/内出血。治癒中
[装備]:鈍ら刀
[道具]:デイパック(支給品入り) 
[思考]:しばらく休憩後、見張り/正午になっても悠二の情報が入らなければ北上 /どうして携帯電話が?
[備考]:内出血は回復魔法などで止められるが、腹部体内に散弾片が残っている。
     手術で摘出するまで激しい運動や衝撃で内臓を傷つける危険性が有る。
430彼女の覚悟 ◆E1UswHhuQc :2005/04/03(日) 16:18:22 ID:gHrK/23Z
「ミズーさん、大丈夫……?」
 大丈夫なわけがない。
 俺の方は腿のあたりを抉られただけで弾も残っておらず、既に包帯を巻いて止血したからそれでいい。
 だが、ミズーは違う。肩に銃弾が残っているのだ。
「平気……平気よ。大丈夫、わたしは……死なない」
 なのに彼女は新庄を安心させようと、気丈に応える。なんていい女だろう。花丸をあげたい。
 などとふざけた思考は、主にギギナに関する記憶が満載してある脳内ダストボックスに投げ入れて、俺は救急箱の中身を漁った。
 飛び込んだこのビルは、どうやら開店前の雑貨店か何かだったらしい。箱詰めにされた商品が山積みになっており、その中にこの救急箱があったのはつい先程信心深くなった俺へのプレゼントだろう。そう信じておくから次もよろしく神様。
 しかし困った。傷口を切開するにしても、道具はミズーの持っているグルカナイフだけだ。麻酔薬なんてしゃれたものもなかった。
 どうするか、と悩むうちにミズーの体温が上昇してきた。女の肌に傷が残るのは良くないが、仕方がない。
 ミズーの腰元の鞘からナイフを引き抜いて、はたと気付く。こういうときはまず煮沸消毒すべきなのだろうが、火がない。
 ライターでも探してくるか、と思ったところで、ナイフに銀色の糸が巻きついた。
「熱っ!」
 いきなり加熱されて思わず取り落としかけたが、持ち替えて柄にタオルを巻きつける。
 糸はミズーから伸びていた。休憩時の情報交換の際に聞いた、念糸という技だろう。
「それで……」
「分かった。あと、これ噛んでてくれ」
 呟くミズーに、タオルを噛ませる。歯を噛み締めて奥歯を砕かないようにするためだ。
 麻酔なしの切開など、激痛以外のなにものでもない。
「行くぞ。……新庄は見ない方がいい。できれば耳も塞いで」
「う、うん……」
431彼女の覚悟 ◆E1UswHhuQc :2005/04/03(日) 16:19:50 ID:gHrK/23Z
 新庄が横を向いて両手で耳を押さえたのを確認し、俺はナイフを突き立てた。
「――っ、!」
 暴れる体を空いた手で押さえつけながら、切り開く。肉を刻む感触など、気持ちの良いものではない。
 何とか弾丸を見つけると、ナイフの切っ先でひしゃげた弾丸を引っ掛け、抉り出した。
 取り出された弾丸が床に落ち、金属音を響かせる。
「よし……」
 一息つく。だがまだ終わっていない。開いた傷口を縫うか包帯で縛るかしなければ。
 そこで、またもや念糸が伸びた。
「おい!?」
 銀色の糸が傷口を灼く。
「――ぅうぅ、……うっ……!」
 肉が焦げる匂い。俺は新庄に鼻を塞ぐように言わなかったことを後悔した。

 糸が消えた時、ミズー・ビアンカは気絶していた。

【B-3/ビル一階/一日目/07:55】

【ミズー・ビアンカ(014)】
 [状態]:気絶。左腕は動かず。
 [装備]:グルカナイフ
 [道具]:デイバッグ(支給品一式)
 [思考]:気絶
【新庄・運切(072)】
 [状態]:健康
 [装備]:蟲の紋章の剣
 [道具]:デイバッグ(支給品一式)
 [思考]:1、ミズーが気がつくまで休憩 2、佐山達との合流 3、殺し合いをやめさせる
【ガユス・レヴィナ・ソレル(008)】
 [状態]:右腿は治療済み。歩けるが、走れない。戦闘はもちろん無理。疲労。
 [装備]:リボルバー(弾数ゼロ) 知覚眼鏡(クルーク・ブリレ)
 [道具]:デイバッグ(支給品一式)  救急箱
 [思考]:疲れた。眠い。
432涼宮ハルヒの計画 ◆mqRk/36lRM :2005/04/03(日) 18:11:17 ID:TmBiygOT
「う…………」
一条京介が目を覚ました時、一番初めに感じたのは鈍痛だった。
全身をだるさと痛みに支配されつつ、身を起こす。
「……?」
記憶がはっきりしない。
目の前には平原が広がっていて、その平原を続く道のど真ん中で寝ていたようだった。遠くには森が見える。
だが、そもそもなぜ自分はこんなところにいるんだろうか? 確か、学校の屋上にいたはずだったが……。
痛みに顔をしかめつつ、座り込んだまま周囲を見渡し――すぐ傍らで女が倒れているのに気づく。
浅葱色に近い青と白のセーラー服を身につけている、女というには若いセミロングの髪の少女。まるで、そこにいるのが当然であるかのよ

うに倒れていた。
他校の女子生徒と何もない平地にやってきて気絶していたという状況に、京介はますます混乱する。
いつの間に自分は夢遊病患者になったのだろうか。
「おい。起きろ」
とりあえず呼びかけてみるが、返事はない。
「おーい。早く起きないと――」
早く起きないとどうなるのか。そこでようやく、京介は思い出した。
いま京介たちは訳の分からない殺し合いに強制参加させられているのである。
そして、なぜ自分たちは気絶していたのか。
「おい! 大丈夫か? しっかりしろ」
どこからみてもイカれた男が、雷撃をまき散らしながら迫ってくる様子をまざまざと思い出す。
記憶に焼き付けられた、あの狂気の愉悦に満ちた瞳。自分たちを生かしたまま消えるとは到底考えられなかった。
しかしどういうわけか、京介は怪我一つしていない。あの攻撃は全てはったりだったのだろうか。痛みとだるさ、あるのはそれだけだ。
そして、それは目の前の少女――ハルヒも同様であるらしかった。呼吸があるのは、上下する胸が伝えている。
だが、彼女は呼びかけに応じることはなく、近づいてゆすってみても無反応。
呪文で起こそうかと思ったが、今更ながら呪文が使えないことに気づき、京介は落胆した。
433涼宮ハルヒの計画 ◆mqRk/36lRM :2005/04/03(日) 18:12:26 ID:TmBiygOT
もし呪文が使えれば、気絶している人間を起こすことも容易いのだが。
まず、杖がない。それだけではなく、気絶する前に確かめたところ、ここの空間では光流脈の気配も感じられなくなっていた。
京介の能力が制限されたからなのか、それともこの場所自体に光流脈が存在しないのか。
どちらにしろ、呪文が使えないことには変わりない。
豊花と一緒に暮らしているおかげで理不尽には慣れたはずだったが、ここまでくると不平すら出てこなかった。
今回はなぜか助かったものの、次こそは殺されるかもしれない。そして、自分たちを殺そうとしている人間が何人いるのかも分からない。

それなのに呪文は使えない。武器も無い。
これでは、豊花に会うまで生きていられるかどうかも怪しいだろう。
ぐったりとため息をついて、座りなおす。
と、後ろについた手が何かに触れた。からん、と木の棒が転がる乾いた音。
振り向くと、そこには――
「……杖?」
ただの杖ではない。それは紛れもなく玲洗樹の枝だ。光流脈使いが呪文に用いる、まさにそれだった。
少なくとも、あの男に出くわすまで京介は杖を持っていなかったはずだった。というか、持っていなかった。それなりにかさばる玲洗樹の

杖を持っていながら、それに気づかないのは豊花ぐらいのものだろう。しかし、今は目の前にある。
怪奇現象に近い杖の出現に京介は訝しんで――そして気づいた。
さっきまでは無くて、今はあるもの。それが杖だけではないことに。
思わず地面を凝視した。いつもと変わらない、しかしここにあるはずのないその気配。
光流脈が、存在している。
一体、俺たちが気絶してる間に何があったんだ。
座っている大地から感じる光流脈の気配に、京介は騙されたような気分になった。
「流れよ、大地を走る輝く女神。戌より出でて、寅へ沈め。通過、意識不明人体にて発動、回復」
試しに唱えた呪文、それは間違いなく発動した。
地面に光が走り、少女の体を呑み込むように膨らみ、そのまま適当な方向へ進んで消えてゆく。
呪文はここに飛ばされる前と同様の効果を発揮し、まもなく少女が目を覚ました。
434涼宮ハルヒの計画 ◆mqRk/36lRM :2005/04/03(日) 18:13:52 ID:TmBiygOT
「……? あれ? どうしたの? ここどこよ」
身を起こすなり、ハルヒは混乱したように辺りを見渡す。
「大丈夫か?」
「うん。……ちょっと頭が痛いけど」
どうやら、京介の顔を見て状況を把握したようだ。すぐに落ち着いて、改めて問い返してくる。
「あれからどうなったの? あのおっさんはどこ行ったの?」
「さあな。おれが聞きたい」
「なによそれ。あんたがやっつけたんじゃないの?」
「知らない。おれも、いま目がさめたところだ。気がついたらあいつはいなかった」
「いなかったって、なに呑気なこと言ってんのよ!」
さっきまで気絶していた人間とは思えない元気さで立ち上がると、ハルヒは仁王立ちになって指をつきつけてきた。
「あんなヤバそうな奴を放っておいたら、誰か他の人が殺されちゃうかもしれないじゃない! どうするの?」
「どうするの……って、どうしようもないだろ」
銃弾をかわしたあの男の動きは、どう考えても素人のそれではなかった。
ケンカで数の有利をひっくり返せるほどの立ち回りができる京介――普通、一人で4人以上の複数の相手をしても勝ち目は無いものだ――

とはいえ、あの男には及ばないという確信がある。それは、京介が本能的に悟ったことだった。
「どうしようもなくても、どうにかしなくちゃいけないの! もし、あの男があんたの探してる子のところに行ったらどうする気なの? あ

んただけじゃないわ。あたしだって――」
唇を噛みしめてうつむく。そのまま、さっきまでの勢いが嘘のように押し黙ってしまう。
435涼宮ハルヒの計画 ◆mqRk/36lRM :2005/04/03(日) 18:14:45 ID:TmBiygOT
「……わかったわかった」
その様子に、どこかの双子の妹を見たわけではないが。
「殺しをする奴は止めよう」
京介は自然とそう言っていた。
「できるの? さっき、勝てなかったんでしょ?」
「できなくても、やらなくちゃならないんだろ? なんとかする」
自分が言い出したくせに、弱気な口調のハルヒに京介は頷いた。
実際、彼はなぜかやる気になっていた。どういうわけか、止めなければならない、という思いが湧き出してくるのだ。
それは、京介自身から自然と生まれたものであってそうではないのだが、その場にいた二人には気づきようがなかった。
「わかったわ。もし次負けたら、バニーのカッコでSOS団の団員募集ビラ配りに強制参加させるからね、絶対よ!」
泣き笑いのような、形容しがたいひきつった表情で叫ぶハルヒ。さっきの戦いは、負けたことになっているらしい。
らしいと言っても、間違っているわけでもないが。
「……わかったよ」
ハルヒの瞳の奥に、豊花と同じ「否定は受け付けておりません」の掛札を見たような気がして、京介は再び頷いた。
そして、心の奥で付け足す。――次の負けがあったら、その次はないだろうけどな。

  ※  ※  ※  ※  ※

「じゃあ、さっさと行くわよ。ほら、これ持って」
そう言ってハルヒが差し出したのは、デイパックだった。
「……どこから出したんだ?」
「どこからって、そこに落ちてたやつよ。あたしたちのやつでしょ? もたもたしてると、豊花に会えないんだからね!」
「…………」
ハルヒの言葉に、京介は沈黙するしかなかった。
なかったのだ。デイパックは。さっき見渡した時、デイパックはもうどこにもなかった。襲撃者が持って行ったに違いない。
にも関わらず、いま手渡されてるのは紛れも無く京介のデイパックであった。
「あんた、ひょっとして手品師かなんかか?」
「え? なわけないでしょ。手品師やってる女子高生なんて聞いたことないわよ」
彼女はあっさりと否定した。
436涼宮ハルヒの計画 ◆mqRk/36lRM :2005/04/03(日) 18:15:28 ID:TmBiygOT
では、デイパックはどこから出てきたのか。
無かったものが出現する。これもまた、さっきから起こっている奇妙な現象の一つなのだろうか?
解けない疑問に首を捻る京介には構わず、ハルヒはデイパックの中身を取り出していた。襲撃前にあった、フライパンである。
「……手品師といえば、最初にあの剣士みたいなカッコした人が殺されたじゃない。しかも宙に浮いたままでさ。あれって一体どういう原

理なのかしら」
「さあな」
知るわけがない。呪文なのかとも思ったが、それとは根本的に違う気もした。
むしろ京介としては、ネコ型ロボットの仕業としか思えない珍現象の方が謎なのだが。
ハルヒにとって、京介の返事はどうでもいいらしかった。彼女は構わず続ける。
「そんなことはどうでもいいの。問題はこれよ」
「…………」
自分で振っておいて、「どうでもいい」はないだろう。
とは思ったものの、ツッコんでも無駄なのは先刻承知なので、京介は黙ってフライパンを天にかざすハルヒを見つめた。
「あんなことが出来る連中が配ったフライパンなのよ? なにか特殊な効果があるに決まってるわ!」
「どこからどうみても普通のフライパンだけどな」
「いいえ、そんなわけないわよ。いい? よく見てなさい――」
何故かバットのようにフライパンを構えると、ハルヒは一気に降りぬいた。そして。
ばしゅう、という何かを裂いたような気の抜けた音を響かせて、振りぬかれたフライパンは静止した。
「……え?」
437涼宮ハルヒの計画 ◆mqRk/36lRM :2005/04/03(日) 18:16:13 ID:TmBiygOT
「変ね? 音だけってわけ? 絶対になんか派手なやつが出ると思ったんだけど。薔薇十字騎士団とか安っぽい名前名乗ってるくせに、配る

ものも安っぽいなんて、許しがたいことだわ!」
「…………」
世の中に、振って「ばしゅう」と音を立てるフライパンがあったら、珍品コレクターは喜んで買い占めるだろう。
これ以上ないほど、フライパンから出るにしてはおかしい音だった。
つまり。フライパンからは何かが出たのだ。
……もっとも、ハルヒはそのことに気づいていないようだったが。
「まあいいわ。もっとすごいものが道端に落ちてるかもしれないしね。京介!」
鳴くフライパンを凝視していた京介は、いきなり名前を呼ばれ、慌てて視線を戻した。
「歩く時はちゃんと下を見て歩くのよ! なんか出てきそうなモノが落ちてたら報告すること。光とか、炎とか、雷……はうるさそうね。と

にかく、不思議なものだったらなんでも!」
「見つけてどうするんだ」
「もちろん、それで身を守るのよ」
炎だの光だのを吐くもので身を守ったら、致命的な損害があたりに出そうだが。
……別にいいか。おれはハルヒと豊花と自分自身を守れたらそれでいい。
「じゃあ、さっさと行くわよ! 無駄に時間を食っちゃったわ」
「……待て。そのフライパン、おれに貸してくれないか」
「え? いいわよ」
京介にフライパンを渡すと、ハルヒは颯爽と歩き出した。
「ほら、行きましょ!」
「ん、ああ。いま行く」
438涼宮ハルヒの計画 ◆mqRk/36lRM :2005/04/03(日) 18:16:47 ID:TmBiygOT
ハルヒとの距離が少し離れたすきを見計らって、京介はゴルフの要領で思い切りフライパンをスイングしてみた。
ざしゅん、と先ほどより幾分重い音が響き、何かが地面に叩きつけられる振動が足の裏を伝わって届いた。
音の発生源を見やって、京介は目をみはる。
今まで踏みしめていた土が、スイングの軌跡をなぞる様にざっくりと切れているのだ。
道としてそれなりに踏み固められていた地面を粘土のように切り裂くフライパン。
「どんなフライパンだよ」
うかつに振り回したら、自分の体を両断しかねない。
こんなものをハルヒに持たせたら、それこそ何が起こるかわからないだろう。物騒にすぎる。
「おい、ハルヒ――」
このフライパンはおれが預かっておく、と言いかけて、京介は視線をハルヒに戻し、絶句した。
視線の先で、ハルヒがゆっくりと地面に倒れてゆく。
「おい! どうした」
慌てて駆け寄る。まさか、フライパンの軌跡に巻き込まれていたのか?
だが、ハルヒに外傷はないようだった。ただ、眠るように気絶している。
「大丈夫か? しっかりしろ」
呼びかけても、揺すってみても返事が無い。再び呪文をかけてみるが、今度はなぜか呪文が効かなかった。
もしかしたら、本人の思っている以上に、疲れていたのかもしれない。どんなに妙な言動をしようと、ハルヒは普通の女子高生なのだ。こ

んな過酷な状況の中では、心身ともに予想以上に疲労するものなのだろう。
京介はデイパックをおろすとフライパンを詰め込み、ハルヒをおぶった。
こんな平原では、敵に見つけてくれと言っているようなものだ。人一人を背負ったまま移動するのは危険だが、このままここにいるわけに

も行かない。
439涼宮ハルヒの計画 ◆mqRk/36lRM :2005/04/03(日) 18:17:32 ID:TmBiygOT
おろしたデイパックを再びつかみ、京介は歩き出した。
目指すは、南に見える森。あそこならば、多少身を隠す助けにはなるだろう。
しかし――京介は心のうちで呟いた。
もし襲われても、絶対におれは負けない。たとえ相手を殺してでも、ハルヒは守る。
気概は無い。だが、それは確信であり、必然とさえ思えた。
ほとんど見ず知らずの少女に、なぜそこまで依存しなければならないのか。
結局、京介がそのことに疑問を抱くことはなかった。

440涼宮ハルヒの計画 ◆mqRk/36lRM :2005/04/03(日) 18:17:56 ID:TmBiygOT

【にわかSOS団(涼宮ハルヒ/一条京介)】
【D-8/平野/1日目・9:00】

【涼宮ハルヒ】
 [状態]:やや衰弱。気絶中。ガウルン戦での傷は完治。京介に背負われている。
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:SOS団の団員を見つける。殺人をさせない。超常的なモノを見つける。E-8経由でE-7へ

【一条京介】
 [状態]:健康。ガウルン戦での傷は完治。ハルヒを背負っている。ハルヒの力によって、思考が変化。
 [装備]:玲洗樹の枝・鳴くフライパン(大抵のものを切断できる風を発生させることができる)
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:ハルヒを守る。ハルヒに有害なものは殺してでも排除する。敵に見つかりにくい場所に移動する。E-8経由でE-7へ

※ハルヒの力が発動したため、ハルヒが望まない限りハルヒを殺すことができません。
 また、ハルヒの力で京介が負けることは絶対にありません。
 ただし、力が空間によって殺がれているので、力が発動する(ハルヒの都合のいいように事が運ぶ)たびにハルヒは衰弱します。
 衰弱によってハルヒが死亡した場合については、次の書き手さんにお任せします。
※ハルヒの力によって、強引に京介が力を発揮できるように空間が作りかえられたため、地下には光流脈が存在しています。
 それによって、島で殺人が行われた場合、負の感情の発生にともなう暗鬼(壁状の青い暗鬼)が出現します。
 ただし、暗鬼に古泉の力は通用しません。

【残り96人】
441歪められた最強の存在 (1/6)  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 18:23:57 ID:sXON7cIb
「何だったんだ、今のは……」
折原臨也は、マンションからさほど離れていないところを走る謎の女学生を目撃していた。
その速度は、とても常人の出せるスピードとは思えない。
足音が聞こえてくるかと思うほどに、力強く速い走りだった。
「どうやら私達には気付いていないようです。続けましょう」
どうやら子荻は、スコープで彼女を追っていたらしい。
しかし彼女は、すぐに四方の索敵へと戻った。
――化け物はシズちゃんとセルティだけで充分なんだけどね。
臨也は謎の疾走人間に対し、口に出さずにコメントした。

「見つけました」
「またかい? 随分と目が良いんだね」
「視力の問題ではありません。
向こうに倉庫らしき建物があったので、初めから注意していただけです」
南の方を指し示しつつ、子荻はそう説明する。
「人数は四人。……あれは、『オーバーキルドレッド』!?」
「何かあったのかい?」
スコープに映った内の一人にわずかに驚く子荻だが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「……いえ、何も。先程より少々距離がありますが、問題ありません。折原さんは周囲の警戒を」
「解ってるよ。今襲われたら君も俺も危ないからね」
――さて、今度は成功するのかな?
肩膝を立ててスコープを覗き込む子荻を見て、臨也はそう思う。
442歪められた最強の存在 (2/6)  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 18:24:53 ID:sXON7cIb
「おいおい祐巳ちゃん、一体どうしちまったってんだ……?」
哀川潤は、北へと続く足跡――女子高生が走った跡とは思えない――を見て呟いた。
「おっ、足跡が残ってるぞ!」
「これでブラックの行き先もバッチリだね!?」
潤の疑念をよそに、アイザックとミリア――レッドとピンクは外に出ても変わらずはしゃいでいる。
少し離れて、落ち着き無く周囲を見回す要。
その足元にはシロが着いてきている。
「よぉーし、行くぞ皆! ブラック救出作戦だ!!」
「殴り込みってやつだね!?」
「……いつ誰に祐巳ちゃんが捕まったんだ?」
珍しく突っ込む潤を無視して、アイザックとミリアは足跡を追って駆け出した。
「こら、先に行くな! 要を置いていく気か!?」
我先にと駆ける二人に向けて、潤は叫ぶ。
しかし横を見れば、要とシロも二人を追って走り出していた。
「ったく、現状が理解出来てんのか……?」
――いーたんなら、こんなに手ェ掛からないんだけどな……。
ふと、自分が目を掛けていた少年のことを思い出す。
彼女にしては珍しく、一つ溜め息をつき、先を走る皆を追おうと歩き出した。
が、

――見られてる?
443歪められた最強の存在 (3/6)  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 18:26:09 ID:sXON7cIb
潤は、ほんの一瞬視線を感じた。
しかし、どこから見られているのか解らない。
右を見る。森。しかし先ほどから獣の気配すらない。
左を見る。少し先に高架がある。しかし人影は無し。
正面。走る三人と一匹。それだけ。
――倉庫に誰かいたのか?
有り得ない。この自分が、哀川潤が隅から隅まで調べたのだ。
しかし潤は、後ろに振り向いて倉庫の方を見た。


『人類最強の請負人』という存在そのものすら、この島では歪められていたのだろうか。
倉庫へと振り返って一秒後、銃弾が潤の背中に突き刺さり、肺を抜けて右胸から飛び出した。
右胸に違和感を覚え、潤は手を当てる。
滅多に外に流れることの無い、哀川潤の血液。それがどくどくと溢れ出ていた。


「――――なんじゃあこりゃあああああああっっ!!!!」


彼女は悲鳴は上げず、故・ジーパン刑事の断末魔と同じ叫びを上げた。
444歪められた最強の存在 (4/6)  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 18:27:01 ID:sXON7cIb
「どうしたグリーン!? ……うおぉっ!!」
「たっ、大変だよアイザック! 助けなきゃ!!」
叫びを聞いて振り返った三人と一匹。
要とシロは驚き立ちすくみ、
アイザックとミリアは服を血の赤色に染めつつある潤へ駆け寄ろうとする。

「やめろ、――こっち来んな馬鹿!!」

叫ぶ潤。しかし二人は止まらない。
そんな周囲の動きとは無関係に、潤の腹へと次の銃弾が打ち込まれた。
口からも血を流し、膝から地面へ崩れる『人類最強の赤色』。

「アイザック! そこの森に隠れよう!!」
「OK! ミリアは、――要とロシナンテを連れて行くんだ!!」
意識を失いつつある潤を肩で支え、アイザックは森へと急ぐ。
ミリアは立ちすくむ要を抱きかかえ、ロシナンテ――シロちゃんと共に走った。

銃弾は、もう襲っては来なかった。
445歪められた最強の存在 (5/6)  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 18:27:56 ID:sXON7cIb

「今度はどうだった?」
構えを解き、屋上の端から離れた子荻に臨也が声をかける。
「パーフェクトです。――優勝候補の一人を殺害しました」
「そりゃ凄いな。知り合い?」
「ええ、まあ。名前は、……二時間半後の放送の時にお教えします」
「もったいぶるね。俺が信用ならないかい?」
「いいえ。ただ、一つくらい暇潰しになることがあった方がよろしいかと」

自分の知る限りこの島で最強の存在である、『人類最強』哀川潤。
それを倒したことに子荻は安堵し、笑みすら浮かべて見せた。


【残り94人】


【C−4/ビルの屋上/一日目/09:30】

【折原臨也(038)】
[状態]:正常
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品入り)ジッポーライター 禁止エリア解除機
[思考]:周囲の警戒 ゲームからの脱出? 萩原子荻に解除機のことを隠す

【萩原子荻(086)】
[状態]:正常 臨也の支給アイテムはジッポーだと思っている
[装備]:ライフル
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:狙撃対象をスコープで捜索 ゲームからの脱出?
446歪められた最強の存在 (6/6)  ◆Sf10UnKI5A :2005/04/03(日) 18:29:07 ID:sXON7cIb
【D−4/森の中/一日目/9:30】

【アイザック(043)】
[状態]:超心配
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:グリーンが大変だ!!

【ミリア(044)】
[状態]:超心配
[装備]:なんかかっこいいね、この拳銃 (森の人・すでに一発使用)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:早く助けなきゃ!!

【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)(052)】
[状態]:健康(前足に切り傷)
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:お姉ちゃんが大変デシ!!

【高里要(097)】
[状態]:軽いショック状態
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:潤さんが……!
[備考]:上着は外に出る際に着ました。

【哀川潤】
[状態]:瀕死の重体(銃創二つ。右肺と左脇腹損傷)
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:気絶中
447 ◆mqRk/36lRM :2005/04/03(日) 19:11:02 ID:TmBiygOT
「涼宮ハルヒの計画」NGということでよろしくおねがいします。
448イラストに騙された名無しさん:2005/04/04(月) 00:51:58 ID:jAK7WKt/
ラノベ・ロワイアル Part3
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1112542666/

新スレへGO!
449イラストに騙された名無しさん:2005/04/07(木) 10:59:19 ID:LWUw5mmm
テスト
450 ◆mGG62PYCNk
もいっかいテスト