ラノベ・ロワイヤル

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1テンプレ1 各種リンク
ライトノベル版バトル・ロワイアル、「ラノベ・ロワイアル」いよいよスタートしました。
みんなでがんばって盛り上げていきましょう(`・ω・´)

"こ の ス レ を 覗 く も の 、 汝 、 一 切 の ネ タ バ レ を 覚 悟 せ よ"
(参加作品内でのネタバレを見ても泣いたり暴れたりしないこと)

※ルール、登場キャラクター等についての詳細はまとめサイトを参照してください。

検討・感想・雑談スレ:ラノベ・ロワイアル 下準備スレPart,5
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1111753570/

まとめサイト
http://lightnovel-royale.hp.infoseek.co.jp/entrance.htm

MAP (1マス=500m×500m、8マス×8マス)
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/bd/86c045dd54145e2bb6113dc3f31c7b6c.png

過去ログ
ラノベでバトル・ロワイアルができるかどうか考えてみるスレ
http://lightnovel-royale.hp.infoseek.co.jp/log/log_1110555929.html

ラノベ・ロワイアル 下準備スレPart,2
http://lightnovel-royale.hp.infoseek.co.jp/log/log_1111150476.html

ラノベ・ロワイアル 下準備スレPart,3
http://lightnovel-royale.hp.infoseek.co.jp/log/log_1111332282.html
2テンプレ2 参加キャラクターリスト1/2:2005/03/26(土) 23:46:07 ID:erpDHFnP
【Dクラッカーズ】 物部景 / 甲斐氷太 / 海野千絵 / 緋崎正介 (ベリアル)
【Missing】 十叶詠子 / 空目恭一
【されど罪人は竜と踊る】 ギギナ / ガユス / クエロ・ラディーン
【アリソン】 ヴィルヘルム・シュルツ
【ウィザーズブレイン】 ヴァーミリオン・CD・ヘイズ / 天樹錬
【エンジェルハウリング】 フリウ・ハリスコー / ミズー・ビアンカ / ウルペン
【キーリ】 キーリ / ハーヴェイ
【キノの旅】 キノ / シズ / キノの師匠 (若いころver) / ティファナ
【ザ・サード】 火乃香 / パイフウ / しずく (F) / ブルーブレイカー (蒼い殺戮者)
【スレイヤーズ】 リナ・インバース / アメリア・ウィル・テラス・セイルーン / ズーマ / ゼルガディス / ゼロス
【チキチキ シリーズ】 袁鳳月 / 李麗芳 / 李淑芳 / 呉星秀 / 趙緑麗
【デュラララ!!】 セルティ・ストゥルルソン / 平和島静雄 / 折原臨也
【バイトでウィザード】 一条京介 / 一条豊花
【バッカーノ!!】 クレア・スタンフィールド / シャーネ・ラフォレット / アイザック・ディアン / ミリア・ハーヴェント
【ヴぁんぷ】 ゲルハルト=フォン=バルシュタイン子爵 / ヴォッド・スタルフ
【ブギーポップ】 宮下藤花 (ブギーポップ) / 霧間凪 / フォルテッシモ / 九連内朱巳 / ユージン
【フォーチュンクエスト】 トレイトン・サブラァニア・ファンデュ (シロちゃん)
【ブラッドジャケット】 アーヴィング・ナイトウォーカー / ハックルボーン神父
【フルメタルパニック】 千鳥かなめ / 相良宗介 / ガウルン / クルツ・ウェーバー / テレサ・テスタロッサ
【マリア様がみてる】 福沢祐巳 / 小笠原祥子 / 藤堂志摩子 / 島津由乃 / 佐藤聖
3テンプレ3 参加キャラクターリスト2/2:2005/03/26(土) 23:47:13 ID:erpDHFnP
【ラグナロク】 ジェイス
【リアルバウトハイスクール】 御剣涼子
【ロードス島戦記】 ディードリット / アシュラム (黒衣の騎士) / ピロテース
【陰陽ノ京】 慶滋保胤
【終わりのクロニクル】 佐山御言 / 新庄運切 / 出雲覚 / 風見千里 / オドー
【学校を出よう】 宮野秀策 / 光明寺茉衣子
【機甲都市伯林】 ダウゲ・ベルガー / ヘラード・シュバイツァー
【銀河英雄伝説】 ヤン・ウェンリー / オフレッサー
【戯言 シリーズ】 いーちゃん / 零崎人識 / 哀川潤 / 萩原子荻 / 匂宮出夢
【涼宮ハルヒ シリーズ】 キョン / 涼宮ハルヒ / 長門有希 / 朝比奈みくる / 古泉一樹
【事件 シリーズ】 エドワース・シーズワークス・マークウィッスル (ED) / ヒースロゥ・クリストフ (風の騎士)
【灼眼のシャナ】 シャナ / 坂井悠二 / マージョリー・ドー
【十二国記】 高里要 (泰麒)
【創竜伝】 小早川奈津子 / 鳥羽茉理 / 竜堂終 / 竜堂始
【卵王子カイルロッドの苦難】 カイルロッド / イルダーナフ / アリュセ / リリア
【撲殺天使ドクロちゃん】 ドクロちゃん
【魔界都市ブルース】 秋せつら / メフィスト / 屍刑四郎 / 美姫
【魔術師オーフェン】 オーフェン / ボルカノ・ボルカン / コミクロン / クリーオウ・エバーラスティン / マジク・リン
【楽園の魔女たち】 サラ・バーリン / ダナティア・アリール・アンクルージュ
4テンプレ4 作中ルール1/2:2005/03/26(土) 23:48:22 ID:erpDHFnP
4:テンプレ4(ルール1)
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
 開催場所は異次元世界であり、どのような能力、魔法、道具等を使用しても外に逃れることは不可能である。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給される。
 「多少の食料」「飲料水」「懐中電灯」「開催場所の地図」「鉛筆と紙」「方位磁石」「時計」
 「デイパック」「名簿」「ランダムアイテム」以上の9品。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「開催場所の地図」 → 白紙、禁止エリアを判別するための境界線と座標のみ記されている。
 「鉛筆と紙」 → 普通の鉛筆と紙。
 「方位磁石」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前がのっている。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが一つ入っている。内容はランダム。
5テンプレ5 作中ルール2/2:2005/03/26(土) 23:49:29 ID:erpDHFnP
 ※「ランダムアイテム」は作者が「エントリー作品中のアイテム」と「現実の日常品」の中から自由に選んでください。 
 必ずしもデイパックに入るサイズである必要はありません。
 エルメス(キノの旅)やカーラのサークレット(ロードス島戦記)はこのアイテム扱いでOKです。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。

【「呪いの刻印」と禁止エリアについて】
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「呪いの刻印」を押されている。
 刻印の呪いが発動すると、そのプレイヤーの魂はデリート(削除)され死ぬ。(例外はない)
 開催者側はいつでも自由に呪いを発動させることができる。
 この刻印はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
 24時間死者が出ない場合は全員の呪いが発動し、全員が死ぬ。
 「呪いの刻印」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
 下手に無理やり取り去ろうとすると呪いが自動的に発動し死ぬことになる。 
 プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると呪いが自動的に発動する。
 禁止エリアは2時間ごとに1エリアづつ禁止エリアが増えていく。

【放送について】
 放送は6時間ごとに行われる。放送は魔法により頭に直接伝達される。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去6時間に死んだキャラ名」「残りの人数」
 「管理者(黒幕の場合も?)の気まぐれなお話」等となっています。

【能力の制限について】
 超人的なプレイヤーは能力を制限される。 また、超技術の武器についても同様である。
 ※体術や技術、身体的な能力について:原作でどんなに強くても、現実のスペシャリストレベルまで能力を落とす。
 ※魔法や超能力等の超常的な能力と超技術の武器について:効果や破壊力を対個人兵器のレベルまで落とす。
 不死身もしくはそれに類する能力について:不死身→致命傷を受けにくい、超回復→高い治癒能力
6テンプレ6 書き手用テンプレ:2005/03/26(土) 23:50:38 ID:erpDHFnP
【本文】
 名前欄:タイトル(?/?)※トリップ推奨。
 本文:内容
  本文の最後に・・・
  【名前 死亡】※死亡したキャラが出た場合のみいれる。
  【残り○○人】※必ずいれる。

【本文の後に】
 【チーム名(メンバー/メンバー)】※個人の場合は書かない。
 【座標/場所/時間(何日目・何時)】

 【キャラクター名】
 [状態]:キャラクターの肉体的、精神的状態を記入。
 [装備]:キャラクターが装備している武器など、すぐに使える(使っている)ものを記入。
 [道具]:キャラクターがバックパックなどにしまっている武器・アイテムなどを記入。
 [思考]:キャラクターの目的と、現在具体的に行っていることを記入。
 以下、人数分。

【例】
 【SOS団(涼宮ハルヒ/キョン/長門有希)】
 【B-4/学校校舎・職員室/2日目・16:20】

 【涼宮ハルヒ】
 [状態]:左足首を骨折/右ひじの擦過傷は今回で回復。
 [装備]:なし/森の人(拳銃)はキョンへと移動。
 [道具]:霊液(残り少し)/各種糸セット(未使用)
 [思考]:SOS団を全員集める/現在は休憩中
7テンプレ7 書き手&読み手心得:2005/03/26(土) 23:51:52 ID:erpDHFnP
7:テンプレ7(書き手&読み手心得)
 1.書き手になる場合はまず、まとめサイトに目を通すこと。
 2.書く前に過去ログ、MAPは確認しましょう。(矛盾のある作品はNG対象です)
 3.知らないキャラクターを適当に書かない。(最低でもまとめサイトの詳細ぐらいは目を通してください)
 4.イベントのバランスを極端に崩すような話を書くのはやめましょう。
 5.話のレス数は10レス以内に留めるよう工夫してください。
 6.投稿された作品は最大限尊重しましょう。(問題があれば議論スレへ報告)
 7.キャラやネタがかぶることはよくあります。譲り合いの精神を忘れずに。
 8.疑問、感想等は該当スレの方へ、本スレには書き込まないよう注意してください。

 【投稿するときの注意】
 投稿段階で被るのを防ぐため、投稿する前には必ず雑談・協議スレで宣言をしてください。
 雑談・協議スレで宣言された順番で投稿していただきます。
 前の人の投稿が全て終わったのを確認したうえで次の人は投稿を開始してください。
 自分の投稿の順番になってから15分たっても投稿が開始されない場合その人は順番から外されます。
8オープニング (1/3):2005/03/26(土) 23:53:06 ID:erpDHFnP
ざわめきと、強烈な光によって彼らは目を覚ます。
そういえば自分たちはいつの間にか光に包まれて…それから?
彼らはきょろきょろと周囲を見渡す、どうやら何処かの大ホールのようだった。

と、そこに数人の男女がたちが入ってくる、きっちりと軍服を着込んだ貴公子然とした連中だ。
「皆様にお集まりいただいたのは他でもありません」
リーダー格らしい長髪の男が高らかに宣言する。
今日、今この時より皆様方に殺し合いをしていただくことになります」

突然の展開に皆が目を白黒させて周囲を見まわしている、男は無表情で話を続ける。
「生きて帰れるのはこの中の1人だけです」
そんな中だった。
「ふざけるな!誰が貴様の言いなりなどに!!」
怒声と同時に1人の男が剣を抜き放ち長髪の男に斬りかかる、さらにそれを援護するかのように
金髪の男もまた斬りかかっていく。
「パーン!!」
「ガウリィ!!」
彼らの恋人だろうか、2人の女性の声が会場に響く。

「毒蛇の王、見落としがありましたよ…武器や防具はちゃんと全員奪っておかないと」
男は平然とつぶやく、 
このタイミングならば鬼神すらかわせまい、それほどまでのすさまじい一撃だったが

2人の、いや会場全ての人間たちが次の瞬間、我が目を疑う。
何故ならば2人の刃は男の目の前で見えない壁に阻まれたかのように静止しているのだから
男は余裕綽々といった感じで細煙草に火まで灯してみせる。
9オープニング (2/3):2005/03/26(土) 23:54:07 ID:erpDHFnP
困りましたね…クライアントからは手荒な真似はするなと言われているのですが」
長髪の男は紫煙をゆっくりと吐き出すと、残念そうに宣言する。
「円滑な進行を妨げる方々には相応のペナルティを与える権限もありますし、ちょうどいい機会ですしね」
男の手が何かの印を切る、と同時に空中で静止したままの彼ら、パーンとガウリィが突然の苦悶の表情を浮かべる

その身体からは、ヨロイの下からもはっきりと分かる、何かの紋章が浮かび上がっていた。
「我々といたしましてもあくまでも自由意志で戦っていただきたい所なのですが
皆さん素直に戦ってくれないのは明白ですし、我々もたかが仕事で命を落とすのは不本意でしてね
そこでちょっとした仕掛けを皆さんに施しておきました」
「つまり私どもに逆らうと」
パーンとガウリィの身体が大きく仰け反り、2人はおびただしい量の血を吐く
さらに見える者にははっきりと分かっただろう、彼らの魂が生きながら荼毘に付されていく様が
そして2人はがくりと力なく空中でくず折れる。

それを確認して男はようやく印を解く、と2人は空中から開放され、床へと転落する。
すでに息絶えているのは明白だった。
「こうなるのですよ、ご理解いただけましたかな?」
挑発めいた言葉にまた座が騒然となるが、男が印を切るしぐさをするだけでしんと静まり返る。
「さて、と改めてルールの説明をさせていただいてよろしいでしょうかな?」

2人の亡骸にすがりつく少女たち、リナとディードリットに向かってまた何か言おうとした男だったが。
「魔術師、君は下がっていいよ、ここからは僕がやるから」
「じゃあお願いするとしようか、人形使い」
魔術師と呼ばれた男、本名イザーク・フェルナンド・フォン・ケンプファーは舞台の袖に退場し、
今度は人形使いと呼ばれた青年が壇上に立つ。
10オープニング (3/3):2005/03/26(土) 23:55:22 ID:erpDHFnP
2人の亡骸にすがりつく少女たち、リナとディードリットに向かってまた何か言おうとした男だったが。
「魔術師、君は下がっていいよ、ここからは僕がやるから」
「じゃあお願いするとしようか、人形使い」
魔術師と呼ばれた男、本名イザーク・フェルナンド・フォン・ケンプファーは舞台の袖に退場し、
今度は人形使いと呼ばれた青年が壇上に立つ。

「というわけだから、みんなもう殺しあうしかないんだよ、だから覚悟決めてね」
青年は先ほどの無表情な男とは正反対に、柔和な笑みを絶やさず言葉を続けていく
「ああ、ついでに言うと僕らを恨むのは筋違いだがら、僕ら薔薇十字騎士団は、世界に不満を持っていて
 なおかつそれを変革しようと試みる勇敢な方々にささやかながらお手伝いをしてあげている、いわば善意の団体みたいなも

のだからね」
もはや誰も返事をしようとはしなかった。
それは絶望していたのかもしれないし、あるいはこれからのことを冷静に計算していたのかもしれないし、
現実から逃避していたのかもしれなかった。

人形使い、本名ディートリッヒ・フォン・ローエングリューンは、涙にくれる2人の少女の肩にそっと手をやる。
「ほら、涙を拭いて…君たちみたいな女の子は笑ってる方がきっと可愛いと思うな」
ディードリットは未だに泣き崩れたままだったが、
「・・・してやる…」
気丈にもリナはそれだけをつぶやいてハンカチを受け取った。
「そうそう、強靭な意志こそが明るい未来を築く原動力さ♪」
ディートリッヒは笑みを絶やさぬまま、今度こそ本格的にルールの説明に入った。

「さて、とじゃあこのゲートを順番にくぐって貰おうかな」
ルールの説明を終えたディートリッヒは参加者たちの背後を示す、振り向くとそこには青白い光を放つ門があった、
門の両サイドには禿頭の巨漢と、メガネを掛けた神経質そうな男がいる。
「手はずどおりアイテムの入ったリュックをちゃんと受け取ってからだよ、じゃあ幸運を!」

【残り 117人】
 禿頭の男から無言で渡された荷物を持って、ゲートをくぐると……
そこは雪国でも不思議な町でもなく、鬱蒼と茂る森林の中だった。
「それにしても殺し合いねぇ……そういうのは出夢くんや零崎の領分だよなぁ。ったく、なんて戯言だよ」
誰ともなしに『ぼく』こといーちゃんはつぶやくと、とりあえず支給されたアイテムを調べるべくバッグの中に手を突っ込んで
一番最初に手に触れた物をつかんだ。
 あれ?なんかこれどこかで触ったことがあるような……
「あぁ、そうか」
 これは二輪車のハンドルだ、どこかで触ったことがあると思ったのは、このハンドルが巫女子ちゃんに貰った
ベスパのハンドルと感触が似ているからだ。
「って、いや待て落ち着けぼく。こんなデイパックにベスパが入るわけ―――」
「ねぇ、誰だか知らないけれどさぁ。そろそろここから出してほしいんだけど」
 どこからか聞こえた声 ――男の子のような妙に高い声だ――に、ぼくの背筋に戦慄が走る。
 やばい、誰か居る、見つかったか?だとしたら早くここを離れなければ!やばい、殺され――
「うわっ!ちょっと手が汗でべとべとだよ!も〜汚いなぁ」
 また声、しかし今度はその間の抜けた声がどこから聞こえてきたのかすぐに分かりホッとする。
いや、本当にそうならホッとするどころではない。なぜなら声が聞こえてきたのは――
「おーい、聞いてる?いつまでぼくのハンドルを握ってるわけ?」
 ――デイパックの中からだったからだ。
 また、声が聞こえた。ぼくは何かの罠ではないかと疑ったが、何時までもこうしている訳にもいかない。
それに、万が一このゲームに乗った奴がこの謎の声を聞きつけたらたまったものではない。
(もしかしたらそういうハズレアイテムかもしれない)
ぼくは強くハンドルを握りなおすと、満を辞して、握ったハンドルを、引き抜いた。
 ずるり
と、ありえないほどに大口を開けたデイパックから飛び出してきたものは、近くの地面の上にガシャンと着地した。
 それは、しっかりとセンタースタンドで地面に立つ、少し古ぼけた二輪車だった。
「ふぅ、やっと出られた。はじめまして、ぼくはモトラドのエルメス。お兄さんは?」
 ぼくの思考能力はしばらくの間フリーズした。


 再起動。

「あぁ、僕の名前?それは秘密と言う奴だよ、エルメス君。
 ぼくは今まで他人に本名を教えたことが一度しかないのを誇りに思っているからね」
 よし、一度再起動したおかげで冷静になれた。
やはり戯言使いであるところのぼくとしては、いつでも余裕を持っていたいのだ。
「ふぅん、まぁいいや。ところでお兄さんいつまでここに居るつもり?誰か来て殺されても知らないよ」
あまり興味がなさそうに言うエルメス君。どうやら細かい事は気にしない主義のようだ。
「それもそうだね、こんなところでグズグズしているわけにもいかないし。とりあえずここから離れておこうか」
 ぼくはデイパックの中からコンパスと地図を取り出すとそれぞれを眺める。
「とりあえず南にいこう。南の浜に出て西回りに歩いていけばとりあえず町にいける」
 そこで適当に寝床でも探すことにしよう。そう決めて、うい。と言うエルメス君の返事を聞くと、
ぼくはエルメス君を押して南方向に歩を進める。が、
ぐにゃ
「うっ……」
 何かを踏んでぼくは慌ててそこから足をどける。
その何かを見て、ぼくは驚愕に目を見開いた。え?、何でぼくはこれ――いや、彼女に気づかなかったのだろう。
その彼女は、
「いたたたた……あれ…ここは…………ッ!」
ぼくを見て、ぼくと同じように目を見開く。
 ぼくはつぶやく。
 彼女は――
「メイドさん?」


【残り117人】

【F-5/森の中/一日目・0:00】

【いーちゃん】
 [状態]:健康/メイドさんに動揺中
 [装備]:エルメス/コンパス
 [道具]:初期配布アイテム一式
 [思考]:町に行く/???(メイドさん)に遭遇

14共同戦線 1/6  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/27(日) 00:14:31 ID:LIVwOHKC
月と星だけが明かりとなる深夜。
木がまばらに生える林の中を、ゆっくりと歩く人間がいた。
青いウィンドブレーカーを纏った少年、物部景。
元々争いを好むわけでもない彼は、行動方針を決めかねていた。
歩き始めて、既に三十分ほどが過ぎている。
星明りに目を凝らし、名簿を眺める。
そこに記されている名前のほとんどは知らない人間だったが、
彼のよく知る人間の名が三つだけあった。
――海野千絵、甲斐氷太、それに……ベリアル、か。
幸か不幸か、幼馴染の姫木梓の名は無かった。
それにしても、正直後の二人には会いたくない。
喧嘩馬鹿の甲斐は、この下らないゲームに恐らく乗ることだろう。
それに、ベリアルこと緋崎正介。
彼が殺し合いをする気かどうかは解らないが、仲良く出来そうな相手ではない。
戦うとなれば苦戦は必至だ。
もっとも、戦うと言ってもカプセルが無ければ話にならない。
彼らが戦闘手段として用いる『悪魔』は、カプセルが無ければ召喚できないからだ。
景はカプセル無しでも少しだけ悪魔を使うことが出来たが、
呼び出そうにも何かに抑制されているのか、全く反応が無い。
支給された荷物の中にカプセルらしき物は入っていなかったし、
普段からカプセルを数錠潜ませているペンダントの中は、すっかり空になっていた。
――とりあえず、海野さんを探すかな。
百人以上の敵か味方か解らぬ人間がいる中、単独行動は危険だ。
信頼出来る人間がいるか否かで、生存確率は大きく変わる。
「まあ、今の僕じゃ彼女にとって足手まといか……」
悪魔の使えない自分の無能さを思い、自嘲する。
と、突然――

「動かないで」
15共同戦線 2/6  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/27(日) 00:15:33 ID:LIVwOHKC
「銃で狙ってるわ。両手を上げて」
聞こえてきたのは、知らない女性の声。
声が上の方からするのは、
――木の上で、カモを待ち伏せてたってわけか。
武器も持たずに呑気に歩く自分は、絶好のカモだろう。
――それにしても銃とはね。僕のスプーンとは大違いだ。
名簿を地面に落とし、ゆっくりと両手を上げる。
「……こっちは抵抗する気はないから、見逃してもらえませんか」
「抵抗しなくても殺す、と言ったら?」
「……全力で逃げる」
「馬鹿? 銃で狙ってる、って言ったでしょ」
「素人が動く標的に銃なんて撃っても、簡単には当たらない。こんな闇の中なら尚更だ。
それに、銃声は君にとってもマイナスだろ? 周りに自分の居場所を明かすことになる」
「……随分と強気ね。本当に抵抗する気が無いなら、背中の荷物も下ろしなさい」
「その間に撃ち殺す?」
「アンタだって、身が軽い方が逃げるの楽でしょ?」
――すぐに殺す気は無さそうだな。
会話に乗ってくる所を見ると、様子見なのだろう。
景はゆっくりとデイパックを降ろす。
「OK。逃げたきゃ逃げていいわよ」
しかし歩き始めた景は、十歩ほどで立ち止まり、振り返って声のする木を見た。
樹上、茂った枝葉の中に、かすかに人影が見える。
「……どういうつもり?」
「命を助けてくれるついでに、一つ聞きたいことがある。……『カプセル』を知らないか?」
――さて、吉と出るか凶と出るか……。
『お前って、冷静な割に豪快なトコがあるよな……』
ここに来る前、町にはびこる悪質な悪魔使いを狩っていた時、
相棒の水原にそんな風に評されたことがあった。
16共同戦線 3/6  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/27(日) 00:16:33 ID:LIVwOHKC
景が賭けに出たのには、当然理由がある。
――問答無用で襲ってくるような人間に出会う前に、カプセルを手に入れたい。
そんな殺人鬼がこの追い剥ぎみたいに銃でも持っていれば、
全く抵抗出来ずに殺されることだろう。
その前に、話の通じる相手と交渉し、少しでも情報を得るべきだ。
背中を冷や汗が伝うが、景は人影から目をそらさなかった。
「……何それ。薬?」
「そうだ。無いと命に関わるんだが、あの変な連中に取り上げられたみたいでね」
嘘は言っていない。
こんな異常な状況で悪魔を使えないとなれば、それこそ命が危ない。
沈黙が続く。
「……私は知らないわ。荷物の中にもそれらしき物は無い」
「そうか。有り難う」
景はわずかに落胆する。そしてゆっくりと後ずさるが、
「待ちなさい。今度は私の質問の番よ」
一瞬気が緩んだ景の体に、再び緊張が走る。
「……質問。アンタは、このゲームに乗ってる?
最後の一人になるために無差別殺人する気はある?」
銃を向けたまま人影が問いかける。
景は数秒間を置いて答えた。
「進んで殺し合いをする気は無い。自分が殺されそうになれば話は別だけど」
「ってことは、銃を向けられている今は、私のこと殺す気でいるのね?」
「いや、今はあんたを殺す手段が無いし、それに……」
「それに、何よ?」
景は、どこか皮肉げな、――『ウィザード』の笑みを浮かべる。
「あんたも僕のことを殺そうとは思ってない。違うか?」
「…………」
17共同戦線 4/6  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/27(日) 00:17:27 ID:LIVwOHKC
人影が、溜め息をついた様に見えた。
「アンタより数十倍酷いけど、似たような話し方する阿呆を知ってるわ」
「それはまた。……その人を探してる?」
「そいつも、よ。最低でも三人、会いたいヤツがいる」
「僕も少なくとも一人、探している人がいてね」
「……で、何?」
「あんたが言ったらどうだい?」
人影がまた溜め息をつく。
「普通は脅されてる方から言うもんよ」
「解りました。それじゃ、……一緒に探しませんか?」
人影が、わずかに声を上げて笑った。
「OK、共同戦線と行きましょう。……ただしその前に」
手を下ろそうとした景は、その言葉に動きを止める。
「そのウィンドブレーカーも脱いで。下に銃でも隠されてたら洒落にならないわ。
あと、ザックの中も見せてもらうから」
「……用心深い事で」
「アンタみたいな、口先だけで賭けに出るヤツよりマシよ」

木から降りてきた女性は、デイパックを調べ、景の体をあらためてから、やっと銃をしまった。
「そうそう、一つ言っておくことがあるわ。
……アンタ、私の事『素人』って言ったわよね」
「確かに言ったが、それが?」
「どういう要素で判断したかは知らないけど、――私は素人じゃないわ」
――どういうことだ?
この、どこにでもいそうな女子高生風の女が?
「ここに来る前にいた所では、軍隊……とはちょっと違うけど、似たようなのに所属してた。
本当は格闘技が得意なんだけど、射撃訓練も受けてるわ。
命を奪い合う戦闘だって、もう何度も経験してる」
18共同戦線 5/6  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/27(日) 00:18:51 ID:LIVwOHKC
驚く景に、女性は言葉を続ける。
「女だとか、子供だとか、そういうので判断しない方がいいわよ。
相手が私だから良かったけど、アンタ死んでたかもしれないんだから」
「…………」
――自分だって、幾度となく悪魔と戦ってきた。
――使役者の中に、同年代の女子もいたというのに……。
黙り込む景。その肩がポンと叩かれる。
「ま、今後は気をつけてね。――そういやアンタ、名前は?」
「……物部景」
「そ。私の名前は、風見。風見千里よ。よろしく」
そう言って、風見は右手を差し出す。
景は、多少警戒しつつその手を握った。

その後二人は木の根元に座り込み、自己紹介をし、互いの探し物について話し合った。
「それじゃ、確認するわよ」
地図の裏に書き込んでいた手を止め、風見が喋る。
「私が探しているのは、出雲覚、佐山御言、新庄運切の三人。
アンタが探してるのは、海野千絵と、そのカプセルとかいう薬。OK?」
「オーケー」
「もう一度確認するけど、私のこと後ろからブスッとやったりしないわよね?」
「……そこまで言うなら、君がその銃を持って後ろを歩けばいい」
風見は笑って、
「ごめんごめん、ちょっとした冗談よ」
……本当に彼女と組んで大丈夫だろうか。
景の頭に不安がよぎる。
「ま、アンタみたいなモヤシが後ろから殴りかかってきても、一瞬でぶちのめせるから、私」
「……そりゃあ頼もしい」
……本当に、大丈夫だろうか?
不安に思う景をよそに、風見は立ち上がった。
「さ、行きましょ。生き残るために、ね」
「……了解」
会話が終わり、二人は互いの目的のために歩き始めた。
19共同戦線 6/6  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/27(日) 00:19:20 ID:LIVwOHKC

【残り117名】


【G−6/林の中/一日目、00:42】

『姐さんと騎士(物部景/風見千里)』
【物部景(001)】
[状態]:正常
[装備]:無し
[道具]:デイパック(支給品入り)、スプーン
[思考]:カプセルと海野千絵の捜索

【風見千里(074)】
[状態]:正常
[装備]:グロック19(ハンドガン)
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:出雲覚、新庄運切、佐山御言の捜索
20Midnight Rendez-vous 1/8 ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 00:22:01 ID:KvC4rniu
「白薔薇さまっ!」
福沢祐巳は暗い夜道で安堵の声をあげる。
その声に振り向いたのは白薔薇さまこと佐藤聖だ。
「よかった、誰も知り合いいなくって…お姉さまや志摩子さんとかとも離れ離れになってしまって」
泣きじゃくりながらも安堵の言葉を漏らす祐巳。

「白薔薇さまさえいてくれたら百人力です、はやくみんなを探しにいきましょう」
しかし…その白薔薇、佐藤聖は祐巳の呼びかけに応じようとはしない。
「?」
心配げに聖の顔を覗き込もうとする祐巳、とそこに始めての声。
「私もお願いがあるの…ねぇ祐巳ちゃん」
聖は祐巳の肩に手を置く…その温度は、まるで死人のように冷たかった。
「あなたを、喰べさせて」
「!!」
瞬きする間もなく聖は祐巳にのしかかる、その口の端からは2本の牙が覗いていた

一目見ただけで心臓が止まるかと思った。
佐藤聖…別名白薔薇または、リリアンのセクハラ女王の異名を持つ彼女は
うっとりとした表情を先ほどから浮かべていた。
姉妹制度という独特の習しゆえ、レズの巣窟と近隣で噂される聖リリアン女学院だが
それは思春期特有の気の迷いのようなもので、実際卒業すると
たいていはすぐに似合いの男とくっついてしまうのが常なのだが、

しかし中にはわずかではあるが真性の同性愛者ももちろんいたりする。
佐藤聖はその数少ない一人だった。
あの人と言葉を交わしたい、例え一言だけでも構わない
聖はふらふらと熱に浮かされたように、闇路を歩く。
その美女はすぐに見つかった、まるで自分を待っていてくれたかのように
21Midnight Rendez-vous 2/8 ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 00:22:56 ID:KvC4rniu
聖が近づいてくるのを見て、美女も微笑む
「わたしに何か用かぇ?」
その声はまるで鈴の音色のように心地よくそして美しかった。
顔半分がベールと垂らした髪の毛で隠されているのが少し気になるが。
「あの…その…」
頬が真っ赤に染まっていくのを自覚しながら聖は何とか言葉を紡ごうとする。
こんな気持ちは何時以来だろう?…たしか。
「お一人…でしたら…」
美女は聖の言葉を予測していたかのようにまた微笑む、そして…。

「皆まで言わずともよい、だが我が顔を見てもまだその言葉続けることができるかの?」
その美女は、美姫は顔半分を覆うベールをゆっくりと剥がす、そして露になった彼女の素顔をかいま見たその瞬間、
聖は悲鳴を上げてのけぞった。
そう、美姫の顔半分は二目と見られぬ程に醜く焼け焦げていたのだった。
「どうした?いうてみよ…わたしと語らいたいのであろ?」
美姫は美しい方の顔で微笑み、聖へとにじり寄る。
「こないでぇ!!こないでぇ!!」

聖は手当たり次第に足元の石や棒を投げるが、当然の事ながら当たりはしない。
「ほほ、可愛いの、そなた気に入ったぞ」
美姫がにぃと微笑む、と、同時に美姫の姿が聖の前からかき消える。
いかに力を制限されていようが、もとより一般人である聖には見切ることなどできはしない、
そして背後から…。
「美しい髪じゃの…それに秀蘭にどこか似ておるの」

鈴の鳴るような美声にも聖は振り向くことさえ出来ない。
そして美姫の白い手が蛇のように聖に絡みつく、そこでようやく聖は身体をひねり逃げようとしたのだが、
「逃さぬ」
22Midnight Rendez-vous 3/8 ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 00:23:43 ID:KvC4rniu
その声と同時に唇を奪われてしまう、無論抵抗する聖だったが…
数千年を生きる吸血姫と、セクハラ女王程度では勝負にすらならない。
事実、硬く閉じられた聖の唇は、美姫の狡猾なまでのテクニックによって少しずつこじ開けられ、その舌が聖の口腔内を優しく滑っていく、
やがて…ため息のようなものが彼女の口から漏れたかと思うと、聖もまた美姫の唇を求め、貪るようにその舌を夢中になって
動かし、吸い始めるのだった。

そして長い接吻は終わりを告げ…ふぅふぅと吐息と同時に二人は唇を離す…幾筋もの唾液の糸がつぅっ…と伸びていく。
だが、これで終わりではなかった。
「我が呼びかけに応じた褒美じゃ、我が僕となるが良い…人の器では味わうことの出来ぬ甘美な世界へと誘って進ぜようぞ」
その言葉と同時に美姫は聖の喉にその牙を突き立てたのだった。
鋭い痛みが聖の身体を突き抜け、だがそれと同じく今まで感じたことのない熱さが彼女の中から湧き上がってくる。
「ああ…」

美姫は聖の苦悶にも関わらず死の接吻を続ける、2度、3度と…
「でも…貴方…なんかにっ」
聖は最期の力を振り絞り、手にした剃刀で美姫に斬りつける、美姫の片耳が裂け鮮血が溢れ出す。
「ほほ、気丈よの…ますます我が物にしとうなったわ」
その呟きが終わるか終わらないかの内に4度目の接吻、そしてそれが終わったとき、
激痛の悲鳴はもはや快楽の喘ぎへと変わり、聖もまた己の熱に促されるまま美姫の喉に牙を立てる、
こうして互いの命のエキスを啜りあう淫らな交合が闇の中でひたすら繰り広げられたのだった。

それからしばらくして、完全に覚醒した聖に何事か言い含め、彼女は悠々とその場を去ったのであった。 

こうして話は現在へと戻る。
今まさに聖は祐巳にのしかかり牙を剥き出し欲望のまま噛み付こうとしていた。
これがあの白薔薇さまなのかと思うほどの膂力ゆえ祐巳は動くことすら適わない。
それに…祐巳を見つめる聖の瞳が爛々と輝く、その輝きを目の当たりにした瞬間、祐巳の身体から
力が抜けていく。
23Midnight Rendez-vous 4/8 ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 00:24:34 ID:KvC4rniu
聖の手が、もどかしげに祐巳の首元をゆっくりと裂いていく、その冷たい感触に祐巳は改めて思う
もう今目の前にいる白薔薇さまは、自分の知っている白薔薇さまではなくなってしまったのだということを。
なのに怖くて恐ろしくてたまらないのに、なぜか逃げようとは思えない。
されるがままの祐巳だったが、その時だった。
「ひぃっ!!」
聖が短い悲鳴を上げる、と同時に祐巳の身体が夢から覚めたように動くようになる。
祐巳の薄い胸から覗いているのはロザリオ、姉妹の契りの証が鈍く輝いていた。

呪縛の解けた祐巳は無我夢中でロザリオを聖に向かって振り回す。
十字の部分が聖の顔に触れ、肉の焼ける匂いがあたりに立ち込める。
「ああああああああっ」
激痛にのたうつ聖、見ると頬に十字の焦げ目がついてしまっている。
それでも聖は祐巳の足を掴んだまま、はぁはぁと息を荒げて血走った瞳で祐巳を見つめている。
「祐巳ちゃん…ごめん、ごめんねぇ…」
ぽたぽたと祐巳の顔に聖の涙が零れ落ちる。

「私、あれから何度も何度も死のうとしたわ…でも出来なかったの、もう我慢できないの」
彼女の首筋には支給品である剃刀で自ら切りつけた傷が幾つもあった、
しかしその傷もぶくぶくと泡立ちながら少しずつ修復していく、
眷属とはいえ、もはや彼女はれっきとした吸血鬼、その程度では苦しいだけで死ぬことは適わないのだ。
そして残ったのは抑えきれぬ欲望のみだった。

「夢じゃ…ないんですね」
えぐえぐと普段ではとても見られぬ姿で乱れる聖、それを冷めた目で眺める祐巳
「そして苦しいんですね、白薔薇さま…」
祐巳はロザリオをそっと地面へと置く、お姉さまごめんなさいと心の中でつぶやきながら。
「白薔薇さまなら…いいです」
不思議と嫌な気持ちはなかった、
それでも聖の口から覗く牙を見た時はまた少しだけ恐怖が疼いたが。
そして聖の牙が祐巳の喉を貫こうとしたその時だった。
24Midnight Rendez-vous 4/8 ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 00:25:34 ID:KvC4rniu
がっ!
横合いからの一撃に吹っ飛ばされる聖、
我に返り振り向く祐巳の視界の中に、パチンコのようなものを構えた眼鏡っ娘、趙緑麗がいた。
「その方!何をしておる」
どす黒い闇の匂いを嗅いでここまでたどり着いたのだが…。
眼前の淫靡かつ異様な光景に気押されながらも緑麗は手にもったスリングショットを聖に向けてさらに放つ
射出された鉄球が聖の側頭部に命中する。
「ぐあああっ」
かつて人間だった頃には決して聞くこともなかったほどの醜い悲鳴をあげてのたうちながらも
形成不利を悟ったか聖は踵を返しそのまま闇の中へと逃げようとする

当然それを追う緑麗だったが、
「逃げてっ!!白薔薇さまっ!!逃げて!!」
祐巳は緑麗にすがり付き、聖の逃走を手助けしようとする。
「そこをどかぬか!!」
「白薔薇さまは悪くない!悪くないんです!!だからっ!!」
搾り出すような涙声で必死で訴える祐巳。
ようやく緑麗が祐巳を振りほどいた時には、もう聖の姿は消えていた。

それを確認し、そこで緊張の糸が解けたのだろう…祐巳は緑麗にもたれかかるように
崩れ落ち気絶の世界へと突入していった。
「おい……気を確かに持て!おい!」
介抱しながらも緑麗は表情を崩さない、おそらくあの娘は眷族、どこかに主がいるのだろう。
しかし…あのおぞましいまでの妖気は何だ、あれほどの力を持つ「主」がこの島に潜んでいる
そう思うだけで背中が凍る思いがする。
「みんな…無事でいてくれ」
緑麗は悲痛な表情でつぶやくのがやっとだった。
25Midnight Rendez-vous 6/8 ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 00:26:35 ID:KvC4rniu
茂みの中、先ほどの自分の行為に震える聖、自分は何をしようとしていた?
自分を慕う後輩に…なんておぞましい真似を。
だが、それとわかっても止めることなど出来なかった、まるで性欲と食欲が交じり合い、数倍に膨れ上がったような感覚だ。
「ううっ…うううっ…」
浅ましき悪鬼と成り果てた自分に涙する聖…しかしそれでも
「止まらない…止まらないわ」
その手に握られているのはつい先ほど捕まえたばかりの野良猫、迷うことなく聖はその喉にかぶり付いた。
ぴちゃぴちゃと野良猫の喉首から溢れ出す血を舐め続ける聖、この蕩けるような甘美な味わいを一度知ってしまえば
輝かんばかりの闇の美しさを目の当たりにすれば、もう逃れられない。

かの魔界医師ですらこの魅惑に一時は抗えず危うく流されそうになったのだ、彼女を責めることはできない。
それに、聖は美姫の言葉を、主の言葉を思い出す。
『自由に生きるがよい、心のままに…』
そうだ、もう自分は人間ではない、人の世の小賢しいルールに縛られる必要など何処にもない。

ああ…人間の血は、そして祐巳の、由乃の、志摩子の、令の、祥子の、江利子の、蓉子の、そして栞の血は…
どんな味なのだろうか?
早く彼女らにもこの悦びに満ちた世界を経験してもらいたい。
「皆…ごめんね、私、やっぱり人間やめさせてもらうわ」

こうして佐藤聖は人間を捨て、かくして白い薔薇は鮮血に染まっていくのだった。
26Midnight Rendez-vous 7/8 ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 00:27:06 ID:KvC4rniu
一方の美姫であったが、彼女も自分の身体に起こった変化に顔をしかめる。
渇く、とにかく渇くのだ。
無論、彼女ほどの大吸血鬼ともなれば渇きを抑えることなど造作もない。
しかし、この地に降り立って以来、彼女の中の吸血衝動は次第に大きくなりつつある。
「これもきゃつらの仕業かの、味な真似をしてくれおる」
事実そうでなければ、誇り高き彼女が戯れとはいえ、行きずりの少女を襲うなど決してありえないだろう。

「我が渇き癒すのはあの男の血潮以外にありえぬと思うておったに、口惜しゅうてならぬ」
美姫は己の顔の傷を指でさする、鈍い痛みと共に思い出すのはあの時の苦い記憶
もはやこの顔、そして著しく弱体化した力ではあの男を手に入れることは適わないだろう
事実、先ほどから魅了の術をかけつづけていたにも関わらず、網にかかったのは彼女一人
一流の戦士・魔術師にはやはりそれなりに気合を入れねば効果が薄いようだ。

まぁいい、この島にはあの男には劣るが、それでもなかなかの美形が多く集っているようだ、ならば、
「我が闇の軍、この地にて再興させるもまた一興、秀蘭の次は劉貴の番よの」
美姫は、かつて古の中国において妲妃と呼ばれていた妖女は艶然と微笑むのだった。
27Midnight Rendez-vous 7/8 ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 00:34:05 ID:KvC4rniu
【残り117名】

『神将&女子高生』
【福沢祐巳(060) 】
 [状態]:気絶
 [装備]:不明
 [道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)、
 [思考]:不明/現在気絶中 

【趙緑麗(035) 】
 [状態]:通常
 [装備]:スリングショット
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:仲間を探す

【佐藤聖 (064)】
 [状態]:吸血鬼化/身体能力等パワーアップ
 [装備]:剃刀
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:吸血、己の欲望に忠実に(リリアンの生徒を優先)
以下3名、【G−2/林の中/一日目、01:30】

【美姫(110)】
 [状態]:通常
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:仲間を増やす(次の標的は男性、意図的に仲間にするのはその1名のみです)
現在位置 【F−3/草原/一日目、01:30】
28浸食、不幸、決意@キョン(1/4):2005/03/27(日) 00:36:39 ID:SPYqpHN5
ゲーム開始直後、俺は近くに安全そうな場所を見つけたので俺はとりあえずそこに隠れる事にした。
デイバッグから出した水を少しだけ口にしてから、盛大なため息をついた。
身体の方には特に問題はない。まぁゲーム開始直後だから当たり前といえば当たり前か。
ただ、手の甲に引っ掻き傷みたいなものがあるが、それは多分ここに運ばれる時に付いた傷だろうから
特には気にしない。
ただ異常があるとすれば、それは精神の方だろう。

ゲーム開始から今まで、俺はずっと平常心のままで来ていた。いや、正確には周りの異常を知った時からか。

あの時、壇上で喋っている男に切り掛かった奴が死んだ時、俺はその光景をただずっと見つめていた。
朝比奈さんは悲鳴を上げ、小泉は顔をしかめ、ハルヒでさえもその光景から顔を背けていた。
長門は俺と一緒に見ていたと思うが、まぁこれは例外だろう。
ただ長門や俺のようにただ見ている奴もいるにはいた。ここから見える範囲では真っ赤な服を来た女の人
や、会場の隅の方にいる俺と同い年くらいの黒服の男とかは俺と同じように見ているようだった。
中には猫耳(?)の付いたヘルメットを付けた人や、蒼い色のロボットも同じように見ていたが、流石に
その表情は分からなかった。

俺はどうなってしまったんだろう。あの人が死ぬ所は確かに見たと思う。それが現実だという事も十分認識
している。でも、俺の心はそれを平然と受け止め、何事も無かったかのように落ち着いている。
もしこれが、ハルヒ達と関わった事で出来た、環境適応力だというのならなんとも都合のいい話のように思えた。


疲れが少し取れた所で、そろそろデイバッグの中身を確認する事にした。
中に入っていたのはさっき取り出した水と食料、懐中電灯に磁石に地図、それと時計と筆記用具が一式、参加者の名簿
そして最後に──ああ、この時出てきた物を俺は死ぬまで忘れないだろうな──俺に与えられた武器を取り出した。
29浸食、不幸、決意@キョン(2/4):2005/03/27(日) 00:38:34 ID:SPYqpHN5
それはパックに入った大量の豆腐だった。
みそ汁とか冷奴に使うスーパーで売ってるアレだ、あれが沢山入ってた。

しかもただの豆腐じゃない。木綿豆腐絹ごし豆腐焼き豆腐胡麻豆腐卵豆腐と、バリエーションに富んでいる。
ご丁寧に醤油のボトルまで付いていた。なんとも気の利いた事をしてくれる。


「……」
……これはどう考えても『ハズレ』だろう。
俺の不幸はハルヒと出逢った時点で打ち止めだと思っていたが、まだまだ底をつくほどではなかったらしい。
だいたい、最初に持った時から嫌な予感はしていたんだ。水2リットル入りのデイバッグにしては妙に重かったんだ。
それにしても、こんな武器にも防具にもならないただの豆腐で、どうやって戦いに勝ち抜けと
いうんだろうか? 凍らせれば武器としては使えるかもしれないが…… 
まったく、先行きが不安過ぎて涙が出てくるぜ。あ、やばっ、何かほんとに涙出てきた。

「それにしても……」
さっきも考えたがこの一年でどれだけハルヒ達と異常な事件に関わっただろう。そして何度、命の危機に立たされた
事だろうか。鶴屋さんの別荘に行った時に、長門が壊れしまった時、巨大カマドウマの時は……まぁそれほどでも
なかったか、ハルヒと一緒に閉鎖空間に閉じ込められた時の事は忘れよう、あとは……。
「朝倉のときか……」
朝倉涼子──、俺を殺そうとした長門と同じ宇宙人の一人。あの時朝倉は俺を殺してハルヒの変化を観察する
とか言っていたが、結果として長門が助けにきてくれた事で今でも生きている事が出来るわけだ。
あの時は流石に命の危機を感じたね。しかしあの時助けられたおかげで、俺は今こうして殺し合いのゲームに
参加させられているわけだが。これは果たして不幸なのか幸福なのかその辺については一度誰かに聴いてみたいもんだ。

「……ん?」

今何かが思考の端に引っかかった様な気がした。
なんだ、これは? あの時、朝倉が教室で俺を殺そうとした時に何があった?
30浸食、不幸、決意@キョン(3/4):2005/03/27(日) 00:40:17 ID:SPYqpHN5
あの時朝倉は、俺を殺そうとする前になんて言った?
「俺を殺して涼宮ハルヒの出方を見る」とか朝倉は言ってなかったか?


ひょっとしたら、このゲームはそういうコトなのか? わざわざハルヒの為にこんなゲームを仕組んだのか?
もしそうなら──、
「……狙われてるのは俺達ってことかよ」
俺は地図をポケットに突っ込んで残りをデイバッグの中に戻すと、すぐにこの場を離れた。
些か大げさな考えかもしれないが、その可能性が無いとは言い切れないだろう。ならば一人でも仲間がいた方が安全だろう。
しかし、もし長門が自分に襲いかかってきたらどうする? 
あのとき朝倉は統合思念体は一枚岩じゃないと言った。なら長門の主が急に意見を変えて、ハルヒに無理矢理
刺激を与えようとするかもしれない。
小泉もそうだ。『機関』とやらはなぜかハルヒを『神』扱いしている。ならハルヒを強引に危機的状況に
陥らせて、ハルヒの力を使わせようとするかもしれない。
しかし、ある意味一番危険なのは朝比奈さんはかもしれない。上司の命令とかそんな事関係無しに、この状況で
しかも何か武器を持ってる状態で下手に刺激すると、こっちまで被害を受けてしまいそうな気がする。


「……バカか俺は」
俺は一旦足を止めて、今までの考えを振払うように、わざと声を出してそう言った。
朝比奈さん達を疑ってどうする? 3人ともハルヒの力についてはよく知っているはずだ。だからあの3人が
ハルヒに手を出してくるというのは考えにくい。いや、絶対に手を出さないだろう。
とにかく──、
「早く皆を捜さないとな」
そう呟いて、俺はまた移動を開始した。


あの時俺は、ハルヒや、朝比奈さんや、長門や、小泉のいるあの楽しい世界を選んで帰ってきた。
だから今度も、俺はあそこへ帰りたい。
小泉や長門、朝比奈さんそして、ハルヒのいるあの非日常な世界へ。
31浸食、不幸、決意@キョン(4/4):2005/03/27(日) 00:42:11 ID:SPYqpHN5
【キョン(087)】
状態:精神がマヒしている模様
所持アイテム:豆腐各種、醤油のボトル、初期アイテム一式
現在地:B-6より移動
行動指針: SOS団メンバー(ハルヒ、長門、朝比奈、小泉)を捜す。

【残り117人】
32割り箸の恐怖(1/3) ◆t4u50oq2Wo :2005/03/27(日) 00:45:35 ID:fc5T54Ei
場所で言えばE-7だろう。マジク・リン(115番)は暗闇の中、そうアタリを付けた。目はとうに
暗闇に慣れていて、その視界の中、大体北の方に、大きな湖が見える。ただ一つの池は
D-6とD-7をまたいでいるから、その南であるこの茂みはE-7と言うことになるからだ。

目が慣れたついでに、配られたバッグの中身を確認してみた。食べ物、水、紙と鉛筆。
地図は折りたたんでローブのポケットに突っ込んである。それとマジク、オーフェン、
クリーオウ、ついでにボルカノ・ボルカンの名前を含む参加者全員の名簿、他、雑貨。

あの胸くそ悪い管理人が説明した物は一通りそろっていたが、肝心の武器、支給品が見あたらない。
明かりを点けるわけにもいかず、暗闇の中、ガサゴソと四回バッグを漁り、しまいには
中身を地面に並べて五分ほど思案したあげく、ちっぽけな一箭の割り箸が支給品なのだと
結論づけた。要するに、ハズレだ。

こうなれば頼みの綱は首にぶら下げた牙の紋章だ。他の人たちの剣や怪しげな武器が
次々取り上げられていく中で、自分と師匠のペンダントだけが見過ごされたのは運がよかった。
端から見ればどうということのないアクセサリーなので当たり前と言えば当たり前だが、
使いようによっては弾丸をも超える武器になる。
(今はとにかく、お師様と、クリーオウ、はどうしよう。合流しないと)
33割り箸の恐怖(2/3) ◆t4u50oq2Wo :2005/03/27(日) 00:46:23 ID:fc5T54Ei
わけもわからず放り込まれたサドンデスだって、自分の師匠ならばいつもの悪あがきで抜け出せる
はずだ。マジクはその点において、絶対的な信頼を寄せていた。だからまずは、オーフェンと
合流しなければならない。
(いや、やっぱりクリーオウも仲間だし、知らないところで死んでたらなんかアレだし)
考え直す。本心は彼女への恐怖心だということに、彼は幸か不幸か気づかない。

ちなみに、ここに至るまでコミクロンの名前が一度も出ていないのは二人に面識がないからである。
オーフェンから事前に説明は受けていたが、信頼するには少し材料が足りない。
そしてもう一人、彼らのメンバーであるはずの地人は、思い出す意味も必要もこれっぽっちも無かった。

とにかく、行動だ。散らかした物資をバッグに詰め込み、立ち上がろうとした、そのとき
(ん?)
彼は咄嗟に動きを止めた。北に広がる湖、そのほとりに、いつの間にか誰かが瀬を向けて立っていた。
不思議なことにその人影は、まるで地面から棒が生えたかのようなシルエットで、ただあった。

【残り117人】
34割り箸の恐怖(3/3) ◆t4u50oq2Wo :2005/03/27(日) 00:47:32 ID:fc5T54Ei
【E-7 湖から少し南の茂みの中 1日目深夜】
【マジク・リン】
[状態]:健康体
[装備品]:牙の紋章
[道具]:割り箸、その他支給品
[思考]:オーフェン及びクリーオウとの合流/人影を見極めるまで待機

【D-7 湖のほとり 同時刻】
【ブギーポップ(宮下 藤花)】
不明
35& ◆CUxWXMHqVQ :2005/03/27(日) 00:51:41 ID:iA63+AK1

     「なんだこりゃ」
   開始会場を出た平和島静雄は自分のバックに入っていたロザリオに眼をしかめる
     「・・・・・・・・趣味わりい」
   山百合会メンバーが聴くと発狂するような言葉を呟きロザリオをポケットに入れる
     (さて、どうしたもんだろうね)
   殺し合いゲームにはおよそ向かない思考のまま静雄はそのままどこかへ歩き始めた・・・・・・
   
     【残り○○人】
     【Bの4/高架下/時間(1日目・0時09分)】
     【平和島静雄(037)】
     [状態]:健康
     [装備]:山百合会のロザリオ
     [道具]:通常の初期セット
     [思考]:ふらふらと何も考えず東南に移動
36独善の天使と賢者の石(1/3) ◆NULLPOBEd. :2005/03/27(日) 01:00:22 ID:wpY66c4n
 殺し合いと言う名の試合が始まり数時間が経過した頃、小早川奈津子は一人森に潜んでいた。
 この森を少し戻ると湖があったのだが、開けた場所では危ないと思い避けたのだ。
 普段なら甲冑を背負って堂々と突き進むのだが頼りにしている甲冑は今無い。
 奈津子としては当然早く帰って、悪に正義の鉄槌を下すという使命を遂行しなければならないと考えていた。
 早く帰る為ならば――――人を殺すことも厭わない。
 悪を滅ぼす天使が愚民共の為に生贄になるなんて思考は奈津子にはない。
 その為にも先ずは武器を、と思い立ったところでまだ鞄さえ開封していないことに気がついた。
 鞄を開封して出てきたのは数日分の水と食料、後は役に立たないような品々……。
 そこに小さな装飾品を見つけた。
「こんなもので満足するあたくしじゃな――」
「ただの装飾品と一緒にされるのは不本意だ」
 奈津子の不満を込めた声を見えない誰かの声が遮った。
 声のする方向には装飾品しかなく、どうやらこの装飾品から声が出ているらしい。
 竜が人に化ける時代。何があってもおかしくない。
 納得できていないのか、何も考えていないのか何の疑問も抱かぬまま奈津子は改めて装飾品を見つめた。
 銀の鎖に繋がれた、黒く淀む球。球には十字架を作るように金の輪が交差してある。
 低く重い声を発するその装飾品は奈津子の興味を惹いた。
「をーっほほほほほ! あたくしの身体に飾られることを誇りなさい」
 自分の巨体に装飾品を着けながら、今後のことを考えていた。
「今後の事をどうする気なのだ?」
 重く低い響きのある男の声が奈津子に問い掛けた。
37独善の天使と賢者の石(2/3) ◆NULLPOBEd. :2005/03/27(日) 01:01:02 ID:wpY66c4n
 装飾品に蔵された意志は“紅世の徒”という。
 立派な神器であり、本来は契約者がいて意志の本体はその契約者の中にいるのだ。
 神器の意志としては早い内に契約者と合流しておきたい。
 しかし現在の持ち主は自我の強そうな人間であり、率直に伝えても頷いてくれるかは不明だ。
 だから可能ならば契約者と合流するような方向へ誘導しようと思っていた。
 先ほどから奈津子が目を通している参加者名簿から契約者である人間がいるのはわかっている。
 参加者名簿が「ら行」に差し掛かったとき、奈津子の手が止まった。
「悪の化身たる竜に正義の刃を――――そういうことよ、をーっほほほほほ!」
「武器を持たずに挑むのは無謀だ。そこで我に考えがある」
「をーっほほほほほ! 言ってみなさい、場合によっては参考にしてさしあげてもよくてよ」
 “王”でもある意志に対して―尤もそんなことなど現地点では知りようはないが―偉そうな態度で臨む奈津子。
 ある種、分かりやすい性格をしていると“王”を思った。
 同業者にもこういうような人物に何人か出会ったことかある。
「我の契約者も参加している。協力を申し込めば戦力になるかもしれぬ。武器を持っているかもしれぬぞ」
「をーっほほほほほ! そうね、見つけたらあたくしの忠実な奴隷として働かせるわよ!」
 会話が微妙にずれているのを意識的に無視する。
 “王”は『なんとかなるだろう』と思いはすれど会わない方がいいのかもしれぬと不安を覚えた。
 似たような台詞を言うかもしれないと想像はしたが、ここまで極端な人間も珍しい。
 そう。“天壌の劫火”と呼ばれた“王”の見た限り奈津子はただの人間である。
 今から探す契約者のような人間離れした動きはできないだろう。
 出会えるかどうかは賭けだな、と“王”は思考する。
(願わくば早めの合流をしたいところだ……)
38独善の天使と賢者の石(3/3) ◆NULLPOBEd. :2005/03/27(日) 01:01:26 ID:wpY66c4n
【残り117人】
【D-6/森の中/1日目・0:20】
【小早川奈津子】
 [状態]:捜索するシャナやアラストールの詳細を知らず。
 [装備]:コキュートス(アラストール入り。アラストールは奈津子の詳細を知らず)
 [道具]:特に無し。
 [思考]:竜堂兄弟に正義の刃を。契約者(シャナ)と合流したい。
39海沿いの紅い花(1/4):2005/03/27(日) 01:05:08 ID:lFpJP3G4
「っだあぁぁあああ!! 何だってんだちくしょうッ!!」
 木々が鬱蒼と茂る森の中。
 湿った土と落ち葉を蹴立て、背後にしつこく迫る気配を感じながら、出雲・覚は全力疾走していた。
 時おり、風を切る音と着弾音が周りで聞こえる。
 視界が悪く、障害物も多い森の中であることが幸いしてか、
追っ手の放つ銃弾はまだ一発もかすりさえしていない。
(つっても、このままじゃジリ貧だぜ……)
 こちらは武器になるようなものは持っていない。
 数分前に支給品を確かめたところ、入っていたのは『うまか棒50本セット』だった。
 今大会屈指のハズレアイテムを引き当てる自分の不運を呪う。
「俺なんか悪いことしたかぁぁぁあっ!?」
 覚の叫びが空しく森にこだました。


 ――楽しいな。楽しいな。
 鬼ごっこなんて久しぶり。
 学校を出てから、こんな風に楽しく遊んだことってなかったかもしれない。
 楽しいな。
 本当に楽しいな。
 でも、彼は足が速いな。追いつけるかな。
 ああ、そうだ。追いつく方法ならあるじゃないか。
 頭を狙って、引き金を引く。
 それだけでいい。簡単だ。簡単なのに……当たらないな。
 困ったな。この銃は扱いづらいな。
 どう見ても両手で扱う銃だし、しょうがないかな。
 僕のEマグはどこにいったんだろう。
 早く銃弾を当てて殺さないと。
 このままじゃ逃げられちゃうよ。
 困ったな。
 本当に困ったな――

40海沿いの紅い花(2/4):2005/03/27(日) 01:05:49 ID:lFpJP3G4
 覚は、前方が明るさを増してきていることに気が付いた。
(! ありゃあ、森の出口か!? まずいな……)
 森の中だからこそ、ここまで逃げてこれたのだ。
 射線を遮る障害物が無くなれば、結果はおのずと知れる。
 前方の視界が開けてきた。

 潮の匂いのする強い風が覚の身体を叩く。
 森の先は崖になっていた。その向こう、遠くに水平線が見える。
 どうやら海に出たらしい。
 即座に飛び込むことに決定。
 だが、崖下すぐは岩場になっているのが相場だ。
 できるだけ飛距離を稼ぐために、さらに加速する。が――

 その時、覚の視界の隅に新たな人物が写った。
 デイパックを背負ったまま崖に腰掛けて海を見ている、まだ幼い少女。
 このまま飛び込めば自分は逃げ切れるだろう。
 だが少女はここに残る。
 そして、すぐ背後には殺人鬼。

 考えるまでもなく、身体が動いた。

「ったく、しょうがねえなあ!!」
 上体を振って強引に90度方向転換。
 覚に気づいて、びっくりしたように振り返る少女に肉薄する。
「つかまれ、そこのロリイィィィィィッ!!!」
「きゃああああああああッ!!?」
 悲鳴を上げる少女を掻っ攫い、そして――銃声が轟いた。

41海沿いの紅い花(3/4):2005/03/27(日) 01:06:54 ID:lFpJP3G4
 ――咲いた。咲いた。紅い花。
 きれいだな。ミラにも見せてあげたいな。
 ああ、そういえばミラはどこに行ったのかな。
 森の中かな。
 きっと、鬼ごっこに夢中で置いて来ちゃったんだな。
 ごめんね、すぐ戻るから。
 彼は……、崖下に落ちちゃったのか。
 死んじゃったかな?
 それとも生きてるかな?
 確かめたいけど、ごめんね。僕はもう戻らなきゃいけないんだ。
 本当にごめんね――

 片手に銃をぶら下げたまま、アーヴィング・ナイトウォーカーは森の中へと戻っていった。


「ちょっと、しっかりしなさいよ!」
 海面に近い岩棚で、アリュセは覚の身体を揺さぶっていた。
 左腕から血が流れている。
 銃撃(アリュセは銃を知らないため、何かの攻撃としか分からなかったが)を受けた時に、
この男が自分を庇って撃たれたことは分かった。
 崖から転落した二人は、アリュセの魔法でここに不時着したのだ。
 アリュセ自身は飛行術を使ったつもりだったが、いかなる力が働いたものか、
せいぜい落下速度を殺すことしかできなかった。
「…つっ…大丈夫だってロリータ……かすっただけだ、傷口きつく縛っときゃ何とかなる。
 それが終わったら、とりあえず……」
「とりあえず?」
「……うまか棒でも、食うか」
 それだけ言って、覚は気絶した。


42海沿いの紅い花(4/4):2005/03/27(日) 01:08:41 ID:lFpJP3G4
【残り117名】

【覚とアリュセ】
【H-3/海岸沿いの崖下/1日目・00:40】

【出雲・覚】
[状態]:左腕に銃創あり/気絶
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式)/うまか棒50本セット
[思考]:現在気絶中

【アリュセ】
[状態]:万全
[装備]:不明
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:覚を介抱する
(アリュセの支給武器は他の書き手に任せます)


【H-3/海岸近くの森の中/1日目・00:40】

【アーヴィング・ナイトウォーカー】
[状態]:情緒不安定/修羅モード
[装備]:狙撃銃"鉄鋼小丸"(出典@終わりのクロニクル)
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:ミラを探さなきゃ(ミラはエントリーされていませんが、探す気でいます)



生き残りたいなら殺せ
殺したいなら生き残れ
ルールは無用
自分がルールだ
 禿頭の男から無言で渡された荷物を持って、ゲートをくぐると……
そこは雪国でも不思議な町でもなく、鬱蒼と茂る森林の中だった。
「それにしても殺し合いねぇ……そういうのは出夢くんや零崎の領分だよなぁ。ったく、なんて戯言だよ」
 誰ともなしに『ぼく』こと『いーちゃん』はつぶやくと、とりあえず支給されたアイテムを調べるべくバッグの中に手を突っ込んで
一番最初に手に触れた物をつかんだ。
 あれ?なんかこれどこかで触ったことがあるような……
「あぁ、そうか」
 これは二輪車のハンドルだ、どこかで触ったことがあると思ったのは、このハンドルが巫女子ちゃんに貰った
ベスパのハンドルと感触が似ているからだ。
「って、いや待て落ち着けぼく。こんなデイパックにベスパが入るわけ―――」
「ねぇ、誰だか知らないけれどさぁ。そろそろここから出してほしいんだけど」
 どこからか聞こえた声 ――男の子のような妙に高い声だ――に、ぼくの背筋に戦慄が走る。
 やばい、誰か居る、見つかったか?だとしたら早くここを離れなければ!やばい、殺され――
「うわっ!ちょっと手が汗でべとべとだよ!も〜汚いなぁ」
 また声、しかし今度はその間の抜けた声がどこから聞こえてきたのかすぐに分かりホッとする。
いや、本当にそうならホッとするどころではない。なぜなら声が聞こえてきたのは――
「おーい、聞いてる?いつまでぼくのハンドルを握ってるわけ?」
 ――デイパックの中からだったからだ。
 また、声が聞こえた。ぼくは何かの罠ではないかと疑ったが、何時までもこうしている訳にもいかない。
それに、万が一このゲームに乗った奴がこの謎の声を聞きつけたらたまったものではない。
(もしかしたらそういうハズレアイテムかもしれない)
ぼくは強くハンドルを握りなおすと、満を辞して、握ったハンドルを、引き抜いた。
 ずるり
と、ありえないほどに大口を開けたデイパックから飛び出してきたものは、近くの地面の上にガシャンと着地した。
 それは、しっかりとセンタースタンドで地面に立つ、少し古ぼけた二輪車だった。
「ふぅ、やっと出られた。はじめまして、ぼくはモトラドのエルメス。お兄さんは?」
 ぼくの思考能力はしばらくの間フリーズした。


 再起動。

「あぁ、僕の名前?それは秘密と言う奴だよ、エルメス君。
 ぼくは今まで他人に本名を教えたことが一度しかないのを誇りに思っているからね」
 よし、一度再起動したおかげで冷静になれた。
やはり戯言使いであるところのぼくとしては、いつでも余裕を持っていたいのだ。
「ふぅん、まぁいいや。ところでお兄さんいつまでここに居るつもり?誰か来て殺されても知らないよ」
あまり興味がなさそうに言うエルメス君。どうやら細かい事は気にしない主義のようだ。
「それもそうだね、こんなところでグズグズしているわけにもいかないし。とりあえずここから離れておこうか」
 ぼくは二輪車がしゃべるという異常事態は置いといて、デイパックの中からコンパスと地図を取り出すとそれぞれを眺める。
「とりあえず南にいこう。南の浜に出て西回りに歩いていけばとりあえず町にいける」
そこで適当に寝床でも探すことにしよう。そう決めて、うい。というエルメス君の返事を聞くと
ぼくはエルメス君を押して南方向に歩を進める。が、
ぐにゃ
「うっ……」
 何かを踏んでぼくは慌ててそこから足をどける。
その何かを見て、ぼくは驚愕に目を見開いた。え?、何でぼくはこれ――いや、彼女に気づかなかったのだろう。
その彼女は、
「いたたたた……あれ…ここは…………ッ!」
ぼくを見て、ぼくと同じように目を見開く。
 ぼくはつぶやく。
 彼女は――
「メイドさん?」
【残り117人】

【F-5/森の中/一日目・00:10】

【いーちゃん】
 [状態]:健康/メイドさんに動揺中
 [装備]:エルメス/コンパス
 [道具]:初期配布アイテム一式
 [思考]:町に行く/???(メイドさん)に遭遇

【???(メイドさん)】
 不明
47オニと言われた女 1/5:2005/03/27(日) 01:17:15 ID:ujntw+hY
参ったな…と、心底オーフェンは思った。
こんな殺し合いの場に急に放り出されても、と呆れてしまう。

それと同時に、怒りも沸くのだが。

「まぁしかし…袋の中身とかも見ないとな」

彼はそう呟くと、袋をごそごそとまさぐる。
出てきたものは………。

「ダイヤの指輪………無理、俺もう無理」

ダイヤの指輪なんざ武器としての転用は不可能である。
それにこの状況で買い物が出来るわけではない。宝の持ち腐れだ。
そこまで考えると、オーフェンは一気に自信をなくして項垂れた。
どこまで続くのか分からない石段の一段目に、デイバッグを置いて。



そして一方……。
かつてある若い男に、そしてあの旅をする少女に自分を「師匠」と呼ばせた女性。
その彼女が静かに歩いていた。
彼女に配られたアイテムはパチンコ。残念だが弾は無かった。
「弾は小石でも良いでしょう……ですが、些か不安ですね」

落ち着いた物腰、
だがまっすぐに光る瞳。
そんな整った印象を持つ彼女は、何をするとも無く歩いていた。
そして長く続く石段を見つけた。
目に付いたのも何かの縁……それに、人の気配も感じる。
まずはそこに行くかと、歩みを速めた。
48オニと言われた女 2/5 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 01:18:18 ID:ujntw+hY
「……こんばんは」
「……ん?」

それから、数分にも満たない頃だった。
オーフェンと女性は、出会った。

「何者ですか、答えなさい」
「まずはアンタの名前が聞きたい」
「私のことはどうでも良いです。答えなさい、名前を」
「………オーフェン。で、アンタは」
「どうでも良いのです、聞こえないのですか?…オーフェン」

オーフェンは心底不愉快になった。
異常なほど押しの強い女性と、現状では使えないアイテム降臨の2連コンボ。

最悪だった。

だが打ちひしがれている場合ではない、これはオーフェンにとってはチャンスなのだ。
早速オーフェンは彼女に話を持ちかけた。

「おい、アンタ…俺と一緒に行動する気はないか?」

しばらく女性は黙っていた。
黙って、見透かすような瞳でこちらを見ている。
そして女性は、口を開いた。

「あなたがこのゲームからの脱出を考えているのであれば、仲間にしてあげても良いです」

オーフェンはご機嫌になった。
天にも昇る心地だった。
それを女性は、静かに見ている。
49オニと言われた女 3/5 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 01:19:20 ID:ujntw+hY
しかし、些か気になるフレーズがあった。
訂正しようとオーフェンはまた話しかける。

「いや、だからアンタが俺の仲間に…」
「あなたが私の仲間になるのではないのですか?」
「俺がなるんじゃない、アンタが」
「私の仲間になって脱出を考えるのでは?」
「…………あのな…だから俺がしたい事の為にアンタが」
「あなたが仲間ではないのですか?」

主導権争いを少々続けた所で、オーフェンは折れた。

「分かったよ、じゃあ俺がアンタの仲間になる」
「わかりました」

そしてオーフェンが指輪を片付けようとしたとき、
女性の目は、光った。

「待ちなさい」
「……今度は何だ?」
「その指輪、私が預かります」
「………はぁ?」
「私が預かると言っているのです」

硬直するオーフェン。
確かに現状では役に立たないが、出会い頭の取引道具などにも使えそうだ。
それに金額にすればかなりのものだ、そうそう手放したくは無い。
50オニと言われた女 4/5 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 01:20:43 ID:ujntw+hY

「これは俺に配られたんだ、俺が持つ権利がある」
「預かります、渡しなさい」
「いや、だからこれは俺に」
「渡しなさい」
「なぁ、アンタ……"オニ"だって言われた事あるだろ」
「渡しなさい」

オーフェンはまた折れた。
未練を引きずりながら女性に指輪を渡す。
女性がそれを受け取り、袋に入れるとある方角を指差した。

「まずはこの石段を登りましょう」
「なんでだ?」
「勘です」
「嫌だといったら?」
「そんな答えに興味はありません、登りましょう」
「………わかったわかった!!」

このゲーム、人災もアリかよ……と、オーフェンはため息をついた。
確かに災いだ、彼にとっては。

そして2人は、石段を登りだした。
51オニと言われた女 5/5 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 01:22:43 ID:ujntw+hY


【C-5/長い石段/1日目・0:23】
『逆関白(キノの師匠 (若いころver)/オーフェン』

 【キノの師匠 (若いころver)(020)】
 [状態]:正常
 [装備]:パチンコ
 [道具]:デイバッグ(至急品入り) ダイヤの指輪
 [思考]:長い石段を登る

 【オーフェン(111)】
 [状態]:正常
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(至急品入り)
 [思考]:女性(キノの師匠)についていく

【残り117人】
52戦略的撤退(1/2):2005/03/27(日) 01:26:49 ID:SPYqpHN5
ゲームが開始してから間もなく、蒼い殺戮者(ブルー・ブレイカー、025番) は二つの問題を抱えることになった。

1つは、遮蔽装置(ステルス・コート)が全く作動しないこと事だった。
遮蔽装置の方は、機能を凍結させられているのか、こちらからの信号に対して何の反応も示さない。
使えない物ならば仕方が無いと、遮蔽装置については諦めたが、もう片方の問題は思いの外深刻であった。
ある一定以上の高度になると、それ以上高度を上げる事が出来ないのだ。
最初は複合センサのエラーかと思った。しかし出力をどれだけ上げても、高度は全く変化しないのだ。
イメージとしては、自身の位置だけ固定させられて、周りの景色だけが通り過ぎてゆく感覚といえば分かるだろうか。
ただ問題は、それがアンカーでワイヤー等の物理的な物でもなく、こちらの推力不足でもなく、ましてや火乃香の
ような『気』の力とも異なる全く別の力によってそれが成されているという事だった。

上昇と下降を繰り返すこと数回、彼はここから離脱を不可能と結論付けて、支給されたバッグの中身を
確かめる事にした。
最初に出てきたのは、簡素な地図だった。
地図に書かれたおおよその地形や建築物の配置を記録すると、すぐに地図をしまって次のアイテムを取り出す。
次に出てきた物は、彼に支給された武器──、緋色に染めあげられた太い木刀であった。
しかし、木刀という物が無い世界に住み蒼い殺戮者には、それは単なる木の棒にしか見えなかった。
木刀の柄を握って、軽く2、3回振ってみる。
ただの木の棒にしてはそれは少々重い。長さは火乃香の持つ刀と同じぐらい、だが刃の大きさはあの刀よりも
2倍は大きい。
内臓武器の電磁衝撃ロッドさえも取り上げられてる今、こんな木の棒でも武器となるならばそれはそれで
有り難かった。

そして他のアイテムを取り出そうとした瞬間、銃声とともに来た衝撃で彼はわずかに姿勢を崩した。
銃声の有った方へ視線を向けると同時に、セルフメンテナンスを開始する。
視線の先には、拳銃を構えた見知らぬ人間が油断なくこちらに照準を合わせている姿が見えた。
先ほどの銃弾は飛行ユニットの翼に命中したようだが、どうやらさしたる問題はなさそうだった。

53戦略的撤退(2/2):2005/03/27(日) 01:28:07 ID:SPYqpHN5
現在の状況について、蒼い殺戮者は冷静に考える。
相手は銃器を所持しており、こちらは近接攻撃用の木の棒が一本のみ。
”拳銃弾程度で自分の積層装甲を貫通できるとは思っていないが、可動部に命中すると後々厄介な事になる”
そう判断した彼はすぐさまスラスタを稼動させ、木刀を手に早々とこの場から離脱した。



【蒼い殺戮者(025)@ザ・サード】
飛行ユニットの翼に銃弾痕有り、ただし飛行に関しては問題無し
所持アイテム:地図のみ(記録装置にデータ保存)、残りはその場に置いたまま
装備アイテム:梳牙(くしけずるきば)
現在地:F-2より高速移動中
行動指針:未定

【銃を撃った人間については次の書き手におまかせ】
【残り117人】
54理路乱歩 ◆0UImLUsV8k :2005/03/27(日) 01:32:02 ID:hK0yVnF/
ゴク…ゴクゴク…
ペットボトルに入った水を嚥下する。
このようなサバイバル状況の下、水は重要な物であるかもしれない。
しかし、ここには自分の命を狙う者が100人以上いるのだ。
そんななか、1kgもあるペットボトルを2本も持って行動するのは致命的だろう。
「プハァーッ…とはいえ、一気に1リットルも飲み干すのはちと至難の業だったな」
宮野秀策は空になったペットボトルを放りながら独り言をつぶやいた。
胃袋が1リットルの水でたぷたぷしているのが自分でも分かる。
「フゥ…とりあえずは茉衣子くんを探すことを第一目的として動くとしようか」
また独りでつぶやき、歩き始めた。

「しかし、このような状況ならてっきり銃が入っているものだと思っていたのだがな」
男達から受け取った黒いデイパックに入っていたのは
食料、水、懐中電灯、地図、鉛筆と紙、方位磁石、時計、参加者名簿、
…そして通常の倍はあろうかという長さを持った両刃の鋏であった。
「こんなもの、危なっかしくて紙を切るのにも使えやせんだろうに…どのような奇人が作ったのだろうな」
独りでつぶやきながら、しかし決して足を止めずに宮野は進み続ける。

少しはなれたところから奇妙な笑い声が聞こえてきたとしても、気にもせずに、歩き続ける。

 【D-6/森の中/1日目・0:20】
 【宮野秀策】
 [状態]:水腹。激しい運動をすると気持ち悪くなることだろう。
 [装備]:特に無し
 [道具]:デイバッグ(大鋏『自殺志願』はしまいっぱなし。水は一本消費した)
 [思考]:一刻も早く光明寺茉衣子と合流を果たしたい。
55堕ちた黒衣1/4 ◆Ui8SfUmIUc :2005/03/27(日) 01:45:13 ID:m1nvAxCy
「さて……」
森を直ぐ抜けた所には何故か海があった。
しかし、その海は流れが早すぎ泳いで渡るべくも無い。それに魔法等世界に干渉する力を極めし者なら、瞬時に気づくであろう。
この海が真実、海で無いという事に。
男は海岸の岩陰に腰を降ろした。
特にする事も無く、取り合えず渡された袋の中身を確認する事にした。
「食料が無くなるが早いか……俺が殺されるが早いか……」
中には彼にとって興味の沸く品は無く、食料と素朴な意匠の冠のみ。
彼は微かに微笑み。
直ぐに微笑む事を飽いた様に、蝋細工の様な顔から感情を消した。
「……下らん。玉座等……」
陛下は既に死なれた。
支配の王錫はカシューに奪われ、信頼できる部下を失った。
傍らに立ち、意味の無い生を生かしてくれた、グローダーには逃げられたと思われてしかたない。
「元より器では無かった……」
あの若い戦士は既に死んだ、あの戦士と戦えるというのであれば、少しは興味が出たというのに。
波が静かに砂浜を打った。
足音は波にかき消されて消えた。
56堕ちた黒衣2/4 ◆Ui8SfUmIUc :2005/03/27(日) 01:45:56 ID:m1nvAxCy
「あの、大丈夫ですか……?」
「……ん?」
男は声に反応し、顔をあげた。
背後、岩の横には一人の少女が立っている。
「何の用だ」
感情の籠もらぬ声、顔。生気が無い、とでも言うのか。
少女は場に似合わぬ心配気な顔で、男の顔を覗き込む様にして見つめ。
「お身体悪いのでしたら……」
「いや、そう言う訳では無い。」
そう、少女の言葉を遮って、再び波打ち際を見つめた。
引いては寄せる、暗黒の島を思い出させる暗い海。
少女は何故かその場を離れず、男の長い黒髪を見つめていた。
「まだ用があるのか?」
「あ、いえ……」
「無いなら立ち去った方が良い。誰かに狙われるからな、こんな開けた場所は……それに俺の様な男、信頼するな」
一瞬、不安とも、悲しみとも取れる感情が浮かんで消えた。波の様に。
少女は、フと微笑むと。
男の横に座した。
横目で少女を見ると、少女はまるで大地母神の司祭の如く、男に微笑みを向けた。
「……なんのつもりだ」
冷たい突き放す言葉、けれど少女は怯むことなく。
「お邪魔でしたら、立ち去ります。私、お邪魔ですか?」
57堕ちた黒衣3/4 ◆Ui8SfUmIUc :2005/03/27(日) 01:46:58 ID:m1nvAxCy
「……いや。それより俺を信頼するとでも言うのか?」
男の言葉に少女は首を振り、男の手に微かに触れる。
冷たい男の手に、優しい暖かさが染み込んでいく。
「知っている人に似ていたんです」
「俺が、か?」
「はい」小さく頷き「誰よりも真っ直ぐで、責任感が強い。けど、何処かで他人と壁を作りたがる」
少女は胸に手を当てて、深緑の服の中に眠るロザリオに触れた。
「いえ。朱に交われば紅くなる、それが出来ないだけの不器用な人」
「……知った口だな。まるで自分の事を話してる様だな」
男は嫌みを言った、少女を突き放す為に。
自分の周りに居る者は傷つく、殺される、死ぬ。ならば誰も、誰も居ない方が良い。
しかし
「そうですね。そうかもしれないです、きっと。」
少女はクスッと口に手を当て、笑むと。
「私も昔は他人とは壁を作っていて、それを自分では気付いて無くて……でも。友達のおかげで」
「変わった、とでも言うのか?」
「はい」
少女の何処までも無垢な笑顔。
男は顔色を変えず。
「名をなんと言う?」
58堕ちた黒衣4/4 ◆Ui8SfUmIUc :2005/03/27(日) 01:47:38 ID:m1nvAxCy
「藤堂志摩子」
男はなんとはなしに、その名を刻んだ。
「シマコか、良い名だ……」
「ありがとうございます、で、貴方の名前は?」
「アシュラム……これでも、騎士だ……」
騎士、という名を口にした瞬間。アシュラムの顔に苦悶が浮かんだが、それも直ぐ消えた。
ここで死ぬなら過去等……
「シマコ、なんでも良い。話してくれ」
「話ですか?」
志摩子は不思議そうに首を傾げ、アシュラムの横顔をみる。
「ああ、お前の友人の話を……どうしようも無く、暇、だからな」
生気のない顔には変わりないが
「それにシマコを変えたモノ、それが知りたい……」
まだ、まだ立てるかも知れない。
志摩子を変えた何か、それを知ればもう一度立てるかも知れない。アシュラムはそう考え、暗黒の島を連想する海をみつめ続けた。
志摩子は微笑んだ。この人はまだ救える、と。
「じゃあ、私のお姉様の話を……」
59堕ちた黒衣4/4 ◆Ui8SfUmIUc :2005/03/27(日) 01:50:42 ID:m1nvAxCy
【アシュラム】
[状態]健康、精神衰弱
[装備]無し
[道具]冠
[思考]
1>志摩子の話を聞く
2>死を待つ


【藤堂志摩子】
[状態]健康
[装備][道具]不明
[思考]アシュラムと話す

場所
H-8 海岸
60それでも貴女が来るのなら 1/3 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 02:02:36 ID:ujntw+hY
シズは墓を作り終わると、海を見ていた。
暗く静かな海。かつて自分はその上で戦ったことがある。

「本当に済まない…」

そしてもう一度墓を見て、彼は呟いた。


数分前の話。
シズが海沿いにゆっくり歩いていると、突然ある事が起こった。
そう、それは突然の襲撃者の出現。
シズには知る由も無いが、その者の名は「島津 由乃」と言った。

「うわぁあぁぁぁあぁぁぁああぁぁ!!」

涙を浮かべ、大声を出しながら…恐らくは支給品であろう斧を振り回した。
だがその動きは甘く稚拙だ。いとも簡単に避けられる。

「君、何があったかは知らないが…止めないか」

シズが話しかける。
だが少女は答えない。恐怖で心が埋まり、言葉が聞こえない様だ。
距離を置き、慌てず冷静に自分の支給品を確認した。
中身はレイピアだった。護身にするには十分過ぎる。
そしてそれを取り出した瞬間、シズの視点は急に上へと移った。

気が付けば、少女が馬乗りになっている。
そして斧を上段に構えている。振り下ろすつもりだ。
何故相手が肉薄したことに気づかなかったのだろうか。武器が出たことによる安心感か。
そして、少女が斧を振り下ろさんとした時……。
61それでも貴女が来るのなら 2/3 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 02:03:20 ID:ujntw+hY




シズは、レイピアを少女の喉に突き立てていた。
喉から細身の刃を生やした少女は、そのまま静かに亡くなった。




それから数分後…つまり、今。

シズはあの少女のデイバッグ諸々も回収し、一人東へ歩くことにした。
食料などもそうだが、斧も使いようによれば剣にも勝る部分もある。
故に少女の支給品も有難く頂戴することにしたのだ。

「……いつからこんな計算高い人間になったんだろうな、俺は」

嫌な癖だ、と自嘲する。
だがそんな事は言ってられない。

まずは、自分の身を守らねば。
62それでも貴女が来るのなら 3/3 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 02:04:26 ID:ujntw+hY


【A-1/砂浜/1日目・0:15】

 【シズ】
 [状態]:正常
 [装備]:レイピア
 [道具]:2人分のデイバッグ(至急品入り) 斧
 [思考]:東へ向かう 護身


【島津由乃 死亡】
【残り116人】

自分の命を狙うものには説得を試みますが、
通じなかった場合は相手を躊躇無く殺すつもりです。
63茉衣子とへーちょその1:2005/03/27(日) 02:06:40 ID:iA63+AK1

     「・・・・・・・・おい、そこのだれか。あんただ、そうあんただよ」

   ・・・・・・・・・・・・いよいよわたくしも頭がおかしくなってきたのでしょうか?
   周りを見渡しても誰も居ないのに声が聞こえてくるのです。
   確かに衝撃でした。わたくしとて、この年にしていくつもの修羅場を潜り抜けてきました。
   それでも人がこれほどあまりにも簡単に死ぬとは・・・・・・・・
   ここから抜け出したい、やめてしまいたい・・・・・・・そんな思いがあることは否定しませんとも
   
   しかし!しかしです!
   何もない場所から誰の声とも知れないおじさま声が聞こえるほどわたくしは心は弱くありません!
   そう、
   声が、
   わたくしが、
   何もないところからっ!!
     
     「・・・・・・・どうしたんだ嬢ちゃん、突然叫んで?」
     「・・・・・・・・・・はっ」
   いけません、わたくしとしたことがはしたない・・・・・・まさか声に出して叫んでいたなんて
   あれ?しかし・・・・・・・
     「貴方はどうしてわたくしが女性だとお思いになったんですか?」
     「いやどうやらあんたのすぐ近くに居るみたいなんだ。だから声でわかる。真っ暗で周りのことまではわからないがな。」 
   そう言われ改めてあたりを見回してもだれも・・・・・・・
     「真っ暗・・・・・・・?」
   もしやと思い、支給された簡素なバッグの紐を解き中を見回します
   ええと・・・・・・水とよく分からない缶詰と、その他いろいろと、あとは、・・・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・・ラジオ?
     「ああ、嬢ちゃん。それだ、それが俺だ。」
64茉衣子とへーちょその2:2005/03/27(日) 02:09:09 ID:iA63+AK1

   ラジオが・・・・・・・・わたくしに話しかけています・・・・・・・
   でもまあ、最近では一般的なことでしょう。ラジオが話しかけてくるなんて。
   きっと・・・・・・きっと
   そう、
   声が、
   わたくしが、
   古ぼけたラジオからっ!!
   
      「・・・・・・・・・・・・・・・ああっ!!」
      「おいっ、嬢ちゃん!!」

   ・・・・・・・・・・
   どこか釈然としないままラジオのおじさまの話に耳を傾けます
   かつて遠い昔にあった戦争(世界大戦ではないようですが)で戦死、ラジオに憑依。
 
   あるのですね)。そして袋詰めにされて今に至ると・・・・・・・
      「にわかに信じがたいですね」
      「即答だな」
   ともかくです。よく考えればわたくしが関わってきた事件に比べればラジオが喋るなんておかしくもないこと
   ここは彼の言うことを信じるしかないようです
65茉衣子とへーちょその3:2005/03/27(日) 02:10:47 ID:iA63+AK1

      「ということはお仲間もこの街にいらっしゃるということですか?」
      「おそらくな。」
   ・・・・・・・・ハービーさん、おそらくこのハーヴェイという方でしょうとキーリさん。名簿にも載っておりますね。
      「・・・・・・・・・・・・・」
      「気を落とすな。キーリはともかく、もう一人の奴は必ず役に立つ。この二人には会っておいて欲しい。」
   確かに。一人で出歩くのは確かに危険の一言につきます。
   少し話した程度ですが、このラジオさん(仮)は信頼に当たる方のようですからお仲間のお二人も信頼の置ける方なのでしょう
   それに一応、あくまで一応ですが室長とも合流すべきでしょうね。
   彼ほど下劣な人間をわたくしは知りませんが、その実力が確かなのは言うまでもありません
   な、何を誤解していられるのですか!?
   わたくしが彼にそれ以上の気持ちを持っているわけがございません!
   そう!
   あんなっ!
   珍妙奇天烈なっ・・・・・・・!

      「・・・・・・・・・・・・・・・・ああっ!!」
      「いや・・・・・おれは何も言ってないぞ」 
      「・・・・・お気になさらずに」
   ともかく、行動の指針が決まりました。
   ハーヴェイさん、キーリさん、そして室長と合流すること。
   しかし、わたくしの武器はこれになるのでしょうか。喋る以外は何の役にも・・・・・・・・
66茉衣子とへーちょその4:2005/03/27(日) 02:12:30 ID:iA63+AK1

   ともかく議論を続けましょう 
      「・・・・・・・・・ところであんたの知人はどんなやつなんだ」
      
      「地上最低に低俗な男です」
      
      「そ、そうか・・・・・・・」
   当然のように答えさせていただきます。もともと答えなど一つなわけですし
   ・・・・・・・・・室長のことは、まあ生きてるでしょうあの人は。
   あの人が死んでいる姿なんて、見たくもございません
   それより気をつけなければ・・・・・・・周りにどんな方が、

      「・・・・・・・・まあ、それはともかくだ」
      「何でしょう?」
      「あんたの名前、教えてくれないか?」


     
   【残り116人】
   【Dの1/公民館/時間(1日目・1時25分)】
   【光明寺茉衣子】
   [状態]:健康
   [装備]:ラジオの兵長
   [道具]:通常の初期セット
   [思考]:ハーヴェイ、キーリ、宮野を探し移動
67英雄と殺人鬼 1/4   ◆Sf10UnKI5A :2005/03/27(日) 02:17:42 ID:LIVwOHKC
林の中、一本の大木の根元に腰を下ろしている男がいる。
独逸軍G機関空軍部所属、へラード・シュバイツァー中尉。
大柄な体に黒の軍服を着込んでいる彼には、常人と違う箇所がある。
右腕が義腕、それも大きく無骨な鋼鉄製だった。
腕というよりは、『砲』と呼ぶ方が適切だ。
二の腕に備え付けられた戦車の砲塔のような射出口には、
金属製の杖が装填されている。
彼の特技は、空間を杖で打ち、その空間を切り取る『結界術』。
その技から、彼は『音速裁断師』と仇名されていた。
だが、
……無理だな、これは。
一流の軍人であると同時に戦士である彼は、自ら異変に気付いていた。
結界術、そして独逸では自由に使っていた『言実詞』が使えない、という事実に。
……あの奇妙な術が存在するのならば、我らの力を封じるのも簡単なことか。
「……下らん」
殺し合いなど、誰が好き好んでやるものか。
自分は軍人であると同時に『騎師(カバリエ)』だ。
先ほど集められた人間の中には、多くの女子供の姿が見られた。
……理由も無く、殺すことなど出来るわけがない。
戦いを嫌っているわけではない。一方的な殺戮を認められぬだけだ。
名簿を眺めていて、一人だけ良く知る名があった。
『ダウゲ・ベルガー』
……あいつはどうしているのだろうか。
考える。
しかし突然、思考を中断する声がかけられた。

「そこのオッサン。ちょっと聞きてえんだけど」
68英雄と殺人鬼 2/4  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/27(日) 02:18:47 ID:LIVwOHKC
――何ッ!?
わずか10メートルほどの距離に、一人の少年がいた。
……何故、気付かなかった?
草木が茂るこの場所で、完璧に足音を消すことなど不可能。
なのに何故、少年に気付くことが出来なかったのか。
シュバイツァーはわずかに慌てて――しかしそれを表に出す事無く――立ち上がる。
「ここは一体どこだ? つーか一体何なんだ? 
気持ちよく寝てたっつーのに、目が覚めたら『殺し合いをしてもらいます』だぜ?
全く、――傑作だよなあ」
話しつつ、ゆっくりと近寄ってくる。
少年の顔には刺青があった。顔の半分近くにかかった、大きな刺青が。
「……それ以上近づくな」
シュバイツァーは警告の声を放つ。
「さっきの質問には俺は答えられん。……用が済んだなら、失せろ」
「おいおいおいおいつれねーなあ。
わけもわからずこんな場所に連れてこられた、いわば仲間じゃねーか」
少年の歩みは止まらない。
「……近寄るなら、命の保証はしない。早く失せろ」
シュバイツァーは義腕を少年へと向け、構えた。
少年が立ち止まる。
「…………オッサンさあ、『危ない物は人に向けちゃいけない』って習ってねーのかよ」
そう言うと少年は右手を背中へと回し、――戻した時にはその手に出刃包丁が握られていた。
「ま、俺も習ってねーけどさ」
言葉が終わる前に、少年――零崎人識は、全力で駆け出していた。
――武器を向けてきた以上は、敵として扱わねばなるまい!
常人とは比べ物にならない加速で接近する人識に対し、
シュバイツァーは冷静に右腕、――”英雄(デア・ヘルト)“を発動させた。
《英雄は敵に容赦をしない》
世界を変革する音無き言葉が描かれる。
その威力は最大出力の1%にも満たないが、
――この距離でかわせる者は存在しない!
69英雄と殺人鬼 3/4  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/27(日) 02:20:17 ID:LIVwOHKC
既に3メートルほどまでに接近している人識に向けて、
空間を断ち切る結界を一瞬で構成する。が、

「おっと危ねえ」

全力で一直線に突っ込んできた人識が、ほぼ真上に跳躍した。
慣性の法則を八割がた無視したその動きは、人識の体を上へと高く運ぶ。
「なっ!?」
歴戦の勇士であるシュバイツァーですら、その動きに驚き声を上げた。
“英雄”発動後のわずかな硬直時間。
殺人鬼にとって、そのわずかな時間は永遠に等しくなる。
わずかに残った慣性だけで、人識は3メートルの距離を詰め――

「ぐうっ!?」

落下速度を乗せた出刃包丁を、シュバイツァーの太い首に突き刺した。
人識は素早く包丁を抜き、距離をとる。
「悪いなオッサン。つい殺しちまった」
何事も無かったかのように、人識は歩き出す。一言だけを言い残して。

「ま、軍人だろうと勝てねえよ。――殺人鬼にはな」


【残り115人】
70英雄と殺人鬼 4/4  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/27(日) 02:21:09 ID:LIVwOHKC
【G−3/林の中/00:25】

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:あてもなく移動。人と遭遇したら殺す。

【へラード・シュバイツァー(079) 死亡】

※シュバイツァーのデイバックは放置されています。
 支給武器も手付かずです。中身は次の人におまかせ。
71茉衣子とへーちょその1(修正版):2005/03/27(日) 02:32:42 ID:iA63+AK1
 「・・・・・・・・おい、そこのだれか。あんただ、そうあんただよ」

・・・・・・・・・・・・いよいよわたくしも頭がおかしくなってきたのでしょうか?
周りを見渡しても誰も居ないのに声が聞こえてくるのです。
確かに衝撃でした。わたくしとて、この年にしていくつもの修羅場を潜り抜けてきました。
それでも人がこれほどあまりにも簡単に死ぬとは・・・・・・・・
本当はここから抜け出したい、やめてしまいたい・・・・・・・そんな思いがあることは否定しませんとも
   
しかし!しかしです!
何もない場所から誰の声とも知れないおじさま声が聞こえるほどわたくしの心は弱くありません!
そう、
   声が、
      わたくしが、
   
   何もないところからっ!!
     
 「・・・・・・・どうしたんだ嬢ちゃん、突然叫んで?」
 「・・・・・・・・・・はっ」
いけません、わたくしとしたことがはしたない・・・・・・まさか声に出して叫んでいたなんて
あれ?しかし・・・・・・・
 「貴方はどうしてわたくしが女性だとお思いになったんですか?」
 「いやどうやらあんたのすぐ近くに居るみたいなんだ。だから声でわかる。真っ暗で周りのことまではわからないがな。」 
そう言われ改めてあたりを見回してもだれも・・・・・・・
 「真っ暗・・・・・・・?」
もしやと思い、支給された簡素なバッグの紐を解き中を見回します
ええと・・・・・・水とよく分からない缶詰と、その他いろいろと、あとは、・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・ラジオ?
 「ああ、嬢ちゃん。それだ、それが俺だ。」  
72茉衣子とへーちょその2(修正版):2005/03/27(日) 02:37:38 ID:iA63+AK1
・・・・・・・・・・
ラジオが・・・・・・・・わたくしに話しかけています・・・・・・・
でもまあ、最近では一般的なことでしょう。ラジオが話しかけてくるなんて。
きっと・・・・・・きっと
そう、
   声が、
      わたくしが、
 
 古ぼけたラジオからっ!!
 
「・・・・・・・・・・・・・・・ああっ!!」
「おいっ、嬢ちゃん!!」

大変失礼いたしました
しかしどこか釈然としないままラジオのおじさまの話に耳を傾けます
・・・彼のお話によりますとかつて遠い昔にあった戦争(世界大戦ではないようですが)で戦死、それを機会にラジオに憑依なさったそうな
それから、あー、まあいろいろありまして、今のお仲間方と旅をしている途中に突然襲われ昏睡(霊でも昏睡することが 
あるのですね)。そして袋詰めにされて今に至ると・・・・・・・
 「にわかに信じがたいですね」
 「即答だな」
ともかくです。よく考えればわたくしが関わってきた事件に比べればラジオが喋るなんておかしくもないこと
どうもここは彼の言うことを信じるしかないようですね
      
 「ということはお仲間もこの街にいらっしゃるということですか?」
 「おそらくな。」
・・・・・・・・ハービーさん、(おそらくこのハーヴェイという方でしょう)とキーリさん。名簿にも載っておりますね。
73茉衣子とへーちょその3(修正版):2005/03/27(日) 02:44:26 ID:iA63+AK1
 「・・・・・・・・・・・・・」
 「気を落とすな。キーリはともかく、もう一人の奴は必ず役に立つ。この二人には会っておいて欲しい。」
確かに。一人で出歩くのは確かに危険の一言につきます。
少し話した程度ですが、このラジオさん(仮)は信頼に当たる方のようですからお仲間のお二人も信頼の置ける方なのでしょう
それに一応、あくまで一応ですが室長とも合流すべきでしょうね。
彼ほど下劣な人間をわたくしは知りませんが、その実力が確かなのは言うまでもありません
な、何を誤解していられるのですか!?
わたくしが彼にそれ以上の気持ちを持っているわけがございません!

あんなっ!
珍妙奇天烈なっ・・・・・・・!

 「・・・・・・・・・・・・・・・・ああっ!!」
 「いや・・・・・おれは何も言ってないぞ」  
 「・・・・・どうかお気になさらずに」
ともかく、行動の指針が決まりました。
ハーヴェイさん、キーリさん、そして室長と合流すること。
しかし、わたくしの武器はこれになるのでしょうか。喋る以外は何の役にも・・・・・・・・
 「どうした?」    
・・・・・・・ともかく議論を続けましょう   
 「・・・・・・・・・ところであんたの知人はどんなやつなんだ」
      
      「地上最低に低俗な男です」
      
 「そ、そうか・・・・・・・」
当然、こう答えさせていただきます。もともと答えなど一つなわけですし
・・・・・・・・・室長のことは、まあ生きてるでしょうあの人は。
・・・・・・何よりあの人が死んでいる姿なんて、見たくもございません
それより気をつけなければ・・・・・・・周りにどんな方が、
74茉衣子とへーちょその4(修正版):2005/03/27(日) 02:46:16 ID:iA63+AK1
 「・・・・・・・・まあ、それはともかくだ」
 「何でしょう?」
 「あんたの名前、教えてくれないか?」
 
  
   【残り116人】
   【Dの1/公民館/時間(1日目・1時25分)】
   【光明寺茉衣子】
   [状態]:健康
   [装備]:ラジオの兵長
   [道具]:通常の初期セット
   [思考]:ハーヴェイ、キーリ、宮野を探し移動
75犬と煙草1 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/27(日) 03:01:10 ID:c3dQFznP
上空を見上げれば黒ずんだ雲が多く目に付く。
 暗幕のような夜空をくり抜く月はない。
 雲の隙間には疎らに星が見えなくもないが、照明の役割りを果たすほどではない。
 なんとも寂しい夜空だが、殺し合いの舞台としては相応しいのかもしれなかった。

「つってもなー。どうすっかな、マジで。カプセルどころか煙草もねえし。サービスが足り
 てねえぜ、まったく」

 甲斐氷太は毒づきながら、空から地上へ視界を戻した。
 癖の強い黒髪。半眼の瞳。細身の鍛えられた体。その上には鋲や鎖のついた、DDのシンボ
ルであるた皮ジャンをまとっている。いつもより気力が萎えてはいるが、それでも隠しようの
ない存在感がある男だった。

 現在、甲斐がいるのは小さな民家の前庭だ。
 かすれた赤色の屋根。くすんだ色の壁。割れた窓ガラス。ぼうぼうに荒れ果てた草木。
 十中八九空き家である。
 荷物を受け取り門をくぐるとこの家の前庭に放り出されたのだ。
 すぐ中に入ってもよかったのだが一応家の周りを一周して近辺の様子を掴んでおくことにした。
 ほとんど思いつきの行動だったし、胸ポケットに煙草さえあればさっさと中に入って一服して
いたことだろう。しかし、ないのだからしょうがない。

 右手から反時計周りに一周。
 中から死角になりそうな場所、人が潜めそうな場所を中心に記憶し、5分で作業を終える。
 辺りにはぽつりぽつりと似たような家が建っていた。元々は住宅街だったのだろうか。
 人気がなく、寂れ果てたその姿はさながらゴーストタウンのようだ。

 家と家の間にはそれなりの距離があるし、誰かがいきなり襲い掛かってくることはないだろう。
 そう判断し、中に入ろうと扉に手をかけたその時。
 甲斐は気づいた。   
76犬と煙草2 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/27(日) 03:01:55 ID:c3dQFznP
 玄関正面。
 点滅を繰り返す街灯の下に、見慣れた赤い機械がある。
 煙草の自動販売機だ。
「まったく、俺も耄碌したもんだぜ。危うく見落とす所だった」
 にやける顔はそのままに、ズボンの後ろポケットから財布を取り出す。
 財布の口を開いて中をのぞき、

 ……二百七十円しかなかった。

「十円、足んねえ…」
 つり銭忘れを探す。ない。
 自販機の下を確認。ない。
 路上を這いずり回る。ない。
 いつもの銘柄にまで後十円。最悪だった。

 いかに葛根市最悪のジャンキーといえども自販機を破壊するほど見境なしではない。
 引き返し、レッドゾーンに突入した苛立ちを扉にぶつける。
 体重がのった蹴りは容易く戸板を破壊。哀れな戸板は5つほどに割れ飛んで、壁にぶつかって音
を立てた。
 それでも苛立たしげに、甲斐は土足で廊下を進む。
 六畳の居間にはテーブルが一つに椅子が四つ。
 わずかな理性の声に従い、もっとも狙われにくい椅子に座り、テーブルにどかりと足をのせる。
 そこでようやく、背負っていたデイバックに気づいた。
「そういや、こいつを開けてなかったな」
 完全に忘れていたが、開始時に配られたデイバックにはいくつかのアイテムが入っている。
 何か口に入れればとりあえず気も紛れるだろう。
 パンに水。懐中電灯。コンパス。時計。参加者名簿。鉛筆に紙。そして…

「――――煙草だ」
 甲斐は呆けた声を出した。        
77犬と煙草3 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/27(日) 03:02:29 ID:c3dQFznP
 四角い紙箱は確かに彼の愛用している銘柄のもの。
 思考は相変わらず呆けたまま、一本取り出し口にくわえ、台所のガスコンロを点火。
 火がつかなかったらどうしてくれようかと考えていると、甲斐の怒りを恐れたのか、青い炎が点った。
 煙草の先端に火を点け、ゆっくりと煙を吸い込む。

 ……ゲーム開始から30分。
 悪魔戦において最強を誇る狂犬の王は、DDのメンバーたちが思わず顔を覆いそうなほど、緩みきった表
情を浮かべた。

「ウィザードに探偵……んでもってロートルの蛇野郎か。どうしたもんかね」
 甲斐氷太は気だるげに呟くと、100以上の名が連なった名簿から視線を外した。
 同時に三本目の煙草を吸い終わる。
 殺人ゲームになど乗る気はない。しかし、ここでぼうっとしているわけにもいくまい。
 これからの方針はどうするか。

「ま、もう一本吸いながら考えるか」

 甲斐はそう呟くと、四度台所へと向かった。


【残り115名】

【D−3/民家内/一日目・00:45】

【甲斐氷太】
[状態]:正常
[装備]:無し
[道具]:デイパック(支給品入り)、タバコ(残り16本)
[思考]:これからの方針を検討
78勇者様? ◆SonaWF4JWA :2005/03/27(日) 03:11:15 ID:01mXqcx5
「フンッ!」
勇者は武器を振り下ろす、何も無い虚空に向かって。

問いT:俺より優れた者があの中にいるか?
答え :NO、俺より優れた奴がいる筈が無い、他の要素が絡むなら兎も角武勇において
   俺を越えられる者など歴史上に一度たりとも存在していない。

「ヌォォォォォォォォッ!」
勇者は武器を横に凪ぐ、まるで演武の様に。

問いU:俺のアイテムは当たりか?
答え :NO、こんなピラピラした短い武器が当たりである訳が無い、予備武器としてなら使えるだろうが。

突き、払い、薙ぎ、打ち下ろし、勇者は様々な形で虚空に向かって刃を振るう、
己の武器に慣れる為に。

問いV:問いT、Uを踏まえた上で俺はこのゲームに乗るべきか?

やがて二万年前の勇者はピタリと静止する、《語らぬもの》がカイルロッドに送った剣を片手に、
口元に野太い笑みを張り付かせて。

YES

【Aの8/海岸/02:00】

【オフレッサー】
[状態]:平常
[装備]:水晶の剣
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:皆殺し
79鳥と翼1/4 ◆/91wkRNFvY :2005/03/27(日) 03:17:38 ID:nvsEC0XU
シュゥゥゥゥン。
軽い落下感、どうやらテレポートとやらは無事に成功したようである。
「まったく、いきなり目覚めたと思ったら殺し合い?バカバカしいにも程があるっつーの」
一人、森の中で声を出す千鳥。
(でも、これはどういう事よ?あの場で見渡した限り、何かファンタジーっぽいヤツとか蒼いデカいのとかいたけど、
それにこの刻印、どうやらあの「薔薇十字騎士団」とやらの意向に反するようなことがあると爆発する、の・・・?)
辺りを見渡すが、ここはどうやら丘の上に建った神社、その境内の様である。敷地はそれなりに広いようだ。
「しかし、こうなった以上これが現実、なのよね・・・。
いつまでも混乱してるわけにもいかないし、とりあえず荷物の確認でもしますか」
この異常な状況で自分を保つには、とりあえず声に出していないと不安で仕方ないのだ。
しゃがみこみ、確認したデイバッグの中には、食料・水・懐中電灯・地図・鉛筆・紙・方位磁石・時計・参加者名簿、
「それに、これは鉄パイプ…?」
手首よりも少し細い金属の棒、それが千鳥に与えられた武器だった。
「うーん、これは鉄パイプ、よね、どう見ても。殴れってのかしら」
気を取り直し、参加者名簿を確認する。名簿をめくる手が止まった。
「相良、宗介・・・。良かった、ソースケもいるのね、さっきの場所では確認は出来なかったけど。
 しかし、あの戦争バカがいるとなれば話は別ね、いるといないでは状況が変わるわね・・・」
普段、ソースケの事をバカだスットコドッコイだの言っている割には、信頼しているのである。
言いながら、再び名簿をめくる手が止まった。
「ガウルンって・・・、あの軍人?生きてたの!?それにテッサまでいるなんて!」
(まずいわね・・・、テッサなんて陸にあがったら何も出来ないじゃない、もしガウルンに鉢合わせでもしたら・・・)
考え込む千鳥。ウィスパードの知識はこんな時に都合よく出てくる能力では無いのか、良い方法が何も浮かばない。
「さて、じっとしているのが得策とも思えないし、ここは神社みたいだけど、誰かいんのかなー。
 いたとしても、こっちに友好的じゃないと困るなぁ」
千鳥は立ち上がり鉄パイプを肩に下げ、神社の中の散策を始めた。
80鳥と翼2/4 ◆/91wkRNFvY :2005/03/27(日) 03:21:05 ID:nvsEC0XU
「しかしまぁ、この神社、なんつー広さよ」
もう10分以上外周を歩いているが、方角・目測で計るに未だに半分すら歩いていない。
「はぁ・・・、この先どうなんのかなぁ、最後の一人になるまで戦い続ける、なんつーオハナシはゴメンだわ」
相変わらず独り言を続けている千鳥だが、

ガサッ

(誰か、いるのっ!?)
慌てて振り向き、鉄パイプを構える。眼前には小さな林があり、その奥には崖が広がっているだけだが。
そこから聞こえた声は、予想とは大きく違うものだった。
「あ、あのっ、私、戦うつもりは無いんです!」
(女性?年齢的にはあたしと同じくらい、いや、それ以下…?)
「どちら様かしら?」
少し、声を落とし尋ねる。
「私っ、しずくって言います!あの、出て行っても良いですか?
 武器は、その、持ってるんですけど、攻撃する意思はありません」
(油断させておいて・・・、ということも考えられるわ。こういうとき、あの戦争バカならどうするでしょうね・・・)
「解ったわ、あたしも鉄パイプを持ってるの、戦う意思はないけど。念の為構えさせてもらうけど、出てきたら?」
千鳥の許可を得、林から出てきたのは上下一体の見慣れない白いスーツを着た小柄な少女だった。
81イラストに騙された名無しさん:2005/03/27(日) 03:26:20 ID:fc5T54Ei
もう殺す計画も立ててあるし
その前に付近にいる知らないキャラの勉強から始めないと・・・
82鳥と翼3/4 ◆/91wkRNFvY :2005/03/27(日) 03:30:22 ID:nvsEC0XU
「こ、こんにちわっ、私はしずくって言います、武器は、こんなのが入ってました」
言いながら鞄の中から取り出したものは、釘バットの様なものだった。
「また。随分似合わないモンを貰ったもんね・・・、あたしはこういう武器に縁があるのかしら?
 もう一度確認するけど、戦う意思はないのね? あたしは無いわ、ここを出たいの」
鉄パイプを少し下げ、尋ねる。
「はい、私もです。良かったら協力しませんか?きっと何とかなります!」
「ふふ、そうね。簡単に言ってくれるけど、あたしも賛成だわ。あたしはかなめ、千鳥かなめ」
武器を下げ、手を差し出し、お互い握手をする。
「あんた、手、冷たいけど、大丈夫?」
「はい、私は、えっと、ロボットみたいなものなんです」
「ロボットぉ?こんな大きさで?まっさかぁ」
そうなのだ、千鳥の知識では人間サイズ、それもこの小ささで人型機械を自立稼動させるなど、出来るはずも無いのだ。
「大体、あんたエラい人間くさいじゃない。そんなプログラム何て聞いたことも・・・」
「その、何て言ったら良いんでしょうか。本体の私は戦闘機の様なものなんですけど、この姿はそのオプションで、
 でも、普段はこの姿での自立稼動なんか出来ないのに、元々私はヒトを模して造られたというか、ごめんなさい、上手に言えません」
「まぁ良いわ、何かもうチョージョーゲンショーのオンパレードって感じだし、信じましょ」
深く気にしない性格なのか、その辺の理解不能な部分は流すことにした。
「ありがとうございますっ、それで、これからなんですけど、どうしましょう?」
首を傾げ、上目遣いに訊ねてくる。
83鳥と翼4/4 ◆/91wkRNFvY :2005/03/27(日) 03:31:21 ID:nvsEC0XU
「あたしは探してるヤツがいんのよ。2人、あんたは?」
「はい、私も一人探しています。蒼い自動歩兵、ロボットなんですけど・・・」
「またロボットぉ? 蒼いのって、そういえばさっき集められた時にいた様な・・・」
先ほど一度集められた時の記憶を思い出す。確かに何かデカい蒼いのがいた。
「はい、私も見たんですけど、声をかける間も無くって・・・、彼の名前はBBって言います」
「そっか、あたしが探してるのはあたしと同い年の相良宗介って男と、やっぱり同い年のテレサ=テスタロッサって娘よ」
「とりあえず、この建物の中へ入りませんか? そこで少しこれからについてを」
「そうね、悪くないわ」
そして千鳥としずくは神社の中へと入って行った。

【鳥と翼(千鳥かなめ・しずく)】
千鳥かなめ
[状態]健康。
[装備]陣代高校の制服、鉄パイプのような物(バイトでウィザード、「団体」の特殊装備)
[道具]デイバック一式。
[思考]戦う意思は無し、宗介・テッサと合流したい。

しずく
[状態]健康。
[装備]白い上下一体のスーツ、エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん)
[道具]デイバック一式。
[思考]戦う意思は無し、BBと合流したい。
【残り115名】
【H-1/広大な神社の中、神社の裏手は崖/1日目・00:30】
84月夜の砂漠で君と出会う ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/27(日) 04:18:49 ID:B9wpuGL3
「ふう・・・」
真夜中の砂漠の真ん中で慶滋保胤はため息をついた。
ため息の一つもつきたくなる。
突然わけのわからない異世界につれてこられ、殺し合いしろというのだ。
何でこんなことになってしまったのだろうか。

その日、保胤は文章生として勤めている大学寮を出て安倍晴明宅へ向かう途中だった。
一人暮らしの保胤はたまに晴明宅で夕げ(夕食のこと)をご馳走になることがある。
もっとも、現在は狭い保胤の庵に他に2名ほどが仮住まいをしているため、
ここ最近は用があるとき以外は晴明宅を訪れていない。
その日は晴明から良い酒が手に入ったと誘われたこともあり、
久しぶりに「用事のない」訪問をする予定であった。
あの時、保胤はたしかに晴明宅へと向かういつもの道をごく普通に歩いていた。
何者かに襲われた気配もなかったし、何の予兆も全く感じられなかった。
ところが、ふと気づくと保胤はいつの間にか大勢の人が集まっている巨大な建物の中にいた。
最初は術をかけられて幻覚でも見せられているのだろうかと考えたが、
意識もはっきりとしていたし術による幻覚特有の違和感もない。
あれこれと混乱しているうちに、この「壮大な遊び」の説明がいつの間にか終わっていた。
促されるままにゲートをくぐると砂だらけのこの場所にただ一人で立っていたのだ。
85月夜の砂漠で君と出会う ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/27(日) 04:20:18 ID:B9wpuGL3
保胤は砂浜ならともかく、このような広大な砂地は見たことがなかった。
因幡の国にはこのような場所があると聞いたことはあるが、保胤自身は行ったことはない。
砂以外の物は何もなく聞こえるのは風の音だけだ。
深夜だが幸い月が出ているため視界は開けている。
保胤はその場に座ると支給された荷物を調べ始めた。
一通り説明を受けたものの他に液体の入った瓶を見つけた。
どうやらこれが自分に割り当てられた物らしい。
瓶を良く見るとそこには「不死の酒(未完成)」と書いてある。
匂いをかいで中身を確認してみると、たしかに中身は酒のようだ。
保胤は下戸ではないし酒が嫌いなわけでもないのだが
この状況ではとても酒盛りをする気にはなれなかった。
「不死の酒」という文字が少し気になったものの
結局保胤は酒には口をつけないまま瓶をしまうと、今度は紙と鉛筆を取り出した。
持っていたはずの符が全てなくなっていたため、即席でこしらえることにしたのだ。
符は陰陽道の道士にとっての武器である。
符がなくても使える術もあるにはあるのだが、いざ戦いになった時に手ぶらでは心もとない。
使い慣れない鉛筆という道具と、物を書くのに適してるとはいえない
月夜の風の強い砂地での符作りに悪戦苦闘しながらも
保胤は30分くらいかけてなんとか10枚を完成させた。
急ごしらえのため、普段使用している符とは格段に威力は落ちているだろうが、
手ぶらでいるよりはましである。
86月夜の砂漠で君と出会う ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/27(日) 04:21:50 ID:B9wpuGL3
ひと段落ついたところで、保胤は立ち上がると背後に声をかけた。
「わたしはあなたと敵対する気はありません。もしよろしければお話でもしませんか?」
先ほどから、背後の小さい砂丘の上からこちらの様子をうかがっている人物がいた。
その気配に気づいていながら、しばらく様子見をしていた保胤であったが、
相手から鬼気がほとんど感じられないことから、こちらを攻撃する意図はないと判断して声をかけたのだ。
隠れていた人物はしばらく動かなかったが、やがてゆっくりと保胤の元へ歩き出した。
保胤は敵対する意思がないことをしめそうと軽く両手を上げ、その人物を待った。
月の光が逆光となり、どんな人物なのかこの位置からでは良くわからない。
しかし、逆光の中、影のように見えるその人物は明らかに何かがおかしい。
そう、その人物には「首がなかった」のだ。
その人物の名はセルティ。首を失ったデュラハンである。

【残り115名】

【B−2/砂漠の中/一日目・00:40】  

 【慶滋保胤(070)】
 [状態]:正常
 [装備]:着物、急ごしらえの符(10枚)
 [道具]:デイパック(支給品入り) 「不死の酒(未完成)」と書いてある酒瓶
 [思考]:セルティと話をする

 【セルティ(036)】
 [状態]:正常
 [装備]:不明
 [道具]:不明
 [思考]:保胤に近づく
87絶対殺人武器の憂鬱 ◆E1UswHhuQc :2005/03/27(日) 04:50:00 ID:sodGxAf/

「ヒャッハッハ。アンタもツイてないな」
「……分かってるからあまり喋らないで、マルコシアス。誰かに見つかるでしょう?」
 不機嫌に、ミズーは答えた。全く、運が悪い。
 何の意味があるのか分からない殺人ゲームに巻き込まれたかと思えば、支給された武器はおしゃべりな本だった。武器として使えないことは無いが、取り回しに不便すぎる。
 月灯を光源に、改めて名簿に目を通す――フリウ・ハリスコーの名前。
(運がないのは私だけじゃない、か)
 硝化の森で育ったという精霊使いの少女の名は、御遣いの言葉を思い出させる。問うことしかしない、哀れな精霊。
 未来精霊アマワ。そして名簿には、その契約者の一人の名がある。
 ウルペン。彼は死んだ。
(……違う。わたしが殺した)
 死者は蘇えらない。それは常識だ。
 だとすれば、このゲームの主催者は常識外の力を持っていることになる。いや、彼らがそんな力を持っているから、自分はここにいる。
 考える事をやめ、ミズーは息をついた。
「まずは……フリウね」
「お仲間も一緒に来たのか? 難儀じゃねっか。ところでよ」
 けたけたと笑うマルコシアスが、急に口調を変えて言った。
「その名簿の中に、マージョリー・ドーってぇ名前はあるか?」
「マージョリー・ドー? ……あるわよ」
「そーりゃあ良かった。ソイツは俺の契約者でな」
88絶対殺人武器の憂鬱 ◆E1UswHhuQc :2005/03/27(日) 04:50:41 ID:sodGxAf/

「契約者……」
 マルコシアスの発した言葉に、つい肩に手をやる。
 獅子のマント留めは、そこに無い。
 本は気にせず言葉を続ける。
「話によっちゃあ、仲間になってくれるかもしんないぜ。ゲームに乗る気はねえんだろ?」
「……ええ。そうよ」
 言って、ミズーは立ち上がった。殺人精霊によって死に絶え、硝化した帝都の光景を脳裏に浮かべて。
「殺し合いは最後の手段でいい」

【残り115名】

【D−5/森の中/一日目・00:40】  

 【ミズー・ビアンカ(014)】
 [状態]:正常
 [装備]:神器グリモア(形状:本。マルコシアス入り。この後の行間あたりにマージョリーの容姿説明)
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:フリウ・ハリスコー、マージョリー・ドーとのとの合流。
89紅く紅く紅い薔薇:2005/03/27(日) 05:19:35 ID:lFpJP3G4
「ごきげんよう」
 遠く、海まで見渡せる高台。
 突然背後からかけられたその声に、一条豊花はビクーンと50cmくらい飛び上がって硬直した。
 さらに、着地するや否や全力で10mほど走って行き、そこでようやく振り返る。
「ぎゃー! 来るなー! あたしに手ぇ出すとあとがヒドイわよーーーっ!!」
 両手で抱えたデイバッグをぶんぶか振り回しながら威嚇する。
「いえ、あの……」
「あんたなんて京介が……あ、あたしの双子の兄弟なんだけど……
 とにかくそいつがちょちょいのパでやっつけちゃうんだから!」
「ですから……」
「京介は無口で暗くて無愛想だけど滅茶苦茶強いわよ!
 さぁいけ、京介! って、いないんだっけ!
 このあたしがピンチだってのになんでいないのよ! 契約違反よ! 職務怠慢よ!!」
 だんだん訳の分からないことを喚き始めた目の前の少女に嘆息し、
 大きく息を吸って、小笠原祥子は一喝した。

「い い か ら 少 し お 黙 り な さ い ! !」

「………ハイ」


90紅く紅く紅い薔薇:2005/03/27(日) 05:21:01 ID:lFpJP3G4
「――ふーん、じゃあお姉さんはその祐巳ちゃんを探してるわけね。ごめん、あたしは誰にも会ってないや」
「……そう」
 祥子は落胆したように肩を落とす。
 よほど心配なのか、痛々しいほど表情が翳っている。
 なんだか見ている豊花のほうが心配になってきてしまった。
「ま、まぁ、大丈夫よきっとたぶん! そういうことならこのあたしも一緒に探してあげるわよ」
 なんとか元気付けようと軽い調子で話しかける。
「一人より二人。あたしも京介探したいし、一石二鳥じゃない?」
 どの辺が一石二鳥なのか良く分からないが、そんな豊花の様子に、ようやく祥子は笑みを見せた。
「ふふ……そうね、できることならそうしたいわね」
 そうでしょそうでしょと、腕組みしてウンウン頷く豊花。
 そのまま、「そんじゃ、しゅっぱーつ!」と掛け声を挙げて勝手にズンズン歩き出す。
 オーバーアクションで動き回るたびに、豊花のツインテールが揺れた。
 祐巳と同じツインテールが。
(祐巳……)
 マリア様の前で姉妹の誓いを交し合った、最も大切な自分の妹。
 参加者名簿を確認し、その名前を見つけたとき、祥子は絶望した。
 最初の会場では見るからに強そうな者たちが集っていた。
 総勢117名。あのような者たちが集う中で祐巳が生き残れる可能性など、万に一つも無いように思えた。
 だが――
(絶対に、祐巳だけは私が助けて見せる……絶対……)
 自分は祐巳のお姉様なのだ。
 自分は祐巳を護らなければならないのだ。
 自分は祐巳を護りたいのだ。

 ――たとえどんな手を使ってでも。
 だから――

91紅く紅く紅い薔薇:2005/03/27(日) 05:21:49 ID:lFpJP3G4
  ――どんっ


 背中に衝撃。
 一体何がと思う間も無く、豊花の身体から力が抜けていく。
「あ……あれ……?」
 すぐ背後に祥子の身体。
 長い黒髪が豊花の頬にかかる。
「お姉さん……? え……何、これ……」
 自分の胸から生えている紅く濡れた金属片を見つめ、呆然と呟く。
「……ごめんなさい」
 祥子の声が聞こえる。
「一緒に探してあげるって言ってくれたのは本当にうれしかった。
 『"できることなら"そうしたい』って言ったの、あれは本当よ。でも……」
 ごぶっ、と豊花の口から血の塊が漏れた。
 それに触発されたかのように、大きく見開かれた瞳から涙が溢れてくる。
「あなたも、そして私も、生きていてはいけないの。それじゃ祐巳が助からないから」
 足が身体を支えられなくなる。
 膝が折れ、前のめりに倒れていく。
 豊花の口が微かに動く。
「…きょぅ…す……」
 そこまでだった。
 地面に倒れる前に、豊花の意識は闇に落ちていた。

92紅く紅く紅い薔薇:2005/03/27(日) 05:22:48 ID:lFpJP3G4
 祥子はしばらく呆然と立ち尽くしていた。
 胸に刺さっていた短剣から、まだ血が滴っている。
 すぐ目の前には死体。
 自分が殺した少女の死体。
「!――っぐ! げえぇぇえぇ!!」
 たまらず嘔吐する。
 覚悟は決めたはずだった。
 だが、実際に直面した『死』はあまりにもリアルだった。
「……っく」
 胃の内容物を全て吐き出すと、意を決したように豊花のデイバッグに向かう。
 水と食料を自分のデイバッグに移し、中に入っていた豊花の支給品を手に取った。
 グロック19。
 オーストリアのグロック社が開発した自動拳銃だが、祥子にそんな知識は無い。
 とりあえずこれもデイバッグへ移し、立ち上がる。

(もう……戻れないのね。いいえ、戻るつもりなんてないわ)
 決めたのだ。
 どんな手を使ってでも、必ず祐巳を生き残らせる。
 そして最後に自害しよう。
(待っていて……祐巳)
 悲壮な決意に身を固め、祥子は眼下に見える海のほうへと歩き出した。


【一条豊花(040) 死亡】
【残り114名】


93紅く紅く紅い薔薇:2005/03/27(日) 05:24:39 ID:lFpJP3G4
【C-2/高台/1日目・00:50】

【小笠原祥子】
[状態]:健康
[装備]:銀の短剣
[道具]:デイパック(支給品一式/食料&水二人分/グロック19)
[思考]:祐巳と自分が生き残り、最後に自害する

[備考]:C-2 → C-1へ移動します。

出展:
銀の短剣(卵王子カイルロッドの苦難)
グロック19(フルメタル・パニック!)
94策士と指し手 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/27(日) 05:35:42 ID:jhZAJd3m
「イーザーヤぁー」
深い森の中、目の前の男は嬉しそうに笑いながら、彼に向かってくる
「やあ、静ちゃん、君も本当にたいしたものだね、こんなピンポイントで俺を見つけるなんてさ」
彼、折原臨也もそう言って笑いかえす。
まるで親しい友人同士のように。
しかし、二人の内心は表情とは真逆だ。
その証拠に、静雄の笑顔には怒筋が張り付き。
臨也の笑顔には緊張感が満ちている。
正直な話、まだこんな、何の体勢も立ってない状況では決して会ってはいけなかった。
臨也の手にしたアイテムは、どちらかというと当たりだがこんな局面で使えるものではない。
なによりこの、平和島静雄を前にしたこの状況下
どんなアイテムがあろうとまっとうな方法で切り抜けるにはあまりに厳しい。
「静ちゃん、落ち着いて話をしよう、どうだい、協力しないかい?静ちゃんだってこの状況には腹が立ってるだろ?」
何とか話術で、切り抜けようとするが、少し立ち止まっただけで
「ああ、このゲームを主催したやつも殺す、このゲームも壊す」
「でも今は、お前を殺す事が最重要だ、それに、お前は乗ったんだろ?このゲームに、だから殺す、そうじゃなくても殺すけどな」
等とのたまい、また歩みを進める。
(くそっ、普通だったらこの状況で知り合いに会って協力しようといわれたら少しは考えるだろ)
臨也はそう内心で毒づきつつも、何とか今の状況を脱しようと思考を巡らす。
95策士と指し手 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/27(日) 05:36:10 ID:jhZAJd3m
ゲームにのった、それはある意味確かだった、彼の背後には頭を潰され事切れた少女の死体があった。
何をするにしても、もし一日誰かが誰も殺さないだけで全て終ってしまう。
だから殺した、殺し易そうな相手を選んで。
彼女にとっては不運だが、それは臨也にとっても不運だった。
本来、彼は自分から動くタイプではなく駒を操るように人を操るタイプだ。
それが無理やり盤上に上げさせられて自らが駒となってしまった。
情報を集めるにも駒を揃えるにもたった一日では不足だった。
だから、彼は殺し易そうな相手を探し出し殺したわけだが。
少女が直前に放った悲鳴のおかげで、まさか静雄が現れるとは思ってもみなか。
96策士と指し手 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/27(日) 05:36:45 ID:jhZAJd3m
「殺す」
静雄が拳を振り上げる、本当にその一撃で人を殺しかねない力を秘めた一撃を。
しかし、静雄は突如その身を横に投げる。

銃声

静雄のいた場所を銃弾が抜ける。ほとんど動物的な勘だ。
「こっちです」
臨也にかけられる声、かなり遠くからだろうが不思議と通った、何の躊躇もなく、臨也は声の方向に走る。
静雄はすぐに立ち上がり臨也を追おうと走り出そうとするが再び銃弾が彼の歩みを止める。
流石にすぐに木の陰に隠れるが、銃弾は正確に静雄のいるあたりに撃ちこまれ続ける。
97策士と指し手 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/27(日) 05:37:24 ID:jhZAJd3m
臨也は銃声だけで撃ち手のいる辺りに辺りをつけて足り続ける。
背後の静雄の怒声も聞こえはするが遠い。
銃声も消えやがて、再び森は静寂を取り戻す。
「止まってください」
突然頭上から、声をかけられる。
少女の声だ。
頭上を見上げると一本の木の上にライフルを持つ少女の姿がある。
おもむろに木の上から飛び降り臨也の前に着地する少女。
体術なら臨也よりも上かもしれない。
「年長者であろうあなたに敬意を表して私から名乗りましょう」
黒く、美しく、長い髪を持つ少女。
冷たい視線、値踏みでもするように臨也を見据えている。
「私は萩原子荻」
明らかに年不相応な少女は言う。
臨也も彼女を観察する、指し手の目で、彼女が使えるかどうか確認するように。
「一応、策士のような真似をしています」
「どうです?私と組みませんか?」
98策士と指し手 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/27(日) 05:38:10 ID:jhZAJd3m
【F−4/森の中/一日目、01:42】

【折原臨也(038)】
 [状態]:正常
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:萩原子荻の値定めと同盟

【萩原子荻(086)】
 [状態]:正常
 [装備]:ライフル
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:折原臨也との同盟

【F−5/森の中/一日目、01:42】

【平和島静雄(037)】
 [状態]:正常
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:折原臨也への暴行、ゲームの破壊

【朝比奈みくる(091) 死亡】
99生まれる狂気 ◆QAsGLyzIGE :2005/03/27(日) 07:42:50 ID:WfpEQ/vk
 森近くの草原、ディードリットはまるで幽鬼を感じさせる動きで歩いていた。

 パーン、彼のいない世界。彼を愛したときから覚悟はしていたはずだ。自分より先に彼が
死んでしまうのは運命なのだからと。
 けれども、それならばこの涙はいったいなんなのだろうか。覚悟が聞いてあきれる。結局、
自分は、心のどこかで、彼がいなくなることなどありえないと信じ込んでいたのだ。
 それほどに彼は強く、誰もが認める英雄で、そして、いつでも自分のすぐ隣にいた。
 人の死はあまりにもあっさりと訪れる、知っている。生易しい生き方をしてきたつもりは
ない。それでも、彼があれほどまでに簡単に殺されるなど、考えてもいなかった。考えたく
もなかった。

 今にして思う。あの時自分も、パーンと共にあの男に挑むべきだった。彼を殺された怒り
をあの場でぶつけるべきだった。
 殺されてもよかったのだ。彼と同じ場所にゆくことが出来るならば、それで。
 けれども自分は、機会を逸してしまった。彼と共に戦う機会を。彼と共に殺される機会を。
怒りならばまだ救いがある。彼を殺したあの男を殺すことを目的に生きていける。けれども
今、心の底から湧き上がるのは怒りではなく、悲しみだけだ・・・
 もう全てがどうでもよかった。この不自然な状況も、わけのわからないルールも、全てが
どうでも。だから、

背後から何者かが忍び寄ってきていたことも、そいつが彼女の意識を奪ったことも、彼女に
はどうでもよかった。

暗転・・・
100生まれる狂気 ◆QAsGLyzIGE :2005/03/27(日) 07:44:36 ID:WfpEQ/vk
 まず最初に知覚したのは、とても食物とは思えない、つるりとした食感の小粒の何か。そ
れを口いっぱいに詰め込まれ、無理やり租借させられる。続いて口の中に広がるのは、どろ
りとした言い難い感触。そしてそのまま、彼女は、襲ってきた快楽の渦に飲まれていく。抵
抗する気力は、すでになかった・・・

「ふん、毒じゃねえみたいだな。使えねえ」
 彼、ヴォッドはディードリットの瞳を覗き込みながらつぶやいた。
 彼としてはディードリットを殺すつもりは(薬を与えた結果論としてはともかく)なかっ
た。まず、こんなふざけた殺し合いに自分を巻き込んだ奴等が気に食わないし、当然そいつ
らの思い通りに動く気もさらさらない。踊らされるのは彼の流儀ではないのだ。ただ、彼が
このイベントの主催者から配布されたデイパック、その中には、食料や名簿、地図などとと
もに、大量のカプセルが詰め込まれていたのである。自分の所持品の正体さえも分からない
という状態も、彼の流儀ではない。自分が弱者であると言うことは承知している。それを承
知した上でなお、利用できる全てを駆使して這い上がるのが彼のスタイルなのである。手に
入る限りの情報を入手し、それらを駆使して絶対に、全てを承知した上で自分たちを見下ろ
して笑っている黒幕を蹴り落とす。そのためには、カプセルの正体は知っておきたかった。
 カプセルに加工されているということは、その薬が人の服用を想定したものであるという
ことだ。毒ではないとは予想していた。手頃な実験台、彼女が現れなければ、彼は自分でそ
れを服用し、効果を確かめていただろう。しかし迷っているうちに彼の前をいかにも無防備
な彼女が通った。明らかに自失していた彼女を徒手で気絶させるのは容易な作業であり、そ
して、ここが重要なのだが、いかにも小悪党らしかった。

 そして、その選択が、偶然が、彼の命運を分けることになる。
101生まれる狂気 ◆QAsGLyzIGE :2005/03/27(日) 07:45:43 ID:WfpEQ/vk
「アッパー系の麻薬に似ているな。覚醒剤か?」さらに観察を続けようとしたとき、彼女、
ディードリットが何かをつぶやき始めた。
「パーン、パーンなの?そこにいるの?」
「?、幻覚症状か?やっぱり麻薬だな。さて、どう使うか」
と、思考を続ける彼の中に疑問が生じる。彼女が昨晩、恋人と思しき人物を主催者側の人間
に殺された様子は、はっきり覚えているし、おそらくそのせいだろう、彼女を発見してから
捕獲するまで、彼女は完全に呆然自失の態だった。

(それがなんで、こんなに嬉しそうな顔して涙流してんだ?)

 彼の背筋を寒気が通り抜けた、と同時、彼の身体は、吸血鬼としての能力をもってしても知
覚できず、避けることも出来ない何かによって、心臓ごと二つに叩き斬られていた。
102生まれる狂気 ◆QAsGLyzIGE :2005/03/27(日) 07:46:21 ID:WfpEQ/vk
「パーン、パーン・・・」
 快楽の中で彼女が見つけたもの、それは昨晩確かに失ったはずの彼だった。彼は、実際には、
ヴォッドが彼女に飲ませたカプセル、それによってディードリット自身が生み出した、彼女の
"悪魔"である。彼がすでに肉体を持たない存在と化していることにはすぐに気づいた。しかし、
正直なところ、そんなことは今の彼女にはどうでもよかった。さらに重要なことを認識したか
らだ。それは、もう、彼女が生きている限り、彼とは別れずにすむのだということ。片時も、
永遠に。
 それは、彼女が魂の底から望んだ夢。当たり前だ。彼女は、いつか必ず来る彼との別れ、た
だひたすらそのときだけを恐怖して生きてきたのだから。
 パーンとの永遠、その幻想は、如何に彼女とは言え壊れかけた精神で抗うには魅力的過ぎた。

 その夢におぼれた瞬間、彼女は、彼に、自分を傷つけた相手を殺すことを望んでいた。いや、
目の前の敵だけではない。永遠を邪魔するもの全てを退けることを、この夢を確かなものとす
ることを、目の前の騎士、彼に望んだ。そして、彼は、それに答えた。
103生まれる狂気 ◆QAsGLyzIGE :2005/03/27(日) 07:47:49 ID:WfpEQ/vk
 もう彼のいない世界で行き続けると言う悪夢に、恐怖せずともいい。ずっと一緒にいられる。
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとず
っとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっ
とずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとず
っとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっ
とずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
 

ずっと、彼と一緒にいる。もう、誰にも、奪わせない。そのために、生き残る。残り全ての人間
を殺してでも。

<<ディード・・・>>

すでに彼女は狂っていたのかもしれない。そんな彼女を、パーンは、少し悲しげに見つめていた。
104生まれる狂気 ◆QAsGLyzIGE :2005/03/27(日) 07:48:18 ID:WfpEQ/vk
【残り112名】


【E−4/平地/一日目、00:49】

『生まれる狂気(ディードリット/ヴォッド・スタルフ)』

【ディードリット(067)】
[状態]:精神崩壊ぎみ
[装備]:不明(カプセルにより悪魔召喚)
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:パーン(自身の悪魔)と共に生き残る

【ヴォッド・スタルフ(046) 死亡】
[状態]:死亡
[装備]:カプセル(放置?)
[道具]:デイパック(支給品入り)(放置)


出展:
カプセル(Dクラッカーズ)
105図らずも(1/2):2005/03/27(日) 08:05:01 ID:SPYqpHN5
「……ふもふも、ふもっふぅ(……厄介なことになったぞ)」
妙に可愛らしい着ぐるみの中でキノがつぶやいた。

支給された物を確認している時に、この着ぐるみを着てみようと思ったのがそもそもの間違いだった。
自分に支給されたこの着ぐるみの中には暗視スコープや無線機の様なものが有り、うまくすれば使い物
になるかもしれないと思った。
だが着てみると、思いの外動きを制限されてとても動きづらいのだ。しかも中の機械は着ぐるみに内蔵
してあるボイスチェンジャーと連動しているらしく、ボイスチェンジャーが使えないと他の機械も全く
使えなくなってしまうのだ。
中の機械だけを取り出そうとキノは考えて着ぐるみを脱ごうとしたが、中の金具がキッチリと嵌っていて
着ぐるみを脱ぐのは不可能そうだった。

中の金具と格闘する事十五分、ついにキノはこの着ぐるみを脱ぐ事を諦めてしまった。

「……ふぅも(……はぁぁ)」
ため息をつきながら、暗視スコープ越しに辺りを見渡す。そこから見えるのは、支給されたアイテム
が浜辺に散乱している風景。とりあえず足下に落ちていた懐中電灯を拾おうとする。
しかし懐中電灯は中々拾えない。4回目にしてやっと拾う事が出来たが、すぐに懐中電灯を落として
しまった。
五回目に挑戦しようとしたその時。
「はい、これ」
何者かが懐中電灯を拾ってキノの前に差し出した。
106図らずも(2/2):2005/03/27(日) 08:06:00 ID:SPYqpHN5
「ふもっ、ふもふも、もっふる(あの、ありがとうございます)」
相手に伝わるかどうか不安だが、一応お礼を言ってキノは相手の姿を見た。
短めに切られた髪の似合う少年がそこにいた。体つきは中肉中背、背中越しに大型のパースエイダーが
見えるが、バッグの中に入っているようですぐに取り出す事は出来ないように見える。
キノはこの少年を一応『安全』だと決め、慎重な動作で懐中電灯を受け取った。今度は何とか懐中電灯
をちゃんと掴む事が出来た。
今度はそれをバッグに入れる為に、よたよたとした動作でキノはバッグの近付く。
しかし、バッグの数歩手前でまた落としてしまった。
再度懐中電灯を拾おうとした時、背後にいた少年が声をかけてきた。
「拾うの、手伝いましょうか?」

考える事数秒、キノは素直に手伝ってもらう事にした。


『チーム時雨沢』
【キノ (018)】
装備アイテム:ボンタ君量産型(脱衣不可能)
所持アイテム:支給品一式
基本方針:1、支給品を集める 2、ボンタ君スーツを脱ぐ 

【ヴィルヘルム・シュルツ(035) 】

所持アイテム:支給品一式、ベネリM3
基本方針:キノの支給品を集める。
107図らずも(書き忘れ):2005/03/27(日) 08:07:31 ID:SPYqpHN5
【備考】
ベネリM3(出典はフルメタ、フルメタではただのショットガンとして登場、ベネリM3は趣味)

【F-6/一日目・砂浜/00:23】
【残り112名】
108目覚めても・・・:2005/03/27(日) 09:02:40 ID:8RBe88su
目覚めると京介(39番)は森の中にいた、自分の記憶が正しければ「薔薇十字騎士団」とか言う奴等に殺し合いをしろと言われたと思う。
そしてそれからは思い出せない、とにかく自分が非日常な世界に居ることしか理解できなっかた。
辺りを見回すと自分の物と思われるバッグが一つ転がっていた。開けてみると中には食料やコンパスそれと銃、俗にマグナムと呼ばれる物がはいっていた。
「これで人を殺せって事か・・・」
京介が呟くと、誰かがこっちに向かって来るのが分かった。反射的に木の陰に身を隠すここから見た限りでは髪形などからしても女、恐らく服装からしても学生らしいそれを見て、
「俺以外にも、学生が参加してるんだな。」
とまた呟いたが状況は変わらない、
とりあえず京介は銃を取り出し女に向ける、
「おい、そこの女止まれ、こっちは銃を持っている。おとなしく止まってこっちえ来てくれ話がしたい。」
すると女はいきなり歩み寄り、
「ちょっと、女ってなによ私はハルヒ、涼宮ハルヒよ、それにアンタこれ殺し合いよ、なんでわざわざ話掛けるわけ?」
と、豊花並のマシンガントークを受け、
「俺は一条京介、探している人がいるんだ、お前が良ければ、一緒に来てくれないか?嫌だといったら殺すしかないけど」
しかし京介は銃なんて撃った事が無い、こんなのは只の脅しだ、
「分かったわよ、私も探してる人がいるの。」
「所でお前の支給品って何だったんだ?」
するとハルヒはカバンをあさりある物を取り出した、
「こっこれよっ!!」
声を荒げながらとりだしたのは紛れも無く、フライパンだった。京介はこれはハズレの武器なんだろうなと思い
「そうか・・・このゲームに乗った奴だっているんだ、探してる奴が死ぬ前に探しに行くか。」
京介は呟きながら立ち上がった。
109目覚めても・・・(2/2):2005/03/27(日) 09:08:56 ID:8RBe88su

「ちょっと待ちなさいよ!」
ハルヒが急ぎ足で追いかけてくる、京介はそれに構わず話掛ける、
「なぁ?お前は誰を探しているんだ?」
「普通そう言うのって自分から教えない?まぁいいわ、私はミクルちゃんと有希と古泉とキョンを探しているの。」
「俺は、双子の妹を探している、豊花って奴だ。」
と、告げると京介は考える、豊花は一人で大丈夫なのかと。

「チーム京介」
【一条京介(39番)】

装備アイテム・マグナム
所持アイテム・支給品一式
思考・豊花を探す

【涼宮ハルヒ(88番)】

装備アイテム・フライパン
所持アイテム・支給品一式
思考・SOS団の復活
110Sillies Night(1/4):2005/03/27(日) 09:10:14 ID:QlOjwKwu
「ドラッグの次は殺人ゲームですって?冗談じゃない」
つぶやいた自分の声が震えているのに気づき、海野千絵は拳を握りしめた。
折角の温泉旅行の途中にこんなゲームに放り込まれてしまったことにもそうだが、
目の前で見せしめに人が殺されたというのに何も出来ずに足を震わせていた自分へも憤っていた。
あれからも研究会のOGとして多少イカれた奴らと張り合ったことはあったが、
カプセル騒動以上の恐怖と焦燥を感じることはなかったので当然の反応といえばそうなのだが。
「……落ち着きなさい海野千絵。ここで自己嫌悪していても何も進まないわ」
──こんなゲームは断じて許されるわけがない。
確かに一同に会された参加者の中には明らかにこの状況を楽しんでいる者達の姿もあったが、
大半は自分のような思いを抱く者に違いない。そう千絵は確信していた。
同士を集め主催者を倒せばここから出られる。そして自分にはそれをやり遂げることが出来る強い意志がある。
「あの顔をぶん殴るまでは絶対死んでやらないんだから」
決意と言うよりは自分に言い聞かせるように声を出し、苛立ちを闘争心に変える。
そこでやっと足下にデイパックが落ちていることに気づいた。
「食料とか……武器が入ってるって言ってたわね」
戦闘に関してはまったくの素人なので何が入っていてもあまり意味はないが、やはり何かないと心細い。
「──っと。何かが引っかかってる?」
引き手をひっぱり1/3くらい開けたところでなぜか止まってしまう。
よく見ると、ファスナーのかみ合う部分に青い布の切れ端のようなものがひっかかっていた。無理矢理詰め込んだらしい。
引手を戻し、今度はゆっくり引っぱっていくと、
「きゃあっ?!」
中の何かと、目が合った。
尻もちをついた千絵に向かってそれは飛び出してきた。
青いマントを羽織った、手のひらサイズの奇妙な少年。
「悪魔っ?!」
千絵の知っている限り、この異様な生物にはこの単語しか当てはまらない。
「失礼な、んな架空生物じゃないぞ」しかし本人に否定された。
──本人に。
111Sillies Night(2/4):2005/03/27(日) 09:10:46 ID:QlOjwKwu
「喋ってる?!」
「喋ることすら認めてくれないのは人権侵害に値すると思う。いや精霊権か。
そもそもあんな狭い場所に閉じこめられ押しつぶされること自体がだめだ。全く。
ところでお前さん、精霊権侵害相談所がどこにあるか知っているか?」
「し、知らないわよっ」
「むぅ、人はいつからこんなに無知になってしまったのだろうか……」
「…………」
目の前の自称“精霊”に対して思考が追いつかない。
悪魔は喋らないし──そもそもカプセルを飲んでいないので悪魔が見えるわけがない。
そもそも悪魔自体がカプセル一つを残して消えてしまっている。
では、これは何だろう?
「あなた、生きてるの……よね?」
「失礼な、ちゃんと生きてるぞ。その証拠にぞこぞこ増え──てないな?
なぜだ?カンストか?ついにカンストしてしまったのか?」
「…………」
よく観察してみると、背中に青っぽい羽根が生えている。髪も人間ではあり得ない青黒い色をしている。
そして肌は青白く、鼻は高く先が尖っている。
人の形はしているが、精霊というよりはどちらかというと虫に見えた。
「その……あなたは精霊、っていうの?」
「人精霊とかに勝手に分類されているらしいぞ。
……そういやひげもないな。若返ったのか?あの閉鎖空間にはそんな美容効果があったのか?」
じんせいれい。人型の精霊ということか。人生例だったら嫌だ。
「……まぁ、現にここにいるんだから、信じるしかないわよね」
目の前の生物について考えることを諦め、千絵は残りのデイパックの中身を確認し始めた。
パン、水、懐中電灯、地図、白い紙と鉛筆……それと、名前が羅列した紙があった。
「参加者名簿ってわけね」
こんなゲームに拉致されたのは自分だけでいてほしい。
そう思いながら、時間をかけて、知り合いがいないか慎重に目を通す。
112Sillies Night(3/4):2005/03/27(日) 09:11:28 ID:QlOjwKwu
「…………」
千絵は深くため息をついた。いてほしくなかった。
物部景。甲斐氷太。緋崎正介──ベリアル。そこには三人の知り合いの名前がしっかりと書かれていた。
景は確実に仲間になってくれる。最優先に探し出す必要がある。
氷太はあの性格だから、もしかしたらゲームに乗ってしまうかもしれない。でも。
「茜さんのためにも……ううん、一緒に戦った仲間だもの。説得しなくちゃね」
そしてベリアル。ここに名前があるということは、あれからどうにかして復活したらしい。
実体がない彼をどうやってここに連れてきたのかは謎だが。
……彼を説得するのは無理だろう。顔を合わせたら十中八九敵に回ると考えていい。
「とにかく物部くんね。あっちもきっと私を探してくれるはず」
名簿をデイパックに戻し、千絵は中身を確認する作業に戻った。
方位磁石、時計──

「……これは何?」
そして奥の方から、拳大のガラス玉と、何かが書かれたメモを見つけた。
「『この玉に精霊を入れて衝撃を与えると爆発します』……あなた爆弾だったの?」
何かをつぶやきながら千絵の周りを飛んでいた人精霊は、目の前で止まって口をへの字に曲げた。
「それは巨大すぎる誤解だ。異議を申し立てる」
「とすると、この玉がそうなの?」
「それも違うような気がする。どちらにしろ閉じこめられることには断固として抗議する」
「……そうよね。もちろんそんなことしないわ」
自爆しろと言っているのと同じだ。嫌がるに決まっている。
千絵自身だって意志がある生物を爆弾代わりにすることなどしたくない。
113Sillies Night(4/4):2005/03/27(日) 09:12:21 ID:QlOjwKwu
ガラス玉とメモをデイパックに戻し、改めて人精霊とやらを見る。
「とりあえず、あなた名前は?」
「俺かい?俺はスィリー。名前は適当だよ。なんだったら、好きなようにつけてもらってもいいくらいだ」
「そうね、じゃあグッピーなんてどう?」
「スィリーって名前、気に入ってるんだホントに。うん」
「…………、じゃあスィリー。あなたはこのゲームについて何か知ってる?」
頭が痛くなってきた気もするが、ここで彼の言動について議論しても意味がない。
「ゲーム?ゲームなのかこれは?精霊権侵害相談所を探す旅を本気で考えないとだめなのか?」
「何も知らない、と。私はここから脱出するために行動するけど、一緒に来るわね?」
「なぜそこで断定口調なのか、ちょっと不満に思ってみようと思う」
「ここにいたって何も始まらないじゃない。あなたも元の場所に戻りたいんでしょ?」
「いやそうだが。いやそうか?小娘や小僧や金属小娘の最近の待遇は微妙な気もする。微妙だが」
「く・る・わ・よ・ね?!」
「むぅ、しょうがない。そんなに見たいか俺のスペクタクむぎゃ」
片手でわしづかみ黙らせて、千絵は歩き出した。


【残り112人】

【E-5/平地/一日目・00:40】
【海野千絵】
[状態]:健康、強い決意
[装備]:スィリー(エピローグ前の状態に戻っている
[道具]:精霊檻(開門済)
[思考]:景を探す、甲斐を説得する→仲間を集めて主催者を倒す
※千絵は勘違いしていますが、原作の設定通り、精霊檻にスィリーを入れて破壊しても壊れるのは精霊檻のみです。

【備考】
精霊檻(まとめスレキャラ紹介フリウ参照)、スィリー(無駄な人生トーク発生精霊)→エンジェル・ハウリング
114Sillies Night  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/27(日) 09:20:09 ID:QlOjwKwu
修正:
[道具]に「支給品一式」を追加
115凶人3人(1/3) ◆Ws4bbhoG7o :2005/03/27(日) 10:32:57 ID:fqhMl4J0
リナ=インバースは冷めた目で、うわごとを呟く彼女を見下ろしていた。
自分と同じ境遇の彼女。
最愛の人を目の前で殺されたのに、何も出来なかった。

いや、ガウリイの攻撃が失敗した直後に炎の矢(フレア・アロー)を放ってはいたのだ。
だが、通常なら10本以上の矢が出現するはずがたった一本だけしか出ず、しかもあっさりとかき消され、
次の魔法を詠唱しようとした時には、もう手遅れだった。

今リナの心中を占めているものは、ただ怒りのみ。
自分への怒りも勿論ある。
だが、ガウリイを殺した連中への怒りはそれとは比較にならない。
アイツラを皆殺しにするまでは死んでも死に切れない。
どんな犠牲を払っても、どんな事をしてでもやり遂げる。もうそれ以外に道は無い。

(ガウリイがいたら、殴ってでも止めただろうな)
優しいあの人の面差しを思い浮かべる。
(でも、ガウリイはもういない。誰も、あたしを止めてくれない)



「15年も待ったんだもの。これからはずっとずっとずっとずっとずっと」
ディードリットがふらふらと森に近づいて来る。
もはや彼女が正気を保っていないのは、誰が見ても明白だ。

(正面切って戦うのは無謀ってもんね。できれば誰かと戦っている所を――)
116凶人3人(2/3) ◆Ws4bbhoG7o :2005/03/27(日) 10:34:55 ID:fqhMl4J0
ふと、リナの視界の端で黒い影が揺れた。

その黒い影が音も無くディードリットに近づいてゆく。
ディードリットはその黒い影に全く気付いておらず、また、黒い影もリナには気付いていないようだ。

森に入った直後、黒い影とディードリットはかち合った。

黒い影は不意打ちに成功。凶刃がディードリットの左腕を刈り取る。
「痛いっ。 パーン、パーン助けて!」
ディードリットの敵意に呼応し、"悪魔"が力を振るう。

しかし黒い影は、見えないはずのその力を察知したのか、横っ飛びに避ける。
体を覆う黒い布がズタズタに裂けたが、それだけだ。本体には届いていない。

(左腕一本とほぼ無傷、勝負はほぼ決まったかな。あとはタイミングね……)
自分にしか聞こえない程の声で、リナは詠唱を始める。


(黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの)
影がナイフを投げつけ――

(時の流れに埋もれし 偉大な汝の名において)
"悪魔"がそのナイフを弾き返すが――

(我ここに 闇に誓わん 我等が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに 我と汝が力もて)
その隙に影はディードリットまで辿り着き――

(等しく滅びを与えんことを!)
凶器と化した手刀で白く細い首筋を――

「竜破斬(ドラグ・スレイブ)!!」
貫いた。
117凶人3人(3/3) ◆Ws4bbhoG7o :2005/03/27(日) 10:37:50 ID:fqhMl4J0
「パーン……」 
それがディードリットの発した最後の言葉だった。


「んー、こんなもんかあ」
樹上から放った竜破斬は、ディードリットもろとも黒い影を貫いていた。

人間数人分がすっぽり入る大きさの穴が地面に出来ており、あとには何も残されていないい。
これでも恐るべき威力だが、本来は町一つを吹き飛ばす程の威力を有していたのである。

「やっぱりかなり魔力が制限されているようね。それに、ズーマも……」
あのズーマがリナの存在に気付けなかった上、得意の黒霧炎も使わなかった。
自分と同じく、他の人間も能力を制限されていると見て良いだろう。


ずしん、と疲労が全身に乗し掛かる。今日はもうロクに魔法が使えそうもない。
普段ならばここまでの疲労は感じないはずなのだが、これも何らかの影響だろうか。
疲れを癒さなければ。この状態で敵に会うのは不味い。

重い体を引きずりながらリナは考える。

(もし、ズーマに襲われていたのがアメリアだったとしても、あたしは竜破斬を撃ったのかな……)

そんな事はもう、決まっていた。


【残り110人】

【028 ズーマ 死亡】 【067 ディードリット 死亡】
118 ◆Ws4bbhoG7o :2005/03/27(日) 10:38:46 ID:fqhMl4J0
【E-4/平地→F-5/森に移動中 /一日目、02:30】
 【リナ・インバース】
 [状態]:疲労困憊。もう魔法はほぼ使えない。
 [装備]:不明。
 [道具]:支給品一式。
 [思考]:必ず生き残ってガウリイを殺したヤツラを皆殺しに。
119姐さんと魔法使いの……1/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/27(日) 10:45:27 ID:AS7jDRhW
とりあえず身を隠しつつ林を通り抜け、できるだけ見晴らしの良い平地などの場所を迂回し、森へ。
 その移動に一時間以上もかけてしまったのは、やや動きが慎重すぎたためか、周囲の地形の把握に手間取ったためか。
 加えて景が森林地帯での行動に慣れていなかったこともあるだろうか。
「さて、この地形、地図で言えば……G−6からF−5の地区へ、斜めに動いた事になるわけか」
 青いウィンドブレーカーの分厚い生地を利用して光を遮り、懐中電灯で地図と方位磁針を照らす。
 探し人の情報を集めるにも物資を集めるにも、D−3周辺に表示された街へ行くのが最善だろうと、僅かな協議の末に決まった。
 当然、ゲームに乗った者たちに襲われる危険は増すだろうが――それを言い出すならば、そもそもこの島で安全な場所など無いだろう。
「このままE―4を経由して行けば良い、わね。まだゲーム開始直後二時間と経っていないし、乗り気になっている馬鹿にも罠を仕掛けるほどの時間的余裕は無いと見ていいわ」
 銃器も配布されている以上、むしろ遮蔽物の多い森を突っ切る方が安全だろうとは、風見の判断だ。
 ちなみに景は――武器がスプーンでは流石にどうしようもない。
 己の靴下を脱いで重ね、中にそこらで拾い集めた小石を詰めて、それを武器としていた。
 ブラックジャックならば、甲斐と戦った際に用いた経験があるのだ。
「しかし、ただのモヤシかと思ってみれば――意外と慣れた感じね」
 森の中を、二人で死角を補いながら移動していると、風見が呟いた。
「……流石に殺しあった経験は無いけどね」
 夜の街で『ウィザード』として悪魔を駆り出していた頃に積んだ、様々な経験。
 ――まさか今更になって役に立つとは思わなかった。
 地図とコンパスを仕舞いつつも、そう思う。
「それじゃ、行くわよ……っ、何?」
「――?」
120姐さんと魔法使いの……2/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/27(日) 10:47:02 ID:AS7jDRhW
 歩き出した風見の足が、何か柔らかいものを踏んだ。
 確認しようと、景が懐中電灯を向けると――
「…………ッ!!」
 それは――頭の潰れた少女の亡骸だった。
 二人は知る由も無いが、それは朝比奈みくると呼ばれた少女のものだ。
 自分が踏みつけたものの正体に気付き、驚きの声を噛み殺す風見。
 景も目を見開いたが、しかし彼は風見に比しても更に冷静だった。
 声を無視して亡骸に触れれば、まだ微かな温かみが残っている。
 それはつまり――
「……まだ近くに犯人が居る。隠れろ――ッ」
 声を潜めて風見に囁き、懐中電灯の光を消しつつウィンドブレーカーを翻し、手近な茂みへ飛び込む。
 次いで風見が傍らの別な茂みに飛び込み、息を潜める。
 茂み越しに目を合わせ、頷きあう。
「やる気になっている馬鹿が居る。しかも、下手をするとすぐ傍に――」
 風見が、口の中で呟いた。
 どうする――?
「頭骨があれほど潰れている点から見て、犯人はそれなりに威力のある武器または能力を所持、か――」
 景が、口の中で呟いた。
 どうする――?
121姐さんと魔法使いの……3/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/27(日) 10:48:14 ID:AS7jDRhW
 暗闇で一瞬照らしたのみなので、大口径の銃器かそれとも鈍器による傷なのかも判別はつかなかった。
 自分は悪魔が使えなければ、銃器も撃った経験は無い。
 武器はブラックジャックの劣化品。
 いざとなれば、風見の銃の腕を信じて囮になるか――?
 と、そこまで思考し景は苦笑。
「……いつの間に、信頼してしまっているんだろうな」
 口の中だけで、そう呟く。
 あの強気な口調が、幼馴染の少女を思わせるからだろうか。
 ともあれ、自分一人では勝てない可能性が高い。
 風見と二人でも危ういかも知れない。
 一刻も早く――
「やっぱり、逃げの一手――ね」
 風見の声に、景は頷いた。
 少女の亡骸に数秒だけ黙祷を捧げると、風見はその手からデイパックを拝借。
「ごめん。貴女の仇を取るなんて言えないけれど……どうか、安らかに」
「……冥福を」
 二人は慎重に、茂みに紛れて移動を開始した――

【残り110人】
122姐さんと魔法使いの……4/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/27(日) 10:49:40 ID:AS7jDRhW
【F−5/森の中/一日目、01:55】

『姐さんと騎士(物部景/風見千里)』
【物部景(001)】
[状態]:正常
[装備]:ブラックジャックもどき(靴下二枚を重ねて小石を詰めた自作品)
[道具]:デイパック(支給品入り)、スプーン
[思考]:1.現在地よりの離脱。 2.カプセルと海野千絵の捜索。

【風見千里(074)】
[状態]:正常
[装備]:グロック19(ハンドガン)
[道具]:デイパック(支給品入り) 、デイパック(朝比奈みくるの亡骸より。未開封のため内容物不明)
[思考]:1.現在地よりの離脱。 2.出雲覚、新庄運切、佐山御言の捜索。
123紅く紅く紅い薔薇(4/5改訂):2005/03/27(日) 11:09:59 ID:Wzw1Vji6
 祥子はしばらく呆然と立ち尽くしていた。
 胸に刺さっていた短剣から、まだ血が滴っている。
 すぐ目の前には死体。
 自分が殺した少女の死体。
「!――っぐ! げえぇぇえぇ!!」
 たまらず嘔吐する。
 覚悟は決めたはずだった。
 だが、実際に直面した『死』はあまりにもリアルだった。
「……っく」
 胃の内容物を全て吐き出すと、意を決したように豊花のデイバッグに向かう。
 水と食料を自分のデイバッグに移し、中に入っていた豊花の支給品を手に取った。
 Mk23。
 俗に、ソーコムピストルと呼ばれる自動拳銃だが、祥子にそんな知識は無い。
 とりあえずこれもデイバッグへ移し、立ち上がる。

(もう……戻れないのね。いいえ、戻るつもりなんてないわ)
 決めたのだ。
 どんな手を使ってでも、必ず祐巳を生き残らせる。
 そして最後に自害しよう。
(待っていて……祐巳)
 悲壮な決意に身を固め、祥子は眼下に見える海のほうへと歩き出した。


【一条豊花(040) 死亡】
【残り114名】


124紅く紅く紅い薔薇(5/5改訂):2005/03/27(日) 11:13:02 ID:Wzw1Vji6
【C-2/高台/1日目・00:50】

【小笠原祥子】
[状態]:健康
[装備]:銀の短剣
[道具]:デイパック(支給品一式/食料&水二人分/ソーコムピストル)
[思考]:祐巳と自分が生き残り、最後に自害する

[備考]:C-2 → C-1へ移動します。

出典:
銀の短剣(卵王子カイルロッドの苦難)
ソーコムピストル(フルメタル・パニック!)


謝罪の言葉:
支給アイテム"グロック19"は、すでに風見千里が所持しているため、
"ソーコムピストル"に変更させていただきました。
以後、こんなことが無いよう、注意します。申し訳ありませんでした。
125道士と妖精は月夜に語らう ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/27(日) 11:48:10 ID:B9wpuGL3
保胤の元に静かに歩み寄るその人物は体の形からして女性のようではあるが、
首から上が存在していなかった。
頭のあるはずの空間がぽっかり空いているのだ。

「なっ!?」
陰陽道の道士としてそれこそ数え切れないほどの怨霊や化物を見てきた保胤であったが、
これにはさすがに驚いた。
相手が、死してなおこの世に想いを残し成仏できない怨霊や鬼の類であるなら、この姿もわからないでもない。
だが、目の前の女性(?)はそれらの存在とは明らかに異なる。
想いだけで存在している霊とちがい、この人物には実体がある。
また、雰囲気からして他人の体に霊が憑依しているのとも違う。
第一、生きた人間ならともかく首のない死人の体に霊が憑依するなど聞いたことがない。
とすれば、術により死人が操られているかまたは妖物の類であろうか。
しかし、それにしたとしても、もっと特有な気を発している様なものなのだが。

保胤が考えあぐねているうちに、彼女(?)は目の前まで来てしまった。
「どうも始めまして。私は慶滋保胤と申します。」
とりあえず、いつもの調子で自己紹介をしてみた。
彼女は少し肩をすくめると、紙と鉛筆を取り出して何かを書いて保胤に渡した。
保胤が月明かりに照らして読んでみると
『私はセルティだ。見ての通り口がないので喋ることが出来ない。
 言いたいことは紙に書いて渡す。』
と書いてある。(以後、セルティの書いた内容は『』で表します)
126道士と妖精は月夜に語らう ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/27(日) 11:49:02 ID:B9wpuGL3
「なるほど、解りました。ところでセルティさんとはあまり聞きなれないお名前ですが、
お生まれはどこなんですか?」
保胤が優しげに微笑みながら尋ねた。
『アイルランド出身だ。昔のことはあまり覚えてないが。』
保胤はアイルランドという国がどこにあるのかはわからなかったが、
セルティが遠い異国の人であることだけは、なんとなく理解した。
(もっとも、保胤の住む平安時代にはアイルランドという国はまだ存在していないわけだが。)

保胤が一人で納得していると、今度は少し乱暴に紙を手渡された。
さっきよりも少し雑な字でこう書かれてある。
『そんなことはどうだっていい。お前は私を見て逃げなかったが怖くないのか?』
どうやら少し苛立っているようだ。

セルティは普段外に出る時は、首がないのを隠すためにフルフェイスのヘルメットを常にかぶっている。
ところが、この世界に来た時ヘルメットは装備品に当たる、と判断されたらしく取り上げられてしまったのだ。
首がないのがバレバレのこの状態を見れば普通の人間は10人中9人は逃げだすだろう。
そして、残りの一人は化物を退治しようと攻撃してくるだろう。
残念だが、これが正常な人間の判断というものだ。
オマケに今は殺し合いゲームの真っ最中だ。
他人とコミュニケーションをとるのはまず無理だろうと、半ば諦めていたのだが・・・
目の前にいるこの男はこの状況下で、首なしの自分が近づいてきたのに
のんきに自己紹介をしたかと思えば、雑談まではじめたのだ。
よほどの阿呆か変人としか思えない。
127道士と妖精は月夜に語らう ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/27(日) 11:50:20 ID:B9wpuGL3
「いえ、正直驚きはしましたが、怖くはありませんよ。」
セルティの思いを知ってかしら知らずか、保胤は微笑を崩さずに答えた。
『お前も新羅みたいな変人なのか?』
保胤にとって予想外の反応が返ってきた。
「いや、その新羅という方がどんな方かはわかりませんが、
 私の場合は仕事柄その・・・ちょっと変わった方々と会うことが多いので」
保胤が困惑しながら答えると、セルティが今度は小刻みに震えながら紙を渡してきた。
『意味不明なこといってすまない。気にするな。』
どうやら笑っているようだ。
頭がなくて表情や声が出せなくても、字の形や仕草でその感情は伝わってくる。
本当は感情豊かな女性なのだろう、そう考えると保胤は少しおかしかった。

それからしばらく、セルティと保胤は砂地に腰を下ろしながら「会話」を続けた。
保胤が一番驚いたのはセルティが安倍晴明のことを知っていたことだ。
テレビとかいう道具で知ったらしく、彼女が言うには大昔の人物だという。
保胤は当初、セルティが勘違いしていると考えたが、詳しく聞いてみると本当に知っているようだ。
セルティはどうやら保胤よりもずっと未来の世界から来たらしい。
時の流れを操ることは陰陽師の力を持ってさえも、まず無理な話である。
時の流れを超えて人を集めた者とはいかなる存在なのだろうか。
保胤は今更ながら背筋を寒くさせた。

二人は話し合った結果、夜が明けるまではここ留まり、夜明けと同時に一緒に移動することにした。
本来、メモをする以外にはほとんど使い道のないはずの「紙」を最大限に活用するコンビが
今ここに誕生したのである。
128道士と妖精は月夜に語らう ◆RGuYUjSvZQ :2005/03/27(日) 11:53:09 ID:B9wpuGL3
【B−2/砂漠の中/一日目・01:20】  

チーム名『紙の利用は計画的に』(慶滋保胤/セルティ)
 【慶滋保胤(070)】
 [状態]:正常
 [装備]:着物、急ごしらえの符(10枚)
 [道具]:デイパック一式、 「不死の酒(未完成)」と書いてある酒瓶
 [思考]:セルティと一緒に行動。夜明けまではこの場所に留まる予定。

 【セルティ(036)】
 [状態]:正常
 [装備]:ライダースーツ
 [道具]:デイパック一式 (ランダムアイテムはまだ不明)
 [思考]:保胤と一緒に行動。夜明けまではこの場所に留まる予定。
129灯台の下で 1/3 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 12:07:38 ID:tZr5DgD0
卵王子…カイルロッドは、この状況に舌打ちをした。

「何が殺し合いだ……納得がいかない!」

急に集められ、そして殺し合いをしろなどという。
ふざけた事を言うあの人間に心底腹が立っていた。

「絶対にこの殺し合いを止めてやる……!」

湧き上がる心の中の焔は、もう止まらない。
そのまま無造作に支給品の袋をまさぐった。

「……乱暴な事はやめてくれませんか?」
「………ん?」

幻聴か?
何か声が聞こえた。どこからかわからないが、男性の声。
そういえばこの袋の中から聞こえてくるような……。

「ふぅ…窮屈だった」
「う……うわぁ!!」

中に入っていたのは、犬だった。
白いふさふさした毛を持つ、笑っているような顔の犬。
そして……喋っている。いや、それはこのさいどうでも良い。

「私の名前は陸、犬だ。シズ様は…どこだ?というかここは……」
「シズサマ?」

何やら自己紹介からさらりと独り言に移行している犬、いや…陸を見て、
カイルロッドはきょとんとした目で見ていた。
130灯台の下で 2/3 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 12:08:28 ID:tZr5DgD0
「ところで、あなたは一体?」
「ああ、俺はカイルロッドだ。呼び捨てで良い」
「ここがどこだか、そういった情報は?」
「いや、俺も訳が分からない」
「成程……」

しばらく唸る2人。
そして、また陸が口を開く。

「ところで、カイルロッド」
「何だ?」
「私はシズという男性の人間を探したいのですが、あなたはどうするんですか?」
「……そう、だな……」

ここで、彼に1つの提案が浮かび上がった。
ゲームを破壊するにしても、まずは仲間も必要だ。
ミランシャやイルダーナフの様な頼れる仲間が。

「じゃあそのシズっていう人を探そう。協力するよ」
「有難う御座います。頼りにしています、カイルロッド」
「だけど、あてもなく歩き回っても仕方が無いな……何か考えは無いか?」
「ではこの灯台を拠点にして動くことにしませんか?」

灯台。
そう、カイルロッドの降り立った場所には灯台があった。
砂浜から伸びるように建つ雄大な灯台。
成程、その案も悪くない。

「じゃあわかった、その案でいこう」
「わかりました」

1人と1匹は、行動を開始した。
131灯台の下で 3/3 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 12:09:08 ID:tZr5DgD0


【A-7/灯台/1日目・0:03】

【カイルロッド】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック(支給品一式) 陸(カイルロッドと行動します)
[思考]:陸と共にシズという男を捜す

[備考]:A-7を拠点とし、近くを捜索
132Samurai Justice ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 15:05:12 ID:n/Pv5zg7
侍というものは弱者を守り、そして悪を討たねばならない、だからこそ強くあらねば
正しくあらねばならない。
「ねぇ?その刀頂戴」
道行くシャナに声をかけたのは御剣涼子だ。
しかしシャナは涼子を無視し、スタスタと歩いていく。
「ちょっと!話聞いてないの!?」
涼子の詰問にも動じず、シャナは歩みを未だに止めない、たまらず涼子は全力ダッシュで
シャナを追い越して手前に立つ。
「あいつらと戦うには武器が必要でしょう、わかる?」
「だからどうして私の武器が欲しいわけ?」
ようやくつまらなささそうにシャナが応じる。
「私の方が使いこなせるからに決まってるからよ、こう見えてもお姉さん強いんだから」
「あきれた」
話にもならない、そんな表情でシャナは涼子を見つめる。

その表情が勘に触ったが、ここは抑える涼子…まぁこういう状況では仕方がない
だが、自分の実力を少し見せれば尊敬の眼差しでたちまち言うことを聞くに決まっている。
「いいかげんにしなさい、悪いことはいわないからお姉さんに渡しなさい、そんな物持ってたら危ないわよ」
勤めて優しくシャナの手をつかもうとした涼子だったが、
踵を返したシャナによって、それは空振りに終わる。
「あら?」
ムッとした表情で自分の手を見つめる涼子、今のは偶然だ、こんな小さな子が
「どうしたの?強いんじゃないの?」
シャナの瞳が危険な光を放つ、気がついた時には遅かった。
その時には信じられないほどの速度の抜き打ちが涼子の眼前で止まっていた。
「…ねぇ」
133Samurai Justice ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 15:05:34 ID:n/Pv5zg7
動けなかった…この自分が…というより見えなかった、それにこの瞳
涼子はシャナの瞳を覗き込む、その挑発的でいて冷たい視線は…一体。
「これでわかったかしら?」
「ええ、わかったわ…サムライとして貴方のような奴を倒さなきゃいけないってこと…」
それ以上の言葉を彼女は口に出来なかった、なぜならシャナの膝が見事に彼女の鳩尾に決まっていたからだ。
「口上を言う前に体を動かしたらどう?」 
ごほごほと咳き込む涼子にはもはや構わず、また先へと進むシャナ。

必死で呼吸を整え、反撃の機会を伺う涼子。
彼女から見えるシャナの背中はスキだらけだ、常在戦場という単語が涼子の頭に浮かぶ、
ましてここは文字通りの戦場…背中を向けた相手が悪い。
涼子はそっと気配を殺し立ち上がる。
狙いはシャナの後頭部…。
「スキあ…」
「あきれた侍もいたものね」
いつの間にか目の前にシャナの顔があった。
さらにもう一度衝撃、今度は掌底が涼子の鳩尾を貫いていた。

「武器が…互角なら…」
壁に叩きつけられ、今度こそ起き上がれそうにないダメージを受けた涼子。
「自分の弱さを認められずに今度は言い訳?」
そんな彼女の心を見透かしたようにシャナは冷たく言い放つ。
「殺しなさいよ」
憎憎しげにシャナを睨む涼子、もはや虚勢しか張れないようだ。
「そうしたいのは山々だけど、悠二が悲しむことはしたくないの」

「情けをかけたつもり?後悔するわよ」
「情け?そんなはずないわよ」
「あなたを斬ったって刃が穢れるだけだもの、そんなに侍が好きなら自分で切腹でもすれば」
自称サムライガールにとってそれは死にも勝る屈辱だった。
そして今度こそシャナは涼子の元から去っていく。
その背中に罵声を浴びせ続ける涼子だが、もはやシャナは涼子の言葉など聞いていなかった。
134Samurai Justice ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 15:06:27 ID:n/Pv5zg7
今、彼女が考えていたのは坂井悠二のことのみ
早く悠二を探そう、悠二に会いたい。悠二とならどんな苦しみにでも耐えられる、
共に生き、共に戦おう、それが叶わないのならば…せめて共に死のう。
「待ってて」
そう呟き、シャナは小走りで涼子の視界から完全に消えていった。

そして…涼子は怒りと屈辱にまみれたまま街をさ迷っていた。
それでも自分の力量が劣ってたとは決して思わない涼子…
正義は…正しい者が必ず最後に勝つのではなかったのか?ならなぜ自分は負けた?
彼女の脳裏にシャナの瞳がフィードバックされる。
そうだ…あの目だ、あの瞳の色に自分は敗れたのだ…あの瞳を乗り越えなければ
あの瞳を手に入れなければ、手に入れさえすれば…きっと自分の方が強いはずだ。
涼子は支給品であるナイフをそっとディバックの中から取り出す。
もののふとして決して使うまいと、自分にはふさわしくないと、つい先ほど封印した品だが…、
そこに。

「君も参加者かい?」
突然の声にぎこちなく振り向く涼子、そこには風采の上がらない一人の男がいた。
「私はヤン・ウェンリー…こうみえても軍人なんだ、不本意ながらね」
その男はぽりぽりと頭を掻きながら自己紹介する。
「ちょうど良かった…実は…」
涼子を弁護するならこれは事故といっても過言ではない、
武器を用意した人間が手を抜いていたのか?たまたま不良品が混じっていたのか?
とにかく、彼女がヤンの言葉に耳を傾けた瞬間、手に握られていたスペツナズナイフの切先が、
ヤンの心臓を貫いていた。
135Samurai Justice ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 15:13:08 ID:n/Pv5zg7
ヤンは一瞬驚いたような表情を見せたのみでそのまま壁にもたれるように崩れ落ちていく。
その体からどくどくと赤い血潮が溢れて止まらない。
そしてその様を見つめる涼子の目に畏れはなかった、逆に奇妙な充実感がこみ上げてくる。
そうだ、自分に足りなかったのはこれだ、この経験が私をより高みへと引き上げてくれる。
この人には申し訳ないが、殺すつもりはなかったのだからこれは不幸な事故に過ぎない。
この人の分まで私が正義のサムライとして他のみんなを悪から守ればいいだけの話だ、それで十分償いになる。

そして今度出会えば、今度こそあの子に勝つことができるはずだ。
「これで乗り越えた…これなら勝てるわ」
そう呟く御剣涼子、その表情は普段と何も変わりなかった。

【C-8/港町 /1日目・1:00】

【シャナ】
[状態]:健康
[装備]:刀(ただし鈍ら)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:悠二を探す

【御剣涼子】
[状態]:健康
[装備]:スペツナズナイフ 、ヤンの所持品全部
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:シャナに復讐/サムライとして人々(自分を肯定する者、従う者)を守り
     悪(自分と考えが違う者)を討つ 
     
【080 ヤン・ウェンリー 死亡】  【残り109人】
136パラダイス ◆wEO8WH7kR2 :2005/03/27(日) 15:48:47 ID:gaT2RdOe
その男は突然、むこうから気安く声をかけてきた。
「お互い、大変なことにまきこまれちゃいましたねえ」
ユージンこと天色優は話しかけられるまで、その男がその場にいることに気かなかった。
ここは見晴らしの良い海沿いの道だ。人がいたら気づくはずなのだが。
「あ、あなたはいったい・・・?」
その男は見るからにファンタジー世界の住人というような服装をしていた。
暗紫色のオカッパの髪が目を引く。
その男は人懐っこい笑顔を張り付かせて天色優を見つめていた。
「僕はゼロスと申します。よろしくお願いします。」
そこで一度、軽くおじぎをした。
天色優もあわててお辞儀を返す。
「ぼ、ぼくは天色優っていいます。」
「優さん。早速ですが僕の話を聞いてもらいます。」
ゼロスはそう宣言すると、優が返事をするのも待たずに一方的に話し始めた。
「僕は元の世界では獣神官という役職をしていましてねぇ。
 獣王ゼラス=メタリオム様の腹心、といえば聞こえは良いのですが、
 結局やらされるのはお使いと雑用ばかりなんです。」
突然、自分には何の関係もない身の上話を聞かされ優は戸惑っていた。
しかも、ゼロスはさっきから同じ笑顔のままで天色優をまっすぐ見つめたままだ。
優は気味が悪かった。
「先日もリナさんという人間のお守りを仰せつかりまして、
 大怪我は負わされるわ、人間ごときにあれこれ罵倒されるわと散々でした。」
137パラダイス ◆wEO8WH7kR2 :2005/03/27(日) 15:50:05 ID:gaT2RdOe
ゼロスは気にすることもなく、平然と人間を侮蔑する言葉を口にした。
天色優は厳密には人間ではない。統和機構に作られた生体ユニットだ。
だが、彼には人間の仲間がいた。大切な仲間達が。
その仲間を侮辱された気がして天色優はゼロスを睨みつける。
ゼロスはこれに全く動じず、何事もなかったように再び語りだした。
「この世界は説明にもあったとおり他の世界とは隔絶しています。
 人間どもの使う攻撃魔法程度の力程度なら、外から引っ張り込むことも可能なようですが、
 意思を持った存在が外からこの世界に干渉を仕掛けることは事実上不可能です。
 もっとも、あの方でしたらあるいは可能かもしれません。」
このゼロスという男はさっきからいったい何を喋っているのだろう。
天色優はゼロスの話の意図がさっぱり読めなかった。
こんなことに付き合っていても気分が悪くなるだけだ。
「僕はもう行きます・・・。さようなら。」
天色優はそれだけ言うとゼロスに背を向けて道沿いに歩き出した。
その背に向けてなおもゼロスは話を続ける。
「繰り返しになりますが、この世界には外から干渉することは出来ません。
 それは獣王ゼラス=メタリオム様も魔王シャブラニ=グドゥウ様も例外ではありません。」
天色優は歩きながらも不安に襲われていた。理由はわからないが心の中の何かが警鐘を鳴らしている。
「つまり、僕は今、誰からも命令される立場にないのです。
 自由な上、とても暇なんですよ。だから・・・」
天色優は不安に耐えられなくなり、ゼロスの方向に振り向いた。
すぐ目の前にゼロスの笑顔があった。最初からずっと同じ表情のままだ。
138パラダイス ◆wEO8WH7kR2 :2005/03/27(日) 15:51:50 ID:gaT2RdOe
「僕は魔族の本能に従って、負の感情をたっぷりといただきます。」
ゼロスはそういうと、手に持った錫杖を天色優に突き刺した。
「ぐ・・・が・・・!」
天色優は口から血を吐き出す。
ゼロスは苦しむ天色優の耳元で楽しそうに囁いた。
「僕達、魔族にとってこの世界はパラダイスなんですよ。
 人間たちが勝手に殺しあいをしてくれているので、負の感情が常に満ちあふれています。
 おまけにうるさい上司にも干渉されません。これ以上のパラダイスはそうはないです。」
天色優は最後の力を振り絞り、耳元で囁くゼロスの首筋に指を突き刺そうとした。
彼の指からは特殊なリギッドが分泌される。
これを体内に注入されると、その個体は跡形もなく爆散する。
(僕はもう助からないにしても・・・こいつだけは、こいつだけは殺しておかないと!)
天色優の指がゼロスの首に突き刺さる、と思われた瞬間。
ッシュ!! という鈍い音が辺りに響いた。
ゼロスが錫杖を持っていない左手で天色優の首を一閃したのだ。
ユージンこと天色優の首がゴロンとその場に落ちた。

【E−8/海沿いの道 /1日目・1:00】

【ゼロス】
[状態]:バカンス気分
[装備]:錫杖(魔族の体の一部)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:負の感情をいただくためにあちこちを徘徊する。

【051 ユージン(天色優) 死亡】 【残り108人】
139Shifty Criminal(1/3):2005/03/27(日) 16:28:59 ID:fZ2+ndks
「……墓、ね。」
不自然に積まれた土と、不自然に立てられた木片。そして周囲に散らばる血痕。
こんな状況下で他人の墓を作っていられる神経に驚きながら、クエロ・ラディーンは一人ため息をついた。
最低なゲームを安全な立場から見下ろす主催者には虫酸が走るが、いち参加者である自分にはどうしようもない。
……いまのところは。
(ま、報復はゲームが終わった後ね)
この状況を脱することが先決と決め、クエロはデイパックの中身を確認し始めた。
ゲームに乗るわけではない。かと言って他の参加者と心から仲良く手を取り合って脱出する気もない。
(最初から殺しまくってる馬鹿は殺す。主催者打倒を目指している奴らを集めましょ)

確かに、自分一人で参加者の大半をスマートに殺すことが可能ならばそれでもいいが、それは不可能だ。
だが、この状況下だからこそ、ゲームに乗らずに脱出を計り徒党を組むものが何組かはいるはずだ。
もちろん大半は他人が信じ切れずに自滅してしまうだろう。
だが、何組かは確実に、数の暴力と強い決意でマーダーを潰しながら主催者打倒へと連帯感を強めてくる。
中盤以降にそういう奴らが増えればマーダーの方が確実に不利になる。
そして、そういう“反逆者”の力が何らかの理由で主催者側よりも強くなってしまったらどうなるだろう?
クエロが出した結論はこうだ。
まず主催者側に反抗する者として仲間を集め、積極的に団体を引っぱり信頼を勝ち取る。
そして終盤、主催者側の出方により、最終的に脱出組に残るかマーダーになるかを決めるのだ。
マーダーになる場合裏切るタイミングが難しいが、最後まで無駄なあがきをするよりはいい。

食料や日用品を広げていき、最後に奥の方で鈍色に輝く小さなものを見つけて、クエロは口元をゆがめた。
デイパックには、少し大きめの弾丸が入っていた。いや──咒弾だ。それも高位咒式用の。
もちろん、魔杖剣がなければただの鉛玉ではあるが。
(これが入ってるって事は、魔杖剣も誰かに支給されているはず。出来れば入手したいわね)
一通り確認してデイパックを閉めると、クエロは振り返って声を投げかけた。
「大丈夫、私は戦う気はないわ。怖がらないで」
先程からじっと感じていた気配に向かって、出来る限り優しい声で、話しかけた。
140Shifty Criminal(2/3)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/27(日) 16:29:36 ID:fZ2+ndks
しばらくすると、疑いと怯えを目に浮かばせて、金髪の少女がしげみから出てきた。手にはナイフを持っている。
「私はこの島から脱出しようと思うの。できれば、誰も殺さずに。あなたとも協力したいんだけど、いいかしら?」
「……本当、に?」
「証拠はちょっとないわね。もしあなたが信じてくれないなら、私はすぐにこの場から立ち去るわ」
「…………」
少女はしばらく逡巡した後、ナイフをデイパックの中にしまった。
「どうせ一人じゃ殺されるだけだし……オーフェンやマジクと会うまでは、一緒にいるわ」
「そう、よかった。私は少しは戦えるんだけど、一人じゃ心細くて」
自嘲の笑みを浮かべ──るふりをしながら、クエロは少女に近づいた。
「私はクエロ・ラディーン。あなたの名前は?」
「……クリーオウ。クリーオウ・エバーラスティン」
「そう。じゃあクリーオウ、とりあえず休める場所を探しましょうか。まずは気を落ち着かせましょう」
緊張でがちがちになっているクリーオウの肩にそっと手を置き、少女の視線まで腰を低くして話しかける。
「……うん」
「それから、あなたの知り合い──オーフェンさんとマジクさん、だった?を探しましょう」
「……ありがとう」
「いいのよ。こんなときこそ助け合わなきゃ。私の方は、知り合いの名前はあったんだけど──頼れる人じゃなくって」
「じゃあ、一人なの?かわいそう」
「ええ。だからちょっと寂しくて。でもあなたと会えたから、大丈夫になったわ」
少し落ち着いたか、クリーオウが堅い表情をゆるませた。クエロもそれにつられて穏やかに笑っ──てやった。

名簿には、あのガユスとギギナの名前もあった。ギギナはともかく、ガユスは必死に脱出の方法を練るだろう。
彼らに会えば自分の魂胆がばれる。ならば、彼らに見つかる前に、彼らよりもより多くの人間から信頼を得ればよい。
(私に会うまでに、楽に死なないでね?)
胸中で嘲笑を浮かべ、クエロはクリーオウを連れて歩き出した。
141Shifty Criminal(3/3) ◆l8jfhXC/BA :2005/03/27(日) 16:30:21 ID:fZ2+ndks
【A-1/海岸 /1日目・1:00】

【クエロ・ラディーン】
[状態]:健康・演技中
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、高位咒式弾(汎用)
[思考]:休める場所を探す→仲間を集める・魔杖剣(クエロの魔杖短槍か<内なるナリシア>)を探す→後で裏切るかどうか決める

【クリーオウ・エバーラスティン】
[状態]:健康・やや緊張気味
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、普通のナイフ
[思考]:休める場所を探す→クエロについていく(オーフェンとマジクを探す)

【残り108人】
142奈々死 ◆cCdWxdhReU :2005/03/27(日) 16:47:59 ID:hcVWt5Jg
こういう状況になるとわかっていたら、
こんな制服なんかじゃなくライダースーツを着ておけばよかったな。
霧間凪(048)は灰暗い倉庫の中、ガラクタを跨ぎつつ嘆息する。
服には誇りが付着してしまい、お世辞にも綺麗とは言えない有様だ。
凪は現在D-3、住宅地帯にいる。その目的はもちろんこの殺し合いの中で生き残る。
ひいてはこの状況から脱出するために必要なものを集めるためだ。
心の中でどれだけ脱出してやる。死にたくないなどと言うのは馬鹿でも出来る。
だがそれに対し、何もしなければそれは妄言を吐くのと変わらない。
1時間程住宅街を歩き回り、いくつかの使えそうなものは見つかっていた。
缶詰が三つに救急箱、他にも鋏や糸、針などの雑貨を既にバックパックに詰め込んでいる。
あとは外との連絡手段なんかが手に入ればいいんだが……。
ガタガタと右手に杖を持ちながら器用にガラクタを動かし、使えそうなものを探す。
なにやら古めかしい瓶やらバケツ。鉄の箱などそれは様々だ。
ふと目に入ったダンボールを開けると、見た目にも新しいホルスターに収まったサバイバルナイフが目に入る。
手に持ってみるとそのナイフは重量感もあり、ケースから出して見ても切れ味もなかなかのようである。
実戦での使用も可能と判断した凪はナイフを持って行くことにし、制服の内ポケットに収める。
他には何もなさそうだな。
ガラクタをあらかた調べ終わり、
入ったときよりも多少は片付いたように見える倉庫を見回し凪は思った。
ただし、一部ガラクタがタワーのようになってしまっているが、
触らなければ問題はなさそうなので凪は放置しておくことにした。
周りに人の気配はない。
143奈々死 ◆cCdWxdhReU :2005/03/27(日) 16:48:54 ID:hcVWt5Jg
しかもここはやや入り組んだ位置にある住宅の倉庫だ。
目立つような真似をしなければ見つかることはないであろう。
凪は手近にあった箱に腰掛け、バックパックから取り出した水を煽る。
結構な時間、埃の多いところで行動し続けた体にはそれはとても心地よく、
体の中の澱みを洗い流してくれているようだ。
とりあえずはこの呪だかっていうのを外しておかないと話にならないな。
というか本当に呪なんてものがあるのか?
だがあの剣士達の死に様を見る限り、そ
れを嘘だと言うよりは本当に呪はあると考えたほうが理屈が通る部分が多い。
この支給品にしてもその力の一端があるようにも思える。
どちらにしてもまだなにも手がかりと呼べる代物も無い今では、
この状況から身を守るしか方法というものは存在しないのであるが。

3分という常人には短いであろう休憩を終え、凪は立ち上がる。
当てはないがとりあえずもう少し清潔なところに行こう。
ここでは息が詰まって仕方が無い。
出口である扉に、支給品の杖を手に向かう。
と、そのとき

ガッシャーーーーーーーーン!!!!

金属、木製品、陶器、様々な音の交じり合った盛大な不協和音が背後に響き渡る。
凪は警戒する。積んでおいたガラクタに立ち上がったときに触れてしまったらしい。
この大きな音を誰かが聞いていたら大変まずい。
特に殺し合いをしようなんて輩が来た場合にはだ。
息を潜め、外の気配を探る。静けさの中、凪の鼓動が騒音へと変貌する。
144奈々死 ◆cCdWxdhReU :2005/03/27(日) 16:49:36 ID:hcVWt5Jg
………………。
どうやら、周りには誰も居なかったらしい。
しかし、いつまでもここに居るのは得策ではないことはわかりきっていることだ。早くどこかに移動しよう。
そう思い、凪は杖を構え外に出ようと――
「いるのはわかってんだぜ。ネズミさんよー」
ハスキーな声が広がる。
く、気付かれていた!? しかし気配は感じなかったのに何故?
杖を持った右手に力がこもる。
「出てきてくんねーならよー、」
空気が止まる。
「こっちから行くぜーっ!!」
その刹那、扉が蹴り飛ばされ、出刃包丁を構えた銀髪の小柄な少年が飛び込んでくる。
「いようねーちゃん、どうする俺を殺すかい? それとも殺されるかい?」
顔に刺青を入れた少年はそう問う。
「悪いが殺す気も殺される気も無いな」
凪は杖を構え、緊張を保ちつつ少年に言う。
少年の右手に持った出刃包丁は適当に構えているといった印象にも関わらず、少年には隙といったものがまったく無い。
「そうかい。だがそんな戯言が通じると思ってんのかよ、あんた。そんな杖一本で」
「ああ、降りかかる火の粉くらいは払わせてもらうがね」
銀髪の少年を睨み付ける。
少年も凪を見つめ返してくる。
倉庫の中でしばし時は止まり、空気が凍る。
そして少年は突然笑い始めた。
「くくく、傑作だぁな。背が高くて腕もいい、予定では殺しとくはずだったんだが、好みの女を殺してもつまんねーや。見逃してやんよ」
少年は笑顔で言う。
「じゃあな、ねーちゃん。音は出さないようにしとけ。次会ったときは殺すかもしんねーからな」
145奈々死 ◆cCdWxdhReU :2005/03/27(日) 16:50:34 ID:hcVWt5Jg
そう言って堂々と背を見せて歩き始める。
まるで後ろから凪が攻撃しても当たることなど絶対に無いかの如く。
「待て」
凪は少年の背に向かって声をあげる。
「ぁん? なんだやっぱり殺されっ、なーーーーー!!!!――」
瞬間、凪の手の中、金属製のその平凡な杖から巨大な鰐の顎が生まれた。
石で出来た巨大な鰐、そのあまりにも予想外な伏兵が少年へと突き進む。
床のコンクリートを削り、噴煙を巻き上げその巨大な質量が小柄な少年へと叩き込まれる。
鰐の顎は少年に喰らいついた。それは少年の体を巻き込み体全体をその口の中に収める。
いつもの少年なら避けられたのかもしれない。しかし、彼はまったくの油断をしていた。
凪が武器を杖しか持たないこと。
その杖がただの杖だと思ったこと。
そして相手が女とタカを括ってしまったこと。
鰐の顎で体を挟まれ、身動きが取れなくなりながら少年は言った。
「ちっくしょー、卑怯だぞ。殺す気はないって言ったじゃねーかよ」
「ああ言ったな。殺す気は無い。だが捕まえる気はある」
凪は少年に向かい、フフンと笑みを浮かべ、少年はなんだよそれと毒づいた。
146奈々死 ◆cCdWxdhReU :2005/03/27(日) 16:50:57 ID:hcVWt5Jg
【残り108名】

【D-3/住宅街/1日目・02:30】

【霧間凪(048)】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:少年(零崎人識)を捕獲。とりあえず殺すつもりは無い

【少年(零崎人識)083】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:捕獲されている。凪に対して殺意はあまり無い
147奈々死 ◆cCdWxdhReU :2005/03/27(日) 16:52:02 ID:hcVWt5Jg
すいません↑のの名前は
『暗闇の中』
で、お願いします
148大絶叫(1/4) ◆t4u50oq2Wo :2005/03/27(日) 17:56:12 ID:fc5T54Ei
二時間ほどたった気がする。湖の影はいつしか消えていたが、マジクはそれでも動かなかった。
慎重に慎重を重ねることにしたのだ。
もう、死人は出ていたりするのだろうか。開始前に二人が死んだが、その死に方は壮絶と言って
更に有り余る惨劇だった。誰も死んでないとすれば、後二十一時間ほどで、自分もそうなる。
(それはイヤだな、さすがに)
そうだといって、自分が誰かを殺すことなど、考えられることではない。
(目標は変わらず、だ。よし)
今度こそ意を決し、茂みを抜けて湖の南の岸を目指し、走り出そうとした。
「その髪の毛は暗闇でもよく映えますねぇ」
また、動きを止めた。今度は心臓がドキリと鳴った。背後から聞こえた脳天気な声。
「けれど、こんな状況だとピンチを呼びますよ」
恐る恐る振り返ると、一人の男がそこにいた。微笑みを浮かべている。手には錫杖。それ以外には
特に変わった物はない。バッグを背負っているくらいだ。
突然の状況変化に、マジクの取った行動は、とりあえずオーフェンを真似てみることだった。
(状況を最大限的確に把握。この人は何で近づいてきたんだ? 一人が怖かった? いや、
 そうは思えないよな。なんか余裕ありそうだし。仲間集めかな)
それもちょっと違う気がする。自分で言うのも何だが、頼りになりそうに見えるとはとても思えない。
男はマジクが黙りこくっているのを見て、あぁ、と合点が言ったようにしゃべり出した。
「これは失礼、僕はゼロスといいます。ホラ、最初に馬鹿な男が二人死んだでしょう? あの
金髪の方と同じ世界からやってきました」
149大絶叫(2/4) ◆t4u50oq2Wo :2005/03/27(日) 17:56:49 ID:fc5T54Ei
(・・・・・・なんだって? 『馬鹿な男の金髪の方と知り合い』?)
マジクを激しい寒気が襲った。自分の知り合いを、大まじめに罵倒した。
男は続けて、先ほどしゃべったのと同じ内容の文句をつらつらと並べ立てる。その間にマジクは
決心した。この男はヤバイ。逃げないと。失敗は許されない。ゆっくりと魔術を構成してゆく。
「そんなわけで---」
男ははたと、話すのを止めた。顔に相も変わらず不気味な笑みを浮かべ、細くなった目の間から
マジクを見据える。恐ろしい程、光の無い目。
「それは珍しい術ですね? 少なくとも、僕たちの世界とは全く違う」
危うく、構成が霧散しかけた。魔術師以外には見えるはずのない構成が、この男には何故か見えている。
そのショックを押さえた。押さえた。ここで失敗すると、後がないのだ。
「まぁそんな訳で、僕はあなたを殺します。おっと、その前に名前を教えて頂けませんかねぇ?
 いえ、呪文のような物を唱えようとしたらその前に殺しますが」
「・・・マジク」
「?」
小声で呟いたので、男は聞き取れなかったようだ。
「僕の名前は、マジク・リンだ」
今度は聞こえるように、言った。そして次の瞬間には、目に見えない熱線が男を吹き飛ばしていた。
茂みの中、なんとも間抜けな表情で地面に叩きつけられた男を確認することもなく、マジクは湖の方へ走り出した。
(南の森はあの人が出てきた所だから行けない!)
そう考え、湖の西に広がる森に逃げ込むことにした。実際、気絶したとは思えないほど弱い術だった。彼らの
能力が制限されていることを知らないマジクは、己の実力不足に腹を立てる。
150大絶叫(3/4) ◆t4u50oq2Wo :2005/03/27(日) 17:57:16 ID:fc5T54Ei
南の畔まで走り、息が上がってきた。
(そういえばお師様、全力で走れるのは十秒間だって言ってたな)
けれど、走るのを止めるわけにはいかなかった。転送の魔術は自分では難しすぎて使えない。
「驚きましたよ」
いきなり背後から声がきこえた。
「呪文を唱えずに魔法を使えるなんて、とても珍しいですねぇ」
それと同時に、右腕に衝撃が走り、マジクは体勢を崩して転んだ。
一瞬、何が起こったのか判らなかった。ボチャ、と音がして、自分の右腕の肘から先が湖に浮かんだ。
激痛。

「わあああああああ!!」
ゼロスは思わず耳をふさぐ。目の前の少年が悲鳴を上げたのだが、その声量たるや、今にも鼓膜が破れそうなほどであった。
この悲鳴は恐らく、かなりの遠くまで届くだろう。すると、何事かと、参加者がゾロゾロ集まってくるに違いない。
「好都合と言えば好都合ですが・・・あまり集まるのも考え物ですね」
だが、使えることに違いはない。とりあえずは、この少年を見守ろう。

目の前で、先の無くなった腕から血が噴き出す。彼はパニックに陥り、血を止めるためにと、切断面をグッと握りしめた。
もちろん、止まるはずもなかった。
「い゛っ・・・・いだっ! ぐ、ぐ、クソッ! 痛い・・・」
顔の穴という穴から汁を拭きだし、うずくまったまま、彼は言葉に鳴らない悲鳴をあげる。それはいちいち大声量で、
言葉の度に暗闇にこだまが走る。
151大絶叫(4/4) ◆t4u50oq2Wo :2005/03/27(日) 17:58:11 ID:fc5T54Ei
「腕を無くしただけでこれだけ喚くとは」
男が呆れたように呟いた。
「あなた、戦い慣れしてませんね? それとも、怪我になれてないのか。どちらにしろ、目の前の敵を
 忘れるというのはどうかと思いますがねぇ」
マジクは見ていなかったが、男は辺りを見回した。
「ほら、人の気配がしてきましたよ。そろそろあなたも用済みです」
それを聞いて、マジクは顔を上げる。顔が不気味に歪んでいる。
(死ぬのか・・・?)
「さよなら」
(死ぬのか?)
男の持つ錫杖が、マジクの胸を貫いた。
(死ぬの・・・か? お師・・・様・・・)
「いただきます」

【D-6/湖南の畔/一日目2:46】

【ゼロス】
[状態]:バカンス気分
[装備]:錫杖(魔族の体の一部)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:負の感情をいただくためにあちこちを徘徊する/集まって来るはずの参加者を適当に待つ

【115 マジク・リン死亡】
152血と鉄 1:2005/03/27(日) 18:01:18 ID:iA63+AK1
「・・・・・・・・・・うげえ」
我ながら情けない声で目の前に転がる少女の死体を見下ろす。
赤く濁った血はまだ乾いておらず、鉄臭い水溜りをあたり一面に作っていた
少女の瞳孔はぱっくりと開き、そのグロテクスさに思わず背筋が凍る
(まったく・・・・・・・・どうにもこうにも最悪だな)
    
非日常には慣れている。入学式の日、あの馬鹿に出会ったおかげでな
不気味な巨大カマドウマと対峙したこともあるし、夏の孤島の殺人事件(小泉の狂言だった訳だが)に
も付き合わされた
・・・・・・・・まあ一番困ったのはこれらすべての元凶であるあの馬鹿女、ハルヒが突然学校の連中全
員に忘れ去られたときのことなんだがな
今回もそう、ハルヒの奴がつまらない漫画でも読んで思いついた冗談だろう。あとでこっぴどく叱ってや
らないと----------最初の最初はそんな風にばかり考えていた

 だが目の前に広がる少女の死体と血の匂いはこれらすべての非日常が改めて今、ここにある現実とは
まったく違うことを無言で教えてくれた。
 殺される。問答無用。
      ・・・・・・・逃げられない。
153& ◆35sraMq3/o :2005/03/27(日) 18:02:49 ID:iA63+AK1

 「・・・・・・・・・・・・・・・・」
無残にも置き去りにされた細い死体。変な方向に曲がった首をゆっくり修正し、大きく開いた瞳孔を指で
閉じさせる。
服がまだ固まりきっていない血で汚れるが、そんなことどうだっていい。
学ランなんてどこかに脱ぎ捨てればいいさ
せめて誰かが弔ってやらないと・・・・・・・・

しかし眠るように眼を閉じた少女の顔は想像以上に整っていて
ハルヒや長門、朝比奈さんの姿を連想させ、彼女たちが無残にも殺された姿をイメージさせ
いったん収まりかけた吐き気が水門を破った洪水のようにむせ返してきた
    
 「ぐえっ・・・・・うっ・・かはっっ、あっ・・・・・・・ぐっっ」
すぐ近くの草むらに口元から溢れる大量の汚物を吐き捨てる。
鼻につく気持ち悪い匂いが当たり一面に広がる鉄の匂いと交じり意識が跳びそうになった 
しかし何も吐き出せなくなった胃はそれでも飽き足らず今度は胃液まで流し込んだ
口中に気味悪く酸っぱい味が広がり、それが気持ち悪くてまた排泄する
 「あ、ああっぐっ・・・・・・はあ、うっ・・・・・・」
154血と鉄 3:2005/03/27(日) 18:04:52 ID:iA63+AK1
目の前に広がるテレビのノイズのような景色に頭がおかしくなる。聴覚がイカレてしまう。
臭い、汚い、死体、どうしようもない。
    ・・・・・・・・・逃げられないのか?
 「・・・・・はあ、はあ」
笑いたくなる、だが笑えない。
そうだよ、俺がこんなんでどうするんだよ。今までもなんとかしてきたじゃあないか。
これがやつらの陰謀なら、なんとしてでもここから生き延びてやる。
・・・・・・・そうハルヒも長門も朝比奈さんも古泉も、みんな一緒に。
思い通りには、させない
    
・・・・・・・・・とにかく、とにかくだ、
「・・・・・・・・・・・・・・みんなを、探さないと。」    

【残り107人】
【C-2/高台/1日目・1:28】
【キョン(087)】
 [状態]:若干体調不良。
 [装備]:豆腐セット、醤油のボトル
 [道具]:通常の初期セット
 [思考]:怒り。SOS団の仲間を探しに移動

【C2地点にてキョンの学ランが脱ぎ捨てられました】
155死と向き合って(1/2):2005/03/27(日) 18:12:48 ID:OzeuekUZ
一条京介(39番)はふと考えた、このゲームは一体何人参加しているのだろうかと、そして何故こんなゲームに自分が参加しているのか。
ポケットをあさり偶然残っていた煙草に火をつけ考える。
「なぁ、何でこんなゲームが始まったんだ?」
涼宮ハルヒ(88番)に尋ねてみるが答えは返ってこない、別に無視されるのはなれているので気にも留めず歩き続ける、二人は豊花がミクルが死んだ事を知らない、
「知らないわよ、私だって非日常の面白い事を探していたけど、こんなの面白くもなんともないわ」
と、いきなり質問に答えられた、しかし京介はそんな会話には終止符を打っていた、自分等以外の人を見つけたからだ、
「少し喋るのを止めてくれ、人が二人居る片方は多分死んでいる。」
確認出来たことを手短につたえマグナムを持ち直す、そこで頭にふと選択肢はよぎる、
1、そこに居る女(御剣涼子)を殺す
2、別の道を通って殺生は避ける
2を選びかけて京介は思うアイツは人を殺している豊花と接触したら豊花を殺すかもしれない、
「アイツは人を殺している、しょうがないから俺はアイツを殺す。」
そう呟くと、狙いを付け引き金を引く、
パンッと言う乾いた音と共に銃弾が吐き出される、弾は涼子の胸を貫き大量の鮮血が飛び散る。
涼子はいきなりの攻撃に驚きながら倒れた、
「悪いな・・・豊花に危害を加えそうな奴は俺が消すって決めたんだ・・・」
そう呟き今亡き涼子の死体に近づいていった
156死と向き合って(2/2):2005/03/27(日) 18:24:09 ID:q4PbUNo2
京介が涼子のカバンをあさるとスペツナズナイフが5本入っていた、京介は顔をしかめながら、
「これはもらっていく・・・」
そう言いながら、静かに黙祷を捧げた、
「これでも持つといい、その武器・・・フライパンじゃあどうにもできないだろ。」
そういってハルヒに渡すとハルヒはいきなり暗くふさぎこんでしまった、
「ねぇ、あんたまさか・・・さっき人が居るっていったけどまさか、殺したの?」
「あぁ・・・殺した、そうするしかできなかった。」
「そう・・・」
「そうだ・・・」
二人の中に沈黙が訪れる・・・京介は考える、もし豊花が俺が殺人を自分のためにした知ったらどう反応するのだろうかと。


【一条京介(39番)】

装備アイテム・マグナム
所持アイテム・支給品一式
思考・豊花を探す

【涼宮ハルヒ(88番)】

装備アイテム・フライパン
所持アイテム・支給品一式 スペツナズナイフ
思考・SOS団の復活


【御剣涼子(66番)死亡】

【残り106人】
157絶対零度の微笑を(1/2) ◆qEUaErayeY :2005/03/27(日) 18:29:53 ID:D9lN3yCm

 風が、凪ぐ。潮の香りを乗せて・・・。

「ここはとっても素敵な世界だね。とっても興味深いよ。
 ・・・でもね、私はもとの世界に帰らなくちゃいけないんだ。」

 ポケットから、息を引き取った少女の髪と同じ色のハンカチを取り出し、こびり付いた血をふき取る。

「まだ夜会(サバト)も終わってないし、私の世界には導いてあげなきゃいけない子が、
 まだまだたくさんいるんだよ。
 私のお仕事・・・。たっくさんの子を魔女にしてあげるの。“できそこない”にならないようにね。」

 今は動く事を止めた少女。その少女の首は、ぱっくりと裂け、
 おびただしい程の血が少女の白い頬を髪を、紅く、紅く染めていた。
 少女のディパックを開き、今度は武器となるもの探る。めぼしい物を見つけ、自分のバッグにしまった。

 一連の動作に無駄は無い。そして楽しそうに終始笑みも絶やさない。
 別に今の状況を楽しんでるわけでは無いのに・・・。
 
「もし・・・今度また会えたら、その時はお友達になろうね。私は貴女をけして忘れないよ。
 貴女の顔も、その綺麗な真っ白い髪も、魂のカタチも・・・」

 魔女、十叶詠子は別れを告げ、その場を後にした。
 寒気がするほどの無邪気な微笑みを浮かべて。

「・・・“影”君は無事かなぁ?」
158絶対零度の微笑を(2/2) ◆qEUaErayeY :2005/03/27(日) 18:32:34 ID:1BZrxpDL

【残り105人】
【死亡 ティファナ(021)】
 
【H-7/海岸/1日目 02:13】
 十叶詠子(005)

状態:健康 
装備:メス
所持:支給品一式、閃光手榴弾1個(ティファナから拝借)
思考:元の世界に戻るための行動を優先。しかし参加者を殺すかは時と場合による。
   H-7からH-6へ移動中
159奇妙なコンビ:2005/03/27(日) 18:34:50 ID:n24WuOlu
「ねえ、ちょっと休まない? 彼此数十分歩きっぱなしじゃない」
その少女は、言葉通り疲れた風な息を一つ吐いて、先を行く男の背中に言った。
男は、彼女のふてぶてしさを感じる言葉に、足を止めて振り返った。
ちぎれっけを撚りまとめ、短い房を何本も束ねたドレッド・ヘア。
花柄で、所々に明らかな銃痕や焼け痕が見える上衣。
そして極めつけは、左目を覆う、黒光りした眼帯。
その鋼のように鍛え上げられた肉体と相俟って、誰がどう見ても堅気の人間ではない。
一見そこらにいる何の変哲も無い学生のようにしか見えない彼女の連れ合いとしては、
どうも不釣合いだが、この男に向かって冒頭の台詞を言ってのけるぐらいだからやはり彼女とて只者ではなさそうだ。
事実、彼女――九連内朱巳は統和機構という何だかわからないがとにかく強大な組織に、
己の舌先三寸と機転――云わばはったりだけで転がり込んだ異端児であり、まあ常人ではない。
しかし、振り返りこちらを見下ろす―男は身長2m程の巨漢だった―
その隻眼の光の凄まじさは彼女をして文字通り凍り付かせるほどのものだった。
「休みたければ勝手に休め。ついてくるのと同じようにな」
ぞくりとするほど錆びた声で男は言い放った。
そもそもこの二人が出会ったのは、ゲーム開始の直後だった。
彼らはお互い、海岸沿いの崖に転送されたもの同士である。
その辺りには遮蔽物がなく、彼らは開始早々に相対すことになった。
いきなりこのようなゲームに参加させられて、転送先で隻眼の巨漢と出会い流石に朱巳も己の生命に危険なものを感じたが、
男はちょっとこちらを見たっきり、所持品を手早く確かめて後、地図を片手に歩き出してしまった。
何となく拍子抜けしてしまったが、直感的に男の只者ではない雰囲気を嗅ぎ取り朱巳はこの男にくっ付いて行く事に決めたのだ。
160奇妙なコンビ:2005/03/27(日) 18:37:48 ID:n24WuOlu
朱巳は、はなっからこのゲームに乗る気は無かった。
そりゃあ死にたくは無いが、元来我が強く―
その性格の御蔭で統和機構なんていつ死ぬかわからない組織に入ってしまった感もある彼女にとって、己の意を通すことの方が身の危険よりも大事なのだ。
この先、状況次第ではこんなことを考え付いた誰かを、
ぶっ潰してやろうとも考えてはいるが、差し当たっては、安全の確保が重要だ。
とち狂ってこんな馬鹿げたゲームに乗った奴に襲われて殺されるなんて真っ平御免だ。
だから、彼女は男に付いて行った。
命を守ってくれる保障は無いが、今の接触から見て、命を取られることもなさそうだ。
ならば、一緒にいる限り、襲撃者は共通の敵になることは変わりない。
あわよくばこの男を誘い、主催者打倒に協力させよう―当初はそこまで考えていた。
が、十数分たった現在。
彼女が付いてくるのを気にも留めず、
そのままぶっちょう面で歩き続ける男に流石の彼女も精神+肉体両方で我慢の限界を迎えて冒頭のやり取りに至るというわけだ。

――朱巳に向かい、どうでもいいといった台詞を言ってそのまま歩き出そうとする男に、
彼女は少し慌てて「待ってよ!」と声を上げた。
また男が胡乱げに足を止める。
「こんな可愛い子一人おいていこうなんて、酷いんじゃない?」
「――可愛い子って玉か、お前」
「あら、心外ねお兄さん。ひょっとして目が悪いの?」
ぎろりと睨むその片目に、ふてぶてしい笑みを返してやる。
「だいたいねえ、どんな目論見があるのかしらないけど、闇雲に歩いてたってしょうがないでしょ? 
 ちょっと立ち止まって状況を把握することも必要よ」
「別に、闇雲に歩いてるわけじゃねえよ」
「うっそだあ」
「………」
男は苦々しげに沈黙した後、周りの遮蔽物一つない平地を見渡して言った。
「休憩するにしても、ここらじゃ都合が悪い。あっちの草むらに着くまで我慢しな」
「よっしゃ!」と思わず声を上げそうになり、慌てて止めた。
161奇妙なコンビ:2005/03/27(日) 18:38:27 ID:n24WuOlu
とにもかくにも、男は彼女の意を汲んでくれたらしい。
一度和解してしまえば、後は彼女の本領発揮である。
早足で男の横に並び、男の野生的な横顔を覗き込む。
「これで私たち、チームね。まあ仲良くやりましょうよお兄さん。私は九連内朱巳。あなたは?」
男はいつからチームになったんだ、と言わんばかりに睨んできたが、朱巳は気が付かない振りをした。
ある意味、あつかましさもここまでくれば爽快さすら感じてしまう。
男もそう感じたのか、はたまたうんざりしてどうでもよくなったのか、そっぽを向いて、朱巳の質問に短く答えた。
「屍刑四郎」
「凄い名前ね、芸名?」
「お前に言われたくはない」
「ははは、そりゃそうね」
こうして、<凍らせ屋>屍刑四郎と<傷物の赤>九連内朱巳のコンビはどうやら結成されたらしい。

【D-7/平野/1日目・0:18】

 【九連内朱巳(050)】
 [状態]:正常
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(至急品入り) 
 [思考]:屍に付いてく

 【屍刑四郎(111)】
 [状態]:正常
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(至急品入り)
 [思考]:休憩する

【残り105人】
162運命 ◆E1UswHhuQc :2005/03/27(日) 18:43:06 ID:Vemk51r8
 月明かりに照らされた砂浜。そこで聞こえるのは波の音だ。
 砂浜近くに一本だけ立っている木を背後に、新庄・運切はバッグを開けた。
 中にあったのは、
「……剣?」
 形状は角張った直刀。柄の長さは両手で扱う武器だという事を示しているが、しかしその刀身はそれほど長くない。
 複雑な彫金が施されているものの、宝飾の類はなにもない。
 鞘に包まれたその剣をバッグから取り出して、腕の中に抱いた。
「……佐山君」
 彼の名前を呟いて、一息。
 ここに彼はいない。
 名簿には、佐山・御言の名の他に、風見・千里、そして出雲・覚の名があった。
 ……殺し合いだなんて……。
 いけないよ、と口の中で呟く。いけないよ、と。
「きっと他に、逃げ出す手段が……」
「あると思うのか?」
 声は背後からした。
「……!」
「それを信じるのは賢い。疑うのは愚か。だが」
 首筋に金属を感じる。身を固くするこちらに構わず、声は続けた。
「世の中には愚かな人間の方が多い」
「あな、たは……」
「俺はどちらだと思う?」
163運命 ◆E1UswHhuQc :2005/03/27(日) 18:43:32 ID:Vemk51r8

 背後を取られ、首筋に刃物を突きつけられている。
 その状況で、新庄は言った。
「ボクに何か、聞きたい事があるの?」
「……なぜ、そう思う?」
「殺すつもりなら、話し掛ける必要はないよね。なのに話し掛けるってことはボクから情報を引き出したいんだ」
「さかしいな。だが図星だ……聞く。赤髪の女を見たか?」
 問われ、新庄は息を呑んだ。見ていない。そもそも誰かと会うのは後ろの相手が初めてだ。
 正直に答えたところで、殺される。しかし抗う術はない。
 新庄は答えた。一言。
「見てない」
「そうか」
 刃物が肉を断つ感触を予想して、新庄は目を閉じた。最後に彼の名を思い浮かべる。
 ……佐山君……!
 その刹那だ。虫の羽音にも似た振動音と、
「お……!?」
 打撃音がした。
「……!」
 振り向く。黒髪をオールバックにした、隻眼の男がナイフを片手に膝をついていた。
 そして、新庄の持っていた剣がいつの間にか抜刀され、刀身をさらしている。
「これ――!?」
「ちぃっ――!」
 隻眼の男は起き上がり様に、ナイフを投擲した。
 が、それは新庄の目の前で、不可視の壁か何かに弾かれた。
 男は再度舌打ちして、今度は銀色の糸を伸ばしてくる――しかし、それもまた弾かれた。
164運命 ◆E1UswHhuQc :2005/03/27(日) 18:44:23 ID:Vemk51r8

「……良い物を引き当てたな、娘」
 男はそれだけ言い捨て、暗闇に姿を消した。
 新庄は剣を手に立ったまま、茫然としていた。数十秒か、数分か。あるいはもっと。
 気付くと、剣はいつの間にか鞘に納められていた――それを抱きしめて、へたり込む。
「助かった……」

【A-6/砂浜/一日目1:20】

【新庄・運切】
[状態]:不安と恐れ
[装備]:蟲の紋章の剣
[道具]:デイパック(支給品一式) ウルペンの落としたグルカナイフ
[思考]:佐山達との合流

【ウルペン】
[状態]:殺せなかった苛立ち
[装備]:無手
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:ミズー・ビアンカの殺害

・蟲の紋章の剣(出典:オーフェン 効果:障壁力場形成・力場を利用した打撃)
・グルカナイフ(出典:フルメタルパニック) 
165人無き城内で遭遇する二人 ◆NULLPOBEd. :2005/03/27(日) 18:53:56 ID:wpY66c4n
 実物を見るのは初めてだと坂井悠二は驚いた。
 悠二の目の前にはまるで中世のお城のように大きな建物が建っている。
 石造りと判断するお城は城壁に囲まれ、唯一の出入り口は正面の城門のみ。
 立て篭もるにはいいかもしれないと思うが、出入り口が一つなのが気になる。
 もし、誰かゲームに乗った人間が出入り口に立つだけで逃げ道はなくなるのだ。
 受け取った鞄を見つめる。そこにある武器は狙撃銃PSG-1。
 高い所からスコープで見渡せないかな……。
 射程距離だとか倍率だとか細かいことは悠二は知らない。
 数字を言われても初めて触る悠二にはピンとこない。使って実感しないと理解できない。
 説明書に使い方はある。最悪、撃てなくてもスコープでシャナを見つければ。
 そう思い、悠二は城内へと踏み込んだ。高く高く、できれば最上階から見渡したい。
 ――――誰もいてくれるなよ……!
 殺し合いなんてしたくないし、誰かと出会って信用できるかは自信がない。
 出会わないのが一番楽だ、楽なのに。現実とは思った通りにはいかないらしい。
「……誰かいる」
 ぼうっとしている――ように見える――少女を階段上がってすぐの部屋で見つけてしまった。
 少女もこちらを見つけたらしく、しかも俺の持つ狙撃銃を見て警戒してしまった。
 武器を構えている様子は、ない。
 大丈夫だ、相手は少女。ゲームに乗った様子もない。
 自分にそう言い聞かせ、悠二は少女に声をかけた。
166人無き城内で遭遇する二人 ◆NULLPOBEd. :2005/03/27(日) 18:54:31 ID:wpY66c4n
「僕は坂井悠二と言うんだけど……君は?」
「長門有希」
 一言、名前だけ告げて少女は黙ってしまった。
 このまま黙って通りすぎる訳にもいかないかな、なんて思ったが話し掛けた以上できそうにない。
 しかし、会話がない。どうすればいいのかと悩んでいると今度は相手から話し掛けてきた。
「情報統合思念体からの動きがない……。そこの貴方、協力して欲しい」
「……あ、うん。それはいいけど……じょーほー……なんだって?」
 彼女の突然の発言に深く考えず頷いた。
 悪気がありそうな雰囲気でもないし、仲間はぜひとも欲しい。
 後は信用できるかどうかだが……それは今話し合って判断する。
「情報統合思念体とはつまり――――」
 彼女の話はよく分からないが、理解できたところだけ掻い摘み整理する。
 一つ目は宇宙には情報生命体という凄い発展した者が存在する。
 二つ目はその情報生命体の親玉が作った意志を持つ人形(という言い方は正確じゃないだろうが)が彼女であるということ。
 そして最も重要なのは、彼女の能力が制限されているということ。
 このゲームの管理者は宇宙人の技術さえも上回るということだ。
「で、協力って?」
「仲間がいる。未来人である彼女なら何か知っているかもしれない」
 未来人という名称からして、未来から来た人間(?)だと想像できた。
 未来から来たならばこのふざけたゲームのことも知ってるかもな。
 そう悠二は思い、そして彼女に対してこう判断を下した。
 彼女は信用できる。手の内を全て晒してくれたのだから――――。
167人無き城内で遭遇する二人 ◆NULLPOBEd. :2005/03/27(日) 18:55:13 ID:wpY66c4n
 悠二は最上階からスコープを用いて捜索することを彼女に提案した。
 彼女、長門さんの武器はライターだった。
 残念ながらハズレだと諦め、辺りを警戒しながら最上階である3階へと辿り着く。
「この建物には誰もいない」
 長門さんの能力が制限されていてもそれくらいは分かるのか、それとも既に調べたのか。
 断定口調で言う長門さん。できればもう少し早く言って欲しい。
 気を取り直しつつ最上階の窓から悠二の狙撃銃PSG-1を取り出し、スコープを覗きこんだ。

【G-4/城内/一日目1:30】
【残り105名】

【坂井悠二】
[状態]:ちょっと脱力したけど、今は真剣。
[装備]:狙撃銃PSG-1(標準固定のスコープ:6倍)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:仲間の捜索。

【長門有希】
[状態]:悠二からの交代待ち。
[装備]:ライター
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:仲間の捜索。
168焦燥:2005/03/27(日) 19:05:43 ID:pyaCmBA2
最悪だ。
デイパックにはリボルバーが入っていたが、弾がない。
つまり鈍器ぐらいしか使い道がない。
しかも知覚眼鏡が没収されてしまっている。
さらに名簿にはギギナとクエロの名前が載っていた。
クエロはもちろんのことだが、ギギナも俺を殺そうとしてくる可能性がある。
「くそっ、早く協力者を集めた方が良いな・・・」
方位磁石で確認したところ、東に林と灯台が見える。
「・・・いつまでもここにいるわけにもいかないな」
そう呟き、俺は周りを警戒しながら東へ向かった。
169焦燥:2005/03/27(日) 19:06:44 ID:pyaCmBA2
【残り105人】

【A-6/砂浜/一日目・0:24】

【ガユス】
 [状態]:不安
 [装備]:リボルバー
 [道具]:支給品一式
 [思考]:協力者の探索

リボルバー・・・コルト社製 パイソン 357マグナム 2.5インチ
170夜の工場倉庫にて 1:2005/03/27(日) 19:18:17 ID:iA63+AK1
  「・・・・・・・・・」
 高里要少年は一人、倉庫の奥で震えていた。
 ついさっき、目の前で男の人たちが変な格好をした女の人に殺されたからだ。
 声が出そうになった。でも出したら殺される・・・・・・・・必死で自分の口を押さえ、その口元からは歯と 
 唇がぶつかってできた傷跡ができていた。
   「・・・・・・うぐっ、ひっっ」
 この街に、心強い慶王や理知に溢れた慶麒はいるのだろうか。雁王や雁麒は何をしているんだろう。
 そして主君は・・・・・・彼がもっとも敬愛する泰王はどこにいるんだろう
 汕子はどこにいるんだろう・・・・・・・
 永遠のような孤独。暗い倉庫に弱く小さな麒麟の鳴き声しか響かない。 
  「・・・・・・・助けて、助けてよう」
 だれもいない倉庫。真っ暗な目の前。
 しかしそのとき倉庫の扉は豪快に開かれた
171& ◆VhmYS2eXd2 :2005/03/27(日) 19:19:51 ID:iA63+AK1


ほんの数分前・・・・・・・・・
 「いや、だから声が聞こえるんだって、ミリア」
 「わあ、きこえないよー。アイザックだけ聞こえてあたしに聞こえないなんて変だよ。べラボーバッドだよ!」
 「べラボーバッドだと・・・・・・べラボーバッドなのは良くないな。非常に良くない。」
 「そう、良くないよ。変だよ、アイザック変、超変!でも私そんなアイザックも大好き!」
 「よ・・・・・よせやい・・・・・・照れるぜ」
各地で殺し合いが始まっても相変わらずなアイザックとミリア。
何の幸運か彼らの支給品は意外と良く、アイザックの支給品は火乃香がジャンクから作ったカタナであった。
ジャンクから作られながらも通常のそれと比べて限りなく性能が高い
勿論彼らはそれを「すごいぞ、超絶勇者剣!」と名づけそれを戦闘用に使わず近くの畑から盗んだキャベツを
意味もなく千切りするのに使ったのだがそんなことはどうでもいい
ミリアの支給品もまた「自殺志願」、マインドレンデルの通り名で知られる切れ味抜群の巨大鋏であった
殺し屋一族、零崎家の長男にして切り込み隊長である零崎双識の愛用する武器である
勿論彼らはそれを植木鋏だと思い込み戦闘用には使わず近くの農家からみかんを盗み出すために使った
というのもまたどうでもいいことだ。
それはともかく・・・・・・・・
「でも聞こえるんだ、ミリア!なあ、ミリアどこから聞こえると思う?俺には分からないんだ!」
「わあ、アイザック、言ってること滅茶苦茶だね。うんそうだなあ・・・・・・・・・」
そして二人はそれぞれ腕を組み首を傾けて考え始めた。
・・・・・・・・・要少年がいる倉庫の前で
172夜の工場倉庫にて 3:2005/03/27(日) 19:21:24 ID:iA63+AK1
【E‐4/工場倉庫/一日目03:13】
【残り105名】

【高里要】
[状態]:健康。
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:アイザックとミリアに出会い多少心が落ち着いた。

【アイザック】
[状態]:超健康
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「とりあえず要を元気付けたいぜ!」

【ミリア】
[状態]:超健康
[装備]:なんだか変な植木鋏(自殺志願)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「そうだね、アイザック!」
173接近1 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/27(日) 19:26:53 ID:c3dQFznP
彼女のスタート地点は海辺だった。
 前方は果てなく広がる海。
 後方は思わず見上げるほどの崖。
 進めるのは右か左だが、どちらも砂浜が見えるだけで違いがない。
 いづれはどこかへ辿り着くのかはたまたそのまま行き止まりか。
 考えても仕方ないと左へ歩き始め1時間。
 彼女は、崖をくり抜くように存在する、その洞窟を見つけた。

 

「外れか、当たりか。判断に迷うところだね」
 022番・火乃香は自分の支給品を手にとって、複雑そうに言葉を漏らした。
 狭い洞窟内に声が反響して幾重にも聞こえる。
 入り口からかなり湾曲した洞窟なので外まで声が聞こえることはないだろうが、用心に越したことはない。
 火乃香は声のトーンを落とし、支給品の観察を続ける。
 艶やかなショートの黒髪。意思の強そうな瞳。
 白いタンクトップの上にジャケットを羽織り、下半身はアーミー・パンツ、足元はコンバットブーツで固めている。
 そして、額には赤いバンダナ。
 砂漠でなんでも屋を営む少女のいつもどおりの服装だ。
 ただ、手に握られたものだけが違う。ジャンク屋で成型した刀の代わりに、彼女の手中には二本の剣がある。
 どちらも細く、小さく、ある種の芸術品じみた装いだ。
“刀使い”の通り名どおり、刀を武器とし、居合いの技を修めた火乃香としては使いにくい部類の装備だった。
「双子剣かぁ。なになに……騎士剣“陰陽”。Iブレインとリンク…。自己領域の展開?」
 説明書は専門用語の羅列。 
 火乃香は大抵の武器なら扱えるが、この剣は根本の技術体系からして火乃香の知るそれとは別物らしい。
 一応文の末尾まで目を通したが、結局わかったのは、自分が使う分にはただの剣であるということだけだった。
 まあ、それならそれで構わない。
 付属の鞘に剣を収めてパンツの腰の部分で固定する。素早く抜けることを確認して、火乃香はようやく一息ついた。
 地面に座り込み膝を抱える。
174接近2 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/27(日) 19:27:37 ID:c3dQFznP
 海が近いせいだろう。肌に差し込む冷気は思いのほか冷たい。
 その冷気は砂漠の夜を思わせる。
 月と星が輝く空。
 刻一刻と姿を変える砂模様。
 夜行性の生物が活動を始め、死が静かに横たわる時間。
 彼女は数え切れないほどの数、砂漠の夜を越えてきた。
 1人でではない。
 ここにはいない相棒のボギーが、常に彼女を守っていた。
 彼の皮肉を聞けないのは、思いのほか寂しい。
 そう感じている自分に、火乃香は笑った。
「ま、だからって死んでるわけにもいかないし。腹ごしらえしたら移動しますか」
 とりあえずは崖の上にでる道を探さなくては。
 気楽に言って、バックからパンを取り出そうとしたその時。

「……!」 
 
 火乃香は瞬時に立ち上がると、左腰の剣を抜き放った。
 額が、バンダナの下の天宙眼がわずかに青い光を漏らす。
 足音は聞こえない。それでも誰かが近づいてくるのを感じる。
 しかし、なぜだろう?
 普段ならはっきりとわかるはずの気配がどこかぼやけている。ノイズ混じりのスピーカーのように大雑把な距離しかわからない。
(後、10メートルくらい。相手が銃を持っていたら……まずいね)
 緊張した空気が洞窟内に張り詰める。
 呼吸の数が減る。
 神経が鋭敏になる。
 右手の剣を正眼に構える。
 天宙眼が明滅を繰り返す。

(……来る!)

 湾曲した通路から、ゆっくりと人影が現れた。
175接近3 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/27(日) 19:28:16 ID:c3dQFznP
【残り105名】

【H-5/洞窟 /1日目・1:10】

【火乃香】
[状態]:健康
[装備]:騎士剣・陰陽
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:崖の上にでる道を探す&人影に対処する
176死人と犬と(1/4):2005/03/27(日) 19:47:20 ID:Wzw1Vji6
 気がついたら下は水だった。
「あれ?」
 ――ドボーン!
 ――ダバーン!
 ――バシャーン!
 なんか水音が三つも聞こえた気がする。
 三つ目が俺で、残りの二つは何だ?
 とにかく水面に出よう。
 息ができないくらいで死にはしないが、苦しいのは変わりない。
「ぷぅ……この展開なに?」
 なんとか俺は水面に出た。
 と思ったら意外と近くから盛大な水音が聞こえる。
「ぷ……! わ、何…み、水!? うそっ……足つって、ぷぁ…!」
 溺れている女がいた。
 バシャバシャと水を蹴立てて、なにやら楽しそうにも見える。
 邪魔しないほうがいいのかと思ってしばらく見ていたら、やがてトプンと音を立てて沈んだ。
 マジか。
「おいおいおい」
 勘弁してくれと思いつつ潜る。
 暗くて視界は悪いが、女が溺れていた位置なら分かっている。
 沈んでいく女を見つけ、その身体を抱えようとしたところで……同時にその女を抱えようとしている男と目が合った。
「!!」
 至近距離に来るまで全く気づかなかった。
 突然のことに、がぼっと音を立てて口から空気が漏れ出る。
 向こうも同様だったようで、途端に必死の形相になる。
 男がその形相のまま必死に水面を指差した。
 俺も同じ形相のままコクコク頷く。

「ぶはぁ!!」
「岸! 岸どっちだ!」
 自己紹介なんてやってる場合じゃない。
 水面に浮上するや否や、必死こいて岸を探し泳ぎ始めた。
177死人と犬と(2/4):2005/03/27(日) 19:49:21 ID:Wzw1Vji6


 それが二時間くらい前の話だったと思う。
 今、俺――ハーヴェイ――と、目の前の男――ダウゲ・ベルガー――は、焚き火を囲んで向かい合っている。
 あれから一時間もしないうちに岸には着いたんだが。
 焚き火を起こす場所探したり、実際に火起こしたりで時間食った上に、
 せっかく起こした焚き火を目を覚ました女に占領され、そんなわけでこの焚き火は二つ目だ。
 もう一つの焚き火は、ベルガーの背後の岩陰にあり、こちらからは見えない。
 どちらも場所を良く考えて作ったから、近くに来ない限り、対岸からしか見えないだろう。
「……ようやく温くなってきた。世界で二番目に不幸だぜ、今日の俺は」
「……じゃ、俺一番に立候補していいか」
 服は焚き火で乾かしているから二人ともほとんど裸だ。
 あの女――テレサ・テスタロッサと名乗った――も同様の状態のはずだ。
 早く温まりたい一心で「一緒の焚き火でいいじゃん」と言ったら大層恥ずかしがったから、俺たちはこう言ったんだ。
「大丈夫、子供に興味ないから」
「右に同じ」
 結果、二人とも平手打ちを食らった挙句、「あぁぁ、すいません!」と謝られてしまった。
 怒れないじゃん。

 ベルガーが、干してあった参加者名簿を手に取った。
「あんたも見といたほうがいいんじゃないのか? 知り合いが参加してるかも知れないぞ」
 俺がその挙動を目で追ってるのに気がついて、ひらひらと名簿を振ってみせる。
 知り合い……絶対参加して欲しくない奴と、できれば参加して欲しくない奴と、どうでもいいのが思い浮かぶ。
 のろのろと俺の参加者名簿を手に取り、中を確認する。
 えーと…………………………最悪だ。
178死人と犬と(3/4):2005/03/27(日) 19:50:56 ID:Wzw1Vji6
 ほとんど濡れたままの服を引っ掴み立ち上がる。
「おい」
「悪い。探してやんなきゃいけない奴がいた」
 自分の支給品――笑えないことに炭化銃だ――を携えて言う。
「悪いけど、テレサによろしく言っといて」
「おい、本当に行くのかよ。そんな状態でしっかり身体動くのか?」
 もう答えずに歩き出す。
 背後でベルガーが嘆息したのが分かった。

 そんなときだ――テレサの悲鳴が聞こえたのは。


179イラストに騙された名無しさん:2005/03/27(日) 19:53:06 ID:Wzw1Vji6
【残り105名】


【死人と犬と大佐殿】
【C-7/湖のほとり/1日目・02:10】

【ハーヴェイ】
[状態]:健康/体温低下
[装備]:炭化銃
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:キーリを探す

【ダウゲ・ベルガー】
[状態]:健康/体温低下
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:とりあえずここで温まる

【テレサ・テスタロッサ】
[状態]:健康/体温低下
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:とりあえずここで温まる

180夜の工場倉庫にて 1 改訂版:2005/03/27(日) 19:55:42 ID:iA63+AK1
  「・・・・・・・・・」
 高里要少年は一人、倉庫の奥で震えていた。
 ついさっき、目の前で男の人たちが変な格好をした女の人に殺されたからだ。
 声が出そうになった。でも出したら殺される・・・・・・・・必死で自分の口を押さえ、その口元からは歯と 
 唇がぶつかってできた傷跡ができていた。
   「・・・・・・うぐっ、ひっっ」
 この街に、心強い慶王や理知に溢れた慶麒はいるのだろうか。雁王や雁麒は何をしているんだろう。
 そして主君は・・・・・・彼がもっとも敬愛する泰王はどこにいるんだろう
 汕子はどこにいるんだろう・・・・・・・
 永遠のような孤独。暗い倉庫に弱く小さな麒麟の鳴き声しか響かない。 
  「・・・・・・・助けて、助けてよう」
 だれもいない倉庫。真っ暗な目の前。
 しかしそのとき倉庫の扉は豪快に開かれた
181& ◆VhmYS2eXd2 :2005/03/27(日) 19:56:22 ID:iA63+AK1
 ほんの数分前・・・・・・・・・
 「いや、だから声が聞こえるんだって、ミリア」
 「わあ、きこえないよー。アイザックだけ聞こえてあたしに聞こえないなんて変だよ。べラボーバッドだよ!」
 「べラボーバッドだと・・・・・・べラボーバッドなのは良くないな。非常に良くない。」
 「そう、良くないよ。変だよ、アイザック変、超変!でも私そんなアイザックも大好き!」
 「よ・・・・・よせやい・・・・・・照れるぜ」
 各地で殺し合いが始まっても相変わらずなアイザックとミリア。
 何の幸運か彼らの支給品は意外と良く、アイザックの支給品は火乃香がジャンクから作ったカタナであった。
 ジャンクから作られながらも通常のそれと比べて限りなく性能が高い
 勿論彼らはそれを「すごいぞ、超絶勇者剣!」と名づけそれを戦闘用に使わず近くの畑から盗んだキャベツを
 意味もなく千切りするのに使ったのだがそんなことはどうでもいい
 ミリアの支給品もまた「森の人」
 旅人キノが愛用する銃。使う人が使えば最高の性能を誇る名器である
 勿論彼らはそれをエアガンか何かだと思い込み、「じゃあ当ててみなミリア!勇者剣を持った俺にはまったく効かないがな」
 「すごいや!アイザック!」の台詞のあと光の速度で飛んできた弾丸がアイザックの頬をかすめたというのもまたどうでもいいことだ。
 それはともかく・・・・・・・・
 「でも聞こえるんだ、ミリア!なあ、ミリアどこから聞こえると思う?俺には分からないんだ!」
 「わあ、アイザック、言ってること滅茶苦茶だね。うんそうだなあ・・・・・・・・・」
 そして二人はそれぞれ腕を組み首を傾けて考え始めた。
 ・・・・・・・・・要少年がいる倉庫の前で
182夜の工場倉庫にて 3 改訂版:2005/03/27(日) 19:57:01 ID:iA63+AK1
【E‐4/工場倉庫/一日目03:00ごろ】
【残り105名】

【高里要】
[状態]:健康。
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:アイザックとミリアに出会い多少心が落ち着いた。

【アイザック】
[状態]:超健康
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「とりあえず要を元気付けたいぜ!」

【ミリア】
[状態]:超健康
[装備]:なんかかっこいいね、この拳銃 (森の人・すでに一発使用)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「そうだね、アイザック!」
183悪役と宇宙人 ◆5RFwbiklU2 :2005/03/27(日) 20:00:46 ID:q5y/slqu

(どうしたものか・・・・)

佐山御言は悩んでいた。
一つは、理不尽な事態に巻きこまれているということ。

(殺し合いなど)
くだらないことだ、と思う。
このくだらないゲームを発案した奴を見つけたら、自主的な反省を促さなければならない、と固く誓う。

二つ目は目の前のことだった。
自分たちは開始場所からワープ、とでも言うのだろうか。
全く別の場所に移動させられたのはわかる。
とても非常識な方法だが、まだ理解の範囲内だと思う。
しかし、周りの奇人どもならまだしも

「常識人の私には少々ついていけない事だ・・・」

「え?」

「なんでもない、独り言だ。 忘れてくれたまえ」

殺し合いという状況から鑑みるに、参加者の移動はランダムだった筈だ。
なのに、目の前には一人の少女が立っている。

(何故私の目の前にいるのかね・・・・)

自由に行動できるようになったと同時に、この事態に陥ったので、無論荷物の中身などは確認していない。
つまり今の自分は無手。
戦力確認の意味も含めて、相手の容姿を観察する。
自分と同い年か、少し下のような感じのする可愛らしい少女。
それを理解しつつも、新庄君には及ばないね、と心の中でつぶやくのを忘れない。
184悪役と宇宙人 ◆5RFwbiklU2 :2005/03/27(日) 20:01:31 ID:q5y/slqu
(しかし)

容姿だけで判断するのは早計だと自分を戒める。
スタート地点で少し周りを見回しただけだが、奇抜な格好をした人物や、ロボットのようなものもいた。
しかも、周囲には容姿が普通でも、性格がおかしい人間で溢れている。
自分の目の前に立っている少女が、地球人だとも限られないのだ。
(これは・・・・)
背中に冷や汗が流れる。
もしかしたら自分は今、人類として初の地球外生命体とコンタクトしようとしているのかもしれない。
それならば、全人類の代表として恥ずかしくないように振舞うべきだ。
今からしようとしている自己紹介一つにしてもだ。
数秒考え、自分に出来るだけの自己紹介を構築する。
(――よし)
心の中だけで、コホン、と咳払いをし、自己紹介に及んだ。
手を大きく広げ、歓迎の意思を示し、良く通る声で言った。

「お初にお目にかかる! 私の名は佐山御言! 宇宙の中心に立つものである!」

言い終え、うむ、と満足する。
これで相手には地球人の礼儀正しさと正確な自己認識能力が伝わったはずだ。
ふと相手を見ると、面食らった顔をしている。
やはり、自分が最初にあってよかった。
人類に、地球という星に対して、驚いている。

少女と見える宇宙人は、少し戸惑いながら口を開いた。

「あの・・・私は、宮下藤花って言います・・・」

小さな声で告げられた自己紹介は、まごう事なき地球のものだった。
185悪役と宇宙人 ◆5RFwbiklU2 :2005/03/27(日) 20:02:29 ID:q5y/slqu
【残り105人】※必ずいれる。

 【座標G−6/場所、森の中/時間(一日目・00:10)】

 【佐山 御言】
 [状態]:現状についての思考。五体満足。
 [装備]:デイパックは未開封。(中身はお任せ)
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:殺し合いを止めること。 地球外生命体とのコンタクト。

 【宮下 藤花】
 [状態]:奇人(佐山)を前にして緊張状態。 五体満足。
 [装備]:デイパックは未開封。(中身はお任せ)
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:目の前の人物をどうにかすること。
186ダブル・スナイパー 1/4 ◆/91wkRNFvY :2005/03/27(日) 20:10:10 ID:nvsEC0XU
「あなたは、私を殺すのかしら?」
「いきなりそりゃねぇぜ、姉さんよぉ」

パイフウが善意の団体とやらに強制的に転送させられた先には既に、金髪でカルそうな男がいた。
「あなた、名前は?」
「クルツさ、クルツ=ウェーバー。これでも傭兵なんだぜ?んで、美人なあんたのお名前は?」
見た目通りのカルい声でクルツは言った。
「私は火乃香っていう女の子を捜してるの、バンダナを付けたショートカットの女の子。あなた、見なかったかしら?」
「おいおい、無視かよ、まぁ、いいか。
 バンダナを付けた女の子も何も、変な連中にぴゅーーん!って飛ばされてから、見た人間はあんただけだぜ」
身振り手ぶりつきのオーバーアクションで応えるクルツ、このような状況でもいつもの調子だ。
「そう」
振り返り、何事も無かったように歩き出すパイフウ。
「ちょ、ちょっと、待ってくれよ」
パイフウを追い越し、前を塞ぐが、取り合われず、
「悪いけど、私、男に興味無いの」
「ちょっと待てって!こんな状況だろ?お互い協力した方が何かと都合が良いって。
 確かにヤローに興味が無いってのもわかる、俺もそうだからな、やっぱりあんたみたいな美人と一緒にいた方が・・・」
慌ててまくし立てるが、パイフウはクルツを睨むだけ。しかし好機と考えたのか、さらに畳み掛ける。
「あんたが来る前に配られた名簿を見たんだけど、俺も3人捜してるヤツがいてさ、
 相良宗介ってヤローと、テレサ=テスタロッサってちょーカワイコちゃんと、千鳥かなめっていう子なんだけど、
 ソースケはともかく、テッサとかなめちゃんはマジで超イケてるから!絶対損はさせねーって!」
187ダブル・スナイパー 2/4 ◆/91wkRNFvY :2005/03/27(日) 20:11:53 ID:nvsEC0XU
どこぞの悪質商法の様な手でパイフウに迫るクルツ。
「・・・・・・さっきも言ったけど、私は火乃香って子を捜してるの。あなたも手伝いなさい」
クルツの説得に心動かされた訳でもないが、パイフウにはやはり少女なのか。
しかし、やはりあまり取り合う気はないのか一人で歩き出す。
「うひょー!マジ!?もちろん手伝いますとも、しかし姉さんラッキーだね、
 こう見えても俺、結構銃の扱いは得意なんだぜ、支給された武器も、ほら」
パイフウに並びながら一人喋り続けるクルツ、言いながら鞄の中から出したものは何と、
「ウェポン・システム・・・」
そう、元々のパイフウの持ち物であった。
「でもこれどうやって使うんだろうな?」
パーツをいじりながら色々試してみるが、どうにも違う気がする。
「あなた、それを私に頂戴」
「げ、何だよー、俺ってそんなに信用できない?」
「違うわ。それは元々私の物、代わりと言っては何だけど、あなたには私の物をあげるわ」
言ってパイフウが鞄から出したものは、手の平で握れる小さい筒だった。
「なんだこれ、ボタンとか付いてるけど・・・」
「さぁ。とにかくそれをよこしなさい」
強引に話を進めるパイフウ、クルツは美人には逆らえない性格なのか、
「ちぇー、わかったよ、ホントにコレ、なんだろうなー」
188ダブル・スナイパー 3/4 ◆/91wkRNFvY :2005/03/27(日) 20:17:33 ID:nvsEC0XU
「あなた、部品はもう無いの?」
装備を確認していた彼女が不意に切り出した。
「いんや、鞄の中にはホレ、食いもんとかサバイバル用品しかもう無いぜ」
「そう」
確認した装備には、スコープが抜けていた。これでは得意の狙撃をすることも出来ない。
まぁ、スコープ無しでも数十メートル程度なら狙えないことも無いが。
それに、焼夷徹甲弾はそのままだ、これがあればそれなりに戦える。もし、銃が無くても素手で倒せば良い。
パイフウは、相手が何者でも常にそのような考え方をする女性だった。
「このボタン、押してみると・・・」
シュンッ!
筒の穴から突然凄まじい勢いで何かが飛び出し、木に刺さった。
「おわっ!? あっぶねー、こりゃ何だ、ワイヤー? 先端は針か何かが付いてるのか?」
再度ボタンを押し、ワイヤーを巻き取る。
「なんつーか、俺は必殺の仕事人じゃねーってのよ」
「いつまで遊んでいるの?」
立ち止まり、首だけをクルツに向ける。 
「遊んでるわけじゃねーって、あぁー!もう、チクショー!なるようになれ、だ!」
諦めたのか、自分の頭をくしゃくしゃとかき、叫ぶ。

「パイフウ」
「ん?」
「私の名前よ、あなたの名前しか聞いてなかったから」

そしてパイフウは、振り向かずに歩き出す。
189ダブル・スナイパー 4/4 ◆/91wkRNFvY :2005/03/27(日) 20:19:48 ID:nvsEC0XU
【ダブル・スナイパー(パイフウ・クルツ=ウェーバー)】
パイフウ
[状態]健康。
[装備]ウェポン・システム(スコープは付いていない)
[道具]デイバック一式。
[思考]自分に害を及ぼすものは殺す。火乃香を捜したい。

クルツ
[状態]健康。
[装備]ブギーポップのワイヤー。
[道具]デイバック一式。
[思考]自分に害を及ぼすものは殺す。パイフウについて行く。宗介・テッサ・かなめを捜したい。
【残り残り105名】
【G-5:雑木林、時間:1日目00:20】
190 ◆Ui8SfUmIUc :2005/03/27(日) 20:22:47 ID:m1nvAxCy
デイバックの中からどうやって入っていたのか、鞘に納められた剣が入っていた。
彼はそれをみて、彼自作の箪笥に勝るとも劣らない美しさがある事を喜びを覚えた。
カタカタと鳴く刃を抜き放つと、周りの全空間の闇をかき集めても、こうならないであろう深い深い暗さを持っていた。
「……」
邪悪と形容されるべき気を纏い、彼に人を斬れ、殺せ、と命じ続けている。
「……いいだろう」
彼、ギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフはその美しく整えられた口唇を歪めて笑った。
鋼に似た色の瞳に輝きが宿る。
それは純粋無垢な、悦びを得た喜び、闘争と言う名の歓びがギギナの中に眠り、たぎるドラッケンの血が騒いでいた。
より強い者を倒す為。
総ては全てに己が力を見せつける為。
ガユスとクエロ、彼の友であり、仲間であり、背を預けた者。
しかし、ここはそう言う場なのだ。自分に言い聞かせて、思考を止めた。

【ギギナ】
[状態]健康
[装備]魂砕き
[道具]支給品一式
[思考]強い者と戦う
【G-7/森の中/一日目・00:40】
H-7へ移動
【残り105人】
「……どうしよう」
大きな橋の上で、フリウ・ハリスコーは一人途方に暮れていた。
殺人ゲームに巻き込まれたことも彼女の精神を追いつめていたが、フリウはもっと先のことを考えていた。
「どうしよう」
“もし、精霊眼にひびでも入ったら”
幻像と力だけは、開門式を唱えることによって引き出すことは出来るものの、水晶眼に入ってしまった精霊は永遠にそこから出られない。
だが何らかの理由で水晶眼に傷が付いてしまったら。
襲われてその際に眼球を傷つけられるか、あるいは死体になったあとに踏みつぶされるか。
こんな状況になったらいくらでもケースは考えられる。

精霊が精霊檻から脱出する際のエネルギー。
スィリーでもあれだけの威力があった。それが破壊精霊ともなるとどれだけの規模になるか。
しかも破壊精霊は有形である。脱出しエネルギーを放出しても、それで終わらない。間違いなく暴走する。
周囲は文字通りの地獄となるだろう。
「あたしは……死んでも人を殺してしまうかもしれない」
二回も故郷の村を壊滅状態に陥らせた破壊精霊。そのどちらも錯乱してたとはいえフリウが自らの意思で行ったものだ。
今度は、自らの意思にかかわらず起こしてしまうかもしれない。
入水すれば眼は安全だろうか──そんなことまで考えてしまう。
「でも、死にたくない」
生きたい。
帰りたい。
サリオンやマリオ、ラズやアイゼン、マークス親子、それにスィリーのいた生活に。
「帰りたいよ……」
涙が冷たいコンクリートの上に、落ちた。
「…………」
そうしてしばらく嗚咽を繰り返して、フリウはやっと思考を働かせることができた。
「死にたくない……けど、このままここにいても意味がないよね」
大きく深呼吸をして心を落ち着かせる。
「あ、そういえばまだ中を見てなかったよね」
忘れられていたデイパックの中を開けて、中のものを取り出す。食料と日用品、それに名簿──
「────っ?!」
突然指に痛みを感じ、フリウは思わず飛び退いた。
デイパックの中を見回したが、中に残されていたものはただの剣の柄だった。刀身はない。
「……?」
おそるおそる柄を握って外に出してみた。すると──月の光に照らされてかすかに輪郭が見えた。
「これ、もしかして見えない剣?ガラスとか……水晶で、できてるのかな」
おそらく強力な武器になるだろう。だが、水晶眼を持つ自分にこれがあてられたのは何となく皮肉にも感じられた。

「あとは名簿かな?」
剣を除いて一通りのものをしまい、フリウは外に出しておいた紙に目を通した。程なくして見知った名前を見つける。
そこには、ミズー・ビアンカの名前が書かれていた。
「…………、あの人なら、この眼の事を知ってる。もし、あたしが死んでも、この眼をまかせられる」
彼女がいたことはフリウにとっての唯一の幸運だった。ミズーなら信用できるし、安心してこの眼を託せる。
それに、個人的に再会してみたいというのもあった。
「どうしてるのかな……」
数ヶ月前に会った彼女に思いを馳せる。印象的な真紅の髪。強い眼差し。そして最強の──

『わたしたちは、その力を使って戦うしかない。誰からも許されざる力で』

「そう……だよね。あたしはこれでしか、戦えないんだよね──」
数ヶ月前に聞いた彼女の言葉を、思い出す。その言葉がゆっくりとフリウを包み込んでいく。
「うん、がんばるよ。あなたに会うまで……生きのびてみせる」
胸に確かな決意を抱いて、フリウ・ハリスコーは橋を歩き始めた。

ただ、彼女は知らなかった。水晶眼の存在を知るものがもう一人いることを。
 【A-4/橋の上/一日目・1:30】

 【フリウ・ハリスコー】
 [状態]:健康、右手の人差し指と中指に小さな切り傷、落ち着いた
 [装備]:ガラスの剣@魔術師オーフェン、水晶眼(ウルトプライド)
 [道具]:支給品一式
 [思考]:ミズーを探す。殺人はできればしたくない。
※ウルペンの容姿は知っていますが、名前は知りません。
「うわぁ、すごい。あんなに遠くまではっきり見える」
感嘆の声を上げる悠二だが長門の反応は無い。
「でもなんだか見にくいな。クソッ、こんなことだったらシャナと話してないで、
 この前教室にあったモデルガンのカタログを皆と見ておくんだった」
 焦点が合わなかったり、持ち方が下手だったりで、スコープでいくら遠くが見えてもはっきり見えないのだ。
「貸して」
そう言って手を差し出す長門に、悠二はPSG-1を渡す。
スコープを覗く長門と、それを見守る悠二。二人はしばらく無言だった。
物音一つ無い城内が沈黙に包まれる。が、
「ドアの向こう。」
その沈黙は長門のつぶやきによって破られる。
 唐突な一言に虚を突かれた悠二だったが、とりあえず落着きを取り戻し、聞く。
「何?ドアがどうしたの?長門さん?」
「ドアの向こう。誰か居る」
「!?」
 長門の言葉(と、いうよりつぶやき)に、悠二は驚愕を顔に浮かべ、ドアを見る。
それとほぼ同時にドアノブが回り、「ぎぃぃぃ」と、ドアが開いていく。
 そこにいたのは―――
「ぎゃはははは!すごいな、おねぇさん。いくらか手を抜いてたとはいえ、殺し屋の気配を悟るなんてよぉ」
殺戮奇術の匂宮雑技団、団員NO.18 一人で二人、二人で一人。殺戮奇術の匂宮兄妹、その兄。
『人食い』(カーニバル)の匂宮出夢だった。
「ッ!殺し屋!?」
 完全に腰を抜かす坂井悠二に対して、長門有紀の反応は適切で、それでいて効果的だった。ただし、
相手が普通の人間だったとしたら。
 長門は先ほどまで覗いていたスコープの付いた、PSG-1を侵入者に向け、全くためらわず、撃った。
すさまじい轟音が、さほど広いとはいえない室内に響く。
 しかし、侵入者 ――出夢は、長門が引き金を引くより先に、銃を構える長門に向かって、
未だ呆然としている悠二の上を飛び越えるように、跳躍した。
 出夢はおかしな体勢で撃ったせいで、長門の手からふき飛んだ狙撃銃を空中でキャッチ。
そのまま壁を蹴って仰向けに倒れた長門を跨ぐように着地した。
「長門さんッ!」
 轟音で我に返った悠二は、倒れた長門に駆け寄ろうとするが、
「ばかやろう!」
出夢の突然の怒声に、ビクリと体をこわばらせる。
「確認もせずに狙撃銃をぶっ放す奴がどこにいる!あ?ここか?ここにいるんですかぁ!?」
「確認した。」
長門の小さな反論に、出夢の額に青筋が浮く。
「なおさらだめじゃねぇか!あぁあーあー!無理な体勢で撃つから肩が外れてるじゃねぇか。」
出夢は長門の肩に手をかけると、乱暴に、しかし適切に、肩の骨をはめた。
「あの……」
 完全に硬直していた悠二だったが、出夢が長門の肩をはめたのを見て敵ではないと判断したのか、
まだ怪我が無いか、長門の体を触りまくっている出夢に聞いた。
「あの……あなたは?」
ん?と出夢は悠二を見ると、にぃ とシニカルな笑みを浮かべて、言った。
「ぼく?ぼくは匂宮出夢。よろしくね、ってかぁ?ぎゃははははははは!」
長門が
「どいて」
と、短く言った。
【チーム・ザ・いとうのいぢ+α(坂井悠二/長門有紀/匂宮出夢)】
坂井悠二
[状態]健康。
[装備]狙撃銃PGS-1
[道具]デイバック一式。
[思考]出夢とのコンタクト

長門有紀
[状態]健康。
[装備]ライター
[道具]デイバック一式。
[思考]SOS団の捜索

匂宮出夢
[状態]健康。
[装備]???
[道具]デイバック一式。
[思考]害をなすものは殺すけど、殺しは疲れたので自分からは殺さない

【残り残り105名】
【G-4/城内/一日目1:35】
197 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/27(日) 21:18:06 ID:ry2b2Y1e
(悠二・・・。)
 煌く真紅の髪と眼を持つ少女は南西の方角へ疾走していた。
先ほど突然目の前に現れた、場違いなほどの笑顔をした青年以来
誰とも会っていない。
 さわやかな笑顔のまま挨拶と静止を促してきた青年に彼女はまったく興味を示さず、
走っていた体勢そのままでもっていた刀(なまくらだが)の峰で前頭部を強打、
青年は笑顔のままその場に背中から倒れ気絶した。 
彼が腰に持っていたリヴォルバータイプの銃を抜き取り、懐に入れたが、
食料は残してやることにした。
 彼女の目的はただひとつ、坂井悠二と合流すること。
悠二の存在の力の気配は南西の方角、それも大きな建物の付近にいるのを感じる。
どうやら彼の近くにもう数人誰かいる様だ。
(すぐ行くから無事でいるのよ!)
彼女は今はこのくだらないゲームに乗る気はなかった。
すべては悠二と合流して、相談して決めればいい。
 フレイムヘイズである彼女の存在の使命は、この世でいたずらに存在の力を乱獲する、
異世界の住人・紅世の徒や王を討滅することである。
 それ以外の存在を相手に殺し合いをするのは彼女の望むところではない。
それに、ここにきてからアラストールの反応がないのも気になる。
いつもならアラストールか自分のどちらかが望めばお互いの場所に瞬時に移動できるのだが、
ここでは不可能のようだ。
(悠二・・・!!)
天頂からわずかに西にずれた太陽の陽を浴びながら”炎髪灼眼の討ち手”シャナは
走り続ける。
198 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/27(日) 21:19:49 ID:ry2b2Y1e
シャナ
[状態]健康。
[装備]刀(なまくら) 『カノン』(リヴォルバー式ハンドガン)
[道具]デイバック一式。
[思考]悠二のいる南西の城へ向かう。銃は使う気なし。

古泉一樹
[状態]気絶状態
[装備]なし
[道具]デイバック一式。
[思考]SOS団の合流

【残り105名】
【E-6/一日目1:40】
199 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/27(日) 21:21:25 ID:ry2b2Y1e
タイトルは「駆ける炎髪」で
200 ◆IgnURNSNeg :2005/03/27(日) 21:23:15 ID:2gZ0hNoJ
「これは一体何の冗談だ?」
そう一人苦笑するように大げさなボディアクションをしながら独白するクレア・スタンフィールド
訳の分からない所にいきなり居たかと思うと、いきなり殺し合いをして下さいと来た。
勿論、彼は殺し屋である、殺すこと自体は別にいい。
だが、それが強制されるというのが気にいらない
かといって、逆らおうにも逆らうと何らかの方法で殺されるらしい
らしい、というのは最初に集められた時に傍に居たシャーネと抱き合っていた為に殺される現場を見ていなかった為だ
彼のスタート地点は何故か井戸の底だった
かなり大きな井戸らしく一人ぐらいなら寝転がれそうな空間である。
ただし膝の高さ程度まで水があるので実際は横にはなれないのだが…
幸いというか、頑丈そうな縄で繋がれた釣瓶が降りているので脱出は容易だが、その後どうするかが問題だ
とりあえず現状把握の為にディパックを漁ると…
「これは…」
刃渡り20cmを越すであろう大型のハンティングナイフ、シャーネ・ラフォレット愛用のナイフが二本入っていた。
「これがここにあるってことはシャーネは丸腰ってことか?糞!あいつら絶対に殺してやる!」
そうはき捨てると彼は最愛の女性シャーネを探すべく釣瓶の縄に手を掛けた…
201 ◆IgnURNSNeg :2005/03/27(日) 21:24:12 ID:2gZ0hNoJ
【クレア・スタンフィールド】
[状態]:健康
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:シャーネを探す
【井戸の底に居るため現在地不明】
202EnteR tAiNer ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 21:51:35 ID:bSphvtpO
フォルテッシモは、10階建てビルの屋上で黙って支給品を見ていた。
その支給品はラジオ。何の変哲も無い小型ラジオだ。
そして、そのラジオから音声が流れていたのだ。

『国営ラジオをお聴きの皆様、今晩は。さあ、お待たせしました。
 毎週二回お送りする、当国営ラジオ一番の人気番組――
 "スケルツィさんの今を切る!"の時間です―――』

それを、静かに聴いていた。

『―――さっそく今回の題目なんですが、"殺し合い"ですね』
『はい。"殺し合い"です。今回はここから話を進めていきたいです』

………それを…静かに聴いていた……。


この電波は、どこから入ってるんですか?
とか、そんな事は疑問視せずに…だ。


【B-3/10階建てビル(屋上)/一日目・0:45】

【フォルテッシモ】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイパック(支給品一式) ラジオ
[思考]:ラジオ『スケルツィさんの今を切る!』を聴く
203妄想の男 ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 21:58:45 ID:0+YObTM9
浜風に吹かれながら自称、天軍きっての美少年ルーキー呉星秀は使命感に燃えていた。
ここの所ポカが多く、慧惑様に折檻されまくりの彼だったが、
とんだ所でチャンスが巡ってきた、きっと鳳月や双子たちは今頃何もできずに
右往左往してるだけに違いない、ここで自分の出番だ。
「そうすれば麗芳ちゃんだってあんなちんくしゃより僕の方が頼もしいって認めるはずさ!」

それに…彼はホールでの出来事を思い出す、正直彼はあそこで起こった惨劇も、そして
生き残るために何をすべきかも聞いてなかった。
何故なら…
「二列目の左側にいたバンダナ姿の女の子、実にかわいかったなぁ…右後ろにいたセーラー服の子もなかなか」
そう彼は説明そっちのけで女の子の品定めに夢中だったのだ。
「いかんいかん使命を忘れてはいけないな」
そう自分の使命はいたいけな少女たちをこの絶望の島から救い出すこと、そして少女らを天界に招き
ハーレムを作ること…もうすでに鳳月らのことは忘却の彼方だった。
ちなみに彼はこれでもれっきとした天界の神将である。
さて、とそういえば荷物を確認してなかったな…星秀はがさごそとディバックの中に手を突っ込むが
その手がわなわなと震えだす。

「こっ…これはまごうことなき美少女の匂い!…この匂いは僕の4列右に立っていた子の物だ!」
偏執的なまでの正確さで匂いを嗅ぎわける星秀、慌てて中身を見てみると、
それは紺色のやけに面積の少ない布地だった、そう…これは…。
「スクール水着!?」
ちなみに胸のところには「藤堂」とゼッケンが貼られている。
震える手で名簿をめくる星秀、すぐにその名前は見つかった。
「藤堂志摩子、なんて素晴らしい名前なんだ」
星秀の脳裏には恐ろしいまでの正確なタッチで描かれたスクール水着姿の藤堂志摩子の姿があった。
たかが水着の残り香だけで、ここまで妄想するとは見習いとはいえ流石天界の神将だった。

「この僕が必ず救い出してあげるよマイハニー!!」
彼の脳はすでに妄想を通り越してスパークしまくりだった。
重ね重ね言うが彼はれっきとした天界の神将である…申し訳ないが。
204妄想の男 ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/27(日) 21:59:28 ID:0+YObTM9
【呉星秀】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック(支給品一式)/藤堂志摩子のスクール水着
[思考]:藤堂志摩子を探す、その他美少女はすべて保護
【残り105名】
【A-4/一日目1:30】
205状況 ◆CSZ6G0yP9Q :2005/03/27(日) 22:08:23 ID:Y/6um9EK
 自身がどのような状況に居るか一つを除いて全くわからない。しかし、ここの空気は彼の最も知る空気だった。
 戦場。彼の育った、生きてきた場所。ならば、するべき事は限られている。
 彼はまず、現状把握に努めた。自分の所持品の確認を始める。短編に限り常備している、催涙ガスやショットガンがなくなっているのは手痛かった。拳銃すらもない。武器はコンバットナイフだけだ。 
 確認を済ませると、彼は視界が取れ、遮蔽物もある禿山の中腹、その岩陰に身を潜ませた。明るければ目立ってしまう陣代高校の制服も、ある程度カモフラージュした。
 自らの安全の確保を終えると、次にすべきは目標の設定だった。黒曜石を加工しながら、名簿を眺め、考える。
 クルツ・ウェーバー。彼なら自らでなんとかするだろう。
206 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 22:10:05 ID:bSphvtpO
あ、ホントだ。書いてる。


………俺の、ミスかな_| ̄|○
207 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 22:10:27 ID:bSphvtpO
失礼…誤爆です。
208状況(2/2) ◆CSZ6G0yP9Q :2005/03/27(日) 22:11:19 ID:Y/6um9EK
ガウルン。死んだはずの男。様々な疑問はあるし、注意すべきではあるが、全く知らない者達に比べれば、危険性は低いとも言える。
 テレサ・テスタロッサ、千鳥かなめ。彼女達は早急に保護するべきだ。
 そこで思考を一旦切り、出来上った黒曜石のナイフを眺める。せめて投擲用にはなるだろう。
 自身を守るべき物はできる限り揃えた。情報はここに居つづけてもこれ以上は集まらない。かと言って動き出すのは下策だろう。
 しかし、彼は迷いながらも決断し、ボタンを一個ちぎると、地面に捨てて立ち去った。
「千鳥……」呟きが残った。

【B−6/一日目00:30】

【相良宗介(フルメタル・パニック)】
状態;良好・戦士モード
装備;コンバットナイフ・スローイングナイフ数本
道具;デイパック(支給品一式)
思考;1、安全の確保 2、情報の収集 3、千鳥、テッサの保護 4、クルツとの合流 
   なお爆撃などの支援はないものとする。
209Dead Man ◆wkPb3VBx02 :2005/03/27(日) 22:12:49 ID:Bu3jhKAN
「生きて帰れるのはこの中の1人だけです、か」

地面から突き出した岩に背を預け、男は先程の言葉をもう一度口に出して確認する。
長い髪が風に靡いて花弁のように舞う。伊達眼鏡の奥の濁った双眸が空を仰ぐ。
そのまま暫く動かない、かと思うと唐突に笑い出す。それは楽しくてしょうがない笑いというより、情けなくてしょうがないと言った笑い。
「―――死人はただ腐っていきゃあいいのによ」
自嘲気味に口の端を吊り上げて笑い、左手で顔を覆う。その左腕は肌色ではなく光沢のある銀色している。
いまや単なる義手に成り下がった”ヴィーグリーズの遺産”。
『レーディング』、かつては化け物じみた能力を発揮した古代の兵器も、今じゃ良く出来た義手と変わらない。
銀色の腕で前髪を掻き分け、そのまま思考に入る。乗るべきか、乗らざるべきか。
乗るべきだ。
他人のために死ぬことなぞ阿保らしいし、脱出を考える程この命に執着は無い。人は、いつか死ぬ。
あの糞みたいな会社で糞みたいな仕事をして生きていくくらいなら、ここで死にたい。男はそう考えた。
ただ死ぬのでは詰まらない。どうせなら楽しく死にたい。男は左手で頬の傷をなぞりながら、にぃと嗤う。
それにもう、後戻りは出来ないのだし。
男の右手には、血と何かが付着した剣が握られていた。銃と剣を合成させてつくった奇妙な剣が。
そしてその横に黒髪の少年、天城錬の頭部を割られた無残な死体が転がっていた―――

【ジェイス】
[状態]:自暴自棄
[装備]:断罪者ヨルガ
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:現状を楽しむ

【残り104名】

【H-5/一日目1:24】
210悪役と泡 1/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/27(日) 22:47:53 ID:AS7jDRhW
「ふむ――君は、地球外生命体ではないのかね?」
「どうしてそうなるんですか……それより、ここは……?」
 佐山は首を傾げる。
 転移前、先程の説明を聞いていなかったのか、と。
 そして問いを口に出そうとした瞬間、ふらり、と少女の体が傾いた。
「……っ!?」
 少女を咄嗟に支える佐山。
 しかし、それは少女ではなくなっていた。
「転移の弾みに『戻って』しまったのか……? と、やあ、どうもありがとう。先程ルールの説明を聞いていたのは僕の方でね――」
 ぶつぶつと何事かを呟くと、少女だった何者かは身を起こして佐山に会釈。
 その表情は、左右非対称の不思議なもの。
「僕はブギーポップ。このみ」
「やはり地球外生命体だったのか」
 この切り替え、演技には見えない。
 二重人格の類にも見えるが、少女に寄生しているのだろうか。
 ……やはりこの世は、未知と不思議に満ち溢れているな。
 そんな佐山の納得にも構わず、少女――ブギーポップは途切れた言葉を紡ぎ直す。
「……さて、僕はこの宮下藤花の二重人格、と言えば理解が早いかな?」
「地球外生命体ではなかったのか」
 佐山が全身で驚きを表現する。
「――まあ、残念ながら違うね。そういった存在と遭遇した事はあるけれど」
「ふむ。どうにも信じがたい話だが……とにかく、君と先程の宮下藤花君は別人だと、そう考えれば良いのだね?」
「ああ、そんなところさ」
211悪役と泡 2/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/27(日) 22:49:33 ID:AS7jDRhW
 ともあれ、この場で顔を突き合わせていても仕方が無い。
 そんな佐山の提案に、ブギーポップも同意し、双方が手持ちの荷物を確認する。
 どうにも浮世離れしたようでいて抜け目の無い二人だが、眼前の相手を疑うという発想は無いようだ。
 ……それとも、表に出していないだけなのか。
「何かねこれは?」
 佐山の荷物からは、食料品などの他に不思議な衣装が出てきた。
 全体が筒のような……
「驚いたね――僕のものだ。僕が出るときの衣装だったんだが、連中に取られてしまったらしくてね。早々に見つかって良かった」
 ひょいと、覗き込んできたブギーポップが衣装を手に取り、身を包む。
 その手馴れた動作に、佐山は嘘は言っていないと判断。
「差し上げよう。どのみち私が持っていても意味が無いものだ」
「ありがたく頂戴するよ。このお礼は、僕の荷とすれば良いかな……?」
 ブギーポップが荷物を漁ると……出てきたのは木の箱だった。
 付属としてか、説明書が付いている。
「リード&ヴォーン九二型・五〇口径エンチャント・マグナム、通称Eマグ」
 ブギーポップがぱらぱらと捲る説明書を、佐山も目で追う。
「強力に呪化されたハローポイント弾を撃ち出す、吸血鬼狩り用のリボルバー拳銃……」
 蓋を開けると、確かに説明書の図と同じ銃が存在する。
 予備の弾丸も十分すぎるほど。
「――対人外向けの銃器と解釈すれば、多分問題無いだろうね」
 佐山もその意見に同意し、頷くと、目の前に箱が差し出された。
212悪役と泡 3/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/27(日) 22:51:25 ID:AS7jDRhW
「……良いのかね?」
「差し上げよう。どのみち僕が持っていても意味が無いものだ」
 先程の己の口調を真似たブギーポップの台詞に、佐山は苦笑。
「それでは――有り難たく頂くとするよ」
 拳銃の扱いは心得ている。
 慣れない物で多少取り回しづらいが、どうにかこの程度ならば使用は可能だろう。
「さて――行動を共にするかね? 私には探さねばならぬ人が居るのだが」
「それが残念ながら僕にも、倒さなければならない存在が居てね……特に今は、その存在を強く感じる」
 残念だ、と佐山は首を振る。
「縁があれば、また会いたいものだね。ブギーポップ君」
「ああ――お互い、生き延びている事を祈ろう。佐山御言君」
 笑みを交わして、二人は踵を返す。
「最後に聞いておこうか……君の敵とは?」
 名残を惜しむように振り向きながら、佐山。
 そこには、同じように振り向いた、左右非対称の不思議な表情があった。
「――世界の敵さ」
213悪役と泡 4/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/27(日) 22:54:02 ID:AS7jDRhW
【座標G−6/森の中/時間(一日目・00:32)】

【ブギーポップ(宮下藤花)】
[状態]:心身ともに健康(移動中)
[装備]:ブギーポップの衣装
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:世界の敵を探し出し、排除する。

【佐山・御言】
[状態]:心身ともに健康(移動中)
[装備]:Eマグ
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:1.新庄運切の捜索。 2.その他の知人の捜索。
214科学の申し子たち1 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/27(日) 22:58:12 ID:c3dQFznP
「むー……なるほど、このハンドルを回すことでバネが巻き上げられるわけか。
 ふっふっふっ、なかなかによい出来ではないか。
 構造は原始的と言わざるをえんがこのネーミングが素晴らしい! 
 製作者には俺的栄誉賞を授けないでもないぞ!」

 いきなり殺し合いに放り込まれたのにも関わらず、夜の森にて盛り上がってる少年が1人。
 三つ編みを2本おさげにし、黒のローブの上には白衣を着込んでいる。
 緑が主体の森の中では白衣は異様に目立っているのだが、少年は気にする様子もない。
 もっとも、あれだけの大声で話していれば、隠れるも何もないだろうが。
 彼を熱中させているのは支給品である。
 見ためは立方体をした木枠だ。高さは1メートルほどだろうか。
 枠の内部は空洞になっており、無数の歯車と金属の軸が連動するように組み込まれている。
 重さもそれなりのものだろう。鈍器としても使えそうな代物だ。
 だが、その真価は鈍器などではない。
 少年はデイバックから拳くらいの鉄球を取り出した。
 ハンドルを限界まで回し、木枠内の軸に鉄球を装填。近場の樹に向き合う。
 樹を的に試射をするつもりなのだ。  
「科学者は決して妄信しない。己の目で確かめ、初めて真実と認めるのだ。なんせ科学者だしな」
 辺りに緊張した空気が流れる。少年の目は真剣そのものだ。
 少年は息を大きく吸い、木枠を抱えるようにして、


「エドゲイン君、ファイヤ!」

 
 引き金を引くと同時、バネが弾け、伝わった反動で少年が後ろに転がる。
 そして落雷のような激突音。
 射出された鉄球は大樹の幹にぶち当たり、自身を半ばまで埋没させた。
 樹そのものが大きく揺れ、葉が雨のように降り注ぐ。
 樹はしばらくしてようやく動きを止めた。辺りに痛いほどの静寂が戻ってくる。
215科学の申し子たち2 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/27(日) 22:58:45 ID:c3dQFznP
 少年はしばし機能停止していたが、

「…………コンビネーション3−7−4」

 少年が呪文を唱えると、幹に埋まっていた鉄球がずるりと地面に転がり落ちた。
 拾ってバックの中へと戻す。

「ふっふっふっ、まあ、そのなんだ。
 科学の最先端を駆けてきた俺から見れば玩具同然ではあるが、次回作となる人造人間39号デキサメサゾン君
の主要武器として採用するのも吝かではない。
 別に思いのほか威力があってびびったわけではないぞ! 
 単純な真理に気づいたのだ。
 一時期は小型化を図っていたがやはり時代が求めているのは火力だ! 
 ふっ、キリランシェロの奴、デキサメサゾン君を見たら、驚いて声もでないに違いない…」
 
 再び5分ほど騒いでから。
 少年――――113番・コミクロンは、木枠を担ぎ、ようやく移動を始めた。



 その一部始終を目撃して。
 白衣の子はいまいち頼りになりそうにない。
 しかしゲームにのっているわけではなさそうだ。
 あの武器は大した威力である。
 ……天樹錬は3ナノセカントほど思考して、後を追うことを決めた。
216科学の申し子たち3 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/27(日) 22:59:40 ID:c3dQFznP
【残り104名】
【F−5/一日目/01:30】

【コミクロン】
状態:正常
装備:問答無用調停装置・エドゲイン君1号
道具:デイパック(支給品一式)
思考:とりあえず移動

【天樹錬】
状態:正常
装備:不明
道具:デイパック(支給品一式)
思考:コミクロンを追う
217 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/27(日) 23:11:14 ID:c3dQFznP
214−216は【天樹錬】が死亡してるのでNGです。
ほんとすいませんでした。
218「ぴぴるぴるぴぶへぇ!!」 1/4 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 23:20:36 ID:bSphvtpO
気が付くと、そこは家の中。

彼女の名はドクロちゃん。撲殺天使☆だそうだ。
それ以上の説明はないし、それ以下の説明は無い。
…………納得して頂けただろうか。些か不安ではあるが。

で、何故彼女が動かないのかと言うと……。

「悪いな、明らかに怪しかったもんでよ。拘束させてもらった」

というわけである。


こういった由々しき事態になるまでに、こんなことがあった。

氷太が一服していると、突然玄関のドアが開いたのだ。
急な出来事だったので少々焦って立ち上がる。煙草は勿論落とさないように。

そして玄関に走るとそこには、鉄パイプを持った少女が立っているではないか。
更にその少女がこちらを見ると、笑顔で鉄パイプを振りかざした。

まずい、まずいマズイMAZUI!!
ならば仕方が無い。やるか。

そして彼は少女にボディーを一発決め、床に沈めたのだ。
大丈夫、気絶させただけだ。だが敵意を向いているもの相手にしてはやけに容易かった様な……。
だがそんな事はどうでもいい……危険すぎる。いざという時の為に拘束しておこうか。
確かここにロープがあったはず……。
219「ぴぴるぴるぴぶへぇ!!」 2/4 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 23:22:03 ID:bSphvtpO

で、こうなった。

「ん〜〜!!むぐぅ〜〜〜〜〜!!」
「あー、煩い……」

丁寧にもそこら辺にあったタオルを猿轡にしている。
騒がれては不利になると考えての結果だろう。
だがそんな事は関係なしに、彼女は呻き続ける。

「ぅぅ!!ん――――っ!!」
「………あー…わかったわかった!!何が言いたい!?」

あまりにも煩いので、氷太は少女の猿轡だけを解く。
するとマシンガンのように、ドクロちゃんは話し出す。

「どういう事!?なんでこんな女の子にイタズラするのぉ!?」
「危険だからだ。つーか俺に攻撃しようとした奴が言うな」
「こうげき?そんな事しようとしてないよ!」
「……はぁ?」
「私、挨拶したかっただけだもん」

挨拶……氷太が固まる。
そういえば、妙に爽やかな笑顔だった。それにあの時何の抵抗もしようとしていなかった。
それに振りかざすのならもう少し機敏になるべきだ。のろのろと片腕を上げては話にならない。
以上を振り返って、自分がどれほど見誤ったのか確信した。

「あの時私、やっと人に会えたって安心したんだから」
「……あの片腕を上げたのは、会釈のつもりだったのか」
「そう」
「………あったま痛ぇ…撲殺された気分だ」
220「ぴぴるぴるぴぶへぇ!!」 3/4 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 23:23:02 ID:bSphvtpO

まぁそうとわかれば仕方が無い。相手も本気の目だ。
彼女を信じた氷太が彼女の拘束を解くと、彼女はうんと背伸びをした。

「まぁさっきのは悪かった…結構ピリピリしてたからな」
「ふぅん。んじゃ、これからどうしよっか?」
「おいおい、唐突過ぎないか?」
「そんな事無いよ、こんな状況だもん」

確かにそうだ。
しかしながら相手の事を知らない以上それは早すぎる。
ならばこうしよう。氷太は彼女を居間に案内し、そこに座った。

「まぁ座れ。で、自己紹介といこう」
「うん、わかった。えっと、私は三塚井 ドクロ。ドクロちゃんって呼んでね!」
「俺は甲斐 氷太……煙草好きなただの男だ。こんな状況じゃ、な」

氷太の煙草は、2本目に突入した。
221「ぴぴるぴるぴぶへぇ!!」 4/4 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/27(日) 23:23:53 ID:bSphvtpO


【D-3/民家内/一日目・1:38】
【第一印象最悪組(甲斐氷太/三塚井ドクロ】

【甲斐氷太】
[状態]:正常
[装備]:無し
[道具]:デイパック(支給品入り) タバコ(残り15本)
[思考]:自己紹介

【三塚井ドクロ】
[状態]:正常
[装備]:無し
[道具]:デイパック(支給品入り) 鉄パイプ
[思考]:自己紹介

【残り104名】
>>218


氷太が一服していると、突然玄関のドアが開いたのだ。
急な出来事だったので少々焦って立ち上がる。煙草は勿論落とさないように。


という文章を


氷太が一服していると、突然玄関に人影が現れたのだ。
急な出来事だったので少々焦って立ち上がる。煙草は勿論落とさないように。


へと変更してください。
申し訳ないです、お手数かけます。
223炎の魔女と殺人鬼(1/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/28(月) 00:26:42 ID:dT5nYC7+
「さて」
 霧間凪は身動きの取れなくなっている人識に近寄ると、屈んで顔を近づけて問う。
「まずあんたの名前を聞こうか?」
「かはは!こうやってあんたに生死を握られている以上、
 答えねぇってことはできねぇよな。名前、なまえねぇ……
 俺の名前は零崎人識。まぁ、あいつは俺のことを『人間失格』と呼んだけどな」
 凪は人識の答えに、ふぅん とうなずくと、近くの木箱に腰をかける。
「人間失格ねぇ。ところであんた……零崎は俺を殺そうとした。つまりこのゲームに乗ったってことでいいんだな?」
 凪は、肯定したら、とりあえず動けないくらいにボコっておくか。などと思いながら再び訊ねる。
しかし、帰ってきたのは肯定ではなく否定であった。
「いいや、俺はこんな糞ゲームに乗る気なんてこれっぽっちもねぇよ。
 かはは!しかしゲームねぇ、見事なたとえだぜ」
 人識はクックックと笑うと、で?ほかに質問は?というような眼で凪を見る。
「乗ってない?じゃぁなんで零崎は俺を殺そうとしたんだ?」
 凪が聞くと、零崎は、
「ハッ!傑作だ、いや戯言かな?あんたは人を殺すのに理由がいると本気で思ってるのか?」
224炎の魔女と殺人鬼(2/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/28(月) 00:28:00 ID:dT5nYC7+
 凪はフフッと、おかしそうに笑うと
「おいおい、質問してるのはこっちだぜ」
と言った。
「ちっ。つれない女だぜ。まぁいいや。さっきの俺の質問だが俺は思わないね、
 俺は、まぁ世間一般に言わせる『殺人鬼』って人種なんだが、べつに理由があって人を殺してるわけじゃねぇ」
零崎は まぁ兄貴に言わせれば殺人鬼に失礼とこ言うんだろうけどな。と言って黙った。
「気持ちいいとか、スカッとするとか無いのか?」
「かはは!それじゃぁ俺が変態みたいじゃねぇか。まぁ似たようなもんだけどな。
 だから好みのあんたは殺さないし、このゲームに乗って、生き残るために人を殺したりもしない。
 つい殺っちまうってのはあるかもしれねぇけどな」
 なるほどね、と凪は言うとワニの杖を解除して零崎を自由にする。
「おいおい、俺を自由にしてもいいのか?いきなりあんたを殺すかも知れねぇぜ」
凪は木箱から飛び降りると、立ち上がった零崎に近寄って言った。
「お前は俺に惚れたんだろ?だったら惚れた女の手伝いをするべきだよな」
凪の有無を言わさない物言いに、零崎は人類最強の請負人、死色の真紅。
哀川潤を思い出した。
225炎の魔女と殺人鬼(3/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/28(月) 00:29:16 ID:dT5nYC7+
【残り104名】

【D-3/住宅街/1日目・02:40】

【霧間凪(048)】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:零崎と脱出の方法を考える

【少年(零崎人識)083】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。
226森へ ◆gzzG2LsYlw :2005/03/28(月) 00:31:20 ID:s0uW9cTs
 少年一人と着ぐるみ一体が北に向けて歩いていた。
少年の名はヴィルヘルム・シュルツ。皆からはヴィルと呼ばれていた。
薄い栗色の髪に、茶色の瞳。着ているのは彼が通っている上級学校の制服。
彼と行動を共にしている謎の気ぐるみの名は、本人いわく「ふぃも」
らしい。出会ってから必死になにかを説明しているが、着ぐるみに内蔵されているらしい機械によって
声がほとんど正しく伝わってこず、何を言っているかさっぱりだ。
 
一時間ほど前―― 着ぐるみを脱がせる努力をしてみたり、意思の疎通を図ろうと試行錯誤をしているうちに、
かなりの時間の経過と共に、見通しの良い場所に自分たちがいることの危険性に気づいた。
あたり一面は、足首まで届かない短い草原になっており、身動きが不自由な着ぐるみでも比較的歩きやすい。
北には鬱蒼とした森が遠くに見える。ヴィルはとりあえずそこに身を隠そうと考え、
手先が不自由な「ふぃも」に代わって、彼(彼女?)の支給品を手早く拾い集め、着ぐるみが腰にかけている鞄に詰め込んだ

。そして北に向かうことを提案し、「ふぃも」の身振りから了承を得たと思い込むことにし、歩き始めた――
227森へ ◆gzzG2LsYlw :2005/03/28(月) 00:32:32 ID:s0uW9cTs
それは歩き始めてからそれほど経たない内に起こった。
突然着ぐるみから妙な電子音が発せられたのだ。ヴィルと着ぐるみは驚き、一瞬身を震わせた。
何事かとヴィルが着ぐるみを調べていると、「ふぃも」が進行方向右前方を指で示して、
「ふもっ、ふもふも、ふもー!」となにやらわめき始めた。
右前方、方角で言うと北東の方角にヴィルが顔を向けると、紅い何かがこちらに向けものすごい勢いで疾走してくる
のが視えた。
「!?」
ヴィルは背中の鞄に入っている、散弾銃のグリップに手をかけた、と同時に
その少女は高く飛び上がり、着ぐるみの頭部に上段からの一閃を食らわせた。
二人がその紅いものは少女だと気づいたのは、その後だった。
少女は真紅の燃えるような髪と煌く眼をもっていた。
まだ十を過ぎた位の少女に見えるが、その顔立ちは凛々しい。
228森へ ◆gzzG2LsYlw :2005/03/28(月) 00:33:14 ID:s0uW9cTs
「え?」
たった今、死なない程度に力を抑えたとはいえ、それなりに、いや、かなりの
勢いで刀を振り下ろしたはずなのだが、直撃を受けた場違いな奇妙な着ぐるみは平然とそこに立っていた。
「なんなのよ!」
少女は左下段から今度は先ほどより強く、着ぐるみの右わき腹に鈍ら刀を打ち付けた。
「ガゴッ」
と鈍い金属音が聞こえたが、刀は着ぐるみの皮一枚すら破けず弾かれた。
彼女はフレイムヘイズ。いかなる場合でも沈着冷静に対処しなければならない。
そう育てられた。そして考える。

(どうやらここに来てからかなり、存在の力の行使に制限がかかっている様ね。
アラストールとも音信不通だし、体の動きもいつもより鈍い感じがする。
そしてなにより、このヘンテコな着ぐるみ一つ破壊できないなんて、ありえない・・
もしかして紅の徒?でも、そんな気配はないし・・。無視して悠二の元へ急ごうか・・。
いや、こいつらの武器を奪取もしくは破壊、そして行動不可、気絶くらいさせておかないと、私はともかく
悠二に危害を加える可能性が十分あるわ。そしてこいつがだめなら・・・)
229森へ ◆gzzG2LsYlw :2005/03/28(月) 00:33:45 ID:s0uW9cTs
突然、少女は後ろを振り向き、ヴィルのほうへ、刀下段に構え、
「おまえが先だ!」
近づいてきた。
ヴィルは鞄から散弾銃を完全に抜き取り構えた。一弾目を装填する。
相手の眼は本気だ。殺される。
「・・・・・・・・・。守るためなら、か」
(どっちが正解なんだろう、僕はまだわからない、わからないけど・・・。アリソン・・!)
少女が振りかぶる。
ヴィルは引き金に指をかけ、
「撃てっ!」
どこからか、男の子のような、若い感じのする、声が聞こえた、と
同時に引き金を絞った。
「ズドンっ!!」
轟音と共に、散弾する前の、至近距離からの一発が少女の腹に命中した。
「ぐっ」
紅い髪をした少女は、受けた衝撃に顔を歪めながら、面白いように後ろに吹っ飛んだ。

「今だ、走りましょう!」
先ほどの少年の様な声がヴィルの背中に呼びかける。
振り向いたヴィルが見たのは、黒いジャケットを着て、腰をベルトで締めた少年(に見えた)だった。
年は十代の中頃。短い黒髪に、大きな目と精悍な顔を持つ。
ヴィルは瞬時に彼が着ぐるみの中の人だと理解した。
「はい、ふぃもさん!」
身軽になった「ふぃも」とヴィルは北にある森に向けて走り去った。
230森へ ◆gzzG2LsYlw :2005/03/28(月) 00:35:37 ID:s0uW9cTs
後ろに少女の姿が見えなくなったのを確認して、
「危なかったですね。」とヴィル。
「ホントに。」
「ふぃも」は手に持っていたものを腰に付けながら言った。
そして、
「これ、ボクのだったんです。さっきの人が吹き飛んだときに落としたみたいです。」と妙に嬉しそうに言った。
それはリヴォルバータイプの大口径のハンドガン。
「ああ、それとボクは「ふぃも」じゃなくて「キノ」です。」
つぶやいた。


【E-6/草原/一日目・2:00】
『チーム時雨沢』
【ヴィルヘルム・シュルツ】
[状態]:正常
[装備]:ベネリM3
[道具]:デイパック(支給品入り) 
[思考]:森へ

【キノ】
[状態]:正常、ボン太脱衣成功
[装備]:カノン
[道具]:デイパック(支給品入り) 
[思考]:森へ、ヴィルと共に行動

【シャナ】
[状態]:治癒能力の低下による遅れ、腹部に重症
[装備]:鈍ら刀
[道具]:デイパック(支給品入り) 
[思考]:負傷治癒・悠二合流

【残り104名】
231俺様の闘争 1/4 ◆z1K.FAG1lM :2005/03/28(月) 00:43:38 ID:QbE2hjov
 キーリは一人、雑木林を歩いていた。
 当初はこんなおかしな状況に陥って大分混乱していたが、現在はとりあえず持ち直し、ハーヴェイを捜していた。

 いつまでも落ち込んでたって仕方ないもん、さっきの場所、結構な人数がいた。
 最初に殺された━━━━そう、殺されたのだ━━━━人たちみたいに、この状況を快く思ってない人が必ずいるはず。
 なら、その人と協力してどうにかこんな場所から抜け出さないと・・・。

「ハーヴェイ・・・」

 呟きが漏れるが、応える声は無い。
 キーリが支給された武器は警棒の様な物だった。勢いよく振ると大きさが倍ほど伸びるのだ。
 説明書によると「超電磁スタンガン・ドゥリンダルテ」と書いてあった。
 良く解らなかったが、どうやらこの棒を相手に押し当て、指もとのスイッチを押すとシロナガスクジラも一撃だそうである。
 シロナガスクジラも解らなかったが。
 とぼとぼと歩いていると突如、頭上からけたたましい声が降ってきた。

「そこ行く小娘よっ、このマステュリュアの闘犬、偉大なるボルカノ=ボルカン様の部下として共に自由を勝ち取る気はないかっ!?」
 ・ 
 ・
 ・ 
 ・
「えっと、あの、何か反応をして頂けると、当方としてもまことに嬉しい所存ですが」
 あまりの奇天烈さにキーリはしばし言葉を失っていた。
 黙り込んだ所為で何故か変人の口調がヤケに丁寧になっているが、気にせず、
「あのー、とりあえず降りてきませんか?すごく話し難いんですけど」
 恐らくどこかの木の上にいるであろう変人に向けて応える。
「うむ、そうであるな。確かに、このままでは話し難いな。良いところに気が付いた!
 お前をこの俺様の自由大万歳計画の部下一号に任命しよう。とうっ!」

ずべしゃあああああああっ!!

ごきんっ!!!!
232俺様の闘争 2/4 ◆z1K.FAG1lM :2005/03/28(月) 00:44:18 ID:QbE2hjov
盛大な音+何かヤバい音と共に上から落ちてきたのは、見た目が10代前半と思われる男の子だった。
「うわっ、大丈夫?」
「うむ、その気遣い、さすが部下一号。褒めて遣わすぞ」
 コンマ単位で復活したボルカンは腕を組み胸を張ってみせる。
「あの・・・、私もう行くね、気をつけてね」
 ボルカンが無傷なのを確認すると、係わり合いになりたくない(そりゃそうだろう)のか、早足で立ち去ろうとするが、
「ちょ、こら!待たないか!この俺様と一緒に自由を勝ち取りたくは無いのかっ!?」
 慌ててキーリに追いすがり、
「この俺様の部下になるのなら、特別にこのハリセンを付けよう、お〜っ、すごい、何て太っ腹、ボルカン様ステキーー!!」
「ごめんね、私捜してる人がいるの、だからあなたと一緒に行くことは出来ないの」
 立ち止まり、懇切丁寧に説明するが、目の前の男はそんなものを聞くような男ではない。
「そうか、なるほど、つまりこの俺様が自由を勝ち取る為の同士を捜してくれるというのだな!さすが部下一号!」
 
 何なんだろう、この人、ボルカン?さっき落ちた所為で頭が?でも、自由がどうとかっていうのは落ちる前から言ってたし…。

「そもそも何で自由を勝ち取りたいの?」
「良くぞ聞いてくれた!しかしそれを説明するにはまず、あの小汚くとも忌々しい黒魔術師の話からせねばならないな!」
「黒魔術師?」
「そう、黒魔術師だ!ヤツは・・・」
 キーリの問に、ボルカンが応えるが、全く頭に入らない。
 元々キーリの世界には魔術などは存在しないため、魔術や魔法なんてものは物語の中の存在なのだ。
 しかし、現在おかれている状況は全くもって物語じみている。今なら神様だって信じられるかもしれない。

 神様がいるなら、どうか、ハーヴェイと会うまで無事でいられますように・・・。
233俺様の闘争 3/4 ◆z1K.FAG1lM :2005/03/28(月) 00:45:22 ID:QbE2hjov
「そういうワケでだ、この俺様が自由を勝ち取るにはあの憎き黒魔術師を打倒せねばならんのだ!」
「そっか、でもやっぱりごめんなさい、さっきも言ったけど、私は捜さなきゃいけない人がいるの」
 実は全然ボルカンの話を聞いていなかったのだが、全く気にしていない。
「仕方あるまいな!部下一号がそこまで捜したいという相手だ、さぞ大物に違いない!」
 また、勘違いが始まった。
「はっきり言ってこの俺様の頭脳と力さえあれば出来ない事は無いに等しいが、しかしだ。
 この俺様に付き従う者がいるというのも悪くない、よって部下一号、お前の捜している相手とやら、この俺様も捜してやろう!」
「え、いいよ・・・、私は一人でも大丈夫」
「無理を言うな、お前の様な小娘がこんな場所につれて来られて何が大丈夫なものか、
 部下を護るのも、このマステュリュアの闘犬、ボルカノ=ボルカンの役目だからな!
 小娘、お前の命を狙うような輩が現れたら俺様が、このハリセンで相手がごめんなさいゆるしてくださいって泣くまで叩き殺してやるからな!
 お前は安心してこの俺様の部下を捜すのだ」
「小娘小娘って、あなたは何歳なの?私は16歳だよ」
「ハン!小娘で十分よ、この俺様より2歳も年下ではないか」
 ボルカンは地人という種族で、18歳、身長は130cm前後、基本的な地人男性の身長である。
 だがキーリはそれを知らない為、どう見ても10代前半にしか見えないのだが。
 もう考えても仕方ないのでその辺は流すことにした。
「わかったよ・・・、ここにいても仕方ないし、とりあえず移動しない?」
「そうであるな!この俺様と、ついでに部下一号の自由を勝ち取る為に、いざ進まん!」

 歩き出した二人が、倒れている古泉を発見するのは数分後のことだった。
234俺様の闘争 4/4 ◆z1K.FAG1lM :2005/03/28(月) 00:46:31 ID:QbE2hjov
【E-6:一日目:01:50分】
【残り104名】

【闘犬ご一行様(キーリ・ボルカン)、古泉一樹を発見】
【キーリ】
[状態]:正常
[装備]:超電磁スタンガン・ドゥリンダルテ(撲殺天使ドクロちゃん)
[道具]:デイパック(支給品入り) 
[思考]:ハーヴェイを捜したい、ゲームから抜け出したい。

【ボルカン】
[状態]:正常
[装備]:かなめのハリセン(フルメタル・パニック!)
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:キーリについて行く。打倒、オーフェン。

【古泉一樹】
[状態]:気絶状態
[装備]:なし
[道具]:デイバック一式。
[思考]:SOS団の合流
235Hound Dog ◆jB1onXN0Ak :2005/03/28(月) 00:49:18 ID:dy/LiXAq
「ここでひとまず一夜を明かそう、すべては明日だ」
クルツの言葉にうなずくパイフウ、彼らの目の前には巨大な城があった。
城の門は開け放たれており、中には人の気配はない。
もっともこれだけ広いのだ、出入り口は他にもあるに違いない。
適当な一室を見繕いそこに腰を落ち着ける2人、さてと…そこで扉をノックする音。
2人は顔を見合わせ、アイコンタクトを取るとすばやく部屋の両サイドに陣取り、相手が部屋に入るのを待つ。
「そろそろ来る頃だと思ってたよ」
その相手が部屋に入ってきた瞬間、パイフウは叫ばずにはいられなかった。
「ディートリッヒ!!」
「へぇ、名前覚えててくれたんだ」
軍服姿の美青年はにっこりと天使もかくやの美貌で微笑む。
その微笑みかき消すように銃声、目にも留まらぬ早業でパイフウが銃を抜き撃ったのだ。
その弾丸すべてがディートリッヒに命中したかに思えたしかし。
「さすがだね、魔術師、君にに借りておいてよかったよ」
その弾丸はすべて彼の体の目の前で停止していた。
「ちなみにただ止めるだけじゃつまらないよね?」
ディートリッヒが呟くと同時に静止していた弾丸が突如ベクトルを変える、その先にいたのは
「クルツ!!」
パイフウの叫びと同時に血煙があがりベッドに倒れ付すクルツ、その足と肩から鮮血が溢れ出す。
クルツは何か言いたげだったが、苦痛のあまり動けずにいる。
それを見て満足げにうなずくディートリッヒ。

「そうそう君は黙っててくれ、今夜はパイフウさんにちょっと重要な話を持ち掛けにきたんだからね」
そう言ってディートリッヒは手にしたケースから何か装置を取り出し、部屋の電気を消す
と、壁に映像が浮かび上がる…どうやらプロジェクターのようだった。
プロジェクターの画像は彼女にとって見慣れた風景を写している、
「これが…どうしたっていうのよ?」
火の出るような視線でディートリッヒを睨むパイフウ
「まぁ待って、面白いのはこれからだから…ほら」
ディートリッヒが示す先を見るパイフウ、そこには何人かの子供たちが写っている。
「だからこれが…」
さらに文句を言おうとしたパイフウの目が大きく見開かれる。
236Hound Dog ◆jB1onXN0Ak :2005/03/28(月) 00:52:38 ID:dy/LiXAq
何故なら先ほどまで遊んでいた子供たちが急に次々と倒れていったからだ、いや子供たちだけではない
大人たちも次々と倒れていく、その中の1人にカメラがズームする。
わずかに覗く襟元に特徴的な赤斑…これは
「天然痘!!」

「ええ、よくわかりましたね」
しかも、いかに天然痘の感染力が凄まじくてもこれだけ急激に発生するはずがない、
こいつら…
「町に細菌兵器をばら撒いたのね!!なんてことを!!」
「ご名答、さて…本題に入りましょうか、タウンの人間たちがすべて息絶えるまでに一週間」
「ワクチンはここにあります」
ディートリッヒが勿体ぶって胸ポケットからアンプルを取り出す。
「働き次第だけど、その条件はわかるよね?」
「私にあんたたちの犬になれってこと?」
「ええ」
やはり…予想通りの言葉にぐらりと体制を崩すパイフウ、しかし。
「馬鹿言わないでよ…だいたいあなたが見せた映像が本物とは限らないじゃないの」
「それにね…見ず知らずの他人が何千人死のうが関係ないわ」
パイフゥは精一杯の虚勢を張る、だが彼女にはわかっていた、あの映像がまぎれもなく
本物のエンポリウムタウンの物だということを。

そしてディートリッヒはそんな彼女の虚勢などとうに見抜いていた。
「君は思ったよりもひどい人だなぁ…君のお友達が聞いたら嘆くよ、多分」
「ま、君が決断できないなら君のお友達に頼むことにするけど?どうかなあ」
お友達…その言葉に烈火のごとく反応するパイフゥ
「あんたまさか!?」
「そのまさか、かなぁ…」
「許さない!!ほのちゃんだけは…」
火乃香は自分にとって理想の存在である、その彼女がこんな人の皮をかぶった悪魔に汚されようとしている。
「許さないならどうするのかな…吼えるだけじゃ現実は覆せない、わかるよね?」
微笑を絶やさないディートリッヒ、それとは対照的にパイフウは悲痛な表情で歯を食いしばる、そして
パイフゥは銃口をクルツに向ける。
237Hound Dog ◆jB1onXN0Ak :2005/03/28(月) 00:54:03 ID:dy/LiXAq
ちょ!ちょっと!!冗談はやめて!!」
冗談じゃないということはクルツにもわかっていた、だが彼といえどもこの状況では
これくらいの言葉しか口に出来なかった。

「ごめんなさい…許して」
ディートリッヒが外に出ると同時に銃声、さらにそれに付随しての凄まじい争いの物音
それらがすべて静まるまで10秒と少し…
力なくドアが開け放たれ、中からパィフウがふらりと現れる、部屋の中には蜂の巣にされたクルツの遺体があった。

「約束よ…ワクチンを」
だがディートリッヒはアンプルをそのまま床に落とし、粉々に踏み潰してしまった。
「あんた!!なんて事を!!」
殴りかかろうとしたパイフウだが、その瞬間凄まじい激痛にうずくまってしまう。
「犬が飼い主に使っていい言葉じゃないよね?」
どういう仕掛けかわからないが、どうやらディートリッヒはパイフウに何かをしたらしい。

「それに言ったよね、働き次第だって…なんならほのちゃんに手伝ってもらう?」
「あんたの…穢れた口で"ほのちゃん"なんて二度と口にしないで!」
口を利くのも辛いはずの激痛の中、それでも言い返すパイフウ
「大好きなんだね、何千・何万の人間たちよりも彼女が…でも不毛だよ、リリアンの女の子たちといい
 男性としてはもったいないかぎりなんだけどな」
満面の笑みでパイフウの呪詛に応じるディートリッヒ、そのまま後手に手を振りながら彼は悠々と廊下へと去って行く
「こっ…この悪魔」
そう背中に声をかけるのがやっとのパイフゥだった。
238Hound Dog ◆jB1onXN0Ak :2005/03/28(月) 00:59:04 ID:dy/LiXAq
そして…
やたらとだだっ広い城の中、トイレに迷って…結果とんでもない話を聞いてしまった。
「あ…あんた」
廊下の曲がり角にて坂井悠二とディートリッヒはばったりと鉢合わせしてしまった。

「君は、坂井悠二くんだっけ?」
相変わらずの微笑で応じるディートリッヒ
「早く逃げた方がいいよ、この城はもうすぐ怖い女の人のせいで血の海に変わるから…それに」
ディートリッヒは悠二の耳元で囁く
「シャナちゃんだっけ?可愛いよね」
「!!」
「今から全力で走ればこの城で出会ったお友達にピンチを伝えることが出来るかもしれない
 でも君は死ぬかもしれない、そしたらシャナちゃんにはもう会えない、ここが思案のしどころだよね」
微笑みついでに悪魔の囁きも忘れない。
そのまま廊下の向こうに足を進めるディートリッヒ、そして悠二が言い返そうと顔を上げたとき
行き止まりのはずの廊下のどこにも彼の姿はなかったのだった。

【パイフウ】
[状態]健康
[装備]ウェポン・システム(スコープは付いていない)
[道具]デイバック一式。
[思考]主催側の犬になり、殺戮開始/火乃香を捜したい。

【坂井悠二】
[状態]:通常。
[装備]:なし/狙撃銃PSG-1は部屋に置いてきています
[道具]:なし/デイパック(支給品一式)も部屋です
[思考]:思案中

【クルツ・ウェーバー:死亡】 残り104名
【G-4/城内/一日目3:00】
239『竜』対『修羅』(1/4):2005/03/28(月) 01:01:34 ID:qhWRXkau
 ――ミラ、ミラ、どこにいるの?
 一人はいやだよ。さびしいよ――

 森の中を、アーヴィング・ナイトウォーカー(以下、アーヴィー)は歩いてゆく。
 その手に狙撃銃を携え、うつろな目であたりを見回しながら。
 絶対に見つけることのできない人を、ただただ求め続ける。
 ふいに、足を止める。
 誰かがいる。
 姿は見えないけれど、誰かがいる。
 ミラかな?

 アーヴィーが足を止めたのを確認したのか、その誰かの声が聞こえた。
「こちらは争うつもりはない。君と話がしたいだけだ。
 ……今から出て行くが、撃たないでもらえないだろうか」

 ――ミラじゃなかった。
 でも、ミラのことを知ってる人かもしれないな――

「わ、分かりました。ぼ、僕も争う気なんてありません。ほ、本当です。
 僕も、あ、あなたに尋ねたいことが、あ、ありますから……」
 アーヴィーのその言葉を真実と受け取ったのか、しばらくして少し離れた木の影から男が姿を現した。
「私は竜堂始。君の名前を教えてもらえないだろうか」
「は、はい。ア、アーヴィング・ナイトウォーカーです」
 ファーストコンタクトがうまくいったことで少し安堵したのか、始の顔に僅かに笑みが浮かんだ。
「アーヴィング君、私は人を探している。竜堂終という名の少年と、鳥羽茉理という名の女性を見なかっただろうか」
 アーヴィーはしばし考える。
 ここで出会った人物はまだ一人だけだ。
「い、いえ、見てません。背の高い男の人には会いましたけど、その人たちは、し、知りません」
 始は、その言葉に僅かに落胆した表情を見せる。
 だが、すぐにまた元の表情に戻ると、アーヴィーに礼を言った。
240『竜』対『修羅』(2/4):2005/03/28(月) 01:02:52 ID:qhWRXkau
「そうか。いや、ありがとう。ところで君も私に聞きたいことがあるんだったね」
 そうだ、ミラのことを尋ねなくては。
「は、はい、あの、ミラっていう小さい女の子を見ませんでしたか?」
「ミラ……?」
 怪訝な顔を見せる。
 参加者名簿には一通り目を通したが、ミラという名前はなかったはずだ。
「いや、見ていない。というより、その少女はここにはいないはずだよ」

 アーヴィーは、目の前の男が何を言っているのか分からなかった。
 ミラがいない?
 そんなわけはない。
 なんでそんな嘘をつくのだろうか。

「参加者名簿は確認したかい? これがそうだ、見てみるといい」
 言って名簿を取り出す始。
 そこまでいうなら確認しようと一歩踏み出したところで、勝手に右腕が跳ね上がり始の額にポイント。
 左の義手で銃身を支えてそのまま引き金を引いた。

 ――ターン!

 あれ? とアーヴィーが思ったときには、とっさに回避しようとした始の額から血飛沫が舞っていた。
「くっ!?」
 銃弾はかすめるだけに終わったのか、目の色を変えるとアーヴィーに向かって駆ける。
「はあぁっ!」
 渾身のパンチがアーヴィーの頬を捉える。
 成す術もなく吹き飛んだアーヴィーは背後の木に叩きつけられ、白目をむいて気絶した。

241『竜』対『修羅』(3/4):2005/03/28(月) 01:04:06 ID:qhWRXkau
「どういうことだ?」
 会話はうまく進んでいた。
 なにより、このアーヴィング・ナイトウォーカーという青年からは敵意が全く感じられなかった。
 なのに、この結末だ。
 額の血を拭い、アーヴィーを見る。
 右手にはまだ狙撃銃を握ったままだ。
 とりあえず武装解除しようと近づき、かがみ込もうとした時――またアーヴィーの右手が跳ね上がった。

「な」という始の言葉と、
 ターン! という、銃声が同時。

 紅い花が咲き、あたり一面に降り注いだ。

 銃声で少しだけ意識が回復した。
 朦朧としたままのアーヴィーの瞳に大輪の紅い花が映る。
 アーヴィーは「きれいだな」と感想を漏らし、「きれいだね」と傍らでミラが言ってくれたような気がした。


【竜堂始 死亡】
【残り102名】

242『竜』対『修羅』(4/4):2005/03/28(月) 01:04:47 ID:qhWRXkau
【G-4/森の中/1日目・02:30】

【アーヴィング・ナイトウォーカー】
[状態]:情緒不安定/修羅モード
[装備]:狙撃銃"鉄鋼小丸"(出典@終わりのクロニクル)
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:ミラを探さなきゃ
    (ミラはエントリーされていませんが、探す気でいます)
    (ミラはエントリーされていないという情報を得ました)

[備考]:H-3 → G-4へと移動しています。
    竜堂始のデイバッグは、現状G-4に放置されています。内容不明。
243 ◆t4u50oq2Wo :2005/03/28(月) 01:53:16 ID:U/CC1LT2
進行表を『竜』対『修羅』まで作成しました。
今日はもう寝ます(・д・)ノシ
244イラストに騙された名無しさん:2005/03/28(月) 02:00:38 ID:IqMfmH78
ガウルンにコダール持たせて良い?w
245犬と天使の覚醒 1/9  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/28(月) 02:19:23 ID:MMKfJLGV
少女(朝比奈みくる)の死体を発見してから、約三十分後。
景と風見は、D−3地区の住宅街に到着した。
目立つような明かりは点滅する街灯くらいしかなく、辺り一帯がシンと静まり返っている。
「さて、どうする?」
塀の影に隠れて二人は話す。
「情報収集と言っても、話相手を見つけないと始まらないわよね。
でも、これじゃ人がいるかどうかも……」
「待った」
景は風見に口を閉じるよう示すと、視線を離れた一軒家に固定する。
「あそこの、自販機のある家」
短く告げる。風見もそこに目を移し、そして気付く。
窓の奥に見える赤い小さな光を見て、風見は一言。
「…………人魂?」
「いや、煙草の火だろ」
訂正する景を、風見は鋭い視線で睨む。
「冗談に決まってるでしょ」
……そんな風には聞こえなかったけど。
「あんな目立つ真似してるんだから罠でもあるのかもしれないけど、
虎穴に入らずんば、よ。行きましょう」
改めて周囲を見回し自分達以外の人影が無いのを確認し、二人は動いた。

ゆっくりと家に近づくにつれ、時たま怒鳴り声のようなものが聞こえてきた。
「家の外まで聞こえるような大声で……。緊張感の無い連中ね。
それとも、それすら人を呼び寄せるための罠?」
ぶつぶつと呟く風見。対して景は、聞こえてくる声に嫌な予感を覚えた。
――まさか、この野卑な声は……。
風見は身を低くして、自販機の陰に隠れながら玄関先を窺う。
「……玄関の扉が壊されてるわ」
――ああ、確かに『あいつ』ならやりかねないが……。
246犬と天使の覚醒 2/9  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/28(月) 02:20:25 ID:MMKfJLGV
「風見、ちょっと」
怪訝な顔で玄関を見ていた風見に声をかける。
「何?」
「もしかすると、中にいる奴が知り合いかもしれない」
景がそう言った瞬間、外の二人にもはっきりと聞こえる大声が家の中から響いてきた。

 「 ぴ ぴ る ぴ る ぴ る ぴ ぴ る ぴ 〜 」

「…………」
「……知り合いって、海野千絵って女のことよね? じゃあもしかして今のが」
「違う。絶対に違う」
はあ、と景は大きな溜め息をつく。
「とにかく中に入ろう。僕が先に行く」
「ちょっ、罠でもあったら……!」
「大丈夫だ。今の女はともかく、あいつはそんな男じゃない」
そう言うと、景は玄関へ向けて歩き出した。
「男? アンタそれってどういうことよ!?」
押し殺した怒鳴り声を上げながら、風見も後に続く。

「馬鹿野郎! そんな大声出す必要はねえんだよ!」
「えっ!? でもボク、精一杯良い所見せようと……」
家の中にいたのは、甲斐氷太とドクロちゃんの二人だった。
互いの事を語る内、ドクロちゃんが『復活の呪文』について話をした。
ワープなんてものが実在したのだから、呪文があってもおかしくない。
退屈していた甲斐は興味を持ち、『なら、この灰になった煙草を元に戻してみろよ』
と持ちかけたのだった。
その結果、
「しかも何だこれは!? 灰が元の形に固まっただけじゃねえか!!」
「おかしいなあ……」
彼女は『エスカリボルグ』というトゲバットを手にしないと真の力を発揮出来ないのだが、
そんなことを甲斐は知る由も無かった。
247赤色繋がり ◆a6GSuxAXWA :2005/03/28(月) 02:21:46 ID:Z+BymhiH
 深夜。
 潮騒の音が聞こえる岩場に、一人の赤い男が座り込んでいた。
「…………」
 男――ヴァーミリオン・CD・ヘイズは、憂鬱だった。
 いきなりこんな場所に呼び出されて殺し合いをしろと命じられた事も原因の一つではある。
 相棒のハリーとも引き離され、I−ブレインも原因不明の不調で機能が低下。
 義眼に隠した道具類まで、かなりの量を始末されている。
 それも、原因の一つではある。
「……何でよりにもよって、トイレの消臭剤なんだ」
 ちょこんと岩に乗っかった目の前の物体は、芳しい香りを放ち続けている。
 ちなみに説明書によると、自然の香料から作り出した化学物質無添加の品、だそうだ。
 ――環境志向万歳だクソッタレ。
 投げやりな思考が、脳裏を過ぎる。
 と、ふと視界の端に、赤色。
 あれは――
「……女?」

 【H−5/海岸傍の岩場/一日目1:34】

 【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:心身ともに健康だが、やや憂鬱気味。
[装備]:無し
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:情報探索

 【哀川潤】
不明。恐らくは健康体であると思われる。
248犬と天使の覚醒 3/9  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/28(月) 02:22:24 ID:MMKfJLGV
怒鳴る甲斐。とぼけるドクロちゃん。
そんな場違いな会話をしていた二人は、侵入者に気がつかなかった。

「……甲斐、何をしてるんだ?」
自分の名を呼ばれた事に驚き、居間の扉へと振り向く甲斐。
「『ウィザード』!? お前、どうしてここが……」
「ちょっと景、説明しなさいよ! アンタが探してるのは海野だけじゃなかったの!?」
「うわ〜いお客さんだあ〜」
「って敵!? ……ハアッ!!」
鉄パイプを振り上げ歩み寄るドクロちゃんに、風見の高速の蹴りが見舞われた。
側頭部を蹴り抜かれ、一瞬で昏倒するドクロちゃん。
それを見て、甲斐はまた驚きの声を上げる。
「おい、誰だこの変な女! 今の蹴りはただもんじゃねえぞ!?」
「変な女とは何よ! アンタもヤる気!?」
「何だと!? DDのトップ舐めんなよクソアマ!」
「クソアマ……? 上等よ! 表に出なさい!!」

「二人とも黙れ!! 静かにしろ!!」

『…………』
我慢が限界に達した景の叫びで、ようやく二人は口を閉じた。
249犬と天使の覚醒 4/9  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/28(月) 02:23:48 ID:MMKfJLGV
「……とにかく、これだけ騒いでたんじゃ誰に気付かれてもおかしくない。
近くの別の家でいい。一旦移動しよう」
「そうね。そこのアンタ、景の知り合いなんでしょ?
死にたくなきゃ着いてきなさい」
「……チッ、わーったよ。それじゃ、これ頼むわ」
甲斐は舌打ちすると、景に二人分のデイバッグを押し付けた。
疑問に思う景が声を出そうとするが、
「こいつ一人置いてくわけにゃ、いかねーだろうがよ……」
甲斐は、鉄パイプを握り締めたまま気絶したドクロちゃんを背負った。
「待ちなさい。いきなり殴りかかってくるような女を一緒に連れてく気?」
「それにも事情があるんだよ。……とにかく行こうぜ」
風見は顔に困惑の色を浮かべ、しかしすぐに玄関へと歩き出した。
その後を、ドクロちゃんを背負った甲斐が着いていく。
最後に残された景は、一言呟いて部屋を後にした。
「荷物も四人分となると、結構重いんだな……」

四人は、二軒先の――と言っても100メートルは離れている――空き家へと移動した。
幸い誰にも見つかる事無く移動は終わり、割れた窓から中へと侵入する。
そして、風見に半ば脅された甲斐が、自分とドクロちゃんの紹介をすることとなった。
「――――まあ、そういうわけでよ。こいつはどうもルールを理解してないようだし、
俺も退屈だったんであそこで話してたってわけだ」
「……生き残るために行動しよう、とは思わなかったの?」
風見の問いかけに、甲斐は苦笑を返す。
「行動も何も、カプセルもねえし第一やる気が起きねえ。
殺し合い? 下らねえ。今の俺にあるのは煙草くらいさ。おいウィザード、さっきの荷物……」
「その煙草の光で見つかってりゃ世話無いわ」
風見の声が冷たく響く。
「……で、アンタもカプセル? 一体それって何なの?」
250犬と天使の覚醒 5/9  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/28(月) 02:25:52 ID:MMKfJLGV
「あん? そいつから聞いてねえのかよ」
「無いと命に関わる薬なんでしょ。
それが必要なのが二人もいるって、同じ病気にでもかかってるの?」
「病気、ねえ……」
甲斐は景を見て、ハッと声を出して笑う。。
「肝心要の所は秘密にしておくってわけだ。流石だな、ウィザードさんよお」
「……どういうことよ」
顔を曇らせた風見に向けて、甲斐は話す。
「――病気は病気でも、『ジャンキー』だよ。薬物中毒って奴さ」
「ジャンキーって……まさか麻薬!?」
驚く風見を見て、甲斐は笑みを更に濃くする。
「麻薬も麻薬、特上品さ。悪魔が見えるくらいのな」
「アンタ、さっきから何を言ってるの!?」
――マズいな。
幾ら背中を任せる相手とはいえ、手札を全て晒す必要は無い。
晒すとすれば、それはカプセルが手に入った時で十分だ。
そう景は考えていた。しかし、
――余計なことをベラベラと……。
甲斐を止めようと、景が口を開こうとした。
その時、景の視界に動くものが入ってきた。
部屋の隅に寝かされていたドクロちゃんが、立ち上がっている。
――手に鉄パイプを握り締めたまま。
ゆっくりと振り返ったドクロちゃんは、高々と鉄パイプを掲げる。
虚ろなその瞳が見ているのは――、
「危ない風見!」
「へ? ――きゃあっ!!」
景は風見に飛びついて、その体を床に押し倒した。

ゴッ、と鈍い音が響く。
251犬と天使の覚醒 6/9  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/28(月) 02:27:12 ID:MMKfJLGV
「ぐあぁっ!!」
風見が見たのは、自分に覆いかぶさる景に鉄パイプが振り下ろされる光景。
鈍い音と共に、景の口から苦悶が漏れる。
「――何してんのよアンタぁっ!!」
叫んだ風見は、景の体を抱いて横へ回転。二人の上下が逆になる。
更に風見は素早く腰の後ろへ手を回し、隠していたグロック19を抜き取る。
射撃。しかし、キンッという甲高い音が響いただけでドクロちゃんは無傷。
「何が天使よ、この化け物ッ……」
さらに射撃するも、結果は同じ。
ドクロちゃんは、風見の射撃に合わせて鉄パイプで銃弾を弾いていた。
「景、走れそう!?」
風見はゆっくりと後ずさりながら、銃声に負けぬ大声で景に話しかける。
「痛むが、多分大丈夫だ……」
その返答に、風見はわずかに笑う。
「上等ッ! 足止めするから先行って!!」
景はよろめきながらも玄関へと急ぎ、鍵を開けて外へ出る。
それを横目で確認した風見は、床に置いてあったデイバッグを一つ掴み、残弾分の連射を見舞った。
弾き切れなかった一発が、ドクロちゃんの横腹に直撃する。
「よしっ……!」
小さく呟くと、風見も玄関へと駆ける。そして脱出。

数メートル先を走る景に、風見はすぐに追いついた。明らかにスピードが遅い。
「強がってんじゃないわよ、バカ……」
口の中で呟く。
「景、ちょっとストップ! これ背負って!」
デイバッグを景に押し付け、振り向いて後ろを確認する。
――よし、来てない!
そして景に向き直り、苦痛に耐えるその顔を見据える。
「……一発かましてやったからすぐには追って来ないはずよ。
でも銃声がマズいから、とっとと逃げましょ。背中乗って」
風見は身を低くして背中を差し出した。
252犬と天使の覚醒 7/9  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/28(月) 02:28:42 ID:MMKfJLGV
「まったく情けないな、女の子に背負われて逃げるなんて」
言いながら、景は体を風見へと寄りかからせる。
「怪我人が何言ってるの。……しっかり掴まっててよ」
――にしても軽いわね、コイツ。
華奢な景の体に、先ほどの鉄パイプの一撃は響いたことだろう。
景を背負うと、風見は駆け出した。
痛みがつらいのか、景は何も喋らない。
――素人じゃないって偉ぶっといて、逆に守られちゃうんだからなあ……。
「景、ゴメンね」
「別に。女性を守るのは男性の役目だって、昔から言うしね」
その物言いに、風見は硬い表情をわずかに緩める。
「……ありがとう」
「どういたしまして」


横っ腹を撃たれたドクロちゃんは、走る風見を見送った。
無表情な彼女は鉄パイプを掲げ、呪文を唱える。
「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜」
唱え終わった時、彼女の腹部から流れ出る血は完全に止まっていた。
「ぴ、ぴる……」
うわごとのようにぴるぴると呟きながら、ドクロちゃんは外に出る。
そして、幽鬼の如く歩き出す……。
253犬と天使の覚醒 8/9  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/28(月) 02:30:51 ID:MMKfJLGV
「何だってんだ、あいつら……」
風見がグロックを取り出した瞬間、甲斐は一人別の窓から逃げ出していた。
ドクロちゃんと戯れるのは彼らしからぬ行動だったが、
その判断力・行動力は決して鈍ってはいなかった。
――銃を持ってるなんて反則じゃねえか。
見知った顔だからと油断したのが失敗だった。
もしかすると、初めから殺すつもりだったのかもしれない。
「ちっくしょお……。俺としたことが……」
――殺られる前に殺る、しかないってことか。
ならば武器、それにカプセルが必要だ。
まず一人殺し、武器を奪う。それを繰り返し、カプセルを探す。
「こんなとこで死ぬわけにゃあ、いかねえよなあ……」
もはやドクロちゃんのことも忘れ、甲斐は駆けた。
生き残るという、単純で明確な目標のために。


【D−3/さびれた住宅街/02:45】

【残り102名】
254犬と天使の覚醒 9/9  ◆Sf10UnKI5A :2005/03/28(月) 02:31:24 ID:MMKfJLGV
『姐さんと騎士(物部景/風見千里)』
【D−3からC−3へ移動中】
【物部景(001)】
[状態]: 背中負傷(致命傷ではない)
[装備]: 無し
[道具]: デイバッグ(支給品一式)
[思考]: 風見に背負われて移動中。

【風見千里(074)】
[状態]: 平常。景を背負っている。
[装備]: グロック19(残弾切れ)
[道具]: ハンドガン用マガジン(1)
[思考]: 景を背負って移動中。


【ドクロちゃん】
[状態]: 頭部負傷。それによりぴぴる(バーサーカー)モード突入。
[装備]: 鉄パイプ
[道具]: 無し
[思考]: 当ても無く移動。他人を見かけたら攻撃
  ※能力値上昇中。少々の傷は「ぴぴる」で回復します。

【甲斐氷太】
[状態]: やや興奮状態
[装備]: 無し
[道具]: 煙草(残り14本)
[思考]: 生存のためにゲームに乗る。
    D−3からE−3へ移動中。

補足:デイバッグ四つがD−3の民家に放置中。中身は全て武器無し。
    銃声はD−3のほぼ全域に響いたものとします。
255未知との遭遇 ◆0UImLUsV8k :2005/03/28(月) 02:34:12 ID:KIgmYc0l
雰囲気に違和感を感じ、宮野秀策は足を止めた。

梢の向こうから話し声が聞こえる。
甲高いような、それでいて深みを帯びた女性の声。
低く重いが、通りのよい声。
(ふむ……とりあえず茉衣子くんではないようだ。
誰かと会話をしているということはそれなりに協調性を持ってはいるはず。
接触してみるとしようか)
そう考え話し声の発生源へ近づいて行く。

ガサリと茂みから現れ宮野は人影に話しかけた。
「やあ! 君達そこで何をしているのか…ぬぇぅおわぁっ!!!」
高速で振るわれた何かを、天性の直観力で回避する。
その何かはしゃがんだ宮野の頭上を通り過ぎ、そこにあった一本の木を叩き折った。
何か、とは肉塊……人間の拳であった。
「乙女の背後をとるとは何事かっ! …あら、よく見ればかなり良い男ではないかえ。
このあたくしの魅力にフラフラと近づきたくなってしまったなら仕方がないわねえ」
そこにいたのは巨漢…いや巨女であった。確実に100キロは超えているであろう巨体だ。
女であると判断したのは辺りに立ち込める濃密な化粧の匂いからである。
宮野はすっくと立ち上がり、くるりと向きを変えると一目散に駆け出した。
256未知との遭遇2/4 ◆0UImLUsV8k :2005/03/28(月) 02:34:52 ID:KIgmYc0l
森の中を駆ける、駆ける、駆ける。駆けながらも思考は果てしなく続く。
その顔は恐怖…いや混乱に歪んでいる。
「何だ何だアレは! 想念体か? いや、それらしい反応はない…
ならば人間だというのかアレが? いや、人間以外である可能性もあるか。 
確かにあそこに集められたとき、人間以外の存在も確認したからな!
とりあえずアレは人外の何かと考えておくとしよう!!
会話をしていたはずなのにその相手も見えなかったことだしな!!」
「をーほっほっほっほっほっ! 誰が人外か! 奇矯な髪の毛の色をしおってこの国賊が!」
後ろから爆音(足音)を轟かせてものすごい勢いで巨体が追いかけてくる。
「待てや美少年! 待てばあたくしがいずれ作る愛のマホロバの名誉職員にしてくれようぞ!」
「断る! この宮野秀策にはまだやるべきことがあるからなっ」
「ならば宮野秀策とやら、他の者に殺される前に殺してしんぜようっ! 撃ちてし止まん神風のココローッ!」
巨体が跳躍。一跳びで宮野が作り出したリードが縮まる。
「くぅっ!!」
宮野は自らのEMP能力を発動する。紫色の触手が宙より現れ小早川奈津子をガンジガラメにした。
ガンジガラメにされた小早川奈津子は足をもつれさせて転がった。
「おおっ!? これは何じゃあっ!」
「よし、三十六計逃げるにしかずとも言う! 逃げるなら今のうちか!」
自分のEMP能力では倒せる気がしない。ここは逃げるしかなかった。
257未知との遭遇3/4 ◆0UImLUsV8k :2005/03/28(月) 02:35:21 ID:KIgmYc0l
「をほほほっ! 何のこれしきぃっ!」
軽々と触手を引きちぎり辺りを見回す小早川奈津子。しかしその周囲に宮野秀策の姿はなかった。
「…逃げたのかえ? フンッなんと意気地のない男であること。
これこそゲンダイのワカモノに蔓延る無気力症候群なのだわねえ」
「…先ほどの宮野とかいう小僧ではないが、お主本当に人間か?」
急展開についていけなかったアラストールがボソリとつぶやいた。
「あたくしは小早川奈津子! それ以上ではあるけれどそれ以下であることはないわ!!」
「それ以上でもそれ以下でも無いと言わんか、普通」
「それ以上無駄口を叩くようなら捨てていくぞよ。 をーほっほっほっほ!」
むしろ捨てて欲しいとコキュートスの向こうでアラストールは切実に思った。

走り続けているうちにいつの間にか森を抜け平原へと出ていた。
誰とも会わなかったのは奇蹟といえよう。
こんな状態で会えば宮野は不審者として殺されていただろうから。
「ハア…ハア…どうにか助かったようだな…ウプ」
急激な運動により胃の中の1リットルの水が暴れている。
あれほど激しく運動したにもかかわらずバッグの中身を落とさなかったのは幸いであった。
「ああ、脚が…いや胃も駄目か…もう走れん…ウ」
座り込む宮野。そのまま芝生へ倒れこむ。
そして意識を失った。
258未知との遭遇4/4 ◆0UImLUsV8k :2005/03/28(月) 02:36:26 ID:KIgmYc0l
【D-6南/森の中/1日目・0:35】
【小早川奈津子】
 [状態]:左手にかすり傷(木を殴った際のもの)
 [装備]:コキュートス(アラストール入り。アラストールは奈津子の詳細を知らず)
 [道具]:デイバッグ(特に無しと書いてあったがこれぐらい持ってるよね)
 [思考]:竜堂兄弟に正義の刃を。シャナとやらと合流してもよい。逃げられてちょっと悔しい。

【E-6/森の中/1日目・0:50】
【宮野秀策】
 [状態]:水腹による不快感と、小早川奈津子との接触による緊張、その他もろもろの要因により気絶。
 [装備]:特に無し
 [道具]:デイバッグ(大鋏『自殺志願』はしまいっぱなし。水は一本消費した)
 [思考]:他の事はともかく逃げられて良かった。 起きたらまた光明寺茉衣子を探す。
259逃げ犬 ◆E1UswHhuQc :2005/03/28(月) 03:36:14 ID:8AH2UXvR
「きゃあああ!」

「どうしたっ!」
 悲鳴を聞いて、ベルガーは背後の岩陰を覗き込んだ。と、何かがぶつかってくる。
 テレサ・テスタロッサだ。下着姿の彼女を抱きとめ、ベルガーは問う。
「何があった?」
「だ、誰かがこっちを覗いて――」
 そこまで言って、テッサの視線の先が自身の身体に移る。下着姿。
「――き、」
「叫ぶなバカ。何でこんなところに居るのか忘れたのかテレサ・テスタロッサ」
「う……」
 殺し合いのゲーム。それを思い出して、テッサが言葉無くうずくまる。
 ベルガーはまだ生乾きの上着を掴み、彼女に被せた。
「あ……」
「まだ乾いちゃいないが、ハズかしいならそれ羽織っとけ」
「……ありがとうございます」
 一礼するテッサに、ん、と頷き、ベルガーはデイバッグを手に取った。中に手を入れ、まだ見ていない支給品を確かめる。
 取り出されたものは。
「……一つ聞くぞ、テレサ・テスタロッサ。――これは武器か?」
「ええと……仮に武器だとしても、私の知識にはないです」
 取り出された黒い卵を見てのテッサの言葉に、ベルガーは溜息で返した。そして聞く。
260逃げ犬 ◆E1UswHhuQc :2005/03/28(月) 03:36:50 ID:8AH2UXvR

「君の武器は?」
「まだ確かめてないです……」
「なら確かめるぞ。武器がいる。視線を感じたんだろう?」
「え、ええ」
 頷くテッサの目の前で、ベルガーは生乾きの衣服を身につけた。黒い卵はポケットに入れておく。
 テッサを後ろに、背後の岩陰へと回った。用心深く。
 焚き火の灯りがつくる視界に、二人は共通のものを見つけた。
 分厚い筋肉の鎧を持った、傷だらけの体を持つ巨漢だ。装飾がなされた、一本の棒を手にしている。
「……どう思う?」
「海兵隊に入るといいんじゃないでしょうか」
 当然のように巨漢を警戒しながら、テッサのデイバッグを掴む。と、巨漢が口を開いた。厳かな声で、
「主は申された」
 棒を大上段に振り上げた巨漢に、ベルガーは一言。
「……何て?」
「――汝、姦淫するなかれ」
 棒が振り下ろされた。
「俺は子供に興味ないって――」
 言う間にテッサを小脇に抱えて、真横に飛ぶ。充分に避けられるタイミングだ。通常ならば。
 横に飛んだベルガーの視界、豪速で振り下ろされる棒が、いきなり巨大化した。
「――!」
 避けられない。そう判断した時だ。
 視界がブラックアウトした直後、二人の姿が消え失せ、棒――宝具『神鉄如意』が地面を撃砕した。
261逃げ犬 ◆E1UswHhuQc :2005/03/28(月) 03:37:40 ID:8AH2UXvR

 視界が開けた先にあったのは、知り合いの死体だった。
「ヘラード・シュバイツァー?」
 どうやって危地を抜け出したのかという疑問はあった。だがそれよりも、眼前に倒れ付した男の死体に言葉を投げ掛ける。
 首筋の斬撃痕と地を塗らす血液。ベルガーはシュバイツァーの手を取り、脈を見る。
「……何こんなところで死んでるんだヘラード・シュバイツァー。レーヴァンツァーン・ネイロルが泣くぞ」
 呟きは夜の闇に紛れ、消え去る。
 ベルガーは溜息一つで感傷を打ち消し、遺体の傍らに転がるデイバッグを手に取り、開けた。
 シュバイツァーの遺した支給品は、東洋風の剣だった。
 一目で業物と分かる気配の、カタナだ。柄の辺りにラベルが張ってある。
 『贄殿遮那』。
「……あの、ベルガーさん」
「なんだテレサ・テスタロッサ。服が欲しいから戻りましょうとか言うなら一人で行けよ。何処だか知らんが」
「違います! いえ、服も欲しいですけど……その、その方は……」
「知り合いだ」
 一言で答えてベルガーは立ち上がり、カタナを手にした。
「ちょっと手伝ってくれテレサ・テスタロッサ。このバカを埋める」
「あ……はい」
 テッサは答え、辺りを見回して穴掘りに使えそうなものを探す。と。
「君の支給品は何だ? スコップだといいんだが」
「そうでした。ええと……」
 言われ、自分のデイバッグを開ける。中には、
「……服で穴は掘れないな」
「……ええ」
262逃げ犬 ◆E1UswHhuQc :2005/03/28(月) 03:38:39 ID:8AH2UXvR

【G−3/林の中/02:30】

【ダウゲ・ベルガー】
[状態]:平常を保とうとしている
[装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ 黒い卵(天人の緊急避難装置)@オーフェン
[道具]:デイバッグ×2(支給品一式)
[思考]:シュバイツァーを埋葬する。

・天人の緊急避難装置:所持者の身に危険が及ぶと、最も近い親類の所へと転移させる。

【テレサ・テスタロッサ】
[状態]:動揺
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式) UCAT戦闘服
[思考]:シュバイツァーの埋葬を手伝う。

【C-7/湖のほとり/1日目・02:30】

【ハックルボーン】
[状態]:健康
[装備]:宝具『神鉄如意』@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:神の導きに従って天罰を下す。

【残り102名】
263天敵 1/4  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/28(月) 05:00:04 ID:apKWvvoI
先ほど、目の前に転がる人間に止めを刺してからどれぐらいたったのだろうか。
あれだけ大きな声で鳴いてくれれば、勇敢な人間の一人や二人はすぐに駆けつけると思ったが・・・
このゲームに参加しているのは兎のような臆病者ばかりなのだろうか、
いや、ただこのまわりには誰もいなかっただけだろう。
首を軽く振るとゼロスは湖のまわりをなぞるように北へと歩き始めた。

数分もしないうちに、向こうから歩いてくる人影を発見する。
筋骨隆々の大男だ。背中には棍棒とバックを背負っている。

(力自慢の、いや力だけが取り得の筋肉ダルマといったところですか・・・)

ゼロスは心の中で嘆息した。これでは少しも遊べないだろう。
魔族である彼には物理的な攻撃など通用しないのだ。
264天敵 2/4  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/28(月) 05:01:09 ID:apKWvvoI
湖にそって南下していたハックルボーン神父は、目の前に禍々しい気を発する男に気付いた。
人間ではない。そうは見えるが、そうでないことは神父からすれば一目瞭然だ。

「不浄なるもの・・・救えぬものよ」

神父は腰を落とすとゼロスに向けて地鳴りを上げて突進する。
265天敵 3/4  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/28(月) 05:02:14 ID:apKWvvoI
(救えぬもの・・・か)

ゼロスはクスリと笑った。それはあなたのことですよと。
大男がまるで竜か何かのような勢いで迫ってくるがなんら脅威を感じない。
どのようにして傷め、歎かせ殺そうかと思案をめぐらせた時、
目前の大男がこの場所を真夏の昼間にするかのような光を放った。

(目くらまし!?・・・違う!)

ゼロスの体が光によって焼かれる。
神父の放つ聖光効果(ハローエフェクト)。
その圧倒的なエネルギー量から可視領域にまで達する聖なる気、魔族であるゼロスには効果覿面であった。
ゼロスが不味い、早く殺さねばと思った時にはもう遅かった。
神父のバスケットボール大の鉄拳が彼の胸にめり込んでいる。
まるでダンプカーに撥ねられたかのようにゼロスの身体が宙を飛ぶ。

(こ、これは私の中に・・・!!な、なんてことだ)

宙を舞うゼロスの全身を神父の聖なる気が巡り、魔力の連結を破壊し身体を分解していく。

ゼロスは湖の上に振る塵となった。

悪魔の滅殺を確認した超弩級聖人ハックルボーン神父は、万人に神の救いをもたらすべくその場を後にした。

【ゼロス 死亡(分解)】
【残り 101人】
266天敵 4/4  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/28(月) 05:03:24 ID:apKWvvoI
 【D-6/湖のほとり/1日目・03:15】

 【ハックルボーン神父】
 [状態]:健康
 [装備]:宝具『神鉄如意』@灼眼のシャナ
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:万人に神の救いを

 ※ゼロスの持っていた装備・道具は湖の中(浅い)です。
267不正アクセス 1/5  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/28(月) 08:53:34 ID:apKWvvoI
匂宮出夢は退屈していた。
入り込んだ城のテラスで坂井悠二と長門有紀の2人に遭遇して以来、
床に尻を着き、壁に背を預けて直立不動の長門有紀を見つめている。
1時間ほど前に「何してんだ?」と尋ねたら、「作り直してる」と返ってきてそれ以来口を利いてない。
坂井悠二の方はやめときゃいいのに城の中を探検中だ。
何かあるかもしれないとかなんとか。危険だが死んでも別に気にならないのでほうっておいた。

「あ〜あ、つまんねぇ・・・」
268不正アクセス 2/5  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/28(月) 08:54:56 ID:apKWvvoI
長門有紀は、情報統合思念体が作成したヒューマノイド・インターフェイスとしての能力をフルに活用し
状況の把握と空間情報の改竄、情報統合思念体へのアクセスを行っていた。

状況は今だ不明確だ。蓄積したデータからは涼宮ハルヒの現実改変能力が原因かと考えられたが
その可能性は低いと判断された。空間の形成パターンが今までの例からは著しく異なるのだ。
涼宮ハルヒの作る世界は、その願望が元になっているので情報の偏りが歪なのだが、ここはそうではない。
空間情報は整然として、いや整然としすぎていて簡単になんらかの目的で作られたものだとわかる。
今までの例から言えば、一番可能性が高いのは情報統合思念体の中の過激派による工作の線だが、
その可能性も低い。手間がかかりすぎている。ハルヒが目的の場合、明らかに不必要だと思われる
ファクターが混ざりすぎている。
しかし、情報はまだ少ない。感知できる範囲は狭められているが、情報を引き続き収集する必要がある。

現在、滞在している城のテラスを中心に空間構成情報の改善を進めている。
シェルターを作るためだ。完成すれば例え核爆弾が振ってきたとしても耐えることができる。
が、能力が制限されているため時間がかかる。最優先で実行しているが後11時間はかかるだろう。
ゲームが開始した直後にした80億4025万1684通りのシミュレーションでは、97.4%の確立で
時間切れによるゲームオーバーは発生しなかった。
そしてシェルターに引きこもった場合だと、12.7%で自分が生き残ることができる。
そうでなかった場合の0.00054%に比べれば明らかに有利だ。
過負荷により疲労が蓄積しているが、シェルターが完成すれば倒れてしまっても問題はない。

そして、情報統合思念体へのアクセス。
これは全く繋がらない。602452/秒回アクセスを試みているが、なんの応答も得ることができていない。
この空間の有様から推測するとおそらく位相がずれているのだろう。
だが、いつか情報統合思念体の方がこの空間を知覚する可能性はある。
そうなれば、情報解析は一瞬で終わる。空間全体を改竄しての問題解決も容易だろう。

長門有紀は直立不動の姿勢で少しずつ、解析と改竄を進めている。
269不正アクセス 3/5  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/28(月) 08:56:09 ID:apKWvvoI
「戻ったよ」

自動ドアが開き、天使の美貌をもった青年が入り込んでくる。

「遊びがすぎるぞ」

部屋の中でモニターを見つめていた長髪の男は不機嫌な声でそれを出迎えた。
しかし、美しい青年はそれを意に介さずモニターを覗き込む。

「あれ?ERRORが出てる。おかしいな、正当な手続きは踏んだはずなんだけど」
「君が原因じゃない。ここだ」

長髪の男が手袋をはめた手でモニターの一角を指す。
270不正アクセス 4/5  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/28(月) 08:57:23 ID:apKWvvoI
「G:4063-4:3997-0:2699・・・。城の中からだね。不正アクセスだ。
君の他にもこんなことができる人間がいるんだねケンプファー。」
「正確には人間ではないがな・・・。長門有紀、人の形をしてはいるがコンピュータそのものだ」
「で、どうするのこれ?まさかほっときはしないよね?」

長髪の男はフッと息を吐く。

「いいや、放っておくさ。」
「どうしてさ?」
「できることは限られている。どうやったところであそこから抜け出すことはできん。もし・・・」
「もし?」
「もし、抜け出ることができたとしても外は亜空間だ。元の世界を見つけることはできんよ。
それよりも、だ」

長髪の男はモニターから顔を放し、青年の方へと向く。

「おまえの方こそ干渉を控えろ。予定が狂えば計画が意味をなさなくなる」
「フフ・・・、ケンプファーはお堅いな。君にとってはこれも所詮茶番にすぎないんじゃないの?」
「そうだとあってもだ」

長髪の男は席を立ち上がり、部屋を出て行き、青年もそれに続いた。

【残り 101人】
271不正アクセス 5/5  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/28(月) 08:58:38 ID:apKWvvoI
【長門有紀&匂宮出夢】
【G-4/城のテラス/03:05】

【長門有紀】
[状態]:若干の疲労。
[装備]:ライター
[道具]:デイバック一式。
[思考]:シェルターの形成/情報収集/ハルヒ・キョンの安全確保

【匂宮出夢】
[状態]:健康。
[装備]:???
[道具]:デイバック一式。
[思考]:退屈中。暇をつぶせることを探している。
272ignition weapon(12) ◆1/g3lj1NWw :2005/03/28(月) 09:03:27 ID:HkcQNkUO
「……なんとも、面妖な」
『ひひひひひ、そう言うなよ相棒』
「私を勝手に相棒扱いするな、エンブリオよ」
『素直じゃねぇなぁ、まぁいいけどよ』
──扱いに困る、それが宮野のエンブリオに対する評価だった。掻き回される側ではなく掻き回す側
にいる宮野にとって、自分以上に会話を掻き回すエンブリオはまさに天敵と言えた。
だがそれ以上に宮野を困らせているのが、このエンブリオの性質であった。エンブリオ曰く『何らかの力
を己が内に持つ者』のみがエンブリオの声を聞く事が出来るらしく、そういった人間がこのエンブリオの
噐たるエジプト十字架を破壊するとその人間の持つ力を完全に引き出すのだという。

『そういうわけだからさぁ、早いとこオレを殺してくんねぇか?』
エジプト十字架を眺めながら、宮野は冷静に考える。果たして、自分は何処から道を間違えたのかと。

湖の中から、エンブリオの入ったバッグを引き上げた事か?

気絶から目覚めた後、北へ向かった事か?

それとも、あの想念体の様な人外の化け物に出逢った事か?

どれも正解のように見えるが、その実殆ど不正解に近い。最も正解に近い解答はただ1つ。

『このゲームに参加させられた事』であろう。

そこまで考えて、宮野は己が唯一の弟子の事について考える。

光明寺茉衣子。
吸血鬼事件の後に誓ったように、どちらかのEMP能力が消失するか彼女が自分を超える存在になるまで
彼女を守らなければならない。
だが、自分は彼女を守れるのだろうか? 自分のEMP能力──、上位世界からの逆干渉を満足に
扱えない状況で。
273ignition weapon(2/2) ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/28(月) 09:04:59 ID:HkcQNkUO

考える事数分、宮野は決意を込めてエンブリオに告げた。
「エンブリオよ、お前はしかるべき人間の手で死んでもらうぞ」
『ひひひ、そうか』
若干はしゃいだ様な声で、エンブリオが応えた。
『ところで、俺を殺してくれるのはどこのどいつなんだ相棒?』
奇怪なる両刃の鋏を鞄から取り出した宮野は、実に宮野らしいアルカイックスマイルを浮かべてこう
返した。
「我が愛すべき唯一なる弟子さ」


【D-6/湖のほとり/1日目・04:45】

 【宮野秀策】
 [状態]:健康
 [装備]:『自殺志願』
 [道具]:デイパック(支給品一式)×2、エンブリオ(ゼロスの支給品)
 [思考]:茉衣子に逢ってエンブリオを使わせる。

【ゼロスの支給品は宮野がゲットしました】
【残り101人】
274Accomplish(1/3)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 09:06:55 ID:2j3TzkRA
「人はどこにでも橋をかけたがる。青春を語り合うのはいいが、回り回って冷温化に繋がることも考慮した方がいいと思う」
「主催者にいいなさいよ」
海野千絵の目の前には、遠方へと続く大きな高架がかけられていた。正面にある階段から上れるようだ。
「本人のいないところで発生する忠告というのも意味がないわけじゃあない。たとえば折れた鉛筆のように」
目の前に飛んできた人精霊を手で払いのけ、辺りを見回す。
「折れた鉛筆でもな、鉛筆の持ち方を練習することができる」
「……誰か、いる?」
橋の上に人影が見えた。体格からして自分と同世代くらいの少年か少女だろうか。
「ゲームに乗ってなきゃいいんだけど」
つぶやいてから、気づく。
薄暗いが、こちらから人影が見えたと言うことは、あちらからも自分が見えているのではないか?
なのに人影は微動だにせずにじっとこちらを伺っているように見える。
「……どうせ見つかっているならこっちから行くわ」
「確かに人生に積極性は大事だな。えらいぞがんばってるぞ暴力小むすぎぇ」
デコピンをかました。
一歩一歩、慎重に歩いていく。覚悟は決めたが、やはり胸中には一抹の不安と恐怖がある。と。
「そこまでよ! 止まりなさい!」
人影が叫ぶ。少女の声だ。千絵はとりあえず声に従って足を止めた。
「とぉうっ!」
かけ声と共に橋から飛び降り───しかも空中で一回転して────こけた。
「ちょっと……大丈夫?!」
千絵がかけよろうとすると、ひょいと立ち上がって、何事もなかったかのようにこちらに指を突きつけた。
「もしあなたが正義の元に主催者打倒を目指しているのならばともに戦いましょう!
でも!愚かにも殺戮を犯すというのなら、このアメリア・ウィル・テスラ・セイルーンがここで成敗してあげるわっ!」
しばしあっけにとられる。自分と同じ肩までの黒髪。童顔だが、大きな瞳と相まって愛らしい容貌だ。
目を引くのは服装。アニメやゲームにそのまま出てきそうな白を基調とした服装。
最初にスィリーのようなものが出てこなかったら、もっと驚いていただろう。
落ち着いてから、その大仰な名前の少女──アメリアに、自分の答えを言ってやった。
275Accomplish(2/3)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 09:07:29 ID:2j3TzkRA
「いいわよ。一緒に主催者を倒しましょう」
「へっ?! いいの……?」
「いいの……ってあなたが言ったんでしょ。私もそのつもりだったし」
「あ、ありがとう。てっきり罵倒されて襲いかかってくると思って」
「……襲いかかるも何も、私の支給武器はこれよ?」
「これか? これ扱いか? 言葉のナイフはそこまで世界に浸透しているというのか。このままでは世界が呼吸困難に陥るぞ」
「──とまぁ、とくに役に立たない戯言発生精霊だから」
「精霊……」
興味深そうに、アメリアはスィリーを観察している。
「ともかく、あなたと私は同じ目的を果たす同志ってことでいいのよね?」
「はいっ! よかったぁ。最初の一人がいきなり味方でほっとしたわ」
「……最初の一人、って、もしかしてあなたずっとあそこで突っ立って誰かが来るのを待ってたの?」
「えへへ」
「……」
無謀過ぎると思う。
「あ、立ってたのはずっとじゃないけど。……ちょっと落ち込んでたから。
……最初に殺されてしまった金髪の人の方、仲間だったの」
「……!」
ある意味一番むごい死に方をした二人のうちの一人を思い浮かべる。
あの二人にもたくさんの仲間がいるのだ。参加者にも、そしてこのゲームの外にも。
主催者に対する憎しみを、千絵は改めて胸に刻み込んだ。
「ガウリィさんが死んじゃうなんて信じられなくて。これは何かの夢とかじゃないのかなって。ずっとそう考えてて」
「愚者だけが、死者の復活を信じる」
「──っ! スィリー!」
「む。そういえば前に似たようなことを小娘達の前で言ったときも変な反応をされたな。万国共通NGワードなのか?」
ぽつんとつぶやかれたスィリーの言葉が鋭すぎて──思わず驚愕の表情で人精霊を睨んだ。
「……うん。そうだよね。その言葉は正しいと思う。だから」
アメリアが何かを噛みしめるように、言った。
276Accomplish(3/3)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 09:08:46 ID:2j3TzkRA
「だからあたしは決めたの。こんなゲームをつくった人たちを倒すって。
復讐も確かにあるけど、でも、……あたしみたいな思いをする人をなくしたい。助けたいの」
「……そうね。その通りよ」
この娘は強い。千絵はふと、ここにはいない相棒のことを思い出した。
「私も、出来る限りの人を救いたい。そして元の世界へ戻りたい。……私は海野千絵。千絵でいいわ。
同盟を──ううん、仲間になりましょう。私たちは同志であり、相棒であり、同胞よ」
「はい!」
「おお、小娘パーティ完成か。ところでその小娘よりも前に会った俺の存在をかろやかにスルーしようとしていないか?」

【残り 101人】

『正義の元に』
【C−4/高架前/1日目・02:00】
【海野千絵】
[状態]: 健康
[装備]: スィリー
[道具]: 精霊檻(開門済み)、支給品一式
[思考]: アメリアと共に仲間を探す→主催者を倒す

【アメリア・ウィル・テスラ・セイルーン】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: 支給品一式+不明
[思考]: 千絵と共に仲間を探す→主催者を倒す
277とりあえず・・・:2005/03/28(月) 09:53:59 ID:oCyBJSBG
自分は人を殺した、ひょっとしたらこのゲームにのった訳じゃなく生きるためだけに殺したかもしれない人を、
でも豊花を守るためだったんだ、ハルヒも使える武器を持っていたほうが良い、
「しかたなっかたんだ・・・、礼子俺はもうすぐお前の所に行くかもな・・・」
と、無意識に呟く
「・・・ねぇ、アンタ結局これからどうする訳?」
「分からない、とりあえずここを一回りして広さを知りたいそれと・・・」
「それとって何よ?」
「何でも無い、気にしないでくれこれからなにが起きるか分から無いんだいそぐぞ」
そう言って歩き出す、京介は煙草に火をつけながら思う豊花はどうしているんだろう。
「アンタって煙草吸うの?学生なのに。」
「あぁ、小学校の時姉貴に嘘をつかれて吸い始めたもう中毒になってる。」
どうでもいい会話をしながら歩きだす、


【一条京介(39番)】

装備アイテム・マグナム
所持アイテム・支給品一式 ・煙草
思考・ここの広さを調べる・死への恐怖

【涼宮ハルヒ(88番)】

装備アイテム・フライパン
所持アイテム・支給品一式 スペツナズナイフ
思考・SOS団の復活

【備考】
C−8からD−8へ
「ぴぴる ぴるぴる ぴぴぴ……る…ぴ…」
 あれからずっと歩き続けていたドクロちゃんでしたが、
歩きつかれてしまったのか、立ったまま寝てしまいました。
 そこはあの零崎一賊の異端児、零崎人識と、炎の魔女、霧間凪の陣取る
一軒の家の前でしたが、雑談を続ける二人がドクロちゃんに気づくのは
まだもう少し後のことになります。
 さて、ちょうどそのころ、大会本部の一室で、艶やかな黒髪を持つ喪服姿の女性と、
一人の優男が会話を交じわしていました。
「やれやれ、ついにドクロがぴぴるモードに覚醒してしまいおったか」
喪服姿の女性がため息とともに言葉を吐きます。
 彼女はバベルちゃん『天使による神域戒厳会議』通称『ルルティエ』の議長を務める立派な女性です。
 対する優男は、あの血塗られたOPでルール説明をした男。
薔薇十字騎士団の人形使い、本名ディートリッヒ・フォン・ローエングリューンでした。
「それにしてもバベルさん、良くぞ来てくださいました」
男が気障な仕草で礼をします。
「カミサマからの勅命じゃからの。それにしてもなぜおぬし等はドクロをこの試練の参加者に選んだのじゃ?」
「それは彼女が『選ばれるべき器』の持ち主だったからですよ。それにしても『試練』ですか」
男の言葉にバベルちゃんは、ふん と不機嫌な顔をして答えます。
「ルルティエの天使たちは、わらわ議長にとってみれば家族も同然。試練とでも割り切らねば家族をこんな戦場に送り込まんわ」
「フフ、『家族』ですか。しかし、あなたの娘さ――」
 男がしゃべりかけたそのときです。ガラッ と、襖が開き、薄暗かった室内に光が差し込みます。
暗くてさっきまでよく分かりませんでしたが、二人が話していた部屋は和室のようでした。
 さて、勢いよく開いた襖に眼を戻しましょう。
 勢い良く襖を開けて入ってきたのは、天使のわっかにくるりん曲がった羊のツノ。金の瞳の下に濃いクマを作った小柄な少女でした。
彼女はサバトちゃん。ルルティエの天使で、今は埼玉県のアバランチ公園に住む、ホームレスな少女なのです。
「どうしたのじゃサバト」
バベルちゃんが上品に体の向きをサバトちゃんに変え、聞きます。
「ぅうっ…えぐぅ……さ、サバトの『ドゥリンダルテ』がないんですぅ」
 サバトちゃんは、ひっくひっく しゃくりあげながら自分の母に訴えます。
そう、サバトちゃんはバベルちゃんの娘なのです。
ちなみにドゥリンダルテとは、サバトちゃんの魔法アイテムである超電磁スタンロッドのことです。
「あぁ、それならいま少し借りているよ。大丈夫、全て終わったらちゃんとかえしてあげるから」
バベルちゃんの変わりに、ディートリッヒが答えます。
「ほ、本当ですかぁ?」
「本当だよ、まぁエスカリボルグは本人の手には戻らないかもしれないけれどね。
 さぁ涙を拭いて、大丈夫だから」
ディートリッヒはサバトちゃんにハンカチを渡します。
サバトちゃんはそのハンカチで顔を拭いて、ちーん と鼻をかむと、ふと気づいたように見知らぬ男に訊ねます。
「エスカリボルグって、ドクロちゃんもここに来てるんですかぁ?」
「フフ、まあね。でも、もう永遠に会えな――」
「サバト!!」
男の言葉をバベルちゃんが遮りました。
「はいっ!」
びくぅ! としながらも、直立不動の体勢をとるサバトちゃんに、バベルちゃんが続けます。
「すぐに元いた部屋まで戻っているのじゃ。わらわもすぐに行く」
「はい、わかったですぅ」
サバトちゃんはそう言うと、とぼとぼと部屋を出て行きました。
「と、言うわけで、すまぬが話はこれで終わりじゃ。わらわはサバトに話があるのでの」
 バベルちゃんの言葉にディートリッヒは無言でしたが、バベルちゃんは開いたままの襖をきちんと閉めると、
サバトちゃんの待つ部屋に歩いていきます。
「くっ!なにが殺し合いじゃ。待っておれドクロ、そなたはわらわが………」
 バベルちゃんが苦虫を噛んだような表情でつぶやきましたが、聞いている者は一人としていませんでした。

【残り 101人】
【D−3】

【ドクロちゃん】
[状態]: 頭部負傷。ぴぴるモード。現在熟睡中。
[装備]: 鉄パイプ
[道具]: 無し
[思考]: 当ても無く移動。他人を見かけたら攻撃。少しは落ち着いた…かな?
  ※能力値上昇中。少々の傷は「ぴぴる」で回復します。

【バベルちゃん(参加者ではありません)】

[思考]:なんとかしてこのゲームを終わらせられないだろうか?
282終わった事と……(1/10) ◆eUaeu3dols :2005/03/28(月) 13:50:39 ID:Qc0oVpGU
ざくり。ざくり。
ペットボトルを真ん中で切った簡易シャベルを地面に突き刺し、土を掘り返す。
ざくり。ざくり。
(まるで人を刺しているみたいだ)
そんな事を思ってしまうのは、やはりすぐ横に死体があるせいだろう。
ざくり。ざくり。
手と膝を土で汚しながら、大地と格闘を続ける。

「これで良いわ」
頭上から声が掛かる。
頭を上げると、目の前にはぼくと同じように膝を土で汚した女性がいた。
手にはペットボトルのもう半分を持ち、ドレスの膝下は土で汚れている。
「まだ浅いですよ。ちゃんと埋葬するんでしょう?」
「用事が出来たわ。これ以上時間は掛けられない」
「光陰夜の毎に、だね」
目の前の女性の声に続き、少し甲高い男の子のような声がよくわからない事を言う。
どうやら前半部は仕方がないようだ。

「あなたは足を持ってちょうだい」
「はい、わかりました」
どさり、と。ようやく人が隠れる程度の墓穴に死体を置いた。
すぐに足から、掘った土を被せて埋めていく。
最後に無惨に潰された顔を、女性は一度優しく撫でてから、薄く土を被せた。
ぼくこといーちゃんは、朝比奈みくるの遺体を埋葬した。
283終わった事と……(2/10) ◆eUaeu3dols :2005/03/28(月) 13:53:18 ID:Qc0oVpGU
大体、3時間くらい前の事だと思う。
ぼくはメイドさんを踏みつけた。

「いたたたた……あれ…ここは…………ッ!」
「メイドさん?」
ぼくが踏みつけたモノは正しくメイドさんだった。
背が小さくで幼い顔立ちでやたらと胸が大きいおまけ付きだ。
ぼくの声にメイドさんはびくっとなった。
「あ、ひゃ、ダメです、殺さないでください、乱暴しないでください!
あたしはなにも……!」
そして、凄い勢いで怯え始めた。
「……お兄さん、強面なんだね」
エルメスの言葉に割と傷ついた。
ぼくは割と標準的で、どちらかというと大人しい顔立ちだと自負している。
「なんでもします! えっと、書記とか、お茶入れなら出来ます、だから……」
「待ってください、ぼくはなにもしませんよ!」
放って置いたら何を言い出すかに少し興味が有ったが、止める。
「……ほ、本当ですか?」
「少なくとも、殺したりしません」
その言葉にメイドさんはホッと安堵の溜息を吐いた。
「よ、良かったぁ」

彼女は朝比奈みくると名乗った。
話を聞くと、彼女はぼくより少しだけ早く出発したようだ。
「あの……あたし、人が死ぬところを見て怖くなって……」
それに加え、スタートした直後にデイパックを崖から落としてしまい、
恐慌状態に陥って仲間を求めて必死に走り、木の根っこに躓き、
壮絶にすっ転んで頭を打って気を失ってしまったのだそうだ。
それを聞いてぼくも寒気を感じた。
284終わった事と……(3/10) ◆eUaeu3dols :2005/03/28(月) 13:55:26 ID:Qc0oVpGU
「それじゃ、君はかなり目立ってしまったんじゃないのか?」
ぼくは寒気を感じながら言った。
殺し合いが起きているこの場所でそれはとても危険な事だ。
だが、その返答は朝比奈さんではなく、その更に後ろから聞こえた。
「安心なさい。見ていたのはあたくしだけよ」
朝比奈さんがまたもびっくりして振り返る。
そこに居たのは……
「「「女王様?」」」
ぼくと、朝比奈さんと、ついでにエルメス君の声まではもった。
金髪碧眼の美形(ちなみにこれまた胸が大きい)で豪奢なドレスを身に纏い、
やたらと高笑いでもしそうな高慢な空気を身に纏った姿は正に女王様だ。
「戦うつもりは無いわ」
それは判る。ぼく達はまるで彼女の接近に気づけなかった。
彼女が敵なら、既に遅いかかっているか、数を恐れて離れている。
「誰なんですか、あなたは」
「ダナティア。ダナティア・アリール・アンクルージュ」
すらすらと、返答としては長くないのにやたらと長い返答が返ってきた。
「楽園の魔術師よ」
おまけに妙な言葉が付け加わった。
ぼくは魔術師と聞くと巧妙なトリックを持つ手品師を想像するが、
デイパックからベスパが出てきて喋り出す今、本物でもおかしくない。
おかしくはない、が……女王様で魔術師というのは豪華すぎやしないだろうか。
「そちらの名前は立ち聞きさせてもらったわ。事情もね」
それは話が早い事だ。というか、一方的に話を進められている気がする。
「同行させてもらうわ」
「どうしてそうなるんですか?」
「群を作るのよ」
ダナティアは堂々と宣言した。

「出来るだけ多人数で生き残るわよ」
285終わった事と……(4/10) ◆eUaeu3dols :2005/03/28(月) 13:59:38 ID:Qc0oVpGU
いーちゃんとエルメス、朝比奈みくるにダナティアは移動を開始した。
最初の目的地は南……ではなく数百m程度北だった。
朝比奈みくるが落としたというデイパックを捜索する為だ。
落としてからまだ20分と経っていないのだから、まだ残っている公算が高い。
中身のパンや水もさる事ながら、ランダム支給品に役立つ物が入っているかもしれない。
魔術師だというダナティアの存在とその気品と自信に安心したのか、
朝比奈みくるは雑談(主に友人達の話だ)までしながらしっかりと道案内をしていた。
(だけど、ぼくはまだ信用しない)
いーちゃんは少し警戒していた。
考えてみれば、デイパックの存在は彼女が2人を殺す理由となりうる。
彼女がランダム支給品を狙った強盗だという保証は無い。
それとは別に、彼女が魔術師だという証拠もまだ見ていなかった。

「あ、ここです! この崖の下!」
みくるが嬉しそうに崖の下を指差す。
住居の三階くらいの高さだろうか。
崖の下も木々が密集していて、デイパックは見えない。
「そう、それじゃ下に降りて……」
ダナティアがそう言おうとした時、遠くから微かに一発の銃声が響いた。
「ひっ」 「……大丈夫、離れた場所です」
またもびくっとなったみくるをいーちゃんが諫める。
「……あれ? この銃声、聞いたことあるような……」
エルメスが素っ頓狂な声をあげた。
「知り合いの銃なのかしら?」
「うん、ここに来る前にぼくの持ち主……キノっていうんだけど。
なんとなく、キノがよく使ってた銃の気がする。……取り上げられてたけど」
「そう。どんな形状なのかしら?」
「えっと、森の人っていって、グリップが……」
形状の説明を聞き、ダナティアは少し考えた後、言った。
「あたくし、少し様子を見てくるわ。しばらく隠れて待っていなさい」
「え、ちょっと待って……」
止める間もなく、彼女はその場から掻き消えていた。
286終わった事と……(5/10) ◆eUaeu3dols :2005/03/28(月) 14:02:09 ID:Qc0oVpGU
結論からいえばこの時の行動は失敗だった。
まず、転移の時に強い抵抗を感じた。
まるで粘度の高い液体の中で泳いでいるような不快で重い感覚だ。
それを強引に突き抜けて転移した時、転移目標地点より少し手前上方に出現し、墜落した。
「くっ、あたくしはあのぬらりひょんではなくてよ!」
咄嗟に風の膜を張って衝撃を軽減する。
彼女の師匠の、極めて高度にも関わらず、どういうわけか高い位置エネルギーを持つ、
空中に出現する転移に慣れた彼女にとって、この位は容易いことだ。
だが、失敗した事が不愉快だった。彼女のせいではないにしても、だ。
(杖が無いだけではないわね。転移自体に制限が掛かっている……)
いつも飛べる距離の一厘にも満たない200mの転移が限界に近い。
これは4時間あまり後に発生するという禁止区域を飛び越せない事を意味した。

次に、銃声の原因だ。
到着地点から透視を発動させ周囲を捜索した。
こちらは事前に気づいている。範囲は半径300mという所だ。
銃を所持していた、アイザックとミリアと互いを呼び合うその2人は……
「……馬鹿ね」
正直、至急にどうこうする必要はまるで感じなかった。
保護の必要も無いだろう、多分。

そして、最大のミス。
287終わった事と……(6/10) ◆eUaeu3dols :2005/03/28(月) 14:04:36 ID:Qc0oVpGU
「あ、あの、あたしやっぱり取りに行きます」
「やめた方がいい」
ぼくは当然のように止めた。
だけど朝比奈さんは主張した。
「だって、降りる道だって有るし……2〜3分も有れば行けるんです。
ダナティアさんが見に行ってる間、何もしないでいるのも嫌ですし。
それに、急がないと誰かに取られちゃうかも……」
その言葉にぼくは押し黙った。
確かにそうだ。それに、誰かに、以外にもう一人警戒すべき人物が居る。
彼女は今の所、私利私欲は見せていないし、概ね信頼に値する人物だ。
だからといって、ダナティア皇女(女王ではないらしい)に全幅の信用を置いていいかは、まだ判らない。
一足先にデイパックを手にしておくのは手かも知れない。
「それじゃ、あたし行ってきます!」
「あ、ちょっと待った、ぼくも行こう」
「いえ、いーちゃんさんはダナティアさんが帰ってくるまで待っててください」
「いーちゃんさん……」
確かにいーちゃんと呼ばれていると自己紹介したが、それにさん付けは何かが違う。
……いや、そんな問題ではない。
ぼくは少し迷ってから、朝比奈さんを追いかける事にした。
「エルメス君、留守番頼むよ」
「うん、任せて」
そもそも、自力で動けないエルメスは待っているしかないのだが。

ぼくがこの選択をするまでに迷った時間は一分かその程度。
たったそれだけの遅れだったのだ。
288終わった事と……(7/10) ◆eUaeu3dols :2005/03/28(月) 14:06:43 ID:Qc0oVpGU
ぐしゃり。
デイパックを見つけた彼女がそれを拾いあげ、ようやく気づいて振り返った瞬間。
背後から忍び寄っていた男が、崖から転げていた岩で彼女を正面から殴りつけた。
朝比奈さんの頭はザクロのように赤い中身をさらけ出した。
その後はまるで喜劇のようだった。
男はデイパックを奪う間もなく別の男に襲われ、慌てふためいて逃げていった。
二人目の男も追いかけて行き、その後で続けざまに銃声が響いた。
そして、静かになった。
ぼくは物陰でずっと見ていた。
最初の殺人を止める間は無く、その後で出ていっても何の意味も無かったから。
それからようやく、ゆっくりと彼女の元に歩み寄った。
「…………」
頭がぐちゃぐちゃに潰れている。
こうなってしまえば、もはやそれが朝比奈さんだった意味なんて無い。
そこにあるのはただの死体、ただの肉の塊――
「――――ぁ」
「!?」
微かにそれの唇が動いた。言葉を紡ぎ出す。
「いーちゃん……さ…ん……」
その瞬間、それは再び朝比奈みくるとなった。

「ごめんなさい……」
震える言葉を、ただじっと聞いている。
「あたしが……ダナティアさんが言ったこと、破ったから……」
彼女は息を吹き返した。だけど、助からないのは変わらない。
「だから、ふたりに……ごめんなさい……」
片目は潰れている。頭蓋が派手に陥没しているのが判る。
「あと……」
脳まで見えている。生きているのも思考出来る事も喋れる事も不思議だ。
「SO……S団の……みんな……に…………」
そんな有様で最後に遺言を残して、朝比奈さんは逝った。
289終わった事と……(8/10) ◆eUaeu3dols :2005/03/28(月) 14:08:31 ID:Qc0oVpGU
エルメスの所に戻ってしばらく待つと、ダナティアが帰ってきた。
彼女は僅か数十分の仲間の死を知り、表情に出さずに怒り、悲しんだ。
そして、その表情を冷たく凍らせた。
だが、それはもう終わった事だ。
その後で、2人とエルメスはみくるの遺体の所に行った。
そこに落ちていたデイパックは何者かに持ち去られていたが、
ダナティアの透視の範囲内にはそれらしい人影はもう見えなかった。

ダナティアはペットボトルの水で彼女の顔を洗うと、
更にそれを魔術で二つに割り、いーちゃんに手渡した。
「葬るわ」
とだけ。
彼らは埋葬を行った。

森の入り口まで移動すると、穴を掘り、朝比奈みくるの遺体を埋め、
最後に優しく撫で、土を被せ、木の皮を剥いで簡単な墓碑を立てた。

そして――今に至る。
290終わった事と……(9/10) ◆eUaeu3dols :2005/03/28(月) 14:12:07 ID:Qc0oVpGU
「……ところで、新しい用事って何なんですか?」
いーちゃんの問いに何も答えず、ダナティアは歩き出した。数十m歩いてすぐに止まる。
「居るんでしょう? 出ていらっしゃい」
………………。
「一時間ほど前に大きな爆音がしたわ」
…………。
「その後、あなたは爆音のした方向から来た」
……。
「森の入り口の茂み……片面とはいえ見通しが効いて良い場所ね」
「ファイア・ボール!」
火球が顔面目掛けて飛んできて炸裂……させない。
一瞬だけ膨れ上がった炎は、私の元まで届かずに立ち消えた。
炎を真空で消火するのはダナティアの得意技だ。
その隙によろめきながら逃げようとした娘をしっかりと目視し、術を放つ。
「しま……っ!!」
そよ風の繭が彼女を包み込み、動きを封じた。

「あなたは、開始の時の……」
彼女は繭の中で藻掻いている。
「確か、リナ=インバースといったわね」
だが、逃れられない。魔法は使い果たしているのか、魔術を使う様子も無い。
「目的は復讐ね」
「あなたに何が判るっていうの!」
リナがデイパックから取りだしたデイパックより長い剣が、風の繭を切り裂いた!
「!!」 「生き残りの座は渡さない!」
ダナティアが続け様に放った風の衝撃波を切り裂きながら間合いを詰める。
「その為に100の死体を積み重ねる気?」 「そうよ!」
最早、2人の間合いは5mも無い。リナの剣技は格闘の素人に避けられる物でもない!
「ガウリィを殺した奴らを皆殺しにしてやる!」
そして、剣が振り下ろされた。
291終わった事と……(10/10) ◆eUaeu3dols :2005/03/28(月) 14:15:27 ID:Qc0oVpGU
リナが持っていた剣は騎士剣と呼ばれる魔杖に近い性質の剣だ。
騎士剣とはある世界で騎士と呼ばれる魔法剣士達が使った剣であり、魔術媒体である。
騎士達は強固な物質とあらゆる魔術を剣に乗せた情報解体の魔術で消去し、
転移で死角に回り込み、無防備な生身に強化した筋力による剣撃を叩き込むのだ。
その性質上、騎士剣は魔術への強固な耐性と、物理的頑丈さを誇っているが……

「100を超える人間が死に物狂いで生存競争をしているわ」
鮮血が滴り落ち、ドレスに真っ赤な斑点を残していく。
「単純計算で言えば、最後の一人に生き残る確立は1%以下ね」
風の魔術がリナの呼吸を封じていた。藻掻き、剣を振り回そうとする。
「その上、あなたの場合、制限されていたとはいえまるで通じなかった相手に」
だが、ダナティアは騎士剣の刃の根本を握りしめ、離さない。
「戦い続けてボロボロに疲弊した一人っきりで挑まなければならない」
剣の刃の根本は他の部分に比べ、かなり鈍い作りをしている。断ち切れない。
「少なくとも、こんな所であたくしに負けたあなた一人で勝てるわけがないのよ」
最強の騎士剣“紅蓮”。だが、それは魔力の尽きたリナに使いこなせる物ではなかった。
リナはどさりと倒れ伏した。

(一つの判断ミス、一つの油断が、一つの死を招く)
ちょっとの間なら、2人を置いていても大丈夫だと思った。
それは完全に油断だ。それが致命的なミスを招いた。
(あたくしは群を率いると決めたわ。率いた者達全ての命を背負わねばならない)
自分の体くらいは切り売りしてでも。
それが、彼女の死へのせめてもの償いだ。

「ちょっと、そこの……いーちゃん、だったかしら」
木陰で見ていた少年に呼び掛ける。
「なんですか?」
「あたくしの傷の応急処置をしてちょうだい。あと、この娘を茂みまで引っ張って」
意外に冷静な返答に内心で驚きつつ、ダナティアはいーちゃんに言いつけた。
「判りました、判りましたよ」
振り回されている事に溜息を吐きつつ、いーちゃんは頷いた。
292終わった事と……(報告) ◆eUaeu3dols :2005/03/28(月) 14:20:31 ID:Qc0oVpGU
【残り 101人】

『歩みを止めず』
【F−5/森の入り口の茂み(隠れて休憩中)/1日目・03:30】
【いーちゃん(082)】
[状態]: 健康
[装備]: エルメス(キノの旅)
[道具]: 支給品一式/半ペットボトルのシャベル
[思考]: (出来れば多数での)生存/SOS団にみくるの言葉(詳細不明)を伝える

【ダナティア・アリール・アンクルージュ(117)】
[状態]: やや疲労。左腕の掌に深い裂傷と出血。止血及び応急処置中。
[装備]: 騎士剣“紅蓮”(ウィザーズ・ブレイン)[安全の為、一時的にリナより没収]
[道具]: 支給品一式(水一本消費)/半ペットボトルのシャベル/ランダム支給品(不明)
[思考]: 群を作り、それを護る。

【リナ・インバース(026)】
[状態]: 疲労困憊に加え、窒息により気絶。怪我の類は無い。
[装備]: 騎士剣“紅蓮”はダナティアに没収されている。
[道具]: 支給品一式
[思考]: 薔薇十字騎士団への復讐/その為にどういった手段が効果的か考え中


『へんじがない。ただのしかばねのようだ』
【F−5/森の入り口/1日目・03:20】
【朝比奈みくる(090)】
[状態]: 死亡済み(加えてF−5の森の入り口に埋葬された)
293幸運の白い馬:2005/03/28(月) 14:42:54 ID:znzq5QEc
 とりあえず倉庫で腰を落ち着けるために、アイザックとミリアは高里要を残し、外の見回りにでていた。
「なあ、ミリア」
 なにやら考え込んでいたアイザックは、ふと何かを思いついたように声を上げた。
「なあに? アイザック」
 辺りを見回していたミリアは振り向いた。
 彼女の目には、アイザックに対する絶対的な信頼が浮かんでいる。
 恋人同士が殺し合うかもしれない、この殺戮ゲームの最中だというのに。
「俺、思うんだけどな。やっぱりただゲームに参加するだけじゃあだめだと思うんだ」
 その視線に気づいているのかいないのか、アイザックは一言一言、言葉を選ぶように紡ぎ出す。
「ん? どゆこと?」
「こんなくだらねえルールに従ってよ、人殺しをするってなのはよくないと思うんだ、うん。なんつーか……ヒーローじゃねえ」
「ヒーローじゃなくて悪人になっちゃうね」
「そう、モリアーティ教授だ」
 悪人=モリアーティとは限らないだろう。
「うう、そんなんじゃ、ホウムズも死んだ子供達も浮かばれないよ」
 確かにこんな奴ライバルのモリアーティ教授では浮かばれまい。しかも二人だ。
「それに要もだ。あいつ、かわいそうにあんなにふるえちまって……」
「アイザックがおもしろい顔しても、怖がったままだったもんね」
「会心のできだったのになぁ」
 実のところ、そのおかげで要が随分落ち着いたことを、二人は知るよしもない。
「でだミリア。俺はいっちょヒーローらしく、あの野郎を懲らしめることにした」
「かっこいい! で、どうやって?」
「そりゃもちろん――俺たち泥棒の流儀で、さ」
294幸運の白い馬:2005/03/28(月) 14:43:51 ID:znzq5QEc
「泥棒の流儀? 盗み?」
「さすがだぜミリア! ――で、あの野郎が今一番盗まれたくない物はなんだ?」
「うーん……このゲーム? でも物じゃないよねえ」
「ああ、でもゲームは参加者がいなきゃ成り立たないだろ?」
「あっ!」
 目を丸くして声を上げるミリアに、アイザックは含み笑いを浮かべて答える。
「ふふふふ……そう、俺たちが盗むのは――このゲームの参加者達だ! みんなを一人残らず盗み出して、このゲームをメチャクチャにしてやるのさ!」
 高笑いすら上げ、アイザックは両手を広げる。その様子には殺戮ゲームの参加者だという風情はもはや微塵も見られない。
「すごぉい! アイザック、冴えてるぅ!」
 ミリアはぺちぺちと拍手した。
「ふっ、この灰色の脳細胞にかかれば造作もない」
「でも盗んだ後はどうするの? 私たちここから出られないんだよ?」
「うっ……それはだなあ……」
 灰色の脳細胞はあっさりと打ち砕かれた。
「うーん」
 しばしの沈黙。
 広葉樹の葉が風に揺られてはらはらと舞い降りる。
 やがてアイザックは開き直ったように顔を上げた。
「とりあえず盗んでから考えよう!」
「そーだね! アイザック冴えてるぅ!」
 冴えてない。
「よーし、あの野郎ぎゃふんと言わせてやる!」
「ぎゃふん!」
「ひでぶとも言わす!」
「わんデシ!」
295幸運の白い馬:2005/03/28(月) 14:44:27 ID:znzq5QEc
「そうそう、わんデシとも言わ……わんデシ?」
「わん……デシ?」
 不意に聞こえた奇妙な鳴き声に、二人はそろって振り向く。
「わんわんデシ!」
 そこには、黄色い帽子をかぶった白い子犬がいた。
 健気そうな黒いつぶらな瞳が、二人を見上げている。
 しっぽをふりふり、何かを訴えるように、すがるように――
「なんだ野良か? あっちいきな、しっし」
「きゃあああああ! かわいい!」
 追い払おうとするアイザックの声を遮り、ミリアは犬に飛びついた。
「え?」
「わん……でし?」
「変な鳴き声ーっ」
 目を白黒させる犬を、ミリアはなで回す。
「おいおいミリア、ワン公なんかどうすんだよ。これから正義の行いをするって時に」
「飼う!」
「へ?」「デシ?」
「いいでしょ? アイザック、えさもあげるし、散歩にも連れてくから!」
 子犬以上にきらきら輝く瞳に、アイザックは言葉に詰まる。
「いや、しかしなあ……」
「駄目? きっとかわいいわんちゃんと一緒だったら、要も元気になると思うなあ」
 こう言われては、アイザックもかなわない。
「ミリアには白い犬がよく似合うなあ」
「わぁい!」
296幸運の白い馬:2005/03/28(月) 14:45:01 ID:znzq5QEc
「じゃあ名前つけないとな……うーん、メフィストフェレス」
 この状況では不吉きわまりない。
「でもメフィストフェレスは黒いよ?」
 色の問題か。
「よし、それじゃあロシナンテ=v
 ロシナンテは馬だ。
「わぁい、ロシナンテ!」
「……わ、わんデシ?」
「じゃあ私、ドン・キホーテ! 参るぞサンチョ」
「へえ、旦那様」
「あ、要は何がいいかなあ」
「風車なんてどうだ?」
 人ですらない。
「おおサンチョ、あんなところに風車が!」
 ミリアは要がまだ休んでいる倉庫のドアを指さした。
「いえ旦那様、あれは悪しき巨人にございます」
 彼らの脳内では、妄想にとりつかれたのは従者の方らしい。
 そのまま急ごしらえの騎士と従者は、これからの基本方針を決めたことへの安堵感によるのか、はたまたハイになっただけなのか、やけに堂々とした足取りで風車(要)に向かって歩き出した。
297幸運の白い馬:2005/03/28(月) 14:45:28 ID:znzq5QEc
(ボクの名前……シロちゃんなんデシけど)
 強制的に馬の名前を付けられたロシナンテことシロは、戸惑いながらも犬のふりを続けていた。

 『悪い人の手に渡ってしまわないように、普段は犬のふりをしててね』

 かつての仲間との約束を守り、犬のふりを続ける幸運の白い竜は初めからこのゲームに参加する気など無かった。
(パステルおねえしゃん、ルーミィしゃん……)
 殺し合いと聞いて、真っ先に浮かんだのは仲間達の顔。
 もし勝利したところで、今頃いなくなった自分を捜しているであろう仲間達は、そんな自分を受け入れてくれるはずがない。
(ボクは、絶対イヤデシ。こんな殺し合いなんて、あんまりデシ。みなしゃんもそう思うデシよね?)
 人間の血で汚れた幸運の白い竜≠ネど、誰が仲間と呼ぶだろう。
 人間を殺して、どうして人間の仲間だと胸を張って言えるだろう。
 かといって、このまま何もせずに生存者が自分のみになるのを待つなどできなかった。
(それは見殺しっていうんデシ。見殺しだって殺し≠ェつくくらいだから、殺しとあんまり変わらないんデシ)
 という思いが、シロの中にあったからである。
 だからこそ支給されたディパックは確認すらせず、何処かに置いてきてしまった。
 武器などあっても決して使うことはないのだから。
 もっとも、食料なども入ってることを後から思い出して少し後悔したが、虫などのゲテモノの方が好みの彼はそれほど困ることもないだろう。
(ボクはあきらめないデシ。絶対にこんなゲームは中止デシ)
 しかし、主催者を説得するにしても、一人では奴のところまで行くのは難しい。
 ゲームをぶち壊すにしても、参加者を逃がすにしても、一人では無理だ。
 そう、一人では。
(だから、協力してくれる人が必要デシ)
 かといって、誰彼かまわず声をかけたら、珍しい自分を売り飛ばそうとする人間が出てくるかもしれない。
 そう思い、言葉を発しても無害そうな人物――つまり悪い人≠ナはない人――を探してさまよっていた時に見つけたのが、このカップルだった。
(――この人達なら大丈夫デシか?)
 この絶望しか待ち受けていないであろう状況でもなお、希望とジョークを――天然なのかもしれないが――忘れない彼らなら。
 自分の正体を明かして、一緒に立ち向かって……
298幸運の白い馬:2005/03/28(月) 14:46:05 ID:znzq5QEc
「ロシナンテー、おいでー?」
「わ、わんわんデシー!」
 考え込んでいると、少し前からミリアの声がかかり、シロはあわてて返事をした。
(みなしゃん、待っててくださいデシ。ボクは絶対に帰ってくるデシ)
 ――とりあえず、彼らがどんな人物なのか良く見極めてから決めよう。
 そう心に決めて、幸運の白い竜はどこまでも破天荒なカップルの背中を追いかけた。
299幸運の白い馬(:2005/03/28(月) 14:46:35 ID:znzq5QEc
【残り101人】
【E‐4/工場倉庫/一日目04:00】
【アイザック】
[状態]:超健康
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「要を元牛気付けつつ誘拐活動だ!」

【ミリア】
[状態]:超健康
[装備]:なんかかっこいいね、この拳銃 (森の人・すでに一発使用)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「そうだね、アイザック!」

【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)】
[状態]:健康
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:「こんなゲーム中止デシ!」

名前だけ登場ですが
【高里要】
[状態]:休養中(健康)
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:アイザックとミリアに出会い多少心が落ち着いた。
300幸運の白い馬(報告):2005/03/28(月) 14:46:59 ID:znzq5QEc
【残り101人】
【E‐4/工場倉庫/一日目04:00】
【アイザック】
[状態]:超健康
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「要を元牛気付けつつ誘拐活動だ!」

【ミリア】
[状態]:超健康
[装備]:なんかかっこいいね、この拳銃 (森の人・すでに一発使用)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:「そうだね、アイザック!」

【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)】
[状態]:健康
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:「こんなゲーム中止デシ!」

名前だけ登場ですが
【高里要】
[状態]:休養中(健康)
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:アイザックとミリアに出会い多少心が落ち着いた。
301& ◆DZGL2BRHu. :2005/03/28(月) 14:52:10 ID:UHOu+n8I
・・・・・・・・・これは、朝の光?
そこにはとても真っ白な景色とまっしろな気分・・・・・・・・・・
ああ、きっとここは向こうの世界、きっとここは死んだ人がたどり着く世界なんでしょう
ごめんなさい、お姉さま。ごめんなさい、みんな。私、みんなより先に・・・・・・・・
          
       おとめ
「うほっ、いい処女」
がばっ!明らかに何か身の危険を感じた私が身体を起こすと目の前には真っ赤な髪が印象的な
恐ろしいほどの美人の方の顔が現れました
思わず私が山百合会のメンバーに混じってもおかしくないような可憐な顔に見とれていると、その
熟れた果実のように赤い唇を私の耳に持ってきて・・・・・・・・・・・ 
「・・・・・・・・・・・・おねえちゃん、きみのこと食べたくなっちゃった」
「きゃああああああ!」
とどこがで聞いたことのあるような危ない台詞を呟いてくるではないですか!
我ながらはしたないと思いながらもつい叫びながら頭を振る私に真っ赤な女性は続けます
「・・・・・・・・・・・いや、悪かった。そりゃあみんながみんないーちゃんのような反応をしてくれるわけじゃないよな。
あたしが悪かったからほら落ち着け。いや、あれだ、さっきからその可愛らしいツインテールがあたしの顔にぺちぺち当たって  
痛いんだ。いや泣くな。な、グミあげるから。」
「・・・・・・・・・グミ持ってるんですか」
「いや、持ってない」
「・・・・・・・・・ぐすん」
「ってそこで泣き出すのかよ!いやあ、なんか新鮮な反応だあ!乙女だよ!だから悪かったほら、な。」
「・・・・うっ、はい」
真っ赤な女性になだめられとりあえず落ち着いた私は自分の周りをみることにしました。
私の腰の上にのっかかっていた赤い女性(黒いスーツが似合っていてかっこいいです。ああゆう風になりたいなあ)も白いベッド
から降り、近くのいすに座っています。
見回したところ白い天井と薬物禁止のポスター、救急箱など・・・・・・・・おそらくここが保健室か何かだと思わせるものが置いて
ありました。ということは・・・・・・・・・・
302真夜中の邂逅 2:2005/03/28(月) 14:53:43 ID:UHOu+n8I
「助けたっていうか、拾いもんだな。ほらあたし貧乏性だから。とりあえず拾えるものは拾っとこうとな。
それにお前可愛かったから。欲情しちゃおうよ、お姉さん、ぱやぱや。」
その台詞に顔を真っ赤にした私に、今度はその女性が尋ねてきます
「しかし何だってあんなとこで倒れてたんだ。一応、あたしが見たところでも危なくないところに除けられていたけどさ。」
・・・・・・・・あの、メガネの女性は本当は優しい方だったんですね。
そして白薔薇様・・・・・・・あの少し変わったところがあるけれどいつも優しい聖様の変わり果てた姿を思い出し
今度は本格的に大粒の涙を流してしまいました。
・・・・・・・なんでこんなことに。どうして?私たちは何もしてないのに。
「うっ・・・・・・・あうっ・・・・・・・・・っ・・・・・・・・」
「あああっ、もうまた泣き出しやがって!ほれほれ大丈夫か?とりあえず落ち着くまでまってやるから」
「えっぐ、うん・・・・・・・んっ、あうっ」
「ほらほらほらほら」
そう言いながら真っ赤な女性は私の背中をさすってくださいました。
その手はとても暖かく、どこか繊細さも力強さも感じさせられ、なぜだか安心するような・・・・・・・・・・
眼からこぼれる涙はなかなか止まりませんが少し気持ちが落ち着いた私はあのときの事を彼女に話し出しました
303& ◆ZtC9M8XHTg :2005/03/28(月) 14:55:09 ID:UHOu+n8I
「・・・・・・・・・なるほどね」
「・・・・・・・・・・・・・お姉さまに会いたいです」
お姉さまに逢いたい。逢って優しく抱きしめてもらいたい。
由乃ちゃんにもみんなにも会いたいけど、やっぱりお姉さまに逢いたい・・・・・・・
「お姉さま?」
「はい・・・・・・・小笠原祥子さま。とてもやさしくて美しくてそれから・・・・・・・・」
「処女(おとめ)はお姉さま(ぼく)に恋してる、か・・・・・・・・」
「何のことですか?」
「いや、気にするな」
よく分からない言葉に首を捻る私。そして真っ赤な女性は妙に明るく続けます。
「じゃあ、それが依頼でいいんだな。」
「え?」
「いつもだったらちゃんと払うもんは払ってもらうところだが、今日は特別だ。この哀川潤がただで依頼をうけてやる」
「ちょっ・・・・・・何のことですか!?」
すると真っ赤な女性・・・・・哀川潤さんは今までに見たことの無い鋭い視線と妖艶な表情で私の目を覗きながら言い切りました
  
「その小笠原祥子とやらに逢わせてやるよ」
304真夜中の邂逅 4:2005/03/28(月) 14:55:58 ID:UHOu+n8I
「・・・・・・・・・・ところでこのナース服は何なんですか?」
ぼろぼろになった制服の代わりに着せられたピンクの服。妙にスカートが短いのが気になるんですが・・・・・・・・・・
  
「あたしの趣味だ」

 
 【残り101名】 

 【チーム紅と赤】
 
 【福沢祐巳(060) 】
 [状態]:看護婦
 [装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服
 [道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)、
 [思考]:お姉さまに逢いたい。潤さんかっこいいなあ 

 【哀川潤(084)】 
 [状態]:健康
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:小笠原祥子の捜索

 【D−2/学校/一日目、04:30】
305決心 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/28(月) 15:16:17 ID:s0uW9cTs
(月が小さくて暗い。やっぱりここはロクシェでもなくスー・ベー・イルでもない、どこか違う世界なんだろうか。)
鬱蒼とした森の中に僅かに差し込んだ薄い月明かりに照らさせながら、ヴィルは思った。そして
「どうやったらここから出られんでしょうね。」と、暗闇の中で、先ほど手に入れたハンドガンを
点検しているもう一人に言った。
そのもう一人、キノが言う。
「さあ・・・。最初に話をしていた軍服の連中に聞くしかないようですが、ボク達の体にも仕掛けを
施されている以上、うかつに逆らうのは危険な様です。」
そして
(できれば三日以内には出たいな・・・。)と小さな声で呟いた。

キノが持っている「カノン」は44口径のパーカッション・リボルバー。作動方式はシングルアクションのみ。
六発装填されていて、弾丸はホーローポイント弾。道具がないので再装填はできない。
一方ヴィルが持っている「ベネリM3」は強力な集弾性とストッピングパワーを持つ、装弾数七発のショットガン。
先ほど一発撃ったので現在の装弾数は六発。弾が無いので、見つけるまでは再装填は不可能だ。
306決心 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/28(月) 15:16:49 ID:s0uW9cTs
会話は続く。
「あなたはパースエイダーを以前にも扱ったことが?」
「パースエイダー?・・ああ、この銃のことですか?」とグリップに手をかけて脇に置いてある散弾銃
を持ち上げていった。
「ええと、銃器全般のことです。」
「なるほど・・・。えっと、まぁ、少し。」
ヴィルはそう言いながら、
(あら、ここにいるのはカアシの六位入賞者よ?下手なわけないじゃない)
と自慢げに話す幼馴染の顔を思い出して、少し微笑んだ。
そうですか、とキノが言って、平然とした顔で続ける。
「では人を殺したことは?」
少し経って、
「・・・・・一度。」
キノは、
「一番大事なのは・・・命をなくさないこと。殺されないことです。つまり自分の命を守るために、
その場に即した最大限の努力をすることです。―――もっと言うのなら、殺される前に殺すことです。」
―――いつか旅先で出会った、刑務所からでて来たばかりの男に言ったものと同じ言葉を、ヴィルに言った。
「ボクは自分の命を脅かそうとする相手は遠慮なく殺します。・・・それがたとえあなたであっても。」
そう付け加えた。
「そうですか。キノさんの”正解”はそうなんですね・・。以前、僕の幼馴染が同じようなことを言っていました。
でも、僕はずっと、どんな場合でも他人に銃を向けてはいけない、と教わってきました。どっちが正しいんだろう・・。」
ヴィルは、真剣な、深刻そうな顔でそう言った。
そしてキノは
「あなたは先ほど襲ってきた人を撃ちました。あなたの中では答えはもうでているはずです。」
真剣な、でも少し楽しそうな顔でそう言った。
307決心 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/28(月) 15:17:11 ID:s0uW9cTs
【D-5/森/一日目・3:40】
『チーム時雨沢』
【ヴィルヘルム・シュルツ】
[状態]:正常
[装備]:ベネリM3(弾は六発)
[道具]:デイパック(支給品入り) 
[思考]:待機。敵対するものは容赦なく殺す。

【キノ】
[状態]:正常
[装備]:カノン(弾は六発)
[道具]:デイパック(支給品入り) 
[思考]:待機。 敵対するものは容赦なく殺す決心をする。

【残り101名】
308 ◆gzzG2LsYlw :2005/03/28(月) 15:19:08 ID:s0uW9cTs
失礼、キノとヴィルの[思考]の部分逆でしたorz
309キャプテン・ガウルン ◆E1UswHhuQc :2005/03/28(月) 15:31:18 ID:8AH2UXvR
 ――いきなりのことだった。
 唐突の投石でハルヒが打ち倒された。
「っ!」
 すぐさまマグナムを石の飛んできた方向へポイントして、発砲。
 ドン、ドン、ドン、と三連射。しかし悲鳴は上がらない。つまり当たっていない――
「――素人が」
 声は横からした。
「なっ……」
 慌てて振り向く。額に傷のある男がいる。
 即座にマグナムを銃口を男へと向けようとして、
「ガキが銃を持っちゃいけないなあ……アブないだろっ!」
 男の再度の投石が手に当たり、痛撃で取り落とす。痛みに舌打ちしながらも拾おうとした瞬間、男の左手――義手の拳が機械的な唸りをあげた。
「それは……!?」
 ハム音が急速にトーンを上げるのに応じて、左手の甲に埋め込まれたクロス・ゲージが発光し始めた。始めは鈍く赤く、そして、燃えるように白く。
 男が獰猛な笑みを浮かべて、口を開いた。
310キャプテン・ガウルン ◆E1UswHhuQc :2005/03/28(月) 15:32:31 ID:8AH2UXvR

「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。昔いまし今いましのち来たりもう主たる世にも貴き三位一体の御名において――!」
 三位相封環、全相解除。ゲージからパチパチと青白い火花が散り、光の筋を描いて拳にまとわりついた。
 それを振りかぶり、にっ――と、男は笑う。
「――DAWN YOU!!」
 閃光。轟音。拳が一条京介の腹にめり込んだ瞬間、怒涛の雷撃が迸り、京介を一瞬で焼き尽くした。
 閃光がおさまり、炭化した死体がゆっくりと倒れる。炭素が飛散したその時、投石の当たった頭を抑えながら、ハルヒが立ち上がった。
「痛……、何? このニオイ――。……!?¥
 男――ガウルンは京介の落としたマグナムを拾い、ハルヒの頭部に照準した。
 発砲。
 頭部を欠損した少女の死体が崩れ落ち、ガウルンは笑った。「おお、神よ」 適当に両手を合わせて祈るポーズを取りながら、
「哀れなクソガキが二匹、そちらに向かいましたよ」
 哄笑が響き渡った。

 【D-8/平原/1日目・03:01】

 【ガウルン】
 [状態]:健康
 [装備]:クラックナックル マグナム スペツナズナイフ
 [道具]:デイパック×3(支給品一式) フライパン 煙草
 [思考]:適当に歩き回って遭遇者をぶち殺しながら、カシム(宗介)を殺す

【一条京介  死亡】
【涼宮ハルヒ 死亡】

【残り99名】

・クラックナックル(出典:ブラッドジャケット 異相空間に蓄電されていた落雷を放出する義手)
311魔王陛下の判断(1/2) ◆qEUaErayeY :2005/03/28(月) 15:50:47 ID:Pm5Nwip2
ゲートをくぐり最初に飛ばされた場所は、普段自分が通う学び舎には似ても似つかない造りの学校であった。
自分が通う聖創学院大付属高校は規模も設備も充実している。それに比べここは図書館一つとっても
月とスッポンとまではいかないが、それに近い差があった。木造という時点で対象外だ。
実は小学校なのでは?とも思ったが揃えられている本にはなかなか興味深いものもあり、
質を重視する自分にとっては、建造物の構成など大して気にするほどのことでは無かった。

ここは3階の図書室。周りに遮蔽物も無いので月明かりが部屋に射し込む。
漆黒の髪に服。闇の中に居たらまず分からないであろう出で立ちをした少年、
空目恭一はそれを灯火代わりに本を読んでいた。

異界特有の枯葉の匂いもしなければ鉄錆の匂いもしない。つまり、ここは異界では無い。
それだけで情報は十分だった。例えここが異界だとしても、自分ひとりの力ではどうすることも出来ない。
しかも、ここから抜け出す唯一の条件が殺し合いの末、生き残る事となったら尚更不可能である。
自分の力量を熟知している空目は、自分に出来ることは皆無と判断して、デイパックの中身の
確認すらせずに一人悠長であった。
ここで、いきなり銃を持った敵が現れようが、階下が戦場になっていようが彼の対応は何も変らないであろう。
空目恭一とはそういう人間だ。
もともと生に執着しているわけでもない。そして、これといった恐怖も無い。
死を肯定しているわけでは無いが、人はいつか死に、それが早いか遅いかの違いで有り、
特に問題は無いのだ。常に死は訪れるものである・・・。

割と近くから聞こえる銃声にも、対した興味を起こさず、ただただ黙読していた。
そして、およそ2時間(弱)後に階下から聞こえる声にも、対した興味を起こさず、ただただ黙読していた。
312魔王陛下の判断(2/2) ◆qEUaErayeY :2005/03/28(月) 15:53:13 ID:Pm5Nwip2
【残り99人】

【D-2/学校3階図書室/一日目 02:45】
【空目恭一(006)】

状態:健康。かなり落ち着いている。
装備:無し
所持:支給品一式、アイテム不明
思考:読書。他に出来ることは無いと判断。
313Before Rondo(1/3)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 16:05:16 ID:9zEde9aE
高架の階段の裏。
月明かりと光量を小さくした懐中電灯を頼りに、千絵とアメリアは名簿を広げつつ今後の行動について話し合っていた。

お互いのいた世界についての情報交換と、優先的に探すべき顔見知りについての情報のまとめ。
アメリアの口から“魔法”という言葉が出た時点で、わずかに残っていた常識という言葉は捨てたが、
どうやらここには“悪魔”を遙かに超える超常の使い手が何人もいるようだ。
千絵がカプセルと悪魔について説明したとき、アメリアが事実をそのまま受け入れて一度も驚かなかったのがちょっと悔しい。
ちなみにスィリーには聞いても混乱するだけなのでそもそも話に入れていない。
精霊というものが存在する世界に興味はあったが、聞いても話があさっての方向に向くだけであろう。
「──とすると、結局こうなるわね」
名簿に印を書き終えて、アメリアにそれをみせる。

○物部景
△甲斐氷太
×緋崎正介
○リナ・インバース
×ズーマ
○ゼルガディス
×ゼロス

「バツが多いな。否定ばかりの人生は鉛筆と消しゴムに悪いぞ」
「……?」
「スィリーに意味を求めちゃだめよ。まぁ、確かに多いけど」
バツ……つまりこの極限状態の中で“嫌々”殺し合いをしてしまうのではなく、自ら積極的に戦いに参加する人間である。
この条件で行くと甲斐もバツなのだが、千絵の心境としてはやはり説得したい。少々甘い考えだとはわかっているのだが。
アメリアにそのことを言うと、拳を握りしめながら熱弁を振るってくれた。
「大丈夫。わたしと千絵で説得すれば絶対わかってくれるわ! かつての仲間ならそこにふたたび正義の心を宿してくれるはずよ!」
「そ、そうね」
フリウ・ハリスコーは念糸を持つ。
 ゆえに、フリウ・ハリスコーは念糸を紡ぐ。

 フリウ・ハリスコーは精霊を使役する。
 ゆえに、フリウ・ハリスコーは精霊に縛られる。

 フリウ・ハリスコーは破壊の王だ。
 ゆえに、フリウ・ハリスコーは全てを破壊する。
 
 フリウ・ハリスコーは未知を退けた。
 それでも、フリウ・ハリスコーはただの子供に過ぎない。



 フリウは橋を渡り終えると、川に沿って南下することにした。
 硝化の森の川は刃の繊維を編みあわせたような代物だが、この川を構成するものは純粋な水だ。
 しゃがみこんで両手で水を掬う。
 ひんやりとした感触。
 手と手の隙間から零れていく水を眺める。わずかな星明りを弾く水は、まるで精霊のように美しい。
 水はほどなくして手の中から完全に消えた。
 残ったのは濡れた小さな手だけ。
 フリウは動かない。
(……精霊。あたしの左目の破壊精霊。アレは、もう、使いたくない)
 それはフリウの正直な気持ちだった。
 村を半壊させ、群精霊を蹴散らし、帝都は瓦礫の山へと変えた力。
 身を守る術としては最上だろう。
 この殺人ゲームの初めから、自分は最強の武器を持っている。
 デイバックの中には変わった剣が入ってはいたが、フリウに扱えるはずもない。
315Before Rondo(2/3)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 16:07:05 ID:9zEde9aE
先程の少し暗い表情の人物が別人にしか見えないほど、本来の気力を取り戻したアメリアはいろんな意味ですごかった。
だが、彼女の話によれば、自分よりも遙かにきつい修羅場をくぐり抜けて来たことになる。
それでもまだ口先だけでない正義を貫ける彼女に、千絵は一種の尊敬の念を抱いた。
「そういえば、あなたの支給武器は?」
「うーん、よくわからないものなんだけど」
と言ってアメリアは自分のデイパックを開けて、中から何かを取り出す。
「……レリーフ?」
「たぶん……マントを留めるためのものだと思う」
平たくいえば、重く丸い銀の板。“ハート・オブ・レッドライオン”という文字と、獅子の横顔が彫られている。
瞳の部分にだけ、白い宝石がはめこまれていた。
「燃えライオンか?」
「もえライオン?」
「うむ。燃えるぞ。強いぞ」
「……」
「まぁまぁ。スィリーも、彼なりに、一生懸命議論に参加しようとしてくれているんだから」
「今何かものすごく失礼な表現が含有された気がするが気のせいか?添加物はちゃんと記載するのが民衆の義務だぞ」
「……とりあえず、今のところは盾にしか使えなさそうね」
武器は相変わらずなしということだ。──いや、あるか。
(確かに、少しうるさいところはあるけど……仲間だもの、ね)
なんとなく気恥ずかしくて言えなかったが、実際アメリアに会うまでの間、彼と会話をすることで恐怖感と心細さが薄れていったのは確かだ。
そしてこの少女。この絶望的な状況下で二人──そう、二人も信頼できる仲間がいることは奇跡に近いだろう。
「アメリア……と、スィリー」
「ん? 何?」
「む、何だ? 斥候くらいなら頼まれるぞ」
「遠慮しとく。…………いろいろ、ありがとうね」
「いいよ。わたしたち、相棒でしょ?」
「断られてから感謝されるというのも複雑な気もするが、そもそも複雑でないものは人生に存在しないのでとりあえずよしとする」
そうして二人して──スィリーは一人口を曲げていたが──笑い合った。
彼女が施されたのは念糸能力者としての、つまりは精霊使いとしての訓練だけだ。
 だから、もし戦うのなら、精霊を使うしかない。

「絶対に制御してみせる。それがあたしの戦い……」
「何を制御するんや?」

 唐突な音。
 独り言にからかうような声をかぶせられ、フリウは慌てて立ち上がった。
 背後に誰かがいるなんてまるで気づかなかった。致命的な隙だ。
 もし殺意をもった者なら、フリウが振り向くよりはやく、心臓を停止させるに違いない。
(もう、間に合わない?)
 自身の輪郭を紐解く感覚。
 背筋を這い回る悪寒に耐え、念糸を放ちながら勢いよくふりむく。
「……!?」
 銀の糸は虚空を撫でただけだった。
 思いのほか遠く、闇に溶けるぎりぎりの所に男が立っている。
 背が高い男だった。
 闇に滲んでその容姿は判然としない。しかしフリウには男が笑っているのだとわかった。
 男が気さくな仕草で歩み寄る。警戒も緊張もない。散歩にいくような足取りだ。
 川辺の小石がわずかでも音を立てないことに、フリウは戦慄した。
 思わず後ろに下がろうとして、背後にあるのが川だと思い出す。下がれない。
「おいおい、あんま怖がるなや。俺、傷つくやないか」
 男は低く笑い、闇から這い出てくる。
 流れるような銀髪。彫りの深い顔立ち。ワインレッドのジャケットに身を包んだ姿はどこか禍々しい。
 男は陽気な仕草で言葉を続ける。
「さてお嬢ちゃん、話し合いといこうやないか。背中にしょってるもん欲しいんやけどくれたりしない?」
 渡すべきだろうか。
 フリウは迷った。
 あのガラス質の剣はどうせ扱えないのだ、バックを渡せば逃げることも可能かもしれない。
 取引が成立する余地は十分にあるはずだ。
(でも、あたしが渡した剣で、きっとこの人は誰かを殺す……)
 確信があった。
 男の動作1つ1つが芝居じみている。この男の本質は、もっと深く沈んだところにある。
 ミズー・ビアンカやリス・オニキスのような戦士でもなく。
 何かわからない論理で動く、そんな人間。
「あいにくと俺は素手やねん。引いたのはなんとこれ、人間探知機! 
 もしお嬢ちゃんが武器を持ってるなら、これと交換してくれへん?
 持ってないのなら、残念やけど、ここでゲームオーバーや。いそいでコイン入れてもコンティニューはないで」
 ひとしきり口上を並び立ててから、
「――選べや。好きな方をな」
 フリウは腰が砕けそうになるのをかろうじて堪えた。全身を貫く殺気。黒く渦巻く槍が穂先をもたげている。
 先ほどまでの陽気さは一欠けらもない。
 男は無表情に近い。
 怖かった。
 本当に怖かった。
 硬質な視線。
 閉じた唇。
 叩きつけられる威圧感。
 その全てを恐れて――――フリウは決意を固めた。

「いつだって誰かがあたしに選択を迫る。あたしは選びたくなんかなかったのに。そのままでよかったのに」
「ん?」
 怪訝な顔をする男を無視して集中する。
 自身の輪郭を解く感覚。生まれるは銀の糸。
 フリウは大きく目を開くと、

「あなたに剣はあげない。選ばなければいけないなら、あたしはあたしの好きな道を選ぶ!」
318Before Rondo(3/3)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 16:09:04 ID:9zEde9aE
と、緊張の糸が完全に切れてしまったのか、突然睡魔が千絵を襲った。
「あ……ごめん、ちょっとだけ、寝かせてくれる?」
「うん、いいよ。わたしが見張っておくわ。今は……2:30ね。一人二時間寝れば、ちょうど夜も明けるんじゃないかな」
「そうね……。おねがい」
「おやすみ。……がんばろうね」
「……ええ」
アメリアに見張りをまかせて、千絵は、ゆっくりとひとときの安らぎの中に身を任せた。

【残り 101人】

『正義の元に』
【C−4/高架階段裏/1日目・02:30】
【海野千絵】
[状態]: 健康・睡眠中
[装備]: スィリー
[道具]: 精霊檻(開門済み)、支給品一式
[思考]: 睡眠を取ったら出発
アメリアと共に仲間を探す→主催者を倒す

【アメリア・ウィル・テスラ・セイルーン】
[状態]: 健康・見張り中
[装備]: なし
[道具]: 支給品一式+獅子のマント留め@エンジェル・ハウリング
[思考]: 睡眠を取ったら出発
千絵と共に仲間を探す→主催者を倒す

※スィリーは獅子のマント留め(とミズー)について知っています。無視されたけど。
 もしフリウが銃弾を放ったのなら、男は迅速に反応し、回避していただろう。
 高速で放たれた念の糸。
 そこに脅威が見つけられず、男の判断が一瞬遅れる。糸が届く。
 瞬時に男の右腕に巻きついた糸は、フリウの意思に応じて力を発した。
 捻る。 
「……がっ!」
 男が大きくバランスを崩して背中から地面にぶつかる。
小石が弾けて耳障りな音を立てた。


 フリウは走り出した。
 そのまま川沿いに全速力で駆ける。
 男が立ち上がるまでにどれくらいの時間がかかるか。稼げた時間は短い。
 追いつかれる可能性は高かった。
「負けない。絶対に制御してみせる。それがあたしの戦い……」
 小さく呟いて。
 いつでも開門式を唱えられるよう、フリウは集中を始めた。
【残り99名】
【B-4/川沿い/1日目・01:50】

【フリウ・ハリスコー】
[状態]:健康、右手の人差し指と中指に小さな切り傷、落ち着いた
[装備]:ガラスの剣、水晶眼(ウルトプライド)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:男から逃げる。ミズーを探す。殺人はできればしたくない。

【緋崎正介】
[状態]:背中を強く打った
[装備]:探知機(半径50メートル内の参加者を光点で示す)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:武器の調達。フリウを追うかは次の書き手に任せます。
 
321 ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 16:12:54 ID:9zEde9aE
>318の
【残り 101人】を【残り 99人】に訂正します。申し訳ない
322海辺の対話 1:2005/03/28(月) 16:32:17 ID:UHOu+n8I
潤が祐巳の気絶体を見つける数時間前・・・・・・・・・

  「お前、妙に臭いな」
  「・・・・・・・・煩い」
まったく、見ず知らずの女に開口一番臭いといわれるとは消臭剤様様だ
ヴァーミリオン・CD・ヘイズは半ば自虐的な笑みを浮かべて苦笑いを浮かべた
組むべきか、一人で戦うべきか・・・・・・・・
とりあえず情報を得るために話しかけてはみたものの、一言会話を交わしただけでわかる
その「只者でなさ」の前に少なからず気を引き締めることを意識した。
  
「さて、お前はあたしに話しかけてきたわけだがいったい何の用なんだね?」
「いや、ただの情報交換だ。」
とはいえ、困ったことに交換できる情報が無いのも事実だ。
ここはデイパックの中の食料かそれともこの消臭剤でも交換するか・・・・・・・そんな馬鹿な
「・・・・・・・ふっ」
「何がおかしいんだ?」
「気にするな」
「まあいいや。あたしもねえ、まだいきなりこの辺に飛ばされてわけのわかんない状態だから交換できる
情報も無いんだわ。まあ、持っててもお前とは交換しようとは思わないけれど。」
そう言い黒スーツの女はニヤリと笑う。
するとタイミングよく潮風が吹き荒れ、二人の間に微妙な空気が流れた。
参加メンバーの中でも文句なしに実力者である二人ではあるのだが、かといって協調性があるわけでもない。
組めば間違いなく優秀な仲間。しかし万が一、敵に回ったときは間違いなく・・・・・・・・・・
323共通利 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/28(月) 16:34:19 ID:u9x5RyX+
あの辺りにはまだ静雄がいる、何より視界の悪い森の中での立ち話は危険と判断し
二人は子荻のスタート地点だったというマンションの一室に移動していた。
子荻がチョイスしたのは窓際ではなく、それでいて複数箇所出入り口のある部屋だった。
奇襲を受けにくく見つかりにくく、その上逃げやすい、絶好とはいえなくも悪くない場所だった。
もっとも禁止エリアとやらになるまでは、だが。

「こんな場所まで用意されてるのか、それで、組む・・・・・・ね、なぜだい?
このゲームにおいて誰かと組むというのは確かに有効な手段だ。
が、この段階で、知り合い意外と易々と組むっていうのは考えづらいな」
それは当然の疑問だった、こんな、本当なら知人さえも信用しがたい舞台の盤上で
赤の他人といきなり組むというのはもっともしてはいけない行為だ。
いつ寝首をかかれるか分かったものではない。
「それに君はどういうわけか俺を図ったように助けた、萩原さん、
どうやら君は状況によってはこのゲームに乗ることも躊躇わない人間のようだけど。
その意図はなんだい?」
当然、臨也と彼女は知り合いでも会った事も無い。
これだけ特徴的なら忘れるというのも考えにくい。
「簡単なことです、最初に集められた部屋で、あの二人が殺された後、冷静に状況判断をしていた人間を数人
その中でも簡単にゲームに乗りそうもない、切れそうな人物を自分の中でリストアップして
一番初めに見つかったのがあなた、なのでしばらくつけさせてもらっていた、それだけの事です」
324& ◆/PaySdnlKU :2005/03/28(月) 16:34:49 ID:UHOu+n8I
(だりい) 
哀川潤が考えていることはこの場においてもあくまで単純なものだった
もちろん、彼女の思考パターンからして頼まれて仲間になるなんてことはしないのは確かだ。
(しかしなあ・・・・・・・・・・)
勿論、潤からしてもヘイズがなかなかの実力者であることは察することはできる。
(まあ、あたしほどではないだろうけどな)
ここでライバルを一つ潰すか、あえて生き延びらせて、ライバルを潰させるか。
そもそもこのゲームに乗るか、乗らないか。
潤の思考はそこにたどり着いていた。

「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・穏やかな波の音が聞こえる中、空気を裂くような沈黙が続く。
「・・・・・・・・乗らないね」
そして沈黙を破るかのように潤が呟いた
「何がだ?」
「んっ、いつもどおり勝手にやらせてもらうってことさ。」
硬くなった背をぐっと伸ばしながら潤は答えた。わけの分からないといったヘイズを尻目に潤はまたにたりと笑みを浮かべ
「あんただってこんな糞馬鹿らしいゲームになんて乗らないだろ?」
「・・・・・・・まあな。」
今度はヘイズもにやりと笑う。
ともかくこの雌猫みたいな女と組んだらこっちの身が滅ぶ。
結局、彼はこう結論付けた。
(まあ残念ではあるが・・・・・・・・)
なんにせよ、今は生き残ることを考えるか
325共通利 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/28(月) 16:36:02 ID:u9x5RyX+
表情には出さずに軽く驚嘆する、あの二人の騎士が殺された後の室内は騒然とし、多くの者が混乱していた。
まあ、当然の事ではある、目の前で人間二人が殺され、彼らが死んだ原因の紋章は自分達にもあるというのだ。
泣き出す者もいくらかはいたが無理のないことだ。
そんな室内で、冷静に他人の顔色を窺う事のできる人物。
その上殺人現場を見ておきながら、その殺人者と組もうなどという思考。

「だからあんないいタイミング助けに入れたか
策師、名前倒れじゃないようだね。
それで、君はこのゲームには乗る気は無いのかい?」
聞くまでもない問いだ、これだけ頭の切れる人物なら答えは決まっている。
「当然です、このゲーム、名簿によると参加者は117人。
私も数人知った名前を見つけましたがこの117分の1になるのに私やあなたのようなタイプでは難しいでしょう。
ならばこのゲームからの脱出を最優先に考えるべきです。
あなたも恐らく同じ考えでしょう、あの殺人はルールに対する単なる時間稼ぎ
本来なら自分自身の手で殺しはしたくない、違いますか?」
326海辺の対話 3:2005/03/28(月) 16:36:25 ID:UHOu+n8I
「・・・・・・・・・・」
そうしてヘイズは背を向け歩き始めた。
「あら、行くのか」
「ああ、突然話しかけて悪かったな」
「そうだな」
悪ぶりもせずそう答える名前も知らない彼女に背中越しに苦笑いしながら
「まあ、あんたならいいとこまで生き残れるだろ」
「余計なお世話だバカタレ。」
そう言って二人は別の方向へ歩き出した。

【H−5/海岸傍の岩場/一日目1:46】
 
  【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:とりあえず東の方向へ
   
  【哀川潤】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:とりあえず西北の方向へ

【残り99名】
327共通利 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/28(月) 16:36:25 ID:u9x5RyX+
そのとおりだった、臨也にしろ子荻にしろ、一般人よりは優れている。
とはいえ所詮は静雄のような怪物には敵わない。
頭脳や立ち回りでカバーするにしても限界がある。
この限定した状況下で、先程のような事態に遭遇しないとは言い切れない。
さらにいえば、あの部屋で見た管理者連中、奴等が最後に残ったからといって素直に帰してくれるとも限らない。
「そうだね、それに無駄な殺しは不要な敵を作る事になりそうだ、24時間に一人は
まあ、保険のためには殺さなきゃならないわけだけど」
「仕方のないリスクですね、場合によってはそれも回避できるでしょう
とりあえずはあなたのおかげで少なくとも48時間は確保できました」

お互い、殺す殺さないについての割り切りはできている、これで下手に正義感のあるやつだと厄介だが。
「そして、俺と君が組めばこのゲームの間も双方にとってメリットがあるか」
「脱出するにしろ、ゲームをせざるをえなくなるにしろ、私とあなたなら、人数が一定のライン・・・・・・
そうですね、10人前後になるまでは確実に信用、いえ利用しあえるはずです」
つまり10人程度まで残ったなら、勝ち残りを目指す方が現実的というわけか。
「お互いいつ、どちらが寝首を掻かれてもいい覚悟のもとの同盟って分けか、面白いじゃないか」
完全に利害だけの同盟、だがそちらの方がむしろ信用できる。
下手な友情や博愛精神ではいつ足を引っ張られるかわかった物ではない。
だからこそ、子荻も臨也のような人間を選んだのだろう。
「それでは同盟成立です、そういえば、まだあなたの名前を聞いていなかったですね。
呼び名がないというのは不便ですから、よろしければ教えてください。
それともまさか教えられない、などという事情でもありますか?」」
今までに、教えなかった人間でもいるのだろうか、臨也は素直に答える。
「折原臨也」
そう答え、一拍置いて
「情報屋さ」
指し手の顔は隠したまま、折原臨也はそう名乗った。
328共通利 ◆vQm.UvVUE. :2005/03/28(月) 16:37:21 ID:u9x5RyX+
【残り99名】
【C−4/ビルの2階/一日目、03:12】

【折原臨也(038)】
 [状態]:正常
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:ゲームからの脱出?

【萩原子荻(086)】
 [状態]:正常
 [装備]:ライフル
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:ゲームからの脱出?
329Dead Man ◆wkPb3VBx02 :2005/03/28(月) 16:42:07 ID:HFaj09uP
(―――何故こうなってしまったんだろう)
荒い岩肌に手を付きながら黒髪の少年、天樹錬は先刻の記憶を反芻する。
黒髪の男が印を切っただけであの強そうな二人の騎士があっさりと殺されてしまった。
逆らえば命はない、言葉にせず行動で示す彼等のやり方に錬は戦慄した。
(これからどうすれば……)
軽い眩暈と怖気を感じつつ錬は自分が取るべき最良の方法を必死に検討する。
参加者を全員殺して最後の一人になる、却下。他人を犠牲にするなど錬には出来ない。
主催者を倒して全員解放させる、却下。なんらかの策を講じない限りあの黒髪の男には勝てない。
となれば取るべき行動は、
(仲間を作って脱出する計画を練る!)
あのホールで確かに錬は見た。赤い髪に一房だけ青い髪混じるあの男、ヴァーミリオン・CD・ヘイズを。
仲間に成ってくれる人を増やしながら、彼を探す。出来るなら自分の騎士剣も取り戻したい。
行動方針を決定すると岩から手を離し、錬は気付いた。自分のI−ブレインが満足に機能しない状態であることに。
これでは騎士剣を取り戻した所で十分戦えない。もし今誰かに襲われれば、撃退するのは難しいだろう。
「この制限もなんとかしないと……」
絶望感で心の中が満たされていく。
そして最悪のタイミングで襲撃者がやって来た。
330Dead Man ◆wkPb3VBx02 :2005/03/28(月) 16:45:06 ID:HFaj09uP
錬に向かって緋色の影が颶風を纏って突進する。剣先が銀の軌跡を描き月明かりに煌きながら影を斬りつけた。
錬は刃と接触する直前に体を反転して回避し、結果として剣は影を薙ぐだけに留まった。
だが緋色の襲撃者は留まらず、振り切った姿勢からさらに一歩踏み込み横薙ぎの一撃を叩きつける。
錬は後方に跳躍、腹部に浅い裂傷を受け苦痛に耐えるように少女のような顔を顰める。
岩の上に着地してから突然の襲撃者に説得を試みようとする。
「ま、待ってください!僕に戦う意思はありません!」
その一言に緋色の影がぴくりと反応する。ぱっと見は女性に見えてしまうかもしれないが、髪の長い男性だと錬には分かった。
男は眼鏡の奥の警戒を孕んだ双眸で錬を睨みつけ、剣を正眼に構える。
「そんなに警戒しなくても大丈夫です。ほら、僕武器とか持ってませんから!」
錬が両手を挙げて武器を携帯していないことを示すと、男は剣先を下げた。
そのまま緊迫した空気だけが流れる。男はもう斬りかかってはこないが信用した様子もない。
男から視線を外せずにいると、向こうからおい、と声をかけてきた。
「さっき戦う意思はないって言ったな、つーことはお前はゲームに乗る気はないってことだな?」
「……ええ、ありません」
少なくとも今の段階では、と心の中で呟く。
男はそうか、と答えると一つの提案を出した。
「誰が味方かもわかんねぇ状況だ。仲間は一人でも居た方がいい。どうだ、俺と組まないか?」
それは錬にとっても有り難い提案だった。いきなり斬りかかって来るような人だけど、今みたいに緊迫した状況じゃ仕方ないのかも、と錬は自分に言い聞かせた。
錬はそれに了承の意を示し、名乗りながら右手を差し出す。
「僕は天樹錬って言います。宜しくお願いします」
男は剣を左手に持ち替え、錬に近づいて握手する。名乗る気はないらしい。
「あの……一応お名前を……」
なに馬鹿丁寧なことしてるんだろう、と思いつつも錬は名を尋ねた。
331Dead Man ◆wkPb3VBx02 :2005/03/28(月) 16:45:43 ID:HFaj09uP
男は口の端を歪めて、
「……裏切り者(ベトレイヤー)とでも呼ぶがいいさ」
「―――え?」
思考が凍結し、間抜けな反応を返す。途端に男の左手が翻り銀刃が煌いて雷のように自分の頭に落ちてくるのを見た。
左手で防ごうとした時点で既にもう遅かった。
頭に鈍い衝撃を感じて頭を斬られたんだな、と不思議なほど冷静に感じる自分が居た。
握手していた右手が引かれ尖った岩に叩きつけられる。頭から離れた刃の切っ先に咽喉を一文字に切り裂かれた。
錬が最後に見た光景は、刃を振り抜く裏切り者の嗤顔だった―――

【天樹錬 死亡】

【残り104名】

【H-5/一日目1:22】
332本で戦う暗殺者 ◆E1UswHhuQc :2005/03/28(月) 17:40:12 ID:8AH2UXvR
「あなた、マージョリー・ドーの居場所は分かるの?」
「ああ。我が麗しのゴブレットは……こっから北だな」
 ミズーは星を見て方角を判断し、マルコシアスの言葉通りの方向へ進んでいく。
 彼を全面的に信じているわけではないが――現状、信じるしかない。
 闇雲に歩き回ってフリウ・ハリスコーを探すよりは、マージョリー・ドーという人物と接触して、協力したほうがいい。なにしろ支給された武器がこの巨大な本だけなのだから、戦いはなるべく避けたい。
 ミズーはなるべく足音を隠しながら進む。ウルペンがこちらを狙って動き回っている可能性は高い。
 と――
「……石段?」
「ヒッヒッヒ。天国への階段かもなー」
「黙りなさい」
 マルコシアスに告げ、しばし思案する――目の前にある石段を、登るか登らないか。
 考えているうちに。
333本で戦う暗殺者 ◆E1UswHhuQc :2005/03/28(月) 17:40:37 ID:8AH2UXvR
 上の方から、爆音が響いた。
「何が――!?」
 逡巡したその時、マルコシアスが言った。
「今の爆発は、我が騒がしい飲んだくれ、マージョリー・ドーだな。こんな夜中にでっかい音立てやがって」
「……戦闘中、ということ?」
「多分なー。何しろ我がぶっちぎりの牙、マージョリー・ドーは怒りっぽくてな」
 ヒッヒッヒ、と笑う、マルコシアス。
「誰かと会ったが、話し合いがこじれて自在法ぶっ放したんだろーよ。ヒャーッハッハッハ!」
「静かにしなさい。……私も行くわよ」
「おお? なかなか好戦的だな、我が麗しき運搬人、ミズー・ビアンカ!」
「……剣より使いにくいけれど、あなたで戦えないこともないわ」
「ヘっ! ……イカしてるぜ、アンタ」
「ありがとう」
 言って、ミズーは石段を駆け上った。

【C-5/長い石段/1日目・1:25】

 【ミズー・ビアンカ】
 [状態]:焦り
 [装備]:神器『グリモア』
 [道具]:デイバッグ(至急品入り)
 [思考]:B-5へ移動。

【残り99人】
334イラストに騙された名無しさん:2005/03/28(月) 17:53:37 ID:+/ucdMW4
常識のないクソどもの溜まり場だなココは

死ねばぁ?
335殺人聖者 ◆CSZ6G0yP9Q :2005/03/28(月) 18:03:23 ID:IqMfmH78
 相良宗介が少年を発見したのは二時の半ばを過ぎた頃だった。
 彼は考える。ここに来る途中、少女の死体を発見した。彼女のデイパックからは既に持ち物は抜き取られていた。
 これから導きだされる答えは、ゲームに乗った人間がいるということだろう。そして、弱い人間を殺し、武器を集め、自分の生存の確率を高める。それは酷く正しい。
 ならば、俺も参加者を殺すかして、武器を集めるべきだ。それらをこなしながら、彼女の元へ向う。
 彼は、そう結論を出した。
 そして、眼前にいる少年をみる。年齢は自分と同じくらい。学生だ。彼の日常を象徴するようなここに逃げて来たのかもしれない。
 震えている首にナイフが突き刺さる。後ろからの一撃。宗介の存在に彼は気づいていなかった。そして、自分が死んだことも。
 時刻は三時を一分過ぎていた。
336イラストに騙された名無しさん:2005/03/28(月) 18:04:38 ID:IqMfmH78
「はずれか……」宗介は呟き、デイパックから食料と水を移すと、死体の横で、奪った豆腐を一つ食べる。
 腹が五分ほど満たされたところで、彼はその場所を去っていった。
 夜明けは近い。自分の格好を考えれば、動くべきは夜であり、休むべきは昼。それまでに、人の近づかなさそうな場所を確保するべきだ。
 彼は地図を眺め、立ち去った。

【D-2(学校1階教室1-4)/03:01】

【相良宗介(フルメタルパニック)】
状態:健康、殺人聖者モード
装備:コンバットナイフ、スローイングナイフ数本
道具:支給品一式(水、食料×2)
思考:1、火器類の確保 2、千鳥、テッサの保護 3、クルツとの合流 4、探索は夜、昼は仮眠
行動:南へ

【キョン(涼宮ハルヒシリーズ)】
状態:死亡(03:01)
道具:水・食料を除く支給品、豆腐の残りと醤油
337 ◆gGIUsWxZq. :2005/03/28(月) 18:06:18 ID:o/wOU5WX
「ふむ…森を抜けた先は海岸なのか」
 ブギーポップと別れ、仲間を捜索すべく行動を開始した佐山・御言はいつしか森を抜け海岸に出ていた。

 潮の香りが心地よい。佐山は砂浜に腰を下ろしこれから成すべきことを模索した。
(新庄君達を探すのは当然として……)

 ざっ。
 ざっ。
 ざっ。
 何者かがこちらのにやってくる足音。
(また誰かが私を訪ねるつもりなのかね)
 一応、用心のためEマグを構える。

 海岸に浮かび上がる影。よく見ると女のようであった。
 服に血糊が付いているようだが、特にケガをしている様子でもない。
(と、なると)
 ゲームに乗った不届き者なのか?
 佐山は女にEマグを向け言った。
「そこで立ち止まってもらいたい、私は佐山・御言。君に危害を加えるつもりはない」
 できれば人殺しはしたくない、が……相手がその気ならやむを得まい。

「銃相手にヘンなことはしないよ。私はもとの世界に帰りたいだけなんだよ」
 月明かりに浮かぶ女――。
「君の魂のカタチ、とっても興味深いよ――ね、佐山君」
 無邪気な笑顔を貼り付けた魔女――十叶詠子だった。
338イラストに騙された名無しさん:2005/03/28(月) 18:07:23 ID:o/wOU5WX
【座標H−6/海岸/時間(一日目・2:35)】

【佐山・御言】
[状態]:健康
[装備]:Eマグ
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:1.仲間の捜索。2.詠子を撃つつもりは無い。

【十叶詠子】
[状態]:健康
[装備]:メス
[道具]:支給品一式、閃光手榴弾1個(ティファナから拝借)
[思考]:1.元の世界に戻るための行動を優先。2.佐山に興味あり
339 ◆gGIUsWxZq. :2005/03/28(月) 18:09:13 ID:o/wOU5WX
【残り98人】
340悪役と魔女 ◆gGIUsWxZq. :2005/03/28(月) 18:13:17 ID:o/wOU5WX
すみません題が抜けていしたた
「来る」
「あぁ、一人…だな。」
 出夢は、唐突な、長門の短い言葉に反応して体を起こす。
「悠二ィィィィィィ!」
突然の絶叫に出夢は虚を突かれる。勢い良く窓ガラスを割り入ってきたのは、紅い髪の少女。
『炎髪灼眼の射ち手』シャナである。
あの『人類最強』かと思って身構えた出夢だったが、現れたのが10歳ほどの少女だったのを見て、いくらか気を緩める。
しかし油断は禁物である。なぜなら、少女の動きは強者のソレであったからだ。
「悠二ッ!悠二はどこ?」
 周りを見回すシャナ。
しかしそこにいるのは無表情でこちらを眺める少女のみ。
(クッ!あせったせいで階数を間違えたか)
と、シャナが思考しているとき、出夢はすでにシャナの真上の天井に跳躍し、張り付いていた。
シャナが気配を察知し、真上を見上げたときにはもう遅い。
出夢が落下しながら、体を弓のようにそらして一撃必殺の拳を放つ。
極端に細く、長い腕から繰り出されたソレは――
「ひゃっははぁッ!くっらえぇぇぇぇ!イーティングワンッ!」
喰らった――いや、喰ったモノを、まるで元からこの世に存在していなかったかのごとく、
粉々に、砕いた。
 喰われた廊下には巨大な穴が開き、『炎髪灼眼の射ち手』シャナは、
「え?ちょッ!ちょっとぉぉぉぉぉぉ!」
真っ逆さまに落下した。
それを見届けるまもなく出夢は叫ぶ。
「いまだ、おねぇさん。逃げるぜぇ!」
 出夢は未だに無表情で立ち尽くしている長門を小脇に抱えると、
(同じ、むしろ自分より大きな少女を抱えている様は、いくらか滑稽だ)
廊下に出て、叫ぶ。
「あー、名前なんだっけ?…そうそう、坂井ぃぃぃ!どこに居るかはしらねぇが敵襲だ!
 とりあえず逃げるぞ!襲われる前にここから出ろ!紅い髪の女だ!『死色』じゃぁねぇけどな。
 ぎゃははははは!」
出夢は城中に聞こえるような大声で叫ぶと、廊下の窓から飛び降りた。

「ッ!ちょっとあんた!坂井ってもしかして坂井悠二!?」
穴から這い上がったシャナは、出夢の叫びに向かって問うが、出夢はもう窓から飛び降りた後だ。
「っ!くそ!」
 出夢を追いかけようとするシャナ、しかしもう追いつけないと悟ったのか、
「悠二!今行くわよ!それまでに死んだら許さないんだから!」
 と言って、二階ほど下にいるらしい悠二のもとへと急いだ。
【チーム・ザ・いとうのいぢ+α−1】(匂宮出夢/長門有紀)
【G-4/城の廊下/03:15】
【残り98人】
【長門有紀】
[状態]:若干の疲労。
[装備]:ライター
[道具]:デイバック一式。
[思考]:シェルターの形成/情報収集/ハルヒ・キョンの安全確保

【匂宮出夢】
[状態]:健康。
[装備]:???
[道具]:デイバック一式。
[思考]:とりあえず悠二を待ってから逃走。来なかったら長門と逃走

【シャナ 】
[状態]健康。
[装備]刀(なまくら)
[道具]デイバック一式。
[思考]悠二を探す
344暴風吹き荒れる ◆ZlP49.IyQM :2005/03/28(月) 18:22:08 ID:uP2BWKCI
 理由すらわからない殺し合いが行われている。、
 ヒースロゥ・クリストフは怒りのあまり、腹の底から咆吼を上げた。
 ヒースロゥは今、一人の男の前に立っている。
 ずいぶんと華奢だが、男であるのは確かだ。
 首と体が分かれ、その接合部分であったところから夥しい血が流れているが、その男が今まで生きていた、ということにかわりはない。
 その男の名前が天色優、あるいはユージンというのだということを、彼は知らない。
 知らないからこそ余計に、腹が立った。
 この男は苦しんで死んだのだろうか?
 怯えて死んだのだろうか?
 泣いて死んだのだろうか?
 後悔しながら死んだのだろうか?
 大切な人を思いながら死んだのだろうか?
 それともそんな間すら与えられず死んだのだろうか?
345暴風吹き荒れる ◆ZlP49.IyQM :2005/03/28(月) 18:25:01 ID:uP2BWKCI
 ――何故だ。
 ヒースロゥは自問する。
 何故このような理不尽な企画が許されるのだ。
 何故主催者共はこのような企画をでっち上げたのだ。
 何故他の参加者たちは、平気で殺すことができたのだ。
 最後の疑問が胸に浮かんだとき、ふとヒースロゥは首をかしげた。
(そうだ。何故こんな真似が出来る? 
 最後の一人にならねば帰れないと言われたからといって、何故こんなゲームが成立する? 帰れない、などあの主催者共が勝手に言ったことじゃないか。
 参加者全員でかかればあの連中を締め上げて、帰る方法を聞き出すことくらい可能じゃないか。ならば、何故?)
 その“こんな真似が出来る連中”の中にはバーンとガウリイの死に怯え、『殺らねば殺られる』という心理が働いた者がいる、
 ということにヒースロゥは思い当たっていなかった。
 彼は良くも悪くも“強者”なのだ。
 その変わりにヒースロゥはこう考えた。
(この状況を楽しんでいる連中がいる……?)
 そう思い当たったとき、ヒースロゥの胸に再び烈火のごとき怒りがわき起こった。
346暴風吹き荒れる ◆ZlP49.IyQM :2005/03/28(月) 18:25:38 ID:uP2BWKCI
 ヒースロゥは得物を持ち直した。
 何の変哲もない木刀は、銃や刃物等の支給品に比べて酷く頼りなかったが、彼が持つとどの刀よりも、剣よりも切れ味が鋭く、
 どの銃よりも、爆弾よりも危険な代物に見えた。
 ヒースロゥ・クリストフ――かつて風の騎士≠ニ呼ばれた男は決意する。
 罪があるかどうかすらもわからない人々を狩る連中も、このような状況を作り出した時点で罪人でしかない主催者共も、
 まとめて退治してくれようと。
 ヒースロゥは暗い海に攫われていくユージンに黙祷を捧げると、歩き出した。
 その顔には、ただ怒りのみが刻まれていた。
347暴風吹き荒れる(報告) ◆ZlP49.IyQM :2005/03/28(月) 18:26:08 ID:uP2BWKCI
【E−8/海沿いの道 /1日目・1:33】
【ヒースロゥ・クリストフ(風の騎士)】
[状態]:激昂
[装備]:木刀
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:マーダー狩り
348みなものむこうがわ ◆xSp2cIn2/A :2005/03/28(月) 19:33:32 ID:dT5nYC7+
「迷った……」
 ぼくはこれで25回目のつぶやきを繰り返した。
「それにしてもコンパスすらないってのは厳しいな」
ぼくはもと来た方向とおぼしきところへ歩を進めた。

 あの女の人との戦闘のあと、茂みにダナティアさんと隠れていたのだが、
人間として当然の生理現象である、尿意をもよおしたぼくは、
付いて行くと言ったダナティアさんの申し出を当然のように丁重に拒否して、
いわゆる『立ちション』をするべくさらに奥の茂みに分け入っていったのは良かったのだが。
「あそこで崖に落ちるか?普通」
そう、ちょうどいい場所を探しているうちに崖から落下。元の場所に戻ろうとして……
「今に至るというわけだ。ったくなんて戯言だ」
ぼくは誰ともなしにつぶやく。
「でも、案外これでよかったのかもしれないな」
 そう、僕の周りでは何人もの人間が死ぬ。
 僕の周りでは幾つもの計画が狂う。
 子荻ちゃんだって
 姫ちゃんだって
 朝比奈さんだって…そうだった。
 ダナティアさんだって、きっとそうなるに違いない。
 僕の影響を受けないのはきっと、
 もうすでに壊れてしまっている青色のサヴァンか、
 人類最強であるあの請負人か、
 それか――ぼくと全く一緒の人間失格
「零崎人識か――傑作だ」
349みなものむこうがわ ◆xSp2cIn2/A :2005/03/28(月) 19:34:54 ID:dT5nYC7+
 そういえば、零崎はこのゲームに参加しているのだろうか?
ダナティアさんは名簿があると言っていたが、まだ僕は見ていない。
「零崎ねぇ……そもそもあいつは生死さえ不明だからな」
もし参加していたらあいつはこのゲームに乗るだろうか?
乗るかな?………いや、くだらねぇなどと言って乗らないだろう。
「人は殺すだろうけどな」
いくらか歩いたとき、唐突に――
「動くな。抵抗しなければ危害は与えない」
ナイフを突きつけられた。もちろん、首筋にだ。
「あぁ、誰かにつけられてると思ったら女の子か」
「しゃべるな。これから幾つか質問をするからそれに答えろ」
やれやれ、どうやらかなり強引な子のようだ。
「その前に――」
挨拶ぐらいはさせてくれ
ぼくは言った。
「哀川さんに追われて良く生きてたな『人間失格』」
返事はすぐそばの木から返ってきた。
「全くだぜ、死ぬかと思ったよ『欠陥製品』」
これが二回目の、
『人間失格』と『欠陥製品』の邂逅だった。
350みなものむこうがわ ◆xSp2cIn2/A :2005/03/28(月) 19:35:49 ID:dT5nYC7+
【残り 98人】

【F−4/森の中/1日目・03:40】
【いーちゃん(082)】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: 誰ともかかわらないように気をつけよう。せめて好きにならないくらいには

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:一人ずつ捕まえて協力してくれそうな人を探す

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁
[道具]:デイバッグ(支給品一式)サバイバルナイフ
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。 いーちゃんと話しがしてみたい……かも
351Alternative(1/4)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 19:54:14 ID:9zEde9aE
南に出ると、まもなく砂漠のような場所に出た。
「さすがに砂漠の真ん中に休息できる場所はないでしょうね。さっさと抜けましょう」
「うん」
──ほんと、さっさと抜けたいんだけどね。
クエロ・ラディーンは胸中でつぶやいた。
クリーオウの雑談に付き合いながら、そして彼女の歩幅に合わせて歩いているのでかなり遅くなっている。
さっさと人材と情報を集めて脱出したいのだが。それと、やはり武器も欲しい。
使える人が持っていた方がいい、という理由でクリーオウからナイフを預けられたが、これだけでは心許ない。
もちろん、クエロは武器がなくとも並の──いや、並以上戦士でも勝つ自信はある。
だが、ギギナレベルの相手となるとやはりナイフでは無理だ。
そして何よりも問題なのは、ここには計り知れない能力を持つ者たちがいるということだ。
「でね、そしたらオーフェンが──」
オーフェン。マジク。魔術。声のみを用いて咒式と同じような現象をもたらす能力。
正直、少し焦った。
そんな連中がいるのならば、自分は抵抗も出来ずに彼らの一声だけで殺されてしまうのかもしれない。
確かに咒式士は、身体に穴が開いたり片腕がもげた程度では死なない。鍛え方が違う。
ギギナのような生体咒式士なら、そもそも細胞のつくりから違う。
ただ、頭部を吹っ飛ばされたら死ぬしかない。
──ならば。
「はやく見つかるといいわね。きっと心強い味方になってくれるわ」
うまくやりこめて味方に引き入れる。
後々、主催者側に回ることになった場合でもいいように、十分な信頼を得ておかなければならない。
そのためには彼女の存在が必要になるだろう。今は苛立ちの原因でしかないが……。
352Alternative(2/4)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 19:54:56 ID:9zEde9aE
──と。こちらに向かってくる人影が見えた。呼びかけようとして、
「そこの二人、止まれ」
……先手を打たれた。まぁ、マーダーならそもそも声もかけないだろう。それとも隙をつくか?
「止まりましょう」
「……う、うん」
素直に立ち止まって、相手の出方を待つ。
子供を気丈にかばう母親のように。身を堅くし、相手を少し不安の色がちらつく強い眼光でにらみつける。
確かに、戦闘能力はこのゲームではそれほど飛び抜けてはいないかもしれない。
だが、詐術なら間違いなく自分が一二を争う腕だと、クエロは確信していた。
両手を挙げて戦う気がないことを見せながら──しかし、いつでも飛び出せるよう神経を尖らせて。
「質問だ。あんた達はこのゲームに乗る気があるか?」
一言で言えば、異形だった。
大昔のペテン魔法使いのような白いローブ。腰には長剣。まだ、これらはいい。
問題は首から上だ。青黒い──まるで岩で出来ているかのような肌。
月明かりを受けて銀色に見える髪は、明らかに毛髪ではない煌めきを宿している。
声の低さからすれば男性か。しかしここまで来ると性別があることすら疑わしい。
(……そもそも彼は人間なの?)
額は髪で隠れて見えないので、擬人かもしれない。
もちろん、今は彼の正体について考えるよりも質問に答える方を優先すべきだが。
「ないわ。……仲間を集めて、なんとか脱出する方法を探してるの」
慎重に言葉を交わす。クリーオウは不安そうにクエロの一歩後ろにいた。
自分はともかく、彼女は“やる気”には見えないだろう。うまくいけば油断させられるかもしれない。
(……そういえば、初めて役に立ったわね?)
胸中で苦笑する。この少女には“魔術士”をおびき出す餌以外の価値はないと思っていたのだが。
「……そうか。俺もそのつもりだ。では長い茶髪か黒い短髪の少女を見ていないか?」
「ごめんなさい、見ていないわ」
「そうか。……すまないが、俺は知り合い以外と馴れ合う気はないんだ。手間をかけた」
それだけ言って、異形はきびすを返した。
少し逡巡して──クエロは言った。
「待って!」
「なんだ」
そして、言葉を続ける。
353Alternative(3/5)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 19:56:12 ID:9zEde9aE
「……私は少し戦える。武器はこのナイフだけだけどね。
でも、彼女は普通の女の子なの。これじゃゲームに乗っている奴らに太刀打ちできない。
完全に信じろとは言わない。一時期だけでいいわ。同盟を組んでくれない?」
「同盟というのは対等な立場で結ぶものではないのか? 俺は一人でも戦える。必要ない」
そりゃあそうだ。普通は、わざわざ好きこのんで足手まといを増やす必要はない。
──諦めるか? いや。
「……じゃあ、言葉を変えるわ。……私たちを助けて」
「……」
「私もこの子も、日常からいきなりこんなゲームへと引き込まれた。早く元の世界へと帰りたい。ただ、それだけなの。
……こんなことを他人に頼むことはおかしいと思う。でも、私たちにはそれしかすべがない」
悲愴な面持ちを作り、少し声を荒げる。クリーオウは自分と異形を不安そうに見ている。
「信じられんな」
「……クリーオウ、荷物を捨てて」
「あ、うん」
地面におろされた荷物を放り投げる。もちろん自分のものも。
ナイフも足下に落として異形の方へと蹴った。
「私は──この子を守りたい。ここで会ったまったくの他人だけれど……私はこの子を助けたい。
だからこの子にはあまり危険なことに──これ以上、危険なことに巻き込ませたくはないわ。けど、私は何でもする。
……だから、お願い」
「あの、わたしもできる限り、がんばれるから」
知り合い以外の他人と関わりたくない者なら、最初の呼びかけを無視しているはず。そして“助けて”と言った際、異形は少し動揺した。
(こんなの、修羅場のうちにすら入らない)
賭けは常に自分の命。誰を信頼し、誰を切るか。
あの、忌々しい事件の後、これ以上の状況を何度も経験している。

────さて、どうでる?
354Alternative(4/5)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 19:57:29 ID:9zEde9aE
クエロの予想通り、ゼルガディスは迷っていた。
腰には支給品の──ガウリイの形見になってしまった、光の剣。文句なしの“当たり”だ。
確実に信頼できるのはリナとアメリアのみ。ただ、二人ともガウリイの死によって錯乱状態になっているかもしれない。
そんな不安はあったが、必ず二人を探し出してここから脱出するつもりでいた。
(どうする?)
彼女らを捨て置いた方が行動は取りやすいだろう。
だがここで見殺しにして後から死体を見ることになると寝覚めが悪い。
再会した後にリナやアメリアに怒られるだろう。特にアメリアは、一人で探しに行くと言いかねない。
(どちらにしろ助けに行くことになるのなら……早いほうがいい)
実は、助けること自体にはそれほどためらいがなかった。……問題は。
(あの女だ)
さっきから自分と交渉している灰白色の髪の女。気丈に背後の少女を守ろうとしている──ようにみえる、のだが。
(何か……底知れないものを感じる。いいのか? 完全には信頼を置かないにしろ、行動を共にしても)
彼女を残し金髪の少女だけを助ける。それも一つの手だ。彼女は承諾するだろう。
だが、様子を見るに、少女は女に全幅の信頼があるようにみえる。
そんなことをしたら少女は、信頼できない自分の誘いを断って女の方に行くのではないか?……ならば意味がない。
(…………怪しい行動に出たら即斬ればいい。それだけの話だ)
自分に言い聞かせ、ゼルガディスは二人に向けて言った。
「いいだろう、しばらく行動を共にしよう。但し、俺の人捜しの方に付き合ってもらう」
「……ありがとう」
「よかった……」
女は安堵の笑みを浮かべた。そこにほころびは見つからない。
「私はクエロ・ラディーン。この子はクリーオウ・エバーラスティン」
「俺は……ゼルガディス・グレイワーズだ」
「よろしく、ゼルガディスさん。……あの、とりあえず、荷物を回収してもいいかしら?」

──こうしてゼルガディスは、選択を誤った。
355Alternative(5/5)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/28(月) 20:00:23 ID:9zEde9aE
【B-1/海岸 /1日目・2:00】

【クエロ・ラディーン】
[状態]:健康・演技中
[装備]:普通のナイフ
[道具]:支給品一式、高位咒式弾(汎用)
[思考]:ゼルガディスについて行く(+魔杖剣(クエロの魔杖短槍か<内なるナリシア>)を探す→後で裏切るかどうか決める)

【クリーオウ・エバーラスティン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]:ゼルガディスについて行く

【ゼルガディス・グレイワーズ】
[状態]:健康、クエロを少し疑う
[装備]:光の剣
[道具]:支給品一式
[思考]:リナとアメリアを探す

【残り98人】

#最初の方のタイトルを(*/4)と書いてしまいました。申し訳ない
356Devils Whisper ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/28(月) 21:01:54 ID:OWeaoUnw
そうか…素敵な人だな、君の友人たちは」
「ええ」
和やかに話し合うアシュラムと志摩子
アシュラムは志摩子の顔を覗き込むように見つめる、
不思議とこの娘と話していると何故か癒される、そんな気がする。
だからこそ、その聖という娘も彼女に魅かれたのだろうか?
そんな気分で、久しぶりに満ち足りた思いを得たような気分になるアシュラム、しかし…
その時は長くは続かなかった。

歌が…歌が聞こえる…美しき妖魔が奏でる死の音色が…
その悲しげでそして優しい音色はいつしか2人の心を虜にしようとしていた。
「いかん」
その囁くような歌に隠された悪意を察知するアシュラム、果たして…
「ほほ…よう見破った」
闇の中から溶け出すように現れたのは白いチャイナドレスを纏った世にも美しき女だった。
顔半分をベールと髪で隠してはいたがその美貌はいささかも衰えてはいない。

「だが…わずかな一瞬であってもわたしには十分ぞ」
美姫の瞳が光る、反射的に未だ魅入られたままの志摩子を庇うアシュラム
その代償として彼は見てしまった、美姫の魔眼を。
「ここは?」
アシュラムは戦場にいた。
眼下には焼け付くような溶岩がボコボコと泡立っている。
「…まさか…」
357Devils Whisper ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/28(月) 21:03:19 ID:OWeaoUnw
考えるまでもなかった、そこはあの日の火竜山…さらに、目を凝らせばそこに在ったのは
あの日の自分と、そしてカシュー王の姿…そう、そこで繰り広げられていたのは己の誇りと意地を賭けた戦い
だがしかし…アシュラムは己の罪にまた慟哭する。
卑怯・未練を何よりも嫌い憎む男が行った、たった一度のしかし取り返しのつかぬ過ち。
「やめろ!やめてくれ!!何故思い出させようとする!!」

そこに美姫の声が重なる。
「それほどまで辛き記憶ならば捨て去ってしまえば良いものを…人という物はまことに厄介にして難解じゃの」
その甘言はまるで乾いた砂に水が溶け込むような鮮やかさでアシュラムの精神を侵食していった。
「やりなおしたいかえ?もう一度騎士として立ちたいかえ?」
もはやアシュラムは抗うことができなかった。

先立っての佐藤聖もまた失った恋の痛みと、同性愛者という闇を抱えていた。
そんな心の隙間を妖女は易々と陥れる。
みよ、黒衣の騎士と恐れられるかの暗黒騎士アシュラムですら、いつしか美姫の足元に跪いているではないか。
「ふふ、美丈夫よの」
アシュラムの白い顔、そして黒い髪を撫でる美姫、
「望みどおりそなたの心の空白、わたしが埋めて進ぜようぞ…今宵、今これよりそなたの主は」
そのまま美姫はアシュラムと口付けを交わす、
「このわたしぞ、生きる場所そして生きる意味わたしが与えて進ぜようぞ」

アシュラムの瞳が急速に意思の光を失っていく、そして今度は別の新たなる光がその瞳に宿っていく。
その光はあの暗黒皇帝ベルドの下、親衛隊長としてその武名を欲しいままにしてきた
あのアシュラムの瞳の光そのままだった。
358Devils Whisper ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/28(月) 21:06:26 ID:OWeaoUnw
志摩子は何も出来なかった…
ただ美姫の唇からわずかに覗く牙を見逃さなかった、その程度のことしか出来なかった。
「血を吸ったのですか?」
不思議と冷静だ…こんな時自分の性格が少し嫌になる。
「僕にしたわけではない、わが白昼の眠りを妨げる無粋な輩を討つのにこまるであろ?」
しれっと言い返す美姫。
「殺さないのですか?」
今度は鼻を鳴らし憤慨したような声で応じる。

「見くびってもろうては困るの、あのような下卑た輩の茶番にのるわたしと思うたか、ただわたしは自由に生きるのみ」
「愛したい者を愛し、殺めたい者を殺め、そして死すべき時がくれば死すであろ…もはやそれだけに過ぎぬ」
その言葉…志摩子は美姫の心の奥に潜む翳りのような何かを感じ取っていた。
「可愛そうな…人」
その声が聞こえたか聞こえぬか、果たして美姫は振り返る。
「そなたにも永遠をくれてやろうかと思うたが、その賢しさ、気に食わぬな」
爪を立て牙を剥き出す美姫。
「私は構いません、ですがアシュラムさんは許してあげてください、
 この人はこの様なところで死んではいけない人です」
「わかっておる、この者…古の関雲長にも劣らぬ将と見た、だからこそなのだ、
 真の武士は二君に仕えず、だがこのまま朽ち果てさせ無為な死を遂げさすにはあまりに惜しい」

美姫はすっと片方の指を上げる…それを志摩子の額に向けて
バシュン!!
でこぴん一発とはいえ、美姫の一撃を受けてぶっ飛ぶ志摩子、その落下点には黒々とした藪が顎を開いていた。
「救いたくばこの者を真に愛し想う者を捜すがいい、そしてその者の魂の叫び届かば、奇跡起こるやもしれぬの」
359Devils Whisper ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/28(月) 21:13:43 ID:OWeaoUnw
そして美姫は自らの支給品であった、華奢な簪に力を込める
と、それは巨大な薙刀…青龍堰月刀へと姿を変える。
「鶴翼斬魔、新たに生まれ変わったそなたに相応しき得物ぞ、
 その刃で我に仇なすもの全て斬り払うがよい!!」
「御意」
跪き恭しく得物を受け取るアシュラム、その瞳はやはり爛々と燃えていた。
かくして最悪の吸血姫は最強の騎士を得たのだった。
360Devils Whisper ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/28(月) 21:21:04 ID:OWeaoUnw
【美姫】
 [状態]:通常
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:己の欲望のままに/そろそろ寝床を探す

【アシュラム】
[状態]:健康/催眠状態
[装備]:青龍堰月刀
[道具];冠
[思考]:美姫に仇なすものを斬る

【藤堂志摩子】
[状態]:健康(気絶してるかも)
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考]:不明

現在位置 【H−5/海岸/一日目、04:00】
361続・接近 ◆pRIOI2rXUM :2005/03/28(月) 21:23:38 ID:sxrdhx8i
張り詰めた空気が漂う
…一分
…二分
いや、もっと長かっただろうか?動きの無いまま対峙し続ける火乃香と
長い刀身の抜き身を刀を持った派手な赤いドレスを着た人影、どうやら女性のようだ。
火乃香は考える。
(誰?襲ってこない所を見るとこのゲームに乗ったわけじゃ無さそうだけど…。
 どっちにしろこのままじゃ拉致があかないか…。一か八か)
決断してからの、動きは早かった。火乃香はその場にいきなり剣を捨てたのだ
「!?」
女が戸惑ったように動きを止めた一瞬の隙に言う
「こっちに敵意はないよ。よかったらそっちも武器を捨てて話し合わない?」
(もし相手が襲ってきてもまだ左用の剣がある)と考えながら告げた。
こちらの言ってる事が本当なのか判断するようかのようにしばらくの間があった。
「カシャン」
意外に軽い音を立てながらその場に落ちる剣。
「…」
しかしそれだけだ。是か否の返答ぐらいはあってもよさそうなものだが女は答えない。
仕方なく火乃香は続ける
「あたしは火乃香。あんたは?」
「…」
なおも黙り続ける
苛立った火乃香が怒鳴ろうと口を開くと
「あんたねえ…!」
と、いきなり無造作に人影は背を向けて洞窟の中からは見えない場所に歩いていく
「?」
いきなりの行動に火乃香がとまどっていると
再び女が戻ってきた。その手にはディパックがあった。どうやら近くに隠していたらしい。
そして、どうするのかと思うと女はディパックの中に手を突っ込み何かをとりだした。
「つっ!」(油断した?まだ武器でもあるの?)
と、自分の判断ミスを呪った。女のいきなりの行動にとっさの対処ができない、仕方なく致命傷だけは避けるべく腕で頭を庇う。
362続・接近 ◆pRIOI2rXUM :2005/03/28(月) 21:24:09 ID:sxrdhx8i
しかし、予想したような衝撃等は無かった
「…?」
訝しげに火乃香が顔を上げると目の前には何か書かれた紙を突き出した女が居た。
「何?読めってこと?」
「コクン」
うなずく女。その様は外見と違いに意外に子供っぽかった。
女から渡された紙に書いてあったのは女が喋れないと言う事と女の名前が【シャーネ】という事だった。
363続・接近 ◆pRIOI2rXUM :2005/03/28(月) 21:24:39 ID:sxrdhx8i
【H-5/洞窟 /1日目・1:20】
【火乃香】
[状態]:健康
[装備]:騎士剣・陰陽
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:崖の上にでる道を探す
【シャーネ・ラフォレット】
[状態]:健康
[装備]:魔杖剣「内なるナリシア」(出典:されど罪人は竜と踊る)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:襲ってくる奴は殺す、クレアを探す
【残り98人】
364科学の申し子?(修整版)1 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/28(月) 21:37:34 ID:bAnJRtcS
「むー……なるほど、このハンドルを回すことでバネが巻き上げられるわけか。
 ふっふっふっ、なかなかによい出来ではないか。
 構造は原始的と言わざるをえんがこのネーミングが素晴らしい! 
 製作者には俺的栄誉賞を授けないでもないぞ!」

 いきなり殺し合いに放り込まれたのにも関わらず、夜の森にて盛り上がってる少年が1人。
 三つ編みを2本おさげにし、黒のローブの上には白衣を着込んでいる。
 緑が主体の森の中では白衣は異様に目立っているのだが、少年は気にする様子もない。
 もっとも、あれだけの大声で話していれば、隠れるも何もないだろうが。
 彼を熱中させているのは支給品である。
 見ためは立方体をした木枠だ。高さは1メートルほどだろうか。
 枠の内部は空洞になっており、無数の歯車と金属の軸が連動するように組み込まれている。
 重さもそれなりのものだろう。鈍器としても使えそうな代物だ。
 だが、その真価は鈍器などではない。
 少年はデイバックから拳くらいの鉄球を取り出した。
 ハンドルを限界まで回し、木枠内の軸に鉄球を装填。近場の樹に向き合う。
 樹を的に試射をするつもりなのだ。  
「科学者は決して妄信しない。己の目で確かめ、初めて真実と認めるのだ。なんせ科学者だしな」
 辺りに緊張した空気が流れる。少年の目は真剣そのものだ。
 少年は息を大きく吸い、木枠を抱えるようにして、


「エドゲイン君、ファイヤ!」

 
 引き金を引くと同時、バネが弾け、伝わった反動で少年が後ろに転がる。
 そして落雷のような激突音。
 射出された鉄球は大樹の幹にぶち当たり、自身を半ばまで埋没させた。
 樹そのものが大きく揺れ、葉が雨のように降り注ぐ。
 樹はしばらくしてようやく動きを止めた。辺りに痛いほどの静寂が戻ってくる。
365科学の申し子?(修整版)2 ◆7Xmruv2jXQ :2005/03/28(月) 21:38:33 ID:bAnJRtcS
 少年はしばし機能停止していたが、

「…………コンビネーション3−7−4」

 少年が呪文を唱えると、幹に埋まっていた鉄球がずるりと地面に転がり落ちた。
 拾ってバックの中へと戻す。

「ふっふっふっ、まあ、そのなんだ。
 科学の最先端を駆けてきた俺から見れば玩具同然ではあるが、次回作となる人造人間39号デキサメサゾン君
の主要武器として採用するのも吝かではない。
 別に思いのほか威力があってびびったわけではないぞ! 
 単純な真理に気づいたのだ。
 一時期は小型化を図っていたがやはり時代が求めているのは火力だ! 
 ふっ、キリランシェロの奴、デキサメサゾン君を見たら、驚いて声もでないに違いない…」
 
 再び5分ほど騒いでから。
 少年――――113番・コミクロンは、木枠を担ぎ、ようやく移動を始めた。


【残り104名】
【F−5/一日目/01:30】

【コミクロン】
状態:正常
装備:問答無用調停装置・エドゲイン君1号
道具:デイパック(支給品一式)
思考:とりあえず移動
366小休止1/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/28(月) 21:58:46 ID:Z+BymhiH
 深夜。
「地図で言うと、C−3。商店街、か――?」
 とりあえず逃げ込んだ雑貨屋らしきその店の奥で、大まかに暗記した地図の内容を思い出しつつ、景が呟く。
 風見は空のマガジンを落とし、最後の予備マガジンと入れ替え。
 弾が手に入ったときの事を考え、空のマガジンはデイパックへ入れようとして――
「……これは、あの女の子のもの?」
 咄嗟に掴んできたそれは、泥と多少の血に汚れた未開封のもの。
 取り出した懐中電灯で照らすと、中身は支給品一式の他に大量の弾丸が梱包された箱があった。
「弾薬セット、ってわけね」
「――その銃、弾は詰め直しておいた方がいいだろうね」
 その声に応じて、風見は弾を調べる。
「あった」
 9mmパラベラム。
 予備マガジンに詰めて、残りの弾を包み直す。
「あとは折角店に入ったんだ、食料や何やらも確保するべきだろうね」
 景が痛みのためか僅かに顔をしかめながら、静かに棚を漁り始め、風見もそれに続いた。
367小休止2/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/28(月) 22:00:55 ID:Z+BymhiH
 結局、見つかったうちで持ち歩けそうなものは缶詰三個、それに頑丈そうな腕時計が二つに救急箱。
 あとは懐中電灯とリュックサック、それに作業用の折り畳みナイフとロープ程度だ。
 デイパックにペットボトルを一本、食料の半分と缶詰三個、筆記具と懐中電灯、ロープと予備の弾丸を。
 リュックサックにペットボトルを一本、食料の半分と缶詰一個、地図と方位磁石、懐中電灯と救急箱を。
 腕時計の時刻を支給品の時計に合わせ、二人が腕に。
 そして風見が銃とデイパック、景がナイフとリュックサックを持って分配が終了した。
 ついでに風見は救急箱から湿布を取り出し、景の背中に貼り付ける。
「物部、アンタなまっちろ過ぎるわよ……どんな生活してたの?」
「放っといてくれ……いや、説明しておくべきか」
 ふと、ぽつりと呟いた景の後半の台詞。
 その言葉に、風見の表情も真剣なものへ。
「……そうね。あの甲斐とかいう男の言っていた、麻薬云々。説明してもらいましょうか」
「ああ。同盟を組んでいる以上、こうなってしまっては説明をしないことには信頼に関わる」
 ついでに、頭のイカれたジャンキーだと思われるのは本意ではないんでね、と景は皮肉げに笑った。
 その言葉を耳にしつつ、背中に湿布を貼り付け終えると、風見は立ちあがる。
「とにかく、台所でも探して何か口に入れながらにしましょ。流石に疲れたし、休憩入れないと……」
「ああ、交代で番をして仮眠も取っておいた方が良いな。さっき毛布も見つけたし、ここは比較的安全そうだ」
368小休止3/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/28(月) 22:02:16 ID:Z+BymhiH
 そして数十分後のこと。
 幾つかの出入り口のある暗い部屋。
 台所から見つけ出したソーセージやパンを齧りながら会話を交わす、二人の姿があった。
「つまり、アンタは自分のしでかした失敗の責任取るために、その麻薬もどきに手を出した、と」
 景の話は非常識なものだったが、風見は特に驚く事も無かった。非常識には慣れている。
「ああ、結果は今言った通り。そしてカプセルも消えた筈だが……この場にならば、あってもおかしくない」
 薄々気付いてはいた――会場で見た蒼いロボットや、中世じみた服装をした人々。
 確認してみれば風見と景も、年齢は同じでも生まれた年代は微妙に違う。
 やはりここには……
「異なる世界、時代から人々が集められているんだ。そんな事ができる主催者が居れば、当たりとして得意武器くらいは用意してある可能性は十分にある」
「私のG−SpやX−Wiもあると楽なんだけど……」
 ……しかし、そんなことが可能な主催者に対して、抗う術はあるのだろうか。
 景はふと、そんな事を考える。
「まあ、気楽にいきましょ。未来人や他の世界の人間なら、何か手だてを持っているかもしれないし……」
 その考えを読んだかのような風見の励ましに、景は苦笑。
 ……やはり、自分の幼馴染に似ている。
「それじゃあ、適当に椅子でも積んで侵入者に気付けるようにしておかないといけないな」
 動こうとした景を、風見が止める。
「私がやる。寝るのはアンタが先よ。……怪我人なんだからじっとしておきなさい」
 押し留められ、景の苦笑が更に濃くなる。
「……はいはい、分かりましたよ」
 先程店を漁った際に見つけ出した毛布にくるまり、景は身を横たえた。
369小休止4/4 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/28(月) 22:04:07 ID:Z+BymhiH
 玄関と裏口のドアの近くに不安定に椅子を積み、施錠を確かめた風見が戻ると、景は静かな寝息をたてていた。
「実はアンタの事、少し疑ってたの。……ゴメンね」
 小さく小さく、風見は呟く。
「日が昇ったら、また頑張りましょ……」
 夜空に浮かぶ月は、徐々にその位置を変えてゆく。
 静かに、時は過ぎて――


【C−3/無人の商店街/03:50】

【物部景(001)】
[状態]: 睡眠中。背中に打撲傷。(致命傷ではない。処置済み)
[装備]: 折り畳みナイフ、頑丈な腕時計
[道具]:リュックサック(水入りペットボトル一本、支給食料(半分)、缶詰一個、地図、方位磁石、懐中電灯、救急箱)
[思考]: 1.交代で仮眠をして疲労を取る。 2.知人とカプセルの捜索

【風見千里(074)】
[状態]:不寝番。 心身ともに健康。
[装備]: グロック19、及びその予備マガジン一本、頑丈な腕時計
[道具]: デイパック(水入りペットボトル一本、支給食料(半分)、缶詰三個、筆記具、懐中電灯、ロープ、弾薬セット)
[思考]: 1.交代で仮眠をして疲労を取る。 2.知人の捜索
370似てる二人と似てる人 ◆cCdWxdhReU :2005/03/28(月) 23:19:34 ID:H6GBxahy
「零崎、おまえもこのゲームに参加してるとはな」
「かはは、なんだよおまえ誰が参加してるって知らなかったのか? 相変わらずぼけてんなおまえ」
そう言って人間失格は笑った。
「おまえも知らなかっただろう零崎、人のことが言えるか」
そう言ったのは黒髪の長髪の背の高いキリっとした美人の女子高生だった。
そう女子高生である。女子高生。
僕の知っている知人の範囲で女子高生で存命なのはもう一人としていない。
朝比奈さんも含めてだ。
そして生前のその知人たちは、
一人は見た目小学生にしか見えないが一度戦闘になれば鬼と化す、ジグザグ、紫木一

姫、姫ちゃん。
一人は見た目はちょっとイっちゃったファッションセンスの女の子だがやっぱり中身

もネジが一本どころかネジを使ってないって感じでありながら白兵戦では目の前の人

間失格程ではないが、
それに近いナイフ捌きを見せた西条玉藻ちゃん。
そして最後の一人、日本刀の先端の様な魅惑的な雰囲気の少女、
しかしてその実態は、全ての人を利用し、騙し、騙り、状況全てを彼女の掌の上で操る。
策士。萩原子荻ちゃん。
そんな3人の女子高生は、自分に言う資格はあまりないかもしれないが、
いずれも美少女だとしてもみな特殊、有体に言えば変という言葉が合う。
だがどうだろう、目の前にいるのは女子高生、普通の女子高生だ。
首吊り学園なんて万国ビックリショーもビックリの学校の生徒ではないのです。
さすがにこの戯言使いもDAIKOUHUNですよ。
「えーと君は……?」
そのモデルのような美人女子高生に聞いてみる。
371似てる二人と似てる人 ◆cCdWxdhReU :2005/03/28(月) 23:20:58 ID:H6GBxahy
「俺は霧間凪だ。わけあってこの『人間失格』と行動をともにさせてもらっている。

『欠陥製品』くん」
その整った顔についた唇から放たれた言葉は僕の予想の軽く斜め上を行った言葉だった。
『俺』? 今『俺』って言いましたかこの霧間凪さんは。
あーえーときっと聞き間違いさ。
そうこの異常な状況がいけないんだ。僕も早くも疲労してきたのかもしれない。
「それでそこの殺人鬼とお知り合いのあんたにも、
零崎と同じように質問させてもらおう。あんたはこのゲームに乗るかい?」
あぁ、なんだかこの喋り方、そしてこの雰囲気、どこかで見たことあるような。
僕の脳裏にある人物の影がよぎる。
「悪いけど興味ないね。僕は零崎みたいな殺人鬼じゃないから殺す意味がないし」
そう、興味がない。この状況全てに興味が無い。
殺し合いなんてのに興奮するほど下卑た趣味も持ち合わせていない。
興味があるとすれば零崎がこの女の子、霧間凪と行動を共にしている点だろう。
こいつが人と組むなんてのはレアなんじゃないかと思うんだが。
「そうか、零崎、この、えーと名前はなんだあんた? まさか欠陥製品じゃないだろ」
「僕は本名は誰にも言わないんだよ。
愛称でよければ戯言遣いなりいーちゃんなり、いっくんなりいの字なりお好きにどうぞ」
「そうか。零崎、この戯言遣いの言葉は信用できるのか?」
呼び名を聞いたと思ったら目の前でこんな質問を始めたよ凪さん。
なんだかやけに行動が潔いというかなんというか。
上品な女子高生というイメージはすでに僕の中から崩れ去っていた。
「あぁ、凪。こいつは殺人鬼なんかじゃねーし。
喜んで快楽殺人に走るようなキチガイでもねーだろ。人の行き死ににゃあ慣れてるみてーだしよ」
そう零崎は言った。殺人鬼に人を殺さないと太鼓判を押されてしまった。
これはかなり貴重な体験なのかもしれない。
372似てる二人と似てる人 ◆cCdWxdhReU :2005/03/28(月) 23:22:05 ID:H6GBxahy
「そうか、すまなかった。こんな状況では一応誰でも疑ってかからないといけないのでな」
「別にいいよ。こんな状況だしね」
まぁ妥当な判断だろう。この行動はある意味冴えた解答とさえ言える。
「それで『欠陥製品』この後の予定はあるか?」
「いや、このあと見たいテレビがとかそんな予定はまったく無いけど」
テレビなんて見たこと自体ほとんどないけどね。
「じゃあとりあえずもう少し奥の方で隠れようぜ。
立って喋ってるってのも目立つし疲れるしでいいことねーからよ」
零崎がそう言った。
確かにわざわざ立っているよりも木の陰に隠れた方がいいかもしれない。
「そうだな。とりあえず俺は戯言遣いが今までどんなことを体験したか。
どんな人間に会ったか気になる。今は情報が一番欲しいからな」
「異論はないよ。なにをするかも決まってなかったし」
「そんじゃあ行くか、こっちの方に目立たないいい場所があったんだ」
そう言って零崎は奥に歩いていこうとする。
「待て零崎」
「なんだよ凪? 隠れんだろ?」
「そこに行くまでに枝を集めてくれ、そこらに落ちているだろ」
凪さんはそう言って零崎の足元に落ちていた枝を指差した。
「なんでそんなこと、めんどくせーなー」
「いいからやれ」
「へいへい」
そう言って零崎は枝を集め始める。
あの人間失格を動かすとは、この霧間凪って人、どういう手を使ったんだ?
373似てる二人と似てる人 ◆cCdWxdhReU :2005/03/28(月) 23:23:11 ID:H6GBxahy
「なにしてる」
「え?」
僕は突然声を掛けられ、素っ頓狂な声をあげてしまう。
「あんたもやるんだよ、戯言遣い」
「そんな」
「なにか?」
「…………はい」
そう言うと凪さんも拾い始め、僕も零崎と一緒になり枝を拾い始める。
あぁ、なんだかわかってきた。この人、よーく知ってる人に似てる。なんか赤い人に。

「すごいな」
10分後、隠れることに適し、それでいて充分とまでは言えないが
仮眠も取れそうな木の幹のまわり数十メートルに
凪さんは自分が持っていた糸と木の枝で簡単なトラップを作ってしまった。
もし誰かが糸に触れれば目の前の枝が落ちて危険を仕組みを知らせるという仕組みである。
「ではとりあえず休もうか二人とも」
こともなげにそう言い凪さんは木の根に腰掛ける。
僕と零崎も腰掛ける。
「なあ零崎」
小声で言う
「あん?」
「似てるよな?」
僕はある種確信して零崎に言う。同意をもらえるに違いない。
「……変なとこばっかりな」
そう言って零崎はため息をついた。
二人の頭の中には人類最強の請負人、哀川潤が不敵に笑っていた。
374似てる二人と似てる人 ◆cCdWxdhReU :2005/03/28(月) 23:23:46 ID:H6GBxahy
【残り98人】

【F−4/森の中/1日目・04:00】
【いーちゃん(082)】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: 零崎達と情報の交換、及びお互いに見張りあい体力を回復

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:いーちゃんと情報を交換 とりあえず隠れて体力を回復、および状況の変化を待つ

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁
[道具]:デイバッグ(支給品一式)サバイバルナイフ
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。 いーちゃんと話しがしてみたい……かも 体力を回復

周囲には糸で作られたトラップが張られている。触れると3人が気付くが触れた人間は気付かないしくみ。
375自由と正義(1/1) ◆5RFwbiklU2 :2005/03/28(月) 23:28:45 ID:WCus+OC9

「まったく、まったく困ったものだ。」

目の前に海を見渡して、カイゼル髭を生やした、総髪の大柄な老人―米国UCAT大佐.オドーはそうつぶやいた。
背後には森、塩辛い風が吹きぬけ、背広の裾をはためかせる。
あのふざけた男の説明を受けてから一時間、オドーは転送された場所を動かずにいた。
自分らが此処に集められた理由を告げられ、オドーは憤りを覚えた。
それは、

(米国の、米国UCATの自由と正義に反することだ)

むぅと唸る。
この状況を何とかして止めなければ。
オドーはもう一つ悩んでいた。
もう一度確認するために、右腕を高く挙げ、指を鳴らす。
小気味のいい音が響き、前方に衝撃が走った。
砂浜に砂塵が舞い、穴が穿たれる。
だが、それ以上の破壊は起きなかった。
376自由と正義(1/2) ◆5RFwbiklU2 :2005/03/28(月) 23:29:13 ID:WCus+OC9
(明らかに、明らかに力が弱まっている・・)

本来の力を出せる左腕でも、恐らく同じことだろう。
制限が掛かっている、とでもいうのか。
足元に置いたデイパックの中身を見る。
食料やサバイバルに必要なもの、そして。
錐のような形状をした刃物。
先が少し曲がっている。
何かに使用するのだろうかと疑問を持ちつつ、武器としては使えると思う。
先ほど見た名簿の内容を思い出す。
書き連ねられた参加者の中には、自分の良く知った日本UCAT、全竜交渉部隊の面々もあった。
死なせてはならない、と思う。
相手は未熟といえども、米国が認めた者たちであり、世界をこれから背負っていく者たちであり、
自分の唯一の親族――ヒオ・サンダーソンとその同棲者の仲間である。

オドーは歩き出す。
海に背を向け、森の中へと。
自らの信じる正義と自由を貫くために。
377自由と正義(状態) ◆5RFwbiklU2 :2005/03/28(月) 23:30:07 ID:WCus+OC9
【残り98人】
【G−1/森と海の狭間/1日目・00:15】

【オドー(リチャードデイビス)】
 [状態]:心身健康
 [装備]:すぐに使えるものは無し。
 [道具]:デイパック一式とアンチロックドブレード(戯言シリーズ)
 [思考]:G−2方面への移動。ゲームをとめること。
     風見千里、出雲覚、佐山御言、新庄運切を探す。 
     米国の自由と正義の実行。
378黒麒麟と白竜:2005/03/28(月) 23:50:31 ID:DIKbEFjW
高里要は倉庫の中で座り込みながら蓬莱での、蓬山での平和な日々を懐かしんでいた。
蓬山では女仙達が要を―泰麒を可愛がってくれたし、汕子がいつもそばにいて孤独を感じることはなかった。
蓬莱での日々は辛いこともあったが、それでも周りには人がいた。同い年の子供がいた。親がいた。弟がいた。

―今はどうだ。
殺し合いをしろといわれ、独り見知らぬ地に投げ出された。汕子はいない。女仙がいない。家族もいない。親しい者が誰一人いない。
あまりに辛すぎる孤独に押し潰されそうなな時に運良く親切な二人組みに見つけられたが
そう簡単に見知らぬ人に懐く事はできない。こんな状況ではなおさらだ。
それでも二人は親切にしてくれたし、さっきも要を励ますかのように明るく話しかけてくれた。
おそらく無理をしてそう振舞っているのだろう。そのせいか話の内容は良くわからないものだった。風車とか。
二人のおかげか、今では過ぎた日々を懐かしむことができるまで落ち着いていられる。
励ましてくれた御礼を言わないといけない、と要は思った。―頭を撫でられた時、ついその手を払ったことの詫びも含めて。
そして再び蓬山を、復興が始まったばかりの戴を思う。
蓬山の女仙たちははさぞ悲しんでいるだろう。驍宗様は心配しているだろう。
そして―
「汕子……」
思わずつぶやいてしまった。二度目の別れ。再び会えたのに、また引き裂かれてしまった。
目を瞑れば彼女が悲しむ姿が思い浮かぶ。その嘆きの声が今にも聞こえてきそうだった。
膝を抱え、顔を蹲らせる。戻りたい。汕子と傲濫に会いたい。そして何より、泰王である驍宗に会いたい。
要の口から嗚咽が零れそうになった時だった。
379黒麒麟と白竜:2005/03/28(月) 23:53:13 ID:DIKbEFjW
「わんデシ!」
出入り口の方から奇妙な鳴き声がした。
見やるとそこには黄色い帽子を被った子白い犬。くりくりと澄んだ大きな目をこちらに向けている。
そういえば二人が子犬だか馬だかを見つけたといっていた気がする。おそらくこの犬がそれだろう。
「……おいで」
そっと微笑みかけ、子犬に近寄るよう手で誘う。
それに反応するかのように、子犬は「わんデシ!」と吼えてから要のすぐそばまで寄ってきた。
人懐っこいその子犬を要は腕で抱きかかえてやった。特に暴れる様子も無く、おとなしい。
子犬の毛皮はふかふかと柔らかく、暖かかい。
「傲濫……」
要が唯一使令に下した僕、傲濫。見た目こそはまったく違うが、子犬の温もりは傲濫のそれを思い出させた。
その傲濫もここにはいない。それを思い出すと胸が苦しくなり、涸れたと思っていた涙が頬を伝う。
その涙を子犬がぺろりと舐めとった。腕の中の子犬の顔がとても心配そうに見えた。
「慰めてくれるの?」
独り言のように呟いた言葉に子犬はわんデシ、と元気よく吼える。
「……ありがとう」
要は微笑んで、ぎゅっと子犬を抱きしめる。
腕の中の子犬の温もりは要の中の孤独という寂しさを溶かしていくようだった。
要は再び呟く。ありがとう、と。
380黒麒麟と白竜:2005/03/28(月) 23:53:58 ID:DIKbEFjW
【残り98人】
【E‐4/工場倉庫/一日目04:30】

【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)】
[状態]:健康
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:「この人も悪い人じゃないみたいデシ。元気がでて良かったデシ」


【高里要】
[状態]:元気を取り戻し、ほぼ健康
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:とりあえずアイザックとミリアに感謝の御礼をする
381 ◆PZxJVPJZ3g :2005/03/29(火) 00:07:41 ID:kJWbDHZr
(人間とはなんとも面白い生き物だ)
血の様な液体の固まりであるゲルハルト・フォン・バルシュタインは、このゲーム中に見てきた人間達に
対してそんな感想を抱いた。
かりそめの同盟を結ぶ者。目的を持って行動する者。人を殺す者。人の死に心を痛める者。狂気に走るもの。
様々な人間がいた。

与えられたデイバッグを己が内に止め、子爵は石段を登ってゆく。

子爵が見てきた者の中には、あの若き市長の姿があった。
あの負けず嫌いのヴォッドですら、ああも容易く死んでしまうとは思わなかった。

石段の頂上に辿り着く。そこは開けた広場の様になっていて、中央には巨大な石碑があった。
そのまま子爵はずるずると石碑の影へと回り込む。

どうもここに来てから力の消耗が激しいと、子爵は感じていた。いつもなら身体の形を変えるのに苦労
する事など無かったのに、ここでは動くのにも一苦労だ。ましてや文字に化けるなんて問題外だ。
なぜこうも力を消耗するのか、その理由は彼にも分からない。
とりあえず、子爵は身体を休める事を第一に考えて眠りに就いた。


【D-4/石碑の影/1日目・05:10】

 【ゲルハルト・フォン・バルシュタイン子爵】
 [状態]:体力を消耗、睡眠中
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック(支給武器は不明)
 [思考]:とりあえず人間観察でも。

【G-6、F-5、E-4、D-3を経由して移動、それまで全く発見されず】
【残り98人】
382イラストに騙された名無しさん:2005/03/29(火) 00:17:49 ID:n7Hal+an
知性は残ってるんだから筆談でやり取りできないともいいきれない。
その場合、どろどろしたマドハンドみたいになるが。
383すれ違い ◆NULLPOBEd. :2005/03/29(火) 00:37:29 ID:olKRevsJ
 廊下の窓から降りた先――――お城の庭園で坂井悠二は抱きかかえられていた。
 あのディートリッヒの話を聞いて悠二が取った行動は狙撃銃PSG-1の最優先の確保だった。
 自分を守る武器がなければ生き残れない。なんせ、自分は無力であると自覚しているのだから。
 悠二は自分の力を見極めた上で、狙撃銃PSG-1を取りに最上階である3階へ向かった。
 だが3階に辿り着いたとき、叫びが城に轟いた。
「あー、名前なんだっけ?…そうそう、坂井ぃぃぃ!どこに居るかはしらねぇが敵襲だ!
 とりあえず逃げるぞ!襲われる前にここから出ろ!紅い髪の女だ!『死色』じゃぁねぇけどな。
 ぎゃははははは!」
 紅い髪の女の敵襲――――その言葉に急いで元の部屋へと向かう。
 誰も、いなかった。
 何故か大穴が開いていて、悠二がどうたらという声が聞こえたが……悠二にはそれをシャナの声だと判断できなかった。
 城が思ったより狭いのか、声が反響して声色が変わっていたのも一つの理由だろう。
 本人達は知る由はないが、それは長門がシェルターを作る為に色々細工していたのが災いした。
 更に襲撃と言う言葉。シャナはフレイムヘイズだ。
 フレイムヘイズとして生き残る為の戦いはするかもしれないが、決して殺しはしないと悠二は思っていた。
 いや、思いたかったのだ。
 最初に会った頃は人間をなんとも思っていなかったが、悠二の母親や友人と出会いそれも改善されたと思っている。
 だから、問答無用で敵襲を掛けてくる女がシャナとは結びつかなかった。
 すぐに狙撃銃PSG-1を手にとり、一階へと駆け下りていく。
 しかし一階の階段のすぐ手前で悠二は一時停止する。一階の部屋には駆け回る音が響いていた。
(襲撃者が探しているんだ……恐らく手薄な僕を……!!)
384すれ違い ◆NULLPOBEd. :2005/03/29(火) 00:37:57 ID:olKRevsJ
 駆け回る音が最も正面の出入り口から離れたときを狙って、悠二は残る段差と部屋を一気に走った。
 襲撃者もその音に気付いたのか、こっちの方へと駆けてくるのが分かった。
 悠二の仲間の二人、長門と出夢が城門で立っているのが分かった。
 城門を閉じることで襲撃者との差を広げようという考えだろうか。
 しかし悠二は既に知っている。それには致命的なミスがあることを。
(早くあの二人に知らせないと)
「早く逃げるんだ! その門は――――閉じれない!」
 襲撃者が発砲してくる様子はない。武器は飛び道具ではないらしい。
 だから追いつかれさえしなければいい。
 なのに、二人は城門から動こうとしない。
 もう少しで二人に追いつく。再度悠二は忠告した。
「その門は――――」
「待って、悠―――」
 悠二と襲撃者、シャナの声は、遮られた。
 城門を潜って外に逃げた瞬間、城門は『閉ざされたのだ』。
 あの大きな城門を閉めたのは出夢だった。
 きっと普通の人間じゃないんだろうな、なんて失礼なことを思いながら悠二は長門に尋ねた。
「あの門、動かないように固定されていたようだけど……どうやって?」
「城門を少々修正した」
 ただシンプルに、そして簡単そうに言ってくれる。
「って、早く逃げないと」
「城門をもう一度改変する。少し重くすることぐらいしか今はできないけど時間は稼げる」
 そう長門は呟く。長門と会話しているうちに出夢もこちらへとやって来たようだ。
 悠二は最後に聞こえた声に既視感を覚えたが気にしないまま、3人は城をすぐさま離れた。
385すれ違い ◆NULLPOBEd. :2005/03/29(火) 00:38:39 ID:olKRevsJ
【チーム・殺し屋と人形達】(匂宮出夢/長門有希/坂井悠二)
【残り98人】【G-4/城の外/03:17】

【長門有希】
[状態]:かなり疲労。
[装備]:ライター
[道具]:デイバック一式。
[思考]:情報収集/ハルヒ・キョンの安全確保

【匂宮出夢】
[状態]:健康。
[装備]:???
[道具]:デイバック一式。
[思考]:生き残る。

【坂井悠二】
[状態]:健康。
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック一式。
[思考]:襲撃者の声に既視感。シャナの捜索。


【シャナ】
[状態]:傷は少し癒えてきたし、悠二の心配で気にしていない。
[装備]:刀(なまくら)
[道具]:デイバック一式。
[思考]:悠二が近くにいる!?
386FunnyPrince&Princess ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/29(火) 00:46:20 ID:91akSuSz
潮風が頬を撫でる、もう歩き始めてどれくらい経つのだろうか?
鳳月は額の汗をぬぐう。
麗芳を探し続けて探し続けて、もう足は棒のようだ
普段なら光遁の雲を使えば一っ飛びのちっぽけな島であるにも関わらず。
「待ってろ…麗芳」
鳳月には麗芳が何をしているのかが手に取るようにわかる、正義感と義侠心なら誰にも遅れをとらない彼女だ
きっと今頃は誰かを守り戦っているに違いない。
だからこそ心配だ。
早く会いたい、そして会ったら今度こそ伝えよう…今まで言いたくても言えなかった言葉を今度こそ。

そこにぼちゃんと水音、反射的に藪を掻き分けたその先にあったものは
「海っ!」
しかも水面には誰かに叩き落されたのか、流されていく少女の姿があった。
助けなければ…しかし鳳月の体はまるで石になったように動かない。

そうこの鳳月くんは…致命的なまでのカナヅチなのである。
事実、海に囲まれた島にいるというだけで、彼は恐怖におののきまくっていた。
だが…それでも神将としての使命感が彼の背中を押す。
「でもなぁ…」
暗い水面をちらりと見やる鳳月、そこに潮流に流されるままの少女の姿がまた入る。
「怖くない怖くない怖くない」

鳳月は避水呪を唱え目を瞑ってそのまま海へと飛び込んだ。
水中に飛び込んでしばらく、やった息が出来る…これなら、と思った瞬間だった。
「がはあっ」
途端に彼の体は浮力を失い、ぶくぶくと海底に沈んでいく。
呪文の効果は数秒しか保たなかったらしい。
天地が逆になり、自分を保っていられない…それでも鳳月は精一杯手足を動かし
必死で少女を助け…もがくその体が急に楽になる、誰かが自分を海面に引っ張り上げてくれたようだ。
387FunnyPrince&Princess ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/29(火) 00:50:08 ID:91akSuSz
「へ?」
見るとそこには自分が助けようとした少女がいた。
「大丈夫ですか…もうすぐ陸ですから…」
恥ずかしさと申し訳なさで赤面するしかない鳳月だった。

浜辺でぱちぱちと薪が爆ぜる音がする。
ようやく陸に辿りついた2人は濡れた体を乾かそうと焚火を始めていた。
薪は古びたボートを分解して調達、火は鳳月が術を使って起こした。
「あ、向こう向いてるから今の間に服を…」
そう言いかけて、鳳月の目が点になる。
なんと志摩子はいつの間にか上半身裸になっているではないか。
「あ…あああ」
「鳳月さんは脱がないんですか?」

制服を焚き火に当てて乾かしながら平然とこちらを見る志摩子。
その大胆な姿を目を背けつつ、横目でちらりちらりと見やる鳳月、
(星秀がいなくてよかった)
彼の幼馴染で同僚でもある呉星秀は偏執的なまでの女好きで知られる。
こんなシチュエーションが目の前にぶら下がっていれば何をしでかすかわからない。
さらに言うなら麗芳にもし見られでも、いや麗芳ならまだマシだ。
淑芳にだけは絶対に見られてはならない、もし見られでもしようものなら文字通りそれをネタに
死ぬまでいびられまくるに違いない。

「い…いや…あと…あとで…」
なるべく志摩子を見ないように見ないように焚き火から離れる鳳月
「ダメです、風邪引いたら大変ですよ」
388FunnyPrince&Princess ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/29(火) 00:52:00 ID:91akSuSz
恥ずかしがっていると思ったのだろう、志摩子はずいと裸のまま鳳月ににじり寄る。
赤面する鳳月の姿は志摩子から見ても実に可愛いらしかった、自分の学校なら姉たちが放ってはおかないだろう。
鳳月はもうされるがままだ、ただうわ言のようにやめ、やめ…と繰り返すのみだ。
そして志摩子の手がズボンに伸び、それを一気に引きおろす…そしてそこに生えていた物を目の当たりにして
志摩子は数秒間なめる様に…視線を上下する、ここで初めて申し訳ないといった表情を見せてズボンをそっと返し、
そして今の自分の状況を把握し…全力ダッシュで服を抱え岩陰へと隠れ、
鳳月は鳳月で、
「だれもいませんようにだれもいませんように…」
呪文のように唱えながら必死で周囲の様子を伺うのだった。

それから10分後、焚き火をバックに
「まぁ…おあいこということで」
「これから一つよろしくお願いします」
2人は文字通り耳まで真っ赤にしながら、ぺこりと頭を下げた。

「ですけど」
志摩子は、どうやら先ほどのアクシデントは水に流してくれたらしい
「惜しいですね、私の通っている学校ならアイドルになれますのに…」
からかい半分、本気半分で志摩子は笑う。

確かに鳳月は少女と見紛うばかりの美しい顔をしている。
その上背も低く、声も愛らしい。
だかそれは常に男らしくありたいと願う彼にとっては屈辱以外の何者でもないらしい。
「そっ!そんなアイドルうれしくないやい!!」
本気で嫌がってる鳳月を見てまたクスリと笑う志摩子だった。
389FunnyPrince&Princess ◆Wy5jmZAtv6 :2005/03/29(火) 00:57:46 ID:91akSuSz
【袁鳳月】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具];不明
[思考]:仲間を探す(麗芳を最優先)/とりあえず志摩子と相談

【藤堂志摩子】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考]:考え中/とりあえず鳳月と相談

現在位置【H−6/海岸/一日目、04:20】【残り98人】
390最強、始動 (1/2):2005/03/29(火) 01:03:36 ID:qcduIKO1
聴いていたラジオ番組も終わりを迎えていた。
「さて・・・。」
小腹が空いてきたのでバックパックの中から何か食べ物を探そうとして・・
「ん?」
名簿を見つけた、パンを食べながらパラパラとめくっていく。
「あの場にいた何人かは倒された騎士共も含めてなかなかの手練れだった筈・・楽しめそうだ。」
そんなことを考えながらめくっていた手が途中で止まる、見覚えのある名前がそこには並んでいた。
「こんなところで会えるとはな、特に・・。」
彼は笑っていた、しかしその目は砂漠の中でオアシスを見つけたもののような目をしていた。
立ち上がり歩き出す。
「てめえとの決着はまだついてねー、もう逃げるのは無しだぜユージン!」
ドアに触れるか触れないかのところでドアそのものが砕け散った、一度に攻撃できる範囲は減ったが威力は変わらないことを確認する。
ますます笑みは激しさを増していく。
『このゲーム、のってやる。』
最強が今、動きだした。
391 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/29(火) 01:04:34 ID:8lYpyUwc
「だれがこんなの登れって言ったんだっけなぁ?なぁ!?」
「私です。それが何か不都合でも?」
「ああ不都合だ!それもかなりな!!」

あれから数十分……2人は延々と石段を登り続けていた。
だが異様に長いそれは、登り続けても終わりが見えない。疲れる。
実際その石段はC-5の南端から北の端まで一直線にある故に、恐ろしく長いのだ。
本人達はそれを知る由も無いが……。

「それでも1/3は登りました。弱音を吐かないように」
「吐きたくもなるっつーの!元々俺はこんなの登る気無かったんだ!」

オーフェンが喚き、座り込む。疲労を感じたらしい。
それを見て、女性もその数段上で座った。

「まぁ貴方の意志の弱さに脱帽した機会に、休みましょう。
 そして貴方のその体力に合わせる為にも暫くはゆっくり登ります。いいですね?」
「もうどんな嫌味なコメントしても良いからそうしてくれ……」

大きな溜息をついてそう言ったオーフェンは、夜空に流れる黒い雲を眺めた。
人並み以上の体力はあるはずだったけどなぁ…と遠い目をする。
そうだ…こんな状況に放り出されたが故に、頭が体に着いていけていないのだ。
本人もわかっていた。指輪は取られるわ相手の押しが強いわ手下にされるわ…まぁ普通は気が滅入る。

というかここまで今考えたのだが、この女は本当に強いのか?なんか怪しくなってきた……。
ただ押しが強いだけの傲慢な人間なのかもしれないな………。

「おい、ちょっと試させてくれ」
「何をですか?」
「アンタが本当に強いのか、だ」
392最強、始動 (2/2):2005/03/29(火) 01:05:36 ID:qcduIKO1
【B3/ビル屋上/01:30】残り98名

【フォルテッシモ(リィ舞阪)】
【状態】
テンション上がり気味/健康
【道具】
なし
【装備】
支給品一式(食料少し消費)
【思考】
ユージンを探しながら強者を殺す、一般人を殺す気はない。
393師匠たる所以 2/4 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/29(火) 01:06:54 ID:8lYpyUwc


立ち上がり、女性の方を向いてオーフェンは言った。
女性は真顔で立ち上がり、そして言う。

「私は銃を使う戦法を得意とし、それで生きていきました。
 ですから銃がないと私の100%は見せられません。非常に残念です」
「でも……それがあるだろ?」
「それ……ああ、これの事ですね」

オーフェンは女性の袋を指差して言った。
そう、それは相手の支給品であるパチンコだ。
指輪を預けた(強奪された)時に見えたのだ。

「今から俺がこの小石を真上に投げる。それをもう一つの小石で当ててくれ。勿論パチンコでだ」
「良いでしょう、簡単ですね。それで私がこれを完遂したら、どういうメリットが起こるのですか?
 どうやら貴方は今、あの指輪以上の値打ちのある物は持っていないようですが」
「……俺が、アンタの実力を認めて、ついでにアンタを信頼する」
「…………タダ働きは嫌いですが、まぁいいでしょう。いつでもどうぞ」

返事を聞くと、オーフェンは早速真上に小石を投げた。
それを女性は真剣に狙う。パチンコを構える。
オーフェンはそんな姿の彼女を、特にその目を見た。
獲物を狙う鷹の様な……確実に他人に「強い」と言わせるその目だ。

と、急に何かを弾く音がした。石同士が当たった音だ、間違いない。
そしてそのまま小石が一つ、オーフェンの頭に当たった。
思わず声を上げてしまった。
394師匠たる所以 3/4 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/29(火) 01:07:35 ID:8lYpyUwc


「いって〜〜〜〜〜〜〜〜……」
「どうですか?」
「アンタ…わざと狙っただろ」
「誤解です」

女性はまた真顔で答えて、座った。
オーフェンも座った。そしてまた流れる雲を見つめた。
そしてそのままの体勢を保ったまま、言った。

「まぁ良い。アンタの力は認めるよ」
「そうですか。ではこれでやっと私の助言を聞くのですね」
「助言って、最初のアレはもうその域じゃねぇだろ…」
「夜空が奇麗ですね、オーフェン」

アンタの腹の色も、そんな感じなんだろ?と心の中で呟いた。
だがそれは心の中だけで置いておく。実際に口に出したら殺されそうだ。
反論が流されたついでにまた遠い目をし、呟く。

「………なんか良いトコないな、俺……」


因みに、なんだかんだ言って女性も少し疲れていた。
それを顔には出さずああいう事をオーフェンに言い放ったのだが……。

そういう所に気づいて反論する等の行動が出来ない限り、
この青年に弁論での勝ち目は無いだろう、確実に。
395師匠たる所以 4/4 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/29(火) 01:08:13 ID:8lYpyUwc


【C-5/長い石段/1日目・0:50】
『逆関白(キノの師匠 (若いころver)/オーフェン』

 【キノの師匠 (若いころver)(020)】
 [状態]:正常(多少の疲労?)
 [装備]:パチンコ
 [道具]:デイバッグ(至急品入り) ダイヤの指輪
 [思考]:長い石段を登る

 【オーフェン(111)】
 [状態]:疲労
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(至急品入り)
 [思考]:女性(キノの師匠)についていく

【残り98人】
396師匠たる所以 訂正 ◆h8QB1rxvpA :2005/03/29(火) 01:09:13 ID:8lYpyUwc


【C-5/長い石段/1日目・0:50】
『逆関白(キノの師匠 (若いころver)/オーフェン』

 【キノの師匠 (若いころver)(020)】
 [状態]:正常(多少の疲労?)
 [装備]:パチンコ
 [道具]:デイバッグ(至急品入り) ダイヤの指輪
 [思考]:一旦休憩

 【オーフェン(111)】
 [状態]:疲労
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(至急品入り)
 [思考]:女性(キノの師匠)についていく 休憩

【残り98人】
397寝起きハイテンション(1/4):2005/03/29(火) 01:33:02 ID:ZsfwEBSL
 まぶたの裏に眩しさを感じ、出雲・覚は目を覚ました。
「……なんだ、もう朝か」
 どうやら何事もなく朝を迎えることができたようだ。
「ま、好き好んでこんなとこまで来る暇人はそうそういねぇわな」
 身を起こそうとしたところで、妙な重さを感じる。
 見ると、自分の腕の中でアリュセが丸まって眠っていた。
 左腕を見ると、へたくそながら布がきつく巻いてある。
 布の出所は……
(俺の服かよ)
 左の袖がなかった。
 多少寒いが、手当てしてくれたことを思えば腹も立たない。
 まだジクジクとした痛みはあるが、出血自体はすでに止まっているようだった。
「さーて、これからどう動くか。とりあえずは腹ごしらえと現状確認だな」
 支給品のうまか棒を咀嚼しながら、勝手にアリュセのデイバッグを漁る。
 そして取り出したアリュセの支給品を見て、
「こっ……これはあぁぁあぁッ!!!」
 覚は驚愕の雄叫びを上げた。
398寝起きハイテンション(2/4):2005/03/29(火) 01:34:26 ID:ZsfwEBSL
「……ふぇ?」
 耳元の大音響でアリュセも目を覚ました。
 まだ半分閉じたままの目をこしこしとこする。
「なに、どしたの?」
 寝ぼけ眼で聞いてくるアリュセとは対照的に、覚は興奮した面持ちでその支給品を掲げ上げてのたまった。
「どうしたもこうしたも、おおぉ何で男の夢、男のロマンがこんなところに!!」
 その手に掲げられているのは、黒いワンウェイストレッチ。
 そして周りには、網タイツ、付け耳、蝶ネクタイに白いカラー、カフスおよびしっぽ。
 完全無欠のバニーガールの衣装一式がそこにあった。
「……ロマン?」
「おおよ、男ってのは特殊な趣味の野郎を除いて、こういうのに燃えて萌えるものなんだ。
 と言っても、コレ単体で萌えるわけじゃないぜ。誰かに着せてこそ萌えるんだ」
 よくわからないという面持ちで聞き返すアリュセに、無駄に力説する。
 ここに風見・千里がいたら、子供になんてこと教えるのかと手加減なしで蹴り飛ばされていただろう。
「も、もえ?」
「ああ、漢(おとこ)が力を発揮するために必要なエネルギーだ。
 装着者がナイスバディであればあるほど効果が高い」
 例えば、と、覚は最初の会場で見かけた黒髪のクールビューティー(=パイフウ)を脳内具現化する。
 似合いすぎた。
「危ねえ、逃げろっ!!」
「ひゃ!?」
 ひざの上に乗っていたアリュセを抱え上げて目の前に正座させる。
「な、なにいきなり!? ……なんで前かがみなの」
「ぬぅ、聞いてくれるなリトルガール。俺の猛り狂う熱き魂を鎮める儀式中だ」
「ふ、ふーん……」
 呆れたように見つめるアリュセをよそに、今度は風見・千里にスイッチする。
(おおぅ…イイ)
 やっぱ千里が一番だなとノロケたことを考えながら、身体の輪郭にそってわきわきと手を蠢かせる。
 アリュセが恐れおののくような目で見ているが、今の覚は気にしない。
399寝起きハイテンション(3/4):2005/03/29(火) 01:36:45 ID:ZsfwEBSL
 と、アリュセが急にいたずらっ子の顔になった。
 きゅぴーんという擬音が聞こえたかもしれない。
 まだ犯罪的な手つきをしている覚の側面に回ると、耳元でこしょこしょと話し始める。
「あのね、最初の広間でないすばでぃの人見かけたよ。背が高くて……」
「ほぅ」
「胸の大きい……」
「ほぅほぅ」
「傷だらけの髭のおじさん!」
 その人物は覚も見ていた。
 一瞬でバニー姿の千里がバニー姿のトレパン巨漢(=ハックルボーン神父)に差し代わる。
「ぐはぁっ!?」
 精神に大打撃を食らい、もんどりうって倒れた。
(いけねぇ……やばいぜこれは、なんて恐ろしい支給品なんだ。まさにヘルアンドヘヴン……)
 あまりのインパクトに脳裏に焼きついてしまった。
 しばらく立ち直れないような気もすが、けらけら笑っている目の前の少女を見ていると、まあいいかとも思えてきた。
(ま、暗くなるよかなんぼかマシだろうよ)
 決して狙ってやったわけではなく本気で妄想していたのだが、結果オーライとしておこう。
 と、そういえばまだお互い自己紹介もしていないことに、いまさらながら気づいた。

 名を聞こうと話しかけようと――したところで、ガバッと勢い良く起き上がる。
 表情は硬い。
 アリュセも笑うのをやめ、真剣な顔つきになった。

 ――頭に直接響き渡る男の声。
 ――死者の名を告げる、最初の放送が始まったのだ。



【残り98人】

400寝起きハイテンション(4/4):2005/03/29(火) 01:37:25 ID:ZsfwEBSL
【覚とアリュセ】
【H-3/海岸沿いの崖下/1日目・06:00】

【出雲・覚】
[状態]:左腕に銃創あり(出血は止まりました)
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式)/うまか棒50本セット/バニースーツ一式
[思考]:UCATの面々と合流/アリュセの面倒を見る

【アリュセ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:リリア、カイルロッド、イルダーナフと合流/覚の面倒を見る

出典:
バニースーツ(涼宮ハルヒシリーズ)
401鋼の後継の憂鬱 ◆E1UswHhuQc :2005/03/29(火) 01:46:08 ID:uDDogdi5
「我は放つ――」
 構成を絞る。なぜだか分からないが、この場では魔術が弱められている。
 ならば威力は求めない。必要なのは精緻の究極。
 オーフェンは叫ぶ。群青色の炎を右腕に纏わせた、眼前の女に向かって。
「――光の白刃!」
 迸った光熱波は、細いものだった――細く、しかし強力な。
「こ、のぉ!」
 それを女――マージョリー・ドーと名乗った――は、炎で包まれ丸太のようになった右腕で防ぐ。
 光が炎を削り、打ち払われた。打ち払った勢いで、マージョリーがこちらへと突進してくる。
 名前を教えようとしない女のパチンコによる投石をうるさげに炎で払いながら、彼女は拳を振りかぶった。
 直線の拳打を身を低く沈めることでかわし――そのまま足を滑らせる。オーフェンは彼女から見て右側に回りこんだ。
 刃物でもあれば突き立てていただろう。必殺の、暗殺の瞬間。
 オーフェンの拳が、マージョリーの脇腹を打った。
「ぅあ……!」
 マージョリーが膝を突きかける、その瞬間。
 群青色の炎が炸裂した。
402鋼の後継の憂鬱 ◆E1UswHhuQc :2005/03/29(火) 01:46:35 ID:uDDogdi5
「――!」
 両腕を前に出しながら飛び退り、腕を軽くあぶられて距離を取る。
「やって……くれるじゃない」
 マージョリーが煮えたぎった瞳でこちらを睨む。今の打撃で肋骨の一本か二本は折れているはずだ。
(手強いな)
 魔術が弱められている事もあるが、それ以上にこの――マージョリー・ドーは強い。
 できれば殺したくはないが、殺すつもりでかからねばならない。構成を編み、オーフェンは呟く。
「我は癒す斜陽の傷痕」
 軽く火傷を負った両腕を治す。完全には治らず、軽い引き攣れが残ったが。
 背後――どう呼べばいいか分からない女が、再びパチンコのゴムを引き絞るのを感じつつ、牽制の為の構成を編む。
 正面――マージョリー・ドーも、再び群青色の炎を吹き上がらせる。
 その時、足音が聞こえた。
「――?」
 注意は正面の相手に向けたまま、聴覚だけを足音の方に向けて聞く。
 かなりの駆け足だ――近い。
 と――

 ぱしっ。

 音は、石と石がぶつかった音だった。投石。
403鋼の後継の憂鬱 ◆E1UswHhuQc :2005/03/29(火) 01:47:11 ID:uDDogdi5
 すぐに、足音の主が投げてきた石を背後の女がパチンコで迎撃したのだと気付く。そちらの方へ視線を向け、
「新手か……!」
「私がやります。あなたはそちらを」
 小石を握る彼女に言葉に、マージョリーへと視線を戻す。と、
「……はははっ」
 マージョリー・ドーは笑っていた。群青色の火の粉を散らせ、笑っていた。
 直後。
「ヒャーッハッハッハー! 生きてるかあ? 我が麗しのゴブレット、マージョリー・ドー!!」
「何してたのよ、マルコシアス! ――って誰よそれ!?」
「耳に響くから黙りなさい……!」
 赤髪の女が、大きな本に乗って飛んできた。文字通り。
「なんだぁ!?」
 疑問の声をあげる間に、パチンコによる投石が赤髪の女を狙う。
 が、それは当たる前に叩き落された――彼女の持つ、板切れによって。
「降りるわよ」
「了ー解!」
 板切れを投げ捨て、本を包む革紐を手に赤髪の女が飛び降りる。即座にそれを振って次の投石を打ち払った。
 当然だが、本というのは戦闘に使うものではない。だが、彼女の持つような巨大なものであれば、鈍器としては充分使えるだろう。
 赤髪の女が、声を張り上げて叫ぶ。
「三人とも動かないで。――私は殺し合いをする気はないわ」
 戦わないという意思表示か、彼女は本を地に落として両手を広げた。何も持っていない。
「……分かった」
404鋼の後継の憂鬱 ◆E1UswHhuQc :2005/03/29(火) 01:48:03 ID:uDDogdi5
 オーフェンは編んでいた魔術の構成を解いた。彼女と同じ様に両手を広げた。同じ様に、何も持っていない。
「話し合おう。最初はそのつもりだったんだから……どっかの誰かのせいでこじれたが」
「夜空が綺麗ですね、オーフェン」
 オーフェンは溜息をついて、素直に夜空を見上げる。
 月が綺麗だった。

【B-5/長い石段/1日目・1:40】

 【キノの師匠 (若いころver)(020)】
 [状態]:正常(多少の疲労?)
 [装備]:パチンコ
 [道具]:デイバッグ(支給品入り) ダイヤの指輪
 [思考]:誤魔化す
 【オーフェン(111)】
 [状態]:かなりの疲労
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ(支給品入り)
 [思考]:話し合う。
 【ミズー・ビアンカ(014)】
 [状態]:ちょっと疲労
 [装備]:神器『グリモア』
 [道具]:デイバッグ(支給品入り)
 [思考]:話し合う。
 【マージョリー・ドー(096)】
 [状態]:肋骨を一、二本骨折
 [装備]:支給品未定
 [道具]:デイバッグ(支給品入り)
 [思考]:話し合う。
【残り98人】
405脱落者 (1/3)  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/29(火) 01:49:54 ID:BGDDdHDh
(・・・ん?)
「どうかされました?」

ナース服姿の福沢祐巳が、不安そうな表情でこちらの顔を覗き込んでくる。

「いや、なんでもねぇぜ。お前はそこでまだ寝てな。
あたしはちょっと外を確認してくる。」

祐巳をベッドに寝かしつけると、哀川潤は保健室から廊下へと出た。
目の前に白い何かがふわふわと落ちてくる。

(雪か・・・?)

屋内に雪・・・そんなわけがないと思った瞬間、後から声がかかる。

「4月にだって雪は降ることはある。この世の中、確かなことなんて何もない。
でもそれでもそれは最初からある可能性の一つ。貴女なら解るわよね、哀川・・・潤」
「な、なんだテメェは!」

振り返ると、セーラー服の少女が廊下の先に浮かんでいる。
さっきまでは気配を感じなかった、いや目の前に見える今ですら気配は希薄だ。

「私は貴女と同じ。世界から可能性を剥奪されたもの。
ここにいるのも只の残滓にすぎない。・・・人の意識の狭間にゆれる幻のようなもの」
406脱落者 (2/3)  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/29(火) 01:51:01 ID:BGDDdHDh
「テメェがあたしと同じだってぇ・・・?」
「ええ。貴女と私はよく似ているは、お互い世界の運命からは見放された存在。
せいぜい、人の目の前を右往左往しては注意を引くぐらいしかできない。
それは大海に石を投げ込み波を起こそうとするような、虚しい行為だわ・・・物語には届かない」

哀川潤はギリリと奥歯を噛み締めている。普段からきつい目つきがさらに剣呑なものへと変わる。

「でも、貴女にはまだわずかな可能性が残されているのね。他人を触媒に物語の中に自分を刻み付ける。
今は・・・あの子」

謎の少女は、ちらりと保健室を窺う。

「うう・・・」

哀川潤の額から汗が一滴床へと落ちる。

「貴女はいつか私の願いをかなえてくれるかもしれない・・・・・・」
407脱落者 (3/3)  ◆gfFjaqv/HU :2005/03/29(火) 01:52:01 ID:BGDDdHDh
「はっ!」
「どうかされました?」

ナース服姿の福沢祐巳が、不安そうな表情でこちらの顔を覗き込んでくる。

「・・・・・・いや、なんでもない。」
(ま、幻か・・・・・・!?)

 【残り 98人】

 【チーム紅と赤】
 【D−2/学校/一日目、04:35】
 
 【福沢祐巳(060) 】
 [状態]:看護婦
 [装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服
 [道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)、
 [思考]:お姉さまに逢いたい。潤さんかっこいいなあ 

 【哀川潤(084)】 
 [状態]:幻(?)を見てやや混乱中
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:小笠原祥子の捜索
408湖畔にて ◆wEO8WH7kR2 :2005/03/29(火) 02:05:45 ID:XKHcstHY
エドワース・シーズワークス・マークウィッスルことEDは湖を見ていた。
彼が「飛ばされた場所」は湖の中の直径10mくらいの小さな島だ。
幸い、明るい月が出ているため陸地を見ることは出来る。
せいぜい、陸地までの距離は200〜300mといったところだろうか。
泳いで渡れない距離ではないが、夜の湖を泳ぐ気にはなれなかった。
また、島にいるということは他の人と遭遇する可能性も低いということだ。
この馬鹿馬鹿しい「お遊び」に真面目に付き合う人間がそうそういるとは思えないが
皆無とは限らない。
月が出ていて明るいとはいえ、夜にうろつき回るのは危険すぎる。
そういう読みもあり、EDは少なくとも夜明けまではこの島に留まることにした。
先ほど荷物を一通り調べたが、彼に割り当てられたアイテムは「飲み薬セット+α」だった。
細かい内容は以下の通りである。
「解熱鎮痛薬」「胃薬」「花粉症の薬(抗ヒスタミン薬)」「睡眠薬」「ビタミン剤(マルチビタミン)」
「下剤」「下痢止め」そして、「毒薬(青酸K)」だった。
よくわからない薬もあったが、人を殺すのにつかえそうなのは「毒薬」と「睡眠薬」くらいだろうか。
しかも、これらは正攻法の戦闘ではまず使用できない。
ようは、だまし討ちをしろということらしい。
やれやれ、といった感じでEDはため息をついた。
荷物の中には参加者の名簿も入っていた。
参加者の中には友人のヒースもいた。
ヒースは今頃、正義の怒りに燃えていることだろう。
自分はどう動くべきか。答えはもう決まっている。
戦地調停士EDは顔につけている仮面をコンコンと叩いた。
409湖畔にて ◆wEO8WH7kR2 :2005/03/29(火) 02:07:07 ID:XKHcstHY
B−7/湖の中の小さい島/一日目、04:00】
 
 【エドワース・シーズワークス・マークウィッスル(092) 】
 [状態]:正常
 [装備]:仮面
 [道具]:デイパック(支給品入り)、「飲み薬セット+α」
 [思考]:夜明けまでこの島にいる

※「飲み薬セット+α」
  「解熱鎮痛薬」「胃薬」「花粉症の薬(抗ヒスタミン薬)」「睡眠薬」「ビタミン剤(マルチビタミン)」
  「下剤」「下痢止め」「毒薬(青酸K)」以上8つ
410年表干渉者 ◆/91wkRNFvY :2005/03/29(火) 02:14:10 ID:1krWG1wo
「ひひひっ、しかし何だなぁ、さっきから誰とも会わねーなァ」
「構わん、その方が安全で良い」
「オレとしては危険になってくれた方が死ぬ確率が上がって嬉しいんだけどよぉ」
「私が困る、茉衣子くんと会えなくなる確率が上がる」
 歩いて茉衣子を捜す以外に有効な方法があるとも思えず、先ほど湖から北に少々行ったところだった。
 当然、歩く以外にすることもないので会話をして気を紛らわすしかないのだが。
「そもそもだな、エンブリオ。私はキミを・・・」

<アスタリスク>

介入する。
 
実行。
 
 
 
終了。
411年表干渉者 ◆/91wkRNFvY :2005/03/29(火) 02:14:41 ID:1krWG1wo
「キミを・・・、っとこれは…」
 月明かりの下、エンブリオと会話していたはずだが、突如、周囲が暗闇に包まれた。
 そして、目の前に徐々に現れてきたのは、常に微笑を浮かべる見覚えのある少女だった。
 
「お久しぶりです、宮野さん」
「キミか、久しいというほど時間は経ってはいないのではないかな」
 一瞬で相手が誰かを判断し、応える。
「そうかもしれません」

 いつの間にか、目の前には軽くウェーブがかったセミロングの少女が立っていた。
「それで、親切にも今回の顛末について私に説明してくれるというのかね?」
「今回は少々厄介なことになってしまいました。その件について、わたし達はあなたの助力を必要としています」
「我々より上位世界の存在が、下位世界の人間の手を借りるというのかね?」
「はい、わたし達だけではこの空間の歪みを正常に戻すという事は不可能と判断しました」
 平行世界は横だけではない、縦に存在する上位世界。
 その上位世界の住人である彼女の力すらも及ばないという今回の騒動の原因は一体何なのか。
412年表干渉者 ◆/91wkRNFvY :2005/03/29(火) 02:15:08 ID:1krWG1wo
「聞こう」
「では、時間もありませんので簡潔に。
 あなた達の時間でつい半日前、何者かがあらゆる平行世界を始めとした異世界へアクセスを開始しました。
 それは正しい時間線では無いので、わたし達はすぐさま対策を立て、対応しました。
 ですが時及ばず、異世界から集められた100名強の人々は、その何者かの造った空間へと放り込まれてしまいました」
「なるほど、それが我々というわけだ。で、そのU.N.オーエン氏は誰なのかね?」
 宮野の問に少女は首を振り、
「判りません、周到に準備していたのか、何度か逆アクセスを試みましたが全て遮断されてしまいました」
「ふむ、しかしキミがここにこうして来れるという事は、そこまで上位の世界の存在の仕業では無いという事か?」 
「はい。恐らくわたし達と同等か、少々上の能力といったところです」
 今まで微笑を湛えていた少女の顔が急に真剣になった。

「もう時間がありません、わたしが相手に悟られずに干渉できるのはここまでのようです。
 最後に宮野さん。あなたの捜している方は、ここより西に3,5kmほど行った場所にある公民館にいます」
「何?本当かね!それは助かる。これで当面の行動が見えてきた」
 宮野の目的は、エンブリオを茉衣子に使わせ、この状況を打破することである。
 自分のEMP能力がフル活用できるのなら、それも合わせて使えばどうにかできない事も無いだろう。
「では宮野さん。わたし達も現状を打破する方法を探します。どうかご無事で」
「うむ、そちらもな」

 そう言って、微笑みに戻った少女は徐々に薄れていった。
413年表干渉者 4/5 ◆/91wkRNFvY :2005/03/29(火) 02:15:45 ID:1krWG1wo
<インターセプタ>
 この事件、鍵を握るのはやはり宮野秀策のEMP能力では無いだろうか。
 相手の目的は見えないが、おそらく実験・観察といった類だと推測する。
 この世界はわたし達の世界ではない、故に守護するべき時と空間でな無いかもしれない、だが。
 宮野秀策や光明寺茉衣子が巻き込まれている以上放ってもおけない。
 願わくば、彼を始めとした全ての人が、正しい時間線上に戻れるように、叶えば。

<アスタリスク>

終了する。

実行。
 
 
 
終了。
414年表干渉者 5/5 ◆/91wkRNFvY :2005/03/29(火) 02:17:12 ID:1krWG1wo
「私はキミを・・・」
 立ち止まり、口ごもる宮野。
「へっ、オレが何だってんだい、ホレられても困るぜ?けけけっ」
 唐突に普段のアルカイック・スマイルに戻ると、
「何でもない、ただキミを相棒と認めたわけではないと言いたかったのだ、ほれ、さっさと行くぞ。
 こんな所で立ち止まっていても何も始まらん、まずは私の最愛の弟子を捜さねばな!」
「へっ、そのお弟子さんとやらは何処にいるのか判ってるのかい?ここの場所は結構広そうだぜ?けけっ」
 
「ふむ、そのことなのだが、何故だか解らないが茉衣子くんは西にいるような気がしてきたぞ、
 故に私は茉衣子くんのいると思われる西に向かって駆けようと思うが、異存はあるかね?」
「オレが死ねるんなら何でもいいぜ、さっさとやってくれ」 
「茉衣子くんに会ってから初めてキミの役割が果たせるというものだ」
 そして宮野は西へ向かう。

【D-6/湖のほとり→西へ向かう/1日目・05:00】

 【宮野秀策】
 [状態]:健康
 [装備]:『自殺志願』
 [道具]:デイパック(支給品一式)×2、エンブリオ(ゼロスの支給品)
 [思考]:茉衣子に逢ってエンブリオを使わせる。
【残り98人】
415邂逅 ◆Aoc3zcD1/Y :2005/03/29(火) 03:14:33 ID:7kZZJEuM
運が良かった。

竜堂終は反省するのは得意ではないが、危機を脱した今は、格別そう思えた。

=======
この理不尽なゲームが始まった直後、自分が飛ばされたのはG-8だったが、
そこは一帯ほぼ草原で見晴らしがよく、ある物といえば物見やぐらだけ。

とりあえずやぐらの上に陣取り持ち物の中を確認し、名簿に従姉妹と兄の名前を確認したからには、一刻も早く合流したかったが、
こんな夜中に闇雲に動いてもうまくいかないと判断し、ここでしばらく休むことにした。

「腹が減っては戦は出来ぬ、っと。もぐもぐ。」
食事をとりながら、荷物を更に確認する。
「なになに、『この剣の名前はブルードザオガー(吸血鬼)といいます。この剣はただの剣ではありません。・・・・』」
416邂逅 ◆Aoc3zcD1/Y :2005/03/29(火) 03:16:10 ID:7kZZJEuM
荷物の確認をし、あたりを警戒しつつも数時間休んだ頃、
2人の人影が接近してくるのに気づいた。
武器をつかんで、すぐさま飛び降りて声をかけた。
「すみません。おれ竜堂終って言います。戦うつもりはないです。
鳥羽茉理と竜堂始のどちらかを知りませんか?」

終としては礼儀正しく問い掛けたつもりだったが、礼儀は正しく返されなかった。
「ふむ、悪くはない。じゃが、子供には用はない。」
後ろを歩いていた女性と思われる人影がそうつぶやいた途端、前の男が持っていた武器で斬りかかってきた。

終とて油断していたわけではないが、その男の攻撃は思いのほか鋭く、左腕の上腕部を浅く斬られてしまい、服の破れた部分の皮膚が白い鱗状の光を放つ。
ダメージはほぼ皆無だが、
「まずいな。」
女の方も接近してくるのを感じ、2対1は不利と判断する。
動きや気配から女の方も、いや、女の方がより危険な存在であることを、終の本能が告げていた。
417邂逅 ◆Aoc3zcD1/Y :2005/03/29(火) 03:17:17 ID:7kZZJEuM
三十六計逃ぐるにしかず。
即断すると、素早く上段から男に斬りかかる。
十分にスピードとパワーののった必殺の一撃。
だが、男は難無く常人離れしたその斬撃を受け止める。
「はあああああああああっ!!」
気合を込めて終が叫ぶと、ブルードザオガーの剣身から衝撃波が放たれ、男の体を切り刻む。
吹っ飛ばされ、それでもすぐさま体勢を整えた男が見たものは、遠くに一目散に逃げ去る終の背中だった。

「よい。追うでない。もう夜明けも近い。今は安全な寝床を確保するのが先決じゃ。」
「・・・しかし面白い。西海白竜王、あの小僧とこんな所で邂逅するとはよもや思いもしなかったわ。」
「はっ?」
「いや、ちと昔を思い出しただけじゃ。どのみち生きておればまた会う事になろうて。」

=======
一目散に逃げ出し、池?を泳ぎ上陸して、一息ついた。
武器をうまく使えたのは良かったが、必殺の威力はないし、なかなか疲れる代物だった。
そう何回も連発したくはないと思った。
そして武器以外の全てをなくしてしまった。現在位置も定かではない。
「まず誰かに会って、協力を頼まないと、場所も時間もわからないなぁ。」
それでも生来の気質から、落ち込むことなく前向きに行動することにした。
418イラストに騙された名無しさん:2005/03/29(火) 03:18:33 ID:7kZZJEuM
【美姫】
 [状態]:通常
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:己の欲望のままに/そろそろ寝床を探す

【アシュラム】
[状態]:軽傷/催眠状態
[装備]:青龍堰月刀
[道具];冠
[思考]:美姫に仇なすものを斬る

現在位置 【G−8/草原/一日目、05:00】

【竜堂終】
[状態]:通常
[装備]:ブルードザオガー(吸血鬼)
[道具]:なし
[思考]:協力者探し/竜堂始と鳥羽茉理との合流

現在位置 【E-7?/海岸/一日目、05:30】
419鳥と翼A ◆/91wkRNFvY :2005/03/29(火) 04:17:09 ID:1krWG1wo
 しずくは心の中で自問する、これはどういう事だろうか。
 直属の上司である浄眼機からはこういったミッションの指令は来ておらず、
 どう考えても中枢・辺境に相応しくないいでたちをした人物が何人もいた。あれは別の惑星の人間だろうか。
 自分がスリープモードの最中に何らかの理由でここに搬送され、同じような方法で彼らも集められたというのか。
 何にせよ、現状自分が出来ることは特に無い。

 建物の中へ入り、かなめと軽い打ち合わせ(ここから動かず状況を見る、というものだが)の後、
 彼女は少し休眠をとると言って眠ってしまった。
 かなめが眠っている間にセルフ・モニタを終了させ、異常がないことを確認すると、次は建造物のモニタリングにかかった。
 しかしアクティブ・パッシブセンサー共に上手く働かず、せいぜいが40メートルほど先の動体反応を探知できるくらいだ。
 センサーに霧がかかっているとしか言えない状態で、完全に反応を捕捉できるのは20メートル、といったところだろう。
 かなめと離れてしまうと緊急時に対処できない可能性を考え、その場を動かず、かなめの起床を待つことにした。


【鳥と翼(千鳥かなめ・しずく)】
千鳥かなめ
[状態]健康。睡眠中。
[装備]陣代高校の制服、鉄パイプのような物(バイトでウィザード、「団体」の特殊装備)
[道具]デイバック一式。
[思考]戦う意思は無し、宗介・テッサと合流したい。

しずく
[状態]健康。機能異常は無いがセンサーが上手く働かず。
[装備]上下一体の白いスーツ、エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん)
[道具]デイバック一式。
[思考]戦う意思は無し、BBと合流したい。

【残り98名】
【H-1/広大な神社の中、神社の裏手は崖/1日目・05:00】
420A Head(1/2)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/29(火) 08:52:57 ID:blEAPx4i
弾がないリボルバー。
魔杖剣がない咒式士。
……眼鏡のない俺。やなとりあわせだ。
あるべきものがないおかげで、今の俺は咒式が使える凡人からただの凡人に成り下がったわけだ。
頼れるのはこの頭脳しかない。考えろ、ガユス・レヴィナ・ソレル。

まずこのゲームに乗るかどうか。否。俺が素手でギギナやクエロを殺せるか?
心情的にも、あの糞主催者共の思惑通りには動きたくないというのがある。
そもそも魔杖剣があっても勝てるかどうか疑問だ。
それに──この島に来てから何となくスタミナが落ちているような気がするのだ。それでもまだ常人以上はあるだろうが……。
これはまずい。
俺だけでなく、何らかの力で参加者全員の身体的能力が落とされている可能性もある。

次に今後の行動。信頼できる協力者が欲しい。
ギギナ。……闘いを求める奴にとってこのフィールドは絶好の場所だろう。却下。
クエロ。……論外。
おわり。

…………。
ラルゴンキン事務所の奴らが参加していたら少しは頼れただろうが、いない。
ならば、全くの他人から信頼関係を築かなければいけない。これが難しい。
脱出するという利害一致のみの同盟関係ならなんとかなるかもしれない……、いや無理だ。
弾のないリボルバー一丁の俺と組んでも足手まといにしかならない。
しばらくは単独で動くしかなさそうだ。
せめて俺の魔杖剣が誰かの支給武器に入っていればいいのだが。
421A Head(2/2)  ◆l8jfhXC/BA :2005/03/29(火) 08:53:39 ID:blEAPx4i
「…………」
ふと、そこで気づく。
なぜ、殺し合いのゲームなのに戦闘能力を落とす必要があるのか?
防御系咒式のみに制限がかかっているのならわかるのだが。
極限状態に追い込むため? 力が制限されたら逆に群れをなそうとするものが増えるのではないか?
弱者へのハンデ?……ありえん。
むしろ戦闘能力を上げた方が強い力に酔った参加者同士が戦い始めるのではないか?
“ゲーム”としてもおもしろくなるだろう。
「…………」
参加者を扱いやすくするため?……逆に言えば、制限しないと手に余るということだ。
ならばなんらかの方法で能力制限を解けば、抵抗は可能か?
いや。
俺は最初に見せしめとして殺された二人を思い出す。
あの紋章のようなもの。あれを何とかしなくてはいけない。
ひょっとしたら、あの紋章自体が能力制限の力をも持っているかもしれない。
「……よし」
俺の身体のどこかに仕掛けられている紋章を外す。能力制限を解除する方法を探す。信頼できる協力者を何とかつくる。
脳の運動を終え、俺は再び東に向かって歩き出した。

【残り98名】

【A-6/砂浜/一日目・0:45】

【ガユス】
 [状態]:健康、体力が少し落ちている
 [装備]:リボルバー(弾無し)
 [道具]:支給品一式
 [思考]:引き続き東に向かう、呪いの刻印を外す、
 能力制限を解除する方法を探す、協力者を探す
422危険なカード(1/5) ◆eUaeu3dols :2005/03/29(火) 10:01:20 ID:e+QGbk/i
音叉を叩く。
甲高い音が小さな締め切った箱の中に響く。
音は箱の壁の一方に付いた測定器で測定され、
あるいは箱の壁面と、壁面の穴から突っ込んだ音叉を持つ手にぶつかり消える。
それを何度か繰り返した後、サラ・バーリンは手元の紙に数字を書き込んだ。
「……ふむ」

出発した時の転移先が学校の近くだった事は僥倖だ。
彼女はすぐさま学校に入り込むと、2階に有った理科室に居座った。
そこでまずは護身用に爆弾や煙幕、催涙弾、睡眠薬などを作り、
ついでにごく簡単な手術出来るようにメスなどをありがたく頂いた。
次に、実験を行った。
刻印の付けられた手を、赤外線に晒し、氷水で冷やし、光に当て、音を当て、
匂いを調べ、舐めて味を調べ、更に魔術的にも念入りに研究し、徹底的にデータを取った。
そして、それらをびっしりとレポートに纏めた。
「これで武器は出来たな。さて……少し調べ物をするとしよう」
一人呟くと、サラは3階の図書室へと向かった。
423危険なカード(2/5) ◆eUaeu3dols :2005/03/29(火) 10:02:53 ID:e+QGbk/i
草木も眠る丑三つ時。
その時間の学校は本来、暗闇で包まれているものだ。
だが、この殆ど人が居ない学校は、ほぼ全ての明かりが煌々とついていた。
その為、明かりがついていたとしても何処に人が居るかは判らなかった。
ほぼ同時刻に1階で静かに人が殺されていた事にも誰も気づかなかった。

だから、彼女がそっと静かに引き戸を開けて図書室に入った時、
2人はこの学校で初めて互いに他人と遭遇した。

「おや、先客が居たか」
「………………」
サラの入室に空目は一度だけ本から顔を上げたが、またすぐに読書に戻った。
サラも気にする事無く、書架から目的の資料を数冊選び出し、空目の向かいに座る。
しばらくの間、互いに話しかけもせず、静かに時間が流れた。
424危険なカード(3/5) ◆eUaeu3dols :2005/03/29(火) 10:04:39 ID:e+QGbk/i
サラは紙束をテーブルに放りながら、唐突に言った。
「ここは貴重な書が多いな」
空目は何か物を書きながら答える。
「そうだな。量は不足しているが、質は余りある」
「科学も私の居た世界より発達しているようだ」
「そうか」
違う世界を示唆する言葉だが、そっけなく返される。
「ところで、きみのランダム支給品は何だったのかね?」
「あなたの方は何だったのだ?」
「そうだな、わたしから答えるべきだろう」
サラは少し言葉を止め、大きく吹いた。
「なんと巨大ロボットだ」
「そうか。それは豪気なことだ」
「……もう少し、派手に反応してもらえないだろうか」
肩を落とすサラ。空目はしばらく沈黙した。
カリカリという音がした。
「使い物になるのか、それは?」
「いや、ならないだろう。……きみの方は何を支給された?」
「【原子爆弾】と書いてある」
「使ったら自分も含めてさようならか」
「そんな所だ。何の意味もない」
互いに、どこか上の空で会話を続ける。
あまり意味の無い会話だった。
そして。
「わたし達は危険なカードを手にした」
最後にサラが一言発し、会話は始まった時の様に唐突に終わった。
425危険なカード(4/5) ◆eUaeu3dols :2005/03/29(火) 10:06:19 ID:e+QGbk/i
サラは空目の前に、紙束と一枚の白紙を無造作に置いた。
『どう思う?』
頭にそう走り書きがされたそれには細かい文字とグラフが密に書き込まれていた。
空目は軽く一瞥し、白紙の頭に走り書きをして返す。
『俺は物理学にはさほど詳しくない。だが、刻印の事だな?』
『そうだ。恐らく盗聴されている』
『そうか』
空目はなんともないという様子で紙を返した。サラは質問を送った。
『驚かないのだな?』
『俺達は既にまな板の上に乗っている。むしろ盗聴だと判明した事は良い事だ』
サラは少しペンを止め……すぐに再開した。
『読心までされていると思うか?』
『可能性は低い。盗聴の意味が無い。有り得なくは無いが、対処不能。考慮外事項だ』
『他に推測できる事は?』
今度は空目がペンを止め、少し考え込んだ後に答えた。
『刻印の発動は手動式だ。開始時に炎の矢を放った魔術師が生かされている』
それは一瞬の事だ。斬りかかった男達の片方の恋人は、一本の炎の矢を投じていた。
気づいたのはサラと、一緒に同じ方向を見ていたダナティア。他に数人程度だろう。
恐らく、薔薇十字騎士団は恋人だけを殺した方が愉快な事になると考えたのだ。
サラは胸がムカムカするのを感じた。
『直に発生する禁止地域も同じかもしれん。現在位置を把握し、侵入したら爆破だ。
24時間死者が発生しなければ全滅する事から、俺達の生死も把握されている』
『わたしは魔術師だが、魔術を制限されているのを感じる。これも刻印の影響か?』
『その可能性は高いが、断言できない。この“箱庭”の力かもしれん』
『解除方はどう見る?』
『少なくとも、殺し合いで発生する腕を切り落とす程度では効果が無いはずだ。
魂と癒着しているのだろう。魔術的処置で除去するしかない。俺は力になれん』
『ありがとう。とても参考になった』
サラは筆談を打ち切ると、宣言した。
「わたし達は危険なカードを手にした」
このカードは危険だ。管理者にとって危険視されうるにも関わらず、反撃には程遠い。
(まだまだ劣勢という事か)
426危険なカード(5/5) ◆eUaeu3dols :2005/03/29(火) 10:08:02 ID:e+QGbk/i
(しかし、この青年は一体何者なのだ?)
歳はおそらくサラより4〜5歳年下という所だろう。
確かにサラは100年に一人の天才と呼ばれながらも、応用力は不足すると自認していた。
だが、空目の推測は知識の応用とかそういったレベルではない。
確かにある程度はサラも辿り着いていた答えだが、一部はまるで……
(まるで答えから式を組み上げたようだ)
どこか自分に近しい物を感じて話しかけたのだが、これは正解だった。
分野と性質の違う2人の天才は互いに補完しあい、刻印の性質を概ね把握した。

そこで、サラはようやくうっかり忘れていた事に気づく。
「わたしはサラだ。サラ・バーリン」
「空目恭一。空目で構わん」

『切り札捜し』
【D−2(学校内3階図書室)/1日目・04:30(話し合い終了時点)】
【サラ・バーリン(116)】
[状態]: 健康
[装備]: 理科室製の爆弾や煙幕を幾らか。及び、メスや鉗子など少々。
[道具]: 支給品一式/巨大ロボット?※1(詳細真偽共に不明)
[思考]: 刻印の解除方法を捜す。その為に移動するかを考え中。
[備考]: 刻印の盗聴その他の機能に気づいた。刻印はサラ一人では解除不能。

【空目恭一(006)】
[状態]: 健康
[装備]: 図書室の本(読書中)
[道具]: 支給品一式/原子爆弾と書いてある?※2(詳細真偽共に不明)
[思考]: 書物を読み続ける。ゲームの仕組みを解明しても良い。
[備考]: 刻印の盗聴その他の機能に気づいた。

※0:話の展開上、ランダム支給品は全く無関係な物である可能性有り。
※1:フルメタルパニックのASが考えられる。他にデパートの山積み超合金玩具など。
※2:キノの旅より出典? 他に花火や原子爆弾型アクセサリなど。
427三人目のカードの持ち手1/3 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/29(火) 10:13:21 ID:mBjCXxBs
 ヴァーミリオン・CD・へイズは、荷を整理して北東、G−6の森へと歩き出していた。
 時計はI−ブレインの脳内時計を合わせ、先程のH−5の岩場に放棄。
 とりあえず手ごろな石を一つ近くの岩にぶつけて、尖った破片を手に。……素手よりはマシだ。
 名簿と地図も捨てた。
 いくら自分に埋め込まれた生体コンピュータ――I−ブレインが欠陥製品だからと言って、画像の一枚や二枚を記憶できないほど記憶領域も狭くない。
 次いで義眼を抉り出して、髪に仕込んだ演算素子を接続。
 硬化した義眼を分解して中を調べなおすが、残っていたもので使えそうなのは有機コード程度だ。
「…………」
 先程の女はともかく、いつ「やる気」になった参加者が襲ってくるとも限らない。
 そう考えて無言を貫いた事が、ヘイズの命を救ったのだろうか。
 ――あの二人の騎士の紋章の浮かんだ箇所は……
 奇形的に情報処理に特化したI−ブレインを駆使して身体情報を徹底的に洗い、代謝系の情報に紛れて違和感のある部位を走査。
 殆どの違和感は、原因不明の能力低下に根ざすものだ。
 それでも根気良く検索を続けると、やっとそれを見つける事ができた。
 呪いの紋章と呼ばれたそれは、己の知る世界の紋章――論理回路とは若干構造を異にするものだった。
 異なる系統の構造や、未知の力の働いている部分も多い。
 ――だが、どうにもならねえほどじゃねえな。
 慎重に侵入防止用の防壁を潜り抜け、己の情報を偽って侵入を試みた。
 原因不明のI−ブレインの機能低下による演算効率の悪さと、予想以上に手強いガードに、何度も辟易する。
428三人目のカードの持ち手2/3 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/29(火) 10:17:23 ID:mBjCXxBs
 と、比較的浅い層までの侵入ながら、一つ重要な事実が判明した。
 紋章には盗聴機能があり、音声は開催者側に筒抜けである事。
 ――アブね……
 独り言でも漏らしていたら、魂を消し飛ばされる所だった。
 だが、これで自分にもカードが一つ手に入った。
 更に断片的な情報から推理を幾つか組み合わせれば、他の機能も何とか把握できる。
「……さて、『破砕の領域』は直径20cmが良いところ、か?」
 周囲に響かない、主催者側にも不自然に思われない程度の声で、呟く。
 情報の海に干渉し、物体を破壊する情報解体。
 ヘイズは音を出すことで空気分子を振動させ、情報解体用の論理回路を構築できる。
 効果範囲内にある物体は、防壁の張られたもの以外、大概の無機物、有機物を破壊できるが……
「人間相手にゃ、ちょいとキツいか……『虚無の領域』は無理だな」
 やはり威力が落ちている。情報的に強固な人間相手では、大した威力も無いだろう。
 普通に殴りつけたほうがよほど痛い。
 I−ブレインの一時的な機能停止を代償に、あらゆる存在を消滅させる『虚無の領域』などは到底無理だ。
「とにかく、必要なら相手の武器吹っ飛ばして……装備無しでも強けりゃ、逃げるか」
 スポーツ科学が発達し、オリンピックすら形骸化した更に後の住人だ――肉体は、常人よりも鍛えられている。
 銃器の扱いも心得てはいるし、I−ブレインによる動作予測もある。
 が、一度でも負傷してしまえば動きに支障が出る。やる気になっている連中にとっては良いカモだ。
 ――だが、カードが一つ手に入った。
 呪いの紋章の情報。
 主催者打倒を目指す参加者――あの悪魔使いも、どうせこのクチだろう――に対して筆談か、有機コード伝いに相手の頭に直接送るか何かで提示すれば……
429三人目のカードの持ち手3/3 ◆a6GSuxAXWA :2005/03/29(火) 10:18:22 ID:mBjCXxBs
 眼前に、森が迫ってきた。
 ヘイズはそのまま森に紛れつつ、紋章の解析を続ける。
 ――トイレの消臭剤引いて、不運は使い果たしたと思いたいもんだが……


 【G−6/森の中/一日目2:24】
 
  【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:健康
[装備]:尖った石
[道具]:デイバッグ(支給品一式)、有機コード
[思考]:1.休息入れつつ呪いの紋章の解析 2.主催者打倒を目指す人間との接触
[備考]:紋章の盗聴その他の機能に気付いた。
430灯台下暗し(1/3):2005/03/29(火) 10:28:43 ID:KSw0oOTr
 カイルロッドは、やばい奴を見つけたと思った。
 しかも目が合ってしまった。
 最初の灯台で、思わず少し仮眠を取ってしまったのがまずかったかと、カイルロッドは思う。
 行動が遅れたためにこんなのと遭遇したのかと思うと、数時間前の自分を呪いたくなるが、
実際すぐに探索を開始していたとしても結末は同じだっただろう。
 なにせ、その男はゲーム開始時からずっとここで素振りを続けていたのだから。
 カイルロッドを見るその男――オフレッサーの口元が、ニィッと釣り上がる。
 何時間も素振りをしていたその身体からは、汗が陽炎のように立ち昇っている。
 月の光に照らされた夜の砂浜で、その姿は異様な迫力を醸し出していた。

 反射的に回れ右。
 傍らの犬も同時に回れ右。
「逃げるぞ!」
「そうしましょう」
 全速力で来た道を駆け戻る。
 背後から「待ぁてぇ〜い!」という声が聞こえるがもちろん無視。
「なんなんでしょう、あの男は」
「俺が知るか! っていうか、あの剣《語らぬもの》が俺にくれた剣じゃないか!?」
「元々あなたの持ち物なのですか? では何とかして取り返したいものですね」
「どうやって!?」
「……さぁ?」
 とにかく逃げる。
 武器もない現状ではそれしか手立てがなかった。

431灯台下暗し(2/3):2005/03/29(火) 10:30:08 ID:KSw0oOTr
 結局、最初の灯台までたどり着く。
 そのまま駆け抜けようとするカイルロッドを陸が呼び止めた。
「待ってください、カイルロッド。ここは灯台の中に逃げ込みましょう」
「なんだって?」
 カイルロッドは耳を疑う。
 この灯台には出入り口は一つしかないはずだ。
 先ほど陸と一緒に確認したのだから間違いない。
 ここに入ったら、自分から袋小路に逃げ込むようなものだ。
「いいから、私に考えがあります」


「ふはは、追い詰めたぞ!! この俺の剣の錆となるがいい!!」
 灯台に入るなりオフレッサーはそうのたまい、勢い良く螺旋階段を駆け上がっていった。
 ――その裏側で体育座りしていたカイルロッドと陸には気づかずに。
「うぬ、まだ上か! 逃げるばかりの臆病者が。正々堂々俺と戦……」
 だんだん声が遠ざかっていく。
 カイルロッドがぽつりと呟いた。
「……馬鹿でよかった」


 時間的余裕はできたが、最上階まで行ったらさらにバーサークして戻ってくるはずだ。
 灯台を出たカイルロッドと陸は、手短に今後の方針を話し合う。
「この灯台はもう使えないな、危険すぎる」
「ええ、移動することにしましょう。海沿いは他の者たちに発見される確率が高そうですから、内陸を進みましょうか」
 今、その前例が灯台を駆け上がっている最中だ。
 地図を広げたカイルロッドは陸の言葉に頷くと、
「そうだな。とりあえず、この湖に沿って南下しよう」
 当面の行動を決定した。
432灯台下暗し(3/3):2005/03/29(火) 10:31:03 ID:KSw0oOTr
【残り98人】


【卵王子とお供】
【A-7/灯台前/1日目・05:00】

【カイルロッド】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック(支給品一式) 陸(カイルロッドと行動します)
[思考]:陸と共にシズという男を捜す/イルダーナフ・アリュセ・リリアと合流する

[備考]:A-7 → B-7へと移動します。



【A-7/灯台内/1日目・05:00】

【オフレッサー】
[状態]:平常
[装備]:水晶の剣
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:皆殺し
433イラストに騙された名無しさん:2005/04/11(月) 17:59:47 ID:x8hw8u3h
現行スレはこちらです

ラノベ・ロワイアル Part3
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1112542666/
434イラストに騙された名無しさん
おお!荒らしが消えている!