葉鍵的 SS コンペスレ 18

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1 ◆jDSrDt4dys
ここは、期限内に与えられたテーマに沿った SS を書くスレです。
他人と腕を競いあうもよし、ネタで盛り上げるのもよし、テーマに沿っていれば何でも(・∀・)イイ!!
テーマを見て、思いついたネタがあればどんどん参加してみましょう。
このスレを育てるのは、あなたが紡ぐ言葉です。

・期間の設定や細かい変更点は告知のなかで発表します。
・テーマはこのスレの話し合いで決定され、開催ごとに毎回変更されます。
・その他、ルールや投稿方法、過去スレや関連スレは >>2-10 あたりに。

【前スレ】
葉鍵的 SS コンペスレ 17
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1147042412/
2 ◆jDSrDt4dys :2007/08/06(月) 23:20:56 ID:mDYBRtM90
3 ◆jDSrDt4dys :2007/08/06(月) 23:24:32 ID:mDYBRtM90
葉鍵的 SS コンペスレ 7
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1045/10459/1045985789.html
葉鍵的 SS コンペスレ 6
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1040/10406/1040605036.html
葉鍵的 SS コンペスレ 5
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1035/10359/1035975262.html
葉鍵的 SS コンペスレ 4
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1031/10311/1031179074.html
葉鍵的 SS コンペスレ 3
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1028/10288/1028847595.html
葉鍵的 SS コンペスレ 2
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1025/10257/1025740724.html
葉鍵的 SS コンペスレ
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1020/10204/1020433927.html
葉鍵的 SS 職人選手権(SS 投稿スレ内で行ったもの(189〜))
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1014/10145/1014537214.html
葉鍵的 SS コンペスレ保管所
http://sscompe.at.infoseek.co.jp/
4 ◆jDSrDt4dys :2007/08/06(月) 23:25:28 ID:mDYBRtM90
【ルール】

・テーマを決めて、それに沿った SS、シチュなどを書く。
・書き手は全員名無し(書き手の知名度で作品の評価が変わるのを避けるため)
・書き手の騙りを防ぐために、作品ごとのトリップを推奨する。
但し、普段コテでトリップをつけている人は、それとは別のトリップをつけること。
・投稿作品とそれ以外の書き込みを区別するために、投稿作品の前後には宣言をする。
・告知及び投稿期間→感想期間→総括期間、という流れ。投稿期間終了までは一切感想をつけない。
・感想期間では、参加作品について感想、評価などを行う。
なお、他の人の感想等に影響が出ないように、感想期間中は作者は身を明かさないこと。
これはコンペスレの内外を問わない。
・総括期間では、書き手の挨拶、運営への意見、次々回のテーマの決定などを行う。
また、感想期間で評価が高かったもの選び、最優秀作品として推す。

・各期間は以下のように設定する。
投稿期間: 2 週間
感想期間: 1 週間
総括期間: 1 週間+α(そのときに応じて期間は変化する)
5 ◆jDSrDt4dys :2007/08/06(月) 23:26:20 ID:mDYBRtM90
【注意】

※必ず名無しで投稿して下さい(誰だか判らなければ良い)。
※特に、普段トリップをつけている方はご注意を。
(そのトリップと違うトリップなら構いません)

それ以外の手順は SS 投稿スレに準じます(以下に転載)。
|【投稿の手順】

|1:まず、投稿する旨を告知するカキコをすると良い。
| 「今から SS 投稿します。なお、××な内容です」など。
| 鬼畜・陵辱・スカなどのジャンルでは特に。読むのを嫌がる人もいます。
| (時間帯・スレの状態・信念・その他で省略可)
|2:書いた SS を 30 行程度で何分割かしてひとつずつ sage で書き込む。
| (名前欄に、タイトルと通しナンバーを入れると分かりやすい)
|3:最後に sage で作者名・タイトル・あとがきなどと共に、
| アップしたところをリダイレクトする(>>1-2みたいな感じ)と トッテモ(・∀・)イインチョ!
6 ◆jDSrDt4dys :2007/08/06(月) 23:27:07 ID:mDYBRtM90
【よくあるかも知れない質問】

Q.複数の作品を投下するのは OK ですか?
A.構いません。期間内でテーマに沿っていればいくつでも結構です。

Q.もうすぐ完成するから、締め切りを伸ばしなさい(`□´)くわっ
A.終了間際の混雑などを考え、締め切りは延長される可能性もあります。
その際は、一言その旨をこのスレに書き込んでください。
ただし、完成まであまりにも時間がかかりそうな場合はその限りではありません。

Q.締め切りが過ぎてから完成したんだけど、ここに投稿していい?
A.締め切りを過ぎたものについては、葉鍵的 SS Training Room や
内容に見合った別の SS 関連スレに投稿してください。
このスレは、決められたテーマと期間の両方を満たす SS を対象にしています。

Q.気に入った SS があったけど、みんな名無しだから作者がわからない。
A.締め切り後にこのスレで訊いてみましょう。教えてくれるかも知れません。

Q.投稿した投稿作品がリアルリアリティに汚染されてます。
A.ときには厳しい意見が付くこともありますが、別にあなたが憎いわけじゃありません。
良い感想職人さんはちゃんと理由も書いてくれますから、次回に役立てて下さい。
7 ◆jDSrDt4dys :2007/08/06(月) 23:28:50 ID:mDYBRtM90
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1147042412/763
となっています。

目に留まった作品だけでもいいので、よろしければ感想を書き込んでください。
あなたの一言が、未来の SS 職人を育てるかもしれませんYO!
8名無しさんだよもん:2007/08/07(火) 21:39:13 ID:ua+vONyA0
数年ぶりに葉鍵板を見たんだが、このスレ、まだあったんだな。
と言うわけで、すっかり葉鍵系から遠ざかった者の気まぐれな感想などを。

>>736   無題(リトルバスターズ/葉留佳・佳奈多)
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1165247209/83-108

 ……これって、コンペスレじゃないけどコンペ該当作なの?
 あっちのスレで感想とかやりとりされてるみたいだけど。まあ、その辺の事情は
参加者各位の判断に委ねるとして。
 や、リトルバスターズってやってないからよく知らないんだけど、この作品の
ヒロイン(佳奈多)が妹とリトルバスターズによって自分の殻を打ち破る、と言う
流れは悪くないと思う。
 文章はゲームのテキストみたいな感じで、情景描写がどうも淡泊になりがちな
気がする。ゲームと違って絵がないのだから、ある程度は情景を書き込まないと
読む人に伝わりにくいんじゃないかな。
 作品の流れそのものは悪くないとは言いつつも、個々の場面における整合性と
言うか必然性と言うか説得力みたいなものがまだ足りないと思う。
 特に、児童虐待でいきなり警察が介入しないはずだし。(普通は児童相談所経由
で、民生委員が先に動くでしょう。警察の直接介入なんて、かなり切迫した事態で
ないと……)


 と、発言長すぎって怒られたので、ここで切る。(続く)
9名無しさんだよもん:2007/08/07(火) 21:41:03 ID:ua+vONyA0
感想の続き
>>739-740 くやしがーる(KANON/香里・名雪・祐一)

 いきなり読点抜きの長文が続き、「何じゃこりゃ」と思ったけど、香里の
「目の前にいるバカップルを相手にするあたしの気持ちになってみろ」と言う
感じが文体から滲み出ていたと思う。
 物語としてはあまり山も谷もないけれど、気だるい雰囲気を醸し出す文章では
むしろそれがちょうどいいくらいかな。
 最大の疑問は「なぜ香里には彼氏がいないのか?」だけど、「その性格ゆえだろ」と
言う暗喩みたいなものを名雪あたりに出させておくと、物語がもう少し引き締まった
かも知れない。

>>749-755 冬の花火〜真琴・爆誕〜(KANON)

 や、怖いねぇ。大事な者を失うと人はここまでおかしくなれるんだ、と言う
見本みたいな話。せめてもの救いは、真琴がまともだったことか。
 祐一たちが淡々と語る内容がどこまで本当なのかは読者としてもさっぱり
分からないのだけど、「秋子さんソープ嬢」で切れてるのは何なんだろう。
名雪がまともな存在としての対比キャラだったのかどうかが、やや不明瞭な感じ。

>>758-761 いつか、星が、砕ける時まで(ToHeart2/るーこ)

 ToHeart2も未プレイなので、まるで見当違いの感想になるかも知れないけど
これはよくまとまっていると思った。
 キャラの設定とか全然知らないのだけど、「るーこ」がどんなキャラなのか
冒頭の僅かな部分で伝わってきた。相方となっている「うー」についても、
「るーこ」をどう思っているかがきちんと感じられた。
 お題である花火もきちんと使っているし、儚さや美しさについて語る部分の
流れも良かった。
10名無しさんだよもん:2007/08/07(火) 21:46:25 ID:ua+vONyA0
感想まとめ

 と言うわけで、一押しは文句なしに、これ。

 『いつか、星が、砕ける時まで』(ToHeart2/るーこ)

 寂れてきてるとは言え、まだ投稿もあるんだから、読んだ人は感想上げてな。
 最近レベルがどうとかこうとか言う意見もあるみたいだけど、書きたいものを
書くってスタンスでいいんじゃなかろうか? 作品も、感想もな。

 では。
11名無しさんだよもん:2007/08/08(水) 20:31:47 ID:fENr058h0
こういう優越感ゲームってのは結構むずかしいのである。

なにしろ、日夜ニッチにはしる努力ばかりしている類のオタだのサブカルだのというのは、
その先進性がふつうのひとにまったく理解されない。
理解されないというのは、言い換えれば劣等感をもってくれないということだ。

そして、劣等感をもってくれない相手には優越感ゲームを仕掛けることができない(≒ピンとこない)。

普段どちらかといえば「理解されないこと」こそを上等として活動しているのだから、それで当然なのだが、
優越感ゲームってそういう「他人に理解できない(上等な)ことを理解できる自分」
という満足感からは外れたところにあるからな。

優越感ゲームを仕掛けたいがために、相手に劣等感を植え付けるべく「啓蒙」努力を怠らない、
みたいな陥穽にはまっていくようだと涙ぐましい。

まあなんだ、これもまたひとつ「傍目に無残」とでもいうか。
12 ◆jDSrDt4dys :2007/08/09(木) 23:24:56 ID:nkDii4Ye0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1147042412/763
となっています。

感想期間は 8 月 13 日の午前 0:00 までとなっていますので、
まだの方は是非お願いいたします。
13名無しさんだよもん:2007/08/10(金) 09:53:00 ID:Q4skKb4C0
土日どっか行ってるんで書きこみ。


・無題(リトルバスターズ/葉留佳・佳奈多)
原作やってないから内容について語れないんだが、全体ぱっと見た限りでは
ただSSを書き慣れてないだけで、あと何度か書いて作法やらなんやら覚えたら
立派な書き手になれるんじゃないかと思った。

・くやしがーる(KANON/香里・名雪・祐一)
香里が浴衣着てる姿を想像すると風俗くさい感じがするのは何故だろう。
書きたかったのは真ん中にある祐一の台詞なんだろうけど、それまでにもう少し描写を重ねて
盛り上げてると落とし所が際立つんじゃないかな。

・冬の花火〜真琴・爆誕〜(KANON)
KANONという作品が持つ透明感とかそういうものを破壊したかったのかな?
結果的にはダークにもブラックジョークにもなりきれてないどっちつかずのSSになってるようだが…

・いつか、星が、砕ける時まで(ToHeart2/るーこ)
るー子だったらこう言うだろうなーっと序盤ニヤニヤ、終盤しっとりと読めた。
花火と言うテーマを自然に消化できてるのも良い感じ。
締めも綺麗すぎる。


最優秀作は「いつか、星が、砕ける時まで」
全てはるーの導き也。
14名無しさんだよもん:2007/08/10(金) 22:51:00 ID:yB4bhlQG0
短く感想を。
このコンペスレの特徴として、テーマが決まっていると言うことがあるのだが、
今回のテーマ『花火』に関して、「無題」は花火大会でなくてはということがなく、舞台が他に移っている。
次の「くやしがーる」も同様。花火に何か感じるものがあればいいのに。
「冬の花火」は「同じVisual Artsでも〜」発言からして、
他のゲームに「花火で死んだ人間が帰ってくる」設定でもあったんだろうか?
でもそれを行動の根拠で通すならまだしも、祐一自身に否定されたら、
「花火をすると真琴が帰ってくるという電波を受信した祐一と美汐」と言うことになって、必然性が消え失せてしまう。
きちんとテーマを消化していたのは、「いつか、星が、砕けるときまで」。
るーこの境遇と花火と星と、誤解から結末まで、綺麗に起承転結が整って、話が流れている。
ちー数万本分というと、確かに大きな無駄遣いだとも思えるしw

んでもって、個別評。
「無題」は俺もリトバス未プレイですまんのだが、決着の付け方が気になる。
警察のフリした学生に、いい大人がダマされるってのはどうかと思った。しかも先日、夜とは言え顔を見せている連中が。
ここは普通に、証拠のテープ&然るべき場所に通報済みで十分では。
それをさっ引いても、すこしばかりご都合主義がすぎる展開だとは思うが。
あと、のっけだったんで気になったのが、「教科書忘れちった!」「馬鹿ね。自業自得よ」のやり取り。
自業自得では意味が通らないだろう。てーか、マジ、他のクラスから借りてこい。なんの嫌がらせだw

「くやしがーる」は短くて内容が薄いし、特に捻りもないのが。
名雪が香里も引っ張り出す意図がよく分からない。惚気たいなら分かるが、最後には無視しているし。
殺意の波動には目覚めるもんじゃないだろうか。芽生えるなら殺意だけで。

「冬の花火」は壊れギャグを狙ったんではないかと思うが、微妙。
3P田中君とか乳拳[黄龍]とかセプテントリオンとかの板外のネタもどうかと思った。
作品傾向上、ストーリー性は皆無なので、ネタが合わないときつい。
ところで、なんでか生き返っている真琴は、やっぱ花火のおかげなのだろうか。

「いつか、星が、砕ける時まで」には特に言うことがない。
るーこの花火観の変遷が楽しい作品だった。オチもいい。
15 ◆jDSrDt4dys :2007/08/11(土) 04:12:38 ID:3vbSNi4h0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1147042412/763
となっています。

感想期間は 8 月 13 日の午前 0:00 までとなっていますので、
時間がありましたら是非ともお願いします。
16名無しさんだよもん:2007/08/11(土) 13:30:02 ID:VsMzlyxa0
・無題(リトルバスターズ/葉留佳・佳奈多)
1.SS全体について:長い。量的に多すぎると、読む気が削がれる。展開が冗長。
2.文章・文体:ゲームのシナリオを読んでいるようだ。情景描写が欲しい。
3.内容:リトバスっぽくはある。ご都合主義、ファンタジー。
4.その他コメント:これからも頑張ってくれ。

・くやしがーる(KANON/香里・名雪・祐一)
1.SS全体について:全体としてはさっぱりと読める。
2.文章・文体:一行が長く、視覚的に読みにくい。普通のINブラウザじゃぐちゃぐちゃでは?
3.内容:モテない香里ネタというお約束。北×香じゃないだけ評価できる。
4.その他:2ちゃんネタ。

・冬の花火〜真琴・爆誕〜(KANON)
1.SS全体について:不味くもないし美味しくもないインスタント麺のようだ。何を目指してるのか不明。
2.文章・文体:要校正。空行が多い。
3.内容:AとBは狂人、Cは一見まとも。しかし実はCこそもっともおかしい、というパターン。お約束。
4.その他:SNOW、無名世界ネタ。


・いつか、星が、砕ける時まで(ToHeart2/るーこ)
1.SS全体について:タイトル名でシメる手法はお約束。
2.文章・文体:特になし。綺麗にかけている。
3.内容:原作未プレーなので、るーこの存在がどのような位置にあるのか全
      くわからず、楽しめなかった。要本編プレーっぽい。
4.その他:一番よく出来ていたSS。

17名無しさんだよもん:2007/08/12(日) 08:31:30 ID:7t7fT/lb0
世の中、みんながみんな「エライねぇ」「カッコいいね」って
認めてもらえるわけじゃないのにね……。
なんでみんながみんな、
有名に、豊かになりたがるんだろう。
なんでみんながみんな、
モテて、満たされたがるんだろう。

ムリなのにね、凡人には。

エロゲーをネタに哲学語ってみても、
ネットで論客を気取ってみても、
323ふうのギャル絵を、たくさん描いて即売会に持ち込んでみても、
フライヤーとかを作って、自称アーティストのふりをしてみても、
8_で、ブス姉ぇちゃん主演の映画を撮ってみても、
VJのマネごととかをやってみても、
「夢を探すため」と称して、フリーターなんかをやってみても、
誰でも使えるパソコンで電気紙芝居を作ってみても、

…ほとんど、本っ当に大多数はムダなのにね。凡人だから。

あまりにも多くの凡人が、あまりも純粋に、
ありもしない「才能」を信じている、「自分主義」というか
「ミーイズム」蔓延の病根は深い。
やっぱり、個性重視教育や「ひとりひとりを大切に」といった
思想がもたらした不幸なんでしょうかねぇ。
18名無しさんだよもん:2007/08/12(日) 09:23:20 ID:H5yWQ7IP0
今回は感想数も揃ってるし自重しようかと思ったけど軽く書いておこうかな。

・無題(リトルバスターズ/葉留佳・佳奈多)
すまない、まだリトバスやってないんだ。
ネタバレが怖くて読めないよ。これは本当に申し訳ない。

・くやしがーる(KANON/香里・名雪・祐一)
非常に短いのに平坦に書いてるな、と思った。
読んで何かを感じる前にあっさり終わってしまった気がする。
勝手な分析だけど、『独り身の香織』と『ヘンな祐一と名雪』。
短い内容がその二つに分散されてさらに内容を薄く感じてしまってるのかも。
せめてどちらかに集中するか、内容を濃くするかして欲しかったかも。
もちろん個人的な意見でしかないけどね。

・冬の花火〜真琴・爆誕〜(KANON)
以前からまったく変わらない内容だと感じた。
今更俺ごときが何か言う必要はないと思う。
感じたことも以前と全く変わらない。

・いつか、星が、砕ける時まで(ToHeart2/るーこ)
物語の形が整っていること。
その上でセリフや内容にるーこらしさが表現されていること。
その二つだけでも読み物として評価できる。
この形式ではこれが適当だとは思うけど、欲を言えばもう少し盛り上げる部分が欲しかった。

優秀賞には『いつか、星が、砕ける時まで』を挙げておこうか。
賞を推薦するのはこれが初めてだな。
思えば、今まではっきりとした評価を出すことから逃げてたような気がする。
コンペのためにはそれは良くなかったのかもしれない。
19名無しさんだよもん:2007/08/12(日) 15:32:40 ID:6iV4qSRt0
「無題」
話が大きくなりすぎたんじゃね?もっとこぢんまりと纏めたら?

「くやしがーる」
「くやしいのうww」ワロスwwどうせなら2chネタもっと入れれば?

「冬の花火」
またお前か。巣に帰れと(ry

「いつか、星が、砕ける時まで」
るーこSSのお手本だな。お題もうまく生かされてるGJ
20 ◆jDSrDt4dys :2007/08/13(月) 00:26:42 ID:kCawfdcs0
【告知】

ただ今をもちまして、感想期間を終了させていただきます。
投稿された書き手の皆さん、感想をつけてくださった読み手の皆さん、
そして生温かく見守ってくれていた ROM の皆さん、どうもご苦労様でした。

引き続きこのスレでは、今回の運営への意見、書き手の挨拶、
次々回のテーマの決定などを行いたいと思います。

上記のものやそれ以外にも意見が何かありましたら、書きこんでください。

※次回のテーマは『昼寝』に決定しており、開催時期は 8 月中旬になる予定です。
※今回決めるのは次々回のテーマです。お間違いのないように。
21 ◆jDSrDt4dys :2007/08/13(月) 00:28:30 ID:kCawfdcs0
感想の中で、評価が高かった作品は以下のとおりです。

『いつか、星が、砕ける時まで』 >>10 >>13 >>18

ということで、第六十四回の最優秀作品は『いつか、星が、砕ける時まで』になります。
おめでとうございます。

あとコンペスレでは随時私に代わる進行役を募集しています。
我こそはを思われる方はぜひ応募のほど、宜しくお願いします。
22名無しさんだよもん:2007/08/14(火) 00:14:29 ID:t7XWzHi30
んー。
『いつか、星が、砕ける時まで』の作者さんおめでとう。
久しぶりに最優秀作品が選ばれて、久しぶりにコンペスレらしくなったと思う。


普通に考えて、新しいSSが短い期間でまとめて読めるというのはなかなか良いもんだよね。
エロパロとかも過疎ってるらしいし、個人サイトでSSうpしてる人も最近はすくないし。
そういう意味じゃ、やっぱこのスレの存在意義は高いと思うよ。
定期的に新しいSSが読めるし、間接的に、自分が読みたいSSを指定できるわけだし(テーマ決めを通して)。

23名無しさんだよもん:2007/08/15(水) 17:58:15 ID:ndSsWMaw0
次々回のテーマに『秘密』を推薦します。
っていうか自分が書けそうなテーマどんどん書いて行かないと後で困るぞ。
24 ◆YOxUf3AVaI :2007/08/15(水) 22:48:30 ID:48UvD5+20
こんばんは。今回、『いつか、星が、砕ける時まで』を書きました。
六つも感想を書いてくれた皆さん、ご苦労様&ありがとうございました。
あと、最優秀作品受賞についても。

るーこは不思議属性でとらえどころが難しいキャラで、その持ち味を出すのにセリフ回しに苦心したりもしましたが、
それが未プレイの人に伝わってたり伝わってなかったりと、修行が足りてるんだか足りてないんだか。
まぁるーこは初書きなんで、まだまだ鍛える余地があると前向きに解釈。
プレイ済みの人にはるーこらしいとありがたい評価を受けてるんで、
付け焼き刃でも、るーこシナリオのイベントを再プレイした価値はあったかな、と。

テーマについて、触れてくれた方も多かったのですが、
実はこの作品、最初は同コンセプト、誰彼原作での発案でした。
花火を敵の攻撃とか、軍人ぽい勘違いかなーとか思ってたのですが、
よく考えたら花火って江戸時代からあるということに気づいて没。(日本ではそうだが、実際にはもっと古いらしい)
痕とか花火っぽいかなー、って、原作で初音ちゃんやってるじゃん、
そうだ、ハクオロが例の火薬の後始末に、花火を作ってしまうのはどうだろう。
……どのタイミングで? などと他のアイデアを考えていたところ、
ふと、先のアイデアをそのまま転用できるキャラがいることに気づき、るーこの登場と相成ったわけです。

たぶん、誰彼原案だった場合、月代の存在でもうちょっと明るめな作品になったような気もするのですが、
こちらもコーラ(るーこはこれで酔う。さながらコーヒーで酔うGuGuガンモの如く)を持ち込んだりしたらとか、
頭の展開を受けてすこしギャグタッチになることも考えてたりも。
が、なんかしらんが、筆が滑ってしまいましたよ? 星とかなんとか、当初はまったく考えていませんでしたよ?
だから、ここら辺の前後半でのギャップに突っ込まれたりするかもなーとか思っていたら、そこら辺は指摘されませんでしたよ?
うむ。相変わらず行き当たりばったりだ。
これも∩(゚∀゚)∩るーの導きということで自分をごまかしてみる。
コーラに関して数行書いたのを、雰囲気砕けると思って消したりと、多少の工夫はしましたが。

さて、そんな感じで。また次のコンペででも。
んでは、これにて。
25名無しさんだよもん:2007/08/15(水) 22:55:27 ID:Ob/ZD2Pl0
次々回のテーマに『アルバイト』を推薦します。
26 ◆jDSrDt4dys :2007/08/16(木) 23:29:58 ID:9iO0VpkH0
【告知】

現在総括期間になっています。
総括期間は 8 月 20 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、書き手の挨拶、次々回のテーマ投票などは
それまでにお願いします。
27 ◆/U1d5W8tXM :2007/08/18(土) 22:03:47 ID:YNa7iRXg0
くやしがーるを書いたものです。こんばんは。
とにかく投稿数ゼロだけはなんとしても阻止せねば、との理由で書き上げたものなので、
プロットも意味も内容も薄いどころかほぼ無いに等しいものに仕上がっています。
ネタも直前に見ていたスレから突発的に思いついたものという体たらく。

頂いた感想を読んでみると、「一行が長くて読みづらい」「2ちゃんネタ」「短いのに平坦」
「描写が薄い」「香里に彼氏は?」と、やはり指摘・疑問に集中しており、いくら急いでいたとは
いえもう少し書き込めなかったのかと後悔することひとしきり。

ちなみにタイトルは昔SEGAから出ていた「タントアール」というゲームからつけています。
つけたというか引用したというか。

そんなこんなでまた機会があれば投稿したいと思っているので、その時はよろしくお願いします。
28名無しさんだよもん:2007/08/18(土) 23:24:33 ID:G+jmmzn90
>>27
「いちだんとがーる」「二度ある事は三度がーる」にも期待します(w
29 ◆jDSrDt4dys :2007/08/19(日) 02:47:33 ID:rcxXJqKd0
【告知】

現在総括期間になっています。
総括期間は明日 8 月 20 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、書き手の挨拶、次々回のテーマ投票などがありましたら
書き込みのほど、宜しくお願いします。

また、合わせて進行役も募集していますので、我こそはと思われる方が
いましたら応募のほど、お願いします。
30名無しさんだよもん:2007/08/19(日) 19:29:09 ID:mE8XFymm0
で、今回こころあらたにコンペを行ったわけだけど、概ね成功ってところじゃないの。
今後とも今回のように活気のあるコンペが続くと願いたい。
31 ◆jDSrDt4dys :2007/08/20(月) 00:28:31 ID:qWxYDTMZ0
【告知】

第六十五回投稿テーマ:『昼寝』

投稿期間: 8 月 20 日の午前 0:00 から 9 月 3 日の午前 0:00 まで。

テーマを見て、思いついたネタがあればどんどん投稿してみましょう。
面白い作品だったら、感想がたくさんついてきて(・∀・)イイ!!
もちろん、その逆もあるだろうけど……(;´Д`)

※投稿される方は >>4-6 にある投稿ルール、FAQ をよく読んでください。
※特に重要なのが

・テーマに沿った SS を*匿名*で投稿する
・投稿期間中は作品に対して一切感想をつけない

の二点です。他の各種 SS スレとは異なりますのでご注意を。

それでは、投稿開始っ!
32 ◆jDSrDt4dys :2007/08/20(月) 00:46:04 ID:qWxYDTMZ0
次回のテーマは一票同士で並んだので、最初に推薦頂いていた
『秘密』にしたいと思います。

開催時期は 9 月中旬を予定していますので、「二週間じゃ書けない」
「昼寝でネタが思いつかない」という方は、こちらのテーマで
ネタを考えてみてください。

あと今後は基本的に総括期間以外は告知しないようにしますが、
進行役も随時募集していますので、変わってやろうという方が
いましたら書き込みの程、宜しくお願いします。
33名無しさんだよもん:2007/08/20(月) 08:32:56 ID:71qfs4I50
ちょうど前スレが過去ログ送りになってた。
34名無しさんだよもん:2007/08/24(金) 12:24:57 ID:6ugtm5p20
ところで、誰かスレ16、17って保管してる?(前、前々スレ)
コンペスレ保管所もしばらく機能して無いみたいだし。
どっかにwikiベースでうpできるほうがいいのかなあ。
35名無しさんだよもん:2007/08/24(金) 18:12:06 ID:x2nW/SFX0
17はhtmlで持ってるよ。
16はテキスト形式でしか持ってない。
うpが必要なら素人の俺にも扱いやすいうpろだを指定してください。
36名無しさんだよもん:2007/08/25(土) 18:41:31 ID:Y28sfmsf0
うpロダかぁ・・・
流れにくい所でどこかあったかな?
37名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 00:01:11 ID:rPniAIRh0
16持ってないから17だけ上げてみた
http://www11.axfc.net/uploader/20/
ここのHe_28997.lzh

keyはkonpe
38名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 01:10:34 ID:D8GCdAlP0
16datでよければドゾー
|д゜)ノ ttp://monoganac2.sakura.ne.jp/src/milktea17139.zip.html
39名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 01:35:14 ID:FSCJMzd90
俺は>>34じゃないけどサンクス。
利用させて頂きます。
40午睡の窓に、夏の歌(1/9):2007/08/26(日) 09:55:45 ID:f/b0q6+s0
 人は寝ている時ほど無防備な状態はない……いや、もっと無防備になっていることも多
々あるかも知れないが、少なくとも今の俺にとっては、それで十分だった。
 穏やかな寝息と、かすかに上下する胸。
 閉じられた瞼と、わずかに開かれた唇。
 閑静な住宅街に射す午後の日射しも心なしか柔らかい気がするし、窓越しの蝉の声もお
となしい。
 普段がやかましいヤツだけに、こうした静かなひとときと言うのは、このまま絵か写真
にして収めておきたいくらいのシーンだとさえ思う。
 細かい経緯はこの際伏せておくが、なし崩しに真琴の昼寝に付き合わされる形になった
俺としては、意外にも悪くない午後の過ごし方だ。
 ある一点を除いて、だが。
 暑いのだ。
 や、それはもう洒落にならないくらいに。
 確かに冷房は効いている。が、「冷えすぎて風邪ひかないようにね」と、秋子さんが気
を利かせて冷房設定を弱めにしてくれたおかげで、すでに気持ちよく寝ている真琴はとも
かく、別に眠くも何ともない俺はひたすら弱冷房の部屋の窓際で背中に夏の日射しを受け
てるわけだ。
 さっきは「心なしか柔らかい気がする」と言ってたのは誰だって? そうでも思わなきゃ、
こんなのやってられねえ。
 日射しを避ければいいじゃないかって? それが出来ればそうしてる。出来ない理由が
あるから、こうなってるんだ。
41午睡の窓に、夏の歌(2/9):2007/08/26(日) 09:56:40 ID:f/b0q6+s0
 そもそも、真琴が何故昼寝をしてるのかと言うと、ここ最近真琴が夜に寝られなくなっ
たのが一番の原因だ。それには俺も大いに関係してるのが、今の状態に至る理由でもある
んだが。自分が蒔いた種とは言いながら、今回は秋子さんが珍しく怒ってたから、俺とし
てはここで真琴を放って逃げるわけにもいかないのだ。あ、怒ると言っても、秋子さんの
はそこらのオバサンと違って怒鳴り散らすとかヒステリックにわめくと言うものじゃない。
ただ、本当に諭すように親身になって叱られる感覚で、それだけに何故か堪える……。ま
あ、俺が悪いんだよ、確かにな。
「ん…」
 不意に真琴が小さく声を上げて、体を動かした。しかし、ちょっと頭の向きを変えただ
けで、体勢にさほどの変化はない。
 やれやれ……。
 コイツはこれで暑くないんだろうか。まあ、俺と違って日射しを受けてるわけでもない
し、それだけ眠たかったって事なんだろうけどな。
 まったく、相変わらずガキだな、コイツは。
「んー…」
 おおっと。
 何で微妙に反応するんだ、コイツは。別に俺はお前の悪口言ってるわけじゃないんだか
ら、いちいち反応するなっての。
 それにしても、だ。
 本当にこうして眠っている姿は可愛いのに、起きてる間は憎まれ口ばっかり叩きやがる
んだから困ったもんだな。……や、ほら、可愛いってのは、あれだ。イタズラ小僧でも寝
顔は天使だって言うようなのと同じだけどな。
42午睡の窓に、夏の歌(3/9):2007/08/26(日) 09:57:30 ID:f/b0q6+s0
 ま、しばらく付き合ってやるか……と、あまりにヒマなので真琴の結んだ髪でもイタズ
ラしてやろうと手を伸ばした時。
 いきなり、俺の体がズルリと横に動いた。や、俺は動かしていない。あくまでも真琴の
頭の少し下の方に手を伸ばしただけだ。
 不意にそれまで部屋にあったのとは違う明らかな熱風が俺の顔に当たる。そうか、俺が
動いたのではなくて、俺の背中を支えていた窓が動いていたわけだ。
 真琴が起き出す気配はないものの、いきなり外からの熱風が入り込んでしまってはよく
ないだろう。それ以前にまず俺が暑くてかなわない。
 と、背中を押し当てながら、動いた方とは逆に体を引き起こすようにした直後、わずか
な隙間を縫って、外から何かが部屋に入ってきた。
「うわっ!」
 思わず俺も声を上げてしまったが、そんな俺よりもはるかに大きい声の持ち主は侵入と
同時にその存在を知らしめてくれる。
『ジジジジジジジジッ』
 蝉だ、蝉だ! 窓越しでは結構おとなしい感じがしたのに、さすがにすぐ近くで鳴かれ
るとたまったもんじゃない。
 とにかく追い出さないと真琴が起きるのも時間の問題だ。だが、今の俺の体勢では蝉を
追い出すために動くことが出来ない。何故なら、真琴の頭が俺の片膝に乗っているからだ。
さらに、俺の片方の手は真琴に握られている。
『ジジジジジジジ』
 む……。蝉のヤツは適当な柱に止まったとたんに本格的に鳴き出す体勢に入ったようだ。
 蝉が鳴き出せば真琴は起きる。蝉をどうにかするには、俺は真琴を降ろして、しっかり
と握られている手を解かなくてはいけない。
43午睡の窓に、夏の歌(4/9):2007/08/26(日) 09:58:27 ID:f/b0q6+s0
 どうする、祐一よ。悩んでいる時間はあまりない。や、真面目に悩んでいるよりは、静
かに真琴を降ろすのが先決だよな、と方針を決めたのと同時に。
『ジーージーージーージジジジジジジジ…』
 蝉のヤツが本気を出しやがった。
「っ! な、なにっ?」
 さすがにその声の大きさに真琴はすぐに目を開けて、頭を上げた……って、待て待て、
人の手を握ったまま無理に動こうと……。
「イテテッ」
「え? 何なのよっ!」
「手を離せって」
「え? 手?」
 蝉の鳴き声と、俺の叫び(と言うほど大げさではないつもりなんだが)が重なる中、寝
起き状態にある真琴は一層頭に疑問符を飾り立てている様子だ。
「えーっ、何で蝉がここにいるのよっ! それに何で祐一が」
 軽いパニック状態とでも言うのか、これは。まあ、気持ちよく寝てたところにいきなり
蝉の鳴き声を間近で聞くことになって、それで起こされたら今度は俺が「痛い痛い」って
騒いだりして(て、別に大騒ぎしたつもりはないんだが)状況がまったく理解出来ないっ
てのはしょうがないだろう。
「あー、いちいち大声でわめくなって」
 俺は相変わらず落ち着きのない真琴に向かって言った。だが、それは蝉と真琴のわめき
声に負けじと、知らないうちに大きめの声になったらしい。
「あぅ」
 俺に怒鳴られているかのように真琴が一瞬だけ体をすくませた。そんなつもりは微塵も
ないんだが、こうなっては何が原因で何が結果だとか言ってる場合でもない。
44午睡の窓に、夏の歌(5/9):2007/08/26(日) 09:59:42 ID:f/b0q6+s0
「別に怒ってるわけじゃないから、落ち着けって」
 まあ、よく分からなくて騒いでるヤツに落ち着けって言ってもほとんど意味はないだろ
うな。現に真琴は落ち着く気配なんてこれっぽっちもない。
「うー、蝉がうるさいー」
 小さい子供が昼寝を邪魔されてむずがるのと同じ……と言うか、実際そのまんまだな。
 やれやれ。
 こうなったら、俺に出来ることはあまりない。真琴が暴れるのを抑えることに専念して、
せいぜい余計な怪我をしないようにするくらいだ。
 と、そこでドアを開けて救いの手が差し伸べられた。
「どうしたの? いきなり大騒ぎになってるみたいだけど」
 秋子さんだ。これだけ大騒ぎになって、様子を見に来たのは間違いないのだが、その割
には表情にはさほど緊張と言うものがない。や、むしろ、笑っているくらいだ。
「秋子さん、蝉です、蝉!」
「あら、窓を開けたんですか。冷房弱めにしたのに、祐一さんには冷えすぎたのかしら」
 極めて簡潔に状況説明をしたつもりだったが、それだけでは足りなかったらしい。
「そうじゃなくて。窓が開いたのは単なる事故で、蝉が入ってきたのも偶然で、真琴がこ
うなってるのは」
「いきなり起こされて、どうしようもなくなってるわけね」
 回転が早いのか遅いのか。秋子さんのペースは相変わらず謎だが、状況の理解はしてく
れたらしい。ともあれ、理解してくれたなら後は簡単だ。
「真琴、大丈夫よ」
 秋子さんは優しく諭すように真琴に近づいて、そっと体を寄せていった。
 まあ、秋子さんだから、ってのは一番大きいところだとは思うのだが、真琴はそのひと
言だけで急に落ち着きを取り戻していく。
45名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 10:05:23 ID:SdcMT9XV0
ここって支援が必要だったりするっけ?
46午睡の窓に、夏の歌(6/9):2007/08/26(日) 10:07:39 ID:f/b0q6+s0
「あ、秋子さん…蝉……」
 なるほど。
 真琴自身に「落ち着け」と連呼したところで、何がどうなってるのか分かってないんだ
から、それだけでは効果なんてあるわけないってことか。
「蝉に驚いちゃったのね? 真琴の昼寝が邪魔されちゃったのは残念だけど、蝉は短い夏
を精一杯生きてる証に、精一杯歌うのよ。だから、許してあげてね」
 秋子さんに優しく抱きしめられながら、真琴は肯定の反応をしてみせる。
「あぅー……」
 あっと言う間に落ち着きを取り戻した真琴は、少しだけ照れくさそうにしながら秋子さ
んの抱擁に身を任せていた。
 見事だなと思う。実にいい場面だなとも思う。ただ、こうしてる最中でも蝉のヤツはそ
の鳴き声を止めようとせず、ひたすら蝉の暑苦しい鳴き声が響いてるってことさえなけれ
ば、最高だったろう。
 ごめんなさい、秋子さん。どうしても俺はこのやかましい鳴き声を「歌う」なんて優雅
な表現は出来ません。
 それからしばらくして。
 気を取り直してしっかりと起きた真琴と俺は、蝉を部屋から追い出したのだが、その後
何故か俺に対する糾弾が始まった。
「そもそも、祐一が悪いんだからね」
「蝉のことは偶然だ。それを俺のせいにされても……、ねえ? 秋子さん」
「真琴が言いたいのは、蝉のことじゃないのよね?」
 秋子さんにさりげなく同意を求めた俺に対して、秋子さんは真琴の味方に回ったようだ。
くそう。三人と言う構成は結局二対一の構図になってしまうのだが、今は俺が一になって
しまった。
47午睡の窓に、夏の歌(7/9):2007/08/26(日) 10:08:49 ID:f/b0q6+s0
「うん。真琴が昼寝するようなことになったのは、誰のせいだって言ってるのよっ」
「そりゃお前が夜更かししてるからだろ」
「違う!」
「祐一さん、まだ反省してなかったんですか?」
 反論を試みる俺に対して、秋子さんが心なしか冷たい反応を見せてくれる。その言わん
とするところはさすがに理解してるので、俺に反論の余地などない。
「う……そう言う訳ではないんです、はい……」
「じゃ、これからも真琴の昼寝にはちゃんと祐一さんが付き合ってくれるのよね」
「真琴、祐一よりも秋子さんがいい」
「あら…そんなことを言ってていいのかしら? 夜にわたしのところに来て、寝付けない
からと色々な話をしてたこと、言っていいの?」
「あ、あぅーっ! それ絶対ダメーっ」
 何も言い返せずにうつむく俺をよそに、真琴と秋子さんは何と言うか、ごく普通の母子
のありがちながら実に平和な会話なんぞを展開してくれている。まあ、真琴が秋子さんに
何を話していたのか興味は尽きないものの、どうせ「秘密よ」と言う返事で終わるだろう。
 相変わらず秋子さんの懐の深さに感服するとともに、こうまで仲のいい母子を見ると、
名雪のヤツはどうなるんだろうと、ちょっとばかりどうでもいい感想を抱かずにはいられ
なかった。ま、それもたぶん杞憂だろうけどな。
「はいはい。勿論祐一さんには内緒にしておくわね。と言うわけで、祐一さん、これから
も真琴の昼寝の時は、ちゃんと面倒見てあげてね」
「ええ、それは構わないですが……」
 と、そこで俺がばつの悪さを感じて、言葉尻を濁らすと、秋子さんは少しだけ表情を曇
らせた。
48午睡の窓に、夏の歌(8/9):2007/08/26(日) 10:09:46 ID:f/b0q6+s0
「祐一さん」
「はい?」
「真琴の部屋で大人げないイタズラを仕掛けて、夜に大騒ぎになったこと。責めるつもり
はないですけど、あなたはちゃんと面倒見ないといけないでしょ?」
「あはは」
 笑うしかない。責めるつもりはないって言いながら、日頃の秋子さんの言動からすれば、
これは十分な責めであって、それだけ秋子さんが本気で怒ってたってことだ。
「それに、単にそれを償いなさいと言うわけでもないのは、あなたにも分かってるでしょ
うしね」
「う……」
 勿論、それも分かっている。だからこそ、俺は真琴の昼寝に付き合ったわけだし。や、
それ以前に真琴が俺の横と言うか、俺の膝枕で寝付いていたことだって、俺には嬉しいこ
となわけだし。
「祐一、何カンチガイしてるのよっ!」
 秋子さんと俺の反応を見て、真琴が食って掛かるものの、それも何と言うか織り込み済
みの反応だ。
「ま、それはいいんですが、さしあたっての問題は俺は昼寝とかするような習慣はなくて
一人ぼけーっとしてるのもなぁっと」
「それもそうね」
「本でも読んでればいいんだろうけど」
「それなら」
 俺がごく当たり前の方法を挙げると、秋子さんは何やら思いついたように笑顔を見せた。
「何かいい案でもあるんですか?」
49午睡の窓に、夏の歌(9/9):2007/08/26(日) 10:12:22 ID:f/b0q6+s0
「昼寝じゃなくて、夜も一緒に寝ちゃえばいいのよね」
「あ、秋子さんっ」
「え……」
 俺は思わず叫んでいた。その言葉に隠された意味と言うものを一瞬であれこれ考えてし
まったからだが、叫んだ理由はほとんど照れ隠しに近いものだったろう。ちなみに、絶句
して、一瞬硬直したのは真琴だ。
「うふふ、冗談ですよ、冗談」
 俺たちの反応を見てから、秋子さんが笑う。しかし、それは真琴の耳には届いていない
らしかった。
「何で真琴が祐一と一緒にーーーーーーーっ!」
 さっきの蝉にも負けないくらいの大声で叫ぶと、部屋中を駆け回ると言うまさに全身を
使った表現までしてみせる。分かりやすいヤツだ。
「や、すでに『冗談ですよ』で収まる状態にないんですけど?」
 俺と秋子さんの周りをバタバタと走り回ったままの真琴を見ながら苦笑すると、秋子さ
んはこれまた実に穏やかな笑みを浮かべていた。
「あらあら、真琴ったらはしゃいじゃって」
「笑い事ではないと思いますが……」
 真琴が本気で嫌がってるのかどうなのかはまあともかくとして、これだけ大騒ぎしてる
のを平然と受け止めてる秋子さんはさすがだ。や、本当にそう思った。
 ちなみに、その日の夜、俺は結局……いや、これ以上は言わないでおこう。そうだな、
俺と真琴だけの秘密と言うことで。ただ、翌日の昼寝の時は俺も真琴同様にぐっすりと眠
ることになった、それだけだ。
50午睡の窓に、夏の歌:2007/08/26(日) 10:14:17 ID:f/b0q6+s0
以上、投稿おわり。

>>40-44,46-49 『午睡の窓に、夏の歌』(Kanon・真琴)

 5/9で連投規制に引っかかってしまいましたが、支援感謝!

 ところで、アンカーってこれでいいんだっけ?
51名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 11:00:43 ID:MIpgOaRV0
それでいいんじゃないかな。
一番いいのは>>5にある通り、
・投稿前宣言
・投稿
・投稿終了宣言、〆のアンカー
の順だけどね。

あと最初の投稿前宣言で総レス数がどれぐらいになるかを書きこむのが
締めきり間際だと意外と重要。
(他の人と被った場合、どれぐらい待てばいいのかの目安になる)
52 ◆jDSrDt4dys :2007/08/27(月) 23:37:50 ID:YMU3zVnr0
【告知】

現在、葉鍵的SSコンペスレでは投稿を募集しています。
今回のテーマは『昼寝』で、締め切りは 9 月 3 日の午前 0:00 です。
テーマを見て思いついたネタがあれば、ぜひ投稿してください。

また、次回のテーマは『秘密』で、開催時期は 9 月中旬になる予定です。
「二週間じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
53 ◆jDSrDt4dys :2007/08/27(月) 23:45:26 ID:YMU3zVnr0
>>過去ログ
保存&補完して下さった方、ありがとうございます。
そろそろ新しい保管庫の作成も考えないといけませんね……

>>50
はい、アンカーはそれで大丈夫です。

>>51
フォロー、どうもでした。
54 ◆jDSrDt4dys :2007/08/31(金) 00:44:03 ID:8ta5mRrw0
【告知】

現在、葉鍵的SSコンペスレでは投稿を募集しています。
今回のテーマは『昼寝』で、締め切りは 9 月 3 日の午前 0:00 です。
テーマを見て思いついたネタがあれば、ぜひ投稿してください。

また、次回のテーマは『秘密』で、開催時期は 9 月中旬になる予定です。
「二週間じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
55 ◆jDSrDt4dys :2007/09/01(土) 23:18:09 ID:/AbgxBA50
【告知】

締め切りまで残り一日となりました。
そろそろラストスパートをかけていきましょう。
今回のテーマは『昼寝』で、締め切りは 9 月 3 日の午前 0:00 です。

また、次回のテーマは『秘密』で、開催時期は 9 月中旬になる予定です。
「残り1日じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
56名無しさんだよもん:2007/09/02(日) 10:32:05 ID:jT/jzEwf0
締め切りを二時間ほどオーバーするかもしれません。
57名無しさんだよもん:2007/09/02(日) 23:14:07 ID:jT/jzEwf0
申し訳ないです、間に合いそうにありません。
58 ◆R4itejpWlg :2007/09/02(日) 23:58:18 ID:tRQQ00mV0
なにか自分でも妙なのを書いてしまいました。
痕SSで、『夢の迷い子』。6レスです。
んでは。

59『夢の迷い子』1/6:2007/09/02(日) 23:59:16 ID:tRQQ00mV0
 太陽が西に傾き始め、ようやく涼しくなってきた風に髪を遊ばせながら、楓は玄関をくぐった。
「ただいま」
 と、囁くような声に返ってくる答えは、一つもない。
 確か今日は、三人ともいたはずだけど……買い物にでも行ったのだろうか、と首を傾げながら、靴を脱ぐ。
 静かな家に、なんとなく遠慮して歩を進めると、――あ、やっぱりいた。
 居間の縁側に面した畳に、初音が丸まるようにして寝転がっている。
 その九十度横に、座布団を枕にして、だらしなく寝こけている梓が。
 正面では千鶴が机に突っ伏すようにして、やはり眠りについている。
 千鶴は久しぶりの休みだし、梓は部活動に日々の家事。初音は小さい体でその手伝いと、皆それぞれに疲れているのだろう。
 少し気温が下がってきたので、薄掛けを引っ張り出して、三人に掛けて回る。
 みんな眠っているのなら、たまには自分が夕飯でも作ろうか、と楓が気まぐれを起こしかけると――電話が鳴った。
 いや、鳴りかけた。最初の音が半秒響くか否かの内に、素早く楓は受話器を取っていた。 
 幸い、今ので誰かが起きた様子はない。わずかに千鶴が身じろぎした程度だ。
 ほっとしながらも、足音を忍ばせて、居間から離れる。
 さて、この無粋な相手は一体誰か。
「はい、柏木です」
『もしもし、あ、楓ちゃん?』
 それこそ三人が目覚めそうなほどに、心臓が高鳴った。
「耕一さん?」
『うん。久しぶり』
「はい……お久しぶりです」
 一段、声が小さくなる。もちろん三人が目を覚まさないように。
 だけど、その意図するところは、さっきとは少し異なっていた。
『あれ、ちょっと声が遠いな』
「今、三人とも寝ているんです。それで」
『ああ、そうなんだ』
「そうなんです」
60『夢の迷い子』2/6:2007/09/03(月) 00:00:19 ID:KRrJkG5r0
 さあどうしよう。なにを話そう。いや、それよりなんの用事だろう。
 元から無口な楓が、上手く言葉を選べずに迷っていると、
『来週の月曜からさ、そっちに行けそうだから』
「ほんとですか」
『うん。そっちの都合はどうかなって思って』
「大丈夫です」
 迷うことなくきっぱり答えた。耕一は電話口で苦笑しながら、
『いいの、楓ちゃんの一存で?』
「もしも他のみんながいなくても、私だけでもおもてなししますから」
 千鶴は会社があるし、梓も部活があるかもしれない。初音は……多分、空いているだろう。
 うん、でも初音ならいてもいいかな。そんなちょっとした打算も頭に昇る。
 楓はいつもと変わらない顔で、いつもよりはるかに浮かれていた。
『あはは、そりゃ楽しみだ』
 楽しみ、とまで言われては、さらに張り切りざるを得ない。
 以前、酔った耕一が、セーラースク水とかバニーとか言っていたが、やはりそこら辺の装備も検討するべきだろうか。
『じゃあ、楓ちゃんが料理作ってくれたりするんだ?』
 料理? 耕一の声には明らかに期待が含まれている。
 しかし普段、気が向いたときしか手伝わない楓は、梓は元より、初音にもその腕は及ばない。
 もちろん千鶴ほど壊滅的ではないが、ひいき目に見てもごく普通。気まぐれなので煮込み料理などには向いてない。
 あらためて、自分の料理レパートリーをひっくり返し、その少なさに、危機感を覚えた。
 ――やはり初音の力は必要だ。あらためてそんな確信を得る。だけど口では裏腹に、
「はい、任せてください」
 と自信ありげに答えてしまうのは、女のプライドの為せる技。
61『夢の迷い子』3/6:2007/09/03(月) 00:01:25 ID:KRrJkG5r0
 今のうちに、初音の協力を仰ごうか。そんなことを考えていると、不意に頭上に影が差す。
 笑顔を作りながらも、なぜかプレッシャーを与えてくるのは、いつの間にか目を覚ました千鶴だった。
 その後ろには、目を擦る梓と、小さくあくびをする初音も続いている。
 声が届いたのか、それともエルクゥのシンパシーでも働いたのか、千鶴は、
「耕一さん?」
 と問いかけ、頷き返すと、順番待ちをするかのように、その場で待機。梓、初音がその後に続いた。
 押し寄せるプレッシャーが三倍に。
『どうしたの、楓ちゃん?』
「あ、その……」
 プレッシャー増大。
「千鶴姉さん達が、目を覚ましたので」
 そういうと、耕一はなにもかも察して、
『えぇと……じゃあ、代わってもらえる?』
「はい……」
 受話器を渡した先で、なにやら喧騒があった気もするが、楓は無視して、居間に退避。
 この分では、当分、次の順番は回ってこないだろう。
 さっき自分で出した薄掛けにくるまって、ふて寝を決め込むことにした。
62『夢の迷い子』4/6:2007/09/03(月) 00:04:15 ID:KRrJkG5r0
 夢の中で、目を覚ました。
 窓の外は、一様に暗い。暗い中に、いくつもの輝きが群れている。
 その一角に、円形に切り取られた闇があった。
 ゆっくりと移動していく中で、その縁に光が宿る。白い輪郭線が、少しずつ深い青にとって変わられる。
 白いマーブルの混じった、青く、美しい宝石のような、星。
 手を伸ばすと、ちょうど掌に収まるほどの大きさに見える。
 その指先には、鋭利な爪が光っていた。刃のように光が反射して、一瞬、目を閉じさせる。
 視界が、暗転する――。
 ――風に吹かれて、瞳を開いた。
 薄く開いた目蓋越しに見えるのは、先のものより柔らかい青。
 身を起こしてみれば、周りを囲むのは緑一色。
 そこは草原だった。
 腰の深さまである草原は、ともすればどこかに迷い込んでしまいそうだ。
 なにかに引かれるようにして歩き出し、ほどなく、人影を見つける。
 背が高く、たくましい、この星の原住民。
 容易に狩られる民草の中で、果敢に抗い、命を分かち、愛し合った男。
 逆光で、表情がよく見えない。けれど笑っている。それが分かる。
 釣られるように自分も微笑んだ。その向こうに――炎が、燃え上がる。
 たちまちの内に、草原に炎が走る。いつしか空は暗く、嘲笑うような満月が空から見下ろしている。
 肉を切り裂く刀も、鉄をも引き裂く爪も、風に揺られる頼りない草葉には、効果が薄い。
 肩を並べ、突破口を開いては、逆巻く炎に遮られるのを繰り返す。
 心の中を、絶望に塗りつぶされたとき、不意に大地が割れた。
 そこには炎はない。代わりに闇が世界を一色に塗りつぶす。その闇の中に、二人は落ちていく。
 遠ざかっていく彼に向けて、懸命に手を伸ばす。あと少し、指が触れる、絡み合う、しっかりと握りしめる――。
 あまりにもあやふやな世界の中で、その手の感触だけが、確かなものに感じられる。
 光が、差した。
63『夢の迷い子』5/6:2007/09/03(月) 00:05:31 ID:KRrJkG5r0
「……楓ちゃん?」
 目を開けば、耕一がいた。確かめると、やっぱり掌には耕一の感触がある。
 固く強く、二度と離れぬように握りしめて。
 不意に視界が鮮明になり、窓の外を流れる景色と、規則的にレールに乗り上げる音が、聞こえてきた。
「耕一さん?」
「うん、平気? うなされていたみたいだけど」
 ああ、そうだ。やっぱり夢だ。夢だと分かっていたのに、いつしか夢だと分からなくなっていた。
 あれ、だけど変だ。どこから夢だったのだろう? 
 確かめるように、繋がった指を、軽く握り返す。
「ああ、これ、楓ちゃんが、その……そうしたがっているような気がしてさ」
 照れたような言い訳。だけどそれは間違ってないと、もう片方の手を添えて証明する。
 そうしている内に、思いだした。そう、今日は月曜日のはず。
 電話を横取られた腹いせに、生身の耕一を独り占めしようと、勝手に耕一を途中まで迎えに来たんだった。
 だけど自分は眠ってしまった。あんなにも楽しみにしていたのに。
 そのことを謝ると、「いや、楓ちゃんの寝顔が見れたし」なんて恥ずかしくも嬉しいことを言ってくれた。
「どんな夢を見たの?」
 説明したが、耕一はちょっと悩み顔。だけど自分でも少し混乱する。あの電話の光景は、夢なのか記憶なのか。
「夢の中で、夢を見たのかな?」
 えぇと、ちょっと違う。
「夢の中で、夢を見る夢を見たんです」
「……ややこしいな」
「そうですね」
「これもまだ、夢だったりして」
 そうかもしれない。切符は買った? いつ電車に乗った? 合流したのはどこ?
 楓はそれを、あえて無視した。
 目の前に耕一がいる。その方がよほど大事なことだ。いっそ夢なら覚めなければいい。
 今は自分が耕一を独占しているのだから。
64『夢の迷い子』6/6:2007/09/03(月) 00:06:48 ID:KRrJkG5r0
 だけど、
「楓――」
 遠くから、呼ぶ声がする。何度か、繰り返し。
 覚めたくない、眠っていたい。このまま眠りの中で、耕一と二人でいたい。
 やがて諦めたように遠ざかる足音、賑やかに近づいてくる足音。
 夢の中では耕一と二人でいられるのに、けれどそのいつもと違う重い足音が心を引く。 
「楓ちゃん」
 ほら。薄目が開いた。やっぱり、本物の現実の耕一がいい。
 あの時と同じように、逆光に眩んだ笑顔が、半覚醒した楓の心を揺り動かす。
 甘えるように手を伸ばすと、指先を軽く取られた。
 引かれて、引いて、身を起こす。
 触れ方は夢の中より頼りないのに、指紋さえ分かりそうなほどに鮮明な感触。
 あぁ、この人だ。
「いらっしゃい、耕一さん」
「ただいま、楓ちゃん」
 夢の余韻を残しながら、月曜の午後、楓は短い眠りから覚めた。
65 ◆R4itejpWlg :2007/09/03(月) 00:08:31 ID:KRrJkG5r0
以上です。ちょっと時間オーバーしてすみませんでした。
>>59-64『夢の迷い子』(痕・楓)
66 ◆jDSrDt4dys :2007/09/03(月) 02:00:17 ID:njHhn+e10
【告知】

ただ今をもって、投稿期間を終了させていただきます。
参加された書き手の皆様、どうもご苦労さまでした。

それでは、これから感想期間に入ります。
投稿された SS について感想、討論などをご自由に行ってください。
期限は 9 月 10 日の午前 0:00 までとさせていただきます。

以下が、今回投稿された作品の一覧です。

>>40-44,46-49 『午睡の窓に、夏の歌』(Kanon・真琴)
>>59-64『夢の迷い子』(痕・楓)
67名無しさんだよもん:2007/09/06(木) 21:17:43 ID:VUf13h/L0
『午睡の窓に、夏の歌』(Kanon・真琴)

結局、祐一は何をやらかしたんだ!
名雪は完全にのけ者になるのは、この手の作品(真琴メイン系)の宿命なのか。
と言うことで。
祐一視点の一人称、読みやすいと言えば読みやすいのだけど、体勢やその他状況説明に関しては、やや説明不足かと。午後の穏やかな状況を描きたいのは分かるけど、それが今ひとつ伝わってない感じ。
落ちに関してももう少しひねりが欲しいかな。


『夢の迷い子』(痕・楓)

呼び出し音を1秒も鳴らさずに受話器を取る楓ちゃんって何気に凄くね?
それに、相手がすぐに出て、それを一切気にしない耕一も。
と、それはさておき。
生活感があるようなないような、ちょっとふんわりとした空気が全体的に流れているみたいな不思議な作品。
夢の中で見る夢と言う形で、引きつける展開はオーソドックスではあるものの、十二分に楓らしさが出ていると思うので、言うことなし。
とてもよかった。


と言うわけで。
2本しかないけれど、優秀作品を選ぶなら、こっち>『夢の迷い子』
68 ◆jDSrDt4dys :2007/09/06(木) 21:38:17 ID:5zUSBC1c0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は>>66となっています。

感想期間は 9 月 10 日の午前 0:00 までとなっていますので、
まだの方は是非お願いいたします。
69名無しさんだよもん:2007/09/08(土) 22:27:56 ID:6mORlwat0
kannso-desu

・『午睡の窓に、夏の歌』(Kanon・真琴)
夜寝られない理由は大人のプロレスごっこじゃなかったのかー
悪戯とかそういう理由で眠れないってことなのかな?

全体的に話の流れがわかり辛いような。
スッと頭に入ってくるんじゃなくて、その都度立ち止まって頭を捻ってしまう。
みっちり書き込まれた情景描写は二重丸。

・『夢の迷い子』(痕・楓)
前半ニヤニヤ、後半しっとりと読めますた。
夢から覚めて、夢から覚めて、そして目の前に耕一。
迷ったかいがあったってのも変な言い方だけど、ラストの楓には「良かったね」
との言葉を送りたくなった。
70名無しさんだよもん:2007/09/08(土) 22:35:46 ID:EY5Kslyt0
コンペと無関係なレスですまんが。

>>67
>名雪は完全にのけ者になるのは、この手の作品(真琴メイン系)の宿命なのか。

あゆなゆまこぴセットで好きな俺としては
こんなこと言われるのは悲しい。
のけ者が必要ならアゴ男をのけ者にしときゃいい。
71 ◆jDSrDt4dys :2007/09/09(日) 00:40:20 ID:PPpuYvns0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は>>66となっています。

感想期間は 9 月 10 日の午前 0:00 までとなっていますので、
時間がありましたら是非ともお願いします。
72 ◆jDSrDt4dys :2007/09/09(日) 21:00:32 ID:PPpuYvns0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は>>66となっています。

感想期間は 9 月 10 日の午前 0:00 までとなっており、あと数時間しか
ありませんが、明日のSS職人のために是非とも宜しくお願いします。
73 ◆jDSrDt4dys :2007/09/10(月) 01:05:13 ID:C7Xxb+Pg0
【告知】

ただ今をもちまして、感想期間を終了させていただきます。
投稿された書き手の皆さん、感想をつけてくださった読み手の皆さん、
そして生温かく見守ってくれていた ROM の皆さん、どうもご苦労様でした。

引き続きこのスレでは、今回の運営への意見、書き手の挨拶、
次々回のテーマの決定などを行いたいと思います。

上記のもの以外にも感想期間に間に合わなかった感想や意見が
ありましたら、書きこんでください。

※次回のテーマは『秘密』に決定しており、開催時期は 9 月中旬になる予定です。
※今回決めるのは次々回のテーマです。お間違いのないように。
74 ◆jDSrDt4dys :2007/09/10(月) 01:15:40 ID:C7Xxb+Pg0
今回の最優秀作ですが、過去の例を見ますと二票以上得票した場合のみ候補を
選出するようだったので、今回は該当作無しとさせていただこうと思います。

あとコンペスレでは私に代わる進行役を募集しています。
我こそはを思われる方はぜひ応募のほど、宜しくお願いします。
75名無しさんだよもん:2007/09/10(月) 12:58:42 ID:L45yL0qh0
久々に見に来たら感想少ないな。
一発ネタじゃなくて書きこまれてる分、感想書きにくいんかな?

午睡の窓に、夏の歌は真琴のツンデレっぶりに吹いたw
夢の迷い子は耕一の言動に一喜一憂したりwktkしてる楓が可愛かった。

なんか両方書き手の希望に添わない読み取り方っぽいが、その辺容赦願えると有りがたい。
76『午睡の窓に、夏の歌』作者:2007/09/10(月) 19:13:01 ID:ahXmsUXF0
まずは感想感謝から。

>>67
何をやらかしたのかはネタとしてはあったのだけど、長くなるのを嫌ってあえてぼかしました。
それと、>>70にも。
名雪がのけ者になると言うより基本的にメインとなる女の子オンリーになる傾向があるので、のけ者になるのは真琴以外全部ですよ。て、秋子さんは別。女の子じゃないからってんじゃなくて、とにかくあの人は別格です。

>>69
寝られない理由は祐一があるイタズラを仕掛けたせいですが、その辺は前述の通りにカットしています。
67でも指摘された場面の分かりづらさは、自分本来の尺に合ってない長さに合わせた結果かも知れないです。
内容が大したことない割に、気がつくと100行を越えていて、「ああ、長いと発言するのも読むのも面倒かもなー」と情景描写を切り詰めたりしてたんですが……結果はこの通り。上手に切り詰めてつなげることが出来なかったのでしょう。

>>75
真琴のツンデレっぷり、堪能していただけましたら、それで十分です。ホントに。

振り返ってみて。
今回は作品が少なかった上に、その片割れが自分のだったりするので、反応の少なさも評価の一つだよなぁと真摯に受け止めることにします。
この作品、自分がこれまで書いていたシリーズの設定そのままの上に、書いてる自分のノリもシリーズものの一作と言う感じでした。その分、前提となる部分の説明を端折っていたりする傾向もあるので、単独作品として今ひとつなのは分かってました。

拙い作品ではありますが、お読みいただきありがとうございました。
77名無しさんだよもん:2007/09/11(火) 14:49:25 ID:Y26yo7iG0
>>67、70
マジレスすると真琴メイン系で名雪がハブられるのは原作から来ている。
シナリオライターが違うから真琴シナリオ中の名雪は影が薄く、名雪シナリオでは真琴は出て来ない。

特に>>70の好きなあゆ名雪真琴セットなんかは原作準拠では非常に成り立ち難い、ほぼ二次創作限定の
シチュだと理解しておいた方がいいぞ。
つか70は感想期間中に愚痴るなw
78名無しさんだよもん:2007/09/12(水) 08:37:37 ID:v0r9uldG0
名雪と真琴が仲いいのはここでも何度か書いたが、あゆも混ぜると難しいな。
79 ◆jDSrDt4dys :2007/09/13(木) 22:35:33 ID:DP7VxRq/0
【告知】

現在総括期間になっています。
総括期間は 9 月 17 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、書き手の挨拶、次々回のテーマ投票などは
それまでにお願いします。
80 ◆R4itejpWlg :2007/09/15(土) 22:02:31 ID:Q6ZDbwOQ0
こんばんはです。今回、「夢の迷い子」を書きました。感想ありがとうございます。
どうも今回のは目的意識に欠けていたというか、場面を繋いでいっただけで、
どことなくぼやっとしたものを書いてしまったような気がします。
もうちょっとはっきり、明らかに変というか不思議なものを書きたかった記憶はあるのですが。
なにか普通に萌えSSとして捉えられてしまい、萌えSSとして評価されてしまいました。
褒められているからいいのですが。いやいいのか、俺。
ここら辺を素直に受け止めていいか迷うところが、このSSが目的意識に欠けていることの現れであります。
ストレートな萌えSSとして書いていたなら、素直に喜んでいいところだし、
もっと違う狙いがあるのなら、修行不足を痛感するところだし。
むぅ。

あと、一つだけ。>>67氏に指摘された電話はですね、まぁ楓ちゃんが素早いというかすごいんです。きっと。
俺のイメージだと柏木家は未だに黒電話で、最初に「リン」って小さく鳴ってから、
「……トゥルルルル」の、……部分で取った感じでした。書いてませんね、書けてません。
耕一に関しては……うん、きっといつも楓ちゃんがこれくらいで取っているに違いない。きっとそうだ。
……ごめんなさいw

もう1本、ホワルバキャラが通りがかってベンチで昼寝大集団を作る話を、途中まで書いていたりしたのですが、
なんとなくそっちもただそれだけの話になりそうで、オチへのルートが見つからずに、途中でアウト。
意外と難しいテーマだった。

テーマといえば、次々回の。さっきふと思いついたのが「鏡」。
ひらがなにして「かがみ」にすると、らきすたのあの子も登場おkという極めて画期的なry
しかし思いついたはいいが、難易度高そうな予感。
後は秋と言うことで、「本」とか「虫」とかなんてのも。と別テーマをあげて逃げ道を作ってみる。

ではそんなとこで。お疲れさまでした。
8167:2007/09/15(土) 22:53:24 ID:T9p1Gqjc0
>>80
どことなくぼやっとしたものってのが、作品の雰囲気を出していたとするならそれがよかったんじゃないかと。(あくまでも個人的な評価だけど)
萌えと言うよりは、夢の夢と言う不思議作品系を目指した結果は十分出てると思うし。
感想としては、雰囲気云々よりは「楓ちゃん萌えですナ」の方が、言いやすいだけかと。

んで。
黒電話って今時ねぇよ!と言うのはさておき。
その説明を聞けば、まあ納得(一応、黒電話の鳴り方は知ってるので)できるとして。
まあ、耕一はあまり細かいことを気にする質ではないなぁと。

ともあれ。
面白い作品を読ませてくれて、ありがとさんでした。
82 ◆R4itejpWlg :2007/09/16(日) 01:54:13 ID:6uhnW+Kk0
>黒電話
まぁ俺も今時ねーなと思うんだけど、あの柏木家、うちの田舎の家と少し雰囲気が似ていて、
なんか昔あった黒電話のイメージがw 

冷静に考えると、当初のもくろみではもっと読者を混乱させるような方向性を目指していた気がするから、
むしろそんなネタを思いつかず、かえって今回のぐらいにぼんやりと抑えた方が、結果論だけど良かったのかもしれない。
もらった感想を見る限りでは。
なんていいかげんな。
83 ◆jDSrDt4dys :2007/09/16(日) 10:31:17 ID:sD1pFKkV0
【告知】

現在総括期間になっています。
総括期間は 9 月 17 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、次々回のテーマ投票、その他意見がありましたら
それまでにお願いします。
84 ◆jDSrDt4dys :2007/09/17(月) 02:58:10 ID:hXfDOMzD0
【告知】

第六十六回投稿テーマ:『秘密』

投稿期間: 9 月 17 日の午前 0:00 から 10 月 1 日の午前 0:00 まで。

テーマを見て、思いついたネタがあればどんどん投稿してみましょう。
面白い作品だったら、感想がたくさんついてきて(・∀・)イイ!!
もちろん、その逆もあるだろうけど……(;´Д`)

※投稿される方は >>4-6 にある投稿ルール、FAQ をよく読んでください。
※特に重要なのが

・テーマに沿った SS を*匿名*で投稿する
・投稿期間中は作品に対して一切感想をつけない

の二点です。他の各種 SS スレとは異なりますのでご注意を。

それでは、投稿開始っ!
85 ◆jDSrDt4dys :2007/09/17(月) 03:08:27 ID:hXfDOMzD0
あと次回のテーマですが、80氏に推薦頂きました『鏡』にしたいと思います。

開催時期は 10 月中旬を予定していますので、「二週間じゃ書けない」
「昼寝でネタが思いつかない」という方は、こちらのテーマで
ネタを考えてみてください。
86 ◆jDSrDt4dys :2007/09/25(火) 21:38:29 ID:e9J1IR0V0
【告知】

現在、葉鍵的SSコンペスレでは投稿を募集しています。
今回のテーマは『秘密』で、締め切りは 10 月 1 日の午前 0:00 です。
テーマを見て思いついたネタがあれば、ぜひ投稿してください。

また、次回のテーマは『鏡』で、開催時期は 10 月中旬になる予定です。
「二週間じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
87 ◆jDSrDt4dys :2007/09/28(金) 23:27:35 ID:evRk1maO0
【告知】

締め切りまで残り二日となりました。
そろそろラストスパートをかけていきましょう。
今回のテーマは『秘密』で、締め切りは 10 月 1 日の午前 0:00 です。

また、次回のテーマは『鏡』で、開催時期は 10 月中旬になる予定です。
「残り数日じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
88 ◆jDSrDt4dys :2007/09/29(土) 23:43:43 ID:SwgE0kik0
【告知】

締め切りまで残り一日となりました。
最後の追い込み、がんばっていきましょう。
今回のテーマは『秘密』で、締め切りは 10 月 1 日の午前 0:00 です。

締め切りを越えて投稿をしそうな方は、前もってお知らせください。
よほどの事がない限りは善処させて頂きます。
89名無しさんだよもん:2007/09/30(日) 23:57:08 ID:bzrF339q0
申し訳ありません。
投稿作がもう完成して、
今見直ししてるので締め切りはちょっとだけ待って下さい。
90 ◆xUktyQHlko :2007/10/01(月) 00:06:32 ID:+4HHuRu90
>>89です。お待たせして申し訳ありませんでした。
今から投稿開始します。
タイトルは『かくれんぼ』。
原作はクラナドで登場人物は朋也と杏。
91かくれんぼ 1:2007/10/01(月) 00:07:21 ID:+4HHuRu90
 地震でも起きれば今にも潰れそうなこのボロアパート。
 ここで俺が杏と同棲するようになってからもう三年ほどになる。
 高校の頃からの付き合いも入れれば、もう十年近い関係になるわけだ。 
 とはいえ、高校からずっと俺と杏との交流が続いていたわけではない。

 杏を再会したのは単なる偶然だった。
 高校を卒業した俺は、あの親父から逃げ出すように家を飛び出した。
 でも世間はそう甘くない。
 俺は仕事先を二回クビになり、その後は約半年のバイト生活。
 築三五年・六畳二間のボロアパートが俺の城だった。
 その家賃すらロクに払えず今日食べる飯にさえ困る日々を初めて経験し、社会の厳しさを知った。
 小さな工務店の親方に面倒を見てもらう形で弟子入り。 
 そこでの生活がやっと安定しだした頃だ。俺が杏と再会したのは。


 その杏の態度が今朝からどうにもおかしいのだ。
 休日だというのに朝早くからいそいそと何処かへと出かけていった。
 そして帰ってきてからはなにやら呆然とした表情で宙に視線を彷徨わせつつ、ぶつぶつと何事かを呟いているようだった。 
 声を掛けても返事が無い。
 ほっぺたを『ふにぃ』となるまで引っ張ってみたが、これまたなんの反応もなし。
 生きてるのか? こいつは。
 試しにお茶を出してみた。82度くらいのすげえ熱いやつ。
 おおっ。ごくごく飲んだぞ?!
 すげえ。なんでヤケドしないんだろ。
 今度はお茶にカラシとショウガを入れてみた。さすがにこれは飲めないだろ……
 うわっ。一口で飲んだぞ。
 すげえ。なんで気が付かないんだ??
 俺のいれた無茶苦茶なお茶を飲み干した杏は『はあ……』カラシとショウガの臭いがする溜息をつきながら、まだぶつぶつと何事かを呟いている。
 こんなことすればいつもの杏なら血の雨を降らせてもおかしくないはずなんだが。 
 どうしたもんかねえ……これは。
 
92かくれんぼ 2:2007/10/01(月) 00:08:42 ID:+4HHuRu90
「朋也」
「お、おう」

 唐突に名前を呼ばれて心臓が止まりそうになる。
 さっきのトッピングがばれたのだろうか。

「あのね……あの……」
「な、なんだ?」
「…………」 

 しばし杏はまた口ごもる。
 そしてやっと口を開いた。

「あ、あのね……かくれんぼ、しない? いま、ここで」

 唐突に提案したその声は、何故だか搾り出すような言葉で紡がれた。

「……はあ? かくれんぼ?」

 この状況で、その言葉の意味が一瞬俺には分からなかった。
 
「かくれんぼって……この部屋でかよ……」

 自分が座るこの部屋をつい見渡してしまう。
 六畳一間の俺の城。はっきり言って手狭である。
 大の大人がまともに隠れる場所など何処にも無いようにしか見えなかった。
 まともな勝負にはならないはずだ。
 
93かくれんぼ 3:2007/10/01(月) 00:10:17 ID:+4HHuRu90
「ほんとに? ここでやるのか?」  
「うん。で、朋也が鬼」
「……どうして?」
「ど、どうしても」

 意味が分からん。
 だが、どうにも断ることは難しそうだった。
 何故だか杏はいまにも泣き出してしまいそうな顔でずっと俺の返事を待っているのだ。
 そんなにかくれんぼがしたいのか?
 ああ、分かったよ。やればいいんだろ。 

 そしてやはり杏を見つけることは非常に簡単だった。
 杏は寝室の押入れの中に隠れていた。それを見つけるのに一分とかからなかった。

「ほら、みつけたぞ」
「う、うん……やっぱりみつかったね、簡単に」
「当たり前だろ」

 杏の手を引いてかびた匂いがする押入れから引っ張り出してやりながら俺は答えた。
 六畳二間のこの部屋に大人一人が隠れられる場所なんてたかが知れてる。
 こんなかくれんぼ、どう考えても意味などないはずだ。

「お前がなにを考えているのかよく分からんが……とりあえず見つけてやったぞ。これでいいのか?」

 俺は杏が事情を説明してくれることを期待していた。だがしかし。
 
「ま、まだ、まだ見つけてない……」
「はあ?」
「あのね、もう一人、隠れてるから見つけて欲しい」
「もう一人?」
94かくれんぼ 4:2007/10/01(月) 00:11:12 ID:+4HHuRu90
 思わずこの部屋を見渡してしまう。
 勿論、俺と杏以外の奴がこの部屋に気配は無い。

「この部屋に、他に誰か居るのか?」
「う、うん……」
「……な、何で? 誰が??」
「……」

 杏は答えない。
 俺は首を捻るしかなかった。
  
 探して欲しい、と杏は言った。でも何を探せば?
 今朝から杏をおかしくさせている理由ときっと無関係ではないだろう。

 杏はなにかしらすがるような目で俺のことを見つめていた。
 しかし俺にどうしろというのか。
 探すこと以外になにも思いつかない。
 だから探す。
 屋根裏まで開けてみた。中にいるのはネズミだけ。
 床下は人が入れるような場所でもないし。
 トイレにもゴミ箱の中にも、戸棚にもなにもない。
95かくれんぼ 5:2007/10/01(月) 00:12:13 ID:+4HHuRu90
 全部調べた。もう、人が隠れることが出来るような場所は何処にも無いはずなんだが。

「居ないよなあ。誰も」
 
 この部屋の中に誰かが隠れているってことは、どう考えてもないはずだ。
 しかし、杏が嘘をついているわけではないだろうし……
 いったいこの部屋に何が隠れているというんだろう。
 足りない頭でなんとか思いついたのは『ボタンでもどっかに隠れてるのか』ってことぐらい。
 この部屋のどっか狭い場所にあいつを隠してるのか?
 いや、それも無理だろう。
 ボタンも随分大きくなっちまったもんな。子供の頃ならいざ知らず……


 …………
 え……まてよ。
 お、俺、答えがわかったかも?!
 いやいやでもまさか
 どうして、だけどそういう話もしてたし
 ……ほんとに?
96かくれんぼ 6:2007/10/01(月) 00:12:53 ID:+4HHuRu90
 頭の中に浮かんだ思考が形をまだ成さない。
 でもそのまま思いに突き動かされて、俺はその手を杏に伸ばした。
 意識もせず、その場所に手が触れる。 
 杏の下腹。
 そこに俺の手が触れたとき、驚きに見開かれた杏の瞳と視線がぶつかった。

「……杏?」
「うん……」 

 頷いた。
 ああ。そうなんだ。
 やっとみつけた。
 うん。
 つまりだ。あれか。
 もう一人いたんだよ。杏のお腹の中に。

 ああ、でもそうかあ。気が付かなかったなあ。
 でも……ああ、そうなんだ。
 そっかああ……

 そんな言葉にならない思いを俺がかみ締めていたその時。
 ふとすすり泣くような声が聞こえた。
 我に返ってみると、杏が鼻水垂らして泣いているではないか。

「うわっ?! なんでお前そんな泣いてんの??」
「だ、だってぇ……ひっく」  

 涙も鼻水も拭く暇もなく、彼女はそのまま泣き。
 うわあ。これはまいった。
97かくれんぼ 7:2007/10/01(月) 00:14:29 ID:+4HHuRu90
 彼女泣き止むまで小一時間ほどかかった。
 まあ、よくあんなにも泣けるものだと正直思わんでもない。

「ごめんね……」
「いや、別にいいんだけどさ。まあ、仕方ない」

 やっと涙が落ち着いたその後で。
 俺は杏に尋ねておきたいことが一つあった。

「あのさ、なんで言えなかったんだ?」
 
 聞くのもまずいかもと思ったが、どうしても気になっていたこと。
 困ったような微笑を浮べながら杏は言った。

「あのね、自分がもしかして妊娠したかもしれないって気が付いたら、もう頭の中真っ白になっちゃって」
「うん」
「お医者さんに行ったら、やっぱり出来てるって。
 でも、あたしその時自分が嬉しいかどうかもわかんなかった。
 おかしいよね。子供のことだってちゃんと話し合って決めておいた筈だったのにね」
「そうだな」
「だからね、朋也に言わなきゃって思っても、言えなかったの。
 でも、朋也が見つけてくれたら初めて嬉しいって思えた。
 すごく嬉しかった。 
 そうしたら、もう涙が止まらなくなっちゃって……」
98かくれんぼ 8:2007/10/01(月) 00:15:05 ID:+4HHuRu90
 言いながら、また涙ぐみそうになってしまう杏。
 いや、泣くなよ? 泣くなよ……ああ、泣いちゃったあ。
 まあ、きっと保育園の先生なんかやってるといろいろと思うところがあるのだろう。
 いや。先生でなくたってきっとそうだよな。
 だって子供が産まれたんだもんな。いや、まだ産まれてはいないが。 
 

 しかし、まいったな……
 まだ泣いてる杏を前にして、こんな時になんて言えばいいのか。
 頭の中に思い浮かぶのは恐ろしく陳腐な言葉だけだった。
 でも妊娠して泣いている妻が隣に居て、夫が黙り込んで居るよりはよっぽどマシだろう。
 だから俺は言ったさ。

「あのさ、元気な赤ちゃん、産んでくれよ」

 ……こんなことしか言えないものなのかね。俺も。
 まったく。
 本当に、恥ずかしくてたまらなかった。



 その次の日には、杏はもういつもの杏に戻っていた。
 寝起きの悪い俺をたたき起こし、俺に飯を食わ、せ身なりを整えさせ、自分もちゃっちゃと用意して保育園へと出勤していく。
 いつも通りその姿のたくましいこと。
 昨日のしおらしさは俺の見た幻かなにかだったのだろうかと思わせるほどだった。
 俺と杏の日々もそうたいして変わらない。
 子供の名前を何にするか。男の子がいいか女の子がいいか。
 そんな激しいながらも意味の無い夫婦喧嘩を今日も明日もまた繰り広げる。
 そんな騒ぎももうしばらくは続くのだろう。
 二人の子供が生まれて来る、その日まで。
99 ◆xUktyQHlko :2007/10/01(月) 00:18:00 ID:+4HHuRu90
以上です。
>>91-98 クラナド『かくれんぼ』(朋也・杏)
締め切り過ぎてしまって申し訳ありませんでした。
100 ◆BIlqN0j.zM :2007/10/01(月) 00:18:38 ID:Dd7UPQpq0
締め切り遅れてすいません、自分も今から投稿します。

タイトル:折原母娘の秘密
元ネタ:鎖
キャラ:明乃、志乃、恭介
長さ:4レス
101折原母娘の秘密1/4 ◆BIlqN0j.zM :2007/10/01(月) 00:20:26 ID:Dd7UPQpq0
 折原明乃は、口に入れたそうめんを全部飲み込むと、今度は喋るために
口を開いた。
「お母さん、今日は恭ちゃんが夕ご飯食べに来るから」
 学校は夏休み前の午前授業なので、彼女は自分の家で昼食を食べてい
る。母親の志乃も、仕事が一段落ついたとかで今日は休みをとっていて、今
は一緒にそうめんを食べている。
「恭介くんが? ちはやちゃんも来るの?」
 母親が仕事で忙しく、いつも妹と二人で食事をしている恭介がよそで食べ
たら、彼の妹のちはやは一人で留守番することになってしまう。当然一緒に
来るものと考えて、志乃は顔を上げて娘に訊ねた。
「ううん。ちはやちゃんが友達の誕生会でいないから、一人で寂しいと思って
誘ったの。うちは今日はお母さんもいるし。いいでしょ?」
 志乃がいなかったら、さすがに明乃は恭介を誘わなかった。そんなことを
したら、この家で恭介と二人きりになってしまう。彼への好意はあっても、明
乃にそこまでする勇気はなかった。
「ええ、もちろん。それじゃ今夜は腕によりをかけておいしい物を作らないとい
けないわね」
 志乃は微笑みながら言うと、
「それとも、母親とはいえ他の女の作った料理を恭介くんがおいしそうに食べ
るのはイヤかしら?」
「お、お母さんっ!」


 夕方。母娘二人は買出しに近所のスーパーまで来ていた。夕食の材料を
用意する時間帯なので、結構込んでいる。
「ねぇお母さん。恭ちゃんの好きな物って何かな?」
 明乃は手持ち無沙汰になって、キャベツを手に取っている志乃へ話しかけ
た。志乃が笑いながら応える。
「へぇ、明乃もそんな年頃になったんだ。お弁当でも作るつもりかしら?」
「違うー。これは単に友達として聞いてるの!」
102折原母娘の秘密2/4 ◆BIlqN0j.zM :2007/10/01(月) 00:21:32 ID:Dd7UPQpq0
 子供っぽく頬を膨らませた娘に苦笑しながら、志乃は会話を続けた。
「でもそんなの、恭介くんに直接聞けばいいんじゃないの?」
「好きな食べ物はカレーって言ってたけど……。そういうのじゃなくて、もっと
こう、なんていうか……」
「ああ、まあ確かにカレーって言われても困るわね。しょっちゅう作っても飽
きちゃうし、それにお弁当に入れられないから」
「だから……。もう、お母さんのバカ」
 これ以上からかって拗ねられても困るので、志乃は質問に答えることにし
た。
「そうね、恭介くんは結構辛いのが好きみたい。カレーが好きっていうのは、
それもあるんじゃないのかしら」
 折原家も香月家(恭介たちの家)も、母親が一人で子供を育てている。だ
から、どちらかの仕事が休みのときは、互いの子供を家に招待することが多
い。志乃が恭介に料理を作る機会も結構あったりする。そのときの食べっぷ
りで彼の好物は大体分かる。
 観察力が欠けているのか、同じく同席しているはずの明乃には分かってい
ないようだが……。
「へー。そうなんだ。あ、豆乳も買わないと」
「もうなくなったの? ……いちおう言っておくけど、辛いのが好きっていって
も限度があるからね。何でもかんでも唐辛子入れればいいってもんじゃない
わよ」
「や、やだなー、お母さん。あたし、そんなにおバカさんじゃないよー」
 好物の豆乳をかごに入れながら、明乃は母からの疑いの言葉を首を横に
振って否定した。内心『それなら豆板醤を塩コショウの代わりに使おうかな?』
と考えていたのは、彼女だけの秘密だ。
「それで、いつ作ってあげるの?」
「べ、別に、いつってわけじゃないもん。ただ、機会があればってだけで」
「ふーん。やっぱり作ってあげようとは思ってるわけだ」
「あー、うー、むー」
 明乃は否定しようとして、言葉を口に出せず、空気を振るわせたのは意味
不明な音だけだった。結局否定の代わりに、少し強い口調で志乃に釘を刺
した。
103折原母娘の秘密3/4 ◆BIlqN0j.zM :2007/10/01(月) 00:22:28 ID:Dd7UPQpq0
「今の話、恭ちゃんには秘密だからね」
「分かってるてば。言わないわよ」


 買い物が終わり、家の前まで戻って来たところで、明乃は唐突に思い出
した。
「あーっ。そういえば、学校にノート忘れてきちゃった!」
 最後の授業で使ったノートを鞄に入れた覚えが、明乃にはない。
「明乃……。どうするの?」
「うーん……今から取ってくる。あれないと宿題が大変だから」
「分かったわ。気をつけていくのよ」
「うん」

 特に何事もなく、明乃は三十分ほどで学校まで往復してきた。左手にノー
トを持って、鍵を回す。
「ただいまー」
 明乃は声をかけて、玄関を開けた。既に夕食の準備を始めているのか、
食欲をそそる匂いが彼女の元まで漂う。それにつられ、取ってきたノートを
居間に置いた後キッチンに入る。
 そこには意外な光景があった。
「あれ? どうして恭ちゃんがキッチンにいるの?」
 キッチンに見慣れた少年がいるのを見つけると、明乃は首を傾げて訊ね
た。夕食を食べに来てと明乃が誘ったのだから、彼がこの家にいるのは別
におかしくない。しかし普通に考えたら、彼はキッチンではなく居間にいる
はずだ。
「あ、ああ。ちょっと手伝ってたんだよ。志乃さん一人で全部やるのは大変
だろ?」
「恭ちゃんが?」
104折原母娘の秘密4/4 ◆BIlqN0j.zM :2007/10/01(月) 00:23:28 ID:Dd7UPQpq0
 妹と二人で家事を分担している恭介の家では、彼も普通に家事をやって
いるのは知っている。しかし普段は基本的にめんどくさがり屋なので、明乃
はわざわざ彼が他人の家まで来てるときに、調理の手伝いをするとは思わ
なかった。志乃にしたって、いくら親しい間柄とはいえ、家に招いた客に手伝
わせたりしないだろう。
 訝しげに明乃が聞き返すと、恭介は焦ったようにどもりながら応える。
「そ、そうだよ。今日は料理をしたい気分だったんだ」
「……なんか怪しい」
「ど、どこも怪しくなんかないぞ」
「……じー」
 明らかに怪しかった。明乃がじとっと恭介を見ていると、彼をかばうように
横から声がかかる。
「明乃。恭介くんと話してないで、帰って来たなら手伝って」
「あ、うん。……あれ? お母さん、ボタン掛け違えてるよ。それに、髪の毛
もちょっと乱れてる」
 志乃の言葉に恭介との会話を中断して彼女の方を見ると、どこか違和感
を覚えた。ちょっと観察して理由に気づくと、それを口に出した。
「え、あ、ほ、ほんと。ちょっと直すから、あなたはスープ見てて」
「うん」
 明乃は素直に返事をして、コンロのそばまで行った。だから彼女は、背後
で二人が安心したようにため息をついたことには、全く気がつかない。
105 ◆BIlqN0j.zM :2007/10/01(月) 00:25:58 ID:Dd7UPQpq0
以上>>101-104
『折原母娘の秘密』でした。

◆jDSrDt4dysさん、ご迷惑おかけします。
106 ◆jDSrDt4dys :2007/10/01(月) 02:37:58 ID:A+TKyhpe0
【告知】

ただ今をもって、投稿期間を終了させていただきます。
参加された書き手の皆様、どうもご苦労さまでした。

それでは、これから感想期間に入ります。
投稿された SS について感想、討論などをご自由に行ってください。
期限は 10 月 8 日の午前 0:00 までとさせていただきます。

以下が、今回投稿された作品の一覧です。

>>91-98 『かくれんぼ』(CLANADO・朋也、杏)
>>101-104 『折原母娘の秘密』(鎖・明乃、志乃、恭介)
107 ◆jDSrDt4dys :2007/10/01(月) 02:44:21 ID:A+TKyhpe0
あと私信ですが、

>>99氏、105氏
いえいえ、私も少し外出していましたので、
全然気になさらないで下さい。
むしろ締め切りぎりぎりまで執筆してくださって
ありがとうございます。
108名無しさんだよもん:2007/10/02(火) 08:26:19 ID:8HYgB9A20
『かくれんぼ』(CLANADO・朋也、杏)

朋也、鈍すぎ。もう一人いるから見つけて、と言われた時点ですぐに気づけ。ボケ。
杏、そんなに悩むな。と言うか、相手が朋也だから悩むのも仕方ないか。
生まれてくる子供が不幸でなければいいな。

六畳二間のぼろアパートでの貧乏生活と、杏との再会との関連が何も書かれていない冒頭部。
背景の説明としては必要だったのかも知れないけど、この貧乏生活の下りが後の展開(特に主題となる子供について)にあまり寄与していないなら、あっさりとすましてもよかったかも知れない。
と言うのも、杏が朋也のイタズラに対して無反応になってるだけの理由が、「どうやって子供のことを朋也に気づかせるか」だけでは弱すぎる気がする。
子供が出来た嬉しさだけではなくて、朋也との暮らしの中で漠然と感じた不安とか、家族のこととか色々な気持ちが交錯してるのではないかと読み取れるだけに、全体の構成を含めてしっかりと書いてくれたら、もっと良かった。


『折原母娘の秘密』(鎖・明乃、志乃、恭介)

鎖は未プレイゆえに、作品から読み取れる範囲で感想を。
てっきり料理についての秘密(隠し味とか)が出てくるのかと思ったら、あの終り方では母親プレイ(原作では親子丼もか?)でもしてたんだろうか。
と言うか、娘をからかうお母さん、余裕綽々なのが非常にいいね。

前半のほのぼのムードの流れと、締めのやや険悪なムードの差がしっかり書き分けされている。
(明乃視点なので)最後まで普通の仲のいい友達親子みたいな感じで書かれているので、志乃のしたたかさが一層協調されている感じがする。文章については申し分なし。
ただ何か最後が尻切れトンボみたいな印象で、いきなり終わっている感があったのが残念。
もう一節くらい文章が続きそうな感じと言うか、何かしらその後の展開を匂わすものが欲しかった。
109 ◆jDSrDt4dys :2007/10/05(金) 00:29:35 ID:QseQD9pz0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は>>106となっています。

感想期間は 10 月 8 日の午前 0:00 までとなっていますので、
まだの方は是非お願いいたします。
110名無しさんだよもん:2007/10/05(金) 16:05:03 ID:kwepwSy00
「かくれんぼ」はニレス目でオチがわかったよ!
良い話で長さを感じさせないんだけど、もう一つ二つ波瀾があるとよかったかな!

「折原母娘の秘密」はタイトル見た時ONEのSSかと思ったよ!
二人とも30分以内に全て終えるって早過ぎなんじゃないかな!
111 ◆jDSrDt4dys :2007/10/06(土) 11:07:54 ID:Rgtnlrjz0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は>>106となっています。

感想期間は 10 月 8 日の午前 0:00 までとなっていますので、
時間がありましたら是非ともお願いします。
112名無しさんだよもん:2007/10/06(土) 23:49:41 ID:5/IxuzIv0
・『かくれんぼ』(CLANADO・朋也、杏)
ええ話や…。朋也、杏を幸せにしてやれよ!
と、ラストでホロりとさせられたんだけど、なにか物足りない。
そうか、この締めは綺麗過ぎるんだ。
俺の心が汚れてるのかもしれないが、これでは消化不良なんだっ。

最後泣いてた杏が、「それはさておき、朋也。あんた、さっき何を飲ませたのかしら?」
とか言うようなドタバタ系の落ちだったら盛り上がったような気がしないでもない。
と、個人的感想。

・『折原母娘の秘密』(鎖・明乃、志乃、恭介)
平坦な描写がいいね。
仲の良い家族の会話も、読んでいて何か薄ら寒い感じに思えてくる。
4レスで丁度「起承転結」になってるのも面白い。

それにしても鎖、さわりしかプレイしてないんだが、恭介ってこんなに見境ない奴だったのか…。
113名無しさんだよもん:2007/10/07(日) 00:07:30 ID:Lo8YIVua0
CLANNADだろ、おまいら……
114 ◆jDSrDt4dys :2007/10/07(日) 20:17:31 ID:S2iZCtbp0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は>>106となっています。

感想期間は 10 月 8 日の午前 0:00 までとなっており、あと数時間しか
ありませんが、明日のSS職人のために是非とも宜しくお願いします。
115 ◆jDSrDt4dys :2007/10/07(日) 20:22:46 ID:S2iZCtbp0
>>113
あ、本当ですね。ローマ字直打ちしていました。
指摘サンクスです。
116 ◆jDSrDt4dys :2007/10/08(月) 01:22:39 ID:FBvRn8qi0
【告知】

ただ今をもちまして、感想期間を終了させていただきます。
投稿された書き手の皆さん、感想をつけてくださった読み手の皆さん、
そして生温かく見守ってくれていた ROM の皆さん、どうもご苦労様でした。

引き続きこのスレでは、今回の運営への意見、書き手の挨拶、
次々回のテーマの決定などを行いたいと思います。

上記のもの以外にも感想期間に間に合わなかった感想や意見が
ありましたら、書きこんでください。

※次回のテーマは『鏡』に決定しており、開催は 10 月 15 日からを予定しております。
※今回決めるのは次々回のテーマです。お間違いのないように。
117名無しさんだよもん:2007/10/10(水) 21:53:55 ID:MeJDrJGP0
=三≪: : : :. :/     /   ,イ: i |   |    ≪三三三三三三三
=三三|!: :. ://  ,'   ,'   / | i |   |   i   }}三三三三三三=
=三三》: : /,'   i:   i   / | /| :! _ -ーi─'Ti :| !勹}三三三三三三
.三三《 : :i i :  |  i: _厶‐ナ i/  ,rァ≠=≪| | 《三三三三三三=
=三三{{: :| | i   | イ´/___/  ,′   |   :〉 | |  ̄》三三三三三 
=三三{{: :| | l      jf'' ̄〈`       !__/ | |  :}《三三三三三= スレに誰もいませんよ?
=三三_!| |    \,八   }             jノ| i/ _三三三三三
=三三三》 i ヽ.   \ゝイ´   、         j/|   d三三三三  
=三三三_   \   \     __      /|     《三三三=
三三三三d\.  |\-=≦      ´      イ | i   | }}三三三
三三三三三}} \| |   \、      __..∠r┴-| i   | ii三三三
=三三三三三_ | |   |┴ミ>'´ ̄       _| |   ト、 う)三三
=三三三三三三}_j : |i  :| /     _ -=  ̄ | |   | 《三三三
:=三三三三三三《 ,リ   ! |     /       | |   |  》三三三
:三三三三三三三≫   | |   /     -=.ニ二|ノ   |  _三三=
118 ◆xUktyQHlko :2007/10/10(水) 22:03:00 ID:4TjQsAWT0
 今回、『かくれんぼ』を投稿しました。
 実はこのネタは最初は佐祐理さんでやるつもりでした。
 その時にはもっとほのぼの系としての話を考えていたんですけど。
 杏を選んだのは泣かせる時のギャップを出すためでしたけど、それはあんまりいい結果にならなかったかもしれないです。
 
 >>108
まあ、振り返ってみれば貧乏生活を細かく描く必要はないかもしれません。
 この設定だと杏が泣いた理由も不安からくるものだと感じさせてしまうわけですか。
 意図としては、貧乏生活は同棲物の定番だからこの設定にしてしまったというだけだったんです。
  
 >>110
 皆さん随分早くオチに気付かれるみたいですね。
 その辺は想定外でした。
 もっとヒントを減らした方が良かったかもしれないです。

 >>112
 綺麗過ぎるって言われるくらいなら、もっと臭いセリフを連発して泥臭いSSにしたかったと思うくらいです。
 その辺のさじ加減っていうのは書いて誰かに読んでいただかないと全然分からないものですけど。
 
 以上、感想レスとさせて頂きます。
 読んで下さった方々、進行役の◆jDSrDt4dys様、
 どうもありがとうございました。
119 ◆BIlqN0j.zM :2007/10/11(木) 08:47:03 ID:BBY8OKt70
『折原母娘の秘密』を投稿した者です。
何故か嫌われることの多い明乃を主人公にして書きました。
時期的にはゲーム本編の始まる少し前の時期(7月初頭あたり)を想定しています。
最初に終わりの部分のネタを考えて、他は後から肉付けしていきました。

>>108
褒めていただきありがとうございます。
志乃は明乃の母親ですから、ゲーム中で明乃がちらっと見せたあざとさをやや強く出してみました。
最後、物足りなかったですか。
言われて改めて読めばそんな気もします。
今後もっと精進します。

>>110
明乃が来ないうちに終わらそうと、祐一並みに頑張ったんです><

>>112
前半で明乃のたわいない「秘密」、後半のオチで志乃の「秘密」という構成にしてみました。
原作の恭介は、友達が襲われてる所見て、しまぱんに注目するくらいには鬼畜です。
ただ、恭介が志乃と関係を持っているという描写はありません。
恭介が志乃の携帯の番号を知っていて、知っていることを他の人に知られたときの反応が、
何か後ろめたいような感じだったのでこんな話を作りました。
ちなみに原作中においては、志乃は早々と再起不能になりますし、明乃との純愛Hもありません。
120名無しさんだよもん:2007/10/12(金) 11:54:01 ID:PmdkTdE90
おお、感想に全レスとは珍しい
これなら俺も感想書いときゃよかったかw
121 ◆jDSrDt4dys :2007/10/12(金) 22:50:48 ID:pvJ6KYb80
【告知】

現在総括期間になっています。
総括期間は 10 月 15 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、追加の感想、次々回のテーマ投票などは
それまでにお願いします。
122名無しさんだよもん:2007/10/13(土) 01:57:05 ID:oc0Ie+6q0
そういえば次々回テーマがまだなのか。
以前出てた『アルバイト』は無難なテーマかと思ったけどな。
あとは『意地悪』とか。
123名無しさんだよもん:2007/10/13(土) 02:13:16 ID:fzqzX6kW0
次々回のテーマは、

「反抗」

で。
124名無しさんだよもん:2007/10/13(土) 23:09:04 ID:i3feaM7k0
「意地悪」がちょっと面白そう
他には「子供」とか
125 ◆jDSrDt4dys :2007/10/14(日) 18:48:58 ID:0l5xuMQF0
【告知】

現在総括期間になっています。
総括期間は明日 10 月 15 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、追加の感想、次々回のテーマ投票などは それまでに
お願いします。
126 ◆jDSrDt4dys :2007/10/15(月) 22:09:17 ID:mB0onuRh0
【告知】

第六十七回投稿テーマ:『鏡』

投稿期間: 10 月 15 日の午前 0:00 から 10 月 22 日の午前 0:00 まで。

テーマを見て、思いついたネタがあればどんどん投稿してみましょう。
面白い作品だったら、感想がたくさんついてきて(・∀・)イイ!!
もちろん、その逆もあるだろうけど……(;´Д`)

※投稿される方は >>4-6 にある投稿ルール、FAQ をよく読んでください。
※特に重要なのが

・テーマに沿った SS を*匿名*で投稿する
・投稿期間中は作品に対して一切感想をつけない

の二点です。他の各種 SS スレとは異なりますのでご注意を。

それでは、投稿開始っ!
127 ◆jDSrDt4dys :2007/10/15(月) 22:16:03 ID:mB0onuRh0
次回のテーマですが、二票推薦頂きました『意地悪』にしたいと思います。

また、前回の最優秀作は推薦無しのため該当なしとさせて頂きました。
作家のみなさんのモチベーション向上のため、気に入った作品がありましたら
感想に合わせて投票のほど、お願いします。
128名無しさんだよもん:2007/10/15(月) 22:21:25 ID:tOFv5Met0
読み手のレベルに合わせられない奴はここで書いても楽しくないと思う。
129名無しさんだよもん:2007/10/16(火) 10:11:25 ID:167v+bMe0
SSはレベルとかそんな高尚なものでもないんだぜ
130投下予告 ◆IZ1G9vaAjc :2007/10/22(月) 00:01:33 ID:QppMcU/Y0
5分後くらいからSSを投下します。
タイトルは『魔性の鏡』
リトルバスターズの二次創作です。
長さはおそらく13レス分になるかと思います。
131魔性の鏡:2007/10/22(月) 00:06:49 ID:QppMcU/Y0

…鈴が行方不明になった。

洒落や冗談抜きで行方不明になった。
きっかけは恭介が、いつものように鈴にミッションを命じた事だった。
「美術室にある鏡は異次元と繋がっているらしい」
「恭介…いきなりどうしたの?」
「そういう噂があるんだよ。ほら、学校の怪談とかで合わせ鏡の怪ってあるだろ?うちの学校では美術室の鏡がその役目を担ってるって訳だ」
「美術室に鏡なんてあったか?」
「お前はそれ以前に美術室に行った事があるのか?」
「どうせねぇよ!悪かったな!」
「まあまあ、2人とも抑えて抑えて…」
「なんでも噂によると、午前0時にその鏡の前に立った生徒は異次元へと連れ去られるそうだ」
「消えたならともかく…なんで行き先が異次元ってわかるんだろ」
「さぁな、生還者でも居るんじゃないのか?」
「それで、その鏡をどうしようってんだ?」
「無論、真偽を確かめる。鈴」
「…ん?」
132魔性の鏡:2007/10/22(月) 00:08:07 ID:QppMcU/Y0
午後11時50分。
理樹と恭介の2人は美術室に忍び込んでいた。
真人と謙吾は寮の部屋にて待機している。
風紀委員や警備員などの目をかいくぐって行動する必要があるため、大勢で行動するのは危険だとの判断からである。
「もうすぐ深夜0時になるな」
行方不明になったのが自分の妹だったからだろうか、それとも自分の発案が事件の発端となったからだろうか。
心なしか恭介の顔に余裕が無いようにも見える。
「理樹、もう一度作戦を確認しておくぞ」
「1人が鏡の前に立つ、1人が直接鏡が見えない位置で待機。そして鏡の近くに居る方が危なくなったら助ける…だね」
「俺が前衛、理樹が後衛。あらかじめ俺には2本のロープを結んでおく。仮に鏡が異次元と繋がっていたとしても、なんとかなるだろう」
…多少単純ではあったが、情報が少ない中で練り上げられた作戦である。
いや、たかが噂に対する用意としては仰々しすぎる程だ。
2本のロープの片方が美術室の柱に、もう片方は理樹の胴体に結びつける。
「何かあったら、全力で引っ張るよ」
「ああ、頼りにしてるぜ」
次に恭介は、自作のインカムのスイッチを入れる。
「こちら恭介。謙吾、聞こえるか?」
「ああ、良く聞こえている」
「録音機も動いているな?」
「大丈夫だ」
「何か変化があったら逐一報告していく。俺にもしもの事があったらそれを元に対策を練ってくれ」
「始まる前からそんな弱気な事でどうする?ちゃんと鈴を連れ戻して帰って来い」
「了解だ」
「恭介、57分。そろそろ配置につこう」
「じゃあ頼んだぞ。理樹、謙吾」
恭介が鏡の前に、理樹が扉の陰へと移動する。
理樹の居る場所からでは、恭介は確認できるが鏡は見えない。
その場所で恭介の命綱を注意深く握り締めた。
133魔性の鏡:2007/10/22(月) 00:09:24 ID:QppMcU/Y0
「理樹、カウントダウンを頼む」
腕時計に視線を落とす。
暗くて見えない…時計に内蔵されたライトを灯す。
「2分前…1分30秒…1分…」
「こちら恭介、様子がおかしい。鏡が曇っていく。これは…霜か!?」
その言葉を聞いて、鏡を直接確認したくなる衝動がおきる。
おきるも…咄嗟に堪えた。
自分はあくまでバックアップなんだ…そう自分に言い聞かせる。
ふと、冷たい風が背中に当たっているのに気づいた。
壁に据え付けられている温度計にライトを当てる…
「恭介、恭介!」
「どうした理樹!?」
「気温がマイナス4度…凄い勢いで下がってる!」
「謙吾、聞こえたか?」
「ああ、聞こえた」
「さっきから異常な寒さを感じる。それに窓は締め切っているのに風が吹いている」
「恭介、危険すぎる。ここは一度退くんだ」
「いや…このまま鏡の前で待機する。理樹、今何時だ?」
「15秒前…13…12…11…」
「こちら恭介、鏡が光り始めた」
「やめろ恭介!お前にもしもの事があったらどうするんだ!」
「このまま正体を見極める…」
数秒もしない内に美術室全体が白く染め上げられる。
恭介も理樹も、鏡はおろか指先さえ確認できない。
「恭介、どうした?何が起こっているんだ?」
「凄い光だ…何も見えない…」
「恭介、今すぐ鏡から離れろ!」
「り…ん…」
「どうした?鈴を見つけたのか?応答しろ恭介」
「鈴…ここに居たのか…」
「恭介!応答しろ!何が起きている?きょう…ブッ…」
134魔性の鏡:2007/10/22(月) 00:10:42 ID:QppMcU/Y0
時を同じく、理樹もまた視界の全てを白く染め上げられていた。
鏡から発せられる光がごく普通の光であったなら、扉の陰に居る理樹には何の影響も及ばなかったであろう。
しかしその光は壁を透過し、視界を白く染め、さらには理樹の思考さえも真っ白になっていく…
何も見えない、何も聞こえない、何も感じない、何も考えられない…そうなっていく事への恐怖も無い。
…真昼のグラウンドに立っていた。
鈴と恭介がキャッチボールをしていた。
真人がランニングをしていた。
謙吾が素振りをしていた。
「ずるいな…僕も混ぜてよ…」
扉を開ける…何の扉?彼にはわからない。
ゆっくりと歩きだす…どこに向かって?皆の待つ場所へと。
鏡の前に立つ…鏡って何だっけ?今の彼には関係無い。

「行くなっ!!」

声が聞こえた…誰の声だっけ?あれは来ヶ谷さんの声だ。
「あ…れ…?」
午前0時。
いつの間にか完全に光は収まっていた。
理樹は鏡の前…それも鼻先がふれそうな程近くに立っていた。
美術室には恭介の姿は無く、代わりに来ヶ谷唯子の姿が見えた。
ロープが2本、床に落ちていた。
135魔性の鏡:2007/10/22(月) 00:12:10 ID:QppMcU/Y0
次の日の昼休み、理樹、真人、謙吾の3人が集まる。
「…とりあえず鈴は病気、恭介は鈴の看病って事にしておいたよ」
「どうやら今の所は疑われてはいないようだが…おそらく、そう長くは誤魔化せまい」
「しかし…まさか恭介まで消えちまうなんてな…」
リトルバスターズの心の支えとして、今まで大きな影響を与え続けていた長兄的存在が消える。
その事実は彼らに重くのしかかる。
「恭介との通信記録にも、たいした事は残ってなかったね…」
「理樹は何か思い出せないのか?どんな小さな事でも良い」
「ごめん…秒読みをしていた辺りから先は、あんまり覚えてない」
「う〜む…」
彼らの持つ情報はあまりにも少なかった。
見通しは…暗い。
彼らの表情もまた…暗い。
「いっそ警察に頼るか?」
「こんな非常識な事、たぶんまとも取り合ってくれないよ」
「リトルバスターズのメンバーも…まあ、役には立たんだろうな」
「そうだね…それに騒ぎが大きくなったら、美術室の鏡に近づけなくなるかもしれない」
「騒ぎが大きくなる前に2人を助け出す、か…」
無論、それは並大抵の事ではない。
徐々に最悪の事態が彼らの頭の中で大きくなっていった…
3人ともそれを必死に打ち消そうとするも、打つべき手が消える毎にそれは何度も顔を出す。
「僕は来ヶ谷さんを探すべきだと思う」
そんな理樹の提案。
昨晩美術室に現れた来ヶ谷は、理樹が眼を離した時にいなくなっていた。
あるいは理樹の気のせいだった可能性もあるものの、逆に何か重要な事を握っている可能性が高い。
「今日は来ヶ谷の奴、学校に来てないみたいだぞ」
「うん、メールも返信が来ない。でも他に手がかりが無いなら、来ヶ谷さんを探す必要があると思うんだ」
「確かにな…なら、休み時間に各々で聞き込み。放課後になったら手分けをして探す…という事にするか」
「うん、そうだね」
「よし、そうと決まったらさっそく行こうぜ」
136魔性の鏡:2007/10/22(月) 00:13:27 ID:QppMcU/Y0
来ヶ谷唯子の捜索は寮の門限ギリギリまで続けられた。
放課後には真人が校舎を、理樹が学生寮を、謙吾が近くの町を歩き回ったのだが、収穫はほとんど無い。
わかった事は早朝に学校の外へと出た事のみ、他のリトルバスターズのメンバーも彼女の行き先を知る者はいなかった。
平行して美術室の鏡についても調べたものの、こちらも新しい情報は無い。
現在の時刻は10時…状況は朝と何一つ変わっていない。
しかし理樹の部屋に集まった3人の表情は…さらに暗い。
「今夜は…僕が行く」
そんな中で、理樹はそう発言した。
「やめろ理樹、危険すぎる」
謙吾がすぐさま反対した。
「どうして止めるの!謙吾は鈴や恭介が心配じゃないの?」
「冷静になれ。まだあの鏡の事は何一つわかっていないんだぞ」
「悪いがオレも反対だ」
「真人までどうしたのさ?」
「理樹、あの2人を助け出したいのは俺達も一緒だ。だがもう少しあの鏡の事を調べて、何らかの対策を立ててから行動するべきだ」
「そんなの待てないよ!明日まで2人が無事な保障は無いんだよ!」
「今行って無事に戻ってこれる保障も無い」
「そんなのやってみないとわからないじゃないか!」
「自殺行為だ!」
「謙吾の意気地無し!」
「何とでも言え…どうしても行くと言うのなら、俺はお前を殴り倒してでも止めるぞ」
137魔性の鏡:2007/10/22(月) 00:14:44 ID:QppMcU/Y0
「真人…」
真人は無言で、強い視線をまっすぐに理樹に返す。
自分は助けない…その眼はそう訴えているかのようだ。
「2人とも、怖いの?」
「怖いさ…鈴を失い、恭介を失い、その上理樹まで失ったら俺は発狂するかもしれん」
「2人はまだ死んだ訳じゃない!」
「死んでないかもしれん。だが…だが、死んだかもしれん」
「謙吾っ!!」

  ピピピピピ…
    ピピピピピ…

そんな険悪な空気の中で、理樹の携帯電話が鳴った。
ポケットに入れっぱなしだった電話を取り出す…
「え…来ヶ谷さん!?」
携帯電話の画面には確かに『来ヶ谷唯子』の文字が点灯していた。
「もしもし…」
「理樹君、突然ですまないが今から美術室まで来てくれないか?」
「えっと…僕なら大丈夫だけど、どうするの?」
「無論、2人を助け出す」
138魔性の鏡:2007/10/22(月) 00:17:58 ID:QppMcU/Y0
午後11時30分。美術室。
棗兄妹救出のために、直枝理樹と来ヶ谷唯子の2人が深夜の校舎へと向かった。
謙吾と真人は例にもよってお留守番である。
来ヶ谷に曰く…
「居ても役に立たん、むしろ邪魔だ」
…との事。
使い捨てカイロを片手に余裕の表情を見せる来ヶ谷に対し、理樹の方はやや緊張した面持ちを見せている。
「来ヶ谷さん、本当にそんなので大丈夫なの?」
「うん?何か問題でもあるのかい?」
「だって…」
来ヶ谷はハッキリ言って手ぶらだった。
服装も普段とまるで変わらず、持っている物はせいぜい使い捨てカイロのみ。
これでは理樹でなくとも不安になるのが当然であろう。
「なに大丈夫だよ。私が理樹君を信じている限りは…ね」
「それってどういう意味?」
「そうそう。今の内に君に聞いておきたい事があるんだ」
「何?」
「昨日、あの鏡が光を放ってから…そうだな…酒に酔った時のように、気持ち良いような、意識が遠くなるような、そんな気分にならなかったか?」
言われて考える、そして思い出す…深く…深く…
「言われてみれば…そうかもしれない」
ひどく曖昧な回答だったが、来ヶ谷には満足のいく答えだったのだろう。
「ならその時に、誰かに会わなかったかい?」
「誰か…?」
「うん、たぶん誰かの姿が見えていた筈なんだ」
そうかもしれない…と思い始めた。
深く思考の渦へと身を沈め、自分の意識を過去へと戻そうと試みる。
あの時光に包まれて、その光の中で自分の脳が溶けて無くなっていくかのような感覚を味わった。
それから来ヶ谷に呼び止められるまでの間に、何かがあった。
139魔性の鏡:2007/10/22(月) 00:20:22 ID:QppMcU/Y0
まるで昨日の夢の内容を思い出すかのような作業。
まるで10年ぶりの友人の名前を思い出すかのような作業だった。
ひどく手がかりが少ない、もどかしい、それでいて確かに自分は何かを覚えているような気がしていた。
そんな中で…何かがあったという前提の元で、無理矢理捻り出すかのような、こじつけるような思いで答えを出すのなら…
「鈴…かな?」
そんな思いで出した答えを聞いた来ヶ谷は、一瞬だけひどく不満そうな、それでいて悲しそうな顔をしたのだった。
「来ヶ谷さん?」
「いや、非常に参考になった。そろそろ2人を助け出すとしよう」
11時40分。
昨晩、鏡が変化を見せた時間よりも少し早い。
来ヶ谷は使い捨てカイロをゴミ箱に放り込み、自分の左手と理樹の右手をしっかりと繋いで見せた。
「いいかい?12時を過ぎるまでこの手を決して離さないでほしい」
「手を?」
「うん、それを今この場で誓ってくれ」
考える…意味がわからない。
意味はわからなくとも…きっとそうする事が必要なんだろうと思った。
「誓うよ。この手は絶対に離さない」
そう言って、理樹はその手を強く握り締めた。
「うん、信じた」
そうして来ヶ谷はにっこりと微笑むと、鏡の中へと飲み込まれていった…
「来ヶ谷さん!?」
あまりに突然だったので、あまりに迷い無く飛び込んだので、理樹には彼女を止める間は無かった。
しん…と、静まり返る。
今現在、美術室は理樹1人だ。
来ヶ谷の姿は完全に消え、理樹の右手は鏡の中に飲み込まれている。
それ故、彼はまともに動く事すら困難であった。
ひんやりとした冷気が全身を包む中で、鏡の中だけが妙に生暖かく感じる。
140魔性の鏡:2007/10/22(月) 00:21:40 ID:QppMcU/Y0
恐る恐る左手で鏡に触れてみた。
奇妙な事に、鏡からは柔らかい感触が返ってきた。
まるでゼラチンかスライムのような、強く押せばそのまま鏡の中に入ってしまうかのような錯覚さえ覚えた。
いや…あるいはそれは錯覚ではないのかもしれない。
現にこの場所で2人の人間が消失し、ついさっき目の前で人間が鏡の中に入っていったのを見たではないか。
そして鏡はそんな奇妙な柔らかさを持ちつつ、なおも鏡だった。
不気味なまでに沈黙し、光を反射し理樹の顔を写しながら、鏡は人間を飲み込んでいるのだ。
11時50分。
美術室のあらゆるものに変化は無い。
変化が無いが故に、理樹の精神は急速に磨耗していく。
「来ヶ谷さん…」
名前を呼んでみる。
その声は一瞬にして掻き消えた。
まるで音さえも鏡に飲み込まれたかのようだった。
鏡の中が人の体温に近いせいか、だんだんと右手の感覚が鈍っているのがわかった。
自分が手を開いているのか、閉じているのか、それどころか右手自体が存在しているいのかさえ怪しくなっていく。
それがさらに理樹に孤独を感じさせ、心を蝕んでいくのである。
「放しちゃ…いけない」
声を出す…声は掻き消える。
「放しちゃいけない」
声を出す…声は掻き消える。
「放しちゃいけない、放しちゃいけない」
声を出す…声は掻き消える。
少しづつ少しづつ心が磨耗する、心が弱くなる、心が…折れる。
時間の流れが、今はたまらなく遅い。
141魔性の鏡:2007/10/22(月) 00:22:58 ID:QppMcU/Y0
鏡の中で来ヶ谷唯子は泳いでいた。
正確には…泳ぐイメージを感じていた。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚…そこでは一切の感覚は通用しない。
そして物理法則さえそこでは一切の意味を持たない。
あるのはただ、イメージのみであった。
そんなイメージの世界の奥深くで、彼女は直枝理樹と出会った。
いつの間にか、そこは学校の放送室に変わっていた。
それは来ヶ谷唯子の思い出を写したイメージであり、来ヶ谷唯子にとっては本物以上に本物に近い直枝理樹だった。
そこはあらゆる現実を掠れさせる場所であり、あらゆる人が幸せになれる場所。
現実を模しながら、現実を超える贋作であった。
その中で彼女は、直枝理樹のイメージと対峙し、そのイメージを破壊する呪文を詠唱する…

「消えろ贋作。『本物』の直枝理樹はここに居るぞ」

彼女の左手の中には、『本物』が握られていた。
外の世界から持ち込まれた『本物』は深い闇となり、世界のイメージを消し飛ばす。
光は闇を怯え、雲散し、消失する。
…鏡が光を失った。
142魔性の鏡(終):2007/10/22(月) 00:24:15 ID:QppMcU/Y0
11時57分。
来ヶ谷唯子は棗恭介を抱え、鏡の中から現れた。
恭介を近くに置くと、今度は右手を鏡に突き刺し棗鈴を引っ張り出した。
12時を過ぎ、鏡がガラスのような硬さに戻った事を確認すると、来ヶ谷は美術室にあったハンマーを思い切り叩きつけた。
鏡にハンマーが触れた瞬間、ガシャンともパリンとも鳴らなかった。

ウオオオオオォォォォォ……ムゥッッ……

そんな叫び声のような、地鳴りのような重低音が辺りに響き、鏡は砕け散った。
割れて飛び散った破片は、まるでドライアイスのように小さくなっていき、やがて全て消えてしまった。
木でできた枠だけが、美術室に残った。

次の日には棗兄妹が目を覚ましたが、鏡についての記憶は非常に曖昧だった。
来ヶ谷はその件に関しては何も語らず、学校側では鏡が誰かに盗まれた…とだけ認識している。
あるいは夢だったのだろうか…と、直枝理樹は考える。
結局最初から最後まで謎のままだった鏡は、徐々に関係者の記憶から消え去っていった。
あの鏡の噂もまた、いつしか誰も知る者はいなくなるのであった…
143 ◆IZ1G9vaAjc :2007/10/22(月) 00:25:47 ID:QppMcU/Y0
>>131-141
『魔性の鏡』でした。
144 ◆IZ1G9vaAjc :2007/10/22(月) 00:36:43 ID:QppMcU/Y0
そこで部屋の隅でノートと格闘していた鈴へと話の矛先が向く。
「と言う訳で、今回のミッションは美術室の鏡を調査する事だ」
「聞いてなかった」
「お前なぁ…」
しかたなしにさっきの会話をもう一度最初からやり直す。
律儀に真人と謙吾のやり取りまで見事に(そして無意味に)再現した。
「と言う訳で、今回のミッションは美術室の鏡を調査する事だ」
「イヤだ」
「お前なぁ…」
「絶対にイヤだ」
「じゃあこういうのはどうだ。ヒソヒソ…ごにょごにょ…」
「む…」
他の3人にはわからないように、耳元で何かをささやく。
「…わかった、そこまで言うのならやってもいい」
ものの1分もしない内に説得は完了したようだ。
それから5分もしない内に鈴は夜の学校に向かい…そのまま行方不明になったのだった。

(…という文章が>131と>132の間に入ります。ごめんなさい)
145名無しさんだよもん:2007/10/23(火) 22:35:22 ID:Ac0dCi2o0
◆jDSrDt4dysさんはどこに行ったんだ……?
もう感想書いていいんだよね?
リトバス知らないんで、そのつもりで読んでください。

みんな鈴がいなくなったのを、最初から超常現象のせいにしてるけど、
これは原作がそういうノリなの?
普通は何かの事件にでも巻き込まれたと考えそうなもんだけど。
登場人物が多すぎたこともあって、キャラがいまいち立っていないように感じた。
自分に読解力がないのかも知らんが、それぞれが何を考えてるのかよく分からんかった。
それに最後の方で主人公(理樹)の影が薄くなりすぎ。
鏡がテーマなので最後に鏡について書くのはいいとしても、もう少し主人公への
言及も欲しかった。
あと、何もかもが謎で終わっては、もにょる。
鏡の由来とかでも書いてあればよかったと思った。
怪談でも全てが終わった後にネタばらしすることが多いでしょ?
最後に、神視点と人物(主に理樹)視点が混在しててやや分かりにくかった。

えー……なんか偉そうに批判ばっか書いてゴメン。
146代理 ◆GwhZ3rdoPU :2007/10/23(火) 23:05:48 ID:Vv3W6ANP0
【告知】

現在、感想期間に入っております。
投稿された SS について感想・討論などをご自由に行ってください。

期限は、 10 月 29 日 の 午前 0 : 00 までです。


以下が、今回投稿された作品の一覧です。

>>131, >>144, >>132-141 「魔性の鏡」
147145:2007/10/23(火) 23:17:24 ID:Ac0dCi2o0
って、ちょっと待って!
ここの投稿期間って2週間じゃん!
誰も指摘しなかったけど>>126の期間の方が間違ってたんだ!!!111!
148名無しさんだよもん:2007/10/23(火) 23:23:06 ID:ppc8oCGo0
あー、びっくりした
俺、「あれ? もう感想期間? 締め切り一週間間違えてた!?」って思ってたからw
149名無しさんだよもん:2007/10/24(水) 17:33:35 ID:M9/tZcUV0
ですよねーw
150名無しさんだよもん:2007/10/24(水) 23:50:29 ID:7+WkXvaV0
出張中にとんでもない事に…
トリップはないけど進行役です。
指摘通り>>126の募集期間は誤っており、
テーマ「鏡」の募集期間は29日月曜日の0時までになります。
多大な混乱を引き起こして申し訳ありませんが、まだ募集期間中なので、
テーマにあった作品が思いつきましたら投稿お願いします。

土曜まで家に帰れそうにないので、簡易告知ですいませんがお願いします。
151名無しさんだよもん:2007/10/26(金) 23:36:58 ID:68UvjKDD0
せめてageようぜ!
152 ◆jDSrDt4dys :2007/10/28(日) 00:38:58 ID:E22agnYM0
【告知】

現在、葉鍵的SSコンペスレでは投稿を募集しています。
今回のテーマは『鏡』で、締め切りは 10 月 29 日の午前 0:00 です。
テーマを見て思いついたネタがあれば、ぜひ投稿してください。

>>146
代理告知の方、ありがとうございました。
153 ◆jDSrDt4dys :2007/10/29(月) 01:21:55 ID:1tK8AdHz0
【告知】

ただ今をもって、投稿期間を終了させていただきます。
参加された書き手の皆様、どうもご苦労さまでした。

それでは、これから感想期間に入ります。
投稿された SS について感想、討論などをご自由に行ってください。
期限は 11 月 5 日の午前 0:00 までとさせていただきます。

以下が、今回投稿された作品の一覧です。

>>131, >>144, >>132-141 『魔性の鏡』(リトルバスターズ)
154 ◆jDSrDt4dys :2007/11/02(金) 23:46:13 ID:s6iO0tu60
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は>>153となっています。

感想期間は 11 月 5 日の午前 0:00 までとなっていますので、
時間がありましたら是非ともお願いします。
155名無しさんだよもん:2007/11/03(土) 01:01:49 ID:WOR1c7ft0
じゃあ感想。
「魔性の鏡」(リトルバスターズ)

鏡についてのホラー描写だけみれば、それなりに不気味さが伝わってくる内容になっていたのではないでしょうか。
あと、来ヶ谷の幻想の理樹……という部分にはちょっと興味を引かれるものがありました。
でも心理描写とかがあっさりすぎる気がします。
やはり読者としての自分が読みたいのはそれぞれの場面で来ヶ谷が何を想ったか。
そしてその後の理樹と来ヶ谷がどうなったかという部分になります。
そういう点で期待に応えて貰えなかったのは残念に思います。
156名無しさんだよもん:2007/11/03(土) 19:57:51 ID:6IGfWO4k0
>「魔性の鏡」(リトルバスターズ)
キャラの掛け合いや話し方は原作っぽかったんでプレイしてる人には判りやすいと思うけど、
このスレには未プレイの人が多いことも考えて、例えば最初の発言の前に「幼なじみで剣道部で〜」
みたいな説明を入れておけば伝わりやすいんじゃないかと思った。

ストーリー、怖さはないけど読む進めさせる力は感じた。
この先どうなるんだろう、なにが起きるんだろう、みたいな。
ただ、最後まで読み進めても解決できない部分があり、全体的に説明不足なような気がしたので、
その辺りも書き込んでもらえると読み手としてはありがたいかな?
157名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 00:09:18 ID:JMxd3WMc0
「魔性の鏡」(リトルバスターズ)

今回は一本だけなのが寂しいけれど、感想いきます。

一読してまず気になった点は、最初の一節(131,144)から後の部分との時間的な経過が曖昧な印象を受けたこと。
「鈴が行方不明になったこと」をえらくあっさりと済ませているように感じられて、恭介が飛び込むまでに一日経過したのか、当日のことなのかがよく分からないからでした。
当日のことだったら数分(或いは数十分?)の時間経過だけで行方不明と決定づけるまでに、恭介たちは何をしていたのか?
一日経過してたなら、なおのこと恭介たちの焦りなどがもっと描かれているべきなのでは?
と言う具合に、自然な流れとして受け止められませんでした。
「鈴が行方不明」と言う事態で、恭介たちがあまりに冷静と言いますか、何と言いますか。
事態そのものは非常に切迫してるはずなのに、展開が非常に淡々としているためでしょうか。ことの重大さを認識してるようにはあまり感じられませんでした。
この物語のミソは、「鏡の中で見えるのが姿が誰なのか?」と言うことだとは思いますし、恭介が鈴をどうやって納得させたのかも何となく分かるのですが、その辺をうまく書ききれていない感じがします。
あと、鏡の由来とかそもそも何だったんだ?と言う部分については、さほど重要なことではないと思いますが、来ヶ谷がどうして鏡の中での対処方法を知っていたのかは語らせるべきかと。
物語の道具としての鏡の存在が強すぎる割に、それについて語る部分がほとんどなく、読者を置いてきぼりにしてると思います。
その結果、どうにもオチが弱く、後味もすっきりしません。
158 ◆jDSrDt4dys :2007/11/04(日) 02:04:40 ID:vgs7j8mh0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は>>153となっています。

感想期間は 11 月 5 日の午前 0:00 までとなっており、もう一日も
ありませんが、明日のSS職人のために是非とも宜しくお願いします。
159 ◆jDSrDt4dys :2007/11/05(月) 00:19:13 ID:blEwizv00
【告知】

ただ今をもちまして、感想期間を終了させていただきます。
投稿された書き手の皆さん、感想をつけてくださった読み手の皆さん、
そして生温かく見守ってくれていた ROM の皆さん、どうもご苦労様でした。

引き続きこのスレでは、今回の運営への意見、書き手の挨拶、
次々回のテーマの決定などを行いたいと思います。

上記のもの以外にも感想期間に間に合わなかった感想や意見が
ありましたら、書きこんでください。

※次回のテーマは『意地悪』に決定しており、開催は 11 月 12 日からを予定しております。
※今回決めるのは次々回のテーマです。お間違いのないように。
160名無しさんだよもん:2007/11/05(月) 19:15:22 ID:PYLG9urr0
長めの感想が四つって珍しいな
161名無しさんだよもん:2007/11/06(火) 13:41:15 ID:Zh4FnB5O0
次々回のテーマについて

テーマと言っていいのかどうか悩むところですが、「ありがとう」と言うのはどうでしょうか。
この台詞を入れるだけでOKということで。(キャラによる表現の違いはあります)

誰が、どんな状況で、誰に(或いは何に)、どんな風に言うのか。
単なるシチュ設定だとも言えますが、テーマに対する整合性とかなんとか考えないで、気楽に作品に取り掛かれるのではないかと期待して。
162名無しさんだよもん:2007/11/06(火) 14:31:13 ID:5zT2DYZ00
落語のなんとかいう奴みたいだな。
観客から三つぐらい募集して即興落語の中で
それらを組みこむやつ。
163名無しさんだよもん:2007/11/06(火) 19:01:55 ID:TDx4rqzs0
>>161
それでいいんじゃね。
モノは試し、というやつだ。
164名無しさんだよもん:2007/11/07(水) 21:20:09 ID:LMT5MJxC0
>>161のやり方を支持。

テーマは「ありがとう」で。
165 ◆jDSrDt4dys :2007/11/08(木) 23:05:53 ID:Js+SaRMR0
【告知】

現在総括期間になっています。
総括期間は 11 月 12 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、書き手の挨拶、次々回のテーマ投票などは
それまでにお願いします。
166 ◆jDSrDt4dys :2007/11/11(日) 01:43:05 ID:yNnaMGXV0
【告知】

現在総括期間になっています。
総括期間は明日 11 月 12 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、書き手の挨拶、次々回のテーマ投票などは
それまでにお願いします。
167 ◆jDSrDt4dys :2007/11/12(月) 01:32:09 ID:2/mBahEa0
【告知】

第六十八回投稿テーマ:『意地悪』

投稿期間: 11 月 12 日の午前 0:00 から 11 月 26 日の午前 0:00 まで。

テーマを見て、思いついたネタがあればどんどん投稿してみましょう。
面白い作品だったら、感想がたくさんついてきて(・∀・)イイ!!
もちろん、その逆もあるだろうけど……(;´Д`)

※投稿される方は >>4-6 にある投稿ルール、FAQ をよく読んでください。
※特に重要なのが

・テーマに沿った SS を*匿名*で投稿する
・投稿期間中は作品に対して一切感想をつけない

の二点です。他の各種 SS スレとは異なりますのでご注意を。

それでは、投稿開始っ!
168 ◆jDSrDt4dys :2007/11/12(月) 01:45:25 ID:2/mBahEa0
あと次回のテーマですが、161氏からの
『SSの中に「ありがとう」の台詞を入れる』
との提案に163氏、164氏の賛同がありましたので、それを採用させて頂こうと思います。

キャラ、状況を問わず、話の中で登場人物が台詞で「ありがとう」と
発言すれば、それだけで応募要綱を満たした事になります。

開催時期は 12 月中旬を予定していますので、「二週間じゃ書けない」
「意地悪でネタが思いつかない」という方は、こちらのテーマで
ネタを考えてみてください。
169名無しさんだよもん:2007/11/15(木) 19:08:16 ID:mYcHd6Mn0
あげ
170名無しさんだよもん:2007/11/18(日) 14:55:12 ID:jsSNaCAW0
まだこのスレ続いていたのか…。
4,5年くらい昔に参加してたなあ。何もかも懐かしい。
SS職人たち頑張れ。
171 ◆jDSrDt4dys :2007/11/19(月) 23:53:32 ID:ybauXYee0
【告知】

現在、葉鍵的SSコンペスレでは投稿を募集しています。
今回のテーマは『意地悪』で、締め切りは 11 月 26 日の午前 0:00 です。
テーマを見て思いついたネタがあれば、ぜひ投稿してください。

また、次回のテーマはSSの台詞の中に『ありがとう』と入れる形式で、
開催時期は 12 月中旬になる予定です。
「二週間じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
172イジワル21(1/5):2007/11/22(木) 18:42:04 ID:cGOCC1vD0
「こんにちわ。いいお天気ですね」
 決まりきったようにおばさん臭い調子で天野が挨拶をした。
「なあ、お前はそんな表現しか出来ないのか?」
「失礼ですね」
 わずかに怪訝そうな表情をする天野だが、そんなことには特に気にせずに俺は歩き出し
た。前からの約束でもないが、今日は天野の買い物に付き合うことになっている。
 俺が歩き出したのを見て、天野も少し不満げながら後についてくる。まあ、確かに天気
はいいし、どこかに出掛けるのは悪いことじゃない。なのに、不満そうなヤツを連れ歩く
のも、何だか粋じゃないな。
「で、その天気がいい日に出掛けてるってのに、そんな不満そうな顔はないと思うぜ?」
「相沢さんは意地悪ですね」
 全部俺が悪いと言わんばかりに天野は表情でも語っている。それはそれで意外と可愛い
ものだが、もう少し笑ってた方がいい。
「一日三回以上、天野に意地悪しないと死んでしまう体質なんだ。あきらめてくれ」
 はぐらかすように俺が大げさなアクションをしながら言ったが、天野はそれで笑顔を見
せてはくれなかった。
「三回以上って、まだ二回意地悪するんですか」
「まあな」
「でも、相沢さんとこうして学校以外で会っているのは、一週間ぶりですけど……」
「じゃ、一週間分の二十一回だな」
「それはそれで計算が合ってません」
 今の一回分を抜けば、残り二十回だと言いたいのだろうけど、実際問題今のが意地悪だ
と言われても、俺にはその自覚がないので、たぶん数には入らないだろう。そもそも、突っ
込みどころが違う気がするのだが。
「ま、とにかく買い物、行こうぜ」
「相沢さんは本当に意地が悪いですね」
 また言われた。天野の計算だと、これも一回に入るんだろうか? などとどうでもいい
ことを気にしながら、俺たちは駅前の商店街へと向かった。
173イジワル21(2/5):2007/11/22(木) 18:44:24 ID:cGOCC1vD0
 俺が天野の買い物に付き合うことになったのは、大した理由でもない。たまたまヒマに
なって、天野は買い物をするのだと言う話があって、一緒にどうだと誘われただけだ。
 商店街で本やら服やら見に行くらしいのだが、考えてみれば、俺はこう言うのが苦手な
のかも知れない。名雪の買い物だと、必ず何かしらトラブルが発生していたし。
 少し距離を置いていた俺に気がついたのか、天野は俺に近づきながら声を掛けてくる。
「どうかしたんですか、相沢さん」
「いや、どうも俺は買い物に付き合うとろくなことがない星の下に生まれてるんじゃない
かって、そんな気がしてただけだ」
「そんなに迷惑でしたか」
「ああ、そんな意味じゃないんだ。まあ、気にしないで、店見て来いよ」
「相沢さんはやっぱり意地悪ですね。そう言うときは……いえ、やっぱりいいです」
 天野は何か言いたそうだったが、途中で言葉を切って、本屋に入っていった。その場に
残された俺としては待ってもいいのだが、何だか間抜けな気がしたので、本屋へと入った。
 紙の匂いに包まれた店内に入ると、天野はすぐに見つかったが、真剣なまなざしで頭を
小さく動かしている。あまり声を掛ける雰囲気でもなさそうだ。
 本屋なんてあまり行かないなと思いつつ、天野を追うようにして入っていきなりマンガ
や雑誌の方に行くのもかっこ悪いので、俺はひとまず適当にそこいらの平積みをぐるりと
見回すことにした。
 不意に目に入った本があった。児童書や絵本のコーナーにあった、その本のタイトルは
『きつねのおきゃくさま』と言う子供向けの絵本だった。
 絵本を手にとってパラッと読んでみると、この絵本の狐がアイツと重なり、自然に俺の
口元がゆるんでいた。──と、そこに、声が。
「相沢さん?」
「わっ、天野、どうした?」
「わたしの方は済みましたけど、相沢さんはどうするんですか?」
 何だかかっこ悪いところを見られた気がしたので、絵本をあわてて元の場所に戻して、
天野に向かってなるべく普通の様子で声を掛ける。
「ああ、それじゃ行くか」
 天野がわずかに怪訝そうな顔をしたが、それに構わず本屋を後にした。
174イジワル21(3/5):2007/11/22(木) 18:46:19 ID:cGOCC1vD0
 本屋を出た後、天野は何か言いたそうにしてはいたが、俺があえてそれには触れないよ
うにしていたせいか、本屋でのことは口に出さずに、買い物を続けていた。
 服屋に付き合うのはわずかに抵抗はあったし、実際天野も「外で待っていただいてもか
まいませんよ」と言ってくれたのだけど、そこで甘えてしまうのも本屋でかっこ悪いとこ
ろを晒した手前、うんとは言えずに俺も意を決して中まで付き合った。まあ、さすがに試
着コーナーの中までなんてのはないけどな。
 春物新作コーナーと書かれているディスプレーには明るい色の服が飾られていて、それ
を見ては小さく頷いてみたり迷ってみたりする天野の姿は確かに悪くはない。これが見ら
れるなら俺の決意も無駄ではなかったろう。
 とは言え、俺に「どれがいいですか?」とは聞いてこないのがいかにも天野らしい。そ
んなことまでしたら、まんま休日のカップルの姿だな。天野とは別に付き合ってると言う
か、彼氏とか彼女とかそう言う関係でもないのだし。
 天野の女の子っぷりを堪能した俺は、荷物持ちへと転職した。と言っても、そんなに大
げさなものを買ったわけではなく、手提げ袋が二つだけ。
「それほど重いものではないですから、別に相沢さんに持っていただかなくても」
 並んで歩く天野は少しだけ困ったような表情をしてみせるが、別に重いから軽いからと
言う次元の問題じゃない。
「や、一緒に買い物に付き合った男が荷物持たないでどうするんだよ」
「そうですか、それではお願いします」
 そう言うところでも上品な物言いは結構なのだが、何故か天野にはあまり似合ってない
気がする。まあ、俺が年上であることを踏まえるなら、当然なのかも知れないが、これが
アイツなら……最初から荷物持ち確定で連れ回すだろうな。あと、サイフも兼ねてるだろ
うし。アイツの場合、買い物と言っても肉まんとマンガしかないけどな。
「どうかしたんですか?」
「や、何でもない。とりあえず、どこかでメシでも食うか」
「そうですね」
 やっぱりいつもと変わらない天野の返事だったが、不思議と心地よく感じた。
175イジワル21(4/5):2007/11/22(木) 18:48:19 ID:cGOCC1vD0
 あれから駅前の喫茶店のランチでそこそこに腹を膨らせて、その後は商店街でウインドー
ショッピングなんかをしつつ、目についた小物を手に取ってみたり、そんな感じで過ごし
いた。なんか、ますます休日のカップルだな。
 そして、何とはなしに、駅ビルの屋上にやってきた。
「ここからはものみの丘が見えますね」
 フェンスの向こうにある緑の広がる場所を見つめながら、天野が言った。
「そうだな」
 俺も何となく同意。
「あの子たちはまた……、誰かと仲良くなって、やって来ちゃうんでしょうか」
 天野の視線の先にはフェンス。その先にはものみの丘。さらに先には何が見えているの
だろう。
「そうかも知れない」
 そして、その誰かにつかの間のきらめきを見せた後、苦しませることになるかも知れな
い。そこまで言わずにいたのは、お互いに分かりきったことだから。
「やっぱり狐って意地悪ですね」
「童話や寓話ではそんなのばっかりだな」
「さっきの絵本は違いますけど」
「ああ、知ってるんだ?」
「以前に読んだことがありますから。相沢さんがそれを読んで、笑ってたのも何となく分
かりますし」
「別に話がおかしくて笑ったんじゃないんだけどな」
「食べるつもりで面倒をみていたヒヨコやアヒル、ウサギに慕われて、それがどうしよう
もなく嬉しくなってしまって」
「ああ。最後には自分の何倍も大きくて強い狼に戦いを挑むんだから、狐って馬鹿だよな」
「でも、それがあの狐のしたかったことですから」
「恥ずかしそうに笑って、なんてのが、とにかくもう素直じゃないなって」
「そうですね」
「でも、だからこそ、アイツみたいだなって思ったんだ」
「素直じゃないところが、ですか」
176イジワル21(5/5):2007/11/22(木) 18:50:31 ID:cGOCC1vD0
 ものみの丘を遠目にしながら、俺はかすかに笑っていた。
「相沢さん」
「なあ、天野。あの丘の狐たちが人の姿になるときって、どんな気持ちだったんだろうな」
「記憶も命も失って得られるわずかなきらめきしかなくても、そうしたかった……だけで
はないでしょうか」
「そうだよな。で、やっぱり最後は恥ずかしそうに笑うのかな」
 俺の問いに対して、天野は少し躊躇ってから、うつむき加減に答えた。
「笑ってましたよ」
「そうか。で、話を蒸し返すようで悪いが、何で『やっぱり意地悪』なんだ?」
 少々わざとらしいものの、ここでやたらとしんみりしても埒があかない。そう思って俺
はあえて話題を切り替えることにした。
「相沢さんはそう思わないのですか?」
「別に意地悪だ、なんてのはな。ただ不器用で素直じゃなくて、馬鹿だなぁとしか」
「それはほとんど真琴のことですね?」
 天野の表情に笑みが戻る。別段笑わすつもりで言ったんじゃないんだが。
「……やっぱり意地悪です。あの子たちも、真琴も、相沢さんも」
「て、その結論に行き着く流れが分からん」
「わたしが望まないことをしてくれたり、わたしがしてあげたいと思ったことをさせてく
れなかったり、色々です」
 色々だと言われて、天野の言うところの意地悪について、何も分からないなんてことは
なかった。だが、俺も意地悪だと言われては素直に納得して終りではない。
「あんまり分からねえな。て、そう言うお前もな」
「有り体に言ってしまえば、これも意地悪ですね」
 俺の反撃は天野には何も効いてないようだった。
「分かってるなら、素直に言え」
「それでは、みんな意地悪と言うことで収めてはどうでしょうか」
 そう言う天野は、何故か嬉しそうに見えた。
 なるほど、みんな意地悪か、確かにそうかも知れない。素直じゃないひねくれた意地悪
なヤツら。ああ、悪くはないな。俺もその一人だしな。
「天野には、あと二十一回意地悪しないとな」
「回数増えているのはどうしてですか?」
177名無しさんだよもん:2007/11/22(木) 18:55:12 ID:cGOCC1vD0
というわけで、投稿完了。
今回も投稿少なめ?

>>172-176 『イジワル21』 (kanon)
178名無しさんだよもん:2007/11/22(木) 22:26:29 ID:Di5eOTbE0
頑張り次第では素人が捕まる。俺は実際に2、3人と会えた。
http://hohoi.ichiya-boshi.net/
179 ◆jDSrDt4dys :2007/11/22(木) 23:49:03 ID:p5DIt1PU0
【告知】

締め切りまで残り二日となりました。
そろそろラストスパートをかけていきましょう。
今回のテーマは『意地悪』で、締め切りは 11 月 26 日の午前 0:00 です。

また、次回のテーマはSSの台詞の中に『ありがとう』と入れる形式で、
開催時期は 12 月中旬になる予定です。
「残り二日じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
180 ◆jDSrDt4dys :2007/11/24(土) 23:40:44 ID:lFddDsmk0
【告知】

いよいよ締め切りまで残り24時間となりました。
そろそろラストスパートをかけていきましょう。
今回のテーマは『意地悪』で、締め切りは 11 月 26 日の午前 0:00 です。

また、次回のテーマはSSの台詞の中に『ありがとう』と入れる形式で、
開催時期は 12 月中旬になる予定です。
「残り一日じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
181 ◆jDSrDt4dys :2007/11/25(日) 22:20:05 ID:x7r4x8e80
【告知】

あと二時間で締め切りです。
最後の追い込み、がんばっていきましょう。
今回のテーマは『意地悪』で、締め切りは 11 月 26 日の午前 0:00 です。

締め切りを越えて投稿をしそうな方は、前もってお知らせください。
よほどの事がない限りは善処させて頂きます。
182 ◆COpg6Wklnw :2007/11/25(日) 23:50:22 ID:jWJBjBaM0
なんとか間に合った。今からSS投下します。
原作はoneで。ヒロインは長森瑞佳。
タイトル・『あなたの意地悪にも』 
183あなたの意地悪にも 1:2007/11/25(日) 23:51:32 ID:jWJBjBaM0
 打ち捨てられたダンボール箱の中で震えている子猫を見ると、つい抱き上げて家に連れて帰ってしまう。
 背中を丸めて泣いている子供をみると放っておけずについ声をかけてしまう。
 それは小さい頃からあまり変わらない私の習性だ。
 そんな習性も含めて、わたしがわたしのことを記憶として思い出せるのはだいたい幼稚園の頃からになる。

 例えば。
 私が幼稚園の年少組みの面倒を見ていたとき、保母さんに「面倒見のいいお姉ちゃんだね」と言って貰えたことがあった。
 大人に褒められることは子供にとって単純に嬉しいこと。それにお姉さんという響きにも憧れた。
 自分が面倒見のいい素敵なお姉さんになれる――と思えることが素直に嬉しかったのだと思う。そういう年頃だった。
 もちろんそのことが全てではないけれど、きっかけの一つであったことは確かだ。
 実に子供っぽい理由である。子供だったから当然だけど。

 特に手のかかる子程熱心に面倒をみてしまう。
 いまでも8匹の猫を家で飼ってる。
 みんな捨て猫だった。寂しそうに鳴いているその声を聞くと、どうしても放っておけなくて家に連れて帰ってしまうのだ。
 そして小学生の頃に出会った、とても意地悪な男の子。彼の面倒をみるのが一番大変だ。 
 大変、だった――
184あなたの意地悪にも 2:2007/11/25(日) 23:52:28 ID:jWJBjBaM0
 小石を投げる。二階の窓のガラスめがけて。
 でも小学生のわたしの手では、二階までなかなか届かない。

「えいっ」

 めげずにがんばる。
 何度か投げてるうちにやっといくらか窓に当てられるようになった。
 でも何度窓ガラスに小石をぶつかっても、窓からあの男の子が顔を出す様子はなかった。

「出てこないなあ」

 さっきから周りの人の視線が気になる。
 買い物籠を腕にさげたとおりすがりのおばさんにちらりと睨まれて、わたしは慌ててぺこっと頭を下げた。
 怪しいひとに見られたかなあ。

「もう帰りたい……」

 溜息。
 だいたいどうしてわたしがこんなに苦労しないといけないのだろうか。
 別にその子の為にわたしが苦労する義務なんて無かったはずなのだ。
 そう思うとだんだん腹が立ってきた。
 さっきまで窓ガラスを傷つけてないように小さな石を選んで投げていたけど……わたしは足元に転がっていたでっかい石を手に取った。

「えいっ!」

 せいいっぱいの力と、そしてちょっとばかりの怒りを込めて。わたしは手にしたその石を投げつける。
 窓を狙ったわけじゃない。どうせ当たるはずないと思ったし、ほんとに当たっても困るし。
 でもこんなときに限ってわたしの投げた石は正確に窓ガラスのある方向に向かって飛んでいく。
 なんで?
 しかもこんなときに限って見計らったかのように窓が開き、やっと顔をだしてくれた男の子の顔面にあたる。
 がつん、という鈍い音と、ぎゃあとかわあとかいう男の子の悲鳴が開いた窓の隙間から漏れる。
 わ。すごい音。
185あなたの意地悪にも 3:2007/11/25(日) 23:53:46 ID:jWJBjBaM0
「だ、だいじょうぶ?!」

 わたしは焦って大声で呼びかけた。 
 でも自分でやっておいてなんだけど、今の音ではもう絶対に死んでると思った。

「なにするんだ!」

 でも、男の子はすぐに飛び起きてわたしに怒鳴り返した。
 ああよかった。結構元気そうだ。

「すごく痛かったぞ!」
「ご、ごめん!」
「なんでこんな嫌がらせをするんだ!!」
「い、嫌がらせじゃないもん!! 一緒に遊びたかっただけだもん!!」
「こんなでかい石をぶつけてどうして仲良く遊べるんだよ!」
「だ、だってなかなか出てきてくれなかったから……」
「頭に来た!!」
186あなたの意地悪にも 4:2007/11/25(日) 23:55:44 ID:jWJBjBaM0
 男の子は叫んだ。
 それはほんとうに、ものすごく怒ってるみたいで。さすがにちょっと怖かった。
 でも昨日出会った時みたいにうつむいて泣いているよりは、このほうがずっといいとわたしは思った。
 けれども男の子は叫ぶ。 

「これからずっとおまえのことイジメてやるからな!!」
「えええええ〜〜〜〜!!」 

 ひどい。わざわざ心配して励ましに来た女の子に、そんな言い方はないと思う。
 そんなわたしの不満をよそに、怒りの男の子は二階の窓から飛び降りる。
 その手にはなぜかかマンガみたいにでっかいトンカチが握られていた。

「うわあ」

 むちゃくちゃに大きいトンカチだった。どう考えてもしゃれにならない大きさだった。
 あんなおおきなトンカチで殴られてたら、きっとすごく痛い。痛いじゃすまない。
 しかもご丁寧に棘釘まで刺してあるし。その発想がもうものすごく怖い。
 とても怖いので、わたしは逃げる。男の子は追いかけてきた。
187あなたの意地悪にも 5:2007/11/25(日) 23:57:44 ID:jWJBjBaM0
「待て〜〜〜〜!」
「ま、待ったら許してくれる?」
「いーや、許さない。一発殴るまでは絶対許さない」
「わあああん」

 それじゃあ待てるわけないだろう、と思う。
 わたしは走って逃げる。男の子は走って追いかけてくる。

「待てーーー長森」
「やめてよーー浩平」

 あははは、と笑えてくる。
 なんだかわたしは少しおかしくなってきた。
 ああ、彼はなんであんなにおおきなトンカチを振り回しているんだろう。
 それに二階から飛び降りるなんて子供には無理なのに。
 ああ、おかしい。絶対おかしい。
 こんなことおかしいのだ。ありえるはずがない。
 そして気付いていく。これは夢だ。
 軟弱なわたしが作り出す幻想。
 幼稚で安易で。そしてもうすぐ覚めてしまうわたしの夢……
188あなたの意地悪にも 6:2007/11/25(日) 23:59:15 ID:jWJBjBaM0
 目が覚めて、現実を認識したのはほんの数秒。
 その数秒で楽しかった、そして懐かしかった夢への想いもわたしの胸の中から消えていく。

「やだな……」

 溜息。
 ふと見ると、カーテンから僅かに差し込む光から夜明けが近いことを自然と感じた。
 あの頃はいつもこれぐらいの時間に起きていた。
 浩平を起こすためには必要な時間だったから。でも今はその必要もない。
 さっきの夢の残滓が胸に差し込んできて、久しぶりに瞳から涙が溢れそうになった。
 わたしは唇を噛んでその涙を堪える。
 泣くもんか。
 泣かない、絶対に。
 たとえ誰も見ていなくても、もう泣かないってわたしは決めたから。


 浩平が消えてしまってから、もうすぐ一年が経とうとしている。
 いまでも時々はこんな朝を迎えることもあるけれど、最初の数ヶ月に比べたらわたしはずいぶんと落ち着くことが出来ていると思う。

189あなたの意地悪にも 8:2007/11/26(月) 00:00:11 ID:4vNkL5/r0
「きっと、浩平のおかげでこんなふてぶてしい女の子になっちゃったんだよ」
 
 ベッドの傍らに置いたウサギのぬいぐるみにわたしはそう語りかけた。
 語りながら、浩平に振り回されてきた日々を静かに思う。 
 小学生の頃は特に苦労したものだ。
 わたしもまだ子供だったから、男の子の他愛の無いいたずらでもときどき泣きたくなってしまうことがあった。
 でもわたしは泣かなかった。泣かないって決めた。
 子供なりの意地もあったろうし、しっかりしたお姉さんでいたかったというのもあるだろうし。
 でも、一番の理由はわたしが泣いて逃げ出したら、その男の子は以前のうつむいていた男の子に戻ってしまう気がしたから。
 浩平にはわたしがついていないといけない。
 いつしかそう思うようになっていた。
 だから今もわたしは彼の帰りを待っている。
 彼の残した言葉の通りに。

「浩平のばかっ」

 一言怒鳴りつけて、私はそのぬいぐるみをそっとベットサイドに置き直した。
 もう気持ちは落ち着いた。
 こんなことぐらいで泣いたりしない。
 あれから、いろんなことがあったよね。
 もう、浩平の意地悪にもちょとやそっとじゃくじけないんだから。
 わたしと浩平のくされ縁は、こんなことぐらいじゃ消えないよね。

「よしっ」

 むんっとからだに気合を入れる。
 さあ、もう学校へ行こう。
 なにがあっても以前と変わらない、いつもどおりのわたしになって。
190 ◆COpg6Wklnw :2007/11/26(月) 00:02:47 ID:4vNkL5/r0
投稿中に時間すぎてしまいました。
運営の方、申し訳ありません。

『あなたの意地悪にも』(one)
>>183-189
191 ◆jDSrDt4dys :2007/11/26(月) 00:20:28 ID:bk474F2b0
【告知】

ただ今をもって、投稿期間を終了させていただきます。
参加された書き手の皆様、どうもご苦労さまでした。

それでは、これから感想期間に入ります。
投稿された SS について感想、討論などをご自由に行ってください。
期限は 12 月 3 日の午前 0:00 までとさせていただきます。

以下が、今回投稿された作品の一覧です。

>>172-176『イジワル21』(kanon)
>>183-189『あなたの意地悪にも』(one・長森)
192 ◆jDSrDt4dys :2007/11/28(水) 23:06:35 ID:i3RC8kNK0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は>>191となっています。

感想期間は 12 月 3 日の午前 0:00 までとなっていますので、
まだの方は是非お願いいたします。
193 ◆jDSrDt4dys :2007/11/30(金) 22:18:33 ID:htxEtGct0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は>>191となっています。

感想期間は 12 月 3 日の午前 0:00 までとなっていますので、
時間がありましたら是非ともお願いします。
194名無しさんだよもん:2007/12/01(土) 22:56:53 ID:/fu9JJQQ0
感想行きます。

>イジワル21
意地悪しといて笑わない事に不満を覚える祐一と、祐一が付き合えないのを知りつつ服を選ぶ美汐に違和感。
でも後者のは意地悪された祐一に対する意趣返しと脳内変換。そう考えるとみっしーも可愛いじゃないですか。
物語の中に「絵本」との伏線を忍ばせておき、ラストでそれを消化しつつ綺麗に締める。
SSとしてはなかなか理想的な形なのですが、もう一波乱あればとも思います。

>あなたの意地悪にも
棘釘トンカチに笑いましたw
長森ですね。まごう事なき長森ですね。
なんでこんなに苦労しなくちゃ…と思いつつも呼びかけ続ける世話焼き、苦労人属性。
原作での疑問のひとつ、なぜ長森が浩平宅を訪問したのか。その解の一つになり得るSSだと思います。
195 ◆jDSrDt4dys :2007/12/02(日) 12:11:26 ID:Q7XdgQtk0
【告知】

現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は>>191となっています。

感想期間は 12 月 3 日の午前 0:00 までとなっており、もう一日も
ありませんが、明日のSS職人のために是非とも宜しくお願いします。
196 ◆jDSrDt4dys :2007/12/03(月) 00:52:28 ID:ISCBIVuZ0
【告知】

ただ今をもちまして、感想期間を終了させていただきます。
投稿された書き手の皆さん、感想をつけてくださった読み手の皆さん、
そして生温かく見守ってくれていた ROM の皆さん、どうもご苦労様でした。

引き続きこのスレでは、今回の運営への意見、書き手の挨拶、
次々回のテーマの決定などを行いたいと思います。

上記のもの以外にも感想期間に間に合わなかった感想や意見が
ありましたら、書きこんでください。

※次回のテーマはSSの台詞の中に『ありがとう』と入れる形式で
 決定しており、開催は 12 月 10 日からを予定しております。
※今回決めるのは次々回のテーマです。お間違いのないように。
197名無しさんだよもん:2007/12/03(月) 03:00:48 ID:w5Oqq7jy0
おつかれー
っていうか、来るの久しぶり過ぎて出遅れた。

次回のテーマは新年の一発目だから、それらしいテーマがいいかな。
…って毎年そんな感じかもしれないけど。

自分は毎年田舎に帰るから「帰郷」とか…難しいか。
他には「遭難」とか「電話」とかは以前あったかな?

電話を発展させて、「あの人からの電話」みたいに限定しちゃうのもアリかも。
198名無しさんだよもん:2007/12/03(月) 16:31:02 ID:apntsupr0
投稿数より感想数が少ないってのも珍しいな。
まあ総括期間中で時間が取れれば感想書いてみるつもりではあるが・・・
199 ◆jDSrDt4dys :2007/12/05(水) 23:49:32 ID:GuznaAnD0
【告知】

現在総括期間になっています。
総括期間は 12 月 10 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、書き手の挨拶、追加の感想、次々回のテーマ投票などは
それまでにお願いします。
200 ◆COpg6Wklnw :2007/12/06(木) 23:12:21 ID:6qG81tDX0
『あなたの意地悪にも』を投稿した者です。
このSSは当初浩平が過去の長森にした意地悪を中心に展開させていくつもりでしたが、
執筆時間が足りないのと、内容がダラダラになりそうだったのでこういう話に変更しました。
その分中途半端な内容になったかもしれませんが……
長森を書いたのは初めてだったので、キャラ造詣が上手くいっていたかどうかは気になりますね。

以下、感想レスです。
>>194
トンカチはもうこれは夢だろ、というツッコミ待ちを意図して書いたものでした。
笑えたのならいいんですかね。
長森らしいと思っていただけたのなら何よりも嬉しいことです。
読んでくださってありがとうございます。

余談ですが、実は自分も美汐で考えてたんですけど。
先に投稿があったので急遽変更して長森にしてみました。
美汐に意地悪をしたいという思考は比較的連想しやすいいネタなんですかね。
それではまた。
201名無しさんだよもん:2007/12/07(金) 18:47:09 ID:AAcfc3+J0
198じゃないけど感想書いときますか。


>>172-176『イジワル21』(kanon)
祐一が美汐に意地悪したくなる気持ちはよくわかる。
だが愛の感じられない意地悪は単なる苛めになってしまう。
要はもうちょいニヤニヤできる意地悪をお願いしたいという願望でつ。
オチの意地悪カウント増加と美汐のツッコミはなかなかだとオモタ。

余談だけど「意地悪」だと可愛らしい感じがするけど「イタズラ」だと犯罪的な感じがするよね。
美汐にイタズラしてぇ〜

>>183-189『あなたの意地悪にも』(one・長森)
長森がなぜその性格を形成するに至ったかが丁寧に描かれているのが好感触。
その上で浩平との出会いを描いてるので、唐突な回想にも違和感を覚える事なくスムーズに読むことができた。
ただまあそれ以降の展開はちょっとグダグダかも。
話を盛り上げるために浩平にトンカチ持たせて追いかけ回させるんだけど、それが非現実的ってか
SSの中でかなり浮いてるように感じた。
全体の雰囲気に合ってないっていうか。うまく言葉にできないんだけど。
〆はまあ、お約束ながらもなかなか良い感じに仕上がっていたと思う。


次回のお題は「バレンタイン」とかベタなものをあげてみる。
202 ◆jDSrDt4dys :2007/12/08(土) 21:13:35 ID:rpVVFOrW0
【告知】

現在総括期間になっています。
総括期間は 12 月 10 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、書き手の挨拶、追加の感想、次々回のテーマ投票などは
それまでにお願いします。
203名無しさんだよもん:2007/12/09(日) 17:24:51 ID:JVrf4x730
『イジワル21』を投稿した者です。

遅ればせながら、感想感謝レスを。
ふと浮かんだアイディアを元に、「4発言程度に起承転結を収められないか」と言う目論見を
もって臨んだのですが、結局5発言になった上に、あまり上手く行かなかったようです。
タイトルも最後までいいのが浮かばず、「どうすべ?」と悩んでいた挙げ句に、
無理矢理ラストの2行に合わせてしまったのですが……。
ともあれ、拙い作品ではありましたが、お読みいただきありがとうございました。

>>194
冒頭が前置きなしに始まってるのも一因(それまでの経緯がない)かと思いますが、
違和感がありましたか。書き切れてない部分が多々あるだろうとは思ってましたが、
キャラについてもっと煮詰める必要があるようですね。

>>201
自分としてはそんなイジメを意識したわけではないのですが、見直してみるとニヤニヤ成分が
確かに足りないようですね。

お二方の指摘を受け、今後の創作は美汐成分を五割増することを念頭に、精進したいと思います。
204 ◆jDSrDt4dys :2007/12/10(月) 02:49:50 ID:OGb1Udfy0
【告知】

第六十九回投稿テーマ:台詞で『ありがとう』
※今回のテーマはSSの中に「ありがとう」という台詞が含まれて
  いればテーマ消化となります。

投稿期間: 12 月 10 日の午前 0:00 から 12 月 24 日の午前 0:00 まで。

テーマを見て、思いついたネタがあればどんどん投稿してみましょう。
面白い作品だったら、感想がたくさんついてきて(・∀・)イイ!!
もちろん、その逆もあるだろうけど……(;´Д`)

※投稿される方は >>4-6 にある投稿ルール、FAQ をよく読んでください。
※特に重要なのが

・テーマに沿った SS を*匿名*で投稿する
・投稿期間中は作品に対して一切感想をつけない

の二点です。他の各種 SS スレとは異なりますのでご注意を。

それでは、投稿開始っ!
205 ◆jDSrDt4dys :2007/12/10(月) 02:55:37 ID:OGb1Udfy0
また、次回のテーマはいくつか頂きました候補の中から
『電話』を選ばせて頂きたいと思います。

募集は1月中旬からになると思いますので、今回のテーマが難しい、
期間が短いと感じられる方はこちらで考えてみて下さい。
206 ◆jDSrDt4dys :2007/12/18(火) 01:10:02 ID:GJdspAxR0
【告知】

現在、葉鍵的SSコンペスレでは投稿を募集しています。
今回は台詞の中に「ありがとう」と入れているSSを募集しており、
締め切りは 12 月 24 日の午前 0:00 です。
テーマを見て思いついたネタがあれば、ぜひ投稿してください。

また、次回のテーマは『電話』開催時期は 1 月中旬になる予定です。
「二週間じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
207 ◆jDSrDt4dys :2007/12/22(土) 12:50:00 ID:PMoh15lI0
【告知】

現在、葉鍵的SSコンペスレでは投稿を募集しています。
今回は台詞の中に「ありがとう」と入れているSSを募集しており、
締め切りは 12 月 24 日の午前 0:00 です。
テーマを見て思いついたネタがあれば、ぜひ投稿してください。

また、次回のテーマは『電話』開催時期は 1 月中旬になる予定です。
「あと数日じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
208名無しさんだよもん:2007/12/22(土) 16:52:11 ID:CkM8GpfU0
投稿なしは寂しいから急ぎで書いたよ。
toheart(1)琴音、後日談系。
「はじまりの三月」
209208 ◆2KwusBRnYI :2007/12/22(土) 16:57:09 ID:CkM8GpfU0
「今はやっぱり、どこも高いもんなんだな」
 昼下がり、腕を組んで、うーんと首をひねる。
学生用国内旅行のパンフレットをファミレスのテーブル一杯に広げながら、琴音と浩之、
二人でそれを食い入るようにじっと見つめている。
外はまだ寒さの残る三月、しかし浩之は国立大学の後期試験になんとか滑り込みで合格し、
やっと長い長い受験を終えたばかりだった。

「こんなに長く居て、お店の人に迷惑じゃないですかね?」
琴音は、何杯めだか分からないくらいの、ドリンクバーのオレンジジュースにストローを指しながら言う。
「そんなことないぞ。受験勉強にここ使ってたやつなんて、コーヒー一杯で
数時間くらい平気で居座ってたし」
 浩之は大量のパンフレットをテーブルでとんとん、と角を調えて、かばんにしまう。
今日、春休みに二人きりで旅行するための計画を立てる、はずだったが、
今日二人で持ち寄ったパンフレットではどうも金銭的に良い折り合いの物が見つからなかった。
それで結局、後日また探してみようということで落ち着いたのだった。

「それって藤田先輩のことですよね」
「何が?」
「ここで勉強してた人って」
「やっぱり分かるか」
「分かりますよ」
 浩之は数週間前までここを何度も勉強場所として使っていたし、それを琴音もずっと知っていたが、
琴音はあえて自分からは会いに行かなかった。
夏休み以降、急激に受験に本腰を入れた浩之を見て、どうしても自分のせいで
時間を割かせてしまう気にはならなかったのだ。
「藤田先輩、本当に頑張りましたよね」
「うーん、まだあんまり実感ないけど」
 氷の入ったグラスを口に運びながら言う。ドリンクバーを頼まなかったので水だけだ。
「でも、すごいです」
「まあな」
 琴音がくすっと笑う。
210208 ◆2KwusBRnYI :2007/12/22(土) 16:59:05 ID:CkM8GpfU0
「それにしてもびっくりしてたな、琴音ちゃん」
「え?」
「いやさ、俺がA大目指してるって言った時」
「あ…」
 琴音はくりっとした目でまっすぐ浩之を見つめ、やや悪戯っぽく言う。
「やっぱりばれてました?」
「狐につままれたような顔してたろ」
「だってあんまりびっくりしたから…」
 それはそうだった。赤点を避けるかどうかというそのときのレベルの浩之の学力で考えれば、A大学は偏差値で2、3ランク上で、
それでも合格できたのは、その後の浩之の集中力の賜物だった。それを踏まえても奇跡的と言えるだろう。
「まさか、琴音ちゃんにまで見捨てられるとは思ってなかったのにな」
 琴音は窓の外に視線を向けながら、冗談っぽく微笑む。
「ごめんなさい」

 そのとき、学生が集まるファミレス独特の喧騒の中、パリンとどこかで何かが割れたような音がした。
誰かがグラスか食器を床に落としたのだろう。その音で一瞬、周囲がしんとしたが、またすぐ元に戻る。
池に小石を投げ込んだ時に広がった小さな波の輪が、すこしずつ薄れ、やがて消えてしまうのに似ていた。
「誰かがグラス…落としちゃったみたいですね」
「ああ」
浩之はちらっと音のした方にちらっと目を配ったが、ふと思い出したようなそぶりをして言う。
「それにしても、琴音ちゃんも短い間に上手くなったね」
「え?」
「力のこと」
「あ、でも…先輩のおかげですけどね」
「いやさ、昔はああいう音がするとおっかなびっくりだっただろ」
 琴音は視線を窓の外から、自分の手元のグラスに戻す。
そして、もう残り少ないオレンジジュースと氷をストローでかき混ぜながら、ゆっくりとした口調で呟く。
「不安だったんですよ。自分がやったこととそうじゃないことの区別がよく分からない時もあったし…」
「そっか」
「コントロールがつくようになってからも、しばらく、力のことを知らない人の前だと怖かったです。また暴走しちゃうんじゃないかって…」
211208 ◆2KwusBRnYI :2007/12/22(土) 17:01:53 ID:CkM8GpfU0
話を聞きながら浩之は、ふと自分のグラスが空だと気づく。
「あ、琴音ちゃん、ちょっとタンマ」
 ひょいと琴音からオレンジジュースを取り上げて、浩之はストローでずずっと音を立てて飲みほしてしまう。
思いがけず、少し炭酸が入っているようだった。
「あ…」
からん。多めに入れた氷がグラスにあたる音が、まわりの声と、今人気のアイドルグループの曲のBGM
―もっとも、興味のない浩之には誰だか分からなかったが―でほとんど掻き消されたが、辛うじて琴音と浩之だけに聞こえた。
「間接キスだな」
 心なしか、琴音の頬が少しだけぽっと赤くなる。
「そういうの…ほんと先輩、好きですよね」
「大好きだ」
「飲み干さなくてもいいのに…」
「美味かったからな。オレンジジュースとなんか混ぜたろ」
「分かりました?スプライト入れるとおいしいんですよ」
「まだまだ子供だな」
 琴音は、ふふっと笑い、ドリンクバー用の模様の入ったグラスを持って立ち上がる。
「あー、俺がやるよ、俺が飲んだんだし」
「藤田先輩に任せると絶対、変なもの混ぜるじゃないですか」
琴音が怪訝な顔をする。
「ばれた?」
「ばれます」
「うーむ、俺も修行が足りんか」
 浩之がわざとらしく腕を組んで言うと、琴音はにこっと笑って、まだまだですよと言い残して、おかわりを注ぎに行った。


212名無しさんだよもん:2007/12/22(土) 17:06:12 ID:CkM8GpfU0
一人残されて、浩之はふと、琴音が何度か眺めていた窓の外に目をやる。
駐車場の脇に一本、ぽつりと人工的に植えられた木があった。
おそらく琴音はこれをずっと見ていたのだろう、控えめな数本の枝から、薄茶色の新芽が幾つか生えてきている。
寡黙で孤独で、それでも空に向かって寂しげに伸びる姿が、浩之には琴音とどこか重なって見えた。
あと何日もすればこの街を離れる。感傷なんていうものにはすこぶる疎い浩之でも、その木を見ていると、
どうしてか少し寂しい気がした。
「そういえば色んなことがあったな…」
空がほんの少しずつ暮れ始めて、薄いオレンジ色をおびた太陽がまぶしい。
琴音が戻ってきたら、今までありがとう、これからもよろしく、なんて言ってみようかなとなんとなく思いつつ、
でもそんな柄じゃないしなあ、と呟いて、浩之は空のグラスを口元へ運んだ。
213208 ◆2KwusBRnYI :2007/12/22(土) 17:07:42 ID:CkM8GpfU0
終わりです。
(212も俺です。sage忘れが酷いしハンドル付け落とすしなんかすみませんw)
214 ◆jDSrDt4dys
【告知】

15時間前をもって、投稿期間を終了させていただきます。
参加された書き手の皆様、どうもご苦労さまでした。

それでは、これから感想期間に入ります。
投稿された SS について感想、討論などをご自由に行ってください。
期限は 12 月 31 日の午前 0:00 までとさせていただきます。

以下が、今回投稿された作品の一覧です。

>>209-212『はじまりの三月』(toheart/琴音)