1 :
名無しさんだよもん:
光が眩しかった。
始まりは、60億の死滅。
破壊の果てに残された、狩る者たちと抗う者たち。
「光です。この町の人々の、世界中の人々の、たいせつな思い」
世界に残された、13個の希望のかけら。
「わしは、悪魔になりたいだけじゃ」
理想の名のもとに、無限の殺戮を欲する集団。
「…ごめん。俺できないわ」
嘆きがいつしか、涙に変わる。
「無駄死にはできない。この町を救うまでは」
戦う人がいる。未来を賭けて。
「悔いることです…罪びとには、それが許されている」
その手のなかに、揺るがす予感。
「俺は、愛でこれを回す男だ…!」
動き始めた、大いなる力。
「友達なら、信じつづけてくださいっ!」
迷ってる暇はない。
「ぎぎぎ」
――大切なキミを守るから。
超多重展開ミスティックバトルSS『クラナド戦記〜光溢れるこの町で〜』
戦いは、さらなる苛烈な現実へ――
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1114015343/l50にて大好評連載中!
新スレ記念おいおい!
4 :
名無しさんだよもん:2005/04/21(木) 01:52:07 ID:ZZJT+k5NO
乙
お、おいおいっ!
〜参加者リスト〜
001 岡崎朋也 (欠番) 幸村俊夫
002 藤林杏 (欠番) 一ノ瀬ことみ
003 藤林椋 (欠番) 岡崎汐
004 春原陽平 (欠番) ガラクタ
005 伊吹公子 (欠番) 春原芽衣
006 伊吹風子 (欠番) 土方店長
007 柊勝平 (欠番) ジョニー
008 一之瀬ことみ (欠番) 紳士
009 相良美佐枝 (欠番) 乾
≪死亡≫ 小川一哉(ラグビー部員) (欠番) 岡崎直幸
011 芳野祐介
012 古河秋夫
013 古河早苗
014 古河渚
≪死亡≫ 宮沢有紀寧
≪死亡≫ 徳田悠作(サッカー部員)
017 坂上智代
018 仁科りえ
≪死亡≫ 杉坂
≪死亡≫ スメルライクティーンスピリッツ
021 ドッペル智代軍団
〜主な登場人物〜
岡崎朋也…本編の主人公。今のところ何の役にも立っていない。
古河渚…演劇部部長。強い思いの光を秘めた少女。
その純粋な思いは、《光》の生み出す魔力さえ打ち消すことができる。
古河秋生…渚の父親。腕っぷしと根性を兼ね備えた頼りになる男。
勝平の毒矢に冒され、その後仁科の応急処置を受けたものの、癌の進行により夜明けまで持つか分からない状態。
古河早苗…渚の母親。 優しさと心の強さを兼ね備えた頼りになる女性。
幸村俊夫…今回の破壊を引き起こした張本人。
『唯一神』の称号を持つ破壊結社《MIO》の領袖として、幻想世界に通じるという謎の力を操り世界を混沌に陥れる。
彼の所有する光『獅子王』は人の生死すら意のままにするらしい。
伊吹公子…『二帝』と呼ばれるMIO首脳部のひとりで、「賢帝」の称号をもつが、幸村への反逆を目論んでいる?
美術教師であり、《光》のひとつである「ゼウクシスの魔筆」を駆使した強力な魔法を使う。
チャームポイントはピンタックブラウス。
一『ノ』瀬ことみ…億にひとりの知性を持つ天才少女。肉体から脳だけを幸村に奪われ、器の少女として利用されることになる。
その知性をめぐらすことで、幻想世界を訪れることができるらしい。
一『之』瀬ことみには精神感応を通じて干渉できるようだ。
一『之』瀬ことみ…一ノ瀬ことみの肉体を持つ刺客。『二帝』と呼ばれるMIO首脳部のひとりで、「知帝」の称号を持つ。
機械のように疲れを知らず、あらゆる火器を扱う。MIOの保有する巨大な集積回路と何らかの関係があるようだ。
仁科りえ…合唱部部長。勝つためなら手段を選ばない冷徹さで、友人・杉坂を間接的に殺害する。
渚の思いの光を受けて悲しみを知り、のちに改心。
その後渚たちと行動をともにしていたが、癌に冒された秋生を助けられる者を探し、一人夜の闇へ。
杉坂…合唱部部員。仁科の裏切りにより殺されるが、幸村の力によって蘇生、『四天王』に数えられる刺客となる。
強靭な右腕の爪が武器。秋生らとの激しい死闘の後、公子の魔法により完全消滅。
藤林杏…クラス委員長。朋也の友人。手裏剣術を応用し、無数の辞書を投擲するのが得意技。
囚われの椋を助けるため、単身飛び出す。
藤林椋…杏の双子の妹。 占いで敵の行動を予知することができる。勝平の襲撃により囚われの身に。
宮沢有紀寧…世界の破滅に絶望し、あてのない戦いの道を選んだ少女。
MIOを撃破するため単身で一之瀬ことみに戦いを挑むが、敗れ去り殺害される。
死後、勝平の支配下に置かれているようだが……。
春原陽平…朋也の友人。美佐枝さんのおっぱいに目がない。
不屈の生命力でどんなピンチからも立ち上がる男。
頭は悪いが、友情に厚い。徳田、智代と相次ぐ戦いで負傷するが……。
春原芽衣…春原陽平の妹。兄を訪ねてこの町に来た途端、MIOの軍団員に襲撃を受ける。
土方の救助により辛くも一命をとりとめ、CLANによる庇護を受けることに。
芳野を助けるために出撃し、公子の「思考分岐空間」に囚われてしまった?
柊勝平…『四天王』に数えられるMIOの刺客。
かつて癌に脚の自由を奪われ病死したが、死を超越して蘇った後は幸村の指揮下に。
全身が癌細胞でできており、その再生能力は不死身。
さらにネクロマンサー(屍術師)の能力を持ち、有紀寧ら死者を操ることができるらしい。
藤林椋に歪んだ愛と憎しみを抱いているようだ。
意味わかんねえよっ!
☆☆☆★★おいおい!いみわかんねぇよ!, 2005/03/03
レビュアー: 杉坂ファン 関西
ともだちにすすめられて読み始めたのですが、すっかりはまりました!
しゅじんこうの朋也の、「おいおい、意味わかんねえよ!」というセリフが凄くかっこいい!
個性豊かな登場人物たちが織り成すミスティックバトルも最高!
とにかく、読まなきゃぜったいソンしますよ♪♪
小川一哉…ラグビー部員。勝平との戦闘のさなか、美佐枝への愛に殉じ壮絶な死を遂げる。
伊吹風子…公子の妹。ヒトデをこよなく愛する少女。美佐枝と芳野に命を救われる。
公子から、《光》のひとつである「レイジングヒトデ」を託される。
相楽美佐枝…学生寮の寮母。芳野の知人。格闘戦にかけては一級品の能力をもつが、生徒を信じるあまり窮地に陥ることも。
芳野祐介…電気工の青年。伊吹公子の恋人。我欲ではなく愛のための戦いを重んじる。
《光》のひとつである「ラブアンドスパナ」を用いて、一瞬のうちに機械を分解できる。
智代の襲撃により意識不明に陥ったあと、公子の「思考分岐空間」に囚われてしまうが……。
徳田悠作…サッカー部員。性格は卑劣で色欲を好み、邪魔者は「情け容赦なくぶっ殺す」という。
美佐枝ら一行を攻撃するが、智代により一蹴、殺害される。
坂上智代…『四天王』に数えられるMIOの刺客。生徒会長。
弟・鷹文の蘇生を条件に幸村との取引に応じ、刺客となる。
絶大な破壊力をもったキックの連続技が得意。徳田を殺害し、春原に深手を負わせるが……。
岡崎直幸…大破壊の前に、古物商の四條から《光》を購入した。動機や現在の居場所など、詳細は一切不明。
岡崎汐(?)…幻想世界の少女。岡崎朋也と古河渚の間に生まれるべき子と言われている。
人知を超えた力を持つらしいが、詳細は一切不明。
スメルライクティーンスピリッツ…隣町の傭兵集団。勝平の指揮のもとに杏らを襲撃するが、殺人辞書術の返り討ちにあいあえなく全滅。
死後、勝平に屍を支配されている。
ドッペル智代軍団…智代を模して作られたサイボーグの集団。
遠近両用の戦闘に対応するため、智代に匹敵する格闘能力に加え、左腕にプラズマ砲、さらには自爆装置を装備。
公子の「思考分岐空間」内にのみ存在する架空の存在とも噂されているが……?
土方店長…ファミレス「Ernesto Host」の店長。市民軍《CLAN》の統率者として、破壊結社MIOに立ち向かう。
ある使命を受け、未来の世界から導かれてきたようだ。
ジョニー…芳野祐介の同業者。芽衣とともに芳野を助けるため出撃後、公子の「思考分岐空間」に囚われてしまった?
片方の分岐ではCLANの戦士、もう一方の分岐では『三幹部』の称号を持つMIOの刺客と、正反対の役割を担うことになるが……?
紳士…MIO本部の周囲に張りめぐらされた「絵画迷宮」で侵入者を迎え撃つ科学者。
重力波干渉不連続面と呼ばれる「空間の断裂」を操り、硬度を無視してあらゆる物体を切り裂く。どうやら公子の協力者のようだ。
乾…MIO『三幹部』の一人。岡崎・春原の担任。教育行為の名のもとに仁科の命を狙う。
何だかよく分からないけど、行くよっ!
(敵がいる可能性が高いわね)
暗い森に鬱蒼とした広葉樹林は人が隠れる場所がたくさんある。
待ち伏せには格好の場所だ。
仁科は慣れた感じで木々の間をジクザクに動いていった。
(回避行動はこれくらいね。えっと、次にすることは奇襲を避けるために敵の居場所を探すこと・・・索敵訓練はずいぶん昔だったから忘れちゃった・・・)
「ばかもん!」
仁科は鉄パチの上から拳で殴られ、ぬかるんだ地面に顔から突っ込んだ。
迷彩色の服が泥で抹茶色に染められる。
それはたった一人のレンジャー訓練の最後の修行だった。
本来の訓練は飲まず食わずで山を一週間歩き回ること、だがこの鬼教官は到達地点にいる狙撃手を撃退せよとの指令を与えたのだ。最初に言った説明ではそんなことは言わなかった。
仁科は終わったと思った瞬間、精も根も尽き果てたように木に倒れ込んだところを狙撃手の・・・鬼教官のペイント弾に撃たれたのだ。
「もう一度だ」
鬼教官は森の中へ消えていく。
仁科はぎっと歯を食いしばって立ち上がる。
ジグザクに狙撃手からの回避行動を取る。
それから仁科は狙われやすい窪地へとわざと逃げ込んだ。
空気を切り裂く音がしたとほぼ同時に、仁科の鉄パチに穴が開く。
だがその前に頭から離れた鉄パチはカランと地面に落ちて、撃ってきた方向へ仁科は走っていった。
その後、森から出てきた仁科と鬼教官の鉄パチの両方に穴が空いていた。
「いいか、体の疲れより、食欲の衝動より、睡眠の欲求より、自分の命を優先するんだ。
そうしないと、生きてはいけない」
家に帰ると、仁科は押し入れの布団を取り出し、靴下を枕の隣に置いて寝ころんだ。
が、疲れのためかすぐには寝れない。
天井を見たまま、じっとこの一週間のことを考える。
この訓練は普通の中学生はやらない。理不尽だし、きついし、苦しいし・・・
だけど、お父さんと一緒にいるためにはこれをしなければならなかった。
お父さんは傭兵でいろいろな国で戦って、それに口には言えないことも相当やっている。
いつ襲われるともわからない。だから、自分の身は自分で守らなければならなかった。
そう・・・私はお父さんの子供だから、それが普通だったりする。
眠いや。寝よう・・・
朝起きた時、驚いたことがある。
昨日まで訓練していた山が雪山になっていたことと、靴下の先からバイオリンが生えていたことだった。
それからバイオリンが私の宝物になった。
仁科が草原へ頭をひょっこりだした。
(よし!)
乾の放った弾丸は、仁科の髪の毛をすっと通り抜け、木に当たった。
仁科は射線を確認し、撃ってきた方角へ走り出す。
(!)
(この動きは、私がスメルライクティーンズに教えたもの・・・だが、女など一人もいないはずだ、一体どういうことだ!?)
こちらに走り込んでくるまでの数秒。
その疑問に一つの蜘蛛の糸が垂れた。
ただ、それはカンダタのように上るべきものでなかったかもしれない。
奴は、アルファの・・・子供。
数秒経った。
乾はこめかみに拳銃を当てられていた。
「あなたの負けです」
「・・・お前の動きは完璧だな」
「えぇ、完璧です」
スメルライクティーンズには、見られた敵は殺すという掟があった。
復讐されては面倒だし、顔を見られては今後の作戦任務に支障をきたす。
時には、その家族でさえ、復讐を考慮して皆殺しにすることがあった。
乾はここで死ぬと悟った。
「武器を渡してください」
「何?」
その言葉を乾は信じられなかった。
「ちょっと待て、俺を殺さないのか。もし、俺を殺さなければいつお前を殺しに来るかわからないんだぞ?そんな甘い調練を受けていたのか!?」
それはアルファに対して、怒っていたのだろう。自分の徹底した理論を学んだアルファはそんな程度しか理解していなかったのかと思ったのだ。
「殺さないですよ」
「馬鹿な!?」
乾は苦虫を噛んだような表情をした。
「自分の命より大切なものをみんな持っているって知りましたから。あの家族のおかげで」
「意味がわからない!そんなの俺の理論には無い!」
「私の大切なものはお父さんですから・・・といってもわからないですか」
仁科はすっと目を細くすると、脇腹に蹴りを入れ、乾を気絶させる。
服を引きちぎって、猿ぐつわとロープで彼を拘束した。
「これでよし」
そのとき、
「おいおい!・・・女の子がこんな山奥でどうしたんだ!?」
勝平が現れた。
山 018 仁科りえ 所持品:多数の武器
乾 所持品:なし
勝平 所持品:毒矢
うご・・・しまった。まあ・・・気づかれなきゃいいか。
19 :
名無しさんだよもん:2005/04/21(木) 22:14:00 ID:mw44Op1k0
'7/) _ _ _ _ ._
, '´ ' ヽ '´ ヽ '´ ヽ '´ ヽ '´/ ヘ 8 '´ ヽ8
i /ノノノ))〉 .i ノノノノノ)) ! j リノ)))) ! jリノ)))) .i 〈/ノノヽ〉 .リ リノノハ))〉リ
!f!(l.゚ ー゚ノ! .<l!(!ll ゚ ‐゚ノll .l ll ゚ ヮ゚ノ∫ .!l∫゚ -゚ノ! .l l(l.゚ ー゚ノ! !lv ゚ -゚ノv
^'⊂丞つ ./l⊂ll丞つ☆ li ⊂丞つ `゙ l∩∩ li ⊂丞つ リ⊂丞つi
く/_l〉 巛く/_l〉 .|! lく/_|〉 く/_l〉 |! lく/_l〉 .く/_l〉
し'ノ .し'ノ し'ノ .し'ノ .し'ノ .し'ノ
おいおい!
21 :
前スレ535:2005/04/22(金) 00:48:39 ID:8Zh3IGML0
何だかよくわかんないけど、まとめサイト更新したよっ!
現在の書き手の陣容見て思うんだけどそれぞれ個性ありますね。
・激燃&激萌王道驀進そつなさ炸裂系
・狂気的言語感覚意表突きすぎ展開系
・トンデモ超絶戦闘理系的緻密描写系
久弥と麻枝と涼元みたい。なんとなく。
>>1 新スレ乙だよっ!
22 :
おまけ:2005/04/22(金) 00:50:56 ID:8Zh3IGML0
>>18 乾はビルの屋上にいたんじゃなかったか?
>>21 魁がいなくて何よりw
あとおまけ見れないみたいだけど…
>>23 そうです。すいません・・・( ´・ω・`)
りえちゃん、完璧な動きで一瞬にして屋上に駆け上ったんですねっ!すごいです!!
意味分かんねぇよ!
「おいおい!・・・女の子がこんな山奥でどうしたんだ!?」
「!!」
新たに出現した敵に対し、とっさに銃を構える仁科。
(…あれ…?)
その時仁科の頭を違和感が襲った。
(何か…おかしい…でも何が…?)
視線が手に持った銃、ベレッタM92FSに向かう。
(そうだ!この銃は扱いやすいから古河さん達の護身用に置いてきたはず…!な、何でここに!?)
風がざわざわと夜の木々を揺らす。
(それだけじゃない…私、民家の周辺にいたはずなのに、いつの間にか森に入っていた。…まさか…これは…!)
「はっ!」
意識を取り戻した仁科の頬に、冷たいアスファルトの感触があった。
右肩の制服が破れ、肌から血が流れ出している。
仁科が倒れている場所は、渚たちのいる民家から出てすぐの場所だった。
「やっぱり…!私、民家から出た直後に敵の攻撃を受けて、気絶していたんだ…!」
「しばらく撃っていないとなまるな。心臓を狙ったつもりだったんだが…」
ビルの屋上で乾が軽く舌打ちをする。
「だが、どのみち次の一発で終わりだ。」
再びライフルを構える。
(まずい、逃げないと次の弾が来る!)
弾かれたように立ち上がり、隠れる場所を探す。
が、その時、仁科の体を異変が襲った。
「え…?」
全身から力が抜けていく。それだけじゃない、体中が熱い。
(これは…秋生さんの症状と同じ!毒じゃなくて感染するタイプの病原菌だったのか!まずい!!)
地面にがくっと膝をつく。
その時だった。
「仁科さんっ!?どうしたんですかっ!!」
異変に気付いた渚が玄関の外に立っていた。
「今助けに行きますっ!」
「来ないでーーーーーっ!!」
仁科の絶叫が夜の町に響く。
「え…?仁科さん…?」
「敵が離れたところからライフルで狙っています!民家の敷地内なら建物が壁になると思いますから、そこに居てください!」
「な、何言ってるんですかっ!それじゃあ仁科さんが…っ!」
「私は、もう助かりません。それより、私を殺した後、敵は直接民家に来ると思います。すぐにみんなを連れて裏口から逃げてください。」
「そんなっ!友達を見捨てて逃げたりできませんっ!!」
仁科の額に汗の玉が浮く。もう時間がない。
「私を友達と思ってくれるなら、逃げてください。それが私の、友達としての…最期のお願いです…!」
「仁科さん…!!」
「渚さん…あなたに会えて…いえ、あなた達家族に会えて、私は本当に幸せでした。例えそのことが私の死を早めたとしても…!」
目を閉じる仁科。瞼の裏に、気絶した際に見た夢が蘇る―――――
『自分の命より大切なものをみんな持っているって知りましたから。あの家族のおかげで』
―――――あの言葉は、夢(うそ)じゃないから…!
「さようなら、渚さん。お元気で…」
死を覚悟した仁科の手に、人の温もりの感触があった。
渚が、仁科の手を握っていた。
「な、渚さん…!?ど、どうしてっ!?」
「そんなの、友達だからに決まってますっ!!」
引き金に伸びた乾の指が止まる。
「古河渚も一緒だったのか。だが、あいつも岡崎のようなクズと付き合う不真面目な生徒だ。まとめて葬っても問題はないだろう。」
照準が渚の頭に移る。
「お前達二人は退学だ。人生という名の学校からな!」
引き金を引く。ライフルから凶弾が放たれた。
ガキンッ
場にそぐわない金属音が響く。
「二人とも、遅れてすみませんっ!」
仁科達を庇う様に停車した一台のワンボックスカー。その運転席には早苗の姿があった。
「渚、仁科さんを連れて早く家の中へ!」
「は、はいっ!」
仁科を抱きかかえ、引きずるようにして民家に戻る。
民家のガレージの方で車を止める音が聞こえた後、早苗も再び玄関に戻って来た。
「お母さんが車を運転できるなんて知らなかったですっ!仁科さん、助かって本当に良かったですっ!」
一人はしゃぐ渚。
仁科の顔は未だ厳しいままだった。
「まだ安心はできません。次は直接ここを襲ってくるでしょう。秋生さんも車に乗せて、早くここを離れた方がいいです。早苗さん、お願いできますか?」
「……」
しかし返事はなかった。
「早苗さん?」
仁科が早苗を振り返る。
どさっ
玄関に倒れ伏す早苗の姿があった。
「す、すいません…体が熱くて…力が入りません…」
「お母さんっ!」
慌てて駆け寄ろうとする渚。
「私達から離れて!渚さんっ!」
仁科が声で渚の動きを制する。
「仁科さん?」
「早苗さんと私は秋生さんと同じ病気に冒されています。おそらく、縫合の際、秋生さんの血液に触れたときに感染したんでしょう。」
「そんな…!」
「今動けるのは、渚さん、あなただけです。いいですか、今度こそ、お願いします。」
仁科の目に堅い決意が宿る。
「私達を置いて逃げてください。」
民家(車庫にワンボックスカー)
012 古河秋生 所持品:タバコ、ライター
013 古河早苗 所持品:レインボーパン他
014 古河渚 所持品:なし
018 仁科りえ 所持品:多数の武器
民家の見えるビルの屋上
(欠番) 乾 所持品:スナイパーライフル
強引だとは思いますが、乾の居場所の矛盾(ビルにいたはずが山にいる)等を脳内削除なしで解決するにはこれしか思いつきませんでした。
意味分かんねぇよ!
何だかよく分かんないけど、まぁ悪くない処理かと。
33 :
前スレ535:2005/04/23(土) 16:28:23 ID:qIuOKGmX0
34 :
名無しさんだよもん:2005/04/23(土) 17:18:06 ID:jQN4yr1k0
何だかよく分からないけど、行くよっ!
お、おいおい。意味分かんねえよっ!
36 :
名無しさんだよもん:2005/04/24(日) 00:14:31 ID:zFy87/si0
>>36 何だかよく分からないけど、行かねえよっ!
>>33 よく分からないけど、これってかなり大変な作業じゃ…超乙としか言えないよっ!
挿絵募集で思い出したけど、なかなかトップ絵書く人いないねっ
人いないから、しょうがないかなっ。蔵本スレとかに宣伝するのは反則かなっ?
今結構盛り上がってるし、まったり待つのがいい気がする。
・商店街の書店
001 岡崎朋也 所持品:唐揚げ弁当
・商店街の書店周辺を移動中
002 藤林杏 所持品:辞書いっぱい
・桜並木の坂道(現実)
005 伊吹公子 所持品:ゼウクシスの魔筆、智代の『光』
・桜並木の坂道(仮想)
011 芳野祐介 所持品:ラブアンドスパナ含む工具一式
021 ドッペル智代軍団 所持品:プラズマ砲
欠番 春原芽衣 所持品:グロックC18
欠番 ジョニー 所持品:IMIデザートイーグル
・桜並木周辺
004 春原陽平 所持品:銃、某ラジカセ(岡崎ラップ入り)
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ、レイジングヒトデ
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、リュック(中身不明)
017 坂上智代 所持品:不明
・MIO本部
003 藤林椋 所持品:本屋でぱくった占いグッズ(奪われたかも?)
007 柊勝平 所持品:44マグナム(毒矢も持っている?)
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器
015 宮沢有紀寧(勝平の支配下) 所持品:不明
欠番 幸村俊夫 所持品:獅子王
欠番 一ノ瀬ことみ 所持品:なし
・MIO本部周辺の雑木林
欠番 紳士 所持品:ジュラルミンケース(ノートPC入り)、携帯
・民家(車庫にワンボックスカー)
012 古河秋生 所持品:タバコ、ライター、
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:特になし
018 仁科りえ 所持品:多数の武器
・民家の見えるビルの屋上
欠番 乾 所持品:所持品:スナイパーライフル
・ファミレス
欠番 土方店長 所持品:不明(店には大量の物資)
欠番 ウェイトレス 所持品:不明
・幻想世界
欠番 岡崎汐 所持品:不明
欠番 ガラクタ 所持品:不明
・現在地不明
欠番 岡崎直幸 所持品:四條から買った『光』
(010小川一哉、016徳田悠作、019杉坂、020スメルライクティーンスピリッツは戦闘不能)
>視線が手に持った銃、ベレッタM92FSに向かう。
第21話のゆきねぇも同じ銃持ってましたよね。
お、おいおい!
意味わかんねぇの?
45 :
'ヽ/ヽ:2005/04/24(日) 17:10:43 ID:QcapOvaPO
わかんねぇな。
何だかよく分からないけど、行くよっ!
屋内に逃げ込む仁科らをスコープの向こうに眺めて、乾はトリガーから指を離す。
「フン、籠城戦でも気取るつもりか?
劣等生どもめ…敵の陣地にのこのこ出向く間抜けがいるか」
嘆息するや、乾は狙撃銃から弾倉を抜き取り、銃身を外してゆく。
ついさっき渚を狙ったレミントンM700を分解し、ライフルケースに収めてしまった。
それは、しかし攻撃の中止を意味しない。
「戦うならば、せめて戦時の法にのっとって殺してやろうと思ったがな…」
つぶやく乾の唇の端が、一種の愉悦に歪んでいた。
ライフルケースから、新たな銃が姿を現す。
先ほどまでの308口径ライフルとは、大きさも重量も何もかもが違う、黒い鋼鉄の構造物。
――「バーレット社の対物狙撃銃」。そう聞けば震え上がる者もいるだろう。
あまりの大火力ゆえに人体への射撃を非人道的として条約で禁止されていたが、
それは地上に国家が存在していた頃の話である。
「銃。銃。銃。銃。銃だ。銃は力、銃は正義。
銃こそ戦いの基本定理。弱小なる装甲は、強大なる銃に道を譲るのだ!」
乾が、トリガーを引いた。
撃針が雷管を打つ。大砲のような銃口から、洩れた炎が夜の闇を一瞬染める。
燃え上がる装薬に促されて、金属のひとかたまりがまっすぐに宙を舞った。
「渚…行きなさい。仁科さんの言うとおりですよ…」
苦痛に歯を食いしばりながら、早苗は言った。
「わたし一人だけ行けるわけないです! お父さんとお母さん…それに仁科さんは、大切な人ですっ!」
頑として応じない渚に、歯噛みする仁科。
この人はどうして、いつもこうなんだろう!
「渚さん…少しは自分の命のことも考えて下さい! 家族や友達が大事って言って、結局自分のわがままばかり!」
「わがままなんかじゃないですっ! みんな一緒じゃないと行きませんっ!」
「この…わからず屋ーっ!!」
ぱしりと響く。
仁科が渚をしたたかに打っていた。血に汚れていない右手を広げて。
渚はもんどりうって、玄関の敷居に転げる。
――それは割れるような音と同時だった。
玄関の扉に弾痕が開いた。
その延長線上には…仁科の腹部。
「これ、なに…? …私、撃たれた…の…?」
太い杭で貫いたような巨大な穴。仁科の腹部に、ぱくりと開いている。
「仁科さあーーーーーん!!」
渚はたまらず絶叫する。玄関土間の上には、崩れるように倒れこむ仁科。
腹の穴から洪水のような血が溢れる。
「渚さん…来ては…だめ…逃げて…」
病魔に汚れた血液に触れれば、渚の命まで危機に晒すのだ。
「…渚…お勝手が開いてますよ。早く、逃げてしまいなさい…」
「いや…いやですっ…!」
「…お願いだから…ね、渚。わたしたちを困らせないで…」
早苗は額に脂汗を浮かべ、精一杯の微笑みを渚に向ける。
「…逃げなさい…渚さん…逃げないと撃つわよ…!」
仁科は力を振り絞って、渚に拳銃を構えた。
「ごめんなさい…お母さん、仁科さん…ごめんなさいですっ…!」
渚は涙声で、二人に答える。
その足は廊下を通って、裏口へと駆けていた。
自分の全身から急速に力が抜けていくのを仁科は、感じる。
闇に流れて消えようとする意識の中で、彼女は考えていた。
(まさか壁ごと撃ち抜いてくるなんて…そんな狙撃銃、聞いたことが…)
ある。
ひとつ、漏れ聞いたことがある。バーレット社の新型火器――XM109重装填対物狙撃銃。
有名なM82・12.7mm対物狙撃銃をベースに開発されたが、XM109の使用弾薬は25mm機関砲弾。
装甲車両と正面から渡り合えるような途方もない銃だ。
壁に隠れていようが、有無を言わせず遮蔽物ごと撃ち抜く。戦車でもなければ防げたものではない。
(でも…仮に壁を撃ち抜けるとして…どうして私たちの位置がわかるの?)
敵は遮蔽物を通して、私たちをどこからか見ているのか…?
…不思議と冷静でいる自分に、仁科は気づいた。
自分は撃たれて瀕死のはずなのだ。どこに、こんな余力が残っているのか?
意識の闇の中で、仁科は、彼と出会っていた。
「おいおい! …女の子がこんな所でどうしたんだ?」
(…あなた、誰…?)
狙撃手の第一撃で意識を失いかけたときも、確か少年は仁科に語りかけていた。
いや…今はもっとすぐそばから、彼は語りかけてくる。
「女の子が、こんな危ない所でさ…」
仁科の意識のなかで、少年は彼女を背後から抱きしめていた。うなじに吐息を吹きかける。
面識などあるはずがない。でも、こんなに近くにいることが、なぜか心地よい。そのことが恐ろしい。
外国の伝説に現れる、処女を誘惑し血を吸う悪魔…それがもしいたら、こんな感じなのだろう。
「残念だけど、キミは死ぬ。だから、選ばせてあげるよ」
背後からは、不気味なほどに優しい声。
「僕の腕の中に蘇り、敵にしかるべき報いを与えるか。このまま朽ちて、動かない本当の屍と化すか」
(死ぬのは嫌…! 敵を倒して、渚さんたちを守るのよ…!)
「なら、決まりだね。…条件は、ボクの腕の中で、変わらぬ愛を誓うことさ」
(何ですって…!?)
「拒否する選択はキミにはないよ…キミの体は、すでに細胞一個までボクのものなんだから…」
痺れたように動かない仁科の唇に、少年は自分の唇を重ねた気がした。
仁科が跳ね起きた。
腹部の穴が、塞がっている。
異様な再生能力を示す蠢くような細胞が、仁科の欠損した肉体を素早く修復していた。
傍らの早苗が目を丸くした。
「仁科さん…いったいどうしたんですか…?」
答えることなく、早苗に向き直る仁科。
――敵を、狩らねば。
***
(数刻前)
「…これでよし、なの」
「ことみちゃ〜ん…ウヘヘ…あれ〜…?」
一之瀬ことみが勝平に対する術式を完了すると、彼の手には弓矢の形をした『光』があった。
「それが勝平君の所有する『光』――名づけて、『アポロンの銀弓』なの。
ギリシャ神話のアポロンが太陽神として崇められたのは後世なの。
もとは妬みと呪いから生まれた、私欲肉欲を貪る争いの神なの。
女のためにトロヤ側に荷担したアポロンが、敵のギリシャ軍に屍の山を築いた武器が銀の弓矢なの。
その矢には、敵軍に疫病を蔓延させる能力がある――これはホメロスの『イリアッド』にも描かれているの」
「きれ〜な弓矢だぁ〜ウヘヘヘ〜…」
…“知”とは対極に位置するこんな男に、まさか『光』の素地があったとは。
一之瀬は侮蔑の目を少年に向けた。
「この弓矢で射られた生物は、やがて癌を発病して死に至るの。あなたと同じ癌をね。
そのあとは…まあ、ご想像にお任せするの」
「ありがとねことみちゃ〜ん…ウヘヘ〜…この弓矢で何したらいいのかなぁ〜」
「…好きにすればいいの。せいぜい私たちの役に立ってくれれば、それでいいから」
・民家(車庫にワンボックスカー)
012 古河秋生(重症) 所持品:タバコ、ライター
013 古河早苗(重症) 所持品:レインボーパン他
014 古河渚 所持品:なし
018 仁科りえ(蘇生?) 所持品:多数の武器
・民家の見えるビルの屋上
(欠番) 乾 所持品:レミントンM700、バーレットXM109
・MIO本部
007 柊勝平 所持品:44マグナム、『アポロンの銀弓』
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器
乾が壁の向こうを覗ける理由、仁科りえの蘇生後の挙動などは、後続に一任
>覗ける理由
明かされないのかよっ!
でもGJ
おいおい!
やっと意味わかったよ!!
何だかよくわかんないけど、行くよっ!
女湯マスター乾
おいおい!
意味わかんねーよっ!!
59 :
名無しさんだよもん:2005/04/26(火) 14:04:17 ID:YfKA9cAzO
何だかよく分からないけど、行くよっ!
何だかよく分からないけど、行くよっ!
61 :
名無しさんだよもん:2005/04/27(水) 06:43:08 ID:YPtbGQT40
とりあえず俺は、風子のアホな行動をやめさせることにした。
姉の幸せを一心に願うその気持ちはわからないでもない。
だが、だからと言って、関係ない人間に手彫りのヒトデをおしつけて、
「代わりに姉の結婚式に出てください」
と言うのは、流石に頭がおかしいと思われても仕方がないだろう。
まず、俺達は当時の学生と連絡を取ることからはじめた。
幸い、渚のおかげで昨年度の卒業生とは難なく連絡を取ることができた。
さらに、その卒業生達の親兄弟からあっという間にこの話が広まったのは、公子さんの人望というほかない。
その後、学校側に校舎を結婚式会場として提供するように提案すると、幸村のじぃさんの口添えもあって、わりとすんなりO.K.が出た。
つくづく、公子さんという人物が築き上げてきたものの偉大さを思い知らされる。
本当に、風子はいい姉を持ったものだ。
正直、家族というものにほとんど縁がないせいか、彼女がうらやましい。
そこでふと、俺はあることを思い出した。
当の本人に結婚式の話を一度も打診していない。
これはまずい。
誤爆かよっ!!
63 :
名無しさんだよもん:2005/04/27(水) 08:45:51 ID:tU7NitIcO
意味わかんねえよっ!
激しくワロスww
突然、公子が焦りだした。
「た、大変です!」
「まあ、焦らんでも、傷は浅いし、土方氏なら必ず見つけ出してくれるさ」
「違うんです!音が・・・銃声の音がしました。」
「銃声?わしには何も聞こえなかったが・・・気のせいじゃないか?」
「祐介さんがどこに帰ってきたかわかるよう、hearingという魔法で周りの音を聞いていたんです。その魔法が、微かにあなたがいた山の方で銃声音のようなものをキャッチしました。まるでスナイパーライフルのように、鋭い音がしたんです!」
「ちょっとまて、MIOのなかのスナイパーは一人しかいないぞ。あの三幹部の乾が三人を襲ったのか!?」
老人はしわがれた喉にごくりとつばを飲み込んだ。
まだあの三人は確実に光を出せない。
そんな状態であのunlimitedの異名を持つ三幹部の乾相手に勝てる可能性は、全く無かった。
「わかった!三人がいる場所をわしに教えてくれ。すぐ急行する!・・・場所を!・・・場所を!・・・ん。なぜ応答がしない!?」
軍の衛星回線がぷつりと切れたらしい。パソコンから何も反応が無くなった。
老人は何度も、ctrl+alt+deleteを押し、再起動をはかったが、公子の声は二度と聞こえなくなった。
頬から汗がだらだら流れてくる。
老人にとって、このパソコンだけが武器なのである。
これが無ければ、彼はまた、ただの年老いた科学者の一人になってしまうのだ。
それは大勢のうちの一人に過ぎなかった。
調弦理論によるナノ集積回路の精製を、彼は生涯の研究として行っていた。
当時では無謀と言われた挑戦であり、凡百の私立大学を出て、名もない研究室にいた老人が、到底完成させられるものではなかった。
だが、彼はそれをできると思っていた。
副教授に疎まれようと、一〇年も下の学徒が教授になろうと、彼はその研究以外の論文を書くことは無かった。
例えどの学会にも科学雑誌にも相手にされずとも、自分の一生を捧げたた研究を必ずやりとげる。どんなことがあっても作りたい。
この集積回路を作るためならば、命を捨てても良いとさえ思った。
だが、いくら時が経とうとできないものはできなかった。
そうして歳も60を超えた時。
一ノ瀬夫妻という天才が彼がいた研究室に入ってきた。
彼らは自分ができなかった実験をすばらしいアイデアで成功させ、とんとんとナノ集積回路を作っていった。
だが、夢半ばで彼らは死んでしまった。
その時、彼らの子供の家に入り込んで、子供に送られた手紙を破いて確かめるという、暴挙を彼は行ってしまったのだが、それも仕方がないことだろう。
あんな薄っぺらい手紙に何が書かれているかくらい想像もつこうが、彼はそれができないくらい必死であったのだ。
彼らが書いた手紙もレポートも存在しないとわかった時、もはや自分では完成させられないと悟った時、彼は自分の無意味な人生を反芻させ、そして
(すまんな・・・私では無理だったよ)
彼は一ノ瀬夫妻の書いた未完成の数式と論理回路の中で服毒自殺をした。
睡眠薬を飲み、朦朧とする意識の中で、机にざっくばらんに置いてあった一ノ瀬夫妻の故書の一つを見た。
それは一枚の手紙。
「ことみへ」
「世界は美しい」
「悲しみと涙に満ちてさえ」
「瞳を開きなさい」
「やりたい事をしなさい」
「なりたい者になりなさい」
「友達を見つけなさい」
「焦らずにゆっくりと大人になりなさい」
彼の脳裏に走馬燈のように、一ノ瀬夫妻が子供のことを楽しそうに、彼に話してくれた光景が・・・
気がつくと、数時間経っていた。
根性が無い彼は、薬の量が致死量より足らなかったらしい。
彼は決心した。
(こんな、なんの意味も無い研究は止めよう。私はこの子のために生きよう)
彼は、未完成の数式や論理回路をゴミ箱に捨てると、ことみの保護者になるため、方々へ掛け合いに行った。
彼は勇気を奮い立たせ、うなだれていた頭を上げる。
(そうだ。あきらめるな・・・わしは、どんなことがあっても挫けずに来たでは無いか。)
老人はきっと目つきを鋭くした。
パソコンを地面に置くと、そこらにあった木の枝で周波数にあわせたアンテナを何十本もつくり始めた。
(パソコンは正常じゃが、衛星の周波数帯がおかしい。ECCでジャミングされているのか、
だが!地面には凹凸があり、強い電波で無線を完全に遮断するのは不可能だ。何本もアンテナを増やし、
こちらが電波を受け取りやすいようにすれば、ほんの少しだけだが回線は回復できる。数秒で良い。それだけあれば、場所の確認はできる。)
ザッ
そのとき、必死でパソコンを打つ老人の前に女の子が現れた。
「無駄・・・私のジャミングはそんな木の枝では解消できないの」
「一”之”瀬ことみ・・・!」
老人は突如目を血走らせた。
「そう・・・私はことみ。ひらがなみっつで・・・」
「嘘をつけ!集積回路の塊にすぎないお前が、何を言うんだ!」
「ことみをどこへやったんじゃ!」
一之瀬ことみは茫洋とした目で老人に話しかけた。
「だから、あなたはこっち側にいるの。そして、彼女の居場所がわからないから、光がある者たちを頼って、MIOを壊そうとする」
また連投規制か。
確か5回投稿すると、他の人が300回投稿するまで書けないはず。
なるべく詰めて投稿するしかないな
ちなみに300回てのは板全体の話ね
2、3時間すれば解除されると思う
第55話では?
あとこの人の話、文章としてはムチャクチャ荒削りなんだけど、それでも読み手を燃えさせる何かがそこにある気がする。
第54話に決まってんじゃん。
ことみ後見人の一人称は「わし」じゃねえよ。
次の人は「第56話」デスヨー
「機械が!私はMIO・・・いや血の通っていないお前を破壊して、絶対にことみを助けるんじゃ!」
ことみの口から血がだらっと垂れてきた。
「血はあるの・・・一ノ瀬ことみと同じDNAと同じ血液型・・・」
「それがなんだ。ただ正確にコピーしただけじゃないか!」
「私は、ことみなの・・・」
一之瀬ことみは、消えゆくような声で言っていた。
「だ・ま・れ。数式のかたまりが!」
老人は半分甲高く興奮した声で、音節ひとつひとつの合間に指を指して、その言葉を強調した。
そのとき、風の流れが変わった。
「あんたなんか・・・だいっっっっっきらいなの!」
ことみが放った空からの光の中に老人は消えていった。
山は木の葉がざわめく音でいっぱいとなり、その中で泣く声など、誰にも聞こえなかった。
・MIO本部周辺の雑木林
欠番 紳士 所持品:ジュラルミンケース(ノートPC入り)、携帯 (生存不明)
008 一之瀬ことみ 所持品:なし
やっと落とせました。。。
なんか幸村も土方も紳士も全部似たようなジジイになるな
お、おいおい!
毒々しい緑色の光がモニターを照らす。
その部屋に幸村はいた。
「ふむ…大破壊を行ってから既に半日が経過しとる。しかし…」
モニターには参加者リスト(
>>6)が映し出されていた。
「思った以上に手こずっているようだの…如何せん、動かせる駒が少ない…」
幸村が背後を振り返る。
視線の先に、ソファで眠りこける一人の男の姿があった。
「聞いておったかの?そろそろ君にも、その名に恥じぬ働きを見せてもらいたいと言っておるんじゃよ…」
「三幹部が一人、岡崎直幸君。」
その言葉で直幸が眠たそうに体を起こす。
「ん…呼んだかい…?」
くしゃくしゃに乱れた服に、汚い無精ひげ。
だらしないその姿を見て幸村はため息をつく。
「いったい君は何を考えておるのかの…?
我々に豊富な物資を提供し、それと引き換えに『三幹部』の地位を得てからというもの、君のしたことと言えば寝ることだけじゃ。
そもそも何故MIOに志願したのか分からんの…」
直幸は幸村の話を聞いているのか、いないのか、うつろな目でぼりぼりと頭を欠いていた。
そこで幸村は厳しい顔つきになる。
「まったく、親が親なら息子も息子じゃ。しぶとく我が組織に楯突きおって…。ここは親のあなたに責任を取ってもらいたい所だの…!」
ギロリと直幸を睨む。
「いや…朋也くんのことは私には関係ない…彼は自分のことは自分で決められる年齢です。」
「戯言を!働くつもりがないのなら、死体になってもらうしかないのぉ…!」
幸村が徐に腰の日本刀に手をかける。
「ちょっと待つの。」
日本刀の柄を押さえる手があった。
「いつ戻ったんじゃ一之瀬ことみ?…気配を絶ってわしに近づくとは、いい根性しとる…」
幸村が舌を打つ。
「今彼を殺すのは得策じゃないの。少なくとも、彼の光の能力には利用価値がある…。ここは私にまかせて欲しいの」
ことみが、微かに妖艶な笑みを見せた。
***
岡崎朋也は本屋の外で立ち尽くしていた。
杏を探して飛び出したものの、外には既に杏の姿はなかった。
かといって勝平の居場所も分からず、朋也は途方にくれていたのだった。
『あんたは渚のこと考えていればいいのよっ!』
杏の言葉が不意に脳裏に蘇る。
(あいつ、何であんなこと言ったんだろうな…)
確かに、渚の動向が気にならないといえば嘘になる。が…
「誰かっ、助けてくださいっ!病人がいるんですっ!お願いしますっ!」
その時、誰かが張り上げる声が、朋也の耳に入った。
反射的に声の方向へ体を向ける。
遠く、壊れかけてチカチカと点滅する電灯の下を、声を枯らして横切る少女の姿があった。
離れていて、輪郭しか確認できなかったが、いつも側にいた朋也には、はっきりと分かった。
渚だった。
「なぎっ…!!」
叫んで駆け出そうとした、その時―――
轟。
激しい風が巻き起こったのを感じた。
朋也の周囲の風が、空気が、ある方向へ向かって吸い寄せられていく。
「やぁ、朋也くん。しばらくだね…」
不意に、呑気な声が聞こえた。
「親父っ…!?」
直幸が立っていた。手に古ぼけた壺を抱えて。
そして周囲の風は直幸の持つ壺の口に向かって吸い寄せられている。
「どけっ!親父!早く行かないと、渚が…っ!!」
朋也は吸い寄せられまいと、必死に踏みとどまりながら叫ぶ。
しかし、既に風は止んでいた。
「いやぁ、いいコレクションが増えたよ。」
直幸が満足そうに微笑んで壺に蓋をしていた。
「お、おいっ!!あんた、一体…!!」
朋也が語気鋭く直幸に詰め寄る。
「…誰だ…?」
朋也の言葉を耳にし、直幸は穏やかに微笑む。
「うん…どうやら『リントホルストの壺』は上手く作動したようだね…
私の指定したものを――例えそれが人の記憶であっても――壺の中に封印(コレクション)してくれる光とは、本当にいい買い物をしたよ…」
「なあ、あんた誰なんだよっ!?教えてくれ、何も思い出せないんだ!」
朋也が直幸にすがりつく。
「何か、大事なことをしようとしていたはずなんだ!大切なことなんだっ…!」
直幸の襟首を掴む手がぶるぶると震える。
「…一緒に来るといい…君を待っている人がいる…なに、心配はいらない。私は君の…『友人』だからね…」
***
数分後、病院の入り口に立つ二人の姿があった。
そして、その二人を窓から眺める影。
「おとといは兎を見たの。きのうは鹿。そして今日は…あなた。」
闇に溶ける黒いワンピースを身にまとった少女、一之瀬ことみだった。
「直幸さんは上手くやってくれたようなの。ようこそMIOへ、朋也くん…」
「いえ、最後の『四天王』さん」
MIO本部
001 岡崎朋也 所持品:唐揚げ弁当
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器
欠番 岡崎直幸 所持品:『リントホルストの壺』
直幸の『リントホルストの壺』ですが、無限に対象物を封印できるのでは強すぎるので、封印できる物は一つまで、などの制限を設けた方がいいかもしれません。
次の方におまかせします。
88 :
名無しさんだよもん:2005/04/28(木) 17:00:21 ID:woBpvrtvO
お、おいおい!
意味わかんねぇけど面白いよっ!
こういったリレー形式のSSスレで、最後まで綺麗にまとめられたことってあったのかな?
ハカロワとか名前は聞くけどよく知らないんで
>>90 ハカロワはリレー小説としては成功したといっていいと思うよっ!
でもきっとそれが非常に希有な例だから、よく引き合いに出されるんだろうねっ!
>>91 参考サイト見てきた。登場人物100人、800話超とか、意味わかんねぇよっ!
ことみが放った空からの光の中に紳士は消えていく。
(こ、これは…“駆除”されるだと!?)
「あんたなんか…だいっっっっっきらいなの!」
一之瀬の声が、雑木林にこだましていた。
その自分の絶叫で、彼女は我に返る。
「…はぁ、はぁ…たいした技術なの。現実と攻撃との区別がつかなかったの」
――そして雑木林の中には、再び対峙する紳士と少女。
安堵に息をつきつつ、一之瀬は言う。
「死ぬかと思ったの。吐血はするし、意識は壊れそうだったし…。
たいしたものなの。私の無意識の自我に、直接ハックをかけるなんて」
「信じられん…きみを破壊するためだけに組んだ、最新型の対生体脳ワームを防ぐとは…!」
紳士はノートPCと、数歩先に立つ一之瀬を見比べる。
そう、一之瀬ことみは人工生命である。肉体は強靭だが、精神は成長の旅路を経た人間よりは脆い。
精神…それは知的生命の成立基盤。人間存在は、つねに精神に支配されている。
紳士は仕掛けたのは、その精神の奥底への電子的な攻撃。
健常人でも驚きや悲しみで心臓が止まることがあるが、それに似たより強力なショックを人工的に発生させる。
だが、紳士の手元の画面には、むなしく「接続を確立できません」の文字列――
紳士の奇襲攻撃は、失敗に終わっていた。
「精神的に一気に成長した…とでもいうのか? 人工生命のきみが…」
「ご心配なく。そんなうまい話はないの。事実、あなたのハックには恐れ入ったの。
私の精神的な弱さ(セキュリティホール)を知り尽くした、完璧な手並みだったの…」
「なら、どうしてそれが防げる…」
「簡単なの。セキュリティホールがあるなら埋めるまで…ファイアウォールを増設してもらったの。
私には協力者がいるの。…あなたと同じように、ね」
「何…!?」
言いながら、紳士はキーボードにひそかに指を下ろす…。
それより速く、空気が揺らいだ。
「遅いの」
一之瀬ことみは人工生命。精神は脆いが、その肉体は人間を遥かに超えて強靭、そして俊敏。
距離を一気に踏み込む。
瞬時に紳士の手から、ノートを奪い去る。
すると紳士がにやりと笑った。
「――それはきみにくれてやる」
「!!」
一之瀬が目を見開いた。紳士が後ろへ飛びのくのと同時。
彼女の手元が刹那、真っ赤に熱くなる――
それは、炸裂。
奪ったノートが、爆炎を上げたのだ。
「生体認証だ! 私以外の手に渡れば、ノートは“機密保持のために自動的に消滅”する!」
ノートは、メインフレームに指令を送り結果の表示を受け取るだけの端末に過ぎない。
そしてジュラルミンケースの中には、いくつもの予備のノートがホットブートを待っている。
足元のケースに手を差し入れ、予備を一機取り出した。
電源を投入。即座にリジューム。
「是非もない! これできみを…破壊する!」
紳士の必殺の運指が、キーボードの上を跳ね踊る。
――はずだった。
少女の声がした。
「遅い、と。そう言ったの」
爆轟の噴煙の向こうから、少女は告げていた。
「バカな…!」
紳士が目を見張る先。
闇に溶ける黒いワンピース。上に羽織った、同じように漆黒のコート。
左手でマントのように翻す。それが爆風から、彼女を護っていた。
パシュ、と噴進の音。
右手には――はためく黒布から顔を出す、M79・40mm榴弾銃。
寸秒もおかず、ジュラルミンケースに辿り着く榴弾。
炸裂とともに、金属の鞄が異様な形にひしゃげた。
「二帝のうち『知帝』の称号は伊達ではないの。あなたの手の内など、すべて計算ずみなの。
対爆風防御の必要性も、予備のノートを取りに行くことも…メインフレームがそのケースにあることもね」
「……ぐ…うっ…!」
ケースからいくらも離れていなかった紳士の体を、榴弾の破片があちこちえぐり抜いていた。
ジュラルミンの蝶番が機能を失い、だらしなく口を開けている。
――そして、大きなくまのぬいぐるみ。
鞄の口からそれが転び出ていた。
「やっと…見つけたの…《光》を!」
少女が、うれしそうに言った。
「…そ…それに…触るな…っ…!」
紳士の叫びを少女は聞いていなかった。
一之瀬はぬいぐるみを抱きかかえていた。
その顔は、笑っていた。
「そう…これが、あなたのメインフレームということなの…」
野望の笑いでも、懐かしさの笑みでさえあるように。
「…一之瀬ことみ…きみは…いったい…?」
紳士に向き直って、拳銃を構えた。
一之瀬ことみのその顔には、もう先ほどの柔らかな表情はなかった。
「…私を殺す…のか…それもいいだろう…」
「いいえ。反抗するなら遠慮はしないけれど…私は幸村先生と違って、とってもとっても寛大なの。
利用価値があるものは、引き続き利用してあげるの。その価値の続く限りはね。
それが…たとえ死人や叛徒であっても、なの」
(死人…?)
「あなたの知能は、決して凡庸ではないの。無から新しい原理を発見する才能ではなく、それを応用することで
有用な技術へと進化させるのが、あなた…一ノ瀬夫婦がワットだとすれば、あなたはさしずめスチーブンソンなの。
乾先生に支給した透過光スコープ。このコートやそのノートPCの防弾素材。本部にある極大規模ナノ集積回路…
すべて、MIO『番外衆』の一人であるあなたの作品。あなたにはこれからも、その価値を存分に発揮してもらいたいの」
少女が微笑む。
…すると紳士の脳に、電気的衝撃のような何かが降ってきた。
「…な…なにを…した…!?」
「あなたと同じようなことなの。ただし、もっと凝ったクラックをしてもらったの」
紳士の意識が薄れてゆく。
大脳の皺の一本に、一つの強力な命令が上書きされるのを感じながら。
「…これが…お前のいう“協力者”の仕業か…!」
「そうなの。あなたの脳に一つマクロ命令を登録したの。これであなたは、私たちに忠誠を誓うほかはないの」
「…ぐっ…うああっ…」
やがて紳士は意識を失った。
***
専用回線で通信を行う一之瀬ことみ。
その送信機の向こうから、ひとりの少年の声が通じている。
「やりましたか?」
「とってもとってもお手柄なの。
――鷹文君。あなたにこんな技術があったなんて、とってもとっても驚いたの」
「まあね。コケの一念ってヤツです。一之瀬先輩がハックされたときはびっくりしたけど、何とか緊急ロックで対応できました。
これも僕のねぇちゃんを助けるためですもんね、一之瀬先輩」
「そう。その調子で、どんどん『わるもの』をやっつけていきたいの。
…『わるもの』たちを倒して全ての《光》を取り戻せば、あなたのお姉さんも蘇るかもしれないの」
「頑張ります。先輩」
意欲に満ちた少年の声。あくまでにこやかに、一之瀬は語りかける。
「わるものには協力者がいるようなの。通信手段はMIOの守秘回線。
つまり、MIO内部に敵がいるということ。私たちを危険に晒すものが、私たちの中にいるの。
ジャミングで妨害はしたけれど…鷹文君、通話相手はわかる?」
「先輩、無理っす。量子暗号の原理は知ってるでしょ?」
「盗聴者による観測行為そのものが量子ビットを変えてしまう…ジャミングはできても盗聴は物理的に不可能、なの」
「そういうことです。ソーシャルに行くしかないんじゃないですか? 尋問して聞き出すとか」
「…一手なの」
少女は唇の端をゆがめた。
MIO『番外衆』…。
『三幹部』『四天王』といった数字で階級が定められた軍団員は、最前線での戦闘任務を負う戦闘員。
対して『番外衆』とは、装備の研究開発や電算機の管理など、後方での職務にあたる者たちである。
坂上智代ちゃんの弟に、これほどのコンピュータの腕があったとは。
私の補佐にあたるオペレータとしては、まさに適任なの。
「利用価値があるものは、引き続き利用してあげるの。それがたとえ死人や叛徒であっても。
その価値の続く限りはね――」
・MIO本部
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、くまのぬいぐるみ
欠番 紳士 所持品:ジュラルミンケースなど
欠番 坂上鷹文 所持品:不明
鷹文がコンピュータに長けてるという設定は智代アフターを参考にしました
55話、56話との時系列は適当に解釈してください
おいおい、ワケわかんねぇよ!
と言いたいとこですが、智代アフターの設定を早速反映させるとは、さすが。
お、おいおい!
100 :
名無しさんだよもん:2005/04/29(金) 21:32:31 ID:YijQVH8EO
100getだよっ!
./l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.i.i.i.i.--、,__
/l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.ヽ
./l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l
./"""'''''--/-、,,_l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l
./llllllllllllllllllll , "''-、,,_l.l.l.l.l.l.l.l.l_,、,l.l ←朋也
/lllllllllllllllllllll_、 ,,,,,,,, "'--''''"" ヽl
llllllllllllllllllll/ """llli、 'l
./,"'U、'.、llll/ _,ニ_-、"-、, ,、iilllllllil l
.l.,./,、-) "-l 'l, _ .o'-,'、 ", ./ニ---、' l お、おいおいっ!意味わかんねぇよ!
.lヽ>、'、 "''-- l-,'"o"';- /
..\'__ .' , .l "" " l
l.'U"l " , _,'__ ,、., ./
.l./ l , 、,,、,、,, ' /
/ .l _//ニニニフ /
/ l .ヽ .//;;;;;;;;;;'/ , / _,、.__、、,、,___
フ l \_ l.l:::::::::::::::l / /";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;"'-、
、 l 丶、 .,"ニ---ニ _,-'"../;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/l;;;;;;;;;;'、
.ヽ, l ヽヽ、  ̄"_ニ-' .l;;;;;;;;;;;/ニ'' ' ,"';;;;;、l
;;;;;ヽ、 ヽ, "フl'l=ヒ l;/ヽ/ ,ニ,ニ'- /;:ヽl
;;;;;;;;;;;\ ' / .l;;;l;;"'-、,_ l丶< """, ,""/
;;;;;;;;;;;;;;;;\ /;;;;;;;;;;;;;;;;;'-、_ヽ;;/l ,,,,,, ./
何だかよく分からないけど、行くよっ!
意味わかんねえよ!!
何だかよく分からないけど、行くの?
105 :
光まとめ:2005/04/30(土) 11:49:46 ID:NvcxhJ5S0
風子:レイジングヒトデ
公子:ゼウクシスの魔筆
勝平:アポロンの銀弓
幸村:獅子王
芳野:ラブアンドスパナ
直幸:リントホルストの壺
・全部で13個ある
・所有者は基本的に原作準拠(か?)
・風子と公子の光が分かれてる理由は今のところ不明
・紳士の鞄から一之瀬が回収した熊のぬいぐるみも光の一種?
何だかよくわからないけど乙
一ノ瀬はともかく一之瀬は光を持てるのかどうかわかんねぇけど乙
第23話あたりで杉坂も公子のゼウクシスの魔筆を使ってた。
真の所有者でなくても光は使えるけど、真の所有者のほうが光の力を最大限に発揮できるってトコでは?
「うあ!」
智代が宙を飛び、地面の上を転がって倒れ込む。
春原は驚いて、固まった。
そして自分の拳と、智代の顔を見る。
皮がめくれた拳と、痛そうに目をつぶって、髪をはだけさせ、頬が紅く腫れあがった智代の顔を見比べる。
春原が智代を殴ったという事実を、自分でも信じられなかったらしい。
「「「おいおい、意味わかんねぇよ!!」」」
何人もの春原の大きな声が騒々しくはもった。
「痛いぞ・・・春原」
智代は涙目になって、春原を見る。
「本当に痛い・・・」
「「「す、すいません!ごめんなさい!うあ・・・ほんとに当たるなんて思わなかったから・・・」」」
腫らした顔を隠す智代。
それを囲むように存在する、拳を握る春原達。
「春原・・・あんたよってたかって女の子をいじめるなんて、そんな奴だと思わなかったわ!?」
「最悪ですっ!風子、男の悪い部分を見てしまいました!」
「「「ええぇえ!?僕が悪いの!?殴ってきたのは智代のほうだよ!?」」」
「今度は責任転嫁!?あんた人として間違ってるって思わないの!?」
「親の顔が見てみたいですっ」
そのとき、すっと智代が立ち上がり、二人の肩をぽんぽんと叩いた。
「いや、二人ともちょっと冷静になるんだ。何か不思議なものが見えないか。この光景・・・この気色悪い光景を・・・正しくつっこむんだ」
「あ!?」
「こ、これは!?」
「「ヘンな人(春原)が100人になっています(る)!?」」
「解説ありがとう」
智代はもといた位置に戻った。
「春原貴様・・・!?分身の術でも使えるようになったのか!?」
春原は隣を見る。
すると鏡のように、同じ動きをする春原がいた。
右手を挙げると、左手を挙げ、左手を挙げると、右手を挙げる。
そして、100人は意気投合して、運動会でやるピラミッドや、ラジカセのスイッチを押して、岡崎ラップの大熱唱をしたりした。
「このうざさとアホっぷりは・・・全部が全部春原で本物だ!春原が100人・・・悪夢だ」
「うぉお文字通り100人力だぁあ。智代!ここで女が男に勝てねえってことを証明してやるぜ!」
「100人で勝っても・・・」
「だめだめですっ」
観客の非難はどこふく風で、
春原は一斉に智代に飛びかかっていった。
四方八方から腕や足が飛び出す。
その力は智代に全く及ばない微力なものだが、何せ100人。
1人を倒しても、次から次へと襲ってくる。
智代はその超絶的身体能力で全ての攻撃を回避しているが、いつまで持つかはわからなかった。
「くそ!春原にやられてどうするんだ!私!」
「うぉおお、勝てる!勝てるぞ!」
智代の服が所々やぶけ、白い肌がちらちら見えだした時、
制服の胸の辺りがビリッとやぶれ、パンチを繰り出した春原の手が、偶然にも智代の服をすり抜け、神のいたずらか悪魔の意志か。
ブラジャーの中へ指先を滑り込ませ、智代の胸をもみしだいてしまったのだ。
「あ・・・」
智代は真っ赤な顔をすると、髪の毛で目を隠した。
「「「うぉっとおおお、わざとじゃないよ!」」」
そういいつつ、にやにや笑ってもう一回もむ春原。
智代はにっこりと春原にほほえみかける。
「春原・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・殺す」
胸の奥に突っ込んでいる春原の腕を肩の根本からボキリと引っこ抜くと、
ハイキックで、頭を爆砕した。
「ひでぶっ」
たじろぐ春原達を、マリア様のようなほほえみを浮かべる智代は次々に倒していく。
「誅す」
ある春原は蹴りで体が腰から両断され、
「戮す」
ある春原はかかと落としで、脳みそが頭からあふれ出た。
「滅す」
「オラオラオラオラオラオラ」
ある春原は、何百発も蹴りを食らい、ちょっとここでは言えないくらいな状況になった。
そう、桜並木の周辺は春原の血と肉によって、屍山血河となったのだ。
その光景があまりにも酷いので、美佐枝は風子の目を手で覆い隠した。
「わわ!何するです!」
「ちょっと子供には刺激が強すぎるわ」
「離してください!そうしないとまずいんです!」
「まあ、私の子供の頃もスプラッタ映画を見たがったけどね。でもその夜は枕を涙にぬらすことになったもんだ・・・ふぅ若い頃は良かったわね。今じゃゲハゲハ笑いながら、そういうシーン見てるおばさんよ」
風子は郷愁にひたる美佐枝の手を振り払った。
「あのヘンな人の大群は風子がこのゼウクシちゅ・・・噛んでしまいましたっ!ゼウクシスの魔筆で作ったんです」
美佐枝ははっとすると、まるで子供の落書きのように、コンクリートの地面が白い春原で埋め尽くされているのに気づいた。
「これは!?」
「はいっ。このヘンな人の大群はですね。敵の体力を削るロシア的消耗作戦なのですっ!
へんな人を次から次へと送り込み、相手が疲弊したところを、私たちが追い込みをかけるという、
ナポレオンをモスクワまで誘い込んで倒したり、日本軍を奉天まで退いて誘い込んだり、電撃作戦で調子に乗ったドイツを誘い込んで打ちのめしたりと、
敵を弱らせるには格好の戦術なのです!あ、なんで風子なのにそんな戦史を知ってるのかって、つっこみはやめていただきたい」
「でも、何で春原なわけ?あいつ弱いでしょ?」
「絵的にですっ!」
「ああ・・・絵的にね・・・」
40人に減った春原は一斉に風子たちに振り向いた。
「「「そのフレーズで納得するのかよ!」」」
「そうか・・・」
智代は笑いながら、幽鬼のようにふらりと髪をはだけさせた。
「この気色悪い春原達を作ったのはお前だったのか」
一瞬。
そう一瞬で、智代は風子の後ろ側に立った。
「死んで・・・つぐなってくれないか?」
智代は徳田の頭をねじ曲げた回し蹴りを放った。
風子は後ろを振り返ると、フィルムのコマのようにゆっくりと動くその足の凶器を見とれていた。
それは、死への記憶の一歩として。
「風子!!!」
ゴッ・・・
連投規制だな。
解除してくれんのを待つしかないけど、
とりあえず今は全文を5レスにまとめるように工夫した方がいいんじゃない?
17行とか20行で次の投稿に行ってるのが多いけど、1レスには最大30行ぐらい入る。
1レスを効率よく使っていけば連投規制にもだいぶ対抗できると思うよ。
オ、オイオイ!
意味わかんねえよ!!
お、おいおい!
風子が持ってるのはレイジングヒトデだぞ?
文全体から、最近このスレを知って参加してくれた人って印象を受けた。
このスレでは、「繋げる」ことを凄い大切にしてきたから、次からそこらへん丁寧にやって欲しいな
しかし何はともあれ、GJだよっ!
>文全体から、最近このスレを知って参加してくれた人って印象を受けた。
え?公子魔法熟女の人でしょ?
桜並木周辺
004 春原陽平 所持品:某ラジカセ(岡崎ラップ入り)
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ レイジングヒトデ
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、リュック(中身不明)
017 坂上智代 所持品:不明
・・・どうも、設定が一杯あって一度に記憶できないです。
おいおい。全文暗記しとけとは言わんが、
せめて自分の書くキャラが最後に登場した回ぐらい読み直せと。
位置と装備はまとめられてるんだから。
確かに、49話を見ればすぐに把握できる程度の情報を幾つも見落としているのは問題だな
記憶力や、新参・古参の問題ではなく、これはちょっと手間をかければ防げたミス
そして間違えたことに対する謝罪の言葉もないんじゃ責められて当然
何だかよく分かんないけど、出来ちゃったものはしょうがないよっ!
後続ががんばるしかないねっ!
「風子!!!」
ゴッ・・・
やけに硬い感触の後、軽く吹っ飛んだ風子の手から何かか落ちた。
それは、風子が持っていたゼクシウスの魔筆…ではなく、ラブアンドスパナ。どうやら蹴りはそれにヒットしたようだ。
「くっ…それはあの男の…何故ここに!」
智代は辺りを見渡す。しかし、芳野がいるはずもない。
「風子!」
美佐枝が駆け寄る。しかし、風子は気絶していた。
そして落ちていたラブアンドスパナは光の粒に包まれ、レイジングヒトデになった。
「いったい、どうなってるの…?」
桜並木周辺
004 春原陽平 所持品:某ラジカセ(岡崎ラップ入り)
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ レイジングヒトデ
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、リュック(中身不明)
017 坂上智代 所持品:不明
文才の無い俺の軌道修正は吉か凶か…
ドクン
風子の手の中で脈打つ感覚。
光だった。
光は、真の所有者だけがその能力の真価を発揮できる。
今、風子の光は本来の姿へ孵ろうと、その、あるべき姿を模索しているようだった。
時に、ヒトデの彫刻が施された杖の姿をとり、また時には妖しく黒光りする柄を持つ筆の姿をとる。
蠢いていた。まるで、生き物のように。
「杖になったり、スパナになったり、一体なんなんだ、それは…」
智代が思わず呟く。
その答えは美佐枝にも分からなかった。
しかし、直感で感じていた。
『それ』は希望だと。渡してはまずいものだと。
だから風子を庇うように、智代の前に立ちはだかっていた。
「ふん、私とやる気か。一対一で。」
智代の言葉に周囲を見渡す美佐枝。
既に分身春原の姿はなく、気絶している春原本体の姿しかなかった。
魔筆がレイジングヒトデに戻ったために分身春原が解除されたのだが、そんなことは知るよしもない。
はぁ、とため息を一つつく。
「だって、やるしかないでしょ。黙ってあんたにやられてろっていうの?」
「うん、その方が楽に死ねるとは思う」
「へぇ、抵抗したらどうなるのよ?」
「こうなるっ!」
刹那、鋭い蹴りが美佐枝の顔面に向かって放たれた。
しかし、既に美佐枝の姿はそこになかった。
「遅いわよっ!」
智代の背後に回りこみ、左腕を掴む美佐枝の手があった。
――――関節か!?まずい!!
とっさに、ダンッと地面を蹴り、宙で体を捻る智代。
そしてその体勢のまま、美佐枝に向かって蹴りを繰り出す。
「わっ!」
慌てて智代の腕を放し、回避する。
一定の距離をとって、再び二人、対峙した。
「やるじゃないか…いい身のこなしをしている」
智代が服に付いた埃を払いながら言う。
「どういたしまして。怪物のあんたに言われても褒められた気がしないけどね。」
荒い息を上げながら美佐枝が答える。
反対に、智代は息一つ乱していなかった。
(はぁ…息が続かないわ…最近運動なんてしてなかったし、長期戦は不利ね…)
「長期戦は見込みがないぞ。早く本気を出すといい。」
完全に見透かされていた。
「芳野さんは、あなたはもっと強いと言っていたぞ。このまま終わったら、死んだ芳野さんも浮かばれないだろう?」
その言葉が、美佐枝に火を点けた。
「あんた…よっぽど死にたいみたいね!!」
キッと智代を睨みつける。
「死にたい…か。」
ふと智代が寂しそうな目を見せた。
「てぇええいっ!!」
美佐枝の叫び声に智代はハッと我に帰る。
気がつくと、美佐枝は地を蹴って智代に飛び込んできていた。
(これは…!)
智代の目が見開かれる。
―――――相楽のドロップキックはもっと強かった。お前などとは比較にならんほどにな。
(ドロップキック!いや、だが軌道が単純すぎる!)
「甘いっ!かわしてカウンターを叩き込めば終わりだ!!」
智代の勝ち誇った声が響く。
その時―――――
「うぅん、ヒトデ万博入場者数300万人突破です…」
寝返りをうった風子がレイジングヒトデを智代に向けていた。
ズシン!
同時に智代の体に重力の負荷がかかる。
(これは…っ幸村たちと同じ『力』!?まずい!!)
「くらえぇえっ!!」
ドゴッ!!
美佐枝のドロップキックが智代に炸裂した。。
「く…っ!」
智代の足元がふらつく。
ジャキッ
美佐枝が銃を構える音が聞こえた。
「坂上智代。これ以上やるっていうんなら、もうあたしはあんたを生徒だとは思わない。全力で…殺すわ」
「……さすがだな…」
覚束ない足取りで、智代はゆっくりと美佐枝に向かって歩いて行く。
「何をっ!?止まりなさいっ!」
美佐枝が智代の進行に合わせて銃を動かす。
「なに、遠慮はいらない。撃ちければ撃つといい。」
智代は美佐枝の銃口の直前で歩みを止める。
「どうした、撃たないのか?私を止めるなら今しかないぞ。」
「くっ…!」
美佐枝の唇がワナワナと震える。
「あんたなんか…あんたなんか…っ!」
引き金に指を添える。
しかし―――がっくりと銃を下ろした。
智代の目がフッと優しくなる。
「甘いな、美佐枝さんは。だがその優しさが、かつての私を惹きつけた。」
智代の目の中に、美佐枝は諦めにも似た感情を見た気がした。
それはまるで、自分を止める者の出現を望むかのような―――――
しかし、すぐにまた厳しい目つきに戻る。
「私を生かしたことを後でゆっくり後悔するといい。二度、私に勝てると思うな。」
言い捨てて、ゆっくりと美佐枝の横を通り過ぎて行く。
(本部へもどって体を癒す…そして、『力』を得なければ…。
目的を遂げるための『力』が…必要なんだ!)
「坂上…何でなのよ…」
美佐枝は智代の姿が見えなくなるまで、呆然とその後ろ姿を見送っていた。
桜並木周辺
004 春原陽平(重症) 所持品:某ラジカセ(岡崎ラップ入り)
006 伊吹風子 所持品:『レイジングヒトデ』
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、リュック(中身不明)
???
017 坂上智代 所持品:不明
レイジングヒトデは風子の光の発展途上形態で、不安定だから様々な形を取っているということにしました。
他の光の能力を持ってるワイルドカード的な光なんだろ?
神卵ハンプティ・ダンプティみたいな。
ハンプティだと強すぎる気がする。
>>108から、レイジングヒトデ以外は完全な力は引き出せないってことなら丁度いいかもしれんね
まあ例によって後の人に一任でいいだろ
しかし、光ってのは強すぎても弱すぎてもいけないから扱いが難しいね
そんなものが13個も出て来たら、物語が破綻しそうで恐いよ
弱すぎる分には問題ないだろう。
その後の成長を描く余地ができるからな。
>59話
>60話
そこはかとなく巧いですっ!
公子魔法熟女の人が好き勝手書いたあと他の書き手さんが補正するから、かえってストーリーが進んでいいですね。
>>133 悪いことはいわん、やめとけ。
135 :
前スレ535:2005/05/03(火) 00:53:42 ID:sp+uKg5c0
何だかよくわかんないけど、まとめサイト更新したよっ!
乙です。いつも楽しみにしてます。
光の能力や形状など分かりやすく整理してあって見やすかったよっ!
河南子タンとともタンも参戦きぼんぬ
After発売まで我慢汁
名前だけのオリキャラになりかねん
>>138 今に始まったことじゃない。名前だけのオリキャラならたくさんいるぞ、乾とか。
いや、担任としてなら乾は結構原作でも動かされてた
この先、岡崎や春原と遭遇した時なんかに、因縁を利用して話を広げる余地もある
だいたい、乾がオリキャラ化してたら他のキャラもオリキャラ化していいというものでもないだろ
初心忘れるべからず。
お、おいおい!
意味わかんねぇよ!
何だかよく分からないけど、行くよっ!
何だかよく分からないけど、行くよっ!
何だかよく分からないけど、行くよっ!
何だかよく分からないけど、行くよっ!
MIO本部の、とある一室。
そこで、一之瀬ことみは無心にキーボードを叩いていた。
彼女の前にはモニターがあり、そのまた奥には緑色の液体で満たされた巨大な水槽が置かれている。
水槽の中には一人の少女の姿があった。
ガアッと音を立てて自動ドアが開き、老人が入ってくる。
「宮沢有紀寧の光の摘出は滞りなく進んでおるかの?」
老人が髭を撫でながら水槽の前に立った。
「とってもとってもいいタイミングで現れたの、幸村先生。」
ことみはそう言ってEnterキーを叩いた。
同時に水槽の中の有紀寧の体が光に包まれる。
「ほぉ…」
思わず感嘆のため息をもらす幸村。
やがて光は有紀寧の胸の辺りに集まり、一つの小さな光となる。
光はゆっくりと水槽のガラスを通過すると、一際大きく輝き、そして地面にカチャリと音を立てて落ちた。
光はペンダントに変わっていた。
「これが有紀寧ちゃんの光なの。」
ことみがチェーンの部分を掴んで顔の前に翳す。
ペンダントには黒く光る宝石が取り付けられていた。
「ふむ…よくぞ摘出してくれた…光とは幸せを願う心…無念のうちに死んだ者からは取り出せないと思っていたが…まぁ、何よりだの。」
幸村はじっと黒色の宝石に見入っていた。
「その、無念の心こそがこの光、『レクイエム』の原動力なの。故に、この光の能力は、他の光とは一線を画すの。」
ことみが意味ありげな顔で微笑む。
「はて、どういうことかの…?」
「光を完全に使いこなせるのは、光の真の所有者だけ。これは幸村先生も知っていると思うの。
しかし、光の真の所有者である有紀寧ちゃんは既に死んでいるの。死者は光を使うことが出来ない。
勝平君のネクロマンスは、癌細胞で死者の体を支配し、操り人形の様に動かしているだけで、対象者が生き返ったわけでは無いから。
だから、現在この光を使いこなせる人間は誰もいないということなの。」
「ふむ…して、それが有紀寧の光の能力と何の関係があるというのかの?」
「関係大有りなの。使いこなせる人間がいないことこそが、この光の能力なの。」
「随分と回りくどいのぉ…もっと直接的に言ったらどうじゃ?わしも、余り気の長い方ではないからの…」
幸村がイライラと声を挙げる。
「だったら実演した方が早いの。誰か、藤林椋ちゃんをここに呼んで。適当な武器も持たせてあげて。」
ことみがパンパンと手を叩きながら叫ぶ。
程なくして、番外衆二人に連れられた椋が部屋に入ってくる。
手には不似合いな銃を持たされていた。
「椋ちゃん、怯えなくても大丈夫。こっちへ来て欲しいの。」
怯えた表情の椋に、ことみが優しく語り掛ける。
「ことみちゃん…わ、私…」
不安そうにことみに近づいて行く。
「何も心配いらないの。ほら、これをプレゼントするから元気を出すの。」
ことみが椋の顔の前にペンダントを翳す。
黒光りする宝石に、椋の顔が映った。
「きれい…」
とろんと目が蕩ける。
吸い込まれるかのように宝石に見入っていた。
「本当に、貰っていいんですか?」
答えを聞く前にペンダントに手を伸ばす。
そして何かに操られるかのようにペンダントを首につけた。
その途端だった。
「う…あぁああああっ!!」
突然頭を抱え込んで呻き声を上げる椋。
「ぐ…ああっ…!!」
そのまましゃがみ込む。
「む…?どうしたと言うんじゃ?」
思わず椋に近寄る幸村。
その時、椋が顔を上げた。そして――――
「死んでください。」
銃を幸村に向け、引き金を引いた。
「ほわちゃっ!!」
即座に幸村が弾丸を日本刀で二つに裂く。
「貴様…!!」
獅子王を椋に突きつける。
椋は既に番外衆に取り押さえられていた。
「成功なの。あの大人しい椋ちゃんでさえ、『バーサーカー・レクイエム』の魔力には勝てなかったの。」
くすくすとことみが笑う声が響いていた。
「何…?どういうことじゃ、一之瀬!」
幸村が刀をことみに向ける。
「装備した人間を、周りの人間を無差別に攻撃するバーサーカー(殺人鬼)に変える。
これが、有紀寧ちゃんの光、『バーサーカー・レクイエム』の効力なの。」
悪びれる様子も無く、ことみが言ってのける。
「なんと…!くっくっ、これはいい!まったくもってこのゲームに適した光じゃて…」
幸村の口から笑いが漏れる。
「しかしじゃ、何故よりによって藤林椋に装備させた?あやつの戦闘能力には期待できまい…」
「それも計算のうちなの。椋ちゃんに絶対手を挙げることの出来ない人間が、一人だけいるから。その子と戦わせるの。」
「藤林…杏…か」
幸村がにやっと唇を吊り上げる。
「杏ちゃん相手なら椋ちゃんは確実に勝てるの。それに万が一椋ちゃんが負けても問題はないの。
『バーサーカー・レクイエム』は常に強者を求めるから。椋ちゃんが死んだ時は、杏ちゃんが次のバーサーカーになるだけなの。」
幸村は納得したように何度も頷いて日本刀を鞘に戻した。
「しかし、一之瀬ことみ…お前も随分とえげつない事を考えるのぉ…」
幸村がくつくつと笑う。
「私は、目的を遂行するのに最も合理的な方法を採っているだけなの。」
ことみが無邪気な顔で言う。
「そう、機械のように。」
MIO本部
003 藤林椋 所持品:『バーサーカー・レクイエム』
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、くまのぬいぐるみ
宮沢有紀寧 所持品:なし
(欠番) 幸村俊夫 所持品:『獅子王』
お、おいおい!
意味わかんねぇよ!
何だかよくわからないけど、行くか?
行くよっ!
いつもの人だな。流石に展開が手馴れてる
うまいよね。おれも文才がほしいぽ
(´・ω・`)
ひとつだけ気になるんだが、「ネクロマンス」という単語は無い
ネクロマンサーが使う術は「ネクロマンシー (necromancy)」な。
「…不意打ちとは…ガガ…女の子らしく…ないぞ」
――智代によって蹴飛ばされた、機械の頭部が言う。
「こんな人間に……一杯食わされるとはな!」
――ラブアンドスパナの攻撃に、右足を奪われた機械。
「プラズマ球の温度は約5500度、太陽の表面温度に匹敵する」
――機械の腕部が変形し、プラズマを放つ砲身と化す。
「くそぉーーーーーーーっ!!」
――火球の猛攻をかいくぐり、芳野の一撃が機械を倒す。
「たくさんの女性に囲まれているんだぞ。こういう時は嬉しそうな顔をするものだ」
――潜んでいた無数の機械たちが、満身創痍の芳野の前に立ちはだかる。
「どうやったか知らないが、まさか『64×64』まで破られるとはな…!」
――最後の力を振り絞り、芳野は機械の軍団を窮地へ追い込む。
「アナタはすでにズタボロデース! 雨に降られたネコのようにネ!」
――そこに待ち受けたのは、かつての仲間の裏切り。
「子猫チャン、日本のコトワザにこう言うでショウ? …『多勢に無勢』とネ」
――助けに飛び出した少女に、ジョニーの非情なる攻撃。
「苦しむことなく、神の御許へおもむきタマエ。…エイメン」
――ジョニーの銃弾が芳野の頭蓋を穿つ。
そして。
すべては、はじめからの、繰り返し。
(まただ。また、時間がループしている…)
芳野はやがて、そう気づく。輪廻するこの時間に。
すべては台本に書かれたように同一。
機械の行動も、ジョニーの発言も、少女の立ち位置も。芳野自身のそれも。
幾度か、幾十度かのイタレーション。
演じ続ける自分と登場人物たち。
(どうすれば、この輪廻から抜け出せるんだ…?)
いつしか芳野の意志は、芳野を動かしてはいない。
筋書きをなぞるだけの自分自身を、どこか遠い場所から見ている。
―――――――――― Executing: "History B" ――――――――――
すでに戻っていた。男の目には生命の光が。男の手には勝利への鉄塊が。
目に飛び込む。
最後に一機、残った機械。戦車のハッチへと躍り上がっている。
ジョニーの襟首をつかみ、頭部への叩きつけようと拳を振り上げる。
「人間よ…よくぞここまで、この私たちをてこずらせた。だが、それも終わりだ!」
「ミ、ミスター・ヨッシーノォーッ!」
ごう、と空気にぶつかる、機械の拳。
「…させんっ…!」
それは同時だった。芳野の最後の一投と。
芳野は投げ放っていたのだ。スパナを機械の腕へと向けて。
その狙いは、精にして確――
ジョニーの顔面を砕く寸前。機械の正拳は、腕から分解され宙を舞った。
「ばかな…!?」
その機能があれば、機械の表情は蒼白になっただろう。
状況を解析した電子頭脳は、敗北の確率がきわめて高いことを予測した。
予測は的中する。もうひとつのハッチから、少女の声が飛び出したのだ。
「行くよっ!」
口径9mmの連撃。それがとどめ。
懐に忍ばせていたグロック18C機関拳銃。少女が構えると、銃口が秒間20発の火を噴く。
弾丸は音より速く、機械の頭部に至り――
そうして電子頭脳は、その機能を、永遠に奪われた。
ゆらりと、芳野は立ち上がる。
(勝ったのか…!?)
機械たちの残骸を踏み越えて、ジョニーたちのもとへ歩を進める。
異変が起きたのはそのときだった。
芳野の目の前で、崩れ去ってゆく。
光景が。
裂ける…。潰れる…。割れる…。砕ける…。
桜並木も…。機械の残骸も…。ジョニーも…。少女も…。彼らの乗る戦車も…。
ガラス細工のように、すべては断片へと終着する。
壊れる。
はじめから現実ではなかったかのように。
自分自身以外の、一切の実在が。
(これは…何だ…? 俺はいったい、何をしている…!?)
まるで、魔法を突然解かれたように。深海から水面へと引き上げられたように。
芳野には何も理解できなかった。
やがて崩壊する光景は、ひとつのそれへと収斂する。
(円、だと…?)
光景は、小さな円になっていた。
魔術を思わせる装飾を帯びた、コインに似た円盤。
暗闇の空中を、ゆるやかに自転するそれ。
――円と、芳野の意識。
――宙をたゆたうのは、それだけ。
芳野はおそるおそる指先を伸ばす。
触れる。
すると、円は、消えた。
――消失と同時に――津波のような記憶の海が芳野の意識に押し寄せた。
そう、はじめ回っていたのは数十個の魔法円であった。
それが、だんだんと減り、二つの魔法円だけになった。
数十個の魔法円とは、俺の運命を模擬的に作り出す、数十とおりの筋書き。
数理の力で機械的に書き出された、絵空事のプロットだ。
いま、ここに浮かんでいる俺の意識…。
これは、あらゆる可能性が内在した俺。〈世界が分岐する以前〉の俺なのだ。
俺は憶えている。
無数の作り物の世界を演じきった、無数の記憶がある。
坂上にいったん倒されたあと息を吹き返し、逆転の勝ちを収めて終幕した世界もあった。
坂上の姿をした一機の機械を倒し、相楽たちのもとへと向かって終幕した世界もあった。
坂上の姿をした機械の群れを、ジョニーの戦車が一網打尽にして終幕した世界もあった。
…どれも、機械が考えて、魔法が造った幻だったのだ。
そして…最後に残った魔法円。
芳野の意識の前。
いつしか、もうひとつの魔法円が浮いていた。
そう…。これが、最後の俺が閉じ込められた場所…か。
浮かぶ芳野が、自転する円に腕を伸ばす。
終わらない茶番を俺に演じさせている、まやかしの世界…。
左手が、円盤を力強くつかんだ。
機械がこさえたものならば…俺に破れないわけがない…!
芳野の右手には、彼の《光》――ラブアンドスパナが握られる。
スパナの口が、魔法円に食い込む。
錠をこじ開けるように、芳野は工具をひねる。
終わらせてやる、この永遠の無為をっ…!
こじ開けられた魔法円から、冷たい光条が漏れてきた。
筋書きを繰り返すだけの、まがい物の世界――芳野はそこへ、足を踏み入れた。
運命を、切り開くために。
桜並木の坂道に、女性はたたずむ。
ピンタックブラウスを緩やかに纏う。
たったひとつ残る、魔法円を見つめる。
「残る魔法円はひとつ…。祐くん…あと一息よ」
・桜並木の坂道(現実)
005 伊吹公子 所持品:ゼウクシスの魔筆、智代の『光』
・桜並木の坂道(仮想)
011 芳野祐介 所持品:所持品:ラブアンドスパナ含む工具一式
(欠番 春原芽衣? 所持品:グロックC18)
(欠番 ジョニー? 所持品:IMIデザートイーグル)
難解な思考分岐空間を完全に自分のものにしてるなぁ
何だかよく分からないけどGJ!
お、おいおい!
意味わかんねぇよ!
行くよっ!
166 :
名無しさんだよもん:2005/05/06(金) 23:04:26 ID:lwF8rhJK0
何だかよく分からないけど、あげるよっ!
「誰かいませんかっ?病人がいるんですっ!!」
夜の町に悲痛な叫び声が木霊する。
一人孤独に戦う渚の姿がそこにあった。
べちっ
つまづいて転ぶのはこれが何回目だろうか。
しかし、弱音一つ吐くことなく、すぐに再び立ち上がる。
「はぁっ…はぁっ…」
既に小さな渚の体に蓄積した疲れは限界を超えていた。
それでも、よろよろと歩き出す。
そんな渚の背後に迫る影があった。
「誰か…助けてくださいっ…お願いしますっ!」
まったく気付く気配のない渚をよそに、人影はゆっくりと渚に近づいて行く。
その手が渚に伸びた。
がばっ
「むぐっ…!?」
「シッ!静かに!」
人影がそっと手を渚の口から放す。
「あ、美佐枝さんですっ!」
渚が思わず叫ぶ。
「ちょっと!こんな所で大声出してたら危ないわよ!って、あなた確か岡崎の…!」
「はい、古河ですっ!…あ、それより美佐枝さん、お願いがあるんですっ」
「はいはい、話は後でゆっくり聞いてあげる。今はまず保育園まで避難しないと。そこにみんないるから。」
美佐枝が視線を遠くの建物に振った。
「あんたの声、あそこまで丸聞こえだったわよ…」
「あ、ふぅちゃんですっ!それに…春原さん!大丈夫ですかっ!?」
保育園内の教室に入るなり渚が声を上げる。
そこには杖を握り締める風子と、その傍らで寝ている春原の姿があった。
「春原は大怪我を負って気絶してるわ。伊吹さんが何とかって魔法で治療してくれてるけど…」
「ヒトデヒーリングですっ!おばさん、ぷち失礼ですっ!」
風子がそっぽを向く。
「はぁ、あんたの方がよっぽど失礼よ…」
美佐枝が怒る気力もないと言った風にため息をつく。
「あ、そういえば古河さん、さっき言いかけてた話、聞かせてくれる?」
美佐枝が呆然と立ち尽していた渚に話を振る。
「あ…はい、あのですねっ…!」
渚が思い出したように口を開いた。
***
「ご両親と友達が病気に…?」
「はい…特にお父さんは…朝まで持つか分からない状態だと…」
渚が辛そうに目を伏せる。
「そう…それで一人であんなことを…。今までよく頑張ったわね、えらいっ!」
美佐枝がぎゅっと渚を抱きしめる。
「伊吹さん、あなたの何とかヒーリングは病気も治せるの?」
じっと杖を春原に向けている風子に尋ねる。
春原の傷口を白い光が覆っていた。
「ヒトデヒーリングです…が…この魔法は血を止めて傷口を塞ぐくらいしかできません…時間もかかります…残念ですが、病気までは…」
風子が申し訳なさそうに言う。
「そう、困ったわね…」
「それと、もう一つ問題があるんですが…」
風子が言いにくそうに口を開く。
「ヘンな人の治療、実はとっくに終わってます」
すっと杖を下ろした。
「え…?でも春原はまだ…」
「はい、傷口は塞がったんですが…どうやら…手遅れだったようです…」
風子がうなだれる。
「そんな…っ!」
渚が口を押さえた。
「あははははっ!」
唐突に笑い声が部屋中に響いた。
「馬鹿ね、春原がこのくらいで死ぬわけないじゃない。あいつはゴキブリよりしつこいんだから!」
美佐枝の声だった。
「何度好き嫌いするなって言っても聞かないし、ドロップキックしても、ジャイアントスイングしても懲りないし…」
「部屋片付けろって言っても聞いたためしがなかったわね。ラグビー部にひどい目にあわされても…次の日には…忘れてるし…」
美佐枝の声が掠れていた。
「私が…人殺し扱いしても…懲りずに…た、助けに来るし…」
「ほんと…馬鹿よね…」
美佐枝の両眼から涙が溢れた。
「惜しい人を亡くしました…」
風子も目を伏せる。
「そんな…朋也くんに、何て言えばいいんですか…」
渚も目の端をこすった。
「そういえば、あいつ、一昔前の歌謡曲が好きだったのよ」
美佐枝の目がラジカセに向いていた。
「ラグビー部にうるさいって怒鳴られても懲りないで良く聞いてたっけ…よっぽど好きだったのね…」
ラジカセを手元に引き寄せる。
「最期くらい、聞かせてあげよっか」
そういうと、再生ボタンを押した。そして―――――
『YO!YO!オレ岡崎!オマエはっ』
聞こえてくる間抜けな声。
『オマエは…陸に上がって進化を遂げたウーパールーパー!』
―――――ピクッ
『あれ…?冗談で言ったのに、なんだかマジでそう思えてきたぞ…』
―――――ピクピクッ
『おまえ…ウーパールーパー?』
「「「ウーパールーパーな訳あるかっ!」」」
ガバッと音を立てて春原が跳ね起きていた。
「ヘンな人がっ!ゆ、幽霊ですっ!!」
「幽霊じゃないよっ!なぜかお前にだけは言われたくないんですけどっ!…ったく、何で岡崎の変なラップで目覚めなきゃいけないんだか…」
春原がラジカセの停止ボタンを押す。
「ううん、春原。岡崎のラップ、とてもよかったわよ…本当に、とっても……!」
「それ、すんげぇ、人の神経逆撫でしてるんですけどっ…って、あれ?美佐枝さん、泣いてる?」
「泣いてないわよ、ばかっ!」
言いながらごしごしと目をこする。
「ふぅん、何だか良く分からないけど、まぁいいや…渚ちゃんはいつ来たの?」
「あ、あのですねっ」
渚が美佐枝にしたのと同じ説明を春原に繰り返した。
***
「なるほどねぇ、ボーガンの矢に毒が塗ってあったって訳か…」
「せめて、ボーガンの持ち主さえ分かればねぇ…。そいつをコテンパンにして解毒剤とか奪えるんだろうけど…」
美佐枝がはぁ、とため息をつく。
「僕、多分そいつ知ってるよ」
「誰かなんて分かるわけないわよね…って、春原!それマジなのっ!?」
一同の視線が春原に集まる。
「う、うん。僕そいつと戦ったし…あいつ、確か背中に弓矢みたいなの背負ってたよっ」
「誰なのよ、そいつはっ!」
美佐枝が春原の肩をぶんぶんと揺する。
「柊勝平。小川を…殺した奴だよ」
一瞬、春原の目に殺意が篭った。
「…そう、だったら話は早いわね。」
美佐枝がすっと立ち上がる。
「制限時間は夜明けまでか。ふふん、望むところだねっ」
春原がボキボキと指を鳴らす。
「「朝までに勝平をぶちのめすっ!!」」
保育園
004 春原陽平 所持品:某ラジカセ(岡崎ラップ入り)
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ レイジングヒトデ
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、リュック(中身不明)
014 古河渚 所持品:なし
連投規制解除されてますね。
最初は現在地・所持品も5レスに入ってたんですけど、改行エラーではみ出て焦りました。
174 :
名無しさんだよもん:2005/05/07(土) 02:49:39 ID:JeXiP1c7O
おいおい!
175 :
'ヽ/ヽ:2005/05/07(土) 04:23:51 ID:yh9SPPF40
意味わかんねぇよ、っと。
何だかよくわからない。けど、行くよっ!
何だかよく分かんないよっ!
何だか!
何だよっ!
∧ ,ィ
l\_ノ \_/ l
l l
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ト―--―┤ ━ ,ゝ _ト、,ノl___ { ̄}
ノ \ ━┛ / > ′<_| l
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l ━┓ l ∠ノ ハハゝト':.:.::!
ノ ┏┫ { / / __>、ヽ、ソノ_从'ノヘ;.l l l
\ /⌒ { { く 7ー‐、'' ̄:.:.:.:.:.:._:,:ヘ! l l
_ノ ( ヽヽ `┤:.:.:.└―‐:. ̄:.:.:.:.:! } }
ヽ, ╋┓  ̄ 7 └―┐_;.:.:.:.:.:.:.:.:/ ノノ
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ヽ ・ / \\:::::/ |::::::::(__
ヽ/ \>′ l::::::::::::::::::\
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`Y´/
lノ
何よっ!
何っ!
「朝までに、といいましても、どうやって敵を探すんですかっ?」
風子が当然の疑問を口に出した。
「それならあたしに考えがあるわ」
美佐枝がエプロンのポケットをゴソゴソと漁る。
そして差し出した手には二つの携帯電話があった。
「さっき職員室で見つけたんだけどさ、二手に分かれて、これで連絡取りながら探すのよ。
私と伊吹さん、古河さんと春原のぺアで良いわね?」
「あの、それって危険じゃないでしょうか…人数を分散させるってことですよね…?」
渚が不安そうに手を合わせる。
「だから勝平を見つけても、他の人を呼ぶまでは手を出さないって決めとくのよ。」
「あ、それなら安心です。」
「さて、これで舞台は整ったってわけだね。じゃあ今夜のゲストを招きに行こうかな」
春原が屈伸運動をする。
「そうね、時間もないことだし…。それじゃみんな、検討を祈るわ」
美佐枝が喝を入れた。
***
風子・美佐枝のペアと別れた後、春原・渚のペアは駅周辺を探していた。
「駅は町の中心ですから、人を探すならその辺りがいいと思います。」
という渚の案に基づいた作戦だった。
「しっかし見事にやられてるねぇ…」
春原が元・商店街だった所を見回す。
店の窓ガラスは一つ残らず割れていて、中には完全に崩壊してる店もあった。
ふたり、ジャリジャリとガラスを踏みしめながら歩く。
「見つけた」
春原が不意に呟いた。
その視線の先に、鼻歌を歌いながら歩く男の姿があった。
背中には光る銀色の弓。
「あの人が、柊勝平さんですか…」
渚も緊張した声で言う。
「敵に『さん』付けなんてするなよっ!どうせこれからぶちのめすんだしさ。」
春原が歩き出す。
「春原さんっ?何処へ行くんですか?美佐枝さん達に連絡を…」
渚が春原の背中に呼びかける。
「そんなのいいよ。最初っから、あいつは僕一人で倒すつもりだった。」
春原がじっと遠くの勝平を見据える。
「駄目ですっ!美佐枝さん達に連絡して、助けが来るまで待ちましょう!」
「…僕の気持ちなんて渚ちゃんには分からないだろうね。こっちは目の前でダチが殺られてるんだよっ!」
春原が思わず声を荒げる。
「これ以上待ってられるか…!小川の仇は僕一人で討ってやるっ!」
地を蹴って駆け出そうとする春原。
その前に渚が立ちはだかった。
「どけよ、渚ちゃん。」
春原が苛々と言う。
「春原さんを一人で行かせるわけにはいきません。私も一緒に行きます。」
渚の目は真剣だった。
「馬鹿なこと言うなよっ!渚ちゃんにもしものことがあったら僕が岡崎に殺されるっ!ここにいろよっ!」
「嫌です。」
渚がきっぱりと言い放つ。
見たことがない渚の頑固な態度に春原がたじろいだ。
「…確かに、目の前でお友達を亡くされた春原さんの心の痛みは私には分かりません…」
淡々と語り出す。
「でも…分かりたいです。辛い気持ちは、分かち合いたいです。それが、仲間ですから。」
「………」
「私たち、一緒に演劇部を再建しました。バスケ部の皆さんにだって、力を合わせて勝つことが出来ました。
私たちは、誰より強い絆で結ばれた仲間だったはずです。違いますか…?」
春原は黙って唇を噛んでいた。
「……電話」
「えっ?」
「携帯電話、貸してくれよ。連絡すれば良いんだろ?」
「あ…はいっ!」
渚が急いで携帯を手渡す。
春原がもどかしそうに番号をプッシュした。
プルルル、プルルル
ガチャ
『春原?勝平見つかったの!?』
「うん、あいつ、呑気に鼻歌歌ってるよ。」
「す、春原さんっ!」
渚が春原の肩を叩く。
『よく手を出さなかったわね、えらいわよ!それで、場所は何処なの?』
「ああ、場所は…」
「春原さんっ!!」
渚が更に激しく春原の肩を叩いた。
「何だよ渚ちゃんっ?今電話をっ…」
振り返る春原。
渚の後ろに、白目を剥いて鎌を振りかぶる有紀寧の姿があった。
「うわっ!!」
鎌を振り下ろす有紀寧。
がきんっ
間一髪でかわす。
しかし、飛びのいた拍子に春原は携帯電話を落としてしまった。
『春原?ちょっと、どうしたのよ春原っ!?今何処にいるの!?』
有紀寧の足元に転がっている携帯電話から美佐枝の声が漏れる。
『すの…』
グシャッ!
携帯を有紀寧が踏み潰した。
「ゆ、有紀寧ちゃん、何でっ!?」
春原がうろたえる。
「あれぇ?春原クン、ここで何してるの?」
春原の背後で響く呑気な声。
「…勝平っ!!」
「おっと、動かない方がいいよ。頭を吹き飛ばされたくなかったらね」
勝平が44マグナムを春原の後頭部に押し付ける。
「勝平…お前だけは許さねえっ…!」
春原がぎりぎりと歯軋りする。
「奇遇だなぁ、僕も春原クンだけは自分の手で殺したかったんだよねぇ。
あの時はまだこの進化した体に慣れてなかったとはいえ、一度はこの僕に勝ったんだからさ…いやあ、屈辱的だったなぁ」
勝平が笑顔を作る。
しかし、目は笑っていなかった。
「名残惜しいけど、そろそろお喋りはお仕舞いにしようか。…バイバイ、春原クン」
勝平が引き金に指をかける。
パアンッ
銃声が暗闇に木霊した。
「え…?」
勝平の額に赤い点が現れていた。
そしてグラリと体を傾けると、どさっと音を立てて地面に倒れこむ。
「はぁ、やっぱり春原に任せたのが失敗だったわ。」
ため息が一つ。
少し離れた所で銃を構える美佐枝の姿があった。
銃口から仄かな煙が立ち上っている。
「美佐枝さんにふうちゃんっ!どうしてここがわかったんですかっ?」
渚が声を張り上げる。
「ヒトデヒアリング(hearing)で周囲の音を拾いました。風子の機転が余すとこなく発揮されてしまったようですっ!」
風子が得意げに杖を掲げて見せた。
「でも勝平を殺したのは失敗だったかもね…。これで解毒剤を持っていなかったら皆の病気を治す方法が分からなくなるわ…」
美佐枝が瓦礫を踏み分け勝平に近づく。
「ああそうか、君たち、僕の仕込んだ癌を治すのが目的ってわけ?」
勝平がむくりと起き上がる。
「う、嘘よ…!確かに頭を撃ち抜いたはず…っ!!」
「驚いてるとこ悪いんだけど、僕の放った癌は絶対治せないよ。だって治す方法は唯一つ、不死身の僕を殺すこと、だからね。」
グジュグジュと音を立てて勝平の額の傷が再生していく。
「んーっ、非常にグロいですっ!」
風子がとても嫌そうな顔をしてみせた。
「うへへ、女の子三人に春原くんまでいるなんて、今夜はツイてるなぁ!」
勝平が嬉しそうに舌なめずりをした。
駅周辺
007 柊勝平 所持品:44マグナム、『アポロンの銀弓』
宮沢有紀寧 所持品:鎌
004 春原陽平 所持品:某ラジカセ(岡崎ラップ入り)
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ 『レイジングヒトデ』
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、リュック(中身不明)
014 古河渚 所持品:なし
最近書き手が少人数で固定されてる気がするよっ!
見てるだけの人も書いてくれよっ!
お、おいおい!
>見てるだけの人も書いてくれよっ!
そういう必死な態度って、あんまり印象よくないからやめたほうがいいと思います。
俺なんかが書いたら質が下がる
文句は作れます
スレも荒らせます
作品は作れません
>>190 実を言うと、ここ最近の話の大半を僕が書いてることに罪悪感を感じてるんですよ…
僕はこの頻度で書き続けていいんですかね?連投は極力避けるべきですか?
63,64話は僕が書いたんですけど、5日待っても他の人が書かなかったんで、いいかなと思って連投したんです。
もし僕のペースが速いせいで他の書き手さんの構想を練る時間が無くなってたりしてるなら言ってほしいです。
まあ、いいじゃん
息が続くまで目瞑って突っ走ろうぜ
書いた物以外で語るのは本意じゃないんですが…
何回か書かせてもらってる者ですが
単純に最近リアルの方が忙しくてなかなか書けないだけです
193氏の出来とかペースとかが構想の邪魔だなどということは全く無いと思います
過去にも2週間ぐらい平気で間があいたこともあるので、気にしないでいいと思います
196 :
193:2005/05/13(金) 23:31:03 ID:MS1GPxfm0
そうですか
ではペースについては特に意識せずに、誰かに注意されるまでは、書きたい時に書く、という形で参加させて頂きます
いろいろご迷惑をおかけしました
↓以下何事もなかったかのように意味わかんねぇよ再開
何だかよく分からないけど、行くよっ!
お、おいおい!
「ちっ、不意打ちに成功したくらいでいい気になるなよ」
春原が肩をぐるぐると回す。
「春原!」
震える声で美佐枝が春原を制した。
「あん?何?」
「…逃げるわよ」
春原の表情が固まる。
「はぁっ?何言ってんの、美佐枝さん!まさかこいつにビビってんじゃないよねっ?」
「春原、あんたも見たでしょ…こいつは銃で撃っても死なない!ここはいったん引いて作戦を立てるのよ!」
「うへへ、流石におばさんは冷静だねぇ。いい判断だよ。」
勝平がでれっと顔を崩す。
「ご褒美に5分時間をあげる。好きなところへ逃げていいよ。つまりは、鬼ごっこってわけだねぇ…うへへ」
「てめぇ…!僕をなめてんのかよっ!」
春原が勝平を睨みつける。
「ん?早く逃げなくていいの?どんどん時間は過ぎていくよ?」
勝平が腕時計をちらりと見る。
「わっ!」
風子が慌てて駅の中に駆け込んで行く。
「あ、ふぅちゃんっ!」
渚もそれを追う。
「もう、そんな所に逃げたらすぐに追いつめられるじゃないっ!」
「待ってよ美佐枝さんっ!」
美佐枝と春原も二人に続いて駅に入っていった。
「うへへ、面白くなってきたねぇ、有紀寧ちゃん?」
勝平が傍らの有紀寧を振り返る。
しかし、有紀寧は静かに立ち尽くしているだけだった。
まるで人形のように。
駅の中の女子トイレに、4人は集まっていた。
「はぁ…何だってこんな狭いところに逃げ込むのよ…」
美佐枝がため息をつく。
「すいません…ふだんクールな風子が珍しく取り乱してしまいました…」
風子が頭を垂れる。
「まあ済んだことはしょうがないわ。ここでしか出来ない作戦もあるかもしれないし…」
美佐枝がじっと考え込む。
「…そうだ!いいこと考えたわ!」
「え、何ですかっ?」
一同の目が美佐枝に集まる。
「あのね…ヒソヒソ…」
そっと耳打ちする。
「んーっ!妙案ですっ!」
「よし、じゃあこの作戦でいくわよ!あたしと伊吹さんで罠を仕込むから、春原と古河さんで勝平たちを引きつけておいて。」
美佐枝が腰をあげた。
「オッケー。へっ、この作戦なら勝平の奴も終わりだね!」
春原がガッツポーズをとる。
「あの、でも…」
「くれぐれも、巻き添えにならないように早めに駅から出るのよ。それじゃあ作戦開始ね!」
渚が口を開きかけたが、その言葉は美佐枝の声にかき消されてしまった。
不安そうに美佐枝たちの背中を見送る渚。
「ん?どうしたの、渚ちゃん、景気悪そうな顔して」
「本当に、これでいいんでしょうか…」
渚がきゅっと手を胸の前で握り締める。
「大丈夫だっての。間違いなく勝平は死ぬって!」
「いえ、あの…それが問題なんです…」
「あん?」
春原が当惑した表情を浮かべる。
「この作戦では勝平さんや一緒にいた女性…有紀寧さんが、死んでしまいます。…可哀相です…」
「はい?なぁに寝ぼけてんの?自分の親や仁科の命がかかってんでしょ?」
「それは…そうです。でも、他の人の命を奪うなんて、許されることじゃないです…」
渚がうつむく。
「そりゃそうなんだろうけどさ、割り切ろうよ。勝平は人殺しの悪い奴だし、有紀寧ちゃんは正気を失ってる。しょうがないじゃん」
「人の命を割り切るなんて、私にはできません…っ」
ポロポロと渚の目から涙が零れた。
***
「さて、そろそろいいかな?」
勝平が駅の中へ足を踏み入れた。
駅の中はシーンと静まり返っている。
「うへへ、隠れても無駄だよ…僕の身体能力は癌細胞の力で常人より遥かに高くなってる。もちろん聴力もね…」
勝平が目を閉じて精神を研ぎ澄ます。
『……おま……思………』
微かに聞こえる人の声。
「うへへ、そっちかぁ…」
勝平が女子トイレの方向に歩みを進める。
「なんだか興奮するなぁ、ぐふふ」
『………言った……そう…』
聞こえる声がどんどん大きくなる。
「さぁて、どこかな…?」
勝平が女子トイレの中に入って行く。
「ここかなっ?」
ガチャ!
一番手前の個室のドアを開ける。
「はずれか…じゃあこっち!」
その隣のドア。またしても人の姿はなかった。
ガチャ!ガチャ!
次々とドアが開かれていく。
残る扉はいつのまにか一つになっていた。
「うへへ、最後まで残るなんて、運がいいねぇ…」
にやにやと笑いながらドアに耳を押し付ける。
『……談……マジ……おまえ…』
「みぃつけたっ!」
勝平が扉を開け放つ。そこには――――
『YO!YO!オレ岡崎!オマエはっ』
―――ラジカセが一つあるだけだった。
「えっ?」
辺りをキョロキョロと見回す勝平。
そこで、トイレの中に謎の線が書かれていることに気付いた。
至る所に書きなぐられた線は、女子トイレの外にまで続いている。
「なに、この線?」
「勝平、罠にかかりましたっ!」
駅から少し離れた場所で待機する4人の姿があった。
「いいわよ!じゃあヒトデヒアリングを解除して、光を『ゼウクシスの魔筆』にしてっ!」
「はいっ」
風子の手の中でレイジングヒトデはゼウクシスの魔筆へと姿を変えた。
「それじゃあ駅の中から続くこの線を…」
美佐枝が足元の線を指差し、リュックからライターを取り出す。
「ガソリンに、変えて」
風子が筆で軽く線に触れる。
途端に周囲にガソリンの臭いがたち込めた。
「終わりよ、柊勝平!」
美佐枝がガソリンの線にライターの火を近づけた。
ボッ!
炎の直線が駅に向かって走って行く。
そして…
ゴォッ!!
たちまち駅は炎に包まれた。
バチバチと燃える炎が、渚の横顔を照らす。
渚は気絶していた。
「ったく、驚いたわ。あんたが気絶した古河さんを駅から連れ出してきたときにはね…」
美佐枝が春原を振り返る。
「しょうがないっしょっ!渚ちゃんは勝平を殺したくないなんて言ってたから、気絶させて連れ出すしかなかったんだよっ!」
「…古河さんは本当に純粋なのね…この先どんな事態が訪れても…この子には、変わって欲しくないわ…」
美佐枝が渚の寝顔を感慨深げに眺めた。
「そ…そんな…っ!」
その時、うろたえる風子の声が聞こえた。
「どうしたってのよ、伊吹さん?」
美佐枝の問いかけに、口をパクパクさせたまま、黙って駅の入り口を指差す風子。
炎の中に人影が写っていた。
やがてその人影はゆっくりと炎の中から姿をあらわにしていく。
人影―――勝平は、黒くこげた人間を自分の前に翳していた。
「あの野郎っ!有紀寧ちゃんを盾にっ…!!」
勝平が手を離すと、元・有紀寧だった肉体は地面に落ちて、ボロボロと崩れた。
「あーあ…もう使えなくなっちゃった…」
勝平はポツリと呟くと、視線を遠くで呆然としている美佐枝たちに向けた。
「今のは…頭にきたよ」
駅周辺
007 柊勝平 所持品:44マグナム、『アポロンの銀弓』
004 春原陽平 所持品:なし
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ 『レイジングヒトデ』
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
014 古河渚 所持品:なし
(焼失) 宮沢有紀寧
207 :
名無しさんだよもん:2005/05/15(日) 17:09:04 ID:ZIMtY+bm0
お、おいおい!
208 :
1:2005/05/15(日) 17:10:21 ID:Z+trDTMX0
くそう・・・俺も書きたいんだが時間とれねえ・・・
連投になってしまうとかは気にすることないと思いますよー
意味わかんねえよっ!
有紀寧の扱いに全米が涙
./l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.i.i.i.i.--、,__
/l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.ヽ
./l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l
./"""'''''--/-、,,_l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l.l 何だ・・・? 何なんだ こいつ・・・
./llllllllllllllllllll , "''-、,,_l.l.l.l.l.l.l.l.l_,、,l.l いきなり入ってきて問題出して
/lllllllllllllllllllll_、 ,,,,,,,, "'--''''"" ヽl (焼失)宮沢有紀寧って・・・
llllllllllllllllllll/ """llli、 'l
./,"'U、'.、llll/ _,ニ_-、"-、, ,、iilllllllil l
.l.,./,、-) "-l 'l, _ .o'-,'、 ", ./ニ---、' l わ・・・ わけわからねえ・・・
.lヽ>、'、 "''-- l-,'"o"';- /
..\'__ .' , .l "" " l
l.'U"l " , _,'__ ,、., ./
.l./ l , 、,,、,、,, ' /
/ .l _//ニニニフ /
/ l .ヽ .//;;;;;;;;;;'/ , / _,、.__、、,、,___
フ l \_ l.l:::::::::::::::l / /";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;"'-、
、 l 丶、 .,"ニ---ニ _,-'"../;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/l;;;;;;;;;;'、
.ヽ, l ヽヽ、  ̄"_ニ-' .l;;;;;;;;;;;/ニ'' ' ,"';;;;;、l
;;;;;ヽ、 ヽ, "フl'l=ヒ l;/ヽ/ ,ニ,ニ'- /;:ヽl
;;;;;;;;;;;\ ' / .l;;;l;;"'-、,_ l丶< """, ,""/
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お、おいおいお!
>いきなり入ってきて問題出して
どういう意味ですか?
何かまずい事をしたようならはっきり言ってもらった方が助かります
俺は211じゃないが、有紀寧の扱いが無慈悲なんだろうな。第29話ともども。
俺自身は有紀寧ファンじゃないのでどうでもいいんだが、
なんか「この書き手は贔屓じゃないキャラは雑に扱うのか」って印象を与えるような。
ラジカセのギミックとか、バトル展開自体は安定して上手く書けてはいると思うので頑張れ。
仰るとおり今回、有紀寧個人よりバトルの展開を優先してしまいました
読む人が不快な思いをするようなSSなら書いてもしょうがないですよね
今後気をつけます。不快な思いをした方、すいませんでした
何だかよくわかんないけど、まとめサイト更新したよっ!
まあ、有紀寧出した人間としてはその後の扱い全般が悲しくない訳じゃないですが
普通に死ぬ展開でいちいち何らかのエピソード挟んでたらキリがないですし
こういうのもアリだと思いますよ
ってことで、何だかよくわかんないけど、いってよっ!
219 :
1/3:2005/05/16(月) 14:12:10 ID:ANasd4zG0
うっく…ぐすっ…うぁーんっ…
声がする。
わたしの声だ。
あの日のわたしが泣いている。
目の前でバイクが倒れていた。
お兄ちゃんが血だらけで倒れていた。
わたしの息が止まった。
お兄ちゃんの息は、もっと止まっていた。
ぼろぼろ涙が止まらない。
なんどもなんどもその人の名前を呼んだ。
頭の中がぐるぐると回る。
どうしたらいいんだろう?
何も考えられない。思いつかないし、思い出せない。
たくさん読んだおまじないの本には、恋を叶える方法は書かれていても、
けが人を治す方法なんて載っていなかったから…。
どうしたらいいんだろう?
どうしたらよかったんだろう?
いまだにわからないでいる。
ただ、もしも、もう一度会えることがあったなら…
そのときは…
「よう」
声がして、わたしを呼んだ。
懐かしい声。
「おかえり、有紀」
その人がいた。
わたしに手を差し伸べていた。
220 :
2/4:2005/05/16(月) 14:14:54 ID:ANasd4zG0
その手を握る。
確かな感触。
暖かい。
「お兄ちゃん…」
「さあ、行こうぜ」
手を引いてくれる。
この人について行けば、もう安心。
振り返ると空が見下ろせた。
わたしの足元には、もう地面がなかったのだ。
はるかな海と大地が、眼下に広がった。
この惑星は、まだこんなにも青いんだ。
「きれいだね…」
「これから行くところは、もっと綺麗だぞ」
「どこへ行くの…?」
「ここではない場所。おれたちが行くべき場所さ」
あの人がわたしの手を引く。
ごうごうと、大地が遠くなってゆく。
離れるあの景色に…どうしてか、物悲しさが募った。
「待って…!」
わたしは不安に声をあげていた。
流れる景色は止まってくれない。
先を急ぐあの人が、振り返る。
「なぜだい、有紀」
「わからない…でも、帰らなくちゃ…!」
221 :
3/4:2005/05/16(月) 14:17:34 ID:ANasd4zG0
必死で考える。
考えれば考えるほど、思考がごちゃごちゃともつれる。
「…残して、きたの…」
襲いくる不安に耐えながら、わたしは声を絞り出す。
「…わたし…わたしは、やらなくちゃいけないことが…!」
でも、声はそこで途切れてしまった。
わたしは、願いの一つになって…
わたしの願いは、光になった。
そのとき、わたしの体は光だった。
波のようでも粒のようでもある。
ひかり。
この世でいちばん速く…
飛んでゆくのか?
落ちてゆくのか?
わたしはとめどもなく、流されて…いや、流れてゆく。
暖かい手が、わたしを導いてくれる。
それは、あの人のぬくもり。
わたしはぬくもりそのものだった。
なのに…なぜ…?
こんなにも…心細いのだろう…?
…
……
………
222 :
4/4:2005/05/16(月) 14:18:13 ID:ANasd4zG0
そこに、わたしは立っていた。
そらでもじめんでもないところ。
時間のない空間。
ここが、わたしの来るべき場所?
…ここは、幻想世界…
…戦いに敗れ去った者が、死後ここに来るの…
声が聞こえる。
聞いたことのない声。
なのに、なぜだろう…。
はるかな太古から、わたしはその声の主を知っているような気がする。
「あなたは…?」
…ようこそ…『光』よ…
…この、誰もいない、物悲しい世界へ。
――幻想世界
223 :
'ヽ/ヽ:2005/05/20(金) 07:47:55 ID:Pbstok+50
おいおいっ
意味わかんねぇよっ
何だかよく分からないけど、幻想世界行くよっ!
「くそっ…あれだけやっても駄目かよっ!」
春原が地団駄を踏む。
「どうするんですかっ!?もう打つ手がありませんっ」
ゆらりと勝平が近づいてくる。
その顔から笑みは消えていた。
「決まってるじゃない、逃げるのよっ!」
言うが早いが美佐枝が勝平に背を向けて走り出す。
「ちっ…!」
春原も気絶した渚を背負って走り出した。
「逃げられるとでも思ってるのかなぁ、この僕から」
勝平が地面に手をつきスタートの姿勢をとる。
「よーい…どんっ!」
瞬間、巻き起こる粉塵。
びゅんっ
そして春原の傍らを通り過ぎて行くつむじ風。
「え?」
春原たちの視線の先、壊れかけた電灯が夜道を照らすその下に、勝平が立っていた。
「そんなっ、いつの間に!?」
美佐枝が愕然とする。
「これで分かったでしょ、逃げても無駄だってことがさ。あんまり手間かけさせないで欲しいなぁ」
勝平がアポロンの銀弓に矢を番える。
と、その時だった。
ばんっ!
銃声とともに勝平の左顔面が吹き飛ぶ。
美佐枝の持つ銃から青白い煙が立ち上っていた。
「だから、無駄だって」
右目でぎょろりと美佐枝を睨む勝平。
その左顔面は既に再生を始めていた。
「だったら、再生が追いつかないくらい徹底的にやるまでよっ!」
ばんっ!ばんっ!
次々と銃弾を受けて、勝平の体がくるくると回転する。
「わっ!」
あまりにも凄惨な光景に風子が目を伏せる。
カチカチッ
弾切れをおこし、銃のトリガーが空しく音を立てる。
既に勝平は原型を留めていなかった。
「はぁ…はぁ…流石にもう死んだでしょ…これで生きてたら人間じゃないわ…」
美佐枝が肩で息をする。
≪誰が人間じゃないって?≫
突如、散乱した肉片が一箇所に集まり出す。
ぐじゅぐじゅと音を立てながら、肉塊は人間の姿を形作っていった。
「ひぃっ…!こんな化け物に勝てるわけないよっ!」
春原が腰を抜かす。
「伊吹さん、何か強力な魔法はないのっ?あいつの復活を許したら終わりよっ」
美佐枝が風子を振り返る。
「それが…さっきから魔法を連発しすぎたようです…もう魔力がありません…」
風子の構える杖からは、ぷすぷすと煙が吐き出されるだけだった。
「万策尽きたって所だね。物足りないなぁ」
再生を終えた勝平が口を開いた。
「さっきまで威勢の良かった春原クンもヘタレちゃったし、そろそろ終わらせようかな、このゲームを…」
勝平が銀弓を構えなおす。
その矛先は春原に向いていた。
「やっぱり君は口だけだったね。もう少し楽しめるかと思ったんだけどなぁ…がっかりだよ」
きりきりと矢を引き絞る。
「ひ…!」
逃げようと必死にもがくが、体が言うことを聞いてくれない。
「今度こそお別れだよ春原クン…じゃあね!」
矢から手を離す。
ひゅんっ!
銀色の矢羽を煌かせながら、矢は一直線に春原へ向かって伸びていった。
「ひぃいいいーーーーーーっ!!!」
その時、
春原を庇うように飛び出す人影。
ぱしっ!
矢を、その手で受け止めていた。
「え…?美佐枝さん…!」
「…ったく、春原…あんたはいつも手間ばっかりかけさせるんだから…」
美佐枝が悪態をつく。
「すげぇ!さすが美佐枝さんっ!以下これをおっぱいぷるるんキャッチと呼ぶよっ!」
春原が歓声を上げた。しかし―――
ポタ…ポタ…
美佐枝の手のひらから血が垂れていた。
「あ…!」
春原の脳裏に蘇る言葉。
―――ボーガンの矢に、毒が塗ってあるんです…
「春原…私が死んだら…あんたがみんなを守るのよ…」
そう言ってがっくりと地面に倒れこむ美佐枝。
その顔はみるみる青ざめていく。
「年甲斐もなく無茶するからだよ、おばさん」
勝平が冷たく言い放つ。
「勝平、てめぇーーーっ!!」
春原の怒声が響いていた。
「うるさいな、焦らなくたって今度は君の番…」
ばきっ!
口を開きかけた勝平の頬を春原の拳が打っていた。
(はやい…!?あの距離を一息でつめるとは…!)
姿勢を崩した勝平に、春原の第二撃が迫る。
「おっと!」
寸での所でパンチをかわし、体勢を整えた。
「やるね、春原クン。そういえば、小川クン…だっけ?彼を殺した時も、君は急に強くなったっけ…」
勝平がじっと春原を眺める。
『私がわんわん泣いていると、おにいちゃんが飛んできてくれるんです。』
『馬鹿なおにいちゃんでしたけど、すごく頼れました。』
『チームの皆からも頼られてたんです。春原に任せれば何とかしてくれるって』
誰かのために戦う時、その真価を発揮する。
それが春原陽平の―――守るべき妹を持つ兄としての―――本能だった。
駅周辺
007 柊勝平 所持品:44マグナム、『アポロンの銀弓』
004 春原陽平 所持品:なし
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ 『レイジングヒトデ』
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
014 古河渚 所持品:なし
お、おいおいっ!?
意味わかんねえよ!
朋也周辺とか杏周辺とか、進行が遅れてるパートを何とかしてほしいもんだな
誰かの犠牲前提で強くなるヘタレ、春原
意味わかんねえけどなんか燃えてきたよっ!!
「うっらぁーーーっ!!」
激しいパンチの応酬。
しかし、形勢は明らかに春原だった。
「くそっ」
ぶんっ!
勝平のパンチはまたしても空を切る。
(なんで…!なんで当たらない!?)
バランスを失った勝平の横顔に、再び春原がパンチを叩き込んだ。
ばきっ!
勝平の体が吹っ飛ぶ。
「調子に、乗るなっ…!」
勝平がポケットからマグナム44を取り出し、構えた。
「シュートッ!」
咄嗟に春原が近くの瓦礫を勝平に向かって蹴り込む。
ばちっ
見事に瓦礫は右手に命中し、マグナム銃を叩き落とした。
「どうした勝平っ!武器無しのタイマン勝負じゃ怖いのかよっ」
春原が挑発する。
「…そうだね…春原クン相手に武器は必要なかった…」
言いながらむくりと起き上がる。
全身の傷がみるみる回復していた。
「教えてあげるよ、僕の真の怖さをね」
勝平が春原に迫る。
「おらぁっ!」
再び春原のパンチがヒットしていた。
「なぁにが真の怖さだよっ!全然たいしたことねぇじゃん!」
勝ち誇る春原。
しかし、
その時は徐々に迫っていた。
「…はぁっ…はぁっ…」
段々と、息が上がってくる。
パンチも空振りが多くなっていた。
「あれぇ、春原クンどうしたの?もしかして、バテちゃった?」
勝平が楽しそうに呼びかける。
その端正な横顔には傷一つなかった。
「へっ…!やっと…はぁっ…調子が、出てきたところだよっ…!」
ぶんっ!
勝平が軽く首を傾けてパンチをかわしていた。
「そろそろかな」
ポツリと呟く。そして―――――
どごっ!
春原の腹に強烈な蹴りを叩き込んだ。
「ぐっ…!」
腹を押さえてうずくまる春原。
ばきっ!
今度はその顔面を蹴り付ける。
ばきっ!どかっ!がすっ!
動けない春原を勝平の容赦ない攻撃が襲った。
「ほらほらぁ!どうしたの?僕を倒すんじゃなかったのかなぁ?」
春原の顔はボコボコに腫れ上がり、いたる所から流血していた。
「…はは…効かないねぇ…」
それでも、這いつくばりながら勝平を睨みつける。
その時、春原は見た。
勝平の背後の空。その地平線との境界が、微かに白んでいくのを。
――――特に、お父さんは、朝まで持つか分からない容態なんです。
「まずい、時間が…!」
春原がずりずりと地面を這って勝平に近づいて行く。
「朝までに…お前を…倒さなきゃ…いけないんだよっ…!」
勝平の足首を掴む。
「本当に馬鹿だね、春原クン…」
勝平が冷たい目で春原を見下ろす。
「君ごときが、僕に勝てるわけないじゃんっ!」
どがっ!
一際強烈な蹴りを受け、春原の体が宙を舞う。
どさっ
仰向けに地面に倒れこんだ。
「ちくしょうっ…!」
ぼんやりと虚空を見据える。
「あいつを…勝平を倒したいっ…!どんな手を使ってもっ…!」
悔しそうに言葉を吐き出す。
「その言葉、本当ですか」
物陰から風子の囁く声がした。
「手段を選ばないということでしたら、一つだけ…グロい人を倒す方法があります」
「な、何…?」
「グロい人の不死身の癌細胞も、一定以上の熱を加えれば死滅するはずです。
要は、ハイパーサーミア(温熱療法)を強制的に行えばいいんですっ!」
「よ、よく分かんないけど…熱いところが弱いってこと…?」
そこで春原がはっと目を輝かせる。
「はい…炎が燃え盛るあの駅の中に、グロい人を転送すればいいんです。
先ほどは駅の出口に近い女子トイレに誘い込んだので脱出されましたが、今度は駅の奥深くに転送します。」
「でも、どうやって?」
「ヘンな人が時間を稼いでくれたお陰で、一回魔法を使う分の魔力が回復しました。転送魔法で送り込みます。」
「だ、だったら早くやってくれよっ!」
「ただ、問題がひとつ…転送魔法はとてもデリケートですから、詠唱中に対象者が一歩でもその場を離れると失敗するんです…」
「え?それって…」
風子が顔を伏せる。
「はい…グロい人が動かないように押さえつけておく人が必要だということです…当然、その人も炎の中に転送することになります…」
「…相打ちって訳か…」
しばらくの間、ふたり黙り込む。
しかし沈黙を破り、春原がむくりと体を起こした。
「ははっ、でも、負けるよりはマシだよねっ!」
そう言って白い歯を見せた。
「ヘンな人…」
風子の目が潤む。
「だ、駄目よ春原…いっちゃ、駄目…」
顔面蒼白の美佐枝がうつろな目を春原に向ける。
しかし春原はその声を無視して立ち上がっていた。
「風子ちゃん、美佐枝さんや、みんなを頼むよ」
「なんかぶつぶつ言ってたみたいだけど、僕に勝つ方法でも見つけたのかなぁ?」
勝平がにやにや笑いながら近づいてきた。
「ああ、見つけたよっ!」
春原が力を振り絞って勝平に突っ込んでいく。
咄嗟にパンチを繰り出す勝平。
しかし、間一髪のところでパンチをかわし、勝平の背後をとった。
「風子ちゃん、今だっ!」
勝平を羽交い絞めにする。
「何をっ…!?」
物陰から風子が飛び出し、杖の先端のヒトデを勝平に向ける。
「ポイント8・1・5から3・7・3へ、転送…ヒトデテレポーテーション!」
詠唱を終えるとともに春原たちの体が光に包まれる。
「春原ぁっ…!」
美佐枝が泣き出しそうな声を上げた。
「大丈夫だよ美佐枝さん。僕は、ほら…天才だからさ、ははっ」
乾いた笑いを残し、春原たちの姿は、光の中に消えていった。
駅周辺
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ 『レイジングヒトデ』
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
014 古河渚 所持品:なし
007 柊勝平 所持品:44マグナム、『アポロンの銀弓』
004 春原陽平 所持品:なし
おいおい、春原で泣く日が来るかもしれないってわけわかんねぇよ!
>>233 今、設定に束縛されて自由に動かせないキャラが多いように思うので、
勝手ながら、こっちのパートをまず片付けてしまおうと思って進めています。
春原づ感動するとは思わなかったよ
GJ!
なんだかよく分からないけど、春原が逝くよっ!
・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
お…おいおい…っ!?
い・・・意味・・わかん・・・ね・・・・・・ぇ・・・・・・・・・・・・・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
アポロンの銀弓の形状なんだが、弓矢なのかクロスボウなのかはっきりしてほしい。
形状は弓矢だけど、秋生達がボーガンと誤認したために、
伝達される言葉としては「ボーガン」が使われているということでどうかなっ
まとめサイトにも形状は弓矢ってなってるしねっ
短距離速射用のボウモードと長距離精密射撃用のクロスボウモードの2形態に変形できるんでしょ?
おいおい!
もしかしてまとめのTOP絵募集してる?
何話か参加した書き手だけど、もしアレだったら描いてみてもいい?
252 :
'ヽ/ヽ:2005/05/24(火) 11:28:36 ID:GJk8ZV7i0
おいおい!
自分たちで描きまくれスレに誰か突撃したみたいだな
描いてもいいんじゃね?イメージイラスト募集中って触れ込みだし
255 :
前スレ535:2005/05/25(水) 00:33:52 ID:SMyLtT3F0
おいおい!
いみ
258 :
'ヽ/ヽ:2005/05/26(木) 22:43:57 ID:HOYXvLX60
わ
259 :
名無しさんだよもん:2005/05/27(金) 02:01:32 ID:UvkP19x0O
かんね
えよっ!
やっぱムードメーカーが元気いいと盛り上がるなぁ…
261 :
名無しさんだよもん:2005/05/27(金) 11:03:28 ID:DFgKWQta0
うーむ、そろそろ書き手復帰しようと思ったが
なかなかの勢いで進んでますなあ
読むの結構大変……
進んでるのは春原集団だけで、遅れてるパートはとことん遅れてるぜ
遅れてるパートも誰かが手を付ければ、どんどん繋がるだろうから心配ないと思うけどよく分かんないけど、行くよっ
>>261 大変だろうが、頑張ってくれよっ
多少矛盾が出ようがビクともしないのがこのスレの良い所
まあ最低限の注意は払ってほしいけどねっ
お、おいおい!
「GYAAAAAAAーーーーッ」
燃えさかる炎の中、ネクロマンサー柊勝平の絶叫が響く。
「小川……遅くなったけど、敵討ったよ…」
想像を絶する高温の中、春原は呟いた。もはやこの体は何も感じない。
意識が無くなるのももう十秒もないだろう。
うすれゆく意識の中、かつての親友の姿を見た気がした。
「考えなおすんだっ、春原クン。このままだと君までっ、今なら君も僕の仲間
に入れてあげるよ。永遠に死を恐れずに……?君は何故ここに…uuuugggggguuuuuuーーーッ!」
「ヘンな人っ…」
「春原っ…天才って言ったじゃないの…」
燃える駅舎を見つめる二人の背後に突如新たな気配が生まれる。
「体が灰になると、流石に光は取り出せないらしいからな…」
そこには、力なくうなだれる春原を抱えた、MIO四天王の一人岡崎朋也
が立っていた。
「岡…崎?」
「とりあえず、こいつはもらって行くからな」
「岡崎っ、あんた岡崎でしょ、ちょっと待ちな…」
次の瞬間、岡崎と春原は音もなく消えさった。
しかし、誰もこのとき春原の衣服に植付けられた癌細胞に気づく者はなかった…
駅周辺
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ 『レイジングヒトデ』
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
014 古河渚 所持品:なし
MIO本部
001 岡崎朋也 所持品:?
004 春原陽平 全身大火傷(重症)
007 柊勝平 再生に時間はかかるが一応生存
267 :
名無しさんだよもん:2005/05/29(日) 21:38:24 ID:qfRWxFM9O
おいおい!!
色々強引だけど、ここで黒朋也登場はいいね。
この手があったか!って感じだ。
「椋…今助けるからね…」
杏は誰にでもなく呟いた。朋也から離れ数時間、杏は椋のいるMIO本部を目指し一人走っていた。
しかし、場所は分からない。が、何か姉妹の絆とも言うべきものだろうか、
不思議な声のようなものに導かれるままに、ある場所に到着した。
「椋…ここにいるの?今行くからね」
杏は目の前にある扉にかけた手に力を込めていった…
「ふむ、ねずみが一匹入り込んだようじゃの…藤林…杏と言ったかの、よし藤林椋をだせ」
幸村は、さも楽しくて仕方ないといった様子で近くにいた部下に命ずる。
「ちょっと待つの、杏ちゃんと戦わせるのはまだちょっと早いの、それに…」
静かに、だがはっきりと一之瀬ことみは幸村の命令を制止する。
「それに…、何じゃ?まあよい、おぬしが言うにはただの気まぐれでもあるまい。だからといって
放っておくわけにもいかんしの。そうじゃの…そろそろ体が鈍ってきたじゃろ、坂上智代よ」
「私にあいつと戦えというのか…」
そこにいたのが当たり前、といった風に返事を返す智代。
「どうした、弟に会いたくはないのかの、ふむ、そうじゃの藤林杏を倒したら一度会わせてやろう」
幸村と言葉に一瞬、身をこう着させる智代。
「その言葉に偽りはないな」
「これでも元教師での、少しは信用してほしいもんじゃの」
「…………いってくる」
その言葉を最後に気配を断った。
「まあ、これはこれで面白そうじゃしの」
幸村の含み笑いをしつつ、呟いた。
おかしい何の気配も感じない。だが、確実に椋に近づいてる感じだ。
「ここに椋がいるってことは、勝平もいるかもしれないってことよね」
「いや、今あいつはここにはいない」
杏は自分の何気ないひとりごとに対する返事が返ってきたことに驚きつつ
声のするほうに英和辞典を投げつけていた。
「流石だな、だが私の蹴りで蹴り返せないことはないな」
その言葉を聞くか聞かないかのうちに、杏の左肩は体に衝撃をつたえていた。
「くっ、あんた確か、生徒会長の坂上智代っ」
「同じ学校だったからな、知らなきゃ困る」
「それで、なんであんたがここにいるのよ」
「あなたを倒しに来た」
「なるほど、あんたもそっち側だったてわけね」
「私だって好きでやってるんじゃないっ。こうしないと鷹文に…」
「鷹文?」
「……いくぞ」
台詞が終わるか否かの刹那の瞬間、智代は地を蹴り一気に跳躍した。
(懐に入られるとこっちが不利ね…)
かつて春原がぼこぼこ蹴られていたのを思い出しながら距離をとる。
(下手に投げても蹴り返されるのがオチね。ならっ)
まず隠し持つ漢字字典×2、少し時間をおき古語辞典を投げつける。
だが、智代の蹴りに全て阻まれる。
「思ったとうり、あなたは一対一にはむいてないな」
こういってみる智代だが、内心自分のこの異様な技の冴えに舌を巻いていた。
(力が湧いてくるようだ。なんだこの感覚は…)
これは幸村らに盗られた光の名残なのだが、智代がきずくよしもない。
「確かに、あんた相手では分が悪いわね。でも、退く気はないわよ。椋を助けるまでは」
「いい心がけだ。そろそろ本気でいくぞ」
智代は壁にむかって跳び、さらに壁を蹴り空中を疾走しながら向かってきた。
「!速いっ」
おそらくあの渾身の一撃を喰らえば即死であろう。
いや、即死でなくても立ち上がることは不可能な体になるであろう。
(どうする、かわす?間に合わないっ、辞書で弾幕?蹴り返されるっ)
そのとき、ふと杏の脳に不思議な声のようなものが聞こえた。
(……ちゃ…ん…おね…ちゃん…たす…て…助けてっ)
「椋っ!」
杏の叫びとともに杏の体が激しい光をはなった。
「くっ、なんだっあの光は」
智代は杏の放つ光に弾かれ着地する。
「椋…待っててね、すぐ行くから」
光が収まった杏の手には光り輝く辞書『三千世界』が握られていた。
MIO本部
002 藤林杏 所持品:『三千世界』辞書いっぱい
017 坂上智代 所持品:なし
008 一之瀬ことみ 所持品:なし
(欠番) 幸村俊夫 所持品:『獅子王』
お、おいおい!
きずくよしもないよ!
光輝く辞書の使い道を考えるのが難しそうだな…
やっぱ投げるのか?
投げるにしても付加効果か何か付くだろう
杏の光はアメジストのペンダントを予想してた
俺はバイクを予想してた
俺もバイクだと思った
辞書に付加効果って、なかなか思いつかないなぁ
形状先出しの光ってのは扱いが難しいね
まあ、例によって後続に一任ってコトで。
杏「ザケルっ!」
おいおい、意味わかんねえよっ
「くっ…お前達はいったい、どれだけ私の邪魔をするんだ…」
智代は歯噛みする。光が発動しなければ蹴りがヒットし、勝利していたはずだったのだ。
「しかし、辞書ごときでは私は倒せないぞ。どうするつもりだ?」
「くっ…」
その通り。
智代に辞書投げは通用しない。
(どうすれば…)
「来ないならこちらから行くぞ!」
智代が一瞬で距離を詰める。
「はぁぁ!」
凄まじい蹴りの連発。杏は紙一重で避けているが、いつ当てられてもおかしくはない。
(まずい…このままじゃあ…!?)
回避に失敗し、バランスが崩れた。その一瞬の隙を見逃す智代ではない。
「終わりだ!」
智代の一撃。杏はとっさに『三千世界』で受け止めた。その刹那、『三千世界』の表紙に埋め込まれたアメジストが輝いた。
「ぐぁぁぁ!!」
智代が吹っ飛ぶ。
「…え?」
劣勢だったはずなのに、自分が智代を吹っ飛ばしているこの状況を、杏は理解出来なかった。
「くっ…いったい、何が起きたんだ…」
智代はかなりのダメージを受けていた。
『…智代ちゃん、一度退いたほうがいいの』
頭にことみの声が響く。
「…仕方がない」
杏は撤退してゆく智代をただ眺めているだけであった。
足下には開いてある『三千世界』…
【−三千世界の手引き−】
@ペンは剣より強し。我に物理的衝撃を与えし者は、等しい衝撃を受けることになる…
MIO本部
002 藤林杏 所持品:『三千世界』辞書いっぱい
017 坂上智代 所持品:なし
008 一之瀬ことみ 所持品:なし
(欠番) 幸村俊夫 所持品:『獅子王』
この能力は面白いなー!
手引き@ってことはまだ続きがあるかもってことか
文才は全然問題ないと思うよ
なるほどと思った
未だに雄弁なじじいに慣れないが、いくよっ!
285 :
前スレ535:2005/06/01(水) 20:10:35 ID:5bpqXfmTO
何だかよくわかんないけど、まとめサイト更新したよっ!
いつも乙!
トップ絵の完成が待ち遠しいよっ
数秒ごとに壁に穿たれる、25mmの穿孔。
その延長線上には、仁科りえの躯。
ぶちまけた血液に這い蹲る姿として、それはあった。
びちゃっ。
飛来する機関砲弾が、肉をもぎ取る。
びちゃっ。
「グ…ギギギッ…!!」
苦悶とも憤怒ともつかぬ呻き。
びちゃり。
肉の裂ける音を立ててこじ開ける。
ハロウィンのカボチャのような大口が、ひとつ。またひとつ。
砲弾を飲み込む仁科の肉体を、早苗は愕然と見据えていた。
「仁科さん、あなた…」
早苗の目の前で、仁科のむき出しの肉が蠢く。
開けられる彼女の傷口は、死に抗うようにその面積を狭める。
「傷が…塞がってるんですか?」
「ギ…ギギギ…!コロシ…テヤル…ギギ…!!」
早苗の声は仁科の意識に届いていなかった。
いや、もはや意識が残っているのかも疑わしい。
制御不能の敵意。
近づく他者を、ただ自動的に皆殺しにする指令。
仁科を動かしているのはそれだけだった。
「ギィッ…!!シ…ネッ!」
仁科の手には拳銃があった。
だが、本来の使い道は忘れてしまった。
だから、地に伏せた早苗の頭上にそれを振り下ろした。
ゴツッ…。
「あく…っ!」
短い叫びとともに、早苗の視界が揺れた。
ゴッ。ゴッ。ゴッ。ゴッ。ゴッ…。
鈍い音。
重い金属が骨を打つ音。
何度も何度も叩きつける。無限にだって繰り返していられる。
「…あ…」
早苗の意識は赤黒く濁っていた。
狂乱する仁科を、もう視界にさえ捉えていない。
***
「ハハハ。これはいい」
思わず笑いを漏らす。
ビルの屋上。
スコープの向こうから、早苗たちを観察する影。
乾だった。
「仁科のやつめ、25mmAP弾を食らって立ち上がるとは驚いたが、そういうことか。
柊のネクロマンシーの支配下とは…これで古河の両親ともども、命運尽きたな。
邪魔者どもを排除する手間が省けたというものだ」
アイピースから目を離す。
慣れた手つきで、乾は銃を分解していく。
「これで無駄弾を撃たずにすむ」
装備を背嚢に収める乾。
屋上から垂らすロープを、するすると懸垂下降(ラペリング)してゆく。
「さて、本来の任務にかかるとしよう」
狙撃手はビルを後にする。
その先には、仁科たちのいる廃屋。
***
秋生はいつしか、意識を取り戻していた。
寝かされていた部屋から自分の体を引きずり出して、早苗たちを探す。
早く車に乗り込んで、一緒に脱出するのだ。
――叶わないと知ったとき、彼はどうしていられただろうか。
「早苗…!?」
玄関は真っ赤だった。
そこには愛する者の体があった。
血に汚れた姿として。
仁科に殴られて。
叫ぶ。
「てめぇ…どういうことだ!?仁科ァーッ!!」
考えるより遥かに早く、駆け出していた。
「ギッ…」
向き直る仁科。
音速を超えるような右拳。爆発のような打撃音。
正拳が炸裂して、仁科の顔面が歪む。
もんどりうって跳ね飛ばされる。
「ギッ…ギギギギッ」
歪んだ顔面は、瞬間的に癒える。
仁科はもう、何もわからなかった。
体に溢れる超人の力。それを振るって、目の前の敵を殺すだけ。
仁科はもう、何もわからなかった。
それが古河秋生という人間であることも。
――そして秋生の手に、“それ”が在ったことも。
「許さねえ…俺の早苗をこんなにしたてめぇだけは…」
“それ”は、顕現していた。
“それ”は、揺るがぬ意志の象徴だった。
“それ”は、秋生の手に握られた『銃』だった。
「あの世へ行きやがれ!!」
灼けるような赤色を帯びた『銃』。
銃口から伸びたのは、同じくらい真紅の光条。
戦乙女の放つ槍のように、それは仁科の胴に突き刺さった。
『光』だった。
仁科りえは恐怖した。それは、まさに死に恐怖する本能。
苦痛が癒えない。
貫かれた胴の焼灼痕が、一向に塞がらないのだ。
そして、病魔ののしかかる体の重さも忘れて、銃を構える秋生。
銃口を仁科の脳天に向ける。
「食らいやがれーーーっ!!」
「待ってください!!」
ふいに女性の声が、屋内に響いた。
…どこから入ってきたのか、姿を現した女性。背格好は仁科にそっくりだ。
手には不釣合いなサイズの拳銃。
なぜか胸元を強調した、レストランの制服みたいな衣装が場違いだった。
「その子を殺したら、私の存在が消滅してしまいます」
「何だと?」
「柊勝平の自動モードが効いてるのね。眠っててもらいましょう」
パシュ、と手に持つ拳銃を放つと、ニードルのような弾が仁科に刺さる。
短い呻きとともに、仁科の体がだらしなく倒れた。
仁科の気絶を確認すると、女性は言った。
「秋生さん、早苗さん、遅くなりました。土方店長の遣いでやってきました」
「ヒジカタ?誰だそいつは?」
「…まだご存知でなくても無理はありませんね。私は、仁科りえです。
この近くにあるファミリーレストランでアルバイトをしています」
「仁科りえ、だと!?」
「こちらの仁科りえが乱暴をしたのは謝ります。私はあなたがたを助けたいんです」
「だったら早苗をなんとかしろっ!!」
早苗と仁科を部屋まで運ぶ。
すると、仁科と名乗る女性は塗り薬のようなものを出してみせた。
早苗の傷口に施すと、薬剤に特有のにおいが鼻をついた。
見る見るうちに、彼女は安静な呼吸を取り戻してゆく。容態は安定したようだ。
「おいおい、すげえな…」
「テクノロジーは日進月歩ですからね」
素直に感心する秋生に、女性は新たな薬を差し出す。
「秋生さんも、これを飲んでください。特殊な抗癌剤の一種で、勝平細胞の活動を抑えます。
秋生さんには、しばらく戦ってもらわないと困りますので」
「どういうことだ?」
「先ほどの狙撃手が来ます。狙いはあなたがたではなく、この家でしょうから」
「なに?この家に何があるってんだよ」
女性は申し訳なさげに首を振った。
「…私にもわかりません。でも、敵の手に渡ってはならない何かです」
それは確かなのだ。
この家に掲げられた表札。それには、「一ノ瀬」とある。
奴らが狙わないはずがない。
「協力を願います。狙撃手を撃退したら、お連れしましょう。
私たちのお店へ。最後の、希望のありかへ」
秋生は手元の銃と、仁科と名乗る女性を見比べた。
「戦うったって、この『光弾銃ゾリオン』でか?」
「それがあなたの『光』。
『光』の真の所有者は、その『光』の真の名を自ずと知ることができる。
それがあれば、百人力ですよ」
一ノ瀬家
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
欠番 ウェイトレス(仁科りえ) 所持品:店から持ってきた物資
013 古河早苗/気絶中 所持品:レインボーパンほか
018 仁科りえ/気絶中 所持品:多数の武器
一ノ瀬家へ接近中
欠番 乾 所持品:レミントンM700、バーレットXM109、ほか装備一式
おいおいっ!!
意味分かんねえよっ!!
何だかよくわかんないけど、行くよっ!
何だかよく分かんないけどフォー!!
「ちっ、確かにあいつを倒すのが先だな。詳しい話は後で聞かせてもらうぜっ」
「やつは今自分に攻撃できる相手がいない、と油断しているはずです。狙うならそこです」
秋生は返事の変わりに壁に身を任せ『光弾銃ゾリオン』を構えた。
構えると同時にかるい寒気がした。いや悪い予感か?
さっきまで秋生がいた場所を銃撃が撃ちぬく。
「どわっ、壁の向こうがみえてんのかよ」
一瞬速く身をかわしていた秋生が体勢を整えながら叫ぶ。
「仁科っ、早苗たちを連れて奥へいけっ」
「分かりました。ここはお任せします。どうかお気をつけて」
「こんなの早苗のパンに比べたらどうってことねぇよ」
銃撃から回避しながら窓際へ向かう。
と一瞬銃撃が止む。その瞬間一気に窓から飛び出し敵を捕捉し『光弾銃ゾリオン』を構える。
「ふんっ、俺の狙撃から逃れ俺を見つけたことは褒めてやる。だが、そんな玩具でどうするつもりだ?」
乾が勝利を確信し呆れた様な顔をしながら声をかけてくる。
確かに、自分の自慢の銃撃がかわされ続け、飛び出てきたのが玩具を構えていたら誰だってそうするだろう。
しかし、『光弾銃ゾリオン』は玩具ではない。
「おまえに……レインボー」
その言葉を聴くか聴かないかの内に乾は予期せぬ感覚に悲鳴を上げる間もなくその場に倒れる。
「やっぱ、初めての早苗のパンははきつかったか…」
秋生は倒れた乾を抱えると仁科や早苗のいる奥の部屋へと歩を進めた。
『光弾銃ゾリオン』
秋生のこれまで人生で受けてきた肉体的苦痛、精神的苦痛を相手の精神に直接叩きつける。
普段は普通の光弾銃ゾリオンとして遊ぶことも可能。
「さてと…話を聞かせてもらおうか」
気がついた乾が暴れぬように
その辺にあったガムテープでぐるぐる巻きにしながら秋生が話しかける。
「単刀直入に言います。私たちに力を貸してください!」
「お、おいおい。意味分かんねぇよ!せめて、事情くらい話せ」
「そうですね。今この町で何が起きてるか知っていますか?」
「よくは分からんが、色々と攻撃を受けている。奴らは何者だ?」
「奴らは…破壊結社MIO、目的はおそらくあなた達、いや正確にはあなたの持つ『光』」
「『光』?『光弾銃ゾリオン』とかか?」
「ええ、『光』の形は人それぞれ、
しかしどの『光』も人知を超えた能力を持つ
奴らはそれを欲しているはずです。
それか『光』には私達の知らない隠された能力があると聞かされました」
「聞かされた?誰に?」
「私に…いや私達に力を貸してくれるなら、お答えしましょう」
「わかったよ、このままぼさっとしてるわけにもいかねえしな」
「ありがとうございます。早速ボスに会ってください。
そこでもう一人の私の事についても全てお話します」
一ノ瀬家からファミレスへ移動中
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
欠番 ウェイトレス(仁科りえ) 所持品:店から持ってきた物資
013 古河早苗/気絶中 所持品:レインボーパンほか
018 仁科りえ/気絶中 所持品:多数の武器
欠番 乾/気絶中 所持品:レミントンM700、バーレットXM109、ほか装備一式(秋生に奪われる)
おいおい!
光弾銃ゾリオンだけど、もちろん鏡で反射するリフレクトレーザーとかも撃てるよな?
今ファミレス周りの話を書こうと思ってるんですけど、芽衣の扱いが今いち分かりません
>>159の、
>壊れる。
>はじめから現実ではなかったかのように。
>自分自身以外の、一切の実在が。
等を見るに、思考分岐空間内の芽衣は架空の存在の様に思えるんですが…
>>161の現在位置でも括弧で括られてますし…
ファミレス内に芽衣がいる設定で書いていいんでしょうか?
キミが書いたこと、それが真実になるんだよっ!
時は仁科がレストランを発つ一時間ほど前に遡る。
「ん…」
ソファの上の毛布がもぞもぞと動く。
端っこから芽衣の頭が覗いていた。
カランカラン
入り口のベルが鳴り、くたびれた顔のウェイトレス―――仁科が、店内に戻ってくる。
「あ…もしかして、一晩中見張りをしていたんですか?」
慌てて芽衣が体を起こす。
窓からはうっすらと朝の光が差し込んでいた。
「すいません、まかせっきりにしてしまって…。昨日は私、疲れててすぐに眠っちゃったみたいです…」
申し訳なさそうに仁科に詫びた。
「いいんですよ、芽衣さん。まだ傷も言えてないでしょうし、ゆっくり休んでいてください」
にっこりと芽衣に微笑みかける。
「土方さんもご一緒ですか?」
「いえ、店長はモニタールームの方に。町内の数箇所に仕掛けた監視カメラの様子を確認しているはずです。」
仁科が二階へ続く階段を振り返る。
と、ちょうどそのとき、階段を下りてくる土方の姿があった。
「あ、店長。お疲れ様です。」
仁科が挨拶する。
しかし、その挨拶を無視し、早足で土方が近づいてくる。
その横顔は心なしか青ざめている様に見えた。
「仁科君、君に仕事を頼む。古河夫妻が勝平の『光』にやられていた様だ。抗がん剤を持ち、至急ここを発って欲しい。」
「…!はいっ!」
仁科が厨房に向かう。
冷蔵庫のドアを開くと、中には様々な種類の薬剤が保管されていた。
テキパキと薬を選び出す。
「そして…芽衣君。君にも仕事を頼みたい。」
土方が芽衣に向き直っていた。
「え…?」
薬瓶を掴む仁科の手が止まった。
「今CLANには決定的に人員が不足している。
そこで君には信頼できる仲間を探し出し、CLANのメンバーに引き込む役目を任せたい。」
「ちょ、ちょっと店長!芽衣さんはまだ傷が癒えてないんですよ!?」
仁科が甲高い声で土方を制した。
「だが、動けない傷ではない。そうだろう?」
「店長…!」
愕然とした表情で土方を見る。
「正気ですか!?まだ中学生の芽衣ちゃんを、銃弾が飛び交う町内に送り出すと…?」
仁科の声は怒りに震えていた。
「なに、戦わせる訳じゃないよ。あくまで隠密行動だ、問題ない。行ってくれるね?」
芽衣の肩に、ぽんと手をのせる。
しかし、仁科がその手を払いのけた。
「また繰り返すつもりですか、店長!有紀寧さんの時の様な悲劇を!!」
その言葉で、土方の顔色が変わった。
「うるさいっ!CLANのリーダーは私だっ!君たちは黙って命令を聞いていればいいんだっ!」
拳を震わせて叫んだ。
店内に気まずい空気が流れる。
「あの…私、大丈夫です。行きます。」
芽衣が恐る恐る口を開いていた。
「芽衣さん…!」
「そうか、ならばすぐに発ってくれ!時間が無い!」
土方が芽衣の背中を押して裏口に連れて行く。
「なんで裏口からなんですか?」
「いいから早く!しばらくはここに戻ってくるんじゃないぞ!」
追い立てるように芽衣を店内から送り出す。
「見損ないました、店長…」
仁科が恨めしそうな目を土方に向けていた。
「何をぐずぐずしてるんだ!君も早く行かないか!」
「言われなくても…っ!」
仁科が踵を返し裏口へと向かう。
「…仁科君」
土方がその背に呼びかける。
今までとは打って変わって穏やかな声だった。
「ここの地下室への秘密の入り口、覚えているね?」
「…?はい…」
怪訝そうな顔で土方を振り返る。
「もしもの時は、そこをCLANの本部として使うように」
「はぁ…」
今いち土方の言いたいことが分からないといった様子だった。
「では、行ってくれ。……気をつけてな」
首を傾げながら仁科は店の外へ出て行った。
パタン、と扉が閉まる。
と、同時、土方が駆け出した。
向かうは店内の武器庫。
大量の武器の中からショットガン、マシンガン等を引きずり出し、身につける。
カランカラン
その時、店内に響くのベルの音。
その音は、招かれざる客の襲来を告げていた。
「なんじゃ…この店は客の出迎えすらしないのかの…?」
幸村の姿が、そこにあった。
「…いらっしゃいませ、お客様。ようこそErnesto Hostへ」
武装した土方が出迎えた。
「ふむ…おぬし一人だけかの?MIOの、対抗組織のメンバーは。」
「…CLANのことを何処でお知りに?」
「ふぉふぉ、CLANというのかの。わしはカマをかけただけじゃ…
現代には無いはずのこの建物は臭いと睨み、朝の散歩がてら来てみれば、とんだ掘り出し物だの…
早起きは三文の得とはよく言ったものじゃて…」
幸村がくつくつと笑う。
「その武装した様子を見るに、わしの接近にはいち早く気づいておったようじゃの…
監視カメラでも仕掛けてあったのですかな?なかなか物資が揃っているようだの…」
幸村が腰に下げた日本刀に手をかける。
「だが、結局は無駄なこと…災いの芽は、わし自ら、ここで摘む…!」
(抜くか、最強の『光』、獅子王!)
土方の全身に緊張が走った。
幸村が静かに鞘から刀を抜き放つ。
その瞬間、土方は感じた。
全身の身の毛がよだつほどの恐怖を。
「う…!」
立っているだけで息が詰まる。
それ程の圧力を『獅子王』に感じていた。
(馬鹿な…!奴は数メートルも離れた所にいるというのに、
まるで刃の切っ先を首筋に当てられているかのような感覚…!)
嫌な汗が背中から噴き出す。
それでいて全身を寒気が支配していた。
がくっとその場に膝をつく。
「おえ…っ」
口からびちゃびちゃと胃の内容物が溢れた。
(か、勝てない…勝てる気がしない…こいつには…!)
力なく床に倒れこむ。
心臓が激しく脈打つ音が聞こえた。
(本能でわかる…私は、ここで…死ぬ…)
ゆっくりと目を閉じる。
すると、まぶたの裏に蘇る情景があった。
そこは営業中の店内。
人々の笑い声で溢れていた。
子供の口にスプーンを運ぶ親がいる。
友達と賑やかに談笑する者もいた。
そして
その客たちを嬉しそうに出迎える自分がいた。
様々な幸せの形が、確かに、そこにあった。
(そうだ…私は守るんだ…)
目を開く。
(この町を…そして、そこにある幸せを!)
力を振り絞り、再び立ち上がった。
「ほう…『獅子王』の殺気を克服したようじゃの…なかなかやりおる…」
幸村が感心したように髭をなでた。
「じゃが…だからこそ、今ここで確実に潰しておかねばならんの…
お前たち町民の最後の希望、CLAN本部は、今ここで潰える…」
幸村が日本刀を斜に構え、迫る。
「違う…希望は、この本部なんかじゃない…」
静かに、しかし力強く、土方が語りだす。
「町に生き、町を救おうとする者、その一人一人の意志の中にこそ、希望はある…!」
(芽衣君、仁科君…先刻は無理やり追い出してすまなかった。
だが、君たちを逃がすにはそうするしかなかった…
幸村はCLANのメンバーは私一人だけだと思っている。
しばらくは君たちに危害の手が及ぶことはないだろう…)
土方が、ふーっと静かに息を吐く。
不思議と、心は落ち着いていた。
(守るべきなのはCLANのリーダーや、CLAN本部ではない。そんなもの、いくらでも代わりはある…
本当に守るべきは、君たち一人ひとりの命。
町を守ろうとする、その意志が途絶えない限り…)
「…例えここで私が死のうと…この本部が潰されようと…!」
悲壮な決意が土方の目に宿った。
「希望の『光』は、消えない!」
ファミレス
欠番 幸村俊夫 所持品:『獅子王』
欠番 土方店長 所持品:マシンガン、ショットガン等(店には大量の物資)
???
欠番 春原芽衣 所持品:グロックC18
欠番 ウェイトレス(仁科りえ) 所持品:店から持ってきた物資
71話で仁科が秋生夫妻を助けに行く裏に、こういう背景があったという設定で書いてみました。ややこしくてすいません。
おいおい、かっこいいよっ!
いいんだけど、装備の描写が「ショットガン、マシンガン等」はちとイモっぽいな…。
武器の記述はもう少ししっかりやるとカッコよくなる鴨。プラネの榴弾銃みたく。
その辺は詳しい人が居ないと厳しいんじゃない?
下手に固有名詞出して、見当ハズレな銃使ってるよっ!ってつっこまれてもアレだし。
誰か芽衣登場あたりからの展開をごく簡単にわかりやすくまとめてくれないか
全部読むのは胃がもたれる…
>>310 別にコルトやレミントンといった固有名詞を聞きたいわけじゃないぜ。プラネの銃だってメーカー名は無いしな。
ハリウッド映画あたりでも、武器をジャキジャキ準備してるシーンなんてのが
「これから敵と戦う緊迫感の演出」としてよく出てくるけど、なんかそんな描写があるといいなと思いますた。
――――
と、同時、土方が駆け出した。
向かうは店内の武器庫。 扉を開け放つと、ずらりと揃った銃が迎える。
手近の二、三丁をひったくって駆け出す。出番を待っていた小銃が、土方の手許についてきた。
流れる手つきで弾倉を押し込む。遊底を引く。小気味よい金属音が跳ねる。
いつでも撃てる印だ―――弾数は充分。
「さあ、来るか」
カランカラン
その時、店内に響くのベルの音。
――――
なんかね、こんなの。
分野別に見れたら、うれしい。
全部読むのは正直苦しい・・・
>>312 なるほど、凄く上手いですね…
銃には疎いので、専門用語は使えそうにありませんが、
>向かうは店内の武器庫。 扉を開け放つと、ずらりと揃った銃が迎える。
>手近の二、三丁をひったくって駆け出す。出番を待っていた小銃が、土方の手許についてきた。
こういった、描写のスピード感は是非見習いたいです。
貴重なご忠告、ありがとうございました。
>>311>>313 確かに新規の読み手さんにはとっつきにくいのが現状でしょうね…何とかしなければ
光が芳野の体を包む・・・意識すらも呑みこむかのように…。
「ん…?」
視界に広がるのは見慣れた天井。
そして、寝ている俺を覗き込む俺の恋人、公子だった。
「おはよう。祐介君」
「あれ、ここは!?」
「ふふっ、何をそんなに慌てているの?うなされてたけど、
悪い夢でも見ていたのね」
「夢・・・?」
(何か大切なことをしてた気がする…なんだ…?思い出せない…)
「はは・・・。夢。そう・・・夢みたいだな」
「朝ごはん、用意してありますよ」
「あぁ、今行く」
何か違和感を感じつつ、いつもとなんら変わりの無いの食事を終える。
「ははっ、でさジョニーが…」
「あっ、もうこんな時間。祐介君、早く支度しないと遅れちゃうよ?」
「そうだな」
仕度をして玄関へと急ぐ。
(それにしても何だったんだ?疲れてるのかもな…)
「じゃあ行ってくる」
「ええっ、行ってらっしゃい」
会社に着いて今日のスケジュールを確認する。
(今日の仕事は新しく病院ができる予定の周りの電柱だな)
「ジョニー、行くぞ」
作業場へ向かう。
(おいおい!あのスクーター今人轢いたぞ…)
(またあいつ、こんな時間に登校か)
見慣れた人々。見慣れた風景。見慣れた町の姿だ。
そこにはなんら変化の無い日常が存在した。
作業場へつく頃には今朝感じていた違和感など拭い去られていた。
(今日も小春日和のいい天気だな。さて始めるか)
「っと、ここの電柱だな。ジョニー、サポート頼む」
「ハイ、任せてくだサーイ」
「(おね・・・目を・・・て)」
「(おねが・・・目を・・・まして)」
「(お願い…目を覚まして…)」
「えっ?」
「どうしマシタ、ユースケサン」
「ジョニーには聞こえなかったのか?確かにあの木の方から声が・・・
ちょっと行って見てくる。すまないジョニー。後頼んだ!」
「ちょっ、待ってくだサーイ、ユースケサーン」
ジョニーをおいて芳野は走り出す。
分からない何かがそこにはある。そんな気がしたのだ。
「はぁはぁ・・・。君か?俺を呼んだのは」
「お願い!目を覚まして!」
そこにいたのは、白いワンピースに身を包んだ女の子だった。
「?一体どういうことだい?」
「あなたが見ていたのは夢じゃないの」
「何のことだ…?言ってる事が良くわからないな」
「ここは最後の魔法円。思い出して…!ここは日常って言う牢獄なの!」
「お、おいおい。意味わかんねぇよ…」
「今、パパやママにはあなたや思いの光を持ったたくさんの仲間が必要です」
少女が胸元に両手をかざす。光がそこに集まって行く…。
「時間が無いの…。私がこの世界に干渉できるのはあと少しだけ。
今の私にはコレしかできないけど…」
集まった光が芳野の胸へと入り込む。
瞬間、意識が覚醒する。忘却し失われていた現実を取り戻し、受け入れる。
「そうか、夢はこの世界だったみたいだな…」
「大丈夫、貴方の思い…はきっと…み…んなに…届く…か…ら……」
少女の姿が消えて行く。
「愛を取り戻しに行く!」
芳野の手には光り輝くラブアンドスパナ。
「歪んでいたのは俺の方だったらしい」
ゆっくりと、芳野はスパナを頭へと入れてゆく。
「まやかし世界よ!これが俺の信じた愛だ!」
頭に入れたスパナを捻る。
魔法円によって歪められた意識をなおす。
刹那、強く暖かい光が芳野を包んだ。
彼のスパナ…ラブアンドスパナ。
それはなにも機械を解体するためだけのモノではない。"なおす"ことも可能なのだ。
それが人の意識、観念、概念であろうとも。
彼の信念で負と判断されたものをなおし、正すことができるのだ。
彼の愛なら間違った方に導かれることは無いだろう…。
風がそよぐ。
「ふふっ、お帰り祐介君」
「公子!?」
桜並木の下で二人は再開を果たした。
・桜並木の坂道(現実)
005 伊吹公子 所持品:ゼウクシスの魔筆、智代の『光』
011 芳野祐介 所持品:所持品:ラブアンドスパナ含む工具一式
・桜並木の坂道(仮想)
(欠番 春原芽衣? 所持品:グロックC18)
(欠番 ジョニー? 所持品:IMIデザートイーグル)
お、おいおい!
最近またスレが勢いづいてきたなぁ
お兄さんはうれしいぞっ!
最近またスレが勢いづいてきたなぁ
お兄さんはうれしいぞっ!
うお、すいません(汗)
勢いで書いたものの細かい所が…。
祐君ですね…orz
一応三点リーダのつもりだったのですが、申し訳ないです。
スパナの能力については次の作者さんにお任せします。
次書くことがあったら気をつけたいと思いますのでご容赦ください。
お、おいおい!
>>322 マシンガン使っちゃいけないんですか…知らなかった
わざわざありがとうございます。
マシンガンて言葉は俺的にファンタジーだから
ってわけわかんねぇよ俺!
>>325 マシンガンを使っちゃいけないってか、
SMGも突撃銃もいっしょくたに間違ってマシンガンって呼ぶ風潮があるから
区別がわかんなきゃ使わないのが無難てこったな
お、おいおい!
─────なんだかよく分からないけど、
行くよ・・・・。
しばらく見てない間にちゃんと進んでるなあ……
これもしかしたらハカロワ以上の分量になるかもねえ
いいことじゃ
「残念ですが、あなたの癌は脳に転移したようです。」
沈痛な面持ちで主治医がボクに話しかけた。
でも今いち実感が沸かない。
ふぅん、と気のない返事をした。
それが重苦しい病室の空気にそぐわなくて滑稽だったことを覚えている。
最初の変化はその三日後に起こった。
いつも看護婦さんが花瓶に活けてくれる綺麗な花。
無意識のうちにその花をバラバラに引き裂いていた。
看護婦はショックを受けた顔で、もうこんなことしないでね、と頼んだ。
最初は、自分でも不思議に思っていた。
でも、毎日それを繰り返すうちに、そんなことはどうでも良く思えてきた。
そして、そうなる頃には、看護婦は花を活けるのを止めていた。
脳の大事な所が癌に冒されてしまったのだと主治医はいったが、ボクには意味がよく分からなかった。
花が無くなったから、ボクの興味の対象は生き物に移らざるを得なかった。
病室に入ってくる小さな虫や小動物を、素手で握りつぶした。
何故だかボクは動物に好かれていたから、今度は獲物に困ることはなかった。
ただし、看護婦は僕の病室に寄り付かなくなっていった。
ボクは孤独になった。
それでも、椋ちゃんだけはボクの病室に足を運んでくれた。
いつしか彼女は、生きる目的も何もかも失ったボクの、最後の支えになっていた。
しかし、ボクは彼女さえも傷つけようとするようになった。
本当は他の男が好きなんだろう、と言いがかりをつけて当り散らした。
遂に、彼女も、ボクから離れていった。
激しい虚無感と後悔がボクを襲った。
死のうと思って何度も自分自身を傷つけた。
しかし、傷はたちまち再生してしまい、とうとう死ぬことはできなかった。
そして、だんだんとそんな感情も薄れていった。
それはまさしく、「ボク」が「ボク」でなくなる過程だった。
………
……
…
「う…」
目を開ける。
夢を見ていたらしい。
体を動かそうとしたとき、全身に激痛が走った。
そうして、そこが病室であることに気づく。
「柊勝平、意識を取り戻しました」
慌ただしく番外衆の人たちが行き来するのを、ぼんやりと見ていた。
「そうか、ボク、負けたんだ…」
徐々に意識がはっきりしてくる。
蘇るのは炎の中で悶え苦しむ自分の姿。
「いや、引き分けだろ」
聞き覚えのある声がした。
包帯で固定された体を傾けて隣を見る。
「朋也クン…!?」
岡崎朋也がボクのベッドの横に立っていた。
「あいつだってお前と同じで重症だしな。」
窓際付近のベッドを顎で指す。
そこに横たわる春原の姿があった。
「光の摘出に耐えられる状態になるまで保護するらしいな。」
そう説明する。
自分をこんな状態に追い込んだ相手を目前にしても、不思議と憎悪の感情は沸かなかった。
そんなことはどうでもいい。
今は彼女に会いたい。
「椋ちゃんはどこ?」
言って体を起こす。
腕から伸びる点滴の管が邪魔だった。
「おいおい、動かないほうがいいぞ。今、お前の癌細胞は死滅しかけてるからな…
安静にしてないと、再生能力自体戻らなくなるぞ…」
癌細胞の死滅。
そうか、それではっきりした。
それでこんなにも思考が鮮明なんだ。
ずっと頭にかかっていた霞が払われた気がする。
「それに、今藤林椋に会うのは無理だしな…」
岡崎がそう付け足す。
「え、何で?」
「ジイさんの命令で藤林杏の迎撃に行ってるんだってよ。
しっかし、この本部に一人で乗り込んでくるなんて、アホな奴もいるのな…」
「何だって…!椋ちゃんを戦闘に!?」
ぎゅっとシーツを握り締める。
―――その女は好きにするがいい
そう、幸村は約束したはずだ。確かに聞いた。
「裏切ったな…!幸村っ!」
布団を跳ね除け、ベッドから降りる。
「お、おいおい!どこ行くんだよ」
「椋ちゃんを、助けに」
腕から伸びる管を引き抜きながら言い放つ。
「やめとけっての。マジで動けない体になるからな、お前」
「………」
熱くなる自分を、冷めた目で見るボクがいた。
『また、あの地獄に戻ってもいいのか?』
『病室から動けない日々。生きる目的を見出せない日々』
『孤独な日々に、また、戻りたいのか?』
それはきっと、癌細胞に支配されていたかつてのボクだろう。
『女なんて他にいくらでもいるだろう。一人くらいほっとけって。』
性欲が暴走し、ことみちゃんや有紀寧ちゃんに鼻の下を伸ばしていたボクだろう。
だけど、今のボクは揺るがない。
「それでもいい。動けなくなってもいい。本当に愛した人ひとり救えないなんて…」
言葉を探す。
昔の、本当の自分が好きだった言葉。
今なら思い出せた。
「そんなの、男じゃない」
ボクは全身を引きずり、歩き出す。
廊下の壁にもたりかかりながらでも、びっこを引きながらでも、歩いていく。
―――男らしく生きること、それがボクの人生の目標なんだ。
それはきっと、本当のボクに続く道だから。
お、おいおい!勝平カッコイイよ!!
MIO本部・病室
001 岡崎朋也 所持品:?
004 春原陽平 所持品:なし
007 柊勝平 所持品:アポロンの銀弓、マグナム44
さっきはなぜか送れなかったので改めて。
敵味方の立ち位置がちょくちょく変わるのがいいよな、この企画
> アホな奴もいるのな…
> マジで動けない体になるからな、お前
スゲェ朋也っぽい台詞だな
339 :
名無しさんだよもん:2005/06/05(日) 14:23:24 ID:01pyKqgdO
久しぶりにage
お、おいおい!
意味わかんにゃいよ!
【400字で要約してみよう!第1話〜第10話】
突然の閃光……それは、岡崎朋也たちの暮らす町を廃墟へと変えた。
渚を探す朋也の前に、武装した一之瀬ことみが立ちはだかり、同時に謎の放送が流れる。
老人の声は言う。「この町の生存者は17名だけじゃ。さあ、殺戮の宴を始めよう――」。
事態を理解できない朋也に、一之瀬は訥々と告げてゆく。
MIOという破壊結社の存在。
『イデア計画』という名の全人類への死刑宣告。
そして一之瀬もまた、朋也を殺すために遣わされたこと……
朋也の説得も空しく襲いかかる一之瀬に、彼は逃げまどう外はなかった。
同じ頃、破壊を生き延びた他の戦士たちも動き始めていた。
追っ手の矢を受けた秋生を気遣う早苗と渚。
襲い来る勝平から春原を守り、美佐枝への愛に殉ずる小川。
芳野と風子を執拗に追う徳田。
怯える杏と椋、MIOへの怒りを胸に果敢に挑む有紀寧。
ただ勝ち残るために、杉坂を死に追いやった仁科。
広がるは果てなき死の荒野、あてどもなき彼らの戦いの行方は!?
続き誰かよろしく
【400字で要約してみよう!第11話〜第20話】
お、おいおいっ!意味わかんねぇよ!
344 :
'ヽ/ヽ:2005/06/06(月) 02:00:18 ID:+JIeIsWQ0
【400字で要約してみよう!第21話〜第30話】
お、おいおいっ!意味わかんねぇよ!!
おいおい…
>>342 うまいなぁ
なんつーか、燃える
続きも書いておくれよ
【400字で要約してみよう!第11話〜第20話】
杉坂を間接的に殺害した仁科は、学園内で古河一家と合流する。
一家とのつかの間の団らんの中、仁科の心にはやはり敵意と策謀が渦巻いていた。
学園内を探索する彼女ら。
そこにはなんと、殺されたはずの杉坂が変わり果てた怪物の姿となって現れる……!
全ての黒幕は、破壊結社MIOの首領・幸村俊夫だった。
天才少女・一ノ瀬ことみの脳髄を機械に幽閉し、人知を超えた力をほしいままにする幸村。
彼の操る力で蘇った杉坂は、魔法熟女の伊吹公子の指揮のもとに仁科らを強襲したのだ。
さらに、弟・鷹文を人質として坂上智代をも引き入れ、着々と人類殲滅計画の駒を進めるMIO……。
だが、地上に希望の灯はあった。
朋也を狙った一之瀬は、藤林姉妹の思わぬ奇襲により一時退却。
芳野と風子は相楽美佐枝の加勢を得て、徳田を返り討ちにする。
そして、蘇った肉体の圧倒的な力を得て襲いかかる杉坂に、敢然と立ち向かう古河夫婦。
流血の死闘の果て。そこには武器を捨て、杉坂を抱きとめる“父親”の姿があった――!
おいおい…
なんつーか…なぁ…
最近このスレに来た人用に、ストーリーを短く要約した物が
なんかしらあるといいと思った。不評ならやめる。
なんで不評なんだ?俺はいいと思うよ。
>>311>>313みたいな人を慮って、わざわざ書いてくれたんだからむしろ感謝してる。
ただ、「そこにはなんと、殺されたはずの杉坂が変わり果てた怪物の姿となって現れる」は文法的におかしい気がす。
感想
やっぱりわかんねえよ!
最初から読めよ!
あらすじ見たからって後編から小説読む奴なんてほとんどいねえだろ!
こんなところ
でも実際
>>311>>313みたいな人がいるわけで
たまたまこのスレを覗いた人が、よし最初っから全部読むぞって気には中々ならないと思うんだよ
でもテンプレとかに今までのあらすじとか要約みたいなものがあれば、それが読むきっかけになるかもしれない
やっぱり、あった方が何かと都合がいいと思うよ
俺は要約とか苦手だから、
>>342>>347の両氏にまた要約してほしいな
354 :
'ヽ/ヽ:2005/06/06(月) 21:02:57 ID:VGqfESnE0
おいおいっ
おいおい
なんか面白そうなことやってるな。
まとめサイトで最初から読んで来るから、
面白かったら参加するよ
廃れすぎじゃね?
俺も話し思いついたら書くからみんなガンガレ!
みんなで力を合わせて一つの物語を作り上げる…
それは、とても素敵なことだと思います
まとめサイト、もうすぐ1000ヒットだなぁ
>>251でトップ絵描くって言ってくれた人はまだいるよね?音沙汰がないと不安になってくる…
360 :
前スレ535:2005/06/07(火) 19:52:43 ID:EBA+BNpj0
何だかよく分からないけど、まとめサイト更新したよっ!
主な登場人物んとこに各キャラ登場話をつけました。
361 :
251:2005/06/07(火) 20:03:13 ID:Azu32FOl0
HAHAHA!超ヘタレ絵なんで修行中の身なのさ!
他の絵師さんのが良い絵描けると思うんで、自分に遠慮せずに描いて欲しいな
なんちゃって紙媒体用の挿絵みたいなのならすぐ描けるかもしれんが…
>>360 いつも本当に乙です。一層見やすくなりました!
>>361 たとえ修行中だろうと貴重な絵師さんであることに変わりはないよっ!
挿絵とかトップ絵とか関係なくても、練習中の絵でも、イラストを投下してくれるってだけで嬉しいよっ!
原点回帰。
お、おいおい。意味分かんねえよ!!
何だかよく分からないけど、行くよっ!
366 :
356:2005/06/08(水) 00:47:22 ID:gEVEnr/Q0
まとめサイトで読んでるけど、結構長いな…
このスレの流れに乗れるのは、いつになることやら…
小説とか書いたこと無いけど、参加しても問題無いよな?
あと、スレもの方も一読したほうがいいか?
367 :
356:2005/06/08(水) 00:49:18 ID:gEVEnr/Q0
誤字…
>>366 俺も書いたことないけど、3回くらい書いたよ。
流れを外しても後続がフォローしてくれるから、思いついたらじゃんじゃん行こう。
何か書くって以上過去ログぐらい読んでもよさそうなもんだが。
シャンデリアの灯の照り返しか。刃のまとう仄赤い光は、瘴気のように妖しく漂う。
見る者を圧倒する長大な太刀が、幸村老人の手にはあった。
対するは銃を携え、戦いの衣装に身を包む土方。
レストランのテーブルを挟んで、じりじりと睨みあう両者。
「わが『獅子王』の『御霊掠め(みたまがすめ)』の型を受けて、なお立ち上がるとはの…」
「ソウルスティールの一種か。意志の力がある限り、そんな術に私は屈しない」
土方が短機関銃の立射姿勢をとった。
老人は左足をすり出し、太刀を八相の構えに直す。
「敵ながらあっぱれな心根の強さよ。では、わしも参ろうか」
死合いの興奮ににやりと笑む。
刹那――幸村の体躯は、そこにはなかった。
(消えた…っ!?)
そう思い違うほどに、迅い。
銃がけたたましく弾丸を散らした。そこに目標の姿はない。
幸村は跳び上がっていた。
「ほわちゃああっ!!」
気合が上方から舞い降りた。
シャンデリアの逆光を背に、猛然と土方に斬りかかる影。
「くっ…!」
堪らず右手で銃身を振り、土方は射線を影にぶつける。
同時に横っ飛びに飛びのく。考える前に体が動いた。
「無駄じゃあああっ!!」
刃が唸る。音速を超えて飛来する鉛の群れを、空中で跳ねのける老人。
土方の驚きをよそに、刃が彼を縦断する――その前に、
(手榴弾じゃとっ!?)
着発。
幸村の真下で、テーブルが炸裂する。
土方が飛びのくと同時に、その左手は手榴弾をテーブルの下に転がしていた。
(かかった…今だ!)
爆煙に包まれる老人。テーブルの破片を刃の峰で防ぐ。
だが、視界を封じる煙の只中――
土方は幸村のアウトレンジから、弾倉いっぱいの弾丸を撃ち込んでみせた。
「射程外からわしを捉えたつもりかの?愚か者め!」
老人の怒声。銃声とともに、弾丸が飛ぶ――土方に返される、銃の反撃。
「お前も銃を使うのかっ!?」
とっさに身を翻し、土方は店内の壁の遮蔽に飛び込む。
晴れた煙から現れる老人――その左手には、一丁の拳銃。懐に隠していたのだ。
「わしを正々堂々たる剣術家とでも思ったか?勝つためなら道具など選ばぬわ!」
遮蔽に向けて、牽制の射撃が執拗に飛ぶ。
戦士としての態度について老人と論争をする気は、土方にはなかった。
「そうか…。でも、狙いはまだお前じゃない」
短機関銃の弾倉を換える。それとともに、腰に差したもう一丁の銃を抜いた。
左手に取った、短銃身散弾銃(ソウドオフ・ショットガン)を放つ。
大ぶりの散弾が九粒、宙を飛ぶ。そこには店内の主照明、釣り下がったシャンデリア。
支えを失った巨大な釣燭台が、幸村の頭上へ落下する。
「ふん、陳腐な小細工を!」
老人の物腰はあくまで余裕。
頭上に太刀が一閃し、線対称に分割されるシャンデリア。
ふたつの片割れは激しく地に叩きつけられた。
「言ったはずだ。狙いはまだお前じゃないと」
同時に、土方の短機関銃が火を噴く。
その照準は、店内の配電盤。
足下灯、非常灯をはじめ、あらゆる灯火がその機能を停止する――
「…ほう、今度は何の細工じゃ…」
何も見えない。墨をぶちまけたような暗闇が、店内に訪れる。
そして、暗闇を切り裂く光条。
短機関銃の銃身に据えられたマグライトが、幸村の顔面を照らしだした。
「お前はやはり剣術家だ。銃の撃ち方でわかる。射撃に関しては、とんだ付け焼き刃だとな。
低光量下での射撃戦では、私のほうに分がある」
言うと、土方は銃の電灯を切る。光が消え、暗闇が再来する。
光がまた灯る――間髪を入れず、そこへ拳銃を撃ち放つ幸村。
「…白燐手榴弾か!こやつ、攪乱とは小ざかしい!」
2度、3度、あらぬ方角に同じ灯光が燃え上がった。
幸村の銃弾はむなしく店内を通り抜けていた。ぎり、と歯を軋らせる。
店内を交錯するのは、かすかな足音と、けたたましい銃声。
飛来する弾丸の気配に、老人は防御の太刀を振る。まさに防戦一方――。
(いいぞ、押している)
短機関銃を断続的に撃ちながら、土方は考える。
(『光』を持つとはいえ、幸村も生身の人間だ。急所に一発でも当てれば、あるいは…!)
……土方の思考は瞬時に断たれた。気づいたときには、老人の間合いだった。
「え…っ!?」
身を翻すが、もう遅い。
破れたように、血が激しく噴き出す。
肉を斬る感触――わき腹を、幸村の『獅子王』の刃が掠めていた。
「虚仮にしおって!このわしが、貴様なぞに攪乱されると思ったかの?」
「なぜだ…完全にアウトレンジしていたはず…!それに、この店は私の店…地の利もある…
なぜ、こんなにあっさりと間合いをとられる…!」
心底不思議だった。
「くくく。わしの『獅子王』は命を喰らう太刀じゃ…視界を封じられようとも、貴様の命そのものの匂いを嗅ぎつける」
この『獅子王』が、貴様の位置を教えてくれるのじゃよ。
倒れる土方に、幸村は勝ち誇って告げた。
「今当てたのは『腐れ肉叢(くされじしむら)』の型じゃ。
これで斬られた肉は壊死し、腐りはてるのみ。どうじゃ、苦痛に身動きも取れまい…」
土方は、表情に脂汗と悔しさをにじませる。
満足げにそれを見下ろすと、幸村は大上段に太刀を構えた。
その直下には、土方の首――。
「さて、首を刎ねてしんぜようかの。なに、すぐにわしの指揮下に加えてやるわい」
振り下ろす。
土方の首は、刎ねられなかった。
「なにい!?」
堪らず『獅子王』を取り落とす幸村。肩口を撃たれたのだ。
…哀れな犠牲者のはずの土方の、袖に仕込まれていた小型拳銃で。
硝煙をゆるゆると上げる拳銃を手に、にやりと笑ったのは、こんどは土方だった。
「ばかな、ばかな、身動きも取れぬはずの貴様が…!?」
「いや、これを仕込んでいて正解だったよ」
服の下から出したのは、ニワトリの血袋。そして、本来食材だった牛肉の塊…。
「…もっとも、当店自慢の黒毛和牛最高級サーロインはダメになったがね」
土方の身代わりに『獅子王』の攻撃を受けた牛肉は、じくじくと腐敗していた。
「くくっ。貴様、なかなかの詭計の使い手…!ただのレストランの店長ではないな!」
「武道の嗜みがある、とだけ言っておこうか」
幸村の額に銃口を突きつける土方。
その胸中には一抹の心配があった。
(違う…私の知ってる幸村は、この程度の急ごしらえの詭計にかかるような奴じゃない。
まだ、真の力を手に入れてはいないのか…?)
「どうした?撃つのか、撃たぬのか、このわしを」
(いや…だからこそ、この好機を逃してはならない!)
引き金に力を込める。
「――幸村俊夫、死んでもらう」
「くくく…これを見ても、まだそのようなことができるかのう?」
「どういうことだ!」
「見るがよいわ。岡崎直幸君、ここへ!」
真鍮のドアベルが、控えめな音を立てた。
玄関がぎいと開いて、暗い店内にさっと朝の光を差し入れた。
「やあ…お邪魔するよ…」
大きな壺を抱えた男がいた。
よれよれのシャツをだらしなく来た、無精ひげの中年男。
岡崎直幸と呼ばれたその男は、壺の中身を土方に見せてきた――
(芽衣君…!?)
想像しがたい光景だった。
壺の中に、その少女が、倒れていたのだ。
「これねえ…私の『リントホルストの壺』という『光』でね…」
中年男が説明する。
「この壺、いろいろと封印できる便利な物でね。壺の中で壊しちゃうことだってできるしねえ。
私を撃ち殺してもかまわないけど、その場合はもちろん…この子は永遠に取り出せない」
歯がみする土方に、老人は余裕を浮かべて言った。
「春原芽衣という娘じゃ。確かに殺したと思ったが、これがなかなかしぶとい小娘でなあ」
なぜだ、仁科君といたはずでは?――その声を出すわけにはいかなかった。
銃口を押し当てられながらも、老人は続けた。
「ここに来る途中、一人はぐれて『仁科さーん、仁科さーん』と叫んでおったんじゃよ。
わしが仁科くんでなくて気の毒なことじゃ。
仁科くんなら、今頃は乾先生が蜂の巣にしておる所じゃろうからの。古河渚もろともな…」
「こいつっ…!?」
まだ…知らないのか?
仁科りえが、未来の土方の仲間のひとりであることを。
春原芽衣が、私の志を受けていることを。
知ってか知らずか、老人は言葉を継いだ。
「選ぶことじゃな。
その小娘とわしを交換するか。哀れな小娘を犠牲に、晴れてわしを撃ち殺すか」
・ファミレス
欠番 幸村俊夫 所持品:『獅子王』
欠番 土方店長 所持品:マシンガン、ショットガン等(店には大量の物資)
欠番 岡崎直幸 所持品:『リントホルストの壺』(春原芽衣を封印)
・リントホルストの壺内部
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
おいおいっ!
意味分かんねえけど、行くよっ!
何だかよく分からぬが、行くぞっ!
何だかよく分かんないけど、行くよっ!
何だかよくわからないけど1000ヒットおめ!
今日はかなりヒット数伸びてたけど、意外とこのスレ、人いるのかな?
何だかよく分かんないけど、行くよっ!
まとめサイトで、第36話と第37話の間にある
芽衣編の578が連続で二つある
多分、ミスだと思う
382 :
前スレ535:2005/06/10(金) 09:56:30 ID:igf7yDCw0
>>381 通報乙であります!
訂正しました。ご協力に感謝します( ゚Д゚)ゞ
お、おいおい!
何だかよく分からないけど、行くよっ!
何かわからんが、くらえッ!
387 :
前スレ535:2005/06/12(日) 00:28:54 ID:AiEIMyHr0
何だかよく分からないけど、1000アクセスを越えた記念代わりに
なんちゃって紙媒体の続き作ってみたよっ。
…20話までで65ページになりますた。
今書かれてるのだけでも、既にノベルス1冊分ぐらいにはなりそう。
余りにも乙過ぎますっ!
まさか挿絵募集に萌えるとは思わなかったw
やっと過去ログから全部読み終わった…
時間があったら杏VS椋のシーンを書きたい…
お、おいおい!
意味分かんねぇよ!
(椋…まっ…て……す…ぐ……から…)
「お姉ちゃん!!」
思わず叫んだ。
椋の体から激しい光が放たれる。
そして光は収束していき……右手には光り輝く辞書が握り締められていた。
『三千世界』――その表紙には、タンザナイトが埋め込まれている。
杏は撤退していく智代をただ眺めているだけであった。
いや、智代など目に入っていなかった。
(なんなの…この感覚は……!)
自分の中に、知らない知識がある。
自分の中に、知らない感覚がある。
自分の中に、知らない感情がある。
(お姉ちゃん……なの…?)
自分の中に――椋がいる。
だが、それだけではない。
なにか、黒い…黒い感覚がある。
(そんなこと…どうでもいい…から……早く…椋を……うぅ……)
なんとか手を伸ばし、『三千世界』を拾い上げる。
椋の場所はわかっている。その方向へと歩けばいいだけだ。
そんなに遠くではない。
――その距離が、遠い。
(はや…く……りょ…う……を……)
一歩体を前へと進める。黒い感覚が襲ってくる。
(……は…や……く……りょ…う……を……)
もう一度、一歩体を前へと進める。黒い感覚が襲ってくる。
(……は………や………………く……)
もう一度、一歩体を前へと――前へと倒れる。
黒い感覚が襲ってくる。
そして、何事も無かったかのように立ち上がる。
「早く椋を殺したい――」
杏は駆け出した。
「くそっ……!」
智代は壁を殴りつけた。手に返ってくる痛みが、今は心地よい。
鷹文との再開のチャンスは、『光』によって潰されたのだ。
『光』に対する怒りは収まりそうにない。
だが、『光』が無ければ鷹文との再開が無いのも事実。
(少し、落ち着かないと……)
幸村達の顔を見る前に、なんとか怒りを納めたい。
息を吐き、それからゆっくりと息を吸う。まず最初に吐くのがコツだ。
三回深呼吸をすると、智代は歩き始めた。
改めて考えてみると、悪態をつくなんて女の子らしくない。
そう思うと、右手の痛みが苦痛へと変わる。
これからは気をつけよう。
そのとき、通り過ぎようとしたドアが、
開いた、瞬間――――
光り輝く辞書が襲いかかって来た。
「なっ……!」
足では間に合わないと判断し、反射的に慣れないエルボーを繰り出す。
それが幸いした。
慣れないエルボーの衝撃なら、蹴りに比べて威力は低い。
だから、智代に返ってくる衝撃が致命傷になることだけは避けられた。
「ぐぁぁっ!!」
自身のエルボーと光り輝く辞書の衝撃が襲い、吹っ飛ばされる。
そのまま廊下の壁に、背中から打ち付ける。
先程の杏との戦いでのダメージもあり、そのまま気絶した。
直後、光り輝く辞書を持った人物が部屋の中から現れ、そのまま走り去っていった。
「ん……うぅ…………」
「すごいの。まだカップラーメンも作れないのに起きたの」
智代は目を覚ました。
気絶した場所に、智代は放置されていた。
「カップラーメンなんていらない……」
何とか体を起こして、立ち上がる。目眩がする。
「カップラーメンはここには無いの。ここ、意外とおいしい食事が食べられるの」
ああ、そういうことか。
つまり、気絶してからそんなに時間は経っていないらしい。
「えっ…と……」
「とりあえず、部屋に戻るの」
「あ…あぁ……」
ことみは歩き始めた。
頭を叩き起こし、後についていく。
(たしか、ドアが開いて、本が……本?)
「藤林杏はどうした?」
「杏ちゃんは、智代ちゃんに勝ったの」
智代ちゃんと呼ばれることに違和感を覚えたが、とりあえず話を進める。
「そうじゃなくて、さっきの部屋にいただろ?」
「?!?」
ことみは少し戸惑い、そして答えた。
「部屋にいたのは椋ちゃんなの」
今度は、智代が戸惑う。椋ちゃん…ああ、妹の方か。
「いや、あの威力は確かに姉のものだ」
一度味わった威力を間違えるはずもない。
「それとも、妹の方も同じ事ができるのか?」
「できるの。でも、普段はおとなしいの」
「そうなのか…。偏見かもしれないが、姉妹なら納得できる。だけど、あの本は二冊あるのか?」
ことみは立ち止まる。
「着いたの」
ことみはドアの横にあるコンソールパネルを弄る。
「杏ちゃんと椋ちゃんは双子なの。だから、光も二人で一つ」
ドアが開く。
「とってもとっても予想外なの。本当は、椋ちゃんに光は無かったの」
ことみが部屋に入っていき、智代もついていく。
「器は二人。中身も二人。でも、『三千世界』を通して中身は繋がってるの」
ドアが閉まる。
「だから、あの部屋にいたのは杏ちゃんでもあるの」
「そう……なのか。難しいな」
「そうなの。難しい問題なの」
(問題は、『三千世界』を通じて『バーサーカー・レクイエム』の魔力が二分されたことなの)
強力な魔力によって意思を奪うのが『バーサーカー・レクイエム』。
つまり、魔力より意思が勝っていれば奪われることはない。
そのボーダーラインが半分になったのだ。
(でも、半分の魔力でも打ち勝つのは簡単じゃないの)
「ところで」
智代が口を開く。
「妹の方は、なぜ私に攻撃してきたんだ?」
「たぶん、ドアの前にいて、邪魔だったからだと思うの」
「そんな理由で攻撃されたのか……」
「仕方が無いことなの。だって――」
――杏ちゃんを殺すこと以外、なにも考えてなかったの。
【−三千世界の手引き−】
A『三千世界』は上下巻に分かれている。
同一人物が上下巻共に所有しない場合、本書の使用に関して多大な制限が付く。
ただし、深い絆で繋がっている二者が所有する場合、同一人物として扱われる。
(なんなの…これ?)
勝平は呆然としていた。
杏が『三千世界』を投げる。
椋が『三千世界』を投げる。
二冊の『三千世界』空中で衝突し、直後に表紙のアメジストとタンザナイトが輝く。
二冊の『三千世界』は消滅し、なぜか杏と椋が握り締めている。
杏が『三千世界』を投げる。
椋が『三千世界』を投げる。
二冊の『三千世界』空中で衝突し――
この繰り返しを勝平は何度も見てきた。
勝平が来たときには、すでに投げ合いは行われていた。
モーションからタイミングまで、一挙一動が全く同じ。
壁を破壊できそうな威力だが、どちらにも当たることは無い。
今すぐに止めなくても、どちらかが死ぬことはないのだ。
(だけど、止められるのはボクしかいない)
意を決して、『アポロンの銀弓』を構える。
二人に当てないように、慎重に。
【−三千世界の手引き−】
B所有者が望む時、本書は常に所有者の手の中にある。
MIO本部の一室
017 坂上智代(負傷) 所持品:なし
008 一之瀬ことみ 所持品:?
MIO本部の廊下
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、『バーサーカー・レクイエム』
007 柊勝平(重傷) 所持品:『アポロンの銀弓』、44マグナム
初めて書かせてもらったのですが
いや、ほんと書きたいように書かせてもらいました。
SSとか書いたこと無いので、批判があればちゃんと受け止めたいです。
三千世界の表紙だけど、アメジストかタンザナイトかはっきりしてほしい。
よく読んだら上下巻だった、スマソOTL
>>399 それは狙って書いたので、問題ないです。
ただ、上下巻に分けても良かったのかどうかが個人的な問題です。
いろいろとぐぐって問題ないか確かめたかったのですが
結局、よくわかりませんでした。
辞書で調べても、三千大千世界に誘導されて
それも仏教用語で、本に関してはどこにも…
何だかよくわかんないけど感想。
SS初挑戦だとは思えん、結構テクニカルな展開な。なかなかすごい。
読ませる文章だと思う。期待の人材なので、これからもがんがってください。
個人的にちょっとだけ気になるのは藤林姉妹の三千世界の投げ合いで、
杏と椋が互角の千日手を繰り広げてるってくだり。
辞書を投げて椋が杏に匹敵する腕ってのは違和感。椋に辞書投擲の特技はないはずだと。
>上下巻に分けても良かったのかどうかが個人的な問題です。
問題ないと思います。
むしろそれぐらいの設定をこさえられる人のほうがこのスレに向くと思います。
お、おいおい!本当に初めてかよっ!?
てくらい面白いです
とても丁寧に書いてくださったのが伝わってきます
これからも是非、書いてください!
椋の投擲能力に関しては、『バーサーカーレクイエム』が秘めた身体能力を引き出している、とか、いろいろ解釈できると思います
>>402 少なくともその理屈じゃ通りが悪い。
杏が日頃の鍛錬と経験に裏打ちされた辞書投げ+バーサーカーによる増強なのに対して、
椋はまったくのゼロにバーサーカーがくっついてるただけだろう。
これで杏と椋が辞書投げにおいて五分ってのは不自然。もっと別の理屈が必要
てか本当に杏と木京が互角かはまだ分からんのでは?
次の話で、木京がスタミナ切れを起こすとか、実力以上の力を出した代償がでるとかあるかもしらん
ま、後継に一任ですな
なんか好評みたい…。ありがとうございます!
>結構テクニカルな展開な。
描写の甘さを誤魔化すのにとっても便利!
よく読むと、智代と勝平が負傷で苦しむ描写が無かったり…
まあ、今後もこういうスタイルで書いていくと思います。
といっても、リアルでちょい忙しいので、少し間を空けますが。
>辞書を投げて椋が杏に匹敵する腕ってのは違和感。
実は、77話はもっと長くなる予定でした。
が、力尽きた&勝平の存在を忘れていた為に今の長さに。
本当はその辺も少し考えていたのですが…ま、後続に一任。
元々は「杏が占い(補佐)で椋が投擲(攻撃)だと面白いなぁ」
と思って書き始んですけどね。
…と、
>>401だけへのレスみたいになってしまった。
ところで、皆さんは77話くらいの文章量だと、どのくらい時間がかかりますか?
俺は初めて書いたので、六時間くらいかかってしまった…。
406 :
405:2005/06/13(月) 18:02:11 ID:V/9sHFXI0
微妙に脱字が…
初心に帰って
お、おいおい!
>6時間
そのSSに対する真摯な態度が伝わったからからこそ、好評を博したのではないでしょうか?
今の自分にとってのベストを尽くしたならば、例え文章は荒削りでも、認めてもらえるんだと思います
文章力の無い私でも、そう信じているから何とか悲観せずに頑張れています
かかる時間は話の内容によってばらばらです。まとまらない時は何時間やってもまとまりません、私はw
あと初めての方なので一応釘を指しておきますが、「おいおい!」「意味わかんねぇよ!」「何だか良くわからねぇよっ!」等のレスがついても、
絶対にへこまないで下さい!一種の挨拶といいますか、「初心を忘れるな」という戒めといいますか…直に分かりますw
何でこんな偉そうに話してるのか自分で意味わかんねぇけど、行くよっ!
意味わかんねぇよ!
>>408 六時間と言っても、前のストーリーとの照らし合わせとか
ぐぐったりとかでかなりの時間とられてますけどね。
まあ、慣れてくればもっと早くなると思います。
休日で暇だったから、そんなに時間割けたわけだし。
あと、過去ログは読んだので、意味わかんねぇよ!
>第77話の人
うれしいのは解るけど、そのへんにしとけな。
リレー小説のスレにとって、作者どうしの雑談ってのは致命的にうざい。
書き手なら純粋に作品で勝負するもんしょや?
次作に期待してるからがんばってな。
お、おいおい……。
まあその、書き手読み手がつらつら語れないのがここまで続いてる要因のひとつかもしれなくて、
なんだかよくわからないけど、行くよっ!
お、おいおい
何だかよく分からないけど、行くよっ!
体中が痛かった。
右腕の今にも裂けそうな痛み。
肝臓や腎臓がなんども繰り返す、腹を棒でつかれるような痛み。
終わることのない頭の痛み。
痛みってこんなに嫌なものだったのか。
「また倒れたの?・・・大丈夫?」
貴文を殴ったのはいつだったか・・・あのときもそうだったのか。
はは・・・こんな苦しかったんだ・・・だからあんなにおびえて・・・
「血糖値低下・・・心拍数低下・・・もうだめかも?かもかも?」
たった一度でいい。たった一度だけもう一度・・・私は謝りたい
「あのときに・・・戻って・・・」
カボチャを切り終えると、鍋にそれを放り込む。
水とコンソメを入れる。
後は30分くらいことこと煮込めば大丈夫。
「おかしいな。ねえちゃんの言うとおりに作ったはずなのに、全然おいしそうじゃない」
「味付けというものを知らないのか・・・?」
智代は立ち上がると、鍋の隣に置いてあった塩を手に取った。
「必要なのは塩とコショウとシナモンだ」
目を丸くしていた。
「辛くならない?」
「ならない。ポタージュが甘いのはカボチャに含まれている甘みなんだ」
味見をした。
「本当だ。おいしい」
「うちの弟は料理下手だったからな。親のいない夕食のために、自然と私が料理をうまくならざるおえなかった」
頭を下げる。
「ありがとうございます・・・えっとお名前は」
「坂上だ」
「え、そうなんですか?ボクと同じ名字だ」
「坂上なんて珍しい名字だと思っていたが・・・智代だ」
「智代さん・・・いい名前ですね」
車いすの男の子は、感慨深そうに頷いた。
「いい名前か・・・」
智代は生まれたばかりの頃の両親が、自分に名前をつける光景を思い浮かべていた。
「ふ・・・それにしても、夕食にしてはカボチャ半分というのは量が多すぎるんじゃないか?」
「そういえば、多すぎますね。どうしてこんなに一杯作っちゃったんだろ」
まあ私の夕食ならちょうど良いくらいだが、と智代は思った。
車いすの男の子は智代と目線を交差させた。
「こんなに食べられませんか?」
「なんだって?」
智代は初めて知った。これが自分のために作られているものだということを。
「これは私の食事なのか?」
「はい」
「そうか・・・とりあえずありがとう。あ・・こんな言い方じゃまずい。うんとその、」
智代は手を握られた。
なんだかあったかかった。
「お礼は食べた時にということで。失敗するかもしれませんから」
智代は顔を赤く染めた。
「ありがと」
四苦八苦して作ったポタージュスープは、意外においしかった。
「あれ?」
智代は自分の服装を見た。
朝からずっと制服を着ていたはずなのに、今は黒のセーターに長ズボンを着ていた。
男の子は裁縫道具を取り出していた。そして縫っているんだ。私の制服を。
ぼろぼろだったからなぁ。納得。
じゃ、ないだろ。
「うわ!」
「親切にもほどがあるんだ!」
ばっと、制服を奪い取ると、壁の隅に向かってそれを抱きしめて、体育座りをした。
だめだ・・・まだ結婚できない年齢なのに。
「もうだめだ・・・私は・・・男に体を見られるなんて。」
「あのー・・・着替えさせたのはことみ先輩ですよ」
「本当か?」
「はい」
智代は頭を抱え込んだ。
ちょっとまて、それじゃ私が馬鹿みたいじゃないか・・・
「それにしても元気いっぱいですね。さっきまでずっとぐったりしていたのに」
「え・・・そうだったか?」
「はい。なんだか死にそうだったってことみ先輩が言っていました。」
「そうだな。なんだかお前といるとすごく楽しい。だから体の調子も良いのかもしれない」
「ボクもです。なんでしょうか。こういうのを波長が合うっていうのか」
男の子は車いすの車輪を回して智代に背を向けた。
「もう大丈夫ですね。名残惜しいですが、仕事があるので。失礼します」
智代は目を伏せた。
「あ、そうだ。名前を聞いていなかったな・・・名前は?」
そのとき、男の子は車輪を回すのを止めた。
後ろを向いたまま、じっと何かを考えているかのように立ち止まっていた。
ただ名前を聞いただけなのに、自分の心臓の鼓動が早まっていったのを智代は感じた。
そして、彼の口が動き出した時、鼓動の速さはピークに達した。
「ボクの名前は・・・鷹文です」
「な・・・!?」
智代の封印された記憶が蘇った。そう、目の前にいるのは鷹文、私の弟、坂上鷹文・・・
そのとき、竜巻のような風が、鋼鉄でしきられたじめじめとして冷たい部屋の中を駆け抜けた。空っぽの室内に、さっきまでカボチャを煮ていた簡易キッチンだけが音を立てて崩れ出す。
そして、風は消えた。
「あれ・・・?私は一体。」
もうそこには車いすの少年はいなかった。代わりにまるで疲れ切ったような3,40歳くらいの男性が立っていた。
「まだコレクションが余ってたんだね・・・全部集めなきゃだめだね」
部屋は暗い。だが、リントホルストの壺の奥底にいれられた智代と鷹文の記憶。
太陽の光さえも吸い込む黒空間のなかよりはまだましなのかもしれない。
「さっきの少年。良いやつだった・・・」
「ああ、良い”友達”だったね」
「ありがとう・・・と伝えておいてくれ」
「ああ、わかった」
「そして、ごめんなさいも・・・ん、何言ってるんだ。わたしは」
「ああ、伝えておくよ・・・」
智代は残っていたカボチャをスプーンですくうと飲み込んだ。
皿にはカボチャの残りかすだけが残っていた。
おいおい!俺だけかもしれないが、内容が把握できない…
誰か解説きぼんぬ
お、おいおい!
リレーでこんな文書かれても、意味わかんねえよ!
017 坂上智代(負傷) 所持品:なし
欠番 岡崎直幸 所持品:『リントホルストの壺』
欠番 坂上鷹文 所持品:不明
意味がわからない・・・?
はぁ、、智代と鷹文が同じ組織の中にいるのに顔を合わせないのはおかしいと
思ったので、直幸がリントホルストの壺で記憶を吸収したんだと、考えたんですが。
そんなわかりにくい話かなぁ。
もう少し読み手の視点に立って書いたほうがいいかな?
あなたに限ったことじゃなく、書き手の意図は案外伝わりにくいものだから
俺は次の点がわかりにくいと感じた
・
>>416で何故智代が重症なのか(三千世界でここまでダメージは受けていないのでは?)
・
>>416だけ一人称で書かれているけど、状況説明が少なくて何が何だか分からない
・
>>417以降は場面転換が起こっているようだけど、時系列が分かりにくい。何故いきなり料理してるのか分からなかった
・最後に直幸が出てきて、記憶を封印したようだけど、その辺りの描写が抽象的過ぎて分かりにくかった
あとこれは俺の主観だけど、智代と鷹文は互いに嘘の情報を与えられ、会うことのないように操作されていたんじゃないか?(
>>96参照)
記憶を失うのもいいんだけど、弟を守るために仲間を殺す、っていう智代の葛藤や行動理念が無くなってしまう様な…?
厳しいことを言ったけど、鷹文と一緒に料理をして、記憶を取り戻していく辺りの流れはかなり好き。
だからこそ、惜しいと思った。もう少し分かりやすければなぁ、と。
長文スマソ
な、なんだかよくわかったようなわからないようなだけど、いくよっ!
>智代と鷹文は互いに嘘の情報を与えられ、会うことのないように操作されていた
俺漏れもずっとそう思ってた
話自体は分かりにくくなかったけど大体
>>425に同意だ
精進します。次の方どうぞ。
百人春原と同じ人?
とりあえず、自分が出そうとするキャラが登場した最新3話くらいを
まとめサイトで読み返してから書くのがよろしいかと。
つか52話で、乾の居場所を間違えたのもこの人だね
これでミス3回目か。流石に、前の人の話をちゃんと読んでるのか疑問に思う
繋げると矛盾が出るような話でも繋げなければいけないのかな…
あのときはミスしたけど、今回は別にミスはしていないが・・・
このスレは基本的に続き書く人に任されるしなぁ
その人が修正できないなら飛ばされても仕方ないかも
さらにどっちの続きを選ぶのもその人次第な気が
>>432 ミスは語弊があったスマソ
ただ、全体的に前の話との繋ぎ目の粗さみたいなのが気になったんで…
まあ、次からは
>>430の言うことを参考にしてみて
76話によると2日目朝の時点で直幸は幸村に同行してるはずだが、
78話の直幸はそれよりは過去なのか? 未来なのか?
「椋っ、殺してやる!!」「お姉ちゃん、死んでくださいっ!!」
杏の放つ『三千世界』。椋の放つ『三千世界』。
それぞれの敵に向かう二巻は空中で衝突するや、また主の手へと回帰する。
辞書と辞書の果てしなき往還。それはまさに、千日戦争。
「椋っ、殺してやる!!」「お姉ちゃん、死んでくださいっ!!」
寄せては返す波にも似た、永劫とも思えるその繰り返し。
だが幾十度目かのループにして――飛び込む小さな影が、あった。
それは一本の矢だった。狙いは寸分過たない。
二冊の辞典が空中で重なる、その極微の一瞬を――
(そこだっ!)
射抜く!
黒檀の幹に太い釘を打ち込むような力強い音とともに、一本の矢が無限を打ち破った。
異変に、杏と椋がばっと振り向く。
横からの矢は『三千世界』の上下巻を射抜き、壁にびしりとはりつけにしていた。
火傷の癒えきらぬ、重い体を引きずった勝平少年。
だが、心の中で快哉を叫んだ。
その手には『アポロンの銀弓』が、精密射撃用の器械式強弩形態(クロスボウ・モード)として在る。
(これで、二人が争いあわないですむ…!)
杏と椋が直ちに思念を籠める。「所有者が望む時、本書は常に所有者の手の中にある」――
『三千世界』のアメジストとタンザナイトが妖しく光る。転送能力の行使のために。だが、
「どういうこと!?」「どういうこと!?」
二つの驚きが唱和する。
『三千世界』を釘付けにしている矢もまた、共鳴するように光り輝いた。
それは宝石の輝きを包み込み、ただちに打ち消してしまう。
『アポロンの銀弓』もまた、勝平の意思が衝き動かす『光』――
『三千世界』の転送能力といえど、強い意思なくして、打ち付ける『光』の矢には抗い得ないのだ。
柱の陰から、勝平が小走りに飛び出した。
思わぬ闖入者に、ぎろりと警戒の視線を向ける杏と椋。
悲痛な面持ちで、勝平が声を限りに叫ぶ。
「椋さんっ! 杏さんもっ! 争いあうのはやめてっ!
ボクを救うために力を尽くしてくれた、あの日のキミにっ……」
ごぼっ。
(っ!?)
声は途中で遮られた。
勝平の喉に流れ込む、鉄錆の味の液体によって。
(あれ……? なに、これは……?)
無我夢中で勝平は気づかなかったのだ。
自分の胴体の正中線上。
まるで太い矢が貫いたような、大穴が穿たれていることに。
――それは『三千世界』の能力だった。
『アポロンの銀弓』の持つ威力が、等しく勝平へと跳ね返っていた。
その足取りは力を失い、勝平はよろよろと地に倒れ伏す。
そして勝平の声は――二人の狂戦士(バーサーカー)には届いていなかった。
「邪魔立てするなら殺すっ!!」「邪魔立てするなら殺します!!」
姉妹が同時に宣言する。
その形相は、あくまで憤怒。
(まずいっ……!)
勝平が思うや、姉妹は彼に狙いを定めた。
やっとの思いで勝平が身を起こすと同時。
杏の手から小ぶりの辞典が飛び立った。
懐に忍ばせた、三省堂のデイリーコンサイス英和辞典、和英辞典、英和・和英辞典――
勝平への最短距離を、ロケットのように直進する。
勝平の手にした『アポロンの銀弓』が閃光を放つ。
堅牢な強弩から、しなやかな短弓の姿――速射用の弓形態(ボウ・モード)へと、瞬時に変転する。
寸秒をおかず、つがえた矢。
飛来する辞書に連ねて放ち、空中で射落とした。だが……
(……足がっ!?)
ふんばった足が、床に流れた自分の血に滑る。
もんどりうって倒れる。横っ面をしたたかに打つ。その視線の先の少女――
「死んでください。」
藤林椋は、銃を持っていた(第61話参照)。
ルガーのスーパーレッドホーク。
大ぶりの無骨な回転式拳銃が、その手には不似合いだった。
「椋さん! ボクは――」
言葉が口から出る暇などない。
爆発するような銃声。9インチのバレルから叩き出される、6発の454カスール弾。
着弾する。
脳天から胴体にかけて、勝平の体の六箇所が、致命的に砕けた。
……勝平の意識と同時に、『三千世界』の上下巻を壁に張り付けていた矢も、煙のように消えてしまった。
そしてすべては、振り出しに戻った。
***
声が聞こえる。
「……やる……」「……さいっ……」
よく知ってる声。
「……殺してやる!!」「……死んでくださいっ!!」
ボクの、守るべき人の声が。
「椋っ、殺してやる!!」「お姉ちゃん、死んでくださいっ!!」
ああ……意識が、いやに明瞭だ。
ボクはどうしたのだろう?
愛する人を守れなかったこと、それをよく覚えている。
銃弾に砕かれたはずのボクの体は、確かにここにある。
再生したのだ。れいの癌細胞によって。癌細胞によって? あの火炎で、癌細胞は失われたはずなのに?
……そう、最初の矢傷だ。
跳ね返された矢傷。『アポロンの銀弓』の能力によって、あれがボクに癌細胞を植え付けたのか。
でも、意識ははっきりしている。
ボクが何者なのか。ボクは何をすべきなのか。すべてわかってる。もう、忘れてなんかない。
人を愛する強い意思。ああ、それが、ボクを保たせてくれているんだ。
ボクは立ち上がる。この、癌に冒された、二本の脚で。
そしてボクは、辞書を投げ合う二人の少女に相対した――
――もういちど、やりなおすために。
***
「まだ消えていないの……生命反応も、『光』の反応も。予想以上に丈夫な人なの。
面白いデータがとれるの……とってもとっても興味深い実験体なの、勝平君は」
別室。
モニター画面には、勝平たちの一部始終が表示されている。
コンソールパネルを手際よく操作しながら、満足げに一之瀬は述懐した。
「幾度もの致命傷から勝平君を蘇生させた癌細胞――彼の肉体にかかった負荷は尋常ではないの。
ましてや高温で失われた癌細胞をむりやり引き出した今、彼はもう長くはないはずなの」
邪悪な科学的好奇心に、一之瀬は唇の端をにやりとゆがめる。
「それで力尽きて肉塊と化すのが先か、杏ちゃんと椋ちゃんに殺されるのが先か……」
――せいぜい殺しあうがいいの。役立つものを残してさえくれれば。
MIO本部の一室
008 一之瀬ことみ 所持品:?
(??? 017 坂上智代(負傷) 所持品:なし)
MIO本部の廊下
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、『バーサーカー・レクイエム』、ルガースーパーレッドホーク9in
007 柊勝平(癌細胞で一時的に復活?) 所持品:『アポロンの銀弓』、44マグナム
お、おいおい。意味わかんねえよ!
>>433 せっかく今までNGとかアナザーとか無しでやってきたんだから、
どうせならそれを貫いてほしい。
ここで妥協したらタガがゆるんで、あれもNGこれもNGとか乱発されそうな気がする。
【一日目夜】
雑木林にて、古河一家が紳士と交戦、古河一家が撤退(44話、48話)
雑木林にて、紳士が一之瀬と交戦。紳士は敗北、拘束される。鷹文(智代に関する記憶あり)が通信機で話す(55話、57話)
本屋にて、勝平が椋を拉致。このとき有紀寧の肉体は存在(43話)
本屋から杏が出発。おそらく、約一時間後に朋也も出発(47話)
MIO本部にて、一之瀬と幸村が椋にバーサーカー・レクイエムを装備。このとき有紀寧の肉体は存在(61話)
桜並木の坂道周辺にて、美佐枝グループが智代と交戦。智代が撤退(45話、46話、49話、58話、59話、60話)
MIO本部にて、重傷の智代が気絶(78話)
【二日目未明】
古河一家が雑木林から一ノ瀬邸へと到着。仁科が秋生を救護(51話)
一ノ瀬邸周辺にて、古河一家が乾と交戦。渚が離脱(52話、53話、54話)
MIO本部にて、重傷の智代を鷹文が看護(このとき両者とも互いの記憶なし)(78話)
MIO本部にて、記憶を取り戻しかけた智代から直幸が記憶を奪う(78話)
朋也が渚の声を聞くやいなや、直幸が朋也をMIO本部へ拉致。このとき一之瀬はMIO本部に(56話)
渚が美佐枝グループに合流、保育園や商店街周辺を探索。勝平登場(63話、64話)
美佐枝グループが勝平と交戦。このとき有紀寧の肉体は焼失。春原と勝平が朋也によりMIO本部へ回収される(64話、65話、66話、67話、68話)
杏、MIO本部に到着。智代(鷹文にわずかに言及あり)と交戦。このとき、幸村と一之瀬はMIO本部に(69話、70話)
【二日目朝】
MIO本部、勝平が目覚める。このとき椋は「藤林杏の迎撃に行ってる」と朋也談(75話)
杏と椋が交戦。勝平が乱入(77話、79話)
未来仁科と芽衣がファミレスから出発。おそらく、まもなく芽衣がはぐれ、直幸に捕獲される(73話、76話)
「朝の散歩」に来ていた幸村および直幸がファミレスに到着、土方と交戦(73話、76話)
一ノ瀬邸にて、未来仁科が古河一家に合流。乾を撃破(71話、72話)
〜解説〜
・78話は、77話からの直接の連続ではなく、60話と69話のミッシングリンクをつなぐ話と仮定すれば、かなりうまく解釈できる。
・78話の智代の重傷は三千世界のダメージではなく、美佐枝グループとの過密な戦闘によるものと仮定。
・その直後の智代の気絶中に、智代・鷹文の両者ともに、直幸に記憶を奪われた。
・69話で智代が幸村のそばにいたのは、智代が鷹文の看病によって回復し、さらに直幸に記憶を奪われたあと。
・69話の智代の台詞「こうしないと鷹文に…」は、直幸に奪われた記憶の断片が無意識に出たもの。その後言及がないのは、本人も自分の発言の意味がわかっていなかったから。
・素案たたき台なので、矛盾があればお好きなように修正してください。
お、おいおい!何だか良く分からなかったけど、意味分かったよっ!これはいいね!
>>443 流れが分かりやすくなった。
GJだよっ!
しまった!矛盾発見……。
第69話開始時点で智代が鷹文の記憶を失っているとすると、69話1/3での幸村と智代の会話:
>「どうした、弟に会いたくはないのかの、ふむ、そうじゃの藤林杏を倒したら一度会わせてやろう」
>幸村と言葉に一瞬、身をこう着させる智代。
>「その言葉に偽りはないな」
の説明がつきませんな。どうすればいいんだ。
定期的にまとめ人が降臨するのが良いよな、このスレ。
>>447 ドンマイ、そしてGJ!!
矛盾ですが、なんか解決策思いつきそうです。もし間に合えば書いてみます
意味わかんねえよっ!
カタカタと忙しくコンソールをいじるばかりのことみ。
部屋に設置されたいくつもの画面がくるくると明滅を繰り返している。
その後ろで、智代はただ無為に椅子に座っていた。何をさせられるでもなく。
智代はうつむきながら、懸命に考えている。
(鷹文…たかふみ…タカフミ…)
眉間にしわを寄せて、何かを思い出す。
(何者なんだ…鷹文って…)
頭の中がぐるぐると回る。
でも、決して結論にはたどり着かない。
奇妙だった。
思考の道筋の途中に、ぽっかりと落とし穴が掘られているように。
智代は思わず、間の抜けた質問をことみに投げかける。
「私は…なぜ戦っているんだ?」
「あなたの葛藤や行動理念なんて、私の知ったことじゃないの」
ことみは振り向きもせずに、にべなく応えた。
智代は一人で先を続ける。
「私は覚えてる。お前たちからの使命を果たしたときの報酬の約束が、『オトウト』に会うことだったんだ、確か」
「……」
「だが、『オトウト』とは何だ? どこの言葉だ? 何か、重要な意味があったと思うんだが…」
「……」
ことみはただ黙っていたが、智代はさらに続ける。
「ひょっとして、私を介抱してくれた、鷹文という男と何か関係があるのか?」
智代は考える。
杏に負けたとき、自分は確かに、「これで鷹文との再開は断たれた」と思った。
…なぜだろう?
私が負けるたからといって、あぜあの男に…鷹文に会えないことになる?
記憶がひどく混濁している。
私はいったい、何をしてる?
長い、長い思考。時間だけが過ぎた。
ふいに智代は、ある結論に至る。
「ひょっとして…あの鷹文という男が、『オトウト』なのか?」
そう言った瞬間、智代の目にわずかながら生気の光が戻った。
「タカフミが…オトウト…タカフミが…」
自分の言葉を噛みしめるように、口の中で繰りかえす。
…同時に、ことみは振り返り、席を立ちあがった。
やおら、ことみは智代の座る所へと歩いてくる。
智代は言った。
「…ことみさん! すまない、記憶が混濁して…。私は、思い出しそうなんだ、私は、ああ、なのに…!」
「智代ちゃん。あなたは治ってきているの。ほんとうに、ほんとうに、おめでとうなの」
慈しむように、ことみは智代の両腕をぎゅっと抱きすくめる。
「ことみさん…」
智代が驚くと、ことみは優しくぽん、と智代の肩をたたいた。
「だからね……あなたはもう、要らないの」
ことみが言う。
突然、肩口から腹にかけて、智代の体が裂けた。
「なにっ!?」
どくどくと血を流して、智代が椅子からずり落ちた。
立ち上がって、戦闘の構えをとる。だが自分の体なのに、ひどく頼りない気がした。
「なにをするっ…!!」
「超弦理論を応用した空間の断裂を形成したの。26次元カラビ‐ヤウ多様体の量子重力による、とってもとっても高度な…」
「そんなことは訊いてないっ!!」
「…そう…。では、教えてあげるの。私たちの基本理念を」
ことみはふっと笑う。
とても、とても冷たい目をして。
「私たちに必要なのは、『駒』として役に立つ人間。それだけなの」
「あなたは幸村先生の取引に応じ、『光』を回収された…その時点で、本来ならあなたはもう用済みのはずなの。
にもかかわらず、あなたを殺さなかった理由はただひとつ…。
見定めるためなの、あなたの存在価値を。私たちの戦闘要員として、あなたが役立つかどうかを」
「なんだと…!?」
「弟に会えるという動機は、あなたが動きやすいようにちらつかせてあげただけなの。馬の鼻先に下げたニンジンのようにね。
…結果は落第点だったの。あなたの戦果は、徳田なんていうゴミクズだけ。
相楽美佐枝、春原陽平、伊吹風子。重要なターゲットはすべて、みすみす逃してしまうなんて…」
…まったく使えない刺客なの。
見下げ果てたといった風情で、ことみは智代をにらみつけた。
「私は…お前たちの手のひらで踊らされていただけだというのか…!」
「もっとも、弟に関連した心理的葛藤が足かせになって全力を出せないのでは、とも考えてみたの。
そのあたりの記憶を消してもらって、再度杏ちゃんで検証してみたのだけど…結果はさっきのとおりなの。
…私は大いに失望したの。度重なる失敗を許すほど、私たちMIOは寛容ではないの。
『光』も持たず、私たちに勝利ももたらさない…そんな者を生かしておく理由は、この広い宇宙のどこにもないの」
智代は怒りに言葉も出なかった。
それを尻目に、ことみはくるりと後ろを向き、コンソールの操作卓に座ってしまう。
「待て! 私と戦うんだ。お前だけは全身の骨を砕いて殺してやるっ!」
「あいにく私はデータ取りで忙しいの。あなたの処刑の続きは、“あの子”がやってくれるの」
そのとき、ガアッと扉が開く。
そこには、まるで鏡に映したように、坂上智代とまったく同じ姿かたちをした少女が立っていた。
「な、なんだ、こいつはっ!?」
「名づけて、ドッペル智代。智代ちゃんを模して作られたサイバネティックオーガニズムなの」
「…智代ちゃんも、ひとつだけ役に立ってくれたの。
このドッペル智代ちゃんは、直幸さんの吸収した記憶をディジタイズして作った人格を持ち、
さらにこれまでの戦いで収集された実戦データをもとにして、あなたに匹敵する格闘能力を実装した作品なの。
もっとも、あなたと違って心理的葛藤がない分、あなたよりは勝るけれど」
ことみが高らかに機能を説明する。
智代は驚愕していた。
「私が、坂上智代だ。どうだ、女の子らしいだろう」
「なにをバカなことを…坂上智代は私だ! 機械が私に成り代われると思うなっ!」
気色ばむ智代に、ことみがまじめな顔で疑念を投げかける。
「??? さあ…本当にそう言いきれるか、わからないの。
だってあなたには、坂上智代という人間としての一番重要な記憶情報が欠落しているのだから…。
その点この機械は、私たちの命令に従う人格を上書きされているだけで、記憶は坂上智代のそれを完全に備えている。
実際、望むならコマンドひとつで、本当に『坂上智代』として振舞うこともできるの…。
さて、どちらがより『坂上智代』に近いのか…とってもとっても哲学的な議論を要する問題なの」
「屁理屈を言うなっ! ならこいつを叩き壊して、私が私であることを証明してやる!」
流れる血をぬぐおうともせず、躍りかかる智代。
「ふふ、面白い…。ことみさん、私がこいつを殺したら、私がオリジナルを名乗っていいよな?」
「あず・ゆー・らいく、なの」
MIO本部の一室
008 一之瀬ことみ 所持品:?
017 坂上智代(負傷) 所持品:なし
021 ドッペル智代 所持品:?
第69話と、よく見たら第77話にも智代が鷹文を覚えているような一文があるので、
それと
>>443-444の辻褄を合わせるようにしました。
お、おいおいっ!
意味分かんねえよっ!
なんか銃夢っぽいな
ドッペル智代は架空の存在だったような
現実には技術力の問題で、この一体しか存在してないことにした方がいいかも試練
あと、これが過去の話なら、時系列を説明しておいたほうがいいんじゃないか?
何はともあれ乙なのな
>>457 時系列については、第80話は第77話・第79話の直後に続く話で、
杏・椋・勝平戦を別室モニターで見ていることみと、その傍らにいる智代を意図してます。
>>443-444でいうなら【二日目朝】の時点になります。
技術力の問題ですが、そもそもMIO本部の病院が未来からタイムスリップして来てますし
じっさい巨大集積回路みたいな超テクノロジーも実在するようですので、
サイボーグの一体くらい出てきてもまぁ問題あるまいと考えた次第です。
(架空世界みたいに集団でジャンジャカ出ていいかどうかは微妙ですが。)
俺が技術力って言ったのは、ドッペルが軍団化すると収拾がつかなくなりそうだから、
技術力のせいにして、現実では一体に限定してはどうか、という意味ね
それと提案だけど、過去の話を書いた作者は自分でどの話とどの話の間を書いたか指摘してほしいな
何だかよく分かんないけど、行くよっ!
「選ぶことじゃな。その小娘とわしを交換するか。哀れな小娘を犠牲に、晴れてわしを撃ち殺すか」
幸村の勝ち誇った声が店内に響く。
土方は黙りこくったまま、ちらりと視線を直幸に向けた。
壺の口の中に横たわるのは、紛れもなく春原芽衣の姿。
観念したように、ふっと息をつく。
「…本当にその少女を解放するんだな?」
その言葉を聞いて、幸村の唇の端がにたりと釣りあがった。
「もちろんじゃて…そんな小娘の一匹や二匹、わしが手を下すまでもない…
放っておけばいずれ野たれ死ぬじゃろうからの…」
「だったら…」
土方が言葉を続ける。
「先に彼女を壺から出せ。それを見届けたら、銃を降ろそう」
「ふむ…よかろう。直幸君…」
幸村が直幸に合図を送る。
「やれやれ…もったいないな…」
直幸が愚痴を零しながら壺を逆さにひっくり返す。
すると拡大した壺の口から芽衣の体がずるりと零れ出た。
「う…」
うっすらと目を開ける芽衣。その瞳に、幸村と対峙する土方が写った。
背筋に電流が走ったかのようにはね起きる。
「ひ、ひじ―――!」
「初めまして、芽衣ちゃん…だったかな?お体のほうは大丈夫でしたか?」
しかし芽衣の言葉を土方が遮っていた。
必死に目配せを送る。
(私と君に面識があること、君がCLANメンバーだということを知られてはまずい…!ここは知らないふりを!)
芽衣も土方の意図を察したのか、はっと口を噤む。
「さて、まだ貰い忘れていたものがあったの…」
幸村がスラリと刀を構えなおす。
「お主の命じゃ」
刃を土方の首筋に当てた。
「やはりそうきたか…いいだろう。あの少女を解放すると約束するのなら、この土方の命くらいくれてやる」
土方が臆する様子もなく言い放つ。
「ひ、土方さんっ!?」
芽衣が絶叫する。
「いいじゃろう…小娘ひとり生かしておいた所で、何の支障もあるまいて…」
その言葉を聞いて、ゆっくりと土方が銃を持つ手を下ろす。
「最期に、言い残すことはないかの…?」
「ひとつだけ…彼女に」
土方が芽衣を振り返る。
「土方さん、どうして、私なんかのために…」
芽衣が目に涙をためて土方を見ていた。
「私たちは、共にこの町を愛する家族…」
土方が穏やかに口を開く。
「その家族を助けるのに、理由がいるのかい?」
そういって、会心の笑みを浮かべた。
「敵ながら天晴れじゃ、土方君」
幸村が刀を振りかぶる。
「敬意を表して、この『獅子王』の奥義をもって君を葬るとしよう…」
獅子王がうっすらと妖しい光を放つ。
「そんな!…いや…いや!」
駆け寄ろうとする芽衣を直幸が取り押さえた。
「芽衣ちゃん、幼い君に、辛い想いをさせてしまってすまない…」
芽衣に背中を向けたまま、土方が語りだす。
「だが、これが遺された者の務めなんだ。先に逝ってしまった者達の遺志を、想いを汲むことが!」
声を張り上げる。
「生きろ、芽衣ちゃん!」
その瞬間、幸村の刀が閃いた。
「一撃必殺の型…」
『死屍往生(ししおうじょう)』
***
「あ、見えてきました。あれです」
仁科がそういって彼方の看板を指で指す。
そこには、「Ernesto Host」と記されていた。
「やっと休めるのかよ…三人担ぐのも楽じゃねぇんだぞ」
秋生がそうぼやくが、仁科には聞こえていない様子だった。
「おかしい…」
そう呟く。
「あん?」
「看板の電飾が消えています。この時間はまだ点っているはずなんですが」
「それがどうしたんだよ…」
秋生が解せないといった顔で仁科を見る。
「考えられる理由は二つです。何らかの理由で店長が消したか…」
そこで一旦言葉を切る。
「戦闘で配電盤が損傷したか」
秋生が唖然とした顔で仁科を見る
「お前らの本部が、誰かに襲われたって言うのか?」
「可能性の話です。しかし、思い返せば私を送り出すときの店長の様子はおかしかった…」
(まさか店長は敵が迫っていることに気づいていたの…?)
仁科の心に焦りが生じる。
(わざわざ私たちを逃がしたということは、敵はかなりの強さということになる…幹部レベルか…下手をすれば…)
「ちっ…やるか」
秋生が早苗たちを道端に寝かせると、ゾリオンを取り出し、構えた。
「気をつけてください。相手も『光』を持っているかもしれません。もしかしたら複数いるかも…」
「どうすりゃいいんだ?」
「秋生さんの『ゾリオン』ですが、私の見立てでは、自身の精神的・肉体的苦痛を鮮明にイメージするほど、
相手に与えるダメージも増加する、というタイプのものだと思います。入念にイメージを練った状態で店内に突入してください。」
「なるほどな…まかせろ」
秋生がゾリオンを構えたままじっと目を閉じる。
(俺の苦痛か…)
留年の報告を受けたときの、渚の泣き顔を思い浮かべる。
ぶぅん、とゾリオンが光に包まれる。
「突入して、敵の姿を補足したら間髪いれずに撃ってください。私が止めを刺します。」
「待て、敵の容姿がわかんなきゃ狙いようがねぇだろっ!」
「敵は、恐らく…」
(店長がここまでの覚悟で臨む相手は、奴しかいない…)
「白髪の老人です」
「老人だぁ?かっ、楽勝だろ」
秋生が軽口を叩く。
「油断していると、死にますよ」
仁科が静かな瞳で秋生を射抜く。
「…ちっ」
その目で秋生も状況を察したらしい。
真剣な面持ちで、店内へと続くドアへ近づく。
「行くぞ、3、2、1」
合図と共にドアを蹴破り、店内に進入する。
(どこだ…白髪のジジイってのはっ!?)
銃を構えたまま、敵の姿を探す。
しかし、それらしき姿は見つけられなかった。
「いねぇな…思い過ごしだったんじゃねぇのか?」
傍らの仁科を振り返る。
「いえ…戦闘の痕跡が…まさか、既に―――」
言いかけて、仁科がはっと口を噤む。
「どうした?」
「シッ…静かに」
耳を澄ますと、誰かがしゃくりあげる様な音が、かすかに聞こえた。
「あっちですね…」
倒れたテーブル、散乱した椅子を踏み分け、客席の奥のスペースへ向かっていく。
そこに、横たわる男と、その男の胸に突っ伏して泣きじゃくる少女の姿があった。
「め、芽衣ちゃん…これは…!」
仁科が足を止める。
「!…にしなざん…」
芽衣が涙に濡れた顔を上げ、仁科を振り返った。
「わ、私のせいで…土方さんが…!」
言葉に詰まる。
「あん?そこで寝てるのがお前らのボスか?」
秋生がズカズカと近寄っていく。
「秋生さん、違うんです…寝てるんじゃないんです…」
仁科が青ざめた顔で語りかける。
「おい、起きろ。わざわざ来てやったんだから歓迎しろよ、てめぇ」
秋生が乱暴に土方を抱き起こす。
だらり、と、力なく土方の頭が垂れ下がった。
「お、おい…!まさか、こいつ…!?」
秋生がギクリとした顔で仁科を振り返る。
「はい…既に…死んでいます…」
「嘘だろ…目だった外傷なんてねぇぞ!?」
「左肩に、小さな刀傷が見えるでしょう。おそらくそれが、致命傷です」
「てめぇ、こんなかすり傷で人が死ぬわけねぇだろっ!」
「…幸村俊夫…あの男ならば…一撃必殺の獅子王を持つ彼ならば、可能なんです…」
仁科が、がくりと膝をつく。
「これが、私達の戦っている『敵』なんですよ…っ!」
大粒の涙がポロポロと零れ落ちた。
「もう、無理です…店長が亡くなった今、どうやって奴らと戦えば…。もうお仕舞いです…!」
堰を切ったかのように嗚咽を漏らす。
これまで気丈に振舞っていた彼女の緊張の糸が、ぷつりと切れたようだった。
「………」
秋生はそんな仁科を黙って眺めていたが、土方を静かに床に寝かせると、やおら立ち上がった。
「俺がいる」
ぽんと仁科の頭に手を載せる。
「早苗もいる。渚もいる。小僧もいる。ま、あいつは甲斐性なしだがなっ」
わしわしと仁科の頭をかき回す。
「…諦めんな、仁科。諦めたら、そこで人間はホントに終わっちまうんだよ」
正面から涙に濡れた仁科の目を見つめる。
「しかし…これ以上古河さん一家を危険に巻き込むわけには…」
「違う。俺たちは、同じ町に住む家族なんだ」
秋生の言葉に力が篭る。
「その家族が助け合うのに、理由なんかいるのかよ」
「…あ…」
その時、仁科は秋生の中に、土方の面影を見た気がした。
『いいかい、仁科くん。こんなときこそ、我々は団結して悪に立ち向かわなければいけないんだ』
『そう、家族のようにね。だから…我々の組織の名は、「CLAN(家族)」にしよう!』
『組織って言っても、二人だけじゃないですかっ店長!』
『ははは、いいじゃないか。家族だって最初は二人だ。そこから増やしていけばいい』
『楽しみだろう。CLANの名の下に、同じ志を抱いた「家族」が集うその時がね…』
「…見つけました…店長の言う『家族』を…」
仁科の目から涙が溢れた。
「秋生さん、お願いがあります」
涙を拭い、秋生に向き直る。
「あん?なんだ、改まって」
「CLANのリーダーを、継いでもらえませんか」
レストラン
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
欠番 ウェイトレス(仁科りえ) 所持品:店から持ってきた物資
013 古河早苗/気絶中 所持品:レインボーパンほか
018 仁科りえ/気絶中 所持品:多数の武器
欠番 乾/気絶中 所持品:レミントンM700、バーレットXM109、ほか装備一式(秋生に奪われる)
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
???
欠番 幸村俊夫 所持品:『獅子王』
欠番 岡崎直幸 所持品:『リントホルストの壺』
欠番 土方店長:死亡
468 :
'ヽ/ヽ:2005/06/20(月) 08:12:14 ID:LIZK4KXF0
おいおい!
意味分かんねぇよ!
なんだかわかんないけど
行くよっ!
472 :
前スレ535:2005/06/20(月) 18:00:59 ID:F7LvbyxL0
何だかよくわかんないけど、まとめサイト更新したよっ!
まとめサイト管理人さんにはホントに頭が上がりません。
ここに万感の意をこめて…
乙だよっ!
>>前スレ535氏
激しく乙だよっ!
あと軽く訂正しとくと、登場人物紹介の杏の最後の部分「杏を狙うバーサーカーとなる。」は『杏→椋』だと思うよっ。
475 :
前スレ535:2005/06/20(月) 19:54:51 ID:F7LvbyxL0
>>474 どうもすんません。
10分ほど前に直してしまいました。。。
476 :
オウガ風:2005/06/20(月) 22:12:04 ID:LA4/qZ67O
魔法熟女コウコ
「屍に蠢くかりそめの生命よ、
冥府の安らぎへと踵を返せ…イクソシズム!」
海星のフウコ
「うぅん、ヒトデ万博入場者数
300万人突破です…グラビテーション!」
「美佐枝さんっ。美佐枝さんっ」
目を覚ました渚の声が辺り一面に響く。
当の相楽美佐枝は目を固く閉じ、肩で荒い呼吸を繰り返している。
「まずいですっ、大ピンチですっ」
「慌てないで、ふうちゃん。今見てあげるから」
ふと、風子の背後からやさしい声が聞こえた。
「おねぇちゃんっ。それにユウスケさんっ」
「伊吹先生っ、芳野さんっ。美佐枝さんが…」
「…この症状は、勝平君の毒ね…大丈夫、私の『ゼウクシスの魔筆』の力で解毒剤を作れば」
そう言うと伊吹公子はさらさらっと空中に筆を走らせ、具現化する。
「これを飲ませて、ちょっと安静にすればすぐによくなるはずです」
そう言いつつ具現化された小瓶を渚へと差し出す。
受け取った解毒剤を美佐枝の口に流し込みながら渚は問う。
「それで伊吹先生と芳野さんは、どうしてここに来て下さったんですか」
「祐くんがね、相楽さんやふうちゃんが心配だっ、って言って…」
「さて、そろそろ話してもらおうか」
今まで口をつぐんでいた芳野祐介が静かに問う。
「その前に…ふうちゃん。その『レイジングヒトデ』の力で私たちをある場所へ転送してほしいの」
「わかったですっ、もう魔力が回復しているから風子ドンとこいですっ。
で、どこにいくですか?」
「この町に最近できた「Ernesto Host」というファミリーレストランへお願いできる?」
「んーっ。わかりました、皆さんその場から動かないでください」
風子は『レイジングヒトデ』を胸の前に掲げ魔力を集中する。
「ポイント8・1・6から10・5・7へ、転送…ヒトデテレポーテーション!」
皆が体に軽い浮遊感を覚えると同時に目の前が暗く暗転する。
「CLANのリーダーだぁ。まずそのCLANてのはなんなんだ?」
秋生は珍しく真剣な様子で聴く、おそらくその言葉がどれほどの重みを持っているか伝わったのだろう。
「CLANとはCivil Legion Against Destruction(破壊に抗う町民部隊)を略したもの
簡単に言えば、破壊結社《MIO》の対抗組織です」
「なるほど、なんで俺なんだ?普通にいくとあんたあたりじゃないのか?」
「いえ、今私はあなたの中に『家族』を見ました。あなたしかいません」
仁科の力強い様子に秋生は頷く。
「わかったよ、で具体的な活動内容は?」
「破壊結社《MIO》よりも先に『光』を持つものを保護すること、それと…くっ」
仁科の台詞がまだ終わらないうちから、辺りの空間に異変が見えた。
「おいおい、早くもお出ましか?」
秋生は『光弾銃ゾリオン』を構え身構えたが、聞こえてくるのはあまりにも気がぬける声。
「んーっ。風子ちょっとはりきりすぎましたっ」
「いたたた、何なのよ、もうっ」
「美佐枝さんが目を覚ましましたっ。良かったですっ」
「ふうちゃん、もうちょっと丁寧にね…」
「…………うっぷ」
秋生と仁科と芽衣は一瞬何がおきたかわからなかったが、すぐに理解した。
「渚ぁぁーーーっ」
480 :
忘れ物:2005/06/20(月) 22:28:42 ID:MFY3jRUA0
レストラン
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
欠番 ウェイトレス(仁科りえ) 所持品:店から持ってきた物資
013 古河早苗/気絶中 所持品:レインボーパンほか
018 仁科りえ/気絶中 所持品:多数の武器
欠番 乾/気絶中 所持品:レミントンM700、バーレットXM109、ほか装備一式(秋生に奪われる)
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ 『レイジングヒトデ』
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
014 古河渚 所持品:なし
005 伊吹公子 所持品:ゼウクシスの魔筆、智代の『光』
011 芳野祐介 所持品:所持品:ラブアンドスパナ含む工具一式
すみませんタイトルミスりました。あとまとめサイトの人めちゃめちゃ乙。
いよいよ揃い踏みって感じだね
公子は秋生たちの目の前で杉坂を消滅させた過去があるから、次の話書く人はそこら辺にもタッチして欲しいな
つか乾大ピンチじゃね?
>>乾
仮にも三幹部なのだから、ここで終わるはずはない!
…といってみる。
◆レストラン
005 伊吹公子 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、智代の『光』
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ、『レイジングヒトデ』
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:『ラブアンドスパナ』含む工具一式
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター、レミントンM700、バーレットXM109、ほか装備一式(乾から奪取)
013 古河早苗/気絶中 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:特になし
018 仁科りえ/気絶中 所持品:多数の武器
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
欠番 ウェイトレス(=未来の仁科りえ) 所持品:店から持ってきた物資
欠番 乾/気絶中 所持品:特になし
◆MIO本部の廊下
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、『バーサーカー・レクイエム』、ルガースーパーレッドホーク9in
007 柊勝平/癌細胞で一時的に復活? 所持品:『アポロンの銀弓』、44マグナム
◆MIO本部の一室
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器?
017 坂上智代/負傷 所持品:特になし
021 ドッペル智代 所持品:?
◆MIO本部・病室
001 岡崎朋也 所持品:?
004 春原陽平/重傷 所持品:特になし
◆MIO本部内(位置不詳)
欠番 紳士 所持品:?
欠番 坂上鷹文 所持品:?
欠番 一ノ瀬ことみ 所持品:なし
◆現在地不明
欠番 幸村俊夫 所持品:『獅子王』
欠番 岡崎直幸 所持品:『リントホルストの壺』
◆失踪
欠番 ジョニー 所持品:?
◆幻想世界
欠番 岡崎汐 所持品:?
欠番 ガラクタ 所持品:?
◆(戦闘不能)
010 小川一哉/死亡 勝平に銃撃される(第8話)
015 宮沢有紀寧/完全破壊 勝平戦の巻き添えで肉体が焼きつくされる(第65話)
016 徳田悠作/死亡 智代に蹴られる(第46話)
019 杉坂/消滅 公子の魔法により除霊される(第26話)
020 スメルライクティーンスピリッツ/死亡 杏の辞書投擲を喰らう(第37話)
欠番 土方店長/死亡 幸村の『獅子王』の能力を受ける(第80話)
486 :
光まとめ:2005/06/21(火) 12:09:57 ID:9O8arsi70
真の所有者 『光』 (現在の占有者)
1. 藤林杏 『三千世界・上巻』
藤林椋 『三千世界・下巻』
2. 一ノ瀬ことみ 未発現 (占有者不詳)
3. 坂上智代 未発現 (伊吹公子)
4. 伊吹風子 『レイジングヒトデ』
4'. 伊吹公子 『ゼウクシスの魔筆』
5. 宮沢有紀寧 『バーサーカー・レクイエム』 (藤林姉妹)
6. 春原兄妹 未発現
7. 相楽美佐枝 未発現
8. 古河秋生 『光弾銃ゾリオン』
9. 古河早苗 未発現
10. 幸村俊夫 『獅子王』
11. 芳野祐介 『ラブアンドスパナ』
12. 柊勝平 『アポロンの銀弓』
13. 岡崎直幸 『リントホルストの壺』
・全部で13個ある(『三千世界』は上下巻あわせて1個と数える)
・所有者は基本的に原作準拠
・ただし、原作では伊吹姉妹の『光』は2人で1個だが、
本作で風子と公子の光が分かれている理由は今のところ不明
・第57話で紳士の鞄から一之瀬が回収した熊のぬいぐるみも『光』の一種?
「勝負ありなの」
ことみが二人の智代に声をかける。
「口ほどにもないな…本当にこれが私のオリジナルか?」
ドッペル智代が嘲笑う。
その足元には血まみれの智代が這いつくばっていた。
「無理もないの。身体能力は完全に同じな上に、ドッペルには遠距離攻撃機能もあってスタミレ切れもない。
必然の結果と言えるの」
「脆いものだな…人間など」
そう吐き捨ててことみの方を見る。
「なに、ことみさんのことを言ったわけじゃない。あなたはむしろ『こっち側』の存在だからな…」
「……」
ことみはじっと伏したままの智代を見つめていた。
「さて、そろそろオリジナルに止めを刺してやるとするか」
ドッペルが智代の前に立つ。
「…ま…待て…」
その時、微かに智代の唇が動いた。
「ほう、まだ意識があったのか。腐っても私のオリジナルと言うだけのことはある」
「静かに」
ことみがドッペルの軽口を諌める。
「どうしたの、智代ちゃん。何か言いたいことがあるの?」
「も…もう一度…もう一度、チャンスを…」
息も絶え絶えといった風に、しかし一語一語はっきりと言葉を吐き出す。
「愚かだな。何度やっても同じと言う事が分からないのか」
ドッペルが爪先で智代の頭を小突いた。
「……」
智代がふらふらと頭を上げる。
血で赤く染まった顔面の中で、強い意志を秘めた目が爛々と輝いていた。
「こいつ…!生意気な!」
ドッペルが足を振りかぶる。
「待って!」
ことみが声を上げる。
「智代ちゃん、『今の』あなたではなんどやっても同じことなの。苦しい思いを繰り返すだけ。それでもチャンスが欲しいの?」
「ああ、欲しい…!」
覚束ない様子でゆっくりと体を起こす。
「何故…?」
ことみが問いかけた。
「気づいたんだ…死を目前にして…」
ふらふらと体を揺らしながら再び立ち上がる。
「ここで死んだら、終わってしまうと…!
何か…思い出せないが…私には守るべきものがあったはずなのに…
それを守ることも出来ずに、本当に、終わってしまうんだと…!」
体の底から声を絞り出す。
「私は絶対に負けられない!そう、気づいたんだ!」
悲痛な叫びが狭い部屋の中に木霊した。
「しつこいぞ…ことみさん、こいつを黙らせていいな?」
ドッペルが智代に歩み寄る。
「十五分、時間をあげるの」
ことみが口を開いていた。
「その時間で、全力で体を休めるの。その後、もう一度だけドッペルと戦うことを許可するの。」
「ことみさん!何度やっても同じだろう!」
ドッペルがことみに食って掛かる。
「そう思うなら、今度こそ完全に息の根を止めればいいの。これが最後のチャンスだから」
ことみはそう言って二人に背を向ける。
「恩に着る…!」
智代の礼を背に受けながら、その部屋を後にした。
(智代ちゃんは、未だその全力を引き出せていないの…人を攻撃することに対して、非情に徹しきれないでいる…
徳田くんのような外道に対しては容赦がないけれど、善良な人たちに対しては甘すぎるの…)
歩きながら思考を巡らせる。
(でも…ドッペルとの戦いの中で、そのリミッターを外すことが出来れば…非情に徹することが出来れば、その時は…)
そっと瞼を閉じる。
ゾクゾクとした感覚が背筋を走った。
(鬼が出るか、蛇が出るか…わたしを超えるかもしれない…)
自然とことみの顔に笑みが零れる。
「さて、あとはあっちなの」
足を近くの研究室に向けた。
ガアッと音を立てて自動ドアが開く。
「あっ、ことみさん!この人、なかなか手ごわいんですよー!ヘルプお願いしますー」
鷹文が明るい声を上げていた。
その手元のコンソールからは何本ものケーブルが延びていて、傍らに座る紳士の頭に繋がっていた。
「ふむ、一之瀬ことみ…いいところにきたの…」
しわがれた声が部屋の片隅から響いていた。
「幸村先生、もう散歩から帰っていたの」
「うむ…このMIOに潜む裏切り者が分かるかもしれんと思ったら心が急いての…」
「わ、私は…」
紳士が口を開く。
「お前らに魂を売ったりしない!絶対にだ!」
椅子に縛られたまま声を張り上げる。
「私たちは、あなたとお話しているわけじゃないの」
ことみがコンソールの元へ歩みを進める。
「あなたの『大脳』とお話をしてるの」
コンソールのキーをカチャカチャと叩く。
「ぐ、ぐわあああああああっ」
紳士が絶叫を上げる。
「ちょ、ことみさん!死んじゃいますよ!?」
「大丈夫、この人はそんなにやわじゃないの」
「や、やめろおおおおっ!!やめてくれえええええっ!!」
苦痛に体を身もだえさせる。
「脳の情報を直接書き換えられるのは苦しいでしょう?さあ、あなたの協力者の名前を吐くの」
「ぐ…っ…!そ、それは…できん…っ!!」
「どの道あなたの精神を支配すれば同じことなのに…何故意地をはるの?」
ことみの指がコンソールの上を走る。
「ぐわああああっ!あっ…」
がくっと紳士が頭を垂れる。
「書き換え完了なの。これでこの人は忠実な私達の仲間と化したの」
ことみが微笑む。
「さあ、協力者の名前を教えて欲しいの」
ぴくっと紳士の体が震える。
ゆらりと頭を上げると、うつろな目をことみに向けた。
「協力者は…伊吹…公子…」
ガタッ!
鷹文が思わず立ち上がっていた。
「な、なんだって…二帝の一人が裏切ったっていうのか!」
「裏切ったというより、最初からMIOの情報を集めるために潜伏していたんだと思うの…
ところどころ、おかしい節はあったの…」
ことみにはたいして動じる様子もなかった。
「くくく…伊吹公子、やってくれたわい…」
幸村が前かがみになって、可笑しそうに失笑を漏らす。
「このわしを騙しぬくとはの…坂上智代の光も、まんまとあいつに持っていかれたと言う訳か…くくく…」
ゆっくりと頭を上げる。
「殺す…」
幸村の目に危険な光が宿っていた。
「わしを謀った代償は大きい…奴は、必ずや地獄の苦痛の中で殺すとしよう…」
その余りの殺気に、鷹文が身震いした。
「そ、そうすね…さしあたっては、二帝の穴を埋めないといけませんね…」
「ああ、それなら…」
ことみが口を開く。
廊下に、コツコツと足音が響いていた。
「心当たりはあるの」
ガアッ
自動ドアが開く。
そこには――――
「すまない、遅くなった」
血を滴らせて佇む、坂上智代の姿があった。
「これで文句はないだろう」
手に捧げていた物体を床に放り投げる。
ドッペル智代の首だった。
「ち、違う…!違うんだ、ことみさん!もう一回やれば、あんな奴――――!」
グシャッ!!
喚くドッペルを智代の足が踏み潰していた。
「五月蝿いぞ…話し中だ」
冷たい目でドッペルの残骸を眺めた。
「ほう、これは…!」
幸村が驚きに目を見開く。
「以前とは段違いの殺気…!お前、いったい何をした…?」
「別に何も」
智代が口を開く。
「我慢するのが、少し、煩わしくなった。それだけだ」
淡々と言い放った。
「しかし…光も持たない生身の状態でこれだけの力を見せるとはの…」
「その私の『光』だが、伊吹公子がもっているらしいな…殺して奪い取るとしようか…」
智代が呟く。
「待て、伊吹公子には制裁も加えねばならん。お前の独断で行動することは許さんぞ」
「…?何を言っている…?」
智代が視線を幸村に向けた。
「私が、いつ、お前に許可を求めた?」
「!!」
一瞬、幸村の背筋に寒気が走る。
(こいつの目…まるで氷のようじゃわい…血の通った人間とは思えん…!)
「くくく…面白い…これが心当たりというわけか!一之瀬ことみ!」
幸村が声を上げて笑う。
「二帝の穴、ここに埋まったの」
ことみがにっこりと笑う。
「よろしくなの。氷帝・坂上智代ちゃん」
◆MIO本部の一室
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器?
017 坂上智代 所持品:特になし
欠番 紳士 所持品:? (洗脳状態)
欠番 坂上鷹文 所持品:?
欠番 幸村俊夫 所持品:『獅子王』
021 ドッペル智代 :破壊
>>484-486 遅ればせながらですが、激しく乙だよっ!
きれいに整理してもらうと、本当に助かります。
場所は変わって、MIO本部の病室。
応急処置が施された春原の横に、かつては岡崎朋也であったものが立っている。
その瞳はどこか虚ろで、生気を感じない。
「春原…陽平」
ベッドに横たわる金髪の少年の名を呟く。
互いをよく知る間柄の筈なのに、初めてその名を口にするかのようなぎこちなさがあった。
――体が灰になると、光は取り出せない。
その言葉に従い、春原を爆炎の中から連れ出した。
だが、朋也は肝心の光の取り出し方など知らない。故に彼は、主人を待った。
それから数分して、彼の主人が病室に顔を出した。老人の皮を被った獅子――幸村だ。
その貌には僅かながら笑みが浮かんでいる。新たな力、坂上智代を得たことに対する笑みだった。
「フン…まだ眠っておるのか」
春原を一瞥する幸村。
流れるような動作で、獅子王を抜刀する。そのまま春原の寝ているベッドの足を叩き斬った。
バランスを失い、傾くベッド。
「…うぇっ!?うわぁーーーっ!」
そして、転がり落ちる春原。
「あれ、ここは…岡崎?どうして…って、ひぃっ!」
春原が状況を確認する間も無く、幸村は獅子王の切っ先を床に座り込んでいる少年に向けた。
幾多の命を屠ってきたそれは、嘲笑っているようにも見えた。
「力を得たとはいえ、そうゆるゆるとやっていられる状況でも無くなってきたのでな…。こわっぱ、
貴様の道は二つ。光を発現させて死ぬか、させずに死ぬか……選ぶがいい」
かつての恩師に刀を突きつけられ、訳の分からない話をされている恐怖が、春原から答える力を奪った。
「ひいいーーっ!!」
獅子王を構える。幸村から発せられる殺気は、春原に確実な死を悟らせた。
「光を持つ者は、その多くが死の恐怖を前にして光を発現させておる。こやつももしや…とは思ったのだがな…。
死を眼前にして尚、目覚めぬ程度の「光」など…底が知れておるわ」
冷めた瞳。
「……殺すか」
「ひいっ!」
たまらず、その場にうずくまる春原。
「情けない…これが男子の姿か。所詮小物だとは思っておったが、これ程までとはな。よかろう。
ならば、死ぬがいい。……無様に、何の意味も無く死んでいった、あのラグビー小僧のようにな」
……こいつは、今、何と言った。
(ひぃ、じゃないっ!お前も男だろうが!)
無様に、何の意味も無く死んでいった、だって…?
(お前・・守れよ・・美佐枝さん・・)
ラグビー小僧、だって…?
(てめえーっ!美佐枝さんに何かあったらぶっころすからなあーーっ)
あいつは…あいつは…!
「……の、ことか」
「む?」
俯いたまま、春原が立ち上がる。
強く握り締められた拳。そこにあるのは、確かな意志。
「小川の、ことかぁーーーーっっ!!!」
瞬間。春原の体が金色のオーラに包まれ、自前の金髪が怒髪天を突くといわんばかりに逆立った。
「ぐおっ…」
思わず後ずさる幸村。
幸村は二つ、勘違いをしていた。
そう、光は死の恐怖を前にして発現するものではない。
そして――春原は、小物などでは、ない。
◆MIO本部病室
001 岡崎朋也 所持品:?
004 春原陽平 応急処置済み 所持品:無し(上着に癌細胞)『コミック力場』
欠番 幸村俊夫 所持品:『獅子王』
※春原の光『コミック力場』
春原が智代の64ヒットコンボを食らっても、杏に轢かれても無事でいられる最大の理由。
この光が発現すると、春原を中心として所謂コミック力場が展開される。
力場の中では、春原にギャグ補正がつきまくる。非常に厄介。
うまいこと春原らしさが出せる光を…って考えたらこんな感じになりました。
モノじゃなくて、フィールド扱いの光ってのも悪くないかなぁ…と。
あ、あと
>>495は1/4の間違いです。
わけわかんねぇよっ!
ヘタレな心を持ちながら禿しい怒りにより目覚めた伝説の・・・わけわかんねぇよ!
光発現イベントは自前のネタで勝負してほしかった
パクリは好かん
燃えシーンでパロやられてもなぁ…
ギャグでパロなら素直に笑えるんだが
でもとりあえず乙だよっ!
こういうのも春原ならでは、と思ったのですが…。
難しいものですね…精進します。
とりあえず、魔筆とかスパナと違って扱いがムチャクチャ難しい能力だな、とは思った。
春原の戦闘が全てギャグになりかねないな
後続がんばれ超がんばれ
てか最近展開早すぎじゃね?
こんなもんだろ
おいおい!
いみわかんないでちゅ!
None ducker yoke wack and naked, eek y'all!
柊勝平は考えていた。この状況で自分がとるべき行動を。
一度は復活したものの、事態は好転しない。
残された時間は少ない。自分の体がそう告げている。
しかし、ただ時間だけが過ぎゆく。そのことがまた勝平を焦らしていた。
「ほう…まだ続いておるのか」
ガアッと音を立てて自動ドアが開き、幸村が入ってくる。
「うん。まだまだ続きそうなの」
一之瀬ことみは振り返らずに答える。
「しかしなぜ、貴様は柊をあの場所へ誘った?奴ごときに何ができる」
幸村は理解できないといった様子で問いかけた。
「勝平君はとっても興味深いの。彼の『光』はまだ半覚醒、だから色んなことをして試しているの」
「ふむ…まだ半覚醒と…くっくっ、面白いしばらくは貴様に任す。本当に『光』とは不思議じゃわい」
幸村はそれだけを言って身を翻す。
「わしは出かけてくる。わしらにたてつく愚か者がおるようじゃしの」
「わかったの。帰ってくるまでにはどうにかしておくの」
幸村は返答を聞くとさっと身を翻し部屋をでていった。
「………さあ、どうするの勝平君」
(勝平さん、椋さんのペンダントを狙ってください)
「だれっ?」
突然頭に浮かび上がった言葉に驚きつつ返事を返す。
しかし、その答えは返ってこない。
今の自分に時間は少ない。藁をも掴むつもりで『アポロンの銀弓』を
精密射撃用の器械式強弩形態(クロスボウ・モード)へと変化させる。
確かによく見れば胸元に黒色の宝石のついたペンダントがあり、不気味に光っている。
一歩間違えば確実に椋は絶命してしまう。勝平の腕に力がはいる。
正確に狙いを定め……突如体を激痛と眩暈に襲われる。
(まさか、もう時間が…せめてあと一分…いや30秒でいいんだっ。ボクに時間をっ)
が、無情にも体はいうことを聞かない。ついには意識が暗転していった。
「終わっちゃったの…結局は勝平君には何にもできなかったの」
一之瀬ことみはキーボードを叩く手を休めつつ残念そうに呟く。
「仕方ないの…私がいって止めるしかないの」
操作を終え立ち上がろうとするが、再び座り込む。滅多にみせない驚愕の表情とともに。
そこにはありえない光景が映し出されていた。
「やっぱり…とってもとっても興味深い実験体なの、勝平君は」
ドクンッ…心臓の音がこれほどまで大きく聞こえたのは初めてだ。
しかし、いまはありがたい。いつの間にやら激痛は身を潜めている。
しかも、力がみなぎっている。そう今の自分には何でもできる。
そう勝平にいわしめるほどの未知なる力が体に溢れていた。
『アポロンの銀弓』を精密射撃用の器械式強弩形態(クロスボウ・モード)に変化させ構える。
そして、その指を離した。
矢は寸分に違わずに『バーサーカー・レクイエム』の鎖の部分を射抜く。
カシャンと音をたてて黒いペンダントは地面に落ちた。
と、同時にこれまで『三千世界』を投げ合ってた二人の体が崩れ落ちる。
勝平は二人に駆け寄った。
「とってもとっても不思議なの。わからないの」
一之瀬ことみは一心不乱にキーボードを叩く。
そして、ある考えが浮かんできた。
「ひょっとして…勝平君の『アポロンの銀弓』は正気じゃない時発現したもの
でも、癌に侵され正気を失った自分を葬ってくれる人を作り出すための光だ
としたら……」
『アポロンの銀弓』形状は弓矢。射られた生物を癌にかからせる。
しかし、それを克服した者には新たなる力を授ける。
MIO本部の廊下
002 藤林杏/気絶中 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい
003 藤林椋/気絶中 所持品:『三千世界・下巻』、ルガースーパーレッドホーク9in
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』『バーサーカー・レクイエム』44マグナム
新たなる力を得るのは一人とかにしたほうがいいと思います。
あと、新たなる力は後続に任せます。なんかジョジョの弓と矢みたいだけど気にしない。
新たなる力のくだりが分からん・・・結局、勝平を倒すための「新たなる力」を得たのは勝平本人?
だとしたら、どうやって勝平が癌を克服したかの説明がないんじゃないかね?
とりあえず時系列的には幸村が散歩に出る前の話に当たる訳だね
なんか朝の散歩がものすごい短時間になるような・・・
おじいちゃんだしねぇ…
もうボケちゃってるんだよ、多分
素朴な疑問なんだけど、光って13個集めたら何が起こるん?
時系列が複雑になってきたようなので提案なんですが、
話の始めと終わりに現在時刻を記入したらどうでしょうか?↓みたいな感じで
クラナド戦記第OO話
【AM7:00】
〜本文〜
【AM7:30】
現在位置・持ち物
521 :
前スレ535:2005/06/25(土) 14:42:10 ID:8hDYbHAZ0
何だかよくわかんないけど、まとめサイト更新したよっ!
時系列はまだです。何話か進んで、展開が確定してからまとめようと思います
>>520 個人的にはやめた方がいいと思います。
例えば、ある話では午前7時に幸村が病院にいるのに、
ある話では午前7時に幸村がファミレスにいるなどと仮に書かれた場合、
後に書かれたのが「確認してから書けよバーカ。矛盾でNG」などとされかねない。
表示が曖昧な方が、どうとでも解釈できるので、却ってやりやすい面もあります。
>85話
何が起こってるのかちょっとよく分からんかった。
・勝平ボーガンを構える
・「椋のペンダントをスナイプしろ」と少女(汐?)の声が
・勝平力尽きてバタン
・しかしなぜかすぐに勝平復活
・スナイプ成功
要約するとこういう事でいいのか?
なぜ勝平が復活できたかとかは後続に丸投げ?
おいおいっ!
>>522 第79話で矢の力が自分に跳ね返って癌復活
同時に新たなる力を得たんじゃない?
意味分かんねえよ
526 :
520:2005/06/26(日) 19:35:48 ID:hVO/G3QO0
>>521 更新乙です!
時刻表示の件ですが、書き手にとっては無い方がやりやすいということは同意です
ただ、読み手にとっては、そういったものがある方が展開を頭の中で整理しやすいのではないかと思い、提案しました
例えば、85話での幸村の「出かけてくる」と言う発言は、恐らく過去に、ファミレスに向かった時のものと思われますが、
なにぶん、時系列が明確でないので、現在の幸村が何処かに出かけようとしている、と解釈してしまう読者がいるかもしれません
現在時刻表示とまではいかなくとも、一言、書き手による時系列の説明があると分かりやすくなると思います
>>518 幻想世界の少女が地上に降り立つことにより
どんな願いも一つだけ叶えてくれるんだ、きっと。
春原「ギャルのパンティおくれーっ!」
シェンロン「おいおい、意味わかんねぇよ!」
「渚…」
レストラン内に突如現れた一団。
その中に、秋生は懐かしい顔を見つけていた。
「渚ぁっ!」
もう一度、確かめるようにその名を呼んだ。
「あ、お父さんです」
転送された際にひっくり返したテーブルの陰から、ひょっこり渚が顔を出す。
「お父さん、病気の具合は大丈夫ですかっ」
ぱたぱたと駆け寄ってくる。
「それは俺のセリフだ…怪我はねぇのか、渚」
「あ、はい…私は大丈夫です。みなさんが助けてくれましたから」
渚が美佐枝たちを振り返った。
「そうか…」
秋生も渚の視線を追う。
「!!」
突如、秋生の目が驚愕に見開かれた。
「何でてめぇがここにいる…伊吹公子!」
そう言ってゾリオンの銃口を公子に向けた。
「お父さん、伊吹先生は味方ですっ!美佐枝さんの癌を治してくれたんですっ!」
渚が懸命に訴えかける。
「けっ、信じられるかっ!渚、お前も見ただろうがっ!」
秋生の脳裏に蘇るのは、昨日の学校内での出来事―――
『悔いることです…罪びとには、それが許されている』
―――淡々と、無表情に、一人の女性徒を眼前で葬った女の顔。
秋生が声を張り上げる。
「こいつが、杉坂を殺したのを見ただろうがっ!」
怒声が店内に木霊する。
レストラン内を静寂が支配していた。
「それだけじゃありません、伊吹公子はMIO首脳部、二帝の片翼として幸村に尽力していました」
ウェイトレス・仁科が後を続けた。
「これでも言い逃れをするつもりですか、伊吹公子さん」
皆の厳しい視線が公子に集中する。
芳野が信じられないといった顔で口を開いた。
「しかし、何か―――!」
「何か、理由があるんですっ!」
渚が叫んでいた。
「伊吹先生はそんなことをする人じゃないって、私には分かりますっ!」
かつての、苦痛に満ちた学校生活の中で、自分を支えてくれた人。
あの頃の伊吹公子の笑顔は、今も渚の胸の中に生きていた。
「渚ちゃん…」
「伊吹先生、悪い人たちと一緒にいた理由を教えてください。私、知りたいです。先生が悩んでいるなら、力になりたいです。
私が…ずっと、そうして貰っていましたから…」
渚が目を伏せる。
長い沈黙が続いた。
「…ええ、分かりました」
公子が観念したように口を開いた。
「この問題は、私一人で解決しなければいけないものだと思っていました。皆さんは優しいから…話せば迷惑をかけてしまう…
だから、私は誰にもこの理由を話さなかったんです…祐くんにさえも…」
訥々と語りだす。
「しかし…もう、そうも言っていられませんね…お話します」
そこで言葉を切って、皆の顔を見渡した。
「私は、妹を人質にとられています」
静かに、しかし、はっきりと、そう口にした。
「えっ…でも、ふぅちゃんは…」
渚が風子を振り返る。
風子は黙って床の染みを見つめていた。
「風子は、今、病院のベットの上にいます。交通事故にあって以来、ずっと、入院しているんです。
今も、丘の上の病院の一室で、眠っています」
そこで再び言葉を切る。
皆の真剣な眼差しが彼女に集中していた。
「大破壊が起こる、数日前に、幸村先生に取引を持ちかけられたんです。
今妹が入院している病院は、大破壊によって消失する。その後の世界に存在する病院は、彼らの本拠地、丘の上の病院だけだと。
私の知恵と光をMIOのために使うのなら、その後も妹の面倒を見てやろう、と。
そして、私は―――」
ふと中空を見据える。
憂いを帯びた瞳で。
「全世界の人の命より、ふぅちゃんの命を選んだんです」
誰も、何も言わなかった。
換気扇の音だけが、静かな店内に響いていた。
「大破壊のあと、光を持つ皆さんだけが生き残ったのはご存知だと思います。
言い逃れはしません。その時の私は、ふぅちゃんのためなら皆さんを殺すつもりでいました。
…あの光景を見るまでは」
言葉を続ける。
「大破壊の直後、モニタールームで町の様子を監視していた私は、見てしまったんです。祐くんが徳田くんに襲われるのを。
幸村が見ている手前、助けにいくことは出来ませんでした。たとえモニターの向こうで彼が私の名を呼ぼうとも。
でも…その時、私は自分の目を疑いました…」
『…呼びましたか』
「病室で寝ているはずのふぅちゃんが、祐くんを助けに来たんです。」
公子が風子の横顔を見つめた。
「あれ、何で?って思いました。こんなこと、あるはずないって。
そしてふぅちゃんは、坂上さんと戦うために一人残ろうとした祐くんに、こう言ったんです。
『ユースケさんっ!絶対に生きて帰って、おねぇちゃんと結婚してくださいっ!約束ですっ!』
ああ、そうか。ふぅちゃんは、私のために…祐くんのために…二人の、幸せのために、頑張ってくれてるんだなぁって。
涙が、止まりませんでした。私は何をやっているんだろうって思いました。ふぅちゃんに会わせる顔がないなって、思いました。
それで…幸村への謀反を決意したんです」
公子は、そこで話を止めて、皆の反応を待った。
渚のしゃくりあげる声が聞こえていた。
「だが…てめぇは杉坂を殺しただろう。あれは、謀反を決意したあとのことじゃねぇのか?」
秋生が語気鋭く問いかける。
「杉坂さんは、亡くなってはいませんよ」
公子がわずかに微笑んだ。
「彼女は、思考分岐空間に送りました。今もそこで生きています。
あの場で、幸村先生に怪しまれることなく戦いを収めるためには、そうするしかなかったんです」
「思考分岐…何だと?」
秋生が狐につままれた様な顔をする。
「思考分岐空間…俺が取り込まれたあれか!」
芳野が納得したように頷く。
「ええ、今も杉坂さんは思考分岐空間の中で、何パターンもの『現実』と戦っています。
そして、その全てを克服したとき、空間内の人間は無事に現世に帰ってこれるんです。
その性質を利用して、一時杉坂さんを非難させる仮宿として使ったんです。」
「じゃあ、てめぇは本当に…いや、待て」
秋生が何かを思い出したかの様に声を上げる。
「なら、風子の本体も思考分岐空間の中に避難させて逃げて来たってわけだな!
これでMIOへの弱みはなくなったんじゃねぇのか?」
しかし、公子はふるふると首を横に振る。
「いえ、ふぅちゃんは病室から動かせるほど容態が回復していません」
「なに…!じゃあ、風子は何処にいるんだよっ!?」
秋生が答えを急かす。
公子が悲しげな表情を見せた。
「まだ、MIO本部の病室に」
***
「裏切り者には、罰を、なの」
一之瀬ことみが手に銃を携え、病室に入っていく。
その窓際のベッドには、死んだように眠っている伊吹風子の姿があった。
「伊吹先生の様子におかしい所はあったけど、まさか実の妹を見捨てるとは思わなかったの。
私が計算していたよりも、だいぶ非情な人だったの」
銃口を、眠ったままの風子の横顔に向ける。
「ばいばい、風子ちゃん。恨むなら冷たいお姉ちゃんを恨んで欲しいの」
微笑を浮かべ、引き金を引く。
ばらららららららっ!
けたたましい銃声が鳴り響く。
薬莢がパラパラと音を立てて病室の床に散らばった。
次第に、ベッドを包む銃煙が晴れていく。
「!?!」
その時、一之瀬ことみは目を疑った。
何事もなかったかのように、その場で眠り続ける伊吹風子の姿を見て。
「これは…?」
目凝らす。
すると、風子の周囲の空間が蜃気楼のように、ゆらりと揺らいだ。
***
「絵画迷宮?」
「はい、ふぅちゃんの周囲を覆うように、小さな絵画迷宮を張って来ました。
あれがある限り、一切の物理的干渉はふぅちゃんに到達しません」
唖然とする秋生に、公子がそう応える。
「そうか…なら風子の本体に危険はないってわけだな…」
皆がほっと胸を撫で下ろす。
特に渚は、安堵で目を潤ませていた。
「残念ですが…そう上手くはいきません。
ゼウクシスの魔筆によって描かれたものが効力を発揮する時間は、限られています。
絵画迷宮ほど強力なものとなると、持って30時間ほど…
ふぅちゃんに絵画迷宮を仕掛けたのは昨日の午後ですので…」
「このままですと、ふぅちゃんは今日の深夜には殺されます」
◆レストラン
005 伊吹公子 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、智代の『光』
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ、『レイジングヒトデ』
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:『ラブアンドスパナ』含む工具一式
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター、レミントンM700、バーレットXM109、ほか装備一式(乾から奪取)
013 古河早苗/気絶中 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:特になし
018 仁科りえ/気絶中 所持品:多数の武器
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
欠番 ウェイトレス(=未来の仁科りえ) 所持品:店から持ってきた物資
欠番 乾/気絶中 所持品:特になし
◆MIO本部・病室
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器?
006 伊吹風子(本体) 【昏睡状態】
◆思考分岐空間
019 杉坂
忘れてました
お、おいおい!
何だかよく分からないけど切羽詰ってきたよっ!
>>518 渚の体内から神獣バンダースナッチが覚醒するんだろ?
いつもの人か。さすがに展開が手馴れてるな。
ただ、今の銃はそんなに煙出ない。
>86話
素直に上手い。漏れも頑張り松
岡崎家の居間にある畳のひとつを、直幸は見つめていた。
「開けてくれるかい?」
一言、つぶやく。
一畳の畳はせり上がり、その下には階段がある。
大事そうに壺を抱えながら、直幸は階段を下りていく。
直後、畳は元の位置へと戻った。
「なあ、有紀寧は本当に助かるんだろうな」
「……助かると言っても、私たちと同じ状況になりますけどね」
水恵はキーボードを叩きながら、和人の質問に答える。
「……ああ、それはわかってる。だけど、幻想世界に行っちまったんだろ?」
「幻想世界へは、少しは干渉できるようになりましたから。あとは、有紀寧さんの『光』を回収すれば、おそらくは大丈夫ですよ」
「おそらく……かよ……」
「ええ、おそらくです」
和人は言葉に詰まった。
「くそっ……」
そのまま、部屋を出て行こうとする。
「どこへ行くのですか、宮沢君」
「自分の部屋に戻るだけだ。こんな研究室に居たって、俺ができることなんて無いだろ」
「……そうですね。岡崎さんも、戦力として期待しているようですし」
和人が足を止める。
「……ああ。様子見が終わったら、いくらでも戦ってやるから……有紀寧のことは、あんた達に頼んだぞ」
そして、和人は部屋を出て行った。
「ええ、きっと助け出します」
キーボードを叩く指が、少しの間止まっていた。
ついさっき和人が出て行ったドアから、一人の男が入ってきた。
「どうだい、研究のほうは順調かい?」
「それなりに……と言ったところですね。岡崎さんの方こそ、どうですか?」
「そうだねえ……まあ、これからを見てみないとわからないよ」
「MIOとCLAN次第……ですか。もうしばらくは様子見ですね」
話しながらも、キーボードを叩く音が止むことはなかった。
「そうだ。これ、頼めるかい?」
直幸は、『リントホルストの壺』を水恵に手渡す。
「はい。保管庫に移しておきますね」
水恵は席を立ち、『リントホルストの壺』を持ったまま部屋を出て行った。
しばらくして、水恵が戻ってきた。
「移しておきました。『胡蝶』以外は、何も入っていません」
『リントホルストの壺』を直幸に返す。
「ああ、ありがとう。しかし、本当によく出来てるねえ。誰も偽物だと気が付かないくらいだ」
「気付かないのは、性質の問題です」
水恵は席に付くと、キーボードを叩き始めた。
「『リントホルストの壺』は、『光』としての力を他人に見せる機会が少ないですから。もし仮に『獅子王』が偽物の『光』だとしたら、ちょっと戦闘をしただけで気付きますからね」
「いやあ、本当によく出来てるよ。あえて言うなら、容量が少ないのが難点だけどね」
「そうですね。わざわざ保管庫に移さないと、あっという間にいっぱいになってしまいますからね。本物の『光』だったら、四次元ポケットのように使えそうですけど」
「そういえば、くまのぬいぐるみの中にあった『光』も、君達が作ったんだよね?」
「あれは……」
一瞬、言葉に詰まる。
「たしかに、『光』に近い力はありましたけれど、とても不安定です。彼は、コンピューターを介してうまく制御していたようですけれど」
「そうなのかい?」
「ええ。ですから、『光』を人工的に作るのは不可能です。せいぜい、似せるのが限界ですよ」
「それでも、いい出来だよ。しばらくは『胡蝶』の存在を隠せそうだ」
「そうですね。偽物の中に本物を隠すなんて、普通は気付きませんよね」
「いやあ、本当にK&M Ichinoseは凄いと思うよ。ところで――」
直幸は思い出したように言った。
「そのK&Mのもう一人はどこに行ったんだい?」
「いやあ、すまないねえ」
「いえ。それより、こんな感じでよろしいですか?」
武器倉庫内の一角に、大量の武器が積まれていた。
「ああ、それくらいでいいよ。しかし、頭脳労働者に雑用をやらせてしまって悪いね」
「MIOの三幹部の一人が武器補充に来たのに、手ぶらで帰すわけにもいかないでしょう」
「そうかい? 雑用なら宮沢君に頼めばいいのにねえ」
「そういえば、彼がいましたね。そう、宮沢君といえば――」
鴻太郎は、倉庫の奥から一本のコンバットナイフを持ってくる。
「これ、宮沢君にあげようと思うのですが」
「なんだい、これ?」
直幸はコンバットナイフを受け取る。
「ここに来てから初めて作った『光』の偽物です。短時間で作ったので、『光』としての力はあまりありませんけど」
「いや、充分だ」
そのナイフに、直幸は見とれていた。
「そういえば、君達はいつから『光』の研究をしてるんだい?」
直幸はナイフを鴻太郎に返す。
「……『光』を研究する為に、学生時代から勉強してたんですよ。この町に住んでいたのも、それが理由ですね」
鴻太郎は話を続ける。
「実はですね、今まで学会で発表していたことは、『光』の研究の副産物なんですよ。発表なんかしてる暇があったら研究を続けたいというのが本音でしたけど、
少しでも社会貢献できればと思いましてね。それにですね、食べていくにも、研究を続けるにも、結局はお金が無いと何も出来ないんですよ」
苦笑して、さらに続ける。
「『光』を研究しているなんて発表できませんからね。あの飛行機事故のときは、現地に信頼できる人がいたので、見てもらおうと思って試作品の『光』を両方とも持って行ったんですよ」
「……それで、ひとつはぬいぐるみの中に隠して、もうひとつはあきらめて捨ててしまったんだね」
「そうです。まさか、岡崎さんの手に渡ってるとは思いませんでしたよ」
「いやあ、四條さんにも感謝しないといけないねえ」
直幸は微笑んだ。
「ところで岡崎さん。MIOに帰られる前に、ひとつお願いがあるのですが――」
そこは、岡崎家の地下にある訓練室。
岡崎家の地下と言っても、その広さは岡崎家の土地だけで納まるわけがない。
そんな中でも、もっとも広い部屋であるのが訓練室。
体育館ほどの広さがあり、壁、床、天井は防弾仕様となっている。
「出ておいで」
『リントホルストの壺』を大事そうに抱えながら、直幸はつぶやいた。
すると、壺の中から一匹の蝶が現れた。
『胡蝶』――それが、直幸の『光』だった。
『胡蝶』はひらひらと舞い、輝き始めた。
そして、輝きはその強さを増し――
――輝きが消えたそこには、スメルライクティーンスピリッツのメンバーがいた。
「……な……なんだ、これは!」
「ああ、今から説明するよ」
困惑していた一同の視線が、直幸に集まる。
直幸は訓練室のドアを指差し、一同の視線もそれに従う。
「しばらくすると、あそこからナイフを持った男が一人来るから、全力で殺してくれないかい?」
一瞬の沈黙。
「お、おいおい。意味分かんねぇよ!」
「ナイフだと? ここから撃てばジ・エンドじゃねえか!」
「一人でなにが出来るってんだよ」
「だいたい、貴様は何者だ?」
一人が、直幸に銃口を向ける。
直後、その男は輝き――そして消滅した。
「ちゃ……C(チャーリー)……?」
「ん、さっきの人はC(チャーリー)というのかい?」
C(チャーリー)がいた場所では、『胡蝶』がひらひらと舞っていた。
『胡蝶』は再び輝き始め――その場にはC(チャーリー)の姿があった。
「先に話しとくべきだったね。君達は、もう死んでいるんだ」
『胡蝶』はひらひらと、岡崎の元へと移動する。
「この『胡蝶』はねえ、精神体を支配することができるんだよね」
視線が『胡蝶』に釘付けとなる。
「君達の精神体を『胡蝶』に具現化してもらったんだ」
金縛りのように体が動かない。
「そうそう、ナイフを持った男というのも、君達と同じ精神体なんだよね」
ただ、次の言葉を待つ。
「もし殺せたら……そうだねえ。しばらくは具現化したままにしてあげるよ」
直幸は、ドアの方へと歩き出す。『胡蝶』もひらひらと付いて行く。
「それじゃあ、頼んだよ」
そう言い残し、直幸と『胡蝶』は訓練室を出て行った。
「おいおい、どうするんだよ?」
「殺るしか……ないんじゃないか?」
「……そう、みたいだな」
直後、ドアが開いた。
『ブリッドナイフ』を片手に、和人は駆け出した。
「おかげ様で、宮沢君の戦力と、『ブリッドナイフ』の性能を見ることができます」
鴻太郎が頭を下げる。
「さて、そろそろ戻らないと怪しまれてしまうね」
「武器でしたら、リアカーに積んでおきましたよ」
「いやあ、本当に悪いねえ。至れり尽くせりってやつかい?」
「はは、では研究の方に戻りますね」
「頼んだよ」
直幸は大量の武器を積んだリアカーを引いた。
「ところで岡崎さん……命を支配する『獅子王』と、精神体を支配する『胡蝶』、どちらが強いと思い――あれ、もう行ってしまいましたか」
岡崎家・地下
欠番 岡崎直幸 所持品:『胡蝶』、『リントホルストの壺』(偽)、大量の武器を積んだリアカー
欠番 一ノ瀬鴻太郎 所持品:?
欠番 一ノ瀬水恵 所持品:?
欠番 宮沢和人 所持品:『ブリッドナイフ』(偽)
020 スメルライクティーンスピリッツ 所持品:SWAT装備一式及び米特殊部隊装備
偽物の『光』には、(偽)を付けておきました。
とりあえず箇条書きー。
・お、おいおい。モデュレイテッド光かよっ!
・時系列がよくわからんけど後続に一任か?
・鴻太郎と水恵がなんか小物っぽいね。個人的にはK&MにはARMSの高槻パパママみたいな
超強力キーパースンとして活躍してほしかったので残念
・俺は別にいいけど、宮沢兄みたいなキャラに適当な人格をくっつける
(いわゆるオリキャラ化)のを嫌う読み手も多いので諸刃の剣
・現時点でキャラ増やすのは正直いただけなかった。
CLANvsMIOの全面対決である程度死人が出てからでないと舞台が膨れすぎて収拾つかないと思うんだが
>>第87話
個人的にはウルトラGJだよっ。
551 :
'ヽ/ヽ:2005/06/29(水) 11:19:44 ID:7vD6n8fP0
お、おいおいっ
>>549に大体同意
文章力や見せ方は上手いと思うんだけどね
それに直幸まで裏切ったらMIOの首脳部がスカスカになるんじゃ…
「仁科。地図だ」
「あ…えっ?」
秋生の出し抜けの言葉に、すっとんきょうな声をあげてしまうウェイトレス・仁科。
勢いを強めて、秋生が仁科に怒鳴りつける。
「ばか、この町の地図をよこせって言ってんだ。敵の病院が載ってる奴をな!
なにしろ時間が限られてる。敵の陣地まで最短で行けるルートを練っとかなきゃならねえ」
「はあ…」
「コラ仁科、CLANのリーダーは俺だって話はてめぇが言い出したんだぞ? 言う通りにしろ、早く!」
「は、はいっ…」
「それと怪我人・病人の確認! ここにゃ医務室くらいあるんだろ。仁科、案内しろ!
動ける奴は運ぶの手伝ってくれ! 超能力で治せる奇特な奴は名乗り出ろ!
ヘタうちゃ今夜にも死人が出るってんだ、もたもたすんな!」
秋生の手が忙しく動き、皆に次々と指示を飛ばす。
それは名監督の采配さえ思わせる、明確にして否応ないもの。
「は…はいっ!」
仁科の目がにわかに輝く。
彼女が心から従うべきリーダーは、やはりこの人なのだと。
***
暫時の後。
電気の明かりが灯る食堂内に、集結したのは9人の戦士。
伊吹公子。彼女の魔筆が作る魔法の薬は、渚・早苗・秋生を蝕んでいた癌細胞を完全に取り除く。
伊吹風子。彼女の杖から放たれる呪文は、体に傷を負った者たちをみるみるうちに癒す。
芳野祐介。壊れていた店内の配電盤は、彼のスパナによって瞬く間に復旧されている。
相楽美佐枝と春原芽衣。それぞれ腕力と身軽さで、秋生の指示をこなしてゆく。
そして、皆の尽力によって病の苦悶から完全に復活をとげた、古河早苗と古河渚。
彼らを統べるは、古河秋生。
傍らには、ウェイトレスの衣裳をまとう仁科りえが、忠実な部下の姿としてある。
「おいおい…おまえら、最高に楽しいチームだぜ」
秋生は満足げに、ぐっと親指を立ててみせた。
「そういや、仁科はいねえのか?」
秋生の言葉に、ウェイトレスの仁科りえが怪訝に振り向く。
「いや…仁科ってのは、今の時代のほうの仁科ってことだ。こんがらがっていけねえ」
「そのことなんですが…」
と、言いにくそうに伊吹風子が申し出る。
「仁科さんですが、風子のヒトデヒーリングでも、おねぇちゃんの作成した解毒剤でも治せませんでした…」
「なんだと!?」
風子を弁護するように、公子とウェイトレスの仁科がそれぞれ補う。
「どうやら、古河さんたちや相楽さんは『光』の加護を受けていることで、勝平細胞の進行がかなり抑えられたようです。
でも、それのない仁科さんには、勝平細胞による肉体支配が急速に進んでしまう…」
「いえ、CLANのテクノロジーはMIOのそれに比ぶものですから心配は一切要りません。
過去の私は集中治療室の自動手術装置に収容しておきましたから、時間さえかければ必ず完治します」
それで納得したか、秋生も荒げかけた声のトーンを戻した。
「そうか、しょうがねえ。とりあえずは、動ける奴らはこれだけってことか。よーし、全員地図に注目!」
テーブルに広げられた詳細な地図に、9本の視線が集まる。
それとともに、公子が説明を始めた。
「くだんの病院のまわりには、侵入者を阻む『絵画迷宮』を仕掛けています。
何も知らずに入れば永久に道に迷いますが、1本だけ“抜け道”を作ってあります。
地図にマーカーで示しました。私がやられてもいいように、皆さん、その経路を覚えてください…」
公子の説明によれば…外界と病院を行き来するには、“抜け道”を通るしか方法はない。
いったん術が完成してしまうと、一から魔法をかけ直さない限り“抜け道”の配置は変えられない。
そして、MIOの幹部は“抜け道”の配置を知っている。
したがって、MIOは戦闘力をそこに集中し、全力で侵入者を迎撃する態勢だろう…。
「…包囲も、挟み撃ちも、およそ作戦らしいことは何もできません。
できるのはただ、正面からぶつかることだけです」
公子がその事実を述べる。
「気にしないわよ。正面からぶん殴るのはあたしの得意だしね」と美佐枝。
「ふぅちゃんには、たくさん、たくさん助けてもらいました。だからご恩返しをするときですっ」と渚。
「ふっ。勝機など自らの手で切り開くもの…方法が一つあるのなら、俺はその一点に全力を込めるまでだ」と芳野。
「みなさん、風子の大人っぽいないすばでぃのためにお気遣いありがとうございます…ヒトデサンクスですっ!」と風子。
そして、「ようし、決まったな」と秋生。
「通信機と発煙筒を忘れるな! 方位磁石も迷宮に入らねえ限りは使える! 装備は好きなの持ってけ!」
「食べ物は食べ過ぎないように! 歩きやすい靴を履いてくださいね! みなさん、ファイトッですよ!」
古河夫妻が最後の檄を飛ばすと、他の7人が強くうなずいて呼応した。
――そこで、異変は起こった。
耳をつんざく爆音が轟くと、建物が大きく震えていた。
その場の全員が、ばっと辺りを見渡す。
「な、なんだぁ!? 今の爆発はっ!!」
「どうなってんの!?」
「集中治療室の方からですっ!! 仁科さんが危ないですっ!!」
「まさか…」
そして、彼らは気づく。
ここにいるはずの一人が、いつの間にか消えていることに。
「…乾…あの野郎っ!!」
「でも、秋夫さんの怪力であんなに縛ったんですよ!? そう簡単に抜けられるわけ…」
「いや。どうやらあれが答えのようだな」
狼狽するウェイトレスの仁科に、「答え」を指さす芳野。
そこには、今なお鮮血の染みを広げながら、柱にロープでがんじがらめにされていた。
店内の柱に、後ろ手に縛られていた乾の手首だけが。
「さ…最悪です…!」
「手首を切断して縄を抜けるなんてな。人間業じゃねえよ、くそっ」
駆けつける集中治療室。
装甲隔壁で守られているはずの自動扉は、跡形もなく爆破されている。室内には、現代の仁科。
砕け散った扉の前には、どういうわけか左目を失った乾がいた。
対峙するは、9人。
「よく来たな、愚昧の徒よ」
多勢に無勢、絶体絶命のはずの乾が、勝ち誇ったように言った。
「虜囚となったおれにきさまらから与えられるのが、怒りであろうと憐れみであろうと、
おれにとっては何の意味もなさん。ここできさまらとともに果てるまでだ。
おれの両目には戦術偵察型の《人造光》、透視と千里眼の『ホルスの目』が移植されている…」
「…その片方を無形の光エネルギーに戻し、一気に解放した、というところですか」
公子が一歩、進み出た。
「そう、ご明察だ」
乾は残った右目を指さす。
「そしてこっちの片方は、さっきをはるかに超える爆発力になる…おれの全生命エネルギーを注ぎ込むことによって。
そこで寝ている仁科ともども、きさまら全員を爆砕できるくらいにな」
「てめえ、自爆するつもりか!?」
どうしてか、乾はふっと笑う。
「くく…『悔いることです…罪びとには、それが許されている』…か」
「なぜ、その言葉を!?」
公子が詰問すると、乾は自分の目を指さした。
「この目で監視していたからな。唇の動きで台詞までわかる。
仁科に罪の意識を芽生えさせることで、人を互いに争わせる泥沼から仁科を救ったのは見事だ。
…だが、本当はそうすべきではなかった。教育者として、人類の無学を正すべきだったのだ」
だんだんと、乾の目がらんらんと光ってくる。
「そうだ! 物質の虚飾を剥ぎ、感情や思念の迷妄を除けば、この世界に残るのは数理と論理の調和!
惑星が楕円を描くように! n次方程式がn個の解をもつように! 法則の永遠なる循環こそ世界の本質!
きさまらの戦う理由など、宇宙にとっては取るにたりん! そんなものは人間の作り出した幻想!
幻想は幻想らしく、幻想世界(あの世)へ還ればよいのだ!」
「な…なに言ってんだこいつ…?」
もはや、乾の千里眼は何も映していなかった。
その目は誰にも解されない理に陶酔し、狂気の光に輝いていた。
「んーっ!! ヒトデメトリーのエネルギー感知がどんどん上がってます! 最悪です!!」
――それは文字通り、今にも爆発しそうなほどに。
「おれはきさまらとともに打ち砕かれ、地表を流れる気体分子の集団(アンサンブル)に回帰する!
物質のあるべき姿へと、自然を支配する調和の一部へと、われわれは還ることができるのだ!」
「危険です!! 皆さん、早く地下壕へっ!!」
乾の右目がひときわ大きく輝いて、仁科があらん限りの声を張り上げた。
――まもなく、巨大な衝撃の球が、
――ファミリーレストランErnesto Hostを、地上から、薙ぎ払った。
(くくく…きさまらがいくら抗おうとも、人々も星々も、必ずや有限の時間で朽ち果てる…。
宇宙の無限にあって、人類がちっぽけな脳に築いた営みなど、すべて空虚で無意味な幻想にすぎん…。
この論理的必然にあくまで抗うのならそれもいい…。おれは先にあの世で…幻想世界で待っているまでだ…)
その声を聞くものがあったかどうか、定かではない。
やがて、爆風の収まった地上に、ぽつりぽつりと人々が現れてきた。
「くっ…愛によって救えるのは、愛を失う恐怖と、愛を失った絶望のみ。
愛の存在さえ認めない狂気を前に、俺はこれほどまでに無力なのか…」
「うすら寒くなるぜ、あの野郎…。MIOってのはあんな狂人ばっかなのかよ」
がくりと膝を地に落とす芳野と、得体の知れない不気味さに身震いする秋生。
渚が顔面を真っ青にして、地上へ走り出た。
「に、仁科さん! 仁科さんは大丈夫なんですかっ!?」
そこで渚たちは見てしまう。仁科の姿を。
…爆風で飛び散った仁科の肉片が、かつて集中治療室があった場所へと、這いずり集まるのを。
それらは急速に、仁科と呼ばれるヒトの形を形成してゆく。
「んーっ!? これはまさにグロい人ですっ!!」
「しつっこいわねえ…まだ活動してんの、あの勝平ってガキの細胞」
疲れきった風情で、美佐枝は思い切りため息をついた。
連投規制?
「グ…ギギギッ…!! シ…ネッ!」
暴走する勝平細胞の命令のままに、襲いくる仁科。
その行く手を遮るように、公子が立つ。
「恐れることはありません。『罪には罰を、咎人には束縛を――“磔刑”』っ!」
手短な詠唱とともに、ゼウクシスの魔筆を振るう公子。
その瞬間。魔物と化した仁科の背後には十字架が存在し、彼女はその動きを止められた。
「単純な魔術です。ディスペルしない限り、半永久的に縛っておけます」
――だが、危機はそれだけにとどまらなかった。
地下壕から、芽衣の黄色い悲鳴が上がった。
「た、大変です! 仁科さんの体が…!!」
地下壕からふらふらと出てきた仁科。
その姿は、まるで劣化したフィルムに映っているかのように、奇妙にかすれている。
なぜか若干嬉しそうに風子が歓声を挙げた。
「んーっ、仁科さんの存在が希薄になっていますっ! 風子のお仲間ですっ!」
「バカ、ノンキなことぬかしてる場合じゃねえ! 仁科、どうしたっ!」
仁科は声を張り上げる。
「―勝平――! ――未来の…私―、――消滅………! ――可能性……!!」
仁科の声は、微弱な電波で話しているかのように、ひどく頼りない。
それでも、やっと聞こえるくらいのか細い声で、仁科は必死に告げていた。
勝平細胞は、永遠の命を与えるものではないこと。
無尽蔵の再生力を与える代わりに、生命に巨大な負担をもたらし、やがて個体を死に至らしめること。
本来なら、現代の仁科の体は、集中治療室の手術で勝平細胞を取り除かれるはずであったこと。
それが乾の干渉によって、手術室を破壊され、実現不可能になってしまったこと。
そして。現代の仁科の死ぬ運命が強まったために、
未来から来た仁科もまた、生と死の量子的重ね合わせの状態に陥ってしまっている――
ありていに言えば、存在が希薄になりつつあること。
「くっ、助ける方法はねえのかよ!?」
「あります。ひとつだけ」
凛とした声。
「それは、柊勝平の『アポロンの銀弓』を手に入れること」
横から公子が、そう言っていた。
「妹の…ふぅちゃんの『レイジングヒトデ』は、他の《光》を取り込む《光》です。
『アポロンの銀弓』の毒を取り込み、もとあるヒトデヒーリングと合成させることで、
その毒の穢れを癒す“ヒトデセラピー”を詠唱することができるでしょう」
「そんな能力があったんですか! 風子そこはかとなく最強ですっ!」
本人がいちばん驚いていた。
「けっ。二人も死人を出したとあっちゃ、寝覚めが悪くていけねえや。
イッパツ行ってやっか! 敵さんの本拠地へよ!」
秋生の拳が、自然と握られていた。
◆レストラン
005 伊吹公子 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、智代の『光』
006 伊吹風子 所持品:ヒトデ、『レイジングヒトデ』
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:『ラブアンドスパナ』含む工具一式
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター、レミントンM700、バーレットXM109、ほか装備一式(乾から奪取)
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:特になし
018 仁科りえ/勝平細胞による暴走状態 所持品:多数の武器
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
欠番 ウェイトレス(=未来の仁科りえ)/存在が消滅しかけ 所持品:店から持ってきた物資
欠番 乾/死亡
乾、自爆!
間違い発見。
× 018 仁科りえ/勝平細胞による暴走状態 所持品:多数の武器
○ 018 仁科りえ/勝平細胞による暴走状態 所持品:なし
にするべきでした。乾の自爆で仁科は一旦バラバラになって復活したばかりなので。
なんだか秋生が江戸っ子チックだけどGJだよっ!
>87話
なんで違和感あるかわかったよ。
鴻太郎と水恵から「父親/母親属性」を感じないからだな。
一ノ瀬夫妻は原作でもことみを導く強さと優しさを備えた親としての存在なんだから
単に科学スキルを持ってる人員としてだけみたいに扱うのはどうかと思うな。
「てめえら、行くぞぅっ!」
秋生の合図で皆が歩みだす。
しかし、すぐにまた、その足は止まることになった。
彼らの前に立ちはだかった伊吹公子のために。
「あん?どうした、伊吹先生よ」
「最後に…MIO本部に発つにあたって、皆さんに確認しておきたいことがあります」
「なんだよ…」
真摯な眼差しを、7人の間に巡らせる。
「命を捨てる覚悟は、おありですか?」
唐突に公子の口から放たれたその言葉に、とっさに、返す言葉がなかった。
「MIOの狂気は、先の乾の一件で理解していただけたと思いますが…
はっきり言いますと、MIOの力はあんなものではありません。
私が把握しているMIOの上層部には、一之瀬ことみや坂上智代、柊勝平といった、
乾とは違い、『真の光』に選ばれた刺客がいます。命の保障なんてできません」
「え…坂上さんや、ことみちゃんが…ですか」
渚が呆然とした表情で呟く。
「ええ、それもMIOと戦うにあたって覚悟しておかなければならない点です。
基本的にMIOは、人の精神の弱いところを突いて自分たちの傘下に加える、といった方法を用いています。
或る者は、完全に精神を乗っ取られて私たちに牙を向いてきます。
しかしまた或る者は自身の葛藤と戦いながらも、大事な人を守るために、やむなくMIOに味方しているかもしれません。
かつての私のように、です」
「…そんなの、無理です…そんな人たち相手に、戦ったり出来ません…可哀想です…」
渚が目に涙を溜めて訴えていた。
「でしたら、帰ったほうがいいですよ、渚ちゃん」
優しい言葉、しかし、厳しい表情で渚に向き合う。
「ある意味では、そういう敵が最も恐ろしい敵なんです。
自分にとって大事な存在を守るためなら、人は鬼になる…どんな手段でも使ってきます。
そんな時に相手に同情しているようでは、こちらが首を取られます」
「……」
渚はただただ黙って公子の顔を見つめていた。
「…人を殺す覚悟なんて決まらなくていいのよ。そんなの、割り切っていいもんじゃないわ」
美佐枝が口を挟む。
「悩みながら、戦っていけばいいじゃないの。その方が人間らしいじゃない」
「いいことをいうじゃないか、相楽」
芳野も後を続ける。
「愛を忘れたら俺たちもMIOと同じだ。
戦いにおいても、俺たちは愛を忘れない。例え、結果的に相手を殺すことになってもな」
凛とした眼差しを公子に向けた。
「そうですね…皆さんは、私が考えていたより、ずっと、強いです…心が…」
公子がすっと頭を下げる。
「皆さん、私とふぅちゃんのために、よろしくお願いします」
透き通る声で、そう挨拶していた。
「ちっ…!そういう堅苦しい挨拶は苦手なんだよっ!早く頭上げやがれっ」
「伊吹先生、こちらこそ宜しくお願いしますねっ」
皆が口々に声をかけ合う。
今ここに、CLANの心は一つにまとまった。
…かに見えた。
「あのっ…!」
風子が甲高い声をあげていた。
「…死ぬかもしれないんですか?今から行くところは、そんなに、危険なんでしょうか…」
おずおずと皆の意見を伺う。
「お前、当たり前だろうがっ!敵の本拠地だぞっ!」
「秋生さんっ!」
秋生の無思慮な言葉を早苗が嗜める。
そう…自分を助けるために皆の命が危険に晒されることになる。
そう知ったとき、風子がどう思うかを早苗は憂いたのだ。
「あ、ああ…悪りい…」
秋生もそれに気づき、口を噤む。
「そうでしたか…風子はてっきり、ピクニック気分で行くものかと…」
俯いて地面を眺める。
「でしたら…風子は別に、構わないです…」
そう口に出していた。
「…はい?」
「ですから、風子は助けてもらわなくても構わないです」
はっきりと、そう告げる。
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇよっ!」
秋生が怒声を上げていた。
「俺たちは、嫌々てめぇを助けに行くわけじゃねぇ!
助けてぇんだよっ!てめぇをっ!心からっ!
例え俺たちの誰かが死ぬことになっても…てめぇを恨んだりなんてしねぇ!
それが家族(CLAN)ってモンだろうがよっ!」
掴みかからんばかりの剣幕で捲くし立てる。
「でも…風子にそこまでして助けて貰う価値はないです…
何もお返しするもの、ないですから…このヒトデくらいしか…」
手の中で木製のヒトデを転がす。
「ふぅちゃんっ…!そんなこと言うと、私おこりますっ!
私たちは、お礼が欲しくてふぅちゃんを助けに行くんじゃないですっ!ぷんぷんっ!」
渚も珍しく怒りを露にする。
「でも…風子のために、おねぇちゃんや皆さんの命が危険に晒されています…」
ヒトデを抱きしめ、ポツリ、ポツリ、語りだす。
「このままでは、結婚式の開催が、そこはかとなく危ぶまれてしまいます…」
「ふぅちゃんっ!?」
公子が緊張した声を上げる。
今の風子は、公子たちを助けたいという強い意志の下に、不自然な存在として復活を遂げた姿。
しかし反対に、自分の存在が皆を危険に晒すことになったとき、その存在は、どうなるだろうか。
存在する目的を失ったとき、風子はどうなるのだろうか。
公子は漠然とした不安感に襲われていた。
「ふぅちゃん、それ以上考えちゃ駄目っ!」
「おねぇちゃん…」
風子が公子の顔をまじまじと見つめる。
一瞬、風子の影が薄くなったような気がした。
「…風子は、ただ、皆さんに祝って欲しかっただけなんです…」
眩しい朝日を背にして、風子が話を続ける。
「おねぇちゃんとユースケさんが…無事結婚式を挙げて…皆さんがそれを祝ってくれたら…それで…」
朝日のせいで、風子の表情は見えなかった。
「風子はしあわせです。たとえその場に風子がいなくても、です」
覚悟を決めた声。
「お、おいっ!風子っ!?」
「ふぅちゃんっ…!何を…っ!?」
光の中に、風子の姿が溶けていく。
あるべき場所に…あるべき姿に還る時が…迫っていた。
「仁科さんには申し訳ないですが…皆さんが、危険な場所に行くことのないよう、魔法をかけさせて頂きます」
手にレイジングヒトデを携える。そして――――
≪忘却…ヒトデアムニジア≫
微かな声。
同時に、空間に光が満ちていく。
「ふぅちゃーーーんっ!!」
悲痛な叫びが木霊した。
………
……
…
「あれ…?私たち、こんな所に集まって何を…?」
美佐枝がキョロキョロと周囲を見渡す。
「確か…伊吹先生の妹さんを助けにいくんでしたよね?」
芽衣がそう呟く。
「でも、伊吹先生に妹さんはいなかったはずですよ…?」
早苗が首をかしげた。
「なんじゃこりゃあっ」
秋生が素っ頓狂な声を上げていた。
足元に転がっていたものを拾い上げる。
「ちっ、おもちゃの杖かよ、くだらねぇっ!」
投げ捨てようとする秋生の手を渚が押さえつけた。
「くだらなくないですっ!とっても可愛いステッキです。えへへ。
とくに、このさきっぽについたお星さまとかっ…」
「そうかよ…じゃあ、お前にやるよ。…って渚、お前!」
秋生が渚の目の下を拭う。
「何、泣いてんだよ…?」
「えっ…あ…!」
渚の頬を、涙の筋が伝っていた。
「何ででしょうか…分かりませんが…何か、悲しいことが…あった気がするんです…」
ごしごしと目の淵を拭う。
「かっ、我が娘ながら変わってやがるなぁ!それより、仁科の具合が悪くなったんだったな!
助ける方法を考えねえといけねぇっ!早く地下壕に戻るぞっ!」
秋生に続き、皆が地下壕の入り口に引き返していく。
しかしそんな中、伊吹公子だけは戻ろうとしないで、その場に立ち尽くしていた。
「すいません…さっき、ここに来る前に忘れ物をしてしまったので、今から取ってきますね」
申し訳なさそうにそう言った。
「かっ、ドジな野郎だなぁっ!一人で大丈夫かよ?」
「ええ、心配かけてすみません。すぐに戻りますから」
一礼して歩き出す。
そして、皆の姿が見えなくなる所まで来ると、立ち止まって空を見上げた。
「だめだよ、ふぅちゃん…」
ぽつりと呟いた。
「おねぇちゃんをだまそうったって、そうはいかないんだからっ」
再び歩き出した。
たった一人で、妹を助け出す。
その、悲壮な覚悟を胸にして。
◆地下壕
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:『ラブアンドスパナ』含む工具一式
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター、レミントンM700、バーレットXM109、ほか装備一式(乾から奪取)
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ/勝平細胞による暴走状態 所持品:なし
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
欠番 ウェイトレス(=未来の仁科りえ)/存在が消滅しかけ 所持品:店から持ってきた物資
◆町内
005 伊吹公子 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、智代の『光』
006 伊吹風子(霊体):消滅
原作と違い、風子に関する記憶は、本体の存在自体が忘れられてしまったということにさせて頂きました。
それにともなって、仁科の救済方法も忘れてしまったということになります。面倒臭そうなことになりそうで恐縮ですが…
しかし、公子が風子を覚えていたように、忘却魔法はそんな厳密なものではないつもりなので、ふとしたきっかけで思い出すのもアリだと思います。
おいおい!
なんだかややこしいことになってきたよっ!
574 :
'ヽ/ヽ:2005/06/30(木) 13:45:20 ID:3Re23R0n0
やべぇAnaが脳内再生された
「また奇怪な『光』を発現させおって…」
幸村は『獅子王』を正眼に構える。
「じゃが光は光、大人しく渡すなら命だけは助けてやろう」
構えを崩すことなく歩み寄ってくる。
「何だかよく分からないけど、嫌だっ」
春原はハッキリと拒絶する。
「ならば力ずくで…いこうかの」
その言葉とともに一気に間合いをつめてくる幸村。
「ひいぃーーっ!春原・ザ・ワールドーーーっ」
反射的に叫んだ言葉、何も意味はなさないはずだった。今までは。
「なんじゃ…意識が……まさかこんな小童に…うおおおおおっ」
叫びも空しく幸村の意識は闇にのまれていった。
灰色の空。
時間という概念がない空間。
無機質な物質たち
…いや、すでに物質であるかさえ分からない。
幸村は[そこ]に立っていた。
――『こちらときめき☆学園』
クックック…。
ついに…ついにわしはやったぞ。
意識と自我を許された存在。
まだ体はない。
だが、それも想定内だ。
記憶がある。
元の世界にいた頃の自分の体の記憶がある。
ゆえに、体の具現化も可能だということだ。
幻想世界の少女がそうであるように。
光が集まり、幸村を包む。
「お…おお…」
彼の器は、まだ若き活力に溢れた20代の姿へと形作っていった。
心の中でほくそ笑む。
「………ってなにしとるんじゃっ。わしは!」
「まさか、これが奴の光の能力…?やっかいなもんじゃ」
とりあえず近くにあった校舎に入ってみる。
奇妙な感じがあちらこちらに感じる。
幸村は常に抜刀できるように身構えつつ歩いていく。
すると、廊下の向こう側から歩いてくる人影が見て取れた。
「……………」
幸村は警戒を怠ることなく相手の様子を伺う。
どうやら女子生徒らしい。
制服を着た女子が別に気にした風ではなくすれ違う。
……がぶっ。いきなり噛みつかれた!
「うぬうっ」
まさに奇襲、完全に不意をつかれた。
幸村は………
1.一撃の下に葬り去る
2.助けを呼ぶ
3.様子をみる
◆MIO本部病室?
001 岡崎朋也 所持品:?
004 春原陽平 応急処置済み 所持品:無し(上着に癌細胞)『コミック力場』
◆『こちらときめき☆学園』
欠番 幸村俊夫 所持品:『獅子王』
たまには遊びの要素を
「こら渚っ、ンなお星様のステッキなんかで遊んでる場合かよ! 仁科が大変なんだぞ!?」
地下壕の中で円陣に座りながら、ステッキを眺めていた渚。
「お星様じゃないです! これ、ヒトデです!」
しかし渚は秋生の怒声に、いくぶんずれた答えで反論する。
「バカ、星でもヒトデでもどっちでもいいだろ、そんなもん」
「どっちでもよくないですっ! このステッキ、名前は『レイジングヒトデ』っていうんです。
なんだか、持っているといろいろな魔法の力が使えるみたいですっ」
「なんだと?」
「例えばその、えっと…ヒトデレビテーション!」
杖の先端のヒトデが光るその瞬間。
秋生の口に加えた煙草が宙に浮きあがり、あらぬ方向へ飛び去る。
「お、おいおい。意味わかんねえよっ!」
みなの視線が集中するなか、タバコは空中を数回転踊ったかと思うと、また秋生の口へと帰って行く。
不思議としか言いようのない光景だった。
渚の突然の行動に、みなが驚きを隠さない。
「どこで覚えてきたんだ? こんな芸当をよ…」
「わからないです…でもこのステッキを握ったら、不思議と悲しい気持ちがこみあげてきて…。
気づいたら、『レイジングヒトデ』という名前とか、使い道とか…いろんなことが頭に流れ込んできたんです」
「頭に流れ込んでくるだと…」
秋生は思った。俺の『光弾銃ゾリオン』のときと同じようだと。
ふいに渚は、何かを思いついたように、表情を輝かせて言った。
「もしかしたら…『レイジングヒトデ』の魔法で、仁科さんの体を治せるかもしれないですっ!」
「おおっ! わが娘、頼んだぜっ!!」
十字架に縛られ、地下壕に収容された仁科。その前に立つ渚。
杖を掲げる。ヒトデが光る。
「行きますっ…ヒトデヒーリング! ヒトデキュアディジーズ! ヒトデレストアヘルス!
ヒトデリムーブプレーグ! ヒトデサニタイズドメタボリズム! ヒトデピュリフィケーション…」
渚は思いつく限り、ありったけの呪文を詠唱する。
叫びのたびに、杖はけなげに神秘の閃光を放ち続けた…。
呪文の効果は、なにもなかった。
魔法の光を浴びながら、蠢く細胞はやはり仁科の体を覆い尽くしていた。
細胞を駆逐するには、勝平の『アポロンの銀弓』の力を取り込む必要があるのだが、渚らに知る由もない。
やがて魔法の力が途切れ、振った杖も閃光を生まなくなる。
叫び疲れた渚が、ぺたんと座り込む。その目はこぼれそうな涙を含んでいた。
「ぐすっ…ごめんなさいです。ぬか喜びをさせてしまいまして…」
「謝るこたねえ。よくがんばったさ…」
「渚。だめだったら、別の方法を考えればいいんですよ」
渚の体を、両親は抱きとめる。
「――…―。……―・―、―…………」
床に倒れ、声もかすかなウェイトレスの仁科も、表情はあくまで優しい。
仁科はすでに、四肢までが消滅している。もはやその体を物理的に動かすこともできないでいた。
ふいに芽衣が口を開いた。
「そうです。落ち着いて、整理して、根本的な理由までさかのぼって考えてみましょう。
未来の仁科さんが消滅しかかっている理由って、そもそも何でした?」
美佐枝が当たり前のことのように答える。
「そりゃあさ、あの乾とかいうサイコ野郎がああやって自爆したからでしょ」
「そうです。じゃあなぜ、乾が自爆すると、未来の仁科さんが消滅するんですか?」
「どうしてって…そのせいで現代の仁科さんが死にかけてるからよね。
勝平のれいの細胞に体をやられてて、今のとこ治療法もないのよ」
「じゃあ、今まで仁科さんが消滅していなかったのは、治療法があったからですよね?」
「集中治療室に自動手術装置があったからね。でも、あれは乾に壊されて…」
そこで芽衣の顔が、ぱっと輝く。
「そうです! 壊されたんなら、直せばいいんですよ!」
振り向くその視線は――彼女が初めて好きになった、ブラウン管の向こうの英雄へ。
「ね、芳野さん!」
その手があった…とばかりに、皆が色めきたった。
期待を込める幾本もの視線。中心に、その人、芳野がいた。
――彼の口から出たのは、しかし…。
「期待を裏切って、すまない…俺の愛をもってしても、無い物体を“有ること”にはできない」
力なく、そう言うのが精一杯だった。
「俺の『ラブアンドスパナ』は、故障した機械を修理することができる。
設計図と適当な材料さえあれば、新しい一体を製作することも可能だ。だが…それはあくまで元になる材料があってのこと。
あの爆発のようになにもかも木っ端微塵にされてしまっては、もう復元はできないんだ…」
「そんな…」
芽衣をはじめ、皆がうなだれてしまう。
一人を除いては。
「それなら任せてくださいっ!」
それは、泣いていたはずの渚。希望を取り戻して、言う。
「『レイジングヒトデ』は、『ゼウクシスの魔筆』にも変身できるみたいですっ。
『ゼウクシスの魔筆』で描いたものは現実になりますので、それで材料を作ってしまえばいいと思います!」
「そうか。材料さえあれば、俺のスパナが役に立…」
「――――…――!!」
芳野の言葉に仁科が割り込んだ。声をかぎりに、彼女は何かを叫ぶ。
渚がヒトデヒアリングの呪文で拡声すると、次のようなことが聞き取れた。
〈残念ですが、『ゼウクシスの魔筆』では、自分が知らない物体を作成することは不可能です。
特に、自分の時代を超えるテクノロジーに関しては、材料にさえなりません。
反重力装置や常温超伝導体を『ゼウクシスの魔筆』で作ろうとしても、見せかけだけで役には立たないんです…〉
「ぐすっ…やっぱりぬか喜びです…」
「畜生め。ひとつ問題を解決したと思ったら、またすぐに別の問題が湧いてきやがる。
これじゃあモグラたたきみてえにキリがねえぜ!」
どうしようもないいらだちに、ぎりぎりと歯軋りする秋生。
その妻が、なだめるように彼に言った。
「秋生さん。もっとポジティブに考えないと、またタバコの量が増えますよ。
問題の核心には迫ってますよ。現代のテクノロジーを超える材料をそろえれば、解決なんでしょ?」
至難の業を、こともなげに言う早苗だった。
苦虫を噛み潰したような顔になって、秋生が言う。
「そうは言うがな、早苗。現代のテクノロジーを超える材料なんて、どこでそろえるってんだ?
芳野の若造も、いくらなんでも吹っ飛んだファミレスからはサルベージできねえだろ」
「残念だが、できない。あれは破損度が尋常じゃない」
「だろ? この近くにあるモンっつったら、あとは『一ノ瀬』とかいう民家だけ…」
「!? 待ってくれ!!」
何かに打たれたように、芳野が目を見開き、秋生をさえぎる。
「あん? どした?」
「さっき、『一ノ瀬』と言ったか。その名は聞いたことがある!
なんでも日本の科学者にして、量子論の発展に大きな影響を与えた天才らしい。この町の人だという話は耳にしていたが…。
以前電験の勉強をしてたとき、理論の教本にちらっと出てきたんだ」
「リョ、リョーシロン?」
「物理学の一分野だ。学問的な詳しいことは俺にはわからんが、とにかく次世代の技術に通じるものだ」
話が難しくなりそうなので、その前に秋生は言う。
「まあアレだ。とにかく一ノ瀬家へ行きゃ、使える材料が見つかるかもしれねえってことか!」
「確かなことは言えない。だが、希望はある」
強く、強く、芳野はそう言った。
「はぁ。あんたが行くなら、あたしも行かないわけにはいかないわね」
「芳野さん、わたしもぜひ行かせてください!」
申し出る美佐枝と芽衣。
「相楽は殺しても死なんからいいが…」
「うっさいわね!」
「芽衣、おまえは大丈夫なのか。
俺を慕ってくれるのはうれしいがな、年端も行かない子供を危険にさらすわけには…」
「いっしっし。じゃーん!」
芽衣が後ろ手から出すのは…レミントンM700狙撃銃。もと、乾が装備していたものだ。
持っていたはずの秋生が、心底仰天して叫んだ。
「お、おめー、いつの間に!?」
「ちゃっかりしてるでしょ? こういうのは秋生さんよりもわたしのほうが得意かと思って。
ちなみにバーレットの対物ライフルのほうも拝借しちゃいました☆」
「かぁーっ…やられたぜ。残りの乾の装備も持ってけ。俺が持ってても、使い道がねえや」
「…ふっ、ついてこい。お前がいれば心強い」
秋生と芳野が笑うと、わが意を得たりと芽衣が白い歯を出した。
「公子はまだ外か。彼女と合流して、現地へさっそく行ってこよう」
「芳野さん、私も行きますっ」
渚の申し出に、芳野はちっちっと舌を鳴らす。
「いや。あんたたちは仁科を護るんだ。
彼女は動けない。ここを空にしたら、いつ敵が仁科を狙うかわからないだろう。それに…」
ふっと目を閉じ、髪をかきあげる。
「家族だけは、決して離れてはいけない。それが…愛だ」
目指すは一之瀬家。
芳野たちは発った。
◆レストラン跡地(地下壕)
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ/勝平細胞による暴走状態 所持品:なし
欠番 ウェイトレス(=未来の仁科りえ)/存在が消滅しかけ 所持品:店から持ってきた物資
◆レストラン跡地周辺
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:『ラブアンドスパナ』含む工具一式
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C、レミントンM700、バーレットXM109、ほか装備一式(乾から奪取)
583 :
'ヽ/ヽ:2005/06/30(木) 23:55:32 ID:3Re23R0n0
お、おい、おいおいっ
すげー、タッチの差で2連荘かよっ!
『こちらときめき☆学園』って、真剣意味わかんねぇよっ
コミック力場っていうより、春原オンステージだなw
「やりいっ!!」
春原の勝利の雄たけびが室内に響き渡った。
部屋の中空には、彼の持つ《光》――
『コミック力場』そのものが、「魔法円」となって宙に浮かんでいる。
春原の光のなかの架空世界、“こちらときめき☆学園”。襲いくる幸村を、まんまとそれに囚えたのだ。
だが、喜びはつかの間。
「…《光》の反応があったので、興味が湧いて来てみれば…」
ガアと開いた扉には、新たな刺客が立っている。
「一難去ってまた一難かよっ! ぶっちゃけありえないよ!」
「おはようございますなの。春原君」
それは漆黒のレザーコートに身を包む、冷たい瞳をした一人の少女。
右手に構えた冷たい鉄――FN社のP90短機関銃が、無機質な口を春原に突き出している。
「お前は確か…図書館に引きこもんのはやめたのかよ、ことみちゃんよっ」
「私が意思の疎通を図る相手は知的生命だけ。だから、あなたとの会話に割く時間などないの」
春原には理解しがたい皮肉とともに、銃口が火を噴く。
「ひいーっ!?」
5.7mm弾の群れがごうと飛来する寸前、春原は壁の陰に逃れる。
「??? どうしたの? 戦わないの? あなたの大嫌いな優等生と」
少女の嘲笑が飛び、歯がみする春原がいた。
さらに加えて、一之瀬はいう。
「あなたの手並みは見事なの。わが組織の最強者、幸村先生の一刀におじず《光》を発動させて…
あまつさえ、あの彼を《光》のなかに捕獲するなんて」
(へっ。僕の力にまんまとかかった、あのヨボジィが最強だって?)
「私はあなたのような強者に敬意を表するの。私と全力で戦い、そして打ち破ってみるがいいの」
(強者…)
彼の頭にはまだ、ありありと残っていた。
力強い光が、わが身から発現したあの感覚が。
(そうだ…ひぃ、なんて言ってるじゃないっ! 僕は男なんだよ!
ジジィにも勝ったんだ。こいつにも勝てる! 危ぶむなかれ! 行けばわかるさ!)
金色に輝く髪が天を指し、体が溢れる闘気を放つことを、春原は思った。
彼は駆け出し、銃口を向ける少女へと猛然と向かった。
「うぉぉっ!! ヒーローが、お前みたいな卑怯者の飛び道具に負けるかよぉっ!!
くらええっ!! “春原最終奥義・究極拳爆裂光斬”ンッ!!!」
燃え盛るかと思われるような拳を突き出し、一之瀬へと驀進する春原――
それを見て、一之瀬は、憐れむようにくすりと微笑った。
「…愚かなの。蛮勇が助けとなるのは、フィクションの世界だけなのに」
銃口が、火を噴いた。
秒間15発のファイブ・セブン弾。
春原の体で跳ね返されることも、コルク栓のようにポンポンと滑稽に抜けることもなかった。
正確に。無常に。致命的に。弾丸は春原の体を刺し貫いた。
力なく転がった春原の体躯から、温かな血液がどくどくとこぼれていった。
「あれ…どうして…? 僕…撃たれちゃったよ…?」
「…あなたがヒーローでいられるのは、しょせん『力場』のなかでだけ。
忘れたの? 『力場』はあなたの手を離れ、そこで丸くなって幸村先生を格納していることを…」
春原の髪は逆立っておらず、輝くオーラもなく、その拳は燃えていなかった。
彼は生身で銃に立ち向かおうとした、ただの愚か者にすぎなかったのだ。
「『力場』の外でのあなたは、通常の物理法則に服する一匹の人間にすぎないの。
あなたなど死に絶えた名も無き60億と同じ。滅び去るべきホモ・デメンス(愚かなるヒト)なの」
「ちがう…僕…は……強者…なんだ…………お前…を…倒して……人々を…救……う………」
「そんな主張は論文に書いて、あの世で閻魔様に査読してもらえばいいの」
再び銃口が火を噴くと、最後に残った春原の生命力を奪った。
「呼吸停止。心臓停止。瞳孔散大。――春原陽平、死亡確認なの」
春原陽平の絶命は、あまりにも、あっけないものだった。
一之瀬は病室の窓から、彼の遺体を投げ捨てた。
「屍生人ども…貴様ら虚の生命などこの『獅子王』の錆に…ハッ!?」
「おはようございます。幸村先生」
幸村が気が付くと、病室だった。
「そうか、お前さんの助けで、わしはあのふざけた架空世界を脱出したというわけじゃな」
「うん。あれは思考分岐空間と同系統の能力…だけど、旧・二帝が結集して作ったそれと違って、
まだまだ未熟な出来なの。そのぶん、クラックするのは比較的たやすかったの」
「…一之瀬くんよ。わしに貸しを作ったつもりか?」
「そういう社会学的な解釈は、先生にお任せするの」
短く笑うと、幸村は『獅子王』をさやに収めた。
「じゃが…お前さん、伊吹の妹の処刑に行っておったのではなかったのかの?」
「…伊吹先生は、あれでなかなか周到なの。風子ちゃんの周囲には、何だか物凄い障壁が張られてるの。
機関砲、火炎放射、毒ガス、ウイルス、レーザー、プラズマ、コイルガン、荷電粒子ビーム、空間の断裂…
一通りやってみたけど、どれも通用しないの。あの防御力は深い研究と考察に値する…」
「暢気なことを言っておる場合かっ!」
幸村の怒号に、一之瀬は思わず眉をひそめる。
「…わかっているの。だから今、智代ちゃんに破壊を試みてもらっているの」
たぶん無理だろうけど、という意図を、一之瀬は言外に込めた。
「な、なあ。ことみ」
部屋の隅から、ぽつりと声がした。
一部始終を見ていた朋也だった。
「おはようございます。朋也くん」
「い、いま、人が一人死んだんだよな? でもな…俺、わからないんだ。
悲しんでいいのか、恐怖すればいいのか。わからない。頭の中から、何かがぽっかり抜けちまったみたいだ。
助けてくれ。教えてくれよ…ことみ。俺はいったい、どうすればいい!?」
「不安になることはないの、朋也くん」
一之瀬は、その目に異常なまでの優しさを込めた。
「私たちがきっと…あなたを教え、導くから」
「ありがとう…ことみ、俺はどうしたら…」
「だから朋也くん」
そこで、一之瀬の声が厳しさを帯びた。
「私たちが命ずるまで、そこでただ無為の時を過ごしていればいいの。
何もせず、何も考えないでね――」
言い放つと、一之瀬たちは部屋をあとにした。
「新たな《光》の回収に成功。容器は廃棄ずみ」
「上々じゃな、一之瀬くん」
◆MIO本部
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、『コミック力場』
欠番 幸村俊夫 所持品:『獅子王』
◆MIO本部病室?
001 岡崎朋也 所持品:?
004 春原陽平/死亡(上着に癌細胞)
マジですみません。
一之瀬ことみというキャラの行動原理に照らして、この状況で春原に情けをかけて生かしとく選択肢が
筆者ではどうしても考えられませんでしたorz
なんでしたら、「上着の癌細胞」あたりで彼を救済してあげてください。
生かしとく選択肢なら幾らでもあったと思うが
ことみをご丁寧に春原の所まで連れて来て、仕方なく殺したはないだろう…
散々引っ張っておいて、ここで春原退場はありえないだろ。
あっけなさ杉。
てか、色々展開考えた上で書いたならまだしも、他に書けるキャラがいるにも関わらず
わざわざ春原編書いて殺すって…しかも、
>なんでしたら、「上着の癌細胞」あたりで彼を救済してあげてください。
とかバカにしてるのか?
ぶっちゃけ、何でもありのリレーだけど最低限の流れくらい読んで欲しい。
今まで散々熱血バカでやってきた春原を、ここでいきなりリアリティに沿って殺されたんじゃたまったもんじゃないよ。
ケッ、意味わかんねえよ
見上げた先は、嘘みたいな青空。
背中に枯れた芝生の感触を感じながら、少年はゆっくりと身を起こす。
「…あ、あれ……?ここは…」
周囲を見回す。
あの全てが変わった日から、何も変わらないままの世界。
切り取られた世界。
瓦礫と静寂が支配する、世界。
目の前には、白い建物。
「病院……」
そこはつい先程まで少年が居た場所。
変わってしまった世界を、変えることができる場所。
それを少年が知るのはもっとずっと先のことになる。
完全に身を起こし、身体についた埃を払う。
未だに混乱したままの頭。何度頭の埃を払っても、これは払えそうにない。
「僕は……生きて、る……?」
頭を下げ身体を見下ろす。
そこには銃で撃たれた傷も、跡も無かった。
勝平との戦いであちこち焦げついただけの、いつもの制服だった。
一息つくと、ソレに気付いた。
中空に浮く――光に。
手を伸ばすとソレは春原の掌に吸い込まれていった。
「これって………ッ!?」
脳内に流れ込んでくる情報。
思い出したつい先程までの記憶。
ぐちゃぐちゃの意識の中で、春原は悟った。
「光、僕の…力。岡崎…」
掌に吸い込まれていったのは、幸村を捕らえ、一之瀬に奪われた光――その、最後の欠片だった。
光は春原に伝えた。力、光の意味を。
光はあの瞬間、持ち主である春原を救った。
身代わり、瞬間移動、意識の改竄。よくもまあ、トンデモにトンデモを重ねたものだ。
だが、その代償は大きかった。光は幸村を捕らえるので精一杯で、そんな無茶をできる力を蓄えてはいなかった。
元はコミック力場と呼ばれていた力。今は一之瀬達の手中にある力。
最早抜け殻であった。
春原の中にある欠片、最早光としての力など殆ど残ってはいない、春原の最後の力。
だがそれは、春原の想いを固めるには…充分すぎる、力。
「何だかよく分からないけど……行く、よっ!」
004 春原陽平(上着に癌細胞)『コミック力場の欠片』
幸村達の手にある光には殆ど力は残っていませんが、春原の持っている方も似たり寄ったりです。
ちなみに春原の現在位置は、88話で出てきた抜け道の外、病院そばの外界です。
>スレ住人
すまん、思わず熱くなってしまった。
こうしたほうがずっと荒れずに済んだな…ごめん。
>>592-593 は忘れてくれると嬉しい。
気持ちはよく分かる。もうこのスレは単なるロワ物じゃないんだろうな
少なくとも俺はクラナドの延長が見たい。各キャラの織り成すドラマが見たい
だから重要人物を殺すときはもうちっと考えて欲しいかな。謝罪するような内容しか思いつかなかったなら、他の人に任せるのも一手
作者陣にとってはフォローするのも大変だと思うが、読んでるこっちにとっちゃ面白いね
活躍→ピンチってか死亡?→奇跡の復活 なんて典型的な燃え展開だし、ベタながら面白い
まあ、二方とも文章力があるから読めるものになってるってことかもしれないけど
おいおい、意味わかんねぇよっ
それはフォローがあって初めて面白いわけで、92話だけを見れば投げやりなのが分かるとおむ
よく修正したもんだ…修正ってのはなんか嫌な言い方だな
ナイすねじ曲げ!
まとめサイト消えてる?
え? 行けないよー
行けないな。
めちゃくちゃだな。
お、おいおい!だな
607 :
'ヽ/ヽ:2005/07/03(日) 07:07:59 ID:FL4dkcYr0
ヒント:92話
だろうね…名無しで投稿していく以上、いつかはこんな時が来るとは思っていた
で、どうしようか?
前スレのログさえ見えるようになれば、問題なく続けられると思う
なんだかよく分からないけど、まとめサイトの復活は無いのか
俺ログ持ってるけどまとめ作ろうか?
どうもよく分からんな…
92,3話のごたごただけでまとめサイトが消えるとは考えにくいんだが
たぶん、92話の作者がサイト管理人だったんじゃないかな?
今まで過剰なくらいまとめサイトに尽くしてくれてたから、自分の作品を批評された反動で、一気に冷めたんだと思う
>>609 出来ればお願いしたいです。ログ置いておくだけの、本当に簡素なものでも構いませんので…
ああ、なるほど…
うーん…何にしても、一度ちゃんと本人から言葉が欲しいところだな。
>>611みたいな勘繰りを恥ずかしげもなく書くようになったか
そろそろリレー小説スレにご招待かもねこのスレ
もうすぐ100話行くのにな。
最近参加し始めて、まだ二話しか書いたことが無いんだが
書くときに、まとめサイトに頼りきっていた
あのサイトは使いやすかったな…
とりあえず、
>>612には同意だね
とはいえ、しばらくは忙しくて書けないんだけど…
今月末あたりから、積極的に書いていこうと思う
またまたご冗談を(AA略
いやほんと嘘だろ、ただメンテ失敗したとか移転中とか何らかの要因でちょっと見れないだけだろ
あのサイトのロゴと紙媒体のネタに惚れて通ったのに…
嘘だと言ってよジョニー!
あげるよっ!
メンテや移転なら何かしら報告がありそうなもんだが…
トップ絵、ずっと楽しみにしてたのに…このままだと絵師さんの光臨ももうないんだろうか…
これで終わってしまうのか…?
こういう時こそ初心忘るべからず
何だか良く分からない状況。されど行く!
これがクラナド戦記クオリティ
621 :
609:2005/07/06(水) 23:28:46 ID:vbfODZP00
ログまとめようと思ったけど試験前で余裕がない。
誰かまとめてくれるならどこかにログうpするけど、どうだろう
自分はそういったことには疎いので、ログのまとめ方とかまったく分かりません…
まとめ関係で力になれないのに、話だけ投下していくというのも図々しいんですが、
次の話を書いたので、以下投下させて頂きます
緩やかなカーブが続く道。
その片側は山の斜面に直接面していた。
生い茂る木々は道路の上にまで覆いかぶさろうとしている。
その道を、一人往く女性の姿があった。
伊吹公子だった。
(違う…これも違う…)
入念に木々の一本一本をチェックしながら道を進んでいく。
(…!)
やがて、一本の木の前で立ち止まる。
注意していなければ見落としてしまう程、微かな印が木の表面に記されていた。
(あった!ここが絵画迷宮の抜け道…!)
森林の中を覗き込む。
既に日は高く昇っていたが、密集した木々が日光を遮断するため、森の中は不気味な薄闇で満ちていた。
(私の謀反が発覚していれば、当然ここは敵が固めていると思ったのだけれど…)
シンと静まり返っている山中。
人の気配はおろか、生き物の気配すらそこには感じられなかった。
(罠かもしれない…しかし、だとしても行くしか…)
魔筆をしっかりと右手に握り締め、森の中に足を踏み入れた。
途端、ざわめきが木々の間を波となって伝っていく。
その光景は侵入者を拒むかのような装いを思わせた。
(この森を抜ければ病院の裏手に出られる…行くしかない!)
カサリ、と枯葉を踏みしめた。
その時―――
バチンッ!
バネが外れる鈍い音。
伊吹公子の細い足を、強く挟み込む二枚の板があった。
板についた歯がズボンを裂きギリギリと肌に食い込む。
(トラバサミ―――!!)
公子がそう気づいたときには、木の陰から銃を構えた兵士たちが飛び出してきていた。
「撃て!」
鋭い声と共に、銃のトリガーが引かれる。
ばららららっ!
幾層もの弾幕が、公子に向けて一斉に掃射された。
巻き上がる粉塵がしばし兵士たちの視野を奪う。
「やったか?」
「間違いない。いかに魔筆使いの伊吹公子と言えども、あのタイミングでは絵を描くことすらできまい」
銃をホールドしたまま、兵士たちはじっと標的の生死の確認を待つ。
巻き上がった粉塵が徐々に晴れ渡り、視界は以前の姿を取り戻しつつあった。
「よし!」
兵士たちが喝采を上げる。
そこには、肉があちこち削げ落ちた、無残な女性の姿があった。
「たわいないものだな、元二帝と言えども」
「そう言うな。もともと戦闘タイプではなかったのだろう。
我々番外衆の方が、純粋な戦闘能力は高かったと言う訳だ」
獲物を仕留めた喜びに、思わず笑みが零れる。
しかし、彼らの一人がある異変に気づいた。
「お、おい!あれ―――!」
伊吹公子の遺体を指差す。
それはうっすらと光に包まれていた。
彼女を包む光が徐々に薄れていく。
そこには、一枚の紙切れが残っていた。表面に人の姿が描かれた紙が―――
「ダミー(偽者)だっ!!」
彼らが気づいたときにはもう遅い。
本物の伊吹公子は既に『詠唱』を終えていた。
『罪には罰を、咎人には束縛を』
対象者を半永久的に拘束する、"磔刑"の詠唱を。
「ぐわあっ!」
十字架を後ろ手に括り付けられた番外衆たちが、次々と地に倒れ伏していく。
「申し訳ありません、皆さん。急ぎの用なんです」
木陰から伊吹公子が姿を現す。
「くっ…!伊吹公子、お前、最初っから罠に気づいていたなっ!」
番外衆が這い蹲りながらも怒りの声を上げる。
「いえ、確信していた訳ではありません。あなたたちの気配にも気づいてはいませんでした。
ただ…私の方がちょっぴり、用心深かった、ということですね」
麗笑を浮かべながら番外衆たちの間を抜けていく。
「貴様っ!これで終わりだと思うな!あんたの出番だっ、坂上智代さんっ!!」
番外衆の一人が後ろを振り返り声を張り上げる。
「坂上さん…!?」
公子もその視線の先を追った。
その先にある一本の大木。
その陰から、ゆっくりと智代がその姿を見せた。
「使えないな…お前たち…」
ため息を吐きながら自分を呼んだ番外衆に近づいていく。
「相手は『光』の所持者だと、聞いていたはずだろう?」
番外衆に詰問する。
「は…?」
「命令を忠実に聞いていたのなら、こうして無様な姿を晒すことはなかっただろうと言っているんだ」
殺気だった瞳で足元に跪く番外衆を射抜いた。
「ひ…!す、すいませんっ!つ、次は必ず…っ!」
怯えた様子で智代の前にひれ伏す。
「次…?」
爪先でゆっくり男の顔を持ち上げる。
「次があると、本気で、そう思っているのか?」
「え…」
刹那、智代の右足が震えた。
男の顔が熟れた無花果のように空中で爆ぜる。
鮮血がビチャビチャと智代に降り注いだ。
「負けても『次』がある…そんな中途半端な覚悟だから負けるんだ、愚図めっ」
静かな怒りを露に男の遺体を睨みつける。
―――私はもう、絶対に負けられないんだ!
そう決意し、死の淵から這い上がった彼女には、『次がある』などという甘えは到底許しがたいものだった。
「ひ、ひいいっ!」
仲間の顔が砕け散るのを目の当たりにし、番外衆たちがパニックに陥る。
「おい、お前たち…」
智代が彼らに声をかけた。
「は、はいっ!何でしょうっ!?」
「自害しろ」
そう、言い放つ。
「はい…?」
「お前たちはMIOの機密保持のために、いつでも自害できるように毒を口内に仕込んでいるんだろう?
それを使えと言っている」
「し、しかしっ…!?」
「くどいぞ…お前たちの顔はもう見たくないんだ。
自分で出来ないというのなら…私が、やってやろうか…」
そう言って一歩を踏み出した。
「ひいいいいーーっ!!」
絶叫とともに番外衆たちがバタバタと倒れていく。
そう、彼らは智代に殺されるよりも自害して果てる道を選んだのだ。
「坂上さん…あなた…!」
目の前にいる少女は、かつて自分が知っていた少女ではない。
そう、伊吹公子は直感していた。
(技のキレ…身のこなし…そして、殺人に対する意識…!
何もかもが違う!以前の彼女と思っていたら、一瞬で殺られる…!)
魔筆を握りなおし、全神経を研ぎ澄ませて坂上智代に対峙する。
「見苦しいものを見せてしまったな、元・二帝」
何食わぬ顔で公子に微笑む。
「さて…一応、聞いておこうか。何しにここへ来たんだ?」
顔についた血を拭いながら智代が尋ねた。
「私は…!」
公子が鋭い目つきで智代を睨み返す。
「あなたたちから、大切なものを取り返すために…!」
囚われの妹の姿が脳裏を過ぎった。
「奇遇だな。私も、お前に返して貰いたいものがあって出向いたんだ」
智代が言葉を続ける。
「持っているんだろう…お前が…!」
静かな言葉。しかし、殺気を込めた両眼で公子を睨みつける。
「!!」
とっさにブラウスの内ポケットに手を当てる。
(ばれている…私が、彼女の『光』を持っていること…!)
「当たりだな」
つかつかと智代が歩み寄ってくる。
(この光、渡すわけには行かない!もし、渡してしまったら…!!)
何の躊躇いもなく数人の人間を、それも味方サイドの人間を、死に追いやった智代。
公子は得体の知れない恐怖を彼女に感じていた。
それは、底知れぬ沼を覗き込む時に感じるような種のものかもしれない。
(そうなれば、誰も彼女を止められない!!)
◆森
005 伊吹公子 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、智代の『光』
017 坂上智代 所持品:不明
GJ
まあしばらくは書きつづけていこうや
お、おいおい!
631 :
'ヽ/ヽ:2005/07/07(木) 14:08:33 ID:ElzVzaMC0
意味わかんねぇよっ!
とりあえずハカロワに参加していた者から一言。
書 き 続 け れ ば な ん と か な る
最近投下してないですが、見守ってるので頑張れ!!
しかし、この時期は試験があるのではないか?
…と、学生は語る。
とりあえず、夏まで生き残らせてくれれば書くから。
635 :
名無しさんだよもん:2005/07/10(日) 23:13:06 ID:RT+tMEQ30
とりあえず保守age
勝平が杏と椋の戦闘を止めてから数時間後。
彼らは病院敷地内の物置の中で息を殺していた。
扉を少し開けると、彼らの目の前を多数の番外衆たちが巡回しているのが見える。
杏がため息をついた。
「もう、全部あんたのせいよ、バカ勝平っ…!」
「お、お姉ちゃん、勝平さんは私たちを助けてくれたんですから、そういうことは余り、その…」
椋が息を潜めて弁解する。
「でも、もともとこいつが椋をさらったのが悪いんじゃない!
ま、殺し合いをしてた私たちを助けてくれたことには感謝してるけど…」
バーサーカー・レクイエムに冒されていた時の記憶は、ぼんやりと杏の頭に残っていた。
妹を殺すなどと、一時でも考えていた自分を思い返すと背筋が寒くなる。
「まったく…なんなのよ、あのペンダントは…」
杏が恨めしげに呟く。
「これのこと?」
勝平がバーサーカー・レクイエムのチェーンを掴んで目の前にぶらさげてみせた。
「ちょっと!やめなさいよっ、そんな物騒なものっ!」
「だいじょうぶだよ、宝石の部分に常に触れていなければ問題ないみたいだから。
じっと見てると引き込まれそうになるけどね…」
黒色の宝石を覗き込む。
吸い込まれそうな漆黒の中に、自分の顔が反射していた。
「そ、それ…いったい何なんでしょう…?人の心を操るなんて…」
椋が宝石から後ずさるようにして身を反らす。
「これ、『光』っていうんだよ、知らなかった?ボクの銀弓や、椋さんたちの辞書も光らしいね」
「光…?で、何なのよ、それは」
「さぁ?ただ、ボクはこの『光』のお陰で今ここに生きているってのは確かだけどね」
勝平が背中の銀弓にチラリと目を遣る。
死の淵から蘇ったときのことが脳裏に浮かんだ。
椋と杏の戦いを止めに入ったあの時。
確かに勝平は力尽きて倒れたはずだった。
温熱療法により抑えられた癌細胞が、銀弓に貫かれたことで再発したのだ。
彼の体の酷使は、とっくに限界を超えていた。
しかし、彼は再び立ち上がった。滾る力と共に。
それは何故か。
勝平には一つの心当たりがあった。
(ボクがアポロンの銀弓を発現させたとき…頭の中に銀弓の使い方が朧げに浮かんできたっけ…)
光の所有者はその能力を自然と認知することができる。
勝平も、ことみに光を発現してもらった時に、その能力を感じていたのだ。
アポロンの銀弓は、自分(勝平)を倒す可能性がある者を探し、その者により強い力を与える目的で目覚めた能力。
一度射られれば、高熱・意識薄弱状態に陥り、生命の危険に晒されるが、
その者が癌細胞に認められる器の持ち主だった場合には、「新たなる力」が与えられるという…
(ってことは…ボクには新たなる力ってのが備わっていることになるんだけど…)
勝平がじっと自分の手のひらを見つめる。
目に見える変化はまだなかった。
「勝平ってば!!」
耳元で杏が大声をだした。
「うわ、なにっ!?」
「なに、じゃないわよ!さっきから椋が呼んでるじゃない!ぼけーっとしちゃって!」
「お、お姉ちゃん…!そんな乱暴な言い方…」
椋が杏をなだめる。
「なに、どうしたの、椋さん」
勝平が椋に向き直った。
「あ、あのですね…っ」
椋がもじもじと目を伏せる。
「あの…すいませんでした…」
そう、頭を下げていた。
「え…?」
予想もしていなかった言葉に勝平は思わず面食らってしまった。
「や、約束していました…勝平さんの病気が良くなるまで、私が勝平さんを支えると…
でも…勝平さんは癌が脳にまで転移して…普段の勝平さんじゃなくなってしまって…
見ていられなかったんです…そ、それで…私は勝平さんの元から離れてしまいました…」
俯いて目に涙を溜める。
「勝平さん、昨日言ってました。
君は朋也くんに心変わりしたんだろうって…私、そんなつもりじゃなかったんです…
でも…私のせいですよね…勝平さんが悪い人たちの仲間になっていたのは…
わ、私が、勝平さんを傷つけてしまったから…」
そう言って嗚咽を漏らした。
「違う…違うよ…元はと言えば、ボクが両足の切断手術を受けなかったから悪いんだ。
足が無くなっても支えになってくれるっていう、椋さんの言葉を信じられなかったボクが…
そのせいで癌が全身に転移して、理性を失なって…結果、椋さんを傷つけてしまった…」
勝平も自分を責める。
「ごめんね、椋さん」
心から、そう詫びた。
「あ、あの、やめてください…!謝らなきゃいけないのは私のほうですから」
椋も再び頭を深く下げる。
「いや、悪いのはボク…」
「あんたたち、いつまでやってんのよっ!」
杏が見るに見かねて二人の間に割り込む。
「結局、誰が悪いわけでもない、病気が悪かったってことでしょ!
だったら、もう一度やり直すってことでいいじゃない。うん、決まりね!」
杏が二人の手を掴んで無理やり握らせる。
「はい、仲直り、と。でも勝平、今度椋を泣かせたらその時は…分かってるわよね?」
杏がにこやかに微笑みかける。
「う、うん。約束するよ」
勝平も引きつった笑顔で応える。
「勝平さん…改めて、よろしくお願いします…」
椋が顔を赤らめて勝平の顔を見た。
「こ、今度こそ…ずっと一緒にいましょう…何があっても、ずっと…!」
「うん…そうだね。ずっと…!」
二人がじっと見つめあう。
「あ!」
その時、杏が小さく叫んだ。
「いいもの見つけたわっ!」
指差すその先には―――駐車場に停められた1台のバイク。
距離にして数メートルといった所だったが、バイクの近くを見張りの番外衆がうろついていた。
「あれに乗ればうざったい兵士たちを蹴散らして逃げ切れるわよっ!」
「で、でも、どうやってあそこまで…?見張りがたくさんいますし…」
「強行突破に決まってるじゃない」
杏が危険な雰囲気を漂わせる。
「やるしかないね」
勝平も頷く。
そして三人は物置の扉を一気に開け放った。
「見つけたぞっ!柊勝平とその仲間だ!」
すぐに番外衆たちが三人に向けて銃を構える。
しかし、勝平の放つ矢が彼らを射抜く方が早かった。
「ぐわっ!」
悲鳴を上げて倒れ伏す番外衆たち。
「杏さんっ!今のうちにバイクを!」
「分かってるっ!しめた、鍵が付けっぱなしよ!」
ブルンと音を立て、バイクが息を吹き返す。
「さあ、椋、勝平、乗って!振り落とされないようにしっかり掴ってるのよっ!」
杏が俄然やる気を出す。
「さ、三人乗りなんかして大丈夫なんでしょうか…」
怯える椋を無理やりバイクに乗せると、杏がグリップを捻った。
ぺーっぺっぺっぺ!
「待てっ!きさまらっ!」
番外衆たちの声を背に、バイクはトップスピードで病院の出口へと向かう。
「そ、そういえば、絵画迷宮というものが病院を囲んでいると聞いたんですけど…」
「だいじょうぶ、絵画迷宮は病院への侵入を拒む結界だから、
病院から出るものに対しては効果を発揮しない。一度出たら病院に戻ることはできないけどね」
2,3会話を交わすうちに、出口の門が近づいて来ていた。
「大変ですっ!だ、誰か追いかけてきますっ!」
椋が緊張した声を張り上げた。
「嘘でしょ?三人乗っているとはいえ、全速力で走ってるのに、人間が追いつけるわけ…」
振り返る先には、人間離れしたスピードでバイクを追ってくる、漆黒のレザーコートに身を包んだ少女の姿。
「一之瀬ことみだ!」
勝平が叫ぶ。
「ことみ!?昨日も朋也を狙ってた…!あいつはやばいわっ!勝平、なんとかしなさいよっ」
「今やってるっ」
しかし、勝平の射る矢は全てギリギリの所で交わされる。
ことみとバイクの差は、徐々に詰まりつつあった。
「こ、このままじゃ追いつかれますっ」
「もっとスピード出ないのっ!?」
「無理言わないでよ!三人も乗ってたらこれが限界っ…!」
杏も必死にアクセルバーを握り締める。
「……」
(三人乗っていたら…か…)
勝平は一人考えていた。
『今度こそ…ずっと一緒にいましょう…何があっても、ずっと…!』
先ほどの会話が脳裏に蘇る。
「椋さん…」
覚悟を決めて、傍らの椋に呼びかけた。
「は、はい…?」
「ごめん…これしか方法が思いつかなかったんだ…」
「え…?」
「…どうか、元気で…!」
その言葉の意味を理解する暇はなかった。
勝平の体が宙に舞う。
途端、バイクの速度が上がった。
「お、お姉ちゃん、止めてっ!勝平さんがバイクから落ちましたっ!」
「えっ!?」
しかし、バイクは次の瞬間には出口の門を通り抜けていた。
(よし…これで椋さんがいくら頑張っても、絵画迷宮の効果で病院に戻ってくることは出来ない
あとは、ボクが一之瀬ことみからどれだけ時間を稼げるかだ。せめて、彼女たちが遠く離れるまでの時間を…!)
「どいて欲しいの、勝平くん…彼女たちの『光』の回収がまだだから…」
ことみが勝平の前で足を止めた。
勝平がため息を一つ吐く。
「どうやらボクは…幸せな未来ってやつとは縁が無いみたいだね…
もっとも、小川クンを殺したボクに、そんなものを手にする資格があるとは思えないけど…」
新たな矢を番える。
「ただ…ここだけは…この門だけは…通すわけにはいかない」
「文字通り、死んでも…!」
◆病院内駐車場
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』『バーサーカー・レクイエム』44マグナム
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、『コミック力場』、くまのぬいぐるみ
◆病院外
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい、バイク
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、ルガースーパーレッドホーク9in
85話では時系列は過去でしたが、この話の冒頭に、物置内で時間を潰したので、これで現在に追いついたということになります。
あと、くまのぬいぐるみは一之瀬ことみが持っているんですよね?いつの間にか所持品から消えていたみたいです。
なんかいろいろGJ!
なんかいろいろ意味わかんネーヨ
646 :
名無しさんだよもん:2005/07/13(水) 21:53:25 ID:fTRHqDJD0
がん ばれ!
「この門だけは通すわけにはいかない…?」
一之瀬ことみが勝平の言葉を反芻する。
そしてクスリと微笑んだ。
「ああ、そういうことだったの。それがあなたの得た『新しい力』…」
意味ありげに呟いてみせる。
「何だって?どういうことだ!?」
「…ずっと、不思議には思っていたの。
あなたの脳を支配していた癌細胞は高熱により死滅した。だからあなたは理性を取り戻し、
椋ちゃんを助けるためにMIOに反旗を翻すことができた。ここまでは理解できるの。
でも、銀弓に射られたことであなたの癌は再発したはずなの。だったら、理性は再び失われるはず…
しかし、今のあなたはさっきの台詞で分かるように、理性を保った状態のまま…つまり…」
言葉をきり、勝平の反応を面白そうに確かめる。
「それこそが『新しい力』ということなの。
癌細胞は、あなたの器を認め、あなたにひれ伏した…
だから、理性を保ったまま、癌の再生能力を自在に使用することができるようになったの。
でも…わたしの考えが正しければ…その力は同時に、決定的な弱点をも生じさせたはずなの」
ことみがゆっくりと視線を勝平の頭に動かす。
「脳、か…!」
「ご名答なの。理性を保てるということは、同時に脳が癌化していないことを意味するの。
すなわち、脳には癌細胞の再生能力が及ばない…一度破壊されたら二度と再生することはないの」
嘲るような笑みがことみの顔に浮かんだ。
「愚かなの…高熱以外には無敵の『全身再生』が、恋愛感情に絆された結果、失われることになるなんて…
人間らしい感情、愛情…聞こえは良いかも知れないけれど…それらは冷静さを失わせるの。
冷静を欠いたものに勝利はない…結局、感情なんかに頼るのは、心が脆い弱者のすることなの」
ことみが、うつむいたままの勝平に罵詈雑言を浴びせる。
「どうしたの、勝平くん?弱点が出来たのが、そんなにショック?」
可笑しそうに勝平を覗き込む。
「…良かった…」
勝平がポツリと呟いていた。
「え?」
「ボクは…いつまた理性を失うかと…そして、椋さんを傷つけるようなことをしてしまうかと…
ずっと不安で…心配で…!再び癌に支配されて、暴走するくらいなら…自分で命を絶つしかないと…そう思っていた…」
勝平の目から涙が溢れていた。
「でも…生きていいんだ…!もう理性を失うことがないのなら…椋さんの傍らで、ずっと暮らしてもいいんだ…!
だったら…これ程嬉しい『力』はない!」
目をゴシゴシと拭う。
涙を拭ったその目には、強い光が宿っていた。
「一之瀬ことみ…もう時間を稼ごうだなんて思わない。
ボクはキミを倒す。椋さんとの…『これから』を守るために!」
再び弓をキリキリと引き絞る。
「そう…。わたしとしても、もうあなたを研究材料として生かしておく理由は無くなったの。
あなたとの殺し合い、喜んでお受けする次第なの」
漆黒のレザーコートが翻った。
その下には黒光りするイングラムM11。
ことみの指が引き金に伸びる。
「おそいっ!」
勝平の声。
太陽の光を受けて銀の矢羽が煌く。
幾本もの銀線がことみに向かって伸びていった。
(勝った!)
勝平は確信していた。
アポロンの銀弓による攻撃は、掠っただけでも相手を癌に至らしめる。
勝平の放った、無数の矢の葬列。
避ける場所は何処にもないはずだった。
だが…一之瀬ことみは笑っていた。
(この程度?)
微かに動いた口は、そう物語っていたような気がした。
ことみが僅かに体を反らす。
さっきまで頭があった場所を矢が通過していった。
風圧でことみの髪がそよそよと揺れる。
無駄のない、最小限の動きで、彼女は全ての矢を避けていた。
まるで矢が通る道筋が見えているかのように。
(そんな馬鹿な!)
勝平が驚きのあまり口を開く。
「ごぼっ…」
しかし、言葉の代わりに口からは大量の血が吹き出していた。
無数の弾丸が勝平の胴体を吹き飛ばしていたのだ。
支えを失った体は病院の外壁にもたれ掛かり、ズルズルとずり落ちていく。
「そんな馬鹿な、とでも言いたそうなの」
ことみがゆっくり近づいてくる。
傷は既に再生を始めていたが、攻撃を避けられたショックで勝平は未だ立ち上がれないでいた。
「き、キミは…ボクの矢の軌道を完全に読んでいる…でなければ避けられるはずがないんだ…!」
呼吸を整えながら必死に言葉を吐き出す。
「だけど…っ!放たれた矢の軌道を読むなんて、人間にできるはずはない…!
ま、まさかキミは…人間じゃないのか…!?」
勝平が化け物を見るかのような目でことみを見た。
「その質問は、なかなか難しい問題点をはらんでいるの」
ことみが囁いた。
「ねぇ、勝平くん…」
大きな瞳が勝平を映し出す。
「もし、肉体は人間で…脳がコンピューターの存在がこの世にいるとしたら…『それ』は人間?それとも…」
一旦言葉を切る。
不気味な光がことみの目に宿った。
「それとも、人間を超えた存在…?」
「…っ!その存在というのは…!」
「そう、わたしのこと。わたしの頭に内蔵された人工知能は、未来の技術の粋を結集させて作られたもの。
そして、MIO本部内の集積回路とも密接にリンクしているの」
あくまで淡々と、ことみが説明を続ける。
「あなたの視線や筋肉の動きに始まり…矢の射出角度、周囲の環境、天候、風の向きに至るまで、
必要とされるデータを瞬時に集積回路に転送、演算を行い、結果をはじき出すと…」
ことみが勝平を見下ろす。
「この結果になるの」
ざわざわと、病院を取り囲む森が揺れた。
「この回避能力の前に破れたのは、有紀寧ちゃんについであなたで二人目。
だから恥じることはないの。もともと無理な話なのだから…ただの人間がわたしに勝つなんて」
「だ、だけど…!」
勝平が口を開く。
「例え矢の軌道が読めていたとしても、体が人間だっていうんなら…
キミみたいな女の子が反応できるはずは…!」
「なら、もう一度試させてあげるの」
ことみが小首を傾げて見せた。
「試す…!?」
「この至近距離から、もう一度わたしに攻撃を仕掛けてみればいいの」
「な、何だって…!?」
あまりの発言に勝平が言葉を失う。
無理もないだろう。彼とことみの間の距離は、1メートル程しかないのだから。
(罠…?でも、この好機を逃すわけには…)
ことみが両手を後ろで組んだまま首を傾げる。
まったくの無防備状態だった。
勝平の喉がゴクリと鳴る。
そして―――
ドォン!
44マグナムの、爆発音の様な銃声が、周囲の山々に木霊する。
「!!」
そして、勝平の目に写ったのは、変わらず微笑みを浮かべている一之瀬ことみの姿だった。
勝平の手がガクガクと震える。
マグナム銃を撃った反動のせいではない。
1メートルの距離で放った弾丸が避けられる。
決定的な力の差を目の前で示されたことによる絶望。
それが勝平の平静を奪ったのだ。
「う、嘘だ…!」
「信じられないのも無理はないの…わたしの外見はただの女の子だから…
至近距離での発砲に反応できないと思ってしまうのも、至極もっともなの」
「はぁっ…はぁっ…」
勝平の呼吸が荒くなる。
遠い。余りにも遠すぎる。
これが二帝。これがMIO。
その前では癌細胞の力など、愛の力など、ひどく無力に思えた。
「人間の脳には、『30%の限界』があるの」
ことみが言葉を続ける。
「本来、成人男性の筋肉は、両腕で500キロの物を持ち上げる潜在能力を秘めているとされるの。
でも普段、脳はその力を30%以下にセーブしている…本当に愚かしいことなの。
一方、わたしには…人工知能には、そんな機能はないの。常に100%かそれ以上の力を使うことが出来るの」
哀れみを含んだ瞳で勝平を見下ろす。
まるで、自分に挑んだ愚かな人間を諌める神のように。
「矢や弾丸の軌道を読む『頭脳』と、卓越した『身体能力』…
これがあなた達『人間』と、『人間を超えた存在』であるわたしの、決して埋まることのない差なの」
ことみがコートの中に手を伸ばす。
出てきた手には、再びイングラムが握られていた。
「勝平くんは良く戦ったの。でも、ここが人間の限界…
意識的に脳のリミッターを外すことすらできない下等な存在の限界点…
わたしに一撃を与えることもなく、あなたは死ぬの」
そう言い捨てて照準を勝平の頭に合わせた。
(駄目だ、負ける…もう、打つ手はない…)
勝平は頭を垂れたまま覚悟を決めていた。
(癌細胞の再生能力を持っていようが…所詮ボクは人間に過ぎない…こいつには勝てないんだ…!)
必死に自分に言い聞かせる。
死を少しでも納得して受け入れようとするかのように。
しかし、その時―――
『今度こそ…ずっと一緒にいましょう…何があっても、ずっと…!』
唐突に、椋との約束が脳裏に蘇った。
それは生に対する勝平の未練を象徴したものだったかもしれない。
(椋さん…)
ふと、愛する人の顔を思い浮かべる。
(ここでボクが死んだら…次に狙われるのは椋さんたち…!だ、駄目だ!それだけは…!)
勝平がゆっくり面を上げる。
一之瀬ことみと目が合った。
「どうしたの?たかが人間が…まだわたしに勝てると思っているの…?」
「人間じゃあ、キミに勝てないと言うのなら…!」
勝平が拳を握り締める。
その手の中には、いつの間にかペンダントが握られていた―――
「ボクは化け物にだってなってやる!!」
―――力を渇望する者を求める、黒色の宝石が。
「バーサーカー・レクイエム!?」
ことみが短く声を上げる。
そして間髪射れずにイングラムの引き金を引いた。
ばららららっ!!!
しかし、弾丸が勝平の頭蓋を貫通することはなかった。
「!?!」
勝平の体はことみの腕を潜り抜け、彼女の懐の中にあった。
(至近距離での銃撃の回避…30%の壁を…人間の限界を…超えた…
自らを凶戦士化することで、脳のリミッターを…!?)
「うぁあ゛あ゛あ゛ーーーーっ!!!」
大地を震わす咆哮。
勝平の右拳がことみの腹部を打っていた。
◆病院内駐車場
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』『バーサーカー・レクイエム』44マグナム
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、『コミック力場』、くまのぬいぐるみ
おいおい、燃え展開だよ!
おーすげえ。
100話目前にして熱い展開ですな
GJ
「…読み切ったの。人ではわたしに勝てない。ならば、人を捨てたものに勝利など、尚更あるはずがないの」
腹部を押さえながら、ことみが呟く。
――地に倒れ伏した、勝平に向かって。
バーサーカー・レクイエムの力を以って身体能力のリミッターを外し、ことみに襲い掛かった勝平。
初撃こそ、ことみの動揺によって命中させられたものの、そこまでだった。
理性を捨てた攻撃はそのどれもが単調かつ直情的だった。
威力がどれほど凄くても、当たらなければ何の意味も無い。
勝平の起死回生の作戦は瞬く間にことみによって計算され、解析された。
拳は空を切り、地を抉るばかりだった。
何とかことみに肉薄するも、再び鉛弾をその身に浴び勝平は大きく吹きとばされた。
その拍子に、握り締めていたバーサーカー・レクイエムを手放したのだろう。
自らの血反吐の中、勝平は夢を見ていた。
最初に感じたのは、微かな違和感。
足の怪我なんて、それこそ山のように経験してきたし、今回も似たようなものだと思っていた。
よく、転ぶようになった。
時折痛みを感じるようになった。
…走れなく、なった。
絶望して、病院を抜け出して…。
“男らしく生きる”なんて、訳の分からない目標に縋った。
そして、ボクは…。
『…こそ…ずっと……何が……も…!』
血反吐と理性と痛みの狭間で、声を聞いた。
懐かしく、新しく、優しく、厳しく、そして――強い、声。
ボクが愛した人。――藤林、椋さん。
椋さんは、何と言った?
『今度こそ…ずっと一緒にいましょう…何があっても、ずっと…!』
そう、一緒にいましょう…そう言ったんだ。
そうだ…ボクは…こんな、ところで…!
とどめを刺さんと勝平に迫ることみの足が止まった。
地に伏した勝平の手が、ぴくりと動く。続いて足。
「まだ、動けるの」
「………さっき、キミは言ったよね…冷静を欠いたものには勝利はない…悔しいけど、全くその通りだ。
全くどうかしてた。こんな、ものに頼ったら…椋さんのところには行けないじゃないか…!」
バーサーカー・レクイエムを投げ捨て、立ち上がる。
「…愚か。人ではわたしに勝てない。人を捨ててもわたしには勝てない。
あなたがわたしに勝つことはできないの。不可能なの。不可解なの」
心底呆れたといった口調でことみが吐き捨てる。
改めて銃口を勝平の方へと向け――硬直した。実に不可解なの。
(どうする…?弓は通じない。バーサーカー・レクイエムも通じない。銃弾は残り少ない。ボクに打つ手は…あるのか?)
頭を振る。駄目だ。あるか、ないかじゃない。勝つ。勝たなければ、いけない。
(考えろ。ボクにできること。ボクだからできること。ボクにしか、できないこと)
先程の夢が脳裏をよぎる。そこで思い至った。柊勝平だからできること。柊勝平にしか、できないこと。
―――簡単じゃないか。
勝平は構えた。彼の戦闘フォーム。
即ち――クラウチングスタート。
「…理解はできないけれど、これ以上あなたに付き合っている暇もないの。さよなら、なの」
ことみがトリガーを絞る。
それが合図。いつもと同じ、合図。
「!!」
銃口が火を吹く。地面が弾ける。駆ける。風が吹く。
煙の向こうに、勝平の姿は無かった。
「嘘…!」
思考が追いつかない。否、思考は追いついている。勝平は単に“速く走っている”だけだ。
だが、捉えることができない――!
衝撃。勝平の体当たりがことみを弾き飛ばす。倒れ伏すことみ。そして、見下ろす勝平。
地を転がり、すぐさま体制を整えなおすことみ。その視線が、勝平の脚と足元に注がれた。
夥しい出血。赤黒い肉が脚に走った裂け目を繋いでいる。
「癌細胞の再生能力…そういうことなの。確かにその方法なら肉体の性能を100%引き出して行動することができる…。
だけど、どうやって脳のリミッターを外したの…?そんなこと、意識的にできる筈がないの。理解、不能なの」
「意識的…?そんな必要、ない。だってボクの魂は…この身体全体に宿っているんだ…!
機械に、MIOに脳を身体を支配されたお前なんかには永遠に理解できるものか!」
(想いを力に変える、それが光。なら、この不可解な現象も、光のせいだというの…?)
一之瀬ことみは明らかに狼狽していた。
柊勝平。こんな人間の何処に、これほどまでの力…想いがあるというのだろうか。
叫び終えると、勝平の身体がわずかに揺らいだ。癌細胞の支配から脳が解き放たれた弊害だ。
再生能力は確かに働く。だが、勝平は傷の痛みも普通に感じるようになっていた。
そこにきて肉体のリミッターを外した運動の連続。恐らくもうあと何回も同じ動きはできないだろう。
だけど、倒れるわけにはいかない…!
再び構える。何度も繰り返してきた、構え。
見つめる先は一之瀬ことみではない。さらにその先…愛しいあの人のもと。そこが、ゴール。
「これがボクの…」
ラスト・ラン
「男の意地だッ!」
◆病院内駐車場
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』『バーサーカー・レクイエム』44マグナム
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、『コミック力場』、くまのぬいぐるみ
かなりGJ
661 :
'ヽ/ヽ:2005/07/15(金) 20:29:49 ID:vFJApFqQ0
おいおいっ
カッペの意地ww
本編で見せてほしかった
なんにせよGJ
ズドン!ズドン!ズドン!
手に持たれたマグナム銃からは幾度も白煙が立ち込め、走る先を完全に読んで撃った筈であるのに鉄の玉はまったく勝平をかすりすらもしない。
(おかしいの。そんな力もないはずなのに。絶対にあっちに行く筈なのに)
予想もしていなかった勝平の力にあきらかにことみは動揺していた。
「やああ!」
数十メートル先にいたはずの勝平がいつのまにか左手側から突進してきている。
「甘いのっ」
とっさに手首をひねって引き金を引く。
再び銃口からは白煙が立ち上げているが目の前に勝平の姿は見たらない。
「そこだ!」
どん!
いきなり腹部に衝撃が走り、思わず手に持っている銃から力が抜ける。
(ありえないの。今のをかわしたっていうの?!)
手から離れたマグナム銃は弧を描いて病院の噴水の中に音も立てずに沈んだ。
(今ならっ)
バックステップで距離をとり、とっさにことみに背中を向けぐっと足に力をこめる。
足元がアスファルトであるにもかかわらず、ぶわっと砂埃がたち、勝平の姿が徐々に遠ざかっていく。
「くっ、させないの」
胸ポケットのハンドガンをとっさにとり、勝平に銃口を向ける。
が、たちあがった砂埃が勝平の姿を捉えさせることを拒んだ。
「してやられたの」
砂埃がはれ、体勢を立て直したころにはすでに勝平の姿はなかった。
(ここで始末できなかったのはイレギュラーなの。でも困ることはないの。アポロンの弓の力くらいならいつでも始末はできるの)
パッパッと服の埃をおとす。
「とりあえず、ここは一度体勢を立て直す必要があるの」
地面に落ちたレザーコートを拾って羽織ったときにその異変に気が付いた。
「?!」
ないのだ。
確かにあるはずのものがないのだ。
「まさか、さっきの体当たりのときに」
ことみの奥歯でぎりっと音がした。
「はあ!はあ!」
全速力で病院の敷地外へと抜け出し、追っ手がこないことを確認すると近場の瓦礫の隙間に身を隠した。
「はぁ、はぁ、はぁ」
徐々に先ほどの傷も再生してきて体のほうもだいぶ楽になってきた。
(ああ、ボクは生き延びられたんだ)
生き延びられたという安堵感と藤林姉妹はいったいどうなったんだろうかという不安が一気に襲ってくる。
「椋さん…」
ガラッ
(!?)
近くの建物の瓦礫が崩れ、思わず銃口をそちらに向けた。
「はっ?!」
いきなり目の前には目測でも野球のピッチャー並みのスピードが出ているであろう辞書が飛んできた。
「うわっ!」
とっさのところで何とかかわした。
こんなことができるのは…。
それは自分にとって一番よく知っている人の姉。
そしてそのそばには最愛の人がいる。
「…勝平…さん?」
「椋さん!」
「え!勝平?!」
次のエモーションに入っていた杏はとっさに動きを止めた。
勝平は手に持った銃を投げ捨てて二人の元に走った。
「勝平!あんた馬鹿じゃないの!一人であんなバケモノと戦おうなんて!」
近づくや否や杏から罵声を浴びる。
でもその目には大粒の涙が浮かんでいた。
「勝平さん…本当によかった…」
「椋さん…」
ぐすぐすと涙を流しながらも椋は勝平の目線を離すことはなかった。
「しかし、あんたよく生きてられたわね」
「お、お姉ちゃん」
「はは、これも椋さんのおかげだよ」
「そ、そんなこと…私は何もしてないですし」
とたんに椋の顔が真っ赤になった。
「それに一泡吹かせることもできたしね」
と、肩から下げているバッグの中に手を突っ込み、それを取り出した。
春原の光『コミック力場』を。
「柊勝平…今度会ったときには絶対に始末するの」
◆廃墟の町
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい、バイク(ガス欠)
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、ルガースーパーレッドホーク9in
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』、『バーサーカー・レクイエム』、『コミック力場』44マグナム
◆病院内駐車場
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、くまのぬいぐるみ
中途半端に理解してかいたから変な部分がいくつかあったりするかも(´Д`;)
ごめ、↑3/3ね
乙
ただバイクはガス欠にする必要無かったんじゃないか?
あと何でマグナムをことみが使ってるんだ?
書いておいて何ですけど、こっからの繋ぎは難しいだろうな…と思ってました。
GJです!やっぱりここは一旦退くのが正解ですよね。
>>667 所有品に多数の武器と書いてあるので、設定上は問題ないでしょう。
イングラムは弾切れになった、ってことで。
>>667 完全にこちらの読み違いでした(汗
ま、まぁ多数の武器とあるんでその一部としておいてください
それとバイクをガス欠にしたのはそうしたほうが瓦礫の隙間あたりに隠れている理由くらいにはなるかなと思ったからです。
説明不足でスマソ
勝平を逃がしたのは一つの正解だと思うけど、勝平を殺すのもアリだったとは思う
このスレでは、臨戦→逃走ってパターンが多いけど、そろそろ人を減らしても良いのでは?
クラナド戦記はハカロワとかと違って登場人物が少ないから、
元々長く続けることには向いてないんじゃないかと思うよ。書き手さんも少ないしね
今回の勝平なんかは十分段階も踏んでたし、ある意味殺すチャンスだったんじゃないかな?
>>670 大体胴衣。
でもちょっと前の春原のこともあるし、登場人物が少ないからこそ殺すときは慎重になるべきだなと思う。
一応メインキャラは一通り生存してるし、なんとか全員生還に持って行きたいって気持ちもあるな。
>>一応メインキャラは一通り生存してるし
あれ・・・?
おかしいな、確か一人・・・
だ、ダメだ!思い出せない!?
誰かも言った気がするけど、これは既にただのロワモノじゃないと思う
もちろん、考えなしに殺すのは一番マズイ行為だと思う。
だけど、反射的に、とりあえずキャラを生かしとけってのもどうかと俺は思うんだ。
そのキャラが辿って来た道筋、流れ、今後の展開、全てを丁寧に考慮した上でなら、
死なせること、を今より積極的に選択肢に入れてもいいんじゃないかな…
なんだかよくわかんないけど、行くよっ!
677 :
名無しさんだよもん:2005/07/17(日) 05:38:31 ID:1KSg0n9Z0
生かす殺すっていうか、これ別に殺し合いさせる必要ある話じゃないんだよね
ロワはどうしても殺さなきゃいけないから、生かすか殺すかの2択になるんだけど、これはそうじゃない。
ロワ経験者とか読者が多いから勘違いしやすいけど、そこはちょっと頭に入れて欲しいな
もちろん、キャラを殺すなって言ってる訳じゃないよ。
別に無理して殺さなくてもいいんだが、
>670が言ってるように臨戦→逃走ってパターンをあまりにも多用しすぎると、
違和感が出てくるのも事実。
企画の趣旨としてはともかく、キャラ達がやっている事は殺し合いなのだから、
遅かれ早かれこの問題は表面化したかも。
クラナド戦記という物語の性質や、書き手さんの人数なんかを考慮すると…
そろそろ、物語を拡げるのではなく、物語をまとめることを考える時期に入ったのではないかと思う。
キャラを生かすにしろ殺すにしろ、各自、終わりの形を意識した話作りをした方がいいかも試練
結局まとめサイトはどうなったんだろう…
やっぱ
>>611ってことだったのか…
真相は管理人さんのみぞ知るって所だろう。その件はもう忘れた方が良いと思う
ただ、92-93話のトラブルが、書き手間の価値観の相違から起こったものなのは間違いない
だからこうしてお互いの価値観を確認・修正していくことは必要なんだろうね
おいおい!の精神には反するかもしれないが…
お、おいおいっ!
意味わからねぇよっ!
(彼ら…町の住民たちには、得体の知れない力があるの…
愛とか…友情とか…そんな非科学的な力を信じたくはないけれど…
でも、そうでなかったら、わたしが勝平くん如きに遅れをとるはずがないの…)
じっと、佇み、思いを巡らせる一之瀬ことみ。
やがて彼女は小さく笑い声を漏らした。
「上等なの…!だったらこちらにも考えがあるの…」
ことみは踵を返し、病院内に戻っていった。
***
地下壕の薄明かりの中。
先ほどまで賑やかだったその場所は、今や古河一家と仁科を残すのみとなっていた。
「ずいぶん寂しくなってしまいましたね」
早苗が頬に手を当てる。
「かっ、野郎共!もっと景気良く行こうぜ!いやっほーーぅ!!」
秋生が無駄に大きな声を出していた。
「そうですっ!今は私達が仁科さんを守らなければいけません。寂しいとか言っている暇ないですっ!」
渚も元気な声で言う。
「渚は強い子ですねっ!」
早苗がそんな渚を見て微笑んだ。
「朋也くんに情けない所、見せられないですから。
いつ朋也くんが戻ってきても怒られないように、ずっと頑張っていたいです、えへへ」
渚も照れ笑いを浮かべる。
「ふん、軟弱な小僧のことだ。今頃、脅されてMIOの仲間になってるんじゃねぇのか?」
「朋也くんはそんなことしないですっ!」
秋生の悪態に、渚が頬を膨らませて言い返す。
「ええ、渚が好きになった人ですからねっ!再会の時が待ち遠しいですね、渚っ」
早苗がにっこり笑った。
渚も満面の笑みでそれに応える。
「はいっ!」
***
無機質な信号音と共に自動扉が開いた。
大画面のモニターが放つ眩い光が薄暗い廊下にまで差し込んでくる。
そのモニタールームに、ことみは足を踏み入れた。
部屋の奥のソファ。
膝を立てて座りながら、じっと画面に見入っている男の姿があった。
「朋也くん、何を見ているの?」
ことみが声をかける。
「ん…ああ、ことみか…」
ふと、我に返ったかのように視線を画面から外した。
そこには、町で起こった様々な出来事の記録が映し出されていた。
「この映像がそんなに興味深いの?」
ことみが更に尋ねる。
「まぁな…」
再びモニターに視線を戻す。
「なぁことみ…こいつら、馬鹿だよな…」
ポツリと呟いていた。
「?」
ことみが小首を傾げる。
「仲間だとか…家族だとか…そんな物のために頑張って、血を流して…俺には理解できないな…」
モニターには血まみれになって戦う秋生や芳野の姿が映し出されていた。
「誰かのために戦う、とかさ…ウザいんだよな…
皆で力を合わせるだとか、吐き気がするような台詞を良く口に出せるよ…
俺なら絶対こんなことはしない…いや、したくても出来ないのかもしれないけどさ…」
無表情な目でぼんやりとモニターを眺める。
「俺には記憶もないし…愛想もない。気の利いたことだって言えない。
この映像のやつらみたいに、仲間ってのと、上手く付き合っていくことなんて出来ない種類の人間だ…
無難に人間関係をこなしたり、他人に気を遣ったり…そういう器用なことが出来る連中とは遠いところにいる…
結局、駄目な人間なのは俺の方なんだろうな」
自虐的に笑ってみせる。
「そんなことはないの」
ことみがきっぱりと言っていた。
「朋也くんは優れた人間なの。
わたしはあなたを…あなたの孤独を、理解してあげられる…
あなたは、『愛』とか『友情』とかいう概念を妄信し…他者との繋がりを求めなければ生きていけないような、弱い人間とは違う…
わたしたちは、あなたみたいな選ばれた人間を探していたの」
「ことみ…」
ことみが大きな瞳で朋也を覗き込む。
「朋也くん、それを証明してみない?
あなたこそ『強者』で、彼らが本当の『弱者』だということを…!」
レザーコートの中から一丁の拳銃を取り出し、朋也に差し出した。
「あいつらを殺せってのか?」
朋也の目はじっとことみの掌の拳銃に注がれていた。
「そう、朋也くんならきっと出来るの」
「……」
朋也はゆっくりと瞼を下ろした。
『私たちがきっと…あなたを教え、導くから』
ことみは記憶を失った自分に、そう言ってくれた。
そして、彼の孤独を理解してくれた。
ことみの言葉には、心を落ちつかせる魔力がある。
それでいて、ウザったい繋がりを朋也に強いろうとはしない。
…彼女の隣は、居心地が良かった。
再び瞼が開いた時、
朋也の両眼は、かつてない邪悪な光を放っていた。
手を伸ばし、ことみの差し出す銃を掴む。
「どうせ暇だしな。殺ってやるよ、ウザい連中を」
ソファから立ちあがり、じっと銃の表面を見つめる。
「それで暇が潰せるのなら、有意義なことだと思うしな」
朋也がそう言い捨てた、その時。
モニターに、ある少女の顔がアップで表示された。
朋也の目が少女に釘付けになる。
「これは…」
「ああ、これは杉坂さんが学校内で消滅したときの監視カメラの記録なの。画面に映っている子は…」
ことみが意味ありげに言葉を切る。
朋也は食い入るように少女の顔を見つめていた。
残された杉坂の衣服にすがり、泣きじゃくる少女の横顔を。
「この子の名前は…古河渚」
「ふるかわ…なぎさ…」
確かめるように呟く。
「知っているの?朋也くん…」
ことみが朋也の様子を伺う。
やがて、朋也はゆっくりと視線を画面から外した。
「いや、知らない…ただ…」
徐に銃を持ち上げる。
「俺はこういう泣き虫でグズグズした奴が、一番嫌いなんだよな」
銃口を画面の中の渚に向けた。
バァン!!
けたたましい銃声。
モニター表面の液晶が床に飛び散った。
画面が暗転し、モニタールームに闇が訪れる。
「あいつも、殺してやるよ」
闇に支配された部屋の中で、朋也の目が殺気を帯びて鈍く光っていた。
一之瀬ことみが妖しく微笑む。
「愛する二人の再会…とっても、とっても楽しみなの」
◆病院(MIO本部)
001 岡崎朋也 所持品:数点の武器
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、くまのぬいぐるみ
◆レストラン跡地(地下壕)
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ/勝平細胞による暴走状態 所持品:なし
欠番 ウェイトレス(=未来の仁科りえ)/存在が消滅しかけ 所持品:店から持ってきた物資
なんだかよく分からないけど、モニターの修理代は経費で落とすよっ!
意味わかんねえよっ!
春原「選ばれし者だったのに!」
ダークサイドに堕ちたか朋也…
いくら探しても公子は見つからない。
仁科の死が差し迫っている今、公子にこだわって時間を浪費している暇は無かった。
探すのを諦めた祐介達3人は、一ノ瀬邸へ全速力で走っていく。
「わっ」
芽衣が転んだ。銃器が大量に入ったリュックのせいで頭からいってしまう。
コンクリートの歩道だったので、非常に痛そうだった。
大人達の全速力は芽衣には早すぎたのかもしれない。
「大丈夫か?」
「いたた・・・だ、大丈夫です!」
芽衣は胸を上下させ、ひゅーひゅーと変な音が喉の奥から聞こえていた。
「お前は戻った方が良い・・・こういうことは大人にまかせろ」
芽衣は不機嫌そうな顔で祐介を見つめた。
「もう、大人とか子供とか関係ないんじゃないでしょうか?私は・・・この町を元に戻したい。あんまり知らない町だけど、私にとって大事な町なんです。だってお兄ちゃんが暮らしてる町なんですから!」
まだ中学も卒業していない芽衣の言葉。
祐介はその言葉を聞いて、力が湧いてくるような気がしたと同時に、自分達の町がほめられていることが、なんだか・・・嬉しかった。
「そうか・・・よし!リュックはここに置いていけ。銃は一丁あれば良い。」
「はい!」
そして、三人は一ノ瀬邸へ着いた。
一ノ瀬邸はリビングも台所も庭も普通の一戸建ての一階である。
その状況は古河家が来たときと、何も変わっていなかった。ただ一点を除いて。
テーブルを囲むように存在する3つの椅子の一つ。
そこにパイプを吸って、煙を吐く、まだ幼さが残る青少年が座っていた。
「誰だ・・・?」
「勇・・・組のものからは鉄砲玉の勇と呼ばれてる・・・今は」
勇は突然テーブルを3人に向かって蹴り飛ばした。
不意をつかれた祐介と美佐枝はテーブルをもろに顔面に受けてしまう。
少し後方にいた芽衣は当たらなかった。が、それは幸運だったのではない。
「番外衆の勇」
ドスを腰に添えると芽衣に向かって突っ込んできた。
芽衣はグロック18Cを構えると、勇に向かって撃ちはなった。
「全然撃ち方がなってねぇな」
勇は鉄砲に全くひるまない。
弾は天井に突き刺さっていた。芽衣は反動に耐えられず、こてっと壁に倒れ込んだのだ。
そこに、勇の感情をもたない鋭い刃が芽衣の肝臓あたりに入った。
刺さった後、勇はずぶずぶと体重をドスにのせていく。
「芽衣!」
祐介は勇に飛びかかっていった。だが、ひらりと避けられ、芽衣の首にドスをつきつける。
「動くな。動くとこいつを殺す」
「あんた、なんて卑怯なの」
「まあな、でもよ。俺みたいに殺す技能を持たないやつはこうするしかないんだよ。もう戻れない・・・姉ちゃんはこの道を行ったら戻れないことを一言も言ってくれなかったけどな」
勇は芽衣のグロック18Cを奪い取ると、片手で構えた。
「当たりにくいが・・・至近距離で撃ちゃあはずさねぇだろ」
その時、壁に寄りかかっていた芽衣がよろよろと立ち上がった。
「まだ動けたのか・・・だけどどうするつもりだ?足の感覚が無くなって痙攣してる。もうそうなったら動けないはずだ」
芽衣は憮然とした表情で大きく手を広げ、勇の前に立ちふさがった。
血がしたたり落ちて、水たまりができていた。
「私が・・・守ら・・な」
「なんだ?」
「陽平お兄ちゃんの町、私が守らなくちゃ!」
芽衣は拳銃を奪おうと、腕にしがみついた。
「な!?」
「美佐枝さん。撃って!」
「馬鹿いってんじゃないわよ!あんたに当たるでしょうが!?」
「いい!」
(なんだ。こいつはなんでこんながむしゃらに自分の命なんて省みないことができるんだ。)
その時、声が聞こえた。
『あなたも昔はこうだったはずなの』
(俺が・・・?)
『あなたの場合はお姉さんだった』
麻薬でほとんど空洞化した脳に、あるはずのない記憶が蘇ってきた。
それは姉ちゃんを助けようと不良のたまり場に入っていった記憶だった。
その時の彼には勇気があった。
(でも、それならなんで俺は・・・こんなことをしているんだ)
だんだん思い出してくる。
(あの不良の二人が楽しそうだった。二人で楽しそうに馬鹿をやって、お互い信頼していたんだ。それが、楽しそうでずっと彼らの不良達と入り浸っているうちに学校を休むようになって、そいつらと姉ちゃんと一緒にずっと楽しく過ごせると思った。
だけど、姉ちゃんが大学に入学するときにはほとんどの仲間はいなくなってしまった。
そう、彼らはただの遊びだったんだ。
だけどそれが悔しくて、ずっとずっとそこにいて、麻薬に手を出して、俺はヤクザになった。あのとき、俺の心が強かったら・・・)
茫洋とする意識の旅が終わると、目の前の芽衣は地面に突っ伏して動かなくなっていた。
「お前!」
祐介はぼおっとした視線を続ける勇から芽衣を引きはがすと、胸に耳を当てた。鼓動が止まっていた。
祐介は制服のボタンをはずすと、胸に手を打ち、人口呼吸を始めた。
「おい!生き返ろよ!なんでこんなに早く死ななければならないんだ!」
「このバカ!なんで・・・なんでよ!」
勇は襟首を掴まれ、揺さぶられる。
襟首は美佐枝の涙で濡れていた。
「お前は大切にされてるんだな・・・」
そういうと、皮膚をつまみ、何かキラリと光るものを取り出した。
それを芽衣の方に投げあげる。
腹部の傷が水に液体窒素を混ぜたように一瞬で凍り付いていく。
それと同時に祐介が心臓マッサージをする手から、鼓動が伝わってきた。
「げほ!ごほ・・・」
芽衣の息がふきかえった。
「あんた、何やったの?」
「ナノマシンだ。超ミクロ技術と量子半導体でつくられた原子レベルのハイテク医療器械。俺は本来これを使って不死身の肉体で戦うことになっていた・・・だけどもうやめだ。」
祐介はみるみる塞がる傷口を見て、これなら仁科を助けることができるかもしれないと思った。
勇は立ち上がった。そして、庭から外へと歩いていく。
「お前どこにいくんだ?」
「さぁ・・・」
勇は茂みの中に去っていった。
麻薬に犯された彼の脳はナノマシンで保たれていた。もうナノマシンが無い彼の体はほとんど動かなくない。ふらふらと雑木林を歩いていくと、ふと大きな木の下に体を傾ける。
「姉ちゃん・・・なんでいなくなったんだよ」
彼は目を閉じると、涙を流して眠っていた。
◆レストラン跡地周辺
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:『ラブアンドスパナ』含む工具一式
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
欠番 未来の勇 所持品:無し
芽衣の銃器はあまりに量が有りすぎたので、リュックか何かに入れていたと判断しました・・・
おいおい!!
意味わかんねえよっっっっ!!!!!!
故・乾が一ノ瀬邸に探しに来ていた「何か」はナノマシンだったってわけだねっ
伏線回収しつつ仁科復活のフラグも立ってGJだよっ!
勇なんてやつ原作に出てたっけ?
さあ?やっちゃったかもね
グランチャーでも出しますか?
>>勇
ゆきねえシナリオのガキではなかったか?
そろそろテストおわる〜(  ̄ー ̄)
(`・ω・´)
試験は終わったものの、続きが思い浮かばない…
てか、まとめサイト無いと書きづらい…
「う゛…」
力なく横たわる仁科を芳野がそっと抱き起こす。
「本当にそいつで治るのかよ」
秋生が胡散臭そうに見守っていた。
芳野一行が一之瀬家から無事帰ってきたのは、つい先刻。
芳野の右手には、一之瀬家から持ち帰ったナノマシンがあった。
「こいつは瀕死の芽衣を助けてくれた代物だ。俺はコイツを信じる」
芳野が仁科の制服の裾を捲くる。
覗く腹部には、毒々しい紫色の皮膚が広がっていた。
「待ってろ、今助ける…」
キラキラ光るナノマシンを患部に近づけた。
ジュッ!
何かが焼けるような音がして、患部から煙が上がる。
「ぐ…うぐ…っ!」
仁科が体を苦しそうに捩る。
全身が熱を発し始めた。
「お、おい…大丈夫なのか!?」
一同が心配そうに見守る中、不意に、仁科ががくりと頭を垂らした。
「仁科さんっ!?」
渚が緊張した声を上げる。
「彼女なら、もう大丈夫ですよ」
穏やかな声がうろたえる皆を制する。
ウェイトレス・仁科だった。
さっきまで不安定だった体は、はっきりと実体を取り戻していた。
「私の体が回復したということは、現代の私の容態も安定期に入ったということでしょう。
皆さん、本当にありがとうございました。何とお礼を言えばいいのか…」
そう言って頭を下げた。
「礼なら芽衣に言ってくれ。あんたのために、町のために、命を懸けて戦ったんだ」
芳野が顎で芽衣を指した。
「芽衣ちゃん、どうもありがとう」
「そんな、私はただ夢中だっただけで…それに、私も仁科さんには命を助けてもらいましたからっ」
芽衣が照れて頬を赤くしていた。
「さて…こうなると、あとは伊吹先生が心配よね」
美佐枝が首を傾げていた。
「すぐ戻ると仰っていたんですが…出てから大分時間が経ちますね」
早苗も眉を顰める。
「ったく、どこ行ったんだか…MIO本部に突入する算段を立てなきゃいけないってのによ」
秋生が舌打ちした。
「そのMIO本部突入の件だが…」
芳野が口を挟んでいた。
「あん?」
「そもそも、何故俺たちはMIO本部を目指していたんだ?」
「何故ってそりゃあ…」
秋生が言葉を探す。
「MIOが悪い奴らだからに決まってるじゃない。あいつらを倒さないと、この戦いは終わりそうにないし」
美佐枝が代わりに答えていた。
「そうだな、だが…何も焦って突入しなくてもいいだろう?」
芳野が腕組みをして言葉を続けた。
「公子さんの話では、病院への侵入を拒む『絵画迷宮』は今日の真夜中にその効力を失うそうだ。
今突入するとなると、敵が待ち受けるだろうわずか一本の抜け道を進まなければならない。
だが、今日の夜以降ならば、好きなルートを辿り、病院へ駒を進めることが出来る。
ならば、突入は夜以降にするのがベターだろう」
「それもそうね…何も危険な橋を渡らなくてもいいのよね」
美佐枝が頷く。
「ふん、今俺もそう言おうとしてたがなっ!よし、じゃあ本部突入は明日未明にするかっ」
秋生の言葉に皆が口々に賛同の声を上げた。
ただ一人を除いて。
「それじゃだめですっ!!」
渚が声を張り上げていた。
「古河さん…?だめって、何が?」
「今日の夜を過ぎたら遅いんです!早く…今すぐ行かなきゃだめなんですっ」
「お、おい…意味が分からないぞ。何故今すぐじゃなきゃだめなんだ?」
芳野が困惑した表情を浮かべる。
「えっ…!そ、それは……何となく…です」
「何となく…?理由もないのに危険地帯に行けっていうのか?」
「いえ、理由はあるんですっ…ええと…っ!」
渚自身も、なぜ、今すぐ行かなければならないのか分からないでいた。
しかし無性に、そう言わずにはいられなかったのだ。
「えっと…!」
必死に記憶をたぐり寄せる。
その時、おぼろげな記憶の中に、小さな少女のシルエットが写った。
顔は見えない。しかし、腕に抱えた星型の彫刻には見覚えがあった。
星…?
いや…
「ヒトデですっ」
渚は叫んでいた。
「ヒトデを持った女の子が、捕まっているんです!その子は私たちの仲間で…早く行かないと殺されてしまうんです!」
必死に皆に訴えかけた。
しかし、一同は首を傾げ、顔を見合わせあっていた。
「古河さん…ヒトデの女の子なんて、あたし知らないわ…」
「私も知りません…」
「みなさん、忘れているだけですっ」
渚が必死に食い下がった。
「全員が一度に、特定の仲間の存在を忘れるなんてことが…あるとは思えないが…
そのヒトデの少女が実在したという証拠はないのか?」
芳野が訝しそうに渚の顔を見た。
「証拠は…ないです…
で、でも…本当なんですっ!信じてくださいっ!
その子は…とても小さくて…可愛くて…いい子だったんですっ
そんな子が、病院で一人助けを待っているんですっ!!」
悲痛な叫びが地下壕に響き渡った。
しかし…
反響が止んだ後に渚に向けられたのは、可哀想なものを見るような、冷たい視線だった。
「なあ、渚さん…疲れているんじゃないか?しばらく休んだ方がいい…」
芳野が渚を労わり声をかけた。
「無理もないわ…突然こんな過酷な環境に放り出されたんだもの…高校生の女の子には限界でしょうよ」
美佐枝も同情の視線を渚に投げかけた。
「え…っ?私、別にどうもしてないですっ!疲れてもいないですっ!信じてくださいっ!」
「いいから、少し休むんだ」
芳野が渚をひょいと担ぎ上げた。
そのまま、隣の仮眠室へと連れて行こうとする。
渚がもがきながら必死に叫ぶ。
「信じてください!本当なんですっ!だ、誰か…っ!」
「ああ、分かった、信じるから、今は休むんだ」
芳野が適当にあしらって部屋を出て行った。
その時―――
「待て」
それまで沈黙を守っていた秋生が口を開いた。
「ん、どうした?」
芳野が渚を抱えたまま戻ってくる。
「お、お父さんっ!私、嘘なんてついてないですっ」
悲痛な声をあげる渚に、秋生がゆっくりと微笑み返す。
「ああ、分かってるよ」
今度は芳野が面食らう番だった。
「あんたまで…正気なのか?
捕らわれた仲間が助けを待っていて…それを俺たち全員が忘れているなんて夢物語を、信じるのか」
「信じる」
寸分の迷いもなく秋生が答える。
「この子の言葉が、もし、嘘だったなら…俺たち全員の命が危険に晒されるんだぞ?」
「渚は嘘なんかつかねぇよ」
娘への信頼に満ちた揺らぐことのない言葉に、芳野が思わずたじろいだ。
「……こんなことは言いたくないが」
言葉を濁す。
「渚さんがMIOの手先で…俺たち全員を陥れようとしている可能性も…」
ガタンッ!!
突如芳野の体が吹っ飛び、机を巻き込んで地に倒れる。
秋生の拳が、芳野の頬を撃っていた。
「秋生さんっ!!」
「てめぇ…!!適当なことぬかしてんじゃねぇぞっ!!」
怒りに満ちた目が芳野を射抜いた。
芳野が静かに切れた唇を拭う。
「…知っているか?この町の高校に、坂上智代という生徒がいた…」
突然、芳野が語りだした。
「彼女は成績も優秀で、全校生徒からの信頼も篤い、生徒会長だったそうだ。
だが、そんな彼女ですらMIOの手に落ち…相楽達を襲う刺客となり…徳田と言う同校の生徒すら殺害したらしい。
つまりは…敵に人の心を支配し、操る力がある以上…むやみに人の言うことを信じるのは得策でないと、そう俺は言っているんだ。
この中の誰かがMIOのスパイである…その可能性はゼロじゃないんだ」
ゆっくりと体を起こした。
「そんなこと問題じゃねぇ…っ!」
秋生が声を張り上げる。
「いいか…敵の本部に、幼い俺たちの仲間が捕らえられてるかも知れねぇんだぞ!!
そいつは、たった一人で…死を待つだけの状況の下で…来るかも分からない助けを待ってるかもしれねぇんだぞ!!
それがどれだけ辛いか…寂しいか…てめぇには分かんねぇのかよっ!?
仲間が助けを待ってる可能性が、たとえ1%でもあるのなら…そいつを見殺しになんてできるかっ!!」
その言葉に、芳野の目が微かに見開かれる。
だが、放つ言葉は変わらなかった。
「それでも、俺には出来ないな。
俺とて…捕らわれた仲間が確かに実在しているというのなら、命を賭けて助けに行くことには何の未練もない。
だが、確証もない不確かな情報のために、チーム全員の命を危険に晒すことは…出来ない。
それが俺の答え…俺の愛だ」
断固たる決意を秘めた目で秋生を睨み返した。
「そうかよ…なら、お前は来なくていい!てめぇら、行くぞっ!!」
一同に声をかけて出発しようとする。
しかし、その声に応えて席を立ったのは数人だった。
「お前ら…!」
美佐枝、芽衣、ウェイトレス仁科は未だ席についたままだった。
「未来の仁科…お前も残るのかよ」
「すいません…私は芽衣さんを置いていくことはできません。土方店長に芽衣さんのことは頼まれていますし…すいません」
そう言って何度も頭を下げた。
「ちっ…結局来るのはうちの家族だけかよ…
もういい…仲間を見殺しにするのが『家族(CLAN)』だって言うんなら、俺たちは…『CLAN』を抜ける!」
秋生が言い捨てて出て行こうとする。
「ま、待って!私も、連れて行ってください!渚さんが行くというのなら、私が行かない理由はありませんっ」
その時、ソファで寝ていた現在の仁科が体を起こした。
「よく言った、仁科。それじゃ、てめぇら…短い付き合いだったなっ!」
階段を上がり、4人は外へ出て行った。
途端、ぐすっと芽衣がしゃくり声を上げる。
「わたし達は…間違っているんですか…?仲間を、見殺しにしているんですか…?」
涙声で訴える。
「いいえ。これはどっちが間違っているって問題じゃないわ。仲間を想う気持ちは同じ…だけど信じる道が違ったのよ。
両方、正しいのよ。それはたぶん秋生さんも分かってるわ」
美佐枝が芽衣の頭を撫ぜる。
「どっちにしろ、公子さんが帰ってきたときにここに残っている人がいないと困るし…それに…」
続く言葉を言いかけて、美佐枝は口を噤んだ。
「それに…何ですか?」
「う、ううん。なんでもないわ」
(それに二組に分かれていれば、もし待ち伏せがいて古河さん一家が殺されても、わたし達が戦えるしね)
そう言いかけた言葉を、美佐枝は心の奥に仕舞い込んだ。
年端も行かぬ女の子に突きつけるには、余りに過酷な言葉だからだ。
「大丈夫よ。すぐにまた皆で笑い会える時が来るわ…きっと」
祈るように、そう、つぶやいた。
◆地下壕
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:『ラブアンドスパナ』含む工具一式
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
欠番 ウェイトレス(=未来の仁科りえ) 所持品:店から持ってきた物資
◆町
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ 所持品:不明
なんだかよくわからないけど、GJだよ!
話は数時間前に遡る。
辛くも一之瀬ことみの魔手から逃れ、病院の外へと脱出した春原。
何だかよく分からないけど行くと決心してから既に1時間余りが過ぎようとしていた。
「…うーーーーん」
瓦礫に腰掛け、唸る金髪。
「いやさ、そりゃあ僕だって今すぐ乗り込みたいよ?でもさぁ…」
独り、虚空に言い訳する金髪。
「やっぱ厳しいって!いくら僕が運動神経抜群で頭も良くておっぱい美女にモテモテだからって、あんなバケモノ相手にはできないよっ」
引きつった笑いを浮かべ、病院を見上げる。
「……はぁ、何でつっこまないんだよ、岡崎」
お前、冗談は顔だけにしろよ。
何時も隣に居た少年の、悪戯っぽい声。いくら耳を澄ませても、聞こえることはなかった。
代わりに聞こえてきたのは……。
ぺーっぺっぺっぺ…
「…なんか、凄く嫌な予感がするんですけど」
ぺーっぺっぺっぺ…
音は次第に大きくなり…
べすん!!
「あーっ、もう!」
「どうしたの、お姉ちゃん!?」
「なんか瓦礫轢いたみたい。急いでるってのに!……よし、タイヤに異常はないか」
「……勝平さん、大丈夫でしょうか」
「心配してもしょうがないでしょ。ほら、行くわよ」
「そんな…」
「はぁ…椋、あのバカの気持ちに応えてやる最大の方法…分かる?」
「…逃げて、生き延びること」
「そーゆーこと。ほら、しっかりつかまってなさいよっ」
ぺーっぺっぺっぺ…
遠ざかっていく。
後に残されたのは、顔に見事なタイヤ跡をつけた馬鹿ひとり。
「……って、僕のことは無視っすか!」
顔面から突っ込まれたにも関わらず、存在を認識してもらえないというのもある意味凄い。
服についた埃をはたきながら、立ち上がる。
「……勝、平?」
バイクに乗っていた少女達よりも、彼女達が口にしていた名前の方に意識が向いた。
勝平。柊勝平。小川を殺し、自分が命を賭して葬ったと思っていた存在。
「あの野郎…生きてやがったのか…」
気がついた時には、体は既に杏達が出てきた方向――病院へと向かっていた。
そこで、見てしまった。
一之瀬ことみと対峙する勝平の、その姿を。
聞いてしまった。
魂の奥底から吐き出された、その想いを。
愛する人を守るため、何度倒れ、傷ついたとしても立ち上がる。
人間離れした動きを見せる一之瀬ことみ。それに追い縋り、超越せんと咆哮する勝平。
いつしか、勝平が倒れる度に息をのみ、拳を握り締める自分に気付いた。
(あいつは、小川を殺したんだぞ…!敵なんだ…!)
そう心の中で呟いても、体の震えは止まらなかった。
春原の目に映っていたのは、狂気の笑みをたたえた狂人でも、無慈悲に人を殺す悪魔でもなく――愛するべき人のために全てをかける、男の姿だったから。
戦いは、勝平の“勝利”で終わった。
忌々しげに息を吐いた一之瀬ことみが去り、病院には先程までの静寂が戻ってきていた。
存在を気付かれぬよう身を隠していた茂みの影で、春原はようやく一息ついた。
「……確かめるしかない、よな」
身を起こし、勝平達が去っていった方向へと走り出した。
勝平達は、案外すぐ見つかった。少し行った先、瓦礫の裏から楽しげな声が聞こえてきた。
近づいていくと、長い髪を翻して少女が瓦礫の影から姿を現した。
「これ以上近づいたら、命は…って、陽平じゃない!アンタ、こんなとこで何やってんのよ」
何時もと変わらぬ冷ややかな口調が、今は嬉しかった。
杏に連れられ、瓦礫の裏に移動した。
そこには、泣き笑いの表情を必死に隠そうとする椋と――柊勝平が、いた。
「………」
言葉も無く、見詰め合うふたり。
親友なんて呼べない、だけど他人だなんて思えない、一人の少年の顔が浮かんだ。
(分かってるよ…!こいつがもう、昔のあいつとは違うんだってことくらい…!)
あの戦いを見れば分かる。
「…いいよ、ボクを殺しても」
暫くの間の後、勝平はそう告げた。
「勝平さん!?」
全てを受け入れた瞳で春原を見つめる。
「ちょっと勝平!」
「ふたりとも、手を出さないでほしい。これは…いつか清算しなきゃいけなかったことだから」
懐から黒光りする銃を取り出し、春原に差し出す勝平。
「……くそぉっ!!」
それを振り払い、勝平の顔を殴った。
鈍い音が、拳を伝わる。
「…それだけで、いいの?」
「いいわけあるかよっ!だけど、だけどなぁ…あんなもん見ちまったら…もう、何もできないに決まってるだろっ!!」
「……ほら、立てよ」
先に沈黙を破ったのは、春原だった。
倒れている勝平に手を差し伸べる。
「…………ありがとう」
その手を取る。
「…もう、いいってぶはぁぁぁ!!!」
勝平が見上げる先――春原の頭には、三千世界が見事にめりこんでいた。
「何だかよく分からないけど、妹の彼氏に手ぇ出してタダですむと思ってんのかしらねぇ〜?」
「お姉ちゃん…」
「……ぷっ、はははっ!」
場が笑いに包まれる。
そこはもう、彼らの日常だった。
「…………僕、無茶苦茶真面目だったんですけど」
「ゴメンゴメン。ほら、これあげるからさ。機嫌直してよ」
言うと、勝平は先程一之瀬ことみから奪い取ったバッグを投げてよこす。
「何故だか分からないけど、それはキミのものだと思うんだ」
バッグを開けた途端に飛び出してくる光――コミック力場。
春原の身体に吸い込まれていった。懐かしい感覚。
「それ、ひょっとして陽平の“光”?」
興味深げに近づいてくる杏を見て、春原は思い出した。この力の凄さを。
「ふふふ…藤林杏!!さっきはよくも人の頭をどついてくれたよなぁ…」
凄んでみせる。
「あァ!?」
「ひいっ!!……ごほん、もうそんな脅しは通用しないぞっ!僕の力を見ろっ!はぁぁぁ!!」
Z戦士よろしく、気合を入れる春原。みるみるうちに金髪が逆立ち、金色のオーラを纏った。
「うそっ!?陽平が穏やかな心を持ちながら激しい怒りに目覚めたっ!?」
「食らえっ、藤林杏!これが僕の怒りだあーーーっ!!」
殴りかかる春原。避ける杏。拳が、杏の背後にあった瓦礫を捉えた。
べきっ
「……え?べきっ…?瓦礫ってさ、砕ける時にべきっって音がするの?」
「…陽平、自分の手見てみ」
視線を落とす。
「………ってなんじゃこりゃあああ!!!」
見事に血まみれ。
「ノォォォーーーッ!!」
のたうちまわる。
「………はぁ」
三つのため息が、見事に重なった。
◆廃墟の町
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい、バイク(ガス欠)
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、ルガースーパーレッドホーク9in
004 春原陽平 応急処置済み 所持品:無し(上着に癌細胞)『コミック力場』
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』、『バーサーカー・レクイエム』、44マグナム
光・コミック力場(弱)
気合を入れると髪の毛が逆立って金色のオーラを纏うことができる。
身体能力の向上、エネルギー弾の使用なんて期待してはいけません。こけ脅しにはなるかも程度。
93話で力の殆どを無くしたという設定だったのでこんな感じにしてみました。
伏線や因縁の回収の仕方とか、めちゃめちゃGJ!
春原と杏の掛け合いもいいねぇ
722 :
前スレ535:2005/08/02(火) 23:07:28 ID:Aq7tO5re0
ご無沙汰すみませんでした。
先月、2ch嫌いの嫁に私がここに入り浸っていることがバレまして、
即刻アカウント削除と全ログ消去、2ch出入り禁止を命じられたもので・・・
いま嫁の留守中の目を盗んで書いてはいますが・・・たぶん定期的には
来れないさそう。
会社で酒飲まされてちょとフラフラなんで寝ます。
おいおい!
意味わかんねえよっ!
102、103話ときて、段々キャラも集まってきた感じだな。
>>722 大変そうだが、頑張れ!
>>723 今はお前が頼りだ、頑張れ!
>>722>>723ッ!君たちの心意気に、僕は敬意を表するッ!
でも家族が第一なんで、くれぐれも無理はしないで
奥さんにこのスレ…というかこの板見られたらきっついよなぁ…
何だかよく分からないけど、行くよっ!
素朴な疑問なんだけど、光って13個集めたら何が起こるん?
サードインパクト
いまさらながら
>>678に同意
「臨戦→逃走ってパターンが多い」って誰かが言ったけどそのとおりだと思うな
今までトムとジェリーみたいに敵と味方が追っかけあいを続けてきたけど
CLAN陣営でもMIO陣営でもいいから、さすがにそろそろ13個の光を集めきって新展開を起こしてほしいと思う
今ってなんかフリーザ一味とZ戦士がドラゴンボールの渡しあいしてるみたい
秋生組が病院に向かったし、そろそろ最終決戦と考えてもいいんじゃない?
光集めきるのはそれこそ本当に最後に回したほうがいいと俺は思うけど…
てか、そもそも光が発動してないキャラってもう残ってなかったっけ?
早苗
美佐枝
智代もまだだしことみの光もよくわからんね。
アスファルトを駆ける四つの足音。
その主は秋生の率いる一団だった。
「秋生さん、絵画迷宮の抜け道の場所は、把握しているんですか?」
「ああ、ここに地図がある。伊吹公子がマーカーで抜け道の場所を示した地図がな」
そういって地図をヒラヒラと振って見せた
「あ…」
その時、渚が小さく声を漏らした。
「どうした、渚」
「いま…誰かの声が聞こえたんです。このステッキを通じて」
渚がレイジングヒトデをぎゅっと握り締めた。
「渚…その声は、何て仰っていましたか?」
「ええと…」
一瞬ためらい、そして口を開いた。
「早く、おねぇちゃんが危ない…と」
***
「はぁ…はぁ…」
大きく肩で息をする伊吹公子。
かたや、対峙する坂上智代は汗一つかくことなく、涼しげな顔をしている。
「元二帝とあろう者が…嘆かわしいな、私の攻撃を避けるだけで精一杯じゃないか」
「…くっ…!」
「そのゼウクシスの魔筆とやら…使ってもらっても構わないんだぞ?もっとも…」
そう言うが早いが、智代の姿が公子の視界から消えた。
「使う暇を私が与えればの話だが」
次の瞬間には、公子の懐の中に智代の姿があった。
その体が翻る。
智代の銀髪が公子の頬を撫ぜた。
(回し蹴り…!!)
そう気づいたときには、既に公子の体は智代の蹴りを腹に受け、宙を舞っていた。
木に叩きつけられ、ずるずると落下していく。
「…!今の感触は…」
智代が怪訝な顔をする。
足元に、ボトリと円形の盾が落ちた。
その表面にはくっきりと智代の足型が残っている。
「とっさにシールドを張って致命傷を避けたのか。腐っても鯛、と言ったところだな」
ぱんぱんと服についた埃を掃いながら言った。
「ぐ…っ」
公子がゆっくりと身を起こした。
(シールドで防御してもこの威力…!で、でも、彼女の攻撃にはとっさに対応できた…
ついていけないスピードではないわ…)
「今の攻撃に対応できたからといって、勝機を見出したつもりではないよな?」
智代の言葉に、ぎくりと公子が身を固める。
「今の回し蹴りは、フェイクだ。別の目的を遂げるための…な」
そういって握った右手を差し出して見せる。
「……!!ま、まさかっ!?」
慌ててポケットを弄る公子。
しかし、『あるべきモノ』はそこにはなかった。
「何を探している?もしかして、これか…?」
ゆっくりと右手を開く智代。
そこに、燦然と輝く『光』があった。
「……っ!!」
驚きに公子が言葉を失う。
「私の『光』、確かに返して貰ったぞ。
そして同時に、お前の勝機は――そんなものが最初からあったのか分からないが――完全に潰えたわけだ」
返す言葉もなく、うな垂れる公子。
「うん、まぁ…同情するぞ、伊吹先生。せめてお前が…『上級魔法』を使えたならば、幾分マシな戦いは出来ただろうにな」
その言葉に、公子がハッと面を上げる。
「なぜ、そのことを…!」
「なに、一之瀬ことみから聞いただけだ。元々、『ゼウクシスの魔筆』と『レイジングヒトデ』は、二つ合わせて一つの『光』。
どちらか片方だけでは、せいぜい非戦闘魔法や拘束魔法などの、殺傷能力の低い『低級魔法』しか使えない。
魔筆で描いたものにレイジングヒトデで更なる魔力を加えることで初めて、その真の力、『上級魔法』を使えるんだろう?」
智代が言葉を続ける。
「お前はその強力な『上級魔法』の力を買われて二帝の地位にまで登りつめたんだろうが…
愚かだったな。妹を助けるために、自らレイジングヒトデを手放し、『上級魔法』を失うとは」
そう、様々な刺客の攻撃から風子を守るために、公子はレイジングヒトデを風子に託した。
それは同時に、自らが強力な力を失うことを意味していたのだった。
「さて先生。おしゃべりはもうこれくらいでいいだろう…」
智代がゆっくりと公子との距離を詰める。公子は静かに目を閉じた。
(後悔は…していない。ふぅちゃんを助けるにはレイジングヒトデを手放すしかなかったから…
ただ、一つ心残りがあるとすれば…ふぅちゃんを助けられなかったこと…)
「ごめんね、ふぅちゃん…おねぇちゃんの力では、あなたを助けられなかった…」
一筋の涙が頬を伝った。
「こんなおねぇちゃんを、許してね…」
覚悟を決めた、その時だった。
「伊吹先生ですっ!!」
渚の叫ぶ声が聞こえた。
公子の場所から百メートルほど離れた森の入り口に、秋生たち一行の姿があった。
「渚ちゃん、レイジングヒトデを貸してっ!!」
突如現れた幸運の女神に向けて、公子が叫んだ。
「無駄だ。間に合わない」
智代には焦る様子もなかった。じりじりと公子に迫っていく。
「ピッチャー振りかぶって、第一球…」
「ん…?」
智代が入り口から聞こえた声に振り返る。
そこに、レイジングヒトデを握り締めて大きく振りかぶる秋生の姿があった。
「投げたぁーーーーっ!!」
絶叫とともに秋生の手からレイジングヒトデが放たれる。
ぱんっ!!
次の瞬間には、レイジングヒトデは公子の手中にあった。
智代の顔色がわずかに変わる。
「…!!だが、やはり無駄だ!
最初に言っただろう、魔筆を使わせる暇は与えないと!」
智代が地を蹴る。
しかし、公子は微笑んでいた。
「いえ、魔筆を使う必要はもうないんです」
そう言ってレイジングヒトデを掲げる。
と同時に、智代の動きが止まった。
「なに…!?これは一体…」
智代の周囲に、目に見えない壁のようなものが張り巡らされていた。
「足元を見てください。あなたは既に、私の敷いた陣の中にいます」
いつの間にか地面には奇妙な模様が描かれていた。
智代の立つ直径五メートル程の円を中心に、直線や曲線、数字、様々な文字が文字が広がっており、うっすらとした輝きを放っていた。
「お前、いつの間にこんなものを…!!」
「最初からです。あなたの攻撃を避けながらずっと、私はこの魔法陣を描いていたんです」
たじろぐ智代を前に、言葉を続ける。
「これは賭けでした。
いくら上級魔法のための魔法陣を描こうとも、レイジングヒトデが無ければ発動できません。
しかし、あなたに勝つにはこれしか…上級魔法しか無かった…
ですから私は、再びレイジングヒトデを手にするという奇跡に賭けて、魔法陣の準備をしていたんです」
高々とレイジングヒトデを掲げる。
「上級魔法… 『無限銃殺刑』」
公子の言葉とともにポツリ、ポツリ、と光が智代の周囲に現れ始めた。
やがて無数の光が智代を取り囲み、それらはゆっくりと形を変えていく。
数百、数千の銃が宙に葬列を作り、智代を完全に包囲していた。
「伊吹公子…たいしたやつだ…お前は…」
智代が呆然と言葉を漏らした。
「坂上さん…出来ることならあなたを殺めたくはありません。
しかし…あなたは変わってしまった。余りに多くの人を…殺しすぎました。
だから私はあなたを殺すことで…あなたの魂を…救います…!」
悲壮な決意とともに、最期の言葉を発した。
「汝の死を持って、汝の罪を赦す…執行」
言葉が終わると同時に、智代を囲む無数の銃が一声に火を噴いた。
幾重にも銃声が重なり、爆音のように鳴り響く。
降り注ぐ弾丸の雨が、智代のたつ地面を抉った。
「すげぇ…!お前、無敵じゃねぇかよ…」
公子の元へとたどり着いた秋生が感嘆の声をあげる。
「いえ…上級魔法の使用にはほとんどの魔力を持っていかれるので、諸刃の剣でもあります。
発動に制限を要するものも多いですし…例えば今の魔法は陣の中に敵を誘い込まなければ使えません。
しかし、それだけに威力は強烈です。いかに坂上智代といえども、これで…」
公子が思わず言いかけた言葉を飲み込む。
「これは…『桜』…?」
幻想的な光景が目の前に広がっていた。
無数の弾丸が巻き上げた粉塵の中で、桜の花びらがヒラヒラと舞っていたのだ。
「あん?なんでこんな所に桜があんだよ」
「いえ、これは桜じゃありません…!桜色の紙ふぶきです」
公子が一枚の花びらを掴んで言った。
「どうだ、なかなか綺麗だろう」
粉塵の中から響く声に、皆が一斉に身を固くした。
「そんな…馬鹿な…」
見開かれた公子の視線の先、そこに、坂上智代の姿があった。
左手に、桜色の折り紙の束を握っている。
「嘘…!どうやって私の攻撃を…!!」
「なに、私はただ千切っただけだ。この紙をな」
動揺する公子に向けて、ひょいと紙の束を持ち上げてみせる。
「紹介しよう。これが私の光、『ジークフリート』だ。
私はこの折り紙を破くことで、破いた枚数に比例した『力』を瞬間的に得ることが出来る。
今私は十枚の折り紙を千切ることで、お前の弾丸を全て弾き返すだけの力を得た。ただし、『あるもの』を代償にな」
「代償だと…!?」
「そうだ。この折り紙の枚数は、私が天寿を全うし、死ぬまでの年数に対応している。
最初は70枚あったから、10枚破いた今は60枚になったわけだな」
「まさか…!あなたの言う代償と言うのは…!」
「ああ、私は寿命を減らすことで強くなれる。それが私の『ジークフリート』の力だ」
まるで他人事のように淡々と、無感情に、智代が言ってのけた。
「寿命と引き換えに強くなるだと…!てめぇ、化けモンかよ!」
「そうです!それは余りに生命を愚弄しています!命の尊厳に対する…冒涜です!!」
秋生と公子が食って掛かる。
「お前たちは無知なだけだ…人を殺したことなどないんだろう?いいか…こいつを見ろ」
近くに転がっていた番外衆の遺体の下に近づいていき、足で遺体を裏返して見せた。
「こいつのような価値の無い命ですら…死の瞬間にはドラマがある。
万物は、その命が尽きる時こそ美しいんだ。まるで散りゆく桜のようにな…」
そう言って低い声で笑ってみせる。
「こいつ…!狂ってやがる…!」
気味の悪いものを見るような眼差しを向ける秋生を尻目に、智代がゆっくりと頭を上げる。
端正な顔の中で、狂気を秘めた目が爛々と輝いていた。
「さぁ、見せてくれ…お前たちの命が散る際に見せる、『桜』を…!」
◆森
005 伊吹公子 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:とくになし
018 仁科りえ 所持品:不明
017 坂上智代 所持品:『ジークフリート(残り60枚=智代の余命60年)』
【ジークフリート】
智代の光。形状は折り紙(の束)。
一枚破くごとに、一年寿命が減り、生きるはずだった一年間分のエネルギーを瞬間的に使うことが出来る。
折り紙の枚数は常に、ジークフリートを持つ人間の残りの寿命の年数に変化する。
つまり、例えば秋生が智代の寿命を減らそうとしてジークフリートを手にし、破いても、減るのは秋生の寿命である。
おいおい!!
意味わかんねえよっ!
743 :
名無しさんだよもん:2005/08/05(金) 09:09:51 ID:2dF8mMOPO
何だかよく分からないけど、行くよっ!!
>>723 いつのまにか更新されとる・・・
素晴らしく乙!!
>>731 リントホルストの壷も87話で偽物ってことになってるからな
746 :
前スレ535:2005/08/13(土) 17:04:27 ID:FoL19/EK0
>>723 申し訳ございませんなどめっそうもない。
俺が作るよりファッショナブルな造りですし。
消滅しますなどといわず
正式版として是非是非後をお任せしたいと思います。
代わりといっちゃ何ですが僕は秘密裏にコツコツと
なんちゃって紙媒体をやっておりました
ttp://www1.axfc.net/uploader/6/so/No_1626.zip.html (キーワードは clannad です)
ポプルスあたりにこのPDFを持ってけば
明日にでも紙媒体として印刷できるであろうことかな。
本当は今上がっている104話を全部ぶち込みたかったんですが
80話時点で356頁になったんで切りのいいトコでやめますた。
ぶっちゃけ感動した
748 :
名無しさんだよもん:2005/08/16(火) 06:52:20 ID:sNnuqMgw0
ミミ彡  ゚̄ ̄' 〈 ゚̄ ̄ .|ミミ彡 正直、感動した
よってage
お、おいおい!
セッ・・・拙者!拙者!イクでござる!ウッ!
>クラナド戦記・暫定ログ保管庫の人
幻想世界6(
>>219-222、ゆきねぇの話)が抜けてる。
>>751ってクラナド戦記最終話の台詞だよな、確か
なんだかよくわからないけど、拙者拙者詐欺だよ!
お、おいおい!
758 :
名無しさんだよもん:2005/08/24(水) 19:14:31 ID:L3yEd18m0
希望のage!!
759 :
名無しさんだよもん:2005/09/01(木) 22:01:46 ID:uZp+gQ7rO
あげあげ〜
760 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 00:40:37 ID:Zpe4c9OoO
最近誰も来ないな・・・
「はぁ」
ため息とともにその男が現れた。その場の誰もが知っている人影、岡崎朋也だった。
智代の後ろから、朋也が声を掛けた。
「てこずってるな、智代。お前らしくもない」
「うん、侮ると痛い目にあう相手だぞ。朋也、お前も油断するな」
何かに魂を奪われたような、冷たい声を二人は掛け合う。
「と、朋也くん…朋也くん、ですか?」
渚が恐る恐る智也に聞いた。
「そうだ」
「どうしたんですかっ!朋也くん、変です!」
「そうかい」
朋也の手には一丁の拳銃。一瞬の躊躇もなく、渚に向ける。
銃声が数発。
「あぶねえっ!」「あぶないですっ」
秋生と早苗が渚を庇うと、茂みに飛び込む。3人の頭上を弾丸が飛び去る。
「渚っ、今の朋也さんは危険です。何者かに操られてるみたいです」
「だらしない小僧だなおい!気付けにレインボーパンでも食わしてやろうぜ」
「ぐすっ…私のパンは…私のパンは…」
「お母さん、そんなこと言ってる場合じゃないです!」
「そうだ、呑気なことを言ってる場合ではないぞ」
見下ろす智代が立ちはだかる。即死の蹴りの構えをとって。
「待ちなさい…」
智代の背後に伊吹公子がいた。手には一振りの長剣があった。
優美なフォルムの西洋剣。鍔にはヒトデの装飾が施されている。
「あなたの相手はこの私です…」
「剣か…?またどこからともなく面妖な物を出したものだな」
「『レイジングヒトデ』『ゼウクシスの魔筆』の合体形態のひとつ、ヒトデソードです!」
「ふふっ…要するに、時間も空間も自在に操るあなたも、上級魔法とやらで魔力が尽きればそうして腕力に頼るしかないわけだ」
冷ややかな笑みを浮かべる。
公子が飛び出す。長剣の間合いに智代を捕捉する。ヒトデから伸びた刃が風を切る。突く。
ヒトデソードの切っ先が無数の弧を描く。
空中に壮大な絵画を刻むように、軽やかにそして快活に。
だが……。
「素人めっ…魔法の飾りを捨てたあなたなど、所詮その程度の使い手ということだ」
公子の描く弧に一瞬の遅れもなく、智代の腕が円を描く。
足さばきが智代を優美に舞わせ、また手刀が剣の腹を打ち、智代を狙う刃を反らす。
斬ることができない。流れる水を断つ刃などありはしない。
(この子…強すぎる!)
「話にならないっ!!」
鉛よりも重く、金剛石よりも硬く、弾丸よりも速い。
避けられない。
公子の顎に、智代の握りしめた拳がまっすぐに打たれた。
「ごぼっ…………」
公子の視界が暗転する。意識がどこかに吹き飛ばされた。
葬送の花束のように、いつしかそこには桜色の紙ふぶきが舞っていた。
「念のため、“一年分”の拳をくれてやった。いかに伊吹公子とはいえただではすむまい」
智代は足元の公子の手から、ヒトデソードを軽く蹴とばした。
カラカラと軽い音を立てて転がった。
***
一方秋生らは、断続的に続く朋也の銃撃にさらされている。
秋生の『ゾリオン』が赤い光弾を放つ。朋也の拳銃が火を噴く。
繰り返されるその応酬。
均衡を破ったのは秋生だった。
「小僧、そこだぁぁぁっ!!」
朋也のわきの茂みから、『ゾリオン』を構えた秋生が引き金を矢継ぎ早に引いた。
「な、なにーっ!か、鏡だとーっ!?」
「オッサン…あんたの『ゾリオン』は対策済みなんだよ」
光弾の弾痕の空いた制服を広げてみせる。上着の下には、朋也を守るように鏡が仕込まれている。
「さーて…俺の前に出てきたのは間抜けだなクソオヤジ。いくらあんたのスピードが人外だろうと、この距離で外しゃしないよ」
朋也の銃口は、秋生の額を正確に向けられている。
一瞬の躊躇もなく、引き金に力を込めた。
どすっ……
――――――朋也の背後から重みが突き刺さった。――――――
「ごめんなさいです…ともやくん…ともや…くん」
振り返ると、そこに渚がいた。
ヒトデの装飾が施された剣――ヒトデソードを握りしめる彼女が、朋也を刺していた。
「ごめんなさいです…でも…もうやめて…やめて…ください…」
迷いと決意と恐怖と後悔……多すぎる感情が渚の脳裏をめぐる。目から涙があふれ出た。
刺突の恐怖に、渚の全身から力が抜ける。力なくヒトデソードを手放す。精も根も尽き果てていた。
渚はひくひくと嗚咽しながら、両膝を地についた。
ヒトデソードの長い刃は、朋也の右肩から生えている。
こんな傷は致命傷には程遠い。いくらでも戦える。……それなのに。
「ぐああああああああああああああああああああああっ!!!!」
耐えがたい痛みに朋也は絶叫した。
右肩に錐を突き立てられたような、否そんな程度ではない。融けた鉛を注がれたような、そんな程度でもない。
「ぐうううっ!!ぐうふ!!ぐうおおお!!!」
この世で一度も感じた覚えのないような巨大な痛み。それが朋也の右肩に突然訪れたのだ。
(何なんだ…これはよ…!?俺の右腕に何が起こってるんだよ…!?)
「と…ともや…くん…? 痛かったですよね…ごめんなさい…ごめんなさいです…」
渚の声も朋也には聞こえない。右肩の痛み、それ以外になにも感じられない。
だが…朋也の頭の中のある冷静な一部分が、必死に考えをめぐらしていた。
(俺の右腕…なぜだ…ずっと昔から、すでに破壊されていたような気がする…!?
忘れていた…!なぜ俺は忘れていたんだ…?俺の右腕…破壊したのはいったい誰なんだ…!!)
***
「研究…か。いやぁ…悪いけど学問の発展なんてね、私はこれっぽっちも興味がないんでねえ…」
いつもの得体の知れない微笑とともに、リアカーを引いた直幸がひとりごちた。
荒野をしばらく歩く。遠くにはもといた岡崎家が見えた。
直幸は向き直り、ふうと息をついた。
リアカーの荷台を覗く。そこには大量の武器と――――一ノ瀬夫妻の研究成果を記した論文があった。
夫妻が同意していないことは言うまでもない。ひそかに持ち出してきたからだ。
「あの墜落事故から、論文とともに生還したあなた方の手際は見事だった…。
でもね…あなた方はMIOに協力しているわけでは決してない。生かしておけば、必ず災いの種になるだろう…。
早い話が…この『胡蝶』とあなた方の研究成果が手に入れば、もう邪魔でしかないってことだね…」
直幸が右手を柔らかく握りしめる。
すると手の中には、暖かな光があった。
白く澄み切った光の筋が幾本も、指の隙間から漏れている。
直幸はもと来た方向を見つめながら、握った右手を天空にかざした。
「………試させてもらうよ………」
右手をゆっくりと開くと、おごそかに直幸は言った。
クラナディック・カノン
「 幻 想 血 族 砲 」
直幸の手のひらに、まばゆく輝く光の玉が全貌を現した。
暖かな光。雪のように白い。
開いた手から、虫かごから放たれた蝶がはためくように、光はその目指す処へと飛び立ち――――
閃光。
遅れてやってくる衝撃。
ゴウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……………!!!!!
そして、その場のすべてを光が埋め尽くした。
人も、物も、思いも全部、真っ白に洗い流すかのように――――
「…………これが、私に流れる岡崎の血。
歴史という因果の糸を通じて“幻想世界の少女”と結ばれている大いなる力だよ」
すべては一瞬だった。
途方もない光の力が、そこの在るすべてを薙ぎ払ってしまった。
さっきまでかつての我が家があったその場所には、もう巨大なクレーターが残されるばかりだった。
直幸はその様と、自分の右手とを見比べた。そして満足げにつぶやいた。
「はっはっはっ…それにしても予想以上の威力だねえ。
やはり朋也くんの“右腕”、この私によくなじむ。あの日、彼から奪った“右腕”の力――
MIOのために存分に役立てさせてもらうよ」
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃
005 伊吹公子/気絶 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:とくになし
018 仁科りえ 所持品:不明
017 坂上智代 所持品:『ジークフリート(残り59枚=智代の余命59年)』
◆荒野
欠番 岡崎直幸 所持品:『胡蝶』、『リントホルストの壺』(偽)、大量の武器を積んだリアカー
(一ノ瀬鴻太郎、一ノ瀬水恵、宮沢和人、スメルライクティーンスピリッツ 再起不能)
おいおい!
小物に成り下がりつつあった幸村だし抜いて直幸ラスボス化か。悪くない。
一ヶ月ぶりにキタ――(゚∀゚)――!!!!
769 :
'ヽ/ヽ:2005/09/12(月) 15:22:50 ID:hQ6cw2UP0
お、おいおいっ!
意味分かんねえよ!
河南子タンとともタンも参戦きぼんぬ
唐突に訪れた千載一遇の好機。
その喜びを表情に出さぬように噛み締めながら、私はゆっくりと地下壕の中を見渡した。
テーブルの向い側に座している芳野と私以外に人影はない。
『他の二人』は隣の仮眠室で休んでいるからだ。
秋生一行と別れた後、私達は伊吹公子が戻ってくるまで交代で休むことを決めたのだった。
思えば随分長くこの時が来るのを待ち望んでいたものだ。
今までは『良い私』を演じることで、そして勝ち取った信用を利用し長いものに巻かれることで、身の安全を確保してきた。
しかし、そもそもこの状況下で他人など信用できるはずがない。
仮眠を取っている間に、仲間と信用していた者の手によって寝首を掻かれるかもしれないのだ。
―――そう、これから私がしようとしている様に。
私以外の人間には、私の安全のために消えてもらうしかない。
その計画の足がかりが、この地下壕内の人間の抹殺なのだ。
秋生と芳野が喧嘩別れしたことは予想外だったが、お陰で計画の実行は容易になった。
隣で寝ている女二人は問題なく始末できる。
だがその前に目の前の芳野を殺らねばならない。
幸いこいつの『光』は戦闘タイプではないから、隙を突けば容易に殺せるだろう。
例え芳野と戦闘になっても私の勝ちは揺るがない。
芳野には私を殺せない理由がある。
それを今までの経験から確信していた。
ゴクリ、と喉が鳴る。
掌にはじわりと汗が滲んでいた。
「どうした、疲れてるのか?顔色が悪いぞ」
不意に芳野に声をかけられ、心臓が竦みあがった。
それほど私は緊張していたのだろうか。
「何ならお前も休んでくるといい。見張りは一人いれば十分だ」
大丈夫だと答えると、芳野はそれ以上追求してこなかった。
心の中でホッと胸を撫で下ろす。
危ないところだったが、この一件は結果的に、私の心を落ち着かせる作用をもたらした。
芳野は私を信用している。
殺れる。間違いなく。
そう自分に言い聞かせた。
芳野を殺せば奴の『光』が手に入るんだ。
そうすれば私の生存確率は更に上がる。
殺るしかないんだ。
私のより確実な生のために――――
ゴウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……………!!!!!
突如沸き起こった低い地鳴り音。
同時に、部屋全体がカタカタと震えた。
「何だ、地震か!?いや、だが今の感覚は前にも…!」
芳野が立ち上がり地下壕の入り口を見上げる。
そう、規模は小さいが、今の振動には覚えがあった。
世界を荒野に変えた大破壊。
それに酷似していたのだ。
だが、今の私にとってはそんなことより重要な事実が目の前にあった。
芳 野 が 背 中 を 向 け て い る
懐の銃を握り締め、席を立つ。
静かに照準を芳野の背中に定めた。
その時―――
「どういうつもりだ… 仁 科 」
芳野が振り返ることなく私に呼びかけた。
ギョッと身が強張り、思わず引き金から指が離れた。
「よ、良く気づきましたね。」
銃を構えたまま、上ずった声で言い返す。
「しかし…古河渚さえMIOのスパイもしれないと疑ったあなたのこと。最初から私も疑っていたと言うことですか」
「その言葉を訂正しておくなら…そうだな、俺は渚さんの人間性については信頼していた。
疑ったのは、彼女がMIOに操られている可能性についてだ。
ただ、お前に関しては最初からある疑念を抱いていた」
「疑念…?」
「そうだ。
古河パンの主人から聞いたことだがな…現代の仁科は本来友達さえ手にかける冷徹な人間だったそうじゃないか。
しかし、友を助けるためなら自らの命も厭わない渚さんの精神に触れ改心したと…
ところが妙だな…未来のお前は最初から善人だった。渚さんに命を救われたわけでもないのに、な。
だから俺は一つの疑念を抱くことが出来た。微かな疑念…外れてくれればそれに越したことは無かったんだが…
『未来の仁科は善人を演じているだけなのではないか』と言う疑念をな。残念ながら当たりのようだ」
芳野が冷静に私の問いに答える。
「しかし幾ら気づいていようとも、結局はあなたの負けです。
あなたには私を殺せない理由がある」
「ああ、確かに。
現代の仁科が死ねば、未来から来たお前の存在も消える。
その逆――つまり未来の仁科が死んだ場合に現代の仁科が死ぬかどうかは定かではない…が、その可能性は否定できない。
お前を殺せば現代の仁科が死ぬ可能性が僅かでもある以上…俺はお前を殺せない。
現代の仁科に罪はないからな…」
またしても落ち着き払った声で回答する芳野。
その態度が私を苛立たせた。
私は芳野の生死を握っている。
芳野は泣き喚いて助けを請うべきなのだ。
「…もう…あなたとのおしゃべりはお仕舞いにしましょう。
後はあなたを殺すだけです!」
芳野への死の宣告。
それは芳野の顔に絶望の表情をもたらす筈だった。
しかし、ゆっくりと振り向いた芳野の端正な顔には、焦りの表情一つ伺うことが出来なかった。
「仁科、今ならまだ遅くない。俺たちは誰一人、お前を裏切ったりしない。
人間は一人では生きていけないんだ。愛なしでは生きていけないんだよ」
静かな瞳が私を見据えていた。
しかし、ようやく私は理解した。
やはりこいつはやせ我慢をしていただけなのだ。
結局はこうして私に命乞いをするしかない。さも正義を語るかのように。
今はそんな芳野が滑稽にしか思えなかった。
「あなたにとっては残念ですが、私は一人で生きていけます。
ただ、生き残る過程で、何人かを利用することはあるかもしれませんが…
例えば、古河秋生の運動能力は利用出来ます。『現代の私の命』、ひいては『未来の私の存在』を守る良い殻になりますし。
もう少し泳がせてMIOと潰しあって貰った方が都合が良さそうですね…
人格の方も、実在するか分からない仲間を助けるために命を賭けるようなお人良しですしね。
しかし、結局は、その決断は正しかったわけですが…」
その時、芳野の表情に微かな動揺の色が見て取れた。
「なに…?誰の決断が正しかったって…?」
「捕らわれの仲間を助けに行った古河秋生の決断が、ですよ。
ヒトデの少女は実在しますからね」
「馬鹿な…なぜお前がそんなことを知っている!?」
明らかに芳野が狼狽する。
問いに答える義理はないが、芳野の動揺が少しだけ私を饒舌にしたようだった。
「冥土の土産に教えましょう。
何故あなたたちが突然仲間のことを忘れたかは分かりませんが…
恐らく、地下壕から出てMIO本部へ向った時に、何らかの攻撃を受け、伊吹風子に関する記憶を失ってしまった。
しかし私はあなた達に同行していなかった。ゆえに私だけは記憶を失うことがなかったんです。
現代の私も地下壕に残っていましたが、彼女はずっと気絶していたので一度も伊吹風子と対面していません。
だからヒトデの少女が伊吹風子とは気づけなかったんです。
私は伊吹風子のことをあなたたちに教えることも出来ましたが、これは利用できると思い、あえてそうしなかったんです。
あなたと古河秋生が喧嘩別れしてくれたのは予想外でしたが…お陰で動きやすくなりました」
私の言葉に芳野が呆然とした表情で微かに口を動かす。
「伊吹…風子…
お、思い出した…何故俺は忘れていたんだ…愛する人の妹さえ…」
芳野の目から一筋の涙が流れた。
「どうやら伊吹風子という名前を知ることが、記憶復活の鍵になったようですね…
しかし、今更もう遅いんです。自ら、自分の死を招いたことを悔いても無駄です」
とどめの言葉を投げかける。
「違う…俺は自分の命が惜しくて泣いているんじゃない…
古河さん達を、渚さんを傷つけてしまったこと…仲間を信じられなかった自分の愚かさを悔いているんだっ!」
肩を震わせてそう叫んでいた。
「いえ、仲間なんて信じなくて正解なんですよ。こうして私に殺されるんですから」
私はそう言い放つと静かに銃のトリガーを引いた。
銃声と共に芳野の作業着の左胸に穴が開く。
ゆっくりと芳野の体が地面に倒れこんでいった。
「さて、光をいただきますね」
屍にそう声をかける。
芳野の持つ工具入れのジッパーを開けると、その中にうっすら光を放つスパナがあった。
スパナを手にした、その時だった。
「あんた、何してんのっ!!」
鋭い声に思わず顔を上げる。
銃を構えた美佐枝と芽衣が部屋の入り口に立っていた。
どうやら銃声を聞きつけて飛び出してきたらしい。
戦闘でこの二人に負ける気はしなかったが、『光』が手に入った今、危険を冒して二人を殺す必要は無かった。
私は素早く出口への階段を駆け上がった。
「待ちなさいっ!!」
「芳野さんっ、大丈夫ですかっ!?」
二人の叫び声を背に受けながら、私は地下壕を後にした。
***
「芳野ぉ…何で死んじゃうのよ…」
「嘘…芳野さん…」
仁科が去った後の地下壕では、横たわる芳野の体に寄り添って二人が泣きじゃくっていた。
「相楽…お前まで泣いてどうする?
俺が死んだら、今芽衣を守れるのはお前だけなんだ。
しっかりしないか」
「そんなこと言ったって、あんたが死ぬから悪いんじゃないっ!」
芳野の言葉に美佐枝が涙声で言い返した。
「…え?」
美佐枝が慌てて身を起こす。
芳野が目を開いて二人を眺めていた。
「芳野さん、生きていたんですねっ!」
芽衣が歓声をあげる。
「ああ。こんなこともあろうかと地下壕で見つけた防弾チョッキを着込んでいたんだ。
もっとも、仁科が頭を狙っていたら殺されていたから、これは賭けだったけどな」
芳野がゆっくり体を起こした。
「ばかっ!生きていたならとっとと起き上がりなさいよっ」
美佐枝が涙を拭いながら罵声を飛ばす。
しかし、芳野は黙って地下壕の出口を見据えていた。
「さて、もたもたしてはいられない。行くぞ、相楽、芽衣」
「ええ、未来の仁科りえをやっつけて『光』を取り戻すのねっ!」
美佐枝が俄然はりきり始めた。
「違う。そんなことよりもっと優先すべきことがあるだろう」
芳野は『光』を奪われたことを悔いてはいなかった。
それと引き換えに大切なものを手に入れたからだ。
掛け替えの無い、愛する人の記憶を―――
「伊吹風子を助けに、だ」
◆地下壕
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:工具一式、防弾チョッキ
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
◆町
欠番 ウェイトレス(=未来の仁科りえ) 所持品:店から持ってきた物資、『ラブアンドスパナ』
GJだよっ!
780 :
名無しさんだよもん:2005/09/22(木) 11:56:37 ID:NsL5nCX70
なんか美佐枝さんと芳野のコンビが凄く好きな俺ガイル
781 :
名無しさんだよもん:2005/09/22(木) 12:50:37 ID:hCdRBy2o0
(;´Д`)スバラスィ ...ハァハァ
お、おいおい!
意味・・・わかんねぇ・・・よ!
実は生きてたって話が多すぎないか?
クラナド戦記の最大の課題がそこにあると思う
参加人数が少ないから必然的にリアルよりドラマを優先する傾向にある…しかしやり過ぎは萎える…このさじ加減が難しい
同じ話の中でならいいと思うが、他の人に移った後の生き返りがどうも気になる
そろそろ殺してもいいように思う
一応メインキャラは一通り生存してるし、なんとか全員生還に持って行きたいって気持ちもあるな。
何だかよく分からないけど行くよ。
/ ̄ ̄ ̄ ̄\,
/_____ ヽ.
| ─ 、 ─ 、 ヽ | |
| ・|・ |─ |___/ …………
|` - c`─ ′ 6 l
. ヽ (____ ,-′
ヽ ___ /ヽ
/ |/\/ l ^ヽ
| | | |
■━⊂( ・∀・) 彡
ガッ☆`Д´)ノ
あれあれ?10月入ってレスがたった2て
793 :
名無しさんだよもん:2005/10/22(土) 20:55:47 ID:uEq7awCc0
(´・ω・`)このスレサミシス
「ぐああああああああああああああああああああああっ!!!!」
肩を走る痛みは、治まるどころか勢いを増すばかりだった。
まるで俺の心の臓に楔を打ちつけられたかのような激痛。
失われた俺の記憶…既に破壊されていた右肩…それらに関係しているのか?
「公子!」
古河渚の父親の声だろうか。
朦朧とする意識の中に鋭く響いていた。
目を向けると、倒れ伏した伊吹公子。その傍らに立つ智代の姿が見えた。
「公子さん…!大変です、すぐに手当てを…!」
古河の母親らしき女性が立ち上がる。しかし、その動きを制する手があった。
「秋生さん…!?」
「忘れたのかよ、早苗。俺たちは大破壊の直後に決めたはずだろうが。
仲間を守るのはお前の役目。敵と戦うのは、俺の役目だ」
腕まくりをして智代に向って歩みだす。
「何があってもそこを動くなよ。早苗、渚…仁科、お前もだ」
最後に、銃を掲げた女生徒に向って釘をさした。
「な、何故ですか!?私は戦えます!」
「てめぇは邪魔だ。あいつは、『違』うんだよ。あの坂上智代って女はな…」
振り向きもせずにそう言い放つ。
「お前…もしかして、古河秋生か?」
智代が渚の父親に声をかけた。
「あん?だったら何だ?」
「なに、古河秋生には気をつけろとことみに言われていたからな。そいつが恐らく最大の敵だともな…」
智代がスカートのポケットから桜色の折り紙を取り出す。
「念のためだ。三枚ほど…使っておくか」
言いながら数枚の折り紙を手の中で千切っていく。
「馬鹿野郎!それを使っちまえばてめぇの寿命が…!」
秋生が叫んだ。その刹那、智代の姿が消えた。
次の瞬間には舞い散る花吹雪と共に秋生の背後に現れる。
「やれやれ…敵の心配をしているようでは、お前の高も知れたものだな…」
言葉と共に高速の回し蹴りを放つ。
ガッ!
しかし、秋生の頭のわずか手前で、その蹴りはゾリオンの銃身に阻まれていた。
「…!この蹴りを見切るとは…やるじゃないか…!」
智代がにやりと笑う。
「ああ見えてるぜ。てめぇの蹴りも、パンツもな」
秋生の言葉で智代が慌てて足を戻す。
「殺すぞ…お前はっ!」
怒号と共に再び秋生に飛び掛って行った。
俺の目に追えたのはそこまでだった。
その先は朦朧とした俺の視界では捕捉できない程、速く、そして熾烈な技の応酬だった。
俺はあんな化け物と戦っていたのか?
古河秋生…別物だ…俺と戦っていた時とは…
我に返った途端に、再び肩の傷が激しく疼いてくる。
「ぐうっ…!ぐああああっ!!」
俺は再び悲鳴を上げた。
「渚、ヒトデソードを朋也さんの肩から抜いてください」
その時、古河母の声がした。
「は…はいっ」
その言葉で、呆然としていた渚が我に返る。
俺の肩からゆっくりと剣が抜けていった。
だが、肩に走る激痛は依然消えることはない。俺は変わらず悲鳴を上げ続けた。
「それではヒトデソードの合体を解除して、レイジングヒトデで傷の手当をしてあげてください。
一度扱ったことのある渚なら出来ますね?」
「はいっ」
落ち着き払った女性の声に再び渚が応える。
やがて、俺の傷口を温かな光が包んだ。
徐々に、痛みが消えていく。
「お前ら…馬鹿だろ」
俺は思わず口に出していた。
「はい?」
母親がきょとんとした顔で俺を見る。
その目は敵を見る目ではなかった。旧知の仲間を案ずる瞳。
俺にはそれが理解できなかった。
「俺の怪我を治して同情を誘うつもりか知らないけどさ…。甘いんだよ。絶対後悔することになるぜ」
辛辣な言葉を投げかける。
俺の治療に没頭している渚の代わりに母親が口を開いた。
「後悔…ですか?」
「怪我さえ治れば、またお前たちに銃を向けるからな、俺は」
「どうしてそれが後悔することになるんでしょうか?」
生真面目な顔で、そう聞き返していた。
「は?」
「私も渚も、苦しんでいる朋也さんを見ていられないから、こうして傷を治しているんです。
私たちがしたいと思ったことをしたのなら、その結果どんな事態が引き起こされようとも…
『後悔』、するはずがありません」
曇りのない瞳。
一瞬、圧倒される自分がいた。
こいつは自分の死さえ覚悟して、俺の傷を治しているのだろうか。
(いや…)
そこで思い直す。
そんなはずはない。そんな人間いるはずがない。
こいつは馬鹿なだけだ。無知なだけだ。
傷さえ治れば…俺が再び銃を向ければ…その時、『気づく』はずだ。
だから俺はただそのときを待てばいい。会話すればペースを崩されるだけだ。
そう考えて俺は口を噤んだ。
「あっ!」
秋生たちの戦いを追っていた仁科が声を上げていた。
俺を含め、皆が振り向く。
秋生が智代の背後を取っていた。
眩い光を放つゾリオンの銃口を智代の背中に向ける。
勝敗は決した。
…かに思われた。
秋生の指が引き金に触れた、その時だった。
あたり一面を桜の花吹雪が覆う。
「なんじゃこりゃあっ!?」
秋生が驚くのも無理は無い。
その紙吹雪の量は尋常ではなかった。
その中にいる者の視界を覆う程に。
「くそっ…どこに行きやがった…!?」
智代を見失い、途方に暮れる秋生。
しかし、吹雪の外にいる俺たちには智代の姿が見えていた。
この森の中、秋生の頭上にまで張り巡らされた木々の枝。その上に。
「お父さん、上ですっ!」
渚が叫ぶ。
智代は渾身のかかと落としを既に振り下ろしていた。
咄嗟にゾリオンを頭上に掲げ、盾にする。秋生のその反応速度は超人的だった。
しかし、考えれば分かる。
視界を覆うほどの紙吹雪。それは同時に、多量の『ジークフリート』が消費されたことを意味する。
この一撃のために。
受け止められるはずはなかった。
バキッ!!
鈍い音と共に、ゾリオンが砕けた。
そして、智代の蹴りが秋生の頭上に降り注ぐ。もう秋生を守るものは何も無い。
それは勝負の幕が降ろされた瞬間でもあった。
ゴッ
ぐらりと秋生の体が傾く。
そのまま、音も無く地面に倒れた。
「きゃああああああっ!!!」
仁科が絶叫する。渚と母親は言葉も無く立ち尽くすだけだった。
「まったく、馬鹿な男だった」
智代がスカートの埃を払いながら呟いていた。
「戦っている間ずっと、殺気が感じられなかった。まるで私を殺すまいと力を抑えているかのようにな。
正義のヒーロー気取りか…くだらない…」
倒れたままの秋生に言葉を吐き捨てる。
「お前たちは…大概、現実を見ていない。
『自分だけは』『私だけは』きっと助かるはず。この状況下においても無意識に信じ込んでいる。
自分にとって、自分自身は物語の主人公だからだ。だから何事においても『死』への覚悟が足りない。
自分は死ぬ、そう判っていたのなら、ヒーローを気取っている暇なんてないんだ!
何かを守るためには、形振り構わず、どんな手段を使おうとも、戦い抜かなければいけないんだ!
それをこの男は、『死』への覚悟も決まらないまま私に挑み、陳腐なヒーローごっこの末に屍を晒した。
まったく、くだらない『死』だっ!」
智代が激昂する。
「くだらなくなんてありませんっ」
その時、渚の母親が叫んでいた。
きっと口を結び、智代に向き直る。
「なに…?」
智代がギロリと睨みつける。
「秋生さんは、最後まで、自分のルールを、正義を、貫いたんです。とても立派でしたっ」
「何が立派なものか…じゃあ、尋ねようじゃないか。
その正義とやらを振りかざして、結局何が変わった?何が残ったんと言うんだ?」
嘲笑い、冷酷な言葉を突きつける。
「それは…人の心です。
懸命に正義を貫いたのなら、例え死んでしまっても、その遺志は人の心に残ります。
その真摯な姿勢は、きっと…人の心を、変えてくれます。」
迷いの無い口調で、それだけを言い切った。
その言葉に、俺はぎくりと身を強張らせた。
先刻秋生の死を目撃してから、自分の中に違和感とも言うべき奇妙な感覚が生じていたからだ。
まるで自分が自分でないかのような感覚。
しかし、それは…心地よかった。
もしかしたら…もともと…今の俺は…『俺』じゃあないのかもしれない。
そう気づいたとき、体の中に温かい何かが流れ込んできた。
そして俺は、思い出していた。
自分の幼い日の光景を。
小さい頃は、ヒーローになりたかった。なれると信じていた。将来は希望に満ちていた。
しかし、時が経つにつれて、俺は色々なことを知ってしまった。
自分の能力には限界があるということ。悪は勝つということ。
だから自分は…いや、人間、誰もが…
ヒーローにはなれないということ。
ああ…そんな、抗えない流れの中で…
ずっと、少年でいられたオッサン。ずっと、少女でいられた早苗さん。
この人たちは…何て、強いんだろう。何て…勇敢なんだろう…
「お父さんっ!!」
渚が叫び、駆け出していく。俺はその肩を掴んだ。
「離してくださいっ!お父さんが…お父さんが…っ!」
必死で俺の手を振り払おうとする。
しかし、俺の顔を見て暴れるのを止めた。
「朋也くん…何で泣いて…?」
俺は黙って智代に近づいていった。
うつ伏せに倒れたままのオッサン。その傍らに、ゾリオンがあった。
俺はそれを拾い上げ、銃口を智代に向けた。
「朋也…まさかとは思うが…今のヒーローごっこを真に受けたんじゃないだろうな…
それとも、気でも違ったのか?そんな壊れた銃でどうすると言うんだ?」
智代が冷笑する。その言葉はもっともだった。
ゾリオンのいたる所にはヒビが入り、銃身は中ほどで折れ、トリガーすら残っていなかった。
それでも、俺はそうせずにはいられなかった。
血の滲んだグリップ…このゾリオンは…オッサンが懸命に戦った証だったから。
そして
ゾリオンは俺に応えた。
一際眩い光を放つ。
「なんだ…?何が起こっていると言うんだ?」
智代がうろたえる。
そして光が止んだ、そこには…
砕かれる以前の、傷一つ無いゾリオンが在った。
『智代ちゃん、お仕事に行ってもらう前に、二つ、注意しておきたいことがあるの』
『一つは古河秋生。この人が「わるもの」の中で一番手ごわいと思うから…』
『それで、あと一つはね…』
『岡崎の血』
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃、『光弾銃ゾリオン』
005 伊吹公子/気絶 所持品:なし
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ 所持品:不明
017 坂上智代 所持品:『ジークフリート(残り35枚=智代の余命35年)』
012 古河秋生 生死不明
久々にキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
お、おいおい!
意味分かんねぇよ!
朋也の能力が俺の予想と同じなのが少し嬉しい
とりあえず、GJ!
>>798の智代と
>>799の朋也の考え方を対比すると
キャラクター性の違いが見えて面白いね。とても「らしい」なあと思った。
秋生の死(?)も活きているし、グッと来たよ。
805 :
'ヽ/ヽ:2005/11/06(日) 15:27:40 ID:ryVHp9V40
お、おいおい!!
意味わかんないですっ
何だかよくわからないけど次のSS早く書けよっ!
state
月1不定期連載
涼元並の遅筆じゃねーかw
(`Д´)ノ
ハカロワスレよりも飽きるの早いな!!
813 :
'ヽ/ヽ:2005/11/20(日) 21:31:10 ID:uQtY34PW0
だが確実に進んでいる
俺暇なときに書いてみるかな…
書き手の一人です
自分は智代アフターをやる時間的余裕もなければ、話の風呂敷を広げる余裕も無いので、
智代アフターには関知せずにせずに書き進めて行きたいと思ってます。
ただ、他の書き手さんで、是非智代アフターを入れて書きたいって方が入れば、
それを考慮して書き進めたいんですけど、どうでしょうか
読者の指示を仰ぐようじゃ駄目だろ
今からアフター入れたらゴチャゴチャしそうだな
いちいち意見なんて仰がなくていいから、とっとと新作投下汁!
おいおい!
・・・・なんだっけ?
あ、思い出した。
わけわかんねえよ!!
ゆきねぇin幻想世界編マダ-?
最終兵器志乃さんマダ-?
意味わかんねえよ、だ
続きキボンヌ
やっぱハカロワはなんだかんだであれだけ続いたんだから凄かったよな
何故だろう。
ゾリオンのグリップは俺の手に良く馴染んだ。
まるでずっと昔から俺の持ち物であったかのように。
現に俺は、誰に聞くことなくゾリオンの使用法・能力を把握していた。
『持ち主の受けた精神的苦痛・身体的苦痛を相手に叩きつける』
それがゾリオンの能力。
そしてオッサンを目前で倒された俺の『苦痛』を具現化するかのように、ゾリオンは荒々しい光を放っていた。
「ゾリオンは確かに破壊したはずだ…これが『岡崎の血』の力というわけか…?面白い…!」
不適に笑う智代に銃を突きつける。
「オッサンの仇だっ!」
グリップを握りなおし、俺は智代を正面から睨み付けた。
「朋也くんっ!」
渚の声で我に返る。
いつの間にか背後に迫っていた渚が俺の手を押さえていた。
「そんな力で撃ったら、坂上さん、死んでしまいますっ」
「え…?」
思わず拍子抜けしてしまう。
「でも渚、こいつはオッサンをっ!」
「何か…何か、理由があるはずですっ!」
俺の腕を掴む渚の手に、きゅっと力が篭った。
「坂上さんは、本当は良い人です。こんな私にも優しくしてくれたんです。
生徒会長さんで、とっても忙しいのに、嫌な顔一つせず私の相手をしてくれた人ですっ」
「渚…」
「お前も頑張れって、励ましてくれた立派な方ですっ。
その優しい言葉に…どれだけ…背中を押してもらったか…っ」
一気に捲くし立てたせいか、そこでゴホゴホと咳き込んでしまった。
「私は、ずっと…坂上さんみたいになりたいと……!」
見ると、渚の足はガクガクと震えていた。
俺の治療に力を使い果たし、その上、目の前でオッサンが倒れるところを目撃したのだ。
精神的にも、肉体的にも、疲弊しきっているのだろう。
それでも渚は、今自分に出来ることをやり遂げようと必死で…
「だから、今度は…私が坂上さんを助けます…!」
肩を震わせ、そう言った。
「……」
そうか…
智代は、そういう奴だったよな…
間違ってもこんなことをする奴じゃあない。
何だか、あいつと笑いあっていた日々が余りにも遠くへ行ってしまったような気がして…
そんな簡単なことすら、俺は忘れていたんだ…
「ちょっと…持っててくれ」
俺はそう言って渚にゾリオンを預けた。
そして…
ぱんっ!
両の掌で思い切り自分の頬を叩いた。
頬に篭る鈍い痛みに、目の覚める思いがした。
「朋也くん…?」
「ありがとう、渚…俺は、大事なものを失うところだった…」
ゾリオンをズボンのベルトに固定する。
「智代は俺が説得する。
だから渚は、公子さんや…オッサンを看てやってくれ。もしかしたら…」
(まだ生きてるかも…)
そう続けようとして、口を噤んだ。
(それじゃオッサンが死んだと認めてるみたいじゃないか…縁起でもない…っ)
頭を振って不吉な考えを振り払う。
「私も坂上さんを助けたいです」
渚が涙で潤んだ瞳で俺を見ていた。
「いや、お前ふらふらだからさ…それに…」
責任を感じていた。
俺さえ記憶を失っていなければ、オッサンがやられることはなかったんじゃないかと。
だから…この一件は、俺が何とかしなきゃいけないんだ。
「渚、朋也さんを困らせてはいけませんよ」
そんな俺の心中を察したのだろう。早苗さんが助け舟を入れてくれた。
「すいません…私、また足を引っ張ってしまいました…」
渚は、泣いていた。
「お願いします…坂上さんを、助けてあげてくださいっ…お願いしますっ」
ぼろぼろと、零れる涙を拭おうともせずに、そう言って頭を下げていた。
親の仇の境遇を想い、涙を流せる人間が、いったいどれほどいるのだろうか。
そっと、その涙を拭う。
涙から、渚の想いが伝わってくる気がした。
「ああ、必ず助ける。智代は仲間だからな」
俺はそういい残すと、智代に向き直った。
智代は、腕組みをして退屈そうに俺を待っていた。
「聞こえたぞ…私を助けるとか何とか…戯言がな…」
腕組みを解いて俺に近づいてくる。
「まだ下らない仲間意識を私に求めているとはな…
もう一人くらい殺してやらないと夢から覚めないか…?」
残酷な笑みを浮かべてそう言ってみせる。
それを見て確信した。
こいつは、『智代』じゃない。少なくとも『智代の意志』じゃない。
「だって、楽しかったからな…」
思わず、口に出していた。
「なに…?」
「世界がこんなになって、今俺が思い出すのは…
くだらない受験勉強や、上辺だけの人付き合いをしていた光景じゃないんだ。
そっちの方が大切なことのように教わっていたんだけどな、あの頃は…
でも、今、失われてみて初めて…分かる。
俺にとって本当に大切だったのは、お前らと過ごした時間だった…
進学も諦めて…好きだったバスケも辞めて…何で生きてるのか分からないような日々だったけど…
そんな、灰色の生活だったけどさ…お前らが、色を与えてくれたんだよ…
一緒になって春原をからかって…笑い合って…
他の奴らからみたら、つまんないことかもしれないけどさ…それが全てだったんだよな…。
楽しかったんだよ、本当に…!
それを取り戻すためなら…見るさ、夢だって…!」
大きく息を吐き、正面から智代を見据える。
「命を賭けて夢を見るさ…!」
伝わっただろうか、俺の気持ちは。
今、俺を嘲笑っている目の前の智代にではなく…
俺達と笑い合っていた、あの頃の智代に。
「長々と語らせておいて悪いんだがな…
無駄なんだ、そんなことをしても。その楽しかった学校生活の記憶とやらが…
無いんだからな、私には…!」
「え…?」
「なぜか知らないが…昔の記憶がすっぽりと抜け落ちている。
なに、私は満足しているんだ。とても良い気分だぞ…背負っていた荷を降ろしたようにな…」
それを聞いて、頭の奥に痺れたような感覚が走る。
昔の記憶が無いって…?それって…さっきまでの俺と同じじゃないか…
「そうか、お前も記憶を…それでか…」
歯車がカチリと噛み合うように、再び思考が動き出す。
同時に、激しい怒りが胸の奥からこみ上げてきた。
「許さねぇ…あんただけは…!」
迸る怒りを抑え、一語一語、はっきりと言葉にする。
「そうだ、来い、朋也。岡崎の血の力とやらを見せてみろ…!」
智代が俺を挑発するかのように近づいてくる。
「俺の記憶を奪い…オッサン達を襲わせただけじゃなく、智代まで…!」
「…?何を言っているんだ、お前は…?」
きょとんとする智代の顔を覗き込む。
その澄んだ瞳の奥に、禍々しい光が潜んでいるのが見えた。
「全部、あんたの仕組んだことだったんだな…!」
――――なに、心配はいらない。私は君の…『友人』だからね…
「何が、『友人』だっ!許さない、あんただけは、絶対っ…!!」
智代の制服の襟を掴む。
「くっ…離さないかっ!」
智代が俺の腕を払おうとした瞬間、
ばちっ
俺の体から火花が迸った。
「痛っ…!?な、何だ…?何なんだ、お前は…!」
智代の声はもう俺には届いていなかった。
俺は一心に智代の瞳を睨んでいた。
その奥底に潜む、『そいつ』を。
「お前の薄汚い能力で、いつまでも智代を操ってるんじゃねぇよっ!」
「糞親父っ!!!」
刹那、
空間は光に包まれた。
***
荒野の中、リヤカーを引き、進む男の姿があった。
パキ…
「おや…?」
荷台からした音に振り返り、声を漏らす。
「『リントホルストの壺』が割れている…」
小首を傾げ、壺のかけらを摘み上げる。
「偽の『光』とは言え…私の操る『光』を内側から破壊するとは…
驚いたねぇ…こんな真似が出来るのは…『岡崎の血』を引く者しかいない…
『光の使い手』としての力を持つものしかね…」
にっこりと満足気に微笑む。
「朋也くん、か」
***
光が収まると同時に、智代はくたりとその場に倒れこんだ。
俺の言葉が聞こえるか分からなかったが、かいつまんで状況を説明することにした。
「智代、もう大丈夫だ。お前は記憶を奪われてたんだ。
俺の親父がやった…でも、もう元に戻ったはずだからさ…」
むくり、と智代が体を起こす。
長い眠りから覚めた後のように虚ろな目をしていた。
「そうか…記憶を奪われていたか…
私としたことが、迂闊だったな…」
ぽつりと呟くと、ごそごそと制服のポケットを漁り始める。
中から、桜色の折り紙の束を取り出した。
「あ、それ…!」
―――馬鹿野郎!それを使っちまえばてめぇの寿命が…!
オッサンの言葉を思い出す。
「もう、使わないでくれな…寿命、減らすんだろ、それ…」
俺の言葉に、ふっと微笑みんでみせる。
ふと
その笑みに、違和感を感じた。
「なに…こんな不完全な光、こちらから願い下げだ……」
「え…?」
徐々に、『違和感』は明確な『異常事態』へと姿を変えていく。
その笑みは、気のおける仲間に向ける類のものでは、なかった。
その裏には、分かりにくいけれど、確実な『棘』が、あった。
『敵意』が。
「光とは、その人間の想いが形となって現れるもの…
あれが私の『本当の光』だと思ったか…?記憶を失った状態で発現した光が…?」
手中の折り紙が、桜色に光り輝く花弁へと姿を変えていく。
舞い散るその花びらは、智代の体を覆いつくし、やがて、あるものを形作っていく。
それは…
「『スティーリィ・ベアー』
‘守りたい’と願う私の意志に呼応して発現した…私の、『本当の光』だ」
いつか…創立者祭で見たことがある。
熊の着ぐるみだった。
ただ、俺が創立者祭で見たそれとは違い、銀色の毛皮を纏っている。
その着ぐるみはとても可愛らしくて…
それだけに、次に発した言葉は――――
「待たせたな、朋也…」
――――背筋を、凍らせた。
「殺し合いを、再開しようか」
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃、『光弾銃ゾリオン』
005 伊吹公子/気絶 所持品:なし
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ 所持品:不明
017 坂上智代 所持品:『スティーリィ・ベアー』
012 古河秋生 生死不明
◆荒野
欠番 岡崎直幸 所持品:『胡蝶』、大量の武器を積んだリアカー
破損:『リントホルストの壺』(偽)
意味わかんねえよっ!
でもかっこいいよっ!
何だかよく分からないけど、行くよっ!
と思っても先の展開が難しいよっ!
意味わかんねぇよ!
お、おいおい!
新作キタ-GJ!!
このままだと病院前で春原組や芳野組、仁科までかち合ってしまう予感
「悪い、今何て?」
違う。
俺はしっかりと耳にしていた。聞こえなかった訳じゃない。
ただ、信じられなかっただけだ。
「呆けたか、朋也。私はこう言ってるんだ」
目前の熊のぬいぐるみが肩を竦めてみせる。
本当に、冗談みたいな光景だった。
だから冗談で終わらせてくれ。
言わないでくれ。その先を―――
「殺し合いを再開する、とな」
カサリ、と落ち葉を踏みしめる音。
俺は智代から後ずさっていた。
何で?何で智代から逃げるような真似をしなきゃならない?
記憶は戻ったはずじゃないのかよ…?
「ないだろ…もうっ…!俺とお前が戦う理由なんて…っ!」
かすれた声でそう言うのがやっとだった。
「そうか?」
くぐもった声が着ぐるみの向こう側から返ってくる。
「だって、記憶は戻ったんだろっ!?」
「だから?」
即答。
もう、俺との会話に一縷の興味すら抱いていないような…そんな、即答だった。
「……っ!」
着ぐるみに遮られ、智代の表情が、見えない。読めない。
クマの眼窩にはまっているガラス球が、やけに大きく、不気味に見えた。
着ぐるみを怖いと感じたのはそれが初めてだった。
「変わらないんだ。記憶を取り戻したところで」
唐突に、言葉を発する。
「な…!?」
「何も変わらない。私の置かれた状況はな」
そう言って重心を落とし、構えた。
つまり、どうやらそれで終わりらしかった。
俺の問いに対する返答は。
俺を殺す理由は。
「行くぞ」
短い言葉と共に、智代の足元の枯れ葉が弾けた。
パンッ!
突如、熊の頬から火花が散る。
「仁科さんっ!?」
渚の声。
振り返ると、震える手で銃を握り締める仁科の姿があった。
「記憶を取り戻したのに、私達を殺そうとするだなんて…
もう、話し合いが通じる相手じゃないです…!
しかし…でも何故…何故銃弾が効かない…!?」
着ぐるみが顔を仁科の方に向ける。
「『スティーリィ・ベアー』…
つまりは、『steely(鋼鉄製の・動じることのない心)bear(クマ)』と言う訳だ。
鋼鉄製のこの毛皮には…銃弾など効きはしない。
鋼鉄による剛の防御力、そして毛の弾力による柔の防御力。
その二つを兼ね備えたこの『光』は、紛れも無く、『最強の防具』だ」
着ぐるみの首がぐるりと回る。
呆けたように突っ立っていた俺と目が合った、その時だった。
ドン…!
不意に…鈍い音と共に、腹部に激痛が走った。
いつの間にか、智代は俺の眼前に迫っていた。
その右拳が俺の腹にめり込んでいる。
一瞬遅れて凄まじい吐き気が襲ってきた。
「ぉ…」
声にならない声と共に汚物を吐き出す。
ビチャビチャと音を立てて溢れ出すそれは…
血、だった。
「どうした?もうことわってあったはずじゃないか…『行くぞ』、とな」
ぐっと右腕を押し込まれ、背後の大木に叩きつけられる。
拳が離れるときに、鋼の毛皮が俺の腹の皮膚をえぐっていった。
「ぐ……っ!!」
歯を食いしばり、絶叫を飲み込もうとする。
「悲鳴を堪えるな。我慢するより吐き出してしまった方が痛みは緩和されるものだ。
まぁ…死に逝く人間には関係の無いことだったか…」
「う………」
頭からサーッと血の気が引いていく。
それが出血によるものなのか…今、この状況に絶望しているためなのかは分からない。
寒気がするのに、いやな汗がじっとりと噴出してきた。
「反撃してこないのか…?
このままでは数分と待たず、この世とお別れだぞ」
智代の声が這い蹲ったままの俺に浴びせられる。
「無抵抗の相手を一方的に甚振るのは趣味じゃないんだ。
できれば正当防衛を貰いたかったんだが」
(こ…こいつ……っ)
悪びれる様子も無い智代を見て、
俺の中にどす黒い感情が湧き上がってくるのを感じた。
駄目だ…こんなことを考えるのはまずい…
(もう…智代は……『駄目』だ…)
やめろ……考えるな…
(もう手遅れだ…智代は……)
智代は、仲間だ…
(俺じゃあ救うことの出来ないくらい、深いところまで…堕ちている…)
………。
(やらなきゃ、やられる……しょうがないんだ…もう…!どうしようもないことだってあるんだ…!)
………………。
(あいつも言ってたろ?正当防衛だ…!撃て…っ!身を守るんだっ……!)
ふらふらと、手がベルトに差し込んだゾリオンまでのびていく。
「そうだ…さっさと構えるんだ」
智代の声。
カリカリと、爪がゾリオンの表面を掻いた。
…………………じゃあ、さ……
(え?)
どうなるんだよ…智代は……誰があいつを救うんだよ……?
(だから、それはしょうがない…)
見捨てるのかよ…?智代を…?あいつの幸せを…!?
(………)
できるかよ…!そんなこと…!
そんな…簡単に…諦めていいもんじゃない…!
…例え、智代自身が『智代』を見捨てていたとしても……!
手が、ゾリオンから離れていく。
「俺は…」
ひどく…肩が重くて…首を上げるのが億劫だったけれど…
「見捨てないからさ…」
しゃんと首をあげて、着ぐるみの…智代の、顔を見た。
「俺は『智代』を見捨てたりしないから…!」
「………」
一瞬の間、そして…
「馬鹿な奴だ」
そう吐き捨てた。
ガンッ…ガン…カンッ…
遠くで聞こえていた音が、徐々に鮮明になってきた。
クマの全身から散る火花。
遅れて、仁科が智代を狙撃してるのだと気づいた。
「鬱陶しいな…」
俺から視線を外さずに、そう漏らした。
足を振り上げる。
「うわっ」
とっさに両手で頭を庇った。
ドォンッ!
鈍い音と共に体が震える。
いや、俺が攻撃されたのではなかった。
メキメキと音を立て、背後の大木が傾いでいく。
智代の蹴りは俺ではなく大木に命中していたのだ。
(外したのか…?助かっ…)
「きゃあああああああっ!!」
鋭い悲鳴。
と同時に、全身に戦慄が走った。
外したんじゃない――――
「渚ぁああああああーーーーっ!!!」
――――わざと、狙ったんだ。
仁科や早苗さん、そして、渚を……!!
ズゥゥゥゥウン!
低いうなり声を上げて、大木が地面に倒れこむ。
「渚っ!早苗さんっ!!仁科ーっ!!」
痛む体に鞭を打つようにして立ち上がり、その姿を探す。
そんな俺の前に、智代が立ちはだかった。
「お前が悪いんだ、朋也。こうでもしなければ、私と戦おうとしないからな」
「お前――――!」
「あいつらは木の下敷きだろう。急げばまだ助かるかもしれないな…」
その言葉に、はっと目が覚めた。
「邪魔だ!」
智代の肩を掴み、脇へどけようとする。
しかし、頑として智代は動かなかった。
まるで、巨岩のように。
俺の人生…俺の幸せ…その前に立ちはだかる、番人の様に。
「助けたければ助けるがいい。ただし…」
クマのガラスの瞳がぎょろりと回転した。
「私を殺した後でな」
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃、『光弾銃ゾリオン』
017 坂上智代 所持品:『スティーリィ・ベアー』
005 伊吹公子/気絶 所持品:なし
013 古河早苗/生死不明 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚/生死不明 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ/生死不明 所持品:不明
012 古河秋生/生死不明
「ちょっと、アレって…!」
病院へと向かう途中、森の入り口。
杏の声で春原達は立ち止まった。
視線の先には人影、対峙するのは熊の着ぐるみ。
「おーい、おかざ…」
知り合いの姿に気付いた春原が無防備に近づこうとする。
「!!」
杏に耳を引っ張られて春原が木陰に引きずり込まれた。
勝平と椋もそれに続いて木陰に身を潜める。
「何するんだよっ!」
「馬鹿っ、少しは無い頭使いなさいよ!」
更に強く春原の耳を引っ張る。
「痛い、痛いって! 取れるーーっ!」
「ほら! 見なさい」
春原と勝平が木陰から顔だけを出す。
距離が離れすぎていて会話は聞き取れない。
けれど。
横たわる人影。異形の熊が放つのは、確かな殺気。
「穏やかじゃないね…」
そして、その光景を見つめる春原の顔は険しい。
「………アイツ、まだ」
「アイツって、キミはあの熊の正体を知ってるの?」
「ああ。だから、僕が止めなきゃいけない」
木陰から身を出そうとする春原の腕を勝平が掴んだ。
「止めるなよっ、今行かないでどうするんだよっ!」
「無鉄砲に飛び出しても状況が好転するとは限らないよ!」
椋さん達に勘付かれないように足をさする。
癌細胞の力で今はなんとか歩けるようになってはいるけど、あとどれだけ“走る”ことができるのかは分からない。
焦ってチャンスを失うわけにはいかない。
けれど…。
春原君の顔を窺う。
焦り、不安、苛立ち。
(ボクは…どうすれば…)
「だからって、こんなの…指をくわえて見てられるかよっ!」
「陽平!」
静止を振り切り、春原君が走り出す。
その時、影に動きがあった。
熊の脚が翻る。
脚は側にあった大木を捉える。
打ち抜かれた大木が倒れる。
少女たちの、頭上へと。
その光景がやけにスローに見えて、ボクは――。
(無鉄砲なのはボクも同じだな、ハハ)
「持ってくれよ、ボクの脚…! ラスト・ランッ!!」
「助けたければ助けるがいい。ただし…私を殺した後でな」
「智代…」
智代を睨みつけ、ゾリオンに手をかける朋也。
けれどその瞳に浮かぶのは、哀しみ。
「それでも、俺は…お前を救う。でなきゃお前が…可哀想だ」
「まだ言うか…!」
「同感だね」
森に響く声。
金髪を逆立たせて、春原陽平が姿を現す。
「春原!」
「岡崎。何だかよく分からないけど…今しなきゃいけないことは分かるよ」
並び立つは岡崎朋也。
そして春原陽平。
「生きていたか、春原。いいだろう…二人まとめて殺してやる」
再び構える智代。
「私を救うなど無駄なことと知れっ!」
「生憎だな。無駄なことに一生懸命なのが、俺たちなんだよ」
馬鹿ふたり、ここに在り。
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃、『光弾銃ゾリオン』
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい、
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、ルガースーパーレッドホーク9in
004 春原陽平 応急処置済み 所持品:無し(上着に癌細胞)『コミック力場・弱』
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』、『バーサーカー・レクイエム』、44マグナム
017 坂上智代 所持品:『スティーリィ・ベアー』
005 伊吹公子/気絶 所持品:なし
013 古河早苗/生死不明 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚/生死不明 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ/生死不明 所持品:不明
012 古河秋生/生死不明
バイク(ガス欠)は廃墟の町に放置してます。
お、おいおい!
意味わかんねぇよ!
おお、新作がたくさん来てるGJ!
正直燃えた。
やっぱここの春原はカッコいいな。
GJ!
俺も次は春原と岡崎の再会にしようと思って書いていたんだが、先を越されてしまったなw
まさかその日のうちに続きが投下されるとは。全部仕上げる暇が無かった
ずっと温めてたネタなだけに無念だよっ・・・orz
何だかよく分からないけど、頑張れよっ!
技術さえあれば漫画化したい・・・。
大切なのは技術じゃない、情熱だ!と無責任に言ってみるよっ!
856 :
'ヽ/ヽ ◆DOASFNYARI :2005/12/31(土) 15:19:02 ID:esoeLQkE0
おいおいっ
意味はわかるよっ
858 :
人生ブラフ ◆8/zHLnhKDE :2005/12/31(土) 20:33:49 ID:l9xCE7iJ0
俺が立てたこのスレまだ残ってたんだな。
あんなトンデモ設定でよくぞ話を広げてくれたもんだ。
50話くらいまでしか読んでないけど時間がある時全部
読み直してみるよ。
とりあえず書き手さんガンバレ。
ジャンプの富樫並の不定期連載ですな
書き手サソガンガレ!
イメージイラストとして黒スーツに赤のシャツで正装した渚が描きたい
でも俺どらえもんしか描けない((ミ゚o゚ミ))
お、おいおい!
「おい岡崎、遂に…最強コンビが揃ったなっ」
金髪の馬鹿が、にっと白い歯を俺に向ける。
「え?どこに?」
「露骨に目を逸らすなよっ!お前の最高の親友が目の前にいるでしょっ!?」
「悪い、お前のこと友達だと思ってねぇや」
「思えってのっ!世界が滅びたときくらいっ!」
春原と軽口を叩きあう。
もう二度と…戻らないかと思っていた日々。
楽しかったあの日々が、蘇っていく気がした。
まだ戻れるんだ。
きっと、オッサンも、早苗さんも、渚も…みんな無事で…
あとは、この中に智代が加わればいい。
そうすれば帰れるんだ。あの日々に。
ドゴッ!!
鈍い音と共に春原の姿が視界から消えた。
「せっかく助けに来ても、無駄死にだったな。だが、まぁ…好きなんだろう?無駄なことが…」
その背後から智代の姿が現れる。
「すの…!?」
見おろすと、後頭部から血を流しながら転がっている春原の姿があった。
一瞬で、現実に引き戻された気がした。
智代には容赦なんてない。
本気で殺す気なんだ。
熊の冷たい両眼が俺を睨み付けた。
「いい加減にしないか、朋也…何人、殺したら気が済むんだ?」
そう、吐き捨てる。
「な、なに言ってる…!みんなを傷つけたのはお前だろ…!」
「なら、そうさせなければ良かったじゃないか」
「な…!?」
「私を殺していればこんなにも仲間が傷つけられることはなかった」
「お…俺は…お前を助けようと…!お前が可哀想だから…!」
「ふざけるな…」
智代が静かに言葉を放つ。
「え…?」
「ふざけるなっ!!!!!!!」
怒号に、
森全体がビリビリと震えた気がした。
「いつまで…そうやって…気取っているつもりだ…偽善者を…っ!!」
わなわなと手が震えていた。
「みんな…必死なんだ…!何かを守るために…生き残るために、必死なんだっ…!!」
「お前…」
「必死だからっ…許されると思ったんだっ…!!
この戦いは、バトルロワイアルじゃなかったのか!?
互いに、殺されることを覚悟した戦いじゃなかったのかっ!?
私は覚悟していたっ!殺されても文句は言うまいと、胸に刻んでいたっ!!」
かすれた声で叫んでいた。
「だから、い っ ぱ い 殺 し た っ !!
いっぱい、殺したんだ!!許されると思ったから、殺したんだっ…!!
なのに…それなのに…っ!!」
智代は、泣いているようだった。
涙は流さねど…
心で。
「お前は、否定するのかっ……!
私のしてきたことを…この戦いを……っ
だったら…何だったというんだ…私の決意は…!奪ってきた、命…は……」
ほとんど悲鳴に近かった。
搾り出す様にして発する一語一語が、静かな森に吸い込まれていく。
守るため……
智代は度々そう言っていた。
―――‘守りたい’と願う私の意志に呼応して発現した…私の、『本当の光』だ。
智代はそうも言っていた。
それほど強い想いなのだろうか。
『本当の光』を発現させるほどに…それほどに守りたいものが、智代にもあるのだろうか。
そして、仲間を手にかけても守り通すと…覚悟を決めていたのだろうか。
なら…俺は、甘かった。
渚なら、決して智代を傷つけたりしないだろう。
杉坂たちが…合唱部のために顧問を諦めてくれと頼みに来たときも…
顔で微笑みながら…心で泣きながら…
夢を、譲った。
そんな渚だから、今度だって…譲ってしまうに違いなかった。
だけど…夢なら…代わりを探せる。
しかし、命は代わりを探せない。
「智代…」
微笑んで譲ってしまう…そんな渚を、守るためには…
俺だけは、死んでも、譲っちゃだめなんだ…!
大事なものを守るために…!
そして、仲間である智代を止めるために…!
「俺はお前と、戦う…!」
体の震えが、止まった。
そして…
俺はゾリオンの引き金を引いた。
『苦痛』…『怒り』…
俺の全てを込めた光弾が智代に迫り…
「ありがとう、朋也」
その時、着ぐるみの向こうで智代は微笑んだ気がした。
鋭く右腕を横に薙ぐ。
ばしっ、という音と共に、光弾はかき消えた。
「これで迷い無く殺せる」
そう、言った。
(ばしっ…?)
俺は銃を掲げたまま、ぼうっと突っ立っていた。
(ばしって、何だよ…あの『光弾』には…
仲間を傷つけられた俺の『苦痛』が…立つのもやっとなほどに傷つけられた、この体の『痛み』が…
詰まってるはずじゃ、なかったのか…?俺の全てをぶつけたんだぞ…っ!?)
「な、何で……!?」
俺はみっともなく呟いていた。
「そんなに不思議か。渾身の一撃を防がれたことが」
淡々と、智代が答える。
「こんな…馬鹿な……」
うわ言のように俺は繰り返していた。
なぜか体が震えている。
「なら…お前は積み重ねていなかったということだな」
智代が呟く。
「え…?」
「私だって…何も最初から強かったわけじゃない…
学年でトップ10に入る学力だって、持ち合わせてはいなかった。
この運動能力、それに学力も、少しずつ、日々の生活の中で積み重ねてきたんだ」
ぽつりぽつりと語りだす。
「連日連夜、町を徘徊し、悪さをする奴を懲らしめた。
時には…深刻なダメージを負うこともある。
地に伏し、泥を舐め、顔をぼこぼこに腫らしたことも、あった…
それでも家に帰ってくれば、休むまもなく、学校の予習や復習をしなければならない。
辛かった…本当に…過酷な…日々だった。
だが、そこで挫けず…放棄せず…積み重ね続けたから、今の私の強さがある…!」
「お前の渾身を防げる、強さがあるんだ」
俺のうわ言に、応えてくれていた。
それは本気で向ってきた俺に対する感謝の気持ちだったのだろうか…とにかく…
俺は惨めだった。
「あ……!」
脳裏に浮かぶ。
学校で寝て…春原の部屋で漫画本をあさって…
怠惰に暮らしてきた生活の様子が。
「う……っ!!」
あつかましい、と思った。
どうしてこれで勝てるんだ…?勝てるだなんて思うんだ…?
智代はきっとあの瞬間にも努力を重ねていたのに…!
「ううっ…!!」
何故、俺は努力しなかった…!
何故、怠惰に暮らすその生活の中で、ほんの少しでも積み重ねてこなかった…!?
「うううっ!!」
目に溢れていた涙が、遂に零れた。
及ぶはずはなかった…!
今まで努力もせず、だらだらと生きてきた俺なんかの全てをぶつけたところで…
智代に及ぶはずはなかったんだ…!
目標のために…懸命に積み重ねてきた人間に…勝てるはずないだろっ…!!
俺なんかに、誰かを守ることなんて…最初っから…
で き や し な か っ た ん だ っ … !
「哀れだな…今、楽にしてやる」
智代が体を捻った。俺へのとどめの一撃を下すために―――
もう、俺には…みっともなく涙を零しながら…祈ることしか出来なかった
だ、誰か…
俺はいい…俺はいいから…っ
みんな…を……!
「助けて…くれぇっ……!」
風を切る音。
そして…
「待てっての」
智代の拳を掴む影があった。
血で真っ赤に染まった金髪が、日の光を受けてきらきらと輝いていた。
「まだ息があったとはな…春原…!」
智代が掴まれた手を振り払い、攻撃対象を春原に移す。
「死んだ振りをしていれば助かったものを…なぜ、わざわざ命を捨てにくるんだ?」
―――智代がそう吐き捨てた、その時だった。
「春原、時間稼ぎごくろうさま〜!あんたたまにはいい仕事するじゃない!」
「古河さんたちは、勝平さんと私たちで、安全な所へ避難させておきました」
「みんな軽く頭を打って気絶してるけど、命に別状はないよっ!」
明るい声が右方向から聞こえてくる。
「杏…藤林…勝平…!」
「何だ…まだ命知らずがいたのか…
だが、屠る相手が三人ばかり増えようと同じことだ」
智代が杏たちを一瞥する。
「じゃあ、もう三人足しといてくれますか?」
左方向からの新たな声に、智代がハッと体を翻す。
「仲間の窮地に間に合えてよかった。これも愛の起こした奇跡、か」
「はぁ…また坂上智代と鉢合わせるなんてねぇ…。しゃあない、やるしかないか」
懐かしい顔がそこに並んでいた。
「美佐枝さん…芳野さん…それに、確か春原の妹…芽衣ちゃんまで…!」
春原が智代に向き直る。
「さっきの質問の答え…!何で僕が…僕たちが…岡崎を助けに来るのか、教えてやるよっ」
「なに…?」
「仲間だからだよっ!死なれちゃ困る、仲間だからだっ」
クマの瞳が一瞬春原を見つめ、微かに頷くと俺にその視線を移した。
「そうか、朋也…」
自分を包囲する人影をぐるりと見渡す。
「これがお前の…‘‘積み重ねてきたもの’’というわけか…」
独り言のように呟くその声は、みんなが口々に俺を呼ぶ声でかき消されてしまった。
やかましい声たちに囲まれて…
俺は…また、涙が出てしまうほどに…頼もしかった。
俺は一人で…勝てなくたって、いいんだ…
だって、俺には…!
「遂に…最強のチームが揃ったな、岡崎っ!」
窮地に駆けつけてくれる『仲間』が――――!
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃、『光弾銃ゾリオン』
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、ルガースーパーレッドホーク9in
004 春原陽平 応急処置済み 所持品:無し(上着に癌細胞)『コミック力場』
005 伊吹公子/気絶 所持品:なし
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』、『バーサーカー・レクイエム』、44マグナム
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:工具一式、防弾チョッキ
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
017 坂上智代 所持品:『スティーリィ・ベアー』
012 古河秋生/生死不明
013 古河早苗/気絶 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚/気絶 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ/気絶 所持品:不明
おいおいおい!
冷蔵庫に入れておいたプリンがないよっ!!
意味わかんねえよっ!
何だかよく分からないけど、行くよっ!
>>863-970 持ち上げといて落としてさらに引っくり返す…もう王道も王道だな。GJ!
この対智代戦で最終章幕開けになりそうな予感。
敵側の数が圧倒的に少ないからしかたないとはいえ
智代一人VS光戦士ほぼ総がかりってのはパワーバランス悪すぎだよね
戦隊モノでは、怪人は常に5人のヒーローにボコられるんだ
ちゃんと戦えそうな奴少ないから、うまくやれば大丈夫だろ。たぶん。
最近、ヒーロー戦隊は最初の5人に加えて、第6の戦士が加入するケースが多いよっ!
燃えだな…
何だかよく分からないけど、行くよっ!