葉鍵ロワイアルII 作品投稿スレ! 5

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1名無しさんだよもん
―――そして、かれらは目を覚ました。
孤島に集められた100人の男女達。
理由も状況も分からないまま、彼らは殺し合いを強制される。

生き残れるのは、わずかに二人。
その枠を賭け、ある者は殺し、ある者は殺される。

「では、諸君らの健闘を祈る」

―――ゲームが、始まった。


葉鍵キャラによるバトルロワイヤルのリレーSSスレです。
ルールを守り、楽しんで行きましょう。ルールは >>2-10 あたりに。

まとめサイト  http://nippoudairi.at.infoseek.co.jp/hakarowa2/

前スレ:葉鍵ロワイアルII 作品投稿スレ! 4
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1085756778/l50
現行の感想&議論スレ:葉鍵ロワイヤルU 感想・考察スレ 9
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1086881316/l50

ログ保管所        http://chara_royale.tripod.com/hr2/
ログ保管所 Pukiwiki  http://f41.aaacafe.ne.jp/~royale/
参加者死亡情報     http://members.lycos.co.uk/hakarowaeurope/
地図            http://nippoudairi.at.infoseek.co.jp/hakarowa2/map02.jpg
2名無しさんだよもん:04/06/12 07:07 ID:3EMh9sa9
現行のルールです。
1、結界により、各能力は使用不可、あるいは弱体化してます。
  この結界は当分破壊できません。

2、各キャラはアイテムを一つずつと1日分の食料+水を配布してもらってます。
  アイテム管理のために、例え話の中でアイテムの状態が変わっていなかったとしても、話の最後に、

  【019 柏木千鶴 装備:トカレフ(残り弾数5)】

  のようにアイテムを明記することを強く推奨します。

3、送信する前にかならずリロードをしてください。
  かぶって投下すると読みにくくなり皆凹みます。

4、NG審議の対象となる可能性があるのは、致命的な矛盾、荒らし目的だろうSS、
  あまりにもぞんざいな死、無意味な新キャラの追加、他、大多数が問題ありと表明した作品です。
  なお新キャラについては、どうしても、という方はまず感想スレの方に上げるようにして下さい。

5、書き手の方はできるだけ実況スレをチェックするように心がけてください。
  矛盾点、ルール抵触等の問題発生時に円滑な進行が出来なくなる恐れがあります。

【審議中の作品の題名】
【NGか通しか】
【その明確な理由】

         ∧_∧
         < `ш´> NG審議がでたらこのテンプレをコピペして事務的に進めるように、感感情論はよくない
       _φ___⊂)_
      /旦/三/ /|
    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  |
    | 誰彼百円 |/
3tears/true:04/06/12 07:08 ID:3EMh9sa9
 泣き出したかった。
 叫び出したかった。
 どうして自分だけがこんな目に遭うのだと、神様に向かって問い詰めたかった。
 目の前の光景が納得できなくて、皐月はその場から逃げ出した。
 そう逃げ出した、自分はまた逃げ出したのだ。
(なんでっ……なんで、あたしはっ……)
 智代の時もそうだ、自分は何もできなかった。
 今度も同じ。手にはナイフを握りながら、何もしなかったのだ。
 使えもしない武器なんて、アクセサリー程度にしかならない。
 こんなことで復讐だなんて、滑稽な話だ。
 いっそ捨ててしまえばいいのに。
 武器も希望も生きる意志も、全て捨ててしまえばいいのに。
 犠牲になった命を考えるとできなくて、
 でも強く生きることもできなくて、
(あたしは、何をやってるんだ……!)
 こうして逃げることしか出来ない。
 闇雲に、出鱈目に走る。夜空の下、走って、走って。
4tears/true:04/06/12 07:09 ID:3EMh9sa9

 

 気付いた時には森に来ていた。
 親友と別れたあの森だった。
 逃避の果てについた先は、逃避の始まりの場所だった。

 我慢も強がりも、上限がある。
 どこかで、ぷつんと、糸の切れる音がした。
 緊張という名の糸。

 あああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ

 皐月は泣いた。
 周りも何も、気にすることなく。
 夜と森が、見下ろしていた。
 涙も泣き声も、優しく包んでくれた。
 せめて今だけは、哀れな少女に、安らぎを。
5tears/true:04/06/12 07:10 ID:3EMh9sa9


 全ては一瞬だった。
 様子を見ようと思ったその瞬間、全てはあっけなく、簡単に終わっていたのだ。
 見えない位置から、新たに見えた影。
 倒れる少女と逃げ出す少女。
 逃げ出した少女の名は、皐月。
 先程出会ったばかりの少女だった。
「光岡さん?」
 雰囲気を察知して、みさきが声をかける。
「さっきの少女だ。皐月といったか。どうも同行者が殺されたようで、彼女は走って逃げ出している」
 説明は、簡潔に。
「みさき。お前はどうしたい?」
 返事はわかりきっていたけれど。
「後を追えるかな?」
 予想通り。
 ただ、彼女の逃げ足は速かった。
 まさに脱兎の如く。
 目の見えないみさきを連れる以上、追いつくのは無理。
「我慢してもらうか」
「え?」
 光岡は呟きも終わらぬうちに、みさきの体を抱え上げた。
「え? ええ?」
「追いつくためだ、少し我慢してもらいたい。重くないから大丈夫だ」
「……微妙に失礼なこと言ってる?」
 答えずに後を追った。
 自分の判断は間違っていない。大丈夫。今度はあの子も救ってみせると。
 それが光岡の願い。



 そして、三人はいま、ここにいる。
6tears/true:04/06/12 07:10 ID:3EMh9sa9

 先程よりは落ち着いたとはいえ、未だ涙の止まらぬ少女。
 可愛い友人の、後輩の手がかりを求めた少女。
 人を救いたい一心で、ここまでやってきた男。
「この先にいるんだね。
 光岡さん。私に、あの子と話をさせてくれないかな」
 みさきの提案。もちろん、簡単に頷けるはずもない。
 何しろ、みさきは一旦彼女に襲われている。
 どのような理由かは推測するしかないが、今度もまたそうならないとは限らない。
 それを全て説明した上で「だめだ」と断言。
「女の子の扱いは光岡さんより上手いと思うよ。ここで光岡さんが行くと、警戒を抱かせることになると思うし。
 わたしが行くことで、信頼に繋がらないかな。
 それにあの子、何か事情がありそうなんだよね? それはきっと、澪ちゃんの関わることで」
 一息ついて、強く、
「だから、わたしが行きたいんだ」
 目の見えない瞳に、強い決意を宿して。
 何を言っても無駄だった。だからといって、行ってこいと送り出すこともできない。
「離れて俺もついていく。それが条件だ」
 何かあっても、みさきを守りきれるぎりぎりの位置で。
 最大限の譲歩だった。
「それでいいよ。ありがとう、光岡さん」
 みさきは歩き出す。
 光岡に教えられた方向へ。
 か弱い泣き声。本当にこの子が、自分に刃を向けたのかと、疑いたくなるくらい。
7tears/true:04/06/12 07:11 ID:3EMh9sa9

「話をしないかな」

 声をかけた。
 顔を上げた皐月の瞳は、確かにみさきの姿を映していた。
 それをみさきが見ることは、もちろんできなかったけれど。
「あんたは……」
 覚えている。光岡という男と一緒にいた、みさきという女。
 あの、ミオと同じ制服を着ている女。
 理解できなかったのは、どうして自分の前に簡単に姿を現して、声をかけることができるのかだ。
 あの時、自分は逆上していた。この女に刃を向けた。忘れたわけではないだろうに。
 少し離れたところに光岡が立っている。それは確認できた。
 それにしたって、こんなに簡単に、
「……どうして」
「それはね」
 言葉の意図を汲み取って、みさきは言った。
「あなたのことを信じてるからだよ」
8tears/true:04/06/12 07:23 ID:3EMh9sa9
 言ってのけた。血と涙と裏切りと殺戮に溢れたこの島で、簡単に言ってのけた。
 上辺だけの言葉ではない。真実、そうであると、理屈抜きで思えてしまうほど。
 みさきの視線がおかしいことに気付く。
 自分を見ているようで、どこか違う。焦点が合ってないというべきか、遠くを見ているというべきか。
 思い当たったことがあった。それは有り得ないこと。推測が確かなら、このゲームは本当に悪意の満ちるほど公平なんだと。
「あんた、目が」
「うん。見えないよ」
 だからなのか。
 こんなに純粋でいられるのは。
 それにはきっと、想像もつかないような勇気も必要だろうに。
 僅かばかりのやり取りで、以前のような激情はもう襲ってこなかった。
(この人は、この人達は、信じられる)
 話をしてみようと、そう思った。
「あたしは、湯浅皐月。
 謝って済む問題じゃないけど……さっきは、ごめんなさい」
「うん」
 笑った。笑って右手を差し出した。
 皐月はその手を握った。
 仲直りの握手。

「いきなりこんなことを聞くのは、皐月ちゃんには悪そうなんだけど。
 教えて欲しいんだ。澪っていう子のこと」
 皐月は話した。みさきと同じ制服をはじめとした、外見のこと。そして、言葉が喋れないであろうこと。
「やっぱり、上月澪ちゃんだよ……」
 皐月は話した。この島での、上月澪の真実を。


【095 湯浅皐月 セーラー服、風子のナイフ  左腕はもう使えない】
【028 川名みさき 白い杖】
【089 光岡悟 日本刀 デザートイーグル(残弾3)】
9ひとときの休息、そして再会:04/06/12 07:36 ID:vuRTYkxv
 俺が出会った二人の死体。
 森の中で出会った名前も知らない少女。
 海の家で出会った名前も知らない少年。
 俺は二人の表情を思い返していた。
 安らかな表情、自分の命を賭してまで誰かを守りきった、そんな気がして。

(俺にもこいつらみたいな覚悟ができるのか? いや――するんだ、この島で理不尽に死んでいった奴らのためにも……)

「だけど――」
 大きく深呼吸する。

「すっげぇ眠い……」
 ひたすら眠い。この島に連れて来られた時からまともに寝たことがあんのか? いや無い。
「だからと言って目立つ所で眠るわけもなあ……」
 ゲームに乗った危ない連中に殺してください、と言ってるようなものだぞ。
 熟睡してる最中に寝首をかかれましたぁ?
 アホか。あの世で功やエミ公に何を言われることやら。
「ぞっとしないな……」
 死ぬにはまだやることが多すぎるぞ俺。
 全部やること片付けてから死ぬ。
 だめだな、やることやって、ジジイになって、布団の上で大往生。それが俺の死ぬ時。
 そこまでしないと死んだ奴らに申し訳がたたねえ。

「――所詮、自己満足だけどな」
 でもそれぐらい許して欲しいぞ。
 ホントに神様がいるのならこんな俺のささやかな願い、叶えて欲しい。
「…………」
「……くっせぇー、よくもこんなクサイ台詞、考えられるな」
 俺は眠くならないように、歯が浮くような臭い台詞を考えながら月に照らされた道を歩いていた。
10ひとときの休息、そして再会:04/06/12 07:37 ID:vuRTYkxv
「結局――森に戻って来ちまったな」
 眠い眼を擦りながら俺は森の中を歩いていた。
 森なら身を隠せそうな場所ぐらいあるだろ、ヘタに動き回るよりはじっとしてた方が安全かもしれない。
 繁みの中とか…。
 木の上だとか…。
 少なくとも海岸よりはマシかも。

 これがホラー映画のパターンなら…
【恐怖に捕われその場から逃げ出す→見つかって死亡】
 だよなあ…でも、
【主人公が様子を見にその場を立ち去る→残された者死亡】
 どっちもダメじゃん……それに俺は主人公って柄じゃ無いぞ

 俺は手に持った鎌を見る。思いっきり殺人鬼が持ってそうな武器だ。
 う〜む…怪しすぎる。
 俺はふと数時間前に別れた二人が気になった。
 宮路沙耶。
 神尾観鈴。
 沙耶は大丈夫だろう、アイツは銃を持っている。そんな簡単に死なないはず。問題は観鈴……ボウガンを持たせてはいるが…アイツが人に向けて矢を撃つなんて考えられねえ……。
 そして俺、武器は鎌。冷静に考えて実は俺が一番危ない、銃を持った相手にこれで対抗できるのだろうか? 刺し違えることならできるかもしれない。しかしゲーム参加者は一人だけではない、簡単に死ねない。

「つまりは――他人より自分の心配をしろってこった」
11ひとときの休息、そして再会 :04/06/12 07:37 ID:vuRTYkxv
 とぼとぼと歩いていた俺の視界に夜の闇とは別の闇が入ってきた。
「洞窟……だよな」
 ぽっかりと開いた黒い穴、当然中の様子はわからない。奈落へ続く深淵、不気味なことこの上ない。
「ここなら誰にも見つからないだろ……」
 ヤバイ、眠気が込み上げてきた。少し休もう。
 先客がいませんように……。
 俺は恐る恐る壁を伝いつつ洞窟の奥へ入っていった。
 誰もいないな…そう思った。
 ところが、だ。

「ん…ともや……」
 女の子の声がした。正直心臓が止まるかと思った。
「ともやちがう…だれ?」
 俺の目の前――真っ暗なので顔は解らないが女の子がいる、しかも思いっきり怪しまれている。俺は慌てて、
「待て、俺は怪しい者じゃない、ここで一休みさせて欲しいだけなんだ」
 自分で言ってて怪し過ぎるぞ。
「ん、わかった」
 わかってくれた。もしも俺が怪しい者だったらどうするんだ。
「俺は木田時紀」
「アルルゥ…」
 変な名前だ、いやそんなことはどうでもいい。
「アルルゥ、ここにお前以外誰かいるのか?」
「アルルゥのとなりにひとり、ケガしてねてる」
「どんな奴だ」
「女の人、長くてきれいな髪で金色、ねごとでおかあさんといってる」
12ひとときの休息、そして再会:04/06/12 07:38 ID:vuRTYkxv
 女の人、長い金髪、寝言でお母さん……? どこかで見たことのある容姿だ…もしや…。
「まさか――神尾観鈴か!?」
「なまえしらない」
 何てことだ…こんな所で再会するなんて……。
「おいっそいつのケガの様子はどうなんだっ」
「顔とか手とか足とかあっちこっち」
「手当てはしたのかっ!」
「いまともやが道具をとりにいってる、アルルゥはるすばん」
 ケガの具合がよく解らない以上、迂闊に動かせないか…そのトモヤの帰りを待つべきだな…。
「そうか…ん? ともや……?」

 思い出した、三枚の写真の内の一枚に岡崎朋也の名前があったことを。
 
「ともやのしりあい?」
「いや…直接の面識はない」
 偶然とは恐ろしい。岡崎朋也、那須宗一、芳野祐介、三人の内一人と出会えるとは…。まあ芳野祐介とは出会いたくないが…いや奴はゲームに乗っている。俺の標的の一人だ…いずれ出会うが来る。

「偶然が重なる、か…どうせなら主催者打倒も偶然から必然にしてやるか」
 再び会うべきではなかった観鈴に再会したが俺は少しほっとしている。沙耶…お前も無事でいてくれ。
「では改めて、ここで少し休んで行ってもいいか?」
「うん」
「サンキュ」
 せめて一時間、いや三十分でも眠ったらその後は…起きてから考えよう。
 俺はひとときの休息をとることにした。

【031 木田時紀 鎌 朋也・宗一・芳野の写真】
【023 神尾観鈴 所持品なし 全身に怪我】
【004 アルルゥ 所持品なし】
【夜0時過ぎ】
13名無しさんだよもん:04/06/12 07:52 ID:6il0VHpP
らりほー
「サテ、一件落着したところで、そっちのニーちゃんはオレッチたちと同行する気なのかい?」
 ふわっと解きほぐすようなエディの口調に、なごみかけたのもつかの間、オボロが顔色を変える。
「そ、そうだ! 忘れていた! 乳はないか、乳は!」
 乳、という響きにうら若き女性陣がたちまち赤面する。
「イヤ、ニーちゃん、こっちのエルルゥとはそういう仲だったのかもしれないが、
 レディー達にいきなりそれはどうかと思うナ」
「そういう仲ってなんですかっ!」
「そういう意味じゃないっ! 腹を空かしている赤ん坊がいるんだ」
 ああ、なんだ、と一同納得。
「そーいうことなら、ミルクって言ってくれヨ。乳って言うから……なぁ?」
「……あたしにふらないでよ」
「ミルクって単語がないんじゃないのかしら?」
 まだ顔が赤いままの真希に対し、いつのまにやら泣き止んだ香里は、すっかり冷静さを取り戻していた。
 目の端から涙を拭ってはいたが。
 香里の疑問をエルルゥにふると、やはりエルルゥは首を振った。
「……コリャ失礼」
 エディは軽く肩をすくめた。
「この國で何というかはどうでもいい! どうなんだ? あるのか、ないのか? 出すヤツでもいい!」
 今度こそ女性陣は赤面した。いくらなんでも出るわけがない。
 もっとも、オボロは乳を出す動物という意味で言ったのだが……悲しいかな、エルルゥにさえ通じなかった。
「あ、あの、オボロさん、それはいくらなんでも……」
「エルルゥから出るなんて期待してないっ……」
 そこでオボロは失言に気づいた。
 ひた……と、発せられる、冷たい炎。先ほどまでの慈母の気配はどこへ行ったのか。
 エルルゥはにこやかな笑顔の後ろに、青く燃え立つオーラを背負っていた。
「オボロさん、それってどういう意味ですか……?」
「あ、いや、そういう意味でなくってだな……」
「どういう意味ですか、って聞いているんですけど」
 辺境の女の気配に圧倒され、誰も彼も声が出ない。
 いや、だがここは、同性たるエディが勇を奮って取りなした。
「ま、まぁまぁ、エルルゥ。今はそれどころじゃないんじゃねーカ? 赤ん坊がいるって話ダシ……」
「そ、そうなんだ。それに調子も悪くなってるようなんだ。頼む、エルルゥ。力を貸してくれ!」
 恥も外聞もなくオボロが土下座する。エルルゥもさすがに、責任感が怒りに取って代わった。
「あの、ここにはなにか乳の代用になるようなもの、ありませんか?」
「ちょっと待って、牛乳くらいなかったっけ?」
「ないわよ」
 冷たいことに、香里の記憶は正確だった。
「もうっ! でもなんかあるかもしれないから、もう一度探してみる」
「チョット待った。それなら、他の家を探した方が早いと思うゼ。ちぃっとばっか、危険だけどな」
「ジュースって、果汁系なら、赤ん坊に飲ませても平気じゃないかしら? 
 一時しのぎだけど、ないよりはましだと思うわ」
 と、現代人組の矢継ぎ早の意見に、オボロとエルルゥは少々混乱。
「……どうでもいい。あの子が助かれば、なんでもいいんだ。
 とりあえず、エルルゥだけでもこっちに来てくれないか?」
「ッテ言われても、こっちも病人を抱えているからナ……」
 視線の先には、苦しそうにしている渚がいた。
「動かせないのか?」
「動かすのは……危険だと思います」
「そうか……」
 互いに病人を抱えている身では、無理も言えない。
 家の奥からは、真希の文句と、方々を漁る音が聞こえる。香里もそれを手伝っていたが、状況は芳しくない。
「その赤ん坊は、どこら辺にいるんダ?」
「海岸沿いの、船の中だ。俺の足で、走って……一刻はかかったと思うが」
「一刻って、言われてもナ……」
 時間の単位が一致しない相手には、無意味な説明だった。
「とりあえず、そのジュースとやらを分けてもらえるか? ないよりはましなのだろう?」
「そりゃかまわねーケド」
 ちらりとエルルゥを見る。エルルゥは迷っていた。
 苦しんでいる友人と、知人の赤ん坊と、どちらを取るべきか……赤ん坊?
「あの、オボロさん」
「なんだ」
「その子って……拾ったんですか? まさか、参加者……」
「いや。……そうか」
 オボロは自分に呆れたように首を振った。本当なら、エルルゥには真っ先に伝えるべきだったことだ。 
「兄者と、ユズハの子だ」
「――っ」
 雷に打たれたような、そんな表現が似合うような、表情に見えた。
 エルルゥには、酷なことを伝えたのかもしれない。
 だが、その驚愕は、ゆっくりと崩れていき――、一筋の涙になった。その下には、微笑みが。
「そうですか、ハクオロさんの……」
「ああ、忘れ形見と言うことになる。ユズハのいまわの際に、俺が取り上げた」
「でしたら、私にとっても、大切な赤ん坊です」
「……ありがとう」
 不覚にも、涙がこぼれそうになる。傍観者のエディですら、鼻をすすり上げた。
「じゃあ、赤ん坊をこっちに連れてくるわけにはいかないのカ?
 とりあえずジュースを持って帰って、飲ませて、こっちに連れてくればいいダロ」
「そうか……そうだな。人数は減るが……いや、蝉丸とすばるならば、二人で残っても大丈夫か。
 他に手はないしな……それでいこう。頼めるか?」
「オーライ。ナビが出来ネーのが残念だが、受け入れ準備を整えて、待ってるゼ!」
「すまん、恩に着る!」
 言ってることの二割くらいは意味不明だが、誠実さは十分以上に伝わった。
 エディが自分の荷物からジュースを一本取りだし、オボロに投げる。
 幸いなことに、それは果汁百%。自然に近い成分だから、赤ん坊にも害はないだろう。
「あ、ちょっと待って下さい、オボロさん。怪我しているじゃないですか」
「俺はミコトの世話が終わってからでいい、じゃあな!」
 言うが早いが、オボロは飛び出していった。まさしく、一迅の旋風のように。
 後にはただ、風に巻かれたエルルゥ達が残るのみ。
「オボロさん……もう。……ミコト、ミコトちゃんか……。ハクオロさんの……」
 暖かい気持ち、寂しい気持ちが、胸の中に同居する。
 だけどこの寂しさは、失われた人を悼み、その無念を忍んでのものだ。
 ユズハの赤ん坊。元々短い生だと言われていたユズハが残した、彼女の生の証。
 どんなに自分の手で育てたかったことか。どれほど生まれて嬉しかったことか。
 痺れるようだった胸の疼きに、優しい感動が満ちていくのが分かる。
 せめて、産まれてきた子には幸せになって欲しいと、切に願った。
「だめね、ミルク見つかんないわ」
「やっぱり、他の家を探さないと無理みたいね」
 真希と香里が、家捜しを断念した。
 粉ミルクなど一般の家庭にはないし、牛乳も冷蔵庫以外に保存すると思えない。
「しゃーないな。ちょっとオレッチがよそを見てくるか」
「あ、私も行きます」
「ダメダメ。夜道をレディーが歩いちゃいけねーゼ」
 指を振ってエルルゥを押し留めるキザな仕草に、小さな笑いが起きた。
 エルルゥも、釣られて笑みをこぼした。
 悲しみの上に立っていても、人はそれでもまだ、笑うことができる。強くなることができる。
 だからこの喜びを、生きていくことの幸せを、まだ見ぬ赤ん坊に――、
 ミコトにも伝えてあげたいと、そう、エルルゥは思った。


【016 オボロ 果物ナイフ 短刀 ペットボトルのジュース [右足と左脇腹の負傷、肋骨数本骨折は応急処置済み]】

【072 広瀬真希 『超』『魁』ライター 出刃包丁 便座カバー 食料と水多めに所持】
【011 エルルゥ 乳鉢セット 薬草類 食料と水多めに所持】
【081 古河渚 食料と水多めに所持 [熱により睡眠中]】
【087 美坂香里 所持品なし [怪我はエルルゥにより処置済み]】
【010 エディ 盗聴器 尖った木の枝数本 ワルサーPP/PPK(残弾4発) タオルケット×2、
   ビスケット1箱 ペットボトルのジュース×2 婦人用下着1セット トートバッグ 果物ナイフ】
【時刻は夜10時過ぎ】
19鏡写し:04/06/12 11:08 ID:SUX26lBw
(どうしたものか…)
カルラとの交戦から森を駈け続け、蝉丸は民家を見つけていた。
だが、ある一点が蝉丸をその民家に近づくのを躊躇わせていた。
それは眼前の民家に灯りがついている事。
民家にオボロであるのなら、夜目が利くオボロが探索するに当たって灯りは不要であるし、
なにより襲撃者の存在を考えればそんな無用心な真似をするとは思えない。

それに民家自体が罠である可能性も捨てきれない。
誘蛾灯のように参加者を誘い、近づいた者を死に誘うという想像が頭から離れない。

(少し探ってみるか)
物陰に身を隠し、慎重に罠の存在がないのを確認しつつ民家に近づいて行く。
ワイヤーの類がないか目を凝らし、地面の様子にも気を配る。
落とし穴がある可能性も在り得るのだから。
あくまでも急がず、慎重に。

思えば本来の寿命を超えて生き長らえたのも、そしてこの島に居合わせたのも運命なのかもしれない。
他の参加者の為にも自分はまだ死んではいけない。
カミュ達が語ったハクオロの人格、彼が背負っていた重責。
それが仮面を通して伝わってくる気がした。
(心配するな。お前の意思は俺が継ぐ)

100M程の距離を進むのに20分を要したが、なんとか蝉丸は民家の庭先に辿りつく。
しかし本題はここからだ。
(……どうやら周辺に罠はなかったようだな。とすれば後はあの民家自体に罠が仕掛けられている可能性だけか)
待ち伏せか、それとも中に進入した瞬間にトラップか。
どうやらここからは一層慎重な行動が必要なようだ。
(出来れば戦いには無縁で、灯りの危険に一切気付いてないような人間である事を祈りたいがな…)
20鏡写し:04/06/12 11:09 ID:SUX26lBw
穏便に済む事を祈りながら、蝉丸はゆっくりと窓に近づいて行く。

「……今、何か物音がしなかったか?」
亮は一瞬で先程までの険しい表情に戻る。
「私には何も聞こえませんでしたけど…」
自分には聞こえ、芽衣には聞こえなかった。
どういうことだろうか?
この島に来て以来、神経が張り詰める状況が続いている。
確かに自分の思い過ごしという可能性もあるが、かと言って聞こえた気がする以上は
何事もなかったかのようにというのは無理な話である。
「……少し外を見てくる。一応神岸を起こして逃げる準備だけはしておいてくれ」

(罠、か……?)
庭に一箇所だけ地面を掘り返した形跡がある。
あれが落とし穴ならばいいが、あの中に誰か潜んでいて蝉丸が背中を向けた瞬間に襲ってくるという恐れもある。
だが、警戒をその地面に割きすぎた。
足が雑草に踏み僅か……ほんの僅かではあるがカサッと音を立ててしまった。

(気付かれたか?!)
だが、窓から姿を見せる人間はいない。
思わず安堵の息が漏れたその瞬間
「何の用だ」
窓からではなく、扉から庭に回って来た松浦亮と目が合った。

互いの手には命を刈取るに十分な武器。
互いの心中に巣食うは不信という名の魔物。
睨みあった眼光すら瓜二つで。
互いの目的は守る事と帰る事で。

だから互いに殺戮者相手に退く訳はいかなかった。
21鏡写し:04/06/12 11:10 ID:SUX26lBw
【037 坂神蝉丸 木刀 ハクオロの仮面装備 切り傷 打撲が二十数箇所】
【084 松浦亮 修二のエゴのレプリカ(充電完了、ギアが2枚)】
【024 神岸あかり 眠っている】
【047 春原芽衣 木彫りの熊 きよみの銃の予備弾丸6発 筆記用具
枕大の石 黒うさぎの絵皿 水風船2コ 予備食料の缶詰が残り3つ】
【時刻は23時頃】
22名無しさんだよもん:04/06/12 12:12 ID:Uamg2TgG
前スレ作品「贖罪」は修正版も含め「ぞんざいな死」「大多数が問題ありと表明した」ので
NGとなりました。
23名無しさんだよもん:04/06/12 12:58 ID:MhWNzvYx
>>22
まだ保留中です。
24名無しさんだよもん:04/06/12 14:38 ID:kkPUSO46
>>23は議論に参加していない人物による独断、もしくは荒らしです。
25Dance in the Dark:04/06/12 16:49 ID:HMfIb2/l

浅見邦博は己の眼を疑った。
ここは絶海の孤島で、自分たちは殺し合いを強制されていて、今は真夜中で、森は暗く。

「あり得ねぇ、だろ……」

声を出そうとして、ひどく喉が渇いていることに気付く。
それほどに、眼前の光景は荒唐無稽で、幻想的に過ぎ、そして―――禍々しかった。
隣に立つリサは、まったく声を上げようとしない。
ただじっと、その情景を見詰めていた。

「踊って……いやがる、のか」

昏い、暗い夜の森の闇の中で。
青白い月光の下、黒を纏った少女は、何ら語弊も誤解も無く、踊っていた。

細い手指が、しなやかな脚が、長い黒髪が、音もなく翻る。
ゆったりと回るように、涼やかに夜を彩るように、少女は舞う。
自分たちが通りかからねば、誰ひとりとして観る者もなく舞われたであろうそれは、
異形の神楽。
この狂った島でさえ、その舞は圧倒的に世界の外側にあった。
声もなく、邦博は少女の舞踏に魅入られる。
26Dance in the Dark:04/06/12 16:49 ID:HMfIb2/l

木々の合間から射す月光に照らされて、少女は踊る。
声には出さず、少女は詠う。

早く死にたい。早く透子に逢いたい。早く透子を抱いてあげたい。
透子のために生きてきたわたしが、透子のために死ぬ。
それはとっても素敵な終わり。
透子のためにあの女を殺して―――わたしは終わる。
だから、だから待っていて。
わたしが終わるのを……透子。

軽やかに、少女の言葉は死を弄ぶ。
くるくると、ステップを踏みながら少女は言葉を紡ぐ。
それは、この世界に在る何かに向けられたものではなく。
今はもう喪われた誰かに、奉げられる唄。
終わりに歩むための儀式。

とん、と少女の靴が地を叩き、舞踊が終わる。
ふわりと舞う黒いスカート。
森の夜闇と月光の中、なお黒く、少女は静止して在った。
27Dance in the Dark:04/06/12 16:51 ID:HMfIb2/l

「―――そこの、あなた」

突然の声に、邦博は驚愕する。
少女の目線が、茂みに潜んでいるはずの自分の眼を、まっすぐに見据えていた。

「―――気付かれて、やがったのか……!」
「sigh……そんな身体で、気配も消さずにいたら当然でしょ」
「早く言え!」
「言っても気配の消し方なんて知らないでしょう……それに、気付かれてたのは最初の最初。
 クニヒロがレーダーに映った点に、大喜びで追いついたときからよ」
「チッ……」

いずれにせよ、気付かれたからには対応を考えなければならない、ならないのだが。
思い浮かばない。
結局のところ、局面局面では力押ししかできないのが、自分の生き方だった。

「どうするんだ……やるか」
「落ち着きなさい、クニヒロ。相手がどういう人間なのか、見極めるのが先決。
 それに……今あなたが出ていっても、死ぬだけよ」

それは冷徹に、現実を告げる声。
丸腰の自分。プロクシを持たない自分。誰にも届かない拳。無力。
その声は、いつかどこかで聞いた言葉と重なって、邦博の内側を抉っていた。

 ―――邦博はさ、誰かの下で動かされてるのが―――
28Dance in the Dark:04/06/12 16:52 ID:HMfIb2/l

「黙れッ! ……クソガキが、黙ってりゃいいんだよ!」
「クニヒロ!?」

激情が、邦博に静止を許さない。
一瞬で間を詰めようと、茂みから飛び出し―――

飛び出そうとしたその足が、止まる。
目に入ったのは、黒光りする銃。
少女の手にあるその銃口は、邦博の胸を微動だにせず狙っていた。

「……なっ……!」
「―――クニヒロッ!」

少女は、微笑んでいた。
それはこの森に、この上なく似つかわしくない表情。
邦博は戦慄する。

(殺られる―――!)

しかし、次の瞬間。
ふ、と。
少女の全身から、鬼気が消えた。
だが続いた言葉は、邦博を激昂させるのに十分な一言。

「安心して、撃ったりしないわ。
 ……わたしにはこれから、たいせつな用事があるから」
29Dance in the Dark:04/06/12 16:53 ID:HMfIb2/l

自分如きに無駄弾は使えないと。
そうするまでもないと、放っておいても脅威にはなり得ないと。
そういう意味にしか、聴こえなかった。

「……この、アマ……ッ!」

今度こそ、足は止まらなかった。
目に入るのはただ、少女の細く白い首。針金のような手足。冷たい瞳。
この女にも、俺は嘗められてるのか。
拳を握る。
この一撃。
一撃で、俺が誰だかを思い知らせてやる―――

突き出した拳はしかし、どこにも届かない。
踏み出した足が、払われていた。
同時に肩に置かれた手の感触。
視界が横転し、直後に落地の衝撃。

「……ぐぁ……ッ!」

頭上から響いたのは、リサの冷徹な声。

「落ち着きなさいと言ったでしょう、クニヒロ」

見上げても、冷たく光る蒼い瞳は邦博を見てすらいなかった。
対峙する女たち。
風になびく金と黒の世界に、邦博の入り込む隙は無かった。
30Dance in the Dark:04/06/12 16:53 ID:HMfIb2/l

「sorry……仲間の非礼はお詫びするわ」
「…………」
「で、どうする……? 私はあなたのお相手をした方がいいのかしら?」
「…………」

絡み合う視線と視線。
先に目を逸らしたのは、黒い髪の少女だった。

「―――やめておくわ。あなたに殺されたら、透子へのお土産がなくなってしまうから」
「……そう。なら、この場は退かせてもらう」

そう告げると、少女は一切の興味を失ったように、森の奥へと歩き出す。
遠ざかっていく少女の黒い背中に、リサが声をかける。

「ひとつだけ。―――私も昔は、あなたのような眼をしていたのよ」

振り向いた少女は、やはり微笑んだまま。
応える言葉は、無かった。
代わりにスカートの裾を摘まみ上げ、優雅に一礼。

「それでは、ごきげんよう」

そして少女は、夜の森に消えていった。
31名無しさんだよもん:04/06/12 16:54 ID:h2rm60Nd
支援
32Dance in the Dark:04/06/12 16:55 ID:HMfIb2/l

ごきげんよう。
これは、わたしの終わりの物語。

ゆっくりと、ゆっくりと。
木々を、草花を、月を、星を、虫の声を、楽しみながら歩く。
この歪んだ島を、慈しむように。
この唾棄すべき世界を、いとおしむように。

この景色の何もかもを、胸に焼きつけよう。
両手いっぱいの花束のような思い出を持って、透子に逢いに行こう。
そう思わせるほどに、夜は綺麗で。

風が、髪を揺らす。
踏み出す足の向こうには、きっと終わりへの門が待っている。
そう、きっとこの茂みの向こうには―――

木々の枝が織り成すアーチを抜ける。
開ける視界。
そこだけが夜の闇から解き放たれたように、月明かりに照らされた空間。
ざあ、と梢が鳴く。

月光の下、大樹にもたれていた獣の耳を持つ女が、ゆっくりと眼を開いた。

「―――追いついた」

さあ―――終末のダンスを、はじめよう。
33Dance in the Dark:04/06/12 16:55 ID:HMfIb2/l

【039 榊しのぶ ブローニングM1910(残弾1)、ナイフ、缶切り(×3)、12本綴りの紙マッチ(×3)、
         護身用スタンガン、ライター、白うさぎの絵皿】
【026 カルラ 自分の大刀 背中・肩を強打 右手首負傷、握力半分以下】

【001 浅見邦博 身体能力増強剤(効果30秒 激しいリバウンド 2回使うと死ぬらしい) レーダー(25mまで)】
【100 リサ・ヴィクセン パソコン、草薙の剣】
【時刻は0時前】
34あおげばとうとし:04/06/12 22:18 ID:RMvcKN8K
 ふたりが捜している人物は、おのおの違っていたが、その目的は変わらない。
 『求める人物を捜しあて、そしてその人物と生き残る』こと。
 そのため、お互いにお互いを、生き残りの対象として認めてはいない。
 それを承知した上で、彼女たちは手を組んでいる。

「――逃げよったわ。済まん、明日菜ちゃん。ウチの失策や」
「たしかに”茶髪の兄ちゃん”は、いまどき腐るほどいますからね……それより大丈夫ですか?」
 それでも今では、友情にも似た信頼関係が成立していた。
 お互いの利害が一致する限りは、だが――。

「”チョンマゲの兄ちゃん”にしとくべきやったかな……」
「晴子さん、頭に怪我を……?」
「あん? なんぞ言うたか?」
「いえ、べつにー」

 銃に弾を込め、容態を確認する。怪我は、それほど深刻なものではなった。
 化膿が恐ろしいが、それなりの処置を施せば影響はなさそうである。
「しっかし惜しいなあ。ずっと完全犯罪やったのに」
「いえ――撃ってきたのは、あちらが先です。やたらと殺人狂扱いは、されないでしょう」
「あー……言われてみれば、そおやな。逃げた娘だけは、わからんけど」
 
35あおげばとうとし:04/06/12 22:20 ID:RMvcKN8K
 銃に弾を込め、容態を確認する。
 怪我は、それほど深刻なものではなった。
 化膿が恐ろしいが、それなりの処置を施せば影響はなさそうである。
「しっかし惜しいなあ。ずっと完全犯罪やったのに」
「いえ――撃ってきたのは、あちらが先ですから、殺人狂扱いはされないはずです。へーきですよ」
「ああ……言われてみれば、そおやな。あの娘だけはわからんけどな」
 
 準備を終えて、歩き出す。
 しばらくして先を歩いていた明日菜が立ち止まり、空を見上げた。
「なに見とるん?」
「あ――いや、朧月だなって。あしたは、雨降っちゃうかもしれませんねー」
「ん? ああ、ホンマやな。しっぶい月出とるわ」
 酒の肴にするには湿っぽいけどなあ、と笑い飛ばす晴子だが、あまり楽しそうな表情ではない。
 雨が降れば移動量は減り、視界も悪くなる。つまり捜せる範囲も狭くなる。捜索は困難だ。

「降られんうちに、雨宿りでける場所、確保しといたほうが、ええかもな」
「そのつもりで、あっちに向かってるのかなー、なんて思ってたんですけど。治療もできるし。考えすぎでした?」
 行く手には、巨大な建造物があった。
 そこは日本人ならば、おそらく誰もが、毎日のように足を踏み入れた場所。

 そう、学校である。
 
 
36あおげばとうとし:04/06/12 22:23 ID:RMvcKN8K
 朋也は暗い学校の廊下で、ひとり緊張しつつ足音を忍ばせて歩いていた。
 暗がりが、あのアパートの惨劇を思い出させる。
『殺せる…のか、僕に』
 そこに、衝撃的な言葉が飛び込んできた。男の声だった。
 生真面目そうで、それなりの年齢だろうと思われる声だった。
(……殺す気に、なりかけているのか?)
 少しばかり声が似ていたせいだろうか。朋也は、この世でもっとも嫌いな「あの人」をイメージしていた。

『子供だから…か』
 足を止める。肩がうずいた。
(子供だから、殺せるのか、だと――?)
 カッと頭が白くなった。
 肩が上がらなくなった、あの日のイメージが浮かぶ。
 不快な思い出が、脳裏を占拠していた。

 どこを、どう斬ったのかはわからない。
 盾を捨て、両手でサーベルを引き抜いた。
 保健室の扉を八つ割きにして、そのまま蹴倒すように踏み込み、正面の男へ向けてサーベルを突き出す。
「――動くな」
 男は持ち物を整理していたらしく、机の上にがらくたが散乱していた。
 座っていた席から腰を浮かせたまま、両手を挙げている。
 眼鏡はかけていない。それに少し若いようだが、どこか「あの人」に似ているように思えた。
 
37あおげばとうとし:04/06/12 22:27 ID:RMvcKN8K
「ま、待ってくれ! 僕は――」
「――煩え。黙れよ」
 何かを迷ったまま、煮え切らずに引き摺っているような男。朋也に歯がゆさや、苛立たしさを感じさせる男だった。
 思わず凄みをきかせてしまう。そんなことを、したいわけではないのに。
「救急箱が必要だ。どこにある?」
「こ、この中に……」
 男は傍らにあるリュックを足でつつき、こちらに押し出した。

「あんたな。この娘を――殺す気なのか?」
 朋也は左のサーベルを収納し、リュックを回収しながら訊いた。
 傍らで眠っている小柄な少女は、たしかに目の前の男から見れば、子供だろう。
「違う! この娘を、護りたい。僕は、この島のルールに乗ることなんか出来ないんだ……」
 ちくり、と朋也の心が痛んだ。
 「あの人」がこの島にいたら、俺をどうするだろう。
 そもそも俺は、どうするだろうか。

 朋也は望まぬ妄想をふりきるように、頭をふって叫ぶ。
「もういい! その言葉、嘘だったら。この娘が死んだら――お前は、俺が殺すからな!」
 朋也は、保健室から逃げ出すようにして去っていった。
 
 いつも家から逃げ出すように、春原の部屋へあがりこんでいた。
 あのときの気持ちに、とてもよく似ていた。 
38あおげばとうとし:04/06/12 22:31 ID:RMvcKN8K
 しばらくの後。朋也が去った保健室に、新たな客がふたり現れていた。
(うお……!?)
(?……どうしました?)
 晴子が散らばった扉板で音を立てないように注意しながら、中をうかがっている。
 その表情を見ると、目を丸くして、驚いているように見えた。
 
 いったん部屋から距離をとって、ふたりで情報を均一化する。
「中におるん、知り合いや。男やけどな」
「ああ、例の国崎さんとかいう、間男ですか?」
「アホタレ、誰が間男やっちゅーねん! アンタのバター犬と一緒にするんやないわ」
「ばっ、バター犬ですってー!?」
 小声ながら壮絶な口喧嘩の様相を帯びてきたところで、晴子が本題に戻そうとする。
「……まあ待ちや。互いの性生活はプライベート言うことにしとこ」
「ええ、そうですね。日照り具合を語られたって、お肌の皺にしかなりませんから」
「な、なんやとー!?」
 ……しばらく、収拾はつかなかった。
 
 気を取り直して、相談しなおすふたり。
「――敬介や。橘、敬介言うねん。まあ、いろいろ細かいこと気の付く奴やわ」
「ふうん……」
 明日菜の表情が、曇っているように見えた。
 いや、冴えているのか。怪しさを増している。
「……せやけど、本当にやって欲しいことはなにひとつ、やってくれへんかった。悪人やないけどな」
 
39あおげばとうとし:04/06/12 22:34 ID:RMvcKN8K
「――橘、ね――」
「なんやねん、明日菜ちゃん。様子おかしいで?」
 少しばかり、過剰な異様さを感じて、引き気味に晴子が尋ねる。
 答える明日菜は、微笑さえ浮かべて――

「そいつ、殺しちゃってもいいですかね?」
 
 ――虚ろに、そう言った。
 高校時代を、あの男を、思い出していた。
 本当にやって欲しいことを、なにひとつやってくれなかった。そんな大人の代表だった。
 
 晴子は少しだけ考えるふりをしてみたが、答えは最初から決まっていた。
 観鈴を助けるために、頼りになるのは敬介ではない。明日菜のほうが、よほど頼りになる。
(そのぶん、障害でもあるんやけどな……)
 だから気圧されるものを感じながらも、明日菜の虚ろさを受け入れるように、へらっと笑って返事をした。
「……チャンスがあれば、構へんで。敬介は甘い奴やけど、無理や油断はせんようにな」
「ええ、もちろん」
 すうっと音でもしそうなほどの変化。
 明日菜の虚ろな笑みが、明るい笑顔に、豹変する。
 
 にっこり笑顔に殺意を秘めて。
 ふたりは保健室へと、歩みを進めた。
 
 
40名無しさんだよもん:04/06/12 22:35 ID:h2rm60Nd
トヨタシエンタ
41あおげばとうとし:04/06/12 22:38 ID:RMvcKN8K
【055 橘敬介 ピアノ線 肥後ノ守 大判ハンカチ メモと鉛筆、裁縫道具 食料 腕に万国旗 手袋着用】
【085 三井寺月代 睡眠中 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
 
【机の上(持ち物整理中) 智代のCD 筋弛緩剤と注射器一式(3セット) スコップ 小型レンチ 手品道具 クレジットカード 鉈 金槌
 小銭入り長紐巾着 ピン類他小物 ヨーヨーもどき 釣り針 太めの釣り糸 医療用の針と糸 携帯用酸素 文化包丁 バッテリー式ドリル
 2リットルのペットボトル2本(水入) 鋸 以上が未整理】
【メモの内容は整理されていない断片的なもの】【リュックは中身ごと朋也へ】
 
【002 麻生明日菜 ケーキ、ショートソード、南部十四年式(残弾8)】
【022 神尾晴子 千枚通し、歪んだマイクロUZI(残弾20発)】
【保健室へ】【晴子の怪我はたいしたことありませんが、治療を望んでいます】
 
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル×2、リュック(乾パン カップ麺 ホイッスル シェラフ 方位磁石 メタルマッチ 救急セット)】
【保健室を去る】【ダンボール製の盾を回収したかどうかは、次の書き手に依存】
 
【深夜】
 
 
>>37最後の文と、>>38最初の文は二行間を空けてください。改行ミスです。
42意思と遺志:04/06/12 22:50 ID:bqogZkez

民家に帰り着いてから、宗一は美佐枝の遺体を民家のテーブルを使った簡易手術台に乗せ、家の中にある解

剖に使えそうな道具を片っ端から集めた
あの二人は解剖する部屋には入れなかった。若い女性にはショッキングな光景だろうし、なにより……

(……そうなってくれないことを祈るばかりだがな)

宗一は苦々しく笑い、自分の手記を部屋のドアに挟む
一通りの準備が終わったところで服を脱がせた美佐枝の遺体を見る
薄暗い照明に照らされた手術台の上の美佐枝は美しく、まるで眠っているようだった

(美佐枝さん……貴女の遺志は絶対に無駄にしません)

そのまま暫く黙祷し、意を決してナイフを取り上げる

(さて、まずは爆弾の埋まっている場所の検討をつけないとな)

最初は手足
澪の爆発を見た限りあれだけの威力の爆弾はそう小さなものではないはずだ
それだけのサイズのものが埋まっていれば誰だって違和感を感じるだろう
更になんらかの事情で部位ごと『脱落』してしまう可能性もあることから、まず此処は無い
43意思と遺志:04/06/12 22:52 ID:bqogZkez

次に頭部
ここで爆弾が爆発すれば即死だ。しかも場所によっては摘出はほぼ不可能。確実な首輪としてはこれ以上は

望めない
だが、ここは手足以上に爆弾を埋め込むとなると難しい
更にゲームに乗ったマーダーからしても確実に相手を殺せる箇所、至近距離で狙う人間も多いだろう
そうなると誘爆の可能性もある。ここも恐らく違う

(それに何より……男として出来れば美佐枝さんの顔はキズつけたくはないしな)

そうなると胴体
最も隠し易く爆発した時に生き残る可能性はほぼ皆無
だが、どこに隠す?最も狙い易い場所だ、その分爆弾に命中する可能性も高い

このことから少なくとも腹部、心臓は無い
腹部には爆弾を外部の衝撃から守るべきものが少なすぎるし、心臓は頭部と同じ理由で
となると一番可能性が高いのは……
宗一はその位置にナイフを入れる

だが、もしも……爆弾の位置がその場所だったとしたら、どちらにしろ無駄になるのではないか?

(いや、無駄にはしない……そう約束したばかりだろ)

44意思と遺志:04/06/12 22:53 ID:bqogZkez

エディが居れば爆弾の解析くらいは軽くやってくれる、何しろ世界一のナビなのだから
しかしその裏で理性は思考を続ける
もし、解除が無理だったとする
その場合、体内にある爆弾を人間を生かしたまま摘出など、よっぽど整った手術施設と医療の専門家が居な

い限り不可能だ
もしそれが可能だったとしても、暫くは安静が必要だろう。ならば、その間にゲームに乗った者、もしくは

ルール違反者を処分するために主催者が動いたとしたら……

(……もしそうなったら勝率がいいとは言えないか)

それに続けて疑問が湧く。いったい『いつ』『どのように』爆弾が体内に埋め込まれたのか?

(誰にもそれらしい手術痕は残っていなかった)
(手術をして、傷が無くなるそれまでの間ずっと眠りっぱなしだったっていうのか?)

宗一の脳内に自分たちの世界では存在しない者たちの姿が浮かぶ
背中に羽の生えた人間、獣の耳と尻尾を生やした人間
そして全く季節感のデタラメなこの島
最後に、倒したはずのあの老人の顔……

(それもこれもファンタジーか?俺たちはいつから剣と魔法の世界に迷い込んだんだ?)

頭の片隅で疑問に対する答えを求め思考しながらも、美佐枝の遺体を解剖する作業を続ける
やがて宗一の指にこつり、と骨とは違う明らかに人工物の感触があった
45意思と遺志:04/06/12 22:54 ID:bqogZkez

(ビンゴ、か?)

異常が無いか慎重に確かめながら手を引き上げる
ゆっくりと、血に赤く輝く小さな円盤状の爆弾が姿を見せた
それを家の中から取ってきた皿に衝撃を与えないよう慎重に置く

「ふぅ…」

神経を使う作業が終わり、宗一は額にびっしり浮かんだ汗を拭い取り一息をついた
血と脂に濡れたゴム手袋を外し、返り血の付いたエプロンを外す
身体に付いた血も拭い取り、最後に切り裂かれた美佐枝の遺体を出来る限り綺麗にして、上にシーツをかけ

てやる
しかし不思議なのは爆弾が全く作動しなかったことだ
摘出した瞬間にペナルティでその場の全員ドカン、という可能性も考えてカミュとゆかりはこの部屋に入れ

なかったのだが……

(主催者がこういう事態を想定していなかったのか、それとも……)
(爆弾を手に入れた程度じゃまだこのゲームは終わらないってことか?)

その心の問に、あの老人が狂喜の笑みを浮かべた気がした

46意思と遺志:04/06/12 22:55 ID:bqogZkez

【065 那須宗一  所持品:長弓、矢20隻 宗一の手記 クレイモア一個 ゾリオン(使用回数3回) 電池

一個 体内爆弾】
【025 カミュ   所持品:気配を消す装置 レミントン・デリンジャー(装弾数2発 予備弾4発】
【078 伏見ゆかり 所持品:グレネード1個(殺傷力は無いがスタン効果とチャフ効果を合わせ持つ)】

【解剖に使った刃物は血と脂で使い物にならないと判断して放棄】
47あおげばとうとし修正:04/06/12 23:01 ID:RMvcKN8K
>>35の上部、

> 銃に弾を込め、容態を確認する。
> 怪我は、それほど深刻なものではなった。
> 化膿が恐ろしいが、それなりの処置を施せば影響はなさそうである。
>「しっかし惜しいなあ。ずっと完全犯罪やったのに」
>「いえ――撃ってきたのは、あちらが先ですから、殺人狂扱いはされないはずです。へーきですよ」
>「ああ……言われてみれば、そおやな。あの娘だけはわからんけどな」
> 

この部分を削除してください。
同様の文章が>>34で書かれており、ダブってしまいました。

申し訳ありません。
48名無しさんだよもん:04/06/12 23:05 ID:qHQSnZOk
>>42-46は現在アナザー扱いなので続きを書かないようご注意ください。
49名無しさんだよもん:04/06/12 23:11 ID:DW1Wzfna
アナザーをこっちに投稿すんな!!
50そして歯車は廻る:04/06/13 00:17 ID:/JrjXt3J

校内を捜索していた。
一階、二階、理科室、職員室。
何か爆発のようなものがあったのだろうか、酷く荒れているところもあった。
その部屋を見たときは背筋に寒いものが走った。
幸い、智代の遺体は見当たらなかった。
多分移動したのだろう。

屋上に出た。
いないだろうが、もしいたら自分は道化だ。
…いや、今でも充分。

夜の冷気が彼の頭を冷やす。

反芻。
ついさっき、自分のしたことを。
ヴィオラを弾いていた男。
その断片的な呟きだけで男を殺そうとした自分。
『違う! この娘を、護りたい。僕は、この島のルールに乗ることなんか出来ないんだ……』
男の言葉が蘇る。
浜辺の歌。
へたくそな演奏。
平和な空気。
51そして歯車は廻る:04/06/13 00:18 ID:/JrjXt3J

それに対し、自分は何をした?!
踏み込み、脅し、奪い、そして今、走っている。
「あの人」に少しばかり声が似ているというだけで!
碌に聞こえなかった呟きの断片で!
自分は、あの平和な演奏をしていた人を殺そうとしたのだ!!

足が止まった。

戻ろう、と思った。
戻って、謝って、協力を仰ごう、と思った。

そうしなければ、自分も「あの人」と同じに、
いや、それ以下になってしまう。
「それに、ダンボールの盾も置いてきたしな」

小学生でもわかるような照れ隠しを言い、歩き出した。
52そして歯車は廻る:04/06/13 00:19 ID:/JrjXt3J
保健室には、明かりが付いていた。
敬介は椅子に座り、呆然としている。
奥にはベッドに寝ている少女。
「以外にアホなんやな、敬介。 これじゃ殺人者にバレバレやないか」
「そのお陰で私達が見つけられたんだから感謝しなきゃですよ。
 …突入してもいいですかね?」
「もう少し様子見た方がええ。なんかおかしいしな。…見たところ対した武器持ってへん。
 そんなに『橘』が憎いんなら、銃で撃つよりも直に刺した方がええやろ? 弾の節約にもなる」
『橘』という名前に異常な反応を示した、明日菜。
何か過去にあったのだろう。
ぎらぎら光る眼。
もし、自分が橘姓だったら遭った瞬間に殺されていたんかな。
そんなことを思った。
麻生明日菜は、名前だけで人を殺す、とも。

観鈴と、時紀と遭ったら、どうなるのだろう。
観鈴の目の前で撃ち殺す?
そんなことをしたら観鈴は自分を拒絶し、走り去る。
逆に、明日菜が自分と観鈴、二人を撃ち殺すことだって充分に考えられる。
観鈴と時紀、どらかと遭った瞬間に、二人の殺し合いが始まる。
勝っても負けても、自分は観鈴を失う。

今までこんなこと、考えなかった。
二人の信頼関係が、こんなに危いものだったなんて。

晴子と明日菜。 今まで、息はピッタリあっていた。
それだけに、同じことを考えているかもしれない。
…いや、今は『橘』への憎悪だけ、だろうか。

(いずれにせよ…潮時やな)
53そして歯車は廻る:04/06/13 00:19 ID:/JrjXt3J

敬介は考えていた。
考えたところでわかるはずはないが、それでも気になった。
あの少年は、一体なんだったのだろう。
自分を見る目が普通ではなかった。
ゲームに乗っていた、とも考えにくい。
誰か怪我をしている人がいたのだろうか。
だとしたら、痛いのだろう。

「笑わせてあげたい。 ……甘い、だろうけど」

そこで、我に返った。
「そこに、誰かいるのかい?」
もしかしたら、さっきの少年かも知れない。
だとしたら、同行を許してもらえないだろうか。
月代を起こすことになるが、それでも。

だが、出てきたのは。

「久しぶりやな、敬介」

探し人の内の、一人。
54そして歯車は廻る:04/06/13 00:20 ID:/JrjXt3J
【055 橘敬介 ピアノ線 肥後ノ守 大判ハンカチ メモと鉛筆、裁縫道具 食料 腕に万国旗 手袋着用】
【085 三井寺月代 睡眠中 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
 
【机の上(持ち物整理中) 智代のCD 筋弛緩剤と注射器一式(3セット) スコップ 小型レンチ 手品道具 クレジットカード 鉈 金槌
 小銭入り長紐巾着 ピン類他小物 ヨーヨーもどき 釣り針 太めの釣り糸 医療用の針と糸 携帯用酸素 文化包丁 バッテリー式ドリル
 2リットルのペットボトル2本(水入) 鋸 以上が未整理】
【メモの内容は整理されていない断片的なもの】
 
【002 麻生明日菜 ケーキ、ショートソード、南部十四年式(残弾8)】
【022 神尾晴子 千枚通し、歪んだマイクロUZI(残弾20発)】
【晴子の怪我はたいしたことありませんが、治療を望んでいます】
 
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル×2、リュック(乾パン カップ麺 ホイッスル シェラフ 方位磁石 メタルマッチ 救急セット)】
【保健室へ戻る】
55後悔と決意:04/06/13 01:38 ID:TqOFzXOf
「二人とも、ここだ」
 クーヤ、ベナウィ、早苗の三人はあれから場所を移動していた。
 目的は二つ。一つは安全に眠れるところを探すため。
 そしてもう一つは……早くあの場所から離れたかったためだ。
 あの場所に留まることは……早苗にとって酷だろう。
 そう判断したクーヤが、場所の移動を勧めた。眠るにはもってこいの場所がある、と称して。
「クーヤ殿、ここは?」
 連れて来られた場所は、森の中心から少し外れた場所にある大木。
 別荘から結構距離があったために夜もかなり更けている。
 月明かりにも晒されていないため、非常に暗い。
 木の根も大きく張り出されており、物陰にもなる。なるほど、警戒するにはもってこいの場所だ。
 クーヤは木の根に腰掛けながら、懐かしそうにふっと笑った。
「昨日、余はここで耕一と一夜を明かした。昨日のうちは、あの耕一が死ぬとは思えなかったのにな」
 その物言いに、早苗もベナウィも言葉を掛けられなかった。
 耕一が爆死しても涙一粒零さなかったクーヤ。その胸中では何を思っていたのだろうか。
 現実は変わらない。
 クーヤが自分で言った台詞だが、それは自分で自分を戒めたのだろうか。

『信じられん! 礼儀知らずにも程があるぞこのうつけ! クンネカムンなら打首にしているところだ!』
『だから謝ってるじゃないか! なんで耳触ったぐらいでそんなに青筋立てるんだ!』
『耳触った位!? 耳触った位と言ったか!』

 昨晩、二人で言い合ったのが、今ではもう遠い。
 クーヤは耕一のことを思い出し、悲嘆の呟きを思わず漏らした。
「耕一……余は、もう耳を触れられても怒りはせぬぞ。だから……」
「クーヤさん……」
「む、少し空気を悪くしてしまったか、すまないな。それより、もう余は休む。
 今日は様座な事が起こりすぎた。皇にも休息は必要であろう……」
 その悲しげな表情も直ぐに切り替え、明るく言ってクーヤは眠りだした。
 二人には無理して明るく振舞っているのが見え見えで、余計に痛々しくも思えた。
56後悔と決意:04/06/13 01:38 ID:TqOFzXOf
「……さて、見張りは私が引き受けましょう。早苗殿も早く休んでください」
「いいんですか? ベナウィさんも体が……」
「いえ、私のことは気にせずに。私の場合、こういったことも仕事のうちでしたから慣れています。
 それに、昼間十分寝てましたからね」
 ベナウィが苦笑する。そこまで言われれば早苗も断るわけには行かず、床に就いた。

 二人が眠った後、ベナウィは一人上を見上げた。
 葉に覆われ、空も見えない暗い光景。
 自分に襲い掛かってくるのは、体の苦痛でもなく、死への恐怖でもなく、後悔。
 ひたすらに、後悔の念が形となって自分に襲い掛かってくるのが分かる。
 もし、あの場で自分が止めていたら。無茶な行動に走らなければ。
 そういったたらればの思考が沸いては沈み、浮かんでは消える。
 嫌な予感はしていた。七海と南の二人が殺されたならば、そこに罠があると十分考えられるではないか。
 その予感を裏付けるかのように、なにやら怪しげな匂いも辺りに漂っていた。
 それはガスの匂いだったのだが、悲しいかなベナウィにそんなこと分かるはずもない。
 文化の違いが重くのしかかる結果となっていた。
 何故自分は二人を止めなかったのか。
 何故自分は皆を危険の高い場所に導いてしまったのか。
 そんな考えがベナウィの脳裏によぎる。
 もしかしたら、自分は期待していたのではないか?
 定期的に空から降ってくる篁の声、あの声の内容が全て偽りで南たちがまだ別荘に待機している、と。
 そして、結果は…………。
 不甲斐なかった。代わりに自分が行っていれば二人を助けられたのではないかとも思えた。
 そう考えているのがハクオロに知られれば窘められること請け合いだが。
 その後に早苗が自分を見失ったときも、それを救ったのはクーヤだ。
 クーヤに引き換え自分は、ただ見ていることしか出来なくて……。
 自分に出来ることをすべきなのは分かっている。そして、あの時自分に出来ることがなかったことも分かっている。
 分かっているからこそ……余計にもどかしく感じた。
 だけど……今の自分には、せめてこういったことぐらいしか出来なくて。だからこそ、後悔がはちきれんばかりに膨れ上がるのだった。
57後悔と決意:04/06/13 01:39 ID:TqOFzXOf
「そろそろ、交代しましょうか?」
 不意に、横からそんな声が漏れた。
 見ると、早苗が起きだしていた。そういえば、空も白みだしている。
「いえ、まだ大丈夫です」
 あまり、自分の本心は悟られたくなかった。
 何より自分の弱さを二人に知られるわけには行かなかった。
 二人を守るためには、自分は強くあらねばならない。
 だからこそ、泣き言を二人にぶつけることも出来なかった。
「でも……無理は、していませんか?」
 その問いかけに、少しどきりとする。
 おそらくは自分の体のことを気遣っての発言なのだろうが。
「いえ……。早苗殿の方こそ、無理は禁物です。あのようなことが起きたばかりなのに……」
「私は平気です。秋生さんは、生きていますから」
「え……?」
 早苗の突然の発言。
 ベナウィがそれに反応すると、早苗は微笑んだまま胸を手に持っていく。
「ここに、秋生さんはいます。私達は心で繋がってます。
 それは、体がなくなっても同じ。そう、信じたいです」
「……そうですか」
58後悔と決意:04/06/13 01:41 ID:TqOFzXOf
 強い。ベナウィにはそう感じた。
 まるで自分を見失ったのが嘘のようだ。自分の気持ちを、全てクーヤにぶつけたからだろうか。
「でも、私は大丈夫ですから。早苗殿はもう少し休まれてください」
「いいえっ、ベナウィさんは少し働きすぎですよ。少しぐらい休んでも罰は当たりません」
「…………分かりました。では少しお願いしましょう」
「はいっ。任せてくださいっ」
 ベナウィはそういって大木に寄りかかった。
 あくまで行動だけ。警戒は怠らない。それがベナウィの性分だった。

『ベナウィは少し働きすぎではないか? 少しぐらい休んでも罰は当たらないぞ』
『いえ、聖上。今休んでは國の政務に差し障りがあるので』

 不意に思い出すのは、ハクオロとの何気ない日常の掛け合い。
 あの頃から自分は何も変わっていない……と心の中で苦笑する。
 そんな中で二人だけは命に代えても守る、とベナウィは心の内に決意した。
 これ以上、犠牲は出したくない。
「……何をやっておるっ。サクヤッ、ゲンジマルッ、耕一! さっさとせんかっ!!」
 クーヤの寝言だけが、辺りに音として伝わっていた。

【33番 クーヤ 所持品:ハクオロの鉄扇、サランラップ25m 短刀】
【80番 古河早苗 所持品:早苗のバッグ、古河早苗特製パン2個、トゥスクル製解毒剤、カッター】
【82番 ベナウィ 所持品:ベナウィの槍、水筒、ワイヤータイプのカーテンレール】
【初日の大木で夜を明かす 時間は夜明け前】
59そして歯車は廻る、作者:04/06/13 09:41 ID:/JrjXt3J
>>50-54
「そして歯車は廻る」は、前の話とのつながりの関係からNGとさせていただきます。
60名無しさんだよもん:04/06/13 15:43 ID:7nfX1Thc
前スレ509-511に投稿された「爆弾摘出」はNGとなりました。

変遷については、感想スレ10のレス番586あたりまでの流れをお読みください。
61名無しさんだよもん:04/06/13 18:22 ID:7nfX1Thc
>>42-46「意思と遺志」はアナザー送りとなりました。

変遷については、感想スレ10のレス番638あたりまでの流れをお読みください。


 また、この作品の特殊な環境から、現在このパートを代わって引き継ぐ作品
 の投稿は、停止がかかっております。
 6/13 24時(=6/14 0時)に解禁となりますので、それ以降に投稿するよう、
 お願い致します。
62守りたいもの:04/06/13 22:36 ID:lAzqSc05
「あの人、自分の世界に入りきってますね・・」
保健室の中を観察していた明日菜がつぶやいた。
「ああ。今ならいけるんちゃうか?」
その発言に晴子も返す。
「じゃ、1、2,3で突撃しましょう。」
「おう!」
「1」
明日菜がつぶやく。
「2」
晴子が呟く。そして、1瞬の静寂の後
「「3」」!!
そして2人は保険室内に飛び込むようにしてなだれこんだ・・・・


青髪の学生服の少年に襲われた後、敬介は唖然としていた。が、3分ぐらいしてようやく我に返った。
(あの少年はいったいなんだったんだ・・・)
(ゲームに乗ったものではなかった。じゃなきゃ僕は生きていない。)
考え、そして敬介の脳裏にある疑問が浮かんだ。
「何で彼は救急箱が必要だったのだろう・・・」
(見たところあの少年には怪我がなかったはず。となると・・仲間のためなのか?)
(仲間がいるとしたら、そこに観鈴もいるかもしれない。いなかったとしても、観鈴に関する情報を聞けるかもしれない)
「彼とはもう一回あってみる必要がありそうだね。」
自分の思考に結論を出した敬介はそう、誰に聞かせるのでもなく呟いた。
だが、自分の思考に没頭していた時間が彼にとっては命取りだった。
突然飛び込んできた女に敬介はなすすべもなく蹴り倒され、馬乗り体勢を取られてしまった・・そして敬介の咽喉下にはショートソードの先端がが突きつけられていた・・
63守りたいもの:04/06/13 22:37 ID:lAzqSc05
敬介に対し、マウントポジションを取った明日菜はどのように彼を殺すか考えていた。
(簡単に死んでもらってもつまらないわね・・)
等考えていると、不意にあることが思い出された。明日菜はまず、その”あること”を聞くことに決めた。
「一つききます。救急箱はどこにあるんですか?」
自分たちが学校という場の保健室に来た前提、それは晴子の怪我を治すためであったはずだ。
(それに殺してからさがすのもまためんどくさいですし)
それに対しての敬介の返答は意外なものであった。
「ない・・さっき武装した少年に脅されて渡してしまったよ・・・」
少年という言葉に明日菜が反応する。
(もしかしたら木田君!?)
「どのくらい前にその少年は去ったのですか?また少年の様子は?後武器についても話してください」
期待を胸に秘め、つめいるように明日菜は問うた。
「そうだね・・去ったのは10分ぐらい前だと思うよ。様子だけど。青い髪の少年だった。制服を着ていたからたぶん学生だと思う。背中に何か背負っていた。武器は・・持っていたはずだけどよくわからない。」
(青い髪・・木田君ではない・・と。)
若干失望しながら、武器について詳しく問い詰めることにした。
「わからないですって?」
いぶたしげに明日菜が言う。
「ああ。ドアが切り裂かれたと思ったらいきなり少年が乱入してきて・・脅されたから救急箱を渡してしまった。」
明日菜の顔色が変わる。
(何をしたらドアがああなるっていうのよ・・・・)
「そいつはどんなものを持ってましたか?」
「ああ・・手に筒のようなものを持っていて、背中にそれを収納できるものを背負っていたということまではわかったけど・・僕にはそれしかわからない。」
「そうですか。」
そういうや、立ち上がる明日菜。敬介の表情には、驚きと安堵の色が見える。
64守りたいもの:04/06/13 22:37 ID:lAzqSc05
だが、次の瞬間状況は一変した。
「なら死んでください。」
その無慈悲な一言の後、

  グサ

敬介の腹にショートソードがつきたてられた・・・
そして、引き抜く。あふれ出す血液。敬介の顔色は見る見るうちに青白くなっていった・・・

「同情はせんで・・・・」
その様子を見ていた晴子はつい呟いた。
そして、部屋を見回す。すると・・
「ここに一人寝とるで。これどないする?」
ベッドに寝ている人間を発見する晴子。明日菜に確定している処置を問う。
「どないするも何も今皿でしょう。晴子さん。」
「そやな。明日菜ちゃん。」
すでに結論がわかりきった事。千枚通しを握り、晴子はベッドに近づいていった・・・


敬介は、朦朧としていく意識の中2人の会話を聞いていた。
もう天井がかすんで見えてきた。耳も遠くなってきた。
2人の会話の内容はわからなかった。だが、晴子がベッドに向かっていくのを見て、敬介の意識は急にクリアとなった。
(月・・・代ちゃんを・・・・・守らなければ・・)
「ちょ・・・っと・・・まって・・くれ・・」
最後の力を振り絞り、ベッドに向かう女に話しかけた
65守りたいもの:04/06/13 22:38 ID:lAzqSc05
後ろから声をかけられた晴子は、声をかけられるとは思っていなかったのだろう、ビクついたがそれも一瞬のこと、すぐに敬介の方を向いた。
かすんだ目でも、その人物だけはわかる。
「は・・・る・・こ・か・・?」
敬介の顔が驚愕に染まる。
「何や、あんたまだ行きとったんか?ひさしぶりやな。」
面白くなさそうに答える晴子。
「なぜ・・きみ・・が・・こん・・なことを・・」
「決まっとるやろ。」
「いったん言葉を切り、晴子は続ける。
「ウチは観鈴のそばにいたいねん」
「こんなこと・・・・・・をして・・・・・・るとみ・・・・すずに知られ・・・・たらど・・うするん・・・・だい・・・・・・・・?」
言葉は弱弱しく、それでもしっかりとした意思で敬介は問うた。
「うっ・・・・・・・・・・・・」
言葉に詰まる晴子。だが、
「それでもウチは観鈴といたいねん!」
毅然とした態度で言い張る晴子。その顔は強い母親の顔だった。
「そうか・・・・」
その様子を見て。敬介は不思議と安心できた。
(晴子なら・・・観・・・・鈴を・・・・幸・・・・せに・・・してくれる・・・)
そして吐血する。もう死ぬと実感した敬介は頼み事をすることにした。
「たの・・・・・みを2つ、き・・・・・・・いてくれ・・・・るか・・・・・い・・・・・・?」
「なんや、ゆうてみい」
66守りたいもの:04/06/13 22:39 ID:lAzqSc05
「あの・・・ねてる・・・こを・・・・ころ・・・・さない・・・でほしい。はるこ・・お願いだ」
この島で見つけた、自分を頼ってくれるぬくもり。そのぬくもりを守りたい。それは橘敬介という男のほんとに最後の願い。ここに古川早苗か渚がいたのならば、今の敬介の目は秋生と同じ、誇り高き父親の目をしているということに気づいただろう。
敬介の今までにない表情を見た晴子は、その想いの深さを目の当たりにして
「わかったわ。約束したる・・・」
そう答えるしかなかった。
晴子の答えを聞いた敬介は、満足そうな顔をすると
「ありが・・・とう。それと・・観鈴をたの・・・・むよ・・・・・」
そういい残し、最後の痙攣が始まり橘敬介は帰らぬ人となった。

「敬介・・・・・」
敬介の最後を目の当たりにした晴子は約束もあり、もう千枚通しをつきたてる気になれなかった。
「晴子さん、約束守るんですか?」
怪訝そうに問う明日菜。
「ああ。一人殺そうが殺すまいが大してかわらんやろ・・」
「晴子さんも甘いんですね。」
「やかましいわ。」

そうして二人は保健室を後にした・・
67守りたいもの:04/06/13 22:40 ID:lAzqSc05
廊下を歩いている最中思い出したように晴子が言った。
「敬介がいっとった、武装したニイちゃんはどこいったんやろな?」
「その人には怪我をしている仲間がいるのかもしれませんよ。」
少し考え、明日菜が答える。
「だから私たちと同じく、学校に来たんじゃないですか」
「・・・そう考えるのが一番筋がとおっとるな。」
晴子も同じ結論に行き着いたのだろう。
何気なく二人が校舎の入り口が見える窓を見たその時であった。
「おっと・・なんか校舎から出て行きよるで。」
校舎から人影が出てきた。
「あれって・・敬介が話してた奴なんやろうな・・・」
「晴子さん。」
明日菜がこれからすることはわかってるなと確認の意味で問いかける。
「当たり前やな。後つけるで。それで2人の事をきくで。」

そういって二人は校舎から出るべく移動を開始した。
だが、晴子の心の片隅には敬介が残した
「こんなこと・・・・・・をして・・・・・・るとみ・・・・すずに知られ・・・・たらど・・うするん・・・・だい・・・・・・・・?」
という言葉がリフレインしていた・・
(ホント、知られたらどうなるんやろうな。)
その答えはまだ知るものはいない。
68守りたいもの:04/06/13 22:43 ID:lAzqSc05
【055 橘敬介 死亡】
【085 三井寺月代 睡眠中 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
 
【机の上(持ち物整理中) 智代のCD 筋弛緩剤と注射器一式(3セット) スコップ 小型レンチ 手品道具 クレジットカード 鉈 金槌
 小銭入り長紐巾着 ピン類他小物 ヨーヨーもどき 釣り針 太めの釣り糸 医療用の針と糸 携帯用酸素 文化包丁 バッテリー式ドリル
 2リットルのペットボトル2本(水入) 鋸 以上が未整理】
【メモの内容は整理されていない断片的なもの】
 
【002 麻生明日菜 ケーキ、ショートソード、南部十四年式(残弾8)】
【022 神尾晴子 千枚通し、歪んだマイクロUZI(残弾20発)】
【晴子の怪我はたいしたことありませんが、治療を望んでいます】
【机の上のものには手を出さず】

【残り34人】
69名無しさんだよもん:04/06/13 23:05 ID:V3RinFRb
>>62-68は矛盾があったためNGになりました。
70名無しさんだよもん:04/06/13 23:12 ID:sta+zg9w
>>69には根拠がありません。
各人、スルーをお願いします。
71名無しさんだよもん:04/06/13 23:37 ID:1dCLPdRI
感想スレにおいて、以下の新規追加ルールが策定されました。
宗一組を扱った作品が投稿解禁される本日24時をもって適用が開始されます。
皆様、ご注意いただきますよう、よろしくお願いいたします。

・問題提起は作品投下より12時間以内とし、それを過ぎた作品は確定とする。
・以下は、後続に深刻な影響を与える矛盾のある作品にのみ適用され、
 既に確定した過去作品に遡及しては適用されない。(※)
・修正は一回のみ。
・修正時間の猶予は、スレの総意に基づいて行われる本スレでの要修正宣告から24時間。
・修正可能なのは話の大筋や結末に変化の無い程度まで。
 それ以上の修正を必要とする場合はNG。
・誤字脱字等、後続にほとんど影響の無いミスについては特に制限は設けない。
・修正待ちの話で使用されたキャラの話は、修正後の判定が出るまで投下を控える。
・なお、確定していない作品の続編が投下された後、元作品に審議が発生した場合、
 元作品のNGは後続作品にも連鎖する。

(※つまり、矛盾を抱えた作品Aに対して修正、あるいはNG宣告をする場合に、
 その矛盾の萌芽が既に通しが確定した作品Bにあるからといって、それに対して
 遡っての修正やNGの要求はしない)

なお、適用の枠組み、その他策定の経緯などは感想スレ10-694までをご覧ください。
72名無しさんだよもん:04/06/13 23:45 ID:rF7eeJkj
……ふと思ったんだが、解禁後何作品か一気に投下された場合どうなるんだ?
ありえないかも知れないが、大分時間があっただけにひょっとしたらNGを想定して書いた書き手さんが複数いるかも知れないし
早いもの勝ちなのはわかっとるんだが事態が事態だっただけにな、そうなったら30分以内に投下された作品なりでコンペでもするのか?
73爆弾摘出:04/06/13 23:59 ID:61jJrEOX
美佐枝の死から半時ほどが経過し、宗一達は一室に集まっていた。
この家から調達した包丁やナイフ、裁縫箱に薄手のゴム手袋など解剖に使えそうなものは全てここに運びこまれた。
ベッドの上には美佐枝の亡骸が安置されている。
宗一は二人の同行者…ゆかりとカミュに声を掛けた。
既に、美佐枝を解剖する事は二人に伝えてあった。
だからこれは最終確認。

「なあ、本当に見ているつもりか? 正直、俺でも辛い作業なんだぞ?」
「一生、心に傷を残すかもしれない。それだけの事を今からするんだ。」
出来ることならこの二人には美佐枝を解剖する所は見せたくない。
これは疑いようのない本心。

「だから――」
だが、宗一の言葉はそこで遮られた。

「いくら宗一君でもそれ以上言ったら怒るよ。」
「美佐枝さんを見届けてあげられるのはカミュ達しかいないから…」
脆くも強い意思を込めて二人は宗一の言葉を否定した。

「わかった。ただ、無理はするなよ。いつでも部屋を出て構わないからな…」
宗一に言えるのはそれだけだった。

(美佐枝さん、あなたの死は決して無駄にはしません…)
宗一は美佐枝の亡骸に手を合わせると、ナイフを手に取る。
服を脱がされた美佐枝の胸部に刃を入れる。
切り開かれた体内を知識と勘をフル活用して調べ上げていく。
誰も、何も喋らない。
蛍光灯の灯りの中、ただ黙々と作業を進めていった。
74find the Routes ◆QGtS.0RtWo :04/06/14 00:00 ID:zM86Yz4k
「クソッ、何なんだよここは」

ベッドに横たえた美佐枝の遺体の前で、宗一たちは途方に暮れていた。
開腹に必要なもの。
診療台。
清潔な空間。
鋭利な刃物。
診療台の代わりはベッドがある。
清潔な空間はどうにも見つかりそうに無いので、美佐枝には失礼だが、既に死んでしまっているので我慢してもらう。
問題は、刃物だ。
遺体をベッドに安置した後、刃物の類を持たない三人は家捜しを始めた。
しかし、ナイフや鋏といったメスの代用品として利用できるようなものは、この民家の中に存在しなかった。
念の為、芳野たちが隠れていた民家も探してみたが、そこで見つかったのは一般的な文化包丁だけ。
これでは腹を裂くことはできても、刃渡りが大きすぎて爆弾の摘出まではできそうにない。
外見だけ立派で、中身の伴わない建物郡。
人が生活していくのに必要なものの無い。
ここはまるで、ショウルームの密集地のようだった。
75受け継がれていく道:04/06/14 00:00 ID:npG0c0r9
 美佐枝の死の後、美佐枝の遺言を伝えた宗一は二人を供に民家に帰り着いた。
 美佐枝の遺体をテーブルへと載せると家中を漁り人体解剖に使えそうな道具を集める。
 そして準備が整った時、宗一はゆかりとカミュに話し掛けた。

「二人は下がっていて欲しい……俺でも辛い作業だ、それに……」
 人の解剖というグロテスクな作業を二人へ見せたくない。
 それも本心の一つである。
 だが、一番大事なのは……最悪の事態に備えて、意志を継ぐ者が必要だったからだ。

「それ以上は言わなくていいです」
「私達は隣の部屋で待機しています……でも信じていますから」
 二人もまた宗一の意志を汲み取った。

「ありがとう……」
 宗一が出せる言葉はそれだけだった。


(美佐枝さん、あなたの死は決して無駄にはしません…)
 テーブルの上に置かれた美佐枝の遺体。
 血が拭き取られた彼女の身体は、まるで眠り姫のようである。
76名無しさんだよもん:04/06/14 00:00 ID:0Mtnj2WD
73は時間前なのでスルーおねがいします。
77名無しさんだよもん:04/06/14 00:00 ID:qr0D3h3q
最近あっさり死ぬ作品が多すぎるな。
なんで一人で完結させたがるかね。
しかもこんな糞つまんない内容で。

…こんなことなら歯車NGにしなきゃよかったな。
78受け継がれていく道:04/06/14 00:01 ID:npG0c0r9
 王子様のキスで起きればどんなに良い事か。

 甘い幻想を抱きながらも、宗一は話し相手にならない彼女に一言かけた。

「あなたの死は無駄にしません」
 
 宗一は美佐枝の亡骸を見詰めながら、思考を練り始める。

(誰かがやらなければいけないこと……必ず達成してみせる)

 道具は限られている。
 使いきらない内に爆弾を発見せねばならない。
 ならばと皆目の見当をつける必要がある。
 そして、それは幸いなのか爆発の現象を見たことでおおよその場所は理解していた。

(あの少女の爆発を見た限り、ほんの一瞬だがお腹から膨れ上がった。
 ということは……)

 自分の感を信じて彼女の体内を探す。

(もし人によって違えば終わりだな……)

 だが、爆弾で絶対殺すとなると胴体か頭だけである。
 四肢の場合は、もし千切られてしまったら意味がない。
 そして一抹の不安も覚えながら作業に集中する。
79名無しさんだよもん:04/06/14 00:01 ID:qr0D3h3q
と、誤爆。
80find the Routes ◆QGtS.0RtWo :04/06/14 00:01 ID:zM86Yz4k
(窓ガラスを割って使うか……?)

考える。
どうにかしてメスの代用品となるものが他に無いかを。
鋭角に割ったガラス板。
これなら確かに皮膚を切り裂くことはできる。
だが、体内の埋め込まれた爆弾を取り出すなどという繊細な作業を行うには向かないだろう。
もし誤って爆弾を直に突付いてしまおうものなら…と考えると、恐ろしくて使うことはできない。
幾ら宗一が世界最高のエージェントで外科手術の知識はあると言っても、実践経験は無い。
できるだけ実際の手術に使うものに近い道具が欲しい。
しかし、他に繊細な作業のできる小さな刃物は見つからない。
ならば、どうする?

「ゆかり、カミュ」
「はい」
「なんですか?」
「一旦、船に戻るぞ」
81受け継がれていく道:04/06/14 00:02 ID:npG0c0r9

(爆弾が取り外した事で爆発しない物なのを祈る……)

 「ん…?」
 どれくらいたっただろうか?
 異物の手ごたえを道具伝いに感じ取る。
 作業を開始して十数分、ほんの片鱗だが爆弾は姿を現した。

 「これが……」
 慎重に切り開かれ、姿を現した爆弾。
 独り言を口にしながら、 宗一はそれを取り出す作業にかかる。
 衝撃を与えないように慎重に慎重を道具を使って取り出す。
 そして、ついにそれは宗一の前に取り出された。


 爆弾の解析は、ここでは無理だ。
 宗一がその分野の専門でもないのもあるが、何よりそのための機材がない。
(せめてパソコンでもあればな……)
 しかしその裏で理性は思考を続ける
 今は別行動している同志達。
 だが、彼らが生きたまま体内の爆弾を摘出など、最低でも簡易な手術室、そして専門のスタッフが必要である。
 もしそれらの条件ををクリアしたとしても、手術後の彼らは安静が必要だろう。
 そして……爆弾を解除するという行為は、反主催者への行動と認識されないはずがない。
 その間にルール違反者を処分するために主催者が動いたとしたら……はたまた爆弾のスイッチを押されたら。
 またゲームに乗った者の襲撃という可能性もある。

(……とんでもない勝率だな)
82find the Routes ◆QGtS.0RtWo :04/06/14 00:02 ID:zM86Yz4k
――そりゃ焦るのは分かるんだけど、急いでもいい事ないわよ。
――慎重派なら、NastyBoy(無茶苦茶小僧)なんて呼ばれないわよね?
美佐枝の言葉――今となっては遺言だが――が頭をよぎる。

(急いては事を仕損じる、か)

そう、Nastyなだけでは世界最高のエージェントは務まらない。
今、自分がやるべきなのは、爆弾摘出を急ぐことではなく、確実に爆弾を摘出し、爆弾の脅威を無くすこと。
確実にやるには、今ここで手持ちの道具を使ってやるのは不可能に近い。
ここで焦って美佐枝の意思を無駄にしてしまっては、笑われてしまう。
何としても爆弾を解除し、篁の野郎をブッ飛ばす。
そして、必ず生きて帰る。
そのためには、まず船に戻って一旦態勢を立て直し、万全の状態で手術を行わなければならない。
あそこになら鋏や果物ナイフといったような手術に使えそうなものがあるかもしれない。
オボロという男が何か刃物を持っていたのも見ている。
軍人である蝉丸に何か知恵を拝借することもできる。
何事も一人で背負うことは無い。
自分は、一人ではないのだ。
83find the Routes ◆QGtS.0RtWo :04/06/14 00:02 ID:zM86Yz4k
「あの、美佐枝さんは……?」
「……すまないが、もうしばらくここに居てもらう」

さっきの芳野とかいう男が復讐に戻ってくるかも知れない。
そんな中、ゆかりとカミュを庇いつつ、遺体を背負って船まで歩くなどといった危険な行動はできない。

「じゃあせめてお布団だけでもかけてあげないと…寒いですよ……」
「ああ…そうだな……」

腕を胸の上で組ませ、布団をかけてやる。
しばし、黙祷。

「――よし、行くか」
「はい」
「うん」

三人は美佐枝の眠る民家を後にする。
未だ何の光も見えないこの島で見つけた、最初の光。
美佐枝の死によってようやく見つかった、未来への道。
絶対に、無駄にしない。
もう過ちは繰り返さない。
新たな決意を胸に、宗一たちは船へと向かう。
84find the Routes ◆QGtS.0RtWo :04/06/14 00:03 ID:zM86Yz4k
【065 那須宗一  所持品:長弓、矢20隻 宗一の手記 クレイモア一個 ゾリオン(使用回数3回) 電池一個 】
【025 カミュ   所持品:気配を消す装置 レミントン・デリンジャー(装弾数2発 予備弾4発】
【078 伏見ゆかり 所持品:グレネード1個(殺傷力は無いがスタン効果とチャフ効果を合わせ持つ)】
【040 相楽美佐枝の死体、文化包丁は民家に置かれたまま】
【三人はアビスボートへ向かう】
【時刻は1時ごろ】
85守りたいもの 修正:04/06/14 00:03 ID:uqJ2xCcv
63の

「そうだね・・去ったのは10分ぐらい前だと思うよ。様子だけど。青い髪の少年だった。制服を着ていたからたぶん学生だと思う。背中に何か背負っていた。武器は・・持っていたはずだけどよくわからない。」
(青い髪・・木田君ではない・・と。)           を
                                 ↓
「そうだね・・去ったのは10分ぐらい前だと思うよ。様子だけど。制服を着ていたからたぶん学生だと思う。黄色い制服だったよ。後背中に何か背負っていた。武器は・・持っていたはずだけどよくわからない。」
(黄色い制服・・?)
明日菜は自分が制服を着ていることを確認する。逆に言えば、木田も制服を着せされられてこの島に連れて来られた可能性が高い。もちろんこの島で木田が服を着替えた可能性もあるが、木田の性格から考えてその可能性は低い。
(となると…木田君ではない可能性が高い、と。)     に差し替えお願いします。

後68の【残り34人】を 【残り35人】に差し替えお願いします。

86受け継がれていく道:04/06/14 00:04 ID:npG0c0r9
>>81

 だがまだまだ疑問の種はつきない。
 いったいどのようにして爆弾が体内に埋め込まれたのか?

(時期は、考えられる内では空白のあの時しかないな。
 気付いたら無機質なホールへと連れてこられた時と最後に確認できている自分の状態。
 この謎の空白の時間をおいて考えられない)
 
 テーブルの目の前に置かれた爆弾を見詰める。

(だが、手術痕なしで埋め込む事なんて可能なのか?
 確かに世の中には心霊手術なんていうのもある。
 それだって現実の信憑性は薄い……だけど)

 頭に思い浮かぶのは、宗一の世界では存在しない者たちの姿。
 羽根を持った女、獣の耳と尻尾を生やした少女
 そして季節感に統一性が全くないこの島
 最後に、忌まわしき過去、決着をつけたはずのあの老人の顔……
 
(はは、これらを目の辺りにしたら、あながちありえなくもないな)

 しかし不思議なのは爆弾が全く作動しなかったことだ
 もし主催者にこの行動が見られているのなら、摘出した瞬間にスイッチを押される危険性もありえる。
 それこそが彼が一番心配した可能性でカミュとゆかりはこの部屋に入れなかったのだが……
 だが、今まで何度となく「解除する」と「主催者への仲間を集う」という言葉や行動も示してきた。
87受け継がれていく道:04/06/14 00:06 ID:npG0c0r9
(主催者がこういう事態を想定してなかったのか……それとも自分たちの計画に絶大な自信を持ってるのか)

 爆弾が取り出されてから時が経つ。
 しばらく様子を伺ったが、爆発する様子もない。
 安全を見計らった宗一が近寄り爆弾を手に取る。

 カチリ……
 何かのスイッチが入った音響く。
 その瞬間、宗一は自らが最後の詰めを怠った事に気付いた。
 宗一が考えれなかった事の一つ。
 この島、もとい主催者達が彼らの常識を遥かに超えた科学力もまた持っていたと言うことを。
 いや、高い科学力があることは、ゾリオンの存在で薄々感づいてはいた。
 だが、彼の見定めた限度を遥かに上回っていたのだ。
 そして投げる暇もなく、音と共に爆発は起きていた。

 部屋に爆発音が響き渡った。

「宗一さん!!」

 扉越しに二人の声が響き渡る。

「ははは……最後の最後でミスをしたか」


 爆弾を掴んだ左腕が跡形もなく吹き飛んだ。
 そして、左顔と左半身は大きく焼け爛れている。
 特に胴体への被害と出血の量が致命的である。
88受け継がれていく道:04/06/14 00:08 ID:npG0c0r9
「離れていたから大丈夫だ!! だけど万が一のこともある、まだ中に入らないでくれ!!」

 心の中では、自分はもう長くない事は解っている。
 だが、残された最後の作業を彼は終える必要があった。
 朦朧とする意識の中で手記を血で濡らさぬよう注意を払い、
残された右手で残すべき情報を全てそこに書き記す。
 爆弾の存在位置……そして宗一が気付く事の出来なかった機能、人の手に触れた瞬間、爆発したことを。

「爆発を抑える方法を見つけてから取り出せと……俺の予想では鍵はゾリオン」

 全てを書き終えた彼は、壁に寄り添い腰を落とす。
 もう立つ体力も消えていた。

「美佐枝さん、すみません……最後の最後でまた自惚れていました」

 意識が段々と遠のいていく。
 血の流れも収まりつつある……
 終わりの時が近づいてきているのだ。

「思えば、ゲームにのった人と戦おうとしたことから……本当ならあなた達の無事を第一に気遣うべきだった。
 戦いを挑みにいくのではなく、守り生き残り仲間を探すことを優先させておけば……
 その結果、悲劇を招き、この結果を起こした」

 まるで懺悔のように彼は呟いた。
89受け継がれていく道:04/06/14 00:10 ID:npG0c0r9
「だけど……今、この時、自分だけにできることを遣り遂げた。そう最後にまた自惚れていいかな?
 みんな……エディ……後を…たの……」

 最後の一文字を残し、彼は重力に従いぐったりと頭を下げた。

【065 那須宗一  死亡】
【025 カミュ   所持品:気配を消す装置 レミントン・デリンジャー(装弾数2発 予備弾4発】
【078 伏見ゆかり 所持品:グレネード1個(殺傷力は無いがスタン効果とチャフ効果を合わせ持つ)】
【長弓、矢20隻 クレイモア一個 ゾリオン(使用回数3回) 電池一個】はカミュとゆかりの傍に。
【宗一の手記】は宗一の死体の直ぐ傍
【残り3人】

【解剖に使った道具は、血と脂で使い物にならなくなったり、爆発の影響などで喪失】
90名無しさんだよもん:04/06/14 00:26 ID:bGBFzBZY
「find the Routes」は、ある意味美佐枝さんが(現時点では)宗一を救ったことになるな。
宗一だけだったら、無茶して爆弾摘出に走りそうだった。
美佐枝さんが生前に遺してくれた言葉が、彼を踏みとどまらせてくれたのだから。
これからまたどのようになるかはわからないが、これからはこれからで期待する。

「受け継がれていく道」のほうは、逆に美佐江さんのたしなめを踏み越えてしまって宗一が死んでしまった。
といっても単純な馬鹿というわけでもなく、主催者側との勝負に負けたようなもの。
そのことを悔いつつ、自分の失敗と、そこから得たことを後続に遺した展開は切なくもあり、琴線に触れた感じ。
これが通っていたとしたら宗一スキーの自分としては、としてはいい死に様を用意してくれたと涙ながらにGJを送ったと思う。

そういうわけで、二人ともGJ!
91名無しさんだよもん:04/06/14 00:27 ID:bGBFzBZY
すまねえ、誤爆した。
92名無しさんだよもん:04/06/14 03:50 ID:qEUCZhtQ
宗一「爆弾どこかな〜ポチっとな」

どっか〜ん!

【065 那須宗一  死亡】
93名無しさんだよもん:04/06/14 03:53 ID:hnYWYBGp
「ふっ、そうか。No.065、那須宗一は明確に我々に反抗した。
では死んでもらおう」

ポチッ。

「あわびゅー!」

【065 那須宗一  死亡】
94名無しさんだよもん:04/06/14 04:20 ID:+UMR37Vu
>>92-93

葉鍵ロワイアル II 作品投稿スレ!3
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1084768942/
95狂犬 1:04/06/14 10:48 ID:SggzH7hm

 「狂犬」醍醐は、己が姑息であることを許せない人間だった。
 罠を張ること、敵を欺くこと。
 それら一般的に「姑息」と呼ばれるようなことをやらないわけではない。
 むしろ、必要とあらばいくらでもやる。
 それは「姑息」なのではなく、そういう戦術なのだ。

 醍醐にとって重要なのは、己の身を何処におくか、だ。
 自分は安全なところに隠れ、部下に指示を出すだけで敵を倒す。
 そういった戦い方を、醍醐は姑息だと考えている。
 常に最前線、常に激戦区。
 篁の私設軍隊、その実働部隊の指令官にあたる位置にありながら、重要な作戦ならば、
文字通り銃弾飛び交う最前線で指揮をとる。
 それが、醍醐のやりかた。
 それだけは曲げたくない、信念。
 これまでも。
 ……そして、これからも。

 ……しかし。
 この島で醍醐がやっていることは。
96狂犬 2:04/06/14 10:49 ID:SggzH7hm
 ――基地内部。
 島の地図が映されたモニターの前で、狂犬は苛立っていた。
 鬱憤は溜まっていく一方だ。
 
 ――すぐそばに。
 幾枚かの壁を隔てたそこには戦場がある。
 銃声と怒号、悲鳴が鳴り響き、喜怒哀楽、その全ての感情が渦巻く、戦場がある。
 そして、その戦場には奴がいる。
 百度殺しても恨み晴れぬ、宿敵がいる。

 己の求める全てのものが、そこにある。

 それなのに自分は、ここにいる。
 いまだ不安定とはいえ、「ラストリゾート」を起動させ、安全を保障された、基地
の中にいる。
「……クソッ!!」

 これは、己が最も忌み嫌った行為ではあるまいか。
 安全な場所で、傍観することしかできぬ己。

 主君の命令さえあれば、今この瞬間にでもあのクソガキ――那須宗一――を縊り殺しに
向かうというのに。
 醍醐にとって篁の命令は絶対だ。
 飼い犬と呼ばれてもかまわない。
 あの御方の飼い犬だというのならば、むしろ名誉であると感じる。
 しかし、絶対の忠誠を誓っていても、狂犬の本能だけはどうしようもない。
 主君に刃向かうつもりなど毛頭ないが、その心中は穏やかではなかった。
97狂犬 3:04/06/14 10:49 ID:SggzH7hm

「……No.065の状況は!?」
 ゲーム開始から何度となく叫んだ言葉。
 その言葉に、おそらく最も多く醍醐に報告を行ったであろう、No.065――すなわち那須宗
一――の監視を担当している部下が答える。
「ハッ! No.065那須宗一は現在住宅地より南へ移動中。No.025カミュ、No.078伏見ゆかりとの会
話内容などから、おそらくアビスボートに向かっているものと思われます!!」
「……もう一人同行者がいなかったか?」
「ハッ! No.040相良美佐枝は、No.036上月澪、No.098芳野祐介との戦闘での負傷に
より、0013時に死亡しました」
「ほう、奴と同行していて死ぬとはな……」
「……これは私の推測ですが、No.065は敵を過小評価していたものと思われます。そのう
え、トップエージェントとは思えないほどの軽率な行動、ミスが見られます。……隊長、
本当にこいつが『あの』NastyBoyなんですか? 自分には、どうもそうは思えません」
 那須宗一の不甲斐なさに、疑問を口にする部下。
「……奴はNastyBoyだ。それだけは間違いない。下らんことは考えず、監視を続けろ!!」
「ハッ! 失礼いたしました、引き続き、No.065の監視を続けます!!」

「あのクソガキが、油断だと……?」
 たかが素人二人に手間取り、なおかつ同行者を死なすという体たらく。
 ……若干の失望。
 しかしすぐさまそれを振り払う。
 奴は、あのクソガキはNastyBoyだ。胆の底でなにを企んでいるかはわからない。油断して
いるフリをしている可能性だってある。
 油断していては、痛い目を喰わされる。
 用心に越したことはない。
98狂犬 4:04/06/14 10:51 ID:SggzH7hm
 奴と戦いたい。
 どちらかが死神に魅入られるまで、死力を尽くして戦いたい。
 しかし、それは叶わない。
 主君の命令は絶対。
 ……だが。
 一つだけ、奴と戦う方法がある。
 それは、主催者への反逆。
 奴が主催者に対して表だった反抗を行えば、それを制圧するという名目で、奴と戦うこと
ができる。
 いままでの奴の行動を見る限り、奴が主催者に反抗しようと考えていることはほぼ確実。
 あとは奴が直接的な行動に出れば……。

 他の奴が叛意を見せた場合は体内爆弾を作動させればそれですむが、奴は別だ。
 自分が直々に奴の首を狩りに行くつもりだった。
 当然、主君に伺いを立て、許可されれば、の話だが。
 戯れ好きの主君なら、必ずや許可を得られることだろう。
 醍醐はそう考えていた。
 その一点に、己の希望を賭ける。

(俺以外の奴に殺されるんじゃないぞ……)

 気づかぬうちに己が宿敵の無事を祈っていることに気づき、狂犬は心の中だけで笑った。

【--- 醍醐 所持品不明】
【ホール地下のシェルター】
【篁が許可を出すかどうかは、後続の方に任せます】
【時刻 一時過ぎ】
99守りたいもの作者:04/06/14 11:40 ID:c7gTrGuj
守りたいものはNGでお願いします。
100名無しさんだよもん:04/06/14 17:10 ID:nYmI0frs
幾らここまできたとはいえ>>95-98はNGだろ。
ただの書き手による主催者を使った宗一への擁護でしかないじゃん。
これはあまりにも他キャラとの差別化が激しすぎる作品として問題ありを出す。
101名無しさんだよもん:04/06/14 17:11 ID:nYmI0frs
誤爆した。
ごめん。
102絡み始めた糸:04/06/14 19:07 ID:qr0D3h3q
校内を、歩いていた。
「智代」
小さな声で呼んでみる。
返事は、無い。
何らかの理由で、どこかに移動したのだろうか。
もう一度保健室に戻り、あの男に聞いてみるのもいいかもしれない。。

違和感に、気付いた。
いくつかの部屋は、何かが、おかしい。
暗くてよく解らないが、確かにおかしい。
その予感は、智代と別れた部屋で、確実なものとなった。

「何…だよ、これ」

まるで嵐でも来たかのように荒れていた。
急いで始めに違和感を感じた部屋に戻る。
サーベルで、室内を照らす。
103絡み始めた糸:04/06/14 19:09 ID:qr0D3h3q

――焼け焦げた、壁。
その光景が、朋也に、アパートでの出来事をフラッシュ・バックさせる。

まさか。

――あの男に聞くべきだ。

走り出した。

もしかしたら、あの男が智代を。

いや、早合点するな。 さっきもそれで殺しそうになったばかりじゃないか。
そうだ、事情を話し、協力を仰いでみよう。
虫のいい話だが、頼むしか無い。
アルルゥの元へ戻り、それから、智代を。

いつもだ。
思う。
自分が復讐に向かったとき、大切な人を失う。
自分に関わった人は、自分の感情的な行動の所為で不幸になっている。


芳野の歌が、自分に勇気をくれるのならば、

あの人の演奏は、自分を平和な気持ちにさせてくれる。

104絡み始めた糸:04/06/14 19:10 ID:qr0D3h3q

敬介は少しの間、呆然としていた。
あの少年は一体なんだったのだろう、と。
救急箱を持っていった。
彼自身は怪我をしているようには見えなかった。
ということは、誰か怪我をしている人がいるのか。

もしかしたら、観鈴――?

都合の良い想像だな、と自分で思う。
と、そこで、声をかけられた。

「久しぶりやな、敬介」

晴子。

何年も会っていなかった。
探してはいた。
だが、実際に目の前にしてみると、何を言えばいいのかわからなくなった。
観鈴が生まれた日。
郁子が逝った日。
観鈴の病気が発覚した日。
晴子に観鈴を押し付けてしまった日。
今までの記憶が走馬灯のように流れて。

そして、出た言葉は。

「すまなかった」

自然に、頭も下がった。
105絡み始めた糸:04/06/14 19:12 ID:qr0D3h3q

晴子は少々、面食らっていた。
隙があれば殺そうと算段していた、幼馴染の義兄が、数年ぶりに会うなり頭を下げている。

「ええから頭上げぇや。男はそう簡単に頭下げるモンやあらへん。
 それより、ウチ怪我してるんや、肩んところ、銃で撃たれて。ここ保健室やろ? 手当てしに来たんやけど」
「え? あ、ああ。 少し待ってくれ」
そう言って晴子はどっかと椅子に座り、敬介は慌しく室内を物色しだした。

(晴子さん、ずいぶん好意的な事言ってるじゃないですか。前言は撤回ですか?)
(アホ。手当てさせて、情報引き出した後の方がええやろ?)
そうは言ったが、何だかわからないモノが胸に溜まっている。
これは、敬介に頭を下げられてから溜まりはじめたものか。
もしかすると、明日菜に『殺しても構わない』と言ったときからではないのか。
心のどこかで、自分は敬介を殺したくないと思ってはいないか。
思っていないのなら、何故明日菜に殺させようとしたのか。

「弾丸は貫通していないし、僕じゃ摘出も出来ないから、応急処置程度しか出来ないけど…」
「かまへん。それで充分や。 それより、観鈴には遭ってないやろ?」
「木田時紀って言う、学生服を着た男の子は?」
「観鈴には、遭っていない。 それと、ついさっき制服を着た少年が救急箱を持っていったけど…」
「制服はどんなのだったっ?! 学ランッ?!」
「いや、オレンジ色のブレザーだったよ」

木田ではない。 明日菜はそう判断した。
ならば、もう、用は無い。
ショートソードの柄に手を掛け――
106名無しさんだよもん:04/06/14 19:14 ID:qr0D3h3q
「おっさんっ!!」

凄い勢いで少年が乱入してきた。
運がいい。邪魔が入ったか。

「あの焼け焦げた部屋はなんなんだ?! いや、それよりも、坂上智代って娘を見なかったか?
 それからっ さっきのことはいくらでも謝る! 手伝って欲しい! 怪我をしている奴がいるんだ!」

よく質問をされる日だ。
一通り答えた後、そう思った。
要請には、快諾した。
持ち物を整理している時間は無かった。
必要なものはリュックに入れさせてもらった。
怪我をしている人は、観鈴ではないかと思い、聞いたが、
『暗くてよくわからなかった。だけど、髪の長い奴だった』と言われた。
観鈴かもしれないし、そうでないかもしれない。
そうでなくても、自分は人を助けたいし、笑わせたい。

晴子達もついてくるらしい。
探し人の情報を得られるかもしれないから、だそうだ。

月代を起こした。
かなり不機嫌だったが、文句は言わなかった。
蝉丸という青年と、月代の姉の仇の情報を求めているから。


五者五様の思惑と事情。
糸が、複雑に、絡み合う。

107絡み始めた糸:04/06/14 19:15 ID:qr0D3h3q

【002 麻生明日菜 ケーキ、ショートソード、南部十四年式(残弾8)】
【022 神尾晴子 千枚通し、歪んだマイクロUZI(残弾20発) 怪我は応急手当済み】
【085 三井寺月代 睡眠中 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル×2、リュック(智代のCD 裁縫道具 医療用の針と糸 乾パン カップ麺 ホイッスル シェラフ 方位磁石 メタルマッチ 救急セット)】
【055 橘敬介 ピアノ線 大判ハンカチ 筋弛緩剤を注射器(3セット)メモと鉛筆、食料 腕に万国旗 手品用品 鉈 文化包丁 】

【机の上 スコップ 小型レンチ クレジットカード 金槌 小銭入り長紐巾着 ピン他小物 ヨーヨーもどき 釣り糸 太めの釣り糸 携帯用酸素 肥後ノ守】
【全員 アルルゥらの下へ】
108こもれづき:04/06/14 21:18 ID:ncY6weOs
 大の字になって、女が倒れていた。
 どれだけの間か、正確にはわからない。だが、かなりの長時間、天空を見つめて微動だにしなかった。
(おとぎ話だと、思ってましたわ)
 女は先ほどの、不思議な投げ技について、思考を反芻していた。
 失いかけていた意識を呼び覚ますため、頭を振りながら身体を起こし、痛めた部分がないか確認する。
(……たいした技ですこと)
 驚いたことに、騎兵に跳ね飛ばされたかのような衝撃だったわりに、どこも砕けてはいない。
 普通の打撲であり、痛みは覚悟しなければならないが、時間をとれば問題なく動かせるだろう。
 女はそう見定めると、休息の場を求め、森の深部へと歩いていった。

 そしてほどなく一本の大樹を見つけると、その幹に背を預け、目を瞑った。
 意識が浮かべば心を鎮め、意識が沈めば身体をほぐし、熟睡しない範囲で、可能な限りの回復に努めた。
 べつだん特殊な技能ではない。戦場では、よくあることだった。
 
 
 傷から滲む血をこらえ、軋む骨格を騙しながら、男は森を駆け抜ける。
(星が読めれば、もう少し楽だったんだがな)
 休息がてら速度を落とし、木々の隙間から夜空をうかがうと、やはり朧月が見えていた。
 雲が多く、わずかに見える空も月の光に埋められている。
 それでも散見できる星がいくつかあったが、そこから方位を読もうにも配置が異なっているらしく、無駄だった。
(……どこなんだろうな、ここは)
 遭遇した者たちは、みな単一種族だった。髪色こそ変化があったが、誰にも尾はなく、耳が退化していた。
(兄者は、この世界から来たんだろうか……)
 
109こもれづき:04/06/14 21:20 ID:ncY6weOs
 そんなとりとめのないことを考えていると、突如として視界が広がった。
 木々の密度が極端にさがり、かわりに一本の大樹が、月光のなかで浮かびあがるようにして生えている。
(でかいな……)
 これほど大きな木は、森の多いこの島でも珍しい。
 幹の太さは男が3人手を繋いでも、一周できないほどだ。

(――ん?)
 そこで、女を見つけた。
 おなじ男を崇拝し、自分は兄と呼び、彼女はあるじ様と呼んだ。
 おなじ歩兵ながら、兵質の差、性格の差からだろうか、互いに関わることは少なかった。
 だが、間違いなく仲間だった。
 
 
 ――どれほど休んだのだろうか。木漏れ月の柔らかな光のなかで、女がそんなことを思い始めたころ。
 カルラの右手の藪から、男が姿を現していた。彼の技能から考えると、あまりに無用心で、無防備な動きだった。
(……生きて、おりましたのね)
 男の名を、知っている。オボロという。 あるじ様の股肱の臣であり、兄弟のように親密だった男だ。
 ほとんど言葉を交えたことはないが、戦士として信頼していたし、自分も戦士として信頼されていただろう。
(それでも、役には立ちませんでしたわね)
 女は、苦笑を浮かべた。
  
「お前……」
 呼びかけられたが、予想通り殺気を感じない。
 カルラはほとんど顔を動かさずに、目だけで軽くうなずくと、そのまま目を閉じた。
「……生きていたか」
「生きておりますわ。けれど、あなたも私も……死にそびれたかもしれませんわね?」
 カルラの辛辣な物言いに、オボロは一瞬足を止める。
 しかし、何かを決意したかのように再度歩みを進め、木の幹に手の届くところで立ち止まり、巨木を殴りつけた。
「ああ。そうだな――」
 それだけ言うと、そのまましばらく、悔しげに固まっていた。
110こもれづき:04/06/14 21:22 ID:ncY6weOs
 
 やがてオボロは、カルラと同じように背中を木の幹に預けると、ずるずると崩れるようにして腰をおろした。
 カルラの右側、1m半ほど離れたところで、しおれたように座り込む。当然、表情は見えない。

 奇妙な沈黙の間があって、搾り出すようにオボロが口を開いていた。
「……俺たちは、兄者を失った。何もできなかった。だがな」
 わずかに遅れたカルラが、そこに言葉を重ねる。
「そう、ですわね。でも」
 そのまま、どちらも遠慮せず、言い切ろうとした。
「兄者と、ユズハの子が残って――」
「あるじ様を、生き返らせてもらう手が残って――」
 そして同時に、目を丸くした。
「――なんだと?」
「――なんですって?」

 驚き。それが、ふたりの思考をかき乱した。
 しかし、すでに同じような交渉を経験しているせいだろう。カルラがさきに口を開いた。
「私の言った意味、お分かりになりますでしょう? ……あるじ様をよみがえらせるために、私と手を組みませんこと?」
 ――望みをかなえるために、ふたりで皆を滅ぼそう。
 それは恐ろしくも、魅力的な提案のはずだった。

 しかし、オボロの返答に迷いはない。即決だった。
「駄目だ。この先に仲間がいる。そこで、もう殺さないと……誓ったんだ」
「……それなら、次善の策がありますわ。あるじ様のために、私に殺されていただけませんこと?」
 
111こもれづき:04/06/14 21:22 ID:ncY6weOs
 危険な領域に突入していく会話だったが、互いに木の幹へ背中を預けたまま、話をしていた。 
 まるで平和な夜のひとときのように、木漏れ月の微光を浴びながら、静かに語り合っていた。
「それも、駄目だ。この飲み物をミコトに――兄者と、ユズハの子に――届けねばならん」
「ふふ。それなら私が、代わりに届けて差し上げましてよ?」
 カルラがいたずらな笑みを浮かべ、ふたたび目を瞑る。
 本気なのか、冗談なのか。見分けがつかない。
 オボロはすぐに返事をすることができず、結果としてわずかな、しかし深みのある沈黙が訪れた。

 それを破ったのは、無言の動作だった。オボロが立ち上がったのだ。
 目を閉じたまま動きを感知したカルラが、ひきとめるかのように警告する。
「子のために、あるじ様をお捨てになるなら……うしろからでも、斬りますわよ」
「いや。お前は、斬らない。兄者も、そんなことは望んでいないからだ」

 ふたたび、沈黙。
 今度は長かった。斬るか、斬られるか。望まれているのか、望まれていないのか。
 意思のぶつかり合いが、静かに激しく続く。

 この沈黙は、唐突に収まった。
 ひらりと何かを避けるように、カルラがオボロへの圧力をゆるめたのだ。
「申しわけありませんけれど。長話をするには、間が悪かったようですわ」
 小声でそう呟くと、カルラは苦笑を浮かべ、まぶたをゆっくりと見開いた。
「なにがだ?」
「他人をあやめる牙がないなら――そこで、隠れてなさいな」
 カルラはそれだけ言うと、もはやオボロへの興味を失ったかのように、左へ視線を流した。
 
 
112こもれづき:04/06/14 21:23 ID:ncY6weOs
 そこには、少女が立っていた。
 美しい漆黒の長髪をなびかせて、少女が微笑んでいる。
『―――追いついた』
 少女の声は、枝葉をゆらす風の音に紛れてしまっていたが、たしかに、そう聞こえた。
 達成感だろうか、開放感だろうか。至福の表情を浮かべて、少女はまっすぐ、カルラのほうへと歩みを進める。
 オボロのそれとは正反対に、木漏れ月のなかを軽やかなステップでやってくる。
 方向も、正反対。そして少女は、優雅に殺気をまとっていた。

 踊りましょう。
 踊りましょう。

 死出の旅への、慰めに。
 
 
【039 榊しのぶ ブローニングM1910(残弾1) ナイフ 缶切り(×3) 12本綴りの紙マッチ(×3) 護身用スタンガン ライター 白うさぎの絵皿】
【オボロの存在に気づいていません】

【026 カルラ 自分の大刀 背中・肩を強打 右手首負傷、握力半分以下】

【016 オボロ 果物ナイフ 短刀 ペットボトルのジュース 右足と左脇腹の負傷、肋骨骨折は応急処置済み】
【木の幹を背に、しのぶの反対側にいます】

【深夜】
 
113万華鏡:04/06/14 21:55 ID:vfy87dwj
両者は睨み合う。
分かりやすい使用方法をしている蝉丸の武器に対し、亮の武器の見てくれはこの状況には恐ろしく不釣合いだ。

だが、亮は知っている。
その手の中にあるのが何より信じられる形をした武器であると。

そして蝉丸は感じている。
相手の持つ武器がいかに危険な物であるかを。

それが故、蝉丸は迂闊には動けない。
それが故、亮は動かない。

「待て、俺に戦う気はない」
均衡を破ったのは蝉丸の方。
「俺は人を探しているだけだ」
そう言って姿勢を崩す。

(どうする…? 信じるか?)
確かに蝉丸の纏っている空気は殺人者のそれではなかった。
そして確固たる意思を秘めた、亮自身を投影したかのような目をしていた。
だから亮は───

「……悪いがそう簡単には信用出来ない」

───もし蝉丸がこの島で始めて会った人物であったのならば間違いなく信用しただろう。
だが、亮は一度その言葉に騙された。
その為、亮自身の身だけでなく、神岸あかりの身まで危険に晒した。
だから今の亮は簡単に人を信じる事は出来ない。してはいけない。
万が一があっては取り返しがつかないのだ。
114万華鏡:04/06/14 21:56 ID:vfy87dwj
目の前の男に対して判断を下す為には、最低でも神岸あかりと春原芽衣が逃げる準備が整うまで時間を稼がねばならない。

「俺一人の命だけが掛かっている訳じゃないんでな」
ギアの照準を目の前の男に合わせる。

「どうすれば信用して貰える?」
照準こそ付けられているが、不思議と蝉丸は恐怖を感じてはいなかった。
あの男は自分と同じだ。自分からは撃つ事は出来ない。

「……まず、その武器を捨ててくれ」
蝉丸はその言葉通りにする。
そして空手に。
「これで信用して貰えるのか?」
その言葉に亮は表情を顰める。
「そのまま5分……いや、3分だけ待ってくれ」
その時間が相手の男の譲れない一線である事を蝉丸は理解した。
「…分かった」


「神岸さん! 神岸さん! 起きて下さい!」
亮が戻って来ない。
芽衣にはそれが何を意味するのかは分かっている。
そして何を優先するべきかも。
「……」
だが、あかりは目を覚まさない。
この島に来てからの疲れが溜まったのか、それとも心が危険を察知して現実を閉ざしてしまったのか。
「神岸さん!!」
しかし今、目覚めなければ永遠にその機会を逸する事は明白であった。
115万華鏡:04/06/14 21:58 ID:vfy87dwj
「お願いだから……起きて……! 急がないと松浦さんが…」
何度目かも分からない芽衣の声があかりの鼓膜を振るわせる。
「芽衣……ちゃん?」
芽衣の必死の願いが通じたのか、それとも起きるべくして起きたのか。
ともかく永遠の眠りになる事は避けられたようだった。
「よかった…」
「理緒ちゃんは…?」
そう言ったあかりの表情は真剣そのものであったが
「今はそれ所じゃありません! 急いで逃げましょう!」
芽衣にはそんな事が重要だとは思えなかった。
だが、芽衣が引っ張った所であかりは微動だにせず。
「理緒ちゃん……ごめんね」
「あかりさん、今は……!」

「誰も悪くない。誰もこんな状況は望んでいなかった」

あかりは泣いていた。
泣き声こそ出しはしなかったが、泣いていた。
「……その言葉は?」
「松浦さんが言ってくれたの。理緒ちゃんも、わたしも、浩之ちゃんも……こんな状況を望んでなかったんだよね」
あかりは涙を拭って起き上がる。
その目には光が戻っていた。
「芽衣ちゃんみたいに……強くなるって決めたもんね。行こう、もう大丈夫だから」


「……そろそろいいだろう」
そう言って亮はギアの照準を蝉丸から外す。
もっとも回転だけはすぐに止まらない為、ギアの回転音だけは静寂に響き渡っている。
「信用して貰えたのか?」
「ああ。…別にここまでする必要はなかったんだが。さっきも言ったが俺一人の命じゃないんでな」

(成程。今までのは同行者を逃がす為の時間か)
116万華鏡:04/06/14 22:00 ID:vfy87dwj
蝉丸には亮を責める気はしなかった。
恐らく自分が同じ立場であれば同様の事をしただろうから。

「松浦さん……? 大丈夫ですか!?」
どうやらその同行者がやって来たようだ。
「……ああ、問題ない。この男は信用してもいいと思う。
……そういえばまだ名前を聞いていなかったな。俺は亮、松浦亮だ」
亮は礼儀として先に名を名乗った。

この狂気が支配する島で、それでも信じる事の出来る者は確かに存在した。
それは鏡に写したかのように己に似た人物で

「俺は蝉丸、坂神蝉丸だ」

しかしその鏡は万華鏡のように

「蝉丸……? ……きよみさんの探していた人?」

姿を刻一刻を変化させ

「お前達がきよみを……?」
蝉丸の手の中には拾い直した木刀が。
「神岸! 春原! 走れ!!」
声と同時に再び回転を開始する亮の手の中のギア。


誰も望まぬ形をとる事も有り得るのだ。
117万華鏡:04/06/14 22:05 ID:vfy87dwj
【037 坂神蝉丸 木刀 ハクオロの仮面装備 切り傷 打撲が二十数箇所】
【084 松浦亮 修二のエゴのレプリカ】
【024 神岸あかり 所持品なし】
【047 春原芽衣 木彫りの熊 きよみの銃の予備弾丸6発 筆記用具
枕大の石 黒うさぎの絵皿 水風船2コ 予備食料の缶詰が残り3つ】
118名無しさんだよもん:04/06/14 22:21 ID:7s0qsqyy
全員U-1化のスレはここですか?
119闇夜の博徒 ◆QGtS.0RtWo :04/06/14 23:04 ID:zM86Yz4k
タンッ!

キリキリキリ…。

タンッ!

夜の森に響き渡る異音。
引き絞られた殺意が闇に吼える。

「0点、1点、1点、0点、3点の計5点、か。練習が必要そうね」

目の前の大木から咲いた、異形の花を見ながら、晴香は一人ごちる。
大木に刻まれた三つの歪な円と、斑に穿たれた五本の矢。
ダーツゲームに見立てて、晴香はボウガンの練習をしていた。

観鈴を追って洞窟に降りたはいいものの、そこに在ったのは真暗闇。
深追いは愚策とみた晴香は諦めて洞窟を登り出で、そこで観鈴の落とした荷物を見つけた。
まず探したのは武器。
コルトの残弾数は二発。
弾切れを起こす前に、何か飛び道具を手に入れておきたかった。

「へぇ、いいもの持ってるじゃない」

まだまだ自分の悪運は尽きていないらしい。
手に入ったのは武器。
それもボウガンだった。
矢のリサイクルが効き、発射時の音も銃声とは比べものにならないほど静か。
暗殺にはもってこいの武器だった。
120闇夜の博徒 ◆QGtS.0RtWo :04/06/14 23:05 ID:zM86Yz4k
タンッ!

「1点、1点、3点、3点、1点の計9点か」

撃っては引き抜き、また放つ。
五度目の練習。
一つ、また一つ、と新しい穴が刻まれていく。
溜息を一つ。

「これだけ撃ってもまだ中心には当たらないなんてね」

一度目に比べれば少しは上達してきたものの、未だ中心を打ち抜くほどの腕前には至っていない。

「まあ当たり前と言えば当たり前なんだけど…」

大木を彩る異形の花びらを、カッターで周辺を削って抉り出し、鞄に直していく。
遅めの夕食をとりながら、上手く扱えない理由を考えてみる。
まず一番の理由。
それはやはり、今が夜であることだろう。
もう大分闇に目は慣れてきたが、よく見える、とは言い難い。
そもそも、月と星しか光源が無い夜などは経験したことがないのだ。
薄ぼんやりとしか円が見えない中で中心を狙うなど、熟達の軍人でもない限り不可能だろう。
第二に、ボウガンの重量。
軽い材質で作られてはいるのだろうが、如何せんコルトと比べると重く感じる。
片手で振り回すなどは以ての外だ。
撃った反動は軽いとは言え、両手でしっかり構えなければ少しブレてしまう。
それと――
121闇夜の博徒 ◆QGtS.0RtWo :04/06/14 23:06 ID:zM86Yz4k
「痛ッ…」

粉塵爆発の際に受けた全身の傷。
小さな幾つかは既にかさぶたができ始めていたが、痛みが消えたわけではない。
殺し合っているときはいい。
アドレナリンが全てを忘れさせてくれる。
だが、いつもそうであるとは限らない。
精神は痛みを感じなくとも、肉体は痛みを感じている。
いつまで精神で騙し通すことができるのか。
表面の汚れは軽く水で洗い流したが、このまま放っておけば破傷風の危険性もある。

(いい加減、消毒だけでもしておきたいところね)

体液と汚泥に塗れた、穢れた我が身。
FARGOに居た頃の自分と、この島に連れて来られてからの自分。
どこか、変わったところでもあるのだろうか?

「ふふっ…」

「人をいっぱい殺した…ね……」

四人、だったか。
最初は金髪の少年。
直接の死因はあの爆発かもしれないが、致命傷を与えたのはあの銃弾だっただろう。
次に姉弟。
こんな状況でも日常を夢見ていた二人。
それが気に食わなくて、怒りに任せて殺した。
そして、あの黒い少年。
薄っぺらな正義感を振りかざして出てこなければ、殺されることもなかっただろうに。
結局、『あさひちゃん』とやらを残して一人で逝った、女泣かせな奴だった。
122闇夜の博徒 ◆QGtS.0RtWo :04/06/14 23:07 ID:zM86Yz4k
一人殺せば殺人犯。
十人殺せば殺人鬼。
百人殺せば、英雄だと聞いた。
ならば、英雄として凱旋してやろうではないか。
最早、昔に戻れるとは思わないし、戻るつもりも毛頭無い。
零れ落ち行く水を、盆に戻すことなどできはしない。
飛沫と散るまでの数刹那。
一人でも多く、地獄への道連れを作らせてもらおう。

腹は決まった。
さっきまでのようにまた大木へ登り、死体につられてのこのこやってくる阿呆を待つという手もあったが、それでは事態は好転しない。
かと言って、何の当ても無く夜の森を彷徨い歩いたところで、安全に休める場所が見つかるとも思えない。
新たな武器も手に入り、軽く食事と休息もとった。
ならば、今こそが、打って出る機会かも知れない。
ボウガンの扱いには少し不安が残るが、当てられさえすれば十分致命傷を与えうる武器だ。
状況に応じてコルトと使い分ければいい。

目指すは住宅地。
傷の手当てができ、獲物の集まる場所。
ここにいるよりは人を殺しやすく、また、人に殺されやすい場所。
彼方へ半歩、此方へ半歩。

「さあ、誰が一番神に愛されているのか、運試しといきましょうか―――」

【091 巳間晴香 所有物:コルト25オート(残弾2)、カッター、ボウガン(残り5本)、相当量の食糧と水(少し消費)】
【時刻は23時頃】
【住宅地方面へ向かう】
123 ◆QGtS.0RtWo :04/06/14 23:19 ID:zM86Yz4k
「闇夜の博徒」は致命的なミスがあったのでNGとさせていただきます。
124Boyhood's End:04/06/15 01:25 ID:72RS/fzn

「……ここなら、大丈夫ね。
 見通しは最悪だし、周囲からの射線は通らない」

森の夜。
深く静かな闇の中に、低く抑えられた女の声。
レーダーに不審な光点は無い。

「とりあえず休息が必要ね。あなたと会った今朝からずっと、歩き通しだったし。
 このレーダーがあれば奇襲はないわ。
 見張りを二時間ごとに交代して、交互に休みましょう」

応じる者はいない。
女は続ける。

「sigh……それにしても、丸一日歩き回ってまるで成果なし、か……。
 いい加減、次の手を考えた方がいいかもしれない」

ぱちり、と爪を噛む音。
そのまま思案気な表情を崩さない。
しばらくの間を置いて、その目線だけが動く。

「…………で、クニヒロ。
 いつまで不貞腐れてるつもり?
 さっきのアレは、ああしていなければあなた、死んでいたわ。
 どうせ銃だけ気にしていて、ナイフなんて目に入っていなかったでしょう。
 感謝しなさい、とは言わないけれど―――」

「―――そんなんじゃねぇ」
125Boyhood's End:04/06/15 01:26 ID:72RS/fzn

女に背を向けて寝転がっていた大柄な影が、呟いた。
そのボルテージが、急速に上がる。

「……そんなんじゃねぇ、そんなんじゃねぇ……そんなんじゃねえんだッ!」
「クニ……ヒロ?」

辺りを憚らぬ、もはや怒号とも言える声に、女は戸惑っていた。
男の声は止まらない。

「俺は、何だ……?
 この島に来てからの俺は、いったい何なんだ……!
 どいつもこいつも俺を置き去りにして走っていきやがる……!
 テメェらにとって俺はいったい何だ、道端に転がってる石ころか!?
 畜生、畜生、畜生!
 俺は、俺の周りのクソッたれな全部をぶっ壊す、そういう俺だったはずだ!
 それが何だ……何なんだ、女に助けられてクダ巻いてる俺はいったい何だってんだ!?
 クソッたれは俺だ、何もできねぇ俺だ、どこにも辿り着けねぇ俺だ!
 戻りてぇ……何にも考えずにぶっ壊してた俺に、戻りてえよ……!
 畜生……ちっくしょう……ッ!」

男が、少年でいられる街があった。
この島は、少年でいることを許さなかった。
男もまた、少年であることを捨てた筈だった。
しかし出会った人々は皆、男を少年として扱った。

浅見邦博は、泣いていた。
126Boyhood's End:04/06/15 01:27 ID:72RS/fzn

リサは、じっと邦博の背中を見つめていた。
暗闇の中、その背中は小刻みに震えていた。

細い嗚咽が止む頃、リサは告げた。

「―――頼みがあるの、クニヒロ」

邦博の背中は応えない。
気に留めた風もなく、リサは続ける。

「街がある、と言っていたわね。あなたがエミリといた街が。
 そこにはおそらく、多くの人が集まっているわ。
 この二日で、その街の存在を知った人間はきっと大勢いる。
 ……もちろん、中には危険な連中も多いでしょうね」

そこで一旦、言葉を切る。
邦博の背中は動かない。

「―――夜が明けたらクニヒロ、あなたにはそこに向かってほしいの」

邦博の背中は、殻に篭ったように動かない。
ため息をひとつ。

「そこで、あなたに探してほしい人がいる。……那須宗一、エディ。
 わたしが知る限り、この世界で一番頼りになる人たち。
 彼らを探して、合流してほしいの。……そして私のことを伝えて。
 『地獄の雌狐』は一足先に、古狸の巣穴に飛び込んだ、と」

ぴくり、と邦博の背中が反応する。
127Boyhood's End:04/06/15 01:28 ID:72RS/fzn

「ずっと考えていたわ。ミルトが飛び込んだ、あのホールのこと。
 あの規模の損傷だもの、きっと修復には時間がかかる。……でも、限界があるわ。
 ミルトがくれたこのチャンス、逃すわけにはいかない。
 けど単独では勝ち目が薄い……だからこそ、仲間を探していたのだけれど」

ふ、と。
リサの視線が沈む。

「……でも結果はこの通り、時間と体力の浪費だった。食糧も、もう底を尽きてる。
 我ながら無責任ね……sorry、本当にごめんなさい。
 けれど、このチャンスを逃したら、もう勝利の女神は微笑まないという感じがしてるの。
 ……もっともアンティークの剣一本で、女神のお気に召すかどうかはわからないけど」

自嘲気味に笑う。
爆弾は、どこに仕込まれているのかも判らない。
最悪、というか十中八九までは、基地内への侵入と同時に起動するだろう。
それでもこの目だけは、逃すわけにはいかなかった。
ルージュでもノワールでもないSingle number、00への一点勝負。

(配当は35倍、か―――悪くない、わね……)

「気付いてる?
 ……日が暮れてからこっち、あのホールに戻るようにルートを選んでいたの。
 もう、すぐそこなのよ、実際。だからね、クニヒロ―――」

ふわりと、微笑むような声音。

「―――夜が明けたら、ここでお別れ」

それだけを、告げた。
128Boyhood's End:04/06/15 01:29 ID:72RS/fzn
沈黙を打ち消すように、リサは続ける。

「街までは、そのレーダーを見ながら気をつけて、ね。
 私は、夜明けと同時に奇襲をかけるわ……どうせ監視付きだろうから、奇襲にはならないでしょうけど。
 それが宗一たちの進む道の礎になれば、それでいい」

そして最後に、VIXENの二つ名に相応しい、狡猾な笑み。

「勿論、私だって犬死する気はないわ。
 ヤツらには、ID13のエースを甘く見たらどうなるか思い知らせてあげる。
 雌狐のひと咬みが、喉笛を喰い千切ることだってある、ってね」

闇の中、蒼い瞳が煌いた。

「―――話はそれだけ。
 このパソコンはあなたに預けておくわ。エディに会ったら、彼に渡して。
 Good night、クニヒロ……二時間したら、ちゃんと起きてね」

それきり、声は途絶えた。


浅見邦博は、動かない。
動けなかった。

これが、最後の選択肢なのだと、それだけは理解していた。


【001 浅見邦博 身体能力増強剤(効果30秒 激しいリバウンド 2回使うと死ぬらしい)パソコン、
 レーダー(25mまで)】
【100 リサ・ヴィクセン 草薙の剣】
【時刻は深夜】
129悪鬼夜行 ◆QGtS.0RtWo :04/06/15 01:52 ID:e37FKRIE
「これは一体……どういうことかしらね」

観鈴を追って洞窟に降りたはいいものの、そこに在ったのは真暗闇。
深追いは愚策とみた晴香は諦めて洞窟を登り出で、観鈴が逃げる際に落としていった荷物を回収することにした。
何か武器でも在ればいい。
そう思って這い出たのだが――

「どこの泥棒猫が……」

其処には何も無かった。
否、御丁寧に胸の上で手を組み合わせられて弔われた少女の死体だけがあった。

「クソがッ!」

少女の死体を思い切り蹴り飛ばす。
一回転、二回転、静止。
蹴られた衝撃で首が在り得ない形に捻じ曲がっていた。
少し溜飲が下がる。

「あは」

「ははは」

「はははははははははははははは!」

「ははハはハハハハハはひひヒははひゃははははははははは!!!」

晴香の哄笑が森を振るわせる。
それはさながら、魔王。
130悪鬼夜行 ◆QGtS.0RtWo :04/06/15 01:52 ID:e37FKRIE
「ははは、はぁ……」

自分は何をやっているのだろう。
やる事なす事、全てが裏目に出る。

「痛ッ…」

粉塵爆発の際に受けた全身の傷。
小さな幾つかは既にかさぶたができ始めていたが、傷が治ったわけではない。
己の役目を思い出したかのように、ずきずきと痛み出す。

愚か者が居るよ――
ここに救いようの無い女が居るよ―――

傷口たちまでもが大声で嗤い出す。

「ははは…」

殺し合っているときはいい。
アドレナリンが全てを忘れさせてくれる。
殺すことだけを考えていられる。
そうだ。
殺せばいい。
目に見える全てを、破壊し尽くしてしまえばいい。
こんな世界なんて要らない。
こんな現実なんて見たくない。
殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し尽くしてもまだ殺し足りない。
このゲームの参加者を全て殺し、主催者どもも全て殺し、篁も殺して。
最後は兄すらも、殺す。
131悪鬼夜行 ◆QGtS.0RtWo :04/06/15 01:53 ID:e37FKRIE
――嗚呼、良祐。
私の愛しい人。
狂おしいほどに愛しているから。
狂ったように殺してあげる。

切って、開いて、抉って、割って。
千切って、刻んで、お皿に盛って。
最後はおいしく食べてあげるの。
血の一滴、髪の一本、細胞の一欠に至るまで。
骨まで残さず、食べてあげる。

「うふ、うふふふふふ」

右手でコルトを玩び、左手でカッターの刃を出し入れしながら、晴香は嗤う。

切って殺すか。
撃って殺すか。
殴ってもいいし、絞めてもいい。
何だっていいから、兎に角、殺す。
殺す、殺す、殺して殺す。
ほうら、楽しくなってきた。
こんなに楽しいのに、傷口たちは嗤うのをやめてしまった。
全く、ノリの悪いやつらだ。
さあ殺そう。
今殺そう。
すぐ殺そう。
兇器を両手に狂気を友に、狂喜を迎えに歩いて行こう。
血の河を作り、死体で堰き止め、蹴り上げて壊し、また積んでやる。
積んで壊して、壊して積んで。
賽の河原の石の塔。
狂ったお勤め終わり無し。
狂った人間歯止め無し。
132悪鬼夜行 ◆QGtS.0RtWo :04/06/15 01:53 ID:e37FKRIE
「待っててね良祐、今すぐ殺しに行ってあげるから―――」

何もかも奪われ、明日は無く、己の命に頓着せずに、他人の死のみを願うモノ。
そんな奴が居れば、きっと悪魔にも勝るのだろう。

【091 巳間晴香 所有物:コルト25オート(残弾2)、カッター、相当量の食糧と水】
【時刻は23時頃】
【森の中を彷徨う】
133光と刻:04/06/15 04:03 ID:jMFjjQJG
「2時間も待つ必要はねぇ」
邦博は答えた。
「それじゃもうここでお別れかしら? ……サヨナラ」
リサは寂しげに微笑んだ。

「違う! 俺も一緒に行くに決まってんだろうがっ!
 夜明けなんて悠長なことは言わず、一刻も早く、今すぐにだっ!
 待つなんて、時間と体力の無駄なんだろ? 俺もそう思うぜ」
「クニヒロ……」
「それに、人探しなんて俺の性にあわねェ
 獲物が目狐に咬まれる前に、龍が全部喰い尽してやるさ」

2人は、すぐさまホールまで移動する。
内部の様子はうかがい知れないが、外には見張りの兵士などはいない。
ミルトが突っ込んだ部分の外壁は既に直されていた。

「なんだありゃ?」
その補修されている外壁の下に何か置いてある。
2人は近寄り、それが支給品のバッグということを確認した。
「何が入って……」
邦博はバッグを開けようとした。
「待って! 篁の罠かも知れないわ。
 餌に釣られた獲物が、開けた瞬間に中の爆弾が……
 B O M B ! ってね」
リサはそういい、邦博の手を掴んで止める。
134光と刻:04/06/15 04:04 ID:jMFjjQJG
「それはねぇだろ、んなことしたらせっかく直した壁がまた吹き飛んじまうことになる
 大体説明によりゃ、もう身体に爆弾仕掛けられてるんだ、わざわざそんな手の込んだことするか?」

言われてみればその通りかもしれない。
向こうはそんなことをせずとも、その気になれば即刻全員を爆死させることも可能なのだ。
おそらくやカメラや盗聴器もそこかしこに仕掛けてあり、参加者の行動は筒抜けなのだろう。
だが、ホールの前まで来た2人にさえも、向こうが何らかのリアクションを起こす様子は無かった。
今はまだ参加者同士の殺し合いに専念させ、余計な介入は避けるということか?
それとも、私たちは本来ならば反逆行為で爆死させるほどの事をしているが
何らかの理由で爆破できない―――?

と、リサが考えているうちに、邦博は既にバッグを開けていた。
少なくとも光や振動で発動するタイプの罠ではないらしい。

「ん〜と……これは剣みたいだな」
邦博はバッグの中から武器を取り出した。
やはり参加者の支給品用の物が、何らかの理由で置かれていたらしい。
135光と刻:04/06/15 04:05 ID:jMFjjQJG
その剣は草薙の剣とは違い、西洋風の剣だった。
邦博は剣を取り出し、リサは付属の説明書を読む。
「なになに……『世界の創造とともに作られた伝説の剣 フィルスソード』だって」
さすがに世界創造からというのは大げさだろうが、草薙の剣と同様かなりの年代物だと言う事は分かる。
ただし切れ味は悪くなさそうだ。
邦博は剣を試し振りしている、
もっとも、剣術の心得などない彼にとっては、ただ力任せに振り回しているだけだったが。

「ねんがんの フィルスソードをてにいれたぞ!」
武器を手にいれ、はしゃぐ邦博に対してリサは思った。

  :そう かんけいないわね
   
→ :殺してでも うばいとる
   
  :ゆずって たのむわっ!!

「な なにをする きさまー!」
136光と刻:04/06/15 04:06 ID:jMFjjQJG
…………実際は、殺すことも譲ってもらうこともしなかったが、だが、興味はある。
リサは説明書の続きを読む。

「『特殊使用方法1 光の矢 光を飛ばすイメージ念じ、飛ばしたい方向に剣を振る 制限回数10回』」

「念じ……? プロクシを出す時のようなモンか?」
邦博はそう言い、フィルスソードを念を込めて振った。

「おりゃあ!」

その時、剣が発光したかと思うと一筋の光が
真っ直ぐ飛んでゆき、木を貫いた。
その木には直径20センチほどの空洞ができていた。
「すげぇ……!」
「OH……!」

凄まじい破壊力の矢だが、発射のための予備動作もかなり大きい。
残り回数もあと9回しかない、ここぞ、というときに使わねば。
137光と刻:04/06/15 04:07 ID:jMFjjQJG
「他にもなんかねぇのか?」
「えーっと……『特殊使用方法2 シャインクルス 剣を頭上に掲げ破壊対象に向かい「シャインクルス!」と叫ぶ 制限回数5回』ね」
「なるほどな……」
邦博はホールの方を向き、剣を振り上げた。

「え? チョット……クニヒロ!」
リサが止めるまもなく……

「シャインクルス!」
この島の中心でシャインクルスと叫んだ。

フィルスソードは、先ほどの数倍の眩しさで発光したかに見えると

その光がホールへ向かって―――

【001 浅見邦博 身体能力増強剤(効果30秒 激しいリバウンド 2回使うと死ぬらしい)パソコン、
 レーダー(25mまで) フィルスソード】
【100 リサ・ヴィクセン 草薙の剣】
【時刻は深夜】
138仮面な人:04/06/15 05:22 ID:C679lkot
「お前達がきよみを……?」
 それはただ単純な疑問。思わず手にとってしまった木刀。
 思わず口から出たのはそんな言葉。
 そのセリフの意味を、彼らはどう取ったのか。
 仮面で覆い隠された蝉丸の真の表情がどんなだと想像したのか。

 この島での危うい均衡は、些細な行動で場を崩すのに充分で。


「神岸! 春原! 走れ!!」
 思わず出た言葉。再び加速するギア。
 その行動の意味を、彼はどう取ったのか。
 仮面で覆い隠されたその表情を窺い知ることはできない。

「待……」
 蝉丸が再び口を開く。
 それを亮はどう取ったのか。

 臨戦態勢に入った亮自身に対する待ったなのか、
 それとも――逃走態勢に入ったあかりと芽衣を呼び止める声なのか。

 ともかく、いくつものすれ違いの末、ギアは射出された。

 ズン!

 蝉丸の開かれた足元、地面に突き立つ銀の車輪。
139仮面な人:04/06/15 05:23 ID:C679lkot

 亮は故意に外した。
 この男、蝉丸は無差別に人を殺し歩くような男ではない。
 きよみを殺したと認識し、蝉丸が自分達に殺意を抱いたとしても。
 それ自体が誤解だ。あの女はゲームに乗っていた人間で。
 かつ、自分達は手を下してはいない。

 亮はゲームに乗った者を討つ『PK』になると心に誓っていた。
 だが、二人を守る為であれば、望まぬ闘いに身を投じることも。その結果人が死ぬことになっても厭わない。

 それでも、誤解から生まれた戦闘ですすんで人を殺すのはやはり躊躇われた。

 恐れを成して去るならそれも良し。
 去らぬなら――

 亮は一、二歩後ずさり間合いを離しながら、再びギアを正眼に構えた。次は当てる。

 裏切られた経験を持つ分、亮の方が幾分好戦的。
 そして平静さをも保ってはいたが。
 思考するという意味ではフィルターでもかかったかのように冷静さを欠いていた。
 あかりと芽衣が蝉丸の歯牙にかからない場所まで逃げおおせたこの時点で。
 もしも蝉丸にもう一度話し合いを求めていれば今後の流れは大きく変わっていたかもしれない。
140仮面な人:04/06/15 05:24 ID:C679lkot

 一方の蝉丸は一転した状況に面食らいながら。
 そして、足元に突き立った銀のギアに戦慄しながらも、目の前の亮を冷静に見つめた。
(くっ……何ということだ)

 きよみと聞いての彼らの豹変ぶり。彼女と何かあったということは想像に難くない。

 先のやり取りから、目の前の亮は理由もなく殺しを行うような者には見えないし、
 亮の言葉に従い、逃げ出した二人の少女はなおさらだ。
 そして、どの程度かは分からないが、彼らは強い信頼関係で結ばれている。
 そんな彼らとこんな形で敵対することになってしまうとは。

「一つ聞く。あの少女達が逃げた先は安全な場所なのか?」
「……」
 二人が消えた先を捉えながら、蝉丸が尋ねる。
 亮は答えない。だがその表情はそうではないと言っているも同然。
 突発的なこういう状況で、落ち合う先など決めてはいないのだろう。
 一瞬の迷いの後――亮の目に今までにはなかった殺気がこもる。
「悪い。手早く片付けさせてもらう。もし死んでも恨むな」

(どういう経緯であれ、これを招いたのは自分の軽率な言動と行動からだ。逃げるわけにはいかん)
 蝉丸は覚悟を決めた。
141仮面な人:04/06/15 05:25 ID:C679lkot

 蝉丸が逃げを打ち、そしてもし上手くここから逃げおおせたとして。
 ――そうすれば亮はすぐにでも少女達を追うのだろう。
 だが、逃げを選択した時点で、彼らとの和解の道はほぼ閉ざされてしまうかもしれない。
 最悪、蝉丸とその仲間達とも敵対することになるかもしれない。
 自分達は本来憎み合い、戦う相手ではないはずだ。
 ここから逃げるのではなく、真っ向からこの状況を収めたい。

 キュイィィーン!と高速回転するギアの音だけが辺りに響く。
 だが、二人はそこに無数の音を聞いていた。
 相手の呼吸音。心臓の鼓動。一定のリズムを取りながら相手の隙を窺う。
 なかなか動くには至らない。
 時間にすればほんの数秒の間だったが、臨戦態勢に入った二人にはその時間さえも悠久の時に感じた。

 蝉丸にしてみれば、未だ仙命樹の力が働かず、傷を負ったままの体で。
 かつまともに当たれば肉を斬り骨を断つ恐るべき威力のギアを相手に真っ向から単純に突っ込むわけにもいかず。
 亮とすれば、残り二発しかないギアをおいそれと撃つわけにもいかなかった。
 相手が素人ならばいざ知らず。目の前の男の落ち着きようと気迫は、まさに修羅だった。
142仮面な人:04/06/15 05:26 ID:C679lkot

 先に動いたのは蝉丸。亮が比較的大きな瞬きをした隙に、一気に一足で間合いを詰める。
(速いっ!)
 亮も横へと回避しながらギアを撃とうとするが、滑るように、ギアの軌道を避けるようにその先へと回り込み。
「すまぬっ!」
 闇夜を切り裂くように、木刀が唸り、亮の手を打ちつける。
「痛ぅっ!」
 手に持ったギアを取り落とすことだけは。亮は必死で打たれた手に力を込め、ギアを握りしめる。

 振り下ろした木刀を構えなおすこともせず、蝉丸は亮の鼻面へと頭突きを見舞った。
 固い仮面が顔に喰いこみ、亮の目の中に火花が散る。視界に映る闇夜が一層暗くなって沈んでいく。

 木刀でギアを持つ手を押さえつけるようにして、亮の体を掴むと地面へと投げつける。
 さらに追い討ちとばかりに覆い被さってきた蝉丸の体が、亮の腹部にさらに衝撃を与える。
「ゴフッ!」
 叩きつけられたのが柔らかい土の上。かつかなりの手加減をされたとはいえ、それは相当な痛みを伴い亮を襲った。


 冷静な試合運びとは裏腹に、蝉丸は内心あせっていた。
 今の激しい運動で怪我した身体が痛むというのもあるが、そういう意味ではない。
 急がなければ。こうしている間にも、彼女達はどんどん遠ざかっていく。
 こちらにはやる気がない。仮に、もしきよみを殺ったのが彼女らであったとしても、復讐などはすまい。
 そして彼女らに対して危険なことをするつもりもないということを分かってもらわなくてはならない。
 ここに至るまで、かなり手荒な強行手段ではあったが。

 だが、まだ終わっていなかった。
 普通であれば、とっくに終わっている戦い。
(神岸と春原を守らなければ……)
 その思いを精神力に変え、亮の手が蝉丸の仮面へとかかりそれを力任せに引っ張った。
 本来の亮からすれば、その引く力はかなり弱々しいものだったが。
 足りない分は自身の体重をかけ、引き寄せる。
「ぐっ!ぐおおおーーっ!」
143仮面な人:04/06/15 05:27 ID:C679lkot

 その叫びは、引いた亮の方が驚いた位だった。
「頭が……頭が割れるっ!」
 ただ添えられているだけのような仮面にも関わらず、蝉丸の顔から吸い付いたように離れなかった。
 ただ、強く引かれれば引かれる程、頭ごと引き裂かれそうな痛みだけが蝉丸を襲う。
 屈強な彼でも耐え難いような激痛。一瞬我を見失う。

(どうなってるのかは分からないが。とどめだ。悪く思うな)
 悶える蝉丸の引き寄せた頭部に向けて、無慈悲にギアを射出する。

 ――今度は、物理的に火花が散った。

「なんだ……その仮面」
 ギアが頭に喰いこむ――はずだった。
 だが、結果はどうだ。
 まるで金属にでもぶち当たったかのように。
 ギアの車輪は簡単に仮面に弾かれてしまったではないか。
 蝉丸も、仮面すらも無傷のまま。ただ蝉丸はまだ悶えていた。

 亮は蝉丸の体の下から這い出る。立ち上がろうとするが足に力が入らない。
 そのままの態勢で再度構えたギア越しに、痛みに悶えもはや戦闘不能なはずの蝉丸を睨みつける。

「……それ、どうなってるんだ?」
 目の前に広がったその光景に、思わず亮が問いかける。答えはない。
 何故なら、蝉丸にもそれをどう答えればよいのか分からなかったから。

 仮面にかかる圧力がなくなったと同時に、今までの痛みなどなかったかのように蝉丸が立っていた。
 亮は即座に撃つことだけは取り止めた。適当に撃っただけじゃ、手傷を負わせるのが精一杯だ。
(改めて思うが、不思議な仮面だ。まるで本当に皮膚と一体化してしまったかのようだ)
 その思考も一瞬。すぐに目の前の、地べたに尻餅をついたままの亮へと意識を向ける。
144仮面な人:04/06/15 05:34 ID:C679lkot

(ギアはあと一発。撃つなら……仮面に守られている頭部じゃ駄目だ。俺は、この男に当てられるのか?)

 お互い分かり合えぬままに。時間だけが刻一刻と過ぎていく。



【037 坂神蝉丸 木刀 ハクオロの仮面装備 切り傷 打撲が二十数箇所 現在ちょっと怪我が痛んでます】
【084 松浦亮 修二のエゴのレプリカ(残り一発)】
【射出されたギアの車輪二つは近くに転がってます】

【024 神岸あかり 所持品なし】
【047 春原芽衣 木彫りの熊 きよみの銃の予備弾丸6発 筆記用具
 枕大の石 黒うさぎの絵皿 水風船2コ 予備食料の缶詰が残り3つ】
【二人が逃げたのなら逃走先等 or 実は逃げてないのならば今後の行動等。
 二人の動向は全て次の方にお任せします】
【時間は23時頃】
145仮面な人・修正版:04/06/15 06:19 ID:C679lkot
「お前達がきよみを……?」
 それはただ単純な疑問。思わず手にとってしまった木刀。
 思わず口から出たのはそんな言葉。
 そのセリフの意味を、彼らはどう取ったのか。
 仮面で覆い隠された蝉丸の真の表情がどんなだと想像したのか。

 この島での危うい均衡は、些細な行動で場を崩すのに充分で。


「神岸! 春原! 走れ!!」
 思わず出た言葉。再び加速するギア。
 その行動の意味を、彼はどう取ったのか。
 仮面で覆い隠されたその表情を窺い知ることはできない。

「待……」
 蝉丸が再び口を開く。
 それを亮はどう取ったのか。

 臨戦態勢に入った亮自身に対する待ったなのか、
 それとも――逃走態勢に入ったあかりと芽衣を呼び止める声なのか。

「動くな。今動けば――撃つ」

 亮が、蝉丸の声を遮るようにしてギアの音をさらに辺りに響かせた。
146仮面な人・修正版:04/06/15 06:20 ID:C679lkot
 結果として亮はその瞬間には撃たなかった。正直な所、撃ちたくない気持ちもあった。
 この男、蝉丸は無差別に人を殺し歩くような男ではない。
 きよみを殺したと認識し、蝉丸が自分達に殺意を抱いたとしても。
 それ自体が誤解だ。あの女はゲームに乗っていた人間で。
 かつ、自分達は手を下してはいない。

 亮はゲームに乗った者を討つ『PK』になると心に誓っていた。
 だが、二人を守る為であれば、望まぬ闘いに身を投じることも。その結果人が死ぬことになっても厭わない。

 それでも、誤解から生まれた戦闘ですすんで人を殺すのはやはり躊躇われた。

 恐れを成して去るならそれも良し。
 去らぬなら――

 亮は一、二歩後ずさり間合いを離しながら、ギアを正眼に構えた。逃げないのであれば、今度こそは撃つ。

 裏切られた経験を持つ分、亮の方が幾分好戦的。
 そして平静さをも保ってはいたが。
 思考するという意味ではフィルターでもかかったかのように冷静さを欠いていた。
 あかりと芽衣が蝉丸の歯牙にかからない場所まで逃げおおせたこの時点で。
 もしも蝉丸にもう一度話し合いを求めていれば今後の流れは大きく変わっていたかもしれない。
147仮面な人・修正版:04/06/15 06:22 ID:C679lkot
【037 坂神蝉丸 木刀 ハクオロの仮面装備 切り傷 打撲が二十数箇所 現在ちょっと怪我が痛んでます】
【084 松浦亮 修二のエゴのレプリカ(残り一発)】
【ギアの車輪一つは近くに転がってます。一つは既に失われてます】

【024 神岸あかり 所持品なし】
【047 春原芽衣 木彫りの熊 きよみの銃の予備弾丸6発 筆記用具
 枕大の石 黒うさぎの絵皿 水風船2コ 予備食料の缶詰が残り3つ】
【二人が逃げたのなら逃走先等 or 実は逃げてないのならば今後の行動等。
 二人の動向は全て次の方にお任せします】
【時間は23時頃】

>>145-146>>138-139と差し替えて下さい。
それに伴い、>>144の【】書きも上のと差し替えお願いします。

お手数おかけします。
 すやすやと、安らかに。
 この絶望的な島で、生を託された一つの命が、眠る。
「あさひ様に大神ウィツァルネミテアのご加護があらんことを……」
 そう呟く者の腕の中で。

 ――偽善、なのかもしれませんね――
 ふと、ウルトリィは思う。

「ウィツァルネミテアのご加護、ですか……」
 大神、ウィツァルネミテア。
 世界の様々な事物に干渉し、多くの恵みを与えてくれたといわれる、『大いなる父』。
 しかし。
 他方では、世界各地に多くの災いを引き起こしたといわれる、『禍日神』。

 その真実を知る者は決して多くない。
 また、例え知る者がいたとしても、その答えに辿りついた者は、それを人に言ってはいけないことを知っている。
 ウィツァルネミテアへの信仰こそが、世界の支えであり、要となっていることをわかっているから。

 ――そしてここにも、真実を知りながらも信仰を保っている者が、一人。
 ただの信仰ではない。
 全ての民を先導する巫女として、大神を、崇めている者。

(いえ……)
 ウルトリィは、静かに首を横に振った。
(ここは……私達のいた世界では、ございませんものね……)
 自分のために笑顔を取り繕いつつ、ウルトリィは溜め息をつく。

「ウルトリィさん♪」
 突如、背後から投げかけられた声に、ウルトリィはハッと我に返った。
 取り繕った笑顔が一瞬だけ崩れる。
 ふと下を見ると、ミコトが顔にかかったウルトリィの髪の毛を嫌そうに取り払おうとしていた。
 慌てて髪の毛をさっと払い、ミコトを落ちつかせる。
「……はい、なんでしょう」
 若干のタイムラグを経て、すばるに返事。
「? どうしたんですの?」
「いえ、何でも……すみません、ぼーっとしてて。ご用件は?」
「えっと……あさひさんが置いていったこれを聞こうと思いますの♪」
 すばるはそう言いながら、カセットウォークマンを右手にちらつかせた。
 あさひがいらないものを置いていった際に混じっていたものである。
「もしかしたら、これに重大な情報が隠されているかもしれませんの」
 ――が、別世界から来たウルトリィに、それが何なのかわかるはずもなく。

「それ……何ですか?」

 すばるがカセットウォークマン、引いてはカセットというものを説明するのには、幾分か時間を要した。

「音を保存する、ですか。なるほど……それで、ここを押したらこれから音が聞こえてくると……」
「……わかってもらえて嬉しいですの……」
 イヤホンを興味深げに眺めるウルトリィの横で、すばるが非常に細い声を上げる。
 ぱぎゅぅ、と言う気も起きないらしい。
 機械の概念がない人間に高度な文明の利器を説明するのは意外と骨が折れる、ということを、すばるは身を持って実感した。
 理解力のあるウルトリィだからまだよかったものの、これがオボロ相手だったりしたら5倍以上の時間が必要だっただろう。
「とにかくですの……あさひさんが捨てずに持っていたんですから、何か秘密があると思いますの! そうでなくとも、あさひさんの生声が入ったテープかも……ああ、神様、ありがとうですの!」
 前半はどうにか自分を奮い立たせるように、後半はもう勝手に、すばるの声が活気を取り戻す。
 テープに入っている時点で生声ではないのだが、知識がないウルトリィはそこに突っ込むことができない。
 それよりも。

(……神様、ですか)
 ウルトリィの頭の中に、耳にしてしまった言葉が反響する。
 大神。禍日神。
 
(……きっと、すばるさんの思っている神様は――いえ……)
 ――再び陥りかけた考えを取り払う。
 気にすることはない。
 今ここにいるのは、巫女でもなんでもない、ただの一人の女なのだ。

「――で、とにかく、聞いてみますの!」
 一通り感謝の言葉を述べ終えて、すばるが目を輝かせながらイヤホンを耳にはめる。
 考えを振りきったウルトリィもそれに倣い、先ほど教わった通りすばるとは反対の耳にはめる。
「では――スイッチ、オン! ですの♪」

 ………………
 ………………
 ………………
 ………………

「あの――すばる、さん?」
「ぱぎゅぅ……何も聞こえませんの……」
 凹んだ。全く何も聞こえない。
「どうなってるんですの……これでは、すばる限定のあさひさんの生声が……」
 いつのまにか、「何か秘密がある」という可能性は闇に葬られていた。
「ええと……」
 かける言葉が見つからず、ただ困ったように笑みを浮かべるウルトリィ。
 仕組みがわかれば手助けできるのだが――
「――ん?」
 と、そこで、ウルトリィが何かに気付いた。
「あさひさん」
「……なんですの?」
 凹みに凹みまくっているすばるが弱りきった声を絞り出す。
「……何か、聞こえませんか?」

「何か……物音、のような……」
「ぱぎゅ?」
 気力復活。
 すばるは、再びイヤホンを耳にはめた。
「……聞こえにくいですの。音量を……ああっ!」
「どうしました?」
「そうですの! すばるはすっかり忘れていましたの! カセットなんだから巻き戻しをしないといけませんの!」
 一気にそれだけまくし立てて、すばるは慌てて巻き戻しボタンを押した。
 シュルルルルルル……
 巻き戻しが開始される。
「そうですの……今はCDやMDしか使ってないから……」
 ぶつぶつと、すばるが独り言を呟く。
(……しーでぃーやえむでぃー、ですか……)
 どうにも、わからないことが多いようだ、とウルトリィは改めて思い知らされる。
 それは、確かに不安ではあるが――同時に、少しだけ嬉しい。

 案外早く巻き戻しは終わり、二人は二度目に挑んだ。
「では再び――スイッチ、オン! ですの♪」

『YO! YO! オレ岡崎! 春原、お前は…ウーパールーパー!』

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……なんですか、これは?」
「……ぱぎゅう……」

 すばるは、遂に倒れこんだ。

(何がなんだかわかりませんが……あまり役に立ちそうにありませんね)
 ウルトリィはすばるの態度から、そう判断する。
 最初は、エルルゥが歌う子守唄のようなものを期待していたのだが、それは見事に裏切られた。
(……本当に一体、なんなんでしょう……)
 しかしながら――そう思いつつも、目の前にあるのは、今まで全く触れたことのない未知の世界。
(……もうちょっと、聞いてみましょうか)
 ウルトリィはミコトを抱いたまま、三回目のイヤホンを耳にはめた。
 すばるが踏んでいた手順を思い出しながら、巻き戻し、再生のボタンを押す。

『YO! YO! オレ岡崎!』

 一旦、一時停止。こういうことは飲み込みが早い。
(オカザキさん、でしょうか……?)
 瞬間的に記憶を漁る。
 会ったことのある名前、宗一達が挙げた名前、放送で呼ばれた名前……それらの中に、該当者はいない。
(……?)
 訝しく思いつつも、一時停止を解除する。
 そして、次に聞こえてきたのは――

『春原、お前は…ウーパールーパー!』


 ――何かが、引っかかった。

(スノハラ……?)

 スノハラ。
 名前。
 名前。
 記憶によれば、確か――

(……放送で呼ばれた名前、でしょうか)
 思い出す。
 宗一達とわかれる直前に聞いた、定時放送。
 
 自分は、ゲンジマルの名前にショックを受けていた。
 だが、そのショック状態の最中にも、あの耳障りな言葉は確かに届いていた。
 そして。
 それを聞いた相良美佐枝が、涙を流したということも、確かに、見ていた。

 この機械のことを、自分はよく、否、全く知らない。
 知らないが――すばるはこれを、「音を保存するための機械」と言っていた。

(あさひさん……?)

 ――もしかして、あなたは――


「いえ……そんなはずは、ないですものね」
 ミコトの頭を撫でながら、力なくウルトリィは呟く。


「でも……」


【009 ウルトリィ ユズハの服 ハクオロ?の似顔絵 ミコト 毛布2枚(船内にも何枚かあり) キーホルダー 食料5日分】
【086 御影すばる トンファー グレネード1個(殺傷力無し スタン&チャフ効果) 小スケブ ペン
    似顔絵(うたわれキャラ) あさひのサイン カセットウォークマン】
【23時過ぎ(あさひが去ってから若干時間が経過)】
156名無しさんだよもん:04/06/15 13:11 ID:72RS/fzn
>127の作中に誤字がありましたため、訂正させていただきます。
申し訳ありません。

×(配当は35倍、か―――悪くない、わね……)
○(配当は36倍、か―――悪くない、わね……)
感想スレで御指摘頂いたので修正いたします。


「ウィツァルネミテアのご加護、ですか……」
 ウィツァルネミテア。
 世界の様々な事物に干渉し、多くの恵みを与えてくれたといわれる、『大神』。
 しかし。
 他方では、世界各地に多くの災いを引き起こしたといわれる、『禍日神』。


>>148の第三段落と差し替えをお願いします。
重ね重ねすいません…誤字です

>>151
×「あさひさん」→「すばるさん」

なんでこんなところにあさひが…
159名無しさんだよもん:04/06/15 21:41 ID:tqgVpXvE
いずれにせよ駄作なんだからそう気にするなよ(w
160うたわれるもの ◆QkRJTXcpFI :04/06/15 22:27 ID:C78dRFNK
眠るミコトをその手に抱きながらウルトリィはカセットウォークマンのだす音に耳を傾けていた。
岡崎という人物の下手な歌は終わり、耳に届くものは最初に聞いたかすかな物音だけとなった。
停止ボタンを押そうとして、手を止める。
(……本当にこれだけしか入っていないのでしょうか?)
ウォークマンはまだ動き続けていた。
(ひょっとしたら、この後に何か入っているかもしれませんね。)
ウルトリィはそう判断すると、ウォークマンに再び耳を傾けた。

テープを再生し続けて十数分、果たしてその時は来た。
『ピーー』
耳を劈くアラーム音。
それはカセットテープの最後に仕掛けられた罠の起動を示すもの。
それは、つまり……

アビスボートに爆音が轟く。
その爆発はウォークマンを止めようとしたウルトリィを粉微塵に吹き飛ばした。
161名無しさんだよもん:04/06/15 22:29 ID:wdpDxxem
「…夢か…」
ウルトリィは朝の布団の中で一発屁を放った。
162うたわれるもの ◆QkRJTXcpFI :04/06/15 22:30 ID:C78dRFNK



カセットテープに込められていた朋也の下手糞なラップ。
まさしくそれは……

―――散りゆく者ヘの子守唄。


【009 ウルトリィ 死亡】
【気絶していたすばる・ウルトリィに抱かれていたミコトの安否とアビスボートへのダメージは次の書き手にお任せします。】
【009 ウルトリィ ユズハの服 ハクオロ?の似顔絵 ミコト 毛布2枚(船内にも何枚かあり) キーホルダー 食料5日分】
【086 御影すばる トンファー グレネード1個(殺傷力無し スタン&チャフ効果) 小スケブ ペン うたわれキャラの似顔絵 あさひのサイン】

【残り 34名】
163名無しさんだよもん:04/06/15 22:43 ID:UCjLroGh
この後に及んでまだこんな話投下するのか・・・・・・・・・・・・・
164名無しさんだよもん:04/06/15 22:50 ID:f081MyZn
 ウルトリィの死骸には、かつてすばるとミコトだった肉片がへばりついていた。
その後、アビスボートの姿を見た者は居ない。

【086 御影すばる 死亡】

【残り 33名】
165名無しさんだよもん:04/06/15 23:06 ID:JZh57DNr
>>159,163
ハカロワUが失敗に終わった理由
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087098105/l50
こちらへどうぞ
166うたわれるもの 修正 ◆QkRJTXcpFI :04/06/15 23:16 ID:C78dRFNK
眠るミコトをその手に抱きながらウルトリィはカセットウォークマンのだす音に耳を傾けていた。
岡崎という人物の下手な歌は終わり、耳に届くものは最初に聞いたかすかな物音だけとなった。
停止ボタンを押そうとして、手を止める。
(……本当にこれだけしか入っていないのでしょうか?)
ウォークマンはまだ動き続けていた。
(ひょっとしたら、この後に何か入っているかもしれませんね。)
ウルトリィはそう判断すると、ウォークマンに再び耳を傾けた。

テープを再生し続けて十数分、果たしてその時は来た。
『ピーー』
耳を劈くアラーム音。
それはカセットテープの最後に仕掛けられた罠の起動を示すもの。
それは、つまり……

アビスボートに爆音が轟く。
その爆発はウォークマンを止めようとしたウルトリィを粉微塵に吹き飛ばした。
その手に抱かれた希望の子を道連れとして…
167うたわれるもの 修正 ◆QkRJTXcpFI :04/06/15 23:19 ID:C78dRFNK



カセットテープに込められていた朋也の下手糞なラップ。
まさしくそれは……

―――散りゆく者ヘの子守唄。


【009 ウルトリィ 死亡】
【ミコト 死亡】

【気絶していたすばるの安否とアビスボートへのダメージ、アイテムの一部は次の書き手にお任せします。】
【009 ウルトリィ ユズハの服 ハクオロ?の似顔絵 毛布2枚(船内にも何枚かあり) 
キーホルダー 食料5日分】
【086 御影すばる トンファー グレネード1個(殺傷力無し スタン&チャフ効果) 小スケブ ペン
うたわれキャラの似顔絵 あさひのサイン】

【残り 34名】
168名無しさんだよもん:04/06/15 23:21 ID:opgYy69Z
>>167
議論されてるぞ、感想スレにこい
169名無しさんだよもん:04/06/15 23:31 ID:e37FKRIE
>>160-162と、>>164>>166-167はNGと判定されました。
経緯は【ノア】実況★葉鍵ロワイヤルII 11【ガチ】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/
>>114-172あたりを参照してください。
170名無しさんだよもん:04/06/15 23:34 ID:yWhdWjWV
>>169
いつ判定されたんだっての。
勝手すんな。
171名無しさんだよもん:04/06/15 23:44 ID:KtKnUXgC
>>169
ヲイヲイ。いきなり判定かよ。
172名無しさんだよもん:04/06/15 23:46 ID:qaVov8VK
>>148-155>>157-158はNGと判定されました。
経緯は【ノア】実況★葉鍵ロワイヤルII 11【ガチ】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/
を参照してください。
173名無しさんだよもん:04/06/15 23:47 ID:e37FKRIE
>>172
NG判定されていません。
174名無しさんだよもん:04/06/16 00:05 ID:QK0aasGU
>>145-146はNGと判定されました。
経緯は【ノア】実況★葉鍵ロワイヤルII 11【ガチ】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/
を参照してください。
175名無しさんだよもん:04/06/16 00:19 ID:L5QGfm8k
>>1-174はNGと判定されました。
経緯は【ノア】実況★葉鍵ロワイヤルII 11【ガチ】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/
を参照してください。
176リアルライズ:04/06/16 01:33 ID:3OHafTOq
その光がホールへ向かって―――

行くはずだった。
確かに浅見邦博はホールに向かって叫んだ。

しかし、彼の思惑とは逆に、フィルスソードは輝きを増し
「な、なんだ、どう――」
「クニヒロ、まさか自――」
そして、そのままフィルスソードを中心に眩い光が包み込んだ

リサ・ヴィクセンと浅見邦博も光の中に飲み込まれ―――

辺りは一時、光に支配され
そして、光は次第にフィルスソードの下へ収束し
再び、辺りを闇と静寂が支配する。
177リアルライズ:04/06/16 01:33 ID:3OHafTOq
静かな夜だった。

そして――

残ったものは…直径10メートル程の大きなクレーターだけだった。
リサ・ヴィクセンの姿も、浅見邦博の姿も、二人の荷物も、何もかもが消えてなくなっていた。

いや、正確には、そこには一振りの剣が残されていた。

フィルスソード、主催者が用意したその武器は
主催者に対抗しようとするものを排除するようにプログラムされていた。

次に、この武器を手にしたものの運命はは、一体どうなるのだろうか?


【001 浅見邦博 死亡 フィルスソード】
【100 リサ・ヴィクセン 死亡】
【時刻は深夜】
178名無しさんだよもん:04/06/16 01:36 ID:QMsXl8nx
静かな夜だった。オボロが去ってから、エディの提案で睡眠をとることになった。
今はエルルゥと香里が見張りをしている。月明かりが支配する部屋中で二人は無言だった。
聞きたいことはたくさんある。だけど、それは悲しい記憶だから。
それに、今はあの人のことを考えたいから。

どれくらい時間が経ったときだろうか。
鳴子が鳴った。一瞬で二人のの表情が変わる。
「香里さんみんなを起こしてくださ―」
コンコンとドアを叩く音がする。それに、息を切らせたちいさな声。
「…お……す。仮面を……です」
(仮面!?)
その言葉に慌て、傍らに置いていた乳鉢に手が当たる。

芽衣達は住宅街を手分けして一軒一軒人がいないかを確認していた。時間がない。
自分達だけでは足手まといにしかならない。そう思って逃げることにした。だけど違う。
相手の、蝉丸の武器は木刀だった。体格差のない場合、必殺の武器になるとは思えない。
一方、亮のギア。この目に見た、あの首の切断。
止めなければならない。
二人だけで説得は無理だろう。あの状況を打ち破るにはどちらかが戦闘不能になるか、協力者を探し、数で圧倒するしかない。
勿論後者だ。芽衣の目標「これ以上誰も死なせない為の主催者との戦い」を考えたら。

そうして必死で家々を巡り今ここでで確かに中で音がした。少なくとも一人は人がいる。
別の家で同様のことをしていたあかりを手招きする。
だが、安心はできない。もし、やる気のある参加者だった場合のことを考えて死角になる位置に移動する。
ここでは誠意だけでは生きてゆけない。先ほど分かったことだ。
179名無しさんだよもん:04/06/16 01:38 ID:QMsXl8nx
「すみません!香里さん、みなさん!」
「…な、ちょっと、待ちな―」
エディを起こしていた香里が異変に気が付くより先にエルルゥは飛び出した。
「…タダ事じゃナイナ」
目覚めたエディは走り去るエルルゥを見、つぶやいた。

「ハクオロさんはっ!…いえ、仮面の人がどうかしましたかっ!」
誰も見えない空間に叫ぶ。もうこの世にはいない人を思って。
芽衣達が姿を現す。アルルゥの様子を見れば敵意のある参加者でないことは分かる。
「今、私達の仲間が襲われています!助けに来てくれませんか?」
「はい!」
あかりは要点だけを伝える。
芽衣は気付く。部屋中にまだ2,3人がいることに。
「あかりさん、先に彼女と戻ってください」
「うん」
あかりとエルルゥは急いでそこに向かっていった。

「話は聞いタ。仲間の名前を教えてくれるカナ?」
玄関から姿を現したのはエディだった。手には何かの機械。芽衣は彼も協力者だと気付き、多少の疑問もあったが亮の名を告げた。
「マキムラの次ってところカ」
盗聴機の84番のボタンを押した瞬間。

『ぐっ!ぐおおおーーっ!』

はっきりと聞こえた。盗聴機からだけでなく。夜空に響く男の叫び。
「急ぎます。二人を助けたいんです」

運命の歯車が、絡み合う。
ひとつのギアの、ひとつの仮面の、ひとつの恋の―――
180名無しさんだよもん:04/06/16 01:38 ID:QMsXl8nx

【024 神岸あかり 所持品なし】
【011 エルルゥ 所持品なし】

【072 広瀬真希 『超』『魁』ライター 出刃包丁 便座カバー 食料と水多めに所持】
【081 古河渚 食料と水多めに所持 [熱により睡眠中]】
【087 美坂香里 所持品なし [怪我はエルルゥにより処置済み]】
【010 エディ 盗聴器 尖った木の枝数本 ワルサーPP/PPK(残弾4発) タオルケット×2、
   ビスケット1箱 ペットボトルのジュース×2 婦人用下着1セット トートバッグ 果物ナイフ】
【エルルゥの乳鉢セット 薬草類 食料と水は部屋に放置】
【047 春原芽衣 木彫りの熊 きよみの銃の予備弾丸6発 筆記用具
 枕大の石 黒うさぎの絵皿 水風船2コ 予備食料の缶詰が残り3つ】
【あかり,エルルゥは亮,蝉丸のもとへ。芽衣もその予定。エディたちがどう動くかは次の方次第】
【時間は23時頃、仮面な人とほぼ同時】
181名無しさんだよもん:04/06/16 01:50 ID:QMsXl8nx
>>178-180のタイトルは「仮面の人」です
182140:04/06/16 02:24 ID:Imo/0AzP
「仮面な人」の作者です。
すいません。もう一箇所、訂正がありました。


>>140の冒頭の二行。
> 一方の蝉丸は一転した状況に面食らいながら。
> そして、足元に突き立った銀のギアに戦慄しながらも、目の前の亮を冷静に見つめた。


 一方の蝉丸は一転した状況に面食らいながら。
 そして、激しく回転するギアの音に戦慄しながらも、目の前の亮を冷静に見つめた。


と変わります。重ね重ね申し訳ない。
183仮面の人:04/06/16 02:50 ID:QMsXl8nx
 静かな夜だった。オボロが去ってから、エディはミルク探しに出かけていた。残された女性陣は睡眠をとることになった。
 今はエルルゥと香里が見張りをしている。月明かりが支配する部屋中で二人は無言だった。
 聞きたいことはたくさんある。だけど、それは悲しい記憶だから。
 それに、今はあの人のことを考えたいから。

 どれくらい時間が経ったときだろうか。
 鳴子が鳴った。一瞬で二人のの表情が変わる。
「香里さんみんなを起こしてくださ―」
 コンコンとドアを叩く音がする。それに、息を切らせたちいさな声。
「…お……す。仮面を……です」
(仮面!?)
 その言葉に慌て、傍らに置いていた乳鉢に手が当たる。

 芽衣達は住宅街を手分けして一軒一軒人がいないかを確認していた。時間がない。
 自分達だけでは足手まといにしかならない。そう思って逃げることにした。だけど違う。
 相手の、蝉丸の武器は木刀だった。体格差のない場合、必殺の武器になるとは思えない。
 一方、亮のギア。この目に見た、あの首の切断。
 止めなければならない。
 二人だけで説得は無理だろう。あの状況を打ち破るにはどちらかが戦闘不能になるか、協力者を探し、数で圧倒するしかない。
 勿論後者だ。芽衣の目標「これ以上誰も死なせない為の主催者との戦い」を考えたら。

 そうして必死で家々を巡り今ここでで確かに中で音がした。少なくとも一人は人がいる。
 別の家で同様のことをしていたあかりを手招きする。
 だが、安心はできない。もし、やる気のある参加者だった場合のことを考えて死角になる位置に移動する。
 ここでは誠意だけでは生きてゆけない。先ほど分かったことだ。
184仮面の人:04/06/16 02:51 ID:QMsXl8nx
「すみません!香里さん、みなさん!」
「…な、ちょっと、待ちな―」
 真希を起こしていた香里が異変に気が付くより先にエルルゥは飛び出した。
「…タダ事じゃないわね」
 目覚めた真希は走り去るエルルゥを見、つぶやいた。

「ハクオロさんはっ!…いえ、仮面の人がどうかしましたかっ!」
 誰も見えない空間に叫ぶ。もうこの世にはいない人を思って。
 芽衣達が姿を現す。アルルゥの様子を見れば敵意のある参加者でないことは分かる。
「今、私達の仲間が襲われています!助けに来てくれませんか?」
「はい!」
 あかりは要点だけを伝える。
 芽衣は気付く。部屋中にまだ人がいることに。
「あかりさん、先に彼女と戻ってください」
「うん」
 あかりとエルルゥは急いでそこに向かっていった。

 彼女の仲間にも事情を説明するために芽衣が家に入ろうとしたそのとき、不意に声を掛けられた。
「話は聞いタ。仲間の名前を教えてくれるカナ?」
 背後から姿を現したのはエディだった。手には何かの機械。
 芽衣は彼も協力者だと気付き、多少の疑問もあったが亮の名を告げた。
「マキムラミナミが83番だったナ。その次ってところカ」
 盗聴機の84番のボタンを押した瞬間。

『ぐっ!ぐおおおーーっ!』

 はっきりと聞こえた。盗聴機からだけでなく。夜空に響く男の叫び。
「急ぎます。二人を助けたいんです」


  運命の歯車が、絡み合う。
   ひとつのギアの、ひとつの仮面の、ひとつの恋の―――
185仮面の人:04/06/16 02:52 ID:QMsXl8nx
【024 神岸あかり 所持品なし】
【011 エルルゥ 所持品なし】

【072 広瀬真希 『超』『魁』ライター 出刃包丁 便座カバー 食料と水多めに所持】
【081 古河渚 食料と水多めに所持 [熱により睡眠中]】
【087 美坂香里 所持品なし [怪我はエルルゥにより処置済み]】
【010 エディ 盗聴器 尖った木の枝数本 ワルサーPP/PPK(残弾4発) タオルケット×2、
   ビスケット1箱 ペットボトルのジュース×2 婦人用下着1セット トートバッグ 果物ナイフ】
【エルルゥの乳鉢セット 薬草類 食料と水は部屋に放置】
【047 春原芽衣 木彫りの熊 きよみの銃の予備弾丸6発 筆記用具
 枕大の石 黒うさぎの絵皿 水風船2コ 予備食料の缶詰が残り3つ】
【あかり,エルルゥは亮,蝉丸のもとへ。芽衣もその予定。ミルク探しがどうなったか、エディたちがどう動くかは次の方次第。】
【時間は23時頃、仮面な人とほぼ同時】
186仮面の人:04/06/16 02:54 ID:QMsXl8nx
>>178-180はNGにしてください。
187仮面の人作者:04/06/16 03:43 ID:QMsXl8nx
>>184
芽衣達が姿を現す。アルルゥの様子を見れば敵意のある参加者でないことは分かる。

のアルルゥはエルルゥのミスです。申し訳ないです。
188仮面の人作者 :04/06/16 08:27 ID:6rKkIq5M
ミスがあったので、>>183-185はNGにしてください。
189名無しさんだよもん:04/06/16 08:28 ID:Ih2IFF3F
>>176-177はNGとなりました
190 ◆QkRJTXcpFI :04/06/16 09:07 ID:x/tCRn0m
>>166-167は作者の解釈に致命的なミスがあったのでNGとさせて頂きます。
191名無しさんだよもん:04/06/16 11:15 ID:TRfZPdDs
>>189
NG判定されていません
192理由 ◆QkRJTXcpFI :04/06/16 11:17 ID:x/tCRn0m
眠るミコトをその手に抱きながらウルトリィはカセットウォークマンのだす音に耳を傾けていた。
岡崎という人物の下手な歌は終わり、耳に届くものは最初に聞いたかすかな物音だけとなった。
停止ボタンを押そうとして、手を止める。
(……本当にこれだけしか入っていないのでしょうか?)
ウォークマンはまだ動き続けていた。
(ひょっとしたら、この後に何か入っているかもしれませんね。)
ウルトリィはそう判断すると、ウォークマンに再び耳を傾けた。

テープを再生し続けて数分、果たしてその時は来た。
ウォークマンから聞こえたのは、今まで何度と無く耳にした主催者…すなわち篁の声。
驚愕したウルトリィは慌ててテープを停止し、気絶したままのすばるに声をかける。
しかし、すばるにこっちの世界に返ってくる気配は見受けられず、仕方無しにテープの続きを聞く事にした。

半時後…

ウルトリィは涙を流していた。
頬を伝う雫はミコトの髪を濡らしていた。
193理由 ◆QkRJTXcpFI :04/06/16 11:17 ID:x/tCRn0m

篁の声で語られる、たった一つの物語。
とある夏の日の物語。
それは今なお続く物語。
空に縛られた少女の物語。
それが真実かどうかは気にはならなかった。
ただ純粋に、圧倒されていた。

篁の語りは続く。
そこにあったものはこのゲームを行う本当の目的。
財力や権力、理外の力をもってしても今だ果たせぬ望み。
それは誰もがエゴだと叫ぶだろう。
だが、心の奥底からそれを否定出来る者が果たしてどれだけ居るであろうか。
その感情は全ての者が持ち合わせているそれと同じものなのだ。
だから、ウルトリィに出来ることはただ涙を流すだけだった。
194理由 ◆QkRJTXcpFI :04/06/16 11:18 ID:x/tCRn0m

『カチリ』
テープの再生が終わる音がする。
それはカセットテープの最後に仕掛けられた罠の起動を示すもの。
それは、つまり……

アビスボートに爆音が轟く。
その爆発は茫然自失のままのウルトリィを吹き飛ばした。
その手に抱かれた赤子もろともに。


篁という男の本心が秘められたたった一つの記録は、
爆発の怒号によってかき消された……


【009 ウルトリィ 死亡】
【ミコト 死亡】

【気絶していたすばるとアビスボートへのダメージ、一部のアイテム状況の変化は次の書き手にお任せします。】
【009 ウルトリィ ユズハの服 ハクオロ?の似顔絵 毛布2枚(船内にも何枚かあり)キーホルダー 食料5日分】
【086 御影すばる トンファー グレネード1個(殺傷力無し スタン&チャフ効果) 小スケブ ペン うたわれキャラの似顔絵 あさひのサイン】

【残り 34名】
195名無しさんだよもん:04/06/16 12:28 ID:ftK5vF2G
>>1-194はNGと判定されました。
経緯は【ノア】実況★葉鍵ロワイヤルII 11【ガチ】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/
を参照してください。
196名無しさんだよもん:04/06/16 13:13 ID:/+lqtxSO
>>192-194はNGになりました。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/366n
を読んでください。
197「はるか」 ◆U2dbpJmxQs :04/06/16 15:31 ID:sjXOpJKU
 アルルゥはじっと待っていた。
 はるかでもいい、由宇でもいい、朋也でもいい。エルルゥでもハクオロでもトゥスクルの仲間の誰でも。
 誰か来ているのをひたすら待ち続けて、知らない二人と会った。
 一人は泣きながら寝ていて、一人は壁により掛かるようにして船を漕いでいる。
 その二人は、待っていた人じゃない。
 と、アルルゥの耳がぴんと立つ。誰かの足音がした。
 誰だろう、誰だろう。待っていた人だろうか?
「……誰?」
 期待を込めて、問いかける。
 誰何の声に、足音が止んだ。代わりにまどろんでいた時紀がはっと顔を上げる。
 浅い眠りを覚まされ不機嫌そうに、「誰だ……朋也って奴か?」と、重ねて問う。
 問われた影は、動かない。
 時紀は鎌を構えて警戒するが、あまりにも貧弱な装備に情けなくなった。
 もしも相手が重火器を持っていたら、こんなものなんの役にも立たない。
 狭い洞窟で、逃げるのも難しい。
 味方は闇だけ。アルルゥを促してじりじりと下がり、その味方を最大限に活用しようとしたとき、
「巳間晴香って人……いますか?」
 そう、問われた。
 途端、アルルゥが叫んだ。
「はるかっ? はるかおねーちゃんっ!?」
 飛び出そうとするアルルゥを、時紀が慌てて抑える。
 アルルゥははるかの名字まで憶えていない。そういう習慣がそもそもない。
 だから、ただはるかという名前だけに反応した。
 影からは、明らかに動揺する気配が伝わってきた。
198「はるか」 ◆U2dbpJmxQs :04/06/16 15:36 ID:sjXOpJKU

 あさひはただ、休みたかっただけだった。
 夜も更け、疲れ切って、僅かな休息を洞窟の中で得ようとした。
 だけどそこには先客がいて――幸い、いきなり襲いかかってくるような殺人鬼ではなかったが、
 その、いきなり襲ってくるような殺人鬼の名前に、激しい反応があった。
「知り合い……なんですか?」
 明らかに喜びと焦燥を含んだ問いかけに、あさひは動揺する。
 例えば残酷な殺人鬼が、その裏では優しい家族思いな人だったように、二面性を備えた人間はいるのだ。
 聞こえてきた幼い声が、言葉通りに晴香の妹なら……自分は、どうする?
 同じように大切な人を奪うのか? それが『復讐者』として、一番正しい行動だと思うけど。
 奥からは、藻掻く気配と泣き出しそうな声が響いてきた。 
「はるかおねーちゃん……倒れてた。分からない。
 由宇おねーちゃんも、名雪おねーちゃんもいない。知ってる?」
 はるかという名に、ぐっと手の中の銃を握りしめる。
 彼の形見に勇気をくださいと願うのに、かき立てられるのは怒りではなかった。
 ……ダメだ。殺せない。
 自分の怒りは、巳間晴香個人にだけ向けられればいいはずだ。
 あさひは自分の良心と復讐心との間で、そう折り合いをつける。
「……ごめんなさい。私も探しているんです」
 途端、失望する気配。返ってきた静けさが、そのまま落胆を示している。
 慕われているんだ、と知って、胸が痛んだ。
 だけど倒れていたというのはどういう事だろう。誰か別の人間に襲われたのだろうか。
 それに、由宇と名雪という名前は初めて聞いた。どちらかが、もう一人いた長髪の女だろうか?
 間接的にだが――あれも、仇だ。二人を争いの中に巻き込んだという意味でなら。
199「はるか」 ◆U2dbpJmxQs :04/06/16 15:39 ID:sjXOpJKU
「……で、あんたどーするんだ?」
 もう一人の男の声。どうすればいいんだろう。
 詳しく女の子に話を聞けば、もっと色々なことが分かるかもしれない。
 だけど、聞いたら自分の精神がくじけてしまいそうな気がする。
 いや、死んでるにしろ、生きてるにしろ、まずはその姿を確認してからだ、と言い聞かせる。
 場所を知らなければ復讐もできないのだから。
「場所――教えてください」
「あ?」
「倒れていた場所です。見てきます」
「あー……おい、どうする? あ、こら!」
 奥からたたたっと小さな影が飛び出してきた。
 見慣れない恰好と、獣のような耳と尻尾。だが、耳の長い人も、羽根のある人もいたのだ。今さら驚かない。
 晴香の方は普通の人間に見えたが……分からない。いろんなことがありすぎて、考えが上手くまとまらない。
 異常だらけのこの島で、まともに考えるだけ無駄な気もした。
 別人なのかもしれないと思うけど、そう考えると、いざ殺すと言うときに、決心が鈍りそうでイヤだった。
 だから、確認したくない。確認すれば、なんの問題もないかもしれないのに。
 いや、行ってみたら、勝手に死んでるかもしれない。それでもいいじゃないかと、どこかが囁く。
 ――復讐する意志が急速にくじけていくのを、懸命に奮い立たせる。
 だめだ、だめだ。あたしは……あの人の仇を討つって、決めたのに。
 アルルゥが襲われなかったことを確認して、時紀も出てきた。
 時紀は無遠慮にあさひの全身を眺め回したが、あさひが眼鏡をかけて、
 いつもの調子でいたら、そこに透子の面影を見いだしていたかもしれない。
 アルルゥは星を見て、辺りを見回して、「あっち」と指差した。
「あっちの、あぱあとっていう建物。はるかおねーちゃんと由宇おねーちゃんと名雪おねーちゃんが一緒。
 アルルゥ、ここで待ってろっていわれたから、待ってる。だから、お願い」
「……うん」
200「はるか」 ◆U2dbpJmxQs :04/06/16 15:43 ID:sjXOpJKU
 アルルゥが、じっとあさひを見あげる。
 あさひはごまかすように目を逸らして、指差された方向を真っ直ぐに見た。 
 手がかりを得たのに、怒りも憎しみも喜びも浮かんでこないのは何故だろう。
「それじゃ、行きますね」
「ん……おねーちゃんの、名前は?」
「え? ……桜井あさひです」
「気をつけて、あさひおねーちゃん」
 ぎゅっとアルルゥが手を握る。
「……はい」
 小さな手に詰め込まれた、信頼という名の暖かさが、今はあさひの胸をえぐるようだった。
 あさひはできるだけ乱暴にならないように、苦労してアルルゥの手をほどき、歩き出した。
 いつの間にか、走り出していた。
 森に隠れ、アルルゥから見えない距離まで走って、息を切らせて、倒れ込むように木に拳を叩きつけ、身体を支える。
 なにが正しいのか、何が真実なのか、自分がどうしたらいいのか、まるで分からない。
 わけのわからない感情に突き動かされて、あさひは号泣した。

【042 桜井あさひ 双眼鏡 十徳ナイフ 食料一日分 眼鏡 ハンカチ ノート ペン
    S&W M36(残り弾数5)予備弾19発 腕時計 ボウガン(矢5本)『短髪』】
【031 木田時紀 鎌 朋也・宗一・芳野の写真】
【023 神尾観鈴 所持品なし 全身に怪我】
【004 アルルゥ 所持品なし】
【夜0時過ぎ 【ひとときの休息、そして再会】の直後】

 あさひのアイテムが【やさしい声と想いをいつも忘れずにいる】【actress】間で矛盾があったので修正しました。
【やさしい声と想いをいつも忘れずにいる】で変更されたアイテムに、【actress】で拾ったボウガンを足してあります。
201 ◆U2dbpJmxQs :04/06/16 19:26 ID:sjXOpJKU
すみません。
神尾観鈴の状態変化の補足と共に、気がついた細かいところの修正、お願いします。
大筋に変化はありません。

>>197 3行目
誰か来ているのを → 誰か来るのを

>>197 14行目
重火器 → 銃火器

>>198 18行目
「……ごめんなさい。私も探しているんです」 → 「……ごめんなさい。あたしも探しているんです」

>>200 6行目
「え? ……桜井あさひです」  → 「え? あさひ……桜井あさひです」

>>200 20行目
【023 神尾観鈴 所持品なし 全身に怪我】  → 【023 神尾観鈴 所持品なし 『全身に怪我 右耳の鼓膜が破れている』】
202想い人:04/06/16 20:56 ID:aBx48bM2
「…たぶん、澪ちゃんは浩平君に会いたいんだと思うな」
「みさきさん。浩平って?」

皐月がこの島での澪の真実をみさきに話した時、みさきは金縛りに遭ったかの様に立ち尽くし、すぐには言葉を紡ぐ事ができなかった。
それなりの覚悟はしていたのだろうが、この島に来る以前の澪を知っていた彼女にとっては、その真実は受けるに重すぎる物だったのだろう。
もう少し言葉に気を使っときゃ良かったかな?などと皐月が考えていると、不意に光岡が二人に声を掛けた。
「みさき。湯浅。先の二人が家から離れた。今宵はもう遅い。あの家で休もう」
「あっ、うん。わかったよ光岡さん」
その呼び掛けに、みさきは即座に我に帰り、彼の元へとゆっくり歩み寄って行こうとし、光岡もまた、彼女を導く為に歩み寄り、その手を握った。
(…なんかいいなぁ。あーゆーの)
この島に喚ばれてからこちら、信頼と悲劇と疑心暗鬼と、様々な事を積み重ね、時に心が折れそうになり、人を信じる気持ちを見失いかけていた皐月だったが、それでも目の前の二人は、やっぱり信じられると、そう思った。
宗一やゆかり、七海や智代のように。
「どうした?湯浅」
「あ、ごめん。今行く」
光岡の再度の呼び掛けに皐月も答え、その足を進めた。
203想い人:04/06/16 20:59 ID:aBx48bM2
辿り着いた先は、つい先程、麻生明日菜と神尾晴子が侵入を試みていた家──つまり、同じくつい先程まで皐月が沙耶と共に居た家の真向かいの家である。
薄い木塀に囲まれた、ごく一般的な日本家屋で、狭いながらも庭もあり、薄青の紫陽花の花が印象的だった。
手始めに光岡がガス、水道、電気系統を調べてみた結果、この家に通っていたのは水道だけで、どちらかと言えば“はずれ”に分類されたが、安心して寝食を得れる以上、贅沢は言っていられなかった。
「台所の棚に缶詰があった。周りの家からも何か使える物を探してくるから、今はそれを食べて身体を休めておいてくれ」
そう言って光岡が居間の卓袱台に缶切りと缶詰と二人分の箸を置いてから出て行ったのが15分程前の事。
(なんだか山積みなんだけど…)
確かに。卓袱台を挟み向かい合う皐月とみさきの間には、実に30個もの缶詰が積まれていた。この家、備蓄の量だけ見れば“あたり”に分類されるだろう。
(いくら何でも食べきれないって…)
「どうしたの?皐月ちゃん。早く食べようよ」
「あ、うん。ちょっと待っててね」
そう言うと皐月は幾つかの缶詰を切り開き、みさきの目の前に並べた。目の見えないみさきに自分の(汗)な感情を理解してもらうのは不可能だった。

──そして、今、皐月が新たに抱いた(滝汗)な感情もみさきには理解してもらえないだろう。
(光岡さんの分無くならないかな…)
そう危惧する皐月の目の前には空の缶詰が四つ。対して、みさきの目の前にはその5倍もの空の缶詰が積み重なっていた。
「たぶんね」
「え?」
不意に、みさきが食事の手を止めて話し始めた。「…たぶん、澪ちゃんは浩平君に会いたいんだと思うな」
204想い人:04/06/16 21:05 ID:aBx48bM2

唐突に、みさきは澪の事について語り始めた。空腹が満たされ──たかどうかは判らないが、気持ちが落ち着いてきたのだろうか。ぽつぽつと、みさきは話を続けていった。

「浩平君はね。私たちの学校にいた2年生の男の子でね、すごく面白い人だったんだよ」
「ふんふん」
そう短く相槌を打つ。
「雪ちゃん──あ、私の親友で演劇部の部長をやってるんだけどね、澪ちゃんもその演劇部に所属しててね。雪ちゃんが言うには、いつも明るくて、純粋で、泣き虫さんだけど、すごく芯の強い子だって」
にわかには信じられなかった。だって私の見た上月澪という少女からは、とてもそんな雰囲気を感じ取れなかったのだから。
もし、彼女が語るような、“雪ちゃん”達に見せていた姿の方が演技なのだとしたら──なるほど、演劇部というのはお似合いだ。
本当に。嫌なくらいに。
「それでね。浩平君はよく演劇部のお手伝いをしててね。それ以外でも、浩平君と澪ちゃんは仲良くしてたみたいなんだって。他の友達も誘って浩平君の家でパーティーなんかもしたって。これは浩平君から聞いたんだけど」
ああ、そこまで言ってもらえたら、後は何となく解る。
たぶん、上月澪という少女は──
「雪ちゃんが言ってたんだ。たぶん、澪ちゃんは浩平君の事が誰よりも好きなんだって」
やっぱり。それなら、あの執念も納得がいかなくもない。
人が人を想う心は、なによりも強いから。
私だってもし、この島にゆかりも、リサさんも、七海ちゃんも、夕菜さんも、エディも……そして宗一もいなかったら、どうしていただろうか?

──ガラガラ。

「二人とも。隣の家の物置でスコップを見つけた。外の仏を埋葬するのを手伝ってほしい」

そんな皐月の思考を遮ったのは、玄関の開く音と、光岡の呼び声だった。
205想い人:04/06/16 21:08 ID:aBx48bM2
錆び付いたスコップが三つ。三人に一本ずつ行き渡らせて、光岡の指示のもと、庭の紫陽花の根本に宮路沙耶の遺体を埋葬していく。
晴子の“茶髪の兄ちゃん”の言葉に反応し、怒りのままに銃を撃ち──反撃されて死んでしまった少女。
(…やっぱりその茶髪の人も、沙耶の好きな人だったの…?)
皐月は心中でそう問うてみるも、徐々に土の中に消えていく彼女からの答えは、当然無い。
「湯浅。悪いが後でさっき戦闘の理由と、それ以前の状況を教えてもらえるか」
「あ……うん」
光岡に問われ、皐月は小さくそう答えた。

【28番 川名みさき 所持品:白い杖、錆び付いたスコップ】
【89番 光岡悟 所持品:日本刀、デザートイーグル(残弾3)、錆び付いたスコップ】
【95番 湯浅皐月 状態:左腕使用不可能 所持品:セーラー服、風子のナイフ、錆び付いたスコップ】
【家の中に未開封の缶詰×6】
【光岡の物資探索の成果は次の書き手に委任します】
206『想い人』作者:04/06/16 21:32 ID:aBx48bM2
すいません。>>205の終わりに以下の一文を付け加えてください<(_ _)>

【時刻:二日目午後十一時頃】
207地獄の雌狐、一世一代の大芝居:04/06/16 22:44 ID:xPiOPKtS
「シャインクルス!」
 フィルスソードは、先ほどの数倍の眩しさで発光したかに見えると
 その光がホールへ向かって―――

「ちょっと、クニヒロ!?」

 ペギョッ……POM!

「……」
「しょぼっ!」

 すざましい光量。その割には、随分と情けない音と共にほんのちょびっとだけ穴が開いた。
 ホールの壁に。

「でも、人一人殺すには充分なみたいね」


 ホールの入り口内側。あのミルトの特攻から約半日。
 何事も起こらない現場を任され、復旧作業員と巡回員が何人かが壁に寄りかかって退屈そうに欠伸していた。
「暇だなぁ。こういった単純作業は」
 そんなこと言ってる人に天誅です。

 ヒューン……

 何か小石が風を切る時のような音がかすかに耳に届く。
「ん?何の音――あわびゅっ!」
 不運にも、壁に寄りかかって不平を漏らしていた巡回員の一人が壁ごと吹き飛んだ。
 地面に叩きつけられたその男の首がありえない角度に曲がっている。
「うおおっ!田中ぁっ(仮名)!」

【巡回員A 死亡】
208地獄の雌狐、一世一代の大芝居:04/06/16 22:46 ID:xPiOPKtS

「ホールの内側には牙を磨いた私兵共がわんさかと待ち構えてたわけね。
 いえ、牙をもがれた私兵達かしら?」
どうやら、参加者達でなくば、レーダーは働かないらしい。レーダーの光点は自分達を除いて未だ光らない。
「誰だろうが何人だろうが関係ねぇ。俺の牙で喰らい尽してやる」
「フフ、クニヒロ。かすかに足が震えてるわよ?」
「ん……なっ!?」
 リサが一つ溜息。
「でもいきなり叫ぶなんてね。しかもホールに向けて。私の知り合いはみんなnasty」
「言ったはずだ。2時間も待つ必要はねぇと」
 といってもいきなりこうなるとは思わなかった為、内心かなりうろたえてはいた。
「いきなり真っ向勝負?」
「と、当然だ」
 武者震いするくらい。
「fu……困ったわね」
 やれやれといったように目の前へと視線を向けるリサの顔が真剣なものに変わる。

「何事だ!騒々しい!」
 突然の出来事にうろたえる男達を一喝する野太い声。その持ち主は巨躯の男。
「mad dog……」
 リサが呟く。狂犬と呼ばれた男の視線がリサを射抜く。
 邦博には一瞥しただけで目も向けない。
「シャイン……むぐっ!」
 邦博の口がリサの手によって塞がれる。
「むがむが、ぁにふぁあがふんふぁ(なにしやがるんだ)!」
「ヴィクセンか。粋なことをする」
 男が一歩前に出る。
「この男は醍醐。篁の腹心よ」
 邦博にそっと耳打ちして、邦博から手を離す。
「シャ……むぐっ!」
209地獄の雌狐、一世一代の大芝居:04/06/16 22:47 ID:xPiOPKtS

「狂ったか?ID13のエースともあろうものが。こんな形で反抗して無事にすむと思ってるのか。
 気に食わん狐だが、せめてもう少し賢いと思ったが」
「フフ、勝負は草履を履くまで分からないわよ」
「ふぇふぁふぁふぇふぁ(下駄だ下駄)!」
 再びリサに口を塞がれてもがく邦博を尻目に、リサが嗤う。
(こうなったら仕方ないわね。相手が飛び道具を構えない内に打破するわよ。いい?)
 コクコク。リサの言葉に邦博がリサにしか分からないように目で頷く。こうなったらやるしかない。
(一、二の三で手を離すから、同時に特攻するわ。準備はいい?一二の――)

 手が離される。
 三!!
 邦博が一歩前に踏み出す。そして――急激に襲いくる痛みに足が止まり、身をよじる。
(な、なんだ!?)
 ドサリと顔面から着地する。何が起きたのか分からない。
 ねじ上げられた腕と肩がキリキリと悲鳴をあげる。
 その痛みに逆らうように、ゆっくりと振り向く。

「残念ね。クニヒロ。ここまで来てしまったあなたが愚か」
「な――?」

 邦博の腕を容赦なく捻り上げ、冷たい瞳で見下ろすその人は。地獄の雌狐、リサ=ヴィクセン。
210地獄の雌狐、一世一代の大芝居:04/06/16 22:48 ID:xPiOPKtS

「どういうつも……ぐあっ!」
 瞬間、さらに骨よ千切れよとばかりに締め上げられ、地面に顔を擦りつける。何も見えない。
「仲間割れか?……どういうことだ?」
 醍醐が不思議そうに、それでも余裕を崩したりせず淡々と尋ねる。
「あら。あなた位は聞いてるかと思ったけれど。案外総帥に信用されてないんじゃない?
 所詮は飼い犬ね。私も立場こそ違えど、あなたと一緒よ」
「なんだと?」
「本当は黙っているべきなんでしょうけど、我々が戦闘を起こすのは好ましくない。
 そうね。篁総帥にお目通り願えないかしら?」
 リサが言わんとすることを理解したのか、少し思案してから醍醐が口を開く。
「……。あの方は表面上のいざこざは俺に全権を委任している。
 その俺の耳に入っていない話は取るに足らんというも同然。それは出来んな」
「ha!……敵を騙すにはまず味方からってコトね。総帥も人が悪い。
 黙って殺されるワケにもいかないから、その時は全力でお相手するけれど。
 こんなところで戦闘を起こしたら総帥は何と仰るでしょうね?」
「……」

 醍醐は再び少し思案する。確かにヴィクセンは篁の手駒として動いていた時期があった。
 その時も醍醐の耳にすべての情報が入っていたとは言い難い。
 篁の自分の知などは遥かに超越した偉大なるお方だ。自分の想像などは超えた考えを持っていてもおかしくはない。
「聞かせてもらおうか?お前が参加者として参加することになった理由を」
「それを答える権限は私にはないわ」
「……まず武器を捨てろ。話はそれからだ」
「NO。それもできない。あなた方に話が伝わってない以上、自分の身の安全は自分で保障するしかない」
「そんな虫のいい話。通ると思ってるのか?」
「あら。あなたが馬鹿にする女狐が、武器を持った程度で萎縮する程あなたの牙は廃れたの?
 所詮は飼い犬となった者の末路。mad dogの名も落ちたものね」
「口だけは達者だな。……いいだろう」
「隊長!?」
 周りにいた醍醐の部下達が騒ぎ出す。醍醐はそれを手で制して。
211地獄の雌狐、一世一代の大芝居:04/06/16 22:49 ID:xPiOPKtS

「いいだろう。ついて来い。もちろんお前一人でな」
 愛用の特殊警棒を手に、リサを名指しする。
 口ではなんと言おうと、この女を甘く見てはいない。だが、剣一本持った相手に萎縮する程醍醐も弱くはない。
 何より、立場よりもプライドが先に立った。ここで相手の要求を呑まねば傭兵隊長の名折れ。
 それに――よしんばヴィクセンが何か企んでいたとしても、篁がそれに呑まれることは在り得ない。
 そして、醍醐自身も主君に申し立てたい話もある。丁度いい。

「of course. この男は全然無関係のただの参加者だから。あまりに無謀な馬鹿だったけどね。計画が台ナシ」
「……俺を、騙したのか?」
 邦博が呻き、リサをもう一度見上げた。それを見下したリサの表情はまるで機械のように冷たい表情で。
「あなたといた時間。退屈はしなかったわ。それだけは感謝するわね」
「騙した……のか?騙したのかぁっ!」
 邦博が吼えた。さらにリサの手が邦博の腕を捻り、彼の身体を地面に沈みこませる。
「ガァァッ!」
「なかなか迫真の演技だったでしょ? 地獄の雌狐。一世一代の大芝居」
 表情が崩れる。小悪魔的な笑い。それを見た瞬間、邦博の何かが弾け飛んだ。
「シャインクルス!」
「!?」
 リサの身体が横へと流れる。かつて彼女のいた場所を寸分違わず光の帯が突き抜ける。
「――強力な武器も、ただ闇雲に撃つだけじゃ当たらないわよ。特に、手の内を知られている相手にはね」
 リサの足が邦博を跳ね上げる。固いつま先が邦博の腹に突き刺さり、身体が九の字に曲がる。
「ぐうっ!」
 フラフラしながら、ゆっくりと立ち上がる――が、目の前のリサの攻撃で再び無様に地面に倒れ伏した。
 何が起こったのか、邦博には正確に理解ができなかった。
 高速ワンツーからの水月への蹴りの三連撃。
 邦博の頭に昇った血が抜けた。
 もう、どうでもいい。
 ――この痛みだけが真実か。
212地獄の雌狐、一世一代の大芝居:04/06/16 22:50 ID:xPiOPKtS

「ククク、なかなか面白い見世物だった。その男はどうする?」
 醍醐が問いかける。
「放っておきましょう。参加者を殺すのは好ましくない――でしょ?」
「……」
 醍醐は気づかなかった。本当の一瞬だけ、リサが探るような瞳を見せたことを。


「……」
 邦博はもう何も言う気力も沸かなかった。完全に打ちのめされていた。心も身体も。
 リサが見下ろしてくる。
「もう少し賢くなることね」
 相変わらず冷たい瞳。それを映す邦博の瞳は何も映さない。
「Bye。……宗一とエディによろしく」
 それだけ言って、リサは消えた。
 醍醐と共にホールの中へと。

 邦博はただ一人、空に浮かぶ朧月を見上げて。
「ちくしょう……」
 知らず、涙が流れた。

――宗一とエディによろしく。
 最後の言葉が耳に付く。うざったい。もうどうでもいい。

 そういえば前にも聞いた名前。それはどんな時だったか。
213地獄の雌狐、一世一代の大芝居:04/06/16 22:50 ID:xPiOPKtS

――そこで、あなたに探してほしい人がいる。……那須宗一、エディ。
  わたしが知る限り、この世界で一番頼りになる人たち。
  彼らを探して、合流してほしいの。……そして私のことを伝えて。
 『地獄の雌狐』は一足先に、古狸の巣穴に飛び込んだ、と――


(……まさか、な)
 最後に見たリサの表情はどんな表情だったか。
 よろしくと言ったあの時――リサの表情は。
 あの時、あの頃。邦博と一緒に過ごした時間と同じ、穏やかな表情ではなかったか?
(……まさか)
 どっちが演技だ? どこまでが演技だ?



【001 浅見邦博 身体能力増強剤(効果30秒 激しいリバウンド 2回使うと死ぬらしい)パソコン、
 レーダー(25mまで) フィルスソード(シャインクルス制限残り3回)】
【100 リサ・ヴィクセン 草薙の剣】
【醍醐 特殊警棒】
【邦博はホール近くで倒れてます。リサは醍醐と共にホール内部へ】
【時刻は深夜】
214名無しさんだよもん:04/06/16 23:21 ID:/Jpu3UDe
>>197-201はNGになりました。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/
を読んでください。
215名無しさんだよもん:04/06/16 23:59 ID:OBLW+Hvz
ズダダダダダダダダダダ!



【100 リサ・ヴィクセン ガンカメラの罠に掛かり死亡】
216名無しさんだよもん:04/06/17 00:18 ID:+glipuBs
以後、キャラが殺し合うのは不可。
キャラ全員対主催者の線に沿ったモノでないと即NGね。
これ、決定。
217名無しさんだよもん:04/06/17 00:39 ID:TQRMLd3M
>>214-216は無視してください。
>>197-201はNGになっておりません。
218月下輪舞:04/06/17 02:31 ID:2ZDnKjNc

それは、実に十二時間あまりの間、そこに在った。



ざあ、と梢が鳴く。

「―――追いついた」

黒髪を風に靡かせ、少女は詠う。
その瞳が見据えるのはただひとり。

夜を縫い込んだような黒髪を編み下ろした、獣の耳の女。
右手には、幾筋もの血痕を纏わりつかせた大太刀。
大樹にもたれていた身体をゆらりと起こすと、その手に握られた太刀を無造作に振るう。
巻き起こる風を従えて、女が口を開く。

「約束でしたわね―――貴女が私の元に」

黒衣の少女が応える。

「ええ、辿りつくことが出来たなら―――」

重なる声。

「―――踊りましょう」
219名無しさんだよもん:04/06/17 02:31 ID:2ZDnKjNc
仕掛けたのは、しのぶ。
逆手に構えた右手には、銀色に煌くナイフ。
長い黒髪に風を孕みながら、低い姿勢で踏み込む。

あまりに無造作な間合いへの踏み込みに驚きながら、カルラは水平に太刀を薙ぐ。
見越していたように黒衣が翻り、刃がやり過ごされる。
ほぼ同時にカルラの胸を襲うナイフ。
太刀を戻す暇もあればこそ、咄嗟に飛び退くカルラ。
間合いを離すまいとするのか、間髪いれず距離を詰めるしのぶ。

振るわれる太刀。紙一重でかわす黒衣の少女。迫る銀色、退くカルラ。
そしてまた間合いが詰まる。
幾度も繰り返されるそれは、青白い月光の下に繰り広げられる華麗な輪舞。

一刻も早くミコトの元へ戻らねばならなかったオボロだが、眼前で始まった剣戟に
動く機会を逸していた。
道を違えたとはいえ、かつて同じ主を戴いた仲間が命のやりとりをしている。
それを捨て置くことはできなかったが、さりとて助太刀するというわけにもいかない。
つい先刻までは斬るの斬らぬのという話をしていた。
理性はここを離れミコトの元に急ぐべきだと告げていたが、その声はいかにも弱かった。
身体は、動かない。
仕方なく大樹の陰から気配を殺して趨勢を見守っていたオボロだったが、その眼は
時を経るにつれ、驚きに見開かれることになる。

黒衣の少女に、あのカルラが押されていた。
少女の短刀はカルラにいくつもの細かい傷をつけていく。
逆にカルラの太刀筋は少女を捉えることができず、虚しく空を切るばかり。
あり得ないと言っていい光景だった。
少女の体捌きはまるでなっていないデタラメなものだったし、カルラはかつての
トゥスクル軍において屈指の使い手だった。
本来であれば、一刀の下に斬り伏せて終焉を迎えるべき闘いの筈だった。
しかし、現実には当然あり得るべき想定とはまったく逆の光景が繰り広げられている。
220月下輪舞:04/06/17 02:32 ID:2ZDnKjNc

それでも、オボロとて腕に覚えのある歴戦の勇士。
一時の驚きから醒めるにつれ、もつれた糸がほぐれるように、この不可解な情勢の原因が見えてきた。
まず第一に、カルラは明らかにその利き手を傷めている。
手首を庇いながら扱われる太刀は大振りが目立つ、いかにも読み易い太刀筋となっていた。
そして第二に、

(―――カルラの剣……迷っているのか?)

剣閃に、往時のキレがまるで無い。
この島で身体が思うように動かぬのはオボロとて文字通り身に沁みて理解していたが、
それにしても限度がある。
敵の刃を前にしながら、どこか心ここにあらずといった風情。
そのような魂の篭らぬ太刀では、

(あれは、斬れない―――)

そう、第三の要素はカルラと対峙する黒衣の少女、そのひとだった。
剣の心得など、まるでないに違いなかった。
しかしそれは、言うなれば人にして人を外れた……人外の化生。
掠っただけでも肉を裂き骨を削りゆく大太刀の剣風を、意にも介さぬ。
そのようなものはただそこに在るだけと、まるで床に置かれた壷を跨ぎ越すように
無造作にかわし、まるで省みることがない。
己の突き、刺し、薙ぐはただ眼前の敵ただ一人と、その念だけがカタチを成したような、
それはそういうものに見えた。
焦りも疲れも、怒りも憤りも、その眼には一切がなかった。
生への執着すらも失くして在るそれは、正しく異形。
己のすべてをただ斃すことに特化させた、そういう情念の塊は、絶つと断じて振るわれた
剣でなくては斬れるものではない。

(カルラ、そのような剣では、いかにお前とて―――死ぬぞ)
221月下輪舞:04/06/17 02:33 ID:2ZDnKjNc

あるじ様。
私の生きる場所。
あるじ様こそが、私の世界そのもの。
ならば、あるじ様亡き今―――私は、どこに立っているのだろう?

先刻の男。
あるじ様の仮面をつけた、あの男の言葉。
力に、頼りすぎていると。
惑わされるな、あれはあの男の言葉、あるじ様のそれでは、決してない。
そう思い込もうとすればするほど、声は強く私を揺さぶる。

結局のところ、私は不安なのだ。
今ここにこうして立っていることが、あるじ様を蘇らせるなどと当てもない望みに賭けて
無辜の民を手にかけることが、生きることが、死ぬことが、この命のやりとりのすべてが、
まるで何の意味も無いのではないか。
足場もなく、ただ闇雲に剣を振り回している愚かな女。
自分がそういうものなのではないかという、どうしようもない不安。
だから、振り返らなかった。
だから、走り続け省みず、ただ屍山血河の上に開ける道があると、それだけを己に言い聞かせ、
この手を再び血に染めたのだ。

しかし、その決意を、その疾走を、只の思い込みだと。
あの声は告げているようで。
お前の道は、己の迷いを誤魔化すだけのまやかしだと。
その血染めの義に縋らなければ、私は私でいられないのに。

迷いは剣を鈍らせ、受ける傷は惑いを深め、私は私の奥底に潜む泥沼に嵌り込んでいた。
222月下輪舞:04/06/17 02:34 ID:2ZDnKjNc

そして、その時が来た。
幾度繰り返されたかわからない攻防の末。
捌き損ねた刃が翻り、致命的な軌道を辿るそれを避けるために引いた足が、
ぬかるんだ土に取られる。
盤上で行われる遊戯のように、その手筋は読めていた。
私の詰みで終わる、負けいくさ。

姿勢を崩し、膝をつくように倒れこむその顎に、少女の膝が叩き込まれていた。
刹那、光に包まれたように瞬き、直後に暗転する視界。
そう、そして右、上から袈裟懸けに振り下ろされる短刀が私の首を薙いで。
それで、終わり―――

終わりは、来なかった。
戻った視界の中、眼に映ったのは。
こちらを見下し、心底から嘲るような瞳。
否、嘲っているのですらない―――その瞳は、私を蔑んでいた。
手には、黒く小さな鉄の塊。
少女が、口を開いた。

「―――こんなものなの?」

その声は酷く冷ややかで、この私をして怖気を立たせる程の殺意に満ちていた。

「―――わたしが辿り着いたのが、こんな場所であるはずがない。
 こんな場所は、わたしが透子に逢いに行くために相応しくない。
 もういいわ。
 ―――最初から、こうしていれば良かった」

鉄の塊が、存在感を増したように感じた。
223月下輪舞:04/06/17 02:35 ID:2ZDnKjNc
ああ、これは私を殺すものだ。
それが、わかる。

「そんな眼しかできないあなたを相手にするのに、わざわざ手間をかけることはなかった。
 どうせ避ける気もなかったんだから、一発で充分。
 ……ねぇあなた、さっき何て言った? わたしとあなたが似ている……?
 ―――ふざけないで」

一瞬だけ、冷たく光るその瞳に憤りのような感情が見えた。
だが、それもすぐに霧散する。

「あなたは、ほんとうに生き恥を晒しただけで、そうして死んでいくのね。
 あなたのたいせつな人が、可哀想。
 さよな―――」

さよなら、と。
言い切ることはできなかった。
一瞬前までブローニングがあった場所、そして少女の首があった場所を、
私の太刀が薙いでいた。

そう。
私は思い出していた。
あるじ様だけが私の世界。
あるじ様の為に私は在り、世界は在るのだと。
ならば、私がなすべきは、いま己が立っている場所に戸惑い、揺れることではなく―――。

あるじ様が欠けたまま続く、この不完全な世界を。
斬り伏せることだ。
224月下輪舞:04/06/17 02:35 ID:2ZDnKjNc

だから。
惑わず在れる、この空気の中に身を置けることを、今は悦びと感じよう。
そう、眼前に立つあれは、狩られるべき獲物ではなく。
まして、私を殺すものなどでは断じてなく。
刃交え鎬を削り、そして私が斃すべき、敵だ。

「―――殺させない、と」

口を開く。
夜の森に響く声は、強く凛々しく。
己に残る最後の惑いを、追い出すように。

「そう仰っていましたわ、貴女のたいせつなトウコさんは。
 ……私の一刀を受け、もはや動くこともままならぬ身で―――
 それでも、貴女を殺させはしない、と」

大きく飛び退いた姿勢のまま、少女は顔を上げた。
その端正な顔は、嗤っていた。

「……透子は―――そう、そういう風に死んだのね―――」

私もきっと、同じ顔で嗤っている。
225月下輪舞:04/06/17 02:37 ID:2ZDnKjNc

その瞬間、勝負がついた、と。
オボロは確信していた。
迷いを捨てられなかったカルラは、やはり兇刃を捌ききれず、命を落とした、と。
だが。

(―――何故、殺さん……?)

黒衣の少女が、カルラに何事かを告げている。
その手には黒い鉄の得物。
あれは以前に物言わぬ少女の懐から垣間見た、

(視えぬ礫を打ち出す弓か!)

不思議なものだった。
剣と剣の勝負には傍観を決め込んだが、己の知らぬ理で動く武器を目にした途端に、
あのようなモノにカルラの命を奪わせるわけにはいかない、と思える。
飛び出そうとしたその脚はしかし結局、動くことはなかった。

(―――カルラの剣気が……変わった……!)

否、戻った、というべきなのか。
視認することすら困難な速度での一閃。
どういった経緯でかは想像すらできないが。
カルラはもう、あの少女に敗れることはない。
心中、そう断言させるほどに、己を取り戻したカルラの剣は、圧倒的だった。
226月下輪舞:04/06/17 02:38 ID:2ZDnKjNc

再び剣戟が始まる。
先程までとは一転、カルラの太刀が縦横無尽に辺りを蹂躙し駆逐していく。
元より一合とて打ち合わせることのかなわない短刀しか持たぬ少女は、カルラに
近寄ることすらできずに防戦一方、果てなく下がらざるを得ない。
その太刀筋が少女を捉えるのは時間の問題、の筈だった。
しかし。

(あの動き―――)

少女は、丁度こちらから遠ざかるようにして距離を開いていく。
先刻までと打って変わったその動きが気になった。
間合いを離せばそれだけ少女の不利になるのは明らかだった。

(まさか―――誘っているのか……?)

徐々に遠ざかっていく女たちの影。
オボロの手には、ミコトに届けねばならぬ飲み物。

「―――クソッ……!」

この身が二つに裂けぬものかと悩む間にも、刻が過ぎていく。
227名無しさんだよもん:04/06/17 02:38 ID:FOVrhl9x
支援
228月下輪舞:04/06/17 02:42 ID:2ZDnKjNc

目の前の女―――カルラは、圧倒的に強かった。

(遠い、なぁ―――)

あといくつの死線を超えれば、辿り着くのだろう。

はらはらと舞うこの感触は、おそらく風に巻かれた髪が幾筋か持っていかれたのだろう。
右から、左から、上から下から時には後ろから、果てることなく吹き抜けるこの風は、
この身に受ければそれですべてが終わる、そういうものだ。
死の具現。
それはそれで、素敵だけれど―――

(まだ、少しだけ早い……!)

こんなことなら、わざわざ起こしてあげるんじゃなかった。
そう考える自分を嘲う。
そう、わたしとこの女は同じだ。
よく似ているというのを通り越して―――完全に相似。

生ける屍を斃しても意味が無いのだ。
超えなければならない。
己の認めた、敵を。
呆けているなら、その頬を叩いて眼を覚まさせる。
それが―――わたしたちの流儀。
229月下輪舞:04/06/17 02:43 ID:2ZDnKjNc

幾度目かの風が吹きぬけたとき。
傷みが限界を超えた制服の、裂けた布が剣風に巻かれ、体勢が崩れた。
瞬間、お腹に激痛。
どうやら正面から蹴りをもらったらしい、と認識するより早く、全力で後転。
後頭部を投げ出すようにして、丸めた背中を地面に叩きつける。
その勢いを殺さず、足を引き戻して転がる。
一瞬前まで身体をあずけていた地面に、極大の衝撃。
大刀が、地を穿っていた。

「―――ハァ……ッ、ハ……ッ」

息を整える間もなく、飛び退く。
間髪いれずに来る、大刀一閃。
稼いだ距離が、僅かに足りなかった。
右手のナイフが大きく弾かれ、転がっていく。

カルラが、大きく息をついて大刀を正眼に戻す。

「―――胸を張りなさい。
 唯人の身で、このカルラとここまで渡り合ったのですから」

それは、完全に勝利を確信した宣言。
事実、形勢は逆転不能に近いようにみえた。
手持ちの武器は護身用のスタンガンと、残弾一発のブローニング。
そして、ポケットのブローニングについては既に手の内を晒している。
わたしが抜き撃つよりも早く、カルラの大刀が構えた手ごと薙ぎ払うだろう。
そう、形勢は逆転不能に、みえた。

しかし、わたしはまったく別のことを考えていた。

(―――辿り、着いた)
230月下輪舞:04/06/17 02:44 ID:2ZDnKjNc

それは、実に十二時間あまりの間、そこに在った。

すべてを無に帰す焔をその内に秘め、暗い森の奥にたたずんでいた。
それは、かつて長瀬祐介と呼ばれていた少年の遺した、破滅のかたち。

その砲身には大きな裂け目。
そのタンクには、充分な燃料。

そして今、その傍にはふたりの女。
存在を賭け、互いを滅せんと闘う、雄々しく立つ女たち。

榊しのぶは、ようやくにして、己の領域に自らの敵を引きずり込むことに成功した。


【039 榊しのぶ ブローニングM1910(残弾1) 缶切り(×3) 12本綴りの紙マッチ(×3) 護身用スタンガン ライター 白うさぎの絵皿】
【026 カルラ 自分の大刀 背中・肩を強打 右手首負傷、握力半分以下】

【火炎放射器 (砲身に損傷・燃料は6割) ナイフ】

【016 オボロ 果物ナイフ 短刀 ペットボトルのジュース 右足と左脇腹の負傷、肋骨骨折は応急処置済み】
【深夜】
231名無しさんだよもん:04/06/17 16:27 ID:u65Kn0Ev
age
232名無しさんだよもん:04/06/17 16:38 ID:j+S/edBp
月下輪舞NGね。わかりにくいから。
233血の盟約:04/06/17 16:45 ID:jxpCDuMk
 なんだかなぁ。
 時紀は目の前の奇妙な少女を見つめて頭を掻いていた。
「ん」
 向こうも、少しビクつくようにしてこちらを見つめている。
 二人、目と目で通じ合う。それはまるで恋人同士。

 ニコリと笑いかけると、少女――アルルゥは身を縮こませて寝ている観鈴の側に寄った。
(……。だからガキは嫌いなんだ)

 あさひの来訪時に目を覚まして以来、どうにも眠れない。
 多少不機嫌になっているのが顔に出ているのだろうか?
 それとも、自分はそんなにも怖い顔をしてるのだろうか。
 ……初対面のあさひにはあんなに擦り寄っていたのに。

(ま、そーでなくとも、物騒な事ばっかり考えてるからな)
 少しは、精神的にも休息を取った方がいいのかもしれないな。などと思う。

 うーん、少しは歩み寄った方がいいのか?
 さすがにアルルゥほど幼い少女には、微妙に邪険にするのも躊躇われる。
 そんな風に思考を巡らせつつ無言の時が続く。

 その内、アルルゥの耳がピコピコと動きはじめる。
「だれかきた……ともや?」
 時紀の耳にも、足音が届く。――複数だ。
 鎌を構えて、入り口を見据える。
 こちらに来るのか――?
234血の盟約:04/06/17 16:45 ID:jxpCDuMk


「!!――誰だそこにい――」
「――と、時紀クン!」


 一行は洞窟へと差し掛かる。
 道案内を兼ね、朋也が先頭に立ち、続いて月代。その後ろを晴子と明日菜が並んで。
 殿を敬介が務めて歩く5人パーティ編成。

 そこにいたのは。
 アルルゥと髪の長い少女以外の人物――鎌を持った男の突如の出現に、朋也がサーベルを構え叫びかけるが、
 さらなる大きな声によってそれを押しとどめられる。

「あ、明日菜さん」
 目の前の男が鎌を下ろして呆然と一同を見渡す。
「……知り合い?」
 朋也が明日菜に問いかけようとするも、再び遮られる。――黒い疾風。
「むぎゅっ」
「やっと会えた!よかったぁ、時紀クンと会えて!」
 明日菜が一目散に駆け寄り、自らの胸に時紀の顔を強引に埋める。
「えっと……どういうこと?」
 月代の呟きに、朋也は無言で返した。多分、物凄い表情をしてたと思う。
「あ、ははは」
 月代が笑ってごまかすように一同を見渡す。
 朋也と同じように顔を歪めていた。ただ一人。晴子を除いて。
235血の盟約:04/06/17 16:46 ID:jxpCDuMk


 それからは語るのも大変な程のてんてこ舞いだった。

「観鈴……」
 未だ眠っている観鈴をそっと抱きしめる晴子。
「こんなに傷ついて……。もう、大丈夫や。これからは、ウチがずっと守ったるからな」

 洞窟内部に入り込んだ一行の中で、次いで飛び出したのが晴子だった。
 敬介はぐっとこらえるようにその二人の光景を見守るだけ。
「……いいの?」
 月代が聞く。
「ああ。晴子は――きっと僕よりもっと心を痛めていただろうから」


「こうしていると。ここにいるのが嘘みたいだね」
 明日菜は、母子の感動の対面の蚊帳の外で時紀に抱きついたまま。
「えと、その、明日菜さん。胸が当たって――」
「コラ、細かいこと気にしないの。……もう少しこのままでいさせてよ。――お願い」
「……」
 時紀の腕に絡みついて、明日菜はじっと観鈴と、晴子の姿を遠巻きに見ていた。
 少し憂いを帯びた表情のそんな明日菜を横目で見やりながら。
 結局時紀は明日菜のさせたいようにさせた。

「晴子。そろそろいいか?」
「なんや?」
「観鈴の手当てを先に済ませたい」
「あ、ああ、そうやな」
 不機嫌そうに振り向いた晴子だったが、そのセリフにバツが悪そうに観鈴から離れる。
「ウチには向いてへんし。手当ては任せるわ」
236名無しさんだよもん:04/06/17 16:47 ID:X7MbsuIc
>>232
NG厨去れ

>>228-230
実況スレにて議論になっております。
対応お願いします。
237血の盟約:04/06/17 16:47 ID:jxpCDuMk

 晴子が朋也に笑いかける。
「ありがとな。ここに連れてきたってくれて」
「いや。俺は何もしてないですから」
「それに観鈴の手当ての為に奔走してくれたやろ?そのお礼も兼ねてや。
 今、言える内に言っとこ思ってな。……これからウチらだってどうなるか分からんしな」
「……」
 多種多様の再会劇。少し雰囲気に入り込めず、居心地が悪かった朋也だったが。
「どうなるか分からないなんて言わないでほしい」
 こんな些細な幸せが詰まった風景を、もう少しだけ見ていたかった。
「おばさん。そこのおねーちゃんのおかあさん?」
 朋也の横にいたアルルゥが恐る恐ると晴子に尋ねる。
「お・ば・さ・ん?まだそんな年やないで。晴子おねーちゃんと呼んでや」
(充分おばさんだろ)
 口にすると死亡リーチがかかるので、朋也はなんとか堪える。
「うん。……晴子おねーちゃん」
「よっしゃ。素直でええ子やなぁ。どっかの居候とは大違いやで。
 そうや。ウチと観鈴は親子や。ウチお母さんや。
 ちなみにそこの敬介は自称父親やけど、ウチらは夫婦でも元夫婦でもないで」
「おい晴子、自称はひどいぞ」
 向こうから、敬介が会話に割り込んでくる。
「充分自称や。この甲斐性ナシが。観鈴は渡さんで」
 アカンベーをしてから、再度アルルゥに向き直って。
「というわけや」
「アルルゥ、おかーさんいない」
「……そーか」
238血の盟約:04/06/17 16:48 ID:jxpCDuMk

「で、何でここにいたんだ?」
 また会話からハブられた朋也がフラフラと時紀の方へと歩いていく。横には明日菜。
「ちょっと、岡崎くんだったっけ?気利かせなさいよね。シッシッ!」
「まぁまぁ。単に休みたいと思ってここに来ただけだ。そしたら観鈴がいたからな。
 ついでに少し休んでただけだ。あんたにもいろいろ聞きたいことあったしな」
 写真のこと――那須宗一や芳野祐介。そして写真を持った女のこと。いろいろ聞きたいことがあった。
 だがその辺のことは、もう少し今の状況が落ち着いてからでもいいだろう。
「聞きたいこと?」
「――ま、おいおい話すよ。それより、桜井あさひって娘知ってるか?」
「桜井あさひ?いや、知らないけど」
(そーいえばいたわね。そんな娘)
 森で出会った、復讐を誓った少女。明日菜は特に何も言わず黙っていた。

「桜井あさひだって?」
 また会話に割り込んでくるのは敬介。割り込みが好きな人だ。案外自己主張が激しい人なのかもしれない。
「知ってるのか?」
「知ってるも何も。今をときめく声優アイドルの桜井あさひといったら有名だよ。
 最近では『カードマスターピーチ』のヒロイン『モモちゃん』の役をこなしてる。
 毎週ビデオに撮ってるし、行けるコンサートには必ず顔を出してるから、見ればすぐ分かるよ」
「……」
「……」
「ん?どうした?」
 一同、ちょっと興奮したような敬介に視線が集まる。
「サイン色紙とか欲しかったりするんか?」
「そりゃ、まぁ。というかいくつか持ってるが」
「あんた、オタクやったんやなー」
「な」
239血の盟約:04/06/17 16:49 ID:jxpCDuMk

「おたくって何?おいしい?」
「シッ!見るんやないで。穢れる」
「橘さん……」
 全員が。月代も観鈴の治療の手を休めて、敬介を見ていた。
 視線が、痛い。
「ち、違うんだ。僕はその、観鈴の為にだな」
「初耳やな。観鈴はまったく知らんみたいやったけど」
「ち、違う。僕はオタクでは――。月代ちゃん、君は信じてくれるだろう?」
「え、わ、私に振られても……」
「そない年下にまで手出すんか。犯罪やでー」
「ち、違うー!」

「晴子さん、楽しそうだね」
 明日菜が呟く。
「そーだな。ほっとくか」
 時紀も悶える敬介を尻目に、朋也へ再度問いかける。
「あさひって娘が、『はるか』って子を追いかけて出て行った。
 行く先はアパートとか言ってた。詳しい場所は分からないが、あんたなら分かるか?」
「……分かる。分かるけど」
 あそこは――もう物言わぬ人達がただ眠るだけの凄惨な場所で。
「行くべきなんだろうか」
「どうかな。今からだと厳しいかもな。結構経ってる」
「……」
240血の盟約:04/06/17 16:49 ID:jxpCDuMk


 しばらく。
 結局、朋也はまだそこに留まっていた。
 あさひという少女も気にならないわけではないが――。この場も気になる。
 智代のことも気がかりだ。

「橘さん。聞きたいことがあるんだ」
 観鈴の治療を終え、手の開いた月代と敬介に言葉を投げかける。
「アタシ達はいいの?」
 明日菜が朋也へと質問する。
「ん?ああ。とりあえずは」
「そっかー。……晴子さん。ちょっといいですか?」
 眠る観鈴の頭を膝に乗せ、髪を撫であげていた晴子が顔を上げた。
「――ああ。……ええで」
 そっと観鈴を膝から下ろし、立ち上がる。
 手持ちの武器、マイクロUZIを手に持ち――
「あ、武器はいらないですよ。ほんのそこまでですし。アタシも置いてきますし」
「……」
「ここ離れるのか?あんま遠くにはいかない方が――」
「ちょっとそこまでだから。時紀クン、アタシがいないからって寂しがったら駄目よ」
「そういう意味じゃ――」
「というわけで。話続けてて下さい。すぐ戻りますんで」
「……花を摘みに行くのか?」
 ボグっ!ベコッ!
 ダブルでの突っ込みが朋也に入った。
241血の盟約:04/06/17 16:50 ID:jxpCDuMk

「うぐぅ……。えと、気を取り直して。坂上智代って女の子見ませんでした?」
 晴子と明日菜が去り、6人――ひとり眠ってるのでほぼ5人だが――になったところで話を進めた。
「いや、知らないが。君は?」
 敬介が時紀の方を見る。時紀も首を横に振った。
「名前だけじゃちょっとな」
「実は、昼間はさっきの学校にいたはずなんです。居た場所は――爆発でボロボロになってましたけど」
「……。その人の服装や容姿とかは?名前は知らなくても見てるかもしれないしな」
 時紀がそう意見を出してくる。
「ああ。そうだな。智代は――」




 その頃。
「いきなりお互いの尋ね人に会えるなんてツイとるなぁ」
 洞窟を出てからそこそこ離れた位置にまで移動してくる二人。
「ここに来るまで苦労の連続で。全然ツイてたとは思えませんけど」
「茶化すなや」
「茶化してるのは晴子さんじゃないんですか?」
 明日菜が笑った。
「そうやな。ま、いつかこうなればいいと思って、そしてこうなったってことやろ。
 いいことずくめやんか。一応はな」
「そうですね」
 しばらく、お互い無言の時が続く。
「ま、感謝はしとるで。ここまで来れたの、明日菜ちゃんのお陰でもあるしな」
242名無しさんだよもん:04/06/17 16:51 ID:j+S/edBp
>>236
お前言ってること無茶苦茶だな
243血の盟約:04/06/17 16:51 ID:jxpCDuMk

「晴子さん。観鈴さんを守りきれそうですか?どう見ても足手まといにしか思えませんけど」
「死んでも守る」
「ふーん。晴子さんの方も怪我してるし。お互い共倒れになりそうですけどねー」
「ケンカ売っとるんか?ウチは安く買い叩くで」
「当方セールはやっておりません。……ま、晴子さん楽しそうでしたし。あれが本来の晴子さん?」
「ま、普段は人なんか間違っても殺したりはせん人間ではあるかな?」
「アタシだってそうですよ」
 カラカラと笑う。別にお互い、好き好んで殺人犯してるわけじゃない。
「ふぅ……」
「疲れとるなぁ」
「疲れるってより、緊張してるんです。ゲンジマル殺した時よりもずっとですよ。
 言ってしまったら、もう後戻りはできませんから」
「ま、想像はつくけどな」
「ホントですか?」
「お互い武器も持たんと出てきてるくらいやしな。なんとなく分かるわ」
「――多分、分かってないと思いますよ」
「あん?」

「ゲームの生き残りの二人にはどんな願いでも叶えられる。
 それを利用すれば、なんと、生き返りの願いを叶えてもらって四人まで生き残りが可能なんです。
 すごいですねー!」
「……」
「お互い、色々と思惑はありましたけど、結構いいコンビでしたよね。アタシ達」
「そうやなー。それは認めるわ」
「でも、お互いの目的果たした以上、コンビを続けていくのは難しいですね」
「そーかもな」
 いやにはっきりと言う。敵対します、と言ってるようなもんだ。
 明日菜らしくない。晴子が顔をしかめた。
244血の盟約:04/06/17 16:51 ID:jxpCDuMk

「それでも。もし仮にこの先コンビを続けていくとするなら。――お互い強い信頼――というか。
 盟約みたいなのが必要ですね。絶対に裏切らないっていう」
「何が言いたいんや?」
「ほら。やっぱり分かってない」
「あんたが大事なトコ先送りするからやろ?」
「だから緊張してるんですってば」
 はぁ、と大きく深呼吸をする。
「別に今すぐ答えを出せというわけではないんです。んー。夜明けくらいまでにはね。
 よく考えて決めて下さい。なぁなぁで決められるくらいなら敵対した方がマシですから」
「だから。まず何決めるのかをはっきり言い!」
「怖い顔しないで下さいよ。――自分でも不思議に思ってるんですから。
 あの時。晴子さん撃たれた時。あ、ちょっともったいないな。とか思って。案外アタシ情に脆いのかも」
「『ちょっと』かい!」
「私がこれから言いたいことは一つ。――守りたい人と、頼りになる人は別ってことです。
 じゃ、言いますよ。とりあえず最後まで黙って聞いて下さいね」
 一度、言葉を切って。再び語り出す。

「二人で優勝して願いを叶えてもらいましょう。
 もちろん、観鈴さんと時紀クンの二人の生き返りを叶えてもらって」
「……」
「それを単なる口約束にしない為に。盟約交しません?
 あやふやな口約束なんかではない、確固たる形のある血の盟約を」
「盟約?」
245血の盟約:04/06/17 16:53 ID:jxpCDuMk


 四人生き残る。それは魅惑の言葉。

 そして。

 明日菜の口から紡ぎだされるは悪魔の言葉。


「アタシ達自らで。観鈴さんと時紀クンを殺しませんか――?」





【002 麻生明日菜 ケーキ、ショートソード、南部十四年式(残弾8)】
【022 神尾晴子 千枚通し、歪んだマイクロUZI(残弾20発) 怪我は応急手当済み】
【085 三井寺月代 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル×2、リュック(智代のCD 裁縫道具 医療用の針と糸 乾パン カップ麺 ホイッスル シェラフ 方位磁石 メタルマッチ 救急セット)】
【055 橘敬介 ピアノ線 大判ハンカチ 筋弛緩剤を注射器(3セット)メモと鉛筆、食料 腕に万国旗 手品用品 鉈 文化包丁 】
【031 木田時紀 鎌 朋也・宗一・芳野の写真】
【023 神尾観鈴 所持品なし 右耳の鼓膜が破れている 応急手当済み 眠ってる】
【004 アルルゥ 所持品なし】

【現在、明日菜と晴子、手荷物全て洞窟の中に置いてます】
【時間は深夜】
246せみとまる:04/06/17 18:09 ID:9qHhzK0Y
なぜ、セミの幼虫は土の中にいても苦しくないか―――
目の前の男の名前を聞いた俺は、いつか修二から聞いた話を不意に思い出した。

あの時、修二はなんと言ってただろう?
あの話に相槌はしていた筈だ。
だが、俺はほとんど上の空だったようだ。
何を聞いてたか、どんな返答をしたか、細かい部分をほとんど思い出せない。

まだ力を手に入れてなかった俺を春秋のエゴから護ってくれた修二。
そして俺のエゴを引き出してくれた修二。
その修二のエゴがいま、手の中にある。
輝く銀色のフレームが揺れていた。
しかし、そのギアの丸い円盤の回転速度が徐々に緩まっている。

バッテリー切れか―――!?

先ほど充電はしたものの、蝉丸との対峙の時間は短くは無かった。
緊張状態にあったため正確にどれほど経過したかはわからない。
5分しか経っていないかもしれないが、30分経っているのかもしれない。
いずれにせよ、このままではあと1分も持たないだろう。

なぜ、セミは苦しくないのか?
俺はそう思いながらギアを―――
247せみとまる:04/06/17 18:11 ID:9qHhzK0Y
なぜ、蝉は一週間しか生きられないのか―――
目の前の男からきよみ(複製身)の名前を聞いた俺は、いつかのきよみとの会話を思い出した。

―――蝉は七年地中で幼虫のまま待ち地上に出るという
     成虫になりしその命は十四日程だと聞くが
     なんと悲しき虫の性だろうな……」
「……ううん、そんなことない
 暗い土の中で眠りながら生き永らえるより
 たとえ瞬きほどの時間であっても、外界で生きている鼓動を感じる方が
 ずっとずっと―――……倖せだと思う」
―――……そうかもしれんな…
    この世に生まれ、生きて誰かと出逢い次の生命を残して
    そして土に還る、それがごく自然な生き方か―――……
「―――…そうね……だとすれば、本当に悲しいのは
 この抜け殻の方かもしれない…ね…」

俺や光岡やきよみはこの頃とは違う、老いることがない、死ぬことのない身体になった。
しかしこの島では、仙命樹の活動はほとんど感じられない。
今の自分には仮面による、別の力が宿ってはいるように感じるが、それでも完全ではない。
あの男の持つ武器、回転している物の当たり所が悪ければ生命を止められることもあるだろう。
いまの俺の身体は蝉と変わらぬ、弱きものだ。
死ねぬ身体になったことを悔い、自らの生命を絶とうとしたこともあった。

だが、ここで死ぬわけにはいけない。
短い生涯かもしれないからこそ、いまを生き抜き、自分の使命を果たさなければ―――

亮のギアに意識を集中する、心なしか先程より回転が弱まっているように感じた。
あまり長時間は使えない武器なのかもしれない、だとしたらそろそろ来るか―――?
248せみとまる:04/06/17 18:11 ID:9qHhzK0Y
亮がギアを射出しようとしたその時、2人は森の方から誰かが走ってくるのを感じた。
(新手か―――!? それとも、あかりと芽衣が戻ってきた―――?)

「「誰だ!?」」
蝉丸と亮の2人は声を揃えて、同じ事を叫んだ。
どこまでも似たもの同士である。

その影は姿を見せると
「撃つナ! オレッチだ! エディだ! 助けに来てやったゼ!」
と両手を上げながら答えた。
突然の黒人男性の闖入者に、亮は蝉丸から照準をそちらに変える。
蝉丸もエディに警戒しつつ、亮からも目を離さない。
その時、エディに向けた亮の手の中のギアは、バッテリー切れでその丸の円盤の動きを止めた。

「フゥ……どうやら、間に合ったみたいだナ
 カワイイレディにヘルプを頼まれてネ……アンタらを止めに来たってわけダ」
エディはそう言うと後ろの茂みを指差す。
そこには追いついてきたあかり、エルルゥ、芽衣の姿があった。
「良かった……間に合って……」
あかりと芽衣は、亮の無事な姿を見て、安堵したようだ。

エルルゥは蝉丸の姿をしばし見ていた後、呟いた。
「ハク……オロ……さん?」

【037 坂神蝉丸 木刀 ハクオロの仮面装備 切り傷 打撲が二十数箇所 現在ちょっと怪我が痛んでます】
【084 松浦亮 修二のエゴのレプリカ(バッテリー切れ、残り一発 ギアの車輪一つは近くに転がってます。一つは既に失われてます)】
【024 神岸あかり 所持品なし】
【011 エルルゥ 所持品なし】
【010 エディ 盗聴器 尖った木の枝数本 ワルサーPP/PPK(残弾4発) タオルケット×2、
   ビスケット1箱 ペットボトルのジュース×2 婦人用下着1セット トートバッグ 果物ナイフ】
【真希・香里・渚は民家に待機中】
249せみとまる:04/06/17 18:15 ID:9qHhzK0Y
【047 春原芽衣 木彫りの熊 きよみの銃の予備弾丸6発 筆記用具
 枕大の石 黒うさぎの絵皿 水風船2コ 予備食料の缶詰が残り3つ】
【時刻は23時10分ごろ 「仮面な人」「仮面の人」直後】
250夢現:04/06/17 18:55 ID:sUK6RdV1
 今日も、何事もなく一日が始まる。
 クーヤは午前中から忙しい。國の政務を皇としてこなさなければならないからだ。
「クーヤ様、今季の収穫についてですが」
 こんなときばかりはサクヤもきりっとした目で順々に國の内情を報告する。
「うむ。それについてはだな……」
 クーヤも公私というものは弁えているので、あくまで淡々と返す。
 少し堅苦しいが、それは仕方がない。そうしないと民に示しがつかない。
 ちょっぴり退屈な、朝の風景。

 昼になれば手が空くというわけでもない。
 民の不満というものはいつも尽きるものではない。
 そんなときにこそ、皇としての力が試されるのだ。だが、クーヤは皇といえどもまだ幼く、
 ハウエンクアやヒエンにまかせっきりな部分が多い。
「二人とも、すまぬな。要らぬ苦労をかけてしまって」
「何言ってんですか、クーヤ様は皇として大きく構えてもらって結構。政は僕らで十分」
 ハウエンクアはいつもそう言ってくれている。少し申し訳ないと思ってもそれに甘えてしまう。
 平凡な、昼の風景。

 待ち焦がれた夜。夜になればクーヤも多少忙しさから開放される。
 自分の背中をゲンジマルに守ってもらいながらサクヤとともに夜の國を出歩いたりもする。
 いつもは三人だけだが、今夜は違う。何故なら……
「よっ、やっと仕事が終わったのか?」
「なんだ耕一、主に向かってその口の利き方は! 仕事のないお前を拾ってやった余の恩をもう忘れたか!?」
 今夜からは、耕一も一緒。
 自分の護衛役として、ゲンジマルとともについていてくれる。
「おっと、そうだった。じゃ、改めて……仕事はもう済んだのですか、クーヤ様?」
「……やっぱり元の言葉遣いで構わん。他人行儀な言葉遣いをされると寂しい」
 冗談を言い合いながら、笑いあう。
 夜の間でしか四人ともに自由な時間を過ごせないのだが、そこはけじめをつけなければならない。
 楽しくて心踊る、夜の風景。
251夢現:04/06/17 18:56 ID:sUK6RdV1
 今夜は耕一が一緒なので少しばかり特別。
 アヴ・カムゥに乗って遠出。と言っても乗っているのは自分だけで、サクヤもゲンジマルも耕一も歩きなのだが。
「さて、行くぞ三人とも。早くせぬと朝日が昇ってしまう」
 クーヤがアヴ・カムゥを動かして先行する。
 だが、三人とも微笑んでいるだけで動こうとはしない。
「何をやっておるっ。サクヤッ、ゲンジマルッ、耕一! さっさとせんかっ!!」
 クーヤがそう言うと、サクヤが困ったような表情をした。それでも笑みは崩さずに。
「駄目です、クーヤ様。私達はいけません」
「なっ、どういうことだ……?」
 気付けば、三人が段々遠ざかっている。
 追いかけようとしても、クーヤのアヴ・カムゥはぴくりとも動かない。
「某らは既に滅した身。これ以上クーヤ様の下にいることは出来ませぬ」
「何を言っておるっ! それでも余の忠臣か!? 主君を置いていく部下が何処にいるのだっ!?」
「クーヤ、お前なら俺たちがいなくても大丈夫だ。だから、生き残れ」
 アヴ・カムゥを乗り捨てて三人の下に走っても少しも追いつく気配はない。
 逆に三人の影が段々と小さくなっていく。その場に、クーヤだけを取り残して……。
「耕一っ! 余は一人では駄目なのだ、だから……置いていかないでくれっ!
 皇としての立場も何も要らんっ! お前達と共にいられるだけで、余は幸せなのだ! だから……いくなぁっ!!」
 クーヤの悲痛な叫びが響く。それでも三人は段々小さくなり、遠くの光の中に消えていく。
 最後に、一言だけ言葉を残して……。
「お前なら、きっと出来る。俺たちが出来なかった、皆のとりまとめが……」
252夢現:04/06/17 18:56 ID:sUK6RdV1

 三人の姿は完全になくなった。
 クーヤはその場にがっくりと膝を突いた。そして、落ちるのは……涙。
「何故、余だけが……生き恥を晒さねばならぬのだ。余が欲しかったのは皇としての地位でも富でもない。
 腹を割って話し合える朋友が欲しかっただけなのだ……」
「……どうした、クーヤ?」
 不意に後ろから話しかけられる。
 振り向いた先にいたのは……
「ハクオロか……せめて、お前だけでも余の側にいて欲しい。これ以上、大切なものを失いとうはない」
「悪いが、それは出来ない。私も一言伝えておこうとここに来ただけだからな」
「なに……?」
 クーヤの眼差しを受け、ハクオロは話し出した。
「クーヤ、お前にはしてもらいたいことがある。この島では何時でも人の命が奪われている。
 私はそれを止めたかった……もう過去の話だが」
「ハクオロ、何を言っておる!?」
 ハクオロはその場を去りながら言葉を続ける。
「この愚行を止めるには優れたものが上に立たなければならない。民をまとめ、統率するものが必要なのだ。
 私が及ばずながらそれを行おうとしていたのだが……その役目をクーヤ、お前に引き受けてもらいたい」
「待て、ハクオロ! いくな!!」
「その役目には資質が必要だ。人の上に立つ事の出来る人物と言うのは限られている。
 クーヤ、お前はまだ未熟だが……その資質は十分にある」
「資質……だと?」
「そうだ。だからお前の力で、私が出来なかったことを……代わりに成し遂げてくれ」
 ハクオロはそう言い切って、耕一たちが消えた光の中に入っていった。
253夢現:04/06/17 18:57 ID:sUK6RdV1
「余に、平定を任せたと言うのか……?」
『そうだ。もうじき夢も覚める。目が覚めたらやることは……わかるな?』
 空からハクオロの声がする。
 クーヤは一呼吸おいて、
「……うむ。余を誰だと思っておる、アムルリネウルカ・クーヤであるぞ?」
 力強くそういった。その目には悲しみも、絶望もない。
 あるのは……決意。それだけだ。
『…ーヤ殿、クーヤ殿』
 遠くからベナウィの起こす声が聞こえてくる。
 もう、楽しい夢の世界は終わりだ。向かうは厳しい現の世界。
 ハクオロに任された思い、なんとしても自分が成し遂げる。クーヤはそう心に秘め、最後に自分に活を入れた。
「サクヤ、ゲンジマル、耕一、ハクオロ! 余がこのけしからぬ催しを取り潰す! だから……心配するでないぞ!!」
 光の中から、耕一たちの笑顔が見えた気がした。

 夢は……今、終わる。

【33番 クーヤ 所持品:ハクオロの鉄扇、サランラップ25m 短刀】
【決意を新たに目が覚める 時間は夜明け】
254すばる:04/06/17 20:29 ID:PvXJhLgF
幼き日の少女はヒーローを目指していた。
悪の組織を討つ正義のヒーロー、その勧善懲悪の物語に少女は魅了されていた。
大きくなり、ヒーローになれなかった少女はより多くの子供達にその魅力を伝えようと筆を手にし、
漫画を描くという道を選らんだ。
そこにあったのは全てヒーローヘの憧憬の念。
この狂気の島にあって己を見失わず、主催者という絶対悪に立ち向かう。
それはあまりに細く、険しい道。
だが、それを迷う事無く選んだのは彼女が積み重ねてきた『正義』への想い。
それは、彼女自身の強さに他ならない。

だが、テープから流れる声は彼女に明晰夢という形で伝えられた。

知ってしまった。
1000年の時を越えて今だ救われぬ、少女の物語を。
聞いてしまった。
この忌まわしきゲームに隠された、たった一つの救いの形を。
感じてしまった。
篁という男の切なる想いを。

絶対悪を倒すという彼女の想いは絶対悪の存在の否定という形で終わりを告げる。

そして目覚めの時は来た。
目覚ましの音は、爆音。
それに続くは、爆風と背中に走る激痛。

痛みに耐え、目を開く。
そこにあったのは凄惨な光景。
半身を失って倒れているウルトリィと、下腹部を失ったミコトの姿。
床に転がる黒焦げたキーホルダー。
そして、二人を飲みこもうとする炎。
255すばる:04/06/17 20:30 ID:PvXJhLgF

背中に走る激痛など忘れていた。
ただ体が動いていた。
転がるキーホルダーを、二人の亡骸を、纏められてた荷物を手に取り、抱え、
彼女は駆け抜ける。
外へ、と。


徐々に火の勢いを増すアビスボートを抜け出して、二人の亡骸を安置する。

手のひらの上にある黒焦げたキーホルダーを見て、

すばるという少女はそこで初めて、

泣いた。


【すばるは夢という形でテープの内容を覚えています】
【背中に軽傷。爆片が刺さっています】
【アビスボート引火】

【086 御影すばる ユズハの服 ハクオロ?の似顔絵 毛布2枚 黒焦げキーホルダー 食料5日分
トンファー グレネード1個(殺傷力無し スタン&チャフ効果) 小スケブ ペン うたわれキャラの似顔絵 あさひのサイン】
256名無しさんだよもん:04/06/17 21:00 ID:JsE0131l
>>254-255
の「すばる」は前の話の「理由」がNGのため、NGとなります
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/
参照。
257名無しさんだよもん:04/06/17 21:10 ID:Ztv+Dj2H
>>256は読み手によるNGです。
書き手によるNGではありません。

読み手を優先するならそれにしたがってください。

少なくともそれをよしとしない書き手が俺含めて二人はいるようですから、
書き手優先の人はNG宣言放置してください。



読み手の顔色を伺い続けるリレーは止めましょう。
ハカロワは書き手によるリレーです。
文句があるなら軌道修正する作品を出せばいいのです。
NGにするなら、せめてそれに代わる作品を出せばいいのです。

何も書かずに文句だけつけ、書き手のやる気を減衰させ、
作品を蔑ろにする荒らし読み手の顔色を伺う必要はありません。

俺も上の作品の影響を含めた上での、どこかのパートのリレーでも書くとします。
長文失礼。
258おとうさんとおかあさんとわたし:04/06/17 21:12 ID:JsE0131l
男の子と女の子が浜辺を歩いている。

わたしのとなりには、黒い、大きな男の人。

今、うちに居候している、国崎往人さん。
往人さんが来てから、夏休みは楽しくなった。
宿題を、いっしょにやった。
学校まで送っていってもらった。

違う、これは、夢だ。
だって、往人さんはここにいないもの。
夢でも、いい。
もう少しだけ、見ていたい。

往人さんと出会う前、飛べない烏の子供を拾った。
名前は「そら」
往人さんも、そらも、わたしのともだち。

わたしの誕生日には、往人さんはケーキを持ってきてくれた。
あれ? でも、どうして往人さんはわたしの誕生日を知ってたのかな?
おかあさんに聞いたのかな?
うーん、わかんない。 観鈴ちん、アホちんだから。

7月も終わりに差し掛かった頃、わたしの体の調子がおかしくなった。
足に力が入らなくて、上手く歩けない。
多分、あの夢のせいなんだと思う。
夢の中の悲しんでいる子を助けるためにも、わたしは頑張る。
観鈴ちん、強い子。
259名無しさんだよもん:04/06/17 21:13 ID:JsE0131l
? でも、私、ここでは普通に歩けていたよ?
いつの間に治ったんだろう? やっぱりわかんない。

そのうちに、往人さんもいなくなっちゃった。
ううん、そらが往人さんだったんだよね。
だから、観鈴ちんと往人さんは一緒。
でも、やっぱり寂しかった。
そしたら、おかあさんが帰ってきてくれた。
でも、わたしと一緒にいると、おかあさんにまで迷惑かけちゃう。
だから、今まで通りでいよう、って言った。

おかあさんは、迷惑かけるのが子供だ、って言った。
わたしとおかあさんは、本当の親子になったんだ、とも。
それから、髪を切ってもらった。
おかあさんは切り過ぎたっていってたけど、わたしはこれでいいと思う。
ぶぃっ

私の髪、今は長いよね?
じゃあ、あの髪型はなんなんだろう。
この夢、わからないことだらけ。

また、体が痛くなった。
おかあさんは平気みたい。
よかった。

男の人が来た。
おかあさんとなにか言い合っていた。
おかあさんはわたしが憶えていないと思っているかもしれないけど、
わたしはしっかり憶えている。
あの人は、わたしのおとうさん。
260名無しさんだよもん:04/06/17 21:13 ID:JsE0131l

おとうさんは、わたしを街の病院に入れようとしていたけど、
わたしはおかあさんを選んだ。
でも、わたし、おとうさんのこと嫌いじゃないよ。
おとうさんと、あかあさんと、わたし。
三人で仲良く暮らせたらいいなって思う。

嘘をついた。
本当はすごく痛いのに、おかあさんに嘘をついた。
わたし、悪い子。
でも、もう夢も終わったから。
羽の女の子も、救われたから。

だから。

もう、ゴールしてもいいよね?


ゴ――ルッ


おかあさんとおとうさんが話している。
おかあさんは今、幼稚園で働いているみたい。
二人は、仲直りできたのかな?
だったら、観鈴ちんも嬉しい。 にははっ
261おとうさんとおかあさんとわたし:04/06/17 21:14 ID:JsE0131l

……あれ?
わたし、死んじゃったの?
でも、今ここで夢をみているよ?

おかしいよ。
そらのいない記憶と、いる記憶があるの。
わからない。
わからないよ。



――ここは一体、どこなの?



「…ん、おかあさん、おとうさん…」


眩しさで目が覚めた。
覗き込んでいる人。
眩しくて見えない。

「どこか動かないところとか、あるかい?」

この声は。

――おとうさん?


【023 神尾観鈴 所持品無し 右耳の鼓膜が破れている 応急手当済み 目を覚ます】
262おどりのはて:04/06/17 21:58 ID:G67489HM
 風が吹き抜けて、巨木の枝を波のように揺らしてゆく。
 女ふたりの間を、落葉が流れてゆく。
 はかなく散るそれらが、この島における命の軽さを示しているようでもあった。

(――ふたりとも、止まった)
 この島の文明。それは、鉄とからくりの文明だ。小さな筒が、光の術法のように身体を撃ち抜く。体験済みである。
 すばるがもっていた鉄の塊などは、闇の術法のように、広範囲を攻撃するという。
(……が、あれは――)
 視線の先にいるふたりの傍らに、大きな鉄の塊があった。カルラは、気付いていないのかも知れない。
 だが、いままで傍観していたオボロには、少女の誘導が、まさにその鉄塊に向けて行なわれていたことが、ありありと見えた。
(兄者なら――どうする、かな)
 自問するが、意味はない。
 ハクオロが自分の子のために、カルラを見捨てるはずなど、あるわけがないからだ。

 答えは最初から、ひとつしかなかったのだ。
 だからオボロは、姿を隠すことをやめた。
 鞄を肩から落とし、短刀とナイフだけを構えると、地を蹴って駆け出した。
  
 
263おどりのはて:04/06/17 22:00 ID:G67489HM
 カルラは、詰めの段階に入ったことを確信した。
 大きな呼気を交え、大刀を正眼に戻す。
 それは普段の彼女にはない、堅苦しい姿勢であった。
 少女に対する、敬意のあらわれだった。
「―――胸を張りなさい。唯人の身で、このカルラとここまで渡り合ったのですから」
 微弱な月光に刀身を輝かせ、ゆっくりと大刀をおろしながら、左手に持ちかえた。

 ――それは彼女の、本気のしるし。
 やろうと思えば左右の腕を、ほとんど同じように使える。
 相手が右にいるから、左にいるから、などと言い訳のできる世界で生きてきたわけではない。
 すべての虚勢を捨てて、カルラは少女を葬ることに決めた。
 その決意のあらわれが、この左構えだった。

 構えに応じるように、目前の少女が動く。
 いや、正確には「動く意志の光」を、その目に見たにすぎない。

 だが、それで充分だった。
 カルラは必中の自信を持って、刀を振り上げる。
「さようなら――」
 さようなら、お嬢さん。
 そう語りながら、極めて無造作に、そして無慈悲に、大刀を振り上げた。
 
 
264おどりのはて:04/06/17 22:04 ID:G67489HM
 しのぶはいまや、ほとんど正面の女を見ていなかった。
 どこをみるともなく視線を浮かし、しかし実は、火炎放射器を凝視している。
(これが、わたしの――とっておき)
 ここが、数えきれぬほどの死の危険に我が身をさらしながら、ようやくたどり着いた、約束の地だった。

 火炎放射器の、砲身に傷がある。残念だが、燃料タンクと思われるところは無傷だった。
 これが燃料を噴射し、そこに点火するものならば、ライターやマッチは役に立たないだろう。
 しかし、噴射するための構造が破壊されており、火気をタンク内まで導いてくれるのなら、ライターやマッチでも使える。

 ……どちらだろうか。
(わかるはず、ない)
 ゆえに、しのぶにのこされた勝機は、銃で燃料タンクに打ち込むという一点だけに絞られていた。

 目の前の女を見る。
 女の目からは、溢れんばかりに殺意がみなぎっていた。
 きっと女は、自分がなにかを企んでいることくらいは、気づいているだろう。
 それを阻止するために、容赦のない一撃を放ってくることも、間違いない。

 それでも、やるしかなかった。
(透子、待っててね)
 しのぶが最後の決断を下した。
(――いま、そこに行くから――)

 覚悟を決めて、手を振り上げる。
「さようなら――」
 全てに終わりを告げるために、彼女は左手を振り上げた。
 
 
265おどりのはて:04/06/17 22:06 ID:G67489HM
『さようなら』
 女ふたり、声を揃えて別れを告げる。
 オボロには、ふたりが同時に放った、現世への決別のように聞こえた。
 間に合わない。オボロはそう思いながらも、ふたりの間に駆け込もうとしていた。

 ――しかし、やっぱり間に合わなかったのだ。

 その証拠に、どん、と嫌な音がして、目の前に何かが飛んできた。
 オボロはほとんど反射的に、それを短刀で貫いていた。
「――むっ!?」
 驚きとともに、獲物を注視する。
 短刀の先には、手があった。
 白く、細く、しなやかな手。
 だがそれは、いまなお握り締めている黒い機械と、手首を走る無数の傷のために、不気味なものにしか見えなかった。

(――なにが起こった!?)
 瞬時に動揺を抑えて状況を整理しようとしたオボロに向けて、カルラが冷たい視線をよこす。
 なにをしに来ましたの、邪魔ですわよ、とでも言うように。

 一方の少女は、オボロの存在に構っている余裕などないようだ。当たり前である。
(終わった――のか?)
 カルラの大刀が、振りあげられている。
 そして正面に立つ少女の手も、同じように振り上げられている――はずだった。

 はずだったが、手首から先が、すっぱりと無くなっていた。
 ――勝負は、これまでだった。
 
 
266おどりのはて:04/06/17 22:12 ID:G67489HM
 少女の切り札は、場に開こうとする瞬間に、刈り取られてしまっていた。
 カルラもそう考えたのだろう、最後のことばを突きつけた。
「……諦めはつきまして? 今度こそ――お別れですわ」
 振り上げた左腕を返し、あとは振り戻すだけで、少女の身体は両断されるだろう。
 その余裕が、カルラの口を滑らかにしていたのかもしれない。 

 だが、その余裕が、一瞬だけ反応を遅らせることになった。
 しのぶが、残る右手を振り上げたのだ。
 手には、銃。
 狙いは、火炎放射器。
「やめろ!!」
 オボロが叫び、飛び込む。
「死になさい!」
 カルラが大刀を振り戻す。
「――!!」
 そしてもの言わぬしのぶの、銃声が鳴り響いた。
 
 
 噴出す血飛沫が、虹のように弧を描いた。
 しのぶの首筋を掻き切ったナイフに追いつこうとするように、朧月に届かんばかりの勢いで舞い上がる。
「透子……」
 抜く手を狙われているのは、分かっていた。だからスタンガンを握り締め、左手を犠牲にした。
 そして隙を見つけ、残る右手で銃を撃った。

 やることはやった。もう、まわりは見えない。
 やるべきことを、やった。喉から下が文字通り、焼け付くように熱い。
「透子……いま、行くわ……」
 しのぶは虚空を見つめ、惨劇の全てを見届けることなく、自らの血の雨の中で崩れ落ちた。
 
 
267名無しさんだよもん:04/06/17 22:16 ID:BGopKpcn
>>258-261は、なんかむかつくのでNGになりました。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/
を読んでください。
268おどりのはて:04/06/17 22:18 ID:G67489HM
「あなた……」
 カルラが、呆然としながら呟いた。
 彼女の大刀が、しのぶとの間に駆け込んだオボロの腹部を、ほとんど半ばまで切断していたからだ。
「……へっ。誓ったばかりで、この始末だ――」
 オボロはそう言いながらも、笑顔すら浮かべてみせた。
 しかしすぐ、骨格の支えを保てずに、倒れた。

 地に伏す寸前で、カルラがその身体を抱きかかえる。
 見るとオボロの胸には、深々と穴が穿たれていた。胸も腹も、どちらの怪我も、致命傷だった。
「どうしてですの? どうして、こんな――」
「……気にするな。誓いを破った、罰みたいなもんだ」

 カルラは首を振る。信じられなかった。

「兄者なら、もっとうまくやる。だが俺には、これしかなかった。……馬鹿と呼んでくれて、いい」
「ええ。ほんとうに、馬鹿ですこと……こんなことになって、子は――御子は、どうなさるおつもりですの?」

「……なあに、心配ない」

 もう一度、改めて。オボロが、笑った。 

「せっかく、お前に、斬られてやったんだ」

 カルラの表情が、疑問のそれから、驚きに変わる。
 オボロの視線を追って、カルラのそれが木の幹へと向かう。

「だから、あれは――お前が、届けろ」

 それがオボロの、最期のことばになった。
 
 
269おどりのはて:04/06/17 22:20 ID:G67489HM
【039 榊しのぶ 死亡】
【016 オボロ 死亡】

【026 カルラ 自分の大刀 背中・肩を強打 右手首負傷、握力半分以下】

【火炎放射器 (砲身に損傷・燃料は6割) ナイフ 果物ナイフ 短刀 ブローニングM1910(残弾0) 缶切り(×3)
 12本綴りの紙マッチ(×3) 護身用スタンガン(としのぶの左手) ライター 白うさぎの絵皿】
【オボロとしのぶの死体とともに】

【ペットボトルのジュース】
【木の幹に置いた鞄の中】

【深夜】

【残り34人】
270名無しさんだよもん:04/06/17 22:22 ID:BGopKpcn
>>262-266,268-169は、「ぞんざいな死」のためNGになりました。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/536
を読んでください。
271CLANNAD:04/06/18 01:04 ID:nVzXEB76
「アタシ達自らで。観鈴さんと時紀クンを殺しませんか――?」

悪魔の誘いと、静かな狂気。
まるで、何かの勧誘のように言い切ったこの女。

考える。
もし、その誘いに乗ったとする。
今までのような方法で殺していくことになるだろう。
最後に二人が残る確率も、高くは無いが、夢物語では無いかもしれない。

もし、その誘いに乗らなかったとする。
観鈴と供に二人、残ることなど出来ない。
そんなことをしようものなら、観鈴は自ら命を絶つだろう。
人を殺すくらいなら、自分を殺す。
観鈴はそれが出来る、強い子だ。
だから、必然的にこのゲームを破壊する方向で動くことになる。
それが成る確率は……とても、とても、低い。

現実的に、観鈴と帰るのなら。
明日菜の誘いに乗るべきなのだろう。

272CLANNAD:04/06/18 01:05 ID:nVzXEB76

母親とはどんなものであったのだろうか。
後で生き返るから、子を殺すことを肯じるのが母親か。
子が、この女の手にかかるのを指を咥えて見ているのが母親か。

違う!!

母親とは、広く、大きく、何より暖かいものではないのか。
極限状態においても、身命を徹して子を守るものではないのか。
それが出来て、初めて観鈴の本当の親になれるのではないか。

例えば。
例えば敬介がこの誘いを持ちかけられたとする。
彼は絶対に乗らないだろう。
温厚な彼であっても目の前の女を殴るかもしれない。
彼は観鈴を守るためなら喜んで命を捧げるかもしれない。

深い思考の海で迷っている時点で、自分は敬介に劣っているのだ。


数十文の二の確率で娘殺しと観鈴は家に帰れる。
限りなく零に近い確率で母と父と娘は家に帰れる。

――今まで迷っていた自分を、恥じた。

自分の取る道は、初めから一つしか無かったのだ。
例えその道半ばで死んだとしても。
自分は母親として死ねる。
自分が死んでも、父親が、居る。

273CLANNAD:04/06/18 01:05 ID:nVzXEB76

「却下。 娘を殺して何が母親や。
 あんた、もう一度でもその台詞言ってみ。 ウチがこの場で絞め殺したるわ」

張り詰めた空気。

ここで、素手で、殺し合いが始まるのか。
大見得を切ったが、肩に怪我をしている自分は勝てるのか。

――負ける筈が、無い。
母親は、いつの時代でも最も強い生き物なのだ。


「そうですか。なら――」

来るか。

「なら、私達はもう敵同士ですね。 私は、提案に乗ってくれる他の人を探します。」
それだけ言い、洞窟へと走りだした。


――先に行かせてはならない。

それは、直感。
先に行かせたら、自分の武器諸共奪われ、6人は、殺される。
274CLANNAD:04/06/18 01:06 ID:nVzXEB76
「くッ」

走る。
運動神経は悪くない。
だが、肩の傷が痛み、上手く腕が振れない。
自分は28歳、明日菜は恐らく20前。
体力の差も、無いとは言えない。

なんだ。
このままみすみす殺させてしまうのか。
母親になりたいのに。
母親として帰りたいのに。

今まで自分は手を汚してきた。
観鈴と繋ぐ手は、血塗られたままなのか。
出来れば、綺麗に洗いたい。
少しでも、贖いたい。

だから、最後の手段を。


「ウチと、明日菜はなぁ―――ッ!!」

洞窟に向かって、叫ぶ。

「無抵抗の人間をッ 騙してッ 殺してたんやぁァ―――ッッ!!」


275CLANNAD:04/06/18 01:07 ID:nVzXEB76

【002 麻生明日菜 ケーキ、ショートソード、南部十四年式(残弾8)】
【022 神尾晴子 千枚通し、歪んだマイクロUZI(残弾20発) 怪我は応急手当済み】
【085 三井寺月代 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル×2、リュック(智代のCD 裁縫道具 医療用の針と糸 乾パン カップ麺 ホイッスル シェラフ 方位磁石 メタルマッチ 救急セット)】
【055 橘敬介 ピアノ線 大判ハンカチ 筋弛緩剤を注射器(3セット)メモと鉛筆、食料 腕に万国旗 手品用品 鉈 文化包丁 】
【031 木田時紀 鎌 朋也・宗一・芳野の写真】
【023 神尾観鈴 所持品なし 右耳の鼓膜が破れている 応急手当済み】
【004 アルルゥ 所持品なし】

【現在、明日菜と晴子、手荷物全て洞窟の中に置いてます】
【時間は深夜】
276名無しさんだよもん:04/06/18 03:20 ID:t/OdgEad
ハカロワをやり直したい奴はここに来な!
心機一転、熱く語ろうぜ!!

葉鍵ロワイヤルV
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087495743/
277名無しさんだよもん:04/06/18 08:43 ID:5cAN+kNR
>>271-275は、「意味のない長文」のためNGになりました。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/601
を読んでください。
278名無しさんだよもん:04/06/18 10:27 ID:4eXJybvE
>>277は無視してください

>>271-275は、人が死んでいないためNGになりました。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/601
を読んでください。
279名無しさんだよもん:04/06/18 10:41 ID:DQyhI/sO
>>277-278
お前ら同じNG荒らしとして、気持ちはわかる。
だが本当の良作にまでケチつけるのはどうかと思うぞ。
流石に作者に失礼だろ。
というわけで
>>277-278は無視して下さい。
280名無しさんだよもん:04/06/18 14:26 ID:lJrJCmy/
なんだこの糞スレ?
 朋也が語っていく。
 時には懐かしむように。時には手放してしまったことを後悔するように。
 智代のことを。

 ブルリと、月代が震えた。
(あの人だ……)
 いつか見た光景。恐ろしい殺人者の顔。白き獣を従えた憎きカタキの顔。
 知らず、手の中に小さな瓶を握りしめていた。
 青酸カリの小瓶。初音の命をいとも簡単に奪っていった小瓶。
(この人はその人と再会の約束を果たすと言った――)
 智代という女と二人、生き残るつもりなのか。
 こうやって、何食わぬ顔で近づいて、情報を集めて。そして用済みになったら――
 殺される。このままじゃ、殺される――
 思考停止。恐怖と、憎悪と、嫌悪で、心が満たされていく。淀んでいく。
(橘さんは気づいてないの?殺される。何とかしなきゃ、きっと私達殺されちゃうよ……)
 何とかしなければ。そうしなければ、きっと取り返しのつかないことになってしまう――。

 ギリッと時紀が歯を噛みしめた。それを悟られまいとしながら。
(あいつだ……)
 いつか見た光景。悲しい物言わぬ女の姿。白き獣と共に横たわる少女の顔。
 知らず、ポケットの中の写真を握りしめていた。
(こいつはその人と再会の約束を果たすと言った――)
 それはもう永久に叶うことのない悲しい現実。
(言わなければ、ならないのか?)
 そうして、ここに何が残るのだろうか。この写真が、何かを語ってくれるのか?
(怖いのか。傷つくのが。俺自身が告げたことで、傷ついた姿を見て、俺が傷つくのが)
 放送が流れれば、それはいずれ分かってしまうことだというのに。
 自分が情けなかった。なんて弱い。時紀は口を一、二度開け、そして何も言わぬ沈黙で通した。
 問題を、先送りにしているだけじゃ、何も解決しないのに。激しい自己嫌悪に苛まされながら。

 ギクリと敬介が身体を硬直させた。
(あの娘か……)
 いつか見た光景。簡単に人を撃ち抜いたあの女。白き獣を従えたゲームに乗った者。
(彼は知っているのか?何食わぬ顔で人を殺してのけているその女の真実を)
 言うべきか、黙っておくべきか、迷っていた。
 彼は、智代がそういう人間ではないと信じきって話をしている。
(今は――言うべきではないはずだ)
 チラリと横の月代を見る。その表情は見えない。
(気づいていないのか? それならば、その方がいいが)
 彼女には、そういった血生臭い思いを持ってはほしくない。
 触れずにすむならその方がいい。
(だが、彼にはいずれ告げなければならないのだろうな)
 敬介は天を仰いだ。これほど、残酷なことはない。
 この島はどこまで自分達を苦しめれば気が済むのだろうか。

 沈黙が降りた気まずい雰囲気を破ったのは、アルルゥの一言だった。
「おねーちゃん、起きた」
「観鈴が?」
 クイクイと肩口を引かれて、敬介が振り返る。
「ん……」
 何度か目をギュギュっと絞るようにしながら、観鈴の口から言葉が漏れる。
 敬介が気持ちをたわませながら、観鈴に歩み寄る。
「…ん、おかあさん、おとうさん…」
 雲を掴むように、手が宙を彷徨う。敬介がその手を握りしめて。
「どこか動かないところとか、あるかい?」
 観鈴が眩しそうに目を細める。
「ここは……? ……おとうさん?」
「……ああ、そうだ。おとうさんだ」
 ギュッと観鈴をその手に抱きしめる。
 観鈴は安心したようにされるがままに、肩に顎を乗せて。

「時紀さん?」
「ああ、ここにいるぞ」
 敬介の肩越しから見えたその姿に、観鈴が口を開く。
「にはは。戻って来てくれたんだ」
 疲れたように。それでも微笑んだ。
「これは夢の続き?」
「現実だよ。観鈴。これからは、僕が観鈴の傍にいるよ――」
 敬介が抱きしめた腕に少し力を込めた。
「痛い……」
「あ、すまん。……晴子もいるよ。晴子もお前の傍にいてくれる」
「お母さんも?」
 それはまるで夢の続きのようで。

 自分の体を見る。少し強く抱かれただけで痛んだ体が感じたのは、やっぱり本物の痛みだった。
「夢じゃないんだね」

 一筋、観鈴の目から涙が零れ落ちた。
 もう会えないと思っていた人達と、再び、こうして巡りあえたことに。

 そんな抱擁ももうおしまいだった。
「な、何だ!?」
 ダダダ……と、物凄い足音が洞窟の入り口から響いて。
 駆け寄ってきたのは麻生明日菜。
 突然の出来事。ただ事ならぬ明日菜の様子に辺りが色めき立つ。
「どうした! まさか敵襲!?」
「晴子は!?」

「――話は後!今は一刻を争うの!」
 朋也と時紀がそれぞれ鎌とビームサーベルを手に取る。
 が、明日菜はそれには目もくれずに脇へと走り、壁際の自らの荷物を手に取る。
 そして、続いて晴子の手荷物へと手が伸びる。
 晴子が愛用していた、マイクロUZIに手を伸ばし、取ろうとするが――それは果たされなかった。

 突如、洞窟へと駆け込んできた明日菜を追いかけるかのように。
 爆撃機の空襲のような大音量が、洞窟内に響いた。
 明日菜の動きが止まる。

「ウチと、明日菜はなぁ―――ッ!!」

 晴子の声。思いを振り絞るかのような声。

「無抵抗の人間をッ 騙してッ 殺してたんやぁァ―――ッッ!!」

 やァ――――やァ―…ヤァ……
 洞窟内で、山彦のようにその声が反響し、その場の人々の心の中に残滓となって漂いつづける。
「な……んだって……?」
 聞こえた言葉の意味は。時紀が呆然と口を開いた。
「……」
 半笑いのような表情か、哀しみの表情か。明日菜が、洞窟の入り口のへ向けて一歩二歩と後ずさる。
 グルリと視線を巡らせる。誰もが明日菜を見ていた。アルルゥでさえも。
「時紀……」
 救いを求めるように、明日菜が時紀を呼んだ。応えるべきだったのかもしれない。
 だが、時紀はその声に応えることができなかった。

「な……に?今度は、なんなの……よ……」
 月代がワナワナと腕を震わせながら、ボソリと呪詛のように呟く。
 その呟きは観鈴の声によってかき消された。
「お母さん?――おかあさんっ!」
 母親の声。その声に、観鈴は自身の精一杯の声を張りあげた。




   ――あたしはいつも奪われる側の人間だった――


 あの頃のあたしは、何も知らなくて。弱くて。
 壊れて崩れ去っていくだけの人形だった。
 みじめで、脆くて、情けなくて。そんなボロクズのような人間だった。

 求めても、願っても。本当に欲しいものは何一つ手に入らない。
 待っているだけのあたしには、何一つ舞い降りてはきてくれなかった。
 ただ、束の間だけの同情と憐れみをくれた人がいただけで。
 それらも、ほんのわずかの間で。
 身体はつながって、表面だけは満たされても、心は空虚なまんまだった。

 誰も、本当のあたしを救ってはくれない。

 かわいそう? 笑わせてくれるわ。
 同情なんていらない。優しさなんていらない。

 弱かった頃のあたしは、とても愚かで。
 そんなものにうわべだけの優しさなんか向けられたくない。
 そんなものに、価値なんてない。
 「いま」だけがあればいい。もう二度と、あの頃に戻りたくなんてない。
 もしあの頃に戻って、やり直せるとしたって――戻りたくなんてない。戻らなくていい。

 弱かった頃のあたしはいつも奪われる側だった。
 だから、強くなろうと決めた。奪う側に回ってやる、と。


 簡単だった。男なんて。優しい言葉をかけて。暖かく抱きしめて。狂おしい程キスをして。
 そして、気持ちいいセックスで幾度も奥まで繋がって昇りつめて。
 そうやって、あたしは少しずつ自分を満たしていく――はずだった。

 だけど、やっぱり心はどこか空虚なままだった。
 あたしが欲しかったのは愛情。自分だけに。自分の為だけにある愛情。
 それは世間では『愛情』とは呼べない偽りのものであったっていい。
 あたしにとっての愛情は、あたしだけが知っていればいい。
 与えられるだけの、慈愛のような愛情なんて、欲しくない。

 それだけは、奪えなかった。
 幾度奪おうと手を伸ばしても、スルリと指の間から零れ落ちていくカタチのないもの。


 木田時紀。
 彼があたしの運命の人だと思った。
 この世の何も信じられないような顔をして。
 強がって。この世界の何もかもに反発して。そんな子供のような男の子で。
 そして本当は、誰よりも優しい。

 この人なら。

 この人なら、あたしの望んだ愛情をあたしにくれる『お人形』になってくれると思った。
 してやろうと思った。

 そう。あたしは。
 『木田時紀』という入れ物の中にあるカタチのないものが欲しかったんだ。


 ――晴子さんと一緒に、自分の中にあるものを守る為、夢中で奪いつづけてきた。
 待ってるだけじゃ、奪われて崩れ去っていくだけ。
 それはあたしにとって、存在価値のないゴミでしかない。
 『木田時紀』と一緒に生きて帰る。それは結局単なる口実でしかなかった。
 ただ、奪われる側にはなりたくなかっただけ。

 晴子さんなら、分かってくれると思っていた。
 ……分かってないのはあたしの方だった。
 いや、分かってくれると思い込みたかったのかもしれない。
 結局、あの人は。あたしとはまったく違う人種の人間だった。
 満たされた愛情を持っていた人間。子を思う母親の強さ。
 あたしには与えられなかったモノ。

 でもまだ一つだけ同じところがある。いや、これは晴子さんだけじゃない。みんな一緒なのかもしれない。

 ――ウチと、明日菜はなぁ―――ッ!!
   無抵抗の人間をッ 騙してッ 殺してたんやぁァ―――ッッ!!――

 人は生きていれば。誰かから何かしら奪いとっていく。
 こんな形で、あたしから奪っていくなんて、思ってもいなかったけど。
 腹は立たない。奪いたければ奪えばいい。『木田時紀』だって、ただの入れ物だ。
 失っても、また手に入れればそれでいい。

 ここで、本当にお別れですね晴子さん。あなたのこと、嫌いじゃなかったんですよ。

 あたしはあたしで。奪って奪って、奪いとって生きていく。

 この島で。
【002 麻生明日菜 ケーキ、ショートソード、南部十四年式(残弾8)】
【022 神尾晴子 千枚通し、歪んだマイクロUZI(残弾20発) 怪我は応急手当済み】
【085 三井寺月代 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル×2、リュック(智代のCD 裁縫道具 医療用の針と糸 乾パン カップ麺 ホイッスル シェラフ 方位磁石 メタルマッチ 救急セット)】
【055 橘敬介 ピアノ線 大判ハンカチ 筋弛緩剤を注射器(3セット)メモと鉛筆、食料 腕に万国旗 手品用品 鉈 文化包丁 】
【031 木田時紀 鎌 朋也・宗一・芳野の写真】
【023 神尾観鈴 所持品なし 右耳の鼓膜が破れている 応急手当済み】
【004 アルルゥ 所持品なし】

【現在、晴子、手荷物全て洞窟の中に置いてます】
【時間は深夜。「CLANNAD」と同時間】
290「選択権」 ◆U2dbpJmxQs :04/06/18 18:15 ID:hUa4DA9O
 夜は更け、何度か死線をくぐり抜けたが、まだ芳野祐介の身体は疲弊しきってはいなかった。
 この時間帯での活動に備えてとっておいた仮眠が、今、生きている。
 高校に入ったかどうかも怪しい少女と共に得た、安らいだ時間だった。
 うそつきで、したたかで、甘えん坊で、泣き虫で、
 料理すらできないのに、そのくせ人を殺すことはできた、アンバランスな少女。
 自分と同じように、誰かの元に帰るために戦っていた少女。
 同じベッドの上でくっついてきた背中は、年相応に小さかったことを思い出す。
 この戦いに勝ち抜いた暁に与えられる、願い。
 それを彼女のために使ってもいいと考えられる程度には、思い入れはできていた。
 さて、岡崎に知られたらどう言われることか――と、今は二人はそういうのんびりとした関係ではなかった。
 今も必死に自分のことを追っているのだろうか。それとも、すでにのたれ死んだか。
 まぁ、いい。
 やるべき事はたった一つ。この島に残っている人間全てを殺せばいい。岡崎が生きているのなら、岡崎も。
 問題は、アサルトライフルの弾丸が残り少ないこと。
 三十発というとそこそこ使えそうだが、三点バーストなら十斉射。
 残り人数、全て自分が殺すわけではないにせよ、命中率を考えれば、十分とは言えない。
 他にも武器はあるが、ナイフにスパナにブラックジャックと近接武器ばかりでは、心もとない。
 なによりも、信頼できる相棒がいない。
 と言って、今さら誰かと手を組むという気にもなれない。
 第一、相棒と呼べるのはあの小柄な少女、上月澪だけだ。
 そう考えると、あの少女との邂逅そのものが、奇跡の産物だったようにも思えてくる。
 僅かに寂寥感を憶えながら、祐介は夜の森を彷徨った。
291「選択権」 ◆U2dbpJmxQs :04/06/18 18:17 ID:hUa4DA9O
 電気というものに慣れている現代人には、黒一色の闇というものはなかなか辛い。
 月明かり程度は、深い森の中では幾重もの葉に遮られ、容易く吸い込まれる。
 このような闇の中で動くのは得策ではないかもしれないが、それでは何のために昼間休んだのか――と、
 その時、ようやく森が途切れた。
 闇の中にいた時間は、実はほんの十分程度だったが、さすがの祐介も安堵を覚えた。
 だが、なお警戒を緩めず、木の影から様子を窺う。
 そこは僅かに他の土地よりも高く、辺りを見渡すことができた。
 まず真っ先に目に止まったのは、民家。四軒が固まって並んでいる。
 そしてそのうち一軒の庭に、動く三つの影があった。
 電気はついていない。
 が、今まで森の中で闇に包まれていた彼にとっては、月明かりですら、眩く思えるほどだ。
 目を凝らしてみれば、大体の様相は分かる。
 一人は男、二人は女。それぞれスコップを手に、庭になにかを埋めている様子だ。
『死体でも埋めているのか? 悠長なことだ……ん? あの女……っ』
 彼女の名は湯浅皐月。二度に渡って祐介の手から逃れた女。
 恨みとか怒りとかは感じないが、僅かに苛立ちは憶える。
『よくよく縁がある……だが、今度は逃がさん』
 3度目の正直と、祐介はM16A2を構えた。
 距離は遠い。ただ届くだけなら十分届く距離だろうが、自分の腕では必中にはほど遠い。
 向こうは3人。全部当たればちょうどいいなと、三点バーストを選択する。
 さすがにばらけて一発ずつは無理だろうが、運が良ければ、2人くらいには当たるかもしれない。
『さて、誰を殺そうか』
 選ぶ権利は彼にあった。
 あのツインテールの女はいいかげん鬱陶しいと思う。
 だが、今はあの白い獣はおらず、怪我をしている以上、優先度は低い。
 もう一人の女は、動きがぎこちない。これも後回しでいいだろう。
 やはり、まず殺すべきはあの長髪の男。後はゆっくりと料理すればすむことだ。
 そう彼の理性は判断し、狙いを付ける。
292「選択権」 ◆U2dbpJmxQs :04/06/18 18:20 ID:hUa4DA9O
 彼が妥協したのには、もう一つ理由があった。
 風が左から右に吹いている。
 この程度の風で銃弾がどれほどの影響を受けるかは知らないが、
 左に立つ男から狙いが反れ、右にいるあの女に当たる可能性もある。
 そういう位置関係だった。
 ――が、まだ撃てない。
 スコップで穴を埋める作業は、上半身の動きが激しすぎる。
 頭は無理でも、せめて胴体には当てたい。まず、動きを止めるまで待つことだ。
 その機会は、ほどなく訪れた。
 彼女らは埋葬作業を追え、手を合わせた。申し合わせたように、ぴたりと動きが止まる。
 これ以上ない、絶好の機会。
 ためらうことなく、芳野祐介は引き金を引いた。

【098 芳野祐介 所持品:M16A2アサルトライフル残弾27、イーグルナイフ、手製ブラックジャック×2、スパナ、
 救急箱(包帯はアイシングに使用)、煙草(残り3本)とライター、食料2日分、糸、テープ 】
【28番 川名みさき 所持品:白い杖、錆び付いたスコップ】
【89番 光岡悟 所持品:日本刀、デザートイーグル(残弾3)、錆び付いたスコップ】
【95番 湯浅皐月 状態:左腕使用不可能 所持品:セーラー服、風子のナイフ、錆び付いたスコップ】
【家の中に未開封の缶詰×6】
【宙に3発の弾丸】
【光岡の物資探索の成果は次の書き手に委任します】
【時刻:二日目午後11時15分頃】
293名無しさんだよもん:04/06/18 21:01 ID:lKpq0nLW
>>281-289は、作者のひとりよがりな優しさが鼻につくのでNGになりました。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/613-614
を読んでください。
294名無しさんだよもん:04/06/18 21:13 ID:a3wf2nPG
>>293は荒らしです。
それには構わないでください。
295名無しさんだよもん:04/06/18 23:59 ID:4eXJybvE
だんだんNGの理由がこってきたなw
296名無しさんだよもん:04/06/18 23:59 ID:a7Auxbpc
>>290-292
は正直言ってむかつくのでNGです。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/613-614
を読んでください。
297名無しさんだよもん:04/06/19 00:13 ID:uZ0Qmo1Z
>>296は荒らしです。
それには構わないでください。
298BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE:04/06/19 00:31 ID:pgBksXhh
 放たれた三つの銃弾。
 男が倒れる光景を確かに芳野はその目で捉えていた。
 残りのうちの一人――皐月の方だ――は、倒れた男を支え、
 もう一人はその場に立ち尽くしている。
(一人か、まあいい)
 ライフルを構え直し、残りの二人を始末するために、その場を離れようとする。
 そこに、一音の銃声が轟いた。
 自分のものではない。誰かが自分を狙ったもの。
 体に僅かな衝撃が走る。
 その原因を探る芳野の目に飛び込んできたもの、それは、
(くそっ! なんてことだ!)
 手に持ったライフル銃だった。銃身が砕け、潰れている。
 完全に塞がれていて、銃として機能しないのは明らかだった。
 あの男が、いや、あの中の誰かが撃ったのだろうか。
 たった一発の銃声。こうも正確に反応できるとは。
(ふざけた真似をする……!)
 ただの鈍器と成り下がったそれを握り締め、芳野は高台を降りる。
 三人を始末するために。
 ライフルを壊され、少なからずの興奮を覚えながら。
299BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE:04/06/19 00:32 ID:pgBksXhh

「光岡さんっ、光岡さんっ!」
 皐月よりも遅く状況を理解したみさきの声が響く。
 みさきの抱きかかえる光岡の体からは血液と体温が急速に失われていった。
 胸部と腹部に二つ。素人目にも、とても助かる見込みはなさそうだと、皐月は頭の冷静な部分で考えた。
 人の死を見慣れてしまったこと、目の前に自分よりも混乱している人間がいること。
 この二つで、皐月は今の状況を冷静に分析する理性を残していた。
 もっとも、そんな自分に嫌悪感があるのは確かだけれど。
「……がはっ」
 吐かれた血がみさきの手を汚す。
「俺としたことが、情けない……油断したつもりはなかったのだが」
「喋っちゃだめだよ!」
 だめではない。自分の命が助からないことを、光岡はよく知っていた。
 最期まで、やるべきことはしないといけない。
「湯銭……敵はどうした?」
「……今は見えない。どこかへ行ったかもしれないし」
「違うな。奴はここに来るぞ……。残ったお前達を殺すために。
 湯銭、今すぐ、皆の荷物をまとめて、ここを離れろ」
 一発だけ撃ったデザートイーグルを、皐月に握らせる。
「光岡さんを置いていけるわけないよっ!」
 光の映さない瞳から涙が溢れ出す。頬を伝って、光岡の顔に、ぽろぽろと零れ落ちる。
 みさきの手を握った。強く、強く。
300BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE:04/06/19 00:33 ID:pgBksXhh
「……すまない、みさき……俺はもうここまでのようだ。
 お前と一緒にいられてよかった。お前を守ることで、俺は生かされていた」
 今ほど何かを願ったことはなかった。
 この目に光を宿してくださいと、カミサマに強く願ったことは、
 今まで一度もなかった。
 この人の顔を、姿を、この目に焼き付けていたいのに、
 そんなささやかな願いさえ、叶えてもらえなかった。
「お前は俺の希望だった。俺はもう、お前を守ることはできないが」
 時間がないのはわかっていたけれど、せめて、最後に、あと一息だけ、
「……お前には、生きていて欲しい」
 それっきり最期、もう口を開くことはなく、
 また一つ、命の灯が消えた。

 芳野は走る。
 あと少しで、あの家に。
301BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE:04/06/19 00:34 ID:pgBksXhh

 また逃げるのかと誰かが囁いた。
 自分の中の誰かが囁いていた。
 智代を置き去りにし、沙耶を置き去りにし、今度は光岡を置き去りにするのかと。
 光岡の願いは叶えてやりたかった。
 みさきを連れて逃げるべきだとわかっていた。
 だけど、自分は、もう、これ以上。
 背を向けてはいたくないから。
「みさき、あたしは、ここで友達を沢山殺された。
 殺人者に背を向け続けてきたけど、もう我慢できない。
 だから、ごめん。あたしが時間を稼ぐから、みさき一人で、少しでも遠くへ逃げて」
 目の見えない少女を見捨てるようなことを言う。
 自分はなんて冷酷で、残酷なんだと思う。
 それでも譲れない一線があるから。
 だから皐月は告げていた。
302BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE:04/06/19 00:35 ID:pgBksXhh

 光岡は言った。希望だったと言った。
 自分にとっても彼は希望だったのだ。彼と出会えなかったら、自分はとうに死んでいたと思う。
 光岡と一緒にいて、本当に楽しかったのだ。いつ壊れるかわからなかったけれど、大切な時間だったのだ。
 音を立てて壊れたのはつい先程。光岡の名前を呼ぶのが精一杯で、ありがとうの一言すら伝えていない。
 光岡は言った、生きて欲しいと言った。
 それが光岡の願いなら、臆病なわたしでも、彼の願いを叶えてあげたかった。
 皐月が告げた。逃げろと、そう言った。
 彼女の背負っているものが何かはわからないけれど、きっと逃げ出すわけにはいかない理由があるのだ。
 わたしはしなければならない。光が見えなくても、暗闇に飛び込んでいかないといけない。
 勇気を胸に。誓いを胸に。決意を胸に。
 覚悟を決めた。決めたんだ。
303BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE:04/06/19 00:36 ID:pgBksXhh

 再会は闇の中。
 正々堂々と家に侵入してきたその男は、とてもよく知った顔だった。
「またあなたなの……」
「奇遇だな。またお前か」
 芳野は皐月の様子を観察する。
 満身創痍と言っても過言ではない。こんな小娘に遅れを取るはずがない。
 少し前の自分ならそう思っていたのだろうけど、今は違う。
 少しの気の緩みが、いくつもの失敗を生んだ。
 この女は二度も、生き延びているのだ。
 ボロボロの身体だけれど、右手に握る日本刀と、両の瞳だけが、ぎらぎらと映えていた。
304BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE:04/06/19 00:36 ID:pgBksXhh

「智代は、どうしたの……放送には呼ばれなかったようだけど」
 言いたいことは沢山あった。今にも飛び掛って、斬りかかりたかった。
 だけどいけない。こういう場で冷静さを失ったら負けだ。
 運動能力ではあちらに分がある。返り討ちにされる危険性は高い。
 相手の裏をかけ。僅かな隙を見逃すな。
 そしてあたしは、時間を稼がないといけない。
「お前の想像してる通りだと思うぞ。最期の最期まで、手強い奴だった」
 ああ、やっぱり、智代は死んでしまったんだと。
 覚悟はあったけれど、こたえる事実だ。
 だからこそ、
「そう、じゃあ、あたしはあんたを殺してやる。この場で絶対殺してやる」
 芳野の手には、アサルトライフル。
 その銃身は途中で砕けている。光岡が撃った弾丸が命中したのか。
 見てわからないでもないが、そんな風に持っていたら、撃てないのがばればれだ。
 はったりでも銃口をつきつけてみれば、あたしも迷っただろうに。
305BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE:04/06/19 00:37 ID:pgBksXhh

「俺からも質問させてもらおうか。もう一人女がいたはずだ。どこに行った?」
「あの子は逃げたよ。あたしが逃がした。
 殺し合いなんかできそうにない子だし、あんたが今殺した男の人の、最後の願いだったから。
 それに」
 ニヤと笑う。瞳に狂気すら湛えて。
「あたし達の殺し合いに、部外者を入れるなんて、つまらないでしょう?」
 一瞬。
 一瞬だけ、目の前の少女の雰囲気に完全に呑まれていた。
 こいつは普通じゃない。
 この状況を楽しんでいる、そして、こちらの様子を観察し隙を見つけようとする狩猟者の目。
 昏い狂気と深い理性を孕んだ瞳。
 本当に一人で、ここにこうして立っている。
 芳野の頭の片隅に「一旦引く」という選択肢が生まれる。
 勢いに任せてやってきたこの場には、復讐に全てを捧げたハンターがいた。
 負けるとは思っていない。ただ、無事で済む気がしない。戦いはこれからも続くのだ。

「もう一つ質問」
 一瞬の隙はあった。だが、まだ足りなかった。今こうしていることがその証明。
 まだ足りない。まだ足りない。まだ足りない。
 もしかしたらと思ったことを、ぶつけてみる。
「ミオは、どうしたの?」
 芳野の瞳が揺れる、口が動く。
「……死んだよ。殺された」

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
306BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE:04/06/19 00:38 ID:pgBksXhh

 時が止まった。
 皐月の時が、
 芳野の時が、
 そして――

 皐月の質問を予想してなかったわけではない。
 そんな質問をされた所で動揺するはずがなかった。
 動揺した理由はただ一つ。
 この場に、唐突に、もう一つの気配が生まれたから。
 左を向く。押入れの襖の奥に。誰かがいた。

 光岡は言った。生きてくれと言った。
 生き残ってやる。絶対に主催者達を出し抜いて、一人でも多くの人が助かる形で生き延びてやる。
 そのために、この手を汚すことを決意した。
 作戦は単純だった。
 皐月が殺人者の気を引く。
 自分は襖の奥で気配を殺し、殺人者に向けて、デザートイーグルの引き金を引く。
 たったそれだけ。
 すぐに戦闘になってしまったら、後は皐月に託すしかなかったけれど、幸運なことにそうならなかった。
 会話も充分。聞こえてくる声で、殺人者のいる位置が見て取れるようだった。
 目が見えない分は、他の器官でカバーする。
 皐月の時間稼ぎは、ほぼ完璧だった。
 最後の芳野の台詞まで、全てが上手く運んでいた。
「……死んだよ。殺された」
 この一言が崩壊の音。動揺したのはみさきだった。
307BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE:04/06/19 00:39 ID:pgBksXhh

 芳野はもう一つの気配を察知した。動揺したのはそのせいだ。
 皐月の演技のせいで――ある意味演技ではないのだけれど――完全に一対一だと誤解した。
 今度こそ隙が生まれる。
 しかし皐月は動けない。みさきが次の瞬間に撃つかもしれないから、動けない。
「くっ!」
 芳野は後ろに飛んだ、直後、その空間を銃弾が飛ぶ。
 引くべきだ――
 咄嗟に思った。
 皐月が生んだ「引く」という選択肢を、躊躇うことなく選んだ。
 澪の話で思い出す。もう少し慎重に事を運べば、彼女は死なずにすんだかもしれないのだ。
 もう二度と失敗は許されない。銃を壊され、怒りのままにここに来て、不意打ちを受けて、
 潮時だと思った。
 そう。闘いはここで終わらないのだから。
 決めたら後は早く、全力でその場から走り去った。

「失敗しちゃったね……ごめん」
「ううん、みさきのせいじゃない。あたしが上手く会話を選べなかったから」
「皐月ちゃんのせいじゃないよ……じゃあ、運が悪かったんだね」
 澪の死。二人に大きな影を落としていた。
 友人を失ったみさき。
 復讐する相手を一人失った皐月。
 もう一人には逃げられて。
 今度は自分が、置き去りにされてしまったのだ。
308BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE:04/06/19 00:40 ID:pgBksXhh
【098 芳野祐介 所持品:壊れたM16A2アサルトライフル、残弾27、イーグルナイフ、手製ブラックジャック×2、スパナ、救急箱(包帯はアイシングに使用)、煙草(残り3本)とライター、食料2日分、糸、テープ 】

【28番 川名みさき 所持品:白い杖、デザートイーグル(残弾1)、錆び付いたスコップ】
【95番 湯浅皐月 状態:左腕使用不可能 所持品:セーラー服、風子のナイフ、日本刀、錆び付いたスコップ】
【家の中に未開封の缶詰×6】

【光岡悟 死亡】
309名無しさんだよもん:04/06/19 00:40 ID:mVV2tAWR
>>298-308
は長すぎてスレッドを不要に占拠したと認められるのでNGです。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/638
を読んでください。
310名無しさんだよもん:04/06/19 01:18 ID:qZLZdf+d
>>309はNGです。
経緯は(r
311 ◆U2dbpJmxQs :04/06/19 02:13 ID:PtkmmecC
>>290-292は、時間軸に無理がありましたので、NGとします。
混乱させて申し訳ありませんでした。
312名無しさんだよもん:04/06/19 02:15 ID:pgBksXhh
>>298-308>>311に伴い連鎖NGです。
いろいろと申し訳ありませんでした。
313 ◆U2dbpJmxQs :04/06/19 02:15 ID:PtkmmecC
忘れてました。
>>298-308「BRAVE/DIVE/LEAVE/ALIVE」も、「選択権」の続きですので、NGとなります。
せっかく書いていただいたのに、申し訳ありませんでした。
314名無しさんだよもん:04/06/19 13:20 ID:plc0Dhk1
>>1-313は、状況設定に無理がありましたので、NGとします。
せっかく書いていただいたのに、申し訳ありませんでした。
315名無しさんだよもん:04/06/19 15:03 ID:s+JdR6Nv
この企画はなんかむかついてきたのでNGです。
作者の方々の次回作にご期待ください。
316名無しさんだよもん:04/06/19 18:45 ID:d/NX/A7k
>>315の人生はNGです。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087497870/
を読んでください。
317名無しさんだよもん:04/06/19 21:11 ID:Wnu2goIT
>309-316
ハゲワラ
318名無しさんだよもん:04/06/20 00:15 ID:Tp8JzJ9z
>>192-194「理由」は正式にNGとなりました。
ここからの派生>>254-255「すばる」も正式に連鎖NGとなります。

経緯については感想スレ754までの流れをお読みください。
大まかな纏めついては感想スレ718以降をご覧下さい。

【ノア】実況★葉鍵ロワイヤルII 11【ガチ】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/l50
319名無しさんだよもん:04/06/20 01:46 ID:zJo63Zgz
>>318は荒らしです。放置してください。
>>192-194「理由」及び>>254-255「すばる」は何の問題もなく通しです。
320夢幻泡影:04/06/20 08:44 ID:wM9ybbzN
 ホール地下最深部。二つの足音が静かな廊下にこだまする。
 突き当たり。飾り気のない大きな扉の前で醍醐が立ち止まる。
「失礼します」
 従順な犬のような声色でそう言って、答えを待つ。
 横に並ぶようにしたリサが、一度醍醐の方をチラリと見やってから、その扉へと視線を移す。
 その向こうに広がるであろう光景を思い浮かべ、瞳に焼きつけるように。
 触れればそれだけで人が斬れそうな鋭い眼光。
「入れ」
 扉の向こうから、その部屋の主――篁の返答が返ってくる。
 まるで地獄の底から響いてくるかのような、そんな深みを湛えた声色で。

 醍醐が部屋へと入る。続いて、一歩遅れるようにリサ。
 赤い絨毯が敷きつめられた部屋。その真中で、篁はただ一人佇んでいた。
 まず一目醍醐を見、そしてリサへとそれを流す。
「ご苦労だった。下がってよい」
「……!しかし」
 即答。醍醐にとって、予想外の篁の反応だった。
「よい」
「……御意」
 何か言いたげに表情を歪ませながら、醍醐がうやうやしく頭を垂れる。
「ですが、あと一つだけ、主君に申し立てたいことがあります」
 切実なる狂犬の本能を剥き出しにして醍醐が言葉を続けようとする。が。
「……下がれ」
「総帥!」
「下がれと言っている」
「はっ……」
 唇を千切らんとばかりに噛みしめながら、醍醐がそれだけをなんとか口にして、部屋を退出する。
 残されたリサを呪い殺さんとばかりに睨みつけながら。
321夢幻泡影:04/06/20 08:45 ID:wM9ybbzN

 醍醐の退出後。そのやり取りを黙って見つめていたリサに篁が労いの言葉をかける。
「任務ご苦労。あれには何も伝えておらんからな」
 クククと嫌らしい笑みを浮かべて、リサへと一歩進み出る。
「……。いえ。そのようなお言葉。――まだ任務の途中ですから」
「クク。途中、か」

「任務の首尾はどうかね?」
「……」
「まだあまり成果はあがってはおらんようだがね。なかなか難航しているように見える」
「……。このような話、聞いておりませんが」
「このような話――とは? このゲームのことかね。
 先程の余興を何故もう知っているということかね。――それとも」
 篁が愉悦の表情を浮かべる。

「――私と醍醐の話、どこまで聞いておりましたか?
 盗聴器の類?監視カメラ?見たところそんな類のものがあそこに隠されているとは思えませんでしたが」
「確かに、察しの通り。少なくともあのホール周りの近場にそのような類のものはない。興がそげる」
「……戯れ好きの総帥らしいですね」
「ククク。どうしたヴィクセン。何を恐れる。何を躊躇っている。言いたいことがあれば遠慮せず言ってくれるといい」
「……フェイク?」
「真実かどうかは、君の方がよく知っているのではないかね?」
「……」
「ならば何故、とでも言いたげな表情だな」
「例え盗聴されていようと、私は醍醐に任務の内容のことなど漏らしてはいない。それに――」
「私が知りえるはずがないか。君が君自身に課した任務のことなど」
322夢幻泡影:04/06/20 08:46 ID:wM9ybbzN

 ぱちりと、爪を噛む音が鳴った。
「身体に設置されているという爆弾は本物?」
「本物ではあるが、あくまで参加者達への抑止効果でしかない。反抗される、それもまた一興。
 人にはいろんな生き方があっていいと思わんかね。それを爆弾で無闇に消し飛ばすのは無粋だよ。
 いざとなれば、使うかもしれんがね」
「そう?私には別の理由がある気がしてならないけれど」
 リサの篁への接し方が、主従関係から敵意のあるそれへと変わる。
 お遊びはここまで。

「篁。もう一度聞くわ。私と醍醐の話。いや、その裏を。何故知ることができたの?」
「小さなさざなみにしかすぎない人間でも、やり方次第では大いなる波――世界の全てを知ることが可能ということだ。
 ――単純に分かり易く言うなれば。これも私に『予想』できうる出来事の範疇だった」
「予想?それはとてもあやふやなものよ」
「だが、現にこうして言い当てられている事実は変わるまい」
「違っていたら?」
「君が違うというなら違うのだろうな。――違うのかね?」
「……全部お見通しってワケね」

「……。分かっていて何故、私をここに通したのかしら?大した余裕ね。
 最も、知っていても爆弾を作動させなかった事実で、ある程度はこちらも予想つくけれど」
「殺せない、ということかね?」
「そうね。あなたがただの余興でこんなことをするとは思えない。――最初からね。
 大量に殺すのが目的であれば、ただ殺す。そしてそれが出来るだけの権力を持った人間。
 そうしないのは。こんな回りくどいことをするのには。どんな理由があるのかしら?」
「殺せない、というのは語弊だよ。先にも言ったようなことだ。
 人には無数の生き方、生き様がある。それを我々が力で捻じ曲げるのは好ましくはない」
 篁は、話題の焦点を切り替えて答えた。
「こんな島に無理矢理押しこんでおいて。好ましくないで済ませるつもり?」
「我々は舞台を用意しただけよ。選び取ったのは君達。殺すも脱出を試みるも何もしないのも。
 すべて君達の意思ではないかね?」
323夢幻泡影:04/06/20 08:46 ID:wM9ybbzN

「面白いものを見せようか」
 篁がパチンと指を鳴らす。
「……!」
 脇に在ったモニターに映し出されたのは。
「クニヒロ……」
「健気なことだ。これも想いの力か。……友情か。それとも愛情か。そのどれでもない絆かね?
 麗しいな。――反吐が出るほどにね。我が『予想』は外れたよ。彼は充分強くなった」
「まだ痛めつけ足りなかったかしら?……馬鹿な人」

 モニターの向こうには。剣を手にホールの中を駆け抜ける邦博の姿が在った。
 剣から二度、光の矢が飛び出し、辺りの敵をなぎ倒す。

「今はまだ殺すな、と厳命している。ラストリゾートもまだ復旧しない。お陰で部下達は防戦一方だよ。
 先程、殺せないのは語弊だと私は言ったな。――もういいだろう。君達二人は充分楽しませてくれた。
 たとえここで死しても、充分に光り輝ける生き様だったと言える」
「……」
「それに、いざとなれば一人スペアもいる。……そうなった方がアレは喜ぶことだろう」
 醍醐が退出していった扉の方に顔を向け、笑う篁。その醜悪さにリサが顔を歪める。

「とはいえヴィクセン。何かと縁のある君をただ殺すには忍びない。
 そして、君を助けようと飛び込んできた彼に免じて。チャンスを与えようか。
 我に服従しゲームに戻れ。先程の嘘を真に変えよ。そうすればこの場は見逃そう。無論彼もな」
「……」
「答えを聞くまで。あえて『予想』はしないことにしよう」

「選択肢は三つ。
 彼を救い、我に服従し、ゲームに乗るか。
 彼を見捨てて剣を取り、ここで犬死するか。
 お得意の蝙蝠的な発言をして、犬死するか。
 さあ、選び取りたまえ」
324夢幻泡影:04/06/20 08:47 ID:wM9ybbzN

 邦博がホール内を駆ける。一つの可能性を信じて。
 中にいた獲物達は、思ってたよりも歯ごたえがない。
 目には見えぬ蛇の牙で、そして目に見える確かな形を持った光の牙で獲物達を狩りとっていく。
 蜘蛛の子を散らすように、一流の傭兵達が後退していく。
 ここにきて、邦博はまるで無傷だった。この分なら、篁がいる奥まで楽に進めそうだ。

 だが、奥まで進む。その必要はなかったようだ。
「おまえ……」
「またすぐに会ったわね。クニヒロ」
 正面から臆すこともなく近づいてくるのはリサ=ヴィクセン。
 邦博の足が止まる。

「……俺はさぞかし、からかいがいのある玩具だったんだろうなぁ?
 お前『ら』にとってはよ。傑作だ」

 リサと、そして、リサの後ろに立っていた人物を見て、邦博が唾を吐いた。
 ここに来たこと自体が、まるで道化。
「そうね。とてもからかいがいがあったわね。でも、あなたのお陰で楽しかったのは本当――。
 ここから去りなさい。できないというなら、力づくでも」
 リサがスラリと草薙の剣を向ける。それは暗闇の中でも鈍い光を帯びて邦博の目を刺した。
「俺はお前らを許さねぇ。絶対にぶっ殺す。最後には必ず俺の牙で噛み砕いてやる」
 それだけ言って対峙もそこそこに、フィルスソードを振るう。

 カイーンと高い音が鳴り響いて、次の瞬間には――邦博の身体が後方へと弾き飛ばされていた。
 邦博の手から零れた剣がカラカラと地を滑り、壁にぶち当たって止まった。
「……いつの世も、騙される方が悪いのよ。
 あなたがどうしても私達を殺したいのなら、もっと賢くなりなさい。もっと強くなりなさい。
 これが私からの最後のレクチャー。今のあなたじゃ、何もかもが力不足。ただのboyね」
 リサがそれだけ言って、邦博の鳩尾に渾身の蹴りを叩き込む。
「この屈辱、忘れねぇぞ。ちくしょうっ――!」
 邦博の意識が闇へと沈んでいく。
325夢幻泡影:04/06/20 08:48 ID:wM9ybbzN

「その男を、外へと運び出しなさい」
 リサが名も知らぬ一人の傭兵に命令する。
 男は返事もそこそこに邦博を肩に担いで入り口へと歩いていく。
「――待ちなさい。これも、忘れないで」
 床に落ちていたフィルスソードを抜き身のまま放る。
 わたわたと手に持て余しながら、それをなんとか受け取ると、今度こそ男はその場から消えていく。

「フフ、これでいいんでしょう?」
 自嘲気味に微笑んで、リサが後方で控えていた男にそう呟く。
「所詮は女というわけか。我を殺すことより、我に従い目先の一人の男の命を取るとはな」
 そう言いながらも、篁は満足そうに笑った。
「さて。まずは、手始めにすることがあるのではないかね?」
「そうね。私は地獄の雌ギツネ、リサ=ヴィクセン。相手を手玉に取って騙し続ける。
 ――騙される方が、愚かなのよ」



 ポタリ……ポタリと、床に血の染みが広がっていく。
 リサの草薙の剣が、篁の首元スレスレで止まっていた。
「蝙蝠は――辛い」
 篁の身体とすれ違うようにして、リサの身体が前方へと沈んでいく。

 篁は、真っ赤に染まったその自身の手を一度見て。同じように染まった短刀を地面に投げ捨てると、
 未だ汚れていない草薙の剣をリサの手の中から拾い上げた。
 最後にリサの亡骸を一瞥して。
「君の選び取った道、確かに見せてもらったよ。マリア」
326夢幻泡影:04/06/20 08:48 ID:wM9ybbzN
【001 浅見邦博 身体能力増強剤(効果30秒 激しいリバウンド 2回使うと死ぬらしい)パソコン、
 レーダー(25mまで) フィルスソード(光の矢制限7回、シャインクルス制限残り3回)】
【篁 草薙の剣】
【醍醐 特殊警棒】
【邦博、ホールの外で気絶中】
【時刻は深夜】

【100 リサ=ヴィクセン 死亡】
【残り 33人】
327 ◆W534Ndsswg :04/06/20 10:28 ID:8N5Nw5cR
>>320-326は話を理解できる人が全くいないため、正式にNGとなりました。

経緯については
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/764-765
をお読みください。
328名無しさんだよもん:04/06/20 11:17 ID:Nb/ZhLsp
NGばっかですね
329名無しさんだよもん:04/06/20 11:23 ID:CylYUQej
煽りは結構。
洗練されたロワ2を後世に残すためには、妥協しないのが最低前提条件というだけ。
330名無しさんだよもん:04/06/20 11:32 ID:a2i1JzHT
>>329は隔離板の糞企画が後世に残る、などと本気で考えているためNGです。
詳細は己が胸にでも聞いてください。
331幻想世界:04/06/20 13:13 ID:0Ad3WJFf
僕は見ていた。
遠い世界を。
僕は怯えていたのだ。この世界に。
僕はずっと前から気づいていた。
この世界は終わってしまっている、ということに。
もう、ここでは何も生まれず、何も死なない。
過ぎる時間さえ、存在しない。
だから、終わることすらない。
一度生まれ落ちたが最後。
終わりのない世界に閉じこめられ、二度と出られなくなる。
死ぬこともなく、新しい世界に生まれることもできない。
そんな凍てついた世界を、僕は見ていた。
332幻想世界:04/06/20 13:15 ID:0Ad3WJFf
大地には、風に煽られるようにして無数の光が舞っていた。
その中に、少女は立っていた。
今、また風に煽られ、いくつもの光が大地を飛び立つ。
それを見上げる少女。
これが、僕の生まれた世界。
それは…なんて、幻想的なんだろう。そう思った。
木や草、転がる石はごく自然に受け入れられた。
それは、あるべきものだと思った。
けど、あの光はなんなんだろう。
こんな光景を僕は、ずっと知らなかったはずだ。
また風が吹いて、ひとつの光が僕の脇を抜けていった。
僕はそれを追いかけた。
すぐ目の前に浮かんでいる。
手を伸ばしてみた。
光はガラクタで出来た指を通り抜けていった。
ずっとここに住む彼女にとっては、光も僕が知る水や木なんかと同じ。
自然の一部なのだ。
でも、それだけは触れることができない。
つまりそれは…影なんだと思った。
でも影には、本体がある。
なら、それはどこにあるんだろう。
どこにも、見あたらなかった。
333幻想世界:04/06/20 13:16 ID:0Ad3WJFf
そのとき、一瞬、光が揺らいだ。

そして、次の瞬間大地に舞っていた無数の光がすべて消えてなくなっていた。
僕が呆然と立ちつくしていると、彼女が隣までやってきたのが影でわかった。
彼女は、突然の変化に怯えていた。
でも、僕は不思議と影は本体に返ったんだと思えた。

だけど、光が消えると同時に、僕はもう一人の僕がこの世界に生まれたことを感じた。

彼女が作ってくれた僕の体。
その材料はガラクタだ。
この体はただの入れ物だ。
そして僕は影だ。
いつか、遠い昔…
あるいは、遠い未来…
僕は違う世界にいた。
もう一人の僕。
334幻想世界:04/06/20 13:16 ID:0Ad3WJFf
この世界には心を持った誰かが、存在してはいけなかったんだ。
間違ってる。
誰にも知られず、忘れ去られているべき場所だったんだ。
僕は世界の果てを見渡した。
世界の終わりを。
世界の終わりは、悲しい色に満ちていた。

【幻想世界】
【少女とガラクタ】
【時刻は不明】
335 ◆W534Ndsswg :04/06/20 13:29 ID:H4xvgd4B
>>331-334は、ほぼCLANNAD本編そのままと認められるため、正式にNGとなりました。

経緯については
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/784-
をお読みください。
336名無しさんだよもん:04/06/20 14:24 ID:a2i1JzHT
>>335
経緯は関係ないとこ指定してるが、>>331-334がNGなのは間違いない。
337名無しさんだよもん:04/06/20 22:33 ID:znJLmsC0
            「ふうふう。これでこりたか。」
                       ∩   っ
                     ,-―――-、
                    ∨∨∨∨.| |
               ⌒     | +_(。) U | |
             (   =  ( `T`    6)
                こ  ,- l ) ̄二ヽ_ノ-、
                 /    ̄|_|_ノ    \
                 |  |    o     |  |
                 |__ |    o      |__|
                (__ |__o___ (-  )
                   |    ∩    |  ̄
                   |__| |__|
          ⌒       (__|  |__)
  ,−、   (     )   __
     \_ ___ /⌒―、ヾ
  / \/# / #  Σ| 〉 ○| ミ         へ、
    ̄ |  |#  / #.人_〉_'±ミ/       ┌―OO
  ――└ ξ_ヾ /
「なんどやっても同じことだぞ。はあ、はあ。いいかげんにあきらめろ。」
338希望の欠片:04/06/21 00:17 ID:869zu95J
──デスゲーム開始約一時間前。

「おわっ」
「うおっ!」
不意に、軽い衝撃。
やはり気が急いていたらしい。通路の角向こうから響いていた足音に気付かず、私は巡回員の青年とぶつかってしまった。拍子に手に持っていたカードキーが散らばる。
「たた…あ、小林さんスンマセン」
「いや、私こそすまなかった田中君。お互い気を付けなくてはな」
「そッスね」
巡回員の青年──田中君に謝罪し、通路に散らばったカードキーを拾い集める。田中君も「あっ」と呟くなりすぐに屈み込み、カードの回収を手伝ってくれた。
「なんつーか、小林さんのカードキー、独特ッスね。この塔の絵とか、何スか?」
拾ったカードの一枚を覗き込み、田中君が聞いてくる。手には、リンクフリーのhpでダウンロードしてきた『THE TOWER』の絵がプリントされたカードキー。
「ああ、そいつは私の趣味でね。タロット占いというのを知ってるかい?それで使うカードの絵をプリントしてあるんだよ」
「意外ッスね。科学者の小林さんが占い好きなんて」
「皆には黙っておいてくれるかな?どうにも体裁が悪くてね…」
「りょーかいッス」
田中君は笑顔でそう言うと、残りのカードを拾い集めるのも手伝ってくれた。
まったく、篁に仕えさせるには惜しい若者だと思う。

「んじゃ、俺もう行きますんで」
「ああ。手間取らせてすまなかったね。ありがとう」
カードキーを拾い集めた後、私と田中君はそれぞれお互いが来た方向へと去って行った。

嘘を吐いた事が、少し心苦しかった。
339希望の欠片:04/06/21 00:23 ID:869zu95J

暫く歩いて着いた場所は、もうすぐ始まるデスゲームで参加者に支給される物資が用意された部屋だった。
室内に入り山と積まれた物資に目を見張り、腕時計に目を落とす。確か後10分で係の者がやって来て、支給品をバッグに詰め込んでいくはずだ。急がなければならない。私はすぐにその山を漁り始めた。

ほんの数時間前、支給品のリストに目を通した時から、この計画は始まっていた。仕事中、同僚や上司の隙を見つけてこっそりあのイラストをプリントアウトし、自分のカードキーに貼り付けた。

目的の物は二つ。縁の研がれたタロットカードと、最後まで再生すると爆発するカセットテープ、及びそれの入ったウォークマン。
四分で見つかった。残り六分。
まずはタロットカードの一部を、手持ちのカードキーと入れ替える。完了。
テープを見てぎょっとする。よりにもよって御丁寧に爆発する直前まで早送りされていた。急いでテープを巻き戻し、適当な所で停止する。
事が終わったらテープは巻き戻しを押したまま放置しておこう。確かこのウォークマンは最初まで巻き戻るとボタンが元通り浮き上がるタイプだったはずだ。
後は録音ボタンを押すだけ。準備は整った。
思いつくままに、言葉を
340希望の欠片:04/06/21 00:25 ID:869zu95J
【すいません。直前のレスは無視してください】

暫く歩いて着いた場所は、もうすぐ始まるデスゲームで参加者に支給される物資が用意された部屋だった。
室内に入り山と積まれた物資に目を見張り、腕時計に目を落とす。確か後10分で係の者がやって来て、支給品をバッグに詰め込んでいくはずだ。急がなければならない。私はすぐにその山を漁り始めた。

ほんの数時間前、支給品のリストに目を通した時から、この計画は始まっていた。仕事中、同僚や上司の隙を見つけてこっそりあのイラストをプリントアウトし、自分のカードキーに貼り付けた。

目的の物は二つ。縁の研がれたタロットカードと、最後まで再生すると爆発するカセットテープ、及びそれの入ったウォークマン。
四分で見つかった。残り六分。
まずはタロットカードの一部を、手持ちのカードキーと入れ替える。完了。
テープを見てぎょっとする。よりにもよって御丁寧に爆発する直前まで早送りされていた。急いでテープを巻き戻し、適当な所で停止する。
事が終わったらテープは巻き戻しを押したまま放置しておこう。確かこのウォークマンは最初まで巻き戻るとボタンが元通り浮き上がるタイプだったはずだ。
後は録音ボタンを押すだけ。準備は整った。
思いつくままに、言葉を紡ぐ。

「…この声を聞いている者が心ある参加者である事を願う」
341希望の欠片:04/06/21 00:30 ID:869zu95J

──デスゲーム、二日目深夜。

静まり返るアビスボート内部。ウルトリィの耳に聞こえるのはただ、寄せては返す波の音と、ウォークマンのイヤホンから聞こえるザーというノイズ。まあ、これも波の音に聞こえなくもない。
(やはりもう何も無いのでしょうか…)
三度目の再生から結構な時間が経ち、意味不明なラップはとっくにに終了している。流石のウルトリィも気疲れしてきた頃、ふっとノイズが途絶えた。

『…この声を聞いている者が心ある参加者である事を願う』
「えっ…!?」
次いで聞こえてきたその声に、ウルトリィは息を飲む。声質から判断するに、おそらく壮年の男性。
『時間が無いので手短に話す。私は篁に仕える科学者で、しかし、今行われているであろうゲームを快く思わぬ者だ。私はこのゲームを妨げるべく一石を投じた。君達への配給品の一つに、ホール内の全システムをダウンさせる為のカードキーを紛れ込ませた』
システムとかカードキーとか理解できない単語が列ぶが、男の言葉に真摯なものを感じたか、ウルトリィは全ての言葉を暗記しようと気を引き締める。
『どうにかして地下一階のコンピュータールームに行き、“塔”、“魔術師”、“月”、“恋人”の順でカードをセンサーに通してほしい』
(塔…魔術師…月…恋人…)
一言一句違えぬよう、ウルトリィはその言葉を記憶していく。
と、
『──もう時間が無い。テープを止めろ!』
「えっ…?」
急な語りの終わりに、ウルトリィは戸惑う。プツン、と短い音がし、再び波のようなノイズ。
しかし、それも僅かな間。

グォンッ!!

「───!!」
耳朶を穿たんとする程の轟音をダイレクトに叩きつけられ、ミコトを胸に抱いたまま、ウルトリィは気を失った。
カセットテープに仕掛けられた悪意が牙を剥き、常に死の危険が付き纏うこの島で、貴重な情報の代償に、ウルトリィは大きな負荷を背負わされた。
342希望の欠片:04/06/21 00:36 ID:869zu95J
「ぱっぎゅー!何事ですのー!?」
突然の爆音に、気絶していたすばるがとウルトリィの腕の中のミコトも目を覚まし、そしてすぐにミコトが泣き叫び出した。
「あああ、ミコトちゃん。大丈夫ですの!」
すばるが慌ててミコトを宥めようとする。
だが、気を失ったウルトリィにはそんな二人の叫び声も、先程まで聞こえていた波の音も聞こえてはいなかった。
否。例え意識があっても、それ等の声音をウルトリィが認識する事は無かっただろう。
「って、ぱぎゅうっ!?ウォークマンがめちゃくちゃになっちゃってますのー!」
そのすばるの言葉通り、ウォークマンは内部からの衝撃に耐えられず鉄屑と化していた。勿論、中のカセットテープもバラバラに砕け散っている事。
不幸中の幸いは、爆発の直前にはウルトリィはウォークマンから手を離していた為、怪我人が出なかった事だろう。
外見上は。
「ああ…これではもうあさひさんの秘密の言葉が聞けないですの…」
勘違いに磨きをかけてがっくりと膝をつくすばるには、未だウルトリィの身に降り懸かった災いに気付く由も無かった。
343希望の欠片:04/06/21 00:39 ID:869zu95J

──同時刻、ホール内部。

『支給品のカセットテープの仕掛け、作動しました。対象は09番ウルトリィの一名のみです』
「そうか…報告御苦労」
通信機から聞こえてきたその報告に、小林は苦虫を噛み潰した様な表情でそう答えた。
(この希望の欠片。どうか、全ての心ある者に伝えてくれ…)

【09番 ウルトリィ 状態:聴覚麻痺、気絶 所持品:ユズハの服、ハクオロ?の似顔絵、毛布2枚(船内にも何枚か有り)、ミコト、キーホルダー、食料5日分】
【86番 御影すばる 所持品:トンファー、グレネード(殺傷力は無し。スタン&チャフ効果)、小スケブ、ペン、似顔絵(うたわれキャラのもの)、あさひのサイン】
【藤林椋の支給品のタロットカード、一部にカードキー混入】
【時刻:二日目深夜】
344 ◆PDWVi6GP4k :04/06/21 10:06 ID:QDwGOn1X
>>340は、本人の申請により、正式にNGとなりました。
345名無しさんだよもん:04/06/21 10:32 ID:jN+0LukR
台風でヒマだからっておいたは止せよボーイ
346名無しさんだよもん:04/06/21 10:49 ID:QDwGOn1X
339の間違いだった
347名無しさんだよもん:04/06/21 11:03 ID:RjGXpfBp
>>338-343は話をきれいにまとめようとする浅はかな考えがモロ見えなのでNGです。
経緯については
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/791-
をお読みください。
348名無しさんだよもん:04/06/21 12:57 ID:FP5tFvpt
 ココロの内は決めていた。
 後はただ実行するだけだった。
 
 荷物の中から南部を取り出し、流れるような動きで木田に銃口を向ける。

「時紀クン、後で生き返らせてあげるから今は大人しく死んでてね。」
「何っ…」
 悪魔の布告と共に響き渡るは一発の銃声。
 至近距離から頭を撃ち抜かれて倒れる木田の手から鎌が転がり落ち、観鈴の足元にてその動きを止めた。

 洞窟に銃声が響き渡り、まず動いたのはアルルゥだった。
 銃声がした方向の逆、すなわち洞窟の深部に向かって脱兎の如く駆け出した。

 木田によって遮られていたUZIへの道が開き、鍵となるそれを手にする。
 UZIを構える明日奈の視界に見えるのはビームサーベルによって照らし出される朋也の姿。 
 その顔に宿されるのものは驚愕ではなく、憎悪。
 殺すものへの、憎悪。
 躊躇いは、無かった。

「てめぇぇぇっっっ!!!!」
 朋也がビームサーベルを振りかぶる。
 それを振り下ろせばケリはつくはずだった。だが―――

 ビームサーベルの輝きはこの洞窟内においてたった一つの光源で、
 それはさながら誘蛾灯のようで、
 それに誘われたのは鉛の羽虫達で、
 ビームサーベルを振り下ろすよりも早く、
 羽虫達は朋也の体を貫いていた。

 朋也の誤算。
 それは武器の性質と現在置かれている場を見誤ったこと。
 そしてそれは殺し合いの場に於いてあまりに致命的。
349惨劇:04/06/21 12:58 ID:FP5tFvpt

「逃げろ!」
 橘の声が洞窟内に響く。
 朋也を貫いたその勢いのままUZIを声がした方向に向けると、明日奈は残弾を余す事無く解き放った。
 UZIがその咆哮を終えるまでに吐き出した弾丸は橘の左腕と左腹部に数発ずつめり込んでいた。
 激痛に足を崩す橘がそれでもなお、叫ぶ。

「二人とも、逃げろ!」、と。
 その声に反応した月代はやはり、洞窟の奥へと駆けていた。
 深き森の闇に産まれ、光差さぬ洞窟の中で育った数多の不の感情と、
 友の命を奪った毒入りの小瓶と形見のリボンを道連れに。

 観鈴は逃げなかった。
 恐怖で足が竦んだわけではない。
 おとうさんとおかあさんを見捨てて逃げることが出来なかったのだ。
 
 晴子にとって、現状は絶望的だった。
 一発の銃声とUZIの咆哮。
 それらは洞窟の中にいた者達を鏖にするには十分過ぎるモノ。
 
(観鈴、死んだら…死んだらアカンで!) 
 晴子は神に祈っていた。
 血に塗れた者の祈りははたして神に届いた。
 洞窟に駆け込んだ晴子の目に映る。
 床に落ちているビームサーベルの輝きがうずくまる橘と観鈴を照らしていた。
 一瞬、安堵の息を吐く。
 が、明日奈の姿が見えない事に気付くまでの隙が状況を更に悪化させた。
 急激に走る腹部への鈍痛。
 ボディーブローを受けて沈む晴子。
 倒れぎわに明日奈の笑みが見えた気がした。
350惨劇:04/06/21 12:59 ID:FP5tFvpt

「ねえ、観鈴さん?」
 唐突に明日奈の口から言葉が紡がれる。
 その手に握られた南部は晴子の頭に向けられている。

「もし晴子さんを殺されたくなかったら―――」

(アカン、その言葉だけは…言ったら……)
 腹部を打たれた衝撃で、晴子の言葉は紡がれない。

「晴子さんの代わりに死んでくれませんか?」


【014 岡崎朋也 死亡】
【031 木田時紀 死亡】

【002 麻生明日菜 ケーキ ショートソード 南部十四年式(残弾7) 歪んだマイクロUZI(残弾0発)傍に放置】
【004 アルルゥ 所持品なし】
【022 神尾晴子 所持品なし 怪我は応急手当済み】
【023 神尾観鈴 所持品なし 右耳の鼓膜が破れている 応急手当済み 足元に鎌】
【055 橘敬介 ピアノ線 大判ハンカチ 筋弛緩剤を注射器(3セット)メモと鉛筆、食料 腕に万国旗 手品用品
鉈 文化包丁 左腕と左腹部に数発の銃創】
【085 三井寺月代 青酸カリ入りの小瓶 初音のリボン】

【殺された二人の持ち物と月代と晴子の持ち物(下記参照)はその辺に置いてあります】
【ヴィオラ(ケース入り) 高枝バサミ 懐中電灯 針金 食料 手作り下着 包丁 英和辞典 ビームサーベル×1
リュック(智代のCD 裁縫道具 医療用の針と糸 乾パン カップ麺 ホイッスル シェラフ 方位磁石 メタルマッチ 
救急セット) 千枚通し 朋也・宗一・芳野の写真】
【ビームサーベルが洞窟内を照らしています】
【時間は深夜】

【残り 31人】
351名無しさんだよもん:04/06/21 13:27 ID:kBzsAmux
>>348-350は話をきれいにまとめようとする浅はかな考えがモロ見えなのでNGです。
経緯については
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/799-
をお読みください。
352幻想世界2 ◆OC8M5Yte3A :04/06/21 16:15 ID:GRmg6GSg
体中から血が流れる。
痛みで気が狂いそうになる。
いや、痛みはすでになかった。
何故なら俺はもう生きていなかったから。
俺は、この世界での生を終え、記憶の海を揺蕩っていた。
この世界?
それはどの世界だ?
あぁ、すごく気持ちがいい。
もう、全てがどうでもよくなってきた。
ずっとこのままでいたい。
しかし、俺の意識はもう既に途切ていたはずだった。
何故意識のようなものがあるのだろう。
そのことに気づく。44
俺にはやらなければならないことがあったはずだ。
俺の『意識』が光を増す。
その途端、景色が流れる。
今までに見たことのある光景…
既視感。
長い、長い時間…
長すぎて、長かったのか短かったのかすら分からなくなる。
俺の『意識』は世界に飲み込まれ…
353幻想世界2:04/06/21 16:16 ID:GRmg6GSg
僕はこの物悲しい世界でも…
彼女と一緒にいられればそれだけで楽しかった。
僕は彼女が好きだ。ずっと一緒にいたい。
僕に意識はある。
僕は彼女が好きだ。ずっと一緒にいたい。
彼女が歩けば、どこまでもついていく。
嫌われたって、ついていく。
それは、意識で、感情だ。
僕が僕である証拠だ。
なら、僕は、どこからやってきたのだろう?
僕の『意識』というものは、どこからやってきたのだろう?
ふいに、この世界に生れ落ちた、もう一人の僕が思い出される。
彼は何故この世界に生まれたのだろう?
彼の世界は遠い、ここよりもずっと素敵な場所にいたはずだ。
何故だかそう思えた。
だけど…
僕が感じていた、もう一人の僕は
次の瞬間何も感じられなくなっていた。
突然宙に舞うような感覚が僕を襲い…
僕の『意識』はそこで途切れた…
354幻想世界2:04/06/21 16:17 ID:GRmg6GSg
そして…
長い旅の終着点に辿り着いた。
長い長い旅の果て…
その場所は、すべての始まりであり、すべての終わりの場所。
ここはどこだろう?
僕達はここがどこだかを知っている。
そしてこれから起きることも全て知っている。
この世界に来るのは一体何度目だろうか。
この世界での意識を閉じ、この世界から去るときは…
ここでの記憶は何一つ無くなっていた。
今までに何度も、何度も同じことを繰り返していた。
でも、今の僕達は全てを覚えている。
遠い昔の未来のこと…
まだ見ぬ過去のこと…
小さな家族で歌った唄のこと…
355幻想世界2:04/06/21 16:17 ID:GRmg6GSg
そして…この世界のこと。
この世界で意識があり、感情があり、そして本当の体を持っているのは彼女だけだ。
彼女はこの世界だから。
彼女以外の意識を持つ存在は、全て入れ物にすぎなかった。
このガラクタの体ではない方の僕の体も、よく出来た人形だったことが今ならよくわかる。
この世界のどこかで、とても悲しいことが行われていること。
僕はそれを止めたい。
そう思った。
でも、そこは本来僕達がいるべき、記憶の中の場所ほど遠くはないはずだけど…
それでも、その悲しい場所は遠かった。
彼女なら、この世界である彼女なら、全てを救えるかもしれない。
あの悲しいことを始めた男がどうやってこの世界に入ってきたのか。
不幸になってしまった光たちをどうやれば救えるのか。
彼女なら知っているはずだ。
356幻想世界2:04/06/21 16:18 ID:GRmg6GSg
…だけど
彼女はまだ何も知らないんだ。
彼女はまだ、この世界と繋がってはいないはずだから。
ならば彼女がこの世界と繋がるのを待てばいい。
でも…彼女がこの世界の意思になるのを待っていたら、彼女を救うことが出来ない。
僕達が一番救いたい人…
それは彼女だ。
ああ…
僕は吠えるように、体を反らせた。
ぎぎぎと瓦礫をすり合わせたような嫌な音がした。
…泣いて…いるの?
彼女の声がした。
ぎぎぎ。
彼女がゆっくりと歩いてきて、そして、僕の背中を抱いた。
…どうしたの…?
ぎぎぎ。
…悲しいことを…思いだした…?
ぎぎぎ。

僕は歌いだす。
…ぎぎぎっ…ぎぎぎっ…
小さい命に、ずっと聞かせていた歌を…

【幻想世界】
【少女とガラクタ】
【時刻は不明】
357名無しさんだよもん:04/06/21 20:15 ID:yED5/9CI
「財前先生」
と柳原医局員の声が響く。
「急患です、どうやら銃で撃たれてるようです。」
といつものとおりにてきぱきと症状を報告する。
財前は「ん」とだけしかいわない。
それを不満を思ったのだが教授に逆らうのは教室内のタブーなので柳原はやはり何も言わない。
しかしそれが顔に出ていたようだ。
講師の佃に「何が不満なんだよ、ヤナ」と絡まれてしまう。
「財前先生、先生の判断がこいつは気に入らないようです。」と佃。
そのとき
「先生!急患です、名前は神尾・・・・」
358月明かりに照らされるモノ:04/06/21 21:38 ID:QB3wxcGJ
 新たなる決意を胸に、三人は目的地へと向かう。
 真っ直ぐとここへ向かってきた為、出た時よりも随分と早くそこへと到着する。
「着いたな。……?」
 アビスボートを視認した宗一が、それにわずかな違和感を感じる。
「どうしたんですか、宗一君?」
「いや……。カミュ、念の為、『気配を消す装置』展開して」
「え。う、うん……」
 素人目にも。いや、宗一の目にも目に見える異常は別にない。
 ただ、何かが違うような、そんな印象を受ける。


「あ、宗一さんですの……」
 アビスボート内部。甲板にいたすばるが、ようやく宗一の姿を確認して安堵の声を漏らす。
「すばる、無事か?」
「はいですの」
 宗一がようやく安心したように身体の緊張を解いた。
「みんなは?」
「いろいろありまして、蝉丸さんとオボロさんはここにはいませんの」
「いろいろ?」

 かすかに感じた違和感。
 それは見張りがいなかったこと。自分達の姿を確認しても、何の反応もない。そんな船の様子。
「宗一さんこそ、一人でどうしたんですの?他のみんなは?」
「え?……あ、そうか。二人とも、もういいぞ」
359月明かりに照らされるモノ:04/06/21 21:39 ID:QB3wxcGJ

「私はここにいますよ」
「うん。私も」
「うひゃぁっ!」
 突然話し掛けられた二人にすばるの心臓が飛び上がる。
 実際には普通に目の前にいたのだが。『気配を消す装置』の効果だった。
 二人、抱き合うようにして機械を胸に抱いて、突如目の前の空間に現れる。少なくともすばるの目にはそう映る。
 基本的に一人用だが、ゆかりとカミュの身体なら、抱き合うようにすればなんとか装置の効果が二人分働くらしい。
 そこまでしてしまうと歩くのがやっとで喋ることすらままならず。あんまり実用的ではないが。

「ぱぎゅぅ……。びっくりしましたの〜」
「すまん。なんか様子がおかしかったから。見張りとかどうなってるのかなー、と思って」
「あ、いろいろとありすぎてすっかり忘れていたですの。今は私が見張らなきゃ駄目ですのに」


「――美佐枝さんは……亡くなった」
 唇を噛みしめながら、宗一が呟く。
「美佐枝さんが……?」
 嘘、信じられない、信じたくない。すばるが三人を見渡したが――。
 誰も何も言えなかった。すばるも結局何も言うことができなかった。
 三人の表情が、それを言うことを躊躇わせた。
「俺達は必ず爆弾を解除する。ゆっくりでも確実に。もう二度と失敗しない為に」
 自分に言い聞かせるように、宗一が誓う。
「……分かりましたの。私も、出来る限り協力いたしますの」
 その意を汲んで、すばるがにっこりと笑った。
360月明かりに照らされるモノ:04/06/21 21:39 ID:QB3wxcGJ

「ミコトちゃんの食料が乏しくて……。オボロさんが探しに向かったけど戻ってこなくて。
 それで蝉丸さんも探しに向かったけれど――やっぱり戻ってこないですの」
「……今はウルトとすばるだけなのか」
「はいですの」
 状況を聞き、宗一が難しい顔をする。何があったのだろうか。

「ウルトさんも――耳が聞こえなくなってしまいましたの」
「……なんだって!?」
「今眠ってますの……多分」
 そう言って、すばるが自らのスケッチブックの一ページを開いて、三人に見せつける。
『こうして紙に書けば大丈夫ですの。 痛くないですの? 困りましたの 〜〜……』
 筆談の跡。そこはすばるの文字の羅列で埋め尽くされていた。
「痛みはないのか?」
 すばる側のみの簡潔な会話内容しか書かれてなかったが、大体の状況は読み取れる。
「ないみたいですの。ただ単に耳が聞こえないだけみたいですの」
「……分かった」
 あとは――ウルトに会ってみよう。


 結論から言えば、ウルトリィは眠ってはいなかった。憔悴しきったように眠るミコトを胸に抱き、撫でつづけていた。
 ウルトリィは本当に耳が聞こえていないだけのようで。
 辺りの様子が確認できる外で話そうということに落ち着き、ウルトも甲板へと顔を出す。
361月明かりに照らされるモノ:04/06/21 21:40 ID:QB3wxcGJ


『カセットテープ?』
「はい。それを最後まで聞いた途端に、爆発して。多分それの影響で耳がおかしくなってしまったようです」
「いきなり横で気絶してたから何事かと思いましたの。無事でよかったですの」
 厳密には無事ではないと思うが。宗一がウルトの耳元に軽く手を添える。
『お姉様、痛くないの?』
「大丈夫よカミュ。――その内元に戻ると思います」
「うーん。鼓膜は無事っぽいな」
 専門的なことは分からないが――ずっと一生このままということはなさそうだ。
 宗一は、その内元に戻るに違いない。とか希望的憶測で物を考える。
「医者がいればいいんだけどな」
 とにかく。ウルトが生きていて本当によかった。……爆発するカセットテープなんて物騒なもの仕込みやがって。
 宗一が誰へともなく心で毒づく。
「そうです。カセットテープの件で言っておきたいことがあります。
 いえ、言っておかなければならないでしょう」
 ウルトリィがすうっと息を吸った。
 宗一ら三人だけでも、無事戻ってきたことに優しげな表情を浮かべていたウルトだったが、
 次の瞬間には真剣なものに変わっていた。
「忘れない内に、伝えておかなければ」
「これですの?」
 すばるも、既に先程聞いた、スケッチブックに走り書きした話をみんなに見せようとするが。
「大丈夫です。お話はまだしっかり覚えてますから」
 ウルトリィがやんわりとそれを制して、宗一に向き直る。
『大事な話なのか?』
「ええ。もしかしたら罠……という可能性も考えましたが。
 あの男性の口調は、とてもそういう風には思えませんでした。きっと、そこには真実が隠されていると思います」
362月明かりに照らされるモノ:04/06/21 21:40 ID:QB3wxcGJ

「カセットテープに収録されている内容はこんな感じでした」
「ウルトさんはオンドリャーの巫女様でして、とても暗記が得意ですの。すばるには無理です」
「オンカミヤムカイの巫女だよ、すばるちゃん……」
 そんな声も、その耳に届いていないウルトリィは、さらっとそれを流してポツポツと語り出した。

 ウルトリィの語りは圧巻だった。ただ聞いた内容を述べるだけでない。
 カセットテープに込められた声と、その想いを心に込めた、収録内容そのままのまさに熱演。
 プロも真っ青のその迫真の演技力。宗一は目を見張った。

「YO! YO! オレ岡崎! 春原、お前は……ウーパールーパー!」
「……」
「いや、ウルトさん、そこはいいですの……」
 ウルトリィはすばるの突っ込みを容赦なく無視した。


「……この声を聞いている者が心ある参加者である事を願う――」
 ウルトリィは語っていく。カセットテープに込められたその一人の男の想いを。
 顔も見たこともないその男が、まるですぐ目の前にいて語ってくれているかのような、そんな感覚。
 最初は全員が普通にウルトリィの演技に見入っていただけだったが。
 話が進む内に、全員の顔が真剣なものに変わっていく。
 宗一に至っては、自らの手記を取り出し、それに会話の内容を掻いつまんで書き込んでいく。
363月明かりに照らされるモノ:04/06/21 21:41 ID:QB3wxcGJ


「──もう時間が無い。テープを止めろ!…………それを最後にテープは爆発しました。――以上です」
 ウルトリィの語りが終わりを告げた。語りに感情移入しすぎた為か。若干目が潤んでいる。
「“塔”、“月”、“魔術師”、“恋人”……の順だっけ?」
「いや。“塔”、“魔術師”、“月”、“恋人”の順だ」
 たった今、自らが記した手記に目を落としながら、カミュの間違いを正す。
「……タロットカードの記述?」
「そこまではまだ断定できないけど。証拠隠滅を図るくらいだから、完全な罠とは考えづらいな」
 そう言ったゆかりを一目見て、宗一が答える。
「……地下1階のコンピュータールーム。どこのことでしょう?」
「……この事はゆっくり考えよう。急いでは事を仕損じる」
364月明かりに照らされるモノ:04/06/21 21:42 ID:QB3wxcGJ


 そうして、語りを終えた瞬間。

 ――しまった。

 宗一が唇を噛みしめた。
 ウルトリィの語りに耳を傾けすぎた。
 外部への――辺りの様子を気にすることを怠ってしまった。

 宗一の耳にかすかに。自然のものではない風を切る音が届く。
 振り向く。

 闇夜の中、その音を醸し出していた物体が、放物線を描いて確実に向かってきていた。――こちらへと。
 まるで、スローモーションのように。目に映るそれが月明かりに照らされてキラリと輝く。

(あれは――なんだ!?)
 あれはまさか――。宗一の頭に激しく警報が鳴り響く。

「カミュ!すまん!」
 それを見た瞬間、反射的に宗一の身体が動いていた。

「えっ、ちょっと……ぐえっ!」
 助走をつけて、一気にそのカミュの肩に飛び乗ると――空高く跳躍した。
「ひゃあん!」
 地上で、変な悲鳴をあげながら、地面へと転がるカミュ。

「くそっ!」
 闇に溶け込みそうになるその物体を左手でキャッチする。
 同時に空中で身体を回転させ、それを利き腕に持ちかえると大きく振りかぶって。
 アビスボートの海の向こう、遠くへ向かって――投げ――捨て―…
365月明かりに照らされるモノ:04/06/21 21:43 ID:QB3wxcGJ

「――って、手榴弾じゃないのかよ!」
 ふと、手に持った物体が目に入る。
 それはペットボトルにいれられた、種も仕掛けも見当たらない単なる液体だった。

 ――落下。

「ぐえっ!」
 背中から、甲板へと落ちる。
 なんとか受身だけは取り、頭から落ちるとかそういったヘマだけはしなかったが。
 手に持ったペットボトルを庇った為、無様な格好だった。
 もし、衝撃で爆破するようなシロモノだったならば。その可能性を考えて。

「いきなり何すんのよ!乙女の身体を踏みつけるだなんて〜!」
 カミュがうぐうぐと呻いた。
「すまん……」
(てか、誰だ、こんなことするのは! 冗談にしてはタチが悪いぞ!)
 いきなり爆発物を投げ込まれたものとばかりに思い込んでしまった。
 焦りと恥ずかしさと情けなさと、理不尽な怒りが心に巻き起こる。

「面白いものを見させていただきましたわ」
 パチパチと、船の外から手を叩く音が聞こえた。
「誰だ!」
 聞いたことのない声。宗一が身構える。
「その声は……カルラ?」
「……カルラ?」

「……ウルトにカミュ? ――ごきげんよう」
366月明かりに照らされるモノ:04/06/21 21:44 ID:QB3wxcGJ
【065 那須宗一  所持品:長弓、矢20隻 宗一の手記 クレイモア一個 ゾリオン(使用回数3回) 電池一個
 ペットボトルのジュース】
【025 カミュ   所持品:気配を消す装置 レミントン・デリンジャー(装弾数2発 予備弾4発】
【078 伏見ゆかり 所持品:グレネード(殺傷力は無し。スタン&チャフ効果)】
【09番 ウルトリィ 状態:聴覚麻痺 所持品:ユズハの服、ハクオロ?の似顔絵、毛布2枚(船内にも何枚か有り)
 ミコト、キーホルダー、食料5日分】
【86番 御影すばる 所持品:トンファー、グレネード(殺傷力は無し。スタン&チャフ効果)、小スケブ、ペン、似顔絵(うたわれキャラのもの)、あさひのサイン】
【026 カルラ 自分の大刀 背中・肩を強打 右手首負傷、握力半分以下】

【宗一の手記にカセットテープの内容の記述が加わりました。かなり分かり易いです】
【時間は深夜】
367名無しさんだよもん:04/06/22 00:04 ID:KX212FSX
>>348-350はぞんざいな死と致命的矛盾により、>>352-356はCLANNAD本編のパクリのため、>>358-366はなんとなく
それぞれNGです。
経緯はいつもの通り
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/903-
をお読みください。
なお、>>352-356の作者はkeyから訴えられる可能性があるので、覚悟してください。
368月明かりに照らされるモノ:04/06/22 00:17 ID:/OY/6iHe
指摘受けまして、いくつか修正します。

>>359の上から8行

「私はここにいますよ」
「うん。私も」
「うひゃぁっ!」
 二人に突然話し掛けられ、すばるの心臓が飛び上がる。
 実際には普通にすぐ傍にいたのだが……。『気配を消す装置』の効果だった。
 二人、抱き合うようにして機械を胸に抱いて。突然視界の隅に現れる。少なくともすばるの目にはそう映る。
 基本的に一人用だが、ゆかりとカミュの身体なら、抱き合うようにすればなんとか装置の効果が二人分働くらしい。
 そこまでしてしまうと歩くのがやっとで喋ることすらままならず。あんまり実用的ではないが。


>>365のラスト3行

「その声は……カルラ姉さま?」
「……カルラ?」

「……ウルトにカミュ? ――ごきげんよう」


それぞれ差し替えて下さい。
以上です。お手数おかけしました。
369惨劇作者:04/06/22 21:48 ID:xmXVcQC+
>>348-350は致命的矛盾を含んでいると指摘されましたので、NG送りにしてください。
370名無しさんだよもん:04/06/22 22:28 ID:DtfipI5C
(・∀・)ハイーキョ
371名無しさんだよもん:04/06/22 23:42 ID:KX212FSX
(・∀・)ハイーキョ
372名無しさんだよもん:04/06/23 00:14 ID:O/hKkZaq
書き手募集age
誰か俺のためにも書いてください
373名無しさんだよもん:04/06/23 08:40 ID:gvSZhjzn
>>372は自分勝手な主張に基づく強引なぬるぽにつきガッ
374名無しさんだよもん:04/06/23 08:59 ID:NX0aqcBP
書き手募集あげ!
俺は書けないけど誰か書いてくれ。
ストーリーのアイデアはあるから、欲しけりゃ感想すれで教えてあげますよ。
375名無しさんだよもん:04/06/23 11:07 ID:C4GEz+TP
('A`)
ノヽノヽ =3 ブッ
 <<
376名無しさんだよもん:04/06/23 12:32 ID:PD4PCKgy
         し!     _  -── ‐-   、  , -─-、 -‐─_ノ
  ロ ロ    // ̄> ´  ̄    ̄  `ヽ  Y  ,  ´     )   ロ え
  ワ ワ    L_ /                /        ヽ  ワ  |
  T が    / '                '           i  U マ
  ま 許    /                 /           く  !?  ジ
  で さ    l           ,ィ/!    /    /l/!,l     /厶,
  だ れ   i   ,.lrH‐|'|     /‐!-Lハ_  l    /-!'|/l   /`'メ、_iヽ
  よ る   l  | |_|_|_|/|    / /__!__ |/!トi   i/-- 、 レ!/   / ,-- レ、⌒Y⌒ヽ
  ね の   _ゝ|/'/⌒ヽ ヽト、|/ '/ ̄`ヾ 、ヽト、N'/⌒ヾ      ,イ ̄`ヾ,ノ!
   l は  「  l ′ 「1       /てヽ′| | |  「L!     ' i'ひ}   リ
        ヽ  | ヽ__U,      、ヽ シノ ノ! ! |ヽ_、ソ,      ヾシ _ノ _ノ
-┐    ,√   !            ̄   リ l   !  ̄        ̄   7/
  レ'⌒ヽ/ !    |   〈       _人__人ノ_  i  く            //!
人_,、ノL_,iノ!  /! ヽ   r─‐- 、   「      L_ヽ   r─‐- 、   u  ノ/
      /  / lト、 \ ヽ, -‐┤  ノ  キ    了\  ヽ, -‐┤     //
ハ キ  {  /   ヽ,ト、ヽ/!`hノ  )  モ    |/! 「ヽ, `ー /)   _ ‐'
ハ ャ   ヽ/   r-、‐' // / |-‐ く    |     > / / `'//-‐、    /
ハ ハ    > /\\// / /ヽ_  !   イ    (  / / //  / `ァ-‐ '
ハ ハ   / /!   ヽ    レ'/ ノ        >  ' ∠  -‐  ̄ノヽ   /
       {  i l    !    /  フ       /     -‐ / ̄/〉 〈 \ /!


377獅子の巣穴:04/06/23 23:46 ID:Dfs4enEi
那須宗一達との戦闘より約一時間余り、芳野祐介は森を彷徨っていた。その瞳にぎらぎらと、殺意と希望をたたえて。
希望とは、願い。
それは己の半身を蘇らせる事。愛しい人の隣へと帰る事。そして、その人に幸せを与える事。
それらの強固な意志を宿し、手に馴染んだ武器を持ち彷徨う彼の姿は、さながら血に餓えた獅子を思わせた。一時は憔悴していた心も、今は完全に保ち直している。
決して休む事無く。誰よりも力強く。誰よりも愛する者の為に。ある意味本物の獅子よりも力強き思いでもって、芳野祐介は動いていた。
もしも今、彼の目の前に何者かが現れていれば、その者は間違いなく彼の「思い」の前に牙を剥かれていただろう。
湯浅皐月や那須宗一のように因縁深き強者でも。川名みさきや古河渚のように面識無き弱者でも。彼は間違いなく殺そうとしただろう。

しかし、そんな芳野の思いとは裏腹に、暗き森の外れで彼が目にしたモノは、彼が殺すべき“者”ではなく、今の彼には必要のない、塒(ねぐら)と成り得る“物”。
それは、おそらく火を放たれたのだろう、あちこちが黒く焼け焦げている民家──河島はるかとアルルゥが初日に塒としていた民家だった。
(かなり酷く焼けているな…。一応原型を保てているのは、昨夜の雨で鎮火したからか)
取り敢えずぐるりと民家を周回し、芳野はそう推測した。
まあ、ろくに陽の光の射さないこの森の中で、炭化した壁が未だに湿り気を帯びているのだから、明白と言えば明白なのだが。
(ただの空き家に火を放つ馬鹿はいまい。…なら、ここには誰か居たと見るべきだな)
次いで芳野はそう考えると、開け放たれたままの勝手口から民家の中へと侵入した。
378獅子の巣穴:04/06/23 23:50 ID:Dfs4enEi

「まあ、こんなものか…」
手始めに芳野は民家の中に何か役立ちそうな物が焼け残ってないか調べ回ったが、生憎、ほとんどロクな物が発見できなかった。勿論、幾ばくかの物資をはるか達が既に持ち去った後なのだからなおの事である。
結果として見つかった物は、ランタンが一個と、バールが一本。加えて、リビングにぽつんと放置されていたハーバーサンプルが一袋だけだった。
「まあ、物資が多いに越した事はないな…」
いささか気を落としながらも取り敢えずそう判断を下すと、芳野はそれらを自分のバッグへと詰め込んだ。

次に芳野はこの家の供給系統──即ち、電気、ガス、水道が通ってるかを調べてみた処、水道は兎も角、ガスと電気の供給がまだ生きている事に驚愕した。
「どういう事だ?あれ程の延焼具合を見せながら、ガス管や電気ケーブルにダメージが──いや待て」
ふと、芳野はある事に気が付く。
(そもそも、この島に電柱や電線があったか?)
自問自答。ノー。そんな物があれば自分が気付かない訳がない。
いや、それに今まで気付けなかったのも情けない話だが。
だが、つまり。
「この島は元から在った島じゃないという事なのか?」
再度、驚愕。
そして、歓喜。
(つまりこの島は全てあの篁とかいう男が用意したセット。しかし、それ程の大掛かりな事を財力だけで成せる訳がない。…いや、人に出来る範囲を越えている)
希望が改めて沸いてくる。火が点く様に心が熱くなる。
(ならばやはり、優勝者への特典の、何でも願いを叶えるという話は充分に信じられるな)
またぎらぎらと、瞳に殺意と希望が沸く。
379獅子の巣穴:04/06/23 23:51 ID:Dfs4enEi

篁よ。お前の望みは、俺達が殺し合う事なのだろう?ならばその為にこの“セット”を存分に利用させてもらおう。
殺すにせよ、救うにせよ、炎の祝福を受けたこの家は、人を探しに寄るような場所じゃない。
ならば、俺はここに雌伏しよう。百獣の王たる獅子として、牙と爪を研いで獲物を狩る準備をしよう。明るくなったら狩りの時間だ。
そして、俺のように興味を抱いてこの巣穴へ近付く獲物も狩ろう。百獣の王は俺一人でいい。
願いが叶うのは、俺一人でいい。
俺と、俺の愛する人達が幸せであればそれでいい───。

【98番 芳野祐介 所持品:M16A2アサルトライフル(残弾30)、イーグルナイフ、手製ブラックジャック(×2)、スパナ、バール、救急箱(包帯はアイシングに使用)、ランタン、煙草(残り3本)、ライター、テープ、糸、ハーバーサンプル1袋、食料2日分】
【時刻:三日目午前零時頃】
380名無しさんだよもん:04/06/24 00:03 ID:9LYnCveQ
良質書き手募集age!!
荒らしにめげずがんばってください。

俺もアイデアだけはあるくちなので、欲しいならあげます〜
381名無しさんだよもん:04/06/24 00:44 ID:8NfO91g5
>>377-379は全く状況が進展していないため、通すと質が落ちるのでNGです。
経緯はいつもの通り
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087220033/903-
をお読みください。
382名無しさんだよもん:04/06/24 00:51 ID:De1znW6N
>>381
実況が次スレ行ってる上に
理由も曖昧

っていうか荒らしカエレ
383名無しさんだよもん:04/06/24 10:39 ID:DA5NTYUi
保守
384名無しさんだよもん:04/06/24 17:10 ID:jzSt/Cph
>>383
終わったスレを保守しないように。
385名無しさんだよもん:04/06/24 18:26 ID:FRdAt3tt
>>384
それはちょっと違うな。
終わったのはスレじゃなくてこの企画。
386名無しさんだよもん:04/06/24 18:43 ID:Q4NnZBnz
埋めちまおうか?
387名無しさんだよもん:04/06/24 19:38 ID:FRdAt3tt
埋め
388名無しさんだよもん:04/06/24 19:50 ID:Rx5K8raq
埋め
389名無しさんだよもん:04/06/24 19:50 ID:Rx5K8raq
埋め
390名無しさんだよもん:04/06/24 19:51 ID:Rx5K8raq
埋め
391名無しさんだよもん:04/06/24 19:55 ID:Rx5K8raq
埋め
392名無しさんだよもん:04/06/24 19:55 ID:Rx5K8raq
埋め
393名無しさんだよもん:04/06/24 19:57 ID:Rx5K8raq
埋め
394名無しさんだよもん:04/06/24 19:58 ID:Rx5K8raq
埋め
395名無しさんだよもん:04/06/24 20:00 ID:Rx5K8raq
埋め
396名無しさんだよもん:04/06/24 20:01 ID:Rx5K8raq
埋め
397名無しさんだよもん:04/06/24 20:02 ID:Rx5K8raq
埋め
398名無しさんだよもん:04/06/24 20:02 ID:DA5NTYUi
勝手に埋めるな
399名無しさんだよもん:04/06/24 20:03 ID:Rx5K8raq
埋め
400名無しさんだよもん:04/06/24 20:04 ID:Rx5K8raq
400
401名無しさんだよもん:04/06/24 20:05 ID:aTHOXV95
無意味だからやめろよ

ほっときゃ落ちるって。
402名無しさんだよもん:04/06/24 22:43 ID:9+PUMUPt
保守
403名無しさんだよもん:04/06/25 01:12 ID:yeg2MrDH
>348-350「惨劇」は審議の結果NGとなりました。
書き手、及び読み手各位は御留意ください。
404名無しさんだよもん:04/06/25 01:46 ID:e9V/a73E
>>403は荒らしです。放置してください。
>>348-350「惨劇」は何の問題もなく通しです。
405名無しさんだよもん:04/06/25 01:57 ID:xgYktVyO
>>403-404
おまえらもう来なくていいよ。
後でまとめサイトみれば判断できるから。

何の価値もない政権の争いですかw
406聖上の意志:04/06/25 16:11 ID:2+fGsIjw
「……ウルトにカミュ? ――ごきげんよう」
そう、挨拶しながら出てきた女はどうやらカミュ達の知り合いのようだった。
翼こそは生えていないがオボロといった男みたいな獣っぽい耳をみると彼女達みたいに違う世界の住人なんだという事が見て取れた。
しかし、知り合いだったからといって信用できるとは限らない。
こんな極限状況で何日か過ぎているのだ、人の性格が変わってもおかしくない。
それに単独で堂々と行動している事、手には大刀が握られている事、彼女がこのゲームに乗っている人間ではないと信じるには無理があった。

「――カミュ、ウルトリィ、下がっていろ。で、これは何のつもりだ」
蝉丸とオボロがいない今、皆を引っ張っていき、護っていくのは宗一の役目でありだからこそ彼女の判断を彼が慎重にしなければならなかった。

「そんな事、知らないわ。ただ、それを届けろとオボロに言われましたの」
「オボロはどうしたっ?何か彼にあったのか?」
あれだけ自ら率先して請け負った仕事なのだ、そう簡単に彼がこの仕事を手放すとは思えない。

「――オボロは死にましたわ。えぇ、この私の一刀の下で――そしてそれがオボロの遺言でしたわ」
果汁100%のジュース、これはきっとオボロがミルクの代わりに何とか探し当てた物なのだろう。
元の街に帰ればたった140円でコンビニに行けばすぐ買える代物だ。
だが、そんな物でさえこの島で見つけようとするとどれだけ大変だったのか……
しかし、その彼の探しに行ったミルクも既に奇跡的に手に入っている。
オボロは運が悪かった。
しかし、彼ならばそれでも満足できたに違いない。
407聖上の意志:04/06/25 16:12 ID:2+fGsIjw
「――くっそうぅぅぅっ!!あの馬鹿やろう……。――何故知り合いのオボロを殺した?お前もこのゲームに乗っているやつの一人なのかっ?」
「えぇあなたの考えている通り、私は聖上の復活の為に人を殺してきましたの。そしてオボロも……あの馬鹿な男もついでに斬ってさし上げたんですわ」
「待って、カルラ姉さまはそんな事はする人ではなかったはず、それに……それならなんでオボロの遺言を訊いてこれを持ってきてくれたの?」
怒りと憤りで頭が一杯になりそうだったのをその一言が止めてくれた。

「あら、つくづくお人好しでいること。聖上の復活に邪魔なのを消しに来ただけかも知れないのよ」
「ハクオロおじ様はそんな事願ってはいないわ。おじ様ならきっとみんなで力を合わせて――悪いやつを倒して――そして生きて帰ろうって言ったはずだわ!」
「聖上なら、ですか……。でも、私はその言葉をもう一度聖上の口から聞きたいんですわ」
カミュのそしてカルラの悲痛な叫びが木霊していた。

「もういい――俺たちに危害を加えないのならオボロに免じて見逃してやる。オボロも頼み事をした人間が殺される事なんて願っちゃいないはずだからな」
「そうね、私もこれで用は済みましたし、引くとしますわ」
宗一としては非戦闘員がこれだけいる中、全員を護りながら戦うのは避けたかったし、カルラとしても連戦に次ぐ連戦で避けられる戦いなら避けたかった。
そして、カルラは元来た方向に去ろうとしていた。

「待って、カルラ!」
その背中に声をかけたのは耳が聞こえなくオボロを殺したと唯一聞いていないウルトリィであった。
そして、カルラの方に駆けていったウルトリィの手にはハクオロとユズハの子、ミコトの姿があった。
408聖上の意志:04/06/25 16:13 ID:2+fGsIjw
「――カルラ、あなたの事だから行くなと言っても聞かないでしょう。けど最後にこの子を、ハクオロ様の子を抱いていって下さいな。ハクオロ様もそれをきっと望んでますわ」
(皆聖上の意志がそれほど大切ですの……)
聖上自信ではなくそれに付随する物モノを。
ベナウィもオボロもカミュもウルトリィもそれを選んだ。

「ふぎゃぁ」
そして、カルラが見た先には聖上の残した物の代表――ミコトがいた。
何故かは解らない、気が付いたらそれをウルトリィから渡され抱いていた。

「きゃっきゃっ」
さっきまでこの子を殺すとか言っていた彼女に向かってミコトは笑い手を伸ばした。
暖かい。
けど、もう既にカルラの手は血で汚れすぎていた。
409聖上の意志:04/06/25 16:14 ID:2+fGsIjw
「――そうね、考えを改めたましたわ。確か生き残る枠は2人でしたわね。聖上の子だけは殺さないし、殺させもしないと誓いましょう。それまであなた達にこの子のおもりは任せましたわ。行動するのにはその子はさすがに邪魔ですしね」
そう言ってカルラはミコトをウルトリィに返して笑った。
まだ、耳の聞こえないウルトリィはその笑みをどう取ったのだろうか。

「カルラ、この争いの首謀者を倒す方法が見つかったのよ。あなたさえよければまた戻ってきて下さいね。何枚かの絵の描かれた紙、それがこの争いを止められる物なんです。それをもし見つけたら、また戻っていって下さいね……」
(聖上なら確かに力を合わせて――悪いやつを倒して――そして生きて帰ろうって言ったでしょうね)
そして、カルラは振り返らず暗い森の方へ去っていった。

【065 那須宗一  所持品:長弓、矢20隻 宗一の手記 クレイモア一個 ゾリオン(使用回数3回) 電池一個
 ペットボトルのジュース】
【025 カミュ   所持品:気配を消す装置 レミントン・デリンジャー(装弾数2発 予備弾4発】
【078 伏見ゆかり 所持品:グレネード(殺傷力は無し。スタン&チャフ効果)】
【09番 ウルトリィ 状態:聴覚麻痺 所持品:ユズハの服、ハクオロ?の似顔絵、毛布2枚(船内にも何枚か有り)
 ミコト、キーホルダー、食料5日分】
【86番 御影すばる 所持品:トンファー、グレネード(殺傷力は無し。スタン&チャフ効果)、小スケブ、ペン、似顔絵(うたわれキャラのもの)、あさひのサイン】
【026 カルラ 自分の大刀 背中・肩を強打 右手首負傷、握力半分以下】

【カルラは別に改心したわけでは無く迷ってます。ミコト以外を狙うマーダーになるか、タロットを探しに出るかはご自由に】
【時間はさほど経って無く深夜のままです】
410名無しさんだよもん:04/06/25 17:09 ID:04jSgHpd
作品キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ッ!!
超面白いです。
最高。
だから続きさっさときぼんぬ。
411あるじ様の意志<修正版>:04/06/25 17:14 ID:2+fGsIjw
「……ウルトにカミュ? ――ごきげんよう」
そう、挨拶しながら出てきた女はどうやらカミュ達の知り合いのようだった。
翼こそは生えていないがオボロといった男みたいな獣っぽい耳をみると彼女達みたいに違う世界の住人なんだという事が見て取れた。
しかし、知り合いだったからといって信用できるとは限らない。
こんな極限状況で何日か過ぎているのだ、人の性格が変わってもおかしくない。
それに単独で堂々と行動している事、手には大刀が握られている事、彼女がこのゲームに乗っている人間ではないと信じるには無理があった。

「――カミュ、ウルトリィ、下がっていろ。で、これは何のつもりだ」
蝉丸とオボロがいない今、皆を引っ張っていき、護っていくのは宗一の役目でありだからこそ彼女の判断を彼が慎重にしなければならなかった。

「そんな事、知らないわ。ただ、それを届けろとオボロに言われましたの」
「オボロはどうしたっ?何か彼にあったのか?」
あれだけ自ら率先して請け負った仕事なのだ、そう簡単に彼がこの仕事を手放すとは思えない。

「――オボロは死にましたわ。えぇ、この私の一刀の下で――そしてそれがオボロの遺言でしたわ」
果汁100%のジュース、これはきっとオボロがミルクの代わりに何とか探し当てた物なのだろう。
元の街に帰ればたった140円でコンビニに行けばすぐ買える代物だ。
だが、そんな物でさえこの島で見つけようとするとどれだけ大変だったのか……
しかし、その彼の探しに行ったミルクも既に奇跡的に手に入っている。
オボロは運が悪かった。
しかし、彼ならばそれでも満足できたに違いない。
412あるじ様の意志<修正版>:04/06/25 17:15 ID:2+fGsIjw
「――くっそうぅぅぅっ!!あの馬鹿やろう……。――何故知り合いのオボロを殺した?お前もこのゲームに乗っているやつの一人なのかっ?」
「えぇあなたの考えている通り、私はあるじ様の復活の為に人を殺してきましたの。そしてオボロも……あの馬鹿な男もついでに斬ってさし上げたんですわ」
「待ってよ、カルラ姉さまはそんな事はする人ではなかったはずでしょ、それに……それならなんでオボロの遺言を訊いてこれを持ってきてくれたの?」
怒りと憤りで頭が一杯になりそうだったのをその一言が止めてくれた。

「あら、つくづくお人好しでいること。あるじ様の復活に邪魔なのを消しに来ただけかも知れないのよ」
「ハクオロおじ様はそんな事願ってはいない。おじ様ならきっとみんなで力を合わせて――悪いやつを倒して――そして生きて帰ろうって言ったはずだよ」
「あるじ様なら、ですか……。でも、私はその言葉をもう一度あるじ様の口から聞きたいんですわ」
カミュのそしてカルラの悲痛な叫びが木霊していた。

「もういい――俺たちに危害を加えないのならオボロに免じて見逃してやる。オボロも頼み事をした人間が殺される事なんて願っちゃいないはずだからな」
「そうね、私もこれで用は済みましたし、引くとしますわ」
宗一としては非戦闘員がこれだけいる中、全員を護りながら戦うのは避けたかったし、カルラとしても連戦に次ぐ連戦で避けられる戦いなら避けたかった。
そして、カルラは元来た方向に去ろうとしていた。

「待って、カルラ!」
その背中に声をかけたのは耳が聞こえなくオボロを殺したと唯一聞いていないウルトリィであった。
そして、カルラの方に駆けていったウルトリィの手にはハクオロとユズハの子、ミコトの姿があった。
413あるじ様の意志<修正版>:04/06/25 17:16 ID:2+fGsIjw
「――カルラ、あなたの事だから行くなと言っても聞かないでしょう。けど最後にこの子を、ハクオロ様の子を抱いていって下さいな。ハクオロ様もそれをきっと望んでますわ」
(皆あるじ様の意志がそれほど大切ですの……)
あるじ様自信ではなくそれに付随する物モノを。
ベナウィもオボロもカミュもウルトリィもそれを選んだ。

「ふぎゃぁ」
そして、カルラが見た先にはあるじ様の残した物の代表――ミコトがいた。
何故かは解らない、気が付いたらそれをウルトリィから渡され抱いていた。

「きゃっきゃっ」
さっきまでこの子を殺すとか言っていた彼女に向かってミコトは笑い手を伸ばした。
暖かい。
けれど、もう既にカルラの手は血で汚れすぎていた。
414あるじ様の意志<修正版>:04/06/25 17:18 ID:2+fGsIjw
「――そうね、考えを改めたましたわ。確か生き残る枠は2人でしたわね。あるじ様の子だけは殺さないし、殺させもしないと誓いましょう。それまであなた達にこの子のおもりは任せましたわ。行動するのにはその子はさすがに邪魔ですしね」
そう言ってカルラはミコトをウルトリィに返して笑った。
まだ、耳の聞こえないウルトリィはその笑みをどう取ったのだろうか。

「カルラ、この争いの首謀者を倒す方法が見つかったのよ。あなたさえよければまた戻ってきて下さいね。何枚かの絵の描かれた紙、それがこの争いを止められる物なんです。それをもし見つけたら、また戻っていって下さいね……」
ウルトリィは何も聞こえなく、何も知らなかった。
だからこそ、カルラを、かつての仲間を心から信じていたのだった。

「確かにあるじ様なら力を合わせて――悪いやつを倒して――そして生きて帰ろうっておっしゃったでしょうね、けど力を合わせるのには遅すぎるのよ……」
そう呟くとカルラは振り返らず暗い森の方へ去っていった。
誰にも届かなかった最後の呟きと一緒に……


【065 那須宗一  所持品:長弓、矢20隻 宗一の手記 クレイモア一個 ゾリオン(使用回数3回) 電池一個
 ペットボトルのジュース】
【025 カミュ   所持品:気配を消す装置 レミントン・デリンジャー(装弾数2発 予備弾4発】
【078 伏見ゆかり 所持品:グレネード(殺傷力は無し。スタン&チャフ効果)】
【09番 ウルトリィ 状態:聴覚麻痺 所持品:ユズハの服、ハクオロ?の似顔絵、毛布2枚(船内にも何枚か有り)
 ミコト、キーホルダー、食料5日分】
【86番 御影すばる 所持品:トンファー、グレネード(殺傷力は無し。スタン&チャフ効果)、小スケブ、ペン、似顔絵(うたわれキャラのもの)、あさひのサイン】
【026 カルラ 自分の大刀 背中・肩を強打 右手首負傷、握力半分以下】

【カルラは別に改心したわけでは無く迷ってます。ミコト以外を狙うマーダーになるか、タロットを探しに出るかはご自由に】
【時間はさほど経って無く深夜のままです】
415あるじ様の意志<修正版>:04/06/25 17:25 ID:2+fGsIjw
>>411-414
>>406-409の修正版です
修正箇所が多かった為本文をそのまま訂正して再投下しました
修正場所
・聖上からあるじ様に全て置き換え(凄いミスでした^^;)
・カミュの台詞をちょい変更

あと、意見があった場所ですが
・ウルトとの台詞は意思疎通は最低限ラインまでしかできていません。カルラはちゃんとやり取りしていますが、ウルトは思いこみで喋っています。
・すばるはほっとくとカルラにかかっていっちゃいそうなので敢えて書くのを放棄してました^^;駄目?
416名無しさんだよもん:04/06/25 23:24 ID:e9V/a73E
>>411-414「あるじ様の意志」は審議の結果NGとなりました。
書き手、及び読み手各位は御留意ください。
417名無しさんだよもん:04/06/25 23:30 ID:hreRb0D6
>>416は荒らしです。放置してください。
418名無しさんだよもん:04/06/25 23:44 ID:DO9in89+
>>417が荒らしです、>>411-414はNGです。
419名無しさんだよもん:04/06/25 23:50 ID:Avs1sG9Q





この企画、2ちゃんねる外でやった方がいいんじゃないのか?マジで




420名無しさんだよもん:04/06/26 00:07 ID:rcV4EicP
葉鍵ロワイアルIIは審議の結果NGとなりました。
書き手、読み手及びヲチャー各位は御留意ください。
421名無しさんだよもん:04/06/26 01:14 ID:QLBmxPFd
>>420
もっと丹念かつ説得力のある文章で皆にその事を伝えてくれ。
422名無しさんだよもん:04/06/26 11:42 ID:j9Vkg4ex
>>411-414は質が低いのでNGです。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087098105/
をお読みください。
423うつせみ:04/06/26 15:50 ID:uSIqBIe7
 ――いろいろなことが、あった。
 殺した。死んだ。出遭った。去った。
 恨まれ、憎まれ、そして赦された。
 ――ほんとうに、いろいろなことがあった。

「ふう……」
 小さく、そっとためいきをつく。
 エルルゥさんが去ってしばらく経った。古河さんに水分を補給させ、広瀬さんとふたりで見張りを務めることになった。
 彼女は「みんなが戻ってくるまでの間だから」と私に交代をすすめたが、そんな気分にはなれなかった。

 ふと見ると、そんなことを言っていた広瀬さんが、柔らかな月光を背中に浴びながら、舟を漕いでいる。
 なまじ寝かけただけに、集中を保てないのだろう。
 ――彼女も、そして先ほどのオボロという男も、仇であった私のことを赦してくれた。
 もちろん諸手をあげてというわけではないし、それぞれ思うところがあったのは分かっている。
 それを救いの手として素直に喜べるほど単純ではないし、そうではないからこそ赦されたのかもしれない。
(――でも)
 栞は、北川くんは。そしてトウカという剣士は。
 夢で救われることもある。だが私は、それを真の救いとしてしまってはいけない。
 ……なぜなら、自分が自分を赦していないからだ。一生、赦せないかもしれない。
 
 
424うつせみ:04/06/26 15:52 ID:uSIqBIe7
「ふふふふふ」 
 ゲームの開始以降、晴香は危険な遭遇を恐れ、住宅街を避け、森や海辺を彷徨っていた。
 しかしいまの彼女は、殺意だけを残し、ほかの思考を著しく減退させている。そうした配慮は、まったく無くなっていた。
 ただ獲物を求めて、人の匂いのするほうへと、引き寄せられるように進んでいた。
 かつて美坂香里が、そうしたように。

 ふと立ち止まる。朧月が窓枠の中に、何者かの後頭部を浮き立たせていた。
 舟を漕いでいる。半ば眠っているのだろう。
 あの髪に、見覚えがあった。一度は対峙し、そして殺せなかった少女だ。
 銃を構え、頭骨を弾丸で叩き割るイメージを思い浮かべる。
「――?」
 そのとき部屋の奥で、他の何者かが動いたようだった。
 用心と言うよりも、好奇心に近い感情をもって晴香は銃をおろし、反対側に回ってみることにした。
 
 
「ふう」
 もう一度、ためいきを重ねる。
 広瀬さんを起こさぬよう静かに立ちあがり、彼女が背を預けているのと反対側、庭に繋がる窓際へ向かう。
 部屋へ射しこむ微弱な光のせいか、窓硝子に自らの姿が映りこんでいた。
 治療はなされているが、呆れるほどぼろぼろだ。そこに映る身体も、映らぬ精神も、ぼろぼろだった。
 穏やかさを感じさせるのは瞳だけであり、その他はなにもかもが、傷付いていた。
(……情けないわね)
 あまりの惨状に、思わず怯む。
 眼をしばたかせ、首を振り、意識を締め付ける。
 
425うつせみ:04/06/26 15:53 ID:uSIqBIe7
 そしてふたたび見た自らの姿に――異変が、あった。
「……なっ!?」
 その姿は悪鬼のようであり、瞳は狂気を宿していた。
 これが、私か。私の、本性なのか。
(違う。違う!)
 否定してみる。しかし心に響く応えはない。
 そうだ。これはまさしく、先ほどまでの私の姿だ。

 自らを戒めて、もう一度その姿を見る。赦されぬ私の姿を、窓の外に認める。
(これが――私なの?) 
 覚悟を決め、狂った表情を目に焼きつけようとする。
 そこで思わず、絶句した。

 ――その顔が、にたりと笑ったのだ。

 嘲笑と敵意の波を感じ、全身に寒気が走った。
 そこまで来て、ようやく整理がついた。これは私ではない。驚くほどよく似ていたが、私ではない。
 この女を知っている。自失していた私の前を、歩いていた女。
 いまは逆転しているが、きっと私はこんな表情を、そして姿をしていたのだろう。

 みたび自らの姿を認めるために、窓硝子へ視線を向ける。
 敵意に対抗するために、厳しくも余裕のない表情にかわった、私が見える。
(そう、これがいまの私)
 小さな自己満足を感じるが、長い間ではなかった。

 ――硝子の向こうの「私」が、何かを手にしたまま腕を振り上げた。

「みんな! 起きなさい!」
「……え? ――え!? あ、あいつ、さっきの!」
「ん……? あ……!!」
 みんなが目を覚まし、恐慌に陥る。同時にがしゃん、と音を立てて窓硝子が砕け散った。
 そこに映っていた、私の姿が霧散する。
426うつせみ:04/06/26 15:55 ID:uSIqBIe7
 
 ――目前に悪鬼のような、かつての私のような、狂気の少女が迫っていた。

「広瀬さん! 古河さんをつれて、逃げなさい!!」
 振り向くことなく叫んで、少女を睨みつける。みんなと一緒に逃げようとは思わなかった。
 予感がする。誰かが止めなければ、皆殺しだ。
 そして、それを阻害することで、自分を赦せるようになるかもしれない。

「香里さん、ひとりで残るなんて駄目です!」
「そうよ、だいたいそいつは、北川の仇じゃない!」
 おめでたいことに、口々に反論してくる。
 ただ敵対する少女だけが、無言で斬り込んできた。
「……仇だったら! それこそ――私の、責任よ!」
 すんでのところでカッターの刃を避け、どうにか腕を抑えこむみ、言い返す。
 ちょっと卑怯だったかもしれないが、自分の罪悪を見せつけるようにして、仲間の反論を封じようとしてみる。

「くっ……でも、逃げろって言ったって、みんなどこに行ったのか分からないのよ!?」
 きっと本性は世話焼きなのだろう。広瀬さんが、なおも食い下がる。
 たしかに、それほど遠くはないとしても、道案内なしにエディさんたちの所へたどり着けるとは思えない。
 しかし誰もまともな武器を持っていない以上、全員ここにいたところで、助かりはしないだろう。
「とにかく、どこでも! どこでもいいから、とにかく逃げて!!」
 恐ろしいほどの腕力を発揮する相手に、跳ね飛ばされそうになるのを耐えながら、私は叫んだ。
 その叫びを止めようとするかのように、組みついた腕と反対の腕が伸びてきて、私の喉もとを捉える。
「ぐ……っ」
 気管を砕かんばかりの握力で締めつけられ、あっという間に呼吸と血液の循環を封じられる。

「こいつ!」
 広瀬さんが割って入った。ありていにいうと、相手の腕ごと蹴り飛ばしたのだ。
 戒めから解放されたが、巻き込まれるように倒れた私を助け起こし、古河さんに手を貸しながら彼女が叫ぶ。
「きっと……きっと、みんなを呼んで来るから!」
 そう言って、ちらりと残された荷物のほうへ目配せをすると、向きを変えて扉へと向かった。
 たいした武器は残っていないはずだが、無いよりはましだろう。
427うつせみ:04/06/26 16:03 ID:uSIqBIe7
 
「――ええ。それまで、頑張るわ」
 背中に語りかける。
 殺意に狂った少女を相手に、ふたりが逃げ切るまで、徒手空拳の私が持ちこたえる。
 病人の古河さんを連れた広瀬さんが、どこへ行ったか分からないエディさんたちを連れてくる。
 どちらも、限りなく不可能に近い夢見ごとだった。奇跡的と言っていい。

(――起こらないから、奇跡っていうのよ)

 そうひとりごちて、私は笑った。
 立ち上がった少女もまた、笑っていた。

 ――晴香と香里は、互いに笑みを浮かべて対峙した。
 
 
【091 巳間晴香 コルト25オート(残弾2) カッター 相当量の食糧と水 発狂中】
【087 美坂香里 所持品なし 怪我は処置済】
【硝子の抜けた窓枠をはさんで対峙】

【072 広瀬真希 所持品なし】
【081 古河渚 所持品なし 発熱中】
【ふたりの荷物は部屋の中】【多めの食料と水】【多めの食料と水 『超』『魁』ライター 出刃包丁 便座カバー】
【部屋を出て行こうとするところ】

【深夜】
【晴香とエディ、蝉丸、亮たちの行動時間を考慮して、調節してください】
 
428名無しさんだよもん:04/06/26 16:13 ID:cj9f7TRj
>>423-427は致命的欠陥があるので正式にNGです。
経緯は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087098105/
をお読みください。
429名無しさんだよもん:04/06/26 16:37 ID:4jfnBweh
>>423-427はなんか読むのタルいのでNGです。
430名無しさんだよもん:04/06/26 19:09 ID:+VpYNk0o
>>428-429
もうマンネリ化してきたのでこの手の荒らしはNGです
431名無しさんだよもん:04/06/26 21:12 ID:xMjm3R+y
つか、>>423-427はどうみても荒らし投稿だろ?
432 ◆OC8M5Yte3A :04/06/26 22:58 ID:VPkhc7Ze
>>352-356
は連鎖NGということで正式にNGにします。混乱を招いて申し訳ございません。
433名無しさんだよもん:04/06/26 23:49 ID:qgs254Jg
>>348-350「惨劇」はNGになりました。
経緯については、感想スレ12の382までをお読みください。

【ぎぎぎ】実況★葉鍵ロワイヤルII 12【ぎぎぎ】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087831397/l50

 今回は特殊な例なので、6/27の昼12時から6/30の昼12時
 になるまでを「惨劇」NG扱いとしての新作募集期間とします。
 当然ながらコピペ投下やコピペ改変作品は禁止とします。
 フライングにも注意してください。

 この期間中に新作が無い場合、6/30の昼12時から7/3の
 昼12時までを「惨劇」通し扱いとしての新作募集期間とします。
 以下交互に繰り返しです。
434名無しさんだよもん:04/06/27 00:18 ID:isJfUxqU
>>433は荒らしです。惨劇は通しです。今後こういった荒らしが湧くのを防ぐためにも、作者様は早く惨劇の続きを投下してください。
435名無しさんだよもん:04/06/27 00:41 ID:PDK227oS
最近もっともらしい事書くNG荒らしが多くて困るな…
436名無しさんだよもん:04/06/27 01:08 ID:n3o+7EWt
もう無茶苦茶だな・・・
437名無しさんだよもん:04/06/27 02:07 ID:lRQKlbyU
>>433
NG扱い期間を先にもってきてる時点で荒らし確定。

誰もがNGだと思っているのなら、通し期間を先に設け、
本当に続きを書こうとする人間がいないことを証明するのが必定。
438名無しさんだよもん:04/06/27 02:22 ID:YLxNdPHc
>>434-437
通し派さん、大人げないですよ。
議論で負けて悔しいからって、荒らしはやめましょうね。
439名無しさんだよもん:04/06/27 02:31 ID:vzY/HQaD
むしろ通しで続き書くもNGでやり直すも12時解禁早い者勝ちにするとか面白そう
440名無しさんだよもん:04/06/27 02:43 ID:Byy/wXjw
>>438よ、見苦しい。NG派の恥だから辞めて。
441名無しさんだよもん:04/06/27 03:02 ID:K8O2Hyiz
このスレうんこ!

うんこ!

うんこ!

うんこ!

うんこ!

うんこ!

うんこ!

うんこおぉぉおっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉぉお
442名無しさんだよもん:04/06/27 03:08 ID:l6VNH2Vf
>>438
負けたのは阪神だよ?
どう考えても流れに逆らっているのはNG派だろ?
443名無しさんだよもん:04/06/27 03:08 ID:z5RYwrtJ
高木ロワイヤルにタイトルを変更したいのですが
444春子の一言:04/06/27 03:10 ID:l6VNH2Vf
そして晴子が一言…
445名無しさんだよもん:04/06/27 03:14 ID:z5RYwrtJ
こんばんは、ラッシャー晴子です
446名無しさんだよもん:04/06/27 03:37 ID:HMHs6MJ5
晴子んの不思議な旅
447その闇の中で、人は:04/06/27 12:00 ID:6nz3adAR

―――ウチと、明日菜はなぁ―――ッ!!
   無抵抗の人間をッ 騙してッ 殺してたんやぁァ―――ッッ!!


凍りつく刻。
ひとを殺すひと。
殺人者。
その瞬間、誰もが動きを止め、そして誰もが、動かねばならないことを理解していた。
護るために、戦うために―――殺すために。

「お母さん?――おかあさんっ!」

刹那の均衡を崩したのは、観鈴の叫び声。

最も早く反応できたのは、岡崎朋也だった。
彼は知っていた。或いは、知ってしまっていた。
人間が踏み越えてはならない最後の一線を、易々と越えてしまえるモノが、この島にはいる、と。
麻生明日菜が、人を殺し。
そして今、自分たちの前で武器を取ろうとするのなら。
目の前のこれは、もはやヒトではなく―――敵だ。
長い黒髪の後姿が、黒衣の女の鬼気迫る笑みが、芳野祐介の眼が、脳裏をよぎる。
握り締めたビームサーベルの切っ先を、明日菜に向けるのに、躊躇いはなかった。
この距離、斬撃で間に合わないのなら―――撃つ。
時紀に視線を向け、動きの止まった明日菜に向けて、スイッチを押そうとした、そのとき。

真後ろからの衝撃が、朋也を突き飛ばしていた。
448集中線:04/06/27 12:00 ID:aoxmZXbZ
 その洞窟の中は、様々な惑いで入り乱れていた。
 恐らくは。最初に静寂を破り、口火を切った者が一番現状を把握し、落ち着いていた。
「時紀クン。アタシを信じて。それとも……信じられない?」
 洞窟の入り口へと後ずさりながら。そう呟く明日菜。
(明日菜さん……?)
 そんな光景を呆然と見て、あっけに取られているだけのその自分の姿は、
 多分まるで滑稽だろうと、時紀は心のどこかでそう思う。それもまた場違いな考えだ。

 ようやく、晴子の告白の叫びの内容と、その意味が時紀の頭の中に浸透していく。
「お母さん?――おかあさんっ!」
 母を呼ぶ観鈴の叫びで、ようやく呪縛から解き放たれたかのように時紀の口が動いた。
 身体の方は、まだ金縛りにあったように動かない。
「明日菜さん!騙して殺したって……。一体どういうことなんですか? ……晴子さんは!?」
 だが結局、真の意味では、晴子の告白も、明日菜の問いも。どちらの話も頭で理解できていたとは言い難かった。
「答えて。信じられない?」
「明日菜さん!?」

 そもそも、何を。どれを信じればいいのか。一体明日菜の問いが何を指して言っているのか。
 時紀には分かっていなかった。時紀の口から答えは、出ない。
 目まぐるしく変わる状況に、頭がついてこれない。
449集中線:04/06/27 12:00 ID:aoxmZXbZ
 ――明日菜にとっては。
 彼が分かってなくとも、彼からの答えがなくともよかったのだ。
 こんな状況じゃ分からなくても当然。混乱しても当然。あのセリフ一つで全てを察しろというのはどだい無理な話。
 というか、明日菜も自分で何を言ってるかなんて深くまでは考えていない。信じてくれれば嬉しいのは事実だったが、それだけだ。
 ただ単に、適当な言葉でさらに場を混乱させれば、時間が稼げて当然。
 隙は、たくさんあった。

 洞窟内のその場にいた誰もが、明日菜の動作に対応ができなかった。
 悲しみに湛えられた明日菜の表情と、そのセリフに。全員が明日菜の顔に注意を引かれていた。
 明日菜の手元には誰も注目していなかった。

「……!」
 それに最初に気づいたのは、朋也だった。気づいた時にはもう遅い。
 明日菜の手の中に、いつの間にやらフッと銃が現れていた。
 その銃口が向けられた先は。入り口に、明日菜に。そこに一番近い位置にいた時紀か朋也か。
 暗くてはっきりとまでは分からなかったし、今の朋也の頭は、この状況に的確に対応出きる程冷静だとも思えなかったが。
 とにかく。サッと血の気が引いた。――だが、それも束の間。

「――っんのっ! そーはさせるかいっ!」
 朋也の血の気が引くとほぼ同時。叫び声を張りあげながら、入り口から飛び込んできた疾風の影。
 もう一人、現状を的確に把握していた人物。明日菜を追ってきた神尾晴子。
(――って、戻ってくるの早すぎますよ晴子さん!)
 明日菜の行動は中断を余儀なくされる。叫んでもなお全力で走っていた晴子に追いつかれてしまった。
 明日菜が歯噛みしながら、さらに入り口の方へと一歩ステップを大きく踏んで。その勢いごと身体を半回転させる。
 洞窟の入り口の方角。そこからの刺客。
 漆黒の影に向けて、水の流れるような滑らかな動作で銃口を滑らすと、少しの躊躇もなく発砲した。

 ダン!

 閉じられた空間の中では、その音もまるで轟音だった。
450その闇の中で、人は:04/06/27 12:00 ID:6nz3adAR

眼前に立つ少年。
その手に握られた薄紅色の光は、きっと人を殺すものだ。
少年はそれを、躊躇いなく明日菜に向けようとしている。
三井寺月代は確信した。
この少年は、やはり―――人を殺すのだ。
その刃が、今まさに振るわれようとしているように見えた。

それで充分だった。
月代は全体重をかけて、目の前の背中に飛びついていた。

 ―――騙して、殺して、無抵抗の人間を、殺して、殺して、

月代の内側には、晴子の怒号が残響を残していた。
それは非日常の単語。
この狂った島の日常。
心の中いっぱいに膨らんだ初音の顔が、騙して、殺して、騙して、

(―――もう、嫌だ……!)

橘と共にいた時間が、傷を癒してくれたはずだったのに。

「逃げて―――橘さん、みんな、はやく……!」

もう、誰かが殺されるのを見るのは嫌だった。
誰かを殺そうとする誰かが、嫌だった。
それだけで、充分だった。
もがく少年の背に、必死でしがみつく。
451集中線:04/06/27 12:01 ID:aoxmZXbZ

 一発の銃声。その音で、ようやくその場にいた者の金縛り――にあったかのような硬直――が解ける。

「そんな振り向きざまのナマクラ銃が当たるかい!このアホンダラの素人がっ!
 やたらとトリガーハッピーすりゃいいってもんやないで!」
 人と人とが狭い空間で入り乱れる。

 まず最初に、晴子が背後から飛びつくようにして明日菜に襲いかかる。いや、実際飛びついていた。
「そんな素人はあなたですっ!……あなたがこうまでするなんて、思っていませんでしたっ……!」
 二つの影が重なり合う。激しく絡み合う二人があげた呻きや呼吸さえも、壁によって辺りに大きく反響する。

 銃を持った明日菜の手首を、晴子が「もう撃たせるか」とばかりに力強く捕えて捻る。
 それを振り払おうと、もう片方の開いた手をふりかざす明日菜。
 だが、その明日菜の手も、晴子がもう一方の手で防ぎ、それをさせまいとする。
 明日菜は、両の手を塞ぎにかかった晴子の腕を振り千切ろうと、
 晴子の身体に蹴りを入れながら、足をかけながらガクガクと自身の上体と腕を前後に揺らした。
 互いに譲らない、明日菜と晴子の強い意思の込められた感情が音となり、洞窟内に響き渡る。

 その二人を。――特に、発砲した明日菜を取り押さえようと、朋也と時紀が一気に間合いを詰める。
 武器をかざしたりはしない。先ほどまで平和に語りあっていた相手に振りあげられるような武器も心も持ちあわせてはいない。
 二人の心の中には、いきなり斬ろう、といった類の選択肢は浮かばなかった。
 やるべき事。やっていいこと。まずは、この状況を無理矢理にでも治める。少なくとも、それは正しいことのはずだ。

「がぁぁっ!」
 その、明日菜を押さえつけようとした朋也と時紀の足が、晴子の悲鳴に一瞬だけ止まる。
452その闇の中で、人は:04/06/27 12:02 ID:6nz3adAR

明日菜の視界を、薄紅色の光が埋め尽くした。
身を引く間もなく、戦慄に身を凍らせる。
光の刃が、文字通り紙一重のところを掠めていった。
それでようやく、時紀の眼から視線を逸らすことができた。
それは、訣別。
彼の手を取って、誰かの輪に加わって、共に道を往く。
そういう甘い幻想との、最後のお別れ。
一切の迷いを振り捨て、奪い、殺し、哂うために、ただ為すべきを為す―――。

麻生明日菜が、動き出す。
その手には南部。
奪い、殺す、決意。
453その闇の中で、人は:04/06/27 12:03 ID:6nz3adAR

春子の怒号が響き、観鈴が叫び、月代が飛んで朋也が倒れこみ、そして明日菜が走り出す。
激変する状況に、木田時紀は対応できずにいた。
一瞬だけ見交わした明日菜の瞳が、脳裏に残像を残していた。
鎌を握り締めたまま立ち尽くす。

眼だけが、明日菜を追っていた。
走り出す明日菜の行く手には壁。
そこに置かれているのは―――晴子の、荷物。
軋みをあげて、ようやく頭脳が回りだす。
それは、つまり。

(明日菜さんが目指してるのは―――)

たしか、きっと、とりかえしのつかない何かが、あそこには、
ようやく声が、出た。

「銃を―――!」

叫びながら、明日菜の背に、手を伸ばす。
届かないことなど、わかっていた。
454その闇の中で、人は:04/06/27 12:03 ID:6nz3adAR

橘敬介もまた、混乱していた。
晴子の絶叫。観鈴の悲鳴。月代の叫び。少年の声―――
月代の懐中電灯から、そして朋也のビームサーベルから放たれる光が大きく揺れる。
闇。光。影。その向こうには、晴子のUZI。
走り来る明日菜。その手には銃。腕の中の観鈴。
混沌とする思考からは結論が出てこない。
それでも、身体は反応していた。
咄嗟に観鈴の身体を離すと、壁の荷物に手を伸ばす。
敬介に向けられる、明日菜の銃口。

銃声一発。
苦痛も衝撃も、無かった。

(―――そうか、光源……!)

少ない光源が大きく揺れることで光と影が交錯し、遠近感が喪われている。
その上、動く的に疾走しながらの射撃。
重なった偶然は、最後の時間を稼いでくれた。

(ほんの少しだけ、こちらの方が早い―――っ!)

膝立ちから、滑り込むような姿勢でUZIを手に取る。
そのまま庇うように身体を捻り、覆いかぶさろうとする、その視界に飛び込んできたのは、
明日菜のバッグ。
疾走の勢いと遠心力を乗せた容赦も躊躇もない一撃が、顔面に放たれた。
鼻柱に白い衝撃。
ノイズに満たされる感覚の中で、手の中のUZIを全力で投擲。
直後、後頭部に強烈な一撃。
岩壁に叩きつけられたと理解する間もなく、一気に意識が刈り取られた。
455その闇の中で、人は:04/06/27 12:04 ID:6nz3adAR

伸ばした手は届かず、UZIは大きな弧を描いて闇の中に転がっていく。
思い切り振り切ったバッグは、敬介に叩きつけた衝撃で手から離れていた。
舌打ち一つ、明日菜は間髪入れず、腰のナンブに手を伸ばす。
触れたか触れないか、その瞬間に身体が引き倒されていた。

「明日菜さん―――ッ!」

木田、時紀。
男の体重に飛びつかれ、大きく傾ぐ明日菜の身体。
そのまま、もつれ合うようにして地面に倒れた。
荒い息遣いだけが相手の存在を伝えていた。
もはやどちらが上でどちらが下かも判らぬ暗がりで、文字通り闇雲に手足を振りまわし、
互いを抑えようとする。
瞬きする間もなく体を入れかえ、幾呼吸めか、明日菜が下になったとき。

「うぁッ……ァァッ!!」

左肩に、考えられない激痛が走っていた。
456その闇の中で、人は:04/06/27 12:06 ID:6nz3adAR

その一瞬、周囲のすべてが凍りついたように、時紀には感じられた。
底知れない戦慄を覚えていた。
鈍い手ごたえ。
まるで、刃物で肉をさばくときのような。
ぬめりとした、重い手応え。

(……俺は、何を、持っていた―――?)

明日菜の背に伸ばした左手。
右手には、そう、何を握り締めていた。
自分は何を持ったまま、明日菜に飛びついて、もみ合った。
右手から何かが滑り落ちて、硬質な音を立てた。
空になった手指が、強張ったように震えている。

(見ちゃダメだ、絶対にダメだ、考えるな、考えるな―――!)

自分は、ただ明日菜に殺してほしくなかったのだ。
このゲームを潰すと決めた。
だからもう、誰かが誰かを殺す必要などないのだ。
この島で弔った多くの死者たちのような犠牲者など、もう必要ないのだ。
そうして、力を会わせて。
誰もいなくなった日常に、帰るのだ。
457その闇の中で、人は:04/06/27 12:07 ID:6nz3adAR
(―――違う! クソッタレ、違う、違う、違うだろ!)

思考がまとまらない。
何か大事なことから眼を背けるようにして、何も見ず何も聴かず、ただ無為で無駄な思考だけが
垂れ流されている。
考えなければならないことは、見なければならない現実は、きっと他にあったはずなのだと、
明日菜、そう、明日菜のことだ。
自分はただ、誰かを殺す明日菜の姿を、目の前に突きつけられるのだけが嫌だったんだと、
たとえば誰かをどこかで殺していても、自分の前でさえいつも通りの明日菜でいてくれるなら、
自分は、いつも通りの自分で明日菜と接してあげられ

思考は、唐突に途切れた。
何かが弾けるような、軽い音。
同時に襲い来る、異様な感覚。
腹が、熱い。

熱は熱を呼び、膨らんだ熱がまた新たな熱を生んだ。
それが全身に拡がり、頂点に達しようとしたとき。
熱は突然、寒気に変わった。
熱くて、寒くて、苦くて、痛い。

(痛い―――?)

そう、痛い。これは苦痛。痛い。痛い。痛い痛い痛い。
絶叫が、我知らず迸っていた。
458その闇の中で、人は:04/06/27 12:09 ID:6nz3adAR

ぬるり、と。
温い、滑りのある何かが、時紀の身体から滝のように流れ落ちてきていた。
胸に伝わるその感触を楽しみながら、明日菜は微笑むように口の端を上げる。
右手には、薄く煙を上げるナンブ。

この左肩から流れる血は、きっと地面に流れて時紀の血と混ざり合っている。
激痛と昂奮の中で熱い吐息をつきながら、明日菜は腕を伸ばす。
絶叫をあげ続けている時紀の上体に絡めるようにして、身を起こした。
座位で交わる恋人同士のように、ゆったりと時紀を抱く。
触れ合う部分からは、快楽の代わりに流れ出す血潮の感触。

「―――大丈夫。大丈夫だからね、時紀クン。こんなの痛くないよ。許してあげる。
 うん、大丈夫。あたしがちゃんと、生き返らせてあげるから―――」

時紀の首筋に回した右手で、愛でるように頬を撫でる。
絶叫は既に、掠れた荒い息へと変わっていた。
奇妙に歪んだリズムで息を漏らす、その唇をついばむように、唇を重ねる。

 ―――だから、さよなら。

一時の別れの言葉は、声に出さなかった。
吐息だけを時紀の内に送り出すようにして、唇を離す。
直後、二発目の弾丸が、時紀を貫いていた。
459その闇の中で、人は:04/06/27 12:09 ID:6nz3adAR

洞窟に響くのは、おとうさん、おとうさんと叫ぶ声。
絡み合う少女と少年の、悲鳴に近いやりとり。
そしてたった今、光届かぬ奥から少年の絶叫が響き渡った。

神尾晴子が飛び込んだのは、そんな闇の中だった。
遅れたのは、ほんの数瞬のはずだった。
状況は、致命的に悪化していた。
460 ◆hLSkVVVqd. :04/06/27 12:10 ID:6nz3adAR

【031 木田時紀 死亡】

【002 麻生明日菜 南部十四年式(残弾5)】
【022 神尾晴子 怪我は応急手当済み】
【085 三井寺月代 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル×2、リュック(智代のCD 裁縫道具 医療用の針と糸 乾パン カップ麺 ホイッスル シェラフ 方位磁石 メタルマッチ 救急セット)】
【055 橘敬介 ピアノ線 大判ハンカチ 筋弛緩剤を注射器(3セット)メモと鉛筆、食料 腕に万国旗 手品用品 鉈 文化包丁 [意識不明]】
【023 神尾観鈴 所持品なし 右耳の鼓膜が破れている 応急手当済み】
【004 アルルゥ 所持品なし】

【歪んだマイクロUZI(残弾20発)は洞窟の闇の中に、鎌は明日菜の傍に、朋也・宗一・芳野の写真は
 時紀のポケットに、ケーキ、ショートソード、千枚通しの入ったそれぞれの荷物は放置】

【残り32人】
461集中線の作者:04/06/27 12:13 ID:aoxmZXbZ
割り込みごめんなさい。
>>448-449 >>451 は無視して下さい。
462名無しさんだよもん:04/06/27 12:29 ID:VlyRRP6K
>>447-460
死に方がぞんざいなのでNGです。
463狼煙-準備-:04/06/27 14:55 ID:Yy+CR5DR
『爆弾――これを解除することが優先、手がかりは低いがある。
 篁――このゲームの主催者だと思われる。手を出すな。
 この世界――色んな世界、時間軸から参加者が集められている所から見てこの島もどの 世界なのか判断は出来ない。ただ、その不思議な事を認めなければ今の状態は説明でき ない。
 帰るために必要――地下一階のコンピュータールームに行き、“塔”“魔術師”“月” “恋人”の順でカードをセンサーに通す。この単語から見てタロットカードだと思われ る。
464狼煙-準備-:04/06/27 14:57 ID:Yy+CR5DR
 危険人物――芳野祐介(20より上の男性、体格は普通)、石原麗子(眼鏡をしている)、カ ルラ(大刀を持っている)、無口で小柄な少女、焦茶色の波うった髪の娘
 信頼出来る人物――光岡悟(蝉丸さんの知り合い)、エディ(黒人)、リサ(金髪の女性)
 今確認できている人物――アルルゥ、石原麗子、ウルトリィ、エディ、エルルゥ、カミ ュ、カルラ、クーヤ、坂神蝉丸、桜井あさひ、
 那須宗一、伏見ゆかり、ベナウィ、三井 寺月代、御影すばる、光岡悟、御影すばる、湯浅皐月、芳野祐介、リサ=ヴィクセン、
 薄い茶髪の冷たい感じの女、無口で小柄な少女、焦茶色の波うった髪の娘――計23名
 3回目の放送時の残り人数――49名』
465狼煙-準備-:04/06/27 14:57 ID:Yy+CR5DR
「こんなもんだろ……」
宗一はすばるから新しく受け取ったスケブの紙に裏表ぎっしりと今解っている事を書き込んだ。
もちろん、この紙には既に死んでいる人物などが混ざっているがそんなことは宗一には解らなかった。
ちなみに、薄い茶髪の冷たい感じの女というのは宮路沙耶、無口で小柄な少女は上月澪、焦茶色の波うった髪の娘は美坂香里のことである。
23名というのは全員に会ったわけではないがすばるやカミュ、そして前に蝉丸から聞いた人物の名前も合わせて書いてみた。
だが、それにしてもまだ半分以上の人物は謎に包まれている。
既に死んでしまったオボロやその他も合わせると半分を超えているかも知れないが。

「カミュ、ウルトリィ、すばるこっちに来てくれ。今から話したい事がある」
カルラとのいざこざがあってすっかり忘れていたけれど、爆弾を止める為に別行動を取っていたのだ。
ここに戻ってきたのもナイフを取りに来る為だし、ナイフが無いと解った以上次の行動に移るべきだ。

「なんですの〜?」
そう考えている内にすばるとミコトを抱えたウルトリィ、それを連れてきたカミュが集まってきた。

「蝉丸さんを待っていたいがやけに遅い。だから、俺は次の行動に移ろうと思う。カミュは知っているが俺は爆弾を解除しようと思う。篁の所に攻め込んだって爆弾があれば終わりだからな。」
「蝉丸おじ様はどうするの?」
「だから、二手、いや詳しくは三手に分かれようと思う。蝉丸さんを待つ待機班と、タロットカードを探しながら同士を増やす班、そして爆弾を解除しにいく二つの行動班だ」
女性が殆どの上、赤ん坊までいる。
確かに無謀かも知れない。
いや、無茶苦茶なのだろう。
だけど、無茶苦茶でも行動しなければならない。
こうしている間にも人は死んでいく。
それに、蝉丸さんが帰ってこれないのにも理由があるのかも知れない。
466狼煙-準備-:04/06/27 15:00 ID:Yy+CR5DR
「まず、待機班はすばる、ウルトリィ、ミコト。恐らく一番危険な班だと思う。そして、この場所はもっと良い場所が見つかるまで作戦の拠点、そして怪我人や非戦闘員の集まる場所としたい。
なるべく早く、蝉丸さんなり、信用できる男の人をそちらに回すことは約束する。けれどそれまではすばるがウルトリィとミコトを一人で護る事になる。一番辛いと思うがお願いできるか?」
「もっちろんです〜。このすばるが正義の味方になってウルトリィさんとミコトちゃんを護ってみせるんですの!どんな敵が来ても大影流合気術でぽいっぽいっと捨ててみせますの!」
彼女ならそう答えてくれると思っていた。
一番大変な護るという役目、それを俺は素直な彼女に押しつけてしまったのかも知れない。

「……ごめん」
「なに謝っているんですの?大丈夫ですの〜!」
彼女――すばるはとっても強かった。
なら、その強さを信じるしかない。

「――次の班はゆかりとカミュにお願いしたい。動く時は前もやっていた通り、気配を消す装置を展開して行動する。常に何か役に立つ物、そしてタロットカードを探しながら動いて欲しい。最初の目標は蝉丸さんを探す事になると思う。
蝉丸さん意外にもここに書かれている信頼できる人物なら声をかけて欲しい。そして、その人物をさっきも説明した通りすばる達の待つここに案内してくれ。他にも頼りになりそうだったら仲間を増やし一緒にタロットカード探しをしてくれ。ここの班は決断力が頼りだ。
正しい決断ならばみんなの生存確率がぐっと増すし、間違った決断なら即、死に繋がってしまう。大変な事を押しつけているが、お願いできるか?」
「―――愛する人の、頼みですから」
「これ以上おじ様やディーみたいな人は増やしたくないもん」
糞、自分で自分が羨ましいぜNASTY BOY。
俺の周りにはいつもこんな最高の女性達がいるんだからな。
467狼煙-準備-:04/06/27 15:01 ID:Yy+CR5DR
「そして、俺は爆弾の解除の為に行動する。まずはオボロの所に行って弔い、ナイフを譲って貰いに行く。それから、爆弾の解除のために行動する。
そして、解除に必要な道具、出来ればパソコン、そして相棒のエディを捜そうと思う」
あえて、美佐枝の死体から爆弾を探す事を言うのは避けた。
汚れ役は俺が一人で被ってやる。
汚れ役に女性を連れていくようじゃ男として失格だ。

「一番、安全な任務かも知れないが俺にしかできない事なんだと理解して許して欲しい。」そう言って宗一は頭を下げた。
辛い任務を割り振った詫びとそうする事しか思い浮かばなかった自分を責めて。

「最後に、各自このメモを持って行って欲しい。迷ったらこれを見て判断をし、解った事があったらこのメモに随時書き足していってくれ。
そして、5回目の放送があった時にまたこの場所で集まろうと思う。その時までにはおれは爆弾を解除する方法を現実の物としていたい。そして、その放送が終わった時こそを篁への反撃の狼煙とする!」
4日目の朝日がやっとこの島に上ってきた。
そこでは、反撃の狼煙の準備は着々と進められていた。
468狼煙-準備-:04/06/27 15:02 ID:Yy+CR5DR
【待機組】
【86番 御影すばる 所持品:新・宗一の手記 トンファー、グレネード(殺傷力は無し。スタン&チャフ効果)、
 小スケブ、ペン、似顔絵(うたわれキャラのもの)、あさひのサイン】
【09番 ウルトリィ 状態:聴覚麻痺 所持品:ユズハの服、ハクオロ?の似顔絵、毛布2枚(船内にも何枚か有り) 
 ミコト、キーホルダー、食料5日分 ペットボトルのジュース】

【探索組】
【078 伏見ゆかり 所持品:新・宗一の手記 グレネード(殺傷力は無し。スタン&チャフ効果)】
【025 カミュ   所持品:気配を消す装置 レミントン・デリンジャー(装弾数2発 予備弾4発】

【爆弾解除へ】
【065 那須宗一  所持品:新・宗一の手記 長弓、矢20隻 宗一の手記
 クレイモア一個 ゾリオン(使用回数3回) 電池一個 】
469名無しさんだよもん:04/06/27 15:05 ID:isJfUxqU
>>447-460は議論の結果NGとなりました。>>463-468は連鎖NGによりNGです。作者はもう少し考えて書けよw
470狼煙-準備-<メモ部分修正>:04/06/27 16:11 ID:Yy+CR5DR
『爆弾――これを解除することが優先、手がかりは低いがある。
 篁――このゲームの主催者だと思われる。手を出すな。
 この世界――色んな世界、時間軸から参加者が集められている所から見てこの島もどの世界なのか判断は出来ない。
 ただ、その不思議な事を認めなければ今の状態は説明できない。
 帰るために必要――地下一階のコンピュータールームに行き、“塔”“魔術師”“月” “恋人”の順でカードをセンサーに通す。
 この単語から見てタロットカードだと思われる。
 危険人物――芳野祐介(20より上の男性、体格は普通)、石原麗子(眼鏡をしている)、カルラ(大刀を持っている)、無口で小柄な少女、焦茶色の波うった髪の娘
 信頼出来る人物――光岡悟(蝉丸さんの知り合い)、エディ(黒人)、リサ(金髪の女性)
 今確認できている人物――アルルゥ、石原麗子、ウルトリィ、エディ、エルルゥ、カミュ、カルラ、クーヤ、
 坂神蝉丸、桜井あさひ、那須宗一、伏見ゆかり、ベナウィ、三井寺月代、御影すばる、光岡悟、湯浅皐月、芳野祐介、リサ=ヴィクセン、
 薄い茶髪の冷たい感じの女、無口で小柄な少女、焦茶色の波うった髪の娘――計23名
 3回目の放送時の残り人数――49名』
471名無しさんだよもん:04/06/28 00:10 ID:eS2K6JyV
散々待たせておいてまた中途半端につまらん作品だな…
472名無しさんだよもん:04/06/28 00:38 ID:rvo6Slfi
>>469
一発で分かる嘘は書くなよ・・・
473あぼーん:あぼーん
あぼーん
474名無しさんだよもん:04/06/28 14:06 ID:majPDtzi
ここよりも感想スレの方が面白いな・・・
475RESISTANCE〜小さな灯火〜:04/06/28 18:28 ID:RHIvLiMf
―――デスゲーム二日目深夜・ホール内部―――

小休止しようと監視室の扉を開けて、科学者のひとり……小林が、ホールの廊下を歩いていた。
「……小林……」
ホールの中でとある男性に声をかけられた。
「……遠藤か……」
振り向いて、自分がこの島の中で唯一心を許せる存在、そして古くからの親友であり同じ科学者の遠藤の姿に緊張を解く。
「『あれ』は、無事に渡ったのか?」
「まあ、な」
小林の言葉に、遠藤は真剣な眼差しで返す。
「ようやく、歯車は動き始めてくれたか……」
「ああ、ようやく、な」

あたりに人気の無いのを確認して、遠藤がささやく。
「すまないな、小林。俺の復讐に付き合わせてしまって」
「気にするな。それに、こんなデスゲームを終らせられるならなおさらのことだ」
小林がこのデスゲームを妨げる理由、それは……

このゲームに嫌悪感を抱いてるためであり、そして……

隣にいる親友のためでもあった。



476RESISTANCE〜小さな灯火〜:04/06/28 18:29 ID:RHIvLiMf
―――デスゲーム開始二十四時間前・ホール内部・仮眠室―――

「小林……小林……起きてくれ……」
小林はまどろみの中、自分を呼ぶ声に気付き、目を開ける。
「……もう、時間か……?……!え、遠藤…!」
あわてて体と意識を起こす。そして、遠藤の姿にさらに驚きを隠せなかった。
あまりにも憔悴した顔、そして、怒りに満ちたその瞳。
「おまえにだけは話しておきたいことがある」
今まで見せなかったその表情に言葉を呑む。
「俺は……このゲームを……潰す!!!もう許せん!!あの……篁だけは……!!」
はっきりとした一つの感情。それは、憎悪。
「既に行動は始めている。奴に一泡吹かせるための……!」
「だ、だが、そんなことをしたらおまえの家族が……」
いい年になっていまだ独身である小林であるが、対する遠藤には奥さんと、今年12歳になる娘がいた。
そして、小林は知っていた。遠藤は家族の命の保障と引き換えにこのデスゲームの企画に参加させられているということを。

477RESISTANCE〜小さな灯火〜:04/06/28 18:29 ID:RHIvLiMf
「……」

無言で俯く遠藤。その瞳から涙が零れ落ちる。

「……ま、まさか……!」

小林は崩れ落ちる遠藤を見て、最悪の結末を予感した。

「既に……あいつらに……殺され……!!」

そして、声を上げて泣き出した遠藤の肩を抱いてやることしかできない自分。

「遠藤……!く……私がいながら……なんてことだ……!」

己の無力さをその身に感じながら……そして友の復讐に力を貸すことを償いと思いながら……。



478RESISTANCE〜小さな灯火〜:04/06/28 18:30 ID:RHIvLiMf
―――デスゲーム開始約十八時間前・ホール内部―――

「あいつは俺から三つの大切なものを奪った。だから俺は三つの報復をする。二つは既に完了している」
「二つ?」

小林と遠藤は再び仮眠室にいた。遠藤は口元をにやつかせながら答える。
「一つめだが、参加者の中に仕掛けられる爆弾の中に偽物を三個ほど紛れ込ませた」
さらに続ける。
「爆弾の仕込まれていないただの心音等を感知する発信機さ。そしてあるタイミングを境に偽物は機能を停止する」
「タイミング?」
「大体このゲームが始まって、第四回目の定時放送の少し前あたりなるな」
「それで、、その偽物は誰に…?」
小林の質問に答えず、遠藤は一枚のデータファイルを渡した。そして、それを見て小林は一瞬目を疑った。

その写真の少女があまりにも彼の娘に似ていたのだ。まるで生き写しのように。耳の形こそ違えどしかし……似ている。
『アルルゥ』……そのデータファイルのタイトル――つまりその少女の名前――にはそう書かれていた。
「……ほっとけなかったんだ……自分の娘を見てるみたいで……」
いたたまれない表情の遠藤に言葉が出ない小林。偽物を仕掛けられたのは他に誰なのかを聞こうと思ったが、口をつぐむ。

479RESISTANCE〜小さな灯火〜:04/06/28 18:32 ID:RHIvLiMf
「あ、悪いな、それで二つめは……」
話題を変えながら遠藤は六十センチ位の細い杖のようなものと、飴玉大の丸薬が三個ほど入った小瓶を取り出した。
「支給品を管轄している俺だからこそできる芸当だが、この杖を別のものと入れ替えさせてもらった。……こないだ言ったろう?知人からセイカクハンテンダケをもらったって、それとさ」
「じゃあ、代わりにそのキノコが支給品として……」
「そういうことになるな。で、これなんだが……」
杖を手に取る遠藤。
「『打神鞭』とかいって、風の力を自由に行使できる杖だって話だ。普通の人間が使っても何の問題も無い。……前読んだ漫画で見た武器と同じ名前だったからな。なんかの役に立つと思って拝借させてもらったわけだが……」
ビームサーベルのほかにもそんなものまでもが……と、一瞬面食らう小林。
「……じゃあ、その小瓶は……?」
明らかに妙な色をした丸薬の入った小瓶を指す小林。
「あのキノコの何個かを知り合いの薬剤師に頼んで調合してもらったものさ。
それはともかく三つめなんだが……実はこれから取り掛かろうと思っているんだ、それは……」
480RESISTANCE〜小さな灯火〜:04/06/28 18:33 ID:RHIvLiMf

遠藤が二つのものを懐にしまいながら、次の言葉を言うより早く、小林が答えた。
「それは私にやらせてくれ」
「小林……しかし……」

「まだ終わっていないのだろう?おまえだけにすべてを背負わせるわけにはいかなくなった」
このゲームに疑問を持っているのは自分も同じだった。が、それよりも……
「……親友として協力する、いや、させてくれ!」

「だが、それではおまえが……」
躊躇する遠藤の手をがっしと摑む。
「もはや私も篁たちと同じだ。ならば一つでも、このゲームに巻き込まれた者達に、そして……」

「親友として何もしてやれなかったおまえに償いたいんだ!!」
ようやく言う事のできた、本音。
「だから……頼む……!」
「小林……!!」
遠藤は小林の手を両手で包み込むようにして握った。その彼の目からは、涙が零れ落ちていた。



481RESISTANCE〜小さな灯火〜:04/06/28 18:34 ID:RHIvLiMf
―――デスゲーム二日目深夜・ホール内部―――

「おかげでこっちのほうは首尾よく整った」
再び辺りに人がいないのを確認すると、遠藤は三枚のCDを取り出した。
「この中にはこの企画に関する多くのデータが入っている……俺の知る限りの奴等の事や爆弾のこと、そしてこのホールの内部地図とか、とにかく奴等に対抗できるほどの、な」
そういいながら、小林に一枚のCDを渡す。
「……念のため予備を持っていてくれ」
「……ああ。で、もう一枚は?」
「ウイルスプログラムさ。ダウンしたシステムが回復しないようにするための兵器といったところか」
そう言い、CDを懐にしまいこむ。と、遠藤は再び真剣な眼差しで小林を見た。
「……時間が、かかりすぎたな……」
既に六十人以上の人の命が失われている。明らかに犠牲者の数は多すぎた。遠藤が言うには、三回目の定時放送の時点ではまだ偽物を仕掛けられた三人は無事、と言っていたが、今はどうなっているかわからない。結局アルルゥ以外の二人が誰なのかは教えてくれなかったのだから。

「もはや猶予が無い。俺はこれからあのアルルゥという少女に接触する。確か、あの洞窟近辺だったよな」
「……本気か?外は危険だぞ!!それにどうやって…!」
「だがじっとしてるわけにもいかないだろう!!それに、あの娘だけはどうしても死なせるわけには!!」
遠藤はそう言い、静止しようとする小林を振り切る。
「遠藤……おまえ……まだ……」
小林は、遠藤にはまだ振り切れないものがあるのを思い知る。
482RESISTANCE〜小さな灯火〜:04/06/28 18:35 ID:RHIvLiMf
「……お前はここに残り、もし、俺達と志を同じくする者達が現れたら、協力してやってくれ……俺に万一のことが
あった時のために俺は自分の意志を記したメモを用意している」
背を向けたまま遠藤は続ける。
「……これで、俺の三つ目の、家族を殺し、親友のおまえをも巻き込んだあいつらへの報復が終る。……後は任せたぞ……もう、既に俺の行動は奴らにばれてるかもしれんからな……」
遠藤はいずこかへと去っていく。
「小林……俺も『彼ら』に罪を償うことができたのかな……?やつに復讐したいがために利用しているだけなのかもしれない……だとしたら、俺も……」
そんな言葉を、最後に残して……。



―――「RESISTANCE」という名の小さな灯火を胸に抱き、二人は行動を開始する―――



483RESISTANCE〜小さな灯火〜:04/06/28 18:36 ID:RHIvLiMf
【小林 所持品: CD1枚(このデスゲームについて多くのデーターが入っている) ホール内にて志を同じくするものたちを待つ】
【遠藤 所持品: CD2枚(小林に渡したもののコピーと、システムに致命的ダメージを与えるウイルスプログラム) 
セイカクハンテンダケの丸薬3個入りの小瓶 打神鞭(風の力を行使できる) 
遠藤の手記(自分たちの事・今までの行動等事細かに) アルルゥに接触するために行動開始 島の地形は暗記している】

【小林、遠藤の目的 このゲームの終結 管理者(篁)達への復讐 ひとりでも多くの生存者を島から脱出させる】

【偽物を仕掛けられた参加者……『三回目の定時放送の時点』での生存者のうち二名(後の書き手に委任)+004アルルゥ
第四回目の定時放送時、生死を問わずこの3人の名前は放送されます】

【遠藤の手記の内容 自分と小林の事 所持品とその詳細 CDのこと タロットを模したカードキーのこと 
偽物の体内爆弾のこと (他必要に応じて追記してもかまいません)】

【遠藤の行動が篁たちにばれたかどうかは後の書き手に委任します】

【時間は「希望の欠片」よりも後】
484名無しさんだよもん:04/06/28 19:38 ID:C089Zf6x
遠藤やら小林やら誰だよ。
そーゆーアイデアは勿体無いから箱にでも詰めてしまっとけ。
485名無しさんだよもん:04/06/28 19:40 ID:TeNHXafi
>484
そーゆーのは実況スレに書け。
486名無しさんだよもん:04/06/28 19:52 ID:WYTUcFPD
>>475-483は意味のない長文、さげてない、オリキャラ大活躍、等から荒らしと判断されました。
487名無しさんだよもん:04/06/28 20:05 ID:FNmQLDDu
NG厨必死だなっと。
             , ---  
    ,   _ ノ)  γ ==== ヽ
   γ∞γ~  \ | |_|||_||_||_| | |  
   |  / 从从) )||ー. ー |) | ナイス煽りですわ
   ヽ | | l  l |〃人 ワ ~ノ| .|
   `从ハ~_ーノ) / y ⌒i   |
    /ヽ><ノ\      | .|
    /.   8/ ̄ ̄ ̄ ̄/ |
  __(__ニつ/. VAIO. / .| .|____
      \/____/ (u ⊃ 
488名無しさんだよもん:04/06/28 20:30 ID:WYTUcFPD
>>487
残念ながら>>475-483は確実にNGだぜ、子猫ちゃん
489名無しさんだよもん:04/06/28 20:57 ID:aFjIVwFQ
>>475-483「RESISTANCE〜小さな灯火〜」は無意味な新キャラの
起用によりNGになりました。

経緯については、感想スレ12の482までをお読みください。
>>2のルールも合わせてご覧下さい。

【ぎぎぎ】実況★葉鍵ロワイヤルII 12【ぎぎぎ】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087831397/l50
490名無しさんだよもん:04/06/28 20:59 ID:Z1yLqj3g
どうせなら伏見と鳥羽にすればいいのに>オリキャラ
491名無しさんだよもん:04/06/28 21:11 ID:P6or2EM3
>>489 名前:名無しさんだよもん[sage] 投稿日:04/06/28 20:57 ID:aFjIVwFQ

---
466 名前:名無しさんだよもん[sage] 投稿日:04/06/28 19:38 ID:aFjIVwFQ
議論するまでもなく新キャラNG(>>5)。
どうしても出したい場合は感想スレに上げて反応を見なければならない。
23時ごろに宣言したいので賛成意見募集。
---


まだ23時ではありませんが…。
492名無しさんだよもん:04/06/28 21:16 ID:WYTUcFPD
472 名前: 名無しさんだよもん [sage] 投稿日: 04/06/28 19:46 ID:itT+bZUp
結局、通し派が出てきたとしてもウォークマンの新キャラが通ったんだから
今回も通せって事だろ?だから何?あれはあれ、これはこれ。
こういう議論する事自体がスレを消費させてダラダラと長くなって読む気を無くす。
もう今すぐNG宣言しちゃっていいよ
474 名前: 名無しさんだよもん [sage] 投稿日: 04/06/28 20:00 ID:aFjIVwFQ
小林に関しては、皆がワンポイント起用として流したのではないだろうか。
勘違い君の跋扈を許さぬためにも、今後は迂闊に主催者キャラへの名前
付けはしない方が良いと思われる。

今回の新作を許すと、このまま遠藤と小林のレジスタンスSSを延々と
読まされる事になりかねない。
それは皆の望む所では無いだろう。

擁護もほぼ皆無だし、23時どころか21時を待たずにNG宣言しても良い?
475 名前: 名無しさんだよもん [sage] 投稿日: 04/06/28 20:03 ID:w03EwBs6
漏れは通しでもいいと思うが流れに逆らう気はない
480 名前: 名無しさんだよもん [sage] 投稿日: 04/06/28 20:46 ID:sRJl5r6m
流石に・・・ とか
もうこれは・・・ とか
そういうのどうでも良いから。
もう下らん言い合い罵り合い思い込みのぶつけ合いはしなくていいから。

気に入らないSSは片端からNGにしていっちゃってください。
ぶっちゃけた話、本スレ読んだあとここ見るとかなり疲れる。
ヤル気すら無くなって来るから。
頼むからヤメテ。
もう何でもNGで良いから。
議論中のオナニーはほんと勘弁。
まじヤメテ下さい。
493名無しさんだよもん:04/06/28 22:24 ID:P6or2EM3

コピペの意図が不明杉
494名無しさんだよもん:04/06/29 03:39 ID:xbEIT/k3
>>474
同意。投下された作品よりも感想スレ住人の反応読んでるほうがおもろい。
495名無しさんだよもん:04/06/29 08:47 ID:mntzlagK
これからも議論百出の問題作(?)登場に期待。
すんなり通るのはクズの証と言ってもいいね。
496名無しさんだよもん:04/06/29 12:18 ID:/Sgwk2Jj
現在>>475-483「RESISTANCE〜小さな灯火〜」の勝手な新キャラ、オリキャラの登場に対してNG希望が出ています。
NG希望(実況スレの466)から24時間後の本日(6/29)19:38が過ぎた時点で、作者から何のコメントも修正版の投下もない場合はNG承諾とみなし、>>475-483「RESISTANCE〜小さな灯火〜」は正式にNGとなります。
497あぼーん:あぼーん
あぼーん
498名無しさんだよもん:04/06/29 13:45 ID:DGzqGmtp
スレ違い
499名無しさんだよもん:04/06/29 16:39 ID:IS7MvHlc
>>497は通しです。
>>496は荒らしですのでスルーして下さい。
500PU-RA-I-DE:04/06/29 17:16 ID:gq198Iv9
「糞っ!畜生っ!ちくしょうっ!!」
邦博が痛みで目を覚ました時には全てが終わった時だった。

「どいつもこいつも俺を嘗めやがって!――風子ってガキも、黒い髪の女も、あの女狐も!!俺は一体何なんだっ!エゴがなけりゃあんな女にも勝てないのか?」
悲痛な男の叫びが木霊する。
最後の最後にリサに裏切られたのが一番効いていた。
共に行動するにあたって、彼女の強さは認めていた。
そして、その強さに少しずつ惹かれていたのも事実なのであった。
裏切りが演技かどうかなんて関係ない。
いや、むしろ演技だとした方が彼には気に入らなかった。
置いていかれた。
あそこまで来ておいて足手まといだと判断されて切り捨てられたのだから……
それならまだ騙されていたと考えた方がマシなのかもしれない。
騙された、つまりは彼の力に利用価値があったのだから……
501PU-RA-I-DE:04/06/29 17:17 ID:gq198Iv9
「糞ーーーっ!!」

ぽとり

行き場のない怒りを地面で解消している内にポケットから何かが落っこちた。

「これは……俺の支給品。」
2錠の身体能力増強剤の入った瓶だった。

「――そういえば、こいつを忘れていたな。」
己の身体を武器として使う薬。
それは、使い慣れない剣なんかよりもずっと邦博向きの武器であった。
これをあの時使っていれば何か変わっていたか解らなかった。
もしかしたら、あの女狐をぎゃふんと言わせられたかも知れない。
そう考えるだけで邦博は愉快な気持ちに浸れた。

「宗一だかエディだか俺は知らねぇ、俺を嘗めるんじゃねぇ。お前が一人で乗り込んでいったのなら、俺も一人で乗り込んでいってやるよ」
そこで、待っているのが裏切った女狐なら斬り捨てる、騙して一人で乗り込んでいったのだったら一発殴ってやる。
この島に来てから無くなったかのように思えたプライド。
しかし、瓶の底にたった二粒ほどまだ残っていた。
塔の中の主催者より、プライドと女を目当てに邦博は立ち上がった。
既に、囚われのお姫様が殺されている事を知らずに……
502PU-RA-I-DE:04/06/29 17:19 ID:gq198Iv9
「あら、どうかしまして?」
先ほどの叫び声に釣られてやってきたのは一匹の女豹。
片手には獲物を狩る為の大刀を、その顔には笑みを伴って――
自分と同じ匂い、この島に来てから無力を痛感した、その匂いをかぎ取って――
そう、カルラ自身自分をかばって死んでいき、尚かつ笑って責めなかったオボロの死に何かを感じていたのだった。


【001 浅見邦博 身体能力増強剤(効果30秒 激しいリバウンド 2回使うと死ぬらしい)パソコン、
 レーダー(25mまで) フィルスソード(光の矢制限7回、シャインクルス制限残り3回)】
【026 カルラ 自分の大刀 背中・肩を強打 右手首負傷、握力半分以下】
503名無しさんだよもん:04/06/29 17:47 ID:+/x0q0hw
>>500-502はタイトルが意味不明で気取ってる感じなのでNGです。さよなら。
504名無しさんだよもん:04/06/29 17:54 ID:t9FLm9K3
つかどう読むん?>タイトル
505名無しさんだよもん:04/06/29 17:56 ID:2ZnprCCk
ぷーらーいーで
506名無しさんだよもん:04/06/30 00:03 ID:mFFacdmJ
507名無しさんだよもん:04/06/30 00:52 ID:zEUf5kcQ
なんにせよプライデは面白いと思う
508あぼーん:あぼーん
あぼーん
509湯浅皐月の夜:04/06/30 03:21 ID:6DYJ/LAN
紫陽花の花は、土壌の性質によって色を変える。酸性なら赤。アルカリ性なら青。なんだかリトマス試験紙を思い出す。
じゃあ、ヒトがその下に埋まってたらどんな色に変わるんだろう。
血の様な赤?ってそれじゃ桜だし。
…この間のお花見の思い出がヤな感じになっちゃった。ゴメン、七海ちゃん。夕菜さん。沙耶。
「…湯浅」
「えっ?…あっ」
ふと、光岡さんに呼ばれて我に帰る。気付くと、光岡さんとみさきさんがあたしを見ている。そのあたしは手を合わせたまま。
短い時間なのに、随分長い間──というか色々と考え込んでたみたい。
勿論、とっくに沙耶の姿はあたし達が掘った土に被い隠されてて、もう見る事が出来ない。
「ごめん。ちょっと…」
ばつが悪い。とにかく“三人”に謝って、もう一度手を合わせて目を閉じ、沙耶の死を悼んだ。
510湯浅皐月の夜:04/06/30 03:23 ID:6DYJ/LAN

沙耶の埋葬を終えてからあたし達は家の中に戻り、居間の卓袱台の周りに腰を落とした。
目の前には未開封の缶詰が六つと、空の缶詰が二十四個。改めて見ると、その現実を少し空恐ろしく感じる。
「ふむ…」
光岡さんがそれを見て僅かに息を漏らす。あまり動揺した感じは見られない。もう慣れっこなんだろうか。
…そう言えばこの二人、いつから一緒にいるんだろう。
よくよく思い出してみれば、まだあたし達はお互いの事を殆ど話してなかった。光岡さんが缶詰を食べ終わったら情報交換になりそう。
“情報”っていうものの価値は、宗一達からよく聞かされてるから解る。そして一の情報から十を知ることのできる能力は、この島では間違いなく身体能力よりも重要視されるものだと思う。

事実、あたしはそこそこ自慢の身体能力で、しかし誰も救えなかったのだから。

ふと、キコキコという音であたしの思考は現実に引き戻される。見ると、光岡さんが残り缶詰を四つ手元に引き寄せて、それを切り開いていた。
あたしは一から十を判断する。おそらく残りの二つは備蓄として携帯するんだろう。
「ねえ、光岡さん。私、もう少し缶詰食べちゃだめかな?」
…みさきさんの一言はあたしの推理を木っ端微塵に打ち砕いてくれた。
「いや、構わない」
言うが早いか、光岡さんは既に残りの缶詰も手元に引き寄せて封を開き始めていた。
あたしの認識は甘かった。
二人はツーカーだった。
どう見てもラブラブだった。言ったら本人達は──少なくとも光岡さんは否定するだろうけど。

そしてゆかり。世の中、上には上がいるわ。
511湯浅皐月の夜:04/06/30 03:28 ID:6DYJ/LAN

食事を終えたあたし達は、まずは考えていた通り、情報交換を始めた。
お互いの身の上話に始まり、この島に来てからの今に至までの出来事。信頼できる知り合いの事や、あるいはその逆の連中の事。
ゲームの開催理由についてなんかの推測混じりの会話も多かったけど、その辺は確定しない以上考えてもしょうがないって事で保留した。
個人的には光岡さんが話してくれた“仙命樹”や“強化兵”の事に興味があった。光岡さん自身は「信じられるのか?」ってちょっと驚いてたけど。
今更、この島では何があっても、何がいても不思議じゃないと思ったから。
トンヌラの事もあったし。

情報交換の後は、光岡さんが集めてきた物を調べていった。
「すまないが、生憎あまり物資は無くてな…」
「ううん。光岡さんが謝る事じゃないよ」
すまなそうにそう切り出した光岡さんの言葉に、みさきさんは柔らかにそう返した。
最初に沙耶の埋葬に使ったスコップは庭に放置してきた。
もとより鈍器としての性能は期待できなかったし、みさきさんとあたしがまともに扱えない以上、重量のある物は、今唯一それを持てる光岡さんの負担になる可能性が高すぎるからだ。
結局、光岡さんが調達してきた物は、まずはマッチ。これは充分役に立つ。一箱しか無かったらしいけど、中はぎっしり詰まってたから問題なし。
一ダース入りの鉛筆一箱と猫目カッター。鉛筆は削られていない新(さら)の状態だったし、猫目カッターはとてもじゃないけど武器にはなりそうもなかったから、あくまでこの二品はセットで筆記用具と考える事にした。
ゴム手袋。特に要るような物じゃないけど、一応、どこかで使う機会があるかも知れないと言うのが光岡さんの言だった。ま、要は臨機応変という事で。
ハンドタオルが三枚。これも臨機応変に役立ちそうだ。一人に一枚ずつ行き渡らせる。
んで最後に…
「湯浅。これは何だか判るか?」
そう言って光岡さんがバッグから取り出したのは、五本のロケット花火だった。曰わく、よく解らない物だからあたしに見てもらいたかったらしい。
ただ、あたしがそう言われた時のみさきさんの瞳が少し寂しそうに見えたから、あたしは「信号弾みたいなものかな」とだけ素っ気なく答えた。
光岡さんもそんなみさきさんの雰囲気を察してか、結局それ以上は聞かずに持って行く事にした。
512湯浅皐月の夜:04/06/30 03:29 ID:6DYJ/LAN

物資分配も終わって、後はさあ見張りの順番を決めて休もうかという段階で、あたしは光岡さんに一つ頼み事をした。

──シャアァァァァ……。

冷たいシャワーが、あたしの全身を打ちつける。汗と、泥と、血に塗れたこの躰を清めてくれる。
正直、この状況下でこんな事を頼むのはかなり気が引けたのだけど、どうにも身体中に纏わりつく汚れと不快感が我慢ならなかったから、無理を承知で頼み込んでみた。
これが宗一相手だったら無理矢理頼み落としてたんだろうけど、なんて心の中で小さく苦笑しながら。
だけど、意外にもすんなりと許可は下りた。
理由は簡単。
「皐月ちゃん、お肌すべすべだね」
みさきさんもやっぱり汗の匂いとかが気になっててしょうがなかったらしい。彼女があたしに続いて光岡さんに懇願した事が、あっさりと許可が下りた理由だった。
やっぱこの二人、ラブラブだ。
「でも、みさきさんだって、プロポーション良くて羨ましいな」
「…そうかな?私が知ってる私は小学生の時のままだから、良く判らないよ」
「あ…」
あたしは自分を恥じた。
目の前の彼女はあたしとそう変わらない年なのに、何だかあたしの方が随分と子供に思えた。
513湯浅皐月の夜:04/06/30 03:32 ID:6DYJ/LAN

シャワーを終えて、後は就寝。押入に布団があったので、それを二人分寝間に敷く。
あたし達の事を気遣って、光岡さんが最初の見張りを引き受けてくれた。
布団に潜り込み、首だけ動かして部屋の壁掛け時計を見る。正しいかどうかは判らないけど、今は午前0時ちょうど。三時間後に光岡さんと交代する。
目の見えないみさきさんはこのローテーションには組み込まれなかった。申し訳なさそうにする彼女の姿は、少しばかり心に残った。


「………」
「………」

不意に目が覚めた。壁掛け時計に目をやると、二時四十五分を指している。
少し早いけどもう交代しようかな、と思っていると、縁側から光岡さんとみさきさんの声がした。小声だけど、はっきりと聞こえる。
隣の布団を見ると、成る程、見事にもぬけの空になっていた。
514湯浅皐月の夜:04/06/30 03:38 ID:6DYJ/LAN

「それでね………私、光岡さんの事が好きです」
えーっ!!いきなり告白ぅ!?しかもすごい真剣!
「……すまない。俺には、忘れられない人がいるんだ」
速攻断ったーー!?じゃあ、あの思わせぶりな態度は何なのよ?
「俺は彼女を──きよみを生涯かけても守らなければならない。…この島で散って逝った、もう一人のきよみの分までも」
もう一人のきよみ。
その言葉が何を意味するのか、あたしには解らなかった。さっきお互いの身の上話をした時も、光岡さんは必要以上には口を開かなかったから。
ただ、もう心の中では、ましてや口に出しても、光岡さんを糾弾する気には全くなれなくなった。
「そっか……ちょっと、残念かな」
口調を元に戻し、努めて明るくみさきさんが言う。でも、あたしも同じ女だから、その言葉の裏に隠された淋しさや哀しさは痛い程に伝わってきた。光岡さんはどう感じてるんだろう。
「…すまない」
「謝らなくていいよ。私の勝手な恋心だったんだし」
みさきさん。恋心なんてのはみんな勝手なものなんだよ。そんなに自分を追い詰めなくても──

ちゅっ。

───え?

「だから、これだけで我慢しとくね」
「み、みさき。湯浅に聞こえたら…!」
光岡さん。もうバリバリ全開で聞こえてるよ。
「それじゃ、お休みなさい。光岡さん」
みさきさんが帰って来る。ヤバい。あたしはとっさに目を閉じて狸寝入りをした。ややあって、みさきさんが隣の布団に入る音がする。
しばらくすると、静かな寝息が聞こえてきたので、あたしはそれと入れ替わる様に布団から出、縁側へと向かった。
何となく、足音を消して。

【28番 川名みさき 所持品:白い杖、ゴム手袋、ハンドタオル】
【89番 光岡悟 所持品:日本刀、デザートイーグル(残弾3)、マッチ、ハンドタオル、ロケット花火(×5)】
【95番 湯浅皐月 状態:左腕使用不可能 所持品:セーラー服、風子のナイフ、鉛筆一箱(1ダース入り)、猫目カッター、ハンドタオル】
【時刻:三日目午前三時頃】
515名無しさんだよもん:04/06/30 04:01 ID:xlrACbCT
久々にまともな作品が投下されたな。
516名無しさんだよもん:04/06/30 04:19 ID:8ew9MmgB
感想・その他意見はこちら

【ぎぎぎ】実況★葉鍵ロワイヤルII 12【ぎぎぎ】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087831397/
517名無しさんだよもん:04/06/30 13:11 ID:b2EnJ5us
>>516はNGです。理由はお察しください。
518名無しさんだよもん:04/06/30 13:28 ID:4lTKse1E
>>509以降は全部NGです。理由はお察しください。
519英雄幻想:04/06/30 14:52 ID:rfHkaxzQ

背中に突然の衝撃。
視界が強引に下方転回し、続いて迫る地面。
受け身を取る間もなく、胸から倒れこむ。
岡崎朋也が状況を把握するまでには、幾ばくかの間を必要とした。

(つまり、俺は―――)

三井寺月代に、押し倒されたのだ。
神尾晴子の叫びに反応し、麻生明日菜を敵と認識し、敵を殲滅すべく剣を取り、
必殺の一撃をもって勝利を収める筈の、その瞬間に。
慌てて首を回し、後ろを確認しようとする。
かろうじて見えたのは、低い姿勢で疾駆する明日菜の後ろ姿。
どうやら明日菜に向けて放ったビームガンは不発に終わったらしい。
光の消えた一本を手放し、背中からもう一本のサーベルを抜き放とうとする。

「何してんだよ、あんたは……っ!」

しがみつく月代に向けて、口を開く。
腰に回された月代の腕は、一向に力を緩める様子はない。
うつ伏せのまま、悪戦苦闘しながらどうにかサーベルを抜くことに成功する。
しかし、この姿勢では追撃どころか視界に捉えることすらできない。

「あんたが邪魔しなけりゃ、俺たちは勝ってたんだぞ!」

言いながらじりじりと身体を回すようにして、どうにか仰向けになる。
ちょうど月代と向かい合うような姿勢。
腹の辺りに顔を埋めるようにして体重を乗せている月代の顔が見えた。
その眼に浮かぶのは、ただ一色―――憤り。
目が合うなり、月代が口を開く。

「どうして、殺すのよ―――!」
520英雄幻想:04/06/30 14:53 ID:rfHkaxzQ

少年は、その言葉の意味を理解できなかった。
その単語が、疑問形で放たれることがわからなかった。
少女の眼から流れ落ちる涙の理由が、わからなかった。

「……敵だからだよっ!」

だから少年は、一番初めに浮かんだ答えを、口に乗せた。
身体にまとわりつく少女の腕を、こころに絡みつく少女の声を振り払うように、
月代に言葉を叩きつける。

「あれは、敵なんだよ! 今の聞いてなかったのか! あいつらは、人を騙して殺してたんだ!
 マジでヤバい連中なんだ、やらなきゃこっちが殺られるんだぞ……!」

涙に濡れた月代の瞳は、ますます険しい色を濃くして朋也を睨みつけていた。
黙ってしまえばその眼に気圧されるように感じられて、朋也は矢継ぎ早に言葉を重ねる。

「俺たちが勝つには、あいつらが武器を置いていった今しかないんだ!
 今なら、こいつを持ってる俺たちが勝てるんだ! ……わかったら、離せよ!」

じっと朋也の言葉を受け止めるようにしていた月代が、口を開いた。
その声は震えていた。

「あんたさ……、勝つとか、負けるとか……敵とかさ……、アタマおかしいんじゃないの……?
 なに、それ。ねぇ、勝ったらどうなんの? 負けたら死ぬの? ……いい加減にしてよ!」
521英雄幻想:04/06/30 14:54 ID:rfHkaxzQ

月代のボルテージが、徐々に高くなる。

「人が死ぬの! 殺すとか殺されるとか、そうやって簡単に言わないで! 人が死ぬんだよ!
 勝つとか負けるとか、そういう風に言っていいことじゃないでしょ! おかしいよ!」

その言葉は既に、朋也一人に向けられたものではなかった。
この島の歪みに対して放たれる、日常の軋み。
洞窟全体に響き渡るような、絶叫に近い吐露。

月代から目を逸らしたかった。
しかし、強い視線がそれを許さない。
朋也にできたのは、たった一言を弱々しく返すことだけだった。

「……だけど、あいつらは人を殺すんだ……」

その一言は、月代を激昂させるのに充分だった。

「―――人殺しはあんただって一緒でしょ!? 智代って女と一緒に人を殺してたんでしょ!?
 きよみさんは、どうしてあんな風に殺されなきゃいけなかったの! 私たちが何をしたの!
 あんただって同じよ! 私たちみんな、殺そうとしてたくせに! 智代って女と同じように!」

周囲から、音が消えた。
522英雄幻想:04/06/30 14:54 ID:rfHkaxzQ

朋也には今度もまた、少女が何を言っているのか、わからなかった。
それでもたったひとつだけ、理解できることがあった。
混乱していた場の一切が整理されたように、感じられた。

この少女は、坂上智代を知っている。
知った上で、殺人鬼と罵っている。
そうして、自分もまたその同類だと、そう言っている。
敵を斃すべく剣を取った自分を、邪魔しながら。
頭のどこかが、ひどく冷静に状況判断を下す。
その思考をそのままに、口を開いた。

「―――離せよ。……離さないなら―――」

左手に握ったビームサーベルの光が、強くなったように思えた。
その光に押されるように、左手を―――

「―――だめ」

左腕の袖が、掴まれていた。
その小さな両手の持ち主は、じっとこちらを見据えていた。

「ともや、それは、だめ」

獣の耳の少女は、静かな眼で朋也を見ていた。
523英雄幻想:04/06/30 14:57 ID:rfHkaxzQ

「アル……ルゥ」

思考が急速にクールダウンしていくのが感じられた。
冷静だと思っていた自分が、実のところ手の付けられないほど昂ぶっていたのだとわかる。
同時に、何かが背筋を這い上がってくるような悪寒が走る。

(今、俺は、何をしようとしていた―――?
 離さないなら、どうしようと、するつもりだった―――?)

自分は取り返しのつかない失態を演じようとしていたのだと。
間一髪のところで、まだ幼さの残るような少女に、それを諭されたのだと。
じわじわと、嫌な汗が滲んできた。
月代の顔が、見られない。

アルルゥに掴まれたままの裾が揺れている。
震えていた。
左手から起こった震えは、今や朋也の全身に拡がっていた。
歯の根が合わない。
アルルゥが、裾から手を離す。

少年はようやく、刃の重さを知った。
力の重さは逃げ場を無くし、朋也の内側を引き裂くように荒れ狂っていた。

それは、だから、あまりにも過酷な、偶然だった。
524英雄幻想:04/06/30 14:58 ID:rfHkaxzQ

強張った朋也の指が少しづつ開き、ビームサーベルを取り落とそうとした、そのときだった。
朋也の視界に映ったのは、ひとつの影。
薄紅色の閉鎖空間に立つそれは、

「何してんねん! 明日菜は! 明日菜はどこ行きよった! 答えぇ!」

もうひとりの、敵のかたちをしていた。

まるで気付かなかった。
月代とアルルゥと、それだけが朋也とこの空間を支配していた。
その空隙は、瞬く間に恐怖に塗りつぶされた。
眼前に立つ敵は、いつだって自分たちを殺せたのだ。
朋也の表情が、泣き笑いのように歪んだ。

月代もまた、晴子の存在に気付かなかったらしい。
弾かれたように振り向いて身体を起こした、その拍子に朋也の腰に回された腕が解かれる。
その表情を見た晴子の眼が、一瞬だけ驚いたように見開かれた。
何を感じたか、晴子は舌打ちを一つ。
周囲を見回したその視線が、一点で止まる。

「―――観鈴! 敬介!」

向けられたその背中が、ほんの少し前に見た何かを連想させて。
それはきっと、駆け出すのだ。
人を、殺めるために。

体内を荒れ狂っていた嵐が、収束していく。
それはようやく見つけた出口に向かって、殺到していた。
525英雄幻想:04/06/30 15:00 ID:rfHkaxzQ

時間が、ゆっくりと流れていくように感じられた。
世界がどろりとした粘液質で満たされたように、もどかしいくらいに緩やかな流れ。
その中で、月代の背中を押し退け、腹筋だけで身を起こし、一気に跳ね起きる。
呼気ひとつ。
左手の刃を、必殺の一刀を、晴子の背に向けて、ゆっくりと振り上げ―――

「だめ―――おねーちゃんの、おかーさん、ともや、だめ―――!」

熱したナイフを、バターの塊に下ろすように。

少年は敵を斃そうと、或いは自責から逃れようと剣を取った。
人に仇なすモノを斬ろうと、恐怖から解き放たれようと刃を振るった。
薄紅色の光の刃が捉えたのは、獣の耳の少女だった。

小さな小さなその身体が、肩口から、二つに裂けた。


岡崎朋也は、人を殺した。
526 ◆87KpMpVxNI :04/06/30 15:02 ID:rfHkaxzQ

【004 アルルゥ 死亡】

【002 麻生明日菜 南部十四年式(残弾5)】
【022 神尾晴子 怪我は応急手当済み】
【085 三井寺月代 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 
         針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル×2、リュック(智代のCD 裁縫道具 
    医療用の針と糸 乾パン カップ麺 ホイッスル シェラフ 方位磁石 メタルマッチ 救急セット)】
【055 橘敬介 ピアノ線 大判ハンカチ 筋弛緩剤を注射器(3セット)メモと鉛筆、食料
       腕に万国旗 手品用品 鉈 文化包丁 [意識不明]】
【023 神尾観鈴 所持品なし 右耳の鼓膜が破れている 応急手当済み】

【「その闇の中で、人は」とほぼ同時進行】
【歪んだマイクロUZI(残弾20発)は洞窟の闇の中に、鎌は明日菜の傍に、朋也・宗一・芳野の写真は
 時紀のポケットに、ケーキ、ショートソード、千枚通しの入ったそれぞれの荷物は放置】

【残り31人】
527名無しさんだよもん:04/06/30 15:26 ID:4uBrHVwW
しかしウィツァルネミテアとの契約によりアルルゥは助かった。
[アルルゥ復活 残り32人]
528名無しさんだよもん:04/06/30 15:37 ID:4lTKse1E
>>519-526は投稿してしまったため、NGです。
詳細はいつもどおり本スレで聞いてください。
…つーか、何この作者。何で最後のレスで自分のトリップ晒してんの?
529名無しさんだよもん:04/06/30 15:44 ID:ypHc2a6i
>>527
ナイスフォロー!
これがリレー小説の醍醐味だよな!
530光届かぬその場所で ◆4zXKB4fFSU :04/06/30 22:29 ID:ho8+pe2S
 物言わなくなったリサ・ヴィクセンを見つめる者が居た。
 『狂犬』醍醐である。

「雌ギツネもこうなっては人を謀る事も出来んな」
 それでももしかしたら、と疑念が拭えずその体を調べてみたが間違いなく死んでいた。
(さすがに死んだ振りという事はないか)
 死してなお醍醐の心中を惑わす事。
 それすらも地獄の雌ギツネと呼ばれた女の計算のうちに入っていたのだろうか?
 今となっては知る術はない。

 リサの死を改めて確認すると醍醐はその亡骸に布を被せた。
「……丁重に弔ってやれ」
 そう告げると合図を待っていた部下により、ゆっくりとリサの亡骸は運ばれていった。

 醍醐はあの女が好きではなかった。
 策を弄する事を小賢しいと感じる醍醐と敵味方を問わず全ての者を手玉に取るリサ。
 全く正反対の2人が同じ陣営に就いたとて、関係が良好であるはずがない。
 しかし今となっては圧倒的な不利を悟っていても単身敵地に乗り込み己の使命の使命を果たそうとした
この女性に奇妙なシンパシーを感じている。
 それが一人の戦士の死を惜しむ尊敬にも似た感情であることを醍醐自身は理解していない。
 もし互いの立場が少し違っていたならば、彼らは同じ死線を潜る間柄であっても不思議ではなかった。
 只、互いの立つ場所がほんの少し違っていた、それだけなのだ。

「今回の騒動による被害は施設の復旧作業には支障ありません。予定通り明朝にはラストリゾートの再起動が可能です」
 感傷に浸っていた醍醐を部下の報告の声が引き戻す。
531光届かぬその場所で ◆4zXKB4fFSU :04/06/30 22:30 ID:ho8+pe2S
「そうか。……また襲撃がないとも限らん、くれぐれも警戒を怠るな」
 醍醐はその他の細かい指示を出すと地下へ戻ろうとして……ようやく違和感に気付いた。

「あの車の残骸はどうした?」
 醍醐の突飛な質問に部下達は一瞬戸惑う様子を見せるが、一瞬後には元の様子に戻る。
「……隊長が回収を指示されたのではなかったのですか?」
 その言葉が醍醐の予想を確信に変えた。
「俺としたことが今まで気付かなかったとは……!」
 そう呟くと地下への道を駆け出した。
「隊長っ!?」
「お前達は復旧作業を続行しろ!」

 本来ならばミルトが特攻してきた時、すぐに気付いていてしかるべきであった事。
 なぜ、ミルトの内部に仕掛けた爆弾が遠隔起動しなかったのか。
 ミルトに本来内臓されていた機能?
 それはありえない。
 醍醐自身もミルトのチェックには携わったのだ。
 そんな芸当が出来る機能は残していない。
 何者かが醍醐達のチェックの後にミルトに細工を施したのだ。
 恐らく爆弾自体を取り外せばすぐに細工が露見してしまう為、起動信号の無力化等という回りくどい細工を施したのだろう。
 タイミングと能力を考えればそんな事が出来る人物は多くない。
 しかも手際の良さから察するに数人が共謀している。
 そしてこの人物が居なければ計画が成り立たない人物がいる。
(内部から反乱者が出るとは……無事では済まさん!)

 慌てて監視室に飛び込んで来た醍醐を見て、部下が敵襲かと緊張を走らせた。
 この敵は最高に性質が悪い───こちらの腹を内部から食い破る。
532光届かぬその場所で ◆4zXKB4fFSU :04/06/30 22:32 ID:ho8+pe2S
 醍醐がモニターを覗いた部屋は
「……勘付いたか」
 既にもぬけの殻であった。


 醍醐が小林の反乱に気付いたのと同時刻、中央ホール地上部、換気ダクトの傍。
 そこに3人の男達が居た。

「長瀬さん、巳間さん……お願いします」
 一人は小林。
 カセットテープに情報を吹き込み、この狂宴に反抗の火を点した人物。
 そして他の2人に道を指し示した人物でもある。

「セリオには……申し訳ない事をしたからね。償いはさせてもらうつもりだ」
 一人は長瀬主任と呼ばれている男。
 セリオのアシモフコードを解除し、ミルトに爆弾を取り付け、同時に起動信号の無効化装置も取り付けた男。
 起動信号無力化装置は今彼の手の中にある。
 しかしそれは不完全だ。
 その機能を発揮する為には起動信号そのもの───ゾリオンの信号を入力する必要がある。

「晴香……まだ無事だといいが……」
 最後の一人は巳間良祐。
 巳間晴香の兄であり、そしてこの島を覆う結界とも言える物を作り出した男。
 正確には良祐は『それ』を復元しただけであり、彼の発明ではない。

 最初、篁に『それ』の復元を言われた時、良祐は当然の如くそれを拒んだ。
 長瀬も同様である。
 しかし篁がその気になれば世界中の無関係の人間を殺害出来る事を知った時、2人はその手を汚す覚悟を決めた。

 良祐の復元した『それ』は異質の力を封じる為の物。
 つまり篁の計画には異質な力を持つ人間達が少なからず集められるという事を意味する。
533光届かぬその場所で ◆4zXKB4fFSU :04/06/30 22:33 ID:ho8+pe2S
 もしもその人物達が力を合わせれば───篁を倒すのも不可能ではないかもしれない。
 その為の準備が整うのにこれほどまでの時を要してしまったが、まだ完全に手遅れにはなっていない。

 主催者に反抗する者達が集い始め、ラストリゾートの解除方法が参加者達に伝わった瞬間から機を伺っていた。
 リサ・ヴィクセンの襲撃で混乱している今を置いて彼らが外に出る機はない。

 もし志半ばで倒れても、彼らの遺志を継ぐ者達がいる。
 楽観視できる要素はそれだけ。
 しかも篁の指の動き一つで簡単に吹き飛んでしまうくらい儚いもの。
 そんな儚い希望にすがって彼らは反旗を翻した。

「小林……どうしても中に戻るのか」
 小林は既に2人と共には行かない事を告げていた。
「私にはやらなければいけない事があります。お2人もあまり長居しない方がいい。恐らくそろそろ番犬が嗅ぎ付ける頃でしょう」
 その言葉に良祐は苦虫を潰したような表情を浮かべた。
「……また後で会おう、小林君」
 再会が無理であると分かっていたから、それが良祐に言える精一杯の言葉だった。
「……ええ、また後で」


 そして彼らは己に課した任務を果たしに行く。


 中央ホール地下。
 一切の陽光が届かぬ満面の花が咲き狂う場所。

 小林の手のバッグには大量のダイナマイト。
534光届かぬその場所で ◆4zXKB4fFSU :04/06/30 22:34 ID:ho8+pe2S
 元より生きて帰るつもりなどなく、良祐が復元した『それ』を破壊する為に彼は来た。
 だがそこに着いた時、先客が既に居た。

 相手の姿を見る暇すらなかった。
 銃弾が一発。
 それだけで小林という男の人生は幕を下ろした。

 新たに血の花が咲き、そのつぼみにあたる部分を相手の男は眺める。
 こうなる事が分かっていて、それでも後悔していない……そんな顔で死んでいた。


 醍醐は思う。
 戦場で必要なのは、能力以上に強い意思であると。
 意思が強い者は時に信じられない力を発揮する。

 それが故に───彼らは侮ってはならず、敵味方の枠と超えて尊敬に値する存在であるのだと。

 そして最後の時には自分もこの男のような顔でありたいと。


【長瀬主任 所持品 爆弾起動信号無力化装置(完全ではない為、現在機能しません)】
【巳間良祐 所持品 レーダー(邦博が持ってるのと同じ物)】
【2人の目的は反主催者側の参加者に合流する事】
【この2人には体内爆弾がありません】

【醍醐 所持品 特殊警棒 デザートイーグル(残弾7発)】
【小林 死亡】
【中央ホール地下の花畑】
535名無しさんだよもん:04/06/30 23:35 ID:4lTKse1E
>>530-534はNGです。理由は一々説明する気にもなりません。
536あぼーん:あぼーん
あぼーん
537名無しさんだよもん:04/07/01 05:31 ID:fLHszOe7
なんか人が死ぬ話に限ってツマランな・・・・・
538ぷーらーいーで修正:04/07/01 11:23 ID:dAj0lHGY
すいません、おそくなりましたがぷーらーいーでの作者です。
まず、タイトルをPU-RA-I-DOに修正お願いします。
prideとpuraidoがごっちゃになってたみたいで^^;
駄目駄目ですね吊ってきます。
あと、指摘があったので1文修正。
>「どいつもこいつも俺を嘗めやがって!――風子ってガキも、黒い髪の女も、あの女狐も!!俺は一体何なんだっ!エゴがなけりゃあんな女にも勝てないのか?」

「どいつもこいつも俺を嘗めやがって!――風子ってガキも、黒い髪の女も、あの女狐も!!俺は一体何なんだっ!プロクシがなけりゃあんな女にも勝てないのか?」
に修正お願いします。
539名無しさんだよもん:04/07/01 13:33 ID:1jOvnX6e
どかーん
ちきゅうは ばくはつ した !

みんな しんでしまった !

【全人類死亡】
540あぼーん:あぼーん
あぼーん
541名無しさんだよもん:04/07/01 20:28 ID:pXpMvLkl
他山は低く見える理論というのがあって。
まあ物理的には地球が丸いからなんだが。

自分より上手いと思った相手には足元にも及べない。
自分が同じレベルだと思った相手は頭一つ抜けて上手い。
自分よりワンランク下だと思った相手が同じレベル。
542あぼーん:あぼーん
あぼーん
543名無しさんだよもん:04/07/02 04:28 ID:L1muR1Wm
クレヨンしんちゃんオトナ帝国を見て泣けない人&悪く言う人とは
たとえ仕事上の関係だけだとしても付き合いたくないですね
何故ってその人は人として大切なものを無くしてるから
544名無しさんだよもん:04/07/02 10:31 ID:ekEWvhtn
葉鍵ロワイヤルUを見てマンセーする人&GJ言う人とは
たとえ仕事上の関係だけだとしても付き合いたくないですね
何故ってその人は人として大切なものを無くしてるから
545CATCH UP DREAM ◆XJU2zMAiAo :04/07/02 13:58 ID:jtQmFBOR

死体がひとつ。
死体がふたつ。したいがみっつ。したいがよっつ。

ひとつは顔が潰されて、ひとつは背中に穴が空いてて、ひとつは肩から真っ二つ。
最後のひとつは、これはもうよくわからない。
たぶん、これはヒトだったのだろうということくらい。
全体に青黒く、ぶよぶよとして、色々なところが色々な方を向いていた。
その一番上に顔がついていたから、人だとわかった。

あたしはだから、それを見て、これだけを思う。
巳間晴香は、ここにはいない。

ああ、と嘆息し。
その濃密な空気を、胸いっぱいに吸い込む。
すぐに吐き気を覚えた。
その不快感が、あたしの横っ面をひっぱたいて眼を覚まさせてくれる。

ここにあるのは。
地獄だ。
ああ、あたしはそして、人を殺すためにここにいる。
この地獄を、この手で再現するために、ここにいるのだ。

芽生えかけた迷いも、躊躇いも、何もかも。
この、一呼吸で気管を赤く染め上げる空気が、塗り潰していく。
かつてこの場に放たれただろう絶叫が、悲鳴が、怨嗟が恐慌が断末魔が、
ノイズ混じりだったあたしをクリアにしてくれる。
546CATCH UP DREAM:04/07/02 13:58 ID:jtQmFBOR

そう、あたしは復讐者だ。
この部屋の誰をも、弔うことなど、赦されてはいない。
勘違いをするな。
あたしは人を殺すために生きている。
恨みを背負うことはあれ、晴らすことなどできはしない。
死者に同情を向けることも、憐憫を覚えることも、いいや、感慨の一欠片すら。
あたしには、赦されない。

この手は死者を弔い、あたしが生き、何かを、誰かを生みだすためにあるのではない。
ただ、ただ巳間晴香の生涯を終わらせるために存在している。
言い換えればそれは、あたしが巳間晴香を殺し、殺し、殺し尽くすその瞬間まで、
あたしは生きてなどいないということだ。
生きてもいないモノが死者を悼むなどと、笑えない冗談でしかない。

だからあたしは、その部屋を一瞥すると。
片隅に置かれたビニールシートを、じっとりと血で濡れた畳の上に敷いて、その上に腰掛けた。
荷物の中から缶詰を取り出すと、プルトップを引き開ける。
割れた窓硝子の向こうには夜空。
吹き込む風が、破れたカーテンに残る斑の血痕を不思議な模様に揺らす。
コンビーフの匂い。血の臭い。
もう一枚の硝子には、べっとりと赤。
ペットボトルの水は透明。
周囲には三体の死体。
外にはオマケにもうひとつ。

これはこれは、どうも復讐者の晩餐には豪華に過ぎる。
547CATCH UP DREAM:04/07/02 13:59 ID:jtQmFBOR

めぼしい遺留品は、手と服を血染めにしながらチェックした。
戦力は十分、あとは情報だ。
獣の耳の少女から聞いた名前は三つ。
見つけた死体は四つ。
五人目の誰かは、生きてここから出て行った。
そして巳間晴香は、ここにはいない。
仲間割れか、漁夫の理か、いずれにせよ。
誰かと出会いたいならうってつけの場所が、眼下に広がっていた。
双眼鏡で眺めれば、いくつかの民家には人の気配があった。

扉を開けると、振り返る。
もう一度だけ、真っ赤な部屋の真っ赤な空気を胸いっぱいに。
ごきげんよう、さようなら。

街に出よう。
目指すのは、たったひとつのハッピーエンド。


【042 桜井あさひ 双眼鏡 十徳ナイフ 食料 眼鏡 ハンカチ ノート ペン 腕時計
         S&W M36(残り弾数5)予備弾19発 ボウガン(矢5本) ベレッタ(残弾5発)
         ロッド(三節棍にもなる) 果物ナイフ 懐中電灯 『短髪』】

【金槌 ヘアスプレー 裁縫道具 タオル二枚 救急箱 約二日分の食料と水
 手帳サイズのスケブ ビニールシート 救急セットは放置】
【深夜】
548あぼーん:あぼーん
あぼーん
549名無しさんだよもん:04/07/02 20:21 ID:RQYyQ5Uj
550名無しさんだよもん:04/07/02 20:56 ID:a2BgqCdL
晴香と聖は処女。
551名無しさんだよもん:04/07/02 23:48 ID:ekEWvhtn
>>545-547は一つの文章が短い典型的な月厨文章なのでNGです。あと10年修行してから他所で書いてください。
552名無しさんだよもん:04/07/03 12:32 ID:c/uB1J4t
>551
あのさ-、もう止めたらどうだ?
見てて痛いぞ。ネタとしても飽きてきた。
553名無しさんだよもん:04/07/03 14:04 ID:+lJuMs1r
今まで飽きてなかったのか。
554名無しさんだよもん:04/07/03 15:14 ID:m47xfKij
だから放置しろというのに
まったくもう
555名無しさんだよもん:04/07/03 16:50 ID:X+j+Xbog
>>554
プッ釣れたw
556名無しさんだよもん:04/07/03 16:52 ID:FY9sYuNu
>>555は寒いのでNGです。理由は面倒なので略。
557名無しさんだよもん:04/07/03 16:55 ID:DrpOdGXr
むっ、俺は通しで良いと思うのだが。
558名無しさんだよもん:04/07/03 17:14 ID:1NQdTBM5
>>555はNG。
明らかにぞんざいな死。
本当にリレーをする気があるのかと(ry。
559名無しさんだよもん:04/07/03 17:21 ID:WoGtAMN4
むっ、俺的には無駄死の何が悪いのかと小一時(ry
560名無しさんだよもん:04/07/03 19:16 ID:XnJtDkOr
>>551-559
自演乙
561名無しさんだよもん:04/07/03 22:08 ID:YYPG0RlR
>>560は新キャラを登場させたのでNG.
562光届かぬその場所で ◆4zXKB4fFSU :04/07/03 23:59 ID:Wr6DOWNh
>530-534はNGでお願いします。

理由は今回のような手法に嫌悪感を示す、読み手、書き手がかなり多くいる為です。
563:04/07/04 01:01 ID:rZ5CzEAm
「フフ、なかなか楽しませてくれる」
篁は一人、口を歪めた。
彼の眼前には、まるでディレクター室のように、多数のモニターが鈍い光を放っている。
島のいたる所に小型カメラが設置してあり、この部屋へと映像が送られてくるのだ。

「いくら抗おうと、無駄な努力よ。貴様らの生死はわしが握っておるのだからな」
篁は脇へ目を落とす。そこには、参加者の人数と同じだけのボタンが並んでいる。
いや、同じではない。さらにその脇、ひときわ目立つ赤いボタン。
これこそ、島にいる参加者達の体内に埋め込まれた爆弾をすべて作動させる、悪魔のトリガーだった。

不意に、異音が篁の耳をかすめた。
「なんだ? ……こざかしい」
どこからか部屋に入り込んだのだろう、一匹の蠅が空気をふるわせていた。
部屋の主の周りを飛び交うその姿は、あたかも参加者達の、悲痛な声を代弁してるかのようだった。
「くだらぬ」
そう言って篁は、どこからともなくハエたたきを取り出し、身構える。
しばらく後、蠅は手近な機械の上で動きを止めた。
瞬間、風を切るハエたたき。
プラスチック特有の、パチンと響く軽い音の下、一個の生命が失われた。
564:04/07/04 01:01 ID:rZ5CzEAm
「フン」
篁は目を細め、満足してハエたたきを納める。
しかしそれからすぐに、自分の犯した過ちに気づいた。
潰れたハエの下にあるのは、悪魔のトリガー……あの、赤いボタンだった。

「真剣やべっ!」
ズガン!
篁が思わず口にした言葉が、外部からの爆発音にかき消される。
体内爆弾が作動した音だ。
ズガン!
ズガガン!
ズッガーン!
爆発音は止むことなく、島全体を揺るがした。
「(ノ∀`)アチャー」
篁は頭を抱えたが、もう遅い。
当然、爆弾を仕掛けられた側は即死。死に際のセリフなど口に出す暇もあるまい。
565:04/07/04 01:02 ID:rZ5CzEAm
やがて、爆発音は聞こえなくなった。
「まあ良いわ。もともとこの企画の目的は、A国に依頼されたあの爆弾の性能を試すことだからな。
 殺し合いなどという映画の真似事は、余興にすぎん」
気を取り直し、部屋を去っていく篁。
後ろのモニターには、焼け野原と黒い画面だけが、ただ映っていた。

【残り0人(全員死亡)】
566名無しさんだよもん:04/07/04 01:06 ID:kN2wwSgC
>>563-565は正式に採用されました。
理由は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087831397/796
をごらんください。
567あぼーん:あぼーん
あぼーん
568闇に光る:04/07/04 14:51 ID:vwi7gvPf
 聞こえたのは発砲音。明日菜が撃った可能性は高い。
「チィ!」
 洞窟の奥を見る。おぼろげに見えたのは二人。観鈴と敬介か?
「―――観鈴! 敬介!」
 思わず叫んでしまう。その数瞬後。後ろからも叫び声。
 気にしていられない。一刻も早く二人のもとへ―――!?
 ――背中に強熱。
(なんや?まさか…)
 二発の発砲音。そして。
『おとうさん、おとうさん!』
 思考より早く体が動く。

(何が起こった?いや、何をした?―――誰を斬った?)
 理解できない。自分が。目の前にあるモノが。走るヒトが。
(あいつ。そう。あいつさえ来なければ…)
 胸の中にはざわめき。片手にはビームサーベル。背中には…
「ああああああ、アルルゥちゃんまで、どうして?アルルゥちゃんがなにをしたって言うのよ!」
 月代の最期の抵抗。それは彼のざわめきを刺激するもので、だから。

 ガッ!

「う。う…」
 壊れた肩でも殴るくらいはできる。振り向くと同時に叩きつけた拳は月代を倒すには十分だった。
(行こう)
 朋也は奥に進んでいく。
569闇に光る:04/07/04 14:54 ID:vwi7gvPf
 明日菜は鎌を手にとる。
 肩の痛み。銃弾は残り5発。暗いこの洞窟ではできるだけ、南部は使いたくなかった。
 辺りを見回す。人影二つ。瞬時に観鈴と敬介であると理解する。
 低い姿勢で走り出す。その様子はまるで忍の様であった。
(橘は気絶しているはず。なら、狙いは観鈴さん…!)

「おとうさん、おとうさん!」
 必死の呼びかけにも敬介は目を覚まさない。観鈴は気絶している敬介を揺らす。
 その声が明日菜を正確に導いていると知らずに。
 その時、気付く。背後に立つ明日菜に。
「…がお」
 それは恐怖からなのか、観鈴には分からなかった。

 無心で鎌を振り下ろす。狙いは観鈴の首。
 しかし、それは果たされなかった。
「明日菜ァァァァァ!!!」
 猛スピードで迫る晴子。受け止める隙さえなかった。
 晴子のタックルで明日菜が飛ぶ。受身はとれなかった。
「ぐはっ!」
 肩と背中にダメージ。一時的なものだろうが、それでも今は辛い。

「観鈴!離れとけ!」
 晴子の声に観鈴は立ちあがる。敬介が気になるが、今はここにいても足手まといになるだけと判断し、入り口のほうへ走る。
 そのとき誰かとすれ違う。が、構わず走った。
570闇に光る:04/07/04 14:55 ID:vwi7gvPf
 ふらり、ふらりと歩いてたどり着いた。この胸のざわめきを早く静めたい。
(…いた)
 晴子の姿を確認する。すかさず、ビームサーベルのスイッチを入れる。
 光が暗闇を照らす。
 その光に反応したのは二人。

 一人は晴子。
(さっきの熱と同じやな)
 振り返る。そこに見えたのは、予想通りの人物。岡崎朋也。
 もう一人は明日菜。
 光を見る。見えたのは二人。晴子と朋也。
 南部を構える。先ほどのダメージは回復していない。だが、はっきりと姿の見える今、当てることはできると考えた。
 二発発砲。
「ぐっ!」
 一発は晴子の背中に。もう一発は朋也の左肩をかすめる。
「チィ!」
 ビームサーベルを落としてしまう。

(チャンスや)
 背中を撃たれても関係無い。明日菜に対抗できる武器がみつかった。
 すぐにビームサーベルを拾い上げる。
(ウチが犠牲になってもええ。明日菜を止めるんや。それがウチの精一杯の罪滅ぼし)
 走る。同時に明日菜も起き上がる。
「ウチとアンタの腐れ縁、終わらせたろやないかぁ!!!」

 ぞわり。
(なんだ?このざわめき。俺は一体…)
571闇に光る ◆Qo/l.TPc9Y :04/07/04 14:55 ID:vwi7gvPf
【085 三井寺月代 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 
         針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
【023 神尾観鈴 所持品なし 右耳の鼓膜が破れている 応急手当済み】

【022 神尾晴子 ビームサーベル 怪我は応急手当済み】
【002 麻生明日菜 鎌 南部十四年式(残弾3)】
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル、リュック(智代のCD 裁縫道具 
    医療用の針と糸 乾パン カップ麺 ホイッスル シェラフ 方位磁石 メタルマッチ 救急セット)】
【055 橘敬介 ピアノ線 大判ハンカチ 筋弛緩剤を注射器(3セット)メモと鉛筆、食料
       腕に万国旗 手品用品 鉈 文化包丁 [意識不明]】

【歪んだマイクロUZI(残弾20発)は洞窟の闇の中に、朋也・宗一・芳野の写真は
 時紀のポケットに、ケーキ、ショートソード、千枚通しの入ったそれぞれの荷物は放置】
572名無しさんだよもん:04/07/04 22:11 ID:icln8VBx
言うまでもありませんが>>568-571はNGです。
理由はビームサーベルなんて葉鍵に無いトンデモ物を使っているから。
この辺りの議論はhttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1087831397/を参照
573名無しさんだよもん:04/07/04 22:56 ID:EJ7XBMSd
中華キャノンなんて葉鍵に無いトンデモ物を使っていたハカロワ1。
574Poker:04/07/04 23:06 ID:lhI632Hu
「ふふふふ……ふふふ、うふふふふふ……」
晴香が窓を乗り越えてこちらにやってこようとしている。
何も考えず、いや目の前にいる者を殺す事だけを考えて――
香里はその狂気を覗いてしまった。

濁った目。

狂った精神。

切れた思考。

血にまみれた身体。

それはかつての彼女と同じ姿であった。

――これなら勝てる……わよね。

逢った瞬間に首を絞め、その相手が目の前にいるのに関わらず窓を乗り越えてこようとしている。
その姿が晴香が狂い思考が止まっている事を表していた。
前の彼女なら危険な事はなるべくせず、銃で応戦してきたであろう。

――嫌になるわね、北川君の仇を目の前にしても冷静でいられる自分が。


いくら狂っているといえど、彼女は最低でも銃を持っていたはずだ。
ならば、なるべく早く、そしてそれが無理ならなるべく戦闘を長引かせる必要があった。しかしこちらには今は手持ちの武器がない。
まずはそれを探し出さなくてはいけなかった。
575Poker:04/07/04 23:07 ID:lhI632Hu

香里が周りを見回してみると丁度手頃な獲物が見つかった。
そして、それを掴むと持ち上げ相手に向かって突き出すように――投げた。

どごっ……どすん

香里が投げた木の椅子を避けきれず晴香は再び窓の外の闇へと吸い込まれていった。

「今の内に何か武器を……」

真希が目配せをして置いていった2つのバッグ。
それで、晴香に対抗するしかなかった。

「――そういえばまだこちらの手札を見てなかったわね」

考えてみれば当たり前であろう、この前まで自分はタダの狂人だったのだから。
何とかに刃物。
正気に戻り、改心したとはいえ武器になるような物は渡さないだろう。

――さて、ジョーカーでも混ざってくれているといいのだけど

手札を開く。
答えはブタ。
何の役にも立たないカード。
そのバッグの中には食料と水しか入ってなかった。

がたん

香里が音に驚き振り返ってみると少し離れた所で銃をこちらに向けて晴香が立っていた。
576Poker:04/07/04 23:08 ID:lhI632Hu

「くっ!」

身体を引きながらバッグの中に入っていた缶詰や箱状の食べ物、そして水の入ったペットボトルを投げつけた。

ぱんっ

乾いた音が闇に吸い込まれていく。
晴香が放った弾丸は香里をそれ投げつけたペットボトルに当たり、香里が投げた缶詰は晴香の顔面に命中していた。

ばしゃぁ――――

撃ち抜かれたペットボトルは空中で舞い、中のものを全てぶち撒きながら踊っていた。

――今の内にもう一つのバッグを!

ブタだった手札はもう全て捨てた。
そして、新しく手札を引く!

バックをあけ視線だけは晴香にやりながら香里は両手をバックに突っ込んだ。
フォールドは出来ない、ベットは自分の命。
577Poker:04/07/04 23:08 ID:lhI632Hu

「――シャワーありがとうね、お陰で目が覚めたわ」

相手はもう用意が出来たらしい、こちらに再び銃を突きつけていた。
もう、目は濁ってない。
そこにあるのは一人の勝負師と純粋な殺意だけ。
ならば、こちらはこの手札で勝負するしかない。
香里は両手に物を掴むとそれを目の前の相手に突き出した。

――ついてないわね……

奇跡は起こらないから奇跡という。
しかしそれでも尚、人は奇跡に期待してしまうのだ。

手札オープン

香里が相手に突き出していた手札それは出刃包丁、『超』と書かれたライター――そして便座カバー。
578Poker ◆zxBZW9ERuE :04/07/04 23:10 ID:lhI632Hu

【091 巳間晴香 コルト25オート(残弾1) カッター 相当量の食糧と水 発狂中】
【087 美坂香里 出刃包丁 『超』ライター 便座カバー】

【最後の鞄の中には多めの食料と水と『魁』ライターが入ったままです】
【食料と水はその辺りに散らばっています。】
【晴香は狂気から覚めました】

【1時頃】
579名無しさんだよもん:04/07/04 23:19 ID:Da97PgLq
>>574-578は相変わらず月厨丸出しの狂気(笑)文章によりNGです。
580Poker ◆zxBZW9ERuE :04/07/04 23:29 ID:lhI632Hu
蝉オロの方が大変になるとの指摘がございましたので
>【1時頃】を
【深夜】に変えさせて頂きます
581Poker 修正 ◆zxBZW9ERuE :04/07/06 00:38 ID:MBtTiU9n
2回目の修正となりますが可能ならば最後の一文
それと便座カバー
に修正をお願いします
そう書いたつもりでしたのに言われるまで気が付きませんでした^^;
582名無しさんだよもん:04/07/06 14:02 ID:mmuhZ3Fm
正直つまらん
583誰そ知る恋歌:04/07/06 15:16 ID:vsbfLRQv

ふたりの少女が立っている。
それはまるで鏡に映したかのように似通っていた。
豊かに波打つ髪、ところどころが裂けた制服、傷だらけの全身。
そして、その瞳。
己になし得るすべてをもって、この場を支配せんとする瞳。
少女たちは対峙する。


美坂香里は内心の焦燥を顔に出さないように耐えるのが精一杯だった。

(マズい、か……)

最後の札は悪くない。
ライターはともかく、出刃包丁は立派に人間を殺傷できる凶器だ。
それと、便座カバー。
これには正直、頭を抱えるより他ないのだけれど―――。

(少なくとも、ブタじゃあない)

それでも、こちらはようやく包丁一本。
こちらを向いている銃口に対抗するには、いささか絶望的な戦力差。

(……けど、勝利条件は私が生き残ることじゃない)

まして、目の前の少女を殺すことでもない。
時間を稼ぐこと。
広瀬たちが逃げ延びるだけの、そしてできればエディと合流できるだけの、時間を。
さしあたっての問題は、その時間が、どうにも稼げそうにないことくらい。

(やっぱり、奇跡なんて期待するものじゃないわね……)
584誰そ知る恋歌:04/07/06 15:16 ID:vsbfLRQv

巳間晴香は、銃口を少女に向けていた。
これは圧倒的な勝利のかたち。
相手が持っているのは出刃包丁。
引き金を引けば、勝負はつく。
そのはずだった。

トリガーは果てしなく重かった。
握る手の平に、じっとりと滲む汗。
それは因縁の決着への昂奮でも、まして殺人への忌避でもなかった。
少女の重い枷となっていたのは、たったひとつの懸念。

(―――あのとき撃った……のは確か、だと思う……けど……)

よく覚えていなかった。
狂気に身を任せ、半ば夢を見ているような状態で行動したツケが、早くも回ってきていた。
記憶にある限り、最後に確認した残弾は二発。
そして、おそらくは一発、或いはそれ以上、発砲している。
一発ならばよし、引き金を引けば最後の弾丸はこの少女を貫くだろう。
だがもし、発砲していたのが二発だったら。
撃鉄が奏でるのは、薬莢を叩く破裂音ではなく、巳間晴香の死刑宣告、その結審の音だ。

また、だ。
自分はつい先刻、昼間にもまったく同じように動きを封じられた。
その挙句に関西弁の女にしてやられ、マシンガンの銃口に身を晒す羽目に陥った。
同じ失敗を繰り返していた。
585誰そ知る恋歌:04/07/06 15:17 ID:vsbfLRQv

(そもそも、ケチのつき始めは―――)

この少女と対峙した、あの海の家の一件だ。
あのときに学んだ筈だった。
銃の一つや二つを持ったからといって狩人を気取れば痛い目に遭う、と。
己を知り、相手を見極め、状況を把握し、退き時を見失わず―――。
さもなければ、手痛い代償が待っていると。

幾つかの修羅場を経て、教訓を得たはずだった。
惑うな、と。
殺すことに集中しろ、と。
そして考えろ、研ぎ澄ませ、ただ相手の息の根を止めるという、その一点だけを貫き通せ、と。

それが何だ。
この様は何だというのだ。
苛立ちに我を忘れ、湧き出る狂気に呑まれ、策も無く集団に正面から襲いかかり。
そして敵を仕留めるべき機会を逃し、今はこうして立ち往生だ。
何一つ。
ほんとうに何一つ、変わっていない。
自分はまるで、変われていない。

懐かしいサイコ女が、目の前に立っている。
あの時はナイフ、今は包丁。
刃渡りは大きくなっているけれど、相も変わらず銃の前に立ちはだかっている。
しかしその眼は記憶にあるそれでは、最早なかった。
濁りは晴れ、澱みは流れ落ちていた。
今はただ一心に、己と対峙している眼。
目の前に立つこの少女は―――変われたのだろうか。

じりじりと、時が過ぎていく。
586誰そ知る恋歌:04/07/06 15:18 ID:vsbfLRQv

時間の経過と共に、香里の焦燥は疑念へと変わっていた。

(どうして、撃たないの―――?)

一発、それで終わる。
距離にして数歩ぶん。
外さない、かわせない。
何もかも終わるはずだ。
それを撃たないというのは、余裕のつもりか。
あり得ない。
先ほどまでならともかく、今この少女の眼は狂気を宿してはいない。
正常な判断ができるということだ。
ならば、時間が経てばたつ程に状況が悪化していくのは判るだろう。
逃走した広瀬たちが反撃の態勢を整えて戻るかもしれないし、援軍や、それとも新たな闖入者、
思わぬアクシデントというものは、この島に溢れかえっている。
静まり返った深夜の住宅街でこれだけの大立ち回りを繰り広げた以上、ここに長居するのは
少なくとも得策ではない。
この周囲にどれほどの人間がいるのかは知る由も無いが、そのすべての耳目を一身に集めても
不思議ではないのだ。
一刻も早く決着をつけて、早々に立ち去るべきなのだ、目の前の少女は。
どう考えてもそれが唯一にして最良の方策。

ならば。
ならば、この状況で撃たないというのは―――それは、つまり。

(撃てない、の……?)
587誰そ知る恋歌:04/07/06 15:19 ID:vsbfLRQv

先ほどの発砲がある以上、銃自体は本物だ。
それでもなお撃てないというのなら、考えられる可能性は絞られてくる。
給弾不良、あるいは―――弾切れ。

いずれにせよ、選択肢が多く用意されているわけではなかった。
このまま睨み合いを続けるのか、逃げるのか、それとも。

(仕留めるか、ね……)

唐突に、その思考がクローズアップされる。
心拍数が跳ね上がる。
殺す。
この手で人を殺す。
実際に考えただけで、震えが走る。
恐慌の中で、あるいは狂気の中でそれを幾度も繰り返したことを思い出す。
吐き気をこらえる。
全身を覆う圧倒的な絶望から、今だけは目を逸らす。

できるのか。
自分にできるのか。

(私が、私の意思で、ヒトを殺す―――)

呼吸が、苦しい。
手の平の出刃包丁と、便座カバーが震えていた。
588誰そ知る恋歌:04/07/06 15:19 ID:vsbfLRQv

目の前の少女の様子が変わった。
自嘲に耽っていた晴香にも、それは察知できた。
先刻までの落ち着き払った様子が、失われている。
少女を包んでいた、ある種の決意が薄れているように見えた。
代わりにその全身を満たそうとしているのは―――覚悟、のような、何か。

少女の呼吸は微かに乱れ、それを抑えようと必死なのが見てとれた。
その手は傍目にも判るほど震え、そして眼は、いまや剣呑な光を浮かべていた。
その光は獲物の怯えでも、護る者の決意でもなく。

(そう……私と狩り合う気になった、ってわけね―――!)

ならば―――受けて立つ。
それが、矜持。
この島で晴香を支えてきた、唯一の柱。
森での、関西女との一戦を思い起こす。
勝てる手札だった。
しかし相手のブラフに怯え、勝負から降りた。
そうして自分は、巳間晴香の在りようを見失った。
ここでもう一度ドロップすれば、それは永遠に失われる。

(なら、レイズするしかないじゃない―――!)

命を、誇りを、魂をベットして、乾坤一擲の大勝負。
この引き金が命運を分かつコインの表裏。

今度こそは生きるか、死ぬかの―――、一点賭け。
589誰そ知る恋歌:04/07/06 15:20 ID:vsbfLRQv

少女の手から、銀色のライターが離れた。
それはゆっくりと、床に向かって落ち―――堅い音を立てた。
それが、合図。

包丁を手に、栗色の髪の少女が走った。
小さな銃を構え、紫の髪の少女はそれを迎えた。

互いの瞳が、互いを捉えた刹那―――小さな音が、弾けた。
590誰そ知る恋歌:04/07/06 15:21 ID:vsbfLRQv

ぽたり、ぽたりと血が滴る。
それは少女を濡らし、床に赤い染みを拡げていた。
巳間晴香の制服、その左肩が、大きく裂けていた。
止まる気配なく血の滲む肩を押さえながら、晴香が呟く。

「やって、くれるわ……」

その視線が向けられているのは、床に横たわる美坂香里。
少女のわき腹に開いた小さな傷痕からは、とめどなく噴き出す血潮。

トリガーを引いた、あの一瞬。
弾は残っていた。
それは、晴香の勝利を意味していた。

だが香里が狙っていたのは、一撃必殺の刺突ではなく。
発砲動作に集中する、その一瞬を狙った投擲。

結果、晴香の弾は香里を貫き―――回転しながら飛来した出刃包丁は、
避ける間も与えず晴香の左肩を薙ぎ、大きな傷を残した。

「本当に、やってくれたわね……」

熱い息を抑えるように、言葉を吐き出す。
591誰そ知る恋歌:04/07/06 15:22 ID:vsbfLRQv
その呟きに答えるように、倒れ伏していた少女の眼が、ゆっくりと晴香を捉えた。
その口から、乱れた呼吸に混じって途切れ途切れの呟きが漏れる。

「……わたし、の、勝ち……ね」

怪訝な視線を向けるよりも早く、少女は続けた。

「……ことば、どおり……よ」

言い終えるなり、口の端を笑みのかたちに歪めようとする。
苦痛と死の恐怖に襲われているはずのその表情は、だが奇妙に満ち足りていた。
その笑みから目を逸らし、敗者の戯言と自分に言い聞かせる。

壁面に突き刺さる出刃包丁を引き抜くと、最後に少女を一瞥し、割れた窓から
外に出ようとする。
少女の顔は、最後まで微笑んでいるように見えた。
592誰そ知る恋歌:04/07/06 15:23 ID:vsbfLRQv

紫の髪の少女が窓から出るのを見届けると、香里は大きく息をついた。
吐く息に混ざって、決して少なくない量の血が口から漏れる。
ゆっくりと、這いずりながら壁面に近づくと、もたれ掛かるようにして身を起こす。

強張る手指を開けば、そこにはたったひとつ残された便座カバー。
わき腹からの出血は止まらない。

「……これ、で……おさえる……の、なんか、やだ……なぁ……」

この期に及んでの思考に、思わず苦笑する。
横隔膜が振動し、激痛が走った。
涙と笑みの同居した表情のまま、帯を通すように便座カバーを巻き、
傷口を押さえようとする。

「……あれ……うまく、いかない……な……」

震える手と歪む視界が、なかなか結び目を作らせない。
何度も何度も、繰り返す。

「……まぁ……これで……いいや……」

どうにかできたのは、結び目ともいえない交差がひとつ。
出血を止めるどころか、傷口を覆う役にもたってはいなかった。
どの道、意味など無かった。
段々と呼吸が不定期になってきていた。

軽く巻いただけの布が、柔らかく敷き詰められた布団のようだった。
どうしてだか、誰かに抱きしめられているように、感じた。
593誰そ知る恋歌 ◆o3dy3KBBYw :04/07/06 15:23 ID:vsbfLRQv

【087 美坂香里 死亡】

【091 巳間晴香 コルト25オート(残弾0) カッター 出刃包丁 相当量の食糧と水】

【最後の鞄の中には多めの食料と水と『魁』ライターが入ったままです】
【『超』ライター、食料と水はその辺りに散らばっています】
【深夜】

【残り30人】
594名無しさんだよもん:04/07/06 15:48 ID:6LowZr6w
保守
595名無しさんだよもん:04/07/06 15:52 ID:mmuhZ3Fm
これまたつまらんな…
緊張感のかけらもない
596名無しさんだよもん:04/07/06 16:43 ID:XpgmNFqI
リレー小説だと言うのに長々と書きやがって…少しは文章削れよw
597 ◆o3dy3KBBYw :04/07/06 23:05 ID:vsbfLRQv
>593に晴香の状態を追加させていただきます。
ご指摘、ありがとうございました。

【091 巳間晴香 コルト25オート(残弾0) カッター 出刃包丁 相当量の食糧と水
[左肩裂傷、出血中]】
598悪魔の囁き:04/07/07 00:04 ID:TJqCeB01
「ハク……オロ……さん?」
 彼女はもうこの世にいないはずの人物を面影をどこに見たのか。
 似ても似つかぬ目の前の仮面の人物がそう見えたのは最後を看取れなかった彼女の未練か。
「……そんな訳…ないですよね」
 分かってはいるがそれでも足は独りでに仮面の人物へ向けて歩みを進める。
 2歩目を踏み出そうとした時、横から伸びた手がエルルゥの進路を遮った。
「迂闊に近寄らない方がイイゼ」
 エディはあくまでも慎重。
 そう簡単に仮面の男に気を許しはしない。
 それがナビゲーターとして背中を預かる者に必要な事であり、その双肩に少女達の命を預かる者に必要な事でもある。
 警戒しているのは仮面の男の方のみ。
 もう一人の松浦亮に対しては警戒してはいない。
 助けを求めて来た時の芽衣とあかりの態度が嘘であったのならば、彼女達は世界一のナビを騙せる地獄の雌ギツネをも超える詐欺師だ。
 それに芽衣とあかり信じる理由はもう一つ存在する。
(最初に盗聴した47番……彼女の声に聞いタ時、彼女はこのゲームには乗っていなかっタ)
 それならば、芽衣と共に居たあの男は信用してもいい。
(さて、どうやってこの場を収めるかナ)
 警戒するべきは仮面の男、只一人。

(エディさんはあの仮面の人を警戒してる?)
 エディの微妙な視線の動き、体の重心の方向がその事実をエルルゥに伝える。
 エディさえ前に立ち塞がってなければ、今すぐにあの人の所に……あの人の仮面の元に走り寄って行くのに。
(なんでエディさんは仮面の人を警戒するんだろう? なぜあの仮面の人を……!?)
 その時エルルゥの脳裏に浮かんだ可能性。
 0ではない、ありえなくはない可能性。

 どうして目の前の人物はあの仮面を持っているのか。
 あの仮面を持っているという事、それはハクオロと会ったという事ではないのか。

 もしかしたら…今エルルゥは最愛の人物の仇を目の前にしているのかもしれない。
599悪魔の囁き:04/07/07 00:07 ID:TJqCeB01
 ハクオロは復讐などは望まないだろう。
 しかしそれはハクオロが復讐の連鎖を嫌うから、死者の為に生きている者が犠牲になるのを嫌うからではないのか。
 だとすれば、今のこの状況は?
 死者の為でなく、今生きている者の命を守る為に相手の命を奪わないといけないかもしれないこの状況は?
 復讐の為に命を奪うのではなく、別の理由で命を奪い結果的に仇を討つのであれば。
 あの人は許してくれるんじゃないか。
 エルルゥの心に魔物が囁く。

 状況が変わった。
 蝉丸にとっては歓迎すべき事だ。
 このままでは誤解されたままだった少女達が戻って来たのだから。
 しかも彼女達はこの争いを止める為、人を連れて戻って来た。
 残念な点としては共に来た黒人の男は明らかに蝉丸を警戒している。
 だが、この状況に置いては警戒されている事すら蝉丸にとって好都合。
 黒人が蝉丸を警戒しているのには当然亮も気付いている。
 ならばそれが安心感となって少しは焦りが和らぐのではないか。
 それに蝉丸は期待していた。
(状況をこれ以上こじらせたくはないが…)

 芽衣とあかりが人を連れて戻って来た。
 亮は2人が無事だった事には安堵するが、まだ危険は去っていない。
(危険だが、やるしかないか)
 もう手元に武器はないが、蝉丸の武器とて一撃で死に至る類の物ではない。
 芽衣とあかりの事は仮面の男を警戒している黒人に任せておけば大丈夫だろう。
 失敗は許されない。
 慎重に仮面の男の隙を見極める。
600悪魔の囁き ◆ShkV1kmbjA :04/07/07 00:09 ID:TJqCeB01

 芽衣とあかりは期待する。
 エディがこの亮達の戦いを止めてくれるのを。
 一触即発の雰囲気に気圧され、亮達の傍に近づく事すら出来ず、ただ固唾を飲んで状況を見守る。
 それ故に気づかない、芽衣のバックにエルルゥが忍び寄っている事に。


「いいか、2人共。オレッチはこのレディ達の頼みであんたラを───」
(今だ!)
 仮面の男の注意が黒人の男に逸れた一瞬の隙を狙って亮は蝉丸に向かって体当たりを見舞う。
「ぐっ!?」
 蝉丸はよろめきながらも中腰で踏ん張って倒れるのを堪える。
 蝉丸が咄嗟に身を捻ったせいか、仕掛けた体勢に無理があったせいか亮の方もよろめいてしまう。
「まだやる気か、いい加減──」
 だが蝉丸はその言葉を最後まで発する事が出来なかった。
「マテ──!」

 エディの声に反応して振り向くと

 
 そこには蝉丸の頭に目掛けて石を振り下ろすエルルゥの姿が───

【037 坂神蝉丸 木刀 ハクオロの仮面装備 切り傷 打撲が二十数箇所 現在ちょっと怪我が痛んでます】
【084 松浦亮 修二のエゴのレプリカ(バッテリー切れ、残り一発 ギアの車輪一つは近くに転がってます。一つは既に失われてます)】
【024 神岸あかり 所持品なし】
【011 エルルゥ 所持品 枕大の石】
【010 エディ 盗聴器 尖った木の枝数本 ワルサーPP/PPK(残弾4発) タオルケット×2、
   ビスケット1箱 ペットボトルのジュース×2 婦人用下着1セット トートバッグ 果物ナイフ】
【047 春原芽衣 木彫りの熊 きよみの銃の予備弾丸6発 筆記用具
 黒うさぎの絵皿 水風船2コ 予備食料の缶詰が残り3つ】

【「せみとまる」直後】
601名無しさんだよもん:04/07/07 00:43 ID:+4Xy+kUk
また投げっぱなし糞文章か!
602名無しさんだよもん:04/07/07 02:40 ID:5cYw161n
warata
603大嫌い:04/07/07 17:34 ID:ysM+itT9
「古河さん、まだ大丈夫?」
「はい……まだ……全然大丈夫です」
真希は渚に肩を貸しながらゆっくりと走っていた。
さっきまで横になっていた病人を走らせているのだ、大丈夫なはずがない。
しかし、それは一人で時間稼ぎをしていた香里も同じ事なのだ。
最初真希にはどちらを優先させれば良いのか解らなかった。
しかし、渚の「急がないと駄目です」の一言で渚の体力を信じてみたくなったのだ。

「――古河さんは強いのね」
「はい……私は強い子なのです」
自分に自信を持て。
朋也に言われたその言葉、渚はそれを噛みしめながら答えた。
自分にも言い聞かせていたのだろうか、そこだけはハッキリと――

エディとエルルゥがどっちに行ったのかは解らない。
住宅街と言ってもそれほどまで家が乱立しているわけではないのが唯一の助けだった。
道がなく、見えていた家にたどり着くと次に見えていた家に探しに行くそれの繰り返しだった。
その上深夜で周りが見辛い事もあってなかなか探し人は見つからなかった。

――女の子ばかりが走ってきたんだし、助けを求めてきた訳だからそこまで離れてはいないと思うんだけど……
真希は芽衣とあかりの事を思い浮かべた。

ぱんっ

その時かすかに音が聞こえた。
どこだか解らない。
しかし、頭に浮かんだのは一人家に残った香里と――北川の撃たれた姿だった。
604大嫌い:04/07/07 17:34 ID:ysM+itT9

「くぅっ……」
その悔しさと無念を下唇を噛み堪える。
隣には渚がいる――ほっとけるわけがない。
しかし脚は前へと進んでいくが、気持ちは後ろに引きずられていっていた。

「――広瀬さん……もういいです。私、強い子ですから……一人でも……大丈夫です」
発砲と真希の表情で何か決心したのだろう。
とぎれとぎれながらも強い口調で言った。

「な、何言ってるのよ!私は……」

――あなたを支えていなくちゃいけないのよ
その一言が言えなかった。
それを口に出すのはおこがましいと思ったし、それを口に出すのを渚の目が止めていた。
今の迷っている自分より遙かに強い目。
そんな目で見られて反論できるわけがなかった。

「では……二手に分かれて……探すというのはどうでしょうか?」
そう言うと渚は肩を組んでいたのを止め自分の力で地面に立って見せた。

「ほら……大丈夫です。それに無理はしませんから……だから……香里さんをお願いします……」

そうだ、香里を助けたかったのは私だけじゃなかったんだ。
それは、渚も同じ思いなんだ。
最初見た時は北川の事もあって毛嫌いしていたけど、北川を殺されたのは香里も一緒だった。
それに、いつの間にか私達と溶け込んでいた。
香里を、これ以上仲間を殺されたくない!
605大嫌い ◆eGR.6tmxQ2 :04/07/07 17:35 ID:ysM+itT9


――北川の仇なら私の相手でもあるじゃない!!

「――わかったわ。じゃぁ私はこっちの方を探してくるわね」
そう言い残して真希は元来た道を走って戻っていった。

――私は誰?私は広瀬 真希。

――私は私に似ている奴が大嫌いなのよ。

――そう、香里やあいつのようにね。

――だから……死ぬんじゃないわよ!!
大嫌い、そう言いながらも香里の事を考えると笑っていた。
もしも、次合ったら最初に合った時のことを謝ろうと思った。

大嫌い……それは真希にとって親友という意味なのだから。

【072 広瀬 真希 所持品なし】
【081 古河 渚 所持品なし 発熱中】
【深夜】
【本文中の発砲音はPokerの時の発砲音です】
606名無しさんだよもん:04/07/07 23:35 ID:aNk4bQW0
607名無しさんだよもん:04/07/08 01:14 ID:aZ7x6riv
>>475-483 RESISTANCE〜小さな灯火〜】
>>496より、NG確定】
【勝手な新キャラ、オリキャラの登場】
608名無しさんだよもん:04/07/08 02:02 ID:TLerSdk0
>>606-607は荒らしです。放置してください。
両作品とも通しです。
609THE・便座カバー:04/07/08 03:26 ID:HNKgyfsK
――もうこれで五人目かしら……
晴香はこの三日間で既に五人も人を殺していた。
優勝者のみに叶えられる願い――兄、良祐のFARGOからの開放。

「あはは、意外とこれもFARGOの試練だったりしてね……」
あの教団ならあり得なくはないと思い始めていた。

――けどFARGOの目的は不可視の力じゃなかったの?
それを封じて戦わせるのなら意味がない。
やはりFARGOは関係なかったのか?

――そんな事は、もう良いわ。私は勝ってFARGOから出るんだから。
これに優勝すれば何だって出来る気がした。
例えば兄を奪ったと言ったFARGO相手に立ち回るとか……
だが、その為にもまずは生き残らなくてはならない。
未だに体中がひりひりする。
その上これでは左腕が使い物にならなくなったに等しい。
ほんと、最後の最後でやってくれた。
戦闘が終わって銃の残弾を確認してみたが0だった。
この傷で包丁とカッターだけで戦っていくのはわざわざ死にに行くようなものだ。
なら、取り敢えずこの家の中の武器を集めてから考えよう。
晴香はそう考え包丁やらライターを1ヶ所に集めていった。
610THE・便座カバー:04/07/08 03:27 ID:HNKgyfsK



ぱんっ

二発目の銃声が今度はハッキリと聞こえた。

――香里、まだ死ぬんじゃないわよ!!

走り、走ってようやく元の家が見えてきた。
真っ暗闇の中一軒だけついていた灯りが羽蟲を誘っていた。
これならあの北川の仇がこの家にやってきたのも頷ける。

――ほんと、馬鹿ね。こんな時まで電気をつけてたなんて……

そう呟きながら真希はゆっくりと音を立てないように近づいていった。
家からの音が無い。

香里とあいつの戦いは終わったのか?

それとも、場所を変えたのか?

もしくは、香里かあいつが逃げ、追いかけてこの場所からいなくなったのか?

パターンはいくらでも考えられた。
だけど、考えている時間はない。
場所を変えたのならそれを追って助太刀するのだから。
611THE・便座カバー:04/07/08 03:27 ID:HNKgyfsK

――さすがにドアからはいるのは危険ね……
真希はふと晴香が割った窓の事を思い出した。
あそこからならうまくいけばばれずに入れるし、音を立てずに中の様子を確認する事も出来る。
そう閃くと真希はすぐさま家の横に回った。
自分たちがいた所を考えながら窓を探す。

――あった。
硝子が割れている、間違えない。
そして、真希はそっと近づき中を覗き込んだ。

そこにあったのは色々武器らしきものを集めた山。

その近くでこちらに背を向け座りながら集めた物を使えるか真剣にチェックしている晴香。

そして窓からすぐ近くに横たわったまま動かない香里、――それと便座カバー――北川の形見であり支給武器であった。

それを理解できた時真希の中で何かがキレ、弾けそしてとんだ。

窓を飛び越え、香里の死体からに寄り、晴香の元へ叫びながら駆けた。

「うわぁぁぁぁぁぁああ!!!」
手元には血に濡れた便座カバーが一つ。
手に取ると結び目はすぐに解けた。

驚き振り返る晴香。
右手にはとっさに掴んだポケットのカッター。
しかし、今の真希には晴香のカッターなんて目に入らなかった。
612THE・便座カバー:04/07/08 03:28 ID:HNKgyfsK


便座カバー――このときは既に『それと』で付け加えるような存在ではなく、唯一のそしてかけがえのない存在であった。

真希は晴香が驚き動けない一瞬の間で後ろに回り込んで手に持っていた便座カバーを相手の首に二重に巻いて締め付けた。

「ぐ……ぐぇ」
それに対し晴香は必死に抵抗しようとしていた。
手にしていたカッターで相手に斬りつけようとする。
しかし、胴に斬りつけても制服が邪魔してダメージを与えられず、手に切りつけようとしても右手一本で後ろ向きじゃ動きが簡単に読まれていた。

「あなたが……あなたが北川と香里を殺したのね!!」
二人を見殺しにしてしまった自分。
二人とも自分が止めていれば、もしくは助太刀していれば助かったかも知れない。
今回も自分の決心が遅くこうなってしまった。
その自分が許せなかった。
しかし、それ以上に目の前の二人を殺して平然と生きているこいつが許せなかった。

自然に手に力が入る。
それに比例して便座カバーは閉まっていく。
晴香はそれをカッターで切ろうとしたが、血に人の油に、そして人の怨念に濡れていてその程度の刃物では切れる代物ではなくなっていた。
613THE・便座カバー:04/07/08 03:29 ID:HNKgyfsK

「この便座カバーはね、北川と香里と私の絆なのよ!!そんな刃物で切れてたまる物かぁ!!」
「が……がはっ」
もう息が持たない。
そう思った晴香は最後の賭に出た。
『コルト.25オート』残弾は0だが先ほどの賭に勝つ事が出来た銃を真希の胸に突きつけた。
はったりだ。
しかし、晴香自身そのはったりで痛い思いをした事もある。
そう、最近の戦いは全て賭の勝負だった。
賭で負ければ負け、賭に打ち勝てば勝ち。
ならば、今度はこっちがはったりで賭に勝つ番だ!!
晴香は真希が負けるのを想像しニヤリと笑った。

しかし、それは相手がはったりに負けた場合の話であった。
真希は北川を香里を――それと便座カバーを信じていた。
ならば、当然そんな最後のはったりに屈するわけがなかったのである。

だーーんっ

空中を一回転して晴香の身体が沈む。
真希は銃を突きつけられ、とっさに肩と腰を支点とした一本背負いを繰り出していた。
ただし、普通の一本背負いと違う所は腕ではなく首で投げていた。
当然、鍛えてもない人間首がその負荷に耐えられる事もなく、晴香は首の骨を折って笑いながら絶命していた。

「北川……香里……仇は取ったよ……」
その場でぺたんと腰をついた。
人を一人初めて殺したのだ。
しかしこんな場所で、その上便座カバーで人を殺したのだ。
真希は少しの間その現実味の無さに呆然としていた。
614THE・便座カバー ◆wEYoqMAQ5k :04/07/08 03:29 ID:HNKgyfsK




【091 巳間晴香 死亡】

【072 広瀬真希 血に濡れた便座カバー】

【家の中には食料と水、『超』、『魁』ライター、出刃包丁、2つのバック、その他家にあって使えそうな物が山になって積んであります】
【コルト25オート(残弾0) カッターは晴香の死体が所持】

【深夜】

【残り29人】
615名無しさんだよもん:04/07/08 04:44 ID:EZkdzfmX
矛盾のない駄作乙!
616名無しさんだよもん:04/07/08 09:15 ID:w8g2yrwG
便座カバーがそんなに丈夫なわけないだろw
NGだな
617対峙が終わるとき:04/07/08 12:32 ID:ZyvQPA+8
「くっ」

自分が避けても亮に当たってしまう。
とっさに亮を抱え、前へ飛ぶ。
跳ね起き、距離をとる。

なんなのだ、あの少女は。
止めに来たのでは無かったのか。
そういえば、前にも同じようなことがあった。
同じ様な獣耳を持つ女と会った時。
仮面の持ち主の身内なのだろうか。
自分が仮面の持ち主を殺したのだと思っているのではないか。

亮は混乱していた。
あかりと芽衣が連れて来た2人は、実はゲームに乗っているのではないか?
杜若きよみのように、二人を騙し、漁夫の利を得ようとしているのではないか?
杜若きよみのように―――

尚も石を振り翳し、エルルゥが迫り―――

618対峙が終わるとき:04/07/08 12:33 ID:ZyvQPA+8
「駄目――――ッ」

二色の声。

亮と、エルルゥの前に足ち塞がるあかりと芽衣。

自分が止めなければ、と思った。
誰も死なせない、なんて偉そうなことを言って、助けを呼びに行って、
それで、この状況。
結局、自分は守られているだけで、何一つ出来ていない。
そんなのは嫌だった。
だから、体が動いていた。

「石を――捨てて下さい」

芽衣が言う。
どさり、と音がして、エルルゥは糸が切れたように座り込んだ。

自分は今何をしていた。
仮面をつけている男を、ハクオロを殺した人だと決めつけ、そして――
命を奪わないといけない等と勝手に思っていた。
何故、誰も死なずにこの状況を打破する事を考えなかったのか。
オボロに言った事と全く矛盾している。
例えハクオロを殺した人であったとしても、殺そうとはしない、と決めたのに。

「ごめんなさい」

そう、呟くことしか出来なかった。
619対峙が終わるとき:04/07/08 12:38 ID:ZyvQPA+8

「神岸、そこを退け」
「嫌。 退いたら、絶対誰かが死んじゃうもの」

お前や芽衣が死ぬかもしれないんだぞ――
言いかけて、言葉を呑み込んだ。
『誰も死なせない』
2人から、強い覚悟が感じられたから。
そしてそれは、このゲームを終わらせるのに必要なモノだと思った。
ならば、その強さに乗ろう、とも。

怖くないはずが無かった。
背中を木刀で打たれるかもしれないし、
もしかしたら銃弾が当たってしまうかもしれない。
でも、あのまま見ているだけ、は、絶対に嫌だった。
浩之ちゃんだったら、身を擲ってでも止めた。
そう思ったから、動くことが出来た。

亮が両手を肩まで上げた。
蝉丸も、木刀から手を離す。
それを見たら、膝に力が入らなくなって、ぺたん、と座り込んでしまった。
やっぱり、浩之ちゃんみたいには出来ないな、と思った。


「やれやれ、俺ッチ等全員、そこのレディ達に負けちまったナァ」

エディが破顔し、周囲の空気が和らいだ。

620名無しさんだよもん:04/07/08 12:39 ID:fZhQ0t/C
いくらなんでも展開苦しいよ・・・
面白いのが書けないなら前の展開リレーした方がよかったのでは?
621対峙が終わるとき:04/07/08 12:39 ID:ZyvQPA+8

互いに情報交換をした。
事情を聞いたエルルゥはただ小さくなるだけで、あまり喋らなかった。
亮も何か話す度に「すまん」と言っていたような気がする。
何となく、亮は同時期の自分に似ている、と蝉丸は思った。

一刻も早く宗一と合流するべきだ、ということで、エディは先にアビスボートに向かうことにした。
渚達を迎えに行くのは蝉丸とエルルゥ。
亮達はすぐ近くの民家でギアの充電をしてから。
芽衣は渚と、エルルゥはウルトとカミュに一刻も早く会いたかったが、我慢した。
木刀だけでは心許無いので、気休めにもなればと、果物ナイフを譲り受けた。


そして今、蝉丸とエルルゥは民家へ向かって走っている。
事情を聞いた蝉丸はエルルゥを許してくれた。
だが、自責の念は消えない。
この人は、殺し合いを止めるのに必要な人だ。
どんなときでも、何とかしてくれる、そんな空気を持った人だ。
仮面がついているからなのか、そんな風に感じた。

(例え、ハクオロさんを殺した人でも、アルルゥを殺した人でも、
 殺し合いに乗っていなければ、殺そうとは決してしません。
 だから――)

これは、契約。

(だから、どうか、この殺し合いを止めるのを手伝って下さい)

もういない、大神との。
ハクオロさんとの、契約。
622対峙が終わるとき:04/07/08 12:39 ID:ZyvQPA+8
【037 坂神蝉丸 木刀 果物ナイフ ハクオロの仮面装備 切り傷 打撲が二十数箇所】
【084 松浦亮 修二のエゴのレプリカ(バッテリー切れ、残り二発)】
【024 神岸あかり 所持品 無し】
【011 エルルゥ 所持品 無し】
【010 エディ 盗聴器 尖った木の枝数本 ワルサーPP/PPK(残弾4発) タオルケット×2、
   ビスケット1箱 ペットボトルのジュース×2 婦人用下着1セット トートバッグ 】
【047 春原芽衣 木彫りの熊 きよみの銃の予備弾丸6発 筆記用具
 黒うさぎの絵皿 水風船2コ 予備食料の缶詰が残り3つ】
623So shines a good deed in a naughty world.:04/07/08 16:22 ID:efMHHdCA

熱が、逃げていく。
この身体を突き動かしていた、狂おしいほどの熱。
娘を護り、わが身を守り、生き抜き生き延び生き残るという、意志。
それが、背中の傷から抜けていくのを感じる。

(風前の灯、ってか―――?
 けどなぁ……蝋燭ちゅうんは、消える間際が一番よう燃える、言うで……!)

固く握られた手には、薄く光る刃。
踏み出す一歩。
次の脚で、駆け出す。

鮮血を迸らせながら、神尾晴子が疾走する。
狙うのはたったひとり―――麻生明日菜。

「明日菜―――ッ!」
624So shines a good deed in a naughty world.:04/07/08 16:23 ID:efMHHdCA

文字通り決死の形相で迫る晴子の姿を見て、明日菜は苦笑する。

「ダメですよ、そういうの。全然、晴子さんらしくないです」

彼我の距離は決して遠くない。
刹那の単位で晴子の凶刃が迫っていた。
それでも、彼女の表情から笑みは消えない。

「は、弾の一発や二発じゃ止まらない、って顔ですねー。
 ……だったら、たとえばこういうのなんか―――どうですか?」

右手の南部をポケットに仕舞うと同時。
おもむろに足元へ目をやると、何かを、思い切り蹴り上げた。
それはぴっこりと音を立てながら、晴子目掛けて飛んでいく。
625So shines a good deed in a naughty world.:04/07/08 16:24 ID:efMHHdCA

突然、視界に飛び込んできたそれを避ける余裕は、晴子にはなかった。

(毛玉―――?)

思考の片隅に浮かび上がったそれを認識するよりも早く。
咄嗟に構えた刃で、その白い毛玉のような何かを、斬り払う。
叩き切るような姿勢でも反動の感じられない、その切れ味が災いした。

ぬるりとした感触が、顔中に拡がる。
疾走の勢いを殺せず、飛び散る血飛沫の真っ只中に晴子は走りこんでいた。

唐突に、視界が塗り潰された。

(しまっ……!)

刹那。
脇腹に走る、衝撃。

後悔も反省も次の手の組み立ても、あらゆる思考を寸断するかのように。
すべての感覚が、一点に集約される。
続いて、重い痛み。

収束していった苦痛が、反転する。
圧倒的なノイズが、爆発するように身体を満たしていく。

「がぁ……っ、アァァァァァ――――ッ!」

薄く光るサーベルが、震える手から取り落とされる。
腹を抉るように深く突き刺さった鎌が、鈍く煌いていた。
626So shines a good deed in a naughty world.:04/07/08 16:25 ID:efMHHdCA

晴子の耳に、明日菜の声が響く。
吐息すら感じられるほどの近くで、明日菜が囁いている。

「周り、見えてなさすぎですよ。観鈴ちゃんと逢えてからホント、晴子さんらしくないです。
 そんなだから―――たいせつな娘さんも護れずに、死んでいくんです」

世界から、熱と光が失われていく。
耳元で囁かれる明日菜の声が、世界を塗り潰していくように。
暗く、凍えるような世界の中で、明日菜だけが在るように。
最後まで残っていた熱が、流れ出し、消えていく。

観鈴の顔が、暗くて見えない。
観鈴の温もりが、寒くて思い出せない。
観鈴が、消えていく。

(観鈴……いつもみたい、がお、て言うてや……そしたらウチ、いつもみたい叱ったるさかい……、
 なぁ……聞こえへんて……みすず、)

「さようなら」

鎌が、引き抜かれた。
627So shines a good deed in a naughty world.:04/07/08 16:26 ID:efMHHdCA

とさり、と軽い音を立てて、晴子の身体が崩れ落ちる。
明日菜は右手一本で器用に鎌を仕舞うと、足元からビームサーベルを拾い上げた。
具合を確かめるように、二回、三回と振るい、そのままくるりと振り向く。

「で、ええと……岡崎くん、だっけ? どうするのかなぁ?」

視線の先には、岡崎朋也が立っていた。
その、何かに憑かれたような昏い眼を覗き込んで、明日菜はくすりと笑う。

「どうしたの?
 ヒトゴロシ同士の潰し合いを見学してて、気分でも悪くなっちゃったかな?」

朋也は応えない。
薄紅色の光に照らされてなお、その貌は暗く沈みこんでいた。
明日菜は微笑みながら、サーベルを一振り。

「―――あたしと、殺しあってみる?」

朋也は俯いたまま、応えない。

吐息をひとつ。
明日菜の顔から表情が消える。
何かを思案するように、サーベルの切っ先だけが揺れていた。
628So shines a good deed in a naughty world.:04/07/08 16:27 ID:efMHHdCA

殴られた頬を押さえながら、三井寺月代は泣いていた。
悲しくて、悔しくて、涙が止まらなかった。

ここでは、人殺しと、人殺しに愛される者しか、生きてはいけない。
そんな世界が、たまらなく嫌だった。

だから、誰かが走り寄ってくる音も、月代には堪えられなかった。
逃げるのは嫌で、動くのは嫌で、見るのも聞くのも嫌だった。
しゃくりあげる自分の背を心配そうに撫でる手も、どうしたのどうしたのと訊ねる
うろたえたような声も、それが橘の愛娘だということも、何もかもが嫌だった。

三井寺月代は泣いている。
629 ◆ezlmYLqI8w :04/07/08 16:29 ID:efMHHdCA

【022 神尾晴子 死亡】
【ポテト 死亡】

【002 麻生明日菜 ビームサーベル 鎌 南部十四年式(残弾3) [左肩負傷]】
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル、リュック(智代のCD 裁縫道具 乾パン
    医療用の針と糸 カップ麺 ホイッスル シェラフ 方位磁石 メタルマッチ 救急セット)】

【085 三井寺月代 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 
         針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
【023 神尾観鈴 所持品なし 右耳の鼓膜が破れている 応急手当済み】

【055 橘敬介 ピアノ線 大判ハンカチ 筋弛緩剤を注射器(3セット)メモと鉛筆、食料
       腕に万国旗 手品用品 鉈 文化包丁 [意識不明]】

【歪んだマイクロUZI(残弾20発)は洞窟の闇の中に、朋也・宗一・芳野の写真は
 時紀のポケットに、ケーキ、ショートソード、千枚通しの入ったそれぞれの荷物は放置】

【残り28人】
630名無しさんだよもん:04/07/08 17:02 ID:fZhQ0t/C
人が死ぬ話がレベル低いと凄く萎えるね
631名無しさんだよもん:04/07/08 17:37 ID:w8g2yrwG
禿同。せめて人並み以下になってから書いてほしいね
632名無しさんだよもん:04/07/08 18:00 ID:+22rrDP2
ポテトにぞんざい死でNG出るかな?
633名無しさんだよもん:04/07/08 19:55 ID:WWou7aB2
>>617-629
>>496より、NG確定】
【ぞんざいな死】
634名無しさんだよもん:04/07/08 20:11 ID:TifHmz7S
    |
 \   へ /                  ──┼─ ──┼─┐    ───/  ─┼─┼
   /_ \ _                   /│    │  │     │/     │ │  \   /
 _ \/ /      ⊂⌒⌒⌒⊃       / │    │  │     │         │     /
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       lヽ , −、 , ' l        ,. - ― - .   ⊂⌒⌒⌒⊃
       l  \n/ |      '       `ヽ     ̄  ̄
      , ´   ̄  ̄ `ヽ     .´ /__//  | _l__ `.
      .  /,    、   丶  .' //`       \i
       i  / /  | 、 \  `,  l   .(●), 、(●)│l
      | l (●),(●)    i i  l  ,,ノ(、_, )ヽ、 i  l
       ! ! ,,ノ(、_, )ヽ、   l| l   、  -=ニ=-  /   l
      ノ  l、 -=ニ=-    /| l  .   ゝ┬‐-‐┬く    |
      .'  ! `_ー----‐´ | l  、/ l L______」 l \ Fl
    i ∧ |(°ヽ,―┘ト、 l | /   l         |  ヽl l
    l l l l .ヽ_ ⌒`っ  i l、/  / |       |\ )、
      、 i !|、   )  ノ  v_ )ー' _ ├―――‐┤./l  l
     ヾ / ー‐ ' ー '    l ,●●、l       |  |__|
⌒⌒⌒⌒ /           |⌒l::ヮ::::l       |⌒|   |⌒⌒⌒⌒⌒
       ` ー┬‐┬┬‐┬┘ 、:::::::::し,  ハ   | l__l
           ー‐'  ー‐'    木木´ー‐'   ー‐'


635waiking ◆QGtS.0RtWo :04/07/08 23:04 ID:5bvQyV4D
渚は歩く。

「…はぁ……はぁ……」

熱病が体を蝕む。
体が焼き切れそうに熱い。
それでも歩く。

(わたしは……強い子ですから……)

真希に言った言葉を思い出す。
そう、わたしは、強い子。
だから、まだ、大丈夫。

「だんご…だんごっ……」

倒れそうになる体を、大好きな歌で奮い立たせて歩く。
636waiking ◆QGtS.0RtWo :04/07/08 23:06 ID:5bvQyV4D
「だんごっ…」

足が縺れて何度も転びそうになる。

「だん…ご……」

意識が朦朧として、視界が霞み始めた。
だが、こんなところで倒れるわけにはいかない。
エディさんか誰か、早く人を呼んでこないと、香里が殺されてしまうかもしれない。
自分を逃がすために誰かが死ぬなんて耐えられない。
それに、もしかすると真希だって――

「わたし、は…つよい…こ……」

ガクン、と膝が折れる。
とっさに両腕をついたが、力が入らず、そのままずるずると倒れ伏せていく。

(だめ……こんなところで寝たら…香里さん…が―――)

そのまま渚の意識は深い場所へと沈んでいった。
637waiking ◆QGtS.0RtWo :04/07/08 23:06 ID:5bvQyV4D
エディは歩く。

「待ってろヨ、ソウイチ……」

蝉丸から聞いた重大な情報。
それは特殊な信号を発射し、参加者に埋め込まれた爆弾を能動的に爆発させることができるゾリオンという武器の情報だった。
そのメカニズムさえ解析できれば、皆の爆弾を無効化することができるかも知れない。
そして、それはエディにしかできない仕事だろう。
ならば、ここで焦って住宅街を駆け抜け、暗がりから誰かに襲撃されるなどといった事態は避けたい。

(ソレニ、突っ込んでケガするのハ、オレッチの仕事じゃナイゼ)

宗一が無謀とも言える前衛を務め、自分はそれを援護する。
それが二人のスタンスだったはずだ。

曲がり角、民家の影、或いは背後。
殺人者はどこに潜んでいるかわからない。
宗一の元へとはやる心を静め、慎重に人の気配を探りながらゆっくりと、しかし出来うる限りに早く歩く。
638waiking ◆QGtS.0RtWo :04/07/08 23:07 ID:5bvQyV4D
(ン…アレハ……?)

暗闇の中に何か大きなものが転がっているのを見つける。

(ヒト……死んでイル?)

どうやら誰か人間が臥せて倒れているようだった。
何かの罠という可能性も在るが、もし誰かに襲われた、まだ生きている人間なら捨てておくわけにはいかない。
こちらの気配を悟られないように、じりじりと背後から近づいていく。
近づくにつれて段々と鮮明になっていく倒れている人間の容姿。

「――マサカ!?」

倒れている人間が誰かを確認した瞬間、危険を承知で駆け寄る。
倒れていたのは渚。
さっき民家で一旦別れたはずの渚が、道の真中で倒れていた。
639名無しさんだよもん:04/07/08 23:08 ID:w8g2yrwG
まんこ濡れてきた
640waiking ◆QGtS.0RtWo :04/07/08 23:08 ID:5bvQyV4D
「オイ、シッカリするンダ!」

返事は無い。
抱きかかえて脈拍を取る。
――どうやら、かなりの速さで脈打っているが、生きてはいるらしい。
他に外傷などはないか検分してみると、膝と額の擦り傷以外に特に傷はないようだった。
しかし、酷い熱を出していた。

「クッ…ドウなってやがる…」

ここに渚が一人で倒れているということは、向こうの民家で何か問題があったに違いない。

(ドウするカ…)

渚をこのまま放っておくわけにもいかないし、かと言って渚を抱えてアビスボートへ向かうのはあまりにも危険だ。
ここは自分よりも治療の心得があるエルルゥに任せるべきだろう。
宗一は後回しにして、一旦エルルゥの元へ渚を連れて戻ることにする。

「ソウイチにゃ悪いが、レディーファーストだナ……」

【010 エディ 盗聴器 尖った木の枝数本 ワルサーPP/PPK(残弾4発) タオルケット×2、
   ビスケット1箱 ペットボトルのジュース×2 婦人用下着1セット トートバッグ】
【081 古河 渚 所持品なし 
    発熱中 膝と額に軽い擦り傷】
【エディは渚を抱きかかえて先ほど蝉丸たちと別れた場所へ】
【時刻は深夜】
641 ◆QGtS.0RtWo :04/07/08 23:09 ID:5bvQyV4D
うわあああ(ry
タイトル打ち間違ってた_| ̄|○
正式には「walking」です。
642名無しさんだよもん:04/07/08 23:23 ID:lFpHaC5H
>>635-640は、タイトルでとても恥ずかしいスペリングミスをしているため、
NGとなりました。
詳しい詳細は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1086991539/641
をご覧ください。
643行かなきゃ!:04/07/09 00:56 ID:yDltB3Bl
 やさしい手が私の背中を撫でる。
「月代ちゃん、泣かないで」
 どうして?
「大丈夫」
 なにが?
「おかあさんが何とかしてくれるよ」
 殺人者のくせに?
「だから」
 それに、あいつに殺されるよ。
「泣かないで」
 うるさいよ。
「月代ちゃん」
 …。

 月代ちゃんが立ち上がる。観鈴ちんも同時に立つ。
「にはは。もう大丈夫?」
 心配したよ。月代ちゃん。
「……」
 怪我は…ないのかな。聞いてみよう。
「怪我はない?」
「……」
 あ、ほっぺが腫れてる。どうして言ってくれないのかな。
 そういえば、右耳が聞こえないんだった。
「ごめんね。よく聞こえないんだ」
「……」
 あれ?どうしたのかな?観鈴ちんぴんちかも。
「…月代ちゃん?」
644行かなきゃ!:04/07/09 00:57 ID:yDltB3Bl

 月代ちゃんが立ち上がる。観鈴ちんも同時に立つ。
「にはは。もう大丈夫?」
 心配したよ。月代ちゃん。
「……」
 怪我は…ないのかな。聞いてみよう。
「怪我はない?」
「……」
 あ、ほっぺが腫れてる。どうして言ってくれないのかな。
 そういえば、右耳が聞こえないんだった。
「ごめんね。よく聞こえないんだ」
「……」
 あれ?どうしたのかな?観鈴ちんぴんちかも。
「…月代ちゃん?」

 私は泣くのを止めた。私のやるべきことが分かったから。
 急ごう。
 私は洞窟を出る。
「月代ちゃん!待って!」
 ああ、着いてきた。もう。
 って、あれ。追いかけて来ない?
 ああ、そうか。観鈴ちゃんもあっちのひとなんだ。
 そうだよね。お母さんもお父さんもあそこにいるんだから。
645行かなきゃ! ◆Qo/l.TPc9Y :04/07/09 00:59 ID:yDltB3Bl

 あれは、おかあさんの声。
 行かなきゃ!おかあさんのところへ!

 悪い人は蝉丸に退治してもらおう。
 行かなきゃ!蝉丸のところへ!

 殺人者がいなくなれば、このゲームは終わるのだから。
 蝉丸ならどんな強い相手でも平気なんだから。
 アルルゥちゃんの敵は絶対に取ってみせるんだから!

【085 三井寺月代 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 
         針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
【023 神尾観鈴 所持品なし 右耳の鼓膜が破れている 応急手当済み】

【月代は蝉丸捜索へ。目的:月代がマーダーだと思っている人の消去。観鈴は洞窟の奥へ】
【So shines a good deed in a naughty world.直後】
646行かなきゃ! ◆Qo/l.TPc9Y :04/07/09 01:09 ID:yDltB3Bl
>>644-645を以下に差し替えお願いします。

 私は泣くのを止めた。私のやるべきことが分かったから。
 急ごう。
 私は洞窟を出る。
「月代ちゃん!待って!」
 ああ、着いてきた。もう。
 って、あれ。追いかけて来ない?
 ああ、そうか。観鈴ちゃんもあっちのひとなんだ。
 そうだよね。お母さんもお父さんもあそこにいるんだから。

 あれは、おかあさんの声。
 行かなきゃ。おかあさんのところへ!

 悪い人は蝉丸に退治してもらおう。
 行かなきゃ。蝉丸のところへ!

 殺人者がいなくなれば、このゲームは終わるのだから。
 蝉丸ならどんな強い相手でも平気なんだから。
 アルルゥちゃんの敵は絶対に取ってみせるんだから!

【085 三井寺月代 ヴィオラ(ケース入り) 青酸カリ 高枝バサミ 懐中電灯 
         針金 食料 手作り下着 初音のリボン】
【023 神尾観鈴 所持品なし 右耳の鼓膜が破れている 応急手当済み】

【月代は蝉丸捜索へ。目的:月代がマーダーだと思っている人の消去。観鈴は洞窟の奥へ】
【So shines a good deed in a naughty world.直後】

647名無しさんだよもん:04/07/09 02:36 ID:mc09S17k
まあ無難な出来かな。
648THE・便座カバー ◆wEYoqMAQ5k :04/07/09 17:16 ID:CvEXR1Gi
感想スレの方で色々言われていましたので遅いですが修正さして頂きます。

>なら、取り敢えずこの家の中の武器を集めてから考えよう。
>晴香はそう考え包丁やらライターを1ヶ所に集めていった。

なら、取り敢えずさっきの家の中の武器を集めてから考えよう。
包丁だってカッターに比べれば幾分かはマシだ。
晴香はそう思うと今出てきた窓からよじ登り家の中へと入っていき包丁やらライターを1ヶ所に集め始めた。

に変更お願いします。
649崩れ逝く台本 ◆wEYoqMAQ5k :04/07/09 18:36 ID:CvEXR1Gi
――また戻ってきてしまったんですね。
この辺りは晴香としのぶに少年が殺された場所。
この住宅街のどこかには未だにその戦いの傷跡が残った民家があるのだろう。
犯人は犯行現場に戻ってくる。
よく、そう言われるがこんな状況でもそんな事があるのだろうか?
あるのかも知れない。
その少しの可能性があるだけであさひは闇の中住宅街を見て回った。

――あそこの家だけ灯りがついてる。
街の中で唯一の光。
3匹目の羽蟲もその灯りに惹かれていった。

割れていた窓から中の様子を覗いてみる。
そこにはあさひがずっと探していた人がいた。

「――晴……香?」
待てども待てども横になったまま動かない。
ただ、その顔に残っている笑みだけがやけにリアルで恐ろしかった。
少年を殺した後の笑顔それとはまた違う笑みであった。
少年の殺した時の笑みよりこっちの笑みの方がよっぽど殺し屋には似合っているようにも思えた。
あの時の悲しそうで、優しく愁いを含んだ笑いは合わない。
そうだ、殺し屋は笑みはこの笑みで十分なのだ。

部屋にはあとは誰もいない。
それを確認した後にあさひは窓をよじ登った。

「はは、あはははは……やっと、やっと合えました。巳間晴香、少年さんの仇です。」
そう言うとあさひはバッグからS&W M36を取り出すと晴香に向かって引き金を引いた。
650崩れ逝く台本:04/07/09 18:37 ID:CvEXR1Gi

だんっ

――少年さんは……

だんっ

――あなたにこの銃を向けながらも撃てなかった。ちがう!撃たなかった!

だんっ

――それが何でだかあなたに解りますか?それは例え自分を撃った相手だからって、少年さんはみんなを――あなたを殺したくなかったからなんですよ!!

だんっ

――そんな人を、私の大切だった人をあなたは殺して、奪っていった!!

だんっ

――だから、私はあなたを許さないっ!!だからっ……

かちっかちっ……

弾が切れた。
悲痛な叫びの五重奏。
しかし、その叫びは虚しく木霊するだけ……

晴香は笑ったままだった。
赤い赤い池の中。
あさひの叫びを聞いてくれる者はいなかった。
651崩れ逝く台本:04/07/09 18:37 ID:CvEXR1Gi


「何で……なんで……なんで……なんでなのよ……」

ざくっ、ざくっ、ざくっ……

十徳ナイフを適当に突き刺した。

腹――胸――そして顔。

何回も突き刺した、しかし晴香の笑みが崩れる事はなかった。

ざくっ、ざくっ、ざくっ……

その笑みは崩れる事はなく、赤い海に沈んでいった。

赤い、赤い、赤い

しかし、その赤でさえもあさひには笑っているように感じた。

「何で……死んでしまったんですか……」

652崩れ逝く台本:04/07/09 18:39 ID:CvEXR1Gi

――バタン

扉が急に開かれる。
あさひが音のした方を見るとそこにはスコップを手にした一人の女の子が立っていた。

「――あなたが晴香を殺したんですか?」
口はそう言葉を紡いでいた。

相手の女の子は必死に何かを訴えている。

解らない……
少年さんが死んで、殺されて。
晴香が死んで、殺された。



仇の仇?

良く解らない……
もう、私どうすればいいのか解らない!!

「――あなたが巳間晴香を殺したんですね……」
桜井あさひの初めて自分で描いた台本は、いつの間にか狂い始めていた。

「私は――復讐者です。」
653崩れ逝く台本 ◆wEYoqMAQ5k :04/07/09 18:40 ID:CvEXR1Gi

【042 桜井あさひ 双眼鏡 十徳ナイフ 食料 眼鏡 ハンカチ ノート ペン 腕時計
         S&W M36(残り弾数0)予備弾19発 ボウガン(矢5本) ベレッタ(残弾5発)
         ロッド(三節棍にもなる) 果物ナイフ 懐中電灯 『短髪』】

【072 広瀬真希 血に濡れた便座カバー】

【家の中には食料と水、『超』、『魁』ライター、出刃包丁、2つのバック、その他家にあって使えそうな物が山になって積んであります】

【真希は外で香里を埋葬していましたが、銃声を聞いて家に戻ってきました】

【深夜】
654名無しさんだよもん:04/07/09 19:25 ID:cCD4KwnA
これは結構面白い話だと思うがなあ
655名無しさんだよもん:04/07/09 21:24 ID:zdYb6aj7
>>649-653は、一部の書き込みでトリップがないため
本人の書き込みと確認できないのでNGとなりました。
詳しい詳細は
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1086991539/648
をご覧ください。

656名無しさんだよもん:04/07/10 12:09 ID:PLf/AYNe
>>655は、もうネタとしてもマンネリ化し過ぎなのでNGです。
ぶっちゃけID同じなら本人です
657名無しさんだよもん:04/07/10 16:11 ID:DzrbDrw1
しばらく話の方凍結したらどうだ?
書き手は時間をおいて話を煮詰め、読み手は少し頭を冷やしてくれ。
こんなんじゃどうしようもない。
658あぼーん:あぼーん
あぼーん
659あぼーん:あぼーん
あぼーん
660あぼーん:あぼーん
あぼーん
661名無しさんだよもん:04/07/10 16:33 ID:as9ffJQN
中々良いIDなのに、勿体ない。
662あぼーん:あぼーん
あぼーん
663あぼーん:あぼーん
あぼーん
664あぼーん:あぼーん
あぼーん
665あぼーん:あぼーん
あぼーん
666名無しさんだよもん:04/07/11 21:59 ID:ewtb9g0V
誘導
http://info.2ch.net/guide/adv.html#saku_guide
|6. 連続投稿・重複
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葉鍵板・SS総合スレッド
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1089537629/
667名無しさんだよもん
とりあえず、削除人様乙です。