葉鍵的 SS コンペスレ 13

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1名無しさんだよもん:04/01/28 20:54 ID:oGbdCLAF
ここは、期限内に与えられたテーマに沿った SS を書くスレです。
他人と腕を競いあうもよし、ネタで盛り上げるのもよし、テーマに沿っていれば何でも(・∀・)イイ!!
テーマを見て、思いついたネタがあればどんどん参加してみましょう。
このスレを育てるのは、あなたが紡ぐ言葉です。

・期間の設定や細かい変更点は告知のなかで発表します。
・テーマはこのスレの話し合いで決定され、開催ごとに毎回変更されます。
・その他、ルールや投稿方法、過去スレや関連スレは >>2-10 あたりに。

【前スレ】
葉鍵的 SS コンペスレ 12
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1069068271/
2名無しさんだよもん:04/01/28 20:55 ID:oGbdCLAF
【過去スレ】
葉鍵的 SS コンペスレ 11
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1063/10639/1063900069.html
葉鍵的 SS コンペスレ 10
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1058/10587/1058785979.html
葉鍵的 SS コンペスレ 9
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1054/10540/1054075821.html
葉鍵的 SS コンペスレ 8
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1049/10491/1049154107.html
葉鍵的 SS コンペスレ 7
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1045/10459/1045985789.html
葉鍵的 SS コンペスレ 6
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1040/10406/1040605036.html
葉鍵的 SS コンペスレ 5
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1035/10359/1035975262.html
葉鍵的 SS コンペスレ 4
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1031/10311/1031179074.html
葉鍵的 SS コンペスレ 3
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1028/10288/1028847595.html
葉鍵的 SS コンペスレ 2
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1025/10257/1025740724.html
葉鍵的 SS コンペスレ
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1020/10204/1020433927.html
葉鍵的 SS 職人選手権(SS 投稿スレ内で行ったもの(189〜))
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1014/10145/1014537214.html

【関連 URL】
葉鍵的 SS コンペスレ保管所
http://sscompe.at.infoseek.co.jp/
3名無しさんだよもん:04/01/28 20:56 ID:oGbdCLAF
【ルール】

・テーマを決めて、それに沿った SS、シチュなどを書く。
・書き手は全員名無し(書き手の知名度で作品の評価が変わるのを避けるため)
・書き手の騙りを防ぐために、作品ごとのトリップを推奨する。
但し、普段コテでトリップをつけている人は、それとは別のトリップをつけること。
・投稿作品とそれ以外の書き込みを区別するために、投稿作品の前後には宣言をする。
・告知及び投稿期間→感想期間→総括期間、という流れ。投稿期間終了までは一切感想をつけない。
・感想期間では、参加作品について感想、評価などを行う。
なお、他の人の感想等に影響が出ないように、感想期間中は作者は身を明かさないこと。
これはコンペスレの内外を問わない。
・総括期間では、書き手の挨拶、運営への意見、次々回のテーマの決定などを行う。
また、感想期間で評価が高かったものを選び、最優秀作品として推す。

・各期間は以下のように設定する。
投稿期間: 2 週間
感想期間: 1 週間
総括期間: 1 週間+α(そのときに応じて期間は変化する)
4名無しさんだよもん:04/01/28 20:56 ID:oGbdCLAF
【注意】

※必ず名無しで投稿して下さい(誰だか判らなければ良い)。
※特に、普段トリップをつけている方はご注意を。
(そのトリップと違うトリップなら構いません)

それ以外の手順は SS 投稿スレに準じます(以下に転載)。
|【投稿の手順】

|1:まず、投稿する旨を告知するカキコをすると良い。
| 「今から SS 投稿します。なお、××な内容です」など。
| 鬼畜・陵辱・スカなどのジャンルでは特に。読むのを嫌がる人もいます。
| (時間帯・スレの状態・信念・その他で省略可)
|2:書いた SS を 30 行程度で何分割かしてひとつずつ sage で書き込む。
| (名前欄に、タイトルと通しナンバーを入れると分かりやすい)
|3:回しは不要。旧スレからの変更です。
|4:最後に sage で作者名・タイトル・あとがきなどと共に、
| アップしたところをリダイレクトする(>>1-2みたいな感じ)と トッテモ(・∀・)イインチョ!
5名無しさんだよもん:04/01/28 20:57 ID:oGbdCLAF
【よくあるかも知れない質問】

Q.複数の作品を投下するのは OK ですか?
A.構いません。期間内でテーマに沿っていればいくつでも結構です。

Q.もうすぐ完成するから、締め切りを伸ばしなさい(`□´)くわっ
A.終了間際の混雑などを考え、締め切りは延長される可能性もあります。
その際は、一言その旨をこのスレに書き込んでください。
ただし、完成まであまりにも時間がかかりそうな場合はその限りではありません。

Q.締め切りが過ぎてから完成したんだけど、ここに投稿していい?
A.締め切りを過ぎたものについては、葉鍵的 SS Training Room や
内容に見合った別の SS 関連スレに投稿してください。
このスレは、決められたテーマと期間の両方を満たす SS を対象にしています。

Q.気に入った SS があったけど、みんな名無しだから作者がわからない。
A.締め切り後にこのスレで訊いてみましょう。教えてくれるかも知れません。

Q.投稿した投稿作品がリアルリアリティに汚染されてます。
A.ときには厳しい意見が付くこともありますが、別にあなたが憎いわけじゃありません。
良い感想職人さんはちゃんと理由も書いてくれますから、次回に役立てて下さい。
6 ◆2tK.Ocgon2 :04/01/28 21:48 ID:AfQL/U/f
こちらにも再掲。

業務連絡です。

>次々回テーマ
支持の多かった『卒業』に決定します。

次回の想定スケジュールは、
 投稿期間:1/29-2/12
 感想期間:2/12-2/22
です。

以上で特に問題がないようでしたら、明朝8時をもって『戦い』の投稿期間に入りたいと思います。
7名無しさんだよもん:04/01/28 22:39 ID:tIRrZPly
乙&即死回避
8名無しさんだよもん:04/01/29 01:20 ID:2aML8OH/
即死回避保守
「尾崎豊、15歳の旅立ち」

俺は今日、卒業を迎える。
ギターを抱え、マンダリン中国語(45%)を習得して。
↓以下続
9名無しさんだよもん:04/01/29 04:57 ID:uGlLb+5h
妖気なサザエさん
10名無しさんだよもん:04/01/29 07:41 ID:ObNiwzTU
>>1
乙彼。
最近、テクノサウンドの虜に。
11 ◆2tK.Ocgon2 :04/01/29 08:10 ID:OU18WRRB
【告知】

第二十二回投稿テーマ:『戦い』

投稿期間: 1 月 29 日の午前 8:00 から 2 月 12 日の午前 8:00 まで。

テーマを見て、思いついたネタがあればどんどん投稿してみましょう。
面白い作品だったら、感想がたくさんついてきて(・∀・)イイ!!
もちろん、その逆もあるだろうけど……(;´Д`)

※投稿される方は >>3-5 にある投稿ルール、FAQ をよく読んでください。
※特に重要なのが

・テーマに沿った SS を*匿名*で投稿する
・投稿期間中は作品に対して一切感想をつけない

※の二点です。他の各種 SS スレとは異なりますのでご注意を。

それでは、投稿開始っ!

# また、次回のテーマは『卒業』で、開催時期は 3 月上旬になる予定です。
# 「二週間じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの執筆に力を
# 注いでもらっても構いません。ただし、投稿は次回の募集開始までお待ちください。
12名無しさんだよもん:04/01/29 11:06 ID:a8uzAN8l
一発目いくます。
題名「ソードダンス」で
KANONSSシリアスものです。
13ソードダンス(1/13):04/01/29 11:07 ID:a8uzAN8l
上弦の月明かりが校舎を照らしている。
今、空には黒い雲とその後ろにはその黒より暗い闇が、月明かりを避けるように広がっている。
時が過ぎれば、黒い雲は月を隠してしまう位置にあった。
黒い雲が明るい月を隠せば彼女は生まれ、黒い雲が明るい月から離れれば彼女は消えていく。
暗い闇の中。
彼女は何を考え、何を感じて、生きているのだろうか。
14ソードダンス(2/13):04/01/29 11:07 ID:a8uzAN8l
学校内はしんと静まり返っていた。
屋上の踊り場からこつこつと足音を軽く鳴らしながら、階段を降りていく。
そのまま、下へ下へと歩いていくと、奇妙な4人が廊下で遊んでいるのが見えた。
頭にはうさぎの耳をつけ、軽いストレートヘアをし、安くて簡素な服。
そして、何も知らないような無垢な瞳が特徴の、
全く同じ姿をした少女達だった。
4人は向き合いながら、輪を描いて踊っていた。
お互いがお互いの手を握り、ただぐるぐると回るだけの踊り。
こんな簡単な踊りなのに、下手な奴が一人いるせいで、何度も失敗していた。
そいつは他の三人と比べて、運動はできるのだが代わりになんだかいつも元気が無い。
他のことを考えているのか、常にぼーっとして、勝手に転んでしまうのだった。
すぐに立ち上がって、「ごめんなさい」と謝る少女の覇気の無さは、楽しげな他の三人達とは
対照的に僕の目には映っていた。
「ごめんなさい・・・」
「いいよ。気にしないで、私達が早過ぎたね。じゃ、次は遅くしよっ」
僕は階段に座って、そんな少女達の様子をずっと見続けていた。
15ソードダンス(3/13):04/01/29 11:08 ID:a8uzAN8l
突然、少女達は踊りを止めた。
「じゃ、いってくるね。」
「頑張ってね」
「応援してるよ」
「・・・・」
いってくるねといった少女を残し、他の子はまるで霞のようにぼやけて、消えていった。
その少女はふっと僕の方を振り向いた。
「一緒にきてもいいよ。そっちのほうが心強いし。」
「え?僕も?」
「そう。あなたも」
「どこに行くの?」
その質問に、彼女ははっきりとした口調でこう答えた。
「魔物と戦うんだよ。」
まるで、さきほどと同じく友達と遊ぶかのように、軽口で彼女は言っていた。
魔物?
言っている意味がよくわからない。なんでなんの変哲もないこの学校に魔物がいるんだ?。
「この階段を降りればすぐにいるから。急がないといなくなっちゃうよ。早く早く」
少女は僕をせかすように話しながら、2段、3段と階段を軽快に降りていった。
僕の同意も無しに勝手に行動する彼女には少し腹が立った。
だが、
この先には一体なにがあるのか?
魔物とは一体どんなものなのか?
自分は怖さとともに溢れる好奇心に耐え切れず、
気が付くと彼女より先に階段を降りていた。
少女は待ってと、必死で追いつこうとしていたが、
先に階段を降りきったのは僕だった。
前にあるのは壁だけ、そこからおそるおそるしんと静まりかえる巨大な廊下が見える位置へと歩みを進めていく。
横を振り向き、ずいぶんと長く感じる廊下を見渡すと、
窓に座って、こちらを直視する蒼い髪の女性がいた。
16ソードダンス(4/13):04/01/29 11:09 ID:a8uzAN8l

その女性は目を細めると、横に置いてある重そうな剣を手に持ち、地面にだらりと剣を垂らす。
そのまま先端を地面に擦り合わせながら歩き出し、カラララという音を廊下中に響かせていた。
ゆっくりと、ゆっくりと、
彼女の見える姿がだんだんと大きくなっていく。
その姿が大きくなりにつれて、重苦しい重圧が増えていく。
間違いなかった。
これが魔物。
体中から滲み出てくる殺気、それでいて獲物に対しては明らかに冷静な振る舞い。
ここに完璧な狩人の魔物が確かにいた。
その殺気に耐え切れず、一瞬目を反らした瞬間、魔物は剣を構え、疾走してきた。
いきなりの魔物の行動に驚いたのも束の間。
気付いた時には、剣を振りかぶった死神がすぐ目の前に来ていた。
殺られると思った刹那。
目の前に小さな塊が飛び込み、寸でのところで剣を止めていた。
小さな塊は魔物を吹き飛ばし、こちらの方を向く。
その小さな塊は剣をもったあの少女だった。
17ソードダンス(5/13):04/01/29 11:10 ID:a8uzAN8l
少女は僕に少し後ろへ行っていてと言うと、
銀の光沢を光らせる剣を持ち替え、あの魔物へと突っ込んでいった。
さすがというべきか、魔物は吹き飛ばされても、すぐに体勢を立て直し、
少女へ背中を傾け、さっきと同様に突っ込んできた。
剣と剣がぶつかりあう。
しかし、少女は怯まず、剣の柄で相手の柄を弾き飛ばし、相手を一刀両断するために、精一杯振りかぶる。
そこを狙っていったのか、それともこの刹那に思いついたのか、魔物はそのままバックステップして、
それを避けて、そのまま中段へ突きを繰り出そうとする。
しかし、少女は身軽にこれを顔を反らして避けていた。
この間の時間はたった数秒間。
自分は夢でも見ているのか。
さっきまでの少女の動きとは、まるで別人が動いているかのような動き。
一体、どれだけの武術を究められれば、こんな凄まじい動きができるのだろうか。
「へへ、じゃあこれでどうかな」
少女が手を挙げると、窓ガラスが魔物に降り注いだ。
一瞬少女が魔法でも使ったのかと思ったが、
窓のほうを見ると彼女以外の3人が、ロープを使ってぶら下がっていた。
どうも、上の階からロープを使って、窓ガラスを蹴って割っていたらしい。
「どうだ!」
さきほどまで魔物と戦っていた少女が、まるで自分の手柄であるかのように、
腰に手を当て虚勢を張っていた。
だが、魔物の体には少しのガラス片が見当たるだけで、それほどダメージが無い。
あのガラス片が降ったとき魔物は、素早く首にあるリボンをほどいて、
肩にぶら下がっている布で、舞い落ちるガラスを振り払っていたため、
ガラスによる傷はほとんど無かった。
「あちゃーまた失敗か。」
「また?ってことは何度もやっているのか?」
「そうだよ。さっきのカッコイイでしょ?」
どうりで魔物の手つきが手馴れていることで。
にこりと笑う少女は、まるで魔物と遊んでいるかのようだった。
18ソードダンス(6/13):04/01/29 11:26 ID:a8uzAN8l
「じゃ、今日はここまでだね。帰るよ。」
「えぇ?」
「まだ目の前に魔物がぴんぴんしているのに、何言っているんだ?」
「いつもこれくらいで終わりなんだよ。」
さっきからのまるで緊張感の無い表情に
無駄としか思えないガラス割り。
魔物を到底倒す気が無い様子。
こんな怖いものを目の前にしているのに、平然と喋りつづける少女。
魔物と少女には何かの境界がある気がした。
一線を超えない密約があるような。
まあ、憶測をいくら考えても仕方ない。
とりあえず、この少女が凄かったってとこで考えるのを終わりにして、激励しにいくか。
僕が彼女に手を振った瞬間。
突如ゆらめく、暗い影が魔物の後ろから現れる。
それはこの学校の制服を着た一人の男だった。
そいつは木剣を力の入れすぎかと思えるほど握り、
隙だらけの構えで少女の前へ走ってきた。
僕でも倒せそうかと思うくらい。
だが、少女はその隙だらけの男に何もしなかった。
男の顔をただぼぅっと見つづけるだけ。
剣をだらっとぶらさげて、構えをすることが無いのはもちろん。両手に力さえ入れていなかった。
驚きの表情を見せつつ何もしない少女。
だが、少女がぼぅっとしている間にも、男は猪突猛進に突っ込んでくる。
少女の目の前までくると、頭の上にまで振りかぶっていた木剣を一気に打ち込んできた。
「おい!何で何もしないんだよ!」
少女ははっとすると隙だらけのみぞおちに、自分の剣を叩きつける。
男は何が起こったのか分からず、数歩たじろぎ、そのまま地面に手をつけてうずくまった。
「ご、ごめんなさい!!」
少女はびっくりして、男に近寄っていった。
19ソードダンス(7/13):04/01/29 11:27 ID:a8uzAN8l

カチャ
冷たい金属音が一瞬鳴る。
下を見さげる眼光で少女の急所を狙う的確な射線を、0コンマ何秒かで即座に決定する。
目から腕までの神経細胞の伝達速度は0.8秒。
腕が動いた瞬間に息を一気に吐き、最大限の力を引き出す。
その斬撃は絶対に避けきれない射線にあった。
左肩から右わき腹へ、真っ直ぐな赤い線が引かれる。
そこから細かな赤い点が、窓からコンクリートの地面に数秒噴出した。
後は壁にもたれかかって倒れる人形が、赤い液体を流して座るだけだった。
20ソードダンス(8/13):04/01/29 11:28 ID:a8uzAN8l

一瞬の出来事。
そのはずなのに、僕の足は斬られる直前に地面を蹴っていた。
僕は彼女に駆け寄っていく。
目の前の魔物がもつ剣の切っ先が恐怖を引き立ていく。
小さな足と首に手をくぐらせて、このまま持ち上げて走ればいい。
僕は背中に走る恐怖に顔を向けないように、急いで所作の行動を起こした。
彼女の体は案外軽かった。
手を首と足の下から通していくと、女の子の柔らかな感触が伝わってきた。
口から吐き出てくる温かい息が頬にかかっていた。
今にも魔物が剣を振りかぶって襲ってきてもおかしくはないのに、
僕は小さな彼女の体に一種のかわいさを感じてしまった。
張り詰めた緊張のなか、もやもやとした感情を抱きながら、
僕は階段を必死で登っていった。
「・・・しとめたのか?」
「いや・・・消えた。」
舞は見上げた階段から視線を反らすと、男に呟いた。
「囮でいて欲しい」
男は冗談半分に返答していた。
21ソードダンス(9/13):04/01/29 11:29 ID:a8uzAN8l

気が付くと僕はまた、屋上の踊り場にいた。
あの少女を運んでいた時から、記憶がぷっつりと切れている。
一体あれからどうなったんだ?
階段をひたすら降りていく。
あの場所に行くために。
あの子は無事なのか?
いや、無事であって欲しい。じゃないとあの時なんのために助けたんだ。
「わ。」
急ぎすぎたためか。僕は廊下に置いてあったバケツに足をぶつけて転んでしまった。
「いたた、こんなのさっきはなかったじゃないか」
体に感じる微妙な違和感。
さっき?
そういえば、壁にあんなポスター貼られていたっけ。
備え付けてあった消火器も無い。
空いていたはずの窓も閉まっているし。。
僕は窓をじっとみていると、さっきと違う明らかな矛盾があるのがわかった。
注目したのは窓ではなく、その先の空。
あの時、上弦の月だったはずの月は今、下弦の月へと変貌していた。
「まさか。」
自分の考えを振り切るように階段を降りていく。
だんだんとあの廊下が見えてきた。
だが、僕の予想は最悪の形で的中していた。
そこにいたのは、傷だらけのたった一人。
それも、踊りの下手なあいつだけだった。
「踊れなくなっちゃった。もう」
僕が会った時に最初に聞いた言葉。
その言葉は他の女の子達がどうなったのか克明に表す言葉。
冷たい現実に僕は腰を砕いてその場に崩れこんだ。
22ソードダンス(10/13):04/01/29 11:30 ID:a8uzAN8l

「ねぇ・・・踊って」
小さな赤い手が目の前に突然現れた。
「一人じゃ踊れないから。踊ってよ。・・・ね」
手の甲のかさぶたに出来るだけ触らないように、
指先を軽く握った。
僕は立ち上がる。
「僕はそっちの業界じゃ。五本の指に入るほどの腕前だぞ。
ついてこられるかな?」
「ふぇ・・・ごめんなさい。じゃ、ちょっとだけ遅くして、
じゃないとまた転んじゃうよ。
痛いのは・・・」
「大丈夫だよ。五本の指に入るほどのプロは遅くするのも早くするのも、自由自在さ」
「よかったぁ・・」
少しずつ少しずつ動いていった。
女の子の足取りは凄くぎこちない。
左回りで回っているのに右足から上げるのは如何なものか。
これでは足が絡まって転んでしまうのも頷けるもんだ。
「なぁ・・・左足からあげればいいじゃん?」
「え・・・?えっとこうかな?」
「そうそう。うまいじゃん。」
「やったぁ・・・」
僕は彼女の呼吸が苦しそうだったので、それ以上話す事は止めた。
僕達はそのまま、ぐるぐると時間を忘れるくらい回りつづけた。
ぐるぐると
ぐるぐる
ぐるぐる
23ソードダンス(11/13):04/01/29 11:31 ID:a8uzAN8l
手の感触がだんだんと無くなっていく。
寒さで手が悴んでいたためじゃない。
握っていた手が消えていっているからだった。
「まじか・・・」
ぼやけた目線を手で擦って、もういちど見ると、女の子は霞のようにぼやけていた。
「最後に一言だけ言いたいことがあるの」
「・・・何だよ?」
「魔物を倒せなくてごめんね」
「お前、そればっかだな。」
「え・・?」
「ごめん、ごめん、ごめん。聞き飽きたよ。他に喋ることはないのかよ?」
「そ、それじゃあ」
ほとんど消えかかっている声にそば耳を立てる。
「ありがとう。一緒に遊んでくれて」
僕は涙を流しながら、笑っていた。
24ソードダンス(12/13):04/01/29 11:44 ID:a8uzAN8l
血が床一面に広がっていた。
窓側の席に座る魔物ともう一人の男。
血は魔物の腹部からぽたぽたと流れ出ていた。
いい気味だ。
腹を斬る死に方はすごく苦しいんだ。
内臓からの痛みに耐えかねながら、じわじわと血を流れ出し
出血多量によって、指先から何から全部冷たくなって死ぬ。
あいつら4人を殺したお前には、そのくらいの死が相応しいんだよ。
僕はまだ涙を流して笑った顔が戻っていなかった。
「お前・・・どうしてこんなことするんだよ・・・これから、やっと始まるところだったのに
・・・おれは、お前が・・・お前が、大好きだったのに・・・」
腕の中の舞は何も答えてはくれない。
どうしてだ。こんなの、勝手で卑怯じゃないか。舞。舞・・・!
男の思惑が頭の中に入ってくる。
全部祐一が原因なのに、何を言っているんだか。
佐祐理さんを傷つけたのも、舞を死に追いやったのも全部、祐一のせいだろ。
舞は魔物を倒す気は無かったのに、ただ寂しかったから。遊んでいたかっただけだったのに。
祐一が現れなければ、何も起こらなかったのに。
そう、祐一がいなければ、僕は生まれてこなかったのに。
地面に流れる赤い水を押しのけて立っている子供靴の足跡は、だんだんと消えていった。
消えていく僕自身を見つめながら、もう一度あの成長した大事な人が無くならないように
消えないように、祈っていた。
もう一人の俺の大事な人が消えないように。
25ソードダンス(13/13):04/01/29 11:45 ID:a8uzAN8l

「あははー 写真も全員と撮りましたし、もう学校でやることは全部やっちゃいましたね。」
「佐祐理さん。一体いくつ男を振ってきた?」
「ふぇー 振ってるって意味はわからないですけど。男の人とは後輩さんやOBさんも含めて、
ざっと70人くらい会ってきましたよ」
「あの校門の前にいる人たち?」
「ふぇ?顔はよく覚えていませんけど、たぶんそうだと思います。」
佐祐理さんと会った男どもは全員が全員
生ける屍と化し、校門の前でスクラムを組んで己の武勇伝?を語り合っていた。
「にしても、あいつら邪魔だな」
「じゃあ、裏門から帰りましょうか。」
「いくところが・・・ある」
佐祐理が話していた間、ぼけーっと桜の木に座り込んでいた舞が突然口を開いた。
そういうと舞はつかつかと新校舎へと、勝手に歩いていってしまった。
「たく、勝手な奴だな。」
「あははー 舞も行きたいところがあったんですよ。」
「そうだな・・・」
何故だか妙に明るい佐祐理さんに疑問を持ちつつ、俺は早々、舞に着いていった。

舞は階段のすぐそばにある2階の廊下に突っ立っていた。
「・・・はじめる」
「え?何をだよ?俺いつも思うんだけどさ、ちゃんと主語と述語と目的語いってから喋れよ。」
「そうですよー舞」
舞は少し考えて、喋った。
「この前の夜の続き。」
夜の続きとは一体。そういえば、あれ最後までやってなかったなぁ。
「ま、まさか・・佐祐理さんもまじって3Pですか?どんぶりですか?・・・どんとこーい」
「あははー 何を言っているか佐祐理にはよくわからないです」
舞はつかつかと俺の前に行くと目の前で手を伸ばした。
「あ・・・そういうことね」
俺は舞の真意を合点した。
舞の指先のほうを握ると、佐祐理さんの手も握った。
「一緒にやろうぜ。」
「あ、はい。でも、何するんですか?」
「何、簡単。簡単。」
舞と俺と佐祐理は円上になるとそのまま回り続ける。
ただ、ぐるぐると、
「確かに簡単ですけど、何だか子供の遊びみたいですね」
「おい、右足から上げろよ。いつもお前はそうだろ?」
「祐一・・・だまって」
「あははー何だか険悪ですね」
「なぁ・・・小さい方はどうするんだ?三人じゃ入れないだろ?」
「他の人も来るんですか?」
「大丈夫もういる。」
「まあ確かにそうだけど・・・」
「えー、ちょっと二人で佐祐理を怖がらせないでくださいよー」
確かにもう二人はいた。
小さな女の子と小さな男の子がもう一人増えた友達と一緒に。
成長した二人はあの時消えてしまった感触を確かめるように、
二人の手をぎゅっと握り合っていた。
27名無しさんだよもん:04/01/29 11:51 ID:a8uzAN8l
>>13-26
以上14レスでした。(・ω・`)スミマセン
28名無しさんだよもん:04/01/31 00:00 ID:4FDchPVG
めんて
298:04/01/31 18:59 ID:/PrjlGpj
良かった、落ちてない。俺のおかげ的だし、
これはどうも、胴上げされて感謝されるかな。
30名無しさんだよもん:04/01/31 19:07 ID:wknvv7VH
OK、俺が胴締めしてやる。ちょっと苦しいぞ。
31名無しさんだよもん:04/01/31 21:29 ID:86m6f94b
では俺は胴切りを。ずんばらり、と。
32名無しさんだよもん:04/02/02 03:08 ID:rJ+Iy0Dv
この土日で書き上げるつもりが、一字も進まなかった今日この頃……
33名無しさんだよもん