葉鍵大戦記5 葉鍵国の興亡

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560名無しさんだよもん:03/02/28 22:38 ID:JTPXnfQP
      キ        //   /::::://O/,|      / これは……
      ュ     / |''''   |::::://O//|     /   半ば 駄スレ
      .ッ       \ |‐┐ |::://O/ ノ   ヾ、/
       :       |__」 |/ヾ. /    /  だが 半ば……
         ヽ /\  ヽ___ノ / . へ、,/          良スレ…!
        /  ×    /  { く  /
        く  /_ \   !、.ノ `ー''"
  /\        ''"  //
 | \/、/           ゙′
 |\ /|\ ̄
   \|
561名無しさんだよもん:03/03/01 02:28 ID:V4FkCuHQ
ホシュホシュホシュ
562名無しさんだよもん:03/03/03 01:10 ID:/9NO1NYa
どうやら主要投稿者の一名がYBB規制の巻き添えを喰らっている模様。
563鮫牙:03/03/03 01:20 ID:LFy3Hklb
ちまちま、書いてはいるんだが、ルミラ中将を
564名無しさんだよもん:03/03/03 01:52 ID:L5I3duiR
保守
565名無しさんだよもん:03/03/03 04:50 ID:WIvYbhoo
そういえば忘れてたけど、確か御堂を奪還するって話があったんだよな。
566名無しさんだよもん:03/03/05 10:04 ID:eQgWGD/I
保守
567名無しさんだよもん:03/03/05 20:04 ID:Itn3hJE3
保守
568名無しさんだよもん:03/03/05 21:23 ID:b8TC6OeS
保守
569運命の扉:03/03/06 01:58 ID:AA7LIRq2
4月2日 シェンムーズガーデン16時45分

 シェンムーズガーデンのテラスでRR親衛隊第一軍ルミラ=ディ=デュラル陸軍中将は山々を眺めていた。
 その表情はこの美しい風景と美貌い反して、暗く重苦しい。
 彼女がアクアプラスシティに到着したのは今より三時間前。
 そして、直ぐにシェンムーズガーデンに出頭を命じられ、ある辞令を受けることになる。
 「司令官」
 冷笑と共にルミラは思わず呟く。
 彼女の言う司令官とは彼女の上官そして、今の北部の反逆者の首領。
 高橋龍也上級大将と彼女が出会ったのはリーフファイト97戦役であった。国防軍司令官と国防軍第1師団長として。
 独立戦争初期時には階級で格上であったが、2年後のリーフファイト97戦役時には逆に高橋上級大将の方が格上と
なり、その指揮下におかれても、彼女はそのことに気を腐らせるような小人物ではなく、むしろ己の職務に誠心誠意取
り組んだ。
「司令官、そして総参謀長まさか貴方達と戦う日が来るなんて、神様って奴は中々悪戯好きのようね」
 私は勝てるのだろうか、あの戦争芸術家に。
 ルミラの全身を冷気が襲う。
 攻防を巧みに操る、指揮能力。戦争全体を計算しつくした戦略眼。あの頃は頼もしく思えたが敵となった今では、ま
るで、死神にように思える。
570運命の扉:03/03/06 02:00 ID:AA7LIRq2

 ルミラとて「韋駄天ルミラ」の異名を持つ機甲電撃戦の職人ではあるが、だからこそ敵対する将軍の力量が分かるが
故に恐ろしくなる。
 銀髪を手でかき上げ、そして目を閉じる。
 30分前の中上大将の声が蘇る
「国家元帥特命第22号ルミラ中将をシモカワグラード防衛司令官に任命する」
 それはつまり第1軍をもって、北部の反徒同盟を撃破せよということ。援鍵ルートは正葉―逢魔ヶ辻のライン、鍵の
動脈を切断する。それがルミラに与えられた役目であった。
 数ヶ月前、久しぶりにテレビで見たかつての上官は少し痩せてはいたが、その目はかつて同様精気に溢れていた。
 それ以来、覚悟はしていた筈だ。何時かは戦わねばならないという事を。
「なんや、ここにおったんか」
 テラスの向こうに、冷徹なる独裁者が立っている。
「閣下」
「査察の方は川上が国連、と言ういうよりアメリカにロシアを仲介して今現在、ワシ等に都合良い様にしとる最中や」
 しぇんむーがルミラの肩に手をやり、言葉を続ける。
「皆、この国の為に一生懸命なんやお前もたのむで」
「はい」
 ルミラが山荘の中に入っていく。
 冷血なる独裁者が山々を眺めながらルミラに告げた。
「お前にはやってもらうことが未だあるんや、必ず生きて帰るんやで」
「はい閣下」
571鮫牙:03/03/06 02:03 ID:AA7LIRq2
運命の扉投稿終わりました。
572名無しさんだよもん:03/03/07 20:56 ID:EM4mT6zK
あー、なんかRoutesプレイしたらしぇんむ〜(現社長)がそんな悪者に見えなくなってきたw

どうすればいいんだ。
573名無しさんだよもん:03/03/09 03:26 ID:zPzGJpRa
あぁ、実は俺もw
スタッフ自身が楽しんで作ってるいるとか言ってるし。
さらにRoutes結構面白い、しぇんむ〜どうしちまったんだ?
574名無しさんだよもん:03/03/09 12:50 ID:YdeqGw1z
単に下川がキ○ガイという前提自体が誤りだっただけなのではないかと。
そもそも、人身掌握力や経営能力皆無の奴がLeafをあそこまで大きく成長
させられるワケがない。

512文書はあくまで葬式にジーンズでくるような奴とかが書いたものだという
点をもっと考慮すべきだったかもな。結果論だが。
575名無しさんだよもん:03/03/09 12:51 ID:YdeqGw1z
誤字見つけちまった・・・・

× 人身
○ 人心
576名無しさんだよもん:03/03/09 15:19 ID:wWzP62Yw
>>574
個人的所感だが。
下川氏は512時点ではHRMというものを軽視しすぎていただけなのではないのかと。

それ以降に関してはよくは知らんが。
577期待はずれ 1:03/03/09 18:40 ID:D3P1EJNu
4月2日1930時
エロゲ国北方総督領・南トコロザワ郵便物交換所(エロゲ・鍵国境)

「なぁ、曹長……」
「……なんですか、少尉」
「何で我々はここにいるんだろうな……」
「……状況を的確に指摘して、今以上に悲惨な気分を味わいたいですか?」
「だよな……」
 目の前を次々に通過していくトラック。その車体に書かれた『鍵猫交易物流』も文字を追いながら、
検問所に詰めているふたりのライアー師団所属の憲兵が、愚痴をこぼし合っていた。
「まったく……ろくな後方支援能力もないくせにこんなところまで出張ってくるからだ」

 いくら最新の兵器をそろえていようが、いくら大勢の兵士を抱えていようが、それだけで戦争は遂行できない。
それらの兵器を常に整備し稼働率を高めておくメンテナンス能力の高さと、
必要な物資を後方から的確に前線へと運ぶロジスティック能力の優秀さ
――大きくまとめて兵站、後方支援能力が高くなければ十全の戦力を発揮できない。
 そしてエロゲ国各軍閥は、決してそれらの能力の高さで知られた存在ではなかった。
いや、むしろ『近代戦を遂行しているとは思えないほどの後方支援能力の低さ』ばかりが目立つ存在だ。
 例えば、今彼らが監視しているねこねこ師団。彼らはかつての『みずいろ事件』で
その主力のほとんどを出撃させたのだが、それをサポートする後方支援部隊を
葉鍵統合軍に撃破されて兵站能力が壊滅し、さらにその状態で決戦を求めて戦場を右往左往するという
自分で自分の首を絞める醜態を晒し、結局は統合軍主力と戦わずして燃料切れで自滅してしまった。『(主力でなく)後方部隊を叩くなどイリーガルだ!』と叫んだ同師団参謀の妄言が、
彼らが近代戦のなんたるかを理解していなかったという何よりの証拠だろう。結局彼らの主力兵器
――K1A1戦車やK200A1歩兵戦闘車は、ほとんど無傷で当時の葉鍵統合軍の手に渡ったのだった。
 また最近では、行軍中に後方支援能力が自壊し半ば難民化、結局は民間団体の援助で何とか食いつないで
消滅を防いだ、マロン師団の『秋桜事件』というスキャンダルもある。
そして、これらの醜態はエロゲ国では何も珍しいことではない。
578期待はずれ 2:03/03/09 18:41 ID:D3P1EJNu
 彼らの所属するライアー師団もそうだった。かつては『駐屯地から出撃することすら出来ない』
とまで言われるほど後方支援能力が腐っていたものだが、さすがに最近では或る程度改善されている。
だがそれでも少し無理をするとすぐにボロが出るし、それを修復するのにかなりの時間がかかる。
 そもそも、新大陸で遍く流布している彼らの精強さの評判は、そのほとんどがライアー支配領域か
その接続地域で発生した紛争に勝利したからこそ得られたものだった。
つまり、後方支援能力の脆弱さが露呈しにくい地域での軍事行動で名を上げていたにすぎない。
 今回のトコロザワ、アオバダイ、トヨハラへの憲兵隊派遣でもその悪弊が噴出してしまった。
まともに車両群が稼働したのは最初の2日間だけで、以後は故障車が続出し機動力の大半を失ってしまったのだ。
 仕方なく彼らは拠点における検問業務に任務を切り替えたが、所詮『点』しか押さえられない憲兵隊に、
『面』を支配しているねこねこ、AF、WINTERSの動きを押さえきれるはずもない。
そのうえ彼らと違い後方支援能力『だけ』は文句なく優秀なAF、WINTERSの両師団は積極的に
軍を陽動させて憲兵隊の消耗を誘い、同方面では検問を有名無実化させていた。
現在それでも物資の流入阻止を達成できているのは、後ろに控えるアリスの威光があればこそ。
しかもそれでも、完全な封鎖には至っていない――結局ライアーは、誰をも恨みようがない自業自得な理由で
『張り子の虎』に成り下がっていた。
 そしてそれは、葉鍵内戦の大きな歴史的特徴――後方支援能力の低い軍閥は政治的にしか介入できない
――を象徴する出来事だった。

「少尉、やはり国境を完全に封鎖するのは無理なんですかね?」
「そりゃ、後先考えずに師団本隊を全力出撃させれば不可能じゃないさ。ねこねこ程度に負ける我らじゃない。
あるいはトコロザワを完全に制圧する方が効果があるかもな。だが――その後が続かない。
結局は『みずいろ事件』や『秋桜事件』と同じ結末をたどるよ。我が軍の後方支援能力では、
絶対にそうなる。そうなったらおしまいだ。鍵に乗っ取られたねこねこや、
北方総督府の直轄扱いになっちまったマロンのような目に遭いたくなければ、
おとなしく格好だけでも封鎖しているしかあるまい」
579期待はずれ 3:03/03/09 18:42 ID:D3P1EJNu
「いっそのこと、アリスのメンテナンスサービスに全て乗っかるというのは……」
「それこそ我が軍は乗っ取られる。ただでさえ総督府が怪しい動きをしてるってのに、
ここで政治的な独立を手放すことが出来るか?」
「なにやら北都南総督が動いているとか……」
「そうだ。ここで我が軍が『近代戦も遂行できない張り子の虎です』なんて醜態を
公式に認めるわけにもいかないだろう? 結局は連中の……」
と、顎をしゃくって目の前を通過するトラックを示す少尉。
「好きにやらせるしかないんだ。まぁ奴らも、アリスに遠慮して普段の1/10程度に流通を押さえているから、
まだしも面目は立ってるがな」
「しかし……こんな様になるなんてことがわかっていながら、
どうして上はここまで我々を出張らせたんですかね?」
「大方、アリスの連中に何か掴まされたんだろ……まったく、ろくでもねぇ」
 少尉は吐き捨てるように毒づいたが、その貶された上層部も実は頭を抱えていた。
彼らは以前から南方総督の長崎みなみのシンパとして知られていたのだが、
今回のアリスとの同調でその長崎総督から『北方総督を飛ばして勝手に行動するのはどういうわけですか?』
と、厳しい詰問の電話を頂戴してしまい、親長崎派としての面目を粉々に粉砕されてしまったのだ。ついには『何でアリスなんかに同調したんだっ!』と内部で責任の押し付け合いまで発生する始末で、
もう政治的には泥沼の状態に陥っていた。
「とにかく……」
 ようやく車列のとぎれた――それでも普段からすれば格段に少ない――対鍵援助物資の流れを見やりながら、
少尉は憮然とした口調で結論づけた。
「期待はずれもいいとこ、って感じだな、こりゃ」


同時刻
鍵第三帝国・回廊辺境領逢魔ヶ辻

「まったく、期待はずれもいいとこだ……」
 古い町並みが残る逢魔ヶ辻の旧市街。その町中にある古びた居酒屋の奥には、
極一部の人間しか知らない秘密の部屋がある。独立戦争以前から過激派の連絡所として使われてきた部屋の中で、
当時この連絡所を設置した当の本人であるJRレギオン少将はそう言って麻枝のことを腐していた。
580期待はずれ 4:03/03/09 18:42 ID:D3P1EJNu
「あのアフォ、もうちょっとおつむがしっかりしてるかと思ったが……側近に乗せられて独立宣言か。
おめでてぇな。おかげでこっちの革命計画は一から練り直しだ!」
「まぁそう言うねぇ、同志」
 テーブルの向かいに座っている、少し危ない雰囲気の男がおどけて肩をすくめた。
 独立戦争当時は旅団長の配下で数々のテロに手を染め、戦争が終わってからは東葉領に潜伏していた
この男の正体は――元前衛派のテロリスト・金森弥太郎。
ちなみに、金森という本名よりも『禁愚ジャッキー』という通称の方がよく知られている。
「で、どうするんで、同志?」
「どうするもこうするもあるか。第三帝国なんてくだらん名前付けて悦んでいる国にこれ以上いられん。
第一、ここまで露骨な態度に出てきたからには、ものみの丘もそろそろ俺を粛清するはずだ……
亡命する」
「亡命先は、とりあえず東葉にしといていいんだな?」
「ああ。東葉なら貴様のテリトリーだ、何とかなるだろう。出来ればスオンカス警視総監あたりに話を付けて、
下葉へ出国できるように動く。月姫自治区あたりに潜り込めればベストだ」
「しかしまぁ、革命の闘士が下川ファシスト政権に亡命とはね……」
「言ったろう? 俺の目的は、麻枝を断頭台に送り込み、ものみの丘を完膚無きまでに破壊することだ。
その目的のためならば、手段なんぞ選んでいられん。俺は勝ち馬に乗って目的を果たす。
どうあがいてもロディマス地方政権以上の飛躍が望めない正葉なんぞにつき合っていられれるか」
「……ま、俺はあんたの、そんな機会主義なところが好きで、ここまでつき合ってるんだからな
……しかし、高橋は『下川打倒』を呼号しているが?」
「それこそスローガンだけだ」
 そう言って、旅団長は隣に控えるなつきからカップを受け取って、一気に紅茶を呷った。
「現実を見ろ。どんなにヤンキーやVAの後ろ盾を得たところで、高橋に葉鍵国全土を制圧する見込みは全くない。
シモカワグラード以東と東葉北部、つまり大リーフ湾岸を制圧するのがせいぜいだ。
 逆に下葉も、短中期的には正葉を打倒できない。おそらく空き地の町を陥落させた時点で、
VAあたりがなりふり構わぬ援助策を打ちだして、現有領土の確保に走るはずだ」
581期待はずれ 5:03/03/09 18:43 ID:D3P1EJNu
「つまり……どちらも互いを打倒できない、と?」
「そうだ。戦略的状況がそうなれば、下川も高橋も『手打ち』を考えるようになる……
つまりは、休戦協定だ」
「へぇ……犬猿の仲のふたりが休戦ねぇ……信じられねぇ」
「不思議でも何でもない。利害が一致すれば、いやでもそうなる。それでも以前ならば考えにくかったが
……麻枝のアフォが同盟にひびを入れてくれたおかげで、急に現実味が高まったな。
 下葉にしてみれば、これは国際的に孤立した鍵を完全に併呑できるまたとない好機だ。
出来ることなら全戦力を集中してでも鍵の領土を制圧したいところだろう。
仮に鍵全土を手中に出来た場合、資源埋蔵量で見ればこの内戦でロディマス地方を失った以上の国力が
転がり込むんだ。ロディマスを『一時的に』高橋にくれてやっても、十分収支決算は黒字になる。
幸い、査察停戦に入りそうな勢いだからな。このまま二国間の休戦に発展する可能性は多分にある」
「ほぉ……それで、正葉にとっては?」
「正葉は、もう国家戦略の根幹に深く月姫民族が食い込んでいる。つまり、親月姫政策を採らなければ
国を維持できない。月姫ジェノサイド政策を採る鍵に三行半を叩き付け、下葉に『お好きにどうぞ』
と言うのは大きなプラスだ。それに元々鍵と同盟したのも、下葉の戦力を引きつけるための
囮の役割を期待したからだ。ここで同盟を解消しても、実のところその目的に影響はないんだな、これが
――それに、鍵を生け贄に差し出す引き替えに一時的な休戦を確保できれば、それだけ軍や体制を強化できる」
「……そんなに上手くいくかね?」
「それはわからん。国際情勢は複雑怪奇だしな」
 旅団長は苦笑した。
「だが下川の関心が、ヤンキーやVAの支援をそつなく受け入れる高橋よりも、
むしろ大チョンボをやらかした麻枝の方に向かっているのは、まず間違いない。
これに匹敵する関心事だった“アビスボート”は、国連安保理によって無力化された。
中上や久瀬といった連中がちゃんと奴の手綱を操れるなら……今後の鍵打倒は、
下川が完全に主導権を握るだろう。そんな状況に潜り込まない手があるか。だから俺は下葉に亡命する」
「ま、こっちが文句を言う筋合いはないな……了解した。早速今晩にでも……」
582期待はずれ 6:03/03/09 18:44 ID:D3P1EJNu
 禁愚がそこまで言いかけたときだった。何の前触れもなく隠し扉が音を立てて蹴破られ、
数人の兵士達が部屋に乱入してくる。
「「「……!!」」」
 旅団長、なつき、禁愚が弾かれたように椅子から立ち上がった。
「ちぃっ!」
 軽く舌打ちした禁愚が緊急脱出路に駆け寄ろうとするが……
「動くな、金森ッ!」
 兵士達の指揮官――第1降下猟兵大隊長・川口茂美少佐の怒号が部屋に響いた。
それと同時に、鈍い輝きが一閃して禁愚の眼前の空間を切り裂く。
「……ひっ!!」
 目の前を通過した物体が鋭いアーミーナイフだとわかって、禁愚はへなへなと床に座り込む。
その醜態をちらりと見やってから、茂美は改めて拳銃を握り直すと旅団長へと銃口を向けた。
「旅団長閣下、出来ればこのまま動かずに願います」
「……おやおや、川口少佐? Airシティで受けた傷はもう治ったのかね?」
「全然。ですが、あなたを放っておけなくて、傷を押して出動しましたよ……みきぽん中将の直命でね」
「いやはや、美人のお姉さんにそこまで思われるとは、なかなか愉快な気分だ……なぁなつき?」
そうおどけて、あまりの展開に傍らで固まってしまったなつきに笑いかける旅団長だったが、
内心ではどっと冷や汗脂汗が噴き出してきた。
(みきぽんの直命……畜生、粛清命令がもう出ちまったのか! ぬかった……タイミングを読み違えた!)
 もう少し時間的余裕があると踏んでいた旅団長は、秘かに臍を噛んだ。
(川口少佐……と精鋭の降下猟兵か。万に一つも脱出の目はないな……ここは一度捕まって脱出を
……いや駄目だ、おそらくこいつら、俺を即刻殺すように言われているはず……)
 万策尽きたか……と観念しかけた旅団長だったが、このときふと微かな違和感を覚えた。
少しそちらの方へ思考を割いて――すぐにその正体に気づく。
「ふん? どうしたのかな川口少佐? 何をそんなに動揺している」
「……! いや、何のことだ?」
 しかし、茂美の顔はあからさまに強張っている。何かの動揺を押し隠そうとしているのは間違いなかった。
(なんだ? 俺を処分しようとするのに動揺なんてするわけないし……何を隠してる?)
 その正体を確かめようと、旅団長がカマをかけようとしたときだった。
583期待はずれ 7:03/03/09 18:45 ID:D3P1EJNu
「茂美しゃん、脅かすのはそのくらいでいいでしゅよ」
 この緊迫した空気に不釣り合いなのんびりした声が部屋の外から聞こえ、同時に一人の女性が入ってくる。
「おや、千客万来ですなぁ……一体こんな悪所に何のご用で、中将閣下?」
 ずれたAAのような面相を持つ女性――東方派遣軍司令官・みらくる☆みきぽん中将は、
旅団長の言葉にくすっと笑いながら口を開いた。
「レギオンしゃん――残念ですが、あなたをこのまま下葉にやるわけにはいきましぇん」
「そりゃま、そうでしょうな――で、処刑方法は?」
 何か得体の知れないものを感じつつ聞き返した旅団長だったが――みきぽんの返答は、
彼の予想を完全に裏切った突拍子もないものだった。
「そんな話ではありましぇん。麻枝しゃんに刃向かうのは勝手でしゅが……
それは、わたしの元でやってもらいましゅ」
「「「……はぁ?!」」」
 銃を突きつけられている3人が、頓狂な声を上げてみきぽんを凝視する。そんな彼らに向かい、
自身の動揺を隠す努力を完全に放棄した茂美が、やや呆然とした口調で3人に
――というよりは、旧知の仲であるなつきに告げた。
「先刻――ミラクル☆みきぽん中将閣下は今回の独立宣言に対して麻枝元帥を激しく糾弾する演説を公表され、
そしてものみの丘の現政権が正当性を喪失したと断定された。
そして――葉鍵国体制の元での正当な鍵自治州統治機構としての『葉鍵国鍵自治州正統政府』の樹立を、
その……宣言された」
「そういうことでしゅ」
 苦悩する茂美とは対照的に、みきぽんは朗らかとも言える表情で告げた。
「現在、下葉・東葉・正葉の各政府に、我々こそが鍵自治州政府の正当な後継者だと認めてもらうよう、
要請を発しているところでしゅ。それと、月姫民族自治区の承認宣言も同時に――
レギオンしゃんには、正当政府軍の樹立と整備に頑張ってもらいましゅ。
下葉に亡命してもらうわけにはいきましぇんからね」
 呆然とする3人を後目に、軽やかな笑い声を上げるみきぽんだった。
その意外に綺麗な声の中で、旅団長がぼそりと呟く。
「期待はずれだ……」
584旅団長 ◆XudNAtsUKI :03/03/09 18:48 ID:D3P1EJNu
>>577-583「期待はずれ」投下完了です。

ちなみに、現実でバグばっかり出してるメーカー=後方支援能力の低い軍閥という風にしています。
585名無しさんだよもん:03/03/09 18:49 ID:S9wi+Acy
非道な設定だな
586名無しさんだよもん:03/03/09 19:13 ID:CuRO9KNf
>>574
だが、大量のスタッフが離脱したのも事実である。
そこらへん難しいよ。
3月29日 0110時

〔艦外に備え付けられた赤外線暗視装置から、ダイレクトに脳に映像が送り込まれる。
少々小さすぎる。倍率アップ。これでいい。甲板上を動き回るアンチ月テロリストの姿も、
AT-3サガーとみられる対戦車ミサイル発射機の姿もしっかりと確認できる。〕

(DDG-001メルティブラッドは、アメリカの技術援助を受けて同人コミケ国の大手企業
渡辺製作所が建造したステルス護衛艦だ。DD-21のイメージ図に酷似した形状を持つこの艦には、
最新のステルス技術がたっぷりと詰め込まれている。平面で構成されているように見える船体には
どこにも完全に平らな面や垂直にとがった接合部などなく、
構造上の角ばった縁や角全てに、くぼみや丸みが注意深くつけられている。
船体は電波吸収材で覆われ、電波吸収塗料によって視認性の低い暗いグレイに塗装されている。
エンジンの排気ガスは外部に放出される前に冷たい外気と混ぜ合わされ、
赤外線放射を低減するようになっている)

[40ミリCIWSの照準を甲板上の対戦車ミサイル発射機に固定。距離5000。
船体の同様および風の影響を計算に入れる。修正完了、ロック解除。40ミリCIWS射撃準備完了。
ここまで約1秒。平均より遅い。初めて感じる実戦の空気がそうさせるのか]

(船体の前後に一基ずつの5インチ砲Mk45mod4はERGM(射程延伸誘導砲弾)によって、
100キロの彼方から正確な対地支援を可能にする。
128セルのVLSは搭載する各種のミサイルによって、魚雷発射管と40ミリCIWSとあわせて
あらゆる脅威への対処を可能とし、格納庫にはSH-60K2機と無人機を搭載している)

〔私はDDG-001メルティブラッド艦長、シオン・エルトナム・アトラシア中佐。
擬似神経によって艦と人間の脳を接続するエーテライト・システムはこのためにある。〕
[この艦のすべての電子機器は私の脳によってコントロールされる。レーダー・ソナー等、
この艦の得たすべての情報は私の脳に集まる。私の脳はそれを解析し、演算し、判断し、指令を下す。
高速思考・分割思考を身につけた私の脳の処理能力は、来栖川のメイドロボに勝るとも劣らない。]

(同盟成立当時、正統リーフが圧倒的に劣る海上戦力を補うために求めたのは、
1・あらゆる状況下において高い戦闘能力を持つこと
2・長い訓練期間を必要としないこと
3・省人化がなされていること
この3つの条件を兼ね備えた艦だった。2と3を実現するにはAIによる自立制御が一番手っ取り早い。
そこで当時同人コミケ国において就役間近だったこの船を購入することに決まったのだが、
ひとつ問題が生じた。渡辺製作所と遠野財団の共同開発のAIの性能が予想よりもかなり低かったのだ。
そこで一介の研究者だった私とエーテライトに白羽の矢が立った。私はその誘いを受けた。
確かに戦時中は研究に割く時間などないが、実際に多くの人間を実験台にして得られたデータは、
穴倉の中で何年研究しても得られないすばらしい報酬だったからだ。)

[思考が速い事は当たり前。そこからさらに多展開する図面を競争させる技法を高速思考と言う。
そして分割思考とは複数の思考回路を持つこと。すなわち「思考する」部屋を複数持つことだ。
そして「部屋」は相乗効果を及ぼしている。
四つの分割思考が出来るという事は、 二百五十六もの思考を持つ事。
それも単純に二百五十六人分の計算が出来る、という訳ではない。
二百五十六の高速知性が、個々の隔てなく同じ目的の為に淀みなく回転し互いを補佐するという事だ。
極限の鍛錬は時に奇跡を起こす。それが「錬金術師」シオン・エルトナム・アトラシアの魔術なのだ]

〔アンチ月テロリストの工作船、情報として知ってはいても直に目の当たりにするのは初めてだ。
もっとよく観察したいところだが、相手もミサイルの発射準備をしている。
そろそろ撃たなければこちらの身が危ない〕
「CIWS、ファイアー」

(艦首の40ミリCIWSが火を噴く。大口径の機関砲弾が周囲の人間ごと
対戦車ミサイル発射機を引き裂き、ばらばらにする。
温度の高いことを示す赤色は、まるで吹き出す血のよう。)

[─まずい。これはまずい。倍率を上げすぎた。止めなければ。カット、カットしないと。
映像カット。思考をカット。カットカットカットカットカット!!]

「エーテライトシステム接続切断。通常システムに移行」
「了解。通常システムニ移行シマス」

─────4番停止。

                   ─────6番停止。

   ─────2番停止。

            ─────7番停止。

吐き気と眩暈の同時飽和攻撃に耐え、どうにか艦との接続を断った。
「艦長!どうなさいました!?」
「心配には及びません。それより工作船は?」
工作船はまだそこにあった。傷だらけの姿をさらしながらも、
いささかも速度を減じることなくこちらに接近してくる。
カミカゼアタック─────。彼らは予測される行動のうち最もくだらない方法をとった。
「CIWS、ファイアー」
「処刑スル」
無味乾燥な機械音声を発したのは、メイド服の少女に似たモノ。
もともとこの艦を動かすことになっていた、遠野財団製メイドロボ第1号MH−1。
遠野財団製AIの処理能力は、来栖川の量産型メイドロボHM-12に搭載されている廉価版AIに
毛が生えた程度のレベルでしかない。無論イージス並みの能力など望むべくもない。
そんなAIでも、通常航行や今回のような相手には十分すぎる。
再びCIWSが唸った。穴だらけになり炎に包まれた工作船は、
大波にさらわれ、瞬く間に海の底に消えていった。
周囲から歓声が上がる。何はともあれこの船は初陣に勝利したのだ。
だが、私は喜ぶ気にはなれなかった。ただひたすらに気分が悪い。
だから、艦橋へと上がることにした。網膜という器官を通して感じる海の姿は、
脳に直接送り込まれるものとは別の趣がある。

     アカ、い─────。

その一瞬、網膜に移った海は血の色に染まっていた。
一瞬だけの幻視。なんてことはない。ただの気のせいだ。
だが、そのとき私は初めて、ここがかつて幾千幾万の苦悶と怨嗟の声を飲み込み、
そしてこれからも飲み込み続けるだろう地獄の入り口───
戦場の海であるということを真に理解した。
外に出て潮風を吸えば、きっと血の香りがするに違いない。
「でも、逃げるわけにはいかない」
そう、逃げるわけにはいかない。私は目的があってここに来たのだから。
人を蝕む忌まわしき病・反転病の生まれた大地、戦乱のエロゲ新大陸に─────。
投稿完了しますた。
メルティブラッドが海上警備隊に所属する理由は、
原田関係のごたごたのとばっちりを避けるための暫定措置とでもしてください。
2か月も待たせてしまうなんて…銃殺されてきます。
( ゚д゚)  ;y=-( ゚Д゚)・∵. ターン
.| |\/  | |)
>>587
前編ではなく後編です(死)。
592名無しさんだよもん:03/03/09 23:37 ID:tpxJzEYn
下葉なんか、軍が機能しないっぽいw>現実世界でバグばっか
ライアーは、いい訳きかんよなぁ……
行殺の時の「無限スワップメモリ増加」は伝説的だw
593名無しさんだよもん:03/03/10 00:23 ID:EYoqGjw2
そろそろ次スレが必要な感じですな。
594鮫牙:03/03/11 01:14 ID:vKaDVzHK
最近は改善されてるから
595非常手段:03/03/11 22:04 ID:jz5Ezwr9
4月2日 21時00分
ロディマス市庁第3会議室

「結論から言えば、我々は彼らを承認すべきではないと考えます」
静かで、しかし強い意思を伴った言葉が会議室に響く。
水無月大将のその姿は、とても数日前まで狂気の淵にあったとは思えない。
「ここで彼らを承認して鍵への物資輸送を止めれば、鍵が陥落するのは時間の問題でしょう。
そして、彼らは嬉々として傀儡政権の長の座に治まるだけ。
下川打倒という我々の目的のためには、彼らを認めることは害しかもたらしません」
正論である。少なくとも純軍事的には。
正統リーフがあくまで実力による下川打倒をなそうというのであれば、
それ以外の結論は皆無といっていいだろう。
ならば短中期的な下川打倒をあきらめ、国土防衛に専念しつつ事態の推移を待つという戦略をとるなら
鍵は存在しなくても良いかというと、それも否なのだ。
鍵自治州と下葉の境界線は長い。その分だけ貼り付ける兵力も必要になる。
もし鍵自治州に兵力を振り向ける必要がなくなれば、下川は使えるありったけの兵力を投入して
こちらの息の根を止めに来るだろう。これは物資援助でどうにかなる問題ではない。
いかに物資があろうと、それを使える人材は一日二日では育たない。
負傷兵がいきなりHP満タンになって戦場に復帰するなどというゲームのようなことが起こるわけもない。
海の向こうから5個師団ぐらい傭兵を連れてくればそりゃあ何とかなるだろうが、
それでは正統リーフも何もあったものではない。
つまり、関係が多少険悪であろうと、鍵自治州軍は少なくとも、
下葉に敵対的な存在として存在していてくれなければ困るのだ。
「それに、我々の航空戦力は未だ実用に耐えない。JRレギオンについてくる予定だった魔女飛行隊は
WINTERSから動けない状況です。ここで優秀な航空戦力を持つ
鍵との関係を決定的に悪化させるなど愚の骨頂というもの」
正論である。一片の疑問の余地もなく正論である。
問題はただ一つ。正論が必ずしも世界に認められるわけではないという一点だけ。
596非常手段:03/03/11 22:05 ID:jz5Ezwr9
「お体のほうはもうよろしいようですな。でしたら、
それで済むなら苦労はないということもお分かりでしょうな?」
武内TYPE-MOON副総裁の言うとおり、事はそう簡単ではない。
あの独立宣言以来、国内の反鍵感情は危険なほどに高まっている。
そこにきてあの801主義者は月姫自治区の承認を打ち出している。
国民の圧倒的な支持によって成り立つ正統リーフ、それを失えばダメージは計り知れない。
エロゲ国のこともある。正統政府を否定することはすなわち鍵独立の追認につながる。
アリスやソフリン中央政府のご老人たちが、態度を硬化させることは必死だ。
「やれやれ…。ここ最近こんな台詞ばっかり言ってる気がするよ…。どうすればいいんだ…」
「葉鍵情勢複雑怪奇、予測しても予測しても必ずその斜め上を行く…。
嗚呼、この身はなんと無力なのやら…」
「お二人とも!弱音を吐くのはやめてください!あなた方がそんなことでは、
こっちはそれこそどうすればいいんですか!」
「そんなこと言われても…」
柏木千鶴大佐の叱責に対する答えはみごとにハモった。
正統リーフ軍総帥高橋龍也、TYPE-MOON総裁奈須きのこ。
二人の息はぴったりのようだ。もっともこんな時にぴったりでも仕方がないのだが。
「総帥。どっちに転んでもろくでもない決断なんて、我々は慣れっこのはずです。ご決断を」
水無月大将が決断を促す。悩んでいても仕方がない。
高橋大将が意を決して言葉を発しようとしたとき、
「ひとつ、よろしいですか?」
琥珀大佐がその言を遮った。
「何か、良い手でも浮かんだのかな?」
「いえ、ひとつ思ったのですが、なかった事にはできないんですか?」
「なかった事に?」
「はい。例えばみらくる☆みきぽん中将とJRレギオン少将あたりが、
偶然にも不幸な事故に巻き込まれるとか、
アンチ月テロリストのテロに巻きこれるとかして命を落としてしまったとしても、
うやむやにはできないものなのでしょうか?」
その瞬間、世界は凍りついた。
597非常手段:03/03/11 22:07 ID:jz5Ezwr9
4月3日 00時30分
逢魔ヶ辻

死体が転がっている。
クロスボウで頭を打ち抜かれた死体が。
彼は優秀だった。それゆえの不幸だった。
この男の気配に気づいてしまわねば、このようなことにはならなかったのに。
「はあ……はあ……」
隻眼の男。彼は傷を負っていた。
常人ならば耐えられぬほどの傷。
そんな体を動かす意思はひとつ。
「JR…レギオン…」
その瞬間、季節外れの雷が、殺意に満ちた顔を照らした。

その男の名は、狗法使い────。
598名無しさんだよもん:03/03/11 22:09 ID:jz5Ezwr9
>>595-597
投稿完了です
599波紋:03/03/12 00:07 ID:4SGZdWwq
4月2日1849時 東部戦線のある正面

 その使者は、古典的にも両軍が対峙する最前線、その真っ只中を白旗掲げて踏み越えてきた。

 降伏の使者、ではない。
 その逆でもない。

 ほかの戦区はいざ知らず、少なくともこの前線の戦局はどちらかに傾いているということはない。
 それどころか、先の第十RR装甲師団の敗走以降のこの数週間は、相互に行う挨拶代わりの定時砲撃を除けば戦局は完全に停滞していた。
 つい数日前、アビスボートの巡航ミサイルという多少の花火は上がったが―――今となってはそれも昔のことだ。

 まもなく、この大葉鍵山系からは見ることができない湾内は、アメリカ軍を中核とする国連軍の艦艇で埋め尽くされるのだろう。
 核戦争の脅威を未然に阻止するため、エロゲ新大陸周辺に展開することとなった国連軍は米軍の三個空母機動群を中核に、英仏伊西等の諸国海軍、軽空母三隻を含む巨大な陣容を誇るという。
 それほどの戦力が、エロゲ国と葉鍵国という強力な海空軍力を有する両国を抑えるのには最低限これだけは必要と判定されたのだろう。

 それが正しい判断かどうかは―――まぁ、やってみなくてもわかる。
 ここまで明らかな戦力差を突きつけられたら、流石の傍若無人なエロゲ諸勢力も今までのような無茶はできない。
 昨日、この高原を去った二ウェ大将(装甲軍司令官就任とともに昇任)が、似合わぬ苦笑を浮かべて呟いたほどだ。「クカカ……流石に、竹槍一本で竜を狩ることは適いそうもないな」と。



 ここは東部戦線。
 連合軍―――正葉と空き地の街、そして逢魔ヶ辻の鍵駐屯軍―――と、下葉軍が静かに対峙を続ける大リーフ湾沿岸地域。

 あわせて二個師団ほどの連合軍(というにはまったく連携が取れていなかったが)に対し、下川政権軍は正面に四個師団、予備に一個師団と二個旅団が縦深のある布陣を構えている。
 もっとも立派なのは数ばかり、攻勢作戦に耐えうるのは、逢魔ヶ辻を睨む山岳地帯に陣取る二ウェ大将が師団長を務めていた第九RR山岳師団キズアトのみ。
 あとの四個師団と二個旅団は、旧式装備に練度の低いRR親衛隊の第三軍。
 陣地から一歩も出れば、壮絶な足手まといになるのは間違いのない部隊である。
600波紋:03/03/12 00:08 ID:4SGZdWwq
 支援の空軍部隊も、正葉の航空兵力が弱体なことをいいことに、主力が鍵南部に出張っているのであまり頼りにはならない。
 なにしろ戦闘機の主力は近代化改修を受けているとはいえSu22とMiG21、攻撃機に至ってはG4スーパーガレブなどまで引っ張り出してきている。
 おかげで逢魔ヶ辻にグリペンを擁する魔女飛行隊が進出してきてからはまったく活動が不活発。
 逆に連合軍側も数量に劣り、重厚な防空陣地でカバーされた下葉陣地への積極的な空襲を行えるわけでもない。

 結果として、前線はまったくのこう着状態に陥っていた。
 いや、二ウェ大将はこの状況下においても攻勢作戦を主張していたのだが、上層部はそれを許さなかった。

 許せるはずもない。

 当時は鍵自治州侵攻作戦たけなわの時であったし、ロイハイト戦線でAFの攻勢が未だ衰えぬ時期でもあった。
 本来この東部戦線に投入するはずであったRR親衛隊第四軍――テネレッツァ軍など、ロイハイトに引き抜かれたまま未だに帰ってこない。
 戦力がまるで足りない上に、ゲリラの攻撃で疲弊した補給線はそれらへの補給を維持するのにいっぱいいっぱい。
 落ち着いている東部戦線にわざわざ自分から火を点けて回る余裕など、下葉のどこにもなかったのだ。



 しかし、それも今は昔のこと。
 RR装甲軍司令官、二ウェRR大将が勇んでシェンムーズガーデンに赴いたのはほかでもない、逢魔ヶ辻攻略作戦に関して幹部会議が召集されたからだった。
 自治州戦役は南部の占領地確保によってほぼ収束し、ロイハイト戦線では攻勢終末点を自覚したAFの戦線縮小の動きがある。
 鍵は不完全ながらも孤立を深め、VAによる物資供給は機能不全に陥っている(と、下葉首脳は判断していた)
 下葉への国際的な逆風を逆手に月姫自治区の設立、禁止兵器管理のための協議開催、そしてその期間の停戦と続けざまに手も打った。

601波紋:03/03/12 00:09 ID:4SGZdWwq
 仕上げにもうひとつ。
 今となっては鍵と外界を繋ぐ唯一の接点、逢魔ヶ辻を停戦発効直前に奪取すれば。
 東葉に頭を下げてでも一時的な航空優勢を獲得し、空挺とヘリボーンによる強襲、混乱を突いての山岳地帯の踏破を達成すれば。
 完全な奪取に成功せずとも、葉鍵中央回廊を扼する要地を手にすることができれば。
 そしてそのままの状態で、停戦発効に持ち込むことができたならば。

 心理的、政治的にだけではなく、物理的にも連合軍の分断に持ち込める―――そう、下川と中上は考えたのだ。



 だから、混乱した。
 もしそのとき二ウェ大将が高原に残っていたならば、軍使を殺して書状をもみ消したかもしれない。
 だが、現実に軍使―――あまりに古典的なコミュニケーションだが、葉領の鍵派が一掃された今、みきぽん中将は前線以外に下川政権との接点を持たなかった―――無事戦線を渡り、書状は下川軍に手渡された。

 そして、その書状は会議中にそれを目にした下川陣営首脳陣をしてこう言わしめたのだ。

「どうすればいいんだ」

 と―――

<糸売?>
602AF書き手:03/03/12 00:18 ID:4SGZdWwq
長くなりそうだったので、この辺で切ってまた後日ですw
603名無しさんだよもん:03/03/12 00:27 ID:FmJhZbd5
おつ

とりあえず>>595
>JRレギオンについてくる予定だった魔女飛行隊は、WINTERSから動けない状況です。
>>600
>おかげで逢魔ヶ辻にグリペンを擁する魔女飛行隊が進出してきてからは
指摘しておきます。

そろそろ移行か…
604名無しさんだよもん:03/03/12 12:12 ID:KOzaEyVJ
hosyu
605旅団長 ◆XudNAtsUKI :03/03/12 19:42 ID:C0e21nLs
葉鍵大戦記6 修羅の葉鍵

「面白いから軍備を続ける者はいない。恐ろしいから軍備を続けるのだ」
――――ウィンストン・チャーチル

エスカレートしつつあった弾道ミサイルの応酬は、国連安保理によって水入りとなった。
だが、統一された葉鍵国という幻影を追う下葉と正葉の軋轢と、
独立国家の野望を秘めた鍵の暴走は、留まることを知らない。
みらくる☆みきぽん中将の謀叛はこの狂騒を止める妙薬か、
それとも煉獄の炎を激しくさせる劇薬か……
葉鍵キャラ&スタッフが繰り広げる一大戦争リレー小説、第六弾開戦。


葉鍵大戦記5 葉鍵国の興亡
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1040357173/
葉鍵大戦記4 Raid on AIR
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1032/10321/1032166769.html
葉鍵大戦記3 〜バ鍵っ子ストーム〜
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1023/10237/1023719697.html
葉鍵大戦記2 Red Key Black Leaf
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1020/10205/1020554975.html
葉鍵大戦記
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1016/10162/1016258488.html
葉鍵陸軍
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1014/10145/1014565791.html

旅団長氏によるサポートHP「葉鍵大戦記 後方支援連隊」
http://www6.plala.or.jp/brigade/support/
606旅団長 ◆XudNAtsUKI :03/03/12 19:43 ID:C0e21nLs
>>605次スレ案
異論がなければ、これで行こうかと。
607名無しさんだよもん:03/03/12 19:58 ID:asYUKMQV
良いと思いまふ。
煽り文が良好。非常に興味をそそる書き方かとw
608旅団長 ◆XudNAtsUKI :03/03/12 21:34 ID:0zCw0u2Z
609名無しさんだよもん
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1047472425/l50
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1047472425/l50
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