青紫か───── 「だいたい最近の若い者は人を外見で判断しすぎなのです! 少しお凸が広いくらいなんですか! アメフラシやなまこが好きだなんて萌え萌えじゃありませんか!」 光岡大尉はこの男のことを 「邪悪な人間ではない。その心の弱さゆえに最悪の選択をするだけのことだ」 と評したが───── 「私はね。高橋龍也になりたかったんですよ。 彼は私の憧れだった。参謀を志したのもそのためです。 彼のように華麗な戦術で勝利して栄光の光をつかみたかった」 今目の前にいる男からは、そのような弱さなど微塵も感じられない。 自らの正しさを一片の迷いも無く信じるとき、人は驚くほど強くなる。 おそらくは彼もそうなのだろう。だが、 それは一歩間違えればバ鍵っ子のようになりかねない諸刃の剣、素人にはお勧めできない。 「皆さん私が外交をやるのは不安なようですが、 私はもともと下葉時代からそういうことをやっていたんです。 少年漫画国に行ったときには、エルメェス中将からパンティーをもらったこともあるんですよ」 …まあいい。その強さが真実からくるものなのか、 それともうわべだけのものなのか─────じきにわかる。
時計も窓も無い時間の感覚を麻痺させるような密室で、 二人は取り留めのない会話を続けていた。 政治家としてではなく、人間として理解しあうための長い長い会話。 どれだけの時間がたっただろうか。 今までにこやかな笑顔を浮かべていた奈須総裁が、急に真剣な顔になった。 「青紫参謀。ひとつ契約していただきたい」 「契約?」 「そうです。なに、たいしたことではありません。 私がこれから言うことを空き地の町の首脳部全員に伝える、それだけのことです」 青紫の顔からも笑みが消える。 「…了解した。子細漏らさずお伝えしよう」 二人の顔は、すでに政治家としての仮面をかぶったものに変わっていた。 「昨日、里村茜と見られる人物がエロゲ国のオネ港で目撃されました」 「間違いないのですか!?」 「あのゴスロリを見間違える人はいないでしょう。 しかも電波お花畑国籍の船から出てきたそうです。 まず間違いないでしょうね」 「その情報はどこから?」 「エロゲ国における我々の協力者、とだけ答えておきましょう。 しかし、彼らはオネ港に何の用があるんでしょうね? 何かわかりますか?青紫参謀」 「そんなこといわれても…」
「あなたにもわかりませんか。これは最悪の事態も想定しておいたほうがいいかもしれませんね」 「最悪の事態?」 「オネ港といえばネクストン軍の軍港です。彼らがネクストンに付いたとしたら、 鍵とあなた方の関係は大揺れですな」 青紫は凍りついた。ネクストンといえばかつて麻枝元帥らの裏切りによって壊滅寸前に陥った タクティスの理想を継ぐものたちである。もちろん鍵およびVAとは犬猿の仲であって、 今まで介入の動きを見せていないのが不思議なほどであった。 空き地の町はもともとタクティスの領土であり、反鍵感情も根強い。 (特殊部隊大佐の宣伝工作が、それに拍車をかけていた) 軍事顧問団がネクストンに付いたなどという情報が流れればその感情が暴走する危険は大いにあるし、 むしろネクストンもそれを狙ってくるに違いない。 「ハ、ハハ、何をバカバカしいバカなことをおっしゃっているのですか。 私は彼らを良く知っている。彼らはそのようなことに手を貸しはしない。 他者に利用される苦しみを誰よりも知っている彼らが、 我々を利用するようなことに手を貸すはずなどないではありませんか!!」 「よく知っている?彼らを?よろしい、ならばお聞きしましょう。 あなた方は軍事顧問団の経歴を知っていますか?」 「ベトナム帰りの特殊部隊隊員と聞いたが…」 それを聞いた奈須総裁は両手を広げ、首を振った。 その様は「なにをいっているんだいチミは」とでもいいたげであった。
「嘘を嘘と見抜ける人間でないと、(この世界で生きていくのは)難しい。 ひろゆきの言葉です。あなたは少しぐらい人を疑ったほうがいいかもしれない。 ベトナム?いつの時代の話ですか。ベトナムで従軍していたとしたら、50はいっているでしょう。 彼らはずいぶんとお若いですねえ…」 「そ、それがどうした!そんなこと言ったらはじめて教の しおり姫とかさおり姫だって18歳以上じゃないか!」 「それだけじゃあありません。あなたは彼らのエロゲ語を聞いてなんとも思わなかったのですか? ずいぶんと堪能だったそうじゃありませんか。 まるで…そう、エロゲ国で生まれ育ったかのようにね」 青紫の顔色が変わった。確かに彼らはエロゲ語が異様にうまかった。 しかもよく思い出してみればどことなく、 タ ク テ ィ ス 訛 り が あ っ た よ う な 「まさか………!そんな………!」 「…青紫参謀。常に最悪の事態を想定するのが為政者というものです。 理想を追うものは、時にその理想自体と対峙しなければならないことがある。 重要なのはね、その覚悟があるかどうかですよ。 そこで瓦解してしまうようなら、所詮烏合の衆だったということです」 「私は…どうすればいいんだ……………」 「我々は、あなた方が空き地の町の味方でいてくれることを期待していますよ」 人の心に影響を与える最も効果的な方法は、切り付けること。 奈須総裁の突きつけた事実は、研ぎ澄まされたナイフのごとく青紫の心をえぐった。
?月?日 ????時 ???????????? 「ようこそ!ようこそ!新たなるタクティスの地へ! 有島裕也!私は君に再会できて非常にうれしいよ!」 「ふん・・・あんたは全然変わってないな、YETボス」 「ハハハ、そう見えるかね有島君!まあいい! 君たちもそこのお嬢さんも、ゆっくりしていってくれたまえ! 『彼女』も君たちを歓迎しているよ!」 「えいえんは、あるよ…。ここに、あるよ…」
7 :
プローシト! :02/12/20 13:10 ID:5qhCZlZA
2月29日15時10分 鍵自治州南方先端部RR装甲軍臨時司令部 「――以上の事により我々、東部方面総監部は月姫難民に対する人道的保護を約束する」 RR装甲軍司令官柳川裕也大将はソファーに腰掛けながら、テレビでプロパガンダを行う人物 をつまらなそうに眺めていた。 その横にはRR装甲軍参謀総監月島拓也中将立っている。 彼は、州都攻防戦で予想外に奮戦した。月姫難民のその後の状況について収集した情報を司令 官に報告していた。 「その後、月姫難民は又強制収容所に逆戻りだ。おまけに今度はバーブワイヤーに機銃付きの装 甲車の監視付きだ」 柳川はその情報を鼻で笑い飛ばし、心底軽蔑する口ぶりで言葉を発した。 「理由はどうであれ、鍵自治州を守る為に命を掛けて戦った者に対する、報いがこれか。ホトホト 反吐が出る偽善者共だ」 そうだ。民族浄化を始めるのは何処の国も権力者ではなく、唯の市民だ。その市民を民主主義、 文民統制の美名の元に躾をしようとしない、麻枝元帥。閣下の功罪だ。もはや、閣下であろうとこ れから行われる、月姫難民に対する鍵市民の虐殺行為は止められないだろう。閣下は自国民を性善 説に則り信頼しすぎたのだ。 「閣下、カルラ中佐、カミュ中佐が到着しました」 太田香奈子大尉の声に、テレビからドアへと視線を移す。やれやれ、東の友人達とは何かと縁が あるようだ。 「そうか。拓也すまないが、しばらく出ていってくれ」 猫科の捕食性動物の耳と尾を持つ筋肉質な女性と、黒い羽を持つ未だ少女の面影を残す女性が入 ってくる。
8 :
プローシト! :02/12/20 13:11 ID:5qhCZlZA
「第9師団師団独立歩兵大隊指揮官カルラ中佐並びに、第9航空団爆撃航空隊指揮官カミュ中佐只 今到着しました」 「RR装甲軍司令官、柳川裕也大将だ。貴官らの到着、心より歓迎する」 形式通りの挨拶の後、鷲見元帥からの親書を二人から受け取る。内容は彼女等が到着する1時間 前に警察庁公安委員会室(室長は藍原瑞穂警察中佐)から送られてきた、書類から概ね理解出来る。 その書類たるや。久瀬内務尚書を始め、憲兵総監ユンナ警察准将、秘密警察長官兼政治警察局局長 吉井警察中佐、警察庁公安委員会室室長藍原中佐という、国家警察の重鎮達のサインで埋め尽くされ ていた。そしてその最後には敬愛すべき国家元帥のサインがあった。つまりは、下葉はこれ程までに この問題に真剣なのだ。少なくとも表向きは。 そして、親書の内容は要約すると。鍵自治区南部方面占領区域の月姫難民自治区設立への尽力感謝 と東部方面軍の戦力派遣である。 あくまで『月姫民族に対する人道援助に熱心な』東部方面総監部に協力するとういう、体裁はこれ で作り出す事が出来る。 派遣戦力は機械化歩兵1個中隊、空軍1個小隊(Su-34×3)のみだが、名目としては十分すぎる。 「尚、東部方面総監部は月姫難民の亡命を積極的に認める」テレビでの鷲見元帥の演説は続く。 テレビを眺めながら、二人の女性士官に柳川は呟いた。 「これで、鷲見元帥も政治の表舞台に立つことになるな」 「力あるものは、政治を行う義務がある。久瀬内務尚書はなかなかのやり手ですわね」 カルラが柳川に微笑みながら答える。久瀬内務尚書と月姫難民問題に関する協議の答えとして東部 方面総監部首脳が出した答えがこれである。 鍵自治区南方占領区域に月姫の難民自治区を作る。 「我々の思惑はどうであれ、月姫難民の多くが命を救われる。この事実を国際世論もそして当の月姫 民族も無視出来ない」 「そして、鍵の月姫民族に対する弾圧も浮き彫りになる。本当、恐ろしい男ですわね久瀬内務尚書は」
9 :
プローシト! :02/12/20 13:13 ID:5qhCZlZA
鍵を月姫難民を利用して国際世論から孤立させる。こうなっては鍵は自らの正統性を証明する為に 強行姿勢を維持せざるえない。 そして、月姫難民に反乱を起こさせ、鍵の体力を奪う。その反乱に対して鍵は強行に鎮圧せざるえない。 「そうだな、あの男だけは敵に回したくないものだ」 「では、当分はお世話になりますわ閣下」 「ああ。月姫自治区防衛軍前衛の月姫RR義勇兵連隊は君達が指揮することになる。君達が持ってきた 部隊はその中核となる」 そう言うと、柳川はワインを一本のグラスを三つ取り出した。 「飲むかね、エロゲ暦96年モノのビンテージだ。葉鍵統合軍以来の混成部隊の結成を祝おうじゃないか」 「頂きますわ閣下」「えへへ、カミュはいいや」 「そうか、ではオレンジジュースを持ってこさせよう」 カルラに赤ワインを注いだグラスを渡しながら、僅かに笑みを浮かべながら言う。何時もの冷笑ではない 正真正銘の微笑み。 「では我々の変わらぬ友情に」 「プローシト!」 「プローシト!」 そして再び、戦乱の幕は上がる。
スレ立て乙。しばらくしたら漏れも書きますゆえ…
12 :
鮫牙 :02/12/20 23:40 ID:rUAftkNz
スマソ。正しくは3月です。
「……まだか? まだなんか?」 こつこつと、もたれ掛かったテラスの手すりを指で打って、苛立ちと期待のない混じった声を上げる姿はとても魔王と呼ばれる独裁者には似つかわしくない。 しかし、独裁者というのは得てしてそういうモノだ。 全てを欲する独占欲、自身の政敵や被支配者に対するに対する強烈な残虐性。常に己の存在を誇示し続けていなければ気が済まない、本能的ですらある自己顕示欲。 それら権力者一般に見られる傾向は、結局のところ彼らが幼児性を脱し切れていないという証左に他ならない。 権力という、刃物や銃などとは比較にならないほど凶猛な凶器を手にした知恵の回る子供。 恐ろしく疑り深く、とてつもなく気分屋である彼らの相手を努められる、そんな人間はそう多くない。 だが、その困難極まる任務を遂行できる人材でなければ、彼らの側に仕え同じく権力を共有することは適わぬ業なのだ。 「そう仰られましても。 ご存知のように、弾道弾の発射には時間が掛かるモノですから」 「わぁっとるわいっ、待ちきれんだけやっ!」 そんなこといわれても、どうすればいいんだ。 青紫のたわけがのたまいそうな言葉が脳裏を過ぎり、中上大将はそれと気付いて小さく頭を振った。 まったく、ろくでもない。ろくでもない話だ。 ろくでもない指導者に指導されるろくでもない国家体制。 それに阿りへつらう連中も例外なくろくでなしばかり―――ああ、これはもちろん自分自身も例外ではない。 戦争相手国が正義の味方なら救われようもあるが、そんな自虐的な願いをせせら笑うように彼らの敵も彼らと同様、どうしようもない屑だった。
どれもこれも大同小異、人間の底辺に位置する輩の闘争に過ぎない。 ならば、そのろくでなしの中からまだしもマシな存在を押し立ててこの戦争を生き抜くしかないではないか。 独裁者に仕えるという離れ業を、生来の技能として身につけている数少ない一人、中上和英大将はもはや慣れ親しんだ絶望感を胸にテラスを行き来する主人を眺める。 「ったくボケが、身ぃ張って臭い芝居まで打ちよるからすっかり気が殺がれたわ」 中上の眼差しに背を向けながら、彼に毒づく下川の声はいつもにも増して湿り気が高い。 その湿度は何も暗い怒りによるものだけではなく、そこに少なからぬ喜びも乗せられていて、その毒気をさらに純度の高いものに仕立て上げていた。 もうすぐこのお気に入りの風景に、さらに彼好みの色彩が数条、北の空へ向かって加えられるはずだ。 「キレたわいが、本気でソフリンあたりに核を撃ち込むとでも思いよったんか? さも馬鹿面提げて馬鹿騒ぎ晒し、三文芝居を演じてくれよってからに。 わいもえらい軽く見られたもんやで、なぁ中上?」 やはり、見抜かれていた。 それはほとんど確信に近いレベルで予期していただけに、中上の無感動な表情に一糸の揺らぎをもたらす驚きではない。 といよりも、それと知られるように殊更わざとらしく暴論を論じていたのだから、感づかれていなかったとすればその方が驚愕すべき事柄だ。 「申し訳ありません、仰ることが些か理解しがたく……」 「まだしらきりよるんか……まぁ、ええけどな」 あくまで無感動に首を傾げる中上に一瞬だけ白けた一瞥を送り、再び下川の眼差しは青い吸い込まれるような空へと戻る。 そのあたりのやりとりを、理解しているのかいないのか。 脳天気な声を上げたのは、中上大将の傍らに佇む脳天気そうな将軍。 ねのつきゆきしろ空軍少将である。 「でもしぇんむ。市街地への被害がおっきいと、またぞろアメリカあたりがうるさいんじゃないです? サーカス師団事件の二の舞みたいなことになるのはごめんですよ〜〜」
サーカス師団事件。 数年前の事件ながら、その記憶は新旧エロゲ大陸の人間には新しい事件であった。 事件のあらましは極めて簡潔である。 エロゲ国さいたま連合集団軍の一角、サーカス師団がスーダンやアフガンと共に反米テロリストの生化学兵器の工場となっているとして、突如米軍空母機動部隊による空襲を受けたのだ。 ディエゴガルシアから進発したB52戦略爆撃機もあわせ、連日行われた空爆に対しサーカス師団はさいたま連合の他の師団と共同で応戦、F/A18二機を含む米軍機四機を撃墜するなど力戦したが、及ばなかった。 隣接する他の師団の協力を得られぬままに防空網と航空兵力の全てを撃滅され、サーカス側が製薬プラントと主張する工場群のほとんど全てを撃破。 その後サーカス師団がプラントを再建しようとするたび、アメリカは恫喝的に空母をエロゲ国南方総督領の沖合に展開し、その度にサーカス師団は涙をのんで圧力を受け入れる結果となる。 その後、NGOの調査などで同プラントはスーダンのそれと同じく実際に製薬プラントであったことが判明したが(現実にサーカス師団はエロゲ大陸で最も医薬の普及に力を入れる軍閥だった)、アメリカはこれを黙殺。 国際社会も見捨てられた土地の忘れられた事件になど思いを馳せることもなく、事件はただ風化した過去として忘れ去られていった。 その頃にはサーカス師団領からの薬品供給が途絶えた大陸に、アメリカの医薬品メジャーの販路が確立されていたというのだから始末に負えた話ではない。 何のことはない、要するにサーカスは填められたのだ。 世界の果てのことであろうとも、アメリカは自国の利害に直結することには極めて目敏い。 突然の、そして久方ぶりの外部勢力との接触は、内部抗争に明け暮れていた新旧エロゲ大陸の各勢力にその事を思い出させ、 しかし、事件が彼らにもたらした教訓は、決してそれだけではなかった。
「余計な心配はせんでええわ。国際社会は―――っつうかアメ公どもは、利害にからまん限りは何したって文句はつけへんわい」 アメリカ合衆国という国は、彼らの国民が思うほどに正義と自由に対して真摯な態度を示す国ではないのだ。 しぇんむ〜はそれを熟知しているから、ここにはいない二億四千万の民を軽侮しきった薄ら笑いを浮かべるのだ。 たとえば、ソマリアが良い例である。 大真面目に民主主義と人道の敷衍が冷戦後のアメリカの任務であると誤解した結果行われたアメリカ主導下での最後のPKFであった同地での作戦は、周知のように見るも無惨な結果に終わってしまった。 ソマリアの乾いた大地に染み込ませた米兵の出血量自体を見れば、それは米軍に抗ったソマリア人のそれととてもではないが比べものになるような量ではない。 だが、自分たちの正義を正面から、護るべき愚かで無学で貧しい民衆に否定された衝撃は、アメリカ国民に実際の被害を遙かに超えた重大な衝撃を与えたと言えるだろう。 それ以降、アメリカは自国の利害に絡まない(或いは、介入すれば得られる利益より支払う対価の方が大きくなりそうな)地域での活動を徹底的に嫌う。 そうした辺境での蛮行が、国際世論においてアメリカも看過できないレベルまで高まった場合のみ、適当な批判の声を上げこそすれ、では実際の行動に移ったかといえばそんなことは全くない。 何故か? 無駄だからである。 米兵の血を流す価値が、そこにはまったく存在しないからである。 今のアメリカという国家は、せいぜい葉鍵内戦を兵器の輸出市場くらいにしか見ていない。 人道の問題などはその添え物だ。確かに月姫への傾斜はあるが、アメリカが彼らに武器を売らなくともどうせどこかが武器を売る。その程度は看過されてしかるべき事柄だ。 合衆国にしてみれば、葉鍵国やエロゲ国の人口や各地に眠る鉱山資源や潜在的工業力は確かに魅力的な市場ではあるが、極めて多数の軍閥が割拠する不安定な政情は、その市場としての魅力を著しく損なっていた。 アフガンと同じく、軽く殴って逃げるくらいならともかく、深入りすれば火傷をするのは避けられないと思われたからだ。 それでも試しに薬品の販路を奪い、独占してみたものの、やはり今の段階では状況は好ましいとは言い難い。
「むしろ、正葉側の月厨どもが、ぎゃぁぎゃぁ国際社会で騒いどるのはこっちにとって僥倖かもしれんな。 考えてもみぃ? 今現在、月厨を積極的に弾圧しとるのはいったいどこの勢力や?」 「チェチェン紛争において、アメリカはロシア軍のグロズヌイ大空襲をはじめ数々の民間人を対象とした戦争犯罪をほとんど問題にしていない。 トルコ軍のクルド族掃討作戦も然り。クロアチア・ボスニア内戦では、ウスタシャによるセルビア人やムスリムへの無差別攻撃はほぼ看過されたな。 要するに、そういうことなのだ」 下川の言葉を引き取る中上の説明に、得心のいったようにねのつき少将は腕組みをして頷いた。 「あー。鍵が悪者の間なら、多少のごり押しは事故として見過ごされるって事ですか?」 ましてや、下葉は大陸間弾道弾を有する危険な国家である。 仮にアメリカはじめ国際社会が色気を出したとしても、ユーゴやアフガン、そしてサーカス師団のように直接的な軍事力行使は考えがたい。 「アホ、もっと大きくでたらんかい。これは我が葉鍵国政府が人倫を無視する極悪非道の麻枝叛乱軍に対して下す正義の鉄槌なんや」 「むは〜ん……AIRシティは鍵市民による月姫難民迫害の正にその舞台で、ものみの丘は居住区より軍・政府関係施設の多い特別行政区……なるほど〜〜」 一人得心している様子のねのつきはすでに関心の対象ではなく、しぇんむ〜の次なる言葉は中上へ向けられた問いかけだった。 「久瀬は、もう着いたんか?」 今度はしらを切らねばならないような質問ではない。 念のため手許のメモに目を落とし、そこにびっしりと記されたスケジュールから必要な情報を探し出す。 「は、予定ではすでに。1230時に列車にて州都入りの予定です」 「ん……ソフリンの使節団にも訓令を入れとけ。タイミングが重要になるぞ」 「は、承知いたしております」 珍しく、落ち着いた口振りの下川に一礼し、中上大将は彼の指示を実行に移すべく扉へと向かう。 そしてドアノブに手を伸ばしたとき、その轟音は数キロの距離を隔てて彼の鼓膜を揺さぶった。
頭を巡らせて暗い眼差しをテラスの彼方へと向ける。 丘の向こう、数十条の白煙が、天へと向かって延びていく。 それは、最悪を避けるために自身が考案した代替策だ。最悪を避けるためであって、最善ではない。 気が重い。 国家元帥とねのつき少将の前ではああは言ったが、本当にその程度で済むだろうか? 宣伝戦で敗北すれば、袋叩きに会うのはこちらではないのだろうか? 恐らくは月姫への寛容な姿勢で相殺できると踏んでいるのだろうが、国際的孤立の危険をわずかも恐れない久瀬内務尚書、彼の自信はいったいどこから来るものなのだろう? いくら思考を深く暗いわだかまりの底で巡らせても、理解の及ぶところではない。 ましてや理解したところですでに遅い。 すでに矢は弦を放れたのだから。 総計四十基を数えるミサイルが、戦略目標への飛翔を開始してしまったのだから。 シェンムーズガーデン、3月28日1430時のことである。 <糸冬>
とゆわけで、作中での予定が一日遅れて……て、今気付いたけどプロージトの時点で29日ですか(喀血 しまった、28日にしてしまった……うぅ、いったん取り消しますでつ(汗
保守
21 :
鮫牙 :02/12/21 00:45 ID:kaGMIbF8
いや、プロージトの時間を変えた方が労力少ないですよ。 つーわけで、4月1日に変更です。
ほしゅ
保守
整備兵 − 今日は施設全体のめんてなんす − いやね〜最近すぐに壊れる施設が多いのですよ。 この間まで勤務していた施設もこの位の時期で壊れてしまったですよ。
捕手…… 野球豚は巣に帰りますよ(泣き)
狂人国家とネクストン、空き地の街の三者は結局の所切っても切れないとしか言いようが無い。 ネクストン−空き地の街は館山総理、空き地の街−電波花畑連合国は里村茜 ネクストン−電波花畑を繋ぐのは・・・里村茜を生み出したということ、そして有島将軍と旧タクティス共和国軍の兵士達 軍事的には、航空部隊は連合国が担当し、陸上部隊は旧タクティス共和国軍と連合国将校、海軍は旧タクティス共和国軍が主導でアシスト、作戦助言が連合国の役割である。 そして、理由は何であれ、全てに共通する事は・・・そこにかつて『タクティス共和国』が存在したという事である。 体制が二転三転したとしても、久弥将軍派の抵抗点であったという事実があっても、麻枝元帥が久弥将軍の当番兵であった里村茜が自分の意のままにならないから嫌いでも、 意外とゲリラ鎮定に役立った渡辺茂雄を士官学校へ呼び戻しても、それは存在した。 住民の反鍵はレパブリック・オブ・タクティス時代への回帰(サイゴン市民が未だに過去を懐かしむのと同様)、月姫ゲリラの一部は旧タクティス共和国軍であるという事実。 (当初配置されていた里村中隊の兵士は鍵国軍人。) 鍵国軍人が負傷しても死んでも協力しない、逆に狂気の顧問団に対しては協力。 帰順工作により今まで戦っていたゲリラが帰順し、民間防衛隊になったとしても驚きもしない。 なぜか? それはゲリラは旧レパブリック・オブ・タクイティスの兵士達だったからである。 では顧問団は? 答えは旧タクティス共和国軍残党と本物の基地外の連合軍であった。 渡辺茂雄の戦いはブラフだったのか?それは否である。第二次大戦中の日系人部隊と日本軍の戦いで示されたあの戦いの再現である。 だから出血は増大しつづけたのである。どちらも軍人としての誇りと目指す物は同じで道が違うという決定的な問題も・・・ だから渡辺茂雄は文句も言わず驚異的な戦術を編出し顧問団到着以前の最悪の兵器で勇敢に戦った。 顧問団到着後の米国式兵器を短期間で訓練し逆に攻勢に転じる事も多々あった。
では里村茜は? 麻枝元帥の疑心暗鬼が原因といえよう。麻枝元帥は渡辺対戦車大隊の奮戦を認めざるを得ず、さらに旧タクティス復興の疑念を抱いたのが決定打となり 渡辺茂雄少佐を大佐とし、士官学校へ送る(後方へ下げる)という決定を下した。 そして、レパブリック・オブ・タクティスの無能を示すスケープゴートとして久弥将軍の当番兵であった里村茜を最前線に送り出した。 当初期待通り連戦連敗を続ける里村中隊に旧レパブリック・オブ・タクティスの評判はガタ落ちになり、空き地の街陥落近しとの目測さえ出る有様であった。 しかし、ここでも麻枝はミスを犯した、その少女が、永遠に待ちつづける少女であることを見落としたために・・・ 少女は、連合国軍の一人の大佐を動かした、それが砲手である。そして、裏切られたと思い込み半ば自暴自棄になっていた所、彼女に気がつき、彼女を求め、 自らを再び戦いに向けた一人の軍人、それが有島裕也である。 そして・・・少女は有島少将によって呪縛から解き放たれる事になる。 では城島司大佐は・・・? 若き日の肉欲の罪を地獄の十字架として背負い街の為に戦うと宣言した、記録の無い男。 それに従うは狂気の軍勢150・・・同じように死亡、行方不明、或いは全て抹消された男達であると伝えられている。 では、これら全てのの意味する空き地の街の有るべき姿とは? 空き地の街において『レパブリック・オブ・タクティス』を復活させる事か? それはベースソン任務部隊の仕事ではないだろうか? ならば何か? アメリカでさえ建設できない『最後の自由の砦』の建設か? だが、鈴木元帥の意向も気にせねばならない所だ。 しかし、青紫参謀、坂上蝉丸少佐、岩切大尉といった全てを失った者達にとって住みやすい場所でなければならない。 顧問団は当初正統葉に任せる方向であったが、やはり難しい話であった。 最後に建設されるのはレパブリック・オブ・タクティスであるのか、自由の砦なのか、はたまた何処かの自治領となってしまうのか? 再び、電波花畑連合国旗と旧タクティス共和国軍橙の戦闘旗、空き地の街の自由の旗が同時に立てられる日が来るのかもしれない。 だが、これだけはまだ推測の域を出ていないのである。 (続?)
というわけで言ってみましたが、なに言ってんだボケナス!基地外はカエレ! という場合は保守代わりの笑い話に 尚、最終的人選:軍事顧問団 NEXTON財団軍所属:有島悠也少将(車長)(顧問団総司令官) NEXTON財団軍(旧タクティス共和国軍所属):中崎勉少佐(操縦手) 電波花畑連合国統合軍所属:(氏名不詳)大佐(砲手)(退役少将) 電波花畑連合国特殊作戦群所属:城島司 大佐(特殊部隊大佐)(鍵国、NEXTON財団からも記録消失) 電波花畑連合国全権大使:里村茜(黒衣の天使)(連合国とNEXTON財団を繋げる唯一の存在)(彼女の意思に基づく為未定) 電波花畑連合国総合兵器研究所所属:長瀬源次郎少将(艦隊司令官)(死んだ筈の馬面の男) スプールアンス・クラスミサイル駆逐艦を防空型にしたのは彼の発案、コスト高のトマホークを廃止し、スタンダードSR2ブロックWに換装) 長瀬源次郎少将:燃え盛る研究所内ではIRセンサーを含め正常に働かないためセリオ、マルチ救出時に全てのセンサーは炎の為完全に機能できなかった為、生き残る事が可能であったと報告 「アレは死んだフリだよ、拳銃一丁で馬鹿のように戦う分けないさ。AKを引っ張り出さない事に気付かれなくて良かった。」 脱出直前データーを盗もうとした某国情報部により保護、連合国へ送られる。その後、スプールアンス・クラスの防空強化、 M3A2、M2A2ブラッドレイを外見を変えることなく、コンピューターを搭載しエイブラムス、航空機、艦艇、地上司令部と連携が可能になる。 インタビューに対し彼は「優秀な指揮官が娘二人もってったから後は心配ない。」後一人居るのでは?という問いに対して。 「あれは俺の娘じゃない、独裁者の娘であり最高の戦闘マシンだろ?俺に聞くより下川元帥に聞いて来い。」 スプールアンスはトマホークしか積んでない事が気になっていたので・・・やっちまいました。 連合国顧問団の内訳は本物の基地外は一人、後は旧タク、そして、ONEフルボイス、MOONリニューアルの販売権がNEXTONに移ったのを繁栄させてみました。 偵察員は本国送還の方向で(w
29 :
傀儡 :02/12/22 17:07 ID:0KR5yq5M
4月2日12時10分 鍵自治州南方RR装甲軍占領区域 ケロピーシティ、一つ星レストラン「みかん寝日記」 VIPルームで二人の男女が机に並べられた豪奢な料理を挟んで向かい合っている。 男の方は、RR装甲軍司令官柳川大将。女の方はラフな服装に長い赤毛をしている。大凡このレスト ランには不釣合いな印象を抱かせる。 食事をしながら最初に口を開いたのは柳川であった。 「蒼崎青子、通称魔術師と呼ばれるパルチザンがまさか、こんな所に潜伏してるとはな」 「そう、意外?それで、私に何か用?装甲軍の坊や」 「ああ、丁度人形を探していたからな」 「人形?」 「ああ、我々はここに月姫自治区を作ることにした。表向きは自治区だが我々に傀儡になってもらう。 その傀儡の自治区に丁度いい総統を探していた」 「はっきり言う男ね」 「そうだ。こんな事を生易しい言葉でオブラードしても意味はないからない」 「それで、本当に私達月姫民族を保護してくれるのね?」 「お前達が我々の人形である間はな」 「歯向かえば?」 「愚問だ。殺す」 冷徹で冷めた瞳が青子の瞳を見つめる。下川軍の将軍に共通する、必要とあれば外道にすらなる、徹底 した合理主義それは時として対峙した者に相手は本当に人間であるか疑問を抱かせる。だが、逆に決して 感情で采配を振る事はない事が分かるのが相手に信用を植え付ける。 青子はワインを一気に飲み干すと、柳川の瞳を見据えて、言った。 「私は貴方が同胞を保護してくれている間は貴方の人形になる」
30 :
傀儡 :02/12/22 17:08 ID:0KR5yq5M
4月2日15時30分 鍵自治州南方先端部RR装甲軍臨時司令部作戦会議室 「デートは如何でした?」 月島中将の質問に少しの笑みを浮かべて答える。 「成功だ。先方も満足していただいた」 「そうですか。では皆さん、手元の書類をお取り下さい」 葉鍵大本営からの通達。 鍵自治州南方先端部に月姫自治区を創設せよ。 そして、それに伴い柳川以下RR装甲軍の派遣された将兵達と東部方面軍の派遣部隊は新たに創設される 月姫自治区防衛軍に編入されるされることになった。 「RR装甲軍司令官の後任はニウエ中将があたるそうです」 第9RR装甲山岳師団キズアトの司令官で鷹のような目をした老将である。東部方面軍の菅宗光大将 とは二人がエルフ軍の将校だったころからの知人でありながら、東部方面軍からRR装甲軍に転属した 変わり者で、その戦歴たるや半世紀にも及ぶ。 「あの老人は、戦争の為に産まれてきたような男だ。彼なら、心配はないだろう」 柳川ですら、ニウエ中将にはこういった感想を漏らす。尤も、同時に産まれる時代を1000年誤った とも思っているが。 「これが月姫自治区防衛軍の編成です」 師団長以下高級将校の多くが戦死した、第1RR装甲師団ライプスタンダルテ・シモカワ・ナオヤー これを三つに分割し再編成することになった。 2個装甲師団1個装甲戦闘団からなる、総兵力三万の月姫自治区防衛軍の誕生である。 「それで、再編成はどれぐらいで終了しますかな」 ダス・リーフ師団長が書類に目を通しながら言う。 「編成は急いでいる。が多少時間が掛かる。何しろそれまで定数9000の師団を12000まで増強 して、おまけに1個装甲戦闘団まで編成するからね」 実際、これは高級将校が多く戦死した為の苦肉の策である。 「まあ、そう焦る事もない。鍵の連中も当分は攻勢を掛けて来る事はない。ではカルラ中佐、RR月姫 装甲戦闘団の指揮はお任せする」 長机を正面の女性を見据えて、柳川が言う。 「ええ、お任せ下さい。閣下」 後に、この戦闘団がカルラ戦闘団と呼ばれ、鍵っ子義勇軍の恐怖の対象になる。
31 :
傀儡 :02/12/22 17:11 ID:0KR5yq5M
月姫自治区 自治区総統 蒼崎青子 月姫自治区防衛軍 司令官 柳川裕也大将 参謀総監 月島拓也中将 第16RR装甲師団ライヒスシモカワRR(旧第13RR装甲師団) 師団長 柳川裕也大将兼任 参謀長 月島拓也中将兼任 司令部付隊(太田香奈子大尉) 戦車連隊(ティリア少将) 戦車大隊(ティリア少将兼任) 戦車大隊(ブルーパープル少佐) 戦車大隊(青村早紀少佐) RR装甲歩兵第1大隊(旧LSN師団) RR装甲歩兵第2大隊(旧LSN師団) 歩兵連隊(サラ大佐) 歩兵大隊(相田響子少佐) 歩兵大隊(日吉かおり少佐) 歩兵大隊(小出由美子少佐) 砲兵連隊(宮田健太郎大佐) 砲兵大隊(メイフィア少佐) RR第2砲兵大隊(旧LSN師団) 砲兵砲大隊(エリア少佐) 砲兵砲大隊(スフィー少佐) 突撃高射砲大隊(旧LSN師団混成) 後方支援大隊
32 :
傀儡 :02/12/22 17:12 ID:0KR5yq5M
第17RR装甲師団ゲッツ・フォン・リネット(旧第2RR装甲師団) 師団長旧ダス・リーフ師団長 戦車連隊 戦車大隊 戦車大隊 戦車大隊 RR装甲歩兵第3大隊(旧LSN師団) 歩兵連隊(サラ大佐) 歩兵大隊(相田響子少佐) 歩兵大隊(日吉かおり少佐) 歩兵大隊(小出由美子少佐) 砲兵連隊(宮田健太郎大佐) 砲兵大隊 RR第3砲兵大隊(旧LSN師団) ロケット砲大隊(スフィー少佐) 突撃高射砲大隊(旧LSN師団混成) 後方支援大隊 RR月姫装甲戦闘団(カルラ戦闘団) 連隊長カルラ中佐 副連隊長カミュ中佐 戦闘団本部中隊(第9師団独立歩兵大隊強行偵察中隊) RR第1戦車連隊(旧LSN師団) RR月姫第1義勇擲弾兵大隊(月姫義勇兵) RR月姫第2義勇擲弾兵大隊(月姫義勇兵) RR第1砲兵大隊(旧LSN師団) 突撃高射砲大隊 (旧LSN師団混成) RR第1装甲工兵大隊第1中隊(旧LSN師団) RR第1後方支援大隊(旧LSN師団) 航空小隊(第9航空団爆撃航空隊第1小隊)
33 :
鮫牙 :02/12/22 17:15 ID:0KR5yq5M
下げ忘れ、スマソ。
34 :
鮫牙 :02/12/22 17:29 ID:0KR5yq5M
第17装甲師団の編成間違えてますた。 正しくは 第17RR装甲師団ゲッツ・フォン・リネット(旧第2RR装甲師団) 師団長旧ダス・リーフ師団長 戦車連隊 戦車大隊 戦車大隊 戦車大隊 RR装甲歩兵第3大隊(旧LSN師団) 歩兵連隊 歩兵大隊 歩兵大隊 歩兵大隊 砲兵連隊 砲兵大隊 RR第3砲兵大隊(旧LSN師団) ロケット砲大隊 突撃高射砲大隊(旧LSN師団混成) 後方支援大隊 です。
大勢に影響ない話なんだが、tacticsは「タクティス」じゃなく「タクティクス」なんじゃないか? と保守がてら野暮を言ってみる。
36 :
アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 05:22 ID:eI292REV
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37 :
アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 07:57 ID:0qzQPh4U
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38 :
アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 08:18 ID:0qzQPh4U
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39 :
アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 11:03 ID:HUpnX5n4
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40 :
アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 11:19 ID:eI292REV
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41 :
鉄槌 :02/12/23 11:58 ID:uBnvvkCa
『それで閣下、第一射の目標は?』 「目標は『適当で良い』、だ」 『……はぁ?』 ……いくらなんでもこれは、上官に対する言葉遣いではないだろう。 今頃こちらの精神の平衡を疑うような表情で、一つ年下の部下の顔が思い浮かんだ。 橋本警察准将の整った、しかしどこか軽薄な風貌に軽い怒りが浮かぶ。 「二度も言わせるなよ、こんなこと。いいか、適当で良いんだ。 一応軍事施設を狙うのは当然だが、実際には周辺に落ちさえすればどこでも良いんだと……ああ、ただしAIRシティに関しては、難民キャンプはCEPに入れるなよ」 そう言い捨てる橋本の語気は荒い。 もとより彼ら戦略ロケット旅団の主任務は、敵勢力の都市部へのNBC弾頭搭載弾道弾による攻撃だ。 都市近郊にHEを叩き込むくらい、いちいち反発を覚えていてどうするのだ。 『それは……』 半ば八つ当たり気味の怒りを浴びせられ、部下は怯んだように口ごもった。 当惑気味の部下に気を払う気はないらしく、上官は吐き捨てるように一方的に言葉を続ける。 「俺達の使命は、こっちの手から失われつつあるイニシアチブに対し、中長距離核戦力という切り札を誇示してこれを取り戻すことを試みることだ」 旅団は発射そのものを成功さえさせれば良くあり、その後のことは何が起ころうと一切知ったことではない。 それらは偉大な指導者同志と、苦し紛れのこの計画を思いついたあのむかつく腰巾着野郎が考えればいいことだ――― 脳裏に浮かぶ彼を極めて不愉快な気分にさせる男の顔、それを消し去ろうと橋本は地図と命令書に視線と思考を集中させる。 どうせ、GPSによる誘導や、記憶した地形図からの経路設定により精度の高い誘導が行われる巡航ミサイルとはことなり、弾道弾のCEPは数百、数千メートルの範囲に設定される。 精密攻撃などもとより無理なのだ。 何か施設や陣地を狙っても、NBC弾頭を使用しない限り効果的な打撃は見込めない。 だが、狙っても当たらないなら当たらないなりに、副次的な効果を狙った演出を行うことぐらいは出来る。
42 :
鉄槌 :02/12/23 12:00 ID:uBnvvkCa
迎撃が不可能、とは言わないまでも、非常に困難な兵器による都市部攻撃。 歴史上、その種の恫喝によって国民の戦意が砕かれた例はない。 第三帝国によるロンドン攻撃、湾岸戦争時のイラクによるイスラエル本土攻撃、何れのミサイル攻撃も相手国の戦意を維持もしくは高めはしても、挫くことはついになかった。 しかし、だ。 当然のことだが、常に下葉軍の腕の届く範囲に住んでいるという死の恐怖のを感じないこととは必ずしも同一ではない。 だからこの種の攻撃によって国民全体の戦意が高まる、あるいは維持されるのは、軍が市民を護る、あるいは断固としてその脅威の根源を取り除く意志を示す時に限られる。 現実に、第三帝国によるV1、V2ロケット攻撃が継続された期間、英国空軍は国民の不安を解消するためかなりの戦闘機をV1迎撃に回すことを余儀なくされた。 ワンサイドゲームに終わった湾岸戦争においても、イスラエルはエルサレムやテルアビブに放たれる弾道弾からの防衛に、パトリオットの導入を始め相当な労力を払わされている。 市街戦が終息して間もなく、月姫難民問題やバ鍵っ子問題で揺れるAIRシティ。 外国軍隊による占領から青紫超主席の就任と、民情定まらないことこの上ない空き地の町。 そして『英雄』のRR菌感染疑惑に揺れる、叛乱分子の拠点ロディマス。 これらの地域には現時点で、下葉の直接的な軍事的圧力を受ける地域としてすでに民衆の不安心理は鬱積している。 命中精度の悪い戦略ミサイル(それも通常弾頭)による施設攻撃などというのはひどく効率が悪い。 たかだか数十発のミサイルが直接的な影響を及ぼすようなことはないだろうが、不安心理を破弾界直前まで押し上げる後押しとはなるだろう。 そこからさらに事態が進展するとしたならば、それは顕在化した脅威から軍が国民を護ろうとしなかった時だ――― 「敵の防空兵力が都市防衛に割り振られるなら良し。 より一歩進んで、サイロなり移動式発射台を叩くため無理な攻勢を展開するならなお良し。 都市を、民衆を護る素振りを見せず、現状を維持するならまぁそれはその時。敵国民の動向を見て考えようって事さ」
43 :
鉄槌 :02/12/23 12:00 ID:uBnvvkCa
橋本の口振りは、どこまでも他人事、投げやりのスタンスを崩さない。 やる気のない、怠惰極まるした人間のように見える(そして事実そうである)のは彼の常だったが、特に今回は外見だけでなく熱意というものがさらさらない。 軍人として許容される態度ではないが、彼には彼なりに理由がある。 「……ま、鍵っ子もバカばっかじゃないしな。正葉は触れるまでもないし。 パニックに陥ってくれそうなのは、青紫の空き地の町くらいのもんか……」 そこでは今、青紫と正葉の会談が行われていると聞く。となれば、この攻撃はそうした両者の動向に対する牽制の意味もあるのだろう。 ふと、壁に掛かった葉鍵国の地図に目を遣った。 それが良くない。 地図を眺めるうち、『彼』の顔へと思考が行き当たり、知らず噛みしめた奥歯がぎりと耳障りな音を立てる。 憎々しげに橋本が見つめるその地図に描き込まれた国名は三つだけ、葉鍵国とエロゲ国、そしてエロ同人国の三つだけ、だ。 そこには正統リーフだの(国家としての)空き地の町だのといった巫山戯た国名はどこにも存在しない。 ロディマスは葉鍵国ロディマス州の州都に過ぎないし、空き地の町もまた葉鍵国の一地方都市として記されている。 全ては内戦前、月厨の浸透が激しくなるより以前の状況―――いや、一点違う点がある。 鍵自治州、という自治体の名がそこにない。 変わってそこにあるのは、『鍵総督府』という時代がかった特別行政区の存在だ。 すでに下川首脳部の内部では、内戦勝利の暁には鍵から自治権を剥奪し、しぇんむに直結する総督が任命されて軍事・行政権を掌握することとされていた。 とはいえ内戦の先も見通せない現状だから、その人事はまだ確定していない。 確定していないが、官僚特に内務省、警察畑の人間がその任に当たるだろう事は確実視されていた。 何故かと言えば、行政に通じる人材が、他の派閥にはまるで存在しないからだった。
44 :
鉄槌 :02/12/23 12:01 ID:uBnvvkCa
RR装甲軍系の人脈は、すなわち旧国防軍系、旧高橋・水無月系ということになる。 下川国家元帥にとっては旧敵であり、RR親衛隊が本来期待された機能を果たしているならすぐにも解体したいような存在だった。 その嫌われようは相当なもので、装甲軍の中ではしぇんむ〜の信頼最も篤い、柳川大将やルミラ中将への信頼ですら全幅のものだとは言えない程だ。 もっとも、下川国家元帥が全幅の信頼を置く人間など、存在しないに等しいのだからその点は決定的な問題にはならないとも言える。 しかし彼らはもはやRR親衛隊が国防の主力を担うことが期待できない今、今まで通り祖国の守護を司る装甲軍の欠くことの出来ない中核であり、しかもほとんど政治的なにおいを有さない連中だ。 確かに占領地の軍政には、彼らの果断さとある種の公正さは極めて適任と言える場面もある。 だが治安を重視した一時的な軍政と、行政の全てを持続的に執務する総督とでは訳が違う。とても総督に任じられるとは思えない。 では、RR親衛隊系の人脈はどうだろう? 政治的信頼性、これはすでに皆無である。青紫大佐の離反以来、徹底的に青紫派は粛正されたとはいえ国家元帥の心証はすこぶる悪い。 人材と言うべき面でも、テネレッツァ軍司令官の河田RR中将の他に見るべき人材といえば、せいぜいテネレッツァ軍参謀長の小菅かなめRR中将がいるぐらいのものだ。 河田中将は変節漢で知られ、小菅中将の才能は未だ未知数の面が強い。 こと人格面の問題は、到底下川大将の認証の基準をクリアできるとは考えられなかった。 こうなると残りは民間人か、官僚かのどちらかしかいなくなる。 だが下川体制下においては、行政に才能のある民間人というのはことごとく体制に組み込まれるか、さもなくば粛正されているかなので結局官僚しか選択肢はない。 そして官僚から選ばれるとなれば、最も政治的信頼性が高く治安を中心とした行政全般に精通した内務官僚からの選出は固かった。 その警察官僚の中の最有力候補が、内務尚書でもある久瀬警察中将でないことは間違いない。 彼はすでにあまりに多くの要職を兼任している。これ以上の重要克つ多忙な職務の兼務は物理的に不可能だし、権力を分散・競合させて安定を保つ下葉の政治哲学にも反するものだ。
45 :
鉄槌 :02/12/23 12:03 ID:uBnvvkCa
ならば、久瀬に次ぐ有力な警察官僚は誰になるか? その一人として、現在憲兵総監を務めるユンナ警察准将や、東葉自治州警視総監スオンカス少将らと共に自分の名前が候補に挙がることを、橋本警察准将は強く意識していた。 だからこそ今度の作戦が、人道的な見地などとは遠く離れたところで不愉快なのだ。 鍵自治州市民への戦略ミサイルによる直接攻撃、自分の名前は彼らの記憶にこの行為と共に刻み込まれる。 彼らにとって、自分の名前は疑うことなく憎悪の対象として忘れられることはないだろう。 それが最後、橋本にとっては鍵総督という花道を絶たれたも同然だ。 いかに能力より政治的信頼性に登用の重きを置く下川体制における生え抜きの彼とは言え、任じられれば必ず叛乱を呼び起こすような地位を与えられるとは思えない。 ただでさえ麻枝元帥及び樋上いたる女史を中心とする元勲の処断、鍵自治州解体と続けばただでさえキ印の多い鍵っ子のこと、何をしでかすかわからないのだ。 鍵解放―――下葉の公式見解―――後は断行すべき処置は断行し、その後は極力鍵っ子を刺激しないような政策に務めるはずだった。 橋本は自尊心の強い男だ。野心の強い男だ。 今は久瀬に後れを取っているとはいえ、彼とてこの内務省で、そして下川体制でのより高みを望んでいる。 戦争の勝利を信じて疑わない彼にとって、鍵総督の地位はその未来図のために重要なステップと認識している。 それをみすみすふいにするような命令が、愉快であるはずがなかった。
46 :
鉄槌 :02/12/23 12:04 ID:uBnvvkCa
「……でもま、そのあたりは実際どうでもいいのさ」 胸の中のわだかまりを無理矢理押さえつけ、彼はいつもどおりの浮薄な調子を取り戻す。 「結局のところはどんな結果が生まれたにせよ、しぇんむがそれで腹の虫を治めてくれればそれでいいんだけどな」 『なんつーか、それ……不健康な目的ですねぇ』 「垣本中佐。今の発言の方がちょっとばかり不健康だぜ?」 『あ、いや。失言でありました』 「ま、俺は政治警察じゃないからどうでもいいが。 気を付けろよ、ただでさえロケット旅団には私服の連中が多いんだから」 自分で脅した挙げ句にどうにも恩着せがましい橋本の物言いに、返る詫びの言葉はスンマセンと軽い。 どうやら大真面目に恩を売るつもりであったらしく、それを聞いた橋本は不快げに小さく舌打ちを漏らした。 「いいか、もう一度命令を伝えるぞ。 攻撃目標はものみの丘、AIRシティ、ロディマス、空き地の町、エロゲ国トヨハラ及びアオバダイ。 ロディマス及び空き地の町には前線直協の地対地ロケット旅団のFROG7、AIRシティはアル・フセイン、エロゲの都市はSS4で叩く。 発射数は各都市につき三基ずつ、ただし鍵領は圧力を加える意味でも徹底的に叩く。 ……で、アル・フセインとノドンなんだが、固定式と移動式を併せて何基あったっけな?」 『ニコ連隊四二基、ただしこのうち移動式の十八基は東葉などに遠隔地に展開しており、ものみの丘は射程に収めてません』 無論、それらはエロゲ国南方総督領を睨んだ布陣である。 「そうだったな。ともかく、届くヤツを全部たたき込め。初日はものみの丘、二日目はAIRシティに各一斉射だ」 やっぱり、どう考えても俺の鍵総督への道は絶たれたよな。 命令を再度言葉にして通達し、橋本は諦念と共にその事実を受け入れた。 下川体制が保有するノドンとアル・フセイン(そしてスカッドB/C)の総数が、発射台五三基にミサイル本体が約百五十。 この数は中東のシリアや、旧ソ連から戦略ミサイルの遺産を受け継いだ白ロシア共和国の保有数にほぼ匹敵するものだ。 この攻撃で、一度にその三分の一近くを鍵の主要都市二つに撃ち込もうというのだから、鍵市民の憎しみはそれまで自治州を蹂躙していた装甲軍へのそれを超えて深く激しいものになろう。
47 :
鉄槌 :02/12/23 12:04 ID:uBnvvkCa
ちなみに廉価版短距離弾道弾であるスカッドよりさらに安価(かつ低性能)であるFROG7の発射台は19基。 中距離弾道弾戦力はSS4サンダルが七基、SS20サーベルが五基の計十二基。 大陸間弾道弾としてはSS19ストレトゥ六基があり、これらの核弾頭の保有総数は戦略核と戦術核併せて三十〜五十発と言われている。 これとは別に、空軍のバックファイアや海軍のスラヴァ級、オスカー級等に巡航ミサイル搭載型の戦術核弾頭が若干数配備されていると言うが、これは橋本の管轄外なのでわからない。 何にしても、これらは当然エロゲ国との最終核戦争を想定して準備されたもので、この内戦に用いられることはないはずだ。 ただ、それには外国勢力の介入が、今以上に激化しなければ、との前提がつくが――― 「弾頭は全てHEだ。各都市の詳細な攻撃目標の選別は任せたぜ」 『結局、SS19は使わないので?』 念押しするように告げる橋本に、垣本中佐はこちらも確認口調で問うた。 「バカ、あれはICBMだぞ、高いんだ。 お祭り騒ぎに使い潰すにはもったいない、射程が十分なら単弾頭のSS4で十分だ……と、久瀬中将は言ってたけどな」 本当は、届きさえすればFROGで十分なのだが、あいにくと下葉北部は400万の人口と共に敵の手中にある。 北部総督領に向けられていた戦略ロケット部隊も、大慌てで首都近郊やこのシェンムーズガーデン東郊の戦略ロケット旅団司令部まで撤収してきていた。 おかげで、北部総督領攻撃には簡易なスカッドやFROGなどより格段に値段の張るIRBMを使用せざるを得ない。 これももったいない話だ、と橋本は渋い顔をする。 『まぁ、確かに大々的な戦果を求める攻撃ではありませんが……』 「求めても拙いっつーの。適度に市民どもが怯えりゃそれでいいんだ。 っつうかな、そこらは俺らの考える事じゃねーよ」 『そりゃま、確かに』 これは橋本が正論である。 すでに総督への妄執は吹っ切ったらしく、割り切った橋本の言葉に部下も異を唱えない。 もっとも異を唱えたところで決定は覆らいばかりか、垣本中佐自身の身体と地位が回避不能の危険にさらされるだけのこと。 下葉の国民なら誰もがそれを知っているから、好んで自殺行為に挑むことがあるはずもないのだが。
48 :
鉄槌 :02/12/23 12:05 ID:uBnvvkCa
そう言えば、垣本中佐は来栖川綾香が好きなんだったな。 ふと、どうでも良いようなことが橋本の脳裏を過ぎる。 空軍の中尾大佐は、鍵の樋上いたるを貰う約束で下川閣下に忠誠を誓ったらしい。 俺はおそらく、総督の地位を得ることは適わない。 だがそれなら、戦後は別の論功行賞があってもいいだろう。 青紫と一緒に空き地の町に逃げ込んだらしい、あの女。長岡志保。 学生時代、何のつもりかは知らないが、藤田少佐とグルになって俺をコケにしたクソむかつくあの売女。 空き地の町を落としたら、国家元帥閣下に申請してあの女を玩具に貰おう。 別にあの程度の女、ルックスなんぞには特に執着はないが、俺をコケにしたのだけは許せない。 じっくり、たっぷり時間を掛けて、徹底的に嬲り倒してやるのも悪くはない。 投げやりな、彼らしいとも言える笑みを口許に浮かべ、橋本は額に垂れた前髪をかき上げた。 「だろ? わかったら、さっさと準備進めるんだ。しぇんむ〜閣下が今頃テラスでお待ちかねだぞ」 下川国家元帥がテラスから心躍るその風景を目にしたのは、これより数時間後のことだった。 <糸冬>
49 :
アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 12:50 ID:HUpnX5n4
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3月29日 連合国統合作戦軍司令部(リッチモンドシティ−) 21:30 空き地の街、城島司大佐より 「ミサイル・サイロ・オープン」(全ての意味でのミサイル攻撃の可能性) を受信 誤報の可能性を含め 極秘に警戒態勢を発信 22:00 連合国戦術センターがミサイル・サイロ・オープンを確認 22:40 対策会議召集 出席率7割(高級将校のみで構成) 23:00 空き地の街に対して警告発信 核攻撃の危険も同時発信 3月30日 1:45 下川帝国に対して何も声明を発表せず (自国領土への核を含むミサイル攻撃は、合法的行動但し、正葉、空き地の街に対しては違法) 万が一の際に報復に核兵器の使用はしない事を確認(里村茜本人拒否) 2:35 空き地の街周辺において行動可能な部隊の確認 3:00 作戦立案開始 4:00 ミサイル発射の可能性濃厚、警戒態勢レベルW発信 5:00 空き地の街周辺海域に輸送船団を確認(武器、車両、救援物資輸送中) 『里村茜』、『空き地の街』の両者出港済を確認し防衛を命令 6:00 輸送船団所属ミサイル駆逐艦2隻迎撃体制 補給艦艇SAM作動 7:00 指揮権を有島少将へ移譲、同時に『遥魔ヶ辻防衛』を受信 9:45 激論の末『遥魔ヶ辻防衛を認可』 その場にいた出席者全員が当初はNOを宣告しかし撤回しYES 10:00 一般市民地下シェルター避難開始、城島隊空き地の街展開完了(対鍵) 11:30 鍵国部隊に対しても地下シェルターへの退避を認可 12:00 月姫部隊、空き地の街防衛隊の予備部隊退避開始 14:00 空き地の街における戦闘部隊は乾戦車大隊、城島隊 4月1日 2:00 下葉東部方面軍より攻撃を受ける。スプール・アンス・クラス及びサクラメント・クラスのシースパローSAM CIWSシステムにより撃退、アルゴル・クラス付近着弾4発、損傷軽微 6:00 最初のハリアーU+3機上空直庵飛行開始 7:00 ナガサキ港へ輸送船団入港 アルゴル・クラス揚陸開始(以後3日間行動不能) 8;00 ミサイル攻撃の可能性濃厚、迎撃戦闘態最終確認 9:00 指揮権が長瀬源次郎少将へ最終委任 10:00 最終的防空体制確立
参加兵力及び作戦計画書 編成:アーレイ・バーグ・クラスミサイル駆逐艦×1 サクラメントクラス補給艦艇(シースパローSAM)×1 アルゴルクラス高速輸送船(スティンガーSAM)×2 スプールアンス・クラス ミサイル駆逐艦×1 迎撃兵装:スタンダードSR−U ブロックW 射程:70-150km 有効射高:25000 迎撃実績:空き地の街付近20kmにおける弾道ミサイルの迎撃において全弾撃墜・撃破(最終命中率55%) 予想される再突入体の数:4−12 (一発辺りの破壊力 200kt−1MT) 予想被害:空き地の街に対するミサイル落下の可能性 36%(連合国による報復攻撃) 遥魔ヶ辻に対するミサイル落下の可能性 100% (鍵国軍集結中) 予想命中率:1斉射 50%(高度20000) (アーレイ・バーグ・クラス1斉射×4 スプールアンス・クラス 1斉射×6) 防空作戦成功率: 優先:空き地の街 56%(空き地の街) 36%(遥魔ヶ辻) 高度二万 備考:作戦開始に最適 60%(空き地の街) 48%(遥魔ヶ辻) 高度一万 備考:二万から迎撃を開始すれば更に成功率は上昇の可能性 76%(空き地の街) 56%(遥魔ヶ辻) 高度五千 備考:地下シェルターの使用前提、地上施設への被害懸念 尚、遥魔ヶ辻の防衛可能範囲は限られている、ミサイル駆逐艦所在地〜150km(最大地点は命中率極低) 当該区域において支援を受けられる味方勢力: 空き地の街所属ハリアーUプラス×12機(予備機含まず)、M107自走砲×16(射程30km) 補足;輸送船団所属艦艇は『タクイティス98作戦』時に残置された補給艦艇(サクラメント・クラス)及び、 ミサイル駆逐艦2隻(正葉による里村茜傀儡疑惑で立ち消えになった供与艦艇) アルゴル・クラスは武器援助の為(M1A2戦車各種ブラッドレイ、パトリオットSAM等満載) サクラメント・クラスには(AIM120、AGM65D等の航空兵器、航空燃料、燃料を満載) (OKなら状況推移+迎撃戦SS等にて予定、対核なのはミサイルを衛星で確認したとしても外見では判断できない為) (特にスカッド系のミサイルは全く判別できない。悪天候の場合は尚)
52 :
アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 16:14 ID:HUpnX5n4
ドラゴンボールZ フジ(関東)で毎週月曜16:30〜放送中!! | ]下ミ─-。、_|_, 。-―テ「 [ l ゝ_,. lミミi=´<_,.`=i=ヲ 、__ノ ヽlミ| 「‐、=ラ7 |ヲ'´ と〜けたこおりのな〜かに〜♪恐竜がい〜たら〜たまのりし〜こ〜みたいね〜
53 :
アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 16:23 ID:HUpnX5n4
ドラゴンボールZ フジ(関東)で毎週月曜16:30〜放送中!! | ]下ミ─-。、_|_, 。-―テ「 [ l ゝ_,. lミミi=´<_,.`=i=ヲ 、__ノ ヽlミ| 「‐、=ラ7 |ヲ'´ と〜けたこおりのな〜かに〜♪恐竜がい〜たら〜たまのりし〜こ〜みたいね〜
と、言うわけで、ミサイル攻撃の段階で策定した案件でふ。
アーレイバーグヤバイだろ、等がありましたら変更可能です。
何でハリアー飛ばすの?と言う疑問は後程(有ればの話ですが)
核ミサイル迎撃にF-14D使ってみたかったけど正統リーフも何処も持ってない(泣
自国に核ミサイル打ち込んでアメリカ動かない小説昔読んだ記憶があったので(w
大げさなのはリアリティーどうかな?とか思ったり。
SSは話を中心にできればと思ってます。ワァァァ〜撃たないで〜
>>35 進言サンクス・・・(汗)
ギャーと叫ぶしかありません。
外国語のカタカナ表記にこだわる無意味さは知ってるけど、 >スプールアンス・クラス ってスプルーアンスかスプルアンスが一般的じゃないですか?
立ち消えになってたとしてもなってなかったとしても過去のSSと矛盾するな… やっぱりダメなんでない?
>>55 旅団長殿
そこがミソですな。
大佐は当初から『空き地の街を守る』と宣言していた所を忘れんで下さい。
『茜に興味を持たず、街を守ると宣言した』その場所がミソですよ。
神隠しがどうであったのか?→ナガサキ港からその日のうちに出て行った場合は?
若い時の肉欲の罪=小説版でいう南条紗江子との関係と言う奴です。
南条紗江子が死んで彷徨っている時に何が起きたのか?
茜との関係が進展しない、しかもそこに現れたのが魅力的な女性であり、茜に対する反発も含んでいたとしたら?
絶望している時に連れて行かれ特殊部隊という環境が打ち込める環境であったら?
そして何で大佐がいつも『緑縞』をつけているか?というところに来るわけです。
ベトナムのシールズがモデルという訳ですがそこがミソです。がっちりと鍛えてしまい
厚着をしたり、アーマーベストを身に纏ったり更にベレー帽なりバンダナなりを巻いてしまったら?
外見は少なくとも誰が誰だか解らなくなるわけです。喋り方も当初は無口が主力でしたし。
性格面もある程度変えてしまえば・・・?
茜自身が気付いたとしても、彼自身が興味を示さなかった場合は?
なら有島との関係はブラフ? 否、大佐自身が空き地の街の防衛と言う事しか見えていなかったら?
有島少将に身を任せても大佐の表情が変わらなかったら?
城島司大佐自身ガ言う『神のお告げで陸軍に来た』部分と『空き地の街を守る』という辺りに以前その場所と何らかの関係があった
と臭わせるわけです。
これなら館山総理もわからんでしょう。名前も普段は大佐というだけでわからないのですから。 記録が抹消されてしまった場合文字通りその人間が誰なのか?また何処の出身なのか?も解りませんし、また外国へ行ってしまえばそれこそわからない。 顧問団特殊部隊=いわゆる米国式装備と訓練をした仏蘭西外人部隊と思ってもよいかもしれません。 だからこそ『帰順工作における過去は問わない、帰順せよ』にも繋がるわけです。 ベトナムのグリーンベレーの宣撫工作(食料援助、医療行為)とタイ国王プミポンの行った共産ゲリラ(大学生が主力だった為未来を担う若者を説得) への『帰順工作』をベースに両者を混ぜてみた訳です。 箇条書きでの説明は誰にでもわかるようにする為。空き地の街戦役において距離30kmからスタートした時の 状況説明と同等であります。 箇条書きの部分全てをSSにしたら洒落にならなくなるのでと思いましたが次があればSSのみで行きます。 そこは申し訳ありませんでした。
ヤッパアウトですか(汗)
>>55 指摘していただくほどに読み返しサンクス
元がネタ書きなので(汗
>>56-57 指摘サンクス、スプールアンスの方向で。
供与が有効であるのなら、長瀬少将自らミサイル巡洋艦に座上+ミサイル駆逐艦+サクラメント+アルゴル2隻
で出陣の方向で。
一度も表記されておらず、正統リーフで巡洋艦が竣工するまで空き地の街の海軍力が一番と表記があったもので。
文字に起して見ますがどうでしょう? (ミサイルサイロ・オープン〜迎撃体制まで)
んがっ、名前入れるの忘れてた。
>>62 は自分です。
>>27 に出てくる司は、描写の時制が不明だったので特に矛盾は感じませんでしたが……
>>59-60 の『司=例の大佐』って設定を今までSS中にあなたが明示、もしくはほかの誰かが明示したこと、
あります?
明示されていないキャラ間の人間関係は、オフィシャルのそれかもしくは常識の範囲内に準じる。
上記を越えた関係にするなら、それを明示する。
そして明示する場合、リレー小説である以上それはSSとしての形態をとる。
……常識じゃありません?
説明もなくいきなり、
>若い時の肉欲の罪=小説版でいう南条紗江子との関係と言う奴です。
>南条紗江子が死んで彷徨っている時に何が起きたのか?
>茜との関係が進展しない、しかもそこに現れたのが魅力的な女性であり、茜に対する反発も含んでいたとしたら?
>絶望している時に連れて行かれ特殊部隊という環境が打ち込める環境であったら?
>そして何で大佐がいつも『緑縞』をつけているか?というところに来るわけです。
こんな設定をSS抜き出持ち出されてきても……
それに以前の『箇条書き』は、一連の空き地の町戦役に挿入される格好でSSの一部と見なせたし、
何より今回のような作中時間が36時間の長期に及ぶようなものじゃなかったです。
SSでは書けない個条書きがいいというのなら、せめて数時間内の出来事の記述にとどめて、
ほかの書き手がその状況を利用しやすいように配慮すべきじゃないですか?
そしてその場合でも、箇条書きは事象の記述のみにとどめ、『司=大佐』などといった事柄はSSで書く、
とした方がいいんじゃありません?
問題なのはあなたの脳内設定ではなく、それをリレー小説に表現する際の作法なんですよ。
上記の設定がSSで書かれていたら、こっちだって文句は言いません。
とりあえずSSにしてもらわんと どういうことになってるのやらさっぱりわからんです。
>>64 OKサ-
文字にする方向で行きます。
初代スレのノリでは行かぬということですな。
確かに表なのは反則ですな。
>>51 の
(OKなら状況推移+迎撃戦SS等にて)
をじつは見て欲しかったのでした(泣
明らかに此方の阿呆だったわけです。
…個人的なお願いですが、
分かりやすい文体で書いて頂けると嬉しいです。
>>66
68 :
顧問担当者 :02/12/23 20:56 ID:zkFUwQOK
>>67 努力します。
予定としては、3月29日の段階から4月1日までを文字に起しております。
∧||∧ ( ⌒ ヽ ∪ ノ ∪∪ ; -━━-
>>66 いや、いくら変更OKと言っても、こう明示されるとほかの書き手を事実上縛ってしまうんですよ。
私だって葉鍵内戦終結へ向けての流れを脳内で持ってますが、
それを書いたら『あくまで私案です』と断ったところで非難轟々でしょ?
とりあえず
>>50-51 の私案はいったんすべて廃棄、
その上で
>>48 の時点に戻って、各書き手とも
>>50-51 の影響を受けずにリスタートでよろしいか?>ALL
∧||∧ ( ⌒ ヽ <賛成です… ∪ ノ ∪∪ ; -━━-
72 :
顧問担当者 :02/12/23 21:09 ID:zkFUwQOK
73 :
顧問担当者 :02/12/23 21:10 ID:zkFUwQOK
>>70 確かに、下川圧勝でその後の展開と言われたら(汗)
ガキの理論に近かったです>自分
3月28日 空き地の街 館山総理に対して若干の失望を受けた感も有るが、それはそうとして、やるべき事は多々残っている。 空き地の街の司令部を出た後、大佐は民間防衛隊の司令官に任命された男と何度か嘆きあった。 但し、一つだけ発見があったことを忘れてはならない。 彼女は外交において恐ろしい威力を発揮するという事であった。 3時間と言う恐ろしく貴重な時間を無駄にしたことに対しての失望と兵器に対する無知に対する 失望は軽い疲労感を起させたが同時に一つだけ発見した事がある。 『館山緑総理は外交戦において最終兵器となりえるかもしれない。』 その理由は、一切の弁明の機会を与えずひたすらに押し捲るといった彼女の戦法は 鍵国の女帝と呼ばれる面々をも震え上がらせるだけの力は無いであろうか? しかも彼女の舌攻撃は確かに理にかなっている部分も多々見られた事も事実であった。 『はっきりしない、解らない。』 それが軍人ならば許されない行為である。 AK突撃銃とM16A2を比べてどちらがよいか解らない、これが軍人ならば大問題以外の何者でもない。 なぜなら軍関係者なら苦笑いをしてAK突撃銃を選択するであろう。 大佐はそれを意識してワザとM16A2を提案したのだ、なぜなら顧問団はM4カービン銃を使用していたのだから、M4カービンと言うのが本当の提案だったのである。 M4カービン銃は銃床がメタルストックであり、フルオートにセミオートといったわかり安いシステムである。 但し銃のメンテナンスは常に行うのが望ましいというM16シリーズ に見られる悪習がそのまま残っている事も忘れてはならない。
逆にAKシリーズは? それこそ放置や無知問題なし、分解簡単、強力で木製銃床も選択できるので格闘戦にも強い傾向があり、 使用する弾薬は初めからホローポイントの如く人体を抉り、 正に人を殺すための設計をしているからである。 両者を比べた場合AKシリーズという答えが多いかもしれない、価格は安く、故障しない、手に入れやすい、 しかし、M4カービン銃も接近戦では内臓をドロドロにする威力を秘めているし、スコープ系の装備も充実している 殴り合いでも合金製ストックであるので木製とも渡り合える能力を秘めている、完全金属製の銃なのだから、顔面を強打すれば骨折は免れないし死を与える事も可能であり、 ナイフと言った武器でも簡単に受け止められるといった所か? 接近戦なんて起きないというかもしれないが、M16シリーズのプラスチック製銃床は壊れやすく信用できないといった声さえも過去の戦争で聞かれるくらいなのだから、接近戦は各地で起きているといわざるを得ない。 本当は総理にそこを指摘してもらってから本題に入るべきであったと今更のように後悔した。 結局のところ連合国から援助として送られてくるM4シリーズが今の所候補に残るだろう。
更に航空機論争では、YAK141、確かにインド海軍が目をつけているが、如何せん空き地の街を守るには役不足である。 ミサイル4発・・・ハリアーUプラスでは6発のアムラームと二発のサイドワインダーを装備していたことを思い浮かべた。 機銃弾も30ミリではあるが150発、ハリアーの25ミリは300発、レーダーの性能に関してはYAK141がMIG29の亡霊、ハリアーUプラスがF/A18Eの亡霊である。 前者は赤外線探査が初めから可能であり、後者はFLIR装置にて行う(内蔵可)更にハリアーはALQシリーズジャミングポットを装備しなければならない欠点がある。 しかし、アムラームAAMはAA12アダーより高性能なのは否めない、なぜなら後者は電子技術に問題がありそうだというのが実情である、但しAA10は侮りがたい性能である。 AIM9MサイドワインダーとAA8アーチャーに関しては似たり寄ったりであり、AA2アートルは論外である。 では地上支援ではどうであろうか? 空対空ミサイルでヒーヒー言っているYAKに対して4トン近くの装備(空対空ミサイル含む)を積載し垂直離着陸をやってのけるハリアーUプラスが優れているとしか言いようが無い。 では、空き地の街に適している航空機は? 片方は西側諸国の戦闘機より優れた探査性能を有し、アフターバーナーも効くが、搭載兵装が不足気味。 さらにMIG、SUシリーズと空戦でき、対地支援も行える機体であるハリアーUプラスではなかろうか? 結局会議は空転し後日ということになる。但し、パトリオット、ブラッドレイは既に発注された。決定された事項がゼロで無かったのがせめてもの救いではなかろうか? 緑の縞を塗りたくったその男は会談の際に見せた明るいイメージとは裏腹に静かな表情をして自分の場所へと戻っていった。 <終>
77 :
顧問担当者 :02/12/23 22:03 ID:zkFUwQOK
・・・というわけでこういうのでは如何でしょうか?
>>74-76 真面目にSSで行きます。
3月29日 空き地の街 森林地帯 連合国特殊作戦群司令部 昼間でも暗い森の中に半地下式に作られた特殊作戦軍基地(性格には建設の際に複合装甲の板をぶち込んだ強固なバンカー)には電波花畑連合国旗が控えめに掲げられていた。 基地の内部はコンクリートの打ちっぱなしの感が強いが彼方此方に粘土の上に描かれた壁画が見られている。 だが説明はそこまでにしよう。 珍しく昨日の事に対する文句を言いながら大佐は簡易ベットから起き上がると戦術情報センターへの通路を歩いていった。 背中には着剣したM4カービン、暑苦しいが頼もしいアーマーベスト(改良したドロンプレートと重ケブラー)、胸ポケットにボールペン一本、 腰にナイフとコルト・ガバメントと呼ばれる『どんな基地外でも一発で突撃を止めることが出来る代物』を腰に下げ、各種手榴弾を吊るしていた。 大佐の日課・・・教練と通信室で自ら衛星探査を行い、パトロール部隊を率いて遥魔ヶ辻方面を監視すること。それの三セットである。 起床後、情報センターと言っても小規模のものであるが、その場所で頭の体操とばかりに衛星探査を行い、その後教練、格闘、射撃、 起床ラッパの変わりに地下で音だけド派手な爆破といった訓練を行い(その日によってメニューが異なる)、 その日訓練に立ち会った部下と共にパトロールを行う。自らを鍛え、また自ら部下を鍛えると言う行為を忘れるな、と彼は前任者の言葉を忘れずに実行する。 自らの目で見、自ら確かめ、自らから率先して行動を起す。 これが鉄則であった。 さらに食事は部下と共に飯を食い、上下に関わらず意見を聞き作戦を立てるその姿は、40と言っても誰も解らないぐらいの慣れが見られた。 大佐の実際の年齢を知るものは居ないし興味が無いというのが現実だろうか? 電波花畑では自分に興味の無い事は無視される傾向がある、正に電波花畑の特徴をそのまま現しているのかもしれない。
此処で大佐の話がでたので特殊部隊の普段の食事光景や訓練といった平時の光景を覗いてみるとしよう。 簡易テーブルに簡易椅子、各々勝手に座りやすい工夫をして雑談に興じる者、常に銃に話し掛けながら飯を食うもの、 真面目にくだらない事(本人達には大問題)を論じ合う者、ゲラゲラと馬鹿見たく笑いつづける者 等種々様々である。 中には上官に対してここぞとばかりに質問を浴びせる者も居るが、大体食事の際は 各々勝手といったほうがよいかもしれない、これだけ見れば若干異常な面はあるが見た目はマトモな人間に見えるかもしれない。 それが本物の基地外と言う奴ではなかろうか? 次に軍事訓練である。 無謀とも思える大柄な男と小柄な男の正面からの殴り合いや、 技が飛び交うカンフー顔負けの死闘、ラバーナイフか本物か確認できない位の文字通りの殺し合いといった本格的なものから、 地下だけでなく空き地の街周囲5キロの広大な更地で市民が見物する中行う大音量の射撃大会 といったジョークに近い物(実は兵器特性や癖といった物を理解する。 (標的も用意され順位も公表される為下位の者は大恥を掻く) 実際に森林地帯での銃撃、ブービートラップ作りや塹壕掘り、砂嚢作り、走り込み、体操といった基礎的な訓練まで行っている。 「空き地の街の陣地の拡張は特殊部隊の訓練に比例」するというジョークが飛び出すくらいの様子である。 実戦はといえば、空き地の街戦役以後、国境パトロールは勿論、遥魔ヶ辻方面の偵察、 下葉守備隊を馬鹿にする等といった事柄から、無料診療所、食料配布という仕事までを全て1中隊で行っている。 空き地の街戦役で若干の戦死者を出したものの、中隊の完全充足は維持されている。
下葉守備隊を馬鹿にするという事は適切ではないかもしれないが、国境付近の下川帝国側守備隊員の銃や弾薬を失敬したり熊が出たと信じ込ませてパニックを起させたりと言ったことである。 大真面目な内容では、一連射撃ち込んで反撃してくる敵の戦力を調べる仕事も存在している。 だがこれらは定期的ではなくその日の指揮官の気分で決定される為、 「窃盗が連続する時や撃ち逃げが多発すると」いった問題も起きており、 『BMP3の大群に追いまわされて国境付近まで逃げ込み175ミリ砲の支援を受けなければならない』 といった笑い話も残っている。だが撃ち逃げはスリルがあるので誰もやめようという奴は居なかった。 しかし、平時の現在では、医療活動が重視されている。何よりも、空き地の街に食料と医薬品を絶やさないこと、 猫でも診療する位糞真面目な医療活動が行われ、輸送船の入港前で食料備蓄が少ない時は 自らの食料を何食わぬ顔をして、 「自分は食べています、腹一杯食べてますからあげます。」といった風である。 後に空腹で笑いながらガムをかむ将兵の姿をみたとか見なかったとか・・・ では話を本題に戻そう、彼等特殊部隊の役割の一つである、空き地の街とは別の独自の衛星探査の話である。 朝目を覚ました大佐はそのまま衛星探査をかける、遥魔ヶ辻、シンキバ、ロディマス、シモカワグラートにNEXTON財団所属オネ港、連合国基地も含まれていた。 NEXTONオネ港に珍しく活気が沸いている様子が映し出されたのを見て大佐は苦笑いを浮かべたがそのまま、戦術目標に探査の目を切り替えていった。 国境、空軍基地、特に空き地の街周辺の軍事施設と遥魔ヶ辻にロディマスやフキフキ港、封鎖されたメビウス・ブルトップも含まれている。 最後に移動目標やミサイル・サイロといった物に至るまで部下の助けを時々受けながらも自分で衛星を操作し衛星写真の専門家と共同で判断を下すといった事を繰り返している。 NEXTONのオネ港には、味方部隊が入港しており、味方軍事基地では発注したパトリオットSAM及び他の陸上兵器の追加分が輸送船を待っている所であった。 海上にはミサイル巡洋艦とミサイル駆逐艦からなる輸送船団がナガサキ港まで後1日の距離を航行している事もわかっていた。 輸送船団は多い時で一ヶ月毎週、少ない時でも2回は必ず寄港している事も付け加えておく。
大佐は満足げに情報センターを出ると一通り訓練をこなし、部下の一人に声をかけ、パトロールへ行くことを示唆した。 今回の目的地は遥魔ヶ辻国境への簡易偵察。ハンビーといった自動車で行くいわば公式な訪問と言う奴だ。森林地帯を抜け、国境付近に来れば苦々しい顔をした乾有彦大隊長に会う事が出来る。 乾隊長は遠野財団軍でも腹を割って話せる人間である。 調子はどうか?現状は?何か出来る事は?たまには酒でも?といった他愛の無い話をする。しかし他愛の無い話から戦況を分析し、去り際に、 鍵を刺激すれば七瀬戦車大隊と戦う羽目になるとか、膠着が続くのであれば、車両を塹壕に入れるべきだ(バルキリーによる爆撃対策)とか、進言して去っていく。 帰りは自らハンドルを握りハンビーを飛ばし空き地の街へ赴き医療活動の視察(自ら執刀することさえある。)し、司令部に帰還した。 その後再び情報センターで衛星探査を行いその日の日程を終えようとした所で大佐の顔が歪んだ。静止衛星に切り替えると更にくだらない状況が映し出されていた 「ミサイル・サイロ・オープンを警告、統合作戦本部、付近の味方部隊・・・そうだ、輸送船団に警告を発しろ。」 命令を出し終えた大佐は今回は長距離パトロールにしなくて良かったという想いで一杯であった。 空き地の街の危機を伝えるのが自らであったことがその理由なのかもしれない。 そして、衛星写真が現像され、さらに詳しく解析が行われる・・・起立式発射台、変テコなトラックの群れ、地面にポッカリ開いた穴・・・ ウンザリするような光景がそこには映し出されていたのだ。 <終>
82 :
顧問担当者 :02/12/24 01:16 ID:g+s+dOX8
というわけで膨大になってしまいましたが、特殊部隊の状況やらミサイル対策の初動の場面です。
83 :
鮫牙 :02/12/24 01:40 ID:/0F74aXJ
重箱の隅をつつくようでアレですが、乾はこの時点で独立装甲連隊の指揮官 になっていた筈ですが…。
84 :
報復 1 :02/12/24 18:42 ID:U3/X7OrT
3月28日1800時 Airシティ中央貨物駅 「ものみの丘からの返信、来ました」 旅団長室へやってきたなつきは、そう言って1枚の紙片を手渡した。 「……」 今日ものみの丘から届いた、東方旅団への転属命令に従い準備のために私物の整理をしていた旅団長は、 黙ってその紙片を受け取る。そこには、以下のように記されていた。 『ものみの丘に飛来せる弾道弾は全て迎撃せり。貴官の逢魔ヶ辻への赴任に支障はなし。 直ちにAirシティを出発せよ。 追伸――出発は今晩中に為せ。29日1200時には逢魔ヶ辻の東方派遣軍司令部へ出頭すべし』 「……うっそくせぇな、おい」 呆れ顔で毒づくと、旅団長はその紙片をくしゃくしゃに丸めた。 「弾道弾の完全迎撃なんて出来るわけないだろうが。まったく、身内に大本営発表かましてどうするよ? そんなに俺を逢魔ヶ辻に追い払いたいかね」 「実際には、どれほどの被害でしょうか?」 「動作不良もあったろうし、いくらかは迎撃できたろうな。けどまあ、8割方が着弾したと 見て良いんじゃないか? もっとも、通常弾頭だから直接被害は深刻なものじゃない」 そう言いつつ、トランクの蓋を閉める旅団長。 「ただまぁ、しぇんむーにはちょっと文句を言ってやりたいな。どううせなら、 ものみの丘じゃなくてトコロザワを叩けば良かったのに。そしたら鍵を簡単に干上がらせられる」
85 :
報復 2 :02/12/24 18:43 ID:U3/X7OrT
内戦勃発に伴い、VA財団が鍵自治州へ物資を送り込む通商路――いわゆる“援鍵ルート”は ひどく限られたものとなっていた。まともに使えるのは、実質2つしかない。 ひとつはねこねこ師団がエロゲ国北方総督領各地からトコロザワへ物資を運び込み、 そこで国策会社である鍵猫交易物流が買い付けて自治州領内へと持ち込む“トコロザワ・ルート”。 港からの全行程を幹線鉄道に頼ることが出来るので効率は良いのだが、ねこねこの連中に 見返り資金をたっぷりと渡さなくてはならないのでコストパフォーマンスが悪い。 しかも師団長の片岡とも中将が『総督府や他軍閥の目もある』などと言を左右にして、 思うように物資を引き渡してくれないのだ。中央情報局では、片岡が物資を小出しにすることにより 自治州側の飢餓感を煽り、見返りの上乗せを企んでいると断定していた。 ちなみにこの片岡のやり口を、後世の史家は『ねこねこ商法』と呼ぶことになるのだが、それはまた別の話。 もうひとつは、葉鍵中央回廊を使う“回廊ルート”。フキフキ港や空き地の町から陸揚げした物資を 逢魔ヶ辻で受け入れ、そこから回廊を通って自治州本土へと運び込む。 しかしこのルートは鉄道が使えず効率が悪い上、月姫ゲリラの襲撃や月姫系労働者の サボタージュに恒常的に悩まされてきた因縁のルートでもある。それでも鍵自治州にとっては 貴重な生命線であり、だからこそ何度も軍を出してここを防衛しようとしたのだ (その割には空き地の町の支配権を事実上放棄するなど、自治州首脳部のやり方は一定していないのだが)。 とにもかくにも、今現在の鍵自治州経済を支えているのは、これらの不安定な2本の援鍵ルートであった。 「自治州経済というのは、結局のところ馬場総裁の財布に頼っている極めて奇形的な経済だ」 机の中に忘れ物がないかどうかチェックしながら、旅団長はなつきに説明を続けた。 「自治州内で完結できる自給自足経済からはほど遠い。ならばVA財団からの物資を 滞りなく流れ込ませることに全力を注がなければならないのに―― 最も使えるルートを押さえていた下葉と、麻枝は戦火を交えてしまった」
86 :
報復 3 :02/12/24 18:44 ID:U3/X7OrT
実際、内戦前の主要援鍵ルートは、下葉各地からアクアプラスシティを通ってAirシティ、 ものみの丘へと到る“下葉ルート”と、ロックブーケやシンキバからけろぴーシティを通って ものみの丘へと到る“東葉ルート”とされていたのだ。しかし内戦勃発により 鍵が正葉陣営に付いたため、このルートは閉鎖されている。 「はっきり言って、鍵は正葉ではなくて下葉に付くべきだった――まぁそれはともかく、 自治州経済の重要拠点は、今や空き地の町とトコロザワになっている。 しかしだ、しぇんむーは空き地の町へはミサイルを撃ち込んだのに、トコロザワには手を付けていない。 その代わりアオバダイとトヨハラに弾道弾を撃ち込んだ」 あらかた忘れ物を探し終えたのだろう、椅子に勢いよく腰を下ろして、旅団長は大きくのびをした。 そんな彼に、なつきが反問する。 「トコロザワまで叩くと、北方総督府が黙っていない――そう考えたんじゃありませんか?」 「莫迦言え。北方総督から三行半を叩き付けられているのは、むしろねこねこ師団の方だ。 AFやWINTERSは叩けて、ねこねこは叩けないなんて道理があるか」 「すると、どういった理由で下川国家元帥は……」 「二つ考えられるな。一つは、援鍵ルートを叩いて経済的動揺を誘うよりも、 直接ものみの丘を叩いて元勲たちを政治的に動揺させたいと考えた場合。 これは、しぇんむーが短期決戦を狙っていると考えるなら納得は出来るが―― それでも援鍵ルートが健在なら麻枝も音を上げるとは思えない」 「では……」 「そうだな、もう一つの可能性……これはあくまで第一弾で、第二弾でトコロザワも叩くとい可能性。 むしろこっちの方が有り得るように思えるんだが――」 そこまで言って、旅団長は苦笑した。 「あるいは、空き地の町を叩いたことで援鍵ルートに打撃を与えたと判断しているのかも知れないな。 まぁあながち間違いじゃない。現地からの報道だと、あそこにもミサイルが何発か落ちて、 そのうち1発は駅を直撃したらしい。もちろん直接的な被害は小さいが、 円滑な流通を阻害するには――」 紅茶すらいむ中佐が入室してきたのは、その時だった。ちなみに彼も、荷物整理の最中だったりする。
87 :
報復 4 :02/12/24 18:44 ID:U3/X7OrT
「一応知らせておこうと思ってな、旅団長。今から赴任するところの隣町――空き地の町で動きがあった」 「ほう……ミサイル攻撃に関連してか?」 「そうだ――」 そこまで言って、紅茶すらいむはやや緊張した面持ちでメモに視線を落とした。 「たった今、館山総理が声明を出した。空き地の町及びロディマスへのミサイル攻撃の報復として、 通常弾頭搭載のSLBMをアクアプラスシティとシモカワグラードに向けて発射、まもなく着弾する――と」 「は? SLBM? 連中、何でそんな代物持って――」 思わず問い返した旅団長だったが――あることに思い当たって低くうなり声を挙げた。 「そうか、あそこには青紫がいたんだったな――“アビスボート”からブチかましたか」
>>84-87 「報復」投下完了です。
>顧問担当者
ついでに言うと、しぇんむーがミサイル発射したのが28日1430時なんだから、
>>78 は28日じゃないとおかしいと思うんだけど……
89 :
顧問担当者 :02/12/24 19:52 ID:2pC14M+N
シマッタ!!>>18に28日って書いてあったな(泣 書き直します(泣 乾連隊長かあらら、アウトだなこりゃ。
正葉国に於いて実施された陸軍整備計画「プライム」。 だがその立案時の規模は、後の改正後の姿を知る者からすれば恐ろしい程に簡素且つ小規模であり、 その骨子は、大幅な軍事力整備に向けた前段階の事前準備的側面が強いものである。 又、都合3段階に分けて実施された当計画初期の規模は、実際に実施された第1段階整備計画よりも 更に小さなものであった事は、当時の国家首脳陣が自国の戦争遂行(経済)能力に対して極めて深刻な 評価を下していた証拠と言える。 余談であるが、この結果から葉鍵国独立戦争時の経緯によって一般には後方軽視の将として見られ がちな高橋元帥が、国家指導者としての適正をも持っていると云う再評価に繋がっている。 (中略) そして、後のに「パンツァー・レーア」の名で知られる第7装甲教導旅団も、この初期案によって 設立された第2教導教育連隊の後身である事は以外と知られていない事実である。 本来、教導隊と教育隊は全くと言って良い程に性格の異なった組織ではあるが、その配された人員の 資質故に、特に第2教導教育連隊として編成された当初には全くと言って良い程に差異は無かった。 何故なら、その人員は人員は、基本的に葉鍵軍軍務経験者で占められていたのだ。 それ故に錬成は編成時より素晴らしい早さで進んでいたが、無論、問題が発生しない訳では無い。 その一例として、当時第2教導教育連隊第3大隊に所属していた曹長A(助教)が大戦終結後に受けた インタビュの一部を抜粋する。
「ええ。驚きましたよ? だって貴方、左右を見回したら葉鍵国防軍でも名を馳せて“鬼軍曹”なんて呼ばれてた連中が揃って たんですから。 真っ新な作業服着込んで「はい。ナニナニであります」とか言ってるんですよ? 正直、悪夢的光景でしたね(笑 「もうお前らが教育する方だろうが!」と、内心、叫びそうになりましたから」 『では大変だったのでは無いですか?』 「ああもう実際、そんなに年期の入っていない助教なんて及び腰で、教官室では彼等が何かの間違いで 下手をうって教育する事になったらどうしようなんて真面目に、そして馬鹿馬鹿しく悩んでいた位い ですから。 ええ? そうですね。 もう何も考えずにハートマン軍曹式にした莫迦も居ましたよ。 只ね? コレ喋ったの私だって判らないんですよね? 言っちゃおうかな」 『ええお願いしますよ』 「ああ、やっぱり言っておこう(笑 教官や助教が便所で泣いてる所を発見されたって事が多く在ったって事は言って起きますよ。 それだけ。 それ以上は身元が割れたらヤヴァイんで勘弁と云う事で(笑」
この様に喜劇的色合いも強いが、当事者達にとっては深刻な事態が多々発生したが、第2教導教育連隊 はその多くを知恵と努力によって乗り越えていった。 旧式化した装備(発足時の装備は、梓戦車大隊の装備改変によって余剰化した戦車、装甲車が主体) しか与えられず、駐屯地に関しても老朽化した建物が大半を占めていたが、所属する誰もが状況に対する 大きな不満を漏らす事は無かった。 不満が無かった訳では無いだろう。 だが、不満よりも熱意が彼らを突き動かしていた。 前述した曹長Aも、インタヴューの内で幾度もその事を告げている。 何故か? 此れは、彼らが葉鍵国独立戦争の経験者であった事で説明が可能である。 葉鍵国独立戦争と下川打倒(正葉国独立)戦争彼らの置かれている状況は極めて良く似ているのだ。 強大な敵。 劣勢な味方。 英雄の指揮の下、凶暴な独裁者を打倒し葉鍵国に自由を取り戻す。 善悪の単純な線分けと、判りやすいキャッチフレーズ。 事、戦意の分野において正葉軍は他軍に些かも劣るものでは無かった。 そう、列強のCM製作会社等と提携した【TYPE-MOON】宣伝部の実施したプロパガンダは、極めて高い 効果を発揮していたのだ。 そしてその影響は正葉領内のみに留まらない。 国際社会の民衆を味方とし月姫、そして正葉国への同情する気運が高まった事で、諸国際企業に対して 鉱山資源その他に対する優先権を認める代償として莫大な支援、そして正葉領内への経済投資を行わせる と云う極めて打算的且つ利己的な契約を大儀-義侠心によるもとだと云うオブラートで包む事すらにも成功 していたのだ。 日米欧企業による積極的投資は脆弱であった正葉国経済の基盤を大いに向上させる事となり、又重工業 能力の向上は、それが限定的なものであっても正葉軍の兵站を劇的に改善する事となった。
だがこの成果はプロパガンダによってのみ達成されたものでは無い。 否、むしろ陰日向に及ぶ大軍閥VA総帥馬場による支援の影響がが極めて大きかった。 この時点で馬場は国際世論の動向を勘案し、自らは影に徹っする形で影響力を行使しており、その結果、 当初は積極関与に対して難色を示していたアメリカ等の列強諸国が各種装備(M-60戦車やM113装甲車と 云った、更新によって余剰化した旧式装備)の格安提供が実現する事となる。 無論そのままで、では無い。 旧式化した装備の改良、戦力化能力には定評のあるイスラエルからの協力(サブラ近代化改修キットは 既に発注済であり、M113に関しても近代化改修が予定されている)すらも取り付けていた。 この他、遠野財団が中心になって交渉を進めていた航空部隊創設に向けての機材調達に対しても劇的 なまでの影響を与えていた 経済的な理由や政治的な問題等から当初は取得までの時間も鑑みて極一部の新鋭機を除き、部隊主力 には第2世代型の老朽機を予定していたものが、ほぼ全ての機材が第3世代型機と相成ったのだ。 尚、様々な面で利益をもたらしている馬場の干渉ではあったが、【TYPE-MOON】と云う組織にとって 一概に好意的に受け取れない側面も在った事をここで記しておく。 (第2教導教育連隊から見た戦争/第一巻より抜粋)
相変わらず時流から少し離れた所のSS書き月姫参謀です。
まぁ兎角、正葉は今だ戦争できる状態では無いと云う事で正面戦争の準備で
「レンドリース」の投下と相成りました(笑
しかしま、弾道弾ですか・・・・・ペトリ配備じゃ間に合わないだろうしなぁ・・・
正葉としてはどう対処するんだろ?(笑
腹案、練り練り
>>89 >顧問担当者殿
一応、現時点で展開しているのはVN旅団第U連隊(長瀬祐介大佐指揮)と
相成ってますのでその方向でお願いします。
乾も居ない訳では無いですが、休養と再編の為に後方へ移動する途中ですので
慌ただしい状況ではあると思います。
95 :
AF書き手 :02/12/24 21:33 ID:+/Q7o4jf
時に確認なんですけど、今のとこ正葉と空き地の街の独立を承認してるのは、国際的に電波お花畑(と、エロゲ国内の親高橋&水無月派・親月姫派軍閥)だけって認識でおっけーでつか?
その認識でいいのではと。 あと考えられる可能性としては、VA財団系くらいですか。
良くて黙認位かと(でないと、重装備等の輸入が出来ませんので) 台湾より立場が少し悪い感じかも(爆
98 :
顧問担当者 :02/12/24 22:18 ID:oA2qCuFn
退屈会議の時間帯にミサイル・サイロ・オープンが出されていなければならない。
・・・空き地の街防空の要たるミサイル駆逐艦が居ない事、高級軍人の殆どがフキフキ港へ鍵と一緒に(泣)
ありゃりゃ超先生空き地の街からSLBMぶっ放しちゃった。
難しい状況だ。
>>95 月姫参謀殿
部隊展開に関しては了解です(汗
フキフキ港〜ロディマス間が120キロキロ以内ならスタンダードSR2で迎撃可能かと進言
ミサイル駆逐艦『里村茜』、強襲揚陸艦『空き地の街』のペアならフキフキ港が防護可能かと進言。
99 :
顧問担当者 :02/12/24 22:19 ID:oA2qCuFn
101 :
鮫牙 :02/12/24 22:21 ID:eLsepssF
列強はグレーで黙認。兵器の国際マーケットに乗り遅れた日本は90式等の 自国兵器の実戦での評価試験と他国へのアピールが出来て喜んでる可能性が。 正式に独立を支持してるのはAF書き手氏の言う勢力のみだと思います。
そっか、こっちの日本には武器輸出三原則無いんだ・・・ 共産国、紛争当事国、その他の国に対しても慎む、やからね。 いくらか調達価格下がってるんかな。
不況脱出のための切り札として兵器輸出を解禁したものの、 その高価さゆえに金があっても武器を調達しにくい 月姫ゲリラにしか買ってもらえなかったんだと思われ。
104 :
鮫牙 :02/12/25 21:43 ID:EV3+MBCM
お陰で葉鍵統合軍(1番質のいいのがノーマルT72だっけ)ノモンハンの 日本軍みたいな目に合った訳だ。
ほs
大仰な装飾が施された机。 綺麗に整頓された椅子達。 暗い照明。 広がる空間。 ――男が一人。 頭を抱えて、机に伏している。 理由は分からないが、どうせ憔悴し切った顔を見られたく無いのだろう。 不意にデジタル音が鳴った。音源は彼の右腕に巻かれた時計だ。 「……そうだ。定時連絡を」 不意に起き上がる。 コップが倒れた。 拡散する液体。 膝にかかる。 冷覚が刺激される。 「……っ、」 立ち上がる。 ポケットのハンカチで濡れた箇所を拭く。 「……くそっ」 「くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、くそぉぉぉぉっ…!」
3月28日 新大陸標準時 9:59 大リーフ湾 正統リーフ/下川リーフ行政管轄区域境界付近 鍵っ子義勇軍特殊部隊MOON.巳間良祐少佐は、もはやルーティン ワークと化した定時連絡に勤しんでいた。 小気味良いキーボード音やクリック音が船室内に響く。 お気に入りではなく主動入力で、あるHPにアクセスした。今回は某企業 のWebページだ。 「……」 膨大な書き込み群を読み流す。 と、何の変鉄も無い文脈の中に、厨房とも電波ともとれる不可解なレス があった。 「……来たか」 まるまる数秒を費やしたが、やはり見間違いでは無いようだ。 『とまぁ、ここまで説明しておいてから言うのも何だけど……これはカ モフラージュよ。あくまでも』 「……?」 『近い内、とある将校が異動になるわ。ま、名前は敢えて挙げないけ ど――今回の作戦はタイミングが重要になるから、それだけは気を付 けて』 「その作戦と言うのは?」 『では、伝えます。半ば凉元君の私案に近いんだけど――』
脳内で指令を反芻した。 IEから本日の履歴を抹消し、念のためにcookieも処分してからPCの電 源を落とす。 それが終わると彼は、こともあろうに手元の銃でPCを撃ち抜いた。更に、本体に強力な電磁石を挟み、仕上げに海中に投棄した。 「うわ。どえらいことするねぇ」 「……もう不必要だから、な」 後ろから陣内の声が聞こえた。 「知ってるか、あれ結構値が張るヤツだぞ?」 「…ま、どうでもいいさ」 実際どうでもよかった。個人的には良心が痛んだが、任務漏洩の危険 性を考えるとそんなことも言ってられない。ちなみに、符号自動変換ソフ トもPCの中だ。 辞令を思い出す。 もし作戦が成功すれば……考えただけでも、吐き気がした。 「……少し急がないとな」 「ん? 何か言ったか?」 「……いや。何でもない」 時間が無い。早く工作員とやらを拾って戻らねばならない。 彼は返事もそこそこに、上陸の準備にとりかかった。
『Purpose maker, Operation excuter.』 投下完了です。いい加減ダラダラしてるのもアレなんで頑張って進めたいです。
3月28日1900時 空き地の町・中央住民会館大会議室 「――以上で会見を終わります」 館山緑総理のマイク越しの言葉が会見場に響いた瞬間、それまでやかましかった記者たちが さらに大声でがなり立て始めた。 「総理! 総理総理! 待ってください総理!」 「館山総理! 結局のところ“アビスボート”は核を搭載しているのですか!?」 「今回の報復はあくまでミサイル攻撃に対するものだとおっしゃいましたが、 それは通常攻撃への対抗に“アビスボート”は使わないと受け取ってよろしいのですか!?」 「報復攻撃第二弾は行うのですか!? 答えてください!」 皆殺気立って、“アビスボート”による下葉への報復攻撃を説明していた館山に追いすがる。 下葉によるミサイル一斉攻撃に、今までほとんど注目されることのなかった一地方勢力が 効果的に反撃した。しかも通常ならば核攻撃に用いる潜水艦発射弾道ミサイルで ――ニュースとしてこれほどインパクトのあるネタはない。下葉国内に取材班を派遣していた 中立国系通信社が、SLBM1発の直撃を運悪く受けた内務省ビルの映像を流したことも、 インパクトの度合いを高めていた。 なんとしてでもニュースバリューのあるコメントを取りたい――そう殺気立つ記者たちに、 しかし館山は黙礼したまま会見場を後にした。 「総理!」 「これだけは答えてください! 核を――核を下葉に向けて発射するのですか? 館山総理!」 追いすがろうとする記者たちと、それを阻止せんとする警備兵 ――会見場は、ちょっとしたパニックに陥っていた。 「……」 会見場の混乱とは無縁の廊下を歩きながら、館山は今回の決断を反芻していた。 確かに下葉の行ったミサイル攻撃、特に弾道ミサイル攻撃というのは効果的だ。 直接的な被害が例え小さくても、それに対する手当だけで膨大な労力を割かれる。
ただ、それはミサイルを撃った方にも当てはまる。特にこの種の攻撃は、 同種の反撃――報復を呼び込みやすい。敵国中枢に弾道ミサイルを撃ち込んだら、 こっちの首都にも弾道ミサイルを喰らった――では全く割に合わないのだ。 それなのに下葉が、というより下川国家元帥が今回の攻撃を強行した理由は、 ただ一つしか存在しない。そう、『敵対陣営には同種の、少なくとも下葉中枢部へ撃ち込める弾道ミサイルが存在しない』 と彼が判断したからだ。 確かに一見、その判断は正しいように見える。今回攻撃を受けた各勢力とも目に見える範囲では、 弾道ミサイル運用能力は全くと言っていいほど持っていない。 前線配備の戦術ミサイルで報復を行う可能性はあるが、それらの射程はせいぜい数十〜数百キロ。 とてもではないが下葉中枢部までは届かない。 下川が、自分が圧倒的優位に立っていると判断したのも無理はない。 問題はただ一つ、“アビスボート”の寝返りに気づいていなかった点だけだ。 そして“アビスボート”のSLBMという存在を下川や下葉首脳部が認識した今、 これ以上の攻撃を行うことはまず不可能となったと考えて良い。 下葉中枢を射程に納めるSLBMに狙われてなお、空き地の町やロディマスに ミサイルの雨を降らせるほど、下川も莫迦ではないはずだ。 しかも館山は声明に続く先刻の記者会見で、核弾頭搭載SLBMが存在するかどうかと言う 記者の質問に、明確には答えなかった。これを聞いた下川が、“アビスボート”の核搭載を 疑うように仕向けたのだ。もし空き地の町へこれ以上ミサイル攻撃を仕掛けたなら、 自暴自棄に陥った館山たちが滅亡覚悟の核攻撃に踏み切るのではないか――そういう疑惑を持たせるように。 下葉にとってやっかいなことは、彼らにはこの状況を打開する有効な手だてがないことだった。 なぜならば下葉には“アビスボート”とSLBMへの有力な対抗策が存在しないのだ。
SLBMは、当然のことながら潜水艦がプラットフォームとなる。そして潜水艦とは、 きわめて隠密性の高い兵器だ。これを探し出して撃沈するのは現在の下葉の海軍力を持ってしても、 非常に困難である。つまり、下葉にはSLBM搭載艦である“アビスボート”を確実に撃沈できる手段が存在しないのだ(あくまでも『確実に』というレベルの話であって、全く不可能と言うことではない)。 そして弾道弾であるSLBMを確実に迎撃できる手段は存在しない。 これらの対策のために、下葉軍は多大な労力を割くことになるだろう。 中枢部の防空体制充実は言うに及ばず、海軍の対潜戦力も大幅に増強しなくてはならない。 そしてそれは、戦場前面への戦力投入量の減少となって、間接的に館山たちを利することとなる。 そういう効果が見込めるからこそ、館山は無理をして青紫に“アビスボート”への命令を出させたのだ。 「さて、これからどう渡っていくか……」 そう呟いて、館山は廊下を足早に歩いた。そしてさらに思考を、今後の鍵や正葉との交渉に巡らせる。 彼女は声明の中で敢えて『空き地の町とロディマスへのミサイル攻撃の報復』と表現した。 そう、わざと『ものみの丘』を除外したのだ。これに、下葉も鍵もすぐに気づくだろう。 空き地の町の安全保障戦略に鍵自治州が含まれていない――という館山の戦略を間違いなく読みとるはずだ。 それに気づいたとき、下葉や鍵はどう判断するか。 下葉は、弾道弾攻撃をかましたのに簡単に報復されたという拭いがたい失点を帳消しにするためにも、 鍵への弾道ミサイル攻撃をより激化させるだろう。それ以外に、下川の威信失墜を回復する手段が存在しないのだ。 一方の鍵自治州は、これ以上の弾道ミサイル攻撃をさけるためにも、空き地の町にすり寄らざるを得ない。 そうなれば――あとは館山の思うつぼだった。鍵自治州が要求している政治犯引き渡し条項を 撤回させるなど容易いだろうし、逆にこちらから難民保護政策を要求することだってできる。 ここに来て彼女は、一気にものみの丘に対する優位を確保したのだ。 これは対正葉交渉においても基本は変わらない。“アビスボート”というカードを切りさえすれば、 たいていの要求は通ってしまう。
そう考えるならば――このタイミングで下川が弾道弾を撃ち込んでくれたことは、 館山にとっては望外の幸運といえた。“アビスボート”の価値をこれ以上ないくらいに 高めてくれたのだから。今回の攻撃がなかったら、“アビスボート”をここまで効果的に 売り込めたかどうか、正直怪しい。 「ありがとう、しぇんむー」 館山の呟いた小声が、誰もいない廊下に微かに木霊していった。 【某新聞3月29日朝刊の見出しより】 空き地の町 下葉に対し弾道ミサイルで報復攻撃 下葉中枢に複数が着弾 内務省ビルに直撃弾 シモカワグラードでは工場地帯に大火災 崩れる下葉の弾道ミサイル優位 内戦戦局の流動化必至 謎の戦略原潜アビスボート 性能・搭載兵器まるで不明 空き地の町は“核”を持つのか? 館山総理明言せず 下葉と空き地の町 弾道ミサイル戦力では互角の存在に アビスボートの秘匿性がカギ
【日本国外務省危険情報より】 葉鍵国(下川リーフ) ● 首都アクアプラスシティ:「退避を勧告します」(引上げ) ●ロイハイト地方・イナ河から100キロの範囲・シモカワグラード以東:「退避を勧告します」(継続) ● その他の地域:「渡航の延期をおすすめします」(引上げ) (20**/03/29) ☆詳細については、下記の内容をよくお読み下さい。 (以下省略)
>115 乙です、旅団長 >114 こういうの好きw
>>98 >顧問担当者殿
夜勤でレス打てない状況で、事態が動いた模様。
申し訳ない。
只、個人的にMDは衛星からのサポートが必須である以上、そして環境構築
に色々と手を打たねばならぬ以上、スタンダードSR2が単品で在っても意味が
無いのでは愚考していますが如何なものか?
現時点ではMAD構築が効果的だと愚考する次第。
>>117 月姫参謀殿
確かに湾岸のイラクスカッド迎撃にも衛星は必須でしたな。(アルフセインVSパトリオット)
顧問団の置き土産であるミサイル駆逐艦×2を使用するのでしたら
空き地の街戦役から時間が経ってますから来栖川のサテライト+スタンダードSAMでも何とかなりそうですね。
何?またご都合主義なという場合は、正統リーフには、確か航空巡洋艦が竣工した筈ですから、ロシアのシステム+スタンダードの連動
(イスラエルル−トでシステム更新等-頑張れ久我峰さん)
それも難しい場合には、、例の列車砲のセリオのシステム+来栖川サテライト+スタンダードSAMでも可能かと。
黒マルチ+艦隊防空が実現している以上問題無いでしょう。
それか、ゴルァ列強頼るなという場合には、
フキフキ港に寄港中の強襲揚陸艦艇『空き地の街』−スプールアンス級ミサイル駆逐艦『里村茜』のセットで迎撃を試みるのもあります。
連合国軍事衛星+強襲揚陸艦の指揮管制+スプールアンスのレーダーシステムの三位一体を取ればギリギリ迎撃できるかと思われます。
衛星からのデータ−を強襲揚陸艦艇で処理してからスプールアンスに『離乳食』として与えて、迎撃ミサイル発射とかもありえそうです。
>>117 続 月姫参謀殿
それか一度落ちたことを認めた上で被害状況を出し、
単品迎撃戦の教訓→サテライトと連動のシステムを事後構築するという話もできます。
単品パトリオットでも迎撃は出来ますから、キワモノスプールアンス単品ならそれよりはマシかも・・・
『迎撃はした』というアクションが重要かと思われますし。
いずれにしろ、高橋総帥、水無月将軍といった面々もいますから効果的迎撃がポンと出てきても違和感が無いかと思われます。
その場にある最良の物で組み立てることも面白いかもしれません。
しかしスタンダードブロックWAが開発中止(一応機能するまで完成した段階で計画中止:2001年12月)ですが、使用しても、
そこは迎撃できる状態で開発中止なので問題無いと思われます。
ただのブロックW連発でも何とかなるかもしれません。
と、いう側面もどうでしょう?と進言します。(汗)
短時間で考えますたため電波入ってます、これ変だぞと思ったら遠慮なく言ってください(泣
空き地の街にパトリオットないこと思い出してサテどうしようと頭捻ってます。長々と失礼しました。
遅レス失礼します。
>>109 後方支援板31殿
無理せず頑張って下さい。
>>115 旅団長殿
お疲れ様です。
SA-12が配備されていると思ってましたからちょっと以外だったり。
>顧問担当殿
私はゴツゴウシュンギクの愛食者ですので、ご都合主義は大賛成ですが(お
既に他の方々が事後対応SSをうpしている手前、
>>119 案で事後構築の方が良い
と思うのですが如何でしょうか?
>『迎撃はした』というアクションが重要かと思われますし。
政治的に危険すぎますからねぇ、看過は・・・
>高橋総帥、水無月将軍といった面々もいますから効果的迎撃がポンと出てきても違和感が無い
つか苦悩の会議萌えとか、そゆう腐った心が沸々と湧いたりも致しますが何か(自爆
ペトリオットは高額ですから、今あるものの有効利用-SLBMによるMAD体制を維持
する事を優先する方が、空き地の街としては重要ではないでしょうか?
SLBMが存続している限り、そして下葉と退治し続けている限り、正葉は空き地を
見捨てる事は出来ないのですから。
政治交渉として、正葉から防空部隊を派遣させるとかも宜しいのでは無いでしょうか。
つか、121をうpして思い出したのですが、正葉にマトモな防空部隊が居なかった 事を・・・・・ ど う す れ ば い い ん だ
正葉でミサイル巡洋艦が竣工するってどのSSに書いてあったっけ?
>>121 月姫参謀殿
意外と、暴落しているかもしれません。PAC-3高価
PAC-2妖しい(湾岸で実証)
>>123 スマソ、東葉でした。
旅団長 作 鉄の浮かべる城 でした。
東葉海軍航空打撃巡洋艦“トゥスクル”就役
間違えました(泣)
ホワイトアルバムがワスプに見えた時点でマズイ(汗)
頭冷やしてきます。
そういえば、二つある『ものみの丘』はどうなったんでしたっけ。 アクアプラスシティ郊外と中央回廊西出口付近のヤツ。
失礼しました。 後者の方で統一したんでしたね…。
3月28日 新大陸標準時 16:25 下川リーフ領内 小高い丘を越え市街地へと続く東営オオサキ線を、長い長い貨物旅客 併合列車が通過している。もし晴天ならば、夕焼けと相まって叙情的な 景色が拝めたのだが、今日は朝からあいにくの空模様だった。 「あー、寒ぃ〜〜〜っくしょぃっ! あ"ー」 「だから、いちいちクシャミするたびにこっち向くなよ」 「仕方ねぇだろ、風邪は移すと治るって言うし」 「何が仕方ねぇんだよ。つーか俺に移そうとするな」 「じゃあアレか? お前は他人様に向かって陣内特性飛沫体液を飛 ばせというのか? 汚ぇなーもー」 「……ただのクシャミにんな呼び名付けんじゃねぇ」
陣内と愉快な中間達(ネーミングは陣内本人。ムチャクチャ不評だった)。 彼らは空き地の町〜シンキバ間に点在する漁港から上陸した後、 大胆にも列車を使って移動していた。巳間は支給された偽造国民 証明カードを携帯していたのでなんら問題はなかったのだが、他の 二人は気付いたら持っていた。写真部分が妙な手触りな辺り怪しさ 炸裂だったが、IDチェックが甘かったのが幸いして何とか乗り込め た。 「あ、剥がれた」 「いや、米粒じゃ無理だろ」 「お前こそ唾なんかで貼ってんじゃねぇかよ。切手か?」 「しょうがないだろ。お前と違って他人様の食料を剥奪するほど飢え ちゃいないわ」 「あーあーまったく。ホント夜明ちんは汚い物が好きねぇ。クシャミと いい唾といい」 「……待て。クシャミはお前だろーが」 「俺はクシャミを発した当人だから汚くないの。むしろ他人のクシャミ を喰らった夜明ちんの方が汚染度1200%(当社比)な訳で」 「訳わかんねぇこと抜かしてんじゃねぇよ!」 「いや、だって事実だし。ねぇ?」 「…………ちょっと、トイレ行ってくる。長いかもしれないから続きは 勝手に進めてくれ」 目の前でクシャミだの唾だの米粒だの言われて気分を害さない人 間がどこに居るのだろうか? ――そんなのこっちが聞きたいくらいだ。 無意識のうちに出たツッコミが実は閂の影響だとも気付かず、巳 間はデッキへと歩き出した。
彼らの乗る車両は、もはや有形文化財に指定されてもおかしくな いほど旧式だった。車両間通路が幌で覆われておらず、代わりに デッキがあるのだ。よく昔の映画でヒロインが主人公と別れる時に 立っているアレである。車両基地で動態保存されていたものを無理 矢理現役復帰させたのだろうか。 そんな事をつらつら考えていると、辺りが暗くなって来た事に気付 いた。太陽が出て無いので分からなかったが、どうやら日没らしい。 朝方から続いていた雨は霧と化して、肌にまとわりついてくるような 感触があった。 途端に肌寒くなってきた。ジャンバーのチャックを閉めて手袋を はめるが、それでもあまり効果が無いので諦めて中に入る事にし た。
もう何回目になるだろうか。 熱を帯びる耳朶を素手で冷やしつつ、彼は陣内達の行動の真意 を考えた。 『お前と同じだ』。 確かそんな事を言っていた。 工作員の脱出を手引きする。 つまり、下葉国内に残留している誰かを連れ出す、のか? だが、誰を? 生命の危険を冒してまでする理由は? それが誰かは予想は付いている。大方例の8×8部隊に関係した人物だろう。だが、何しろ彼らは過去の人間である。事情を知らない のでいかんせん確信が持てなかった。 では、なぜ。 やはり、私情なのだろう。 あれほどの能力を持つ二人だ。加えて元葉鍵国の軍部に所属し ていたのだからそれくらい考えついても不思議ではない。現実的で はないが――
「………………んがっ」 座席に戻ると、陣内はいびきをかいていた。起きている時もうるさ かったが、この男の場合寝ていても同様らしい。 「長かったな。便秘か?」 「…いや」 「……そうか」 会話終了。どうもこの男とは話が続かない。 閂は車窓の方を向いていた。もうすっかり日が落ちたので外の様 子は良く分からない。むしろ車内灯のお陰で鏡代わりになってい た。
「……なんなんだろうな」 「何がだ?」 「いや。この国が、な」 「どうしたんだ、突然?」 「……兄ちゃん。確かに俺は傍から見ればアフォに見えるだろうよ。だ がな、それもこれもみ〜んなコイツが居るせいなんだよ。気付いてく れよ……」 閂は困ったような顔をして陣内の方を向いた。 「ああ、すまない」 「ま、別にどうでもいいんだが」 「で、何がどうしたんだ?」 「いやな。一体何でこの国は戦争してるんだろうって」 「元は一つの平和な国だったのに、か?」 「ああ、兄ちゃんの言いたい事は分かるさ。あの男の、下川の傲慢 が全部悪い」 周りをまったく気にせず、変わらない口調で言った。慌てて回りを 見渡すが――まばらな乗客は全員寝てしまっているようだった。 「だがな。俺は決してそう思わない」
「……どういうことだ?」 「下川の独裁っぷりばかりが矢面に立たされてはいるが、それを止 められなかった俺達にも責任はあるんだよ。高橋にも鷲見にも。麻 枝だって――兄ちゃんの上司にだって、もちろんそうだ。 なまじ能力があるばっかりに下川はトップに立たされた。それだけ の話だ。もし仮に俺がヤツの立場だったとしても、結果は同じだろう な」 「……」 そんな事、考えた事も無かった。 全ての原因はあの国家元帥にあると決め付けていた。ヤツを倒せ ば全てがうまく収まるとも。 「鍵や正葉が下葉を倒したとしようか。――だがもし仮にそうしたと ころで、今の政治体制を見ても高橋や麻枝が第二、第三の下川に なってもおかしくないな。元恩が蔓延る官僚主義の鍵。高橋・水無 月が幅を利かせている正葉。東葉は現状では問題外。誰が次代を 担うんだ?」 「……つまり、お前は」 「馬鹿言え。何で俺らが今現在プーしてると思ってるんだ?」 能力を見誤られただけの理由で粛清されかける。そんな不条理な 経験をした彼らが、下川に恨みを持って居ないわけが無い筈だ。
「結局、何が言いたいんだ?」 「この国は一度滅びるべきなのかもしれない。そういう運命を持って るのかもな」 閂は乾いた笑みを浮かべて外を見やった。窓ガラスが息に曇る。 市街地に入ったようだった。すぐそこまで民家が迫っている。 大同小異、同じような集合住宅でも、生活している人間によって 様々に見えた。 「………………んがっ」 「――ま、どうでもいいさ。別にこの国を変えてやろうって訳でも無 し。 どこか遠い国――エロ同人国でもいいな。そこでのんびり暮らそ うかね」 余生って言うにはまだ早いけどな、付け加えて閂は笑った。 「……一つ聞きたい事がある」 「ん? なんだ?」 「お前達は何でこの国に来た? 何か理由が――」 ――言葉を発している途中に、衝撃が走った。 ――それがミサイルの着弾だと気付いたのは、 少し時間が経ってからだった。
>>128-135 『changes of life.』投下完了です。
下葉内で鉄道を利用する時は国民証明カードなるものが必要らしいとか。
しかし、連続投稿規制に引っ掛かるとはw
3月28日1229時 ロックブーケ駅 肩を彩るモールも煌びやかな軍服は、彼らが前線に立つ兵科の者ではないことを物語る。 かつてまだ戦争が美しかった時代、この煌びやかな兵士達が進軍の先頭に立ち、友軍の士気を鼓舞したものだが流石に今は時代が違った。 彼らは武器を持たない代わり、楽器にて軍務をこなす。 いや、言うなれば楽器が彼らの武器ということになるのかもしれない。 彼らが相手取るのは、何も式典に参列する高官や国民ばかりでない。 他国より来訪した外国要人に最初の歓迎を捧げるのも、彼らの重要な任務なのだ。 他の兵科が武威を以て祖国の威信を保つのと同じく、軍楽隊は衆に優れた楽曲を以て、祖国の面子を施すのである。 ロックブーケ駅のホームに立つのは幾らかの私服組が見えるほか、誰も彼もが軍人ばかり。 この日この時、駅の内部にメディアを除く民間人の立ち入る余地は全くない。 間もなくこの軍人に満ちたホームに滑り込む一本の特別列車、その片方の主である冷徹な人物は、徹底してテロの危険を除去するよう来訪前に東葉警察に下知していたのだった。 間もなく予定時刻。 軍楽隊の指揮者はごく自然に、特に鉄路の先に視線を移すこともなくタクトを握る手を眼前にまで挙げる。 わざわざ視覚で列車の接近を確認するまでもない。 幼い頃より音感を鍛え上げた彼に取り、常人には聞き取れるはずのない距離にある列車の走行音を拾い上げることなど造作もないことなのだ。 そして、今までも数多くの歓迎式典をこなしてきた彼に取り、そんなわずかな音から列車の距離、ホームへの到着時間を算定することももはや慣れきったことだった。 眼前に掲げられてから間もなく、タクトが軽やかにリズムを刻み始める。 それに従い軍楽隊が奏で出すはBland New Heart。 鍵の作曲家の手になるLast regretsと並び、明文化された法規定のない葉鍵国において、事実上の国歌としての扱いを受けている歌である。
参列する将兵の誰ともなく、歌詞が自然と口を衝いて出る。 それは、独立間もないこの国が、未だ雄大で強固であった頃の記憶。 下川と麻枝、そして高橋、その他さまざまな葉鍵の群雄、その国民が抱える矛盾が爆発するより前の時代の名残。 高橋が袂を分かち、麻枝が見切りを付け、そして下川が力づくで己の下に取り戻そうとする崩れ去った栄光だ。 葉鍵の誰しもがその当時を明瞭に思い起こし、懐かしみ、今との落差をその敵対者への憎しみと転化させる。 無論、下川体制の一翼として軍務に服する東葉の一般将兵に取り、その憎しみをぶつけるべき対手は高橋、そして麻枝なのだ。 ホームに滑りこんだ列車の主は、その強固な統一された意思を再確認するためにこの土地を訪れたと言っても過言ではない。 無論、主題は月姫難民の画期的とも言える処遇、その協力を求めるための訪問である。 だが結局のところ、下葉が大きく月姫保護に政策の舵を切るのは鍵と高橋を打倒するための方便に過ぎない。 即ち、これはある種の踏絵でもあるのだった。 東部方面総監部が、下川体制と行動をともにするに当たってどこまでの協力を捧げ、そして忠誠心を示せるのかと言う。 列車が停止した。警察軍の儀杖兵がばらばらと昇降口へと駆け寄り、時を同じくしてBland New Heartの演奏が終わる。 演奏そのものはそこでは終わらず、そのまま次の曲目へと移る。 Last regrets. それがその曲に与えられた名前だった。 直前に彼らの上司から指示されたその曲を演奏する事に、軍楽隊の将兵にはいささか違和感が残るところ。 かつて平和だった時代ならばともかく、今ここで、しかもこの相手にこれを演奏するのか。 あまりにこの場その相手に適し過ぎている曲だけに、それが彼の不興を買った時に起こるだろう問題を考えるとどうにも不安は打ち消すことが出来ないのだ。
しかし、どれほど不安を感じさせる指示であろうと、それは既に下されたのだ。これを拒む事など出来はしない。 来賓の不興を買うのと、東葉自治州警視総監スオンカス警察少将の不興を買う事、いずれが恐ろしいかと問われたなら、全ての東葉警察官がスオンカス少将と応じるだろう。 それは軍楽隊の将兵も同じ事だ。緊張に表情を固く強張らせながらも、彼らに選択肢は最初から一つしか残されていないのだった。 軍楽隊、そして参列する将兵の多くが共有したその懸念は、半ば以上正しかったと言える。 「Achtung!! 内務尚書であり警察軍長官、国家警察長官たる我らの指導者同志、久瀬警察中将に対しぃ、敬礼っ!」 列車の奥より現れて、一斉に敬礼を捧げる将兵に答礼を返す人物―――久瀬内務尚書もまた、防音の施された車内から外部へ解放された事でようやく耳に飛びこんできた曲にわずかに表情を歪めて見せた。 これは皮肉だろうかと、考える。 確かに内戦前、葉鍵国の規則では、式典等で国歌を演奏する際には葉鍵双方の国歌相当の曲を演ずる事と定められていた。 しかしそれは内戦前の規則である。下葉が鍵と全面戦争に突入した今、ほとんど消え失せたような規則である。 (僕の出身を論っているのか―――まぁ、無理もない) 久瀬は鍵の出身である。 鍵出身者でありながら、下川の片腕として鍵市民を弾圧する側に回っている『奸物』である。 この種の反応にはもはや慣れっこだったし、それが自然な反応だと認識する理性も持ち合わせていた。 だからと言って、そうした皮肉を浴びせ掛けられるのが不愉快である事には変りがない。 その不快感は、すぐに東葉の代表として彼を出迎えに現れた一人の将軍によって増幅された。
「遠路をはるばるようこそ、久瀬内務尚書『閣下』」 ハスキーな、性別不祥のその声は、不思議なほどよく通った。 本来の三人称は『彼』と呼ばれるべきであり、しかしながらすでに『彼』であるための根本的な肉体的特徴を喪失し、だからと言って『彼女』であるための要件も根本的に満たしていない一人の警察将官。 東葉自治州の高官たちは、彼の他には誰もいない。 まぁ、そんなもんだろう。 久瀬は唇の端を吊り上げて、久瀬の名が邪悪の代名詞とされる証拠のような笑みを造った。 この時期この人選で、東葉にシェンムーズガーデンの使者などとろくでもない無茶な要求に決まっている。 そう東葉が判断するのも無理はない事だ。 首脳がわざわざ疫病神を歓迎に出てくるはずもない事ぐらい、重々承知している。 胸中に冷ややかな何ごとかを押し隠し、久瀬は極めて自然な様子で彼に手を差し出し、微笑んだ。 「盛大な歓迎感謝するよ、スオンカス警察少将」 <糸冬> いきなり交渉からとゆーのも味気ないので、まずは久瀬ちんのロックブーケ入りから書いてみますた。 さて、交渉妥決までにどれほど周囲が進んでしまう事だろうw
保守?
142 :
名無しさんだよもん :02/12/30 04:42 ID:c5RhLAnW
sate
ソファに背を預けているには大柄な、決して締まったと表現でき無い体躯の男。 笑うような表情を顔に張り付け、だが決して瞳だけは笑っていない。 無表情。 それが正葉国を支える3財閥が一つ遠野財閥最有力分家、久我峰の家長であった。 「上院でも“月姫系住民に対する支援法案”は可決しました。今では、我々の代わりに彼等が正葉国への 支援を熱心に世論に訴えてますよ」 「素晴らしいな」 そう答えたのは、男の正面に座った、鋭利な雰囲気を纏った女性。 鋭利と云うのは少し違うのかもしれない。 只、隙が無いのだ。 眼鏡越しに覗く双眸には、一切の揺るぎが浮かんでいなかった。 「いや有り難いと云うべきか。お陰で私たちの訓練も堂々と出来る様に成ったのだからな」 小首を傾げる壁を見上げた女性。 その視線の先には星条旗が誇らしげに掲げられていた。 二人が居る場所はアメリカ東部に存在する寂れた州空軍基地。 其処が、建設途中の正葉国航空隊訓練施設であった。 無論、アメリカの非公式許可を得てである。 否、のみならず影ながらも全面的な支援を受けていると言っても良いだろう。 基本的に葉鍵空軍出身者や傭兵等と云った経験者を主体としてるパイロット達であったが、それでも 大規模な訓練ノウハウ等で依存していた。 但しこれを別の角度から見た場合、アメリカは正葉国航空隊が米空軍にある程度依存する様に仕向けて いると見えるだろう。 何故ならば正葉国空軍が主力として選んだ機体は、それだけの事をせねばならぬ存在であったのだから。
轟音と共に窓枠が揺れた。 ソニックブーム、超音速飛行による衝撃波。 そして一瞬のタイムラグ。 空を戦闘機が駆け抜けていく。 激しく上昇し、宙返りを打つ。 そしてそのまま背面飛行に。 群青色のカンバスに、艶消しの黒に染められた機体が自在に白い線を刻み込んでいく様が見えた。 「また派手な事をしますな」 「今のがウチのエースチームだよ」 「見事ですな。ファントムから乗り換えたばかりだと云うにもう機体を手足の様に扱いこなしている」 呆れたように呟く久我峰。 対する女性は煙草を吹かしながら、醒めた瞳で久我峰を見る。 「残念だがまだまだだ。機体を操るのではなく、機体に乗せられている状態だからな」 「辛いですな。稀代の航空指揮官殿の評点は」 「陸上よりも容赦が無いからだよ、空と云う奴はな。どれだけ訓練を積んでいても逝く時は一瞬だ。 だからこそ訓練を積まねばならぬ。その一瞬の生存率を高めねばならないからな」 「・・・・ですか」 「そうだ」 傭兵航空指揮官として名を馳せ、その的確すぎる指揮から【人形使い】とすら称えられる女性。 それが蒼崎燈子。 そして久我峰-遠野財団に大佐待遇として雇われる形で、新設される正葉国航空軍司令官に就任する事と なった女性であった。 「しかし凄いな。アレを一個飛行隊分揃えると云うのは。流石は金満だな遠野財団は」 顎で示された先、駐機場には10機近いF-15E【ストライク・イーグル】が整然と並べられていた。
「もう半分の機体ももう直ぐこの基地へと輸送されてくる手筈です。これで第一臨時航空隊は所定の機材 を揃えられる事になりますね」 「だがあれだけでは戦争は出来んぞ。制空隊向けの方はどうなっている?」 「改造は順調です。来週には一号機が訓練用として先行空輸されて来る予定です。なかなか美人に出来 上がりましたよ。これはお土産です」 そう言って久我峰の差し出した写真。 其処には、塗装も無く地金剥き出しのまま各種地上試験を受けているF-15の姿が在った。 否。 それは只のF-15系列機では無かった。 特徴的なエアインテーク付近に設置されたカナード。そして推力偏向ノズルを搭載していた。 一般に、F-15S/MTDと呼ばれている機体であり、本来それは純然たる実験機ではあった。 何故、その様な機体が正式型として正葉国が採用するのか? それは下葉国の装備するSu-27系列機に対して危機感を抱いていた高橋正葉国総帥らの意見(彼ら葉鍵国 建国戦争に携わった軍人達は、制空権の有無がもたらす絶対的な意味を知悉しており、故に他の何よりも 制空権の確保−もしくは敵制空権の奪取阻止を望んでいた)によって、ある程度他の整備計画を犠牲に してでも整備するよう、高い優先順位が与えられていた。 だがそれでも、通常ならばF-15等と云う機体をおいそれと揃えられるものでは無い。 特に、正葉国のような貧乏所帯では。 常識的な判断から、西側第3世代機を装備する事へと予定が変更された時点でF-16A/B型の性能向上型を 装備する事が半ば決定していたのだが、これが土壇場でF-15の性能向上型へと変わった理由には幾つかの 重なり合った結果だった。 先ず最大のものはVA馬場総帥の干渉。 如何に経済的な理由があるとは云え、下葉国空軍主力機と渡り合えない様な機体(F-16系列改造機では、 限定的な制空権確保が限界であると云うのがORの結果だった)を装備されては困る、と言う事が非公式 に高橋総帥の下に届けられ、同時に更なる航空機調達用として融資が追加されたと云う事が一つ。 一つには90式戦車等と同様に自国の持つ軍事技術の実戦に於ける評価試験を目論む日本の都合(正葉国 空軍が装備するF-15S/MTDの母体は、その半分が日本国航空自衛隊の装備していた非MISP型機であった)。
機体容量の少ないF-16系列機を改造するよりも、F-15系列の方が盛り込んで実験できる技術も多いのだ から。 そして日本側への対抗心からアメリカも又、自国技術の実戦実験と宣伝を兼ねて最新鋭機材の廉価供出 を約束した事も大きな理由であった(日米共に、母体は格安提供。改造費のみ実費徴収と相成っていた)。 蒼穹が広がっていた。 空は晴れ上がり、絶好の訓練日和。 そんな中、一機のF-15Eは順調に訓練スケジュールをクリアしていく。 常とは変わらぬ飛行。 だが後席、火器管制官は操縦者の心理状況を把握していた。 故に、訓練スケジュールが一段落した時に尋ねた。「少し荒れてない?」、と。 「そういう訳じゃない」 そう答えたのは何処かしら中性に近い秀麗な貌をしたパイロットだった。 名は両儀式。 一応は大尉の階級に持つ、傭兵時代からの燈子の部下-仲間だった。 「そうかい? でも何時もより少しだけスロットル操作が乱暴だけど?」 「五月蝿いなコクトー。オレだってそんな気分に成るだけだ・・・・・・・数値で出てるのか?」 コクトー。 そう呼ばれた後部座席に座る火器管制官の名は黒桐幹也。 両儀と同様に、蒼崎とは航空傭兵時代からの仲間であり、その頃も式操るF-4Gの後部座席に座っていた。 「数字じゃ誤差範囲だよ。只、これは僕の勘」 「嫌な時に鋭いな」 「長い付き合いだからね・・・・・・・・アレ、残念だった?」
黒桐の云うアレ。 それは下葉によって実施された弾道弾攻撃に対する報復-シェンムーズガーデンへの引ったくり爆撃の 事であった。 或いは報復と言うよりも政治的意図、意思の表明と言うべきかもしれない行動。 無論「徹底抗戦」を、である。 大規模な編隊を組んでの爆撃は不可能ではあるが標的であるシェンムーズガーデン近郊の緻密な地図が あり、更には下葉からの亡命者によってある程度まで防空体制が把握出来ている為に、夜間、極少数機に よるLO-LO-LOミッションで不可能ではない。 特に、F-15Eであれば損傷を受ける事無く帰還する事すらも可能。 それが正葉国臨時航空総監部の判断であった。 蒼崎ら実戦経験豊富な指揮官にとって、正直、総監部の判断は甘すぎるものであったが、政治的側面を 臨席した高橋総帥に言われては拒否しきれるものでは無かった。 一昼夜に及ぶ激論の末に出された結論は、単機による報復爆撃の実施。 但し、蒼崎の激烈な主張によって撃墜された場合には、如何なる手段を使用してもパイロットを絶対に 救出する旨が作戦案には明記されていた。 そしてパイロットの欄には両儀と黒桐の文字があった。 作戦名は「ブルーアイス」。 それが中止された理由は単純。 アビスボートのSLBMによる報復攻撃が実施されたからに他ならない。 「そういう訳じゃない。只、コレを訓練抜きで思いっきり振り回してみたかっただけだ」 「そういうのを残念だって世間では言うんだよ」 「・・・・・・オレ、オマエの一般論、嫌いだ」 少しだけ拗ねた両儀の声に微笑する黒桐。 彼らが戦争の表舞台へと顔を出すのは、今暫し先の事であった。
月姫参謀氏が串規制に引っかかっているため、代理でのアップです。
>>143-147 「空の境界」
修正差分を忘れていました。
>>143 冒頭に追加
「3月29日 10時42分」
>>145 >装備する事が半ば決定していたのだが、これが土壇場でF-15の性能向上型へと変わった理由には幾つかの
>重なり合った結果だった。
↓
>装備する事が半ば決定していたのだが、これが土壇場でF-15の性能向上型へと変わった理由は、幾つかの
>意見や意向が重なり合った結果だった。
3月28日 2200時 エロ同人国月姫民族正規自治区沖20キロ エロ同人国海上警備隊旗艦 改しきしま型ヘリコプター搭載巡視船“ever after”船内 エロ同人国海上警備隊は、月姫勢力の海軍といえる存在である。 隻数こそエロ同人国正規海軍に比べ少ないものの、そのほとんどがT34の主砲を搭載した哨戒艇やら、 黄蜂級ミサイル艇といった小型・旧式で整備も行き届いていない正規軍に比べ、 大型巡視船や海自の最新鋭のはやぶさ型・一号型ミサイル艇を多数保有し、 あぶくま型フリゲート・海自を退役したたかつき型護衛艦と、さらにASW練習艦として 同じく海自の退役艦であるゆうしお型潜水艦を保有する海上警備隊の戦力は、 正規軍をはるかに上回っていた。 そのエロ同人国海上警備隊は、現在猫の手も借りたいほど忙しい状況であった。 下葉の弾道ミサイル攻撃およびアビスボートによる報復攻撃は、 すわ全面核戦争の危機かと全世界の人間を震撼させるものであり、 避難しようとする人々で、港はごった返していた。 「港の方はどうなってる?」 「はっ!港に集まった住民の約60%はすでに乗船を完了、難民国に向けて出航しております。 混乱もだいぶ収まった模様です」 海上警備隊司令を務める芳賀敬太大佐はふぅ、と息をついた。 やれやれ、このばかげた祭りもどうやら収束に向かうようだ。 「ですが司令、本当に核ミサイルなんか降ってくるんですかね。 ファシストどもだって俺らと共倒れになるほど馬鹿じゃないと思うんですが」 「可能性は無いとはいえないさ。潜水艦1隻につめるミサイルの量には限度がある。 何せ自分の首都に巡航ミサイルぶちかますような奴らだしな。もっとも…」 大佐はいったん言葉を切り、苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てた。 「あいつらはそこまで考えてないだろうがな」
月姫民族正規自治区の住民は自分たちのことしか考えていない。 我々が他国で迫害にあえぐ同胞のために行動するたびに、 それは内政干渉だとか軍国主義とか言いがかりをつけてデモを起こす。 それでアンチ月テロリストどものご機嫌が取れるとでも思っているのだろうか? 正規自治区のやつらは争いを拒み続けていれば平和が来ると思っている。 だが、それは違う。どんなに争いを避け続けていても、戦争は起こるときには起こる。 争いを起こすものを叩けなければ、それは繰り返されるのだ。 暴力を振るうものには容赦なくそれ以上の暴力を振るう、 その意志があってこそ平和は守られるというのに、やつらはまったくわかっていない。 その愚かさのあらわれが我々だ。海上警備隊─。我々は軍の名さえ与えられない。 言葉の魔術でアンチや正規軍の機嫌をとろうとする、欺瞞に満ちた名称だった。 「ディス イズ エロ同人国海上警備隊第4警備隊所属 PLH-004 “幻舞” 第三次避難船団、出航する」 「了解した。航路は先ほど説明した通りだ。諸君らの航海の無事を祈る」 「了解。オーバー。ブレイク」 思考を修正し、職務に集中する。至極守りがいの無い民衆ではあるが、同胞には違いない。 いつどこで何があろうと同胞を守る、それが我々の責務なのだ。 「正葉海軍より通信。現在不審船舶を追跡中、まもなくエロ同人国EEZ内に入るとのこと。 正葉の巡視船では追いつけないとのことです」 「よりによってこんな時にか…」 エロ同人国内のアンチ月姫テロリストは、麻薬や武器などの密輸によって活動資金を得たり、 工作員を正葉領内に送り込むためにしばしば漁船を改造した工作船を使用していた。 「“望郷”に現場に急行して不審船の足を止めろと伝えろ。 くれぐれも14.5mm機銃の射程に入らないように念を押してな」 “望郷”は1999年に能登半島で不審船を取り逃がした海上保安庁が、 同じ徹を踏まないために建造した高速巡視船“つるぎ”の同型船である。 その速度は43ノットを超え、高速の不審船であっても捕らえることが可能であった。
3月29日 0100時 「ディス イズ “望郷” 不審船舶を肉眼で確認。これより停船勧告を行う」 「了解」 芳賀大佐は他にこの作戦に、つがる型PLH2隻と1号型ミサイル艇を投入していた。 日本が不審船を捕らえるために動員した兵力と比べると非常に少ないが、 避難船護衛に戦力を割かれている状況ではそれもいたしかたなかった。 「不審船舶に停船する様子は見られません。これより威嚇射撃に移ります。な、なんだ!?」 轟音、そして通信途絶。“望郷”に何かが起こったことは明白だった。 通信士が懸命に呼びかける。 「応答せよ!“望郷”応答せよ!」 「ディス イズ “望郷” 本船は攻撃を受けた!繰り返す、本船は攻撃を受けた!」 CIC内に緊張が走る。普段の工作船の武装では、“望郷”の20ミリをアウトレンジなどできないはず。 “望郷”のクルーは熟練兵ばかりであり、うっかり敵の射程に入るとも思えなかった。 「20ミリの射程外から攻撃を受けた。おそらく対戦車ミサイルによると思われる。 被害は負傷者5、うち重傷2。20ミリ機銃が大破、IFFが故障した」 芳賀大佐は情報を反芻した。対戦車ミサイル! エロ同人国に残置され、アンチ狩りを行っているらっきょ大隊の黒桐鮮花少佐が言っていた。 最近のアンチは正規軍よりいいものを使っている、エロゲ国かどこかが支援しているのだろうと。 工作船の重武装化は予測できないことではなかった。こうなったのは私のミスだ。 これ以上被害を拡大させるわけには行かない。 「ただちに追跡を中止し、帰投せよ。負傷者はSH-60Jで収容する」 「………………了解した」 “望郷”の船長の声も震えている。 目の前に敵を見ながら退却せねばならない、さぞかし無念だろうが、それはこっちも同じだった。 つがる型と1号型はまだ遠くにいる。“望郷”が追跡を中止すれば、不審船を見失ってしまう。 費用対効果など無視して1号型のSSM-1Bをぶち込みたいところだが、 IFFが故障した“望郷”がそばにいてはそれもできない。
「司令…。無念です…」 重苦しい空気が“ever after”のCICに漂う。 「知っているか?葉鍵国ではこんなとき、『どうすればいいんだ』というらしい…。 ど う す れ ば い い ん だ」 芳賀大佐のその言葉に、副官は 「そんなこと言われても…」 と答えるしかなかった。 「前方に船影!!こちらに向かっている!」 “望郷”から新たな通信が入った。 「何だと!」 「あの艦形は…まさか?何であんな船がこんなところに…」 「船長!情報ははっきりと正確に頼む!」 「し、失礼しました!あれはズムワルトです! 不明艦の形状は、DD-21ズムワルトに酷似しています!」 DD-21 ズムワルト─ アメリカが計画していた次世代ステルス駆逐艦─ いまだ世界のどこにも存在しないはずの艦─ 「間違いないのか!?」 「はい!あのステルス艦形は間違いありません!」 なぜそのような艦がこんな海域にいるのか─ ほとんどの士官がそれを理解できない。 その真相を知る芳賀大佐は、自らの興奮を抑えることができなかった。 「キター━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ッ!!!」 不明艦から通信が入ったのは、その叫びとほとんど同時のことであった。 「グッド・イブニング! ディス イズ エロ同人国海上警備隊所属 DDG-001 “メルティブラッド”!」
>150-153 メルブラキター━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ッ!!! ということで投稿してみますた。 ちなみに通信の最初と最後に英語を使うのは海上自衛隊のならわしだそうで。
激しくマテ エロ同人で月姫勢ってそんなに強いのか? 確か、弱体で弾圧受けてるんじゃなかったか? それなのに、独立なんてホザいて下葉にアタック掛けてるのか?
http://www6.plala.or.jp/brigade/support/ss04/599-604.htm >ロディマス地方に対してはエロ同人国の領土拡大といった形で南下を続け、
>葉鍵中央回廊東側出口を窺う地点まで勢力範囲を広げていた。
>特にこの段階で奪った土地――正葉と大葉鍵嶺に挟まれた突出部は、
>月姫民族の実質的な自治領となっている。
>ただしエロ同人国内の主導権争いに敗れてからは、
>この『自治領』も非常に不安定な状態となっている。そしてこれが、
>月姫勢力が正葉と同盟を結び、葉鍵国内に『固有の領土』を求める最大の動機となっていた。
確かにこのあたりの描写と矛盾する。海にもほとんど面してないし。
ただ、「正規自治区」と「実質的な自治領」を別個のものとするなら解決可能だろう。
TYPE-MOON主流派と距離を置きたい穏健派がエロ同人国の体制内部に留まり、
彼らが「正規自治区」を形成するということも十分あり得る。
ただその場合でも、ちょっと正規自治区の海上兵力が強力すぎる気がする。
冷遇されている連中が装備するにしては贅沢すぎるし、
仮に正規自治区ですらこれだけの海上兵力を保有できるなら、
TYPE-MOON本体はこれ以上の海上兵力を保有可能なはず。そしてそれらの艦隊があれば、
このSSの内容に従うなら容易にエロ同人国海軍を圧倒して、同国の港湾を封鎖可能だ。
それはすなわち、同国のシーレーンを完全管制できるということを意味する。
つまり、わざわざ他国へ侵略を行わずとも、エロ同人国を制圧できる。
正葉と組んで固有の領土を、なんて賭をそもそもする必要がない。
正規自治区の海上兵力は、せいぜい巡視艇数隻程度が妥当だと思う。
それにここで海上兵力のインフレを起こすと、
黒マルチ艦隊が最強という今までの設定を崩しかねん。
157 :
154 :02/12/30 22:42 ID:kOznPxxe
たとえば日本が北朝鮮と地続きで、工作員が100万人くらい入り込んでるとしたらどうします? ソウルのごとく、スカッドやら重砲の射程内に東京があってそれらが大量に東京に狙いを定めていて、 しかも東京に人口が集中してるとしたら? そりゃ事を構えたくはないでしょう。失うもののない国は、失うもののある国より怖い。 実際空き地の町に侵攻した時だって、しぇんむーはT72ぐらいしかよこさなかったし。 海上警備隊は月姫勢力の海軍といえる存在であるわけで、 すなわちTYPE-MOONの海上兵力と認識してますが。
158 :
154 :02/12/30 23:12 ID:kOznPxxe
つまるところ、エロ同人国最強の軍事組織であり、同時に同国の公的性格をも持つ勢力としての月姫民族が存在すると。 となると、これはエロ同人国そのものが、葉鍵国解体に乗り出してると解釈されることになるな。 迫害される少数民族の独立の大義、とやらの正体見たりw
×エロ同人国最強の軍事組織であり ○エロ同人国最強の武装集団であり
正統リーフに供与されたミサイル駆逐艦2隻のうちの一隻?
ズムウォルトってDD-X計画に引き継がれて中止になったような。 それにDDGじゃないような・・・(パワープロジェクションまんせー、 な船でっしゃろ?)
いや、問題なのは、月姫側がそれほどまでにエロ同人国最強の武装集団であるのなら、 葉鍵国への浸透などは行わず、むしろエロ同人国の平定に向かうのが自然なんじゃないかって ことなんだけど。 葉鍵国の海上兵力は黒マルチ艦隊を頂点としてかなりのものがある。 一方のエロ同人国の海上兵力は貧弱そのものとの描写。 ならばどちらが与し易い相手か、いうまでもないと思う。 彼らの目的はあくまで「固有の領土」であって、それを獲得できるならどこでもいいんだから、 このSSの設定ならば、そもそも葉鍵国への浸透を行う理由がなくなる。 やはり月姫正規自治区を「エロ同人国最強の武装集団」にしているから変なことになっていると思う。 エロ同人国本体を正規自治区に見合うほど強化するか、 あるいは貧弱な本体に見合うほど正規自治区を弱体化させるかのどっちかじゃないか?
164 :
154 :02/12/31 15:53 ID:K90ASt4+
>>旅団長
私は月姫勢力をエロ同人国の最強武装勢力といった覚えはありませんぞ。
少しくらい海で上回っていたところで陸は1個師団だし(まあ、ゲリラは世界中に散らばっているけど)
空なんか今までなかったし。
とはいえメルブラ来る前でも陸に比べて海があまりにも強いので、そこは修正の必要があると自分でも思います。
多数ってのを3〜4隻づつぐらいにして、あぶくまかたかつき抜けばいいかな?
>>後方支援版の月姫参謀殿
日本兵器使ってて対潜水艦戦が弱いなんて許せない(爆
まあ、正規軍が北の装備ならロメオがあるわけですし…
というか、黒マルチ艦隊は化け物ですよ。
守るべき空母の防空力が半端じゃない上に
>モスクワ級ヘリコプター巡洋艦(改良型)×一隻
>キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦(改良型)×二隻
>スラヴァ級ミサイル巡洋艦(改良型)×五隻
http://www6.plala.or.jp/brigade/support/ss02/711-714.htm こんなものがおまけにくっついてくるわけです。
倒せる可能性が少しでもなければ、ズタボロにされておしまいです。
>多数ってのを3〜4隻づつぐらいにして、あぶくまかたかつき抜けばいいかな? その辺の裁量はお任せするけど、 エロ同人国正規海軍と比べて程良くバランスがとれてれば矛盾がなくていい感じ。 それと黒マルチ艦隊だけど、確かに見かけの戦力は強いけど、 黒マルチに全面的に依存しているという致命的な弱点を抱えている。 そこをうまく突ければ、正葉―鍵同盟の現状戦力でも撃破は可能。 逆に下葉は、その点をどう克服するかが課題。 まあ、その辺は創作テクニック次第だけど。
いや、海で黄蜂級や北の砲艦用いてる国が、 陸や空でいいモノ使ってる道理はないかと>エロ同人 多分、同じ装備体系の田所軍より悪いんじゃないでしょか。 つまり、タリバン並み。 そうであるなら、月の陸における優位も動かんよーな……
168 :
154 :02/12/31 19:11 ID:K90ASt4+
そこは人民の海や弾道ミサイルでカバーかと。 ついでに北にはミグ29があります。
169 :
154 :02/12/31 20:26 ID:K90ASt4+
>隻数こそエロ同人国正規海軍に比べ少ないものの、そのほとんどがT34の主砲を搭載した哨戒艇やら、 >黄蜂級ミサイル艇といった小型・旧式で整備も行き届いていない正規軍に比べ、 >大型巡視船や海自の最新鋭のはやぶさ型・一号型ミサイル艇を多数保有し、 >あぶくま型フリゲート・海自を退役したたかつき型護衛艦と、さらにASW練習艦として >同じく海自の退役艦であるゆうしお型潜水艦を保有する海上警備隊の戦力は、 >正規軍をはるかに上回っていた。 ここをこう変えたいと思いますがよろしいでしょうか? 隻数こそエロ同人国正規海軍に比べはるかに少ないものの、そのほとんどがT34の主砲を搭載した哨戒艇やら、 黄蜂級ミサイル艇といった小型・旧式で整備も行き届いていない正規軍に比べ、 ヘリコプター搭載巡視船を4隻、海自の最新鋭のはやぶさ型・一号型ミサイル艇を3隻ずつ保有し、 海自を退役したたかつき型護衛艦と、さらにASW練習艦として 同じく海自の退役艦であるゆうしお型潜水艦を保有する海上警備隊の戦力は、見劣りするものではなかった。
3月27日深夜、空き地の街司令部、会議室 大きなスクリーンに映されているのは、周辺地図、とミサイル飛行予測経路である。シモカワグラートとアクアプラスシティは勿論、移動式発射機の位置も大体描かれている。 移動式発射機は事前察知に対して強い場所が鉄則である、でなければ先制攻撃(イスラエルの理論)を受け、諸外国にアピールされ、攻撃失敗は勿論諸外国からも蛮行と避難される事になるからである。 大体消される場所、ハリアーUプラスの航続距離(基地外パイロットはカミカゼ攻撃も辞さない)、エアカバ−の薄い地域防空体制の整っていない地域等である。 会議出席者は空き地の街では館山総理、連合国特殊部隊大佐、防衛隊司令官、正統リーフ領からは、米村少将である。 青紫参謀は聞き役としての出演である(軍事音痴を散々言われた。) まず、本来驚くべきことが青紫参謀から発表される。 『電波花畑連合国軍事顧問団がネクストン財団軍所属』である事。 しかしこれは館山総理の一笑に伏された。 「だから何?私だってネクストン財団所属だったでしょ?」 ハイ終了。だれも驚かないし、誰も騒ぎ立てる事はない。 旧リパブリック・タクティクス所属の兵がかつての月姫ゲリラであり、今の自治政府防衛隊であることは既に知られている。 「俺は連合国所属、調べてみな。」 これは特殊部隊大佐。後に判明。 顧問団の人選もネクストン財団所属、旧タクティクス共和国所属、本物の基地外と判明、本物の基地外が存在した時点で 青紫参謀に蹴りが入れられた。 「俺はお前見たく殺戮やら戦争犯罪は犯しちゃいない!」 蹴りを入れたのは米村司令官、アッパーくれたのは蝉丸、モニターの向こうから殺気が伝わってくる・・・ これには、さしもの青紫参謀も閉口した。 『ならアンタは何者だ?RR菌を開発し、デキスギ師団を殺し・・・強化兵を作り上げ・・・』 口には出されなかったが、痛いほどよく解った。 「ショボーン」 うなだれる超先生、しかし思いついたように。 「そ・・それはだね・・・奈須将軍がだね・・・」 超参謀は誤魔化すのが精一杯だった。超先生がノリノリに発言するのは、報復攻撃の決定の時である。
月姫側奈須将軍の爆弾発言は、爆弾発言になり得なかったのである。結局空き地の街の兵器が電波花畑連合国製の兵器であるという事実を消す事は出来ないし。 「里村茜とあの狂人達の戦いの記録は確かに存在したのだから。」 それにこの土地は元々タクティス共和国領であり、久弥将軍派の抵抗地点であったし鍵の防衛ラインでもあった。 すでに何度も戦闘に巻き込まれ住民は驚きもしない。 最初の茶番劇が済むと議題に突入した、防衛すべき施設、場所、住民の避難、攻撃後の対処・・・最初の茶番劇が嘘だったかのように議題は進み命令が発せられる。 館山総理の政治手腕はたいしたものである。ただ、武器に関しては音痴としか言いようがないのは退屈会議で明らかになってしまったが・・・ それでも数日で勉強した成果らしきものは見えていた。 先へ進む前にここで一旦、空き地の街の司令部について話をしよう。 淡白に言えば、プレハブ建築と強化コンクリートと複合装甲に守られた不思議なお家である。 性能的には、燃料気化爆弾を入り口やら通気口やらにぶち込まれても酸欠にならないような工夫(プレハブの密閉力)とNBC防護(プレハブの力)と『糞重たくて貫通力のある大きな誘導爆弾』 が直撃しても貫通できないし何発ぶち込んでも壊れない(複合装甲の力)が宣伝文句である。元がプレハブ建築の応用なので、壊れたらその部分の強化コンクリートを解体して新しいプレハブを足せば完成という便利なモノ である。 ・・・ス−パ−ジョリーやらブラックホークやらその他色々な輸送ヘリを駆使して、空き地の街戦役から今まで拡張されてきたそのお家。 当然、会議室、将校個室、兵士用の居住スペース、司令官執務室、ゲストルームと言った部屋(どれも西洋式の豪華な内装)から、戦術センター、各種レーダー、情報センターといったものまで全てのモジュールがプレハブで作られている。
利点としては、 ・空き地の街の司令部は一部分が壊れてしまってもその場所とそっくりなプレハブをくっつければ幾らでも再生できる。 ・空き地の街が陥落寸前になったとしたら大量のヘリで持っていく事もできる。でもそれは非現実的かもしれない。 ・陥落の可能性が濃厚になった際にプレハブの1個でもいいから正統リーフ領に運んでいってしまえば亡命政権を作る事も出来る。 (なぜなら、空き地の街の司令部だったモノという事実が理屈である。) ・1個でもプレハブを持っていく事が出来れば亡命政権を作る事が出来る。 ・逆に敵に持っていかれてしまったとしても、新しいプレハブを継ぎ足してしまえばソックリ同じ司令部が出来上がってしまう。 面白可笑しいお家である。 あのパトリオットシステムや、SA12ジャイアントがトレーラーや装軌式で運べてしまう現代、逆にプレハブも見直すべきでなかろうか? だが裸の司令部だけポツンと置いておくわけには行かない、司令部には自衛用火器がつきものである。 当時完成していた設備は・・・ TOW2B発射機が16基、40ミリ連装機関砲が6基、12.7ミリ機銃が36基、陸上発射型サイドワインダー4連装発射機2基、パトリオット発射機が4基であった。 後に頭の悪い40ミリ連装機関砲は賢いバルカンファランクスに変更されることになるがそれは一ヶ月後のことである。 空き地の街の司令部の能力は、揚陸艦艇と同等レベルの指揮能力、イージス艦以下の抑止力、パトリオットPAC3よりマシという弾道ミサイル防空システム。 さらに、40ミリ連装機関砲は金喰い虫サージャント・ヨークのシステムでミサイル迎撃が一応可能(撃墜率30%程度で頭が悪い)、パトリオットは衛星と連動できるけど、半固定式だからビルが立っていたりすると射撃に支障が出る。 トレーラーに乗っけないと動かせないから再装填も面倒・・・問題点も含んでいる。 一見すると豪華そうであるが、空き地の街戦役から時間が余りたっていないことを思い出して欲しい。だから直属の野戦重砲は無いし、ヘリポートのHマークが手書き等不完全である部分も多いしパトリオットの絶対数も足りていない。 パトリオット16発でどうやって弾道ミサイル全部打ち落とすんだゴルァ!とまさに叫びたくなる位だった。 では、話を戻すとする。
司令部に備えてある防護火器、レーダー、状況を加味して立てられた迎撃手段は司令部半固定式パトリオット、40ミリ連装機関砲、 サイドワインダー・・・サイドワインダーといわれた時、失笑が起きたが、『熱を発するものなら大体追っかけていく』という事から採用された。 防衛手段は、パトリオット→サイドワインダー→40ミリ対空機関砲の順番で最終的に高度3000メートルまでに4割を撃墜させる事が出来れば良いという結論に落ち着いた。 防衛目標は民間人を優先的に防衛することが決定され、鍵国部隊にも近くのシェルターへ避難する事を勧告、それだけでなく、特殊部隊を配置して街を守ること、動かせない病人の為に特殊部隊が介入する事である。 事後計画も簡単に取りまとめられた。大穴で済んだ場合には直ちに埋め、経済活動を停滞させ無いように努力する事が決められた。 さらに、電波花畑連合国(の友好的基地)へ衛星回線を繋ぎ外交、防衛体制に関する助言、進言を受け、協力体制の確認を行った。 アメリカは自由主義に対する挑戦として支持(せざるをえない。)、フランスはの脅迫に屈服(少女愛好家である与野党大物を情報部が脅迫)、 イギリスは見てみぬふり、ドイツは知らなかったふり。バチカンは寄付攻勢で解決。中国は食事で忙しい。 どうやって外交ルートを確保したのかは誰も解らない、しかし、アメリカは支持するしか無くなったことは事実である。 それでも外交ルートの手配は12時間で全て完了した。 そして、最後の項目であるミサイル攻撃に対する報復・・・ 当初反撃は行わないと決められていた、しかし・・・館山総理がすっと立ち上がり言い切った。 「アビスボートを使用します。SLBMによる下川帝国中枢へ攻撃を行います。」 これに対して真っ先に米村少将が反論した。 「自殺行為だ、SA12ジャイアントが配備されている。その数倍もの仕返しが来る。」
「いいえ、あえて私がSLBMと使ったことに着目してください!」 誰もが驚いた、館山総理が軍事作戦を話していることに。 「電波花畑連合国戦略空軍の1部隊が既にパーシング中距離弾道弾を手配しています。」 連合国側の主張もある程度正しい、核に対する報復に核兵器を用いる事、冷戦時代から騒がれているお話である。 「思い出せ、この街の出身である里村茜が聞いたらどんな顔をするか?」 特殊部隊大佐が一喝する・・・ 「なにッ!それはどういう意味だ?」 「核は何も残さないし、核はいけない。」 冷戦の時に核が使われなかった理由・・・政治的理由だけでなく、ヒロシマ、ナガサキの悲劇の呪縛という側面もあったことを思い出して欲しい。 「確認を取る!」 これは特殊部隊大佐と連合国側高級将校のやり取りである。十分後・・・ 「パーシングミサイルを解除する。・・・大佐の言った通りの結果だった。」 肩を落とす連合国空軍関係者達。 それを尻目にほくそ笑む館山総理。 「ですから、SLBMはどうでしょう?」 「SLBM?核兵器には変わりないだろ!」 やり返す連合国関係者。 「誰が核兵器と言いましたか?言葉のあやですっ!」 その一言で、いままでションボリしていた青紫参謀がニコニコしながら説明を始める。 「それは大丈夫である。なぜなら、連合国からプレゼントをもらっているからだ。」 アビスボートが空き地の街で浮上した際、艦載兵器の一部入れ替えが行われていた。 確かにロシア製兵器と米国式兵器の規格は異なっている。しかしそれを簡単な改造で導入した事を思い出して欲しい。 しかし何で、館山総理がこれを発言できたのか? 政治学の核による対決を勉強したのだろうという話で一段落だった。 なぜなら・・・館山総理は当初本気で核対核を想定していたのだから。苦し紛れの言い訳がたまたま当たったに過ぎない。 「総理、よく気がつかれましたな。実はね、アビスボートに積んであるのは、ロシア式の物だけでなく米国式の通常弾頭のミサイルも積んでいるのだ。」 得意満面な超参謀・・・ 「OK・・・こちらからは作戦立案の補助に専念する。」。 以後住民退避の状況、迎撃体制の確立と言った事が分単位で行われていく・・・
迎撃戦開始前の状況 ・攻撃を受けた場合はSLBMによる反撃、但しミサイル落下と被害状況に応じて発射数は調整。 ・固定式パトリオットの予想撃墜率は45%強、病院の防衛を最優先(移動不可能な患者の生命尊重) ・サイドワインダーで若干着弾点をずらせる可能性がある。スティンガーSAMも実験的に使用 ・スカッド系統の大型ミサイルがそのまま降って来る場合は有効・・・されど撃墜率は25%程度、小さな目標であるMIRVに対しては5%程度 NBC防護、住民の退避が前提、無謀とも思われるが試す価値はある。 ・KHシリーズ対レーダーミサイル対策、どさくさに紛れた地上侵攻阻止の為ハリアーUプラス(4機編隊24時間体制)が上空警戒 (アムラーム4発、サイドワインダー2発、2600ポンド燃料気化爆弾一発) ・SLBMに対してもアメリカは自衛権を認めざるを得ない。
・・・日付がずれていたので書き直しました。 大戦略Wの司令部4の現代版をイメージしてみました。 ベトンコンクリートで固めてありますが、空き地の街戦役から時間経過があまりないので拡張中ですね。 キネティック弾頭とIRシーカーの代わりですな→40mm連装、サイドワインダー 核ミサイルを前提にした迎撃体制であります。 では来年が良い年でありますように。
>>169 それでいいと思う。
>>176 なあ……
そのSSの時刻、青紫も米村も空き地の町から遠く離れた場所にいたんだが、
いったいどうやって空き地の町に残留していた館山の元へ戻ってきたんだ?
それに米村は空き地の町側の人間であって正統リーフ側の人間ではないんだが。
ありゃま新年早々又やりましたか(汗) 蝉丸、岩切に救出された後、米村少将は空き地の街の空軍司令官と認識していましたが? 強襲揚陸艦とモニタリングしていた筈だったのですが、それでもNGだったか(汗) >>正統リーフ領 正統リーフの領土から中継と言う意味でしたが(汗) 正統リーフ領、フキフキ港、強襲揚陸艦『空き地の街』を想定(汗) 正統リーフ領から米村少将、聞き役超先生でも駄目? 緊急事態が発生して連絡が取れなければ最悪ですけどね。 通信手段の一つや2つ持っていて当たり前だと思いますけど? ヘリでも何でもすっ飛ばせば強襲揚陸艦に戻れると思いましたが・・・?
3月29日1326時 旧大陸・エロゲ国首都ソフリン某所 「アクアプラスシティとシモカワグラードに、巡航ミサイルが落ちたそうですね」 挨拶もそこそこに、エロゲ国外務相長谷川よしたか氏はソファに腰を下ろしながら客人に哀しげな顔を向ける。 「住宅地にも着弾があったそうで。ロイハイトとラエートには、AF・月姫による全面ガス攻撃があったとか。 悔やみごとを述べて、マボガニーの机の上に置かれたコップを手に取り、注がれたミネラルウォーターで喉を潤す。 この攻撃を行った卑劣な連中に怒りを覚えるとともに、不幸な民間の犠牲者に哀悼の意を表します」 無論、社交辞令である。 葉鍵国とは極めて関係の悪いエロゲ国の利益代表者である彼に取って、葉鍵国民が同士討ちで何人死のうと知った事ではない。 だからと言って、葉鍵国の利益代表者である客人に面と向かってそうとは言えないから、体裁を取り繕っているだけの話だ。 そう、エロゲ国は―――と言うより、アリスソフト集団軍は体裁を取り繕っている。 葉鍵国、下川体制の存続に重要な関心があると示唆している。 そうしなければならない理由が、彼らには三日前から、つまりこの来訪者が最初に彼のもとを訪れた日から生まれていた。 「しかし……難しくなりましたね。田所はともかく、青紫まで核ミサイル戦力を保有しているとは。 これで、貴方がたの潜在的優位は失われてしまった」 「……結論から申し上げますと、我らの指導者同志はこの程度の恫喝に怯むような人物ではありません」 葉鍵国外務省在エロゲ国大使、川上英嗣氏は穏やかな笑いを浮かべて首を横に振った。
「閣下にはお伝えしておきます。先ほど、本国より連絡がありまして。 我が国は弾道弾の増産体制に移行すると同時に、空き地の街及びアオバダイ、ものみの丘への弾道弾攻撃を強化続行する事と決しました。 また、我が統一された国土の分断解体、奪取を狙う外国勢力に対し、より直接的な行動へ進むべき段階に進んだとの認識も示されております」 「……それは、つまり、あれですか」 穏やかな微笑とともに、川上大使が口にした言葉。 一瞬だったが、長谷川外相は呆けたような顔を彼に向けた。 川上大使が笑顔とともに告げた下葉の報復戦略、そこに誤解しようもない明瞭さで示されたある決意。 胸中に、怯えとも共感とも付かない感情が沸いていた。 「貴国は弾道弾を用いて電波お花畑連合国―――そしてアメリカに、直接攻撃を掛ける意思があると?」 コップの水で示したばかりの唇が、もうかさかさに乾いていた。 あまりにも、馬鹿げた話だった。到底正気とは思えない―――もし、政局がここまでの悪化を示していなかったなら。 だが現実に、ほぼ全面的に膠着状態の続く戦局はともかく、葉鍵内戦を取り巻く政局は悪化の一途を辿っている。 下葉北部において、開戦1週間で百万人を超える虐殺を行ったとされるにも関わらず、国際世論の月姫支持は圧倒的だ。 無論百万人は下葉の公式発表に過ぎず、実数は一ヶ月で十万人前後とされるが、それでも凄まじい民族浄化には違いがない。 そして葉鍵国において月姫の弾圧の主役を担ってきたのは鍵自治州の側である。 ましてや、青紫の空き地の街にはなんらの独立の大義も存在しない。 いきなり気違いが顧問団と称して押し掛けて国土の一部を占領し、彼らは好き勝手やった挙句戦争犯罪者を主席に仕立て、葉鍵の国民ですらない人物を総理に据えて出ていった。 これはもう、歴然とした侵略行為である。
にも関わらず、宣伝戦の立ち遅れもあって国際的には下川体制が月姫弾圧の象徴であるかのごとき認識が広まっていた。 昨日など、あの脳タリンで世界的に有名なアメリカ大統領は、「葉鍵国は最終的に解体される事が望ましい」と記者会見でやらかして、下葉どころか地域の安定を重視するエロゲ国守旧派軍閥の不快感まで買ってしまっている。 葉鍵国の情勢不安定化は、ここにきて(主に列強の干渉のために)新旧エロゲ大陸全土の情勢不安定化へと転化する兆候を見せはじめていた。 下川=悪。 あまりにも短絡した認識である。 だが、それは現実問題として意図的に定着されつつあり、それと同時に葉鍵国の解体も既定の認識となっている。 これを覆すには、下川派が叛乱分子を軍事的に完全に粉砕して武力再統一を完遂するしかないのだが、それも当面は難しいのが実状だ。 叛乱勢力を列強が支援する現状であれば、なおさらのことである。 エロゲ国において下川体制に近い立場にあるアリスソフト集団軍出身の長谷川外相にとって、国家解体の危機にさらされる下川体制の焦りは痛いほどに良くわかる。 「詳細は決しておりませんが、彼の国々が我が国の解体を望む最も憎むべき国家であることは事実です。 行動を起こす場合は、情け容赦なく徹底的に、反撃する間も与えず……となるでしょうな」 焦りがわかるとはいえ、その狂気じみた行動を是認する謂れはなかった、 この暴言を聞いたなら、川上大使の笑みが狂気に冒されてのものだと長谷川外相が勘繰るのも無理はない。 自然、外相の口調も鋭さを増したものになる。 「冷戦も終わったと言うのに、世界に核戦争を起こすつもりなのか、貴国は。 そもそも弾道弾の増産体制は、ソフリン条約の自主規制条項に反するものですよ」 「我が国の生存にとって必要ならば、それもやむを得ぬ事でしょう」
それに、と川上大使は何やら笑みをねっとりとしたものを含んだそれへと変えた。 「閣下。万が一核戦争が引き起こされたところで、大地が灼かれ放射能が宙を覆うのは北米大陸と電波お花畑、新エロゲ大陸全土。 そしてソフリンを初めとする旧大陸の一部です。 心配なさらずとも、アリスソフトには影響は及びませんよ」 「……瀬戸際戦術、ですか。北朝鮮でもあるまいに……」 これは脅しだ。こちらに彼らの要求を呑ませようと言う、交渉戦術だ。 それが判らない長谷川ではない。彼はアリスソフトの熟達した外交担当者であり、それが故に同軍が牛耳るエロゲ国中央政府に送り込まれて国家全体の外務をも掌握するほどの人物なのだ。 だからこそ、悟りたくない事まで悟ってしまう。 これは単なる恫喝ではない。 下川派は本気だ。少なくとも、川上大使はそうなのだろう。 彼らには、正葉や空き地の街の独立を許すつもりなどわずかばかりもない。 国家としての統一を、絶対的に死守するとの決意に満ちている。 むざむざと解体、滅びの道を歩むくらいなら、他の全てを巻き添えにするという意志を隠しもせず、偽ろうともしていない。 ダイナマイトを手にして火をつけろ、と脅すのではなく、彼らはすでに火のついたダイナマイトを手にしてもうすぐ爆発するぞとけたけた笑っているのだ。この連中は。 気圧されるわけにはいかない。 自分を叱咤する。聡明な彼をして、その流暢な舌をからめとりそうになる恐怖心を無理に抑えつける。
(落ち着け。落ち着くんだ、長谷川よしたか外務相。 彼は仮にも、敵国であるエロゲ国に送り込まれてきた葉鍵国の大使だ。愚物ではないはずだ。 愚物ではない以上、彼の狂態はある程度演技であるはずだ……騙されてはいけない。怖れてはいけない) ねめつけるように、川上大使の双眸を見返した。 何もそこからは読み取れない。理性も狂気も情熱も平静も、いっさいの存在が読み取れない。 だが、そうして瞳から全ての感情を消している事こそが理性の存在を示しているのではないだろうか? 彼の瞳には何らの感情もない。波の一欠けらもない。 もし仮に、彼が本当に狂気に冒されているならば。 そこには剥き出しの感情が溢れているはずだった。 精神の制御など、狂人にできるはずがない。その箍が外れたからこそ、彼らは狂人と呼ばれるのだから。 であれば、これは演技だ。その確信が、彼の語調に強さを取り戻させた。 再びコップの水で喉を潤し、彼は川上大使に肩をそびやかして首を傾げて見せる。 「しかしいったい、貴国は我々に何をお望みなのか。ご存知のように、我々は新大陸の情勢に全くと言って良いほど関心がないのですよ」 「はて。閣下は葉鍵国の解体をお望みなのですか? 単なる弱体化ではなく? 我が国が彼らの手により解体されてしまえば、どうなるか……それを最も懸念されておられるのは、閣下方アリスソフト集団軍だと思いましたが」 川上大使は笑顔を全く崩すことなく、小刻みに首を横に振った。 「まぁ、閣下にとって、折角追い出した我々のために、わざわざ労力を割く事を好まれないのは存知ておりますが……」 わざとらしく、テーブル上の紙の束をばらばらと捲る。
それは弾道弾の全面使用が決定された日、久瀬が吉井中佐から受け取り、血相を変えたある機密情報が記された書類だった。 爆弾に近い内容を含んだ、その文書。 それは常に頂点の存在としてその支配権に挑戦を受けるアリスソフトにとって、到底看過できない内容を含んでいた。 これを目にして一驚した長谷川外相は、ソフリン中枢にそのことを伏せたままただちにアリス首脳に状況を報告し、白木元帥から下葉との交渉の全権を付与された。 その後、交渉は全て秘密裏に水面下で進められていた。そうまでして、秘密を保たねばならない理由がそこにあった。 なんとなれば、アリス勢力の圧倒的優勢にあるソフリンにおいてさえ、VA財団の諜報網はそこかしこに張り巡らされているからだ――― 「閣下。先日お渡ししましたこの資料から、今回の内戦が真実誰の策謀によるものなのかおわかりになっていただけるはずです。 そして、葉鍵国の分断、下川体制の崩壊がアリスソフトにとって望ましいものなのかどうかも」 指摘を受けた長谷川外相の表情は苦い。 葉鍵国の分断がエロゲ国に与える影響、それは容易に予測がついた。 即ち、エロゲ国内での各軍閥の分離独立への動きが活発化するだろうと言う可能性だ。 かつて葉鍵が独立を果たした前後―――実のところ、アリスソフトが強大化する葉鍵を疎んじてエロゲ国の枠の外へ飛び出すよう仕向けたあの頃、葉鍵はその強大さ故に周囲の悪意の的であった。 とはいえ、その当時葉鍵がアリスより強大であったかというと、必ずしもそうではない。 葉鍵が強大であると同時に驕慢に過ぎたために、周辺軍閥の憎しみを買い、アリスへ向けられるべき悪意、野心のたぐいが葉鍵に向けられただけの事である。 アリスの首脳部がその事実に行き当たったのは、葉鍵と言うスケープゴートを失ってから後のことであった。 そしてその時には既に、隙あらばアリスの寝首を掻き、エロゲ国の支配権をこの手に握ろうと言う野心家の群れは、その衝動を到底抑えがたいものにまでたかめていたのだ。
今のエロゲ国は以前にも増して群雄割拠、ソフリンも新大陸の南北総督府も全くの飾り物に過ぎない存在に堕している。 実質彼らがエロゲ国として体裁を保っていられるのは、単に支配勢力であるアリスソフトの軍事力に対し異議を唱えるだけの度胸ときっかけがないからに過ぎない。 そしてこの場合、そのきっかけこそが問題であった。 迫害という抽象的な背景、軍事力による政権擁立という規制事実によって容易に国際社会が独立を容認するなら、それがエロゲ国内の微妙な政治バランスにどのような影響を与える事だろう。 長谷川外相には、葉鍵国が解体された後のエロゲ国の姿が容易に想像できた。 つまらぬ情けや野心によって、葉鍵国を解体しようとしている連中は敵だ、そう断言できる。 あのオツムの足りない野心家の群れは、エロゲ大陸全てを魔女の大釜の中に放りこもうとしているのだ。 それでも。それでも、だ。 アリスソフトの利益代表として、彼には最後までより小さなリスクを追求する義務が課せられている。 VAが葉鍵に何事かよからぬ陰謀を巡らしているのは疑う余地がない。 同時に、彼らがアリスソフトの失脚を狙っている事もまた、証拠を必要としない真実であった。 だが、その二つのVAの陰謀がそのまま直接的に繋がっているのかどうか。 VAが共通の敵だからと言って、下葉が共闘に値する存在であるのかどうか。 そして、彼らが持ちこんできたプランが、いかなるリスクを持ちいかなる見かえりをもたらすものであるのか。 長谷川外相は見極めなくてはならない。 エロゲ国ではなく、アリスソフトのために見極めなくてはならない。 その思考が国家首脳の発想として最悪最低、病的とすら言える物である事を自覚しながらも、彼はそれ以上に自身のアイデンティティをアリスに求めていた。 「……昨日に続いての質問になりますが。あれが真実であると言う証拠は?」 「我が国の諜報網を明かせと仰いますか?」
笑顔がようやく崩れ、川上大使は驚いたような表情を作った。 造っただけであって、本当に驚いたわけではない。 それは長谷川外相の立場上当然の質問だったし、もちろん大使も、そして大使に直接司令を下した下川も予期していた問いだった。 予期していた以上、その質問への回答も準備されている。 新たに書類鞄から取り出した、数枚の写真は昨日内務省の第五局が入手したばかりの情報だった。 「信じていただくしかありません……と言いたいところですが、閣下の立場は承知しております。 閣下、これは我が指導者の誠意の証です。場所はメビウス師団及びプルトップ師団支配地域の軍事施設。 恐らく、貴国の南部総督すらまだこの部隊移動はご存知ないでしょう」 手渡され、そこに視線を落とした長谷川の表情が見る間に一段と暗さを増した。 写真に移っているのは、ほとんどがエロゲ国の国章を掲げた兵器の群れだ。 覆い隠すようにシートが掛けられている兵器が多い理由は、そこからわずかに覗く師団章を見れば一目瞭然だ。 川上大使は、ここがメビウスまたはプルトップの軍管区だと言った。 写真の中にはいくつか特徴的な風景が見える。検証すればわかる事だ。こんなところで嘘は言うまい。 ならば―――この写真が手を加えられていないとすれば、何故、VA系のメビウスの駐屯地に、月姫への強烈な支持で知られる千代田連合集団軍ニトロプラス師団の部隊が駐留しているのだ? 何故、アージュ師団のチーフテンが、プルトップ師団のOF40と肩を並べているのだ? 「これは……まさか。いや、そんな」 考えられる事は、一つしかない。 その事実はあまりにも長谷川にとって信じがたいもので、だが一抹の疑問を氷解させるのに十分な代物だった。
これは、VAが南部総督領における傘下軍閥、また正葉・月姫の友好勢力を組織した正葉への救援軍なのだ。 いや、正葉への救援を名目とした、葉鍵国を最後的に解体するためのラストバタリオンなのだ。 そして、その葉鍵国解体の尖兵に立つ人物はもちろん椎原ではない。 久弥ですら、ない。 尖兵はすでに決起している。 葉鍵国に確固たる橋頭堡を築いている。 確固たる橋頭堡を築き、やはり葉鍵国の解体を望む別の勢力を連携を強め、アメリカという後ろ盾を得て葉鍵国政府(下川政府)に圧力を加えつづけている。 そして彼らは大陸外勢力の支持を固めつつある。 彼らがVAの露払いとして動く限りにおいて、その大陸外勢力の支持はVAへの支持としても機能することになるのだ――― 当人がそれを自覚しているかどうか―――自覚しているのだろう。 踊らされていることを自覚した上で、馬場総裁のタクトに振るわれるがままに踊っているのだろう。 そのことを、先に受け取った資料ははっきりと物語っている。 「……信じなくてはならないのか。時期を併せたかのような下川と鍵の衝突、田所派の侵攻。南部総督府での一部軍閥の独断的行動の続発。 いくら葉鍵国、エロ同人国屈指の財閥三つが支援しているとはいえ、湯水のように湧き出す正統リーフの軍資金。 それら全てが密接に結びついているとするなら、それだけの外交力、資金力を持ち合わせている勢力はひとつしかない」 そう、VA以外に存在しない。
いや、他にそれを可能とするだけの勢力と言うなら、アリスソフト集団軍もその実力を有している。 だが、もちろんその策略を巡らしているのはアリスソフトではありえない。 消去法において、全ての糸を裏で操っているのはVA財団しか存在しないのだ。 「……それで、貴国は我々に何を望むのです?」 深く息を胸中に引き込み、それを吐き出して、長谷川外相が沈うつな面持ちを作った。 対する川上大使の顔にもすでに笑みはどこにもない。 膝の上を両手は軽く拳を作り、椅子から身を乗り出すようにして不吉な言葉を囁きかける。 「我々だけでは、世界を灼くと脅すには力不足です。チキンゲームに貴国も乗っていただきたい。 善も悪も曝け出して全ての価値観をぶち壊したその上で、戦争を変質させてしまいましょう」 「戦争を、変質させる……なるほど。 単純化した事実しか受け入れられない連中に、より判り易い別の事実を与えようということですか」 その通りです、と川上大使は破顔した。 再び笑みを取り戻した彼の表情を見据え、こんなろくでもないドクトリンを考え付くのは一体下葉の誰なのだろうと諦観と疑問を抱く。 最初からの政策なのか(少なくとも彼らは田所の報復は予期していたはずだった)、それとも青紫の予想外の反撃に慌てて政策を切り替えたのか。 どちらにしても、このドクトリンの提唱者は呪われてしかるべきだ、長谷川外相は胸中そう断定した。
同時にもう一人、呪われて然るべき人物がいるなと自嘲の笑みが口許に浮かぶ。 白水元帥閣下、お許し下さい。 自分には、下葉の提案に乗るしか打つべき方策を思いつきません。 そして閣下、ご自分をもお呪いください。 我々はすでにVAの術中にはまりつつあります。 葉鍵国の解体を阻止しない限り、彼我の力量差ははっきりと逆転を余儀なくされてしまうでしょう。 閣下、我々の不明がかかる事態を導きました。 その不明を冒した人物には、元帥閣下、あなたご自身も含まれているのです。 この瀬戸際政策がどういう結末を導くか、それはまだわかりません。 我々は、世界を核戦争の大釜に放りこむことになるのかもしれません。 ですが、海外からの干渉を完全に廃絶しない限り、新旧エロゲ大陸の秩序維持は、我々の権益維持は不可能です。 そして今や、海外の帝国主義者の干渉を排除するには、彼らに大火傷を追わせるリスクを明示してやるしか方法はないのです。 全てはルドラサウムの御心のままに―――
☆共同声明☆ ・エロゲ国アリスソフト集団軍は、葉鍵国の国土の永遠の不可分を絶対的に支持する。 ・葉鍵国の統一が保証される限りにおいて、アリスソフト集団軍は如何なる政治体制がその上に君臨しようとこれを承認する。 ・葉鍵国現政府及び、アリスソフト集団軍は、新旧エロゲ大陸諸国に干渉を試みる如何なる大陸外諸国の干渉をも拒絶する。 その上で、葉鍵国現政府及びアリスソフト集団軍は、葉鍵国の分離主義策謀、軍事的冒険主義を試みる外国勢力の存在を強く批判する。 ・また、葉鍵国現政府及びアリスソフト集団軍は、新旧エロゲ大陸におけるいかなる外国軍の存在も是認しない。 その存在が確認された場合は、断固たる決意とともにあらゆる軍事力をもってこれを排除する。 但し、安保理決議を経た国連が承認する軍隊の存在はこれを支持する。 ・今後、両勢力はかかる外部勢力の反動的干渉に対し、あらゆる手段を用いて共同で対処していく事をここに表明する。 エロゲ国最大最強のアリスソフト集団軍が独断で発表した下葉との共同アピールは、エロゲ大陸内外に強烈なインパクトを与える事となる。 その後、エロゲ国でも旧大陸の政権派とされる諸軍閥が後続したこの声明は、特定の何かを名指ししてはいない。 だが、名指しせずとも誰が対象なのかはエロゲ大陸の住民ならば幼稚園児にすら理解できた。 アリス、下葉の有するICBMが電波お花畑はおろか、北米大陸をも射程に治めていると言う事実。 ことアメリカがどこかの分離主義者の正統性を承認するという行為は、そのまま独立が達成されたと換言しても過言ではない。 だからこそ、アメリカへの恫喝と言う無謀な行為に挑戦する事も止むなしとするまでに、葉鍵国下川派、そして潜在的に無数の分離主義者を抱えるエロゲ国主流派は外交的に追い詰められているのだ。 手負いの獣は遠からず手負いとなる事を自覚した獣と手を結び、狩人に叛旗を翻した。 仕掛け罠の檻を力づくで食い破り、自由な外へと飛び出して優位を取り戻そうと獣は足掻く。 エロゲ国新旧大陸、いや全世界の緊張は急速に高まりつつあった――― <糸冬>
台湾とチベットとウイグルが同時に独立するぞー、と叫び出して、
それをアメリカが軍事的に支持した場合、中共はどうでるかなー、とか。
同じく分離主義勢力を多数抱えるロシアの政権が右派政権だった場合、
中共のお祭り騒ぎを眺めてどうでるかなーとか。
そんな感じw
……そして早速修正をば(汗
>>179 >「住宅地にも着弾があったそうで。ロイハイトとラエートには、AF・月姫による全面ガス攻撃があったとか。
> 悔やみごとを述べて、マボガニーの机の上に置かれたコップを手に取り、注がれたミネラルウォーターで喉を潤す。
> この攻撃を行った卑劣な連中に怒りを覚えるとともに、不幸な民間の犠牲者に哀悼の意を表します」
↓
>「住宅地にも着弾があったそうで。ロイハイトとラエートには、AF・月姫による全面ガス攻撃があったとか……」
> 悔やみごとを述べて、マボガニーの机の上に置かれたコップを手に取り、注がれたミネラルウォーターで喉を潤す。
>「この攻撃を行った卑劣な連中に怒りを覚えるとともに、不幸な民間の犠牲者に哀悼の意を表します」
にて(汗
他にもありそーな……
現時点では、葉鍵内戦勃発からどれぐらい経過しているのでしょうか。
>193-194 参謀殿
調査有難うございました・・・流石に空き地の街の司令部まで戻るのは無理ですよ。
会議終ったからひとっとび・・・そしたら何で空き地の街の防空の要であるミサイル駆逐艦まで狩り出してフキフキ港まで行ったのか?
という政治的、軍事的意味も全部台無しになりますし(汗)
次に超参謀をさらにヘコませておきます(笑ありゃま・・・空き地の街−強襲揚陸艦−電波花畑連合国友好基地
の三者衛星中継でしたが・・・
>>170 下から8行目
>蹴りを入れたのは米村司令官、アッパーくれたのは蝉丸、モニターの向こうから殺気が伝わってくる・・・
モニターの向こうと言う時点で超先生と米村少将、蝉丸の三者は自治政府の司令部には少なくとも居ないというニュアンスでした。
説明不足・・・これでアウトならもう一度てゆっくり考えてきます。訂正でOKなら訂正を入れます(泣
迎撃戦立案時の各自の所在
自治政府-空き地の街
館山総理、特殊部隊大佐、防衛隊司令官
正統リーフ領内 強襲揚陸艦-『空き地の街』
青紫参謀、米村少将
会談終了後HH53ヘリ、若しくは複座方ハリアーUで会談場所から強襲揚陸艦に戻るり、揚陸艦艇で会談
連合国友好基地
強襲揚陸艦の欄に蝉丸が消えてる(泣) 無様だな>俺
いつのまに参謀になったんだ俺はw えーと……つまり、 『空き地の町』に帰還した青紫たちと、 司令室にいる舘山総理と、 連合国友好基地との 「衛星中継を使った会議」 って訳ですか。
3月29日1300時 空き地の町 「すこし、見込みがはずれましたか――」 下葉とアリスソフトとの共同声明を伝える速報電文を見つめて、館山は嘆息した。 「ミサイル攻撃が止まったから、もしやとは思ったのですが。核保有を明言しなかったのが、 裏目にでましたね」 現在、新たなミサイル攻撃の兆候は報告されていない。 館山も一時はこれを下川が譲歩した証ととらえていたが、この共同声明は、 この平穏は単に第二弾攻撃に備えての準備段階に入っているだけにすぎない――と主張していた。 館山は、この生声明がブラフかどうか、正直判断が付かなかった。まさか下川が、 核に狙われている可能性があるのにこれ以上の強硬策を採ってくるとは思っていなかったのだ。 だが、下川が態度をエスカレートさせたからには、こちらもそれにつきあう必要がある。 そもそもこの程度で怖じ気づくくらいなら、最初からSLBMをカードとして切ることはしない。 そう――こちらも刀を抜いて下川の喉元に突きつける必要がある。 「青紫に緊急連絡を――“アビスボート”の搭載核の目標をロックオンさせます」 「ほ……本気ですか総理!」 傍らにいた元民間防衛隊長が目を丸くする。 「そんなことしたら、それこそ全面核戦争に……!」 「構いません」 館山は感情を消した表情で、彼の反論を拒絶した。 「どのみち、弾道ミサイルが恒常的に降ってくるようではこの政権は――いや、 この町の存在自体が成り立っていきません。ならば、滅亡覚悟の最後の賭にでるまでです」 「しかし……」
「我々の目的は、あくまでも里村茜が帰還すべき環境を保持し続けること、です。 それが達成できないのならば、この政権を維持する目的は失われます。 そして下葉体制下では、それを達成できる見込みがないばかりか、住民の生存自体が危ぶまれます。 それは、あなたもよくわかっているはずです」 「……はい」 たっぷり十秒間は沈黙した後、彼はこくんと頷いた。 もっとも彼女らは、今下葉と東葉が月姫保護策で協議を行っているという事実を知らない。 もしこの時点で彼女らがそれを知っていたら、空き地の町住民に元月姫ゲリラが多いことを材料に、 下葉との妥協の道を真剣に考慮したかもしれないが―― ふぅ、とため息をついてから、館山は少し疲れた口調で言葉を発した。 「青紫に暗号電。『透過薬を開発せよ』――直ちに発信してください」 そこで、唇をかみしめた館山は、ぽつりとつぶやいた。 「これ以上弾道ミサイルが降ってくるようならば、核ミサイル発射を躊躇しません」 同時刻 強襲揚陸艦“空き地の町” 「『透過薬を開発せよ』――ふぅ、まさかここまでくるとはな」 暗号が記された紙片をじっと見つめて、青紫は嘆息した。 「なぁ……何の暗号なんだ、それ?」 傍らの米村が、不審気に聞いてくる。なんだかわからないが ――何かとてつもなくいやな予感がする。 「ああ、米村少将。これは、“アビスボート”に搭載した核弾頭SLBMの全弾発射準備命令だ。 同時に、目標の最終選定作業を行えとも言ってきている」 「――ひっ!」
思わず声をひきつらせた米村に構わず、青紫は厳重に保管していたアタッシュケースを取り出した。 “アビスボート”への地上海上からの命令伝達だけは未だに青紫に権限が残っており、 このアタッシュケースはそれが行える唯一の端末だった。これを艦の通信系統に直結して指令を行う。 先の通常弾頭SLBMの発射もこれで行ったので、米村も機能だけは知っている。 「まずは目標の選定だな――」 折り畳みキーボードをガチャガチャと広げながら、青紫は地図を片手に睨めっこを始めた。 「目標指示――5メガトン級2発はアクアプラスシティとシェンムーズガーデンを真っ先に狙おう。 3メガトン級4発はシモカワグラード、ボスニア、ロイハイト、ロックブーケにそれぞれ1発ずつ。 残りの1メガトン級はこれらの目標を打ち漏らした場合の予備としてとっておく。 ああ、もし余裕があるなら黒マルチ艦隊上空に1発放り込もうか。 直撃はしなくても核パルスで使いものにならなくなるはずだ」 「――」 米村は、恐怖に満ちた目つきで青紫を見つめていた。 「あんた――自分がなにをしようとしているかわかっているのか!」 「――わかっているつもりだ、米村少将」 「いいや、あんたはわかっていない! このままじゃ全面核戦争だ!」 青紫の胸ぐらをつかんで、もの凄い形相で睨み付ける米村。 「貴様――このまま館山のいうとおりに行動したら、空き地の町それ自体がなくなるんじゃないのか!? 俺はよくわからんが――里村茜が帰ってくる場所を守るために、貴様達は戦って居るんだろうが!」 「そのとおりだ、米村少将。我々はその目的のために一致団結している」 苦しそうに息をしながらも、青紫は強い意志の感じられる瞳で見つめ返した。 「だがそれは――里村茜が帰る場所を保持できないなら、 我々の政権の存在理由もなくなると言うことだ」 「それは――そうだが」
「弾道ミサイルが雨のごとく降ってくるようでは、とても里村茜を迎えることはできない。 そしてそんな町では、住民たちもいつ死ぬかわからぬ生活を強いられる。 かといって下川国家元帥に下ったところで、命の保証などあるわけがない ――ならば、全面核戦争のリスクはつきまとうが、最後の最後までチキンレースにつきあって、 万が一の可能性に賭ける方がマシだ。いや――それしか選択肢はない」 「だが――全面核戦争が……」 「米村少将……我々には、もはや全面核戦争に訴えるしか道はないのだ。 館山総理もそれを悟られたからこそ、わたしにこの命令を下したのだろう」 青紫の瞳に、少し冷たい光がともった。それに対してなにもいえない米村に軽く頷いてから、 “アビスボート”への伝達作業を続けていく。 やがて――通信回線に直結させた端末から指示目標一覧と攻撃発起の際の符丁を圧縮通信で送って、 青紫は大きく伸びをした。 「さて――それでは“アビスボート”への訓電を平文でおくるぞ、米村少将」 「へ、平文でか?」 「そうだ」 お構いなしにうなづくと、青紫はいつもの口調で――だがさすがに表情から笑みを消して、 次のように言い始めた。 「我々が全面核戦争をも辞さない覚悟であることを全世界に宣言しないとな―― “アビスボート”に告ぐ。先に伝えた符丁に基づく暗号電を受信次第、 直ちにこれらの目標に核弾頭搭載SLBMを全弾発射せよ。 それ以後は空き地の町本国政府が消滅する可能性大のため、“アビスボート”独自の判断で行動すべし」
203 :
被弾 :03/01/01 22:21 ID:aZ0YBUV7
3月28日 新大陸標準時 20:23 下川リーフ 気が付くと、瓦礫の山にいた。 何が起こったのか、全く理解出来ない。大きな爆発音――のよう なものが聞こえたのと同時に、五体は衝撃に揺さぶられた。そこま では覚えている。つまり、気を失ったわけだ。 「またか」 本日二度目の気絶。多分一生のうちで二度も体験できないだろ う。なんだか可笑しくなった。 腕に感覚が戻ってくる。 寝起きの時とは違う、まず脳が稼動してから全身が覚醒する。そ んな感覚。 「……っ」 腰を強く打ったらしい。後ろを向こうとして痛みが走った。 「……なんなんだ、これは」 やっと歩きまわれるくらいに痛みがおさまったので、辺りを見回し てみた。 ――瓦礫。ひっくり返った車。列車の束。そして、クレーター。 正気の沙汰とは思えない。何故自分が五体満足でココに居るの か、全く持って理解出来ない。さっきまでの余裕は全て消え失せ た。 「……そういえば、」 言ってから、思った。 ――ここで陣内達と別れてしまえば、問題ないではないか。ヤツ ラは勝手に付いて来た外部の人間に過ぎない。正気に戻れ。お 前は作戦行動中なんだぞ?
204 :
被弾 :03/01/01 22:21 ID:aZ0YBUV7
「……くそっ」 そんな考えが浮かんだ自分に、反吐が出た。 理屈は正しい。だが、もっと深いところで頑なにそれを否定する自 分が居る事に気がついた。 「……よう、兄ちゃん」 意外な事に、彼らはあっさり見つかった。陣内はさっきまで民家 だった建物に寄りかかりながら、いつもどおりに笑ったような顔つき をしていたし、閂は少し鬱の入った面持ちをしている。二人とも全く 変わらなかった。 ――片方の人間の、左腕が欠けている事を除けば。 「……陣内、お前」 正確にはズタズタにひしゃげていると言ったほうが正しいだろう か。五指は構造的にあり得ない方向に曲がり、所々に白いモノが 見える。全体的に赤い色をしているので、いやに目立っている。 腕に至ってはもはや原型を留めておらず、絵の具をグチャグチャに まぜたような色合いをしていた。肩口から生えているので、辛うじて ソレが腕だと分かるレベルだ。 「……ぐっ」 吐き気がこみ上げてきた。 人間の体内臭とは――こんなにも嫌悪感を抱かせるものなのか。
205 :
被弾 :03/01/01 22:22 ID:aZ0YBUV7
「……よし。一思いにやっちゃってくれ」 「本当に、いいのか」 「だって、これじゃ使い物にならねぇだろ?」 「……そうか。なら、しょうがないな」 ゴスッ。 そんなチープな言葉でしか表現できない、鈍い鈍い音がした。 「いくぞ」 「ああ……いってくれぇあぁあああああぁあああぁぁぁ!!」 これほどの痛みを伴なっても気絶しないこの男の精神力は、賞賛 に値するだろう。 普通の人間なら腕をナタで削ぎ落とすなんて真似はまずしないだ ろうから、よく判らなかったが。 「……取れた」 そして、それを平然とやってのけた自分にも驚いた。 「よし。夜明ちん、あと頼む」 「……ああ」 どこで覚えたのだろうか、閂はなれた手つきで応急処置を施した。 アルコールで軽く殺菌した後、切り口を布で覆う。完了するまで1分 とかからなかった。
206 :
被弾 :03/01/01 22:22 ID:aZ0YBUV7
「これを」 「……モルヒネか? 用意が良いな、兄ちゃん」 「いいから飲め」 「……馬鹿、こりゃ、注射するヤツだろ。注射器頂戴」 指摘されて初めて、自分が狼狽していることに気付いた。 何度も戦場を潜りぬけた特殊部隊の人間であるはずの、自分が。 「……あー、楽になってきたー…」 言うや否や、陣内は眠りについてしまった。 「…ああ、睡眠薬もついでに盛っといたから」 閂が言う。 「……さて。このまま放っておくわけにもいかないしな。医者に見せ ないと腕が壊死する」 「…ああ」 気絶したとは言え、これまで殆ど起きっ放しだったので、精神はも はやギリギリまで磨り減っていた。そんな脳内だ。目の前の事態に やっとだったのだが――この閂の落ち着きようは、納得できなかっ た。 でも――もう、どうでもよかった。 「……あれに載せるか?」 ボロボロになったリアカーが置いてあった。見た限りとても使い物 にならなさそうだったが、実際触れて見ると特に問題は無かった。 「よし。んじゃ行きますか」 「……アテはあるのか?」 「無い……が、この惨事だ。診療所くらいは出来てるだろ」 人の集まってそうな所だな。 そう言って、閂はリアカーを引き始めた。
訂正です。 > 気絶したとは言え、これまで殆ど起きっ放しだったので、精神はも >はやギリギリまで磨り減っていた。そんな脳内だ。目の前の事態に >やっとだったのだが――この閂の落ち着きようは、納得できなかっ ↓ 気絶したとは言え、これまで殆ど起きっ放しだったので、精神はも はやギリギリまで磨り減っていた。そんな脳内だ。目の前の事態に 付いていくのがやっとだったのだが――この閂の落ち着きようは、 納得できなかっ 彼らは殆ど直撃を食らってしまったわけです。(↑の内容とは関係ないですが)
3月27日深夜、空き地の街司令部、会議室
大きなスクリーンに映されているのは、周辺地図、とミサイル飛行予測経路である。シモカワグラートとアクアプラスシティは勿論、移動式発射機の位置も大体描かれている。
移動式発射機は事前察知に対して強い場所が鉄則である、でなければ先制攻撃(イスラエルの理論)を受け、諸外国にアピールされ、攻撃失敗は勿論諸外国からも蛮行と避難される事になるからである。
大体消される場所、ハリアーUプラスの航続距離(基地外パイロットはカミカゼ攻撃も辞さない)、エアカバ−の薄い地域防空体制の整っていない地域等である。
会議出席者は空き地の街では館山総理、連合国特殊部隊大佐、防衛隊司令官、正統リーフ領内に存在する強襲揚陸艦『空き地の街』からは、米村少将である。
青紫参謀は聞き役としての出演である(軍事音痴を散々言われた。) 難しい話は解らん!と控えめに蝉丸が隅のほうに座っている。
空き地の街司令部−強襲揚陸艦、最終的には電波花畑連合国(名目上私戦私闘のため友好基地)を含めた衛星会談の始まりである。
と
>>170 不思議な家(空き地の街の迎撃体制)1 の上から9行を差し替えてください(汗)
>>197 31殿
申し訳ありません(汗)間違えました。
超先生、後の展開がシリアスでしたのでアレ以上叩くのは後ほどに(スマソ
210 :
それから :03/01/02 16:43 ID:cNBzdd9I
3月29日 新大陸標準時 6:25 下川リーフ それが対地ミサイルの攻撃によるものだと聞いたのは、意外にも閂の言葉からだった。 月姫系ゲリラの自爆テロだというデマも流れたが、どちらにせよ確固たる証拠は無かっ た。 その時は、まあ可能性のある話だと思って聞き流したのだが、日が明けて空き地の町 政府の公式発表が報道されると、デマは真実に変わった。 会見で彼らは、自分達は核を所有していることを匂わせていた。明確なコメントは避け ていたがマトモな思考能力を持つ人間ならばそう考えるのが妥当だ。 今ごろ本国では会議でモメてるだろうな――何となく思った。防衛対象にものみの丘が 含まれて居ないことに気付き、焦っているに違いない。何しろあれだけ舐めきった条文を 突きつけたのだから、上層部は恥を覚悟で舘山総理に懇願せねばなるまい。いや、その 前に国粋主義者の凉元大将を説き伏せるのが先か。 他方、街に――瓦礫の丘にいる人々は、複雑な顔を浮かべていた。 いつ何時、原子のカタマリが自らに死を告げるために落ちてくるのか、見当がつかない 事に対する不安。 そんな状態に自分達を陥れてしまった、政府への憤慨。もちろんその対象は下川だけ ではない。彼らはただ漠然と『上』を睨んでいるように見える――そんな印象を受けた。
211 :
それから :03/01/02 16:43 ID:cNBzdd9I
夜通し医者を探した結果、運良く執刀してくれる医者を見つける事が出来た。陣内は現 在、そこのベッドにお世話になっている。その後、ほぼ無傷で残っている平屋を見つけ、 お世話になっている。そんな状況だ。 「……さて、これからどうする? まさか、これしきのことで任務を放棄するわけにもいかな いだろう?」 任務。 そう、自分は今の今までそのことを忘れていたのだ。 だが、もう別に驚きもしない。脳の感情を司る部分が、ミサイルの着弾と共に完全に破 壊されてしまったような気がした。 何故そう思うのか、自分でもよく判らなかったが。 今もアクアプラスでは、特殊部隊――MOON.巳間良祐少佐――の到着を待ち詫びる人 間がいる……と言う事実が、ある。 記憶の一部を継ぎ合わせて、そう認識した。 「準備が出来次第、出発するつもりだ。あんたらとはココでお別れだな」 その言葉を聞いても、閂は当たり前の文句を聞くような態度を見せていた。何となく予 測がついていたらしい。 ただ一言、 「そうか。まぁ死なないように頑張れよ」 としか喋らなかった。
212 :
それから :03/01/02 16:43 ID:cNBzdd9I
それから数時間、そこらの民家を物色した。 町外れの丘まで差し掛かった時、自家発電機のある簡素なブロック作りの家を発見し た。家主はどこかに消えてしまったらしい。運悪く街に出ていたのか、それとも救助活動 をしているのか。どうでもよかった。 探し物はテーブルに鎮座していた。電気の生きている事を確認し、つつくように電源ボタ ンを押す。画面に例の、「窓」とはおよそ形容し難いマークが広がった。 背面を覗く。LANボードにコードが刺さっている。どうやら携帯電話は必要なさそうだ。 もうおなじみとなったIEの画面に、言い渡されたHPアドレスを入力してみた。 16の掲示板のうち、7つはサーバーが落ちていた。サーバー本機がアクアプラスにあっ た為――とYahooに書いてあった。 他の9つは無事だった。覗いて見ると今回のミサイル攻撃で話題が持ち切りだった。少 し興味が湧いたが、今は連絡が来ていないかどうかが最優先事項だ。 ――あった。 変換ツールは今や魚のエサになっているので、苦労して自力で解読した。そこらへんに 置いてあったメモと用紙に全て書き終えた時、そこに一つの命令文が出来た。 ――至急、連絡せよ。手段は問わない。 要約するとそんな感じだった。 数秒間紙とにらめっこした後、プロクシリストを掲載しているHPにアクセスした。 匿名串をいくつか拾って順番に刺してみる。3つ目の串が頑丈そうなので、これを使用 することにした。
213 :
それから :03/01/02 16:43 ID:cNBzdd9I
「さて」 目をつぶる。 まさかこのアドレスを使うはめになるとは夢想だにしなかったが、まあ仕方ないだろう。 この家主には悪いが。 アドレス欄に、不可思議な文字の羅列が組み立ってゆく。最後に.go.ksと結び、Enterを 押した。 『パスワードを入力してください』 画面に陳腐な文字が現れた。どうみてもレトロヒューチャ―感は否めないが、だからと いって素晴らしい代案があるわけでもない。ユーザー名に『guest guest』と入れ、パス ワードを入力する。 「***************」 『パスワードが違います』 判っている。これはフェイクだ。 「****」 『パスワードが違います』 「********」 『パスワードが違います』 「**」
214 :
それから :03/01/02 16:44 ID:cNBzdd9I
『……』 突如、画面が切り替わった。ものみの丘地下に置いてあるサーバーにアクセスしたの だ。 このテの分野に疎い人間なら、3Dの人間が喋ったりする様子を想像するだろう。或い は、FLASHを贅沢に使った格好良いデザインが眼前に迫ってくるとも考えるだろうか。 だが、そんなSF的インターフェイスは機能的でない。目の前に映し出された画面は、白 色をバックに黒字が踊り、コンテンツ一覧が左隅に佇んでいるという簡素なものだった。 画面左上に書かれた『ものみの丘・政府管理HP』という文字が、辛うじてココは政府の所 有する極秘サーバーだ、と告げている。 chat画面に入る。 『名前を入力してください』 巳間……良…祐。 『巳間良祐 さん ですね。ようこそ。尚、ココでは誹謗中傷は削除対象となりますので、 よろしくお願いします』 ごくごく普通のやりとりだった。利用するのは初めてだが、その普通ぶりに少々肩透か しを喰らった。 既に『連絡員』というHNの先客がいた。 『挨拶はいい。任務報告を簡潔に』 文字が表示される。 指示どおり、これまでの行動を簡潔に書きこんだ。一行レスを20行も使ったので見栄え が悪くなってしまった。当然の事ながら、陣内と閂の事は伏せておいた。 『なるほど。で、君の身体は作戦行動に支障ないか?』 そんな文が表示された。 『問題ありません。多少擦り傷を受けましたが、作戦には支障は』 『了解した。命令に変更は無しだ。予定通り、工作員に接触を試みてくれ』 変更は、無しだと? 大なれ小なれ命令に影響が出るであろう例の事件処理に没頭しているのだろうか。上 層部は。 『何か質問はあるか?』
215 :
それから :03/01/02 16:44 ID:cNBzdd9I
『――――ありません』 気付いたら、そう書き込んでいた。 『では、通信を終了する。尚、この連絡手段は今回限りだ。以後は別方法で連絡をとるよ うに』 と、PCの電源が落ちてしまった。 慌てて辺りをみるが、人影はない。蛍光灯がついているので発電機の故障ではないよ うだ。 ということは、あの短時間のうちにこちらのPCにクラッキングを仕掛け、遠隔操作したと 言う事か。可能性としてはあり得ない話ではなかったが――そんな事をダラダラ考えてい る時間も無いので、例によって作業を進める事にした。 PC筐体の蓋を開け、中からHDDを慎重に取り出した。平たい長方形のそれは、まさしく 精密機械と言うべきオーラを発していた。 「……つくづく、こういうものを破壊するのに縁があるな」 先のノートPCと同じような手順で、HDDは永久に使い物にならなくなった。
216 :
それから :03/01/02 16:47 ID:cNBzdd9I
昔、兵学校に在籍していた頃に受けた講義を思い出しつつ、工作員の人間性について 考えてみた。髭面の渡辺が印象的だったので、今でもその講義だけ難なく思い出せた。 工作員、とは所謂スパイの事だ。彼らの多くは、現地外交官に買収された元は一般人 である。性質上、政府関係者がスパイの大半を占めることになる。今回救助対象になる 工作員も恐らく下川政府に浸透している人間か、もしくはスリーパーと推測される。スリー パーとは、現地に超長期間潜伏し、いざという時に行動を始める言ってみればウイルスの ような存在である。 そのどちらにせよ、政治色の薄い存在である可能性は否定できない。しかし逆に言え ば、外部の人間を全く受け付けないものみの丘が、他国の人間の(しかも末端と言って 良い人材の!)身柄の確保をわざわざ特殊部隊まで出動させて行うという事は、考えれ ば工作員が『コチラ寄り』の人物だということを裏付けている、とも取れる。それだけ重要 な人物だと。 現在、下葉に所属している鍵出身の人間と言えば、あの内務尚書が真っ先に挙げられ る。だが、彼が工作員である可能性はほとんどゼロに等しいだろう。彼は徹底した営利主 義者である事は、自治州では『親殺し』の名で通っている事からも窺える。その彼が、最 大勢力である下葉を捨てて(最右翼である特殊部隊の人間が言うのも問題だが)国際非 難の激しい斜陽の国家に亡命するなど想像もつかなかった。 その他にもう一人、工作員であると考えられる人間がいた。 久瀬内務尚書以外に当てはまる人材は、現時点でヤツしか思い当たらない。 しかし、そいつのツラを浮かべるだけで、なんか悪寒がした。
217 :
それから :03/01/02 16:47 ID:cNBzdd9I
MICEという概念がある。『金、イデオロギー、名声及び信用の危機、自尊心』の事だ。 一人の人間がスパイになる動機付けのようなものなのだが――どう考えても、ヤツはそ のどれにも当てはまらない。金に目が眩む程無能ではないし、明確な思想を持っている わけでもない。名誉なんて端からあり得ないし、自尊心は皆無。 という、存在意義の分からない人間だ。 だが、まあ言い訳としては十分妥当な所だ。どんな状況下に陥っても必ず救助部隊を 派遣すると言う姿勢は軍全体の士気を底上げするし、今の膠着状態にささやかな清涼剤 を投じる位にはなるだろう。 それよりも――むしろ重要なのは、そのあとだ。命令に変更が無いと言う事は、つまり その任務も実行しなければならない、と言っているのと同義だ。 自分は、仕事に感情を持ち込むような人間ではない。 否。では、なかった。 陣内と閂達に接触して初めて解った。自分は、そんな強い人間ではないと。 そんなヤツが、果たしてこの任務を遂行できるのだろうか? 少し前。 「……行ったか」 閂は巳間が外へ出ていくのを確認した。 ポケットから通信機のようなモノを取り出す。携帯電話というには少々大きすぎるデザイ ンで、どちらかというとトランシーバーのようなフォルムをしていた。 電源を入れると、液晶ディスプレイに「Hello」と表示された。随分とフレンドリーな演出で ある。 と、彼は家の外に――正確には屋根の無いところに移動した。次いでアンテナを伸ば し、側面の大仰なダイヤルを回す。 「頼むから兄貴の方に送信しないでくれよ? 用があるのは妹のほうだからな」 手元の機械に軽く囁き、彼は中央のボタンを押した。
218 :
それから :03/01/02 16:48 ID:cNBzdd9I
>>210-217 『それから』投下完了です。
何て言うか、実在の人物にあんな
>>206 酷い事していいのだろうか、とか思ったり思わなかったり。
自分はあくまでもフィクションだと割り切って考えてます……って、このスレでは既に自明ですねw 失礼。
>>209 顧問担当者殿
いや、まあ、あれは一種の冗談ですから気になさらずw
……なるほど、ヤツか、ヤツなのかw>第五列 どーりで、あまりに脆弱だったはずだw
3月29日 強襲揚陸艦『空き地の街』 館山総理の言う事は確かにもっともだ、弾道ミサイル迎撃戦闘は・・・3つの病院と発電所は守りきったが鉄道駅、市街地の一部に大穴が空く始末だった。 パトリオットは予定外の6発しか命中しなかったし、逆に40ミリ連装機関砲サージャント・ヨークのシステムが頑張った。司令部周辺に着弾は1発で被害は軽微・・・ でなければ総理の会見なんて出来る筈が無い。40ミリ連装機関砲は2割台と言われたポンコツさをヘロヘロと発揮はしたが、装填手の活躍 (実際はベルト給弾を長く繋いでしかも旋回しやすいように工夫しただけ) により驚異的な連続射撃を繰り出しさしもの弾道ミサイルも木っ端微塵に叩き潰された。 サイドワインダーやスティンガーも多少は命中はしたが破片を被せるだけなので病院や発電所と行った目標から反らすのには役に立った程度だったと聞いている。。 奇跡は、M163バルカンがスカッドを一発撃墜した事である。射程2600に改修を受けていた(遥か昔に)バルカン、頭の悪いバルカン・ファランクスと言う汚名をここで返上した。 翌日復旧命令が出され連合国特殊部隊指揮のもと日常生活を維持しつつ経済活動も再開された、しかし、発電所近くに着弾した一発のミサイルが発電所の能力の3割を奪っていた。 それでも発電所は7割の力をフルに出して協力体制と敷いた・・・ 最終的死傷者 病院方面:軽傷者15名 市街地:シェルター直撃等を含めて350名以上死亡、市街地防衛中のバルカン3両、12名、アベンジャー14両、20名戦死、負傷者数名、 スティンガー射手8名戦死、鉄道駅直撃弾、鉄道線寸断。 市街地の20%に被害 山葉堂は防衛成功 発電所方面:バルカン1両4名戦死、発電システムに軽い損傷。 司令部:40ミリ連装機関砲2基壊滅、要員を含め16名戦死、パトリオットSAM再装填完了+損害なし、陸上発射型サイドワインダー損害1基 警備中の連合国特殊部隊:パトロール中に銃撃戦が発生するも死傷者なし、発電所方面で軽傷4名。 鍵国部隊:損害不明、死傷者不明。というか忘れてしまった。
なんだか奇跡が起きたのか、頭の悪い戦いなのか判別さえつかない・・・ 何でこんな事を思い出すのだろう? 米村高広は考えた・・・走馬灯のように人生がくるくると思い出させられる・・・そして、最後の場面、核戦争に巻き込まれて一生を終えてしまう姿・・・ 「そんなんじゃないッ!」 パッと拳銃を抜くと訓電を送りつづける青紫の後頭部をそのままで強打した。 「がふっ・・・米村君・・・なにを・・・なにをするんだね!」 もう一発、殺気を含んだ青紫参謀(軍関係者は参謀と昔のまま呼んでいる)の瞳を直視しても米村は今度は正面に拳銃を振り下ろす。 一発目だけでは脳震盪も起さない所は鍛えられているからだろうか? 「ん・・・マイッタ。」 バタリと倒れる青紫参謀長流石の超参謀もニ発目には耐えられなかったと見える。だが死なない所はしぶとい・・・ しかし米村少将は感慨にも耽らず倒れた参謀から受話器を剥ぎ取ると一気にまくし立てた。 「アビス・ボートへ、此方米村高広臨時司令官、青紫参謀長はRR菌発祥の疑い濃厚!只今の電文は無効、只今の電文は無効だッ!」 「そんなことを言われても困る!」 珍しく声を荒げるアビス・ボート艦長。 「里村茜が核攻撃を嫌っている(少なくとも今は)以上今のところ核攻撃は無意味であるっ!それがわからなければアビスボートを沈めてやる!」 「ちょっと待ってくれ・・・それこそ本当に ど う す れ ば い い ん だ!」 しかしいつも通り沈黙した、米村少将の殺気が真実であることを察知したらしい。 「今までどおり通常の行動を続けろ・・・オレは海軍は良くわからないから今までどおり行動しろ、そして俺に質問するなそして答えは要らない、この通信は傍受されている可能性が非常に高い!」 そのまま回線を一度切る・・・使い方は解らないが、ロックを解除する方法なら大体わかる。青紫は面倒な事は簡単に解決するフシがあるからだ・・・ 「ディスエンゲージ・・・これを押せば大丈夫だ。英語だから俺でも読める。」 ポチ、一気にミサイルロックが解除されパネル表示が全てグリーンとなる・・・一瞬安心した物の次が残っている・・・ケーブルを抜いて電源オフ、核ミサイル発射は少なくとも止まった。 次にやること・・・艦内の制圧・・・それは一部は連合国のオブザーバーが一気にカタをつけてくれた。彼等は助言を与えるという立場から要所に配置されていたのだ。
まず艦橋の自治政府要員は動くことが出来なかった・・・連合国オブザーバーがM4カービンを構えて米村少将をカバーしたからであった。 電波花畑の軍人は自分が正しいと思う行動を実行する。今回は米村将軍が正しいと判断したようだった。 青紫参謀は丁重に士官室に軟禁され連合国オブザーバーがC4爆薬を体に巻きつけて同室する(イザとなったらドッカーン)・・・ 目覚めた青紫参謀は一言 「ほ ん と う に ど う す れ ば い い ん だ!」 超参謀は今回の作戦についての重要性を何度も説いた、しかしオブザーバーはC4爆薬を指差すだけだった。 だから叫ぶしかなかった。 『本当にどうすればいいんだ?』 他のオブザーバーは作戦室担当者は作戦室、戦闘司令室担当者は戦闘司令室を制圧した。 だが他の区域は難しい・・・ そこで米村将軍はアタッシュケース左手に下げパイロット待機所へと駆け込む・・・あえて単独行動である。そのほうがまだ何が起きたのか把握できていない艦内では安全だった。 米村将軍が駆け込んだ先の住人達・・・ハリアー2プラスのパイロットは電波花畑連合国の軍人であり、米村の指揮下にあり、日頃からハリアーの操縦を習うなど親密な関係である。 さらに、国家の犠牲、しかも中尾司令官一個人の政略の犠牲となった彼にたいして連合国軍人は自分達の境遇と似ていると共感を呼んだのだ。 「コマンダー!またハリアーの練習飛行ですか?」 顔なじみの飛行隊長が米村に声をかける。 「聞いてくれ、オレは今核弾頭の発射装置を握っている!」 「サー冗談が・・・ってまさか?」
「そのまさかだ、アビス・ボートが核を使用しようとした。」 一気にまくし立てる米村、時間がない・・・ 「茜ちゃんは核攻撃には反対だったのでは?」 「館山総理は核攻撃を行い下川と全面対決を想定しなければ空き地の街の政府は存在できないと言っている。」 「そんなことをしたら核戦争で全部パー、茜ちゃん泣いちゃうよ?空き地の街の住民も無意味な巻き添えだよ・・・」 真面目な顔で飛行隊長が話した・・・ 「だからだ!だからオレは参謀を殴って止めた、アビスボートは通常作戦に戻させた、艦橋その他重要設備のオブザーバーを援護しろ!」 すかさず米村が再びまくし立てる、従うか否かの選択を迫っている。 「イエス・サー!」 飛行隊長はすぐさま地上戦闘を号令する理解力は高いらしい・・・そして、マリンコはオールライフルマンという言葉が聞えてきそうである。 彼等は軍事顧問団に随伴する為陸軍に軍籍を移動してはいるが元はユニオンマリンコ(連合国海兵隊)の所属である。 5分で全てのパイロットが各々得意な武器(M4カービン、M249、MP5、爆発物、LAW、拳銃二丁等)を手に、 50口径機銃弾に耐える航空ヘルメット、改良ドロンと重ケブラーのアーマベスト、白燐手榴弾、破片手榴弾を装備して集合した。 「OKサー」 自らM4カービン銃を携えた飛行隊長が米村に報告する、既に他のパイロット達は武装したままオブザーバー援護に向かっていた・・・ 15分経過・・・艦橋制圧、戦闘室、戦闘指揮所、通信室と言った重要施設、呼応したヘリコプター・チーム(連合国ヘリパイロット)が現在の状況を伝えて回る・・・ 「そして、コマンダー、貴方にはコレです。」 別のパイロットが尊敬の眼差しを向けながら、M21狙撃銃を米村に手渡した。 「コマンダーの腕ならコレは扱えます。」
M21狙撃銃・・・顧問団では有名な装備であり指揮官クラスが扱えなければいけない代物である・・・ 米村も真似して訓練はしていたが漸くなれてきたばかりの代物だった。 当初マリンコはM21が嫌いだった、昔から嫌いだった。 でも空き地の街での活躍以来M21狙撃銃が注目されていたのだ。 「サンクス・・・受け取ろう。しかし戦闘指揮は、飛行隊長が取れ、俺が狙撃でアシストする。」 「イエッサー、しかし味方同士で撃ちあいにならないように最高の配慮をしましょう。特に鍵の連中に乗っ取られないように・・・」 「裏葉代表はまた交渉に出かけたままだ、留守部隊は少ない。だが気をつけろ、この世に確実はもはや存在しない!撃つのを躊躇うな!」 『これは我々の船である。』 最終的には坂上蝉丸にも状況説明をしなければならない・・・米村は飛行隊長と数名の武装パイロットを引き連れて艦内を進んでいった・・・ しかしあの米村が何故此処まで行動したのか? 保身?命?いやいや、一度死を覚悟した者は強い・・・彼が青紫の話を聞いているときにふと見上げた先にあった一枚の絵。 簡単に言ってしまえば少女が軍人を抱きしめている絵、それが米村に戦いを決意させたのである。 奇麗なブロンドの髪を2つの三つ編みに纏め、引き込まれるような緑眼、表情は慈愛に満ちている、服装は濃い黒、可愛らしい白いフリルがたくさんついているが、フリルの一部が赤黒く汚れている。 表情はとても優しい・・・まるで天使のような少女、そしてその少女に抱かれているのは・・・薄汚れたアーマベストを纏った連合国のパイロットだった。 状況は空き地の街戦役が終った後、帰還した連合国パイロット達であったが仲間を数人失いうちひしがれていた時、哀れな飛行隊員をその胸に抱きとめたとされている。 それはハリアー飛行隊の飛行隊長が描いた油絵だった。
米村は過去を振り返りロクデモないと思いつつこの絵を見た・・・米村は思った、俺も帰る場所の無い哀れな男、俺も暖かく抱いてもらえたら・・・ その温かい胸に抱かれてひと時でもいいからこのくだらない人生とおさらばしたい、しかし、このままでは・・・ そして以前、自分の境遇を嘆いていた時にハリアー飛行隊長に言われた一言を思い出した。 「コマンダー、貴方も茜ちゃんに抱かれる資格がありますよ。」 彼は思った、ここで核を使ったらオシマイであると・・・茜が米村を抱いてくれるとは限らないし今回の事で軽蔑されるかもしれない。 それでも米村は今回の決定は賛同できなかった。 艦は制圧された・・・坂上蝉丸は無謀な戦いを避ける方針を支持、空き地の街司令部は考えを改めざるを得ない状況に置かれる事になる。 鍵国留守部隊も結局同意した・・・空き地の街で心中したくないのが本心だ。幸いにして銃撃戦は起きなかった。 そして遥魔ヶ辻の介入を避けなければならない。 そして・・・艦橋に再び戻った米村少将は一本の通信を入れる・・・ 「繰り返す、此方は米村高広臨時司令官、青紫参謀にRR菌感染もしくは発症の疑いアリ!同様に館山総理の動向にも注意せよ!」 自治政府防衛隊、連合国特殊部隊の連合部隊が司令部を平和的に制圧、館山総理には頭を冷やしてもらう事になった。 「コレは内政問題であり、遥魔ヶ辻が介入した場合恐ろしい呪いと報復を受けることになる。」 これは連合国特殊部隊、空き地の街自治政府防衛隊のメッセージである。 正統リーフも流石に黙って見過ごせない状況が出来てしまうのだから。
全てが完了した時米村は漸く一息ついた。 「俺は正しかったのだろうか?」 答えは未だでていない・・・弾道弾を降らせない為の強力なカードが何かないか・・・まさか連合国から空母機動部隊を呼ぶわけにも行かない・・・ 選択肢としては残ってはいるが私戦私闘で空母駆動部隊が公海上から突入したら・・・しかも米村の呼びかけに応じるのがあるのかどうか・・・ 鍵は絶対にNOだった。正統リーフも妖しい、結局連合国に頼るしか道は残っていなかった・・・ 彼はアタッシュケースを再び厳重に保管しなおすと溜息をついた。 ミサイル駆逐艦『里村茜』も同時刻、米村高広少将の指揮下に入った。 だがこの時、 米村は知らなかったが電波花畑連合国においてタイタンロケットが発射準備状態であった。 弾道弾タイタンUではない、タイタンロケットである。 アメリカ合衆国や列強を核で脅迫する事に対しての強烈なメッセージを積んだタイタンロケットが・・・ アメリカ製金星探査機がなぜか詰め込まれているそのロケットは一体何なのだろうか?
>>220-226 米村君戦う。
>>218 後方支援連隊31殿
逆にリアルですな・・・
流石に戦争という環境である以上・・・仕方がないことではないでしょうか?
またドアホな内容になってしまった(汗)
すいません(汗) >226 米村君戦う 7 の差し替えです。 全てが完了した時米村は漸く一息ついた。 「俺は正しかったのだろうか?」 答えは未だでていない・・・弾道弾を降らせない為の強力なカードが何かないか・・・ パトリオットPAC3以外の何かが・・・ 鍵は絶対にNOだった。正統リーフも妖しい、結局連合国に頼るしか道は残っていないのか? 彼はアタッシュケースを再び厳重に保管しなおすと溜息をついた。 ミサイル駆逐艦『里村茜』も同時刻、米村高広少将の指揮下に入った。 だがこの時、 米村は知らなかったが電波花畑連合国においてタイタンロケットが発射準備状態であった。 弾道弾タイタンUではない、タイタンロケットである。 アメリカ合衆国や列強を核で脅迫する事に対しての強烈なメッセージを積んだタイタンロケットが・・・ アメリカ製金星探査機がなぜか詰め込まれているそのロケットは一体何なのだろうか? に差し替え願います・・・。なんで空母機動部隊とか出てくるんだろ、しっかりしろ>俺 黒マルチに対する牽制を書き間違えした模様です(汗)
ふと思ったのだけど。 空き地の町に向けて発射されたミサイルって、FROGが三基だけなんじゃなかった?
ちょっとこれ以上進むとまずいと思うから、きつめのことを言わせてくれ。 >顧問担当者 前からそうじゃないかと思ってたんだが、 あんた空き地の町に直接関係のあるSS以外はただ軽く読んでるだけで、ちゃんと事実関係を把握してないだろ。 だから、乾の指揮部隊が変わって移動中だってことにも気づかないし、 “トゥスクル”の所属国を間違えるし、空き地の町に関係しない端々の描写は雑だし、 ミサイルの発射数も間違える。 それは違うとか言わないでくれ。あんた自身がそう思っても、 表に出てきたものを見る限りそうとしか思えない。 そりゃ陸軍スレの頃ならそういった書き方でも何とかなったろうが、 ちゃんと種々の設定も決められて、多くの書き手が多くの陣営を同時進行で書いている現状じゃ、 そんな書き方じゃ全然保たないぞ。 それに、自分の書いたものしか見ないで他のSSには無頓着なその姿勢が、 二代目スレであんたが事実上追放されたそもそもの原因じゃないか。あんたその過去から何を学んだ? これ以上書き進めたいなら、過去のSSをもう一回じっくりと、 空き地の町の描写がでてこないSSもちゃんと読み込んだらどう?
頭冷やしてきます。 パトリオット6発くらって落ちないスカッド3発無いですね(汗) ミサイル駆逐艦残置問題とミサイル巡洋艦の所属、アレも申し訳ない限りです。 流すように読んではいましたがヤッパリボロが出ましたわけで。恥ずかしい限りです。 が、しっかしフロッグ3発と脅迫で核戦争というのも少しばかり解せないと思いますが如何でしょうか? アドリブになってないアドリブ使ったの認めますわ、すいません。 けれでも、パトリオット5-6個射撃群発注しておいてハイ核戦争。これも安易過ぎないかと? 本気で核戦争考えるならよほど被害が出て脅迫がこなければ例え1勢力であってもそこまでやらんでしょう。 恒常的にミサイルが落っこちてくるからパトリオットで迎撃する。イラン・イラク戦争レベルではないかと。 とにかくアドリブ抜きで考えてきますわ。マジで・・・ 超参謀も居ない、大体長もいない、ネタ書き基地外喚いてる、マジで無様ですな>俺
大隊長でした、訂正。
>が、しっかしフロッグ3発と脅迫で核戦争というのも少しばかり解せないと思いますが如何でしょうか? その考えを何の脈絡もなく通そうとする姿勢が問題だと思いますが。 >けれでも、パトリオット5-6個射撃群発注しておいてハイ核戦争。これも安易過ぎないかと? ならば、そこに至るまでの流れをある程度自分で作ったほうが自然では? 指摘としては正しいのかもしれませんが、 そのテの意見はSSではなくまず書き込んだほうが早いと思ったりします。 >超参謀も居ない、大体長もいない、ネタ書き基地外喚いてる、 ……? >アドリブ抜きで ……???
追記。 >パトリオット6発くらって落ちないスカッド3発無いですね >が、しっかしフロッグ3発と脅迫で核戦争というのも少しばかり解せないと >パトリオット5-6個射撃群発注しておいてハイ核戦争。これも安易過ぎないかと? >恒常的にミサイルが落っこちてくるからパトリオットで迎撃する。イラン・イラク戦争レベルではないかと。 そういうレベルの問題では無いような気もします。
認識甘いのか、重ね重ねスマソ。 喚く前に冷却してきます。
勿論ネタ書き基地外は俺ですが(汗) 初期の形を捨てるという意味ですハイ。
そろそろ軍事板でやってくれと本気で思った。 顧問よもうそろそろ眠った方がいいんじゃないか?もう軍板とおなじなのだよここは。
>が、しっかしフロッグ3発と脅迫で核戦争というのも少しばかり解せないと思いますが如何でしょうか?
いや、だから全体を見たらどうかと言っているんだが。
ミサイルが降ってきたのは空き地の町だけか?
下川は同盟勢力である鍵自治州やエロゲ国に向けても大量の弾道ミサイルを発射した。
空き地に町への攻撃はその一環だ。だからたとえ空き地の町に落ちたのがFROG7であったとしても、
それは政治的には弾道ミサイルと同一の存在でしかない。
FROG7が選択されたのはただ単にコスト的な問題にすぎないし、事実下葉の大使は本当かどうかはともかく、
『空き地の街(略)への弾道弾攻撃を強化続行する事と決しました』と発言している。
(
>>180 より)
これ以上は自分のSSをくどくど解説することになるから詳細は省くけど、
最初の館山の声明と、それを受けた下葉−アリス共同声明と、さらにそれを受けた館山の決断と、
上記を前提にして読み進めていったらどうか?
それに、館山の決断がまだ『何が何でも核戦争』ではない。
『空き地の町と正葉へのミサイル攻撃がこれ以上続くなら核戦争』という恫喝レベルの話だ。ただし本気の。
>>238 軍事板でやった方が叩かれるだろーねw
慶祝スレなんてさんざ叩かれたし、後半。
基本的には嫌なら見なけりゃいい、それだけのことじゃないだろうか?
少なくとも板違いじゃないし(言ってる我ながら微妙ではあるが。むし
ろ適合する板もないというのが実体か)、ネタ軍事なら潜水艦スレが復
活してるし。
>>顧問担当者
>大隊長いない
第一スレで姿消してるし、何を今更なこといっとるんだ君は。
でも潜水艦スレでも艦長見ないな……どうでもいいけど。
個人的には貴方の最大の問題は、前のRR菌弾頭ミサイル問題の時とかも
そうだけど、『他者が書いたモノを即座に否定するためだけのSS』を書
く悪癖があることだと思いまつ。
つながらんし、そっちに話を回す気にもならんようになるって。
それでいて、貴方一つところしか書かないしね。
リレーSSでやっちゃいかんことの鉄則だと思う。
後はりょだんちょの仰りように激同ってところか。
しかし大戦記スレ全般の兆候なんだが。
葉鍵ファンタジーは一人リレーが寂しくて廃れていったが、こっちはあま
りにも一人リレーが全盛で疑問を感じる(ここらへん、りょだんちょの鍵
自治州での話なんかも同じくね。実在鍵っ子キャラ増えるとどうしてもリ
レー出来ない部分が増えてしまった)
他人のパートを引き継ぐことに、もちっと意欲見せてみたらどう?>書き手諸氏
>一人リレー その辺の問題は自分でも感じていた。 だから前スレで集成旅団を自分で解体したし、実在メンバーを大きく三分割した。 これで鍵の話を前よりは作りやすくなったと思うんだが……これでも不十分ならば、 それは自分の力量不足だ。その点はお詫びする。 それとこちらも、なるべく一つところに固まらないように注意してはいる。 実のところそっちの方が、内戦全体の情勢を自分の思惑の方へ引っ張りやすんで。
>>240 >一人リレー
耳が痛いです。
自分が書いた話を例に取ると、
伏線の張りすぎとか、そもそも大局に関係ないような話なのが原因と感じております。
ところで、
>>220-226 はどうしますか?
個人的には一旦NGにした方が良いかと思います。
書いた本人も『頭を冷やす』とか言ってますし。
投下する前に頭冷やして欲しいところですね。
ってあんま他人の事言えんかw
そもそもミサイルの弾数が違う以上冒頭の描写が矛盾するので、 仮に何も意思表示がなければ、NGが妥当でしょう。
纏めてみました。
特に記述が無い限り、新大陸の標準時間で記してあります。
指摘等ございましたら遠慮なく。
数年前 サーカス師団事件。
3月27日 22:00 青紫ー奈須会談。里村茜をエロゲ国オネ港で目撃、軍事顧問団=有島(明言はせず)という情報を受ける。
>>2-6 3月28日 12:29 柳川、東葉・ロックブーケに到着。
>>137-140 3月28日 14:30 下葉、ものみの丘、ロディマス、空き地の町、エロゲ国トヨハラ及びアオバダイに弾道ミサイルを発射
>>13-17 。
使用ミサイルは
>>46-47 を参照。
3月28日 16:30 アビスボート発射の報復SLBM、下葉に着弾。
>>128-135 3月28日 19:00 空き地の町、SLBM通常弾道による報復攻撃を公式発表。
>>110-114 3月28日 22:00 エロゲ国月姫民族正規自治区沖にて海上警備隊所属ステルス駆逐艦『メルティブラッド』の存在を確認。
>>150-153 3月29日 7:26(現地時間13:26) アリスソフト長谷川外相、メビウス・プルトップ軍管区における南部総督府各軍勢の集積を下葉に通達。
両者間に軍事同盟結成
>>179-190 3月29日 13:00 空き地の町、「アビスボート」搭載核ミサイルの目標を選定。
>>198-201 4月1日 15:10 東葉、月姫難民に対する人道的保護を発表。東部方面軍の戦力派遣。
>>7-9 4月2日 12:10 柳川、蒼崎青子(月姫)に鍵自治州南方先端部に設立予定の月姫自治区総統への就任を要請。
>>29-32
とりあえず
>3月28日 16:30 アビスボート発射の報復SLBM、下葉に着弾。
1800時に
>「たった今、館山総理が声明を出した。空き地の町及びロディマスへのミサイル攻撃の報復として、
>通常弾頭搭載のSLBMをアクアプラスシティとシモカワグラードに向けて発射、まもなく着弾する――と」
とあるんで(
>>87 )、最低1時間程度は遅らせた方がいいかと。
>>128-135 については、冒頭の時刻が1627、最後の時刻が1800に近い時刻とすれば何とか。
それよりも今気づいたんですが、
オオサキ線が走っているのはリアルリアリティ・ナ・オーヤ近辺なので目標からはずれているという問題があります。
まあその辺は、SLBMが予定どおりに全弾命中したとはどこにも書いてないですので、
動作不良で途中で落ちた1発とか何とかすれば解決可能なレベルですが。
ちなみにせっかくなので。作中に出た下葉北東部の鉄道は以下のとおり。
・下葉国鉄北東縦貫線
シモカワグラード―リアルリアリティ・ナ・オーヤ―空き地の町手前
・下葉国鉄大リーフ湾線
リアルリアリティ・ナ・オーヤ―シンキバ対岸―空き地の町手前
・東葉交通営団オオサキ線
東葉領オオサキ―東葉・下葉国境―リアルリアリティ・ナ・オーヤ
>3月29日 7:26
時差が5時間だから0826時ですね。
>・下葉国鉄大リーフ湾線 >リアルリアリティ・ナ・オーヤ―シンキバ対岸―空き地の町手前 ああ、違った。空き地の町手前じゃなくて東葉領シンキバ。
>>旅団長
指摘どうもです。
とりあえず旅団長の案を受けて
>>128-135 について冒頭時刻を1627、最後を1801とさせて頂きます。
>オオサキ線
すみませんでした。当方の思い違いでした。
> 小高い丘を越え市街地へと続く東営オオサキ線を、長い長い貨物旅客
>併合列車が通過している。もし晴天ならば、夕焼けと相まって叙情的な
>景色が拝めたのだが、今日は朝からあいにくの空模様だった。
を
小高い丘を越えシモカワグラード市街地へと続く国鉄北東縦貫線を、
長い長い貨物旅客併合列車が通過している。もし晴天ならば、夕焼け
と相まって叙情的な景色が拝めたのだが、今日は朝からあいにくの空
模様だった。
に変更したいのですが、どうでしょうか。>皆様
http://www6.plala.or.jp/brigade/img/Eastmap.png これを見る限りだと空き地の町〜フキフキ港より距離が長いのがちょっと気になりまして。
もしアレでしたら「動作不良で途中で落ちた1発」説を推します。
>3月29日 7:26
うわー、引き算間違えたw
追記。
>>247 >空き地の町〜フキフキ港より距離が長い
↓
『大リーフ湾海岸線〜シモカワグラード間が』、空き地の町〜フキフキ港より距離が長い
3月29日1002時 東葉領ロックブーケ、東部方面総監部 まだ四月にもならないと言うのに、窓から吹き込む風はすでに心地よい穏やかさを運んでくる。 山間部に位置し、四月になってもまだ防寒具を手放せないシェンムーズガーデンとは大違いだ。 ここは葉鍵国軍東部方面総監部所在地、ロックブーケ。 陽光の街と呼ばれるこの都市は、人口120万を誇る東葉最大の港湾都市である。 同人コミケ国やアニメ国、さらにはエロ同人国などとの交易で栄え、商業港として見るならば下葉のラエート港を凌いで葉鍵国最大ともいえる。 はるかに万国貿易市場と港湾部を望む高台に聳える白亜の建物、その一室に彼らはいた。 葉鍵国軍東部方面総監鷲見努元帥、そして来訪者たる久瀬内務尚書。 (シェンムーズガーデンとアクアプラスシティの冷たさは、単に自然条件によるものではないのだろうが……) 気温に加えて雰囲気があまりにも寒く、重い。 むき出しのコンクリートと裸電球という、シェンムーズガーデンの地下壕の象徴的な姿を脳裏に浮かべて久瀬はわずかに目を細めた。 射し込む光が、余りに眩しい。 眩しく輝くのは陽光だけに非ず、久瀬の目にもここに来るまでの道中見かけた人々の表情は明るく映る。 (何時か……何時の日にか、この街のような華やかさを葉鍵国全土に広げたいものだが……) 内に起こった羨望が、ため息という形で外に漏れた。 政治的に安定し、経済的に繁栄する葉鍵国。 例え親殺しと呼ばれようと、冷血漢の代名詞と認識されようと、それは紛れもなく久瀬の夢であり、目標であった。 ただし、彼はその夢を自分の生きている時代には求めない。 求めるべきではない、と自らを律してもいる。
軍部による権力抗争、民族対立の深化と激化。世情は混沌を深めている。 今は、未来の発展の礎となるだろう『統一』という秩序を維持することが絶対条件。 全てを犠牲にしてでも、それは守られなければならない。 総人口5400万、国内において油田、ガス田と鉄鉱、ウラン等を産出する中進国。 資源に恵まれながらも、周囲を強大な敵対国に囲まれた中規模国家が、相互に敵対する4つの国家(しかも多くは外国の傀儡)に分断されたその将来に何が待つというのだろう。 独立を承認し国家を解体したが最後、それは次なる戦争の呼び水にしかならないことは目に見えているのだ。 それも、次の戦争は独立戦争をすら上回る激しく規模の巨大なものになるだろう。 次の戦争は内戦ではなく、戦争当事国の中には多くのモラルに欠けた核保有国が存在するのだから。 そしてその大戦争の果てに、自己を中心とする新秩序の構築を目論む存在―――VA財団―――の影があらわとなりつつあるのだから。 一カ所でもほころびが見えたなら、たちまち土手の全てが決壊するだろう。 そして、堤防を破った濁流は、たちまち葉鍵の、否、新旧エロゲ大陸の全てを押し流すだろう。 その未来を容易に予測できる、それほどに周辺の事態は緊迫化していた。 ―――その未来だけは阻止する。 それは久瀬の決意である。 彼が鍵を捨て、下葉に取り入ったのも、議会勢力を制圧するため父親さえ手に掛けたのも、数多くの屍の山を築き上げてきたのも、全てはただその目的を希求してのことだ。 この東葉を訪れたその目的、月姫民族の懐柔プロセスに東葉の協力を取り付けることとてその例外ではない。 彼は余人に貶されるほど冷徹な人物ではなく、敵手に呪われるほど邪な人物でもなかった。 むしろ、彼は独善性はあっても困難に立ち向かう熱意を抱き、秩序維持という社会正義を希求することに関しては純粋に過ぎるきらいさえある。
そう、久瀬内務尚書は独善的であり、純粋に過ぎた。 彼は彼の目的を追求するために権力を求め、今この瞬間に得られるものはない繁栄のために今の全てを犠牲とすることを許容した。 そんな彼の理想を理解できる人間はさほど多くなく、彼自身その事実を理解し、そして他者から理解されることを望んではいなかった。 むしろ、自分と共に行動するのは少数者で良いと考えている節すらある。 駒としてではなく、同志として人を募れば愚鈍な人間もその中に混じり、却って目標の貫徹に問題を惹起するとでも考えているのだろう。 結局、正面を見据えた眼差しは淡々と冷たい光を宿し、何層もの厚いヴェールで彼の内面を覆い尽くしてしまうのだ…… 「厄介なことに、なったようだね」 どうやら、ため息を趣旨を誤解されたらしい。 儀礼的な同情が篭められた鷲見元帥の言葉に、久瀬は思わず苦笑を浮かべた。 「いえ、むしろ事態は簡略化されたのですよ」 横方向に首を振り、そう応じる口許が苦笑から徐々に冷笑に変わる。 「民衆のことなどそっちのけで、核戦争のチキンゲームに興じる指導者達。さて、西側にはどう映ることでしょうね? この内戦に関わる連中は、どいつもこいつも民衆のことなど考えてはいない……それをさらけ出してやれば良いのです」 浮かべた冷笑は全ての内戦当事者、その権力者に向けられたもの。 その中には紛れもなく彼の主である下川直哉国家元帥も含まれていて、それと気付いた東葉首脳陣は思わず驚いたように顔を見合わせた。 彼らのそんな反応を、久瀬は心中楽しんでいる。 久瀬とて人間である。 一つところに決意を定め、人の風評など気にも掛けずにその目標に向けて邁進するとは言っても、やはりストレスとは無縁ではないのだ。 自虐にも似た際どい発言を唐突に切り出して、相手の当惑の様子を楽しむ。 それは、人から悪評以外の評価を受けることのない久瀬にとって、数少ない娯楽の一つなのだった。 もちろん、相手は選ぶ。誰にでも彼にでもという訳ではない
例えばスオンカスのような手合いが相手の時は、そんな様子を見せるはずもない。寝首を掻く事を得手とする手合いに隙を見せることの危険は、自分自身がそうであるだけに十分弁えていた。 この場合、鷲見という人物はそこまでの危険性を持たない。才覚の問題ではなく、まだしもまともと言える人間性の問題だろう。 彼はこれを失言と捉えるよりもむしろ、秘密警察を支配する久瀬が、鷲見の失言を誘うために罠を仕掛けたと捉えているのではないか。 テーブルを挟んで向かいに座する元帥の僅かに細められた双眸が、当惑と共に警戒感を湛えてこちらを見据えていた。 それはごく自然な反応だろう。これを好機と捉え、逆に罠を仕掛けてやろう等という人物は到底まともではないのだ。 それに―――万が一にも自身の立場が危うくなる事態が生まれたとして、それでも自分の働きひとつでいくらでも取り返せる。 或いは、自分が直轄支配する警察権力を使って、下川の耳に入る以前に握りつぶすこととて難しくはない。 それだけの自負と実績と能力と権力が、彼の手の中にはあるのだ。 「先年のアメリカによるアフガニスタン介入の場合、欧米の人権団体には北部同盟もタリバンも同列であるという批判が強く存在しりました。 その時は、北部同盟支援は国家主導の政策でしたのでその種の声はついに大きくは成り得ませんでしたが、今回の国際社会は人権屋主導で月姫支援に動いておりますから」 表向きは何の変化もなく平然と言葉を続ける久瀬に、しばらく東葉の面々は言葉もない。 先ほどの彼の言葉に衝撃を受けてもいたし、その後の彼の説明があまりに呆れたものであったことも理由の一部だった。 「……自分の正統性をアピールするのではなくて、他者も自分と同列だと晒して回るのか」 これも逆転の発想、とでも言うべきなのだろうか。 たっぷり三十秒ほども間を空けただろう、鷲見元帥の隣席を占めた唖然とした三宅中将の反問に、久瀬は無造作に頷いた。
「その通りです。予想通り、我々の同類であるところの田所氏は、市街地へのガス攻撃でもって報いてくれました。 ご丁寧に、これは報復だという『歌月十夜』との連名の声明文まで出してくれる配慮の細やかさです。 民間人へのガス攻撃を行った勢力として月姫の名前が出た以上、国際社会の正葉に向けられる目にも厳しいものが混じるでしょうね」 弾道ミサイルによる攻撃が、その種の再報復を招く可能性をあらかじめ織り込んでいたというのだろうか、この男は。 傲然と言い放つ久瀬に、総監部の将星たちの中には露骨な嫌悪感を浮かべる者すらいる。 こと、会談が始まってから無言を通す菅宗光大将などは、射るような眼差しで久瀬をねめつけていた。 「……それなら、空き地の町はどうなのか。 あれも、シェンムーズガーデンの予測の範疇だったと言うのか?」 はっきりとした不快感、敵意の表明を受けても臆するどころか何らの反応をも返さない。 そんな態度は、批判的立場に立つ人間の敵愾心をなおさらかき立てるものだ。 辛うじて表情に出すことを抑えた者でも、久瀬への問いには皮肉の棘を隠せないらしい。 鷲見元帥の問いかけに、初めて憮然としたように久瀬の眉が顰められた。 痛いところを衝いたのだろう、それを確認して鷲見は多少溜飲を下げる思いだった。 「いえ……あれは、予測の外です。アビスボートの寝返りは、攻撃を受けるまで我々は確認しておりませんでした。 ですが、彼らがチキンゲームに乗ってきたのは悪い取引ではありませんよ」 確かに、全ての戦争当事者を同じ地平に引きずり下ろすという目的のためには悪いことではない。 だが正直なところ、久瀬は空き地の町を軍事的には歯牙にも掛けていなかったというのが実際のところなのだ。
先の第10RR装甲師団トゥーハートの無様な敗退、当然のこととして秘密警察と憲兵隊は、その理由に関してすでに捜査を開始している。 サボタージュ容疑、或いは敗北主義的喧伝の容疑。捜査のメスは迷うことなく、トゥーハート師団の首脳部へと向けられていた。 久瀬と同じく、鍵出身である 今はまだ確固たる証拠を掴めていないが、久瀬はアクアプラスシティ帰還後早々には彼の逮捕に踏み切るつもりであった。 独裁国家の警察の利点(であり、最大最悪の問題点)である。逮捕してしまえば、後はどのようにでも料理できるのだ。 ―――裏切りさえなければ、空き地の町はいつでも落とせる。 何しろ空き地の町は誰の目にも電波花畑の傀儡で、しかも彼らの独立の理由は未来永劫誰にも理解できないだろう代物だった。 おかげで世間一般的には、権力抗争に敗れた青紫が進退窮まって電波花畑に国を売り飛ばす挙に出たのだろう、そんな解釈で通っている。 正葉の独立に好意的な諸国ですら、空き地の町の動静に関しては今日まで存在を無視するかのような態度をとり続けてきたのはそれが理由であった、 だから、青紫が三度目の転向をやらかして正葉に街ごと合流して戦争目的の正当化を図らない限り、何をやろうと他への影響は抑えられる。 軽く、そして今となっては途方もなく甘く、久瀬はそう考えていた。 そんなどうでも良い目標にわざわざミサイルを撃って見せたのは、一つにはしぇんむ〜の腹の虫を治めるため。 いま一つには、あまりにも明快な侵略者(=電波花畑)の存在を国の内外に改めて知らしめるためでしかない。 まさか、反撃を受けるとは考えていなかった。 彼らまで核戦力を(それも田所軍以上のそれを)保有しているとは想定していなかっただけに、出立前に策定したドクトリンをそのまま押し進めて良いのか一抹の不安はあった。 だが、国家元帥はこのまま空き地の町の核保有を知る前の外交戦略を推し進めることに腹を固めたようだ。 確かに今更、後には退けない。 後に退けないなら、突き進むしかない。 「もう一点、どうも我が国を細切れの分断国家に変貌させたいらしい国際社会に、我々が地表の半分を核攻撃可能であることを思い出して頂きたく」 「そうした思考はどうも、有り体にいってしまうと破滅的だな」
久瀬は、彼自身のその政策を『恐怖の総和』ドクトリンと名付けていた。 とある人気小説のタイトルから取られたその内容は、鷲見が呻くように呟いたごとくまさしく破滅的と言える。 新旧エロゲ大陸において現在の情勢の推移に危機感を覚える勢力を糾合し、更なる危機を煽り立てることで秩序の維持を図るという矛盾した政策。 現行秩序の維持を保つか、さもなくば世界の破滅かのチキンゲーム。 国内の民衆はおろか、内戦に色気を出した外国勢力もとんだ狂犬を相手にしてしまったものだと思わずため息が漏れた。 「核保有国の動静に、国際社会が関与を放棄することはあり得ない。 逆効果ではないのか?」 「関与そのものに関しては否定しません。ただ、関与の手法を変えさせたいだけですよ」 一方に与するような関与を遮断する、それが目標だというのだろう。 しかし、そんなことが本当に可能なのだろうか? 恫喝を受けた国際社会は、核の脅威を取り除くためにより踏み込んだ措置を執ってくる危険はあるのではないか? そう、反撃を受けた下川体制が、エロゲ国の諸軍閥を巻き込んでさらに危機を先鋭化させる挙に出たように。 もしかして、この青年は『統一された葉鍵国』が絶望的であるなら、全てをゼロに返すことを想定しているのかも知れない。 疑問を繰り返し検証するうち、恐ろしい考えが鷲見の脳裏に浮かんだ。 馬鹿な、と笑い飛ばしたい。出来るならば、の話だが。 一蹴するには、久瀬の政策はあまりに急進的に過ぎる。歯止めを掛ける様子が見られない。 最初からブレーキを踏むつもりのないチキンレース。 相手が一歩も引かなければ、退いてもそのタイミングがわずかでも遅かったならば……
「……勤勉な国民のための国家、というのが久瀬内務尚書のテーゼだと聞いたのだが。 何時から君は、単なる専制君主信奉者に宗旨替えしたのかな?」 想像もしたくない未来がかいま見えたような気がした。 背もたれに身を委ね、尋ねる声には精神的な疲労感が強く滲んでいる。 「はは。僕は毎日服を着替えるように、都合に併せて信仰を変えるんですよ。 荒れ野を歩くのに、礼服を着込んで出かける愚か者はいないでしょう?」 対照的に、普段の調子を取り戻した冷ややかな声がそれに応える。 ニタリという擬態語も相応しく口許を歪め、久瀬は額に掛かった前髪を払った。 「それとも閣下は、一つの宗派以外の信仰の存在を許さないような、がちがちの原理主義者の方がお好みですか?」 「止してくれ、私は鍵や正葉のような手合いは嫌いなんだ」 否応なく未だ続発する正葉過激派のテロリズムを想起させられ、鷲見元帥の表情が苦渋に歪んだ。 下川体制の一翼として一般には黙殺されることが多いのだが、東葉は紛れもなく一連の事態に於いては被害者に近い立場に立っている。 正葉独立以後のこの一ヶ月、三日と正葉過激派によるテロが起きなかった日がないのである。 スオンカス支配下で再編が進みつつある自治州警察が、次々と過激派の構成員を逮捕処断し、爆弾製造工場も含む複数のアジトを摘発しているものの、過激派の勢力には衰えが見られない。 衰退するどころか、むしろ活発化の様相を呈していた。 先日など、西部の小都市エルムイが数百人の正葉武装勢力に襲撃され、中心部の市役所広場が三日間に渡って占拠されるという事件が発生している。 東葉ではこれまでにない規模の軍事蜂起である。鎮圧にはシンキバ市の第1204警察連隊一千名では足りず、ユウラク市の第1202警察連隊からニコ中隊を手当しなければならなかった。 それから激しい市街戦、最終的にはMi8ヒップ輸送ヘリまで動員し、警察部隊の陸空両面からの市役所突入で幕を閉じるまでが一昼夜。 百二十名余の武装勢力を殺害、逮捕するのと引き替えに、東葉が支払った代償は軍民併せて二百三十余名に上る。 連続するテロの果て、起こるべくして起こったというべきこの事件は、東葉の軍民が蓄積してきた正葉への悪意をほとんど沸点ぎりぎりまで押し上げている。
(しかし、それもこれも元はといえば……)
久瀬を見遣るの中村毅幕僚長の瞳に、少しばかり穏やかならぬ光が宿った。
彼が久瀬に抱く怒りは、感情論としては当然だろう。
だが、理屈としては些か筋違いである。少なくとも、久瀬だけの責任ではないだろう。
中村幕僚長もそれを理解しているから、諭すような澤田真紀子大佐の視線に気付いてばつが悪そうに視線を外へと向けたのだ。
事件後、捕縛した叛徒の取調の過程で判明したある事実。
それは、下葉と東葉の間に横たわる、根深い相互不信の構図を浮き彫りにしていたのである―――
<糸売>
アホほど長くなったので、残りはいずれ分割して(汗
交渉ごとは長くなる……こうしてこの先の展開を確保宣言しちゃうのも、一人リレーの原因ですよね(汗
アフォだな自分……
とりあえず、
>3月28日 12:29 柳川、東葉・ロックブーケに到着。
>>137-140 柳川は久瀬の誤り、
>3月29日 7:26(現地時間13:26) アリスソフト長谷川外相、メビウス・プルトップ軍管区における南部総督府各軍勢の集積を下葉に通達。
情報の伝達経路が逆ではないかとー(笑
>>257 投下乙です。
>柳川は久瀬の誤り、
>情報の伝達経路が逆
あ、失礼しました。
引き算間違えといい、何か自分の脳を疑いたくなりますわw
そうすると退屈会議もNGでないかと提起してみる。 大佐のキャラ違和感ありすぎ、あれほとんど別人だし。 >240 全部知っているふうに言うのよくないよ。 じごぐるなら何も言わないけどじごぐるじゃなきゃもうちょっと言葉を選んだら? 顧問のSS否定するだけとかいうけどさ結果的にそうなってる部分もあるんじゃないの。 否定SS多いけどさ、俺もそこは悪い所だから直せと思うけどNGをすぐ出すよりよくないかとも思った。 それに嫌なら見なけりゃいいじゃないかって言うけどさアメリカまで出てきてる時点でもう板違いの領域入ってないか? 2ちゃんから遠く離れてるし。
今一度読み返してみたが、特段不都合を感じるとは思われなかったけど?
違和感というが、以前からの流れからすればあんなものだし。
それに、例え違和感を感じるとしても十分修正可能な範囲にとどまっているから、
後の書き手もさほど苦労するとも思われないが。
>>26-27 >>74-76 それと本人が
>>209 で修正が入った
>>170-175 は収録、それ以外はNGとしたい。
>違和感を感じる
旅団長閣下!RRに感染なされましたか!?(w
>>244 メルティブラッドが確認されたのは0100時ですね。
>>244 失礼しました。
何も言い返す言葉が無いです。
264 :
240 :03/01/04 00:20 ID:ghvTTtB5
>>259 >全部知っているふうに言うのよくないよ。
>じごぐるなら何も言わないけどじごぐるじゃなきゃもうち
>ょっと言葉を選んだら?
ん、悪い。
確かにちと言葉が過ぎたかもしれん(つまり俺は、じごぐる
ではない:笑)
どうもここんとこ、スレ見てるとフラストレーションがたまるのよ。
それこそ嫌なら見なけりゃ、の世界なんだが。
軍事顧問団はさておいても、HNからして『AF書き手』だ
の『月姫@名無し参謀』だの「他のパートはリレーしません」
宣言してるような名乗りはいかがなモノかとか、そうして自
分のパートを囲い込んだ書き手がただ担当勢力を優位に立て
ようと、そればかりに血道上げてるように見えるとか、ね。
んでもって、否定SSに関しては、巧くやってくれりゃそれ
はそれで構わないんだけどね。
ただ、露骨なので読み手としては萎えるのだ。流れを無視し
ての独断専行多いし。
アメとかの介入が板違いくさい、ってのには実は同意で(だ
から240でも「言ってる自分でも微妙」なんて言ってるわけ
だが)、どうせなら初期に兵器の原産国とかも2ちゃん世界
で設定しちまえば良かったのになぁとは思う。
ただ、主体が葉鍵のスタッフ&キャラである限りは問題なか
ろと個人的には妥協してるんだが(今更変えろとは言えないし)
……愚痴ばっかになってますます流れ汚すので、これ以上漏
れは出てきませんでつ。
言い逃げスマソ。
265 :
鮫牙 :03/01/04 17:47 ID:9tfLwiTe
御久しぶりです。 そういや、葉鍵国って師団の上に軍団が無くて、師団の直ぐ上が軍なの? 俺はそのつもりで書いてたんだけど。
編成表見る限りだとそうらしいですね。あまり意識して無かったですが。 機動性を高める為だとか将星たちの競り合いの結果とか、色々理由がつけられそう。
267 :
名無しさんだよもん :03/01/05 08:31 ID:K43ErL2y
hosyu
268 :
ノーマッド ◆r442iNH6hw :03/01/05 09:29 ID:0kIHcqhJ
269 :
ノーマッド ◆7GyBO3CLl. :03/01/05 09:46 ID:0kIHcqhJ
270 :
ノーマッド ◆UQww/wGhQo :03/01/05 09:56 ID:0kIHcqhJ
東葉領内で起こった、大規模な正葉系武装勢力の蜂起事件。 起こった、という過去形の表現は正しくないかも知れない。 今もって、エルムイ市〜ノセシェチカ市のラインで逃亡した数百人の武装勢力と、これを追撃する警察部隊の戦闘は続行中であるからだ。 戦闘力を維持したまま逃走を続ける彼らの一部はすでに、下葉=東葉の境界線まで浸透潜伏しつつある。 これを受け、シモカワグラード等から出動した下葉の警察部隊もようやく掃討作戦に参加しつつあるが、遅きに失した感は否めない。 それでも、要請から一時間で最初の部隊が進発するという状況は、これまでの両警察官の協力体制を考慮すれば驚異的な素早さであるといえた。 東葉にしてみればそれは当然の協力であり、本来もっと手早く準備を整えるべきなのだということになる。 彼らが不満を覚えるのには、それ相応の理由がある。 東葉警察が得た捕虜によって明らかにされたのは、事件に関与したゲリラの大半が、下葉に拠点を置いていたグループだという事実。 そして、それらのゲリラが易々と下葉警察が厳戒を敷いているはずの境界を突破し、東葉へとその活動拠点を移したという事実であった。 もともと、東葉の治安機関が把握していた域内の正葉過激派の構成員は、不明確な点が多いながらも約千名、多くて千五百名というところである。 その構成員の数は支援者も含めてのものだから、実際の戦闘員となるとその数はさらに絞り込まれる。恐らく五百名前後の数だろう。 その五百名とて、一カ所に集結して活動を行っているわけではないことを考えると、今回の事件に投入された正葉過激派の兵力はあまりに多過ぎたのだ。
東葉で正葉過激派が跳梁跋扈するその一方で、下葉領内では月姫ゲリラの跳梁する北部を除き、ゲリラの活動は完全に封殺されていた。 思い出したように発生するテロルも倉田派と久瀬派の政治組織による街頭暴力が主で、正葉の関係するものはまるで見受けられない。 もちろん、正葉や鍵のスパイ網の摘発は毎日のように続いていたが、彼らによる下葉領内での蜂起計画は、国会解体前後の大粛正で完膚無きまで叩き潰されていた。 今や、下葉における正葉及び鍵系の活動家はその主要な幹部を処刑され、武器やアジトも喪失して組織として崩壊した。 辛うじて難を逃れた連中も少なからずいるだろうが、彼らは隠匿に成功した武器と共に北部の月姫ゲリラに合流したのだろう。 少なくとも、東葉の警察首脳はそのように判断していた。 下葉北部地域において、月姫ゲリラは遠野家正嫡派が主流であり、正葉過激派との連携は強固なものではないという事実を把握していないが故の誤断だった。 順当と思われた警察の判断、それは一部においては事実であったが、より多くにおいて全くの誤断だったのだ。 蓋を開けてみれば、何のことはなかった。 難を逃れた数百名の正葉原理主義者の内、月姫に合流したのはわずか数十名。 残りは下葉における拠点維持を諦め、東部の摘発が下葉より弱く、また下葉と東葉の警察が相互に意志疎通を欠くところがある点を衝いて越境潜伏を図っていた。 東葉警察は、その事実を全く掴んでいなかったし、アクアプラスシティからその旨連絡も受けてはいなかった。 もちろん内務省は、彼ら自身そのような動きを掴んでいなかったと弁解してはいる。 東葉がそうであるのと同じように、彼らもその時点では月姫ゲリラ内部に深刻な内部対立があるという事実を知らなかった。 だから時期を前後して田所の北部侵攻が始まり、同地での月姫ゲリラの活動が顕著になったため、そちらに合流したものだと判断していた、と。
その説明は、相互不信に根ざした疑惑を払拭するには到底足らないものだった。 なお内務省内におけるセクショナリズムや、下葉から東葉への何らかの悪意がこの不備に繋がったのではないかと、東葉治安担当者の中には疑惑が遺っていた。 それはむしろ東葉から下葉に向けられた悪意、セクショナリズムの類なのだが、それを抱いている当人は気が付かない。 東部方面の警察及び国境警備隊は、いささか下葉本土のそれとは扱いが異なっている。 当然の事ながら、アクアプラスシティの内務省本省は東部の警察にも他同様の指揮命令権を有している。しかしそれは、建前上のことでしかない。 下川が鷲見達F&Cからの離反組を懐柔するに当たって与えた、東部四州における極めて広範な自由裁量権。 そこには一般に東部自治州と称される東部方面総監部支配の諸州の軍権だけではなく、行政権もまた委ねられていた。 行政の一機関である警察も、当然のことながらその自由裁量権の例に漏れるものではない。 政治警察、治安警察、そして警察軍、さらには公的には存在が否定されている秘密警察までもが全て、鷲見の手に委ねられたのだ。 下川から警察権の全権を与えられた東葉はしかし、それを下葉そのままの流儀では運用しなかった。 下葉におけるあまりにも抑圧的な警察権力のあり方は、軍事独裁という政治体制下にありながらも自由主義的な傾向を強く持つ東葉のカラーにはそぐわなかったのである。 独立後しばらくは、軍政下においてエロ同人系ゲリラ(月姫勃興以前のそれ)のテロルは後を絶たなかった。 だがそれらのテロルは、総監部が軍事力による武装組織の討伐を進める一方、彼ら自身が同人主義の傾向を強く示したことで次第に沈静化の方向へと向かった。 事態が沈静化し、完全な軍政から軍部監督下の行政組織を再構築する余裕が出来たところで、東葉は警察力の再編成に乗り出した。 まず秘密警察の機能を最低限の非合法活動を遺して政治警察に移管し、その超法規的な警察力自体をほぼ消滅させた。 東葉における秘密警察が、アクアプラスの秘密警察本部(久瀬警察大佐が本部長だった)の直接命令を優先したことを懸念しての解体だった。
ニコ旅団八千名が移管された国境警備隊、六個連隊約六千名を委ねられた警察軍。 これら内務省の準軍事組織については、戦時に於いては軍の指揮系統に組み込まれることとなった。 また、警察軍に関しては戦車や重砲などの重装備を解体し、歩兵用携帯火器と機銃装備のBTRのみを装備する対都市ゲリラ型の武装組織に改編された。 独立時のソフリン条約で設けられた、葉鍵国の常備兵力を40万(内訳は葉30万、鍵10万とされたが、すぐに有名無実化した)に制限する自主規制条項。 この網をくぐり抜けるため、警察に準軍隊としての打撃力を与え、また軍内部反対勢力への牽制と位置づけたた下葉とは根本的に異なるシステムである。 治安対策にも携わるため、他の警察組織との権限重複が問題になることの多かった憲兵隊は、総監部においては警務隊と改称された。 改称されると同時に、その役割は主に軍内部の秩序維持に限定され、通常のエロゲ国工作員・テロ対策などは政治警察と治安警察が共同で担当することとなった。 大規模な変化だけでこの三つ、他にも様々に手を加えた東葉警察は、その組織構成も警官の帰属意識も、下葉のそれとはかなり異なったものとなった。 下葉の警察は、国民に畏れられる存在である。 東葉の警察は、国民に親しまれる存在であった―――下葉と比較して、の話ではあるが。 東部方面総監部設立当初のこうした組織改革は、正葉の独立以後急速に復古的再々編が進みつつある。 当分平和が続くことを想定していたこの方策では、到底テロルを押さえられないことがはっきりしてしまったからだった。 超法規的存在である秘密警察が復活し、内務省の各準軍隊には重装備の再配備が進められている。 夜間、警察が民家のドアをノックすることも多くなり、事態を知る官僚たちにとっては、壁や植え込みに盗聴器が備え付けてあるのではと不安を抱く時代が到来した。
だがそれでも、内務省出身のスオンカスを警視総監に迎え、急速に下葉の警察体制に近づきつつある東葉警察であっても、内務本省との意識のズレははっきりと存在した。 互いが互いに対して抱く信頼感の根本的な欠如はには深刻なものがある。 特にアクアプラス内務省が、菅大将が一時期高橋を匿っていた事情を薄々察知してからは、それと気付いた東部との間で腹のさぐり合いが続いているだけに、火種には事欠かないのである。 軍に於いてもそれは同じ、中村幕僚長が怒気を我知らず顔に出してしまったのには、そうした背景事情がある。 「……そう、閣下があの手合いがお嫌いであることは自分も重々承知しています。 今回僕……失礼、自分がロックブーケにまで参りましたのも、閣下と我々、つまりは葉鍵国の共通の敵であるあの手合いの手足を縛るため、閣下のお力をお借りしたい事があるからなのです」 「頼み……? シェンムーズガーデンから命令ではなく要請とは、珍しいな」 中村と澤田が目配せを交わしている間にも、久瀬と鷲見の会話は進んでいた。 ようやく久瀬が切り出してきた本題に対して、鷲見は警戒感を隠さない。 下川が命令といわずに使いに持たせて寄越す頼み事など、ろくでもない事に決まっているからだった。 いや、普通の命令だってろくでもないことであることは珍しくない。 だが、要請、頼み事の類というのはそれ以上に不吉だ。 いつでも頭ごなしにどやしてくるあの男が『要請』などと、あまりにも怪しいではないか。 あの国家元帥が遠慮がちに頼まざるを得ないのだ。どれほどリスクのある作業だと言うのだろう。
……結果として、久瀬が持ち込んだ要請は、案に違いして労力としてはそれほど手間の掛かるものではなかった。 だが、リスキーであることには疑いがなかった。 新旧エロゲ大陸で迫害を受けるとある民。 東葉との間には、わずかな交流しか持たない彼らのために、一つ書簡を書いてくれと言うのだから危ういこときわまりない。 「閣下。我々の指導者、下川国家元帥は葉鍵国の現状を鑑み、領内にて月姫民族に一定の自治権を与えることを決断されました。 しかしながら体制内においては月姫民族への反発も根強く、彼らの心情をおもんばかると最終的な判断をつけかねているのが実状です。 つきましては、我らが指導者は親愛なる友人である元帥閣下に対し、この問題に関して『適切な助言』を頂きたいと願っておられます―――」 <糸売> とゆわけで投了。 あとは誰かお願いしまつ(これはこれで無責任じゃのう……)
hosyu
278 :
殉死 :03/01/06 00:00 ID:3QQDUc40
3月29日15:30時分 鍵自治州けろぴーシティRR親衛隊第1軍司令室 「ルミラ様御茶ですよー」 「様じゃなくて、司令と呼びなさいって言ってるでしょ」 RR親衛隊第1軍、自らの直属部隊RR親衛隊の余りの御粗末な実力に危機感を抱いたしぇんむー が装甲軍から引きぬいた戦力で編成した、親衛隊の最精鋭である。 その指揮官 ルミラ=ディ=デュラル陸軍中将は副官アレイ陸軍少佐に手にしていた書類の机の上に 置きながらそう言った。彼女達親衛隊第1軍は一般RR将校としての階級は与えられて無く、胸に着け てる階級は装甲軍や東部方面軍、首都軍同様一般陸軍のそれのみであった。 RR親衛隊第1軍の編成当時、武装RR親衛隊の制服と階級章が支給されたが、ルミラ以下RR親衛隊 第1軍の全ての将兵がこれを大本営へと送り返し、装甲軍同様に旧国防軍の軍服と階級章着続けている。 このしぇんむーのRR運動に対する完璧なる抗議はしぇんむーを激怒させたが時は2.14事件の傷も 冷めない時、ここで再び大粛清を行う訳にも行かず、結局RR親衛隊第1軍の処遇は司令官のルミラ中将 の葉鍵統合軍への転属、事実上の左遷という形になった。 そして、今度の内乱で彼女は再びRR親衛隊第1軍の司令官として返り咲いた。この後、彼女等にRR への合流を無理強いをすることなく、RR親衛隊第1軍はRR親衛隊内の非RRとして存在している。
279 :
殉死 :03/01/06 00:02 ID:3QQDUc40
「それで、引き上げは順調なの?」 「はい。この調子で行けば、あと3日後にはアクアプラスシティに全軍が帰還出来ます」 鍵自治州占領区の治安維持の任についていた、3個師団からなる、RR親衛隊第1軍は葉鍵大本営の鍵 攻略の戦略ドクトリンの変更と共にその任を解かれ、アクアプラスシティへの帰還命令を受けていた。 「で、閣下私達はこの後どうなるんでしょう?」 「多分、私達はロハイト方面の防衛の任が与えられると思うわ。あそこを守っていた警察軍が壊滅してしま ったでしょ」 ルミラが銀髪を手で鋤きながら言う。 「はい、大規模な奇襲攻撃の挙句ガス攻撃を受けたそうですね」 「ええ、司令部は斎藤警察准将以下全員が戦死しておまけに指揮を代理していた岡田警察中佐はシェルシ ョックで軍精神病院に収監されたそうよ。まさしく魔女の釜だったみたいね。と、無駄話はこれまで。アレイ 少佐、報告が終わったのなら任務に戻りなさい」
280 :
殉死 :03/01/06 00:03 ID:3QQDUc40
アレイが部屋を後にした後、ルミラは背を椅子も預け思った。 頭に浮かぶのは冷徹なる独裁者、下川直哉国家元帥。 何が閣下、貴方を変えてしまったのだろう。ルミラはふと、軍服のポケットに忍ばしている写真を取り出した。 其処には未だ若く、そして屈託なく笑う。しぇんむー、水無月大将、そして自分がいた。 まだ、葉がエロゲ国のパルチザンだった頃の写真だ。 そのAKを片手に笑う姿を見る度にルミラの心は酷く痛む。 5,14事件、流血の大粛清。私はあの時貴方を非難する事しかしなかった。 貴方が其処まで追い詰められている事に気がつかなかった事を棚に上げて。 本当に彼が冷徹なる独裁者なら、何故私はあの時もそして今も粛正されないのだろう。 私は本当はあの時、閣下にどんな言葉を言えば良かったのだろうか。 ――あの時私が貴方を止める事が出来れば、貴方はこんなにも後悔を重ねる事も無かったのに。 ルミラは瞼を閉じて、その薄汚れた古い写真を胸のポケットに戻すと、心の中である誓いをたてる。 閣下、私は最後まで貴方の味方であり続ける。それがあの時貴方を止める事が出来なかった私の償 い。もう貴方を止められないのなら、共に。 ――後世の戦記小説の第一人者佐藤○輔氏は何故ルミラ中将が粛正されることは無かったのかについて こう説明している。 「彼は一見冷徹で孤独な独裁者のようで、実はそうではなかった。故に一一やDOZAルミラといった 数少ない理解者を失うのを恐れた」
281 :
鮫牙 :03/01/06 00:09 ID:3QQDUc40
ルミラの所属がフリーデンタール戦隊では親衛隊、鉄槌では装甲軍になってたので こういう形にしてみました。
3月29日1450時 東葉領ロックブーケ・東部方面総監部 「私としては、久瀬に了解の旨を伝えたいと思うが――諸君に反対意見はないか?」 一旦休憩となった鷲見―久瀬会談。休憩室に引き上げた鷲見は、存念を単刀直入に切り出した。 「何故そう思う――と聞きたいところだが、確かによく考えればそれ以外に選択はないようだしな」 会談の様子をモニターで見ていた菅が、ため息混じりに苦笑した。 「確かにリスキーな行動だが、見返りもまた大きい。両者を比べれば、まぁ看過すべきリスクじゃろ」 今ここで久瀬の提案を了承し、下葉の正葉―鍵同盟分断策に乗れば、確かに同盟陣営との関係は急速に悪化する。 現在細々と非公式ルートで保たれている鍵自治州との外交・通商は完全に途絶するのはまず間違いないし、 正葉やTYPE-MOONとの関係も修復不可能にまで悪化する可能性が高い。何よりこれは、 今次内戦に東葉が積極的に介入するとの意思表示でもある。今までのように事実上の中立を保つことは できなくなる。 だがこれらのリスクは、下葉―東葉同盟――後世の史家に言わせればアクアプラスシティ・ロックブーケ枢軸 ――を維持し続けるならば、必然的に通る道筋でもある。どのみち東葉は高橋と菅の共闘を否定した時点で、 正葉と対決さざるを得ない道を選択してしまったのだから。違うのは、それが決定的になる時期が今すぐか、 それとももう少し先か、だけだった。 「確かに中長期的スパンで見ればその通りだと思います」 上記のポイントをふまえた上で、中村は発言した。 「しかし、久瀬の提案に即答するというのは如何なものでしょうか? 我々は、今少し実質的な中立を装って今次内戦への決定的瞬間における介入を窺うべきではと」 「だが、そう悠長なことも言っておられまい。君の言う決定的瞬間とは、例の郁美君の『アレ』じゃろう?」 「……」 コクンと、菅の問いに肯く中村。
「確かに『アレ』が一段落するまでの間、西方国境を騒がせたくない気持ちはわかる。 とはいえ、もうそんなことを言っていられない情勢だというのは、中村君もよく知っているはずだ。 正葉原理派の跳梁を押さえなければ、我々は安心して『アレ』を実行できない。 そしてそれを押さえるには、原理派どもに下葉と我々が緊密な関係にあると見せつけて、牽制しておくことがまず大事だ。 その意味でも、久瀬の提案をすぐに受け入れることの意味杯大きいと思うんじゃが……どうかな?」 「確かに……そのとおりです」 素直に肯く中村。 「そうよね……それに久瀬がこっそり示した見返り……あれも悪くはないし」 話を引き継いで、みつみはギッと椅子の背もたれに身を預けた。 この会談に先立って、久瀬は「助言に対する下川国家元帥の謝礼」がどのようなものになるかを、 非公式に内示していた。つまり、重油等各種燃料等の割当量増加、“トゥスクル”早期戦力化のための熟練乗員の派遣、 そのほか諸々の戦略優遇策(これは久瀬が示したと言うよりも、中上が前もって取引条件として提示していた物だった。 ただこれは、内戦勃発によって既に決定されていた事項だったのだが)という諸々の『謝礼』が示されたのだ。 これらを受け入れるメリットは、確かに月姫難民問題に介入するデメリットを上回る――と彼らは判断していた。 それから小一時間ほど話が進んだが、大勢に影響はなかった。つまり――東葉は下川に対し 『適切な助言』を行い、東葉はその『謝礼』を受け取る。助言の内容や謝礼の中身に関する条件闘争については ――まあそれは実務レベルの協議になるから、今この場で決めることではない。 「ただ、一つ確認しておかねばなるまいな」 話を大きくまとめた後、菅はぼそりと呟いた。 「果たして国家元帥閣下が、本当に空き地の町や正葉へ今後も躊躇せず――そう、 恫喝ではなく本当に弾道ミサイルを撃ち込むのかどうか、それを見極める必要があるじゃろう。 明日にも核戦争が始まろうというときに、今更難民保護で言葉を飾っている暇もなかろうて」
空き地の町が館山総理の号令の下、全面核戦争覚悟の背水の陣を強いた――この兆候は、 東葉の情報機関も大筋でつかんでいた。もっとも、空き地の町はその動きを隠そうともしなかったのだから、 別に不思議でもなんでもない。 「そうだな、その点を……」 鷲見がそう答えかけたとき、手元の小型液晶モニターが点滅した。防諜チェックを通った 内部メールがたちどころに表示される。 「ほぉ……今、久瀬から『非公式情報』が入ってきたよ。どうやらあいつ、今頃我々が何を話しているか、 大筋で予測していたのだろうな」 「それで、なんと?」 中村の問いに、鷲見は苦笑で答える。 「国家元帥閣下は、あくまで本気で、一歩も引かずに弾道ミサイル攻撃を強化続行する―― そう久瀬に訓令を発したそうだ」 息をのむ列席者。だが――だが鷲見は、苦笑の度合いをますます大きくした。 「しかし久瀬は、このような『私見』をよこした。『今回の件で消耗したミサイルの増産配備を待つため、 空き地の町および正葉への攻撃は生産工程的な制約を受けざるを得ないだろう。そしてそれが終わっても、 不良品のチェックや戦略ロケット旅団に対する謀略を完全排除できるか、断言はできない』とな」 「つまり――」 「そうだ。下葉はあくまでも『本気』の姿勢を崩さない。ただし実際の攻撃はミサイル増産の遅れや 正葉―鍵同盟の戦略ロケット旅団への妨害工作を言い訳として、当面は延期される―― そう言っている」 「それはそれで結構じゃが――どういう風の吹き回しじゃ? つまりは空き地の町の核恫喝に屈したんじゃから、 もう少しうまいいいわけを……」 「多分、時間稼ぎじゃないかな」 「ん? 時間稼ぎ?」 みつみのつぶやきに、菅が顔を向ける。 「だって……空き地の町の優位の源って、つまるところ“アビスボート”のSLBMじゃない? それを言い換えれば、“アビスボート”を撃沈しさえすれば、優位は崩れるわ。 こんな核恫喝なんて夢と消えるんじゃない?」
「そうか――」 中村が言葉を引き継ぐ。 「元凶を断つための、時間稼ぎの言い訳か」 みつみの言うとおりだった。空き地の町の戦略的優位性は、つまるところ“アビスボート”に、 というよりはそれが積んでいる核弾頭搭載SLBMに全面的に依存していると言っていい。 以前ならば重要だっただろう電波花畑の存在など、現在ではまったくの空手形でしかなくなっている。 電波花畑の威光は、下葉―アリス共同声明によってその効力を完全に喪失していた。 それはともかく、一か八かの賭に出た空き地の町だが、その大元の“アビスボート”を撃沈してしまえば、 その優位性などいとも簡単に瓦解してしまう。確かに危険な核のチキンゲームを続けるよりは、 そうした方が安全確実ではある。もっとも、どうやって撃沈するのかという難題はあるのだが。 そう――下葉は、下手な言い訳で時間を稼ぐ間に“アビスボート”を撃沈する腹づもりだったのだ。 ――数分後 幹部たちの意見を『了解を即答する』にまとめ上げた鷲見は、再び会見室へと足を踏み入れようとした。 だがその直前、慌てて駆け寄ってきたみつみからプリントアウトされた1枚の用紙を受け取る。 しばらくそれを眺めてから――鷲見はテーブルへと歩み寄り、着席した。 既に着席している久瀬にその用紙を渡しながら、ほっとしたような皮肉気なような、判然としない笑みを浮かべる。 「久瀬内務尚書、要請にお答えする前に、ひとつ喜ばしい報告が入った」 「ほぉ、なんでしょう?」 「たった今入った情報だ。電波花畑連合国は、今次内戦における全ての介入を半月以内に全面停止する旨を発表した。 内戦勢力に対する新規の物資援助は本日付けをもって全て停止、通信等の後方支援業務も半月後に全て停止される。 過去何らかの軍事支援を行った人間も半月以内に強制退去させるそうだ ――おめでとう、これで残る障害はVAとホワイトハウスだけになった、かな?」
戦後かなり経ってから ロックブーケ中央放送局第102スタジオ 「ドキュメント葉鍵内戦・第四回 内戦戦局のターニングポイント」収録風景 「教授、何故この時期に、電波花畑連合国は葉鍵内戦からの撤退を余儀なくされたのでしょうか?」 「実は、電波花畑の内戦からの排除というのは、下葉が動き出す前にVA財団が積極的に策を講じていたんです。 現在残っている馬場総裁の命令電文を読み合わせていくと、葉鍵内戦における主導権確立を狙って、 電波花畑の介入拡大を阻止しようとしていた馬場総裁の動きが浮かび上がってきます。 その意味で、下葉―アリス共同声明は馬場総裁にとってまさに渡りの船でした。 下葉、アリス、VA、そしてVAと利益共同体となっていたアメリカはこの声明を口実に一斉に 電波花畑の退場を求めたのです。伝統的に外交が弱い電波花畑は、これに抗することができませんでした」 「しかし教授、下葉―アリス共同声明は、つまるところVAやアメリカをも標的としていたはずですが?」 「その点についてですが、近年になって馬場総裁からアリス上層部に多額の工作資金が流れていた実態が 明らかになりました。その詳細は不明ですが、少なくとも馬場総裁は裏金と特務工作によって、 アリスを丸め込めると判断していたはずです。そしてそれは限定的ではありますが正しい判断でした。 ただし完全に丸め込むことは不可能でした。そのため、アメリカからの直接的な支援は、 正葉航空隊の訓練および投入を最後として途絶えてしまいます。これ以後日米欧を中心とする葉鍵内戦への介入は、 VA財団を通じた武器の制限的な売却など、限定されたものへと変化していきます。 そしてVA財団の内戦介入方針も、一方の陣営を目に露骨に支援していくものから、 両者のパワーバランスを巧みに調整するものへと変化せざるを得ませんでした。 ただこれに関しては、馬場総裁が以前から目論んでいた方針だった、とする学説もあります」 「なるほど。それと教授、今まで電波花畑に依存していた空き地の町がすんなりこの方針に従ったのは、 何故なんでしょうか?」
「今まで見てきたように、館山総理はSLBMによる核恫喝戦略を発動することで、 電波花畑の存在抜きで下葉と対抗できる戦略へと転換しました。ですので、 今になって電波花畑が撤退したとしても、別段影響は少なかったのです。 VA財団が電波花畑の抜けた穴を迅速に埋めると打診してきたこと、 電波花畑が現地政府による兵器接収を対価を払うことで認めたことなども影響しているでしょう。 ですから、本国の方針に抵抗しようとした一部分子の身柄拘束にも踏み切ったわけです」 「解説ありがとうございます、教授。 ――さてみなさん、こうして葉鍵内戦の戦局は3月末をひとつの区切りとして大転換していきます。 ここに、内戦は序盤から中盤へと大きく変化していくのです――では、続きをどうぞ」
>>280 こーゆー台詞って塩野七海の方が似合っていると言ってみる。
でも(・∀・)イイ!!
>288 あは、やっぱり旅団長だった。 >26-27が収録されるならネクストンがこなきゃ変だとおもったけどどうかな旅団長。 同じくVA財団だと、>3も>6も違和感を感じる、特に>6のYET11を鈴木元帥に前に作者が訂正したんだから。
軍事が良く解らんスタッフ萌えの自分としてはアメリカの本格的な介入は無くなった(?)ようなので一安心。 しかし、エロゲ国ではアリスが最大勢力なのか。 個人的にはアリス、エルフ、F&C辺りが横一線くらいだと思ってたんだが。 大戦記2の「狸どもの競演」でビッグ3とか言われてたし。
>>290 その点については基本的には後の書き手にゆだねるけど、
・
>>26-27 の該当部分については作中のその時点における誰かの『願望』にすぎず、未来を確定させる記述は登場していない。
・
>>2-6 については、元々ネクストン生まれの人間が電波花畑に渡りそこで軍事顧問となって空き地の町へ行き、
そして軍事顧問を辞めてネクストンへ戻ったとすれば説明可能。
・同じVAで矛盾するのでは、という点については
http://www6.plala.or.jp/brigade/support/ss04/396-399.htm > VA総裁たる馬場の言動には、ひとつの特徴があった。自分の本心を絶対に人に明かさないのだ。
>VAの戦略方針は常に彼自身で決定し、決して参謀タイプの人間に頼ろうとしない。
> そしてそれを徹底するため、「駒」の人間たちには本心とは似ても似つかぬ戦略方針しか語らない。
>それも、ひとりひとりに全く別の理由を――そこまで極端ではなくても、バラバラな理由をそれぞれに話し、
>本心を徹底して隠してしまう。このため、馬場の言動からVAの動向を探ろうとする敵対勢力の試みは、
>成功した試しがなかった。
> 現に、田所や巫に話した「葉鍵内戦介入の理由や目的」は馬場の本来のそれではない。
>全く違う――とまではいかないが、彼の本心はかなりかけ離れたところにあった。
とあり、VAが全く違う名目で別々の勢力に介入することは不自然ではない。
というわけなんだけど、どう?
>・
>>2-6 については、
の前に>「>26-27と」が抜けてた。
>>291 それも例えば
アリス>F&C=エルフ>>>>他の軍閥
みたいな規模だったら、「ビッグ3」と称してもそう不自然ではないと思う。
>旅団長 まぁ、そうなんだけどね。 アリス=下葉声明の時に「エロゲ国でも旧大陸の政権派とされる諸軍閥が後続した」というのに エルフとかもこれに含まれるのかな、とちと気になったもんで。 後の書き手の裁量でどうとでも書けるようにあえてボカした書き方したんだろうけど。
3月29日 新大陸標準時 15:12 空き地の町 「待て! なあ俺の話を聞いてくれよ!」 「……本国からの命令は既に連絡済のはずだ! 大人しく座ってろ!」 「クソッ、なんだってこんな時期に撤退命令が出るんだ!?」 軍事顧問団の面々にとって、それは晴天の霹靂だった。つい30分ほど前、突如 電波お花畑本国より撤退を伝える旨の電文が送られてきたのだ。あまりに突然過 ぎる命令ゆえ顧問団の多くは自治政府側に抗議をしたが、舘山総理以下首脳は 簡潔な説明をするに留まり、質疑応答の場は設けなかった。 「さて、大佐殿。ご命令どおりご自身の部隊の方々には黙ってもらいました」 「……ああ、すまないな」 「各自の行動が自由裁量で任されている電波お花畑でも、国際社会には太刀打 ちできなかった。そういう事ですね?」 「そうだな。確かにその通りだ」 「では、これからの予定を詰めるとしますか。物資を載せた輸送船――帰りは往還 船になりますが、その到着がおよそ28時間後。30日の午後7時ごろ」 「荷揚げやら庶務を計算に入れて、出発はだいたい2000時になるな」 「では、それまでに引き継ぎ業務を完了させてください」 「了解した」 「――しかし、残念な結果に終わってしまいましたね」 「?」 「正直な所、私はあなた方を評価してました。今回の撤退も……代案はあります が、結構な痛手です」
代案、というのはつまりVA財団による援助の事だ。先方は『電波お花畑の穴を 埋める』と述べたが、それが資金面での事なのか軍事力を指すのかは触れてい ない。 何しろ馬場総裁は気まぐれで有名だ。今回の突然の申し出も、明確な理由は全 く分からない。ただ、軍需産業と言う視点から覗けば空き地の町は格好のター ゲットといえた。これから戦争が起きるだろうと暗喩しているようものなので、決し て喜ばしくは無いが。 しかし空き地の町にとってこれは僥倖と言えよう。VA財団は新大陸にとどまら ず、旧大陸エロゲ国をもその手中に収めるほどの巨大企業だ。事業形態は多岐 に及んでいるので、彼らのような後ろ盾があるのと無いのとでは雲泥の差があ る。 だがそれ以上に、外国勢力に頼らずやっていけるという事実の方が大きい。 このまま電波お花畑に依存しているとなると、彼らを含む『大国』間の利益闘争 に巻き込まれる恐れがあるからだ。皮肉にも今回の例が良くあてはまる。 核戦略をぶち挙げたとは言え国力の面で言えば彼らはまだ小さな国家に過ぎな い。大手振って列強とやり合えるだけの体力は持ち合わせていないし、そもそもそ こまで戦争を拡大すると空き地の町の存在自体が危ぶまれる。 以上の理由から、舘山総理は電波お花畑との事実上の『縁切り』を容認した。 より可能性のある方に鞍替えという、生きる知恵だ。 「衛星を使えなくなると情報戦での優位性が危うくなるな?」 「あと半月のうちに遺憾なく使用させていただきますから、その点はご心配なく」 微笑する舘山。愛想笑いという訳ではなく、自然と出た笑顔だった。 「まあ、あんたみたいなのがトップにいればこっちも安心して帰れるって訳だ」
「……さて、と」 大佐が退室すると舘山は一息ついた。 目の前の机には膨大な書類が積まれている。顧問団引き上げによる組織の改 変、援助停止によって生じる各所の問題点や果てはVA財団の各種事業部のパン フまで、とにかく今後必要になるだろう全てのデータが揃えてある。 「まずは参謀にお伺いを立てて見ますか」
『Good-bye Kitty Guy,Hello business men.』投了。
>>282-287 「ターニングポイント」を受けてこんな感じにしてみましたが、いかがでしょうか。
ちょっくら質問です。 鍵自治州の政治組織って描写されてましたっけ?
元帥とは別に州知事がいる以外、描写はなかったような?
了解。 あんまり突っ込むとアレなので、味付け程度に留めます。
302 :
意思疎通 :03/01/07 20:49 ID:ipP89Ycn
3月29日 新大陸標準時 15:30 空き地の町 『まずは何より優先したいのが、住民に対する正確な事情説明だな』 ミサイル目標選定の労をねぎらう舘山の言葉もそこそこに返して、青紫はそんな事を言った。モニタ 越しに伝わる彼の表情は疲労こそあるものの、先日のような狼狽は見られなかった。 「その点については既にTV演説の草稿を纏めてますから、ご心配なく」 『もう手を打ってあるのか。速いな、舘山総理』 「こういう事は迅速且つ正確な対応が求められますから」 空き地の町には、二つの懸念材料があった。 一つは、馬場総裁の傀儡国家になり下がってしまう恐れがあるという点。 二つ目は、顧問団撤退による住民の心理的動揺。 前者は言うまでもなく、支援の見返りに何を要求されるか皆目見当がつかない事に依拠している。 軍需産業戦略の一環としての支援と割り切って考える事も可能ではあるが、同時に操り手を失った 人形の新たなる所有者として近づいてきたという疑惑も否定できない。何にせよ、VAとの交渉には 最大限の注意を払わねばならない。 後者――住民の心理的動揺とはつまり、『英雄の離脱』という意識の蔓延によって思想の統一が 困難になると言う事。つまりは空き地の町の崩壊に繋がる最重要案件だ。これについては舘山総理 が既に先手を打ってTV演説をする予定だが、どこまで効果があがるのか未知数だ。もし住民が彼女 の言を信用せず、反対に政府への不信感が高まろうものなら……結果は論ずるまでもない。 彼女がこれから行うTV演説は、空き地の町の今後を占う意味でも非常に重要なものであった。
303 :
意思疎通 :03/01/07 20:49 ID:ipP89Ycn
『――しかし解せないな。発表したのが鷲見……東葉という点に違和感を感じる』 青紫は話題を変えた。先ほど報道された東葉月姫受け入れについて言及している。 「今まで日和見を決め込んでいた彼らが、このタイミングで急に歴史の表舞台に上がった。確かに妙 ですね」 『自治州で迫害されている月姫難民を救済する為と言えば聞こえが良いが、ね。 しかし、これで影響を受けるのはTYPE-MOONと正葉だ。只でさえ水無月君のRR感染疑惑で荒れて いるというのに、会議前のこの微妙な時期にあまりにもタイミングがよすぎる』 「――陰で下葉が操っている、とでも?」 『可能性としては考えられなくもない。 ただ、もし仮にそうであるとしても、東葉は見返りとして下葉から何を授かるのか。そこらへんを詳しく 検討していかなければならないね。――――しかし、どちらにせよ、だ』 「もし彼らが下川に付き、我々と対峙するような状況になるのであれば」 『東葉への核使用をも辞さない、な。 彼らも多少の覚悟の上での行動だろうからね』
今更なんだが、読み返しつつふと気付いたんだが。
http://www6.plala.or.jp/brigade/support/ss05/109-113.htm >かつてネクストン軍Tactics師団(現在はネクストン軍が任務部隊制に移行したため解隊)の
>師団長として現鍵自治州首脳部とともに戦った経験を持ち、後に意見の食い違いからネクストン軍を
>放逐された吉沢努退役中将。現在では総督府専属顧問官として南方総督のスタッフとなっていた。
……タクティス共和国と思いっきり矛盾してると思われ。
っつーか、タクティス共和国って設定が唐突に出てきたもんだからなぁ。
306 :
顧問担当 :03/01/07 21:53 ID:1O6vtPdl
こりゃ凄いね(w)
もはや「タクティス共和国」と「Tactics師団」は別物と考えたほうが早そうな気が。
『レパブリック・オブ・タクティス』はTactics師団内部での、ネクストン軍全体を示す非公式用語だった ……ってとこにしとこうや(w 幸いというかなんというか、単に『旧タクティクス共和国』って言葉だけで、 どんな体制だったかなんて内容説明がまるでないから、その辺いくらでも解釈できる。
ついでに、 たかが一師団を『共和国』と僭称するまでに思い上がった麻枝たちと、 それを処断しようとした鈴木との対立が、麻枝たちの葉鍵国への亡命の直接の原因となった とでもしておけばいいかもしれん。
×→たかが一師団を ○→たかが一師団の名称を冠し スマソ、ちょっと言葉が抜けてた。
>>309 旅団長
まあ、そこらへんは後続のSS書き手さんにお任せすると言う方向で。
と言っても個人的にはそれで書いてしまいそうだが(w
312 :
内部衝突 :03/01/07 23:13 ID:ipP89Ycn
3月29日 11:00 鍵自治州 ものみの丘司令室 ロックブーケで久瀬内務尚書の歓迎セレモニーが準備され、旧大陸ではアリス-下葉共同 声明の原案が書かれている頃。 ものみの丘では主要メンバーによる緊急会議が開かれていた。 昨日アクアプラスシティより飛来したミサイル(レーダー確認は14:54。中央情報局では FROG7との見解を強めている)は同日3時07分、ものみの丘北地区に着弾。 自治州行政府ビル、自治州高等裁判所及び義勇軍司令部が倒壊し、また周囲の建物も爆 発の影響で窓ガラスが割れるなどの被害を被っている。 迎撃に打ち上げられたミサイル(ねこねこルートで仕入れた米製旧型ミサイル)はそもそもの 絶対数が少ないので全部をカバーすることが出来ず、迎撃に成功したのは2基のみに留まっ た。 3月29日7:32、第二射のAIRシティ飛来を確認。迎撃ミサイルの尽力にも関わらず、飛来し たミサイルの全弾が着弾。運悪く通勤ラッシュ真っ只中の市街地中心部を直撃したために死 傷者が続出。同局の調べではこれまでに少なくとも百人単位の死者が出たとしている。救難 活動は難航し、また上下水道を始めとする各種インフラ設備の分断によってAIRシティは混乱 状態に陥った。
313 :
内部衝突 :03/01/07 23:13 ID:ipP89Ycn
朝一番からうんざりするようなニュースを聞かされ、一同は重苦しい表情をしていた。 「――これにより下葉は、自治州全土を射程に収めているという事実を我々に再確認させ、同 時に我々に心理的動揺を促した、と考えられます」 至極当たり前の感想を述べて折戸は腰を降ろした。誰も口を開こうとはしない。 しばらく間があって、おもむろに麻枝が切り出した。 「では、我々はこれからどのような対策を取るべきか」 「――それについてですが」 再び折戸が語りだす。 「この攻撃によって、彼らは言わば核のチキンゲームへの参加を誘っているのではないか、と 考えます。ならばこちらも敢えてゲームに乗り、彼らと対等な立場へ就くというのは?」 「――折戸大将。それは非常にリスクを伴なうものではないかと」 凉元が異を唱える。 「確かに、我々はそれを行えるだけの能力を有してはいます。XB-70なら高度25000mから戦 術核を落とすことも不可能ではない。しかしながら同時に弾道ミサイルに身を晒すことにもなり うる。もしそうなれば、下葉の連中が先制攻撃を仕掛けてきた時に弾道弾を確実に撃墜でき るだけの能力を――少なくとも現時点よりも上の能力を、要求されます。こんな馬鹿げたゲー ムに乗る必要はないのです。第一、肝心のプルトニウムをどこで調達すると言うので?」 「勿論、傍目から見れば子供の喧嘩よりも単純な理論でしょう。しかし歴史を見て下さい。か の自由主義国家と社会主義国家との冷戦で秩序を保ってきたのは、紛れも無く核でした。そ の事例に習い、今度は我々がその立場になるべきでは、と」 一呼吸置いて、さらに続ける。 「それに、副次的効果として次のような利点が挙げられます。まず第一に正葉に恩を売ること が出来るという点。彼らはアクアプラスを直接叩けるだけの戦力を現時点では保持していな い。情報局はTYPE-MOONが米国で航空軍の訓練を受けているという報告を提出しています が、同時に即応できるレベルではないともしています」
314 :
内部衝突 :03/01/07 23:14 ID:ipP89Ycn
これはしのり〜率いる中央情報局米国支部の手によるものだった――といっても特別な活 動をした訳ではなく、航空機ファンレベルの人間であれば誰でも判るようなちょっとした事件 だったのだ。 1機しか存在しないはずのMTDが複数機、所属不明のF-15Eと肩を並べていれば誰だって 自分の目を疑うだろう。 「第二に例の案件……空き地の町に対する譲歩をする必要がなくなるという点です。彼らの 存在意義はあの奇怪な潜水艦だけですから、それと同等の能力を保持すれば必然的に無用 となります。で、肝心の核弾頭ですが――」 手元の書類をスクリーンに映し出した。 「現在自治州には4基の原発が存在しています。AIRシティ北260kmモリグチエリアと自治州 北部のイナ河源流付近にそれぞれ2基ずつです。各基とも3月現在の調べで最大出力の75% で稼動中です」 「――つまり、原発のプルトニウムを流用しようと言うのか?」 凉元はあまりの突飛さに驚きを隠せない。それに構わず折戸は続ける。 「そのうちの一基――モリグチ第一原発を、『弾道弾が命中したので一時停止させ、総点検を 行う』との名目で停止させます。ちょうど施設にガタが来ていたらしいので良い機会でしょう」 「だが技術的な問題が残る。プルトニウム加工は手間が掛かると」 「既に技術開発本部には連絡済です。作業は三交代で30時間もあれば終了すると申してま す。もちろん表向きは原発総点検ですが」
315 :
内部衝突 :03/01/07 23:14 ID:ipP89Ycn
手際が良すぎる。 凉元を始め各将校は折戸の手の早さに驚愕した。 「しかし、折戸君。それでは電力供給が間に合わないと思うが」 麻枝が当然の疑問を口にした。 しかし、それも彼の予想の範疇だった。 「残りの3基の出力を105%まで上げて対応します。モリグチ第一原発も6日程度で復帰出来る ので、停電による混乱は最小限に抑えられます。もっとも現在AIRシティは電力供給自体が止 まってますから実際の損害はさらに少なくなると推測しますが」 それを聞いてもなお、麻枝は決断するまでには至らなかった。国民の生命を危険に晒すと いう行為が彼には耐え難い苦痛だったのである。その点、折戸はドライな考え方をしていた。 「――このまま下川の脅しに屈したままでは、いずれ再攻撃が始まります。そうすれば結果 は自明でしょう」 と結び、一通りの説明を終えた。
316 :
内部衝突 :03/01/07 23:14 ID:ipP89Ycn
「――XB-70パイロットは、確か神尾大佐だったかな?」 「…麻枝元帥、もしや本当に今の案を汲むおつもりですか? 考え直してください!」 「――現在はホームベースです。必要とあらば何時でも呼び出せますが」 「折戸大将!」 凉元は折戸の座席に詰め寄った。 と、彼は自分を見つめる視線に気付いた。 一呼吸置き、ゆっくりと述べた。 「……あなたは自治州1600万の民を生命の危険に晒すおつもりか?」 「――そこにあの難民達は含まれているのですか?」 「……っ」 折戸の冷ややかな指摘が、彼の耳に届く。自治州の人口は概算で1600万としているが、そこに月姫難民人々は含まれていない。正式な調査が行われていないため、一部では10万 とも50万とも云われている。 凉元の月姫アレルギーは相当なものだった。鍵自治州を――如いては麻枝元帥を崇拝す る余り、原理主義ともいうべきほどに凝り固まった存在になってしまったのだ。 「凉元大将。我々は瀬戸際に立たされている。まずそのことを認識して頂きたい。 そして、為政者は感情論で行動してはいけない。常に冷静な視点から事象を見るべきだ。で ないと――我々は破滅する」 その言葉は凉元にのみ向けられたものではなく、その場にいる人間全てが対象であるかの ように麻枝には聞こえた。 「先ほどの問いに答えると――下川の攻撃は、あくまでも威嚇です。 第一に、目標選定が大雑把過ぎる。本気で我々に打撃を与えるのなら原発や義勇軍基地を 狙うはずです。 第二に、鍵自治州の人間はAIRシティのみではない。貴官はことあるごとにAIRシティを心配さ れるが、現在もけろぴ〜シティやKanonシティが下葉に占領されている事をお忘れなく――」
317 :
内部衝突 :03/01/07 23:14 ID:ipP89Ycn
「――では、確認する。折戸君はこの後AIR航空隊神尾大佐に事情説明。何か言われるかも 知れないが、何とか説き伏せてくれ」 「了解しました」 「凉元君は会議終了後速やかに技術開発本部に赴き、精製チーム班長と話を詰める」 「……分かりました」 「しのり〜君はAIRシティの混乱収束を任せる」 「了解」 結局麻枝は折戸の案を飲んだ。彼もまた、凉元とは違う意味で乗り気ではなかったが、背 に腹は変えられない。最終的にどちらが鍵自治州のためになるかを基準に判断した。 対して凉元は納得行かない表情を見せている。核のチキンゲームに乗った事に対してでも あったが――それ以上に、彼の立場から見た所が大きい。 メンバーの中でも歴史の浅い彼にとって、他人の案を受け入れるということはすなわち序列 の後退を意味していた。 「では、会議を終了する」 三々五々と退室していくメンバーを横目に、彼は書類を見つめていた。 この会議から僅か3時間後、彼らは再びここに集まる事になるとは考えもしないだろう。
319 :
鮫牙 :03/01/07 23:24 ID:aqO9JlOj
kanonシティってAirシティの後方じゃなかった?
あれ、下葉から見てKanonシティ→Airシティと記憶してましたが…そう言われると心配に。 確認して見ます。
http://www6.plala.or.jp/brigade/support/ss03/069-076.htm >・早期に州都Airシティ、およびその後方のKanonシティを奪取
これね。
それ時になったのが後二点。
>(レーダー確認は14:54。中央情報局ではFROG7との見解を強めている)
ものみの丘に飛来したのはアル・フセイン(
>>46 )。FROG7とは形状からして違う。
>運悪く通勤ラッシュ真っ只中の市街地中心部を直撃
おいおい。2日前まで市街戦闘やってた都市で通勤ラッシュもないと思うが。
あー、それとこのSSではないけど、
ロディマスを狙うのがFROG7とあるのは(
>>46 )多分何かの間違いだと思う。
射程が全然足りない。
http://www6.plala.or.jp/brigade/support/ss03/069-076.htm >・早期に州都Airシティ、およびその後方のKanonシティを奪取
……思いっきり勘違いしてました。鮫牙殿、指摘どうもです。
Kanonシティを占領したと言う記述も見当たりませんし、
>>316 の
>第二に、鍵自治州の人間はAIRシティのみではない。貴官はことあるごとにAIRシティを心配さ
>れるが、現在もけろぴ〜シティやKanonシティが下葉に占領されている事をお忘れなく――」
を
第二に、鍵自治州の人間はAIRシティのみではない。貴官はことあるごとにAIRシティを心配さ
れるが、現在もけろぴ〜シティを始め自治州南部が下葉に実効支配されている事をお忘れなく――」
と訂正いたします。
ご迷惑おかけしました。
323 :
鮫牙 :03/01/07 23:56 ID:aqO9JlOj
322>まあ、一行訂正すれば済むレベルですから。 〉運悪く通勤ラッシュ真っ只中の市街地中心部を直撃 運悪く家を失った戦災者の仮設住宅地の中心部を直撃 ではどうでしょう。
げふぁ。 ロディマスって、よく見ると結構後方なのですな……うぐぅ。 おとなしく、SS12スケールボードあたりにしておきますか。 これなら道路移動型でどこからでも発射できる。
保守水域
327 :
沸点 :03/01/09 00:55 ID:Sf1Z7X5+
3月29日 13:30時分 鍵自治州Airシティ戦災者仮設住宅地 「こんな小さな子まで」 兵隊が瓦礫の山から引きずり出した血まみれの死体を眺めながら、隻腕の指揮官は呟いた。 鍵自治州の存亡をかけた、Airシティ攻防戦。それは戸越まごめ中将の戦死。第36師団そしてOHP師団 の壊滅。その見かえりの装甲軍の撤退という形で終結した。 そしてこの戦闘で、劣悪な兵質及び装備で奇跡的なまでの奮戦をした集成旅団は実質一個連隊にも届かない程 に撃ち減らされた。隻腕の指揮官、彼はこれらの壊滅した部隊を寄せ集めて編成した独立連隊の指揮官である。 元は、OHP師団の砲兵連隊長であったが、テロにより自分の片腕と家族を失い。目を覚ませば、部隊は壊滅 していた。上層部は彼にしばらく休養を取る事を進めたが、彼はこれを断り、現場への復帰を強く希望した。 そして現在、独立連隊の指揮官として混乱の続くAirシティの治安維持に当たっている。とはいえ、この 独立連隊は編成途中であり、実際に動かせる戦力と言えば、Airシティにいた集成旅団の残存戦力のみであっ た。これだけの戦力でAirシティの治安維持には多忙を極め、彼は文字通りの働き詰であった。 さらに、Airシティの警察は戒厳令により軍、実質の彼の指揮下ではあったが、ミサイルはAirシティに 有る、警視庁及び、中央警察署にも着弾し、装甲軍の砲撃により殉職した警察長官、州知事に続き、警視総監と Air市警警察署長までも殉職した為に指揮系統に混乱を起こしていた。
328 :
沸点 :03/01/09 00:57 ID:Sf1Z7X5+
唯でさえ困難な治安維持に今回のミサイル攻撃により、彼の激務により拍車が掛かることとなった。 もはや穏便な治安維持等出来る筈がなく、暴動は機銃掃射で鎮圧するよりない状況となっていた。 とくに、普段から迫害されつづけていた月姫難民はこの州都の混乱に乗じて、内乱を起こす可能性が大きい為 市警の武装機動隊を最大数動員し居住区から出れぬように厳重なる監視下においていた。 こうしなければ治安を維持出来ないとは、まるで末期のロマノフ王朝を見るようだな。思わず苦笑いをしながら、 指揮官はつぶやいた。 「大佐、少し休まれた方が」 見るからに顔に生気の感じられぬ、連隊長に彼の副官が意見をする。 「いや、いい今は仕事をしている時が安らぐ」 彼の気遣いにそっけなく答えると、仕事に戻っていった。 『副官からみた葉鍵大戦記』より抜粋。 鍵スト大佐、観鍵りっ子中佐といった集成旅団の指揮官は戦闘の終結後即座に旅団長シンパというだけで、地方 の警備隊や基地司令へと移動させられた。州都で指揮官が少しでも多く必要なこの時期にである。 この後に及んで、政争に明け暮れる上層部と絶望的な現場と命を削り尻拭いをする上官を見比べて、私は唯ため 息をつくばかりであった。
329 :
沸点 :03/01/09 00:58 ID:Sf1Z7X5+
3月29日 14:00 鍵自治州 ものみの丘司令室 「馬鹿な、貴方達は何を考えているんだ!」 麻枝元帥は思わず、驚愕の極みの表情で来訪した客人達に叫んだ。 客人は鍵自治州議会議長、自治州予算委員会会長等の州知事がいない現状での文官の長達である。 「馬鹿な事?偉大なる閣下が虐殺者から民衆を守る協力体制を作る事が馬鹿な事ですか?」 「州議会が私の指揮下に入る法案を可決等、貴方達は文民統制を自ら放棄するつもりか」 その時、鍵自治州の行く末を決定する一言が司令室に共鳴した。 「ようするに、閣下は鍵の民衆を見殺しにするおつもりですか?」 涼元大将が眼鏡を直しながら言った。 「馬鹿な」 「では何故、彼等の期待に答えないのです?」 涼元が麻枝の目を見据えながら言う。 司令室に沈黙が流れる。そしてその沈黙を破ったのは麻枝であった。苦悶に満ちた表情で呟く。 「私は鍵の民衆を愛してる。決して彼等を見殺しにはしない」 「では」 その返答に、鍵自治州議会議長の顔が綻んだ。 「議長。元帥閣下は貴方達の期待に答えて下さいますよ」
330 :
沸点 :03/01/09 00:59 ID:Sf1Z7X5+
客人が帰った後、会談の間沈黙を守っていた折戸は涼元に苦虫を噛み潰した表情で言った。 「馬鹿な事を」 涼元は上唇を上げながら返答する。 「ふ、折戸大将。貴方も元帥にこうなって頂く事を内心望んでいたでしょう」 「手段が気に入らない。貴様何れ足元を掬われるぞ」 それから6時間後、極めてスムーズに臨時議会で以下の法案が可決された。 州議会は麻枝元帥を、議会及び軍、警を統帥する総統に任命する。 州議会は挙国一致体制を築く。 鍵自治州は本日を持って、鍵第三帝国となる。麻枝総統閣下が帝国の国家元帥となる。 そして、これが議会より可決されると同時に鍵自治州、彼等に言わせれば鍵第三帝国は葉鍵国より独立を宣言。 正式に宣戦を布告する。
331 :
鮫牙 :03/01/09 01:02 ID:Sf1Z7X5+
沸点投稿終わりました。内部衝突の会議から三時間後。あつまってこんな結果に。
3月28日 2230 正統リーフ国首都ロディマス 【TYPE-MOON】本部 テレビには、誠実さを感じさせる壮年の男性が会見を行っている様が見て取れた。 『Yes.We・・・・・その通りです。我々は断固として脅迫に対しては屈さない。それは我々の存在意義である、 と云うのが大統領の意思です』 英語で行われている発言にワンテンポ遅れて、訳された言葉が流される。 画面右隅にはLiveの文字があった。 『報道官!』 その声に画面は切り替わり、記者席、挙手をしている男性を映し出す。 『それは武力行使も辞さないと云う事ですか?』 『合衆国はその選択肢を除外しません。ですが、我々は如何なる相手であろうとも交渉を拒絶する事も ありません』 『しかし彼らは一切の交渉を拒否している様に見受けられます。これにはどうされるおつもりで?』 『一つ誤解の無い様に言っておきますが、合衆国政府は新旧エロゲ大陸諸国の不安定化は一切望んでは いないと云う事です』 『?』 『共同声明で彼らが表明した事は新旧エロゲ大陸諸国へ他国が干渉する事の阻止、即ち民族自決であり、 それは合衆国としても当然支持する事です。”如何なる理由があろうとも”その民族の自決を阻害する 事は許されざる行為。合衆国はそう判断しています』
『では、難民支援の為の介入ならばあり得ると云う訳ですね』 『それに関しては国連が主体と成って動く事になるでしょう。合衆国には国連の主体性と主導権に異議を 申し立てるつもりはありません』 『ですが国内世論では月姫難民擁護の気運が高まりつつあり、その目的を達成する為には軍事力の派遣も 検討されるべきとの意見も少なくありません』 『軍事力だけで問題は解決しません。外交努力を忘れては文明人と言い難いのではないでしょうか。 そして難民擁護ですが、これは我が国を始めとする諸国の良識ある市民達の不遇な立場の人々に対する 誇り高き道義心の発露であり、これは第二次世界大戦以降培われてきた、人種差別に対する人類の意思の 表れだと思います・・・・個人的意見ですが、私はこれを素晴らしい事であると思っています・・ああ、どうぞ。 次の方』 それは正しく、捌くと云う表現こそ相応しい態度であった。 質問を実施している側も歴戦のマスコミであり、素人では無いのだが、彼らが望む様な刺激的な言葉を 報道官から引き出す事は出来ないでいた。 だが、この部屋に居る者達には明確にアメリカの意思が見て取れていた。
「流石に上手いものだね。言質を与えず、だが見るものに一つの明確なメッセージを込めている」 「そうですね。対外的には交渉優先を明確化して相手に希望を与え、同時に自らの武力行使に対し、何ら 規制となる様な言質は与えていませんからね。ついでに言えば列強諸国の中にも、エロゲ国と同様に国内に 分離独立主義者が旺盛な中露が居ますからね」 「アメリカとて自在な行動は無し難い面がる、そゆう事だね」 「本音としては、自分に脅迫した連中など存在を赦すつもりなんてないでしょうけどねーっ」 「だがそれは気分だ。国家を気分で動かしてはいけない。まぁそんな大統領当人はアレだが、国務省には 国防省系で穏当且つ有能な人材が入っているから、そこら辺の入れ知恵だろうね。明瞭ではないが故に 出来る事もある訳だ。そういえば大統領の失言も、既に取り繕っているね」 「『解体とは葉鍵国では無く、下川と云う一個人による独裁体制を指すものであり、説明不足であった』 確かに、下手に統制の取れない紛争地帯を作りだしても利益には成りませんからねーっ。兎も角、ニッチで 微妙な立場の【TYPE-MOON】としては、そこら辺の方々に頑張っていただくしかありませんねーっ」 「笑い事じゃ無いがね」
些かだらしない動作で身をソファへと預けながら那須きのこ【TYPE-MOON】総裁は苦笑を浮かべた。 ゆっくりとネクタイを緩め、眠気を払うようにこめかみを揉む。 「兎に角、これでこの問題に関しては手打ちに成って欲しいものだ。下葉-アリスが先に脅迫し、アメリカ が恫喝する。でも、外交チャンネルは空けておくので、そこでだらだらと交渉して全てを有耶無耶にする。 まぁそんな所かな。このまま手をこまねいていてはでは弾道弾の投げ合いと云う洒落にならない事態に なってしまうからね。正葉国内も些か分裂気味だし」 「んーっ、やはり荒れましたか?」 「ああ大荒れだ。元々原田司令と高橋総帥は呉越同舟、下川憎しの念で団結していたからね。其処に揺らぎ が入れば大変だ。【TYPE-MOON】にもとばっちりが来たよ」 「状況を混迷化させてますからねーっ」 「ああそうだ。だがそれだけでは無いね、あの表情は。もう少し、何か奥深いものが感じられたが・・・・」 「あら、代表は心が読めるのですか」 微笑を浮かべながら琥珀は手馴れた動作で、自分と那須の分の珈琲を用意する。 「淹れ置きですがどうぞ」 「まさか、だよ。私にそんな力があれば皆にもう少し楽をさせてあげられるのだけどね-有難う」 那須は手渡された珈琲に、砂糖を入れずそのまま口を付ける。 濃い珈琲が疲労と眠気とをゆっくりを中和していく。 「しかし会議でこれ程に疲れるとは・・・野戦服を着て山野を駆け回っていた方が余程に楽だ」 「その言葉、志貴様も言ってらっしゃいました。自分は大隊の指揮官位が妥当な人間だとも」 「はははっ彼らしいね。『殺人貴』か、だがそのまま終わられても困る」
「はい。志貴様はもう少し、御自分の能力を信頼されても良いのですけども・・・・・」 「その通りだ」 目を閉じ、何かを思うように顔は天井を向く。 「・・・・・・自分の殻は自分で破るしかない。特に、それを作ったのが自分であればな。尤も、それは我々も 同じだがね」 「・・・・・・総裁・・・」 「では、少しばかり責任に相応しい話でもしようか、琥珀大佐」 「はい」 琥珀は表情から柔らかなものを抜け落とすと、ゆっくりとした動作で那須の向かいに腰を下ろす。 「対外工作案は、各種纏めてあります」 そう言って差し出されたA4紙の束。 一つは列強諸国向け。 それは、従来の月姫擁護運動を煽る目的では無く、【TYPE-MOON】-月姫民族にとっての頭痛の種である、 歌月十夜師団への対処に関するものであった。 AF師団と共にロイハイト地方へと侵攻し暴虐を尽くす歌月十夜師団の行動は、現時点ではプロパガンダ の効果によって問題化する事は無かったが、それでも根深い問題として、列強諸国からも非公式に憂慮の 念が伝えられてきていた。 これをこのまま座視する事は、今後の国際社会に於ける【TYPE-MOON】の立場に深刻な影響を与えかね ない事態と化していた。 国家無き流浪の民として辛酸を嘗め尽くしている【TYPE-MOON】首脳陣は、それゆえに、己たちの存続 には『国際社会の支援』と云う無形の後ろ盾が重要である事を知悉していた。 故に、月姫難民の存在に対して懐疑の念を抱かせかねない歌月十夜師団の存在は断固として容認しえない のであった。
都合の良い事に、ロイハイトでは国際社会に於いて容認され得ぬ大量殺戮兵器-毒ガスが使用されており、 国連安全保障理事会にては、この被害現場の調査/査察を実施すべきだとの声が上がっていた。 無論、道義心だけが理由では無い。 特に列強諸国の関心は、実戦で使用されたBC兵器の効能、そして被害状況の確認に重点が在る。 それが、琥珀の見出した付け入るべき場所であった。 「交渉材料の方はどうかね?」 「ネロ・カオス中佐直率の第666特殊空挺大隊長距離偵察小隊が27日1130に現地への潜入に成功。 都市部の被害状況を纏めています。又、歌月十夜及びAF師団の詳細な部隊被害情報を入手しました」 「内通者か?」 「正確に言えば、彼ら(正嫡派)が人材不足を理由に勧誘された方にの中に、秋葉大佐が昵懇にして いる方がいらした訳ですから、表返ったとでも言うべきですねーっ」 「良く纏めてあるな。簡潔で、要点が抑えられている」 紙には、概略ではあったが被害の詳細が纏め上げられてあった。 否、良く見れば後方へと上げる被害報告書すらも混じっていた。 「これは?」 「はい。歌十夜師団の基幹士官は大概が此方のシンパですから、報告書まで入手出来る訳です」 「いい加減だな連中も。まっ、それで利益を得る身としては非難するも筋違いだがね」 苦笑を浮かべつつ、那須は書類をテーブルへと放る。 「まぁ良い。で、先方の反応はどうなのかね?」 「上々です。少ない手間で得るものは、容易に得られぬものですから喰い付きが良いですね。殆ど即答 でしたよ」
「対価も安いからね」 「ええ。彼らにとっては取るに足らない問題ですから、これは」 列強諸国が【TYPE-MOON】より都市BC兵器戦の情報を得る代償として払うものは一つ。 遠野四季の身柄の保障、只それだけであった。 「但し、その前提として現歌月十夜師団は解体。虐殺行為等の実施責任者として適当な人物の処分、及び 遠野四季への短期刑執行が要求されています」 当然と言えば当然の要求。 これに乗じて【TYPE-MOON】としては親主流派の基幹要員を監視・拘束の名目で正葉へと連れ去る事を 計画しており、遠野家正嫡派の実働戦力としての歌月十夜師団は戦力としての壊滅する筈であった。 「いいだろう。それならば我々の要求にも合致する。承諾の意を伝えておいてくれ」 「はい判りました。では続いて東葉・下葉への工作ですが」 「噂の自治区構想か・・・・やはり傀儡かね」 「愚問です。蒼崎青子女史が代表に就任しましたが実権はRR装甲軍、要するに月姫自治区防衛軍司令官の 柳川裕也大将が握ってますね」 「ふん、完全に対鍵自治州対策か・・・・・制空権回復の為の時間稼ぎだな」 「はい。そゆう側面は否定しえません。現情勢で傀儡とは云え月姫民族の自治区に侵攻する事は激烈な 批判を浴びざる得ませんので」 「・・・・・だが、知ってるかね。今、鍵自治州首脳陣の間では、対下葉攻勢論が会議の俎上に上る事が多い そうだよ」 「はい?」
「所謂、戸越中将戦死に対する報復論らしいがね」 「あはーっ、何ですかそれは?」 「知らんよ。部外者には想像も出来ん理由があるのだろうな」 「はぁ」 「すまんな、話がそれたな、それで?」 「はい、我々参謀団としては和戦両様の案を立案しましたが・・・・・」 「否定か肯定か、か。君はどう思う琥珀大佐」 「えーっと、個人的には、ですが否定しずらいものだと思うんですよ」 「それに利点もある。既成事実の作成、違うかね?」 下葉領内の、それも完全な傀儡として設置された月姫自治区ではあっても、それは【葉鍵】と云う国に とっては完全な前例として存在しうる事であり、否定よりも肯定の方が重要であった。 そしてもう一つ。 【TYPE-MOON】の至上命題、月姫民族の生き残りに於いては、対立する双方の勢力に足がかりが在ると 云う事は、どちらが勝利するにせよ重要な意味合いを持ってくるのであり、琥珀としては支援すらも実施 すべきとの認識すらあった。 無論、下川独裁政権下で戦後にまで自治区と云う形を存続させる為には彼らに対して月姫自治区は存在 価値を認めさせねばならない。 それは、或いは同胞相打つ事態。 だがそれを琥珀は、そして奈須は粛然と受け入れるつもりであった。 「支援に関しては完全な裏ルートを使用。【TYPE-MOON】、月姫の名は一切出すな」 「はい。時南家の医療NGOを使用します」 「あそこは・・・・・月姫系と云う事で警戒されないか?」
「はい。それは大丈夫かと。時南家は葉鍵国独立戦争時にも医師団を派遣していますので、怪しまれる 事は無いと思います。それに即応で投入出来、その上で疑惑を持たれない選択肢はありませんので」 「宜しい。ならば反対する理由は無い。やり給え」 その言葉に琥珀は、用意されていた一つの書類に【決済済み】の判子を打つ。 「しかし、これで益々鍵自治州とは微妙な関係になりますね」 「仕方があるまい。彼らには彼らの、我々には我々の目的があるのだからね」 「ですね。では鍵自治州に対する工作も、ついでに進めてしまいますか?」 「当然だよ。我々は月姫の民の為だけに存在している。特に、他人を差別する事を恥じぬ様な連中に遠慮 をする必要があるかね」 「一応、同盟国ですから・・・」 「ならば、同盟国に対する配慮を彼らが成していてもよい筈だ。我々は彼らの差別政策を一部、問題化せず 彼ら自身からのアクションを待った。だが彼らは何もしない。宜しい。であるならば我々も我々の為にのみ 活動しても、彼らに何ら恥じるものではない。同盟とは双務的なものなのだからね」 「そこまで腹を括ってらっしゃったのであれば、何も申し上げません」 「人が悪いな琥珀大佐。君もこの程度の事は考えているのだろう?」 「それが参謀のお仕事ですから」 「ではその中で最良と君が思うものを示してくれ」 「プラン乙ですね。今度東側に飛ばされてくるJRレギオン准将を懐柔し、積極的に鍵自治州の政権交代を 狙います」 「派手だね。だが彼らが我々に一枚噛むかね?」 「下部組織無しの新設旅団を与えられる意味を自覚出来ない筈は無いですから、そこら辺は。それに我々 の目的は鍵自治州の解体では無く現体制の打倒ですから拒否感は殆ど無いと思います。後、彼個人も自身 の生き残りの為には少しでも協力を必要としている筈ですから、逆に、着任と同時にこちら側に接触が あるかもしれませんね」
「問題は、如何にして監視役のみらくる☆みきぽん中将の目を誤魔化すかと云う事か」 「現政権としても、彼を殆ど丸裸で飛ばす理由は、極度に警戒しているからでしょうからね。まぁそこら辺 は一つ、面白いアイディアがありまして」 「何かね?」 「正葉鍵連絡会で出たのですが、正葉鍵両国の連携をアピールする為に隷下部隊を持たない東方旅団へと 正葉軍から参謀と戦力とを派遣し、一種の統合部隊を創設してはどうかと云う事です」 「それは・・・・前例が前例過ぎるな。一種のブラックユーモアかね?」 流石に絶句する奈須。 葉鍵の統合部隊の顛末を考えれば、何とも評しがたいアイデアではあった。 特に相手は、その時の片割れなのだ。 だが対して琥珀は何気ない風情で笑う。 今回はその轍を踏む事は無い、と。 「目的意識と危機意識の相違がありますから、そこまで酷い事にはならないと思いますよ」 「そんなものかね」 「はい。そゆうものです」 何とも言い難い顔で、カップを呷る奈須。 冷えた珈琲は苦味が強かった。 澄んだ響きとともにソーサーに置かれたカップへと、反射的におかわりを注ごうとする琥珀。 それを手で制する。 「で、後問題はアリスだけか」 「はい。まさか彼らが直接的に出てくるとは思わなかったな」 「それだけVAが脅威なのだと思います」 「追い詰められて来ている。そう云う事か?」
「葉鍵国の全てがVA側についたとすれば、エロゲ国のパワーバランスには大きな影響を与える事に成り ます。例えそれがエロゲ国外の存在であたとしても。いえ。他国であるが故に出来る事も多いです。 そして何よりも彼らが恐れているのは正葉国の独立がなった場合に発生するであろう分離独立主義の蠢動、 此れを極度に恐れていますね」 「外側からは分離独立運動に見える訳か」 「はい。まぁ下葉国と正葉国の国力比を考えれば無理からぬ話ですが」 「であるならば話は容易だな。高橋総帥の談話として下川独裁体制の打破と、真に葉と鍵の協調した国家 樹立を目指す旨を発表すれば良い。無論、其処に東葉や月姫、或いは空き地に町すらも含む、旧葉鍵国領 に存在する全ての勢力が参加する事も含めてな。高橋総帥とて、それが最終目標の筈だ」 「あはーっ。一気に話が大きくなりますねーっ」 「ふん、大きな事はいい事さ。特に目標はね。少なくとも此れを目標としておけば、アリス-下葉の共同宣言 にすらも合致する」 「でもどうでしょ、アリスへの接触はスポンサーの意向に結構・・・・」 「それは正葉国や高橋総帥らの話だ。我々が動く分には問題は無い。何と言っても「知らない」訳だからね。 それに彼らとてアリスを敵に回す事は好まない筈だ」 「では? 「ああ【TYPE-MOON】として接触を図ろう。無論、高橋総帥の了解は得てね」 弱者は己が弱小である事を理解しているが故に積極的であった。 世界に動かされるのではない、世界を動かさねばならぬのだ。 【TYPE-MOON】本部の明かりは、翌朝まで煌々と煌いていた。
何度もナンバリングを間違えて申し訳ないです(汗 TO:鮫牙殿 投稿、お疲れ様でした。 が、第3帝国って一体!?(笑 素朴な疑問なんですよ、第1と第2は何なかと(核爆
あの…蒼崎青子が総統に就任することになったのは4月2日ですが…
>>344 ・・・・・・・・・カハッ(吐血
スッゴイおおポカ
どないしよ・・・・日付かぁ?
コレの日付を変えるかぁ??
でも、そうなると今度は「第3帝国」との絡みが(;´Д`)ハァハァ
ん〜
ん〜〜
えーと、スパイ活動で知ったと云う形でマトメてはイケナイでしょうか(大汗
>>346 ゲハァッ(大吐血
あのssは、
>ニダーと呼ばれるハングル国人そのものだった。
との所で、脳みそが逝っちゃって、後は会議内容しか記憶に無かったりしま
した(苦笑
ええ、当方、ハン板の住人だったりしますから(自爆
ニダニダ言えって事かよぉ!(絶叫
とか、あのハンドル使って地の文でニダニダ言うぞとか、ヤサグレタンデス
ええ、ハン板はアンチ韓国・半島!
一緒にするなぁ〜(涙
ホントぽか、しまくりですな(溜息
私も頭を冷やした方が良いですかね?(自嘲
>奈須総裁が彼女を送り込んだという形にしたほうが良いかと
であるならば、訂正を・・・考えて見ます。
ご指摘、有難う御座います。
「対価も安いからね」 「ええ。彼らにとっては取るに足らない問題ですから、これは」 列強諸国が【TYPE-MOON】より都市BC兵器戦の情報を得る代償として払うものは一つ。 遠野四季の身柄の保障、只それだけであった。 「但し、その前提として現歌月十夜師団は解体。虐殺行為等の実施責任者として適当な人物の処分、及び 遠野四季への短期刑執行が要求されています」 当然と言えば当然の要求。 これに乗じて【TYPE-MOON】としては親主流派の基幹要員を監視・拘束の名目で正葉へと連れ去る事を 計画しており、遠野家正嫡派の実働戦力としての歌月十夜師団は戦力としての壊滅する筈であった。 「いいだろう。それならば我々の要求にも合致する。承諾の意を伝えておいてくれ」 「はい判りました。では続いて東葉・下葉への工作ですが」 「噂の自治区構想か・・・・やはり傀儡かね」 「愚問ですね。実務者レベルで交渉をしていますが相当に苦戦しているそうです。恐らくは蒼崎青子女史が 代表に就任する事に成るでしょう実権はRR装甲軍、要するに月姫自治区防衛軍司令官の柳川裕也大将が握る 事になるでしょう」 脳裏には、昨晩の蒼崎青子の横顔が蘇る。 「御しきれるものかね、柳川に」 「はっ?」 「いや何でもない。だがコレは完全に対鍵自治州対策・・・・・制空権回復の為の時間稼ぎだな」 「はい。そゆう側面は否定しえません。現情勢で傀儡とは云え月姫民族の自治区に侵攻する事は激烈な 批判を浴びざる得ませんので」 「・・・・・だが、知ってるかね。今、鍵自治州首脳陣の間では、対下葉攻勢論が会議の俎上に上る事が多い そうだよ」 「はい?」
こんな感じで如何でしょうか。 しかし、駄目ですな私(笑
>今度東側に飛ばされてくるJRレギオン准将を懐柔し 自分、少将(w >「で、後問題はアリスだけか」 これは、共同声明発表以前の交渉段階での動きを掴んでいた、でいいんだよね? それはそうと、『第三帝国』……うーん…… いや、それでいくというのなら尊重するけど、 初期のまだ陸軍スレの頃、『国王高橋』『リーフ王国』をリアリティがないという理由で 『高橋総帥』『正統リーフ』に変更した過去があるから…… その辺の皆さんのご意見は? 確かにいつまでも『鍵自治州』を名乗るのはおかしいから、国名変更は妥当なところだけど。
「第三帝国」は通称――というか自称で、国際的には認められてない。 下川政権を「前帝政」と位置付ける事による皮肉、と考えるのはいかがでしょうか。
>>350 >自分、少将(w
・・・・ゴファッ(二回転捻り吐血
申し訳無いですぅ(涙
うp時に訂正お願いしますぅ〜(滂沱
>同声明発表以前の交渉段階での動きを掴んでいた、でいいんだよね?
正葉-【TYPE-MOON】の耳は長いと云う事ですが、イケナイでしょうか?
つか、もう少し説明入れとけ>自分な、感じですね。
申し訳無いです。
>第3帝国問題
皮肉に関しては、第三帝国を自称すれば自分も下川政権と同じ水準だと云う
事を公称してしまう事にもなると思うのですけども、鍵は其処まで自滅的な
選択をするのでしょうか?
周辺から、皮肉として帝国と呼ばれるのは良いと思いますけども・・・
さっき書いた後に気づいたんだが……鍵がこの方法で独立を宣言するのは、実は非常に拙いんじゃないか?
正葉は下葉との戦争に際して、自分たちが葉鍵国の正当な政権だと主張している。
で、鍵は内戦以前は葉鍵国の一自治州という扱いだった。
だからここで鍵が独立を宣言する場合、
同盟を結んでいる『正当な葉鍵国政権』である正葉との間に何らかの交渉をして十分に根回ししておかないと、
正葉が『自分たちの正当性を否定された』と受け取りかねん……というか、常識的に考えれば多分受け取る。
麻枝が独立を決意してから独立が宣言されるまでわずか6時間。
とてもではないがロディマスへ根回しをしている時間はないと思う。
このままじゃ、正葉―鍵同盟は崩壊の危機に瀕してしまうが……
>>352 >正葉-【TYPE-MOON】の耳は長いと云う事ですが、イケナイでしょうか?
いや、確認の意味で聞いただけだから、別にイケナイとかそんなことじゃなく。
確かに論理的にはそうだったのですが 議会や予算委員会の勢いを抑えきれず、やむなく独立 というのはどうでしょう。 議会のそういう動きを事前に察知出来なかった。 麻枝たちも、独立の無謀さを承知しつつも否決するまでには至らなかった。 麻枝たち首脳は議会を軽視していたように見えますし、凉元が情報をシャットアウトしてたとも考えられます。 どちらにせよ鍵にとっては先行き不安ですけれど。
いや、同盟を危機へ陥れる方向へ進ませるのも十分有りだから、 書き手がその点を了承するのなら、この問題に関しては一向にかまわないと思う。 でもまあ、とにかく本人の意思表示がないと話にならないので…… >鮫牙氏 ・『第三帝国』の呼称であくまで進めたいか? ・正葉―鍵同盟が危機を迎えかねない展開だが、それでもかまわないか? 以上の二点、意思表示願います。
356 :
鮫牙 :03/01/09 21:38 ID:Sf1Z7X5+
<『第三帝国』当方、ナチオタなもので、総統と言えばと、思いつい。 リアリティに欠けるというのでしたら別の呼称でもかまいません。 <『正葉―鍵同盟崩壊の危機』 その後の展開は、それでかまいません。まあ、書き手次第ということで。
>>353 >このままじゃ、正葉―鍵同盟は崩壊の危機に瀕してしまうが……
冷静に考えてその影響は、今までは正葉内の【TYPE-MOON】が現政権の転覆を
狙っていたのが、正葉が主体となった形に変わるだけかもしれませぬ。
まぁVAとの絡みから、ある意味で微妙なんですが(笑
>いや、確認の意味で聞いただけだから、別にイケナイとかそんなことじゃなく。
いや、流れとして浮いている描写かなと思ったもので。
>>354 全力逆噴射国家と云う言葉が思いつきました(笑>鍵第3帝国
何処へ行くのやら・・・
まぁ個人的には、面白ければそれで良いと云う面がありますから(笑
つか期待の新作(?)「MELTY BLOOD」をどうやって反映させよう(笑 同人国からの義勇軍か? せいぜい連隊規模だろうけども。 つか、入手出来ていないのでキャラ名とか、立ち位置(人間関係)が把握 出来ない罠(w どーすんべ あー、うたわれ師団でも遊びたいのにぃ〜(最近やったらハマリマスタ(笑
359 :
失策 :03/01/10 01:30 ID:62RDoAsE
3月29日22時32分(現地時間3月30日03時32分) エロゲ国旧大陸本領沖合・VA財閥本部船“ビジュアルアーツ” 『話は全てご破算だ! 我々をコケにしてくれたこの代償は、必ず払って貰うからなっ!!』 怒りに憎しみを上乗せしたような、そんな叫びが鼓膜を激しく殴りつけた。 がちゃん、と受話器を叩きつける物音も高らかに、この船の座標から二百キロ強ほど離れた都市からの電話は唐突に切れる。 後に残ったのは春の陽気も凍り付くような静寂ばかり。 分厚い防弾ガラスがはめ込まれた窓の側、通話の始終一方的にがなり立てられた男は憮然とした面もちで手にした受話器を眺めている。 さて、どうにもすっかり懐柔したはずだと思ったのだが。 数時間前まで、事の運びが順調そのものであったことが嘘のようだ。 ある事件を契機に事態がここまで悪化してしまった、自分がどこで判断を誤ったのか、或いは連中のやり方があまりに拙かったのが原因か。 どちらもその原因だろう、だが調子に乗って事を焦りすぎたらしい。 大きくため息を吐き、男―――VA財団総裁、馬場隆博氏はくしゃと頭を掻きつつ受話器を置いた。 「アリスを完全に怒らせてしまったようですね……」 背後から、男性の声が響く。 その声に、通話中一人の来客をずっと待たせていたことをようやく思い出し、馬場総裁は肩越しに彼の方へと振り返った。 「うん、しもたな。 巧く丸めこんだと思うてたんやけど……くそ、下葉の動きを読めんかったんが気にくわんっ!!」 直接的な表現でこそ伝えなかったものの、馬場とて事前にアリスに打診は行っていた。 そこで得られた感触は、『鍵の独自性に関しては我関せず』というもの。 それを馬場は、鍵の独立に対しての黙認と受け取ったのだが。 だからこそ、馬場は鍵の独立の建議を麻枝に出すよう鍵自治州議会、そして涼元に働きかけたのである。
360 :
失策 :03/01/10 01:30 ID:62RDoAsE
結論から言って、読み違いだった。 いや、事情が変化していたと言うべきだろうか? なにぶん、あの下葉との共同声明の直後―――わずか数時間後である。鍵の独立宣言は、アリスに取ってみれば彼らが提唱した秩序に対する公然たる挑戦に他ならなかった。 ほとんど全てが同時進行で起こってしまった、その不可抗力に馬場の口からはらしくもない慨嘆が漏れるばかり。 「葉鍵国の統一の断固支持……あの声明、大真面目の代物だった訳ですな」 「こっちが本気なのに、気がついとるんかも知へれんな」 金を貢いでヨイショして、あれだけ下手に出て持ち上げてやった意味があらへん。 傍らの受話器を取ったときから火を灯けたまま灰皿に放置され、ずいぶんと短くなってしまった煙草をまるで仇か何かのように力任せにもみ消す。 腹が立つ。 事の成り行きはまったく理不尽だと思う。 状況の推移を掴めなかった部下どもはまったく無能だと思う。 となると、そうした輩を重用し、その上自らもアリスの出方を見誤った馬場隆博という男は一体どれほどの人物だというのだ。 思わず自嘲が口許に浮かぶ。 これまでの順調さに、すっかり慢心していたのだ。 自分は優秀に分類される人間であっても、全能の神ではないことを忘れていた。 ネクストンと鍵の扱いでやり合ったとき、あの時以来失敗などしていなかった、そのツケが回ってきたのだろう。 なんと馬鹿馬鹿しい、そのツケはこのお祭り騒ぎの転回点で、最悪の次ぐらいに悪い結果を招いてしまったのだ! ……確かに、計画の変更、順延は余儀なくされた。 だが、何時までも過ぎたことに思いを巡らせていても意味がない。 少なくとも、アリスとの協力事項の内の幾つか―――電波花畑の排除などは生きている。 それだけでも僥倖とせねばなるまい。 今は、一刻も早く状況に合わせた次の布石を打たなければ。
361 :
失策 :03/01/10 01:34 ID:62RDoAsE
ようやくのこと軽く気合いを入れて背もたれから身を起こし、身体ごと来客へと向き直る。 「さて、長岡少将。話はいろいろ聞いとるけど……実際のトコそっちはどないなん?」 長岡健蔵空軍少将。 エロゲ国北方総督領CRAFTWORK航空師団の司令官であり、田所広成の良き友人、そしてVA財団の走狗として馬場とStoneHead's集団軍を繋ぐ鍵となる人物である。 であれば、馬場総裁が問う『そっち』とは当然のごとくロイハイトの戦局を差す。 空軍機で現地から急ぎ来着したばかりの長岡少将は、まさしくこの問いに答えるために海を渡って来たのである。 「端的に言えば、世も末です。敵も味方も全面ガス戦争に突入しています。 こちらの損害率はすでに20%を超えていますから……破弾界に達しつつあると言えます」 電話は常に盗聴の恐れがあった。 敵国ではなく、自国内での権力バランスの問題である。 およそ非効率的な理由から、軍使という古典的な役割を果たす長岡少将の表情は険しいものだ。 彼が軍人としては断腸の思いで伝えようとしていること――その意を汲んで、馬場はわざとらしいまでに沈痛な面もちでゆっくり深く頷いた。 「なるほどな。潮時か……?」 「田所大将はそのつもりです。すでに撤収の準備を指示しました。 ロイハイトの敵戦力もすでに組織的抵抗力を喪失しており、増援の一個軍も緒戦のガス攻撃でかなりの損害を出していますから、敵の追撃は避けられるものかと」 「ン……」 中国軍装備の田所軍の戦果としては、まず上々の上がりといえるだろう。 むしろ、馬場総裁の当初の期待より大きな戦果を上げた、というのが正確なところである。 もともと総裁は、せいぜい国境地帯でRR親衛隊の数個師団との攻防戦を繰り広げるくらいの役割しか期待していなかった。 それが緒戦の奇襲が見事なほどに図に当たり、国境から二百キロ、首都まで百五十キロの北部主要都市、ロイハイトにまで鋭鋒が達した。 現在鍵や正葉が下葉相手に奮闘を見せているのは、この開戦劈頭の航空撃滅戦で下葉空軍が崩壊したことが大きい。 与えられた役割以上の働きを果たし、敵の地上兵力も十分以上に吸引した。
362 :
失策 :03/01/10 01:36 ID:62RDoAsE
予定されていた彼らの役割は、すでに終わっていると言って良い。 だが、利用価値はまだまだ消えていない。しかし、彼らの存在が多くの問題を引き起こすだろうと言うことも、想像に難くはない。 このまま田所を使い捨てるのと、一度本領まで退かせて存在を誇示し続けるのと、さてどちらがVAにとって役立つだろう? 重石としての役割と、彼らの暴走癖とを天秤に掛けた結果は、あっさり温存策へと大きく傾いた。 事態が事態である。 使える手駒は、多少リスキーであっても温存して置かなくてはもったいない…… 「総裁、大変です!」 ほぼ決断を下しかけたとき、彼の思考は闖入者によって中断された。 唐突な大声に脅かされるのは、電話に続いて本日二度目である。ノックもなしに駆け込んできた幹部を見て、馬場は不快感も露わに鼻を鳴らした。 ジロリと彼を睨み付けただけの総裁に代わり、叱咤を飛ばすのは長岡少将の役割となる。 だが、狼狽した部下は詰るような二対の眼差しに気が付く余裕もない。早口で次の言葉をまくし立てるのが、長岡少将の叱責が飛ぶよりわずかに早い。 「トコロザワに憲兵隊の北方総督府派遣群が入りました! ねこねこからの連絡によると、総督命令に基づき葉鍵国との国境封鎖任務に就くと通告、執行部隊はすでに封鎖を開始しつつあるとのこと!」 「何やと、『新撰組』がかっ!?」 報告を受ける二人の顔から、非難が消えて驚愕に差し替わった。 エロゲ国陸軍憲兵隊新大陸北方総督領派遣群、通称『新撰組』。 岩清水新一憲兵少将(学名・ゴロタニア=ゴロタン)を名目上の司令官に、軍紀違反者、テロリストの類を裁判無用で行殺に処すると恐れられる部隊である。 その人員の過半は、やはり新大陸に支配地域を有する星空めてお中将のライアー師団から選抜されており、政治的な判断はライアーのそれに準じるものと認識されていた。 「……ライアーは正葉寄り中立の立場にあると認識していましたが」 かつて卓上ゲーム国PBM方面軍遊演体軍集団時代には、『マルチ萌え〜』などと公言して憚らなかった将軍を多数奉じる軍である。 そんな軍の思わぬ動向に、長岡大佐は失意混じりの舌打ちを漏らす。
363 :
失策 :03/01/10 01:38 ID:62RDoAsE
「アリスの多田大将からも目ぇ掛けられとったからな。それと考えれば不思議やないが…… いや、待て。となるとトヨハラはどうなっている?」 北方総督領でもう一つ、VA系とは別個に鍵側に加担しているエロゲ国軍閥の存在に思い当たり、馬場総裁は幹部に状況を確認する。 彼らがVAによる鍵支援を狙い打ちにしているなら、トヨハラを取り込むことで支援ルートの確保を図れないかと考えたのだ。 しかし、悲痛な面もちで電文に目を落とす部下の答えは、馬場を落胆させるには十分なものだった。 「はい、憲兵隊はトヨハラにも進駐を図り、現在管区の境界線を挟みWINTERS師団側と調整中のようです……」 「……強引な。全面的に、軍閥の内政に干渉してきたか」 長岡少将の呆然とした声音は、それ以上にショックを受けた様子の馬場の耳を右から左へと虚しく通り過ぎるだけだ。 これほどまで強引に、政府・総督府が軍閥の活動に制約を加えようと試みるのは『とらいあんぐるアロー』事件以後初めてのことだった。 それを是とさせるまでに、エロゲ国保守派の鍵=VAに対する怒りは激しいのだろう。 このままアリスと表面だった対立を続けた場合の結果を素早く脳裏に計算し、馬場はぶるりと怖気を震った。 このままでは、ダメだ。 「……これは、アリスとの関係修復するのが先決やな」 「確かに……」 馬場の最終目標が何かを知らぬままに、長岡は同意のうなずきを返す。 自明の理であった。 何をするにしても、ビッグ3の中でも頭一つ抜ける規模を有するアリスと正面切って抗争する状況はあまりにも分が悪いのだ。 彼らの支持を受ける必要はない。好意的中立も取り立てて重要ではない。無関心ぐらいがちょうど良い。 しかし、悪意、敵意だけは買ってはダメだ。 政治的経済的に負けることはないにしても、これを圧倒することも不可能なのだから。
364 :
失策 :03/01/10 01:40 ID:62RDoAsE
「……長岡少将、田所のおっさんをすぐに本土に戻らしぃ。 空き地にしとったら、何かいらん事仕掛けられるかもしれん」 「はっ、承知しました。 ただちに田所大将に伝えます」 強張った動作で敬礼を行い、長岡少将は踵を返す。 その背中を一瞥し、扉が静かに閉じられたその後で、彼は頽れるようにソファの背もたれへと身を委ねた。 ぐったりと脱力したその姿はまったく無気力に疲れ果てたかのごとく。 しかし項垂れ、隠されたその相貌、両の眼だけは憤怒と野心とに爛々と輝いている。 (……くそ、絶対このままじゃ済まさへんぞ。 後でみとれ、吠え面かくのは貴様らやさかいの……) 貴様ら、が誰を差すのか馬場総裁自身わからない。 わからないが、一つだけ彼だけにははっきりしていることがあった。 いずれ、勝利するのは自分なのだ。 一度や二度の逆転再逆転はあるかも知れない。 しかし最後に残る勝者は他の誰でもない、この馬場隆博という男一人なのだ――― 「……そうや。最後に勝つんはワシや」 呟いて、ふいと彼は頭を上げた。 底光りする眼光を、壁際にて控える財団幹部へと向ける。 「メビウスに……いや、メビウス領内のちよれんの連中に連絡しぃ。 ”プロジェクトD”、発動準備に入れとな」 <糸冬> アリスを完全に丸め込めなかった理由は、鍵独立騒ぎのせいだったようです(後付) そんな訳で、『失策』投了しますた。
3月29日2018時 葉鍵国―――下葉南部の商業港、ラエート港。 沖合に大規模な海底油田・ガス田を有し、航空・電子工業を中心とする産業の栄える70万都市である。 国際交易都市であるロックブーケとは異なって、どちらかと言えば新旧エロゲ大陸の域内貿易を主とするこの都市は、街並みもまた一見して東葉とは違う趣を見せる。 立ち並ぶ高層建築物群の外壁は色合いに乏しく、多くの車と人でにぎわうメインストリートさえ空と同じく鼠色。 頭上の空いっぱいに重苦しい雲が広がり、たまの晴れた日にも薄ぼやけた光化学スモッグが漂うのに象徴されるがごとく、行き交う人々の表情が晴れ渡ることもない。 交差点、駅前広場、商店街の入り口、至る所に鼠色の制服に身を包んだ武装警官が、そんな疲れた群衆を叱咤するように睥睨していた。 552文書事件より前は、高橋が国を売ろうとするより前は、戦争になる前は、こうではなかった。 その過去への追慕は、国家予算の過半が軍事費に消えるというこの国の現実から目を背けるためのまやかしに過ぎない。 同じく下川に縁が深いロイハイト市民がそうであるように、下川体制への支持が厚いこの都市の住民には体制批判は遠い別世界に分類されるの思考なのだ。 そんなラエート市の中心的なモール街。 本来なら閉塞的な日常生活の中、消費という行為に開放感を求める人々でごったかえすだろうそこに、この数日というもの人の姿が全くない。 ただ漂ってくるのは腐臭……死臭、かつて人であったモノが、どこか目に見えない場所で腐り落ちてゆく耐え難い異臭。 多くの下葉市民にとって、空き地の街による下葉首都への巡航ミサイル攻撃と共に巨大な衝撃と恐怖、そして敵対者への消し得ぬ敵意をかき立てる結果を生んだ事件の証が、そこにあった。 アオバダイに弾道弾が着弾した一時間後のことだ。 アオバダイ周辺に展開した移動式発射台から、五基のDF15(東風十五号)が発射されたのは。
目標は二カ所。 二基はロイハイト市及び、同市西方から田所配下のPIL師団を包囲するように運動していたRR親衛隊部隊、テネレッツァ軍に向けて各一基。 三基は射程を最大限に取り、ラエート市へと向けて発射された。 発射そのものは即座に下葉のメインステイによって探知され、後方のラエート市に初めて空襲警報が発令と共に、周辺に配備されたS300高射ミサイル連隊による迎撃が試みられた。 結果として、目標に到達したミサイルは、ロイハイトに一基、ラエートに二基。 目標を外れからといって、それら二基のミサイルも別に撃墜に成功したというわけではなかった。 発射されたミサイルの内の二基は、一基が発射直後に姿勢制御を失って国境付近に虚しく落着。 もう一基は終末コントロールに何らかの問題があったのか、ラエート上空まで到達しながら市街、港湾を飛び越して海へと落ちた。 結果として、目標近辺に着弾したのは三基だったというだけのこと。 だが、着弾が五基であれ三基であれ、それだけならば物理的な被害は大したものになるはずもない。 東風15号のペイロードはたかだか500kgである。その程度の炸薬量なら、街区を一つ吹き飛ばすことさえ不可能だ。 そう、通常弾頭ならば、怖くはない。 しかし田所が放った報復の一手は、通常弾頭ではなかった。 東風15が即応性の高い個体燃料式であること、応射までに一時間しか掛からなかったこと、併せて考えれば田所は最初から弾道弾の投げ合いを予期していたのだろう。 待ちわびたように発射されたそれらの弾頭に、たっぷり充填されていたのは火薬ではなく悪意の気体。 時を合わせ、態勢を建て直したAF・『歌月十夜』連合軍が、ボスニアからロイハイトに至る戦線の全正面で攻勢作戦に使用した気体と同じもの。 以前のように、下葉警察部隊の暴走により敢行され、田所軍の手によるものと糾弾され、その批判難詰をむしろ栄誉であるかのように受け入れたVXガスによる攻撃とは違う。 今度こそは正真正銘、田所軍によって使用された毒ガス・タブンとマスタードガスの複合ガス弾頭であった。
時、あたかも夕暮れ時。 晩餐の買い出しに、或いは仕事を終えての飲み会に、モールに溢れた人の波の真ん中に、それは落ちた。 死者の数は、買い物客や商店の従業員など約七百名。 人口密集地に着弾し、パニックとなった群衆が避難に手間取ったことが被害の拡大を招いた。 出口に我先に殺到する買い物客や従業員、彼らの波に押し流されて、軍の化学戦部隊や救急隊の到着は大幅に遅れた。 あるいは存在を誇示して彼らの恐怖を宥め、あるいは空砲を乱射して暴徒化する彼らを威嚇して道を拓き、ガスの充満する現場に到着したときには全てが手遅れ。 彼らは救急医療具や解毒剤も虚しく、現場の洗浄と遺体の回収作業に努めるしかなかった――― 「……正直な話ですが、この街を今空けて出ていくことには抵抗がありますね」 モスクワ級航空重巡洋艦『HONEY BEE』艦橋から眺めるラエートの灯りは、攻撃以前に比べて極端に明度を落としたように見えた。 いや、確かに街の灯りはその数と明るさを減じているのは間違いない。 市議会が今日の昼間、緊急協議で(現代戦、ましてや相手がミサイルでは意味がないという軍、警察の助言にも耳を貸さず)市内全域での灯火管制を決議したことが影響しているのだろう。 しばらく不安におののくような母港の姿を眺めていた江藤泰久RR海軍少将は、苦渋も露わに小刻みに首を横に振る。 「それは、わからない感慨でもないけど」 傍らに立つ少将が、困ったように首を傾げた。 泰久の顔をのぞき込みつつ、宥めるように言う。 「艦隊がこの港に団体さんで居座ってても、弾道弾相手には何もできませんよ」 「制空権を確立しているわけではない洋上で巡航ミサイル原潜を相手にしても、大した働きはできないと思いますよ?」 「それは、口にしちゃいけない類の疑問だよ」 多少の皮肉を交えた江藤少将の言葉に、105円提督……永田和久海軍少将は不快感を覚えたらしい。 宥めるような口振りから一転して、冷ややかな空気が言葉を覆う。
「前線は全面的な化学戦で敵のガス攻撃に対し逆撃を掛けているというし、ボスニアのばんろっほ少将も小艦艇でナカメグロへの奇襲に出る。 それぞれがそれぞれの義務を果たしている。そしてあなたの義務は他にあるんだ」 泰久に口を開く間もなく言い募るなり、永田は彼に背を向けた。 視線が窓の外に広がる港湾設備、そこに横付けされた艦船群を順に過ぎる。 「江藤少将。あなた方の働きが、この内戦が核の洗礼を受けずに済むかどうかの鍵を握ります。 なんとしても、隠れ潜むあなた方の手でネズミを燻りだし、これを撃沈して頂きたい」 この『HONEY BEE』を旗艦に、カラ級巡洋艦一隻、ウダロイ級対潜護衛艦二隻、ソブレメンヌイ級駆逐艦一隻、ネウストラシムイ級フリゲイト二隻、クリヴァクV級フリゲイト四隻という水上艦艇群。 加えてオスカー級巡航ミサイル原潜一隻、シエラ級及びヴィクターV級攻撃原潜三隻、アルファ級攻撃原潜一隻、ラダ級及びキロ級潜水艦五隻の潜水艦隊が、江藤泰久に与えられた全兵力である。 大艦隊であった。 特に潜水艦戦力は、エロゲ大陸最強のものと言って良い。 シエラ及びヴィクター級は、ソフリン条約によって巡航ミサイル搭載能力を奪われているものの、水上艦にとって脅威であることには代わりがない。 水上艦隊の対潜能力も強力で、モスクワ級とウダロイ級のコンビはそもそもピースの護衛につくはずであった艦である。 もっともピース計画自体は、法外な軍事予算の増加により計画が無茶苦茶に改訂され、本来の駆逐艦主体の数を重視した護衛艦隊編成から化け物じみた巡洋艦部隊へと変貌を遂げている。 この江藤少将に託された水上戦力は、本来の国情に見合った建艦計画の名残といって良いものだった。
先に北に向けて出撃したばんろっほ艦隊、そしてこの艦隊が出撃すれば西海岸の下葉水上兵力はほぼ出払ったに等しい状況となる。 南北に分散したその全てをかき集めても、ボスニアの国境警備隊第三任務部隊の残余とラエートの海軍残留部隊、国境警備隊を併せて旧式又は小型の水上艦艇十隻前後と、通常動力潜水艦三隻が残るに過ぎない。 軽空母二隻を中核とする大規模な水上部隊を保有するF&Cあたりが動けば、ひとたまりもなく粉砕されてしまうだろう。 その危険を敢えて看過して、下葉はアビスボート狩りに本腰を入れる姿勢を示した。 エロゲ国諸軍閥へのアリスソフトによる圧力、さらに露骨なVAの台頭への旧軍閥の危機感という背景がなければ不可能な決断だった。 しばらく、二人の海軍少将の間には沈黙が漂っていた。 彼らが見つめる先の軍港では、深夜だというのに兵士が慌ただしく出航準備に逐われている。 貿易港の方でも動きがあるのは、徴用した貨物船やタンカーといった民間船の出航も同時に予定されているからだ。 どうやら上層部は着上陸作戦の決行も睨んでいるらしく、それら貨物船と両用戦艦艇群をエスペランサ市(下葉領唯一の、大リーフ湾に面する港湾都市)まで護衛する任務も江藤艦隊は担っていた。 今も『HONEY BEE』が係留されている岸壁を、海軍歩兵連隊のT72AGが十両ほど、ロプーチャ級戦車揚陸艦まで自走していくのが見える。 その車列が往き去るまで、二人は沈黙を保っていた。 「SS-N-21の射程は3000キロ。大リーフ湾外からでもアクアプラスシティに届きますね……厄介な話だ」 先に口を開いたのは、江藤少将の方だった。 それを受けた永田少将も、先ほどまでの会話はなかったかのように穏やかな様子で応じる。 「ただ、あれは巡航ミサイルですから。 攻撃目標だっておおよその見当は付く。発射後にこちらの制空下の飛翔期間が長ければ、迎撃できる可能性は高まるし……」 だがそれとて発射を探知できなければ、迎撃できるポイントに戦力が布陣していなければ、それまでのことだ。
大海原に潜む、一隻の原潜を探し出して撃沈する。 それは至難の業……いや、ほとんど不可能な難事と言っても良いほどだ。 水上艦艇ならば、レーダーの発達した現代において、その発見は極めて容易である。 通常動力潜水艦は、空気取り込みのために定期的に海面近くに浮上する必要がある。狩る側に取ってみれば、この時が狙い目だ。 だが、原潜にはそれがない。 原潜は水中にいるからレーダーに引っかからないし、原子炉は空気を必要としないから浮上する必要もない(無線交信のためには浅海まで浮上の必要があるが) 海底に着底し息を殺して時を待てば、敵艦に探知される恐れはほとんどないと言ってよい。 だが、いくら空気を必要としないからと言って、原潜は永久に海面に浮上する必要がないという訳にはいかない。 船は補給を必要としなくとも、それに乗り組む人々には生活物資が必要だからだ。 「VAなり電波花畑なりの貨物船が、洋上補給を行っている可能性はあるかな?」 両者とも、反下川の立場を取る勢力である。 VAは空き地の町との繋がりが確認されておらず、電波花畑は表面上撤退を表明したとはいえ何しろ狂人の集団である。 油断は出来たものではない。 「空軍がAWACS飛ばして洋上監視を強めてるけど、まだ今のところは…… だけど、定期的に洋上補給を受けたとしても、彼らは結局いずれ港湾に戻らなきゃならない」 「?」 「簡単なことです。確かにどこか他国の力を借りれば、食料飲料水の類は補給できるでしょう。 だけど、人員はどうですか?」 「あ―――」 淡々とした永田少将の指摘に、江藤少将の目が輝きを取り戻した。 アビスボートには、通常の戦略原潜が常に用意している交代の要員がいないのである。 彼ら交代要員は、ボスニア港で待機、そして裏切りが発覚した今は秘密警察によって逮捕処刑されてしまっている。 つまり、彼らは永遠に交代要員を持たない潜水艦になってしまったのである。 これから訓練し用意する、というのも到底非現実的だった。 原潜に限らず、潜水艦の乗組員は一朝一夕でできあがるものではない。
ましてや、彼らには訓練に供するべき潜水艦が存在しなかった。これでは養成は不可能だ。 結論すると、彼らは洋上にて補給を受けることは出来ても、要員の交代は望めない。 おのずと艦の活動に、時間的な制約を受けるのだ。 そして彼らアビスボートの乗員は、黒マルチ艦隊同様すでに一ヶ月以上に渡って休養なく任務に就き続けている。 さらには音信途絶時の核ミサイル発射の判断まで委ねられ、緊張状態の極にあると考えてよい。 居住性の高いロシア型潜水艦の系譜を汲むフネである。彼らが限界に達するまでには、まだ時間は掛かるだろう。 だが、今存在する脅威が賞味期限付きだと知れてしまえば、戦略価値は多いに弱まるのだ。 「でもま、沈めるには早いに超したことはないわけです」 一度アビスボートが帰港すれば、その時を狙って空爆を掛けるなり、出航後も随時モニターして位置を特定し好きなときに攻撃を仕掛ける手はずを整えるなり、どうとでも料理できる。 だが、裏を返せば彼らが自由に動き回っている限り、下葉は空き地の町に対して陸上からの攻撃をしかける事すら難しいという事実に突き当たる。 だからさっさと沈める算段をしてしまいましょう、と永田は手にした海図をコンソールの上に広げた。 「これまでアビスボートが使っていた海域は、考慮から外すとして…… 軍としての知識とは別に、彼らがどの程度、あの海域の状況を熟知しているかだね」 海図には、赤いインクでいくつかの書き込みが記されている。 丸で囲まれた海域は、アビスボートが下葉海軍時代に鍵やエロゲ国の目標を睨んで設定していたミサイルの発射位置だ。 それらの大半は、大陸の西岸側にあった。 アビスボートの母港がボスニア港であり、大リーフ湾周辺には下葉はフキフキ以外に大規模な軍港を保有していなかったからだ。 「我々が地上攻撃用の巡航ミサイル原潜を保有したのは、アビスボートが初めてだから。 我々にも彼らにも、運用法そのものが手探りの状態。加えて、アビスボートの本来の活動海域は西岸側……」 二人の少将は揃って顔を見合わせた。 確かに、アドバンテージは彼らの手の中にある。 だが、ゲームのルールをよく知らないという点では立場は同じだ。 覆せないハンディではない―――と、信じたい。
「我々が大リーフ湾とその外海の海底を知らないように、彼らも熟知しているわけではありません」 「我々が知る程度にしか、彼らもそこを知らない……」 やれるかもしれない。 そう信じて、やるしかない。 決意ともあきらめともつかない想いと共に、どちらともなく頷いた。 敬礼を捧げるのは永田少将が先だった。 「幸運を。あなた達の働きが、我が国の未来を定めます」 「祖国と家族のため、最善を尽くします」 <糸冬>
とりあえず……
>軽空母二隻を中核とする大規模な水上部隊を保有するF&Cあたりが動けば、ひとたまりもなく粉砕されてしまうだろう。
に関しては↓
http://www6.plala.or.jp/brigade/support/ss04/254-261.htm >これには、南方総督領に有力な艦隊を保有する軍閥が存在しないという事情も影響している。
>もちろん北方総督領には、軽空母を中心とした小型機動部隊を保有する軍閥がいくつか存在するし、
>エロゲ国旧大陸本領から正規空母を中心とした空母任務群が襲来する可能性もある。
とあるので、F&Cを北方のどこかの軍閥あたりに変更していただければ……
申し訳ない、北と南を取り違えておりました。 >軽空母二隻を中核とする大規模な水上部隊を保有するF&Cあたりが動けば、ひとたまりもなく粉砕されてしまうだろう。 を >北方総督領に幾つか存在する、小規模な空母機動部隊を含む有力な艦隊戦力を擁する軍閥あたりが動けば、ひとたまりもなく粉砕されてしまうだろう。 に差し替えたいと思いまつです。 時に、黒マルチ艦隊がボスニア港に向けて反転したのって、三月のいつ頃になるんでしょ?
はっきりした記述はないものの、前後の状況からして3月24日ごろです。 ボスニア―大リーフ湾が巡航速度で1週間ですから、 現在はロックブーケ沖合を通過して下葉南岸沖合を西進中のはずです。
376 :
鮫牙 :03/01/12 10:12 ID:8pU6lYec
「沈黙の艦隊」の戦術をパクって、江藤艦隊に戦いを挑む超先生。萌。 375>という事は4月1日にはボスニア到着ですね。
3月29日 新大陸標準時 10:14 下川リーフ 「だから無理だっての!」 「いーじゃねぇか。もう元気になってんだから」 「まだ完全に傷口塞がってねぇってドクターも言ってんだろ!? お前はもう暫くここにお世話 になってなさい」 「なにを馬鹿な事を。そんな事になったら毎晩毎晩夜泣きする夜明ちんを誰がお守りするって んだ」 「誰が夜泣きするか!」 事の顛末はこうだ。 閂と陣内は『スポンサー』から任務を依頼された。 依頼内容は一つ。とあるRR親衛隊将校と連絡を取り、状況によっては脱出の手引きをす る。陣内が言った通り巳間と同じような内容だった。 彼らが選ばれた理由は二つ。 一つは2.14事件を潜り抜けてきた歴戦の兵という点。 二つ目は――『とあるRR親衛隊将校』と個人的接点があったためだった。 陣内と閂は恩赦の類を一切受け取らなかった。もちろん作戦に必要な経費はもらっている がそれも微々たる物である。なぜ彼らが恩赦を断ったのか『スポンサー』には不思議だった が、それが彼らなりの義理であるという事に気が付いたのは作戦開始後の話だった。 ちなみに先ほど閂が通信したのも『スポンサー』と連絡を取ったためである。
「――ああ、君」 「ドクターからもひとこと言って下さいよ」 「いや、それなんだが」 初老の医師は、数種類の薬を渡す。 「化膿止めと痛み止め。なにかあった時の為に強心剤も入れといた」 「なっ…!」 「ほれみろ夜明ちん。御大も許可してくださっておるのだぞ。ほれほれほれ頭が高いわ。犬の ように地に伏したまえ」 「ちょっ、どういう事ですか!?」 「――聞いた所では陣内君の妹がアクアプラスで一人暮らしをしているそうじゃないか。わざ わざ旧大陸から一刻も早く助けに来たのに、それを押し留めるほど私は無粋ではないよ」 いや、攻撃があったの昨日でしょうが。 何となく言うとおりに地面に伏せながら心の内でツッコミを返しつつ、閂は陣内の方を見た。 ――目が笑ってる。一計図ったな。 「なに、大丈夫だ。腕の方はしっかり縫合しといたと自信を持って言えるよ。君が傍にいれば なお安心だしね。あんな綺麗な応急処置は素人じゃ出来ない」 「はぁ……」 常識で考えても一晩で治るはずがないだろーが。閂はほんやりそんな事を考えていた。 「あ、それとこれも持って行きなさい。アクアプラスにいる弟の病院の紹介状だ」 医者は茶封筒を閂の手に握らせた。 「さあ、長居は無用だ。車も用意したから、一刻も早く妹さんの所に行っておやりなさい!」
「いやーぁ、ありゃもう天然記念物クラスだぜよ」 親切なのか不親切なのか、陣内はあっけないほど簡単に診療所を脱出する事が出来た。 世話になった医者は腕は確かなのだが、かなりの妄想癖&思い込みの激しい性格らしく陣 内の虚言もあっさり信じてしまった。さらに何をしたのか、二人は一晩の間に妙に親密な仲に なっていた。初老の医者は別れ際に感極まって泣いてしまったほどだ。 閂は、ソッチ方面の一次交渉を疑わずにいられなかった。 「――しかしホントに大丈夫か? 腕」 「そりゃ大丈夫なわけ無いだろ、まだ傷口がくっついてないってんだから。メシ食う時もクソする時も片手じゃ不便だし」 「メシとクソを同列視するな」 閂は脊髄反射で後者の方を突っ込んでしまった。 事実、陣内は文字通り皮一枚で生きている状態だった。激しい運動をすれば傷口が開き、 あっという間に出血死するだろう。 「しっかし、今日は嫌にケツの穴が痛むなー」 「…!?」 「何か変なものでも食ったのかね。まー快便だから別にいいけど」 「・…!!??」 「ん? どしたよ閂ちゃん。そんな端っこ寄っちゃって」 「いや……何でもない」 「そうか。何でもないか」 「………頑張れよ」 「何がだっての」 巳間に遅れる事3時間。一株どころか二百五十株くらいの不安を抱え、閂はアクアプラスに 向けてハンドルを切った。 「――――まー、何にせよ早く行ってやらないとマジでヤバイしな」 「――ああ」
一日遡り、3月28日午後4時のシェンムーズガーデン。 ミサイル着弾の2時間ほど前、テラスには繊細なピアノの調べが響いていた。 葉鍵国内戦が勃発して以来そのピアノは永らく使用されなかったが、専属の調律師によっ て状態は良好に保たれていた。 曲目は中世にピアノ名手としても名を馳せたフランク・リストの名曲・愛の夢 第3番。4分半 ほどの短い曲だが、シンプル且つ美しいメロディは同時製作された他の二曲より有名だ。 今日のピアノ奏者は国内でも五指に入るほどの腕前だった。聴く人が聴けばそれは息を飲 むほどの素晴らしさであり、同時に何とも言えない緊張感を覚えたりもする。 ただ、テラスの外は暗雲が広がり、容赦ない雨が降っていた。またその足元に広がる葉鍵 国内情勢とも併せて――全く溶け合っていなかった。見る者によっては酷く滑稽に感じるだろ う。 しかし、奏者はそのことをまるっきり無視して弾きつづける。 実は、彼にこのような才能がある事はあまり知られていない。なぜなら彼は大勢の群集が 集まる場所では絶対に演奏しないし、親しい友人が――いればの話だが――懇願してやっ と重い腰をあげるほどに人に聴かせるのを嫌っていたからである。決して彼は人前では演奏 しないのだ。
「――素晴らしい演奏でした」 最後の一音が鳴り終わると、拍手と感想を述べる声が室内に鳴り響いた。 「ほう……お前みたいなヤツにも音楽の良さが分かるんか?」 「――はっ、もちろん私のような者には凡そ勿体無き程ですが、見事な演奏でした。この中尾 佳祐一生の幸福で」 「何故。わざわざお前を呼んでピアノ聞かしたか――判るか?」 中尾の賞賛を一蹴するかのように彼は問うた。声色こそ軽いものの、普通の人間なら恐怖 を覚えずにはいられない。 「………いえ、私にはさっぱり」 「ああすまんすまん、質問の仕方が悪かったな」 控えめな笑い声が反響する。普段見られないようなその態度に中尾は混乱していた。 「――3月27日0500時。反逆者を襲撃中、謎の飛行中隊が現れた。WINTERSのヘタレどもや な。そいつらはあろうことか我々を攻撃。突然の不意撃ちに成す術もなく敗退――」 次々と発せられる言葉から、中尾は先の自治州戦における責任を詰問されていると悟っ た。 驚愕と恐怖が脳内を駆け巡った。なぜならその件については既に処分が決定済みであり (中佐に降格・防空軍司令官代行の座を剥奪)、これ以上の処分はない筈だった。それを蒸し 返されたということは――どうやらその処分は取り消されたらしい。 「ワシの言いたい事、分かるか?」 向けられた銃口が全てを物語っていた。
静寂な空気が辺りを包んだ。 雨音と薄暗い電球だけが中尾の五体を保っていた。平衡感覚が失われ、今バランスを崩し たらどこまでも倒れていきそうな気がした。肉体を支える二本の足は頼りなく震えている。突 きつけられた銃口を正視できずに目を逸らす。 結局いたるは永久的に麻枝のモノになるのね――もはやそんな事しか思考できなかった。 どうも眼前に迫る圧倒的な死から逃れられそうにもない。 2分ほど経っただろうか。 突如彼は銃口を降ろした。どうやら生命を終えずに済んだようだ。――先延ばしになっただ けでどちらにせよもう幾許の猶予すら残されていないのだが。 「お前のような貴重な人材をここで殺すわけにはいかんしな」 彼の声は優しいものであったが、とても信じるには足りえない。あの国家元帥の言を一度と して信用した事の無い人間にとって、彼の一言一言は自分に襲いかかる災いの予告としか 意味を成さない。中尾は言葉の続きが気になった。 「――それで私はどうすれば?」 「ああ、そやったな」 妙になげやりな態度で彼は答えた。 彼は辺りを見回す。あるのはグランドピアノとガラス窓、そして机だ。卓上にはWW2に作られ たレシプロの名機達が軒を連ねている。その中の一つが彼の目に止まった。それは大戦初 期に最強と謳われた日本有数の戦闘機、ゼロファイター。彼のお気に入りだ。 フィギュアをいじりながら、彼は何か思案していたが――突如、言った。 それはあまりに唐突過ぎる死刑宣告だった。 「そうや。ええこと思いついたわ。お前、特攻せい」
「――へ?」 あまりにバカげたアイディアに中尾はそんな声を漏らしてしまった。予想していた従来の粛 清手段とあまりにかけ離れた処分に笑みをこぼさずにはいられない。 しかし、それを冗談で流すには相手が悪すぎた。 「分からんやっちゃな。弾道ミサイルを使うのもったいないから代わりにお前が飛ぶ。簡単なこ とやないけ」 彼はいきなり不愉快になった。 「ええか。お前は既に処分が決定されとる。降格やな。中上あたりはそれで良しとした。けど な、ワシはそうは思わん。多くの戦士を犠牲にし、多くの備品を無下にした。これが国家反逆 罪以外の何になるっちゅうんじゃ。お前も死んだ兵士とおなじ道を辿れや」 全ての常識が非常識な下葉においてもなお、ソレは滑稽なほどにムチャクチャな論理だっ た。だが実質上この国は彼の私有物に等しいし、それゆえココでは彼こそが絶対の法なの だ。 「そうやな――FROG7やSSシリーズでも億劫なソフリンあたりがええか? それともエロゲ国北 方のどっかでも面白いし――」 まるで悪戯を思案する子供のように、彼は計画を練った。
結局の所、彼は中尾を粛清する事を前提にしていた。しかし彼の幼稚な思考は、どうせ殺 すのならオモシロク殺そうという方向に歪んだ。導き出した回答は、かの戦争で大日本帝国 が編み出した究極の戦術、特攻。方法のみ抽出して考えれば、ミサイル至上主義の現在に おいてむしろ逆に盲点ともいえるだろう。 「つまり、こうや。 とある国内便が突如エンジントラブルをきたしコントロール不能に陥った。必死の努力にも関 わらず、あえなく墜落。しかし旅客便にはなぜか気化燃料が満載していた――」 しかし何より、彼にとって中尾は既に利用価値の無い玩具に過ぎず、哀れな玩具を何とか して再利用しようと試行錯誤を重ねた結果なのである。玩具は相手を恫喝させる鋭利な刃物 に変貌し、一突きすれば何百人もの命を奪えるほどに研ぎ澄まされた。 「ああ。それとさっきのアレ。何故お前に聴かしたか」 「……はい」 「お前へのレクイエム。要はそういうこっちゃ」
じ、自爆テロ?
3月29日0242時 アクアプラスシティ、内務省ビル地下 『ねー吉井、この電話って大丈夫かな?』 「大丈夫、って?」 『うーん、盗聴とかされてない? ってこと〜』 ほんわかした声に問われて、ふと首を傾げて考え込む。 普通、電話帳には載っていない回線、それも秘密警察の局番を盗聴しているヤツがいるはずがない。 軍部の連中はわからないが、機密保護の措置は取られているはずである。 保安体制は多分、シェンムーズガーデンの国家元帥執務室に匹敵するレベルだという自負はあるから、そうそう盗み聞きされてるなどとは思わない。 その秘密警察の長である吉井ユカリ警察少佐に一抹の不安が残るのは、脳裏を過ぎった上司の風貌のせいだろう。 彼なら、久瀬内務尚書という人物なら、内務省内にも、そしてそれが腹心というべきこの自分に対してであっても、二重三重の監視を行っていても不思議ではない。 いやむしろ、行っていない方が不思議でさえある。 内務省の主は、彼の主であり独裁でもって国家を支配する男がそうであるのと同様、誰をも信じず、誰の力をも当てにせず、ひたすら強引に事を為そうとする傾向がある人物であるからだった。 そろそろと、憚るるように辺りの様子を見回した。 青紫が放った巡航ミサイルが、内務省ビルの上層部に着弾してからまだ幾ばくも時間が立っていない。 幾つかの部署と事務用品、そしてそこでようやく避難に取りかかったところの官僚達(民政担当部署の者が多かった)多数がばらばらに砕け散ったのは取り立てて問題ではない。 屋上の広域通信用のアンテナが破壊され、また各地の内務省施設・部隊を結ぶ高速回線もサーバが吹き飛ばされてはどうにもならず、内務省は全土の警察の状況把握はおろか、首都圏警察の掌握すら困難を極めるという事態こそが生き残った者に焦りを生んだ。 指揮施設が地下に存在しながら、そうした電子設備のほとんどが(アンテナは仕方がないにしても)上層に存在することの不備、不可解さは以前から指摘されていたである。
だが、552事件以後の国内の混迷を受けて、一時的とはいえ内務省の機能不全を招きかねない大改装に踏み切るだけの余裕がなかったことが痛手となった。 軍部と対立関係にある内務省において、現在唯一残された長距離連絡手段は電話回線のみだ。 今のところ、ロイハイトとラエートの市内に着弾したという弾道弾の情報すらまともに入手できてはいない。機能不全この上ない。 おそらく現在、内務省ほどに全体情報を把握できていない政府機関は他に存在しないだろう。 システムの応急的な復旧にもまだ時間が掛かる。その間彼らの手許にある情報集積手段は、それほど多くはない。 そのわずかな手段は、今のところただ一つのことに指向して活動を続けていた。 防空軍の―――いや、空軍の大粛正、そして解体である。 久瀬の命令ではない。それより上、つまり国家元帥閣下の指示ですらない。吉井の(極めて珍しい)独断であった。 下川国家元帥閣下が、どうやら中尾防空軍大佐の処分を覆すらしい。 国家元帥官房から、中尾大佐の動静の把握―――逃亡の阻止を指示された段階で、秘密警察と政治警察はその見解で一致した。 指導者同志の性格からいって、まず処分が軽い方に再変更されることはありえない。そもそもそれなら、逃亡の阻止なぞという命令は出ないはずである。 だから、中尾大佐の処分は厳罰化―――おそらくは処刑、になるだろう。 混乱した状況の中でも、その情報を得た内務省は正しい判断を下した。 判断を下すと同時に、行動を開始した。 首都及びシェンムーズガーデンでは梅木太郎技術少将、中上雅司空軍大佐(参謀総長の実弟)、ユウジナカジマ空軍中佐ら中尾に近い、或いは動向の読めない幹部連の監視と逮捕状の事前発行。 ロイハイト方面に投入するため、部隊の抽出を急がせていた各地の警察軍部隊には、その中止と代わって全土の空軍基地への侵攻準備を。 数日後には鍵自治州南部の治安維持任務を解かれ、アクアプラスシティに帰着する予定の警察師団には、この機を捉えて兼ねてからスパイ疑惑のある高槻逮捕のためにシモカワグラードの制圧を。
この動きを理由づけるのは、状況を把握している者なら難しくはなかったろう。 防空軍、そして空軍を実質的に支配するのが、しぇんむに忠実なねのつき=ろみゅラインではなく中尾大佐だと目されていたからである。 かつて開戦劈頭にAFの航空撃滅戦を受け、航空戦力が壊滅的打撃を受けたとき、その再建案は空軍を実質的に支配する中尾大佐の協力がないとできないものだった。 それを知っているからこそ、下川国家元帥とて中尾大佐を処断せず、米村中佐の処刑(失敗したが)でお茶を濁そうとしたのではなかったか。 あれからまだそう日にちは経っていない。 中尾の再建策はまだ道半ばであり、そうして再建される空軍兵力は当然のように彼の私兵へと変貌しうる存在であった。 そもそも旧国防軍系の人脈が支配的であり、反下川色の強い親衛隊空軍のことである。 中尾の処刑へと事が進めば、一部の正葉への逃走どころか、陸海軍すら巻き込んだ総決起の様相を呈する可能性は否定できない。 指導者閣下の判断は、手足である自分たちが是非を問うべき問題ではない。 久瀬内務尚書の在所がロックブーケでなければ―――との思いはあるが、それも考えてもどうしようもないことだ。 下川国家元帥は、空軍離反の可能性を完全に失念しているらしい。 内務省のトップも不在、かといって許可を得ている余裕もない。ならば、吉井の独断であっても備えを怠るわけにはいかない。 一時的に空軍力の完全な喪失という危険すぎる状況を迎える危険は高くとも、全面的な叛乱によりそのまま体制が打倒されてしまうよりはマシなはずだ――― そんな訳で、現在内務省内は上層部では鎮火が終わって遺体の回収と行方不明者の捜索、生き残った機材や資料の移動という作業が、下部では上層部の回収・復旧作業と叛乱鎮圧のための指揮・情報収集で蜂の巣をつついたような騒ぎだった。 だが、例えどんな騒ぎが辺りで起こっていようと、非常時の任務とは別に通常の職務も続いているものだ。 内務省内における相互監視。スパイ摘発。
それも、何時いかなる時と場所であろうと、決して中断されることのない最優先の職務の一つだった。 多分、この電話は盗聴されている。それは間違いない。 他にもこの室内には、盗聴以外にも働いているように見えながら、意識はこちらの様子に集中させているスパイが何人か紛れているはずだ。 しかし、盗聴されてないかどうか?なんて質問が出た時点で、それら監視者には秘密警察長官になにやら隠し事ありと知れてしまっている。 今更じたばたするだけ無駄だろう。 ごまかそうとして泥沼にはまるより、素直に盗聴されたほうがまだしもマシだった。 「……大丈夫、だと思う」 『おー、さすが内務省ってカンジぃ? 機密保持は万全だねー♪』 「馬鹿言ってないで。 で、わざわざ前線からこっちに直接電話掛けてくるなんてどうしたのっていうか、どうかしてるよ松本。 ……なにかあったの?」 露骨にためらいながらの吉井の答えを僅かばかりも疑った様子もなく、おどけたような(本人は至って真面目な)返事を寄越す松本を急かす。 『あったから電話掛けてるに決まってるじゃん』 「松本はそのあたり、信用できないから」 『あー、ひっどいんだーっ』 声を荒げる、というより抗議の叫び。 受話器の向こうでぶぅっとむくれる松本の様子が手に取るように分かる。 無制限化学戦という戦局にあってどれほど精神が痛めつけられているだろうと案じていたのだが、変わりないその態度に吉井の顔にふわりと笑みがこぼれた。 「ごめん、冗談。 それはおいといて、ホントにどうしたの?」 『あー、んーと。大したことでもないかも』 なら掛けてくんなよ。
などと、この相手に突っ込むだけ野暮というものである……のだが、やっぱり突っ込んでしまうのが長い付き合いの哀しいサガだった。 気が付けば、受話器を握る手がふるふると震えていたり、受話器の把手がみしみしと音を立てていたり。 おーい、誰か先ほどのあったかい想いの行方をしらんか? 「あーのーねー。松本、ちょっと……」 『岡田がねー。 ガス攻撃受けた報復に、核弾頭撃ち込もうとしたから逮捕しただけー』 「そんなことはどうでもいいから、今日という今日は…………へ?」 予想通り人の言うこと聞いちゃいない松本に、困ったように眉を曲げ……予想だにしない松本の言葉に、かくんと顎が落ちた。 多分、その時の吉井の間抜け面を松本が目にしたなら、窒息するくらいにまで笑い転げて話が進まなかったのだろうが……幸い互いに百キロ超の彼方である。 普通の感性持った人間なら、電話越しにも気付きそうな吉井の壮絶な呆然自失っぷりなど露知らず、普通の感性の持ち主ではないところの松本少佐は至極平然と言葉を続ける。 『だから、岡田を捕まえてぐるぐる巻きにして装甲車の中に閉じこめてんだってぇ。 ガス攻撃受けたらキレちゃって、一基だけ手許にあったスカッドに核弾頭載っけて発射しようとしたから』 ぶぅっ!、と背後から、口に含んだ珈琲を盛大に吹き出したような音が聞こえた。 たちまちその周囲でわき起こる非難と騒ぎを耳にして、吉井の冷静な部分が盗聴者の存在ハケーン、などと投げやりに呟いている。 残念なことに、吉井の神経細胞は松本のように配線を間違えていたり規格外に太かったりはしないので、圧倒的に巨大な困惑と混乱の海に投げ出されて立ちつくしている。
『でもね、とりあえず捕まえたのはいーんだけど、岡田をぐんぽーかいぎとかにはぜっっっったいに送りたくないしぃ。 久瀬君に見つかったらそっこー電気椅子じゃん? どうしたらいいかな、って思って……』 おーい、吉井。聞いてる?と松本の声。 もちろん、受話器は耳に押し当てたままなのだから聞いていることは間違いない。 ただし、聞いてるだけであった。 処理限界超えてフリーズ寸前の吉井の頭脳、とてもじゃないが言葉を発することのできる状況ではないのである。 「えっえええ、えっ、えええええええぇぇっ!!?」 結局、吉井の最初の言葉……というか魂消たような絶叫が、無意味に周囲の注目を集めたのはそれから一分後のことだった――― <糸冬> 即リレーです。 お休みって素晴らしい……
393 :
鮫牙 :03/01/12 23:55 ID:8pU6lYec
御疲れ様です。 鍵自治州南部の治安維持任務はRR親衛隊第1軍はあたっていた筈ですよ。
394 :
鮫牙 :03/01/12 23:57 ID:8pU6lYec
訂正 鍵自治州南部の治安維持任務はRR親衛隊第1軍はあたっていた筈ですよ。 ↓ 鍵自治州南部の治安維持任務はRR親衛隊第1軍があたっていた筈ですよ。
396 :
鮫牙 :03/01/13 00:16 ID:HHmuVKfX
あーあ成る程!書いてた本人が忘れていた。警察師団も投入されてたことを。 表向きの治安維持は親衛隊第1軍がやって、裏で警察師団が秘密裏にレジス タンス狩りをやっていたなんて事は久瀬たんなら十分考えられますね。 スマソ。
済みません、脱字です(汗
>>390 >『あー、ひっどいんだーっ』
>声を荒げる、というより抗議の叫び。
>受話器の向こうでぶぅっとむくれる松本の様子が手に取るように分かる。
を、
>『あー、ひっどいんだーっ』
>声を荒げる、というより天まで何かが抜けたような抗議の叫び。
>受話器の向こうでぶぅっとむくれる松本の様子が手に取るように分かる。
に差し替えお願いいたします(汗
398 :
顧問担当 :03/01/13 22:37 ID:0PNfFrsN
ギャ−中尾大佐特攻寸前、駄目だコリャ書き直し(泣) 館山総理の容姿って今まで謎だったがどんな感じなのかと一考・・・ アメリカ−馬場連合。 結局アメリカ戻ってきたなコリャ、しかも武力行使付き。 アメリカ軍が居る可能性があるとすればアメ公が攻撃したさいたま国? どっちにしろアメ公抜きでもトコロザワのねこねこもピンチっぽいな。 館山総理が馬場社長に鞍替えしたという事は鍵が無血で難攻不落の軍港をソックリ手に入れた? 空き地の街から援助物資搬入(空き地の街−遥魔ヶ辻ルート) >>>ねこねこ商法ピンチ? ふと思ったが、遠野財団−正統リーフの武器調達がピンチかも? イスラエル介入出来ないとどうするんだろう? 鍵−正統リーフ間の同盟も危ないのか・・・ 一日単位で状況が一発逆転もありえるから良く読まんとな(汗
399 :
顧問担当 :03/01/13 22:44 ID:0PNfFrsN
連合国撤退からか(泣 書くとすれば。
まだやるんかい
401 :
400 :03/01/13 23:37 ID:PH8ddDSX
>>398 は
人間が読める文章を書けるようになってから再度お越しください
402 :
鮫牙 :03/01/13 23:38 ID:HHmuVKfX
<400 あからさまに邪険な態度を取るのはどうかと…。
罵倒とても(・∀・)カコワルイ 批判するなら、批判の要点を示すのが筋ってもんかと。
ゴキブリ並だから大丈夫でしょ >400 文盲か?
しかしまあ、顧問が問題を起こしたの、何も一度や二度の事じゃないしね。 >アメ公が攻撃したさいたま国? サーカス師団を『さいたま国』なんて言ってるのを見れば、不安にもなろうよ。 >顧問担当 とにかく、ものを書いていただきたい。それを見て、みんなが判断するだろう。 ただし、未だに電波花畑がどうこうといった話から抜けきれないようなら、風当たりきついよ?
406 :
顧問担当 :03/01/14 00:56 ID:E6z3NzBC
実は限界だったりする。
>>400-
>>401 指摘サンクス。直接攻撃の方が実は痛い。
リレーに向かないタイプだと思っては居ましたが、書いた以上最後までやらんとマズイと思ってました。
>>404 援護サンクス。
>>405 丁度撤退の描写があったので、基地外勢力全部下げてしまえば投了、その際に米国を
電波花畑共々退場させてしまおうかと実は考えていたりしました。
過去ログを読みまして。
本格的に内戦突入ですから関連外の板の精算が必要だなとは思っていました故。
NEXTONに移行させて、細々と事後処理が必要かと考えていました。
書いたからには始末しないとという悪い癖が(汗
壮絶な最期と言う物を一度書いて見たいという邪心が粘着の如く板汚しの結果を招き申し訳ありません。
>さいたま国
またやりましたが(汗)
最近のログなのに・・・申し訳ありません。
>風当たりきつい
まさにその風当たりの強い場面を書こうとしておりました。
最後まで援護してくれた方にサンクス。
407 :
山崎渉 :03/01/14 09:58 ID:FmtD77xg
(^^)
408 :
鮫牙 :03/01/14 23:11 ID:uOV2B6Wl
顧問担当氏< 過去SSを改竄したり、無視するような真似をしなければ誰も叩きませんよ。 意図的か無意識かは解りませんが、これが反感を買う最大の理由だと思います。 まあ、とりあえず一度「空き地の町」周辺が貴方以外の書き手も書いてるように、 貴方も「空き地の町」以外の場所も書いてみるべきだと思います。
/#〃⌒⌒ヽ、 あははーっ ヽ#{ミ/ノ/ハ))) 竹やりです。これでB29を堕としましょう。 //|ノ| ^∇^)|| (/|リつ――つ――――― リ/__][_」 (_/)_/)
保守 危険だし。
反革命カクマルみたいな内ゲバ合戦やってる暇あったら、さっさと書け。 と逝ってみる。
412 :
山崎渉 :03/01/17 00:22 ID:J0yEIeUJ
(^^)
保守
保守
保守
固守
太守
墨守
死守。 ……なんか未曾有の展開だな。
420 :
鮫牙 :03/01/19 23:00 ID:+lK/y6He
書こうと思うのだが、時間が
保守
専守
防衛
消極的攻勢
逆撃
殱撃
邀撃
強撃。 ……おーい、書き手の行方を誰か知らんか? 螺旋はさておき、独立戦争の時期って何時頃かどっかに明記ありましたっけ? SSざっと見なおした限りにおいちゃ、既述はなかったと思うのでつが…… 見落としてそうで怖い罠。
いや、まぁ……何というか、もう自分にとってはいろいろと手詰まりな状況なんで、 しばらくは他人に任せたいところなんですが。 >独立戦争の時期 2・14事件→正葉独立がほぼ1年とされている以外は、特に決められてはいなかったはずです。
旅団長殿、どもです。 手詰まりは……他のスレとか見る限り、環境より内容、でしょうな(汗 他の書き手さんも一斉に手が止まったあたり、こっちが状況妙なほうに弄くり過ぎたのか……? そうだとしたら面目ない次第……
これはまぁ自分についても言えることですが、 弾道ミサイルの応酬をエスカレートさせすぎている面は否定できません。 実際、アメリカを介入させない理由付けがかなり苦しくなってきています。 ここらへんで思い切って弾道ミサイル及びそれに準じる巡航ミサイル、 それとNBC兵器をを明確に禁じ手としておかないと、いろいろ拙いとは思うんですが…… もうここまで話を進めてしまった以上、上手くそれを処理できる設定を、 少なくとも自分は思いつけない状態です。
「計画に、ぬかりはないでしょうか?」 「いや、ぬかりしかない」 しばしの間、静寂が二人の間を包んだ。 まだところどころ残雪が月明かりに煌く山麓の対空監視哨。 海抜数百メートル、春先のまだ斬り付けるような寒さ。 それに加え、この沈うつな雰囲気がもたらす冷気が加わって、どちらともなく身震いするように大きく一度身を震わせた。
問うたほう、女顔の青年には、その身震いと絶句以外に対応のしようがない。 絶句するほかに対応がない……つまり、青年将校は他の具体的な対策をまるで持ち合わせていなかった。 即席でも付け焼刃でも、彼にとっては(そしておそらく彼らにとっても)唯一無二の最終手段である。 それをあっさり否定されたなら、他に取るべき手段なんてどこにもないじゃないか。 「そ、それじゃ……どうしようっていうんです?」 手すりに持たれたまま項垂れ、弱弱しく言葉を吐く。 「……ぬかりしかなくても、やるしかない。 相手だって備えが万全、まるでぬかりはないって訳じゃない。そこを衝いてことを進めよう」 暗闇に閉ざされた地平に目を向けたままのもう一人のは、傍らの青年に言い聞かせるというより、自分自身の説得に努めるかの口ぶりで物を言う。 実際、成算は乏しい。 ゼロでないにしても、これを以って作戦遂行は可能だなどとは口が裂けても言えないレベルの勝機しかない。L これをこのまま実行に移せば、まず間違いなく無残な失敗を迎えてそれで終わり、だ。 多くの部下が死ぬだろう。 死者の列にはまず間違いなく、自分たち二人の骸も並ぶだろう。 敵味方に別れてしまった妹―――傍らのこの部下に取っては幼馴染―――と、二度と会うことはかなうまい。 そして多分恐らくは、彼らが救出すべき一人の男もその例に漏れないに違いがない。
なら、なにもアクションを起こさなければ悲劇は免れるのだろうか? これも望みは極端に低い。 少なくとも、男が死ぬことは間違いない。 彼と彼の親友にゆかりの深い、自分たちにも追及の手は及ぶだろう。 部下たちは…………わからない。 即座に処刑される事はないだろうが……ここからどこか、激戦区の前線に投入される可能性は否定できないんじゃないだろうか? そう、栄光ある大日本帝国陸軍、近衛師団歩兵第三連隊の将兵たちが辿った運命を、彼らが辿るおそれは十分以上にありえた。 ましてやこの国の指導者は、桜会に代表される旧帝国陸軍のあの忌まわしい高級将校たちと同等か、それ以上に性質の悪い男なのだ。 唐突に意味不明の罪に問われた一人の高級将校に縁がある、二人の青年将校に指揮されたばかりに何の関係もない将兵が巻き添えになる。 この理不尽が、指導者の倣岸な笑顔がを思い浮べてしまえば、絶対的な既定の事実として彼らの胸裏に深く、暗い翳を落とす。 既に二人の将校にとって、ことは成算の問題ではなくなっていた。 座して与えられる死を待つか、起って自ら死に向かうか。 いずれがまだしもマシな選択か……あまりに消極的な選択肢だったが、事ここに至った上は、彼らにとってすでに他に選び取る事ができる道はないのだ。
「中上大佐は……?」 「参謀総長に強要されて、潔白を誓う念書を差し出したらしい」 「うめき少将は」 「技官を巻き込んでも仕方ないだろ」 「第三航空師団のみゃくさ大佐や第二航空師団の宇治川中佐は?」 「宇治川中佐は、信頼できる人だけど……河田を裏切ることはできなんじゃないか」 カグラ空軍基地司令でもあるみゃくさ大佐に関してコメントがないのは、それ自体が回答だということなのだろう。 いつもは快活で磊落な彼には似合わない暗めの笑みを形作って、食い下がる青年に宣告する。 それは冷静と、淡々としたようでいて、それでいて聞く者の耳には悲鳴としか聞こえない血を吐くような言葉。 「防空軍は――――旧国防軍原田派の別働隊としての空軍は、もうその役割を果たせないんだ。 誰も知らないまま、気付かないまま、そう、それこそ俺達だって、そうなるよう仕向けた下川すら、気付かない間にばらばらになってしまってたんだ。 認めたくない。認めたいわけがない。あれだけ気心が知れた仲だったはずなのに……でも、それを言うならこの国自体が昔はこうじゃなかったはずなんだ。 こんなのは、この国の持病みたいなもんなんだよ。それを認めて、認めた上で。俺達は俺達の出来る事を果たすしか、ないんじゃないか?」 二人がその身を包むのは、ダークグリーンを基調とした葉鍵国空軍の制服。 その右袖に空軍野戦部隊の袖章を、左袖にシェンムーズガーデン防衛隊のカフタイトル。文字を銀糸の鈍い光沢が彩っている。 一人は、防空軍特別親衛防空連隊の連隊長、七瀬彰空軍中佐。 今一人は、第一空軍野戦師団師団長、河上空軍大佐という。
いずれもシェンムーズガーデン防衛隊の中核を担う部隊の司令官であり、同時に中尾、そしてかつての原田海軍中佐の息の掛かった指揮官として知られていた。 そんな危うい立場にある二人の事だ。元より、原田がホワイトアルバムと共に消えたときから、この日がある事は常に意識していた。 事を起こす事だって、一時でも選択肢から外した事なんてない……だからこそ、中尾は彼の息の掛かった部隊をシェンムーズガーデン近辺に配置したのではないか。 つい数ヶ月前と中尾粛清がほぼ既定化した今と、変ったことはほとんどない。 要約すれば、変化はわずかに二つだけ。 空軍の全てが味方であると言う充実感が、危機を目の前にした今となっては幻想に過ぎなかったと知れてしまったこと。 そして、その結果として、研究を密かに続けてほぼ一年、十分な勝機を見こんだはずのこの計画も、今はただ自滅を飾るためだけの花道と化してしまったというだけのこと。 「だから、俺達三人の手駒でやるしかない」 本当はこの青年も、生きて逃してやりたいのだが。 自分がここで果てる分も、妹と、冬弥と、彰の三人には生き延びて欲しいのだが。 河上の心がちくりと痛んだ。 だが、心が痛もうが涙が涸れようが今となっては、もう無理だ。 いや、原田が海兵の手駒だけを連れて逃れたときに、残された者には終点の見えた、葉ずれる事を許されないレールが敷かれていたのだろう。 間違いなく完全に、自分達はマークされている。 久瀬支配の警察の監視を突破して、彼を安全地域に送り出すだけの自信などまるでない。 七瀬だって、追跡を撒くことが可能だなどと思ってはいまい。
逃げれば、捕まる。 捕まれば、生まれてきたことを後悔するまでに痛めつけられ、あることないことを喋らせられる。 どちらも確定事項に等しい。 逃げて、捕まって、拷問されて、無理な自白を強要されて、得ることができるのは―――数週間の寿命の延長、ぐらいのものなのだ。 そうまでしてわずかに余命を延ばすことと、ここで一息に死を迎えることと、どちらが幸せなことだろう? 結論はすぐに定まった。 ならば道連れは、少ないほうが良い。 体制の中で生き延びるのも、自分達が起こす混乱の中で彼らが逃走を計るのも、あるいは今自分達が選びつつあるのと同じような道を進む事も。 自分達が敢無く散った後の身の振り方は、彼ら自身が決めれば良いだろう。 さすがにそこまでは、自分たち三人には責任の持てない話だった。
そう、三人の知ったことではない。 もう一人、ここにはいないもう一人。 もう一人、彼らには同志がいる。 頼りになる同志がいる、はずだ。 少なくとも、彼らの思い描く人間関係の中の世界では。 中尾大佐が聞けば天を仰いだだろう。 原田准将が知れば嘲りと憎しみがない混じったような複雑な笑みが浮かんだだろう。 不幸にして、河島と七瀬は二人の上司が彼らが同志と考える男に下した評価を知らないでいる。 「中島祐治防空軍大佐に連絡をしなけりゃな」 ―――それは、最悪の人選だった―――
シェンムーズガーデンの広大な地下壕、その一室。 耳に当てたヘッドホンに研ぎ澄まされた意識の全てを向けて、一心にノートにメモを取りつづけていた男が一人。 やがて、男は不意にヘッドホンを机上に置いた。 身を乗り出すようにして腕を伸ばし、同じ机上、やや離れたところに置いてあった古めかしい黒電話の受話器を掴み取った。 ダイヤルは、回さない。回す必要もない。 黒電話の形状はただのダミー。実際には、この電話機、この回線はただ一つの場所にしか繋がっていないだのから。 男は遠く彼方で先方の受話器が取られたことを確認すると、『吉井萌え』などと大書された送話器に向かって早口小声で囁きかける。 「忍者より青色。『鶏は飛ぶ事に決めた』。繰り返す、『鶏は飛ぶ事に決めた』」 <糸冬>
とゆわけで投了です。
>>431 >弾道ミサイルの応酬をエスカレートさせすぎている面は否定できません。
いやまったく、やりすぎました……
一度行きつくトコまで行かしてやろう、そしたら落ち着くなどと言うのは浅はかな考えです(汗
>ここらへんで思い切って弾道ミサイル及びそれに準じる巡航ミサイル、
>それとNBC兵器をを明確に禁じ手としておかないと、いろいろ拙いとは思うんですが……
ですね……
一応、大筋で解決策は睨んでるんですが……へたれ物書きに納得の展開を描けるかどうかが問題。
開き直ってりゃ世話はないので、頑張って書きます。
あんまりのもダメなら容赦なく切りつけてくださる方もいらっしゃるでしょう。
保守
保守
3月30日1330時(葉鍵国時間) ニューヨーク・国連本部前 「えー、こちらは国連本部前です! たった今、緊急開催された国連安保理が終了しました! 葉鍵内戦で遂にBC兵器搭載弾道ミサイルが 使用されるという異常事態に対し、これまで弾道ミサイル使用に消極的な容認姿勢を取っていた アメリカが突如態度を急変して開催を要求した安保理、その決議内容は…… あっ、たった今情報が入りました!……国連軍介入です! 国連安保理は、大量破壊兵器の使用に関する部分にのみ、直接武力行使を容認しました! 米英仏露中の0常任理事国は、これ以上大量破壊兵器の使用を放置すれば全面核戦争に発展するという点で一致した懸念を表明、 米軍が国連安保理承認部隊として部分的武力行使を実行すること容認した模様です!」
同時刻 ホワイトハウス 『合衆国政府は、基本的にはエロゲ国新大陸における紛争に直接介入は行わない。 ただし、これ以上大量破壊兵器が使用されるようならば、それは人類全体、地球全体への脅威となる。 よって我々は、国連安保理の決議に従い、以下の行動方針を決定した。 1. エロゲ国新大陸における紛争に巡航ミサイル、弾道ミサイル及びNBC兵器が今後使用された場合、 合衆国軍はそれを用いた勢力に対し国連安保理承認部隊として軍事力を直接行使し、 それらの大量破壊兵器の存在を粉砕する。 2. 1の対象は、エロゲ国新大陸及び旧大陸に存在する全ての勢力である。 過去、合衆国政府が支援を与えた勢力も例外ではない。 3. 1の行為を為すための準備行動を発見した場合も、1と同様に行動する。 なお、この宣言に実行力を持たせるため、以下の行動を実行に移した。 A 4個空母任務群のエロゲ国新大陸近海への急派 B ICBM発射基地及びSLBM搭載原潜への特別命令 また、合衆国政府の以下の方針は不変であることをここに付言する。 a 月姫難民問題に関する人道的観点からの軍事力行使を伴わない支援 b エロゲ国諸勢力間の通常兵器を用いた紛争への合衆国軍直接介入の見合わせ c エロゲ国諸勢力間との経済交流の維持』
同時刻 エロゲ国旧大陸本領沖合・VA財閥本部船“ビジュアルアーツ” 「田所のアホも、意外に使い道があったな」 馬場は上機嫌に頷くと、国連安保理決議を伝えるニュース画面に見入った。 「東風15号に化学兵器詰めよって。威嚇無しにぶち込む……ま、これくらいせんとアメちゃんも 重い腰は上げんかったやろし」 ことん、とウィスキーの入ったグラスをおくと、馬場は唇を僅かに歪めた。 「回りくどいことをせずとも、最初からこうすればよかったんや……これで、下川も飛び道具は使えんで」 今まで弾道ミサイルが飛び交ってもホワイトハウスが黙りを決め込んできたのは、 それが『核戦争につながる恐れが小さい』と判断していたからだ。下葉や空き地の町の核恫喝に接しても 介入しなかったのも、まあそれが現実の核のパイ投げに到らないとホワイトハウスが推測したからであった。 『脅し合うだけならお好きにどうぞ』と放置を決め込むつもりだったのだ。 だが、その『暗黙のルール』を、田所はあっさり破ってしまった。それでも通常弾頭の東風十五号ならば、 または単にBC兵器を使っただけなら、まだホワイトハウスも容認したかも知れない。 だが実際に起こった攻撃では、弾道ミサイル+BC兵器という最悪レベルの取り合わせが使われた。 29日深夜になってようやくラエートで起こった事態の詳細を掴んだ合衆国政府の高官たちは、 それの持つ意味に気づいてみな血の気が失せてしまった。その時まで彼らは、 ラエートには通常弾頭のミサイルしか落ちていないとの前提で行動を進めていたのだ。 だが現実に撃ち込まれた兵器は、そんな悠長なことを入ってはいられないタイプの取り合わせだった。 ここまで事態がエスカレートしては、彼らも黙ってはいられない。BC兵器を弾道ミサイルに積んで 実際に発射してしまった以上、NBC兵器――特に核兵器に対する禁忌は完全に失われたと彼らは断定した。 つまり核弾頭弾道ミサイル発射を下葉が決断する可能性が跳ね上がったと彼らは考えたのだ。 そしてそうなれば、空き地の町もそのエスカレートにつきあわざるを得ない――との推測に当然行き着く。
いくら直接介入を控えた合衆国政府とはいえ、現実に全面核戦争の脅威が迫っていると彼らなりに 判断すれば事情は違ってくる。こうして合衆国は他の常任理事国を抱き込み 『ABC兵器及び巡航・弾道ミサイル』に限定した介入を決定したのだった。 上機嫌な馬場に対し、主席秘書が淡々と報告を行う。 「合衆国政府が、葉鍵内戦に関係する各勢力に非公式通知を行いました」 「ほぉ。で、なんていうとる?」 「今回の声明は、大量破壊兵器の使用に関する場合にのみ適用する。 通常兵器をどれほど大量に使用したとしても、そのことで今回の声明を適用することは絶対にない。 また国連安保理もこの方向で動かす――とのことです」 「……つまりは、今後みぃんな、巡航・弾道ミサイルやABC兵器も使ってはならんし脅してもならん、ということか」 「ええ。いずれ国連安保理の決議に従った国連武装解除部隊が各勢力の査察を行うでしょう。 それによって該当兵器の引き渡しが行われるはずです」 「下川は……従わざるを得んな。共同宣言で『安保理決議を経た国連が承認する軍隊の存在はこれを支持する』 てはっきりいうてしまった以上、この査察は拒めん」 「下葉が破れかぶれで核弾頭ICBMを米本土へ放つ可能性は?」 「いや、それもないやろ。最初の1発を放とうとする寸前に、下葉沖合に展開した空母任務群や 戦略原潜から報復されるわ。今までの現地に展開する名目を持たないアメちゃんを相手取っていた時とは訳が違う」 うきうきと喋ると、馬場はグラスに残っていたウィスキーを一気に呷った。 「弾道ミサイルビジネス、旨味が多かったんやけどな……ま、ここで下川の好きにやらせといたら、 この戦争すぐにでも終わってしまうわ。今日の百ドルよりも明日の千ドルや。 ここら辺でミサイルやらNBCやらを取り上げといたほうが、戦争も長引いてこっちも儲かる、と」 「下葉―アリス共同宣言も威力を失いますな」
「そや。あの宣言は、弾道ミサイルの脅威を担保にして初めて威力が出てくる紙切れや。 それが禁じ手になった以上、本来の意味は無うなってしもた。もちろん下葉もアリスも メンツがあるから全部ご破算とはいかへんけど、下川の目論見からはえらく離れた効果しか生まんやろ、当分は」 「わかりました……あ、それから話は変わりますが」 御説ごもっともと拝聴していた主席秘書が、退室しようとして忘れかけていた話題を持ちだした。 「ん? 何や?」 「鍵自治州の新国名の話です。政務局長から 『いくら何でも第三帝国などという国際常識を弁えない国名は拙い。麻枝元帥に新国名の撤回を伝えて欲しい』 と意見が上がっています」 「却下や」 「……え?」 「却下や、言うとる。ま、局長の懸念もわかるがな……わいに良い考えがあるんや。 しばらくは麻枝にヒトラーの気分を満喫させとけ」 「は……はぁ」 得心のいかない表情のまま一礼して退室する主席秘書をぼんやりと眺めながら、馬場は小さな声で呟いた。 「常識を弁えない、か……当然や、そうみんなが思うように仕向けたんやから」 新たにウィスキーを注ぎながら、ニヤリと笑う。 「どうせこっちが鍵から正葉に乗り換えるための方便やったしな、あの独立宣言 ――でもまぁ、あと1〜2回は物資を送り込む必要はあるがな。それにあのアホ州会議員どもの口も封じとかんと」 執務机の上の直通電話が鳴ったのはその時だった。この直通番号を知っているのは ひどく限られた重要人物しかいない。 薄気味の悪い笑みを浮かべたまま立ち上がった馬場は、受話器の前まで歩いていくと軽く息を吐いてからそれを取り上げた。
「高橋はんか……ああ、そのことでこっちも連絡とろうと思うとったんや……いやまったく、 麻枝のアホにも困ったもんや。あんたらの正当性に泥塗りよって……いや、あれは麻枝が勝手にやったことや。 わいは全然知らされてなかった。ホンマや。第一事前に知っとったら、『第三帝国』なんて 信用ぶちこわすアホな名前、名乗らすかいな……そや、これはあんさんが腹を決めたら、やけどな? こんな言うこと聞かん鍵はもう見捨てよう思とんねん……ああ、その代わりあんさんには、 鍵に回してた分も上乗せしてたっぷり援助するさかい……いや、別に今すぐ返事聞ことは思てない。 けど――よう考えといてや?」
>>443-448 「変更指示」投下完了です。
文句ばっかり言うのも何なので、多少強引ですがつじつま合わせをやってみました。
ご指摘よろ
旅団長乙。 しかし巡航ミサイルっつっても定義は難しいでっせ。 今の対艦・対地ミサイルなんかほとんど巡航ミサイルと呼べなくもないものばっかだから、 特に海戦なんか第二次大戦時に逆戻りしかねない罠。
そこら辺は、ある一定射程上のミサイルは全て規制対象としましょう。 100キロか、あるいは100マイルか、とにかくキリのいい数字で。 ・弾道ミサイル……弾道飛行特性を有する全てのミサイル ・巡航ミサイル……弾道ミサイル以外で射程が一定距離以上のミサイル と定義すればよろしいかと。 海戦については、突出している下葉の海軍力を削ぐ意味でも、これでいいような気もします。
100キロだと、ハープーンがほぼ軒並み使えなくなる一方で、 SS-N-2スティックスやSS-N-22サンバーンなんかのロシア製ミサ イルは使えるというむしろ下葉優位の状況になりかねないので、 射程は80キロあたりが良いかもです。 そこらへんはVAだの米帝だのの思惑で、下葉への締めつけを仕 掛けたとかの理由だとか……
でもせめてハープーンぐらいは使いたいよなあ…
それじゃ…… この文脈の流れから言えば、国連安保理は核弾頭運搬手段としてのミサイルを禁止したいのですから、 ここは思い切って定義を、 ・巡航ミサイル→核弾頭を搭載可能な全てのミサイル とでもしますか? これでも巡航ミサイルはあらかた潰せます。 ただこれだと、ロシア製対艦ミサイルはほぼ全滅ですが。
>454 単純に、 ・巡航ミサイル→戦略巡航ミサイル。 ・弾道ミサイル→中距離弾道ミサイル、大陸間弾道ミサイル、および 潜水艦発射弾道ミサイル として"分類されている"もの。 でも良いかと。すぐ後で”及びNBC兵器が”とあるし。
456 :
ノーマット゛ ◆yGAhoNiShI :03/01/26 02:01 ID:BVPV/QRE
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/'../:: /∠.._ |、.ノ この素晴らしき番組を見て
/':::|:::  ̄ ̄ |./ 少しは社会に貢献しなさい(怒)
!-'L|::. v' ===放送日程===
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. , ゞ、、;;;,,_,,,..._;;;;;__,,..ノ、 名古屋 テレビ愛知 (日)9:30〜10:00
'ー┐,,..、_ ノ l_,,,...、 _,,一`大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
~ ~ ~ 福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
実況:
http://cha2.net/cgi-bin/test/read.cgi/choanitoku/1042918215/l50
457 :
ノーマット゛ ◆yGAhoNiShI :03/01/26 04:34 ID:XtaecPG0
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458 :
ノーマット゛ ◆yGAhoNiShI :03/01/26 05:54 ID:Qr6CcaIf
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ノーマット゛ ◆yGAhoNiShI :03/01/26 05:57 ID:XtaecPG0
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ノーマット゛ ◆yGAhoNiShI :03/01/26 07:03 ID:jnRHDmmr
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ノーマット゛ ◆yGAhoNiShI :03/01/26 07:11 ID:BVPV/QRE
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|:: ∈∋ ヽ | < まったく糞の役にも立たない人たちですね(怒)
//:: -=,=.ヮ. |ヽ、| \________
/'../:: /∠.._ |、.ノ この素晴らしき番組を見て
/':::|:::  ̄ ̄ |./ 少しは社会に貢献しなさい(怒)
!-'L|::. v' ===放送日程===
. ヾ:::.. / 東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
. , ゞ、、;;;,,_,,,..._;;;;;__,,..ノ、 名古屋 テレビ愛知 (日)9:30〜10:00
'ー┐,,..、_ ノ l_,,,...、 _,,一`大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
~ ~ ~ 福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
実況:
http://cha2.net/cgi-bin/test/read.cgi/choanitoku/1042918215/l50
462 :
ノーマット゛ ◆yGAhoNiShI :03/01/26 07:43 ID:BVPV/QRE
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実況:
http://cha2.net/cgi-bin/test/read.cgi/choanitoku/1042918215/l50
463 :
ノーマット゛ ◆yGAhoNiShI :03/01/26 08:15 ID:BVPV/QRE
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実況:
http://cha2.net/cgi-bin/test/read.cgi/choanitoku/1042918215/l50
>>455 いや、その「戦略巡航ミサイル」だけを規制していいのか、という話です。
具体的に言えば、
射程500km、ペイロード450kg、核弾頭搭載可能なSS-23は「弾道ミサイル」として規制するけど、
射程550km、ペイロード750kg、核弾頭搭載可能なSS-N-19対艦ミサイルは「戦略巡航ミサイル」ではないから規制しない、
というのはいかがなものか、という問題です。
465 :
鮫牙 :03/01/26 23:21 ID:zhNdofXQ
質問。数ヶ月後先まで月日を飛ばすのは反則ですか?
まぁ、話の筋さえ通せば早い者勝ちではないかと。 俺も似たようなこと書いてますし(ごにょごにょ
そりゃあ展開によるでしょう、としか言えません。 ただ、今まで1スレ1〜2日のペースで動いていた展開を一気に飛ばすんですから、 それなりの説得力は当然必要になってくるでしょうが。 あと、良祐や陣内たちのパートがまだ途中です。 そちらの展開にある程度の片が付くまでは、あるいは自分で引き継いで片を付けるまでは、 飛ばし控えた方がいいかと。
第2次大戦時の兵器ベースで展開させていたら、ミサイルだとかについての 余計な心配をしなくてもよかったのにな…
3月31日0200時 ものみの丘近郊、麻枝私宅 「核という選択肢は―――封じられてしまったな」 投げ掛ける視線は大型の壁掛けテレビに向けられて、独白染みた呟きには、落胆の色はまるでない。 そこに並々と湛えられたのは、ただひたすらに安堵の色。 その溢れ出しそうな喜色を辛うじて表情にまでは表さず、鍵第三帝国総統、麻枝准国家元帥は傍らの男に語りかける。 「……折戸君。我々は核を持つ必要はない。 もう、危機は去ったんだ」 「核を開発、使用する危急性がなくなっただけではありませんか。保有の必要がなくなったわけではない」 あらゆる感情を消し去った平板な声が、麻枝の喜声に対して否定的に応じた。 麻枝と同じ画面を冷ややかに眺めながら、折戸大将の抱く想いは麻枝のそれと好対照を為している。 鍵第三帝国の独立祝いに国連の介入が重なって、参謀本部の涼元大将は今ごろお祭り気分だろう。 葉鍵国時代から自治州軍は弾道弾及び核弾頭の保有を許されず、独立戦争に突入した今はそれが鍵第三帝国の安全保障を根底から揺るがす問題となっていた。 それを解決するための折戸の核武装論に対し、皇土の放射能汚染を恐れる涼元は徹頭徹尾批判的であったのだから、労せずして下葉はおろか、新旧エロゲ大陸の全ての勢力から核の脅威を取り去る機会の到来は大歓迎であるはずだ。 新旧エロゲ大陸の全ての勢力から核の脅威を取り去る機会。 本当にそうなのだろうか? 少なくとも、折戸はそれは賛同しない。
確かに、下葉の核の脅威が完全に除去されるならばそれはそれで良い事だ。 完全に除去されるならば、の話である。 では完全、という状況があり得るだろうかと問われたなら、折戸は全く懐疑的であった。 「危機は厳然として我々の目前にあります。 考えても見てください、我が自治州―――いや帝国は、葉鍵国からの公然たる独立を宣言したのですよ。 元より下葉が講和に応じる可能性は限りなく低いものでしたが、ことここに至った以上、それは全くのゼロに進んだといって良いでしょう。 そして、彼らは国の統一が永遠に喪失されたと判断すれば、国際社会の反応など無視する公算が極めて大きい」 大量破壊兵器の査察一つを取ってみても、戦時下にある土地に置いて、完全無欠の査察など可能であるはずがない。 既に部隊配備された核や弾道弾の実数を誤魔化されたなら、査察団は銃弾飛び交う最前線に、丸腰、でなければ全ての障害を排除できるような重武装で乗りこむとでもいうのだろうか? あまりにナンセンスだ―――この国連の要求をただ飲むのでは、下葉よりもむしろ鍵にとって有害だ。 折戸大将は、下川という男に微塵の信頼性も見出さない。 下川はこの国連決議を受け入れるにせよ、さまざまな詐術を駆使して骨抜きを謀る事は必死だろう。 そう、断定していた。
断定するに足る根拠は、折戸の主観としては間違いなくある。 あの独占欲と自己顕示欲の異常に強い男が、国家統一の最後の重石と考えている道具をそう簡単に手放す訳がない。 ましてや、すでに正葉と空き地の街、そしてこの鍵第三帝国の独立宣言によって、箍の全ては緩みきっているのだ。 未だ、通常兵力においては個々の勢力は下葉の足許にも及ばぬ戦力しか有しない。 だが、一本では非力な蟷螂の斧とて、群れをなして掛かれば下川という巨象を狩り殺す事とて不可能ではあるまい。 それを、下川は知っている。 それを、下川は本能的に怖れている。 だからこそ、彼らは核やアリスとの共同声明による恫喝を行った―――それが折戸の確信だ。 ……まぁ、弾道弾に関しては、半ば下川の腹立ち紛れの想いつきなのかも知れないが。 あの男は、何とかしてダメージを最低限に抑えようと策略を巡らす筈だ。 下川直哉という男は、そういう男だ。 誰よりも自分が知っている。 他の誰よりも、あの憎むべき男に騙まし討ちを受けた自分が、誰よりもよく知っている。 力を篭めて握りこんだ両の拳、その掌に爪が食い込んだ痛みが内向きに没入しかけた彼の意識を活性化させた。 (……馬鹿だな。今は、感情的になっていて良い状況ではないではないか) 情緒にどうも平衡を欠く自信に気付き、忌々しげに舌打ちを打つ。 懸念が顕在化しているのはあれの人格面だけではない。 こちらの動静そのものが、十二分に懸念材料なのだ。
今の鍵の政策は、まるで無軌道、暴走に近い。 折戸には、麻枝の真意が今どこにあるのかがまるでわからない。 わからないから、危惧が生まれる。危惧が生まれたなら、その危険性を吟味し、糾し、奏するのが部下の務めと言うものではないか。 それが他愛もなく冷静を喪ってどうするというのだ。 「……閣下。 何故、この時点での独立を是とされたのです?」 折戸が悩み、憎み、自嘲し、そして口を開くまでに一分ほどの時が掛かった。 その間の彼の沈黙を、やはり黙したままに待ちつづけていた麻枝はどう受け取っただろう。 沈黙の果てに紡がれた、冷静を装いながらも感情のぶれの残り香を強く漂わせた固い声音をどのように感じたのだろうか。 麻枝の内心は、今の能面からは窺えない。 能面そのものは、さして気にはならない。長い付き合いだ。時折見せるこの表情を気にしていてはしかたがない……はずなのだが。 何かしこりのようなモノが残るのは、麻枝の反応を通して自分の動揺を感じ取っているからなのだろう。 自身が冷静を失していることに気付きながら、平常を取り戻せない自身に嫌気を差しつつも彼は思考をなんとか切りかえようと試みる。
ともかく、だ。 ああ、自分の問題も解決できないようで国家の難事に当たれるか、そんな疑問はさておくとして、だ。 こちらの問題も気が滅入ることはなはだしいが…… 出だしからして悪い。独立宣言のタイミング、ネーミングセンス、どれも最悪のモノではなかったか。 折戸は嘆息混じりにテーブル上のグラスを手に取り、琥珀色の液体を呷った。 案の定、正葉は非公式ルートながらはっきりとした不快感―――いや、激怒というべきだろう―――を表明してきている。 正葉は名目こそ独立を謳ってはいるが、その目的は実際には葉鍵国現政権の転覆と新秩序構築にある。 彼らからしてみれば、面子を潰されたのも良いところだろう。 何か譲歩を示してやらなければ、同盟に大きな亀裂が走りかねない。 面子を潰されたと言えば、アリスソフトやアメリカも同じである。 葉鍵国の統一性の維持を支持する、と表明した直後に第三帝国というふざけた名前で独立宣言を為されたのだから、その怒りは想像に余りある。 月厨問題のこともある、ほぼ間違いなく、今後当面はアメリカからの武器調達は困難になったと見ても良い。 アリスソフトの出方はわからないが、ねこねこルートの封鎖はもちろん、今後も締め付けを強化してくることは十分予想される。 直接介入がありえないのは、数少ない救いといえるだろうが。
ネーミングセンスの問題は……今更言うまでもない。 今現在、世界中から鍵へ向けられる視線の温度は、下葉へ向けられるそれよりも低い。 田所と同列―――とまでは言わないまでも、限りなくそれに近い水準で見られているのはマスコミの論調を見ても明らかだ。 それを屁とも想わない涼元や一部の国民連中というのは、流石はバ鍵っ子というより他にない。 そう、あの建議を行った一群の『愛国者』たちを、折戸は愚か者と断じている。 そしてその自身の断定が、社会常識に基づいた普遍的なそれだとの確信も持っていた。 ―――ならば、だ。 祖国への愛国心と指導者への忠誠心と、そして胸焼けのするような無知無思慮を腕一杯に抱えこんで訪れた自称愛国者たちの建議を、唯々として受け入れた麻枝国家元帥は一体何なのだ? 「……わかりきったことじゃないか。ああしなければ、国民は納得しなかったはずだ」 一拍、二拍の間を空けて、麻枝はふるふるとゆっくり頭を振った。 その答えを耳にして、折戸は絶望的な、しかしどこかしら心地よい泥濘に身を委ねるような不可思議な感覚に囚われる。 ああ、彼の視界はどこまでも内側に向けられているのだ。 自分の内懐にある者たちに優しく注がれる眼差しは、外界の事象にはまるで関心を向けることがないのだろう。 閉ざされた平穏、構造的な予定調和、安価な奇跡と悲劇―――ああ、なんと暖かく手狭で窮屈だが幸せな世界なのだろう!
「彼らの提案を受けなければ、君の諫言を受け入れる形で拒んだなら、君が君側の奸として吊るされることだってありえたんだ! それは……君だって十分以上に判っているはずだろう!?」 麻枝のその言葉は、後半に進むに従って感情的な響きを帯びていた。 元より、良くも悪くも情の深い男だ。 良く馴染み、良く慕い、そして良く妬む。 ちょっとしたことから敵意を抱いて旧友を国から逐うこともあれば、自分に従順な国民を愛し、慣れ親しんだ同輩を守りたい一心でこのような愚にもつかない行動を取ることとてある。 なんのことはない。 今気付いたことですらない。 折戸はともすれば浮かびそうになる呆けたような笑いを押し殺すことに、多くの労力を割かねばならなかった。 つまり、結論はこうだ。 これまでも折戸が困惑や懊悩に直面するたび、何度も導き出された結論だ。 親愛なる第三帝国の指導者、麻枝准国家元帥閣下は自身の規範と国家組織の行動規範を分かたない。 いや、大気論に象徴される彼の強烈なイデオロギーが、それを分かつことを許さないのだ。 だから彼と彼の崇拝者の主観的には慈愛に富んだ至誠の統治者であるとしても、第三者からは気ままに支配する独裁者に過ぎない。 そう、折戸が憎んで止まないもう一人の独裁者、下川直哉とその本質をなんら違えるところがないのだ―――
「……私だって、国家の解体を望んでいた訳じゃない。 しかし最初に仕掛けたのはあの我慢のならない小太りの独裁者で、そしてともかくことはこう進んでしまったんだ」 確かにこの男の本質は、下川のそれとなんら変るところがないのかもしれない。 だがそれでも、それが麻枝が自身の虚像を守るための無意識の演技であるかもしれなくても、折戸は時折人間的な苦悩を見せる麻枝という指導者が嫌いではなかった。 いや、忠誠を誓うに足る男だと信じていた。 多分、折戸の信頼は裏切られることはないだろう。 折戸が二心を抱かない限り、麻枝は自分の側に立つ人間を切り捨てることはない。 でなければ、麻枝は当時まだ一人の同僚でしかなかった樋上いたるを守るためだけに、ネクストンを離反するようなことはなかったはずだ。 何度も言う。国家元帥は、身内には過剰なぐらいに寛大で誠実な指導者なのだ。 後にも先にも、この例に漏れたのはただ一人の男しかいない。 そう、久弥直樹という例外があるのみなのだ。 何時の間にか、グラスが空になっていた。 それと折戸が気付いたのは、麻枝がテーブル上のボトルを手に取り、折戸の視線上にかざして見せたからだった。 無言のまま差し出されるボトルに、折戸もまた無言のままでグラスを手にとって酒を受ける。 そしてやはり無言のまま、今度は折戸が麻枝のグラスを同じブランデーで満たした。
二人が共にグラスをかざし、どちらともなくおもむろに口を開く。 「経緯が如何様であれ、二度目の独立を果たした我々の祖国に乾杯」 「その行く末が不透明であるにせよ、我々の手腕次第で栄光を掴み取ることも可能な祖国の未来に、乾杯」 謹厳な口ぶりでそう唱え、皮肉と諦観とそれを上回る意気込みを乗せた二つの言葉に数瞬互いの双眸を凝視しあう。 そして、すぐに、破顔した。 「はは、酷いことをいうな君も」 「良くいいますね、麻枝さんだって変らないじゃないですか」 打ち解けた雰囲気。 階級では折戸と並んだ涼元大将が、それを欲しても決して得られないもの。 ネクストン集団軍時代以来、同志として行動を共にしてきた時間が培った、立場を離れた友人としての関係。 これから鍵がどう動くにしても、その行く末に何があるにしても、麻枝と折戸、そして他の元勲たちは行動と運命を共にするのだろう。 それは二人の願望であり、これまでの鍵の足跡から導き出された確信でもあった。 彼らが二人が、その願望をあまりに甘く脆い認識だとはっきり知覚したのは、まだこれよりしばらく後のこととなる。
もう一つ、彼らが知らなかった、否、気付かなかったことがあった。
すぐに時間帯を気にしながらのしのり〜や涼元らの御注進の電話によって二人も知るところとなるのだが、知ろうと思えば即座に知ることもできた情報である。
何しろ、二人がグラスを傾ける目の前で、点けっぱなしになった液晶テレビが映し出すエロゲ国国営放送が、それを速報していたのだから。
『緊急ニュースをお伝えします。
激しい内戦の続いている葉鍵国で、先ほど下川直哉国家元帥が記者会見をおこない、国連決議の原則的受諾を表明しました。
しかし、同時に下川国家元帥は国連決議には詳細な部分でなお不備な点が多数あるとも指摘しました。
国家元帥はこの不備を改善するための協議会の設置と、査察団受け入れのための停戦期間の設置を提案しており、事態の推移には予断を許さない状況が―――』
<糸冬>
とゆわけで投了……長い。
纏められないのはヘボの証ですな、はぁ。
いっそのこと、大量破壊兵器の定義もネタにしちまうといーんじゃないでしょうか?
とゆわけで、協議会設置の提案です。
まぁ他にも色々、しぇんむの仕掛けた罠。
停戦期間云々が、自分の言ってた「時間を飛ばすのと似たようなこと」ですにゃ。
内容、特に日付にちっとばかし問題がありそうです。
てゆか、問題大有りなので4/1に変えます(汗
んで、同日の午後に下葉と東葉による月姫自治区設立声明と。
http://www6.plala.or.jp/brigade/support/ss06/007-009.htm ご意見、ご指摘、糾弾などありますればよろ。
479 :
名無しさんだよもん :03/01/29 16:12 ID:/an/wzUl
保守
突然ですまないんだが…、 仮に、今の現代大戦略みたいな設定をガラポンにして、兵器生産国設定を 第2次世界大戦期ベースにしたパラレルワールドにおける新しいリレー小説 (仮に「アドバンスド葉鍵大戦記」とでもしておきますか)なるものを始めると する(もちろん別スレで)なら、これについてどう思います?
兵器生産国設定を第2次大戦期ベースにすれば、核、細菌兵器やミサイル等の 存在による設定の複雑化(と極論すれば瞬時に戦争が終わりかねない状態)を 回避できると思うし、高度化した現代の戦争では描きにくい個人の特性なんかも 描けると思うんだけどね。
確か以前にも、下葉が細菌入りミサイルを飛ばし、全土が壊滅した状態ってのを 書かれたけど、それをチャラにしてミサイルを飛ばすことに失敗したってことにした ことがあったよね。 本質的に現代戦争だと、核とか細菌兵器を落としてオシマイってされかねないのが 難点で、戦闘自体もロングレンジからのミサイルの打ち合いとかになって登場人物 の顔が見え辛くなると思うんだ。エースなんていないしね。 そういうのがあるから、このスレでもら政治ネタが好まれるんじゃないかな。
3月31日 1422 ロイハイト地方小規模村落 歌月十夜師団野戦陣地 化学兵器の使用から戦線の膠着が発生すると共にう、歌月十夜師団司令部は持久戦にも対応する為の 名目でロイハイト地方の様々な建物を接収していた。 野営機材が少ない訳では無かったが、野宿をするよりもまともに夜露を凌げる場所を、師団司令部が 欲した事が理由だった。 そんな師団接収施設の一つ。 ヘリ運用施設として利用されている小学校。 運動場の広さからの選択ではあったが、その実、固有のヘリ部隊等と云うものの無い歌月十夜師団では 殆ど無駄の部類に入る有様だった(師団司令部は、空調設備や通信設備の整った市庁舎に在った)。 にも関わらずヘリ基地等と称し整備していたのは、極稀にAF軍からの連絡機が来る事と、師団航空参謀 の見栄からであった。 そんな小学校舎を流用した航空機管制塔。 その一室で二人の女性士官がお茶をしていた。 「馬鹿だ。これでは自分から位置を露呈させているようなものだ」 憤懣を盛大に込めながら吐き捨てる月姫・蒼香大佐。 小柄なその身を包む野戦服は、少なからず泥に汚れている。 月姫は師団司令部からの許可を丁重に無視し、自らの大隊を村落郊外に偽装展開させていたのだ。 「この辺りの地形は敵の方が良く知っている。奇襲を喰らったらどうするつもりなんだ」 「んーでも、何か撤収するって話だよ?」 合いの手を入れるのは三澤・羽居。 ぼっとした感じの女性ではあったが、一応は中佐の階級を持つ高級士官であった。
「らしいな」 言葉少なげに、そして具体的な言葉を交えずに返答する月姫。 その態度に一瞬疑問を抱いた三澤だったが、その理由に思い至ってにっこりと微笑んだ。 そして爆弾投下。 「大丈夫だよ蒼香ちゃん。心配しなくてもこの建物は掃除済みだから♪」 「ぶっ!?」 「あっ、きたなーい」 思わず紅茶を噴出した月姫に、三澤が呟く。 何と言うか要領が悪く見えて何故かその実、物事を上手くこなす事の出来る人物。 それが三澤であり、月姫とてその言葉を疑うつもりは無かったが、それでもこの手際の良さには思わず 呆れていた。 「おまえなー」 「どうしたの?」 「・・・・ここの部隊は刀崎の系譜、ガチガチの遠野家正嫡派だぞ。大丈夫か?」 「んー確かに隊長さんはアレだったけどね副官さんは話が判る人だったし」 「騙されてる可能性は?」 「えーそれは無いと思うよ? それに人質も取ったし監視役も置いてるし」 サラリと際どい事を言う三澤。
「『秋葉の友人』を使ったのか? 後々面倒事にならなければ良いが・・・」 月姫の脳裏に蘇るのは暗闇より唐突に現れ秋葉のサインが入った手紙を渡し、協力を要請してきた者。 正葉軍第666特殊空挺大隊指揮官、ネロ・カオス中佐。 眩惑迷彩服と相まって、見る者に黒塗りの禍々しきイメージを与える長身の男。 尤も話してみると極めて理知的な人物であり、月姫とて忌避感を抱いている訳では無かったが、この 微妙な時期に月姫主流派でも名の通った人物が歌月十夜師団内に居る、動いたと云う状況は、後に少な からず影響を与えるのでは無いかと危惧してだった。 「大丈夫だよ蒼香ちゃん。酷い事はしてないし、それに秋葉ちゃんが到着したら正嫡派解体だから全てを 有耶無耶にしちゃえばいいし♪」 「おいおい(汗」 あっけんからんとした口調。 だが言っている内容は、露呈した場合には力技で揉み消すと云う事であり、それを言い切る三澤に、 月姫は少しだけ背筋に寒いものを感じていた。 「瀬尾中尉です、失礼します!」 その時だった。 元気の良い声と共に、月姫達が居る応接室の扉が開かれたのは。 扉は、たてつけの悪さからガタガタッと悲鳴を上げる。 木製故の重さ、だがそれを無視して来訪者は勢い良く開く。 「秋葉先輩がっ、あぁっ、遠野大佐が来るって本当ですかっ!?」 小動物的な元気の良さ。 それがこの、瀬尾・晶と云う女性の美点。 そう判ってはいても、少しだけ頭痛を感じる月姫。 対して三澤は来た来たと、にぱっと笑って振っている。
「本当だよ♪ もう直ぐ・・そうだね一時間位で此処に来る筈だから、詳しい事はネロ中佐さんに聞いて みると良いよ」 「はっ、はい!!」 まるで尻尾を振って居る様な有様で再び駆け出した瀬尾。 「あいつ、ネロ中佐の居る場所が判って飛び出したのか・・・・?」 呆れた様な呟きを洩らす月姫。 それが、UNの看板を背負った秋葉が到着する少し前の情景であった。
え〜お久しぶりです、名前。もう少し汎用性の或る名前に変えようかと愚考してる 名無し@月姫参謀デス。 【或る師団の長い一日 1】UPです。 相変わらずの凡ミスが多いかもしれませぬが、生暖かい目で見守って、辛辣に 指摘していただければ幸いです。 では。 個人的には、政治とか外交を絡ませる方が面白いと思うんですけど如何なものか?
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
一応保守点検
活力のなくなったスレを分割したら、共倒れになるだけだぞと言ってみる。 ところで、保守代わりに質問。 まだ書く意志のある書き手はどれくらいいるんだ?w
498 :
鮫牙 :03/02/04 22:27 ID:qhqC7NeH
俺は書く意思があるぞ。時間が無いだけで。
一時期書きすぎたから、できれば進行管理役に徹したい。
500 :
154 :03/02/04 22:39 ID:Y9xmVrCt
ええ書いてますとも。 でも1ヶ月以上も待たせてしまってるし支援サイトはアップミスってるし 358には誰も突っ込んでくれないしもうNGでも一向に構わない気分です。 ∧||∧ ( ⌒ ヽ ∪ ノ ∪∪
>>500 いや、今更突っ込む必要もないっつーか、じきに続きが投稿されるだろと思っててスルーしてたんだけどね、俺個人はw
支援サイトは、問題になった部分を一時的に棚上げしてうpしてるだけじゃねーの?
そこらへんどうなんかね?>旅団長氏
にしても、意外に書く意志のある香具師多いなっつか、レスはえぇな(w
旅団長の進行管理役に徹するってのは、当面の間って解釈でオーケー?
狗威氏なんかもう見てもないのかね。
>>500 ああすまん、コピペした際のミスだ。すぐに訂正する。
>>501 見通しが立たない面もあるが、まあ当面の間と受け取ってもらっていい。
>>502 なる。
まぁ本領での活躍をむしろ期待してるんだけど、漏れはw
ま、感想書かないケド(書けよ)読み手はまだここにいるよ、てな感じで頑張って書いて欲しいね>書き手諸氏
504 :
名無しさんだよもん :03/02/06 23:00 ID:gHib/bCG
huzyo-
定期点検 そう言えば最近整備兵氏の姿も見えない… 査察団に聴取受けてる?
保守
誰もいなくなったな…
508 :
査察団 :03/02/11 20:30 ID:uhGNad6z
なつきすれのあれは奴だったのか!
どうなるんだろうな、このスレ。
書き進めてはいるんだけどね……
保守・・・ 12日締めの用事があったんですわ、申し訳ない。
保守するなら今のうち。 分解整備中
保守保守保守
久しぶりに読んでみたら、なんだか特定人物の排除が進みつつあるようですね。 そのあたりの人間模様も含めて楽しいスレです。がんがってくらさい。
旅団長関係の出来事を全てなつきスレのせいにするスレはここですか?
どうでもいいが、地獄車って皮肉屋で電波で鬼畜でチョンってところが、 アニメ板の有名固定「ほとり」にそっくりだ(w
皮肉屋で鬼畜なのは認めるけどw、後の二つは心当たりがないな。
あれ?地獄車チョン説って嘘だったの?(w それと、ほとりなら最悪に自分のスレ持っているから、逝ってみたら? 自ら在日登録証をうpして、アニメ板のみんなはボクの友達だといいつつ 脳内精神世界を展開するというかなり強力な固定で、出てくると「氏ね」 と呼びかけるのが挨拶みたいになっている。 しかも幼女レイパーで、親戚の幼女とか小学生とかにいたずらをしたという 武勇伝を自慢するといった電波っぷりだ。
今日は出かけるから保守
520 :
名無しさんだよもん :03/02/16 14:35 ID:Bu613P+s
保守
522 :
整備兵 :03/02/18 23:30 ID:jKDY1A7y
今日はブービートラップの整備です…… すこし前にある将軍が訓練用の罠に引っ掛かったそうです。
3月29日 新大陸標準時 18:00 アクアプラスシティ 酷い惨状だった。 首都外郭を走り、街の外枠を形成している首都環状道路を越えると、左右には黒くすさんだ 建物が迫ってきた。日が落ちているためではない。条例で建築物の塗装に派手な色は使え ないのだ。理由は良く分からないが国家元帥の弁では『治安維持の為』だとか。さらに進むと 徐々に建物の背丈が高くなってくる。どこの街でもそうだが、様々な理由で中心部の方が郊 外より人口が多い。しかし、それもある一定の高さまでしかない。これも条例で、一定の高さ 以上の建物を建てる時は厳しい審査をパスしなくてはならない。 それらはまるで、飢餓の為に成長が止まってしまった子供達のようだった。 先のミサイル攻撃で存在を危ぶんでいたが、幸い内務省などの並ぶ首都中心部からは離 れた場所に建っていたため被害はなかったらしい。建物は外資系のビジネスホテルである。 移動を制限されたこの国でホテルを経営しようなどと言う酔狂な行為に、今回ばかりは感謝 せねばなるまい。所々へこんだワンボックス(ちょっとばかり拝借したものだ)を地下駐車場に 止めて、フロントへ足を運んだ。
流石は一流ホテルと言ったところだろうか。それらしい派手さはあるものの宿泊客の心身を 癒すように過度の装飾は避けられている。2Fまで続く吹き抜けは何とも言えない開放感を与 え、ここが本当にあの下川リーフである事を疑わずにはいられない。ある意味異国の建物と 呼ぶにふさわしい。 「――いらっしゃいませ。ご宿泊でしょうか?」 「一昨日予約した巳間です。2泊ほど世話になります」 「巳間、様ですね。少々お待ち下さい」 礼儀正しいフロントボーイはすぐさまキーを取り出した。 「401号室になります。そちらのエレベーターをご利用ください」 暗がりになっているところにエレベーターの扉が二つ並んでいる。割と使い込んだような印 象を受けた。 「では、ごゆっくりどうぞ」 「ありがとう」 荷物をおき、シャワーを浴びて旅の疲れを癒した。出発したのが28日未明だったから、概算 で30時間以上まともに休息をとれなかった事になる。これほどの任務は麻枝元帥救出作戦 以来だ。 数少ないアクアプラスホテルの中でもここを選んだ理由は、LANによってインターネットに接 続出来るという点に尽きる。ポケットの携帯電話を取り出して背面のカバーを開くと、そこには あるはずのないLANポートがついており、無線などとは比べ物にならないほど高速でネット サーフィンができる。盗聴で足が付く事も無い。鞄からLANケーブル(オス/オス)を取り出して 各々のジャックに差し込み、今朝と同じ要領でものみの丘に繋いだ。
――本部が出した回答は只一つ。 『引き続き任務に当たれ。内容に関しては自己裁量に任せる』。 もちろんこれは実質的な任務全般を指しているのであって、政治的な理由とかそういった高 度な配慮を要求しているわけではない。長年政府の駒として働いてきたのだ、それくらいは分かる。 今までの(決して多いとは云えない)任務ならそんな事は考えもしなかったが、今回はなぜ か時々ふとそんなことを思い出す。だからどうしたと言うわけでもないのだが。 言うまでも無く、彼らとの接触が多分に影響されている事は自明だった。自分と同等の立場 に身を置いているのにも関わらず、彼らはシステム的に一段階上層に位置しているのだ。自 分は任務遂行を至上とするが、彼らはその先を見据えている。自分は将来に対して胸を張れ るほどの展望を持ち合わせていないが、彼らはまるで望遠鏡を覗くように自己の未来を覗く。 ……だからと言って、じゃあ自分もそうしようとは到底思えなかった。なぜなら、自分は彼ら のように将来を開拓したいとは思えない。相応の権力もコネも持ち合わせていない。なにより も、自分には帰るべき場所が存在するのであって、そこを――永久に――離れることなど思 考の範疇外だ。 こうしてみると、彼らが己の人生(というか、考え方)に与えた影響というのは実際に接して いた時間よりも遥かに大きい存在である事が判った気がする。前に読んだ本(タイトルは忘れ た)に『自己の存在を確認する唯一の方法は、他人と接することである』とか書いてあった。当 時は話半分に読んでいたが、まさかこんな特殊な状況下でそれを実践するとは思いもしな かった。特殊な状況下ゆえに、日常ではあり得ない経験をすることが出来たとも云えるだろう が、そんな事を考え始めるとキリが無いのでこの話題は止めることにしよう。 今の自分は特殊部隊MOON.所属の巳間良祐少佐なのであって、一個の独立した人間で はないのだから。
3月29日 新大陸標準時 20:30 アクアプラスシティ しかし、実際どのような手段で脱出するかどうかとなると明確なビジョンがあるわけではな かった。いや、少なくとも行動前には細部に至るまで計画はなされていた。 なされていたのだが、しかしそれは全て『アクアプラスがマトモな状態』であることを想定し ての取り決めであり、つまるところ都市機能の失われた現在の下川リーフ首都に於いて有効 なプランであるとはとても言い難い。眼下に広がる現在の街並を見れば誰にでも理解できる。 だが、どちらにせよこれからやることに街の出来不出来はあまり関係ない。予定通り29日未 明を以って特殊部隊巳間良祐少佐は救出対象の身柄確認に全力を注ぎ、居場所を確認次 第これを迅速に確保せよ。そういうことだ。ミサイル攻撃が作戦行動に影響を及ぼすのは確 保後の脱出行動なのであって、作戦のキモである身柄確保には特に差し支えない―― ――筈だ。 そして、もし彼が今なお健在であれば、およそ3時間半のちに日付が変わる頃、聖マコピス ト教会の3ブロック北に姿を現す。 今は――少なくとも3月29日午後8時48分現在は――そのことに集中しようではないか。
数時間前 下川リーフ アクアプラスシティ東150km 「――んで、貴方様はどうやって片手で運転しようというのですかな? 陣内殿」 閂は小型トラックにしがみつく陣内に向かって一言放った。 「はっはっは、愚問を。この私にかかれば小型トラックの一台や二台、愚息一本でラインダン スを演じることすら出来るのだよ夜明くん。まあ見ていたまへ」 言うや否や、陣内は右手一本で器用に乗り込み、エンジンを吹かした。 別に大した話ではない。長時間の移動に飽きた陣内が運転したいとダダをこねたのだ。 「ほれ見ろ。このステキトラックも私の搭乗を心から歓迎しているかのやうだ」 「いちいち報告せんでいいから早よ動かしてみろって。あと文語体で語尾を締めるのは止め れ」 陣内は構わずミッションをドライブに入れ、車を発進させる。重量のある小型トラックは割とス ムーズに動いた。どうやらこれまでの所、エンジン系統に目立ったトラブルはないらしい。閂は 軽く舌をついた。 左ハンドルのAT車だったため、左手の無い陣内でも最低限動かすことが出来る――かに 見えた。
「ありゃ」 次の瞬間、電柱に頭から突っ込んでいた。気が緩んだのか、タバコに火をつけようと右手を 放した時にハンドルを取られてしまったらしい。 「なーにが愚息一本で、だ。腕一本でも無理じゃねぇか」 「いやいやいや違うんですよ閂殿いまのは地軸がちょこっと傾いただけなのであって俺がハン ドルを取られたとかそんなわけじゃないんですよって聴いてます旦那?」 「ほれ、いいからさっさと助手席に退いた退いた」 訳の分からない事を延々呟いている陣内を閂は軽く避け、あっさりと運転席に収まってしまった。 「第一、お前はあのまま時速15キロでアクアプラスまで行くつもりだったのか? 何時間かか ると思ってるんだよ」 「いやいや、距離や時速などは問題ではない。軽く目を閉じて遥かジャーマニーのアウトバー ン2号線をバーゼルからミラノに向かっていると想像するだけで、800マイルの道のりをICEの 一等車に乗っているかの如き快適な空間を演出することが」 「――いや、もーいいから。ね? つーかアウトバーン2号線はドイツ通らないから。あとドイツ はキロ表記じゃなかったか?」 そんなどうでもいい知識を仄めかせつつ、閂は手早くトラックを発進させた。これ以上こやつ にハンドルを握らせたら、また一から使える車を探さなくてはならない。それだけはご免だっ た。こうしてふざけている間にも、中尾の身に危険が迫っている可能性を払拭できない。彼ら は急ぐ必要があった。
3月29日 新大陸標準時 23:30 アクアプラスシティ 聖マコピスト教会北3ブロック 交差点付近 侵入したアパートは交差点の四つ角に建っていた。大分前に家主を失っているようで、部屋 中に湿気と黴の匂いが充満していた。幸いげっ歯動物の類いは見受けられなかったので、出 窓の一つに腰を落ち着かせた。ここなら交差点全体を見渡せる。 市街地でも星がよく見えるのはアクラプラスの名物だ。 空を見上げれば空一面に天然のプラネタリウムを臨む事が出来る。北極星を始め、北斗七 星やしし座、おとめ座がそこにある。では、なぜ市街地でも星々が煌いているのかと云うと、 地上にあるはずの人口の星が無いからである。下川リーフは現在戦時下だが、平時におい ても夜遅くまで明かりを灯している家庭はごく少ない。全く無いと言っても過言では無いだろ う。一家団欒を囲む柔らかな室内灯が秘密警察を呼ぶ誘蛾灯に変身する前に人々は明かり を消してしまうのだ。 だが、今日はいつもと様子が違った。内務省を核とした半径1キロ四方は昼と変わらぬほど 発光している。24時間体勢で復旧作業が行われていることが容易に見て取れた。 「――まずいな」 その影響か、いつもなら文字通り真っ暗闇の一帯は――住民にとって不快なほどに――明 るみを増していた。恩密行動に非常に向かない夜だ。
こちっ。 聞こえるはずの無い時計の針が聞こえた。反射的に左腕を見るが、そこにはデジタル表示 の時計が23:47と告げていた。 しばらく耳を凝らしてみたが、二度と針の音は聞こえなかった。どうやら幻聴か気のせいらし い。目の頭を揉み解し、首を捻る。筋肉の軋む音が聞こえた。それは首の筋肉を解していな い事への警鐘であり、あまり歓迎すべき音ではない。だが、今はどうでもいい。 不意に鼻の頭が痒くなった。右手で擦るが痒みは中々消えない。4度ほど擦ったところでよ うやく平気になった。 時計を見る。味気ない文字盤が23:56と告げていた。そろそろだ。 首にかけた双眼鏡の倍率を低くし、まず四辻の北側を覗いてみた。10km先にRR親衛隊の レーダー中継基地がある。だからと言うわけではないのだが、気になった。特にそれらしい影 は見当たらない。東、西と見てみるがやはり人影はない。最後に南(来た道だ)を調べるが、 やはり何も見受けられない。 気が付くといつの間にか日付が変わっていた。3月の冷気が頬を包む。首から上は無防備 な為直接外気に触れている。吐く息にはかすかに白い湯気が混じっていた。 再び双眼鏡を覗く。今度は順番を変えて南、西、東、北 二本足が見えた。 そして、それは地面に倒れていた。血を流して。
誤爆スレ立て以来恥ずかしくなって足が遠のき久しぶりにのぞいてみたんだけど… なんか凄いなぁ もう軍事知識薄い人間が書いたりすると叩かれたりしちゃいまつかね?
しません。というより出来ませんw 人の事全然言えませんから。
3月29日 新大陸標準時 0:15 アクアプラスシティ 聖マコピスト教会北3ブロック 交差点付近 人が倒れていた――と判断せざるを得ない。高度文明を持つ二本足の動物など、地球上で はホモサピエンス位しか思い当たらない。建物の影に隠れていてよく見えなかったが、常識 を持つ人間ならソレが同じヒトであることくらい想像がつくだろう。そして自分は常識を持ってい る筈だ。少なくとも一個の人間として。 問題はそれが誰であるか、と言うことだ。あまり考えたくはないが、もしそれが今回の作戦 における救出対象であるならば――作戦は失敗だ。少なくとも一方は。 手早く荷物を纏め、部屋を出た。部屋に充満していた黴の変わりに、今度は微かな街の光 と冷気が襲って来た。それらを無視し、静かな足取りで向かう。さりげなく四方を見やる。特に 目立った人影はない。 およそ5〜6分の間に一連の行為が行われた。それも全くの無音で。作業に要した時間は あまり問題ではない。自分だってそれほどの時間があれば人一人殺害することなど朝飯前 だ。しかし無音と言うのはどういうことだろうか? 背後から忍び寄り、延髄にナイフを刺し込 む。それを6時ほど捻れば心臓への電気信号が絶たれ、絶命する。あとは慎重に寝かせれば ―― 信号が赤に変わった。あまり存在意義があると言えない。頻繁にライトの色を変える事で、 必死に自己をアピールしているように見えた。 辻向かいの建物に身を隠す。犯人が留まっている可能性は否めない。ポケットにしまってい る拳銃を取り出し、安全装置を外した。カチャリという音が周囲に木霊したように聞こえたが、 実際はもっと小さな音のはずだ。 小石を投げてみる。 特に反応はない。 再度投げてみるが、やはり反応はない。 思い切って近づいてみる事にした。自分はつい遅くまで友人宅に訪問していた一人のアク アプラス市民で、偶然通りかかったら人が倒れていたのだ。それで狙撃でもされたら元も子も ないのだが。
なるべく平静を装って、歩き出した。あと5メートルのところに人が倒れている。 もう殆ど全身が見えていた。 やはり、それは人の身体だった。 辺りに散漫している血の量をみる限り、それが生命活動を止めていることが見て取れた。 あと3メートル、2メートル、1メートル―― 死体は、首から上がまるっきり喪失していた。 代わりに、刀の柄が生えていた。 首だけではなかった。右手、左手、右足、左足。全て中途から切断され、代わりにナイフや ら木材やらが差し込んである。突起物は肛門にまで生えていた。 まるで――肉付け途中の人形のようだった。 死体には慣れているはずなのに、思わず吐きそうになった。悪趣味過ぎる―― 3月のアクアプラスは夜になると身が凍るほど寒い。手袋は必需品だし、場合によっては ニット帽も欲しくなる。そんな寒さなのにも関わらず、辺りには腐臭が充満していた。普通の人 間ならとっくに失神していてもおかしくはないが、残念ながら自分は普通の人間ではない。 ソレが着ている服は、白衣だった。厭な予感がした。うつ伏せになった死体を倒してみる が、仰向けにした瞬間に肛門の突起物が腹を貫通した。オレンジ色の液体が頬に飛んだ。ポ ケットのハンカチでそれを拭き、胸元のネームプレートを確認する。 と、後頭部に何かを突きつけられている感触がした。 振り向くまでも無い。嫌と言うほど味わってきた感触だった。 「――――――動くなぁ」 もったりした声でそいつは言った。酷く陳腐なセリフだと思った。
3月29日 新大陸標準時 0:23 アクアプラスシティ 聖マコピスト教会北3ブロック 交差点付近 緊張した、いや緊張すべきであろう時間が流れる。自分は後頭部に拳銃を突きつけられ ており、相手の姿を直接見ることは不可能だ。おまけに膝を付いている体勢だ。誰が見て も圧倒的に不利な状況だった。 かと言って、これから自分は殺されるのかといわれると、恐らくノーだろう。相手が自分に 徹底的な殺意を抱いていない限り自分はここでは死なない。自殺でもしない限り。 「――高槻、か」 「驚いたか? 巳間」 高槻は心底嬉しそうな声を上げて拳銃を降ろした。 「何をやっているんだ、お前は」 「お前がこそこそしてたんでな。暇だから遊んでみた」 恐らく本音なのだろう。こいつの性格を知る人間からしてみれば、そんな悪趣味が高槻の 十八番であることくらいごく自然に思い当たる。立ち上がって高槻の方を向いた。笑ってい た。人間に二本の琴線があるとして、一方は喜と楽を司り、もう一方が怒と哀に関わるの ならば、高槻の笑みは間違いなく後者にあてはまるだろう。とにかく生理的に受け付けら れない。 「――こいつは誰だ?」 「ん? ああ、これか。俺を追ってきたやつだ。別に最初はどうでもよかったんだが、あまり にしつこかったんでな」 高槻はその物体をつまらなそうに蹴飛ばした。死体が揺れ、首の部分から血が漏れた。 こうなってしまっては人としての尊厳も何もあったものではない。 「ここまでする必要はないだろう」 「単なる見せしめだ。このゲスはよりによって俺に唾を吐いた。その仕返しだ」 腹が減ったから先に飯を食った。全く同じイントネーションで、全く同じ声色で、高槻はそう 答えた。つまり高槻と言う人間はそういう人物なのだ。言うまでも無いが。それよりも先の 言葉が気になった。
「――追手?」 「ああ、そうだ。追手だ。これは追う側。俺は逃げる側。判りやすいだろ?」 高槻はもう一度足元の死体を蹴った。もう血は漏れなかった。 「何かまずい事でもしたのか?」 返事は返ってこなかった。代わりに長い沈黙がやってきた。高槻はポケットにしまって あったタバコを一本持ち出し、無言で差し出した。 「いや。タバコは止めてる」 高槻は紫煙を吹かした。怪訝に思った。そういえば、こいつが他人に物を勧めたことが過 去に一度でもあっただろうか? 吸い終わると、高槻はこちらを向いて言った。 「空き地の町戦役における致命的敗退。鍵自治州への内通――俺の罪状の中身だ。 笑っちまうよなぁ? 今まで生殺し同然にしといて、一昨日になって突然『お前は死刑だ』と か言われちまうんだぞ? なぁ? どうすりゃいいんだ、俺は!?」 割れんばかりの声を上げて、高槻は笑った。上品とは言えない笑い声が建物に木霊し た。
ひとしきり笑った後、高槻はそのままの姿勢で続けた。 「下葉の方が戦争する機会に恵まれると踏んだからだ、俺が留まった理由は」 そう――当時(といってもごく最近の事だが)多くの鍵派が離反していく中、高槻と久瀬は こちらに残る事に決めた。経理屋として名高い久瀬を引き抜こうと上層部はやっきになって いたが、ここにいる一人の将校は半ば見捨てられていた。何しろ残る動機がはっきりしな いし(当時から高槻は異端だった)、第一居ても居なくてもどうでもよいと判断されていた節 がある。その高槻を、なぜ今になって確保する気分になったのか――もっと上等な言い訳 はなかったのだろうか? この男の前ではそんなことしか考えられない。 「ものみの丘から連絡があった時には耳を疑ったなぁ。AIRシティ侵攻戦が一段落したあた りに内務省からお呼びがかかるとは思っていたが、まさかその前夜にものみの丘とはなぁ?」 愉快なんだか不快なんだか良く分からない口調で高槻は喋りつづけた。一体何が彼をこ れほど饒舌にさせているのだろう。不思議に思った。こんなにも自分語りをする高槻は見た 事が無い。 「確かに俺は今まで多くの人間を殺してきた。戦争の時も、そうでない時も」 先ほどの死体に一瞥をくれる。血液はもう半分ほど固まってしまい、黒くすさんでいた。 「そしてこれからも人を殺し続けるだろうなぁ。別にそれがどうということはない。どうとも思 わない。だがな――」 目の前が真っ赤になった。 いや、それはほんの一瞬であり、 「まだ、死にたくは無いなぁ?」 実際はレーザー照準器を当てられたのだ。 高槻は発砲した。
周囲に乾いた銃音が鳴り響いている。高槻の撃ちまくるVz61に紛れ込んで、3点バース トの異なる発砲音が聞こえた。敵は複数居る。 「――おい! あまり闇雲に撃つな!」 言うや否や、高槻のマシンガンは弾切れを起こした。高槻は手早くマガジンを装填する。 その瞬間を狙って、相手の兵士が高槻を狙い撃ちにしようとした。あたりに遮蔽物は見当 たらない。 「くそっ」 前もってポケットに入れておいたM93Lマシン・ピストルを引き抜く。下葉内務省向けに改 良されたもので、前の作戦の際にこっそりくすねておいた秘蔵品だ。 だが、ちょっと間に合いそうにない。 「よけろ高槻っ!」 「判っとるわぁぁぁ!」 一瞬前まで高槻が立っていたところに銃弾が飛来してきた。あとコンマ数秒遅れていれ ば蜂の巣になっていたところだ。高槻はちょうど四辻の建物の影に隠れることが出来た。し かし安心して居る暇は無い。ぐずぐずしていると手榴弾を放り込まれる。 「……い、…間!!」 と、高槻が叫んだ。断続的に続く銃声のせいで良く聞き取れない。 「……なんだ!?」 「………!」 「……なんだって?」 返事の代わりに、高槻は敵に向かって何かを放り投げた。 それはきっかり5秒後、ものすごい閃光を放った。いわゆる催涙弾というやつだ。これには 相手も意表を付かれたのか、一旦銃声が止んだ。分隊長らしき人物の指揮を取る声と、な ぜかクシャミをする音が聞こえた。 その空間に向けて、高槻は掃射した。あれほど苦戦を強いられてきた敵は、滑稽なほど あっけなく生命活動を終えた。 「ほれ、行くぞ巳間」 高槻はガスマスクを付けていた。 ガラスのせいで表情は読み取れなかったが、恐らくその下にはあの不快な笑みがこぼれ ているのだろう。
543 :
名無しさんだよもん :03/02/24 00:30 ID:gby5mxJf
hosyu
544 :
密議 :03/02/24 23:52 ID:23pu2uQU
四月一日 1500時 ものみの丘司令室 「断固として反対です! 停戦など論外だ、我々は南部を犯罪的なファシストに占領されたままなのです! この不法行為をそのままにして、停戦に応じたりすれば帝国の威信は地に落ちる!」 鋭くもなければ迅さもない、あるのはさながら重砲の一斉射撃のような、鼓膜を劈く声量ばかり。 噛み付かんばかりの勢いで叫ぶ将軍の双眸はしかし至って静かで、そのまるで狂気染みた様子とはまったく逆に、彼の精神が平衡を保っていることを示している。 「ましてや、戦略兵器の武装解除を行うために、たとえ国連の旗印を掲げているとはいえ外国軍隊の進駐を許すなど…… 鍵の聖土に蛮族を迎え入れることなんて、あってはならないことだ!!」 この狂態は、総統閣下への忠誠心の発露なのか。はたまた彼なりの交渉術なのか。 どちらにしても、演技をよくもまぁここまで通しぬけるものだ。呆れを通り越していささか感嘆の念すら抱いてしまいそうになる。 (……ま、大気論で総統の横に名前を連ねたとはいっても、国民の支持を勝ち得たとはいえない涼元君にとっては、総統に熱烈な忠誠を示し続ける以外に道はないのよね……) 下葉において、下川直哉以外のすべての人間が監視対象となっているように、鍵においても身内への蜘蛛の糸は十重二十重に張り巡らされている。 その細く細く容易く切れそうな、しかし強かで触れたものを絡めとり放さぬ糸の数本が伝えてくる彼の動静を思い出し、しのり〜の唇から吐息がこぼれた。 それにしても、彼女は思う。 ここのところ、毎日のように『重要な会議』をやっている気がする。 のっけから、傍らの人間スピーカーが奏でる騒々しいBGM。 どうにも考え事をするには不適なそれを半ば以上聞き流しつつ、しのり〜は実際に誇張なくほとんど毎日見慣れてしまった室内、顔ぶれをぼんやりと見渡した。
545 :
密議 :03/02/24 23:53 ID:23pu2uQU
さしずめ、日替わり定食ならぬ日替わり政策というところだろう。 確かに予測不可能な事態が多すぎる、多すぎるからといってこれはあんまりかもしれない。 思えば麻枝元帥の誘拐以降、戦略、戦術、外交のすべての分野においてほとんど一度も主導権を握ることができていない。 下葉、あるいは正葉、そして何よりも主家筋といっても過言ではないVA、彼ら諸勢力の思惑にいいように左右され、その都度根本的なドクトリンの変更を迫られるこの一ヶ月。 初めて自分の意思で踏み出した───この人間スピーカーの独断専行だ───一歩は最悪の悪手で、なおさら事態の主導権をこちらから引き離す結果に終わっている。 いや、事態(そして指導者の気まぐれ)に振り回されているのは敵も同じことだ。 それは、中央情報局長官たるしのり〜が掌握している情報網のもたらす多様な報告でも明らかだ。 敵の戦略は常に一定せず、命令の発令、撤回がわずかな時間に繰り返されるのは日常茶飯事、その上絶えざる外圧と月厨による鉄道破壊に晒されている。 そのために兵力移動、物資集積などに著しい非効率性が見受けられ、ことそれは優先順位が低く設定されている対AFの北西戦線で顕著だ。 昨夜の唐突の停戦発議、そして今朝の傍若無人な(なにしろそこは鍵固有の領土なのだ!)月姫自治区設立宣言も、どうせ泥縄式の決定なのだろう。 彼我の抱える困難には、決して大きな差はないはず───といってしまえば、それは欺瞞にしかならないのだろう。 帝国にあって下葉にない幾つかの問題、その最たるもののひとつ、いや二つかもしれない。 その問題のひとつは、帝国と『彼ら』がともにこの大地に存在する以上回避しえぬ……これはもはやどうしようもない。 しかし、今ひとつの問題は不可避というものではなかったはずだ。 その不可避ではない災厄を、わざわざ遠方から喜色満面で引っ張ってきたのは誰だったか。 胸の中にある怒りの炎は湿り気を吹き飛ばすようなそれではなく、むしろじっとりと水気を多く含んで、まとわりつくような……まるで泥濘が高熱を帯びているような、そんな炎だ。
546 :
密議 :03/02/24 23:53 ID:23pu2uQU
ことさら無視するかのように正面へと向けていた眼差しを、顔の向きはそのままに傍らへと向ける。 瞳の中に浮かんでいるのはわずかな不快感。それ以上のものではない。 確かに、彼の選択は帝国の選択肢を極端に減らしたという一点で、しのり〜にとって(そして多くの帝国の高官にとって)愉快なものではない。 だが、国内情勢をも睨んだ場合において、果たして彼が強引に推し進めた結果、それ以外の目標を選択し得たかどうか。 おそらくは不可能だ。 あれだけむちゃくちゃをやられて、今さら葉鍵国の再建なんて選択肢はありえない。 下葉と和平をするならそれはもう鍵自治州の完全な独立性を認めさせた上でないと国民が納得しない。 武力で下川を打倒したとして、正葉の高橋を担いで再び統一国家を、これもあんまりにもナンセンスだ。 大多数の国民が抱く反リーフ感情は決して単に下川体制を指すのではなくて、高橋と水無月をも含む『リーフ』への悪意そのものにまでなっているのだ。 そこへ持ってきて、正葉は憎むべき月厨を(どうせ内戦完遂のための一時的な同盟相手としてなのだろうが)擁護している。 結論は覆らない、どう考えたって答えは一つだ。 葉鍵国などもう存在してはならない。 鍵は独立の道を歩むしかないんだ。 ……残る問題は、彼があまりにも露骨で強引で後先を考えなくてしかもことの重大性に気づいてないということに過ぎない。
547 :
密議 :03/02/24 23:55 ID:23pu2uQU
やっぱり涼元大将は無責任だ。 長考の結果として、怒りのレベルはその程度にまで縮小された。 ぷぅと軽く頬が膨らんだ、そろそろそういう年でもなくなりつつある(むしろとっくにそゆ年齢ではなくなっている)しのり〜中将である。 気がつけば、彼はようやくその理性より感情が優先する人間であると自身を証明付ける咆哮を終えていた。 長机を挟んだ反対側。 そちらに発言者が変わっていることに気づき、彼女は慌てて表情と全身を引き締める。 「国土の一部を外国軍に制圧されているのは下葉とて同じことだ。 我々の威信ばかりが失墜することにはならないだろう」 しのり〜が緊張を漲らせたのも当然だろう、声の主こそは敬愛すべき唯一絶対の指導者、鍵第三帝国におけるただ一柱の生ける偶像。 たとえ同じく元勲に列する彼女であってすら、不真面目な表情でそのお言葉を拝聴してよい相手ではない。 「……それはどうでしょうか?」 麻枝崇拝が突き進んだ涼元大将あたりになると、そのお言葉に異を唱えることすら恐縮するようになる。 それほどにありがたいお言葉に疑義を差し挟んだ男に向け、涼元が案の定不快感をこめた眼差しを向けた。 だが麻枝自身には気にした風もない。 というより、淡々とした彼の表情から内心を読み取るのは不可能に近いのだが。 ともかくも彼は表面上なんらの変化を見せず、いささかうつむき加減の部下へと問うた。 「というと? 折戸君、なにか思うところがあるのかな?」 折戸がわずかに視線を床に落として黙り込んだのは、単に沈思ばかりの故か、それとも胸中を去来する暗く冷え切った思いの故か。 当人にもいずれともつかぬ、恐らくはそのいずれもが理由であるのだろう。 彼の沈黙は十秒ほども続かず、涼元が横槍を入れるよりも早く彼は麻枝の方へと顔を上げた。
548 :
密議 :03/02/24 23:56 ID:23pu2uQU
「下川という男の性格からいって、たとえ敵もろともであっても威信の低下を許容できるとは考えられません」 「ん……やはりこの呼びかけは罠と見るべきだと?」 「はい。下川は停戦を提案しましたが、その停戦の時期に関してはなんら言及しておりませんから」 折戸はうなずいて、集うた高官たちを見渡した。 「さらに停戦の議題として、禁止兵器の具体的な策定など、我々だけで協議できるわけもない微妙な問題を山のように積み込んでいる。 率先して国連決議の受け入れを推進するように見せて、その実査察を先送りするための欺瞞であるとしか思えない」 「先送り、ですか。受け入れ回避ではなく?」 尋ねるしのり〜も、折戸の見解には同感だった。 下葉の首脳部は馬鹿ぞろいだが、それでもこうも明示された事態を読めないほど愚かではないだろう。 難癖を大量に取り揃え、妙な猶予期間まで構えて決議履行をリードするポーズを取るからにはその目的は時間稼ぎとしか考えられない。 問題は、受け入れを先送りした上で下川一派が狙う『先送りの利益』なのだが…… 「受け入れが不可避であるくらい、下川にもわかっているだろうからな」 しのり〜の疑問を知ってか知らずか、折戸はおもむろにうなずいて言う。
549 :
密議 :03/02/24 23:58 ID:23pu2uQU
核戦争を阻止するという列強の本気―――それはあのもうだめぽなアメリカ合衆国大統領陛下のご様子を見ていれば大変よくわかりやすい。 寝ても醒めても明けても暮れても、ブラウン管の向うで彼が罵倒し倒す相手の名前はナオヤナオヤナオヤナオヤ。 ヤツは危険だ政権から引き摺り下ろさなければならない亡命するなら勘弁してやる、はてどこかで見たような? 確かに、今のところは激しさを増しつつある大国同士のせめぎあいの結果身動きを封じられてしまった格好だ。 だが、決議違反など他の大国も納得せざるを得ない事態が起これば、嬉々としてその絶大な武力を行使するに違いない。 「今回の声明、恐らくは時間稼ぎだろう。疲弊した通常兵力を立て直すための……或いは、その後の条件闘争を有利に運ぶための。 彼らは先の共同声明を逆手に取られて、弾道弾の威嚇と核のチキンレースを封じられてしまった。 いまや彼らに残された手段は、通常戦力による地道な勝利しかない。そしてそれは、時間を掛ければ確実に手に入る、と彼らは踏んでいる」 ふむ、と誰かが軽く鼻を鳴らした。 全体的には同意しかねる、といった様子だった。 その相手に折戸は顔を向け、穏やかな声で問いかける。 「涼元大将、君の考えはどうだ?」 「いくらか納得はできる。だがやはり疑問はあるな。 下川は時間を味方につけている側ではない。むしろ逆だろう」 揚げ足取りをしようというのではないらしい。 折戸は油断すれば苦笑に緩みそうになる口元を意識してこらえ、先を促すように頷いた。 涼元はどうにも、状況を考えずに序列の問題に固執するところが強くて困る。 まぁ、彼の立場を考えればやむをえない面はあるのだが―――なんとか落ち着いてほしいものだ。
550 :
密議 :03/02/24 23:59 ID:23pu2uQU
「下葉が想定する主敵が正葉でも月厨でも田所でもない、我々であることに疑いの余地はない」 幸いにして、涼元はエスパーでもなんでもない。 だから、彼が折戸の心の奥底の失笑を感じ取ることもなかったし、それがゆえに激発するようなこともなくて済んだ。 今こそは、鍵第三帝国の運命の岐路である。 序列への妄執は一時脇に追いやった。冷静を思考の基盤にすえて、司令室の壁に掛けられた簡略な地図を見上げながら断じる。 「我々が動員を進め防備を固める、さらには反攻に転ずるを恐れたからこそ、下川ファシストは空き地の街での敗北も捨て置き、我らにその最精鋭をぶつけてきたのではないか。 時間が経つにつれ、彼我の戦力差は開くどころか縮まるのは明らかだ。彼らがここで敢えて手を休めて機を窺うなどというのは……」 「確かに考えがたい。ただしそれは、援鍵ルートが健在であった場合、の話になるな」 まずありえない、そう続けようとした涼元を遮った言葉の主の意外さに、折戸が軽く両眼を見開き、涼元の表情からは血の気が失せた。 彼の反論を遮ったのが、他ならぬ麻枝総統閣下であったからだ。 「ねこねこルートがアリスに遮断された今、生き残っている援鍵ルートは正葉―逢魔ヶ辻のラインだけだ。 これがどれほど不安定なルートか、知らないわけではないだろう」 「し、しかし……」 タイミングを無視した独立世論の醸成、そして無思慮極まる国名の建議。 誂えたばかりの冷静が吹き飛んだ。 言外にその責を問われていることに気づき、涼元の声音に狼狽が滲む。
551 :
密議 :03/02/24 23:59 ID:23pu2uQU
まさか、国家元帥閣下から遠回しながらも叱責を賜るなど。 慌てて言葉を取り繕うとするが、狼狽がさらなる動揺を招いてうまく言葉を紡げない。 何か弁解しようとすれば、錯乱の極みに達した言語野が半ば泥の中に沈んだ自分をさらなる深みに導きそうで、涼元はだらだらと脂汗を流しながら佇立する以外の反応を見せられない。 その抗弁に手間取る間に、しのり〜の硬い言葉が鈴元を憮然と押し黙らせた。 「下葉がこちらの内情を把握している兆候はありません。もし彼らがレギオン准将らの動静と連動しているようなら、すでにAirシティは陥落しているでしょうし。 ですが、少なくとも下葉は一連の経緯から、こちらの内訌、特に帝国と正葉との確執を期待するに足るものと判断していると考えられます。 下葉内務省が対月厨政策の強化に力を向けているのも、その延長線上のものと考えていいでしょうね」 「当然、停戦期間中に下葉は我々と正葉の分断工作に乗り出す肚だろう。 正葉がどう出るかは判らないが、彼らの動静次第では、我々は完全に干上がってしまう」 現実問題として、ねこねこルートが完全に遮断されたわけではない。 憲兵隊による封鎖は続いているとはいえある程度の物資の流通は黙認されているし、ソフリンでは同ルートの開放に向けてVAとアリス上層が現在も協議を続行中だ。 一ヶ月程度の戦争遂行にはとりあえず問題はないし、戦争前からすでに半ば統制下にあった経済への影響も即効性のあるものではない。 当面現状を維持するだけなら、鍵の北部3/4を保つだけならなんの問題もないのだ。 だが、これから予備役を本格動員し、兵力を拡充し、そして南部を解放するために反攻に転ずるとなるとなると話は違った。 正面装備から燃料弾薬に至るまで、なにもかもが足りていない。 こと、装甲車両に至っては、自治州軍の再建を急ぐあたりEREL旅団に回していたような旧式車両まで引っ張り出してきている。 一部の部隊など懲罰部隊もかくやの編成で、さしもの涼元大将も警察任務以外での運用を放棄せざるをえない状況なのだ。
552 :
密議 :03/02/25 00:00 ID:VZROucgK
では、けろぴ〜シティなど鍵南部の解放を断念して、徹底的に守勢に徹し、和平、独立までの道筋を立てるならどうだろう? これはこれで、緩やかに死を待つのに等しい方策だった。 軍隊は、戦闘行動を行っていなくても莫大な燃料、そして食料を消費する。 そして現在アリスが鍵に運び込まれるのを黙認している燃料の総量は、この消費量を明らかに下回る量でしかなかった。 一ヶ月程度の戦争遂行が可能なら、と現状維持に但し書きがつくのはそのためだ。 この状況を打破するためには援鍵ルートの再建が欠かせない。 だが、その鍵の片方を握るアリスとのパイプを何一つ鍵は持たなかった。 たとえソフリンに密使を送り込み、アリスに直接対話を求めたところで彼らがまともに取り合ってくれるとは思えない。 結局のところ、アリスは鍵をVAの出先機関程度にしか思っていない。そして現在、アリスはVAとの交渉を続けている。 わざわざ出先機関に窓口を開くような労力を払う理由がないのだ。 正葉ルートに頼る策も、安易に選ぶのはあまりに拙い。 理由はいくつかあるが、最大のそれは彼らの半分が月厨という集団であるということだろう。 正葉に借りを作るということは、月厨に借りを作るということに等しい。 月厨の力を借りなければ戦争遂行ができなくなる、そんな事態が生まれれば、月厨迫害を体制維持の重要なファクターとしている鍵第三帝国にとって致命的な展開を招きかねない。 こと、鍵第三帝国固有の領土である南部、そこに下葉ファシストが樹立した月姫傀儡政権へのフリーハンドを失ってしまいかねないではないか。 この状況に対する回答を、彼女はすでに用意していた。 実行に移すにはいたらない。というより、彼女の権限外のことだ。 リスクも多く含んでいる。軍事的にも政治的にも外交的にも、膨大なリスクを抱え込んでいる。 荒っぽい外科手術だから、失敗したら致命傷になりかねない。 ただ、致命的というならば、現在進行形で鍵第三帝国そのものを蝕む病魔が死に至る病なのだ。 手術のリスクが高いといっても、死病を放置するよりは格段に快癒生存への道は開けている。 今動くことこそが、活路を開くことにつながるのではないだろうか?
553 :
密議 :03/02/25 00:01 ID:VZROucgK
逡巡は、言葉を発するためのプロセスに過ぎない。 腹は決まっている。資料も用意していた。儀式を終えたなら、後は行動に移すのみだ。 しのり〜は薄く笑みを浮かべ、麻枝総統の顔を見返した。 「いっそ、この際一度行き着くところまで行ってしまうのも良いかもしれません」 「……どういうことかな?」 「今、我々と彼らの間に存在する溝は、何も帝国の独立宣言のみに起因するものではないということです。 鍵と正葉……いえ、鍵と葉とそして月厨、三つの民族の間に厳然と存在したひずみが、鍵第三帝国という名称問題をきっかけに顕在化したに過ぎません。 今でなくとも、いずれ帝国と正葉ネオファシストの間には重大な危機が生じていたでしょう。 その危機の到来が敵前でではなく、この時期に訪れたことは幸いなことと見るべきかと」 なるほど。 言わんとするところは察した。しかし、その真意がまだ汲めない。 麻枝総統がしばらく言葉を咀嚼して漏らした呟きは、そんな色を宿したものだ。 「今とて敵前には違いないが……しのり〜君、君はこの停戦を受けるべきだというのだね? 下川の誘いに敢えて乗って、彼らの分断工作にさらされる危険も承知の上で、正葉との、今までとは異なる関係の再構築を目指すべきだと。 今のような成り行き任せ、応急処置的な同盟関係ではない……打倒下川、そのためだけの、その間だけのドライな同盟と割り切るべきだと、そういうのだね?」 「はい。壊れてしまったモノを修理して用いるより、新しいモノを買い求める方が安くあがることもありますから。 もちろん、そのためにも事前に全ての障害を除去しておくことが望ましいと思います」 しのり〜は問題を『解決』するとは言わず、『除去』すると言った。 その微妙なニュアンスの言い回しに、それと気づいた麻枝の両眼がすうっと細められた。 その変化は彼ばかりではない。しのり〜の言わんとするところ、それと気づいた鍵の将星たちに明らかな緊張が走るのが見て取れる。 「正葉との関係をいったんフラットなものに戻すため……それに、涼元大将の主張も極めて重要な問題を含んでいます。今のままの停戦では、帝国の威信に重大な影響を及ぼしかねません。 もう一策、これは折戸大将の手を煩わせることになりますが……」
554 :
密議 :03/02/25 00:02 ID:VZROucgK
しのり〜はいったん言葉を区切り、それまであたかも周囲に人がいないかのように麻枝一人へと固定されていた視線を外し、折戸の方へと向けた。 口許に浮かべた微笑は偽りのもの。暖かさをかもし出すことは決してなく、ただ瞳が湛えるそれと同じ酷薄さばかりを感じさせる。 「停戦を原則受諾し、その発効日を定めるまでは良しとして。 停戦が発効する前に、下川ファシストが調略の足がかりにするでしょう、帝国とリーフの関係を煩雑にさせる根本的な問題を取り除いておきたいのです」 「つまり?」 「下川ファシストが我々の不可分の聖土を不当に占拠し、その地に打ち立てられた劣等人種の忌まわしい傀儡政権。 AIRシティに到着した集成師団を中核とする兵力での、南部諸都市解放作戦を提案いたします」 ども、AF書き手です。 投稿完了しますた……相変わらず長いだけか。 研鑽してきまつ……
大戦記もうだめぽ。 特定コテハンへの依存度が強過ぎて、そのコテに見捨てられると即死状態になる。 同じくコテへの依存度が高い鯖や、コテが早期に死滅したファンタと比べてもあんまりに脆弱だ。
>>555 記念すべきファイズの書き込みがそれだとは(w
で、特定固定って旅団長のことか?
それにどちらかというと、行き当たりばったりでよく1年もったなという感じの方が強いんだが。
なんていうか、他のに比べて感想とかネタとか少ないよね。なんでかはわかんないけど とはいえ、嫌いじゃないんで落ちて欲しくはない ageのマブラブ事変とか下川はしゃぎまくりの新兵器Routesとかでてこないかな …そうなるとなんか仮想戦記みたいか
いや、いいかもしれないなそれw>ageのマブラブ事変とか下川はしゃぎまくりの新兵器Routes
ageはだいぶ前に行動不能になっているので、今更動かすと矛盾が生じます。
キ // /::::://O/,| / これは…… ュ / |'''' |::::://O//| / 半ば 駄スレ .ッ \ |‐┐ |::://O/ ノ ヾ、/ : |__」 |/ヾ. / / だが 半ば…… ヽ /\ ヽ___ノ / . へ、,/ 良スレ…! / × / { く / く /_ \ !、.ノ `ー''" /\ ''" // | \/、/ ゙′ |\ /|\ ̄ \|
ホシュホシュホシュ
どうやら主要投稿者の一名がYBB規制の巻き添えを喰らっている模様。
563 :
鮫牙 :03/03/03 01:20 ID:LFy3Hklb
ちまちま、書いてはいるんだが、ルミラ中将を
保守
そういえば忘れてたけど、確か御堂を奪還するって話があったんだよな。
保守
保守
保守
569 :
運命の扉 :03/03/06 01:58 ID:AA7LIRq2
4月2日 シェンムーズガーデン16時45分 シェンムーズガーデンのテラスでRR親衛隊第一軍ルミラ=ディ=デュラル陸軍中将は山々を眺めていた。 その表情はこの美しい風景と美貌い反して、暗く重苦しい。 彼女がアクアプラスシティに到着したのは今より三時間前。 そして、直ぐにシェンムーズガーデンに出頭を命じられ、ある辞令を受けることになる。 「司令官」 冷笑と共にルミラは思わず呟く。 彼女の言う司令官とは彼女の上官そして、今の北部の反逆者の首領。 高橋龍也上級大将と彼女が出会ったのはリーフファイト97戦役であった。国防軍司令官と国防軍第1師団長として。 独立戦争初期時には階級で格上であったが、2年後のリーフファイト97戦役時には逆に高橋上級大将の方が格上と なり、その指揮下におかれても、彼女はそのことに気を腐らせるような小人物ではなく、むしろ己の職務に誠心誠意取 り組んだ。 「司令官、そして総参謀長まさか貴方達と戦う日が来るなんて、神様って奴は中々悪戯好きのようね」 私は勝てるのだろうか、あの戦争芸術家に。 ルミラの全身を冷気が襲う。 攻防を巧みに操る、指揮能力。戦争全体を計算しつくした戦略眼。あの頃は頼もしく思えたが敵となった今では、ま るで、死神にように思える。
570 :
運命の扉 :03/03/06 02:00 ID:AA7LIRq2
ルミラとて「韋駄天ルミラ」の異名を持つ機甲電撃戦の職人ではあるが、だからこそ敵対する将軍の力量が分かるが 故に恐ろしくなる。 銀髪を手でかき上げ、そして目を閉じる。 30分前の中上大将の声が蘇る 「国家元帥特命第22号ルミラ中将をシモカワグラード防衛司令官に任命する」 それはつまり第1軍をもって、北部の反徒同盟を撃破せよということ。援鍵ルートは正葉―逢魔ヶ辻のライン、鍵の 動脈を切断する。それがルミラに与えられた役目であった。 数ヶ月前、久しぶりにテレビで見たかつての上官は少し痩せてはいたが、その目はかつて同様精気に溢れていた。 それ以来、覚悟はしていた筈だ。何時かは戦わねばならないという事を。 「なんや、ここにおったんか」 テラスの向こうに、冷徹なる独裁者が立っている。 「閣下」 「査察の方は川上が国連、と言ういうよりアメリカにロシアを仲介して今現在、ワシ等に都合良い様にしとる最中や」 しぇんむーがルミラの肩に手をやり、言葉を続ける。 「皆、この国の為に一生懸命なんやお前もたのむで」 「はい」 ルミラが山荘の中に入っていく。 冷血なる独裁者が山々を眺めながらルミラに告げた。 「お前にはやってもらうことが未だあるんや、必ず生きて帰るんやで」 「はい閣下」
571 :
鮫牙 :03/03/06 02:03 ID:AA7LIRq2
運命の扉投稿終わりました。
あー、なんかRoutesプレイしたらしぇんむ〜(現社長)がそんな悪者に見えなくなってきたw どうすればいいんだ。
あぁ、実は俺もw スタッフ自身が楽しんで作ってるいるとか言ってるし。 さらにRoutes結構面白い、しぇんむ〜どうしちまったんだ?
単に下川がキ○ガイという前提自体が誤りだっただけなのではないかと。 そもそも、人身掌握力や経営能力皆無の奴がLeafをあそこまで大きく成長 させられるワケがない。 512文書はあくまで葬式にジーンズでくるような奴とかが書いたものだという 点をもっと考慮すべきだったかもな。結果論だが。
誤字見つけちまった・・・・ × 人身 ○ 人心
>>574 個人的所感だが。
下川氏は512時点ではHRMというものを軽視しすぎていただけなのではないのかと。
それ以降に関してはよくは知らんが。
4月2日1930時 エロゲ国北方総督領・南トコロザワ郵便物交換所(エロゲ・鍵国境) 「なぁ、曹長……」 「……なんですか、少尉」 「何で我々はここにいるんだろうな……」 「……状況を的確に指摘して、今以上に悲惨な気分を味わいたいですか?」 「だよな……」 目の前を次々に通過していくトラック。その車体に書かれた『鍵猫交易物流』も文字を追いながら、 検問所に詰めているふたりのライアー師団所属の憲兵が、愚痴をこぼし合っていた。 「まったく……ろくな後方支援能力もないくせにこんなところまで出張ってくるからだ」 いくら最新の兵器をそろえていようが、いくら大勢の兵士を抱えていようが、それだけで戦争は遂行できない。 それらの兵器を常に整備し稼働率を高めておくメンテナンス能力の高さと、 必要な物資を後方から的確に前線へと運ぶロジスティック能力の優秀さ ――大きくまとめて兵站、後方支援能力が高くなければ十全の戦力を発揮できない。 そしてエロゲ国各軍閥は、決してそれらの能力の高さで知られた存在ではなかった。 いや、むしろ『近代戦を遂行しているとは思えないほどの後方支援能力の低さ』ばかりが目立つ存在だ。 例えば、今彼らが監視しているねこねこ師団。彼らはかつての『みずいろ事件』で その主力のほとんどを出撃させたのだが、それをサポートする後方支援部隊を 葉鍵統合軍に撃破されて兵站能力が壊滅し、さらにその状態で決戦を求めて戦場を右往左往するという 自分で自分の首を絞める醜態を晒し、結局は統合軍主力と戦わずして燃料切れで自滅してしまった。『(主力でなく)後方部隊を叩くなどイリーガルだ!』と叫んだ同師団参謀の妄言が、 彼らが近代戦のなんたるかを理解していなかったという何よりの証拠だろう。結局彼らの主力兵器 ――K1A1戦車やK200A1歩兵戦闘車は、ほとんど無傷で当時の葉鍵統合軍の手に渡ったのだった。 また最近では、行軍中に後方支援能力が自壊し半ば難民化、結局は民間団体の援助で何とか食いつないで 消滅を防いだ、マロン師団の『秋桜事件』というスキャンダルもある。 そして、これらの醜態はエロゲ国では何も珍しいことではない。
彼らの所属するライアー師団もそうだった。かつては『駐屯地から出撃することすら出来ない』 とまで言われるほど後方支援能力が腐っていたものだが、さすがに最近では或る程度改善されている。 だがそれでも少し無理をするとすぐにボロが出るし、それを修復するのにかなりの時間がかかる。 そもそも、新大陸で遍く流布している彼らの精強さの評判は、そのほとんどがライアー支配領域か その接続地域で発生した紛争に勝利したからこそ得られたものだった。 つまり、後方支援能力の脆弱さが露呈しにくい地域での軍事行動で名を上げていたにすぎない。 今回のトコロザワ、アオバダイ、トヨハラへの憲兵隊派遣でもその悪弊が噴出してしまった。 まともに車両群が稼働したのは最初の2日間だけで、以後は故障車が続出し機動力の大半を失ってしまったのだ。 仕方なく彼らは拠点における検問業務に任務を切り替えたが、所詮『点』しか押さえられない憲兵隊に、 『面』を支配しているねこねこ、AF、WINTERSの動きを押さえきれるはずもない。 そのうえ彼らと違い後方支援能力『だけ』は文句なく優秀なAF、WINTERSの両師団は積極的に 軍を陽動させて憲兵隊の消耗を誘い、同方面では検問を有名無実化させていた。 現在それでも物資の流入阻止を達成できているのは、後ろに控えるアリスの威光があればこそ。 しかもそれでも、完全な封鎖には至っていない――結局ライアーは、誰をも恨みようがない自業自得な理由で 『張り子の虎』に成り下がっていた。 そしてそれは、葉鍵内戦の大きな歴史的特徴――後方支援能力の低い軍閥は政治的にしか介入できない ――を象徴する出来事だった。 「少尉、やはり国境を完全に封鎖するのは無理なんですかね?」 「そりゃ、後先考えずに師団本隊を全力出撃させれば不可能じゃないさ。ねこねこ程度に負ける我らじゃない。 あるいはトコロザワを完全に制圧する方が効果があるかもな。だが――その後が続かない。 結局は『みずいろ事件』や『秋桜事件』と同じ結末をたどるよ。我が軍の後方支援能力では、 絶対にそうなる。そうなったらおしまいだ。鍵に乗っ取られたねこねこや、 北方総督府の直轄扱いになっちまったマロンのような目に遭いたくなければ、 おとなしく格好だけでも封鎖しているしかあるまい」
「いっそのこと、アリスのメンテナンスサービスに全て乗っかるというのは……」 「それこそ我が軍は乗っ取られる。ただでさえ総督府が怪しい動きをしてるってのに、 ここで政治的な独立を手放すことが出来るか?」 「なにやら北都南総督が動いているとか……」 「そうだ。ここで我が軍が『近代戦も遂行できない張り子の虎です』なんて醜態を 公式に認めるわけにもいかないだろう? 結局は連中の……」 と、顎をしゃくって目の前を通過するトラックを示す少尉。 「好きにやらせるしかないんだ。まぁ奴らも、アリスに遠慮して普段の1/10程度に流通を押さえているから、 まだしも面目は立ってるがな」 「しかし……こんな様になるなんてことがわかっていながら、 どうして上はここまで我々を出張らせたんですかね?」 「大方、アリスの連中に何か掴まされたんだろ……まったく、ろくでもねぇ」 少尉は吐き捨てるように毒づいたが、その貶された上層部も実は頭を抱えていた。 彼らは以前から南方総督の長崎みなみのシンパとして知られていたのだが、 今回のアリスとの同調でその長崎総督から『北方総督を飛ばして勝手に行動するのはどういうわけですか?』 と、厳しい詰問の電話を頂戴してしまい、親長崎派としての面目を粉々に粉砕されてしまったのだ。ついには『何でアリスなんかに同調したんだっ!』と内部で責任の押し付け合いまで発生する始末で、 もう政治的には泥沼の状態に陥っていた。 「とにかく……」 ようやく車列のとぎれた――それでも普段からすれば格段に少ない――対鍵援助物資の流れを見やりながら、 少尉は憮然とした口調で結論づけた。 「期待はずれもいいとこ、って感じだな、こりゃ」 同時刻 鍵第三帝国・回廊辺境領逢魔ヶ辻 「まったく、期待はずれもいいとこだ……」 古い町並みが残る逢魔ヶ辻の旧市街。その町中にある古びた居酒屋の奥には、 極一部の人間しか知らない秘密の部屋がある。独立戦争以前から過激派の連絡所として使われてきた部屋の中で、 当時この連絡所を設置した当の本人であるJRレギオン少将はそう言って麻枝のことを腐していた。
「あのアフォ、もうちょっとおつむがしっかりしてるかと思ったが……側近に乗せられて独立宣言か。 おめでてぇな。おかげでこっちの革命計画は一から練り直しだ!」 「まぁそう言うねぇ、同志」 テーブルの向かいに座っている、少し危ない雰囲気の男がおどけて肩をすくめた。 独立戦争当時は旅団長の配下で数々のテロに手を染め、戦争が終わってからは東葉領に潜伏していた この男の正体は――元前衛派のテロリスト・金森弥太郎。 ちなみに、金森という本名よりも『禁愚ジャッキー』という通称の方がよく知られている。 「で、どうするんで、同志?」 「どうするもこうするもあるか。第三帝国なんてくだらん名前付けて悦んでいる国にこれ以上いられん。 第一、ここまで露骨な態度に出てきたからには、ものみの丘もそろそろ俺を粛清するはずだ…… 亡命する」 「亡命先は、とりあえず東葉にしといていいんだな?」 「ああ。東葉なら貴様のテリトリーだ、何とかなるだろう。出来ればスオンカス警視総監あたりに話を付けて、 下葉へ出国できるように動く。月姫自治区あたりに潜り込めればベストだ」 「しかしまぁ、革命の闘士が下川ファシスト政権に亡命とはね……」 「言ったろう? 俺の目的は、麻枝を断頭台に送り込み、ものみの丘を完膚無きまでに破壊することだ。 その目的のためならば、手段なんぞ選んでいられん。俺は勝ち馬に乗って目的を果たす。 どうあがいてもロディマス地方政権以上の飛躍が望めない正葉なんぞにつき合っていられれるか」 「……ま、俺はあんたの、そんな機会主義なところが好きで、ここまでつき合ってるんだからな ……しかし、高橋は『下川打倒』を呼号しているが?」 「それこそスローガンだけだ」 そう言って、旅団長は隣に控えるなつきからカップを受け取って、一気に紅茶を呷った。 「現実を見ろ。どんなにヤンキーやVAの後ろ盾を得たところで、高橋に葉鍵国全土を制圧する見込みは全くない。 シモカワグラード以東と東葉北部、つまり大リーフ湾岸を制圧するのがせいぜいだ。 逆に下葉も、短中期的には正葉を打倒できない。おそらく空き地の町を陥落させた時点で、 VAあたりがなりふり構わぬ援助策を打ちだして、現有領土の確保に走るはずだ」
「つまり……どちらも互いを打倒できない、と?」 「そうだ。戦略的状況がそうなれば、下川も高橋も『手打ち』を考えるようになる…… つまりは、休戦協定だ」 「へぇ……犬猿の仲のふたりが休戦ねぇ……信じられねぇ」 「不思議でも何でもない。利害が一致すれば、いやでもそうなる。それでも以前ならば考えにくかったが ……麻枝のアフォが同盟にひびを入れてくれたおかげで、急に現実味が高まったな。 下葉にしてみれば、これは国際的に孤立した鍵を完全に併呑できるまたとない好機だ。 出来ることなら全戦力を集中してでも鍵の領土を制圧したいところだろう。 仮に鍵全土を手中に出来た場合、資源埋蔵量で見ればこの内戦でロディマス地方を失った以上の国力が 転がり込むんだ。ロディマスを『一時的に』高橋にくれてやっても、十分収支決算は黒字になる。 幸い、査察停戦に入りそうな勢いだからな。このまま二国間の休戦に発展する可能性は多分にある」 「ほぉ……それで、正葉にとっては?」 「正葉は、もう国家戦略の根幹に深く月姫民族が食い込んでいる。つまり、親月姫政策を採らなければ 国を維持できない。月姫ジェノサイド政策を採る鍵に三行半を叩き付け、下葉に『お好きにどうぞ』 と言うのは大きなプラスだ。それに元々鍵と同盟したのも、下葉の戦力を引きつけるための 囮の役割を期待したからだ。ここで同盟を解消しても、実のところその目的に影響はないんだな、これが ――それに、鍵を生け贄に差し出す引き替えに一時的な休戦を確保できれば、それだけ軍や体制を強化できる」 「……そんなに上手くいくかね?」 「それはわからん。国際情勢は複雑怪奇だしな」 旅団長は苦笑した。 「だが下川の関心が、ヤンキーやVAの支援をそつなく受け入れる高橋よりも、 むしろ大チョンボをやらかした麻枝の方に向かっているのは、まず間違いない。 これに匹敵する関心事だった“アビスボート”は、国連安保理によって無力化された。 中上や久瀬といった連中がちゃんと奴の手綱を操れるなら……今後の鍵打倒は、 下川が完全に主導権を握るだろう。そんな状況に潜り込まない手があるか。だから俺は下葉に亡命する」 「ま、こっちが文句を言う筋合いはないな……了解した。早速今晩にでも……」
禁愚がそこまで言いかけたときだった。何の前触れもなく隠し扉が音を立てて蹴破られ、 数人の兵士達が部屋に乱入してくる。 「「「……!!」」」 旅団長、なつき、禁愚が弾かれたように椅子から立ち上がった。 「ちぃっ!」 軽く舌打ちした禁愚が緊急脱出路に駆け寄ろうとするが…… 「動くな、金森ッ!」 兵士達の指揮官――第1降下猟兵大隊長・川口茂美少佐の怒号が部屋に響いた。 それと同時に、鈍い輝きが一閃して禁愚の眼前の空間を切り裂く。 「……ひっ!!」 目の前を通過した物体が鋭いアーミーナイフだとわかって、禁愚はへなへなと床に座り込む。 その醜態をちらりと見やってから、茂美は改めて拳銃を握り直すと旅団長へと銃口を向けた。 「旅団長閣下、出来ればこのまま動かずに願います」 「……おやおや、川口少佐? Airシティで受けた傷はもう治ったのかね?」 「全然。ですが、あなたを放っておけなくて、傷を押して出動しましたよ……みきぽん中将の直命でね」 「いやはや、美人のお姉さんにそこまで思われるとは、なかなか愉快な気分だ……なぁなつき?」 そうおどけて、あまりの展開に傍らで固まってしまったなつきに笑いかける旅団長だったが、 内心ではどっと冷や汗脂汗が噴き出してきた。 (みきぽんの直命……畜生、粛清命令がもう出ちまったのか! ぬかった……タイミングを読み違えた!) もう少し時間的余裕があると踏んでいた旅団長は、秘かに臍を噛んだ。 (川口少佐……と精鋭の降下猟兵か。万に一つも脱出の目はないな……ここは一度捕まって脱出を ……いや駄目だ、おそらくこいつら、俺を即刻殺すように言われているはず……) 万策尽きたか……と観念しかけた旅団長だったが、このときふと微かな違和感を覚えた。 少しそちらの方へ思考を割いて――すぐにその正体に気づく。 「ふん? どうしたのかな川口少佐? 何をそんなに動揺している」 「……! いや、何のことだ?」 しかし、茂美の顔はあからさまに強張っている。何かの動揺を押し隠そうとしているのは間違いなかった。 (なんだ? 俺を処分しようとするのに動揺なんてするわけないし……何を隠してる?) その正体を確かめようと、旅団長がカマをかけようとしたときだった。
「茂美しゃん、脅かすのはそのくらいでいいでしゅよ」 この緊迫した空気に不釣り合いなのんびりした声が部屋の外から聞こえ、同時に一人の女性が入ってくる。 「おや、千客万来ですなぁ……一体こんな悪所に何のご用で、中将閣下?」 ずれたAAのような面相を持つ女性――東方派遣軍司令官・みらくる☆みきぽん中将は、 旅団長の言葉にくすっと笑いながら口を開いた。 「レギオンしゃん――残念ですが、あなたをこのまま下葉にやるわけにはいきましぇん」 「そりゃま、そうでしょうな――で、処刑方法は?」 何か得体の知れないものを感じつつ聞き返した旅団長だったが――みきぽんの返答は、 彼の予想を完全に裏切った突拍子もないものだった。 「そんな話ではありましぇん。麻枝しゃんに刃向かうのは勝手でしゅが…… それは、わたしの元でやってもらいましゅ」 「「「……はぁ?!」」」 銃を突きつけられている3人が、頓狂な声を上げてみきぽんを凝視する。そんな彼らに向かい、 自身の動揺を隠す努力を完全に放棄した茂美が、やや呆然とした口調で3人に ――というよりは、旧知の仲であるなつきに告げた。 「先刻――ミラクル☆みきぽん中将閣下は今回の独立宣言に対して麻枝元帥を激しく糾弾する演説を公表され、 そしてものみの丘の現政権が正当性を喪失したと断定された。 そして――葉鍵国体制の元での正当な鍵自治州統治機構としての『葉鍵国鍵自治州正統政府』の樹立を、 その……宣言された」 「そういうことでしゅ」 苦悩する茂美とは対照的に、みきぽんは朗らかとも言える表情で告げた。 「現在、下葉・東葉・正葉の各政府に、我々こそが鍵自治州政府の正当な後継者だと認めてもらうよう、 要請を発しているところでしゅ。それと、月姫民族自治区の承認宣言も同時に―― レギオンしゃんには、正当政府軍の樹立と整備に頑張ってもらいましゅ。 下葉に亡命してもらうわけにはいきましぇんからね」 呆然とする3人を後目に、軽やかな笑い声を上げるみきぽんだった。 その意外に綺麗な声の中で、旅団長がぼそりと呟く。 「期待はずれだ……」
>>577-583 「期待はずれ」投下完了です。
ちなみに、現実でバグばっかり出してるメーカー=後方支援能力の低い軍閥という風にしています。
非道な設定だな
>>574 だが、大量のスタッフが離脱したのも事実である。
そこらへん難しいよ。
3月29日 0110時 〔艦外に備え付けられた赤外線暗視装置から、ダイレクトに脳に映像が送り込まれる。 少々小さすぎる。倍率アップ。これでいい。甲板上を動き回るアンチ月テロリストの姿も、 AT-3サガーとみられる対戦車ミサイル発射機の姿もしっかりと確認できる。〕 (DDG-001メルティブラッドは、アメリカの技術援助を受けて同人コミケ国の大手企業 渡辺製作所が建造したステルス護衛艦だ。DD-21のイメージ図に酷似した形状を持つこの艦には、 最新のステルス技術がたっぷりと詰め込まれている。平面で構成されているように見える船体には どこにも完全に平らな面や垂直にとがった接合部などなく、 構造上の角ばった縁や角全てに、くぼみや丸みが注意深くつけられている。 船体は電波吸収材で覆われ、電波吸収塗料によって視認性の低い暗いグレイに塗装されている。 エンジンの排気ガスは外部に放出される前に冷たい外気と混ぜ合わされ、 赤外線放射を低減するようになっている) [40ミリCIWSの照準を甲板上の対戦車ミサイル発射機に固定。距離5000。 船体の同様および風の影響を計算に入れる。修正完了、ロック解除。40ミリCIWS射撃準備完了。 ここまで約1秒。平均より遅い。初めて感じる実戦の空気がそうさせるのか] (船体の前後に一基ずつの5インチ砲Mk45mod4はERGM(射程延伸誘導砲弾)によって、 100キロの彼方から正確な対地支援を可能にする。 128セルのVLSは搭載する各種のミサイルによって、魚雷発射管と40ミリCIWSとあわせて あらゆる脅威への対処を可能とし、格納庫にはSH-60K2機と無人機を搭載している) 〔私はDDG-001メルティブラッド艦長、シオン・エルトナム・アトラシア中佐。 擬似神経によって艦と人間の脳を接続するエーテライト・システムはこのためにある。〕
[この艦のすべての電子機器は私の脳によってコントロールされる。レーダー・ソナー等、 この艦の得たすべての情報は私の脳に集まる。私の脳はそれを解析し、演算し、判断し、指令を下す。 高速思考・分割思考を身につけた私の脳の処理能力は、来栖川のメイドロボに勝るとも劣らない。] (同盟成立当時、正統リーフが圧倒的に劣る海上戦力を補うために求めたのは、 1・あらゆる状況下において高い戦闘能力を持つこと 2・長い訓練期間を必要としないこと 3・省人化がなされていること この3つの条件を兼ね備えた艦だった。2と3を実現するにはAIによる自立制御が一番手っ取り早い。 そこで当時同人コミケ国において就役間近だったこの船を購入することに決まったのだが、 ひとつ問題が生じた。渡辺製作所と遠野財団の共同開発のAIの性能が予想よりもかなり低かったのだ。 そこで一介の研究者だった私とエーテライトに白羽の矢が立った。私はその誘いを受けた。 確かに戦時中は研究に割く時間などないが、実際に多くの人間を実験台にして得られたデータは、 穴倉の中で何年研究しても得られないすばらしい報酬だったからだ。) [思考が速い事は当たり前。そこからさらに多展開する図面を競争させる技法を高速思考と言う。 そして分割思考とは複数の思考回路を持つこと。すなわち「思考する」部屋を複数持つことだ。 そして「部屋」は相乗効果を及ぼしている。 四つの分割思考が出来るという事は、 二百五十六もの思考を持つ事。 それも単純に二百五十六人分の計算が出来る、という訳ではない。 二百五十六の高速知性が、個々の隔てなく同じ目的の為に淀みなく回転し互いを補佐するという事だ。 極限の鍛錬は時に奇跡を起こす。それが「錬金術師」シオン・エルトナム・アトラシアの魔術なのだ] 〔アンチ月テロリストの工作船、情報として知ってはいても直に目の当たりにするのは初めてだ。 もっとよく観察したいところだが、相手もミサイルの発射準備をしている。 そろそろ撃たなければこちらの身が危ない〕
「CIWS、ファイアー」 (艦首の40ミリCIWSが火を噴く。大口径の機関砲弾が周囲の人間ごと 対戦車ミサイル発射機を引き裂き、ばらばらにする。 温度の高いことを示す赤色は、まるで吹き出す血のよう。) [─まずい。これはまずい。倍率を上げすぎた。止めなければ。カット、カットしないと。 映像カット。思考をカット。カットカットカットカットカット!!] 「エーテライトシステム接続切断。通常システムに移行」 「了解。通常システムニ移行シマス」 ─────4番停止。 ─────6番停止。 ─────2番停止。 ─────7番停止。 吐き気と眩暈の同時飽和攻撃に耐え、どうにか艦との接続を断った。 「艦長!どうなさいました!?」 「心配には及びません。それより工作船は?」 工作船はまだそこにあった。傷だらけの姿をさらしながらも、 いささかも速度を減じることなくこちらに接近してくる。 カミカゼアタック─────。彼らは予測される行動のうち最もくだらない方法をとった。
「CIWS、ファイアー」 「処刑スル」 無味乾燥な機械音声を発したのは、メイド服の少女に似たモノ。 もともとこの艦を動かすことになっていた、遠野財団製メイドロボ第1号MH−1。 遠野財団製AIの処理能力は、来栖川の量産型メイドロボHM-12に搭載されている廉価版AIに 毛が生えた程度のレベルでしかない。無論イージス並みの能力など望むべくもない。 そんなAIでも、通常航行や今回のような相手には十分すぎる。 再びCIWSが唸った。穴だらけになり炎に包まれた工作船は、 大波にさらわれ、瞬く間に海の底に消えていった。 周囲から歓声が上がる。何はともあれこの船は初陣に勝利したのだ。 だが、私は喜ぶ気にはなれなかった。ただひたすらに気分が悪い。 だから、艦橋へと上がることにした。網膜という器官を通して感じる海の姿は、 脳に直接送り込まれるものとは別の趣がある。 アカ、い─────。 その一瞬、網膜に移った海は血の色に染まっていた。 一瞬だけの幻視。なんてことはない。ただの気のせいだ。 だが、そのとき私は初めて、ここがかつて幾千幾万の苦悶と怨嗟の声を飲み込み、 そしてこれからも飲み込み続けるだろう地獄の入り口─── 戦場の海であるということを真に理解した。 外に出て潮風を吸えば、きっと血の香りがするに違いない。 「でも、逃げるわけにはいかない」 そう、逃げるわけにはいかない。私は目的があってここに来たのだから。 人を蝕む忌まわしき病・反転病の生まれた大地、戦乱のエロゲ新大陸に─────。
投稿完了しますた。
メルティブラッドが海上警備隊に所属する理由は、
原田関係のごたごたのとばっちりを避けるための暫定措置とでもしてください。
2か月も待たせてしまうなんて…銃殺されてきます。
( ゚д゚) ;y=-( ゚Д゚)・∵. ターン
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>>587 前編ではなく後編です(死)。
下葉なんか、軍が機能しないっぽいw>現実世界でバグばっか ライアーは、いい訳きかんよなぁ…… 行殺の時の「無限スワップメモリ増加」は伝説的だw
そろそろ次スレが必要な感じですな。
594 :
鮫牙 :03/03/11 01:14 ID:vKaDVzHK
最近は改善されてるから
595 :
非常手段 :03/03/11 22:04 ID:jz5Ezwr9
4月2日 21時00分 ロディマス市庁第3会議室 「結論から言えば、我々は彼らを承認すべきではないと考えます」 静かで、しかし強い意思を伴った言葉が会議室に響く。 水無月大将のその姿は、とても数日前まで狂気の淵にあったとは思えない。 「ここで彼らを承認して鍵への物資輸送を止めれば、鍵が陥落するのは時間の問題でしょう。 そして、彼らは嬉々として傀儡政権の長の座に治まるだけ。 下川打倒という我々の目的のためには、彼らを認めることは害しかもたらしません」 正論である。少なくとも純軍事的には。 正統リーフがあくまで実力による下川打倒をなそうというのであれば、 それ以外の結論は皆無といっていいだろう。 ならば短中期的な下川打倒をあきらめ、国土防衛に専念しつつ事態の推移を待つという戦略をとるなら 鍵は存在しなくても良いかというと、それも否なのだ。 鍵自治州と下葉の境界線は長い。その分だけ貼り付ける兵力も必要になる。 もし鍵自治州に兵力を振り向ける必要がなくなれば、下川は使えるありったけの兵力を投入して こちらの息の根を止めに来るだろう。これは物資援助でどうにかなる問題ではない。 いかに物資があろうと、それを使える人材は一日二日では育たない。 負傷兵がいきなりHP満タンになって戦場に復帰するなどというゲームのようなことが起こるわけもない。 海の向こうから5個師団ぐらい傭兵を連れてくればそりゃあ何とかなるだろうが、 それでは正統リーフも何もあったものではない。 つまり、関係が多少険悪であろうと、鍵自治州軍は少なくとも、 下葉に敵対的な存在として存在していてくれなければ困るのだ。 「それに、我々の航空戦力は未だ実用に耐えない。JRレギオンについてくる予定だった魔女飛行隊は WINTERSから動けない状況です。ここで優秀な航空戦力を持つ 鍵との関係を決定的に悪化させるなど愚の骨頂というもの」 正論である。一片の疑問の余地もなく正論である。 問題はただ一つ。正論が必ずしも世界に認められるわけではないという一点だけ。
596 :
非常手段 :03/03/11 22:05 ID:jz5Ezwr9
「お体のほうはもうよろしいようですな。でしたら、 それで済むなら苦労はないということもお分かりでしょうな?」 武内TYPE-MOON副総裁の言うとおり、事はそう簡単ではない。 あの独立宣言以来、国内の反鍵感情は危険なほどに高まっている。 そこにきてあの801主義者は月姫自治区の承認を打ち出している。 国民の圧倒的な支持によって成り立つ正統リーフ、それを失えばダメージは計り知れない。 エロゲ国のこともある。正統政府を否定することはすなわち鍵独立の追認につながる。 アリスやソフリン中央政府のご老人たちが、態度を硬化させることは必死だ。 「やれやれ…。ここ最近こんな台詞ばっかり言ってる気がするよ…。どうすればいいんだ…」 「葉鍵情勢複雑怪奇、予測しても予測しても必ずその斜め上を行く…。 嗚呼、この身はなんと無力なのやら…」 「お二人とも!弱音を吐くのはやめてください!あなた方がそんなことでは、 こっちはそれこそどうすればいいんですか!」 「そんなこと言われても…」 柏木千鶴大佐の叱責に対する答えはみごとにハモった。 正統リーフ軍総帥高橋龍也、TYPE-MOON総裁奈須きのこ。 二人の息はぴったりのようだ。もっともこんな時にぴったりでも仕方がないのだが。 「総帥。どっちに転んでもろくでもない決断なんて、我々は慣れっこのはずです。ご決断を」 水無月大将が決断を促す。悩んでいても仕方がない。 高橋大将が意を決して言葉を発しようとしたとき、 「ひとつ、よろしいですか?」 琥珀大佐がその言を遮った。 「何か、良い手でも浮かんだのかな?」 「いえ、ひとつ思ったのですが、なかった事にはできないんですか?」 「なかった事に?」 「はい。例えばみらくる☆みきぽん中将とJRレギオン少将あたりが、 偶然にも不幸な事故に巻き込まれるとか、 アンチ月テロリストのテロに巻きこれるとかして命を落としてしまったとしても、 うやむやにはできないものなのでしょうか?」 その瞬間、世界は凍りついた。
597 :
非常手段 :03/03/11 22:07 ID:jz5Ezwr9
4月3日 00時30分 逢魔ヶ辻 死体が転がっている。 クロスボウで頭を打ち抜かれた死体が。 彼は優秀だった。それゆえの不幸だった。 この男の気配に気づいてしまわねば、このようなことにはならなかったのに。 「はあ……はあ……」 隻眼の男。彼は傷を負っていた。 常人ならば耐えられぬほどの傷。 そんな体を動かす意思はひとつ。 「JR…レギオン…」 その瞬間、季節外れの雷が、殺意に満ちた顔を照らした。 その男の名は、狗法使い────。
599 :
波紋 :03/03/12 00:07 ID:4SGZdWwq
4月2日1849時 東部戦線のある正面 その使者は、古典的にも両軍が対峙する最前線、その真っ只中を白旗掲げて踏み越えてきた。 降伏の使者、ではない。 その逆でもない。 ほかの戦区はいざ知らず、少なくともこの前線の戦局はどちらかに傾いているということはない。 それどころか、先の第十RR装甲師団の敗走以降のこの数週間は、相互に行う挨拶代わりの定時砲撃を除けば戦局は完全に停滞していた。 つい数日前、アビスボートの巡航ミサイルという多少の花火は上がったが―――今となってはそれも昔のことだ。 まもなく、この大葉鍵山系からは見ることができない湾内は、アメリカ軍を中核とする国連軍の艦艇で埋め尽くされるのだろう。 核戦争の脅威を未然に阻止するため、エロゲ新大陸周辺に展開することとなった国連軍は米軍の三個空母機動群を中核に、英仏伊西等の諸国海軍、軽空母三隻を含む巨大な陣容を誇るという。 それほどの戦力が、エロゲ国と葉鍵国という強力な海空軍力を有する両国を抑えるのには最低限これだけは必要と判定されたのだろう。 それが正しい判断かどうかは―――まぁ、やってみなくてもわかる。 ここまで明らかな戦力差を突きつけられたら、流石の傍若無人なエロゲ諸勢力も今までのような無茶はできない。 昨日、この高原を去った二ウェ大将(装甲軍司令官就任とともに昇任)が、似合わぬ苦笑を浮かべて呟いたほどだ。「クカカ……流石に、竹槍一本で竜を狩ることは適いそうもないな」と。 ここは東部戦線。 連合軍―――正葉と空き地の街、そして逢魔ヶ辻の鍵駐屯軍―――と、下葉軍が静かに対峙を続ける大リーフ湾沿岸地域。 あわせて二個師団ほどの連合軍(というにはまったく連携が取れていなかったが)に対し、下川政権軍は正面に四個師団、予備に一個師団と二個旅団が縦深のある布陣を構えている。 もっとも立派なのは数ばかり、攻勢作戦に耐えうるのは、逢魔ヶ辻を睨む山岳地帯に陣取る二ウェ大将が師団長を務めていた第九RR山岳師団キズアトのみ。 あとの四個師団と二個旅団は、旧式装備に練度の低いRR親衛隊の第三軍。 陣地から一歩も出れば、壮絶な足手まといになるのは間違いのない部隊である。
600 :
波紋 :03/03/12 00:08 ID:4SGZdWwq
支援の空軍部隊も、正葉の航空兵力が弱体なことをいいことに、主力が鍵南部に出張っているのであまり頼りにはならない。 なにしろ戦闘機の主力は近代化改修を受けているとはいえSu22とMiG21、攻撃機に至ってはG4スーパーガレブなどまで引っ張り出してきている。 おかげで逢魔ヶ辻にグリペンを擁する魔女飛行隊が進出してきてからはまったく活動が不活発。 逆に連合軍側も数量に劣り、重厚な防空陣地でカバーされた下葉陣地への積極的な空襲を行えるわけでもない。 結果として、前線はまったくのこう着状態に陥っていた。 いや、二ウェ大将はこの状況下においても攻勢作戦を主張していたのだが、上層部はそれを許さなかった。 許せるはずもない。 当時は鍵自治州侵攻作戦たけなわの時であったし、ロイハイト戦線でAFの攻勢が未だ衰えぬ時期でもあった。 本来この東部戦線に投入するはずであったRR親衛隊第四軍――テネレッツァ軍など、ロイハイトに引き抜かれたまま未だに帰ってこない。 戦力がまるで足りない上に、ゲリラの攻撃で疲弊した補給線はそれらへの補給を維持するのにいっぱいいっぱい。 落ち着いている東部戦線にわざわざ自分から火を点けて回る余裕など、下葉のどこにもなかったのだ。 しかし、それも今は昔のこと。 RR装甲軍司令官、二ウェRR大将が勇んでシェンムーズガーデンに赴いたのはほかでもない、逢魔ヶ辻攻略作戦に関して幹部会議が召集されたからだった。 自治州戦役は南部の占領地確保によってほぼ収束し、ロイハイト戦線では攻勢終末点を自覚したAFの戦線縮小の動きがある。 鍵は不完全ながらも孤立を深め、VAによる物資供給は機能不全に陥っている(と、下葉首脳は判断していた) 下葉への国際的な逆風を逆手に月姫自治区の設立、禁止兵器管理のための協議開催、そしてその期間の停戦と続けざまに手も打った。
601 :
波紋 :03/03/12 00:09 ID:4SGZdWwq
仕上げにもうひとつ。 今となっては鍵と外界を繋ぐ唯一の接点、逢魔ヶ辻を停戦発効直前に奪取すれば。 東葉に頭を下げてでも一時的な航空優勢を獲得し、空挺とヘリボーンによる強襲、混乱を突いての山岳地帯の踏破を達成すれば。 完全な奪取に成功せずとも、葉鍵中央回廊を扼する要地を手にすることができれば。 そしてそのままの状態で、停戦発効に持ち込むことができたならば。 心理的、政治的にだけではなく、物理的にも連合軍の分断に持ち込める―――そう、下川と中上は考えたのだ。 だから、混乱した。 もしそのとき二ウェ大将が高原に残っていたならば、軍使を殺して書状をもみ消したかもしれない。 だが、現実に軍使―――あまりに古典的なコミュニケーションだが、葉領の鍵派が一掃された今、みきぽん中将は前線以外に下川政権との接点を持たなかった―――無事戦線を渡り、書状は下川軍に手渡された。 そして、その書状は会議中にそれを目にした下川陣営首脳陣をしてこう言わしめたのだ。 「どうすればいいんだ」 と――― <糸売?>
長くなりそうだったので、この辺で切ってまた後日ですw
おつ
とりあえず
>>595 >JRレギオンについてくる予定だった魔女飛行隊は、WINTERSから動けない状況です。
と
>>600 >おかげで逢魔ヶ辻にグリペンを擁する魔女飛行隊が進出してきてからは
指摘しておきます。
そろそろ移行か…
604 :
名無しさんだよもん :03/03/12 12:12 ID:KOzaEyVJ
hosyu
>>605 次スレ案
異論がなければ、これで行こうかと。
良いと思いまふ。 煽り文が良好。非常に興味をそそる書き方かとw
609 :
名無しさんだよもん :
03/03/14 22:16 ID:DKlVpbLP