テイルズ オブ バトルロワイアル Part16

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1名無しさん@お腹いっぱい。
テイルズシリーズのキャラクターでバトルロワイアルが開催されたら、
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。参加資格は全員にあります。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。
これはあくまで二次創作企画であり、ナムコとは一切関係ありません。
それを踏まえて、みんなで盛り上げていきましょう。

詳しい説明は>>2以降。

【過去スレ】
テイルズ オブ バトルロワイアル
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1129562230
テイルズ オブ バトルロワイアル Part2
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1132857754/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part3
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1137053297/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part4
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1138107750
テイルズ オブ バトルロワイアル Part5
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1140905943
テイルズ オブ バトルロワイアル Part6
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1147343274
テイルズ オブ バトルロワイアル Part7
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1152448443/
テイルズオブバトルロワイアル Part8
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1160729276/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part9
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1171859709/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part10
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1188467446/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part11
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1192004197/l50
テイルズ オブ バトルロワイアル Part12
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1197700092/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part13
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1204565246/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part14
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1213507180/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part15
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1224925862/

【関連スレ】
テイルズオブバトルロワイアル2nd Part9
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1227941534/


【したらば避難所】
〔PC〕http://jbbs.livedoor.jp/otaku/5639/
〔携帯〕http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/otaku/5639/

【まとめサイト】
PC http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/
携帯 http://www.geocities.jp/tobr_1/index.html
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/14(水) 16:11:39 ID:04ITW3qn0
----基本ルール----
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができ、加えて願いを一つ何でも叶えてもらえる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
 「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。

----「首輪」と禁止エリアについて----
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。

----「首輪」と禁止エリアについて----
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
 主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
 この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
 24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。 
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
 下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
 プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
 たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく。

----スタート時の持ち物----
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を配給され、「ザック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「着火器具、携帯ランタン」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「支給品」
 「ザック」→他の荷物を運ぶための小さいザック。      
 四次元構造になっており、参加者以外ならどんな大きさ、量でも入れることができる。
 「地図」 → 舞台となるフィールドの地図。禁止エリアは自分で書き込む必要がある。
 「コンパス」 → 普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「着火器具、携帯ランタン」 →灯り。油は切れない。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「写真付き名簿」→全ての参加キャラの写真と名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「支給品」 → 何かのアイテムが1〜3つ入っている。内容はランダム。
※「ランダムアイテム」は作者が「作品中のアイテム」と
 「現実の日常品もしくは武器、火器」の中から自由に選んでください。
 銃弾や矢玉の残弾は明記するようにしてください。
 必ずしもザックに入るサイズである必要はありません。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
 ハズレアイテムも多く出しすぎると顰蹙を買います。空気を読んで出しましょう。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/14(水) 16:12:23 ID:04ITW3qn0
----制限について----
 身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
 (ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合があります)
 治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法は発動すらしません。
 キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
 しかしステータス異常回復は普通に行えます。
 その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。
 MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
 全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内ということでお願いします。

----ボスキャラの能力制限について----
 ラスボスキャラや、ラスボスキャラ相当の実力を持つキャラは、他の悪役キャラと一線を画す、
 いわゆる「ラスボス特権」の強大な特殊能力は使用禁止。
 これに該当するのは
*ダオスの時間転移能力、
*ミトスのエターナルソード&オリジンとの契約、
*シャーリィのメルネス化、
*マウリッツのソウガとの融合、
 など。もちろんいわゆる「第二形態」以降への変身も禁止される。
 ただしこれに該当しない技や魔法は、TPが尽きるまで自由に使える。
 ダオスはダオスレーザーやダオスコレダーなどを自在に操れるし、ミトスは短距離なら瞬間移動も可能。
 シャーリィやマウリッツも爪術は全て使用OK。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/14(水) 16:13:08 ID:04ITW3qn0
----武器による特技、奥義について----
 格闘系キャラはほぼ制限なし。通常通り使用可能。ティトレイの樹砲閃などは、武器が必要になので使用不能。
 その他の武器を用いて戦う前衛キャラには制限がかかる。

 虎牙破斬や秋沙雨など、闘気を放射しないタイプの技は使用不能。
 魔神剣や獅子戦吼など、闘気を放射するタイプの技は不慣れなため十分な威力は出ないが使用可能。
 (ただし格闘系キャラの使う魔神拳、獅子戦吼などはこの枠から外れ、通常通り使用可能)
 チェスターの屠龍のような、純粋な闘気を射出している(ように見える)技は、威力不十分ながら使用可能。
 P仕様の閃空裂破など、両者の複合型の技の場合、闘気の部分によるダメージのみ有効。
 またチェスターの弓術やモーゼスの爪術のような、闘気をまとわせた物体で射撃を行うタイプの技も使用不能。

 武器は、ロワ会場にあるありあわせの物での代用は可能。
 木の枝を剣として扱えば技は通常通り発動でき、尖った石ころをダーツ(投げ矢)に見立て、投げて弓術を使うことも出来る。
 しかし、ありあわせの代用品の耐久性は低く、本来の技の威力は当然出せない。

----晶術、爪術、フォルスなど魔法について----
 攻撃系魔法は普通に使える、威力も作中程度。ただし当然、TPを消費。
 回復系魔法は作中の1/10程度の効力しかないが、使えるし効果も有る。治癒功なども同じ。
 魔法は丸腰でも発動は可能だが威力はかなり落ちる。治癒功などに関しては制限を受けない格闘系なので問題なく使える。
 (魔力を持つ)武器があった方が威力は上がる。
 当然、上質な武器、得意武器ならば効果、威力もアップ。

----時間停止魔法について----
 ミントのタイムストップ、ミトスのイノセント・ゼロなどの時間停止魔法は通常通り有効。
 効果範囲は普通の全体攻撃魔法と同じく、魔法を用いたキャラの視界内とする。
 本来時間停止魔法に抵抗力を持つボスキャラにも、このロワ中では効果がある。

----TPの自然回復----
 ロワ会場内では、競技の円滑化のために、休息によってTPがかなりの速度で回復する。
 回復スピードは、1時間の休息につき最大TPの10%程度を目安として描写すること。
 なおここでいう休息とは、一カ所でじっと座っていたり横になっていたりする事を指す。
 睡眠を取れば、回復スピードはさらに2倍になる。

----その他----
*秘奥義はよっぽどのピンチのときのみ一度だけ使用可能。使用後はTP大幅消費、加えて疲労が伴う。
 ただし、基本的に作中の条件も満たす必要がある(ロイドはマテリアルブレードを装備していないと使用出来ない等)。

*作中の進め方によって使える魔法、技が異なるキャラ(E、Sキャラ)は、
 初登場時(最初に魔法を使うとき)に断定させておくこと。
 断定させた後は、それ以外の魔法、技は使えない。

*またTOLキャラのクライマックスモードも一人一回の秘奥義扱いとする。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/14(水) 16:15:02 ID:04ITW3qn0
【参加者一覧】 ※アナザールート版
TOP(ファンタジア)  :1/10名→○クレス・アルベイン/●ミント・アドネード/●チェスター・バークライト/●アーチェ・クライン/●藤林すず
                  ●デミテル/●ダオス/●エドワード・D・モリスン/●ジェストーナ/●アミィ・バークライト
TOD(デスティニー)  :1/8名→●スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/●リオン・マグナス/●マリー・エージェント/●マイティ・コングマン/●ジョニー・シデン
                  ●マリアン・フュステル/○グリッド
TOD2(デスティニー2) :1/6名→○カイル・デュナミス/●リアラ/●ロニ・デュナミス/●ジューダス/●ハロルド・ベルセリオス/●バルバトス・ゲーティア
TOE(エターニア)    :2/6名→●リッド・ハーシェル/●ファラ・エルステッド/○キール・ツァイベル/○メルディ/●ヒアデス/●カトリーヌ
TOS(シンフォニア) :2/11名→●ロイド・アーヴィング/○コレット・ブルーネル/●ジーニアス・セイジ/●クラトス・アウリオン/●藤林しいな/●ゼロス・ワイルダー
             ●ユアン/●マグニス/○ミトス/●マーテル/●パルマコスタの首コキャ男性
TOR(リバース)    :2/5名→○ヴェイグ・リュングベル/○ティトレイ・クロウ/●サレ/●トーマ/●ポプラおばさん
TOL(レジェンディア)  :0/8名→●セネル・クーリッジ/●シャーリィ・フェンネス/●モーゼス・シャンドル/●ジェイ/●ミミー
                  ●マウリッツ/●ソロン/●カッシェル
TOF(ファンダム)   :0/1名→●プリムラ・ロッソ

●=死亡 ○=生存 合計9/55

禁止エリア

現在までのもの
B4 E7 G1 H6 F8 B7 G5 B2 A3 E4 D1 C8 F5 D4 C5

18:00…B3


【地図】
〔PC〕http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/858.jpg
〔携帯〕http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/11769.jpg
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/14(水) 16:15:51 ID:04ITW3qn0
【書き手の心得】

1、コテは厳禁。
(自作自演で複数人が参加しているように見せるのも、リレーを続ける上では有効なテク)
2、話が破綻しそうになったら即座に修正。
(無茶な展開でバトンを渡されても、焦らず早め早めの辻褄合わせで収拾を図ろう)
3、自分を通しすぎない。
(考えていた伏線、展開がオジャンにされても、それにあまり拘りすぎないこと)
4、リレー小説は度量と寛容。
(例え文章がアレで、内容がアレだとしても簡単にスルーや批判的な発言をしない。注文が多いスレは間違いなく寂れます)
5、流れを無視しない。
(過去レスに一通り目を通すのは、最低限のマナーです)


〔基本〕バトロワSSリレーのガイドライン
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/14(水) 16:16:35 ID:04ITW3qn0
━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活はどんな形でも認めません。
※新参加キャラクターの追加は一切認めません。
※書き込みされる方はスレ内を検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。(CTRL+F、Macならコマンド+F)
※参加者の死亡があればレス末に必ず【○○死亡】【残り○○人】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※具体的な時間表記は書く必要はありません。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。

※基本的なロワスレ用語集
 マーダー:ゲームに乗って『積極的』に殺人を犯す人物。
 ステルスマーダー:ゲームに乗ってない振りをして仲間になり、隙を突く謀略系マーダー。
 扇動マーダー:自らは手を下さず他者の間に不協和音を振りまく。ステルスマーダーの派生系。
 ジョーカー:ゲームの円滑的進行のために主催者側が用意、もしくは参加者の中からスカウトしたマーダー。
 リピーター:前回のロワに参加していたという設定の人。
 配給品:ゲーム開始時に主催者側から参加者に配られる基本的な配給品。地図や食料など。
 支給品:強力な武器から使えない物までその差は大きい。   
      またデフォルトで武器を持っているキャラはまず没収される。
 放送:主催者側から毎日定時に行われるアナウンス。  
     その間に死んだ参加者や禁止エリアの発表など、ゲーム中に参加者が得られる唯一の情報源。
 禁止エリア:立ち入ると首輪が爆発する主催者側が定めた区域。     
         生存者の減少、時間の経過と共に拡大していくケースが多い。
 主催者:文字通りゲームの主催者。二次ロワの場合、強力な力を持つ場合が多い。
 首輪:首輪ではない場合もある。これがあるから皆逆らえない
 恋愛:死亡フラグ。
 見せしめ:お約束。最初のルール説明の時に主催者に反抗して殺される人。
 拡声器:お約束。主に脱出の為に仲間を募るのに使われるが、大抵はマーダーを呼び寄せて失敗する。
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/14(水) 16:37:50 ID:BYSBkjyc0
>>1
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/14(水) 16:56:01 ID:GEdfg8s8O
翔星乙!

これが最終スレ、ではないだろうけどいよいよクライマックスだな。
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/15(木) 21:13:07 ID:mPksuN3pO
男なら>>1乙だろうがあぁぁぁぁッ!!
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/15(木) 22:21:09 ID:qsCOIyOLO
>>1乙 さてセンター後に投下が来てるのを期待。。。
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/15(木) 22:35:58 ID:TIOuJ1R5O
おれだって……>>1乙したいっ!!


アナザーも残り9人か、このまま主催者戦に持ち込めたらいいが…
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 12:25:35 ID:TDUJATkJ0
ここは主催戦よりも主催戦に持ち込むまでのプロセスが厄介だからなあ
下手するとミクトランとの直接戦闘よりも死人でかねん
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 14:00:49 ID:PAap65ui0
それは一対一の時点で危なかった言ってたミクたんだからな
相手片腕隻眼の大剣使いなのに
15名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 14:58:57 ID:SdP1EYzaO
斬られ続けるかぎり何もできないことに定評のあるミクトランだからな。
遠距離からのトラップで仕留めにくるのもわからんではない。
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 15:07:35 ID:PuULAiZtO
もし今の生存者のなかで一対一でミクと戦うとしたら誰が勝てるかな?
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 19:45:47 ID:26T2zoUAO
安定して勝てそうなのはRキャラか。本編と違って余力がある
次点がクレスとコレットあたり。クレスはまだどうなるか不明、コレットは直接戦闘に難がある
厳しいのはキール、カイルだろう。ダメージがきつい。グリッドもここか。

ダメージを基準に考えてみた。反論は受け付ける
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:35:08 ID:8FinLml70
>>1乙。ヴェイグが秘奥技を使えたのが大きかったな。まず一人じゃミクミクにされるだろうな。
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:32:58 ID:+r23uXQr0
秘奥義で一気に勝負決める以外に、満身創痍&首輪解除の代償にダメージ食らったヴェイグに活路は無かったからな……
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 06:28:23 ID:ob22C5vrO
一撃必殺を謀るから失敗するんだよなやっぱり。
そりゃ火力だけじゃ勝てんさ。ミクトラン舐めんなっこんさ。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 08:40:15 ID:dGVyBtOQO
むしろどうにかするべきは、首輪や催眠術を初めとするミクトランの数々のチートではないかと小一時間(ry

そもそもロワの主催者なんて、参加者に対してはいくらでもチートができる立場にいるんだから、
そりゃ正面突破じゃかなうはずもないだろ。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 10:03:18 ID:bFEgrj640
じゃあ正面突破以外に手段があったかと、という点に関しては大いに吟味する価値があると思うがな。
ロイドの最適解の時も思ったが、その選択を選ぶにあたっての周囲の条件とか履歴、制限とか、そういうのは考えるべきかと。
選択を間違ったか、間違った選択としても選ぶしかなかったか、じゃ意味が変わってくる。

あの時のヴェイグは取りうる最善は尽くしたと信じたい。じゃなきゃ最後が救われなさすぎる。
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 23:38:02 ID:uiuktDub0
とりあえず一番の鍵はおそらくハロルドだろうな。あいつなら制限解除もしかねん。
制限解除できたら時空剣で脱出できるかもしれんし、回復術の効果も戻る。
これぐらいの布石はミクを倒すには多分必要だろうな。黒幕もいるかもしれんし。
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 00:12:38 ID:rQTf38mk0
問題はその鍵の発動条件が不明ってことだな。本編で動かなかった奴を動かす何かがいる
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 10:32:36 ID:kFVNSsHnO
そこでハロルドが究極神ヨシヅミを召喚するわけですね分かりま(ry
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 12:22:45 ID:xbJp2XRoO
ハロルドって敵側なんじゃないのか?
アナザー冒頭で自分がジョーカーみたいなこといってたし。純粋に対主催ならロイドが死ぬ前に手を打つと思う。
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 14:35:43 ID:plHnooVJO
黒幕に乗っとられてるみたいだからな、黒幕も描写が一回しかないから目的がよく分からないが
ハロルドも本編最終話じゃベルセリオス持ってなかったけど何をしたのか分かってないし
どっちも今出てる情報じゃ敵か味方か判別し辛いな
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 02:10:11 ID:4xhn5Uzo0
第三勢力って線もあるな。黒幕は主催側、ハロルドは参加者側……挟み撃ちの形になる(何が
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 19:23:00 ID:FAWowcNFO
此処でまさかのクレア黒幕説を唱えてみる
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:05:03 ID:InTID+cI0
ベルセリオス装備型クレアか。強そうだ……動機は完成したフォルトゥナにPCキャラ入りを願うとか?w
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 01:35:46 ID:RaeAUgXg0
ベルセリオス装備マリアンを思い出した
結局術しか使わずリオンに刺されて終わってたけど
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 04:03:03 ID:1AinZSHc0
>>31
啄木鳥漫画か
あのマリアンってマリアン時は剣持てなかったけど、ベルセリオス時は片手で持ってるんだよな
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 10:46:33 ID:Iq0ATtApO
両手とはいえフィリアがクレメンテ持てたことを見るに、乗っ取りだろうがマスターになれば重量はあんま意味なくなるんじゃないかね。
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 10:49:37 ID:1WaW+RfXO
クレメンテって見た目と違って軽いんじゃなかったっけ?発泡スチロールとまではいかなくてもスカスカなのを想像した
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 12:38:02 ID:s5AGRUGtO
クレメンテ「常時自分に威力を絞ったトラクタービームかけてますが何か?」
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:03:21 ID:RaeAUgXg0
オリジナルマスター用に調整してるんだったな
持った瞬間に自分の身体の一部と思うほど馴染むらしい
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 16:28:57 ID:J2lXhyvI0
ゾンビ化したとはいえ、ハロルドとベルセリオスの組み合わせは強力そうだな。
どっちに付くかでパワーバランスが容易に傾く。
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/27(火) 10:31:18 ID:QO7BU+rUO
会いに行くまでが大変そうだけどな
ダイクロフトに行く方法もはっきりしてないし
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 21:02:46 ID:1don2UlIO
暇だったので各キャラの遭遇者人数を数えてみた
全員はキツいので第六開始時点の生存者のみで本編最終話までをカウント
クレス:25人
ミント:21人
グリッド:25人
キール:20人
メルディ:21人
カイル:21人
ロイド:21人
コレット:22人
ミトス:24人
ヴェイグ:27人
ティトレイ:24人

死体は含めてない、同じ話に出たキャラを遭遇者と見なしてるので

多分誤差があるけど大体こんな感じ
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:20:55 ID:Z0ZbpYS3O
クレスはその中の何人を自分の手で殺したんだろ…

1/3ぐらいか…?
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 02:36:07 ID:OKnX3a5uO
>>40
過去スレより
5人
リオン(ロニ、ポプラ、ゼロス、ソロン、プリムラ)
4人  
バルバトス(しいな、クラトス、サレ、マリー) ※自殺含めれば5人
シャーリィ(ハロルド、カッシェル、ユアン、トーマ)
3人  
ヴェイグ(ルーティ、ジェイ、ティトレイ) ※ミトスも入れれば4人
デミテル(すず、セネル、マウリッツ)
マグニス(首コキャ、ジーニアス、マリー)
クレス(コングマン、マーテル、スタン) ※幻影に殺されたと考えれば4人?
グリッド(キール、メルディ、ロイド)

2人以下は省略
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 03:08:07 ID:gQz6fjqMO
まとめサイトを何日かかけて見てるんですが…Gに食べられる死体の話って何話辺りにあるんでしょうか?
よろしければどなたか教えて下さい…
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 03:16:47 ID:rO2EHObI0
リオンも遠回しな自殺じゃないか?
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 08:14:16 ID:eS9Y5Def0
>>40
否、その計算は間違っている。
25人中3人ならば8.33人中一人。アナザーの場合ロイドを殺して6.16人中一人だ。

ってクンツァイとがいってた。ちなみにミントをクレスの殺害人数に含めるときりよく5人中一人になる。
あ、でもアナザーだと出あった人数に変動がでるか?
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 15:40:09 ID:RGkmeGZM0
>>42
マリーのかな?それなら240話の「倒錯共生」だな
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 20:35:24 ID:EVxtIbfe0
しかしあの話はグロさを置いても重要なところではある。
ゴキブリがいた、参加者支給品以外の動物が確認されてるのってこの話だけじゃないか?
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 22:32:50 ID:gQz6fjqMO
>>45
どうもありがとうございます!
読めました。

個人的にはGより蛆が…
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 22:45:20 ID:Whb8VN0+0
そういやどっから来たんだろうなあれww
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/02(月) 20:11:46 ID:zhhP1Brw0
ミクトランの嫌がらせだろうな、多分。しかもマリー個人を狙った。
一日でああなるなら埋葬されてない死体のいくつかは他もああなってるはずだし。
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/05(木) 22:55:38 ID:mlSc9lnwO
昼間の砂漠に放置してあったから腐るのが早かったとか
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/05(木) 23:44:03 ID:P9f5wofS0
専門的なこと分からんから砂漠に置いたら腐るより乾くんじゃないかと思ってしまう
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/06(金) 13:42:02 ID:3jTbuXfeO
クレスが薬物で見た幻覚ってのはないか?
デミテルも見てるから蛆もGも事実だけど、幻覚で増幅されてたって線。
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/06(金) 15:20:50 ID:4+l0+L6hO
>>52
そうかもしれないッス
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/06(金) 19:33:11 ID:5IFOwb+D0
>>53
正気に戻ったからって調子乗るなよ時空剣士
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/06(金) 19:39:21 ID:15wR7u9uO
まて、今のはダジャレか?
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/06(金) 20:16:32 ID:5IFOwb+D0
    ∧,,∧  ∧,,∧
 ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U (  ´・) (・`  ) と ノ
 u-u (l    ) (   ノu-u
     `u-u'. `u-u'
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/07(土) 13:20:47 ID:7WinIRpS0
   。・ * *・
  *・ ゚・* 。 。 * ゚
* ・ ゚・ * 。 *・ ゚ ・ *
・ * 。∧∧ ∧∧ * ・
゚∧∧・ω・)(・ω・∧∧
(・ω・∧∧)( ∧∧・ω・) 採用
(つ (・ω・)(・ω・) と)
uu(l  )(  ノuu
   uu uu
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 00:18:30 ID:BX7eI/1y0
投下します。
のんびり投下しますので支援はたぶん大丈夫です。
もしたまたま見合わせてお時間がある方は、支援していただけると嬉しいです。
59The Moving named 'Battle-Royal' 1:2009/02/08(日) 00:20:15 ID:BX7eI/1y0
「あと、これはどっちでも好いんだが……ここに来る前の、ロイドのことを教えてくれないか。
 僕は、ここに来てからのあいつしか知らなかったんだ。ロイド以外の人間から見た、こうなる前にいたロイドのことを」

そう言った彼の言葉は、コレットにとってとても酷いものだった。
彼――キールは目の前に、過去を聞きたいその少年の亡骸があることを知っていてその言葉を紡いだのだろうか。
胸から喉、そして頭部が大きく切り裂かれた、なんて程度のレベルではない惨状のそれ。
夕日が浮かび、建物は陰影でひっそりと暗くなり、くっきりとした赤と黒のコントラストが2人の視界を支配する。
風の冷たさなど少しも感じさせないほどの、その光景自体の無慈悲な冷徹さ。
それを前に見据えながら、2人は地に立つ。
人は遺体を目にしたとき、その人に別れを告げなければいけないのだから。




1度おぶったキールを降ろし、コレットはもう息もしていないロイドに近付いた。
天使化した時点で心臓も呼吸も止まっているが、それでもロイドはみんな止まってしまった。
直視するに堪えない状況なのを座り込んで見るも、痛みが消えていたからなのか、切り口から覗ける少年の表情はどこか穏やかだ。
動かないロイドの手をそっと握り、改めて大切な人の感触を噛みしめる。
その間に地面に座り込んだキールがセレスティアのケイジを取り出し、独り言を呟くような語調の軽さで詠唱する。
彼女のすぐ傍で発生したロックブレイクは甚だ空気が読めていなかったが、しかしきっと必要な行為なのだ。
柔らかくなった大地はそれなりの大きさの穴を作り出した。人が1人入られるくらいだろう。
物音に気付いてその穴を見ていたコレットは、後ろにいるキールの方へと振り返る。
相変わらずのふてぶてしさが見え隠れする表情だが、それでもコレットは彼に感謝した。
少なくとも自分だけではロイドを弔うことなどできなかった。ロイドをこのままにしておくなど惨すぎる。
それに、こうして埋葬のための墓穴を作り出してくれたこと自体が、彼にとってのロイドへの一種の思いなのだろう。
彼女は握っていたロイドの手を離そうとしたが、そのままぴたりと動かなくなってしまった。
後方のキールが怪訝そうな目で彼女を見つめる。
しばらく沈黙が続いたため、彼は時間と焦りに耐えかねて声をかけた。
「おい、僕たちには時間の猶予がないんだ。埋葬しないなら行くぞ」
とは言うものの、コレットの力を借りなければろくに移動もできないキールだったが、
コレットは後ろに首を動かし、可愛らしい笑みを浮かべて「ごめんなさい」と謝った。
そしてロイドの方へと向き直る直前、目元に手を当てて何かをかき消したのを彼は見た。
コレットは何回も何回も湧き出るそれを、頑張って抑えようとした。
けれども溢れてしまうそれを手で押さえて、彼女はもう1度だけ大切なロイドの手を握った。
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 00:20:48 ID:G2lYvcWu0
 
61The Moving named 'Battle-Royal' 2:2009/02/08(日) 00:21:41 ID:BX7eI/1y0
せめてもの形見にと、コレットは彼のポケットから細工に使っていた愛用の工具と、時空剣士の証たるエターナルリングを取り出す。
彼女の胸に飾られた要の紋も、きっとこの細工道具で作っていたのだろう。
そう思うとこれがとても大切なものに思えた。
エターナルリングも、彼女との世界再生の旅の果てに手にした、彼との過程の結実。
共に眠らせてあげてもよかったものだが、少しでも彼のものを近くに置いていきたいと思うのは、自分の心の弱さゆえか。
今でも自分を庇ってくれたロイドに「ありがとう」と言えない。どうしても「ごめんね」という言葉しか出てこない。
自分がもっと身体も心も強ければ、という思いが拭い切れないでいる。
だが、いつかは言える。そして笑ってみせよう。
そのために今は決別が必要なのだ。死んでしまったロイドと――――過去の弱い自分と。

2つの形見をしまい込み、コレットはロイドの屍を抱え上げる。
頭がだらりと垂れ下がったお姫様抱っこの状況に、本当なら立場が逆なのにな、と思った。
そのまま歩を踏み出して進み、口を開けている穴にロイドの身体を安置する。
少しだけその姿を見つめ、彼女はキールの方へと向く。
彼女の様子を遠目でみるように眺めていた彼は、「いいのか?」と少し遠慮がちに尋ねた。
両手ですくうように持っている二つの遺品を彼は一瞥したが、どうにも興味なさそうに目を逸らす。
クレスを見逃したから指輪には興味がないだろうことはコレットにもなんとなく分かっていた。
だけど、彼は首輪を外すことができるかもしれない鍵さえも関心を示さなかった。
キールが怪訝そうに、どちらかというなら不安そうにコレットを見据える。
コレットは頷いた。これ以上の躊躇する間を挟まぬように。
その反応を受けて、キールは今1度ケイジを取り出して地系晶霊術を唱えた。
この人は良く分からないし、少し怖いけど、それだけじゃないと彼女には思えた。

彼の顔が土くれに埋まっていく。
飽きるほどに見慣れた赤い服が見えなくなっていく。
別れの時が刻一刻と近付き、寂しさと悲しみと強さだけが降り積もっていく。
工具と指輪をぎゅっと握り締めた両手を胸元へと当て、コレットは「だいじょぶだよ」と呟いた。


そうして、ロイドは姿を網膜に残し、目の前から消えた。
62The Moving named 'Battle-Royal' 3:2009/02/08(日) 00:23:05 ID:BX7eI/1y0





女子に背負われるという情けなくもある意味では男子の本懐を果たしているキールは、
中央広場に向かうまでの間じっとコレットの話を聞いていた。
彼女がこの島に来てから辿った道筋、出会った人々、遭遇した出来事。
少なくとも、彼女の話は彼の情報を補完する上ではかなりの重要度を占めていた。
正気であった頃のクレスに、第1次放送をまたいで戦ったティトレイ。襲いかかってきたマグニスやバルバトス。
何よりもあのE2の城の崩壊を招いたのは、間接的ではあるが彼女だったのだ。
そこで出会ったリアラに、既に死者となっていたクラトス。リアラから聞いた島での経緯と元の世界の情報。
城跡に集まってきたスタンやカイル、ミトス。
情報に齟齬はない。図面に欠けていたピースが少しだけ嵌まる。
可能であるのならまた1人話を聞き出したい奴ができてしまった。
その力自体の情報は、全容は把握できずともヴェイグから聞いている。
何故力を暴走させたのか、何よりも“放送の前に力を暴走させるほど精神不安定に追い込んだものは何なのか”。


とはいえ、前記の問いは意外とすんなり答えることができる。
「状況から考えて、真っ先に疑うのはサレだな」
ふぇ、とコレットは頓狂な声を上げた。予想外の人物が捜査線上に挙がったからだった。
現に、彼女は知らないがキールは直前までサレのことを情報上での「対主催」として扱っていた。
「暴走するティトレイのそばには負傷した誰かがいたんだろう?
 後のお前の話やティトレイ本人が言っていたことから検定するに、恐らく藤林しいなだろうが。
 ティトレイの言葉も気になるが、これも後々のことを考えれば推測はできる。
 それに奴は殺したではなく『見殺しにした』と言っていたし。
 となると、その事件の場により近くにいたのはサレということになる」
「でも、サレさんはいい人です。
 私を庇ってくれたし、怪我をした私のために治療道具や治癒術を使える人を探しに行ってくれた。
 だから城跡にはリアラやクラトスさんがいたし、サレさんもいたんだよ」
「そうか? 僕はヴェイグから、サレは元の世界では敵だったと聞いていたが。それも人の不幸を楽しむタイプの。
 ティトレイと藤林しいなを襲った何かは二人のうち“あえて藤林しいなを選んだ”。いかにも戦えそうなティトレイを後に回して。
 もし2人を全く知らない犯人であれば、なぜ先に女を狙ったのか。ティトレイをその後狙わなかったのか。
 この“何か”はティトレイが暴走することを知っていたのではないか。
 これを踏まえれば、あのティトレイの事件さえ、サレがお前たちを陥れるために仕組んだことと思えないか?
 リアラとクラトスが城跡の事件に巻き込まれたのは奴の罠とは思えないか? 
 もっとも、仕組んで何をしたかったのかは分からないし、そいつも死んでるけどな」
口をつぐんでしまうコレットだったが、それでも否定的な剣幕は顔に表れていた。
背負われ後ろから見ることはできなくとも、無口であることでそれを感じ取ったキールは一言、
「おめでたい奴め」
とだけ呟いた。
今度こそぶん投げられるなり殺されるなりされるだろうと思っていたが、黙々と目的地に向かって歩く彼女に、
彼は満足げににやついた。
63The Moving named 'Battle-Royal' 4:2009/02/08(日) 00:24:50 ID:BX7eI/1y0
しばらく沈黙が続いていたが、コレットは空気を変えようとしたのかロイドのことを喋り始めた。
初めはぶすっとしたまま可愛げもなく話していたが、段々と声の調子が楽しそうなものになっていくのが、
手に取るまでもなく彼も分かることができた。
それでね、それでねと今日あった面白い出来事を語るかのように、コレットの語りは喜々としていて、鮮度があった。
キールはへえ、ふうんと相槌を打つだけで、ただコレットの言葉を耳に入れていた。
そうして彼は理解する。
コレットがロイドのことを話し出したのは空気を変えるためではなく、自身のいきり立つ心を抑えるためだったのだ。
クルシスなる敵――厳密には反旗を翻そうとしていた奴みたいだけど――にさらわれ、
ロイドが助けに来てくれたことを話すときなど、どこか言葉尻が湿ってさえいた。
ロイドのことを考えると自然と嬉しい気持ちになる。心が溢れてくる。
コレットにとってあいつはそんな存在なのだ。本当に頭のおめでたい奴め、とキールは心中で罵る。

――――人のこと言えた義理じゃないよなァ。

彼だって、メルディのことを考えただけでいざとなればクレスを殺せるほどだ。
メルディのエールは万病の霊薬・エリクシールの効力さえ上回る。ついでに言えば最高の媚薬である。

コレットにとってロイドがそうであったように、旅を共にした他の仲間にとってもそうであったらしい。
何がしかの傷や痛みを抱える仲間たちを、ロイドの前向きさが少しずつ変えていった。
ロイドはどうやら自分の意識していないところで全能だったようだ。
他人のベクトルを変える力を持っていたし、故に自分のベクトルを曲げる必要がなかった。
自分が望むようにやっていれば人を、そしてそのうち世界を変えられる。
正に世界に愛された奇跡の申し子。世界の中心に据えられた、真の温室育ち。
それも当然か。時空剣士はその力で歴史や世界そのものさえねじ曲げられるのだから、それくらい傲慢でなければ力を担う重圧と釣り合わない。
巻き込まれる側のことをまるで考えていない。
そんなロイドが、この村に来て真っ先に死んだ。
世界を変えるどころか、自分の大切なもの1つだけ守り抜いて死にやがった。
ロイドにも変えられないほどこの世界が牢固だったから、という訳ではない。
自分から全能を捨てて、ベクトルを“変えられる側”になったのだ。
例え全能であろうと神とかそういうものではなく、ただの人間だったから。
だから1つしか救えなかった。1つしか救わなかった。
だが、その様がキールには普遍的でありながらとても特別なものに見えたのだった。

ロイドのことを聞きはしたが、それに対するキールの返答は特になかった。
ただ言葉を含み、舌の上で感触を確かめて嚥下する。
この島に来る前のロイドと来た後のロイドはことごとく同じであり、――――だからこそ最期の選択が異化されて浮き上がる。
少なくとも同じ人間である以上、彼はロイドには負けられない。
あの自信に満ちた笑顔を上回らねば、彼はあの脳内天晴れな奴より下になってしまうのだから。
そんなくせに、動かない下半身と女におぶられているという事実が情けない。
64The Moving named 'Battle-Royal' 5:2009/02/08(日) 00:27:05 ID:BX7eI/1y0
話をしている内に、目的地である中央広場へと辿り着いた。何とか広場だと分かる程度だった。
ジャッジメントの影響もあって憩いの場は見るも無残に崩れ去っており、瓦礫で溢れ返っていた。
周囲の民家も半壊なり全壊なりしており、とてもじゃないがゆっくり休める場所ではない。
おまけに辺りも暗くなってきたおかげで廃墟特有の不気味さが立ち込めている。
そんな中、「どうぞ座って下さい」と言わんばかりにぽつんと椅子が置いてあった。
横たわらず、暗い場所だがしっかりと安定した場所に置いてあることから、それがグリッドの設置していたものだとキールは考えた。
コレットも同じことを考えたのか、その椅子の方へと近寄っていく。
「30点だな」
キールを椅子に座らせたコレットはその呟きを確かに聞いた。
「普通、椅子と机はセットだろう? それを僕の言葉を正面から受け取って椅子だけ置いて行くなんてどこの馬鹿だ。
 これでマイナス50点。その気配りのなさでマイナス10点。ついでに椅子の立てつけが悪いのでマイナス10点」
キールはじろりとコレットを見た。そして何もない自分の前方を指で2回指し示す。
目は口ほどにものを言うというが、あまりに不遜かつ無遠慮な目つきに流石の彼女も応じるべきか迷った。
彼女も黙ってキールを見返していると、しばらくして彼が溜息をつき、
「僕は男も女も対等に扱ってるだけだぞ。メルディは特別だけど」
「対等なら、あなたも同じはずだよ」
「……すまないが、机になるものを持って来てくれないか」
と、折れた。彼女は笑ってとてとてと走りながら机を探しに行った。
その間に彼は足元に転がっている飛礫や小石を拾い上げる。
足が動かないので椅子に座ったまま上半身を曲げて拾っているが、正直運動不足の彼にはこれだけでも辛かった。身体が固い。
「ふみゅっ」と遠くから情けない声が聞こえたのでそちらを向くと、
今まさにコレットがバランスを崩して瓦礫に転ぼうとしているところだった。
そうしてどてんと地面に不時着すると、その衝撃で机が転がり出た。思わずキールも椅子から転げ落ちる。
「いたたた……あれ? 机があるよ?」
(何だあれ……数学的に考えて、ちょうどよく転んでちょうどよく机だけが出てくる確率……相当過ぎる)
不思議そうにコレットは現れた机を見ているが、それ以上にキールは信じられないような目でその光景を見ていた。
コレットの神に祝福された幸運はそうそう数値で計れるものではないのである。
結果オーライといった表情で机を持って帰ってきた彼女は、せっかく座らせたのに落ちている彼を見てびっくりした。
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 00:29:49 ID:i1KKL1B30
どこまでできるか分からないけど支援
66The Moving named 'Battle-Royal' 6:2009/02/08(日) 00:30:30 ID:BX7eI/1y0
仕方なくもう1度座らせると、彼はおもむろに机に石を置き始めた。
「何してるんですか?」
「別に。グリッドが戻ってくるまでの暇つぶしさ。することもないんだから何をするのも勝手だ」
何の法則もなく、様々な位置に小石が置かれていく様子をコレットは見つめる。キールもただ黙々と石を置いていく。
相当な数があるが、そのうちの幾つかは横に避けられている。
たまに石を動かし、何個かの石を取り除く。そして、机の上に砂を一定の箇所に振りかける。
そしてまた石を動かしては取り除き……その繰り返しだ。
声も発せず、コレットは黙ってじっとその様子を見つめている。
右手側にあった幾つかの石が、一気に左側へと移動する。左上のある箇所に、様々な場所から石が十何個も集まる。
そして再び、中央付近に振られる砂。
それが、コレットは“自分が指で地図を貫いた感触と似ている”ことに気付く。
「……あ、もしかして……」
「時間潰しには最高の棋譜だよ」

小石はキールが知る限りの参加者。除かれたものは脱落者であり、ひいてはキールが情報を持ち得ない者。
主に中央付近に走る砂は禁止エリア。彼が最後の砂を掴み落とすと、中央には見事な砂の断線が走っていた。

「何か、見落としていることはないかと思って振り返っていた」
「でも、もう手がかりとかは」
「ああ。洞窟半落、E2陥落、C3陥落、G5炎上、B2封鎖。どうしようもない。
 北東の城は話を聞く限り残ってそうだが、ここももう普通には行けない」
キールは指を右側に持っていこうと動かしたが、砂の線に阻まれて止まった。
彼は視線を机の中心――地図でいうD5の山へと向ける。
(行く必要があるとすればここだが、もう無理だな。
 封鎖線が完成し、エターナルソードを持たない以上はミクトランの囲いは完壁。
 クレスやミトスが協力してくれるなんてのは天文学的確率だし、もしそうなってもミクトランは確実に手を出してくる。
 僕たちの首輪はともかく、時空剣士は確実。出会いがしらに潰しに来ないとも限らない。
 リヴァヴィウサーだって頭が飛ばされちゃ何の意味もない。
 情勢はミクトラン側の圧倒的有利。負けは最早無いと言って差し支えない――――不自然すぎるほどに)
67The Moving named 'Battle-Royal' 7:2009/02/08(日) 00:32:25 ID:BX7eI/1y0
現在の情勢となった盤面を眺めながら、キールは考える。ミクトランは何故こんなにも完璧な封鎖ができたのか。
(ミクトランに負けの目が無さ過ぎる。僕たちの浮き足を掠め取っただけではとてもこうはならない。何かおかしくないか? )
今まで、“自分たちが西に集まったことを首輪から察知したから幸いと封鎖した”と考えていたが、これでは道理が立たない。
第4放送で完全に詰める前から、既に仕込みがあったからこそ可能なこの断線。
第3時点で東西のアクセスポイントはD5を通るかC4の橋を渡るか、南の橋しかない。
もし東西に人が別れたら、33%の確率で山を経由することになる。
第4放送時点での生存者は15人。その内5人が山に来れば、山の施設に気づく奴もいるだろう。
思いつきで気軽かつ突発的にできる断線ではない。
これは、状況を見て封鎖に踏み切ったというより“山までのプロセスを封鎖するから、参加者を西に集めた”と見るべきなのではないか?
しかも、速くて第2放送、遅くとも第3放送の時点で仕込みを始めている。
早々にD5を封鎖しては中央のルートが消滅し、東西のアクセスの利が減少する。
だからこそじわじわと、端から中央へ向かうようにと設定する。
東西分断に必要な禁止エリアは最低で8つ。放送2回分に相当するが、流石に2回分で中央封鎖に踏み込んでは露骨が過ぎる。
それこそ中央に何かあるのではないかという仮定を臭わせてしまう。
片方にあらかじめ人が集まるようにしておけば、山岳に設置されている装置が露見する可能性は下がる。

「あの、さっき右上の方に集まってた石って……」
「ん、ああ。B7……マーテルたちだな。ファラの放送に反応して村に向かったんだ」
「そっか、マーテルさん……ああ、やっぱり」
明らかに含みのある言い方に、キールは目尻を鋭くして彼女を無言で問い詰める。
思ってもいなかった反応に彼女はあたふたと手を振った。
「マーテルさんなら、あんな放送があったら迷わず向かっていただろうなって。だから、やっぱりそうだったんだと思って」
その言葉でキールの脳内がすっと冷え切った。

第2放送のしばらく後、ファラは決死の覚悟で島中に不戦を呼びかけた。
そして彼女の意志に賛同するかのようにC3の村には参加者の一部が集結した。
そこで組まれた円陣も、一時の団結も、あっという間に崩壊した結束も覚えている。
マーテルたちを含め、参加者が西に集まったのはファラの放送に呼び寄せられたから。当然のように分かる論理だ。
だから考えるのはそんな問題ではない。これは表面的なものであり、単に断片の1つでしかない。
既知の未知化。事象は分かれば分かるほど謎が現れ、新たな観点で見ていく必要がある。

ここまでの展開が――――1つの意図の下に組まれていたと“解釈”したら?
68The Moving named 'Battle-Royal' 8:2009/02/08(日) 00:35:09 ID:BX7eI/1y0
「コレット。お前はこのバトルロワイアルについてどう思う?」
「え?」
「じゃあ、最初に巻き込まれたとき、どんなことを考えた?」
「え、ええっと……やっぱり、ひどいことだと思いました。
 だからロイドたちと合流して、この戦いを終わらせる方法を考えようと思ったんです。
 ミクトランの中にもきっと良心っていう神様がいると思ったから。話し合えばきっと分かりあえる、って」
聞けば聞くほど楽天的にも程があると思ったが、それはこの際置いておく。
重要なのは、参加者――巻き込まれた者たちにとってまずバトルロワイアルというものをどう捉えるのか、ということである。
「なら、最初に会ったサレはどうだったと考える?」
「……サレさんは、ロイドたちを探すのを手伝ってくれるって言ってくれました。
 でも、しいなを襲ったのがサレさんだっていう、あなたの言葉を信じるなら……サレさんは、私やクレスさんを不幸に遭わせようとしていた」
コレットとサレは共に行動していた。だが、その根幹にあるバトルロワイアルの意味――ひいては勝利条件は全くの正反対だ。
別にこの2人だけに言えることではない。
コングマンやマグニスのように「バトルロイヤル」と捉えるなら、勝利条件は最後の一人まで生き残ることであり、
その手段は他者の殺害になる。
ロイドたちのように「主催者の凄惨な行為」と捉えるなら、勝利条件はミクトランの打倒であり、
その手段は首輪の解除およびこの箱庭からの脱出となる。
単純に生き残りたい奴、一度は死んだ身として願いを叶えたいやつ、単純に惨劇が見たい奴、
それぞれによって勝利条件とそこに至る手段は異なる。
バトルロワイアルは1つしかないのに、まるで万華鏡のように映される絵は増える。

「じゃあ次だ。主催者にとってバトルロワイアルとは何なのか?」
彼の問い掛けにコレットは黙り込んだ。よくよく思えば、ミクトランがロワを開いた理由など考えたこともなかったのである。
だが考えてみたところで圧倒的に情報が少ない。ましてや彼女にとって主催者は別世界の人間なのだ。
ヒントも何もなければ、背景に思い至ることもできない。
「……やっぱり、私たちが苦しんでいるのを見て喜んでいるんでしょうか」
「本当にそうか? 僕にはそうとは思えないが……僕なら、もっと苦しませる」
それはどうかといった面持ちでコレットはキールを見るが、彼にしてみれば至極最もな考え方だった。
69The Moving named 'Battle-Royal' 9:2009/02/08(日) 00:37:33 ID:BX7eI/1y0
能動的にバトルロワイアルを引き起こした人間の立ち位置は二つ。目的か、または手段か。
目的であると仮定した場合。即ち『バトルロワイアルを開催することが目的であった場合』。
その場合、勝利条件は既に開催された時点で――極論すればあのホールから全員が転移した時点で達成されている。
参加者が20%未満にまでなったら、もう爆笑してもいいはずだ。
きっと今頃もがく参加者を見ながら、大口を開けて笑っているのだろう。
しかし、キールは開催自体が目的ではないと踏んでいる。
「脱出のための手がかりがなさすぎる。純粋に絶望とか惨劇とか、そういうものを観賞するためにこのゲームがあるとするなら、
 餌代わりの希望を用意してもいいはずなんだ。例えば、首輪を解除する鍵が実は起爆装置だったとか。
 いや、餌は魅力的であればあるほど食いつきがいいのだから、本当に手がかりがあってもいい。
 なのに、何もない。考えられるとしたらエターナルソードくらいだ。
 放送だって重要なのは死亡者と禁止エリアくらいしか言わないし、遊びの要素が全くと言っていいほどない。
 ゲームっていうのは目の前に餌をぶら下げて、希望と絶望で揺らぐ波を与えなきゃモチベーションを維持できないものなんだ」

これは学習における指導要綱に似ている。
例えば、足し算のできるロイ……学生Lに因数分解を教えるとしよう。
まず足し算をするLに九九を解けと言えば、解けるかどうかは別にしても解く意思は持つだろう。
それが解ければ次は代数計算を経て、そして因数分解へと理解を進めさせるのだ。
一本一本間にチェックポイントを用意することで、バカを一歩一歩導いていく。
だが、Lにいきなり因数分解を解かせようとしたところでそもそも問題を見る気にさえなるかどうか分からない。
地図もコンパスもなしに大海原に放り出されれば、途方にくれるよりないように。

アクセントとしてのヒントくらいはあってもいいものを、この島にはそれがない。
ヒントを設置できるだろう施設も脆い。壊れていいということは、守るほど重要なものがそこにないということだ。
壊れることを予想していたかどうかは別にしても、壊れてもさして問題がなかったということになる。
山の施設だって、実際そんなヒントがあってもいいだろうという仮定から導き出された程度の推論。
本当にあるという物証はないし、開催理由が目的ではないなら、むしろないとも考えられる。
このバトルロワイアルは徹頭徹尾、問題を解かせない=参加者を脱出させまいというベクトルに満ち溢れている。
つまり、ゲーム自体のプロデュースは二の次だ。ミクトランにとってバトルロワイアルは「手段」である。
「それに、バトルロワイアル自体が目的なら参加者はもっと多いだろう、普通」
「じゃあ、ミクトランにとってこれは……何か理由があるの?」
けれどもコレットの言葉に彼は曖昧に呻き、小さく頷くだけだった。
70The Moving named 'Battle-Royal' 10:2009/02/08(日) 00:39:53 ID:BX7eI/1y0
バトルロワイアルが手段であると仮定した場合、ではミクトランにとっての意味――勝利条件は何なのか?

もう達成されている場合。
今なおバトルロワイアルを運営している意味はない。さっさと首輪を爆発させればいい。

優勝者を出す場合。
しかし参加者の半数以上が初期の時点では対主催であろう人間―――ロイドやジェイ達が言う所のミクトランに抗うであろう仲間達―――である。
優勝者を出したいだけなら、前述の通り安全を期して参加者のほとんどをバルバトスのような奴にしてしまえばいい。
死人さえ呼べる力を持つミクトランが、わざわざ理想主義・平和主義の人間ばかり集めるのは利に合わない。
蟲毒系の儀式によって何か力を得るのが目的だとしても、ここまで参加者に統一性がないと次の段階に行けないだろう。
何より、ここまでのことができる人間が55人程度の規模の儀式で必要なものを得られるのか? 甚だ疑問が残る。

仮に、脱出させる場合。
これは論外である。ミクトランが中央封鎖線を張ったおかげで詰んでいるのだから。
脱出させることが目的でバトルロワイアルを開いたならミクトランは自滅している。主催側がこんなミステイクを犯す理由はない。

全滅させたい場合。
これも否。結果だけが欲しいなら、それこそ最初のホールで崩落させるなり毒ガスを出すなりして虐殺すればいい。
わざわざバトルロワイアルなどという面倒な手段を取る必要がないのだ。

バトルロワイアルは囮で、その過程で得られる何かがある場合。
あるいは、複数個の目的を同時に達成しようとしている場合。例えば趣味と実益を兼ねるなどのケース。
ほかに比べればマシではあるが、それでもバトルロワイアルを囮にする理由は薄い。
少なくとも、もっと不確定要素のない手段はあるはずだ。それこそ先述の全滅目的のような。
複数個の目的がある場合も同様だ。力の入れ所が分散し、そこに隙が生まれてしまう。
つまるところ、どの目的もしっくり来ないのはこの不確定さに尽きる。

「バトルロワイアルは不確定要素が大きすぎて、1つの目的を得るための手段としてはてんで向いていない。
 無理して1つの結果に誘導するくらいなら、その結果に近い位置から始めた方がましだ。
 だけど、そこまでするならバトルロワイアルである必要もないというジレンマがある」

何故バトルロワイアルなのか。
ミクトランほどの知能や技術に長けた人物なら、わざわざこんな手間を取る必要はないという考えにすぐ至るはず。
ならば、手段としての性能が低いバトルロワイアルでなければいけない理由<勝利条件>とは何なのか。
71The Moving named 'Battle-Royal' 11:2009/02/08(日) 00:42:05 ID:BX7eI/1y0
先刻のリオンの考察で、ミクトランが常に自由に干渉できることは首輪を爆破させる“のみ”という直接的手段しかなく、
かつこのゲームは有限回であり、主催もまたその全てを操れるわけではないと証明した。
ミクトランは間接的にしか手を出せず、行動範囲は限られている。ミクトランもまた何らかのルールに縛られる駒の1つである、と。
そして、メルディがなぜネレイドの手に落ちああなったのかということを考え、この論理を広げると、
ミクトランはこのバトルロワイアルにおいて6つのルールを持っているということになる。

“ミクトラン――王は首輪によって駒の有無=参加者の生死に影響を与えられる”
“王は禁止エリアの指定権利によって、駒の移動に影響を与えられる”
“王は放送の内容によって、参加者の行動に影響を与えられる”

ここまでは確定している事実。云わば主催者として堂々と行使できる「表ルール」とでも言うべきものである。
そして、今キールが疑惑を強めているプレイヤーとして使役できる「裏ルール」が残りの3つ。

“王は、駒の初期配置をある程度任意に選ぶことができるかもしれない”
“王は、アイテムの初期配置をある程度任意に選ぶことができるかもしれない”

これはファラの放送によって参加者がこの村に集まったことや、メルディにリヴァヴィウス鉱が支給されていることなどから考えられる。
ただし仮定の域は出ていない。説明できる事象がまだ少ない。
そして、この2つでも説明できない、通常なら考えにくい要素――キールが推測する未だ判明しない直接手。

“王は、まだ何か駒に影響を与えられる攻撃手を持っているかもしれない”

これこそ仮定中の仮定だ。手法も分からないし、実証など何もできない。
だが、わざわざマリアンを爆死させるという下策を経てなおジョーカーとして動くリオンの行動を考えれば、
可能性は低くとも否定することまでは不可能。ミクトランがリオンに手出ししたことも有り得る。

ミクトランをこの惨劇を俯瞰・観戦する主催者としてではなく、積極的に自分の権利を行使する存在と仮定し、
今のこの主催の敗北がありえない状況が、ミクトランの勝利条件を満たす為の駒の動かし方の結果だとすれば。
これを仮定し状況を並べなおせば、そこからミクトランの勝利条件を逆算できるのではないか。
そう考えた上で、キールは嘆息した。
(だけど、時間もないし情報も足りていない。不確定要素も多すぎる。
 バトルロワイアルである理由があるはずなのに、やはりどうしても実行するには不安要素が強すぎる。
 グリッドたちが戻ってきたとき、更に情報が入ればいいんだが)
72The Moving named 'Battle-Royal' 12:2009/02/08(日) 00:44:53 ID:BX7eI/1y0
この島はチェスボードだ。自分たちも、ミクトランさえも駒の1つであり、2つの勢力に分かれて戦っている。
それはマーダー対脱出派といった易しい構図ではない。敵――主催者ミクトラン側と、バトルロワイアルに抗う者たち。
2人の王の下、この孤島というボードの上で戦いは繰り広げられている。
とりあえず、もう1人の王はグリッドにでもしておこうとキールは決めた。
気は乗らないが、奴が死ねば団結は脆いものにも消え去っていくものにもなるだろう、と思ったからだ。
それくらいには彼もグリッドを評価している。
奴が大勢の中で、あの鬱屈を吹き飛ばして堂々と叫んだ様も、発した言葉も、否定する側のトップにするには相応しいだろう。
まあ、代表というか代理だけど。彼は内心いじわるにほくそ笑んだ。

ミクトランもグリッドの側も、共に勝利条件を持っている。そうでなければそもそも争う理由がないのだから当然である。
そして勝利条件があるとすれば、それは逆に敗北条件の存在を暗に仄めかしている。
グリッド側の敗北条件は全員が死ぬなり何なりあるが、平たく大まかに言えば“全員がバトルロワイアルに屈する”ことだろう。
しかしミクトランの勝利条件は、先述した不確定要素も相まって「これだ」と断定することはできない。敗北条件も同様だ。
脱出してほしいのか優勝してほしいのか、この二極の結末のどちらも考え得る状況ではどう動いていいのかも分からない。
それ以外の他の結末も想定できるのだから更に致し方ない。
ゲームというのは大抵ルールが定められ、それに基づいて勝利条件が決められる。
単純に支給されたルールブックに載っているルールに乗っ取れば、優勝することがバトルロワイアルの参加者としての勝利条件なのだろう。
だが、先程のミクトランの6つのルールは別物。同じ駒でありながらミクトランの勝利条件は参加者とは違う。
それを踏まえて考えれば、ルールが定まってさえいないのだから、どうすれば主催にとって勝ちなのか分かるはずがない。
ならば、こちら側はミクトランが勝利条件を満たす前に、こちらの勝利条件を満たすしかない。
“バトルロワイアルから脱出し、ひいては主催者を打倒する”という明確な目標があるのだから、それに向けて動くしかない。

だが攻撃しか出来ない参加者達の指針を踏まえた視点で考えれば、一連の流れにはミクトランの悪意が伺える。
ミクトランが6つのルールと、それによって動く駒を用いて守りを固めてきたという解釈だ。
初めは表ルールを使い参加者を牽制し、裏ルールを用いて参加者を攻撃する。
会場に放り出された右も左も分からない参加者にとって、支給品と現在位置は数少ない“絶対情報”だ。
その二つを調整することができるのなら、少なくともファラの放送は“仕組むことができた”シナリオだと読める。
キールにとってそれがミクトランの手で行なわれたかどうかは重要ではない。
この展開が“ミクトランにとって都合のいい展開であるかどうか”が重要なのだ。
既に都合の悪い展開に対して干渉が行なわれた実例がある故に。
(仕組んだかどうかは分からないが、そこに至る過程には幾つかの裏ルールの匂いが伺える)
来る人間までは完全に決めつけることはできないが、“来るだろう”人間を決めることは不可能ではない。
そしてファラがC3の村の近くに置かれたならば、彼女の性格のこと、遠からず拡声器は使われる。
彼女が毒を煽ろうが、煽らまいが関係はない。そうして惨劇の宴は引き起こされるのだ。
そしてその意図が見え始め綻び出す終盤では、再び強力な表ルールを使用して自陣の守りを完成させる。
結果はこの通り。禁止エリアによって片面が封鎖されては全ての情報は掴み切れないと、キールも痛感している。
東側にいた参加者も西側に集まったとは言っても、それでも全ての情報を集めなおすのは不可能だ。
73The Moving named 'Battle-Royal' 13:2009/02/08(日) 00:47:21 ID:BX7eI/1y0
「コレット、お前さっきのグリッドが叫んでいたことは聞こえてたのか?」
「……はい。今ならあの言葉の意味が分かる気がします。
 私、どっかに自分の心を置いてきちゃってたんです。天使化とか、アトワイトに身体を貸したのとか関係なく。
 もっと早くに気付けてたなら、私……ロイドを死なせないで、ごめんねじゃなくてありがとうって言えたはずなのに……」
「……勿体もない慰めは言わないぞ。僕だってロイドを殺した側なんだから」
「私も、あなたは悪くないなんて言いません。
 私は……私のためにも、ロイドのためにも、いつか笑うって決めたんだから」
どこかに置いてきた自分の想い。それを思い出せとグリッドは叫んだ。
もし参加者が自分の心を置き去りにし、バトルロワイアルというものを飲み込み内側から呑み込まれてしまったら、
それはバトルロワイアルの存在を納得し、歯車の1つとして機構に組み込まれたことに他ならない。
その時点で人物Aはミクトランの駒として運動することを意味するのだ。
“あの村は危険人物が集まるだろうから行かない方がいい”――――そんな対主催的思考でさえ、
ミクトランの攻略法を手助けするものとなる。
「バトルロワイアル」とは、ミクトランが自らの勝利条件を満たすために用いる“指し手”――戦術の総称なのだ。
そこには対主催やマーダーといった区分けも境界線もない。ミクトランに利用されているか否かの一点だけ。
何らかの理由、たとえば脱出方法に捕らわれ対主催同士で潰し合えば、それはそれでミクトランの駒として機能しているのだ。
都合と理さえ合えば対主催さえもくるりと意味の向きを変える。
それがあの姦計の王の指し手・バトルロワイアルの力なのである。

「えっと、あの」
コレットが口を開き何かを言おうとしたが、何故か言葉に詰まった。彼女はちらりとキールの下方を見てから俯く。
挙動不審な彼女の動作に気づいてキールは下を向いた。
地面に1個、僅かに残された夕日にきらめく小さなもの――画鋲が落ちている。
どこから出てきたのか分からない。
だが彼は何か思い当たることがあったのか、自分が座っている椅子の座席を、身体を捻らせて見た。
服に、金色の画鋲がいくつも刺さっている。それにさえ気付けない。

「プラス30点だな」

こう解釈したところでどうしようもない。情報も時間も、何より彼の命の刻限が足りない。
敵の攻め手も曖昧で、その狙いも不明瞭。その上ノイズが激しすぎる。
どこからどこまでが、どれがミクトランの「バトルロワイアル」としての指し手なのか判別することができない。
一部の事実に基づきこの仮説を立てた以上、全てがそれぞれの意志の結果による偶然の産物と説明するには都合が良すぎる。
しかし、全部が全部ミクトランの手中だと言うには、あまりにも穴がありすぎる。
いくつかが運の要素――ランダムで構成されているなら、それこそ無尽の結論が溢れ出し計算量が異常なまでに膨れ上がる。
それをこの短時間で計算するなど現実的ではないし、不可能だ。
データも足りていないのだから結論など出せっこない。

(それでも、僕が勝つ。どんなイレギュラーも、もう僕の計画を崩せない)
74The Moving named 'Battle-Royal' 14:2009/02/08(日) 00:49:07 ID:BX7eI/1y0
笑うキール。それをコレットは訝しがりながら見ていた。
自分の戦略と戦術を構築した今、キールにとってこの状況は決して悪くない。
終盤の終盤。ミクトランの勝利は刻一刻と近づいているだろう。
それを阻止し、彼の勝利条件を満たすための「攻め手」はこの答案の裏にある。
それで挑めばミクトランに、七割近くの勝率―――自分にとっての―――をはじき出せるだろうものを彼は用意している。
希望も絶えた訳ではない。ならば、いつまでも付きまとって離れないこの悪寒は一体何なのか。
(まさかこの状況も読んでいる? いや、力、情報……あらゆる面で格下の相手達に“負けるために全力を出して殺しにいく”なんてことは有り得ない)
それではミクトランがいままで仕掛けてきた戦術全てが無意味なものになってしまう。
ならば、この悪寒は何を恐れるが故なのか。
不利に見えて有利、有利に見えて不利。どこまでがミクトランの想定内であり、どこまでが違うのか。
ミクトランの勝利条件は何なのか。数少ない手がかりを結びつける蜘蛛の糸。
きっと、この解釈でさえ“何かが欠けている”。

だが、もうここで勝負を賭けるしかない。
ミクトランに仕掛けた“毒”が効いている今を逃せば、ミクトランに更にバトルロワイアルを行使する機会を与えてしまう。

勝負はすぐだ。彼の答えが正しいかどうか、全てはその1点に掛っている。

キールは天を仰ぐように銅空を見上げる。そんな自分を鼻で笑いたくなった。
今更神に赦しを乞うつもりも無いくせに。科学の外側で、神秘の内側でお前はいつも傍観を気取っている。
お前ならば―――全てを見下ろせるお前ならば、きっと答えなど既に知っているのだろうけど。
神よ、お前に願うものなんてない。
だが、答えられるものなら答えてみるがいい。

「バトルロワイアルとは、何ぞや」


キールの呟きは、鋭敏化したコレットの耳でやっと拾える程度のもので、たちまちに掻き消えた。
虚空へ上る微小な波は、誰の耳にも届かない。
宇宙を越えて、星を越えて、銀河を渡ろうとも、決して。
75The Moving named 'Battle-Royal' 15:2009/02/08(日) 00:51:02 ID:BX7eI/1y0
【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:HP5%/5%(HP減衰が常時発生)TP45% フルボッコ ある意味発狂 頬骨・鼻骨骨折 歯がかなり折れた 【QED】カウントダウン
   指数本骨折あるいは切断 肉が一部削げた 胸に大裂傷 中度下半身不随(杖をついて何とか立てる程度)ローブを脱いだ
所持品:ベレット セイファートキー C・ケイジ@I(水・雷・闇・氷・火) C・ケイジ@C(風・光・元・地・時) 
    分解中のレーダー 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) フェアリィリング
    スティレット ウィングパック(UZISMG入り)魔杖ケイオスハート
基本行動方針:メルディを救う
第一行動方針:情報を整理しながらメルディ達を待つ
第二行動方針:メルディを優勝させる
ゼクンドゥス行動方針:静観。一度はキールの願いを叶える。
現在位置:C3村中央地区

【コレット=ブルーネル 生存確認】
状態:HP70% TP20% 罪を認め生きる決意 全身に痣や傷 深い悲しみ
所持品:ピヨチェック 要の紋@コレット 金のフライパン メガグランチャー
    エターナルリング 細工工具 イクストリーム
基本行動方針:何時か心の底から笑う
第一行動方針:メルディ達が戻ってくるのを待つ
第二行動方針:リアラを殺してしまった事をカイルに打ち明ける
現在位置:C3村中央地区
76The Moving named 'Battle-Royal' 16:2009/02/08(日) 00:54:01 ID:BX7eI/1y0






ですが、貴方達は聞いている。

世界の枠よりも大きな視点を持つ貴方達は聞いているし、見ています。


『バトルロワイアルとは、何か』


ある意味において、究極であり至源であるこの問い。

ある忍者は、このバトルロワイアルをチェスと捉えました。

マーダーと対主催。駒を操り、互いの王を討ち取るための戦いと。

ある学士は、このバトルロワイアルをチェスの指し手と捉えました。

もっと大きなチェスの中においてミクトランの操る駒、その動きに抗うための戦いと。

彼の問いに、答えられますか?


今、貴方はそれを考えた……そして、それではないような気がした…………

答えは何でもよいのです。

その答えによって、貴方の観測する世界<バトルロワイアル>が色めき立つ…………それが私の喜び。



ですが、皆様は一つだけ分かっていらっしゃる…………もし、これがチェスであるとするならば…………

駒だけではゲームは進まない…………そう、足りないものがあと二つあることを…………

それは…………とと、申し訳ありません。少々長く語りすぎてしまいました。それでは――――――――――――












「『下座』の手番終了です。『上座』、駒の運動をお願いします―――――――――――ベルセリオス様」
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 01:02:22 ID:HTEAGnOOO
さるさんになってしまったので携帯から失礼します。
これで投下終了になります。今回はいわゆる考え方のお話。
ご質問などありましたらお気がねなくどうぞ。
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 01:21:01 ID:ZzHl6X9O0
キールが順調に死にそうだなぁ…
そして改めて感じる、まさにドツボに嵌まった観
やっぱりあのシャーリィが痛かったな、ロイド心臓喪失事件
しかし、ミクトランってそこまで慎重派で隙のない相手だったっけ?

ってか、いつも思うけどこの神視点のおまけみたいなのいらなくね?
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 02:10:08 ID:NkyUHW0MO
投下乙
単に自分が見落としているだけかもしれんが、ティトレイがしいなを見殺しにした発言は誰も居ない場所で言っていなかったか?
間違ってたらスマン
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 03:01:11 ID:F1pFBFXX0
久しぶりの投下乙。テイルズロワで久しぶりに考察らしい考察きたな。
でも切り口が一味違うなあ。起こったことを全部ミクトランの策と考えるのか……キール、それは絶対考えすぎだw
キールが考える仮説が、この神視点と重なるのかな? プレーヤーの一人がベルセリオスだとすると、残りが誰なのか気になる。

>>79
しいな見殺しの告白はマーテルとの会話だな。キールは知らないはず。
一応サウブレの現場でしいな(女)を救えなかった話はヴェイグが聞いてるから、
コレットのもってる情報を合わせればキールでも届くかな。
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 03:07:24 ID:PZoEVZo4O
投下乙です。
相変わらずこのロワは対主催が勝てる気しないななw
もうマーダーがミトス以外いないのに

>>78
一応天才だしヒューゴを乗っ取ってたのを気付かせないぐらいには狡猾じゃね?
あとメタ視点は今の段階じゃ何とも言えないな
実はメタ視点じゃないかもしれないし
まぁそこまで気にする必要もないと思うが
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 07:10:52 ID:rlrm1cZz0
そういやDとD2でベルセリオスがヒューゴを乗っ取る過程が違うんだよな
Dはヒューゴがそれを手にした瞬間だったが
D2はヒューゴが人々を豊かにするため知恵を借りてるうちに徐々に浸食だった
8379:2009/02/08(日) 08:00:26 ID:NkyUHW0MO
>>80
レスサンクス
もう一回その辺りを読み直してくる
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 08:50:45 ID:vqq5Yr2Z0
投下GJ。考察もさることながら、コレットとロイドの別れがちゃんと書かれたのがいいな。
脱出フラグアイテムもちゃっかり回収して、これで首輪はなんとかなるかな?

>>82
kwsk。本編でそんな話あったっけか? ドラマCDとか? 見逃してただけならすまん。
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 08:55:20 ID:rlrm1cZz0
どっちも攻略本で出た話
っていうかオリDは攻略本で初めてわかるキャラ設定がやたらと多かったな
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 09:00:51 ID:rlrm1cZz0
追加ですまんがドラマCDでは
ヒューゴがかなりミクトランに抵抗していて精神体で移動する術?らしきものも使っている
後、確か漫画版ではベルセリオスに乗っ取られずヒューゴがソーディアン無しでリオンを圧倒していた
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 09:18:27 ID:NRc3MT6s0
投下乙!なんという考察www
QED.彼の証明は完了するのか?最終鬼畜学士キール・T
こんなものが俺の頭にうかんだ。まあ実際にキールは鬼畜だけど・・・おや、誰か来たようだ。
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 10:17:19 ID:hmbFoUisO
>>78
だからミクトランには何者かが入れ知恵をしているのではないか、
って仮説が、しばらく前にこのスレに挙がってたな。
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 22:43:51 ID:lLI7ViKq0
裏ルールに該当しそうなのどこらへんだろ?
バルバトスとマグニスの出会いはそれっぽいけど、もしマグニスが豚デレ発動してなかったら良マーダー相打ちの可能性も多分にあったわけだし・・・うーん。
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 23:37:00 ID:ZzHl6X9O0
裏ルールねぇ
シャーリィが何故か最初に気を失っていたトコとか?
後はシャーリィとかマウリッツとかにエクスフィア支給されてたトコとか?

ってか、読み返してみると前半の死に易さと後半の死に難さの違いが異常だw
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 23:38:03 ID:0QHQlMP10
セネル……
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/09(月) 00:53:10 ID:H3obkdu1O
けれども本ルートのロイドやキールの惨めな死に方を見ると、
セネルみたく一思いに死ねた方がまだマシに思えてしまうから不思議だ。
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/09(月) 03:03:26 ID:kgOTWjRN0
とはいえあくまでもキールの推測であって正解ではないのを忘れずに、だがなw
しっかしすごいなあ。うん、ほんと、キールの言うようにこのロワに於けるバトルロワイアルとは何なんだろ
未だになぞがいっぱい残ってるからな。
戦術としてのバトルロワイアルというのは面白い思考だと思った
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/09(月) 11:03:26 ID:2XzNHVzR0
後、ミクトランが何者かも重要だよな
未来視たって言ってたがどうやって視たのか
そもそも本物なのか、どこの時間軸の天上王なのか
改変現代かエルレイン干渉かそれとも正史ルートか
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/09(月) 12:08:47 ID:dEZ4Morc0
 
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/09(月) 14:25:27 ID:Qba9R5t7O
サイグローグだかも気になる所
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/09(月) 21:17:30 ID:cZdEV0wy0
小学生レベルの指導プランの引き合いに出されたLさん(17)涙目で吹いた。
2年で九九覚えるペースじゃ因数分解は30歳くらいまで覚えられんだろw
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 12:01:14 ID:gDGlY12C0
今回の作者です。反応がたいへん遅くなってしまい申し訳ありません。
今更ながら>>79氏への回答を。

キールのしいなに関する推測は>>80氏の言うように
ヴェイグから279話の情報を得ているという前提で書きましたが、
確かに「見殺しにした」というのは間違いですね。
情報がごっちゃになってしまってました…orz すみませんでした。

修正版を避難所の方に投下しておきますので、そちらの方で宜しくお願いします。
99名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 13:40:29 ID:53Vc+w5G0
修正ご苦労様です。
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 09:06:24 ID:4tsCk8IWO
椅子に画鋲とかグリッドせこいなw
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 11:14:37 ID:CfUYt1K1O
ハッタリに人質、死んだフリ、椅子に画鋲。
セコいことしてるだろ……対主催のリーダー(代理)なんだぜ?
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 07:58:13 ID:IFZDj6ru0
まさか「おめーの席、ねぇから!」ということなのか?
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 14:53:11 ID:Txnl/XrT0
キールが第五の最後にグリッドにしたことを考えればこのくらいの仕返しで済んだことを喜ぶべきかもしれん
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 16:15:58 ID:d6zb2ya/O
>>103
確かに今考えればVSクレス戦の際、クレス撤退のタイミングに合わせるとかして、
ドサマギでキールを殺ることもできたんだよな、グリッド。
それをやらないあたり、グリッドは人格者だな(もしくは頭が冷えている)……

……と一瞬思ったけど、
その真意が「どうせキールは放っときゃ勝手におっ死ぬんだし、わざわざ俺が手を下すまでもないか」
だったりしたら嫌すぎるw
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 21:49:52 ID:Fgh2Lsw50
というか、あのタイミングでキールやるとかキールを上回るド外道じゃねえかw
単に流されただけだと予想
グリッドの性格ならば、既に半分忘れているとしてもおかしくない
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:26:31 ID:o2SxsUWuO
ちなみに殺る対象をキールではなくメルディにすると、外道レベルが更に倍率ドン。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:47:26 ID:RDWonzXhO
それはもう道を外したというより脳ミソとっぱらうレベルだな。
ま、グリッドの性格からして預けられたメルディは痛め付けんだろう。メルディを預けたキールに負けを認めることになる。
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/17(火) 17:49:20 ID:U7TYQcR40
やっと追いついたのだが、話がややこしすぎてよくわからなくなってきた。
だが面白い。
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/17(火) 23:45:09 ID:YzjzeCF80
前スレの最後に分かりやすいまとめがあったんだけどなースレ落ちちゃったし
誰かまだ持ってないだろか
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/18(水) 19:17:23 ID:dOjhhVPb0
>>109
それは前スレのアナザールートの流れの奴かい?
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/18(水) 19:21:11 ID:Qbu+xcRk0
三つのルール X、Y、Z

X:状況に流されてキャラクター個々が自棄になる。
     →グリッドが演説で打破(覚醒<ユアンの登場>が必要)
Y:ミクトランやチャネリング支配下?のミトス、キールによって構築された避けられない戦況
     →ティトレイが自由に動いて打破(首輪解除フラグも確保)
Z:キャラクター全員に漂う諦めの漂う空気or時空剣を巡る裏切りが発生しやすい環境
     →ロイドが理想を捨てることで打破(キールが覚醒し戦力が残る。コレットも生存)
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 00:56:33 ID:jG9hRfUNO
>>110
そう、本編と一緒にまとめてあった奴。C3はよくも悪くもごちゃごちゃだから、あれは便利だった。
落ちる前にとっておけばと後悔。
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 07:34:04 ID:681+8a8F0
498 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日:2009/01/03(土) 01:54:24 ID:K75+jeSs0

新年の暇潰しに昨年のアナザーの動きをまとめてたけど、
その前に本編をまとめた方が比較できそうだったので、先に書いてみた。

・本編の大まかな流れ

導入

ロイド入村。ミトスが燃やした拠点の煙を目印にクレス・ティトレイとミトスと出会い、交戦開始。

遅れてカイル、ヴェイグ入村。ピンチのロイドを救援。
西地区でロイドVSクレス、北地区でヴェイグ&カイルVSティトレイへと分離。

状況を確認したミトスが行動開始。
ミントは放棄。西にアトワイト@コレットを送り、南に移動。

さらに遅れてキール・グリッド・メルディ入村。
待ちかまえていたミトスと一戦交えるかに見えたが、ミトスを時空剣士として使うことを決めていたキールが離反。
自身の情報から作られた脱出プランを全て捧げてミトスへと帰順する。
グリッドを瀕死に追い込んでメルディと共にミトスと合流、西地区へ。グリッド、憎悪の念からフィギュア化開始。

西地区ルート

ロイドがクレスに敗北。ロイドに興味を失ったクレスが標的をアトワイトに変更。

コレットの面影に隙ができたか、アトワイトが離脱成功。

再戦の決意と準備を進めていたロイドがコレットの戦闘を視認、追撃にかかる。

ロイドとクレスが再戦。ロイドが優勢をとるも、クレスの新技(改良技?)で逆転。
死にかけるが、コレットが乱入。魂を引き替えのリヴァヴィウサーによってロイド蘇生。
コレットの死に影響を受けた二人がぶつかり、ロイド勝利。クレスが転移で東に撤退。

そこにキール達が登場。瀕死のロイドをさらに追いつめ、完全にコレットを支配したアトワイトの手で心を折る。
エターナルソードを持ったクレスを追いかけるミトス陣営。遅れてきたエクスフィギュアによって、ロイド死亡。
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 07:34:42 ID:681+8a8F0
499 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日:2009/01/03(土) 01:54:58 ID:K75+jeSs0

北地区ルート

ヴェイグとカイルを誘引しながら移動するティトレイ。
カイルの晶術やリバウンドの影響を受けながらも鐘楼までの移動成功。

鐘楼屋上にてヴェイグVSティトレイ。ヴェイグが勝つも殺すことができず、
その隙をつかれミントを狙撃される。ミントを庇ってカイル死亡。

カイルの末期の言葉を受けて弔うが、自責の念から絶望しティトレイを殺す。
間違った世界を終わらせるという考えから参加者の殺害を決意する。

ロイドに敗退したクレスを発見し、ヴェイグが撃破。自分自身に殺されるという幻覚の中でクレス死亡。
ミトスの落とし穴に落ちたクレスからヴェイグがエターナルソード回収。

鐘楼の中からヴェイグがミントを発見。殺すことも生かすとも選べず見過ごすが、
クレスを追い求めるミントがそのまま二階から転落死する。

最終決戦

村中央にてヴェイグとミトス陣営が接触。
ヴェイグのスタンスの変化を知らないキールがミトスをミントのいる(はずの)東へ向かわせる。

そこにシャーリィ@グリッドが襲撃。気づかないキールを庇い、メルディ死亡。
その状況に耐えきれず、心身共々ぐちゃぐちゃにされてキール死亡。

ヴェイグのフォルスにて中央地区雪原化。アトワイトとヴェイグがシャーリィから離れ、
東より戻ってきたミトスとシャーリィが交戦。漁夫の利を狙うヴェイグ静観。

クィッキーの玉砕と引き替えにアトワイトとミトスのコンビが勝利。
そのままマーテルの復活儀式発動。マーテルがコレットに憑依する。

原作通りの口論になるが、シャーリィを潰すためのレイズデッドでグリッドが復活。
キールの計画の続きをなぞりマーテルを人質に取るが、自分の無いグリッドにはその先が無く、手詰まりに。
グリッドを殺そうとミトスが動くが、マーテルがそれを庇いコレット死亡。
強襲したヴェイグがグリッドをシャーリィと勘違いしたまま攻撃、グリッド死亡。アトワイトもその過程にて終了。

ミトスVSヴェイグ開戦。魔術とフォルスの壮絶な撃ち合いの中ヴェイグが優勢を取るが、
ミトスの言葉に心を揺さぶられ、ジャッジメントの直撃にて左腕を失う。
そのままヴェイグを殺せるかに見えたが、姉の死に全てを無価値だと悟ったミトスはエターナルソードによる脱出を決行する。

ミトス、最初のホールへと転移を成功させるも、ミクトランの口からそこが会場内であることを知らされる。
最後に実りの中にチャネリングがあることに気付くも首輪爆破により死亡。

ヴェイグ以外の全員死亡によって優勝者決定。本当のホールへと転移する。
首輪を奇策によって抑えたヴェイグは全てを終わらせるためにミクトランの殺害を決める。
インブレスエンドによってミクトランに勝ったかのように見えたが、
それは優勝したヴェイグに与えられた全てを終わらせるという願い=生と死の永久ループの夢だった。
ソーディアンの人格への疑問を呈されたままミクトランに破壊されディムロス終了。

優勝者はヴェイグ=リュングベル。ミクトランと神の眼を残し、その行方は誰も知らない。
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 07:35:15 ID:681+8a8F0
500 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日:2009/01/03(土) 01:55:51 ID:K75+jeSs0

で、ここからアナザー。

大まかなアナザーの流れ

導入

ロイドが入村するが、落とし穴などに引っかかりタイムロス。
その間に入村したヴェイグ・カイルがファラの家の方に来ていたクレス・ティトレイに先に接触する。
リバウンドに苦しんでティトレイがクレスを残し撤退。追撃はせず、カイルを待機させてロイド&ヴェイグVSクレス戦開始。

予定外のティトレイの動きに戸惑うミトスが、作戦を変更。ミントは保険として残すことに。
アトワイトを西に向かわせて、ジャッジメントによる広域攻撃のために南東へと移動。

中央で張っていたカイルとコレットが接触するも、見逃すことに。

キール、グリッド、メルディ入村。
ミトスが来ないことを訝しむキールと南東から嫌な予感を感じたグリッドが口論の末分かれ、
キール・メルディは西へ移動することに。

西地区ルート

二人がかりでも物ともしないクレスに、ミトスからの援護射撃が来ないアトワイトが仕方なしに乱入攻撃。
ヴェイグ、ロイド、クレス、アトワイトの四人が入り交じる乱戦状態に陥る。
キール達は状況を整理後、ミトスと接触するために東へ移動。

キール、中央で待機していたカイルと接触。会話中にグリッドを確認してそちらへと戻る。

ジャッジメントを伴った更なる混戦状態にグリッドが乱入。コレットを人質にとって事態を納め、バトルロワイアルからの解放を演説。
その後、コレットを助けることを決めたロイドの支援に周り、ロイドVSコレット、グリッドVSクレス開始。
残されたヴェイグはそこに現れたキールの勧めにてカイルとの合流に動く。

グリッドVSクレス。ユアンの能力を解放しながら時間を稼ぐも、最終的に冥空斬翔剣にて敗退。

ロイドがアトワイトに勝利。アトワイト本体は残りの力で北の方(B3)に離脱する。
コレットの説得に成功?するも、クレスの一撃によってロイド死亡。

コレット(ミント)の為に人を殺してきたクレスをコレットが否定し、クレス錯乱。
コレットが危機に陥るが、ロイドの行動に心を動かされたメルディがそれを庇う。
メルディを守るため、キールがクレスと戦うことに。

当然のように瀕死に陥るが、その中でキールが自分の目的を再確認しバトルロワイアルと戦うことを決意。
ケイジの中に潜んでいたゼクンドゥスの参戦、クィッキー、コレット、グリッドなどの
さまざまな援護を受けて作った策で心身限界のクレスを撃破する。

クレスを敢えて逃がしたキールとグリッドが改めて合流。
中央で合流することを約束してグリッドとメルディがカイル・ヴェイグを探しにいくことに。

クレス、ぼろぼろになりながらミントと邂逅。
ミント、クレスを救うためマーテルと融合、精霊化してレイズデッドを行い、
幻の入り交じるなかでミントの手助けを得てクレスが自分を取り戻す。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 07:36:00 ID:681+8a8F0
501 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日:2009/01/03(土) 02:00:44 ID:K75+jeSs0

北地区ルート

戦場から抜けたティトレイがマーテルの呼び声に導かれ、手薄になった鐘楼へ。
そこでミントを見つけ、実りの中にいたマーテルとの会話からリバウンドの根源を発見し、自身を正常化する。
ミントの願いを叶えるため、彼女を抱えて北迂回ルートへと向かうことに。

南東地区にてグリッドが詠唱中のミトスを発見する。
一蹴されて落とし穴の中に落とされるが、輝石の中のユアンと再開する。

自身の答えを見つけたグリッドがエクスフィア内のシャーリィを舌戦で撃破。
ネルフェスエクスフィアとユアンの輝石を融合させることで天使化を成功させ、復活。
ミトスを翻弄してジャッジメントを未完成に留めることに成功し、そのまま撤退。ミトスは鐘楼に退却。

もぬけの殻になった鐘楼に気づき、ミトスが北に追撃開始。
北地区にてティトレイ達を捕捉し、ミントを抱えて上手く戦えないティトレイを追いつめる。
ティトレイを庇うミントに激し、殺そうとするが救援に来たカイルの手によって阻まれる。

ティトレイとカイルのコンビでミトスを抑える中、マーテルとミントがミトスを説得。
その影響か、ディムロスを持ってやってきたヴェイグの参入からか、ミトスが北へと逃走。
ミントもクレスを追うためその場から逃走。追わせないために残ったティトレイとヴェイグが戦うことに。

言葉とフォルスを交えながら、互いの感情をぶつけ合うヴェイグとティトレイ。
その中でヴェイグも自身の罪のあり方に答えを見つけ、それをティトレイに示し、二人は和解することに。

二人のやりとりを見たカイルが、ディムロスと共にミトスとアトワイトの下へ向かうことを決める。
カイルの帰還を待つと決めたヴェイグ達は今後のことに思いを馳せる。

B3。アトワイトと合流したミトスにカイルが接触。アトワイトはミトスと共に終わることを望み、
結果としてミトスwithアトワイトVSカイルwithディムロス開始。
ヴェイグの決意に揺さぶられたカイルが心を乱すが、ディムロスのアトワイトへの想いに引っ張られて立ち直る。
しがらみを越えたディムロスの告白をアトワイトが受け入れ、ソーディアンに決着。

最後の決着をつけるため、カイルVSミトスの決戦開始。


北と西で二本のルートに分けられるのは同じだけど、
印象として、本編は両方終わらせてから生き残りが集合して〜というのに対して、
アナザーは場所に対して参加するキャラクターがコロコロ変わってる感じがする。
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 10:15:05 ID:AvB6C1XS0
転載乙。ここからキールとコレットの描写があったから、残りはいよいよカイルとミトスだけかな
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 12:22:57 ID:d6t49hoPO
グリッドとメルディ、クレスもありそうだな
ここら辺はなくても後でフォローできそうだが
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 21:41:08 ID:BoiRibVo0
なんとなく書いた。反省はする。

1Pモード。 プレイヤー:ティトレイ

ステージ1 VSしいな
*ミニゲーム。タイミングよくボタンを押して死体を見てブチきれてるしいなをなだめよう!
 でもボタンやタイミングを間違えると火に油だぞ!

ステージ2 VSクレス&コレット&サレ
*通常戦闘。ただし暴走状態なのでフォルスゲージが常に赤!!
 イベント戦闘なので負けても進むぞ。

ステージ3 VSデミテル
*ミニゲーム。死なない程度に地雷原を歩いてデミテルの注意を引こう。
 精神状態がアレなので方向キーが逆になってるのに注意。

ステージ4 VSモリスン
*通常戦闘。デミテルが死なないようにモリスンの攻撃から守ろう。
 デミテルの魔術じゃないとダメージを与えられない。

ステージ5 VSE2城戦
*まずは通常戦闘。マグバルのドサクサに紛れてジェイとクラトスを倒そう。
 倒すとミニゲームへそのまま突入。崩れだした城の瓦礫からデミテルを守れ。

ステージ6 VSC3戦
*ミニゲーム。適した位置にアブラナの種を撒いて、家を焼き払おう。
 ウルトラ上手にに焼けると高得点。

ステージ7 E3サウブレ

*シューティング。E2で行われている戦闘を狙い撃て!ただしクレスに当てると減点なので注意。
 そのまま連続でダオスと戦闘。HPはほとんど無いがそれでも魔王なので注意。

ステージ8 VSクレス

*お前の拳(剣)はおしゃべりだな!

↓成績で分岐 以下本編

ステージ9 VSヴェイグ&カイル
*特殊戦闘。HPがみるみるうちに減っていく。動けなくなる前に振り切って鐘楼台まで逃げろ!

ラストステージ VSヴェイグ
*ガチンコ戦闘。こちらのHPは低いが、ヴェイグの攻撃は時間が経つにつれて緩くなっていく。
 最後はシューティング。ヴェイグが逡巡しているうちに、カイルをロックオンせよ。


個々のキャラでアーケードモード作れないかなと思ったら、半分ミニゲームになった。
よくよく見返すと一人当たりはあんま戦闘はしてないのね。
多分アナザーのステージ9はスニーキングミッション。
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 21:52:51 ID:q4NBJpLeO
本当に反省しろよ
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 22:07:48 ID:ALPBXeFIO
深刻な状況のはずなのに何故か吹いてしまった
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/25(水) 22:10:00 ID:xXwGYY+t0
ティトレイは対主催戦力としてかなり重要だな。リバウンドから治って比較的軽傷なのが特に。
脱出フラグをほとんど持ってないのがいかんともしがたいがw
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/26(木) 00:11:17 ID:OKJh3q59O
というか脱出フラグ持ち自体が少ないな
時空剣以外に何かあったか?
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/26(木) 00:26:16 ID:13XY2EGb0
脱出フラグになるかわからんが、ネレイドとか?
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/26(木) 02:00:58 ID:mKIgdb2VO
>>124
闇の極光も一応脱出フラグだろうが、劇中の描写からするともうフラグが折れてるな。
メルディはキールVSクレス戦でフィブリルを使おうとしたみたいだけど、
それにも失敗したみたいだし。

仮にフィブリルの使用が実はまだ可能だったとしても、まずキールが全力で阻止するだろうし、
奇跡的に使用にこぎ着けたとしても、ロワ自体をどうにかできるかどうかはまるで見当がつかない。

……実を言うと、ハロルドがここから無双状態になって、
対主催の知らぬ間に事件解決、って展開が一番現実的なラインじゃね?w
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/01(日) 19:42:30 ID:UZOF84dH0
リオンがジョーカーで
ハロルドが……で
過去を断ち切らない道を選んだジューダスは何時ソーディアンが黒だと分かったんだろうな
そもそも最初の内からかなり先まで見据えて惨劇打破の切っ掛けを残している
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/01(日) 21:09:50 ID:N1DalcOoO
リオン倒してシャルティエ手に入れてからか。妥当な線は。
他のソーディアンと違ってD2の知識がないとか、ミクのオーダーメイド臭がする。
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 00:29:19 ID:3oc9WFiN0
しかしジューダスはしたことこそ少ないが、影響力は多大な気がする
ロイドとメルディにしろ、カイルやリオンにしろ
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 17:26:40 ID:LzH5HhUv0
でも、キールの解釈を当てはめるとジューダスはかなりどつぼに嵌っていたかも。
【拡声器が使われた場所は危険】というバトロワの定石に従って南下したらリオン待ちだし。
たらればの話はしても仕方ないけど、あの時C3に行ってればモリスンかクレスのどっちの行動は防げたはず。
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 17:39:55 ID:t+3DyZHl0
現在のソーディアンの強さを見るに
単体で勝ったジューダスってトップクラスの強者だな
確かにあのままC3行ってたらクレスやデミテルを倒せたかも
でもそうするとチャネリングに誰が気づくって話だしな
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 18:32:15 ID:rEPH4uqzO
その辺の補正のかかりっぷりは、
さすがキャラ投票でワンツーフィニッシュが定位置の人気キャラって感じだな、
リオン&ジューダス。
リオンはその上にジョーカー補正までかかってたし。

リオンVSヤク中クレスあたりは、
本編では実現しなかった対戦カードだけに是非とも見てみたかった。
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 19:03:38 ID:t1w6oFmGO
相性の問題があったと思う<カルマ戦
リオンはジューダスが誰かを知らない、ジューダスはリオンが誰かを知ってる。この差は大きい。
ジューダスはシャルもリオン技も理解して対処できるが、リオンがそれするにはジューダスが誰かを認めるとこから始めないとだし。

しかし、この頃からソーディアン最強兵器宣言だったんだなw
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 02:55:25 ID:fAPHM8HI0
今思ったが、ロイドってクラトスより先に死んじまったのかな。
クラトスは一応意識はなくとも輝石の中にいるし…
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 19:34:35 ID:wpIMvB2JO
コレットが回収してないから、無残に壊れたか、

本編みたいにキールがこっそり回収したか。
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 23:35:16 ID:dBie22zUO
>>133
ロイドは天使化状態で死んだから、ロイドの意識も輝石の中に封じ込められて未来永劫そのまま、
って可能性もある。
アナザールートならまだコレットを救うっていう願いを果たせたからいいけど、
本編ルートでそんなオチが待ってたら、まさに地獄だろうな。
自分の全人格を否定されてそれを挽回するチャンスもないまま、
自殺もできずに永遠に後悔の念に苦しみ続けにゃならないわけだし。

本編ルートでミトスがあえてロイドの輝石を砕かずに左手を切断して回収させたのは、
オリジンが自身に従わなかったときの保険って意味もあったのかも知れないが、
ロイドにそれだけの地獄を味わわせたい、って嗜虐心のなせるワザでもあったと解釈すると、
ミトスも相当な外道だな。
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 14:28:58 ID:4UXokokfO
アナザーだとロイドのエクスフィア砕けてるから意識は残ってないんじゃね?
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 14:36:21 ID:VJtNISjN0
地味に忘れがちなことだが、ミトスは本編開始くらいからの参戦だから本編ほどロイドと確執がなかったりする
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/05(木) 02:11:47 ID:qAy6oUJp0
まあ、ロワではカイルやクレス、シャーリィとの確執がメインだからな
原作ではロイド達に感化され今までの自分が無意味になりそうで怖いと言っているし
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 18:34:22 ID:4daVgpxdO
でもミトスとクレスは因縁持ちの割に接触ないな
直に会ったの1回目のC2村ぐらいか
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 19:55:51 ID:VtrtJodbO
ミトスは敵討ちよりマーテル復活の方に力入れてたからかも
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 22:03:33 ID:iLToPm2NO
ついでにミトスは元来が狡猾な性格だから、
クレスが空間転移までフル活用したガチな粘着ぶりを見せて、
振り切るのに多大な労力を要するor振り切れない状況に追い込まれる、
なんて事態にでもならなきゃ、正面対決なんて絶対に選ばなかっただろうしな。

感情に任せて状況を読まない敵討ちに走らないあたり、ミトスの判断は冷徹だ。
これでマーテルやミントって弱点がなきゃ完璧なんだけどなあ……。
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 22:06:42 ID:7kKWtk6w0
ユアンの裏切りに何百年と気づかなかったのは
ユアンが凄いということだな
さすがユアン
クリスに速攻バレてたミク様とは一味違うぜ
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 22:51:10 ID:MVJgJFCh0
ミトスが黄金の足を準備し始めたようです>ユアン

さて、そのミトスとカイルの正面衝突はどうなることか…
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/09(月) 00:01:30 ID:0PSr4OgCO
あとカイル対ミトスが投下されれば放送か
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/09(月) 02:58:57 ID:PMBx+ERc0
そういやドラマCDじゃインフェリアの学生が戦車作ってたり犯罪者が所持してんだよな
まあ、サンクの場合は特別なのかもしれないけど
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 23:13:48 ID:EmiOXHyR0
投下します。
147落陽に帰り道は見えるのか 1:2009/03/10(火) 23:16:01 ID:EmiOXHyR0
崩壊した村をすさまじい速度で駆ける影が1つ。
音速の貴公子こと漆黒の翼のリーダー、グリッドは中央地区へ向かうべく、自慢の足で走り抜けていた。
背にはメルディを負ぶさっている。腕が1本しかないため、残った手を彼女の臀部にあて、
彼女には服をぎゅっと掴んでもらうことで何とか背負うということが成立していた。
恐らくキールがこの事実を耳にしたら、グリッドは半殺しにされるか、もしくは本当にあの世行きになるだろう。
しかし、メルディの体勢はそれでも時折不安定になり、グリッドの速さもあってか、彼女は常に強く服を握っていた。
彼女の肩にポジションを取るクィッキーも、重傷であるにも関わらず必死にしがみついている。
天使となって感覚を失ってしまったグリッドがこのことに気付くのは、走ってしばらく後のことである。
ちらりを後ろを振り返ると、懸命にしがみつく彼女とクィッキーの姿が目に入って、慌てて彼は速度を落とした。
そしてもう1度体勢を直し、今度は少し速度を落として走り出した。
それでも速さだけはごく一般的な成人男性と比べたら相当のものである。
このときばかりは感覚の消失を少しばかり恨めしく思った。
「すまん、メルディ。気を遣えなくて」
「……ダイジョーブ。メルディも走ったら、きっと追いつけないから」
メルディの語調は静かというよりはどことなく暗く、遠回しに背負われている自分の無力さを伝えているようだった。
グリッドは、珍しく彼女にだけはどんな言葉をかければいいのか分からないでいた。
自分の願いというものが、彼女にはあるのだろうか?
いつかのヴェイグの話で、元々彼女はとても元気で明るいと聞いた。
だが、今の姿しか知らないグリッドは、塞ぎ込んだ彼女をどうすればいいのかも分からない。
ろくに会話することさえも、メルディはずっとキールに付いていて自分はすぐ洞窟へ向かったのだから、実際今回が初めてのようなものだ。
自分の不甲斐なさに奥歯を噛みしめる。
過程はまるっきり別物であるにしろ、「無自覚に人を殺した」という点では、この2人に共通するものはある。
そしてそれを知った後、陰鬱に塞ぎ込んでしまったという点も共通している。
だが、彼と彼女は違う。似ているようで、ベクトルの向きは全く別物だ。
手段の直接性と間接性も、何に苦しんでいるのかも、自分を取り戻したか否かも――どんな言葉をかければいいのか分からないわけだ。
グリッドは、彼女をどうにかしたいと思いつつ、どう励ませばいいのか分からなかった。
言葉が届くかどうかというよりは、自分が差し挟んでいい問題だと思えなかった。
自分は彼女と感覚を共有できたとしても、戻るための道筋がまるで違う。
方法が違うのだから、アドバイスをしたとしても彼女のためになるとは思えなかったのだ。
それほど彼女の瑕疵は深い。だからといって、簡単に「はいそうですか」と言える人間でも、グリッドはないのだが。
148落陽に帰り道は見えるのか 2:2009/03/10(火) 23:18:36 ID:EmiOXHyR0
夕闇の弱々しい光が街路を気持ちばかり照らす。
光よりは闇の方が濃くなってきた村では、前方も暗くなりはじめ、視界が悪い。
体温を奪い去っていくような夕方の風も、この闇から生まれてきたのではないかと思える。
荒廃した村では何の違和感もなかった。気分が悪いと、グリッドは心中で吐き捨てた。
「メルディ、マジカルポーチの様子は?」
「何もないな。何も出てこないよ」
「つっまんねーな。こう、ステーキとか景気よく出ないもんかねえ。黄色いケーキだっていいぞ。
 ああ……ボルシチか、ビーストミートのポワレでもいいな。こう寒いとあったまるモンがいい」
その言葉にメルディは何も返さなかった。ただぎゅっと服を掴むばかりで、何かにぐっと堪えるようだった。
「……ダメだよ。きっといい結果なんて出ない。メルディの手は汚れてるんだから」
「ほう、その汚れた手で俺を掴んでくれてるとは、ありがたいこった」
彼女は手離そうとしたが、グリッドが速度を上げたため服を掴んでいらざるを得なかった。
「どうなるか分かんねえだろ。どうなるか分かんねえから、色々やるんだろ?
 端っから読めてたらつまらんだろ」
グリッドが意気揚々と言う中、彼女は目を逸らすように顔を服に埋めていた。
深い橙色の髪が少しばかり見えるが、その奥で彼は何の疑問の浮かべず、とても輝かしく笑っているのだろう。
それくらいは彼女にも想像することができた。想像でも眩しかった。
この村の塵にまみれ澱んだ空気の方が、まだ自分には合っているのだと彼女は思う。
今も呼吸することさえ辛いが、晴々として澄みきった空気を吸う方が、きっともっと辛いだろうから。
涼やかな大気を吸い込んだときの心地よさが懐かしい。
セレスティアはいつも暗かったけど、インフェリアは空が青くて綺麗だったっけと、彼女の中で痛みに似たものが過ぎった。
その空の下で、あの3人はよく笑っていた気がする。
自分もその笑顔を奪ってしまったのだから、もうそれを見ることは叶わない。
だが、思い出すことはまだできる。瞼の裏に浮かぶ光景を思い出しながら、共に笑うことが――――できなくなるのは、怖い。
彼女が持っていたポーチから何かがぽんと飛び出て彼の後頭部に直撃した。
痛みこそないものの頭が下に向き、視界が激変したおかげで彼は見事につんのめった。
空を舞った何かをキャッチするメルディ。
「ニンジンな」
「っはあ? ニンジン? こう走らされてても、いくら何でも馬じゃねえぞグリッド様は」
1度メルディを降ろし、再度負ぶり直そうとした彼はメルディの方を向いた。
彼女は何故か飛び出してきたニンジンを見つめていた。
「でも、ボルシチの材料だよう」
彼女の言葉にはっとし何かを閃いた彼は、汗も出ない身体で指をぱちりと鳴らした。
「ちょっとずつ、ちょっとずつ、ってことだな」
149落陽に帰り道は見えるのか 3:2009/03/10(火) 23:20:36 ID:EmiOXHyR0
静けさの支配する場所で、2人の青年が空を見上げていた。
夕焼けの空に時折走る閃光に、空にたなびく飛行機雲。
草葉がそよぐだけの静寂とは裏腹に、音もなく飛び散る火花の激しさは戦闘の激しさを物語っていた。
2人のうちの1人が不安そうな表情を見せる。そして片手に持った懐中時計に目をやる。
時は17時半過ぎ。ともすれば「もう18時か」と呟いても差し支えない時間の頃合だ。
互いが持っている情報を一通り交換していたため、知らぬ間に時間は過ぎ去ってしまっていた。
それからは時折言葉を挟む程度の沈黙が続き、夕方の風が心に冷たさを吹き込ませていた。
青年がタイムリミットという禁忌をを知りながら、時計に意識を伸ばしてしまったのはそのためである。

かの地は18時の放送と同時に封鎖される。
もしその前にエリアを抜けることができなければ、そこに命があるのなら容赦なく終わってしまう。
しかし、未だ終わりの見えない戦闘の気配が、青年の不安を駆り立てる。約束は果たされることなく終わるのかと。
「少しは落ちつけよ、ヴェイグ。お前らしくないぜ?」
傍らに座り込むもう1人の青年が語りかける。
ぽん、とどこからか緑の髪と同じ色の草を取り出して、風来坊がするかのように茎を口にくわえる。
「お前こそ妙に冷静だな、ティトレイ。らしくもない」
正反対の言葉を全く同じように言った。
ティトレイと呼ばれた青年は茎をたばこのように指で挟んで、やれやれといった顔をした。
小さく顔を上げて空に視線を移し、人工的に生まれた星の瞬きを眺めると、ティトレイは表情を真摯なものに変えた。
「あれはカイルの戦いだ、俺たちが口を挟んでいいことじゃない。あいつが俺らの戦いを黙って見ててくれたように」
「だが……」
「お前な、待つって決めたんだろ? 男ならびしっと約束は守れよな。もちろんカイルもだ。
 男には、誰にも邪魔されない戦いってのがあるもんだぜ」
諭すかのように指を突きつけてティトレイは言う。
それは単にお前の理論ではないのかと、ヴェイグと呼ばれた男は口を挟みそうになったが、
邪魔をしてはいけないという思いは共通していた。
それでもカイルの行方を不安に思ってしまうのは、もはや彼の性なのか、年上の銀髪の男の宿命なのか。
――――両足骨折。睾丸破裂。裂傷多数。単純に考えて、戦闘をできる身体ではない。
いくらディムロスがいるとはいえ、今しがた空の向こうで行われているような激しい戦いのやり取りは出来ないはずだ。
……単純に考えて。
だが、現にカイルはそれをやってのけている。
どれだけの負担ががあるのかは分からないが、ただでは済まないことだけは、遠目に見ている2人にも分かった。
間違いなく、相応の動きに対する代償はある。
ましてやあんな煙さえ上げるほどの機動をカイルとディムロスは見せたことがない。
そして、そこにいるのだろうミトスもそれに応戦している。いや、相手の方が上手だろうか。
どれほど本気を出さねば戻ってこれないのか――戦闘が続いているのを見る限りまだ生きてはいるようだが、
それもいつ、どこまでか、不安になるのも仕方がなかった。
150落陽に帰り道は見えるのか 4:2009/03/10(火) 23:23:23 ID:EmiOXHyR0
「今のカイルに、ろくに戦える力が残ってると思うか?」
錬術を発動させ、心持を隠すように傷の回復に努めるヴェイグ。
このような自己治癒の術が自分たちにはあるからいいものの、カイルは傷を癒す手段がほとんどない。
ティトレイもまたヴェイグを真似て術を発動させる。
「うーん、カイルのことは詳しく知らねえから何とも言えねえが、
 いくら機動力があっても術だけでミトスに対抗するのは相当厳しいと思うぜ」
夕日の赤の中でもしっかりと浮かぶ青いフォルスの光。
その強い輝きは絢爛たるものだったが、反して彼らの心中には陰りが落ちる。
ミトスに関しての情報は、朝方にロイドからも聞いている。
おまけにティトレイは実際にミトスと2度対峙しており、それを踏まえての発言だ。
状況をしっかりと見極め、冷静な判断をした上で効率的な行動に出る。
権謀を謀るデミテルと共にいた青年にとって、この考え方は紛れもなく島に来て学んだ糧だった。
「けど、だからってそれでくたばるタイプでもないだろ、あいつ。やる時はやるし、土壇場で力を出すやつだな。俺もしてやられたし」
だが、同時にこの青年はティトレイ・クロウというヒトだった。
持ち前の前向きさで渦巻く不安を一気に吹き飛ばせる男だった。
ヴェイグは驚いたような目でティトレイを見ると、にかっと歯を見せた笑顔を浮かべていた。
大した面識もないカイルのことを何故こうも断言できるのかと、思わず溜息をつきそうになる。
(土壇場、か。だが、確かに一理ある。リオンの時も、シャーリィの時も、決定的な一撃を与えていたのはあいつだ)
けれども、土壇場というのは比較的刹那のもので、長く続けばそれは全くの別物だ。
単なる不利――その一言に落ち着くのである。
そして、今のカイルが不利などという状況に収まれば、間違いなく勝てない。そうヴェイグは思い込んでいた。
要するに、約束は信じるにはとても弱々しいものなのだ。
だが、そういえば「死なないで」という確証の持てない約束をしたのは誰だっただろうかとふと思った。
その誰かはこれまでの死地をくぐり抜けて何とか守ってきた。
思い出して、ヴェイグは苦笑めいたものをこぼす。しかし、それは確かに「笑い」だった。
「そうだな。そう思う」
「だろぉ? そうでなくたって人はギリギリのところでこそ力を発揮するもんなんだよ。例えば、俺とか」
ヴェイグの言葉を聞き、笑いながらヴェイグの背中をばんばんと叩くティトレイ。
普段身に付けている胸甲がない分、叩く強さが負傷した身には少し堪えたが、それも懐かしいものと思えば別段気にはならなかった。
「確かにお前はサウザンドブレイバーの射角を変えていたな」
昨夜のことを思い出し、あの激動の光景を瞼に浮かべる。
目まぐるしく変わっていった情勢を思い返すだけで眩暈がしてくる。そして、罪悪感も。

自分の意識と身体が噛み合わない思考の狭間で、ヴェイグはふと違和感を覚えた。

そして記憶を掘り返し、あの記憶は紛れもなく真実だと確認する。
自分の身にも起きた「それ」を思い出し、やはり間違いないと自分の中で言い聞かせる。
生じた違和感は、疑問から不安へと変化していた。
本来なら「それ」は、ありえないはずなのだから。
否、何故今になって疑問を覚えたのだ。たったさっき、自分はすぐ近くの相手にやってみせたではないか。
「……ティトレイ」
「ん? 何だよ」
ただでさえ低い声が更に低くなり、威圧感を生み出した。
相手の真剣そうな声音を微妙なニュアンスとして受け取ったティトレイは、表情を硬くして相手の方を見返した。
名を呼んだが、ヴェイグは隣の親友の方を見ずにただ前方を見つめていた。
はっとしたような、呆然自失としたような、どこか別のものを視野に存在させているような顔つきだ。
ヴェイグは息を吸うことを思い出したように1つ咳を払い、ティトレイの方を向いてはっきりと言った。

「……俺たちは何故、聖獣の力を使える?」
151落陽に帰り道は見えるのか 5:2009/03/10(火) 23:26:30 ID:EmiOXHyR0
中央地区へと到着していたグリッドは非常に焦っていた。探しても探しても椅子が見つからないのである。
このままでは四つん這い(正式には3)で人間椅子にされるどころか、言葉で責めて責めて責められて膝を抱えておしまいある。
まあ人間椅子になってもわざと身体をずらしてキールを転げ落とさせるのも面白いかなと思ったが、
それこそ今度は怪我をしたキールのために「歩く人間車椅子」にされそうな予感あらため悪寒がしたので、止めておくことにした。
子供にパパ、パパなどと呼ばれながらするならまだいいものの、誰が一体キールのためにそんなことをするものか。
自分は乗られる側ではなく乗る側なのである。あ、でも子供がキールみたいな奴だったらどうしようか。

とはいえ、そんな悪策あれこれを考えていても、見つからないものは見つからない。
まるで瓦礫の市場のようになってしまった中央広場では、完全な形をした椅子を見つけることすらままならない。
あったとしても脚が焦げてぼろぼろになっていたり、座ったら穴が空いて下半身が埋もれてしまいそうなものばかりである。
広場という性質上、民家がただでさえ少ないのだから、グリッドが焦るのも仕方がなかった。
「あー、俺の人生終わるよコレ。四つん這いなんかになったら羞恥心にTP使ってゲームオーバーだよマジで」
柄にもなくとぼとぼと俯いて呟くグリッド。
彼の様子をじっと見ていたメルディは、とてとてと歩いて傍にあった瓦礫の山に手をかけた。
「メルディ、大丈夫だ! 俺のせいでお前に小さな傷1つでもつけたって知られたら、俺キールに殺されっから!!」
「ロイドやコレットだったら、グリッドがこと手伝うよ、きっと。だから気にしなくていいな」
必死に止めるグリッドをよそに、彼女は手を止めようとしない。
まるで手を動かす理由をこんながらくたの山の中から見つけようとするかのような姿に、彼はメルディの手首を掴んだ。
「ロイドやコレットがするから、お前もするのか? そりゃあ唯のおままごとだろ。
 他人がするから自分もする、なんての駄目過ぎるだろ」
その言葉は今のメルディの状態を鑑みれば酷なものだったが、それでも彼は伝えなければならないと思った。
案の定、彼女は黙り込んでしまった。瓦礫にかけた手が強く握られている。
下手すればその僅かな振動でもこの無骨な物質の山は崩れてしまうのではないかと、そう思わせる強さだった。
自分の情けなさを糾弾された恥よりも、あたかもロイドとコレットのことを侮辱されたような気がしたのだと、グリッドは悟った。
確かに彼女の行為は真似めいたものかもしれなかった。だが、それでも2人の心だけは汚されるものではない。
何より、そう思ったメルディの心はばらばらに切り刻んでいいものではないのだ。
手首にかけていた手を離し、彼も民家の残骸に手を伸ばす。
「ま、動かないよりはよっぽどマシか。そうしたい、って思ったのは自分だもんな」
がちゃがちゃと宝物でも見つけようとするようにグリッドは手を動かして山をあさる。
夕日の中、2人並んで大きなゴミを除く光景は何ともおかしかった。
「……メルディ、何がしたいかまだ分からないな」
「んん、俺もよく分かる。何をしても、結局ただのフリじゃないかって気がしてな。だからお前にさっきあんなことを言った。すまん」
「メルディも、フリか?」
「いや、違った。確かにロイドやコレットの真似かもしれないが、そこには確かにメルディの意思があった。
 そこが俺とは違った。俺は自分すらなかったから、ただのフリだった」
「……よく分かんないな。メルディと、グリッドは違うか?」
俯くメルディにグリッドはにやりと笑う。
「違うね。そりゃもう190度くらい違う。それだけ自分で決めるってのは重いんだ。それに言ったじゃないか、あいつの傍にいるって」
152落陽に帰り道は見えるのか 6:2009/03/10(火) 23:28:58 ID:EmiOXHyR0
下卑たいやらしい笑みを浮かべると、メルディの頬にほんのり赤みが差したような気がした。
というのも、単に夕日の光が広がっていたからそう見えたのかもしれなかったからである。
メルディは黙り込んだまま、作業に没頭するように残骸をあさった。それを、手を止めたグリッドは無言で見ていた。
自分が手を動かさずとも、メルディはちゃんと自分の手で探してくれているからだ。
先刻ユアンの記憶を垣間見て、否、混同しかねたことを思い出しながら、グリッドは彼女の後ろ姿に自分を重ねようとしていた。
――とはいえ、傍から見れば唯のサボリなのだが。
「あ、グリッド。椅子、椅子があったな」
「本当か!?」
積もっていた瓦礫は周囲に散らばり、山があった場所には四本足で背もたれのある椅子が横たわっていた。
椅子の上に残っているがらくたをグリッドが除け、椅子を立たせる。
埋もれてこそいたが、元々頑丈な素材だったのか、これといった損傷はなかった。
脚の長さが合っていないのか、少々がたついてしまうことが唯一惜しかったが、キールも及第点を出してくれるだろう。
思わずにんまりと笑うグリッド。
「上出来だメルディ。頑張ればお天道様はちゃんと見ててくれるってこったな。これで脱・羞恥プレイ!」
グリッドの言葉を理解できていないのか、メルディは高々と腕を掲げるグリッドをきょとんとして見ていた。
そんなことも露知らず、グリッドは椅子を片手で担ぎ上げ、瓦礫のない平らな場所へと置いた。
1度周りを見渡し、まだキールたちが来ていないことを確認して、怪しげな笑みを浮かべる。
「メルディ、ちょっとあっち向いててくれないか?」
彼が指差した方向に、メルディは怪訝に思いながらも振り向く。
グリッドはどこぞの女神の生まれ変わりの少女のような、とても褒められたものではない笑みを上げた。
(ジファイブ市街戦トラップマスターのグリッド様を嘗めるなよォ……? 何なら命かけてこれに電撃流したっていいんだぜェ?)
グリッドは手の中で転がしていたそれを、数個椅子の上へと置いた。
この島で4人、共にいた漆黒の翼のなごりが悪い形で発現されようとしていた。

ちなみに、これは古典的でありながらもなかなかの痛みを発させるのだが、
当のターゲットには通じなかったことはまた別の話である。

グリッドは空を見上げ、ある1点に目を移す。
どうみても自然に発したものではない多くの線状の雲が、赤い空を横切るように伸びている。
少なくとも、グリッドの才覚からすればきな臭さを嗅ぎ取るには十分過ぎたものだった。
153落陽に帰り道は見えるのか 7:2009/03/10(火) 23:30:54 ID:EmiOXHyR0
ヴェイグの問い掛けを聞いたティトレイは面食らったような顔をして、そのまま沈黙してしまった。
どうやら自分が聖獣の力を行使したときのことを思い出しているらしく、腕を組んでうんうんと唸っている。
否定の声をすぐに上げないあたり、ティトレイにも思い当たる節があるのだろう。
確かに、聖獣の力については先程の情報交換でも話題の端にも上がらなかった。
それほど無意識の存在であり、認識の外にある当たり前のものだったのだ。
腕をほどき、口にくわえていた草を指でいじる。既に噛み過ぎて茎の根元はぼろぼろになっていた。
「確か、聖獣って俺たちがユリスを倒した後、カレギアを離れたんだから……使えないはずだよな?」
「そうだ。だが、現にこうして俺は使えている」
矛盾しながらも、確かに存在する事実。
異世界の人間が多く集まるこの世界には自らのあずかり知らないものや知識も多々あったが、
それでも自分たちの世界に関わることでは話が変わってくる。
「俺はあんな状態だったから、正直気にもしなかった……何でだ? 何で、使えるんだ?」
「分からない。……俺はこの島に来て、1度だけ……シャオルーンの声を聞いたような、気がする」
「シャオルーン? まさか、この世界に聖獣が来てるってのかよ?」
ティトレイの突飛な声にも、ヴェイグは首を横に振るばかりだった。
聞こえたというのも意識が朦朧とした時のことで、今は特に聞こえるわけではない。
理由も分からない上、いくら可能性を考えたところで当人たちから明確な答えを聞けないのでは、それらが推論の域を出ることはなかった。
旅を経るごとにうまく操ってきたからか、聖獣の力をこの世界で初めて意識したのは、
混濁した意識の中、ハロルドの手を止めようとしたときだ。
もっとも、あのときはそのまま気絶してしまったため、詳しく覚えてはいない。
その後イ―フォンの闇の力を使うティトレイと遭遇し、やっと明瞭に聖獣の力の存在を認識した。
違和感――というものがなかったわけではないが、状況の難解さがそんな暇を与えず、何より使わざるを得ない理由ができた。
だからこそ、今まで聖獣の力を使用してきたのだ。
ただの、存在は分かっていても、何故かというその理由にまで意識が向かなかっただけの話。
「でも、ま、理由が分からなくても実際使えるなら、それに越したことはねえんじゃないか?
 リバウンドもあるみたいだし、聖獣の力なのは本当みたいだ」
そんな自分の思考とは正反対に、あっけらかんとティトレイは朗笑を浮かべて言った。
考えても意味がないとでも主張するかのような結論に、深く考えている自分が馬鹿にされているような感覚に陥った。
「本当に頼ってもいいのか? 考え方によっては、得体の知れない……」
「おいおい、その得体の知れない力で俺を元に戻そうとしたヴェイグさんが言うなよ」
思わず押し黙ってしまったヴェイグはそのまま言葉を引っ込めるしかなかった。
確かに、使えるものは使っていった方がいいというティトレイの言説は、こんな状況下に放り込まれたこともあり、理にかなっている。
それでもヴェイグは、問題が解決したからこそ、歯と歯の間に何かが挟まったときのような不良感を覚えていた。
かつてジューダスと共に行動していたときもフォルスのことを聞かれ、更には首輪の解除方法にある程度の目処をつけたようだった。
考えたこともなかったが、もしかしたら自分たちの力は、自分たちが思っている以上に謎を秘めているのかもしれない。
「……けど、そうだな。おっさんは俺の力にかなり興味あったみたいだし。そんなに他の世界のとは違えのか……?」
ヴェイグの考えを読んだように、ティトレイが独り言をこぼす。
「あー、考えても分かりゃしねえ。こういうのは頭いい奴の仕事だよな!」
ふんぞり返って頭を組んだティトレイに、ヴェイグは「そうだな」と一言答えた。
頭のいい奴、と考えキールを連想した。
そうして西の状況と、自分を中央に向かうよう指示したキールに少しの不安を覚えた。
今頃あっちはどうなっているのか、まさか全員クレスに殺されてしまっているのではないか――そんな根拠のない不安ばかりが募った。
本当は、カイルを待つためとはいえここに残っているべきではないのだ。
ティトレイを引き連れて西に向かった方が、ロイドたちの手助けになる。
それにティトレイはクレスと組んでいたのだから、もしかしたら説得も可能かもしれない。
(そうだ、その方がよっぽど合理的じゃないか)
――――それでも自分の足は動こうとしなかった。
死体の山から目を逸らしたいのか、それとも仲間たちを信頼しているからなのか。
何にせよ、自分の身体はどうしようもなく不器用だった。
154落陽に帰り道は見えるのか 8:2009/03/10(火) 23:33:05 ID:EmiOXHyR0
無事に椅子を設置し終えたグリッドたちは、改めて北地区へと向かっていた。メルディを背負い疾走する。
これまで落とし穴に引っ掛かっていないのは、彼の運がなす技か、それとも落ちる前に穴を通り抜けてしまっているからか。
天使化による強化は破壊的と言えるまでの力を引き出させていたが、肝心の背中の羽はただのお飾りなのか、
風にそよいで悠然としているだけだ。
背中のメルディが触れてみても後天性の羽であるため、簡単にすり抜けてしまう。
「グリッドのはロイドが翼よりちっちゃいんだな」
「甘いなメルディ。俺の翼は目に見えないところにあるんだぜ!」
「ううん、グリッドのはこのサイズな。でも、それでもグリッドは飛べてるよ」
あっさりと言われてしまったグリッドは頭をうなだらせ、本来感じないはずの重さがぐっと増したように感じたが、めげずに走り続けた。
住宅街を駆け、いくつかの倒壊した家屋が現れ始める。
そして村というくくりが終わりそうになり、軒のラインが切れた頃、目の前に見えてきたのは石に腰かける2人の青年――――
「やあっとグリッド便終了だ。お届け物はモノじゃなく言葉、ってな」
とはいえただの言伝の上にモノもあるんだが、と付け足してから、グリッドは大きく息を吸い込む。
そして思いっきり叫んだ。



不安の影に囚われていた中、グリッドたちの訪問はヴェイグにとって僥倖だった。
腕が1本なくなっていることに驚きもしたが、当人はけろっとした表情で
「あー腕持ってきてヴェイグにくっつけてもらえばよかったかなー」などとのたまうものだから、ヴェイグの心配はあっけなく吹き飛ばされた。
それに、ティトレイが普通に行動を共にしていることに驚いたのは相手も同じだった。
北地区でのことを話すと、グリッドは笑ってうんうんと頷いていた。
そして、その笑顔ががらっと変わって、西ではロイドが死んだことがヴェイグ達に伝えられた。
ロイドたちを見捨ててきたも同然であるヴェイグは、複雑な思いを抱えながらも何も言うことが出来なかった。
自分を支えてくれた仲間の1人だというのに、最期に立ち会うこともなかった。得も言われぬ罪悪感が心中を漂う。
「そんな顔をするんじゃない。ここに来たのはお前の意思だろう。なら、悲しみはしても後悔はするんじゃない」
そう言うグリッドの表情も、眉間に皺が寄せられ、ぐしゃぐしゃになりかけていた。
少なくとも、遠くから守れなかったことよりも、その場にいて仲間を目の前で殺される方が辛い。
その発想に至ってヴェイグは申し訳なさげに俯いた。
「クレス……やっぱりあいつ……」
「クレスは俺とキールのユニゾンアタックで撃破した。……と、ティトレイだったか。1つ話がある」
手早くメルディを降ろし、つかつかと近寄るグリッド。ティトレイが返事の音を作る前に事は終わっていた。
155落陽に帰り道は見えるのか 9:2009/03/10(火) 23:36:04 ID:EmiOXHyR0
一閃。
まさにそう例えてもおかしくはない左からのストレートが、ごうを音を立ててティトレイの頬をえぐっていた。
不意の攻撃と殴打自体の速さも相まって、ティトレイは受け身を取ることもなく地に転がった。
ヴェイグとメルディも多少なりとも驚いた顔をしていた――とはいえヴェイグはユニゾンアタックについて聞いた時点で驚いていた――が、
何よりも驚いているのはティトレイ自身だった。
「昨日はどうもお世話になりました。あんな超弩級の砲撃に、毒まで喰らわせおって!!」
「い、いや秘奥義はともかく、毒はおっさんがしたことだろ!?」
反論する前にもう一撃。半身を起こしたところで今度は裏拳で反対側に喰らい、両側とも赤くなってしまっている。
一方的な加虐にティトレイも怒気をはらんだ目つきでグリッドを見るが、当人は気にも留めず、目を閉じて鼻から息をもらした。
「……今のはジェイとヴェイグの分だ。2人でこの一発でおしまい」
噛みつかんとまでに膨れ上がっていた怒気が、すっと冷めていったようにヴェイグは思えた。
この言葉に驚愕したのは何もティトレイだけではなく、ヴェイグもその1人だった。
ジェイを死なせてしまったのは誤殺した自分が原因だと考えていたのに、グリッドは遠慮もなくティトレイを殴った。
確かにあの状況を招いたのはティトレイだ。だが、実際問題歩いていただけで、何の手も出していない。
むしろ殺されようとする側だったのだ。ヴェイグからしたら、何故こう非を咎められるのか、訳が分からなかった。
――いや、もしかしたら。ヴェイグの中で1つの光景が蘇る。
グリッドは、ジェイが死ぬ状況を招いたことを責めているのではないのかもしれない。
それなら単に「ジェイの分」と、自分を含める必要はないのだから。
ティトレイは何も言わず沈黙していたが、殴られた頬に触れた後、ぱんぱんと両手で2回叩いた。
心なしか、左頬の方が赤く腫れている。
「分かってるぜ。俺はもう、嘘はつかないって決めてんだ」
それを聞いて、にやりとグリッドの口角が上がる。
「我らが新生・漆黒の翼はバトルロワイアルに抗う者なら誰でも入団可能である。というわけで! お前は今日から一員だ」
「勝手に決めんなよ! ……でも漆黒の翼ってあれだろ、ギンナルたちのだろ? なら結構楽しそうかもな」
あれを楽しそうと思う感覚がどうかと思うが、とヴェイグは呆れそうにもなったが、それでも気持ちは重苦しいものではなかった。
グリッドのこの才能は以前からもあったような気がするが、どこか違うように思えると、ヴェイグはリーダーを見ながら耽っていた。
「で、お前は何しに来たんだよ?」
「おお、そうだった。収集命令だ、キールが中央に集まれと」
その言葉を聞いても2人の表情はいまいちぱっとしなかった。
カイルのことを既に聞いていたグリッドは片腕でぽりぽりと頭をかいて、弱った様子を見せる。
「まあ、カイルも連れてこいと言っていたからな。分かった、だが必ず5分前には広場に来い。それともう1つ、条件がある」
グリッドはサックから、キールに渡された首輪とメモを取り出す。何も言わず、ヴェイグたちの方へと差し出す。
「……これを、どうしろと?」
「知らん。キールから言われたんだ。詳しくはそれを見ろ。あと、できればお前よりティトレイの方がいいとも言っていた」
「はあ? 何で俺が?」
「だから知らん」
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 23:42:15 ID:mDicjvnvO
支援
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 23:45:53 ID:8o83bYweO
支援
158落陽に帰り道は見えるのか 10:2009/03/11(水) 00:46:07 ID:3fnSMscw0
鼻息を荒くし何故自信満々に語るグリッドに、ヴェイグは頭痛を起こしそうになったが、
とりあえず首輪を1つ受け取るとそれはティトレイに渡し、言われた通りにメモを見た。
内容はフォルスに関する記述ばかりで、大抵が以前キールに話したことばかりだ。
首輪と一緒に渡されたものの、首輪の構造などが書かれたメモは一切ない。
少なくとも、キールは首輪の解除方法を求めているわけではないのだろう。
メモの端々に書かれている追記にも、他系統の術との比較など、フォルスの特異性に関しての記述が目立つ。
(ティトレイも以前、ミトスの指示でフォルスによる首輪の爆破を行ったと言っていた。
 キールもミトスも、あのデミテルも……やはり、フォルスは何か他とは違うのか……?)
沈黙したままヴェイグは一考する。
先程まで頭のいい人間の仕事だと思っていたことが、その人間から逆に返し手を食らってしまった。
ただ、わざわざあのキールが頼むということは、やはりキールだけでは出来ないことなのだ。
となると、やはり自分たちにしかないものを必要としているということなのか。
北の空に目を移すと、なおも光は絶えていない。むしろ、更に激しさを増しているようだ。
発生した雲や、明らかに一部帯だけにかかっている靄。
カイルとミトスは、互いの全力を出し合ってぶつかっているのだろう。
そうそう終わるものではないと、嬉しいのか悲しいのか分からずにそう思った。
「恐らく、これで俺たちの力を試せということなんだろう。引き受ける」
「そうか、助かる。じゃあ俺たちは……」
「いや、待て」
立ち去ろうとするグリッドを引き止めるが、ヴェイグの視線は彼ではなく、
その後ろで1人クィッキーの傷を看ているメルディへと向けられていた。
ぼんやりと青い毛並みを撫でていた彼女は、その視線に気づいたのか、ゆっくりと陰った瞳を3人の方へと向けた。
ヴェイグの隣にいたティトレイが、少しだけ瞳を大きくする。そのことに気がついたのは誰もいなかった。
「メルディ、こっちに来てほしい」
不思議そうな面持ちをしながら、メルディはクィッキーを肩に乗せて近寄る。
1歩分の距離を空けて立ち止まったが、ヴェイグは小さく手招きをして更に呼んだ。
手を伸ばせば簡単に顔に触れられる距離にまでなり、ヴェイグはティトレイの方に振り向く。
そして、キールに渡されたメモの一文を指差して示す。

『メルディの首輪をフォルスでコーティングしてほしい。変な気は起こすな。下手なことはするな。
 ヴェイグなら外側を氷で、ティトレイの場合はヴェイグと同程度でいい。それ以上のことをしたら殺す』

大変物騒な内容である。自分が離れている間に一体何があったのかと疑いたくもなる内容である。
そこまで言うなら頼まなければいいのに、とさえ思ってしまう。
ヴェイグはティトレイの方を見たまま動かない。
159落陽に帰り道は見えるのか 11:2009/03/11(水) 00:47:32 ID:3fnSMscw0
「……俺の方がいいって、そういうことかよ。ヴェイグじゃ凍傷とかしちまいそうだもんな」
重たい息をついて、メルディの方へと向き直るティトレイ。
曇り切ってしまった深紫色の瞳は、彼には見るに堪えないものだった。
彼女の表情は鏡に見立てたガラスのようで、いつか見た自分の表情と全く瓜二つだったのだ。
かつての姿を想起させる彼女の姿に、こんな顔をしていたのだと胸が苦しくなる。
何よりも――何故そうなったのかまでは分からずとも――彼女は深い絶望を抱いているのだと分かるのだ。
それだけではあるが、それがどんなに辛く苦しいのかは、ティトレイも分かっている。
「……あんた、俺に似てるな」
聞こえるか聞こえないかの境目くらいの声量でティトレイは言う。
「大丈夫、諦めさえしなければ、絶対何とかなる」
それでも、届かないと思うのは何故なのか。
当然だ、その人にはその人の問題があり、それは自ら乗り越えていかなければならないのだから。
自分にできるのはせめてもの励ましくらいだ。きっと、届きはしないだろう。彼女の目は変わらない。
だが、言うことにこそ意味がある。自分がその証人だと、ティトレイは分かっていた。
フォルスを発動させ、首輪に蔓を巻きつけていく。おまけにティートレーイの花を一輪つけてあげた。
少し息苦しいのではないか、と思ったが、それはメルディの表情には表れなくてうかがい知れなかった。
「こんなもんでいいのか? イマイチよく分かんねえんだけど」
確かに、これが一体どんな影響を及ぼすのか、正直3人には皆目見当もつかなかった。
しかしこれ以上すれば逆にこちらがキールに首を飛ばされてしまう。
ましてや、首輪に手を出すというのは、普通に考えれば度胸のいることなのだ。
下手すれば爆発しかねないものを、何故わざわざ空の首輪ではなくメルディの首輪で確かめたのか、ヴェイグには疑問を禁じ得なかった。
「まあ、これで用件はおしまいだな。再度通告だが、時間までには必ず来い。それ以上は保障できんとのこと」
「……分かっている」
返事を受け取ると、グリッドは再度メルディをおぶり、中央に向かって走り出した。
最後に見たグリッドの表情は、陰りのない不敵な笑顔――だったように思う。
すぐに小さくなっていく後ろ姿を見送りながら、ヴェイグは背に広がる空の向こうのことを考えた。
果たして、時間通りに戻ってくることは出来るのだろうか、と。
さっきまで手に持っていた首輪が、形もないのに急に手の中にあるような気がしてきて、ずしりと更に重くなった。
密接に肌とくっつきそのまま身体の一部となって剥がれなくなってしまうようだった。
時間と、たった1つしかない掛け替えのない代償を自分に伝えてきている。
周りに漂う時間がどんどん遅延していき、手袋の中でゆっくりと汗が流れる。
思考と自分という存在だけが、やけにくっきりと浮かび上がっている。
自分の中で、どこか「大丈夫」だという気持ちがあった。
だが、突如突きつけられた時間という現実は、周りの空を冷たく、渇いたものにしていった。
そして何よりも、犯した罪はなおも自分にこびり付いているのだと、嘲り笑っていった。
グリッドたちの帰っていく最後の姿が目に映る。
今の自分の表情はあいつとは全く違うのだろう、とヴェイグは思った。
カイルは本当に戻ってこれるのか――――自分は、戻れるのだろうか。
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 00:48:20 ID:P1CPj1siO
支援
161落陽に帰り道は見えるのか 12:2009/03/11(水) 00:48:35 ID:3fnSMscw0
遠くから聞こえた爆発音に、ヴェイグは我に返ったように身体を震わせた。
音がした方向を見ると、ティトレイが自前の弓を構えており、その前方には地面が焦げ付いたのだろう小さな跡が残っていた。
視線に気づいたのか、ティトレイは振り返ってヴェイグの方を見た。
「ヴェイグ? どうしたんだよ、ぼーっとしちまって」
まだぼんやりとした表情を浮かべていたのか、ティトレイは驚きと心配が混ざったような面持ちだった。
何も言わず焦げ跡の方を見ると、「ああ」と首を振りながら言い、そのまま言葉を続けた。
「早いとこ、これやっちまった方がいいんじゃねえかと思って。カイルたちがいつ帰ってくるか分かんねえんだから。
 にしても意外とこれあっけなく爆発するんだな。俺が前やった時はもっと違ったのに――――」
爆発後を指し示しながら説明するティトレイの言葉も、ヴェイグには残骸としてしか頭に残らなかった。
どうしても、先刻の感覚が心身にこびりついて離れない。
昨夜の海岸で首輪を爆発させたときのことを語っていたティトレイも、親友の異変に勘づいたのか、
いつもは快活明瞭な笑顔を珍しく曇らせた。
「……俺、何となくだけどよ、今だけはお前が考えてること分かるよ」
そう呟いて、ティトレイはグリッドたちが消えていった街路の方へ顔を動かした。
姿はもう消えてしまっているが、網膜に焼きついた残像として、後ろ姿と影の幻が道に浮かび上がる。
「多分、俺も同じことを思ったんだ」
ヴェイグは答えはしない。少なくとも、何か言葉を発してしまったら、
この島に来て自分の中で欠けてしまったものはあるのだと、痛烈に感じてしまうから。
ティトレイも言葉を促すようなことはしなかった。欠落は2人とも同じことが言えた。
近くの岩にティトレイは腰かける。再び草を出して、それで口に鍵を掛けるように口内に差し込んだ。
周囲には夕闇と静寂だけが満ちる。それでも、赤い空に浮かぶ戦いの軌跡は消えそうにない。
帰ってこない空の星々、帰っていく後ろ姿、それらを思い浮かべながら、
2人は懐かしい世界の風景に自分の姿を重ねることがどんな意味を持つのか、浮かんでは消える思いを定めようとしていた。
162落陽に帰り道は見えるのか 13:2009/03/11(水) 00:49:30 ID:3fnSMscw0
【グリッド 生存確認】
状態:HP15% TP10% プリムラ・ユアンのサック所持 天使化 心臓喪失 自分が失われることへの不安
   左脇腹から胸に掛けて中裂傷 右腹部貫通 左太股貫通 右手小指骨折 左右胸部貫通 右腕損失
習得スキル:『通常攻撃三連』『瞬雷剣』『ライトニング』『サンダーブレード』
      『スパークウェブ』『衝破爆雷陣』『天翔雷斬撃』『インディグネイション』
所持品:リーダー用漆黒の翼のバッジ 漆黒の輝石 首輪×3 ジェットブーツ
    ソーサラーリング@雷属性モード リバヴィウス鉱 マジックミスト 漆黒の翼バッジ×5
基本行動方針:バトルロワイアルを否定する。現状ではキールの方策に従う。
第一行動方針:メルディを連れて中央広場に向かう
第二行動方針:キールにヴェイグたちと首輪のことを説明する
現在位置:C3村北地区→中央広場

【メルディ 生存確認】
状態:TP35% 生への失望?(TP最大値が半減。上級術で廃人化?) 神の罪の意識
   キールにサインを教わった 首輪フォルス付加状態
所持品:スカウトオーブ・少ない トレカ カードキー ウグイスブエ BCロッド 
    双眼鏡 漆黒の翼のバッジ クィッキー(戦闘不可) マジカルポーチ ニンジン
基本行動方針:本当の意味で、ロイドが見たものを知る
第一行動方針:グリッドと共に中央広場に戻る
第二行動方針:キールを独りにしない
現在位置:C3村北地区→中央広場


【ティトレイ=クロウ 生存確認】
状態:HP20%(動くまで回復継続中) TP35% リバウンド克服 放送をまともに聞いていない 背部裂傷 不安
所持品:フィートシンボル メンタルバングル バトルブック(半分燃焼) チンクエディア
    オーガアクス 短弓(腕に装着)
基本行動方針:罪を受け止め生きる
第一行動方針:カイルの帰還を待つ
第二行動方針:ミントの邪魔をさせない
現在位置:C3村北地区

【ヴェイグ=リュングベル 生存確認】
状態:HP25% TP25% 他人の死への拒絶 リオンのサック所持 刺傷 不安
   両腕内出血 背中3箇所裂傷 胸に裂傷 打撲
   軽微疲労 左眼失明(眼球破裂、眼窩を布で覆ってます) 胸甲無し
所持品:忍刀桔梗 ミトスの手紙 漆黒の翼のバッジ ナイトメアブーツ ホーリィリング
基本行動方針:罪を受け止め生きる
第一行動方針:カイルの帰還を待つ
第二行動方針:ロイド達の安否が気になる
第三行動方針:カイルに全てを告げる
現在位置:C3村北地区


*この後、ヴェイグとティトレイは356話のポプラおばさんの話に繋がる形になります。
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 00:52:07 ID:3fnSMscw0
遅くなりました。さるさんが終わったので投下しました。
最後にもありますが、この話でのヴェイグたちの時間軸は356話より前になります。

それでは、何かご質問や意見などありましたらお願いします。
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 02:18:17 ID:P1CPj1siO
投下乙です
代理投下できず申し訳ない

聖獣フラグktkrフォルスの謎も本ルートじゃほとんど解明されてないし
あのややこしい造りの首輪から強引にとはいえ無事だったんだから何かあるんだろうな
それにしてもグリッドうらやましいなティトレイには及ばないが
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 09:21:46 ID:vCNI+O4TO
新作乙。まさかのグリッド。画ビョウ仕掛ける現場が陰湿なのに笑えるのはグリッドの人徳か。
滑り込みの妙を感じるいい繋ぎ。GJ!
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 22:44:48 ID:iEBCYWYv0
新作来てたか、乙です。

なるほど、ヴェイグたちとの時間差をこういう風に埋めたのか。
なんかジェイが一人でC3をこっそり駆け巡った話を思い出した。
聖獣の問題も持ち上がって、どうなるかwktkするしかない。
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 22:46:30 ID:Rod18zn2O
投下乙
もう放送の後でしか出ないと思ってた、リバースコンビが出てビックリ
殴られるティトレイが格好良かった
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 19:19:51 ID:HfweiUmwO
お?これ第2回?
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 22:23:17 ID:rM22KbsP0
これは第1回のルート分岐。第二回は別のスレでやってる。
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 01:00:02 ID:agaSIHGL0
>>169
d。その別のスレってのを探してくる
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 07:15:56 ID:GNyaXuYa0
マイソロ2の攻略本で全シリーズ間のつながりが説明されたな
まあ、ロワに絡めても絡めなくても問題ない設定だったけれど
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 07:50:43 ID:8T/VpE5mO
まじか。kwsk
173名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 08:07:07 ID:GNyaXuYa0
簡単に説明すると始祖の世界樹のようなものが存在していて
それぞれの世界の記憶がその世界樹へ集まり種子となり新たな世界を構築する
つまりマイソロやなりダンで歴代キャラがいるのはシリーズ世界の記憶を受け継いでいるから
そしてシリーズ作品は全て世界樹の種子から出来ておりその世界樹とつながっている
こんな感じ。もっと上手く説明できる人がいたらしてくれ
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 09:13:38 ID:CRnMgFCAO
どう見ても始祖の世界樹=バンナムです、本当にありがとうございました
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 14:13:48 ID:GNyaXuYa0
追記すると世界=星かは分からないが
PとDの時間に関する理が違うので宇宙そのものが世界樹で創られているっぽいかな?
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 18:30:48 ID:u95z1tH9O
となると、原作世界にいるキャラと、マイソロ世界にいるキャラは同一存在ではなく並行存在、ってことになるのか?

どのみち興味深い設定だし、テイルズの各世界をクロスオーバーさせるツールが公式から
提供されたんなら、この設定を利用するのが一番無難じゃね?
とりあえず、展開予想スレに行ってくるか。
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 19:08:06 ID:CRnMgFCAO
気になって思わず買ってきてしまったが、言ってたのはあくまでアルファの人だから
公式というよりは準公式くらいじゃないかね。考え方のひとつ、みたいな
アルファは世界観をよくパラレルワールドとかSF的に描くしね
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 23:51:16 ID:kF1B9yF80
アルファってか芝の人だろ、それw

でもまあ、そういう根幹に関わる設定をナムコ側が了承して無いってことも無いと思うぜ
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 02:31:57 ID:Eq5Q0pggO
そういやもうそろそろ通算400話になるのか
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 03:36:01 ID:7+swAfn6O
最近から携帯用まとめで見始めたんだけどアナザー357話の最後って次の話に繋がってる?
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 04:18:07 ID:KLssIxPG0
>>180
後半のキールのクレスフルボッコはコレットの想像……のはず。
地の分がよく分からん語り口調になってるから自信は無い。
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 22:55:45 ID:7+swAfn6O
>>181
あぁ、次の「これじゃ駄目〜」ってトコまでが想像だったのか、読んでる時さっぱりだった。ありがとう。
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 12:54:23 ID:pv3e5LguO
保守
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 20:18:35 ID:hI5eGaKQO
2ndでも同じこと話してるが、このロワの主人公やヒロインって誰なんだろうか?
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 22:12:41 ID:FK5or8axO
ロイドは主人公と言っても問題無いよな?
ヒロインはカイr…いや何でもない
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 22:13:29 ID:j93+xWy90
>>184
俺も言おうと思ってたw

やっぱ主人公はグリッドかね。ヒロインはカイr・・・アトワイトかな。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/27(金) 00:33:39 ID:svhaT2JtO
個人的に主人公は元優勝者
ヒロインは、ティトレイが女だったらティトレイと言うのだが、残念ながら女ではないのでコレット
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/27(金) 21:22:40 ID:qfoPcvLE0
主人公−ヒロインという繋がりを重視するならヴェイグとカイ…かな。

本編ヴェイグはダークヒーローっぽいけど。
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:40:17 ID:UsETVxIlO
保守
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 17:40:51 ID:5Xt78FedO
最近読み始めた
クレスのドラゴンボールというかブリーチ的な強さに笑った
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 00:34:52 ID:na39guTl0
クレス「僕の次元斬は百八式まであるぞ」
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 11:12:57 ID:n30pTE3PO
ブリーチといえば今週のジャンプ読んでて吹いた
まんまこのロワのクレスとコレットじゃねえかw
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 12:18:50 ID:faZj8RUiO
クレス「何・・・だと・・・!」
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 14:37:18 ID:i+kOb3dcO
デミテルが作ったのは厨二病をL5まで上げる薬だったのか
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 17:14:51 ID:zG6lVU7cO
心臓の所に穴が空いてるってのもブリーチと微妙に被る
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 20:19:04 ID:bq2/M1DxO
クレスはブリーチのパロでグリッド戦の時「なん…だと」って言ってるしなw
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 20:22:07 ID:Bxs3ojr/0
自分の心象世界の中でもう一人の自分と戦ってるしな
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 13:24:47 ID:uOht7F+r0
最近読み始めたんだが、まとめサイトって更新止まってる?
199名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 17:28:25 ID:K44h07XJO
パソコンのまとめは結構前に更新止まってるな
携帯のまとめなら最新話も置いてあるからそれ見るといいよ
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 02:22:17 ID:7c2NBLnI0
>>199
携帯の方確認してから書き込むべきだったorz
ありがとう、早速読んでくる
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 00:16:38 ID:qU5Zwyc8O
保守
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 08:36:09 ID:ZLglXM0cO
G様華麗に保守
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/19(日) 10:15:26 ID:wDWwxsmgO
今日読み返したんだが、1stもやっとここまできたかと思った。
いや、もう終盤なんだなって改めて思ったって言うか。
恐らく次の大作で英雄戦に決着がつき、次でグリッド達とキールが合流して、ミトスは勝ったとしても戦意喪失だろうから次に生存者集合、クレスといざこざがあってミクトランの元へ…だよな。

あと10話〜20話で完結なんじゃないかと考えたら感慨深いものがある。
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/19(日) 14:39:43 ID:TS2fbAOZO
とは言え、ここの書き手陣ならもうちょい引っ張るんじゃね?

アナザーはキールVSクレス戦にも相当尺を取ったし、
何より本編で未回収の伏線も、アナザーですらまだほとんど回収らしい回収がされていない。
案外、これでようやく折り返しが見えてきた程度、だったりするかも知れん。
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 21:30:54 ID:ojo0MEYWO
やっぱ鍵はフォルスなのかなぁ…頑張れエクスフィア組
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/25(土) 16:07:42 ID:tsiXIZXsO
些細な誤字はいくつか見かけたけど一番気になったのは361話最後のHP TPウンコウンだった。
207名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/25(土) 17:30:36 ID:gVyyOnzEO
ああUNKNOWNがUNKOWNになってるのかw
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/26(日) 23:47:25 ID:Y87pckh6O
UNKOWNワロタ
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/01(金) 00:30:56 ID:NFC6pOgaO
これで最後だ! 保守
210名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 12:56:04 ID:rU1DamUnO
保守
211名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 19:49:35 ID:/48TyPLjO
唐突だけど、このロワのマスコット的なキャラって誰になると思う?
212名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 19:56:06 ID:Il1U1z4eO
クイッキー一択だな
他に居たっけ?
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 20:24:09 ID:Jg/WTqNSO
牛さんを推してみる
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 23:44:18 ID:WMSv6AJR0
>>213
マス・・・コット・・・・・・・?
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/08(金) 01:36:15 ID:kyfDic4pO
俺はエクスフィギュア一択だな(マウリッツも酢飯も込みで)
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/08(金) 01:37:26 ID:ZR2Q9HJw0
マスコット?
アビシオン人形一択だろ常識的に考えて
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/08(金) 08:28:14 ID:72dywnRtO
スレ開いたらいきなりウンコウンとか吹いたじゃねーかwww
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/10(日) 17:55:49 ID:p9LjgeKx0
ウ○コウンの張本人です。いろいろすいませんでしたw ○ンコw
対応遅れてしまいましたが、修正してくださったまとめ氏に感謝します。

ついでというにはアレなのですが、最後の投下から約2ヶ月経ってしまったので謝罪を。
カイル・ミトス戦を待たせてしまいスレを見に来てくださってる読み手の方々には申し訳ありません。
現在の進捗は60%といったところです。5月の間には成果を示せるよう努力いたしますので、もうしばらくお待ち下さい。

219名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/10(日) 22:21:37 ID:G4WPcvXtO
いえいえ、いくらでもお待ちしますよー
体に気をつけて頑張って下さい
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/10(日) 23:07:26 ID:yqFliY9vO
いえいえ楽しみに待っていますよー。がんばって下さいー
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 01:11:12 ID:dL3sXs9DO
同じく楽しみ待ってます
いつまでも待ちますよ
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 03:27:08 ID:zTaFgJcOO
我慢できないんで6月まで時間跳躍してきます
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 08:56:30 ID:16UookTLO
>>222=リアラ
224名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:49:49 ID:hh1frMfGO
保守る
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 16:20:52 ID:K8D/mq6gO
保守
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:53:49 ID:rsE4Rov/0
おまえら、そんなに頻繁に保守しなくても落ちゃしねーよw
227名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:16:55 ID:g6Gl9l7rO
それだけ期待してるって事さ。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/22(金) 01:50:40 ID:WO7zVA3/0
じゃあ作品が来るまでの時間潰し(?)ってことで
特に好きな話とかある?
あとキャラとかコンビとか
229名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/22(金) 01:52:12 ID:tRUvNQI/0
ジューダス・ヴェイグのコンビは結構好きだった
230名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/22(金) 08:45:53 ID:SpcsR5kv0
ヴェイグ・ティトレイとクレス・ティトレイとトーマ・ミミーとコレット・リアラのコンビが好きだ
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/22(金) 13:33:52 ID:FZgzt6vI0
ジューダス・ロイドとトーマ・ミミーのコンビが好きだ
クラトス・リアラと漆黒メンバーも結構好き
あと終盤のキール見てるとリッド・キールコンビだった頃が懐かしく感じる
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/22(金) 14:16:24 ID:oYh51yq50
アナザーだとミトスとアトワイトのコンビが好きだな。
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/22(金) 14:48:09 ID:7bWg2C3JO
やはり牛さんとミミーかな。
後バルバトスとマグニス。
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/22(金) 16:16:53 ID:4dp5wFwyO
ヴェイグとグリッドの取り合わせが結構好きだな
あとやっぱり牛さんとミミー
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/23(土) 09:40:20 ID:a5YCJgYMO
スタンとミントのコンビが結構好き
あとファラとジョニー
比較的短い間でも印象に残ってるのが多い
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/23(土) 18:29:26 ID:vu7n5z3j0
パロロワを片っ端から見る→テイルズロワ発見→見る→見終わる→鬱になる→アナザー見る→テンション上がる→続きwktk←今ここ
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/27(水) 13:57:05 ID:sytLLBwl0
保守
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/31(日) 23:29:55 ID:XLWnvxpzO
カイルパート書き手です。五月の間に間に合いそうにないので連絡します。
期待されてた方にはまことに恐れ入りますがもうしばしお待ち頂けたらと思います。本当に申し訳ありません。
239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 00:56:00 ID:2ABVsF/qO
了解ですー
体を壊さないようにのんびり頑張って下さい。
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 08:44:14 ID:2TV5HlIv0
了解しました
いつまでも待ちます!
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 19:06:33 ID:nVavKjo+O
時間跳躍してきますた・・・また一ヶ月跳躍してきます
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/02(火) 00:47:30 ID:c0GjEtre0
同じくいつまでも待ちますぜい!
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:15:04 ID:pnHsEnm8O
☆保★守☆
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:47:53 ID:SYhztNHQ0
     ./ ニYニヽ
 r、r.rヽ  / (0)(―)ヽ
r |_,|_,|_,|/  ⌒`´⌒ \   ふむふむ・・・
|_,|_,|_,|_,| , -)    (-、.|   
|_,|_,|_人 (^ i ヽ__ ノ l |
| )   ヽノ |  ` ⌒´   /
|  `".`´  ノ
   入_ノ
 \_/
   /
  /


        
        ./ニYニヽ
 r、r.rヽ.  / (0)(0)ヽ
r |_,|_,|_,|/  ⌒`´⌒ \   で?っていう
|_,|_,|_,|_,| , -)    (-、.|   
|_,|_,|_人 (^ iヽ__ ノ l |
| )   ヽノ |  `ー'´   /
|  `".`´  ノ
   入_ノ
 \_/
   /
  /
245名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/08(月) 20:43:04 ID:IaoQRpKWO
ほす
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/11(木) 23:01:42 ID:rM0pkXcLO
星湯
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/15(月) 10:02:34 ID:T1YEqUtyO
保守
248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 16:51:56 ID:aptBGbx20
保守
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 20:58:11 ID:PbyUC9yHO
そろそろ前の作品から3ヶ月か…カイルパートにwktkだが、書き手さんが体調を崩したんじゃないかとちと不安だぜ

というわけでちょっと時間跳躍してくる
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/22(月) 21:12:36 ID:KktJeyhJO
保守
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/25(木) 05:45:43 ID:3gucxo81O
保守
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 02:49:00 ID:mmtnQwnm0
英雄対決かー。
実にどうなるかワクテカだぜw
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 20:34:56 ID:SKu/Lb4a0
VSのカイル・リオンコンビ情報聞いて
真っ先にロワを思い出したな
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 21:11:32 ID:43YOwLp2O
CMでクレスの「僕と戦おう……本気でね」を聞く度に
なぜかロワのクレスを思い出してしまう俺はもうパロロワ脳
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 08:15:43 ID:leCA+sQEO
>>254
もちろんクレスはラリった表情なわけですね分かります
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 17:20:54 ID:on4Br2F2O
>>254
全身黒タイツですねわかります
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 01:52:44 ID:WIaqKi/T0
投下します。
258Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 1:2009/07/01(水) 01:53:43 ID:WIaqKi/T0
別に大した望みがあった訳じゃない。
明日も晴れてくれないかなって、その程度のささやかな願いだよ。
夢なんて持てる暮らしじゃなかったしね。でも、そこにはいつも姉さまがいた。
ずっとずっと昔の奥底の、僕の記憶の中に父母の姿は無い。たった一人の僕の家族さ。

望みは? 平穏、それだけさ……老けてるなんていうなよ。
理想というには、子供が見る夢にしては小さすぎるって分かってる。
でも、そんな願いでさえも、僕がいた世界は許してくれなかった。
賢し過ぎるエルフと愚か過ぎるヒト、どちらでもない僕らの血は世界が僕らを締め出すのに十分過ぎる理由なのさ。

諦めたくなかったから、旅に出た。僕たちを受け入れてくれる世界があるって信じて外を知った。
衰退する大地、争う人々、混迷する世界。目を凝らしても皿にしても、僕たちの居場所なんてとても無かった。
でも、前に進んだよ。信じたかったんだ。人の善を、希望を、未来を信じたかった。
世界さえ変われば、人もきっと変わる。僕と姉さまが過ごせる居場所だって見つかる。“だから世界を救いたかった”。
……今思えば、無茶だったよ。2人分の幸せを手にするのに、世界ごと変えようとしたんだから。
ま、若かったからそれなりに無茶もできた。それに、決して仲間がゼロだったわけじゃなかったし。

どうなったかって? 世界は救えたよ。英雄は世界を守れたんだ。“でも、ニンゲンは汚いままだった”。

そういうことなんだよ、この世界も、僕らが元々いた世界も同じなんだ。
世界に存在する幸せの総和は有限なんだよ。人が二人いたらそれを奪い合う。
だから、きっと僕らの居場所は何処にも無い。
世界を救ってまで作った小さな隙間さえ、あいつらは平気で奪ったんだから。

奪わなければ永遠に手に入らないものもある。だから、僕も奪うと決めたんだ。
姉さまが最後に願った夢と、僕のこの願いを叶えるために、世界さえ捨ててやるって。

そう、思って生きてきた。その願いしか、あの無価値な世界の上で生きていく理由も無かったから。

姉さまの願い―――――前に話したっけ? 元の世界で、僕が何をしようとしたか。
そう、千年王国。誰もが同じ種族の、差別の無い世界。無機生命体の楽園だ。

……まあ、そうだね。わざわざ死にに来た僕の下に来るようなお前がいるんじゃ、無理だったかもね。
でもさ“この世界はそれを実現してる”んだよ。
常識を超えたサウザンドブレイバー、破壊神ネレイドの顕現、ソーディアンのスペックオーバー。
普通なら世界が終わってしまいそうなカオスがあふれ返っている。
なのに、こうして世界が回っている。罅一つさえ入らないこの空を正しく回転させる“何か”がある。
晶霊術・晶術・魔術・爪術にフォルス。最低七つの世界を内包して尚それを一つに統べる“法則”が機能している。
人も同じ。本来交じり合うはずの無い世界の人間たちが“ルール”によって統制されている。
老いも若きも貴賎も強弱さえも関係ない。殺されるか殺すか騙すか騙されるか、生き残ったものが正しくて真実。
人間だけじゃない。精霊も、晶術も、異なる世界から集められた無数の現象が、
たった一つの法則<王>によって支配されるこの世界は、ある意味にて差別も無い―――――――――まさに千年の王国だ。

笑えよ。そうあれと信じて積み上げた姉さまの理想は誰とも分からない何かに完成されられて、
しかもその願いは間違ってるって、姉さまと姉さまじゃない姉さまに正面切って目の前で言われた僕を。
259Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 2:2009/07/01(水) 01:54:28 ID:WIaqKi/T0
知らないまま、愚者と死ねればどれだけ楽だったか。
いつだってそうさ。知りたくも無いことばかり、僕は知り過ぎている。
でも、もうそれも終わる。もう、沢山だ。流れも、姉さまも、理想も、僕を動かすものはもう何も無い。何もかも失った。
後は使えない駒の始末だけ済ませて、心置きなく退場だ。

誰が幕を下ろすかって? 決まってるだろ。そのルールの一つを型作るこの首輪か―――――唯の莫迦だ。

あいつが来るかって? そんなの知るかよ。僕は預言者じゃあないんだ。
でも、万が一来るとしたら、あいつ以外に思いつかない。

…………なんでだろう。あの夜もそうだった。あいつは唯のニンゲンで、姉さまとまったく関係がないのに。
僕の計画の上では、ただエターナルソードを得るまでの時間稼ぎ。一夜だけのトリックスターに過ぎない存在。
重要度でいえば中の下。生きてても死んでてもさして変わらぬ駒。
なのに、あいつは僕の前に現れて、最後の最後で僕の願いを打ち砕いた。
僕がリアラを死に追いやったから? スタンとリアラを引き裂いたから? 
……不思議だな。これほどまでに分かり易い理由が並んでいるのに、そのどれでもない様な気がする。
まあ、いいさ。その程度の理由でも。僕を殺すには十分だ。
何もかもを失って、自殺する意志さえもなく、ただ終わることを待とうとした僕の人生。
その果てで待っていたのが、僕の影でもあの化け物でも姉さまでも姉さまの仇さえでもなく、何でもないただ英雄見習いとは。
寝た子を起こすくらいが丁度いい。終わりの終わりに迎える暇潰しとして、これほどの娯楽はきっと無い。

来いよ。カイル=デュナミス。復讐でも正義でもなんでもいいからそれで僕を終わらせろ。
その代わり、何も知らないお前に最後に教えてやるよ。

何かを捨てなきゃ、英雄にはなれないのさ。たとえ、その願いがどれだけささやかな願いでも。


――――――――――


ずっと、昔から憬れてたんだ。
父さん。英雄と讃えられた、俺の自慢の父さん。記憶の中だけの父さん。
追いつきたかった。少しでも父さんに近づきたかった。父さんと同じになれば、もう一度会える様な気がしてた。
英雄になれば、きっと帰ってくる。ひょっとしたら、それくらい思ってたかも。

今思うとすごく頭悪いなあ。今もそんな良くないんだけどさ。
旅を始めたころは、それくらい莫迦で、何も知らなかったんだ。その中で色々教わったよ。
英雄―――――何かを成して讃えられる称号。その英雄になる為に何かをするってことの矛盾。
父さんの道をなぞってるだけじゃ、何時までも父さんの影から抜け出せないってことも。

孤児院の外の現実は厳しかった。でも、挫けはしなかったよ。
俺には、俺を支えてくれる仲間が―――――――俺を英雄だと言ってくれる人がいたから。

<人ひとり……自分の大事な人も守れないやつが、英雄になんてなれっこないです>
260Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 3:2009/07/01(水) 01:56:29 ID:WIaqKi/T0
貴方も、知っている人に言ったことがあります。俺が目指した英雄の形です。
世界の為に一人を切り捨てるような英雄じゃなくて、その子の為の、英雄。
ウッドロウさんとも、フィリアさんとも、母さんとも……父さんとも違う、俺が目指す俺だけの英雄。
だから、より多くの為にたった一人を切り捨てる遣り方を許せなかった。
……やっぱ、覚えてましたよね。あの時は、俺も頭に血が上っちゃって。
でも、間違ってたとは今でも思ってません。
それは腰抜けの考え方で、両方を守る方法を見つけ出すことを諦めた弱さなんだって。

俺は“あの時まだ”知らなかった。
英雄という業は、そんな青臭い理想が通じない世界にあるんだって。

今の俺には、それを口にする資格さえない。
それくらい、いろんな物を無くし過ぎた。失っても、それでも前に進む人を見過ぎた。
“もう一度”逢えたなんて浮かれていた俺とは、決意も覚悟も違ってた。
だから、あいつの示した選択を受け止められずに、俺は大切なものを2つも、“二度も”溢した。
貴方も、見てましたもんね。最悪にダサくて、死ぬほどかっこ悪い俺を。

そんな俺を、支えてくれた人がいる。自棄になってた俺に、命の意味を教えてくれた人がいる。
待っていてくれた人がいる。あんなにボロボロになって、それでも守りにきた俺を覚えていてくれた人がいる。
守ってくれている人がいる。例えそれが償いのためだとしても、俺の命を何度も救ってくれた人がいる。
一人じゃ立つことも出来ない俺を、色んな人たちが支えてくれた。

でも、そろそろ一人で立たないと。いくらなんでもダサ過ぎる。敵討ちくらい一人でできないと、さ。

…………でも、なんでだろう……何で、あいつなんだろう。いつの間にか、そう思ってた。
大切な人たちの仇だからだけじゃない。俺が、あいつを倒さないとダメなんだって。
ミトス=ユグドラシル。あいつは、今まで出会った誰とも違っていた。
人間離れしたやつならいっぱい見てきた。英雄殺し、聖女、そして神。アイツはその誰とも違ってた。
たった一人の為に、体の時間を止めてまで千年を生きて、世界を犠牲にする道を選んだ英雄。

最初からあいつの存在が気に入らなかった。その意味も分からなかった。
あいつを、ううん、あいつの口にする“英雄”を、俺は受け入れることが出来なかった。
あの人の時みたいに、全部分かっているけど答えを知りたくないとかじゃなくて、
答えだけは分かっているのに、頭でそれが理解できなかった。

でも今ならはっきり分かる。アイツは、俺の手で倒さなきゃ駄目だったんだって。
負けない程度じゃ全然足りなかった。完璧に潰さなきゃ、勝たなきゃだめなんだって。他でもない俺自身の為に。

―――――――ディムロス。俺、やっと分かったんだよ。
俺がしたいこと。俺が前に進むための力。俺の中に残ってた、最後の気持ち。
言いたいことがいっぱいあるんだ。俺の我侭に最後まで付き合ってくれた、お前に最初に伝えたいんだ。
だから、生きたい。
まだ、もう少し生きていたい。
出来ることなら、ずっと生きていたい。
けど、血が寒くて、眼が霞んで、砕けた膝が笑ってる。陽の光が無くて、夜が痛い。

ごめん。俺、まだ貴方に伝えていないことがある。貴方が知っている俺が、まだ知らないことを。
本当は、最初から知ってたんだ。知ってたけど、忘れたかった。ううん、無かったことにしたかった
何かを失わなければ、英雄にはなれないって。たとえそれが、たった一人の女の子の為だったとしても。

時間が無いのが、悔しい。音にする時間さえ惜しい。
ああ、誰か、俺に時間を。

話さなきゃならないことが、貴方に――――――――――――――――――
伝えたいことが、君に――――――――――――――――――――――――


――――――――――
261Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 4:2009/07/01(水) 01:57:34 ID:WIaqKi/T0
サイグローグは顎を拳の上に載せて盤面を見据えていた。注視しているのは、駒の密集しているC3ではなくB3だ。
あまり特徴のない上座の男のニヤけ顔を一瞥したあと、サイグローグは考える。
現在、上座・ベルセリオスが『天使』を氷の女王の説得行動を終了させた『炎剣』へと攻撃させてターンが終了。
下座が長考を始めていた。永遠と錯覚しそうな時間、下座は盤上を睨み付けている。
サイグローグは、その下座の停滞を見てある種の断定を下した。
(これは……やはり罠とみるのが妥当でしょうか。指し手を見る限り、上座は下座の行動目的を断定したとみて間違いないでしょう)
下座は現在まで、剃刀の上を滑るような指し手を繰り広げている。
烏の成金、学士の復権、弓士の蘇生……どれも危うすぎる。サイグローグ自身が警告を下す一歩手前の奇手ばかり。
たとえ以前の棋譜から上座の基本戦略を把握しているとしても、一歩踏み間違えれば確実に全滅するような危うい指し手だ。
人間では怖すぎて打てるかどうかも危ういものだか、逆にその指針は明快きわまる。
これほどまでに危険を冒しながら、盤から零れおちた駒は厳密にはたった一つのみ。リスクを極限に引き上げての、リターン重視戦略。

下座は明らかに“生き残った全員を可能な限り生きたままバトルロワイアルから解放すること”を目的としている。

その気持ちそのものはサイグローグにも分からないわけではない。
上座の戦術『バトルロワイアル』が展開している限り常に主導権を上座が握ることになり、下座は受けに回らざるを得ない。
かといってその戦術下に置かれた上座の駒を倒しに行けば、犠牲が大きすぎる。いずれもトップクラスの性能だ。
クラス『マーダー』に属する4駒に真正面からぶつかれば単純計算で最低4駒犠牲にしなけれなならないだろう。
残り10駒のうち8駒が落ちて残り2。そのうちの一人が潜伏ステルス『学士』か烏の中の『海神』が割り込めば上座の勝利確定だ。
仮に2駒が真っ当なクラス『対主催』だったとしても、残り2では王を打ち取るには戦力が足りなすぎる。
そもそも、後一人殺せば生還できる状況でどれだけ自らのクラスを維持できるかという問題さえある。

もしも中盤のように複数の個所で多面的な混乱が起きているならば上座が別の場所へと手を進める間にマーダー同士で同士討ちを仕掛ける策もあるが、
この終盤ではそれは期待できない。そんな緩い手を打てばそこを起点に即座に蹂躙される。“この戦いは読み合いが前提項となるが故に”。

途中からの参戦だからとはいえ、スタートとしては下座が圧倒的に不利な盤面。
とにもかくにも、下座はこの最悪の泥沼から抜け出す必要があった。
だから下座は徹底的に上座の攻撃を耐えつつ、駒を貯え、反撃の時を待っている。それは分かる。
(ですが、全員はやりすぎでしょう。だから今、上座はそれを逆手に恐るべき策を打ってきた)
それが即ち、天使のB3撤退だ。マーダーの自殺という定石では決してありえないこの指し手は、下座の戦略を前提に置いたときこそ悪意を見せる。
心の揺らぎを隙とみせ、いかにもな誘い。しかしそこに待ち構えるのは持久戦に最高な回復装置と禁止エリアという名の時限地雷。
要するに上座はこう言っているのだ。

“全員救うんだろ? 早く来ないと殺してしまうよ?”

天使解放を餌に駒を釣り、氷の女王と禁止エリアで挟みあげる釣り野伏。人情を盾とした陰湿この上ない策だ。
そして、下座は炎剣を北へと動かした。その思惑に乗ってかどうかは分からないが、これはあまりに軽率すぎる。
確かに天使と氷の女王は駒としてかなり優秀であり、持ち駒に出来るのであればこれほど便利な物もそうそうない。
全員を割くわけにはいかない以上、その回収役として炎剣を用いるのも妥当ではある。
だが、その為に貴重な自駒を危険にさらすのは更に危うい。それこそが上座の、ベルセリオスの思惑だ。
天使を餌に炎剣を吊り上げ、大々的に放送でその名前を告げる。それを起点として再度氷剣がマーダーに落ちる可能性を残すつもりだ。
例え即時効果は無くとも、王を攻める敵陣の背面を突くための楔としては悪くない。
もしかすれば、上座はここまでを見越した保険としてB3を禁止エリアにしていたのかもしれない。
262Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 5:2009/07/01(水) 01:59:12 ID:WIaqKi/T0
無論、決して下座が無策で北に攻め入ったとはサイグローグも思っていない。
可能な限りの備えを打った後に攻め入ったのは事実だ。だが、盤面を見る限り下座はTP枯渇による短期決戦を狙っていたはず。
ジャッジメントを巡る攻防は、これを見越していた部分もあったのかもしれない。
魔力切れで達磨にした天使を早々に懐柔するならば、氷の女神の説得含め殺すよりも早く終わらせられたはずだ。
ここまで上手く役を運べたのだ。下座が未練がましく、月が四回転するほどの長考にて粘りたいのは分からないでもない。

だが現実として、その青写真はもう成立しない。上座がそれを阻止した。
メンタルサプライという、あまりにも異常な策をもって切り返した。
体力を削ってでも継戦を重視。もう用済みと言わんばかりなこの非道な手によって、下座の戦略は完全に瓦解したと言っていいだろう。

(ここが引き際でしょう……これだけ傷を負った天使では駒の性能も落ちてるでしょうし、無理をして引き込む魅力がない……
 半壊とはいえ氷の女王を掌中に収められただけでも、好とすべき………………!?)

カン、と音が鳴った。停滞という名の錆が、その音にて一瞬で払拭される。
陰鬱な部屋の中に響く凛としたその駒音は、白魚のような指先によって前に進められた炎剣から放たれていた。
「……確認します……このゲームにおいて私が議題としない限り……一度動かした駒の変更は効きません……よろしいですか?」
サイグローグは僅かに訝しみを籠めて問う。盤面を再確認するが、少なくとも現時点で活路があるとは思えない。
最寄は北地区の二つだが、このタイミングでは既に行動フェイズ終了だ。
下座が小さく首を縦に振って返答する。
サイグローグは少しだけ嘆息をついて、それを受領した。
欲に駆られ大局を見失なったか。情に駆られ戦略を放棄したか。
カオスを好むサイグローグ個人としてはそれも嫌いではないのだが、相手が悪すぎる。
この世界を支配するは論理の巣。情に目を曇らせれば即座に捕まってしまう。

だが、あるいは。

サイグローグが柏手を打ち、両者の意思を合一する。
あるいは、それを超える一手がここに残されているというのか。

「両プレイヤーの続行意思を確認しました……それでは……“お待たせしました”。
 戦闘再開です……先手、時の紡ぎ手……行動の開始をお願いします……」

ならばその一手はもはや、神のそれに他ならない。


絶望と諦観と失意を知る子供が、空に二人。
帰る場所を亡くした小鳥たちの物語。ただ、それだけのもののかたり。

――――――――――
263Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 6:2009/07/01(水) 02:00:45 ID:WIaqKi/T0
正邪入り交って繰り広げられた村の戦火もほとんど鎮静し、この島は“ほぼ”静寂を取り戻した。
天を見上げれば空の蒼も鳴りを潜め、双月が再び色彩を取り戻し始めている。
だが、まだ眠るには早いとばかりに喧騒が響く。
夕の赤と夜の藍、太陰と太陽が二つ混じり合うこの太極の上で、双極の如く飛び回る二つの点があった。
「・−・−− ・・ ・−・−・ −・−・・ −−・・ ・・ ・−・−・ ・−・・ ・− ・−・−・・(水、雷にて解し火を熾す)」
双極の一、ミトス=ユグドラシルの手が前方に突き出される。
そこに握られた神秘の紋章が悲鳴を上げるように輝き、周囲の現象が書き換えられる。
ミスティシンボルを備えたミトスの初級魔術の高速詠唱は最早言語の体を成さない。
「行け!」
火球四発・落雷一閃・水刃三枚。教科書の手本のような三矢が突き立てられた剣指の号令の下、敵を目指し放たれる。
初級魔術とはいえ、それを三つも束ねれば相応の威力を有するだろう。
だが、ミトスはそれを集めることなく散らして放つ。
先ほどまでのアイスニードルと異なり、意図的に統制を乱して繰り出された魔術は眼前の敵に紙一重にまとめて回避することを許さない。
一つ一つ避けるのは容易くともそれを連続してとなればその難度は累乗となる。
敵は細かい回避を余儀なくされ、そしてその姿勢から次を回避しなければならなくなる。攻撃に転じる余裕などない。
「・−− −・−・・ −・・・ −・ ・・−− ・・− −・−・・ ・・  ・・− (焼いた土に木を生やす)」
小技の乱打は止むことを知らない。既に唱え終わっていたか、
正面からのファイアボールに加え周囲からウインドカッター、下方よりストーンブラストが敵に放たれる。
それは当てるというよりは封じると言った方がしっくりくる攻撃だった。
直撃を狙うことなく、周囲を攻囲し機動力を奪いきる。確実に避けられぬ場所まで追いつめて、まだ追い詰め抜く。
一見してただの乱れ撃ちに見える連射はその実詰め将棋のように強かだ。
それを相手もそれを察しているのか、多少強引であろうとも抜け切る必要があると力を蓄える。
そして、その隙をミトスと彼女は見逃さない。
「アトワイト!」
『EXスキル変更、エリアルスペル→キープスペル。充填終わってる!』
「上出来だ。フリーズランサー全弾投擲!!」
ミトスの持つソーディアン・アトワイトがそのレンズとエクスフィアを青く輝かせる。
相手の“溜め”の出掛りを狙い澄ましたように本命の中級魔術が敵を狙い穿った。
その流れるような詰め方は、先ほどまでの闘法と似て非なるものだった。
連射の効く初級魔術が狙うのは相手の機動力そのものではなくその機動力を生かす“空域”だ。
逃げられる場所を削り、行動範囲を絞り取っていく。
檻から逃れよう暴れれば、牽制の合間合間にアトワイトがキープした中級魔術を解凍してカウンターを叩き込む。
戦闘補助こそが骨頂であるアトワイトがミトスの輝石のサポートに回ったことで、その魔術精度はタガが外れたように鋭く歪む。
物理的にも“心理的にも”攻撃にのみ専心することが初めて可能となったミトスの術は、新しい遊び場を見つけた子供のように自由だ。
術しか届きようのない距離で、この空はミトスが圧倒的優勢を得る魔力の楽園と化す。
<Turn Shift>
264Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 7:2009/07/01(水) 02:01:37 ID:WIaqKi/T0
だが、この遊び場は決して一人だけのものではない。

アトワイトが前面で戦っていた時に初級晶術の連射で敵を追い詰めていたように、
空での戦いではダメージより“当てる”ことそのものの方が重要となってくる。
平面から立体へとシフトした戦場はただでさえ攻撃が当てにくく、しかし逃げ場無き空の上では一撃が即死に直結する。
空戦に於いて肝要なのは、どれだけ多く傷を負わせたかではなくどれだけ早く傷を負わせるかだ。
たとえ初級術でも一回直撃させれば連携に繋いで、それでほぼ勝ちを拾いに行ける。それがミトスの術であるならば尚更だ。
その点を考えれば、ミトス達の戦術はあまりに慎重すぎると言っても良かった。一回当てればほぼ片がつくのだから。
戦闘中の調整を可能とするためとはいえ、自分で調整を行うべき輝石までアトワイトに任せてのこの攻撃。
網で完全に囲ってから槍で突き刺すなど、虫や鳥を撃ち落とすためのものにしては豪壮すぎる。それではまるで、獣狩りではないか。
だが、とミトスは双剣を握りしめた。
確実に当てるために周りを囲む。効果領域の広い中級術で堅実に当てる。
それは事実の側面にすぎない。裏側に潜むのは、そこまでしなければならないという事実。
初級術で囲っているのは、直撃が当てられないから。中級術で射抜こうとしているのは、そうでもしなければ止まらないから。
―――――――――――――――飛ぶ獣が相手では、これでも未だ殺しきれない。

「はああああああッ!!!」

大気に鈍い風斬り音が唸り響く。空気まで歪みそうな程の熱気を纏った一刀が空を斬った。
六連の魔術を辛うじて交わした直後の応対、とてもではないが安定した姿勢をとることなどできない。
だが、彼は振った。技も、何もなくただその大太刀を振り抜き切った。
それだけで仄かな赤みを持った太刀筋に割かれて氷槍が飴と焦げ消え、蒸発による大気の膨張が局地的な突風を生み出す。
『嘘、あの状態から術剣!?』
「違う。技なんて上等なものじゃない。“ただ斬っただけ”だ」
唯の斬撃だけで火を熾しかねないほどの熱量。この距離でさえ肌が渇くような錯覚をミトスは覚えていた。
いや、それは渇きだけではないのだろう。ひり付くような、打ち震えるような何かは彼の内側より喚起される。
『熱量増大!? ミトス!!』
アトワイトが熱源の増大に気づくよりも僅かに早く、ミトスはミスティシンボルを構えていた。
中級を放ったあとの微かな詠唱硬直、一刀により空いた風の道、そして直線。
『ようやく空いた。行くぞ、カイル』
「うん。行くよ、ディムロス』
爆ぜるような音とともに、“敵”の後ろに焔が舞い上がった。
彼と彼のを隔てる距離はまだかなりの長さがあった。それでもミトスは剣を楯とする。それでも間に合うか。
直線距離が幾ら開こうがあのチームには、カイル=デュナミスとソーディアン・ディムロスには意味がない。
どれほど無限に伸びようが、直線である以上は彼らの射程なのだから。
爆熱。自らが発生させた熱に弾かれるように、箒に跨ったカイルが飛翔する。
身を竿に屈め、食いしばる様に加速度と風圧に耐える。
水の足りないパン生地のようにボロボロと崩れてしまいそうな肉体と心を抱えて、それでもカイルは剣を握った。
その眼光は、ただ一点を見据える。竿が指し示すその先には、舞い飛ぶ風の向こうに輝く虹色の翅。
誰かの為にではなく、自らの意志で打ち倒さなければならない存在。
「勝つ。勝って、全部はそっからだ!!」
風を前にして閉じられることなく開かれた瞳が、もう二度と揺るがないと決意を湛えている。
100の距離は3秒かからず4と縮み、互いの睫毛が見えるほどに接しかける。
「・・−・ ・−・・ ・・・ −・− −・−−(剣鋭を招き、腕剛に来たる)!!」
間一髪で挟んだシャープネスの輝きを腕にまとわせながら、ミトスは薄暗い表情を浮かべた。
前座に時間を割いて待つだけの値があったとミトスは眼前の大きな瞳に確信した。
265Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 8:2009/07/01(水) 02:02:23 ID:WIaqKi/T0
蒼と紅の刃が火花を散らし、互いに一歩も引かぬと鍔を競り合せる。
アトワイトとディムロス。かつて番いであった者たちが、文字通りの意味で交り合っているというのは皮肉でしかない。
「躊躇なしで急所狙いか。あの時はフランヴェルジュだったが、得物を変えて少しはマシになったか!?」
「自分じゃ分からない。なったかどうか、その身体で確かめろッ!!」
が、それは一瞬のことに過ぎない。カイルの腕が内側に締まり、その細腕からは信じられぬ力がアトワイトを押しやる。
咄嗟にミトスは右の邪剣をアトワイトの後ろに乗せて交差させ、倍の守りを作る。
この状態が示す事柄のかなり大きさに、ミトスはしかめっ面を隠しきれなかった。
これでは受け切っても反撃に転ずることができない。ただ亀のように凌ぐだけの構え。
補助術まで使い、反撃のために残した力も防御に用いなければならない。ましてや。
「ディムロス!」
『分かっている。このまま受けごと押し切るぞ!!』
更に尾翼より燃える火炎に勢いを受けたカイルの剣が、その全力さえも打ち崩す。
まともに受ければ胴が別れを告げる。防御に全力を割いても、それでも足りぬ。
「突撃ばかりか、進歩ないね!」
付き合えないとばかりにミトスが補助効果を使い潰して弾き、距離を取ろうと下がる。
「進歩が無いのは、そっちも同じだろ!」
だが、カイルは後退を許さない。退くを見るが早いか、ディムロスが計ったように箒を加速させ二者の距離を潰す。
ミトスを捉えながら前進するカイルとカイルを見ながら後退しなければならないミトスでは、出せる速度に差が生じる。
薙ぎ、上段、突き。追うごとにカイルの攻撃は技こそ無くとも幅広がり、培ったモノがその応用を支える。
追撃を弾く度に構えと剣戟音が歪んでいく。勢いの乗った重量のある剣の威力は小刀二振りで止められるものではない。
ディムロスと異界の箒の力によってカイルは己が生命線である“速さ”を一時的にとはいえ取り戻し、
亡き父が最高の武装であったディムロスを手にして“力”を得た。
移動と攻撃が限りなく合一したカイルとディムロスの突撃は逃げるミトスをほぼ完璧に捉えきる。

詠唱も転移の暇もない、剣交わる至近距離。この空に今のディムロスとカイルを“止められる”ものなど誰もいない。


ミトスの退路を追うようにして箒の機動を制御するディムロスは安心を覚えていた。
劣勢転じて優位を得られたことにではない。カイルの太刀捌きにだ。
(防御が成っている。どうやら、少なくとも周りは見えているらしい)
待ちに待ったこの圧倒的状況を得ることができたのは、それまでの攻撃を耐えに耐えたからに他ならない。
無論ディムロスも相手の魔術に合わせて回避行動を行っていたが、
敵の主力がアトワイトからミトスに移った以上、先ほどまでのように彼女の思考を逆手にとって大味に避けることはできない。
まして、回避にかまけ過ぎて速度を殺してしまえばそれこそ終わりである以上、回避には自ずと限界がある。
だからこそ、最低限の速度を維持して凌ぎ切るにはカイルの防御能力が必須だった。
受けるべき術を障壁にて受け、防ぐべき術を剣にて弾く。
耐え凌ぐ。カイルの性格から考えて一番無理そうなそれを、カイルは為している。

【スピリッツの少ないときに攻撃すんな、弾かれるぞ!】

闇雲に攻めて勝てる相手ではない。傷を負っても癒してくれる者はいない。残る力も心許無い。
攻め一辺倒では崩せない。耐えて耐えて、その傷ついた体に残された力を蓄え、一点に爆発させる。
細波立つ心中にかろうじて集中力を取り戻したカイルはその双眸にしっかりと“勝利”を刻み込んでいる。
踏み込むことを恐れて退がるでもなく、狂に身を任せて暴れるでもなく、耐える。なんと気の遠くなる作業か。
だからこそ、耐えに耐えて見つけ出した間隙より切り拓いたこの攻めの手を緩めない。
カイルも、そしてディムロスも分かっているのだ。このまま一気に終わらせてしまうべきだと。
だが、それを易々とさせるのであれば“この2人”がC3村に至るまでこうまで見事な立ち回りができたはずがない。
266Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 9:2009/07/01(水) 02:04:50 ID:WIaqKi/T0
「空破絶風撃ッ!」
カイルの右より繰り出される豪速の突きによって、ミトスは遂にガードブレイクを起こして仰け反る。
「終わりだ、ミトス!!」
先ほどまでの返しとばかりに、態勢を整わせる間を与えず二連目の突きがミトスを狙う。                   <Turn Shift>
『待て、カイルッ』
これで確実に仕留められただろう、ミトス一人だったなら。
『獲ったわ。ニードル、速射!』
完全に止めを刺しに入ったカイルの正面、本来ならミトスの背中に隠れていたであろう場所から氷の針が放たれる。
ディムロスの咄嗟の注意に、カイルは即座に詠唱へと切り替え、解除から素早く術障壁へと切り替える。
目に入りそうな距離で砕け散った氷が、カイルの頬を切った。
『スイッチ! 術の主導権を入れ替えていたのかッ』
「ぐ、ずっけえ〜〜! 母さんでもここまでセコいことしないよ!!」
『馬鹿を言っている場合か、備えろ。来るぞ!!』
堪らず目を瞑ったカイルが見開いた時には既に遅い。先ほどまで剣が届いた場所にはミトスは疾うに居らず、
転移痕の白き羽を風に舞わせながら、遥か遠くに下がりながら詠唱を進めているミトスが居た。
「そう焦るなよ。今やられた分まとめて倍返ししてやるからさ!!」
顔面の歪曲に明確な怒気を孕ませて、ミトスが闇を除く七属全ての初級魔術を撃ち始める。
『グッ! やはり、外側では向こうに分があるか。カイル、気持ちを切り替え――――』
「分かってるよ!」
カイルは悔しそうな顔をしながらも、迷うことなく防御へと型を切り替えた。
逃げられた以上はもうどうしようもない。また、耐えるしかない。耐えて、耐えて、蓄える。
痺れを切らして大技を放ってくるその時まで。
                                                           <Turn Shift>
一度剣を交えた2人の戦いであったが、その様相は昨夜のそれとは一線を画していた。
既にカイルにミトスの能力と経験に対する戸惑いは無く、ミトスもまた小細工を捨て自分の得手で応じた。
ディムロスとアトワイト、カイルとミトス、力と技、そして剣と魔法。
明瞭過ぎるほど得意分野を分け隔てた2組の戦いは互いの距離がそのまま優勢劣勢を表している。
距離が狭まればカイルが、距離が広がればミトスが優位に立つ。
そのあまりに極端過ぎる戦力と相性が、皮肉にも中距離戦の拮抗と膠着を生む。
あの時はミントとコレットという二人の存在がそれを打ち破ったが、それはもう無い。
秒の刻みで切り替わるほどに凄まじい拮抗が時間を貪っていく。
だが、それでもカイルは焦らなかった。焦れる心を懸命に抑えて、考えて剣を振るう。
是が非でも勝たなければならないのだ。生き延びるという意味の勝利ではない。それならモンスターでも出来る。
カイルが得るそれは“相手を打ち破る”勝利でなければならない。そうでなければ前には進めない。

思えば、これが初めてなのだ。
強者ならば幾度と無く見えてきた。だが、その時には仲間がいた。
一人戦ったことはあった。だが、それをカイルが望んだことは無かった。

仲間も無くたった一人で、誰かを倒すために“挑んだ”のはこの一ツきり。
カイルは剋目した。初めて自分の手で倒したいと思った存在を。
自分と背丈も然程変わらぬ、しかし英雄“だった”少年を。
                                                           <Turn Shift>
267Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 10:2009/07/01(水) 02:05:54 ID:WIaqKi/T0
そんなカイルの心中など知る由も無く、彼らを追い立てるようにミトスは術を乱れ撃つ。
高速詠唱・圧縮詠唱・古語詠唱etc。持てる知識と技術を総動員させて放たれるそれらはミトスという魔術使いの臨界そのものだった。
それに辛うじて追い縋り、ギリギリの距離でサポートを行っているアトワイトもまた限界以上の機能を求められていた。
既に自ら術を組み上げる余裕などほとんど無い。既に晶術の主導権さえもミトスのもので、使えるのは精々が眼くらましの子供だまし。
コレットを動かしていたときの経験でミトスが動きやすいようにスキルやバイタルをチェック・調整する程度のことしか出来ない。
元々、本来彼女はマーテル復活の過程でミトスに棄てられる捨て駒だったのだ。この連係は使うはずのなかったもの。
むしろ、それに即座に対応できただけアトワイトの補佐能力を称えるべきだろう。
(エクスフィアをつけたことをこんな形で感謝することになるとは思わなかったわ……こんな無茶な戦い方する子だったのね)
連射の片手間に、空けた片手で持った邪剣を首筋に宛がってTPを補充するミトスを見ながらアトワイトは思った。
多少沸点が低く、周りを見なくなるきらいはあるが、それさえなければのミトスの戦いは冷静さを基とするものだった。
彼にとって戦いとはあくまでも目的を達成するための一手段でしかなく、むしろそれを最後まで避けていた風にさえ思う。
その姿に似つかわない老獪とさえいえる戦略体制。そのスタイルが、まったく別のものに変質しているようにアトワイトには思えられた。
ペース配分を計算しつくした長距離ランナーが、急に全力疾走をし始めたかのような幼稚さだ。
後を省みぬ消費、それを補う短絡的対処。戦いの為だけの戦術。しかしてその勢いは大にして苛烈な、波濤の如き攻勢。
それは愚かだとか、思慮が無いというものとは少し違うものだった。そう、それはむしろ――――
「・・・ ・−・−・ −・・・ ・−・−・ −−・−・(氷砕、乱光)!」
発生させたアイシクルの内側にフォトンを放つ。砕かれた氷が、無数の鏡となって光を拡散させた。
突然の光の雨に、カイルの驚きが減速となって離れたミトスにも伝わる。
それをミトスは眺めていた。悪戯に引っかかった相手を物陰からこっそり見て愉しむように。
それは、アトワイトが今まで見てきたミトスの中で物珍しいものだった。
マーテルが傍にいたときの従順なものでもなく、彼女を失ってからの絶望的なそれでもない。
後も先も無い唯快楽よりくる刹那的な喜悦。ミトスにあるはずのないものだった。
「どうした? 今更ディムロスとやり合うことに気が引けてきた?」
突然だったミトスの気遣いに、アトワイトは少しだけ意表を突かれた。
自分はそんなに顔に出易かっただろうか。顔も何もないはずだが。
『別に。よくもまあそこまで無茶ができるものと思っただけよ。こっちも、あっちも』
余計なことを言うのも無粋だと思ったアトワイトは前半分を茶で濁した。
そう、といいながら左右四本の剣指で交差する方陣を刻みながらミトスは空を見下ろす。
遠くにはおぼろげに先ほどまでいた村が、その更に遠くには中央に聳え立つ山が見える。
「悪かったな。ここに呼ばれる前まではずっとユグドラシルでやってきたからね。いま一つ加減が分からない。
 ブランクなんて作るもんじゃなかったな。晶術を識って少し新しいものに挑戦したら欲が出てきたなんて、
 今更、この僕がだぞ? やっぱり珍しいものになんか手を出すものじゃないね」
彼方より放たれたバーンストライクをリジェクションの障壁で弾きながらミトスはそう言った。
全てを拒絶するはずのそれは、軋んだように呻きを上げる。
『いいじゃない。人も、剣も、新しい出会いが無かったらいつか朽ちるてしまうんだから』
「そういう意味では感謝しなくもないよ。お前がいなかったら、結構早い段階で詰んでた」
二弾目にて破れた障壁の向こうから来る三弾目をアトワイトで弾き返す。カイルの傍で爆ぜた火弾がごうっと火柱を立てて煙る。
ミトスのいる高度からでも揺蕩う黒煙の昇りが見えて、空を縦に区切った。
268Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 11:2009/07/01(水) 02:06:57 ID:WIaqKi/T0
「つくづく、憎らしいな。この完璧な空は」
『……そうね。本当のマスターでもない貴方が晶術を使って、私が貴方やコレットの肉体で魔術を組んで、
 カイルは箒で空を飛んで、ディムロスが炎を操ってる。ここに来る前は、そんなこと考えもしなかったわ』
眩むようなその昼夜の天を眺めながら、ミトスはぽつりとそう言った。アトワイトがそれに返す。
非常識が、さも常識であるかのようにこの世界は大人しい。
これだけの矛盾に満ちた世界ならば、千はあっておかしくないだろう解れ。それが存在しない。
海に石を投げようが岩を投げようが、波紋しか広がらない。それもいずれ波と消え、残るのは大海の巨なる存在だけだ。
『もう、本当に諦めたのね』
「出来ることなら、ミクトランは血祭りに上げたかったけどね。お前の言う神の眼だけでこの空を作れるとは、さすがに思えない。
 これを作ったのが奴だとしたら、本当に狂ってる。正直、理解が出来ない」
自嘲するような響きに、アトワイトはミトスの言いたいことのニュアンスを辛うじて掴み取った。
アトワイトも、ミトスもまた、最初はミクトランに抗おうと思った存在の一つだった。
だが、全てを失ったミトスにとっては最早ミクトランと戦うことも、ミクトランに従うことにも意味が無い。
霞んだ瞳に映る世界は“ミクトランに勝てる”という夢想を脱色したモノクロの空だ。
「少し世界に触ったことのあるやつならとてもじゃないが作らないよ、こんな箱庭。トマトを切るのにエターナルソードを使うようなものだ。
 バトルロワイアルなんてゲームの為だけに用意するにしては、完璧過ぎている」
万人が矛盾無く共存する天。それはミトスが四千年を費やしても辿り着けなかった世界だ。
矛盾なんて無い。死角なんて無い。弱点なんてあるはずも無い。瑕疵一つ無い、まさに―――――

「認めたくは無い。だけど、これを神業と云わずして表現する術を僕は知らない」
アトワイトは息を呑んだ。知り合って2日あったかどうかという関係だが、この少年の性分を少しは知っている。
その少年が“神”を口に出してしまった。それがミトスの完全敗北を意味していること彼女は知っていた。
それは、新しき理。真理を塗り替える神理。神の御業より生まれし完全なる世界。
残り少ない夕陽が赤く稜線を輝かせ、ミトスの頬を照らした。歪みは感じられない、美しき空が彼らの瞳に映る。
『神様はいないんじゃなかったの?』
「追求し続けるものがなくなっちゃったからね。もう、どっちでもいいよ」
アトワイトは理解するしかなかった。ミトスは、とっくに死んでしまっている。
命の概念が存在しない無機の存在であるが故に、目的や役割を失うことがどれほど空ろなことなのか。
ミトス=ユグドラシルはもう既に死んでしまったのだ。絶望に浸って、それでもなお残していた理想と共に。
だから、この死の淵で残酷な答えを受け入れることができる。
彼にとって世界の真実が如何なるものであろうとも、最早この空に散る灰の一欠けらの価値も無いのだ。

『ミトス……』
憂うような音を漏らすアトワイトに、ミトスはコツコツと刃を十字に重ねて鳴らし、
「そうしょげた顔するなよ。さっきも言っただろ、感謝しなくも無いって。それに……」
<Turn Shift>
「――――――――――空翔ッざあああああああああああンッッッッッッ!!!!!」
「こんな世界でもこういう莫迦がいるからぁねッ!!!」
269Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 12:2009/07/01(水) 02:09:33 ID:WIaqKi/T0
“頭上から落ちてきたギロチンに噛ませた”。
中空発動の利を生かし、始点に一回転を入れて放たれたカイルの一撃は身と剣の重さ・腕の力に加え遠心力を備えていた。
重力鉛直方向のから、縦の突撃。小枝二本で防げるほど生易しいものではなく、やはり小枝のように守りを叩き割る。
「カッ……」『ミトスッ!』
ミトスの胸に赤い一本線が入り込む。皮二枚を切り裂いて滴らせる天使の血は鈍い。
だが、カイルは更に腕を捻り込み剣をその奥に押し込もうとしている。
カイルに負けず劣らないほど華奢なミトスの肉体では心臓まではさほど遠くない。 <Turn Shift>
「ははカカッ、その程度かよカイル!! アトワイト、回復用意!!」
嘲けるような声と共に、ミトスの体が半歩捻られる。ぶちりと、左の胸に傷の音が歪む。
気にするそぶりすら見せずミトスは更に半歩踏み込む。アトワイトをぶつける様にして腰部へと掌底。
「−−・−・ ・・−・− −・−−・ ・・−・  ・・− −−・−・ ・・−・− −・−−・(神経回復、痛覚再起)!!」
詠唱と共にミトスの手のひら、正確にはアトワイトから浮かび上がった青い治癒の光がカイルへと流される。
一体何をしたのかと問うよりも早く、結果が現れた。じゅくりと、カイルの股に赤い染みが再び浮かび上がる。
「う、い″、いっが、〜〜〜〜〜〜〜〜ずっ!!!!!」
張りつめたカイルの表情が縦横に歪み抜く。脂汗を吹き出しながら現れたそれは露骨なほどに内側に走る激痛を教えていた。
何故今になって股間部の痛みがぶり返すのかという疑問も消し飛ぶほどの痛み。
それでも剣の構えを保ったのは称賛に値したが、握りの緩みは仕様もない。その“たわみ”をミトスは見逃さなかった。
『カイル! ミトス、貴様何をッ―――――!?』
「丁寧に教えてやれるほどの余裕をくれたら答えてやるよ」
ディムロスがミトスに問いただすよりも早く、ミトスの蹴りがカイルの鳩尾を打つ。
足場無き中空であるが故に、作用にてカイルが、反作用にてミトスが離れるように仰け反り距離が開く。 <Turn Shift>
『待て、っく!』
「に″、ご、ごごま、逃げる″!」
ディムロスが再度問おうとしたが、カイルの“悲痛な”叫びが掻き消した。
食い縛るように箒を握ると、それと同時に十の氷針が飛び射られた。退がるしかないというカイルの判断は間違っていなかった。
<Turn Shift>
ミトスの代わりに牽制射撃を放ちながらそれを見ていたアトワイトが疑問を漏らす。
『本当に下がった…………ただのファーストエイドだったはずなのに……』
「少し傷を起こしてやった。中途半端に血流が良くしたからな、血の気の多い莫迦にはかなり辛いはずだけどね」
顔をある感情に歪ませるミトスに彼女は空恐ろしさを覚えた。制限下の回復術が弱まることは周知の事実だ。
ファーストエイド一発程度ではせいぜい少し元気になる程度だろう。そして、治りかけの傷ほど痒いものだ。
全ては分かりきった事実の組み合わせに過ぎない。だが、それをあの土壇場で試せるものがどれほどいるだろうか。
ターゲッティングの無効と制限を逆手に取った、敵への回復術の使用。今までのミトスには無かった手管。
カイルの力が研ぎ澄まされていくように、ミトスの技もまた変質し始めていることを彼女は改めて感じた。
『それにしても……痛そうね……どっちの意味でも気持ちは分からないけど』
「嫌なこと思い出させるなよ………それに、こんなの子供騙しだ。次はもうないよ」
そう言われたアトワイトは彼らを見やった。少しずつ対応が早くなっているのは、立て直しが進んでいる証拠だ。
ミトスが剣を持つ手を何度も開いて握り締め直す。目に見えて分かる手の震えは、もうカイルの剣を受け止めきれないことを示していた。
「……捉えてきたな。もう安々と距離をとらせてくれない、か」
270Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 13:2009/07/01(水) 02:10:29 ID:WIaqKi/T0
打ち合いを経るにつれて爆発的にカイルの“キレ”が良くなっていくのをその身で体感しながら、ミトスは口を曲げた。
あの時自分の精神状態がお世辞にも芳しくなかったことを差し引いても、その力は一日前とは比べ物にならない。
一日前に対峙した餓鬼は、世の中が自分中心に回っていることを疑わない子供だった。
そのなまくらが一研ぎするたびにその刃を鋭くなっていくのをその手がひしひしと感じていた。
恐らくは、これが本当のカイル=デュナミスの“限界”。そして、その限界もまだ伸び代があるように感じられた。
愚直なほどの正攻法で切り込んでくるカイル。遂に小細工未満のチャチな手品にまで手を出し始めた自分。
優劣は明白。あと2,3回斬り合えば競り負けるだろう。自分の手のひらを見て、ミトスの顔が更に歪んだ。
皺もないその無垢な自分の手はどこをどう見ても子供の手なのに、酷く老いて見えていた。
「何を見てるのさ」
ふとアトワイトの視線を感じ、ミトスはそちらに瞳を向ける。
『随分楽しそうだなって思って』
「僕が? 冗談」
馬鹿にするように鼻を鳴らすミトスに、アトワイトは呆れたように言った。
『そう。でも貴方、笑ってるわよ』
中指から三指を突き立て粋護陣を出すと、狙い澄ましたように火礫が着弾する。
アトワイトの攻撃を上回って反撃を許し始めた中、ミトスは老いたその手で自らの顔をなぞった。
その感触で彼は実感する。蒸発する水煙の白に薄く隠れたその口元、否、顔面その全てが笑みに歪んでいた。
だが、ミトスはそれを否定するわけでもなくただ事実を認識し、苦虫を奥歯でひき潰した。 <Turn Shift>

『ッ、しまった! ミトス!!』
一瞬の間隙に放たれた高圧高温の反応を感知したアトワイトは一瞬完全に虚を疲れた。
『遅い! 魔神炎!!』
箒を介した擬似的な主導権の入れ替え。自分たちの模倣に気づき、術管制を引き戻すが二手遅い。
魔神の炎が、微かに乱れた射撃を焼き払い、その業火の向こうから一陣の風が吹きあがる。
大気の分子を焼き尽くし光を放つ流星の如く、斬撃そのものと化してカイルが飛ぶ。
完全に捕まったと悟ったミトスは痺れを押し潰すように双剣を強く握った。
頭蓋を折り斬ってしまいそうな唐竹がミトスへと打ちつけられる。しかしその刹那、ごりっと金属と肉を交ぜたような音が唸る。
「それみろ。そんなふざけたことを云うから」
ミトスが引き攣った様に笑うが、そこにはアトワイトを責める語感はなかった。
今のはアトワイトというより自分のヘマだ。それに、アトワイトがヘマをしようがしまいが腕二本ではどの道もう支えきれない。
この距離では詠唱からの切り返しもままならない。もう手札は無く、身体がカイルの圧に屈し始めている。
心にいたっては、戦う前からと言っていい。
(成長する子供と、時間が止まった大人。なんともしがたいな)
完全に動きを止めたディムロスの剣先には邪剣の柄が縦に割れて食いこみ、その握る掌の肉から血が滴っている。
指ならば小指薬指が飛んでいるだろう深さで剣を止めている。それで“やっと、かろうじて”だった。
横から刃を当てていれば、たとえ闇の武具であろうともその生きた刀身ごと両断されていただろう。
ここまでか、とミトスは無意識に鼻で溜息を付いていた。
体全部の筋に力を入れていなければ付いたであろうそれには後悔も、憤慨も特には無い。 <Turn Shift>
とうに目的は消え去り、欲するものも無く、未練などある筈も無い。有機的な死など、この体には無縁だ。
いや、死んでいるというならもうとっくの昔だな。そう思ったミトスの瞳は自然と閉じていた。
271Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 14:2009/07/01(水) 02:13:08 ID:WIaqKi/T0
(昔の昔に姉さまがいなくなったときから、もう分かりきってた。
 僕の居場所は、姉さまの影にしかなかった。そこでしか生きていけなかったんだから)
薄々、分かっていたこと。それを“姉”の口から告げられては認めるしかない。
ミトス=ユグドラシルの全ては、マーテル=ユグドラシルの為だけに存在した。
それを失って、それでもそれに縋って生きるしかなくて、惰性で生きてきた。
(疲れて当然か。楽しみも何も無い、作業だけの時間だったからね)
この体は既に歩く死体で、それが四千年の徒労の果てに壊れるだけのこと。
それが最後の最後にこんな狂った世界で姉さまに出会って、僅かばかりの夢を見た。
もう一度、やり直せるんじゃないかって。
でもその夢さえ潰えた。他ならぬ姉さまの手で、夢は覚めてしまった。
だからもう眠ろう。夢さえ見ることの無い、深い深い眠りへと――――――
<Turn Shift>
「待てよ」
深海に落ちていく寸前に手を掴まれたように、その言葉には強い引力があった。
無理やり起こされた寝起き明けの如き不快さを露にして、ミトスがボソリと吐く。
「まだ殺ってなかったのか。さっさと殺せよ、ウスノロ」 
振り下ろした刃の圧は緩めることなく、カイルが口を開いた。
「言われなくても、勝つ。でも、それはお前じゃない。お前みたいなやる気の無い奴に用なんてない。
 俺が知ってるミトスは、この程度で終わらなかった。道を譲らなかった」
それはこの風渦の中でやけに透き通って聞こえ、ミトスの中の僅かな弛緩さえ引き締められる。
それほどに、ユグドラシルの4000年に埋没したその名が新鮮に感じられた。

「この程度なら、あの時の方がまだマシだ。本気出せよ、腰抜け!!“それでも英雄かッ”!!??」

その一言に、ミトスの中の陶酔が醒めていく。
ああ、このまま酔って死ねればさぞ楽だっただろうに。畜生め。 <Turn Shift>

別に、なんの作為的意味があったわけでもない。ただカイルの口から自然と言葉が出ていた。
何でこんなことに腹を立てているのだろうと、カイルは言葉を吐いた後で自問したくなった。
ディムロスが何かを言いたそうにしたが、マスターの何かを察したのか口を噤む。
それがカイルにとって、ミトスに勝つことと同じくらい意味を持っていると感じていた。
【英雄】。言の葉を舌の上に乗せてカイルはその味を確かめ、得心する。
何故今自分がこうもミトスに挑みかかっているのか。
リアラを殺されたこと、ロイドの世界の敵であること。マーテル。ミント。
それらは確かに戦う倒すべくに足る理由ではあるが“間接的理由”だ。
娯楽に耽っていた時に仕事のことを思い出したかのような不愉快さをミトスが自分に見せている。
カイルという存在が、ミトスという人物を無視できないのはつまるところあの夜の一戦に尽きるのだと。
「お前が、それを口にするかよ。まだ何も分かってないのか」
カイルの怒号と同じくその一言にはあらゆる疑問が詰まっていた。
ロイドらから既に聞いたであろうミトス=ユグドラシルという人物の末路。
既に明らかになっているであろうこの世界におけるミトス=ユグドラシルの目的。
それらを踏まえたうえで、既にあの夜に答えたであろう結論を聞いていて、なお諦めるなと口にするのか。
「なら、逆に聞くがな。お前にとって英雄ってのは何だ?
 まさかあの時みたいに下らないことを言うつもりじゃないだろうな」
「――――――――なりたくてなれるものじゃないってことは知ってる。
 自分のやったことに皆から讃えられて贈られるものだってことは」
ほう、という溜息が聞こえてきそうな軽い驚きをミトスは見せた。
「半分合ってるよ。なんだ、唯の脳無しじゃなかったのか」
あの時のことを思い出して、カイルは苦いものを覚えた。それが刃を少し後押しする。

「英雄を定めるのは、英雄以外のニンゲンだ。これは正しい。だからなりたくてなれるものじゃない。これも正しい。
 だから、その逆も正しい。なりたくなくても勝手に英雄にさせられる場合がある。
 ――――――――――――――――“英雄以外のニンゲンどもが自分の都合で英雄を欲した場合”、だ」
272Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 15@代理:2009/07/01(水) 02:24:40 ID:kyHWrJtD0
カイルの剣が朗々と答えるミトスへと少しずつ肉薄する。
この距離でのカイルの優勢は明らか。だが、ミトスから放たれる何かは止んでいない。
それは命の危険に対する怖れでも殺される相手への敵愾心でもなく、もっと視野の広い憎悪だった。、
「そもそも、何故讃える? そんなに英雄を憧憬して讃える暇があるなら自分で英雄になろうとすればいいのに。
 ならないんだよ。なるはずがない。英雄を祭り上げる奴は“英雄になる気は無い”んだ」
距離が縮むほどに増大する惨意。自分へ答えると同時に、それはミトスの中の何かを揮発させている。
そのガスの匂いを嗅げそうなほどの距離で、カイルはミトスの中の澱を見た気がした。
「何かを成す為には犠牲は付き物だ。だけど、誰だってその矢面には立ちたくない。
 だから希う訳だ、誰か自分の代わりに多く失ってくれないかと!」
堆積した歴史の底に沈殿していた、憎悪よりも煮立ち憤怒よりも焼けたニンゲンへの失意。
剣戟の振動にて舞い上がったその汚泥が、カイルの意識を一瞬釘付ける。
額と額が擦れ合いそうな近接でミトスの下半身はカイルの死角となる。
「で、当然その程度の心根しか持たない奴が良心の呵責に耐えられるわけが無い」
カイルの死角を襲う左の足刀。人間とは異なる視界を持つディムロスはそれを捉えていた。
だが、それをディムロスは言わなかった。寧ろ好機と捉えたからだ。
先の蹴りで調子に乗ったのかは分からないが、今は状況が違う。
この態勢ではとてもではないが腰に力は入らない。加速させる距離も無い苦し紛れの死んだ蹴りなど避けるに値しない。
それよりも、更に崩れるであろう守りを打ち破るべきと考えた。兵の法から導き出される道理。

それをカイルは避けた。火を落とし、剣を弾いて箒を軸にその場で横転する。
その所作は無意識に限りなく近いものだった。その蹴りを何故避けなければいけないかなど分かる筈も無い。
ただ、ミトスの中から表出した何かがカイルの神経に直結した。

もしクルシスの指導者ユグドラシルならば抗うことなくここで滅んだだろう。
だが、“寝た子を起こしたのは果たしてどちら”か。
間髪で横に薙ぎ払われた蹴足がカイルが先ほどまでいた場所を過ぎる。
絶望とは反転した希望。堕とせし英雄の絶望は、未だ何も終わってはいない。

「だからヒトは自分を慰めるために謳うのさ――――――――“どうもありがとう英雄サマ”ってね!!」

刹那、ミトスの足が閃光を射出した。
当人の足よりも伸びた閃光がまるで刃のように伸び、大気を射抜く。
粒の波が空を渡り、焦げついた空気の匂いがカイルの鼻に届いた。
収束する光の奔流の先には、内側からブーツを吹き飛ばされたようなミトスの小さな素足があった。
『ユグドラシル、レーザー……?』
アトワイトが虚空に投げかけるようにその技の名を口にする。
その名のものよりも細く、短くはあったがミトスから放たれた真白き光の一閃は確かにそれだ。
そこに疑問符が付くのは、ミトスがユグドラシル形態をとっていないからではない。
ダオスと共に放ったように、口径の小さな銃で大きな銃弾を放つリスクさえ負うならばミトスの身体でも不可能ではない。
後に省みるものの無いこの戦いにおいて、それは有り得た選択肢だった。その戦いをその眼で見ているアトワイトもそれは考えていた。
『莫迦な……蹴り足からッ!?』
ディムロスが彼女の疑問を代弁する。その閃光が発射されたのは――――眼前の結果を信じる限り――――ミトスの左足だ。
本来ならば掌から放たれるべき光が脚部より放たれたという事実は、事実以上の驚きをディムロスに与えた。

「そんなヒトが勝手に与えた称号に何の意味がある!? 無いね。欠片も無いッ!」
273Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 16@代理:2009/07/01(水) 02:25:30 ID:kyHWrJtD0
刹那、ミトスの足が閃光を射出した。
当人の足よりも伸びた閃光がまるで刃のように伸び、大気を射抜く。
粒の波が空を渡り、焦げついた空気の匂いがカイルの鼻に届いた。
収束する光の奔流の先には、内側からブーツを吹き飛ばされたようなミトスの小さな素足があった。
『ユグドラシル、レーザー……?』
アトワイトが虚空に投げかけるようにその技の名を口にする。
その名のものよりも細く、短くはあったがミトスから放たれた真白き光の一閃は確かにそれだ。
そこに疑問符が付くのは、ミトスがユグドラシル形態をとっていないからではない。
ダオスと共に放ったように、口径の小さな銃で大きな銃弾を放つリスクさえ負うならばミトスの身体でも不可能ではない。
後に省みるものの無いこの戦いにおいて、それは有り得た選択肢だった。その戦いをその眼で見ているアトワイトもそれは考えていた。
『莫迦な……蹴り足からッ!?』
ディムロスが彼女の疑問を代弁する。その閃光が発射されたのは――――眼前の結果を信じる限り――――ミトスの左足だ。
本来ならば掌から放たれるべき光が脚部より放たれたという事実は、事実以上の驚きをディムロスに与えた。

「そんなヒトが勝手に与えた称号に何の意味がある!? 無いね。欠片も無いッ!」

今自らが成したことなど露も気にする素振りなく、ミトスがカイルに一撃を振り下ろす。
「ッ!」
天地を反転させたカイルの上に流れる唐竹とその我武者羅な一撃が打ち付けあった。
重い。カイルの手に痺れが刻まれる。馴れぬ体勢からの咄嗟の一撃であったことを差し引いても今までとは比べ物にならない。
それには何の小細工も無かったことがカイルには分かっていた。ただ力目一杯に打ち込んできた、それだけの攻撃。
その証拠に、ディムロスの硬さと自分の握力の方が耐えられずにミトスはその手からファフニールを弾き飛ばしてしまう。
(速い。今までと、桁が――――――――)
中を空回るミトスの小柄な身体。華奢と言ってもいいその肉の何処に世界を変える力を持っていたのか。
その片鱗を、カイルは3分の4回転した世界で垣間見た。

「人から散々奪うだけ奪っておいて、その代わりに貰えるのが『英雄』? 
 要るかよ、そんな屑切れ。向こうだって屑切れだって分かってるから気軽に差し出すんだよ!!」

ミトスの左足が、親指と人差し指で弾かれた剣を器用に掴みあげる。
筋を強張らせるほどに握り締められた剣が、その憎悪そのままにカイルを蹴り斬った。
『カイル!!』
一歩早く上下を戻したカイルの防御が辛うじて間に合う。矢張りというべきか、その威力は手よりも劣ったのが幸いと機能していた。
が、ミトスはその結果云々など端から眼中に無いといった様子で、アトワイトを横に振り被る。
目端が切れそうなほどに見開いた瞳。歯の軋る音。余裕はおろか諦観さえ削ぎ落とされた、剥き出しの感情がそこにあった。
風も凍りつきそうなほどの一閃を前にし、剣では間に合わないと判断したカイルが大きく仰け反って避けようとする。
身体が覚えていたアトワイトの刀身の長さとミトスの腕から差し引いた殺傷範囲からの判断だった。
『晶術反応? これは――――紙一重で避けるな!!』
ディムロスの一言の意味を理解するよりも早く、目の前の光景が推移した。
カイルの鼻先を刃が掠める寸前、ミトスの手からアトワイトがすっぽ抜ける。否、空を握り締めている。

「自分が出来ないこと、したくない事。そういうことを代わりにやってくれる間抜けを嘲笑う為の代名詞だ。
 賞賛は、功績は! どれだけ自分を食い潰して他人の犠牲になったかでしか計れない!!」
274Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 17@代理:2009/07/01(水) 02:26:35 ID:kyHWrJtD0
晶術で精製された氷によって伸びた柄。増した射程が、カイルの目測を超えて迫る。
鼻頭に切れ目が入った瞬間、カイルの左手が半ば勝手に動いていた。
ガントレットを咄嗟に噛ませ、骨まで至る寸前に刃を止める。
やはりその威力故に衝撃で柄の氷が砕け、弾かれたアトワイトが宙を舞った。
半分ほど切れた鼻の頭の軟骨からくっぱりと血を滴らせるカイル。
口に入る血の苦味を覚えた、カイルは目の前の存在に今までとは異なった空恐ろしさを感じていた。
ロイドから聞いていた能力仕様を超えた大技。走る・歩くという意味での足の価値が無い中空とはいえ、脚部を用いた手数の増加。
それらも確かに脅威ではあったが、カイルが感じていたのはそこではなかった。
接近戦というカイルの領域にミトスを踏み込ませたのは、『譲らない』というミトスの強い意志。
ともすれば戦いの結果としての敗北さえ受け入れていたかもしれないその小さな身体を支え始めたものが、暴威と化す。
「うっ、あ、が――――ッ」
『カイル!』
鼻先のアトワイトまでもがその名前を叫ぶ。敵に案じられなければならないほどの苦悶がカイルに表出する。
眼前に運んだ自分の鉄甲に遮られた死角、カイルの膝には蹴り付けるように足指でしっかりと握られた邪剣が深々と刺さっていた。
逆鱗、あるいは最古の生傷に触れてしまったという手応えが、カイルの中で自らの窮地として確かなものとなった。
マーテルの弟でもなく、世界の調停機関であるクルシスの首魁でもなく、ハーフエルフでさえなく、

「英雄の価値はどれだけ失ったかでしか量れない。故に、英雄は誰よりも多く自らの大切なものを捧げる!
 それが望んだものでも、望まざるものでもだッ!! そうでなければ、人一人の力で世界を変える力は得られない!!」

“英雄”ミトス=ユグドラシルの怨嗟を開いてしまったのだと。
『右足だとッ!?』
怒号の呪言とともに、ミトスが右足の輝きを見たディムロスはそれに気づいた。
短剣をカイルの膝に杭と打ち込んで、足場を固定したミトスの左足は“軸足”だ。
そして先ほどの左を考えれば、これは脚力増強などと温いものではない。
“左で成せたことが右で出来ぬ道理が無い”。

「だから英雄は失う。本当に守りたかったものを、本当なら守れたものを! こんな風にッ!!」

ぐいと左足を相手の膝に押し込み、反動を得たミトスの右足がカイルの横腹を穿つ。
噴出する赤い水が、夜の黒が白き光に呑み込まれる。
アウトバースト。カイルに撃ち付けられた箇所から閃光が迸り、全てを炸裂させた。


光が止んで再び闇が天を覆った空に、ミトスは星を見るようにして大地を睥睨した。
『ミトス。そんな無茶をしたら、足が……』
しゅうと湯気を上げたような両の裸足を見ながらアトワイトがミトスに諫言しようとしたが、
ミトスの放つものにぞくりとしたものを覚えて押し黙る。
先ほどまでの悦楽的な表情とは真逆の乾いて煤けた、全てを侮蔑しきった感情が露出している。
マーテルが死んだときのそれに似ている、と彼女は思った。
だがあの時でさえまだ「マーテルを甦らせる」という希望がそこには残っていた。
闇の中の最後の一条さえ見失ったかのような、ミトスの歴史の中の染みを全て表出させた漆塗りの黒。
何をどう経験すればこの幼い面がそんな面構えになるのか、アトワイトには想像が付かなかった。
今までのミトスが、本気を出していなかったとは思わない。全力でカイルを倒しにかかっていた。
それは彼の武器として在った彼女が一番よく分かっている。だか“ここまでする気は無かった”筈だともアトワイトは思っている。
顔は涼しげでも足を見れば、本来手で使うべきもの遣った代償が確実にミトスの体内に蓄積しているのが分かる。
その内側に掛かっている負荷は想像を絶する。楽しむため、死ぬための戦いに持ち出す技ではない。
自らの拳を砕きながら殴るような戦い方をするような少年だっただろうか。
つまり、眼前の敵はミトスにとって自傷してまで殴るべき相手なのか。
275Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 18@代理:2009/07/01(水) 02:27:15 ID:kyHWrJtD0
「咄嗟に防いだな。よく選んだね。腕を犠牲にしなきゃ、命は守れなかった」
アトワイトが面を上げるように視界を上げると、少し遠くで白く煙が棚引いていて風に掻き消え続けていた。
煙の先には真っ赤に血を滴らせている左腕があった。あったはずのガントレットは、破片をその肉に食い込ませている。
その庇った左腕と、腿肉を抉り取られたかのように右脚から血を垂らすカイルは4割が紅い。
『そこまで人間を憎むか、ミトス=ユグドラシル。異世界の英雄よ』
浅い息を短く吐き、震える手で膝の血を少しでも留めようとするカイルを庇うように、ディムロスはミトスを睨み付けた。
ミトスから迸るものの大部分を占めているであろうもの。
それがニンゲンという生き物に対する憎悪であることをかつて英雄が担った剣は確信した。
英雄というものが人々から与えられるものである以上、ニンゲンを憎むミトスにとっての英雄の価値は自ずと定まる。
「『嫌い』だ? そんな小さな言葉に収まる程度のものだと思う? 
 ソーディアン。誰かの為に朽ちることを運命付けられた、哀れな生命よ」
端正であろうその小顔を歪ませているのは、感情か過去かあるいはその両方か。
世界を救った英雄に刻まれたものというには、それはあまりにも空虚な絶望だった。
「世界なんてその気になれば誰でも変えられる。簡単に世界を滅ぼすことも出来るんだから。
 でも、あいつらはそれをしない。しようとする気さえ起こさない。いつか自分以外の誰かがやるのを待ってる。
 いつまで経っても世界は変わらない。だから、僕が変えることにした」
顔の上半分をアトワイトを掴んだ手で覆い、ミトスが傷口から血をひり出すように言葉を紡いだ。
店を畳む古物商が、蔵の中に眠っていたものをひっくり返して懐かしむような寂びだけがそこにあった。
「それなりに辛いこともあった。報われないことも多かった。それでも、少ないけど仲間もいた。
 頑張ればいつか必ず夢は叶うと、世界は変わるとあの頃は信じられた……笑えよ、この僕がだぞ」
自嘲さえも浮かばぬ冗談に、笑える余地などあるはずもない。
「そこそこ足掻いて、それなりに努力して、まあ、ありがちな世界の危機くらいは救えそうになった。
 これさえ終われば、きっと僕のやってきたことは無駄じゃなかったと誇れたかもしれない」
それはカイルらが見てきた中で、一番素直な表情だったかもしれない。
一等乾ききった、骸骨の笑顔だった。英雄にしか浮かべられぬ絶望が、そこに刻まれていた。
ぞわ、とミトスの背後に列べられた寒気にディムロスが気づく。
無数の氷針が、夕闇の薄暗がりに紛れて並べられている。静かで早く、尚かつ緻密な布陣だった。
(100本以上……蜂の巣どころではないッ!!)
「でもな、そこで初めて知ったんだよ。世界は救えても、変えられないって!!」
風化した想い出。輝いていた最後の時代の化石。もう取り戻せないと知ってしまった全てへの悔恨。
その全てを殺意に転換し、ミトスは殲滅の大号令を繰り出した。

一瞬たりと聞き入ってしまった自分を罵り潰すとともに、ディムロスは再び箒を自分の制御下に置いて素早く対応を敷く。
カイルの意識が戦闘が成せるほどに回復しきっていない今、迷える時間は無い。
剣の裁量で動かせる推進力を全て火力に変えて全面に押し出し、火炎の楯と成す。着弾と共に高圧高温の蒸気が障壁の外側に爆ぜ上がった。
爆音と蒸発の熱は酷いが、反発する属性同士の利がある。これならば凌ぎきれる、そうディムロスが思った瞬間だった。
「犠牲を払えばなんだって出来る。それこそ世界だって救える。
 だけど“犠牲を必要とする”世界の仕組みは変化しない。姉さまを奪われるまで、僕は気づけなかった!!
 お前も、スタンとリアラを失うまで気づかなかっただろ、カイルッ!?」
炎の赤と蒸気の白が視界を埋め尽くす中、少年の声が響き渡る。痛みさえ錯覚しそうな悲愴がこの音の波の中を貫いていた。
ディムロスはそこで自らの間違いを悟った。ミトスは時間稼ぎに昔の苦労話を語ったのではない。
その程度の詐術に心を揺さぶられるほど、ディムロスは易くはない。
ソーディアンが封印された千年。その4倍の年月を経ても残る生傷の痛みだからこそ、ディムロスを穿てた。
アトワイトをバルバトスに奪われ、司令官として非情の決断を下したディムロスを。
276Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 19@代理:2009/07/01(水) 02:27:56 ID:kyHWrJtD0
そして、今その痛みをカイル=デュナミスただ一人に理解させるためだけにそれは語られている。
人間を信じて最後の最後まで諦めなかった少年が、旅の終わりに知った真実。
彼が守ったものはこんなにも下らなくて、彼が失ったものはあんなにも掛け替えの無いものだった。
世界は変えるものではない。その引き替えに大切なものを、喪ってしまうから。
最後にふらりと訪れた客に対するものとしては破格過ぎるこのサービスは詰まるところ、冥土への土産。
(必ず殺す、即ち必殺の意志。ならばこの拮抗に、更に一枚仕込むか!!)

ディムロスの読みとほぼ同時に、ガキン、とファイアウォールにひび割れたような圧力が走る。
堅い。炎にぶつかっても溶けない何かが壁を穿っている。
「英雄になれる素質があった訳でも、英雄になりたかったわけでもない。ただ、一緒にいられれば良かった。それで十分だったんだ」 
その圧力点を中心とした部分の水蒸気が一瞬晴れて、蒸気混じりの直線を結ぶ光の輝きが映る。
ミトスの左手には邪剣ではなく槍が、守りを撃ち貫く聖なる槍が握られていた。
「僕は唯のハーフエルフだ。僕には姉さましかいなかった。姉さまと一緒にいられれば、誰にも迫害されない場所があればそれで良かった」
ファイアウォールに食い込んでも融けない槍が、楔と打ち込まれている。ディムロスがミトスの意図を察した時には既に遅かった。
足指で剣を器用にホールドしながら、ミトスは両の手に握ったホーリーランスの片方を投擲する。
先に穿った一投目を寸分違わぬ打ち抜き、壁を更に圧し抜く。
意図を察してもディムロスには打つ手がなかった。未だ雹の如き波濤は押し寄せている。
再び推力を得るために壁を解けば、無数の氷に刺し貫かれるだろう。槍を避ければ針衾、針を防げば百舌の贄。
攻めるも退くもままならず、ホーリーランスだけがじりじりと目の前を進んでいる。
「な? 全部は無理なんだよ。本当に大切なものを知らなければ、いつかそれを失う」
手元に残った最後の一槍をミトスは背中に回す。捻った背筋に全てを貫通する力を蓄え、その眼は壁に刺さった二連槍を狙い済ます。
三本目で、かっきりと貫く。詰め将棋の如き陰湿な精密さに、ディムロスは唸るしかなかった。
「僕は唯のハーフエルフだ。姉さまと一緒にいられれば、誰にも迫害されない場所があればそれで良かった」
全てを守ろうとすれば、何処かで歪みが出る。中途半端に選べば、必ず後悔する。
世界もマーテルも欲するは虫が良く、スタンとリアラどっちともというは傲慢に過ぎない。
「ニンゲンなんかの英雄なんて、願い下げだよ。僕の全ては、姉さまのためだけにあったんだ」
選ばなければならないのだ。英雄であるならば、何かを捨てて進むしかない。
「僕は、ただ、“姉さまの英雄であれれば、それで良かった”」
だから世界を、それ以外の何もかもを犠牲にしてでもたった一人を取り戻すと決めたミトスは英雄として完成している。

「お前にはまだ分からないだろ。でも、理解しろなんて言わない。
 分からないまま――――――――ここで死に飛ばせェェェェェェェッッ!!!!!!!」
その一点に収束しきった意思が、全てを引き替えにしても厭わない決意が、そこに至れぬ全ての偽善を撃ち射抜く。


『カイル……!』
投げられた最後の聖槍が飛翔する。アトワイトは無い目を瞑るように、ディムロスを最後に引き合わせた少年の名を呟く。
救済か或いは死出への手向けか、それはいかなる感情から放たれた言葉なのか。
だが、アトワイトはただ道具として己の領分を堅守する。

(知らなかった……あいつ、これだけの想いがあったんだ……これなら、強いはすだよ)
277Ace combat−The UNSUNG BATTLE− 20@代理:2009/07/01(水) 02:28:43 ID:kyHWrJtD0
弾道は計算する意味もないほどの真っ直ぐさで壁を崩す槍の柄尻を打った。
『ぐぅっ……ここまで、なのか……』
ディムロスもまた無念を顕わに諦観を漏らした。だがそこに絶望というほどの後ろめたさは無い。
ただ、自らのマスターを勝利に導けない自分の無力が疎ましかった。
全力を発揮したソーディアンどうし、得物は五分と五分。
だが現実は、形振り構わず全てを曝したミトスを前にして、遂に前進した彼の槍がカイルをくり抜こうとしている。

(永い間、一人で抱え込んでたんだろ。そんな気持ち、誰にも理解できないものな)

ディムロスはミトスとカイルを分かつものを悟ってしまった。
望まぬまま英雄となり世界しか救えなかったミトス。かつてディムロスに誰一人見捨てない英雄の在り方を説いたカイル。
それのどちらが良いかはディムロスには決められない。

(大切な人を零して、世界を守った英雄、か。ははっ……“他にも”いたんだな、こんなところに)

だが、2人の相違がこの一切の望みを棄てた死地に於いて、最後の一歩に絶対的な差を生ぜさせている。
『せめて、俺がもう半日早くお前に会えていたならば……』
後ろ2つの槍が光と爆ぜ、三本分の力に推された初槍が遂にディムロスの焔を破る。

<そう、彼ではミトスに勝てない。それはもう分かり切っている>

(否定なんて、俺に出来る訳がない。でもな、一つだけお前間違えてるよ。
 失うことでしか、英雄にはなれない。そんなこと―――――)

ダメージではない。技術ではない。膂力でもない。
英雄としての経験。ただその一点で、カイル=デュナミスはミトス=ユグドラシルを越えられない。
『我が身の、不甲斐なさを許せ……ッ』
その結果が、彼の肉の中心を――――――――――――――――――――――――



<だが、だからこそ、堕ちた英雄を止められるのは彼しかいない>



「そんなこと―――――“知ってるよ”」
紅黒い鮮血が赤暗い空に散り、傍にあった剣のレンズをびたびたと覆った。




Pause――――――――――――――Next Turn Shift Belserius→Goddess
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 02:30:23 ID:kyHWrJtD0
代理投下完了です
メッセージもありましたので合わせて転載



投下終了。お待たせして申し訳ありません。
しかもこれだけ待たせて分割で申し訳ありません。
しかも久しぶりの投下がこんなグダグダ内容で(ry

続きはできる限り早く投下します。読み手のみなさんには、
ご迷惑をおかけしますが、もうしばらくお待ちいただけたらと思います。
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 02:32:59 ID:kyHWrJtD0
おおっと書き移し忘れ


追記:SS内にちらほらある編集点らしきものは、
あくまで目安程度に考えていただけると嬉しいです。
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 02:56:00 ID:sGQMob+fO
投下乙なんだぜ

これはカイル終わったな…
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 03:44:22 ID:rwTXHTgfO
新話ktkr!
カイル好きの俺としては、また号泣しそうですがGJ!!(´・ω・`)
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 08:37:11 ID:ErlA230BO
投下乙!
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 19:58:35 ID:RTFq9ykXO
投下乙です。代理の人も乙

カイルの成長とブチ切れミトスがいいな
あともう一波乱来そうだ
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 20:58:08 ID:bYjEpTWy0
投下乙!
英雄対決続ききたああああああああああああああああ!
いいいやっはあああああああああ!
冒頭のミトスの摩耗っぷりがせつねえなあ。
アトワイト視線もミトスを魅せるのにいい味出してる。
なんだかんだで似たもの同士。
共にただ一人のための英雄でありたかったもの達の戦い。
ミトスの英雄論が読んでる俺の胸にもぐさりと来た。
“ミトス”を超えようとくらいつくカイルと、その熱と禁句に引きずられて全てを曝け出したミトス。
怒号の激突の末が楽しみでなりません。

ミトスの高速詠唱の表現もすごいいいなーw
かっこいい!
空中戦だからこその足でのレーザーにはなあにいい!?状態だったw
間のサイグろさんとかも気になるなーw

GJ!!
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 21:43:11 ID:xZ6W8AnD0
何この気持ち悪いスレ
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 21:57:13 ID:qxa3ZfftO
投下乙!久々の新作だな。
息巻く攻防戦の応報にハラハラしながら読んでいたが・・・カイルー!!
これはもう流石にキツイ気もするが続きはどうなるんだ・・・ミトスも本気になるとやっぱ恐ろしいな。
英雄同士の戦いは苛烈だなぁ。

しかし・・・goddess、だと・・・?
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 02:05:23 ID:Hs7O0cBiO
なんでそんなに文章を書くの上手いの?尋常じゃないぐらい続きが気になる。
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 14:54:33 ID:d0mfrCm1O
投下乙です
続き待ってます
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/05(日) 11:31:34 ID:CC3yI8VL0
カイルミトス戦作者です。

大きめのミスを発見したので修正します。
内容に変更はないため、避難所に詳細を記入しました。
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 16:43:29 ID:z4d73jlT0
修正乙です。

291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/11(土) 14:12:26 ID:e9sV+bym0
修正乙です!
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/15(水) 21:09:57 ID:NQ1WAvG7O
アトワイトの氷の女王が女神になってるところがあるけど
女王が正しいのか?
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/17(金) 20:27:37 ID:DhdzO6O2O
クレスとかティトレイもところどころ名前違うみたいだし、特に決まった名前はないんじゃないか?
もしくは、マーダーから対主催(寄り?)になったとき名前が変わるとか?
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/18(土) 13:34:11 ID:JfoPueyw0
該当部(駒の名称が出てくる部分)の主な作者です。
最初は流動的にその場の気分で駒名は換えていくつもりでしたが、
氷の女神と氷の女王は同じ話の中で混ざってますね……完全に見逃してました。

現在までで出ている駒の名前は以下のように統一します。
名称を変更するときは本編で明言させます。

天使
氷の女王


怪物
学士



凶剣
射手

氷剣(氷の剣士)
炎剣(炎の剣士)

二刀
人形

多分これで全部だとは思いますが……抜けがあったら適座指摘ください。
まとめ氏には避難所にて後で修正要望を書きます。
重要そうな部分で穴を作って申し訳ありませんでした。
295292:2009/07/20(月) 16:18:04 ID:0jTNq/qOO
乙です
面倒をおかけしたようで申し訳ない
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 05:15:03 ID:g9AJWijaO
保守
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 19:39:38 ID:72MzcO84O
ほす
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 23:41:57 ID:HIDS+1vDO
ほしゅ
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 07:04:32 ID:lnDxkvSxO
保守
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/06(木) 21:40:38 ID:KOojRh6cO
ホシュ
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/09(日) 16:36:28 ID:j+Rup8EPO
保守
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/13(木) 00:56:06 ID:Z52oAUEIO
ほしゅ
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/16(日) 18:38:56 ID:4+nfQrOkO
保守
304R-0109 ◆eVB8arcato :2009/08/17(月) 11:23:39 ID:82H9Re9L0
どうも、こんばんは。
「バトルロワイアルパロディ企画スレ交流雑談所(以下交流所)」の方でラジオをしているR-0109と申します。
現在、交流所のほうで「第二回パロロワ企画巡回ラジオツアー」というのをやっていまして。
そこで来る8/22(土)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?

ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。

交流所を知らない人のために交流所のアドレスも張っておきます。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1243687397/ (したらば)
ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html (日程表等)
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/17(月) 20:22:09 ID:XuBjBzi3O
特に異論はないけど問題は人の集まり具合か?
携帯なのが残念だ
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/17(月) 20:47:11 ID:Fe4pWidSO
ラジオっていうと前は完結前だったよね
完結したらまた来てって話してたなあ、懐かしい
楽しみにしてます
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/17(月) 20:53:57 ID:UppbbEcMO
まじかよ。今実家帰ってて参加できねぇや…。
時期が時期だし参加出来ない人が多そうだなぁ…。残念だ。
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/20(木) 22:18:05 ID:ti3JInZSO
支援だけでもできたらいいんだが…
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 20:40:51 ID:rRC9M+JI0
保守
310R-0109 ◆eVB8arcato :2009/08/22(土) 21:00:50 ID:od4VJfhh0
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 01:36:33 ID:q9r9cgR0O
お疲れ様でした。
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/24(月) 00:51:52 ID:wpmjVUGN0
今久しぶりにブラウザ更新したわ\(^o^)/
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/27(木) 20:27:53 ID:PmmstqqdO
ほっしゅほっしゅ
314名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 20:58:40 ID:kyzgHz2jO
ほっしゅ
315名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/04(金) 03:09:33 ID:KzVzV7xUO
ほしゅ
作者様がインフルエンザにかからないことを祈っております
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/04(金) 07:59:55 ID:D2MXtaux0
交流所ってところのリンクが貼られてあったから見てみたが…
なんだありゃ。荒れすぎだろ。
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/07(月) 09:18:26 ID:e4YefSSZ0
>>316
どこのことだ?
318名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/10(木) 09:19:34 ID:fQeW+R6YO
保守。
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/13(日) 21:17:50 ID:NGsdbPj8O
パロロワの交流所っていうと
イベント企画板と、したらばの毒吐き別館にあるな
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/14(月) 21:00:42 ID:AwGQRdo/0
まあすぐ上に貼られてるけど、
したらばのタイトルからして、あそこはいつも荒れてる場所だから
321名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/16(水) 16:59:48 ID:dzTgkQFxO
保守
322名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/19(土) 19:33:57 ID:qjyi/y9m0
保守
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/22(火) 21:37:34 ID:Gl+lekkOO
保守
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/22(火) 22:31:18 ID:TPettD/C0
各クールごとに見所ってか山場ってのを
決めるとしたらどこらへんだと思う?
バトルとか関係なしで。
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/22(火) 23:29:45 ID:tX9TJuSJO
本編はヴェイグVSミクトランだな。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/22(火) 23:32:58 ID:GOjpznFl0
カイルがリオンを殺したのは本格的な崩壊への第一歩だったように思う
リオンは最終的に仮面コスでVS天上王して生き残るんだとばかり思っていた
アナザーじゃあどうなるか予想つかないが
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/23(水) 22:23:31 ID:Md/GIOqt0
トーマが言っていたが、あの時点で対主催の動きはかなり制限されてるんだよね。
E2に戻るなりそこで休憩するなりE3のケイオスハート無視すると
シャーリィが魔杖持ったままフリーになる。大人数で動く対主催に砲撃持ちの奴は脅威すぎる。

そのままシャリがミトスあたりを狙ってくれれば別だが、サイグロ視点を信じるならベルセリオスがそんな手を打つか微妙過ぎる。
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/23(水) 23:50:43 ID:Smo20mpEO
それ含めるとターニングポイントはサウブレ編辺りか?
強対主催と重要フラグ持ちキャラの大量退場で対主催側の動きが大幅に制限されたし
カイルが洞穴に落ちたことでリオン絡みがややこしくなった
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/24(木) 07:21:16 ID:4dTpDKZ50
俺はE2悲劇辺りからだと思う。あれ以降の流れで今まで来てる。
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/24(木) 21:17:27 ID:YTmCTv+G0
ロイド組がE2に向かったのもクラトスがそこにいるって情報からだからな。
ターニングポイントは第二次E2だと思うが、そこに来るまでの流れも確かに誘導的ではある。
331名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/25(金) 15:03:34 ID:x91wBEZhO
>>327
範囲型の攻撃は、そもそも単騎かそれに近いパーティよりは、
大人数のパーティに撃ち込んだ方がコスパ的に考えてお得だしなぁ。
メガグラの超大火力砲撃を一点収束させてピンポイント攻撃で超々大火力砲撃をお見舞いする、
なんて小器用な真似を酢飯がしていたとも思えんし。
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/28(月) 21:27:37 ID:gFjuj6I70
ジューダスが言ってた
何一つ諦めない五人の馬鹿って
グリッド、ロイド、カイル、ミント、メルディってイメージ
あくまでイメージ
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/29(火) 10:37:11 ID:7lIgdLrwO
俺はグリッド、ロイド、カイル、ヴェイグ、メルディかな
面識ないのも含めてるけど
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/29(火) 18:10:19 ID:vmOkLTmu0
>>333
そいつらとは全員面識があるぞ
335名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/30(水) 07:01:48 ID:6Vd6Pb7UO
あれ?グリッドとジューダスって面識あったか?
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/30(水) 12:35:36 ID:loFyyt1LO
Dでリオンのときに会ってるのも含めれば面識あるだろうけど…
あのときのグリッドと今のグリッドは同じ馬鹿でも全然違うしなぁw
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/30(水) 21:21:09 ID:5MXafm8R0
個人的には
ロイド、ヴェイグ、メルディ、カイル、スタンだと思ってる
まぁ、わかんないけど
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/01(木) 00:38:13 ID:4ggiD5r10
ロイド・メルディ・ヴェイグの3人は鉄板ぽいよね
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/01(木) 01:05:54 ID:JjSseqq3O
原作からして多分カイルもだな
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/04(日) 22:04:18 ID:iVD3bMO+O
しかしジューダスの言う馬鹿のほとんどが最終盤まで生き残ったのは面白いな
341名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/05(月) 02:35:17 ID:H8oHIscz0
>>340
ロイドはコレットを解放した
メルディはキールVSコレット等を回避した
ヴェイグはティトレイを完全に表返らせた
カイルはこれからってとこなのだろうか?
あと一人は知らんが
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/07(水) 20:59:59 ID:RX+JuPO00
ディバックの中で支給品達がだべり兼、考察話をするという内容で
一話丸々濃いものが出来るのは改めて凄いな
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/07(水) 21:03:25 ID:RX+JuPO00
誤爆
2ndと間違えた
1stも支給品同士の愛憎劇や
対主催希望の星を殺したのが支給品だったりと凄いんだがな
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/07(水) 21:04:38 ID:xZqX269JO
>>342
誤爆かい?
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/07(水) 21:11:49 ID:xZqX269JO
おっと失礼
確かに支給品周りだとディムロスとアトワイトは本編とアナザーの差が凄いな
個人的にはカルマ戦のシャルティエも好きだが
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/11(日) 00:12:37 ID:WratJ3kUO
保守
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/11(日) 13:50:48 ID:zN4My7c1O
1st読み返してて思ったけど、1stって2ndよりサブキャラが多いよね
グリッドとかカトリーヌとかポプラおばさんとか
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/11(日) 20:08:03 ID:pSgGSgEGO
5人の馬鹿に、なんとなくだが
ディムロスが入りそうだ。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/11(日) 22:45:29 ID:7rAJNfBK0
>>347
指名制と得票制の違い
あと、出したキャラは自分で責任持って他人に渡せって空気があったから、
漆黒組の四人はお荷物にならずに中盤まで残った
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/12(月) 21:23:44 ID:RQb9jPGi0
>>348
シャルへの対応からしてソーディアンの素性について
薄々感づいていただろうから微妙かも
つかよく気づいたよなコイツ
ハロルドのことも気づいてましたってなっても驚かないぞ
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/12(月) 22:41:46 ID:FuhjM8fv0
生まれたときからの付き合いだったからな。微妙な違和感を感じ取ったのかもしれん。
リオンはマリアン関連で精神的にあうあうな状態だったし。
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 17:20:58 ID:mOAKfAT+O
投票当時のスレを見てたんだがセネルとティトレイは格闘家繋がりで一緒に投票されてたんだな
なのにこの差は一体どこから…
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 20:30:52 ID:8hM7ZXRh0
セネルはシャーリィマーダー化の為の生け贄だからな
ベルセリオス的意味でもメタ的意味でも
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 23:40:13 ID:fgluwYQSO
それを殺すための駒がデミテルっていうのもまた…
いや実際はすずがそうだったんだろうけどさ
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 09:22:30 ID:Ns0agvIKO
そう考えるとセネルの死って結構重要…なのか…?
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 11:25:16 ID:osStTuIm0
少なくとも二人のショタが股間をOOする事態にはならなかったろうな
357名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 14:22:39 ID:59l/NS3QO
セネルの死が必然なら、マーダーシャーリィはベルセリオスにとってかなり重要な駒の可能性大だな。
358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 01:07:00 ID:84Y/wT5qO
エクスフィアを与えたのも、そう考えれば合点はいく。
大体の場合、シャーリィinグリッドがキールやメルディを殺してるだろうし、ベルセリオスにとっては重要な駒だったのかもな
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 15:24:41 ID:NtXR8kEdO
そろそろ投下がくるかなー
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/20(火) 17:39:39 ID:cA/+VBsu0
もう十日もすれば投下されるだろうさ
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/20(火) 19:57:50 ID:FavpAH8NO
元に戻った時空剣士自重
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:19:43 ID:Qo7UWAhX0
黙って投下をまトウカ
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 17:58:51 ID:BhlgvQboO
テイルズオブマガジンのP漫画でクレスがデミテルに操られててニヤニヤしてしまった
364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 19:15:52 ID:CEWJJQnIO
mjd?
ちょっとマガジン買ってくるわ

クレスも元に戻ったけどどうなんのかな…
ってかまた少ししたらヤク中に戻るかもしれない以上何ができるんだ?
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 18:04:13 ID:9oOuPjr0O
クレスがこの先生きのこるには
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 19:07:09 ID:MrAgtRip0
現時点での最善は、「クレスの意思で、ヤク中に戻ってしまう前に退場」かな。
367名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 19:18:47 ID:NkrLXoef0
きのこを食べて生き残ろう!
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 21:28:35 ID:X2l+fIJnO
ラジオで調子乗ったからって駄洒落言っても駄目だぞ時空剣士w
369名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/28(水) 11:01:27 ID:e+pi7qkMO
保守
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/31(土) 05:35:03 ID:ampyiKPOO
保守
371名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 20:41:25 ID:tMU1FDCEO
保守!
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 02:47:14 ID:BLfpJC4aO
保☆守
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 12:15:44 ID:pJqC3YQCO
保守。
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 16:53:19 ID:kDPPKSgYO
4ヶ月時間を跳んできたがまだ投下はないか。
更に一ヶ月跳んでくる
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 13:52:43 ID:kXrmLQl2O
時間旅行出来ないので保守
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 21:28:50 ID:XQoRjP1a0
こんばんは、ナッシュという者です。
今晩、突発的ではありますが、テイルズロワ1st・2ndを題材としたラジオの
テスト放送をしています。
日付が変わる頃くらいまで流しておりますので、
お時間のある方、よろしければご参加・ご協力ください。

ラジオのアドレス…… http://nash-tobr.ddo.jp:8000/
ラジオ掲示板…… http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13268/

それでは、失礼しました。
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 21:34:50 ID:CgupwT+jO
>>376
携帯なので参加はできませんが頑張ってください
378名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/17(火) 12:51:55 ID:Nqv/WoU6O
保守
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/17(火) 19:54:10 ID:LrGtEBE00
やっと規制解除北
380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 00:26:32 ID:Ic4CVQIyO
2ndスレと同じぐらいだろうが点呼とろうぜ
1
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 07:05:22 ID:QTsUjdGOO
2
投下来ないね
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 07:12:33 ID:9GhstsxM0

信じるしかないさ
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 11:22:25 ID:OFKUuifDO
4
待つ時間も楽しいってことで
自分に文才があればとつくづく思う
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 12:36:04 ID:3XNzj5xOO
5
信じる者は救われる?
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 13:01:45 ID:I4K9VbL/O
6
信じること、信じ続けること、それが本当の強さだ
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 17:48:04 ID:g6V9WING0
7

救われるさ、いつかはな
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 18:05:03 ID:VQOZb1J7O
8
何か良いこといいたいけど思い浮かばない。
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 20:18:01 ID:9KmOrs1iO
9
同じく
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 21:17:11 ID:RcwSFRXzO
10
そういう時はダジャレをいうんだ!
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 16:27:21 ID:vyAH84azO
11
キールが裏切ーる
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 08:08:08 ID:J3NKp04AO
12
だ、誰かフリーズチェックを…もしくはリキュールボトルを…
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 20:51:04 ID:cgGugdAOO
13
パナシーアボトルならあるけど…
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 22:42:44 ID:CJZENPhrO
なんか書いてるとか、書く気がある、じゃなくて待ってるって人ばかりだけど、
こっちは進行度的にしかたないのか。
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 23:42:26 ID:ST/NcLznO
書き手の打ち合わせがアナザーの最初にあって、完結までの展開が決まってるんじゃなかったっけか
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 23:49:34 ID:6MbrVJmf0
一度終わってる分気長に待てるかな
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/21(土) 22:46:07 ID:hC8T1bRWO
ネタバレします


犯人はヤス
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/21(土) 23:23:12 ID:DRMslHBFO
どうでもいいネタバレだなwww
というかこのロワに犯人っているんだろうか
398名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/21(土) 23:57:56 ID:bcggyY0E0
現状の最有力候補はベルセリオスだろうな<犯人
目的も何をしたのかも不明だけど、サイグローグのセリフからすると
不幸系のイベントはこいつの指し手みたいだし。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 01:54:53 ID:PJrwvtuzO
保守
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 23:04:59 ID:H+V5+SV/0
このロワの中盤辺りでリオン・マリアン・ジューダスの神絵が投下された覚えがあるんだが
どうだったっけ? まとめにはないから記憶違いかな
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 23:26:57 ID:X5N7x9Z3O
ジューダスは分からんがリオンとマリアンは首輪爆破の時の絵が来てたな
絵の人上手かったなぁ…今何してるんだろう
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 23:30:30 ID:n0DlrTzh0
>>400
絵師本人からの要望で、まとめサイトから削除されたはず
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 23:32:42 ID:H+V5+SV/0
>>402
残念、そうなのか。教えてくれてありがとう
やっぱり気に入ったものはSSでもイラストでも即保存が鉄則だな
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/25(水) 14:22:59 ID:wb4EG+NaO
こんにちは、ナッシュです。規制のため携帯から失礼します。
テイルズロワラジオのお知らせに参りました。
第一回ラジオを11/28(土)の21時から放送しますので、お時間のある方はよろしければどうぞ。
ラジオのアドレスは当日スレに書き込ませていただきます。

では、失礼しました。
405名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/28(土) 21:10:10 ID:FZEAD56U0
今からラジオ放送します〜よろしくお願いします。

ラジオのアドレス…… http://nash-tobr.ddo.jp:8000/
掲示板のアドレス…… http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13268/

聞き方は↓からどうぞ
http://www.atamanikita.com/start-shoutcast/shoutcast-14.html
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/28(土) 21:22:43 ID:2yOhdTjEO
ラジオ乙です。スカイプがないから乱入は出来ませんが、手土産に避難所に投下をしました。規制のため、お手数ですがどなたか代理投下をお願い申し上げます。
407ZERO 1@代理投下:2009/11/29(日) 01:35:20 ID:qdIRg4ds0
氷の針衾と炎の城塞が消え行く中に、夜の黒と血の赤は聖槍の光を受けてやけに映えた。
その空間の中で、ミトスも、アトワイトも、ディムロスも、
ともすれば落日より早く光る星々さえも、この宙にある一切が静止する。
カイルの細腰を正中に射抜く一投、加減の余地も無い殺傷がこの空に滴るオブジェとなっている。
勝敗と生死を分かつ一閃。アトワイトも、ディムロスも決したと思った。
結果だけではない。ミトスとカイルを隔てる僅かにして絶対の差がそれを確かたらしめている。
マーダー、或いはシルヴァラントとテセアラの敵としてミトスと相対したならば、
今この空に飛び続けていたのはカイルだったろう。
だが、ミトスの逆鱗に触れ、四千年の深淵を覗いたのは他ならぬカイルだ。
不器用と言うよりは、馬鹿の極み。カイルらしい結末と言えば、それまでの決着だ。

『…………ミトス?』
なのに、ソーディアンを握るその手が緩まない。
「なんで」
アトワイトも――――――――――ディムロスも。

見上げたアトワイトの視界に映ったのは、瞳孔を開いて食い入るように見開かれたミトスの瞳の震え。
嬉々でも怒気でもなく、純粋な驚愕。「何故」しか存在しない感情がそこにあった。
アトワイトにはマスターの気分を完全に理解することなど出来はしない。
ただ彼女に分かるのは、その瞳の先に何かが浮いていたということだけ。
彼女は知っている。ソーディアンの意思だけでは人はこの空に留まれない。つまり。
「なんで、生き切らない?」
まだ、彼の命は終わっていない。

『カイル……お前』
「はは、言ったろ…………死なないよ、俺は」

その声に導かれたディムロスの眼に飛び込んだのは、真っ赤な飛沫の奥でくすんでいたカイルの瞳だった。
血の気の薄い顔で力無く笑うカイルの胸元、溢れ散る鮮血の源泉で槍が止まっている。
だが、そこは臓腑ではなかった。それよりも僅か三寸、彼の手がその槍を握っているように見える。
『嘘…………魔術を、手で掴んでる……?』
まるで削岩機で削り廻すように、夥しい散血が渦を巻いて彼の左の掌を真っ赤に蒸かす。
止められない英雄の意志を、その小さな手が抗している。
『まだ、やれるのか?』
剣の問いにカイルは何も答えなかった。だが、ディムロスはそれだけで全てを了解した。
生命は未だ希薄で、心音は胡乱。
でも生きていて、まだ空を飛んでいる。それだけで十二分だった。
生きて戦う。それのみがこの空に示せる唯一つの意思だ。
408ZERO 2@代理投下:2009/11/29(日) 01:36:52 ID:qdIRg4ds0
そして眼に湛えられたその意思がミトスを睨み付ける。
顔の蒼白さが一種の錯覚でないかと思えるほどに血走った瞳が、ミトスの心臓を圧迫した。
その瞬間、カイルの手とディムロスの炎が同時に動く。
ホーリーランスを、より正確に言えばホーリーランスと掌の間の隙間を押し上げて、
槍の切先を僅かに逸らし、それと同時にエクスプロード級の爆発力で自らを一気に加速させる。
『掴んでたのは、槍じゃない…………だったら、あの渦を巻く空間は……ミトス!?』
掌に集めた威力全てをぶつけて魔術を弾いたカイルがソーディアン二つの驚きよりも早くミトスへと肉薄する。
僅かばかりに反応で上回ったミトスの右手に氷柱が握られ、左手足の二振り合わせて三つで受け止める。
「ごっ……お前……ッ」
ミトスは驚愕と困惑に見開いた眼の中で青目をふるふると震わせた。
だが、ミトスを驚愕せしめたのは大仕掛けの後の隙とはいえ魔術の一つも撃たせずに距離を詰めた速度でもなく、
その剣威に抗するために増した足を重ねてなお五分にしか持ち込めないほどに強いこの斬撃でもない。

「何処から、湧いて出た。その力……三味線を引いてた訳じゃ、無いだろ……何処に隠してた……?」
ミトスが奥歯を真っ二つに割りかねないほどに食い縛った口から、漏れ出すように眼前に問いかける。
ここまで叩いて尚折れないモノがあるとしたら、それは一体なんなのか、興味があった。
「そんなもん、無い。でも、ここで死んだらお前の言う英雄を認めることになる。だから、死なない」
カイルは淡々と応ずる。少しでも取り扱いを誤れば爆発してしまいそうな感情を意識的に押さえ込むように。
ミトスはその答えに落胆と安堵を綯い交ぜにしたような息をついた。

「ここまで言って、分からないのか。まあ、別に分かれ――――」
「“分かるんだよ”。だから、負けられないんだ!!」

完全に止まったはずの剣が更に押し込まれ、ミトスの体が吹き飛ばされる。
「くそ、しつこいッ!」
飛ばされたミトスがアトワイトを進行方向上に突き立てると、そこに氷壁が一枚生成された。
勢いが付くよりも早く、中空に出現した足場を踏みしめてミトスは体勢を整える。
しかし体の制御は容易くとも、心はそうは行かない。
(どうして、ここまで這い上がれる? 何も知らないガキが、僕に追い縋ってくる!?)
完全に折ったはずのカイルから放たれる闘気に、ミトスの心が気圧されている。
初めて剣を交えたときには潮騒程度のざわめきだったそれが、今や津波と化して荒れ狂っている。
一体、カイルの何に引っかかっていると言うのか―――――――――――
『ミトス、ガード!!』
「!?」
アトワイトの声に首を上げたミトスの眼には、カイルが剣を今振り下ろさんとしている瞬間が写っていた。
この攻撃は幾らなんでも速過ぎる。受身を取ることまで予測していなければ成立しない。
「リジェクション!!」
避けるも払うも間に合わないミトスは咄嗟に前面に障壁を放ち、間一髪でカイルの剣を僅かに止める。
「分かってる、だと? 歯も生え揃ってないようなお前如きが、その青い嘴で何を囀る!?」
「何かを失くすことは避けられない。全部を守ろうとしたって、俺達の手は2つしかない。
 守りたいものが多すぎて、そうやって苦しんで来た人たちを、知っている」
ロイド=アーヴィング。差し伸べた手をもぎ取られて、残った命の短さに追い詰められた人。
ヴェイグ=リュングベル。選択を常に突きつけられ、望まない結果を与えられながらも、迷うことを捨てなかった人。
彼らだけではない。数え切れないほどの喪失が、この空の下には溢れ返っている。
「だったら、分かるだろ。何かを求めるなら―――――」
「父さんは言ってた。英雄は多くでも、1つだけでも、かけがえのない何かを守れる人のことだって。
 でも、その為に全部を犠牲にするような奴は、英雄なんかじゃない」
409ZERO 3@代理投下:2009/11/29(日) 01:38:13 ID:qdIRg4ds0
消えた障壁の波の向こうには、驚愕しかなかった。
目の前に現れたのはカイルではなく、屈折した軌跡を残す3本の光の矢だ。
光はその速さ故に不可避。それでいて、どこに避けても身体への接着は逃れ得ないたった3本の布陣――デルタレイは、
カイルの愚直さとは似ても似つかない精密さを持っていた。
とっさに発動した粋護陣に光はかき消えたが、代償として少しの硬直が襲いかかる。
その代償を理解しながらも、ミトスは回避ではなく防御を選んだ。
カイルにとって術は本腰を入れて撃つものではなく、単なる牽制の手段だ。ましてや下級晶術など。
ならばカイルの狙いは――――

「たああぁぁぁぁっ!!」

視界外からの超高速奇襲攻撃!
視野から消えた部分から攻める。その考えは分かる上、結局は馬鹿さ加減を露呈する手法だ。
だが、普通ならば捌けるこの攻め手も、カイルの場合は状況が異なる。
こちらが攻撃に転じる前に、あの箒の、それこそ馬鹿げた速度で距離を詰められる。
そうなればどうなるか。もちろん、反撃することはできない。よくて手がイカれるか、最悪胴が真っ二つになるだろう。
ミトスがとった手段はどれでもなかった。選ばれた者のみが扱える完全回避――すなわち空間転移。
速度に乗って振るわれたディムロスは空を切り、転移の光と炎の残滓だけがその場に残る。
だがカイルは止まらない。止まれないのだ。急停止すれば圧力で身体がひしゃげてしまう。
そしてそれを見越したミトスは、ミスティブルームの制動距離の少し先――

『カイル、上だッ!』

――カイルの速度が落ち始める頃合いに転移した。
上空から落ちてきた剣は、まるで未来の時空剣士の技のよう。降下の威力を上乗せしたアトワイトをミトスは振り落とす。
「っぐ!?」
しかし、声を上げたのはカイルではなくミトス当人だった。
カイルもまた、ディムロスを上に振り上げてミトスに抗戦した。
通常ならば力が入りきらない状況で、カイルはミトスの一撃を受け止めてみせたのだ。
体躯の差でもない。力の差でもない。ましてや、大剣と曲刀の差でもない。
けれども、カイルは訳の分からないもので差を埋め、力を拮抗させた。
精神論を頭から否定するつもりはないが、それを引いても今のカイルは理解の範疇外だった。
それをもみ消すように、ミトスは目を細めたまま小さく嘲笑を放つ。
「多くでも、1つだけでも、かけがえのない何かを守れるのが英雄だって?
 馬鹿馬鹿しい。ならば英雄はそのために、守るもの以上のものを失う者だ。お前の父親とやらは、それを経験しなかったのか?」
剣と剣が重なり合う。お互いの表情が視野から溢れ出すほど、2人の剣はぎりぎりと軋み合っていた。
鼻先がぶつかり合ってしまうほどの距離でも、気迫だけはしっかりと感じ取れる。
「僕はそれで姉さまを失った。世界が救われても何も変わりやしない人間のせいで! 
 変わらない人間が作った、変わらない世界のせいで!
 だから、僕は姉さまの願いを叶えるために、世界の仕組みも変えてやることを選んだんだよ!」
しかし、目の前のミトスの怨嗟を耳に入れても、怯む様子はまるで見受けられない。それどころか更に強まるばかりだ。
その気圧に押されてか、カイルが持つディムロスのコアが一瞬だけ輝く。
「選んだ? 違うだろ。お前はそうするしかなかっただけだ。
 大切な人を守れなかった自分の無能を棚に上げて、何が世界の仕組みだ」
410ZERO 4@代理投下:2009/11/29(日) 01:39:30 ID:qdIRg4ds0
上方向に弾かれた剣が、地面との摩擦ではなく晶術の力によって炎に包まれる。
「そんなもの、関係ない。お前は大切な人を亡くした理由を自分以外に押し付けて、そうやって自分を納得させてるだけだ」
レリーフの刻まれた剣身が、勢いを殺さぬ内に振り落とされる。接触した刀身から爆発が広がる。
衝撃を利用し、爆炎剣をいなしてミトスは後方へ飛んだ。
アトワイト、とパートナーの名を唱える。相方は状況と5文字の名前とその響きだけで、ミトスの意図を把握した。
コアに組み込まれた、本来は存在しないエクスフィアの力を用いて、アトワイトは主君のEXジェムを遠隔操作した。
構成を組み替えられる。それを確認してミトスはすぐさま術を編んだ。
詠唱が即座に破棄され、4本の氷の針がミトスの指揮によって規則的に向かっていく。
「お前に、お前に何が分かる!? お前だって、ここで失くしておきながら!」
具現化されたアイスニードルは、ミトスの冷徹な怒りをそのまま冷気へと変貌させ速度を増した。
反撃魔術<スペルリベンジ>。吹き飛び中、下級魔術が詠唱なしで発動する複合EXスキル。
箒の機動力を以って、カイルは向かってくるアイスニードルを、最低限の動きだけで、その場でくぐり抜けるように避けた。
3本が横を通り過ぎていく中、最後の1本だけが箒をへし折らんとばかりに柄を狙う。
機動力の要である魔導の箒。カイルは、それを手放し、折れた足で思い切り柄を“押した”。
「言っただろ。知ってるって。だから、分かるんだよ」
空中に身を投げ出せば、待っているのは無論墜落。つまりこの行動は自殺行為だ。ミトスも、ついに焼きが回ったかと思ったほどである。
だが、カイルは空中で最後のアイスニードルを見据えた。そして身体を捻り、跳躍した際の軸足ではない、もう片方の折れた足を振り上げる。
あとは重力に任せるのみ。痛みなど当に忘却の彼方で知りやしない。
足に針が突き刺さる前に、踵が氷を捉える。父は得意でも息子は得手ではない体術で、それを“叩き割った”。
残された冷気の余韻が少しだけ周囲を凍てつかせたが、それもすぐに昇華された。ディムロスが引き戻した箒の熱が、冷たさをかき消していた。
カイルは空いた片手で箒を掴み、身体の前に持っていきすぐにホバリングさせた。
距離が離れ、2人は相手の顔を見合う。片や焦燥、片や決意。
肉体的にも、精神的にも追い詰められているミトスは、張り詰めた面差しのカイルを見て焦燥せざるを得なかった。
少なくとも、昨日の夕方に戦った甘っちょろい青二才が、馬鹿げているとはいえこれほどの反撃をしてくるなど。

「世界より一人を選ぶなんて、違うんだ。間違ってるんだよ」

何より。
箒に乗りディムロスを構えるカイルは、先程まで傷つき、心を消耗させていた人間とは別人のようだ。
まるで、痛みを感じていないかのように、否“傷み過ぎて痛みを忘れてしまったかのように”。

「お前、まさか―――――」
「そんなのを選ぶ奴は、英雄になれない。なっちゃいけない」

ある可能性に思い至ったミトスの眼に、カイルの瞳が重なる。
さっきまでの痛みとは比べものにならない。
童顔に浮かぶのは、15の幼い少年のものとは思えぬ痛みに塗れた湿った表情。
ミトスは、それを識っていた。遥か昔、姉を失い、全てに諦めたあの一瞬にそれを見た。

世界よりも大切なモノを失った、愚者の絶望を。


「亡く――――――――――――――――いや、“捨てた”のか」
411ZERO 5@代理投下:2009/11/29(日) 01:40:56 ID:qdIRg4ds0
ミトスの問いに、カイルは無言を以って応じた。
世界と少女。どちらかを選べばどちらかを失う。
神を倒した果てに、世界を救うことを選んだ少年は、その代償としてかけがえのない存在を無くした。
すべての始まりであった、様々な時空を共に歩み、少年を英雄と認めてくれた少女を。
彼が初めて焦がれる想いを抱いた少女を、彼はその手で切り落としたのだ。

「そんなの、英雄じゃない。唯の莫迦だ。
 たった一人の為に世界を犠牲にしようとしたお前も、たった一人の為に世界が壊れててもいいと思った俺も」

ミトス=ユグドラシルに想像が付いただろうか。
そんな彼女を失って、彼がどれほどの痛みを負ったか。
ただ一言「生きたい」と言ってくれれば、世界を捨ててでも選んだろう彼女をその手で殺した痛みを。

ミトスは呆然とカイルを見ていた。
失うということを知らないと思い、散々と大事なものを奪っていったのに、カイルはとっくに捨てていた。
捨てることで英雄となる道を示していたのに、それのなんて滑稽なことか。
既にカイルは、昨夜ミトスが定義した「英雄」であったのだ。
だが、彼は自分と同じミトスに向かって「英雄」ではないと否定した。
それを聞いて、ミトスが言葉を失わない訳がなかった。

「俺だって、とっくの昔に失ってる。世界と天秤にかけられて、俺は世界を選んだんだ。
 そしたら、幻のように消えていっちゃった」

綴られる言葉は、15歳の子供が背負う十字架には重すぎた。
だからこそ外見に似合わぬ語りは不思議な説得力を持っていた。
この島に来る前のことなどミトスには分からない。だが、彼が述べていることは紛れもなく事実なのだと。
辛酸では足りぬほどの猛毒を、この島に来てなお彼は呷り続けてきたのだと。

「俺はあの子の――リアラの英雄だ。英雄だと、思ってた。
 だから、あの子が生きれるなら、世界なんて滅んじゃってもいいって、あのときは思った」

ディムロスを両手で握り、体を丸くするカイルの背に、あのときの感触が蘇る。
彼女の体の感触だ。神を具現させていたレンズを前に躊躇い、恐れ、剣を振り上げたままの自分に寄り添ってきた。

「でも、そんなの違う。それは俺の望みだ。
 リアラは、消えるのは怖くないって、神に捕らわれる世界よりも再会できる世界を、未来を望んだんだ」

そして、いつの間にか背中に残っていた感触はどこかへと、溶けるように消え去ってしまっていた。

「俺、そんなことも忘れてた」

遥か昔に見失った宝物を見つけたような懐かしみをカイルは胸に抱いた。
辛き現実の果て、今ここにカイルがいる。
その彼が見据えるのは、自分と同じく世界に大切な人を奪われ、その大切な人ひとりのために全てを敵に回した幼子。
洞窟で聞いたクラトスの言葉を思い出す。
大切な人のためならば世界すらも犠牲にする。その堅き信念は、カイルも共感し肯定はできた。
しかし、カイルは首を横に動かし、自分の心の奥底にある澱みを振り切った。
自分は、ミトスとは違うのだと。
越えるのであれば、この少年とは違う道を、
いや、この少年の道の“続き”を示さねばならぬ。
412ZERO 6@代理投下:2009/11/29(日) 01:43:42 ID:qdIRg4ds0
「一人のための、自分の願いよりも、もっと大事なものがあるんだ。
 本当に大切な人の英雄なら、英雄なら――自分の想い以上に、譲っちゃだめなものが、あるんだ!!」

世界よりも一人を優先する。同族嫌悪、あるいはシンパシー。
カイルがミトスに抱いていた情念はそれだった。

大切な人の想いも聞き入れず、世界だけを憎み壊すなんて間違っている。
その人が世界と可能性を愛したのならば、自分も同じように信じなければならない。
そうでなければ、通じ合った想いからの声を受け入れないだけの、単なる独りよがりの願望でしかない。
そして、カイルはそれを選ばない。

「だから、俺は行く。
 リアラが俺とまた会える未来を信じたなら、俺はそう信じたリアラを信じて、ずっと先に行くだけだ!」

カイル=デュナミスが望む未来は、彼女が笑顔でいられる世界の上にしか存在しないのだから。

「正気か……? お前、自分が何を言っているのか、分かってるのか……?」
掠れた声でミトスはかろうじてそれだけを紡ぐ。
リアラの死体を見ておいて、優勝の対価も跳ね除けて、犠牲さえ拒んで、
それでも再会できることを信じるというのか。

投げかけられた言葉、それはカイルの迷いそのものだった。
できるのか。無理じゃないのか。妥協したほうがいいのではないか。
だが、それでも進む。カイルには、それを打ち払う“力”を持っている!!

「無茶だって分かってる。でも俺、信じるよ。もう、それを疑わない。
 信じること、信じ続けること。それが本当の強さだから!!」

自分の中の僅かな惑いさえも打ち払うようにカイルは英雄の父の、大きな背中を思い出しながら、その言葉を綴った。
とても越えられる存在ではないけれど、父から伝えられた一字一句は確かに息子の中に刻まれていた。

『ミトス!?』
カイルの大声を聞き入れていたミトスは、すっと手の曲刀を下す。
アトワイトが呼びかけるように名を唱えたが、ミトスは何の反応も示さない。
戦意が喪失したのか。カイルからは陰った表情は伺えない。ただ、戦闘態勢を解除したことはカイルにとっても驚くことだった。
自分の言葉に自信がないわけでも、偽りがあるわけでもない。
だがミトスは、自分の言葉を素直に受け入れる精根の持ち主ではないと、カイルは心のどこかで思っていた。
それは弛めぬ臨戦態勢にも表れている。ミトスの作戦の内だと、カイルはなおも相手を目から離さないでいる。
そしてその目は、ミトスの凄惨な笑みを観測した。

「そう。そう、なのか。お前の出した答えはそれか。
 お前はそうやって、僕を越えて行こうとするんだね」
413ZERO 7@代理投下:2009/11/29(日) 01:45:24 ID:qdIRg4ds0
余裕を醸し出している笑みではない。
見下すような、嗜虐味に満ちたものではなく、馬鹿にするような軽薄なものでもなく、
この世界に存在する全ての謎が解き明かされたかのように実に晴れやかな笑顔だった。

「礼を言うよ。やっとハッキリした。お前が何者で、僕がどうするべきか、お前とどう向き合うか」
だからこそ、カイルはそれに全身を総毛立たせた。
少年の相貌でありながら常に大人の冷ややかな表情を浮かべてきた、あのミトスとはまるでかけ離れていた。
その切り離されたような感情は、いわゆる善の要素――改心とか、懺悔とか――とは、何の繋がりも見せなかった。
では、何故こうも明朗とした表情なのか。

「そんなの、認められるか」
理由はただ1つ。ミトスにとって心底“面白くない”からだ。

「潰す。お前を、全力で、叩き、潰す。
 完全に、完璧に、完膚なきまでに殺す――アトワイト!!」
『ッ、了解。術式転移、凍結解除<キープスペル>――ホーリーランス!!』

アトワイトを翻してミトスが剣先を突きつけた瞬間、カイルの真下から無数の光輝の槍が顕現し、飛翔する。
先程の壁を突き破ったときの突貫型とは違い、四方から出現した槍が、交錯して真中のカイルを貫かんと迫る。
空中であるが故に、地面に接触して消滅することはない。
おまけにご丁寧なことに、本来発動させるような急な角度で発動させておらず、ベクトルに調整をかけている。
上から逃げては間に合わない、そうカイルは確信した。穂先を下方へ思い切り向ける。
しかし、一瞬の内にカイルの血は冷え切った。

剣に秘められし七色の裁きを受けよ。
その無情な、しかし荘厳な言葉の響きが目前に白光の剣を生み出した。

急降下するカイルを追尾するホーリーランス。もちろんベクトルは上から下、つまり押さえているのは縦方向の軸である。
そして、次に現れた複合上級術・プリズムソードはカイルの下ではなく背後に陣を張ることで、前方向だけではなく横軸をも制していた。
しかも詠唱のラグもなく、速急に。
「上級から上級へだと!?」
槍の雨の次は猛スピードで突っ込んでくる巨大な光の剣。
連続で繰り出される高位魔術の応酬に、ディムロスも舌を巻くしかなかった。
現れた数は6つ。ホーリーランスよりも数が多いとは、笑いたくもなる。
剣がカイルの周囲に降り注ぎ、まず逃げ場を埋める。それも高位の術であるがゆえに広範囲に展開されている。
唯一開かれた正面も、残された逃げ先というには到底及ばない。
切っ先はカイルを狙い澄ましていた。

初級術のような単発で攻めるのではなく、広範囲で発動する上級術を選ぶ。ゆえに、連続で行使するには詠唱を要するはずである。
ディムロスも言った通り、詠唱もなくいきなり上級術から上級術に繋ぐことは、どんな恩恵を受けようと不可能だ。
何の加護もなければ、初級ですら一拍の間は挟むだろう。
ミスティシンボルがあったところで、詠唱時間が初級術レベルまで縮まるわけもない。
414ZERO 8@代理投下:2009/11/29(日) 01:47:29 ID:qdIRg4ds0
だが、1つだけ方法がある。
複合EXスキル、遅速博打<ランダマイザー>。つまり、完全なる天運の力だ。
下手をすればかえって詠唱時間を延ばしてしまうだけの、気まぐれな拡張能力。
それを連携に組み込むこと自体が間違いの代物。しかし、ミトスはそれに頼った。
ミトスは、自分のあらゆる要素――運という偶然さえも――を力として集約させ、全てを勝利に繋げるべく機能させ始めた。
それに、これは運よく発動すれば重畳、という程度のもの。
恐るべきほどの速さでマナが編み上がることがなければ、単に詠唱を破棄してもう一度唱えればいいだけの話なのだから。

そして天はミトスに味方した。いくら天の使いだからとはいえ、とても尋常とは思えない、身を凍えさせるような味方の仕方である。
いや、かつて誰もが不可能と笑った古代戦争を終わらせた英雄ミトスに“天が味方する確率”を問うことそのものが間違いか。
捕まればそれだけでひとたまりもないが、なにより前後から魔術の連撃が決まり――間違いなく身体を双方向から引き裂かれる!
肝を冷やすのも当然である。上下左右、そして斜方向。三次元における全方位がカイルの行く手を塞いでいるのだから!

それを前に、この少年は怯まないというのだから――ああ、とてもとても恐ろしい。

2本の光の刃が中心に迫るのと同時に、周りを遮っていた光の剣の1つが消えていく。
コンマ1秒、いや1フレーム。サブリミナルすら認識するほどの速さで切れ目の糸口を直感的に見出したカイルは、両手で舵を切り横へ急転回した。
最後のプリズムソードはすぐ近くにまで迫っている。
速度が乗った状態でのカーブは当然大味になる。直角に近く曲がろうとするほど難易度は高まる。
だが、いかにその大回りの旋回を縮めるかで、結果はまるで違ってくる。
剣が身体を貫くか、腕を持っていくか、皮膚を舐め取っていくか。それだけの違いである。
相手は光だ。技術だけではなくとっさの判断力も、一瞬を大きく変貌させる。
まるで、速度と速度がぶつかり合うカーチェイス。時速が跳ね上がるスピードだけで言えばまさにドッグファイト。
そのイカれた速域のぶつかり合いに競り勝つために、カイルは思いきりハンドルを切ったのだ。

ごう、と唸る風の音が常に耳を満たす。
轟音と呼んでもいいほどのそれは、永遠に耳の奥で反響し続けるのではないかと思わせるような威力があった。
カイルは風圧で箒も身体もへし折れてしまうのではないかと思った。
しかし、こんな風よりも、襲いかかってくる剣の威圧の方がよほど強い――!
それもそのはず。肌をひりつかせるそれは、すぐ真横ですれ違う光からの熱だ。
熱も、引き裂かれた烈風も、互いに譲り合うこともなくカイルの皮膚を傷つける。既にぼろぼろの身体から更に血を奪ってもまだ足りない。
だが、いくら身体を傷つけられても。その奥にある想いまでは、傷1つつけさせやしない。
箒を握り締める手に、さらに力を込める。ぎゅう、と血管が浮いて見えるのではないかというまでに。
何も聞こえない突風の中で、カイルは叫んだ。
激しい空気の流れを、すべて吸い込んでしまおうとするかのように大口を開けた。
エンジンのバーナーが熱を上げる。
そして光の剣は、カイルの目尻の横をすり抜けていって、後方から迫っていた光の槍と衝突した。
周囲に広がる、真っ白な光の波動。
カイルはそれを背に浴びながら箒を走らせた。
命中しきる前になんとか矛先を逃れ、ぎりぎりの瀬戸際で旋回しきったのだ。
力に力を重ねた、畏怖すべき光の十連撃を避けきり、ほうとカイルは息をつく。
凄まじい威力の行使を越えて、少しの気の緩みが生まれた。
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 01:48:18 ID:eiTU/zKBO
支援!!
416ZERO 9@代理投下:2009/11/29(日) 01:49:51 ID:qdIRg4ds0
――<Turn Shift> 今度はこっちの手番だ。
目の前に、空間転移の光と純白の羽根。
その中心から現れた幼き大天使は、手に収まっている得物を迷うことなく振り抜いた。

うめき声が上がる。奥歯がぐっと無意識のうちに噛み締められた。
とっさにディムロスで防いだが、体勢は崩れきっており、とても戦闘を行うような姿勢ではない。
ミトスは絶え間なく攻撃を繰り出す。まるで舞うような剣戟だ。一連の動きに淀みは一切ない。
『……イル!』
防御と呼べるぎりぎりの境界線の上でカイルは耐え凌いでいた。
ラインを少しでも越えてしまえば、間違いなくアトワイトが身体を貫くだろう。
だがここは空中。いくらミトスとはいえ、攻撃を続けたまま風を制御することなど不可能だ。
地上にたどり着くまで守りきれば勝機は見えると、カイルは断じた。
『カイル!』
ひたすらにミトスの斬撃をいなし、降下していく。防戦一方だが誤ってはいないと思った。

それはつまり、1人で考えた結果の行動だ。
耳には全くパートナーの呼び声が入っていなかった。
『カイル、避けろッ!』
「僕を前にして、そんな守りに入ってていいのか?」

ディムロスの呼びかけに気づいて、カイルの脳はすっと冴え渡った。
交差するソーディアンはぎりぎりと軋みを立てている。
目に強い光が射し込む。前方のミトスからそれは発せられていた。
発生箇所は、右足。

「それで僕より先に行こうなんて、四千年早いんだよ馬鹿が」

既に左足でレーザーを放ち、右足でアウトバーストを放っている。負荷は掛かりきっているはずだ。
カイルの動揺をせせら笑うように、ミトスは冷笑を浮かべる。
――そんなものは関係ない。
大切な人のために、大切な人を失って、それでまた会いに行くなんて。
そんな理合からかけ離れた馬鹿を相手にして、負荷なんてものに拘っている方がおかしい!
常識を越えた相手には、越えた常識をもって相対せねば太刀打ちできないのだから!
何より、こいつを倒すことに比べたら、足の1本や2本など惜しくはないッ!

「そうさ……僕のしてきた過去より先に行こうなんて、行こうなんて……そんなこと……」
417ZERO 10@代理投下:2009/11/29(日) 01:53:04 ID:qdIRg4ds0
お前は世界と大切なものを天秤にかけて、世界に心を殺されたんだ。
お前は僕と同じだ。世界に翼をもがれた、飛べない雛鳥。
大切なものを奪われて、嘆き、憎むべき存在。
そんなお前が、僕と同じ選択をしたくせに、先に進もうとするなんて。
最果ての先に、まだ道があることを示そうとするなんて。
僕は認めない。絶っ対に認めない。
もしお前がそこから更に進むというなら、僕のしてきたことは何だったんだ?
四千年もの間、世界を分離させ、人間に繁栄と衰退を繰り返させ、姉さまの固有マナに近づけさせるよう調整して。
再び逢えたこの世界でも姉さまに否定されて自棄になって。
それは、何もかも中途半端な努力でしかなかったということなのか?
心のどこかで、諦めていただけなのか?

そんな筈がない。認めるか。認めてたまるか。
僕は姉さまの英雄だ。姉さまを復活させるために、数え切れないほどの犠牲を払ってきたんだ。
例え未来でロイドたちに滅ぼされ、違う道があったことを示されるとしても、僕がなくしてきたものを否定させはしない。
ましてや、カイルになんて。僕と同一の存在になんて。
僕と同じ道を歩みながら、まだ未来があるなんてことを示させはしない!
僕は姉さまの英雄として最善を尽くしてきた。限界まで、限界まで進んで、それでも駄目だったんだ。
それが、その先があるだなんて、認められるわけがない!!
だからお前を倒す。お前を倒して、僕は僕の正しさを示す。
僕を越えようなんて、そんなこと――――

自ら剣を弾き返したミトスの表情が、一瞬で怒気をはらむ。
左の軸足が空を踏み、右の爪先が光と共に蹴り抜かれた。

「そんなこと――――あってたまるかああああぁぁぁァァァァッッ!!!」

極大のレーザーがカイルの視界を包み込む。
逃れ得ぬ射程から放たれたそれは、真っ向から立ち向かうミトスの意地そのものだった。
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 01:59:57 ID:nIjGa3b1O
支援
419ZERO 11@代理投下:2009/11/29(日) 02:01:11 ID:qdIRg4ds0
そうだよな。やっぱり、譲らないよな。
お前だって、あんなに強い意志を持ってるんだから。
ミトスの言ったとおりだ。散々ディムロスにも言われてたじゃんか。
やっぱ馬鹿だなあ、俺って。
あの洞窟のときに、もう分かっていたんじゃないか。
リアラがいなくちゃ何もできない。
リアラがいなくちゃ駄目なんだ。
どうしようもなく、リアラが必要なんだ。
けれど、命を絶ちはしない。
死んで会いに行くことなんてしない。
この島で会えたんだから、元の世界でだって、また会える筈だろ?
奇跡なんて言うつもりはないけれど、あんなにもう会えないと思っていたのに、再会することが出来たんだから。

だから、生きて、どこまでも生きて――――もう1度あの子に会いに行くんだ。
そのためには、まずはこの壁を、お前を――世界<バトルロワイアル>を越える!


――<Turn Shift>! まだ、終わりも譲りもしない!

「魔神炎ッ!」
向かってくる光のレーザーに対して、カイルはあろうことかソーディアンの炎をぶつけた。
単純な光ならば、炎をぶつけたところですり抜けられておしまいだ。
だが、これはいわばエネルギーの塊。力と力を衝突させれば、2つの間で力の相殺が生じる。
例えその威力の差が歴然としていても、微々たるものでも、そこには僅かな歪みが生じる。
「空破……」

そして――歪みは切れ目となり、突破口となる。

「――――絶風撃!!」

カイルは裂け目に向かって、思い切りディムロスを突き立てた。
その勢いのままに箒を全速力で走らせ、更に威力を重ねる。
生じた衝撃波が防御壁となって、光の粒子を切り崩しながらも進んでいく。攻撃は最大の防御とは正にこのことだ。
力と力がぶつかり合い、互いに勢いを殺していく。更に炎の壁を構築して光を突き破る。
炎が光を喰えば、光が炎を浸食する。炎の弾丸を食い止めようと光の波濤は防壁と化す。
力量は均衡。あとはどちらの意気が持つかの背比べ。
それぞれの表情が、力を込めすぎてぐしゃぐしゃに崩れる。
エネルギーの相殺の中では互いの声も聞こえない。だからこそ、2人は力を込めて応えた。
カイルが更に剣を突き出し、ミトスが強く左足に力を重ね――――光が爆ぜる。
420ZERO 12@代理投下:2009/11/29(日) 02:02:58 ID:qdIRg4ds0
白光が藍色の空に広がり満ちる。まるで時が一気に逆巻いて、新しい朝が訪れたのではないかと思うほどだった。
まばゆい光がうっすらと、だんだんと消えていった。
カイルの動きが止まる。
ミトスの光が消滅する。


吹雪が吹きつけたようにまっさらな景色が色を取り戻していく中、それぞれのソーディアンは思いを馳せていた。
それも全く同じようなことだった。番いというのは嘘でもないらしい。
得てして感じていることは同様なのだと、協調とも違うソーディアン同士の“確信”があった。
この地で似たようなマスターを持ったからだろうか。
どちらも無理に無理を重ねるような攻撃の仕方をするものだから冷や汗ものである。
だが、2本――否、2人とも最早それを止めるようなこと心持ちもなかった。
むしろ、どこまでも愚直な在り方に、安堵すら心の片隅のどこかで覚えていた。
方法はこれしかないのだと、2人は分かっていた。
そうでもして勝たねばならないのだ。勝たなければ、相手を打ち倒したことにならないのだ。
意味はその一点にしか存在しない。
カイルとミトスにとって、相対する相手とはそれほどの境目に在る者なのだから。

アトワイトは分析する。
カイルは決してリアラの為に自分を蔑ろにしている訳ではない。
リアラの想いのために自分の願いを捨てているのではなく、2人で共に歩める明日を目指し、あるがままに考えている。
自分が片棒を担ぎ、殺してしまった少女のために、カイルはあるかも分からないものに向かって奔走しているのだ。

ディムロスは推察する。
ミトスは未来と自分を諦め続けるために、カイルを容認できない。
認めれば、それは自分を否定することになる。姉のために生き、それでも悲願を為せなかった今までの自分を。
その自分が、単に歩みを止め立ち止まっていただけだなど、認められる筈がない。

2人は純粋で、まっすぐだ。自分の思いを知って止めることなど出来ない。
そしてソーディアンは武器として、相棒として、そんなマスターを助けなければいけないのだ。

そう。マスターを助け、更に進まなければならない。
カイルの動きが止まる――それが“視認できる”。
ミトスの光が消滅する――五体満足の姿を“視認できる”。
大剣は光を真っ二つに切り裂いた。だが、同時に暴力的な光の壁は剣士の動きを停止させた。
剣士はなおも空中に、天使は羽ばたく力さえないかのように、ゆっくりと舞い降りていく。
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 02:04:12 ID:RbrhSGt+O
支援!
422ZERO 13@代理投下:2009/11/29(日) 02:04:21 ID:qdIRg4ds0
「どうした……ずい、ぶん、息が上がってるぞ?」
「お前が……いうな……」
両方とも完璧な隙をさらけ出しながら、それを攻めることはなかった。
満身創痍。疲労困憊。2人とも、既に動く気力すらないのだ。
息を切らしたまま、2人は互いを見つめている。
無機生命体であるミトスですら、無意識的に息の乱れを覚えていた。
(僕が、呼吸? 馬鹿を言えよ。何のための、身体だよ)
天使の身体に、疲れも呼吸も存在しない。
だから、これは記憶だ。まだ疲れがあって、全力で動けば息が上がったころの記憶。
(息切れなんて、冗談じゃない。まるで、生きているみたいじゃないか)
この身に浮かぶのは4千年前の、まだ僕が英雄でなかったころの疲れだ。

「……譲るつもりはない、か」
「そっちこそ。さっさと、俺に、倒されろ、よ」
だからこそ、言葉を吐き出す。
僅かに生まれた時間を、呼吸にあてがうかのようにして。

ぜえ、はあ、と荒い吐息の中に、子供じみた感情に満ちた声が混ざる。
カイルが身を乗り出すように敵意を放つ。
「俺は、リアラに会いに行くんだ」
しかし、カイルはそうそう動いてこないということを見抜いてか、ミトスは口元に手を当てて余裕ぶる。
「もう遅いだろ。どっちにしたってお前はここで死ぬしかない」
実際のところ、動けないのはミトスも同じだ。ぼろぼろの手を隠すように、手を固定させているに過ぎない。
だから、それはただの話題でしかなかった。
ほんの少しだけ休むために、ささやかな絶望をもう一度だけ確認する。

だが、カイルの答えはどうしようもなくカイルだった。
「知るかよ。そんなの、お前を倒してから、全力で走れば間に合うさ」
「ク、あ、っは。はっはっは、僕じゃあるまいし。馬鹿じゃないの? お前」
ミトスはたまらず吹いてしまった。何を今更、こいつの我侭っぷりに驚く必要がある。
「いや、だからか。僕の一撃を真っ正面から突き破るほど、強いのは。
 それほど逢いたくて――それほど、想っているのか」
ミトスはその我侭――カイルの覚悟を口に含む。
だが、それはあまりに大きすぎて、嚥下することができない。頬を目一杯膨らませて、息をすることすら叶わない。
苦しくてたまらなかった。背反する悩みを前にしては、吐き出すことも不可能だ。

「なあ」
ミトスが既に半分を地平線に隠した夕日を見ながら、言った。
「なんだよ」
「このままだと時間切れだ。お互い、それは嫌だろ」
まるで、夕方に遊んでいたこどもが暗くなって遊びを畳まなければならなくなったような未練だった。
もう、帰らなければならない。だから、最後にもう一回。


「次で、終わりにしない?」
423ZERO 14@代理投下:2009/11/29(日) 02:06:41 ID:qdIRg4ds0
遂に大地に降り立ったミトスは当てていた手を下ろし、アトワイトに添える。
抑え切れぬ感情をせき止めているかのように、ミトスの身体は闘気の光の点滅を繰り返している。
だが、地上から空に向かって吼える少年は、天使でも神でもなかった。
大地に生き、ささやかな理想のために世界に、運命に反抗を宣言した者。それは古の英雄の姿だった。

「…………ああ、いいよ」
休息は終わりだと、カイルは剣を構える。
激しい心臓の鼓動に対応するかのように、身体には赤い残像がちらついている。
カイルはミトスの気迫に無言で応じ、空中からミトスを見据えた。
決して見下しているのではない。相手は眼前にそびえ立つ、見上げても切れ端の見えない壁だった。
だが、それを今から越える。
越えなければ、リアラに逢うなんて――リアラの英雄になるなんて、先のまた先だ。
箒にエンジンをかけ、さらにミトスとの距離を取るべく飛び立つ。
小手先の攻撃など、もうレパートリーも体力もない。

なればこそ、終の札を今こそ切ろう。限界程度、魂爆ぜれば超えるは容易い!!

「俺の全てで、お前に挑む。勝負だ、ミトス=ユグドラシル。今度こそお前を超えて――――俺はリアラに会いに行く!!」
「お前がリアラと再会するなんて、認めない。それでも逢うと謳うなら――――越えてみせろ、カイル=デュナミスッ!」

紅の光を纏いし潜在の解放――スピリッツブラスター
白の光を纏いし稀少の邂逅――オーバーリミッツ

全力全開。決意の宣言をした今、ここから先はそれだけだ。
424ZERO 15@代理投下:2009/11/29(日) 02:08:20 ID:qdIRg4ds0




カツン。
硬質の音がひとつ、静かな空間の中で綺麗に響いた。
音源となったチェスの駒から伸びた指は、なめらかな曲線を描いている。
薄暗い部屋を照らす青白い光によって、色の白さは更に拍車をかけている。
空間に発せられた音はそれきりで、彼女も、対面する相手も、一言も声を漏らさない。
ただ指された一手をじっと見つめ、相手の意図を探り、次なる手を考えているだけだ。
その2人を見つめる、道化師がひとり。
闇を縫って現れたその道化師は、2人の目の前に現れるまで1つの気配も発していなかった。
いや、それともチェスを指す2人が思考の海に潜り続けていたせいなのか。
何にせよ、突然現れた道化師に対して、少なからず2人はさしたる興味を抱いていなかった。
白黒のボードをじっと見つめるだけで目を配べもしない。
しかし、道化師もまたそんな2人を――正式には2人の采配を――眺めているだけで、肩をすくめはしなかった。
顎を手でさすり、道化師は興味深く盤を俯瞰する。
面白い。
ただ試合を傍観するだけの存在、そのような立場の道化師から見ても、この戦いは実に面白いと感じさせた。
村の外れの次期禁止エリアで広げられる指し合いは、一手ごとにめくるめく展開を見せ、
両方とも一歩も譲らない、薄氷の上を渡るような攻防を続けていた。
内容の派手さとは逆に、許されるだけの時間をかけて考えた攻撃だ。
少しでも誤れば一気にチェックメイトまで攻め込まれる、それゆえの長考から成り立つ最善手。
実際の駒の顛末もさることながら、2人が一体どんな思考の上で動かしているのか? 一体どんな心境の上でそれを選択したのか?
道化師にとっては、それを考量するだけでも笑いを押し殺したくなる。
大胆だが、とても迂遠な探り合いなのだ。この2人の手合わせは。
2人は粘密に、神経質に、かつ相手の懐に潜り込む大胆さを兼ね備えた指し手を繰り出し合っていた。

「……クハハハ……了解です……下座からの…………決戦申請を承諾しました…………」

そして、遂に下座が仕掛けた。
さらに“炎剣”を北へ捩じ込み、最終決戦の一手が示される。

「上座……この決戦に応じるかどうか…………返答をお願いいたします…………」

タイムリミットが設定されていて駒の実力も差がある中、ここまで五分の戦いを繰り広げてきたのは下座の実力だろう。
これで僅かながら、勝利の光は見えてきた。
今までの流れで仕込んできた策の全てを用いた決戦。当然、敗れれば全てを失う。
だが、これを乗り越えることが出来たなら、一気に形勢は下座に傾く。
(もっとも、上座がこれに乗れば、という前提で、ですが…………)
ふと、無音の空間で淀んだ空気が、微弱ながら流れを変えた。
次の手番であり盤上を眺めていた上座の男が、陰鬱な笑い声を上げていた。
始めは抑えられていた声も、次第に声量が大きくなっていった。
道化師も、下座の彼女も怪訝そうな目で見つめる。
剃刀の上をなぞるような指し合いに遂に気が狂ったか。
ただ、先ほどまでは静謐に包まれていた空間に響く、相手を馬鹿にする子供のような笑声は、
生気さえ感じさせなかったこの場所に初めて「生きたもの」をもたらした。
425ZERO 16@代理投下:2009/11/29(日) 02:09:35 ID:qdIRg4ds0
「な〜るほっど。全力全開で最後の決戦、実に分かりやすい好手だね。陳腐過ぎるくらい」

まだ駒を動かしていない、長考の時間に上座が対戦相手に語りかけたのは初めてである。
下座の彼女は少しも眉を顰めることもなく、相手の言葉を聞き入れる。
「だが陳腐とは王道。使い古されるには、誰でも使えるほどに完成されていなければならない。
 こっちだって『愛』っていう同じような手を指したからね。定石の効果は実に高い。
 現にそちらの全力に対して、受けるか逃げるか、私が指せる手は狭まった」
盤上を見つめながら何度も首肯する男は、相手を讃えるように明るい調子で喋り、柏手を打った。
ぱん、ぱんと数回打ち鳴らした後、男は両手を付けたまま、俯かせた顔を手に近づける。
あまり特徴の無い、記憶に残らない類の本当に平凡な面構え。
だが、身体を小刻みに震わせて裂ける口元だけが鮮烈に視界を占領する。そうしたら後にせき止めるものはない。
黒くてぎらりとした、悪魔の目のようなものが口の中から姿を覗かせた。
まるで子供の嘲笑だった。
喉仏を揺らして溢れ出た声は大音量のサウンドとなって、この場には彼を除き2人しかいないのに、
世界中の人間全てに聞かせてやるかのような笑い方だった。
一人腹を抱えて大笑する姿は滑稽にも見えたが、あまりに子供じみた声は純粋ささえ感じさせる。
そう、純粋に相手を馬鹿にしているのだ。
息を切らし、腹痛を起こし、目元に涙まで浮かべて、それほどまで全力で貶している。
時間に圧されまんまと安易な手を指したと、彼は嗤っているのだ。

「おしまいだね、もう」
それが“神の一手”かと。随分とお安いベットじゃないかと。

だが、それでも対戦相手はびくともしない。
侮蔑に満ちた哄笑に顔をしかめていても、彼女の張り詰めた真摯な面差しは陰りもしない。
しばらく笑い転げていた男は、そんな彼女の様子を気にもかけず、腹の酸素が尽きてやっと嘲笑を喉笛の奥にしまい込んだ。
一息ついて、男は組んだ手を顎に近づけ、口を開けた。
両手を台座にし、目線だけを下方の盤面に配べ、彼は穏やかな笑みを唇に描いた。

―――――――――――ええ、直に終わります。

「君の負けでね」
動じない相手を前にしても、彼はその一笑を絶やさない。置かれた黒いピースをひとつ取り、手元で弄ぶ。
「確かに、戦況は五分。どちらの子供が勝つかは、神様にだって読めはしない」
サイグローグは両者が承認した最終決戦の準備を整えながら、二人の会話を聞いていた。
そう、勝敗は読めない。だけど、それは“戦術レベル”に限った話だ。
「どちらが勝つにしろ、まずどちらも五体満足じゃ済まないし力も残ってない。
 でも、そうなったらどうなるか分かってるだろう?
 タイムリミットに焦って決着を急ぎたいのは分かるけど、もう遅すぎる。
 帰るための力も壊れて枯れて結局タイムオーバーさ」
一週間後のアサガオの観察日記を朗読するかのように、ベルセリオスは結末を指し示す。
「むしろ首が飛ばされるまでの時間が残されている分、もっと性質が悪いかもね!
 それでおあいこ痛み分け。ああ、夕日を見ながら『お前、なかなかやるじゃないか』『お前もな』
 とか言いながら首がボンッってね。グフフフフ、想像したらお腹が痛くなってきた」
再び大声で笑い出す上座の男は、ぽんぽんと黒い駒を軽く上方へ投げては掴んでを繰り返す。
端から見れば乱暴な扱い様だが、そんなものは気にしない彼はとても楽しそうだ。
それでいて視線を盤の上に固定している。だが、今彼の目に映っているのは今この瞬間の盤面ではない。
彼が見据えているのは何手も先の未来で、錯綜している悲劇という名の喜劇。それを弄ぶ事に心を弾ませているのだろう。

「全力を出させたって別になーんにも困らない。だって“どうでもいい”んだから」
426ZERO 17@代理投下:2009/11/29(日) 02:10:42 ID:qdIRg4ds0
上座は弾ませた声で言い、宙に放っていた駒をぱしりと強く手中に収める。
擦り切れて、傷ついた天使の駒。だが、掌の内に消えた駒に対する尊厳はまるで見られない。
むしろ自分のものなのだから、と意のままに扱っているようにも見える。
「これはもう死駒だ。ここで捨てると決めてるこっちには何のリスクもない。
 あるのはリターンだけ。賭駒<ベット>を取られるのはそっちの方だ」
そう、彼のこの余裕をもたらしているものこそが、上座と下座を分け隔てる差に他ならない。
ベルセリオスにとって負けても失うものは無く、下座の彼女は勝っても得るものが無い。
なぜなら、この局面において両者の目指す勝利条件は決して相反しないからだ。
「要するに、君は私が占有しているこの天使の駒を救いたいわけだ。
 だが、その救いが“生”である必要性は無い。双剣がそうだったように、安らかなる死でもOKな訳で」
あと少し先の未来を見通すように、ベルセリオスは悪性を瞳より垂れ流した。

「だから、君はあの二人の精神を好きなだけ救うと良い。その代わり、肉体的な死は私が戴くよ」

やはりか、とサイグローグはベルセリオスの言葉に目を細めた。
ゼロサムゲーム。通常、この手合いのゲームは誰かの優位が誰かの不利に直結している。
下座は少なからず上座から優位を奪い取り、2人の少年を救えるように上座を追い詰めていたはずだった。
だが、それもそのはず。上座は、B3とは違う場所で得を得ようとしていたのだから。

「上げて落とす。定石じゃないか。炎剣が帰ってこない。それだけで、氷剣を落とすには十分なんだよ。
 精神的にあの2人が救われようが救われまいが、帰りを待つ者たちには知りえない。
 残された氷剣は自分の愚かさで現実に平伏するよ。そして無様に堕ちるんだ、前のゲームみたいにね。
 得物は違うが、まあエターナルソードでも十分な働きは期待できる。
 あとはもうなし崩し、そりゃ山積みの本を突き倒したみたいにね!!」

手のひらで相槌を打ちたくなる衝動を、サイグローグは辛うじて堪えた。
天使をこうも捨て駒にできるのは、既に次のマーダーを見つけていたからか。
凶剣が死んだ後は、もうエターナルソードほどの大剣を装備できるのは彼しかいない。
そして同時に、現行の生存者の中で奴を止められるものはもういない。
弓士ならば辛うじて渡り合えるだろうが、堕ちた旧友を相手にすることが“やりにくい”のは、当の本人がよく知っていることだろう。
なにより、絶望の種だけを仕込めるのが“おいしい”。上座の好きなタイミングで爆弾を爆発させることができるのだから。

「確かに、このB3という限定的なエリアだけで見れば非ゼロ和も成立する。
 だけど、だからこそ君は私の勝利を止められない。
 ゼロはマイナスよりも上だ。私は失っても良い駒を失い、君は決して多くない貴重な駒をドブに捨てる。
 君の損は私の得。勝つのはこっち。どんな過程を通ろうが結局最後はこっちだけが点を取ってておしまいなんだよ」

そうして再び腹を捩らせる男は、唯一、1カ所だけ笑っていなかった。
細めた目から爬虫類のような、ぬるりと湿った瞳を覗かせる。
全身で笑いを表現して、その目だけが冷徹に相手を見下し、貫き通していた。

「結局救えないんだよ、君は――――――――チェック。この最終決戦、受けよう」
427ZERO 18@代理投下:2009/11/29(日) 02:12:09 ID:qdIRg4ds0

手に握っていた黒のポーンを指先に移し、上座の男はチェスを指す。
逃走も降参もない。下座の術策を馬鹿にした男が指した手は紛れもなく“戦闘続行”だ。
傍で成り行きを傍観していた道化師もゲームを止めることなく、男の行動を承認した。
道化師は手番が下座に移動したことを宣言するが、既に下座の彼女は同じエリアにある白い駒を手に取っていた。

――――――――ベルセリオス。貴方は今、このゲームは“損得の和がゼロになる訳ではない”と、定義しましたね?

さして考える時間も取らず、即座に動かそうとする彼女を、男は座視していた。
男――天才かつ狂的科学者であるベルセリオスの言葉は、別に相手の精神を砕き、ゲームから退場させることが目的ではない。
ただ相手の思考にノイズを与えるための布石の1つであり、同時に相手を単に見下げるためのものだ。

――――――――ならば、わたくしにもまだ手はあります。
だからこそ、全く揺らがないこの女の、意志の消えていない双眸に興味を覚えているのだ。

――――――――WIN・LOSEが絶対ではないのであれば、双方を勝ちに導くことも可能であるはず。

単なる夢想家の言動ではない。
恐れることなく、実際に手を打ってきているのは、この対局の記録でも明らかだ。
彼女はどれだけ憫笑を買われようが、決してその内なる炎を絶やしはしない。
未だに何も諦観していないのだ。
戦意を喪失しない相手方を見て、男は青筋を浮かばせるどころか、むしろ楽しげな笑顔を浮かばせていた。
「諦めないのか。まだ全員を救うことを。けれど、そっちの方がこっちも面白いからいいよ」
なぜなら男にとって彼女の指示は結局“どうでもいい”のだから、楽しまなければ損ではないか。
彼女の思いは貫徹されない。
諦めずに手を出してくるならば、男もその手に、愉快に非情に応えるだけなのである。
助けを求めて蜘蛛の糸を掴むのなら、それをちょきんと切ってやる。
邪悪な意思に見つめられた彼女は白い駒を静かに動かさんとする。

「何でも叶えられるって、そんな全能ぶった顔を叩き潰すの、すごく楽しみだ。来なよ、"時の紡ぎ手"」

静寂の中に秘められたその堅い意志は、敵手と同じく“戦闘続行”だ。
428ZERO 19@代理投下:2009/11/29(日) 02:13:45 ID:qdIRg4ds0
「それでは、両者合意を確認いたしました。B3最終フェイズ、下座の手番からです」



カツン、と音が鳴って、最後のラウンドの幕が切り落とされる。




最古の英雄、失ってきたその過去を守り通すために。
最後の英雄、失いきれないその未来を勝ち取るために。
鏡合わせにさえならない二人が、己の為だけに乾坤一擲を賭す。

宴もたけなわ。されど、楽しき祭囃子もやがては終わる。
これより先全ては終点へと続く。

その前に綴る最後の余興演目。
24時間前の再演。
延々と繰り返される惨“劇”の一幕。

それが、遂に終わる。


小細工は絶無。この黄昏の狭間の、一時の祭宴を愉しまれることを。
429ZERO 19@代理投下:2009/11/29(日) 02:14:35 ID:qdIRg4ds0
462 :戦え名無しさん:2009/11/28(土) 21:57:50
本日の投下終了です。
まずは、4ヶ月間も音信不通のままにしていたことお詫び申し上げます。
ちまちま小出しでいくよりも、決着までを完成させるべきとの判断でした。
スレの皆様には、心配をかけて申し訳ありません。

決着は、明日投下いたします。


ということで代理投下終了です。とりあえず読んでくる
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 02:21:30 ID:RbrhSGt+O
投下乙!代理の人も乙!
カイルはもうダメかと思ってたがそんなことなかったな
かっこよかったです!そしてついに決着がつくのか
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 03:19:15 ID:e7X6RllMO
投下乙
やっぱりカイルとミトスの対比が上手いなー。
正に死力ってな感じだ。こういう泥臭い勝負は燃える。決着に期待だな。
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 08:29:34 ID:XWoCUFh7O
投下乙!
今日が楽しみで仕方ない。
とりあえず…姉さあああああん!!!
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 08:53:22 ID:mSaWwF+rO
ちょっと投下されるまで時間跳躍してくる
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 15:53:35 ID:j7Hodg1fO
久々の投下乙!!
カイルは遂に自分の生きる理由を見つけたか
そしてカイルに反抗するミトスもまた必死だな
この2人のぶつかり合いはやっぱり見てて面白い
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 19:14:09 ID:E5T8TNRR0
投下&代理投下乙。早く後半こいこい!
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:08:05 ID:TjvUrDPo0
投下準備完了。
お待たせしました。2130より投下を開始いたします。
総量80k。申し訳ありませんが、支援・代理投下が可能な方はぜひご助力ください。
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:09:30 ID:XWoCUFh7O
80kb…だと…?
みなぎってきた!
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:18:03 ID:mSaWwF+rO
ちょっとコンビニまで跳躍して何か買ってくる
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:28:33 ID:E5T8TNRR0
さぁ来るぞ!全裸になるぜ!!
440The Meaning of Living:2009/11/29(日) 21:31:52 ID:TjvUrDPo0
スピリットブラスターの陽炎を纏いながら空へと飛び立つカイルを見つめながらアトワイトは思う。
恐らく、次に交差する時が最後となる。いや、間違いなく最後とするつもりなのだろう。
これが会話できる最後の機会だ。何かを話せば、ひょっとしたら思いもよらないことが分かるかもしれない。
だが、彼女はそれを見送った。彼女らが割り込める余地はもう殆どない。
求められるのは、ただ彼らが全力を発揮できるように尽くすことのみだ。

オーバーリミッツの圧力を放ちながら飛翔を見送るミトスを見下ろしながら、ディムロスは思う。
発進の初動を見逃がされたのは、向こうが攻撃も出来ぬほどに限界だからだけではないだろう。
初撃で切り込まなかったこちらと同じだ。もう、突発的な小技を仕込む余力は無い。
だからこそ蓄えているのだ、力と時を。体中に残った全てを掻き集めた渾身の一撃を、最大の効果で放つために。
陳腐極まりないが、それはつまり陳腐になるまで使われるほどに完成された確実な手法だった。

「アトワイト」

大地に降り立ち、ミトスは静止した。もう飛翔に回す力もメリットもない。
攻撃方向を全方位の半分に限定し、固定砲台と化して完全な迎撃の構えを取る。
恐らく、次にくる突撃は今までで最速のものとなるだろう。
だからこそ、そこに一撃を叩き込めればその戦速をそのまま自らの力と転換することが可能となる。

「ディムロス」

眼下の地にポツンと「休め」にも似た足幅で立つミトスは、まるで通せんぼをしているようだった。
この爪先から爪先までを結ぶ直線より後ろには、絶対に行かせないと。
その矮躯を、永久に越えられない壁と変えて立ちはだかっている。
ミトス=ユグドラシルが立つ地平線こそが、きっと英雄の限界線だ。
退けば問題はなく、迂回すれば釣りがくるだろう。だが、そんなことできるはずもない。

『……本気? あれは間に合わないから、止めるって……』/
                          /『ロイドから聞く限りでは、奥の手は3つ。どれで来るか』
「あいつが僕を越えに飛んでくる。
 全力程度じゃあ、もう踏み台にもならないよ」/
                     /「分からない。
                       でも、きっと全部で来る。出し惜しみは絶対に無い」
『……そう。分かったわ』/
           /『そうだな……つまらんことを聞いた』

ソーディアン達は一秒にも満たぬ間で応じた。その短い時間でさえ、彼らにとっては無限に等しい価値を持った時間だった。
ミトスの心中、カイルの覚悟。ディムロスの決意とアトワイトの願い。
それら全ての中から今直ぐに考えなければならないことを言葉にするにする。

『待ち構えているぞ。易々とは懐へ入れまい』/
                    /『こちらから先に仕掛けるのね?』
「うん。だからもう一度だけ頼むよ。この一撃を入れる間合いまで」/
                              /「ああ。出かかりを潰せ。その後は任せろ」
441名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:32:03 ID:E5T8TNRR0
支援
442The Meaning of Living 2:2009/11/29(日) 21:33:34 ID:TjvUrDPo0
勝負は奥の手と奥の手のぶつかり合い、純粋な力と力の衝突となるだろう。
となれば、その瞬間までにどれだけ相手の力を削げるかが要となるのは言うまでもない。
真っ向からの速度ではミトスに勝ち目はなく、この距離ではカイルの勝利に届かない。
カウンターを狙うにしても“ただ”待ち構えるだけでは、結果は知れている。先の後の先こそが、反撃の神髄だ。
そして魂を込めた一撃を狙うからこそ、覚悟と速度が要となる。先の先のさらに先こそが突撃の醍醐味だ。

『『了解(した)。ソーディアンとして、お前(貴方)<マスター>に、勝利を』』

だからこそ、マスター達の前座を務められるのは武具の誉れに他ならない。
例えその魂魄が想いを繋ぎ合っているとしても。
否、繋ぎ合っているからこそ“眼前の敵”を屠ることに一切の抵抗は無い。


「悪いね、最後まで」

ミトスはそう朗らかに言いながら、背中の羽を極大にまで羽ばたかせた。
今までのような速度重視の粗い構成などでなく、最後の最後まで丹精籠めるようにして術を組み上げる。
アトワイトと、自らのソーディアンと共に。

『セット、タイダルウェイブ』
「セット、レイ」

アトワイトの詠唱と共に潮騒が辺りを包む。小波を響かせる海は、ここからでは少し遠い。
ミトスの詠唱と共に光球が生れ、夜に向かう世界に輝きが溢れ出す。
光が極小の水滴をプリズムと受けて散乱し、混じり合った白光が純粋な単色光へと分解される。

『「晶魔混交―――――――――――――」』

紫、藍、青、緑、黄、橙、赤の七色。そして、その中間にある無限の色々。
それら一つ一つが一つの星として満天を覆い、数秒経たない間に彼らの周囲は極彩色の宇宙と化す。
複合技の中でも、精密さと物量において最良の一つと数えられるこの技を以て先陣とする。
英雄という称号がが全人類より賜る呪いなら、この壁は即ち世界に等しい。ならば―――――

『「星虹、宙に輝け―――――――――――――プリズミックスターズ!!」』
“越えて見せろよ”。光速度の極限に見ること叶う虹を号砲として、彼らは最後の壁と立ち塞がった。
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:34:39 ID:E5T8TNRR0
支援
444The Meaning of Living 3:2009/11/29(日) 21:34:39 ID:TjvUrDPo0
(流れ星。あの時も見上げてたんだよな)

夜空に浮かぶ流れ星が、全て自分たちの方へ向かってくる。
願いを祈るべき星の全部が自分を殺しに流れてくるなんて、自分の願いはどれほどまでに叶わないものなんだろう。
だが、カイルは自嘲の笑みさえ浮かべなかった。この願いを誰かに叶えてもらおうなんて気はこれっぽちも無い。

『空が3割か…………来るぞ、覚悟は聞くまでも無かろうなッ!』
「勿論。何が来ても、どれだけ高くても、行く!!」

カイルは剣先をすっと箒の穂先へと向け、ぼろぼろの空き手で柄の先端を握り締める。
流星を前にして組むべき両の掌を、箒を軸に180度別に向ける。
祈るよりも似合うその手をピンと伸ばし、箒と体軸を合致させて、カイルは意思を炎と爆発させた。

「奥義、岩斬滅砕陣」
『属性付与・火属性付加』

虹光が自らの肉体に着弾する前に、彼らは下方へ向けて垂直に飛んだ。
視界全てを覆う草原が、一秒前にいた背後で輝いた花火の如き光に照らされる。
耳朶を掠めるのは音を置き去りにする風の吼音と全天より飛翔する光速の幻音。

「『術技変化―――――――――――――』」

前方より音速で迫る大地、後方より亜光速で襲い来る星虹。絶体にして絶対、絶命への一直線。
だが、死に向かう直線を真っ直ぐ進むその瞳に怖れは無い。
想いは見つけた。だったら、もう一歩たりとも立ち止まってなんていられない。
立ちふさがるならば、星だろうが大地だろうが世界だろうが英雄だろうが――――――

「『邪魔は退けェェェェェェェ!!!!―――――――――――――覇道、滅封ッ!!』」
“超えてやる”。溶解した液体の大地が飛沫と散ちらせて、彼らは最後の空に舞った。

天地が、滅茶苦茶に踊る。夜の黒の夕の赤の上に、虹の光と太陽の輝きをべっとりと塗りたくったかのようだ。
自らの熱量に速度と摩擦熱を合わせ高温高圧の熱剣と化したディムロスを奮うカイルの一刀が、大地を文字通りに溶かす。
平手で叩かれた水のように溶解した岩石が飛び散り、光速に近いが故にほぼ直線でしか動けない星虹が衝突する。
全方位より迫るはずの星々が、次々と爆発していく。その中心に当たるカイル達の姿は、たちまち爆煙の中に消え失せた。

その一瞬の出来事を、アトワイトはレンズに焼きつけるように刻み込んだ。
光弾を配置しようがない鉛直方向へのダイブ、そしてその勢いを全て力にして大地を叩き斬る。
墜落時の衝撃を相殺しつつ、水飛沫のように飛び散るマグマにて背後からの弾丸を撃ち落とす。
馬鹿だ。馬鹿としか言いようがない。
コンマ一秒狂えば、相殺できなかった衝突のエネルギーを全てその身に受けて粉微塵になってしまう。
それでなくとも僅かでも斬り所が悪ければ溶けた岩の飛沫と星の飛礫を同時に浴びてミンチになっていた。
限りなく100%に近い、死の一線。それをこうも迷わず踏み越えてくるなんて。

『許容は出来ないけど…………だからこそ、ディムロスね。“空いたわよ、直線”!!』
445The Meaning of Living 4:2009/11/29(日) 21:35:24 ID:TjvUrDPo0
アトワイトはその水晶体の奥底で、明快に―――――人の顔があった頃ならば――――笑った。
その馬鹿を、誰もが夢幻と投げ捨てるものを拾い集めるからこそ、彼らは此処にいるのだ。
その瞬間、煙幕の中に大穴が開く。その中心には当然の如く飛翔体があった。

『気付いていたか! 聡明過ぎるのも考え物だな!!』

地平と平行に、敵へと一直線を疾走するカイルとディムロス。
斬撃を撃ち込む角度と出力の微細な調整によって、衝突の際に生じる力を相殺するのではなく、
垂直から水平に転換したその超加速は、あちらとこちらを結びつける最短距離で出せ得る最大戦速だった。
ただ相殺するよりも桁外れに難度が高くなるであろうそれは、最早馬鹿・阿呆以前に気を違えているという他ない。
だが、アトワイトはそれを驚かなかった。驚く理由が無かった。
彼らならやりかねない。いや、絶対にやる。そういう確信があったのだから。
狂っているというなら、もうとっくの昔に狂っているのだ。今更頭の捩子が5、6本吹き飛んだとて大差は無い。
“そして、それはこちらも同じことだ”

『貴方達が分かり易過ぎるだけでしょう!? 頭上、抑えたわ!!』
『時間差ッ! カイル、このまま行くぞ!!』

アトワイトが予備に残していた十数%の星が、地表スレスレを飛ぶディムロス達に降り注ぐ。
既に彼女は狙いなどつけてはいない。しいて言うなら、この大地全てだ。
無限の一割もまた無限。数え切れぬ程に空より降り注いだ正真正銘の雨弓を擦り抜けながら、ディムロスは怯むことなく直進した。
此処で退いたところで得るものなど何もないことを、その本能が理解していた。
全力を奮うべき勝負所を見極められないならば、指揮官に意味は無い。躊躇さえも惜しんで突き進む。

しかし、如何に速く走ろうが雨を避け切ることが出来ぬように、カイルの体が紅く濡れていく。
耳を掠め、肩を傷つけ、腿を割る最悪の雨。しかし、ディムロスもカイルもその速度だけは決して落とさなかった。
血が出るうちは、生きている。生きているうちは、まだ足掻ける。足掻けるうちは、その歩みを止めさせる訳にはいかない。
雨に打たれても、我が身に降り注ぐその血潮がこれほどまでに熱いのだから。

(分かってたけど、速過ぎるッ! 追い切れない!!)
(流石に厚いッ。覚悟はしていたが、抜けきれるか!?)

如何に速くとも弾丸全てを精密には当てられないアトワイト。
速度を維持するために最小限にしか避けられないディムロス。
斬り込まれるのが先か、命が削り取られるのが先か。
生命と距離を詰め合うよりないか、そう2本が思った時だった。

「いい位置だ。代わって」
「ありがとッ 後は任せろ!!」
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:35:36 ID:E5T8TNRR0
支援
447The Meaning of Living 5:2009/11/29(日) 21:38:04 ID:TjvUrDPo0

その言葉が重なった瞬間、ディムロスを両の手で握り直したカイルとアトワイトの腹に掌を当てたミトスの視線が合致した。
アトワイトはミトスが交錯のタイミングを合わせやすい水平状態にまで相手の軌道を限定した。
ディムロスはカイルが最も相手を斬り易い一線で相手までの道を切り拓いた。
叩き潰す/ブった切るに、十分過ぎるこの状況。機は熟した。後は彼らの仕事だ。
数秒経たず至近で見えるであろう、今から粉微塵にする肉の形をしっかりと刻み込むように瞳を見開き、2人は全身より気迫を沸き立たせる。

カイルはミトスのこれがロイドのそれと同じものであることを理解し、己の肌を粟立たせた。
やはり、あの時はまだ全力ではなかったのだ。多分、これがミトスの掛け値無しだ。
ミトスもまた、カイルから迸る魂魄の輝きを見ながら天使の力を軋らせた。
OVLと同系統の潜在能力の解放か。ならばこの突撃より連なるのは、正真正銘の大技だ。

「「はああああああああああぁぁぁ!!!!」」

両手持ちに切り替えたことで生まれる衝撃波の歪が、旋風となってディムロスに纏わっていく。
舞い上がる羽根と共に、天使術の威光が魔法陣と周囲を包んでいく。
D.Sはもう過ぎた。向かう先は、もうFINしかない。
なればこそ全力を以て全力を打倒するならば、秘奥義以外に選択肢は、無い!!

「行くぞッ!」

無数の擦過傷から血の粒を散らしながら、カイルは強く強く剣と風を纏った。
烈火の如き突撃から、神風の如き疾駆へとシフトする。
カイルが持ち得る秘奥義は五種。
その内、一瞬でも立ち止まればたちまち自分の体を蜂の巣以下の肉片に変えてしまうだろうミトスの術撃を前にして、
一度も足を止めずにカイルが狙える秘奥義は一つしかない。
(とう、“スタンさん”、ごめん……斬空天翔剣<受け継いだ技>は、使わない。使えない。俺は、もう貴方と同じ道には進めない)
遥か後方へ投げ送るように、もう一つの剣を捨てる。
憧れは、きっと辿り着けないから憧れるのだ。
アレを使うのは、スタン=エルロンより一子相伝を継ぐに相応しい息子が奮うべきであり、
今から進む穢れた道を切り拓くには、その技はあまりにも清廉に過ぎる。
そして“全力を以て、斬り飛ばす”のであれば、己が持ち得る最大を以て挑む以外に、カイルはその術を思いつかなかった。
例え、相手がどのような技でこの身を阻もうが――――――ッ!?

「格が違うんだよ……ッ!!」

荒れ狂う風の重層の中でもよく通るミトスの声と共に、蒼白き光によってその足元に円の魔法陣が刻まれる。
その魔法陣に、カイルは絶句した。正確には、陣にではない。
複雑な文様を必要とするほどの大掛かりな術式に精通するほど、カイルは術に詳しくはない。
だが、カイルはその恐ろしさを肌で理解した。六感などという浅いものではない。眼球の奥底で焼き付いた光景が脳に疼く。
澄んだ、何処までも澄んだ蒼の翅。そして、跡形と果てた城の躯。固唾を呑む。来るのは、あの人の技だと。
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:38:29 ID:E5T8TNRR0
支援
449The Meaning of Living 6:2009/11/29(日) 21:39:20 ID:TjvUrDPo0
イノセントゼロを除けばミトスが誇る3枚の切札。
内二つは、敵の位置をホーミングしてからの着弾型だ。今のカイルなら狙ってから落とすまでに避け切るだろう。
故に“敷く”。自らを中心として魔陣を描く。自らを囮と化し閉じ込める。
この身を斬り裂くその一瞬、必ずカイル=デュナミスはその射程にいるのだから。
(今更顔向け出来るとは思わない。でも、勝たなきゃならないんだ。使わせてもらうよ。クラトス)
その死体を壊した自分にこの技を使う資格があるとは、ミトスも思わなかった。
ただ、今より勝ち取るべきものに比べれば、そんな煩悶など“どうでもいいもの”でしかない。
だから使う。組み上げたのは天使術系統の秘奥義の基礎にして基点。
此は聖域。悪しき闇の一片の存在さえも赦さぬ、聖なる戒め。

「シャイニング・バインドッ!!」

超高速でミトスに突進していたカイルの前に現れた景色は、文字通り“光景”だった。
七色に燦然と輝いていた星の光とは違う純粋な白光が、ミトスの足元から立ち上る。
細長い光線が無数を重ねて、一つの城塞を形成していた。
カイルは相対的に超高速で接近する光壁を食い入るように見ていた。
強力な光に目を焼かれてしまう危険も厭わずその大きな瞳を開いて、
既に光に阻まれてミトスの姿が見えなくともその壁を見ていた。
絹紐よりも艶やかに細く、茨の蔓よりもしなやかに恐ろしく、鉄の檻のよりも強固に不朽。

人ならぬ天使の御手にて造られし、聖なる鎖がその翼を引き裂こう。

「おっオオオおおおおおおおォォォォぉぉっ!!!!!!!!」

多分、いや“絶対に”そのどれか一本にでも捕まればあの魔陣より抜け出す術はないだろう。
初見の技を前にしてのその断定には、理合という意味ではまったくと言っていいほど根拠がなかった。
だが、理など消し飛ぶほどの直感だけがカイルにはあった。
これが、この技こそが、あの城を吹き飛ばしたのだと。
何かを守るために、あの人が、クラトス=アウリオンが使った最後の技なのだと。
どくんと、ポシェットの中の輝石が震えたような気がした。いや、カイルの意識が輝石に震えたと言うべきか。
クラトスの死体と、あの城址。
その瞬間を見ていない者には絶対に理解が及ばないだろう過程が、眼前の技によってカイルの中で結び付いた瞬間だった。
両の手で握ったディムロスから驚愕と僅かな委縮が伝う。
当然だろう。ディムロスが感じるものの何倍もの怖れで、今にも剣を落としてしまいそうな自分がいるのだから。
秘奥義相手に下がるならともかく、アレに今から突っ込もうというのだから、恐怖が無い方がおかしい。
だが、後ろからプリズミックスターズが追撃している以上、僅かでも立ち止まれば背中が蜂の巣になる。
後門は既に塞がれた。そして前門が閉じられようとしている今、前に進むしかないのだ。
だけど、アレを抜けられるのか―――――――――――――――――――否、抜く。
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:40:05 ID:E5T8TNRR0
支援
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:40:11 ID:j7Hodg1fO
おおおお支援支援
452The Meaning of Living 7:2009/11/29(日) 21:40:26 ID:TjvUrDPo0
カイルがその衝撃と共に、壁に攻め入った。
後ろで遠く、虹が爆ぜる音がしたが、それを理解する暇などカイルにはなかった。
生い茂る無数の光条。その僅かな隙間を縫い、時には突撃の衝力で突き破って風の如く突き進む。
未だ震え続けるその両手を、より大きな意思で握り潰す。
光の先に、父と間違えたあの大きな背中を思い出す。よく見れば父とは違う、でも同じように広く、力強い背中。
きっとあの人はその背中で護ったのだ。大切なものを、自分の命を賭してでも。
(クラトスさん。貴方には、何度お礼を言っても足りません)
彼は最後まで、いや、最後が終わってもまだロイドの身を案じていた。
会いたかったはずだ。生きて彼を護りたかったはずだ。
(貴方に会えなかったら、俺はきっと立ち上がれなかった)
それを曲げてでもクラトスは何かを護った。死してなお言葉を紡ぐことのできる力さえも、カイルの為に用いてまで。
彼が護ったものが何だったのは、カイルには知る術もない。ただ、はっきりと分かっているのは。
(貴方がいなかったら、きっと俺とリアラに触れることも出来なかった)
その力で護ってくれたものの中に、リアラもいたということだ。
あの城で、クラトスが護りたかったものはリアラだけではないのだろうけど、
その力で護られたものの中に彼女が居なかったなら、カイルはその死体にさえ再会することはできなかった。
(借りを返す、なんて言って返せる借りじゃないことは分かってる。
 貴方の代わりにミトスを止める、なんて言えるほど俺が強くないことも分かってる)
焦げつく皮膚も厭わず、カイルは目標へ疾駆する。
越える、この壁も。例えそれがかつて彼の大切なものを護った壁であろうとも。
光を掻き分けて進む先に路が拓かれる。この夥しい光の中でもハッキリと分かる、その虹色の翅までの道が。
クラトスが自らの手で清算したかったであろう存在への直線と。

「飛翔せよッ!!!」

交差の刹那にばしゅりと音がなり、ミトスの右腕がカイルの前へと飛び出る。
同時にカイルに遅れて追従する風のうねりが、斬り飛ばした腕を洗濯機に入れたボロ雑巾のように捩じり刻んだ。
右腕一本。この戦いが始ってから初めての決定的な一撃をミトスに与えてもカイルは止まらなかった。
極端に視界が狭まる超高速の世界では吹き飛んだ右腕しか確認できなかったが、
肉体的にも精神的にも、この程度で死ぬ相手ではないことだけは分かっている。
ミトスの存命を裏付けるかのように地面から湧き上がり続ける光の中で、
両手持ちを解いたカイルは左手に箒をしかと握り締め、右手のディムロスを力一杯に地面に突き刺した。
(俺は、父さんやクラトスさんのようには、きっとなれない。俺には誰も守れないかもしれない)
地面を抉るように焼けた土くれを舞い上げながら、ディムロスを軸としてカイルは無理矢理自らを回転させる。
そして左手一本で強引に箒の舳先を曲げて自らの向う先を再びミトスへと固く定める。
一切の減速を行わずに自らの体躯を反転させたカイルが、再び敵を見据える。
右腕を失くしてなお、その翅と左手を広げて立ちはだかる敵を。

“行かせるかよ”。
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:40:33 ID:qidBvessO
支援
454The Meaning of Living 8:2009/11/29(日) 21:42:27 ID:TjvUrDPo0
越えるべき敵の面構えを確認しようとしたその瞬間、その背後の光から虹が溢れ出た。
シャイニングバインドの隙間を縫うようにしてプリズミックスターズの残弾が反転したカイルを襲い狙う。
数少ない縛鎖の隙間を埋めて、虹の飛礫がカイルを狙い撃つ。
壁は、更に厚くより高く聳え立つ。攻める者を阻むように、その後ろにあるものを守るように。
世界を救い、誰かを“守る”ことこそが英雄の力であるというならば、
今カイルの前に立ちはだかるそれは、紛れもなく英雄というものの威力そのものだった。
ミトスは守っているのだ。自らの失い続けてきた過去を、それを取り戻すために更に失ってきたものを。
たとえ歪であっても自分の手で積み上げてきたものを、決して誰かに侵させぬために。
その壁を誰かに越えられない限り、自分の歩んできた道を永遠に諦め続けることができるのだから。

(リオンやミトスのように、本当の本当に大切な物の為に全部を犠牲にする覚悟も無いかもしれない)

だが、それを抜ける。無限の弾点と光線で編まれた壁の毛穴ほどの隙間を抉じ開けて突き進む。
その身を形無き風と成して、唯々加速する。
前へ、もっと前へ。足を砕かれ股間を潰され仲間を失っても前へ。
その背中に守るものがもう無いというのなら、攻めるしかない。
頭皮が少しめくれた。頬が焼けた。肩に小さな穴が開いた。
それでも進むカイルを誰もが愚かと嘲笑るだろう。ありもしない夢想に縋る子どもと嗤うだろう。
それでいい。夢だろうとなんだろうと、この手に掴むべき未来は、きっとこの壁の向こうにしか無い。

(それでも、勝ち取ってやる。攻めて攻めて前に出たその先に、この手に掴んでみせる!!)
「真空のッ!!!!!」

光の園に再び赤が混じった。
切り返しの斬撃が再びミトスの体から肉体の一部を切り離す。
セカンドエンゲージにて左腕を中指と薬指の間から肩口に至るまで縦に斬り飛ばす。
両腕を完全に断った。だが、それでもなおカイルは一切の油断を見せなかった。

“越えさせるかよ”。

再びカマイタチがミトスの肉を刻む音の遠くなるを聞きながらカイルは速度を更に加速させる。
交差の瞬間、ミトスの口元が微かに歪んだのをその眼で見ていたからだ。
その予感に呼応するように、シャイニングバインドが一層の輝きを増す。
陣の中に残された魔力の全てがが、最後の締めとばかりに爆ぜようとしていた。
(俺は、生きるんだ。誰かを守るためじゃない。自分を守るためでもない)
余波の段階で回避や防御が通用するレベルでないと分かるその終の一撃に抗する術は、陣より脱出する以外に無い。
城に賊を入れたまま閉じつつある城門を前にして、カイルはディムロスを真っ直ぐ壁に突き立てた。
閉じられたのなら、突き破るまで。今のカイルに、守るための力など何も意味を成さない。
(生きて、もう一度リアラに会うために!! その為に生きる命だからこそ、俺は戦える!!)

「刃アァア゛ア゛アアア゛アァァァァァッァァッッッッ!!!!!!!」
455The Meaning of Living 9:2009/11/29(日) 21:43:37 ID:TjvUrDPo0
聖域が解き放たれる。爆発的な光の奔流が天に上っていく様は、幻想そのものだった。
その美麗な幻想より弾き出される染みのようにカイルが飛び出す。
衣服のあちらこちらに焦げ目を造りながらも、生きて死地を抜け出した。
黒ずんだ顔色は露骨に疲労をカイルに訴えているのだろうが、カイルはそれを全て無視した。
まだ終わっていない。求めるのは生ではなく勝利。故に、最後の一撃まで手を緩めない!!

「翔ッ王!」

カイルがまだ熱冷めやらぬ大地をディムロスで再び叩き、反動と共に穂先を天に向ける。
右の剣を地に左の箒を天に、遅れた風とともに空へと昇る。
高く、高く。その高みより壁を一刀の下、叩き斬るために。
虹を失い、もう殆ど夜にしか見えない空を昇り決意を固める。
かけがえのない何かを守れるのが英雄であるならば、きっと俺は英雄にはなれない。
だとしても、それでもリアラを求めるこの想いだけは譲れない。
だから―――――――――――――――――――――

「絶燐しょ」
『カイル、止まれェァァァッッッ!!!』

え?
カイルは莫迦のような反射で今まで耳から抜けていたディムロスへと向いた。
自然と地を見下ろしたカイルの眼に入ったのは、箒の穂に突き刺さった邪剣ファフニール。
なんでこんなものが? 何時?
そんな疑問を抱くより先に、更なる事実に気付く。
箒に絡んだ邪剣、その柄より更に白い何かが伸びている。
まるで地を這う罪人を天より救い上げる蜘蛛の糸のように、それは伸びていた。
上昇しながらその先をカイルは眼で追う。キラキラと輝くそれは、光の柱より伸びていた。
ああ、と莫迦なカイルでも気付く。これは鎖だ。罪人を牢獄より逃がさぬための枷。

“お前は一度堕ちたんだ”

あの二回の接触は腕を斬ったんじゃない。“斬らされたんだ”。

“だったら落ち続けろ”

最初の一撃でファフニールと箒を、次の一撃でファフニールを鎖と縫いつけた。

“何度でも何度でも地面に墜ちろ”
最初から狙いは箒。その翼を毟り取ることの為だけに、シャイニングバインドは放たれた。

“足から体から手から肘・膝・背中、そして頭から墜ちろ”

地を這う聖域より伸びし鎖。微かな希望を夢見る蜘蛛の糸。
だから、其れはつまり“同じ罪人に引っ張られるために存在していた”。



「イふぁふかよホォ、バァャァァァロオオオオオオオオォォォォォッォォオォオオッッ!!!!!!」


456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:44:48 ID:j7Hodg1fO
支援!
457The Meaning of Living 10:2009/11/29(日) 21:44:53 ID:TjvUrDPo0
鎖を口に銜えた咎人が嗤う。いかせない、行かせはしないと。
口元より伸びた最後の一本が、空を飛ぶ罪人の偽翼に絡みつく。
鉄や金属であるならばたちまち焔に蒸発するだろうとも、光によって鋳造されたその鎖の束縛は絶対。
いや、材質など無意味だ。重要なのは意思。
縛るという意思を極限まで高めた「鎖」は、「紐」や「縄」などより遥かに強い。
そしてそれはつまり、ミトスの持つ明確な怨念の強さだった。

「……ッ、ディムロス!」
『分かっている。このまま千切るぞ!!』

ミトスに捕まっていたことにようやく気付いたカイルだが、既にブレーキを掛けられる速度では無い。
更に速度を上げて上昇し、鎖を強引に引き千切ろうと試みた。
この空の向こう、もっと高く飛ぶならばこの程度の枷に止まってやれるはずもない。

『ミトス! もう無理よ! これ以上は、顎から下が――――――』
「ゃガッガツグズずズジュうゅいあらっあざああああああ!!!!」
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜歯顎強化<ストレングス>ッ! 晶術治癒なんて“する暇ない”わよ!! 
 これくらい、男の子なら耐えなさい!!」

下に垂れた曲線を描いていた鎖が、忽ちに緩みを失い引っ張られる。
それをミトスは力いっぱい噛んだ。ともすれば鎖が切れてしまうのではないかと思えるほどに噛んだ。
奥歯がたちまち削れ砕け、前歯が一本折れ、口から生えていくように伸びる鎖に血の赤を塗していく。
それでもミトスは食い縛った。超高速で口内を通過していく鎖に口の端の肉を裂かれながらも耐えるように噛んだ。

―――――――――――一人のための、自分の願いよりも、もっと大事なものがあるんだ。
            本当に大切な人の英雄なら、英雄ならーー自分の想い以上に、その人が本当に望むことの方が大事だろ!!

行かせない。絶対に行かせない。
人類が滅多に体験しないであろう人体破壊をその身に感じながら、ミトスは今、初めて他人の道を否定しようとしていた。
例えば、ロイド=アーヴィングような“世界の英雄”の進む道と自分の道は交わらない。
世界と一人を天秤にかけることそのものを肯定できないロイドのような道ならば、
幾ら進まれようがミトスには興味もないだろう。
自分の道を守るために抗いはするだろが、ここまで自らを壊すようなことはしない。
光は影に交わることは無く、逆も然りだからだ。

だが、カイル=デュナミスが今から行こうとする道は、かつてミトスの歩んだ道。“一人の英雄”だ。
一人の為ならばそれ以外のすべて、世界さえ犠牲に出来る。
例えどれほど後で悩み苦しもうと、その選択を行える覚悟を持つだろう。
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:45:12 ID:E5T8TNRR0
支援
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:46:58 ID:j7Hodg1fO
支援
460The Meaning of Living 11:2009/11/29(日) 21:47:31 ID:TjvUrDPo0
なんという皮肉、いや、奇遇だろうか。
かたや自らの血に苦しみ、英雄にならざるを得なかった少年。
かたや自らの血に依って、英雄になろうと決意した少年。
カイル=デュナミスはミトスと正反対の開始点からミトスと同じ“英雄”に至ったのだ。

だが、カイルとミトスの道には決定的な違いがある。
カイルの目指すそれは“ミトス=ユグドラシルの進んだ道の先にある”ということだ。

一人の為に世界全てを犠牲にする覚悟を持ちながら、
その覚悟をその一人の願いの為に、例え、それがその人を殺すことになったとしても、
その願いの為に自分を捧げることのできる、真なる“一人の為の英雄”。
もしそんなものが存在するのであれば、真なる英雄の前にはミトスの歩んできた道など中途半端なものでしかない。
ミトスが諦め続けるためには、ミトスがその道の果てに居続ける必要があるというのに。

とっくに理解はしていたのだ。千年王国も、姉さまの蘇生も、所詮は自分の願いに過ぎない。
姉さまの遺言を曲解して、自分の都合の良い言い訳にしてきただけ。何一つ、姉さまの望みにかなっていない。
それを否定する気は、もうない。何せ、この世界で姉さまの口からそれを言われてしまったのだから。

そこまで諦めてさえも、目の前の存在をミトスは許容できなかった。
カイルが“そこ”に至ろうとしているのは認めよう。
だが、もしカイルがそこに至ることがあれば、ミトスの道に、まだ続きがあったということになる。
つまり、英雄ミトスの敗北の原因は外因ではなく内因、唯の努力不足ということになってしまう。

(認めない。リアラには逢う。その為に犠牲を出すこともいとわない。
 “だけどリアラが望まないだろうから犠牲は出さない”。
 リアラの望みを完全に達した上で、自分の意思を叶える。そんな我侭、有り得てたまるか)

それは、できるかどうかの問題ではない。在ってはいけないのだ。
ミトスでさえ、マーテルの真意を曲解しなければ自分の望みをかなえられなかったというのに。
もしそんなものがることを認めたならば、その瞬間ミトスが到達した英雄の限界線は破られ、彼の四千年は無駄と化す。
その先に道がなかったのではない。ただ、その先を見つけられなかっただけなのだと。

「そんなの、認められるかァァァァッァァァッァァッァ!!!!!!!!!!!!!」

ミトスがかぶりを振って、銜えた鎖を大きく引っ張った。
カイルとミトスを結ぶ白い直線が、二人の意思を繋ぎとめる。
越えようとする意志と、越えさせまいとする意志。二つの意思がまるで綱引きのようにぶつかり合う。

そして、その意思の引きあいを結果が空に示され、
カイルの体が箒から弾かれるように飛び出し、カイルの仮初の翼がもぎ取られる。
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:48:16 ID:E5T8TNRR0
支援
462The Meaning of Living 12:2009/11/29(日) 21:48:26 ID:TjvUrDPo0
「お前は、逃がさない! ここで墜ちろ!!
 その意思ごと、滅びてしまえ!! アトワイトッ!!」

ミトスが右足で大地に突き刺していたアトワイトを蹴り上げる。
そこには、プリズミックスターズの操作を終えて、既に詠唱を準備終えた彼女がいた。

『コアクリスタル、ハイエクスフィア共にフルオープン。この状態は保って数秒。成功率は――――』
「100!!」
『―――――――――――――ええ、勿論!!』

子供の無茶と理不尽に応ずるように、アトワイトは気後れを微塵も見せず凛々しく答えた。
彼女の様に裂けた口をかろうじて笑いに歪め、ミトスは残った左腕の内側半分を鞭のように揺らして振った。
中指から親指しかない掌でアトワイトを掴み、ミトスは天使の翅を最大開度で展開する。

「・・−・−・−−−、−・・・・−−・−・・・−−(灼熱の業火を纏う紅の巨人よ)」
『第一節・エクスプロード!!』

天空を泳ぐカイルの左上後方に、巨大な轟炎の渦球が現れる。
目まぐるしく動き回る視点の中、ディムロスが発露した術力に声を上げる。
『クッ! 動きの取れぬ中空で、上級術を―――――――!?』
避けるにも防ぐにも、即座に対応しなければ間に合わない。
つまりまだ対応できるレヴェルの攻撃だと彼は判断した。
だが、間断無く続けられたアトワイトの詠唱にディムロスは二重の意味で絶句する。

『−・・−−・−−−、−−・・−−・・・・−・−・・−−・−・−・・(蒼ざめし永久氷結の使途よ)』
「晶術並列運行!! 第二節・アブソリュート!!」

清涼な音階から形成されるのは、握り拳ほどの大きさもあるやという大きさの氷の弾―――――の“吹雪”。
一粒一粒に明瞭な意思を見つけるのも難しいほどの氷玉がたんまりと詰まったそれには、
カイルの正面を塞ぐ絶対零度の寒気団には、入った人間を凍死させる前に肉塊に変えてやるという殺意が篭められていた。

有り得ない、とさしものディムロスは目の前の光景を疑った。
そして、当然それは魔術が連続して展開することにではない。
マリアンやマーテルと共にいたというダオスなる男は、参加者全員の前で4連続詠唱を成立させたと聞く。
なにより、アトワイトとの戦いでそしてミトス・アトワイトの連携を何十回と見続けた歴戦の兵は、
この連続詠唱のカラクリ、つまりエクスフィアのEXスキルとユニゾンアタック、
そして魔術と晶術の複合による時間差詠唱を正確に理解している。
つまり、これは『四魔術を同時に成立させる一魔術』ではなく、ただの『一魔術の四回連続詠唱』なのだ。
故に、膨大な構成と詠唱を要する上級術はこのテトラスペルもどきには組み込めない。
それがディムロスの導き出した結論であり、恐らくは今までの現象を説明しきる唯一のロジックだ。
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:49:40 ID:E5T8TNRR0
支援
464The Meaning of Living 13:2009/11/29(日) 21:50:03 ID:TjvUrDPo0
「−・−・・−−・−・−・−−・−−、・−・・・−−−・・・−−(三界を流浪する天の使者よ)」
『スペルキープ解凍! 第三節、サイクロン!!』

『上級術を3連だと!?』
ならば、右上後方より巻き上がる嵐の螺旋は、どう説明すればいいというのか。
術の過程において、その効力・規模と詠唱の手間は比例する。
初歩の術ほど詠唱はシンプルであり、上級術ならばその逆だ。
アトワイトとミトスの手法は詠唱の短い初級術だからこそ、成立する方法なのだ。
その証拠に、アトワイトもミトスも四連続詠唱の構成内容は常に初級術にて組んでいる。
上級術では、どうやりくりしたところで詠唱速度がかさんで連続と呼べるほどの連携には繋がらない。
いくらミトスがダオスと類似する能力を幾つも備えていたとしても、
初級四連のテトラスペルを逸脱して、上級術を連続で放つなど―――――――――

『お前の入れ知恵か、アトワイトォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!』

ディムロスが吼えた。この死地に入って一番激したその怒号には恨み辛みはなかった。
ただ、なぜこんな簡単なことに気づかなかったのかという爽快な後悔だけがあった。
ディムロスは、テトラスペルに囚われ過ぎたのだ。

<Turn――――――――――――

遅い遅い遅い。脳に送る血液までその胸に行ってるんじゃないのかい?
よく考えれば簡単に導き出せることだよ? いいかい?
既にこれまでの指し手で以下の情報は提示した!!

『ミトスがテトラスペルを習得できたのはアトワイトを得たから』
『ミトスがテトラスペルを習得したのはダオスを超える力を得るため』
『ミトスのテトラスペルは魔術・晶術問わず内容を変更できる』
『ミトスのテトラスペルは“本当のテトラスペル”ではない』

それを踏まえて、さてさて問題です。
『“アトワイトと出会った”ミトスがテトラスペルと呼称した術は、何の術を原型にして着想を得たでしょうか!?』

テトラスペルをただ真似した所でダオスのオリジナルに勝てる訳もなし。
ならばミトスは何故テトラスペルのイミテーションでダオスを超えようとしたか!?

それで勝てる算段があったから。
イーコール、ミトスが得ようとしたのはテトラスペルより上位の術のイミテーション!!

前回はグチャグチャの木っ端バケモノが相手だったからストレート程度の役で済ませた。
今回は、とっくりと役を組む時間あったからね。確りと揃えさえてもらったよ、ストレートフラッシュ!!
さあて答えあわせのオープンタイム! 御代は、死んでのお帰りだッ!!

 ――――――――――――Shift>
465The Meaning of Living 14:2009/11/29(日) 21:50:58 ID:TjvUrDPo0
『気づかれた! ミトス!!』
ディムロスの劈くような怒声に、アトワイトは彼がこちら側の手札全てを理解したことを察した。
ディムロスなら遠からず気づくだろうことは分かりきっていた。そして気づかれた以上、ここからは完全に速度勝負になる。
それでも遅い、とアトワイトは素直にそう思った。だが、それは当然でもある。
もし、自分が彼と同じ立場でもそうであろうし、何より知っている立場でも未だ全てを受け止め切れていないのだから。
(本当に、子供は恐ろしい。現実に制約されない発想が、水のように湧き上がるんだもの)
ちょっとした思い付き、ふと頭を過ぎるイメージ。数秒後に『ないない』と直ぐにかき消されてしまうようなもの。
人に空は飛べない、鉄は海に浮かばない。ありとあらゆる“現実”が壁と立ちふさがってきた。
だけど技術の進歩は、文明の開化は、人の歩みは、その壁を越えることでしか成立しなかった。

アトワイトは凝視する。その壁をまた一つ越えようとする、我が身の主を。
「−−・−−−−・・−−・−・−・−−(気高き母なる大地の僕よ)!!」
『乱数装置<ランタマイザー>始動! 第四節、グランドダッシャー詠唱開始!!』

自らの肉体を壊しつくしても一切の淀みなく4番目の詠唱を紡ぐミトスに、
アトワイトは己の作業を進めることで応じた。回復や補助を行う暇さえ、もうないのだ。
今から行おうとしていることは、スピードスペルやミスティシンボルの加護を付加したとしても、
4度も連続して諳んじることが出来るなど精霊王や神々でも至れぬであろう超魔術だ。
普通ならばそこで思考が止まる。現実の前に、想像が阻害される。
だが、諦めない者はその先へ行く。その現実を踏まえた上で、可能性を導き出す。
そしてミトスが至った道が、この運試しだった。
自らの、そしてアトワイトの持つ術能力を全て三節に注ぐ。
己が持つ力を全て注いで、第三節までを絶対に繋げる。
そして最後の一節は、文字通り運否天賦に託す。

<Turn Shift>

「ディムロス、これッ!?」
『うろたえるなカイル、まだ包囲網は完成していない!! 』
目の前で着々と整いつつある処刑台を前に一瞬途惑ったカイルに、ディムロスは檄を放つ。
だが、まだディムロスに諦めの二文字と完全なチェックメイトは存在していなかった。
発動してなお、まだ襲い掛かる様子を見せない三術。
三方を包囲されてなお、まだ閉じられていない地面。
今ミトスたちが仕掛けている術がディムロスの想像通りであるならば、
それらは、ミトスの策がまだ完成していないことを示していた。
(立体を囲むに必要な最小の面数は4。地面までは閉じられておらん。抜ける!!)
ディムロスは自分の推理がミトスの思惑と合致しているだろうことを確信していた。
4つ目の術が発動しない限り、他の3つは仕掛けてこない。
ミトスの目的は完全なる勝利。カイルを“叩き落す”ことだ。
99%の勝利ではなく、100%の必滅を狙ってくるはず。
故に、それが完璧になるまでは仕掛けてこない。だからこそ、まだディムロス達には希望する余地がある。
『最後の最後で、欲に眩んだ――――――――という程度なら、まだ楽なものを』
なのに、ディムロスの眼に写る唯一の突破口は、面白いほどに暗く細く見えた。
466The Meaning of Living 15:2009/11/29(日) 21:51:49 ID:TjvUrDPo0
『そうね。ハッキリ言って、非合理的。大人しく三連で手を打っておけばいいものを』
ランダマイザーに失敗すれば詠唱時間が常よりも更に伸びる。
いや、それだけではない。
先のプリズムソードとホーリーランスの連続術はただの二連携であったから失敗してもリスクはなかった。
だが、この術は“4つそろってこそ成立する”以上、失敗は許されない。
最悪、必死の想いで繋いだこれまでの術にも影響を及ぼすだろう。
そんなリスクを犯すくらいならば、大人しくトリコスペルで収めておけば、
それでも、9割9分9厘勝利を収めることだ出来たはずだ。
『でもね、ディムロス。どうしてかしら……この運試し、外す気がしないわ』
意思が、世界を捻じ曲げる。不可能が、可能へと摩り替わる。
そう、英雄の前には可能性など無意味。
 
<Turn>

だって、1%=100%のバトルロワイアルで確率なんて意味ないもの!!

<Shift>

『四殺、徹った……最終セーフティ解除、行けます!!』
「ユグドラシルの名に於いて命ず。四元の精霊、我が前に連なりてッ、大いなる至源の力と化せ!!」

ミトスの命令に従うようにカイルらの真下。溶解した大地のその更に下から、巨岩が一本の杭とせり上り、
カイルの下後方を塞ぐようにして昇り上がる。
声ならぬ声が、天地を伝う。風に、火に、水に、そして土に響く。
アトワイトをタクトとして、今や召喚士ミトスはこの戦場の全てを掌握し、指揮していた。

『まさか、成立させるというのか……クレメンテも、ベルセリオスも無しに……』

プリズミックスターズ、そしてシャイニングバインド。
どちらも決め技とするに十二分の能力を備えた技である。
それらさえも捨て札として、ミトスは紡ぐ。己の全てを尽くし、この呪文を紡ぐ。
最初は、使うつもりもなかった。使えるとも思っていなかった。
それはただの着想に過ぎない。姉を守れる存在であるダオスに一目羨望を抱いたミトスが、
その力にほんの少しでも追いつけるように目指したものの“取っ掛かり”に過ぎない。

テトラスペルを超える力。全てを呑み込む神聖なる力。
晶術の最終形態。四属性上級術一斉放火。
グズグズの口を捨てて、石より響くように、ミトスは最後を唱えた。

「【死力は賭した。越えられるなら、越えてみせろ。カイル=デュナミス】」

大いなる力――――――――――――――それは、いつだって最後に英雄の前に立ちはだかる。



「【ディバイン、パウア!!!】」



<Turn 終了ッ☆ END>

467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:52:38 ID:qidBvessO
支援!
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:53:45 ID:E5T8TNRR0
支援!支援!
469The Meaning of Living 16:2009/11/29(日) 21:55:37 ID:TjvUrDPo0
箒から引き離され、絶えず受け続けていた推力から解放されたカイルは、宙ぶらりんに浮いた意識の中で思った。
ああ、死に囲まれている。これはもう逃げられない。
物理的に逃げられないこともあるが、何よりもミトスの殺意を改めて強く思う。

(―――――――なんて、キレイなんだろう)

それが世界の救済だろうと、殺意という醜い我欲だろうと、
望みに向かって一所懸命に尽くすことは、あの星空の瞬きよりも輝いている。
ただ、黒い星の光は夜には見えないだけ。見えていないだけなのだ。
揺らめく視界が見下ろす先に、羽虫の様にボロボロな肉塊がこちらを見上げている。
両腕を壊して、両足も潰して、顎も砕けている。
今にも壊れそうなのに、ただカイルの死を見届けるためだけに留まっている死骸。
だが、カイルの瞳に映るその骸は、どうしようもないほど英雄だった。

(高っかいな……壁。あれだけやっても、届かないのか)

全力を出した。カイル=デュナミスという一個人がもつ全存在を賭けた。
そして確かに、後ほんの少し手を伸ばせば届く位置までカイルはミトスに追いすがったのだ。
だが、それでも超えられなかった。ミトスが、それを上回った。
知識で、道具で、策で、自傷で、力で、運で、ミトス=ユグドラシルという一個人が持つ全存在を以て打ち破ったのだ。
ぐうの音も出ないほどの、決着。それはきっと小指1本分の差でしかないが、絶対的に聳え立つ差。
カイルでは、ミトスに勝てな“かった”。……ならば、カイルにミトスが超えられなかった壁をどうして越えられようか。

(嫌だ……! 諦めたく、ない……のに……!!)
生死の狭間で、カイルの願望と現実がせめぎ合う。
この道はもう大きな壁で塞がってしまっていると分かっているのに、ほかに生き方を知らぬ自分には引き返す道も無い。
470名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:56:20 ID:E5T8TNRR0
支援
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:56:55 ID:j7Hodg1fO
支援!
472The Meaning of Living 17:2009/11/29(日) 21:57:51 ID:TjvUrDPo0
――――――――――ならば、祈りなさい。かつて貴方が祈ったときように。
−チガ チヲコバム−

(誰……? 何処かで……聞いたような…………)
張り詰めていた気も遂に尽き、意識を闇に落としていく。

――――――――――弱く哀れなヒトの仔よ、そなたの願いはヒトの手では叶わぬ。“お前がそれを認めている”。
−ココロガ ココロヲクダク−

(それでも、俺は、これしか、望めない)
薄れゆく景色、見上げた双月の夜空に、カイルは今一度両の手を組みたくなった。

――――――――――ヒトが2人いればどちらかの願いが叶わぬのは自明の理。“だが、私ならば2人ともに完全な形で願いを叶えられる”。
−キセキハオトズレナイ−

(逢いたい……もう一度…………思い出なんかじゃない、……未来に、もう一度……逢いたいんだ……!!)
何故ヒトがそうするのか、分かった気がする。
疲れて、どうしようもないこの瞬間。どうしようもなく星空を見上げたくなる。

――――――――――だから、私に望みなさい。失ったものを、全て。
−ユメナド……−

例エソノ星<カミサマ>ガ紛イ物モノダトシテモ、ヒトハ祈ラズニハイラレナイ。

――――――――叶わぬ願いを、叶えられなかった願いを、この神に!!
−ソコニハソンザイシナイノダカラ−



            『でも、俺<君>はまだここにいる』



−アラガウカ!!−


<Turn   え? ちょ、何を――――  Shift>

473名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:58:07 ID:E5T8TNRR0
支援!!
474The Meaning of Living 18:2009/11/29(日) 21:58:38 ID:TjvUrDPo0
「っ!!」
その時、自分が見たものを説明する言葉をカイルは持たなかった。
風火水土の殺人空間にいたはずのカイルの目の前にあったのは、
今よりもっと深い夜の空と、雨に濡れて冷え切った石畳の床と、その床を覆う自分の血だった。
ここは何処か、何が起こったか。それを問うよりも先に、響くように声が聞こえた。

「ディム――――」
『きっと、違うと思うんだよ』

ソーディアンとの対話に慣れたカイルは反射的に自分のソーディアンの名前を言おうとしたが、途中で止まる。
それがディムロスの声でなかったから。だが、誰の声かという疑問はなかった。カイルがそれを聞き間違うことは有り得ない。

『君は俺に憧れてくれていると言ったけど。多分、君は俺にはなれない。君の目指している先に、俺はいないんだ』

雨音に混じる呟きは、確かに誰かに伝えるためのメッセージだった。
だけど、そこにはその誰かに伝えたいという意志が感じられない。
使わなくなった蓄音機から、伝えるつもりも無い独白が流れ出すように。

『君がどんな英雄を目指しているかは、分からない。
 でも、君が目指す先にいた人を俺は知っている……2人とも、俺が守れなかった人たちだよ』

ああ、とカイルは雨に打たれ這い蹲る“自分”を感じながら“誰か”の呟く2人を思った。
一人は、女性だ。未来のために、現在を捨てることを選んだヒト。
その姿と理想の高さに眩しいと思いながらも、その高みより墜ちることを止められなかったヒト。
そして、もう一人は……少年だ。
たった一つのかけがえの無いものを守るために、仲間も、世界も捨てた誇り高き騎士。

(リオン…………)
『俺とあいつは、道を違えた。そして俺は生き残って、あいつは死んだ。
 でも、今でも……いや、“今だから”思うんだよ。あいつの生き方は本当に間違っていたのかなって』
475名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:59:21 ID:E5T8TNRR0
支援
476The Meaning of Living 19:2009/11/29(日) 21:59:31 ID:TjvUrDPo0
胸を深々と穿つ斬痕から、自分以外の誰かの想いが血液と共に漏れ出す。
いくら馬鹿なカイルでも理解できた。自分が受けたことも無いこの傷は、その誰かの傷なのだと。
『誰も失いたくないと思っても、俺は子供一人の命も守れない。
 俺の手の届かない場所で、仲間の命が消えていく。……君が憧れる俺は、ここじゃ“その程度”なんだ。
 多分、リオンの生き方の方がこの世界には“合ってる”と思う』
雨音響く城跡。カイルはその場所を知っていた。
忘れられるわけもない。彼も、その場にいたのだから。
色んなものを失った。一度は掴んだ少女の手も、仮初の平穏も、そして。
『でも、俺にはあいつの生き方が本当にそれで良かったとは思えないんだよ。
 例えそれがこんな世界だったとしてもね。一人の為に生きて、一人で死んでいくなんて、そんなの悲し過ぎるじゃないか』
そんなことを考える“俺が見ている俺”が泣き喚いている。
ああ泣くなよ、よく見とけよ。今から自分の父親の末期を看取る機会さえも無くすぞお前。
『俺のような英雄も、あいつのような英雄も、多分どっちも間違いじゃない。少なくとも、俺はそう信じたい。
 でもどっちも正しくないから、必ず何かを失ってる』
スタン=エルロンの胸から溢れ出す鮮血を自らの胸に浴びながら、
カイルは小瓶を落として嘆き狂う殺人鬼に襲い掛かろうとする自分を見、そしてその死角から滑り込む弾矢を捉えた。
今から、俺はあの奈落に落ちていく。
『知りたいんだよ。君とこの空の下で話して、そう思ったんだ。
 俺もリオンも英雄になれないこの空の下で――――――――“英雄は本当にいるのか?”』
俺の手が、ディムロスを握っていることを思い出す。
それをもうすぐ手放す。何のために? 決まってる。バカで馬鹿で、どうしようもない俺が生かされる為に。
『君なら、俺の道とあいつの道を二つとも知っている君なら……ひょっとしたら……成れるかもしれない。
 俺達が諦めた本当の答えに、君なら届くかもしれない』
握るディムロスから、意思が伝わる。ああ、これは“記録”だ。
レンズに神が宿り、剣に人格が籠もり、エクスフィアに精神が溶け合う。
意思は、願いは、石に刻まれる。

『だから、守るよ。君がこの後どうなるか分からないけど……それでも、この今は守る。
 君が今から歩むだろう、この最初の一歩を守りたい』

(畜生、何で、今になって! こんなしょうもないことに気づくんだよ、俺!!)
カイルを狙い撃つ凶刃が、ディムロスによって弾かれる。
そして、殺人鬼の刃が自分<スタン>の脳天を覆う。
帳を降ろすように、世界が黒く染まる。刃と人が離れ、記録時間が終わりを告げる。
だけど、カイルにはそれ以上の記録は必要なかった。
知っている。俺は、この後を知っている。だって、見たのだから。


『ああ―――――――――生きて、よかった』 
あの、完全な笑顔を。


デッドラインの淵の淵。そこで、俺はやっとその意味を理解した。


477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 21:59:37 ID:j7Hodg1fO
なん…だと…?支援
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:00:47 ID:E5T8TNRR0
支援
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:01:01 ID:qidBvessO
支援
480The Meaning of Living 20:2009/11/29(日) 22:01:40 ID:TjvUrDPo0
『カイル! おい、カイル!!』
中空を舞うカイルにディムロスは懸命に声をかける。
何もかもが“わや”になってしまった死地で、ついに減圧と風圧で体と頭が追いつかなくなったか。
ディムロスのその恐れを安心させるように、カイルは薄らと眼を開けた。
『カイル……ッ!!』
「ディムロスも、守ってくれてたんだよな」
喜びを声に出そうとしたディムロスの口をゆっくりと塞いだのは、カイルの穏やかな瞳だった。
懐かしい夢を見た後のような、まどろみを抜けた後の朝のような。
「ディムロスだけじゃない。ミントさんも、クラトスさんも――――きっと、リオンだって」
眼球だけでディムロスを、そのレンズを見つめる。ディムロスは分かっていないのみたいだ。
アレは夢か幻か奇跡か。そんなことはカイルにとってどうでもよかった。
本当の意味で“生きる理由”を見つけた今だからこそ、
今の自分が多くの人間に守られて生きてきたことを実感する。
カイル=デュナミスの生の下にある夥しい死の数々。だが、今ならはっきりと言える。
その全てが、決して犠牲になるために生きていた訳ではないことを。

カイルが憧れた英雄は、カイルを助けるために自分が犠牲になったとは一欠けらさえも思っていなかった。
守りたい。あったのは、ただそれだけの願い。少なくともカイルにはそう信じられた。

「守りたいって気持ちは、それだけで凄いんだ」

もしそこに打算があったとしても。
例え悪意に満ちていたとしても。
ただのエゴでしかなかったとしても。
誰かを守りたいという意思は、それだけで尊い。
その意思を、“生”を託すということは。

――――――――でも、俺はまだここにいる。まだ仲間が生きてるからとかじゃない。
        こう……何ていうかな、ありきたりだけど、俺の中にいるんだよ、うん。

(やっと分かった。父さん、そういうことなんだね。
 俺は、まだ生きてる。俺の中で誰かがが生きるんじゃない。
 俺を支えてくれた人たちの中で、俺が生きてるんだ)

カイルの手のひらに力が僅かに宿る。
多くを失いすぎて自分を見失った少年が、もう一つの宝を見つける。
自分の願いがなければ、犠牲にしか見えないもの。自分を生かしてくれた人たちの願いを。
空を見上げる。もう殆どが炎と風と雪に隠れてしまった中で、一際輝く星を見つける。
カイルはディムロスを握るその手を伸ばした。足掻くように、震えた指をそこに近づける。
僅かに灯った生は淡く、死は直ぐそこに近づいている。それでもカイルはそれを追い求めた。


(俺の命は、俺だけの命じゃない。生きる理由を見つけた今なら、分かる)
 
例え誰も守れない生き方だとしても、誰に守られて生きているか位は分かる。

届かない一番星。
ああ、あの一番星だ。
あの星の下で、約束した。

「ディムロス。俺は“帰るよ”―――――――――帰りを、待っている人が居る」
481The Meaning of Living 21:2009/11/29(日) 22:02:38 ID:TjvUrDPo0
小指が、誰かにひっぱられたような気がした。
冷たい、でも決して冷めてない小指が、カイル=デュナミスの小指を引き上げる。
それはほんの少しの“引力”だった。
かつてのカイルには枷でしかなかった“死ねない理由”。
今ならばそれは杖となる。その歩みを支えてくれる力となる。
ミトスにあって、カイルには無かった力。その微力が――――――カイルの小指一本を、あの壁に引っかけさせる。

「今なら誓える。生きて戻る。あの人に、言わなきゃいけないことがある」

心に火が灯る。紅くて蒼い、魂の炎がカイルを満たす。
生きて帰る。たったそれだけのことを誓うのに、俺は一体どれだけの回り道をしていたんだろう。
あまりに愚鈍でどうしようもなく莫迦だ。でも、無駄だったとは思わない。
守ること、犠牲になるということ、罪と罰のこと、生死の価値。
全部繋がってたのだ。だから今なら答えられる。
生きるという、その本当の意味を。

『この力……レンズパワー……100……140……170……まだ上がるというのか!?』
魂が、剣を伝う。カイルの意思が、ディムロスを包み込む。
これは、神が思召した奇跡か? 否、これは意思の、心の力。
『300オーバ!? まさか、第二形態?……いや、今は問うまい!!
 この力なら……カイル、最終コード起動!! 俺に続けて唱えろ!!』

カイルが頷き、ディムロスを両の手で握り直す。
纏っていたスピリットブラスターの輝きが、ディムロスに集約する。
魂を燃やすその意思が、レンズを介し、剣の魂さえも爆ぜさせる。


【 】

何も無い。黒い雲渦だけが回り続ける場所に、カイルは立っていた。
その向こうにはソーディアン・ディムロスと、それを握る腕。
紅いグローブと、真白い鎧。向かい側の人間が誰かを知るには、それで十分だった。
カイルは誰何すること無く、時を惜しむように言葉を紡ぐ。

「まだお礼も言ってなかった。
 “ありがとう。”俺を生かしてくれて。
 “ありがとう。”俺を死なせてくれなくて」

喜べる。素直に俺が今生きていることを喜べる。
それが例え犠牲と呼ばれるものだとしても、多くの死の上にある命だとしても。
そこから更に踏み出せることが、こんなにも嬉しい。

「それを思い出させてくれて、ありがとう。そして、ごめん――――」
482名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:02:38 ID:E5T8TNRR0
支援!!!
483The Meaning of Living 22:2009/11/29(日) 22:03:58 ID:TjvUrDPo0
カイルの言葉を遮る様に、放り投げられたディムロスがカイルの眼前で大地に突き刺さる。
男は、世界を救った英雄は、優しげな声で言った。

【分かってる。今の君に改めて託すよ。ディムロスは君をもう認めてる。
 好きに使いな。俺はもう、あの時とっくにこれを託してたんだから】

カイルは何かを言おうとして、それを堪えた。
剣士にとって剣は己が半身だ。それをカイルに向かって投げられたということの意味。
カイルは、あの城でとうの昔に受け継いでいるべきそれを噛みしめてディムロスを握る。

【そのかわり】

先ほどまでと比べ物にならない厳しい音に、カイルの筋肉が強張る。
英雄は大らかに、堂々と、ただ願いだけを言葉にする。

【取り戻してこい。“お前”にとって、かけがえのないものを、一つ。
 きっとその子も待ってる。俺が言うのもなんだけど、女の子は待たせると恐いぞ?』

暗雲が晴れ、払拭された雲の向こうから太陽の光が広がる。
その陽射しの眩しさに、カイルは涙を零し掛けた。
カイルは今から旅に出る。あり得ないものを見つけ出す旅に。
終点は何処にあるか分からない。一歩歩いたその先で終わるかもしれない。

カイルだけが挑む英雄デュナミスの冒険譚。
その旅の始まりに得る餞別として、これほどのものがこの世にあるだろうか。

カイルは英雄に背を向ける。道はこれより違え、もう二度と振り返ることはない。
だから、カイルは語った。今はまだ頼りないその背中で、未来に誓うように。

「知ってるよ。じゃ、行ってきます!」

玄関より駆け出す少年に、父親はただ手を振って見送った。
振り返ることのないその背中に、一抹の寂しさと万感の自慢を覚えて呟く。

【おう、行ってこい。カイル、俺の―――――――――

大丈夫だよ、ルーティ。あいつは、もう自分の翼を持ってる。
越えられないものなんて、何も無い。


「『不死鳥は巨大なる力を秘めし者にのみその姿を現す!!!!」』



――――――――――――――――
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:04:53 ID:j7Hodg1fO
支援!!
485The Meaning of Living 23:2009/11/29(日) 22:04:58 ID:TjvUrDPo0
嵐・炎・氷・震。ディバインパウアの魔力が収束へと向かう一点を、アトワイトは見続けていた。
ミトスの持つ技術を余す所無く用いて構築された大魔晶術は、文字通り人間を最低でも4回は殺せるだろう威力を顕わにしている。
長い、永い戦いの終着を決して見逃さないよう、それこそが今自分にできる唯一の手向けというように。
(ありがとう、カイル。貴方がいなかったら、きっと私は道具としても死ねなかった)
人間として生を渇望することも出来ず、道具として死を割り切ることも出来ず、
ただぼんやりとした終わりを迎えていたことだろう。
カイルが、自分の心とディムロスと向き合うことを示してくれた今だからこそ、
人としての全てを満たした彼女は、道具として未練なくこの終わりを迎えることが出来る。
(私は、本当に子供に弱いわね……あの直向な顔、髪の色は違うけどあの子そっくりだわ)
未来を見通すように大きな虹彩に、アトワイトは会うことも出来なかった本来のマスターの姿を重ねた。
その記憶さえも疑わしいものであるとはいえ、それも已む無しか。
道具という役割を徹したとはいえ、マスターを鞍替えた事実は揺るがないのだから。
(ごめんなさい、ルーティ。でもどうにも、この子は危なっかしくて放って置けないのよ)
後悔は無い。ルーティと何もかもが違うとしても、彼のとった行動が決して人の為にならぬものだとしても、
我が刃を握るこのマスターもまた、運命に抗おうとした一人の子供だったのだから。
だから、彼女は見届ける。もう一人の運命に抗い尽くした少年の終わりを。
(もう一度、ありがとう、カイル。最後の最後まで、ミトスに付き合ってくれて―――――――)

『――――――――――――――――は?』

そのとき見たカイルの姿を形容する言葉は、千年を永らえた彼女でさえ持ち得なかった。

そう、彼女は“カイルを見ている”自分を正確に認識している。
その決着を一瞬たりとも視界から漏らすまいとその人工の瞳から見続けている。
だからこそ理解できる。“それは絶対に有り得ない”ことなのだと。
(ミトスのディバインパウアは完璧な正四面体を構築している。蟻一匹入る余地も無い)
重ねて自らに問いただす。彼女は、今カイルを見ている。
血まみれで、傷だらけで、生を垂れ流しにしている死に体を見ている。
嵐と豪雪と炎と岩石、術の密室に封じられたカイルを――――――“見ている”。
(なんで、術よりも奥にいるはずのカイルが、見えるの? って、いうか……)

だからこそ見ることの出来ないはずのカイルが、アトワイトには見えていた。
だが、その理由もアトワイトには一見だけで理解できている。“だからこそ、分からない”。

『全長、15.7メー、トルッ……!?』

空飛ぶ飛行竜を見ながらでも、背後の積乱雲を見ることが出来るように―――――――
カイル=デュナミスの姿は大いなる力よりも“巨きく”見えていたのだから。

『巨人、立つ<ビッグ>……?』

この村は、一体何度自分を驚かせば気が済むのだろうか。
赤い巨人。アトワイトは目の前に存在するカイルをそう表現するしかなかった。
夕日のごとき赤さを持つ巨人とディバインパウアは既に接触しているが、
当の巨人は苦しみこそしてはいるが、術を食らったことに痛みを覚える様子も無く、
その威力と効果さえも痛みを感じぬその巨躯の前では巨人の腹の辺りでじゃれる獣程度にしか見えない。
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:05:02 ID:E5T8TNRR0
何だと!!支援
487The Meaning of Living 24:2009/11/29(日) 22:05:48 ID:TjvUrDPo0
『うそ、だって、アタッチメントディスクは』

違う。“これは違う”。
アトワイトの積み重ねてきた“偽りの記憶”が己の口から漏れ出したそれを否定した。
ここまで何合も至近距離で刃を交えてきたのだ。ディムロスに『きょじんたつ』のディスクは装備されていない。
ならば今まで隠していたか。否、隠す意味も無く“この局面でビッグは有り得ない”。
ビッグは文字通りに術者を巨大化させる晶術であり、
彼女とミトスの前で巨大化するということは、『的を大きくしましたのでどうぞ心置きなく血塗れにしてください』と言うに等しい。
(幻術? 真逆、そんな高等技術クレメンテならともかく、ディムロスに出来るはずも)
だから、これはビッグではない。でも幻でもない。だったら、これは一体。

あまりにもバカバカしく、そして不可解な現象に思考を落とされたアトワイトは巨人カイルが振り上げたディムロスに気づくのが僅かに遅れた。
クレスの次元斬など比べ物にもならない、この大地さえも一薙ぎに出来そうな大剣の刃が彼女らに垂直に持ち上げられている。

『しまっ、ミトス、避け』
「ねぇ、アトワイト―――――――――――――」

アトワイトがマスターに促そうとした喚起と同時に刃が振り下ろされる。
逃げる? そのぐちゃぐちゃな四肢で、どうやって?
圧壊必至の天からの一閃を見上げ、ミトスは裡に溜まった澱を全て吐き出すように呟いて、



【「フェニックスと鳳凰の違いって知ってる?」】


剣とミトスが衝突し、爆風が舞い上がった。


―――――――――――――――

なるほど、成程!! そうか、そういうことか!! 
と、いうことはあれか、ここまでは読んでいたと、そういう訳だ!!!
面白い、すごく面白いよ。いいよ、実に好い。その無駄に大きい乳房は唯の脂肪の塊ではないという訳だ。
“上等”。
ジャッジ・サイグローグ! “<私>”はこの手を許可する!!

お望み通り、最後まで付き合ってあげるよ。その代わり、盛大に死んでもらおうか!!

―――――――――――――――<Turn

488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:07:13 ID:E5T8TNRR0
支宴
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:07:34 ID:qidBvessO
支援…!
490The Meaning of Living 24:2009/11/29(日) 22:08:31 ID:TjvUrDPo0
吹きすさぶ風の中、アトワイトは目を開けた。
砕けたと思った我が身は依然として硬度を保ち、その精神も保たれている。
あれだけの大きさの刃を受けて、無事で居られるはずがない。
だが、その理をせせら笑う様に彼女の主は空を見上げて嘯いた。

「フェニックスは……アスカの伝承と純粋なモンスターがごっちゃになってるんだけどさ、
 まあ俗に言う、不死鳥だね。火属性を司るから、イフリートの眷属になるかな?」

何も変化がない。あの巨人が消えて、ディバインパウアが集っていく。
変わったといえばせいぜいこの熱風だけ。まるで、あの巨人の残骸が熱になってしまったかというように。
(………熱? 温度差……エクスプロードに、ブリザード……サイクロン……っ)

『蜃気楼ッ!! この温度差を更に上乗せしたというの!?』
【そういう意味では鳳凰も火属性と言われている。でも、実際には違う。
 確かに火の属性も持つが、それは南方を護る火鳥とごっちゃになって後から付属した属性だ】

かつて語られた物理法則に重ねて曰く、光の屈折率は、大気の密度差―――――“温度差”に依存する。
急激な温度差が低くあるものを中空に映し出す様を見て、古代の人間は竜が息を吐いて楼閣を建てたと信じた。
クローナシンボルの一件と同じだ。その温度差そのものは術から生まれたものだとしても、
そこから副産物として派生した物理現象は術そのものではない。
故に、超常現象を自分の説明できる領域で解釈しようとしてしまった晶術のエキスパートはそこに気づくのに一手遅れる。
巨人の幻を抜けたこの奥で、今もなお彼女らのディバインパウアは本当の彼らを殺そうとしていたのだから。

『嘘でしょ? いくらディムロスが万物の火を操れたとしても、ここまで精密に光を曲げられない!!』
【読み違えた。何度潰しても這い上がるから、不死鳥だと思い込んだ。
 あの剣、この焔。僕はあいつをスタン=エルロンの延長線上と“決め付けてしまった”】

あと10秒も待てば、自分たちの奥の手がカイル達を包み殺す。
そう分かっていても、アトワイトはこの怪現象への思考を止められなかった。
あの大きさが幻と分かった今でも、悪寒が絶えない。
まるで、ミトスとカイルの“巨きさ”の差を目の当たりにしたようで。
空気を熱すれば、世界が歪むのは当然。だが、それをどう歪めるかまでは操作しきれるものではない。
その為には直接支配するしかない。大気の温度差を“それによって付随するものを”。


『私のように水を通すか、大気そのものを操れなければ―――――――――――――――あ』
【鳳凰の本当の属性はシルフ。そして】


そして、アトワイトはようやく主の見る先へ視線を移す。
晶魔乱れ合う死の渦の中心。そこで屈折無く輝く、一条の光を。


【カイル=デュナミス……焔の英雄から生まれたのは、風遣いだったのか】


火と水より風は生まれる。鳳凰――――――――――それは英雄が現れるときにのみ現れる。


―――――――――――― Shift>

491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:09:09 ID:E5T8TNRR0
支援!支援!!
492The Meaning of Living 26:2009/11/29(日) 22:09:24 ID:TjvUrDPo0
ディバインパウアの結界。その中の僅かな隙間から輝きが漏れ出す。
その源泉はカイル、いや、彼の持つディムロスだった。カイルの心の内側から放たれる魂の輝き、スピリットブラスター。
体全体から溢れ出ていたその力が、ディムロスという一点に集約している。
人と刃を繋ぐソーディアンの真価が、その輝きを循環・増幅させていく。
それがどういう現象から“そう”なったのか、カイルもディムロスも問わなかった。
自分たちの魂魄が繋がっているという感覚だけで彼らは充実していた。
「カイル、これで最後だ。お前も、俺も」
ディムロスが真剣そのものとして言った。
肉体的には、とうの昔に振り切れてしまっている彼らの限界。それを超越させていたのは彼らの精神だ。
カイルはおろかディムロスの魂までも燃やす以上、その後に残る肉体を保つものなど無い。
カイルはただ首肯して応じた。目を閉じ、体中から血混じりの汗を吹き出しながら周囲の空間に集中している。
ミトスに箒を奪われてなおカイルを宙に留めさせ、本来ならばとっくに収束しているべきディバインパウアの侵攻を遅らせているもの。
鳥が羽ばたくことを止めても、羽ばたいた後に風は残る。
不発に終わったことで行き場をなくした、翔王絶燐衝の膨大な風力を、カイルは再び自らに集めていく。

イメージする。壁を越え、帰るべき場所へ飛んでいく。
渡り鳥。羽? ……少し心許ない。行くべき場所は遠く、越えるべき壁は高い。もっと大きく――――翼のような。

ロイド、そしてミトスの羽を思い出す。
かっこいい蒼い翼、綺麗な虹の羽。

「ぶっ」
『どうしたッ やはり無理が!?』

風が収束するごとに、ディバインパウアがカイルに迫っている。
その死力の中で見当違いの気遣いを見せるディムロスに、心配ないと慌てて制する。
彼らの天使の羽が自分についたときを想像して、
その何ともいえぬ微妙さに耐えられなくなったのだ。
「俺にはああいうのは、似合わないかな。やっぱ」
今の身の回りも今から進む道も、お世辞にも綺麗とは言い難い。
「俺には、こういうのが合ってる」
ディムロスの刀身とレンズの輝きが最高潮に達する。
集められた風が、ディムロスの刃を通る度に熱され、赤く染まっていく。
血のように後ろめたく、太陽のように愚直で――――――――炎のように狂ってる。

「これで最後だ、ミトス。”行くぜ”!!
 燃え上がれ、俺の魂<スピリットブラスター>!!」

熱された風が、ついに着火する。
集められた酸素も、気中の塵も何もかもが燃え広がる。

『レンズパワー300%!!! CODE:BLASTCALIBUR――――――――起動!!』

ディムロスの中に伝わったカイルの意志が、その光を爆発的に輝かせる、
カイルを纏うように燃えていた炎が後方に二つ延びる。
その形は、正に――――――――

「一子相伝在らず! ただ託された意志――――――――絆にてこの技を繋ぐ!!」

“鳳凰、焔を受け継ぎ、今こそ不死鳥と甦る”

「『皇王、天翔翼ッ!!』」

493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:09:45 ID:wA1kKyr5O
支援!
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:10:06 ID:j7Hodg1fO
支援……!
495The Meaning of Living 27:2009/11/29(日) 22:10:19 ID:TjvUrDPo0
攻囲網の中より突如現れた炎の鳥。
4つの上級術の中でもハッキリとわかるそれを見ながらアトワイトは胸中を吐露した。
「追加秘奥義……ですって……ッ!?」
彼女の驚きは無理からぬことだった。
不発に終わった秘奥義を強化して甦らせたこと。
あの絶対的敗北の境地でまだ諦めていなかったこと。
秘奥義を重ねるという発想にカイルもまたたどり着いたということ。
ここまで積み上げられて声を漏らすなという方が酷だ。

そしてなにより、あれだけの優勢が一転し、ミトスの危地を生み出しているのだから。

「おおおおおおおおッッッッ!!!!」

網にもがく鳳凰が、自らへの戒めを引きちぎろうと自らの正面に突撃する。
逃げる獲物を許さぬように聳える四方の守り。
絶望に打ちひしがれ、ただ祈るように最後を待つのならば
与えられるのは寸分違わぬタイミングで集まる4つの上級術のフルコースだ。
だが言い換えれば、一歩でも前に踏み出せば、打ち破るべきはただ一面だけになる。
(確かに、ただ待つに比べれば一瞬とはいえ威力は25%にまで下がる……けど、本気でやる!?)
無論、口で言うほどたやすくはない。
落ちるといっても、術の頂点に達する上級術。そして、一瞬後には残りの3つが背後より襲い来る。
たった一歩で何かが変わるなどと期待も出来ない絶望の世界。
そんな場所で一歩前へ踏み出すことが、どれだけ恐ろしいことか。

だが、その一歩を踏み出せる意志を持つものだけが、
この活路を見いだせる――――――――ミトスとカイルを隔てる壁、唯一炎属性に有利が付く絶対氷壁へ!!

「ギャガッ、カカカカッ!!」
「ミトスッ!?」

ミトスの口から音が漏れた。顎を自砕したそこから響く音が笑いであったと気づける者が何人いるだろうか。
破壊された大笑とともに既に無くした右腕を振って、ミトスは残りカスの魔力をさらに捨てる。
ピシリ、とミトスの輝石にヒビが走り、12枚の羽の1枚
が弾け飛んだ。
同時に魔力を上乗せされたディバインパウアが、今までよりもさらに暴力的に圧を増す。
カイルが檻を突き破るより早く圧殺する。
愚直なまでの挑戦に、王者は小細工のかけらもない力勝負を挑んだ。

「あああああああああ!!!!!!」
496The Meaning of Living 28:2009/11/29(日) 22:11:25 ID:TjvUrDPo0
益々の威力を増して迫りくる後方の風火土、
そして不死鳥の業火をもって尚溶かし切れぬ豪雪。
少しずつ吹雪を切っ先をいれつつはある。だが、それ以上にカイルの背後に三重殺が迫っていた。
正真正銘の絶体絶命。だが、カイルには自らに迫る死を一切意識しなかった。否“忘れていた”。

往く。飛ぶ。越える。ぶち抜く。ぶっ飛ばす。

カイルの脳裏にあったモノはただそれだけ。
自分を支え、押し上げてくれる力に後方の全てを託し、
ただ前へ。1mmでも前進し、昇る。不死鳥の嘴を氷へと突き立て、突撃する。
今のカイルはこの吹雪の中でさえ匂ってきそうな「生」に充ち溢れていた。
何度地面に墜ちようと、壁にぶつかろうと、越えるまで飛び続け、突き破るまでぶつかり続ける意志に。
それだけが、その背中を支えてくれたモノへ示せる唯一の光だとでもいうように。
カイルは二度と、その信念を疑いも曲げもしない。

そう、それこそがカイルの生の形。
カイルをカイルたらしめるその信念<ワガママ>に――――――――破れぬモノなど、ありはしない!!

「ミトスァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
「ガジルァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!!!」

爆散。不死の鳳凰を殺せる力が臨界に弾けた。



オーバーリミッツの黒い波動が消え去り、ミトスの両膝が地面に落ちた。
度重なる酷使に、その肉体はとっくにグズついている。
アンデットでももう少しマシだろう屑肉の両眼は、己の姿を省みることなくただ目の前の爆煙を眺めていた。
露出した下顎に残った数少ない歯がぷらあんと抜け落ちる。息が上がっていた。

全力だった。出し惜しむもの全てを放り投げた。
一体何百年ぶりだろうか、こんなに疲れているなんて。
疲れるなんて、有機生命体の持つ無駄の顕著な例だ。
なのに、それが今自分の心を満たしている。
本来の自分には絶対にあり得ないものが、死骸には心地よかった。
何故、と問えぬ位の疲れだから気分がバカになっているのだろうか。それでもいいとさえ思えた。
重力と達成感と疲労感に双肩を押され、ミトスの上半身が地面へと下る。
その瞳を空へと向けたまま、ミトスは墜落する中、ヒビの入った輝石に手をかけた。
一切の執着はなかった。
あの英雄が墜ちた。それだけで、彼が満足に死ぬには十分だった。
元々、生きたくもなかったのだ。
無機生命体になって知ったはずだ。死んでいる方が、生きているより優れている。
不安定なノイズだらけの生なんかより、死はよっぽど完成している。
こんなクソのような世界で、奪われるだけで何も得られない世界で、生きる気もなかったのだ。
姉さまが甦ったところで、その心を取り戻すことができないと分かっていたのに。
世界の全てに復讐したところで、満たされないと分かっていたのに。
何をどうしようとしたところで、ミトス=ユグドラシルの生は四千年前に終わっていたのに。
生きて叶わない願いを夢見続ける位なら、死んでしまう方がよっぽど救われている。
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:11:47 ID:qidBvessO
支援!
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:11:59 ID:E5T8TNRR0
支援だぁあああ
499The Meaning of Living 29:2009/11/29(日) 22:12:34 ID:TjvUrDPo0
ああ、でも。
なら何で今、こんなにも気分がいいんだろう。
苦痛しか無かった僕の生が、今終わるから?
それにしては、やけにスッキリしているように思うのは、僕のノイズだろうか。

それを見つける前に、僕は死ぬ。
未練というほど大きなものでもないから、死ぬには子細無い。永遠にぼんやりし続けるより、よっぽどいい。
だけど、お前なら、
お前なら、その答えを知っていただろうか――――――――

「どっりゃああああああああ!!!!!!!!!!!」

黒煙の内側から一条の筋が走る。その先っぽには、煙の大きさに比べれば豆粒のような影。
既に殆ど帳の落ちた空に、それが何かを捉えるのは難しい。
だが、ミトスには分かってしまった。
千里先を聴く天使の力が、夜を見通すエルフの血が、
そして何より、世界を動かす英雄の真実が、同じ存在を違うはずもない!!

「あ、ぃる」

既に剣の輝きは消え去り、背中に申し訳なさそうについた燃え残りのような鳳凰の残骸も消える。
融解と凍結を繰り返したのだろう顔面と髪先は氷と滴と鼻水に汚れていた。
だが、生きている。先に融合した三術の爆発を背に受けて、その推進力を以て極寒を打ち破り、カイルはここに生きている。

何故などとミトスが問うはずもない。
風も纏わず、墜ちるように落下している。剣だけはしっかと握りしめたその瞳には笑いを作ることもできなくなった自分の笑顔が映っていた。
理由はそれで十分明白。生きて――――生きて、決着をつけるためにカイルは今生きている。

どうやら、頭を完全に叩き潰さないと勝った気になれないらしい。
あのエセ天使といい、こいつといい、何処までも人をバカにする。
こちらはもうとっくに動けないというのに、死ぬだけだというのに。
バカが。そんなことをされてしまったら――――死ねないだろうが。

『ミトス!?』
みじ、ぎち、と筋肉が潰れる音がミトスから響く。
立ち上がろうとする動作をしたくても、それに付随する骨格が機能していないのだった。
痛覚無き無機生命体であろうと骨格には逆らえない。
絞りきった雑巾からさらに汚水を取り出すように、
無理に動かした筋から本来流れるはずのない血液が押し出される。
命だったものが、崩れていく。
だが、ミトスは立ち上がろうとした。両腕の使えないまま、足だけで身体を起こそうとする。
(起きろ。僕の身体、起きあがれよ)
『もう止めなさい!! あんなのじゃ貴方に届かない。待てばカイルは死ぬわ!!』
アトワイトの言葉を意図的に無視してミトスは足掻く。
ぶちぶちばっずん。かつて金の髪と純白の衣に包まれていた天使は、土と血に塗り尽くされていた。
(あいつが、生きている。生きて殺しに来てるんだよ)
ミトスの羽がバタつく。肉体的に起きあがることを諦めて天使の力で体を起こそうとする。
だが、身体が持ち上がろうとしたところで羽がまた一枚、砕けた。
(殺すんだよ。潰すんだよ。二度と英雄なんて言葉吐けないようにグウの音も出ないくらいにぶっ倒すんだよ)
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:13:13 ID:j7Hodg1fO
追加だとッ!?支援
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:14:33 ID:E5T8TNRR0
支援支援支援支援
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:15:08 ID:qidBvessO
支援
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:16:18 ID:wA1kKyr5O
支援。
504The Meaning of Living 30:2009/11/29(日) 22:18:16 ID:TjvUrDPo0
なんという不運。今頃になって落下してきたファフニールがミトスの手甲に突き刺さる。
「あ、ああ”っ」
『ミトス!』
ミトスは苦痛に呻きを隠せず、アトワイトを手落とす。
痛覚制御が効かなくなって、いよいよもって窮まってきた己の身体。
だが、ミトスはそれを不運とは思わなかった。
もう剣を握る握力もない。だったら、いっそ突き刺さっている方が持ち運びやすい。
僅かばかりの魔力にほんの少しだけ渇きを癒したミトスの身体が、ゆっくりと持ち上がっていく。
『どうして!? どうして立ち上がるの!? もう、十分じゃない。そうまでして、どうして!?』
遠ざかるアトワイトの最後の言葉。
(どうしてか、だって? そんなの決まってるだろ)
苦しい。痛い。死にたい。パンクしそうなほどのノイズにミトスの脳は悲鳴を上げる。
だけど、立ち上がり続けることを止められなかった。
(頼むよ。僕の身体、あと1分なんて贅沢言わない。10秒、いや、1秒だけでもいい。保ってくれ)
ミトスの身体が、ついに二本の足で大地に立つ。
止めたくない。1分でも、1秒でも、この時間を終わらせたくない。
1秒あれば、もっと前に進める。それで何かを変えられるかもしれない。
(今だけなんだ。あいつの前に立ちはだかることができるのは、今しかないんだ)
さらに一枚。虹色の破片とともにミトスの身体が宙に浮かぶ。
この一瞬が、今のミトスにとって全てだった。
歩んできた四千年も、かつて夢見た千年の王国も、この一秒に比べれば無価値に等しい。
(畜生。終わりたくない。もっと続けたい。
 まだ行ける。僕は、僕は、まだ―――――“死にたくない”)

その瞬間、ミトスは否応にも気づくしかなかった。
死にたい。死にたいと希っている自分が今、生きたがっていることに。

「はっ…………あは…………あはっ、あはははははは!!!!!!!!!!」

両足を地面に叩きつけ、その反動を脚に蓄える。
同時に、天使の羽が輝きを放つ。二枚が散りて、ミトスの身体を光に包む。
これが、生きているということなのか。死にたい、死にたいと苦痛に喘いで、それでも生きてしまっている。
なんて、なんて――――――――なんて楽しい!!

跳躍、そして転移。
転移後の隙を潰す為に、助走をつけて翔んだ。
この後に及んでまだ僕は勝ちたがっている。
ああ、そうだ。勝ちたい。僕は勝ちたいのだ。
姉様の為でもなく、世界のためでもなく、復讐でさえもなく、
ただ僕が、ミトス=ユグドラシルが、こいつに勝ちたくてたまらないのだ!!
運命、神、世界。そんなもの、今この瞬間に何の価値がある?
だから僕は、追い続けたんじゃないか―――――――――――――――

転移の光が掻き消える。そして、自分を覆う黒い影。
誰と問うまでもなく、左腕に突き刺さった刃を翳す。
怨敵もまた、背中まで回すほどに刃を降り上げている。

「おおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオッッッッツ!!!!!!!!」
「AAAAAAAAAAAAああああああぁぁぁぁぁッッッツ!!!!!!!!」

英雄たちの願い。その意志は高らかに――――――――

505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:19:26 ID:E5T8TNRR0
支援
506The Meaning of Living 31:2009/11/29(日) 22:21:05 ID:TjvUrDPo0
この島唯一の村。その北端で、2人は鳳凰が消え去る所を見つめていた。
遠目にも見えた激戦の痕跡は全てが大空に溶けて、残るのは人の記憶だけだ。
「終わったな」
時計を確かめながら、1人がそう呟いた。
この距離ではどちらが勝ったかなど分からない。
ただ、鳳凰が死んだその位置、そこからここまでの距離と
長針短針が直線を貫くまでに残された時間の帳尻が合っていないことだけは明白だった。
「しっかし、驚いたな。まさか巨大化までしちまうとはよ。お前が守る必要なんてなかったんじゃねえの?」
彼は冗談を交え、言外に戻ることを提案した。
回りくどい言い方をしたのは、当然もう1人の意志を案じてのことだった。
僅かばかりに、弓の弦をしならせる。
万が一暴走を始めたならば、即座に覚悟を決めなければならないかとさえ彼は本気で思っていた。

だが、その不安を余所に、もう1人は冷気を発することもなくただ北を見つめていた。

「…………何、お前心配じゃねえの?」
肩透かしを食らった1人は、素直な気持ちで己が疑問を吐いた。
男は振り返らず、呟く。
「心配さ。だけど」
「だけど?」

1人の反芻に、彼は手のひらを、その小指を見つめて言った。

「約束したからな」

ごちそうさまと、ティトレイは首を振った。
勝っておけよカイル。じゃないと、後がマジで洒落にならんぜ。


ぼたり、ぼたりと紅い雫が空に墜ちる。
心臓をめがけて、大剣が天使を貫く。
剣の先から雫が、少年の口から言霊が、同じ意味にこぼれた。

「俺の、勝ちだ。ミトス=ユグド、ら、し…………」

少年の眼から生彩が抜ける。張りつめていた意識をついに奈落へと落とす。
空より大地へと落ちようとする少年を、英雄は抱えた。
「バカかお前。ロイドが言ってただろ。殺すなら頭骸だって」
このまま落とせば、英雄の勝ちだ。
だが英雄はそうせずに心底厭そうに、楽しそうに笑った。
求めた物は生死ではなく勝敗。そして、それはもうついた。
そしてなにより、英雄は生きることの意味を知っていた。
永き闘いの決着は刹那。
その刹那のために、死にたいと願い続ける。
それが生きるということだというのなら、



【ああ、お前の勝ちだよ。英雄】

生きているって――――――――なんて素晴らしいんだろう。


507The Meaning of Living 32:2009/11/29(日) 22:22:37 ID:TjvUrDPo0
PLAYER OF HOPE  WIN!!

Result

EXP 1
GOLD 0
GRADE 756.0

GET:S・アトワイト


カイル ”鳳凰天駆”修得!!
カイル ”皇王天翔翼”修得!!


――――――――

「…………降参。おめでとう、君の勝ちだよ」
両の手を上げて白旗を上げるような格好をしたベルセリオスは素直に己の敗北を認めた。
自分に絶対的な自信を持つ者にしては珍しいことだが、盤面を見れば当然のことではある。
炎剣は天使を打ち破り、あまつさえ世界に諦観した天使に生きることの価値を認識させた。
下座が対戦席に座った時点での状況から鑑みれば、これ以上の戦果はそうそう得られるものではない。

このゲームの“ルール”さえ理解できずに成す術なく敗退した他の雑魚共とは比べるまでもない。
今までの対戦相手の中では、最強のプレイヤーだ。
ベルセリオスは下座の能力を過つことなく、正確に評価していた。
そして、その力を以てしてでも自分には勝てないということも。
「…………ばっかじゃないの? 何が生きるって素晴らしい、だ。今から死ぬってのに」
大地を這い蹲るアリを空から眺めるかのように、ベルセリオスは酷薄に吐き捨てた。
そこには、今まで散々無理させてあちこちに傷を作った駒に対する労りは欠片もない。
過程に興味を持たずただ結果だけを見据えるベルセリオスにとって、
駒がどのような思いで動いていたのか、その傷ひとつひとつに込められたものなど茶碗についた飯粒一粒の価値もなかった。
ただその役割を、炎剣の死を確かなものとしたことだけが全てだった。
勝負というものは、十中八九始まる前に決している。
それを体現するかのような予定調和の結果が、この戦いの結末であることは疑いようもない。

「…………ベルセリオス様…………貴方のターンです…………」
流石の道化師も不服があったか。
表情こそ変えぬものの、声色に僅かな感情をにじませてサイグローグは手番の移動を告げる。
決着がついた以上、盤の整地を、ゲームの後片付けをしなければならない。
「あー、はいはい。敗戦処理は負け側の役目ってね。
 それじゃ、そっちの健闘を讃えて綺麗に終わらせて上げるよ」

こっちはこいつらが死ねば、それで十分だしね――――――――
既にB3のことなど眼中から外したまま、ベルセリオスの冷たい指が2つの駒を掴んだ。


<Turn RESTART>

508The Meaning of Living 33:2009/11/29(日) 22:23:28 ID:TjvUrDPo0
殆ど黒く落ちた空。目を覚ましたカイルの眼に映ったのはそれだった。
「俺…………」
微かに赤に微睡んだ夜空に、カイルは自分が生きているのか死んでいるのかさえ曖昧だった。
それほどに、カイルは全てを出し尽くしていた。
自分の存在まで出し尽くしてしまったような稀薄感に、カイルは自分の相棒に自らを尋ねる。

「ディムロス…………俺、って、いっで、痛、いんどお! あづ、熱、うっずいっだ!!」

だがそれを教えてくれたのはディムロスではなく、自分に散々蓄積した痛みだった。
緊張の中に置き去りにしてきた無数の痛みが、待ってましたとばかりに利子をつけてカイルに押しつけられる。
自らを抱き締めるように肩を手で押さえ、カイルは呻きを漏らした。
痛みに半分、そして喜びに半分だった。
「痛、あ、っはは、生きてる。生きてる…………!!」

最後は無我夢中で殆どよく覚えてはいないが、
ミトスの刃が自分に迫っていたことだけはしっかり覚えていた。
どちらが死んでも、どちらも死んでもおかしくなかった一瞬。
その先に生きていることが、嬉しくない訳がない。
だが、同時にカイルはディムロスの不在に気づいた。
スピリットブラスターをリンクさせる域にまで達した相棒が手元に無いことに不安を覚えぬ訳がない。
「ディムロス、一体何処に…………」
【あっちだよ】
カイルの右側から延びた指が、ディムロスの落ちている場所を指し示す。
カイルはその指に導かれるように後ろを向いた。
仰向けに倒れた骸の上に十字架の如くディムロスは突き刺さっている。
「あ、あった。も〜ディムロス、心配しちゃったじゃん。
 いるならいるって、言って、くれ、た…………」
カイルはそこでやっとのことで気づいた。
俺の手は二本しかなくて、あそこにあいつがいて、
じゃあこの俺の横から延びてる手って、誰のだ?
というか…………この声って、もしかしなくても…………

「あ、アリガトウゴザイマス…………あの、それで、ドチラサマで…………?」
これだけの激戦の後だ。カイルの感覚が鈍っていても無理はない。
だが、今まで命を奪い合っていた相手の声を忘れるのは如何なものか。

【どこにでもいる、ただのハーフエルフですよ。誰かさんのせいで死んじゃった、な】
「お、おば、オバババ、おっ、オバケェェェェェェェェ!!!!」

尻餅をつくカイルの醜態に溜飲を下げたミトスはクスリと笑った。
【別にとって食いはしないよ。乗っ取れなくもないけど、お前に憑くなんてこっちから願い下げだ】
年相応の微笑を見せる少年の姿は、夜に溶けてしまいそうな半透明だった。

509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:24:19 ID:wA1kKyr5O
支援支援
510The Meaning of Living 34:2009/11/29(日) 22:24:55 ID:TjvUrDPo0
何かを探すように周囲の草群を見渡すカイル。
足を満足に動かせないカイルの杖となったディムロスが小言を吐き続ける。
『アストラル体、という奴か。2度目とはいえ慣れぬものだ。
 にしてもカイル、お前も一度見ていたろうが。
 俺の…………いや、我のマスターとなるつもりなら、この程度のことでいちいち狼狽えるな』
「そ、そこまで言うことないだろ! それに」
『貴方だけには言われたクないと思うわよ』

第三の合いの手がした所をカイルが見れば、そこには草に紛れたアトワイトの姿があった。
『カイルが血を流す度に心配しちゃって。よかッたわね、ソーディアンで。
 人間だったら胃に何コ穴があいていたことか』
『それはお互い様だろう。まったく、無茶をするマスターを持つと、苦労が耐えんな」
「全くね。まあ、そこを含めて認めちゃったんだから、仕方ないんだけど』
やれやれ、と肩をすくめるような口調で同意を促すアトワイトに、ディムロスは反射的に抗った。
『な、何をいうか。誰がいつこいつをマスターとして認めただと!?』
「え、だってさっき」
『アレは…………一時的なものだ! 確かに勝つには勝ったが、その内容は隙だらけの無駄だらけ。
 ヴェイグが我を振るっていたならもっと早く片づいたぞ。そんなことでは、当分はマスターの座はやれんな』
「うわ、ひでえ!!」
『よく言うわ…………最後なんてノリノリで叫んでいた癖に。
大体何よブラストキャリバー!!(キリッ)って、人間的に言えば千歳越えてるのよ? 恥ずかしくないの?』
「いや、アトワイトさんも人のこといえないと思う」
カイルの至極真っ当な指摘に、ディムロスもアトワイトも押し黙ってしまった。
いくらあの時はいろんな意味で発憤していたとはいえ、
今思い返すとシャルティエが基地で秘密にしていたあの日記並に恥ずかしいものがある。

「『『ぷ、ぷは、あっははははははは』』」

誰とも無く、笑い声が広がる。
誰も彼もがボロボロに情けない中で、今更恥ずかしいも何も無いことを思い出したのだった。

『はは…………ねえ、カイル』
アトワイトが笑いを鎮め、カイルに向き直る。
『貴方には、言わなきゃならないことが山ほどあるわ。
 でも、もう時間がないからこれだけ言わせて…………ありがとう。そして、ごめんなサい」
何に対しての感謝で、何に対しての謝罪なにかを彼女は意図的に省いた。
カイルであればそれを間違えないだろう確信があったし、
なにより、そんな数文字を省かなければならないほど彼女も時間がなかった。
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:25:31 ID:E5T8TNRR0
支援ーーー
512The Meaning of Living 35:2009/11/29(日) 22:26:34 ID:TjvUrDPo0
『アトワイト、お前』
『うン。もう無様な姿だけは見せたクナかったから、頑張ってたけど。
 もう長クは保たなそう。まあ、仕方ナイわ』
アトワイトのレンズとともに怪しく鳴動するエクスフィアにディムロスは僅かに唸った。
緊張と信念で抑えてきたものの弛緩。反動は、避けられない。
そしてアトワイトがそう望んでしまった以上、ディムロスには投げかけるべき言葉がない。
そんなディムロスの胸中を見透かすように、アトワイトは優しく言った。
『いいのよ。私は、自分が望んでしまったことを否定しない。
 そして、その結果起こしてしまったことの責ニんから逃げるつもリもない。
 子供の貴方たちが分カっていることですもの。大人が、そこを覆す訳にはいかないわ』
『そう、だな。時間はまだある。私も、最後まで付き合おう』
ディムロスは観念したように瞳を閉じた。
もう誓いを違えるようなことはしない。例え彼女が地獄に堕ちようとも、今度は一人にはしない。
『……ありガとう。貴方と一緒になラ、何処へ落ちても耐ヘられる』

カイルは2本のやり取りを黙って聞いていた。口を挟むほど無粋ではない。
だは、決して言いたいことが無い訳ではなかった。
その言葉の裏には、ほんの少し先の未来に関する断定が含まれていたからだ。
ディムロスとアトワイトから目を反らしたカイルの向かう先に、先ほどまで自分の足となっていた箒を見つける。
あわててそこにかけより、箒を手に取る。
「――――っ」
自分の手足の状態が分からない人間はいない。
箒の表面が僅かに焦げていた。飛べはする。だが、全力で飛べばディムロスの熱量に箒の方が耐えられない。
カイルはポケットから時計を取り出して小さく舌を打った。
日没まで5分を切った。全力で飛んでも間に合わない。

カイルは天を仰ぐ。空から見る天空よりも、少し高い。
傾いて天辺だけを残す太陽と夜空は今のカイルの状況を明示しているようだ。
気持ちとか、奇跡とか、絆とか、そんな形のないものじゃどうにもならない
“物理的不可能”がこの空すべてを覆う見えない壁となっているかのようだった。

これでは、もう――――

【終わりだな】
「ミトス」

振り返った先には、柳の下の何某かのようなミトスがいた。
ミトスの言葉にカイルの心が少しささくれたつ。
だが、同時にその言葉は誰に言われるよりも強く響いた。
もう一人の自分が代弁した弱い言葉を素直に受け止め、抗うことができる。

「俺は、諦めないよ。ひょっとしたら、間に合うかもしれない。
 何かが起きて、禁止エリア発動の時間がズレるかもしれない。可能性はある」

――――――――――――先に言っておくけど、誤作動なんて“絶対に”ないからね。
            6時ジャスト、禁止エリアの発動と放送はきっちり行うよ。

【可能性どころの話じゃないな。妄想かよ】
「かもしれない。でも」
【?】

カイルはミトスに向かい合う。その落日を背に浴びて、尚も謳った。

「そうでなかったとしても、俺が俺の冒険を終わらせる理由にはならないよ」
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:26:57 ID:qidBvessO
支援!!
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:27:23 ID:iNnHehlSO
支援
515The Meaning of Living 36:2009/11/29(日) 22:27:29 ID:TjvUrDPo0
何かを言おうとしたミトスが、それを堪え口を歪めてかき消す。
【ふふっ、そうだな。お前はそういう奴だよ】
「ああ、そうだ。これ」
カイルが、思い出したようにポケットから何かを取り出し、それをミトスに投げた。
とっさに残った指で掴み、一体何かと怪訝そうにそれを見る。
「お前のことは絶対に許さないけど、あの人は最後までお前のこと心配してたよ。俺、一応“止めた”からな」

尽くすべき言葉を全て尽くしたカイルはソーディアン2本を持って北に背を向け、南に進路をとった。
太陽とともに沈んでいくような、悲壮が隠しきれていない。
それでもカイルは歩みを止めなかった。希望がなかろうと、希望を見つけようとする意思は捨てない。

だけど、やっぱり、帰り道が暗すぎる。

<Turn――――――――――――Over>

 「こんなもんかな。夢見がちなガキには過ぎた結末だ。ありもしない希望に、最後まで狂うといい」
 ベルセリオスはむんずと天使の駒を掴んだ。炎剣はB3とC3の境まで移動させなければならないが、
 用の済んだ天使はもう排除して問題ない。残り五分で、身体既存著しい。こんなものは誤差の範囲だ。
 「ご苦労様、私だけのマリオネット。お前とお前の姉は実に扱いやすかったよ。褒美だ。安らかに死ね」
 ベルセリオスは、天使を高く高く放り上げた。役目を終えた駒は、盤の外へと叩き付けられて――――――――――――

真っ暗な道。夕餉の匂いもしない場所で、子供は一人呟いた。
そして、夜の闇が彼らの命を覆い尽くす。
「ごめん。俺、間に合わ―――――――――――――――――」


ゲシッ。


カイルの背中に強い力がかかり、足蹴にされてうつ伏せに倒れてしまう。
いったい何事かとカイルが思うより先に、地面に伏せた顔へ誰かの爪先がヒットする。
うつ伏せから仰向けへひっくり返されたカイルが頭を摩りながら上体を起こす。
そこにはアストラル体ではない、半壊したミトス本人が立っていた。

「てめ、何するんだよ!?」
【クソ、何でこんな奴なんかに。ああもう、クソッタレ】

ミトスが悪態をつきながら転げ落ちたアトワイトを足で拾い上げ、手に移して辛うじてマジマジと眺める。
『ミトス!? 何ヲ』
【……完全にエクスフィアに変性してるわけじゃないな。ギリギリ保ったか
 ――――――――――――おい、カイル。もう一度だけ確認するぞ。リアラに逢えると、本気で思ってるのか】

ミトスの問いに、カイルは怒りにも似た感情を沸き立たせた。
帰れるか帰れないかなどよりも遥かに強い反抗心が戻ってくる。
「それだけは、絶対だ」
516名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:27:29 ID:E5T8TNRR0
支援
517The Meaning of Living 37:2009/11/29(日) 22:28:23 ID:TjvUrDPo0
今更問うまでもない言葉をミトスは確かに改めた。
【その言葉、絶対曲げるなよ】
そして、自分のボロボロのエクスフィア、そこに鎮座する要の紋に手をかける。

―――――――――――「何、してる?」
ベルセリオスの瞳が、目尻を裂きそうなほどに大きく見開かれた。
盤上より高らかに上げられた天使の駒はまだ床に落ちていない。
代わりにあったのは、床とは比べ物にならない柔らかさの、女性の掌。

「これは異なことを言いますね。要らないと、捨てると言ったのは貴方でしょう……?」

ある一説に曰く。狩人が最も油断する瞬間は、己が目的を完遂する一瞬だという。
その定義に従って言えばベルセリオスはこの一瞬、確かに油断していた。

「ククククク……ッ、確かに……、捨てると言いましたね………このサイグローグが保障いたします……!!」

太鼓判を押すサイグローグが、この瞬間下座の狙いを完全な意味で理解した。
何のことはない。この柔和そうな女神は、最初から“戦略的勝利”もベルセリオスから奪うつもりだったのだ……!!




 聞きましたねベルセリオス。ならばこの駒、私が――――――いえ―――――――



日没まで、後少し。


                      ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・
 ―――――――――――――――――――――お姉さんが使っちゃっても、いいのよねぇ?



要の紋を引きちぎり、天使の座を捨てる。
ハーフエルフとしての体はほぼ崩壊している。
召喚士として破れ天使としてももうじき砕け、英雄としても負けて。残されたのはたった一つ。
それで十分。さあ、最後の悪あがきを始めよう。


「今だけ、その道を支えてやる。この“時空剣士”ミトス=ユグドラシルが」



 ――――――――――――――――Turn Shift――――――――Not Over!!>

518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:29:39 ID:wA1kKyr5O
支援!!!
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:30:39 ID:qidBvessO
支援支援
520名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:31:10 ID:E5T8TNRR0
支援!!
521The Meaning of Living:2009/11/29(日) 22:32:57 ID:TjvUrDPo0
投下終了です。
すいません。ぜんぶやっちゃいました。
ロワSSとしては最悪の出来ですが、アナザーってことでご容赦を。

一応「決着まで」はここで終了です。
次回で一応、第7クール最終話を予定しております。
なるだけ早く上げられるよう努力いたしますので、皆様もうしばらくお待ちください。
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:33:38 ID:j7Hodg1fO
支援…
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:36:09 ID:e7X6RllMO
投下乙!脱出間に合え!
テンションだだ上がりで奇声発しそうだ!
524The Meaning of Living:2009/11/29(日) 22:36:44 ID:TjvUrDPo0
あ、やば。修正をさっそく見つけてしまいました。

12:『−・・−−・−−−、−−・・−−・・・・−・−・・−−・−・−・・(蒼ざめし永久氷結の使途よ)』

×:使途
○:使徒

です。申し訳ありません。

そして、改めてお礼を。
皆様の支援、誠にありがとうございました。
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:37:20 ID:E5T8TNRR0
乙!!とりあえずいくつか前のから読みなおしてくる!
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:39:01 ID:PGsrEDmx0
投下乙です!まだ流し読みだけど熱かった!
次まで待てない!もうちょっと読み込んでくる

あとこれだけ言わせてくれ、わざとだったら申し訳ないけど
翔王のセリフは「真空の刃」じゃなくて「疾空の刃」だよ
527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:41:53 ID:TjvUrDPo0
ファミ通攻略本で確認しました。
×:真空の刃
○:疾空の刃

に修正します。何というパチモン。申し訳ないです(特にカイルに)
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 22:45:17 ID:qidBvessO
投下乙です!
やばいテンション上がりっぱなしだ

とりあえずもう一回読み直してくる
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 23:56:18 ID:iNnHehlSO
投下乙です

これで英雄対決も決着か
色々と濃かったがとにかく熱いな
それにしてもカイルはどうなることやら、生きているのが不思議なくらいボロボロだし
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 00:00:18 ID:q+rQfESq0
投下乙!

やっべえええええ、何か色々やりやがったな、書き手さああん!って言いたくなるくらいテンション上がったああああ!
おもれえ、めちゃくちゃおもしれええ!
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 00:04:34 ID:dklbB9uaO
読んできた。投下乙!!
印象的なとこがありすぎて何を言っていいか分からんが…とにかく2人とも無事でよかった!かっこよかった!
しかしまだ分からんからどうなることやら…下手すりゃ帰れないだろうし…
しかも…あれ?チェス打ってる人ってまさかほんわか姉さんなのか……!?
いやでも参加者じゃないし…何にせよ投下乙!次が楽しみだ
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 00:33:33 ID:OrUpK16nO
投下乙!
ちょっと次回の投下まで時を越えてくる
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 00:43:56 ID:1cqO+wve0
>>531
ベルセリオスに負けた指し手達も気になるといえば気になる
パッと思いつくのがセイファート、聖獣、ソウガ、ジューダス、ダオス、マーテルってとこなんだが
534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 01:41:43 ID:fjXSL6daO
前回はハロルドだったのかな
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 11:03:14 ID:OrUpK16nO
>>535
ダオスやジューダスは参加者だから違うんじゃないか?参加者の誰かが元差し手だとするとゲーム内容まで変わっちゃうし。ノーマルEDの時の描写もあるから、あくまでも参加者自体は毎回同じなんじゃないかなと思った。
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 11:06:52 ID:OrUpK16nO
間違ったorz
>>535じゃなくて

>>533
537名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 21:21:35 ID:dklbB9uaO
やっぱ打ってるのは精霊とか神様レベルのやつじゃないかな…オリジンはみっくんに追い出されてたけど
聖獣もちらちら本編に出てるしなあ
出てない奴のような気がする

しかし読み返しても燃えるなあ……
まさかスタンが出てきて皇王を引き継ぐとは思わんかったよ
なのにブラストキャリバー(キリッww
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/01(火) 08:23:54 ID:LyN4hV1f0
誰にしても、本編で指した奴は相当の戦犯だろ…

姉さんの駒を動かすたびに揺れるおっぱいに期待するしかねえ
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 01:48:00 ID:dmLy7R080
久しぶりに来たら・・・
もうGJとしか言えない自分を呪いたい。作者さんお疲れさまでした!
カイルは間にあってほしいものだ。
あとブラストキャリバー!!(キリッ)www
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 07:59:10 ID:MtZoRlaHO
そういえば今回のステータスってどうなったの?
541名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 10:42:53 ID:/pVUJzNLO
ゲームが終わってないからリザルトが出ないんじゃない?
542名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 10:50:53 ID:WxKE4jFwO
決着「まで」だから実質まだ終わってないってことだとオモ
次の話じゃないかな
543名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 00:41:55 ID:yuDBWM9n0
ミトスもマーテルもベルセリオスの駒だってのが気になるな・・・やっぱマーテルはミトス発奮用の餌か
544名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 08:19:40 ID:cSLvCm+r0
随分面白そうなスレですな
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 20:21:26 ID:LGnO6exBO
>>543
大いなる実りにはチャネリングが仕込まれてたからな。
効果がリオンのやつと同じなら実質ミクトランの思い通りに動かせるわけだし。動かしやすいというのも分かる。
マーテルも聖母みたいな性格だしな…。
546名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/05(土) 16:19:05 ID:lYOetsPlO
タイトル見て思ったけど
カイルとミトスってルークとアッシュの関係みたいなもんなのかもな
仲間じゃないけどどっか繋がりがあるというか
547名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/05(土) 20:38:12 ID:/fiw7xuS0
繋がりというか、うーん。
548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 00:02:34 ID:DQVkjAFXO
聖なる焔は、同じ所から生まれて違うものになった。
ミトスとカイルは生まれも育ちも違う所から、同じ生き方になった。

ある意味ルークと真逆かも。
549名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 03:42:53 ID:aqN3pbHz0
それこそ
ロイドとミトス
カイルとジューダスorディムロスみたいな関係じゃないか?
       
550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 04:33:43 ID:aqN3pbHz0
>>538
クール毎に違う奴が指してるのかも
仮面が指しているとすれば第六クールか? あれ、ルール違反レベルに強烈な介入だったし
ダオスは……指しているとすればノーマル最終クールかもな。つかミトスVSヴェイグはどっちがどっち側なんだと
ミクトランは開催前か第一クールで負けたんだろうなあ
551名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 12:21:59 ID:nSOWfn9a0
>>548
その同じ生き方になった(=同一の)2人が
ここで違いを見せてきたからルークとアッシュに似てる

ってことじゃね?
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 19:40:59 ID:QP/bbnTo0
しかし、カイルはとっくにロワに匹敵する選択をゲーム本編でやってたんだよな……
ひょっとすると転び方次第じゃ本当に優勝狙いのマーダーになっていたんだろうか。
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 20:23:46 ID:cfS/H66hO
第4あたりは散々発狂するって言われてたなカイル…
自殺防げたのだってクラトスのおかげだよな
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 21:06:43 ID:DQVkjAFXO
自分の子供は助けられないが余所の家の子供を導くのに定評のある父さん
555名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 01:33:13 ID:tf/qnah0O
あんまり好きじゃなかったカイルが今はテイルズで四番目ぐらいに好きなキャラになったぜ
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 18:09:06 ID:wru7byNx0
みんな、ロワを見てから好きになったキャラとかいる?
557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 18:28:01 ID:GgCUm3kLO
牛さんがダントツだな
グリッドは元々好きだった
558名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 19:30:08 ID:d7BOYEz/O
グリッドだな。ロワ読んだ後、見逃してた漆黒の翼イベント見るためだけにPS版Dの二周目始めたわ。
あとは……やっぱ牛さんかな
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 20:21:01 ID:IP2hYdBA0
キール、グリッド、カイルだな
560名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 01:09:39 ID:nOHQg1zK0
このロワのおかげで原作のハロルドまでが黒く見えるようになってしまいました
仮面にアイツも神と同類だなって言わせたルート分岐スキットも今では恐怖の対象に
そんな彼女が大好きです
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 01:48:37 ID:80OO1pBQO
トーマはロワ見て好きになったキャラだ、と思ってたけどやっぱり原作やったらそうでもなかった。
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 07:57:37 ID:lgbXFXEfO
ロワ版トーマで展開するTORアナザーか。
ヒルダはトーマを師匠(せんせい)と崇めてるな。
ラスボスはサレで、ユージーンの死んだ穴を埋めてPCに。
563名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 12:19:52 ID:UYfmrqWQO
牛さんやらティトレイをこのロワで見て、ちょっと敬遠してたRプレイする気になったなあ
プリムラも結構好きだけどファンダム売ってないんだよな
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 15:14:02 ID:v1dREWfbO
おれもTOLだけまだだな
でもこのロワを見たら…いや、何でもない
565名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 17:36:04 ID:wT2h81TnO
安心しろ、原作の酢飯はロワほどDQNじゃないw
むしろこのロワのDQNぶりを見てからだと、本編の振る舞いがかわいく思えるはずだ。
566名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 17:38:49 ID:nOHQg1zK0
今回の酢飯ってベルセリオス関与に因るところも大きいんじゃなかったっけ?
本人はたとえ何度生まれ変わろうと必ず同じ道を偉ぶって言ってるけど
567名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 18:50:57 ID:lgbXFXEfO
>生まれ変わっても何度でも同じ道を選ぶ

駒として扱うのにこれほど楽なものもない
568名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 14:38:00 ID:+EaG7ipbO
保守
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 11:59:24 ID:jKgaNU6FO
今最新話見た。
ミトスの勝利への執念と、テトラスペル25%の発想に脱帽。話に引き込まれ一気に読み進めてしまった。
だが途中のブラストキャリバー!(キリッ)に全部持ってかれた。
後で読み返そう。書き手さん乙です。
570名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 00:38:51 ID:yAubcjzm0
保守
571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 01:17:12 ID:/mWY6qBq0
エースコンバット×(なのは+弾幕STG)÷2=カイルVSミトス戦

チョン避けとバインド繰り返しながらドックファイトする2人を幻視した。
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 14:49:23 ID:fKZgIPVFO
生き残りの中じゃカイルが一番主人公って感じがする
573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 18:18:38 ID:8arFgKAK0
各クール毎の主人公って誰だろうな
個人的には第一クールにはセネルを推したい
え、ズガン? 聞こえんな〜
574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 20:33:16 ID:i65JkN+VO
第二クールは敢えてクレスを推す。
コレットを救う為コングマンに戦いを挑んだクレスは主人公だった。

まあ、その後は、主人公ではないな。うん。
575名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 01:25:26 ID:z6f3iedHO
第四はリッドかスタンかジューダスで迷う。
3人ともカッコいい死に方だったし
576名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 01:47:35 ID:9jM31FrLO
クレスは

・第一部のラストでヒロインを救うも消息不明に
・第二部でボスに洗脳されて再登場、強大な敵として立ちはだかる

実に黄金パターンじゃないか
577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 02:01:30 ID:t/pgbYic0
クレスの一部短いなw
3クールはデミテル
4クールはリッドかユアン
5クールはリオン(ジューダス)
ノーマル6クールはキールかな
エンドがヴェイグ
アナザー6クールはカイル
統括でグリッド
578名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 10:05:30 ID:SOf/h37OO
こうしてみるとやはり女性キャラが出てこないな
個人的に第三クールはファラが主人公でもいいと思うんだが
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 11:54:20 ID:6snrjxQl0
ヒロインがヒロインしまくってるからかなあ
580名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 14:34:46 ID:z6f3iedHO
>>578
カイルがいるじゃないか
581名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 22:53:46 ID:t/pgbYic0
歴代のカイルの保護者
ロニ
ジューダス
クラトス
リオン
ヴェイグ
ディムロス
スタン
なんというそうそうたるメンツ。どう考えてもヒロインです
コイツらが同盟組めば余裕で世界獲れるぞ
582名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 23:20:32 ID:6snrjxQl0
カイルが心配で放っておけない同盟ですね、分かります。

しかもそこにミトスが入りそうだから困る。
583名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 23:23:44 ID:9jM31FrLO
もうカイルがヒロインでいいよww
584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 07:46:38 ID:wcJ8ygrMO
カッコいい男に守られて、終盤のアナザーでは1人でラスボス級を倒す。
悪ふざけじゃなくてカイルが女だったら本当にヒロインだな
585名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 14:22:39 ID:D0faW9kQ0
本編:悲劇のヒロイン
アナザー:戦うヒロイン
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 21:03:10 ID:e3n7L0rpO
アトワイトもある意味ヒロインっぽい
587名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 21:34:16 ID:Lz5H/miSO
>>584
大勢の男に守られつつ戦うとか、それなんと乙女ゲ…げふんげふん
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 21:53:56 ID:6DuS/leCO
そういえばもうすぐ通算400話になるのか?
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 07:42:41 ID:CS3OzQ2+0
次かその次でなるはず。
590名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 19:54:51 ID:MOhHkcZWO
数えて見たけど丁度みたいよ。>400話
間違ってたらゴメン
591名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:13:25 ID:OpJ8WZvKO
本ルートが357話
アナザーが330話〜371話で差分が42話
次じゃね?
592名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 01:26:51 ID:Pt6B3gyJ0
もしテイルズロワに攻略本があったら

【BOSS ミトス(3)】
HP 4000
TP 500
所持アイテム なし
耐性:光・氷
弱点:闇・火
出現場所:B3

シークレットミッション:魔神炎を放ち、晶術が乱れた後にダウンさせる

解説
カイルとの一騎打ち。2日目夕方のミトス(1)は勿論、
本編ラストのミトス(2)とも違うので油断しないように。
久しぶりの空中戦操作となるので操作方法も思い出しておこう。
本気ではないためか魔術をあまり使わず、「アイスニードル」や
「アイスウォール」などのアトワイトの晶術をメインに使ってくる。
セレスティアルマントとペルシャブーツをしっかり装備しておくこと。
初級〜中級術が多いが、テトラスペルによって最大4連続で放ってくるので、
ガードと回避はしっかりと行うように。4発目を受けきった後が反撃のチャンスだ。
高速ダッシュから爆炎剣ループコンボでしっかりとダメージを取って行こう。
シークレット条件の魔神炎は、蒼破刃を使っているとランダムで習得する。


【BOSS ミトス(4)】
HP 3000
TP 700
所持アイテム ソーディアン・アトワイト
耐性:光
弱点:闇
出現場所:B3

シークレットミッション:ディバインパウアを皇王天翔翼で相殺する

解説
本気を出した英雄ミトス。ミトス(3)からの連続戦闘となるので、まずは回復を行おう。
(といってもよほどうまくやりくりしていないと回復アイテムは残っていないが…)
基本パターンはミトス(3)と同じくテトラスペルだが、属性のバリエーションが桁違いなので
防御はおすすめできない。移動速度の高さを利用して逃げ回り、少しずつ削って行こう。
HPが50%を切ると接近戦も仕掛けてくる。
コンボの締めに使ってくる「足バースト」と「足レーザー」はガード不可能なので
それぞれバックステップとフリーランで逃げること。
HPが残り5%を切るとOVLからプリズミックスターズを放ってくる。
この時岩斬滅砕陣を使用すると覇道滅封に変化する。このタイミングで秘奥義を使えば、
ミトスがカウンターでシャイニングバインド→ディバインパウアを使ってくる。
後はイベントでシークレット達成なので、カイルが得た力を体感しよう。
ただし○ボタンは押しっぱなしにしておくこと。




カイルVSミトス戦があんまりにも熱かったので。反省はしない。
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 13:40:38 ID:RwGyJJfrO
>>592
ジェストーナとかカッシェルの項目が無さそうで吹いた。
シャーリィとか何回あるんだw
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/26(土) 12:56:38 ID:5FMgkl0fO
保守
595名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 17:57:42 ID:/ECR7o1uO
捕手
596名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 14:34:16 ID:OshIboaoO
今年はどうなるか楽しみ
597名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 15:52:05 ID:6m8wu9Oc0
あけましておめでとう
さてラストが見え始めてきたが、今年はどうなるかな
598名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 11:22:05 ID:H3xUPB1R0
保守
599名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 21:41:18 ID:0tbbmFlBO
ほす
600名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/11(月) 00:06:27 ID:yEJ/YeEI0
保守
601名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/15(金) 08:02:37 ID:2x8i8pabO
ほしゅ
602名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/18(月) 03:23:52 ID:JruVACbF0
今気付いたけど、このスレ立って1年近くになるんだな
603名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/18(月) 20:06:12 ID:0aeycSd30
>>602
ホントだ。すげーw
604名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/21(木) 15:10:04 ID:FdEJHGIm0
後何スレ使うんだろうなぁ
605名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/22(金) 09:30:36 ID:t2AP7oRz0
2〜3くらいでない?
606名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/26(火) 17:46:41 ID:we7N6WCcO
保守
607名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/27(水) 22:37:16 ID:kbwY0KKl0
どうでもいいけどマウリッツさんって杖術使いだし
丸太でも振り回させてればかなり強かったんだろうな
608名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/28(木) 00:06:13 ID:KZapjpbrO
こんなこともあろうかと味噌だけは持ち歩いてそうなマウリッツさん吹いた。

マウリッツで思い出したけど、結局マウリッツがフィギュア化するまでの話が曖昧なんだよな。
ソロンが関わったみたいだが、何がどうなったんだかさっぱりだ。
609名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/28(木) 06:19:38 ID:3nNBRlhV0
>>608
ソロンがベルセリオス側の半ジョーカー的存在だったんじゃないか?
原作でも何故か人類の敵ポジションのダークジェイと一緒に登場してきたし
あの人とは敵対ポジションでもおかしくない。え、ギート? いや、気にすることはない
610名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 14:28:07 ID:audrFiQ6O
保守!
611名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 14:49:48 ID:XnHfwOg/0
ほっしゅ
612名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/05(金) 15:54:42 ID:rOv5IDKd0
みんな規制に巻き込まれてるのかな…
613名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/10(水) 02:16:55 ID:x0GZ9DnN0
保守
614名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/13(土) 05:23:06 ID:JFdGVfZ10
ソーディアン所有者を完敗させたのってジューダス、クレスくらいか
そいつらも何だかんだでチート的事情持ちだし、さすが最強の携行兵器なだけはある
そのクレスを倒したのがキール、グリッドのコンビってのも感慨深いな
615名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/13(土) 17:29:51 ID:t60GA5nW0
サレ・コレットと三人がかりで暴走ティトレイをやっと倒して、
マグニス相手に生き延びるのが精いっぱいで、
コングマンには手も足も出なかったのが、
あれだけの強さにまでなったのは過程はどうあれ凄いと思う<クレス

クレスが仲間入りすればかなり戦力が期待できるが…
ミクトランもソーディアン3本所持してるんだよな…
616名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/16(火) 08:48:03 ID:xZN81b4Z0
ソーディアン三本にミクトランの人格を投射しているならどうなるか分からんがな
オリジナルマスターが相当な爆弾持ちなことはオリ、リメ、D2に共通していることだし
人格破壊、発狂、晶術使用不可能、乗っ取られ、人格のズレetc。四本あったら危険も四倍だ
617名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/20(土) 01:58:36 ID:VzUsNFE1O
保守
618名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/24(水) 08:15:12 ID:XQmxhiqAO
ほしゅ
619名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/25(木) 22:01:20 ID:eLukyJ3X0
他ロワや交流所で鬱ロワだ鬱ロワだって言われていたけど
最近はあまりそんな感じはしないな
やっぱみんなある程度は救われてるからか
620名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/25(木) 22:28:38 ID:sdqGa3NL0
そりゃアナザーだもの
621名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/27(土) 03:41:09 ID:ENNps2e80
まあ、ぶっちゃけこのロワのおかげで? ハロルドを見る目が変わってしまった
自分がいるわけですがね。いや、元からグレーな設定だったけど
カーレル死亡シーンまで穿った目で見るようになってしまいまして
でも他のD2、Eメンツの株は基本的に全員上がって、今ではすっかりお気に入り作に
622名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/28(日) 04:01:49 ID:8rP2nbuqO
ユアンとグリッドが好きになった。
623名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/01(月) 12:49:20 ID:JiT1SfU20
俺はカイルが好きになったなあ
あと実はクレスもwヤク中だけどミントの為に戦ってたとことか
624名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 13:55:05 ID:5sgD0ZrXO
俺はヴェイグが好きになって
読み終えたらR買ってしまったぜ
625名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 22:49:19 ID:LnvAwKlT0
びっくりしたのは牛さんだな
漆黒組も好きだ
626名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/09(火) 03:40:43 ID:z3VnP/hb0
カイルが好きになったなあ
本編といいアナザーといい笑ってられないような状況なのに頑張るもん
627名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/15(月) 22:24:34 ID:6HAO3NSw0
ほっしゅ
628名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 15:11:46 ID:1vOCgSagO
ほしゅ
629名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 16:33:57 ID:azLP/2ZD0
こっちは荒れてないようで一安心
630名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/24(水) 23:54:42 ID:ywxS+hgDO
書き手さん大丈夫かな…
631名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/28(日) 21:24:24 ID:/hAHAS8aO
保守
632名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/31(水) 00:01:13 ID:2MepfMLX0
信じること、信じ続けること。それが本当の(ry

待つだけってのもあれだから、これまでを振り返る意味で
タイトルを中心に一話ごとに軽く紹介的なものでも書いてみる。話のネタにでも。

1:The Battle Royal

ストレートなタイトルのオープニング。
いきなり連れられて、蝙蝠が首輪になって、魔法は跳ね返される。
主催ミクトランのやりたい放題っぷりには参加者に同情を禁じ得ない。
しかしその割にはマグニスに見せしめを殺されるあたり、
詰めの甘さが天上王(笑)らしさか。なんにせよ「バトルロワイアル」の「始まり」である。

2:Undecided

決定しない。決心できない人間。ここではやはりゼロスのことか。
参加者がまず一番に決めなければいけないこと――――――ゲームに乗るか、抗うか。
それを決められなかった魔法剣士は当てもなく海沿いを彷徨う。
保留もまた一つの決断。それに、決められなくても歩くことは出来る。

3:歪む歯車

魔王ダオスの配下ジェストーナ。本来魔王軍という組織の歯車でしかない彼が、
命に駆られダオスさえも倒そうと意気込むのはある意味で歪みと言える。
弱さを自覚しつつも克己しようとする彼の歪みは、このロワという歯車を狂わせられるか。

4:ある英雄の息子の話

カイル=デュナミス。英雄スタンと英雄ルーティの息子。
怒濤の理不尽の後にすぐさまスタン達との出会いを期待できるのは子どもの無邪気さか、英雄の胆力か。
持ち前のその楽天さで父も早々に見つかるかと思えば、父さんじゃなくてとっつぁんでした。
運命は時に厳しい。でも、英雄のお話はいつも運命的な出会いから始まる。

5:一陣の赤い風

EのOPアニメで狼獣を狩るその姿は正に一陣の赤い風。
命を奪って生きることを知る猟師リッドは、ある意味でロワに最初から順応している。
素早く目的を定め、得物を理解し、狩るべき危険な獣をいち早く見抜き、
リッドは木々を縫って森を渡る――――――――――でも猿みたいに木登りする貴方も獣ではなかろうか。
633名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/31(水) 00:02:33 ID:B+nnddTR0
6:最凶タッグ結成

運命は初っ端から賭けに出た。
マグニスとバルバトス。およそ序盤に出会ってはいけない鬼共が火花を散らす。
だが、彼らは鬼だった。獣なら食い合うしかないが、鬼ならば手を取ることができる。
かくしてここに同盟が結成される。最強ではとても足りぬ、最凶の同盟が。
柱を持ってかれた塔ならずとも、全ての対主催涙目の速攻である。

7:甦りゆく黒き翼

空気が読めてないのはこれだから(褒め言葉)。
自覚は無くともアイテムの引きもいい。小道具の準備も万全だ。
何も分からない道化は、恋人と引き裂かれた哀れな娘を巻き込んで何をするのだろうか。
何をするかなど決まっている。喜劇(ごっこ遊び)――――演目「漆黒の翼」の再演だ。

8:武道と忍道と

矛を止めると書いて武道。心に刃を忍ばせると書いて忍道。
しかし武道は相手の矛を砕くために拳を奮い、忍道はその刃を外に曝け出す。
守るべきものを護りたいセネル、敵を討つ為ならば命さえ惜しまないすず。
どちらも決して間違ってはいないのに、二つの道はおよそ最悪の形で交わった。

9:孤高の魔術師

魔術師は孤独を好む。草花は薬効にのみ意味があり、自分より強い存在はただそれだけの事実でしかない。
情や縁を断ち切り、全てを理詰めにて明快にするデミテルは正に魔術師だ。
だから、二人の少年少女の戦いも唯、漁夫の利を得られると言う意味しか持たない。
武道と忍道―――――――――――生き残ったのは、魔道のみ。ただ、それだけのこと。

10:Anxiety of a goddess

女神の心配。マーテルにしてみれば、一呼吸するだけで何処かで誰かが死ぬようなロワは
心配事のバーゲンセールだろう。しかし、女神たる彼女は決して立ち竦むことは無く、
少しでも多くの心配を減らせるように前進し、潮風に当てられ気を失った少女を見つけ出す。
女神は知らない。今また海に嫌われた少女は、この舞台最大の心配事になりうる存在であることを。


とりあえず10話まで。
タイトル等に元ネタがあっても気付かないまま書いている場合があるので、その時はすいません。
続きは思いついたらで。
634名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/31(水) 07:44:15 ID:sj/jUcgn0
こいつは応援せざるをえないな
635名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/31(水) 08:03:27 ID:YDk+fSk1O
なんでそんなカッコイイの
636名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/03(土) 12:35:05 ID:WVZQxtlQ0
11:限りなく近い未来にて

時間とは無数の一瞬の連続。だから未来は連続した現在に過ぎない。
引鉄を引くという現在の限りなく近い未来が、銃声を放つという現在であるように。
銃声を聞いたという現在が若者の踵を変えさせるという限りなく近い未来であるように。
ならば、若者が北に逃げたこの瞬間、限りなく遠い未来も既に現在だというのだろうか。

12:志高く

志。ヒトが人として生きていくために必要なもの。その意味で藤林しいなは人間だ。
ただ惜しむらくは、銃の威力と現状への恐怖が3つの事柄に気付かせなかったことか。
自分を「この“イベント”の“参加者”」と名乗り“こんな風に人を殺す奴”になろうとしていること。
怒りを向けるべき張本人が眼と鼻の先にいるということ。
そしてなにより、高すぎる志は人間を孤独にするということを。

13:剛運な彼女

支給品占い:自分が手に入れた支給品で今後を占ってみよう。三回まで引けるぞ。(スカあり)
例)Pさん 引いたもの「メガグランチャー」
運勢「剛運」(=肉体に見合わない強運。固い。固すぎて、運に振り回される)
コメント(同運の方の):ガッハッハ。そいつを持ちあげるにゃ、嬢ちゃんはアレが足りねえな。アレだよ、アレ。

14:守るべきもの

守らなければならない。マーテルはそう思った。例え背後より来る魔人に殺されようとも、彼女だけは。
守らなければならない。ダオスはそう思った。時を越えてついぞ巡り合った大樹の女神を、他の誰かを殺そうとも。
誰よりも強い心を持つマーテル。誰よりも強い意思を持つダオス。
守るべきものを持つ者は何時だって強い。だが、それ故に弱く、愚かでもある。

15:闇に包まれる男

闇に包まれて身を隠すより、太陽の下で迷い込んだ人間から追い剥ぐ方が山賊には似合っている。
ただ、ここは山ではなく森で、獲物は人間ではなく原初より森に生きるエルフの血統で。
何より、かしましい娘に関われば碌なことにならないと体験しているだろうに。
因果は十分。諦めて、不名誉な称号を受けて経験値稼ぎに走っておけ。その痺れた体で走れるものならば。
637名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/03(土) 12:41:38 ID:WVZQxtlQ0
16:Hello,my gift

贈物。幸運な巡り合わせ。縁というものはあながち馬鹿にできない。
親子の縁が、図らずも別の親子を引き寄せ、分かれて一時間もたたずその英雄を追う少女と巡り合わせる。
その縁は物理的な力を持つ。ならばその手に握られた二刀が持つ力は1つ。
また逢えた愛刀達よ、お前達はあるべき場所へ帰るがいい。

17:surprise!!

正常な人間にとって異常な世界が異常であるように、異常な人間にとって異常な世界は正常だ。
魚が水に帰る様に、この異常を許容したサレは悦楽と権謀術数を弄ぶ。
ただ、流石のサレでも壁を打ち抜いてコける少女は許容しきれなかったらしい。
サプライズエンカウント。戦闘時は気絶よりスタートとなります。

18:氷の決意

帰りたい。この世界に招かれた誰もが少しは願うこと。
だが、ヴェイグのそれは余人のものとは比較にならない。彼女の下へ、その為ならばその手を赤に染めても。
赦しを乞うべき女神さえも凍らせる氷の決意で、彼は遥か遠き家路を目指す。その意思は本物だ。
ならば、溶けるはずのないフォルスの氷から滴った女神の雫は、誰の零した涙か。

19:A caramity in the cave

洞窟の中の惨事<calamity>。有用武器の交換、前衛後衛の配分。忍者と法術師の滑り出しは上々だ。
だが驕ってはいけない。その程度の優位なんて不死身の怪物一匹でひっくり返ってしまう。
災厄で満たされた洞窟、右(R)も左(L)もない場所で、生き延びるため彼らは己に出来る最善を尽くす。
そう、“最善”を尽くしなさい――――――――――――――貴方には期待しているんですからねぇ、ジェイ?

20:若さ

若いということは素晴らしい。そこから更に成長できるのだから。
だが、まだ“若い”。それはさながらこの城に置かれた剣のように、強い“新品”だ。
高々20も達していないその人生が、一人で高々数分捻って出した答えがさも唯一の解だと思ってしまう。
戦闘への期待さえ隠しきれないクレス=アルベイン。その剣の鋳造は、まだ道半ばだ。


また10話で。別に占有して書き続けようってほどでもないので、
1話とかだけでも他の方も思いついたらどうぞ。

一応元ネタが無いか調べてますが、漏れとか「これは違うだろう」とかで
自己判断で省いてる所があるので、ありそうだったら意見ください。

19話は、この後の21話を考えるとそうじゃないかなーという妄想です。
詳細調べつくしてないので、これも意見あればぜひ。
638名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/07(水) 00:41:53 ID:Ex+mBJl80
21:利用するものされるもの

FFTチャプター2 「利用する者される者(THE MANIPULATOR & THE SUBSERVIENT)」。
全ての生命はその二つに分類できる。ただ、人間の場合それがほんの少し分かりづらい。
化物を倒すために、ミントを利用したジェイが、得も言われぬトラウマでソロンに利用されている。
誰にも届かない謝罪の声。だが悲しいかな、許しを与える神も怨むべき神もここには存在しない。

22:グミ嫌いなんて知らない

半分位のテイルズオブシリーズでみんなが苦労するグミ嫌い習得。
とりあえず2週目に性能を引き継いで難易度下げて突撃するのが無難か。
そんなことを知る暇なく、ルーティさんは己の幸運っぷりに打ちひしがれる。
まあ、この世界で数少ないグミを食べない人達はみんなグミ嫌いになれるんだけどね。もしくは死体に。

23:(100+100)×2=???

阿亜瓶倶流極奥義「仁投龍」……かつてアセリアの大地が2つに分かたれていた時代に居た炉居怒という剣士用いた奥義。
2本の剣を持つことで己が力を2倍にする秘剣――――モリスン亭蔵書「2つの月に見る太古の世界」より。
「つーことはさ、二刀流が2人居れば、更に倍になるんじゃねーの!?」「君は馬鹿か!」
はたして解は0(ゼロ)か∞(無限)か、神様でさえ計算には時間がかかりそうだ。

24:After a caim comes a storm

Caim:ソロモン72柱の1人ケイム。弁舌に優れ討論に強い。
悪魔にとって、疑うことを知らない天使をかどわかすことなど容易いこと。
その黒い羽を隠し、いずれ彼女の翅で巻き起こす嵐を心待つ。

25:天才と英雄

ハロルドとスタン。ハロルドにとってはカイルの父親であり、スタンにとっては自分の相棒の製作者。
そして、第二次天地戦争でソーディアンと英雄として殺し合った存在。
この出会いは運命の採配か。そんなことを考える間もなく、彼らは未だ災厄残る洞窟へと導かれる。
639名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/07(水) 00:44:47 ID:Ex+mBJl80
26:幻想と永遠の始まり

少女は逃げる。地平線の果てへと、那由他の彼方へと、脅威より、自らを×××するものより逃れるために。
だけど、鬼は追い掛ける。いつまでもいつまでも、永遠に。
鬼ごっこが終わったとき、少女はいなかった。まるで、最初から幻想であったかのように。

27:怪奇覆面暗殺者

覆面暗殺者とおは読んで字の如く、幽幻のカッシェルのこと。
非力な相手とはいえ、森の闇を縫い獲物を追いつめる様は正に暗殺者の面目役如というところか。
対面したキールにしてみれば突如現れた暗殺者はさぞ妖しく不気味――――怪奇であったことだろう。
ところで、怪奇という単語にはもう一つ「グロテクス」という意味がある。さて、何のことやら。

28:Artigiano della vaschetta

イタリア語で「バスケッタ(皿盛り)の職人」。
料理は目でも楽しむものであり、一流の職人は盛り付けを疎かにはしない。
野に生える植物たちも彼女の手にかかれば料理の材料であり、陰惨な殺戮ゲームも彼女の前では華やかなパン屋に変わる。
ことパン料理においては超一流の職人、ミミー=ブレッド。さて、バトルロワイアルの参加者としては何流か?

29:魔法のホウキ

魔法の箒、ミスティブルーム。アセリアでは長距離航行の為にヴォルトの力が必要だったアイテム。
雷属性を主とするユアンに支給されたことにはある種の運命か。
なんにせよ、そのホウキが導いた運命は一人の窮地を救い、一つの出会いへと導いた。

30:一難去ってまた一難

有名なことわざ。災難や危機が次々と襲ってくること。
もっとも、ロワにおいては一難さって5、6難ほどやってくることも珍しくない。
その意味でリッドとカッシェルは幸運だ。今去ったのは万難に等しい存在だったのだから。
その後の一難程度、甘んじて受けなければならないだろう。

640名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/07(水) 11:20:44 ID:uTs/Ckvy0
元ネタというかタイトルの意味が分かって面白いなあ
どれもカッコイイのに23番だけがひどいwwww
641名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/09(金) 22:51:27 ID:KRLWUL2L0
31:不運の男

襲われたことがまず不運。背後を取っておきながら「ヒャハハハ」と大声を出したのが不運。
デートの為の一張羅を心臓の血で汚したのが不運。遥か未来にけん玉の戦い方が伝わっていなかったのが不運。
何もかもが不運だらけで、タイトルは一体どちらを指していたのか分からない。
ここで死んだジェストーナは不運がだったのか、ここで生きたゼロスは不運だったのか。

32:獅子心の漢

イングランド王リチャードT世。生涯の大部分を戦闘の中で過ごし、その勇猛さから「獅子心王」と称された。
「バトルは英語でロワイアルは仏語だ!」なロワよりも純粋なバトルロイヤル(王者の戦い)を
貫こうとするコングマンには相応しい。ちなみにこの王、処刑とか幽閉とかの方面に逸話がある。
そのあたりも彼に相応しいか。それにしても惜しい―――――獅子ではなく、虎だったならば兄貴だったのに。

33:猛牛に芽生えし感情
 
「オレサマオマエマルカジリ」の選択肢も覚悟しなければならない出会いは急転直下、四星トーマに新しい何かを芽吹かせる。
それは食欲と性欲の錯誤か、それとも単に餌付けされただけか。始まりは何にせよそれはイースト菌のようなもの。
このまま死に絶えるか、トーマの中で生地を膨らませるか。水と栄養とトーマの中の温かさだけが知る。
にしても…牛デレ、そういうのもあるのか!

34:武器

交渉に於いて話術が武器であるように、知恵を持つものはその頭脳が武器であるように、
戦局が進めば水さえも武器になるように。ディーラーより最初に配られたカードを見ただけで落胆するにはまだ早い。
要は札の切り方次第。そしてマリー=エージェントには、何物にも動じぬ胆力と言う武器が備わっている。
もっとも、それは「武器」レベルの話だ。「凶器」や「兵器」相手に太刀打ちできることを保証するものではない。

35:燃えるマナ

女神マーテル。魔王ダオス。天使ミトス。万物の根源たるマナのエキスパートが森の中に3人もいる。
その意味を知るものならば、足を踏み入れることさえ憚られる領域を蛇はぬるりと擦り抜ける。
大火を見るのに何も自らが炎になる必要は無い。ほんの少し、樹を赤く火種に晒せば良い。
画して蛇の謀は奏し、炎が上がる。ただしそれは眼には捉えられぬ魔王の炎、火遊びで扱うには悩む神の火だ。
642名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/09(金) 22:52:26 ID:KRLWUL2L0
36:傀儡という名の運命

強い意思は強い意図を紡ぐ。その意味でリオン=マグナスほど傀儡が似合う者もそうはいないだろう。
三度与えられた運命の中で、三度同じ道を選ぶ彼を縛る糸はそうそう簡単には千切れまい。
彼女への愛慕が紡ぐ血染めの糸、だが同じ糸は盤上に2本。さて縦横交わり綾なされるのはどんな紋様か。

37:失われた英雄

エドワード・D・モリスン。本来ダオス戦役における英雄であるはずだったが、クレス達の介入によってそれは無くなった。
いわば歴史上から“失われた”英雄だ。だが、天の採配かモリスンは魔王を討つ機会を再び得た。
歴史から失われた英雄の座を、はたして歴史にすらない世界の中で取り戻せるか。

38:田舎娘と貴族

俗にシンデレラストーリーと言われるように、田舎娘が高貴な人と出会い、その人生を変えていくのはよくある話だ。
バーサスでも田舎キャラだったファラはこの手合いの出会いに縁があるのだろうか。
次なるお相手は地方豪族三男坊の吟遊詩人。歌と風と草原に祝福された出会いは、ハッピーエンドかバッドエンドか。

39:修羅の目覚め

修羅:別名阿修羅。古代インドの魔神、アスラ。イノセンスで知る方も多かろうが、戦闘神として有名だろう。
元々善なる神であったが、妻を強奪(凌辱?)され戦争を起こし、その怒りに固執した結果善心を忘れ
妄執の悪鬼と化したという説もある。妹を無惨に崩されたチェスターは怒りに駆られ、モーゼスの言葉さえ届かない。
毒が回っていたのははたしてどちらか。妹を救うため修羅道に入ったばかりのチェスターには、知る由もない。

40:闇の現

語源は古今和歌集「ぬばたまの闇の現(うつつ)は定かなる夢にもいくらもまさらざりけり」(詠み人知らず)。
暗闇の中の現実、実際に起きても判然としないものの事。
目覚めて殺し合いをしろと言われたことも、その中でいきなりダジャレ大会が始まったことも、なんとも現実味のないことか。
阿鼻叫喚の絶望や、今息絶えた鼠の血熱の方が感じられるだけまだ現実的だ。
(あるいは、矢野絢子の「闇の現」か。こっちは歌詞が完全に後のクレス向けだが)
643名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/11(日) 14:04:56 ID:Tqda4ZlG0
32はタイガーフェスティバル兄貴かw
644名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 09:14:26 ID:faEUXGwoO
33は孤独のグルメかな?
そこかしこにあるネタが楽しすぎるww
645名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 17:46:03 ID:TejdemgyO
久々に伺ったらこんな素敵な事態に…
頑張ってください
646名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 18:24:16 ID:qAJdvNYC0
41:狂気に刻む希望

異常と正常の境は曖昧だ。サブマシンガンに幼子を見出す変態を私たちが異常だと思っても、
その本人にとっては、正常極まりない世界が広がっていることもある。
その境目が主観でしか決まらないのなら、ヒトは皆、誰かにとっての狂人なのだろう。
ならば狂人が希望を抱いても罰は当たるまい。例えそれが他のすべての人間にとっての絶望でも。

42:弱きケモノ

クィッキー (Quickie):学名 ポットラビッチヌス。身長15cm(耳12cm・しっぽ45cm・全長72cm)体重200g。
メルディの通常攻撃を担当しているが、術メインで戦うプレイヤーにとってはあまりに頼りない、弱い獣だ。
そんな支給品に比べれば、スタンス確認、支給品確認、方針確認を速やかに行うポプラおばさんのなんと頼れることか。
きっと対主催の中核となり、最終決戦前にピーチパイを皆に振舞ってくれることだろう―――――彼女“も”弱きケモノでなければ、だが。

43:我が道突き進む

秘奥義スパイラルドライバー詠唱(?)「我が道突き進む、スパイラルドライバー!!」
突き進まれて勝手に敵の裏側に行かれるのも困りものだが、そこがロニらしい技の一つだ。
その手にあるのが首輪探知機と、コスプレ衣装だけだとしても我道を突き進んでくれるだろう。
とりあえず、砂漠のど真ん中から道を探すことから始めるべきだが。

44:リーダーとして存在感は示しておこう

存在感はリーダーに必要なものだ。だが、それは別にせこせこと会話に混じって話の腰を折ることではない。
詳細は下に任せ、それが信頼に値するものであるならば自分の責任で最後にしっかりと締めればよい。
そういう意味では、それなりにリーダーの素質もあるだろう。30点くらいか。
(エナジーブレッド→箒暴走)……………1万点満点で。

45:法術師の性(さが)

それが今その瞬間まで自分を殺そうとしていた化物でも、彼女は癒さずにはいられなかった。
治療が終わった後の彼女の満足そうな疲労を見て思う。多分、彼女は持って生まれた魂―――性こそが法術師なのだ。
しかし、何故このタイトルだけ読みを後ろにつけているのだろう。邪魔だからとってしまえ…
法術師の性―――――――――うん、無いな。CERO「Z」になってしまう気がする。
647名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 18:25:11 ID:qAJdvNYC0
46:冷たき焔

霜焼けなどというように、冷たすぎるものは時に火と同等な領域に到達する。
ルーティが対峙した「それ」は正に“そういうもの”だったのだろう。
殺す側、抗う側、流れ出る血の熱さ、待たせている人の想いは変わらないはずなのに。
だがそれを問う暇は無い。この氷だらけの草原で戦意の焔を燃やせ、生き残りたければ。

47:始動する天才

「いい、スタン?『バトルロワイアルを終わらせる』……そんな言葉は使う必要がないのよ。
 なぜなら、この天才ハロルド様がその言葉を思い浮かべた時には、それは開始1スレで既に終わっているのだから。
 『ご愛読ありがとうございました。ハロルド博士の次の実験にご期待ください』なら、使ってもいいッ!!」
いやいや、ダメだし。ほら、とりあえず女の子助けるとか、化物倒すとか、そういう地道なのからね。

48:忍び寄る邪神

それは影法師。つかず離れず、決して消えることは無く、ただただ彼女についてくる。
無力なそれは決して近づいてこない。ただ、彼女が近づいてくるのを待っている。
それで十分。なぜならその身は非物質―――――決して死なないという、このゲームにおける「最強」だ。
インフェリアの邪神にしてセレスティアの解放者ネレイド、怯える少女に与えるのは呪いか、自由か。

49:再会そして再戦

どこかで誰かが死ぬというロワの性質上、再戦も再会も珍しいケースだ。
特にそれがついさっき殺されかけたマーダーとの交戦で、数少ない元の世界の知己となればなおさらだ。
良い支給品や、良い陣地などとは比べ物にならない安心を彼らは得た彼らは幸運と言える。
だが思い出せ、暗殺者の言葉を。まだ何も事態は好転していないのだ。安心は、決して未来を保証しない。

50:死を招く者

死を招く者は、最後まで生き残る。死ねば、死を招くことができないからだ。
弓槍を持って妹の為、より強く生きようとするチェスター。
銃火を以て慕う子の為、より強く殺そうとするヒアデス。
死を招くもの二人幼女の為に相見えれば、さてどうなるか。
648名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 23:47:13 ID:xi3dcEn6O
45w
649名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 00:37:28 ID:FMJmmrRm0
51:閉じる世界

弓使いにも様々だ。「拡がる世界」を持つ者もいれば、閉じる世界を持つ者もいる。
眼前の狂気をねじ伏せて、毒で殺して、そして死ぬ。そうして彼の世界は閉じられる。
世界が閉じる刹那、彼の世界には桃色の髪が映っていたのだろうか。
分からぬままに、閉じていく命――――――そうして殺意は、拡がっていく。

52:砕ける氷

仲間に会うまでは死ねない。武器がなくとも晶術を、術が無くとも盗みの技を。
冷静に確実に持てる全てを尽くし死に抗う彼女は、冷たくも光輝く氷晶の如く美しい。
だが、眼前の相手は心まで凍った氷の王。生の情熱に溶けた氷で何を抗えようか。
氷は全て彼の支配下。その手に握られていた氷のように、砕けて果てるがその定めだ。

53:メンバー増員中

「この音速のグリッド、こと漆黒の翼に限り嘘はつかない。再結成! 再結成するが…
 今回募集人数と募集期限の指定まではしていない。そのことをどうか君達も思い出して欲しい。
 つまり…俺がその気になれば漆黒の翼は4人でも55人でも増員可能だろうということ……!」
剛運名探偵加入で掟破りの4人編成。新生漆黒の翼の一日はそうして更けていく。

54:舞台袖の笑い

舞台袖:客席から見えない舞台両脇の奥。控えの役者や、舞台装置や照明器具、音響機器などが置かれる場所。
隠されたのはしいなの血と、暴走に至る過程、そしてサレの目的か。
通常観客に見えない場所のはずなのだが、役者であるクレスやコレット達には見えず、
観客である私達はが袖で笑うサレを見ることができるというのは皮肉だ。

55:不死身の男

マウリッツと言えば不死身。戦闘回数だけでいえば某6回戦う暗殺者に記録更新されたが、
連続で3回も戦うことになったラスボス真っ青の不死身ぶりはそうそう破られまい。
そのタフネスぶりとメルネスへの忠誠心はソロンも、フィギュア化と雷も、天才と炎をもものともしない。
だが悲しいかな、もう3回死んでしまった。そして魔術師の4回目。人は必ず死(4)に至る。
650名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 00:38:56 ID:FMJmmrRm0
56:小さき天才

Genius:天才。当然、初登場から修羅場にエンカウントしたジーニアスを指す。
ただ、ジーニアスはハロルドのような天才と言うより、秀才・神童に属するタイプだろう。
故に開始直ぐ気絶する打たれ弱さ、傷ついた仲間へアイテムを惜しまないことなど、実に理解しやすい。
神童、二十歳過ぎればただの人。奇人変人集うロワの中で彼は天才となるかか、凡人となるか、それとも神童のまま終わるのか。

57:使用人と大佐

ヒューゴ邸使用人、マリアン=フュステル。元地上軍大佐、ソーディアン・アトワイト。
マリアンに瓜二つと言われるクリス=カトレットが守り刀としてルーティに預けたとか、微妙な距離感の1人1振り。
カトレット姉弟に翻弄された2人の邂逅、傍目にはイタいこの出会いは何をもたらすか。

58:崩壊の序曲

様々な物語のタイトルに用いられることの多いフレーズだが、なぜ序章でも開幕でもなく序曲なのか。
それは崩壊―――自ら壊れていくものに対し、オペラや大演奏のような壮大さを人が見出しているからではないだろうか。
集団の崩壊はロワの醍醐味の一つ。輝かしい結束が一つの傷から壊死していくのは心が躍る。
それが蛇の危機を避けて安堵して、兄の死と言う本当の傷を見逃していた集団なら尚更だ。
序曲は前奏と違い、曲全体のあらすじを担う。序曲が鳴った時点で、結末は約束されている。

59:分裂

ここに来て初めて出会った参加者だった。初めて協力できた異世界の仲間だった。
何故、何故こうなってしまったのか。原因にもっとも近いはずの藤林しいなには何も理解できない。
狂えた新たな仲間、気絶した旧い仲間。理解するための暇さえ与えられず、選択を突きつけられたしいなは、
旧い仲間を選んだのか。成す術無く事態は流転し、世界を越えた絆は容易く分け裂かれる。

60:違いの解る男

違いが分かる人の為のコーヒ、NESCAFE GOLDBLEND? シンフォニアの世界では
毎日コーヒー党と紅茶党が骨肉の争いをしているが、残念ながらゼロスはどちら派でもない。
ゼロスにとっては飲み物の違いなぞよりも、それを一緒に飲む女性の違いの方が万倍重要であろう。
おーい、そこのメイドのお姉さーん。この血の滴る良い男とお茶しな〜……あ、2人?
651名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 19:38:23 ID:Ji7tBeC30
おお、これはいいな
乙です
652名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 22:56:27 ID:3uWZtHOj0
60wwwうまいなwwww
653名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/02(日) 11:13:19 ID:+iAGT7MO0
61:心構え
物事に対処する心の準備。覚悟。
このゲームを終えて好きなパートナー(?)に求愛されるにしても、
このゲームに優勝したとき約束の報酬が得られないにしても、大事に当たる為には、それ相応に必要なものである。
しかし、突如町に侵入してきたこと―――目先の大事には大抵間に合わないものでもある。

62:マグニスさま、だ。豚が!!
パルマコスタの首コキャ男性「ひ、東の牧場のマグニスだ…」「マグニスさま、だ。豚が!!」(コキャ)
テイルズ知らなくてもこれは知っている人も多かろう、マグニスさまのキャラを決定づけた屈指のネタである。
さま付け(not様付け)をデフォルトにするくらい自己のお強い優良種たるハーフエルフのマグニスさまにあらせられませば、
その強すぎるオーラ故に豚もよりつかず、12時間エンカウント無しも仕方の無いことかと。パン工場の煙目指してドンマイ。

63:戸惑い
手段や方法がわからなくてどうしたらよいか迷うこと。進む方向などがわからなくてこまること。
これからどうするか。その方向ならば迷うことは無い。
だが、眼前の少女をどうするべきか、どうしたいのか。手法を知らぬ雄牛は戸惑うばかり。
幸いしたのは脳筋か。フォルスの暴走にトーマは迷わず走り出す。そう、迷う暇があれば体を動かす方がまだマシだろう。

64:運命は時に厳しい
ロニ戦闘勝利セリフ「運命は時に厳しい」。恐らくは自分たちに倒されたモンスターに対して言っていると思うのだが、
勝手に右側行かれたり一部技を除いて簡単にスカしたり、ロニがヘマしたときにもこの言葉でごまかされる魔法の言葉。
そんなチョロい言葉が通じるほど運命も甘くは無い。近しい世界の2人が出会えば、即座にパーティ結成……そんなに都合良く回るはずもない。
運命は“時に”厳しい。いつも優しいよりも、いつも厳しいよりも、それは恐ろしいものなのだ。

65:抱擁する天才
古きを紐解けばシャルリーアシュルクヴェイティトポンとそちら方面が充実していたが
時代は変化し、エル○×○ロエなりエ○テル×リ○なりア○ーテ×ジルバなりこちら方面の需要創出傾向も伺える。
しかしそれを数歩先に行ってたかテイルズロワ! 巨乳と巨乳が抱き合ってめくるめくCEROZ展開へ…(ミント18才、スタン19才なのでセーフ)
んな訳無かったーッ!! お約束の首輪調査だったーッ!! しかもミントの喘ぎが天上王に盗聴されていたーッ!!
654名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/02(日) 11:14:09 ID:+iAGT7MO0
66:第一回放送
技で言うなら虎牙破斬。称号で言うならコンボ初心者。
小咄、禁止エリア、そして死者発表。ありきたりかもしれないが、まずはここに来なければ次には進めぬ第一関門。
だが、こういった手順は疎かにしてはいけない。何事にも様式美というものがある。
それに、言ってみればここまでは所詮「配置」だ。駒は並べた。さあ、こっから攻めるよ?

67:逃亡
彼女は逃げた。ヒアデスさえ殺すこの世界の誰かから。
禁止エリアになるこの場所から。悪鬼巣食う塔から。なにより、内より囁く闇の声から。
だが哀れなる少女は知らない。逃げた先に安息がある保障などないことを。
彼女が怖れ逃げた塔が、誰かにとっては安息の拠点に思えることを。

68:波紋
池に石を投げれば水面に波紋が浮かぶ。放送と参加者の心はちょうどこういう関係なのだろう。
ロイドにとって投じられた石は大きく重く、水面を大きく波打たせた。
ジューダスの水面は、あまり波打たなかった。ただそれだけだ。
だけど、波立たない水面は無い。波紋は薄く、しかし広く彼の心に浮かんでいる。

69:強者を求めて
弱肉強食。あまりにもシンプルで、それ故に剛力。
闘争心に支配されたコングマンにとって唯一絶対のルールであり、ルーティの死は肉片程度の意味しかない。
町の明りを導に歩むチャンピオン。恐らく、彼の行く先にはノイシュタットの英雄となる歴史と交わらないであろう。
少しずつ、少しずつ、バトルロワイアルの毒が歴史を軋ませていく。

70:天才と忍者
ジーニアスとしいな。2番目に結成された同じ世界のパーティ。
その縁のおかげか、アビシオンフィギュアまでも寄ってくる。
この調子でコレットとも寄れれば良かったが、今は逃げる方が先決だ。
だがその前に、E2が町なのか村なのか城なのかはハッキリさせといた方が良いと思うよ?
655名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/10(月) 15:30:03 ID:DFUoBKgiO
第1回放送まで結構あったんだな
656名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/14(金) 11:19:27 ID:TS8f/B2uO
保守
657名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/15(土) 19:36:13 ID:0A5kCVIE0
名言か……
1stの名言って何があるかな?
658名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/18(火) 21:55:18 ID:9JKvl0qb0
個人的には最新話の「今だけ、その道を支えてやる。この“時空剣士”ミトス=ユグドラシルが」とか好きだな
この後の展開を想像するだけでwktkが止まらない
659名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/24(月) 02:37:37 ID:xvcONQLCO
ほしゅ
660名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/28(金) 01:06:23 ID:0x4wQ9mI0
保守
661名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/03(木) 22:10:26 ID:hayEBhd9O
保守
662名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/04(金) 19:25:41 ID:BGeS36dPO
もう結構経つんだな…
毎日の様に覗いているが最近の事に感じるぜ。
信じること、信じ続けること、それが 本当の強さだ!
663名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/10(木) 00:25:27 ID:37v7ZW7U0
hosyu
664名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/12(土) 20:53:23 ID:PFPAPqS60
……告知してませんでした……orz
ナッシュです。本日21時からラジオを流しています。
お時間がある方、よろしければどうぞ。

掲示板
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13268/
ラジオのアドレス
http://nash-tobr.ddo.jp:8000/
聞き方はこちらからどうぞ↓
http://www.atamanikita.com/start-shoutcast/shoutcast-14.html
665名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/12(土) 20:58:34 ID:DHIQkLRH0
ラジオ久しぶりだな
666名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/13(日) 01:40:50 ID:aq0NE8zQO
ラジオ(笑)
667名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/13(日) 14:34:53 ID:0njSBfRn0
昨日……だと……?orz
668名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/17(木) 22:51:21 ID:h+vQqbfp0
保守
669名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/21(月) 14:03:43 ID:sfVSc2xIO
半年経ったな
670名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/22(火) 13:50:56 ID:wWCu2Ch6O
経っちゃったね…
書き手さん大丈夫なのか?
671名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/28(月) 17:40:19 ID:DKCWGrViO
保守
672名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/29(火) 19:56:06 ID:aC7ULV8R0
投下無くてもいいので生存報告欲しいな
673名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/30(水) 08:25:02 ID:NKOgoZyw0
名無し氏は2ndチャットに顔出してたし、ラジオも書き手のナッシュ氏がしてくれてるし、生存はしてるでしょ。
相当難産なんじゃないか?
674名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/04(日) 06:07:26 ID:6ISmYzZO0
続きを楽しみにしている俺がいるぜ

まさかの主催者大勝利エンドで強烈な印象に残ったロワだから、
これをアナザーでどうするのか気になる
675名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 17:54:47 ID:RtIoN5GvO
保守
676名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:44:14 ID:tlOgfn7e0
保守だッ!!!!!!!1111
677名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:50:18 ID:k62LlXE20
最後はどうなるのかね
また全滅かそれとも……
678名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 08:14:46 ID:nx+AxylVO
ほしゅ
679名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/29(木) 11:03:48 ID:CGiiMz3c0
hosyu
680名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/06(金) 20:59:41 ID:GXVc0YSc0
ホ、ホアァーッ!!
681名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/13(金) 15:03:54 ID:Z3SPV7aOO
保守なの
682名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/20(金) 00:08:19 ID:DCcytjf9O
保守
683名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/27(金) 10:01:06 ID:6us3OAv5O
保守
684名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/31(火) 17:43:21 ID:ZI34XXAH0
ほっしゅ
685名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/05(日) 15:13:55 ID:4Phb90Q7O
保守
686名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 00:18:24 ID:1aJare7kO
ほしゅっ
687名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 14:18:08 ID:UQsza1F2O
保守
688名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/18(土) 01:37:06 ID:YIQlKUbAO
保坂
689名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/21(火) 22:51:21 ID:8qitarFuO
最後の投下から何ヶ月経った?書き手さん元気かな
690名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 15:32:35 ID:TtiHOTBR0
そろそろできそうみたいなことは言ってたけどね
691名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/30(木) 04:03:01 ID:83WW0L4E0
保守
692名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/07(木) 01:35:02 ID:EoOH/v8kO
保守
693名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/08(金) 16:55:22 ID:iNhsck8q0
保守
694名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/11(月) 21:03:44 ID:J/XNKNomO
保守
695名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/11(月) 23:34:50 ID:upJIorTE0
大変お持たせいたしました。遅れて申し訳ない。
では、早速投下…と言いたいところなのですが、今回のSSは膨大な容量とスレの残り容量の問題もあり、私だけでの全投下は非常に困難です。
そこで、今日はSS全体の一部(体験版)を投下し、新スレにて読み手の皆さんの支援協力のもと投下したいと思っております。次回投下日時は今週末にお知らせします。
それと新スレは一応こっちで立てますが、もし私が無理でしたら協力お願いします。

では、投下します。
696第七クールβ版(仮題) 1:2010/10/11(月) 23:37:40 ID:upJIorTE0
「今だけ、その道を支えてやる。この“時空剣士”ミトス=ユグドラシルが」

仲間を喪って、人間に裏切られ、姉を喪い英雄として敗北した挙句、天使やハーフエルフとしても崩れかけている。
そんなニンゲン・ミトス=ユグドラシルは、まるで獣に喰い散らかされた屍肉の様な哀れな風貌で、継ぎ接ぎの皮と芯で辛うじて地に立ちそう吐き捨てた。
どうしようもなく朽ちてしまったミトスの身体は、見せ物にしても流石に見るに堪えない代物だ。
しなやかで張りがあった筈の肉は、精力を失い乾燥し、皹割れた地表の様に萎びていた。
天使の輪が光り、艶があった筈の金髪は、血と油に汚れてすっかりくたびれてしまっている。
死に損いも死に損い。体躯と対照に酷く綺麗な天使の翅は、取って付けたようで最早笑い種だ。
しかしカイルの目には、そのゴミの様な四肢は確かに凛と、一人の完成されたニンゲンとして見えた。
有象無象を静止に至らせる無慈悲な絶氷……いや或いは万物を灰燼に帰す地獄の豪火か。
力強く猛りながらも、冷徹で幽邃な圧倒的覇気。
器と呼ぶ物があるなら、この威厳にも似た清冽な存在感の事を言うのだろう。
カイルは、熔解した後に固まって妙に歪んだ大地に立つミトスをまじまじと見つつ、そう思った。

「ミトス、お前」

……ソレ、取って大丈夫なのか。
要の紋を指差しそう続けようとしたが、カイルはいや、と呟き言葉を飲み込んだ。
確かにエクスフィアの直接装備は身体に毒とはロイドから聞いていた。
だが、この状態のミトスにそれを訊くのは野暮過ぎる質問だと思ったからだ。
ミトスからしてみれば、こんな有様の身体に触ろうが何だろうが、きっともうどうでもいい事なのだろう。

カイルは両手で紫色に染まってしまったズボンを握ると、黄昏の魔手に浸蝕される空へと目を泳がせた。
程無く呆れた様な溜息と舌打ちが、もう一人から一つ。
【それでいい。馬鹿は余計な事を言うな。時間がないんだ、黙って見てろ馬鹿】
「ばッ……!? に、二回も言う事ッ」
『おいミトス、呑気に喧嘩をしている場合では!』
【五月蠅いよ、餓鬼共】
ミトスはしたり顔をしたまま心底苦しそうに笑うと、心外だと食い付くカイルから視線を外した。

油断すれば今にもぼろぼろと崩れ落ちてしまいそうな脆弱な脚腰。
関節を動かす度にみぢりみぢりと千切れる、余りにも頼りない神経。
“辛うじて”瞬きをする度に、ねとりと目の縁から溢れる黒い体液。

……ああ、クソッタレ。ミトスは腹の底から、自らを呪う様に唸った。
部品共が、末端が最早まともに命令を聞きゃあしない。
生憎と油を差してる時間は無いし、ボルトを締める余裕も無ければ補強する道具も無い。
今の僕には無い物が多すぎて、何かが有る事の方が異常になっている。
皮肉な話だな。元々、僕には何も無かった筈なのに。それが自然だったのに。
でも今は、これが自然とは到底思えない。欠損はやっぱり、異常なんだと今更気付くんだ。
……だが、手前らの主は腐ってもこの僕だ。これからギアはまだ上がるぞ。
この程度でへばってたら即ゲーム・オーバーだ。
僕とこの肉とはもう腐れ縁のレベル。
ま、肉体なんて無機生命体にとっちゃキャラメルに付いてるおまけの玩具並だけどさ。
でも、折角なんだ。最期まで付き合わなきゃ損だぞ? このポンコツハーフエルフ。
バイト代の代替に良いモノ見せてやるから、もうちょっとだけ残業してけよ。

五月の蠅を軽くあしらい、ミトスは己が相棒へと視線を移す。
使ったのは僅か2日程度というのに、今じゃ随分と手に馴染んでいる。
何故かと少しだけ考えて、直ぐに得心した。少なくとも、エターナルソードよりはこの身体のサイズに合っている。
『ミ、と』
アトワイトの消え入りそうな電子音に、ミトスは今から行うべきことを再確認する。

【悪いけど、悠長に語ってる時間がない。“剥がす”よ】
697第七クールβ版(仮題) 2:2010/10/11(月) 23:39:40 ID:upJIorTE0
何時になく険しい声色にアトワイトはマスターへ声を掛けることを止め、その表情を窺った。
震えている……否、“肩を揺らして笑っている”。
何処をどう見渡しても残骸以下の肉体。だが、その笑みはただそれだけでミトスを死に損ないの少年と認識させなかった。
むしろ、何処か若返っているとさえ錯覚するその笑みは、生まれた瞬間の生命の溌剌さに近い。
しかしこの状況でなおも笑うのか。これは言うなれば、そう――――――狂気の類。
本人は自らが形作る表情の意味に気付いているのだろうか。
絶望的なまでの制限時間――否、それさえも疾うに終わっている――を添えたこの逆境を、無意識に愉しんでいる事に。
ならばこの意識外の狂的な愉悦は、何処に向けられたものなのか。
カイルへの? ……いや、十中八九違う。ならば誰へ、何へ?
(……違うワね。そんな複雑なものじゃない)
コアクリスタル、そしてそこに寄生するエクスフィアにかかる斜陽の光線をミトスの掌が遮った時、アトワイトは脱力するように溜息をついた。
『ミトス……』
【何?】

これは、彼女が道端で小銭を見つけた時のような笑みは―――――――――大人の鼻を明かすため。

『痛く、しないでね?』

この子供が大人への悪戯を思い付いたかの様な笑みは――――――――――ミトスが追い求めた大人の背中への。

【死ねバカ】



【17:55'10】



エクスフィア。人間に着床することでその人間の長所を強化する増幅器であり、
鉱石でありながらヒトに寄生しその感情・精神を餌にして成長する歴とした“生命体”。その呼称である。
エクスフィアは通常、要の紋という接続装置を介して肉体に装備する。エクスフィアの直接装備は身体に猛毒である故に、だ。
毒素と言う名の力の代償。増幅させるためには肌につけなければならないのに、直接つければ寄生されるという矛盾。
自然はそう簡単に人間へと力を授けないということらしい。
だが、ヒトには知恵があった。
かつて世界が統合されていた頃よりも更に昔、ドワーフは持ち前の技術を活かし、その毒素を抑える特効薬<要の紋>を精製したのだ。
だが、ヒトが火を使う術を覚えたとしても火の恐ろしさが減じるわけではないように、エクスフィアの呪いは厳と存在しつづけている。
要の紋無しにエクスフィアを剥すと、身体を形成するマナが毒素に蝕まれ、暴走――――肉体構築バランスとマナの結合を崩す。
それは人間を人間と構成している結合の崩壊。つまり、心身共に怪物の様に成り果てるという事だ。

『お、おい……!』

それが今、目前で繰り広げられようとしている。
ミトスはあろう事か、アトワイトのコアクリスタルに直接寄生したエクスフィアを剥そうとしたのだ。
その行動へと声を荒げながら咎めたのは、当然同じソーディアンであるディムロスだった。
無論、寄生者が人間の場合ではなくソーディアンの場合にもそのルールが適用されるかは定かではない。
が、エクスフィアが貪るものが人間の生命ではなく“精神”である以上、
人格を持つ武器であるソーディアンに及ぼす危険性は、単純機械のそれを遥かに凌駕する。
なにより、この弱ったアトワイトの様子。これは確実にエクスフィアを利用して限界を超えた“利息”だ。
この状態からコアクリスタルに癒着したエクスフィアを剥ぎ取る事は、相当危険なのではないか。
彼女が破損する可能性を少なからず感じとったディムロスには、ミトスの行為を見過ごす事は到底出来なかった。
698第七クールβ版(仮題) 3:2010/10/11(月) 23:43:14 ID:upJIorTE0
【何だよ】

ミトスが目を細めながら低く呟く。心底面倒臭そうな声だった。
『気でも違ったか!? 直接装備したエクスフィアを剥すなど到底正気の沙汰とは思えんッ!』
【何だそんな事か……心配無用だよ王子様。ただの応急処置さ。魔法使いの仕儀に口を出すと、舞踏会に間に合わないよ?】
ミトスはカイルが所持しているディムロスへと嘲笑を浴びせると、アトワイトのコアクリスタルへと手を伸ばした。
『応急処置!? 何を言ってッ』
「ディムロス」
す、とカイルが興奮に紅く輝くディムロスの刀身をはたく。
何事かとディムロスが見上げると、カイルは首をゆっくりと左右に振ってみせた。
冷静なカイルの様子に、ディムロスはコアクリスタルの発光を止め、喉元まで競り上がっていた怒声を飲み込む。

「信じよう」

……信じよう。はっきりとした口調で、カイルはそうディムロスを諭した。

   <信じる事。信じ続ける事。それが本当の強さだ>

一閃。
切っ先からグリップまで、思わず身震いする様な電流が走った。
脳裏に浮かぶ青年の顔。重なる面影、真の強さ。ディムロスは思わず息を飲んだ。
(……あぁ。確かにお前の血を引いているよ、この莫迦は)
何処までも真直ぐで、図々しくて熱くて、危なっかしくて……どうにも放ってられん。
ディムロスは苦笑いを堪える。創られた記憶と知りつつも、呆れざるを得なかった。
確かにミトスは負けを認めているだろうさ。そして、もうこちらへの殺気もない。
それでも、今の今まで敵だったミトスをそうも即座に信じるのか、マスターよ。
他に道がないとは言え、それが最善だとは言え。そこまで純粋な目で私に信じろと言うのか。
これでは……まるで。

【立場が逆だね?】

ミトスが辛そうに嗤った。
ディムロスはむっとして、ミトスへと視線をやる。
……そこには、まるで全てを見透かしたかの様な嫌らしいしたり顔があった。
ディムロスはコアクリスタルの奥底で低く唸った。そうだ。信じる。それしかないのだ。
全く、スタンと言いカイルと言い……つくづく私を辱める。
これではどちらが導かれているのか分からんな。まだまだ私も駄目だ。

『……もう! 黙って聞イていればミトスも随分と性格が悪いわね』
痺れを切らしたアトワイトが、呆れた様に苦言を零す。ディムロスは僅かにたじろいだ。
声色の節々に混ざる不自然な機械音にコアクリスタルを点滅させつつ、アトワイトは続ける。
『安心シてディムロス。後遺症の可能性はともかく、破損まデはいかないのは今日の朝に一度確認済みよ』
アトワイトがミトスの行為に殆ど声を上げなかったのは、主への忠誠と言うよりはその経験によるところが大きい。
【言うなよ。面白くないなぁ】
母親へ仕掛けた悪戯が失敗したかの様な、そんな不服そうな表情を浮かべると、ミトスは口を尖らせた。
「ぶッ」
ディムロスを杖にバランスをとっていたカイルは思わず噴出す。そんな顔もするのか。
と、途端にミトスの顔が険しくなる。カイルは慌てて視線を流した。
……ひー、おっかないおっかない。

【……ま、いいや。じゃあいくよ。観客も居ないのに仲良く漫才してる場合じゃない】
699第七クールβ版(仮題) 4:2010/10/11(月) 23:48:52 ID:upJIorTE0
ミトスは残った指を器用に動かし、アトワイトのコアクリスタルに寄生するエクスフィアを引っ張った。
『あふッ』
アトワイトの喘ぎに被さり、コアクリスタルが鋭い悲鳴を上げる。
みしみしと、太い木の幹が重機でブチ折られた様な音が辺りに響いた。
次いで、エクスフィアが一度だけどくんと脈打つ。心臓を彷彿とさせる様な、有機的な躍動だった。
カイルは目を凝らし、エクスフィアを観察する。
癒着しかかったエクスフィアがどくんと脈打つ。
アトワイトにへばり付いている輝く魔触手は、まるで毛細血管の如くコアの奥深くまで張り巡らされていた。
うねうねと蠢きならがら輝くその魔触手は、恐らく高濃度のマナで構成されているのであろう。

『……あまり見ていて気持ちの良いものではないな』

それを無理矢理にぶちぶちと引き剥がす作業を見ていたディムロスが、ぶっきらぼうに零した。
剥し終えたミトスを見たまま、そうだね、とカイルは顔を顰める。
度々上がっていたアトワイトの喘ぎは苦悶に溢れていた。

エクスフィア。ロイドやミトス達の住まう世界の力。
その強さは、ミトスやアトワイトとの戦いで身に染みて理解している。
だが、同時にその恐ろしさもカイルはしっかりと理解していた。
コレット、シャーリィ。方向性は違えど心や身体を、その石に囚れた人たちがいた。
クラトス、ロイド。力を得た代償として、人間としての死を失ってしまった人たちもいた。
ヒトが人である為の最大の証を、エクスフィアは喰うのだ。
カイルにとって、それはエクスフィアの恩恵やエクスフィア自体にに悪意が無いことをを差し引いても認め難いものがあった。

カイルは黙ってディムロスのコアクリスタルを見つめた。
なら、レンズはどうだというのか。人格さえ完全に模倣し、ヒトの願いを束ね精神さえも宿す遊星からの物体。
(もし、レンズがエクスフィアのように使われていたら、あの現代みたいになるのかな)
エルレインの手によって改変された現代。全人類が頭にレンズをつけ、
神の眼から放射されるエネルギーに生かされたあの世界は、正にレンズに寄生された世界だった。
意思を食らう石、エクスフィア。願いを集める物質、レンズ。
無機物にヒトの心が侵されるというのは、少なくとも正しいことではないはずだ。

「……ディムロス、ごめん」
『唐突だな。脈絡もない』
「エクスフィアを見てたら、鉱物が……無機生命体ってのが、やっぱり納得いかないなって思った。
 でも、ディムロスもアトワイトも……剣でも、無機物でも、生きてるって…………ああ、畜生」
うまく言葉が纏まらず唸るカイルを見て、やはり正直な奴だなとディムロスは思った。
幾ら恩恵があろうと、人間を、有機生命を不幸にするエクスフィア、無機生命体という存在を認めきれない。
だが、今その手に握っているディムロスもまた形は違えど、ミトスの定義に従うなら無機生命体だ。
イコール、ディムロスを、ソーディアンを認められないというところまで論理が飛躍したのだろう。
眼は口ほどにものを言うとはいうが、カイルのはそれ以前のレベルだった。
『気にするな。お前の想いは正しいさ。戦時のこととはいえ、人格を兵器に写すなど正気の沙汰ではないからな』
ディムロスは昔を懐かしむように言った。かつてなら自らを唯の剣だと嘯いたであろうが、
例え複製の人格であろうと、その人格さえ粗悪品の可能性があっても、あの滾った血潮の熱さは人間のそれだった。
今なら、ソーディアンにも心があると認められる。故に、自分達やエクスフィアが如何に禁忌の存在であるかを認識できる。
「……なんで、ソーディアンだったんだろう」
カイルが、誰に聞かせるでも無くつぶやいた。天地戦争において、地上軍が劣勢だったのは知っている。
それを覆すために、強力無比な局地戦仕様の決戦兵器が必要だったことも理解できる。
でも“何故それが、意思を持つ剣でなければならなかったのだろうか”。
『お前も知ってのとおりだ。我らソーディアンとマスターが同調した時、その力は何倍にも膨れ上がる』
その力が、戦争に勝つためには必要だった――――――ディムロスはそこまでは口にしなかった。
700第七クールβ版(仮題) 5:2010/10/11(月) 23:51:36 ID:upJIorTE0
「分かってる。でも、ディムロスにも……ソーディアンにだって、心はあるんだ。生きてるんだ。
 そう思ったら、少しだけ辛くなった。もっと他に、心を傷付けない方法がなかったのかなって」
バカだな。ディムロスは素直にそう評価した。
ソーディアンに人を見出すとは。何処まで父親に似ているのか。だが、それは正論のみが持つ愚直な響きだった。
スタンとの別離を思い出す。ダイクロフトとこの世界で二度別れたが、その痛みが変わることは無い。
モノに心を与えてヒトを成す。その全てを悪しと断ずる気は無いが、やはり自然ではない。
そして自然で無いものは、いずれ何がしかの悲劇を生む。
ソーディアンに人格崩壊のリスクが付いて回ったように。剣であるはずのアトワイトが壊れかけた今のように。

『戦争だったからな。生きる為には、捨てなければならないものもある』
「うん」

ディムロスの言葉に、カイルは頷いた。選ぶことの意味を知ったカイルはディムロスの言葉をしっくりと受け止められた。
だが、それでも。彼女はどうだったのだろうか。彼女なら、きっとその程度の危険性は知っていただろうに。
カイルが識る彼女なら、意思を持つ剣以外の選択肢を創りだせただろうに。
(ハロルド……)
ミトスの腕から奔る光を見つめ、虚空に呟くソーディアン・メーカーの名前。
誰よりも神を否定した彼女なら、その解を持っていただろうか。


遠い目をするカイルを一瞥してミトスは舌打ちをした。
【チッ……怪我人に仕事をさせておいて黄昏かよ。良い御身分だこと】
『仕事って、貴方が勝手にやり始めたことじゃ……ふあっ』
文句を言うよりも早く、ミトスがアトワイトを構成する回路の“勘所”を強めに直す。
『い、いま、セ、セクは』
【痛くしないで、なーんて言ったのは何処の誰だっけ? 分かったら少し黙ってろ】
アトワイトの嬌声なんぞ何あるものかと、ミトスは直ぐに作業に意識を戻した。
ミトスとて本気でいらついている訳でもなく、この精密作業の前ではそんな余裕もない。
確かに昼に一度エクスフィアの換装作業は行ったが、あの時はそれまでアトワイトもエクスフィアを使っていなかった。
ソーディアンの同調機能を逆に用いたコレットの外部操作。村全体を覆うほどのディープミスト。
ミトス及び自身のエクスフィアのEXスキル調整。そして極めつけはテトラスペル、そして射撃系術撃の際の高速精密演算。
いずれも、エクスフィアによるソーディアンの性能強化無くして成しえないことであった。
そして、ミトスの望みを支える為にアトワイトがどれだけのものを差し出さなければならなかったのか、その答えが今ミトスの指先に示されている。
【アトワイト】
厭味にか、主の命令を律義に履行していたアトワイトにミトスは小声で剣の名を零した。
アトワイトは相槌代わりにコアクリスタルを輝かせる。
【悪いね。ここで死ぬつもりだったんだろうけど、そういうわけにも行かなくなった】
『いいわよ。今の私の願いは、彼と共にあること。出来ることなら、貴方も見届けたかったけど……ごめんなさい』
【変な気遣いは止めてよ。僕はもうこんなザマだ。今更見届けるモノもない】
憂うアトワイトの未練を断ち切る様に、ミトスは唇が半分無くなって露出した歯ぐきを見せる。
【代わりと言っちゃなんなんだけどさ、一つ、頼まれてくれない?】
何を、と彼女が聞く前にミトスがコアクリスタルに顔を近づける。
エクスフィアとコアクリスタルの間に糸を引く光を繊細に断ち切りながら、ぼそとミトスは言った。

【あいつをしっかり見届けとけ】

何故、と訊きたい衝動にアトワイトは駆られた。その言葉が余りにも意味深過ぎたからだ。
何か言葉の裏にずっしりと大きな槍を据えている様な、そんな印象を受けた。
アトワイトはミトスの表情を覗き込む。深い影の向こう側には、険しい表情が掘られていた。
『分かッたわ』
アトワイトは応じる。裏に据わる槍ごと意志を受け取ったが、しかし詮索はしなかった。
裏に孕まれた明確な意味は理解しかねたが、そこに何かがある事を理解しただけで充分だったからだ。
【何だ。意外と素直だな】
ミトスの口が歪む。皮肉ったらしい口調は、しかしやけに温かかった。
危険そうなラインを全て断ち切ったことを確認したミトスが、エクスフィアを摘み一気に引き抜く。

【……姉さんほどじゃないけどさ、良い奴だよお前】
701名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/11(月) 23:54:10 ID:7fzQ/77K0
支援
702第七クールβ版(仮題) 6:2010/10/11(月) 23:54:43 ID:upJIorTE0
重油の様に汚く粘性を帯びた血液をぼたぼたと零しながら、ミトスは微笑んでみせた。
それに応えるように、アトワイトも少しだけ笑ってみせる。
マスターの笑顔は酷く醜かった。
身体は笑えないくらいにグロテスクだったし、言葉にはいちいち皮肉が混じるときた。
相変わらずの呆れた子供っぷりだ。
だけど……だけど不思議と、悪い気はしなかった。むしろ全てが心地良い響きに感じられた。

【あ、あとさ】
ミトスは空を見上げながら、思い出した様に呟く。
アトワイトは何かしら、とコアクリスタルを輝かせた。
【もし戻れたら、クルシスを頼む】


は?


気の抜けた表情で空を仰ぐミトスへと、アトワイトは目を白黒させながら質す。
『……貴方、今、何て?』
そんなアトワイトの様子にくすりと笑うと、ミトスはさもそれが当然であるかの様に、言葉をさらりと繰り返した。
【だから“もし戻れたらクルシスを頼む”って。四大天使がもう誰も居ないんだ。
 どのタイミングから僕がいなくなるかにも因るけど、オリジンとの契約もなくなるし、調整者を失った世界は荒れに荒れるだろうね。
 まあ、下界も下界で碌な事にはならないだろうな……なあんだ、考えてみるとヤバいな】
邪魔だった神子<ゼロス>の死により教皇は権威を増大し、やがては国王達を毒殺しハーフエルフ狩りを始めるだろう。
予備素体<セレス>を担ぎあげて、後はテンプレートの傀儡政権の出来上がりか。
ミズホは次期当主を失い、迷走は避けられない。現テセアラの神子はミズホと個人的な関係を持っていたはずだが、
それも断たれれば、容易に状況はひっくり返るだろう。
シルヴァラントに至ってはもっと酷い。何せ世界を調停するクルシスの中枢が軒並み居なくなるのだ。
クラトスが抜けて、レネゲードを纏めていたらしいユアンが死んで、再生の儀式は進まず、衰退の一途をたどるだろう。
ハーフエルフ社会もユアン殺害のレッテルを張り付け、ディザイアンとクルシスの残党との抗争に巻き込まれる事は想像に容易だ。
世界が統合されていたら話は別だが、ロイドが死んだ以上それも怪しいか。

もし、この世界の結果が元の歴史に反映されるならば―――――
コレットの時間軸か、ミトスの時間軸か、マーテルの時間軸か。
どの段階から“改変”になるかは分からないが、少なくともまともな歴史にはならない。
レネゲード残党、残る五聖刃を中核としたクルシス残党・ディザイアン連合、教皇旗下テセアラ軍。
少なくともこの3つは遠からず争いになる。最初はテセアラだけの競り合いになるだろうが、
規模の小さいレネゲードは確実にシルヴァラントを巻き込むだろう。
それを止める為のコレットを中核としたシルヴァラント・ミズホ連合が動くか……
少なくとも四つ巴……戦争は必至だ。とてもではないが避けられはしないだろう。
コレットの仲間もまだ残っているらしいが、一個人でどうにか出来るレベルの流れじゃない。
特需でレザレノあたりは若干潤うだろうが、経済でコントロールは―――――――――――

【……それに、五聖刃にも怪しい動きをしてる奴等が居たみたいだしね。となると正史も危うい。
 特にロディル辺りは僕が居なくなった世界で何をしでかしてるか分かったもんじゃあ】
『嫌』

ぴしゃり、とアトワイトははっきりと断言する。ミトスはむっとした表情をアトワイトへと向けた。

【アトワイト】『イ・ヤ』
【そこをなんとか】『絶対嫌』
【頼むからさ】『幾ら頭を下げられても嫌なものは嫌なの』

予想以上の頑固さに、ミトスの目尻がひくひくと振れた。こいつ、もう一度エクスフィアぶち込んでやろうか。
『そこまで心配しなくてもいいんじゃないの? 貴方の姉さんの居ない世界に、興味は無かったんじゃないの?』
703第七クールβ版(仮題) 7:2010/10/11(月) 23:56:12 ID:upJIorTE0
改変ポイントを場合分けしながら未来をシミュレートしたミトスはアトワイトに言われて初めて、自分のらしくなさに気付いた。
全く……この僕が姉さまの居ない世界の心配なんかするなんて、どうかしてる。
ミトスは口を半開きにしたまま、ぼんやりとそう思った。
胸中で少しだけ自嘲する。とんだお人好しもいたもんだ。こりゃあ、どっかの英雄に毒されたか。

『確かにね。でも、姉さまの望みは、世界が無くちゃ始まらない』
差別のない世界―――――本当の意味でマーテル=ユグドラシルが夢見た世界。
自分では無理だった「理想」。今でも叶うとは思っていない。
でも、あんなバカな人間がいるのなら……もう一度だけ、奇跡を願ってみたくなる。
それはきっと涅槃寂静の遥か彼方の確率。でも、ゼロではない。
奇跡を諦めた彼に出来るのは、それをゼロにしないことくらいだ。
いつか奇跡が叶うという夢を、見続ける為に。

『そんな目で睨んでも折れないわよ。大体どウやって? 私はただの剣よ?』
【知らないよそんなの】

ミトスは肩を竦め、アトワイトを馬鹿にする様に語尾に笑いを含めた。
その余りにも自分勝手な様子に、とアトワイトは言葉を失う。
これは驚いた。天使様は即答策無しときたか。
【ああ、じゃあこうしようか……これはマスターからの“命令”だ、ソーディアン・アトワイト】
ミトスはアトワイトに不満を入れられぬよう、間髪を入れずそう続けた。
あっけらかんとしたミトスを見つつ、めいれい、とアトワイトは胸中で繰り返す。
そう言われてはどうにも具合が悪い。
コアクリスタルの中で口を少しだけまごつかせながら、アトワイトは溜息を鼻から零した。

『意地が悪いのね、最期まデ』

……本当に、意地悪よ。
ぽつりと呟かれたそれは、怒りと諦観、そしてほんの少しの優しさの響きに包まれていた。
【ハッ! 言ってろ。大体そんなの今更だろ?】
ミトスはそれに気付いていたのか気付いていなかったのか、笑い飛ばす様に言葉を返す。
アトワイトはそよぐ葦の音色に耳を傾けながら、苦笑を零した。
相変わらずね、と一言。

ミトスは醜く、けれど今まで以上にとびきり柔らかく笑ってみせた。

【お前に、四大の空席を与える。お前の瞳から、僕は世界を見続けよう。だから見届けろ。
 僕が辿り着けなかった道の本当の果てに、何があったのか――――――それを僕に見せてくれ】

そういってミトスは外した自らの要の紋をとりだし、震えた指先でかつてエクスフィアがあった場所に近づけていく。
エクスフィアによる毒を抑える為の要の紋ならば、アトワイトに残留する毒にも効果があるか。
ミントの時にも行った手法だが、もう気休め程度だとしても何もしないよりはいいはずだ。
だが、アトワイトにはその行為がまったく別の意味合いをもっているような気がした。
まるで、叙勲式だった。今までと、そしてこれからの彼女の功績を讃える為に。
そして、己が瞳をその水晶の角膜に託すために。

【……“任せていいな”】

断る事だって、アトワイトには出来た。剰え、本当は解っていた事があった。
たかだかどこの馬の骨か分からない剣一本、増えたところで崩壊寸前の組織を纏める事なんて出来はしない。
ましてや戦争を止める事なんて。
けれど、関係ないのだ。そんな理屈くだらない。
ミトスの願いに対する答えは、最初から一つしか存在しないからだ。
ミトスは恐らくアトワイトが言うであろうその唯一の答えに、
ありがとう、なんて高尚な謝辞は言わないだろうし、アトワイトもそんなもの要らないだろう。
彼女にとっては世辞も抜きで、その笑みだけで充分だ。
だから、アトワイトは胸を張ってこの台詞を言える。
704名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/11(月) 23:56:39 ID:7fzQ/77K0
支援
705第七クールβ版(仮題) 8:2010/10/11(月) 23:58:35 ID:upJIorTE0

『勿論よ。私、良い女だから』

マスターとソーディアンの関係なんて、総じてそんなものだ。



【17:56'00】



【記念品だ】
ミトスはそう言うと、エクスフィアと自らのスカーフをカイルに投げた。
緩やかな放物線を描きながら胸の間に着地したそれを、カイルは慌てて掴む。
ミトスはそんなカイルの様子を鼻で笑うと、カイルが握るエクスフィアを顎でしゃくった。
【好きに使いなよ。僕にはもう必要ないし】
アトワイトのコアクリスタルに要の紋を癒着させつつ、ミトスは自嘲する。
『それは?』
ディムロスが訊く。アトワイトに要の紋を装備させる理由はない筈だと思ったからだ。
「形見さ」
ミトスは口の端を吊り上げながら応えた。カイルがミトスへと怪訝そうな表情を向ける。
【冗談だよ。あいつの時もこうしたけど、アトワイトの後遺症を抑えられるかもしれない。
 ま、気休め程度だね。けど、それでも無いよりはマシだろう。運が良ければ、言語障害位は抑えられるさ】
ミトスはそう言い終わるや否や、それよりもお前、とアトワイトを翻してカイルを指す。
その意味を理解しかねたカイルは首を傾げた。
【早く箒に跨がってディムロスとマナを練っとけよ。何時でも出発出来る様に、さ】
疎ましそうに目を細めて夕日を見るミトスは、そう言うとカイルへと背を向ける。

【あぁ、そうそう。言い忘れたけど時計をそこら辺に置いといてくれない? 正確な時間を見たいからね】
カイルは頷くと、ポケットから時計を取り出し、地元に放った。
時計には目もくれない。とてもじゃないが、地獄を指しているだろう長針を見る気にはなれなかった。

「ディムロス、あと少しだけ力を貸して」

自分は、墜ちる為に翔ぶのではない。昇るんだ、帰るんだ。何があっても、あの人の元へと。
『当たり前だ、馬鹿者』
例え翔ぶ為の翼が――――――太陽に焼かれる蝋の翼でも。



【17:56'35】



焦げている。緋色の世界を見て、そう感じた。
空が、地平線が、大地が……そして、未来さえもが。
落ちる日は墜ちる愚直な英雄が世界に投影された物に見えた。
遠く霞む落陽の焔は、何かを迫る様にじりじりと肌を刺す。
噎せ返る様な汗と血と煤の臭いが辺りを包んでいた。
常識を逸脱した熱により液状化し大きく歪んだ大地は、どこまでも奇妙に写った。
先の戦闘に焼かれ、からからに乾いた空気が、双眸の粘膜を刺激して仕方がない。
身体が、痛い。
表面だけでなく、中身も限界近くまで擦り切れていた。
精神もズタズタだった。気を失いかける自分に鞭を打って、精神力を残り一滴まで搾り取る。
重い瞼の裏側に、幻覚が見えた。天使と自分の首輪が爆ぜる映像が、意識の淵で繰り返される。
その隣に、約束した人が墜ちるさまが見えた。
暗い未来を握り潰す様に、明るい未来を逃がさぬ様に、オレは拳を強く強く握る。
本当の終わりは時間じゃない。拳を崩したその時がきっと、デッドエンドだ。

「……終わったよ。何時でも行ける」
706第七クールβ版(仮題) 9:2010/10/12(火) 00:00:02 ID:SNAAEv720
詠唱を終わらせたカイルが呟いた。声は少しだけ低い。
ディムロスはカイルを少しだけ見ようとしたが、やめておいた。

『ミトス、箒の問題はどうする? 正直1エリア分耐えられるかは――――』
『私がサポートするわ。水に圧力を掛けて蒸発モさせない様にコントロールする。
 これなら熱処理問題は解決するでしょウ?』
アトワイトの言葉に成程、とディムロスは唸った。要するに常にユニゾンアタックをする様なものか。
確かに解決はするが……徒に神経を遣いそうだ。ソーディアン2本の操作など、カイルのキャパシティを凌駕している。
だが、それ以外に手が無いならば行くしかない。

【それにだ】

ミトスがアトワイトをカイルに放りながら、少し声を大きめにそう切り出した。
酷使されるだろう未来に覚悟を燃やしていたディムロスは、その声に現実へと引き戻される。

「ちょ、まッ」

カイルは空を割きながら回転するアトワイトを慌てて全身で追った。
“ソーディアンには鞘がない”。
カイルはアトワイトをキャッチしつつ、そんな当然の事すら無視するミトスを怒気を孕んだ双眸で睨む。
【まぁ聞けよカイル。水の圧力と冷却、熱……条件は揃ってる。
 ソーディアンのポテンシャルなら、即席の水蒸気機関を作る事も充分に可能だ。
 まぁ速度がどの程度上がるかは僕には判らないけど、上手く操ればまだ時間はどうにかなるだろうさ】
すいじょうききかん、と小難しい顔をして小首を傾げるカイルを一瞥すると、ミトスは両手を上げながら肩を竦めた。
【残念だけど、馬鹿に説明してる暇は僕にはないよ? それよりアトワイト、チャージだ。
 カイルとディムロス、お前のマ……いや、晶力を最低限だけ残して限界まで全部僕に寄越せ】

ミトスは輝石の周囲に光るEXジェムを、窮屈そうに弄りながら言う。
ミトスはロイドの様に器用ではない。本来、EXスキルは何かをしながら手軽に変えられるものではないのだ。

【限界まで絞れ。死ぬ気で……いやむしろ殺す気で搾り取れ】
「いや殺すのはやめろよ!」
【黙れ馬鹿。どうせもう死んだ運命だ。だったらもう一度くらい死んでみろ】

ミトスは憤慨するカイルを鼻で笑い一蹴すると、セットされたEXジェムを確かめる様に指でなぞる。
【ここまで来ると哀れを通り越して吐き気がするね。お前、知力を低下させる装備品か何か持ってないか?
 そいつを捨てろ。少しは馬鹿が治るだろうよ】
死相を歪めて冗談めかすミトスに、カイルは喰ってかかった。
だが、振り上げられた拳が最頂点で止まる。
「そんなものある訳……………あ」
【…………………? おい、どうしたんだよ。とっととチャージを】
アトワイトのコアクリスタルが一際鈍く光る。ミトスは雲行きが怪しくなった流れに不安を覚えた。
『?? 晶力の伝導率が落ちて…………ちょっと、カイル。貴方、何持ってるの?』
「……………………………………エート、ソノデスネ……」
【………………………………………………おい真逆、お前】
 
カイルの懐からポロリと何かが落ちる。
コロンカランチャカポコと転がり落ちたのは、非常に禍々しい気を放っていた。いたのだが――――――

『カイル―――――――――――後で説教だ』

―――――――――ケンダマダッタ――――――――。

notice:
魔玩ビジャスコア――――――魔将ネビリムを封じた魔装具のひとつ。
攻撃力:変動、知力:−30、回避:100、幸運:−50――――――“知力:−30”。


707名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 00:00:43 ID:h5sFnkmw0
支援
708第七クールβ版(仮題) 10:2010/10/12(火) 00:01:39 ID:SNAAEv720
【お前がここまで馬鹿だとは……こんな奴に負けたなんて末代までの恥だな……】
「そ、そこまで言う事ないだろ!」
『馬鹿者! お前がそれを捨ててさえいれば、知力が上がって戦いが楽になっていたかもしれんのだぞ!!?』
「う……スミマセン」
ディムロスの小言を直立不動で聞きながら、アトワイトを介してTPを根っこから
持って行かれているカイルは何処か枯れ木に残った最後の一葉を思わせた。
戦闘中とのギャップに舌打ちしながらミトスは少しだけ目を細めた。
(だが、あの回避力が無ければ1分保たなかっただろうね。しかも、補正無しのラックで僕<英雄の天運>を上回ったと)
馬鹿さ加減と、本当の意味での“悪運”に喉を鳴らしながら、ミトスは要点を切り替えた。

【まぁ、いいさ。取り敢えずそれを寄越せ。無いよりはマシだ】

差し出された手に、カイルはビジャスコアを渡す。
何に使うのかはカイルには到底分からなかったが、寄越せと言われたら差し出すしかない。
ミトスがビジャスコアを握り、カイルの手がけん玉から離れる。

瞬間、ビジャスコアを握ったミトスの腕が―――――否、“ミトスの腕であり続けようとしていた棒”が落ちた。
けん玉の重さにさえ耐えきれないと言わんばかりの、重力に服従した落ち方だった。
【……フン。まぁ、保った方か】
その自然法則に過ぎる光景を前に一歩後ずさるカイルを尻目に、ミトスは器用に足の指でけん玉を拾い上げる。
ポンと宙に上げて、器用に頭の上に着地させる。
そうしてミトスは何事もなかったかのようにカイルに背を向けた。それが意味する事をカイルは知っている。

【これでもうお前等に用はない。そろそろ餓鬼の顔にもうんざりしてたんだ……さっさと行け。時間が無い】

四秒。
ミトスが背を向けてから過ぎた無意味な時間だ。
おい、とディムロスがカイルを急かすがカイルは動じない。
ミトスは背に感じる痛い程の視線に、馬鹿が、と呟く。
『……カイル?』
アトワイトが心配そうな声をカイルに掛けた。
ミトスは恨めしそうに唸り、頭から下ろしたけん玉を蹴り上げ、振り返る。
崩れそうな表情で上唇を噛むカイルの表情が、そこにはあった。
ふざけるな。ミトスは先ずそう思った。単純に覚えたのは呆れよりも怒りだ。

【おいッ、僕は時間が無いって言ってるんだ!】
なんて面だ……考えてる事が丸分かりだ。これだから馬鹿は。

舌を打ち苛立ちを顕にするミトスを、カイルは真直ぐ見つめた。
ディムロスとアトワイトが時間が無いと咎めるが、カイルはそれを無視して口を開く。
「ミトス、お前は」
【待った】
わざとらしく声のトーンを上げ、ミトスはカイルの言葉を遮った。
たじろぐカイルを尻目に、ミトスは早口で続ける。

【お前には待ってくれてる人が、居るんだろ?】
   ....
……お前には。
カイルは何か言いかけた口を悔しそうに噤むと、への字に唇を曲げ、目を細めた。
マーテルの事を聞くのは、少し酷だと思ったからだ。
同時に、野暮な事を訊こうとした事を少しだけ反省する。
もう諦めて壊した―――――違う、覚悟したんだ。現実に覚悟させられたんじゃない。
きっと、自分から壊す選択をしたんだ。歩いて行くと決めた――――例え、そこに屍があろうとも。

「……うん」
709第七クールβ版(仮題) 11:2010/10/12(火) 00:03:04 ID:SNAAEv720
天使は四千年もの気が遠くなるような間、御丁寧に研き続けてきた自慢の枷を躊躇い無く壊した。
それは、なんて勇気の要る選択だろう。どれだけ辛かったろう。
悠久にも似た苦しみはあまりにも茫漠としていて、カイルには想像もつかなかった。
考えると頭が爆発しそうになり、目眩を覚えたのでカイルは考えるのを止める事にする。
だが、そんなカイルにも一つだけ分かる事があった。
四千年の呪縛から解き放たれた少年の顔が……まるで生まれ変わったかの様に清々しいという事だ。
カイルはディムロスを確りと握り、ミトスを凝視する。
一瞬見せた清々しいそれから険しいそれへとシフトさせたミトスは、焼けた大地にぽつりと置かれた時計を一瞥していた。
ミトスは中途半端な表情を向けるカイルに気付くと、顎で先を促し、心底鬱陶しそうに溜息を零す。

【行け。そして、二度と振り返るな。
 お前の道は僕の4千年でもまだ足りない。一度でも顧みたら、人間の内には届かないよ】

ミトスはそう呟くと、少しだけ儚げに唇の端を吊り上げた。
カイルはこくりと頷き、箒をくるりと右に回転させる。
木々が、これからカイルが受けるであろう試練に恐れ慄き、ざわざわと奇妙に騒ぎ立てた。
からからに乾いた空気が、箒に巻き付いてばさばさと螺旋を描く。
それは英雄を見送るにはあまりにも不気味な演奏だった。
「なあ、何でここまでしてくれたんだ?」
【さぁね。気まぐれと、暇潰しと…………まあ、そんなとこさ】
焼け焦げた地平線が陽炎に蕩け、天と地は紅い化物に飲み込まれる。
血腥い臭いだけが空気に充満し、カイルは吐き気がするような思いだった。
英雄の旅立ちだと言うのに、景色はどこまでも殺風景で冷たくて……
そして……どうしようもなく死んでいた。
そう、間違えるな。ここは生と死の狭間<デッドオアアライブ>じゃない――――確定した死郷<オールデッド>だ。
カイルはきりりとしたその瞳で、森の最果てのその先、待ち人を見る。
そうだ、とカイルは汚い風の中で思った。
それでも自分は此所に居る。汚れても、醜くても飛んでいる。
助けてくれる人がいる。待っててくれる人がいる。言わなきゃいけない事もある。
……後ろなんて、振り返るもんかよ。

【取り返してこい。お前になら――――――――――いや、なんでもない】
「……ありがとう、ミトス」

刹那、カイルは風になった。
その背中に熱い何かを感じながら、カイルは吹き荒ぶ。
まるで未来に吸い寄せられる様に、後ろから押される様に、真直ぐにカイルは翔んだ。
どこにだって、きっかけはある。救われるものがある。誰にだって、譲れない想いがある。
現実がどうだろうが世界がどうだろうが、関係ない。
墜ちる口実のずっと奥には、必ず翔ぶ理由が燻っているものだ。
710名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 00:04:34 ID:h5sFnkmw0
支援
711第七クールβ版(仮題) 12:2010/10/12(火) 00:04:34 ID:SNAAEv720
【死ぬなよ、馬鹿】

ミトスは嬉しそうにそう呟いた。
夕日を居抜く一投の矢の如く翔び去ったカイルの背を見送り、傍らで虚ろに光る懐中時計を一瞥する。
未来。死のデッドラインが現在に届くまでまで――――――――あと、170秒と少し。






















――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――準備、終わった?

 時間はたっぷり上げたよ。私からの出血大サーヴィス。いや実際は出てないけど。

 陣形は万全? 駒のコンディションは想定内? 保険は重ね掛け? 懐のナイフはちゃんと聖別法銀? 戦略戦術抜かり無し?

 ああ、そう。準備イズカンプリィション? それはそれはとてもとっても重畳々々。

 よかった――――――――――――――――これで“必死こいて積み上げたモノが全部ブッ壊れても文句ないよね?”



 嗚呼ァァァあああアあァAaaAAAあああああああッッッ駄目だ駄目駄目、全ッ然駄目だね!
 何をするかと思えば下らない塵手! その程度の悪足掻きで一体何が攻略出来るって? ええ!?
 24時間、1440分に88400秒ッ。人類に、生命に、否無機物でさえもッ、万象等しく縛られなければならぬ絶対の法ッ!!
 その壁に蜉蝣が一匹立ち向かったところで寿命が幾ら変わると?
 ハッ! 笑止! 羽虫が一匹騒ぎ立てたところで、時間という絶対の魔法<タイム・リミット>は壊せないッ!
712名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 00:05:44 ID:h5sFnkmw0
支援
713第七クールβ版(仮題) 13:2010/10/12(火) 00:05:59 ID:SNAAEv720
 だが! そう、だ・が・し・か・し、だ……このベルセリオスの揚げ足を取り、尚且つ抗うその覚悟、自信や良し。
 乞食じみた手にズル賢い事この上無い攻め、ああ結構じゃあないか。
 あすこでオッ死ねば多少は見てくれ良く終われたのになぁ。
 そりゃ最早成りも振りも構ってられないよなァ。無様に這い蹲っても生かしたいよなぁ?
 くくくッ、いやそう考えると面白い! 意地でも“私”に勝とうとする気持ちが透けて見える様で実に良い!
 結構結構。そうではないと心の折り応えがないというものッ!
 希望の暗示、最期の反抗、限界を超えた努力の結晶ッ!
 導き出される手は那由他不可思議無量大数の内、たった一つ!!
 ああ成程それはまさに、陳腐な言葉ではあるが一般的に言う“奇跡”と呼ぶに相応しいだろうよッ!
 お前ら“希望側”がいつも最後に縋るのはそれだ。私も、だァい好きだよォ?
 だって……その手が決まる寸前、王に喉元に刃を当てた瞬間、絶頂に達する刹那、希望の爆発的快感。

 “それを唾を吐き掛け粉々に捻り潰すのは、磨き上げ終わった玉を本人の目の前で笑いながら踏み砕くのは、さぞかし愉快な事だろうからなァ?!”

 さぁ、これで終わりか? 違うだろ? まだまだ隠し持ってんだろ? こんな安手だけじゃないだろ?
 次はどんな手で来る時の紡ぎ手? 常に全力で来いよ、さもないとその瞬間に終わらせるよ?
 貴様が積み上げた努力・叡智・戦略。どんな手でも一つ一つ丁寧に微に潰してやろう。最後まで、何一つ残さずね。
 オセロといっしょさ。お前らが白く白く積み上げれば積み上げるほど、それが地面に墜ちた時に裂く柘榴は真っ黒に熟れる。
 その傲慢ちきな表情が屈辱と絶望の色に染まると思うと、実に痛快だッ!
 結構! その鬼をも畏れぬ指し手、実に結構ッ! これだからバトルロワイアルはッ!
 乗り掛かった愚船だ、朽ち果てるその時まで付き合おうッ!

 ……ジャッジ、判定者サイグローグ。“通し”だ。“私は―――――絶望側はこの手を認めるッ!!!”

 ククククッ! 了解しました。これより、第七最終戦――――B3撤退戦を開始します…………ッ!!

 一流のプレイヤーはチェックメイトを悟った時点でリザインする。
 徒に盤を掻き回すことは恥であり、未来を読み切れぬ自らの無能を示めすことに他ならないからだ。

 さぁ始めるよド三流? 自らの無能、その醜悪―――――――臓腑の底から絞り出せ!!


――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――Turn Shift
714名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 00:08:51 ID:szDg/IsK0
支援
715第七クールβ版(仮題):2010/10/12(火) 00:15:01 ID:SNAAEv720
第七クールβ版(仮題)はひとまずここで投下終了です。続きは来週に新スレにて。

そして運悪くスレ立て規制でした。どなたか頼みますorz
716名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 00:25:15 ID:hqpPGzGd0
投下乙!!
感想の前に新スレ。読みこんだら感想改めて書く。

テイルズ オブ バトルロワイアル Part17
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1286810498/l50
717名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 10:05:22 ID:8I3MAdE80
久しぶりの投下乙!

無茶苦茶続きが気になるな
来週が待ち遠しい
718名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 20:22:48 ID:hqpPGzGd0
なんという生殺し……ッ
来週まで時間跳躍してくる
719名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/16(土) 07:23:55 ID:+aCYCcq20
お待たせいたしました。今晩、7時以降に投下いたしますので支援をよろしくお願いします。詳しい時間はまたお知らせいたします。
720名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 20:44:14 ID:ygRJlmTz0



【17:57:15】



枯れ禿げた荒野に徐々に緑が目立ってくるのは、徐々に戦域を離れつつある証だ。
死より生へと近づく道。なのに、咎人を祓う煉獄を思わせる大空にカイルは強い眩暈を覚えた。
世界を刻々と染め上げる茜色自体に、まるで重さがあるかの様だった。
時間という名の、どうしようもない壁が、上からじわりじわりと切迫する。
勝利にそぐわぬ暗過ぎる現実に息が詰まる様な思いだった。
……だが、それでも。
『過熱か…………アトワイト、もっと冷却速度を上げろ!!』
『やってるワよ!! だけど、下手に出力を上げたら凍る。その意味が分からないワけじゃないでしょ?!』
『チィィッ……』
焦れるのはカイルの後腰に交差して固定されたディムロスとアトワイト。だが、それも無理からぬことだった。
アトワイトがラジエータとしての機能を担ったことによって、再び飛行可能になった。
もう飛べないとさえ思っていたことを考えれば、感謝こそすれ怒りなどあるはずもない。
“だが、足りないのだ”。実際、今現在の速度は戦闘時の6割弱。とてもではないが、音速は超えられない。
ディムロス達にそのエネルギーが無いわけではない。それを受け止められるだけのキャパシティが箒に残っていないのだ。
ミスティブルームは魔法の“箒”―――植物だ。火力が強すぎれば、燃える。
それを抑える為の冷気とて過ぎれば凍る。そして凍った植物は脆い。なにより、火力そのものを減じてしまっては元も子もない。
つまり、どちらの力が強すぎても箒にダメージが入ってしまう。
それを避ける為には、絶妙なバランスの熱機関サイクルが必要だ。しかし、
(……分かってたけど、処理速度が落ちてる。限界を越えた経験が裏目に出るとはね……)
エクスフィアを失い能力を落とした(正確には元の水準まで戻った)ハードと、限界を越えたハードを動かしてきたソフト。
その二つの齟齬がアトワイトの総合能力を若干――――だが、確実に落としていた。
なにより、あまりにも対極過ぎるマスターに率いられてきたアトワイトは、その性能を完全にカイルと同期できていない。
そして、それを理解しているからこそ彼女は自らにリミッタ―を掛けることで辛うじてアジャストしているのだ。
全ては必然とした理路の整然――――故に、全力が出せない。


<――――詩に曰く、将を射んと欲すれば先ず馬を射るべし。序盤<ギャンビット>は素直に。さあ、どう出る?>


秒単位で減速していくのを錯覚するディムロス。エンジンを廻しているからこそ分かる致命的損失が、彼の眼に映る距離を無限に延ばしていた。
『くぅ……もう、無理、なのか』
『ミトスが何とかしようにも……これではもう…間に合わないかもしれないわね』
ソーディアンの口から僅かに、しかし濃密過ぎる感情が洩れる。
覚悟はした。立ち向かう覚悟も、受け入れる覚悟も。だが、今回の相手――確定した運命――はあまりにも悪過ぎる。
「諦めない……まだッ、こんな所で!!!」
『『!?』』
それさえも吹き飛ばさんほどの意思が、ディムロス達を伝う。
幾度となく運命を乗り越えてきたカイルにとって、それは意思を挫くものには成り得ない。
向かうべき場所、求めるモノが見つかったのなら、後は唯突貫するのみなのだから。
カイルの皮膚を赤銅の覇気がうっすらと纏う。
そしてそれがディムロスとアトワイトにも伝わり、輝きをを介して繋がり合う。
そう、それは魂魄の輝き。限界を超えるという意思の具現。天使を、英雄を乗り越えたスピリットブラスターが、今運命を―――――――




721名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 20:46:05 ID:ygRJlmTz0
<宣言―――――――――敵手強制破棄≪インバリット・アタック≫>


――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――

 下座の仕掛けた一手が、黒き一閃にて斬り裂かれる。
 無惨に散る展開の裂け目から、ベルセリオスが凶悪な笑みを浮かべた。
 「何度も何度も黙って通すと思った? 莫迦が。
  お前も分かってたろ? どっちでもいいって、どっちが勝っても問題ないって。
  だからさぁ“こいつがソーディアン2本持って脱出に足掻くパターンは想定済み”なんだよおおおおお!!!!」
 ベルセリオスの背後から黒き渦が現れる。処刑<エクセキューション>。それは、あらゆる希望を赦さぬ、闇の絶望。
 「一番最初に炎剣がSBを使用したのが2日目深夜。そして今3日目夕方2度目のSB使用。
  つまり“SBの再使用には少なく見積もって12時間以上の溜めが必要だと言える”」
 ベルセリオスは至極真っ当な理屈を振りかざして、水を差した。
 闇の圧力が、論理という名の重圧が一切合財を押しつぶす。夢も、希望も、事実の前にはチリに同じ。
 「絶望手、受理しました。
  下座は本手を撤回するか、絶望手を上回るロジックを、溜めを要さずに発動てきた理由を提示してください」
 ジャッジの裁断が、更に希望を締め上げる。ジャッジは公平にして絶対。そこには一切の憐憫も同情もない。
 だが、サイグローグは内心でほうと嘆息をついた。
 ルールには秘奥義は回数縛りがあるが、SBやOVLにはそれがない。
 加えて言えばクライマックスモードと違い使用間隔制限も提示されていない。
 その気になればSBを根性で発動した、という理屈で強引に突破することも不可能では無い。だが――――
 ビタ、と女神の手が止まる。強引に歩を進めようとしたその運指が、凍りついたように止まった。

 「気付いたね? 偉い偉い。後一歩前に進んでたら、終わってたよ?」

 ベルセリオスが女神の筋肉の硬直を恍惚に見つめる。知能の無い獣ではこうはいかない。
 今この瞬間だけに囚われるモノには、プレイヤーたる資格すらないのだから。
 「後一歩で、睾丸潰されても牛がグチョグチャの挽肉未満になっても本気を出せない糞野郎に墜ちるところだったのになあ?」
 そう。それでは海神戦でSBを使わなかった理由が説明できない。
 あれだけの辱めを受け、それでも立ち上がってなお本気が出さなかったということになってしまう。
 いや、それどころか、これまで炎剣が立ち向かってきた全ての危機にたいして手抜きしていたという主張さえ罷り通すことになる。
 そしてそれは、英雄と成ろうとする駒に永遠に消えぬ傷を付けることになるだろう。
 見事、とサイグローグは素直に感心した。退けば地獄、進めど煉獄。
 僅かばかりの逃げ道さえ潰すベルセリオスの指手は合理かつ盤石、精密にして悪辣。
 それこそが上座の、ベルセリオスの骨頂だ。その仕手によって、何匹の獣が葬られたことか。
 硬直は一瞬。だが、それこそが儚き道を刹那に砕く。
 宇宙を統べるロジックの細網が、傷んだ蝶を絡め捕る―――――――

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――Shift Break




722名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 20:47:23 ID:ygRJlmTz0
――――――覆すほど甘くは無かった。
「ガッ……」
『カイル!?』『……内臓機能と代謝機能低下……余剰のグリコーゲン、殆ど無い……何これ、酷使し過ぎでしょ!?』
口元から血にもなれない薄い唾がカイルから漏れ出、スピリットブラスターの気流が淡く霧散する。
驚愕するディムロスを脇目に療兵の本領で分析を行ったアトワイトは呆れたように呟いた。
時間が無いため簡易のメディカルチェックではあったが、カイルの疲労がどん底を三層ほど打ち抜いた状況であることだけはハッキリしていた。
昨夜のE2城から数えてもロイド、クレス、シャーリィ、そしてアトワイトとミトス。僅か24時間足らずの間にこれほどの激戦があった。
そう幾らカイルの心が、魂が強かろうとその器は15歳、未だ成長途上の肉体なのだ。
精神が肉体を凌駕すると言えば聞こえはいいが、その精神は肉体の健全より育まれるのも事実である。
『労働基準法を無視しているって次元じゃないわよこれ……ディムロス、貴方……』
『言いたいことは山ほどあるが、とりあえず、基準を天使に置くのだけは金輪際止めておけ!』
ディムロスの反論は至極もっともだった。加えて言うなら、そのボロ雑巾の身体の僅かなエネルギーもミトスがチャージで奪ってしまっている。
二刀は言い合いにはならなかった。そんなことは死んでからでも遅くは無い。
しかし、カイルさえも口を動かせない本当の沈黙は、二刀の中で燻っていた意識を思い起こさせるのに十分だった。
分かっていたこととはいえ、現実の壁は厚過ぎた。
元々無理で当然、死んで必然の挑戦だ。合理を是とする軍人としての思考が、燃料を全て使い切って尚燃えようとする主の痛々しさに鎌首もたげる。


――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――
723名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 20:48:05 ID:ygRJlmTz0

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――

 「そら、鈍ったよ。鴨撃ちだ」
  動きの止まった英雄に、ベルセリオスが畳みかけるように絶望を霰と降らせる。覚悟なんて移ろう蜃気楼に過ぎない。
  こうして流れを淀ませれば自ずと揺らぎ、勝手に崩れていく。一体幾つの駒が、その色を保てたと思っている。
 「正直さ、よく頑張ったと思うよ?―――――――だけど、もう無理だ」
  畳みかけるベルセリオスが、目元をひん曲げて謳う。
 「軍人の駒動かしてるんだからさぁ、冷静な判断ってのをしなよ。
  マスターは青息吐息。エネルギーは乏しく、私がSBの線を潰した今、加速する手段が無い。
  そもそも加速出来たところで、時間が足りないって話はとっくの昔だ」
  聞き分けのない子供をあやす様に、ベルセリオスが優しく語る。
 「ほら、簡単だろう? 理由もハッキリしている。むしろ諦めない理由が無いくらいだ。
  だからさ、そんな“えせソーディアンマスター”なんて護る意味が無いって」
  わざわざ敵にチェックメイトの流れを説明されなければ分からないとは、今までの評価も雲散霧消だ。
 「それとも何? 無茶でも頑張るのが美徳とか思ってるクチ? 
  何人間気取ってんの? 無理だって。そういや、この炎剣だって言われたんだよ。元相棒にさ。なんて言われたと思う?」
  目線、手筋、話術。そのどれもが“絶望”に集約する。少しでも、ほんの少しでも壊れてほしいと、折れてほしいと願うように。
 「ウルセェオマエミタイニニンゲンヤメタヤツニナニガワカル―――――――――グフヒャヒャッハァ!!。
  いや正しいね、流石英雄(笑)。どーせ人間じゃない無機物とか神なんざに、人間の不合理は理解できないんだからさぁ。大人しく“理”に縋っておけよ」
 まるで人間以外を下等と詰る様に、ベルセリオスは盤を、下座を見下す。
 「もうさ、いいじゃない。最善は尽くしたんだからさ。ここで死んでも誰も文句は言わないって。
  アレだろう? あんまり駒が成長目ざましいから、ちょっとグラァってキタんでしょ? 
  ひょっとしたら何とかなるんじゃないかって、思っちゃったんでしょ」
 力の限りを尽くして、それでもまだ足掻くなんて無様過ぎて泣けてくる。
 「無理だから。相手が魔王とかなら分かるけどさ。“現実”相手じゃそれも限界ってね」
  無理。この二文字ほど今の状況を集約する言葉なあろうか。理が、策が無ければ、根性だけでは徹らぬものがある。
 「だから、ね? 最後のチャンスだ―――――――――大人しく負けとけ」
  ごり、と逃げる駒に絶望を叩き込む。ベルセリオスの言う通り、状況は初手から既に女神の負け。一手潰れれば、覆す奇跡さえも願えない。

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――

724名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 20:49:54 ID:ygRJlmTz0
やはり、無理なものは無理なのか。ディムロスの中で封じられていたモノが目覚めかける。
戻ったところで、その後のカイルはしばらくはまともに戦えない。ミクトランに対抗する為の手段もハッキリ言って未計画。
所詮は、この足掻きさえ遥か天上より見下ろすミクトランの余興にしかならないのではないか。
自分でも信じられぬ程の弱気……いや、理由は薄々分かっている。
自分には、共に死んでくれる“つがい”が直ぐ傍にいる。その僅かな満足が、死を微かに甘くしている。
(なんと、脆いことか……カイル、俺は――――――)

ディムロスの煩悶が電気信号と化す直前、物理的な振動が刀身を伝った。
カイルの手の震え、服を通じて伝わる汗の冷え。

「まだだ……まだ、諦め……ッ!!」

それは、雁字搦めにされた獣の咆哮だった。意思だけは折れぬのに、身体が、世界が言うことを聞かぬ。
言の葉と裏腹にぼたりとカイルの口から零れる一滴の雫。
それは汗よりも苦く、血よりもくどく、脳髄よりも塩辛い。
希望に満ち溢れた少年の、末期の一滴はどんな美酒よりも糞不味い。だから良いのだ。

(……だと、言うのか……ッ 無理なものは、何処まで行けど無理だというのか……ッ!?)



<希望側、受け手無――――――「宣言。自手修復≪リカバリング≫」>――――・――――・――――Turn Shift



―――――――――――――――ふざけんなよ! ここまで連れて来ておいて、そんな無責任なことを言うなよ!!

(ッ!?)
カイルが吐き出した特濃の呪いにディムロスは心の底から憤慨する。
ここまでの現実を直視してなお、立ち上がろうとするカイルに自らを恥じる。
(俺としたことが、何を迷っている。こんな時、スタンなら折れたか……否!)
神の眼、空中都市、ベルクラント、そしてミクトラン。千億の絶望を前に屈しなかった我が相棒。
奴ならば、この程度の壁程度で躊躇しなかったと確信する。
だったら、カイルは? ありとあらゆる英雄の形を超えていかなければならないカイルが、
“スタン=エルロン如きが超えられる壁”程度に躊躇していいと思うのか――――――――

『っつ、ざけるなァァァァ!!!!!』
『「!?」』

――――――――――俺、頭良くないせいかさ、聞き分けも悪いんだ。だからどれだけ無理だって言われても、納得できない。
『なんだカイル、その弱弱しい音は!? まさかこの程度の障害で折れようとしているのではあるまいな!?』
ディムロスがカイルを叱り付ける。いや、自らが弱さを吐くことでその醜悪を具現する。
『お前は莫迦だろう!? 何を聞き分けの良いことをッ!? その程度の無理に今更何を納得している!!」
ディムロスが叫ぶ。カイルの弱さを、そしてなにより自分の弱さを壊すように。かつて奴がそうしてくれただろうと。
「……ディムロス」
『天命にお前自身を譲るな!』
それは無知であり、短慮からくる無能だったかもしれない。百人見れば百人笑い、千人聞けば千人が嘲る愚劣さだろう。
だが、だからこそなのだ。だからこそ奴は絶望と向き合えた。その中でも消えないものを見出せたのだ。
『なんだその震えは! 笑わせる! ならば何故お前の心臓は今ここに動いている?
 足は、拳は、脳は、何故そんなにも必死になっている!? その双眸は、何故前を見るッ!』
思い出せ。天地戦争の頃も、その千年後も、きっとその18年後でさえ、何時だって絶望はあった。それこそが今更だ。
その時に自分が何を言われてきたか。カイルに、そして、スタンに。
725名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 20:50:58 ID:ygRJlmTz0
――――――――――ディムロス、お前の本当の気持ちを聞かせてくれ。軍人としての判断じゃなく、お前自身がどう思っているのかを。
『何故ミトスを超えた。何故命を賭け、傷を負っても生き延びた。傷みは、疵は、お前の体に刻まれた歴史は決して嘘を吐かんッ!!
 お前の歴史は、まだ生きたがっていたではないか!“もう”ではない!“まだ”……“まだ”だ!!』
人間だから時に膝を折ることもあるだろう。だが、膝が折れるのはそれまで立って頑張ったからだ。
真なる絶望は本当に本当に頑張った者にしか得られない。そして、本当に本当に頑張った者は、真なる希望を得る資格がある。

――――――――――“お前は剣の形をしているけど、人間だろ”? そんなお前はこの状況をどうしたいんだ?
魂の底から吐き出た絶望。だが、その更に奥にある希望―――――――それこそが、人間を人間たらしめる。
傷を、歴史を辿り、そして思い出せ。絶望を乗り越える、現実を超えた始まりの願いを。
『帰ると約束したのだろう! ならば!!』
「―――――――――――――ああ、勿論!」
陰っていたカイルの顔が上がる。
「そう、全部呼吸するよりも簡単な事だったんだよね。俺は運命なんかに俺を譲らない。あの人と……約束したんだからさ!」
“運命に抗う”。もとよりそれはカイルの専売特許。思い出せば、後は水を吸うがごとく。
戻るって、言ったんだから。だったら……
「……守らなきゃ。帰らなきゃ、生きなきゃ! ああそうさこんな所で死んで堪るかよ!
 こんな、こんな……こんなちっぽけな現実に俺の世界が止められて堪るもんか!」
『ならば前を見ろ。行け、超えろ! 翔べカイルッ! ブチ壊せ、英雄カイル=デュナミス!!!!
 五臓六腑に全神経、四肢から手足の先まで死ぬ気で動かせッ!!!!!
 この程度の絶望に屈するようでは、ミトスはおろかスタンさえも超えられないぞ!!!!』
「ああ、俺の歴史を勝手に終わらせなんかしないッ! まだ、諦めるもんかあァァァァァァッ!!!!!」
千年前に棄てて、今取り戻した我が人間の性。みすみす奪われてなるものか。


真なる絶望? 笑止、あのバカの血を引くこの真のバカを諦めさせたければその3万倍は持ってこい!!


『アトワイト! 晶力の出力データと箒の熱サイクルデータをこちらに回せ!!」』
ディムロスがアトワイトに声をかける。その声は今までと同じ冷静さを持ちながらどこかが僅かに違う熱を帯びていた。
『いいけど、次はどんな無茶をするツもり?』
『無茶が前提か……いや、強ち間違っていないなッ』

――――――――――――――だったら、一緒に考えよう。やれることは全部やってやろう。
              お前と本当の意味で協力し合い、この世界を守る方法を見つけたいんだ。
やれることは、全てやる。絶望するのはその後でいい。
そして今やれることは、カイルを護る為に本当の意味で“協力”することだけだ。

『カイルとのリンクを切れ。コレットやミトスはともかくカイルと今直ぐ同調はできまい。全力で排熱に注力しろッ』
『そんなことしたら今度こそ箒が壊れるわよ!?』
驚くアトワイトに、ディムロスはさも当然のことのように吠えた。
『問題無い。我が、全てをマニュアルで調整するッ!!』
カイルに2本を器用に操れという方が土台無理なのだ。ならば、自身が中継点となることでその負荷を軽減させる。
『……言い争う時間も惜しいわね。カイルのバイタルも渡すわよ。任せていいわね?』
『すまんな。その代わりエスコートは任せろ』
諦めたように、アトワイトは自身が管理していたデータをディムロスに流す。
こうなった時のディムロスが梃子でも動かないことを彼女は知っていた。
『了解。カウント5からMAXにするわよ。恥をかかせたら許さないから』
そして、こういう時のディムロスが期待を裏切らないことも。
「ディムロス……」
『まったく、見所があるかと思えば抜けも多い。まだまだ未熟だな。戻ったら覚悟しろ、骨の髄まで鍛え抜いてやる』
申し訳なさそうなカイルに、ディムロスが呆れたように呟いた。志高くとも器は幼い。
『だから―――――――ここは預けろ。お前が見出した路、今は俺達が切り拓こう』
「うん……お願い!!」
なんとも。例えリーダーの役を辞めても、まだまだ自分の役割は多そうだ。
726名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 20:52:09 ID:ygRJlmTz0
『5』
『聞こえているだろう、見えているだろうよ、ミクトラン。
 死が定まってなお無様に生き足掻こうとする我らを見下ろして、さぞ気分が良かろうな!!』
黄昏の天空にディムロスは吼える。かつてパートナーだった英雄のように、少し前世界に吠えた黒翼のように胸を張り、高らかに。
『4』
「だがそれもだけ今だけだ。俺達は決してあきらめない!!」
気力を振り絞り、カイルが言葉を紡ぐ。口に出せば意味と成る。そしてそれは、カイルの心に力を与える。
『3』
『どれだけ難しくとも、どれだけ苦労しようとも、必ず“そこ”まで辿り着く!!』
それは決意でさえなかった。高められた意思が紡ぐは絶対の未来であり、ならば既に勝利は約束されている。
『2』
「地面に根を張る植物のように、しっかりと生きている俺達人間の強さ!」
天空を、異界の狭間を超えた先の王に、いや、その向こうの絶望そのものよ。目に、耳に、心に刻み尽くせ。
『1』
「『必ず思い知らせてやる、覚えておけ!!』」
幾千幾万の絶望にさえ屈さぬ一なる希望―――――それこそが、英雄の力なのだと。

『行くわよ……出力全開!! セット、ブリザード!!』
『イクティノス、技を借りるぞッ! セット、エクスプロ―ド!!』
ディムロスとアトワイトのコアクリスタルが輝き、赤と青の力が箒の中に注がれていく。
絶対零度と無限熱量が相殺、増幅されていく炉心は最早極小の恒星に等しい。
その中心に座して熱量を制御するディムロスの負荷は想像を絶する。
だが、ディムロスはそれを成していた。アトワイトと、そしてカイルの意思を受けて自らの力を相乗する。
安ッぽい男の意地と、一番最初にこの血の通わぬ剣を相棒と言ってくれたスタンへの借りを以て、臨界点ギリギリで安定させる。
『『コアクリスタル二重起動<ツインリンクユニゾン>――――――ゴッドブレス!!!!!』』
反発する二つの属性が混じり合い、気流と蒸気が螺旋に渦巻く。
「物語は!」
『ここから!!』
『始まるッ!!!』
限界。現実。運命。バトルロワイヤル。
この刹那に、そんな陳腐なものにどれだけの意味があるって?
そんなもの、紙よりも薄くて空気よりも軽くて、豆腐よりもずっと脆い。
「運命を!!!」

―――教えてやるよ。息をするのよりももっと簡単な、奇跡の起こし方!!

『『「ブッッチ抜けええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇェェェェェェェェッッッッ!!!!!!」』』
火と水より生れし神の息吹が箒を、カイルを南へと押していく。
風をベースとしたその推力は今までの火力よりも安定し、耐熱的にも箒への負荷は小さかった。
アトワイトとディムロスを重ねたからこその、理想的推進力が少年を未来へと進ませる。だが、
『…………汲めて8割…………これでも足りんと言うのかッ!!』
箒の耐久力。カイルの負荷。それら全てを帳消しに出来るほど都合よくはない。
最高速度の8割。それがディムロスに引き出せた、限界の限界だった。
全力を出しても間に合わない時間だというのに、これでは、とても。
『諦めないで。ここまで出来たなら、きっと行ける』
アトワイトが、ディムロスを激励する。根拠のない気休めよりも密度の高い音だった。
『貴方がカイルを信じているように、私も信じてる。
 カイルが全力で走れば間に合うと言った時、言ってたわ。“僕じゃあるまいし”間に合わないと。
 私のマスターなら、不可能を可能にできるかもしれない。カイルに超えられないものを、超えられるかもしれない』
『時空剣士―――――まさか、狙いは――――――』
ディムロスが固唾を呑む中、アトワイトは天を仰く。
こちらで出来ることは全てやった。あとは天命を待つしかない、天の御遣いが運命を捻じ曲げるその瞬間を。
727名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 20:57:22 ID:kixU5Mxw0
――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――Turn

 「修正手を受理……通しです」
 サイグローグの宣言と共に、先ほどまでの熾烈な駒音が止む。
 静止した盤上には首の皮一枚でギリギリ、しかし確かに上座の攻めを受け切った炎剣があった。
 南方へ前進する炎剣を疎ましそうに見つめていたベルセリオスが、舌打ちと共に下座に向き直る。
 「チッ……やってくれたね。この手筋、あの剣を非人間扱いした私への当てつけかい?」
 ねめつけるような視線を受け流す様に下座は無言を貫き、やがてベルセリオスは諦めたようにどっぷりと椅子に沈こんだ。
 「フン……まあ、いいよ。ここまでは所詮前戯だしね」
 サイグローグは顎を擦りながら、盤を精査する。
 「どうする? こっからなんだよ。貴方が本気で私の包囲網を破るなら、こっちをなんとかしないといけない」
 ベルセリオスの組んだ炎剣脱出不可能のロジックは大別して二つ。「速度」と「時間」だ。
 速度を出せないから、間に合わない。そして“速度を出せても時間が無いから”間に合わない。
 「さあ、見せてみろよ。時間を、世界遍く通ずる絶対の法を破る、神の奇跡を!!」
 「言われずとも」
 女神が駒を掴む。それは先ほど引きこんだ、傷んだ天使の駒だった。

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――Shift



【17:58'30】



彼女の願いが空を渡る頃―――――――――――――彼女の主はけん玉遊びに興じていた。
飛行機、つばめ返し、円月殺法、世界一周etc。
唯一残った足指をまるで手のように扱って回し、時には蹴り上げて中空に弄ぶ。
宙高く昇った珠は酷く窪んだ眼窩から覗くと、まるで三つ目の月のように見えた。
遊ぶなんて、それこそいつ振りだろうか。顔を動かす体力も惜しいミトスは心で苦笑した。
(多少行く先が違っていたら―――――――僕も、こんな風に遊べたのかな)
ミトスは目を細めて、ほんの少し前の過去を思い出す。リアラが語った自身のIF。
そこには、ミトスにも友達がいたらしい。けん玉を遣うハーフエルフの子供が。名前を、確か――――
(悪いね“ジーニアス”。何処で死んだか知らないけど、僕にはとんと意識が無い。
 怨むなら僕の初期配置だけ弄った指し手を怨んでくれ。お前とは、遊んでやれそうもない)
けん玉を弄ぶのは名前しか知らぬ同族への惜別か。
その真意は兎にも角にも、中空に浮かぶ4つの球体の内、赤き太陽は消え失せようとしていた。

(そろそろか。バカ共の首尾は分からないのがもどかしいけど…………仕方ないね)
【スキル起動。キープスペル、スペルチャージ、リズム、スピードスペル】

ミトスが自らの輝石に意識を通す。輝石を安定させる要の紋を敢えて捨てることで、逆にリミッタ―を壊す。
要の紋もアトワイトも無き今、これが正真正銘最後の技錬。
正直に言えば使用したいスキルはもっとあるが、無いものを強請るほど子供ではない。

【− ・・−− −− −・−・ ・−・ ・−−・・・・−−・(日月星。昼夜の狭間、黄昏の一番星に並びし天の三精よ)】

ミトスが詠唱を始めると共に、足指と剣玉の動きが速度を増していく。
口の殆どを失ったミトスのそれは字義的な意味で詠唱ではなかったかもしれない。
だが魔術の本質は世界、そしてマナへの語りかけだ。必要なのは集中と意思。
それさえあれば、例え舌を切られても何かを護ることができる。

【−・・− −−−−・− ・・−・・− −・・ ・・− −・(休生傷社景死驚開。道に惑う旅人を導く地の八門よ)】

剣玉の珠と糸と剣先の軌跡が、立体の陣を刻んでいく。
それはミトスが刻んだ中で今までで一番複雑で、一番美しい紋様だった。
何が自分をここまで駆り立てているのか、その意味を問うように彼は世界に呼び掛ける。

【−・ ・−−−−−・− ・・−・・  −−・ ・・・−−・(掛けて二十四、人の運命を廻す歯車の速度よ)】
728名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 20:58:03 ID:kixU5Mxw0
ミトスには分かっていた。もう、カイル達は間に合わない。どれだけの速度で走ったところで夜は来る。
ギンヌンガ・ガップ―――死都ニブルヘイムへと通ずる魔界の門は奴の運命を呑みこもうとその顎を開き始めている。
だが、自分ならば。その開門を僅かに遅らせることができる。

【−・・−−− −−・−・・−・ ・−−・・・・−−・(天地人。その源流、命数を掌握せし王よ。
 契約者―――時空剣士・ミトス=ユグドラシルが、失効たる契約に敢えて今此処に願い奉る)】

カイルのエネルギーを奪っても、その回復は微々たるもの。
肉体はどころか、霊的器官が潰れかけている今、初級魔術でさえも放てるかどうか。
優良種たる血を失いてマナはろくに視えず、剣士を壊し剣も握れず、五衰近付く今天使でさえない。
アトワイト無き今晶術は使えず、ハーフエルフとしての属性魔術も使えず、天使でなく天使術は使えず。
“だからどうした”。
我が名はユグドラシル。これでも一度は世界を救った、世界の支配者。
魔剣が無かろうが、たかが人一人の運命――――――――――――捻じ曲げられなくて、何が時空剣士か!!

故に、それはミトスが使える最後の魔術。
ミトスの周囲に12等分に刻まれた真円の魔法陣が4枚発生する。



【17:59:――――その慈悲を以て、彼の運命を“稼げ”―――――――――――テトラスペル・タイムストップ×4!! ――θθ】



秒針が12を刻んだ刹那、世界はその心臓を止めた。


――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――Turn

 「こ、この手は……ッ!!」
 さしものサイグローグも盤上の光景を見て絶句する。白と黒しかないモノクロームの中で更なる灰色に切り取られた世界。
 タイムストップによる時間停止。しかも、それを4枚重ねで発動を狙うとは。天使を最後の最後まで生かしたのは、この為か。
 サイグローグはこの様な手を下座が用いるとは思わなかった。予想だにしていなかったというのもあるが“そもそも不可能だからだ”。
 今までの手筋から考えて、この戦法には絶対に無理な理由が存在している。
 (どうするか、ここは私が指摘するよりないか――――)
 だが、そんなサイグローグの思惑さえも切り裂くように、下座の美しき指先が更に動く。
 見惚れるような道化の視線には、ベルセリオスの歪む唇は映っていなかった――――――――

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――Shift



【--:--:--】
729名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 20:58:43 ID:kixU5Mxw0
「ディムロス、これッ……」
剣山の如く突き立つ草木。固着する大気。停滞する光の速度。
音よりも光よりも早く変貌した世界に、カイル達は驚愕をせざるを得なかった。
世界から命を奪いきったような灰色の世界は、水迷宮の悪魔が<時>を奪う現象そのものだ。
『ストップフロウ……否、タイムストップか!? だが、何故我らが入門している!?』
クライマックスモード、そしてタイムストップ。
マーダーに、そしてミクトランに抗う者達が何よりも警戒していた現象が、今眼の前に展開している。
だが、この世界に於いてこの状況はあり得ない。
ミクトランがマナを操作したのか、この世界には微小かつ悪質な制限――――“術対象敵味方識別無効”がある。
敵味方の区別が無いこの世界のタイムストップにおいて、その中で動けるのは術者だけのはずだ。
だが、カイル達は認識している。自分達が時の止まった世界を動いていることを。
何故か。人の身体だった頃なら頭を抱えていただろうディムロスは頭を捻りながら周囲を見渡す。
やはり、自分達以外に動くものは無い。まるで、自分達が世界から守られているかのよう――――――
『アトワイト、お前、その光は』
そこでディムロスは気付いた。自分達を守る“何か”。その中心がアトワイト……否、そこに装備された鉱石であることに。
『これ……ミトス、貴方……』
要の紋。ミトス=ユグドラシルが天使に墜ちた時より彼と共にあった、輝石と対を成す最古の宝石。
その宝石に直に触れて、アトワイトは改めて理解する。
自分が託されたモノの重み。そして、それを託してくれたという信頼。
(安請合いするんじゃなかったかしら。こんなに重いものだなんて、思わなかった)
だが、その胸中とは裏腹にアトワイトの意思は漲っていた。
(任せなさい。貴方の願い、未来の果てまで届けてあげる)
要の紋の光と連動するようにアトワイトの刃が煌めく。
コレット、そしてミトス。二人の天使と同調してきたその経験、能力を全力で解き放つ。
エクスフィアを失った今、異常ともいえた全盛の力は既に無い。
(ミトスの固有マナはこの刀身が憶えてる。後は、それをカイルに―――)
それでいいと彼女は思った。ミトスの願いを、ミトスの意思を継ぐ。生きていく理由がある。ただそれだけで、人は強く在れるのだから。
ミトス=ユグドラシルの代理として、世界を見届けるという意味が。
『これは、晶力……いや、マナとやらが、我にッ!? アトワイト、お前……』
『つべこべ言わず疾走りなさい! こんな子供騙し、長くは保たないのよ!!』
ディムロスの驚きを一蹴するアトワイトの罵声。一番最後までミトスの状態を見ていたからこそ、彼女には分かっていた。
タイムストップの連続詠唱。そんな大魔術に、はたして彼の身体が何処まで耐えられるのか。
『カイル、今の貴方なら私とディムロスを通じて分かるはず。お願い……ミトスの夢を、こんな場所で終わらせないで…………っ!』
「分か、ってる………! あいつの、運命もォ、俺が…………持っていくッッ!!」
アトワイトの想いが、ディムロスを経由してカイルに通ずる。
双刃を介して奴の、ミトスの激情が伝わるような錯覚をカイルは覚えた。
これは支援なんて生易しいものなんかじゃない。

―――――――超えるって、決めたんだろう? ついてこれなきゃ、其処で死ね。

カイルは走る。原初の英雄が贈る、終の試練を見事達しようと疾っていく。
吹き荒ぶ荒野の嵐を布一枚で護り裂くように、時の凪を掻き分けてゆく。
四千年の長きに渡る英雄の業。その地獄が、決して無駄で無かったと示す為に。
静止した時間を斬り裂いて、最後の英雄が未来へと突き進む―――――――――ッ!!



【--:--:--】
730名無しさん@お腹いっぱい。
奇怪。その魔術を形容する言葉はその一つしかなかった。
本来なら1つしか現出しないはずの時刻盤が4枚。そしてその中心に立つ残骸。
もしもこの単色世界を認識できるものがいたならば、それは生贄を捧げる儀式にも見えただろう。
だが、紛れもなくその贄こそが魔陣を統べる主であり、この昼夜を分かつ黄昏の狭間を“斬り裂いた”存在であった。

鼓動を認識し、領域を選定し、そして一点を隔絶する。
眼には見えぬ紅い糸を手繰る様に、四千年を共に歩んだ半身とも言えた要の紋、そしてそれを託した彼女の位置を“信頼する”。

全ては当然の帰結であった。
如何に速度を上げようが、疲弊しきった一人と二振り。あまつさえ漕ぐ船は半壊した箒。
余程要領良くやったところで、飛翔の真似事を整えるのが精一杯だ。

軋みを上げる時計の音に、未完の呪文を滑らせていく。
波も渡らぬ世界に音が響き、そしてそれが更に波を静めていく。
詠唱が効果を生み、生まれた効果が詠唱を紡ぐ暇を作り出す。

速度だけではどうこうならないこの状況。時間が足りぬこの状況。
運命を司る悪意が組み上げた不可能奇問。
それを破る手は一ツ―――この前提条件を打ち砕くことに他ならない。

眼にも心にも映らぬ時間の流れ。稚魚にとっての滝がそうであるように、絶対に逆上がることの出来ぬ河。
それを天使は堰き止める。幾戦を経て培った連詠の技術と、辛うじて残った剥奪間際の称号の残滓を絞り出し、世界を逆しまに捲き返す。
我が要石を鍵に、我が仇者の衣を盾に、我が半刃を槍としてこの絶対次元にモーゼの奇跡を構築する。

マクスウェル術法体系の初等呪文。
Distance(距離)=Velocity(速度)×Time(時間)。
ゴールまでの距離が不変一定、速度は下降減衰――――であるならば、“所要時間を弄繰り回すより他は無い”。

タイムストップ連続詠唱による、長時間の停止。究極の時間稼ぎ。
最後の問題はミクトランの、否、悪意が布石し敵味方識別無視<ターゲットレス>の縛り。
ここで詰むはずのロジック。これ以上はあり得ぬ壁。だが、英雄にそれが無意味であることは先刻承知だ。
昨日の味方が今日の敵であり、今日の敵が明日の味方であるバトル=ロワイアルに於いて、
このような小細工を施されるまでもなく敵と味方の境は存在しない。
あるのは、自分と他人の区別だけ。この世界に入門できるのは、自分のみ。

だったら“自分と言う領域をもう一つ創り上げるまで”だ。

カイル=デュナミス脱出の為の鍵は、速度と時間。
そしてその内の一つ<速度>を得る為には、ディムロスとアトワイトが一“刃”同体の境地に達する必要がある。
ソーディアン同士の共鳴<ユニゾン>が叶うならば。ディムロスとアトワイトの間に回路が徹るならば。
例え違う世界であろうとも、姉の魂が重なりあう奇跡が真だとするならば。
ミトスとアトワイト、カイルとディムロス、人刃一対の同調があの一時の夢でないと願うならば。

音も光も渡らぬ野外の無響室。眼を閉じれば虚ろだけ。
これぞ真実、これぞ現実。惑わす音も、眩ます光も閉ざせば宇宙にお前もヒトも独り法師<ぼっち>。
見えぬ聞こえぬ届かぬ叫びは、四千年を経ても反射しない。誰の心にも響かない。
だが、少年は詠った。届けと―――否、届くと歌った。
かつてその宿願は伝わらなかった。どれだけ声を大きくしようが、低くしようが、想いは、願いは届かなかった。
違うのだ。“つたえる”とは“つたわる”とは“そういうものではないのだ”。
楽器は剣二本で事足りる。要の紋をメトロノームに。歌詞は彼女が憶えている。
心に焼き付いた刹那の剣戟音に、天使が鼓動は確信する。

魂よ、運命に響き合え――――――――――――これがミトス=ユグドラシルの周波数<固有マナ>だ。

ソーディアンの同調能力、その離れ業が交響曲を紡ぎだす。
かつて英雄だった少年は己が全ての小細工を以て唯一人の聴衆を――――カイル=デュナミスを“英雄”に偽装した。