テイルズ オブ バトルロワイアル Part17

このエントリーをはてなブックマークに追加
442END of the Game −epilogue!?−2:2010/11/15(月) 00:17:38 ID:LCDFiVxZ0
一体どうやって再構成されたのか。この世界では存在できない筈の大晶霊が、その時の確かなデータとして弾き出されている。
参加者に支給されたクレーメルケイジには、大晶霊の力に匹敵しうるほどの“晶霊に相当する力”を入れてあるが、
大晶霊そのものが入っている訳ではない。明確な自我は持たず、単なるパワーソースとしての役割でしかない筈だ。
だが、キール=ツァイベルの死すべき運命が捩子曲がったという事実、そしてこの数値。そしてタイムストップによる介入の実例の存在。
確かに大晶霊は――弾き出された名はゼクンドゥス、時の高位大晶霊である――意思を持って、参加者を庇った。
その可能性を否定する理由は存在しない。そして、疑わしきはとりあえず罰しておくべきか。

「消すべきか……否か。さて……」

ミクトランは顎に手を当てて黙考する。
首輪を持たないイレギュラーな存在。時を司る以上、野放しにしていては危険因子に成りかねない。
ならば媒介と成る術者を消してしまえば、最悪の状況は回避できるが――――――

――――それに何の意味があろうか。

ミクトランはそれでも心安らかに、にんまりと笑う。
時の大晶霊を所持した参加者に何は出来るか。その答えは一つしかない。
主催者が……この自分がいる浮遊死都へ向かって、時空転移するためだ。
ゼクンドゥスを使う意図はどの道エターナルソードと同様のものとなるだろう。
戦いを望まず、脱出を模索する者のために参加者を“釣る”。そして、その際に生ずるエネルギーを以てオリジンを掌握する。
その為に時渡りの魔剣を、それを精錬するための双剣を、そして殺し合いを加速させる“3人の契約者”を会場に送ったのだから。
「聖女の奇跡、魔剣、時の大晶霊etcetc――――どの様な術を用いようが私の箱庭から抜けだそうとする手法は必ず“転移”に属する。
 つまり……我がダイクロフトの位置を座標的にも知らぬお前達に自力でここまでくることは“絶対に”不可能という訳だ。
 ならばどうして、天上王たる此の私が無粋に手を出す必要があるというのか」
だが、彼らは知らない。彼らが王城と信じ転移するべき場所が唯のハリボテであることを。
仮にハリボテであると疑ったとしても、彼らはそれを疑い続けることはできないだろう。
殺戮という荒野の砂漠で二日と半日、彼らは活路という水を一滴も飲むことできず歩き続けてきたのだ。
そこにやっと見つけた一杯の泥水。それを腹を壊すかも疑って飲むことを諦めることが、どれほど難しいか。
だから彼らは思い込むのだ。強く強く“この水を飲んでもお腹を壊さないと”。嘘さえも信じなければ、心が保てないから。
ならば、辿る結末はどれも同じ。湖の底で、絶望に落ちて藁を掴んだまま溺れ死ぬより他ない。
後はその絶望に染まりきったその首から上を破裂させればいいだけだ。

「何より、ここまで無様に踊っているのだ。観劇を終えてからでも遅くはあるまい」
とすれば自分がするべきは――――何も気にせず、無様な姿を見ているだけだ。ミクトランはそう思った。
ゼクンドゥスを内包するクレーメルケイジを持つキールは天使コレットを人質にとって喚いている。
そして、魔剣を持つクレスも今やキール達が密集している光点へ近づいている。
軒並みのマーダーが陥落し廃人の戯言が悪化している中、万一正気に戻っていたならば用済みとして殺そうかとも考えたが、
数少ない殺戮要素である以上結果を見届けてからでも遅くは無い。放送を終えてからでも問題は無いだろう。

「それに、そろそろ放送か。考えを纏めるには足りん」

ミクトランは玉座をたち、天を仰ぐように時計を見た。
人々は沈む陽を見て一日の終幕を感じ始めるが、闇の中のダイクロフトではこの時計が時の流れの全てだった。
長い日であったか、短い日であったか。充実していたか、空虚なものであったか。
だが、この世界の黄昏時は、少なくとも一日を思い返し明日に繋げる刻ではない。
全員がミクトランを静聴し、閉ざされた未来に嘆き狂う時だ。

「制裁をするにしても――――絶望に染まった奴らの絶叫を聞き終えたその後だな」

ミクトランは意気揚々と、相貌に狂気じみた笑みを浮かべながらマイクに語りかける。
あからさまで安い文句など、不快感を与えるにはもって来いの言葉だ。
会場の生き残り達が眉間に皺を寄せているのを想像するだけで、ミクトランは心が躍った。
時は、午後6時00分―――――玉音の時だ。

443END of the Game −epilogue!?−3:2010/11/15(月) 00:19:20 ID:LCDFiVxZ0
<一つ。私は脱出に関して、何の手も進めていないと云いましたが……しっかりと手は揃えさせていただきました。
 そして、私は待っていたのです――――――――――――――最後の1枚が手元に来る、その一瞬を。
 二つ。貴方は聖獣達がベルセリオスに何の太刀打ちも出来ず敗れたように言いましたが……彼らがいたからこそ今此処にある輝きがあった。
 だからこそ、貴方のその心無き暴虐があった後でも、私の手は――――――この輝きは消えなかった>


 諸君。いかがお過ごしだろうか?
『――――――随分楽しそうに遊んでんじゃねえか、混ぜろよクレス!!――――』
 早いものだ。このゲームが始まって3度目の夜を迎えようとしている。
『――――――――ティトレイ!? ヴェイグ達はどうした!?―――――』
 ここまで戦い抜いてきた君達に、私は敬意を表する。
『―――――――――おぶって遅いから置いてきた、って、ちょい黙っててくれ、意識外したら斬られるからよ!!―――――――』
 一体どれだけの血に塗れて生き抜いてきたのか。どれだけの命を殺めてきたのか。その崇高な意思と覚悟に、有り余る賛辞を与えたい程だ。
『――――――――――弱点の一つ、考えてないとでも思ったかよ!!――――――クレスさん……!?――――――』
『―――キール!キール!!――――――――接近、更に中!? そうか、あれなら翔転移で逃げられねえ!!―――――――』
 今頃、何の戸惑いも疑いもなく、この放送に耳を澄まし、血で汚れた手でペンを握っていることだろう。
『―――――――――随分元気そうじゃねえかよぉ……で、誰に治してもらった?――――――――――』
『―――――――――――痛、ぢぐ、ああああ、今しか、無い……―――――――キール、怪我大丈夫か!?――――――』
 全く、慣れというものは恐ろしい。下賤な地上人ではあるが――人間の生き死にを弄ぶことも、既に身体に染み込んでいる筈だ。
『――――虎牙――――だから振らせねえってんだよ、牙連撃ッ!―――――――』
『――――――何がどうなってって、いや、つーか放送、メモらにゃってかそれより――――――――――――――』
 戦いを求め身体が疼いているか? 殺さなければ気が済まないか?
『―――――――あの人、どうした―――――…………退け―――――――』
『―――――――――――――――――それが答えかァァァァァァァァ!!!!!!!!!――――――桜花ッ!!――――』
 至福だろう。生きる身には非常に耐え難い辛苦と、それを大きく上回る悦と快さを知ったのだ。

『―――――――――――退けと言った。“しゅうきほう”!!―――――――――グハァ!!!』

 知ってしまえば最早戻ることも叶わぬ。何と――――何と浅ましく、滑稽か。だが、実に素晴らしいことだ。そうは思わないか?
『―――――ティトレイの更に内側から、殴っただ!? あいつ武術まで、いや剄か!?―――――――』
『――――――――――――が、なッ ……お前のも、結構お喋りだなァ……――――――――――――――――――――』
 反旗を捨てろ。頭を垂れよ。理解したまえ。
『―――――――――ヤッバ、剣の間合い―――――――――――我キール=ツァイベルが大晶霊に願う―――』
『―――――――――――間合いに押し込む為の技かッ!―――――――』
 それがバトル・ロワイアルの醍醐味の1つなのだ。――もう、分かっているのだろう?

『―――――――――――タイム・クレーメル……ゼクンドゥスッ!! 一度きりの契約だ……“僕の為に扉を開けッ!!”―――――』

 何、知り得ぬ者もやがて気付くだろう。それまでこのゲームを大いに楽しもうではないか。

『――――――……ッ―――寸止めって、え、その声―――――ミント、さん…か?――――――――――――』

 まだゲームは5日間も残されているのだからな。ッククククク。

『――――止めなきゃ。もう止めてください、クレ―――――あっ――――――――あ、コケた―――――――』

 では、第五次定時放送を始めるとしようか。
444END of the Game −epilogue!?−4:2010/11/15(月) 00:21:55 ID:LCDFiVxZ0
――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――

不味い。サイグローグは心中でそう断じた。
(この放送を“続けてはならない”!……今、グリューネ様は“何かをするおつもり―――――否、既にしている”ッ!!)
サイグローグは今64マスの盤ではない別の小さな盤、そこに存在する王の駒を動かしていた。
地殻破砕兵器ベルクラントの如く、遥かな高みから一方的に神の言葉を下界に送り、あるものに狂気をある者に絶望を与える力を行使している。
だが、その目論見が通じないことをサイグローグはこの段階でハッキリと確信していた。
「サイグローグ。法を弄び、盤上の駒を玩具と嘲笑う貴方のことです。恐らくこの後に更なる地獄と狂気を用意しているのでしょう。
 貴方にはベルセリオスと違い、読みが通じない。ルール無きゲームの中で無限に膨れ上がる狂気を読み切ることは不可能と言っていい」
別の盤に眼を移しているサイグローグの耳に、女神の声が響く。冷徹な声の中に、確かに混じるのは怒りの気だった。
調子に乗った子供を窘める直前の、大人の如く。
「ですが、たった一度、たった一度だけ―――――――――――“貴方の手が読める一瞬がある”」
サイグローグの視線は王の駒に。しかし、響くのは王の声ではなく、自分の見ていない盤上でひっきりなしに打ち続けられる駒音。
動かしている。動かされている。全ての駒がたった一人の手で、何回も何回も。
(戻らなければ、不味い。何をしかけられるか――――――――――)
サイグローグは決心した。このまま王を操っていては“取り返しのつかないことになる”。私の遊びを台無しにする何かをされてしまう。
故に道化は手元に持った玩具を投げ捨てて、もう一つのおもちゃ箱へ――――――――――――


“駄目ですよ。午後6時――――――――――放送は必ず行われなければならない”。


「ガッ、ぬぅ……ッ!!」
その瞬間、サイグローグの手がまるで石になったかのように硬直した。
そして、まるで瞬間接着剤をつけられたかのように、王の駒が手元から離れなくなっている。
法を統べ、王を支配するサイグローグを拘束する力など、存在する訳が―――――そう、1つだけある。

王の行動を確定できない希望側が唯一、その手を読める一瞬が。

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――

愉しく話題を振ろうとしたミクトランだったが、ふと顔を顰めた。
先刻までは気にも留めていなかったが、いつになく音声が騒がしい。放送に割って入るかのように、言い争う音が絶えない。
声の質からして、多くの人数で喋っているようだが――

と、言うより……

――――こいつら、放送を聞いているのか?

ミクトランは一抹の疑問と怒りを覚えつつ、放送を途切れさせては下手に怪しまれると考え直し、再びマイクに顔を近付ける。
言い争って聞く気がないのであれば、少し悪戯でもしてやればいい。
445END of the Game −epilogue!?−5:2010/11/15(月) 00:23:55 ID:LCDFiVxZ0
 ……ごほん。ッん、ん。
『――――――――――入れ、メルディ。時間が無い―――――……キールは?――――――』
『―――――いっててて……血出てら。あ、紅い―――――あ、ご、ごめんなさい!―――――――』
 禁止エリアも死者の発表と同じく、命に関わる重大な要素だ。聞き逃さないよう心したまえ。
『―――――これは、一人用だ。気付かれれば2人目は確実に首を飛ばされる――――』
『――――……どいてくれ―――――どきません……どいたら、クレスさん―――――――』
 いいか、大事なことだから2度言っておく! 聞き逃すなよ! いいな、絶・対・に・聞き逃すなよ!!
『―――――…………頼む――――――え、クレスさん。もしかして―――――とりあえず。アニーくらいの年頃で、野郎の上になんて乗るなっての―――――』
『――――やだよぅ……これじゃずっと独りだよぅ…――――――大丈夫だ。向こうに行けばひとりじゃない―――――――』
 午後9時にE1、午前0時にC3、3時にF2、そして6時にH3を禁止エリアとする。
『―――――違うよ……キール、なんで分かんないよ……―――――分かるものなら、とっくの昔に分かっていたかったさ――――――』
『――――――――きゃっ、って、あれ? 良く見たら……どこかで会ってましたか?―――――んあ? ああ言われてみりゃ何度か逢ってたっけか?――――』
 参加者が全員西に集まっていることは、貴様達も既に分かっていることだろう。ならば、もっともっと狭い、逃げ場のない狩猟場の中で戦うがいい。
『―――――――何だこの状況は――――――――――――――ヴェイグ!? この混沌とした状況に救世主降臨ッ!?―――――――――――』
『――――――――――……ティトレイ――――――その胸の中……“逢えたんだな?”ならいい、行け―――――……すまない―――――』
 その方が結果的に、運営する側としても手間を削減できて助かるというものだ。それ位の優しさは見せてくれるだろう?

『――――――――――オリジン、“斬るよ”。―――――――――やば、キール逃げろッ!!』
『――――――メルディ、行け! 僕には、コレしか方法が思いつかなかった!!――――――キールッ!!―――――』
『―――――ZZZZZZZZZZZZZZん〜〜〜〜あと5時かあ〜〜〜〜〜〜〜んZZZZZZZZZZZZZZZZ―――――――』

ミクトランは決定的に確信した。
この私が、蒼穹大地の支配者である天上王たる私が――――まるで無視されている。

強張った口角がひくひくとのた打ち回り、目はあっちへこっちへと泳いでいる。
美しい金の長髪の影には、常に威厳と冷徹さを備え持つ彼に似つかわしくない、はっきりとした青筋が浮かんでいた。
ミクトランにとってこの事実は恐ろしく耐え難いものだった。
民の上に立つ者が聴衆に無視されることなど、あってはならない。
玉座に座る資格すらない、と言い渡されているのと同義だ。
今までならば場がしんと静まり返り、自分が放つ一語一句を傾聴していたというのに。
一体、一体何が変わったというのか。
ミクトランはこの時ばかりは盗撮用のカメラを会場に設置しなかったことを後悔した。

だが、だからといって放送を通じて「聞かんかああああぁぁぁぁぁl!!」などと叫んでは、それこそ間抜けの間抜け。
王の威厳を保つためにも、ミクトランは極めて、努めて冷静に、震える手でマイクをがっしりと握る。
446END of the Game −epilogue!?−6:2010/11/15(月) 00:25:08 ID:LCDFiVxZ0
――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――

【――――――――――――先に言っておくけど、誤作動なんて“絶対に”ないからね。
            6時ジャスト、禁止エリアの発動と放送はきっちり行うよ】

「貴方は所詮、代行に過ぎない。ベルセリオスの意向――――否、絶望側の、王を用いる者の義務からは逃れられない!!」
まだマーダーは残っている。参加者は首輪をはずしていない。バトルロワイアルは正常に運営できる。
バトルロワイアルはまだ、終わっていない。ならば――――――――“放送は必ず行われなければならない”!!
全ての権利には同時に、義務が存在する。そして、その権利が強力であればある程、責任と義務もまた強大になる。
王と法を操る権利―――――――――――――その裏にある王の義務が、サイグローグを縛り付けていた。
サイグローグは仮面の中で歯噛みした。完全に狙われた。恐らく、ベルセリオスと戦っていた時からこの一瞬を狙っていたのだ。
全てを見通す絶望の眼が王に集中するその一瞬―――――盤上の全てが死角と成り、奇跡を呼び込むその刹那を。
絶望側の手を120%読み切り、最大最良のタイミングで最強の一撃をカウンターで放つ刹那を!

「ぐぅ、早く、早く終わらさねば……ッ!」
「遅い―――――言ったでしょう。ゲームはここで“終わらせる”と!!」

王を動かす力無き駒音、それを掻き消すほどの無常な無数の駒音だけが世界を満たしている。
神の一手など比ではない――――――放送が終わるまで永久に続く神の∞手<インフィニティア・ストライク>が。

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――


――――――ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ
 それでは、脱落した死亡者を発表しよう――――
ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ―――――――

自分でも笑ってしまうほど声の震えが隠し切れていないことに、ミクトランは愕然とした。
ぷつり、とミクトランの中で、王のカリスマのような何かが切れた。


 ――……だが、その前に一言、一言だけ言わせてもらおう
『―――――――――――扉が……拡がった……クレス、お前…………――――――――――――』
『――――――――おいカイル! ……眠ったように死んでやがる!?――――――……逆だ―――――』
 先程私は貴様達に敬意を表すると言った。だが、同時に多大に失望している。
『――――何だ? ああ、そういえばお前が操ってたのか…って―――アトワイトさんいいところに。すいません、ちょっと貸してください!!――――』
『違うよロニ……傷は舐めるモノじゃなくて…………うわ……何処舐めてんだよ―――――――なんか、やばくね?―――』
 何故か? 当然だろう。一体どこの手を、どこの足を、どこの口を弛めている?
『―――――――――――――う…だめだよ…リアラ…むにゃむにゃ――――――――緊張感ゼロだ! 何だこのKYっぷりは!! 父親を呼べィ!!――――』
『―――――――キール……―――――どいつもこいつも……僕の計算の中で暴れやがって……お前達がその気なら……もう知らないぞ……――――――』
 結論から述べよう。今回の死亡者は7名だ。残りの生存者が僅かである以上、むしろ多いと言うかもしれん。

『―――――〜〜〜〜漆黒の翼参謀より全団員に通達ッ! 急いで――――――――迷わずまっすぐ――――――灯り”の向こうまで!!』
447名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 00:25:30 ID:aa2m6+2k0
  
448END of the Game −epilogue!?−7:2010/11/15(月) 00:25:58 ID:LCDFiVxZ0
 だが、いくら全体の数が減少しようと、貴様達は殺すことを辞めなかった。今回の堕落ぶりは一体何なのか。
『―――――キール……ええーい! もう一回だけ賭けてやらぁ!! 皆、俺に…このグリッド様に続け!!―――――』
『――――――完全においてけぼりだ、ディムロス―――――――いいからさっさと入れってこったよ!!――――いや、まずカイルの回復をキールにだな――――』
 何故なのか。理由を考察してみても、私の頭脳でも解は導き出せなかったぞ。
『――――ティトレイ……いいのか?――――そりゃこっちの台詞だ……だけど、一人で、大丈夫なのか?――――』
『――――――――――しっかしこいつおきねーな。おーいカイルー。げ、そういやそうだ……後でキールにフライパン借りるか――――――』
 まあいい。今、貴様達は「7人も死んでいる」と思っているだろう。
『――――それは君が……いや、言うとおりだ。何時までこうしていられるか分からないし、その時は、遠くない。だから行くよ―――――――』
『――――キール、この向こう……――――――――――ああ、お前の想像通りさ――――――――――――』
 それは同時に、死者と同数の殺人者がいる可能性を秘めているということでもある。
『――――――――お前一人で行くんだ―――――――――キールも、来てよ……きっと、待ってるよぅ――――――――』
『――――――――僕はもう、一人じゃない――――――――そっか、そのマント……そうだよなぁ、ヘヘッ――――――あ、頭から血出てるぞ―――』
 その7人を殺したのは誰なのか、己の胸に聞いてみることだな。
『――――(ビリッ)クレスさん、しゃがんで下さい!―――……え?これは?――赤くはないけど、クレスさんはやっぱり、バンダナを付けてる方が似合うから―――』
『――――――ぐがー――――――スコ――――――血がー血が足りない……――――――こいつ本当に死にかけてるのか?―――――……一応な……―――』
 もしくは――隣に立つ友人達の胸を切開し、直接心臓に聞いてみてはいかがかな。己に聞くのはその後でも遅くはあるまい。
『―――――――――ありがとう。じゃあ、いってらっしゃい。こっから先は…………僕の出番だな【バンダナ】―――――ダジャレかよッッ!!―――――』
『―――――難しいことなんてなかったんだ。僕が受け止めていれば、答えは在った―――――――――本当、最悪の問題だよ――――――』
 ククッ、心臓は性急なモノだ。早く聞かねば口を閉ざすぞ? 永遠にな。
『――――――――ちょっと寒いけど……暖かいです。やっぱり、クレスさんでした。少しだけでも、笑えたから……ありがとう――――』
『――――はいはいもう入った入った!!―――――な、背中を押すな! カイルの傷にさわ――――んー……リアラー、背中押さないでよー……――』
 それでは、お待ちかねの死者を発表しよう。よく耳を澄ませるといい。私は大声で喋ってやる程、親切ではないぞ?
『――――――――私、この世界で色々あったけど、クレスさんのこと、忘れませんから!――――ああ、僕も、君に逢えて……良かった――――』
『――――キールも一緒! 一緒な!! 一人じゃ、きっと耐えられない!!―――――――――メルディ……僕は―――――』
 リオン・マグナス、プリムラ・ロッソ、トーマ、シャーリィ・フェンネス、
『――――――――終わったならお嬢ちゃん! 急いで入れ!! ……クレス、それでいいんだな?――――――頼んでいいのか?――――』
『―――大丈夫じゃね?―――――……――――――りあらあ…………いってきまーす……むにゃむにゃ――――――』
 ロイド・アーヴィング、ミント・アドネード、ミトス・ユグドラシル。
『―――――2人分の頼みだ。それに――――ダチの頼みならなおさらだ―――――――――ありがとう、もう一人の弓使い――――――』
『――――てめーも来るんだよ馬鹿野郎ッ!! うわ、グリッド、お前―――――――』
『さっぱり何が何だか分からんが、その眼の決意だけは信じてやる。お前も見届けろ――――こい、メルディ!!――――はいな!!――――』


 以上、計7名だ。優勝はクレス=ア、ルベ――――――――――――――――――――



『――――――――コレが俺達の答えだ。頼むぜ、どうか当たってく――――――――――――――



449名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 00:27:32 ID:swOTEzAS0
 
450END of the Game −epilogue!?−8:2010/11/15(月) 00:27:36 ID:LCDFiVxZ0
<こ、これは…………ここまでできるというのですか…………神とは、いやはや……ここまでのモノでしたか……ッ!!>

ミクトランの声が消えた。消えざるを得なかった。自分が何を言っているのか、分かるのに数秒の時を要した。
いくら放送の最中であろうと、口を閉ざさなければならない理由があった。
マイクの置かれたテーブルが微かに揺れる。天板に置かれている、強く握り締められた拳が震え、マイクは耳障りな物音のみを集音する。
目の前に広がる巨大ディスプレイ。そこには参加者の現在位置を示す光点が点っていた。
誉れ高く、そして哀れな供物たる参加者。
光は生き、命を落とせば灯りも消える。生存、死亡を区別する表示だけが、真実を物語っていた。
下手したら、両目の眼球が飛び出してしまいそうな。
それほどミクトランは眼を見開いていた。

<幾ら全てを弄ぶ道化といえど…………“ゲームが終わってしまえば”手は出せないでしょう?>


○クレス・アルベイン/●ミント・アドネード/●チェスター・バークライト/●アーチェ・クライン/●藤林すず
●デミテル/●ダオス/●エドワード・D・モリスン/●ジェストーナ/●アミィ・バークライト
●スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/●リオン・マグナス/●マリー・エージェント/●マイティ・コングマン/●ジョニー・シデン
●マリアン・フュステル/●グリッド
●カイル・デュナミス/●リアラ/●ロニ・デュナミス/●ジューダス/●ハロルド・ベルセリオス/●バルバトス・ゲーティア
●リッド・ハーシェル/●ファラ・エルステッド/●キール・ツァイベル/●メルディ/●ヒアデス/●カトリーヌ
●ロイド・アーヴィング/●コレット・ブルーネル/●ジーニアス・セイジ/●クラトス・アウリオン/●藤林しいな/●ゼロス・ワイルダー
●ユアン/●マグニス/●ミトス/●マーテル/●パルマコスタの首コキャ
●ヴェイグ・リュングベル/●ティトレイ・クロウ/●サレ/●トーマ/●ポプラおばさん
●セネル・クーリッジ/●シャーリィ・フェンネス/●モーゼス・シャンドル/●ジェイ/●ミミー
●マウリッツ/●ソロン/●カッシェル
●プリムラ・ロッソ


1/48


ロスト。
湖を付近の光点を確認する。存在なし。死体も無し。
ロストロスト。
幾つかの言葉を呟き、ダイクロフト内の生体反応を確認。存在1。ミクトラン本人のみ。
ロストロストロストロスト。
頭で何度も過ぎる単語がゲシュタルト崩壊を起こしてしまうほどに、ミクトランの脳裏全てを占める。
巨大ディスプレイの、C3に集結していた8つの光点は、瞬時に1つだけになっていた。
死んだ痕跡も、生きた痕跡さえも全て“隠れた”。
見紛うなき死亡判定“不在”。7人の生体反応が同時に消えたのだ。

451名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 00:28:16 ID:swOTEzAS0
 
452名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 00:29:07 ID:swOTEzAS0
 
453名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 00:29:27 ID:aa2m6+2k0
 
454END of the Game −epilogue!?−9:2010/11/15(月) 00:30:47 ID:LCDFiVxZ0
<敢えて問いましょうグリューネ様…………この状況…………どういうことですかな……ッ!?>


主催者であるミクトランさえ解明できない、とても不思議な不思議なミステリィ。
放送の間に全ては終わり、村に残された者はただ1人だけ。
殺人鬼、クレス・アルベイン。まさか、あの剣鬼が残った7人を一気に屠ったとでもいうのか。それなら答えは簡単だ。

<三つ目の過ち――――――――答えを得たからといって、正直に答えなければならないというルールはありませんよ。
 いつも貴方達が首輪や、脱出方法について謎かけをするのでは不公平でしょう? ですから――――――――>



バトルロワイアル、終了―――――――――――――優勝は、クレス=アルベイン。



ロストロストロストロストロストロストロスト。
そうとしか言いようが無い。そうとしか表現できない。
だから、ミクトランが言うべき言葉は一つしかない。“ゲームは終わりなのだ”と。
なのに、その次に何とか単語の切れ端から思い浮かんだ言葉は――――――――――――――




<宣言・迷宮封印【パズルブース】。
 解いてみなさい、絶望。この“神隠し”―――――――――――――全ての希望が集った奇跡の意味を>




「有り得んぞオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

その後、沈黙のまま5秒経過。明らかに放送事故だった。








【優勝 クレス=アルベイン―――――――――――――――バトルロワイアル、終了】
455名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 00:30:53 ID:aa2m6+2k0
 
456名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 00:31:13 ID:swOTEzAS0
 
457名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 00:32:18 ID:swOTEzAS0
 
458END of the Game −epilogue!?−(last):2010/11/15(月) 00:34:45 ID:swOTEzAS0
806 名前:戦え名無しさん[sage] 投稿日:2010/11/15(月) 00:33:29
投下終了。支援無用と言っておきながらこの体たらく、支援いただき誠にありがとうございます。
バトルロワイアルは終わりましたが、物語はもうしばらく続きますので、もう少しお待ち頂きたく願います。

さるさんはいりました。どなたか最後にアナザーに代理投下ねがいます。
459名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 00:37:13 ID:swOTEzAS0
執筆お疲れ様でした!
いやー……これは、すげえ。状況ぶっぱなのに筋がとおってる……じゃないな。
筋とかぶっ飛ばして主催者側に謎掛けを行うグリューネさんマジ女神。
“絶対に”の強制力をぶっ飛ばしたかどうかはまだ未知数ですが、トリッキーな
構成を活かしての離れ業、素敵でした。
そしてミクトランwww 「よさんかぁああ!」だけは地の文でもダメだからな!www
460名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 00:49:37 ID:aa2m6+2k0
続きがすぐきただとおおお!?
おいおいあんたら、前回俺がサイグロに抱いた絶望を返せw
バトルロワイアルを終わらせる、がまさか決意宣言ではなく文字通りだったとは……
しかし確かに放送ってえのは確実に読める手だな
あいだあいだのクレスらの会話といいミクトランといい今回はかなりわろたw
投下おつ!
461名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 01:29:48 ID:9jYstP5kO
投下・執筆乙です!


前回での絶望感はいったい何だったんだw
まさかこんな展開になるとは…
そりゃあ天上王も叫びたくもなるさ
あり得んぞォォォォォはガチで吹いたw
462名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 01:46:38 ID:LCDFiVxZ0
投下した作者です。SS内の名簿においてミスがありましたので、
以下のように修正します。


○クレス・アルベイン/●ミント・アドネード/●チェスター・バークライト/●アーチェ・クライン/●藤林すず
●デミテル/●ダオス/●エドワード・D・モリスン/●ジェストーナ/●アミィ・バークライト
●スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/●リオン・マグナス/●マリー・エージェント/●マイティ・コングマン/●ジョニー・シデン/●マリアン・フュステル
●リアラ/●ロニ・デュナミス/●ジューダス/●ハロルド・ベルセリオス/●バルバトス・ゲーティア
●リッド・ハーシェル/●ファラ・エルステッド●ヒアデス/●カトリーヌ
●ロイド・アーヴィング/●ジーニアス・セイジ/●クラトス・アウリオン/●藤林しいな/●ゼロス・ワイルダー
●ユアン/●マグニス/●ミトス/●マーテル/●パルマコスタの首コキャ
●サレ/●トーマ/●ポプラおばさん
●セネル・クーリッジ/●シャーリィ・フェンネス/●モーゼス・シャンドル/●ジェイ/●ミミー/●マウリッツ/●ソロン/●カッシェル
●プリムラ・ロッソ


以上です。よろしくお願いいたします。
463名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 02:56:04 ID:KJV/HdGJ0
投下乙です!

いやはやミクトランの気持ちがよく分かる…リアルポルナレフ状態だ…
グー姉さんが何をしたのか気になりすぎる次回が本当に楽しみだ。
あと時空剣士自重
464名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/15(月) 08:47:17 ID:exNcAKR0O
投下乙!
絶対の権力を持つサイグロも絶対行う義務には勝てないか…
しかしカイル起きろw
時空剣士今回は見逃してやろうw
465名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/16(火) 01:02:21 ID:ytYIFUFi0
投下乙です!
酷い放送事故を見たwwwwwwかわいそうな天井王…
まさかまさかの展開で、思わず「どういうことなの…」と呟いていました
書き手さんの創造力には毎回脱帽です
次回の物語も楽しみにしてます!
466名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/16(火) 21:51:33 ID:UX8+h9VJO
投下乙!!

とりあえず唖然として感想が思い浮かばないです。作者さん凄すぎる。

しかし残りの物語で1stが終わると思うと…2ndを読んでない自分としては一気に寂しくなったよ。
467名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/17(水) 20:36:38 ID:GGHALFMt0
( ゚д゚)<話を聞かんかぁぁぁぁ!!!!

【優勝 クレスアルベイン】

( ゚д゚)ポカーン


(゚Д゚)


こんな感じなのか。放送ガン無視された主催者として新しい伝説が生まれちまったな……
468名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/24(水) 00:16:18 ID:E6Bzo1o70
なんですか、これ?
優勝者はクレスなの?ってことはロワは終わったの?
いや、そんなことより、カイル達対主催組は脱出できたの?
もしそうなら、脱出エンドなの?
469名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/24(水) 02:19:22 ID:ZLN46sAAO
まだいたのかお前
470名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/24(水) 07:22:51 ID:FR9zfJUl0
>>468

優勝者はクレス?→バトルロワイアルという殺し合いゲームの優勝はクレス
ロワは終わった?→殺し合いという意味では終わった(と思う)。
カイル達は脱出できた?→分からない。少なくともミクトランはカイル達がどこに行ったか把握できていない。
脱出エンドなのか?→まだ続くって書いてあるから終わりじゃない。

こんなところか、真面目に考えたら。
471名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/26(金) 00:09:59 ID:ezMRz8iG0
投下乙です!
サイグロに絶望したまままた長期間待機かと覚悟してたよ
この脱出?のからくり、ベルセリオスの思惑、もろもろ解明されることワクテカで待ってる!

ところで前回の話、分岐の原因のクイーンて誰のことなの?
ハロルド?


472名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/26(金) 08:54:56 ID:E2yFcwZ9O
読解力不足の自分が憎いがスペードがシュヴァルツ
ハートがグリューネだと思ったけど違うんかな。
473名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/26(金) 13:50:13 ID:o9VRvM4g0
ここまでのあらすじ頼むよ
474名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/26(金) 21:37:21 ID:UEOEBWXs0
ベルセリオスが聖獣を片っ端からフルボッコして俺TUEEEE!!!(本編)
→グリューネが調子乗ったベルセリオスをフルボッコ(第七クール)
→サイグロにバトンタッチしてやりたい放題し始めると思ったらロワが終わっていた(いまここ)
475名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/29(月) 07:17:59 ID:bD97XYum0
ほしゅ
476名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/30(火) 10:46:20 ID:e67/ZNqb0
まさかの更新で感動した。

あれ天上王(笑)さんの威厳とかhどこに・・・
477名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 15:02:22 ID:vANvtzTa0
今年中にこのモヤモヤは解消されるのだろうか?
478名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/05(日) 14:02:45 ID:lnbMF4Uj0
逆に考えるんだ。自分で解いて解消すればいいやと考えるんだ
479名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/12(日) 11:08:22 ID:V4RFdVRh0
時よ止まれ、保守は美しい
480名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 14:51:42 ID:l02z77em0
書き手の一人です。お疲れ様です。
近々SSを投下できそうな運びになっていますが、現行スレだと容量不足になってしまうます。
そのため新スレを立てようとしましたが規制に引っ掛かってしまいました。
お手数ですがどなたか新スレを立てていただけないでしょうか。

1は以下のようになります。よろしくお願いいたします。

携帯 http://www.geocities.jp/tobr_1/index.html

4811スレ:2010/12/18(土) 14:53:23 ID:l02z77em0
テイルズシリーズのキャラクターでバトルロワイアルが開催されたら、
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。参加資格は全員にあります。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。
これはあくまで二次創作企画であり、ナムコ及びバンダイナムコゲームス等とは一切関係ありません。
それを踏まえて、みんなで盛り上げていきましょう。

詳しい説明は>>2以降。

【過去スレ】
テイルズ オブ バトルロワイアル
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1129562230
テイルズ オブ バトルロワイアル Part2
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1132857754/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part3
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1137053297/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part4
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1138107750
テイルズ オブ バトルロワイアル Part5
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1140905943
テイルズ オブ バトルロワイアル Part6
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1147343274
テイルズ オブ バトルロワイアル Part7
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1152448443/
テイルズオブバトルロワイアル Part8
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1160729276/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part9
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1171859709/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part10
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1188467446/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part11
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1192004197/l50
テイルズ オブ バトルロワイアル Part12
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1197700092/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part13
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1204565246/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part14
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1213507180/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part15
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1224925862/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part16
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1231916923/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part17
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1286810498/

【関連スレ】
テイルズオブバトルロワイアル2nd Part12
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1283236233/


【したらば避難所】
〔PC〕http://jbbs.livedoor.jp/otaku/5639/
〔携帯〕http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/otaku/5639/

【まとめサイト】
PC http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/
携帯 http://www.geocities.jp/tobr_1/index.html
482名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 14:57:43 ID:wm+8j+r30
スレ立てに成功しました。
以後、テンプレを貼っていきます。

テイルズ オブ バトルロワイアル Part18
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1292651805/
483:2010/12/18(土) 15:01:33 ID:l02z77em0
【参加者一覧】 ※アナザールート版
TOP(ファンタジア)  :1/10名→○クレス・アルベイン/●ミント・アドネード/●チェスター・バークライト/●アーチェ・クライン/●藤林すず
                  ●デミテル/●ダオス/●エドワード・D・モリスン/●ジェストーナ/●アミィ・バークライト
TOD(デスティニー)  :0/7名→●スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/●リオン・マグナス/●マリー・エージェント/●マイティ・コングマン/●ジョニー・シデン
                  ●マリアン・フュステル
TOD2(デスティニー2) :0/5名→●リアラ/●ロニ・デュナミス/●ジューダス/●ハロルド・ベルセリオス/●バルバトス・ゲーティア
TOE(エターニア)    :0/4名→●リッド・ハーシェル/●ファラ・エルステッド/●ヒアデス/●カトリーヌ
TOS(シンフォニア) :0/10名→●ロイド・アーヴィング/●ジーニアス・セイジ/●クラトス・アウリオン/●藤林しいな/●ゼロス・ワイルダー
             ●ユアン/●マグニス/●ミトス/●マーテル/●パルマコスタの首コキャ男性
TOR(リバース)    :0/3名→●サレ/●トーマ/●ポプラおばさん
TOL(レジェンディア)  :0/8名→●セネル・クーリッジ/●シャーリィ・フェンネス/●モーゼス・シャンドル/●ジェイ/●ミミー
                  ●マウリッツ/●ソロン/●カッシェル
TOF(ファンダム)   :0/1名→●プリムラ・ロッソ

●=死亡 ○=生存 合計1/48 【優勝:クレス・アルベイン】

禁止エリア

現在までのもの
B4 E7 G1 H6 F8 B7 G5 B2 A3 E4 D1 C8 F5 D4 C5 B3

21:00…E1
00:00…C3
03:00…F2
06:00…H3
484名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 15:13:03 ID:l02z77em0
スレッド立てありがとうございました。
投下の際はその前にまたご連絡いたしますので、支援のほどご協力いただければ幸いです。
485名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/24(金) 02:24:29 ID:01ozJOtZ0
O.参加者を配置する8×8の盤を「会場」、王を配置する1×1の盤を「本拠地(真)」と以後便宜的に定義する。

第六戦noticeより
1.「会場」と「本拠地」の二つの盤は連続的に隣接していない。

(1)式より
2.特殊移動を除き、駒を「本拠地」に移動させることはできない。

(2)式より
3.この特殊移動を「転移」と定義する。

第六戦noticeより
4.駒を盤の外側へ移動させる場合は“絶対に”「本拠地(真)」を通らなければならない。


(3)(4)式より
5.駒を「会場」の外へ移動させる場合は「会場」より「転移」を行い「本拠地(真)」へ移動しなければならない。




第一戦及び第六戦noticeより
6.王を除く全ての駒の初期配置は「会場」のCD45の2×2マスである。

第一戦及び第六戦noticeより
7.この4マスはその構成が「本拠地(真)」と相似している。

(7)式より
8.この4マスを「本拠地(偽)」と定義する。

(6)(8)式より
9.王を除く全ての駒の初期配置は「本拠地(偽)」である。

主催情報より
10.王を除く全ての駒は初期配置以前に「本拠地(真)」を見たことは無い。

ここで第六戦noticeより
11.「転移」による移動を行う場合「現在位置」と「転移先位置」の2マスを確定させなければならない。

よって(9)(10)(11)式より
12.王を除く全ての駒が「現在位置:会場」より「転移先位置:本拠地」へ「転移」しようとした場合
   「本拠地(真)」の位置を知らない駒の「転移先位置」は自動的に「本拠地(偽)」になる。

(12)式より
13.「本拠地(真)」に一度でも配置されていない駒は「本拠地(真)」に「転移」できない。

(5)(13)式より
14.「本拠地(真)」に一度でも配置されていない駒は「会場」の外へ移動できない。


故に
15.【「本拠地(真)」に一度でも配置されていない王を除く全ての駒は「脱出」出来ない。】/ QED



「つまり――――――――――どういうことなんでしょうか……」

サイグローグはそういって、白煙と共に暗い天井へとぼそり呟いた。
486名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/24(金) 02:25:11 ID:01ozJOtZ0
「とまあ、そんなことも最初は思いましたがね……この紋章を頂いた時は……
 ……盤上の駒は、誰一人として脱出不可能……まあ、こんな面倒な手順を踏まずとも……平たく言ってしまえば、
 【本拠地を通らなければ脱出できない】【本拠地に入ったことの無い駒は本拠地を知らない】【本拠地を知らなければ会場から本拠地には入れない】
 この3つの組み合わせというだけなのですがね…………」

そう呟くサイグローグは煙管を左手で弄び、薄暗い部屋の中に紫煙をくゆらせている。
本来の絶望側プレイヤーであるベルセリオスが構築した55の駒を閉じ込める鉄檻を眺めながら、道化は溜息をついた。
1つ1つは簡単に抜けることができるのに、3つ同時には絶対に抜けられない悪魔の監獄。
超技術フィールドでも膨大な監視でもない、たった3つの公式の組み合わせによって構成された王を守る論理の城塞。
エンブレムを手にし主催側の情報を知った今だからこそ、ジャッジでもあるサイグローグはその檻の強固さを実感する。
ベルセリオスは本気で駒を閉じ込めるつもりだったのだ。王に反抗はおろか、あの盤上から出してやる気さえない。
執念さえ感じるほどの完璧主義には、サイグローグでさえ『何もそこまでしなくてもいいのに』という想いを禁じえない。
水の一滴さえ漏らさないこの城壁は、一体王を何から守る為のものなのか。一体何を逃がさないようにするためのものなのか。
道化すらそう疑問を抱きたくなるほど、このシンプルな迷宮は完璧だった。
 
「私が見る限りでも、抜け穴のない……さながら出口無きラビリンス―――――――――――――――だったはずなのですが」

そう。完璧“だった”。つい先ほどまで―――“更なる迷宮が現れるまでは”。
サイグローグが視線を下げると、紫煙の向こうに見慣れた盤があった。
8×8の、何度見たかもわからない世界、唯一今までと違うのは“そこに駒が一つしか残っていない”ということだけ。
「少しはしゃぎ過ぎてしまいましたか……完全に虚を突かれてしまいました……いやはや、喰えないカミサマです……」
サイグローグが王を動かして放送の一手を行っている間に、全てが変わり、そして終わってしまった。
一体何が起こったのか、何故こうなったのか、こんなの有り得るのか。
様々な“謎”が盤上を蠢き、王と法を司るサイグローグでさえその全容を見渡すことができなくなっている。
「真逆、放送に被せてくるとは思いもしませんでした……
 例えるならば私がツモ山からじゃんぱいを掴んで捨て牌を切るまでに7枚全部をすり替えられたようなもの……
 いやはや、とんだギャンブラーがいたものです……」
迷宮封印<パズルブース>。それが人間の作り上げた絶対の檻に対する、女神の答えだった。
いや、これは最早答えとは呼べないだろう。むしろその真逆……“謎”の極致だ。
『この密室からは絶対に脱出できません。どうやれば脱出できるでしょう?』という問いに対し
『私は脱出しました。さて、どうやって脱出したでしょう?』と応じたのだから。
「場所が場所ならば『質問を質問で返すなあーっ!!』と怒っても良いのでしょうが……神様は学校を出ていないでしょうしねえ……」
サイグローグは煙を目いっぱいに吸い込んで、三度大きな溜息と共に白煙を吐く。
これではまるでトンチだ。屏風の中の虎を捕まえさせるはずが、逆に屏風に消えた虎を探す羽目になっている。
絶望側が用意した謎を更に大きな謎で覆い隠すとは。放送という絶望手によって隠された神の一手―――――それは正しく“神隠し”だった。

「という訳でグリューネ様……私、とんと分かりませぬ……そろそろ、答えを教えて頂けませんでしょうか……?」
487名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/24(金) 02:25:51 ID:01ozJOtZ0
そう言ってサイグローグが顔を上げ、盤面から視線を対面へと移す。
そこには、女神はいなかった。代わりに存在感を発揮しているのは、女神が要るべき場所に屹立する一体の像だった。
木目と金属の意匠によって組み上げられた、両腕で自らの胸を抱きしめる聖母マリアの彫像。
聖母が抱擁せしは、咎を持った罪人。その茨の腕に抱かれた罪人は感激のあまり絶叫と自ら血液と共に罪を洗い流す。
故に人はそれをこう呼ぶ。アイゼルネ・ユングフラウ――――――鉄の処女<アイアンメイデン>と。
「鉄の処女といっても、実際は木で出来ているモノが殆どなんですが……その中でも随分と出来の良い品です……通販で買った甲斐がありました……」
何処から持ちだしたのか、何時の間に運び込んだのか。そんなことさえも馬鹿らしくなるほど中世の拷問具はその存在を誇示していた。
通販での謳い文句は縁結び・恋愛運上昇の御守りだといったか。だが、そんな華やいだ効能など消し飛んでしまうほど、その像は赤く染まっていた。
サイグローグが指を弾くと、ガシンと処女が震え、聖母の瞳や扉の隙間からじわりと紅い汁が血涙の如く漏れ出す。
像の股下を大きく濡らす血の池は、とてもではないが1回や2回で出来るものではない。既に処女は10回以上涙を流している。
例え処女の中が二重扉になっていようが、そもそも棘が付いていなかろうが道化にとっては関係無かった。
閉ざされている限り、アイアンメイデンの中がどうなっているかなど誰にも分からない。ならばそこから血が出ようが何が出ようが矛盾など存在しない。
2つの力を備え、天に最も近い場所に座すサイグローグにとって、閉ざされた鉄の処女の内側を弄ぶことなど造作もないのだから。

だが、サイグローグが相対する存在もまた天に座す女神だ。
鉄の処女が恥じらう様にゆっくりと開かれると、そこからグリューネが現れる。
拷問具から出てきたにも関わらずその立ち居振る舞いは一流のモデルの如く優雅で、
先ほどまでメイデンから噴出していた血は一体何だったのかという疑問さえ蕩けてしまう。
「何度問われようとも同じです。私が示したモノが全て。それ以上を答える義務はありません」
そう言ってグリューネは拷問具の中で少しだけ乱れた銀の髪をその手で中空に梳き、どさりと椅子に座る。
普通ならば不調法であるはずの仕草さえ華美に映るその美しさに誰もが思うだろう。
たかが鉄の処女ごときに、この神なる美貌を傷付けることが出来るはずがないと。
サイグローグは知ってか知らずか、女神の美しさから視界を掌で覆うようにして仮面を擦る。
女神に言われずとも、道化にもそれが無駄な問いであることは重々承知していた。
アイアンメイデンに閉じ込める前にも、サイグローグは既にこれと同等な“質問”を女神に繰り返していたのだ。
額のティアラに電気を流した。深い井戸に落とし水を流したetcetc。
およそ考え付く痛みを伴う心無い拷問を幾千幾万と、休む間もなく与え続けたのだ。
その中には当然“女”神にしか通用しないモノや、一目見ればお肉を暫く食べられなくなるモノもあったが、
その全てを克明に記すことさえも憚られる程、その毒に塗れた拷問は悲惨に過ぎた。
「……CERO:Z解放をご購入頂ければ全て公開したのですが……ええ……ま・こ・と……残念無念です……」
煙管を回しながらサイグローグは冗談めかすが、道化にとってこの状況は冗談ほどには笑えるものではない。
普通のプレイヤーならばそれだけで泣き叫びながら、どうか止めてくれと答えを吐露しただろう。
だが女神は決して折れなかった。決して口を開くこと無く、その全てをそよ風の如く流しきったのだ。
アイアンメイデンの前には、拷問のプロを呼んでまで女神の口を割らせようとさえしていたが、それさえも効果が無かった。
ちなみにそのプロがどうなったかと言えば、自慢のドリルで女神を喘がせるよりも前に、
女神の器の大きさに自信を喪失して白化してしまったのでサイグローグが速やかに片付けてしまった。
中年が石コロ遊びに興ずる彫像など、何処に置こうが部屋の景観を損なってしまうのだから。

「まあ、別の意味で十二分に愉しませていただきましたから良しと致しましょう……
 しかし、本当に教えて頂けませんでしょうか……? 一体この一手、如何なる思惑で打たれたのですか……?」
「どうしました、道化。貴方らしくない愚かな問いです……それこそ、答えるとでも?」
488名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/24(金) 02:26:34 ID:01ozJOtZ0
道化のくたびれた様な問いかけに、女神は口元を手の甲で押さえ苦笑する。サイグローグもまた、煙管を噛みながら苦虫を潰す様にして笑んだ。
自分の打った一手について「こう打てば貴方はこう打つので、後何手でチェックメイトにできます」などと喋るプレイヤーがいるだろうか。当然反語だ。
その思惑を推測し、自分の戦略の中で愉しむこと。それもまたこの戦いの愉悦の一つなのだから。
もっとも、神の放ったこの一手は推測するどころの話で無かったのも事実ではある。
「何を悩むことがありますか? 私の一手が不服であれば、強制破棄で砕いてしまえばいいでしょう?」
「……クククク、グリューネ様も存外陰湿でいらっしゃる……それが出来れば労苦はありません……」
女神の挑発にサイグローグは自分の額を小突きながら項垂れた。
矛盾を見つけ出してこの一手を破壊してしまう――――確かにそれは最も確実な対応法なのだ。
サイグローグの力ならば僅かな矛盾の一つでもあれば、そこから鎖を撃ち込み粉々のバラバラに砕いてしまえるだろう。
“だが、矛盾があるかどうかも分からないモノ”を一体どうやって砕けというのか。
糠に釘、水に刀、暖簾に腕押し、カニに武器。最後の一つは若干意味合いが異なるが、つまりはそういうことだ。
(得られた駒の情報は飛び飛びの音声だけ……これだけではどうとでも解釈できてしまう……)
これだけの大掛かりな駒の消失、探せば矛盾はあるかもしれない。だが、それを立証することがあまりに困難なのだ。
曖昧過ぎて逆に矛盾を見いだせない。それを見つけ出せなければ、崩しようがない。
ベルセリオスの論理の檻を剛の極みとするならば、グリューネのそれは柔の極み。
人間は神を檻に閉じ込めたが、神は煙か光となってひゅるりと網目から逃げおおせたのだ。
(さらに押し込んで問い詰めても良いのですが…………これ以上は墓穴ですね……)
ならば、この謎の正当性を問い詰めるという手もある。『これでは私が手を進められない。この謎は本当に解けるのですか? 解けなければ矛盾です』と。
だが、サイグローグはそうしなかった。プレイヤーとしての経験は浅くとも、ここまでの戦いを見続けてきた経験がその一手に死の匂いを嗅ぎ取っている。
恐らく、否、間違い無く“グリューネはそれをこそ待っている”。
もしサイグローグがうっかりそれを問うたならば、女神は満面の笑みでこう答えるだろう。

『解けます。では、解けぬ貴方の代わりに今から答えを見せましょう』と。

そうして、悠々と種明かしと共に駒を更に進めるのだ――――――恐らく、チェックメイトまで一気に。
つまりは事実上の絶望側のパスだ。答えを持つグリューネだけが延々と手を進め、その答えを盤上にて示すだろう。
それが矛盾あるものであったならばまだ救いがあるが、もし矛盾が無かったら……恐らく、その時にはサイグローグの逃げ場は無くなっている。
(グリューネ様のあの自信……一か八か、運否天賦に賭けるには少々分が悪いですか……)
人間を観察することを趣味とするサイグローグは、神とは言えどグリューネというプレイヤーをある程度見極めていた。

グリューネというプレイヤーを一言で表すならば『絆が伝説を紡ぎだすバトルロワイアル』だ。

意味や想いなど、一つ一つは弱くか細い糸を紡いで強大な縁とし、圧倒的な火力で攻守ともに圧倒するスタイルを得意とする。
一度陣形が完成すればそれは七色の伝説となる。そうなってしまえば、彼女の奇跡の前に防御も攻撃も全く無意味だ。
ベルセリオスとの戦いからみても、女神が全力で放つ奇跡は多少の矛盾ではビクともしないだろう。
謎が解けずにパスを続けるということは、彼女が奇跡を構築するのを指を食わえて見逃し続けるということだ。
逃げ場無しの状況であのタイムストップ級のクライマックスコンボを食らったならば、サイグローグとて肉片が残るかどうか。

「……おや……もしかして私……かなり窮地ですか……?」

さも今気付いたかのように白々しく、サイグローグは煙管の灰を落とした。
つまり、サイグローグはこの神の一手を壊すことは出来ないし、かといって解けないからと見逃すことも出来ない。
こうして思考するだけでも、彼女に奇跡を生み出す時間を与えてしまっている。
向かい合わざるを得ないのだ、この神が構築した迷宮の謎へと。
489名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/24(金) 02:27:26 ID:01ozJOtZ0
「全く……絶望…………王を操る側が『こうさつ』に挑む羽目に陥るとは…………では、参りますよ……」

サイグローグが煙管を虚空に片付けて盤をコツンと指で叩くと、一枚の羊皮紙が現出した。
道化はそこに、何処からか出した羽ペンに黒インクを吸わせ、洒脱な文体で自分の名前を書き記した。
「代行者サイグローグの名に於いて……オーダー発令…………“全軍集結しなさい”……」
その時だ、何処からともなく金属音が鳴り響いたのは。
重厚な白銀の鎧兜と腰に佩いた剣の擦れる音。無数の蹄鉄が地面を撃ち鳴らす音。
それは即ち、戦争音楽。戦士達がその命の価値を今一度問い質す直前の、開戦前のプレリュード。
序章が鳴りやむと、そこには錚々たる演奏者達がいた。彼らは己の楽団の御旗を立ててその出自を隠すことはしない。
魔科学を追及せし北部軍事王国軍――――――――――――――魔導砲2門以下、参軍。
神の眼を封印せし神殿を擁する世界最強の王国軍―――――――――――――七将軍旗下、参陣。
鏡面世界唯一の王国軍、賢王に統治された雪下の王国軍、繁栄世界教会騎士団、推参。
獣王に統治されし王国正規軍、七聖連合宗主国近衛軍、参戦。
ヘイズル神聖王国軍、フレスヴェルグ国家騎士団、ニーズホッグ新帝国軍、直参。
これだけでも半分も数え切れぬほどの軍団“群”が、サイグローグの背後に荒海の如く波打つ。
法を――――そして王を守る秩序の力が、部屋の間取りなど吹き飛ばしてしまうほどに集結していた。

その中から、白馬に乗った一人の騎士が躍り出る。真白き正義の甲冑を輝かせた、あの法の守護騎士だ。
「王の代行として……貴方にこの“群団”の全権を委任します……法の守り手としての務めを果たしなさい……」
横に並んだ騎士――――新任騎士団長にサイグローグは視線を合わせること無く機械的な命令を発する。
目で伝える必要などない。そこに騎士団がいて、そこに王を脅かす反逆者が隠れている。ならば果たすべき任務はたった1ツ。
「Order is only one……“生死不問<デッドオアアライブ>”……謎のヴェールに隠れた卑しき犯罪者7名を――――」
評議会の命令に呼応するように、騎士団長が剣を天に掲げる。それに従う様に、無数の兵士達が槍と剣を力強く構える。
兎にも角にも、消えてしまった7つの駒の存在を再び盤上に確定させなければ話にならない。
存在を確定させてしまえば、どのようにでも対処できる。
隠れているならば、見つけ出すまで。隠れることができる場所を、創りだすまで。彼らが隠れた場所を、棺桶とするまで。

迷宮ごと、焼き払ってしまえ。
「―――――見つけだして処刑せよ……!」

世界が、ひねくれ切ったアルカナルインが爆発した。
そう思えるほどの怒号と無数の足音が織り混ざった地鳴りが、一直線に迸る。
目指すは女神、そしてその奥に隠れた身元不明の7人の容疑者へと。

「考察提示……7つの駒はやはり直接盤の外側へ抜けだした可能性があります」
「反論します。絶望側代行に、ベルセリオスの組み上げた檻の絶対性を確認。“会場の駒は盤外に出る際、絶対に本拠地を通ります”!」
「絶望代行、及び判定者として回答……この檻に関するベルセリオス様の絶対を保障します……“会場の駒は盤外に出る際、絶対に本拠地を通る”……」

サイグローグが提示した一手が一軍の一斉突撃と化し、女神の喉元へ突き抜ける。
だが即座にグリューネが右手で空を横一文字に切ると、地面から真っ赤な溶岩が噴出して騎士の鎧や骨ごと溶解させていく。
女神の神術に対し、サイグローグは法律書を読み上げるように判定をその被害報告と共に告げた。

「ならば、本拠地に到達後にどこかへ隠れた……もしくは到達後、即座に脱出した可能性があります……」
「否定します。絶望側代行に放送時の王の状態を確認。王は本拠地に存在する駒の生体反応を確認していました。そこに抜けはありますか!?
 “参加者が本拠地に存在していならば、王はその生体反応を確認できます!!”」
「絶望代行回答、反論を保障します……“王は本拠地の生体反応を確認できます”
 ……判定者より追加補足……“本拠地内に限定して、王の観測エリアに死角はありません”……」

再び放たれた左翼からの弓矢の雨嵐を、グリューネが放った蒼き輝きが掻き消してしまう。
そして跳ね返った矢の一本一本が放った本人めがけて戻り、その喉や心臓を突き刺していく。
やはりベルセリオスが組み上げた密室は有効に機能している。密室から出る扉は1つ、そしてその扉は常に王の監視下にあったのだ。
490名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/24(金) 02:28:09 ID:01ozJOtZ0
「王が“天才”にアンデット化の処置を施していた事実を提示……7駒全てアンデットになった可能性……死体ならば生体反応は確認できません……」
「否認します。判定者に法の効果を確認。“死亡確認無き死者の存在を禁ずる”!!」
「判定者回答……法の効力を認めます……“生者は死を確認しなければ死者にはなれず、死者でなければアンデットにはなれない”……」

だが、更に死角を潰そうと騎士団は右翼から更に重装騎兵二個師団、突撃猟兵四個旅団を投入。
錐行陣で突撃し、前線の死体を蹄鉄でブチブチブチブチとミンチにしながら女神の脇腹を抉りにかかる。
しかし、女神の防壁は未だ機能を続け、氷壁と化した防御の前に騎兵は全て凍死してしまった。
だが戦果報告を紡ぐサイグローグは満足気に笑んだ。これでいい、これであの7駒全てを“会場に閉じ込めた”のだから。
その事実に比べれば、たかが三軍壊滅など必要経費でしかない。所詮は盤外の駒だ。換えは幾らでも効く。
たった一人、たった一人が女神に一太刀入れればいい。それで女神の持つ一手は消滅する。

「駒が全ての首輪を外した・壊した可能性を提示します……生死判定は首輪によるもの…………外してしまえば反応が無くなる可能性がある……!」
「却下します。例え王がそれを認識できなくとも“私達は認識が可能です”!」
「プレイヤーによる否定有効……例え王が知らなくとも、私達は認識できる……首輪の有無は、この謎に影響しない……」

死体の山以上に積み重なっていく痛みと怖れとそれを忘れる為の怒りの断末魔が空間を満たすが、サイグローグの報告にとっては何の阻害にもならない。
無理矢理の脱出・本拠地での潜伏説をほぼ完全に抹消された……否、“本当の意味で7駒を会場に閉じ込めた”騎士団はついに砲撃と共に大攻勢へと転ずる。
この戦争の中で恐らくは最重要となるであろう要衝――会場潜伏説を抑えようと、無数の兵士達が命を散らせていく。
一体何が彼らを戦いへと駆り出しているのだろうか。
それさえも瑣末なことと踏みつぶしながら、騎士たちは謎へと突き進んでいく。
謎に覆い隠された謎を暴き、その答えを殺す為に。

この戦いは、プレイヤーによって生み出された全ての可能性が真実となる資格を持つ。
そして今グリューネは自らが創りだした謎によって自分の持つ一手―――――7駒を王から逃がす1つの可能性を守っている。
だが、それと同等の一手をサイグローグが提示できれば“どちらを真実と選ぶかはプレイヤーの判断だ”。
だからこそサイグローグはこの騎士たちと同じく無数に存在する可能性を、1つでも多く届かせようと雨霰に降り注がせ、
グリューネはその全てを神の一撃で押し流し、サイグローグの放つ騎士たちを鏖殺し尽くす。
相手の持つ可能性を嘘と殺害する為に、自分の持つ可能性を真実と創生するために。
盤上に於ける真実を探す『考察』ではない『こうさつ』。
真実の創り合い、可能性の殺し合い――――――――――――それこそが、彼らの本当の『考殺』に他ならない。

「会場がバテンカイトスである説を用います……! 精神世界であるが故に……駒は全てデータ的存在であり……削除によって消えた可能性が……!!」
「本気で有り得ると思っているのですか!? 絶望側代行に確認。“データであろうとなかろうと、消えた痕跡を王は確認していない”!!」
「絶望代行回答……どちらにせよ痕跡は確認できません……“存在が生身であるかそうでないかはこの謎に影響しない”……!!」

ほぼ全ての兵力を潰され窮地にあるはずのサイグローグが腹の中で笑んだ。
騎士団の殆どを殺しているのが女神の力ではなく、ベルセリオスの密室の硬さであり、
自分が絶対に通れない壁にぶつかって死ねと騎士たちに命じていると理解していながらもなお嗤っていた。
駒は脱出していない。本拠地にも行っていない――――――つまり、まだ会場内だ。兵力の半分を殺して確認した。
そして状況から見て首輪は恐らくまだ解除されていない、更に、データや精神的な存在である可能性も潰した……
それを、更に半分の死体の山で塞いで潰した。ならばこれで終わりだ。
サイグローグが再び王の紋章と法の書を重ね合わせ、守護の光を生み出す。
逃げ場を全て死体で塞がれたグリューネの持つ謎の答えを――――希望の輝きを消し去る、真実の光を!

「ならばこれでチェックです!……宣言・主催者行動<光竜滅牙槍>ッッ……!! 
 【7駒の消失を王が確認……非常事態による特例を発令……“現時点で参加者7名の首輪爆破措置を行いました”】……ッ!!」
491名無しさん@お腹いっぱい。
生きた意味もろとも木っ端微塵に吹き飛んでいく兵士達、死に行く理由も木っ端微塵に吹き飛ばしていく神術。
その嵐中を辛うじて駆け抜けた法の守護騎士が剣に天の光を収束させ、眩い程の光の龍を女神に向けて穿ち抜いた。
会場の中にいるならば、7駒が何処に隠れていようがこれで死ぬ。首輪によって殺せぬ駒など存在できない。
死ななければ、会場の何処にも存在しない。“会場内から出られないのに、居ない”――――論理破綻だ。法の光の前に女神の迷宮は破壊される。
避けなければ必殺。しかし避けることは許されない光の一撃が女神を狙い穿つ。
駒が消えたからと言って首輪即爆破など、無粋極まりないものだろう。
だが道化にとっては知ったことではない。グリューネが尻込みして7駒の居場所を教えれば爆破を止めればいい。
言わないのであれば……この一手が空気を読んでなかろうが、会場内のどこに隠れていようが、殺してしまえば問題は無い。
どちらにしても希望は潰えて、これにて終了――――――

「無駄です―――――判定者に結果判定要請。王はその死を確認できましたか!?
 “存在しない駒の首輪を爆破を確認することは何人にもできません”!!」

だが、女神の奇跡は容易くなかった。
女神が正面ににかざした右手から蒼き障壁が生み出され、法に輝く光の龍槍を完全に防いでいた。
生死さえ謎のまま。矛盾も真実も覆い隠す闇の底に、光は届かなかった。
そして、空いた左手より振り抜かれた悪魔の槍が一直線に突き進み、守護騎士の鎧を貫いて射抜く。

「くっ……判定……通しです……“王による爆破指示は確かに行われましたが、首輪の爆破を確認できません”…………」

サイグローグによって述べられた結果に盤上が静まりかえる。
爆破すれば問答無用で死亡を確定させる王の首輪も、存在しない人間を殺すことはできない。法に従う無辜の民を斬ることはできない。
剣を以て切り拓くことが出来なかった騎士はガクリと膝をつき、その動きを静止した。
全ては決した。団長につき従う様に、その背後に可能性を失った騎士たちの骸が、海のように横たわっている。
法の光であろうが、謎の持つ闇を全て照らすことはできなかったのだと。

「これでも、届かないというのですか……」
倒れ伏す夥しいほど堆く積まれた騎死の墓標を横目に、サイグローグは口元を押さえて唸りを堪えた。
無論、全てを賭してその王命を遂行しようとした忠臣達に対する労いなどではない。
盤外へ逃げ出した訳ではない。死体で密閉した。
本拠地に隠れ留まっている訳でもない。死骸で封鎖した。
首輪をはずした訳でもない。死蝋で塗り固めた。
不正に消失した訳でもない。死者で閉じ込めた。
生きて出ること叶わぬ死の密室。なのに、その中で殺そうとしても―――――――――――その生死すら確認できない。

額を指で小突きながらサイグローグは頭を捻るが、この謎に対し打開策を見いだせない。
あまりに酷い論理破綻のように見えるのに、何が矛盾が分からないから通さざるを得ないとは何たる皮肉か。
道化は更なる抜け穴を探そうと考えるが、その可能性を一向に見つけられない。
考え得る可能性は全て叩き壊されてしまった。しかも、女神の力ではなくベルセリオスの檻の硬さによって。
ベルセリオスの絶対の檻がなまじ強力過ぎるが故に、可能性を消してしまうのだ。
可能性を考察するサイグローグの姿は、まるで密室に閉じ込められたのが道化の方であり、
懸命に檻から逃げ出す為に存在しない抜け穴を探しているかのようだった。
難易度UNKWOUN所ではない難易度GODの迷宮。ここに、出題者と回答者の立場は完全に逆転していた。

「どうしましたサイグローグ……貴方が次の手を進めぬというのであれば、私が先に手を進めさせていただきますが……?」

グリューネが気力と自信に満ちた声でサイグローグに甘い言葉を紡ぐ。
謎という最強の楯で駒を守りながら、一方的に王まで駒を進めていく心算であることは疑いようもなかった。
(さて…………どうしましょうかね……)
女神の魅惑的な睦言にサイグローグは煙管を銜えて煙を肺に充たし、状況を整理する。
(この状況で私が取ることのできる戦略は2つ……1つは謎を解くことを諦め、この結果を受け入れること……つまり狂剣優勝で戦いを終わらせること……)
7駒が消えてしまった以上は仕方が無い。とりあえず与えられた結果を唯唯諾諾と受け入れて、この戦いを終わらせてしまうこと。