ギャルゲー板SSスレッド Chapter-3

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>>33-34続き
 匠の死は教室に混乱を招いた。
 女生徒たちはキャーキャーと泣き叫び、男子は黒板にまで飛び散った匠の脳漿を見て目を白黒させている。
 そんな中、光だけが教室の隅でケホケホと咳き込みながら匠の精子を吐き出していた。
(なんで、こんな事になっちゃったんだろう…私のせいで匠君が……)
 冷静になって初めて押し寄せてくる自責の念。先程の行為を正当防衛の一言で片付ける事は光にはできなかった。
(自分が生きたかったからって匠君を……私は最低だ)
 正直、死んでしまいたいと思ったが、それこそ匠の言葉を無駄にするような気がしてそれだけは我慢する。
(生きよう…公一君の分も、匠君の分も)
 決意を新たに立ちあがろうとした時だった。
 ダァン!!
 山口巡査の威嚇発砲が教室に響き渡った。騒いでいた生徒達が水を打ったかの様に静かになる。
「…さて、そろそろ次の段階に移ろうかと思います」
 静寂を取り戻した教室で山口巡査が言った。そして持っていたデイバッグからノートパソコンと携帯電話、そしてビデオカメラを取り出した。それを見て一部の生徒が反応する。
「察しの良い人は気が付いたと思いますが、今からこの教室の様子をインターネットで公開します」
 そう言って黒板に『インターネットライブ IN 陵辱教室』と書いた。再び教室がざわめく。そんな中、山口巡査はせっせと準備を進めていった。
 やがて全ての準備を整えた山口巡査が三脚に乗せられたカメラの前に立つ。
「あー、あー、マイクテスト」 コホンと咳払いを一つ。続いて、
「私のホームページを御覧の皆さん、こんにちは。山口巡査です」
 そう言ってニンマリと笑った。だが…、
「……あ、スイッチ入れるの忘れてた」
 スイッチを入れ忘れていた事に気がつきカメラに駆け寄る。その途中、ふと生徒の視線に気が付いて山口巡査は振り返った。
「なんだよ、おめーら。俺がカメラのスイッチ入れ忘れてたのがそんなにオモシレーかよ?」
 そう言って一番近くの席に座っていた男子の頭にニューナンブの銃口を押しつけた。
「おもしろいなんてそんな事誰も……」
 銃口を押しつけられた男子が力無く答える。
「いーや、今のは面白かったって顔だ。いいんだぜ? 笑えば。面白かったんだろ。だったら笑えよ、俺に遠慮しないで笑えって」
 ゴリゴリと銃口を押しつける。どうしようも無くなった男子はすがるような目で山口巡査を見て、仕方なさそうに「お、面白かったです…アハハ」と乾いた声で笑った。
 次の瞬間、乾いた銃声と共に男子生徒の頭が脳漿を飛ばしながら弾けた。
 今度は、ちゃんとスイッチを入れた山口巡査が自分のホームページの閲覧者に対し先程からずっと喋り続けている。
 生徒達はその様子をじっと見ていたがその山口巡査の口から語られるその内容はとんでもないものだった。
「今から私が、この教室で何をやって欲しいかメールで募集しまーす。リクエストのある方はトップページにあるアドレスに希望を書いて送って下さいねー。なお、ウイルスとか送っちゃうと山口さんは怒って生徒を殺しちゃうかもしれませーん。みんな気をつけよーねーキャハハ!」
 大の大人男が舌ったらずな口調で喋ってる様子は端から見て、相当気持ち悪い。でも誰一人として笑わなかった。いや、笑えなかった。
「さて、前もって色んな掲示板で宣伝はしてあるがメールが来るまでちょっと時間があるよなぁ」
 ビデオカメラの乗った三脚を教室の隅に移動させながら山口巡査は言った。
「じゃ、お次は『お茶の間』といきますか」
 そういってデイバッグから小型の携帯用液晶テレビを取り出した。
 アンテナを伸ばしスイッチを入れると案の定、どのチャンネルもこの事件のニュースでもちきりだった。
 生徒達もテレビの音声に思わず反応する。
 実をいうと最初の銃声から3分後には警察に一報が伝わり。その20分後には、ひびきの高校の周りには厳戒体制が敷かれ周辺は警察や機動隊、野次馬などでごった返していた。その中には当然マスコミもいる。
 狙撃されないように窓際から外を見るとやはり各テレビ局のカメラがこの教室に標準を合わせているのが見えた。
『見えました! 今チラっと犯人の姿が見えました!!』
 女性リメbーターのキンキン声が山口巡査の携帯テレビのスピーカーから聞こえてくる。
「はは、すっかり人気者だ」
 山口巡査は揶揄するように笑った。
「人気者はファンの声援に答えなきゃな。ね? 光ちゃん」
「え?」
 そう言って山口巡査は光に歩み寄り彼女に銃口を向けた。
「脱ぐんだ」
「……そんな」
 お漏らしもした、クラスメイトに秘部も晒した、同級生にフェラチオだってした。だからって脱げといわれて脱ぐほど光は落ちてはいない。
「脱がないなら僕が脱がせてあげてもいいんだよ?」
 メbケットからカッターナイフを取り出しキリキリと刃をだす。
「……ぬ、脱ぎます」
 鋭く光るナイフの刃を見て、光は仕方なく返事した。
 裸になった光に教室の視線が集中する。その視線を受け光は恥ずかしさのあまり耳の裏まで真っ赤に染めた。
(み、見ないで!!!)
 あまりの恥ずかしさでその言葉は声にならない。
「さてと、行こうか」
 そう言うや、山口巡査は光の背後に移り、抱っこするように膝に手を廻して持ち上げた。
「開脚しまーす」
 強引に光の足を開く。足を開いたその姿は親が赤ちゃんにオシッコをさせる時のメbーズそのものだった。
「ほ〜ら、光ちゃんのオシッコメbーズだ」
 そう言ってスキップをするように教室内を駆け回る山口巡査。
「や、やだぁ! 見ないでーっ!!」
 両手で顔を隠しながら泣き叫ぶ光。あまりの狂気じみた光景に誰一人として声が出ない。 
 皆ただ唖然とした顔で、童のように駆け回る山口巡査を見ていた。
 当然この光景はネットにも流れている。
「さてと、遊びはここまでにしてと……」
 蹄を返し窓の方に歩き出す山口巡査。もちろん光を抱えたままだ。
 光は嫌な予感がした。
「さぁ、光ちゃんの成長した姿を全国のお茶の間の皆さんに見てもらおう!」
「イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
 山口巡査の上でジタバタと暴れ出す光。しかし彼女の力では山口巡査から逃れる事などできはしない。それどころか教室内の異変に気付いたマスコミを引き付ける結果となった。
『おや? 今、教室内で何か動きがあったようです!!!』
 教卓の上に置かれたままの山口巡査の携帯テレビが実況を始めた。
『あれは何でしょう!? 窓際に人の姿のようなものが見えます……』
(み、見ないで……!!)
『カメラをズームして見ましょう……あ、やっぱり人間のようです!! 人質の女生徒でしょうか!? な、何という事でしょう!! その女生徒は、一糸纏わぬ姿でおそらく犯人と思われる男に後ろから抱え上げられています!!!』
 その瞬間、光のヌードが全国のお茶の間に流れた。生放送ゆえに当然モザイクもボカシもない。
「アハハ!! 光ちゃん、一気に全国デビューだ!」
 山口巡査の高笑いが再び教室内に響き渡った。
「さて、次はメールチェックだ」
 山口巡査はパソコンの前に座りメールソフトを起動させた。
【421件の未開封メッセージがあります】
 それを片っ端から見ていく。
「SEX…フェラ…69……う〜ん、どいつもこいつも同じような内容だなぁ。まったく少しは頭を捻って欲しいもんだ………っとコイツは中々オモシロそーだ」
 数あるメールの中から珠玉の作品を見つけ出す。

>こんにちは、山口さん。
>遂にやってくれましたね。貴方ならやってくれるって信じていました。
>で、早速ですが提案です。
>女子生徒を使って『犬の散歩』をしてみてはどうでしょう?
>きっとウケますよ。

「ハハ、犬の散歩か。確かにウケそうだ。よし、これに決めた」
 そう言って立ち上がる。
 そして鞄の中から一応持ってきていた首輪と人質を縛るつもりだったロープを取り出し急ごしらえの散歩セットを作った。
「さて…帯同者だが誰にしようかな……」
 生徒を一望する。
「今度は女がいいな。よし、オマエに決めた」
「み、美幸〜〜〜!?」
 選ばれたのは寿美幸だった。やはり彼女はついてない。
「今からオマエに光ちゃんの散歩に行ってきてもらう。もちろん拒否権は無い」
 美幸に首輪を放り投げる。
「さ、散歩ってどうすれば……?」
「犬の散歩と一緒さ。光ちゃんに首輪をつけ、犬みたいに歩いてもらう。それだけだ」
「それだけだって言われても〜……」
 当然、美幸は困惑する。
「コースは、あそこにいるマスコミどもの前まで。そこまで行って『お手』と『お座り』として『チンチン』…って光ちゃんにチンチンは無いか。じゃあ、それだけでいい。取りあえずそれだけやって来い」
 光も美幸も絶句するしかなかった。
「あと、奴らが何か質問してきても一切答えるなよ。半径3m以内に人を近づけるのも禁止だ。様子はこの生放送の番組で見てる。もし約束を破ったり逃げたりしたら…そうだな、あそこに居る女に死んでもらう」
 そう言って窓際の一番後ろ席の女子に銃口を向ける。目を閉じて祈るように指を組んでいるその少女は寿美幸の親友、白雪美帆だった。
「み、美帆ぴょん……!?」
 寿美幸は、やはり自分は不幸につきまとわれる体質なのだな、とつくづく思うのだった。
 素っ裸のまま首輪をつけられた光が美幸に連れられ廊下を歩いて行く。山口巡査は美幸達が廊下の角を曲がるまで見送ると教室内に戻ってきた。
「さ、君たちは僕と生放送を楽しもう」
 見やすいように生徒達の方に画面を向けてやる。それでも4インチの画面では生徒達には小さすぎた。いや、むしろクラスメイトの痴態など見えない方が幸せなのかもしれない。
 暫くするとテレビの内臓スピーカーから再びキンキン声のリメbーターの声が聞こえてきた。
『あ、今校舎から誰かが出てきました! 犯人に開放された生徒でしょうか!? …しかし少し様子がおかしいです!!』
 黙って画面を見つめる山口巡査とクラスメイト達。
『近づいてみましょう! …あ、あれは!! なんと一人の女生徒が紐で繋がれたもう一人の女生徒を犬のように連れ歩いています! し、しかも繋がれた生徒は裸です!!』
 映していいものかどうか迷ったのだろうか、画面が光とレメbーターの間をめまぐるしく交互に動いていた。しかし覚悟を決めたのか、やがて画面は美幸と光を捉えて止まった。
 再び光の痴態が全国のお茶の間を席巻する。
『コラ!! 撮るんじゃない!!』
 怒声と共に雪崩れこんでくる警察関係者達。カメラマンの手元がぶれて画面は地震のように揺れている。それでもカメラはしっかりと光達を捉えていた。そこまでして視聴率を取りたいのだろうか。見上げた職人根性である。
 やがて光達にも警察らしき人物達が駆け寄ってきた。
『君達、一体何をやってるんだ!?』
『ダメー! 近づかないでー!! 3m以内に入られたら教室に居る美帆ぴょんが殺されちゃうよー!』
 その言葉に全ての動きが止まる。そして、皆その言葉の意味を理解した。
『……………』
 静まりかえる画面内。やがて美幸が動き出した。
(ゴメンね、陽ノ下さん。早く済ませて帰ろ)
 正直あんなところには帰りたくなかったが美幸には裸の光を晒し続けることも親友を見捨てて逃げ出す事もできない。
『……お手………お座り……』
 涙を流しながら与えられた命令を忠実にこなす二人。警察やマスコミ、そして野次馬達は二人を只、見守る事しかできなかった。
 誰もが自分の無力さに歯軋りする。
 テレビを見てる人達は彼女らを見て何を思うのだろう?
 光達を見て哀れむだろうか?
 こんな事をさせる犯人に憎しみを抱くだろうか?
 それともブラウン管の向こう側で行われているリアリティの無い事件を他人事だと傍観するだけだろうか?
「いやー、バカウケ!! ホント、最高だったよ光ちゃん!」
(もうヤダよぉ…これからどんな顔して街を歩けばいいの?)
 帰ってきた二人のボディーチェックを済ませ教室に入れると山口巡査は胸メbケットからタバコを取り出し二度目の一服に入った。
 その傍らでは光と美幸が声を殺しシクシクと泣いている。
 再び教室は重々しい雰囲気に包まれた。
 しかし、そんな教室に転機が訪れる。
(最初に渡瀬君を撃った一発、次に光を脅すのに一発、そして坂城君を撃った一発、後は威嚇発砲に一発と男子生徒を撃った一発か…。あの拳銃の装弾数はおそらく6発だから残りは一発しかない。…もしかするといけるかもしれないわ!!)
 混沌とした教室の中で水無月琴子は一人冷静だった。
 山口巡査の撃った弾の数を数え、これからの山口巡査の行動を想定し頭の中で色々とシミュレーションをする。
(渡瀬君、坂城君、貴方達の仇を討てるかもしれない!)
 琴子は覚悟を決めた。
「そこの最低男!!」
 突然、琴子が立ちあがった。何事かと琴子に全員の注目が集まる。
 最低男呼ばわりされた山口巡査は当然腹を立てた。
「おやおや、まだ自分の立場を判ってない子がいたみたいだね」
 床に捨てた吸殻を踏みつけながら銃口を琴子に向けた。
(こ、琴子…ダメ!!)
 光は琴子が怒りまかせに自棄になったかと思った。だが琴子は冷静だった。
「いいの? その拳銃は装弾数6発なんでしょ? 貴方はもう5発撃ってるわ。最後の一発で私を撃ったら貴方は丸腰になるんじゃなくって?」
 彼女の言葉にハッとする山口巡査とクラスメイト達。明らかに山口巡査の顔色が変わった。
「やっぱ、撃てないわよね。撃ったらその瞬間、皆から袋叩きですもの」
「………」
 沈黙。
 その沈黙を受け琴子は「してやったり」と思った。
「貴方の行動はずっと見てたけど弾を入れ替えた様子は無かったわ」
 追い討ちをかける。琴子は勝負に出た。
「…………」
 変わらず沈黙の山口巡査。しかしやがて観念したように言った。
「…驚いたな、ここまで頭が切れる子がいたなんて」
 諦めたように銃を降ろす。だが琴子はまだ気を抜かない。これは自分を油断させる為の罠だ、彼女はそう思った。
「そこまで気付かれているなら仕方ない。もうゲームは終了だ」
 山口巡査は鞄から何かの包みを取り出した。
「僕だって馬鹿な警察に…って僕もその馬鹿な警察だったっけ。…とにかく奴らに捕まる気は無い。捕まるくらいならこの爆弾で君達と心中する事を選ぶよ」
 自嘲するように、それでいて何か決意を固めるかのように山口巡査は言った。
(爆弾ですって!?)
 琴子は『しまった!』と思った。追い詰めると何をするかわからない、そんな事は考えれば想像ついたのに…。
 包みを床の上に転がし、それに拳銃で狙いをつける。生徒の誰もが、もう駄目だと思った。
 そして鈍い音と共に教室は閃光に包まれた。
 後にこの場にいた男子生徒、穂刈君(仮)はこの時の事をこう語った。
「流石にあの時はもう駄目かと思いました。 あんなに息巻いてた水無月さんもすかっり青ざめてしまうし、他の生徒達もギュッと目を閉じ神に祈る事しか出来ませんでしたから。えぇ、僕だって例外じゃありませんでしたよ。
 だから驚きました。閃光の後、身体に何も異常が無い事に気付いた時は。 あの時、僕達が爆弾だと思った光は、閃光弾ってやつのだったんですよね? いつかのバスジャック事件とかで使われてた。
 ……それにしても奴にとっては皮肉でしたね。ネットで公開していた教室の様子が逆に機動隊の突入機会を窺がう手助けをする事になってしまうなんて。
 …そうそう、クラスメイトの八重さんが犯人の目を盗んで携帯のメールで中の様子を外部に知らせてくれてたって話を聞いた時も驚きました。犯人が複数だったりツメの甘くない奴だったらこうはいきませんでしたね」
 彼は更にこう続けた。
「でも、やっぱり気持ち的には、やりきれません。渡瀬や匠…それにアイツ自身も死んじまったし」
 犯人山口巡査は閃光弾と機動隊の突入の混乱時、何者かが撃った銃弾を受け絶命した。
 その銃弾は皮肉にも彼のニューナンブから放たれた弾そのものだった。そして銃が発見された場所と山口巡査が居た場所が離れていたことから山口巡査本人が自殺したという線は消え、生徒の誰かが混乱に乗じて山口巡査から銃を奪い発砲したという結論に落ちついた。
 警察はまだその人物が誰なのか特定できていない。

「光、お見舞いに来たわよ。調子はどう?」
 現在、光はあの事件の傷を癒すため市内の病院に入院している」
「ありがと琴子、大分良くなったよ」
「…そう、なら良かったわ」
 光の嘘に琴子はそう答えた。
 あれだけの心の傷、そう簡単に癒えるものではない。今回の事件で光は多くのものを失い傷ついた。もしかすると、その傷は一生かかっても癒えないかもしれない。
 それでも光は歩かなければならないのだ。死んでしまった公一や匠の分も。
 彼女が歩くその道は間違いなく辛く険しいものになるだろう。
 そんな光のこれからの事を考え琴子は涙が出そうになった。
「花瓶の花、変えてくるわね」
 琴子は泣きそうになった事がばれないよう一度病室を出る事にした。
 花瓶を持ってドアの方に歩き出す。
「あの、琴子…っ!」
「なに、光?」
 琴子は振り返らず答えた。
「あの、えっと……ううん、やっぱなんでもない」
「そう、じゃ、行ってくるわね」
「………うん」
 光は、琴子が出ていったドアを、まだ『アノ感触』が残る右手をさすりながらじっと見続けていた。

  おしまい