復活のギャルゲ板SSスレッド

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長いのから短いのまで、ほのぼのからダークまで、健全からえろえろまで。
あなたの胸の中に生まれた、あなただけのストーリーを聞かせてください。
もちろん感想やリクエストも大歓迎♪
ふぅ、新スレ立てるのって初めてだから緊張した…いぢめないでね。
さて、しょっぱなから私の拙文で恐縮だけど、何もないのも寂しいので一発。
ときメモ2より、サブストでもブルストでもドラマCDでも一番乗りな、
この娘のお話です。
3風が運んだHappyness(前編):2001/05/07(月) 06:56
 強い風が、むせ返るような緑の匂いを運んでくる。初夏の日差しが木々を透かして
降り注ぐ、そんな日曜の午後。緩やかな坂道を歩いていく、少年と少女の姿があった。
「ねぇ…ほんとに大丈夫なの?寿さん」
 少年が、傍らを歩く少女に気遣わしげに話し掛けると、少女――寿美幸は、頭を軽く
さすりながら答えた。
「うん、もうすっかり平気だよ〜!」
(……ほんとは、まだちょ〜っと痛いけどね)
 少年に心配をかけないよう、美幸は心の中だけでそう付け加える。
 このやたらと縁起の良い姓名を持つ少女は、その名前に反して、常に不幸な出来事に
つきまとわれる。例えば――ハイキングの途中、降りた駅の二階のベランダから突然、
強風に煽られた植木鉢が落ちてきて、あまつさえ頭に直撃したりする事などだ。
「……コブにでもなってなけりゃいいけど」
 心配そうな表情の少年に、美幸は笑顔で答える。
「……ほんとに大丈夫だってば。美幸、こういうの慣れてるし」
「慣れてるっていったって……」
「ほんとにいつもの事だもん。えーと、昨日はショッピング街で消火栓が破裂して
びしょぬれになったでしょ。おとついは学校の帰りにジュースの自動販売機が倒れて
きて下敷きになったし、その前の日は校庭のベンチに座ったらペンキ塗りたてだったし、
えーとその前は……」
 不幸の数々を思い出しているうちに、美幸はどんどん暗い気分になってきたらしい。
急激に声のトーンを落としていく彼女に、少年は慌てて励ましの言葉を捜した。
「ほ、ほら元気出して寿さん。『禍福はあざなえる縄の如し』って言うじゃない」
「へ?カフクハアナザ…って、なに?」
「要するにさ、幸せと災いは代わりばんこにやってくる、って事だよ。今日はもう
悪い事があったんだから、きっと何か良い事も起こるはずだよ」
「そうなの、かなぁ?」
「そ、そうだよ」
 美幸の大きな瞳に真剣な視線で見つめられて、少年は少し赤面した。ごまかすように、
小さな咳払いといっしょに話題を変える。
「……え、えーと。あ、ほら、あそこ……」
 少年が指差した先に、小さな白い建物が見える。
「あの教会を過ぎたら湖が見えてくるはずだよ。湖のそばの、涼しい場所でお弁当に
しようか」
「うん!さんせー!」
 美幸の表情が再び明るくなる。やはりこの天真爛漫な少女には、笑顔が良く似合う――
そう少年は思う。
4風が運んだHappyness(後編):2001/05/07(月) 06:56
 そのまましばらく二人で、たわいのない雑談など交わしながら歩いていると――。
 再び突風が吹き、木々が大きくざわめいた。風に長い髪を巻き上げられて、美幸は
思わず目を細める。その時、かすんだ視界の中で、何かが自分に向かって飛ばされて
くるのが見えた――美幸は、反射的にそれを両手で受け止めた。
「……はにゃ?」
 風が弱まるのを待って、美幸は手の中の物を改めて見つめた。それは、赤いハイビス
カスの小さな花束だった。
「あれ?寿さん、どうしたのそれ?」
「えーとぉ、美幸にもよく解んない。今日はよくお花が飛んでくる日だよね……あっ」
 風上の方を見ると、そこにはさっきの小さな教会が有った。その入り口で、真白な
ドレスの女性が二人に手を振っている。その傍らには、タキシードに身を包んだ男性が、
優しげな微笑を浮かべて立っている――それは、ささやかだが幸せそうな結婚式だった。
「……ってことは〜、これってウエディングブーケだったんだ……」
「そうみたいだね……」
「これ、もらっちゃっていいのかなぁ?」
 手の中の花束を見つめて言う美幸に、少年が頷く。
「いいんじゃない?」
「やったぁ〜!ラッキ〜っ!」
 美幸は文字通り、飛び上がるように、全身で喜びを表現した。
「えへへ、さっき言ってた事、ほんとだったね〜!ラッキーとアンラッキーは代わり
ばんこ……。あっ……」
 何かに気づいたかの様に、美幸は言葉を止めた。
「ん?どうしたの?」
「……っていうことは〜、美幸みたいに、昔っからず〜っと不幸な子には、いつか……
おっきなおっきなハッピーが、やってくるのかなぁ?」
「きっと……うん、きっとそうだよ。想像もできないくらいのすごい幸せが、寿さんの
未来には待ってるんだと思う……」
 真剣な表情でそう答える少年を見て、美幸の口元から笑みがこぼれる。
「あは、それはオーバーだよぉ。だって〜、ちょっぴりなら想像つくもん」
 そう言って美幸は、そっと目を閉じた。まぶたの裏に、一つの光景を思い浮かべる。
「え、そうなの?それってどんなの?」
 不思議そうに尋ねる少年の声に、美幸は思った。男の子って、こういう事あんまり
知らないのかな――ウエディングブーケの言い伝え。これを受け取った女の子は、
その次に……。
 風が吹いた。先刻までとは違う柔らかい風は、木漏れ日の中にたたずむ二人を、優しく
撫でながら吹き抜けていった。手の中のハイビスカスが小さくゆれるのを感じながら、
美幸はまぶたを開き、そっと言った。
「えへへ……ないしょだよ」
(……今はまだ、ね)
 広い空の下に、ウエディングベルの祝福の音色が響き渡っていた。
                             (Fin)
さて、まわしまわしっと。
そりゃ。
うりゃ。
たりゃ。
どりゃ。
だりゃ。
>>1
新スレ立てる時は出来るだけ前スレへのリンクも貼った方がいいかと。

とりあえず前スレ@過去ログ倉庫は↓こちら。
http://yasai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=gal&key=../kako/972/972092485
>>11
ああっ忘れてた…すんません。
でも回しは続行。おりゃ。
まだ回す。ぶいすりゃ。(風見志郎)
ふぅ、回し完了っと。
「風が運んだHappyness」>>3-4、何気にこの板でも根強い人気の、寿美幸の
お話です。この娘の話は前から書いてみたかったんだ。

…もっとコミカルな話にするつもりもあったんだけど、私が書くとこうなっちゃうなぁ…
あの、良いSSだと思うんだけどどうして回すの?
タイトルで台無し。辞書はこまめに引こう。
17クラスター:2001/05/07(月) 21:08
>>16
happiness……ま、細かいことは気にしない。
>>15
や、立てた直後でTOP20に入ってる時、長文だとウザがられるかな、と。
こないだの一件でピリピリしてる人も多いだろうし。スレが軌道に乗って
きたら、そこまで神経質にならなくてもいいと思いますけどね。

>>16-17
やっちゃった…マジに鬱だ氏脳。

さて、1は当分ネタ切れなので、引き続き職人さんの参加をお待ちしています。
19名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/11(金) 12:59
お。新スレできてたのね。めでたい。
>>14
前スレの八重さんの4月8日のSSと同じ人かな?
ほのぼのしてていい感じっす。
20名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/11(金) 23:36
>>19
ビンゴ。やっぱし芸風が一緒だからモロバレですね。
「ほのぼのな話」を狙って書いたネタなので、そう言って頂けるのは嬉しいです。

ついでにあげ。
長生きして欲しいスレ。
エロSSはここでいいの?
>>22
エロSSスレはちょっと前にあったけど
削除された。
>>22
別に構わないと思われ。前スレもエロネタ健全ネタ混在だったしな。
25名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/12(土) 10:50
ageてみる
26名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/13(日) 03:05
このままdat逝きですか?age
27名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/13(日) 09:06
>>26
スレの性質上、空白期間が出来ちゃうのは仕方ない。サクラネタなんかは他のスレで
やってるのも多いみたいだし。
書いたものの投稿以外に、なんかSS関連の話をここでしていくのもいいかもね。
「こんなの読みたい!」みたいな話題とか。

認知度UPのためにもあげ。
28名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/13(日) 22:09
>>27
同意。よし、みんなリクエストでも書き込もう。
折れはエビヤン警部とロベリア(サフィール)のキャッツアイみたいな
コメディきぼーん。
エロSSのスレ残ってるけど、どうする?
http://yasai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=gal&key=988798840&ls=50
30名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/13(日) 22:27
>>29
あ、、生きていたんだ(ワラ
でも、脳死判定。冥福を祈りましょう。
31やくそく:2001/05/13(日) 22:45
その朝、伊集院メイはごきげんだった。
「おにいちゃん」とまた遊べる。それは、今まで大人たちに囲まれて暮らしてきたメイにとって、とても新鮮な楽しみだった。

屋敷を抜け出し、河川敷に向かう。
今まで同年代の友達と遊ぶ経験の少なかったメイにとって、石蹴りのような他愛ない遊びでも、楽しくてたまらなかった。
誰かと一緒に遊ぶ。こんな当たり前の事が、伊集院家の人間にはほとんど許されていなかった。

わくわくしながら待つ。今日はどんな遊びを教えてくれるのだろう? そんな事を考えているだけで、メイは何だか嬉しくなってきた。
およそ外遊びには向かないような長いスカートを履いたメイを見て、同い年位の子達はけげんな顔をする。
でも、メイはちっとも気にならなかった。
だって、おにいちゃんはそんな事ちっとも気にせず、むしろ服が汚れないよう気を遣ってくれさえしたからだ。
もしかしたら、遊びが楽しい以外の何かも、メイを幸せにしていたのかも知れない。
でも、その感情を理解するには、メイはまだまだ幼な過ぎた。



やがて日が暮れかけるころ、咲之進が迎えに来る。
今日はおにいちゃんは来なかった。
でも明日はきっと来てくれるだろう。
そんな事を考えながら、メイは眠りについた。

一週間ほどそんな事が続き、とうとうメイは、やくそくが破られた事に気付いた。
「ぜったいのやくそく」が…。


その夜、メイは泣いた。
32メイちゃ:2001/05/13(日) 22:48
私だけのため 生きるのだ
33メイちゃ:2001/05/13(日) 22:48
くやしいけど恋してるのだ
34メイちゃ:2001/05/13(日) 22:50
こんな気持ちにきづいた日
35メイちゃ:2001/05/13(日) 22:52
Happy! It's a Super Special Day.
36メイちゃ:2001/05/13(日) 22:53
Lucky! 私 Super Special Girl!
37メイちゃ:2001/05/13(日) 22:54
Always! It's a Super Special Day.
3831:2001/05/13(日) 22:56
初めてSSに挑戦…
3931:2001/05/13(日) 22:57
中身が無いなぁ…
4031:2001/05/13(日) 22:58
回し完了…
>>31
ぐはっ!自分の考えてたのとネタかぶってる!

…いや、つい昨日メイちゃの初攻略してて、「もう放さないのだ!」イベントに
萌えまくったんで、ネタにしてみようかと…。こんな偶然もあるんだなぁ。
ま、こっちの話は高校時代で、美帆とか絡むんですが。うーん、書いたもんか書かないもんか。
>>41
あう、ぜひ拝読したいです。
私はサブスト2&ブルーミングで人生間違いました(w。
43名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/13(日) 23:39
>>41
きぼーん
44プレゼント(1):2001/05/14(月) 01:07
「……貴様が白雪美帆か?」
 その日、演劇部の練習を終えた美帆を校門で待っていたのは、少し意外な人物だった。
日本有数の大財閥、伊集院の姓を持つ少女、伊集院メイ。ひびきの高校の生徒なら、彼女
の事を知らないものはいないだろう――曰く、世間知らずのお嬢様。曰く、電脳部名物
わがまま娘。曰く、生徒会長・赤井ほむらの天敵。エトセトラエトセトラ。
「何でしょうか?」
 美帆は、いつもの柔和な笑みを崩さずに答えた。
「じ、実は、きさ……い、いや、せっ、せっ、せっ……」
 口ごもるメイの頬は、校庭の木々の紅葉もかくやというほどに紅潮していた。
「せ、先輩に……白雪先輩に、たっ、頼みがあるのだ」
45プレゼント(2):2001/05/14(月) 01:08
 夕暮れせまる河川敷公園には、秋の終わりを予感させる、少し冷たい風が吹いていた。
 二人きりになりたいというメイの願いに、美帆は自分のお気に入りの場所を選ぶことで
答えた。二人が土手に腰を下ろすと、長い影が背後へと伸びた。
「……それで、頼みと言うのは?」
 美帆が尋ねると、メイは少し逡巡してから答えた。
「きさ……いや、先輩は占いが得意だそうだな」
 メイの口調は高圧的だが、表情と仕草はそれを完全に裏切っていた。視線は宙を泳ぎ、
指は所在なげに、袖口のボタンなどをもてあそんでいる。
「ええ、よくクラスの皆さんにも、占って欲しいとお願いされます。それが?」
「じ、実は占って欲しい事があるのだ。……い、言っておくが勘違いなどするでないぞ!
科学の徒であるメイは怪しげな迷信など信じないのだ! 小さい頃、一度だけ占いに頼った
事があって、それに裏切られて以来、メイは科学一筋に生きると決めたのだ! ただ、事象
を性格に判断するにはあらゆる情報を多面的に収集し分析する事が必要なのであって……」
 そこまで言ってメイは沈黙した。どうやら、自分で自分の言っている事が解らなくなっ
たらしい。美帆は苦笑混じりの微笑みで答えた。
「で、何を占えばよいのですか?」
 メイはしばらく逡巡した後、意を決したかのように話し始めた。
「や……奴へのプレゼントのことなのだ」
46プレゼント(3):2001/05/14(月) 01:08
「奴?」
 頭の上に疑問符の浮かんだ美帆を顧みる事もなく、メイは続けた。
「来週の月曜日が、奴の誕生日なのだ。それで、奴に喜んでもらえるようなプレゼントを
……と思ったのだが……何にも思い付かないのだ……」
「でも、伊集院さんの家はお金持ちなんでしょう?プレゼントなんて、いくらでも……」
「……メイは今まで、人から贈り物をもらって、嬉しいと思った事が一度もなかったのだ」
「え?」
「心の底からメイの誕生日を祝ってくれるような人間など、めったにいないのだ。みんな、
伊集院家に近付くための手段としてしかメイを見ていない……」
 素直すぎる独白に、美帆は驚いた。ここ、河川敷公園は、人々の本音が聞ける場所として
知られている。あるいは、美しい川面のきらめきに、人の心を解きほぐす力があるのかも
知れない……そんな事を美帆は考えた。
「でも、奴だけは違ったのだ……奴は、いつもその時メイが一番欲しいと思っているものを
贈ってくれるのだ。だからメイも、奴が一番喜ぶようなプレゼントを……と……」
 しゅんとした表情で話すメイを見て、美帆は思った。この子は、みんなが言うほど高慢
ではない……ただ少しだけ、人より感情のあらわし方が下手なのだ、と。
 美帆は無言のまま、鞄から愛用のタロットカードを取り出した。膝に乗せた自分の鞄を
机代わりにして、カードを並べ始める。
 そして美帆は、カードから得られたインスピレーションを言葉にした。
「手作りのお菓子なんか、いいと思いますよ」
「え? で、でもメイは料理が苦手……」
「そんなに難しいものでなくてもいいのですよ。クッキーでもケーキでも。そこにあなたの
心さえこもっていれば」
「そ、そうか……そんなに、簡単な事だったのだな……」
 メイは満足げに微笑んだ。無垢な天使のような微笑みだ……と美帆は思った。
47プレゼント(4):2001/05/14(月) 01:09
 その時、遠くからメイを呼ぶ声が聞こえてきた。メイの付き人である三原咲之進の声だ。
「あ……メイはそろそろ帰らなくてはいけないのだ。……せ、世話になったのだ」
「どういたしまして……あ、最後にひとつだけ教えてくれませんか?」
「なんなのだ?」
「小さい頃、あなたを裏切った占いってなんだったんです?」
 その問いに、メイは遠い目をしたまま答えた。その瞳には、今沈み行く夕日ではなく、
過去の夕日が映っていたのだろう。
「……たわいのない花占いなのだ。そう言えば、あれもこの公園だったな。その頃、一緒に
遊んだ男の子に、もう一度会えるかどうか……。占いは『会える』と出たのに、結局それ以来、
二度と会うことはなかったのだ」
 メイは懐かしむように、沈みゆく夕日を見つめていた。――だから、その答えを聞いた
美帆が、顔色を変えたことには気づかなかった。
「それではメイは帰るのだ。きょ、今日はありがとう……なのだ」
「が、頑張ってくださいね。あなたの心が伝われば、きっと喜んでくれます。あの方はそう
いう方ですから……」
48プレゼント(5):2001/05/14(月) 01:10
 咲之進の運転する車の中で、メイはプレゼントするお菓子への想像を巡らせていた。次の
日曜日は、屋敷の厨房を朝から貸りよう。伊集院家の厨房にはあらゆる設備が揃っている
から、奴が見たことのないようなお菓子だって作れるだろう。奴の喜ぶ顔が目に浮かぶ
ようだ……。
(……おや?)
 些細な違和感をメイは感じた。自分は美帆に、奴の名前を言っただろうか。美帆は別れ
際に『あの方はそういう方だ』と言った。まるで奴の事を知っているような口ぶりでは
ないか……。
(……ま、いいのだ)
 それよりも、今は大切な事がある。
「そうだ、咲之進、明日中に菓子作りの入門書を揃えておくのだ」
「かしこまりました」
 メイの胸中を知ってか知らずか、咲之進はいつものように無表情に答えるだけだった。


(運命の妖精さんは、ときに残酷ないたずらをされるものですね……)
 幼いメイは覚えていなかったかもしれない。川原で泣きじゃくる彼女に、花占いの
やり方を教えた、一つだけ年上の少女の事を。そしてメイは知らなかったはずだ。その
占いが、その少女にとっても再会の願いを込めたものであった事を……。
 その時の願いが既に叶っていた事を、美帆はつい先日知ったばかりなのだ。
 そして……再び出会えた彼の誕生日もまた、来週の月曜日。
(私の想いと彼女の想い……同時に叶う事は有り得ないのかもしれませんけど……)
 それでも、美帆は願わずにいられない。
(運命の女神様、どうか彼女の想いに、祝福と慈悲をお与えください)
 その願いは天に届いただろうか。
 夕日が沈みきった空に、いつしか煌きはじめた一番星が、微笑むようにまたたいた。
                                   (Fin)
さがってるので、回さなくてもいいかな?
と言うわけで「プレゼント」>>44-48
思い切り急いで書き上げてしまいましたが、こんなお話です。
実質2時間弱か…書けるものだなぁ(粗製濫造に気をつけましょう>自分)
…やっぱし、回してあげとこっと。
そういえば、美帆は「お姫様」にあこがれる「姉」で
一方、メイは伊集院家の「お姫様」な妹。
つまりシスタープ…いやいやいや。
でも、妙に共通するキーワードとか
相反する要素の多い二人なんですよね。
幼年期の川原のエピソードはもちろん創作ですけど
けっこう、有ってもおかしくない話かな、とか思ったりして。
58名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/14(月) 06:53
というわけでage。
もう一度リンクだけ貼っておきます。「プレゼント」>>44-48、
本編では全然接点のない、メイ様と美帆ぴょんの話です。
59名無しだけのため生きるのだ:2001/05/14(月) 11:25
>>58
ブラボー。メイちんと美帆っちーという意外な組み合わせ(かつ幼年期絡み)、面白かったです。

>>44の「曰く…エトセトラエトセトラ」とか>>45の「じ、実は占って…」とかメイちゃらしくて良かったです。
>>46の「河川敷公園は人の本音が聞き出せる場所」とか>>47の「メイを呼ぶ咲之進」というのも、
ゲーム内の設定にのっとっていて親しみやすかったです。
伊集院家の呪縛とか、占いシーンの描写とかも、「いかにもときメモだなあ」といった感じを受けました。

(でもこれを2時間弱でですか…。31に同じくらいかかった自分って一体…。しょ、精進します。)
何はともあれメイたんマンセー!!
60名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/14(月) 13:26
いいかんじage
61名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/14(月) 13:58
徐々に盛りage
62名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/14(月) 22:51
>>59
あ、もちろん考えてる時間を含めると2時間じゃきかないですよ。街をぶらぶらと
歩きながら考えてたり、以前からのネタストックから引っ張ってきてたりしてますし。
…つーか、今回の反省。書いて即日アップは金輪際二度とやりません。
速く読んで欲しかったんで勢いでうぷしたけど、なんか読み返したらボロボロだぁ…。
野咲すみれのSSキボーン。
俺は本編でのオマケゆえのシナリオ薄さに涙した(でも萌えた)。
あぁ、薄幸の美少女…さいこーっす。
64名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/15(火) 23:43
あげてみる。
ここはリクエストもアリですか?
アリなら…いや、やめておこう。
66名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/16(水) 11:08
前スレより回転が速いですね。
前スレで生まれた職人が育っているのもいい傾向だと思うよ。
優良スレマンセー
68 :2001/05/16(水) 12:04
69入学式前夜(1):2001/05/16(水) 19:22
ふぅ、今日も一日終わっちゃったなぁ。
明日はいよいよ入学式かぁ。
そう呟きながら、イスに座る。
そしていつものように、机の上にある写真に目を向ける。
写真立てに収まっている小さかった頃の写真。
初めて三人で行った遊園地での写真。
華澄さんと私…そして君が写っている写真。
君と一緒に写っている最後の写真。
悲しい別れが待っているなんて知らずに、無邪気に笑う私と君…。
次の日、君が引っ越してしまうなんて…突然すぎるよ。
あの時、私…何も言えなかったんだよね…。
あのあと、私、泣いたんだよ。
悲しくて…寂しくて…涙が枯れちゃうくらい…。
泣いても君が戻ってくるわけないのにね。
今でもあの時のことを思い出すと目頭が熱くなる。
一度、君に手紙を書いたんだよ。
幼いころの思い出…楽しいこと、悲しいこと。
その思い出には、いつも君が一緒にいたこと。
あの時、伝えられなかった私の想い。
一生懸命、何日もかかってやっと書いたのに…。
なのに…出した手紙はそのまま戻ってきたんだよ…。
あの時もまた泣いたっけ…もう二度と会えないんじゃないかって。
ヒドイよぉ…。
もう…どうして連絡くれないの?
私のことなんて…もう、忘れちゃったの?
私の…心の中は…。
こんなに…こんなに君のことでいっぱいなのに…。
70入学式前夜(2):2001/05/16(水) 19:22
そんなことを思いながら、机の引出しを開ける。
そこにはちょっと汚れた小さな箱がある。
その小さな箱を取り出し、机の上に置く。
これは私の宝箱。
大切にしてきた、宝物が入っている箱。
そっと蓋を開け、箱を写真の方へ傾ける。
これ…全部、私の大切な宝物なんだよ。
この宝物一つ一つに、君との思い出が詰まっているんだよ。
その中から指輪をとり、手のひらにのせる。
えへへ、これは一番の宝物だよ。
夜店で君が買ってくれた、ガラスの指輪。
あの時のことは今でも鮮明に憶えているよ。
本当にあの時は嬉しかったなぁ…。
苦しいことや悲しいことがあった時、いつもこの指輪を眺めてた。
あの頃のように、君が優しく励ましてくれてるようで…。
だから、元気だしてがんばろうって思うんだよ。
私、いつも君から勇気をもらっているんだよ。
いろいろなことを思い出し、目頭が熱くなる。
いけない…もう、泣くのはやめるって決めたのに…。
泣いても始まらない…何も変わらない。
また会える…そう信じてる。
きっとまた会える…そう信じてる。
いつかきっとまた会える…そう信じてる。
その時は笑顔で再会したいって。
そう自分に言い聞かせながら、がんばっているんだよ。
指輪を写真の前に置き、頬杖をつく。
ため息をつきながら、ゆっくりと指輪から写真に視線を移す。
71入学式前夜(3):2001/05/16(水) 19:23
今頃君はどこで何をしているのかなぁ?
私はひびきの高校に入学するんだよ。
華澄さんも通っていたひびきの高校。
君はどこの高校へ行くの?
あぁ…私ったら、また…。
中学の入学式の前もそうだった。
もしかしたら、君が帰ってくるんじゃないかって。
入学式でばったり再会できるんじゃないかって。
そんな都合のいいこと思ってた…。
ううん…本当はいつもそう思っているんだよ。
ひびきの高校かぁ…。
小さい頃はよく二人で近くまで行ったよね。
あの頃は、ずっと一緒にいることが当たり前だと思ってた。
物心つく前から、一緒にいたんだもんね。
ずっと一緒だった、幼稚園も、小学校も。
あの日…そう、君が引っ越してしまうまでは…。
君との時間は、あの時止まってしまったまま…。
いつか君に会えたら…。
また…会えたら、止まった時間は動き出すのかな?
それとも…私と君とは別々の時間を刻んでいくのかな?
でも、そんなことどうでもいい…君に会えるなら…。
君と別れてから…もう7年か…。
ふと、時計に目を向ける。
あっ…いけない、もうこんな時間。
君のことを考えていると、あっというまに時間がたっちゃうよ。
初日から遅刻するといけないから、もう寝るね。
それじゃ、おやすみなさい…。
72入学式前夜(4):2001/05/16(水) 19:24
電気を消し、ベッドに潜り込む。
…。
…。
…。
あれ?今日はなかなか寝付けないなぁ。
明日が入学式だからかなぁ。
薄暗い部屋の中、机の方に目を向ける。
そういえば、君の将来の夢って…。
えっと…たしか、野球選手になりたいって言ってたよね。
今でもその夢は変わらないのかなぁ。
それとも、新しい夢に向けてがんばっているのかなぁ。
将来の夢、か…私の夢って何だと思う?
えへへ、素敵なお嫁さんだよ。
もちろん…君のお嫁さん。
私の小さい頃からの夢…君のお嫁さん。
すぐにでも叶うような、そんなささやかな夢。
そう、そんなささやかな夢のハズだった…。
なのに…君との突然の別れ。
今では叶うかどうかさえ分からない夢。
でも、可能性がないわけじゃないよね…。
お互い元気でいれば、いつかきっと会えるよね。
私、いつまでも君のこと忘れないよ。
君はどうなのかな?
私のこと、憶えててくれてるのかな?
憶えててくれれば嬉しいな。
まさか、忘れちゃったりしてないよね…。
せめて…せめて、心の片隅にでも眠っていてくれないかなぁ。
再会できたとき、その眠っている思い出を私が優しく起こしてあげるのに…。
73入学式前夜(5):2001/05/16(水) 19:24
ねぇ、憶えてる?
小さい頃はよくおままごとしてたよね。
君がお父さんで私がお母さん、そしてたくさんのぬいぐるみの子供達。
君はよく言ってたよね。
「オレさぁ、一人っ子だろ。親は忙しくて毎日帰りが遅いから寂しいんだ。
だから兄弟は多い方がいいな。きっと楽しいだろうな。光もそう思うだろ?」
『うん。』ってうなずくと、
「やっぱりそう思うよな。オレ、結婚したら子供いっぱいつくるぞ。」
『えへへ、じゃあ、私がんばるからねっ。』って言ったら、
「えぇ、でもな…光の子供じゃ泣き虫ばっかりになるから困るなぁ。」
『そ、そんなことないよぉ。』って泣いたら、
「ホラ、もう泣いた。だから光は泣き虫なんだって。」
『だって…だって…そんな意地悪しなくても…。』
そう言っていつまでも泣いてると、
「…もう泣くなよ、光。オレは笑ってる光が一番好きなんだよ。」
そう優しく言ってくれるのが、とても嬉しかったんだよ。
たしかに私は泣き虫だったかもしれない。
でも、ほとんどの原因は君だよ、君が意地悪したんだぞ…もう。
私、よく近所の子にもいじめられたよね。
そんな時はいつも、君が助けてくれたよね。
「おまえら、光をいじめるな。」って。
君、そんなに強くないのに。
でもね、そのときの君、かっこよかったよ。
勝ち負けなんて関係ない、私、本当に嬉しかったんだよ。
私が困っているときは、いつも優しくしてくれたよね。
74入学式前夜(6):2001/05/16(水) 19:25
君、かけっこ速かったよね。
私、いつも君の後をついていくので精一杯だったんだよ。
『ねぇ…待ってよ…。』
「早く来いよ。置いてくぞ。」
『あっ…。』(ドテッ)
よく転んで泣いちゃったよね。
『ふぇ…い、痛いよぉ。』
「まったく、しょうがないな。」
膝を擦りむいたときは、君がおぶって家まで帰ってくれたこともあったよね。
ほんと、君は優しいんだよね。
でも、もうちょっと走るスピード落としてくれてもよかったのに…。
そうそう、君があんまり速いから、私がはぐれちゃったこともあったよね。
あの後、はぐれないようにって、君は手をつないでくれたんだよね。
えへへ、嬉しかったなぁ。
君が引っ越す事になったときも…。
あの時、さよならの言葉さえ言えなかった私…。
ただ、走っていく車を追いかけることしかできなかった。
君にすら追いつけない私が、車に追いつけるハズ無いのにね…。
それから私は速く走れるように、一生懸命練習したんだよ。
中学校に入って陸上部に入部したのもそう…。
速く走りたい…君に追いつきたいって…。
いつか君と…一緒に…走りたいって…。
いつか…きみの…よこ…はし…り…って…。
いつ…か…。
…。
<完>
75回します(1):2001/05/16(水) 19:26
光「ねぇ、今でも子供、たくさんほしいと思っているの?」
主人公「そうなだな…野球チーム作れるくらいは欲しいかな。」
76回します(2):2001/05/16(水) 19:26
光「野球チームって…えっ、9人?」
主人公「まあ、それくらいかな。」
77回します(3):2001/05/16(水) 19:27
光「うーん、それはちょっと大変かなぁ…。」
主人公「大丈夫、大丈夫。光は一人でもOKさ。」
78回します(4):2001/05/16(水) 19:27
光「えっ?でも…それじゃ8人足りないよ。」
主人公「大丈夫だって。」
79回します(5):2001/05/16(水) 19:28
光「?」
主人公「華澄さん、琴子、美幸、茜、ほむら、花桜梨、
美帆、楓子、メイで10人。」
80回します(6):2001/05/16(水) 19:29
光「…。」
主人公「真帆、すみれ、舞佳さんを入れれば13人。
野球チームじゃなく、サッカーチームだって作れるぞ。」
81回します(7):2001/05/16(水) 19:29
光「…そんな…ヒドイよぉ。」
主人公「ハハハ…冗談だよ、冗談。」
82回します(8):2001/05/16(水) 19:30
光「もう…バカァ!!」
主人公「あれ?光、たしかバカって言う奴がバカじゃなかったけ?」
83回します(9):2001/05/16(水) 19:30
光「もう…知らない!!」(そんなこと憶えててくれたんだぁ…嬉しいなぁ…)
主人公「ハハハ…。」(うーん…やっぱり、子供は光とだけにしとくか…)
84ひかりん、、、大好きです。。。:2001/05/16(水) 19:34
「入学式前夜」です。
>>69-74
光の主人公に対する想いを書いてみました。
初めてなんで、想像しやすいところから…。
うーん、どこかにありそうだな…ま、いっか。
思うように表現できない…結構難しいなぁ。
85笑顔(前編):2001/05/16(水) 19:35
空中ブランコの高台の上から、すみれは客席に目を走らせていた。
――いた。あの子だ。すみれの胸に静かな緊張が走る。


三日ほど前の事だ。すみれ達は、この街での興行準備に大忙しだった。
ちょうど必要な資材の買い出しを終え、町外れに立てたテントに向かおうとしていたその時、
突然デイジーが何かに気付いたかのように飛び出して行った。
「あ、デイジー!」
止める間もなく走り去ったデイジーを追うため、すみれは荷物を他の団員に預け、駆け出した。
「じゃあすみれちゃん、先にテントの方に帰ってるわね」
「はい、すみません。デイジーを連れてすぐに戻ります」

デイジーの走っていった方向にしばらく向かうと、「キキッ」という聞き慣れた声が聞こえてきた。
そこは小さな公園だった。公園の片隅のブランコで、4・5歳くらいの女の子がデイジーを不思議そうに見つめていた。
一方デイジーはと言うと、その女の子の前で飛んだり跳ねたりして、何やら懸命に笑わせようとしているようだった。
女の子の頬には光る筋が、泣いた跡があった。
その風景を見て、すみれの胸にあの時の記憶がよみがえる。
若くして母が亡くなり、自分が一人泣いていた時の事、その時初めてデイジーと出会い、慰められた時の事…。

すみれはそっと女の子に近づき、声をかける。
「何してるの?」
「…おねえちゃん、誰?」
「私はすみれ。野咲すみれ。私も隣に座っていいかな?」
「……きれいな、名前だね」
86笑顔(後編):2001/05/16(水) 19:35
少しの無言の時間が流れ、先に口を開いたのは女の子の方だった。
「わたしね…、おかあさんとおとうさんが、『りこん』しちゃうんだ」
「えっ」

少女の話を聞き、すみれは理解した。女の子の母は娘を産んだ事を後悔しており、父もまた、家庭に興味を持っていない事を。
例え両親が健康でも…、これでは意味が無い。

すみれは考えた。自分はみんなを楽しませるために、笑ってもらうためにブランコをやっている。
それは、あの人が教えてくれた事。
そんな自分がこの子のために出来る事、それは…。

すみれは、ポケットからサーカスの券を取り出して言った。
「ねえ、今度の日曜、私達サーカスをやるんだけど、もし良かったらお父さんお母さんと一緒に見に来てくれないかな」


―あの子が来ている。両脇に座っているのが恐らく両親だろう。
少女の境遇を、自分に重ねあわせていただけなのも知れない。
自分がブランコをやっても、あの子は笑ってくれないかも知れない。
でも、それでも、一人の子供の笑い顔のために、自分はブランコがやりたい。
またきっとあの人に、胸を張って会えるために。

跳んだ。重力に引かれるままにブランコは高度を下げ、そしてまた昇る。すみれは親友の名を呼ぶ。
「おいで、デイジー」


閉幕の喧燥の中、すみれは少女の姿を探す。
「すみれおねえちゃん!」
あの子が声をかけてくる。
隣に立つ両親の、何かをあきらめてしまったような表情には、何も変化は無い。
でも、あの子は確かに――かすかに、恥じらいながらだが、確かに微笑みながら、こう言った。
「…ありがとう」

(「私こそ、ありがとう」)そんな思いを胸に、すみれはありったけの笑顔で返した。
(やっぱり、あの人の言う通りだった。サーカスは、誰かに笑ってもらえる力があるって…)
87名も無きミナー:2001/05/16(水) 19:37
うぷしようとしてリロードかけたら、84さんの作品が目に飛び込んできてかなりびっくり。
名前消し忘れ…鬱。
SS書くの2回目で不慣れですが、すみれちゃんです。
メモ2ばっかり…(w
TGSのすみれちゃんのテレカ、かなり良かったり
メイちゃんに転ぶ前はすみれ属性だったり
最後の二行は蛇足だったかも…
そう言えば、すみれちゃんのメールボックスは出るのだろうか…
サブスト3ではどんな役回りになるのか?<すみれちゃん
96名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/16(水) 19:47
>>85-86
「笑顔」
ときメモ2より、野咲すみれちゃんです。
97名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/16(水) 21:01
昨日、すみれSSリクエストした者だけどこんなに早く書いてくれるとは…。
感謝!
983-4と44-48書いた人:2001/05/16(水) 23:00
…どんどんメモ2SS専用スレと化しつつありますね(w
しょっぱなが美幸ってのが問題だったんだろうか…。他作品のSSもお待ちしております。

といいつつ、すみれちゃんの話一つ思い付いたんで、週末に書いてみますね。
主人公と出会う一年前、実はこんな所でこんな人と会ってました…てな話の予定です。
(メイ&美帆もそうだけど、そんな話が好きなんだ)期待せずにお待ちくださいね。
99名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/17(木) 00:07
ときメモ2SSスレ化は全然OK。
ただ萌え路線のSSが多いのが気になるなァ。
たまにはもっと馬鹿っぽいのや電波なSSがあってもいいと思う。
エロ? エロはどっちでもいいよ。
SSの醍醐味はifだと思う。
だから98の作風は好きだ。
101名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/17(木) 00:22
「馬鹿っぽいの」はともかく、「電波なSS」っていまひとつイメージが湧かない…

「メイに抑圧された元科学部員たちが突如反旗を翻し、ひびきの高校をジャックした!
立ち向かうのは、たった一人校内に取り残された(※屋上で昼寝してた)赤井ほむら!」
(ダイハード+押井守作品風)とか…イマイチっぽいか?
>>101
前スレにあったサド卿(だったかな?)みたいなのじゃない?
ときメモSSで一番困るのは主人公の名前だと思われる。
104名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/17(木) 00:51
結城鋼「ひびきの市北部に位置する、私立きらめき高校。数時間前、突如としてハイテク特殊部隊に占拠された。
彼女らが当局に突きつけてきた要求は、ドラマシリーズの制作。
それが受け入れられない場合、24時間以内にコナミから独立すると宣言している。

結城鋼「君に依頼する任務は二つ。人質として囚われている爆裂山教官の救出。
もう一つは、彼女らの独立を阻止すべく説得する事だ。

結城鋼「彼女らを率いる実戦部隊リーダーは陽ノ下光。君の幼なじみだった少女だ。


…こんなのですか?<バカっぽいの(と言うか電波?)
105ボケコニアン:2001/05/17(木) 01:00
遠くで打ち上げ花火の残響音がひびく以外には、
音もなく、閑静な住宅街ならではの静けさを保っている。
そして、ときどき窓越しに見える花火が、
白いひかりだけの俺の部屋に彩りを与えている。
オヤジとお袋は、まだ花火を見に行ったきり帰ってこない。
しばらくは、この部屋に人が来ることもないだろう。

なぜ俺がここまで慎重に人の気配を探っているかというと、いうまでもない。
俺の部屋は・・・一組の男女、言うなれば俺ともう一人、
女の娘がそばにいるからだ。

冗談のつもりだったのに、さっきからやたら光を意識してしまってしょうがない。
浴衣姿の光は、緊張しているのか、さっきから一言もしゃべることはない。
その姿は、俺自身もまた緊張する十分な理由だった。
・・・冗談。
それは、光の何気ない一言から始まった。
「私、すごくどきどきしてるんだ」
その言葉が耳に入った俺は、
「じゃあ、俺が確かめてやろう」
なんて、軽い冗談を言った。それが、この冗談だった。
昔からの付き合いだった光の反応は昔のままだった。
「エッチ。今触ろうとしたでしょ。」
そこまでは。いつもなら、これでおわりだった。
でも、その言葉を言うと、すぐに光はしおらしくなった。そして、俺から目をそらして、
小声でつぶやいた。
「でも、きみとだったら・・・いい。」
俺はなにも分からずに、聞き返した。
「それって、なにがいいの?」
光は、「鈍感」といったきり、もう顔をあげようとはしなかった。
そこではじめて、俺は光の言葉の意味がわかった。
うつむいたままの光の肩に、俺はそっと手をかけると、
すぐにふっと力が抜けてゆくのを感じた。
「ここは人が多いから、俺の部屋に行く?
目に光が自分の部屋を見せてくれただろう。俺の部屋も見せてあげたいんだ」
と俺がさりげなくこえをかけると、
「・・・うん」
とひかりはうなずいた。

ここに来るまでは、あまりよく覚えていない。
とにかく、誰にも会いたくない、というそれだけでいっぱいだった。
・・・匠に見つかると後のフォローできないからな
106ボケコニアン:2001/05/17(木) 01:31
家に帰ると、俺は冷蔵庫から冷たい水を取り出して、
玄関にいる光に差し出した。水を飲んで二人とも落ち着きたい、と思ったからだ。
光はそっとコップに口をつけると、
1度だけそれを傾けて、俺に差し出した。
ためらいもなく、俺はそのコップで一気に水を飲んだ。
こうすることで、少しでも光に対する俺の気持ちを示したかった。
「き、汚いよ」
さっきの一幕以来、初めて「光の声」を聞いた。
「好きな奴のなら汚くないだろう」
言いながら、少しばかりキザと思ったが、そんなことはどうでもよかった。
「あ、ありがとう」そう光はお礼を言った。
光を立たせたままにするわけには行かないので、
俺は、自分の部屋に光を案内すると、コップを流しに置いた。

ベッドの上に、俺と光は腰掛けた。
部屋に入ってから一言もしゃべることのなかった光が、
少ししてようやく口を開いた。
「私ね、その、・・・そういう経験、ないの。
男の子からみれば、こういうのってカッコ悪いのかな?」
俺は返答に窮した。俺だって経験があるわけではない。
しかしここは正直に言ったほうがいいだろう。俺は光に、自分も経験がない旨を話した。
「よかった・・・。」そう言って、心なしか光はうれしそうな顔をした。
そしてどちらが言うともなしに、互いに自らの唇を重ねた。
「これで、2回目だよね」
光が言う。俺は記憶になかったが、光の言うことを聞くうちに、
俺が縁日で指輪を買ったときに、光がうれしくて俺にキスを求めたらしい。
そんなことも覚えていない自分の頭を少しばかり情けなく思った。
>>255
2価のカチオン。本当は2+とかいてあるんだよ。
108ボケコニアン:2001/05/17(木) 02:12
俺は光の背中に腕を回すと、そっとベッドに沈めた。
「優しいんだね」
光は俺を見つめながらまじまじという。
「あ、あたりまえだろう」
我に帰れば、キザな言葉を連発している。
俺はそのもどかしさを拭い去るため、光の浴衣の帯をそっとほどき始めた。

胸があらわになる。
お世辞にも大きいとは言えなかったが、スポーツをやっている光らしく、
形よく、張りもありそうだった。
「さっきの続き」
俺はそう言って、光の胸に手を当てた。
光も緊張していることは、鼓動を通して十分感じることができた。
光は恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしている。
恐らく家族以外に裸を見せたことがないのだろう。
俺はなんだかいとおしくなって、光をぎゅっと抱きしめた。
「い、いたいよ」
思わず力がはいってしまったらしい。
思わず俺は「ごめん」といって力をゆるめた。

正直な話、どうすれば光が喜んでくれるかわからなかった。
思いつくままに、光の胸をそっと揉んでみた。
最初光は「ひっ」と声を上げたが、徐々に体の力が抜けていくのが分かった。
直感的に俺は「光が気持ちいい」と感じて、しばらくの間、おれはそれをつづけた。
光の顔がすこしゆるんだのを見て、俺はズボンを脱ぎ、自分のものを
そっと外に出した。パンパンになっているのがよくわかった。
そして俺は光のはいている純白の下着にそっと手をかけた。
誰にも見せたことがない、光のそのものが姿を見せる。
「お願い、明かりを消して」と光が懇願する。むりもないだろう。
俺はそっと電機のスイッチに手を伸ばした。

真っ暗な状態で、うまく光の中へ入れることができるかはわからなかった。
俺は正座をすると、光の足伝いに手を這わせ、自分のものを茂みへと導いた。
その直後、「うっ」と光が声にならない声を発した。
いたいのだろうか。もう1度無理にいれてみたが、やはり光はいたがっているように感じた。
俺はいたたまれなくなって、自分のものをそっと抜いた。
「光、おれたちずっといっしょだ」
「うん」光はうなづく。
「だから、この続きは、おれがもう一度指輪を買ってやったときに・・・いいよね」
そう言い終わると、光の目から涙がこぼれた。
「次はきっと、我慢するから」
俺はその涙をそっと指でぬぐった。
「いたがる姿、見たくないからな」
今はまだ早いかもしれない。
でも、いつかまた二人きりで・・・。
109ボケコニアン:2001/05/17(木) 02:12
さげてなかったー
股間を膨らまして読んでいったらこんなオチかい(w
何かお預け喰らった感じだ(w
せっかくこのスレ初の本格18禁SSかと期待してたのに・・・・(笑ぉ
まぁ、いいんじゃねーの?
113ボケコニアン:2001/05/17(木) 14:29
上でいろいろ書かれてるけど、
初めて同士だったらむしろ失敗する可能性高くないか?
葉鍵の鬼畜主人公じゃないんだからさ
114名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/17(木) 14:31
>>113
そんなリアリティいらんぞゴラァ
俺は一つの可能性としてボケコニアンを支持するよ
今日はお休み。
117名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/18(金) 22:09
ときめも意外も期待age
ときメモ以外で需要と供給がありそうなのって
TLS・サクラ大戦・シスプリ…
けっこうあるじゃん。
119名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/19(土) 19:39
期待age
120腋毛が直毛:2001/05/19(土) 20:01
>>75
>光「ねぇ、今でも子供、たくさんほしいと思っているの?」
>主人公「そうなだな…野球チーム作れるくらいは欲しいかな。」

萩尾望都の「11人いる!」のタダとフロルを思い出した。
そんだけ。
121微笑みを、あなたに(1):2001/05/20(日) 23:19
――また、ここに来てしまった。
 休日の、人気のない校舎は、そのモノトーンの色調とあいまって、どこか廃墟めいた
寂しさを漂わせていた。八重花桜梨はその前に一人たたずみ、かつて母校と呼んだ場所を、
寂しげな瞳で見つめていた。
(私……何してるんだろう)
 花桜梨の唇から、切なげな吐息が漏れる。
 背後から声がかけられたのは、その時だった。
「あ、あの……この学校の生徒の方ですか?」
 声の方向へ花桜梨が振り向くと、そこには一人の少女がいた。花桜梨よりも2つか3つ
年下だろうか。短めに切りそろえられた髪と、シンプルなワンピースが清楚な印象を与え
ている。そしてそのあどけなさを残した瞳は、今にも泣き出しそうに潤んでいた。
 花桜梨は戸惑った。少女の問いへの答えはNOだ……今の彼女は、どこの学校の生徒でも
ない。しかし、それを見ず知らずの少女に打ち明けられるほど、花桜梨の心の傷は浅くは
なかった。
 そんな花桜梨の沈黙を、無言の肯定と受け取ったらしく、少女は言葉を重ねた。
「あの、デイジーを一緒に探してもらえませんか!? あの子、この学校に迷い込んじゃっ
たんです! お願いします!」
 そこまで言って、少女は自分が名乗ってさえいない事に気がついたらしい。一度言葉を
切り、そしてうつむき加減で言った。
「あ、ご、ごめんなさい、私ったら――。私、野咲すみれっていいます」
122微笑みを、あなたに(2):2001/05/20(日) 23:19
「デイジー……デイジー!」
 無人の廊下に、すみれと名乗った少女の声が響きわたる。彼女に付き添って歩きながら、
花桜梨は、蘇ってくる思い出の苦さをこらえていた。
 彼女がこの高校を辞める、その原因となった事件――バレー部での一件から、まだ、
懐かしいというほど時間を経たわけではない。だから、楽しい思い出も辛い記憶も、
鮮やかすぎるほどに脳裏に残っている。通りすぎる教室から、友人の呼ぶ声さえ聞こえて
きそうな気がする。
 花桜梨にはそれが辛かった。もうここに、彼女を笑顔で迎えてくれる友人はいないのに。
あの満ち足りていた日々は、二度とは帰ってこないのに――。
 花桜梨は小さくかぶりを振った。闇へと堕ちて行きそうになる思考を止めようと、
隣を歩く少女に話しかけた。
「ねえ、あなた、見かけない顔だけど……」
「あ……はい、私は……」
 すみれは、自らの身の上を花桜梨に語った。
 彼女は、今ではもう珍しくなってしまった、地方巡業サーカス団の団長の一人娘らしい。
中学2年生だが、転校を繰り返しながらサーカス団と共に旅をしているのだという。団員
としてときおり舞台に立つ事もあるのだそうだ。
 今日は彼女の貴重な休日だった。そこで、ペットのデイジーと共に街を散歩していた
ところ、突然デイジーが走り出し、この校舎の中へと消えたのだという。
「でも……助かりました」
「えっ?」
「この学校の人がいてくれて。えーと……」
「八重。八重花桜梨」
 答える花桜梨の胸に、ちくりと痛みが刺す。私は彼女に嘘をついている――もうこの
学校の生徒じゃないのに。
 そのとき、花桜梨の視界の隅に、何か動くものが見えた気がした。
「……あっ」
「……どうしたんですか?」
「今……校庭の、ほら、あそこ……何か動いた」
 花桜梨が言い終わるが早いか、すみれは駆け出していた。
123微笑みを、あなたに(3):2001/05/20(日) 23:19
 すみれの肩の上に、大きな目の愛らしい小猿が、その小さな手でしがみついていた。
「――本当に、ありがとうございました。ほら、デイジーもお礼を言って」
 すみれに促されて、デイジーは「キキッ」と短く鳴いた。
「ううん、礼を言われるような事じゃない……」
 花桜梨は戸惑い気味にそう答えた。
「でも、見つかってよかった……」
「はい……でも、お礼をしたいのは、デイジーを探してもらった事だけじゃないんです」
「え?」
「八重さんと一緒に、ずっと学校を歩いてて……私、なんだか、本当にこの高校の生徒に
なったみたいな気がして……嬉しかったんです」
 言うすみれの表情は複雑だった。憧憬と、悲しみと、そして――あきらめ。
「……私、中学を卒業したら、サーカスに専念するつもりなんです。だから、高校生活
なんて、本当にただの憧れ……」
 目を伏せて言うすみれに、花桜梨の胸はずきん、と痛んだ。すみれにとって、普通に
高校に通って、普通に勉強して、普通に友達と遊んで……普通に恋をする。そんな日常で
さえ、すみれには手の届かない物なのだ――。
「あ、ごめんなさい……変な事言っちゃいましたね」
 すみれは健気に笑って見せた。
(そんな顔で笑わないで)
 彼女の笑顔が、花桜梨には痛かった。叫びだしたい気分だった――私は、あなたの
憧れていたものを、自分で捨てたんだ、と。
「今日の事は忘れません……それじゃ、本当にありがとうございました」
「……待って」
 立ち去ろうとするすみれを、花桜梨は思わず呼び止めていた。
「最後にもう一つだけ、あなたに見て欲しい景色があるの……」
124微笑みを、あなたに(4):2001/05/20(日) 23:20
「わぁ……」
 すみれが感嘆の声をあげた。
 校舎の屋上から見下ろすと、普段は無機質に見える街にも、確かに自然が息づいている
事が実感できた。公園の木々の緑、咲き誇る花たちの赤――そして空の青。吹き抜ける
冷たい風さえ、自然の息吹のように思える。
「ここ、いい街ですね」
「……そう……?」
「はい。今まで行った街ではひびきのが一番でしたけど、ここも負けてないです」
 ひびきの? その地名が、花桜梨の記憶の片隅にひっかかった。どこかでその名前を
聞いたような――。
「そこって、どんなところなの?」
「私が、はじめて舞台に立った時の街なんです。あの時のことは今でも忘れられません。
お客さんの笑顔が、すごく温かくて、嬉しくて……。ああ、サーカスやってて良かった……
って思ったんです」
「笑顔、か……」
「はい……サーカスは風のような物だって、パパが言ってました。風が草木の種を運んで、
きれいな花を咲かせるように、サーカスは街から街へ、人から人へと笑顔を伝えるんだっ
て……」
 そんな事を語る、すみれの瞳は輝いていた。この子は本当にサーカスが好きなんだな……
と花桜梨は思った。
「すみれちゃん……」
 花桜梨はささやく様な声で言った。
「私……うまく言えないけど……自分が本当にやりたい事を持ってるのって、素晴らしい
事だと思う……」
「え……?」
「だから、大切にして欲しいの。あなたしかできない事ができる、そんなあなた自身を」
花桜梨は笑顔で言った。作り物の笑顔だと、花桜梨は内心で自嘲した。“サーカスの
少女”なのは自分の方かもしれない――それも、滑稽なピエロだ。
 だけど、と花桜梨は思う。笑顔で励ますぐらいしか、自分にはできない。それが、彼女に
対するせめてもの贖罪だ……と。
「……はい!!」
 花桜梨の葛藤を知る由もなく、すみれは微笑んで、ぴょこんと頭を下げた。そんなすみれの
表情がまぶしくて、花桜梨は無言で空を見上げた。風にのって、静かに雲が形を変えながら
流れていくのが見えた。

   丘に登り見上げるの 届きそうな青い空……

 花桜梨の唇からこぼれたメロディに、一番驚いたのは、あるいは花桜梨自身だったかも
しれない。
125微笑みを、あなたに(5):2001/05/20(日) 23:20
「その歌……何ですか?」
 花桜梨は即座に答える事ができなかった。かすかな記憶を辿って行くと、一つの懐かしい
風景が浮かんだ。
「昔……私が小さい頃、母さんが良く歌ってくれた歌なの……」
「へぇ……素敵な歌ですね。あの、よければ続きを教えてください」
 花桜梨はうなずいた。おぼろげな記憶の糸をたぐっていきながら、思い出の奥底にしまい
込まれた旋律を、ゆっくりと解き放っていった。

   丘に登り見上げるの 届きそうな青い空
   つらいこともあるけれど 泣いてばかりいられないね……

 すみれはその歌を、ただ黙って聞いていた。真剣な表情で、詞の一字一句を噛みしめて
いるようだった。やがて花桜梨が最後まで歌い終えると、今度は自分で、その歌を再現した。
花桜梨はその飲み込みのよさに驚きながら、すみれの歌声に自分の声を重ねた。

   あの雲の行く先は 見たことのない場所
   新しい明日と夢の生まれる場所……

 すみれの足元から、小さなさえずりが聞こえた。見下ろすと、一羽の小鳥がすみれの足元
で遊んでいる。歌いながら、すみれがそっと手を差し伸べると、小鳥は怯えもせず、その
手のひらに身を委ねた。

   もうすぐ春がくるね 暖かい日差しを連れて
   涙の跡が乾いたら 空へはばたこう……

 少しぎこちない、しかし澄みきったハーモニーは、柔らかな春風のように花桜梨の心を
包んだ。それは凍てついた彼女の心のひとかけらを溶かし、小さな一粒の雫に変えて、
瞳からこぼれさせた。
 二人以外にその歌を聴く者のいない、静かな空の下で、ただ風だけが、そのメロディを
はるか高いところへと運んでいった。
126微笑みを、あなたに(6):2001/05/20(日) 23:21
 花桜梨が帰った時、家には誰もいなかった。鍵を開け、暗い部屋に明かりをつける。
 自室のベッドに寝転んで目を閉じると、すみれの顔がまぶたの裏に浮かんだ。
『サーカスは街から街へ、人から人へと笑顔を伝えるんだって……』
 そんな彼女の言葉が、まぶしい笑顔と共によみがえる。
(――私も、あんな顔をしていたんだろうか)
 ふと、入学式の日の事を思い出す。さまざまな期待を胸に、高校の門をくぐった日――
あれからまだ、一年も経っていないのだ。
(もう二度と、笑うことなんかできないと思っていた。だけど――)
 花桜梨は、机の上に詰まれた、何冊かの小冊子を手にとった。それは、花桜梨の母が少し
前に持ってきた物だった。うっすらと積もった埃を軽く払い、その中から一冊を選び出す。
そこには「私立ひびきの高校・入学案内」と書かれていた。
 表紙の写真の中で、澄んだ空を背景に、大きな時計塔がそびえ立っていた。少し古びた、
レンガ造りのその時計塔の中で、ただ頂上の鐘だけが、陽光を受けて輝いていた。
 花桜梨は思う。
 いつか、作り物の笑顔じゃなく、心の底から笑える、そんな日が来る事があったなら――
その時はもう一度彼女に会おう。今日の嘘を謝って、そして叶うならば、もう一度一緒に歌おう。
 その時まで彼女は、今日の歌を憶えていてくれるだろうか。
 入学案内の1ページ目をめくりながら、花桜梨は無意識に、その歌を口ずさんでいた。

   もうすぐ春がくるね 暖かい日差しを連れて
   涙の跡が乾いたら 空へはばたこう
   鳥たちと行こう
   鳥たちと行こう……

                                           < Fin >
127回します:2001/05/20(日) 23:22
あう、力量不足。
128回します:2001/05/20(日) 23:22
なんだか、書きたいことの、半分も書けてない気がするぞ。
129回します:2001/05/20(日) 23:22
ていうかすみれちゃんの話を書くつもりだったのに
130回します:2001/05/20(日) 23:23
気がついたらすっかり八重さん主演でした(w
131回します:2001/05/20(日) 23:23
すみれSSのリクエストされた方、ごめんなさい。
132回します:2001/05/20(日) 23:23
ま、こんなんでも、この文の半分ぐらいの分量を没にしてるんで
133回します:2001/05/20(日) 23:24
それに免じて許してやってください(w
134回します:2001/05/20(日) 23:24
なお、発表日が八重さんのバースデイなのは
135回します:2001/05/20(日) 23:24
単なる偶然であって他意はありません。
136名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/20(日) 23:26
「微笑みを、あなたに」>>121-126 でした。
なんか暗いタッチの話になってしまいましたね。
というわけで…でもないけど、どなたかコメディタッチの話きぼんぬ。
前スレのシスプリネタ(S.Educationでしたっけ)なんか好きだったなぁ…。
137名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/21(月) 00:13
すみれSSリクエストした奴だけどこれはこれでよかったよ。
俺、八重さん萌えでもあるし…ボソ
しかし、よくこうゆうネタ思いつくなァ。関心するよ。
とりあえずご苦労様。
気が向いたらまた次回作でも書いてね。
138ボケコニアン:2001/05/21(月) 00:51
>>121〜126
キャラの設定をよくつかんでいていい感じだと思う

ただ、あまり露骨に下げ続けると荒らしと取られかねんので
そういうのは注意したほうがいいと思う。
SSスレで回しは基本だろ
140名も無きミナー:2001/05/21(月) 16:41
>>136
なぜか、八重さんの「蒼い鳥」を思い出しました。
コメディタッチ…サブスト2の後日談に挑戦するも、頓挫しました(w。
141華澄おねえちゃん(1):2001/05/21(月) 18:22
俺は今、ひびきの市へ向かう車の中にいる。
明日はひびきの高校の入学式か…。
あれから7年か…。
俺は昔のことを思い出していた。
初めて三人で出かけた遊園地。
華澄さんと光と俺の三人…すごく楽しかったな。
あの日撮った写真、笑顔で写っている俺と華澄さん…。
光のヤツ…もっと嬉しそうな顔すりゃよかったのに。
タイミングが悪かったのか?
それとも嫉妬とか…まさかな…。
しかし、あの華澄さんの笑顔は偽物なのか?
次の日、俺が引っ越すことを知っていたんだろうに…。
正直驚いたよ…突然引っ越しとはね。
そんな雰囲気、微塵も感じられなかったな。
両親からも、華澄さんからも…。
うーん、俺って鈍いのか?
いや、あの頃はまだガキだったからな…しょうがないさ。
華澄さん…近所に住む、5歳年上のおねえさん。
きれいで、頭もよくて、面倒見もよくて…。
ほんと、いいおねえさんって感じだったな。
光…俺の幼馴染み。
光の家と俺の家は隣同士だった。
ちょっと泣き虫だったけど…もっとも、俺が意地悪してたんだが。
妹みたいでかわいかったな。
同い年ってこともあって、いつも一緒に遊んでた。
小学校への登下校はいつも光と一緒だった。
学校から帰ってくると、いつも光が誘いに来て、一緒に遊びにいったよな。
なつかしいな…。
142華澄おねえちゃん(2):2001/05/21(月) 18:22
「あそぼー」
光が呼びに来る。
「うん、あそぼー」
いつものように出迎え、いつものように答える。
「えへへ、じゃあ、いこー」
「うん」
あっちこっち光を連れ回す。
近くの小さな公園や、ひびきの高校の近く。
河川敷公園や商店街…いろいろな所へいったよな。
下校途中の華澄さんを見つけ、声をかけたこともあった。
「あっ、かすみおねーちゃん!」
「あら…。こんなとで遊んでたの?」
「うん。あっ、そうだ!いっしょにあそぼー」
3人で遊んだ方が楽しいと思ったのに…。
光はぶーぶー言って帰っちゃうし。
華澄さんは華澄さんで遊んでくれないし。
歩き出す華澄さんを追いかけ、何度も声をかける。
「いっしょにあそぼー」
「ごめんね、帰って勉強しないといけないから」
そう言って取り合ってくれなかった。
そんなに勉強が大変なのだろうか?
前はよく遊んでくれたのに…。
最近はあまり遊んでくれない。
光もあまりいい顔しないし…。
うーん、光と一緒だったからマズかったのか?
などと思った俺は、次の日…。
143華澄おねえちゃん(3):2001/05/21(月) 18:23
「あそぼー」
光が呼びに来る。
「ごめん…ひとりであそぶ」
いつものように出迎え、誘いを断る。
「ぶー、もういいよー」
「…」
光を追い返し、一人で出かける。
今日こそ華澄さんと遊ぶぞって、意気込んで。
華澄さんが下校してくるのを待ち伏せる。
歩いてくる華澄さんを見つけ、近寄り声をかける。
「いっしょにあそぼー」
「あら…今日は光ちゃんと一緒じゃないの?」
「…うん。きょうはね、かすみおねえちゃんとー、あそぶんだ」
「…」
「ねぇ、いっしょにあそぼー」
「ごめんね、帰って勉強しないといけないから」
「ねぇ、いーでしょ、いっしょにあそぼーよ。おねがーい」
俺は必死に懇願する。
「しょうがないなぁ…」
華澄さんは困った顔をしながら、何か考えているようだった。
「ねぇ、おねがいー」
「…分かったわ。そんなに遊んで欲しいのなら…」
「えっ、ほんと?ほんとにあそんでくれるの?」
「ええ、いいわよ。でも…今はちょっと…」
「えー」
「そうね…じゃあ…後で家にいらっしゃい」
「うん、ぜったいいくー」
そして俺は華澄さんと別れた。
144華澄おねえちゃん(4):2001/05/21(月) 18:24
しばらくその辺をぶらついたあと、家に帰る。
「えーと、なんかわすれてるような…」
なにか大事な約束…。
「そうだ…かすみおねえちゃんのうちに、いかなくちゃー」
俺は危うく約束を忘れるところだった。
ともかく、俺は華澄さんの家に向かった。
「かすみおねえちゃん、あそぼー」
ドア越しに呼ぶ。
…。
返事は返ってこない。
何度か呼んでみるが、やはり返事はない。
「あれ?」
華澄さんの両親は共働きのため、留守だろう。
じゃあ、華澄さんは?勉強するっていってたし、一応約束したし…。
「るすかなぁ?」
ドアを開けようとしてみる。
ガチャ…。
「あれ、あいてる…いるのかな?」
勉強に集中してて聞こえないのだろうか。
とりあえずおじゃますることにした。
光と一緒に何度か遊びに来たことがある…華澄さんの部屋は二階だ。
俺は階段を上っていく。
そして、華澄さんの部屋の方へ目を向ける。
ドアが少し開いている。
「…あっ…はぁ…」
かすかに声が聞こえたような気がした。
「かすみおねえちゃん…いるのかな?」
俺はそっとドアに近づいていく。
そしてドアの隙間から部屋の中を覗く。
「かすみ…おねぇ…」
145華澄おねえちゃん(5):2001/05/21(月) 18:24
目に飛び込んできた光景…。
華澄さんは…なぜか裸だった。
ベッドの上で仰向けに寝そべり、虚ろな目で天井を見ている。
はぁ、はぁ、はぁ…。
かすかだが、荒い息遣い。
小さな二つの膨らみも激しく上下しているのがわかる。
徐々に息遣いが静かになっていく。
それに合わせるかのように、体の動きも次第に穏やかになっいく。
「ふぅー」
ゆっくりと息を吐き出す華澄さん。
俺はその光景をただ、ぼーっと眺めていた。
暫くして、華澄さんの手が動き始める。
体を撫でるようにゆっくりと…右手は胸に、左手は股間の方へ…。
(かすみおねえちゃん、なにしてるの?)
俺には理解できなかった。
だが、見てはいけないものを見ているような気がした。
なぜだろう、こんなにドキドキする。
華澄さんの動きは、時に優しく、時に激しかった。
時々漏れる、甘いような、なんとも言いがたい声…。
そんな華澄さんの動きや声に、俺の鼓動が激しくなる。
もう、どうにかなってしまいそうだ。
俺は股間に妙な違和感を感じた。
(えっ?)
初めて起こった体の変化に戸惑う。
「イタタタッ。」
思わず声を上げてしまう。
「誰…誰かいるの?」
146華澄おねえちゃん(6):2001/05/21(月) 18:25
「ご、ごめん…なさい…」
そう言いながら、俺はドアを開ける。
「あ、あの…その…」
何て言っていいか分からない。
「あら、恥ずかしいところを見られちゃったわね…」
ちょっと照れくさそうにする華澄さん。
「あの…よんだんだけど…おへんじなくて…それで…」
「…こっちにいらっしゃい」
そう優しく微笑む華澄さん。
「ご、ごめんなさい…」
そう言いながら、恐る恐る華澄さんの傍までいく。
「ちょっとまっててね」
華澄さんはそのまま部屋から出て、階段を下りていく。
俺は俯きながらその場に立ちすくむ。
いつのまにか、体の変化は収まっていた。
(なんだったんだろう?かたくて、おおきくなってた…)
暫くして、華澄さんがジュースを持って戻ってくる。
「とりあえず、これ飲んで」
「う、うん」
ジュースを受け取り、一気に飲み干す。
「びっくりしたでしょ?」
「う…うん。あの…なにしてたの?」
「えっ…と…。そうね…あなたも…大人になれば分かるわ」
「おとなになると…わかるの?」
「そうよ。これも大事な勉強なのよ」
(うーん、よくわからないな…)
「そうだわ…あなたに手伝ってもらおうかしら…」
「えっ?」
「あっ、でも…あなたには…まだ早いかしら?」
「そ、そんなこと、ないよー」
よく分からなかったが、とりあえず反論する。
「本当かしら?じゃあ、少しだけ…ね」
「うん…」
147華澄おねえちゃん(7):2001/05/21(月) 18:25
「じゃあ、服を脱いで…」
「えっ?」
華澄さんの両手が俺の頬を包む。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのよ」
そう言いながらゆっくり顔を近づけてくる。
「でも…」
「ほーら…私も裸でしょ。大丈夫よ」
「うん…」
言われるままに服を脱ぐ。
「じゃあ、座ってくれる?」
俺は床に座る。
華澄さんはしゃがみ、頬杖をつく。
「あら…かわいい…へぇ…」
華澄さんにあっちこっちを触られる…なんだかくすぐったい。
「やっぱり、まだ早かったのかしら…」
そう呟きながら、腰を下ろし、ゆっくりと足を広げていく。
「ここ、見たことある?」
手を臍に当て、ゆっくりと下の方、薄く毛が生えている辺りまで動かす。
さらに下へと指を這わす。
「えっ、よくみたこと…ない…」
「うふふ、そう?」
悪戯っぽい笑みを浮かべる。
人差し指と中指で少しずつ広げていく。
「!」
こんどは指を中にゆっくり入れていく。
「あぁ…」
吐息がもれる。
俺の鼓動がだんだん早くなっていく。
148華澄おねえちゃん(8):2001/05/21(月) 18:26
(あっ、また…)
俺の体に変化が現れる。
「あら…ふーん…」
「あわわっ」
慌てる俺。
「うふふ、大丈夫よ…あなたも大人に近づいている証拠よ」
そう言いながら、手を優しく添える。
さらにゆっくりと顔を近づけてくる。
カプッ。
「!」
クチュッ、チュパッ、チュッバッ…。
(な、なにをしてるの?)
ッバップ、ブッバップ、ッチュブッ…。
(…なんだろう…このかんじ…)
華澄さんの頭が上下に激しく動く。
ふんっ、ふんっ、ふんっ…。
(…き、きもち…いい…)
チュバッ、クチュッ、レロレロレロ…。
「うっ…」
ドピュピュッ…。
「…あっ………うふふっ…」
白い液体に濡れたまま、華澄さんが微笑む…。
…。
…。
…。
「あぇ?」
気が付いたら、俺は自分のベッドの上にいた。
あれは夢…だったのだろうか?
それとも…。
俺が引っ越したのは、それから数日後のことだった…。
<完>
149回します:2001/05/21(月) 18:26
「現実か?
150回します:2001/05/21(月) 18:27
それともあれは
151回します:2001/05/21(月) 18:27
妄想か?」
152回します:2001/05/21(月) 18:28
「華澄さん
153回します:2001/05/21(月) 18:28
会って直に
154回します:2001/05/21(月) 18:28
聞きたいな」
155回します:2001/05/21(月) 18:29
「万が一
156回します:2001/05/21(月) 18:29
妄想だったら
157回します:2001/05/21(月) 18:29
大変だ」
158華澄おねえちゃん、、、大好きです。。。:2001/05/21(月) 18:32
「華澄おねえちゃん」です。
>>141-148
こういうのってどうでしょうか?
しかし…起つのはともかく、逝くかなぁ。
とりあえず、逝ってきます…。
159名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/21(月) 22:13
ここまでのインデックス。

「風が運んだHappyness」>>3-4 /ときメモ2、寿美幸
「やくそく」>>31 /ときメモ2、伊集院メイ
「プレゼント」>>44-48 /ときメモ2、伊集院メイ&白雪美帆
「入学式前夜」>>69-74 /ときメモ2、陽ノ下光
「笑顔」>>85-86 /ときメモ2、野咲すみれ
「無題」>>105-108 /ときメモ2、陽ノ下光(※18禁)
「微笑みを、あなたに」>>121-126 /ときメモ2、野咲すみれ&八重花桜梨
「華澄おねえちゃん」>>141-148 /ときメモ2、麻生華澄(※18禁)

ものの見事にメモ2ばっか…どうなってるんだろう
(↑3本も書いてる人間が言う事じゃありません)
そろそろ真帆かほむら辺りが来るかな?
160ボケコニアン:2001/05/22(火) 01:04
ごめん159、俺はうらぎるよ

「冒険してもいいころ」

この地を踏むまで、朝日をもう数え切れないくらい眺めた。
そして、明日異世界の最後の朝日をみるんだろうか…

俺はそんなことを考えながら、古ぼけた洋館のベッドに横になった。
今まで旅をしてきた仲間たち。
なぜか俺のことばかりつけまわしてきたカイルにレミット。
明日からは執拗につけまわされることもない。自由な生活が待っているはずだ。
それなのに・・・なぜか俺の胸の中は満たされなかった。
センチメンタルという感情だろうか?今までに味わったことのない
不思議な感触だった。

もどかしい気持ちを紛らすために、俺はあっちの世界に住んでいたときに持っていた
一冊の本を読み出した。もう所々ぼろぼろになっているが、
なぜか捨てることのできない一冊だ。そう思うのはこれが、あっちの世界の唯一の物だからだろう。
ベッドの脇の置いてあるろうそくに俺はそっと火をつけると、
印象に残っているところだけを読み始めた。
たしか・・・この本1箇所いいこと書いてあったんだよな
そう思いながら読んでいると、不意に部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「あいてるよ」と俺が入ることを催促すると、ためらいがちにドアが開いた。
ほのかなろうそくの明かりで確認できることは、それが白い服を着た女性である、ということだけだった。
「こんばんは」
その声を聞いて、俺ははじめて、声の主が誰であるかを理解することができた。アイリスさんだ。
「ああ、こんばんは。でも、どうしてここに?」俺は尋ねた。今ごろ、レミットの相手で忙しいと思ったからだ。
「あの、私の話、聞いてもらえないでしょうか?」そういうと、なぜかアイリスは視線をはずした。
とくに断る理由もない俺は、彼女の話を聞くことにした。
161ボケコニアン:2001/05/22(火) 01:38
「あの、レミット様が、何であなたにいつもからんでくるの、ごぞんじですか?」
それは以前にも、聞いたことのある台詞だった。
「ああ、知ってるよ、だって」
と答えようとしかけたとき、アイリスさんが口をはさんできた。
「ごめんなさい、あれはわたしのせいなんです」
「わたしのせい?」俺は面食らった。レミットは俺にかまってもらいたい、
という話を以前アイリスさんの口から聴いたことはあったが、なぜだろう?
真面目なアイリスさんのことだ。今までのレミットの行動の責任を
全て自分でかばおうというのが目的に違いない。
「いいんですよ、アイリスさん。ぜんぜんきにしてませんから。」
しかし、次に俺の耳にはいってきた言葉は、俺の五感をフルに活用しても
予想することはできなかった。
「レミット様がからんでくるのは、ジェラシーのせいです。そしてジェラシーのもとは、」
「わたしなんです」
レミットが俺に妬いてる?あんなガキに妬かれるとは、俺も不本意なものよ。
でも、わたしってどういう意味だろう?
「それは・・・」
そういいかけると、アイリスさんは数瞬、間を置いた。
そして、思いつめた表情で俺に告げた。
「わたしが、あなたをお慕いしているからです」
「いつのまにか、あなたをみかけるとしせんがくぎ付けになってしまって・・・
レミット様のこともわすれるくらいで・・・
あした、おわかれになってしまうと思うと・・・この気持ちだけは・・・」

俺はあまりのことに言葉が出なかった。
アイリスさんが・・・俺を好きでいてくれていたなんて・・・

しかし、その次に彼女の口から出た台詞は、俺の人生そのものをかえるに十分なものを持っていた。
162ボケコニアン:2001/05/22(火) 03:18
「せめて思い出に、私をだいてください」
俺はためらった。いくら俺を好きでいてくれる人であったとしても、
それが倫理的に許されるものであるのか。

・・・俺は迷った。でも、彼女の思いをここで受けとめることができなければ、
きっと後悔するだろう。俺も、彼女も。
意を決して、俺は聞き返した。
「後悔、しない?」
「・・・はい」
彼女の決心が固いことを確かめると、俺はろうそくの明かりを消した。
愛を交わす場所は、暗闇と昔から相場が決まっている。

ちょっとカッコつけて、俺はアイリスさんの肩を抱き、ひざの下に手を回した。
1度だけこういうポーズを取っているのを見たことがあって、かっこいいだろうなといつも思っていたのだ。
長い旅で鍛えた体は、軽々とそれをやってのけた。
アイリスさんも、まんざらではなさそうだ。

そっとベッドに降ろすと、俺もその傍らに横になった。
誰が言い出したわけでもなく、互いの顔が重なり、そして唇に触れた。
ほのかな温かみが伝わってくる。
しばらく、互いに唇の感触を味わった。

しばらくして俺は、控えめなアイリスさんには似合わないほど発育した
イブのリンゴに手を伸ばした。なんともいえない手触りが、俺に伝わってくる。
同時に、徐々にアイリスさんの鼓動が早くなっていくのを感じ取ることができた。
恐らく、今までにこういった経験が皆無だったのだろう。
もし部屋が明るかったら、恥ずかしさと恐怖心で
彼女の顔はそれこそリンゴのようになっているはずだ。

俺はそれとなく尋ねた。
「その、アイリスさん、なんか、苦しかったりしたら、遠慮なく、言って」
でも、すぐに無意味なことだと気づいた。どんなに苦しくても、
決して表に出さないという彼女の性格を熟知していたからだ。
少し間を置いて、「私は、大丈夫ですから・・・」という期待通りの返事が返ってきた。

胸を愛撫すると、俺はアイリスさんの上体をおこし、その背後に回って
後から抱く格好を取った。そして、彼女のスカートに手を伸ばした。
その上からのの字を書くようにして、これからの行為にそなえるというわけだ。
はじめはその行為にどぎまぎしているせいか、体が硬直していたが、
氷がとけるように、少しづつからだがほぐれてきた。
かすかであるが、呼吸も乱れてきている。少しづつ感じはじめてきているようだ。
俺は夢中で指を動かした。

徐々にスカートが湿っぽくなってきた。俺はいったん指の動きを中断させると、
太股の部分までスカートを捲り上げ、ショーツに手をかけた。
案の定、濡れている。もし明かりがついていたら、恐らく白かブルーだ。
彼女を不安にさせないように、できる限り俺はゆっくりとショーツを脱がせた。
163ボケコニアン:2001/05/22(火) 03:20
「アイリスさん、いいね?」
俺はもう一度、聞いた。
「・・・はい」
消え入るような声で、そう答えてきた。お互い、不安に決まっている。
俺は、自分のズボンから、いきり立ったモノをそっと出した。
明かりがなくてなによりだ。明るかったら、恐怖心を煽るだけだ。
そして、お互い上だけおこして、互いに向き合った。
おそらく初めての娘に、いきなりM字開脚を告げてもできないだろう。

少しづつ先端が入ってゆく。明かりを消してだいぶ時間がたっているので
目が慣れてきているが、脂汗を流しているのがよく分かった。
膣の中は狭く、無理に押し込んでもすぐに押し戻されてしまう。
いくら濡らしているとはいえ、初めてならばきついはずだ。
シーツをきゅっとつかんでいるのが目に飛び込む。
必死の思いでこらえているのだろう。
俺は速く楽にさせたい一身で、つい無理にねじ込もうとした。
「うっ」という曇った声が響く。これでは逆効果だ。
仕方なく俺は、ゆっくり進めることにした。

長い長い時間がたったように思えた。ようやく、俺のモノは
粘膜の壁に突き当たった。おそらく、ここが最後部だろう。
アイリスさんは、必死になってこらえている。きっと泣き出したいくらい痛いのだろう。
少し力を加えると、モノの先端をぬるっとした、生暖かいものがなでた。
恐らく、破瓜の証だろう。
ひとまず、俺はモノを抜くことにした。

少し痛みを和らげるほうがいいと思い、俺は再び唇を求めた。
時間がたてば少しは痛みもひくはずだ。
俺は長い口付けを交わした後、再び行動を開始した。
しかしやはり半分ほどいくと、押し返されてしまう。
俺はそれ以上いれるのはあきらめ、浅く上下し始めた。
無理に入れていないせいか、アイリスさんの顔に脂汗がにじんでいるようには見えない。
少し安心して続けた。

再び、アイリスさんの呼吸が乱れてきた。俺は意図的に腰の動きを早めた。
そして少しした後、互いに声とも叫びとも似つかぬ声を上げて、
歓喜へと向かった。
164ボケコニアン:2001/05/22(火) 03:44
これはマターリ編

半年後・・・

「お茶が入りましたよ」
声のするほうへ俺は向かった。
アイリスが菓子とお茶を入れてテーブルに腰掛けている。
なぜ俺がアイリスと共にいるか。
あの日、俺は帰ることを希望しなかったからだ。
自分の世界に返る、なんてつまらないことより、もっとすばらしいものがある。
それを、あの夜俺は知った。

俺の支えになってくれる人。
その人と、幸せな家庭を築く。

言われて見れば「なんだ」と思う夢かもしれないが、
金や権力なんてものに惑わされずに、毎日の生活が平凡で楽しくあること、
それが1番かなえがたいものではないか、と俺は思う。

今日は、道場兼ギルドが休みなので、一日二人でゆっくりできる。
あのあと、これまでのたびの経験を生かして、ギルドと道場をはじめたが、
俺の噂を聞きつけたものたちが大勢やってきて、毎日が忙しい。
しかし、あっちの世界のように、のんべんだらりとした生活を送るよりは、ずっと楽しいはずだ。

身重のアイリスの体に目をやって、俺はいつしか読んだ本の言葉を、ふと思い出していた。
165159:2001/05/22(火) 23:09
>>160
いや、別に裏切りとは思わないし、他作品のSSも大歓迎ですけど・・・
むしろ、投稿時間の開き方が気になるんですが(w
>>161>>162なんか、一時間半ぐらい開いてるし。
もしかして、書きながらリアルタイムでアップしてるんですか?
166名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/22(火) 23:21
アイリスさんなら「姫さま」だろ?
167ボケコニアン:2001/05/22(火) 23:24
>>165
いや、なんか次もときメモ系で来るのかな―という期待を裏切ったから。
基本的にはご指摘のとおり、リアルタイムで書いてます。
音楽聴きながら。
なんか1度ネタを紙に書いたりしたのを再びうちこむのはめんどくさいと考える主義なので。

これは余談ですが、山田一氏のテキスト好きなんですよ。
俺自身、あの人に近づきたいってのがあって。
しかし、あの人の域でオリジナル書けるようになるまで後10年くらいかかるね。
>>167
山田一って加奈と星空☆ぷらねっとの人だっけ?
しかしリアルタイムで書きつつ書きこむのはやめてくれ。
他の人が書きこみしたくても書きこめない。
>>166
あと、SSは一つの書きこみが長くなるから回さずに上げると他のスレに迷惑になるよ
169159=165:2001/05/23(水) 00:47
>>168
いや、>>167は「紙に書く」とか言ってるところを見ると、テキストエディタの類を
使えない環境なのかな、と。ドリキャスとか。
まぁ私も、可能なら一度エディタで書いて、推敲した方がいいと思います。
や、えらそなことは言えませんけど。
170ボケコニアン:2001/05/23(水) 01:03
>>168
すまん。
このスレブックマークに保存しているから
そこまで気がつかんかった
今度からそうするよ。
エディタ使うと、たまに行が大幅にずれるからあんまり使いたくないんだけどね。
しかし書きこめないのなら仕方ないか
俺のスレじゃないしね
>>170
書きこめないっていうかSSの間に書きこむとSS書いてる人に失礼だから書きこまないってことだよ。
172ボケコニアン:2001/05/23(水) 02:11
>>171
なるほど、モナー板の暗黙のお約束のことだね
たしかに誰かのとダブルと俺としてもいい気しないしね
楽しく読ませてもらってます。
職人さん、がんばって下さい!
174名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/23(水) 21:35
>>172
レミットもきぼーん。
175名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/24(木) 11:36
Λ_Λ   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ( ´∀`)< 上げるモナー
 (    ) │
 | | |  \__________
 (__)_)  
ずれた……
177ボケコニアン:2001/05/25(金) 00:47
ちょっと充電中
あと、どういう感じにすればもっと面白くなるかも感想きぼんぬ
SSは書き出しが難しいね。
書こうと思ったけど筆が進まん。
179名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/25(金) 23:12
週末に大量投稿はあるのかな?
期待上げ〜
沈黙
181とりあえず1と名乗ってみる:2001/05/26(土) 23:18
…ネタ切れ中です。
「こんな話書いて見たい」候補はいくつかあるんだけど、さっぱりまとまりません。ちょほー。
こんな時には、自分で書くより人の書いたのを読みたいと思う今日この頃。

つーわけでage。
182セルフ・パーティ(前):2001/05/27(日) 03:02
 夏が終わり、そろそろ文化祭に向けてひびきの高校が動き出す季節。
 出展受付中の生徒会室へ生徒が一人大股で歩いてくると、勢いよく扉を開けた。
「はーっはっはっ! いるか山ザル。電脳部の出展届を持ってきてやったのだ!」
「あーうるせぇ。ったく、普通に入って来られねぇのかよ」
 華々しいメイの登場を、苦虫を噛みつぶしたような声が出迎える。
 狭い生徒会室の奥の机で、あぐらをかいて座っているのが赤井ほむら。伊集院メイにとっては気にくわないことこの上ない相手である。
「ふん、このような下々の祭りに敢えて参加してやるのも修行の一つ。ありがたく思うがよいのだ」
「あ〜あ、ありがた過ぎてやる気なくしたぜ。今日の受付はもう締め切りだな」
「何だとこの猿! ははぁ、メイの素晴らしい出展にぐうの音も出なくなるのが怖いのであろう。戦わずして逃げを打つとは、レベルの差を感じる本能だけ大したものだっ!」
「相変わらず何わけのわかんねぇこと言ってんだよこのチビっ! ええいやめやめ、マジで受け取らねぇ!」
「会長、真面目に仕事してください」
「…ちぇっ、わかったよ」
 横から役員にジト目で睨まれ、ほむらが渋々と片手を差し出す。ふんぞり返ったメイの渡した出展届を受け取り、あくびをしながら目を走らせた。
「出展内容:史上類を見ない素晴らしいゲームの製作…なんじゃこりゃ…」
「まあメイとしては最先端研究の発表でもよいのだが、ここの生徒に理解させるのは無理があろう? 人の上に立つ者として、たまには大衆に媚びてやるのも必要なのだ」
「あーそーかい。つまんなそうだから不許可、っと…」
「おいこらぁ!!」
「るっせーな、冗談だよ。はいはい、確かに受け付けたぜ。副会長ー、あとよろしく」
「はいよ」
「まったく、いちいちメイに刃向かう奴め…」
 副会長から参加にあたっての説明を聞きながら、横目は恨みの視線をほむらに向ける。伊集院家と聞けばたいていの者はひれ伏して追従するか、恐れて近づかないかのどちらかなのに、こいつときたらかえって噛みついてくるのだから非常識だ。ここらでひとつレベルの差というものを思い知らせてやらねば。
「よいか赤井ほむら、今回は電脳部の威信をかけているのだ。人気投票では必ず1位を取ってやるから覚悟しておくがよいぞ」
「へっ。そんなこと言って、どうせ金を使ってプロのゲーム屋でも雇うんじゃねえのか」
「し、失礼な奴めっ! そんなものに頼らずともメイと下僕だけで十分なのだっ! ええいもういい、口で言うより現物でギャフンと言わせてやるのだっ」
「面白れぇ! これでもゲームにゃぁうるせぇんだ。あたしがテストしてやっからせいぜい気合い入れて作れよな!」
「ふん!」
「けっ!」
 ぴしゃんと音を立てて扉を閉めると、メイは肩をいからせながら生徒会室を後にした。
 どこまでも無礼な奴……だがかえって文化祭が楽しみだ。当日になればあいつだってさぞかし目を丸くするに違いない。今回考えたゲームはかなり自信があるのだ。
 そのまま特別教室棟へ行き、渡り廊下に近い部屋に入る。元は第二理科室兼科学部の部室だったが、メイの入学とともにすっかり改造され、今では科学部なんて部が存在したことも忘れ去られている。
 中では十数人の部員たちが、机を囲んで何やら話しているところだった。
 メイの姿を見るや冷や汗をかきながらいそいそと出迎える。
「ど、どうもメイ様。お疲れ様です」
「うむ。このような雑用は本来メイのすることではないが、今回は宣戦布告の意味もあるからな。気にするでないぞ」
「は、はぁ…。ところで今、文化祭に出すゲームの打ち合わせをしてたんですが…」
「何を言っておるのだ? お前らはメイの言うとおりに作ればいいのだ」
「ああっ予想はしてたけどやっぱりー!」
「メイの電脳部なのだから当然であろう。ふっふっふっ、見ているのだ赤井ほむら。メイの才能の前に必ずやひれ伏させてやるのだっ! はーっはっはっはっ!」
「とほほ…」
 暗い顔の部員たちなど、高笑いを続けるメイの視界にはまったく入っていなかった。
183セルフ・パーティ(前):2001/05/27(日) 03:03
 徹夜で書き上げた仕様書を全員に配り、さっそく翌日から電脳部の作業が開始された。
 ゲームのタイトルは『スペースリングファイター』。文化祭用に短い時間で遊べるよう、タイムアタック型のシューティングにした。ラスボスのデザインが結構メイのお気に入りである。
「自分の絵の才能が怖いのだ。お前とお前、しっかりCG化するのだぞ」
「このラクガキを一体どうしろと?」
「‥‥‥」
「いえっ! なんとも斬新なデザインでありますっ!」
 グラフィックと音楽は下僕たちに任せて、メイは画面に向かってプログラムを組み始める。
 ディスプレイに並ぶコーディングの羅列。子供の頃から慣れ親しんできた映像だ。コンピュータは人間と違って、ウソをついたり約束を破ったりすることはない。きちんとプログラムすればその通りに動く。それがメイにはありがたかった。
「そういえばメイ様、予算申請の締め切りが今日ですけど…」
「バカめ、貧乏生徒会に恵んでもらうほど落ちぶれてはおらん。費用はすべて伊集院家が出すから心配せずともよいのだ」
「そ、そうですよねぇ。いつもすいません…」
「なぁに、欲しいソフトがあればいくらでも言ってよいぞ。わはははは」
 そう。ここにあるパソコンも、周辺機器も、ソフトウェアも、すべてはメイが用意させたものだ。
 赤井ほむらのような反乱分子もない。すべて自分の思うように動く。
 この退屈な学校で、ここだけがメイにとっての楽園だった。
184セルフ・パーティ(前):2001/05/27(日) 03:03
 そんな調子で開発が順調に進む中のとある昼休み。メイは研究と称して、部室のパソコンを使って市販ゲームで遊んでいた。
 電脳部の活動は放課後だけなので、今は部室に自分一人だ。庶民に煩わされることなく思う存分電脳の世界に熱中していたのだが…。
「くっそー、やっぱ外からじゃわかんねぇか。なあ茜、ちょっと見てきてくれよ」
「も〜、何言ってるのさ。そのくらい自分でやりなよ、子供じゃないんだから」
 廊下から何やら声がする。しかも片方は、忘れたくても忘れられない下品な声だ。
 メイは眉をひそめると、ゲームを一時停止して音を立てずに廊下側の扉へ近づいた。
「けっ、冗談じゃねぇぜ。あたしが見に来たなんて言ってみろ、あのガキがますますつけ上がるじゃねぇか」
「でもゲームは気になるんでしょ?」
「ニャ、ニャハハハハ。ゲームと聞くとあたしの血が騒ぐんだよぅ」
 こめかみの頭痛を抑えて、思いっきり扉を開けてやる。
「全部聞こえておるわ、たわけ!」
「うわおう! くっ、立ち聞きとは卑劣なヤロウだぜ…!」
「人の部室の前で大声出していたのは貴様だろうが! …いや、もういい。相手にするだけこっちのレベルが下がるのだ」
「んだとこの」
 例のごとく火花が散る間に、今回は一緒に来ていたショートカットの生徒が割って入った。確かいつもほむらと一緒にいる女だ。
「ねえねえ、ほむらったら電脳部のゲームが気になるらしいんだよ。どんなのか教えてくれないかい」
「あ、茜ーっ! どうしてお前はそう素直なんだよ!」
「しょうがないだろ、昼休みがもったいないじゃないか」
「ふふん、知りたいか? 知りたいようだな。貴様には教えてやらん! 死ぬまで考えるがいい、はーっはっはっはっ」
「けっ、どうせそう言うと思ってたぜ! 帰るぜ茜!」
「もう、それなら最初から来るなんて言わないでよ…」
 ぶつぶつ言いながら立ち去ろうとする二人に、ふとメイの頭に良い考えが浮かんだ。ほむらではない方の背中に声を投げかける。
「おい貴様、一文字とか言ったな。こんな奴の友人とは、さぞかし難儀をしているであろう?」
「…うん」
「ああってめぇ茜! なに同意してんだよっ!」
 ギャーギャーわめくほむらは放っておいて、腕組みして尊大に見下ろす……実際は見上げるのだが。
「どうだ、そんな山ザルは見捨ててメイの下僕にならないか? 悪いようにはしないのだ」
 確かこいつは生活費を稼がねばならないほどの貧乏人と聞く。ならばこれを断るはずがあるまい。
 と、思ったのだが、この寛大な申し出に対して、茜はにっこり笑うとぽんぽんとメイの頭に手を置いた。
「あはは、しょうがない子だなぁメイちゃんは。少しはバイトでもして社会性を養おうね」
「め、メイちゃん!? な、な…くっ、もういいっ! しょせん無礼者の友人は無礼者なのだーっ!」
「はいはい。ほら、ほむら。そろそろ帰るよ」
「おう。じゃあな伊集院、部室でゲームなんかやってんじゃねぇぞ。うらやましいから」
「とっとと帰れっ! しっしっ!」
 二人を追い払って中から鍵をかけたが、すっかり興がそげてしまった。遊んでいたゲームを終了させる。
 仕方ないので、昼休みも文化祭の準備につぎ込んだ。
185セルフ・パーティ(前):2001/05/27(日) 03:05
 10月は飛ぶように過ぎ、そろそろ月の終わり。準備も追い込みに入ってきた。
 一応遊べるまでには完成したのだが、開発の常で後から後からバグが出てくる。
「メイ様、剣ボタンを2連打したらフリーズしました」
「う…わかったのだ」
「メイ様、画面ぎりぎりで弾を当てたら相手が無敵になりました!」
「ええい、わかったのだっ!」
 メイン部分のプログラムは自分一人で作ったため、バグ修正の作業も結局メイがほとんど羽目になった。
「あの…。俺たちも手伝いましょうか?」
「う、うるさいっ。お前ら凡人に扱えるようなプログラムではないのだっ!」
「へいっ!」
 というより他人が見ることをまったく考えずに作ったので、メイ以外には意味不明なものになっているのである。
 他の部員は仕方なく部屋の飾り付けなどをしていたが、ピリピリしているメイが「集中できん!」と怒鳴って全員帰らせてしまった。
 誰もいない部室で一人キーを叩いていると、なんだか心細くなってくる。
 だいたい、なんでメイがこんな下々のような苦労をしなくてはならないのか。伊集院家の力をもってすれば…
『どうせ金を使ってプロのゲーム屋でも雇うんじゃねぇのか』
「む…」
 あの忌々しい声が聞こえてきて、メイはぶんぶんと頭を振った。ダメだ、やはり自分の力であの猿をぎゃふんと言わせねば。
 窓の外は夕焼けから夜に変わり、窓から見える他の部屋の明かりもひとつまたひとつと消えていく。
 余計なことを考えないよう画面に集中していたが、元より人のいない特別教室棟では、時計の音が大きく響く。
 カチカチカチカチ…
 夜の学校……そこは妖怪や幽霊の跋扈する、怪談のメッカであると聞いたような……。
「(ふ、ふんっ、非科学的なのだっ。だいたい咲之進が廊下で目を光らせているはず…)」
「おい、誰かいんのか?」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
 椅子から10センチほど跳ね上がり、口から飛び出しかけた心臓をあわてて押し戻す。
 涙目をこすってよく見れば、きょとんとした顔のほむらが入り口に立っていた。
「なんだ伊集院かよ。って、なんだよ今の顔! お化けだと思ったのかー? ぎゃはははははははは!!」
「あ…ぐ…う……よりによってこんな奴の前で恥をさらすなんて、伊集院メイ一生の不覚っ…。かくなる上は貴様を殺してメイも死ぬーーっ!!」
「どわーっ! お、落ち着けっ! わかった、見なかったことにするから! なっなっ!?」
「ウソつけ! 貴様みたいな口の軽い奴が喋らないわけないのだ! きっと明日にはメイは校内中の笑い者になっているのだ! うわぁぁぁぁん!!」
「だーっ、泣くなっての! ったく、おちおち冗談も言えやしねぇ」
 ため息をついてメイをなだめつつ、ほむらは部屋の中を見回した。他に人影はなく、物言わぬ機械だけが整然と並んでいる。
「で、一体何をやってんだ?」
「ふ、ふん。文化祭の準備に決まっているであろう。メイのように有能な者は自然と仕事も多いのだ」
「はー、さいですか。けど準備は8時までって決まりだろ。もう帰った帰った」
「う…」
 見れば時計の針は8時を少し過ぎたところだ。なるべく他のことを考えないようにしていたので気づかなかった。
 まだバグは直っていない…。他の部員たちを追い返した手前、明日までに直っていないと格好がつかない。
「も……もう少しで終わるのだ」
「は?」
「だから、あと1時間くらいなのだ。大目に見るのだっ!」
 ふんと胸を反らしてそう言うメイに、ほむらは呆れたように頭を掻く。
「へいへい、まあてめーは車で帰るんだもんな。好きなだけやってけよ」
「え、いいのか?」
「いいんだよ。あたしが会長なんだし」
「…そうだな。貴様の辞書に時間厳守などという単語が載っているはずもないな…」
 憎まれ口を聞き流して、ほむらは廊下に引っ込んだかと思うと、首だけ部屋に戻してにやりと笑った。
「ま、思ったより根性あるみたいじゃねーか。ちっとは見直してやるぜ」
「な…。う、うるさいっ! 山ザルに見直されても嬉しくないっ!」
「ニャハハハ。じゃあカゼ引かねーうちに帰れよー」
 笑い声とともにほむらは消え、再び部室に静寂が戻った。
 まったく、根性なんて…そんな庶民の精神論みたいなものを、メイが持ち合わせているはずもないのに。
 でも、ここまでやってきたんだから、文化祭にはいいものを出したい。
 メイはぱちんと頬を叩いて、最後の作業に取りかかった。別に……あの女に期待されてるからではないけれど。

<続く>
回します。
妖精さん妖精さん。
回してください。
「実際のスタッフロールと違うぞ」とか気にしちゃダメです。
回し。
回し。
回し。
ありがとう、回しの妖精さん。
>>182-185
「セルフ・パーティ」前編。メイ&ほむらです。(LSFが個人的に不満だったので…)
後編はなるべく早急に出します〜。

それと前スレで書いたシスプリSS「S. Education」が前編だけで放置してしまって
ましたが、後編を書いたらクソ長くなったので、別サーバーに置いてあります。
見たい人だけどうぞ。(34Kbyte)
http://www.geocities.co.jp/Playtown-King/5909/edu2.html
195とりあえず1と名乗ってみる:2001/05/27(日) 07:33
おお、ほんとにほむらの話がきている♪。
S. Educationもそうでしたが、会話が軽妙で楽しいですね。こういう漫才みたいな
ノリのも書いてみたいけど、才能がないみたいで(<関西人なのになさけない)
楽しませていただきました。
面白いです〜。
うう、メイちゃかわいい…。泣ける…。(←って、泣くところか?)
すごく軽快で楽しいですね。
197名無しくん、、、好きです。。。:2001/05/27(日) 21:54
ここって補完サイトないの?
198ミナー@メイたんマンセー:2001/05/28(月) 01:19
「味見する?」
メイの両手が塞がっているのをいい事に、袖口から覗く脇から手を滑り込ませる。
メイは「あっ」とかすかな声を上げるが、顔を背けるだけで抵抗らしい抵抗をしない。
その小さな唇をそっと塞ぐ。
力が抜けた手から落ちそうになるフライパンをそっと取り、テーブルに置く。
後ろで結んだエプロンをほどき、髪をくしゃとなでる。

「あ、朝だというのに…そ、そんなに、したいのか。」
「ああ」
「な、なら、いいのだ。あ、あなた…。」


―――――――――――――――――――――――――――
ごめんなさい、SSでも何でも無いです。
メモ2ドラマCD4のオビの裏を見てたら、勢いでどうしても。
チクショウ、情景描写なんか全然出来ないぞ。萌えだけでは何も出来ないぞ。
お目汚しすみません。>ALL
199ボケコニアン:2001/05/28(月) 04:23
198に届くように・・・
>>198
続き勝手に書いちまった。
もしネタ考えてたら申し訳ない。

俺はメイの胸を背後から揉み始めた。
控えめだが、確実に心地よい感触が俺の手に伝わってくる。
「あっ、あっ、やめるのだ。手に持っていたお皿が、わ、わっ、割れるのだ」
俺がここでやめると思ったら大まちがいだ。
生意気なメイを懲らしめてやるには絶好の機会なのだから。
「手を離すと、足にあたっていたいだろうな」
俺は耳元でそうささやきながら、執拗に手の運動を繰り返す。
さらに耳元に息を吹きかけ、追い討ちをかける。
「め、メイは、み、耳は弱いのだ。は、ハァン」
だんだんメイの声がオンナのものに変わってゆく。だいぶ感じているはずだ。
俺は器用に左腕の動きを止めると、メイが持っていた皿を取り、
そっとテーブルの上に置きなおした。
「なあ、昨日は3回もやって朝から腹が減ってるんだ。
 だから・・・おかずはお前がいい」
メイの答えを確かめるまでもなく、俺はメイのパジャマに手をかけた。
「す、するなら、ベッドの上じゃないと、い、いやなの・・・だ・・・」
しかし、俺の分身がその言葉に対して拒絶反応を示していることは、
ここを見ている読者は容易に想像できることである。
「いや、今食べたい」
「だって、ここは、きたな、あぁん」
「なに言ってるんだ?毎日、家事ができないお前の変わりに俺が納得ゆくまで掃除してるだろう?」
メイは観念したのか、徐々に体を俺に預けた。
200ボケコニアン:2001/05/28(月) 04:24
俺はメイの下半身を床に下ろすと、パジャマを脱がせた。
淡いピンクと白の、チェック柄のブラとショーツが覗く。メイと二人で婦人服売り場で買ったものだ。
「かわいいぜ」
まきに火をつけてもこれほどまでにはなるだろうかというくらい、
メイの顔が赤くなった。
「う、うれしいの・・・」
すっかりしおらしくなっている。本来のメイの姿に戻ってくれたようだ。
俺も床に下半身を落とし、俺の太ももの上にメイを乗せた。
そしてブラをはずし、再び胸を揉み始めた。メイはもっとボリュームが欲しいとこぼすが、
俺自身はスレンダーなほうが好みなので気にしない。
ふと目をやると、ショーツの色が変わっている。だいぶ濡れてきているようだ。
胸にやっていた手をスライドさせ、両手でショーツを下げていく。
そして足を上げさせ、左足にそのショーツを引っ掛けた。
メイの肩越しに、秘密の花園に目を落とす。朝露で濡れていて、みずみずしい。
しかし、自然を敢えて蹂躙して開発してこそ、人間は今日までの繁栄をつちかってきたのだ。
もちろん、俺自身その歴史の流れに逆らうようなことはしない。
まずは地ならしだ。右手の人差し指をそっとトンネルの入り口に入れる。
「あっ、あっ、だ、め・・・のだ・・・」
メイはもはや正常な意識がない。
掘削機のように指を上下させると、次第に泉から水があふれてきた。
メイの呼吸が速く、そして荒くなっている。
俺はなおも続けた。
しばらくして、
「はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ、・・・うっ」
うめき声のような声を立てると同時に、メイの体がぐにゃりとなった。
休むひまもなく、俺は分身をトンネルに挿入する。
この体制だと、俺が腰の力で全体中を支えないといけないので少々きついのだが、
手が自由になる分、相手を感じさせるのは容易だ。
まず、いきなり自分の腰を動かすのはきついので、
メイの腰のあたりに手を添え、そっと上げ下げを試みる。
「あぁぁぁん」
オンナの淫靡な声をあげて、メイの体が小刻みに揺れ動く。
ぐちょぐちょという音が、あたりにひびいている。
腰に添えていた手を離し、左手で胸を、右手で泉を愛撫する。
そして、腰は分身を動かしはじめる。
三穴攻め、というのがあるが、三スポット攻めというのもまたその威力は絶大だろう。
しばらくすると、再びメイの息が激しくなってきた。
しかし、俺の機関が休まることはない。
メイの体が、少しづつ硬直しだした。そして、
「め、メイは・・・いっちゃ・・・う・・・の・・・あああっー」
と絶叫するとともに、俺の分身をぎしぎしと締め付ける。フライングされちまった。
そのしまりにつられて、俺の分身もトンネルに赤ちゃんのもとを放出し始めた。
「はあ、はあ、はあ」とメイの息が途切れがちになっている。

俺は二回戦の合図に、メイの唇に、自分の唇をそっと重ねた。
201ボケコニアン:2001/05/28(月) 04:26
もう4時じゃん・・・
おれは寝るかな、一人で
長森瑞佳みたいな娘がいればなあ・・・鬱鬱鬱鬱鬱
202198:2001/05/28(月) 13:39
>>199-200
ごち〜。

そう言えば、SS読む時って皆さんどうします?
私は脳内EVS使用&キャラソンBGM併用で、マターリと。
リレー型SSとかできそうだね
204切る:2001/05/29(火) 02:13
参考スレ
http://yasai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=gal&key=990718070&ls=50

 玄関開けたら2分で生首。
 今日も部屋でエビアンが俺を待ってる。
 今日は、いつもよりバイトが遅くなったから早く帰らないと。最近アイツちょと帰りが遅くなっただけで拗ねるからなァ。
 俺は手早く帰り支度をすませると愛車のバイクにまたがった。
「ちょっと待つニダ!」
 不意に背後から呼びとめる声。振り返ると悪友のバックサンテがスナック菓子(http://koji.pos.to/ebisen/05_02.htm)を手にニヤニヤした顔で立っていた。
「最近、オマエ付き合い悪いニダ。もしかして女でもできたかチョン?」
 その言葉に思わずドキッとする。
「あ、動揺したニダ! もしかしてイソヨンに手を出したんじゃないだろうニャ?」
「な、なにいってるんダよ? 彼女なんかいねーよ」
「本当ダニか?」
 相変わらず怪訝な顔のバックサンテ。マズイな、話をそらさないと…。
「それよりもオマエの食べてる菓子うまそうだな」
「あぁ、上手いダニよ。『韓国オリジナル』の菓子は最高ダニ!」
「そ、そうか…」
「それよりも今から遊びに行くからつきあうダニ!」
「いや、俺用事があるんだ」
「用事? 何ニダ?」
「7時からやる『dチャモン』(http://japanese.joins.com/article.asp?InputDate=20010225&InputTime=212037&ContCode=250)のアニメが見たいんだ」
「『dチャモン』か、アレはいいダニ! アレを見るのなら仕方ないダニ」
 どうやら解放してくれるようだ。しかし、バックサンテの奴『dチャモン』が好きだったんだ…。
「アンニョンヒ ゲセヨ (さよなら)」
 俺はバックサンテの気が変わらないうちにその場を去ることにした。

   つづく(嘘)
菓子の方のリンク切れてるかも
http://koji.pos.to/index.html
のかっぱえびせんを参照。
206とりあえず1:2001/05/29(火) 06:59
>>199-201
…なんか主人公のキャラが違いません?(w

>>202
私は読むときは雰囲気作りしないですねぇ…。書くときはキャラソングをBGMに、
さらにユージンの200円フィギュアをPCの前において、とかやってますが(藁

>>203
本格的にリレーやるなら、明確なテーマが無いと辛いかも。別スレのサクラロワイヤル
なんか、面白い事やってますね。混乱も多そうですが。

>>204-205
……おーい(w
>>204-205
小笑い。
韓国はかっぱえびせんもパクってたか。
トンチャンモンはしってた。
なんでも侍の出てくる話はカットされてるそーだ。
ってスレ違いだ…な。
208再会(1):2001/05/29(火) 12:36
「…ひかりちゃん」
誰かが私を呼んだ。
「誰、誰なの?」
辺りを見渡すが、誰もいない。
「ひかりちゃん…バイバイ…」
「えっ?」
振り返ると、一人の小さな男の子が車のドアの前に立っていた。
「まって!」
そう言いながら、男の子に近づく。
男の子は聞こえないのか、そのまま車に乗り込む。
「ねえ、まって」
車に近づこうとするが、距離が縮まらない。
車が動き出す。
「ちょっとまってよ!」
慌てて走り出し、車の後を懸命に追いかける。
「ねえ、まって…」
車はスピードを上げ、どんどん小さくなっていく。
「あっ…」
つまづいて転んでしまう。
車はそのまま走り続け、やがて見えなくなる。
「ねえ、どうして…どうしてなの…」
次第に辺りが真っ暗になっていく。
…。
不意に背後が明るくなる。
振り返ると、そこにはひびきの高校の制服を着た少年が立っていた。
「誰?」
顔はよく分からない。
「も、もしかして…」
209再会(2):2001/05/29(火) 12:37
そこで目が覚める。
カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しい。
「夢…また同じ夢…」
小さい頃、彼と別れてから何度も見た夢。
「この前見たのはいつだったかな…」
夢から覚める直前の人物…おそらく彼。
私が成長していく度に夢の中の彼もまた成長していく。
しかし、彼の顔を見ることも声を聞くこともない…。
飾ってある写真に目を向ける。
小さい頃に撮った写真。
幼馴染みの三人…華澄さんと私、そして彼が写っている。
華澄さんは近所に住む5歳年上のおねえさん。
今は大学生で一人暮らしをしている。
彼は隣に住んでいた同い年の子。
その彼が引っ越してからもう7年…残念ながら連絡はない。
部屋に掛けてある制服に視線を移す。
「ひびきの高校の制服、か…」
小さい頃はひびきの高校の近くで遊んでいたこともある。
その頃からずっと見慣れている制服。
華澄さんも着ていた制服。
そして、今日から自分が身に着ける制服。
写真に視線を戻す。
「今日はひびきの高校の入学式だよ。君はどこでなにをしてるの?
 学校も制服もあの頃と変わらないよ。もちろん、私の想いも…」
光は暫く写真を眺めていた。
210再会(3):2001/05/29(火) 12:37
「さーて、シャワーでも浴びようかな…」
階段を下りて、台所にいる母親と挨拶を交わす。
「お母さん、おはよう!」
「おはよう、光」
朝のシャワーはもう、日課になっている。
シャワーを浴びながら、昔のことを思い出していた。
彼と小さな公園で遊んだことや彼とはぐれてしまったこと。
彼と山道で迷子になったことや彼から指輪を買ってもらったこと。
そして、彼が引っ越してしまう前に三人で出かけた遊園地のこと。
引っ越し当日、彼にさよならさえ言えなかったこと。
彼がいなくなって、寂しくて泣いたこと…。
「ひーかーりー、早く出ないと遅刻しちゃうわよー」
母親の声が現実に引き戻す。
「はーい」
体を拭き、バスタオルを巻く。
手早く髪を乾かし、そのまま脱衣所から出る。
牛乳を飲みながらちらっと時計を見る。
「いけない、もうこんな時間…遅刻しちゃう」
慌てて部屋に戻り、急いで制服を身に着ける。
久しぶりに彼の夢を見たせいだろうか、心が落ち着かない。
階段を駆け下り、台所へ向かう。
立ったまま皿からパンを取り、一口かじる。
「まあ、行儀の悪い…」
「ご、ごめんなさい、遅刻しちゃうから…」
「しょうがないわねぇ」
そのままパンを食べながら玄関へ急ぐ。
「いっへひまーふ!」
そう言いながら足を靴に突っ込み、家を飛び出して行く。
211再会(4):2001/05/29(火) 12:38
光は春の暖かな日差しを受けながらひびきの高校への道を走っていく。
家が近いとはいえ、近所にひびきの高校の制服を着た人を見かけなかった。
「えへへ、さすがに初日から遅刻はマズイよね」
光はちょっと走るスピードを上げる。
時折吹く、優しい風の中を駆け抜けていく。
「あれ!?今日はなんか、みょーに涼しいなぁ」
ひびきの高校に近づくと、まばらながら制服を身に着けた人たちを見かける。
校門を抜け、桜の花びらが舞う中をさらに走っていく。
「もう大丈夫かな?えへへ、こんな時は陸上の経験がものをいうなぁ」
光は少し走るペースを落とす。
視線の先に人だかりが出来ているのを見つける。
何か貼り出されているようだ。
「クラスの発表でもされてるのかな?」
光はその掲示物めがけて走っていく。
走りながら周囲を見渡す。
(これから3年間、この景色と一緒に過ごすんだね…)
(えへへ、お世話になります…)
ついつい周りの景色に目を奪われ、前方への注意を怠ってしまった。
ふっと、前に視線を戻すと一人の少年が立っていた。
「えっ!?」
気付いた時には遅かった。
(ぶ、ぶつかる!)
慌ててスピードを落とそうとするが間に合わない。
(も、もう…だ…め…)
ドンッ!!
212再会(5):2001/05/29(火) 12:38
ぶつかって倒れる少年としりもちをつく光。
「うわっ!いてててて…」
「い、いたたたた…」
少年と光はほぼ同時に声を発する。
「な、何だ?」
「ご、ごめんなさい!私、よそみしてたから…」
お互い相手の顔に視線を向ける。
「あれ!?」
「えっ?」
(ウ、ウソ…)
突然、光の脳裏に小さい頃の思い出が過ぎる。
「…もしかして、光?」
少年が先に口を開く。
「うん!」
(間違いない…)
「小学校の時以来だね…7年振り、かな…」
「…もう…ヒドイよ…急に…引っ越し…しちゃうんだもん…」
あまりに突然で、うまく言葉が出てこない。
ずっと待ち望んでいた彼との再会。
「ご、ごめん…」
「ううん…でも…私のこと…ちゃんと憶えてて…くれたんだね…」
「…うん」
「えへへ、嬉しいな…」
(こ、これって夢じゃないよね?)
(今朝見た夢、彼と再会できるっていう暗示だったの!?)
(あぁ…神様ありがとう…)
213再会(6):2001/05/29(火) 12:39
「そ、それより、光…だ、大丈夫か?」
少年は少し顔を赤らめながら聞いてくる。
「う、うん」
(私のこと心配してくれるんだ…昔と変わらず優しいな…)
彼をよく見ると、鼻から赤いものが垂れている。
「それより…君こそ大丈夫?」
「えっ?」
「その、鼻血…出てるよ…」
彼は手で拭い、鼻血が出ているのを確認する。
「あっ…本当だ。だ、大丈夫だよ…」
(えーと、何か拭くもの…)
光は探そうとして、今の自分の格好に気付く。
「あっ、ヤダ…」
(…見られちゃったかな…)
慌ててスカートを押さえる。
「…」
「ひょっとして…見えた?」
「えっ?な、なに?」
「ううん…な、なんでもない…」
そう言いながら光はハンカチを取り、彼に差し出す。
「とりあえず、これ使って…」
「あ、ありがとう…」
彼は光からハンカチを受け取ると鼻に当てる。
「…じ、じゃあ俺、保健室いくから」
素早い動きで、立ち上がり背を向け、歩き出す。
「?」
(なんか変な歩き方…どこか打ったのかな)
光も立ち上がり、歩いていく少年の背中をずっと見送っていた…。
214再会(7):2001/05/29(火) 12:40
「もうすぐ、入学式が始まっちゃう」
(その前に…トイレにいこうかな)
光はトイレに向かって走っていく…。
「きゃーーーーーっ!!」
思わずトイレで悲鳴を上げる。
「そ、そんな…」
(ウ、ウソ…は、はき忘れていたなんて…)
恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
(ヤ、ヤダ…)
(も、もしかして…み、見られちゃったの!?)
(…どうしよう)
(は、恥ずかしいよ…)
(…私、もうお嫁にいけないよ…)
目が潤んでいくのがわかる。
(せっかくの感動の再会が…これじゃ、台無しだよ…)
「…もう、神様の意地悪!」
一方その頃、彼は…。
「光のヤツ…昔と変わってないな」
(もっとも、体のほうはちゃんと成長してるけど…)
さきほど起こったことを思い出す。
「お、おもわず興奮しちゃったよ」
鼻に当てているハンカチを離す。
「とりあえず、止まったかな…」
(しかし、凄いもの見ちゃったよ…)
(まさか見えたなんて言えないし…)
光から受け取ったハンカチを広げてみる。
「こ、これって…パ、パンティ!?」
<完>
215回します(1):2001/05/29(火) 12:41
オープニングから
216回します(2):2001/05/29(火) 12:42
光と主人公との
217回します(3):2001/05/29(火) 12:42
再会シーンを
218回します(4):2001/05/29(火) 12:43
私の妄想を加えて
219回します(5):2001/05/29(火) 12:43
お送りします。
220回します(6):2001/05/29(火) 12:44
前回うぷした
221回します(7):2001/05/29(火) 12:45
入学式前夜の
222回します(8):2001/05/29(火) 12:45
続きです。
223回します(9):2001/05/29(火) 12:46
続きもなにもないか…
224ひかりん、、、大好きです。。。:2001/05/29(火) 12:48
「再会」です。
>>208-214
えーと
>>214
はっきり逝って…、氏にそうになりました。

ノーパンひかりんハァハァ。
そんな馬鹿な……。
妄想でかすぎ!
227とりあえず1:2001/05/31(木) 07:16
>>224
ちょっと老婆心。文中の人称が統一されていないのが少し気になります。
(ごく序盤だけ『私は〜』と一人称、途中から『光は〜』と三人称になっている)
えらそうな事を言うようですが、参考にしていただければ。
しかし、そんなオチとは思わんかった(w

ひさびさにage。
もっとエロ系を…
229224:2001/05/31(木) 18:13
>>227
参考にさせていただきます。
練習あるのみ…でしょうか。
がんばれ!
231名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/02(土) 03:04
週末あげ
232ボケコニアン:2001/06/02(土) 03:35
エロ系SSスレはどっか別のとこにあったけど
そっちに上げたほうがいいんだろうか・・・
俺はしばらく忙しくてカキコする余裕ないから
他の職人さんに期待するわ
こっちでいい。
234名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/03(日) 00:32
投稿率の高い週末がやってきました。
今週はどうでしょうか。
235ボケコニアン:2001/06/03(日) 01:42
このスレ見てる人少ないのかな?
たまにはなんか書いてー>>ALL
結構SS考えるの大変なんだわ。3時間は使う。
キャラやゲームの設定を無視したSSはおもろないからそういうので結構考える。
3週間後に試験控えてるから今追いこみで忙しいです
まあ、俺程度の駄文でよかったら試験終わったら上げるよ

某所のクレアSSもまだ完成してないか・・・鬱
236名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/03(日) 20:31
SSってそんなに時間かかるモンなのか?
構想30分 制作1時間(タッチタイプ可で)ぐらいだと思ってた。
あらためて職人に感謝。
2371@遅筆かも:2001/06/03(日) 21:11
>>236
人それぞれだとは思いますけどね。速い人はそれぐらいで書いちゃうかもしれない。
私の場合なんかは、核になりそうなアイデアが出てから、話のプロットをまとめるのに
2〜3日かかる場合が多いです。その前に没になるほうがもっと多いけど(w

ときメモ2に偏りすぎるのがアレだったので、「ダブルキャスト」なんか書いてみたら
女性キャラの出ない話になってしまいましたとさ。まだ書きかけだけど。
これギャルゲ板に上げても誰も喜ばんよな(w
>>237
喜ぶ、だから上げてくれ。
頼む。
まぁ、24時間SSの事ばかり考えてるわけじゃないから正確な時間は判りませんよ。
>>236
私は言葉遣いとかで時間ロスしてしまうクチ…(汗)。

>>237
きぼんぬっす。
一人称がなんだったか判らなくて悩む事もしばしば……。
誰かときメモ2の全員の一人称と主人公のことをなんて呼ぶかを教えてくれ。
242名も無きミナー:2001/06/04(月) 15:35
>>241
光の一人称→私 主人公の事は「きみ」「○○(下の名前)君」「○○ちゃん(幼年期のみ)」
華澄の一人称→私 主人公の事は「○○(下の名前)君」と、あと一つあったかな?
琴子の一人称→私 同上「あなた」「(EVS使用時。…使ってないからわからない)」
茜→ボク 同上「キミ」「(EVS使用時。…同上)」
美帆→私 同上「あなた(だったかな?)」「(名字)さん」
ほむら→あたし 同上「おまえ」「(忘れた)」
ゆっきー→美幸 同上「あなた(ちょっと自信無し)」「(あだ名呼び)」
楓子たん→(忘れた…) 同上。…全然覚えてない…
八重→私 同上「あなた」「(名字)君…だったかな?」
メイたま→メイ 「貴様」「(名字呼び捨て)」「(名字)せんぱい(イベント時のみ)」;「おにいちゃん(幼年期)」
真帆→私 「あなた」「(…忘れた)」
すみれ→私 「あなた」「(名字)さん」
舞佳→私 「少年」…これ一つだったかな?
匠&純→俺 呼び方忘れた


穴だらけスマソ。詳しい方、フォロー頼むす。
う、自分で書いておきながらかなり見辛い…。
基本的に呼び方は「あなたor君」「(EVSで)名字or名前」の2パターン、かな?

美帆・美幸・ほむらの幼年期に特別な呼び方あったかな…?
244名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/04(月) 20:26
>>242-243
サンキュー! SS書く時(あるのか?)の参考にするよ。
しかし主人公の名前はときメモSSのネックだね。
ディフォルトであればいいのに…。
小説版orドラマCD版の名前使うのもナンだしなァ…。
(っていうかドラマCD版の主人公の名前は知らん)
やっぱり「キミ」「あなた」で誤魔化すか。
上月澪みたいにしゃべれないキャラってどーすんの?
246ボケコニアン:2001/06/04(月) 23:12
>>244
俺は主人公への呼びかけを省略してるけどね
具体的には俺のSS見てくれ

>>245
こればっかりはそういう表現いれてくしかないんじゃない?
例えば、

澪は細身のサインペンで、手に持っていたスケッチブックになにやら書きこんだ。
書き終わると、澪はおもむろにそれを見せる。
俺の目には「明日、お寿司が食べたいの」という文字が飛び込んできた。
そういえば・・・先週そんな約束したっけ。
俺が言うのもなんだが、約束を破る人間は大嫌いだ。もちろん、俺自身も。
俺は澪の右肩をぽんと叩くと、「じゃあ、明日つれていってやるよ」と言った。
否や、澪はそれを期待していたかのように、満面の笑みを浮かべてうなずいた。

こんなかんじ、分かってくれたらうれしい
>澪は細身のサインペンで、手に持っていたスケッチブックになにやら書きこんだ。
ドラクエみたいだ…ってのは冗談で、やっぱ俺もこうするしかないと思うよ。
澪はSS作家殺し。
248:2001/06/04(月) 23:35
>>244
一人称だとそういう技が使えますね>キミ、あなた
三人称だとなかなかそうもいかないんですけど、>>3-4なんかは「少年」で無理やり
押し通してます。小説版センチで、大倉らいた氏も同じ事をやってますが(w
(でも、純や匠みたいなほかの男性キャラがいると使えないんだよなぁ…)

ダブルキャストネタ難航中。もう1アイデア入れたいともがいてます。
>>238>>240さんありがとう。頑張ります。
ときメモ系の主人公の名前(呼び方)が問題になってるが、なんならここ専用の主人公ネーム決めるか?
しかし「名無し太郎」とかになったらSS読んでて感情移入は100lできんか…。
う〜む、我ながら不毛だ・・・・・・。
やっぱり主人公の名前問題はSS作家の力量でカバーしてもらうしかないね〜。
作家のみなさん頑張って。
>>249
「○○君」も読んでいて鬱になります。
251セルフ・パーティ(後):2001/06/05(火) 22:50
前編>>182-185
---------------------------------------------
 苦労の末に、『スペースリングファイター』は無事完成した。
 そしていよいよ文化祭当日である!

「どうだ? 客の評判は」
「はい、好評です。部活でここまでのものを作るのは凄いって」
「そ、そうかっ? ふ、ふん。部活動レベルで判断されるのは不本意なのだ」
 とか言いながらも、勝手に顔がにやけるメイである。夜遅くまで頑張った甲斐があったというものだ。
「どうだ貴様たち、電脳部員で良かったであろう?」
「そ、そうっすね」
「あとは人気アンケートで1位を取れば完璧なのだ。はーっはっはっはっ」
 客の入りも良く、メイは部室の中をうろちょろしながら画面を後ろから覗き込んだり、適当な生徒をつかまえてゲームの講釈を垂れていた。庶民のお祭りでもなかなか楽しいものだ。
 と、部室の反対側から耳慣れた大声が聞こえてくる。
「どりゃぁ! ホーミングホーミングホーミングー!」
「もう少し静かに遊べんのか…」
「横から話しかけるんじゃねぇ! 今のあたしは誰にも止められないぜー!」
 騒ぎながらラスボスを倒し、ふぅと息をついて顔を上げ、ようやく赤井ほむらはメイの存在に気づいた。
「な、なんだ。てめぇかよ」
「ふふーん。ずいぶんと熱中していたようだなぁ? そんなに面白かったか? んんー?」
「い、いいだろ別にっ! あたしは何事にも全力投球なんだよ!」
「ええいひねくれ者め! 素直に面白かったと言えっ!」
「…まあ、面白かったけどよ」
「は?」
 あっさり認めるほむらに、メイの勢いが一瞬削がれる。
「ま、ゲームに関しては嘘つけねぇからな。マジで面白いぜ」
「え、そ、そうか? え、ええと……ま、まあ当然なのだ、メイが作ったのだからな。わはははははっ!」
「おう、ゲームの出来と作る奴の性格は関係ねぇってことがよーく分かったぜ」
「はーっはっはっはっ。ってどーいう意味だっ!!」
「ニャハハハ。さーて次こそは1分の壁を…」
「ほむら〜! いい加減次の場所行こうよ〜」
 廊下の方から疲れたような声が聞こえ、ほむらはやべ、とばかりに首をすくめた。
「そういや茜を待たせてたんだった。じゃーな、伊集院」
「あ、ああ……なのだ」
 少し呆然とそう答えて、ほむらの姿が見えなくなってから、ようやく実感が湧いてくる。
 勝った! 予定ではほむらがもっと悔しがるはずだったのだが、まあ贅沢は言うまい。面白いと言わせた時点でメイの勝ち。完膚無きまでの大勝利である。
「はーっはっはっはっ! やったー! 今日この日を山ザル退治記念日とするのだ!」
「め、メイ様?」
「うむ、貴様たちもよくやってくれたのだ。文化祭が終わったら祝勝会を開いてやるから楽しみにしているがよいぞ」
「は、はぁ…」
 勝利の余韻からくる鷹揚さで部員たちに寛大なところを見せると、メイはしばらく高笑いを続けた。さすがはメイの電脳部。これほどの成果を出せる部など日本広しといえどもそうはあるまい。
 周囲にすっかり満足しながら、メイの笑い声は閉じた部室に響いた。
 その時は疑問も持たなかったのだ。
252セルフ・パーティ(後):2001/06/05(火) 22:51
 一日中部室に張りついているのも何なので、午後は校内を見て回ることにした。
 とはいえ一緒に回る友達もなく、横にいるのは咲之進である。
 お喋りしながら目の前を行き交う女の子たちを見て、何となく物足りない気分にもなったが…
 それでも文化祭は結構楽しかった。生まれて初めてお好み焼きを食べたり、美術部の作品をもっともらしく論評したり、演劇部の『シンジテラ』に大笑いしたりと、瞬く間に時が過ぎていく。唯一不愉快だったのは、茶道部で正直に「苦いのだ。まずいのだ」と言ったら、そこにいた女が目を釣り上げて「あなたは和の心が分かっていないわね。そもそも茶の湯とはうんぬんかんぬん…」と説教を始めたことくらいだ。
 4時過ぎから一般客は帰り始め、5時にひとまず閉場となる。
『――公開は終了しました。生徒たちはキャンプファイヤーまでに、できるだけ片づけを進めてください』
 輪投げ大会に熱中していたメイは、校内放送を聞いて我に返った。そういえば自分の部活をほったらかしだ。電脳部はメイがいなければ成り立たないというのに。
「大変なのだ、きっと部員どもがメイの命令を待っているのだ。咲之進、貴様はもう下がってよいぞ」
「はい、メイ様」
 スススと視界から消える咲之進を後に、小走りに電脳部へ急ぐ。
 まだ祭りの余熱は消えず、あちこちで最後の騒ぎ声や笑い声が聞こえてくるが、それも徐々に落ち着いてくる。あとはキャンプファイヤーを残すのみだ。メイにとっては実に満足な一日だった。
 特別教室棟の端へ来ると、人影もまばらになってくる。こんな辺鄙な場所にも、あれだけ客が来たのだから自分たちの実力だろう。
 午後は部員たちに任せきりだったし、少しはねぎらいの声でもかけてやろうか。
 そう考えながら、笑顔で部室の扉に手をかけた。
「なんか…つまらん文化祭だったな」

 手も表情も、そのまま動かなくなった。
 何だ? 今聞こえてきたのは。
 頭が停止している間に、ぼそぼそと部室の中から声が流れてくる。
「そりゃあそうですよ。伊集院さんの命令通りに動いてただけだし」
「俺、作りたいゲームがあったんだぜ。今年が最後の文化祭だったのに…」
「先輩たちはまだいいっすよ。僕たちなんか来年も再来年も伊集院さんと一緒ですよ…」
 動けない。こいつらは何を言ってるんだ。
 固まった空気の中を、開発中に何度も聞いた電子音が流れ出す。
「スペースリングファイターか…」
「そりゃあよくできてるけど、無理矢理作らされたんじゃなぁ」
 大成功だったのに。
 お客も喜んでくれたのに。赤井ほむらも誉めていたのに。
「大した備品も予算もなかったけど」
 どうして今さらそんなことを言い出すの…。

「昔の方が楽しかったよな…」

 みんなのため息が聞こえた。廊下まで届くほど深く。
 その中になんて入っていけるわけがなかった。
 くるりと背中を向けて、メイは逃げるように逆方向へ走りだした。
253セルフ・パーティ(後):2001/06/05(火) 22:52
 祭りの喧噪は終わり、校内中が片づけを始めている。
 生徒たちは忙しく走り回っている。早く片づけないと日曜日に出てくる羽目になるから、みんな必死だ。
 行くところのないメイは、校舎から弾き出されるように外へ出た。
(なんで)
 ふつふつと怒りが湧いてくる。何であんなことを。庶民のくせに。無能のくせに。メイの下僕のくせに!
 …けれど、その怒りもすぐに空気が抜けるように縮んでいく。あんな風に思われてたなんて。
 悪いのはどちらか…
(いや、違う、違うぞ! メイは悪くないのだ!)
 ぶんぶんと頭を振って、もうそのことは考えないようにした。
 だいたい、庶民なんかに嫌われたからなんだ。元々住む世界が違うのだし、ただメイが勝手に、楽しい部活だと思い込んでいただけで…
 もう陽は落ちて、窓から漏れる明かりがメイを照らす。『何をしている』なんて聞かれたら答えようがない。
 メイは明かりから逃げるように、校舎の壁に寄って、その場に座り込んだ。
 壁一枚隔てた向こうから楽しそうな笑い声が聞こえる。
 耳を塞ぐように膝に顔を埋める。考えてみれば、どうして自分はこんな高校に通ってるんだろう――?

「よお、どうした」

 ここに入学してから一番多く聞いた声で、憎たらしいほど覚えてる相手。
「何があったか知らねーけどさ、落ち込んでたってつまんねぇぞ。うまいぐあいに文化祭なんだしよ。キャンプファイヤーで騒いで忘れちまおうぜ!」
 暗くて誰だか分からないのだろう。ほむらの声は、今まで聞いたことがないほど明るい。
 その証拠に、メイが顔を上げて冷たい目を向けると、反応するようにほむらも渋い顔を見せた。
「げっ、お前かよ…」
「…悪かったな」
「あー、可愛くねぇ。ったく、何してんだよ、カゼ引くぜ」
「お…大きなお世話なのだ。メイのことなんてどうでもよいだろう!? さっさと消えるのだっ!」
 大声で当たり散らす。最悪だ。よりによってこいつが現れるなんて。
 ほむらも腹立たしそうに舌打ちしたが、立ち去るかと思いきや、何を考えたかいきなりメイの隣に腰を下ろした。
「な、何なのだっ…」
「ま、お前みたいなのでも一応ここの生徒だからな。文化祭の最中に生徒が一人でこんなとこにいるんじゃ、放ってはおけねぇだろ。あたしは生徒会長なんだぜ?」
 勝手なことを言いながら、首を傾けてメイの顔を見る。話せ、と。
「べっ…、別に貴様に話してどうなるものでもないが…。まあどうしても聞きたいというなら言ってやらんでも…」
「あーわかったわかった。で、どうした?」
「じ、実はっ…」
 メイは堰を切ったように話し出した。部員たちのひどい仕打ち。この際ほむらでもいい、誰かに言ってほしい、メイは悪くないと。
「そ、それはメイも少しは強引だったかもしれないけど、でも電脳部のためだったのだ。メイだって一生懸命頑張ったのだ」
「‥‥‥」
「メイ一人で夜遅くまで残っていたのだっ。そういうのは全然評価してくれないのだっ!」
 ほむらに見られるのが嫌で、、メイは再度膝に顔を埋めた。
「メイの気持ちなんて誰も分かってくれないのだっ…!」
254セルフ・パーティ(後):2001/06/05(火) 22:52
 しばらく言葉はなく、夜だけが深まっていく。
 メイは動けない。そろそろ沈黙に耐えられなくなったころ、ようやくほむらが口を開いた。
「なあ、伊集院」
「‥‥‥」
「このボケ」
「‥‥‥‥。んなっ!?」
 予想もしない暴言に、驚きと怒りで口をぱくぱくさせてる間に、ほむらはつまらなそうにそっぽを向いた。
「よくよく聞いてみりゃあ、全部てめぇが悪いんじゃねぇか。ったく、一瞬でも同情して損したぜ」
「な、な、こ、こういう場合は慰めの言葉をかけるものと相場が……ええいもういい! この血も涙もない悪魔ぁっ!」
「バッカ野郎! 文化祭ってのはなぁ、みんなで楽しむもんなんだよ。どんなにいいゲームだろうが、自分一人が楽しいんじゃ何の意味もねぇだろうが!」
「う…」
「誰もメイの気持ちを分かってくれないだぁ? じゃあてめぇは周りのことを考えたのかよ。他の奴らがどんな気持ちか、一度でも考えたってのか!?」
「う、ううううぅ〜〜!」
「ここはてめぇ一人のパーティ会場じゃねぇんだよ!」
 言葉が返せない。悔しい。何でこんな奴に。
 メイは地面を蹴って立ち上がると、涙目でわめき散らした。
「うるさい、うるさいうるさいうるさーーい! め、メイは悪くないのだ! メイは伊集院家の人間だから、他の奴とは違うのだ。周りのことなんて知ったことじゃないのだ!」
「けっ、そうかよ。だったら部活なんて入るんじゃねぇ。一人で遊んでな!」
「い、言われなくてもそうするのだ! やめてやる、こんなレベルの低い学校、元々通いたくなんかなかったのだっ…!」
「こ、この野郎…やめちまえやめちまえ! せいせいすらぁ!」
「う…う…うわぁーーーん!!」
 頭の中が真っ白になって、メイは泣きながら脇目も振らずに走って逃げた。
 ひどい、ひどすぎる。それは少しはメイも悪かったかもしれないけど、あそこまで言うことないのに。
 本当に、こんな学校入るんじゃなかった。あんな奴になんか会いたくなかった。
 本当に本当にっ…!
(赤井ほむらなんか大っ嫌いなのだっ…!)
255セルフ・パーティ(後):2001/06/05(火) 22:53
 …くしゅん。
 11月の夜は寒い。いつまでも外にいるわけにもいかず、メイは足を引きずるようにして校舎に戻った。
 といっても、行けるところは一つしかない。
(あ、あいつらだって反省しているかもしれないのだ。さっきのは冗談だったのかもしれないし。いや本気だったとしても、メイは身分が高いのだから庶民から妬まれたって別に何とも…)
 自分でも嘘と分かることを必死で言い聞かせながら、特別教室棟の階段を登る。人は先ほどよりもさらに少なく、空気も冷たい。
 あんなところに、戻ったとしてもどうしよう。
 部員みんなから嫌われたまま、これからの毎日を過ごすんだろうか…。
 とうとう部室が見えてくる。その時だった。
「聞いてんのか、おい!」
 突然廊下に大声が響いた。
 思い出したくもない、さっきまでメイに優しい言葉の一つもかけてくれなかった相手。
 なんであの女がそこにいる!?
「そりゃあ伊集院はクソガキだ。高慢ちきだし、常識も知らねぇ。てめぇ中心に世の中が回ってると思ってやがるどうしようもねぇ奴だぜ」
 かっと頭に血が上る。メイの悪口を言いに来たのか。部員たちと一緒に、メイをこき下ろして盛り上がる気か。
 悔しさに歯がみしながら、部室へと突進する。
「でもな、だったら何でそう言わねぇんだよ!」
 扉を蹴破って殴り込もうとした足が急停車した。
 部員たちのうろたえた声が聞こえてくる。
「か、会長、落ち着け」
「これが落ち着いていられるかっ! 言わなきゃあいつだってわかんねぇだろ!? 普段はペコペコして、いなくなったら陰で悪口言いやがって。ケツの穴の小せぇ野郎どもだぜ!」
「け、ケツの穴って、お下品な…」
「下品も骨董品もあるかっ! 特に2年と3年!」
「はいーっ!」
「お前ら先輩だろ、ちっとは先輩らしいところ見せてやれよ! あいつだってひびきのの生徒なんだ。せっかく同じ部になったんじゃねぇか! 同じ土俵にくらい上がってやれよっ…!」

 しばらく無音が続いてから、苛立たしげに机を叩く音がした。
「あたしが言いたいのはそれだけ! 邪魔したなっ!」
 言うだけ言って部屋を出て、乱暴に戸を閉めたほむらは、歩き出そうとしたとたんに眼前のメイに激突しかける。
「うおぅ!? な、何してんだてめぇ」
「…貴様こそ何をしているのだ」
「んにゃ、べーつに」
「よ…余計なことをして欲しくないのだ!」
 メイの予定とは違うことばかりだ。もう全然わからない。
「何で貴様がそんなことをするのだっ!? 大きなお世話なのだ! 貴様の情けを受けるなんて、め、メイは…」
「バーカ、別にてめぇのためじゃねぇよ。あたしがやりたいからやっただけだ」
 そう答えて、ほむらは部室の扉を指さす。
「ほら、片づけが残ってんだろ?」
「な…」
 急激に声が小さくなっていく。状況が変わったわけじゃない。
「で、でも何と言って入ったらよいか分からないのだ…」
「悪いことをしたら言うことは決まってんじゃねぇか。いくら世間知らずだってそのくらい分かんだろ」
 最後まで無礼で、気遣いがなくて、そのままの言葉を投げつけると、ほむらはメイの背中をどんと押した。
 よろける自分を支えて振り向いた時には、既にほむらは軽い足取りで廊下の向こうへ消えていった。
 バカにして…!
 半ばヤケになって、勢いよく扉を開く。
「あ…」
「メ、メイ様…」
 気まずさが場を覆う。
 十数人の部員たちは、みなきまり悪そうに目線をそらす。
「ご…」
 言うことは決まってる。
 分かってるけど、口が動かない。動かないけど…
 これ以上あの女にバカにされるのが嫌で、メイは無理矢理言葉を吐き出した。
「ごめんなさい、なのだ…」
256セルフ・パーティ(後):2001/06/05(火) 22:54
 ぎょっとした顔が目の前に並んだ。
 1年生の女の子が涙を浮かべて謝る姿に、被害者意識は消え失せ、部員たちの胸に罪悪感が押し寄せる。
「べ、別に伊集院さんは悪くないよっ!?」
「そうそう! 言いなりになってた俺たちが情けないんであって!」
「でも、本当は違うゲームを作りたかったって…」
「いやいやいや、大したゲームじゃないし! ホントに!」
「無理をしなくてもよいのだ…。メイがいるからいけないのだ。責任を取って退部するのだっ! さよならっ!」
「わーーっ! ち、ちょっと待ったーっ!」
 さすがにこれで辞められたのでは後味が悪い。背を向けて走り出そうとするメイを、全員大慌てで引き留める。
「落ち着けって伊集院さん!」
「離せっ! だって文化祭は終わってしまったし、今さら取り返しなんか…」
「ま、まだ冬のゲームコンテストがあるじゃないか。もう一度やり直そう! うんそれがいい!」
 メイは上目遣いで、そんな部員たちの顔を見る。本音かどうかなんて分からない。今までだって分からなかったんだから、けど…
「ほ、ほんとか?」
「そうそう」
「どうしてもか?」
「どうしてもっ!」
「そのぅ、メイは責任を取って退部する気なのだが、どうしてもと引き留められては無下に断るのもどうかと思うので…」
「あーもうわかったからっ! よし、それじゃさっさと片づけようぜ。急がないと終わらん」
 一人の言葉に全員で時計を見て、慌てて部屋の中へ散っていく。何人かがメイに声をかける。あらためてよろしく、と。
「メ、メイも片づけるのだ」
 その後を追いかけながら、初めて感じる雰囲気に足を踏み入れたような気がした。他の誰かがいる空間。自分一人じゃなくて。
 何だか予定外のことばかりだけど…。
 立ち去る気にならなくて、やっぱりここに残りたいと、どうしてもそう思った。
「ああっ! ポスターをはがしたら画鋲だけ壁に残ったのだ!」
「いや、そういうのはまず画鋲から外さないと…」
「メイなんて…メイなんて…」
「だ、誰にでも向き不向きはあるんだからさっ! なっ!?」
257セルフ・パーティ(後):2001/06/05(火) 22:54
 翌週になると文化祭の残り火も消え、すっかり元の日常に戻って、一日の過ぎた放課後。
「会長、我々の仕事はまだ終わってませんよ」
「ちぇっ、なんで決算報告なんて面倒なモンがあんだよぅ」
 ほむらがぶつぶつ言いながら各班の報告を流し読みしていると、例によって生徒会室の扉が音を立てて開く。
「はーっはっはっはっ! 山ザルはいるかっ!」
「あーうるせぇ。あたしは忙しいんだよ! ガキは帰って寝てろ!」
「ふん、猿のくせに忙しいのか。まあ時間の有効活用などという概念を知っているとも思えんしな」
「相変わらずわけわかんねぇこと言ってら…。で、今日はなんの用だよ」
「え? う、うむ」
 急にメイはそわそわし出すと、もごもごと何かつぶやいて、急に思い出したように顔を上げる。
「そうだっ! なんで人気アンケートで電脳部が6位なのだ? 票の不正操作の疑いがあるのだ!」
「バーカ、ゲームやらない奴には全然面白くねぇだろ。茜だって興味なさそうだったし」
「むぅ〜」
「で、用はそれだけか?」
「い、いやその、ええと…」
 しばらくあっちを見たりこっちを見たりのメイだったが、しびれを切らしたほむらが何か言おうとする前に口を開く。
「こ…この前はありがとうなのだっ!」
「は?」
 きょとんとした顔で聞き返して、苦虫を噛みつぶしたメイに気づき、理解すると同時に大笑いする。
「ぎゃはははは! 何だよ、それを言いに来たのかー!?」
「むっかぁ〜! やっぱり取り消すっ! 貴様に言う礼など1グラムもないのだっ!」
「へへーん、あたしだって礼を言われる筋合いなんかないね。悔しかったら部活であたしをギャフンと言わせてみな」
「言われなくたってそのつもりなのだっ! 生まれ変わったネオ・電脳部は冬のゲームコンテストに向けて各自開発に余念がないぞっ! 首を洗って待っているがよい、わはははは!」
「何だよネオ・電脳部って…」
 呆れたほむらの声が届く前に、メイは身を翻すと、元気よく部室の方角へ走り去っていった。
 そんな後輩の姿を見送っているところに、役員の一人が声をかける。
「何です、ニヤニヤ笑って」
「ん? いや、この学校で良かったなーってよ」
 生徒会長はそう言いながら、んっと大きく背中を伸ばした。


<END>
258回しネタ:2001/06/05(火) 22:54
ひかりんと仲良く話している華澄先生。
259メモまんが大王:2001/06/05(火) 22:55
爆裂山「華澄先生は生徒と仲がよろしいですなぁ」
260回し:2001/06/05(火) 22:55
華澄 「あ、校長先生。ははは…」
261回し:2001/06/05(火) 22:58
爆裂山「わしも見習いたいですな。どんな話をしておるのですか?」
262回し:2001/06/05(火) 22:58
華澄 「今は『クラスの男子で一番嫌いな奴』で盛り上がってました」
爆裂山「それは…」
263回しネタその2:2001/06/05(火) 22:58
華澄「あー暑い! 教室にクーラー入れて欲しいわ!」
264回し:2001/06/05(火) 22:59
舞佳「あんたなんかまだいいわよ。私なんか外よ! 炎天下よ!?」
265回し:2001/06/05(火) 22:59
華澄「そんな事はしらん」
266回し:2001/06/05(火) 22:59
華澄「教室にクーラー欲しいなー」(はーっ)
舞佳「‥‥‥‥」
「セルフ・パーティ」前編>>182-185 後編>>251-257
メイ&ほむらです。結局10日もかかってしまった…。

>>195-196 感想ありがとうです〜。通して読んでみてテンポが悪かったら
別の単語を使う…というようなことをやってます。
268:2001/06/05(火) 23:23
>>267
…白旗ぱたぱた。
そうそう! こういうほむらが見たかったんですよう(LSFじゃちっとも
生徒会長らしいとこ見せてくれないんだもんなぁ)。

良い物を読ませていただきました。心の底から絶賛をおくります。いやほんとに。
うん、よかったよ。
270名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/05(火) 23:41
新作が出たときくらいあげません?
何気に回しネタおもろい。いいなぁ、メモまんが大王^^
272:2001/06/06(水) 00:02
前の分も含めて、ここまでのインデックスをまとめておきまーす。

「風が運んだHappiness」>>3-4 /ときメモ2、寿美幸
「やくそく」>>31 /ときメモ2、伊集院メイ
「プレゼント」>>44-48 /ときメモ2、伊集院メイ&白雪美帆
「入学式前夜」>>69-74 /ときメモ2、陽ノ下光
「笑顔」>>85-86 /ときメモ2、野咲すみれ
「無題」>>105-108 /ときメモ2、陽ノ下光(※18禁)
「微笑みを、あなたに」>>121-126 /ときメモ2、野咲すみれ&八重花桜梨
「華澄おねえちゃん」>>141-148 /ときメモ2、麻生華澄(※18禁)
「冒険してもいいころ」>>160-164 /エターナルメロディ、アイリス(※18禁)
「セルフ・パーティ」前編>>182-185 後編>>251-257 /ときメモ2、伊集院メイ&赤井ほむら
「味見する?」 >>198-200 /ときメモ2、伊集院メイ(※18禁)
「切る」>>204 /Tomak、主人公&バックサンテ
「再会」>>208-214 /ときメモ2、陽ノ下光

相変わらずメモ2ネタ率高し。
そうそう、「味見する?」は正確にはタイトルじゃありませんが、
あまりにもハマるんでこうしておきました(w
 燃える。
 燃え落ちる。
 血の色をした炎が、悪魔の舌のようにすべてを飲み込んでいく。
 ほんの数時間前まで、俺たちがくつろぎ、語り合っていた建物は、いま炎と黒煙に包まれていた。
 ――そして、その炎を背にして、一つの影が俺に迫りつつある。
 その左手に凶器を携えた、無慈悲な殺人者の影が。
 逃げようにも、両足がまるで俺のものではないかのように動かない。階段を転げ落ちた時に負った
傷のせいだ。
(どうして……こんな事に)
 そう、楽しいはずの、俺たち映研の撮影旅行は、深夜に響き渡った女性の悲鳴を合図に、突如として
暗転した。
 俺の脳裏に、惨劇の記憶がフラッシュバックする。血に染まったバスタブ。鮮やかな色をした臓腑。
悲鳴。胃液の匂い。爆発音。そして、部長の助けを求める声と――断末魔。
(どうしてこんな事に!)
 答えなど与えられるはずもないと知りながら、俺はもう一度その問いを、誰にともなく発した。
 影は一歩、また一歩と、俺との距離を狭めていく――もう、逃げられない。これが、部長を見捨てて
一人逃げようとした俺の、罪に対する罰なのか……。
 せめて俺は、殺人者の正体を見極めようと、そのシルエットを凝視した。そのとき炎が大きく爆ぜ、
一瞬だけその顔を照らし出した。
(……!!)
 真紅の返り血に染まった、その顔は……。
 瞳に狂気の光を灯したその顔は……。
 驚愕のあまりすくみ上がった俺に、彼女は容赦なく、銀色に輝く殺意の塊を振り下ろした。
「み……美月……どうして……!?」
 自分のはらわたが切り裂かれていく音を聞きながら、俺は彼女の名を、かすれる声で呼んでいた。
274終わり無きリテイク(2):2001/06/06(水) 01:16
「……それで?」
「いや……それで終わりだけど」
 俺がそう言って話を締めくくると、二村――映研の同期の友人である――は、大げさな仕草で
ため息をついて見せた。
「君ってばさ、シナリオの才能ないよね」
「ほっとけ! どうせ俺はしがないカメラマンだよ」
「兼、荷物持ちだよね」
 そう言って二村は笑う。ったく、お前だってそうだろうが。
「まぁ、今の僕たちをモデルにして、話を作る事自体は面白かったけどね。でも、仮に今の話を
映画にしたとしたら、観客からブーイングを浴びるのがオチだよ。なんだこりゃ、訳がわかんない
ぞ、ってね」
「やっぱり、そう思うか?」
 俺の問いかけに、二村は頷いた。
「だって、伏線も謎の究明も何も無いじゃない? ただ唐突に虐殺が始まって、主人公は何が起こっ
たのかさえ解らないままに死んでいく……そんなのはシナリオとはいえないよ」
友人ならではの正直な酷評に、おれは小さく苦笑しつつ、こう答えた。
「……だけどさ」
「なんだい?」
「本当に『怖い』っていうのはさ、、そういう事じゃないかと思うんだ……。何も解らず、何も知ら
されず……ただ狂気にさらされる、ってのが、どれほど怖いか……」
 少し沈んだ口調で言う俺を、二村は笑い飛ばした。
「あはは、まるで本当にそんな目にあったみたいな口ぶりだね」
「……あ、いや……」
「でもまぁ、君にそんな想像力があるとは思わなかったよ――ただ、ちょっとばかり悪趣味かな」
 ニ村は大げさに天を仰ぎながら言った。
「よりによって、美月ちゃんみたいないい娘を、殺人鬼に仕立て上げちゃうなんて!」
「……おまえさあ、そのいちいち芝居がかった話し方、どうにかならないのか?」
「世界は神の劇場、然して人はすべからく演技者である……なんてね」言いながらニ村は、部屋の隅に
ある電灯のスイッチに手を伸ばした。「さ、明日も早いし、早く寝る事にしようよ、主演男優代理さん。
今日、君が鼻血を出してぶっ倒れたシーンをリテイクしなきゃね」
 電灯を消すと、部屋は闇に包まれた。ただ、ほのかに月明かりだけが窓から差し込み、淡い光の帯を
作り出していた。
「リテイク……」
 俺のつぶやきは、早くも寝息を立て始めたニ村には届かなかったようだった。
275終わり無きリテイク(3):2001/06/06(水) 01:16
(想像力……か)
 俺は寝付けないまま、二村のそんな言葉を繰り返していた。
(……違うんだよ、二村)
 俺が二村に語った話は、俺の想像ではなかった。いや、「無意識下の」という言葉を頭につけるなら、
それでも正しいかもしれない。なぜならそれは、俺が見た夢だったのだから。
 そう、それは奇妙な悪夢だった。一度しか観ていないはずなのに、何度も何度も繰り返したような……
異常なまでの存在感に満ち溢れた夢。俺一人の中に抱え込むにはあまりにも生々しい、そのはけ口を
求めて、俺はそれを自作のシナリオと称して二村に打ち明けたのだった。
 俺は暗い部屋の天上を見つめた。人は本能的に暗闇を怖れるというが、俺たち映研の人間には、闇は
慣れ親しんだモノだ。光と闇が生み出す幻影、それに夢を託して、俺たちはカメラを回し続ける。
 だが、ファインダー越しに世界を見ていると、ふと足元が消え去るような不安感に襲われる事がある。
現実と虚構の狭間、そのわずかな間隙に落ち込むような……。
「キャァァァァァッ!!」
……えっ!?
 闇に響いた悲鳴が、強烈な既視感を呼び覚まさせた。俺はあわてて、隣のベッドでいびきをかいている
二村を揺さぶり起こした。
「二村、二村! いま、悲鳴が聞こえなかったか!?」
 しかし、寝ぼけまなこの二村の返事はそっけないものだった。
「悲鳴なんて知らないよ」
「確かに聞こえたんだけど……」
「夢でも見たんじゃないの?じゃ、おやすみ」
 ……!?
 そう……夢だ。今の悲鳴も、二村との受け答えも、確かに夢と同じだった。
 だとしたら、これから起こる事も夢なのか? あの悪夢がもう一度繰り返されるというのか? ――いや、
そもそも俺たちのいる世界そのものが、巨大な虚構の中にあるとしたら!?
 俺はそっとドアノブに手をかけた。その外に待ち受ける惨劇をなかば確信しながら、それでも俺は
その衝動に逆らえなかった。
 なぁ、神でも悪魔でもいい。もしも、この世界を外から見ている者がいるのなら、教えてほしい。
 いったい……いったい今は、何度目のテイクなんだ!?
[END]
276回します:2001/06/06(水) 01:17
というわけで
277回します:2001/06/06(水) 01:18
いきなりですけど回しちゃいます
278回します:2001/06/06(水) 01:19
いつもは甘甘な話しが多いので
279回します:2001/06/06(水) 01:19
たまには毛色の違う
280回します:2001/06/06(水) 01:20
話を書きたいな、とおもってたらこうなりました(w
281回します:2001/06/06(水) 01:20
実際、「ダブルキャスト」では
282回します:2001/06/06(水) 01:21
ジェノサイド編の恐怖が白眉だったと思います。
283回します:2001/06/06(水) 01:22
ていうかマジでビビったぞ美月(w
284回します:2001/06/06(水) 01:24
あの「クワッ」は強烈過ぎだってば。
285:2001/06/06(水) 01:26
「終わり無きリテイク」>>273-275
「ダブルキャスト」で、ジェノサイド編直前のセーブデータから繰り返して
プレイしてた時になんとなく思いついた話を、ちょっと脚色してみました。
どんなもんでしょう?

>>267 & >>285
まってました。両方とも堪能させていただきました。
ご苦労様。
287ミナー:2001/06/06(水) 20:29
>>267
…マンセー。他に言葉が見つからないです。
そうそう! こういうメイが見たかったんですよう(LSFじゃちっとも
クラブ「活動」やってるらしいとこ見せてくれないんだもんなぁ)。
2chやってて本当に良かった…。

>>285
お疲れ様です。
「やるドラ」やった事無かったのですが、やってみたくなりました。
そろそろ馬鹿っぽいSSを……。
辞書がないとSSを書けない。
無知は恥だよ…。
もっと漢字を勉強しないといかんな、俺。
>>267
イイ! 途中で目頭が熱くなってしまったヨ。

>>285
いい感じですね。また「ダブルキャスト」やろうかな……。
291梅雨の帰り道:2001/06/07(木) 20:59
何がいけなかったかというとやはり新聞の天気予報欄を信じた事だろう。
 俺は雨雲に閉ざされた薄暗い空を眺めながらそう思った。
 昼休み過ぎから降り出した雨は既にいくつもの水溜りを地面に作り出している。
(まったく、何が『低気圧は太平洋上に移動し午後からは各地ともに晴れでしょう』だよ)
 今更、愚痴っても始まらないが愚痴らずにはいられない。かといって愚痴ってどうにかなるものでもないのだが…。
 昇降口は今も傘の花を咲かせた生徒たちを次々と吐き出している。そんな中、傘を持っていない俺は、ただ木偶人形のように立ち尽くしていた。
 雨の中を突っ走って帰るという強硬手段も考えられたが、最近の運動不足ぶりを考えると、とても家まで体力がもつとは思えない。
「教室に戻ってやむのを待つか…」
 半ば諦め階段の方へ踵を返そうとした時、
「あれ? どうしたの?」
 振り返ると赤色の傘を手にした光が不思議そうな顔をして立っていた。
「ん、ちょっとね」
 今更、傘を忘れたことを隠してもしょうがないのだが、なんとなく本当の事を言うのが格好悪く思えて俺は言葉を濁した。
「…もしかして傘を忘れたとか?」
「………」
「やっぱりそうなんだ! もう、水臭いなぁ。言ってくれれば私の傘に入れてあげるのに」
「でも……」
 光の傘は色もサイズも女の子らしい物で、とても二人の人間が入る余裕は無さそうだ。
「いいから、いいから」
 有無を言わさず傘を広げる光。こうなった光はもう止める事ができない。
 諦めた俺は光の厚意に甘えることにした。
292梅雨の帰り道(2):2001/06/07(木) 21:00
「傘は俺が持つから」
「うん、ありがとう」
 傘を受け取り光とともに入ると、思った通り傘は小さい物で二人も入ればどちらかの肩が濡れるのは避けられそうになかった。
 さりげなく傘を光の方に傾ける。
「あ、駄目だよ。こっちに傾けたらキミの肩が濡れちゃうよ」
 さりげなく傾けたつもりが光にはわかってしまった。そういえば最近気がついたのだが光は不思議と俺のする事に敏感だ。
「いいって、入れてもらってるのは俺の方なんだし」
「駄目だよ! キミが風邪ひいたら私――」
「少しくらい濡れたって風邪なんてひかないって」
「でも……」
 お互い一歩も引かない二人。互いの性格をよく理解しているがゆえ、こうなると拉致があかなくなることは明白である。
「そうだ! じゃあ、こうしよう?」
 突然、何かを思い浮かんだ様子の光。そして…。
「お、おいっ」
 光は俺の方に身体を密着させてきた。触れ合うお互いの肩と肩。
「これなら二人とも濡れないよね」
(確かに濡れることはないけど…)
 顔が紅潮していくのが自分でもわかる。見ると、自ら身体を寄せてきた光も少し頬を朱に染めていた。
「ねぇ、よく考えるとこれって相合傘――」
「え?」
「ううん。なんでもない、なんでもないっ」
「?」
 何かを言いかけてやめる光。気になったが本人が、なんでもないと言っているので追求するのもどうかと思い俺は気にするのをやめた。
「エヘヘ…」
 そんな俺の横でなぜか光は嬉しそうに微笑んでいた。
293梅雨の帰り道(3):2001/06/07(木) 21:01
 校門を抜け暫く歩いてるうちに、いよいよ雨も本降りになってきた。
「これじゃあ、傘さしてても変わらないね」
 横から強く降りつける雨は否応無しに俺と光を濡らしていく。
「こりゃ、どこかで小降りになるまで雨宿りしてた方が賢明かもしれないな」
「そうだね」
 しかし生憎、雨宿りに適していそうな店はどこも客で一杯だ。おそらくみんな俺達と同じ考えなのだろう。
「やっぱり、濡れながら帰るしかないか…」
 そう思った時だった。
「あ、あそこなんてどうかな?」
 光が指さしたのは偶然休みだった八百屋の軒下。店頭陳列を考えてだろう、やや大きめに設けられた屋根の下は雨宿りするには最適そうだった。
「よし、あそこまでダッシュだ!」
 言うが早いか、俺達は一目散に八百屋の方に駆け出していた。

「ハァ、ハァ…」
 肩で息をする俺の横では光は既に呼吸を整えている。さすが陸上部員といったところか。
「あ〜あ、もうビチョビチョ」
 ハンカチを取りだし濡れた部分を拭いていくものの、当然ハンカチだけでは間に合わず、暫くするとハンカチは水分でグッショリと重くなった。
(このままじゃ二人とも風邪ひいちゃうな)
 梅雨が明ければすぐに期末テストだ。この時期に風邪をひくことはどうしても避けたい。
「クシュン!」
 不意に光がくしゃみをした。
「寒いのか?」
「うん、ちょとだけね」
人差し指と親指で『ちょっと』のゼスチャーをする光。その顔色はとても『ちょっと』どころではなさそうだった。
 近くの自販機でホットのコーヒーを2つ買い、そのうちの一つを光に渡す。
「ありがと」
 光がタブを開けるのを確認し俺も缶コーヒーのタブをあける。一口飲むと身体の芯から温まるのが実感できた。
「光、まだ寒いか?」
「ううん、大分温まったよ。ありがとう」
「そうか」
 俺はフゥーっと息を一吐きし安堵の溜め息をもらす。そんな俺をみて光はくすっと微笑んだ。
「やっぱり、キミって優しいね」
「そうかな…」
 自分が優しいなんて実感はない。ゆえに優しいなんて言われると、なんとなくこそばゆく感じてしまう。
「それより光……」
 さっきから微笑んでいる光を見て俺はあることに気がついていた。
「ん? なに?」
「その…下着が透けてる…」
「ば、ばかぁ!」
294回し中:2001/06/07(木) 21:02
回します
295回し中:2001/06/07(木) 21:03
久しぶりのSSなんだけど……
296回し中:2001/06/07(木) 21:03
終わり方が尻切れ蜻蛉だ…
297回し中:2001/06/07(木) 21:04
まぁ、妄想を文章化しただけだからな〜
298回し中:2001/06/07(木) 21:05
この後、雨がやむまで光の家で、って展開も考えたけど……
299回し中:2001/06/07(木) 21:06
今の文章力ではそこまで書けませんでした。
300回し中:2001/06/07(木) 21:08
同じようなネタで、光とスキーに行って遭難、って話も考えたけど…
301回し中:2001/06/07(木) 21:09
あまりにありがちだからやめました。(このネタもだけどね)
302回し中:2001/06/07(木) 21:10
最後に一言
303回し中:2001/06/07(木) 21:11
ツッコミどころ満載だけどあまり突っ込まないでね。
(漢字・表現のおかしな所は別です。指摘して下さい)
>>291-293
『梅雨の帰り道』
ときメモ2・陽ノ下光。
まぁ、なんというか…妄想です。
以上。
305:2001/06/08(金) 00:07
なにやらにわかに活気付いてきましたね。

>>304
お疲れ様です。前スレで、光とおしくら饅頭する話や、「コタツDE琴子」を
書かれた方でしょうか?(なんかタッチが似てる気が)
謙遜されていますが、私はこういうマターリした話って大好きです。
次回作も期待してます〜。
>>305
スゴイ! ご名答です。
やっぱりタッチでわかっちゃいますか…(笑)
なんせ、SSでもっともマズイ
「〜〜た」「〜〜した」を連発した説明臭い文章だからな〜 (;´Д`)
この辺が普段触れてる文章の量の差がでてしまうんですよね。
もっと本を読まないといけないな〜俺。
活気付いてるけど下がりまくってるよ。
現在300以下。
>>289
結構有名だけどここって便利。
http://channel.goo.ne.jp/tool/
dat逝き阻止の為ageます
「ねえ、今からちょっと買い物に付き合わない?」
森下さんとのいつもの帰り道。
そろそろ駅も見えてくるかなという所で、そう持ち掛けられた。

「買い物?」
「うん。ほら、今度の日曜日、一緒に海行く約束したじゃない?
それで、新しい水着買おうと思ってるんだけど、もし良かったら一緒に選んでくれないかな、なんて」
「あ、ああ。良いよ、もちろん」
「ホント? 良かった。じゃ、行きましょ」

「うわー、いろいろあるなぁ。あ、この水着可愛いかも。うわっ、こっちのやつ…すごい…。
ねえ、あなたはどれが良いと思う?」
「えっと…、そうだなあ…
(1)この赤いやつはどうかな? >>311
(2)この青いワンピースは? >>312
(3)俺はスクール水着のほうが… >>313
「この赤いやつはどうかな?」
「うーん、ビキニか。ちょっと冒険ね。あ、でも、せっかくのあなたとのデートなんだし、たまにはこういうのもいいかな。
じゃ、ちょっと試着してくるからそこで待ってて」

どきどきしながら待つ。
でも、女物の水着売り場で一人待つというのは、なかなか恥ずかしいものがあるな…。

「お・ま・た・せ。ねえ、どうかな? 似合う?」
「う、うん…。すごくよく似合ってるよ」
似合うどころじゃない。イキイキとした彼女の笑顔と水着姿。まるで太陽でも現れたかと思った。

「そう? よかった。じゃ、これにするね」>>314
「この青いワンピースは?」
「そうねえ…。ちょっと地味な気もするけど…。
うん、あなたがそう言うのだったら、これにしようかな。ちょっと試着してくるから、そこで待ってて」

もうちょっとセクシーなやつを選べばよかったな、などと思いながら待つ。
少ししてカーテンが開き、
「じゃーん、ねえ、どうかな?」
青いワンピが彼女の体にぴっちりとはりついてとても健康的だ。

「うん、いいと思うよ」
「ホント? じゃあ、これにするね」>>314
「俺はスクール水着のほうが…」
「え、ええっ!? ちょっ、やだもう。そんなのばっかり」
「ご、ごめん」
「ふふっ、学校のプールでさんざん見てるでしょ。知ってるんだぞ」>>314
「今日は、付き合ってくれてどうもありがとう」
「いや、俺の方こそ楽しかったよ」
「ふふっ、今度の日曜日、楽しみね。それじゃね、バイバイ」
「ああ、さよなら」

…本当は、わかっていた。彼女と海に行って、そして終業式には、彼女とお別れなんだという事。
でも、言い出せなかった。こうやって彼女と同じ時間を過ごす事が、とても楽しかったから。
言ってしまえば、もうこの時間は終わりなんだ。その事が、とても怖かった。
315回します:2001/06/08(金) 15:33
TLS2、森下茜さんです
316回します:2001/06/08(金) 15:34
実は最近プレイし始めました
317回します:2001/06/08(金) 15:35
何はともあれバスケシュートイベント
318回します:2001/06/08(金) 15:35
「才能あるぞ」がすごく良かったり
319回します:2001/06/08(金) 15:36
ゲーム以外の展開で、上ネタが既出だったら申し訳ございません
320回します:2001/06/08(金) 15:37
ファーストプレイは、最後の必須イベントが出せず、友情EDでした
321回します:2001/06/08(金) 15:38
青春っていいねえ…(しみじみ)
322回します:2001/06/08(金) 15:39
BGMも良いゲームですね
323回します:2001/06/08(金) 15:40
とりあえずファンディスクを買おうかな、と思う今日このごろ
324名も無きミナー:2001/06/08(金) 15:43
>>310-314
「まだ今日は、いつもの帰り道」
TLS2、森下茜さんです。
おぉ、ちょうど暇をもてあましてた時にナイスタイミング!
堪能させていただきました。
選択肢とはこってらっしゃる。
>>323
ファンディスクはあくまで外伝的存在だから、、、。
初代かRをやってからの方が良いと思うッス。
327267:2001/06/09(土) 19:45
感想くださった方、ありがとうございます〜。
LSFに対してはまさに>>268>>287と同じ不満を持ってました。
生徒たちに嫌われてるほむらなんて見たくないぞゴルァ(゚д゚)>コナミ
328名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/10(日) 07:55
  
329名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/10(日) 11:05
ときメモのエロSSどこかにないかな
>>329
あるよ。
googleでさがしてみ。
331:2001/06/10(日) 20:34
>>324
遅くなりましたがお疲れ様です。実はTLSをやった事がないので、内容については
よく解らないんで…すいません。

>>329
マルチポストは感心しないよ〜。
と言いつつ、このスレ的には、自分で書いてみる事をお勧めしときます。初心者歓迎。
前スレはちょうど俺の書いてる332番目のレスを最後に逝ってしまった。
(正確かどうかはわからないが俺のかちゅーしゃの中では332がラスト)
どうやら今回は、まだまだ続きそう。
なにはともあれよかったね〜。
333住んでいる世界:2001/06/11(月) 16:46
 レジの店員が女性というだけで並ぶのを躊躇してしまう。そんな自分に『まだ、自分はこちら側の人間だ』と安心をするとともに、レジに並ぶ事の出来ない自分に俺は苛立ちを覚えた。
 手に持っているCDのジャケットでは、ゲームに登場する二次元美少女が嬉しそうに微笑んでいる。その笑顔に、恥を捨ててレジに並んでしまいたい衝動にかられるがそれを実行してしまうと俺はもうこっちの世界に戻ってこれなくなるような気がして俺は何とか踏みとどまっていた。
「どうした、買わないのか?」
 CDを手にしたまま動かない俺に、友人の松戸が不思議そうな顔で話しかけてきた。松戸は場所こそ傍にいるが、正真正銘『向こう側』の人間だ。多分、俺が何故にレジに並ぶのを戸惑っているかわかってはいないだろう。
「おまえ、それ欲しかったんだろ? しかもそれ『初回特典付き』だぞ? 今買わないと絶対に後悔するぞ」
 彼のいう『初回特典』にどれほどの価値があるかは判らないが、今の俺には、レジにいる店員が女性ということだけが問題だった。
「おまえはこのCD買ったのか?」
「オイオイ当たり前だろ、発売日に即日ゲットだぜ!」
「…そ、そう」
 さも、当然だという彼の態度に俺は住んでいる世界の違いを強く意識し『やっぱり自分はこっちの世界にいるべきだ』と思い直した。
「やっぱ、買うのやめとくわ」
「な、なんでだよ??」
「今月は金に余裕が無くてさ…」
「よし、だったら俺が金を貸してやろう」
 適当につけた口実はあっという間にその力を失った。
「そんな、悪いって」
「いいから、いいから」
 普段からは決して考えられない気前のよさに、俺は薄ら寒いものを感じずにはいられない。
「返してくれるのはいつでもいいからさ」
 とにかく強引に握らされたお金は俺の運命を強引に決定づけてしまった。さらにレジに目を移した時、店員と目が合ってしまったのが追い討ちをかける。もう駄目だ。
 レジに並ぶ。そしてCDをわざと裏返してレジの上に。事務的な態度の店員がCDを手に取りバーコードをとる。
 ここまでは順調だ。何一つ不信に思われている点はない。心の中でフーッとため息をつく。だけど――。
 不意に品物を袋に入れる店員の手が止まる。店員を見るとCDのジャケットを直視したまま止まっていた。みるみる紅潮していく我が顔。
「に、二千…プ…八百九十円になります……ププ…」
 店員が肩で笑っているのを見ながら俺は『向こう側の世界』の扉が開いていくのを感じていた。
>>333
思いっきりスレ違いだけど気にしない、気にしない。
335名も無きミナー:2001/06/11(月) 19:16
>>325 >>331
どうもありがとうございます。

>>326
あ、いえ、「1」自体は以前にプレイしていたのですが、
「2」は最近…という事で。
でもどうもありがとうございます。

>>333
>「よし、だったら俺が金を貸してやろう」
すごいリアル…(w。
>>333
誰もが一度は通る道。
ところでこれ回さんでいいのかな?
333じゃないけど、回しときますか…
よく考えたらこのスレ、成長速いね…
職人さん達、お疲れ様です
メモ2人気の高さはさすが
初めてギャルゲを買った時は…さすがに照れたなぁ…
今ではもう…
343名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/11(月) 21:45
どうもでしゃばった真似をしました
344333:2001/06/11(月) 21:47
悪い!忘れてたよ。
回しご苦労様。
345三角関係(1):2001/06/12(火) 18:35
 私が親友の琴子から、衝撃の告白を聞いたのは、ひびきの高校に入学してから、二度目の夏休みが終わって間もなくのことだった……。

 私はいつものように陸上部の練習を終え、帰ろうとした。そのとき、忘れ物をしたことに気が付いたので、一度教室へ戻ることにした。
 途中、廊下や階段では数人の生徒を見かけたが、教室には誰も残っていなかった。ただ、差し込む夕日が、私の影を作っているだけだった。私は忘れ物を鞄にしまい、帰るために玄関へと歩いていく。

「もう、帰っちゃったよね……」
 幼馴染みの彼を思い、呟く。彼は部活動をしていないため、先に帰ってしまうことが多い。でも、何度か一緒に帰ったことがあるので、こんなときはついつい期待してしまう。彼に再会して、もう一年以上経っている。しかし、彼との仲はいまいち進展していない。
「そういえば、最近琴子の帰り、遅いなぁ……」
 琴子は茶道部に入っているので、よく帰りが一緒になることがあった。でも、最近は遅くまで残っているらしく、ニ学期が始まってからは一緒に帰っていない。

 玄関に着くと、まだ帰らないで友達とおしゃべりしている生徒や、ちょうど下校する生徒たちがいるので、廊下よりは騒がしい。辺りを見まわすが、彼らしい姿を見つけることはできなかった。
「帰ろうかな……」
 そう呟きながら、靴を履き替える。私はため息をつき、玄関を出ていく。
 ポンポン。
 玄関を出たところで、不意に右肩を叩かれる。私は立ち止まり、僅かな期待を寄せて振り向く……。
346三角関係(2):2001/06/12(火) 18:36
「光、一緒に帰らない?」
「こ、琴子……うん、いいよ」
 一瞬、表情が曇ったのかもしれない。
「あら……誰かさんを待っていたのかしら?」
「そ、そんなことないよ……」
 慌てて否定する。琴子には、私の考えなんてお見通しなのだろうか。
「フフフ、冗談よ」
 琴子は悪戯っぽい笑みを浮かべ、歩き出した。
「もう、琴子ってば……」
(意地悪!)
 琴子の背中に向かって、そう心の中で呟く。私は琴子に追いつき、彼女の左側に並んで歩く。
「ねえ、琴子。最近遅いみたいだけど、部活忙しいの?」
「……えっ? 別に……」
「そうなの?」
 私たちは校門を抜け、夕焼けに染まる坂道を下っていく。東の空はもう、暗くなり始めている。辺りを見まわすと、同じように下校する生徒のグループをいくつか見かける。

「ねぇ、琴子」
 私は琴子の方を向いて呼びかける。
「…………」
「ねぇ、琴子ったら!」
「……えっ、何?」
 琴子は私の方に顔を向ける。
「もう、さっきから呼んでるのに……どうかしたの?」
「別に……」
 なんとなく元気がないように見える。それに前よりやつれているようだ。なんだかいつもと様子が違うみたい……私の呼びかけも上の空って感じだし。
347三角関係(3):2001/06/12(火) 18:37
「ねぇ、琴子。どうかしたの? 何かあったの?」
「べ、別になんでもない……わよ」
 琴子は視線を逸らすように正面を向いてしまう。何か悩みでもあるのだろうか。ちょっと心配になってくる。
「ねぇ、悩んでいるなら相談してよ」
「……」
 琴子は立ち止まり、何か言いかけるが、ためらっているようだ。
「ねぇ、琴子。私たち親友でしょ……もう、水臭いなぁ」
 私は琴子と向かい合えるように、正面へと移動する。
「こんなこと、光に相談することじゃないとは思うんだけど……」
 琴子は視線を落とし、ゆっくりと呟いた。
「何いってるの、琴子。私でよければ、力になるよ」
 そう言いながら、琴子の顔を覗き込む。
「……ありがとう、光」
「ううん。いいって、いいって」
 私は首を振り、琴子に微笑みかける。琴子はいつになく真剣な表情をする。

「私……今……三角関係に悩んでいるのよ」
「ええっ!? ま、まさか琴子も彼のことを!? ど、どうしよう私……そ、そんな……親友と彼、どちらかを選べっていうの?」
 琴子の口から出た『三角関係』という言葉に過敏に反応し、慌ててしまう。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、光! 勝手に暴走しないでちょうだい!」
 琴子の言葉で、私は落ち着きを取り戻す。
「まったく、光ときたら……しょうがないわね」
 琴子は半ば呆れたような顔をして、深くため息をついた。
「えへへ、ごめんごめん。……で、相手は誰なの?」
 私は頭を掻きながら、琴子に尋ねる。
「じ、実はね……」
 琴子は暫く間を置くように黙る。私は緊張しながら、次の言葉を待つ。
348三角関係(4):2001/06/12(火) 18:37
「……茶杓と柄杓なのよ」
「えっ!?」
 私は耳を疑った。
「茶杓と柄杓って言ったのよ」
「えっ!? い、今なんて……」
「だから、『茶杓』と『柄杓』って言ったのよ。何度も言わせないでちょうだい!」
 琴子が顔を真っ赤にしながら大声で答える。その声に反応して、近くを歩いていた生徒たちの視線が私たちの方に向く。
「ご、ごめん、琴子……」
 琴子は軽くため息をつき、空を仰ぎ見た。
「ちゃ、茶杓と柄杓って……あの茶道具……の?」
 私はささやくように、琴子に確認してみる。
「そうよ。ちなみに象牙の茶杓と竹の柄杓よ」
「そ、そうよって……ちょ、ちょっと琴子、冗談……だよね?」
 私は琴子の顔をまじまじと見詰める。琴子の口から『冗談よ』って言葉が返ってくると思った。しかし、琴子は遠くを見るような目をする。
「初めて茶杓に会ったのは……もう、何ヶ月も前になるわ……そう、あれは…………」
 琴子はモゴモゴと口を動かしているが、私には聞き取れない。そのまま、回想モードに突入してしまったようだ。時折、頬に手を添えたり、赤くなったり、微笑んだりしている。はたから見ると、ちょっと怖いかも……現に他の生徒たちは、私たちに冷ややかな視線を浴びせてきたり、係わり合いにならないよう足早に立ち去っていく。
「ちょっと、琴子……」
「…………」
「ねえ、琴子ったら……」
 私は琴子の両腕を掴み、必死に揺さぶりながら何度も声をかける。
「……えっ? あっ」
 琴子は暫くして我に返ったようだ。
349三角関係(5):2001/06/12(火) 18:38
「……ねぇ、大丈夫?」
「と、ともかく、私は部活を終えたあと、茶杓と密会するようになったのよ」
「み、密会って……」
「柄杓は何度か私たちの情事を見ていたのね。ある時、柄杓は私を脅してきたのよ」
「えっ!? 柄杓が?」
「そうよ。もちろん、最初は抵抗したわ。でも結局、強引な押しに負けたのよ……」
「お、押しって……」
「結局、時々茶杓の目を盗んで柄杓とも会うようになったわ。でもね、最近は茶杓も柄杓も毎日のように私を求めてくるのよ。このままじゃ、私の体が持たないわ。それに、柄杓との関係が茶杓に知られしまうわ」
「…………」
「茶杓には茶杓の、柄杓には柄杓のいい所があるのよ……」
 琴子の頬は、赤く染まっている。
「ねえ光、私どうすればいいのかしら?」
「ど、どうすればって聞かれても……」
 私は返答に困ってしまう。なんて答えたらいいの……。
「そうよね、光は彼一筋。私の悩みなんて分かってもらえないわよね」
 琴子は自嘲ぎみに笑みを浮かべる。
「な、何いってるの、琴子。それに、そういう問題じゃないような……」
「まあ、いいわ……。」
 琴子はまた、深くため息をついた。私は何も言えなかった。琴子は冗談を言っているのだろうか。それとも、真剣に悩んでいるのだろうか。私には分からない。もう、辺りは暗くなってきている。下校途中の生徒は殆んどいなくなってしまったようだ。
350三角関係(6):2001/06/12(火) 18:38
「ああ、そうそう、光は知っているかしら?」
 暫くの沈黙の後、琴子は話しかけてくる。
「えっ、何を?」
「この前転校していった、野球部のマネージャーをしてた子のことよ」
「さ、佐倉さん……のこと?」
「そうよ。その子が転校していった理由よ」
「親の仕事の都合でしょ」
 私は彼から少しだけ、話しを聞いたことがある。
「表向きは親の仕事の都合とかいってるけど……」
「違うの?」
 私はなんだかイヤな予感がした。
「違うのよ。……どうやら三角関係の縺れが原因らしいのよ」
「さ、三角関係!?」
「そうよ。そしてその相手なんだけど……」
「ま、まさか……か、彼が絡んでいるの!?」
 琴子がニヤリとしたような気がして、不安になってしまった。
「いいえ、違うわ」
 琴子から否定の言葉を聞いた私は安堵し、ため息をつく。
「相手が誰だか……気になる?」
「う、うん。……ま、まさか、ボールとかグローブって言わないよね……」
 私は、冗談を言ったつもりだった。
「光、惜しいわね」
「ええっ!?」
 私は驚きの声を上げる。
「実は……ボールとバットらしいのよ」
「…………」
 私は完全に言葉を失ってしまった。
<完>
351回し(1):2001/06/12(火) 18:39
馬鹿っぽいというか
352回し(2):2001/06/12(火) 18:40
電波というか
353回し(3):2001/06/12(火) 18:40
妄想というか
354回し(4):2001/06/12(火) 18:40
なんとか
355回し(5):2001/06/12(火) 18:41
かんとか
356回し(6):2001/06/12(火) 18:41
形にしました
357回し(7):2001/06/12(火) 18:42
こんなのが
358回し(8):2001/06/12(火) 18:43
あったって
359回し(9):2001/06/12(火) 18:43
いいよね(藁
360名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/12(火) 18:47
>>345-350
「三角関係」
ときメモ2より光&琴子です。
とりあえず、精進します……。
琴子がdでるね〜。
何はともあれご苦労様です。
362ミナ:2001/06/12(火) 22:42
>>360
最初、「秘密会議イベントみたいなストーリーだろうか」とか
「サブスト3ではこんな話しが?」とか思っていましたら…(w
お疲れ様です〜
3631@実は特撮オタ:2001/06/12(火) 22:53
>>360
なんか浦沢義雄脚本のよーだ…ああ、久しぶりにカーレンジャー
見たくなってきた。ガオの脚本書いてくれないかな浦沢さん…

…あー、失礼しました。なんかシュールで良いですね。お疲れ様でした。
364名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/13(水) 23:06
不安age
>>364
いみなくあげるな
結構下がってたからいいんじゃねー?
今日はなんかアレだし……。
前スレみたいになったら悲惨だろ?
今日もアレだね。
最近ずっとアレだ。
こんな時こそ清涼剤的SSを!
368名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/15(金) 18:52
君子スレッドにSSが出てるね。(・∀・)イイ!!
http://yasai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=gal&key=987966513&ls=20
どうせならこっちにうぷしてっての
最悪の場合、あちこちのスレに乗ってるSSをリンクしてけばいいんじゃない?
人によっては見落としてるSSだってあるだろうし・・・
っつーかここ急に元気なくなってねー?
そして誰もいなくなった……
(マジナラウツダ…)
>>371-372
上位がこれだけ荒れてりゃあね。
俺もギャルゲ板に関しちゃ最近はROM専化してるし(藁・・・えない)
『エーックス……』

(ナレーション)
太正時代、帝都の人々は黒之巣会と呼ばれる闇の組織に苦しめられていた。
(映像:街で暴れる脇侍と逃げ惑う群衆)
国は秘密部隊、帝国華撃団を組織し、帝都防衛のため黒之巣会に立ち向かった。
(映像:光武と脇侍の戦闘シーン)
これは、帝都の平和を守り、帝都を魔の手から救うために、
おのれの命を懸けて戦った乙女たちの物語である。

♪かぜのなかのすーばるー
「魔物の襲来」
「帝国海軍からの新隊長」
♪みんなどこへいったー
「狡猾な敵の策略」
「足並みの揃わない隊員たち」
♪そうげんのぺがーさすー
「新たな敵、「降魔」の脅威」
「霊子甲冑・光武の限界」
♪ちじょうにあるほしをーひとはおぼえーていない
「副指令の戦線離脱」
「伝説の悪魔の復活」
…………………………………………………………………

(クボジュソ)
今夜のプ○ジェクトXは、太正時代、帝都防衛のために命を懸けた
乙女たちの戦いの物語です。
(クボジュソ)
それでは当時の様子を振り返ってみましょう。

(ナレーション)
太正時代。蒸気機械文明が発達し、
日本は、かつてない繁栄を手にしつつあった。
(映像:帝都の雑踏)
しかし、いまだ国家転覆の野望を果たさんとする組織が
帝都の地下に存在していた。
(映像:帝都の地下某所、詳細不明)
組織の名は黒之巣会。首領の名は天海といった。
天海は稀代の妖術師で、数百年の時を生きる魔人だった。
西洋文明によって汚された帝都を破壊し、かつての徳川幕府、
幕藩体制を復活させる、というのが彼らの企みだった。

天海は魔の力で「脇侍」と呼ばれる配下を駆使し、
帝都の破壊活動を繰り広げていた。
(映像:街で暴れる脇侍と逃げ惑う群衆、再出)

軍は秘密部隊「帝国華撃団」を組織し、
黒之巣会の脅威から帝都を守るために戦うこととなった。

魔の力を操る黒之巣会には、通常の武器では歯が立たなかった。
そこで帝国華撃団は、霊能力を持つ者を集め、
霊力で操る人型の戦闘兵器、「霊子甲冑 光武」を用いて敵と戦った。
(映像:光武と脇侍の戦闘シーン、再出)
発足当初、光武を操る花組の隊員は女性ばかりだった。
霊能力を持つ者はほぼ女性に限られていたからだった。
そんなある日、華撃団の本拠地、銀座の帝国劇場に一人の男がやってきた。
(ナレーション)
太正12年4月。
ひとりの男が帝国劇場を訪れた。
男の名は大神一郎。
帝国海軍少尉で、海軍士官学校を首席で卒業した秀才だった。
男性には珍しく霊力をも持っていた彼に初めて与えられた任務が、
帝国華撃団花組の隊長だった。
彼は、使命感に燃えていた。

しかし、帝国劇場で彼を待っていた仕事は、劇場のモギリ係だった。
(プOジェクトエーックス…)

(クボジュソ)
ではここでゲストをお招きします。
当時の帝国華撃団花組の隊長、大神一郎さんです。
(背筋の伸びた白髪の老紳士がゆっくりと登場)
…………………………………………………………………
(国丼)
…で、劇場に行ってみたら、自分の仕事はモギリ係だったと。
そのときは、こう、どんなお気持ちでしたか?
(大神)
いやもうね、いきなりロビーに連れて行かれて、ハサミをぽんと渡されたんですよ。
じゃあがんばってね、ときたもんで、おいおいどうなっとるんだ、と思ったら、
もう目の前にはお客さんが行列を作ってましてね。あれには参りましたなぁ。
(クボジュソ)
モギリ係ということは知らされてなかったんですか?
(大神)
ええ。まあなんせ秘密部隊ですから、ふだんは世をしのぶ仮の姿として
劇場を運営している、というのも至極もっともな話なんですが、
後で聞かされましたから。いや本当に、あのときは参りました。
(クボジュソ)
最初は隊員のみなさんをまとめていくのが大変だったと
お聞きしましたが?
(大神)
私も当時はまだ仕官学校を出たばっかりで、あれが初仕事でしたし。
男ばっかりの学校からいきなり女性ばかりの職場に放り込まれて、
正直言って戸惑いもありました。でも隊長が戸惑ってちゃ、
そりゃまとまるものもまとまりませんわな。ハハハ。
(国丼)
しかし、非常に個性的な隊員ばかりだったそうで。
(大神)
たしかにみな非常に個性的でしたな。でも、みな本当に可愛かった。
いや、ヘンな意味ではなくてね。特別な力を持っていたばかりに
戦いの最前線に立たされることになった彼女たちを、
何とか自分が守ってやらにゃあ、と思ってましたね。
帝都を守るよりそっちの方が大事だったかもしれませんな、ワッハッハ。
(クボジュソ)
そんな大神さんの思いが通じて、帝国華撃団花組はいつしか固い結束を
手にしていました。そして、黒之巣会を次第に追い詰めていきました。

…………………………………………………………………

(国丼)
…というわけで、ついに黒之巣会の首領、天海を倒した!と。
しかしここからが、ここからが大変だったんですよね。
(クボジュソ)
黒之巣会を滅ぼし、平和を取り戻した帝都。
しかし、新たな敵の魔の手はすでに忍び寄っていました。
(ナレーション)
太正13年、正月。
大神は、久しぶりに重圧から解放されていた。
隊員と、初詣に出かけた。
人ごみに揉まれながら、あらためて一仕事を終えた達成感に浸っていた。
しかし、そんな矢先のことだった。
神社の境内で、突然、魔物が襲いかかってきた。
それは、これまで以上に過酷な戦いの、始まりだった。

敵は、「降魔」と呼ばれる、闇の世界の存在だった。
それまでの敵とはまるで違う、想像を絶する強さだった。
光武では、歯が、立たない。
翔鯨丸の援護射撃を受けて、どうにかその場は切り抜けた。
しかし、光武は、もはや二度と動かないほどの損傷を受けていた。

帝劇に戻った花組は、すぐに、対策会議を開いた。
大神は言った。「特訓しよう。」
自分たちに光武の修理や改良を行う技術はない。
それに、操縦者の能力が上がれば
光武自体の力もより上がる仕組みになっていた。
今は自分たちのできることをしよう。特訓だ。
大神は、皆が賛同してくれるものと思っていた。

だが、異を唱える隊員が続出した。
今どきそんなの流行らない。
押しつけはやめてくれ。
議論は平行線をたどった。
結局、各自の意思に任せることとなった。
光武を失い、花組の団結まで失うことになるのだろうか。
内外の危機に、大神は、追い詰められていた。
(プOジェクトエーックス…)
(国丼)
このときは、唯一の武器と言ってもいい光武を失ったわけですよね。
で、自分たちの戦闘能力をまず上げよう、と大神さんは提案した。
しかしそこで花組がいわば空中分解を起こしてしまった。
大神さんとしては、どんな思いだったんでしょうか?
(大神)
そのときは、ショックでしたねえ。もう花組の結束は固い、間違いない、と
思っていましたから。でも、私があさはかだったんですよ。
戦うための特訓以外にも花組への貢献のしかたはいくらでもあったんです。
(クボジュソ)
自ら特訓に赴いた隊員。特訓を拒否した隊員。
花組はいったん散り散りになりました。
しかし、帝都を救う思いは、みんな同じだったのです。

(ナレーション)
大神は、マリア・タチバナと銃の訓練に明け暮れた。
真宮寺さくらは、剣の稽古に励んだ。
桐島カンナは、山ごもりをして空手の特訓に邁進した。

あとの3人は、帝劇に残った。

イリス・シャトーブリアンは、連日街を遊び歩いては昼寝を繰り返していた。
最年少の彼女は、隊員の中でも特に並外れた霊力の持ち主だった。
しかしそれゆえに、霊力をコントロールできないことがたびたびあった。
彼女に必要なことは、精神の安定と肉体の成長だった。
好きなことをして、たっぷりと寝て過ごすことが、
彼女にとっては霊子甲冑の制御能力を上げるための「特訓」だった。
(ナレーション)
神崎すみれは、連日社交界のパーティーに繰り出していた。
神崎重工の令嬢である彼女は、その人脈を利用して、
新型霊子甲冑開発のための資金繰りに奔走していた。
それが、彼女にとっての「特訓」だった。

李紅蘭は、その新型霊子甲冑の開発に携わっていた。

自分が最も花組のために貢献できること──
誰もがそれを行っていた。
彼女たちの心は、一つだった。

そして、再び全員が帝国劇場に集まった。
新型霊子甲冑「神武」が出来上がっていた。
大神は、隊員の誰もが花組のため、帝都の平和のために
力を尽くしていたことを知った。隊員を、花組の強い絆を
信頼できていなかったのは自分の方だったと思い知らされた。
大神は、あらためて隊員一人一人に感謝した。
彼女たちを誇りに思った。
これなら、きっといける。そう、確信した。

神武は、見事な出来だった。
華撃団花組は新たな敵、葵叉丹とその配下たちに
臆することなく立ち向かっていった。
それは、軍人としての、意地であった。

しかし、前代未聞の危機が、華撃団を襲った。
(ナレーション)
帝国華撃団の副指令、藤枝あやめが、突然、魔のものに姿を変え、
敵の許へと去っていった。

隊員たちは、打ちのめされた。
隊員の多くは、あやめに誘われて華撃団に入隊したのだった。
人生の転落の危機を彼女に救われた者もいた。
隊員たちのショックは、はかり知れないものがあった。
ある者は書庫で泣き崩れ、ある者は日頃の平静さを失い、
猛然と、大神に食ってかかった。
──戦って、戦って、自分の手はもう血でべっとり。
まだ十代も半ばの少女にそう言われ、大神は、言葉を、失った。

先の見えない戦い。最も信頼していた味方の戦線離脱。
隊員たちは、心身ともに限界に達していた。
プロジェクト最大の危機であった。
(プOジェクトエーックス…)

(国丼)
いくら霊子甲冑に乗ってるとはいえ、降魔との戦いは
やはり命懸けだったわけで、そこへもってきて副指令の…まあ、
寝返りっていうと言葉が悪いんですが、まあ戦線離脱があったと。
これは、大神さんとしても、ショックだったんじゃないですか?
(大神)
…そうですね。でも、私が動揺していては隊員の士気に関わりますから、
私はとにかく隊員一人一人の話を聞いて、何とか彼女たちに奮起してもらおうと。
(クボジュソ)
隊員のみなさんも、このときはかなり動揺しておられたようで…。
(大神)
彼女たちのあんなに取り乱した姿は、それまで見たことがありませんでした。
それでかえって、自分がしっかりしないと、という気持ちにさせられましたね。
何にしても、自分の仕事は、いえ、もう、「仕事」じゃなかったですね、
あのときは。ただもう、彼女たちの支えになりたかった。
(クボジュソ)
大神さんの熱意に、隊員たちも少しずつ落ち着きを取り戻し始めていました。
しかしそのとき、さらなる脅威が帝都を襲いつつあったのです。

(ナレーション)
東京湾上に、巨大な物体が浮かんだ。
聖魔城。敵の本拠地であり、最終兵器でもあった。
何としても聖魔城を破壊し、敵の首領、葵叉丹を打ち倒さねばならない。
華撃団は、この時のためにとっておいた切り札、空中戦艦ミカサを用いて
聖魔城内に神武を送り込み、敵の本拠地に突入する作戦をとった。
一かバチかの、賭けだった。華撃団の皆が、奮い立った。

……………………………………………………………

(国丼)
…というわけで、見事、葵叉丹を打ち倒されたわけですが、
実は大神さん、そのときのことはあまりよく覚えておられないとか?
(大神)
ええ、恥ずかしながら。あの時はもう無我夢中というか、
何が何やらよく分からない展開だったというか。
とにかく、帝都に平和を取り戻すんだ、というその一念でした。
(クボジュソ)
すべて終わって、帝都に本当に平和が戻って、
そのときは、どうでしたか?
(大神)
いやもう感無量でしたね。もちろん、失ったものもありました。
でも、帝都を守れた。何より、大事な隊員を一人も失わずに済んだ。
そのことが本当にうれしかったですね…。
(国丼)
本当に隊員のみなさんのことを愛しておられたんですね。
(大神)
ええ…。結局私がこうして最後まで生き残ってしまったわけですが、
彼女たちと一緒に帝劇で過ごしたあの頃のことは、今でもはっきりと覚えてます。
それに、いくら何でももうそろそろ私にもお迎えがくるでしょう。
また彼女たちと花札でもしたいものですな。ワッハッハッハ。
(クボジュソ)
帝国華撃団の決死の奮闘によって、帝都に平和が戻りました。
そして、その後の物語です。


♪かたーりーつぐー ひとーもーなくー

(ナレーション)
聖魔城を破壊し、帝都に平和をもたらすという当初の目的を
達成した帝国華撃団は、いったん解散することとなった。

大神一郎は、海軍に復帰した。

♪まぎーれちらーばるほしのなは わーすーれーられーてーもー

他の隊員たちは、それまでと同じように、帝劇の舞台で活躍した。
人々は、魔物の脅威などすぐに忘れ去り、彼女たちの舞台に
酔いしれた。魔物と戦い帝都の平和を守り抜いたのが
彼女たちだということを知る者は、客席には誰一人、いなかった。
もとより彼女たちには、それで良かった。
それよりも、大神が海外洋上訓練に一年間も赴任することの方が、
彼女たちにとってはよほど寂しいことだった。

ミカサ記念公園。
聖魔城に特攻した空中戦艦ミカサは大破し、船首はそのままここに残された。
(映像:ミカサ記念公園の現在の様子。家族連れでにぎわっている)
秘密部隊ゆえに歴史にその名を残すこともなく、
帝都の人々にはその存在すら知られていなかった帝国華撃団。
しかし、彼女たちが命を懸けた戦いの跡は、今も、この地に残されている。

♪ヘーッドライト テールライト たーびはーまだーおわらーないー
♪ヘーッドライト テールライト たーびはーまだーおわらーないー ……
とりあえず回しますね。
上の、名前間違いました(w
えーと、
9レス分でいいんでしたっけ。
あと5つ。
4。
3。
2。
1。
393名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/17(日) 10:37
というわけで、
>>374-383
サクラ大戦1のSS…というか何というか(w
「プ○ジェクトX〜サクラ大戦編」でした。
もしもN○Kの某TV番組でサクラ1をやってみたら?というノリです。
何はともあれ、読んで下さった方に感謝です。
今まで知りませんでしたが、連続投稿制限、あったんですね…。
元ネタ二つともわかってて始めて笑えるな〜。
395名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/17(日) 18:01
激笑あげ
こうゆうSSもありなら俺も何か考えようかな。
たまにはSSで連載ものをやってくれ週一うぷでいいからさ。
最近、明日の楽しみってのが無くてこまってんだ
>>397
サクラの各キャラスレとかSAKURAROYALEスレに行ったら?
毎日どれかひとつぐらいはUPされると思われ
399名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/18(月) 13:13
(トモロヲ)
2chギャルゲー板では、長くSSの冬の時代が続いた。
先人たちの努力によって、ようやく軌道に乗ったかに思われた
旧SSスレは、黄金厨によってdat逝きを余儀なくされた。
各種キャラスレで奮闘する職人たちも、
徐々に撤退に追い込まれつつあった。
この板にSSは根づかないのか。
誰もが、そう思った。
しかし、「だからこそ、俺が書く」
「SSで人々に萌えと笑いを」と立ち上がる、男たちがいた。
職人としての、意地であった。
このスレは、ギャルゲー板をこよなく愛し、
SSの可能性を信じ続けた男たちの、執念の記録である。

…つーわけで、職人のみなさん、頑張ってくだされ。
つーか、他のスレで活動してる職人さんも頑張ってほしい。
気楽にエールを送る399であった。
そういえば1を最近見ていないような…。
ちょっと前まで在中作家2〜3人はいたのに今は…
みんな、新作執筆中なんだよね? ね? ね?
この倦怠気的状況を打破すべく、どんなSS(シチュ)を読みたいかアンケート。
取りあえず俺はときメモマターリ系きぼん。

なんか仕切ってるみたいでゴメン。
4041:2001/06/18(月) 22:58
すいません、ちょっと他の板に入り浸ってました…まとめてレスさせていただきます。

>>393
ああ、こういうパロディも好きです。田口トモロヲ氏のナレーションが聞こえてきそうですね。

>>396
私自身は、ここはなんでもアリだと思っています。バラエティに富んでいたほうが楽しいし。
ぜひとも挑戦してみてください。お待ちしてます〜。

>>397
連載もの…私は最後まで一度書いてからでないと出せない人なんで、ちょっと無理かも。
そこらへんは他力本願ということで一つ。

>>398
サクラ系は各スレッドでSSがさかんですね。ただまぁ、不幸な行き違いも多少あるみたいですが…
このスレがそのあたりの受け皿になれればいいんですが。

>>399
…なんか照れくさいです(w

>>402
ないしょ♪

>>403
実はときメモ1がぜんぜん来てないんで、その辺にも期待したいんですが。
私もマターリ系が好き。
405ボケコニアン:2001/06/18(月) 23:32
>>399
おう!いつ復活できるか分からんけど
まあ気長にまっててや
お、ここにきて作家2名のレスが!
良かった。まだ見捨てられてなかったんだ…。
407名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/20(水) 14:11
最近、ホントしずかだねー
408名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/20(水) 14:15
age
409名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/20(水) 14:16
sage
sage
板全体で見れば、アレでナニなSSは結構うぷされてるんだけどね…
412名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/20(水) 17:34
アレでナニなSSっぽいの見つけたよ。
作者も新スレ立てないでこっちくれば良いのに

http://yasai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=gal&key=992971509&ls=50
413名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/21(木) 00:38
ギャルゲーオタって、心の中ではクラスや会社の女の子たちに
相手してほしいんだろうねえ。恋愛ゲームばっかりやってるもんねえ。
何かあると「現実の女の子は……」と否定的な発言に出るけど、
実際の所女と10秒以上話したことの無い奴ばっかり。
告られたことなんて一回もないんだろうな。油臭い豚みたいな
外見じゃ、そら「現実の女の子」は冷たいよ。
彼女らは、ゲームと違ってちゃんと相手を選ぶからさ。
いいか、「現実の女の子」が冷たくて怖い訳じゃねーの。
お前ら相手だと、冷たくて怖いだけなの(笑)

でも、自分の醜さとキモさを自分自身よーく解ってるから、
現実の綺麗な女の子には絶対に近づかないんだよね。
傷つけられるのが解ってるから、自分から逃げておく。
「女には興味ない。ゲームが好きなんだよ」というポーズを
とっておけば、多少でも自分のミジメさから目をそらせるもんね。
あ、綺麗な女の子たちはぜんぜん君たちの事なんて気にしてないから、
そんなポーズはとろうととるまいと無駄。
彼女たちにとっての君らはウジ虫みたいなもんだよ♪

本当にギャルゲオタって惨めだね。時々この板に来て大笑いしてるけど、
お前らいつまでドット絵でオナニーするわけ?
何もここに貼らなくても…なぁ?
ここは優良スレなんだし。
作家達へ
忙しいならアップしてくれなくてもいいから、一日一回、何か書き込みしてくれ。
音沙汰がないとなんか心配。
416名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/21(木) 22:16

何をいっとるのかね?
418名無しさんの野望:2001/06/21(木) 22:38
この続きを描いてくれ、と言いたいんでしょう
4191:2001/06/21(木) 23:38
書き終わったネタを読み返したら、実は全然面白くない事に気づく。鬱だ。
(書いてる時に気づけよ>自分)と言うわけで、一本ボツ箱行きにしてしまいました。
私なんぞの駄文でも、待ってていただける方には申し訳ないんですけども。

それはそれとして。
片桐VS水無月ネタって、どこかにありましたっけ? 誰でも思いつきそうな
ネタの割には見かけた事がないような。

>>415
毎日は無理かもしれないけど、私などでよければ時々は。
>>418
ボツにしたネタのシチュエーションだけでも教えてYo。

>桐VS水無月ネタって、どこかにありましたっけ?
少なくとも俺は見た事ないよ。ぜひ書いて。
4211:2001/06/22(金) 00:00
>>420
えーと、メモ2キャラ総登場のスラップスティックなコメディ…の筈でした。
が、作者に笑いのセンスがないもんで、ちっとも笑えないシロモノに。
(書いてる最中はハイになってるんで、本人だけは楽しいんですよね(w )

やっぱし、小説で笑わせるのって難しいわ(しみじみ)
>>421
書いてるときやたらハイになる気持ちわかるな〜。
で、翌日に推敲して自分自身に苦笑…。
燃え尽きた・・・・・・・・・
424名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/23(土) 03:32
>>421
できれば拝見したいです。
期待age
今週は新作なしと。
4261:2001/06/23(土) 23:57
>>426
一応一本出せると思います…明日には。でも期待しちゃいやん。

ところで、>>403さんの
>この倦怠気的状況を打破すべく、どんなSS(シチュ)を読みたいかアンケート。
に対する回答もお願いしますね>ALL。

海面波高し、ゆえにsage。
427Take it easy! (1):2001/06/24(日) 22:37
 かすかに冬を予感させる風が、鮮やかな紅葉を吹き散らし、細い山道を炎の色に
彩ってゆく。
 観光ガイドにも乗っておらず、訪れるものもほとんどいないその場所を、少女は独り、
長い髪を風に揺らしながら歩いていた。
(ずいぶん久しぶりね……2年、いや3年ぶりかしら)
 少女――水無月琴子は、そんな感慨を抱きながら、山道の果てにあった小さな鳥居を
くぐった。
 かつては鮮やかな朱だったのだろうその鳥居は、ずいぶんと長い年月、風雪に耐え
抜いた事を誇るかのように、くすんだ色を身にまとっている。その先に、小さな社が
彼女を待っていた。
(あの時の絵馬……まだ残っているのかしら)
 それはかつて、琴子の親友――陽ノ下光という名の少女のために奉納した絵馬だ。
幼い頃に離れ離れになった幼なじみと再会できるように――そんな願いを託して。
 そして、その願いは叶えられたのだが。
(あの頃は……こんなに苦しい思いをするなんて、想像もしなかったわね)
 独り、自嘲ぎみの苦笑を浮かべる。
 静かな場所である。耳をすませば、聞こえてくる音は川のせせらぎと野鳥のさえずり、
そして――
「OK, complete! できあがり♪」
(え?)
 琴子が頭をめぐらすと、そこには一人の、琴子と同年代らしい少女が、絵筆を片手に、
満足げな表情でキャンバスをながめていた。その少女は、琴子の存在に気づくと、
人懐っこい笑みを浮かべて言った。
「あ……人がいたのね。絵に熱中してて気づかなかったわ――ちょうど良かった。
Excuse me、 ちょっとこの絵の感想を聞かせてくれないかしら」
「……ま、まぁ私で良ければ」
 狐につままれたような表情で、琴子はその少女に近付き、キャンバスを覗き込み――
絶句した。
428Take it easy! (2):2001/06/24(日) 22:37
「な、な、な……」
「Oh、感動のあまり声も出ないってワケね。まぁ今回のは、われながら自信作――」
「何よ、これ!?」
「何って――Picture、 絵よ?」
 そういって彼女が指し示したキャンバス――そこに描かれていたのは、眼前の情緒
あふれる風景とはほど遠い奇観であった。昆虫の足のように節くれだった柱が、
両生類の皮膚のような屋根を支えている。ぬらぬらとした、異様な光沢を持つ壁から
糸を引いているのは、粘液か何かだろうか?
「とってもイマジネーションを刺激する景色だと思わない? で、バイオメカニカルな
タッチにアレンジする事で、ミスマッチを狙ってみたわけよ。まぁ、当然ながら
R.H.ガーギーにインスパイアされたんだけど――」
「……信じられない。敬意が感じられないわ」
「What? 敬意?」
 無邪気に問い返す少女に、琴子は引きつるこめかみを押さえながら答えた。
「いい? この建物はね、建築様式にせよ装飾にせよ、古人の叡智が詰め込まれた、
いわばいにしえの文化の結晶なのよ! 敬意を払うのが当然でしょう!?」
「そうかも知れないけど、それをあえてリミックスする事がアートなのよ」
「アート? この古色蒼然たる風景を、こんなゲテモノにするのが芸術だって言うの!?」
「ゲテモノ!?」
 今度は少女が絶句する番だった。追い討ちをかけるように、琴子は続ける。
「だいたい、さっきから聞いていれば、その話し方はなんなの!? 無意味に横文字を
並べれば格好がつくとでも思ってるわけ!?」
「No, this is my native style! これが私の自然なあり方よ!」
「どこが!? 思いっきり不自然よ!」
「もういいわ!」手にした絵筆をギシギシと軋ませて――今にも折ってしまいそうな
勢いだ――少女は言った。「It's my mistake! 所詮アートのなんたるかを解らない
人に聞いた私がバカだったわ!」
 言い捨てて立ち去る少女の背中に、琴子は叫んだ。
「そんなもの、解りたくもないわよ!」
429Take it easy! (3):2001/06/24(日) 22:38
(まったく――ああいう手合いが、日本の誇るべき文化を破壊していくのね。嘆かわ
しい限りだわ)
 持参した和菓子を口に運びながら、琴子はまだ怒りをもてあましていた。こんな時は、
煎れたての茶でも飲めば気分も落ち着くかもしれないが、あいにくと茶道具までは持参
していない。
(今日は一人静かに、自分を見つめ直そうと思ってたのに――)
 自称芸術家の少女の姿は既になく、周囲は静けさを取り戻していた。琴子は大きく
深呼吸し、自然の雄大さを体内に取り込もうとした。
 ――が、その時。
「Help! Help! 助けてぇ〜!」
 さっきの少女の声だ。
「……今度は何なの!?」
 あの無礼な少女と再び関わるのは願い下げだったが、「助けて」と言われて放って
おくのも気が引ける。琴子は眉をしかめながら、声の方向へと駆け出した。

 神社の裏手の小川に――文字通り、ほとりではなく川の流れの中に――彼女はいた。
ダンボールのようなものを抱えてもがいている。
「お願い、助けて! Help!」
 叫ぶ少女に、琴子は冷ややかな声で言った。
「そこ、足が立つわよ」
 琴子の言ったとおり、川の深さは少女の胸あたりまでしかない。濁りのない澄んだ
水のおかげで、底まで見る事ができる。
 しかし少女は引きつった顔で、なおも叫んだ。
「解ってるけど、流れが速くて怖いの! お願い、Please!」
「ああもう世話の焼ける!」
 言いながら琴子は、ざぶざぶと水の中へ入っていった。
430Take it easy! (4):2001/06/24(日) 22:38
 水に濡れた二人分の衣服が、ぱたぱたと風になびいている。
「はっくしゅん!」
 神社から借りた毛布に包まって、琴子は大きなくしゃみをした。もともと寒さに
弱い彼女は、身を小さくしてぶるぶる震えている。
「Sorry ――本当にごめんなさい」
 同じく、毛布に身を包んだ少女が申し訳なさそうに言うと、琴子はそっけなく答えた。
「……もういいわよ。その子のためだったんでしょう?」
「Yes, off course. もちろんよ」
 少女と一緒に毛布に包まって、一匹の仔猫がすやすやと寝息を立てていた。少女が
抱えていたダンボール、その中身はこの仔猫だったのだ。
「小川の風景を書こうとして、腰をおろした時にちょうどこの子が流されてきて、
それで、助けなきゃ!って無我夢中で――」
「で、自分が水恐怖症な事を忘れてた、と」
 真っ赤になって頷く少女を見て、琴子は笑った。むろん嘲笑などではない、明るい
笑いだった。
「そう言えば、お互いまだ名前も知らないわね。私は水無月琴子――あなたは?」
「My name is...... っと、横文字は嫌いなんだっけ」
 少女も微笑みながら答えた。
「私は彩子――片桐彩子よ」
431Take it easy! (5):2001/06/24(日) 22:39
「ふうん……」
 彩子のスケッチブックをぱらぱらとめくりながら、琴子は言った。
「さっきのは悪趣味そのものだったけど、まぁこの辺りはなかなか悪くないわね」
「素直じゃないわね。感動したなら、率直にそう言いなさい」
「これが私の自然なあり方なのよ」
 二人は顔を見合わせて、同時に笑い出した。
 やがて、スケッチブックのとある一ページに、琴子は目を止めた。
 ショートカットの、活発そうな少女の肖像画だ。モデルになった少女が持っていた
のだろう、生気に満ちた瞳の輝きを、絵を通してでもうかがい知る事ができた。
「どうしたの?」
「ううん……私の親友に、ちょっと似てるなと思ったのよ」
「へえ……Unexpectedly、偶然ね。その絵のタイトルも『親友』って言うのよ」
 彩子はくすくすと笑った。
「それじゃ、こっちのは?」
 琴子が指し示したのは、次のページの肖像画だった。今度は少年だった――前髪を
少しだらしなく伸ばしたその少年は、よく言えば優しげ、悪く言えばたよりない、
と言った印象だ。
「Sorry、そっちにはまだ題名はつけてないわ……」
 彩子は言った。
「もし今つけたら、『片思い』ってタイトルになっちゃうかな――本当は、『恋人』
ってつけたいんだけどね。でも、まだ私の本当の気持ちは伝えてないから……」
 琴子には少し意外に思えた。思った事を率直に口に出すタイプの彩子が、そういう
事を躊躇する様には思えなかったからだ。
「訳有りなの?」
 琴子の質問に、彩子はため息で答えた。
「Yes、なかなかフクザツなのよ。さっきの――」彩子はスケッチブックを1ページ
戻し、ショートカットの少女を指し示した。「この子……望って言うんだけど、
彼女も彼のこと、好きらしいのよね」
 どきん、と琴子の胸が大きく脈打った。
432Take it easy! (6):2001/06/24(日) 22:39
「Why? どうして急に黙り込むの?」
「え、ええ、何でもないわ」なるべく平静を装いつつ、琴子は言った。「それは
大変よね。それで――あなたはどうするつもりなの?」
「どうもしないわよ」
「え?」
 秋空を見上げて、彩子は言った。
「――悩んでもしょうがないって気づいたの。私は彼の事が好き。望も彼の事が好き。
で、私と望は親友――その一つ一つは、動かせない事実だもの」
「それで……あなたは平気なの?」
「Take it easy、なるようになるわよ」
 彩子は微笑んだ。晴れ渡る秋空にも負けないぐらいの、さわやかな笑顔だった。
(なるようになる――か)
「そうかも知れないわね……」
「What? どうしたの?」
「何でもないわ。独り言よ」
 琴子は、広い空に向けて、大きく伸びをした。
 心の奥にわだかまっていた痛みが小さくなっていく気がした。それは完全に無く
なってしまった訳ではなかったが――いや、それが消え去る事など、あり得ないの
だろう――だが、今ならその痛みを受け入れられるかも知れないと、そう思った。
 彩子はそんな琴子を不思議そうな顔で見つめ、やがて思い出したように言った。
「そういえば、さっき助けてくれたお礼をしてないわね――未来の大画家の手による
肖像画、なんてのはどう?」
「え?」
 琴子の手からスケッチブックを奪うと、彩子は鉛筆を取り出し、返事を待つ間も
なく、デッサンを始めた。
「ちょ、ちょっと……」
「Don't Move. モデルは動いちゃダメよ」
 琴子は戸惑いのために、彩子は集中のために、二人はそれぞれ沈黙した。紙上を
鉛筆が走る、さらさらと言う音だけが、二人の間に響いていた。
433Take it easy! (7):2001/06/24(日) 22:40
 日はやがて西に傾き、長い影を大地へと投げかけはじめる。
「それじゃ、私はそろそろお暇するけど――」
「Hmmm、私はもうちょっとここにいるわ」言って彩子は、古社の風景を見渡した。
「あなたの言うとおり、古人に敬意を表した上で、もう一度この景色を描いてみよう
かな、って思ってね」
「またゲテモノに描いたら承知しないわよ」
「I cannot promise. どうなるかは解らないわ。パッションの赴くまま、気の向く
ままだから。ね、ミケ」
 腕の中でまどろむ仔猫に、彩子は呼びかけた。
「安易な名前ね……」
「そう? 偉大なる芸術家、ミケランジェロにちなんだんだけど」
 そう言って彩子が笑うと、琴子もつられてくすくすと笑った。
「それじゃ、さようなら。もし縁があったら――」
「ええ、See you again. また会いましょう……おっとと」
 彩子は、スケッチブックから、一枚のページを破りとった。
「忘れる所だったわ。はいこれ、あなたの絵よ」
「ありがとう。遠慮なく頂いておくわ……って、ちょっと、何よこれ!? 私
さっき、こんな顔してないはずよ!?」
「でも、その方が断然キュートでしょう?」
 彩子はいたずらっぽく笑った。
 戸惑う琴子と対照的に、絵の中の琴子は、まるで聖母のように、穏やかな笑顔を
浮かべていた。
434Take it easy! (8):2001/06/24(日) 22:40
「おはよっ、琴子!」
 休み明けの学校は、どこかけだるい雰囲気に包まれている。そんな中で元気に呼び
かけてきたのは、彼女の親友、陽ノ下光だ。
「おはよう、光。相変わらず元気ね」
「えへへ、それが私のいいところでしょ?」
 言って光は、太陽のような笑顔を浮かべた。
「でも、琴子も今日は機嫌よさそうだね」
「どうして?」
「だって、なんかニコニコしてるみたい。昨日、いい事でもあったの?」
「まぁ、ちょっとね」
「よっ、光……に水無月さん。二人とも余裕だね」
 そんな会話を交わす二人に、話しかけてきたのは、光の幼なじみの少年である。
「おはよっ! って、余裕ってどういう意味?」
 聞き返す光に、少年は意外そうな顔で答えた。
「光……もしかして忘れてる? 今日の一限目、数学の小テストだぞ」
「え……。ああ〜〜〜っ!!」
 光は悲鳴を上げた。
「忘れてたぁ! どうしよう、全然勉強してないよぉ!」
「お、落ち着け光! 俺の張ったヤマ教えてやるから!」
「うん、お願い!」
 少年と光は、カバンから慌てて教科書を引っ張り出し、にわか試験勉強を始める。
それは多分、どこにでもある普通の光景なのだろう――それがたまらなくいとおしい
物に思えて、琴子は目を細めた。
 いつかはこの平和な日常も、時の流れに突き動かされ、運命の歯車によって変え
られて行くのだろう。あるいはそれは、何かを壊し、何かを失わせるのかもしれない。
しかし――。
 光はしばらく教科書と格闘していたが、ふと顔を上げて、琴子が何もしていない事に
気づいたらしかった。
「さすがに琴子は余裕みたいだね。うらやましいなぁ……」
「そうでもないわよ。でも――」
 琴子は穏やかな笑顔を浮かべ、一言、言った。
「Take it easy、なるようになるわよ」
                                      < 完 >
435回します:2001/06/24(日) 22:41
と言うわけで、
436回します:2001/06/24(日) 22:41
琴子VS片桐
437回します:2001/06/24(日) 22:42
もし出会ってたらこうなるんじゃないか、
438回します:2001/06/24(日) 22:42
てな話をお届けいたしました。
439回します:2001/06/24(日) 22:43
全然性格の違う二人ですが
440回します:2001/06/24(日) 22:43
案外、最初の一線さえ越えてしまえば
441回します:2001/06/24(日) 22:44
結構意気投合するんじゃないか、という気がします。
442回します:2001/06/24(日) 22:44
ところで、この二人の意外な共通点。
443回します:2001/06/24(日) 22:45
二人とも親友が新幹線…(だからどーした)
4441@慢性的に才能枯渇中:2001/06/24(日) 22:48
「Take it easy!」 >>427-434
ときメモ1&2(どっちかっつーと琴子主体だから2か)より、
水無月琴子と片桐彩子出演でお送りしました。

今週はちょっと投稿数が寂しかった…私は当分ネタ切れに苦しむと思いますので、
ベテランの職人さんから初挑戦の初心者さんまで、みなさまの投稿をお待ちしています。
ご苦労様
446名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/25(月) 05:23
ギャルゲーオタって、心の中ではクラスや会社の女の子たちに
相手してほしいんだろうねえ。恋愛ゲームばっかりやってるもんねえ。
何かあると「現実の女の子は……」と否定的な発言に出るけど、
実際の所女と10秒以上話したことの無い奴ばっかり。
告られたことなんて一回もないんだろうな。油臭い豚みたいな
外見じゃ、そら「現実の女の子」は冷たいよ。
彼女らは、ゲームと違ってちゃんと相手を選ぶからさ。
いいか、「現実の女の子」が冷たくて怖い訳じゃねーの。
お前ら相手だと、冷たくて怖いだけなの(笑)

でも、自分の醜さとキモさを自分自身よーく解ってるから、
現実の綺麗な女の子には絶対に近づかないんだよね。
傷つけられるのが解ってるから、自分から逃げておく。
「女には興味ない。ゲームが好きなんだよ」というポーズを
とっておけば、多少でも自分のミジメさから目をそらせるもんね。
あ、綺麗な女の子たちはぜんぜん君たちの事なんて気にしてないから、
そんなポーズはとろうととるまいと無駄。
彼女たちにとっての君らはウジ虫みたいなもんだよ♪

本当にギャルゲオタって惨めだね。時々この板に来て大笑いしてるけど、
お前らいつまでドット絵でオナニーするわけ?
ご苦労様
448ボケコニアン:2001/06/25(月) 08:19
>>415

こつこつとアスファルトに刻む 足音を踏みしめるたびに
おれはおれで有りつづけたい そう願った
裏腹な心たちが見えて やりきれない夜を数え
逃れられない 闇の中で 今日も眠ったふりをする
死にたいくらいにあこがれた 花の都大東京
薄っぺらのボストンバッグ 北へ北へ向かった
ざらついた苦い砂をかむと ねじ伏せられた常識さが
今ごろになってやけに骨身にしみる
ああ 幸せの とんぼよ どこへ
おまえはどこへ 飛んで行く
ああ 幸せの とんぼが ほら
舌を出して わらってらあ

いま上野のネットカフェにおりますわ
長渕剛の「とんぼ」など歌ってみる今日この頃
>>444
お疲れ様〜。
1&2の共演ってのもいいよね。
>>444
お疲れ様です〜。きよかーさんを絡めてくるとは、意表を突かれました。
「ミケランジェロでミケ」とか「聖母のように穏やかな琴さん」とか、すごく(・∀・)イイ!!です。
 私はお風呂から上がり、自分の部屋に戻ってきた。イスに座り、鞄から包みを取り出す。その包みを開き、中の物を机の上に置く。それは香水の入った小瓶。幼馴染みの彼から貰った、誕生日プレゼント。
 入学式で7年振りに再会した彼は、別れてから一度も連絡をくれなかった。でも、私のことを憶えていてくれた。もちろん今日、6月25日が私の誕生日だったことも……。
 正直言うと、あまり期待していなかった。だからプレゼントを貰った時は、本当に嬉しかったな……。
 私は左手で頬杖をつき、右手で小瓶を掴む。それをゆっくりと右の方へ移動させる。そして暫くの間、ぼーっと眺めていた。
「……プレゼントかぁ」
 私は机の奥に飾ってある、小さなイルカの置物に目を向ける。それはガラスでできた物で、小さい頃に誕生日プレゼントとして貰ったもの。それを小瓶の右隣に並べて置く。イスを少し後ろに下げ、机の上で両腕を組む。その中央に顎を乗せる。
「懐かしいなぁ……」
 私はその2つを眺めながら、置物を貰った時のことを思い出していた。

 それは7年前、彼が引っ越ししてしまった年。その年の6月26日、つまり私の誕生日の翌日。
 その日は近所にある小さな公園にいた。学校から帰ってきた後、よく彼と一緒に遊びに行った場所。彼がいなくなってからも、ときどき1人で出かけていった。もしかしたら、彼に会えるんじゃないかって思って。
 私はそこで、ひびきの高校の制服を着た女の人に出会った。その人の名前は……そういえば、聞いてなかったような気がする。そのお姉さんのことは、ショートカットで短いスカートだったってことくらいしか憶えていない。でも、何だか妙な感じだったなぁ……。
 私はそのお姉さんと話しをした。お姉さんも小さい頃に好きな人と離れ離れになったけど、その人と再会することができたって言ってた。もしかしたら、小さかった私に同情して、話しを合わせただけかもしれない。たとえウソだったとしても、その時の私がどれほど勇気付けられたことか。その時貰ったものが、この小さなイルカの置物。ずっと彼のことを想い続けてこれたのも、この置物のおかげかもしれない……。
 そのお姉さんには、あの日以来会っていない……。お姉さん……元気に、してるのかなぁ……。お姉……さんは、好きな人……と、うまくいった……のかな…………。
「う、ううーん」
 翌朝、私は机の上で目を覚ます。そのまま寝てしまったようだ。
「ふぁー」
 ひとつ大きな伸びをする。その時、右手が香水の小瓶とイルカの置物に当たり、倒してしまう。
「ああっ!!」
 ガッシャーン。
 とっさに反応し、なんとか小瓶を押さえることができた。しかし、置物は床に落ちて割れてしまった。
「や、やだ……せっかくの思い出の品が……」
 私はため息をつくことしかできなかった。小瓶だけでも助かってよかった、と思うべきなのかな?
 形あるものはいつか壊れてしまう、後悔してたってしょうがない……そう思って部屋を片付ける。
 朝食を終え、学校へ行く準備をする。タンスからお気に入りのハンカチを取り出し、ポケットに入れる。
「今日も1日、がんばろう!」
 ちょっと気合いを入れてみる。
「そうだ、帰りにファンシーショップへ寄ってみようかな」
 なにか変わりになるようなものを探してみようか……そんなことを思いながら、私は学校へと向かった。

 今日は土曜日ということもあり、部活も早めに終わった。
 私は制服のまま、ショッピング街にあるファンシーショップへ行くことにした。そこはお気に入りのお店の1つで、たまに友達と一緒に出かけることもある。

 お店を外から覗くと、下校途中の生徒が数人いるくらいで、思ったほど混雑していない。
「えへへ、ゆっくり見てまわれそうだね」
 私はお店に入る。ぬいぐるみが置いてある場所や、アクセサリーが飾ってある場所などをゆっくりと見てまわる。最後にガラス製品が置いてある場所へ行く。小さな置物が並んでいる棚で、お目当てのものがないか探してみる。ネコ、ウサギ、クマ、ペンギン……。
「キレイだなぁ……あっ、これ……」
 他の置物の影に隠れていた、イルカの置物を見つける。ちょうど今朝、壊してしまったものと同じようなもの。それ1つだけで他には見当たらない。さっそくそれを手に取って眺める。
「……ひょっとして、結構人気があるのかなぁ」
 私は迷わず買うことにした。小さいこともあり、値段はそう高くない。他にも何か買おうかと思ったけれど、今日はやめることにした。
「これが見つかっただけでも十分だよね」
 包装されたイルカの置物を鞄の中に入れ、笑顔でファンシーショップを後にする。
 さて、これからどうしよう。家へ帰るにはまだちょっと早いかな……。
「そうだ、久しぶりに公園へ行ってみようかな」
 私は近所にある小さな公園へ行くことにした。そこへはもう何年も行っていない。彼と一緒に遊んだ場所。お姉さんに出会った場所。ひょっとしたら、7年振りにお姉さんに会えるかも……なんてね。

 公園に着いた私は、辺りを見まわす。砂場にはおままごとをしているらしい2人の女の子と、砂山を作っている男の子と女の子がいる。滑り台では男の子と女の子が遊んでいる。その近くではサッカーボールで遊んでいる3人の男の子が見える。子供たちしかいないみたい。
「変わってないなぁ」
 砂場や滑り台、ブランコなどを見て呟く。さすがに遊んでいる子供たちの数は少ない、か……。
 私は砂場の近くにある、背もたれのないベンチまで歩いて行く。そこに座り、鞄を太ももの上に置く。目の前では一生懸命に砂山を作っている子供たちがいる。私には気付いていないようだ。
「そういえば、私たちもこんなふうに遊んでたんだよね……」
 私はそれを眺めながら、彼と砂山を作って遊んでいた時のことを思い出していた…………。

「危ない!」
 前方から、子供の声が聞こえる。
「えっ!?」
 その声に現実に引き戻され、ふっと顔を上げる。
「サ、サッカーボール!!」
 気が付いた時には遅かった。
 ゴン!
 ボールは見事、頭(左前あたり)に命中。その反動で、そのまま背中から後ろへ倒れていく。
 ドッシーン!!
 目の前が暗くなっていく…………。
「……ねえ」
 誰かが私を呼び、揺さぶっている……。
「ねえ!」
 子供の声?
「ねえったら!」
「う、うーん……」
 私はその声に、何とか反応しようとする。上半身を起こすと、体に乗っていた物が左の方へ落ちる。目を開けると、辺りがぼやけて見える。右に誰かいるようだし、左に落ちた物は私の鞄?
「イタタタタ……」
 私はボールが当たった部分を左手で摩ってみる。まだ頭と背中が少し痛い。
「だいじょうぶ?」
 右側から心配そうな声が聞こえる。私の足がちゃんと見える……焦点が合ってきたみたい。
「うん、大丈夫だよ」
 私は声のする方に顔を向け、笑顔で答える。そこには小学校1〜2年生くらいの女の子が1人。長い髪をした……えっ、泣きぼくろ!? 小さい頃の私に似てるような……ま、まさかね。そうそう、世の中には自分と同じ人間が3人はいるっていうし……。
「ありがとう」
 私は女の子にお礼を言う。そしてゆっくりと立ち上がり、スカートについた埃を払う。その女の子は不思議そうに私を見ている。こんな所で倒れていたんだもんね、びっくりするよね……。
「ねえ、座らない?」
 そう声をかけると、女の子はこくんとうなずいた。私は鞄を拾い、ベンチの左側に座る。鞄は左に置く。女の子は私の右隣に座る。
 日が傾きかけているらしく、辺りは夕焼け色に染まりつつある。公園内を見まわすと、先ほどまでサッカーボールで遊んでいた子供たちは見当たらない。砂場で遊んでいた子供たちもいなくなったようだ。かわりに、滑り台で5〜6人、ブランコの辺りで4人くらい子供が遊んでいるようだ。奥のほうではキャッチボールをしている2人の子供が見える。
「あーあ。逃げちゃったのかなぁ……」
 私がぼーっとしてたのも悪いけど、ひと言くらい謝ってくれてもいいのに。
 私は隣に座っている女の子を見てみる。そういえば、この女の子は1人でいるけど、グループから抜け出してきたのだろうか。なんだか寂しそうに砂場を眺めている……。
「ねえ、あなたは他の子と遊ばないの?」
 その女の子は俯いてしまう。
「もしよかったら、お姉さんとお話ししない?」
 女の子は黙ったまま。聞いてるのかなぁ。
「……うん」
 暫くの沈黙の後、その女の子から答えが返ってきた。ちょっと気になるなぁ。
「ねえ、どうかしたの? 何か悲しいことでもあったの? よかったら聞いてあげるよ」
 私は女の子に優しく問いかけてみる。
「……あのね、昨日ね、私の誕生日だったの」
 えっ!? 私と同じ日……。
「そ、そうなの? おめでとう」
「……今年はね、1人ぼっちだったの。いつもはね、お友達がいたんだ。いっつも一緒に遊んでた……男の子」
「その子、どうしたの? 喧嘩でもしたの?」
「ううん。お引っ越ししちゃったの、急に」
 ええっ!?
「そ、それで?」
「私ね、その子とずっと一緒に、いられると思ったの。なのに……」
 女の子の目から、一粒の涙が落ちる。
「私、ずっと待ってるのに……電話もないし、手紙も来ないの。もう……私のこと、忘れちゃったのかな……。私、こんなに……好き……なのに……」
 女の子の目から、ポロポロと涙が落ちていく。なんだか、小さかった頃のことを思い出すなぁ。この子も私と同じような経験をしたんだ……。
「……泣かないで。大丈夫だよ、きっと」
「えっ?」
 女の子は顔をこっちに向ける。涙が頬を伝い、流れ落ちていく。
 私はポケットからハンカチを取り出し、女の子に渡す。女の子はそのハンカチを受け取り、涙を拭く。
「その子にも、きっと何か理由があるんだよ。大丈夫、心配しないで」
「でも……」
 女の子は俯いてしまう。うーん、何とか元気付けてあげたいなぁ。そうだ!
「あのね、実は……私も同じようなことがあったんだよ」
「えっ!? おねえちゃんも?」
 女の子は驚いた顔でこっちを見る。
「私にも小さい頃、大好きだった男の子がいたんだよ。いつもその子と遊んでた。でもね、急にその子が遠くへ行くことになっちゃって……」
「その子も、お引っ越ししたの?」
「うん。その時はとても悲しくて、ずいぶん泣いたんだよ。でもね、いつかその子と再会したいって、笑顔で会いたいって、そう思うようにしたんだよ。もしその子が私を忘れてたとしても、私が思い出させてあげるってね」
 女の子は黙って聞いている。
「その子ね、全然連絡くれなかったんだ……。でもね、再会することができたんだよ」
「……そうなの?」
「うん。偶然だったんだけど、高校の入学式でね。私のこと、ちゃんと憶えててくれてたんだよ。その時は本当に嬉しかったなぁ」
「そうなんだ……」
「きっと、そのうち連絡あると思うよ。だから、希望を捨てないでがんばらなくっちゃね」
 女の子は不安そうに、私をじっと見ている。
「大丈夫だよ。あなたが強く信じていれば、きっと願いは叶うと思うよ。私も祈っててあげるから……」
「……うん」
「あっ、そうだ……」
 私は鞄から小さな包みを取り出す。今日買ったばかりのイルカの置物。
「これあげる」
 その包みを女の子に差し出す。
「えっ?」
「1日遅れだけど、私からの誕生日プレゼント」
「えっ……いいの?」
「うん。あなたがその子と再会できるように……お守りだと思って、持っててね」
「あ、ありがとう」
 そう言って、女の子は包みを受け取る。
「絶対に諦めちゃ、ダメだからね。約束だよ」
「……うん」
「さぁ、元気出して、がんばろう!」
「うん!」
 女の子は笑顔で答える。よかった、元気になったみたいで……。
 日が落ちたのか、辺りは暗くなり始めている。滑り台で遊んでいた子供たちが帰っていく。
「私、そろそろ帰らないと……」
 そう言って、女の子は立ち上がる。
「そうだね」
 私も立ち上がり、鞄を左手で持つ。
「……おねえちゃん、ありがとう。バイバイ」
 そう言って、女の子は走っていく。
「バイバイ」
 私は2〜3歩前へ出て、女の子を見送る。
「バイバーイ!」
 女の子は公園の出入り口で振り向き、右手を上げて振る。
「バイバーイ!」
 私も右手を上げ、それに答える。あの子も再会できるといいけど。
「ああっ、ハンカチ……」
 あれ、お気に入りだったのに……。
「危なーい!」
 右の方から、子供の声が聞こえる。
「えっ!?」
 その声がする方に顔を向ける。
「な、何?」
 小さな球体がもう目の前まで迫っていた。
 ガン!!
 その球体は見事、頭(右前あたり)に命中。私はバランスを崩し、そのまま倒れる。
 ドサッ!!
 薄れゆく意識の中で思う。や、野球のボール…………。
「……ん、うーん」
 気が付いた時には、辺りは暗くなっていた。薄暗い街灯が、弱々しい光で私を照らしている。
 まだ頭が痛い。私は鞄から手を離し、立ち上がる。右手で痛いところを摩ってみると、小さなコブができていた。
「あーあ、今日は何て日なんだろう……」
 そう呟きながらスカートを払う。鞄を拾い、辺りを見まわす。さすがにもう、公園で遊んでいる子供は1人もいない。
 こ、こんな所で倒れていたなんて……。だ、誰かにイタズラとか、されなかったよね……っていうか、誰も気付いてくれなかったのかなぁ。

 私は家に帰り、自分の部屋へ行く。制服を脱ぎながら、今日起こったことと、7年前のことを思い返していた。
「あっ、そういえば……」
 7年前、お姉さんからハンカチを渡されたような……。
 下着姿のまま、タンスを引っかきまわす。た、たしかどこかにしまっておいた気がする……。
 暫くして、ちょっと綻びかけたハンカチを1枚見つける。ごくんっと唾を飲み込み、それを手に取って広げてみる。お気に入りのハンカチと同じ柄……。
「……やっぱり。も、もしかして、あの女の子って……」
<完>
459回します(1):2001/06/26(火) 18:19
ひかりんの誕生日ってことで
460回します(2):2001/06/26(火) 18:19
いろいろ考えてたんだけど
461回します(3):2001/06/26(火) 18:20
毎日のように考えてたら
462回します(4):2001/06/26(火) 18:21
夢にまで出てきたよ(藁
463回します(5):2001/06/26(火) 18:21
しかし、こうやって思うことで
464回します(6):2001/06/26(火) 18:22
自分の中でその存在が大きく
465回します(7):2001/06/26(火) 18:23
美化されていくのだろうか?
466回します(8):2001/06/26(火) 18:24
たとえ相手がゲームのキャラだとしても……
467回します(9):2001/06/26(火) 18:25
これは越えてはならない線なのだろうか?
468ひかりん、、、大好きです。。。:2001/06/26(火) 18:28
冗談はさておき、
>>451-458
「1日遅れの誕生日プレゼント」
ときメモ2より陽ノ下光です。
想い続けるって大変だよね。
SSもいいけど回しネタに共感した俺って・・・
>>242
匠の一人称は「僕」でもOKみたい
>>470
別スレで匠の一人称が論争になってたけど、CDドラマでは確かにそう言ってるよね。
4721:2001/06/26(火) 23:26
>>468
お疲れ様です。誕生日ネタ、書こうかと思ってたんですが、前スレのひかりん日記で
自分の中の引き出し使い切ってたんで無理でした(w
そうか、こういうアプローチがあったか…

>>470,471
CDドラマ5(今聞き終わった)でも「僕」ですねぇ。もう直す気なさそうだなぁ…
(でも自分は「俺」にこだわる。「僕」は女の子の前でかわいぶって見せる時だけなんだっ!)
473コナミ:2001/06/26(火) 23:33
>>470 >>471 >>472
手抜きの脚本家ですみません
>>472
まあその辺は作家の好みに任せましょう。
>>467
私はもう越えてますよ…
>>473
シナリオ展開そのものに問題がある。
477教えて君:2001/06/28(木) 01:40
厨房ですが、回すのってどういう意味あんスカ
>>467-468
君もすでに越えているのでは?
さあ、新たな世界へ踏み出そう…
その先に、光が見えるだろう(藁
479名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/28(木) 02:30
ギャルゲーオタって、心の中ではクラスや会社の女の子たちに
相手してほしいんだろうねえ。恋愛ゲームばっかりやってるもんねえ。
何かあると「現実の女の子は……」と否定的な発言に出るけど、
実際の所女と10秒以上話したことの無い奴ばっかり。
告られたことなんて一回もないんだろうな。油臭い豚みたいな
外見じゃ、そら「現実の女の子」は冷たいよ。
彼女らは、ゲームと違ってちゃんと相手を選ぶからさ。
いいか、「現実の女の子」が冷たくて怖い訳じゃねーの。
お前ら相手だと、冷たくて怖いだけなの(笑)

でも、自分の醜さとキモさを自分自身よーく解ってるから、
現実の綺麗な女の子には絶対に近づかないんだよね。
傷つけられるのが解ってるから、自分から逃げておく。
「女には興味ない。ゲームが好きなんだよ」というポーズを
とっておけば、多少でも自分のミジメさから目をそらせるもんね。
あ、綺麗な女の子たちはぜんぜん君たちの事なんて気にしてないから、
そんなポーズはとろうととるまいと無駄。
彼女たちにとっての君らはウジ虫みたいなもんだよ♪

本当にギャルゲオタって惨めだね。時々この板に来て大笑いしてるけど、
お前らいつまでドット絵でオナニーするわけ?
480名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/28(木) 03:38
Λ_Λ
(゜Д゜)
>>477
長文がいくつも連続していると、TOP20に上がった時、興味のない人間には
迷惑だからです。かといってageないと、せっかくの新作に気づいてもらえないかも
知れないんで、回しレスを9個書いてからage、という事になってます。
(発祥の地は葉鍵板らしいですが)
>>478
片足くらい、突っ込んでるかもね(藁
このまま、逝っちゃうのかな?
483悪巧み(1):2001/06/28(木) 19:34
 やあ、屋上にいたんだ……何をしているんだ?
 なんだよお前、大親友であるこの坂城匠様に向かってその態度は……。
 幼馴染みの光ちゃんが学校休んでいるからって、そんなに落ち込むなよ。
 えっ? 18歳の誕生日にプレゼント渡せなかったって?
 家まで行ったのに、会ってもくれなかったって?
 まあ、しょうがないかもな。
 あんなことがあった……おっといけない。
 な、何でもないよ。
 な、なんだよ……何でもないって言ってるだろ。
 聞き間違いだって……。
 えっ? 何でも好きなものおごってくれるって……。
 本当か? ……どうしようかな。
 よ、よせよ。や、やめろよ。
 わ、分かったよ、分かったから。
 教えてやるから……しょうがないな。
484悪巧み(2):2001/06/28(木) 19:34
 この間、交流会があったの知ってるだろ。
 そうだよ、きらめき高校との交流会だよ。
 俺と光ちゃんが代表で、きらめき高校に行っただろ。
 交流会が終わった後に、藤崎さんに誘われたんだ。
 ちょっとした歓迎会が用意してあるからって言われてさ。
 えっ? 藤崎さんって誰かって?
 なーんだ、知らないのか? 藤崎詩織を?。
 きらめき高校で人気ナンバーワンの女生徒だよ。
 でも、噂じゃ性格悪いって話しだけど……。
 俺たちが案内された教室には、男女合わせて20〜30人はいたんじゃないかな。
「やめてーっ、藤崎さん!!」
 突然教室内に光ちゃんの絶叫が響き渡った。
 声のした方に振り向くと、光ちゃんが数人の女生徒に羽交い締めにされていた。
 そして、藤崎さんは笑いながら、光ちゃんのスカートのジッパーに手をかけていたんだよ。
 そうだよ、彼女たちは光ちゃんのスカートを脱がそうとしていたんだ。
 光ちゃんは必死に足をばたつかせて抵抗していたよ。
 けれど、その足すら二人掛かりで押さえられてしまって、とうとう肉体的に抗う術を失ってしまったんだ。
「やめてーっ、やめてよーっ、やめてーっ!!」
 光ちゃんの絶叫が再度響き渡った。
 周りをよく見ると、藤崎さんのクラスメートたち……だと思うけど、全員がこの光景に注目していたんだ。
 まあ、当然だろうね。
 えっ? 俺? 助けなかったのかって?
 そりゃあ助けたかったけど、俺も取り押さえられていたからね。
  ズルッ!
 藤崎さんによって、光ちゃんの制服のスカートが下ろされたんだ。
 光ちゃんのストライプ模様のパンティーが露わになったよ。
「さあ、みなさーん。いよいよご開帳よ〜♪」
 藤崎さんは嬉しそうに声をあげてたよ。
 そう、次に脱がされるのは、当然光ちゃんのパンティー。
 光ちゃんはすっかり観念した様子だった。
485悪巧み(3):2001/06/28(木) 19:35
 多分、こんな事を考えていたのかもしれないね。
「(パンティーがおろされる瞬間、きっと男子は目をつぶってくれるよね……)」
「(もしかしたら、1人くらいは見るかもしれない)」
「(でも……そうよ、5人までなら、見られていないことにしよう)」
 ってね。こうでも思い込まなければ、きっと光ちゃんの精神はこの時点で崩壊していただろうね。
 でも……。
  スルスルッ!
 藤崎さんの手によって、とうとう光ちゃんのパンティーが下ろされたんだ。
  さわさわっ!
 光ちゃんの薄い陰毛が、外気と人目にさらされた。
  ガバッ!
 次の瞬間、光ちゃんの両足が広げられた。
「おおっっっっっっーーーーーーーーーーーーーー!!」
 教室中に、どよめきが起こった。
 光のアソコは、典型的なピンク色だったよ。
 まさにぴったりと閉じた秘貝って感じだったね。
 思わず俺も見入ってしまったよ……。
 周りをよく見ると特に男子が、光のアソコをじっくりと見つめていたよ。
「おー、いいねぇ〜」
「あんなんなっているんだ、初めて見たー!」
「俺もう、我慢できねぇ〜」
 なんて、あっちこっちから感想が聞こえてきたよ。
 光ちゃんがパンティーを脱がされる瞬間まで、願っていたであろう事は、粉微塵に砕かれたんだ。
 光ちゃんはそこにいた全員に、自分のアソコを見られてしまったんだ。
 耐え切れない羞恥心と屈辱感で、光ちゃんは泣いていたよ。
 それこそ、狂ったように……。
 いや、本当に狂ってしまったのかもしれないな。
 あの日以来かな、光ちゃんが学校に来ていないのは。
486悪巧み(4):2001/06/28(木) 19:36
 な、なんだよ。よせよ。
 俺がウソを言っているって?
 そう思いたい気持ち、分からなくはないけど……。
 あっ、そうそう。
 光ちゃんには悪いことしちゃったかな、そのうち謝っておくよ。
 えっ? 何を謝るのかって?
 バカだな、お前に話したことに決まってるだろ。
 光ちゃん、お前にだけは知られたくないって言ってたからな。
 口止め料ってことで、1回やらせてもらった……あっ、ごめんごめん。
 また余計なこと言っちゃったよ。
 まあ、そう気を落とすなよ……。
 処女が全てじゃないし、光ちゃん以外にもいい女の子はいるだろ……。
 お、おい、まてよ。おごってくれるんじゃなかったのか……ってやっぱムリか。
 ……さて、次は花桜梨さんだったな……。
  <おしまい>
487坂城匠:2001/06/28(木) 19:37
あっ
488坂城匠:2001/06/28(木) 19:37
はっ
489坂城匠:2001/06/28(木) 19:38
は!
490坂城匠:2001/06/28(木) 19:39
どう
491坂城匠:2001/06/28(木) 19:39
かな?
492坂城匠:2001/06/28(木) 19:40
びっくり
493坂城匠:2001/06/28(木) 19:40
したかい?
494坂城匠:2001/06/28(木) 19:41
僕の
495坂城匠:2001/06/28(木) 19:41
情報に!
496坂城匠:2001/06/28(木) 19:44
>>483-486
「悪巧み」
僕……い、いや俺は才能ないんで……
元ネタ
http://yasai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=gal&key=992918482&st=27&to=27
>>496
新しい趣向の斬新さは認めるがネタがダークだ…。
いや、ギャグとして読めば面白かったよ。
でもなあ…?
匠ぶっ殺す!!
4991:2001/06/28(木) 23:13
>>496
お疲れ様です。新スレになってから始めてのダークものですね。
旧スレには結構あった気がしますが。

>>497
1にも書いてあるとおり、「ほのぼのからダークまで」ですんで。
正直自分も、詩織や匠が悪役なのはちと辛いんですけど、好みの問題ですからね。
書き手にとっても読み手にとっても、多様なニーズに答えるスレであったほうが良いかと。

>>498
…いや、本編中の匠は結構いい奴だと思うんですけど…(楓子の、修学旅行で
再会イベントとか、華澄センセの文化祭イベントとか)。って何フォローしてんだオレ。
5001:2001/06/28(木) 23:25
ちょうど500でキリが良いので、久々にインデックスage。
前回インデックス >>272

「終わり無きリテイク」>>273-275 /ダブルキャスト(※ややダーク?)
「梅雨の帰り道」>>291-293 /ときメモ2、陽ノ下光
「まだ今日は、いつもの帰り道」>>310-314 /TLS2、森下茜
「住んでいる世界」>>333 /ノンジャンル
「三角関係」>>345-350 /ときメモ2、陽ノ下光&水無月琴子
「プ○ジェクトX〜サクラ大戦編」>>374-383 /サクラ大戦
「Take it easy!」>>427-434 /ときメモ1&2、水無月琴子&片桐彩子
「1日遅れの誕生日プレゼント」>>451-458 /ときメモ2、陽ノ下光
「悪巧み」>>483-486 /ときメモ1&2、陽ノ下光&藤崎詩織(※18禁、ダーク)
っていうか、>>483-486って改造コピペを匠視点でアレンジした物だね。
元々は「悲惨な1を晒す」文章だったけど、ここまで輪廻転生するとは・・・(苦藁)
週末です。
みなさん頑張ってください。
503名無しくん、、、好きです。。。:2001/06/30(土) 20:28
週末なのに寂しいかぎりですね。
しかも250まで下がってるし…。
みんながんばr
504名無しくん、、、好きです。。。:2001/07/01(日) 04:25
ギャルゲーオタって、心の中ではクラスや会社の女の子たちに
相手してほしいんだろうねえ。恋愛ゲームばっかりやってるもんねえ。
何かあると「現実の女の子は……」と否定的な発言に出るけど、
実際の所女と10秒以上話したことの無い奴ばっかり。
告られたことなんて一回もないんだろうな。油臭い豚みたいな
外見じゃ、そら「現実の女の子」は冷たいよ。
彼女らは、ゲームと違ってちゃんと相手を選ぶからさ。
いいか、「現実の女の子」が冷たくて怖い訳じゃねーの。
お前ら相手だと、冷たくて怖いだけなの(笑)

でも、自分の醜さとキモさを自分自身よーく解ってるから、
現実の綺麗な女の子には絶対に近づかないんだよね。
傷つけられるのが解ってるから、自分から逃げておく。
「女には興味ない。ゲームが好きなんだよ」というポーズを
とっておけば、多少でも自分のミジメさから目をそらせるもんね。
あ、綺麗な女の子たちはぜんぜん君たちの事なんて気にしてないから、
そんなポーズはとろうととるまいと無駄。
彼女たちにとっての君らはウジ虫みたいなもんだよ♪

本当にギャルゲオタって惨めだね。時々この板に来て大笑いしてるけど、
お前らいつまでドット絵でオナニーするわけ?
505感想:2001/07/01(日) 07:54
>>504
登場人物もストーリーもありません。これではSSでなく詩になってしまいます。
モチーフとなる作品が何なのかもよくわかりませんし・・・。
アドバイスとして、なにかの作品のひとつのエピソードを自分で文章にすることを勧めます。
納得がいくまで何度も書き直してください。満足できたらUPしてください。
厳しい意見が寄せられるかもしれませんが、謙虚な気持ちで受け止めましょう。
何度も繰り返して文章力をつければ、頭に浮かんだアイディアやストーリーを、
上手にSSにまとめることができるようになるはずですよ。
>>505
これコピペですよ。
気を取り直して逝ってみよう!
先週末はなにもなかったか…
寂しいね。
>>496
続きはないのか?
誰か続きをキボーン。
詩織&匠コンビの活躍に期待(藁
次回ターゲットはぜひ花桜梨さんで……
最近ボケコニアンみないけど逝ったのか?
511:2001/07/02(月) 23:30
うーん、決して悪くない投稿ペースだとは思いますが…
書き溜めして一気にアップ、っていう形式が主流なんで、よけい少なく感じるのかも。
エリカ100gスレみたいに、ちょこちょこアップするのは…ここだと難しいか。

関係ないけど、ときメモ1・紐緒閣下の家族に関する設定ってご存知の方います?
512ボケコニアン:2001/07/03(火) 00:38
>>510
殺すなー!!!!!!!!!!!!!
今期末試験&就職活動&バイトで忙しいのじゃ!
6/26に東京でレスしてるぞ、俺は

>>509
いちおう496の続きは考え付いたが
テキスト上げるひまもないから半分だけ上げるね
513ボケコニアン:2001/07/03(火) 00:39
無意識のうちに、という言葉はやはり存在するのだろう。
匠が最後の言葉をいうか言い終わらないかのうちに、
俺は自分のこぶしを匠・・・いや、もうこいつは豚で十分だ。
豚の左ほほに突き出していた。
剣道の素振りで鍛えただけあって、豚が防御の姿勢をとる隙さえも与えなかった。
クリーンヒットしたせいで、そのまま後方へ吹っ飛ぶ。
まあ、そこらを這い回っているノロマな豚らしいといえばそれまでか。
でも、俺には豚にかまっているひまなんかなかった。
なにも持たずに俺は校舎を抜けた。
昇降口にいた華澄さんの呼びかけを振り切って。

俺が・・・その時いたら・・・
もっと、もっと速く
おれは、俺が光の気持ちに気付いていれば・・・
目頭に熱いものがこみ上げてくるのがはっきりと分かった。
学校までは10分かかるかかからないかの距離が、
永遠のロードのように感じた。
畜生!畜生!畜生!
俺の狭い心の中で、いつまでもその言葉だけが反響しつづけていた。

息を切らしながら、俺は光のうちの呼び鈴を押した。
もちろん、中から人が動く気配はない。
ためらいがちに、もう1度呼び鈴を押した。
ほどなくして、奥から足音が聞こえ始めた。
10秒ほどして、がちゃんという音と共にドアノブがさがり、
なかから光のお母さんが出てきた。
「まあ、さっきはごめんなさいね。」
「お願いです、光に逢わせてください。」
「でもねえ、光はさっきからあんな感じで。」
「どうか、どうか、お願いします」
俺が真剣に頼んでいるのが分かると、ついに根負けしたらしく、
俺を光の部屋に案内してくれた。
514ボケコニアン:2001/07/03(火) 00:40
続きを請うご期待。
513から考えてくださればもっとうれしいけど
>ボケコニアン
生きてたか、良かった。
勝手に殺して済まん。
あ、殺してはなかったか…。
取りあえずお帰り。
 汗臭い男ばかりの運送会社では九段下舞佳の存在は特別だ。いわば職場の華。そんな職場の華が今危機にさらされようとしていた。
 女子更衣室。男女比率が極端に偏っているこの会社では需要が少なく今日は舞佳以外に使用している者はいない。
「ふん、ふ〜ん。今日も一日頑張っちゃったわよん♪」
 今日が給料日だからだろうか、今日の舞佳はいつになく上機嫌だ。
「おっと、急いで着替えないと次のバイトに遅れちゃう」
 運送屋のユニフォームをやや乱暴に脱ぎ捨て着替えのシャツを鞄から出した時だった。
 ガチャ…。
 不意に更衣室の扉が開いた。
「あれ? 今日は女は私だけじゃなかっ――!?」
 全てを言い終える前にその口は塞がれた。
「ん!?…んぐ!?……っ!?」
(だ…誰!?)
「舞佳さん、俺…俺っ…舞佳さんの事がっ…!!」
(そ、その声は少年!?)
「動かないで下さい。俺、舞佳さんを傷つけたくないから」
 見ると少年の手には刃渡り10センチほどの果物ナイフが握られている。
(そんな…なんで少年が!?)
 どうやら彼女の中では刃物による恐怖心よりも少年に裏切られたショックの方が大きかったようだ。その証拠に他の男が相手だったら噛みついてでも振り払ってた手に彼女は何もする事もできなかった。
「わかってもらえたようですね…」
 口を覆っていた手を離し舞佳を解放する。
「すみません、こんな形になって…」
 突き刺すような舞佳の視線を受けながら少年は言った。
「わかってると思いますが大声を出したら―――」
「ねえ!」
 今度は舞佳が少年の言葉を遮る。
「なんで、こんな事になっちゃったの!? ちゃんと告白してくれたらお姉さんだって考え――」
「もう俺には時間がないんです」
「え…!?」
「………」
 暫くの沈黙の後、少年は重い口を開いた。
「実はさっき俺、匠を……友達を殺してきたんです」
と、ここまで書いて中途半端ながら終了。
っていうか続きが書けない…。
このままエロを書こうにも自分の希薄な性体験では稚拙な文章しか書けないのだ(苦笑)
というわけで取りあえず匠を殺しておきました。理由はありません。
そうそう、このSS(になってないが)タイトルはないっす。
「無題」ということで。
なんせ、舞佳を出す事だけをコンセプトにしてましたから。
これくらいなら回さんでもいいよね。
ボケコニアン氏と連書きになったけど…。
おお、続きが!!
>>514 続きを期待してますよ。
>>517 努力と根性でがんばりましょう!! オレモナー(藁
>>496 見てショック受けた俺も、一応続きを考えていたんだけど……どうしよう。
>>519
色々な未来を見てみたい。
続きを考えてるなら書いてよ。
「言う」と「云う」の使い分け教えて下さい。
>>521
ゴメン、俺は知らないです。
「云う」なんて使ったことないです。
誰か知ってる人いるかなあ云々……
下がりまくって今350番目。
上げた方がいいと思うが夜はうぷが多い時間帯。
だから上げれない。
でも、明日dat逝きしてないか心配。
急な荒らしとかで突然ってことアルし…。
524名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/05(木) 01:41
はじめまして。
ここって鬼畜陵辱系アプしても大丈夫でしょうか?
(前スレは大丈夫でしたよね……)

私は「TLS2七瀬かすみたんとセクース」スレッド
http://yasai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=gal&key=985616842
>>347-400とか書いてる者なんですが、
次作は上記スレで書くには不適切な内容に
なるんじゃないか、と思うのです。
#七瀬かすみ出てこないし

鬼畜系SS掲載の可否および
鬼畜系上げる際のガイドラインなど示してくださったら
ありがたく思います。
>>524
 TLSは補完妄想スレ逝け
>>524
基本的に荒らし、煽りじゃなければどんなSSもOKだと思う。
1にも「ほのぼのからダークまで」ってあるし。
俺的には全然OKです。
個人的にスカトロは勘弁…。
乳首ピアス・安全ピンとかもキツイっす。
SMは…愛があればギリギリかな。
528名無しくん、、、好きです。。。:2001/07/05(木) 04:59
この時間なら大丈夫だろうdat逝き阻止age
529:2001/07/05(木) 07:07
>>524
実は私自身、そういうのが苦手な一人だったりしますが(w

>>526さんが仰っている通り、何でもありでいいと思います。
どうしても気になるなら、鬼畜系が嫌いな人間が読み飛ばせるような
配慮をしていただければOKじゃないかと思います。
アップの一つ前のレスに注意を入れるとか。
>>524
個人的に鬼畜系は苦手なので、
>>529に同意しときます。
531俺の気持ち(1):2001/07/05(木) 18:15
 俺はフラフラと校門を抜け、歩いていく。夏にはまだ早いはずだが、日差しがやけに暑く感じる。
 屋上で匠から聞いた話しは本当のことなのか? 信じろってほうが、どだいむりなことだ。
「意地の悪い冗談……だよな」
 そう呟きながら、坂道を下っていく。
 確かに光は休んでいるが、その理由を本人から聞いたわけではない。光の親友である水無月さんにそれとなく聞いてみたが、どうやら何も知らないようだった。今の俺には、他に確認する術がない。
 匠自身が体験したことを語ったのだから、多少の脚色があったとしても、ほぼ事実と思って間違いないのだろう。
 だからといって、あっさりと受け入れられるわけがない。認めたくない、何かの間違いであって欲しい。
 そんなことが現実に起こりうるのか? やりきれない思いが心に募っていく。
「いったいなぜだ? どうしてなんだ!!」
 道の端に転がっている空き缶を見つけ、右足で思いっきり蹴る。蹴られた空き缶は、跳ねながら道路を横断して視界から消えていく。
 何か……何か情報が欲しい。できればそのことが否定されるような何かが。
「そうだ、きらめき市にいってみよう」
 俺は電車に乗り、きらめき市へと向かった。それこそ、藁にもすがる思いで……。

 駅に着いた俺は、辺りを歩き回ることしかできなかった。当てなんてないんだから、しょうがない。きらめき高校へ乗り込むわけにもいかないし……。
 きらめき高校の生徒らしいグループ何組かとすれ違ったが、声をかけることはできなかった。
「なにやってるんだ、俺は……」
 何もできない自分に苛立つ。ただ歩き回っているだけじゃないか、こんな無駄なことしてなんになるんだ……。
 そんなことを考えはじめた俺は、駅に戻るために引き返すことにした。
 ちょうどゲームセンターの前を通り過ぎようとしたとき、そこからきらめき高校の生徒らしい2人の男が出て来た。
 向かって左のへらへらした男が、もう1人の男にしきりに何か話しかけている。
 彼らは俺と反対方向へ歩いていった。俺はなんとなく気になったので、立ち止まって振り向き、耳を澄ます。
「おいおい、今の……」
 右側の男が、左隣を歩いている男の肩を叩いている。
「なんだよ、好雄」
 肩を叩かれた男は鬱陶しそうに答える。
532俺の気持ち(2):2001/07/05(木) 18:16
「ひびきの高校の生徒だぜ……。ひびきの高校といえば、この間の交流会……」
 俺は好雄と呼ばれた男の口から出た『交流会』という言葉に反応する。
 なにか知っているのだろうか? 俺は2人の後を追いかけ、会話を盗み聞きしようと試みる。
「お前、あんな趣向が用意されてたなんて、知らなかっただろ。な、参加してよかっただろ」
「ああ、確かに。好雄の情報もたまには役に立つな」
「なに〜。たまにじゃなくて、い、つ、も、だろ!」
 好雄は隣の男の脇腹を小突く。
「イタッ、悪かったよ。いつも感謝してます、好雄様」
「うんうん。人間、素直が一番だぞ」
「俺さあ、女の子のアソコ……じかに見たの初めてだったけど、凄いな。なあ好雄、妹と比べてどうだった?」
 もう1人の男は左手で頭を掻きながら、好雄に尋ねている。
「いや〜、どうって聞かれてもなあ。優美なんて、まだまだションベン臭いガキだからな」
 好雄はそう答え、笑っている。
「そうか? ま、いいか。ところで……あの子のことなんだけど……」
「あの子って、誰のことだよ」
「誰って、あのひびきの高校の女の子に決まってるだろ。チェックしてあるんだろ?」
 俺は聞き逃さないように、更に彼らに近づく。話しに夢中らしく、気付かれてはいないようだ。
「か〜。お前も好きだね〜。ちょっと待てよ……」
 そう言って好雄は立ち止まる。俺も慌てて立ち止まる。
 好雄は自分の鞄から手帳らしきものを取り出し、パラパラと頁をめくっているようだ。
「お、あったあった。いいか、耳かっぽじってよく聞けよ。……ひびきの高校3年、陽ノ下光。誕生日は……」
 陽ノ下光!? 俺はとっさに好雄の右腕を掴み、強引に引き寄せる。好雄は体勢を崩し、よろめく。
「いまの話し、本当か? 間違いないのか?」
 俺は好雄の胸倉を掴み、詰め寄る。
「うぐぅ……。あ、ああ……そ、そうだよ。ま、間違い……ないよ」
 俺は好雄を突き放し、駅に向かって走り出す。
「な、なんなんだよ、アイツ」
「さ、さあ?」
 後ろから2人のやり取りが聞こえてきたが、俺は構わず走り続ける。
 やはり匠の話しは本当だった。こうしちゃいられない、光に会わなくちゃ……。
 でも、会ってどうするんだ? 慰めの言葉でもかけてやるのか?
533俺の気持ち(3):2001/07/05(木) 18:16
 ひびきの市に戻った頃には、日も傾きかけていた。
「光、今行くからな……」
 俺は必死になって走った。とにかく光に会いたい、今はただそれだけだった。
 光の家に着くころには、苦しくて肩で息をしていた。少しでも息を整えようと、何度か深呼吸をする。
  ピンポーン
 チャイムを鳴らす。少し待ったが反応はない。誰もいないのか?
 俺はもう一度チャイムを鳴らそうとした。ちょうどそのとき、ドアの向こうに人の気配を感じた。
  ガチャッ
 ドアが開き、光の母親が姿を現す。
「あら……」
「こ、こんにちは。あの、お願いです、光に、光に会わせて下さい」
「でも……光は誰にも会いたくないって言っているのよ。最近ずっと元気がないのよ、学校にも行きたがらないし。いったい何があったの? 聞いても答えてくれないのよ、あなた何か知らない?」
「……さ、さあ。俺にもよく分からないんです」
「そう……」
「俺、光が心配で……と、とにかく会わせて下さい」
 俺は必死に頼み込む。
「ちょっと、待っててね」
 光の母親はドアを閉め、光を呼びにいったようだ。光は会ってくれるだろうか。
 暫くしてドアが開き、光の母親が顔を出す。
「……ごめんなさいね、会いたくないって言ってるわ」
「そうですか……。じゃあ、これを光に渡してもらえますか」
 俺は包みを差し出す。
「これは?」
「光への誕生日プレゼントなんです。遅くなってしまったけど……。あっ、それから伝えてもらえますか。俺、毎日近所の公園で待っていると……学校が終わってから、ずっと待っていると。だから会いに来てくれと、お願いします」
「……分かったわ」
「それじゃあ、失礼します」
 そう言って、俺は玄関を後にする。もう辺りは暗くなり始めている。振り返り、二階の窓――光の部屋だ――を見上げる。カーテンは閉じられており、電気は点いていない。
 ん? 今、カーテンが動いたような……光か?
「俺、待ってるから!」
 窓に向かって叫ぶ。光に届くように願いを込めて。
 その後、近所の公園に向かって歩き出す。
534俺の気持ち(4):2001/07/05(木) 18:17
 近所の公園に着いた俺は、辺りを見まわす。月明かりに照らされた公園内に人影はない。砂場の近くにあるベンチまで歩いていき、そこに座る。
「なつかしいな……」
 小さい頃はよく光と一緒に遊んでいたよな。あれからもう9年も経つのか……ここは殆んど変わってないな。
 俺は昔のことを思い出しながら、光が現れるのを待っていた……。
 どれくらい待ったのだろうか。ふと時計を見ると、既に1時を過ぎていた。
 今日はもう帰って寝るとするか。光、来なかったな……。

 それから毎日、学校が終わってから近所の公園に行くようになった。いつも決まって砂場の近くにあるベンチに腰を下ろし、夜中まで光を待っていた。
 学校が休みの日は1日中、公園で待っていた。しかし残念ながら、光は一度も姿を現すことはなかった。
 ちょうど待ち始めてから1週間が過ぎた日のことだった。その日は朝から晴れていたのだが、昼過ぎには雲行きが怪しくなってきていた。いつものように公園のベンチで待ち続けていると、夕方頃にはポツリポツリと雨が降り始めてきた。もちろん、傘なんて持ってきていない。
「まいったな。このままじゃ、ずぶ濡れになるな……」
 光に約束した手前――といっても一方的だったが――帰るわけにもいかない。
 俺は小雨が降る中、ずっと光を待っていた。
 どれくらい待っただろうか、背中や靴は完全にずぶ濡れになっていた。
 公園の入り口の方へ目を向けると、そこに傘をさした人影が見える。
「光? 光なのか?」
 俺はその人影に向かって呼びかける。人影は黙ったままで、その場から動こうとしない。俺はゆっくりと立ち上がり、その人影に近づいていく。
 どうやらその人影は光のようだ。
 俺は2〜3歩手前で立ち止まり、様子を窺う。光は少し痩せたように見える。やはり心労のせいなのだろうか。
「光、来てくれたんだね、嬉しいよ……」
 気の利いたセリフが思い付かない。
「……うん」
 光は弱々しく答える。
「……その、匠から全て聞いたよ。ごめん、光。俺、何もしてあげられなくて」
「ううん、きみが……悪いわけじゃないし……」
 そう言いながら、光は少し俯く。
「でも、せめて相談くらいしてくれても……」
535俺の気持ち(5):2001/07/05(木) 18:17
「……ゴメンね。私、もう何が何だか、分からなくなって……坂城くんに……む、無理やり……その……」
 光はポロポロと涙を流す。
「……もういいよ」
 俺はポケットからハンカチを取り出す。それは雨でかなり濡れていたが、構わず光に差し出す。
 光はそのハンカチを受け取り、涙を拭う。
「でも……取り返しの……付かない……もう私は、汚れて……」
 光は涙を流しながら、小さな声で途切れ途切れに話す。
「何を言っているんだよ、光。そんなこと関係ないよ」
「えっ?」
 光は顔を上げる。
「光は今でも俺のこと、思ってくれているんだろ?」
「……うん」
 光は涙を拭きながら答える。
「俺、やっと気付いたんだ。俺には光が必要なんだって。この数日間、光に会えなかったことがどれほど寂しかったことか。俺は光に7年間もこんな思いをさせていたのかってね……」
 光は黙って聞いている。
「光……俺はお前が……」
 俺は光に近づき、抱き寄せようとした。
「い、いやっ」
 俺は光に突き飛ばされ、よろめく。光の差していた傘が地面に転がった。
「……光」
「ゴ、ゴメンね。……もう少し、もう少しだけ時間をちょうだい。お願い……」
 光はとても悲しそうな顔をして訴える。体が震えているのが分かる。
「……分かったよ。光の気持ちが落ち着くまで、俺はずっと待っているから」
 光は俯き、何か呟いたようだが、俺には聞き取れなかった。
「と、とにかく、早く学校に来いよ。俺、待っているから……」
 俺は傘を拾い、光に渡そうとする。しかし、光は首を横に振り、傘を受け取らない。
「それじゃ……」
 そう言って、光は雨に濡れながら帰っていく。まるで汚れた体を洗い流すかのように……。
 俺はそんな光の姿をずっと見送っていた。
「光……」
 俺の心の中で、光の存在が大きくなっていることを知った。今はただ、焦らず待つしかないのだろう。
 しかし、俺は本当に、光の全てを受け入れることができるのだろうか……。
536回し:2001/07/05(木) 18:19
「悪巧み」を読んで
537回し:2001/07/05(木) 18:19
ショックを受ける
538回し:2001/07/05(木) 18:20
でも、想像してたら
539回し:2001/07/05(木) 18:20
思わず興奮……
540回し:2001/07/05(木) 18:21
ハアハア
541回し:2001/07/05(木) 18:21
その日の夜
542回し:2001/07/05(木) 18:22
光が匠に襲われる夢を見た
543回し:2001/07/05(木) 18:22
寝覚めが悪くて……
544回し:2001/07/05(木) 18:23
超鬱に
545519:2001/07/05(木) 18:26
>>531-535
「俺の気持ち」
ときメモ2、陽ノ下光
一応、>>483-486 の続きということで。
俺はただの光萌え〜
>>545
ご苦労様です。
続きを楽しみにしてます。(あるんだよね?)
しかし、夢にまでみるとは…アッパレ!(?
547通りすがり:2001/07/05(木) 20:52
このスレのサイズは312KBです。
512KBを超えるとスレ自体が壊れます。
この調子でいくと1000までは持ちません。
気を付けて下さい。

それでは作家の方々頑張って下さい。
私は突然開けなくなると困るので、かちゅーしゃでログ保存しながら見てます。
本当はときメモ+バトロワスレみたいに補完サイトがあればいいんだけど誰か作る気ない?
549ボケコニアン:2001/07/06(金) 01:29
拒むことなく、光の部屋のドアノブは回った。
カーテンを閉め切っているせいか、もう夏が始まっているというのに
部屋の中は薄暗い。
「だれ。」
部屋の中から、光の声がしたが、俺はためらわずに部屋の中に入った。
もともと大柄な女の娘じゃなかったけれど、机に向かっている光の肩は、
いつもよりずっとずっと小さく見えた。
「こないで」
そう言って、光はこちらを向いた。
一瞬、間があった。
「か、かえってよっ」
泣いているとも、狂っているとも似つかない表情で、光は叫んだ。
そして、次の瞬間だった。光がはさみを両手ににぎって突進してきたのは。
とっさのことに俺はあぜんとなったが、俺自身の本能が、体を右に傾けた。
だが、さすがに俺の左腕は防御しきれずに、光の持っていたそれは、
俺の皮膚の表面を勢いよく撫で付けた。
間髪を入れず、左腕の表面に赤い一筋の模様が浮かび上がる。
しかし、俺にはそんなことにかまっているひまなんてなかった。
光は・・・
死ぬ気だったのだ。
恐らく、俺を一人残して。
すぐに俺は、光の持っていたはさみを、力ずくで奪いにかかった。
いくら両手で握っていたとはいえ、所詮女の娘の力だ。
ましてや、剣道の素振りで鍛えた俺の腕力にかなうわけがない。
しばらくの格闘の後、光の手には、力いっぱいなにかを握り締めた後だけが
残っていた。
光はがくりとひざを落とした。
550ボケコニアン:2001/07/06(金) 01:31
そして・・・
初めてだった。
光が俺の顔を覗きこんだのは。
俺がこんな間近で、光の眼を覗きこんだのは。
ちょっとした沈黙の後、光が嗚咽をはじめた。
「ご、ごめんね・・・」
かすれた声で、そしてそれは消え入りそうな声だった。
たまらなくなって、俺は、ひざを立てて、光の細い肩をきゅっと抱きしめた。
「聞きたくなかったけど・・・ つらい思いをしたんだね・・・」
光はなにも言わなかった。
「もっと、もっと早くお前の気持ちに気付いてれば・・・」
沈黙をさえぎるように、俺は言った。
もう、自分も涙を押さえることはできなかった。
「守って、やれなくて、ごめん」
泣き虫だと光を馬鹿にしてたあのころより、俺は泣いていた。

明らかに、外と中では時間の進み方が違ったはずだ。
かすかにさしこんでくる太陽の日差しはほとんど変わらなかったが、
俺と光はかなりの時間、泣いていた。
お互いに顔を上げたときは、泣き疲れて、ぐったりしかかっていた。
俺は、自分の気持ちを伝えた。
「光、もう、俺、おまえなしじゃ・・・」
「わたしも」
「ずっと、いっしょにいてね・・・ や・く・そ・く、だよ」
光がそう言い終わると、お互いまたみつめあった。
そして・・・
導かれるように、俺は自分の唇を、光の唇に重ねた。
551ボケコニアン:2001/07/06(金) 01:34
おいもいそがしかでなあ、きょはこいだげにしちょっど
れぽーとかかんなら・・・
あたいはなんしちょっとよ・・・
ちょうど書きこみに来たらボケ(以下略)さんが書きこんでる途中みたいなので終わるの待ってました。
こうゆう時SSスレって困るね。
で、待ってるうちに何を書きこみに来たか忘れた…。
553ボケコニアン:2001/07/06(金) 01:41
すいません、友人とチャットしながら書いてたので
方言丸出しで書いてしまいました

549、550は513のつづきです
ほんとはまだ続くんだけどね・・・そいつはまた今度

ちなみに、551を標準語で書くと、
「俺も忙しいので、今日はこのへんにしておきます
レポートを書かないとね・・・
私は何してるんだろう・・・」
と言っております。うざいと思うのですんません

あと、ここのリンクがみつめてナイトのスレに張られてたけど、
あそこに書きかけの奴がまだ残ってるんだよ・・・
テキスト打つひまがなくてつい後回しにしてるんだけど・・・
でも、恐らくみてる人いるので、公言。
「みつめてナイトスレの書きかけの奴は7月中に書き終わる。」
うん。これでよしと。
554ボケコニアン:2001/07/06(金) 01:43
>>552
以前の反省踏まえてテキスト打ってコピペにしたんだけど・・・
申し訳ない
555552:2001/07/06(金) 02:02
>>554
たまたま居ただけです。
深夜にたまたま出かけたコンビニで偶然知り合いにあったようなもの。
気にすんねい。
続き物は前回(もしくはこれまで)のリンクを貼っといてくれると嬉しい。
週末うぷ
期待していいのかな。
558星空のメッセージ(1):2001/07/07(土) 23:07
「笹の葉さらさら、軒端に揺れる……っと♪ うん、これでよし!」
 野球部の部室って、だいたいどこでも殺風景なものだけど……といっても、ひびきの
高校と、ここ大門高校のしか知らないけど……でも、今日はちょっぴり違う。
 なんたって今日は七夕だもん!
 そんなわけで、部員のみんなに書いてもらった短冊が、笹の葉と一緒に風に揺れて
いる。最初はみんな子供っぽいってバカにしてたけど、結局みんな書いてくれたの。
……願い事は、やっぱりっていうかなんというか、野球の事ばっかり。だって、もうすぐ
甲子園だもんね。
 だけど。
 一枚だけ、そうじゃない短冊……私の書いたのが、隅っこにこっそりぶら下がってる。
『あの人と   になれますように。佐倉楓子』
 空白の部分に入る言葉は……ナイショ。だって、恥ずかしいもん!
 空はもう暗くなりかけてた。雲一つない空に、星たちがきらきらと輝き始めてる。
(……あれ? 流れ星?)
 空に一筋の尾をひいて、小さな輝きが飛んでいく。それを一瞬ボーっと眺めてた私は、
あわてて両手を組み、小さく口の中で願いごとを唱えた。
「あの人に会えますように。あの人に会えますように。あの人に会えますように」
 さ……三回言えちゃった。
 それでも、流れ星はまだ消えてなかった。それどころか、どんどん大きくなってきてる
ような……き、気のせいだよね。まさかこっちに落ちてきてるなんて……そんなことある
わけないよね。
 輝きが大きくなってくる。どんどん大きくなって……そして……。
 ずぅぅぅぅん!!
「きゃあっ!」
 ものすごい音がして、私はとっさに目を閉じてしゃがみこんだ。
 目を開けたとき、そこには黒くて丸い“何か”が、地面にめりこんでた。
 大きさは……野球のボールより、ちょっぴり大きいぐらい。よくみると、色はすこし
紫がかった黒……アメジストみたいにかすかに透き通ってるみたいにも見える。
 ――これ、さっきの流れ星なのかな?
 まさかね。あんまり詳しくないけど、流れ星って、“タイキとのマサツ”とかのせいで
燃え尽きちゃうんでしょ?だったら、ものすごく熱くなくちゃいけないはずだけど、これは
せいぜい焼きたてのピザぐらいの熱さだもの。
 ……じゃ、なんだろう?
559星空のメッセージ(2):2001/07/07(土) 23:07
 そんなこんなで、帰りはすっかり遅くなっちゃった。暗い夜道を、私は一人、ちょっぴり
急ぎ足で歩いていく。
 それにしても――。
 カバンの中から、さっき拾った不思議な玉(結局持ってきちゃった)を取り出して、
しげしげと眺めた。
 これ、どうしよう? 落し物だったら、交番に届けた方がいいのかな?
「見つけたわ」
「……え?」
 突然後ろから声をかけられて、私はびっくりしながら振り向いた。
 立っていたのは女の子だった。多分、私と同じぐらいだと思うけど、目つきが鋭いせいか、
なんだか年上っぽくも見える。体の線を強調した服装(……ちょっぴりうらやましい)の上
から、なぜか白衣を羽織っていた。……暑くないのかなぁ?
 その女の子は、私をにらむような目つきで見ながら、こう言った。
「おとなしくそれを渡しなさい。素直に渡せば、危害は加えないわ」
 え?
「あ、あはは……なんだか映画の台詞みたい……」
「……冗談だと思っているわけね? どう思おうとあなたの勝手だけど、とにかくあなたに
選択肢はないわ。それを渡すか……さもなければ」
 真夏だというのに、背中から冷や汗が吹き出た。……どうしよう。映画なんかだと、こう
言う事言う人ってたいてい悪者だよね?
 玉を抱きかかえる手に力がこもった。この人に渡しちゃいけないって、そんな気がした
……怖いけど。
「……そう。そう言うつもりなら、こちらにも考えがあるわ」
 女の子は、右手を空に高々と掲げて叫んだ。
「いでよ! 真・世界征服ロボ!」
 その声と同時に、彼女の後ろの地面が、もこもこと盛り上がった。地面を割って現れた
のは……
「うそ……」
 ……弟がよく見てるアニメみたいな、大きなロボットだった。
「ロボ! スタンビーム発射!」
『ま゛。』
 次の瞬間。
 カミナリみたいな光が閃いて、私の意識を真っ白にした。
560星空のメッセージ(3):2001/07/07(土) 23:08
 次に気がついたとき、私は小屋みたいな所にいた。
 目を上げると、何台かのコンピュータや、なんだかよく解らない怪しげな機械が、複雑な
配線で接続されていた。その中心にあるのは、あの不思議な黒い玉で、やっぱりこれも、
ごちゃごちゃとコードが絡み付いている。
 さっきの女の子もそこにいた。コンピュータの画面に向かって、なにやら熱心に操作してる
みたい。
 私は自分の手足を確認した。ほら、映画やドラマだと、手足が縛られてたりする場面でしょ?
だけど、別にそんなことはされてなかった。そんな事しなくても、さっきみたいなすごいロボット
があるから、どうせ逃げられないって思ったのかもしれない。
 女の子は、まだコンピュータをいじってた。
「ふふふ……ついに我が物になるわ。宇宙の神秘、恐るべき異星の叡智が……」
 そんな事をぶつぶつつぶやきながら。熱中しすぎて、こっちには全然気づいてないみたい。
 ……今なら逃げられるかも。
 できるだけ静かに、私は立ち上がった。足音を殺しながら、出口のドアに近付いていく。
そーっと、そーっと、そーーっと……。
「きゃあっ!?」
 配線の一本につまづいて、私は派手に転んだ。こんなときでも、やっぱりやっちゃうんだ、
私ったら……。
 女の子は振り返って、ものすごい形相でこっちを見た。
「見たのね」
561星空のメッセージ(4):2001/07/07(土) 23:08
「み、見てないっ! 私何にも見てないし聞いてないよっ!」
「この秘密を知られた以上、ただで返すわけにはいかないわね」
「だから秘密なんて知らないってば!」
「そもそも、この球体は……」
「いや、だから説明されなきゃなんだか解らないし……」
「黙って聞きなさい!」
「……はい」
 ……本当は話したいんじゃないのかな、この人……?
「この球体はね、驚くべき事にこれ単体で恒星間を航行できるのよ。しかも相対性理論を
超越した超光速でね」
「え? こうせいかん……そうたいせい……何?」
「……仕方ないわね、あなたのような愚民にも解りやすく説明してあげるわ。要するに、
星から星を、光より速く飛ぶ事ができるのよ」
「星から星……って、もしかして宇宙人が作ったの、これ!?」
「その通りよ。でも、どうせなら異星人と呼びなさい」
「な、何のために?」
「何らかの情報を伝えるため、つまり手紙のような物と思われるわ」
「それがどうして地球に落ちてくるの?」
「そこまでは解らないわ。何らかの超自然的な、イレギュラーな力が働いたのかも……。
ふふふ……私にとっては千載一遇の幸運だわ。これほどまでのオーバーテクノロジーを
駆使して伝えられる情報……素晴らしい、素晴らしいわ」
 あ、あの……目がすわってるんですけど……。
「その秘密を解き明かせば、世界征服のための貴重な戦力になることは疑いないわ。まさに
この私、紐緒結奈にこそふさわしい……くく……くくくく……」
 ううっ、その笑い方、怖いよぅ……
 その時、コンピュータから「ピッ」という音がした。画面を見ると、さっきまではよく
解らない数字や文字が画面を流れてたんだけど、それが止まってた。
「ふっ、解析が完了したようね。さぁ、いよいよよ……あなたも、歴史的瞬間に立ち会える
事を感謝する事ね」
 そう言って、その紐緒とかいう女の子が、キーボードの一番大きなボタンを押すと、小さな
スピーカーから、無機質な声が流れ始めた。
562星空のメッセージ(5):2001/07/07(土) 23:09
『標準暦1D74C、星間座標6A960Bより94A523へ送信。
 身体状態は良好だろうか、<発音不能な固有名詞>。
 君が琴座ベガ星系に移住し、恒常的接触が不可能になってから、575標準時間単位が
経過した。
 だが、君の事は、1標準時間単位さえ忘れた事はない。
 君の残した<翻訳不能>も成長している。それを見るたびに私は、君の事を思い出す。
そろそろ第2次<翻訳不能>の季節だ。私は、美しい<翻訳不能>を観測できる事を期待
している。
 もうすぐ<翻訳不能>も終了する。そうしたら、また<発音不能な固有名詞>に二人で
行く事を希望する。だから、君も期待して待っていて欲しい。
 ……愛している。
 例え、1Bかける16の33乗星間単位の距離が二人を隔てたとしても。
 君の事を永遠に愛している』

 そこで、コンピュータは「再生終了」の文字を出して止まった。
 ……長い長い沈黙。
「あ、あの……もしかしてこれって、宇宙人さんのラブレター……?」
「く……くくく……ふふふっ……あははは……あははは」
 彼女は笑い出した。おかしくてたまらないって感じで、ずっと笑い続けた。
「あははは……くだらない……実にくだらないわっ!!」
 彼女は、接続されていたコードを乱暴に引きちぎり、黒い玉をわしづかみにした。
「もうこんなものに価値はないわ。私の手で処分する!」
「だ……だめぇぇぇぇっ!!」
 ……後から考えたら、自分でもよくあんな大胆な事をしたと思う。
 私は、思いっきり勢いをつけて、彼女に体当たりした。
「!!」
 彼女の手から転げ落ちた玉をつかんで、私は全速力で逃げ出した。
563星空のメッセージ(6):2001/07/07(土) 23:09
 逃げたのはいいけど、どうしよう!?
 これ、相手の宇宙人さんに届けるためには、また宇宙に打ち上げないとダメなんだよね?
えーと、NASA……はアメリカだよね。日本なら種子島だっけ……でも、きっとロケットの
打ち上げって高いよね。何千万とか何億とか。
「ロボ! 彼女を食い止めなさい!」
『ま゛。』
 背中の方から、ずしん、ずしんと足音を立てて、あのアニメみたいなロボットが追いかけ
てくる。
 とっ、とにかく後の事は後。今は逃げなきゃ!
「ロボ! 独裁ミサイルシャワー!!」
『ま゛。』
 後ろからひゅるひゅると風を切る音がする。嫌な予感がして、私は身を伏せた。すると、
私の頭の上をたくさんのミサイルのようなものが通過していって……ずっと先にあった
小さな倉庫を木っ端みじんにした。
 あ、あんなの当たったら死んじゃうよぉ!
「ちっ、運がいいわね。ならばこれはどう!? 君臨プラズマボール!!」
「きゃあああっ!?」
「かわした!? なら、絶対専制ソニックカッター!!」
「きゃあああああっ!?」
「ええい、ちょこまかと小賢しい!! ならば世界征服ハイメガキャノン!」
「きゃあああああああっ!?」
 ……ぜんぶ避けられたのは、奇跡と言っていいと思う。人間、命かかってると、何でも
できるもんだね……。
 で、でも、もう限界……。ああ、やっぱりもうちょっとダイエットしておくんだった……。
 ふらつく足が絡まって、私はそこに倒れこんだ。手を離れた黒い玉は、ころころと地面を
転がって、そして……紐緒という人の足元にたどり着いた。
564星空のメッセージ(7):2001/07/07(土) 23:10
「ずいぶんとてこずらせてくれたわね」
「だ、だめ……この人の想い、届けてあげなくちゃ……」
「あなたのたわごとに付き合う時間はないわ。ロボ、これを」
『ま゛。』
 彼女がかかげた黒い玉を、ロボットはどこかうやうやしい仕草で受け取った。
「行くわよ……服従ドリルパンチ・超々長距離航行モード準備。増槽システム展開、プロペ
ラント充填130%」
 黒い玉を掴んだまま、ロボットが右手を空高く掲げると、腕の周りが複雑に変形していく。
一体何をするつもりなんだろう……止めたいけど、もう体が動かなかった。
「腕部自律航行システム起動。琴座ベガ星系へのフライ・バイ航路算出後、速やかに射出
フェイズへ」
 え?
 琴座ベガ星系って、確か……。
「カウントダウン開始。10・9・8……」
 ロボットの腕の周りから、白い煙がもくもくとあがり始めた。これって、もしかして……。
「……4・3・2・1・ランチ!」
 どうっ! というものすごい音がした。
 ロボットの右腕は、肩の辺りから切り離され、そのまま空の彼方へと、白い尾を引いて
飛んでいった。
 満足そうな顔で空を見上げる彼女に、私は訊いてみた。
「……無事に目的地までたどり着けるのかな?」
「太陽系の引力圏さえ脱すれば問題はないわ。後は自力で予定航路に復帰できるはず……
そこまでのフライ・バイ航路は完璧よ」
 そこまで言って、彼女は『しまった』という表情になった。
「紐緒さんだっけ。えっと、もしかして……」
「……かっ、勘違いしないで欲しいわね」紐緒さんは言った。「あれが私の敵の手に渡れば
厄介な事になるわ。そうなる前に、宇宙の果てに葬り去った……それだけよ」
 矛盾してる、と思った。だって、さっき「こんなものは無価値だ」って言ったのはこの人
自身だもん。
 だから、たぶん……彼女は最初からこうするつもりだったんだと思う。
「あなたも、普通なら不敬罪で処罰する所だけど、特別に許してあげるわ」
 紐緒さんは、ぷいと顔をそむけて、もう一言だけ言った。
「今日は、特別な日だから」
565星空のメッセージ(8):2001/07/07(土) 23:10
 家にたどり着いたときは、もうすっかり遅い時間になっちゃってた。おかげで、ママに
こってり絞られちゃったけど……まさか今日の出来事を説明しても信じてもらえないだろうし、
それに心配してくれたんだもんね。だから、長〜いお説教を、私は黙って聞いてた。
 で、ようやく小言から開放されて、部屋に戻ろうとした時、ママは思い出したようにこう言った。
「そうそう、ひびきののお友達から電話があったわよ」
「えっ!?」
「久しぶりに声を聞きたくなったんですって。今日は遅いから、明日かけてあげなさい」
「うん!」
 私はとてとてと小走りに階段を上がり、自分の部屋の窓を開けて、満天の星を見上げた。
今ごろ、あの人も同じ星を見てるのかな……と思ったら、心がじんとあったかくなった。
 ひびきのと大門……今はちょっぴり離れちゃったけど、だけど、こうして同じ空の下で
つながってる。
 寂しくなる時もあるけど、平気だよ。あの、星と星を隔てた二人だって頑張ってるんだもん。
 それに……
 きっといつか、願いは叶うもん!
                                   <END>
566星空のメッセージ(おまけ):2001/07/07(土) 23:11
「やっほー、みほぴょん、おっはよー!」
567星空のメッセージ(おまけ):2001/07/07(土) 23:11
「おはようございます寿さん。今日はご機嫌ですね」
568星空のメッセージ(おまけ):2001/07/07(土) 23:11
「うん! だって〜、昨日、とってもいい事があったんだ〜!」
569星空のメッセージ(おまけ):2001/07/07(土) 23:11
「そうですか、それは良かったですね。どんな事ですか?」
570星空のメッセージ(おまけ):2001/07/07(土) 23:12
「えっとね、七夕だからお星様見てたの。そしたらね、流れ星が見えたから、願い事いったんだ〜!」
571星空のメッセージ(おまけ):2001/07/07(土) 23:12
「どんなお願いですか?」
572星空のメッセージ(おまけ):2001/07/07(土) 23:12
「美幸にラッキーが訪れますように、って。でも〜、ちょっと気になるんだけど〜」
573星空のメッセージ(おまけ):2001/07/07(土) 23:12
「はい?」
574星空のメッセージ(おまけ):2001/07/07(土) 23:13
「お願いしたとたん、こう、きゅ〜っと流れる角度が変わったんだけど、なんでなのかなぁ?」
575:2001/07/07(土) 23:14
「星空のメッセージ」>>558-565 (回しネタ兼おまけ:>>566-574)
ときメモ1&2より佐倉楓子&紐緒結奈です。なんとか七夕に間に合いました。
七夕といえば離れ離れになった恋人が出会う日、そして我らが閣下の生誕記念日。
なんせ閣下だったらちょっとぐらい無茶しても大丈夫だろう! ということで、
すこしふしぎ、略してSF(藤子F不二雄先生リスペクト!)な話になりました。
まぁ、たまにはこんなマンガチックな話しがあってもいいよね?
いいです。
>>575
お疲れサマ〜。
578名無しだけのため生きるのだ:2001/07/09(月) 16:44
>>575さん
>『ま゛。』
(爆笑)

七夕−遠距離恋愛−佐倉さん
  └紐緒さん       ですか。いつもながらプロット凝られていますね〜。


あと、板違いながら
>藤子F不二雄先生リスペクト!
同意!!
579ボケコニアン:2001/07/10(火) 02:18
ここで終わっても区切りよかったはずだけど、
ここの読者が俺に求めてるのはこれしかないと思ったから書いとく
前レスは513から。では感動(するのか?)のラスト

しばらくの間、俺は光の繭のような感触を感じていた。
うなじから、なつかしいにおいと光の使っているシャンプーの香りが
鼻腔にはいってくる。
光の息が苦しいかもしれないと思いつつも、
それらは俺をひきつけて、
光を思いやることをつい忘れさせてしまった。
しばらくしてようやく、
俺の理性が、俺の顔を光の唇から引き離した。
光は、幸福感のためか、目がきょとんとなっていた。
「ね」
不意に、光が俺に声をかけた。
「私を、受け取って」
突然の返事に、俺は戸惑った。
死ぬほどの恥辱を受けた上に、好きでもない男に・・・
俺にはそんなことはできなかった。
「そんなこと・・・できない・・・よ」
それを聞いた光は、とても悲しそうな顔を見せた。
きっと自分が汚れている、と思ったのだろう。慌てて弁解せざるをえなかった。
「そうじゃないんだ。ひかりを・・・傷つけたくはないんだ」
「ううん、今キスしてもらったとき、こころからほっとできたの。
だから、きみが・・・わたしをもっと安心させてほしい」
そういうと、光は顔を真っ赤にした。
「女の娘に、そういうこといわせちゃ・・・いけないよね・・・
1分間だけ、時間を・・・くれ」
光は、俺を完全に信頼しているから、こんなことをあえて言ったんだ。
そんな光の気持ちに、俺はどれだけこたえることが・・・
自分と、光との気持ちが葛藤した。
自分の心臓が、激しく動いているのが分かった。
オーバーレブで壊れてしまうのではないかと思うくらいに。
そして・・・俺はある決断を下した。
580ボケコニアン:2001/07/10(火) 02:20
ひかり・・・後悔、しないか?」
そう、俺は光を受け取ることにしたのだ。
すれ違いが生んでしまった互いの心の傷。
もうすれ違うことはやめにしよう。
お互い、ありのままに、正直な二人でいたい−
光はそっとうなずいた。
豚がどんなふうにして光にせまったのかは知らないが、
絶望と恐怖、恥辱。光は俺を残して去ってしまうほとのことをされたのだ。
体験が全くない俺に何ができるか分からないが、
できるかぎり光にやさしくすることに努めた。

まず最初に、俺は部屋のカーテンを閉めた。
真昼にこんなことをやるのは不自然だけれども、
見られることは光にとって苦痛のはずだ。
暗くなったところで、俺は右腕で光の肩をきゅっと抱いて、
そっと光のベッドに二人横になった。
まず、俺は光の髪をなでつづけた。
昔はよく引っ張って泣かせてたけど、いとしい人のものにそんなことはできない。
光が心地よさそうな表情を見せる。俺は何回も光の髪をなでつづけた。
「君の手って、あったかいんだね」
「そうか?」
「うん。なんだか、太陽のように、ぽかぽかしてる」
「ありがとう」
すべりだしは順調のようだ。でも、ここからが本番だ。
まだ傷のいえていない光の中へ、どうやっていれればいいのか?
俺は思案しながら、そっと光の下着に手をかけた。
弾力のある光の太股の感触が、手に伝わってくる。
スカートだけというのは感触が悪いだろうが、
それでもあのことを考えると、こっちの方がいいと思った。
581ボケコニアン:2001/07/10(火) 02:21
思案を重ねたあげく、俺は自分の手のひらをそっと舐め始めた。
そして、自分の息子を取りだし、舐めた手でなでまわした。
これなら少しは痛みが軽減されるだろう。殺菌効果もあるはずだ。
俺は舐めた手を、ポケットに入っているハンカチでふき、そのまま
息子の根元にあてがった。
「ひかり、痛かったら・・・言えよ」
「うん」
そう言うと、俺はスカートの奥にそっといれ始めた。
「うぅっ」
光が声にならない悲鳴を上げた。
さすがにまだ傷が癒えていないのにこの行為は厳しいはずだ。
でも、途中で止めると光をますます傷つけるだろう。
俺は仕方なく続けた。
少しづつ、俺は光の中へはいってゆく。
きっと歯を食いしばり、涙を浮かべながら今の行為に耐えているのだろう。
暗くて・・・よかった。
ほどなくして、俺のものが完全に入った。
ここまでできたのが、お互い奇跡といってもいいだろう。
俺は、傷を悪化させないように、できるだけゆっくりと腰を動かし始めた。

5分ほど腰を動かしつづけただろうか。
不意に光が、「あっ」という声を漏らした。
俺は慌てて、光の中から引き抜いた。
「どっ、どうした」
「わかんない。でも・・・なんか今、ふっと体が浮いたような気がして・・・」
直感で光がイったのだろうと分かった。
「だいじょうぶか?」
「う・・・ん。優しくして、くれたから」
「ひか、り・・・」
おれたちは再度、唇を重ね合った。
582ボケコニアン:2001/07/10(火) 02:23
2時間もかかったよ・・・
1500文字ないのにこれだけか
俺が師と崇める山田一氏に近づけないな、これでは

ねよねよ
お疲れやす
ご苦労様です。
時間と分量は人それぞれだから気にしなくてもいいと思う。
多けりゃいいってもんでもないし。
585名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/11(水) 19:32
>>524であったように鬼畜系行きます。
苦手な人はしばらく飛ばしてくださいね。
586鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:33

「ちょっと寄り道していこうよ」
「うん、いいわよ」
私は笑顔で返す。私のために高価なバッシュなんて買ってくれたんだもん。
少しくらい付き合ってあげなくちゃね。
「え〜と…」
クスッ。助け船、出してあげよっかな。
「臨海公園に行かない?」
「うん、そうしよう」

彼とは最近親しくなった。勇次君とはまた違った感じのお友達。
日の暮れかけた臨海公園は風も強くなくて、なんだかとてもいい感じ。

彼とベンチに座った。いつもよりちょっぴり近くに彼を感じる。
それが全然不快じゃない。
「森下さん、新しいCDなんだけど、聴いてみない?」

彼とは音楽の趣味も合うみたいなんだ。
屋上で歌ってるのを見られた時はちょっぴり恥ずかしかったけど
おかげで音楽の話でも盛り上がれるのは嬉しいかな。
「え、何々?誰の?」
「…秘密だよ。とりあえず聴いてみて」
「うん、わかった」
私に秘密を持つなんてちょっと生意気だけど
これを聞いたら教えてくれるのよね?
587鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:33
私はポータブルCDプレイヤーを開けて
彼が渡してくれたCDに入れ替える。
何?この素っ気ないCD。
MR.DATAってバンド名なのかしら?それともアルバム名?

首を捻る私に彼は優しく
「あぁ、それはCD-Rっていうんだけど、
自分でCDの曲を入れ替えたりオリジナルを入れたりできて…」
「えっ、自作曲なのっ?」
「…ま、まぁ…厳密には、リミックスみたいなものだけど」
ふぅん、彼にはそんな趣味もあったんだ。

「これ、誰かに聴いてもらったの?」
「いや…まだだけど…」
「ふふっ、よろしい」
聴かせてもらうのは私が初めて、ってことよね。
なんか嬉しいな。

再生ボタンに指を伸ばす私を見る彼の目が、なんだかちょっと怖い。
「…どうしたの?」
彼は慌てた素振りで
「い、いや、何でもないよ」
って言うんだけど、明らかにいつもと違う。
588鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:34
変なの。
でも自分以外の人に聴いてもらうってことで緊張してるのかもね。
もしかして彼の声で愛の告白とか入っちゃってたりして?
彼だったら…ちょっと考えちゃうかなっ。

再生ボタンを押す。
彼の喉がゴクリと動くのが見えた。
それを見たら私もなんだか凄く緊張しちゃって、
鼓動の速さを感じながらイヤホンから流れる沈黙に耳を澄ませる。

一秒、二秒、三秒、何も聞こえない。
四秒、五秒、六秒、あっ、何か聞こえてきた。ボリュームを少し上げる。
「ピーポーピーポーピーポーピーポー」
えっ?これはっ?
救急車っ!!
腕がわなわなと震える。
膝ががくがく震え出す。
目元が熱くにじむ。視界がかすむ。
身体が…動かなくなる…。

「ど、どうしたの、森下さん。えっ、動けないの?」
心配そうな彼の顔が近づく。
「う…うん…」
精一杯振り絞ったけど、蚊の鳴くような声しか出ない。
589鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:34
「じゃあ、送ってあげるよ」
彼の声は場違いに弾んでいた気もするのだけれど
きっと顔面蒼白なのだろう私は、
もう声を出すことも出来ずにただ首を縦に振るだけだった。
まるで首から下の神経が繋がっていないようで
腰を上げることが出来ない。
この音を聞いてたくなんかないのにイヤホンを外すことさえ出来ない。
耳から聞こえてくるのは救急車の音。遠ざかったと思うと、また近づいてくる。
お願い、早く次のトラックになって。いい加減に曲、始まってよ。

彼が手をあげてタクシーを止めた。
私の腰を抱くようにして立たせ、タクシーの後部座席に連れてきてくれる。
タクシーの席に座った瞬間、左耳のイヤホンが外れた。
彼は黙ってイヤホンを直してくれる。
私はそれを拒めない。
嫌なのに。この音聞いてたくないのに。

彼が行き先をボソボソと運転手に告げる。
頭が働いてない。イヤホンから流れてくる音で、彼の言ってることが聞きとれない。
でもタクシーは動き出す。
590鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:35
角を幾つか曲がって…思ったより早くタクシーが止まった。
正確な時間はわからないけど、そんな長い時間じゃない。
彼がお札一枚で会計してる。
ほらね、やっぱりたいして走ってないんだ。

ここは私のうちじゃない。団地…あぁ、そうか、彼の家のあるところだ。
彼に手を引っ張られて、私はタクシーから出る。
私は、彼が腰を抱えているのに合わせて足を前に出すだけ。
今何階を歩いているのかすらわからなかった。


あれっ、私、いつの間に靴を脱いだのかな。
気付いたら私はリビングを靴下で歩いていた。
ここは彼の家だってこと、それはわかる。
ねぇ、休ませてよ。
エレベーターを使って上がったのに、私はひどく消耗してた。

私の目の前で扉が開く。
なんでその扉に特別な意味を感じたんだろう。
エレベーターホールの入口や、彼の家のドアが開いたことは
全く記憶に残っていないのに。
591鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:35
扉の隙間から漏れる赤い光がパッと目を射したから
私は反射的に目を瞑ってしまった。
次に目を開いたときには扉が開ききっていて
部屋の全景が網膜に焼き付く。
真っ先に目に入ったのが部屋の両隅に置かれた工事現場にあるランプ。
コンクリの土台に黄色い支柱が刺さってて
一番上で赤い灯がグルグル回ってる。

多分そこは彼の部屋なんだろう。
ありふれた学習机と椅子、本棚、洋服ダンス、壁に沿ったベッド。
物は少ないことが特徴の、何処にでもありそうな部屋。
でもありふれていない回転灯。

遠ざかり近づき、でも絶え間なく続く耳の「ピーポーピーポー」
どちらを向いても目に入る回転灯。
電気が点いていないから、目を瞑っても回転灯の赤い光が目を刺激する。
「…やめてよ」
私の声は彼に聞こえただろうか。

回転する赤い光が一定の間隔で正面から私の目を差す。
背中に回った彼の腕に力が入る。
私の足はその力に逆らえない。
592鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:36
腰に添えられていた彼の手が離れる。
私は自分の力で身体を支えることも出来なくて
膝からその場に崩れるだけ。

部屋の扉を閉め、彼が鍵をかける。
電気がついていないから、明かりは部屋の四隅に置かれた回転灯だけ。
彼が私のイヤホンを外した。
音は少し遠ざかったものの、すぐにまた近づきはじめる。
理由はすぐにわかった。
彼の部屋のコンボからも救急車の音が響いてたから、だ。
「イヤホンだと暴れたら外れるからね」
直に耳に入らないのだから、イヤホンよりはスピーカーの方がまだマシだった。
でも、いったいなんでこんな目に遭わなくちゃならないの?
私、あなたに何か悪いこと、した?
……これから、私が暴れるようなこと、するわけ?
私の目に新しい涙が湧いて、溢れる。
593鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:36
凄い脂汗で、制服が背中がべったりくっついてる。
膝にも、腰にも力が入らない。
全身がガクガクする。
「あ、床での方が良いんだ、変わってるね、森下さん」
そう言いながら彼が私のスカーフをほどく。
しゅるっと引き抜かれる赤いスカーフ。
彼はセーラー服の裾に下から手をつっこみ、服を脱がしにかかる
私は彼の動きにさしたる抵抗もできず
上着が上がるにつれて、腕も上がってしまう。
まるで脱がされるのを受容しているみたい。

後ろに回った彼がブラのホックを外す。
直に触れた指の感触に背中がぞくっとした。
肩紐が外れる。
……また抵抗できなかった。
こんなに嫌なのに。
594鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:37
「何?期待に震えてくれてるの?」
どうやら私は震えているらしい。
別に不思議じゃなかった。
その理由には心当たりがありすぎたから。
彼が私をじろじろ見る。
赤い光に当てられた彼の顔は、お日様の元でのそれとは大違いで
彼の小狡くいじけた本性を剥き出しにしていた。
それを信じたくない気持ちと、彼はそういう人だったかも、という気持ちが
私の中でないまぜになる。

気持ち悪い。
喉が詰まったみたいな感じ。
赤い光線は針になって露出した肌を刺すようで、当たる度に痛い。
身体は相変わらず全然力が入らなくて
胸を隠すことも、涙と鼻水を拭くことも出来なくて
精一杯身体中に力を入れようとしても、顔がくしゃくしゃになっただけだった。
595鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:37
私の肩を両手で掴んで、彼が私を仰向きに倒す。
私が抵抗できないことをわかってるのだろう。
思ったより優しい動きだった。
尻をついて座っていた私の脚は、
反動で体育座りのような形に跳ね上がる。
少し立てた膝にスカートがくっつく。
太腿もこんなに汗ばんでる。
まるで身体の水分が全部汗になって流れていってしまうようで、
私の喉はカラカラだ。

身体の左側に膝立ちの彼がそびえている。
夏服のYシャツが暗い部屋でひときわ赤く染まる。
ピーポーピーポーピーポーピーポー。
素っ頓狂なサイレンはやまない。
そして私は力が入らない。

寝転がってる私に彼の顔が近づく。
抵抗できない私を嘲笑うかのように、
彼は舌と歯だけでスカートのボタンを外そうとする。
いやっ。やめてっ。
腰の横にある顔を思い切り蹴飛ばしてやりたい。
だけど、実際には膝がぴくっと動いただけ。
きっと彼には私が動かそうとしたとも思われない程度に。
596鬼畜系:嗚呼茜:2001/07/11(水) 19:39
スカートを掴んだ彼の手が腿に触れる。
それがつぅっと下がっていって、腿に赤い空気を直に感じるようになる。
もはや私の身を包むのはショーツだけ。
この異常な空間では、私はあまりに無力だった。

「ふふっ。いつもの活発な森下さんからは想像もつかないね。
まるで童女みたいで…可愛いよ」
彼の視線が私の身体を上から下まで舐め回す。
やめてっ。見ないでよっ。
なんで力が入らないの、もうっ!

「ここは童女じゃないけどね」
彼の右手が私の左胸に伸びる。
反射的に身体を反らしたけれど、
そんなことで稼いだ数ミリなど
彼の手の伸びる速さの前では無に等しい。
597鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:39
彼の手が逃げる私の胸に追い着く。
親指と人差し指で下から挟み込むように掴まれて
そのままやわやわと揉まれてしまう。
心臓の近くだからか、肺の近くだからか
胸を掴まれると息を吸うのさえ一苦労で
私は死にかかった金魚のように口をぱくぱくさせる。


「さすが森下さんだね。多くの男どもの視線を集めるだけのことはあるよ」
彼が指の腹で私の乳首をゆっくりと転がす。
あまりの嫌悪感に背筋がゾクゾクする。まるで胸を毛虫が蠢いているよう。

普段なら、絶対こんなこと許さないのに。
力ずくでされても、噛みついてでも抵抗してやるのに。
なのにこの音、この光。
あの瞬間が連想されるだけで、こんなにも力が入らないなんて。
598鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:40
仰向けの私。
彼の左手がお臍を通って、人差し指と中指の二本がショーツを引っかける。
駄目っ!私は脚を閉じて精一杯力を入れる。

力は入ってくれたみたいで、
彼の腕がショーツをめくりあげながら止まる。

「森下さん、今更抵抗してももう丸見えだよ」
呆れたような響き。
そうかもしれない。
きっと私の毛もアソコも、全部見えてしまっているだろう。
そう思うと悔しさが戻ってきて、新しい涙が溢れてしまう。

「可愛いね、森下さんのマンコ」
彼が私のアソコに息を吹きかける。
私の…毛が息でゆらゆらする様を楽しんでるみたい。
私はあまりのことに本当に情けなくなって
それで胸が詰まったのか声も出せやしない。
599鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:40
そんなこと言わないで。
そんなことしないで
そんなこと…

「ほら、全部見せてよ。もったいぶらずにさ」
そう言って彼は再度左手一本でショーツを下ろそうとする。
でも私は脚を閉じる力を振り絞った。
ショーツは太股で挟みつけられ、お尻にも引っかかって
伸びるだけで一向に下がってはいかない。

彼が「ふぅ」と息をついた。
その溜め息がすぐにクックッという意地悪な笑いに変わる。
「そうそう、一つ言わなくちゃいけないことがあったんだ」
私の気に障る笑い。
この人は絶対何かよからぬことを考えてる。
警戒しつつも、胸に湧いてくる不安を自覚する。
600鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:40
彼が私の目をじっと見て、語りかけてくる。
口元には歪んだ笑みを浮かべながら。
「森下さんの従兄弟のお兄さんが亡くなったのは、
本当は交通事故のせいじゃなかったんだってね。
小学生の森下さんを自動車から助けた時には
病気が既に末期だったんだって?」
彼が嗤った。
そんなわけない。お兄ちゃんは私を庇って…死んだんだ。
彼をきつく睨み付ける。
目尻の涙はもう乾いたし、さっきだって彼に抵抗できた。
今なら赤い光線を浴びる彼にも勝てる気がする。

「おぅおぅ凄い目をしちゃって。でもおかしいと思わなかったのかなぁ?
事故の日とお兄さんの命日が半年近く違うこと」
「!」
吸いかけた息が喉に引っかかったような感触。
慌てて吐こうとして咳き込む。
「げほっ、ぅげほっっ」
何?
自分でもおかしく思うくらいに私、動揺してる。
動けないからこれだけで済んでるけど
身体がちゃんと動いたらいったいどんなリアクションになったのだろう。
601鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:41

……私が事故にあったのは残暑のきつい運動会シーズン。
お兄ちゃんが庇ってくれたけれど、それでも肘と膝は擦りむいちゃって。
おかげで運動会のアンカーを取り上げられちゃったんだ。

……お兄ちゃんが亡くなった日、
お兄ちゃんのママと私は、白衣とマスクを着けて
ただお兄ちゃんの心臓の動きを表した波形をずっと見ていた。
私が集中治療室の窓から大三角形を見つけて
お兄ちゃんの細くなった手を握って「大三角形だよ」って言ったら
今思えばお兄ちゃんには大三角形は見えなかったかもしれないんだけど
体中チューブだらけのお兄ちゃんは、目を開けて頷いてくれた。
あれはお兄ちゃんの亡くなった、午前零時間際のことで…。
…そうだ、その時見えていたのは冬の大三角形だった…。
602鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:41

「でも」と思う。
そんな頭に再び彼の声が鳴る。
嫌な声。ただでさえサイレンだけでガンガンしてるのに。
「勿論事故で重体になって半年後に亡くなる、なんて幾らでもあるけれど
彼の場合は明らかにかすり傷だったんだってね。」
そうだったのかな…そうだった気もする。
もういい。よくわからない。
だって、頭も身体もまともに働いてないんだもん。

彼の声がやまない。
やめてよ、もうやめて。いい加減に私を解放してっ。
「でも森下さんは、自分が憧れの従兄弟のお兄さんの
恋人でも何でもないのが嫌だったから、
私のために彼は死んた、彼は私のために命を捨てた、
とか思い込んでる、図星だろ?」
彼の下卑た笑い。
なんでそんなこと、あなたに言われなくちゃいけないわけ?

キッと彼を睨みつけ…ようとする。
でも、私の視界が意志とは無関係にかすんで…。
溢れてきたのは涙。
目元を伝う熱さ、口に入ると沁みる塩味、そう、これは涙。
603鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:41
お兄ちゃんが死んだのは私の事故とは無関係。
わかってた。
だけど突きつけられて初めてわかる。
私が逃げてたってこと。
何時の間にこんな空想に浸るようになっちゃったんだろ。
「永遠に手に入れられない」なら、せめて「思い出を作り替えよう」って。

「両思いだった」ことにしたかったけど、
それじゃあんまりにも現実とかけ離れてるから
「私のために死んだ」ことにした。

「私がお兄ちゃんを死なせた」から
「私のために死ぬ価値があるとお兄ちゃんは思ってた」ことに脳内変換され、
「私を死ぬほど愛していた」お兄ちゃんの像が創られる。

でも、気付いてしまった今、私を愛したお兄ちゃんってメッキは剥がれてしまった。
その地肌は、私のことを親戚の女の子としか見てくれなかった本当のお兄ちゃんの姿。
せめて妹でも我慢出来ると思った。
それが誰からも可愛がられ、少女にして女王だった私の精一杯の妥協。
でもそれすらかなわなかった。
604鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:42
私はお兄ちゃんが亡くなったのをいいことに自分に都合の良い像を創り上げ、
「悲劇のヒロイン」面をして現実から目を背けていた。
これ以上自分が傷つけられることのないように。

私は、私に誠意を込めて告白してくれた男の子たちに
とても卑怯なことをしていたのかもしれない。
そんな私は報いを受けるのが当然なのかもしれない。

回転灯の回る部屋。
彼は足側に動いて、今度は両手でショーツの左右を掴む。
彼の腕に力が入る。お尻に直接板張りの床の感触が伝わる。
下着越しの体温で温まっていたから、別に冷たくはない。
ショーツが腿を丸まりながら下りていく。
もしかしたらあんなことを聞かされたせいで、
抵抗する気力が少し失せたのかもしれない。
さっきまでみたいな力が身体に入らなかった。
605鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:42
「じゃあそろそろカラ揚げのお礼をしようかな」
カラ揚げって何のことだっけ…
わからない。よく覚えてない。
なんだか身体がフワフワしちゃって、自分のものだって実感が持てない。
ただ回転灯の赤が規則的に彼の身体を照らすのが目に映って
ただ救急車の音が聞こえるだけ。
見たくないのに目を閉じることも出来ない。
聞いてたくないのに耳を塞ぐこともできない。

仰向けの私の足が広げられ、彼の両肩に乗せられる。
私の腰の下には枕が敷かれている。
まるで彼に私の大事な部分を差し出しているよう。
赤い光に染まって、彼がニタッと笑った。


彼のが、私のアソコに当てられる。
硬い、けれど弾力がある感触が、私を現実に引き戻す。
たとえ私が報いを受けなくてはならないにしても、
どうして誠意があった男の子たちでなく彼によってされなくてはならないの?
その思いが私に再び抵抗する力を与えてくれた。
606鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:43
そんな、何でっ、どうして?
私が何をしたっていうの?
いやっ!やだっ!
今まで出なかった言葉が堰を切ったように出る。
腕を振り回して彼の頭を叩く。
でも拳にこめられた力のあまりの弱さに、我ながら愕然としてしまう。
小学生の方がきっとずっとマシなパンチを打てるはずだ。
こんなんじゃ、彼には痛くも痒くもない。
「怖いの?大丈夫だよ。女のココは男のコレをくわえるために出来てるんだからさ」
彼は右手で肩に乗っている私の両脚を押さえ、
左手は彼のものを掴んで私のアソコに押しつけている。

彼の腰が前に動くと彼のが入ってこようとするけど、
ちょっと力が入ると入口で上につるっと滑って私の中に入らない。
その度に全身で安堵の息をつく。
こんな時間が長く続かないことを知っていても。
「潤滑液が必要なのかな」
「…んがっ…けほっ、けほっ」
彼は私の口の中に指を突っ込むと、むせて咳き込む私に構わず指を濡らし
彼のにまぶす。
607鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:43
まがまがしくそびえ立つ男のアレの異形が赤い光に照らされる。
彼がその根本を私のアソコに当てたから、
まるで私には自分の股間から生えたように映る物体。

彼が腰を引く。
彼のが徐々に私からは見えなくなる。
それが急激に不安感を煽る。
「ひっ」
腰を浮かして逃げようとするが、やはり身体が思うように動いてくれない。
彼が私の足を掴んで、もう一度私を引き寄せる。
彼のが私のアソコに押し当てられる。

ミシミシミシミシッ

最初に感じたのは、熱さだった。
男性器が体外にあるのは冷やすためだ、って習ったのに
なんでこんなに熱いんだろ、それが最初の感想だった。

メリメリメリメリッ

「う…うぁぁぅぅぅっ」
次に来たのは痛みだった。
身体を半分に引き裂かれるような鋭い痛み。
608鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:44
無意識のうちに何か掴む物を探した。
でも見つからなくて、それぞれの手で逆の二の腕を掴む。
彼のが入ってくる。
これも無意識なのだろう。二の腕に爪を立てた。
そんな小細工で分散したつもりでも、この痛みはとても誤魔化せない。

耐えきれずに声が出てしまう。
「う…うっ…あがごごがっっっ」
「あ〜感激だよ、憧れの森下さんとヤってるなんて」
耳がキーンとする。
彼の先っぽが私の中に入ってる。
でもまだ三分の二くらいは残ってる。
こんなの全部入るの?
ねぇ、もうやめてよ。冗談でしょ。
でも私は冗談じゃないことも十分知っていた。

メキメキメキメキッ メキッ
彼のが前進を開始する。
「ぃぎいいぃいっ」
痛い、痛い、痛い。
もうそれしか考えられない。
「ふぅ〜っ。やっぱり締まり良いねぇ。鍛えてるだけのことはあるよ」
609鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:44
やめてよ、おマタ痛い。動かないで。動かさないでっ。
でも彼は私をしっかり押さえて更に深く侵入する。
「ふぅ…入った」
見るまでもなかった。
彼のが私の中に収まったことは、何よりも私の身体が知っていた。
私の身体を突き破って彼のが出てくるんじゃないか、という恐怖は
きっと彼みたいな人間には一生わからない。


痛くて、辛くて、悔しくて、でも無力で。
こういうのを何て言えば良いんだろう。
絶望…で良いのだろうか。
うちひしがれる私をよそに彼は腰を引いては戻し、と動き出した。
「森下さんは濡れない性質なのかな。でもマシュマロみたいで気持ち良いよ」
「ぅん〜〜〜〜〜っっ」
こっちは全然気持ちよくなんか無い。
ただ痛いだけ。
新しい涙がどんどん目尻にたまって流れる。
610鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:45
嫌、嫌、やめてっ!!
どうして?なんで?…嫌ッ!
痛い、なんで?許してよ。
嫌…嫌…痛い…嫌…

「そんなに痛いんだ」
彼が腰を止める。
私は冷や汗を流しながら頷く。

「じゃあ抜いてあげようかな」
えっ。そんな言葉が出るとは思わなかったけど、一も二もなく賛同の意を表す。
そうしてよっ。早くっ!
私はブンブンと首を縦に振る。
「ふふっ、せっかちだなぁ。わかったよ」
膨らんだ彼のがそろそろと抜かれる。
痛い。抜かれる動きでも彼のが引っかかって私はかき回される。
痛くて時々頭が真っ白になって、目に何が映ってるのかもわからなくなる。
彼はひどく残念そうに
「森下さんのアソコが絡みついて、行くなって言ってるんだけどなぁ」
なんて言ったりする。
この卑劣漢。鬼。強姦魔。
でも口は呼吸するだけで精一杯。言葉にならない。
「わーったよ。抜く抜く」
611鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:45
彼のが抜かれていく。
内臓が鉄の棒でかき回されたような感じ。
痛みはまだ感じるけど、どうにか終わってくれた。
これで…終わったんだ。

「ほら立って」
股間がズキズキする。
膝はまたガクガクしてる。
立てるわけないでしょ。
そんな私の腰を後ろから抱くようにして、彼は私を無理矢理立たせた。
「ほら、見てよ、森下さん」
彼の指が私の太腿をなぞる。二筋の血が股間から流れていた。

彼は指で絡め取って
「うん、これが処女の味なんだね」
さも美味しそうに舐める。
最低。なんでそんなこと出来るの?
612鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:46
彼が腰に回した手を離す。
それだけで私はよろめいてしまう。
お腹に力が入らない。
ただ立ってるだけでこんなに体に力を入れてるなんて知らなかった。
力を入れるとまた痛みが戻ってきちゃって
結局私はズルズルとその場に崩れ落ちる。

二の腕には自分でつけた、ぞっとするような爪の跡
なんて情けない私。
こんな卑怯な男に処女を奪われてしまって。

でもまだ終わりじゃなかった。
「えっ」
その場に座り込んだ私は、今度は後ろから押されてうつぶせになる。
こんな時でも手をついて、顔が地面に当たらないように出来るものなんだ。
でもそんなことは何の慰めにもならない。

太腿が床とほぼ垂直になり、私はお尻を高々と彼に向ける。
そのまま何もなく数秒間の時間が経過する。
血塗れのアソコが彼の目に触れているのだろう。
もう死んでしまいたい。
こみ上げてくる悔しさ、既に行われてしまったことへの諦め、
そしてどうしようもない無力感。
血がドクドクいって回ってる。胸が痛い。
きっと顔は真っ赤になってるんだろう。
613鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:46
唐突に彼が私のお尻を割り開く。
や、やだっ。そんなところ。
何しようとしてるのよっ。

彼のが私のお尻の穴に押し当てられる。
えっ、ちょっと待って。
やめてよ、そんなことされたら死んじゃう。

お尻を抑えた彼の手に力が入った。
お尻に当てられた彼のに圧力がかかった。
「やだ…そこ、違うっ」
さっきはミシミシ、メリメリだったけど、
今度はバキバキッって感じだった。
全ての障害物を薙ぎ倒す勢いで彼のが私の中に入ってくる。
「あ…あががっ…」
下から突き上げてくるものに押されて、胃が私の口から出るんじゃないか、と思う。
今度は掴む物も何もない。
もう頭は真っ白で、何が目に映ってるのかもわからない。
耳もおかしくって、耳の中から何か出てきそう。
喉がからからで、吸った息も肺に行くまでに吐いてしまう。
614鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:46
苦しい。
私からは見えないけど、彼のは私の中に深々と刺さっているのだろうか。
「ははははっ、森下さんのお尻の処女も俺のものだ〜」
彼の声が何処かで聞こえるけど、言葉として認識できない。

さっきよりはゆっくりだけど、かき回されるような動きに私の頭はおかしくなって
ただ息することだけに全神経を注ぐ。
呼吸を楽にするために顎をあげると、赤い光が目を刺す。
回る赤い灯…。お兄ちゃん…。


「うん?」
彼の動きが止まる。
彼のものがそろそろっと出される。
膨らんだ彼のものが出てくるだけでも凄く痛い。
「森下さんは後ろにも膜があるのかなぁ、血が出てるよ」
彼ので何処か切れたんだ。
そんなこと分かりきってるのに、彼はことさらにあげつらう。
「あはははっ、こいつは本当に後ろの処女ももらった、って気がするなぁ」
彼がまた動き出す。
私の中はかき回される、というより粉々に打ち砕かれる。
身体も、心も。
615鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:47
ジュッ、ジュッ。
彼の腰が私のお尻に打ちつけられる。
そんなものを入れるところじゃないから、
ひどくゆっくりとしか彼は動けないのかもしれない。
私の中がえぐられるこの上ない気持ち悪さに、
噛み殺せない不快感に
私はただ歯を食いしばってこの時が終わってくれるのを待つ。

「ハァ、ハァ、俺もう駄目だ、イクよ」
彼が腰の動きを少し速める。
私の身体は麻痺してしまったようで、
さっきまでのような鋭い痛みは感じない。
ただ鈍い痛みと私の中をうごめく嫌悪感への吐き気をこらえる。
もういい…これできっと終わる…。
それだけが私をこの世界に繋いでいた。

ぴゅるるるっ、どくっ、だくっ
直腸にひときわ熱い塊がぶつかる。
それが私の身体に沁み渡り、汚していく

よくもこんな…ひどい…悔しい…やっと終わった。
616鬼畜系:嗚呼茜:2001/07/11(水) 19:48
彼は動けない私の肛門から溢れる精液と血を拭いて
それから鼻水や涙まで熱いタオルでぬぐった。
まるで手慣れた作業のようで、私は凄く嫌だったのだけれど
今更些細なことだって思えて、抵抗する気は起こらなかった。

彼が私に服を投げつけてよこす。
私はノロノロとそれに身を包んだ。
服を着る、ただそれだけのことに20分くらいかかったかもしれない。
おマタやお尻だけじゃなく、身体全体が痛くて、
腕を上げる度、腰を上げる度にジンジン、ズキズキして
心臓が鳴る音で、身体中が痛かった。
617鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:48
バタン。
彼の家の扉が閉まる。
駅に行かなくちゃ。
私が考えられることはそれだけだった。

すれ違う人たちが私を避けて通る。
あぁ私は汚されたんだ、皆それがわかるんだ。
こんな汚れた私には、もう何の価値も無いんだね。

おかしいよね。
ほんの二時間前までは、彼と一緒の時間は一日で一番楽しい時に思えてた。
一緒に帰りたくて校門で待っちゃうくらい、彼に会いたかった。
なんで私がこんな目にあわなきゃいけないの?


おマタとお尻がジンジン痛い。
髪も服もきっとくしゃくしゃなんだろう。
そんなことを思うと堪えていた涙が浮かんで、顔までくしゃくしゃになる。

駄目、泣いちゃ駄目。泣いてしまったら、
ここでうずくまってしまったら、きっと家に帰れない。

視界はぼやける。
頭がクラクラする。
でも重い体を引きずって歩く。
618鬼畜系:森下茜:2001/07/11(水) 19:49
それから一週間、私は学校を休んだ。
友達は何人もお見舞いに来てくれたけど
誰にも会う気が起こらなかった。
電話も何本もかかってきたけど
生返事で五分と話さずに切った。

何があったのかは誰にも言わなかった。
誰かが、彼は今学期いっぱいで転校するらしい、と言ってた。

私は瞬間ホッとして、それは良かったと思えたのだけど、
十分後には逃げられた、私の怒りのやり場を失った、
という気持ちが湧いてきて、すごく、すごく悔しかった。
619名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/11(水) 19:50
本編の「救急車の音を聞くと(以後ネタバレ)」という設定を
かなり拡大解釈してお届けしました。
620名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/11(水) 19:51
>>585-618
あと、お兄ちゃんの設定も変えてます。
621名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/11(水) 19:53
一応スカトロ、ピアスなどは避けて
アブノーマルなプレイはアナルくらいです。
622名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/11(水) 19:54
君子に救急車ジャックさせて、そこで…って設定と迷ったんですが
623名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/11(水) 19:55
ポケコニアンさんの、1500字を2時間、ってかなりハイペースだと思います。
624名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/11(水) 19:57
はぁ…ラブな人はダメなのかなぁ…。
625名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/11(水) 19:58
本当は鬼畜だとは思ってないんですよね。
CD作ったり回転灯持ってきたり、そこには何らかの感情があるわけで。
626名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/11(水) 19:59
真の鬼畜って、相手に対して「穴」として以外の感情を持たない
そんな奴だと思うんですけどね。
627名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/11(水) 20:00
あ、あと茜にはポータブルCDプレイヤーは似合わないですね。
彼女はMDだと思います。
628名無したん@笑顔いっぱい:2001/07/11(水) 20:00
またそのうち投稿することもあるかもしれません。
その時はよろしくお願いします
ご苦労様です。
さりげなく力作ですな。
630名無しくん、、、好きです。。。:2001/07/12(木) 02:26
お疲れ様です
631:SS職人候補生補欠(以下略 :2001/07/12(木) 03:41
どうもこちらの皆様はじめまして。TLS3エロスレでへたれエロSS書いてる者です。
興味があればこちらにも来てみて下さい。
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi?bbs=eroparo&key=991325206&ls=50
私はTLS3の笑たんSS書いてます。まだ未完成ですが。
>>631
余力があったらこっちにもアップして下さい。
そっちにも時々顔をだしますから。
633 :2001/07/14(土) 10:11
寂しい週末になりそうだ
ボケコニアンは内定取れたのかな。
そーいえば愚痴スレでみたような……。
636:2001/07/15(日) 22:54
うーむ、今週はちょっと寂しかった…
>>586-618は力作でしたが(お疲れ様です)

こういう事言うと反発もあるかもしれないけど、読み手の皆さんも、できれば
読後の感想とか、リクエストとかアイデアとか積極的に書き込んで欲しいかな。
ちょっとこのスレ、投稿以外での動きがなさすぎなんで。
637名無しくん、、、好きです。。。:2001/07/16(月) 07:09
たまにはageとかなきゃね
ギャルゲSSじゃなくてギャルゲで人生を狂わせた人SSでもいいの?
639ボケコニアン:2001/07/16(月) 23:21
>>635
心配してくれてサンクス。
実はまだひとつも取れてないのよ。
まあ自分は福祉関係の仕事をあたっているから夏休みが勝負なんだけどね

>>634 >>636
俺は今客商売のバイトしてるから週末は一番書く可能性少ないとおもう

>>638
自分の壊れ話を書いてもひくだけだと思うぞ
>>638
読んでみたいのできぼーん。
641雨の後(1):2001/07/18(水) 18:05
 俺は雨が降る夜の公園で、光を見送っていた。光の姿が見えなくなってからも、暫くはその方向をぼーっと眺めていた。
 光が残していった傘を差しているとはいえ、かなりの時間雨に打たれていたため、全身はずぶ濡れだった。
「ふぅー」
 ゆっくりと息を吐き出す。時計を見ると、11時を過ぎていた。
「今日はもう帰ろう……」
 光はちゃんと帰ったのだろうか。なんとなく気になったので、光の家の前を通って帰ることにした。
 自分でも心配しすぎかな、とも思ったが、公園を出て光の家へ向かう。
 近くには華澄さんの実家がある。そういえば、なぜ華澄さんはアパートを借りて住んでいるのだろう……実家の方が学校にも近いのに……。
 光の家が見えたとき、二階の部屋に明かりが点いているかを確認する。
「点いているってことは……ちゃんと帰ったんだよな」
 いつのまにか、雨は止んでいた。俺は傘を閉じる。
 この傘を返すことを口実に、確認することもできるが、今はやめてこのまま帰ることにした。
 安心して緊張が解けたのか、なんだか急に体が重く感じられる。
「なんだろう……体がだるい……」
 俺は多少ふらつきながら歩いていく。時折、周りの景色がぼやけて見える。なんだか頭がぼーっとする……。
 右手で額を触ってみると、少し熱があるようだ。早く帰ったほうがいいよな……。
 ショッピング街を抜け、踏み切りを越えて歩いていく。
  ガツッ!!
「おおっと」
 俺は何かに躓いてしまった。た、倒れる……。
  バフッ!
「??」
 目の前が真っ暗……ん!? この頬に当たる、柔らかいものは……?
「大丈夫?」
 顔を上げると、そこには……。
「か、華澄……さん」
 どうやら華澄さんに抱き止められたようだ。近くに居たのだろうか……全然気が付かなかった。
642雨の後(2):2001/07/18(水) 18:05
「あら? どうしてこんなに濡れているのかしら……」
「え? いや……」
「だめじゃない、いつまでも夜遊びしてちゃ。きっと、おばさんが心配してるわよ。もう、しょうがないなぁ。昔とちっとも変わってないんだから……」
 そう言って、華澄さんは俺に微笑みかける。俺はというと、とても笑えるような状況じゃなかったが。
 そんな俺の異変に気付いたのか、華澄さんは自分の額を俺の額に押し当てる。それはほんの数秒の出来事だったはずなのに、俺にはとても長く感じられた。
 か、華澄さんが目の前に……く、唇がすぐそこに……。すごくドキドキする……な、何を考えているんだ俺は……。
「あら、すごい熱……」
 華澄さんは額を離す。
「大丈夫……なわけなわね……」
 俺はもう限界かも……意識が遠のいていく……。
「ちょっと、しっかりして……」

「ん……」
 何か冷たいものが……額に乗っている……。
 俺はゆっくりと目を開ける。華澄さんが左から覗き込んでいた。
「あっ、気が付いたのね……よかったわ」
 ここは? 自分の知っている場所じゃない……病院でもないみたいだ……。
 誰かの部屋……なのか?
「か、華澄さん……ここ……」
「ここは私のアパートよ。すぐそこだったから」
「そ、そう……なんだ……」
「いいのよ、気にしなくても。あっ、おばさんにはちゃんと連絡しておいたから、心配しなくても大丈夫よ。かなり熱があるみたいだし、無理できないわよ」
「うん……」
 なんだか寒気がする……。
「寒いの? 震えてる……」
 俺はこくんと頷き、目を閉じる。すぐに睡魔がやって来て、俺を眠りへと誘う……。
643雨の後(3):2001/07/18(水) 18:06
「うーん……」
 俺の意識は朦朧としている。体に力が入らない……。
 体は横になっているようだ……左向きか?
 首の辺りに重みを感じる……それに、前方から……温かい……風?
 俺は重い瞼を何とか開けようと試みる。
 薄暗い……目の前に何かある……か、華澄さん!? 華澄さんの顔……。
 じゃあ……首の重みは……華澄さんの腕か? 顔に当たっているのは……風じゃなくて……寝息?
 よく確認したいところだが……目を開けていられない……。
 暫くまどろんだ後、また眠ってしまった……。

「ん……うー」
 朝……なのか? うー、体がだるい……頭もぼーっとしている。
 目を開けると、頭の後方から光が漏れているのがわかる。
 ここは……そうか、華澄さんのアパート……俺を介抱してくれたんだよな……。
 華澄さんが隣で寝ていたような……あれは夢だったのか?
 俺は体を起こす。
 あれ? 俺……服を着ていない。上半身は裸……ま、まさか……。
 布団を捲くって確認すると、下半身にはバスタオルが掛けてあるだけだった……ってことは……。
 考えるのはよそう……。
 視線を正面に移すと、壁に掛かったカレンダーと、その上にある時計が目に入る……12時半か。
 すぐ左は障子の引き戸になっている……この先に別の部屋があるのか。
 俺は部屋を見回す。この部屋の広さは8畳くらい――右側は押し入れと床の間なので実質は和室6畳か?
 床の間には、大きな犬のヌイグルミとテレビが置いてある。近くには電話もある。
 俺の後ろにはカーテンがあり、隙間から光が差し込んでいる。
 左側にはタンスや本棚、それと小さなテーブルが置いてある。テーブルの上には3冊の本が乗っていた。
 布団が敷いてある左側に、バスタオルがいくつか重ねて置いてある。
 俺は立ち上がり、下半身に掛かっていたバスタオルを腰に巻く。置いてあるバスタオルを1枚取り、羽織る。
 それから後ろのカーテンの所へ行く。カーテンの隙間から外を覗くと、ベランダになっていた。
 そこには洗濯物――俺のワイシャツやズボン、それにパンツ――が干してある。
644雨の後(4):2001/07/18(水) 18:07
「華澄さーん」
 何度か呼んでみたが、返事は返ってこない。
 今日はたしか……金曜日。この時間じゃ、学校行ってるよな……。
 俺は引き戸の先が気になったので、そこまで歩いていき、ゆっくりと開ける。
 ここは……キッチンか――全体の広さは隣の部屋とほぼ同じだが、キッチン自体は6畳より狭いだろう。
 左の壁伝いに小さな冷蔵庫、その上に電子レンジが乗っている。
 冷蔵庫の横は流し、調理台、ガスレンジになっていて壁にぶつかる。
 その正面の壁伝いに視線を右へ移動させるとドアがり、下には靴が置いてある……玄関か。
 部屋の中央にはテーブルと2脚のイス。テーブルの上には土鍋や茶碗、それにスプーンが置いてある。
 その脇にコップと市販の風邪薬、体温計があった。コップの下にはメモが挟まっている。
 部屋の右側を見ると、今開けた引き戸と壁があり、正面にはドアがある。
 そのドアのすぐ横が一箇所途切れているが、壁は玄関へと続いている。
 その途切れた奥には洗面台が見える。その下にはいくつか箱が置いてある……洗剤や入浴剤か?
 洗面台の左側にはドアが見える。こっちのドアの先は、バスルームか? ってことは正面のドアはトイレかな。
 全体的に部屋は綺麗に整理されているようだった。
 とりあえず、俺はそのメモを取って読んでみる。

  おはよう。ぐっすり眠れたかしら?
  まだ熱があるようなので、寝ていなくっちゃダメよ。
  おばさんと学校には連絡しておくから、心配しないでゆっくり休んでね。
  お粥を作っておいたから、温めて食べてね。それから、食後に薬を飲むのを忘れちゃだめよ。
  病院へ連れて行ってあげようかとも思ったんだけど、学校を休むわけにもいかないし。
  なるべく早く帰るので、それまでおとなしくしているのよ。
   華澄

 俺はまず、熱を測ることにした。体温計――よく小さい頃使っていた水銀を使ったもの――を脇に挟み、暫く待つ。
 熱は……38.4℃ってとこか……まだ熱はあるな。
 
645雨の後(5):2001/07/18(水) 18:07
 ぐぅー。
 お腹が鳴った。そういえば、昨日の昼以降なにも食べてなかったな……。
 せっかくの好意、無にするわけにもいかないだろう。
 俺は土鍋をガスレンジにかけ、温める。
 温まったお粥を茶碗に移し、イスに座る。
「いただきまーす」
 俺は早速、頂くことにする。スプーンでお粥をすくう。
  フーフー、パクッ、モグモグ。
「お、おいひい……」
 空きっ腹だったこともあるかもしれないが、それはとても美味しかった。そう、涙が出そうなくらいに。
 シンプルながら、この塩味の加減が何とも……。
 俺はお粥を全て平らげた。
「ごちそうさまー」
 華澄さんの手料理を味わうのは初めてだが、なかなかいける……ってお粥だけでは判断できないか。
 まあ、どうせならもっと別の料理をご馳走になりたいものだ。
 と、とにかく、薬を飲んで寝るとするか……まだ治ったわけじゃないし。
 咳は殆んど出ない、喉や鼻も酷くない……やっぱり疲労からくるものか?
 俺は先ほどまで寝ていた所へ戻る。高熱に慣れたせいか、多少ふらついたが、いつもと変わらないような感じだ。
 まあ、せっかく華澄さんに看病してもらったのに、悪化したんじゃシャレになんないよな。
 下に敷いてあるものと、巻いてあるもの、全て新しいバスタオルに交換する。
 俺は布団に入ると、そのまま眠りにつく……。

「ふぁーあ」
 俺は目を覚まし、体を起こす。そして、大きく伸びをする。
 体の方はいくらか楽になったようだ。
 時計を見ると、8時を過ぎていた。
「あら、起きたのね……」
 ちょうどキッチンの方から、華澄さんが近づいて来た。
646雨の後(6):2001/07/18(水) 18:08
「か、華澄……」
 俺はそう言いかけ、固まる。華澄さんが額を押し当ててきたから。
「熱はかなり下がったみたいね。でも、治りかけが大事だから……」
 そう言って、華澄さんは離れ、優しく微笑む。
 俺はまたもやドキドキしてしまった……。
「お腹、空いたでしょ」
「う、うん……」
「用意してあるから。あっ、服乾いたから……着てね」
 そう言って、華澄さんは俺に服を差し出す。
「あ、ありがとう」
 俺は服を受け取る。
 …………。
「あ、あの……」
「えっ、何?」
「ここに居られると……その、恥ずかしいんだけど……」
「あっ、ゴメンね……ふふふ、大きくなったわね……」
 俺の耳にはそう聞こえたような……俺の聞き違いか?
「今、何か言った?」
「ううん、別に。何でもないわ」
 華澄さんは一度にっこり微笑み、キッチンの方へ歩いていった。
「?」
 俺は服を着た後、キッチンへと向かった。

「病み上がりだから、お粥でいいわよね」
「えっ? あ、うん……」
 俺はイスに座って待つ。
「あっ、そうそう。光ちゃん、今日学校に来たわよ」
「えっ、本当ですか?」
 よかった、俺の努力は報われたのか……。
 華澄さんはお粥が入った茶碗とスプーンを俺の前に置く。
647雨の後(7):2001/07/18(水) 18:09
「でも、これからが大変よね……」
「えっ?」
 俺はスプーンを取ろうとした手を一瞬止め、華澄さんを見る。
「だって、そうでしょう。あんなことがあったんだから……」
「そ、そうですね……いただきます」
 スプーンでお粥をすくい、口に入れる。
 そうか、光は華澄さんに話していたのか……。
 華澄さんは向かいのイスに座り、頬杖をつく。
「口外しないでね……あのことを知っているのは一握りの人だけなのよ」
「わ、わかってますよ」
「これ以上、光ちゃんが苦しむのを見たくないわ。それに……」
「それに?」
「ううん、何でもないわ……」
 華澄さんは一瞬悲しそうな表情を浮かべた後、ぼーっと俺の方を眺めている。
 その後、俺がお粥を食べ終えるまで、お互いひと言も話さなかった。
「ごちそうさま。とても美味しかったよ」
「そう? ありがとう」
「いやー。お礼を言うのは俺の方ですよ、看病までしてもらったんだから……」
「いいのよ、別に。後片付けするから、テレビでも見ていて」
「そ、そうですか……じゃあ」
 そう言って、俺はキッチンを後にする。

 俺はテレビのスイッチを入れ、ぼーっと眺めていた。
 これから先、どうなるんだろう……いくら考えても答えは出ない。
 暫くして、華澄さんがやって来た。
 ん? お酒の臭い……。
「あっ、そうそう。これ……飲んで」
 そう言って、何やら黄色い液体が入ったワンカップをテーブルに置く。
「こ、これって、もしかして……」
「卵酒よ」
「卵酒って、いいんですか? 俺、未成年ですよ……」
648雨の後(8):2001/07/18(水) 18:09
「いいじゃない……これは薬よ、く・す・り」
 そう言って、華澄さんはワンカップを持って俺に差し出す。
 進められたからって、飲むのには躊躇するよ。
 華澄さん、なんだか顔が赤いぞ。それに華澄さんからもお酒の臭いが……。
「ああっ、華澄さん、お酒飲んだでしょう」
「そうよ、私は大人なんだからいいのよ……さあ、飲んで……」
「い、いやでも……やっぱりマズ……」
「いいから飲みなさいよ!」
「わわっ!」
 結局、俺は無理やり飲まされてしまった……。

「いたた……」
 頭がガンガンする……。
 俺は目を開け、体を起こす。
 部屋は薄暗い明かりで照らされている。
 右隣には華澄さんが裸で静かな寝息を立てている……。
 えっ!? 裸……お、俺も裸だ……どうして?
 うーん、卵酒を飲まされて……それから……体が火照ってきて……ワイシャツ脱いだような……。
 後は……全然覚えていないぞ……。
「と、とにかく服を着なくちゃ……」
 服は部屋中に散乱していた。俺は自分の服をかき集め、そそくさと着る。
 おおっ、これは華澄さんのパンティ……そ、それどころじゃないだろ……。

 俺が次に目覚めたのは、自分の部屋だった。
 どうしてここに?
 そうか……俺、華澄さんのアパートから逃げたのか……どうやって帰って来たか覚えていない。
 気が動転していたのだろうか……だからって逃げることないよな……。
 ん? 右手に何か握っている……ブルーのパンティ……。
 あれ? このワイシャツに赤いシミ――上からポタポタとたれたような感じ――が付いている……これって血?
 いったい何があったんだろう……思い出せない……。
649回し:2001/07/18(水) 18:10
ボケコニアンさん
650回し:2001/07/18(水) 18:10
1さん
651回し:2001/07/18(水) 18:11
名無したん@笑顔いっぱいさん
652回し:2001/07/18(水) 18:12
作品を読ませて頂きました。お疲れ様でした。
653回し:2001/07/18(水) 18:13
SS職人候補生補欠(以下略さん
654回し:2001/07/18(水) 18:14
すいません、まだ作品を見てないです。近いうちに読ませて頂きますので。
655回し:2001/07/18(水) 18:16
話しは変わりますが、華澄さんはアパートで一人暮らしで、いいんですよね?
656回し:2001/07/18(水) 18:17
アパートに住んでない? 親と一緒?
657回し:2001/07/18(水) 18:18
違っているなら……鬱だ
658519:2001/07/18(水) 18:21
とりあえず、
前回 >>531-535 「俺の気持ち」
続き >>641-648 「雨の後」
ときメモ2 麻生華澄 です。
ageて逝こう……
某100gスレでSS書いてる者です
ご苦労様、これから堪能します。
情景描写が細かくていいですね。

続きは…あるのかな?
662659:2001/07/18(水) 21:54
削除されない限り続けるつもりです。
ただ、最近私の偽者があちこちのスレを荒して少し悩んでいます。
何か愚痴を言っている様で…申し訳ないです。
>>658=D・Cさん?
何の血か考えるとチョト怖ひかも
664659:2001/07/18(水) 22:01
>>663
違います。
私はこちらでSSを書いた事はありません。
あ、どうも失礼しました。
666659:2001/07/18(水) 22:07
>>665
いえ、お気になさらずに。
むしろ私もあのような正常な男女のSSを書いてみたいと
思ったことはあります。
6671:2001/07/18(水) 23:37
>>658
お疲れ様です。エロ方面に行きそうでなかなか行かないじれったさがなんとも (・∀・)イイ!
しかし、「悪巧み」って、いろいろ派生しましたねぇ。

>>659
エリカ100gスレはたまに見ています。もし、違った毛色のものが書きたくなったら、
いつでもこのスレを利用してくださいね。
668659:2001/07/19(木) 00:07
>>667
私如き者に温かい言葉…感謝します。
669「悪巧み」の元ネタ:2001/07/19(木) 01:22
貼っておきます。
>>496の元ネタリンクが繋がらないので。

水無月琴子よ。
この間、光の身の上に起こった出来事を、全部話したいと思うんだけど、いいかしら?

そう、あれはきらめき高校の藤崎詩織さんが、交流会の名目でひびきの高校に来た日のこと。
突然教室内に「やめてーっ、藤崎さん!!」 という光の絶叫が響き渡ったの。
声のした方向を振り向くと、光が数人のいじめっ娘たちに羽交い締めにされていたわ。
そして藤崎さんが、笑いながら光のスカートのジッパーを外していたの。
そう、彼女達は、光の下着を脱がそうとしていたのよ。
光は必死に足をばたつかせて抵抗していたけど、その足すら
二人掛かりで押さえられてしまって、とうとう肉体的に抗う術を失ってしまったわ。
「やめてーっ、やめてよーっ、やめてーっ!!」
光の絶叫が再度響き渡った。周りをよく見ると、クラスメートたち……もちろん
男子達全員も、この光景に注目していたわ。当然でしょうね。
  ズルッ!
藤崎さんによって、光の制服のスカートが下ろされたわ。
光のストライプ模様のパンティーが露わになった。
「さあ、みなさん、いよいよご開帳よ〜♪」
藤崎さんは嬉しそうに声をあげたわ。
そう、次に脱がされるのは、当然光のパンティー。
光はすっかりと観念した様子だった。多分、こんな事を考えていたのかもしれないわね。
「(パンティーがおろされる瞬間、きっと男子は目をつぶってくれるよね……)」
「(もしかしたら、1人くらいは見るかもしれない)」
「(でも……そうよ、5人までなら、見られていないことにしよう)」
……こうでも思い込まなければ、光の精神はこの時点で崩壊していたでしょうね。
でも……
  ズルッ!
藤崎さんの手によって、とうとう光のパンティーが下ろされたわ。
  さわさわっ!
光の薄い陰毛が、外気と人目にさらされる。
  がばっ!
そして両の足が広げられた瞬間、
「おおっっっっっっーーーーーーーーーーーーーー!!」
クラス中に、どよめきが起こったわ。
光のお○んこは、典型的なピンク色だったの。まさにぴったりと閉じた秘貝という
感じ。思わず私も見入ってしまったわ。
周りをよく見ると男子たちも、光のおま○こをじっくりと見つめている。
「おー、いいねぇ〜」
「あんなんなっているんだ、初めて見たー!」
「俺もう、我慢できねぇ〜」
と感想を口々にしながら。
光がパンティーを脱がされる瞬間に、願っていたであろう事は、粉微塵に砕かれたのよ。
光は、クラスの男子全員に、自分のお○んこを見られてしまったの。
耐え切れない羞恥心と屈辱感で、光は泣いていたわ。それこそ、狂ったように。
いえ、本当に狂ってしまったのかもしれない。

あの日以来、光は学校に来ない。
自室に閉じこもり、泣き続ける毎日を送ってるの。
私たちは、来年、大学受験という人生の大切な節目を迎えるわ。
みんな、光に言ってあげて。励ましてあげて。
辛いのは、光だけじゃない! (私もこの間、道を歩いていたら10円落としたし)
来週の月曜からでいいから、きちんと学校へ来て!と……
6701:2001/07/20(金) 23:32
>>669
荒らしが来たのかと思った…(w
しかしこのスレ、投稿がないとほんとに動かないなぁ。みんなFFXで忙しいのかしらん。

ネタ一本思いつくものの、どう考えてもこの話を突っ込むスキマがクリスマスぐらい
しかない。このクソ暑いのに…(w
細かい所が全然まとまらないので、多分書けるのは来週かその先ぐらいになると思います。
その間、他の職人さん、どうぞよろしくお願いします。
南半球ではクリスマスが真夏です(w
ここはスレサイズ大丈夫かなぁ。
長文と引用(「>>」ね)が多いから心配です。
6731:2001/07/22(日) 02:12
>>672
確か、「雨の後」投稿直後で380Kぐらいだったと思います。
このままのペースで行くと1000いくまでに512K超えそうだから、適度な所で
見切りをつけて新スレに移行したほうがよさそうではあります。
674age:2001/07/24(火) 12:57
あら、誰もいないのかしら…
>>672-673
674までの時点で337Kでした
http://yasai.2ch.net/gal/dat/
>989185904.dat 23-Jul-2001 20:57 337k
676ガラスのラビリンス(1):2001/07/25(水) 00:21
 どこまでも透き通った世界に、私はいた。
 透き通った壁と、透き通った床と、透き通った天井。その世界に存在するのは、私以外に
はそれだけだった。果てしない広さと、息苦しくなるような狭さを同時に兼ね備えた……こ
の世界はまるで迷宮。そう、硝子の迷宮だった。
 一体いつから、ここにいたんだろ。
 一体どれぐらい、この迷路をさまよっていたんだろ。
 周りを見まわすと、何枚かの壁を隔てて、“彼”の姿が見えた。――彼の方はまだ、私の事
に気づいてない。
 そうだ。
 私は、彼の事を追いかけ続けて……迷い続けて……ここにいるんだ。
 あと少し。ほんのもう少しなのに……どうしても彼の場所にたどり着けなくて。
 たまらずに、私は彼の名前を叫んだ――でも、それは声にはならなかった。まるで、空気
までもが凍りついたかのように。それでも、私は彼を呼び続けた。透き通った壁に、何度も
何度も拳を打ちつけながら――でも、不思議な事に拳はちっとも痛くはなかった。
 だから、そのかわりに痛かったのは、別のところ。
 この胸の……ずっと、奥。
677ガラスのラビリンス(2):2001/07/25(水) 00:22
「かり……光!」
 公一くんの呼ぶ声で、私――陽ノ下光、この春にひびきの高校の一年生になったばかり――
は、やっと我に返った。
「どうしたんだよ、ぼーっとして」
 うつむいたままの私を下から覗き込むようにしながら、公一くんは少しぶっきらぼうな口
調で、私にそう問いかけた。私は少し慌てながら、その場を取り繕った。
「う、うん……なんでもないよ。ちょっと、今朝見た夢のこと、思い出してたんだ」
「ふぅん……なんか悪い夢だったとか?」
 彼の表情に、かすかに陰りが見えた。……私のこと、心配してくれるんだ。
「ほ、ほんとに」無理やりに作り笑いを浮かべながら私は言った。笑顔が少し引きつってい
るのが自分でも判った――「ほんとになんでもないったら。つまんない夢だよ」
「ならいいけどさ。せっかくの遊園地なんだし、楽しもうよ」
 公一くんがそう言ったとき、ちょうどその後ろを、轟音をあげながらジェットコースター
が走り去っていった。悲鳴とも歓声ともつかない、甲高い叫びが尾をひいていく。
「あ、あれに乗ってみようか。前に来た時はまだガキだったから、身長制限で乗れなかった
んだよなぁ」
「そんな事言っちゃって。ほんとは、怖くて乗りたくなかったんじゃないの?」
「お前が言うなよ」彼は苦笑を浮かべた。「小さな頃は泣き虫だったくせに……」
「あー、ひっどぉい。そういう事言うと……」私は彼の不意をつく事に成功した。「置いてっ
ちゃうんだからね!」
 いきなり走り出した私を、公一くんが慌てた声で追いかけてくる。
「お、おい、待てよ、光!」
「あははは、こっちこっち!」
 子供の頃のように、無邪気な追いかけっこをしながら、私は、七年ぶりに訪れた、この幸
福な時間をかみしめていた。
(――ありがとう、琴子)
 私は、心の中でだけ感謝の言葉をつぶやいた。
678ガラスのラビリンス(3):2001/07/25(水) 00:23
 それは、高校生活が始まって間もない、ある日の昼休みの事だった。
「遊園地のチケット?」
「そうよ。二枚しかないけど……ま、もらい物だから贅沢はいえないわね」
 胸ポケットから取り出したチケットをひらひらとさせながら、そんな事を言ったのは、中
学時代からの親友、水無月琴子だ。
「でも琴子、ああいうにぎやかな場所って苦手じゃなかったっけ?」
「ま、積極的に行こうとは思わないわね。大体、施設の半数以上が横文字という辺りが気に
食わないわ。全く、伝統ある文化という物をなんと心得ているのかしら?」
琴子らしいセリフに、私は苦笑いした。どういう訳か、彼女は極端に西洋文化を嫌がる癖が
ある。お兄さんが極端に西洋かぶれした反動らしいけど。
「じゃ、どうして?」
「……はぁ、相変わらず鈍いわね。ほら、幼なじみの彼を誘いなさい、って言ってるのよ」
「えっ……?」
 どきん、と一瞬胸が高鳴った。
「あ、ほら、噂をすればなんとやら、よ」
 琴子が視線で示した先に、男の子が三人、こちらに近付いてくるのが見えた。その中に、
琴子がさっき言った幼なじみ……渡瀬公一くんの姿がある。
 私はかすかに体温が上がるような感覚を覚えた。いつもだったら、それほど意識しないの
に……。
「やぁ、水無月さんに陽ノ下さん、今日も綺麗だね♪」
 そう声をかけてきたのは、公一くんの友達、坂城匠君だ。
「それはどうも。でも、おだてても何も出ないわよ」
「つれないなぁ水無月さん。……あれ? 遊園地のチケットじゃない。どうしたの?」
 坂城君がチケットに手を伸ばそうとすると、琴子はそれをひょいと頭上にかかげた。
「あいにくだけど、あなたには関係ないわ。これは、光と渡瀬君の再会記念よ」
 琴子が言うと、坂城君は少しがっかりした顔で、傍らの公一くんを肘でつついた。
「いいなぁ、お前、幸せ独り占めじゃないか。……ああ、俺にも欲しかったなぁ、かわいい
幼なじみ」
「よ、よせよ……」
 どこか困ったような顔で公一くんが言う。……やっぱり、迷惑なのかな……?
679ガラスのラビリンス(4):2001/07/25(水) 00:24
「照れるなって。そうそう、知ってるか? あの遊園地、新しいアトラクションができたら
しいぜ。『メイズイリュージョン』ってやつ」
「メイズ…何?」
「ま、平たく言えば鏡の迷路なんだけどさ。ほら、よくあるだろ? 壁が鏡張りになってる
奴」
 さすがに情報通の坂城君、チェックが細かいなぁ……と私が感心してると、坂城君は突然
声をひそめた。
「ただ、なんだか妙な噂が流れてるらしい……その鏡は心を映す鏡で、心に迷いを持ったま
ま入ったものは、そこで永遠に迷い続けるとか……あれ? 陽ノ下さん、どうしたの?」
「え? な、な、何でもないよ?」
 と言いながら、少し声が上ずっちゃってる。……自分でもちょっぴり情けない。
「気にするな匠。光は昔から怖がりなんだよ」
 ……あーん、公一くん、ばらしちゃったあ。
「全く……くだらん」
 俺には興味がない……といった雰囲気を漂わせながら、そうぽつりとこぼしたのは、さっ
きから話題に加わっていなかった、公一くんと匠君のもう一人の友達……えーと、確か名前
は、穂刈純一郎君だ。
「だいたい、迷路なんか、片手法を使えば簡単に通過できるだろうが」
「片手法……って?」私がそう訊き返すと、穂刈君はなぜか押し黙った。そんな彼の代わり
に坂城君が答える。
「片手を壁についたまま歩けば、どんな迷路でも確実に越えられるっていう、アレだね。で
もなぁ純、それじゃあまりにも風情ってもんがないだろ?」
「へぇ……私知らなかったな。穂刈君って物知りなんだ」
「そっ……そそそそ、そうかな?」
 ……なんだか穂刈君の顔、ちょっぴり赤いような。
「それはそれとして」琴子が静かな口調で尋ねる。「まさか、光の誘いを断ったりしないわよ
ねぇ、渡瀬君?」
「え、あ、うん。どうせ次の日曜日は暇だし……」
「『暇だし』!? ……はぁ」琴子は公一くんを一瞬だけ冷たい目でにらみ、ため息をついて
から、小声で私にだけささやいた。
「光……やっぱり考え直したほうが良くない?」
 私は答えなかった。答えられなかった。
 七年ぶりに二人きりで過ごす時間……そのときめきで、胸がいっぱいだったから。
 そんな私を見て、琴子はもう一度、大きなため息をついた。
680ガラスのラビリンス(5):2001/07/25(水) 00:24
 緑の芝生の上、春の日差しがぽかぽかと気持ちいい。
「あ……おいしいよ、これ」
 お弁当を一口ほおばった公一くんの顔がほころぶのを見て、私は心の中でだけ、安堵のた
め息をついた。よかった……。
「料理上手くなったじゃないか、光。昔は泥のおにぎりしか作れなかったのにな」
「あはは、それっておままごとの話じゃない。いくらなんでも、そんなのと比べないでよ」
 笑いながら、私もお弁当に箸をつけた。うん、これなら自分でも、会心の出来だって思え
る。『愛情は最高の調味料』って、使い古された言葉だけど、本当なんだなって思った。
 しばらく無言で箸と口を動かしていた公一くんだけど、ふとつぶやくように、こう言った。
「そうか……みんな、変わっていくんだよな」
「え……?」
「この街も、ここに住んでる人も、みんな」
 そう言った公一くんの瞳は、ほんの少し寂しげだった。彼の視線の先には、無邪気に走り
回る子供たちの姿があった。
「ほら、俺たちがあの子たちぐらいの頃、よく砂遊びしてた小さな公園……あれ、もう無い
だろ?」
「うん……何年か前に、マンションに変わっちゃった」
「そんな思い出の場所が少しずつ減っていくのって、なんだか寂しいな、って……そんな事
考えちゃってさ」
「そうだね……」
「でも、変わっていかなくちゃいけないんだよな……少しずつ、大人に」
 彼の言葉に、少し胸が痛んだ。
 ……私は、いつまで彼の“幼なじみ”でいられるんだろう。
「あのね……公一くんはね、無理して変わらなくてもいいんじゃないかな。今だって、君の
純粋さは昔から変わってないもの」
「……それって、成長してないって意味?」
「あははは、そうかもね」そう言って私が舌を出すと、彼は怒った素振りを見せた。でも、
それが素振りだけだ、って事は一目で解った。公一くん、私に本気で怒った事なんて無いも
の。
 君はやっぱり、変わってないよ。
 そして、私のこの思いも……
(本当に?)
 心の片隅で、もう一人の私が言う。
 ちくりと胸が痛む。
(本当は、変わってないと思い込みたいだけじゃないの?)
681ガラスのラビリンス(6):2001/07/25(水) 00:25
 それは、ある日の放課後の事だ。
 顧問の先生の急用で、部活が休みになった事を知った私は、公一くんと一緒に帰ろうと思
い、校門の前で彼の姿を探した。――でも、ようやく見つけた彼は、一人じゃなかった。
「それでね、美幸、思わず飛びのいたんだけど、その先にマンホールがあって〜。落っこち
ちゃって、大変だったんだよ〜」
「ま、まぁ、ダンプにはねられるよりは良かったんじゃないかな?」
 彼の隣に、一人の女の子が並んで歩いている。その子はいかにも楽しげに、少し大げさな
身振りで公一くんと話していた。
 どうしてだろう――思わず私は、校門の影に身を潜めてしまった。私に気がつかないまま、
彼と、その女の子の声だけが通り過ぎていく――。
「そっかー、そうだね〜。珍しいものもみれたし、美幸ラッキーだったのかも〜」
「珍しいもの?」
「そう、真っ白なワニさん〜!」
「あ、あははは……それは確かに、ある意味ラッキーかも……」
 あの子……知ってる。確か、寿美幸さんだっけ。なんだかいろいろと不運な女の子だって、
クラスメートが噂しているのを聞いた事がある。
(……仲、良さそうだな……)
 公一くんは優しい。
 だから、寿さんの不運が本当だったとしたら、きっと公一くんは、その子を放って置けな
いだろうって思う。それはいいんだ。それが公一くんのいいところだもん。
 だけど――
 彼の背中が遠ざかっていく。私との距離が、どんどん開いていく。
 ――どうしてこんなに、胸が苦しいんだろう。
682ガラスのラビリンス(7):2001/07/25(水) 00:25
 園内の案内マップの前で、私と公一くんは、次に何に乗るか相談してた。
「えっと、ジェットコースターとバイキングは乗ったな。3Dシアターにも行ったし、コー
ヒーカップにも乗った……少し気分が悪くなったけど」
「公一くん、調子に乗って回し過ぎるんだもの。おかげで目が回っちゃった」
「……まぁそれはそれとして」
 公一くんはごまかすように頭をかきながら、私の方に振り向いた。
「あと、光は何か乗りたい物、ある?」
「私はなんでもいいよ。君の好きなのに決めて」
「うーんと、それじゃ……」彼の視線が案内図の上をさまよい、やがてある一点で止まった。
「そうだ、観覧車に乗ってみようか」
 えっ……。
 突然、私の頭の中に、幼い頃の思い出がフラッシュバックした。
 七年前……まだ小さかった私と公一くん、そして近所に住んでいた華澄お姉ちゃん、その
三人で遊園地に遊びに行った事があった。
 そうだ。あの日も私は公一くんと観覧車に乗ったんだ。三人で見下ろした街並みがとって
もきれいだった事、今でも覚えてる。
 その一日は、まるで夢みたいに楽しかったんだけど……その夢から覚めたとき、私たちを
待っていたのは残酷な現実だった。
 その次の日、公一くんは、遠いところに引っ越していっちゃったんだ。
 あの遊園地でのひとときが、最後に楽しい思い出を作らせようという大人たちの気遣いだ
った事は、幼かった私にもおぼろげに理解できた――だけど。
『いっちゃいやだよぉ!』
 走り去るトラックを、私は懸命に追いかけようとして、足がもつれて転んだ。
『やだ……ずっといっしょじゃなきゃやだぁ!公一くーん!!』
 驚き。怒り。混乱。虚脱。絶望。そして悲しみ。たくさんの感情が、私の頭の中で渦を巻
く。あの日の記憶が、ほんの一瞬前の事みたいに蘇ってくる……。
683ガラスのラビリンス(8):2001/07/25(水) 00:26
「……やめようよ」
 かろうじて、それだけが言葉になった。公一くんが意外そうな顔をする。
「えっ? 光、観覧車好きだったじゃないか。どうして?」
「あっ、ご、ごめん……なんか、そういう気分じゃなくてさ。ほら、他にも面白そうなの、
いっぱいあるじゃない」
「……ま、いいけど」
 言って公一くんは、案内図に目を戻した。……ごめんね。せっかく、私の好きなもの、覚
えていてくれたのにね。
「そうだ、匠が言ってた奴。あれ、どこにあるのかな」
「あれって、鏡の迷路の事?」
「そうそう。えっと……」
 案内板を二人で探したが、それらしいものはどこにも載ってなかった。
「新しい施設だから、まだ地図に載ってないのかな?」
「みたいだね……」
 そんな私たちの後ろから、突然声がかけられた。
「何かをお探しですか?」
 振り返ると、そこには真っ白なドレスを着た、綺麗なブロンドの髪の女の人がいた。童話
のお姫様役か何かだと思う。その青い瞳には、優しげで、どこか神秘的な輝きがあった。
「あ、えっと……」
「迷ってしまったのですね。お探しのものなら……」彼女はきれいな日本語で話しながら、
私たちの背後を指差した。「あちらにあります」
 私たちは振り向いた。指差した先に、確かにそれらしき施設が見えた。
「必ず、迷宮の謎を解き明かしてくださいね。それがきっと、二人の絆を強めるはずですか
ら」
「えっ……あれっ?」
 もう一度、彼女の方を振り向いたとき、もう彼女はそこにはいなかった。
 不思議そうな表情で、公一くんが言う。
「……なんだか、白雪さんみたいな人だったなぁ」
「白雪さん……って?」
「うん、白雪美帆って、C組の占いが得意な女の子。……知らない?」
 私はうなずいた。「……うん」
「そっか」公一くんは無邪気な顔で笑った。「今度紹介するよ。あの子の占いは良く当たるっ
て、女の子にも評判らしいから」
 きっと、公一くんに悪気はないんだと思う。
 でも、私の知らない女の子の名前が、君の口から出てくる事。それはとっても、寂しい事
なんだよ――。
 私はそんな思いに囚われていたから、だからその時は……こんな単純な事にさえ、全然気
がつかなかった。
 ――どうしてさっきの女の人は、私たちの探している場所を知っていたのだろう。
684ガラスのラビリンス(9):2001/07/25(水) 00:26
(メイズイリュージョン、かぁ)
 本当はあんまり乗り気じゃなかった。なんとなく、あの嫌な夢を思い出すから。
 でも、せっかく公一くんが、私が好きだろうって選んだ観覧車を、私は断ってしまったか
ら。だから、彼にこれ以上わがままを言うのは嫌だった。
 そんな時、ふいに坂城君の言葉が蘇った。
『ただ、なんだか妙な噂が流れてるらしい……その鏡は心を映す鏡で、心に迷いを持ったま
ま入ったものは、そこで永遠に迷い続けるとか……』
 迷い……か。
 私は多分、何かを迷ってる。でも……いったい何を迷ってるんだろう。
「何やってるんだよ、光」
 私がひとりで悩んでいる間に、公一くんはミラーメイズの入り口に、先にたどり着いてい
た。
「ご、ごめーん」
「……そうだ、さっき置いてきぼりにされたお返ししてやろっと。ほら」
 私より一足早く、彼はミラーメイズの入り口をくぐり、その中に消えた。
「あ、待ってよぉ」
 私は駆け足でミラーメイズの入り口に近付いた。チケットを係の人に渡して、自分もその
扉をくぐる。
「もぉ、公一くんのいじわるぅ……あれ?」
 いない。
 公一くんの姿が見えない。
「ちょ、ちょっと? 公一くん? こおいちくーん!」
 返事はない。
 どこからも人の声はしない。
「や、やだ……悪い冗談やめてよ……ねぇ!」
 ひたすらに静かな迷路の中に、私の声だけが響き渡った――。
685ガラスのラビリンス(10):2001/07/25(水) 00:27
 その夢は、ときどき不意にやってきた。
 その夢は、私をひどく苦しめた。
 その夢から目覚めたとき、私はいつも、涙で枕を濡らしていた。
 ――硝子の迷宮の夢。
 果てしなく広がる、美しくて恐ろしい世界の夢。
 それは見る度に細かい部分が違っていたが、たった一つ共通点があった。
 それは……公一くんに、私の声が届かない事。
 そして、公一くんが、私の前から去っていく事。


 彷徨い続けて、いったい何時間が経っただろう。
 左手首の時計は、何時の間にかその動きを止めていた――まるで時間ごと凍りついたみた
いに。
 私は鏡の迷宮の中で、いまだ迷い子のままだった。いくら歩いても、いくつの角を曲がっ
ても、出口も――もちろん、公一くんも、一向に見つかる気配はなかった。
(こんな――こんな事って、あるはずない!)
 遊園地の迷路なんて、いくら広くたってたかが知れてる。なのに、この迷宮はまるで無限
の広さを持っているかのように、私には感じられた。
 ずっと歩き続けて、足が棒のようだ。意識もなんだかぼんやりとしてきて、まるで、いつ
もの悪い夢の続きを見ているみたいな気がする。――ううん、きっとそうだよ。目が覚めれ
ば、さわやかな朝の風に吹かれながら、君と学校に行くんだ。平穏で幸せな、いつもと同じ
毎日が――。
 心がきしむ音が聞こえた気がした。まるで自分の大切な何かが壊れてしまいそうな。
 その時、私は足元の小さな段差に足をとられてつんのめった。床に打ちつけた膝に痛みが
走る……その痛さが私に告げた。これは夢なんかじゃないと。待っていても、目なんか覚め
ないんだと。
 不意に涙がこぼれた。
 彼の前では、絶対に流さないと誓っていたものが。
 ――もう、嫌だよ。
 公一くん。
 もう、迎えに来てはくれないの? 小さい頃は、私が迷子になっても、いつも探しに来て
くれたじゃない。
公一くん。
 もう一度会いたいよ。
 ねぇ、もう一度、一緒に手をつないで歩きたいよ――。
 もう一度、昔みたいに――
686ガラスのラビリンス(11):2001/07/25(水) 00:27
「ご飯、食べないの?」
 あ……お母さんの声だ。
「――いらない」
 これは……小さい頃の私?
「ちゃんとご飯食べないと、大きくなれないよ?」
「もういいんだもん。公一くんといっしょじゃなきゃ、オトナになってもしかたないもん」
「どうして?」
「――公一くんのおよめさんになれないんじゃ、しかたないもん」
 お母さんが苦笑いする声が聞こえた。
「光は公一くんの事、大好きだったのね」
「……うん……」
「なのに、簡単にあきらめちゃうの?」
「あきらめる?」
「そう。公一くんはどこかに行っちゃったけど、いなくなっちゃった訳じゃないのよ? 本
当に好きなら、どこまでも追いかけていかなきゃ」
「でも――わたし、まだこどもだもん」
「だったら、なおさら大きくならないとね。ほら、ご飯冷めちゃうわよ」
「……うん」


 ――そうか。そうだよね。
 あきらめちゃいけないんだ、まだ。
 なけなしの勇気を振り絞って、私は立ち上がった。
 穂刈君と坂城君の言葉を思い出す。
『――だいたい、迷路なんか、片手法を使えば簡単に越えられるだろうが』
『片手を壁についたまま歩けば、どんな迷路でも確実に越えられるってアレだね』
 ……右手か、左手か。
 一瞬だけ迷った後、私は壁に左手をついた。
 この手のひらに残る、幼い頃のぬくもり――それが今は、信じられる唯一の絆だから。
 だから、この左手が、きっと私を彼の所に導いてくれる。そう信じて。
 一歩を踏み出す。
 ねぇ、公一くん。私が陸上始めたって言ったとき、君は少し驚いた顔をしてたよね。確か
に、いつも置いてきぼりにされて泣いてた、小さい頃の私のイメージと重ならないかもね。
私が陸上を始めた本当の理由――君にはまだ話してなかったよね。
 ゆっくりと、歩みを進める。
 ねぇ、公一くん。君は知らないよね? 昔もらったおもちゃの指輪。今でも、大切にとっ
てあるんだよ。私の小物入れの中で、とっても綺麗に光ってるんだよ。
 一つの角を曲がる。
 ねぇ、公一くん。本当は君に、どうしても伝えたい言葉があるんだよ。たったの一言だけ
だけど、私にとっては地球より重い一言が。
 だから――もう、待っているだけの私はやめる。
 君に追いつける様にがんばる。きっと。絶対に――。
 私は空いている右手で、頬に残る涙をぬぐった。
 そして――。
687ガラスのラビリンス(12):2001/07/25(水) 00:28
 そして、再会は唐突にやってきた。
「ひ、光……」
「あっ……!」
 左手を壁に沿わせながら、何回目かの曲がり角を曲がったとき……すぐそこに、追い求め
た人の姿があった。
 公一くんは、拍子抜けしたかのように呆然とした表情で立ちすくんでいた。私もきっと、
彼と同じ顔をしていたに違いない――そう、まるで鏡に映したかのように。
「………………」
 言葉は何も出なかった。
 だから……私はただ、彼に飛びついて、力いっぱいに彼の体を抱きしめた。
「光……ごめん……」
 彼は申し訳なさそうに言った。
「俺が、光を置いてなんか行ったばっかりに、怖い思いをさせちゃったね……」
「ううん……いいよ。こうやって、また会えたんだもの」
 私は腕を彼の体からほどくと、一歩後ろへと下がった。彼の体のぬくもりが、少し名残惜
しかったけれど。
 公一くんが、わずかに目をそらして言う。
「――純の奴に、感謝しなくちゃな」
「どうして?」
「ほら、あいつの言ってた迷路の必勝法……あれを思い出したんだ。だから……」彼は、自
分の右手をじっと眺めながら、言った。「この手を壁について進めば、光に会えるんじゃない
かって……そんな気がしたんだ」
えっ……?
「――どうして右手だったの?」
 私がそう尋ねると、彼は少し照れたように「えーと、それは……」と一瞬言い淀んだけど、
やがて小さな声で、でもはっきりと言った。
「……昔、光とつないだ手だったから」
「あ……あははっ!……やだ、公一くんったら……ははは……あはははっ……」
 私は笑った。笑いが体の内側からこみ上げてきて、止まらなかった。止まらなくて、どう
しようもなく笑い転げた。
「な、なんだよ」彼は少し憮然とした表情だ。「いくらなんでも、涙流すほど笑う事ないだろ
っ!」
「あ、あははっ……だって、だって……ははは……!」
 違うんだよ、公一くん。
 この涙は……違うんだ。
 だって、君が本当は、こんなにすぐそばにいたんだって……それがやっと解ったんだもの。
 それが嬉しいから。嬉しくて仕方ないから。だから……涙があふれるんだよ。
「全く……あれっ?」
「……どうかしたの、公一くん?」
 ようやく笑いを収めて、私は訊いた。
「あれ、出口じゃないか?」
 彼が指差した先に見えたもの……それは確かに、差し込んでくる太陽の輝きだった。
688ガラスのラビリンス(13):2001/07/25(水) 00:28
 優しく私たちを出迎えてくれた太陽は、まだずいぶん高い所にあった。
「おっかしいなぁ……すごく長い時間、迷ってたような気がするんだけど……」
 彼が不思議そうにつぶやく。
「公一くん、夢でも見てたんじゃない?」
「え? まさか」
「じゃ、気のせいだよ、気のせい。そういう事にしておこうよ」
 公一くんはまだ、納得がいかないといった表情だ。でも私には、もうそれはどうでも良い
事になっていた。
 だって、やっと……長い長い悪夢から覚めたんだもの。
「でも……確かに、なんだか疲れちゃったかな」
 私のつぶやきに、公一くんが答える。
「うん、実は俺も。どうする? ちょっと早いけど、今日はもう帰る?」
「うーん……それも何だかもったいないし……そうだっ!」
 私はある方向を指差した。そこには、雲ひとつない青い空を背景に、ゆっくりと回る大輪
の花があった。
「ね、最後に観覧車、乗ろうよ!」
「……光、さっきは嫌だって言ってたじゃないか」
「へへ、気が変わっちゃった。ね?」
 私は、あきれ顔のままの公一くんの右手を握って、強引に引っ張った。
「まったく、気まぐれなんだから。……ま、いいか」
「そうそう。きっと今日は、いい眺めだと思うよ。こんなにいい天気だもの」
 ……そして、この街を見下ろしながら、君と離れ離れでいた七年間の、その空白を埋めて
いこう。確かに、この街はほんの少し変わってしまって、君との思い出の場所もちょっぴり
減ってしまったけど。
 だったら、新しい思い出を作っていけばいいんだ。
 これから、ずっと。君と二人で。
 私は公一くんと手をつないだまま、青空に向かって大きく深呼吸をした。そのとき、どこ
からか大きな鳥が一羽、真っ白な翼を羽ばたかせて、高く飛び立って行くのが見えた。
 その鳥は、なんだか私たちに微笑みかけているような……なぜだかそんな気がした。

                                         ――Fin――
689回します:2001/07/25(水) 00:29
こ、今週は寂しい…
690回します:2001/07/25(水) 00:29
明日でまる一週間何の投稿も無しですかー。
691回します:2001/07/25(水) 00:30
670の予告ネタ(クリスマスの話)も、
692回します:2001/07/25(水) 00:30
今週書けるかどうか解らんしなぁ。
693回します:2001/07/25(水) 00:30
というわけで、急遽アップに踏み切ったこの話、
694回します:2001/07/25(水) 00:30
いったい何かと言うと、実は私の習作時代のものです。
695回します:2001/07/25(水) 00:31
この作品で初めて女性一人称に挑戦したんだよなぁ。
696回します:2001/07/25(水) 00:31
改めて読み返すと懐かしいものが。
697回します:2001/07/25(水) 00:31
つってもたかが半年前なんだけど(w
698:2001/07/25(水) 00:33
「ガラスのラビリンス」>>676-688 ときメモ2より陽ノ下光でした。
みようみまねでSS書き始めた頃の未熟な作品なのでとても恥ずかしい。
構成に凝りすぎて、回想が多くて読みにくいったら…
ま、今もほとんど上達してませんが(w
でも思い入れのある作品ではありますね。「彩のラブソング」の主人公の
気持ちがちょっとだけ解る今日この頃。
ご苦労様。
7001:2001/07/26(木) 07:00
気がつけば700…キリの良いところでインデックスまとめときましょ。
前回、前々回インデックス >>272, >>500

「悪巧み」>>483-486 /ときメモ1&2、陽ノ下光&藤崎詩織(※18禁、ダーク)
「無題」>>513, >>549-550, >>579-581 /ときメモ2、陽ノ下光(「悪巧み」の続き、※18禁)
「無題」>>516/ときメモ2、九段下舞佳(「悪巧み」の続き、未完)
「俺の気持ち」>>531-535 /ときメモ2、陽ノ下光(「悪巧み」の続き)
「雨の後」 >>641-648 /ときメモ2、麻生華澄(「俺の気持ち」の続き)
「星空のメッセージ」」>>558-565 /ときメモ1&2、佐倉楓子&紐緒結奈
「鬼畜系:森下茜」>>585-618 /TLS2、森下茜(※18禁、ダーク)
「ガラスのラビリンス」>>676-688 /ときメモ2、陽ノ下光

今回ひかりん大人気。
お疲れさまです。
702 :2001/07/28(土) 17:25
 
静かだ…こんなもんか?
704ボケコニアン:2001/07/29(日) 02:52
俺は某所で上げるのを最後にしばらく充電してくるよ
なんか見てると作風がマンネリ化してるし
オリジナルでストーリー書けるだけの実力つけないと
ただの自己満足レスに終わっちまうしね
7051:2001/07/31(火) 07:02
…うーむ、見事に無風状態ですね…。 仕切るようで申し訳ないですけど、
この際だから、過去に何度か試みて失敗したアンケートなんかやってみましょうか。
ちょっと質問を、雑誌のソレ風にまとめてみました。

1.あなたはこのスレをよく読みますか?
  A.頻繁にチェックする B.思い出したときだけチェックする
  C.上がってきたときだけチェックする D.その他

2.あなたは、SSに主に何を求めますか?(いくつでも)
  A.萌え B.ほのぼのまたーり C.感動 D.笑い
  E.スリル、サスペンス F.パロディ
  G.ライトなエッチ H.ハードなエロ I.バイオレンス J.その他

3.あなたの読みたいSSのゲームタイトルは?

4.あなたの読みたいSSのキャラクター名は?

5.このスレ以外にも、SS投稿の盛んなスレがありますが、
その中でお勧めやお気に入りがあれば教えてください。


特に期間は設けません。
で、もしSSの投稿される方がおられたら、そちら優先でお願いしますね。
706決定権(1):2001/07/31(火) 18:24
 朝、俺は自分のベッドで目を覚ます。
「ふぁーあ……」
 体を起こし、大きな伸びをする。
 あれは夢か幻か……いまいち実感が湧かない。
 ふっと机の上に視線を移すと、小さな青いものと白いものが目に止まる。俺はベッドから降りて、机の前まで行く。
 その2つをそれぞれ広げて確認する。青いものはパンティ、白いものはワイシャツだった。
 それが夢でなく、現実だということを示している。
 華澄さんのアパートで看病されたこと。お酒を飲んだこと。そして裸で寝ていたこと。なによりも、その場から逃げ出してしまったこと。
 俺は何かイケナイことをしてしまったんじゃないのか、どこかでそう思っているのかもしれない。
「ま、まさか、華澄さんを……」
 頭の中にあることが浮かんだ。
「いや、そうと決まったわけじゃないさ」
 首を振り、その考えを否定する。昨夜のことは殆んど覚えていないんだ、何があったかわからないじゃないか。
 まあ、華澄さんに聞けばわかるのだろうが……。

 朝食を食べ、学校へ行く用意をする。今日は土曜日か……。
「あれ? 腕時計がない。忘れてきたのか?」
 たしかに公園では身に着けていたはず。でも、華澄さんのアパートでは着けてなかったような……。
「ま、いいか。それより、このパンティ……どうしよう。やっぱり返した方がいいかな……」
 このまま、持っててもしょうがないよな。それを手に取り、まじまじと見詰める……なんだかドキドキしてきた。
 ちょっと匂いを嗅いでみようか……か、華澄さんの匂いがするのかな?
 心臓の鼓動は更に高鳴ってくる。ううっ、これじゃまるで変態だよ……何を考えているんだ、俺は。
「学校に持って行くわけにもいかないし……」
 それこそ変態扱いじゃすまないような気がするぞ。
 その辺りに投げておくわけにもいかないので、ワイシャツと一緒にタンスの引き出しにしまうことにした。

 玄関で靴を履こうとした俺は、もう1つ忘れていたものがあることに気付く。
「あっ、傘……」
 そうだ、光の傘も忘れてきたらしい。まったく、俺ってヤツは……。
 靴を履いて学校へと向かう。
「靴も濡れていたはずなのに……華澄さん、乾かしてくれたのかな……」
707決定権(2):2001/07/31(火) 18:24
  プップー!
 高校へ向かう坂道を上っていこうとしたとき、すぐ後ろで車のクラクションが鳴った。ぼーっと考え事をしながら歩いていたせいか、車の接近に気付いていなかった。
 振り向いてその車の運転席を見る。そこには華澄さんが乗っていた。
 華澄さんは俺の左横まで車を移動させて止まり、窓を開ける。
「おはよう、具合はどう?」
「お、おはようございます。おかげですっかり良くなりましたよ」
「そう? それは良かったわ」
 俺は周りの生徒の視線が、こっちに向いていることに気付く。
「あ、あの華澄さん。他の生徒が見てますよ……」
 俺は華澄さんに顔を近づけ、小声で囁いた。
「別にいいじゃない。私は気にしないわよ」
「気にしないって……」
「そうそう、これ……忘れ物よ」
 華澄さんはそう言って、助手席に置いてあった腕時計と傘を取る。
「す、すいません」
 俺は腕時計と傘を受け取る。
「もう、ヒドイわ。朝起きたら居ないんだもの……」
 華澄さんは俺の耳元で囁いた。
「い、いや、それは……」
 返答に困り、慌ててしまう。
 華澄さんはそんな俺の姿を見て、一度にっこり微笑むと、車を発進させた。
 俺はただ、その車を目で追うだけだった。
 後に残された俺には、周りの生徒からの冷たい視線が……。
「……い、いやぁっ」
「……ちょっと待ちなさいよ……」
 前方からそんな声が聞こえた。よく見ると、走っていく2人の後ろ姿があった。
 あ、あれは……光と水無月さん――水無月琴子、光の親友だ――みたいだったが……。
708決定権(3):2001/07/31(火) 18:25
 ぽんっと左肩を叩かれる。
「よお。元気になったようだな」
 顔を左に向けると、そこには純――穂刈純一郎、俺の親友――がいた。
「ま、まあな」
「そ、その……う、うまくやっているのか?」
 純は顔を少し赤くしながら聞いてきた。
「はぁ? 何を言っているんだ」
「だ、だから……その……あ、麻生先生と……」
「華澄さんと?」
「あ、ああ。な、何もこんなところで降りなくても……」
「……お前、勘違いしているぞ。別に送ってもらったわけじゃないぞ」
「そ、そうなのか? お、俺はてっきり……」
「てっきり何だよ」
「お、お前……麻生先生の部屋に……ととと、泊まっていたんだろう? だ、だから……」
 純はさらに顔を赤くしている。
「な、なぜそれを?」
 純のヤツ……何で知っているんだ?
「や、やっぱりそうなのか?」
 純の声がうわずっている。しまった、カマかけられたのか?
「と、とにかく学校へ行こうぜ。もたもたしてると遅刻するぞ」
 俺はごまかすように純を急かせ、学校へ向かって歩き出す。
 途中、純が何を知っているのか聞き出した。
 あの雨の後、倒れた俺を支えていた華澄さんを見かけたこと。俺を病院ではなく、華澄さんのアパートへ運んだこと。華澄さんが俺を介抱すると言っていたことなど。
 そういえば、華澄さんのアパートは純の家の近くだったな。
 そうだよな……いくらなんでも、華澄さんが1人で俺を運ぶのには無理があるよな。
 純は深く追求してこなかったので、俺はあまり余計なことは話さなかった。
 これが匠なら……匠? そうだ、アイツをどうしてやろうか……。
709決定権(4):2001/07/31(火) 18:26
 教室に着いた俺は、光の姿を探す。しかし、教室に光の姿はなかった。
「おいおい、麻生先生と何話してたんだ?」
「そうそう、朝から熱いね〜」
 席についた俺に向かって、周りの席の生徒が冷やかす。
「べ、べつに。具合を聞かれただけだよ」
「いいよな〜、幼馴染みだもんな〜」
「まったく、うらやましいぜ」
 幼馴染み……そう、華澄さんも光と同様に、俺にとっては幼馴染みなんだよな。小さい頃は、華澄さんともよく遊んでいたよな。もっとも、年が離れているせいもあって、華澄さんより光と遊んでいたことの方が多かったが……。
 小さい頃のことをぼんやり思い出しているうちにチャイムが鳴り、ホームルームが始まる。
 光は具合が悪いということで、保健室にいるらしい。また、匠は昨日から欠席しているそうだ。

 1時間目の授業を終えた俺は、保健室へ向かった。
 引き戸を開け、保健室を見回す。保健の先生がいるだけで、ベッドには誰もいない。
「何、具合でも悪いのかしら?」
「い、いえ。あの、光……い、いや、陽ノ下さんは?」
「陽ノ下さん? ああ、具合が悪いからって、早退したわよ」
「そ、早退!? そ、そうですか……」
 せっかく光に会えると思ったのに……。
 俺はがっくりと肩を落とし、保健室を後にする。

 放課後、俺は純の席までいく。
「おい純。匠のこと――」
「ちょっとこい」
「えっ!?」
 俺は純に腕を掴まれ、強引に屋上まで連れていかれた。
「よし、誰もいないな……」
 純は辺りに人がいないことを確認した。
「な、何だよ、こんな所に連れ出して……」
「お前、匠の所業を知っているのか?」
「しょ、所業?」
 なんだよ、所業って……。
710決定権(5):2001/07/31(火) 18:26
「影でかなりヤバイことしてたらしいな。まったく、同じ男として許せん!」
 俺の問いかけを聞いていないのか?
「どうしたんだよ、純」
「匠は……ヤツは女性の弱みに付け込んで……いいい、いかがわしい……」
 怒っているせいか、変な想像しているせいか知らないが、純は顔を真っ赤にしている。
「お、落ち着けよ」
「す、すまん。つい……。と、とにかく、かなりの女性が被害に遭っているらしいぞ。弱みを握られているらしく、表沙汰にはなっていないらしいがな」
「そうなのか? そうか、光もそのうちの1人だったのか……」
 俺は呟いた。
「今、何か言ったか?」
「い、いや別に……」
 いけないいけない、余計なことは口に出さないほうがいいな。
「ところで純、お前は何でそんなことを知っているんだ?」
「い、いや、それは……。あ、ある人に聞いたんだ……」
 またもや純の顔が真っ赤になる。
「なんだ……女か?」
「べべべ、別に誰でもいいだろ……」
 純が好意を寄せていそうな人か……。
「佐倉さんか?」
「…………」
 純の顔は、今まで見たこともないくらい真っ赤になっている。判り易いヤツめ……。
 純ほどからかい甲斐のあるヤツはいないよな。

 暫く純をからかった後、匠について聞いてみた。
「ところで純、その匠なんだけど……昨日から休んでいるんだろ?」
「そうなんだ。なんでも大怪我して、入院したらしいぞ。噂じゃ、誰かに襲われたらしいが……」
「そうなのか?」
「ああ。そういえばこの間、一文字さんを狙っているとかなんとか言ってたな」
「一文字さん、ねえ……」
711決定権(6):2001/07/31(火) 18:32
「まあ、何かしらの報いは受けたってところだな。襲われていなければ、この俺が成敗してやったのに……」
「それはそれは……残念だったな」
 純は腕時計を見る。
「い、いかん。部活が始まってしまう。じゃあ、俺はこれで……」
 そう言うが早いか、純は走り去っていく。
「お、おい純……。いっちゃったよ」
 いつまでもここに居てもしかたがないし、教室へ戻るか。

 俺は教室に入ろうとして、引き戸の前で立ち止まる。なぜなら、教室内から話し声が聞こえてきたから。
「……光ちゃんがどう思っているにしろ、これは私と光ちゃんの問題であって、あなたには関係ないんじゃない?」
「そ、それは……そうかもしれないけど……」
 俺は引き戸の隙間から中を覗く。視線の先……窓際最前列の机の前に人が2人、向き合って立っている。奥が水無月さん、手前は華澄さんか――後ろ姿だが、朝見た服装と同じだ。他には誰もいないようだ。
「ま、まさかあなたも……そうなのね。親友になら取られても、私に取られるのは我慢できない……」
「な、なんですって!」
  バシッ!!
 それは一瞬の出来事だった。水無月さんが睨み付けるような表情になったとき、既に右手は動いており、華澄さんは避ける間もなく、頬を引っ叩かれていた。
「……図星のようね」
 華澄さんは水無月さんに顔を向けつつ、そう言った。
「ち、違うわ。そんなんじゃ……」
 水無月さんは視線を逸らす。
「あなたもよく考えることね。友情と恋愛、どっちが大切か……」
 な、何だ? 何の話しだ?
 暫く沈黙が続いた後、水無月さんがこっちに向かって歩いて来る。
 俺はとっさに引き戸から離れる。
  ガラガラ……ピシャン!
 水無月さんは引き戸を勢いよく閉める。
「や、やあ。水無月さん……」
 声を掛けたが、水無月さんは俺を一瞥しただけで歩いていく。
「何だ?」
 水無月さんの姿が見えなくなるまでぼーっと見ていた。
712決定権(7):2001/07/31(火) 18:33
 俺は暫く間を置いた後、引き戸を開け、教室へ入っていく。
 華澄さんは窓際最前列の席に座り、頬杖を付いて外を眺めていた。
「か、華澄さん」
 俺がさりげなく声を掛けると、華澄さんはゆっくりとこっちを向く。右頬がまだ少し赤い。
「……私って嫌な女、なのかしら……」
 ゆっくりと、そう呟いた。
「そ、そんなことないですよ」
「あなたは……あなたは誰が好きなの? ……やっぱり光ちゃん?」
「えっ!?」
 突然の問いに、俺は戸惑ってしまう。
「決定権は、あなたにあるのよ……私も光ちゃんもあなたのこと……」
 華澄さんの目から、ぽろりと涙が一粒流れ落ちる。
「ご、ごめんなさい……」
 そう言って華澄さんは席を立ち、教室から出て行く。
「華澄さん……」
 華澄さんや光の気持ち……薄々気付いていたことだ……。
 俺は暫く、その場に佇んでいた。

 その日の夜、俺は自分のベッドの上で横になり、いろいろなことを思い出していた。
 小さい頃、光や華澄さんと遊んでいたこと。ひびきの市から引っ越してしまう前の数日間。高校の入学式で光に再会したこと。水無月さんや純、匠たちと出会ったこと。そして、華澄さんと再会したこと……。
 俺が好きなのは……誰なんだろう。光なのか、華澄さんなのか、それとも……。
 今までそんなこと、深く考えたことはなかった。いや、答えを出したくなかったのかもしれない。適当に、そう適当に毎日を楽しく過ごせれば、今までのように曖昧な関係でも十分満足だった。
 だが、そんな関係をいつまでも続けていけるはずはない。ただ、自分からその関係を壊したくなかっただけなのかもしれない……。
 これ以上は無理なのか? なにかしらの結論を出さなければいけないのか……。

 目を覚ますと、既に昼近くだった。いつのまにか眠っていたのだ。
 少し早い昼食を済ませ、部屋に戻ってきた。
 俺は暫く考え、なんとか一つの結論を出した。その結論とは……。
  俺は光が好き>>713
  俺は華澄さんが好き>>714
  俺は水無月さんが好き>>715
713決定権(8):2001/07/31(火) 18:33
 俺は光の家に向かった。
  ピンポーン!
 チャイムを鳴らす。
 暫くして、光が顔を出す。
「光!」  (2度目ならコチラ>>716
「……何?」
 光の表情は暗い。
「これ……ありがとう」
 俺は傘を差し出す。光は無言で受け取った。
「昨日のこと、気にしているのか?」
「ううん。別に……」
 光はゆっくりと首を振る。
「光、俺――」
「華澄さんはいいの?」
 光は俺の言葉を遮るように問う。
「えっ!?」
「華澄さん、君のこと……ずっと見守っていたんだよ。君が毎日夜中まで公園で待っていたことや、あの日君がびしょ濡れになりながら待っていたことを教えてくれたのは、華澄さんなんだよ。私……やっぱり華澄さんにはかなわないよ」
「そ、そんな……」
 あの日、華澄さんが光を説得したのだろうか? 俺はただ、公園で意味も無く待っていただけなのか?
「私ならいいの。華澄さんが君のこと好きなの……気付いていたから。私は大丈夫よ、もう落ち着いたから……」
 光はとても寂しそうな表情をする。
「光……」
  俺は、光が好きなんだ>>716
  ごめん、華澄さんが好きなんだ>>714
714決定権(9):2001/07/31(火) 18:34
 俺は華澄さんのアパートに向かった。
 階段を駆け上り、華澄さんの部屋の方を見ると……。
 華澄さんはドアに背を預けていた。
「華澄さん!」  (2度目ならコチラ>>717
「あら……どうしたの?」
「これ……」
 そう言って、俺はポケットからパンティを出す。
「や、やだ……。やっぱり持って帰っていたのね」
「ご、ごめんなさい」
「……もう、相変わらずエッチなんだから」
「えっ!?」
「昔はよく、私のスカートめくったり、おっぱい触ってきたりしたじゃない」
「そ、そんなことしたかな?」
「もう、都合の悪いことは全部忘れているのね……」
「えっ!? ま、まさかあの日……お、俺、華澄さんにエッチなことしたんじゃ……。ワイシャツの血って……も、もしかして……」
 華澄さんはクスクスと笑い出す。
「な、何がおかしいの?」
「あれ、あなたの血よ。私を押し倒したまではよかったけど、鼻血だして倒れるんだもの、びっくりしたわ。あなたはそのまま寝ちゃったのよ。朝起きたらいないし、どこへ行ったのか心配したんだから……」
 俺は笑うしかなかった。なんだか情けないな……。
 暫くして、華澄さんは急に真面目な表情をする。
「ここへ来たってことは、期待してもいいのかしら? 光ちゃんはいいの? 後悔しない?」
「か、華澄さん……」
  ごめん、光のことが好きなんだ>>713
  俺、華澄さんが好きなんだ>>717
715決定権(10):2001/07/31(火) 18:49
 俺は水無月さんの家に向かった。
 ちょうど玄関の前にいた水無月さんを見つける。
「水無月さん!」
「な、何しに来たの?」
 急に不機嫌な表情になる。
「あ、あの――」
「こんな所に来るより、行くところがあるでしょ!」
 水無月さんは俺の言葉を遮る。
「お、俺……水無月さんのことが、ずっと好きだったんだ!」
「はぁ!?」
 水無月さんは固まってしまう。
 暫くして……。
「……な。ば、馬鹿じゃないの! そ、そんなくだらない冗談を言いに来たの?」
「い、いや……」
「何言ってるのよ。あなたには光がいるじゃない。べ、別に麻生先生でもいいけど……。と、とにかくそんなことを言いに私の所へ来るなんて、気が狂ってるとしか思えないわ」
「水無月さん……」
「まったく、とっとと帰ってちょうだい!」
  冗談さ、俺は光が好きなんだ>>713
  気が狂っていたよ、俺は華澄さんが好きなんだ>>714
  冗談なんかじゃないし、俺は正気だよ>>718
716決定権(11):2001/07/31(火) 18:52
「俺は光が好きなんだ」
「えっ!?」
「俺には……光しかいないんだ」
「う、うれしい……私も大好きだよ」
 光は一瞬だけ、嬉しそうな表情をした。
「でも……私はもう……汚れているんだよ……」
 そう言った光の目には、涙がたまっている。
「そんなの関係ないって言ってるだろ」
「だって……」
「大切なのは過去じゃない、未来だよ」
「み、未来?」
「そう、俺たち2人の」
 光の目にたまっていた涙が流れる。
「もう、泣くなよ。光の辛い顔や悲しい顔は見たくない。光には笑顔が一番似合うよ」
「えへへ、そうかな?」
 光は無理に明るい笑顔を作って見せる。
「バカ……泣きながら笑うと怖いよ」
「あっ、バカっていう方がバカなんだよ……」
 そう言って光は俺とドアの間をすり抜け、走っていく。
「言ったな……まてよー」
 俺は走っていく光を追いかける。
 光が心から笑ってくれる日は近いかもしれない……。
   <光END>
717決定権(121):2001/07/31(火) 18:53
「俺は華澄さんが好きなんだ」
「本当に?」
 華澄さんは顔を近づけ、念を押す。
「う、うん」
「そう……私もあなたが好きよ。さ、入って」
 俺は促されるまま、華澄さんの部屋に入る。
「小さい頃に約束してくれたこと、忘れているでしょ……」
 華澄さんは和室の方へ移動する。
「えっ? 何か約束してた?」
 俺は華澄さんの後を追う。
「フフフッ、やっぱり憶えていないのね」
 華澄さんは振り向く。少し寂しそうな表情をしている。
「ねえ、何を約束したの?」
「内緒よ。とりあえず、この前の続き……しましょうか……」
 華澄さんは俺の耳元で、そう囁いた。
「えっ!?」
 俺の鼓動が早くなっていく。
「なーんてね、冗談よ」
 そう言って華澄さんは俺の唇に軽くキスをする。
 俺は弄ばれているのか?
   <華澄さんEND>
718決定権(13):2001/07/31(火) 18:54
「冗談なんかじゃないし、俺は正気だよ」
「そ、そんなの……おかしいじゃない。変よ、絶対に変よ」
「変じゃないさ。水無月さんの気持ちはどうなんだい?」
「えっ、私の……気持ち?」
 水無月さんは視線を逸らすように俯く。
「そうさ、大事なのは俺と水無月さんの気持ちだろ」
「わ、私は……。私はあなたのことが……」
 そう言って、水無月さんは顔を上げる。
 俺は水無月さんの次の言葉を待つ。
「す、好きよ……多分」
「た、多分?」
「自信がないわ……」
「ど、どういうこと?」
「私、中学の頃からあなたのことを聞かされてきたのよ。いつのまにか光の思い出が、私の思い出のようになっていたのよ。あなたに出会ってから、あなたへの想いが少しずつ大きくなっていったわ。でも、私は本当にあなたのことが好きなのかしら? ……光が好きだから……だから私も……好きになったのかも……」
「光ならわかってくれるよ……」
「私にあなたを……光よりあなたを選べっていうの?」
「そ、そうさ」
「そんなこと出来ない。出来るわけないじゃない……」
 そう言って水無月さんは家に入ってしまう。
「み、水無月……さん」
 俺はドアまで行き、ノブを回す。
  ガチャ、ガチャ。
 開かない……鍵をかけられた。
 俺の決断は間違っていたのか? 前途多難だ……。
   <水無月さんEND>
719回しネタ(1):2001/07/31(火) 18:55
琴子「ねえ光、日本人ならパンよりご飯よね」
光「うん、私もそう思うよ」
720回しネタ(2):2001/07/31(火) 19:01
琴子「うどんやそばもいいわね」
光「うん、そうだね」
721回しネタ(3):2001/07/31(火) 19:02
琴子「でも、私の一番はやっぱりご飯かしら」
光「へぇ、そうなんだ……」
722回しネタ(4):2001/07/31(火) 19:03
琴子「光はどうなの?」
光「えっ、私? 私は……私も同じだよ」
723回しネタ(5):2001/07/31(火) 19:04
琴子「じゃあ、ご飯が一番好きなの?」
光「うん、ライスきだよ!」
724回しネタ(6):2001/07/31(火) 19:05
琴子「め、銘柄は?」
光「えっとぉ……コシヒカリ!」
725回しネタ(7):2001/07/31(火) 19:07
琴子「そ、そう。じゃあ、おかずは何が好き?」
光「えへへ、卵……かな」
726回しネタ(8):2001/07/31(火) 19:07
琴子「ま、まさかその卵って……」
光「ヨード卵・光!!」
727回しネタ(9):2001/07/31(火) 19:10
琴子「はいはい……」
光「ちょっと待ってよ〜琴子、琴子ったら〜」
728519:2001/07/31(火) 19:18
前々回−>>531-535「俺の気持ち」
前回−−>>641-648「雨の後」
続き−−>>706-718「決定権」
ときメモ2より 光&華澄&琴子 です。
今回で完結、ということで。
つ、疲れた……。
ご苦労様〜。
長編ってやっぱり大変だよね。
しかしこの回しネタは…。
些細なことだが>>717が(121)になってるよ。
それだけ。
>>705
自分の萌え思想がばれるのでこのアンケートには答えにくいっす。
7321:2001/08/02(木) 23:28
>>728
遅くなりましたがお疲れ様です。「雨の後」って後に続く話だったんですね…
服についていた血、やっと胸のつかえがおりました(w

>>731
実は書いてから後悔しました。よく考えたら、アンケート結果がどうでようと、
結局自分の書きたい話しか書けないわけだから意味ないんですよね。
と言うわけで、あれは忘れてください>ALL。
733 :2001/08/04(土) 12:54
 
このスレは432KBです。
そろそななので気をつけてください。
>>732
リクエストを取ることは良いと思うよ。
736  :2001/08/05(日) 21:10
737NTS:2001/08/06(月) 03:46
へへへへ、今日は土曜日〜♪
週に一度のお楽しみ、おにぃの家に行く日〜♪
「おにぃ、おはよー」
そう言ってドアを開ける。
なんか、合鍵持ってるって彼女みたいだよね。
一人暮しにしては以外に片付いてる部屋を進んで奥の部屋に行く。
こうして綺麗に片付いてるのも、毎週甲斐甲斐しく来てあげてる僕のお陰だよね。
「おにぃ、きたよー」
………
あれ、返事が無い。
「あぁ、未だ寝てる!!」
おにぃったらこんな可愛い妹が来てるのに寝腐ってるなんて。
しかもベッドであんな仕合せそうな顔しちゃってるし。
うぅ〜ん、毎週来ちゃうと有り難味が無くなっちゃうのかなぁ。
でも、一週間以上もおにぃに一回も逢えなかったら僕気が狂っちゃうし………
「ねぇ、おにぃ起きてよ〜〜」
肩をゆさゆさ揺すってみる。
「…………」
うぅ、全然起きないよ。
周りを見てみると、数本のビール瓶。
昨日随分飲んじゃったのかな。
取り敢えず頬を触ってみよ。
『ふにふにふにふに』
「あははは、面白い。」
って、声挙げちゃおにぃが起きちゃうよ――――
ん?僕起そうとしてたんだっけ。
でも、このままじゃ全然起きないよぉ。
「こまったなぁ、どうしようかなぁ」
………
………こう言う機会は滅多にないよね。
「一緒に寝ちゃおっと」
一応口に出す。
おにぃから反応は――――――なし。
よしっ、実行しちゃうもんね、へへへへ。
自分でも解るくらいにやけながら、布団に滑り込む。
うわぁ、目の前におにぃの顔があるよ!!
キスし……ちゃおっかなぁ。
うぅ緊張するかも。
……………
……………
……………
あぁ〜駄目だ〜〜〜。
恥ずかしくて出来ないよ〜〜。
やっぱり、最初のキスはおにぃから優しくして欲しいなぁ。
取り敢えず今は一緒に寝るので我慢しよっ、うん。
んふふふふ、久しぶりのおにぃの布団だぁ。
暖かいなぁ。
抱きついちゃお、えい。
そしてそして〜おにぃの胸に頭を『ぴとっ』とくっつけるの。
あはは、なんかおにぃの匂いに包まれて寝るのって幸せ〜〜。
おやすみなさぁい。
738NTS:2001/08/06(月) 03:47
739NTS:2001/08/06(月) 03:49
740NTS:2001/08/06(月) 03:50
741NTS:2001/08/06(月) 03:51
(・∀・)マワス
742回し中。:2001/08/06(月) 03:54
 
743NTS:2001/08/06(月) 03:55
(・∀・)モットマワス
744NTS:2001/08/06(月) 03:55
>>742
Thanx
745NTS:2001/08/06(月) 03:57
(・∀・)回
746NTS:2001/08/06(月) 03:59
(・∀・)マワス
747回し中。:2001/08/06(月) 04:00
 
748NTS:2001/08/06(月) 04:00
>>737
シスプリっぽい何か
パッと見、回しが荒らしにみえました。
>>748
お疲れさまでしたぁ。
あ、あのー、リクエストはOKですか?
ときメモ(1、2どっちでも)でソフトエッチ系とか、お願いできます?
さぁ、職人頑張ってくれ!!
752NTS:2001/08/07(火) 20:35
>>750
十日出店する立場なので微妙にてんぱってます.
時間見て書いてますんで期待しないで待ってください.
7531:2001/08/07(火) 22:03
>>748
お疲れ様です。一件シンプルな中に、極限までシェイプアップされた萌えが
つまってて(・∀・)イイ!
こういうの見ると、自分の作品って無駄に長いのかな、とか思っちゃいますね。


…気がつけば、最後の作品が七夕ネタだったから、今日でまる一ヶ月…
来週の連休中には何か書きますんで許して(w
タイトル予告して自分を追い詰めておこう。「一日だけのMAHO」(仮)です。
登場キャラモロバレ(w
754519:2001/08/08(水) 12:32
>>730
ご指摘、ありがとうです。おバカな間違いですね(藁

>>748
お疲れさまです。
いいですね〜。うちの妹もこんなだったら……(藁

>>752-753
次回作、お待ちしてますよ。
755750:2001/08/09(木) 23:17
職人様、頑張って下さい!
ゆっくりと、待たせていただきます。
ソフトエッチってどんなんだっけ。
757名無しくん、、、好きです。。。:2001/08/11(土) 07:39
もしかして、ライトエッチのこと?
ハードエッチの対として使ったのかな?
違っているなら、謝ります。
ソフトもライトも一緒でしょ。
ただニュアンスはわかるが説明を求められるとうまく答えれない。
759名無しくん、、、好きです。。。:2001/08/13(月) 22:48
>>757-758
わかりにくくて申し訳ありません。
あまり深い意味はないんです。
ただ、あまりエロエロでなければ…
あっ、別にエロが嫌いなわけではないんです。
7601:2001/08/13(月) 23:13
誰も期待してなかっただろうと思うけど、一応謝罪。
すいません、>>753の予定、撤回します。どうしても先に書きたい話ができてしまいました。

だって、最近の駄スレ乱立(おのれ夏厨め!)見てると、不憫で不憫でしかたないんだよ…
761761らしいっすね:2001/08/14(火) 01:05
あんのぉ・・・ここって超ハードコアエロSS書いても良いっすか?
>>760
気長にまってます
>>761
どうぞご自由に。
でも文頭に注意書きしてくれると嬉しい。
ひびきのの鐘の余韻を耳に残したまま、早春の校庭から2人、歩き出す。
「俺の部屋に来る?」
「うん。君の部屋、見たい。」
彼女の手は柔らかく、その肉体的質感に堪らず俺は前傾姿勢となった。
「具合でも悪くなったの?」
「いや、ちょっとね。」俺は足早に自分の部屋へと急いだ。
家には例の如く誰も居ない。冷蔵庫のメモすらない。「誰も居ないの?」
両親が帰って来るまでには時間がたっぷりある。「うん。夜遅くまではね。」
部屋に入るなり、彼女を抱き締めた。
「あぁ・・・」彼女の瞳が閉じる。
舌をねじ込み、彼女の口を啜る。彼女は唇の力を抜き、俺に為されるがままだ。
セメント袋2袋分の重さは、俺の力でなんと言うこともなく持ちあがる。
お姫様抱っこで、ベッドに横に置く。次いで自分も横たわる。
大門高校の制服が殺風景な寝場所を彩る。
彼女の口中を上から味わいながら、右手で彼女の胸の柔らかさを確認する。
「ん・んんぅ・・・」
さして大きくはないが、柔らかい。その感触に切ないような激情が込み上げる。
彼女の体を一頻り撫で回しつつも、舌を休める事はしない。彼女も俺がそうする様に、
俺の舌を吸い、俺の口を啜り、俺の唇全体を舐めまわした。
彼女の顔が上気し、息遣いが荒くなる。彼女のスカートのホックを外し、右手を
パンティーの内側に忍び込ませる。
「ああぁ・・・」
抵抗しないのか。覚悟が出来てるのか。否、彼女は期待しているのだろう。
彼女の喘ぎ声が室内に響くのみだ。
彼女の顔から自分の口を離し、すぐさまスカートから露にされた彼女の下半身へ
持って行く。綺麗な左右対称の花弁を舐り、小さな突起部分を鼻先で探し当てる。
764763続き:2001/08/14(火) 17:27
「汚いよ、そんなとこ。・・・はぅっ!」
「くう〜っ堪らん。どれだけ楓子ちゃんのを舐めたかったか。」
「ああぁ!・・・ああっ・・・」
彼女の体が仰け反り、足に緊張が感じられる。彼女は両の手で俺の頭を下へ押し下げ
ようとする。俺はそんな事にはお構いなく、彼女の花弁とその周辺を散々味わい尽くす。
もはやこのままではいけない。自分のパンツがどろどろに成ってしまう。
俺は自分の衣服を下半身のみならず上半身まで脱ぎ捨てる。
それを見て彼女も制服を脱ぎ、ベッドの横に置き、すぐさま毛布で身を隠す。
彼女が隠れた毛布に、自分も潜り込む。
「初めてなの。怖いの・・・」そう言いながらしがみ付いて来る。
「そうか。丁寧にやるから、我慢してね。」
「うん・・・」
再びキスをし、彼女の部分をまさぐる。既に自分の唾液でぬるぬるになっている。
自分の腹にめり込みそうなほどに怒張したものを彼女の股間にあてがう。
「はぁ・・・ああぁ・・・」
自分の物で彼女の股間を擦り回す。突起がそれと分るほどに硬くなっている。
キスをしながら挿入する。
「つっ、ううーっ・・・」入れた瞬間、彼女の全身が強張る。
「我慢できる?」不安になって尋ねる。彼女は苦しげにも笑顔を作り、
「出来る、と思う…」
ゆっくり腰を動かす。一突きを入れる度に彼女が「あ"ぁん」と喘ぐ。
激しく腰を動かし、彼女の中で放出する。しかしピストン運動は休めない。
彼女の香しい匂いに満たされた部屋に、特有の臭気が漂い出す。
切なそうな表情の彼女の瞳から涙が一筋伝う。
入れたまま腰を休める。「どうして泣くの?」
「分らない。痛いのもあるけど、嬉しいの。」
「じゃあもう少し我慢して。」「・・・うん。」
体を起こし、右手親指で股間の突起を刺激しつつ、ピストン運動を再開する。
彼女の全身が右に傾いた日の光を浴びて赤く染め上がる。
「はあぁっ!」彼女の絶頂を確認し、再び彼女のなかで果てる。
・・・・・・・・・・
彼女は俺に凭れながらベッドに腰掛け、改めて俺の部屋を見まわす。
彼女の写真が拡大され、パネルになっているのを机近くの壁に見出す。
去年、海で撮った物だ。
「なにこれ、恥かしいな。もう。」
「あの頃より綺麗になったよね。」
「えっ?・・・そう?」
彼女の頬が夕日より紅く染まる。

今年の夏は、もっと沢山写真撮ろうかな。浴衣姿も。
彼女を抱き寄せたまま、そんな事を考える。
                                     終わり
よくログ見たらバイト数オーバーの懸念があります。
エロげ葱板に新スレ立ててハードコアはそこでやる事にします。
766バイトオーバー怖いけど:2001/08/14(火) 20:44
一応回しときます。
7673rd:2001/08/14(火) 20:45
満足できる作品を書きたい。
7684th:2001/08/14(火) 20:46
その為にはえろAA職人さんの手伝いも要るかななどと
7695th:2001/08/14(火) 20:46
考えたりするんですけど。
7706th:2001/08/14(火) 20:47
ときメモキャラで、既出で無いのって、
7717th:2001/08/14(火) 20:47
そんなにいなかったりします?
7728th:2001/08/14(火) 20:48
回して、回して。
7739th:2001/08/14(火) 20:48
林間は却下でしょうな。
774 。:2001/08/14(火) 20:50
年の為。こういうコトするのも荒らしなような。
775763-764。:2001/08/14(火) 21:57
>>763-764 は楓子と♥(露骨表現あり)です。
内容が内容だけに敢えて上げず。
このスレは443KBです。
そろそろ新スレに移行した方がよろしいかと…。
777通常の名無しさんの3倍:2001/08/16(木) 21:45
これで終わりにするか、続けるか、>>1!!
続けて紅麗。
7791:2001/08/16(木) 23:42
>>775
お疲れ様でした。
でも、楓子ちゃんなら「〜だモン!」をどっかに入れて欲しかった…(w

>>776-778
って、次スレも私が立てるんですか? 実は、誰かが代わってくれるのを
期待してたんですけど(w
それはそれとて、今書いてる話がほむら&メイなんで、スレ立て一発目から
それだと、例の清川厨房が来ちゃう恐れが…。どうしましょう?
1のスレ管理が丁寧だったので次スレも立ててくれると嬉しいです。
無理ならせめてコテハンになってスレ管理だけでも…。
ちなみに1発目にほむら&メイ話を書いても俺は安心だと思う。
どうせスレ立ってすぐは潜るまで地下進行で下がった頃に1発目うぷになるだろうから荒らしも気がつかないだろうし。
>>780に全面同意。
>>775
お疲れさま。
(・∀・)イイ!!

>>780
同意します。
783:2001/08/17(金) 14:36
>>780-782
…そういう風に見られてたのか、私。そういう事なら、OK、やりましょう(<おだてに弱い)

んがしかし、ここに来てちょっと問題が… なんか連続書き込み規制が強化されたとか。
http://yasai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=gal&key=989238762&st=939&to=941
詳しい情報をお持ちの方、いらっしゃいますか? 状況によっては死活問題になりかねない…。
取りあえず立ててからゆっくり考えればどうでしょう?
どうせ、暫くは下げ進行だし。
やっぱり「つづく」をつかった連載方式になるのかな。
それとも「しばらくお待ち下さい」と書いて他の人に書きこみ待ちをしてもらうとか。
でも、意外となんとかなりそうな気がするなァ…。
なんにしろ夏厨対策で一時的なものだといいね。
ついにデカスレ指定うけちゃいました。
かちゅーしゃじゃないと書きこめません。
はふん。
7861:2001/08/18(土) 02:03
かちゅ初使用…
どうも、スレッドサイズの上限が小さくなっちゃったみたいですね。
片桐スレとか先生スレとか、突然読めなくなっちゃう事故頻発中のようで。
次スレの準備を急ぎます。
かちゅーしゃで見ながら待ってるのでスレ立てたら報告よろしく。
スレを立てる時間を予告でもいいです。
とにかく待ってます。
7881改め缶珈琲
新スレ立てました。ついでにコテハンも決めました。
http://yasai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=gal&key=998140261 です。
あわせて新作、何とか書きあがりましたんで、もうちょっとチェックしたら
うぷします(明日の朝になっちゃうかも…)