ギャルゲ・ロワイアル2nd

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1名無しくん、、、好きです。。。
このスレはギャルゲ・ロワイアル2ndの本スレッドです
ギャルゲ・ロワイアル2ndを一言で表すのならば、ギャルゲーの人気キャラを用いてバトルロワイヤルをするというリレー小説企画です
基本的に作品の投下・感想共に、このスレで行って下さい


ギャルゲ・ロワイアルしたらばBBS(1st・2nd兼用)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/8775/

ギャルゲ・ロワイアル2nd 議論・毒吐き専用スレpart2(上記したらば内)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1203171454
※議論はこちらでどうぞ

ギャルゲ・ロワイアル2nd避難所スレ(同上)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1205659483
※本スレが荒れている場合の感想・雑談はこちらでどうぞ。作品の投下だけは本スレで行って下さい

ギャルゲ・ロワイアル2nd予約専用スレ(同上)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1205656662/l50


ギャルゲ・ロワイアル2ndまとめwiki
http://www7.atwiki.jp/galgerowa2

ギャルゲ・ロワイアル2nd毒吐きスレ(パロロワ毒吐き別館BBS)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1203695602
※毒吐きスレ内での意見は、基本的に無視・スルーが鉄則。毒吐きでの話を他所へ持ち出さないように!


テンプレは>>2以降に
2名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 18:35:56 ID:IGJGocnS
・参加者一覧
3/3【THE IDOLM@STER】
   ○高槻やよい/○菊地真/○如月千早
5/5【アカイイト】
   ○羽籐桂/○千羽烏月/○浅間サクヤ/○若杉葛/○ユメイ
5/5【あやかしびと −幻妖異聞録−】
   ○如月双七/○一乃谷刀子・一乃谷愁厳/○アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ/○九鬼耀鋼 /○加藤虎太郎
5/5【機神咆哮デモンベイン】
   ○大十字九郎/○アル・アジフ/○ウィンフィールド/○ドクター・ウェスト/○ティトゥス
4/4【CLANNAD】
   ○岡崎朋也/○古河渚/○藤林杏/○古河秋生
4/4【CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
   ○黒須太一/○支倉曜子/○山辺美希/○佐倉霧
2/2【極上生徒会】
   ○蘭堂りの/○神宮司奏
4/4【シンフォニック=レイン】
   ○クリス・ヴェルティン/○トルティニタ・フィーネ/○ファルシータ・フォーセット/○リセルシア・チェザリーニ
3名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 18:36:17 ID:IGJGocnS
4/4【School Days L×H】
   ○伊藤誠/○桂言葉/○西園寺世界/○清浦刹那
2/2【Strawberry Panic!】
   ○蒼井渚砂/○源千華留
6/6【つよきす -Mighty Heart-】
   ○対馬レオ/○鉄乙女/○椰子なごみ/○鮫氷新一/○伊達スバル/○橘平蔵
3/3【To Heart2】
   ○柚原このみ/○小牧愛佳/○向坂雄二 
3/3【Phantom -PHANTOM OF INFERNO-】
   ○アイン/○ドライ/○吾妻玲二 
4/4【Fate/stay night[Realta Nua]】
   ○衛宮士郎/○間桐桜/○葛木宗一郎/○真アサシン 
4/4【舞-HiME 運命の系統樹】
   ○玖我なつき/○深優・グリーア/○杉浦碧/○藤乃静留
6/6【リトルバスターズ!】
   ○直枝理樹/○棗鈴/○来ヶ谷唯湖/○棗恭介/○宮沢謙吾/○井ノ原真人

【残り64/64名】
4名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 18:36:39 ID:IGJGocnS
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → 舞台である島の地図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。

【禁止エリアについて】
放送から2時間後、4時間後に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。
5名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 18:37:14 ID:IGJGocnS
【舞台】
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/ed/c29ff62d77e5c1acf3d5bc1024fe13f6.png

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述する。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。
6名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 18:37:53 ID:IGJGocnS
【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。

【デイパック】
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。

【支給品】
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1〜3つのアイテム。
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。
7名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 18:38:36 ID:IGJGocnS
【予約について】
書き手は事前に書きたいキャラを予約し、その予約期間中そのキャラを使った話を投下する義務がある。
予約無しの投下は不可。
予約期間は3日間(72時間)で、その期間を過ぎても投下がなかった場合、その予約は無効となり予約キャラはフリーの状態になる。
但し3作以上採用された書き手は、2日間の延長を申請出来る。
また、5作以上採用された書き手は、予約時に予め5日間と申請することが出来る。
この場合、申請すれば更に1日の延長が可能となる。(予め5日間と申請した場合のみ。3日+2日+1日というのは不可)
期限を過ぎた後に同じ書き手が同じキャラを予約することはできない。(期限が六日、九日と延びてしまう為)
予約の際は個人識別、騙り防止のためにトリップをつけて、 したらばで宣言すること。

【能力制限】
ユメイの幽体問題→オハシラサマ状態で参戦、不思議パワーで受肉+霊体化禁止
ユメイの回復能力→効果減
舞-HiME勢のエレメントとチャイルド→チャイルド×エレメント○
NYP→非殺傷兵器で物理的破壊力も弱い
     ただし、超人、一般人問わず一定のダメージを食らう
     NYPパワーを持ってるキャラはその場のノリで決める
リセとクリスの魔力→楽器の魔力消費を微小にする、感情に左右されるのはあくまで威力だけ
ティトゥスの武器召喚→禁止あるいは魔力消費増
士郎の投影→魔力消費増
アルの武器召喚→ニトクリスの鏡とアトラック・ナチャ以外の武器は無し。
            または使用不可。バルザイの偃月刀、イタクァ&クトゥグア、ロイガー&ツァールは支給品扱い
            またはアル自身、ページを欠落させて参戦
            または本人とは別に魔導書アル・アジフを支給品に。本の所持者によってアルの状態が変わる
武器召喚全般→高威力なら制限&初期支給品マイナス1&初期支給品に武器なし
ハサンの妄想心音→右腕ごと没収または右腕有り、使用は不可。または消費大、連発不可。または射程を短くする
ハサンの気配遮断→効果減
虎太郎先生の石化能力→相手を石にできるのは掴んでいる間だけ

その他、ロワの進行に著しく悪影響を及ぼす能力は制限されている可能性があります
8――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:37:18 ID:oFDExdZ6
――はじまり。

眠っていた、のだろうか。
心地の良いまどろみなどでは決してなく、泥のような残滓が頭を揺さぶる。
ぼやけた視界は白い波紋となって角膜を侵蝕する。

何が起こったのか、そして何が起こっているのか。
それは、今の私にはまるで分からないことだった。
指は動く。腕も、足も、肩も、首も――

「あら?」

変だ。うごかない? ……いや、違う。ただ純粋に動かし難いのだ。
少し心を沈めて身体の感覚を鋭敏化させてみる。
確かに、感じる。何かが……ここにある。

だから、そっと指先で触れてみる。
壊れ物を扱うように細心の注意を払って。
ふるふると小刻みに振動する、微妙に血液の廻っていない人差し指と中指で。まるで朽ち花を摘むように。

「……チョーカー、かしら」

言葉にしては見たものの、頭は確実にそれが"別の物"であると判断していた。

ツルツルとした滑らかな表面。
爪で引っ掻くようにして触れてみても返って来るのは明らかに"金属"であると分かる無機質な堅さだけ。
皮膚に感じるヒンヤリとした感覚は、ソレが一切の温かみを持たない鉱物で出来ていることを示していた。
9――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:38:26 ID:oFDExdZ6
なんなのだろう、これは。
チョーカーでもネックレスでもラリエットでもブローチでもない。
まるで闇夜で蠢く蟲が詰まっているようだ。そして、何よりも背筋を駆け抜ける妙な悪寒。
全身の神経が未だ朦朧とした睡りから抜け出せていない脳細胞に必死で訴えかける。

コレは、良くないものだ、と。


駆け抜けた戦慄と共に意識は覚醒に至った。
違和感。つまり、思考はここが明らかに"異様"な場所であるという確信へと向かう。

ぐるりと周囲を見回してみる。
どう見てもおかしい。どう考えても変だ。
適当に考えても二つほど疑問点が浮上する。首を締め付ける妙な物体を除いても、だ。


まず今私がいる場所。左手で軽く地面に触れてみる。少し、冷たい。
そう、床だ。ほんの数分前まで私は講堂程度の広さのホールの"床"でどうもグッスリお休みだったらしい。

――何故、こんな場所にいる?

二つ目。この空間には、私以外の何十人もの人間がいる、ということ。
しかも未だ床の上で意識を朦朧とさせている女の子などが多数。
つまり集団の誘拐犯だろうか、という解答が頭に浮かぶ。
だがすぐさま、それは却下。
何しろ周りには年頃の少女だけではなく、頑強な身体付きの老人や全身黒タイツの仮面の男など妙な人間も多数存在するからだ。
「ここはどこなのだぁぁぁああああ!!」などと凄まじい動きをしながら絶叫している変な髪色の男なんかもいる。

(うん。きっと、ああいう人のことを○○○○って言うんだわ)
10名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:38:31 ID:IGJGocnS
 
11――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:39:01 ID:oFDExdZ6
そう。つまり、二つ目はこういう疑問だ。
――何故、こんな類の人間達が一堂に介しているのだろう?


……む、なんだかよく分からなくなって来た。一度全てを整理して見よう。
まずは自問自答。
そう、この場所にあって、唯一確かな存在とはおそらく考える自分自身だけなのだから。
「我思う故に我あり」とはよく言ったものだ。
何もかもが、国境や空間を越えて世界までもが虚偽だとして、
今こうして思索を巡らせている自分自身までが嘘偽りの存在であるなんて考え難いってこと。

さぁ、私は誰だ? 記憶を探れ。事実を手繰り寄せろ。

ネットワークを検索したような速度で一気に情報が到着する。
聖ル・リム女学校、五年A組所属。
星座はてんびん座。血液型はAB型。そして名前は、

「源、千華留」

それが、私の名だ。一つの濁りもない鉄壁の真実だ。
アストラエの丘に建てられた三つの女学校――『聖ミアトル女学園』『聖スピカ女学院』『聖ル・リム女学校』
その中の一つ、最も新しく建造された聖ル・リム女学校で生徒会長を務めている。
そう、これでプロフィールは完璧。後は――


「さて、そろそろ皆さんの意識も戻った頃でしょうか」
「……そのようだな」


状況の、把握のみだった筈なのだが。
12名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:39:04 ID:IGJGocnS
 
13名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:39:32 ID:IGJGocnS
 
14――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:39:39 ID:oFDExdZ6
突如、ほとんど暗がりに近かった広間に明かりが灯った。
今まで気付かなかったが、中央にステージのようなものがある。
まるでライブハウスのように多数の機器類が置かれ、そしてその中央に立つ二人の男の姿――

一人は黒尽くめの神父。190cmはありそうな日本人離れした長身。身に纏った僧衣を鍛え上げられた筋肉が押し上げる。
そして何より全てを見透かしてしまいそうな硝子球のような瞳……。
闇、深淵、暗黒。ありとあらゆる暗澹とした感情を凝縮したような絶望色に染まった視線で彼は私達を見下ろす。

そして比べて対照的なのが、その隣に佇む十代後半の青年だ。
衣服から彼が学生であることが分かる。おそらく私と同じか一つ上、と言った所だろう。
人柄の良さそうな微笑を口元に携え、右手には鞘に包まれた日本刀と思しき武器を持っている。
傍目からも彼の実直で、真面目な性格が伺えるようだった。

「だ、誰だよ……アレ?」
「おいおい、俺に聞くんじゃねぇよ。俺達、目覚めたばかりで三人とも条件は同じだろうが」
「……だな。とりあえず話を聞いてみようぜ」

隣で三人組の男の子達がこそこそと話し合っている。
どうも知り合いと一緒にこの怪しげな《イベント》に参加している者もいるようだ。
私の場合はどうなのかしら。事前申し込みなんてしてないから、当てにはならないでしょうけど。

一瞬、辺りが騒がしくなったが二人の男が放つ雰囲気に気圧されたのか瞬く間に再度広間は静寂に包まれた。
どうも顔なじみのグループは複数存在するらしい。
が、逆に、大多数の《子供》の中に混じった《大人》達が誰も微動だにせず、壇上の二人を睨めつけているのが気掛かりだ。

(何だろう……すごく嫌な予感がする)

そして再度湧き上がる妙な感覚。生き物としての本能にも似た……そんな気分だった。


「――聞きたまえ」
15名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:39:59 ID:IGJGocnS
 
16――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:40:10 ID:oFDExdZ6
底冷えのするような声。

「私は監督役の言峰綺礼。隣の彼は神崎黎人だ。
 『元の世界』では聖杯戦争、という催し物の監査役をやらせて貰っていた。
 さて、諸君らに今から一つ、頼みたい事がある。尤も、そもそも拒否権は存在しないのだが」

頼み事? いや、拒否権が存在しないのならば、それは既に違う意味を持つ。
つまり、純然たる命令だ。


「諸君らにはコレから互いを傷付け騙し犯し欺き――そして、殺し合って貰う」

(――ころす?)

「言葉とは便利なものだ。涅槃のように錯綜とした状況にも適切な意味を与えてくれる。
 名とは力であり、名こそが万物へとその存在を証明する。
 つまりコレは人の世で言う――バトルロイヤルという催しだ」

空気が、変わった。
意味が分からない、という顔付きをしている者もいる。
口元に薄ら笑いを浮かべ、状況を完全にテレビか何かの企画だと思っている者もいる。
怒気を顔中に巡らせ、今にも暴れだしそうな者もいる。

静寂が乱れた。
私自身も当然だが、言峰と名乗った男が何を言っているのかまるで理解出来ていない。
バトルロイヤル――言葉の意味ぐらいは知っている。
プロレスなどで行われる勝負形式の一つ。何人もの人間が一つの舞台に上げられ、最後の一人になるまで闘い合うのだ。
当然、勝ち残るために手段は選んでなどおられず、他のレスラーと協力し合い騙し合いながら優勝を目指すのである。

(何を……言っているのかしら。本当に、殺し合い? そんな訳……)
17――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:40:45 ID:oFDExdZ6
ただあくまで、本来のバトルロイヤルとは興行である。
相手を殴り傷付けるとはいえ、《殺す》ことは絶対にない。後遺症の残るような重症を負わせることもない筈だ。
そう、男の言葉はあまりにも馬鹿馬鹿しいものだった。
自分を含め、どう見てもこの場にいるのは他人を傷付けたこともなさそうな少年少女が大半だ。

信じられる訳など到底ない。そんな雰囲気が場に充満した時、

「まず、証拠を見せようか」

黎人と名乗った青年がにっこり、と微笑みながら片腕を上げた。


パンッ、


と空気の充満したビニール袋が破裂するような音が広間に木霊した。

「う……そ……」

気付けば、私の口唇からそんな声が漏れていた。


「きゃああああああああああああああ!!」


そして、一拍置いて――少女の絶叫。

「た、貴明っ!!!!!」
「貴明くんっ!!!!」
18――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:41:27 ID:oFDExdZ6
数人の知り合いが一斉に『頭の破裂した』少年の名前を呼んだ。
絶叫の隙間を縫うようにゴトッ、という鈍い音と共に少年の身体が床へと倒れ伏す。
血液が溢れる。まるで噴水のように首の動脈から溢れ出した血が辺り一面を鮮血の舞台へと変えた

「いやぁあああああああああああ!! タカくん!? タカくん!? タカくんっ!?」

隣にいた小柄の黒髪少女は半ば狂乱状態に陥り、隣に居た少年の身体をガクガクと揺する。
耳を劈くようなその声は、一瞬でその場の人間に『事実』を理解させるには十分過ぎるものだった。
状況を理解していない人間など誰一人としていなかった。誰もが己の置かれた状況を把握した。


「残念だけど、河野貴明君には一人目の犠牲者になって貰った。
 ああ、ちなみに爆発したのは君達の首に嵌められている首輪さ。
 もちろん無理やりに外そうとしても爆発する。人一人を死に至らしめるには十分過ぎる破壊力を持っている」
「予め言っておこう。自らが特別などとは思わない事だ。この盤上において諸君らは一つの駒に過ぎず、それ以上でもそれ以下でもない。
 そしてこの瞬間、諸君らは己の境遇を理解した筈だ」
 
もう、誰も何も言わなかった。無駄口を叩く人間は一人も存在しない。

「――――Amen。幸いにも私は神父だ。死亡者には最大の敬意をもって応じよう」
「どちらにしろ、ここで誰かに死んで貰わなければいけなかったんだ。何も起こらず放り出しても君達は現実を理解出来ないだろうしね。
 そして皆には考えて欲しい。今僕はこう命令した。『適当に一つ首輪を爆破しろ』と。」

神父が十字を切る。青年が朗らかに笑う。

私には信じられなかった。
いや、眼の前で何が起こったのかを信じたくなかったのかもしれない。
泣き叫ぶ少女の声など耳に入っていないかの如く、二人の男は淡々と状況を説明する。
その言葉はあまりにも現実離れしていたが、何故だが妙に心に残った。
つまりあの瞬間、私の首輪が爆破されていた可能性も十分にあったということだ。
19名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:41:39 ID:IGJGocnS
 
20名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:42:00 ID:IGJGocnS
 
21――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:42:18 ID:oFDExdZ6
私の背筋を悪寒にも似た戦慄が駆け抜けた。そして私は未だ『少年だったもの』の身体を揺すり続ける赤い少女を見やった。

おそらく彼のすぐ近くにいたのだろう。
全身が少年の頚動脈の断裂した際に起こった大量出血によって、血みどろに染め上げられ真っ赤になっている。
まるで頭からバケツ一杯の血液を被ったようだ、と私は思った。
少女の周りには赤い液体が泉のように広がり、爆砕された頭蓋骨と脳漿がスープの具のように浮かんでいる。

口の中がカラカラになる。周囲からは狂乱の声。
胃の中の物をその場でぶちまけている者も多数、いる。
私も喉の奥から込みあがって来た嘔吐感を呑み込むのに精一杯だ。
大の大人ですら眼を背けずには居られない地獄のような光景がそこにはあった。

その時。
リン、と何処からか鈴の音が響いたような気がした。


「ふふふふふ――ミカゲ、殺し合いですって」
「はい、姉さま」
「私達が誰なのかも知らずにこんな遊びに誘い込むなんて」
「本当に、愚かな人」


突如闇の中を切り裂くように壇上に現れたのは二人の少女だった。
薄碧色の髪、血の気の引いた肌。そして――赤い眼。
それは全く同じ容姿をした双子だった。

(……何なのかしらこの子達は)

私は自分の眼を疑った。
なぜなら、この少女達は今、明らかに何も無い所から出現したのだ。
どう見ても異常な存在――
22名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:42:37 ID:IGJGocnS
 
23名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:42:45 ID:hXnQ5oSv
24――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:42:53 ID:oFDExdZ6
「ノゾミちゃん! ミカゲちゃん!」
「あら、あなた。あなたも――贄の血もここにいたのね」

髪の毛を左右で結んだ大人しそうな女の子が二人の少女に向けて声を荒げた。
ノゾミ、と呼ばれた少女が面白そうに応える。
ニエノチ? さすがにソレが名前、ということはないだろう。何かのあだ名だろうか。

「二人とも、そんな所にいたら危ないよっ!! 早く降りてっ!!」

少女はぶるぶると震えながら双子に向けて絶叫する。
どう見ても何の特別な力もなさそうな普通の女の子だ。
だが、あの『突然闇の中から出現した双子』を知っている点は引っ掛かる。……どういうことだ?

「「うふふふふふふふふ――」」

ピッタリと息を合わせて少女達は笑った。
合わせ鏡のように、全く対照的な動作で。
それは身の毛も弥立つような、背筋が凍り付くかと錯覚しそうになるほど冷たい響きだった。
私はそして確信する――彼女達はヒトではない、と。

「私達は主さまを蘇らせるために忙しいの」
「こんな遊戯に付き合っている暇なんて、ない」
「……連れないね。少しぐらい、僕達とのゲームに付き合ってくれてもいいんじゃないかな?」
「ソレは無理な話よ、ねぇミカゲ」
「私達には時間が、ない」
「しかし君達は囚われの身だ。この場からどうやって抜け出すつもりだね」

そんな神崎達の言葉を聞いた二人の少女は再度顔を見合わせ、ニィッと更に笑顔を濃くする。

「それならこんな箱庭は――」
「壊してしまえばいい」
25名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:43:00 ID:IGJGocnS
 
26名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:43:28 ID:IGJGocnS
 
27――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:43:32 ID:oFDExdZ6
ゆらり、と少女達の背中から赤い霧が立ち上った。
そして瞬く間にソレは赤い大蛇へと姿を変え、真っ直ぐ言峰達に向けて牙を剥いた。
それは全長数メートルはありそうな全身を鱗で覆われた化物だった。
黄金の月にも似た瞳は覗きこむだけで命を吸い取られてしまいそうな錯覚に襲われる。

(化……物ッ……!!)

明らかにこの時点で二つの反応を示す人間にその場は分かれた。
起こった異常に眼を見張り、悲鳴を上げる者とそうでない者。
集められた人間の間に確実な意識の差があることは明白だった。

「……残念だ」

瞬間、神埼が動いた。
疾風のような速度で大蛇の突撃を回避しそのまま、神崎は手にした刀を抜き放ちその化物を一刀両断にする。
赤い靄のようになって、拡散する蛇。少女達の顔面が驚きの色に染まった。
そしてそのまま彼は双子に向けて突進し、彼女達を一刀の元に切り伏せた。

「え――嘘……でしょ、何で私の身体……」
「残念ながら今、君達は受肉した存在だ。元来が鬼、そして霊体故の特別な措置と言った所なんだけどね」
「主さま――」

全ては一瞬の出来事だった。
双子の姉妹は神崎の刀に切り裂かれ、地に伏せる。
そして瞬く間もなく、赤い霧となって霧散した。辺りに残ったのは二つの銀色の首輪だけだった。

「……見事な腕前だな」
「お褒めの言葉、ありがたく頂戴しておきます」

この時点で完全に残りの人間からは、この場で彼らと争う気力はなくなっていた。
腕に覚えがあるものも様子見に徹しているのだろう。
28名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:43:50 ID:IGJGocnS
 
29――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:44:04 ID:oFDExdZ6
「さて、これから詳細な説明をさせて貰おうかな。まず――」
「待っておくれやす、黎人はん」
「静留さん? 何か質問でも?」


神崎黎人がそこまで言い掛けた時、一人の少女が彼に話し掛けた。
彼女は潤沢な栗色の髪の毛を腰まで伸ばした豊満な身体付きの女性だった。
そして更に分かり易い特徴がその口調。京言葉、という奴か。

「うちらがここに集められた理由は――いや、何であんさんがそこにおるん?」
「……僕じゃあ役不足かい? 白羽の矢が立った、とでも言うのかな。ただ、まぁ……分かりやすくいえば」
「言えば?」
「僕達も駒の一つ、って事さ。もちろん静留さん達とは役割も勝利条件も違うけどね」

この話し振り、おそらく両者は知り合いなのだろう。
しかも静留と呼ばれた女性の話し振りから察するに二人とも相当近しい関係だったようだ。
まるで神埼黎人がこの場にいることに疑問を持っているような……。

「……まあええわ。うちは好きなようにやらせてもらいます」

納得したのだろうか。彼女はそう小さく呟くと、含み笑いを残して人の影の中に消えた。


「……話が逸れたね。改めて自己紹介しようか。僕は神崎黎人。そして、主な進行は僕が担当する。
 一応の主催者、と考えて貰っていいかな。
 言峰神父は補佐的な役割を……まぁ、あくまで監査役と考えてもらえば良いと思う。
 さて、バトルロイヤル――便宜的に僕達はこれを『ゲーム』と呼ばせて貰う。
 駒とは言ったが僕達はあくまで舞台の外の人間だ。実際に殺し合うのは君達……ここに集められた68、いや65人の参加者諸君だけさ。
 基本的なルールは最後の一人になるまで殺し合う事、これはいいね? 加えていくつかの補足説明がある」

30名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:44:20 ID:IGJGocnS
 
31――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:44:34 ID:oFDExdZ6
神崎黎人はロールペーパーに書かれた文章を読み上げるように、スラスラと言葉を紡ぐ。
広間はむせ返るような血や吐瀉物の臭いが充満し、お世辞にも快適とは言えない環境だ。
それでも彼は顔色一つ変えず、微笑みながら説明を続ける。

「時間は無制限。会場はとある無人の島だ。そして、六時間に一回ごとに死亡者と『禁止エリア』を伝える放送を行う。
 さすがに一箇所に留まってばかりいられると、進行に支障が出るからね。ソレに対する処置だと思って欲しい。
 そして、もう一つ。見てもらえば分かると思うが、君達の中には明らかに超常的な力を持っている人間がいる。
 参加者間の溝を埋めるため、ある程度の制限を課させて貰っている。
 いつもと同じ動きをしようと思うと痛い目を見るかもしれないね……加えて『使用さえ出来なくなっている能力』もある筈だ。
 まぁ、こっちの方は時間の経過と共に制限が解除される可能性もあるけどね……。
 また当然、食べ物や飲料水なども支給する。それと別に――武器もね。
 各種銃器、刀、槍、鈍器、爆弾、劇物、あとは『面白い力を持った道具』などだ。
 皆の愛用の道具などもコレには含まれる。気になったら探してみるといい」

銃という言葉にドクン、と私の心臓が叫び声を上げた。
……何をビビッているのだろう。
殺し合わせる、とまで言っている。拳銃どころか、ライフルやマシンガンを持ち出してきてもおかしくはない。
さすがに本物のバトルロワイヤルのように、素手で殴り合いをさせるのは非生産的と見たか。

「言峰神父」
「……ああ、ご苦労。最初の説明としてはこれで十分だろう。
 それでは、現時をもってバトルロワイヤルを――」

説明は終了したのだろうか、神崎が言峰に目配せをする。
言峰が小さく頷き、殺し合いの合図をしようとした瞬間。
彼は露骨に眉を吊り上げ不快そうな表情で、とある少女見つめた。


「柚原このみ――キミは……いつまでその死体に縋り付いているのだね?」

32名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:44:39 ID:IGJGocnS
 
33名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:45:00 ID:IGJGocnS
 
34――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:45:10 ID:oFDExdZ6
言われて、そして再度私は例の少女を一瞥する。
少女は顔を伏せたまま、亡骸となった少年(孝明と呼ばれていた)に向けてうわ言のように何かをブツブツと呟いていた。

「……や、やだよ、何で何で何で? 何でタカくん死んじゃうの?
 タカくん。ね、眼を開けてよ。タカくん眼を覚ましてよ。ね、ぇタカくんタカくん……タカ……ッ……くん……」

喘ぎ声が嗚咽となり、そして涙が理性を侵蝕する。
柚原このみは言峰の台詞などまるで耳に入っていないようだたった。そして、

「神崎黎人。君は……例の条件を説明し忘れていたな」
「言われて見れば、そうですね。ついウッカリしていたようです。それでは?」
「ああ、彼女には残念だがサンプルになって貰おう」
「分かりました」

(――ッ!?)

神崎黎人が『河野貴明にしたように』右手をスッと上げた。
それは……つまり、そういうサインなのだ。


――ピッ、

「……ぁ、カ……ぅ……くん――」

――ピッピッピッ、

「え……!?」

――ピピピピピピピピピピピピピピピ

35名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:45:44 ID:IGJGocnS
 
36――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:46:07 ID:oFDExdZ6
「いやぁぁあああああああああ!! く、首輪がっ!! 首輪がっ!!」
「そう、すっかり忘れていた。首輪は先程のように即爆破することも可能だが、禁止エリアに入った場合は三十秒経たなければ爆発しない。
 そして、これから諸君らにはこの『三十秒』じっくりと味わって貰いたいと思う。
 彼女には可愛そうだが、二人目の犠牲者――見せしめになって頂こう」
「や、やだぁっ、やだぁっ!! 助けて、助けて……ッ、タカくん!! タカくん!!」


柚原このみの首輪が無機質な音を発する。
彼女は躍るようにその首輪を握り締め狂気の色を増す
まるでタイマーの点滅音のようなソレは、次第にその間隔を早くしながら私の心の奥深くへと抉り込んだ。

これが本当の死へのカウントダウンという奴か。……バカ、冗談にもならないじゃない。

もちろん、私も彼女を助けたいとは思う。人間として、当たり前の感情だ。
だが状況が状況だった。
奴らはこの場の全ての人間に関する生殺与奪の権利を握っている。
そして誰もがこの在り得ない状況に混乱していた。彼らが言っていた『超常的な力を持つもの』も多分、それは同じ。
今、この瞬間、出会ったばかりの人間に対してすぐさま行動を取る事が出来る人間なんて実際はほとんどいないのだ。

それでも、
もし、
考えられるとしたら、

「このみっ!!」

――長年姉妹のように連れ添った知り合いぐらいのものだ。

パチンッ、という乾いた音が首輪の電子音を一瞬だけ打ち消した。
泣き叫んだ柚原このみの頬を彼女の側にいた女性が引っ叩いたのだ。

37名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:46:08 ID:IGJGocnS
 
38名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:46:24 ID:hXnQ5oSv
39名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:46:32 ID:IGJGocnS
 
40――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:46:37 ID:oFDExdZ6
「……タカ坊はもう帰ってこない。このみ、アンタがしっかりしないでどうするの!」
「た、タマ……お姉ちゃん……?」
「それと、そこの馬鹿二人!! 早くこのみの首輪を止めなさいっ!!」


キッと凛々しい顔付きで、そして凄まじい怒気を孕んだまま彼女は主催の二人を睨みつける。
言峰と神崎の表情も非常に驚きに満ちていた。
彼らはこの状況で自分達に歯向かう人間が入るとすれば超常的な力を持った連中、であると推測していたのだろうか。
しかし、主催者である二人に堂々と啖呵を切るとは、彼女は相当強い精神力を持っている、私はそう感じた。


「向坂環。だが、残念ながらこの場で彼女の首輪を止める事は出来ん。
 私達は慈悲深い人間ではない。もう、この場は誰かが死ななければ納める事は出来んのだよ」
「……だったら――」

彼女はクッ、と自らの首に煌く銀色の円環を差し示した。

「私の、命をあげる。だから早くっ!!」

彼女――向坂環はそう言い切ると地面に尻餅を付き震える柚原このみの前で大きく手を広げて立ち塞がった。
その場に居合わせた誰もが彼女のその行動に息を呑む。
僅かな逡巡の後、顔を見合わせた神崎と言峰が共にニンマリと笑った。


「……言峰神父」
「ああ。その願い――了承しよう、向坂環。
 確認する、柚原このみの命を救うその対価は君の命――本当に構わないかね?」
「嘘なんて付くわけないでしょ!! 早くしなさい!!」

41名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:46:53 ID:IGJGocnS
 
42名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:46:57 ID:pstXiFjJ

43――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:47:16 ID:oFDExdZ6
言峰綺礼が片手を上げ、合図を送った。
柚原このみの首輪からけたたましく鳴り響いていた電子音がピタッ、と鳴り止んだ。
そして、

「諸君――私は人が絶望し、自らの悲運に打ちのめされる光景を見る事を至上の愉悦としている。
 何故、このような申し出を私が受け入れたのか不思議に思うものも居るだろう。
 だが、私は見てみたくなったのだよ。
 二人の幼馴染を失った彼女が――このゲームにおいて、どのような表情を見せてくれるのか」
 
代わりに向坂環の首輪から断続的な電子音が発せられた。

「そして――契約は執行される」

顔面を極上の歓喜に彩り、言峰綺礼は死者の代替わりを告げる。
再度、三十秒の死へのカウントダウンが開始された。


「やだ……いや、だよ。タマお姉ちゃんまで私を……私を置いていくの?」
「……このみ。駄目だよ、あなたは生きなくちゃ」
「やだよ!! タカくんが居なくなったのに、タマお姉ちゃんも居なくなるなんて私、耐えられないよっ!!」


柚原このみは瞳に一杯の涙を溜めて、向坂環に抱きつこうとする。
が、向坂環は小さくかぶりを振り、寂しそうな表情で彼女を突き放した。

私は、いやこの場の誰もが彼女の決断に大小様々な驚きを感じていた。
何故、他の人間のために容易く命を投げ出すことが出来るのだろう。
もしも自らの知り合いが同じような状況に追い込まれた時、自分はどんな行動を取るだろう、と。

44名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:47:17 ID:ggEM0yNp
 
45名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:47:23 ID:IGJGocnS
 
46名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:47:30 ID:FT7FdISG
47――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:47:47 ID:oFDExdZ6
「雄二!! 居るのは分かってるのよ! このみ抑えてなさい!!」
「ッ――姉貴……何考えてんだよっ!! 自分から死にに行くなんて正気かよ!?」
「……狂ってたらこんな事出来る訳ないでしょ」


他の人間を掻き分けるようにして、一人の少年がもがき続ける柚原このみを羽交い絞めにする。
が、少年の顔色も真っ青だ。腕の中の少女が幼馴染を失うのと同時に、彼は自らの姉を失うことになる――
電子音が私の鼓膜へと突き刺さる。
それは間違いなく私の人生の中で最も長く、そして最も短い三十秒だった。


「このみ、雄二――頑張って生きてね」


結末は血風と陳腐な爆発音。
彼女の決意を嘲笑うかのように、豪壮さも美しさもない。
飛び散る人だったモノ。
そして残された胴体の崩れ落ちる音。

「あ……ね、き――ッ!!!」
「タマ……おねぇちゃん……!!」

涙は視界を遮り、鳴り止んだ電子音がその現実を突き付ける。
訪れたのは死。
明確で拭い去ることなど出来る筈もない残酷な運命。
殺戮の舞台は整ったとばかりに神崎黎人が高らかと宣言した。


「さぁ、ここに残った六十四名の人間によってゲームがスタートする。各自思う存分――殺し合って欲しい。検討を祈る」

48――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:48:17 ID:oFDExdZ6
彼の言葉と同時に、広間を埋め尽くしていた人間が一人、また一人と姿を消して行った。
まるでSF映画などで使われるワープ装置のようだ、そんなことを何気なく思った。

何故、どうして私がこんな場所に呼び寄せられたのかは分からない。
特別な――先ほどの双子のような能力などある訳もなく、武術も習ったことはない。
目的は何だ? ただ私達を殺し合わせ、苦しむ姿が見たいだけという訳でもないだろう。
集められた人間も様々だ。
無力な人間から明らかな異能者、超人。もしかすれば殺人鬼などもいるかもしれない。

(でも――)

闇は深く、こんな『ゲーム』に参加させられることになった己の運命を呪うことしか出来ないのだろうか?


「……ふむ君が最後のようだな、源千華留。さて、何か言っておきたい事はあるかね。
 私個人としては一般人である君が感じ取った、この序曲に関する感想を聞かせて貰いたいところだがね」
「そう、ですね」

壇上には言峰綺礼。
広間に残されたのは河野貴明と向坂環の死体、そして私だけだった。

「ずばり、私が生き残れる可能性は非常に低いかと」
「……ほう、言い切るのだな」
「ただし――」

ここで一息。ジッと私は言峰の瞳を見つめた。
49名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:48:37 ID:ggEM0yNp
 
50名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:49:03 ID:ToK9l6An
51名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:50:00 ID:ggEM0yNp
 
52――はじまり。 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:51:00 ID:oFDExdZ6
「普通の人間――何の力も持たない人間である私も、色々と頑張ってみよう。希望はあるんじゃないか――とは思いました」
「――そうか。……ククク、言葉通りの活躍、期待させて貰ってもいいかね」
「最善の努力程度でよろしければ」

私がそう、呟いたと同時に妙な浮遊感が身体を包みこんだ。
ゆっくりと身体が消えていくのが分かる。
意識がどこかへと飛んでいくのが分かる。
そして――ふと思った。そういえば私の、知り合いはいないのだろうか。と。


「それでは――私の口からも宣言しよう。この殺戮と狂気の宴の開幕を!」


言峰の言葉を脳で処理しながら、私の――私達の戦いはその瞬間、始まった。



――――ギャルゲ・ロワイアル2nd 開始。




【ノゾミ@アカイイト 死亡】
【ミカゲ@アカイイト 死亡】
【河野貴明@To Heart2 死亡】
【向坂環@To Heart2 死亡】

【残り64名】
53名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/16(日) 23:51:01 ID:IGJGocnS
 
54 ◆awaseG8Boo :2008/03/16(日) 23:52:39 ID:oFDExdZ6
はい、投下終了です。支援ありがとうございました。
登場キャラは千華留様とその他沢山。
ここからがギャルゲロワ2ndのはじまりです。
皆様頑張っていきましょう。
55名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 00:24:55 ID:Qd+D9FV+
>>54
本投下乙です
先走ってwikiに乗せちまったのですがどこか訂正点とかありますか?
あるようなら乗せ直します
56 ◆awaseG8Boo :2008/03/17(月) 01:42:53 ID:+LbKAygI
えーと一応>>52に若干加筆してあります。
会話文自体は変わっていないので、そこから上書きでコピペして頂けると嬉しいです。
wiki編集ありがとうございます。
57Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 08:48:26 ID:qrb0dswE
右手が喋りだした。
今の状況を説明するなら、この一言だけで事足りるだろう。
追記するならば、勝手に動き出すということぐらいか。
ともかく、その男の右手は無言のまま『それ』を引っ張り続ける。が、取れない。
幾ら引き伸ばしても外れず、また強引に毟り取ろうとするとあっけなく回避される。
自らの右腕なのに、そこだけが別の意志でも働くかのように。
しばらく同じ事を続けていると、突如右腕がプルプル震え出す。
そして、次の瞬間には右手の『それ』が、男の顔面目掛けて頭突きを仕掛けてきたのだ。

「いい加減諦めな」

重い声ながらも、口調だけはやけに軽快だ。
先程の説明に一つ追記する。この右手に収まった『それ』、もとい奇妙な人形は、自らの意思で喋るらしい。
特徴的な髪型に、少しだけお洒落を装った衣類を身に纏うこの人形。
ぐるりと首で円を描くと、顔を男に向けてやれやれと肩を竦めた。

「どういう状況か解からねぇが、まずは自己紹介だな」
「……」

未だに沈黙を続ける男を置いてきぼりにして、人形は奇妙な踊りを舞いながら口を開く。

「俺の名前はプッチャン。それ以上でもそれ以下でもねぇ」
「……」
「おいおいノリが悪いぜ。こういう時は、自分も自己紹介するもんだろ?」

プッチャンと名乗った人形の問いかけに、男は向き合うだけで何も答えない。
一見すれば、腹話術でも楽しんでいる様にも見えるだろう。
が、当人達は至って真面目にやっているのだ。

「どうやら、外見通りシャイボーイって奴か。ま、それも悪くねぇ」
「……」
「なんだったら、俺様が素敵でゴージャスなあだ名をつけてやるぜぇ?」
58Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 08:49:33 ID:qrb0dswE
くるくると身体を揺らし、意味不明なあだ名を挙げていくプッチャン。
あまり騒ぎ過ぎると目立ってしまい、お互いが危険に晒させる可能性を秘めている。
だが、手元のプッチャンを止める気配を、宗一郎は一向に見せない。
既に右手の違和感など受け入れた宗一郎は、最初に集められた室内を思い出していたのだ。
あの場を見る限り、自身を知るものはごく僅か。
知っているといっても、お互いに会話した事など数えるほどしかない。
とは言え、立場上は先生と生徒だ。守らねばなるまい。

「葛木宗一郎だ。それ以上でもそれ以下でもない」
「ふぅん」

宗一郎と名乗った男の反応がそれきりだったため、プッチャンは自分なりの解釈で話を進める事にした。
ここで長々と問答するより、しなければならない事があるから。

「一方的で悪いが、一緒に探して欲しい奴がいる。俺の家族でな。
  本当なら俺だけで探したいが、見ての通り人形の体じゃ探しにいけねぇんだ」

誰かの腕を借りなければ、文字通りプッチャンはただの人形となってしまう。
だから、どれだけ無碍に扱われようとも。どれだけ邪険にされようとも。
プッチャンはそれを受け入れ、そうして願いを叶えなければならない。
地に深々と頭を下げ、男としての誠意を見せる。

「願いか」

初めて。プッチャンが右手に収まってから、宗一郎が先に音を出す。
立ち居振舞いから雑音に至るまで、全ての音を消していた黒い影はようやく、自らの意思を声に変えた。
それを敏感に感じ取ったプッチャンは、下げていた頭を戻し、宗一郎に向き直る。

「ああ。そいつを一緒に探して欲しいってのが、俺のお願いさ。
 その代わりといっちゃなんだが、俺もお前さんの願いを叶えるため協力するぜ」
「……願い」
59Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 08:50:30 ID:qrb0dswE
拳を振り回し、力強さをアピールするプッチャン。
他人の腕でどんな協力が出来るかは不明だが、自信があるのはよく伝わってくる。
一方の宗一郎は、相変わらず意思と関係なく振り回される右腕を無視して、何かを確かめる様に声を漏らす。
今の自分は何なのか。どのような役割を求められているのか。
自分と誰かが繋がっている気配が無い以上。自ら選べということなのか。

「私の願い……は」

口に出そうとするが、肝心の言葉が見つからない。
まるで言葉をしまった場所だけが、酷い靄にかかっているような感覚。
そんな中からでも、宗一郎はたった一つの言葉を掘り起こす。

「願い事を探すことだ」




◇◇◇




とある室内で、高槻やよいは震えて泣いていた。
気が付いたら見知らぬ人に囲まれていて、ようやく見知った顔を見つけたと思ったら。

「うぅ……」

テレビドラマなどで、それに似せたモノは見たことがある。
やよい自身、駆け出しながらもそういった刑事モノの仕事に関わった事があった。
だが、目の前で見せ付けられた現実は、フィクションとはあまりにもかけ離れていた。
60Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 08:52:30 ID:qrb0dswE
思い出すことも出来ないくらい、やよいの脳裏が血で染まっていく。
それは不幸中の幸いなのかもしれない。
仮に全てを思い出したら、口から嘔吐物を出しきっても拭えない、苦い気持ち悪さを覚えていただろうから。
口から漏らしてしまわぬ様に、何度も何度も涙をこぼす。
やがて、袖が雨に濡れたかのように湿ってきた頃、隠れていた部屋が勢い良く開け放たれる。

「!」
「泣いてるところ悪いんが、聞きたいことがある」

突然の来客に、やよいは腰が抜けてしまう。
安全だと思い込んで室内に逃げ込んだが、逆に考えれば逃げ場はどこにもない。
唯一の逃げ場である扉の前で立っているのは、くたびれたジャケットを羽織る男性だった。
年齢はやよいも幾分上だろうか。見つめるだけでも冷気を放つ瞳が、やよいの恐怖心を一気に煽る。
震える体で床を這いながら、やよいは部屋の隅へと逃げていく。
だが、それを停止させるように、その男は力強く踵を床に叩きつけた。

「悪いが二度手間はしたくない」
「ぅぁ」

頭を抱えてうずくまり、そのばで泣き続けるやよい。
男はゆっくり近づくと、再びやよいの眼前で踵で床に振動を与える。

「ひぅッ」
「質問は簡単だ。お前はそれに答えればいい……ただし」

涙を流しすぎたのか、喉が渇いて上手く声が出せない。
そんな様子を見下ろしながら、男は後ろに隠していた腕をゆっくり前に持ち出す。
出現したのは、黒光りする鋼鉄のボウガンだった。
弓の部分を軽く小突きながら、男は照準をやよいに合わせる。

「悪いが期待できない答えだったら、こいつが礼になると――」
61名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 08:53:05 ID:Si7BSy/8
 
62Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 08:55:32 ID:qrb0dswE
空気を冷やすような音と共に、一本の矢が文字通りやよいの眼前の床を抉り貫く。
これだけでもう、やよいは半分意識を手放していた。
だが、そんなやよいの頭を軽く床に叩きつけ、沈みかけた意識を半ば強引に覚醒させる。

「眠る前に聞かせて欲しい」

意識が飛びそうになるのを見計らっては、やよいのツインテールを握り締める。
もはや瞳から輝きが失われつつあるやよいを無視して、男は静かに語りかけた。

「キャル……キャル=ディヴェンスって子を知らないか?」

知っているなら助けてやると言う囁きに、やよいは最後の希望とばかりに首を横に振る。
だが、それを見た男は、握っていたツインテールを放して冷たい息を漏らす。
助かったと思ったやよいが見たのは、自分の額にボウガンを突きつける男の姿。
その瞳は、もはや用済みだという意思がハッキリと書かれている。
抵抗する気力を残す事など許されていなかったやよいは、何も考えられず黙り込む。
ゆっくりと。
男は手を掛けていたボウガンの照準を、突然横にずらし、躊躇わずにトリガーを引いた。
突然射出された矢は、奥にあったテーブル目掛けて飛んでいく。
あわやテーブルに突き刺さらんと言った瞬間、突風が巻き起こったかのようにテーブルが空に浮く。
それと同時に、テーブルの下から大きな影が飛び出し宙に舞う。

「一つだけ言える心理がある。「男は黒に染まれ」ってな!」

突然の渋い声と共に、小さな風がやよいと男の間に潜り込む。
風の中に潜む敵意を察した男は、後方に跳躍しつつ二発目の矢を放つ。
黒い影は、それを難なく回避すると、持っていた何かを左右に振った。
これに合わせるかのように、空気が断層になって風に。割れていく風が男へと迫る。
男は視覚の精度を上げ、風の中にいる敵意の正体を見破った。

「なるほど……お前も敵か」
63名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 08:58:54 ID:/Xve8J0X
  .
64Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 08:59:10 ID:qrb0dswE
正体が判れば、対処の方法など幾らでもある。
黒い影が持っていたのは、持っていたのは無く自ら有していた物。鞭の様な腕だったのだ。
それよりも、男は今の回避運動で気になったことがある。どうにも身体の動きにキレが無い。
例えるならば、風邪のひき始めの様な、そんな些細な違和感。
だが、殺しを世界の基準とする女性にとって、この違和感は非常に大きな足枷だ。
可能な動きと反応速度を確かめながら、男は向かい合う影に声を掛けた。

「さっきの反応を見なけりゃ、コメディアンだと勘違いしてた」

見れば、無愛想なスーツの男性に、地味とも言える典型的な顔。
そして一番目を惹くのが、右手に嵌められた可愛げのない人形だ。
今はこちらに注意を向けつつも、人形と奇妙なやりとりを続けている。
おそらく街頭で腹話術でもしている姿が、滑稽過ぎて似合うだろう。
だが、先の反応や鞭のような手捌きで化けの皮が剥がれた。
あの鞭に乗せた殺意は、確実に男だけを狙っていた。そんな芸当、一回のコメディアンにできるはずが無い。

「おいおい。お前さんが誰かは知らないが、小さい子供になんてことしやがるんだぁ」

右手に嵌められた人形が、怒りの様子で身体を振るう。
これは、挑発のつもりだろうか。

「俺はツヴァイ……アンタの同業者だよ」

ボウガンの矢を装填しながら、ツヴァイと名乗った男は自分が用意した間合いをとる。
相手が暗殺者ならば、どんな暗器が飛んできてもおかしくない。
やよいへ向けていた警戒の糸を、眼前の男だけに向け。
ツヴァイはトリガーを引く。



◇◇◇
65名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 08:59:40 ID:/Xve8J0X
   .
66名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:00:47 ID:/Xve8J0X
    .
67Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:01:00 ID:qrb0dswE
それより少し前。やよいとツヴァイが部屋に飛び込んできた瞬間。
宗一郎はクロスの敷かれたテーブルに潜り込み、プッチャンの口を塞いでいた。
出来るだけ気配を絶ち、可能ならば全てやり過ごすと言う算段だ。
暴れ回るプッチャンを押さえ込み、宗一郎はそっと二人の様子を伺う。
会話を聞いている限り、主導権はツヴァイにあるようだ。
その行為に、怒ることも無ければ哀れむことも無い。
殺し合いで直面する場面に、例外など何一つ無いからだ。
だが、詰問しているツヴァイの態度にどこか違和感を感じた。
一つは、あの冷徹な仮面の下にある、本来のあるべき姿。
もう一つは、やよいにボウガンの先を向けている筈なのに、そこに殺意がない事。
けれども、彼自身からはハッキリとした殺意がにじみ出ている。
ただ無音で様子を伺っていた宗一郎は、次の瞬間には身を隠していたテーブルを蹴り上げていた。
間もなく、ボウガンから放たれた矢が宗一郎の居た位置に突き刺さる。
敵意が迫るのならば、こちらも戦闘の体勢へ転じるしかない。
左手を鞭の様にうねらせ、ツヴァイの顔目掛けて差し向ける。

(だが、気付かれたのか?)

二人に注意を向け過ぎたか。それともプッチャンがいたからか。
理由は不明だが、今は目の前の敵に応対しなければならない。
この状況下にありながら隠れていた事で、一気に警戒心を高めてしまったのだろう。
依然、冷徹な表情を浮かべるツヴァイに警戒しながら、宗一郎は左手の拳をプッチャンから外す。
と、その瞬間を待ってましたと言わんばかりに、プッチャンが抗議を開始した。

「なぁ、どうして助ようって思わなかったんだ?」
「彼女は私の生徒ではない」
「おいおい。冷たいぜぇ」
「……殺しの世界に救いなどない」

何かに触れたのか、宗一郎の言葉は最初よりかなり長い。
68名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:01:41 ID:Si7BSy/8
  
69名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:02:12 ID:/Xve8J0X
   .
70Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:02:22 ID:qrb0dswE
「じゃ、お前さん。いや、相棒と言わせてくれ。相棒はあの嬢ちゃん達を殺すのかよぉ」
「『殺す』必要や、そう言った指令があるならば」
「指令って、誰がそんな命令するんだよ? 俺だったら絶対しねぇなぁ」

プッチャンの言葉に、宗一郎は何も答えたりはしない。。
それ以降、プッチャンが口を開くことは無かった。
ただ意外だったのは、相棒という言葉を聞き流した事だ。
反論がないと言うことは、そう呼んで構わないと言う事だろうか。
それとも単純に聞き逃しただけなのか。
一人悩むプッチャンを気に掛ける事もせず、宗一郎は音を立てずに距離を詰める。
そして動き出そうと右足を前にずらした瞬間、ボウガンを構えた男が口を開く。

「俺はツヴァイ……アンタの同業者だよ」

最後の単語に、宗一郎の構えがより深く重たいものに切り替わった。
薄々は感じていたが、やはり目の前の敵は素人ではないらしい。
ボウガンの照準を何時でも外せるように、踵をずらしながら間合いを詰める。
支給品として渡された武器はなく。あるのは自身が鍛えてきた、鞭のような左手しかない。
ある程度の接近戦を主とする宗一郎にとって、距離が離れることは不利とも言える。
だが、これが殺し合いだと言うのならば、そんな文句など言う権利は無い。
それに、当たり前だが左手が使えると言うだけで、無限に選択の幅が広がる。
握り締めた拳を左右に振り、その射程範囲と間合いを確認。
今は一秒でも早く、この左手のみと言う状況に馴染み、確実に動くべきだ。
床を蹴り飛ばし、まずは後方へと飛び去る。
同時に拳を上下に振るい、追撃へ移る際の誤差を調整。
一方、ツヴァイはボウガンの矢を安定した精度で撃つ。
一本が心臓を。またもう一本が足を狙う。

「悪いが、殺す方が専門で、殺されるのは専門外なんで……ねッ!」
「同意する」
71名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:02:49 ID:/Xve8J0X
   
72名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:03:43 ID:/Xve8J0X
 
73Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:03:52 ID:qrb0dswE
これを回避せんと横に飛ぶが、狙い済ましたかのように、一本の矢が宗一郎の目に飛び込む。
完全回避は不可能と判断しつつ、強引に身体を傾ける。
矢は宗一郎の右肩をわずかに抉りながら、背後の壁へと突き刺さる。
僅かに広がる熱を無視して、宗一郎は追撃を警戒して大きく後ろに跳ぶ。
予想していたより、身体の反応が遅い。
これは先程の一撃でも感じたが、どうやら気のせいではないらしい。
自身の身体能力を下方修正しながら、宗一郎は改めて左手の間合いを確かめる。

筋力。やや低下。
身の堅固。かなり低下。
身の軽さ。かなり低下。
精密度。問題なし。
思考。問題なし。
射程距離。把握完了。
相手の間合い。ほぼ把握。ただし要警戒。

傷に対して『痛み』を覚えたと言う事は危険だが、今は呑み込むしかない。
ならば相手の攻撃を一切回避すればいいのだ。
左手の手首から指の先に至るまでの神経を頭に叩き込み、宗一郎は攻勢の構えをとる。
開いていた距離を、左右に飛びながら徐々に詰めていく。
そして自身の間合いに入った途端、遊ばせていた腕に再び神経を張り巡らせる。
宗一郎の左腕の先端が反り返り、軌道をずらしながらツヴァイへと牙を剥く。
一度目のうねりで予測不可能なたるみを持たせ、二度目のうねりでたるみを直線に引き伸ばす。
幾重にも煽られていく風を肌で感じたツヴァイは、その風の先にある、本丸の狙いを瞬時に見極める。
風の波は、横、縦、斜め。その中に隠れるように潜む、殺意の篭められた低い波。
ツヴァイは着地したと同時に転がりながら横へと飛び、宗一郎に対して取った間合いを修正。
一瞬遅れて、鞭のような先端が獲物の居なくなった床だけを叩いて去っていく。
今度はそれを追いかけるように、ツヴァイは腰を低くしてボウガンを前に構え突撃を開始。
自らの巣に帰っていく鞭に注意を払いながら、宗一郎目掛けてトリガーを引く。
ボウガンから解き放たれた矢は、速度を緩めることなく、敵意を露にしながら飛ぶ。
さらにツヴァイは、退路を塞ぐように追撃の矢を放つ。
宗一郎の選択肢を潰しながら、腰に手をまわし、三度目の矢をボウガンへと装填。
74名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:04:53 ID:/Xve8J0X
  
75名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:06:14 ID:/Xve8J0X
    
76Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:06:31 ID:qrb0dswE
自身の判断能力と精密度合いを信じているが、殺し合いは何が起こるかわからない。
どんな事態が起きようとも対処できるよう、ツヴァイは静止したまま相手の出方を待つ。
微細な動きすら漏らさぬよう、全神経を一本に束ねて。

一方、逃げ場を失った宗一郎は、取るべき最善の可能性を脳から引き出す。
迫り来る矢を左に回避。横に飛ぶ。時間差で迫る二度目の矢。回避不可能。
迫り来る矢を右に回避。障害は厚い壁。回避するスペースを確保できず直撃。
迫り来る矢を上に回避。天井に見を預ける。三度目の矢が来れば逃れられない。
迫り来る矢を下に回避。問題外。少しばかり距離を詰めようが、矢の威力は変化なし。
即座に回避の選択肢を捨てる。ならば、選択する行動など初めから決まっていた。
速度を落とさずに飛来する殺意に満ちた矢。これの速度と予想進路を分析。
同時に、左手を上下に振り勢いを乗せ、うねりをあげさせ空気を弾く。
握った拳が左右へと振れ、その度に軽い音が床で飛び跳ねる。
チャンスは一度しかない。拳と呼吸を合わせながら、宗一郎はその時を待つ。
一度。二度。三度目の音が飛び出す前に、手首を一気に返す。
微細な動きは、跳ね続けていた拳の手首へと伝わり、やがて先端へ届く。
そして地面から一気に反り上がった先端は、鏃を天井に弾き飛ばした。だが、先端はまだ動きを止めない。
なぜなら、宗一郎の視線の先ではツヴァイが三本目の矢を放っていたからだ。
宗一郎自身も一気に距離を詰め、拳の本丸がツヴァイに届く範囲まで飛ぶ。
まずは、今にも飛び出さんとしていた矢を、揺れ続ける拳を誘導しボウガンに巻き叩きつけ空に捨て去る。
武器を弾かれ、驚愕の表情を浮かべるツヴァイを他所に、宗一郎はなおも距離を詰める。
今の位置ではまだ、致命傷を与えるには遠すぎるからだ。
それに、今一度腕の軌道を変えなければ、攻撃が確実に命中しない。
空中を飛びながら、宗一郎は手首を時計回りに捻り……それが選択ミスだと気付いた。

「死ね」
77名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:06:42 ID:/Xve8J0X
   
78Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:07:43 ID:qrb0dswE
驚愕の表情だったツヴァイの顔は、いつの間にか乾いた顔に変わっていた。
そしてその手には、最初から服の裏に隠していた一本のコンバットナイフ。
あらゆる状況を考えていたからこそ、ツヴァイは今の今までこの奥の手を隠してきたのだ。
アンダースローで放たれる鋭い光が狙うは、宗一郎の心臓。
前に飛び続けているため、横への回避が間に合わない。
腕の軌道に攻めの気持ちを乗せたのが裏目に出た。
もしあのままにしていれば、まだ弾くチャンスがあっただろう。
だがしかし、今の左腕では攻撃を繰り出すために微妙なたるみが生じている。
浮かんでは消えていく選択肢。
思考を高速回転させ回避の手を思い浮かべるが、可能性はどれも0%から上がらない。
時間切れを告げる様に、視界をナイフの切っ先が覆い尽くす。
だがこんな時でも、宗一郎は冷静なままでいた。
まるでこうなる事も予測していたかのように。
刃が。
心臓に。
突き刺さり――











「やれやれ。真剣白刃取りなんて始めてやったぜ」
79名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:07:56 ID:/Xve8J0X
   
80Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:09:01 ID:qrb0dswE
声と同時に、宗一郎は攻撃に備えていた拳を一気に振り下ろす。
まるで声が聞こえたのも、助かったのも当然のように受け入れて。
その右手には、未だにナイフの突起部分を口に含む、溜め息混じりなプッチャンがいた。
一方、ほんの僅かに反応が遅れたツヴァイは、皮膚を切り裂き伝染する激痛を抑えながら大きく後ろに跳ぶ。
が、それを許さない宗一郎。
床に着地して腰を落とすと、左足を床に固定し右の足を伸ばす。
距離が零になったツヴァイの腹部に、強烈な膝蹴りを減り込ませる。
白と黄色と赤い色が混ざり合った液体が、ツヴァイの口から数滴吐き出されていく。
続けて宗一郎は、残してきた腕の先端を引き寄せ、ツヴァイの腕を絡め取ろうとする。
が、一方的な攻撃を受け入れるツヴァイではない。
嘔吐感を飲み込みながら、眼前にあった宗一郎の顎目掛けて頭突きを喰らわす。
致命傷とまではいかないが、脳が揺れ、ほんの僅かに宗一郎の体が傾く。
宗一郎が体勢を取り直す前にと、ツヴァイは跳躍し、相手の首目掛けて廻し蹴りを放った。
重心の傾いていた宗一郎は、抵抗する術なく、やよいがいる方向まで床に転がっていく。
デイパックごと巻き込みながら、床に転がる宗一郎。
この隙にと、ツヴァイは取りこぼしたボウガンを回収し、再び間合いを取り直す。
若干の苛立ちを抑えつつ、確実に矢を装填する。ここで焦っても、仕方が無いのだ。
一方、宗一郎と共に一緒に床に転がっていたプッチャンは、ぶち撒けられた支給品から起死回生の品発見し、体を伸ばす。
転がり続ける中、プッチャンは小声で囁く。

「相棒。ここは撤退だ」
「今背を向けるのは……危険だ」

淡々と告げる宗一郎を無視して、プッチャンは両手に抱えた物体を突き出す。
それは、一般的には煙幕弾と呼ばれる、やよいに支給された武器だった。

「こいつは煙幕弾ってやつだ。昔見たことがあるから間違いないぜぇ」
「煙幕か」
「俺が放ったら即効で撤退だ」
81名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:11:10 ID:Si7BSy/8
   
82Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:11:41 ID:qrb0dswE
宗一郎は転がりながら小さく頷くと、両足に力を込め強引に回転を止めた。
回転運動に使われていた力が行き場を失い、蓄積する勢いは宗一郎の体を床から空中に持ち上げていく。
そして空中でプッチャンが煙幕弾を投げやすい体勢をとりながら、同時に側面の壁に足を掛ける。
同じ体であるはずなのに、右手だけが別の行動を取る違和感を、宗一郎は既に学んでた。
ツヴァイが矢を装填し狙いを定めるよりも、プッチャンの投擲が速い。
彼の足元から噴出される煙を確認することも無く、宗一郎は壁を蹴り出口へと駆け出していた。
その途中、床で震えていたやよいと視線が交わる。
見開かれた瞳の中には、真っ黒な目をした宗一郎と、プッチャンだけが映し出されている。
逆に眼鏡をかけている宗一郎の視線の先には、何も映し出されてなどいない。
けれども、双方の視線は確かに交差した。

「お嬢ちゃん!」

右手のプッチャンが必死に手を伸ばす。けれど、その手はあまりにも短すぎて。
遅れて手を伸ばしたやよいの腕を掴めず、虚しい風だけを捕まえる。
ここで、やよいは諦めたのかもしれない。
何も解からないままここに連れてこられて、一方的に追い詰められて。
常人では神経が磨耗してしまう恐怖に閉じ込められ、何も残せないまま。
漠然と全てが終わる感覚が、やよいを呑みこむ。
宗一郎を包んだ風が、残り香の様に室内に巻き起こる。
きっともう、外の世界を見ることは無いかもしれないだろう。
プロデューサーに会う事も、同じ場所にいた千早や真にも再開できず。
疲れていたやよいは、ゆっくりと瞳に映る景色を終わらせた。
だから、気付いた時には宗一郎の腕の中にいたのが信じられなくて。
プッチャンから発せられる、喜びと激励の声に何も答えられなかった。
そう。再び瞳を外の世界に向け、見上げた先にあった宗一郎の眼鏡の奥は、暗くてよく見えないのに。
けれども、双方の視線は確かに交差したのだ。
83Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:13:15 ID:qrb0dswE
「わ、私、高槻やよいって言います! あ、えっと……ありがとうございます!」
「プッチャンだ。それ以上でもそれ以下でもないぜ」
「葛木宗一郎だ。それ以上でもそれ以下でもない」





そして二人と一体の人形は、黒く塗りつぶされた世界へと溶けていく――



【B-6 中心街・街外れ/1日目 深夜】
【葛木宗一郎@Fate/stay night[Realta Nua]】
【装備】:プッチャン(右手)。
【所持品】:支給品一式
【状態】:疲労(小)
【思考・行動】
0:夜の跳躍中
1:今後、どうするべきか考える
2:蘭堂りのを探す?
3:間桐桜や衛宮士郎に関しては保留。可能なら保護

※宗一郎は、自分ではプッチャンを外せません。他の人が取れるかは不明。
※自身の体が思うように動かない事には気付きました。
※やよいをどうするかは、今後の書き手さんにお任せします。


84Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:14:16 ID:qrb0dswE
【高槻やよい@THE IDOLM@STER】
【装備】: なし
【所持品】:なし
【状態】:肉体疲労(中)。精神疲労(大)。やや混乱。少し元気
【思考・行動】
0:宗一郎と空を跳躍中
1:少し休みたいです
2:うっう〜。千早さんと真さんに会いたいです









煙の無くなった室内で、ツヴァイは床を蹴りつつ怒りを露にしていた。
せっかく鉄の意志で己を貫くと誓ったのに、結局は女一人殺せないとは。
やよいの震える目が、一瞬だけキャルを思い出させてしまった。
だが、それでは駄目だ。そんな弱い意志では、大切な女すら守れない。

(キャル)
85Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:15:47 ID:qrb0dswE
姿は分からなかったが、あの場所に確かにいた。
この支給された名簿が正しければ、彼女はあの場所にいたのだ。
ただ、名前だけ微妙におかしい。なぜキャルにドライと書かれているのか。
頭を振るい、混乱する思考を統制する。
ともかく、今必要なのはキャルを保護し、尚且つ他の人間を手早く殺す事だ。
だが、手に持ったボウガンでは連射できないのが手痛い。使うならば、馴染みのある銃が一番だ。
と、何度も床を蹴ったところで、デイパックから顔を覗かせる武器を発見した。
足早にデイパックまで近付くと、淡々とした表情で手を伸ばす。
中から出てきたのは、願っていた銃であるコルト・ローマン。それと、予備の銃弾が幾つか。

「プラマイで考えればプラス……か」

前向きに考えれば、幸先がいいとも言える。
この戦いのおかげで、身体の違和感や武器の補充が出来た。
あんな子供を殺せなかった事でこれならば、むしろお釣がきたと考えて良いだろう。
もう迷わない。次に会えば、どんな相手でも殺す覚悟は出来た。
けれども油断だけは決してしない。無理に手を伸ばせば、鼠にだって噛まれてしまうから。
だが、一人だけ例外がいる。この例外だけは、どんな出来ることならば戦いたくない。
その名前は、自分のすぐ上に記されている一人の女性。名前はアイン。
彼女は確かに、自分が殺したはずなのだ。だが、確かにあの場所にもいた。
自分を育て上げ。また自分が背中を預けていた女性。
吐き捨てられていたコンバットナイフを拾い上げ、その刃に自らの瞳を写す。

「待っててくれキャル。必ずお前を見つけてみせる」

掲げたコンバットナイフの刃がキラキラと綺麗に輝く。
それは、電灯の光に反射した切っ先だっただろうか。
それとも鋭く冷たいツヴァイの瞳だっただろうか。

86名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:16:23 ID:/Xve8J0X
 
87Einsatz ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:16:49 ID:qrb0dswE
【B-6 中心街・個人事務所/1日目 深夜】
【吾妻玲司(ツヴァイ)@PHANTOM OF INFERNO】
【装備】:コンポジットボウ(13/20)。コルト・ローマン(6/6)。予備の弾丸(36/36)
【所持品】:支給品一式×2。コンバットナイフ
【状態】:疲労(小)
【思考・行動】
1:キャルを見つけ出して保護する
2:アインはなるべく敵にしない。
3:他の参加者から武器を奪う。可能ならば殺すが無理はしない。

※身体に微妙な違和感を感じています。
※アインが生きていることに疑問。
※時間軸はキャルBADENDです。
88名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 09:18:41 ID:/Xve8J0X
89 ◆eQMGd/VdJY :2008/03/17(月) 09:29:01 ID:qrb0dswE
投下終了の書き込みでさるさる規制……危なかった。
支援して下さった方、ありがとうございました。
何かあった場合、夕方ごろには反応できると思いますので、何かあれば修正します。
それでは、失礼致します。

それと、タイトルの元ネタ。(仮投下でも書きましたが)

『Dies irae〜Also sprach Zarathustra〜Einsatz』の主題歌
榊原ゆいで『Einsatz』 です。
90名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 13:01:28 ID:20ds/84l
一発目の本投下乙であります!
セリフの一つ一つがかっこえぇ、やよいの絶望的な雰囲気が伝わってくる。
葛木とコンビ組むことになるのか今後に期待が膨らみまくります。
91名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 17:01:24 ID:+lgmFaTM
投下乙です
のっけからスリル溢れる展開
プッチャンはどこに行ってもプッチャン、まさに彼らしい

いっそ、ボウガンには太一人形(クロスチャンネル)
つけちゃえと思ったが、矢の本数の都合もあるか
92名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 17:22:30 ID:RNZqZGAD
葛木はマーダーしかありえないと思ってたから、驚き。
93名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 19:02:50 ID:tOflNTjI
最初っからクオリティ高いついでにハードルも高くなりました
とにかく乙!!
94名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 19:26:46 ID:eyAjNXLs
>>54
投下乙です
原作の雰囲気を上手く出したまま、しかし一矢すら報いれず斬殺された鬼の双子
環の格好良い散り様や、精神的虐待を受けるこのみ開幕を飾るに相応しい良OPでした
このみがどうなるのか、楽しみ過ぎる……w

>>89
こちらも投下乙です
宗一郎、何やってんのwwwwwと思ったのも一瞬だけ
その後の濃厚なバトルに目を引かれました
宗一郎・プッチャン・やよいという余りにも個性的なチームがこれからどうなるか、注目ですね
95To all people 1/7  ◆AZWNjKqIBQ :2008/03/17(月) 21:10:10 ID:1+s+e9b1
月光に曝され海の底の様な蒼さの中に沈んでいる石の雛壇。
その端にぽつんと、小さな銀色に輝く人形がお行儀よく座っていた。

壇と人形の大きさは非常にアンバランスで、月光を銀に跳ね返す人形は綿埃程度にしか見えない。
人形は、まるで御伽噺の中に出てくる巨人の家に迷い込んだかの様な錯覚を覚えていることだろう。

いや、前提が間違っていた。
石の雛壇。積もった時を規則正しく切り取ったその跡は、正体を明かせば採石場と呼ばれる場所であり、
その端に座り、月を見上げている人形は人間だった――いや。

人形の様な人間だった。

天にそれを覆うものは無く、雨の様に降り注ぐ月光で白い髪を銀色に輝かせている人間。
朧な存在ではないかと錯覚させるような薄い色の肌。
真っ直ぐに通った綺麗な鼻筋。わざとらしいまでに綺麗な面の造詣。
見開かれ、長い睫に飾られた真っ赤な、人ではないような、まるで人形のような瞳。

人間の名前は――黒須太一。

白い夏用のシャツに空色のスラックスと、何の変哲もない衣装をまとっていながらも、普通には見えない少年。
彼はその『何か』が見える赤い瞳で、天上の月を見上げていた。

黒須太一は、採石場の壇の端でただぼぅっと白い月を見上げていた。
直前の、赤色に酔った頭を冷ますために彼は白い月を見上げていた。
96To all people 2/7  ◆AZWNjKqIBQ :2008/03/17(月) 21:11:17 ID:1+s+e9b1
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


夢を……、夢を見ていたのではないか、と……彼は思う。そういうイメージとして過去を想う。


あの時、月を見上げていた自分は本当に人形の様だった。
上等のドレスを着せられ、凝ったレースとそのレースでできたリボンで飾られていた。
そんな姿のとおりに振る舞い。そんな姿に相応しい時間を、冗談の様な時間を過ごしていた。

時は移ろい、記憶は途切れ、舞台は切り替わる。

あの時、暗い天井に月を見上げることを妨げられていた自分は本当に人形だった。
人形として見られ、人形として扱われ、人形として使われて、あくまで人の形をしたモノでしかなかった。
そんな姿のとおりに振る舞い。そんな姿に相応しい時間を、悪い冗談の様な時間を過ごしていた。

時は移ろい、記憶は途切れ、舞台は切り替わる。

あの時、ただ独りで月を見上げていた自分は人であることを忘れていた。
人形として生きているうちに人の振る舞いを忘れ、それを恐れ周りの人間の振る舞いを真似していた。
まるで人間のように振る舞い。そんな姿に相応しい時間を、面白い冗談の様な時間を過ごしていた。

時は移ろい、記憶は途切れ、舞台は切り替わる。

あの時、たった一人ぼっちで月を見上げていた自分は……一体何だったのだろう?
人間として生きているうちに恐ればかりを募らせ、それを払うために必死にまた人間のフリをしていた。
気付けば、まるでそこに忘れ去られたかのように、たった8人。バラバラの人モドキが、たったの8人。

そしてまた、時は移ろい、記憶は途切れ、舞台は切り替わる――。
97名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:11:17 ID:qrb0dswE
  
98名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:12:05 ID:qrb0dswE
   
99名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:12:13 ID:1yzsPb/E
 
100名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:12:16 ID:QYrUr++M
 
101To all people 3/7  ◆AZWNjKqIBQ :2008/03/17(月) 21:12:22 ID:1+s+e9b1
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


夢中夢。夢中夢。夢中夢。夢中夢。そうであると考えなければ、辻褄が合わないぐらいに不条理な人生だ。
しかし、その場その場で確かなリアリティがあったことも彼は覚えている。

尻の下の砂利の感覚。夜の空気。どれも嘘ではない。世界に嘘はない。
だとしたら嘘を疑うのなら自分自身となるのだが、そしてその自分自身が信用ならないことは重々承知しているが、
とりあえず彼は現状をその自分自身なりに整理してみる。

――諸君らにはコレから互いを傷付け騙し犯し欺き――そして、殺し合って貰う。

眩しさを感じるほどに『人間』らしい指令だった。
互いに傷つけ、騙し、犯し、欺き、そして殺し合う。……なんら通常の人間の有様と変わるところはない。
騙し欺くというのはコミニュケーションである。切望する人と人との交差でもある。
殺し合う――殺す、ではなく殺し合う。互いが同等であり、遠慮や気兼ねのいらない存在であるということの肯定だ。
人間未満の自分に与えられるには、十分がすぎる環境だろうと彼は考える。

64人。それは、たった8人の8倍であることを意味する。
8人になる前は無数ではあったが、殺し合うというほどの密度とまで考えるとそれ程の人間は0に近かった。
故に、彼としては今最も『人間』と多くの関係性を結んでいる状態とも解釈できた。
64人もの人間と、殺し合うなどという濃密な関係性を与えられているのだ。

その64人の中には、彼の見知った名前もあった。
鞄の中から出てきた紙切れに書かれていた――『支倉曜子』と『山辺美希』&『佐倉霧』
スーパーニンジャとフラワーズ。
前者に関しては全くの心配はない。むしろ警戒を必要とするか? この状況、彼女が何をするか解らない。
後者に関しては心配だった。しかし、こちらも警戒を必要とするかもしれない。向こうも警戒しているだろうから。
102名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:12:35 ID:qrb0dswE
   
103名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:13:03 ID:1yzsPb/E
 
104名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:13:25 ID:qrb0dswE
105To all people 4/7  ◆AZWNjKqIBQ :2008/03/17(月) 21:13:29 ID:1+s+e9b1
自分を含めれば合わせて4人。つまりは、前のステージから4人減ったということになる。
おそらくは領域の問題か? この4人は殺しあえるが、あの4人は殺されるだけだ。この世界のルールにそぐわない。
前のステージで、世界が8人を選んだように、このステージでは4人と他の面々が選ばれたのだ。

気になるのは、その他の面々だろう。
全く未知の存在。そして、自分の中に築き上げてきた常識の更新を必要とする存在。

――君達の中には明らかに超常的な力を持っている人間がいる。

さらりと言われてしまったが、遅れながらもツッコマざるをえない。そんな人間はいないと。
彼は夢想家ではあったし電波の受信感度も良好ではあったが、そこまでにリアリティを無視した男でもなかった。
あの場所で見たアレ。魔法やお化けと解釈するのは思考停止も甚だしいだろう。故に彼は突き詰める。

アレは――宇宙人だ。そう、これならばなんらリアリティに反しない解釈だ。
宇宙人だったら、確率論的に広い空の彼方のどこかにいてもおかしくはない。むしろ、いないとおかしい。
宇宙人ならば、その振る舞いもただの人間から見れば超常的であってもおかしくはない。
アレは、アイツらは宇宙人。それが解答に間違いない。たった4行でQ.E.Dである。

宇宙人。広義で捉えれば我々人類も宇宙人だと言える。なんせ、宇宙船地球号の一員なのだから。
なので、アレと人間を分け隔てる言葉を使う。言葉による分別は、言語学の基本でもあるのだ。

アレは――エイリアンだ。人間から見れば外敵という意味にとることができる存在だ。

しかし、彼はエイリアンを恐れない。彼には『カラデ』があるのだから恐れる必要はない。
カラデ……決して、空手といった紛い物とは違う。遥かに高度な全方向対応型汎用格闘術である。
これがあればエイリアンなど全く問題にならない。少なくとも1度に4匹までだったら許容範囲内である。
……無論。これは、彼の脳内設定にしかすぎないのだが。
106名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:14:12 ID:watS8smd
 
107To all people 5/7  ◆AZWNjKqIBQ :2008/03/17(月) 21:14:40 ID:1+s+e9b1
それはさておき、もっと具体的なリアリティのある話をすれば、彼にはリアルな『武器』が与えられていた。

一つは、グロック19。
全長は20センチ足らず、重さは500mlペットボトルよりやや重い程度の、非常にコンパクトで携帯性に優れた拳銃である。
装弾数は15+1のタイプ。マガジンの予備はないので、切れれば一々装填しなおさないといけないが、弾数は多かった。
全部で64発。8×8になる64発だ。丁度人数分。一人一発使えば、最後に自殺用が一発余る計算になる。

もう一つは、サバイバルナイフ。
ランドール製作のいかにもといった感の、サバイバルナイフと思えば大体の人が想像するそのままのデザインのそれ。
刃渡りは15センチ足らずといったところだが、高炭素鋼を打ち鍛えたその刃身は非常に頑強で頼もしい。
銃刀法というものがある日本に住む彼にとっては、銃に比べれば馴染みのある獲物であった。

武器は以上2つ。この言い方だと思わせぶりだが、そう……鞄の中にはもう一つアイテムが入っていた。

最後の一つは拡声器。
同じ様なものでも、マイクよりは大げさなラッパの形をした、文字通り拡声を目的とした機器。
シャイなボーイが愛の告白に使うもよし、痴呆症の老人にランチのメニューを伝えるもよしの一品である。
決して武器ではないコレ。鞄の中からコレを見つけた時、彼は『ああ、なるほどな』と思った。

島とは聞かされたが、どうやら相当に広いらしい。どうやってその中から人間を探そうかと思っっていたらコレだ。

コレがあれば、人一人がカバーできる範囲は飛躍的に広がるだろう。
みんながみんなコレを貰っているのかは不明だが、コレを使えば互いの距離は縮まり交流が始まる。
交流――素晴らしい2文字である。恋愛と同じ文字数で、同じくらい重要な文字列だ。

異文化交流という言葉があるが、時にはエイリアンとも交流ができるかも知れない。
勿論、人に紛れ込んでいるエイリアンとはスパイであり、侵略者の尖兵であるからには相容れないのだが、
もしかしたら奇跡――これも素敵な2文字だ。が、起こるかもしれない。
108名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:15:05 ID:watS8smd
 
109名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:15:07 ID:qrb0dswE
110To all people 6/7  ◆AZWNjKqIBQ :2008/03/17(月) 21:15:46 ID:1+s+e9b1
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


黒須太一は見飽きた月から目を放し、灰色の砂利の上に立ち上がる。
尻についた埃を払い、鞄を持ち上げ、視線を道の先へと向ける。

一歩足を踏み出すには目的と方向を決めなればならない。そして、それは今までの思考で確定した。
黒服達がエイリアンであることは間違いない。そして64人の中にもエイリアンが混ざっていることも分かっている。
自分は人間の側である。ならば、目的は一つしかありえない。

『人間』を集めて『エイリアン』を打倒し、地球の平和を――人間の平和を守る。

あまりに壮大だった。何と言っても、地球の未来が彼の双肩にかかっている。
しかし彼はそれを前に怯むことも、絶望することも無い。
人類には友情、努力、勝利といった素敵な2文字の数々があるのだから、恐れることはない。

ガピッ――と、片手に構えた拡声器が喉を鳴らす。

とりあえずはリハーサルなのだが、もしかしたらコレが人類最初で、最大の一歩となるかも知れない。
そんな心地よい緊張を得て、彼は言葉を発する器官とそれを広げる機械とを接続した。


黒須太一は交流を始める――……。




「……――――――――――――――――生きている人、いますか?」
111名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:16:02 ID:qrb0dswE
  
112名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:16:04 ID:watS8smd
 
113名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:16:37 ID:watS8smd
 
114To all people 7/7  ◆AZWNjKqIBQ :2008/03/17(月) 21:16:52 ID:1+s+e9b1
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


【C-4 採石場/1日目 深夜】
【黒須太一@CROSS†CHANNEL】
【装備】:拡声器、グロック19(拳銃/弾数15+1/予備48)、サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康
【思考・行動】
 基本:『人間』を集めて『エイリアン』を打倒し、地球の平和を守る
 1:拡声器を使って、人と交流する
 2:『人間』なら仲間に、『エイリアン』なら倒す
 3:『支倉曜子』『山辺美希』『佐倉霧』と出会えれば、仲間になるよう説得する

 ※太一の言う『エイリアン』とは、超常的な力を持った者を指します。
 ※登場時期は、いつかの週末。固有状態ではありません。
115名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:17:23 ID:1yzsPb/E
 
116 ◆AZWNjKqIBQ :2008/03/17(月) 21:17:58 ID:1+s+e9b1
投下終了しました。多大な支援感謝です。
117名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:18:22 ID:qrb0dswE
投下お疲れ様でした。GJです。
ん〜、この歪みっぷりが太一らしい。
拡声器を救援でなく、交流のために用いるのも、ある意味彼らしいですね。
118名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:21:28 ID:watS8smd
投下お疲れさまです。
忘れてた太一の情報がガンガン思い出されました。
シーンチェンジが短剣符なのが憎い!そしてよく出来ている!
太一飛ばしています。続きが書きたくなる登場話でした。GJ!
119名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:22:31 ID:eyAjNXLs
投下お疲れ様です
ちょ、何という変化球w
クロチャン未プレイだけど、太一って凄いですね……w
いきなり拡声器使ってるし、序盤の台風の目になりそうだ
120名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:23:55 ID:+lgmFaTM
投下乙
そうそう、これこそが太一の持つ狂気の一面だ
この状態だと気配感知能力も持ってるし、結構怖いんだよな
121名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:24:54 ID:z7AgbTIa
太一歪みまくってますね
さすが偏差値80越えの変態w
122名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:29:38 ID:u1/3N4Ez
GJ!
カラデとか宇宙人とかネタ的な要素満載なのにシリアスな文体でかけるのは凄いw
123名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:32:39 ID:20ds/84l
投下乙です。
独特な雰囲気の中で個性的な思考が描かれ、読んでいて引き込まれました。
魅力的な一本です。
早速の拡声器が今後どんな広がりを見せるのでしょうか?
124 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 21:47:48 ID:eyAjNXLs
こんばんは(・3・)
桂言葉、向坂雄二、千羽烏月投下します
お暇な方いらっしゃれば、支援お願い致します
125名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:48:16 ID:+lgmFaTM
 
126名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:49:02 ID:UG7eVqQs
 
127 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 21:49:18 ID:eyAjNXLs
虫の音一つすらも聞こえて来ない、静寂に包まれた絶望の孤島。
天より降り注ぐ月明かりの下、生い茂る茂みに身を潜めている制服姿の少女が一人。
少女――千羽烏月は、動揺を隠し切れぬ声で呟いた。

「まさかあの鬼達が、あそこまで簡単に倒されるなんて……」

烏月を戦慄させているのは、主催者達とノゾミ達が行った闘争の顛末だった。
主催者達は殆ど片手間のような手軽さで、ノゾミとミカゲを仕留めて見せた。
自分ですら苦戦したあの鬼の双子を、だ。
それに、自分を含む参加者全員に嵌められた首輪。
何か不穏な行動を起こせば、その瞬間に首輪を爆破されてしまうだろう。

得体の知れない、しかし圧倒的な実力を持つ主催者達。
参加者の反抗を決して許さない鋼鉄の枷。
これではもう、主催者達の打倒は絶望的であると云わざるを得ない。
ならば、どうするか。

「……斬るしかないな。桂さん以外の参加者、全員を」

冷え切った自分の心に温もりをくれた少女。
自分の全身全霊を懸けて守ると誓った少女――羽藤桂。
何よりも大切な彼女を生還させる事こそが、今の自分にとって最優先目的である。
殺人遊戯の破壊が不可能である以上、桂が生き残るには優勝するしか無い。
故に、自分が桂を優勝させる。
桂以外の人間を例外無く殺し尽くして、最後に自分も自害する。
これで桂だけは生き残れる筈だった。
そして、その目的を成し遂げ得るだけの力も手に入れた。
128名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:50:24 ID:+lgmFaTM

129名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:50:38 ID:UG7eVqQs
 
130 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 21:50:55 ID:eyAjNXLs
「刀、か。お誂え向きだね……まるで私に人を殺せと云ってるみたいだよ」

今烏月が手にしているのは、竜鳴館に伝わる名刀――地獄蝶々である。
月明かりを反射して光り輝くその刀身は、禍々しい程に美しい。
未だ切れ味を試してはいないが、外観から見て取れる情報だけでも、稀代の名刀である事は容易に推し量れた。
剣の道に生きてきた自分からすれば、使い慣れぬ銃などよりも余程頼りになる武器だ。
この刀の秘めたる性能を最大限に引き出せば、人を殺すという目的は難無く達成出来るだろう。

武装は完璧に近い。
使い手の技量も十分。
こと剣の扱いに関してなら、誰が相手であろうとも遅れを取るつもりは無い。
そして覚悟の面でも、問題などある筈が無かった。

「私は守る。どんな事をしてでも、何を犠牲にしてでも、桂さんだけは守り切ってみせる……!」

守る。
この手がどれだけ血に塗れようとも、他者の命をどれだけ踏み躙ってでも、桂だけは守り切る。
自分はもう幾度と無く人を殺してきたのだから、今更躊躇などしない。
桂さえ無事で居てくれるのならば、他には何も望まない。
今後の方針を決定した烏月は、最初の獲物を探し出すべく動き始めた。

何時の間にか掌に浮かんでいた汗を拭き取って、地獄蝶々をしっかりと握り直す。
命が懸かったこの状況で全く緊張しないのは不可能だが、だからと云って下らぬミスを犯す訳にはいかない。
汗で手が滑った所為で敵を取り逃した、などという事態は絶対に避けねばならないのだ。
烏月は大きく一度深呼吸をした後、森の中を静かに歩いてゆく。
そうやって進んでいると、やがて視界にとあるモノが映った。
131名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:51:11 ID:UG7eVqQs
 
132名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:51:44 ID:UG7eVqQs
 
133 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 21:52:10 ID:eyAjNXLs
(……あれは、女の子か)

烏月の前方二十メートル程の所に居たのは、制服姿の少女。
少女は艶やかな黒髪を風に靡かせながら、狼狽した表情で東の方角へと駆けて行く。
突然殺人遊戯の舞台に放り込まれた所為で、恐らくは混乱しているのだろう。
少女がこちらに気付く様子は無いし、武器も持っていない。
今襲撃すれば、造作も無く仕留められるように思えた。

(私は無実の人間を…………っ、迷うな! 桂さんを守る為には、これが最善の選択なんだ!)

己の心に沸き上がった躊躇を握り潰して、烏月は勢い良く地面を蹴り飛ばした。
早鐘のように鳴り響く足音が、森の静寂を乱暴に切り裂いてゆく。

「きゃあああああっ!?」

ようやく襲撃者の存在に気付いた少女――桂言葉が、迫る脅威から逃亡すべく一目散に駆け出した。
しかし、烏月の身体能力は常人を大きく上回っている。
程無くして両者の距離は零となり、言葉は木の幹に背中を合わせる形で追い詰められた。

「あ……あのっ…………」

未だ状況を理解し切れていない様子の言葉が、怯えた声で何か話そうとする。
しかしそれを遮る形で、烏月が一言だけ呟いた。

「――――すまない」
「……え?」

天高く掲げられた地獄蝶々の刀身が、月光を浴びて妖しく光り輝く。
烏月は祈るように目を瞑ると、言葉に向けて容赦無く白刃を振り下ろした。
134 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 21:53:10 ID:eyAjNXLs
「あ―――――」

言葉は動けない。
呆然とした表情のまま、頭上より迫る死を眺め見ている。
だが、刃が獲物を切り裂く寸前――――


「……待ちやがれっ!」
「――――――ッ!?」


響き渡る叫び声。
烏月が手を止めて振り返ると、そこには回転式拳銃――ニューナンブM60を構えた少年の姿があった。
ニューナンブM60の銃口は、正確に烏月の方へと向けられている。
このままでは不味いと判断し、烏月は即座に近くの木の陰まで飛び退いた。

「まさかお前、本気で殺し合いなんてするつもりなのか? 悪いが正気を疑うぞ」

現れた少年、向坂雄二が刺々しい視線を烏月へと向ける。
放たれた声には、確かな怒りと驚愕が混在していた。
烏月は木の幹に身を隠したまま、雄二とは対照的に落ち着いた声を返す。

「貴方だって、目の前で人が殺される所を見ただろう? 私達には、もう殺し合うしか道が残されていないんだよ」
「別に殺し合わなくたって、皆で力を合わせれば何とかなるだろ。
 大体……姉貴や貴明を殺した奴の言う事なんかに、誰か従うかってんだよ!」

憎き主催者達の取り決めに従う意志など、雄二は全く持ち合わせていなかった。
皆で手を取り合えば、このような馬鹿げた殺人遊戯など直ぐに覆せると思っていた。
しかしそんな雄二の考えを、烏月はぴしゃりと跳ね除ける。

「私は貴方みたいに楽観的じゃないからね。見ず知らずの人間と組むなんてリスクは犯せない。
 それに貴方はあの神父達がどれだけ恐ろしい存在か知らないから、そんな事が云えるんだよ」
135名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:54:13 ID:HvSah7zN
136 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 21:54:24 ID:eyAjNXLs
烏月からすれば、面識の無い人間と手を組むなど有り得ない話。
桂の生存確率を一割でも引き上げる為には、余分な行動など取れる筈も無い。
安易に他人を信用し、結果として寝首を掛かれてしまう、といった事態は絶対に避けねばならないのだ。
故に、今からやるべき事は一つだけ。

「桂さんを守る為には、他の参加者達を全員殺さなければいけない。
 貴方達にも死んで貰わなければいけないんだ」

烏月は深く腰を落として、足元の枯れ葉を思い切り踏み締めた。
木の向こう側に居る獲物達へ向けて、告げる。

「故に――千羽党が鬼切り役、千羽鳥月がお相手致す!!」
「…………ッ!?」

瞬間、烏月の足元が爆ぜた。
舞い上がる落ち葉の中、烏月は恐るべき脚力で雄二との間合いを縮めてゆく。

「速、いっ…………!」

予想外の速度に驚きながらも、雄二が慌てて銃のトリガーを引き絞る。
しかし素人如きの銃撃では、高速で動き回る烏月を捉えられる筈も無い。
何度銃撃を試みても、弾丸は虚しく空を切るだけだった。

「フ――――――――」

刀を構えた長髪の修羅が、左右へとステップを踏みながら前進し続ける。
四発目の銃弾が放たれるよりも早く、烏月は剣戟が届く距離まで詰め寄った。
雄二も咄嗟の判断で後方へ跳躍しようとしたが、それを上回る速度で地獄蝶々の刃が振るわれる。
137名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:54:38 ID:UG7eVqQs
 
138名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:54:50 ID:qrb0dswE
   
139名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:55:22 ID:UG7eVqQs
 
140 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 21:55:46 ID:eyAjNXLs
「あづぅっ…………!!」

悲鳴と共に舞い散る鮮血。
唸りを上げる白刃が、雄二の右太股を深々と切り裂いた。
大きく態勢を崩した雄二に向けて、烏月は尚も追撃を仕掛けてゆく。
ダンと一歩前に踏み込むと、その勢いのまま刀を一直線に突き出した。
雄二も何とか上体を横に捻って逃れたが、それは烏月の予想通り。
烏月は殆ど密着した状態から、強烈な体当たりを雄二の胴体へと見舞った。

「がっ……!」

雄二の体が力無く揺らぐ。
烏月は続け様に大きく腰を捻ると、刺すような鋭さの回転蹴りを繰り出した。
蹴撃は雄二の胸部へと沈み込み、その身体を大きく後ろへと弾き飛ばす。

「――――ハッ!」
「ぐがあっ! あぐっ……げほ……っ」

肺まで伝わる激しい衝撃に、雄二が苦痛の表情を浮かべながら後退してゆく。
そこへ追い縋る鬼切りの修羅。
烏月は確実に前進を続けながら、地獄蝶々を大きく横へと振りかぶった。
十分な予備動作を伴って放たれる剣戟は、文字通り必殺の一撃と化すだろう。


(俺は……此処で死ぬ、のか……?)

雄二は動けない。
斬られた足は今も激痛を訴えているし、胸を強打された所為で呼吸すらも侭ならない。
眼前には、刀を構えたまま踏み込んでくる烏月の姿。
あの刀が振るわれた時自分は死ぬのだと、当然のように理解出来た。
しかし雄二が全てを放棄しかけたその瞬間、脳裏に姉の姿が浮かび上がった。
141名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:56:12 ID:UG7eVqQs
 
142名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:56:13 ID:qrb0dswE
143名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:56:52 ID:qrb0dswE
144 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 21:56:58 ID:eyAjNXLs
(――あね、き)

環は最期の瞬間まで勇敢だった。
己が命を代償として、死に往く運命にあった柚原このみを救ったのだ。
なのに、自分は此処で諦めるのか?

(姉貴……、俺は――――)

環は最後に、『このみ、雄二――頑張って生きてね』と言い残した。
死を目前にして尚、残される者達を励ましてみせたのだ。
なのにその想いに応えられぬまま、自分はこんな所で朽ち果てるのか?

(……ふざけんな)

力の限り拳を握り締める。
今自分が倒れたら、誰が姉と貴明の無念を晴らすというのだ。
誰がこのみを守るというのだ。
未だ倒れる訳にはいかない。
未だ終わる訳にはいかない。
自分の全存在を懸けて、一秒後に迫った死を否定する――!


「終われない! 俺はまだ、終われないんだあああああっ!!!」
「な――――!?」

気合の咆哮。
雄二は強引に痛みを噛み殺すと、上体を屈めた態勢で烏月の懐へと飛び込んでいった。
横薙ぎに振るわれた地獄蝶々の白刃は、雄二の頭上を空転するに留まる。
その空振りの隙を狙って、雄二は渾身の力で拳を上方へと振り上げた。
145名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:57:11 ID:UG7eVqQs
 
146名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:57:53 ID:UG7eVqQs
 
147 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 21:58:05 ID:eyAjNXLs
「がっ…………!」

顎を強打された烏月の動きが一瞬停止する。
続けて雄二は烏月の頭を両手で掴み取ると、強烈極まりない頭突きを見舞った。
堪らず烏月が後退しようとするが、尚も雄二は攻める手を緩めない。
両の拳を強く握り締めて、何度も何度も眼前の敵へと叩き込む。

「おらあぁぁああああっ!!」
「グ、カ、ハ――――」

殴る、殴る、殴る、殴る……!
立て続けに撃ち放たれた拳撃が、烏月の脇腹へ、肩へ、頬へと突き刺さる。
雄二は更に追い打ちを掛けるべく、大きく一歩前へと踏み込んだ。

「食らい……やがれえええ!」

雄叫びと共に、全身全霊の正拳突きが放たれる。
だが烏月とて日々鍛練を積み重ねてきた猛者であり、そう容易く押し切られたりはしない。
烏月は上体を右へ傾けると同時に、肘撃ちによるカウンターを雄二の顔面へと打ち込んだ。

「ご、があっ…………!」

自身の前進力を倍返しされた雄二が、たたらを踏んで後退してゆく。
それは烏月にとって十分過ぎる隙。
烏月は刀を深く構えてから、一気に距離を詰めようとして――そこで、凄まじいまでの悪寒に襲われた。

「…………ッ!?」

何かが決定的に不味い。
心臓を冷たい手で鷲掴みにされたような、喉元に刃物を押し付けられたような、そんな感覚。
それとほぼ同じタイミングで、背後から迫る足音。
148名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:58:31 ID:UG7eVqQs
 
149名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:58:34 ID:qrb0dswE
150名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:59:13 ID:UG7eVqQs
 
151名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:59:23 ID:qrb0dswE
152 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 21:59:34 ID:eyAjNXLs
「う、アアァ――――!」

悪寒の正体を確認している暇は無い。
己が勘を信じて、振り向きながら剣を一閃する――!


「っ…………!」

凶器と凶器が衝突して、甲高い金属音が鳴り響く。
烏月の視界に飛び込んだのは、刀を振り下ろした言葉の姿だった。
言葉は何もせずに、ただ戦いを見守っていた訳では無い。
他の者達が戦っている隙に、鞄から支給品の刀――小鳥丸を取り出していたのだ。
烏月が態勢を整えるのを待たずして、言葉は矢継ぎ早に鋭い剣戟を繰り出してゆく。

「やああああぁぁっ!!」
「く、ッ――――――」

一発、二発、三発、四発。
次々と降り注ぐ連撃の中、烏月は紙一重の回避を強要される。
振り下ろしの剣戟は横への跳躍でやり過ごし、心臓を穿ちに来る一撃は地獄蝶々で受け止めた。
しかし次の瞬間言葉は腰を落とし、更に一歩奥へと足を踏み入れた。
地面スレスレの位置から、烏月の喉に向けて最短距離で白刃が突き上げられる。

「この……っ…………!」

烏月は驚異的な反射神経で上体を後ろへと逸らし、間一髪の所で迫る死を空転させた。
だが相手の剣戟が予想以上に鋭い所為で、反撃にまではとても手が回らない。
先ずは態勢を立て直すべきだと判断し、一旦後方へと飛び退いた。
153名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 21:59:51 ID:UG7eVqQs
 
154名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:00:09 ID:+lgmFaTM

155名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:00:26 ID:qrb0dswE
156 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 22:01:02 ID:eyAjNXLs
「……驚いたな。まさか剣の勝負で、私が一瞬でも押されるとは思わなかった」
「私も驚きました。何しろ、会話をする暇も無いまま殺される所だったんですから」

会話を交えながらも、烏月は首筋に嫌な汗が流れ落ちるのを感じていた。
言葉の剣戟は、烏月にとって警戒に値すべきものだった。
ほんの一瞬でも回避が遅れていれば、間違い無く喉を刺し貫かれていただろう。
それでも、自分とて千羽党の鬼切り役を勤めし剣士。
正面から斬り結べば、誰が相手であろうとも打倒する自信はある。
しかし、と烏月は言葉の横へ視線を移した。

「――形成逆転、だぜ」
「ッ…………」

烏月の眺め見る先では、雄二がこちらに向けて銃を構えようとしている所だった。
これで、状況は一対二。
言葉だけでなく、銃を持った人間までもが相手となっては、いかな烏月と云えども危険は免れない。
それに先程から、普段に比べてどうも身体の動きが鈍い。
このまま戦い続ければ、致命的な傷を負ってしまう可能性も十分考えられた。

「……潮時だね。此処は退かせて貰うよ」

烏月はそう云うと、言葉達の方へと身構えたまま後ろ足で後退し始めた。
言葉達も、無理に追撃を仕掛けようとはしない。
痺れるような緊迫感の中、両者の距離だけが少しずつ離れてゆく。
灯りが届かぬ森の中という事もあって、直ぐに烏月の姿は闇に紛れていった。
烏月が踵を返して走り出そうとした瞬間、思い出したように雄二が叫ぶ。
157名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:01:08 ID:UG7eVqQs
 
158名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:01:49 ID:UG7eVqQs
 
159名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:02:11 ID:qrb0dswE
  
160 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 22:02:20 ID:eyAjNXLs
「ちょっと待ちやがれ! 俺は向坂雄二だ……お前の名前は?」
「……千羽烏月だ。次に会った時こそ、貴方達を殺す」

烏月はそれだけ告げると、立ち並ぶ木々の隙間を縫う様に駆け始めた。
背後への警戒は決して怠らぬまま、血に塗れた地獄蝶々の刀身を眺め見る。
自身の手には、未だ雄二の太股を切り裂いた時の感触が残っている。
先の一戦は、間違い無く現実に起こった出来事。
命を奪うには至らなかったものの、自分は無実の人間を殺そうとしてしまったのだ。
それは許されざる大罪だが、だからと云って道を変えるつもりは毛頭無い。

「桂さん……どうか、暫くの間持ち堪えて欲しい。
 貴女を守ると誓ったあの時の約束、絶対に果たして見せるから……!」

真っ直ぐに前を見据える烏月の瞳には、既に一切の迷いも浮かんでいない。
今回は敵を倒し切れなかったものの、次こそは必ず戦果を挙げてみせる。
そう胸に誓うと、烏月は暗い森の中を走り抜けていった。


    ◇     ◇     ◇     ◇


「ふう……。どうやら、戻って来たりはしないみたいだな」

烏月が走り去ってから十数分後。
傷付いた身で警戒を続けていた雄二だったが、敵が戻ってくる気配の無い事を確認すると、ようやく張り巡らしていた緊張を解いた。
途端に鈍い痛みが右足の傷口へと襲って来て、思わず地面に座り込んでしまう。
161名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:02:55 ID:UG7eVqQs
 
162名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:03:08 ID:qrb0dswE
  
163 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 22:03:32 ID:eyAjNXLs
「あっ……お怪我は大丈夫ですか!?」

言葉は慌てて雄二に駆け寄ると、ポケットからハンカチを取り出した。
そのまま腰を落として、ハンカチを雄二へと手渡す。

「サンキューな。えーと……名前は何て言うんだ?」
「桂言葉です。先程は、危ない所を助けて頂いて有難う御座いました。私にとって貴方は命の恩人です」
「いや、助けられたのは俺も同じだって! 本当に、有り難うな」
「いえいえ、私の方こそ向坂さんが居なければどうなっていたか……」

二人は互いに何度も感謝の気持ちを伝え合う。
ペコリペコリと頭を下げ合う姿は、端から見れば滑稽なものだったかも知れない。
やがて雄二が、堪え切れなくなったかのように笑い出した。

「はは、何だかお互い礼ばっかりだな。キリが無いから止めようぜ?」
「フフ……そうですね」

言葉も微笑みを浮かべながら、雄二の云い分に同意した。
互いが互いにとって命の恩人である事は確かだが、このままでは一向に話が進まない。
雄二は少し間を置いた後に、疑問を言葉へと投げ掛ける。

「なあ、桂は誰か探してる奴とか居ないのか?」
「え? 探してる人、ですか?」
「言い方が悪かったかな。つまり、知り合いが参加させられていないかって事だよ」
「あ――そうです、名簿を見ないと!」

雄二に問い掛けられて、ようやく言葉は自分のミスを悟るに至った。
いきなり殺戮の孤島に放り込まれた所為で動揺してしまい、未だ名簿のチェックを行っていなかったのだ。
雄二が苦笑する中、言葉は慌てて鞄から名簿を取り出した。
164名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:03:56 ID:UG7eVqQs
 
165名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:04:29 ID:qrb0dswE
166名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:04:41 ID:mUUm4Qty
   
167名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:04:49 ID:UG7eVqQs
 
168 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 22:05:05 ID:eyAjNXLs
「え…………嘘……。誠くん……が……?」

名簿に目を通した言葉は、ハンマーで頭を強打されたかのような錯覚を覚えた。
伊藤誠――自分に出来た初めての恋人。
根暗な自分にも優しく接してくれた人物。
何を差し置いてでも守るべき、自分にとって全てとも云える存在。
そんな存在が、この殺し合いに参加させられている。
しかし次の瞬間、言葉は先に倍する衝撃を味わう事となった。

「さい、おんじ、さん――――――」

言葉の視線が、一点へと集中的に注がれる。
名簿には、機械的な字で西園寺世界という名が記載されていた。
極めて珍しい名前である以上、同姓同名の別人という事は無いだろう。
言葉や誠と同様に、世界も殺人遊戯の舞台へと連れて来られているのだ。
そう、殺人が許されているこの孤島に。

「その誠って奴と、西園寺って奴は桂の知り合いなのか?」
「ええ、誠くんは私の恋人です。それに西園寺さんも、私にとって大切なお友達です」

雄二が疑問を投げ掛けると、言葉は迷わず首を縦に振った。
時を置かずして、世界との関係について説明を続けてゆく。

「そう……本当に大切なお友達。西園寺さんが紹介してくれたからこそ、私は誠くんと付き合えたんですから。
 私、とても感謝しています」

言葉の話に嘘偽りは一切無い。
嘗て西園寺世界は、誠と言葉が関係を深められるように尽力した。
もし世界の助力が無ければ、二人は会話する機会すら持てぬままだったかも知れないのだ。
169名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:05:16 ID:UG7eVqQs
 
170名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:05:41 ID:qrb0dswE
171名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:06:21 ID:UG7eVqQs
 
172 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 22:06:26 ID:eyAjNXLs
「そっか。だったらまずは、その二人から探す事にするか?」

それは雄二からすれば、至極真っ当な提案だった。
今名前が挙がった二人は、言葉と極めて親しい間柄だと考えて間違いないだろう。
ならばその両名や柚原このみから探索してゆくのが、最も妥当な行動方針であるように思えた。
しかし次の瞬間雄二の耳に飛び込んできたのは、全く予想だにしない台詞だった。



「なのに――あの女は誠くんを誘惑した」



冷え切った声。
周囲の雑草が風に揺れ、ざわざわと耳障りな音を奏でている。
気温が数度下がったかと錯覚させられる程の、圧倒的な悪寒が雄二へと襲い掛かった。

「かつ、ら……?」

雄二は呆然とした表情になって、眼前の少女を正面から直視する。
言葉の大きな瞳に、燃え盛る憎悪の火炎が浮かび上がっていた。
173名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:06:29 ID:mUUm4Qty
 
174名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:06:31 ID:qrb0dswE
175名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:07:24 ID:UG7eVqQs
 
176名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:07:25 ID:mUUm4Qty
   
177名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:07:30 ID:qrb0dswE
178 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 22:07:32 ID:eyAjNXLs
「西園寺さんは、私から誠くんを奪おうとしてるんです。友達の振りをしてた癖に、突然私を裏切ったんです。
 誠くんは私とお付き合いしてるのに、それなのに西園寺さんは彼を誘惑しようとするんです」


少女が抱いている憎悪は何処までも暗く、何処までも根深いものだった。
友人だった筈なのに。
自分と誠の仲を応援してくれていた筈なのに。
世界は最悪の形で言葉を裏切って、誠と恋人関係になろうとしているのだ。


「酷いですよね。絶対に許せませんよね。大体、誠くんが私以外の女の子を好きになる訳無いじゃないですか。
 誠くんは何時だって、私の事だけを想ってくれています。
 誠くんは私の事を名前で呼んでくれました。誠くんは私をデートに誘ってくれました。
 誠くんは私の事を好きだって云ってくれました。
 私と誠くんの気持ちは通じ合っているんです。
 ただ誠くんは優しいから、本当に優しいから、西園寺さんの誘惑を断り切れないだけなんです。
 たったそれだけの事なのに、馬鹿な西園寺さんは勝手に勘違いして……!」


終わらない独白、膨れ上がってゆく憎悪。
雄二は一言も口を挟めない。
余りにも異常な独白を前にして、身体は完全に硬直してしまっていた。
ただ心臓だけが音を立てて、血液と共に不安を全身へと行き渡らせる。
そして数秒後、雄二の不安は現実のものとなった。

「だけど私、思い付いちゃいました。誠くんを取り戻す方法も、西園寺さんに罰を下す方法も。
 この島って、殺人が認められているんですよね。だから――」

瞬間、言葉は目にも留まらぬ速度で鞄から刀を取り出した。
言葉の手元から奔る銀光が、雄二の脇腹へと吸い込まれてゆく。
179名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:08:07 ID:UG7eVqQs
 
180名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:08:11 ID:mUUm4Qty
   
181名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:08:16 ID:qrb0dswE
182名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:08:17 ID:HvSah7zN
183名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:08:40 ID:UG7eVqQs
 
184 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 22:08:51 ID:eyAjNXLs
「ガ、ハ――――――――」

足を怪我している雄二には、逃れ得る術など無かった。
言葉は手にした小鳥丸で雄二の脇腹を貫いたまま、底冷えのする声で告げる。

「――殺しちゃえば良いんです。先ずは西園寺さんを殺して、それから誠くんと一緒にこの島を抜け出せば良いんです」

言葉はおもむろに刃を引き抜くと、傍に転がっているニューナンブM60を抜け目無く回収した。
続けて力任せに雄二を押し倒して、馬乗りの態勢となる。

「その為には、足を怪我した味方なんて邪魔なんです。足手纏いを連れたままじゃ、誠くんも西園寺さんも探せませんから。
 ですから、向坂さんは此処で死んで下さい」

それは紛れも無い死刑宣告。
武器を失って動きも封じられた雄二には、逃げ延びる手段など最早存在しない。
だが――此処で直ぐに殺されていれば、未だ僅かながら救いがあったかも知れない。
少なくとも、これ以上の苦痛には晒されずに済んだかも知れない。
しかし次に言葉が行ったのは、余りにも無情な宣言だった。

「直ぐには殺しません。私は西園寺さんを、出来るだけ苦しませた上で殺したいんです。
 ですから、先ずは向坂さんで調べさせて下さい。どんなやり方をすれば、相手を一番苦しめられるかを」
「あ…………ぁ…………」

告げられた台詞の意味を理解した途端、雄二の表情が絶望に侵食されてゆく。
とどのつまり言葉は、雄二を実験台にしようとしているのだ。
冷たい白刃が、雄二の右人差し指へと添えられる。
185名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:09:18 ID:qrb0dswE
186 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 22:09:34 ID:eyAjNXLs
「糞っ…………ちくしょおおおおおおおおおおおおおおぉぉ!!」

雄二が叫ぶ。
良いように利用されたまま終わる、自らの身を呪って。
だがそんな叫びも空しく、雄二の指は無慈悲にも斬り落とされた。


「あガアアアアアアアアアアァァァァァっ!!!」

周囲一帯に響き渡る絶叫。
切断された指の斬り口からは、シャワーと見紛わんばかりの鮮血が噴き出している。
続けて言葉は雄二の顎を掴み取ると、空いている方の手で剣を構えた。
白刃の切っ先は、真っ直ぐに雄二の右目へと向けられている。

「ひ、……う…………ッ」

これから降り掛かるであろう厄災を予見し、雄二が懸命に瞼を閉じる。
しかしその程度の抵抗、時間稼ぎにすらなりはしない。
鋭い刃は難無く標的の瞼を突破して、そのまま奥にある眼球をも貫いた。

「ああああああああああ…………ッ!!!」

グシャリという嫌な音と共に、凄まじい激痛が雄二の神経を埋め尽くす。
潰された眼球からは、赤白く濁った液体が涙の如く溢れ出している。

「――このくらい、未だ序の口です。もっともっと、色々試させて下さいね?」
「……う……ぁ……ぁあっ…………」

拷問は止まらない。
世界を苦しめる為に、ただそれだけの為に、言葉は自らの恩人を刻んでゆく。
指を、目を、鼻を、耳を、口を、身体中のあらゆる箇所を、即死しない程度に斬り刻んでゆく。
静まり返った森の中で、雄二の悲鳴だけが何度も何度も木霊していた。
187名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:09:38 ID:UG7eVqQs
 
188名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:09:55 ID:mUUm4Qty
     
189名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:10:24 ID:UG7eVqQs
 
190名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:10:53 ID:mUUm4Qty
  
191名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:10:55 ID:qrb0dswE
192名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:11:04 ID:UG7eVqQs
 
193 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 22:11:09 ID:eyAjNXLs
    ◇    ◇    ◇    ◇



「……ふう。向坂さんも死んでしまいましたし、実験は此処までですね」

言葉は額に浮かんだ汗を拭き取ってから、返り血に塗れた身体をゆっくりと起こした。
足元には、数十分前までヒトの形をしていた肉塊が転がっている。
完全に破壊尽くされたその状態からは、最早誰の死体であるか推し量るなど不可能だろう。

「それでは行きましょうか。西園寺さんを殺す為に、誠くんを取り戻す為に」

言葉の目的は二つ。
最低の裏切り者である西園寺世界の殺害。
そして、最愛の恋人である伊藤誠との生還。
それらの目的を成し遂げる為には、余計な行動など一切するつもりは無い。
利用出来る人間は利用し尽して、襲撃者や足手纏いは容赦無く殺害する。
全ては、自分と誠の幸せな未来の為に。

大丈夫、雄二を殺したお陰で銃も手に入った。
世界を苦しめ抜く方法も十分に研究出来た。
服が血塗れになってしまったのは面倒だが、新たな服を手に入れれば良いだけの話。
何も、問題は無い。

「誠くん、誠くん、誠くん、誠くん…………」

薄暗い森の中、返り血に染まった少女が独り歩いてゆく。
異常極まりない妄執を、胸の内に抱きながら。



【向坂雄二@To Heart2 死亡】
194名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:11:23 ID:+lgmFaTM

195名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:11:37 ID:qrb0dswE
   
196名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:11:53 ID:UG7eVqQs
 
197 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 22:12:06 ID:eyAjNXLs
【F-4 森/一日目 深夜】
【桂言葉@School days】
【装備:小鳥丸@あやかしびと −幻妖異聞録−、ニューナンブM60(1/5)、ニューナンブM60の予備弾15発】
【所持品:支給品一式×2】
【状態:小程度の肉体的疲労、血塗れ(向坂雄二の返り血)】
【思考・行動】
基本方針:西園寺世界を殺してから、誠と共に島を脱出する
1:西園寺世界に最大の苦痛を与えた上で殺す
2:伊藤誠と共に島から脱出する
3:利用出来る人間は利用して、襲撃者や足手纏いは容赦無く殺す
4:返り血の付いていない服に着替える
5:千羽烏月を警戒



【千羽烏月@アカイイト】
【装備:地獄蝶々@つよきす -Mighty Heart-】
【所持品:支給品一式】
【状態:小程度の肉体的疲労、身体の節々に打撲跡】
【思考・行動】
基本方針:羽藤桂を生還させる為、他の参加者達を皆殺しにする
1:桂以外を全員殺して、最後に自分も自害する
2:桂を発見したら保護する
【備考】
※烏月は桂言葉の名前を知りません(外見的特徴のみ認識)
※自分の身体能力が弱まっている事に気付いています
※烏月の登場時期は、烏月ルートのTrue end以降です
198名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:12:27 ID:UG7eVqQs
 
199 ◆guAWf4RW62 :2008/03/17(月) 22:13:02 ID:eyAjNXLs
投下完了しました
タイトルは『そして始まる物語』で宜しくです
矛盾・誤字等ありましたら指摘お願いします
200名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:13:58 ID:UG7eVqQs
 
201名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:14:59 ID:3dBAFGYn
GJです!
雄二、お前って奴は……
202名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:15:32 ID:qrb0dswE
お疲れ様でした。GJです。
これから協力するのかと思いきや、あっさりと切り捨てる言葉様が素敵。
そして遂に最初の犠牲者か。
雄二は出会った相手が悪すぎたなwどちらを選んでも殺されたとw
203 ◆aa/58LO8JE :2008/03/17(月) 22:16:23 ID:3dBAFGYn
続けて支倉曜子、投下します。
204 ◆aa/58LO8JE :2008/03/17(月) 22:17:42 ID:3dBAFGYn
山の中腹に降り立った少女が最初に行ったのは、参加者名簿の確認だった。
樹木の合間からかすかに差し込む月明かりを頼りに、支倉曜子は羅列された六十以上の単語をさっと眺める。
そこに自らのよく知る少年の名がある事を確認すると、少女は表情を変えぬまま名簿を鞄に入れた。
続けて鞄から殺し合いの舞台であるこの島の地図を取り出す。
周囲の風景から自分の居る位置を確認し、更にいくつかの施設に目星を付ける。
地図に記された複数の施設群。
特に病院や大学、発電所ならば目的の物――首輪の解除に必要な工具類も揃っている可能性があると考えたのだ。

彼女の目指しているもの、それは首輪を解除し、この場所から脱出する事だ。
無論、支倉曜子は争いを忌避する平和主義者というわけではないし、殺人に怒りを覚えるほど正義感の強い人間でもない。
しかしここには自らの半身とも言うべき少年が存在している。
だから、彼女は殺し合いのルールに則った方法では自身の目的を全う出来ないと判断した、ただそれだけの事だった。


己に支給された物品を確認しながら少女は思考する。
黒須太一と共にこの島から生還するには、やらなくてはならない事が四つ存在している。
205名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:18:28 ID:UG7eVqQs
 
206名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:18:43 ID:eyAjNXLs
 
207名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:20:03 ID:3dBAFGYn
まず手始めに、太一を捜索する事。
彼は自身の命に無頓着な面があるので、殺人者に危害を加えられるまでに合流したい。
また、例え彼の肉体が生存していても、彼の心が狂気に飲み込まれてしまっては意味が無い。
彼が戻れない所にいってしまう前に、早急に保護する必要があった。

次に、自身と太一の首輪を解除する事。
ここから脱出するためには、爆弾の内蔵された首輪を外さなければならない。
そのためにも解除に必要な工具や設備が島内に存在するかどうかを確認する必要がある。
それに首輪内の構造を知るのにサンプルもいくつか欲しい所だ。

それから、太一の安全を確保する必要性もある。
例えば殺し合いに乗った存在を放置しておけば、それだけ彼に危険が及ぶ可能性が増える。
更に言えば殺し合いをする意思が無くても足手纏いになるような存在ならば、それは殺人者と同義である。
そういった障害を排除しリスクを最小限に抑える。そのついでに、首輪のサンプルを集めてもいい。
ただし、自分自身が死んでしまっては無意味なので無理をする必要は無いし、首輪も死体から回収すればいいので構わないのだが。

そして最後に、島からの脱出方法の探索。
港やビーチリゾートなどに船があれば幸いだが、そううまくいくとも思えない。
そもそもこの島が“どこ”にあるもかもわからないのだ、安全な場所まで行き着けるという保障は無い。
あるいは主催者の本拠地にならば脱出方法がある可能性が高いが、今度はその本拠地を探す必要性も出てくる。
ともかく、それを踏まえてもこの島から生還するためには何らかの方法が必要だった。


考えを取り纏めつつ、少女は支給品を確認し終える。
そして、その内の斧以外を全て鞄に仕舞い込むと、少女は自らの目的を実現するべく森の中へと音も無く消えた。
208名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:20:32 ID:UG7eVqQs
 
209 ◆aa/58LO8JE :2008/03/17(月) 22:21:23 ID:3dBAFGYn
【E-6 山中 1日目 深夜】
【支倉曜子@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
【装備】:斧
【所持品】:支給品一式、本人確認済み支給品(1〜2)
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:黒須太一の捜索及び保護
 2:1に並行し3〜6を行う
 3:殺し合いに乗った者及び足手纏いになりそうな者の排除(ただし無理はしない)
 4:首輪のサンプルの入手(特に手段は問わない)
 5:首輪の解除に必要な器具・設備を探す
 6:島からの脱出方法を捜索する
 7:太一と二人で生き残る

※名簿に佐倉霧、山辺美希の名前がある事も確認しましたが、特に気にしていません。
210名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:21:26 ID:UG7eVqQs
 
211 ◆aa/58LO8JE :2008/03/17(月) 22:22:08 ID:3dBAFGYn
投下終了しました。
タイトルは『月夜に踊る隠密少女』でお願いします。
212名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:28:14 ID:eyAjNXLs
>>211
投下乙です
自分はクロチャン未プレイですが、陽子の思考が良く伝わってきました
マーダーにもpkkにも考察キャラにも成り得そうな、面白いスタンスですね
でも探し人は、もう凄い事に……w
213名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:30:12 ID:20ds/84l
gu氏投下乙!
最初からパワーに溢れたバトルで、こちらもエンジンをかけるのが大変だw
全開になった言葉様がんばれ。星を稼ぐんだ。

aa氏投下乙!
簡潔な分量でキャラの思考を描く、良い登場話だと思います。
今回は特に動きのない彼女がこれからどんな話を作っていくのかw
214名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:31:30 ID:+lgmFaTM
>>202
投下乙
雄二いぃぃっ! どっちもヤンデレかよw
ロワ特有の突き落としだよな、これは

できれば精神状態に
精神崩壊。殺人にタブーがないの
追加をよろしくお願いしますね。
彼女、崩壊前と後でかなり性格変わってる人なんで

>>211
こっちも乙。相変わらず合理的なお人だ
彼女も今流行の対主催マーダーか
215名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 22:45:39 ID:u1/3N4Ez
お二方とも投下GJです。

>>202 言葉が……。やばい黒言葉様貫禄ありすぎる……。

>>211 太一の為に殺すのをためらわないあたり曜子のヤンデレっぷりも流石ですな。
216名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/17(月) 23:56:52 ID:qqbw7MQG
ふむう、出遅れたか。

>>54
投下乙です。
神崎…強いのう…
そしてタマ姉…なんてこったい。

>>89
投下乙です。
なんだか凄く良いコンビだw
知らない人にはプッチャンが本体に見えるんじゃないかコレw
そして、ツヴァイ…悲しい未来が待っていそうな予感…

>>116
吹いたw
原作知らないのだが凄いキャラだw
面白い事になりそう。

>>199
雄二…南無。
言葉様……ガタガタブルブル。
一瞬でも綺麗な言葉様を期待したのが間違いだったのかのう…
そしていきなりバトル…流石ですなあ。

>>211
投下乙です。
むう?
マトモそう考察しているのに、確実にマトモではないキャラ…かw
判りやすい登場話乙です。

217 ◆guAWf4RW62 :2008/03/18(火) 00:09:40 ID:NL8zYiUm
皆様、感想有難う御座います
物凄く励みになっています

>>214
指摘有難う御座います
では殺人にタブーが無いと加筆します
精神状態についての明記は、後の展開を狭めかねないので、出来れば避けたいと思うのですが如何でしょうか?

また毒吐きスレで指摘があった名乗り関連についても、今日〜明日中には該当部分の修正版を投下します
218 ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:23:22 ID:v9SQKbeR
小牧愛佳、菊地真トウカしませう。
219世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:24:43 ID:v9SQKbeR
 ふかふかのシーツ、ふかふかのかけ布団、ふかふかの枕。三点からなる極上の安座の上に、少女は横たわっていた。
 薄い桃色を基調とした学生服。胸元のリボンと赤いスカートは、派手すぎず地味すぎずの絶妙なバランス。
 学生服が包む少女も、派手さはないが、全体的に整った容姿をしている。
 特徴としては、左の耳元辺りで纏めた大き目の髪留めが目立つ。飾り気のない頭部を主張する、ワンポイントだ。

 健やかな寝息が静かに音をたて、しかし少女の表情は苦痛に歪んでいる。
 まるで悪夢を見ているような――いや、今となってはそれも過去形だ。
 悪夢を見た。思い出すのも辛い悪夢。
 だからこそ、少女は夢から逃亡し、現世に帰還した。

「……ん。ここ……は?」

 成人男性二人分は余裕と思われる大きなベッドの上で、少女は目を覚ました。
 湿り気を帯びた目頭を袖で拭い、キョロキョロと辺りを見渡す。
 視界に飛び込んでくる風景は、なんと豪勢な一室だったろうか。
 自身が座っているベッドを中心として、右の壁際には鏡台と冷蔵庫が、正面には大画面の液晶テレビが置かれている。
 左側は玄関とバスルームのようだ。統合して見渡すと、豪勢なワンルームマンションの一室といったところだろうか。
 はて、どうして自分はこんなところにいるのだろう……と、半覚醒状態の頭に記憶を辿らせる。

「どうしよう……思い、出せない」

 ずきり、と脳髄の中枢がひび割れたような感覚に襲われる。
 発熱による頭痛にも似た不快感が、少女を苦しめた。
 ずきんずきんずきん、何度も頭に響いてくる痛みは、ひょっとして警告なのだろうか。
 この部屋に至るまでの経緯を無理に思い出そうとすれば、きっと後悔してしまう――そんな予感がした。

 どうしよう……このまま気分が優れるまで二度寝してしまおうか。
 いやしかし、ここがどこの誰の部屋なのかもわからない。人様の部屋で勝手に休むほどの気概は、少女にはなかった。
 ちょっと外を歩いて、まずここがどこなのかを把握しよう。うん、それがいい。
 と少女は思い立ち、ベッドの上から身を起こそうとする、直前で、
220世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:25:47 ID:v9SQKbeR
「……あれ? これ、なんだろう」

 ふと、傍らに置いてあった荷物に目がいった。
 華美な装飾はなく、収納口も一つ。二つの肩紐から、背負って使うタイプだと推測できるそれは、

「リュックサック……かな?」

 小学生の頃、こんな形のバックを背負って遠足に行ったことを思い出す。
 しおりと筆記用具、お弁当と水筒、それにおやつ。
 重たくなるまで詰め込んで、持ち運ぶだけでも疲れていた記憶が。
 懐かしいなぁ、などと思う片隅では、これが自分のものではないということをちゃんと認識していた。
 家主の所有物だろうか。確かめようにも、他人の荷物に勝手に手をつけるのは忍びない。
 数秒間懊悩した挙句、少女はそのバックから目をそらした。
 最優先事項は事態の把握だ。そのためにまず、この部屋を脱出しよう。
 今度こそ、と身を起こし、

「よっ……あれ?」

 ベッド上で体を屹立させるが、すぐにバランスを崩してしまう。
 足腰がうまく立たない。何時間も正座をしていたような痺れ、もしくは脱力感が、少女を再度ベッドに誘う。
 へなへなと倒れ込み、結局少女は、またふかふかの安寧に捉われてしまう。
 ああやっぱり二度寝してしまおうか、ううんだめだめ、と葛藤する最中、ピッ、という電子音が一つ。

「えっ?」

 寂寞としていた室内に、突如として音が入り込む。
 少女の吐息よりも存在感があり、やや機械的にも感じる声は、正面に聳える液晶画面から発せられている。
 目を向けると、テレビの液晶画面が美麗な採光を放っていた。
 どうやらベッドに倒れこんでしまった際、布団の上に置かれていたリモコンの電源ボタンを押してしまったようだ。
 手元に転がっていたリモコンを摘みながら、少女はそう検分する。
 だがすぐに、リモコンは摘んだ指から零れ落ちてしまった。
221世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:27:52 ID:v9SQKbeR
「えっ……ひゃえぇ!?」

 甲高い声を上げて、少女は心臓を張り上げた。その視線の先は、電源のついたテレビ画面。
 映し出された映像の中では……一組の男女が、お互いに、裸で絡み合っていた。

「なっ、にゃ、はえぇぇ〜〜っ!?」

 奇妙な声を漏らし、少女は咄嗟に零れ落ちたリモコンを拾い上げる。
 ボタンが押しやすい形に握ろうとして、しかしあまりの慌てぶりに二度三度お手玉してしまう。
 やっとのことでチャンネルを変えるが、

「〜〜〜……っ!?」

 映し出された別の番組では、また別の男女が裸で絡み合う様が、さっきよりも過激に。
 ぼっ、と少女の顔から火が上がり、連続してチャンネルのボタンを押す。
 しかし、またもや別の男女が。チャンネル変更。しかし、またもや別の男女が。チャンネル変更。しかしまた。

「ど、どどどどどどうしてえ〜!?」

 変えても変えても、液晶画面の中で展開される行為は同じ。出演者とシチュエーションの違いしかない。
 少女の年齢は、世間一般では『お年頃』に分類される。性についての知識も、また人並みだ。
 だから、この番組がプロレスの実況映像であるなどとは、間違っても思わない。
 思いたくても、少女の中の女の部分がそれを否定してしまう。

 チャンネルを三週はしただろうか。番組のジャンルはいっこうに変わらない。
 パニックに陥った少女は、混乱と動揺のあまりリモコンを放り投げてしまった。
 床に転がったリモコンは、そのまま右横に設置された冷蔵庫の下に入り込んでしまう。

「なんでぇ〜」

 少女は涙目になりながら、嘆きの声を漏らす。全身から、こんなはずじゃなかったという主張が滲み出ていた。
 しかしそんな少女の嘆きも、テレビのスピーカーから放たれる大音量の喘ぎによって掻き消されてしまう。
222名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:28:14 ID:Tl6Wf9e1
 
223名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:28:23 ID:evNgS9q5

224名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:28:28 ID:NL8zYiUm
 
225名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:28:35 ID:rIBBQ8cV
226名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:29:14 ID:Tl6Wf9e1
 
227名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:29:24 ID:NL8zYiUm
 
228名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:31:10 ID:rPYHOe5C
 
229名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:31:43 ID:Tl6Wf9e1
 
230世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:32:14 ID:v9SQKbeR
「あ……」

 思わず、視線がそっちにいってしまう。
 液晶画面の中では、白人の男女が一組、ダブルベッドの上で行為に没頭していた。
 それも推察するに、かなり終盤。女性の喘ぎが徐々にテンポアップしている事実が、少女の心をざわつかさた。

(どうしよう……テレビ……消す? あ、でもリモコン拾わなきゃ……どうしよう)

 冷静に対策を図ろうとして、少女はいつの間にかテレビの正面に正座していた。
 目の前で真摯に務める役者たちに敬意を払うように、少女は男女の演技に釘付けとなった。
 なんとなく、見届けなくちゃいけない気分に――少女の行動の意味を説明するならば、その一言に尽きる。

(なんだか……なんだかあたし……へん……)

 心がふわふわする。
 顔がほんのり上気する。
 心臓がばくばく鼓動する。
 なんだかとってもいけない気分。

(あたし……どうしちゃったんだろう……わからない、わからないよぉ……)

 この部屋に訪れるまでの経緯、自身の置かれている境遇、所在地。
 なにもわからない――いや、たぶん本能はそれを知っている。
 けれど少女の精神は、その記憶に封をしてしまっているのだ。
 たぶん、それはきっと辛いこと。思い出すだけで自壊してしまうような。
 少女は忘れたいと、忘れるべきだと、そう思い至ったのかもしれない。
 ここで、こうして、こうなっているのも、全ては逃避の結果なのだとしたら。
 身を委ねてしまうのが、一番しあわせなことなのではないだろうか。

(あっ……!)
231名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:32:36 ID:TrXPK1Op
232名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:32:58 ID:9lDPgmZ8
233世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:34:21 ID:v9SQKbeR
 テレビ画面の中で繰り広げられている行為が、激化する。
 悲鳴にも似た音は鋭く、前後の単純な動きは過激さを増し、見る者を圧倒した。
 少女が持っていたのは、中途半端な知識。完璧ではない。
 だからこそ、その中途半端な部分を埋めたいという、好奇心が働いてしまった。
 事態を把握していない、直前の過去を忘れたがっている少女だからこその、逡巡が生まれる。

(どうしよう、どうしよう……)

 自暴自棄にも近い陶酔の気配が、少女の脳を焼く。
 委ねたい。この虚脱感から抜け出すため、流れに身を任せてしまいたい。
 少女は立ち上がる力を失っていた。なんとかしたいという願望も、放心するように体から抜け出てしまう。
 敷かれたレールの上を、ただなんとなく歩き続けることができたら、なんと幸福か。
 怒り、悲しみ、憎しみ、焦り、迷い――そんな感情に流されて生きることが、愚かでも楽なのだとすれば。
 どうなっても、いいかもしれない。

(あたし……やっぱり、へん……)

 心中で呟いて、少女は確かな異変を感じ取った。
 湿り気。
 内腿の辺りに感じる妙な違和感を、少ない知識の項目から索引する。
 やがて少女は、女の性質としてそういう状態になることがある、ということを理解すると、また涙ぐんだ。
 やっぱり自分はどこかおかしい。わかっているはずなのに、あえておかしくなることを承諾している。
 こういうのを、いやらしい、っていうのかもしれない。

(なんか、もう……〜〜〜っっ!)

 少女の感情の高ぶりに比例するように、テレビの中の行為もエスカレートする。

 発散される声――喘ぎ。
 ほぐれる肢体――淫ら。
 愉悦に浸る顔――恍惚。
234名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:34:35 ID:v0QWblNk
 
235名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:35:12 ID:9lDPgmZ8
236世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:35:28 ID:v9SQKbeR
 なにもかもが、少女にとっては未知だった。
 男と女の到着点を、童心が見た、その当たり前の結果。
 少女の手は、いそいそと湿り気を帯びた部分をなぞり始める。

(んっ……ちょっと、気持ち)

 湿り気が伝染するのを恐れたのか、それともただ単に邪魔と感じたのか。
 少女はいそいそとスカートを脱ぎ始め、丁寧に畳んで枕元に置く。
 そして再び、湿り気の根源たる箇所に、指を当てた。

 しっとりした手触り。水にも似て、ゼリーにも似て、しかしまったく違う粘着質。
 高揚する気分。色で表現するならピンク。桃色ではなくピンク。ひたすらに淡い。

 ぬめぬめ、という擬音が頭の中いっぱいに広がる。ねばねばじゃないところがポイントだ。
 なにに似てるだろうか……川魚の質感? もずく? 納豆? あまりいいイメージが浮かばない。
 それでも少女はひた耽る。この触感に。ぬめぬめ、ぬちゃぬちゃ、にちょ、とした手触りに。

「はずかしぃ……」

 自分自身についての感想を、率直に吐露する。
 羞恥というのは、女性にとって忌避しがたい感情だ。しかし、時には意識せず抗ってしまう場合もある。
 基本的に羞恥心というのは、羞恥の元となる事実を、誰かに知られることで感じえるものだ。
 今は少女一人、ひとりしかいない、それが少女を駆り立てる。
 羞恥心というのは心の箍だ。創世記以来、裸でいることに疑問を持ち始めた人類が、自然と作り出した箍。
 現実を把握していない、いまだ夢心地にもあると言える少女が、その箍を無視するのは摂理だった。

 湿り気は増す。徐々に、徐々に、湿り気をなぞるだけでは足りなくなってきた。
 清純な白の下着が、淫らに汚れていくのがわかる。
 最後の砦。取ってしまおうか。
 貞操な部分に、手を伸ばしてしまおうか。
 自らの意志で、大人の階段を登ってしまおうか。
 早い、遅い、いや早い、やっぱり遅いかも、あ、でも。
237名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:36:06 ID:NL8zYiUm
238世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:36:35 ID:v9SQKbeR
(こんな……あたし……自分で)

 まどろむ瞳。
 荒ぶる呼気。
 艶やかな頬。
 揺る乙女心。
 瓦解する砦。
 侵略する手。
 侵略される。

(こんな……あたし……自分で、こんな、えっちなこと……)

 口には出せない自嘲が、心の中で反芻される。
 反省したい。むしろ猛省した。でもやめられない。
 このままどんどん先に進んでしまったら、一人で突っ走ってしまったら、どうなってしまうんだろう。
 好奇心、探究心、冒険心、ああもうそんな体面はいらない。いっちゃおう。

 下着の中に入り込んだ指が、さらなる奥へと向かって、伸びていく。
 他でもない少女自身の手で。速度が遅いのは、せめてもの躊躇い。
 浸る、浸る、夢うつつ……少女は夢から抜け出せない。

 突然の混沌が。
 たかあきくんの死が。

 夢から現実へ戻る切符を、少女に捨てさせた。
 だって、全て忘れて自分の殻に閉じ篭ってしまえたら、楽そうだって――そう思えたから。

(ひゃうん……っ!)
239名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:36:42 ID:TrXPK1Op
240名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:36:51 ID:v0QWblNk
 
241名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:37:23 ID:9lDPgmZ8
242名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:37:25 ID:TrXPK1Op
243名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:37:27 ID:NL8zYiUm
244世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:37:44 ID:v9SQKbeR
 液晶画面では、ちょうど行為の果てが訪れていた。
 この番組が終了しても、またすぐ似たような番組が始まる。
 その頃、自分は夢から抜け出せているだろうか。わからない。
 ただ今は、夢に浸る女の子として。
 奥に、奥に。
 秘密の部分に、手が、触れ――――バタンッ!

「ひぇ……?」

 突如、自分の声でも、テレビの音声でもない、無機質な音が鳴った。
 汗まみれの顔を、左の玄関口へと向ける。
 そこには、唖然とした顔で立つジャージ姿の男の子が一人。
 目と目が合う、瞬間。
 男の子が口を開く、ほぼ同時に。

「キ、キクチマコトデース!」

 少女――『小牧愛佳』の乙女回路が、爆発した。


 ◇ ◇ ◇

245名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:37:51 ID:NL8zYiUm
 
246名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:37:51 ID:bDVJ3xPa
 
247名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:38:39 ID:9lDPgmZ8
248名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:39:00 ID:TrXPK1Op
249世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:39:19 ID:v9SQKbeR
 ――数分前。

 殺し合いという名の、ゲーム。
 自身が立たされている状況を、自分なりに分析した結果、頭を抱えるはめになった。

「……なんで、なんでボクがこんな目に……」

 電線の切れた、ドロップキックでもかませば折れてしまいそうなほどボロボロの電柱を背に、苦悶する。
 職業柄、トラブルやアクシデントには慣れっこだった。が、これは明らかにその範疇を越えている。
 ドッキリの可能性は既にゼロ。そもそも、あのプロデューサーがこんな悪趣味な仕事を取ってくるはずがない。
 となれば、これはもう否定のしようもなく、事件だ。
 そして、そんな事件を前にできることが……なにも思い浮かばない。

「はぁ……」

 溜め息をついて、その場に深く座り込んだ。
 短く整った黒の頭髪に、トレーニング用のジャージ姿。
 今はげっそりしているが、本来その顔つきはとても凛々しく、男女問わず好まれる魅力を持っている。
 彼――いや、それは見た目の印象から与えられる間違ったイメージだ。

 彼女――の名前は、菊地真。
 765プロダクションに所属する、歌って踊れる現役アイドルである。
250名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:39:30 ID:rIBBQ8cV
251名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:39:44 ID:NL8zYiUm
 
252名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:40:08 ID:TrXPK1Op
253名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:40:27 ID:iBEDgLIT

254名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:40:32 ID:bDVJ3xPa
 
255世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:41:47 ID:v9SQKbeR
「悩んでも仕方ない……っていうのは亜美と真美の曲にもあるけどさ……」

 言峰綺麗、神崎黎人の両名による開会宣言の後、真が飛ばされたのはスラム街の中心だった。
 荒廃した街々の情景は異国の紛争地域を思わせる有り様で、すぐにここが日本じゃないんだと認識できた。
 支給された地図を見ても、それはやはり。彼らの言っていたとおりの、孤島。
 脱出するには船かヘリが欲しいところ。いや、それ以前に、首に嵌っている枷をどうにかする必要があるか。
 それに、他の『ゲームに乗った参加者』も注意しなければならない。
 あの双子、いや大蛇などもってのほか。他にもあんなのがいるのかと思うと、ゾッとする。
 しかし、

「……落ち込んでる場合でも、ないですよね……プロデューサー」

 懸念される将来の安否、それらを今は考えず、真は立ち上がる。
 真にとって、悩み事なんてのは日常茶飯事だ。トップアイドルへの道は苦難の連続なのだから。
 それに、ここには如月千早と高槻やよい、同じアイドルの友達が二人もいる。
 彼女らもまた、動揺に悩み苦しんでいるときかもしれない。だけど、二人だってそのまま燻ったりはしないはずだ。
 なぜならそれが彼女らを支えてきたプロデューサーの、765プロの教えだから。

「ボクたちは、こんなところでへこたれたりしない! よ〜し、バリバリいくぞー!」

 自分で自分を鼓舞し、真はアイドルとしての強い表情を取り戻す。
 向かう先は、眼前に聳える怪しい洋館。
 真に支給された物資の一つ……首輪探知レーダーが、この中に他の参加者がいることを示していた。
256名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:42:31 ID:9lDPgmZ8
257名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:42:36 ID:TrXPK1Op
258世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:43:31 ID:v9SQKbeR
 洋館の中は、当たり前だが人気がない。
 照明は淡いピンク色。そして館全体に、鼻をつく強い香りが蔓延していた。

「うっ……なんだろう、なにか珍しい花でも置いてあるのかな……?」

 異臭というわけではないが、芳しい香りとも言いがたい、嗅いだことのないようなにおい。
 ずっと嗅いでいると、気分がふわふわしてくるような……不思議な感覚に捉われる。
 真はジャージのポケットに入っていたハンカチを鼻に当て、なるべく臭いを嗅がないように進んだ。

 館の内部は外観で見るよりも広く、狭い廊下にいくつもの部屋が置かれている。
 首輪探知レーダーの反応があったのは二階に登ってすぐの部屋。
 外から窺うにはなんの変哲もないノブ式の扉が、真の足を止めた。

(中にいるのかな? どんな人だろう……)

 首輪探知レーダーの機能は、極めて最低限のものだ。
 索敵範囲は半径200メートル。首輪の反応を察知すると、その数と大まかな距離を、ランプと電子画面で知らせてくれる。
 ランプは反応が近ければ近いほど点滅の速度を増し、また一度登録した首輪は反応しなくなる。
 真自身の首輪は既に登録済みだ。つまり、この反応は間違いなく他者の首輪。
 画面上の算出距離値も、今は4メートルと出ている。距離もドンピシャ、反応の主は扉一枚隔てた向こう側にいる。

 誰かを殺すなんてことは、端から考えていない真だ。
 首輪の反応を探ってみたのも、逃げるためではなく合流して協力を得るため。
 ゲームからの脱出方法なんて検討もつかないが、一人でいるよりは、仲間を作っておいたほうがいろいろ将来的だ。
 そう当たり前のように考えて、しかしいざ同じ境遇の人間に会おうかというと、躊躇う。
 なにしろ、相手はこのゲームに賛同しているかもしれない。無害である保障なんてどこにもない。
 だがそうやって悩むと、またプロデューサーの顔が頭に浮かぶ。

「……ッ!」
259名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:44:01 ID:JcumRQ2C
  
  
260名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:44:05 ID:NL8zYiUm
 
261世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:44:28 ID:v9SQKbeR
 逡巡は選ばない。765プロのアイドル、菊地真の売りはその行動力にあるからだ。
 そして、扉を開け放つ。ノックを忘れてしまった。
 中には、同世代くらいの女の子が一人。上半身は学生服で、下はなぜかパンツ一枚だった。
 しかもこの少女、なにやら汗だくの上に頬がほんのりピンク色に染まっている。
 少女の正面にはテレビが。玄関口からだとよく見えないが、どうやらアダルトビデオが映されているようだ。

 はて、この状況はいったい……と考えたところで、真の顔が発火した。
 気づいてしまったからだ。少女が現在、女の子の口からはとても言及できない行為の真っ最中だという事実に。
 だがもう扉は開けてしまった。今さら逃げることなどできない。
 ああどうしよう、真は刹那の間に懊悩すると、ふとプロデューサーのアドバイスが頭を過ぎる。
 それはアイドルのみならず、芸能界を舞台にする者全てに言える基本事項。
 こういうときはまず――挨拶だ!

「キ、キクチマコトデース!」

 しまった、声が少し裏返ってしまったか。
 真が失態を自覚した直後、少女の顔はピンク色から情熱的な赤へと移り変わり、その身はわなわなと震えだす。
 しばし見つめ合い、そして最悪の事態が始まった。


 ◇ ◇ ◇


「いやああああああああああああああああ!!」
「ああ、待って! 待ってええっと……パンツの君!」
「うわあああああああああああああああああああんんん!!」
「だあぁぁ! ボクはいったいなにを言ってるんだあぁぁ!?」

 見られた。見られてしまった。あんな恥ずかしい場面を、よりにもよって、『男の子』に。
 河野貴明の死により、夢の殻に閉じ持ってしまっていた少女、小牧愛佳。
 彼女を現実へと連れ戻したのは、幸か不幸か、痴態を異性に見られるという、最高にお先真っ暗な悲劇だった。
262名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:44:33 ID:TrXPK1Op
263名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:46:26 ID:NL8zYiUm
 
264世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:46:31 ID:v9SQKbeR
「待ってってばー! その、ボクは見てない! まったく、なーんにも見てないからー!」
「やらあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 甲高い悲鳴を上げつつ、迫り来る男の子から逃げるため、廊下を遁走する。
 現実は理解したものの、これが殺し合いであるという事態はいまだ把握し切れていない愛佳。
 逃げるのは恐怖心からではない。羞恥心からだ。

(男の子に、男の子に、知らない男の子に、み、み、みみ、見られちゃったろおおおお!?)

 羞恥心に支配された愛佳の全身は茹蛸状態。精神は、完全なる暴走の道をひた走っている。
 愛佳の前方、一階へと下る大きな階段が目に入るが、走る速度は落とさない。
 この状況を脱せるなら他になにもいらないと愛佳は強く念じ、跳んだ。

「ひゃああふぁうああふあああうううにゅううううう!?」

 一段目から階段を踏み外し、転げ落ちる。舌を噛まなかったのが奇跡と言えた。
 転がって一階に下りた愛佳は、すぐに立ち上がることができず、そのまま床で硬直。
 多少頭がグラグラして気持ち悪いが、特に外傷はない。
 ダメージで言うならば、肉体よりも精神のほうがよっぽど深刻だろう。
 それだけ、女の子の恥ずかしい部分を好きでもない男の子に晒す、ということが異常事態なのである。

「ちょ、大丈夫!?」
「ふみゅ〜……へ?」

 一階の階段先でへばっている愛佳の下に、男の子が駆け下りてくる。
 追いつかれてしまった。どうしよう。
 危機感を覚えるのだが、とても逃げ出せるような状態ではない。
 眼前までやって来た男の子の顔を覗くと、また恥ずかしさが込み上げてくる。
 しかも、
265名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:46:32 ID:bDVJ3xPa
 
266名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:46:44 ID:TrXPK1Op
267名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:48:04 ID:NL8zYiUm
 
268名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:48:05 ID:v0QWblNk
 
269名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:48:21 ID:9lDPgmZ8
270世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:48:30 ID:v9SQKbeR
「あ……」

 転げ落ちた際の、体勢が一大事だった。
 現在は純白の下着一枚となっている愛佳の臀部。
 まん丸とした、決して小振りとは言えないお尻が、

「はえ……」

 自らの存在を主張するかのように、天に向かって突き出されている。

「あの……その……えっと」

 ばばん、と。
 いやむしろ、どかん、と。
 いやいやむしろ、モロン、と。
 ――or2

「……ふゅ、ふええぇぇぇぇん」

 成す術はなく、愛佳は観念したように泣き出した。


 ◇ ◇ ◇

271名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:49:25 ID:JcumRQ2C
  
272名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:49:32 ID:9lDPgmZ8
273世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:49:59 ID:v9SQKbeR
 殺し合いという名のゲームに参加して、アイドルたる真が最初にやらかしてしまったことは……女の子を泣かせることだった。
 それが殺人や傷害でなかっただけ良かったと解釈すべきか、いやそんな楽観的には考えない。
 言うなればあれは回避しきれなかった惨劇だが、真が少女を怖がらせてしまったことは事実。
 ここはまず謝罪すべきだ。とは思うが、目の前の少女はひたすら泣き続けるだけで、とても聞き入れてはもらえそうにない。

(こんなとき、どうすればいいんだろう……あ、そうだ!)

 ハッと閃いた真は、さっきまで鼻を押さえるのに使っていたハンカチを取り出す。
 そして思い出すは、アイドルとしての基本事項。
 アイドルに大切なものは真摯な挨拶、そしてそれに伴う笑顔。
 心の中で詠唱し、真はそっとハンカチを差し出した。

「……泣かないで。ほらっ、可愛い顔がぐしょぐしょだよ。さ、まずは涙を拭いて」

 キザっぽいセリフに乗せて、満面の笑顔を振りまく。
 世間一般のアイドルならば『可愛らしい』と評されるであろうスマイルは、真に限って言えば『カッコいい』と評価できる。
 女の子でありながら、容姿や言葉遣いは男の子に近く、真のコンプレックスにもなっている要素。
 それが、少女を慰める必要があるこの場においては、これ以上ないほど効果的に機能する。

「あっ……あ、ありが、とう……」

 目と目が合った瞬間、愛佳の涙は、魔法がかけられたかのように止まってしまった。
 顔色は、先ほどに比べて静かに、より自然な赤色に染まる。
 それが、『女の子が格好いい男の子と対面したときの表情』などとは、露とも思わない。
 少女が泣き止んでくれた事実だけをのみ込み、真は歯を輝かせた。
274名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:50:34 ID:9lDPgmZ8
275世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:51:22 ID:v9SQKbeR
【C-2 娼館一階/1日目 深夜】
【小牧愛佳@To Heart2】
【装備】:なし
【所持品】:なし
【状態】:精神的疲労(中)、スカートはいてない
【思考・行動】
 基本:???
 0:ちょっと格好いいかも……ってもうばかばかあたしのばか〜
【備考】
 ※河野孝明死亡のショックにより、開幕時の記憶が飛んでいます。
  そのため、殺し合いの事態も理解していません。なにかの弾みで思い出す可能性はあり。
 ※支給品一式(未確認)と愛佳のスカートは、娼館二階の部屋に放置。
 ※真が男の子だと思っています。

【菊地真@THE IDOLM@STER】
【装備】:首輪探知レーダー(残り約5時間)
【所持品】:支給品一式、ランダム支給品×2(確認済み)
【状態】:健康
【思考・行動】
 基本:ゲームには乗らない。同じ意志を持った仲間を作る。
 1:とりあえず、目の前の少女を落ち着かせる。
 2:脱出したけど、どうすればいいのかわからない……。

【首輪探知レーダーについて】
 索敵範囲は半径200メートル。首輪の反応を察知すると、その数と大まかな距離を、ランプと電子画面で知らせてくれる。
 ランプは反応が近ければ近いほど点滅の速度が増し、察知した首輪は登録可能。登録した首輪は反応しなくなる。
 画面には反応との相対距離、大まかな方角が映し出される。音声機能は一切ない。
 ちなみに電池式。単三電池二本で6時間稼働。電源のON/OFF機能はないので、節電には直接電池を外す必要がある。

【娼館について】
 外観は洋風の館。二階建て。愛佳がいた部屋とは別種の部屋がいくつも存在する。
 また、『館全域に嗅ぐとなんだかいけない気分になってしまう香り』が蔓延している……?
276名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:53:09 ID:iBEDgLIT

277 ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 00:54:31 ID:v9SQKbeR
投下終了。

以下、真面目な話。
初投下ということもあって、どこまで許容されるかという試みも含めての作品です。
苦言はどうぞ容赦なく。素早く対応する所存です。

そして支援まことに感謝です。
278名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:54:43 ID:JcumRQ2C
 ∧_∧
( ;´∀`)
人 Y /
( ヽ し
(_)_)

279名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 00:55:38 ID:bDVJ3xPa
投下ラッシュで感想が間に合わないw


おお、雄二よ…死んでしまうとは情けない
と、いうわけで投下乙ですgu氏
雄二覚醒キタコレと思ってたらあっけなく逝っちゃうんだもんな
これがバトルロワイヤルというものか…

そしてaa氏も投下乙です
曜子ちゃんがギャルゲ1stの隠密行動大好き杉並に見えてきたのは俺だけでいい
あんなロリコンとは違って曜子ちゃんは文字通り色々な意味で大活躍してくれるはず

LxH氏もめちゃくちゃ乙です
あれ?いつの間にギャルゲ板は18禁になったんだろうとか疑いましたよw
そしてLxHのトリを見た瞬間、
あ、スクールデイズが投下されるな、と考えたのは俺だけでいい。
そして愛佳が書き手ロワ2ndの蟹座氏に見えたのも俺だけでいい。
280名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:01:16 ID:v0QWblNk
>>277
投下乙です。
むう、これは新しい。
しかし男と思われるとは、お約束だな…真
281名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:07:11 ID:iBEDgLIT
投下乙 
勘違い来た来たw 
描写の過激さには賛否両論ありそうだけど、 
彼女がおびえた理由はよく分かります。二人ともトラウマだ… 

>>420 
了解。確かに、鮮血ENDルートとは 
症状違いますしね。精神崩壊確定とまではいえませんね 

逆に、言葉様は普通でありたいのに普通になれないと 
自覚してるらしい(スタッフ談)ので崩壊してるかもしれない。 
どっちに転ばすのもありそうだ 
282名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:16:39 ID:v0QWblNk
先週の主な出来事

                                 +;;. ;”
       _                  ̄―=_ *'・’r';、 ,
      '´  ,、`ヽ=-                   ̄=-_〉 ,:’,'´⌒⌒ヽ ,:’
  . とi ,ノノ ))リ  =‐                      ̄=-_.ノ! j从从i〉': .‘
 ___|!il| ワノl|  =-                        二レj(i゚ Д゚ノ!∴;;;
 {l,、,、,、,、l|l=と)彡ーニ                        二と     ノ ” 、, .
   ノノ,く/_|jソ、リ            −_         _― (´/*・_ノ *`'・
    (_/ ヽ_)               ―=ニ二― ̄      し ´ ';*;

283名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:17:09 ID:v0QWblNk
             _,..-------...,,_
         _,.-'''"          "'''- .
       ,/                 "、
      ,/                  ヽ  `、
     / /    /  |  l   ll   ヽ ヽ  `、
    ,/ / /| .,/   | | .| l | l .| l ヽ ヽ ヽ `、
    .l ,| / | /  /| | | ,| .| | l | ヽ ヽ ヽ ヽ  l
   ,.| | ,| .| ,l  / l/ | | | |ヽ |ヽ .ヽ | .ヽ ヽ |
   .| | ,|  | | | l_ l ..|.,l ,|l | l | ,l |,|-l‐|\  ヽ ヽ.|
   | | |  | l .|、 .| l.|`l゙゙ヽ,| ヽヽ|ヽ| |l_|_|_ l/|    ヽ..|
   | j| | | | | ヽ,r‐,‐‐、ヽl ヽ |ヽィ'i  ;;.ヽゝ|/l  .l  .|
   | |,| | | .l || イ ヒゾ,   ヽl  ヒゾ,r" | |  .|ヽ|
   |,| .l | |  | |ハ ` ゙゙゙     !        | ノ  | . l     姉さん…
   |l ヽl| ヽ ゙l、ト                / |. |ヽ|        ヤンデレって怖い…
      ヽ、|゙|  ,.ハ      ‐--‐    , '" | |
         |/j ,| "' 、         / /l /| | |
         l  ヽl\ |`l'''-..  , -'" | < レ   |l
           / ヽl..|  . ゙"".    | ~">
           |"'''- .._       , -'" |
           |     "''‐┐ ┌'"   |

・2nd開幕! 皆さん、張り切って行きましょうー!
・タマ姉ーーーーー!!!! 今回の主催は強そうですねえ。
・雄二様(違)ーーーーー!!!! 綺麗な言葉様は所詮届かぬ夢なのか…
・葛木&プッチャン…なんというか良いコンビだ…
・愛佳…しょっぱなから恐ろしいインパクト…
・つーか、予約多いよwww 半分以上埋まっているではないですかwww

先週(というか昨日と今日)(3/17、18)の投下数:5作+OP
死者:1名(向坂雄二)
現時点での予約:18件w
284名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:17:11 ID:NL8zYiUm
>>277
投下お疲れ様です
危険な要素を孕んでいるとは思うけれど、個人的には最高に楽しめました
エロスに、現実否定に、抱腹絶倒の展開
凄く面白かったです
もし修正作業を行う事になりましたら、大変だとは思いますが、出来れば頑張って下さい

>>281
了解です
では精神崩壊とは明記しない方向で、修正作業を行わせて頂きます
285282:2008/03/18(火) 01:19:26 ID:v0QWblNk
おっと失敬、タイトルみたいなものとして
週刊ギャルゲロワ2nd創刊号(3/18)
が抜けておりました。
286名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:22:02 ID:NL8zYiUm
>>283
懐かしの週間ギャルゲロワ始まったwwwwww
投下乙です
予約18……凄いな
287名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:24:37 ID:9alMcYG+
>>277
お疲れ様です

個人的にはギャルゲ板で行うと決めた以上
板のルールに反する恐れのある描写は、極力控えるのが書き手のマナーかと思っています
そのせいでロワ自体が潰れるような事があったら嫌・・・というか迷惑ですし(まぁ飛躍しすぎだけど)
288Piova ◆J1Yqz32Be. :2008/03/18(火) 01:40:07 ID:t6Vp1jm1
 
初めは、優しそうな人だと思った。
深い深い緑色の目をした、外人さん。


 ◇ ◇ ◇ 


気がついたら、変な部屋に集められていて。
朋也と渚を見つけたのに、話もできない内に急にわけのわからないことを言われて、
目の前で、人が、その、あんなことになって。
真っ赤で、怖くて、目をつぶって。
しばらくして目を開けたら、辺りは真っ暗で。
そうしたら周りにはもう、誰もいなかった。

「……?」

ざわざわと、音がする。
真っ暗で何も見えないけど、沢山の木が周りにあるんだと、その音が教えてくれた。
今の今まで建物の中にいたはずなのに、一歩も動いていないはずなのに。
じっとりとした冷たい汗が全身に噴き出してくるのを感じる。
涙が滲む。頭が痛い。お腹が痛い。
何もかも、悪い夢の中の出来事だったらいいのに。
そう思った瞬間、ぐらりと足元が揺らいだ。
ああ、夢が覚めるんだ。そう思った。
そのまま倒れていたら、気を失えていたら、本当に目が覚めたのかもしれない。
飛び起きて、呼吸は荒くて、心臓はばくばくいってて、でもそこは自分の部屋で。
汗まみれの身体を拭き終わる頃には忘れてしまえるような、そんなものであったのかもしれない。
だけど余計なことに、あたしの身体は反射的にバランスを取ろうとして、足を踏み出してしまっていた。
あたしは倒れない。気も失えない。悪い夢からも、覚めない。
289Piova ◆J1Yqz32Be. :2008/03/18(火) 01:40:41 ID:t6Vp1jm1
「…………ぃや、」

小さな声を漏らしてしまえば、もう駄目だった。
耳が張り裂けるような声が、あたしの喉から迸っていた。
何も見えなかった。何も聞きたくなかった。
何もかもがいやで、何もかもが怖くて、走り出していた。
がさがさと音がする。
落ち葉を踏む音だ。
それは紛れもなくあたし自身の足音で、だけどそれすらも、ぐにゃぐにゃとゆれる世界が
あたし一人に向ける悪意のように思えて、その音から逃げるように、足を速めた。
破裂しそうな心臓の鼓動が、ほんの数歩で呼吸を乱す。
ひ、と引き攣るように息を吸った瞬間、真っ暗な世界が、逆さまになっていた。
何かに躓いて転んだのだと気付くのと、ほとんど同時。
熱いような、冷たいような、白いような、黒いような火花が、真っ暗な世界の中に飛び散った。

どれだけの時間、そうしていたのかわからない。
あたしはだらだらと流れ続ける鼻血の生温さを感じながら、膝を抱えて泣いていた。
じんじんと響く痛みは一向に治まらない。
流れる血も止まらない。
骨が折れたのかもしれない。
真っ暗な中で鏡もなくて、怖くて鼻を押さえることもできない。
痛くて、辛くて、悲しくて。
だからあたしは、ずっと泣いていた。

「―――どうしたの? どこか、怪我をしたの?」

背中から声をかけられたのは、そんなときだった。
本当なら、恐怖が先に浮かぶべきだったのだと思う。
だけどそのときのあたしはもう、泣くのに疲れて、痛いのに疲れて、怖いのに疲れ果てていた。
しゃくり上げながら振り向いた、その先に見えた光の優しさ。
それから、あたしの眼を覗き込むみたいな、深い深い緑色の瞳の柔らかさと、かけられた声のあったかさに。
あたしはただ、声を上げて泣くことしか、できなかった。
290名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:41:02 ID:v0QWblNk
291Piova ◆J1Yqz32Be. :2008/03/18(火) 01:41:28 ID:t6Vp1jm1
 
 ◇ ◇ ◇ 


優しそうな人だった。
深い深い緑色の目をした、外人さん。

「……うん、これでもう大丈夫」

あたしの鼻血を見て驚いて、ポケットから出したハンカチで拭いてくれた外人さん。

「痣になるかもしれないから、ちゃんと冷やしておかないと」

言いながら、ハンカチを真っ暗な夜空にかざすみたいにして、あたしの鼻の頭に乗せてくれた。
優しい人だと、思った。

「あ、ありがと……」
「どういたしまして、えーと……?」

ランタンの灯りが揺れる。
外人さんの緑色の眼の中でも、あったかい光が揺れていた。

「ふ、藤ばや、し……杏」

まだ声が少し震えていたのが恥ずかしい。
そんなあたしの顔は、小さな灯りの中でも見て取れるほど赤くなっていたんだろうか。
外人さんが小さく笑う。

「フジバヤシ……不思議な名前だね」
「き、杏が名前よ。藤林は苗字」
「そうか。……キョウ、だね。僕はクリス。クリス・ヴェルティン。……よろしく、キョウ」
292Piova ◆J1Yqz32Be. :2008/03/18(火) 01:42:15 ID:t6Vp1jm1
そう言って、片手を差し出してくる外人さん……クリス。
ちょっとだけ照れながら、あたしはその手を握り返す。

「よ、よろしくね、クリス」

その手は思っていたよりも少し硬くて、だけど指は白くて、見とれてしまうほど細くて。
だからあたしは、次の言葉に一瞬だけ、反応できなかった。

「うん。歩けそうなら、少し歩こうか。……どこか、雨宿りできる場所を探さなきゃ」
「……、え?」

ほんの瞬きするくらいの、空白。
今、なんて?

「……どうしたの? そんなに濡れたままでいたら、風邪をひくよ」
「濡れ、て……?」
「うん。僕が住んでいた街ではあまり傘をさす習慣はなかったけど、いくらなんでも
 この雨に打たれっぱなしじゃ身体に毒だよ」
「……ッ!」

反射的に、手を引っ込める。
鼻の頭に乗っていたハンカチが地面に落ちるのも構わず、あたしは目の前に立つ人を凝視する。
彼が何を言っているのか、理解できなかった。
空を見上げようとして、できなかった。
そんな必要も、なかった。
雨など、一滴も降っては、いなかった。
293Piova ◆J1Yqz32Be. :2008/03/18(火) 01:42:51 ID:t6Vp1jm1
「……何を、言ってるの」

引いたはずの汗が、背中を伝って流れるのを感じる。
この人は何を言っている? 濡れている? ……誰が? どうして?
緑の瞳の中で、ランタンの灯火が揺れている。
ぐらぐらと、揺れている。
疑念は、瞬く間に恐怖へと変わった。

「どうか、した……?」
「来ないで……!」

がさり、と足元で落ち葉が音を立てた。
あたしの手を掴もうとするように伸ばされた、その手を振り払うようにして距離を開ける。
緑色の瞳が、あたしをじっと見詰めていた。
ついさっきまで優しそうに見えていたはずの深い深い色のそれは、今や粘りつくような光を湛えて
ぎらぎらと輝いているように思えた。

「……近づか、ないで」

後ずさりしたその足に、当たるものがあった。
思わずそちらに目をやれば、それは他ならぬ彼の持っていたデイパックのようだった。
足が当たった拍子に倒れて、その中身が顔を覗かせていた。

「……ッ!」

ひ、と声が漏れていたかもしれない。
そこにあったのは、一見するとトランシーバーみたいな、あるいはお父さんの使う電気式の髭剃りみたいな、
プラスチック製の細長いもの。だけどその先っぽから、小さな金属製の突起が二本、突き出していた。
あたしは素っ気ないデザインのそれが何なのか、知っている。

「スタン……ガン……!」
294名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:43:33 ID:8KvJn+3c
 
295Piova ◆J1Yqz32Be. :2008/03/18(火) 01:43:41 ID:t6Vp1jm1
声に出した瞬間、それが急に存在感を増したように思えた。
ランタンの灯りが、あったかい光が揺れている。
だけどあたしは思い出してしまっていた。
その光の外側には、暗くて、冷たくて、ぐにゃぐにゃ歪んだ世界が広がっていることを。
同時に、思い知る。
その真っ暗な世界は、小さな光を侵食してやろうと、ずっと機会を窺っていたことを。
緑の目の外人が何かを言おうと、口を開きかけたのを見た瞬間、あたしは自分のデイパックを掴むや走り出していた。

「…………!」

走る、走る、走る。
足を止めたら追いつかれるぞ。
息を止めたら背中にいるぞ。
躓いたら、転んだら、止まったら、もう逃げられないぞ。
スタンガンの火花が、すぐそこに迫っているような気がした。
彼は、緑の目の彼は、あれを使って何をするつもりだったんだろう。
……決まってる。
ドラマやマンガで見たことのあるような、とてもひどいことをするつもりだったんだ。
考えないようにしていた言葉が、押さえつけようとしても押さえつけられずに、蘇ってくる。

『諸君らにはコレから互いを傷付け騙し犯し欺き――』

怖い。
怖い。
こわい。
助けて。
息が苦しい。
酸素が足りない。
何メートル進んだ? 何十メートルの距離が開いた? まだだ、まだだ、まだだ。
走れ、走れ、走れ!
296名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:44:06 ID:8KvJn+3c
 
297Piova ◆J1Yqz32Be. :2008/03/18(火) 01:44:21 ID:t6Vp1jm1
あたしはあたしの心の中から響く声に突き動かされるようにして、無我夢中で走り続ける。
振り向くこともできず、一歩先すらも見えない闇の中を、走る。
段差を無視し、高低差を考えず、ただ交互に足を出し、地面を蹴り続ける。
転倒することなく走り続けられていたのは、奇跡だといってよかった。
そうして何十歩目か、何百歩目か、何千歩目で、奇跡は唐突に終わりを告げた。

今度は、鼻を打つことは、なかった。
咄嗟に出した手が、地面を擦る。
瞬間、焼けるような熱さを掌に、脳を直接叩くような激痛を手首に、それぞれ感じていた。

「……ッッッ!」

声が出せなかった。
上も下もわからない闇の中で、おでこを地面になすり付けるようにして呻く。
膝小僧は盛大に擦り剥けているだろう。
掌も皮が破れて、小石や木の葉や枝がいくつも食い込んでいるだろう。
だけど、それ以上にあたしの身体が訴えていたのは、手首から響く痛みの大きさだった。
―――捻挫だ。それも、相当ひどい。
あたしの中で、他人事みたいに呟く声が聞える。
経験という名の、それは声だった。

追いつかれるかもしれないと、思った。
立ち上がることなんて、できなかった。
涙を流すこともできず、声も漏らせずに、闇の中であたしはただ、海老みたいに身体を丸めて震えていた。


 ◆ ◆ ◆ 
298名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:45:01 ID:8KvJn+3c
 
299Piova ◆J1Yqz32Be. :2008/03/18(火) 01:45:14 ID:t6Vp1jm1
 
―――行ってしまった。

慣れないことをするもんじゃない。
瞬く間に小さくなっていく背中を見送りながら、軽い溜息をつく。
何がいけなかったのかはわからないけれど、どうやら彼女には盛大に誤解されてしまったらしい。
精一杯にお人よしを演じたところで、この様だった。
やはり僕にはそういった部分での才能が致命的に欠けているのだろう。
こんな時だけは、ここにはいない友人のことを少しだけ羨ましく思う。
饒舌で軽妙な彼の周りには、いつも人が集まっていた。
彼はそんな僕の方こそ羨ましい、などと言ってはいたが、それも彼なりの冗談なのだろう。
僕はいつだって自分のことで手一杯だっただけだ。
笑顔で会話を交わしながら皮一枚の下で足を引っ張り合うような友人関係や、わずらわしいだけの上下関係、
恋愛や、友情や、そんな大きかったり小さかったりするコミュニティの中に、僕はどうしても溶け込めなかった。
無論のこと、僕だって隠者を気取るつもりはない。
そういうものが縦糸として、あるいは横糸となって織り成す模様を社会というのだとは、理解しているつもりだった。
ただ、そういうものに対処するだけの余裕が、要するに僕にはなかった。
それだけのことだ。
もう一度、溜息をつく。
溜息をつくと幸せが逃げる、と言ったのは誰だったか。
僕の中に、逃げていくだけの幸せがまだ残っているのかどうか、それすらもわからなかった。

首を振って、地面に散乱した荷物を整理しようと屈みこむ。
安っぽいコンパスと地図。
それから黒い、小さな筒のようなもの。
いったいそれが何であるのか僕には使い方の見当もつかなかったけれど、さっき逃げていった彼女は
それを見て顔色を変えていたから、彼女にはきっと理解できていたのだろう。
反応から察するに、あまり真っ当な代物ではないだろうことは想像がつく。
凍死した浮浪者でも見るような、あの表情を思い出すと少し気が重くなる。
見ず知らずの人間が僕を見てどう感じるのかは人それぞれだと思うけれど、さすがにああいう風な反応を返されて
何も感じないほど、僕は人間ができていなかった。
だからといって怒りを感じるわけでもなかったが。
300名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:46:10 ID:8KvJn+3c
 
301Piova ◆J1Yqz32Be. :2008/03/18(火) 01:46:23 ID:t6Vp1jm1
もう何度目かもわからない溜息をついて、転がった鉛筆を拾い上げる。
その傍らに落ちていたのは、何枚かの紙。
上質なその紙を、僕は明かりの傍でじっと眺める。
もう何度も目を通して、書かれていることのほとんどすべては頭に入っていたけれど、
それでもその中身には視線を惹きつけられてしまう。
何の因果か、そこに記されていたのは僕にとって、ひどく見慣れたものだった。
五本の長い線と、その上を踊る無数の記号。その上下を飾る幾つかの単語。
俗に五線譜と呼ばれる、それは紙束だった。
記されたタイトルは『L'uccello blu』。

「……蒼い鳥、か」

いったい神は僕にどんな役割を期待しているのだろうと、悪態の一つもつきたい気分だった。
僕の手元にフォルテールは、あの魔導楽器はない。
歌をうたえるだけの喉の持ち合わせもなかった。
だから、こんなものを見せられたところで僕にはどうすることもできなかった。
もっとも、もしこの場にフォルテールがあったとして、新しい楽譜を見たからといって
夜の森で独り音楽に身を浸したくなるような情熱など、僕にありはしなかったのだけれど。

目を閉じて、雨の街を思う。
僕が三年近くを過ごした、静かな水音に煙る街。
石造りの街並みは今日も、いつもと変わらぬ姿で雨と音楽に満たされているのだろう。
ナターレを迎えるまで、あと半月といったところだった。
僕が急にいなくなったところで街の営みは何一つとして変わらない。
元々熱心な学生ではなかったし、もしかしたらパートナーすら決まらない卒業発表から
逃げ出したと思われるだけかもしれない。
コーデル先生くらいは怒ってくれるのだろうか、それとも呆れるだけか。
後者かもしれない、と思う。
僕という存在は、あの街にとってその程度のものだった。
302名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:47:26 ID:8KvJn+3c
 
303Piova ◆J1Yqz32Be. :2008/03/18(火) 01:47:26 ID:t6Vp1jm1
だけど、最初に集められた大きな部屋には、いくつか見知った顔もあった。
ファルさんは優秀な学生だったし、騒ぎになるかもしれない。
トルタの友達やリセの家族もきっと心配しているだろう。
僕にしても何日も帰れなければ、手紙が途切れてしまう。
アルはきっと気を揉むだろう。
新年の休みにはこちらへ様子を見に来るかもしれない。
誰もいない部屋を見て、どんな顔をするのだろう。
他人事のように、思う。

静かな部屋。
静かな、誰もいない部屋の中で、アルは泣くのだろうか。
その目の前で必死に手を振る、小さな音の妖精にも気付かずに。

ああ、と思う。
あの小さな妖精は、もしも僕が戻らないとしたら、どうなるのだろう。
誰も窓辺まで、彼女を連れて行ってやれない。
どんなに頑張っても窓枠に登れずに、小さな足を踏み鳴らすのだろうか。
あんなにも美しい歌声を、誰にも聞かせることなく。
いつまでも、窓を見上げているのだろうか。

考えて、僕もまた空を見上げる。
ぼんやりとした光に照らされた梢の向こうには、黒の一色だけが広がっている。
雲も何も、見えはしなかったけれど。

―――雨が、降っていた。

恋人と、フォルテールと、あの小さな妖精と。
色々なものが僕の周りから、あっという間に奪い去られてしまったというのに。
雨だけは変わらずに、あの街と同じように。
いつまでも、僕の上に降り続いていた。
 
304名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:47:52 ID:S/ahcTi0
 
305名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:48:12 ID:Tl6Wf9e1
 
306名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:48:12 ID:TrXPK1Op
 
307名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:48:13 ID:8KvJn+3c
 
308名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:48:14 ID:G2uq1YK4
     
309Piova ◆J1Yqz32Be. :2008/03/18(火) 01:48:19 ID:t6Vp1jm1
 
【D-4 深い森の中 深夜】

【クリス・ヴェルティン@シンフォニック=レイン】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、『蒼い鳥@THE iDOLM@STER』の楽譜、スタンガン、ランダム支給品*1
【状態】:健康
【思考・行動】
 基本:無気力。能動的に行動しない。
 0:Piovaゲージ:70%
 1:あの部屋に帰れるのだろうか。
 2:トルタ・ファル・リセと会えるだろうか。
 3:やはり他人とはあまり関わらない方がいいのかもしれない。

【備考】
 ※雨など降っていません。
 ※Piovaゲージ=鬱ゲージと読み替えてください。
 ※増えるとクリスの体感する雨がひどくなります。


【藤林杏@CLANNAD】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、ランダム支給品×3(未確認)
【状態】:右手首に重度の捻挫、鼻から出血中、掌と膝にひどい擦過傷。
【思考・行動】
 基本:混乱。恐怖。苦痛。
 1:怖い。誰か助けて!
 2:怖い。誰も近づかないで!

【備考】
 ※捻挫は専門知識による治療が必要です。
310名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 01:48:41 ID:t6Vp1jm1
投下終了です。ご支援ありがとうございました。
311名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 02:16:50 ID:8KvJn+3c
投下乙です。
クリス幻覚時でのスタートか。
凄く心理描写クリスらしくてGJです。
さて杏葉疑心暗鬼状態でどうなるか。

GJでした。
312名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 02:17:17 ID:XLP/SREa
携帯からで失礼
投下乙です
クリスの病状を絡めた展開でしたね
怯え切った杏に救いはあるのか、はたまた更なる恐怖が待ち受けているのか、続きが気になります
313 ◆LxH6hCs9JU :2008/03/18(火) 02:26:30 ID:v9SQKbeR
投下乙です。
クリスの雨が見える幻覚の使い方が上手い……!
1stでは気丈に逝った杏を、こんな自然な流れで錯乱させるとは。
心理描写のテンポが冴える一作でした。も一回乙!

次に自分ごと。
お叱り頂戴した上での改稿版を仮投下スレに落としましたので、拝見お願いします。
314I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:01:54 ID:BU+jAFk4
「どうして……こんなことを……殺し合いなんてわたしにできないよ……」

見ず知らずの場所に連れてこられ、最後の一人となるまで殺し合え――
その時はドッキリ番組の撮影か何かに呼ばれたのだろうと、事実を楽観的に受け取っていた。
いや、そもそもいきなり連れてこられた時点で事態がおかしいことはわかっていたはず。
でもわたしはその事実を受け止めるのが怖くて、テレビ番組のロケと一種の現実逃避をしていた。
だがそんな都合の良い妄想は血に塗れた冷たい現実にいともたやすく切り裂かれる。
たった三十分にも満たない時間で、四人の人命が一瞬にして奪われたのだった。

「あの二人まで死んじゃうなんて……」
わたしは赤い霧となって消滅した二人の女の子を思い出す。
正確には『二人』と表現するのは間違いかもしれない。
ノゾミちゃんとミカゲちゃん、彼女たちは人に在らざるあやかしの者なのだから。
そしてわたしと浅からぬ因縁がある者だった。

わたし――羽藤桂はいたって普通の女の子。運動能力も成績の人並み。
友達とおしゃべりやショッピングなどを楽しむ普通の女子高生。
趣味は読書と……もう二つ。
どちらも『普通』の女子高生らしくない趣味、落語と時代劇。
落語は有名どころな噺はそらで言えるぐらい記憶しているし、
時代劇も近所のお年寄り顔負けの知識が自慢である。えっへん。

そんなどこにでもある日常を普通の毎日を過ごしていたわたしだが、あの夏のできごとを境に一変した。
ことの始まりは母親の死だった。とくに不審な死でもなく過労が祟ってのこと。
お母さんの葬儀やその事務に追われ悲しむ暇もないわたしにある知らせが届く、それは税理士からのものだった。
母子家庭であったわたしのお母さんが亡くなったことで発生する遺産の管理についての話だった。
その話によるとわたしが物心つく前に死んだお父さんの実家が、無人のままわたしの名義で相続されていたらしいのである。
税理士さんの話はわたしにはさっぱりだったけど、とにかく相続税か何やらでややこしいことになるので、
その家を相続するか放棄するかを決めて欲しいとのことである。
とにかくその家を一度見なくては相続も放棄も決められないので、
わたしは夏休みを利用して父の実家にある片田舎の町、経観塚に赴いたのである。
315名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:02:27 ID:8KvJn+3c
 
316I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:03:06 ID:BU+jAFk4
経観塚の地で遭遇したあの一件はわたしに非日常の世界をまざまざと見せ付けた。
わたしの一族に秘められたある力を巡った事件である。
わたし――代々羽藤の名に連なる人間は『贄の血』を受け継いでいる。
贄の血は人にあらざる者、つまり鬼や妖怪のような超常存在がその血を口にすると、飛躍的に己の力を増す特殊な体質なのだ。
故に羽藤の人間は古くからその手の存在に狙われてきた一族だった。
そして羽藤の血を受け継ぐ人間であるわたしは経観塚の地でさまざまな妖の者に命を狙われるはめになったのである。
だけどそれら一連の事件はわたしの大切な人たちの協力で一応の解決となり、再び日常が戻ってきた。
はずだった。

「またこんなことに……」
再び戻って来た日常を謳歌するその矢先に、見ず知らずの場所に連れてこられ殺し合いをさせられる。
できることなら逃げ出したいけどそれは無理というもの。
あのノゾミちゃんとミカゲちゃんですら一瞬にして滅ぼされた。
彼女たちは経観塚でわたしの血を狙って現れた妖怪だった。
わたしからすると自分の命を狙う敵ではあるのだが、なす術もなく消滅させられた二人に複雑な気持ちを抱いていた。
あの二人は人間ではない鬼、妖怪の類、普通の人間には到底太刀打ちできない力を持っている。
だけどあの神崎と名乗った男の人はたった一太刀で彼女たちを滅ぼし、赤い霧へと還元した。

「あれ……? おかしいよこれ……なんであそこにノゾミちゃんとミカゲちゃんがいたの???」
信じられない出来事で思考が麻痺していたのだろうか、わたしはある奇妙な点に気がついていなかった。
今ごろになってある疑問が噴出する。
それは何か?
あの場に彼女たちが存在していること事態がおかしいのだ。
経観塚の地に纏わる事件が解決したことであの二人は消滅したはずだった。
そしてノゾミちゃんは言っていた『私達は主さまを蘇らせるために忙しいの』と。
彼女たちを使役する山の神ももういないはずなのに……
わからない、脳の中に蜘蛛の巣が張られたように不快な感覚。
理解できないことを無理して理解しようとして脳が煙が吹きそうだった。
これ以上考えても答えが出るわけもなし、結局わたしは二人の存在について深く考えることを止めた。

「……あの子、大丈夫かな」
317名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:03:16 ID:v9SQKbeR
 
318名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:03:39 ID:rPYHOe5C
  
319名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:03:59 ID:9lDPgmZ8
320名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:04:06 ID:TrXPK1Op
 
321名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:04:40 ID:Tl6Wf9e1
 
322名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:04:44 ID:GdL8i4XO
323I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:04:49 ID:BU+jAFk4
頭を吹き飛ばされた男の子の傍らで泣き叫ぶ女の子の姿を思い出す。
確か柚原このみと呼ばれた女の子、半狂乱になった彼女はうわごとのように彼の名を呟いていた。
その痛々しい姿にわたしの心も張り裂けそうなぐらい痛む。
そんな彼女に言峰と名乗る男は無慈悲に追い討ちをかける。
わたしの耳にもはっきりと聞こえる電子音、死へのカウントダウンが彼女を襲う。
誰も彼女を助けられない、わたしもその光景を呆然と眺めているだけだった。
だけど、そんな中、自分の命を呈してでも彼女を救おうとした女性がいた。
自分の命と引き換えに首輪の爆破を止めろ――
臆せずにに毅然とした態度で、あの場に居合わせた者すべてに聞こえるほど凛とした力強い声で嘆願した。
神父は彼女の願いを聞き届け、柚原このみの首輪の爆破を停止した。
その代わりに――

「ひどいよ……なんでこんなこと平気でできるの……?」

自然と涙が溢れてくる、全くの見知らぬ他人の出来事なのにまるで自分のことのように感じられた。
『このみ、雄二――頑張って生きてね』
あの人の最期の声と顔が心に焼き付いていた。
数秒後に迫る自分の死に取り乱すことも無く、自分の運命を受け入れ遺された者の安寧を祈る彼女。
優しい笑顔で彼女は最期の言葉を紡ぐ。
そしてその決意を踏みにじる冒涜の赤い飛沫が辺りを染め上げる。
世界で最も美しいものと最も醜いものを同時に見たような気分だった。
目の前で大切な人を二人も失った彼女の悲しみと絶望は想像に尽くしがたい。
もし、彼女たちに再会できたのならその時は力になってあげたい。
贄の血以外はたいしたことのできないわたしだけど、せめて側にいてあげたい。
324名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:04:51 ID:rPYHOe5C
 
325名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:05:04 ID:8KvJn+3c
 
326名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:05:15 ID:rPYHOe5C
   
327名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:05:36 ID:GdL8i4XO
328I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:05:51 ID:BU+jAFk4
彼女たちの絆を知らずにわたし程度がそんなこと軽々しく言うのは憚れるけど、それでも……


◆ ◆ ◆


「そういえばここ……どこなんだろう……」

これまで起きた事態をを把握するために考えすぎていたのか、
自分がどこにいて、どこに向かって歩いていたのを完全に意識の外に追いやっていたらしい。
わたしは足を止め、周囲を見渡す。
アスファルトによって舗装された道、学校のグラウンドよりも遥かに広い、だだっ広い敷地。
周りに建物はなく遠くに建物らしき影があるが周りは闇に包まれ詳しいシルエットまではわからない。
ただ一直線に伸びたアスファルトの道が存在しているだけだった。
白線で描かれた矢印や数字、等間隔に設置された白や黄の灯りが道路の輪郭を浮き上がらせ、
ここが普通の道ではないことだけを伺い知ることができた。

「なんだろうこの道……高速道路じゃないよね……」
ふと見上げると、百メートルほど離れた路上に大きなシルエットが月明かりに浮かび上がっていた。
ここからでは良く見えない、もっとよく近づいてみよう。

百メートルほど歩いても道に終わりは見えない。
そしてわたしの目の前に影の正体が姿を現した。
「飛……行機……? でもこれ……?」
全長およそ二十メートル、高さは五メートルぐらい。
旅客機と比べるとずっと小さなサイズ。
でも旅客機とは違って鋭角的な機首、小さな操縦席、三角形の翼、二つの垂直尾翼。
翼の下にはエンジンは無く、エンジンは尾翼の側に二つ。
そして翼の下にぶら下がった円筒形のミサイル。
明らか普通の飛行機とは異質の、攻撃的なデザインだった。
それはよく映画で見る――軍用の戦闘機だった。
329名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:06:20 ID:Tl6Wf9e1
 
330名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:06:42 ID:TrXPK1Op
 
331名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:06:47 ID:9lDPgmZ8
332I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:06:49 ID:BU+jAFk4
「そっかあ、ここ滑走路だったんだ」
目の前の物体の正体に気がついたことで今自分がいる場所がわかる。
たしかに滑走路ならこの道路の長さと広さに納得できた。
さっそくわたしは地図を広げてみる。
地図には重要そうな施設がしるされており、学校や病院、コンサートホールなどが記されその中に空港の二文字を発見した。
B-7からC-8に向かって引かれた赤い直線と空港の文字、赤い直線は滑走路を表しているのだろう。
わたしは地図から目を離し、戦闘機を見上げる。

「これに乗って……なんて無理、だよね……」
ため息をつくわたし。
もちろんわたしに飛行機を動かす技術もないし、例え動かせても島の外に出た瞬間に首輪が爆発するに違いない。
わたしにとってそれは無用の長物だった。
「それにしてもヘンな色」
そっと機体に手を触れる。ひんやりとした金属の質感。
覚めるような青い塗装がなされていた。こういうのは灰色っぽい塗装が普通だと思っていたのに。
あらためて目をこらし機体を眺める、どうやら機体に何か描かれているようだ。
機首付近に『765』と描かれた数字。
機体側面に英字で『THEiDOLM@STER』
そしてなにより垂直尾翼に描かれた女の人の姿がすごく場違いな雰囲気を醸し出していた。
年の頃はわたしと同じぐらい、煌びやかな服を着ており長くて綺麗な黒髪が印象的だ。
なんでこんな目立つ塗装を戦闘機に施したのか理解できそうにない。
「……この塗装をした人のセンスを疑うよ」
わたしは腰を下ろしもう一度渡されたデイパックを中身を探る。
地図の他にランタン、水や食料そして――
参加者名簿が目に入った。

わたしは急いで名簿を開く、嫌な予感と期待が入り混じった感覚。
333名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:07:43 ID:TrXPK1Op
 
334I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:07:47 ID:BU+jAFk4
そして見つける、わたしの名前の他に見知った名前が記されていることを。

千羽烏月
浅間サクヤ
若杉葛
ユメイ

「そ、んな……」

経観塚でわたしと関わった人の名前が記されいた。
知り合いの名前を見つけた喜びと、彼女たちも巻き込まれてしまったという悲しみ。
二つの感情が心の中で揺れ動く。

「なんとしてもみんなを探さないと――」

カツン

そう思った瞬間、私の背後で音がした。
誰かの足音、機体を挟んで反対側から音がした。
どくんどくんと心臓が激しく脈打つ。
誰かが――いる。

「だ……誰かそこにいる……の?」

恐る恐る問いかける。
335名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:08:08 ID:TrXPK1Op
 
336名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:09:00 ID:8KvJn+3c
 
337I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:09:12 ID:BU+jAFk4
どうしようどうしよう……!


「何とも奇妙な血の臭いに釣られて来てみれば……ただの小娘か」


鈴を転がすような高い声。闇の中から、機体の影からその人物が私の前に姿を現した。


◆ ◆ ◆


「まったく……妾ともあろう者があのような者共に遅れを取ろうとは嘆かわしい
肝心の九郎とは離れ離れ、しかも契約も解除されていると来ている。あの甲斐性無しのマスターめ……」

ぐちぐちと愚痴をたれるその人物を月明かりが照らし出す。
青い月光がその白い少女を染め上げる。
わたしの目の前にいる人物は女の子だった。

年の頃は小学生の高学年ぐらい。日本人離れした顔つき
青い瞳に長い銀色の髪、透き通った白い肌、白いフリルがついた衣装。
女のわたしが見ても一目で美しいと認識させるほどの美少女だった。
見たところわたしに敵意は無いようだけど……さっきの言葉が気になった。
彼女は奇妙な血の臭いと言った。それの意味することはただ一つ、贄の血だ。
彼女はわたしの血に何かを感じている。わたしは警戒心を解かず、彼女に声をかける。

「あの……誰ですか」
「ん? ああすまぬな娘よ、ついついあの馬鹿を思い出してしまってな。変な愚痴をこぼしてしまったようだ」
「は、はあ……」
338名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:09:14 ID:GdL8i4XO
339名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:09:34 ID:rPYHOe5C
 
340名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:10:22 ID:9lDPgmZ8
341I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:10:27 ID:BU+jAFk4
「しかし汝は面白い血を持っている。人にあらざる外道共を引き付ける血。
位階の低い外道共は言わずもがな、高位の精霊たる妾ですら甘美に酔いしれる臭いだからのう
よくもまあこれまで生きてこられてきたものよ」

女の子は大昔のお姫様のような口調でわたしをまじまじと見つめる。
間違いない、この子はわたしの血の特性に気がついている。
そしてこの子もまた人にあらざる者……!

「あ、あなたも……わたしの血を……」
「はっ! 妾をその辺の下等な物共と一緒にするでないわ!」

女の子は腕を組み、頬を膨らませ怒る。
その仕草がどことなく可愛らしかった。

「別に妾は汝を獲って喰おうなんて気はないからな。血の臭いに引かれてここに来たまでだ
それに丁度良い……娘よ、一時的ではあるが妾のマスターをやれ」
「はい? ……マスター?」
「どういうわけか九郎と交わした契約が解除されていてな、マスターがいないと妾も満足に力を振るえぬ。
汝は九郎よりも魔術の才は無さそうだが、誰とも契約しないよりはマシだからな」

九郎? 契約? マスター? 何のことを言ってるのかさっぱりわからない。
わたしの疑問をよそにまくし立てる女の子。

「あの……そもそもあなた誰ですか?」
「なんだ汝は知らぬのか? 妾こそアル・アジフ、かの狂えるアラブ人アヴドゥル・アルハザードによって
記された最強の魔導書『ネクロノミコン』の化身なり!」
「ねこのみかんさん……?」
「違う! ネ・ク・ロ・ノ・ミ・コ・ンだ! 正確に言うとネクロノミコンは英訳された際に付けられた名であり、
アラビア語で書かれた原題、すなわちアル・アジフが妾の真なる名だ」
「えっと……アルちゃんでいいのかな?」
「『ちゃん』付けは余計だがまあいいだろう。汝の名は何と言う?」
「羽藤桂……」
342名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:10:28 ID:TrXPK1Op
 
343名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:11:35 ID:9lDPgmZ8
344I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:12:02 ID:BU+jAFk4
「桂かよかろう、汝の名、我がページにしかと刻んだ。汝に問う、我と契約しこの世の悪を打ち払う魔術師となる覚悟はあるか?」
アルちゃんの翡翠色の瞳がまっすぐわたしを見つめる。
曇りの無い澄んだ瞳、そこにやましいものなど一片も感じられなかった。
「とは言え一時的なもの、本来のマスターと再会するまでの間だけだ。もちろん九郎と再会しても汝を見捨てはせぬ。安心しろ」
「で、でも……」
そんなこと簡単に承諾してもいいのだろうか……
確かに一人でいるよりアルちゃんと一緒にいたほうが安全なのだろうけど……
「あ〜〜〜〜〜〜!!!! はっきりせぬかこの甲斐性無し!!! 契約するのかしないのかはっきりせんか!」
迷うわたしにアルちゃんのカミナリが落ちた。
仕方ないよね、一人じゃ心細いし……

「わかったよ……わたし、アルちゃんと契約する!」
「そうか……汝の決意しかと受け取った。では約束通り契約を……だがその前に」

その瞬間わたしの身体が総毛だった。
アルちゃんの瞳が怪しく輝いたように見えた。
ぞくりと背筋に冷や汗が流れ落ちる。
まるで蛇に睨まれた蛙とはこのこと。

「ちょっと……すまぬな」
「へ?」

どんっ、と軽く身体を押され思わずバランスを崩れ後ろに倒される。
一瞬何が起ったのかわからなかった。尻餅をついて背中が冷たいアスファルトに触れる。
ひんやりとしたアスファルトの硬い感触が気持ち悪い。
見上げた視線、その先には頬をわずかに桜色に染めたアルちゃんの顔が間近にあった。
「アル……ちゃん……?」
そこで気づく、
わたしの身体はアルちゃんに押し倒され――馬乗りになった状態で地面に組み伏せられていた。
アルちゃんの瞳は潤んだように怪しい光を湛え、妖しく濡れた吐息をわたしの首筋に吹きかけている。
「ゃ……ぁ……」
345名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:12:40 ID:9lDPgmZ8
346名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:12:47 ID:TrXPK1Op
 
347名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:13:16 ID:Tl6Wf9e1
 
348I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:13:37 ID:BU+jAFk4
「ああ……何とも蟲惑的で淫靡な香り、汝が今まで生きていたことが不思議でかなわぬ
ずっと我慢してきたが妾とてその血が持つ理に逆らうのは難しいものよ」

アルちゃんは完全に上気しきった表情と声でわたしを見つめている。
「何、すぐに済む。汝がじっとしていれば五分も掛からぬ……」
アルちゃんの右手にはいつの間にかにサバイバルナイフが握られていた。
「いいか……死にたくなければ絶対に動くでないぞ、ほんの少しその首の薄皮を切り裂き滲み出た汝の血を舐めるだけだ」
彼女とて人にあらざる者、今まで必死に贄の血の誘惑から耐えていたのだ。
わたしは身じろぎ一つせずアルちゃんの瞳を見つめる。
「そうだ、できるかぎり痛くはせぬ。だが汝がヘタに動けばこの刃が汝を深く傷つけてしまう
そうなれば妾は汝の血を涸れ果てるまで喰らい続けることになる。だから――決して動くな」
「ん……」

アルちゃんはゆっくりと刃先を首にあて――その手の動きがとまる。
「どう……した……の?」
「……やはり首筋は怖い……胸元に変えさせてくれ」
わたしの問いにアルちゃんは少し恥ずかしげな表情で言った。
「いい……よ」
「すまぬ……」
アルちゃんはわたしの呼吸によって規則的に上下する胸に視線を移し凝視する。
「そんなに見つめられると恥ずかしいよ……」
「少し……服をずらしてもよいか?」
「う……ん」

アルちゃんはゆっくりとわたしの胸元のリボンに手を伸ばして掴み、ゆっくりとそれを引く。
しゅるりと衣擦れの音がして、はだけたリボンが地面に落ちる。
アルちゃんの十本の指がわたしの襟をつかみ開いてゆく。
ふと視線を外し空を仰ぎ見る、戦闘機の尾翼に描かれた女の人と目線が合ってしまう。
まるでこれから行われることを見られているようで、恥ずかしくて顔から火が出そうだった。
349名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:14:10 ID:Tl6Wf9e1
 
350名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:14:20 ID:9lDPgmZ8
351名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:14:26 ID:TrXPK1Op
 
352I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:15:25 ID:BU+jAFk4
「どうした桂?」
「べっ……別に何でもない……よ。早くして……誰かに見られたら誤解されちゃうよ……」
「そのわりには妾に押し倒された時一切抵抗しなかったのは不思議よのう」
アルちゃんは唇を吊り上げにんまりと意地悪に笑う。

「いくぞ……桂」
「うん……アルちゃん」

はだけた胸元、小さめの胸の一部が露になる。
トクントクンと心臓が波打っているのが自分の耳にもはっきりと聞こえるのわかった。
ナイフの切っ先が胸元にあてがわれ、ゆっくりと刃を縦に引かれる。
「ッ……」
ちくりとした痛みが感じる。
ほんの数ミリの赤い筋が引かれ、ぷつぷつと赤い雫が浮かび上がって行く。
ぴちゃ……ぴちゃ……
アルちゃんの仔猫のような小さな舌がわたしの血に触れる。
「ん……んんっ……」
舌が肌に触れる感覚が何ともこそばゆく無意識に声を上げてしまう。
頭の中にあるイメージが浮かび上がる。
二本の赤い糸が絡まり合い一本の線に繋がり合う感覚。
他人に自分の血を与えたときに幾度となく感じたイメージ。
贄の血を介してわたしとアルちゃんが繋がり合う感覚だった。

数分が経ち、血が止まったわたしの胸から唇を離したアルちゃんは静かに言った。


「羽藤桂――妾は汝と契約する」

353名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:15:44 ID:TrXPK1Op
 
354名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:15:49 ID:GdL8i4XO
355名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:15:50 ID:9lDPgmZ8
356I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:16:53 ID:BU+jAFk4
わたしは正式に……といっても本当のマスターが見つかるまでの間だけど、
アルちゃんとの契約を交わすことになった。
でも……本当にこれでよかったのかなあ……?



【B-7 空港 滑走路 深夜】

【羽藤桂@アカイイト】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、ランダムアイテム×3
【状態】:健康
【思考・行動】
基本方針:島からの脱出 殺し合いに乗る気は皆無
1:アルと協力する
2:知り合いを探す
3:柚原このみが心配
4:ノゾミとミカゲの存在に疑問

【アル・アジフ@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】支給品一式、ランダムアイテム×2
【思考・行動】
基本方針:大十字九郎と合流し主催を打倒する
1:桂と協力する
2:九郎と再契約する

【備考】
※桂とアルが契約しました。マギウススタイル及び、アルの制限の詳細は次の書き手に任せます
※桂はノゾミEND以外のルートから参戦です。誰のENDを迎えたかは次の書き手に任せます
※滑走路に如月千早のペイントが施されたF-15E戦闘機が放置されています
357 ◆DiyZPZG5M6 :2008/03/18(火) 03:17:37 ID:BU+jAFk4
投下終了です
多数の支援ありがとうございました
358名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:22:26 ID:Tl6Wf9e1
投下乙!!そして超GJ!!
ここまで全力でGJしたのは初めてかもしれない。
桂とアルという組み合わせに巧みな互いの描写。
二人とも物凄く丁寧に書かれていて初見の人にも優しいと思いました。
そしてなんと言っても百合描写がグッジョォォォオオオブ!!!
359名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 03:26:36 ID:v9SQKbeR
投下乙!
アカイイト未プレイなだけに、冒頭の設定説明は嬉しいね。
アルのほうも実にらしい。セリフのどれもが生き生きしてる。
百合……も度肝を抜いたけど……ちょwF-15E戦闘機千早ペインティングってwww
360名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 08:31:47 ID:iBEDgLIT
投下乙

>J1Yqz32Be氏
雨降り状態での参戦ですか
彼の淡々とした心理描写が怖い
コミュニケーションに苦労しそうだな
杏とは相性悪かったねえ

>DiyZPZG5M6氏
桂ちゃんはこのロワでもモテモテだね
たぶん、資質のありそうな子だから、戦闘面での活躍も期待できそう
支給品に戦闘機とはずいぶん大胆なモノをw
361名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 08:40:44 ID:iBEDgLIT
>>283
お疲れ様です
初の死者は彼となりましたね
OPで見せ付けられたばっかりなのに
まさに踏んだり蹴ったり
362名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 11:21:16 ID:m+DUWNCQ
やっと追い付いたけど、序盤からエロい展開が多くて吹いたwww
今回もいきなり飛ばしすぎだろギャルゲロワwwwww

ともかく、書き手の皆様GJw
363名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 12:33:38 ID:TrXPK1Op
皆様、投下乙です。やっと追いついたw

葛木チーム
目的を見出せない葛木先生にぷっちゃんを支給させてコミュニケーションを可能にするとは脱帽w
消極的な対主催だけど、今後の活躍に期待。あと、玲二さん初マーダーおめでとうw

黒須太一
何だこのレナを髣髴とさせる素敵な人はwwwwwwww
一般人は仲間、それ以外は敵のスタンスは素晴らしいwwww 名台詞も健在で凄かったwww

言葉様
ゆ、雄二が初の死者に……orz OPで二人も死んだからしばらく……少なくとも雄二は大丈夫だろう、と思っていただけに欝だ。
つーか言葉様怖いw 烏月さんが霞んで見えるほどヤバいwwwww

支蔵曜子
対主催もマーダーも考察も任せとけ、と言わんばかりの便利の人だwww
行動方針は太一が第一というのも面白いw なのに太一さんはバリバリ症候群みたいな症状にwww
364名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 12:40:01 ID:TrXPK1Op
えろすチーム
いやいやいやいやwwwwww なんとまあ、別の意味でもGJな代物をwwwww
愛佳の精神的ショックと真の男の子ネタをうまく絡み合わせた秀作www というかこの先どうなるギャルゲロワ2ndwww

クリス&杏
こ、これがクリスの精神病……素晴らしく丁寧にキャラが描かれてて驚いた。
杏は一話死亡の恐怖が残っているのかも知れないwww 矛盾した状態表が彼女の精神状態をうまく表していますね。

契約チーム
桂ちゃん、早速吸われるのかwwwwww
ようやく積極的な対主催チームが出てきてほっと一息www うまい組み合わせで今後の動向が気になるなww


ふう、短くてすいませんが感想終了。
いやー、まだ序盤も序盤なのにどうなるww 書き手の皆様、もう一度投下GJでした!
365名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 17:54:13 ID:EAmkjD7g
じゃあ、現在の状況をこっちにも

積極的対主催 3+1
羽藤桂、アル・アジフ、菊地真、プッチャン(葛木の支給品)

消極的対主催 5
藤林杏(パニック)、クリス・ヴェルティン(精神病)、
小牧愛佳、高槻やよい、葛木宗一郎

対主催マーダー(愛する人と脱出狙い) 3
ツヴァイ、桂言葉、支倉曜子

優勝狙いマーダー 1
千羽烏月(最後に羽藤桂に譲るつもり)

発狂マーダー 1
黒須太一(本人は対主催マーダーのつもり)
*桂言葉は精神崩壊していない可能性が高め
366Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 18:35:27 ID:Jz+wfiY2
「……困った」

深い森の中であたしは溜息を一人吐く。
ようやく座れそうなとこを見つけて、いつの間にか持ってたデイパックを開いた矢先の事だ。
あたしが覗いた中にはロクなものが入ってなかった。
何が入ってたかというと、

「……このくちゃくちゃごてごてで趣味の悪いセンス。ど派手な輝き。
 最悪だ。
 それ以上に、こんなのどうやって使うかもわからん」

振り回せばいいのか? ほんとうにそれだけなのか!?
ワケ分からん。槍なのかも斧なのかも不明だぞ。
他に入っているものがないかと探してみれば、見つかった事は見つかった。
けど、それもやっぱりアホっぽい。

「くずかごのーと……。くちゃくちゃイタいぞ、コレ」

よく分からん絵とか意味不明な文章がいっぱい踊ってる。

『今にも政略結婚が行われようとしたその時、秘密の抜け穴を通って王子様は大聖堂からお姫様を連れ出すことに成功したのでした』
『山里のお寺に住む妖怪さんは物知りだけど一人ぼっち。友達を欲しがっていつもいつも泣いています』
『古い、古い昔の遺跡。そこにはドロボウさんなら誰でも欲しがる神秘のお宝が眠っていたのです』

「……ダメだな、コレ書いたやつ」

さっさと二つともしまいこんであたしはようやくひと心地つく。
だけど、何であたしがこんな事をしなくちゃいけないのかを思い出して一気に沸騰した。
367Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 18:36:13 ID:Jz+wfiY2
「……ふかーっ!!」

いったいなんなんだあのモジャは!!
いきなし殺し合いだなんてふざけすぎじゃこんちくしょー!!
なんであたしたちがそんなことしなくちゃいけないんじゃボケー!

そう思ったんだけど、すぐにあたしの頭に浮かんできたものがあった。
……死体だ。
思い出すだけであたしの体に震えが走る。

あたしはたくさんの猫を世話してきた。だから、その分死ってものに立ち会ったことがある。
死ぬ前にいきなりいなくなっちゃう猫もいるけど、そうじゃないこともある。

あの、タカアキって人は本当に死んじゃった。
他にも、3人も。
皆死んじゃって、あたしたちもそんな中に放り込まれた。

……さっき見た名簿の中にこまりちゃんがいなくてほんとに良かった。
はるかもみおもクドも、くるがや以外はみんないなくて安心した。
だけど、他に不安な事ができてしまった。
ここには、理樹がいる。
バカ兄貴やくるがやなら殺したって死なない。ほっといても平気だ。
馬鹿二人も死ぬはずない。あれであいつらは強いんだ。
だけど、理樹はそうじゃない。
……あんなモジャとかカタナ男なんかと会ったら、簡単に死んじゃうに違いない。
他の連中は死なないけど理樹は死ぬ。
だから、あたしはそんな事は絶対にさせない。
ここにはいないけど、探して探して探して――――見つけたら、どうやってでも守り抜いてやる!
あ、もちろん殺したりなんかはしないぞ、絶対にだ!
368Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 18:36:59 ID:Jz+wfiY2
「安心しろ、理樹。お前はあたしが守ってやる」

そう呟いた瞬間、

きゅ〜〜〜〜〜〜。

……おもっきしあたしの腹がなった。
そういえば、まだ食事前だったのにいきなりあそこに飛ばされたんだ、あたし達は。
今何時なんだろ。
森の中なので、どんだけ時間が経ったのかもよく分からん。

「……何はともあれ腹が減っては猫まっしぐらだ。
 何か、食べるものを探しにいくか」

呟いて、とりあえず歩き始めたその時。
すごくすごく美味しそうなニオイがあたしの鼻に届いた。

◇ ◇ ◇


ぐつぐつ、ぐつぐつ。
琥珀色をした不透明のソースが丁寧に丁寧に煮込まれている。
ソースの中に混ざるのは、何種もの野菜だ。

えぐみの全くない、生で食べても甘ささえ感じる人参。
ほくほくと、噛み締めるたびに口の中に柔らかなデンプン質を解き放つジャガイモ。
じっくりと時間をかけて、飴色になるまで炒めたタマネギ。
これらを基本として、他にも数多の野菜がそのエキスを存分にソースに溶かし込む。
369Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 18:37:47 ID:Jz+wfiY2
そんな野菜の旨みがたっぷり詰まった鍋の中で煮込まれているのは、豚バラ肉。
その過程で余分な脂はソースに満遍なく分散する。
残るのは適度な量の脂を持った、噛み応えのある味わい深い肉だ。
口の中に放り込み、噛む。
それだけでソースの味成分をたっぷり含んだそれはとろけ、口の中に脂の甘みと肉の旨みを染み渡らせてくれる。

これらを纏め上げるのがスパイスだ。
ターメリック、クミン、コリアンダー、ショウガ、コショウ、シナモン、唐辛子。
エトセトラエトセトラ。
いくつものいくつもの香りが味覚のありとあらゆる部分を刺激する。
まさしくそれは香りのオーケストラ。
あまりにも複雑で、あまりにも魅惑的。
だから、食べ飽きない。
いくら食べてもそれを分析しきる事はできはしないのだから。
野菜も、肉も。
スパイスを浸透させる事で、他の料理には及びもつかない嗜好性をその内部に備えるのである。

この料理の呼び名は人によって様々だ。
カレーライス。カリーライス。ライスカレー。ライスカリー。
どんな風に呼んでもいいが、その中に必ず入る単語が一つある。
ライス。
これを以って、この料理は初めて完成する。

そもそも、カレーという料理は発祥の地とされるインドには存在しない。
彼の地で消費される、多種多様なスパイスを使った煮込み料理。
その総称をイギリス人がカレーと名づけたというだけなのだ。
従って、カレーという料理はある意味無国籍なものなのである。
そしてそれ故に、日本に定着した『カレーライス』は、日本の米に相応しいアレンジがなされているのだ。
370Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 18:38:35 ID:Jz+wfiY2
それはトロみの存在である。
たっぷり小麦粉を炒めて、それをルゥと共に鍋の中に流し込む。
こうする事で、満遍なく米に絡むソースを作る事ができるのだ。
日本以外の国で主に食される米はインディカ米。
粘り気が少なく、パサパサした食感が特徴のこの種にはさらさらとしたトロみの少ないソースは確かに合う。
だが、日本人の好むジャポニカ米はモチモチとした食感が特徴であり、炊いた時に水分を多く含む。
それ故に、水分の多いスープのようなソースよりも、トロみをつけたソースのほうが相性がよいのである。

小麦粉を混ぜる理由はそれだけではない。
香ばしさ。
パンやクッキーなどで分かるとおり、加熱した小麦粉は食欲をそそる香りを放っている。
それを加える事で、カレーの旨さを非常に引き立てる事を可能とする。

野菜。肉。スパイス。小麦粉。
これらを均一になるまで煮込み、極限まで洗練したソースをライスにかける。
米の一粒一粒に至るまでをソースに絡ませ、熱々の内に口に入れる。

スプーンの先のルゥとライスの混合物が、何百という数の香りの成分を放っている。
顔に近づけるだけで食欲の中枢を刺激するそれを、がぶりと一口。
口内に広がるのはあまりにも鮮烈すぎる芳香の交響曲。
全体として一つの主題を奏でながら、一つ一つは嫌味なく調和した完成度の高い芸術品だ。

次いで舌の上にそれらを置けば、まさに気分は夢心地。
脂の甘さ。肉のコク。野菜の甘さ。スパイスの刺激。小麦粉の香ばしさ。米の滋味。
一体となったそれらは中毒性のある旨みとなって、我々を虜にさせるに違いない。
直後に襲ってくる辛味が舌に残るクドさを洗い流してしまうために、いくらでも食べられそうな気にさえなってしまう。
371Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 18:39:21 ID:Jz+wfiY2
そうしてライスを食べながら、ごろごろと転がる肉を口に放り込む。
汗を流しながらひたすらがっつく体にとって、まさしくそれはスタミナ回復の為の一手。
噛み締めるごとに広がる肉々しい味わいを、体はご馳走として受け止めてくれるだろう。
そうして昇ってくるのはただ一言だ。

――――ああ、美味い。

余韻に浸りながらも、今度は野菜に手を伸ばす。
いい具合に煮崩れたジャガイモや、自然な甘さの柔らかい人参。
溶ける寸前まで煮込まれたタマネギをたっぷりソースに絡めていただく。
そしてまた、はふはふと息を荒げながらライスを平らげていく、そのローテーション。

こんなに美味しいものがB級グルメだなんて!
何と日本人は贅沢なんだろう。
そんな事を思ってしまうほどに、カレーの魅力というのは抗いがたいものなのである。


◇ ◇ ◇


それは、見る人が見れば非常に彼女らしい行動だと納得した事だろう。
二人の少女を前に木影から棗鈴が行ったり来たりを繰り返しながらも、もの欲しそうに何かを見つめているのである。
視線の先にあるのは、カレーの鍋。
……要するに、カレーを食べたいにもかかわらず、人見知りが災いして近づけないのだ。
そんな鈴の様子を見て、カレーを作っていた二人も当初の警戒を解いて苦笑していた。


「えーと、あの。そちらの人はこんな殺し合いなんかに乗ってるわけじゃないんですよね……?」
「ふにゃっ!?」
372Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 18:40:08 ID:Jz+wfiY2
大人しそうな少女が眉を下げた笑いで話しかけると、鈴は驚いて飛び退いた。
傍から見ればバレバレとはいえ、本人は気づかれていないつもりだったらしい。
びくびくと木陰に隠れながら、恐る恐る顔を覗かせて少女達の方を見る。
ここは森の中のキャンプ場。
二人の少女は焚き木などを集めて、カレーを作っていたらしい。
二人の内、今鈴に話しかけたほうの少女は警戒させないように気を使いながら、ゆっくりと自己紹介を始めた。

「あ、あの、えーと……。わたしは間桐桜って言って、こんな殺し合いに乗ったつもりはないんです。
 だから、安心してください」

にこりと微笑む桜と名乗った少女。
その手にあるお玉にはカレーがこびりついたままで、本人の言葉通りまったく殺し合いには似つかわしくない。
こいつは大丈夫かもしれないな、と鈴は内心の警戒のレベルを下げる。
カレーを呑気に作っている人間が、殺し合いなんかをするとは思えない。

「そして、こっちの女の子もわたしと同じで殺し合いなんかしないって言ってる人です。
 名前は……」

先ほどから俯いたままだった、もう一人の少女を見ながら桜が告げようとする。
と、その少女は顔も上げないままピースサインをして名乗りをあげる。

「……清浦刹那、です。よろしくです」


向こうから挨拶をしてきた。ならば、こちらも言葉を返さなければなるまい。
それは彼女自身も分かっているとはいえ、鈴の動きは遅々として進まない。
つい先日まで旧バスターズメンバー以外とは殆ど話もできないような状態だったのだ、その人見知りは生半なものではない。
373Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 18:40:58 ID:Jz+wfiY2
それでも、彼女はどうにか言葉を紡ぎだす。
――――どこかの世界で、何かを学び、糧として成長した事を証明するように。

「あ、あたしは、……棗、鈴だ。も、もちろん殺し合いなんてするつもりない!
 あんなモジャの言う事聞いてたまるかボケ! ふざけんな!
 つーかなんだ!? 何でこんな事する必要があるんだ! バカ兄貴の策略か!?」

……まあ、テンパリすぎて支離滅裂な事を口走っていたりもしたのだが。
とはいえ、そんな彼女の内面など知りようもない桜と刹那は戸惑うしかない。
威嚇するように肩をいからせる鈴に、どう対応したらいいものか狼狽していたのだが、しかし。


きゅ〜〜〜〜〜〜。

鳴り響いた音に、緊張は一気に解ける事になる。
見れば、鈴が腹を押さえて顔を真っ赤にしている。直前までの勢いなど欠片も残っていない。
だから桜は、くすりと笑いながらもどうにか鈴を誘う言葉をかけることができた。

「くす、お腹が減ってたみたいですね、棗さん。
 お近づきのしるしって事で、一緒にカレー食べませんか? 先輩仕込みだから美味しいですよ?」

えっへんと立派な胸を張る桜。
その自信満々な様子と、何よりあたりに漂うカレーの食欲を誘う香ばしさ。
これら二つにより、鈴には生来の人見知りを負かすほどの欲求が湧き上がった。

「食べる! 腹減ってたんだ、ありがとう! さくら、お前いいやつだな!」
374Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 18:41:50 ID:Jz+wfiY2
満面の笑みでカレー鍋のあるこちらに向かって突っ込んでくる鈴に、桜もまた微笑み返す。
その微笑に鈴は安堵のようなものを得ながら、えも知れない充実感を何となく感じていた。
それは自分ひとりで他の人間とコミュニケーションを取れた事に対してなのか、それを誰かに誇りたいからなのか。
ようとして知る事はできなかったが。


◇ ◇ ◇

間桐桜は幸運に喜んでいた。
こんな短時間で、二人もこちらを信頼してくれる人間が現れたのだから。

この殺戮会場に呼び寄せられた時、彼女はいつも通り衛宮家で夕食の準備をしている真っ最中だった。
正確にはいつも通り、ではなかったのだが。

――――聖杯戦争。
極東の地、冬木で行われる、万能の願望機を巡る戦いがとうとう勃発したのである。
余人のあずかり知らぬ所で、だ。
マキリサクラは五回目となるその戦乱の疑似聖杯であり、また、マスターとして参戦する予定の魔術師だった。
だが、その権利を彼女は放棄した。
兄である間桐慎二にマスター権を委譲し、自身は戦う事を望まなかったのだ。
それもこれもすべて、彼女の先輩であり、かけがえのない人間である衛宮士郎の為だ。
一応彼も魔術師ではある。だが、聖杯戦争を半人前の魔術師である衛宮士郎は知りえない。
間違いなく一般人同然といっていいだろう。

桜は思った。衛宮士郎を守らねばならないと。
彼は、無鉄砲で正義の味方を目指す人間だから。
元々彼に接触したのは彼の現状を調査する為だったのだが、しかし桜は今ではそんな事を抜きに純粋に好意を抱いていた。
だから、マスター権を放棄して彼の日常を守る……、いや、守ったはずだったのに。
唐突に、それは失われた。
バトル・ロワイアル――――人数だけなら、聖杯戦争も遥かに超える規模の殺し合いに巻き込まれる事で。
375Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 18:43:38 ID:Jz+wfiY2
最初は混乱した。どうすべきかも分からず、物影に怯えて縮こまるだけだった。
――――だが、デイパックの存在を思い出して中を改めた時、その思考は一変する事になる。
中に入っていた名簿。その中に、衛宮士郎の名が入っていたのだ。
彼女がやっとのことで祖父から掴み取った彼の安全。
それを、こんな形で脅かされる事になるなどとは思いもしなかった。

……そこからの行動は、彼女自身でも驚くほど早かった。
彼女のデイパックの中に入っていたランダム支給品。
残念ながら直接戦えそうな武器はなかったものの、一つのアイテムが彼女にアイデアを思いつかせたのだ。
彼女自身の得意とする、あるものを経由させる事で非常に有効に利用できそうだということを。

それを実行に移す為にまず周囲を探索した所、幸運にも一人の同行者を得る事ができた。
清浦刹那と名乗った彼女は口数は少ないものの、ピースサインをするクセがあったりと意外とお茶目だ。
出会った当初は警戒されたものの、どうやらこちらが殺し合いに乗っていないと判断してくれた様である。
とりあえず、彼女と情報交換するためにその場を作る次第となり――――、空腹を満たす為にも料理をしようということになった訳だ。
キャンプ場ゆえか近場の店にカレー材料が揃っていたので、キャンプの設備を使って簡単にカレーでも作ろうとしたところで現れたのが、棗鈴という少女だったのである。

現在は三人で焚き火やその上のカレー鍋と飯ごうを囲み、情報交換をしているところだ。
カレーが出来るまでまだ少しはかかる。その時間を利用して、協力できそうな事を示し合わせておこうというわけだ。
……とは言っても、先ほどから話しているのは桜と鈴だけだったのだが。
性格なのか、刹那は出会った当初から俯いたままでほとんど話さない。
実の所、出会って1時間は経っているのに桜はまだ彼女の顔もまともに見てもいない。
質問をすれば答えてくれるとはいえ、多少のやりにくさを感じるのは仕方ないだろう。
376名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 18:48:16 ID:iBEDgLIT

377名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 18:48:29 ID:9lDPgmZ8
378名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 18:58:24 ID:rPYHOe5C
 
379名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 19:00:19 ID:rPYHOe5C
  
380 ◆LXeaSCgZXw :2008/03/18(火) 19:14:32 ID:iQKG6XoZ
それでは投下します。
満月が路上のアスファルトに反射して、夜には似つかわしくない明るさがある。
そんな明るい夜、一人の男、伊藤誠は路地裏に身を潜めていた。

「満月か……美しいな。闇に目が慣れてない俺にはむしろ好都合だ」

伊藤誠は冷静に自らが置かれた状況を把握し、次の動きを考えバッグを開く。

「冷静に考えろ。まず、参加者は……えっと………世界、言葉、刹那の三人だけか」

名簿にざっと目を通し、知っている名前を把握する。
(少なくとも自身を殺す危険が無い者が三人か。
しかし、逆をいえば彼女たちは皆がこういった場で生き延びる経験など持たない純粋な素人だ。
自分も素人ではあるが、女性である分性別差による身体能力の優劣を考慮すると俺以上に危険だ、早急な保護が必要になるな)

「出来る限りの早急な行動が求められるが、まずは情報収集か。俺に配られた物は何だ?」

誠はしばしの思案の後、バッグを開き、中身を確認する。
すると中から出てきたのは拳銃であった。

「オートマグか。これはまた珍しい銃を。しかしこれでは連射は難しい単発銃のつもりで扱うしかないか」

さらに確かめると予備マガジンは五個だ。
(数はあり、破壊力もあるが、これでは銃撃戦となればまず勝ち目が無い。立ち回りには細心の注意を要するな)
それだけ考えると、闇夜を利用して、駅に向かおうと歩き出す。
しかしそこで足を止めざるを得ない。
(なんだ!?あの女は?それにあの刀は?)
闇夜に、とてつもなく長い刀を持った少女が徘徊するのを見つけ、しばし様子見をするしかなかった。

▽▽▽
「ここはどこですか?どうしてこんな………岡崎さん…………お父さん」

小さい声で涙をこぼしながら、夜の街をただただ徘徊する。
バッグを開くと中にあったのは、長い日本刀と拳銃。
だが、拳銃など持ったことも無い渚は銃はバッグに入れなおし、日本刀の方を手に取り振り回す。
それをとって、恐怖をかき消そうと振り回しながら歩き続ける。
少女にとっては、それが唯一の現実を忘れる手段だったからだ。
しかし、それはすぐに終わりを迎える。
闇雲に刀を振り回せば、すぐに力尽きるのは火を見るより明らか。
ましてや長い刀は重量も十分であり、それが疲労をより加速させた。

「はあ………はあ…………疲れました」

少女は一度刀を鞘に納め、何とか落ち着こうと試みる。
深呼吸、手の平に人の字を書いて飲む、水を飲んでうがいをする。
それだけを試みると、若干であるが冷静さを取り戻し始めた。
そして、名簿の中身を思い出し、歩き出す。

「はっ、ハンバーグっ!!」

好きな食べ物の名前を大きな声で口に出す。
渚独特の自らを強くするおまじないのような言葉。
すると何だか心なしか本当に落ち着いたような気がする。

「だっ、大丈夫です。探します。岡崎さん、お父さん。それに杏ちゃん」

渚は気を強く持ち歩き出す。

▽▽▽
少女の動きは少々謎が多かった。
突然『ハンバーグ』と叫んだときは、気でも触れたのか?という心配までしてしまった。
しかしその後の発言に耳を澄ますと、どうやら違うらしい。
比較的冷静な風に装っている。
すると、接触するか否か、それは慎重にすべきだ。
だが、目の前の少女と行動を共にするというのはメリットが大きい。
一番のメリット。それは自らが殺し合いに乗っていない。
これを周囲に対してアピールできる。
他者が視認した際に単独行動をする男と、女連れの男。
『俺は殺し合いには乗っていない』という言葉の信頼度は後者の方が遥かにデカイ。
前者では、殺し合いに乗っていなくとも、情緒不安定の者なら有無を言わさずに襲い掛かってくる危険さえある。
無駄な危険を減らす意味でも『同行者』の早期確保は自らに有益になるだろう。

「多少……荒っぽいが試してみるか」

路上の小石を拾い上げ、渚の眼前に落ちるようにアンダースローで放り投げる。そしてその後すぐに物陰へと姿を隠す。
(これでどう動く?)
これは一種の実験だ。
もしこれで、振り返って刀で襲ってくるなら、一切の躊躇無く即射殺。
瞬時に物陰に隠れて、徐々にこちらに近づいてくるならこちらも距離をとり、別の手で再び様子を見る。
そう考えていたが、渚の行動はそのどちらでもなかった。

「ひっ!」

一瞬小さな悲鳴を上げるが、決して動かず、ゆっくりと後ろを振り向く。

「あっ、あの。どっ………どちらさまでしょうか?私は……古河渚です」

勇気を振り絞って声を掛ける。
その様子と、しゃべり方に、とりあえずの危険の薄さを感じ姿を見せる。
「伊藤誠だ。古河渚。それが君の名前か」
「はい。古河渚といいます。伊藤さんですか。始めまして」
「古河渚………とても綺麗な響きだ。君のその顔に似合っている」

誠は渚に対し、笑顔を浮かべながら近づいていく。
渚はようやく出会えた人が優しそうな人で、若干の安堵を覚える。

「君は誰を探しているんだい?俺は西園寺世界、桂言葉、清浦刹那という三人の女子高生を探している。年は君や俺と同じくらい。
世界はセミロング、言葉はロングヘア、清浦は赤いリボンのセミロングという特徴がある」

誠は一番ピンとくる髪型で三人の特徴を提示した。
すると渚も、少し間を空けてから

「私は、古河秋生という名前のお父さんと岡崎朋也さんっていう私と同級生の男の子と藤林杏ちゃんって名前の同級生の女の子を
探してます。お父さんは……何となくですが、私と似ているところがあるかもしれません。岡崎さんは黒色で普通の男の子の髪型です。
杏ちゃんは紫っぽい髪でとても長いです」

と、誠と同じように髪型をメインに探し人の特徴を提示する。

「……君はお父さんも一緒に呼ばれたのか?」
「はい。お父さんも呼ばれてます」

(父親も呼ばれている。すると俺の最初の推測である高校生ばかりが選ばれているという推理は間違いとなるのか。
いや、でもあの場には高校生らしい外見の者が多かったことには違うが無い。
落ち着け、考えろ。名簿には『アイン』『ドライ』『真アサシン』というどう考えても人名とは考えにくい名前もあった。
それはつまりコードネームのような物であり、そのような物が必要な仕事。裏社会などに通じる人間も参加している可能性がある。
それにやけに長い外国人の名前まである。それならむしろ俺のような高校の仲良しグループのみを呼び出されたのがレアケースで、
古河渚の父親のケースのように、家族ぐるみで参加させられているケースも多いのか。そうなると、中には殺しのプロも参加している
危険があるのか。待て、最初に候補に挙げた『真アサシン』など名前からして、暗殺をするつもり満々だ。やばい。暢気に会話を
楽しむ暇などまるでないじゃないか)
「古河!悪いが俺は駅に向かう。そっちはどうする?」

誠は少し考えて事の重大さを再認識する。
そして少し焦ったような感じで渚に問いかける。

「はっはい。私も一緒に行きます」

渚もそれに同意する。いや、正確に言うと同意せざるを得ないという方が正しい。
一人で夜の街に残されるよりも、目の前の男の子と一緒の方が安全のような気が、渚はしていた。

「なら走るぞ。いいなっ!」
「はいっ!」

渚の了承を得て、誠と渚は二人で駅へと走り出した。


▽▽▽
少し走ると駅は近かったらしく、あっという間についてしまった。
誠は手早く時刻表を確かめる。
すると、残り十分弱で電車が到着するのが分かる。

「この時間は待っているしかないか」

誠はホームの椅子に座り、走って疲れた体を休める。
すると渚は誠の隣に座り、少しだけ寄り添う。

「なっなんだよ。悪いが流石に付き合えないぞ。確かに古河は凄く可愛いけど、それでも俺には世界とか言葉とか………」
「ちっ、違いますよ。違います。これです」

誠の狼狽振りに、逆に顔を真っ赤にして渚は否定し、バッグから一つの銃を取り出す。

「これ。伊藤さんの方が使える気がして」

その銃を渚は誠へと差し出す。
しかし、誠はしばし思案してから、そっと渚へと返す。

「ベレッタか………渚が持ってたほうがいい。俺にはこれがあるから。」

そして誠は腰に差したオートマグを見せる。
本来ならベレッタの使い勝手は魅力的だったが、重量と反動を考慮すると渚でも充分に扱える。
万が一、離れ離れになった際に渚の生存率はベレッタを所持している方が不所持よりはずっと高くなる。
渚には死んでほしくない。
そんな気持ちがあり、誠は渚の申し出を断る。

「二挺拳銃なんて慣れないまねはしたくない。まあ銃自体使い慣れては居ないんだけどね。ははは」
「だけど私だって銃は……」
場を明るくしようと笑う誠に、渚はなおも食い下がる。
すると、誠は笑顔で答えた。

「別に撃たなくていいから。ただの護身用だからさ」
「………分かりました。だけど本当に撃てませんよ」
「ああ。構わない。それよりさ。その刀の方を貸してくれよ。古河じゃ重いだろ」
「これですか?構いませんが」
「サンキュ」

誠は軽く礼をすると鞘を腰に差し、そっと刀を抜く。
その刀身は長く、そして美しかった。

「いい刀だ。俺みたいな素人が使うには惜しい業物かもしれないな」
「そうですか。私は伊藤さんでも使いこなせると思います」
「過大評価だって。はは」


渚の言葉に思わず誠は苦笑いをこぼす。
するとすぐに電車が来る。
適当なことを話していたらあっという間に電車の到達時刻となった。

「それじゃ乗るか」
「はい」

二人が乗り込み、しばらくするとドアが閉まりゆっくりと発車していく。
すると誠は座席に座り、銃のマガジンを外し銃の状態を確認する。

「どうしたんですか?」
「銃の調整だ。無いと思うが、弾が未装填とか弾詰まりのある暴発銃では洒落にならない。一応ベレッタも一度貸してくれ。確認する」
「はい」
渚は誠の言うとおり、銃を渡す。
するとすぐにマガジンを外し、弾を抜き取ってから銃口を見つめ調べる。
しばらく無言で色々と調べていたが、やがて口を開く。

「大丈夫だ。銃弾も入っているし、暴発も無い」
「本当ですか」
「ああ。一応手先は器用だからな。説明書も読んだからバッチリだ」

それだけいうと誠はベレッタを渚に返す。
渚は銃を受け取ると、しばし考え込むしぐさをしてから、口を開く。

「あの。伊藤さんはこの首輪はどうやれば取れると思いますか」

渚は首輪を触れながら答える。
当面の恐らく生還を目指すならクリアしなくてはいけない最大の壁。
その問いに誠は、臆面も無く答える。

「今は分からない。とりあえず誰か既に殺された者の遺体か、もしくは殺し合いに乗った人間を殺して首輪を奪い分解する以外手は無い」
「既に殺された人の遺体ってっ!?…………」
「いや、言い過ぎたな。………大丈夫だ。きっと岡崎やお父さんや杏は生きている。もちろん俺の仲間も……きっとな」
渚が表情を曇らせたのを配慮し、すぐに言葉を変えてこの会話を打ち切る。
しかし誠にとっては、首輪に関することを考えるきっかけとなった。
(首輪……言峰の言い分では三十秒のカウントダウンで爆発する。そしてこのみという少女は環という少女の介入で
カウントダウンが止まった。これはカウントダウンは自由に止められることを意味する。そして爆発。河野貴明と向坂環の共通点。
これは首から上が吹っ飛んだにも関わらず首より下のダメージが少ないという事だ。つまりこの首輪は花火と同じような仕掛けで
火薬の配置、そして首輪の強度を部分によって変えて爆風が首より上に集中する仕掛けとなっているはずだ。また、最初は恐らくランダム
でありながら、二度目はピンポイントで爆発する首輪の主を変えている。恐らく受信機かそういった類の物が内蔵され、
電波信号をキャッチして起爆する仕組みとなっているはずだ。それなら受信機を破壊すれば首輪を無力化出来るはずだ。首輪を入手し、
分解し受信機を見つける。これは恐らくかなり難しい。自分は決して機械には詳しくないし、命をやり取りをした経験も無い。
その俺にその困難きわまる作業が出来るだろうか。いや、むしろ今冷静に考えている俺が既に奇跡だ。
だけど……こうなったらやるしかないんだよな。古河は俺に頼っている。ここで俺が臆病風に吹かれたら末代までの笑い者だ。
もう、賽は投げられた。俺は自分の信じる道を突き進むだけだ。死を恐れるな。死よりも、目の前の女を泣かせたり、
見捨てたりする自分の姿を恐れろ。そうだ。もう前を見つめるしかないんだっ!)

「あの……伊藤さん?」
「……………ん?あっ、ごめん。なんだ?」

首輪の考察に没頭していた誠は渚の言葉でわれにかえる。
その誠に渚はおずおずと問いかける。

「ところでどうして伊藤さんは南の方へ向かおうって思ったんですか?中心街の方が人が集まると思うのですが」
「それか………別に理由は無いさ。ただ何となくだよ」
「そうなんですか?」

あまりの拍子抜けの答えに渚もかなり驚いていた。
しかしその様子には特に関心を持たず、ただ一人誠は座席を立ちあがり、刀を抜いて進行方向を向けて呟いた。
390名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 19:37:29 ID:iBEDgLIT

「強いて言えば―――――」

その時、闇から差し込む月光が逆行となり誠を照らし出す。
その中で誠は一言を放つ。

「――――あの地平の向うからあいつの影が俺を呼ぶんだ」
「…………………………」

渚は声が出なかった。
唯一つ渚が思ったことは

『伊藤さんなら、きっと何とかしてくれます』

その根拠の無い自信が渚を包んでいた。
誠は渚を一度流し見ると、刀をそっと鞘に戻す。
その時高い金属音がなる。
鞘と唾の反響音だ。
その反響音が鳴り止むと同時に、電車は目的の駅へと付く。

伊藤誠と古河渚。
はそっとホームへと降り立つ。
二人の未来。
伊藤誠の直感は、どう転ぶのか。
二人の運命の歯車は、絡み合って大きく動き出す。
392名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 19:43:28 ID:iBEDgLIT

【F-7 駅/1日目 深夜】
【伊藤誠@School Days L×H】
【装備】物干し竿@Fate/stay night[Realta Nua] オートマグ(8/7+1)@Phantom -PHANTOM OF INFERNO-
【所持品】支給品一式 オートマグの予備マガジン×5 確認済支給品0〜1(一見すると武器の可能性は低い)
【状態】健康、冷静
【思考・行動】
 基本:殺し合いの破壊 首輪の解除
1:世界、言葉、清浦、古河秋生、岡崎朋也、藤林杏との早期合流、保護
2:遺体、もしくは殺し合いに乗った人物の首輪を奪い取って分解
3:真アサシンは殺し合いに乗った可能性が高い為、見つけ次第殺す

備考
伊藤誠の首輪による考察
首輪は受信機が取り付けられている。
受信機を取り除けば無力化可能。
火薬と首輪の強度を調整して、首からうえだけを吹き飛ばすような細工を行っている。

【古河渚@CLANNAD】
【装備】ベレッタ M92(16/15+1)@Phantom -PHANTOM OF INFERNO-
【所持品】支給品一式 ベレッタ M92の予備マガジン×5
【状態】健康
【思考・行動】
 基本:伊藤誠と共に行動。出来る限りのサポートをする。
1:お父さん、岡崎さん、杏ちゃん、西園寺世界、桂言葉、清浦刹那との早期合流
2:人を殺したくは無い。

共通行動方針
とりあえず駅回りを捜索しつつ、遊園地、カジノ、劇場方面へと向かう。
394名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 19:48:03 ID:iBEDgLIT
>>380
投下乙
感想は後で書きますが、
とりあえず、したらばの予約スレにトリ付けて書き込んでくださいね
一応ルールなので
395Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:03:04 ID:Jz+wfiY2
そんな訳で、一度打ち解ければはきはきと答えてくれる鈴と出会ってからは、桜はまずそちらの持つ情報を収集することに専念した。
同時にこちらの知る情報も彼女達に開示していく。
リトルバスターズという、彼女の仲間の事。
衛宮士郎という少年の事。
鈴自身の行動方針。
それらを聞きながらも、カレー鍋をかき混ぜる手は休めない。

そんな折、こちらの手伝いとしてルゥを投入してくれた直後、刹那が珍しく自分から口を開く事で情報交換は一時中断された。
顔を赤らめながらのその言葉は、彼女の挙動や様子から予測した通りのものだった。

「……あの、間桐さん、棗さん。ちょっと、……その、お手洗いに……」

もちろん桜に断る意味などない。
むしろ、我慢などしてもらっては後々厄介な事になりかねないので推奨するくらいだ。

「あ、はい、どうぞ刹那さん。私たちはここでお待ちしてますね?」

桜が言うなり、ぺこりと頭を下げて刹那は暗闇の方へ消えていく。
駆け足なあたり、もうだいぶ我慢していたのかもしれない。
苦笑しながらも、桜は思う。
……ちょうどいい頃合だ、と。

「……あの、鈴さん。ちょっとわたしのデイパックの中から取ってきて欲しいものがあるんですけど、いいですか?」

鍋を混ぜながらの台詞。これなら鈴に、鍋の側から離れられないことを印象付けられる。
そして、予想通りに鈴が腕を組みながら、自分の背後数メートル先のデイパックに向かって歩きはじめた。

396名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:03:17 ID:iBEDgLIT

397名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:03:56 ID:iBEDgLIT

398Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:04:50 ID:Jz+wfiY2
「了解だ。なに取って来ればいいんだ?」

――――そう、絶好のポジションだ。


自分が鍋に向かって何をやっても、彼女の位置からは見えはしない。


「えっとですね、……ガラムマサラが入っていると思うんです。それをお願いできますか?」

言いながら、間桐桜は服のポケットから一つのものを取り出す。
――――シアン化カリウム。
青酸カリの入った、カプセルを。
それが彼女に与えられた支給品の一つだった。

間桐桜は思う。
これを集団の料理に紛れ込ませれば、そいつらを一網打尽に出来ると。
鍋のような、全員で突っつけるものが望ましい。
個数は全部で4つ。その一つを、今、使う。

自分は料理が得意だ。
それもこれも、全て料理の師匠である衛宮士郎のおかげである。
何と素晴らしいのだろう、彼から授かった技能で彼を守る事ができるなんて。


間桐桜は幸運に喜んでいた。
こんな短時間で、二人もこちらを信頼してくれる人間が現れたのだから。
399Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:05:51 ID:Jz+wfiY2
――――ふふ、なんて殺しやすいんでしょうかね。
他の人もこのくらい殺しやすければ嬉しいんですけど。

先輩を守る為なんです。
申し訳ないですけど、死んでもらえますよね?

ほくそ笑みながら、背後でごそごそやっている鈴を尻目にカプセルを鍋に伸ばす。
刹那がいない今こそ、絶好の機会だろう。
そうして改めて鍋を見た瞬間、彼女は気付く。


「……カレーが、光っ――――?」



それが彼女の見た最期の光景となった。


◇ ◇ ◇


森の中を駆け抜ける。出来る限り、急いで。

清浦刹那と名乗った少女は、キャンプ場から即座に離脱する事を選んだ。
間もなくあの場所には人が集まってくるだろう。爆音を聞きつけて。
そうなる前にさっさとあの場を離れなければいけない。
400名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:06:25 ID:iBEDgLIT

401Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:07:44 ID:Jz+wfiY2
おそらく二人とも死んだだろうとは思うが、確信までは至らない。
何らかの間違いで生き残った場合、自分が犯人であると思われてはいけないのだ。
一応その為に、自分の良く知るある人物に成りすます事はしておいた。
幼馴染である、清浦刹那。
彼女の癖や特徴は熟知しているし、出来る限りまともに顔を見せることや目立つ行動もしなかった。
そもそもたった数十分から1時間強程度しか一緒に行動しなかった以上、ろくな記憶もないとは思うが完璧ではないだろう。
単なる『支給品の実験』で、今後の行動を制限されてはたまらない。

『清浦刹那』は、――――いや、西園寺世界は思う。
自分は、絶対に無事に帰らなければいけないのだから、と。

西園寺世界がこの殺し合いの場に呼ばれたのは、ある年の末の事だった。
それまであった色々な問題がひと段落し、名実共に幸せな日々の真っ最中。
そんな平穏を、彼女はいきなり奪われた。

殺し合い。
初めは、そんな馬鹿なことがあるかと思った。
しかしそれはいとも簡単に否定される。
あまりにも無残な殺戮が目の前で行われた事で。

見せしめとして殺された四人の人々。
見知らぬ場所に一人飛ばされた世界は、それを思い出すだけで震えが走るのを実感する。
自分なんかが生き残れるはずがない。
そんな恐怖に苛まれた彼女を救ったのは、彼女と共にいた人間だった。
――――そう。彼女は、一人ではなかった。

正確には一人と計算していいものかは分からない。
何故ならその人間は、――――彼女の胎内にいたのだから。

西園寺世界は、妊娠していた。
402名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:08:45 ID:BU+jAFk4
 
403名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:09:16 ID:BU+jAFk4
 
404Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:09:40 ID:Jz+wfiY2
クリスマスプレゼントとして、桂言葉と共に伊藤誠に報告したそのときから。
彼女はひとりの母親だったのだ。

自分が母親だという自覚。
それが彼女に強い意思を与えたのである。
絶対に、生きて帰ると。この子を産んでみせると。

その為に。
生きる為に、彼女はまずその手段を得る事を求めた。
手始めに支給されたデイパックの中身を確認し、そこにあったアイテムの説明書きを読む。
そして世界は理解する。
ある意味その支給品はアタリだったのだろう。
だが、使いどころが非常に難しいのだ。
直接的に危害を加えてくる人間に対抗するのには無力だとも言える。
第一、体に負担をかけて胎児に悪影響を及ぼしたりなどすれば元も子もないのだ。

従って、世界は集団に加わる必要性を大いに知らされる事になる。
突然殺し合いをしろと言われて、はいそうですかと頷ける人間も確かにいるだろう。
だが、そんな人間に対抗する為の集団もおそらくいるはずだ。
彼らと出会えれば、自分の安全はある程度確保できるだろう。
戦闘なども今の自分は迂闊にこなせない以上、それを代わりにやってくれる人間がいるというのもありがたい。

それに加え、自分の支給品は、集団内でこそ真価を発揮するアイテムだという理由もある。
西園寺世界に支給されたアイテム。
それは、いわゆるプラスチック爆薬だった。
405名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:10:00 ID:BU+jAFk4
 
406名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:10:37 ID:BU+jAFk4
 
407Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:10:46 ID:Jz+wfiY2
コンポジションC4のブロック。
扱いやすさと信頼性を兼ね備える、理想的な爆薬だ。
そして、それを起爆する為の時限式の信管。
起動後三分経過で爆破するというこれらの組み合わせは、邪魔な相手を一気に吹き飛ばす事ができる。
だが、三分は戦闘中に使用するにはラグがありすぎる。
これらを有効に使えるシチュエーションはどんなものか。

……それは、自身を仲間だと思って油断している人間たちをまとめて排除するという状況だ。
例えば――――、殺し合いの終盤で、その集団以外の外敵を殆ど排除した後のような。
仮に、本当に一人しか脱出できないとしたら。
そんな場合を考えれば、機さえ逃さなければ非常に有用なのは間違いない。
……もしも、誠や言葉といった知人がいたとしても。
今の自分が最優先するのは腹の中の子供だ。その時は容赦は出来ないだろう。

ただ、そんな状況で少しくらい怪しい行動をしても怪しまれないくらいの信頼を得る必要は、ある。
同時に、自分が爆薬を持っていることも知られてはならない。
あくまで無力な保護対象であると認識してもらわなければ、集団に入るのにもままならないだろう。

保身を第一に考える今の世界にとって、C4というアイテムの特性はまたもありがたいものになってくれた。
その自由自在に形を変える可塑性は、デイパック以外の場所にいくらでも仕込む事を可能としてくれたのだ。
髪の中や下着の中、靴の中。
そうした場所に少しずつC4を仕込んでしまえば、デイパックをいくら探しても見つかる事はない。

こうして全てのC4を仕込み終えた直後に出会ったのが、桜だったという訳だ。
かくして、世界は桜を相手にC4の使い勝手を試す為の実験をすることにした。
やはり説明書きの使い方を読んだだけでは分からないことはいっぱいある。
実際に試して、いざという時に使えるようにならなければならない。
鈴とも出くわしたのは偶然だったが、幸いどちらの人間も殺し合いに乗らなさそうな呑気な人間だ。
試し撃ち、いや、試し爆破としては申し分ない。
他の参加者との接触が殆どないうちに、さっさと済ませてしまうべきだろう。
408名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:11:07 ID:BU+jAFk4
 
409名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:11:40 ID:BU+jAFk4
 
410Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:11:47 ID:Jz+wfiY2
だから世界は、念のために清浦刹那を名乗り、ルゥと一緒にC4をカレー鍋の底に流し込んで早々に離脱した。
その結果が――――、

「……あ、爆発……したんだ」

轟音となって、世界の耳に訪れた。
一瞬、猛烈な後悔が世界を包み込む。吐き気すら催しそうだ。
……だが、世界はそれを一息の下に呑み込む。
自分は絶対に生き残らねばならないのだからと、それだけを考えるようにして。

これから自分はどうすべきかということに意識を移し、それだけを考えるようにする。
まず大前提として、とにかく頼れる集団に属する必要があるだろう。
身の安全が第一だ。
敢えて殺し合いに乗る必要はない。放っておいてもどうせ人数は減っていく。
それができ次第、自分の知人を探す事を集団に伝える事ができれば御の字だ。

自分の恋人、誠。
一時期いがみ合ったものの、今では友人として接している誠のもう一人の恋人、言葉。
幼馴染の刹那。

刹那に関してはもし桜や鈴が生きていたら迷惑をかけるかもしれないが、自分から彼女に成りすました事を言う必要はないだろう。
とりあえず、生きて会えたらそれを喜ぼう程度に考える。

と、そこで思いつく。
もしかしたら、服で自分だと特定されるかもしれない。
念のため着替えておいた方がいいだろう。
411名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:12:49 ID:BU+jAFk4
 
412Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:13:06 ID:Jz+wfiY2
それを肝に銘じ、世界はゆっくりと歩き出す。
とりあえず目指すは北だ。キャンプ場からは出来る限り離れないといけない。
中心街のような、治安のよさそうな場所なら安全かもしれないので、そこを目指す事にする。

西園寺世界は、自覚のないエゴイストだ。
我が身可愛さに人を踏み躙る事もしばしばである。
……本人がそれに気付いているか否かは別として。
『子供の為』という大義名分を得た彼女が、それを楯に人々に何をもたらすのか。
それを知る事は、今はまだ叶わない。

【C-3南西部 森/一日目 深夜〜黎明】

【西園寺世界@School Days L×H】
【装備】: 時限信管@現実×4、BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C4(残り約0.9kg)@現実
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康、妊娠中
【思考・行動】
基本:保身を第一に考える。元の場所に帰還して子供を産む。
0:……ごめんね、間桐さん、棗さん。
1:大集団に加わって安全を確保する。知人と一緒に帰還できない様なら、優勝する為機を見てまとめて爆破する。
2:誠や言葉、刹那を探す。
3:積極的な殺人はしない。しかし、後々障害になりそうなら知人でも周囲にばれない様に排除。
4:服を着替えて、『清浦刹那』と同一人物であると思われないようにする。
5:とりあえず、中心街の方を目指す。
【備考】
※参戦時期は「『二人の恋人』ED直後です。従って、桂言葉への感情や関係は良好です。
※下着や靴の中などにC4を仕込んでいます。デイパック内部にC4は存在しません。
※時限信管はポケットに入っています。デイパック内部に時限信管は存在しません。
※桜と鈴は死亡したと思っています。ただし、生存の可能性も考慮しています。
※衛宮士郎、リトルバスターズ!勢の身体的特徴や性格を把握しました。
413名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:13:28 ID:BU+jAFk4
 
414Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:14:15 ID:Jz+wfiY2
【時限信管@現実】
C4やTNT、ガソリンといった爆発物を一定時間後に起爆させる為の装置。軽量かつ小型なのでポケットにも入ります。
たとえ火の中水の中草の中(中略)あの子のスカートの中でさえも、カレーの中でも作動する信頼性の高さも魅力。
起動後の爆発までの猶予は一律で三分。カップ麺が出来るまで。
接触信管とは違って、戦闘中に使っていられるほどの余裕はまずないだろう。

【BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C-4@現実】
米軍御用達のプラスチック爆薬C4のM5A1ブロック。2.5ポンド、即ちおよそ1.13kg入り。
どんな形状にも変形できる使い勝手の良さと、信管による起爆以外ではまず爆発しない信頼性を持ち合わせる。
逆に言えば、信管がなければ火をつけても普通に燃えるだけなので燃料程度にしか使えない。
破壊力はTNT換算で1.3〜1.4倍程度とこちらも優秀。
ちなみにTNTを使用したM26破片手榴弾の装薬量は156gな為、およそ100g強でC4は手榴弾と同程度の爆発力を持つということである。
ただし、破片による殺傷を考慮していない為、上述の量では破壊力そのものは及ばない。


◇ ◇ ◇


背後から強烈な白い光を感じた鈴は、一瞬浮遊感を感じた。
直後に強烈な熱と、背面への痛みが走る。
地面に叩きつけられ、しばし呆けることを強制された。

が、しかし、そんな場合ではないことをどうにか感じ取り、振り向いたその先には。


「……さ、くら? さくら……。さくらぁぁぁぁああああっぁぁあぁあああぁああっ!!」
415名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:14:58 ID:BU+jAFk4
 
416Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:15:37 ID:Jz+wfiY2
胸部から腹部にかけての前半分を失った間桐桜が、店先の魚と同じ目で仰向けに倒れていた。
抉られたそこからはどろどろと小腸と大腸の合挽き肉が零れ落ち、まだ熱を持つ肝臓が夜闇に水蒸気の白い帯をたゆたわせている。
心臓にはとうに穴が開き、どう考えても死体そのものだ。
よくよく見れば、砕けたカレー鍋の破片やカレーそのものが、彼女の死体のあちこちに痕跡を残している。
四肢に突き刺さった金属片のそれぞれからは固まっていない血が流れ出し、カレーは内臓とミックスされて人肉カレーを作っていた。

鈴は知る由もないが、実の所桜のおかげで彼女は奇跡的に軽症で済んでいた。
C4が放り込まれたカレー鍋と鈴の間に桜がいた為、爆風や鍋の破片の飛散に対し、彼女の肢体が肉の楯となったのである。
皮肉な事に――――、鈴を葬り去るため毒を混入しようとしたことで、桜は鈴を救う事となった。

「せつな……! どこだ、はやく来てくれ! さくらが! さくらが……!」

しかし、そんな事は鈴には分からない。
捨てられた猫のように、鳴き/泣きながら、自分を拾ってくれた人/桜の体に縋るだけだ。

「駄目だ、駄目だ、死んじゃ駄目、さくら……!
 先輩に会うんだろ、こんなとこで寝ちゃ駄目なんだぞ、さくら……っ!!」

その声が届くことは、もうありえない。

殺し合いの理不尽さに怒り打ち震えながら、しかし何も分からないまま。
桜の明確な敵意も、『刹那』の無自覚な殺意も知らないまま。
棗鈴はただ、泣いていた。
どうしようもない現実を前に、一人で泣き続けることしか出来なかった。

ここには、彼女を助けてくれる幼馴染は、誰一人いないのだから。

417名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:15:43 ID:BU+jAFk4
 
418Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:17:41 ID:Jz+wfiY2
【D-3 キャンプ場/一日目 深夜〜黎明】

【棗鈴@リトルバスターズ!】
【装備】:ハルバード@現実
【所持品】:支給品一式、草壁優季のくずかごノート@To Heart2
【状態】:背中と四肢の一部に火傷(小) 、空腹、激しい動揺
【思考・行動】
基本:理樹を探し出し、守る。殺し合いには絶対乗らず、生きて帰る。
0:さくら? さくら!? 死んじゃ駄目、死んじゃ駄目だ……!
1:理樹を探し、守る。
2:リトルバスターズメンバーを探し、同行する。
3:刹那を探す。
4:衛宮士郎を探し、同行する。
【備考】
※参戦時期は謙吾が野球に加入する2周目以降のどこかです。故に、多少は見知らぬ人間とのコミュニケーションに慣れているようです。
※くずかごノートの情報に全く気付いていません。
※衛宮士郎の身体的特徴や性格を把握しました。
※『清浦刹那』に関しては、顔もまともに見ておらず、服装や口調、ピースサイン程度の特徴しか認識していません。

【草壁優季のくずかごノート@To Heart2】
ポエミィな文章に満ち満ちた、人によっては黒歴史満載な時期の思い出の一品。
……なのだが、それに混じって今ロワについての情報がいくつも追加されているようである。
ただし真偽の程は不明。
しかも玉石混合なため、もしかしたら重要な情報が書いてあるかもしれないが、
それを探し当てるのはウォーリーの国でウォーリーを探すより困難だろう。
419Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:19:23 ID:Jz+wfiY2
◇ ◇ ◇

もはや何もかもが分からなかった。
意識は混濁し、体が冷たくなっていく事を実感する。

何がいけなかったのか。何故こんな事になったのか。
彼女には分からないし、分かったとして今更流れを変えることなどできはしない。
これは一つの末路。
他者を省みなかった一人の少女の、数多の可能性の一つである。

――――ただ、たった一つ彼女が間違わなかったのは。
衛宮士郎を守りたいという決意。
それだけは、確かに尊ぶべきものだったろう。

霞む思考の中で、泣き叫ぶ少女の声が聞こえてくる。
マキリサクラはそれを、何故かは分からないがとても嬉しくて、同時にとても申し訳ないと思う。
それきり、もう何を考える必要も無くなった。

420Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo :2008/03/18(火) 21:20:13 ID:Jz+wfiY2
最後に残ったモノは、この少女に大切なヒトを守って欲しいなあ、という意識の泡沫だけ。

こうして奮戦は荼毘に付す。
願わくば、愚昧だった彼女の決意が、今際の悲鳴に貶められぬよう。



【間桐桜@Fate/stay night[Realta Nua] 死亡】

※D-2〜D-3付近に爆発音が響き渡りました。
※桜の死体の側にシアン化カリウム入りカプセル×1が落ちています。同じもの×3が、桜の死体のポケットに入っています。
※鈴の側に、デイパック(支給品一式、ガラムマサラ、不明支給品(武器は入っていない)×1〜2入り)が落ちています。

【シアン化カリウム入りカプセル】
ご存知青酸カリの入ったカプセル。一粒で数人くらいなら殺せる量の毒が入っています。
421狂ヒ咲ク人間ノ証明 ◆PELOaKeBfU :2008/03/18(火) 21:41:28 ID:fvOv6My1
何も出来なかった…。
自分のこれまでの鍛錬は一体何だったのか?何のために武を極めようとしていたのか?
全ては正義を遂行するため、憎むべき悪を討つためではなかったのか?
で、何故自分はここにいる?何故自分はこうして生き恥を晒している?

そうだ…あの時私は何も出来なかった…悪を討つ刃でありたいと願い、真に己の培った武を存分に振るう機会を、
心の奥底で望んでいながら、何も出来なかった…出来たのはただ震えていただけ。
「私さえ…覚悟を決めていたらば…」
あの少女は死ぬことはなかった、出来たはずだ…いや、やらねばならなかった。
「とんだお笑い草だ」
古の士に憧れ、その士たらんと日々思っていながら、このザマだ。

それでも考えないこともない、例えばあの時私が死んでいれば…。
「レオは泣いてくれただろうか?…」
自らの亡骸にすがりつき泣きじゃくるレオ…乙女にはそれが酷く甘美な光景に思えた。
が、次の瞬間それは締め付けられるような苦しみへと変わる。
あの少年の、姉を失い慟哭する少年の叫びを聞いて、そんなことが思えるわけがない…まして。
鉄乙女が対馬レオを悲しませることなどあってはならないのだから…だがしかしそれも。
「見捨てられたかな…私は」
それは第三者から見れば単なる被害妄想に過ぎないのだが、乙女は確かに感じていた。
あの時、向坂環が己の命を捧げた瞬間の自分の背後の視線を、仲間たちの侮蔑に満ちた視線を、声を。

「乙女姉さん、見損なったよ」
レオが声高に詰る。
「ほら、言っただろえらそうなことを言ってても所詮は口先だけさ」
伊達スバルが軽蔑の視線を向ける。
「もうムリしなくていいんですよ、センパイ」
椰子なごみが哀れみに満ちた慰めを掛ける。
422狂ヒ咲ク人間ノ証明 ◆PELOaKeBfU :2008/03/18(火) 21:42:28 ID:fvOv6My1
「違う…違う…ううっ」
こみ上げる吐き気に口元を押さえる乙女、いくらこらえても嘔吐物が口元からでろでろと溢れ出す。
嘔吐物に塗れながら考えることはただ一つ…。
「いっそ死にたい…何故」
幕開けに首を吹き飛ばされた少年の姿が浮かぶ、今の彼女にとってそれは決して無残な物ではない。
むしろ…羨望に満ちた思いすら抱ける、ああ、何故自分ではなかったのか?こんな惨めな思いを晒しながら、
無様な生を送るのならば、あの時一思いに殺して欲しかった。

なら…いっそ。
乙女は己の支給品の黒光りした拳銃を見る…この引き金さえ引けば全てが終わる。
言葉どおり死にたかった…このまま死にたかった…だがそれすらも乙女には選べなかった。
ここまでの屈辱を、ここまでの恥辱を覚えていながらなお、鉄乙女は死ぬのが恐ろしかった…死にたくなかった。
士道とは死ぬことと見つけたり。
そんな物は絵空事だ、本当の死を見てあの無残で一片の救いすらなき最期を見てそんな奇麗事がほざけるはずがない、
所詮死んだことのない人間に死は他人事に過ぎないのだ、決して逃れえぬものでありながらも…人はそれから目を逸らして、
奇麗事で自分を騙して日々を生きている…だから、だから。
「だからといって私が許されるわけがない!」
鉄乙女という少女は不器用なくせに中途半端に頭が回るので一度悩めばいつまでも袋小路。
さらにプライドが高いため、だれかに泣きつくことも都合よく責任を転嫁することも出来ない、
まさに二律背反の生き地獄だった。

風が木立を揺らしざわざわと響く…が、それすらも乙女にとっては自身を責めているように思えて仕方なかった。
「やめろ…やめろ」
拳をめちゃめちゃに振り回す乙女。
「あの時何が出来たというのだ!私だって…」
そこまで叫んで…力なくへたりこむ乙女…何が出来たというのか?結論から言えば出来ることなどいくらでもあった。
例えば刺し違える覚悟であの神父に一矢報いることも可能だった、自分の命さえ捨てれば…だが。
そこで気が付く、ようやく…つまり自分は自分が可愛いだけではなく、嫉妬しているのだ向坂環に…、
自分が思い描いていた理想の最期を遂げた彼女に、下劣にも程があるではないか!
423狂ヒ咲ク人間ノ証明 ◆PELOaKeBfU :2008/03/18(火) 21:43:49 ID:fvOv6My1
風が木立を揺らしざわざわと響く…が、それすらも乙女にとっては自身を責めているように思えて仕方なかった。
「やめろ…やめろ」
拳をめちゃめちゃに振り回す乙女。
「あの時何が出来たというのだ!私だって…」
そこまで叫んで…力なくへたりこむ乙女…何が出来たというのか?結論から言えば出来ることなどいくらでもあった。
例えば刺し違える覚悟であの神父に一矢報いることも可能だった、自分の命さえ捨てれば…だが。
そこで気が付く、ようやく…つまり自分は自分が可愛いだけではなく、嫉妬しているのだ向坂環に…、
自分が思い描いていた理想の最期を遂げた彼女に、下劣にも程があるではないか!

「ふ…ふふふふ…あはははは、私は結局ただ優越感に浸っていたいだけの臆病者だったというわけだな」
もう何もしたくなかった、何もやる気が起きない…死にたくない以前に死のうと思う気力すらない…。
絶望した乙女の目に固く握られた拳が映る…脳裏に幼き日々からの鍛錬の記憶が甦る。
だがもう乙女にとってそれは憎むべき無用の長物に過ぎない、もうそれを行使すべき機会は永遠に喪われたのだから。

「何のために」
袂の大木に力一杯拳を叩きつける、普段の乙女の膂力ならば真っ二つに砕けるはずだが。
今はみしみしと悲しげに軋むだけに過ぎない。
「何のために」
それでも構わずに拳を振るう乙女、悲しげな軋みが木霊する。
拳はすでに血まみれになっていた、だがそれでも乙女は自傷行為を止めようとはしない。
これまでの人生を、これまでの鍛錬を否定するかのように。
だから乙女には気が付かなかった、自分の背後に迫る能天気な歌声も、そしてその歌声の主が。
「ちょっと!何馬鹿なことやってんのよ!!」
と、自分の腕を掴むその時になってもなお。

「ふーん、それでそんなことしてたんだ」
杉浦碧と名乗った女性…いや美少女は乙女の独白をただ黙って聞き終わったあと、
「結局馬鹿じゃん」
大胆かつ短刀直入に言い放った。
「く、口が過ぎるのではないですか!」
424狂ヒ咲ク人間ノ証明 ◆PELOaKeBfU :2008/03/18(火) 21:44:38 ID:fvOv6My1
慰めも同意も期待してなかったが…余りではないのか?
「何度でもいうわよ、この馬鹿、馬鹿」
挑発するように繰り繰り返す碧、乙女の顔色が少しずつ変わっていく…
この女に…乙女は座った瞳でジロリと碧を睨む、しかし碧はその爛々とした視線を、
竜鳴館の生徒たちを震え上がらせるその凶眼を物ともせずに受けとめなお笑う、
ギリッ…乙女の歯が軋む、私のこの気持ちがこの女に…このへらへらと薄笑いを浮かべてる女に何が分かるのだ!

「貴様ァ!これ以上私を辱めるな!」
破いた袖口で応急処置をしただけの拳が碧の顔面めがけ放たれる、が…
「何もやる気がしないとか言ってた割にはやるじゃん?大したものね」
その拳は碧の顔を捉える寸前で防がれていた、碧がどこからともなく取り出した巨大な斧によって。
「ま、こんどはさあたしの話も聞きなよ」
拳が届かぬのならばせめて視線だけでもと乙女はさらなる殺気を瞳に込めるが、無論碧はものともしない。
「さっきのはノーカンにしたげるからさ」
どこまでもマイペースな碧の声に乙女は何故か不思議と先ほどとは違う感情を覚えていった…。
挑発に乗ったからとはいえどこうやって僅かでも発散できたからこそだろうか?そう考えれば理解できる、
この人は自分よりも上手だ…そう悟った乙女の身体からようやく殺気が消えていった。

「ま、気持ちはわからないでもないわよ」
お互い三角座りで向かい合う碧と乙女、碧の斧はいつの間に消えている。
「じゃあさ、何もしないで…それで納得できるの本当に?あんたそれじゃ本当の卑怯者になっちゃうよ
まして死んでチャラに出来るなんて、ちゃんちゃらおかしいにも程があるじゃん」
これはもしもの話だけど、と前置きしてから話を続ける碧。
「もし助かったらどうするの?今すぐに助けが来たらどうするの?それでアンタ喜べるの?
このままだとたとえ助かっても自分を憎みながら一生を闇の中で過ごすことになると思うよ?」
言ってからしゃらくさい例えだな、と碧は思う。
425狂ヒ咲ク人間ノ証明 ◆PELOaKeBfU :2008/03/18(火) 21:46:05 ID:fvOv6My1
いやです、と答えようとした乙女、自分が卑怯者だということなど分かりきってるが、
それでも面と向かって言われると辛いものがある。
「ね、子供の頃、テレビ見なかった?思い出してみてよ、もうだめだって思ったときテレビの中のヒーローはどうしたの?」
「それは…」
ただの絵空事だ、まやかしの欺瞞だ…とは言えなかった、かわりに。
「立ち向かった…どんなことがあっても折れなかった最後まで誇り高く…でも」

碧の声は乙女の反論を許さない、間髪いれず。
「じゃあさそれをやればいいのよ、憧れたんなら最後まで貫けばいいのよ、あたしはそれをやってるわ」
「お言葉ですがそんなに現実は」
「現実がどうだっていうのよ?そんな現実こっちから願い下げよ…それに」
こんなことになってなお現実がどうとか、それこそ乙女が何度も言う絵空事そのものではないか?
「ですがっ!立ち向かえると思うのですか!?」
「全然」
乙女の言葉をまた受け流す碧。

「確かにあたしたちの力なんてアイツらにしたらリンゴでも潰すように一ひねりだと思うんだよねーでもね、
それでも正義の美少女碧ちゃんとしては何もせずにはいられないのよ」
正義という言葉を聴いて俯く乙女、何故か碧の顔を見ることができなかった、その代わり乙女は気が付いてしまった。
威勢のいい言葉を並べる碧の手が震えていることを、が、それを責めようとは思わなかった、むしろ。
「ま、でもね…あたしもホントいうと怖かったんだよ、あんたと同じで何もできずに見殺しにしちゃったんだから…
でもあたしはあの子たちにごめんねとは思うけどそれで悩んだりはしない、
悩んだまま何も出来ないまま死んだらあの子たちが本当に可哀想な子になっちゃうから」

「だから…あたしはやるだけのことはやってみる、それで死ぬのならせめてあいつらに命の価値を、生き様を見せ付けてから
笑って死んでやるの、あんたも出来るはずよ」
長年の修練で拳法ダコに覆われ女らしさとは無縁となってる、乙女の手を見る碧。
「こんなに頑張ったんだから、頑張れるんだからさ、ね」
「だが私はまだ」
426狂ヒ咲ク人間ノ証明 ◆PELOaKeBfU :2008/03/18(火) 21:46:47 ID:fvOv6My1
未だ視線を外したままの乙女、自分はそこまで割り切れない、まだ憂いは晴れない、
事実、目に焼きついた惨劇が彼女の心を今も恐怖で苛み続けている。
それでもこの人に、杉浦碧についていけば何かが得られるかもしれないとは感じていた。

こうしてとりあえずはお互いの友人・知己たちを探していこうということになった2人だったが。
「そういえば鉄乙女って漢字でどう書くの?え、そんな字、じゃああんたこれからてっちゃんね」
「そ…それは」
「あたしもミドリちゃんて呼んでいいから、あ、ちなみにじゅうななさいだから」
噛み合うにはまだ時間が必要のようだった。

【C-6 山里/1日目 深夜】

【鉄乙女@つよきす -Mighty Heart-】
【装備: デザートイーグル】
【所持品:支給品一式】
【状態:疲弊】
【思考・行動】
1:碧に従ってレオたちを探す
2: 自分の誇りを取り戻したい
(死への拭いがたき恐と環への劣等感あり)

【杉浦碧@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備: 不明】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:反主催として最後まで戦う
2: 知り合いを探す。
427名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 21:52:27 ID:iBEDgLIT

428名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 22:01:37 ID:iBEDgLIT

429名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 22:04:06 ID:iBEDgLIT

430名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 22:14:40 ID:iBEDgLIT
投下乙です
Spicy Drop Marble Jenka
まさかこんな展開になるとはw
みんなと仲良いといってる割に、
クラスメイトも殺すつもりなのがなんというか

狂ヒ咲ク人間ノ証明
なんか、普通の対主催組みがいるとほっとしますね
乙女の罪悪感とそれに混じった嫉妬心が見事
431名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 22:19:26 ID:BU+jAFk4
投下乙です!

『Spicy Drop Marble Jenka』
桜…ようやく出場できたのに…世界の自覚なき身勝手さの犠牲第一号に
世界って最低の屑だわ!(褒め言葉)
何も知らない鈴カワイソス

『狂ヒ咲ク人間ノ証明』
乙女さんらしい苦悩…そして一見能天気だけど熱い正義の心を秘めた碧ちゃん
このコンビの今後に期待です
そして碧ちゃんじゅうななさいw
432 ◆guAWf4RW62 :2008/03/18(火) 23:05:44 ID:PCu7+7Jx
こんばんは(・3・)
『そして始まる物語』の修正作、修正部分のみをしたらば仮投下スレに投下させて頂きました
特に問題が無いようでしたら、該当部分を差し替えた上でwikiに掲載お願いします



>>341
投下乙です
心理描写が凄まじく上手くて、桂の気持ちが余す所無く伝わってきた
自分はデモンベイン未プレイですが、アルと柱が良い感じに噛み合ってた様に思います
二人の危ないやり取りも、堪能させて頂きました
これは良いコンビになりそうだ

>>393
投下乙です
いきなり「はっ、ハンバーグ」とか叫びだした渚に吹いたw
後議論スレで指摘が出ているようなので、出来ればご一読下さい

>>420
投下乙です
世界、こいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいが(AAry
彼女の黒い部分が、良い意味で強調されたステルスマーダーっぷりでした
鈴も、原作からそのまま飛び出てきたかのような再現度の高さで凄い
桜の死を受けて、士郎がどう動くかも注目です

>>426
投下乙です
抗えなかった事に苦悩する乙女さんも、また彼女らしくて良かったです
未だ負の感情を抱えているけれど、此処から覚醒しても、叩き落されても、面白い事になりそうですね
碧も原作知らないけれど、良い叱咤激励でした
433 ◆LXeaSCgZXw :2008/03/18(火) 23:29:54 ID:iQKG6XoZ
>>432
はい。
えーと、誠の性格に関することだけど、見解はここでいいのかな?
理由を述べると、誠の性格に関しては
見せしめによる恐怖が度を越えてしまった為に、逆に吹っ切れて「覚醒」「気分がハイ」もしくは「トランス」といった
状態にナチュラルで陥ってしまっていると判断してもらえれば構いません
集中力が平時より上がっている以外の能力の上昇は決してありません
もちろんツバメ返しも使えません
434名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 23:40:37 ID:iBEDgLIT
>>433
できれば、したらばスレに書いていただけませんか?
いまから作品がどんどん投下されるようなので、
議論しづらいので。支給品のこととかもありますね

あと予約スレにトリで投下完了を書き込んでください
初心者だと分からないかもしれませんが、
それが出来ないとあらぬ疑いをかけられる可能性があるので…
435名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/18(火) 23:40:53 ID:faFkGSw9
>>433
ここだと投下の邪魔になる恐れがあるので
議論を交わすのならしたらばの議論スレの方でお願いします
436名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:04:08 ID:cXRL8hUL
仮投下スレ>>124->>131の代理投下します
437Let's Play? ◇iDqvc5TpTI:2008/03/19(水) 00:05:10 ID:cXRL8hUL
どこまでが森で、どこからが空なのか。
どこからが影で、どこまでが闇なのか。


夜空に輝く星々から漏れ出る光は、雲と枝葉に遮られ大地を照らすことは無い。
我先にと陽光を求めた木々の葉達は、貪欲にも日が落ちた後ですら地上に光を分けてはくれない。

深夜の森。
それはなんて暗い世界であろうか。
森の黒、夜の黒、影の黒、闇の黒。
ありとあらゆる黒が入り乱れる黒き世界。
幻想的とも悪魔的ともとれるこの世の異界。

古来より人が畏怖の念を抱き続けてきたその聖域は、

「ドォォォォクタァァァァァァァァァァ―――ッ・ウェェェェェェェェェェストッッッッ!!」

只今現在進行形でムード絶賛ぶち壊され中であった。
438名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:05:34 ID:6h34LUOc
支援します
439Let's Play? ◇iDqvc5TpTI:2008/03/19(水) 00:06:11 ID:cXRL8hUL
「気にくわないのである」

欝蒼と生い茂る森の中、筋骨隆々な長身をボディスーツで覆いその上に白衣を纏った男がぽつりと呟く。
思い出すのは男にとってはつい先ほどの光景――監督役と名乗った者達による見せしめと思われる惨劇。
彼、ドクター・ウェストとて悪党である。
己が望みの為だけに悪の秘密結社『ブラックロッジ』に与し、自らが設計した破壊ロボで破滅と恐怖をばら撒いてきた。
今更、そのことを弁解するつもりも道徳ぶるつもりもない。
しかし、彼には彼なりの美学がある。
この下劣な殺し合いと決して相容れることのない美学が。

何よりもう一つ許せないことがある。
ドクター・ウェストは存在自体が放送規制用語な人物ではあるが、紛れもなく天才科学者である。
しかも彼の専門は科学に限らず、魔術すらもカバーしている。
本人が魔術を使えるわけではないが、魔術を理論に組み込んだ兵器の開発などならお手の物だ。
その知識・柔軟性・発想力のどれをとっても完璧と言えるほどだ。

そんなウェストは当然のことながら、しかるべき設備か道具があれば首輪を解除できると自負している。
外すより先に遠隔操作で爆殺される恐れもあるが、逆にいえばそれは首輪に対して外部から干渉できるという証明に他ならない。
現に神父は一度起動した爆弾のタイマーの解除すらしてのけた。
同じように外部から爆弾が爆発しないよう干渉することや、主催陣からの干渉を妨害しつつ直接外すことも可能ではないか?
試しに何処からか首輪を手に入れて分解してみないことにはわからないことだらけだが、
どんな未知の技術や力が使われていたところで、自分の頭脳は首輪解除の大きな助けになることは間違いない。

当然主催陣もそのことは熟知しているはずだ。
殺された双子との会話や制限についての説明からしても、
主催者とやらが参加者の能力や正体についてかなり詳しいことは明白である。
きっといくつもの対策が用意されているに違いない。

だからこそ屈辱なのだ。

主催者たちはウェストのことをどう評価したにしろ、最終的には参加者として選んだ。
440名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:06:34 ID:E/ZWecl3

441Let's Play? ◇iDqvc5TpTI:2008/03/19(水) 00:07:22 ID:cXRL8hUL
裏を返せば、舐められているのだ、自分は。決定的な脅威とは成り得ないと、無事に首輪を外せはしまいと。

この天才が!大天才が!!一億年は前言ったから二千年足して一億二千年に一人の大!天!才!たる
我輩ドクタァァァァァ・ウェェェェストッッッがぁぁぁあああああ!!

「くう、我が宿敵大十字九郎にならまだしも、見ず知らずの奴らにこれだけの屈辱を味あわせられるとは!
 億倍返しである!今ならセットでここ最近負け続けの我輩の負債もついてくるのである!!
 え、一つでいいからまけろって?NO!!んなの知るかボケえっ、てめえらはホイホイ騙されればいいんじゃあ!」

幸い自分には心強い味方がついている。
人造人間エルザ。高位の魔術師とも互角に渡り合う戦闘力を秘めたドクター・ウェストの最高傑作。
一人ずつ『ゲーム』とやらの舞台に転移させられたからこそ今ははぐれてしまっているが、
自分とエルザは一心同体、呼べば必ず現れると、ウェストは根拠もなく信じて疑わない。

「ふん、この程度で我輩たちの絆を断ち切ったつもりであるか?甘い、甘すぎるのであーる!
 ああ、あれは甘く切ない我輩の青春時代。恋と夢を天秤にかけたあの日。
 後から乗せた我輩の科学への情熱の重さによって、ジャンプ台と化した天秤から飛んで行く恋心!
 行くのである、誰も見たことのない宇宙の彼方へ!!あれ、なんか熱い!?た、大気圏!?ぎゃー!」

我輩の愛は燃えるように熱いのだとえらくひねりのない結論に達したウェストは、
442Let's Play? ◇iDqvc5TpTI:2008/03/19(水) 00:08:26 ID:cXRL8hUL
今か今かと出番を待っているであろう我が子の名を、愛をこめて高らかに大声で告げる。

「かも〜〜ん、エェルザ!」

 




風が木々の葉を揺らす。
ざわざわと鳴る音だけが虚しく響く。
それだけだ。常に彼の傍らにいた相方の返事はない。







「エルザ!エルザァァァァァァ!?NOォォォォォ」

先程までの威勢はどこへやら、先端が白く染まったやたらと明るい緑色の髪を振り乱し、
涙と鼻水を垂れ流しながらドクターウェストは絶叫する。
愛が足りなかったのかと体をくねらせアホ毛をおっ立て叫び続けるも、見慣れた少女の姿はおろか返事すらない。

「ま、まさか、我輩を残して嫁いで行ってしまったのであるか、あの鬼畜外道ロリコン変態探偵の元に!
 我輩の美学そのものがあのような男に汚されるなどと!エルザー、逃げてー!
 行ってはいかんのである、マイ・フィア・レディー、エルザー!カムバッークッ!」

がくりと肩を下ろし膝をつくドクター・ウェスト。
443名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:08:43 ID:Dbr5+YFs
444名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:09:21 ID:sYcLXCx3
 
445Let's Play? ◇iDqvc5TpTI:2008/03/19(水) 00:09:22 ID:cXRL8hUL
およよよと泣きじゃくるも、最後の希望とばかりにランタンに明かりをつけ、名簿の隅々にまで目を通す。

尚、暗い森ではランタンの光がとてつもなく目立つことなど、これっぽちも気にしない。


幸か不幸か彼の最高傑作たる人造人間の名前はどこにも載っていなかった。
代わりとばかりに目についたのは一つの名前。
ティトゥス。
ウェストが所属するブラックロッジの大幹部『アンチクロス』の一人だ。
参加者に奴がいること自体は問題では無い。
重要なのはブラックロッジの頂点に立つ大導師が今回の件を見逃したということだ。

鬼であったらしい双子を瞬殺した神崎黎人の力は、数多くの超人を知るウェストからしても中々のものだった。

少女から立て続けに幼馴染を奪った言峰綺礼の歪みは、同じ狂人であるウェストからしても相当のものだった。
446名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:09:24 ID:Dbr5+YFs
447Let's Play? ◇iDqvc5TpTI:2008/03/19(水) 00:10:19 ID:cXRL8hUL
だが、それでも。足元にも、及ばない。あまりにも、届かない。圧倒的すぎるのだ、「聖書の獣」大導師マスターテリオンは!
そんなマスターテリオンが、悲願たる『C計画』の発動直前に組織の重要人物二人をむざむざ奪われるとは思えない。
いや、むしろいつもの戯れで見逃したというのならそれはそれで構わない。
だが、もしも現状が気まぐれの結果で無いとしたら。神崎黎人も匂わせていたではないか、黒幕の存在を。
その黒幕は大導師と何らかの関係を持っているとのでは。
最悪マスターテリオン本人、あるいはあの魔人をも上回る邪悪が黒幕である可能性も……。

「ま、まだである!我輩には無敵ロボがあるのである!共に闘い続けたロボと我輩。
 心の無い筈のロボが最後の最後で我輩を守るために単身主催者の根城へと突っ込んでいく!
 『も、戻るのであるロボ!』『博士、エルザの口癖ぱくるなロボ』『ちょ、エルザァアアア!?誤解なのでグギャハゴベ!』
 ロボを一人で死なせない我輩の優しさに、全我輩が涙。ホロリ」

ぞくりと、己が想像に肌寒いものを感じたのウェストは、恐怖を誤魔化すかのように立ち上がり声を張り上げる。
主催者たちの手に渡っているかもしれない愛しのエルザを助けにいく我輩燃え、と勇気を奮い起す。
こんなこともあろうかと、幸い新型の破壊ロボは例え地球の裏側から呼んだとしても現れてくれる優れものだ。
これぞまさに男のロマン!指パッチンも忘れない!助けて僕らのピンチジェノサイダー!!

「さあ、今こそ友のもとへ駆けつけるのである、スーパーウェスト無敵ロボ29号先行公開型劇場版スペシャルぅぅううううう!!」





世界は依然黒一色に支配されたままである。
闇を切り裂くロケット噴射の光が空に輝くことはない。
448名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:10:29 ID:Dbr5+YFs
 
449名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:10:36 ID:6h34LUOc
 
450名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:11:11 ID:Dbr5+YFs
 
451名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:11:16 ID:sYcLXCx3
 
452Let's Play? ◇iDqvc5TpTI:2008/03/19(水) 00:11:39 ID:cXRL8hUL
大地を震動が揺るがし銀のドリルが姿を現すこともない。



「ろ、ロボ!?愛するエリザをみすみす奪われた我輩では、操縦者にふさわしくないということであるか!?
 っく、だが我輩は信じているのである。最終回付近で君が駆けつけてくれることを!」

そういえば、言峰綺礼は『元の世界』という言葉を用いていた。
なるほど、さすがの我輩も別世界へのワープ機能は破壊ロボに組み込んではいなかったと、実にあっさり納得する。
それでもドリルなら次元の壁くらい突き破ってくれるはずと信じていることも合せて、色々とんでもない人物である。

「……うう、静かすぎるのである」
とはいえドクター・ウェストも人間だ。
しかも、彼の世界では最も活気溢れる街――アーカムシティの住人であり、愉快犯なのだ。
一転して虫の子一匹すらいない夜の森に一人放り出されれば、寂しいと思ったりもするのである。

ちなみに、先程までの大声が好からぬものを呼び寄せうるとは、思ってもいない。


「っは、て、天才とは常に孤高!とはいえ大十字九郎達も主催者打倒に動くはず。
 同じ敵を前にして手を組むライバル達!
『か、勘違いしないでよね!?一人で寂しかったわけじゃないんだからね!?』
 そんなツンデレな我輩も萌え」

ふとデイパックが目についた。
わざわざ能力に制限をかけるくらいだ、破壊ロボが支給されることはないだろう。
だが、愛用のギターなら入っているのではないか?あれのケースはミサイルが発射できる立派な武器なのだから。
僅かな期待を胸にデイパックを漁り出すドクター・ウェスト。
あれでもないこれでもないと探り続けること数十秒、遂に望んでいたものが姿を現す。
楽器である。ギターでこそないものの、箱に詰められたそれはどう見ても鍵盤だ。
まともに曲を弾くならともかく、音を鳴らすだけなら、ピアノやオルガンといった鍵盤楽器ほど簡単なものはない。
453名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:12:54 ID:3R4Q9I4c
 
454Let's Play? ◇iDqvc5TpTI:2008/03/19(水) 00:12:59 ID:cXRL8hUL
強そうな名前からして意外とロック向きかもしれないと、ウキウキしながら説明書を見つつ組み立てていく。

言うまでもなく、一か所に留まるのは危険だなどとは、考えもしない。


「ぬはははははははははははははははっ!天才とは天に選ばれた才能の持ち主!
 故に我輩には神の加護が付いているのである!
 我輩の熱き魂のシャウトに着いてくるには少し心もとないが、
 そこは我輩、どっかの鬼畜で変態な探偵とは違って紳士なのであ〜る。
 優しく、優しく、レェッツ・ロォッケンロォォォオオオオオル!!」

準備を終えたマッドサイエンティストの指が鍵盤の上を踊る、踊る。
コンソールを弄るかのような出鱈目で乱雑な動きだが、そもそもが初めて鳴らす楽器である。
派手になりさえすればそれでいいと適当に弾き続ける。
されど、無音。どこをどう押そうとも音の一つすら奏でられない。
起動ボタンでも押し忘れたのかと最後まで読んでいなかった説明書に再び目を通し、絶句する。

「は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

説明書の最終行、そこにはこう書かれていた。

『魔導奏器。鍵盤楽器。生来の資質を有する者にしか演奏できない』

「ま、魔導奏器?」

知らない名称だったが、魔術を組み込んだ楽器という直訳でなんとなくわかる。
たぶん一定の魔力がないと弾けないとかそういうことなのだろう。
またも、魔術。ドクター・ウェストの前にいつもいつも立ち塞がる壁。
ウェストは憎々しげに楽器を元の箱へと戻す。
いつか改造するなりして弾いてみせると、フォルテールという楽器の名に負けないよう強い意志を込めて。
455名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:13:36 ID:Dbr5+YFs
 
456Let's Play? ◇iDqvc5TpTI:2008/03/19(水) 00:14:01 ID:cXRL8hUL
「ふふふ……ふははは……ふははははっ!まあ良いのである。
我輩の頭脳は異界の魔術をも超えることを証明してみせるまで!
分解である!解析である!!改造である!!!
そうだ!そうだとも!我輩の科学に支配できぬものなど何も無いのである!
我輩はドクター・ウェスト!科学の申し子ドォォォオオオクタァァァァァー・ウェスト!」

がんばれ僕らのドクター・ウェスト!科学が魔術に勝利するその日まで!!



【E−4 深い森 深夜】

【ドクター・ウェスト@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:フォルテール(リセ)
【所持品】支給品一式、ランダムアイテム×2(確認済み 楽器ではない)
【思考・行動】
基本方針:我輩の科学力は次元一ィィィィーーーーッ!!!!
1:設備・器具の入手
2:首輪のサンプルが欲しい
3:首輪の解除
4:フォルテールをあらゆる手を使って弾いてみせる
5:誰か人と合流したい(ティトゥス以外)

【備考】
※マスター・テリオンと主催者になんらかの関係があるのではないかと思っています。
※ティトゥスを警戒しています。
※フォルテールをある程度の魔力持ちか魔術師にしか弾けない楽器だと推測しました。
※相当派手に騒いでいるので、同エリア内の誰かに一方的に見つかっているかもしれません。
457名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:14:35 ID:cXRL8hUL
代理投下終了しました
458名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:15:26 ID:3R4Q9I4c
 
459 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:18:39 ID:oZPakt6K
レオ、美希の投下始めます。
460名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:20:00 ID:Dbr5+YFs
支援します
461 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:21:00 ID:oZPakt6K
月光が差し込む深い夜の森。草木も眠ると言われる時刻も遠くない。
眠ろうとする草木の中、声を上げ、憤りを露わにするひとつの学生服は、広い森にあってある意味異物ともいえる。

「ふざけやがって! 俺はこんなゲームになんて乗らない」

俺――対馬レオ――は激情のままに、傍らにあった木を殴りつけていた。
剥き身のまま叩きつけられた拳がじんわりと痛む。
神父が開幕を宣言した場で目にしたものは、思わず現実を疑いたくなるような、あまりに有り得ない光景だった。
しかし、拳の痛みは、じんじんと、これは夢ではなく現実だと伝えてくる。

ここにやってきてはじめにやったことは名簿の確認だった。
開幕が宣言されたとき、日ごろからよく見知った顔を視界に捉えていたからだ。
確認の結果、スバル、フカヒレ、椰子、乙女さんから館長までもがこのゲームに参加させられていた。
名簿を見ていく中で、他に目に付いたのは柚原このみという名前。
無慈悲に首輪を爆破された少年に縋り付いて泣いていた少女。意に反して、場の中心となってしまった少女。
あの場での悪夢が否応にも蘇り、激しい憤りを手近な木にぶつけてしまっていたのだった。

時間が経ち、ほとんど痛みが引いた拳を下ろす。
落ち着け、一時のテンションに身を任せるのはよくない。
自身の口癖にも近い言葉と共に心を静めようと試みる。完全に頭を冷やせたとはいいがたいが、思考は可能だ。
まず、自分が今すべきことを考えなくてはならない。現実を認識できないうちに死んでいたなんて、笑い話にもならない。
462名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:21:39 ID:8zJWi8k5
463 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:21:43 ID:oZPakt6K
はじめに、今後どう行動するかだが、これは簡単だ。
こんなゲームは壊してしまえ。そして、ここから脱出だ。
ゲーム開始を告げたあの場で、今までの常識では考えられない、明らかに異常な存在に見えた双子が殺された。
あんな力は俺にはない。そもそも、あれが何なのかもわからない。
自分は、彼女らよりも弱い存在だから、抵抗しても無駄でおとなしくゲームに乗るべきなのか?
冗談じゃない。こんな常識はずれな催しだ、完全であるはずはない。どこかに付け入れるところはあるはずだ。
それに一人二人で無理なら、もっと大勢でかかればいい。
最初から諦めてかかっては、為せるものも為せないというものだ。
そして何よりも、この対馬レオ自身の心の底からの感情が、理屈抜きにこんなゲームなんて認めないと主張していた。

主催者への怒りから煮えたぎっていた感情は、ようやくまとまってきていた。
そこで、まだ荷物を名簿しか確認していなかったことを思い出す。
一通り確認しようと荷物へと手を伸ばしかけ――――

ガサッと、深夜の森の中の静寂を破り、確かに人の存在を示す音が耳へと届いた。

「誰だ!」

反射的に音の方向へと声を投げかける。音はおそらく一足で襲いかかれるような範囲から聞こえたように感じた。
既に奇襲が成功していてもおかしくない距離である。
迂闊だった。この距離まで近づかれるまで気づけないほど、熱くなり、注意力を欠いていた自分を恨む。
中身は確認していないが、苦し紛れに荷物へと手を突っ込んで見せ、警戒を最大まで高める。
こうも早く、こんな事態に陥るとは――
464名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:21:43 ID:Dbr5+YFs
 
465名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:22:15 ID:8zJWi8k5
466名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:22:24 ID:QzBguckH
 
467 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:22:24 ID:oZPakt6K
「わ、わっ、その、決して怪しいものではっ」

しかし、拍子抜けな答えと共に現れたのは一人の制服を着た少女だった。
よほど慌てたのか少女は、わざわざ持っていた荷物まで投げ捨てて見せた。
さらに怯えを含んだ表情で両手を挙げる。

「あ、争う気はないんです。荷物も、ほら、捨てましたし」

突然殺し合いに放り込まれた緊張のせいか、そこまでされてようやく一応は警戒を解くことが出来た。
荷物に突っ込み、握り締めていた手は、汗でじとっと湿っていた。

◇ ◇ ◇

「はあ、つまり今までの話をまとめると主催者をどうにかして、ここから脱出しようということですね?」

ここにきてから考えたことについて、一通りの説明を終える。
ゲームからの脱出の意思、頼りすることが出来そうな館長や乙女さんの話などだ。
出会った少女は、山辺美希と名乗った。
山辺は、水色をベースにした制服姿だった。波がかった長く茶色い髪が特徴的で、自分より少し年下に見える。
会ってすぐは、視線が泳ぎがちで、多少の動揺が伺えたが、話をしているうちに落ち着いてきたようだ。
彼女もこのゲームに乗る気はないらしく、仲間が出来たのは素直に心強かった。

「そうだ。山辺、協力してもらえないか? 館長たちもきっと同じ考えだ」
「……そうですね、微力ながら協力させていただたく思いますです。
 はあ、はじめて会った人が対馬さんで安心しました。物騒な人だったら、まったくどうしようかと」

少しの間の後、山辺は笑って答えを返してくれた。
468名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:22:25 ID:Dbr5+YFs
 
469名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:22:34 ID:3R4Q9I4c
 
470名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:22:59 ID:Dbr5+YFs
 
471 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:23:08 ID:oZPakt6K
「そうか、よかった」

幸先は悪くない。周りを皆殺しにしてやろうとする人間がそれほど多いとは考えにくい。
なにせ、自分の知り合いはみんな殺し合いをしようとする人間ではない。
この先だってきっとうまくいくはずだ――――っと、それでもあまり楽観するわけにはいかないか。
簡単にその場のテンションに身を任せると失敗は見えてる。

「山辺は知り合いがここにきてないのか?」

状況が状況だ、情報の持つ意味は普段以上に大きい。
自分の知人が5人も連れてこられている以上、集団単位で拉致されている可能性は高い。
山辺も複数人で連れてこられたというのは十分考えられることだった。


「はい、同じ学校の友達と先輩が来てるみたいです。
 私以外だと佐倉霧、黒須太一先輩、支倉曜子先輩の三人です。ただ……」

山辺は話しながら目線を下げ、表情を曇らせる。何か言い辛いことでも、あるのかもしれない。
ためらいがちに説明されたのは、こういうことだった。
まず、黒須太一という人物は、精神的に問題があり、日常生活には基本的に支障はないが、何かの弾みで暴走するらしい。
この暴走した状態になると、周囲に対する攻撃性があり、非常に危険ということだった。
しかも、今置かれていう状況は殺人ゲームの盤上。極めて暴走しやすくなっているのは間違いなかった。
そのくせ、頭と口がよく回る人物らしい。特に人の心に付け入るのが上手いため、なお危険だという。
そして、もう一人、支倉曜子。彼女は何を置いても黒須太一を優先するらしい。
つまり、黒須太一のために、他者に対して極めて有害な行動を取る可能性があるということだ。
しかも、知略、戦略に優れ、戦闘力もあるという。
味方に出来れば心強いが、敵にすると非常に厄介だ。
472名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:23:11 ID:8zJWi8k5
473名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:23:37 ID:cXRL8hUL
 
474 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:23:44 ID:oZPakt6K
「こういうふうに悪く言うのは心苦しいんですけどね。今置かれてる状況を考えるとですねえ……」
「ああ、気分はよくなかっただろうけど、ありがとう。知っておくに越したことはないよ」

苦笑いしながら頬をかく山辺に言葉を返す。
もう一人の知り合い、佐倉霧という子は、おそらく大丈夫ということらしい。
繊細な子らしく出来れば早く合流してやりたいとのことだった。

「それじゃ、移動先を決めよう。
 スバルたちも探したいし、街のほうに向かってみるか、森にずっと居たってしょうがないしな」

支給品の確認も済ませたし、ひとまず街へ。
はじめに山辺と会えたのは幸運だっただろう。もちろん一人よりも安全ということもある。

ただ、それと……いつも回りにいる女の子たちと違って強気すぎないのは正直安心もする。
強い女の子とさすがにそこまで縁があるわけじゃなかった、ってことだよなあ。


◇ ◇ ◇
475名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:23:59 ID:8zJWi8k5
476名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:24:07 ID:Dbr5+YFs
 
477名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:24:09 ID:QzBguckH
 
478名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:24:25 ID:sYcLXCx3
 
479名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:24:28 ID:cXRL8hUL
480 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:24:31 ID:oZPakt6K
人。人がいた。生き物がいた。
連れてこられたこの場所は、私――山辺美希――を含んでたったの8人で繰り返す孤独な世界ではなかった。
夜も深い森の静けさも、文字通り生き物が絶え果てた森の静けさには劣る。
ただその代わりに、この世界はいずれ血で血を洗うであろう殺戮の舞台だった。

あの一週間を何度繰り返してきただろう。
月曜日に始まり、日曜日に終わる世界。
一週間でリセットされ、ループする世界。
たった8人だけが世界から切り取られた世界。

繰り返される世界には、ループを逃れられるわずかな場所があった。
その法則を知り、私は私としてリセットされることなく生き続けることが出来ていた。
それは簡単なことではなかった。生きるために普通なら非難されてしかるべきこともやってきた。

見里先輩が精神的に追い詰められて屋上から落ちるのをただ眺めていた。
冬子先輩が衰弱死した後に胸に短剣を刺してきた。
暴走しそうな太一先輩から、他のみんなを身代わりにして逃げた。

ただただ、私が、『この』私であるために行動してきた。
481名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:25:22 ID:cXRL8hUL
 
482名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:25:27 ID:3R4Q9I4c
 
483 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:25:29 ID:oZPakt6K
そして今回ここに連れてこられた。
ここはループ世界の一部なのか、それとも既にその枠外か。考えたところでわからない。
それでもひとつ確実なことがある。
私はなんとしても生きて帰りたいということ。
この願い自体は人として当然の願いに違いない。しかし、私は適応係数40を超える世間的には異常者だ。
他人に共感するという感情がわからず、人よりも自己愛が強いらしい。
皆殺しにして優勝することを躊躇する参加者は少なくないだろう。
でも私は、何を置いても、優勝してでも生きて帰りたかった。
何らかの理由でループを脱し、ループ世界の枠外なら、当然そのまま死んでしまう。
ループ世界の枠内なら死はそのまま初期化を意味する。たとえループによって戻ったとしてもだ。
それは私であって、私ではない。
固有の時間を生きる私は、リセットされれば死んでしまうのだから。

しかし、いくら生き残りたくても私は一介の生徒でしかない。
この催しを簡単に生き残ることが出来るとは思えなかった。
そこで考えた手段。それは集団に紛れること。
複数人でいれば、殺し合いに乗った人間からは身を守りやすくなる。
襲われた際、場合によっては仲間を切り捨てて自分だけでも逃げ延びればいい。
殺し合いに乗っていない人間からは信用されやすくなる。
私は見た目ただの女子校生だ。こちらを信用した相手は身を守ろうとしてくれる可能性は高い。
使えない人間は、状況を見て私が処理していけばいい。

対馬レオ。
この会場に来て最初に見つけた人間。長い間見ていなかった、あの7人以外の人間。
外見はごくごく一般的な男子高校生。
様子を伺った限り、このゲームに反抗しようとしていることが見て取れた。
こんなゲームに乗らないと、一人でわざわざ口に出していたあたりで、接触して問題ないと判断できた。
わざと音を立て、こちらを気付かせ、無害を装ってある程度自然に接触することも出来たと思う。
男である以上、それなりに身を守る力になってくれるのは期待できそうだ。
頼れそうな知り合いが多いというのもプラス。いざとなればそちらに乗り換えることもできる。
484名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:25:48 ID:6h34LUOc
485 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:26:03 ID:oZPakt6K
太一先輩と曜子先輩もひとまず警戒させるということにも成功した。多少に誇張して話したという部分も含めて。
おそらく彼らは私が生き残るための物理的障害になる。なるべく接触は避けたい。
太一先輩と会って、心を乱されてしまうかもしれないのも怖かった。
霧については、こんな私のことをちゃんと友達だと思っているだろう。
霧は、きっと役にたってくれる。ただ、最終的に自分の手にかける可能性を考えると、あまりいい気分ではない。

なんにしても、何もせずに生き残ることは出来ない。
ひとまずは対馬さんが、私を守る「盾」になってくれるだろう。
開幕が宣言された場を見渡した限り、50人以上の人が集められていた。きっとこの催しは長丁場になる
焦りは禁物。今のところしっかり無害を装えているはずだ。

対馬さんから移動を促す声がかかる。市街地方面に向かうとの事だ。

「はい、行きましょうか」

私はにこにこと笑顔を崩すことなく答えた。
対馬さんは護身用に銃を持って移動するようだ。
私は何も持っていないように見えるが、投げナイフは隠し持っている。
でもこれは対馬さんには教えていない。場合によってはこれで対馬さんを刺す可能性だってあるわけだから。
私が無手でも、自分が銃を持ち、守ろうとくらいはしてくれているんだろう。

えへへ、しばらくの間はしっかり役に立ってくださいね。対馬さん。
486名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:26:17 ID:cXRL8hUL
 
487名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:26:37 ID:QzBguckH
 
488名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:26:42 ID:Dbr5+YFs
 
489 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:26:45 ID:oZPakt6K
【D-5 森/一日目 深夜】

【対馬レオ@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M38 弾数 5/5】
【所持品:支給品一式、予備弾20、ランダム支給品0〜2(本人確認済み)】
【状態:健康】
【思考・行動】
 基本方針:ゲームからの脱出、仲間集め
 1:自分と山辺美希の知り合いを探すため、また脱出のための仲間を集めるため、北東の中心街を目指す
 2:太一、曜子を警戒

【備考】
 ※CROSS†CHANNEL勢のごく簡単の人物説明を受けました。
  本文記述部分以外どの程度またどのように説明したかは後の書き手さんにお任せします。

【山辺美希@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:支給品一式、投げナイフ4本、ランダム支給品0〜2(本人確認済み)】
【状態:健康】
【思考・行動】
 基本方針:とにかく生きて帰る。集団に隠れながら、優勝を目指す。
 1:対馬レオについて、北東の中心街を目指す
 2:太一、曜子を危険視

【備考】
 ※ループ世界から固有状態で参戦。
 ※つよきす勢のごく簡単な人物説明を受けました。

・S&W M38

1959年にS&W社がM36を元に開発した、Jフレームの小型回転式拳銃。
愛称は『ボディーガード』。装弾数5 予備弾数20発。
490 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:28:06 ID:oZPakt6K
以上で投下終了です。
多数の支援ありがとうございました。
問題点など、指摘がありましたら、よろしくお願いします。
491 ◆CKVpmJctyc :2008/03/19(水) 00:31:29 ID:oZPakt6K
タイトルは『固有の私でいるために』でお願いします。何回もすみません。
492 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:34:51 ID:cGACwxqF
投下乙。やはりクロチャンの面子は恐ろしい。

修正終わりました。
前投下が終わったばかりなので40分ごろから投下します。
493名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:36:06 ID:cXRL8hUL
投下乙です
では感想を

Let's Play?
さすが西博士wwこの状況下で普段通りのハイテンション
こういう和むキャラは必要不可欠ですぜw

固有の私でいるために
美希黒いよ…((((;゜Д゜)))
クロスチャンネルをプレイしてない自分でも彼女の歪みの片鱗が伝わってきます
レオがいつまで彼女を味方につけていられるかに注目
494名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:39:00 ID:sYcLXCx3
>>454
投下乙です
自分はデモンベイン未プレイですが、騒ぎ回るウェストに思いっ切り吹いたw
良い意味で暴走しまくりなキャラですね……w
首輪解除技能もあるようだし、ギャグもこなせるし、今後の活躍に期待大

>>461
投下乙です
相変わらずテンションに身を(ryと言いつつ、心中穏やかでないレオ
そして善良と見せ掛けて、実は冷静で腹黒い美希
全く違う二人の、それぞれの視点からの描写が興味深かったです
特に美希は、貴重な純正ステルスマーダーとして目が離せない
495真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:41:32 ID:cGACwxqF
直枝理樹は、森に潜んでいた。
転送された先は、不運にもMAP中央の湖の「中」。幸い浅い部分であった。
身を隠せる場所に座り込み、ずぶ濡れのまま支給品と名簿を確認。
自分以外に、仲間が五人も巻き込まれていたことにショックを受けていたのだが――

今、その彼の全身が震えている。湖に落ちて濡れたから、というわけではない。
目の前で繰り広げられる、ありえない戦いに。
戦う二人から発せられる、始めて感じた殺気に怯えているのだ。

「詰まらん、詰まらんぞ! 魔術師の類だと期待してみれば、姑息な暗殺者に過ぎんとはな!」
侍そのものという容姿の男が、投擲される何かを薙ぎ払い、避けながら相手を追い詰める。
「ギッ――」
相手は、異常な相貌をしていた。
黒いローブを纏う、骸骨のような仮面の男。

「――詰まらん。失望させてくれた報いを受けるがいい」
侍が持っているのは、刀でも剣でもない鈍器が一つ。
その頼りない武器を、繰り出される斬撃が、移動する速度が補っていた。
月明かりの下、二つの影は留まることを知らない。

速い、なんて次元ではなかった。理樹が知る限り最速の、来ヶ谷さんや鈴の速さでも及ばない。
目で追うのが精一杯……たぶん、銃を持っていても正面からでは相手にならない。
そして――異形の骸骨面の男は、それ以上に速かった。
だというのに、押しているのは侍。戦いは速さだけでは決まらず、技量、力は侍の方が上なのだろう。
骸骨面の男は、侍の攻撃をなんとか避けながら木片らしきものを投げ続ける。
それを難なく切り払われ、骸骨面の男は、湖に逃げた。

「逃がすか!」
そこに、侍は足を踏み入れ追う。

――そして、理樹は骸骨が笑ったのを確かに見た。
496名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:42:06 ID:Dbr5+YFs
 
497名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:42:19 ID:Kz//0QZE
投下乙です
クロチャンをプレイしたのはずいぶん前ですが
美希のキャラを鮮明に思い出せました。美希らしいです。

レオ…やっかいなのに捕まったなぁw
今度は長生きしろw
498真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:42:56 ID:cGACwxqF
侍も、もちろん気づいただろう。
しかし、そこに骸骨の投擲が迫る。

その数は、四。木片とはいえ、当たり所次第では死ぬのでは、という速さのそれを無視はできない。
そして、侍の足場は、水の中であるが故に回避は不可能。
だが、侍には全てを薙ぎ払うだけの技量があり、当然のようにこなす。

それが、骸骨の狙いだった。
骸骨面は、木片を投げた瞬間には行動に出ていた。
ローブから、掲げた右腕が覗く。
腕が、馬鹿みたいに長い。僕の身長以上ありそうな腕だった。
なぜだか黒布に覆われた右腕が、解かれる。

(あ、え……えええ!?)
布の中から出てきたものは、折りたたまれた腕だった。
右腕だけが、さらに異常に長かった。左腕の倍はあろう魔腕が姿を現す。

「――――妄想心音(ザバーニーヤ)」

初めて、言葉らしい言葉を骸骨が発した。
魔腕が、侍に伸びる。
二人の距離は、約5メートル。
それでも、その異常に長い腕は確実に届く。
侍は避けることはできず、攻撃を防いだその動きは、一瞬の隙を生んだ。
絶対に回避不能。素人の理樹すらも、それを確信していた。

「なぁっ―――!?」
悲鳴に近い声は、骸骨面の男があげることになった。
伸びた腕は、戻ることは無かった。
なにせ、根元から切り落とされていたのだ。

侍――ティトゥスの隠された三本目の腕に持つ、異様な形状の刀によって。
499名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:43:08 ID:Dbr5+YFs
 
500真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:44:03 ID:cGACwxqF
「人体を変異させているのが、自分だけとでも思ったか?」
徒手空拳だった、通常の左腕に刀を持ち替え、骸骨面に迫る。
勝敗は決したも同然だった。

理樹は、離れるべきだと感じた。
あの骸骨面の男が殺され、次に狙われるのは自分かもしれない。
深く息を吸って、頭に血を巡らす。
そして、考えた結果。
理樹は、その相手に向かって行っていた。

侍は、顔すら向けなかった。
ほんの一瞬、視線が向いたかどうか。
「何……!?」
何が意外だったのか、侍は驚いている。

理樹の手にあるのは、支給品の一つ、バルザイの偃月刀。
このまま斬りかかる? 絶対に殺される。
だから、説明書に書いてあった通りに、振りかぶって投げた。

侍は単調すぎる軌跡をかわす。
説明書には「魔導具、バルザイの偃月刀。魔力を通せば灼熱の刃となり、展開すれば投擲武器になる。魔術使用時の効果を上げる触媒ともなる」とあった。
魔力なんてあるはずもなく、戻ってくる前に、侍に切られるのは確実。どうにもなりはしなかった。

――投げたそれを、骸骨の男が受け止め、投げ返さなければ

「シッ!」
投げた偃月刀は、僕が投げたときとは勢いからして違う。
「ぐぅッ!」
避けきれず肩を切り裂かれた衝撃で、侍の左手から得物が弾け飛ぶ。
それを、理樹が受け止めたのと同時に、体が浮かぶ感覚に襲われた。
501名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:44:21 ID:Dbr5+YFs
 
502名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:44:45 ID:sYcLXCx3
 
503真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:44:56 ID:cGACwxqF
「えっ? わ、わぁぁ!?」
理樹が骸骨面に掴まれていると気づいたときには、侍の姿が小さくしか見えない距離まで離れていた
それに、追いつこうと走る侍だったが――撤退する骸骨の速さは、理樹を抱えてなお、それ以上に速かった。


追いつけぬとわかった時点で、ティトゥスは追跡を断念した。
「逃げられたか……」
しかも、獲物まで奪われた。
バルザイの偃月刀。あれを投げてきた男を、大十字九郎――マスターオブ・ネクロノミコンと見間違えた。
一瞬、隙を生んでしまいこの様。よく見れば、似ても似つかぬ羽虫だったというのに。
傷は深くはない。血は出ていない……傷口が偃月刀の熱で焼けているために。

「とはいえ、あの程度の得物は替えが効く。このような業物でもなければな」
双身螺旋刀というらしい刀を振る。
刀というには禍々しい、四本の刀を捻じり融合した魔刃であった。
「得物など使い捨てるのが当然と思っていたが。なるほど、これほどならば頷ける」
湖に浮かぶ、切り落とした腕を拾う。

「悪神の腕といったところか。どういう技かは知らぬが、喰らえば魂を奪う外法には違いあるまい」
その腕を、何を思ったかディパックにしまうティトゥス。
「取り返しに来るなら、それも一興。とはいえ、切り札の無い骸骨如きに、その度量はないか」
今の一戦で、自身の体の変化は把握できていた。
身体能力の低下は激しく、そればかりか。
「刀を召喚できない、か」
封印されたわけではなかった。しかし、ティトゥスの魔力総量を以ってしても、呼ぶことが出来ない。

「『屍食教典儀』がなければ無理ということか。力を求めたが故に力を抑制されるとは、笑えぬ話だ」
宿敵たるウィンフィールドも、マスターオブ・ネクロノミコンとそのマスターも制限化にあることは容易に想像できた。
「覇道邸の警備をしていた雑魚程度でも、束になれば今の俺では万が一はある。
ドクター・ウェスト……それ以下の雑魚にも勝利の可能性をもたらす為のものだとすれば」
ティトゥスの顔に自然と笑みが浮かぶ。
504名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:45:04 ID:Dbr5+YFs
 
505真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:45:32 ID:cGACwxqF
「すなわち、制限が必要な強者が、宿敵以外にもいるということ。
支給品次第では、弱者とも死合いを望める、か。それまでに獲物を四本集めたいところだな」
あの神父と小僧の言いなりというのも気に入らないが、せっかくの戦場を無駄にはしない。
ブラックロッジが大幹部、アンチクロスのティトゥスにとって、強者と戦うことこそ喜び。
もし、最後に生きているのは自分ならば、あの二人を斬る機会もあるだろう。
地図を開き、刀剣がありうる美術館に向かうことを決めた。
そうして、ティトゥスは骸骨の男が消えた方角とは逆に歩き出す。
「だが、宿敵よ。願わくば生き残れ。この俺に、斬られるまでな」
呪いのような願いを呟いて、深い森へと進んでいった。


【D-4北部 深い森の中 深夜】
【ティトゥス@機神咆哮デモンベイン】
【装備:双身螺旋刀@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【所持品:支給品一式、不明支給品0〜1(刀剣類ではない)アサシンの腕】
【状態:右肩に軽い斬り傷と火傷】
【思考・行動】
基本行動方針:死合う
1:美術館に向かう。見つけた参加者とは死合う。
2:刀剣類と『屍食教典儀』(もしくは類するもの)を探す。
3:ウィンフィールドと死合いたい。
4:骸骨の男が追ってくるならば、再び死合う。
【備考】
※参戦時期は、ウィンフィールドと二度目の戦いを終えた後です。
※身体能力の制限に気づきました。
※刀の召喚は、魔導書などによるサポートが無ければ使用不可能です。
【双身螺旋刀の説明】
鍛えられて百年以上の妖刀霊刀四本を融合させた螺旋状の刀。本来の持ち主は、名もなき妖。
その強度、切れ味は凄まじいが、その形状のためドリルのように相手を抉る方が適している。
持つところ以外、柄の部分さえも螺旋状の刃なので扱い難い危険な代物。
506真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:46:24 ID:cGACwxqF
完全に追跡を振り切ったのか、落とすように離された。
骸骨面の男の腕は、既に血が止まっていたが、痛々しい切り口はそのままだった。
「あ、あの、大丈夫で――」
「どういうつもりだ、小僧。素人でもわかる死地に、何を考え踏み込んだ」

骸骨面が理樹を睨みつける。
震えはしなかった。慣れてしまったわけではなく、恐怖心がマヒしているだけだろう。

「まさか、私を助けようなどと」
「ごめんなさい、それはないです」
怪しい仮面の男に免疫があるとはいえ、それを助けようと思うほど理樹は聖人のような心は持っていない。

「いや、むしろ安心したが……だが、ならばなぜだ?」
「これを……取り返したかったんだ」
今、手に握られているもの。それは、野球のバットだった。
「それは、小僧の物なのか?」
「いや、友達のバットだけど。これを、どうしても取り返したかったんだ」
「その程度で命を張ってどうする」
こんな物を取り戻すために、命を危険に晒したなんて。鈴でなくとも「馬鹿だろお前」と言われて当然だ。
それでも、仲間と散り散りになった今。日常にあったモノを、手に入れたかったのだ。

「武器への愛着ならわかるが……小僧、他に短剣の類は持っていないか?」
「無いけど」
やたら残念そうな骸骨面。そんなに大事なものなのだろうか。

「だが、結果的には助けられた。礼を言わねばなるまい」
「あっ、いえ。えーと、僕、直枝理樹って言います。あな、あなたは……?」
「アサシンだ。名簿上では何故か真となっているが……まぁ、理由は薄々わかっているのだが」
アサシン。英語でAssassin。日本語で……

「アサシンさんですか。って、えっと……これ、もしかして、名前じゃなくて」
「真名は別にある。これは私のクラス…判りやすくいえば、職業だ」
507名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:46:32 ID:Dbr5+YFs
 
508名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:46:39 ID:sYcLXCx3
 
509真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:46:58 ID:cGACwxqF
暗殺者。見た目どおり、この人は本当の殺人者だった。

「小僧、聞いていなかったが……この殺し合い、お前はどう動く?」
「それは……」
自分の命は、目の前の男――アサシンに握られている。
ここは、どう答えればいいか。どうすれば、死なずに済むか。
「こんな殺し合いに乗ったりなんかしない。この首輪を外して、仲間と帰るんだ」
そんなことはわからなかったから、本心を口にした。

「人を傷つけたくはない。出来ることなら、誰とも争いたくない。でも、仲間を守るためなら僕は戦う。
鈴と、恭介と、リトルバスターズのみんなと。出来る限りの人たちと、ここから脱出するんだ」
「理想だな。お前の仲間は、あの侍のような奴と戦って生き延びられるのか?」
恭介ならば、真人たちならば、なんとかなるのではと淡い希望を持つ。
だが、鈴は。恭介にすら淡い希望しか持てないのに、鈴があんなのと出会えば結果は目に見えている。

「……僕は、ナルコレプシーっていう病気を抱えていた。それを、仲間を救うために治したんだ」
恭介……リトルバスターズの仲間が作ってくれた『世界』で理樹と鈴は強くなった。
バスが崖から転落した際、唯一無傷だった理樹と鈴を強くするために作られた世界で。

その惨劇は、防げない。それでも、まだみんなを救えると信じて病気を克服して元の世界に、

戻ることを、何かに阻まれた。
そして、気づいたらあの場所に集められていて……
人がたくさんいた。人が、死んだ。バケモノがいた。バケモノも死んだ。また人が、死んだ。
孝明と呼ばれていた人の死体にすがり泣いていた、このみと言う女性。
その人の死を、命と引き換えに救った向坂環、という人。
あの神父は言った。「二人の幼馴染を失った彼女が」と。
幼馴染が、理不尽に命を奪われ、そして命を救うために死んでいった気持ちは、どれほどのものだろう。
自分にとって、鈴を、恭介を、真人たちを失うのと変わらないのなら、それは絶望でしかない。

それでも、彼女の善意を無駄にしちゃいけない。
顔すら正確に思い出すこともままならない、彼女。
510名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:47:37 ID:sYcLXCx3
 
511真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:47:38 ID:cGACwxqF
この殺し合いを仕組んだ人たちの悪意に押しつぶされそうな中、世界には善意があることを、思い出させてくれた。
恭介たちが、そうであったように。

「……僕は、今まで善意に包まれて守られてきた。その善意に報いるためにも、悪意に負けるわけにはいかない。
だから、僕は行かなきゃ。難しいからって、始めから諦めたら何も手に入らない」
足踏みしている間に、何もかも失ってしまうくらいなら、足掻いてみせる。
「ほう」

「だから、あなたの力が必要なんだ」

「む……待て、なんだそれは?」
無茶苦茶な振りだとは僕も思った。
「僕はここから脱出する。でも、僕は弱い。だから、あなたの力が必要なんだ。……意外と普通かな?」
「いいや、普通ではない。色々な工程が抜けている以前に、私を誘うのは狂気の沙汰だ」

「あの侍と戦っていたのは……殺し合いに乗ったから? それとも……」
アサシンは、一瞬返答に困ったような素振りを見せた。
「……私が戦っていたのは、発見されて逃げ切れなかったからに過ぎない」
「発見されたって……アサシンなのに?」
「それを言うな。小僧のような一般人でも勝ち目があるよう、制限がかけられているようだ。
身体能力のみだと踏んでいたのだが……気配遮断を含む技能まで、ランクが落ちていたのを見抜けなんだ、私の落ち度だ」
「せ、制限って……それであの動きなの!?」
それなら、あの侍も同じで……本調子なら残像すら見えないということだ。

「始めに殺された双子がいただろう。アレとは違うが、私も人間ではない。
本来、物理的な方法では傷一つ付かないが、今は銃やナイフでも死ぬ受肉した体だ。
小僧のような一般人も対抗できるよう、身体能力はもちろん、特殊能力にまで制限がある」
無くなった腕を、忌々しげに見つめるアサシン。

「でも、あの侍の足を止めるために水の中に誘い込んだんだよね?」
「気づいたか。だが、あの場は足止めして撤退すべきだった。急いた代償に、切り札を失ったのは大きすぎる」
512真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:48:17 ID:cGACwxqF
「……アサシンさん。その怪我があるし、本調子でもないし……やっぱり、僕と組まない?」
ここまで相手に魅力の無い提案も珍しい。何せ弱者が強者に手を組もうと誘っているのだ。
だが。

「……いいだろう。命の恩人に恩義を返すのは、当然のことではある」
「ほ、本当に?」
ぱあっと、明るく顔を輝かせる。
「行動理念は好みではないが、ただの馬鹿でもないようだからな。
――だが、いつまで手を組むかは……小僧次第だ」
「……それ、どういうこと?」

「小僧、お前は言ったな。この殺し合いに乗らず、ここから脱出してみせると。
私の本来の主である魔術師殿は、お前とは真逆を往く者だった。別に小僧の方針を批難するわけではない。
魔術師殿は悪逆を、暗躍をし続けた。魂までもが腐りきろうと、願いのために進み続けたのだ。
――小僧、お前の志は、そのリトルバスターズの誰かを失っても……変わらぬものなのか?」

返答どころか、呼吸すら満足に出来なかった。
本当なら、僕と鈴しか残らない世界だった。それを鈴すらも失ったら。
最後まで、人の善意を信じられるのか。

「まさか、仲間だけは死なないなどと、思っているのか?」
「それはない。終わりは……別れは来る。それは、受け入れないといけない事実だ。
だけど……わかっていても、わからない。僕は一度……失う過酷さから、逃げた人間だから」
その答えに、どういう感情を持ったのか、仮面からは何も感じ取れなかった。

「……ならば、小僧の志が折れるまでは付き従ってやろう。小僧の志が折れたとき、この契約は終わりだ」
「……僕の心は、変わらないよ」
弱まった決意を、奮い立たせる。
アサシンや、あの侍を例外としても、僕の実力は下から数えたほうが早いに決まっている。
なら、せめて気持ちで勝たないと、生き残る事だってままならない。

「……それで、小僧殿。これからどう動く?」
513名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:49:00 ID:sYcLXCx3
 
514真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:49:01 ID:cGACwxqF
なんか、殿が付いた。小僧殿って、馬鹿にされているのか違うのか、良くわからない。

「とにかく、リトルバスターズのみんなを探して合流する。他の参加者とも、危険だけど接触したい。
あの侍が危険な奴だって知らせな……ああぁ〜〜〜」
「どうした、小僧殿?」

「謙吾も見た目侍だよ……」
確実に、いつもの剣道着姿だろう謙吾。
あの侍に同様に襲われた人が「侍姿の男に気をつけろ」と言い回ったなら……
「しかも、どっちも髪が尖ってるし……最悪だよ、ロマンティック大統領……」
「……よく考えよ、小僧殿。その仲間とやらは、腕が四本あるわけでもあるまい」
「そうか、その辺りを伝えればいいんだ」
つまりは、それを伝えられない限り勘違いされるかもしれないということだ。

「よし、それじゃあ……へっくしゅ!」
夜風が寒い。濡れた服を着ていたのが不味かったのか、体が冷え切っていた。
「たしか、支給品に服があったな。私は周囲の偵察をしてくる。その間に着替えておくといい」
アサシンは、ディパックから服を投げ渡すと跳躍し、木々に消えていった。


そうして、アサシン――ハサン・サッバーハは湖まで舞い戻った。
「無い、か。当然だな」
シャイターンの腕。あの男が魔術に通じている以上、あの腕を放置はすまい。
現状、あの侍に勝つ術はない以上、諦める他にはない。

「そうすると、やはりあの小僧と手を組むしかないか」
元々、ハサンは殺し合いに乗り気ではなかった。
間桐桜に殺されたはずの代行者が五体満足で生きている矛盾。
同じく間桐桜に殺された自分が、その記憶を保ちながら現界している矛盾。

さらに、聖杯ですら不可能だろう奇跡を用いておいて、可能であろう望みを叶えるといった褒賞を用意していないこと。
すなわち、純粋な殺し合いを望んでいるのだ。
515名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:49:27 ID:cXRL8hUL
 
516名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:49:46 ID:Dbr5+YFs
 
517名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:49:58 ID:cXRL8hUL
 
518真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:50:01 ID:cGACwxqF
願いを叶えるために呼び出されるサーヴァントに、それを要求しても応える者は多くはない。
それでも、オマエならば殺すだろうと呼ばれたのがアサシンである自分なのだろう。

たしかに、いつものように気配を消しながら、障害となりそうな相手を消せる機を待つつもりだった。
しかし、能力の制限によって、それは満足に出来ない。
アサシンも、超人というカテゴリーではけして上位の実力者とはいえない。
身を守るため、徒党を組むという手段を取るのも有効だろう。
こんな外見の自分に、向こうから持ちかけてきたのは実際のところ幸運だった。

だが、彼は魔術師でも、特殊な能力があるわけでもない平凡な人間。
この怪異に巻き込まれて信念を曲げない志だけは評価に値するが、それもいつまでも持つまい。
なにせ、直枝理樹という人間を支えているのは仲間。それも怪異に巻き込まれている。
間違いなく死ぬ。誰も失わないどころか、直枝理樹本人が最後まで生き残る可能性すら極小だ。
すぐに考えは変わる。放送が始まるまでの約5時間が、彼の最長生存時間となろう。

(――あっさりと折れる信念しか持たぬなら、生かす価値もない。志が折れたとき、その心臓を貰い受ける。
小僧の仲間が残っていたなら、すぐに送り届けてやろう)
その間に強者が減れば、御の字といったところか。

(……少しばかり、興味はあるのだがな)
あの少年は、真逆だ。
人として扱われず、人々の悪意を受けて生きていたが故に永遠を求めた自分。
誰からも大切にされ、人々の善意を受けて生きてきたが故に終わりを受け入れる少年。
これほどの真逆もない。完全に交わることがないだろう存在だ。
だが、それゆえに自分の協力を求めたのではと、ハサンは考えた。
真逆であるが故、彼の持つモノを自分は持たず、自分が持つモノを彼は持たない。
足りないところを補う。既に切り札を失ったハサンにとっては生き残る術となるかもしれない。

「あの小僧に、私を補えるモノなどあるとは思えないが」
そう長い付き合いにもならない以上、深く考えても無駄だと思考を止めた。
「さて、これで全てか」
ハサンの手には、木で掘られた星があった。
519名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:50:22 ID:Dbr5+YFs
 
520名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:50:40 ID:cXRL8hUL
 
521真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:50:56 ID:cGACwxqF
ティトゥスに向かって投げていた中で、外れたりして比較的無事だった物だ。
その数、実に六十四。今はちょうど五十しかない。
「ダークが無い以上、出来る限り回収しようとは思ったが……」
気配遮断がランク落ちしている以上、安全には拾えない。次からは拾うのを諦めることにする。

――ちなみに、これが星ではなくヒトデだと書かれた説明書を、ハサンは見ていない。

跳躍し、元の場所に戻る。
この僅かな時間に殺されているのでは、とも思ったが、そこには変わらず―――

否、変わり果てた直枝理樹がそこにいた。

「黙んないでよっ! これ渡したのアサシンさんじゃない!」
「女物だと気づかず渡したのは、これもまた私の落ち度だが……」
アサシンが渡した服は、聖ミアトル『女』学院の制服だった。
黒を基調としたお嬢様全開の服装を、何の違和感無く着こなしている理樹。

「それを着て、あまつさえ長い靴下まで穿いているのは、リキ殿だろう」
「いや、それはそうだけど……って、なんで急に名前なのっ!?」
「その外見で小僧殿と呼ぶのは……小娘殿と呼ぶにも、性別を知っているのでな」
他の服もないため、仕方なく色々と理樹は諦めた。

「まず、これからの行動に関して……あらかじめ言っておくことがある」
真剣な内容であると察して、理樹も服装のことを忘れて聞く。
「リキ殿に協力はしよう。が、あくまで私は暗殺者であることを忘れてもらっては困る。
襲ってくる敵は、始末する。それが女子供であれ、ナイフ一つあれば人など殺せる。
襲ってくる理由は関係ない。躊躇して死んでしまえば、何も成せないことは理解しているだろう?」
「……説得する時間を、くれない?」
「……二つ、納得してもらう。一つ。説得が失敗すれば、リキ殿を助けられる保証はない。二つ。私の命も危険な状況ならば、躊躇無く殺す」
おそらく、最大限の譲歩だろう。理樹はゆっくりと頷く。
522名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:51:08 ID:Dbr5+YFs
 
523真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:51:31 ID:cGACwxqF
「では、これを渡しておこう」
手渡されたのは、トランシーバーだった。アサシンの手にも、同じものがある。
「私は気配を隠し、無線の範囲内を監視しておく。何か発見したらリキ殿に伝えよう」
離れる前に、お互いの支給品や知り合いについて情報交換をする。
「バルザイの偃月刀は、そのまま使っていてよ。僕じゃ扱えないみたいだし」
「そちらの武器は?」
「……バットと、傘かな?」

謙吾のバットの他に、武器になりそうな物は、やたら丈夫そうな傘だけだった。
説明書によれば、名前はカンフュール。一角獣の名は、けしてハッタリではない。
防弾、防刃、耐炎製の布地と、超硬チタンの先端。とても見えないが、立派な武器だった。
バットをしまい、こちらを使うことにする。
「一見、武器とは思われないだろう。こちらが間に合わない場合は、それで身を守るといい」

そして、お互いの知り合いについて話した。
「リキ殿の知り合いは、その五名……心得た、似た容姿の人物は、命を奪うことはなるべく避けよう」
「ものすごく不安なんだけど……それで、アサシンさんの知り合いは?」
「基本的に全員敵だ」
「えー」
やっぱり手を組む相手を間違えたかもしれない。

「まず、エミヤシロウ。彼は一言で正義の味方……この殺し合いにも批判的なはずだが、私とは敵対関係だ。
次に、クズキソウイチロウ。殺し合いに乗っているかは不明だが、私とは敵対関係だ。
……そして、マトウサクラ。最悪の小娘だ。殺し合いに乗っている可能性は大。……お互い殺したいほどに敵対関係だ」
「うわあ、最悪じゃんっ!」
「そして、マトウサクラとエミヤシロウは恋人関係。どちらかを敵に回せば、どちらも敵となる」
正直、アサシンの見た目だけで判断できた交友関係だった。

「不必要な敵対は避けるが……マトウサクラには気をつけろ。文字通り、食われるぞ」
衛宮士郎、葛木宗一郎の二人も一般人よりも強いが、間桐桜は段違いだそうだ。
制限がなければ、参加者全員あの場で「食べて」しまえるそうだ……これは説得できないかも。
それぞれの外見的特徴も聞いておく。会っても、アサシンのことは話さないほうが良いかもしれない。
524真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:52:09 ID:cGACwxqF
アサシンが、夜の森に溶け込む。
トランシーバーの範囲は半径2kmらしい。通じるか確かめる。
『リキ殿、聞こえるか?』
「聞こえるよ」
感度も悪くないようだ。

どこにいるのかもわからないけど、どこかでアサシンは監視してくれている。
それでも、頼りきるわけにはいかない。自分に出来ることは、自力でやり遂げないといけない。
だから、その決意を込めて、あの言葉を口にした。

「ミッション、スタートだ」
【C-4 採石場近くの深い森の中 深夜】
【直枝理樹@リトルバスターズ!】
【装備:カンフュール@あやかしびと −幻妖異聞録−、聖ミアトル女学院制服@Strawberry Panic!、トランシーバー】
【所持品:支給品一式、不明支給品0〜1(武器ではない)、謙吾のバット@リトルバスターズ!、濡れた理樹の制服】
【状態:健康、服装により精神的苦痛】
【思考・行動】
 基本:仲間と脱出する。殺し合いはしない。
1:真アサシンと協力する。
2:リトルバスターズの仲間を探す。
3:誰かと会ったら侍(名前は知らない)について注意と、謙吾との違いを説明する。
4:真アサシンと敵対関係にある人(特に間桐桜)には特に注意して接する。
5:このままじゃド変態だよ……
※参戦時期は、現実世界帰還直前です。
※アサシンの真名は知りません。
【カンフュールの説明】
一角獣の名を持つ傘。本来の所有者は九鬼耀鋼。先端が超硬チタン製の、鋼鉄をも貫く貫剣傘。
布部分は、防弾防刃特殊パラ系アラミド繊維に千度の炎に耐えうる耐炎繊維を寄りあわせコーティングしたもの。
525名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:52:18 ID:cXRL8hUL
 
526名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:52:31 ID:Dbr5+YFs
 
527名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:52:40 ID:sYcLXCx3
 
528真逆 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:52:51 ID:cGACwxqF
【真アサシン(ハサン・サッバーハ@Fate/stay night[Realta Nua]】
【装備:バルザイの偃月刀@機神咆哮デモンベイン、木彫りのヒトデ50/64@CLANNAD、トランシーバー】
【所持品:支給品一式】
【状態:右腕(宝具)切断】
【思考・行動】
 基本:無理せず自己防衛。生存のために協力。
 1:理樹と協力する。
 2:理樹の信念が折れた(優勝を目指す)なら殺害。それまでは忠義を尽くす。
 3:気配を隠しながら周囲を監視する。
※参戦時期は、桜ルート本編死亡後です。
※右腕の喪失により、妄想心音が使用不可能です。
※身体能力、気配遮断などのランクが落ちていることに気がつきました。
※木彫りのヒトデを星だと思っています。説明書には「木彫りのヒトデ。参加者贈呈用」と書かれています。
【バルザイの偃月刀の説明】
アルの破片でもある魔導具。魔力を通せば灼熱の刃となり、展開すれば投擲武器になり、手元に戻ってくる。
魔術使用時の効果を上げる触媒ともなる

※真アサシンと理樹は、お互いの知り合いについて情報を交換しました。
※トランシーバーは半径2キロ以内であれば相互間で無線通信が出来ます。
529名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:53:09 ID:cXRL8hUL
 
530 ◆CMd1jz6iP2 :2008/03/19(水) 00:53:53 ID:cGACwxqF
以上で投下終了となります
支援感謝です。
まだ問題点などありましたらご指摘ください。
531名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 00:57:35 ID:cXRL8hUL
投下乙です

ハサンかっこいいぞおい!てかヒトデwww
ティトゥスも貴重な無差別マーダーとしての活躍とハサンとウィンフィールドとの再戦に期待
そして…理樹はやっぱり女装させられる運命なのか…w
532I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:00:13 ID:Dbr5+YFs
I am bone of my sword.(体は剣で出来ている)

Steelis my body, and fireis my blood(血潮は鉄で、心は硝子)

I have created over athousand blades. (幾たびの戦場を越えて不敗)

Unaware of loss. (ただ一度の敗走もなく)

Nor aware of gain. (ただ一度の勝利もなし)

Withstood pain to create weaponswaiting for one's arrival. (担い手はここに独り剣の丘で鉄を鍛つ)

I have no regrets.This is the only path. (ならば、我が生涯に意味は要ず)


My whole life was, unlimited blade works. (その体は、きっと剣で出来ていた)


「ふう……」

少年は呟いた。
頭から生み出される言霊、かつての自分を形作る呪文を。
もはや何の意味もない文字の羅列。
本当に何の意味も持たないかつての自分の在り方を綴った英文を、少年は何の意味もなく紡いだ。
533名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:00:50 ID:Z2CHM8Ld
 
534名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:01:07 ID:klDPYBYU
535名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:01:12 ID:QzBguckH
536名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:01:30 ID:3R4Q9I4c
 
537名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:01:35 ID:klDPYBYU
538名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:02:01 ID:sYcLXCx3
 
539I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:02:06 ID:Dbr5+YFs

少年はゆっくりと歩き出す。
深い森の中、赤毛の髪よりもずっと真紅の布を左腕に巻いたまま。
約束を果たすために足を前に進め続けた。

「………………」

漆黒の闇を助長させる鬱蒼とした森林。
その隙間から見える月は、決して彼を祝福しているようには見えなかった。
それでもいい、と少年は受け入れる。ただ一振りの誓いと強い意志を放つ瞳を前へ。ただ前へと進ませていく。


――――――この身は一太刀の剣として、大切な人との誓いを果たすために。



     ◇     ◇     ◇     ◇
540名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:02:44 ID:3R4Q9I4c
 
541名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:02:57 ID:8zJWi8k5
542I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:03:01 ID:Dbr5+YFs


「…………」

歳の程、十五ほどの少女がいた。
彼女の名はリセルシア・チェザリーニ。ピオーヴァ学園のフォルテール科に通う女学生だ。
少女は月を眺めていた。
いつもは綺麗なはずの月が、何だか自分のことを嘲笑っているかのようで恐ろしかった。

「……どうして」

どうして、こんなことに巻き込まれたのだろう。
あの会場での惨劇を思い出す。頭を吹っ飛ばされた死体、彼らを殺した凶器が自分の首にも仕込まれていると思うと震えが止まらない。
真っ赤な血とぶちまけられた脳髄は堪らなく、気持ち悪い。
あんな姿に自分もされるんじゃないか、と思うと気が狂いそうだった。だから、まずは落ち着こうと月を見上げることにしたのだ。

543名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:03:27 ID:sYcLXCx3
 
544I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:03:40 ID:Dbr5+YFs
「…………クリス先輩」

名簿は既に確認した。付き合いの深い、浅いはともかくとして知人は三人。
考えるのは学園の先輩であるクリス・ヴェルティンのことか。
何をしているだろう、と思う。危ない目に合わなければいいのだが。
同じ孤児院出身でそれなりに仲良くしてくれてる、ファルシータたち学友の知り合いのことも心配だった。

「……よし」

生い茂る木々の合間から月光を浴び、やがて現実へと帰還する。
現実逃避の時間は終わりだ、現状を把握しよう。
心配ばかりしている場合じゃない。何しろ、リセ自身は非力な一人の女に過ぎないし、彼女自身もそれを理解している。

「まずは……ランタン。と……わわ、これは……」

真っ暗な道を歩くのに必要不可欠なランタンをデイパックより取り出す。
そうこうしている内に、見つけた。
デイパックの中、質量を無視して入れられているのは……刀。それも模造品ではなく、本格的な名刀とも呼べるもの。
説明書が出てくる。銘は『維斗』というらしい。

試しに持ってみると、ずっしりと重い。小柄な彼女には振り回せそうになかった。
というか、デイパックに入れたら軽くなるのに取り出した途端に重くなるとは、質量法則の無視も甚だしい。
545名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:04:28 ID:QzBguckH
546名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:04:50 ID:sYcLXCx3
 
547I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:05:08 ID:Dbr5+YFs

「どうしよう……」

おろおろ、としてしまう。
だが、実感は少し沸いた。これは本物の殺し合い。人を殺せる武器を平気で手にしている。
この事態という異常をゆっくりと噛み締めていく。
さあ、足を踏み出そう。この地獄を生き抜くために。まずは信頼できる先輩を捜すことから――――と。


「ねえ、そこの。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「ひゃ……!?」


思考を纏め、落ち着こうとしたリセの心臓が飛び上がることとなった。


     ◇     ◇     ◇     ◇


「……す、すいません……その、私……」
「椰子なごみ。ちょっと聞きたいことがあって、声をかけたんだけど……ああ、これは気にしないでほしい。自衛のつもりだから」
548名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:05:53 ID:3R4Q9I4c
 
549名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:06:09 ID:8zJWi8k5
550名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:06:09 ID:xVW/RWH2
 
551I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:06:20 ID:Dbr5+YFs

椰子なごみ、と名乗った少し背の高い少女は、黒い凶器を片手で弄びながらリセと対面した。
クールな人、というのがリセの第一印象だ。眼鏡をかけたその姿は、冷淡なイメージも多少なりとも醸し出している。
リセは目の前の少女を警戒する。なごみという少女も自分を警戒しているのが分かる。
彼女が持っているのは、モデルガンでなければ……間違いなく、銃。人を引き金を引くだけで撃ち殺す最悪の凶器だ。

(落ち着かないと……とにかく、落ち着かないと)

深呼吸をひとつ。
大丈夫、彼女は警戒しているだけ。自衛……つまり、人を殺そうなんて考えていないはず。

「わ、私は……リセルシア・チェザリーニです。同じく……人を捜してます」
「そう……貴女が支給されたのは、それ?」
「は、はい……『維斗』という名前の刀だそうです」

会話は通じる。お互いに冷静さを取り戻し始めていることを、リセは感じ取った。
彼女も……椰子なごみも同じなはずだ。突然殺し合いに巻き込まれて、分不相応な人殺しの道具を握らされたに過ぎないのだ。
だからリセは尋ねた。捜したい人がいる、もしかしたら彼女はこうして色々な人に声をかけてきたのではないか、と希望を持ちながら。
552名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:06:43 ID:sYcLXCx3
 
553名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:07:21 ID:3R4Q9I4c
 
554I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:07:22 ID:Dbr5+YFs

「あのっ、クリス先輩……クリス・ヴェルティンって人のこと、知りませんか?」
「……悪いけど、私が初めて出逢ったのが貴女ですから。だから知らないですね」

突然、素っ気無い敬語口調になった。彼女の本来の口調だろうか。
それが警戒が解けた合図だと判断して、リセは心の中で安堵のため息をつく。……と、ここでなごみが逆に問い返した。

「すいませんけど、そっちもあたしが初めてですか? 私もセンパイ……対馬レオって男の人を捜しているんですけど」
「ご、ごめんなさい……私も、椰子さんが、初めてです」

ですか、となごみが溜息をつく。
どうやら同じ『先輩』を捜す同志らしい。これなら、もしかしたら一緒に行動できるのではないだろうか。

思えばいつも孤独だった。
授業中も誰も組んでくれないし、食事も一人でしか取れなかった。
音楽室に入ったら、毛嫌いするように皆が出て行ったこともある。知らない人に叩かれることすらあった。
だけど勇気を振り絞れ、と自分を鼓舞する。
大丈夫。この異常事態だから、好悪の反応はどうあれ、彼女だって同行する人を捜しているかも知れない……なら、一緒に行こう、と言おう。
555名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:07:26 ID:QzBguckH
556名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:07:46 ID:sYcLXCx3
 
557名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:08:23 ID:sYcLXCx3
 
558名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:08:41 ID:3R4Q9I4c
 
559I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:09:03 ID:Dbr5+YFs

(……ぐっ)

心の中で気合を入れた。
怖いけど、勇気を振り絞らないと。自分ひとりは、こんな状況の中で孤独は怖いから。
リセは寡黙な自分を奮い立たせるようにして、なごみに声をかけた。


「あのっ……よろしければ……!」
「なら、もう用はない。さよなら」


疑問。
混乱。
焦燥。
銃声。
悲鳴。
絶望。
560名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:09:03 ID:8zJWi8k5
561名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:09:40 ID:sYcLXCx3
 
562I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:10:31 ID:Dbr5+YFs

リセにとって不幸だったのは、彼女の警戒を自衛のためだと信じてしまったこと。
リセにとって幸運だったのは、火事場の莫迦力なのか咄嗟に体を右にずらせたことと、なごみ自身が銃の反動で軌道をそらしたこと。

「ちっ……惜しい」

椰子なごみは……リセにとって、この殺し合いを肯定した死神は苛立たしげに舌打ちした。

「どう……して……?」
「……うん?」
「どうして、こんなこと、するんですか……生きたいから、死にたくないから……です、か……?」

ガチガチ、と震える歯を必死に噛み合わせた。
銃弾を避けた代償に地面に転がり込んで服が汚れてしまったが、気にならない。
ただ、漠然とこのまま殺されるのだろう、ということを理解した。理解したら、次にはどうして殺されなければならないのかを聞きたくなった。
そんなリセをなごみは嘲笑った。そんなつまらない理由じゃない、と誇らしげに語って見せた。

「センパイを、助けるため」
「え……?」
「聞こえないんですか? センパイのためにあたしはアンタを殺すって言ってるんですよ」
563名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:10:34 ID:oYZ7b/q6
  
564名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:11:16 ID:3R4Q9I4c
 
565名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:11:34 ID:xVW/RWH2
 
566名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:11:41 ID:sYcLXCx3
 
567I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:11:52 ID:Dbr5+YFs

その言葉の意味が最初は分からなかった。
だけどゆっくりと言葉を咀嚼していく。このイカれたゲームのルール、そして……そう、会場で殺された女性を思い出した。

―――生きて帰れるのは最後の一人。

そして自分の命を捨ててまで、一人の少女を救ったあの女の人。
自分の命を捧げてまで女の子を護ったあの人。あんな風にはなれない、と漠然と思っていたリセは目の前の女の目的を理解する。
それらがイコールとなりえるとき、リセには信じられないような願いが答えとして提示された。

「あ、貴女は……ただ一人のために、皆を、殺すんですか……?」

静かに首を振って肯定。

「や、椰子さんは……自分の命を捨ててまで、その……『センパイ』を助けるって、言うんですか……?」

再度、首を縦に振っての肯定。
ついで、なごみの持つ銃……S&W M37 エアーウェイトがゆっくりとリセに照準を合わせられる。
リセは震える両手で名刀、維斗を握って相対する。……が、もとより彼我戦力差は歴然だった。
どちらも武器の素人とはいえ、ろくに持ち上げられない刀と引き金を引くだけで勝負を決することのできる銃。結果は明白だった。
568名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:12:03 ID:3R4Q9I4c
 
569名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:12:03 ID:oYZ7b/q6
 
570名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:12:09 ID:8zJWi8k5
571名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:12:17 ID:QzBguckH
572名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:13:15 ID:3R4Q9I4c
 
573I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:13:28 ID:Dbr5+YFs

「そう。あたしはセンパイのために戦う。センパイはあたしの全てだから。あたしの居場所だから、誰にも奪わせない」

先ほどは撃ち慣れていない、ということで外した。
だが、今度は外さない。狙いを定め、弾かれないように両手で銃を握る。

「センパイを守るためなら、あたしはこの殺し合いにも乗る。センパイを優勝させてみせる」
「そんな……」

その在り方を、リセは悲しいと思った。
自分の命よりも大切な人がいることを羨ましいと思う反面で、その想いを間違った方向に向けなければならないのだ。
そこまで思いつめて、必死に思いつめて。
その末に目の前の女性、椰子なごみは決めてしまったのだ。自分の命を捨てて、道徳も理論もかなぐり捨ててまで、大切な人を護ることを。

(どうして……)

私にはできない、とリセは思う。
誰だって自分の命が可愛いものだし、死ぬ覚悟なんて易々と決められるはずがない。
だから素直にリセはその生き方が悲しくて、そしてそれ以上に理不尽だと思った。
574名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:13:54 ID:8zJWi8k5
575名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:14:25 ID:sYcLXCx3
576I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:14:56 ID:Dbr5+YFs
「そ、そんなの、おかしいです・・・」

そうだ、おかしい。変だ、絶対に間違っている。
何で殺し合わなきゃいけないのだろう。自分たちが何をしたというのだろう。

「椰子さんの言う『先輩』がどんな人か知らないです……知らないですけど、こんなこと望んでる人じゃないと思います……!」

精一杯の言葉を包む。
だって酷すぎる。なごみは自分の命よりも大事って思えるような人がいるのに。
なごみのことも『先輩』のこともリセは何も知らない。
だけど、これだけは分かるつもりだった。それほど想われてる人が望むはずなんてない。だから、やめてほしかった。

例えば……本当に例えばだが、クリスが自分のために殺し合いに乗ると考える。
嬉しいはずがない。自分のために手を汚させてしまったことを後悔する。
だから、そんな選択はしてはだめなのだ。それを自分も相手も傷つける最悪の方法。絶対に……誰もが後悔するのだから。

「っ……うるさい」
「椰子さんの……『先輩』は……椰子さんに人を殺させることを望むような……そんなつまらない人なんですか……!?」
577名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:15:19 ID:sYcLXCx3
578名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:15:42 ID:QzBguckH
579I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:16:09 ID:Dbr5+YFs

寡黙な彼女に似合わない怒声。
死を前にして、肝が据わってしまったのかも知れない。怖いし、胸が張り裂けそうなほどに苦しかった。
結局のところ、リセルシア・チェザリーニは優しすぎたのだ。


「だまれっ!! あたしはセンパイのために戦うっ! あたしの居場所を何度も奪わせてなんてたまるかっ……! だから、お前はここで死ねっ!!」


それが冥土の土産と定めた言葉だろうか。
なごみの指に力がこもる。リセはギュッと重い刀を握り締めながら、それでも目は閉じない。
死神の顔を目に焼き付けたまま、一秒後に迫った死を受け入れる。
せめて、無力な兎なりに戦ってやろうではないか。
恨みがましい瞳を、目の前の死神の脳裏に一時間でも、一分でも多く刻み付けてやろうではないか、と。

「…………っ」

死ぬのが怖い。
殺されることが憎らしい。
だけど屈するものか、と歯を食いしばった。決して瞳だけはそらさなかった。
580名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:16:10 ID:3R4Q9I4c
 
581名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:17:18 ID:sYcLXCx3
582名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:17:18 ID:3R4Q9I4c
 
583名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:17:21 ID:QzBguckH
584I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:17:33 ID:Dbr5+YFs



ごん、と殴打音に似た何かがリセの耳を穿ったのは直後。

「ぐあ……!?」

なごみの悲鳴が森に響いた。
リセは見ていた。目をそらさずに見ていた。だから事態が把握できた。
彼女の顔面に何処からか飛んで来たのは、石……ではなく、ボール、でもなく。

辞書。ディクショナリー。

狼狽する彼女の目の前で、なごみの眼鏡が弾けとんだ。
怯んだ様子のなごみではなく、リセは新たな参入者に視線を向け……ようとして、突然手を引かれた。

「えっ、わっ……」
「掴まってるんだっ……逃げるぞ!」
585名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:17:58 ID:8zJWi8k5
586名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:18:21 ID:sYcLXCx3
587I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:18:43 ID:Dbr5+YFs
現れたのは少年だった。
赤い短髪、歳のほどは少し上の男……とまでしか判断できない。今は少年のことを詮索している時間がない。
腕を引かれるままに走った。名刀はデイパックの中に詰められ、彼の右手がリセの右手を乱暴に掴んだまま走り出す。

「くっ……逃がすかぁぁ!!」

深夜、森に響く轟音。
怨嗟のこもった怒声を背中に受けたまま、彼らは走る。
銃声がひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……視力の悪いなごみは、うまく狙いを定められない。しかも現場は鬱蒼と茂った森林だ。
少年は木の影に隠れるように逃走していった。やがて、空気だけが銃口より漏れる……総弾丸数は五発らしい。

逃がした。
それはもう、完膚なきまでにやられた。

「くそっ……くそくそくそっ!」

がんがんがん、と憎らしげに木を蹴り付けた。
一通り鬱憤を晴らした後、眼鏡を回収する。壊れてはいなかったので一息、そのまま耳にかける。
足元には辞書。間違っても人に投げるものではないのだが……とにかく、自分を邪魔した男が投擲したものがある。
588名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:18:47 ID:8zJWi8k5
589名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:18:50 ID:3R4Q9I4c
 
590I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:19:30 ID:Dbr5+YFs

「あいつら、殺してやるっ……殺す、殺す、殺すッ!!」

子供染みた憤怒を発散させる。なごみは怒りを直接的な衝動に身を任せていた。
投擲された辞書をそのまま回収する。
なんの役に立つかも分からないが、生憎となごみの支給品は銃一丁と予備の弾丸だけだ。持っていっても損はないだろう。
借りは必ず返す、と毒づきながら、木々の隙間に見える月を見上げた。

「……センパイ。待っててください。あたしが、必ず……」

椰子なごみは歩き出す。
生徒会メンバーであろうと、誰であろうと殺すことを誓って。
深い深い森の中、魔性なる月の光に魅入られるかのように……見上げた夜空へと堕ちていく。


【E-4 森林/1日目 深夜】
591名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:19:31 ID:sYcLXCx3
 
592I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:20:13 ID:Dbr5+YFs

【椰子なごみ@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M37 エアーウェイト(0/5)】
【所持品:S&W M37 エアーウェイトの予備弾40、杏の辞書@CLANNAD】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:レオを優勝させる
1:レオと合流することが最優先
2:殺せる相手は生徒会メンバーであろうと排除する
3:リセと赤毛の男(士郎)にもう一度出遭ったら、必ず殺す

※なごみルートからの参戦です。



     ◇     ◇     ◇     ◇
593名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:20:45 ID:8zJWi8k5
594名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:20:51 ID:sYcLXCx3
 
595I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:21:14 ID:Dbr5+YFs


「ここまで来れば……大丈夫だろ」
「はあ、はあっ……はあ、あ、ありがとうござ……います……」

場所は廃屋。既に寂れて久しい古びた部屋の一室まで駆け込むことで、ようやく彼らは一息つく。
リセは荒い息を吐きながら、改めて恩人である少年の姿を見ることができた。
人の良さそうな印象だった。気になったのは左腕を肩まで巻いてしまっている赤い布のことぐらいだろうか。
埃を払ってベッドに座るリセと、壊れかけた窓から外の様子を見つつ、リセに向き直る青年。

「俺は衛宮士郎、学生だ。良かったら名前を教えてくれないかな?」
「り、リセルシア・チェザリーニ……です。リセって呼んでください。衛宮さん……で、いいですか?」
「ああ。それでいいよ」

地図を取り出し、現在位置を確認しながら情報交換を行った。
先ほどリセを襲っていた眼鏡の女……椰子なごみが対馬レオという少年のために殺し合いに乗った、とリセは伝える。
彼の支給品は殺し合いには不向きな代物……俗に言うハズレの部類だった、と士郎は語る。
先ほどなごみに向かって投げつけた辞書もそのひとつ。そのときの落胆のしようを溜息交じりに語る彼に、リセは薄い笑いで答えた。
596名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:21:37 ID:3R4Q9I4c
 
597名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:22:20 ID:cXRL8hUL
 
598I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:22:21 ID:Dbr5+YFs

「見てくれよ、これ。ゴルフクラブって……遊びじゃないんだから、ふざけんなって叫びたくなったぐらいだ……」
「あはは。ま、まあまあ……」

続いて人捜し。
先輩であるクリスや友人のファルやトルタの情報を期待したが、残念ながら効果はなかった。
同じく士郎が知人を尋ねるが、結果は同じ。お互いに情報は得られなかった。

「ああ、俺が捜してるのは桜って子だ。他にも一応、知り合いはいるけどな」
「……えっと、ご関係をお聞きしてもいいですか……?」
「え、えっと、一応後輩、なんだが……その、守りたい人といえば、その、だな……」

照れた士郎が微妙に微笑ましかった。
リセにとって士郎は何の意思も関係なく、リセと話してくれるのが嬉しかった。

話は自衛の件に移る。
士郎はまともなものを支給されなかったし、リセはそもそも戦えないし、刀も扱えない。
ゴルフクラブで戦う少年と振れない刀を頑張って構える少女。どう考えても配役違いです、本当にありがとうございました。
599名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:22:21 ID:sYcLXCx3
 
600名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:23:12 ID:sYcLXCx3
 
601名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:23:28 ID:8zJWi8k5
602名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:23:48 ID:cXRL8hUL
 
603名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:23:51 ID:i23CSJ4Y
 
604I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:24:27 ID:Dbr5+YFs
「……あ、そうだ。衛宮さん……これ、よろしければ、どうぞ」

よって、必然的に話はこうなる。
リセは持ち上げるのも一苦労、と言わんばかりにそれを差し出した。
おずおずと差し出したのは、名刀『維斗』。
リセには振るうことはおろか、持ち上げることがやっとだが……男の士郎ならば、と渡してみた。

「ん……それじゃ、ちょっと見せてもらうな」

維斗を受け取ると、士郎は目を閉じて精神を集中させる。
解析、開始。
この刀の本質を感じ取る。鬼切りの刀、かつて人であった鬼を切ってきた名刀。決して折れず、錆びずを貫く。
満足げに士郎は頷いた。素晴らしい名刀だった。士郎は剣という本質に対して深い関心も持っている。そんな自分が素晴らしいと思えた。
現存する宝具の類かも知れない。鬼切りの刀……桃太郎の宝具あたりなら、そういうものかも知れない。

試しに振るってみた。
検索、問題なし。片手で何度か刀を振るう。これも問題はない。

「本当にいいのか、リセ?」
「もちろんですよ」
「……ありがとう。それじゃ、この刀……維斗を借りることにする」
「はい、衛宮さん」

さて、そろそろ行動しよう。
廃屋に待機していた士郎に背を向け、リセは再び歩き出す。
今後の方針は知り合いの捜索。そしてこのゲームに反抗するための協力者を集めることだ。
廃屋の扉を開く。最初の目的地は地図に記された中世西洋風の街……皆に再び会うために最初の一歩を踏み出した。
605名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:25:08 ID:8zJWi8k5
606名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:25:09 ID:cXRL8hUL
607名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:25:29 ID:sYcLXCx3
 
608名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:25:44 ID:8zJWi8k5
609名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:25:58 ID:i23CSJ4Y
 
610I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:26:21 ID:Dbr5+YFs


ガツンッ!


そこで、リセの意識は消えてなくなった。


     ◇     ◇     ◇     ◇


「…………」

俺は倒れ伏すリセを、できるだけ冷めた目で見つめた。
右手にはゴルフクラブ。俺の支給品のひとつだ。
一番役に立つ支給品がこれで、しかもそれですら人を思いっきり殴れば折れ曲がってしまった。廃屋に投棄する。
支給されたものがこれでは『殺し合いに乗る身』としては落胆すること、この上ない。

(どうして……って、思ってるんだろうな)
611名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:27:02 ID:cXRL8hUL
 
612名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:27:13 ID:sYcLXCx3
 
613I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:27:26 ID:Dbr5+YFs
後頭部を殴打されたリセの頭は割れ、鮮血が埃まみれの床に流れ落ちる。
どうやら……まだ、死んではいないらしい。きっと、彼女には疑問だけが心の中に残っているだろう。

リセを救ったのは武器を得るためだった。
もう一人の女、椰子なごみは銃を持っていた。こちらは易々と無手では倒せない――――よって退却を選択。
このまま彼女にリセを殺されれば、この名刀も椰子の手に落ちていた。そうなってはますます倒せない。
だから彼女を救い、そして信頼を得て……そして武器を奪うことにした。

「……待っていろ、桜。俺が桜を守るから」

桜のために。
俺はこうすることを選択した。
場合によっては命を捨てても――――この左腕の聖骸布を取ることすら、厭わない。

『――――だから、俺が守る。どんなことになっても、桜自身が桜を殺しそうになっても……俺が、桜を守るよ』

あの雨の中、俺の前でしか笑えなかった少女を抱きしめた。
そのときに誓ったのだ、約束したのだ。

『約束する。俺は……桜だけの正義の味方になる』

万人のための正義の味方ではない。ただ一人のためのヒーローになろう、と。
俺の知らないところで泣いていた桜が、いつかちゃんと笑えるように。
そのために俺は決めた。悩んで、悩んで、悩みぬいて……決めた。俺は、衛宮士郎を鬼にしよう、と。
614名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:28:18 ID:3R4Q9I4c
 
615名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:28:23 ID:8zJWi8k5
616名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:28:33 ID:sYcLXCx3
617名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:28:46 ID:i23CSJ4Y
 
618名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:28:50 ID:cXRL8hUL
 
619名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:29:01 ID:QzBguckH
620I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:29:35 ID:Dbr5+YFs

「桜の味方であると、誓ったんだ」

名刀、『維斗』を握り締めて近づく。
昏倒するリセの胸を正確に狙い、そのまま大きく振り上げた。


―――――裏切るのか?


「―――ッ!?」

心臓が止まるかと思った。
それは幻に過ぎない。俺自身の、罪悪感が生み出した迷いに過ぎないはずだ。
だけど、俺の心が感じていた。背後にもう一人の衛宮士郎が幽鬼のように立っていた。
現実にはそんな存在はいなくても、確かに俺はもう一人の俺の声を聞いていた。

―――――今までの人生、信念、決意、生き様、衛宮士郎という存在を。
―――――たった一人のために。己自身も、多くの人の幸せも、全てを切り捨てるのか?
621名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:31:12 ID:8zJWi8k5
622I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:31:21 ID:Dbr5+YFs
「………………」

刀を振り上げた腕が、そのまま停止している。
背後で語りかけるのは確かに俺だ。
同じ状況に立たされたとき、正義の味方として奔走することを選択したはずの衛宮士郎は語りかける。

―――――倒れているのは罪も咎もない女の子。
―――――何も知らず、普通に当たり前の人生を送ってきたはずの少女。平穏を享受し、それを理不尽に奪われた者。
―――――彼女から、他の60人を超す人間たちから―――――その命までも奪おうというのか?

「…………っ……!」

そうだ、そんなこと分かっている。
改めて言われるまでもなく、分かっているんだ。俺の行動は正義の味方のやろうとしていることじゃない。
この刀を振り下ろしたそのとき、衛宮士郎は壊れてしまう。そんなこと、忠告されるまでもなく分かっていた。

―――――かつての衛宮士郎が救いたいと願った人たちだ。
―――――今までの衛宮士郎なら迷わず助けようと足掻いたはずだ。
―――――なのに、お前は。

背後に幻視したもう一人の俺が弾劾する。
そうだ、俺は正義の味方になろうとした。親父――――切嗣の意思を受け継いで、正義の味方になるんだって。
その思いも、その意志も憶えてる。


―――――ただ一人、守りたい人のために……お前はエミヤシロウ(正義の味方)を裏切るのか?

623名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:31:25 ID:sYcLXCx3
 
624名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:31:57 ID:3R4Q9I4c
 
625名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:32:13 ID:8zJWi8k5
626名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:32:24 ID:i23CSJ4Y
 
627名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:33:51 ID:cXRL8hUL
 
628I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:34:10 ID:Dbr5+YFs

誰かを救うことが自分の贖いだと信じてきた。
泣きながら多くの人を見捨ててきたあの火災、その償いをするのだ、と……そう信じて生きてきた。
だというのに、俺は鬼になる選択をした。
背後は振り向かなかった。ただ、俺はゆっくりと名刀を手にする腕を――――


「ああ―――――裏切るとも」


すとん、と。
リセルシア・チェザリーニの胸に目掛けて振り下ろした。


     ◇     ◇     ◇     ◇


(どうしてこんなことになったんだろう―――?)
629名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:35:01 ID:3R4Q9I4c
 
630名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:35:02 ID:QzBguckH
631I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:35:22 ID:Dbr5+YFs

混濁する意識の中、私は宙に浮いたままぼんやりと呟いた。
世界は真っ白で、そして意識は真っ黒。
上下左右、前後も分からないまま……身体は動かない。夢の中にいるような浮遊感と、悪夢のような恐怖。

「………………」

そうだ、こんなの夢に違いない。
私みたいな娘が殺し合いに放り込まれるなんて、そんな非常識は有り得ない。
だからこれは夢。そして……もうすぐ、夢は終わるんだ。
終わらせるために彼は近づいてくるのだから。

(目が覚めたら――――)

「…………っ……!」
632名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:35:28 ID:cXRL8hUL
633名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:35:37 ID:i23CSJ4Y
 
634名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:35:50 ID:sYcLXCx3
 
635I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:36:19 ID:Dbr5+YFs

横たわる私を見上げるように、青年が近づいてくる。
私を起こすために―――同学年の男の子が凶器を振りかざして近づいてくる。
そんな苦しそうな顔、しないでほしいです。
衛宮さんは、まだ起きれないだけなんですよね……?
大丈夫です。……衛宮さんも椰子さんも、こんな悪夢はいつか、終わるはずですから。


「ああ―――――裏切るとも」


(――――歌を、また歌いたいなぁ)


そう願ったのは一瞬。
衛宮さんが刀を振り下ろす光景を視界の端に捉えたとき、私はこの世界に別れを告げた。


【リセルシア・チェザリーニ@シンフォニック=レイン 死亡】

636名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:38:26 ID:8zJWi8k5
637I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:38:41 ID:Dbr5+YFs


覚悟はできた。
罪のない少女の血で手を染めた。
これでもう戻れない、これでもう途中下車は許されない。
多くを取りこぼしてでも、どんなに見っとも無くとも、万人よりも抱きしめたい少女の命を選択した。

「…………」

ごめん、とは呟かない。廃屋の中で眠るように少女の遺体を寝転がせて、俺は廃屋を去る。
彼女は俺を信用してくれたはずだ。その心を裏切った代償は胸にしこりとして残っている。涙が出るほどに痛い。

だが、これでいい。
命を奪うとはそういうことだ。魔術師に……魔術を教えてもらったそのときに、命を奪う覚悟はできていた。
自分のために、自分と他人の血で身体を染めるのが魔術師なのだから。
俺は月を見上げた。憎らしいほどに輝き、祝福と怨嗟の月光を俺に浴びせる。

638名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:38:59 ID:sYcLXCx3
 
639名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:39:48 ID:cXRL8hUL
640名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:39:54 ID:8zJWi8k5
641I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:40:05 ID:Dbr5+YFs

「桜。俺はお前の――――味方だ」


世界が彼女の存在を許さないとしても。
ただ一人、自分だけは桜の味方であり続けよう。どんな結末が、どんな惨劇が待ち受けようと。
鬼切りの刀を持った『鬼』は一振りの剣と化して、障害を潰していくことを決意する。
だから、痛いのも苦しいのも我慢できる。それも当然だ。



I am bone of my sword.――――――体は剣で出来ているのだから。


【E-6 廃屋/1日目 深夜】

【衛宮士郎@Fate/stay night[Realta Nua]】
【装備:維斗@アカイイト】
【所持品:支給品一式×2、不明支給品1(武器ではない)、リセの不明支給品(0〜2)】
【状態:健康、強い決意】
【思考・行動】
642名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:40:23 ID:sYcLXCx3
643I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:41:35 ID:Dbr5+YFs
基本方針:桜を優勝させる
1:桜を保護、そして安全な場所へと避難させる
2:桜以外の全員を殺害し、そして自害する
3:桜についての情報を集める


※桜ルート途中からの参戦です。
※左腕にアーチャーの腕移植。赤い聖骸布をまとったままです。投影の類は使えません。
※ゴルフクラブ@School Days L×Hは破損し、廃屋にリセの死体と共に投棄されました。



投下完了、まず一言謝罪させてください。
32行を舐めすぎていました、ごめんなさい。次回は決してこのようなことがないようにします。
644 ◆WAWBD2hzCI :2008/03/19(水) 01:42:49 ID:Dbr5+YFs
って、ここで書き込めばよかったorz
投下完了です。タイトルはもちろん、士郎の例の呪文より。
鉄心、ではないはずと思うのですが……ご意見、ご感想をお待ちしております。
645名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:45:16 ID:i23CSJ4Y
嗚呼、感想が間に合わない…

>>iDq氏
投下乙です。
ウェストのキチガイぶりがゲーム本編と遜色ないほど再現されていて素晴らしいです
よく研究されてるな、本気で思いました。

>>CKV氏
投下乙です
今回のレオはどこまで活躍できるのか、期待大です
何気にミキミキは今回初めてのステルスマーダーになるのかな?

>>WAW氏
投下乙です
いきなり鉄心ですか、色々な意味で度肝を抜かれました
シンフォは知らないけど、リセって子が哀れでならない
これがバトルロワイ(ry
646名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:45:29 ID:sYcLXCx3

>>530
投下乙です
いきなりの本格バトルにワクワクしながら読んでいました
ハサン先生、いきなり宝具を失ったか……この打撃が今後、どれだけ影響してくるか
そして何を投げてるのかと思ったら、ヒトデwwwwwwwwww
理樹は心を強く持ち続けれるかどうかが、相当重要そうだなあ


>>643
投下乙です
桜の為に正義を捨てた士郎……正に原作桜ルート後半の彼そのものですね
士郎の苦悩、なごみのレオに対する想い、痛い程伝わってきました
パロロワで初めて修羅と化した士郎がどうなるか、要注目です
しかし桜はもう死んでるんだよなあ……余りにも報われない
それと鉄心は『二人の他人を救う為なら、愛している一人をも切り捨てる』なので、違う筈
647名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:45:35 ID:cXRL8hUL
投下乙

まさかのヤンデレ士郎…完全に予想外の展開
だけど桜はすでに…
なごみんはやはりデレが長じて同じくヤンデレ化w
ギャルゲロワはヤンデレの宝庫だぜ!
648天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:49:57 ID:gYU7ooS9
茶色い髪の毛の異様に妙に悪い男――古河秋生が眼を覚ました時、そこは見たこともないような石畳の洞窟のような場所だった。
軽く地面に触れてみる。返って来るのはザラザラとした砂と尖った小石が皮膚を引っ掻く感触。
神経はハッキリとその痛みを理解し、そして消化する。

これは現実。紛れもなく一辺の嘘偽りの含まれない本物だ。

『諸君らにはコレから互いを傷付け騙し犯し欺き――そして、殺し合って貰う』

「……チッ、何言ってやがる」

人が死んだ。
双子の少女、高校生程度の少年、そして少女。
合計して、四人もだ。

双子の方は身体が赤い霧を出したり、蛇を呼び出したりと明らかに妙な人種であることは確かだ。
とはいえ「はい、そうですか」と割り切れるほど自分は薄情でもないし、冷酷ではない。
眼の前で起きた惨事は正直信じたくないことだし、そもそも状況の変化が目まぐるし過ぎて意味が分からない。

「とりあえず、荷物か」

秋生はボリボリと頭を掻きながら、ひとまず荷物の確認を始めることとした。
出て来たものは食料や水、ランタンなどの必需品。
軽くパッケージを開けて確認してみたが、パンは一つもなかった。
パン屋である自分に、ソレに随する食物が一つも与えられなかったのは妙な気分だった。

「おいおいパンはねぇのかよ、パンは!? もしかしてコイツを準備した奴はパンが嫌い……ってか?
 好き嫌いしてるとマトモな人間になれねぇぞ!!」
 
649天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:50:37 ID:gYU7ooS9
出て来たのはおにぎりだった。しかも秋生を嘲笑うかのような凄まじい数の。
梅干、カツオ、辛子明太子、シーチキン、焼きタラコ、シャケ、マヨネーズ明太子、昆布辛子明太子……、 
「勘弁してくれ」と懇願したくなるような怒涛のおにぎり。
しかもコレだけの量のおにぎりがあるのに、パンは一つもない。
どう見てもこれは、自分に対してあの黒い二人組が喧嘩を売っているようにしか思えなかった。

秋生はため息を付きながら、海苔の黒で中身が見渡せないデイパックの中に乱暴に手を突っ込む。
が、瞬間彼の眼の色が変わった。

指先が、触れたのだ。感じ取ったのだ。
明らかな異常、自らの頭をこの空気に馴染んだ――つまり「バトルロワイアル」へと切り替える存在を。

「おいおい……マジかよ、こいつぁ……!」

現れたのは本物の銃だった。
M16A2(AR-15A2 モデルNo.645)M16A1改良型アサルトライフル。
装弾数は20発。これは通常の運用にも狙撃としての運用にも適している。
未だアメリカ合衆国軍制式ライフルとして名を馳せる、銃の中でもトップクラスの知名度を誇る一品だ。

「うぉおおおおおお!! すげぇえええ!! カッコよ過ぎだぜ、ちくしょー!!」

が、古河秋生に関しては違った。
彼は他のどんな大人よりも――いや、子供よりも非常に子供っぽい部分を多分に備えた大人だったからだ。
秋生は古河家のチャームポイントとでも言うべき頭部の触角を仔犬の尻尾のように震わせながら、年甲斐もなく喜びを露にした。

例えば、この非常に心細い状態で銃を手にした場合。その魔力に取り付かれてしまう者がいるかもしれない。
他の人間を攻撃しようと考えてしまうかもしれない。
だが彼に関して言えばその可能性は皆無だった。

「っとっと。まだ何かあんのか? 次は…………ぁん? 名簿?」
650名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:50:38 ID:Dbr5+YFs
 
651名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:50:39 ID:QzBguckH
652天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:51:14 ID:gYU7ooS9
なぜなら彼は非常に強く、陽気で、そして少しだけ馬鹿な……、

「アイン……蒼井渚砂……はぁ"ナギサ"ねぇ。
 吾妻玲二…………岡崎智也? ったくだせぇ名前だ………藤林杏……ふむ。お、古河秋生。俺もちゃーんといる、と。
 そして次が古河渚、か。へー似た名前もあるもんだ。んで次が間桐桜………………。
 …………………………あ? …………な……ぎ……さ? …………ふふふ、ふ、る、か、わ……なぎさぁああっ!? 
 はあああああああああああああああああっっっっっ!!??」

一人の少女の――父親だったからだ。

「おいおいおいおいマジかよ、コイツは!? 渚!? マジで渚!?
 同姓同名の別人とかじゃねーのかよ!? いや、でもそんなある名前じゃねーぞ!? 早苗はいないみたいだけどよ……!!
 つーことはアレか、この岡崎智也もあの馬鹿……!?」

瞬間、秋生は理解した。
つまり、一番最初に神崎達が自分達に向けて「ゲーム」とやらの説明をした時、犠牲になった少年達の関係を。
彼らはおそらく、初めから知り合いだった。
互いを呼び合う名前や親密な態度、ある程度の顔見知りでなければあのような反応は考えられない。

「参加させられてんのは幾つかの知り合い単位のグループ、って訳か……?」

頭がグルグル回る。
これは明らかにノンビリと支給されたおにぎりに文句を付けながら、パンvsおにぎり抗争をしている場合ではない。
少なくとも、やらなければならないことが出来た。
【この古河渚が本当に自分の娘である古河渚かどうか確認する】必要がある。

「こりゃあ、やべぇな……とにかく他の人間を探してみるしか――」
「きゃああああああああああああああ!!」
「なッ――!?」
653名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:51:17 ID:sYcLXCx3
 
654名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:51:30 ID:cXRL8hUL
655名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:51:38 ID:3R4Q9I4c
 
656天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:51:47 ID:gYU7ooS9
そして更に頭の中は混乱する。
女の悲鳴だ。それは良い。それはまだ理解出来る。
脅える女がいるならば、駆けつけて慰めてやればいいのだ。
それが男としての責務。一児の父親としてのプライドである。

だが、秋生が疑問を抱いたのは叫び声が起こった状況ではない。大切なのは"誰が"その声を出したのか、ということ。
なぜならこの声は、

「……渚? おいおいおい……いきなりかよっ!? ちくしょぉおお!! 俺の娘には指一本触れさせねぇええ!!」

彼の愛娘・古河渚のソレと全く同じだったのだから。
秋生はM16を陸戦兵士のように構えると、声がした方向に向けて走り出した。


 □

657名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:52:03 ID:sYcLXCx3
 
658名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:52:10 ID:Dbr5+YFs
 
659名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:52:12 ID:3R4Q9I4c
 
660名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:52:16 ID:i23CSJ4Y
>>CMd氏
すいません、普通にスルーしてしまいました。
理樹とハサンの異色コンビ。これがクロスオーバーものの醍醐味ですね
続きが気になります
リトバスはネタバレをくらっているのでたぶん全部知ってるつもりでしたが
何気にナルコレプシーって治るんですね。知らなかった。早くリトバス全クリアしよ…
661天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:52:20 ID:gYU7ooS9
鮫氷新一ことフカヒレは、眼が覚めてからずっと悩み続けていた。

鮫氷新一ことフカヒレは眼鏡っ漢(こ)である。
それはもう、眼鏡が顔と同化しているのではないかというレベルの眼鏡ボーイだ。
だが、今はそんな眼鏡の奥の瞳にまるで輝きが見られない。まるで腐ったドブ川のようである。

苦悩の原因はもちろん、先程眼の前で行われた惨劇について、だ。
あの瞬間、爆破されたのが自分の首輪だったとしたら――そう思うだけで震えが止まらなくなる。

「レオぉぉぉぉ……スバルぅぅぅぅ、助けてくれよぉぉぉ……」

情けない泣き声をあげながら体育座りの体勢でガクガクブルブルするフカヒレ。
そしてその傍らにはやけに豪華な剣が置かれている。

――エクスカリバー。
騎士王アルトリアが紆余曲折あって手にした伝説の聖剣である。
この武器が出て来た瞬間は思わず喜びを露にしたフカヒレであったが、ぶっちゃけ彼は剣など使えないのでそれもぬか喜びなのであった。
適当な銃なんかが入っていた方が何倍も心強かったのである。

殺し合いなんて無理に決まっている。誰かを殺すのも殺されるのも自分には不可能だ。
このままずっと膝を抱えて隠れていようか。
そうだ、きっとソレが一番上手い手段に違いない。
大丈夫、必ずレオやスバルや乙女さんや館長が助けに来てくれる筈! ……椰子は多分無理だろうけど。

などとフカヒレが非常に後ろ向きな結論を出した瞬間、事件は起こった。


「きゃああああああああああああああ!!」
「うわぁぁあああああ!! な、なんだっ!?」」

662名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:52:37 ID:cXRL8hUL
663名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:52:51 ID:3R4Q9I4c
 
664天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:52:54 ID:gYU7ooS9
なんと、フカヒレの頭上から女の子が落っこちて来たのである。
だが彼が座っていたのは遺跡の内部。
当然の如く天井が存在する施設の内部だ。
しかし、その天井がパカッと開き――まるで忍者屋敷のような感じで女の子が現れたのだ。

「い、痛たたたた……う……な、なんであんな所に穴が空いてたのかなぁ?」

それは、平たく言えば天使だった。エンジェルだった。
お尻を擦りながら首を傾げる少女――しかも何故かびしょ濡れだ。
おそらく、ここまで落ちてくる間に水路か水溜りでもあったのだろう。全身が余すことなく水で濡れている。

(小さな女の子……しかも全身ずぶ濡れ……だとぉっ!? そしてこのシュチュエーション!!
 こ、これはぁあああ!! なんたる……なぁんたることかぁっ!? フラグ? もしかしてフラグ立ってる?)

フカヒレの眼の色が変わった。
突然自分の目の前に女の子が現れたのである。
これに衝撃を受けずしていったい何に驚くというのだろうか。

『空から女の子が降って来る』

これはギャルゲーにおける最もポピュラーな出会いの一つと言えるだろう。
並び証される物としては、

『パソコンから女の子がいきなり出て来る』
『遅刻遅刻ー!!と叫びながらトーストを咥えて走って来る女の子と曲がり角でぶつかる』
『ある日、自分には十二人の妹がいた事が判明する。もしくは生き別れになった母親から十九人の姉妹が居る事を告げられる』
『大好きな姉と共に、とある三姉妹の下で執事として働く事になる』
『養子として引き取られた家には六人の姉が! 十年の時を経て甘々ライフが再スタートする。続編では更に二人の姉が!』

など、そうそうたる顔ぶれだ。
まさに「それって極上だね!」と言ってしまいたくなる。
665名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:53:13 ID:Dbr5+YFs
 
666天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:53:30 ID:gYU7ooS9
ちなみにフカヒレは数多のギャルゲーを嗜むギャルゲーマスターである。
彼は日々クラスメイトのイガグリ(2-C所属、野球部)と共にギャルゲーについて語り合っているのだ。
そんな彼の上から女の子が降って来た――これを運命と言わずして何と言うだろう。

しかもその女の子の可愛さと来たら!
全身水浸しの少女はワインレッドの髪を後頭部で結い、若干短めのポニーテールにしている。
目鼻立ちは幼く童顔で、クリッとした大き目の瞳がやけにチャーミングだ。
身に纏っているのは明らかに何処かのお嬢様学校の物と思われる黒色ベースの制服。
そして、その、黒い制服がグッショリと水で湿り、未成熟な股体のラインをクッキリと浮き上がらせている。

フカヒレは息を呑んだ。
そして興奮する自身の一部を宥めながら、おもむろに自らの"力"を解放する。しかし、

(…………な、なにぃ……見えない!? ま、まさか……ッ!?)

フカヒレに衝撃が走った。
なんと、彼の持つ特殊能力『眼鏡の渕を押すことで、女の子のバストサイズを観測する』能力が発動しないのである。
何度、クイッと眼鏡の渕を指先で押してみても特別な変化は起こらない。フカヒレは戦慄した。

どうやら主催者がルールを説明していた時に言っていた『超常的な力には制限が掛かっている』という条項に触れてしまったらしい。
流石に竜鳴館高校の影の実力者と称される自分に、制限が掛からない筈がなかったという訳か。

(だがっ……まだだ、まだ終わらんよ!! 俺の力……眼力を甘く見られては困る!!)

しかし、フカヒレは諦めなかった。
能力が何だ? 制限が何だと言うのだろう?
自分にはこの眼鏡があって、そして両の眼はハッキリとすぐ側で怪訝な顔付きをしている女の子を捉えている。
二人を阻むものはメットリとした空気と濡れた衣服だけ。
条件は万全で最善で最良だ。つまり……やるしか、ない。

――――おっぱいスカウター、発動。
667名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:53:31 ID:cXRL8hUL
 
668名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:53:44 ID:3R4Q9I4c
 
669名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:54:16 ID:sYcLXCx3
 
670名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:54:28 ID:QzBguckH
671天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:54:31 ID:gYU7ooS9
(バスト…………72…………74…………76…………クッ…………まだか……まだ上がっていくのかぁっ!?)

瞬間、フカヒレの頭に凄まじい痛みが湧き上がった(ような気がした)
思わず、コメカミを抑える。眼鏡のフレームが指先に触れた。
つまりこれは自らの力を酷使し過ぎた代償。これ以上の負担は身体にとっても毒だ。しかし、

(俺は……見たい!! そして触りたい!! 女の子に!! 女の子の身体に!!! この程度の痛みで参る訳には……!!
 うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!! 燃え上がれ俺の小宇宙!!
 …………78…………79…………80!! 捉えたっっっっ!!!!!)

臨界点を、彼は突破した。
そして、フカヒレは歓喜した。
彼は達したのだ。遙かなる遠き理想郷(アヴァロン)へと。
続けざまに自らの脳裏に少女の姿(全裸)をリアルに思い描く。
すなわち――頭の中に投影する。

――――観測完了。
――――同調(トレース)、開始(オン)
――――基本骨子、想定。
――――基本骨子、解明。
――――構成材質、解明。
――――全工程(トレース)、完了(オフ)

………………………………、

…………………………、

…………………、

…………、

……。
672名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:55:02 ID:cXRL8hUL
 
673天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:55:04 ID:gYU7ooS9
楽園、
桃源郷、
エデンの園。

理想郷を表す言葉はいくつも存在する。
しかし、フカヒレの妄想は留まることを知らない。
それは、天にも昇るかと思うような至上の幸福だった。







「あの……? 大丈夫、ですか?」

少女の声を聞いた瞬間、フカヒレは我に返った。
おずおずと少女が首を傾げながら彼に尋ねた。
フカヒレは再度、彼女をしげしげと舐めるように見つめた。

歳はおそらく高校生程度だろう。身に纏っている制服から十分に推測出来る。
だがその容姿は非常に幼く、中学生と言ってしまっても十分に通用する。
しかしそこに何の問題があるだろうか?

否! 断じて否だ!!
愛し合う二人を隔てるものは歳の差や体格の差などではなく、その想いの深さ。そして薄っぺらい衣服だけ!
そもそも――彼はロリコンである。
もとい、ロリコン"でも"ある。
基本的に彼の趣味はノーボーダー。顔が良くて穴が空いていればそれでいいのだ。
「つるぺた幼女から爆乳お姉さんまでドンと来い! でもブサイクだけは簡便な!」なのである。
674名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:55:26 ID:sYcLXCx3
 
675名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:55:45 ID:cXRL8hUL
 
676名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:55:55 ID:3R4Q9I4c
 
677天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:56:22 ID:gYU7ooS9
初対面の印象は非常に大切だ。
フカヒレは万全の体勢から、最上の自己紹介の言葉で彼女に応じる意思を固めた。

「私、"ナギサ"って言いま――」


 □


「私、"渚砂"って言いま――」
「俺は鮫氷新一。フカヒレなぁんて呼ぶ奴もいるが、それは仮の姿さ。シャークって呼んでくれ。
 おっと大丈夫だぜ? 鮫だからって決して君を食べたりしないよ? あ、もちろん変な意味じゃなくてね」
「……あの」
「趣味は天体観測。割と自然好き。好きな昆虫はコーカサスオオカブト。あの威風堂々とした角になんか親近感覚えるよね」
「…………………………」
「いやさぁ、こんな所であったのも縁って言うかさ。あ、もしかして俺達、運命のアカイイトで結ばれているのかもしれないな」

蒼井渚砂は、とりあえず悟った。
眼の前にいる少年は凄まじい、と。色々な意味で。
少なくとも自分を殺そうという意志はなさそうだが……?


「だ、だからさぁ……ハァハァ……ちょっと俺と……さ。お話……しないかい? こ、怖かっただろう?」
「えと……その……」
「ハァハァ……あ、そうだ。君、今ずぶ濡れだよね? さ、さすがにその格好じゃ風邪を引いちゃうぜ? 幸いにも俺にはこれが……」

678名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:56:35 ID:xVW/RWH2
679天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:57:07 ID:gYU7ooS9
鼻息を荒くしながら、一歩また一歩と鮫氷新一は自分の下へと迫ってくる。
ズボンのポケットをゴソゴソとやると、

「ほ……ほら……ナイスなブルマだろ? あ、礼には及ばないよ。俺は漢として当然の事をしたまでだからね」

そこから取り出したブルマを渚砂へと差し出した。
そしてあまりにも自然な動作でポン、と彼女の掌の上にソレを置く。

(な、なんなんだろう……この人)

渚砂は完全にパニック状態になりつつあった。
遺跡の外を肩を震わせながら歩いていたら、突然足元が開き、遺跡の内部へと吸い込まれた――
しかも落っこちる最中に湧き水か何かの噴出口を経由したため、全身ずぶ濡れだ。

加えて鮫氷新一という眼の前の少年。彼の言葉、動作、何もかもが理解の範疇を超えている。
彼女は基本的に男に免疫がない。
もちろん、生粋の女子高育ちである。故に、


「へ…………変態さん?」


こんな台詞が漏れてしまったのも仕方がないことだろう。
鮫氷新一、フカヒレと名乗った少年は――自分にブルマを履かせようとしている。
これだけでも、この言葉を送るには十分過ぎる。

「なにおぉぅ!? おいおい、君。言って良い事と悪い事があるんじゃないかい?」
「え……いえ、私は別にそんな……」

しかし彼は渚砂の台詞が気に入らなかったらしい。
途端に高圧的な態度で(それでもどこかに漂う情けなさは抜け切らないのだが)彼女を恫喝する。
が、その時だった。
680名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:57:08 ID:sYcLXCx3
 
681名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:57:15 ID:cXRL8hUL
 
682天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:57:40 ID:gYU7ooS9
「ハァハァ……まったく、君はいけない子だなぁ……。そんな悪い子にはオシオキ――」
「シャッ!!」
「ひぃぃぃぃぃいいいいい!!」

渚砂のデイパックの中から『白い影』が飛び出して来たのは。

「き、狐!? ど、動物だとぉっ!?」
「お、尾花ちゃん……?」

現れたのは全身を白い体毛で覆った子狐だった。何とも妙にモフモフしている。
デイパックの中になんと動物が入っているのを見た時、渚砂は相当に驚いた。
付属していた紙には『名前は尾花です。可愛がってあげてください。決して食べたりしないでください』とだけしか書いてなかったのだ。
……さすがに言われなくても、食べたりはしないと思ったものだが。
足場が悪かったため、可愛そうにも思ったがしばらくの間デイパックの中に入っていて貰っていたのだ。

尾花はフカヒレを敵と見なしたのか、それとも渚砂を一時的な飼い主と認めたのか。
全身の毛を逆立て小さく唸り声を上げながらフカヒレを威嚇する。
赤い瞳に白い毛、鋭い爪と牙――ぶっちゃけなくてもその場にいた二人の人間は竦みあがった。

しかしフカヒレは僅かな勇気を振り絞り、渚砂を守るように身体を震わせている尾花へと啖呵を切る。

「はっ! まさかこのシャークこと鮫氷新一が四足歩行動物如きにビビる訳が……」
「グルルルルルルルルッ――」
「…………ビビる……わけ……」
「グゥゥゥゥゥゥッ、ガァッッッッッ!!!!」
「う……く……ち、ちくしょう!! きょ、今日はこの辺で勘弁してやるよ! 覚えてやがれ!!」
683名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:57:55 ID:Dbr5+YFs
 
684名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:58:11 ID:cXRL8hUL
 
685天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:58:15 ID:gYU7ooS9
が、あまりにもフカヒレは弱かった。
どこかの負け役のような捨て台詞を残して一目散に逃げ出す。
いや、しかし彼の行動は自らの能力を考えれば真に賢明なものだ。
もしこれが、どこぞの宇宙人相手だったならば「戦闘力たったの5……ゴミめ」と一瞬で殺されていた筈である。
相手との力の差を理解することは生物にとって欠かせない機能だ。
今にも襲い掛からんとばかりに咆哮する動物を前にして、逃亡することは単なるヘタレ的行為では決してない。
たぶん。

「……フカヒレさん?」

状況を完全に飲み込めずにいた渚砂が彼の名前を呼んだ時、既に彼は脱兎の如く逃げ出した後だった。
渚砂は少しだけ難しい顔をしながら数秒の間思索を巡らせる。
そして「よく分からないけど、まいっか」という結論を出し、足元で自分を見上げている尾花に向けて小さく微笑んだ。

「ねぇ、尾花ちゃんはどうしたい?」
「ケン!」
「ん……どうしたの? わ、鞄引っ張っちゃ駄目だよ」

尾花が渚砂のデイパックを咥え、何かを指し示すような行動を取った。
この中に何が入っているのだろうか。
確か、まだ大して名簿すら確認していないはずだ。

「道具、違う。もしかして名簿?」

渚砂が問い掛けると、小さく尾花は頷いた。
言われるがままにデイパックから参加者の名簿を取り出すと、渚砂は地面にソレを広げる。

「若杉……葛? それと羽藤桂? ……もしかして尾花ちゃんの飼い主?」
686名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:58:45 ID:sYcLXCx3
 
687名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:58:50 ID:Dbr5+YFs
 
688名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:59:00 ID:cXRL8hUL
 
689天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 01:59:10 ID:gYU7ooS9
再度尾花は頷く。渚砂は正直な話、驚きを隠せなかった。
とにかくこの子狐はとんでもなく頭が良い。
完全にこちらの言葉を理解している節もあるし、まるで感情まであるようだ。
というか文字も読めている……?

「んー考えても仕方ないかな? 分かった、それじゃあとりあえずその二人を探してみよう!」
「コン!」
「よろしくね、尾花ちゃん」

ひとまず複雑なことは置いておいて、現実的に物事を考えることとする。
彼女の思考を支配するものは二つ。
完全に水が染み込み、非常に気持ちの悪いこの服をなんとかすること。
そして――

(千華留様……千華留様は……大丈夫、ですよね?)

名簿の中で唯一見掛けた知り合いの名前。
大好きで大好きで堪らない――憧れの先輩の笑顔だった。



【C-3 遺跡周辺/一日目 深夜】
690名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:59:45 ID:Dbr5+YFs
 
691名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:59:52 ID:cXRL8hUL
692名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 01:59:56 ID:3R4Q9I4c
 
693名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:00:07 ID:sYcLXCx3
 
694天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 02:00:26 ID:gYU7ooS9
【蒼井渚砂@Strawberry Panic!】
【装備:尾花@アカイイト】
【所持品:ランダム不明支給品x2、ナイスブルマ@つよきす -Mighty Heart-】
【状態:健康、全身びしょ濡れ】
【思考】
基本方針:殺し合いには乗らない。知り合い、頼りになる人間を探す。
0:濡れた服をなんとかする
1:源千華留、若杉葛、羽藤桂を探す
2:信頼出来そうな人を探す

【備考】
※参戦時期は千華留ルートより、明確な時期は未定。
※フカヒレは渚砂のバストを80と断定しましたが、それが合っているかどうかは定かではありません。
※尾花が頭の上に乗っています。 

【尾花@アカイイト】
【状態:健康】
【思考】
基本方針:葛と桂を探す。それまで渚砂のことを守る。

【尾花@アカイイト】
『名前は尾花です。可愛がってあげてください。決して食べたりしないでください』

【ナイスブルマ@つよきす -Mighty Heart】
ナイスなブルマ。紺。
これを見た男子は「ナイスブルマ!」と叫ばずにはいられない。
Nice Boatとは遠縁の親戚である。


 □

695名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:01:00 ID:cXRL8hUL
696天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 02:01:04 ID:gYU7ooS9
「はぁっ……はぁっ……クソッ、ここまで来れば……!! な、なんなんだあの狐は……!!
 野生だとか生物としての本能だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

どこまで逃げて来たのだろう。少なくともまだ遺跡の内部に彼はいた。
肩で息をしていたフカヒレが顔を上げると、

「うぉぉぉおおおおおおお!!!! "ナギサ"どこだぁあああああああ!!」
「はっ――――!?」

前方から凄まじい叫び声を上げながら一人のおっさんがこちらに向けて突っ込んで来る。
手には……ライフル!?

「見つけたぜ、こらぁああああっ!! てめぇかナギサを泣かせたのはっ!?」
「ひぃぃぃいいいいい!! ぼぼぼぼ暴力反対!!!」
「てめぇが素直に喋れば撃ったりしねぇ。いたのか!? 俺の娘は、ナギサはここにっ!?」

顔に銃口を押し付けられたフカヒレは必死に頭を働かせる。
確かにさっきまでいた少女の名前は……ナギサ!
というか、つまり、彼女はこのおっさんの娘ということか?

「す、すいません、お父さん!! 僕が情けないばかりに娘さんに辛い思いを……!!」
「誰がお父さんだ、誰が!?」

フカヒレは地面に頭を擦り付け、土下座しながら考える。
……ああ、運命ってあるんだなぁ、と。


【C-3 遺跡内部/一日目 深夜】
697名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:01:40 ID:Dbr5+YFs
 
698名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:01:40 ID:cXRL8hUL
699天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 02:01:41 ID:gYU7ooS9
【鮫氷新一@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:エクスカリバー@Fate/stay night[Realta Nua]】
【所持品:ランダム不明支給品x1(本人確認済み・銃ではない)】
【状態:疲労(小)】
【思考】
基本方針:死にたくない。殺したくない。
0:目の前のおっさんにとりあえず謝る。
1:知り合いを探す
【備考】
※特殊能力「おっぱいスカウター」に制限が掛けられています?
 しかし、フカヒレが根性を出せば見えないものなどありません。
※渚砂の苗字を聞いていないので、先ほど出会った少女が古河渚であると勘違いしています。
※混乱して渚砂の外見を良く覚えていない可能性があります。


【古河秋生@CLANNAD】
【装備:コルトM16A2(20/20)@Phantom -PHANTOM OF INFERNO-】
【所持品:5.56mm NATO弾x40、おにぎりx30@現実、ランダム不明支給品x1】
【状態:健康】
【思考】
基本方針:主催者の野郎をぶっ飛ばす。家族を守る。
0:フカヒレから渚の情報を聞き出す。
1:渚を探し出して守る
2:岡崎智也も探してやらんことはない
3:殺し合いに乗った奴は取っちめる
【備考】
※遺跡内部には様々な仕掛けが施されている可能性があります。

【おにぎり@現実】
日本人の主食・米をまとめて、中に具材を入れたもの。種類は様々。心なしか明太子が多い。
支給されたのはコンビニで売っているタイプ。賞味期限は約二日。消費期限ではない。
パン屋とおにぎり屋はまさに犬と猿の関係と言えよう。
700名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:03:06 ID:Dbr5+YFs
 
701 ◆awaseG8Boo :2008/03/19(水) 02:04:38 ID:gYU7ooS9
失礼、遺跡はD-3でしたね。
どちらのペアも、

C-3→D-3でお願いします。
702名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:06:14 ID:cXRL8hUL
投下乙!!!

やべえww夜中なのに爆笑ww
フカヒレが面白すぎるwwwつーかおっぱいスカウターに制限ってww
言峰なにやってんだよw
アッキーとの出会いがフカヒレに何をもたらすか楽しみです
703名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:09:56 ID:Dbr5+YFs
投下乙!
フカヒレwwwwwwwお前はまさにフカヒレwww ってか制限対象になるとは誰が思っただろうかwww
だ、だめだ、笑いが止まらないwwww
とにかく、投下GJでした。 それにしても随所の小ネタが笑えるwww
704名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:10:38 ID:sYcLXCx3
>>701
投下乙です
ふかwwwwwwwwwwひれwwwwwww
腹痛いw何制限されてんのw
暴走っぷりも、最後の秋生と出会うって展開も凄く面白かったです
後、
>しかし、フカヒレが根性を出せば見えないものなどありません。
aw氏自重して下さいw
705名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:15:17 ID:i23CSJ4Y
嗚呼、投下の途中に感想いれてしまうとか、恥ずかしい…
これが投下ラッシュの恐ろしさか

>>aw氏
投下乙です
フカヒレwどうしてこの状況でここまで面白くなれるんだお前はw
まさかギャグ補正にも制限がかかるとか、盲点でした
着眼点が素晴らしすぎます

あと途中、岡崎朋也が岡崎智也になってましたよ
706名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:21:21 ID:3R4Q9I4c
まとめて感想!

>Let's Play?
ドクタアアアアァァァウエストオオオォォォwww
原作知ってても知らなくても、このインパクトは凄いw
セリフの節々かららしさを感じました。一人だというのにすごいテンションだw

>固有の私でいるために
クロスチャンネル勢にまともな奴はいないのかー!?w
レオも厄介なのと出会っちまったなぁ……w
なんとも先行き不安な二人。

>I am bone of my sword
マーダーが一気に二人も増えたぞやっほい!w
リセの安否が目まぐるしい。死んだと思ったら助かって、助かったと思ったらやっぱ死んだー!?
士郎の葛藤とリセ死亡の無情感がまさにロワだわ……

>天から舞い降りたシ者
フカヒレ自重しろwwwww制限っておいwww
フカヒレの変態っぷりが際立ってたけど、渚砂の名前及び声ネタが上手い。
ああしかしなんというコメディパート。笑わせてもらいましたw
707 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:27:28 ID:QHSILiiP
場所は森の中。
見渡す限り、緑と茶色の混合した景色で全てが埋められている。
時折吹く風が、植物の匂いと共に優しく彼女の鼻腔をくすぐる。
ザワザワと鳴く木の葉と草の合唱が、彼女の精神を落ち着かせていた。
静寂。
大地の自然以外の何者も、この静謐な空間を侵すことは憚られるようである。
ひょっとしたら、妖精や精霊の類が現れて踊っていても、なんら疑問を抱くこともなく受け入れられることもできたかもしれない。
それほどまでにこの場所は神秘的かつ幻想的な場所であった。
殺し合いの舞台にはあまりにも似つかわしくない雰囲気。
いや、似つかわしくないからこそのアンバランスさと不安定さが、より一層この場の神秘的雰囲気を高めているのかもしれない。
木陰から漏れる月の光を一身に浴びながら、トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナはそこに佇んでいた。
正式名称はアントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナだが、彼女が留学している神沢学園ではトーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナと名乗っている。

気の強そうな瞳。
あるいは確かな意志を感じさせる瞳と言い換えてもいいかもしれない。
真っ白な神沢学園の制服に、所々散りばめられた赤が絶妙なハーモニーを奏でている。
妙齢のロシア人女性に比べてあまりにも貧相な胸……ゲフンゲフン、失礼。
身長は同年代のロシア人女性どころか、日本人女性の平均よりも小さいかもしれない。
彼女はその陶磁器のように美しい肌で、参加者名簿と地図とコンパスを握り締めていた。

初めに彼女がしたのは、参加者の確認と現在位置の確認。
そして、自分の頭を抱えることだった。
詳細は省くが、神沢学園の生徒というのは表の顔で、彼女はロシアから日本に送り込まれたスパイである。
そのスパイがこうして見知らぬ場所に拉致され、こうして殺し合いを強制させられているのだ。
スパイが人を拉致することはあっても、拉致されるなど言語道断。
しかも、この島が世界のどこに位置するのかも彼女には分からなかった。
708名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:27:48 ID:i23CSJ4Y
 
709名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:27:51 ID:sYcLXCx3
 
710 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:27:58 ID:QHSILiiP
ここまできたらスパイの面目丸つぶれも同然。
トーニャはこの裏の仕事に誇りなどは抱いてないが、それでも己の不覚を恥じずにはいられない。
この話を聞いたら、各国の諜報機関はロシアの間諜はさぞかしノロマなんだろうと噂するかもしれない。
しかし、彼女はそんな中傷は気にしてはいない。
気にするとすれば、本国の反応。
もし、今から大至急ロシア、または潜伏してる神沢市へ帰還を果たすことができても、報告はどうするか。
ありのまま言っても正気を疑われるだけ。
黙っていても、報告がない間、何をしていたか聞かれるに違いない。
我が身の処分などどうなっても構わないが、トーニャには血の繋がった実の妹がいる。
妹をスパイなんていう血なまぐさい世界から、日常の世界へ帰還させるために、今までトーニャは努力してきたのだ。
しかし、こうして拉致されたとあってはもう妹の無事を確認するすべなどない。




次にトーニャが考えたのは、この殺し合いに乗ろうということだった。
神崎黎人、言峰綺礼の言っていた言葉に従い、人を殺そう決意したのだ。
それは彼女が殺人凶だからでも、自分以外の存在などどうでもいいというエゴイストだからでもない。

彼女は何よりも妹の、サーシャ・アントーノヴナ・ニキーチナのことが大事だった。
日本にいる間は妹との手紙のやり取りが二人を繋ぐ唯一の絆だった。
彼女のことを思えばなんでもできた。
はやくロシアに帰って、二人で平和に暮らしたかった。
だから、人を殺す決意をした。
日本に来た当初は、残された妹のことを思うと、今すぐにでも帰りたいと何度と無く思った。
報告が少しでも遅れると、本部から叱咤された。
兄のウラジミールはとんでもない変態オタクだった。
711 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:28:29 ID:QHSILiiP
一乃谷兄弟、七海伊緒、その他彼女の知人友人はほぼすべてその人妖能力を詳細に記して本国へ送った。
皆に裏の顔を隠すのは心苦しかったが、職業柄、「私はスパイです」とも言えないからしょうがない。
悪いとは思っていたが、妹のためだと、ただひたすら良心の呵責を押し殺し、冷徹ともいえるほどに任務を遂行した。
皆が自分の正体を知ったら何と言うだろうか、間違いなく嫌われるだろうなと何度と鳴く想像を巡らした。
でも、それでも、七海伊緒といるときは任務も何もかも忘れることができた。
いつの間にか伊緒は良き友とも言うべき存在となる。
伊緒と、先輩の癖に身長の低い上杉刑二郎との煮え切らない仲を時には応援し、時にはからかい、時には炊き付けた。
何の因果か、神沢学園の生徒会の仕事もするようになったが、会長を初めとしてみな優しい人ばかり。
生徒会の仕事も、生徒会の皆と遊ぶのも楽しかった。
トーニャも、こういう生活も悪くないかな、と徐々に感じ始めていた。

しかし、いつかは壊れると予想していた日常は、最も予想外の形で崩れることになる。
心の準備も何もなく、ある日突然訪れた究極の選択肢。
彼らを殺せるのか?
トーニャは――イエスと答えた。
神沢学園の友人より、妹の方が大事。
ただそれだけのことだ。
証明もなにも必要はない。
なれば、やるべきことは決まってる。
彼女は、もはや自分の手の延長にも使えるほどにも使いこなした人妖能力を口にする。
「キキーモラ!」
呟くのは一瞬。
それに答えるように現れたのも一瞬。
トーニャの背中からチューブの黄色いチューブのようなものが伸びてきた。
そして、その先端にはひし形の金属錘が取り付けられている。
さらにトーニャはこのキキーモラに命令を与えて、手近な木に向かわせる。
トーニャの意志に答えて、彼女の長い長い手とも言うべきチューブと、その先に取り付けられた金属錘が、瞬く間に近くの木の幹を抉り取った。
パラパラと地上に落下していく木の破片を見て、彼女は満足そうな笑みを浮かべる。
712名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:28:50 ID:i23CSJ4Y
 
713名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:29:01 ID:3R4Q9I4c
 
714 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:29:00 ID:QHSILiiP
これが人工的に取り付けられた彼女の人妖能力、『キキーモラ』だ。
彼女はこの背中から伸びたチューブと金属錘を自在に操って敵と戦う。
チューブとは呼んだが、これは厳密には極小の糸を幾重にも重ねて太いチューブを形成している。
この糸はバラバラにすることも可能だが、そうすると激痛が走るため、やむなく束ねているのだ
この背中から生えた糸の集合体こそ「キキーモラ」であり、先端に取り付けられた金属錘はあくまでも付属品に近い。
キキーモラそのものは敵を縛ったり、遠くの物を探るのにも使えたりと汎用性は高いが、如何せん殺傷力に劣る。
そこで、攻撃力増加のために取り付けられたのが、先端の金属錘。
現在は鉛の金属錘が取り付けられているが、別の素材、例えば炭化タングステンを特殊加工した金属錘に取り替えることも可能である。
また、この糸は彼女と触覚を共有もしている。
支給品などなくても、これがあれば彼女は戦っている、そのはずだった。
しかし、ここでキキーモラに予想外の事態が発生していることにトーニャは気づいた。
「……短い」
そう、キキーモラは彼女がその気になれば100m、痛みを我慢すればもっと伸ばせるはずだった。
だが、今彼女が痛みに耐えて、限界まで伸ばしてみたが、伸ばせたのはおそらく10mほど。
いつものわずか1/10までしかキキーモラを伸ばせないのだ。
そこで、不意に神崎黎人の言葉が思い浮かぶ。
『超常的な能力を持つものはその能力にある程度の制限を課す』、と。
「そういうことですか……」
皮肉めいた笑みを浮かべた。
なるほど、たしかに大幅な制限だ、と。
これでは100m先の標的にキキーモラだけを送り込み、その金属錘で暗殺ということもできない。
接近戦もできない訳でもないが、できるだけ怪我をするのは御免被りたいだけに、この制限は思わぬ痛手だった。
「……ふぅ、なら支給品に頼ることにしましょう」



さて、ここで、ようやく支給品のお出ましである。
トーニャも支給品の事をないがしろにするつもりはなかったが、状況の把握とこれからの方針を決めるのに時間が掛かりすぎていた。
鬼が出るか蛇が出るか。
その前に一つおさらいをするとしよう。
715名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:29:01 ID:Dbr5+YFs
 
716 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:29:31 ID:QHSILiiP
ここは殺し合いの舞台だ。
そしてトーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナはこの殺し合いの参加者だ。
デイパックの中には殺し合いをするための支給品が入っているらしい。

現在必要な情報はこれくらいか。
ここまでは参加者なら誰でも分かる事柄だ。

「……………………」
支給品を確認した彼女は頭痛でその場に倒れこんでいた。
悪い物を食べたのではない。
劇薬を嗅いでしまったのでもない。
あるいは支給品がハズレだったという訳でもない。
彼女は人生の厳しさというものを初めて知ってしまったのだ。


殺し合いをすすめるために支給人があるのだから、中には武器が入っているのだろう。
妥当な考えだ。

中に入ってるのは銃やナイフ、まあ、最悪の場合裁縫針ということもあるだろう。
その考えは間違ってはいない。
717名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:29:39 ID:cXRL8hUL
 
718 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:30:03 ID:QHSILiiP
いずれにせよ、邪魔になる道具が入ってるということはあるまい。
ダウト! 甘い! 大甘! 内容量190gの缶コーヒーに200gの砂糖をブチ込んで飲むよりも甘い!


トーニャはきっとこう考えたのに違いない。
「神様、そんなに私のことが嫌いですか?」、と

彼女の支給品は防弾チョッキ。
……武器ではないが、ハズレでもない。
トーニャも、これが普通の防弾チョッキなら喜んで着ただろう。
そうは問屋が卸さない。
この時のトーニャの感情を表せる言葉は、おそらく地球上になかったであろう。

高い防御力が獲得できるではないかと思う人もいるかもしれない。
では、そんなことを思った人たちに聞いてみよう。




これが『マッチョスーツ型』の防弾チョッキだと言われたら、貴方は着ますか?



719名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:30:15 ID:Dbr5+YFs
 
720名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:30:37 ID:cXRL8hUL
 
721名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:31:16 ID:cXRL8hUL
 
722名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:31:34 ID:Dbr5+YFs
 
723名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:31:50 ID:sYcLXCx3
 
724名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:31:57 ID:3R4Q9I4c
 
725名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:32:18 ID:sYcLXCx3
 
726 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:32:31 ID:QHSILiiP
「……な、なんですかこの一昔前のお笑い番組に出てくるようなマッチョスーツは!?
 しかもとても作り物には見えないじゃないですか!?こんなもんに無駄な技術使う暇があったらさっさと世界平和に役立てなさい!
 この波打つような上腕二頭筋とか芸術物の出来栄えではないですか! 
 そもそも防弾仕様だからってこんな堂々とした防弾チョッキがあってたまりますか!
 他人からは見えないところに着込むから効果があるんでしょうが!?
 こんな見え見えのの防弾チョッキなんかすぐに避けられて、別の場所撃たれるわ!
 それになんなんですかこの説明書は!?
 『私はこれを着てロワを生還しました 37歳 会社員』とか意味不明の驚天動地の空前絶後の前人未到過ぎです!?
 こっちの『これには驚いたわ。自分が何もしなくても筋肉がつくのが分かるんだ(HAHAHA!)』とか、これは防弾チョッキじゃないのですか!?
 むしろ、こんなもん着てるだけで筋肉ついたら怖いわ!?
 そもそもなんですかこの思わずニューヨークに直行したくなるような説明書は!?
 通販!?通販ですか!?電話と振込みはどこにすればいいんですか!?分割払いはできるんですか!?
 ああもう、ツッコミが追いつかない!?
 っていうかこんなもん着れるか!着るか!着てたまるか!着たらキキーモラが使えないでしょうがーーーーーーーー!!!」

ちなみに彼女、普段から怖いが、怒らせるともっと怖いという自他共に認めるドSだが、ツッコミの才能もある何気にハイスペックな人物である。
727名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:32:48 ID:cXRL8hUL
 
728名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:33:37 ID:Dbr5+YFs
 
729 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:33:42 ID:QHSILiiP
理不尽だった。
あまりにも理不尽だった。
何故こんなところに連れてこられて、何が悲しくてこんなガチムチなマッチョスーツを着て戦わねばならないのか。
これを着て戦えと?冗談じゃない。
トーニャの中に沸々とした怒りの感情が渦巻いていた。
今となっては本国のこともサーシャのどうでもいいと思えるほどの怒り。
堪忍袋の尾が切れるとはこういうことだったのかと、トーニャはある意味感謝もしていた。
さっきまでの決意はどこへやら、トーニャは反逆の意志を胸に抱く。
とりあえず、こんなものを支給したやつは殺す。
ここまでコケにされて黙ってられるのはパンダだけだ。
かくして、ここに反逆の意志を持つ一人の少女が誕生した。
言峰綺礼と神崎黎人の失敗は、もっとマシなものを彼女に支給していれば、より円滑にこの殺し合いは進んだだろう、ということである。
だが、彼女の受難はこれだけで終わらなかったのだ。

「理樹、そこか!?それとも鈴か!?」

さて、トーニャが反抗の意志を確認して移動しようとした途端、いきなり夜の静寂を切り裂かれた。
ガサガサと音がして一人の人物が現れたのだ。
どうやら先ほどの叫びを聞きつけてきたらしい。
迂闊に声を出した事をトーニャは恥じるが、それよりも先に現れた人物の品定めの方を優先させた。
その人物は鍛えられた見事な肉体をその身に纏った青年。
短ランのような短く黒い制服に、下は水色のジーンズ。
彼の気性を現すかのように、頭のバンダナと制服の下のシャツは燃えるような赤。
そしてツンツンとした固そう質の髪の毛の持ち主である。
とりあえず敵意はないようで、トーニャは警戒を解いた。
730名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:34:03 ID:i23CSJ4Y
 
731名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:34:11 ID:sYcLXCx3
 
732 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:34:16 ID:QHSILiiP
その人物の名は井ノ原真人。
筋肉の為に生き、筋肉の為に死ぬ、憎めない筋肉馬鹿一直線だ。
彼を知るものに、彼の性格を聞いたらこう答えるだろう。
馬鹿、と。
「なんだよ……違うのか。違うなら筋肉で違いますよって言えよ」
真人はあからさまに落胆した様子で呟いた。
「筋肉はしゃべりませんよ」
トーニャも冷静に切り替えした。
と、同時にこの人物に対しての評価も即座に決めた。
馬鹿、と。
短いが、これ以上ないほど的確な評価だった。
もっとも、真人がここに駆けつけてこれたのはトーニャの怒りの声のおかげであり、その点では、二人は似たもの同士だったことに両者は気がついてない。
そして、かの支給品をそのまま外に置いていたことこそ、トーニャの今日最大の失敗だったのかもしれない。

「そうか、悪かったな。じゃあ――っておい、それは何だ?」
真人がトーニャの足元を指差す。
トーニャも真人が何を指差していたのかすぐに察した。
しまった、とトーニャは思わず自分の頭に手をやってしまう。
あのうれし恥ずかしい支給品のマッチョスーツ型の防弾チョッキが転がっていたのだ。
防弾チョッキはその存在を誇示するように、月の光を反射して誇らしげに光る。
「その筋肉……お前のか?」
「ええ、まことにお恥ずかしい限りですが……」
真人の指摘に開き直って答えた。
もうこの状況は誤魔化しようがないのだ。
ならば、正直に言って笑われて、大変だったね、で終わらせればよかろう。
トーニャはそう考えていた。
733名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:34:19 ID:cXRL8hUL
 
734 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:34:48 ID:QHSILiiP
しかし、その思考が通じるのは普通の人間のみだ。
目の前の人間、特に筋肉に至上のこだわりを持つ真人にはそれは通じなかった。
重ねて言おう、トーニャは本当に運がなかったと。
真人は不敵な笑みで今度はトーニャを指差し、こう言うのであった。
「そうか……なら……着ろ」
「……は?」
いまいち状況を理解できないトーニャを尻目に、真人は拳を天に突き上げ、今ここに神聖な勝負が始まった事を宣言する。




「俺の究極の筋肉とお前の至高の筋肉、どっちがいい筋肉か勝負だ!!!」



【D-1 森林/1日目 深夜】
【井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備:なし】
【所持品:不明支給品1〜3】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:リトルバスターズメンバーの捜索、及びロワからの脱出
1:理樹や鈴らリトルバスターズのメンバーや来ヶ谷を探す。けど、その前にこいつと筋肉勝負だ!
735 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:35:26 ID:QHSILiiP
【アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備:なし】
【所持品:不明支給品0〜2】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:打倒対主催
1:筋肉勝負なんてしてたまるか!っていうか着るか!
2:不明、とりあえず打倒対主催を目的に行動

※制限によりトーニャの能力『キキーモラ』は10m程度までしか伸ばせません。
 先端の金属錘は鉛製です。
※防弾チョッキはマッチョスーツ型です。首から腕まで、上半身は余すところなくカバーします。
※防弾チョッキを着るつもりは微塵もありません。むしろ、誰かに着せようと考えています
736名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:35:26 ID:Dbr5+YFs
 
737 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 02:38:06 ID:QHSILiiP
投下終了しました
738名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:39:09 ID:Dbr5+YFs
投下乙wwwww
マーダー→支給品見てorz→対主催に転向なんてほとんど知らないwwww
というかトーニャのツッコミが可愛すぎるwww
739名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:40:01 ID:sYcLXCx3
>>737
投下乙です
真人ww馬鹿w
筋肉勝負って一体全体、何する気なんだw
支給品のセレクトと、その活かし方、共に最高でした
あやかしびと未プレイの自分にとっては、序盤の丁寧な解説も嬉しかった
740名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:40:13 ID:cXRL8hUL
投下乙!

やっぱり真人w期待を裏切らない脳筋野郎w
ウラジミールと気があいそうだw
支給品でマーダーから対主催に転向したキャラなんて初めて見たぜw
トーニャの早口突っ込みがすごくトーニャらしいです
741名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:41:14 ID:xVW/RWH2
ちょっと待てwww
最初のシリアスな空気はどこに消えたwwwww

藤野らんさんのツッコミボイスが脳内で再生されましたw
GJ!
742名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:41:25 ID:3R4Q9I4c
投下乙!
開幕、トーニャの真っ当な思考から始まったかと思えば、
まさかの筋肉チョッキ登場でナイスツッコミ!
立て続けに真人登場で筋肉センセーションだ!

……テンポよすぎるwww筋肉いぇいいぇーい!
743名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:48:42 ID:i23CSJ4Y
筋肉でトーニャ改心!?
筋肉は世界を救う!そうか、僕らに必要なのは筋肉だったんだね!!

…というわけで、投下乙です
744 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 02:57:09 ID:Z2CHM8Ld
「なんつーか……事実なのかよ……これ」
俺は未だに信じられなかった。
いきなりこんな所に連れてこられ殺し合い?
はっ、冗談よしてくれって言いたいが、
「目の前で人が死んだ……これは紛れも無い事実だ」
あの少女達と少年が死んだ。
それは今でも分かる。
あの鉄の臭い。
血の臭い。
そう死んだのだ、俺の目の前で。

「ちっ……俺は……」
この殺し合い。
俺はどうするべきだ?
殺し合いに乗る?
それとも抗うべきか。
その二択。
「何……焦ってんだよ……俺らしくない」
流石に俺でも焦るらしい、この状況は。
もっと冷静になるべきだ。

あの時、理樹と鈴を助けると決めた時の様に……って! おい!
「マジかよ……俺はあの事故から助かったのか!? いや違う。俺は理樹と鈴を助ける為の最中の筈だ……なのに何故」
解らない……なんでこんな事になっちまった?
俺達はあの作り上げた世界で理樹達を成長させる為にいた筈だ。
これは完璧な現実。
それがはっきりと解る。
なら理樹は、皆は?
「落ち着け……たしか名簿が」
そう名簿が……俺の知り合いは。
745名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:57:37 ID:Dbr5+YFs
 
746名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:57:49 ID:ar6TaOrs

747名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:57:58 ID:cXRL8hUL
 
748 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 02:58:12 ID:Z2CHM8Ld
……いた。
謙吾、真人、来々谷……そして理樹、鈴。

そうなのか。
理樹、鈴……お前達までいるのか。

考えろ、俺。

……こんな殺し合いなんて俺らしくない。
もっといいやり方があるはずだ。
転覆させるいいやり方が。

だが。
俺は元々死にいく者。
しかし理樹達は違う。

俺達は理樹達を救うと決めた。
なら……。

「決まってるよな……今更、罪とか言ってられないよな……俺は決めたんだから」

そう決まってる。
理樹達をすくう。
それは場所を変わってしまったけど決意は変わらない。
人を殺すという大きな罪。
はっ、それがどうした。
元々理樹達の為に沢山の罪を背負ってる。
今さらふえたって変わりはしない。
ならばやる事は一つ。
749名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:58:29 ID:cXRL8hUL
 
750名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:58:39 ID:Dbr5+YFs
 
751名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:58:41 ID:3R4Q9I4c
 
752名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:58:47 ID:sYcLXCx3
 
753名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:58:51 ID:x9OkNXCH
 
754 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 02:59:22 ID:Z2CHM8Ld
「乗ってやるさ……今更、正義の味方なんて柄じゃない……憧れるけどな……でも罪はとっくの昔に背負ってる……だから後悔はしない」」

そう、殺し合いに乗る、理樹の為に。
後悔はしない、絶対。
どんなに罵られ様と、俺は決めた、理樹達を生かすって。
そのためにはまずは準備を。
俺はそう思って支給品を確認する。

「……ビンゴ。銃、しかも本物だ。説明書がある……SIG SAUER P226……思いっきり当りだな」

しっかりと予備弾までご丁寧にある。
そこまで多くは無いが。
弾も装填してある。
さて……準備しようか。
作戦はもう決まってる。
一人では辛いがな。

俺は軽く準備しようとした矢先草陰から物音が聞こえた。
やれやれ……早速か。

ふーっ。
落ち着け。
これがミッションスタートだ。

「動くな!」
「ええ……そちらもね」

755名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:59:40 ID:ar6TaOrs

756名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:59:46 ID:cXRL8hUL
 
757名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 02:59:50 ID:sYcLXCx3
 
758 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:00:05 ID:Z2CHM8Ld
俺が銃を向けた瞬間もう相手も俺に向けていた。
ちっ……油断か、いや単純に俺も焦ってただけか。
俺がそっちに振り向くと少女がいた。
俺より若干下か?

相手も……銃か。
リボルバータイプの。

しかしこの膠着状態なんとかしないとな。
このままじゃジリ貧だ。
とりあえずコンタクトをとろう。

「ひゅう……なかなかだな。あんた、名は?」
「……そっちから名乗ったら?」
「それもそうだな……棗恭介。なんてこと無い1市民さ」
「トルティ二タ……トルティニタ=フィーネよ」

そう名乗った少女はどこか凛々しくそして決意を持った目で睨み付けていた。

その出会いが俺にとって大きな出会いになるとは俺自身も思いはしなかった。





759名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:00:14 ID:Dbr5+YFs
 
760名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:00:43 ID:Dbr5+YFs
 
761名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:00:43 ID:cXRL8hUL
 
762名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:00:47 ID:ar6TaOrs


763 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:00:57 ID:Z2CHM8Ld
「殺し合いね……やれやれ」
私はその言葉を口にしてみる。
まったくなんでそんなものに巻き込まれなきゃいけないのかしら。
私はやっと重荷から開放されたのに。
もっともかなり唐突だったけど。

そうクリスが自分自身で気付いて。
そしてクリスの回復と共に姉さんも奇跡に近いような回復を遂げた。
2人は今、幸せに暮らしてる。

うん、立派なハッピーエンドだ。
でも私はその中にいない。
いちゃいけないのだ。
私の望みは叶ったようなものだから。

でもこの胸の空白は何?
何か満たされないような想い。

そうクリスの事。

どんなに違う事を思ってもクリスのことだけ思い出す。
クリスしか。

ああ、私はクリスしかなかったのだ、この3年間の間。
全てはクリスの為に全てを捧げた。
クリスが苦しくないように、あの事を思い出さないように。
自分を殺して姉さんのように演じて、邪魔な障害は排除して。
クリスだけ……クリスの為だけに。
私は生きてきた、あの時から。
764名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:01:00 ID:3R4Q9I4c
 
765名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:01:36 ID:Dbr5+YFs
 
766 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:02:01 ID:Z2CHM8Ld
……ああ……私はクリスだけなんだ。
姉さんが元気なっても、私は変わらないんだ。

今更……だよ。
今更遅いんだ……もうクリスは姉さんと幸せに暮らしてるから。
だから、だから。

「って……私は殺し合いの中にいるんだ。そんな事考えてる暇はないよ」

そう、殺し合いにいる。
どうするべきか、ね。

私は助からないだろうなあ。
あの2人の女みたいな力はないし、はあ。
私が帰らなくてもクリス達は幸せだろう。
心配ぐらいはしてくれるはずだけど。

「……悲観してもしかたないか。支給品とこれは参加者名簿?」

誰か知り合いはいるのかしら?
んとリセルシア、ファルシータ。
リセは安全そうだけどファルは駄目だ。
なんともいえない不安感があの子を見ると襲われる。
ファルは危険かもしれない。
後は……え?
767名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:02:27 ID:Dbr5+YFs
 
768名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:02:37 ID:ar6TaOrs

769名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:02:45 ID:3R4Q9I4c
 
770名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:02:54 ID:cXRL8hUL
 
771名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:03:07 ID:sYcLXCx3
 
772 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:03:08 ID:Z2CHM8Ld
「嘘……だ。クリ……ス……!?」

嘘……嘘。
クリスがなんで!?
何でクリスが……!?
もしや……ねえさんも!?

「……いない……よかった」

でも、そんな。
クリスはやっと幸せを取り戻せたというのに。
……なんで……なんでぇよお!

ひどすぎる……クリス。
私は……。

よく分からない感情が頭を巡る。
私はどうしたいんだろう。
クリスがいるなんて思っていなかった。

どうする? 私は。

……簡単ね、簡単。
そう変わらないのだ。
あの時と。

773名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:03:30 ID:cXRL8hUL
 
774名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:03:48 ID:Dbr5+YFs
 
775 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:04:00 ID:Z2CHM8Ld
「……私がクリスを元の世界に返す! クリスは幸せにならなきゃいけないもの、姉さんと」

そうクリスは幸せじゃなきゃいけない。
だから元の世界に戻すのだ、姉さんのいる所へ。
つまりそれは

「私は殺す、人を。何の躊躇いもなく殺してみせる。罪とかは言ってられない……どんなに力がなくても絶対!」

人を殺すという事。
どんなに私が力がなくても。
必ず! 必ずだ!

でも何故か気分が高揚してる、人を殺すというのに。
ああ、簡単だ。
またクリスの為に何かできるのだから。
この胸の空白が埋まる気がするんだ、本当に。

クリスになにかできるという空白を埋めるパーツが。

ああ晴れやかだ、頑張ろう、あの3年間のように。

支給品は何だろう一つ目は

「……無骨なものね。でもいいわ、当たりよ」

それは銃。
名前は説明書に書いてある。
えっとSturm Ruger GP100?
名前を知ってもね……。
776名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:04:37 ID:Dbr5+YFs
 
777名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:04:37 ID:3R4Q9I4c
 
778 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:05:09 ID:Z2CHM8Ld
んと……使い方は……。
結構簡単かな……上手く撃てるかは別問題として。
ちょっと構えてみる。

重いな……これが銃。
人の命を奪うものなんだ。
私が奪うのだ命を。

……滅入ってちゃしょうがないな。
取り敢えずいこう。
どこにいくかは……気の向くままに。


そしてすこし進むと目の前に茂みの向こうに人が。
うーん男の人みたいね。
こっちには気付いてはいないか……なら。

殺すだけよ。

私はそう決意すると一歩ずつ気付かれずに進む。
銃の射程範囲までもう少し。

そして辿り着く。
さあ、あの通り構えよう。
さらに発射のトリガーを。

779名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:05:29 ID:Dbr5+YFs
 
780名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:05:35 ID:sYcLXCx3
 
781名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:05:47 ID:cXRL8hUL
 
782 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:05:59 ID:Z2CHM8Ld
そこで
「動くな!」
相手が銃を即座に向けた。
気付かれた!?
でも
「ええ……そちらもね」
こっちも準備が終わってるのよ残念ながら。

さてどうしよう?
現状は緊迫してるわね。
隙もないし、こちらも見せてるつもりはない。
なにかきっかけが欲しいわね。

その時
「ひゅう……なかなかだな。あんた、名は?」
目の前の男が尋ねてきた。
隙でも狙ってる?
どうなんだろう。
しかし道義って物もある。

「……そっちから名乗ったら?」
尋ねる前にそっちからなのならければならない。
道義じゃない。
そしたら目の前の男ははっとして納得したように
「それもそうだな……棗恭介。なんてこと無い1市民さ」
棗恭介……か。
783名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:06:21 ID:Dbr5+YFs
 
784名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:06:22 ID:3R4Q9I4c
 
785 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:06:51 ID:Z2CHM8Ld
しかしなんてさわやかな笑み。
逆に怪しいわ。
兎も角こっちもなのらなきゃ
「トルティ二タ……トルティニタ=フィーネよ」
そうつげる。
恭介は頷き満足そうだった。

その時、この気さくそうだけど鋭い目をした青年が私の運命を変えるとは思わなかった。




さて、あれからどれくらい警戒したままだろうか。
私達は互いに牽制したままである。
とはいえ……私は実は震えていた。

これが正真正銘の殺し合いなのだ。
どちらが生きてどちらかが死ぬ。
そのせめぎあいで私は恐怖している。

私は殺し合いに乗ったはずなのに。
……慣れないものはするものじゃないか。
でも一生慣れたくはないわ。
人を殺す事なんて。
786名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:07:13 ID:Dbr5+YFs
 
787名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:07:42 ID:cXRL8hUL
 
788名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:07:51 ID:ar6TaOrs

789 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:07:53 ID:Z2CHM8Ld
「さて……トルティニタ。お前は殺し合いに乗ってるのか?」

そんな時、恭介は突然私に尋ねてきた。
何でそんな事を?
やはり隙を狙ってるの?
この状況を打破する為に。

私は答えずただ押し黙っている。
その沈黙が答えだというように。
恭介はそれで納得したかのように

「そうか……。実はこう言ってはなんだが俺も乗っている……そしてトルティニタ、何故乗った?」
「……は?」
「だから何故乗ったと聞いてるんだ。ぱっと見お前はあの女たちのように特殊な力は持ってなさそうだ……いっちゃなんだが勝ち残れるようには思えない、それなのに何故?」

力が無い、か。
そうよ、私は残念ながらただの一般人。
それでも私はやらなければならない、クリスの為。
でも恭介。

「貴方も一緒でしょ? 恭介。私にも貴方はただの一般人にしか見えないわ。なら何故貴方も乗ったというのよ?」
「……ふん、こうみえても俺は火を噴くことが出来るんだぞ、こう見えても」
「嘘だっ!」
「……何故、すぐにばれる? そして何故そこまで気合を入れる?」

当たり前よ、目が笑っているわ。
人をごまかすことを楽しんでいるような。
まるで無邪気な子供。
でもならどうして?
790名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:08:36 ID:sYcLXCx3
 
791名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:08:56 ID:3R4Q9I4c
 
792 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:08:57 ID:Z2CHM8Ld
「じゃあ……何故恭介は乗った?」
「じゃあ……なら、トルティニタ、何故乗った?」

ほぼ同時に同じことを尋ねる。
息ピッタリに。
やはり互いに気になるのかしら?
私達は苦笑いし

「ふっ……被っちまったか……」
「ええ……なら同時に言わない? 乗った理由」
「そうだな……いいだろう」

私は思いっきり息を吸う。
これからいつものように歌を歌うように。
大きく吸って。
さあ、宣言だ。
793名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:09:25 ID:ar6TaOrs

794名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:09:25 ID:cXRL8hUL
 
795名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:09:30 ID:Dbr5+YFs
 
796名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:10:15 ID:MK6L71j9
797 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:10:29 ID:Z2CHM8Ld
「私はクリスという幼馴染の為に……」
「俺は理樹と鈴という幼馴染の為に……」

さあ言おう、私の宣言だ。
これがここで起こる殺し合いで私がする事。

「全てを捧げて他の人を殺す、クリスをあの幸せな場所に還す為に、絶対」
「全力で人を殺す、理樹と鈴を救うためにだ、必ず」

そうそれがたとえ他の人に罵られても。
どんなに軽蔑されても。
クリスが私を止めようとしても。

「絶対に止めるわけにはいかないの。どんなにそれがいけない事でも」
「絶対にやめる事はできない。それがどうしようも無いほど大きな罪でも」

でもそんなのとっくに知っている、気付いてる。
だけどやめる事はできない、しない。
だって

「クリスは私が護る。それが私がここにいる意味。トルテニィタ=フィーネが存在する意義なの」
「理樹と鈴は俺が助ける。それが俺が生かされている理由。棗恭介というものの全部の意志だ」

798名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:10:58 ID:ar6TaOrs

799名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:11:05 ID:MK6L71j9
800 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:11:17 ID:Z2CHM8Ld
それが私がいる意味だから。
神様は禁忌を破る私を許さないだろう。
きっと地獄に落ちる。
でも

「禁忌を破る事をもう慣れてるのよ。どんなに私が汚れても穢れても……ただクリスが幸せなら」
「大罪なんかとっくに背負ってる。どんなに俺が傷ついても死んだりしても……それでも理樹と鈴が生きてくれるのなら」

そう、だから。

「私は絶対諦めない! どんなに力が無くても! クリス! クリスだけは私の力で還すのよお!」
「俺は絶対挫けない! どんなに倒れそうでも! 理樹! 鈴! あの2人だけは俺の力で救うんだ!」

私は進むんだ。
最後の最後まで。
決して止まる事は無く。
クリスに為に。
そう、決めたから。

これが私の宣言。
私の誓いだ、この中での。
801名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:11:17 ID:cXRL8hUL
 
802名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:11:29 ID:Dbr5+YFs
 
803名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:11:43 ID:sYcLXCx3
 
804名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:12:39 ID:3R4Q9I4c
 
805名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:12:49 ID:MK6L71j9
806名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:13:04 ID:Dbr5+YFs
 
807 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:14:29 ID:Z2CHM8Ld
でもこれって恭介も殆ど一緒?
そう思った瞬間

「くくっ……はは、あはははははははははははははは!」

恭介はまるで面白い物を見たように満面の笑みで笑い出した。
あの鋭さは何処に言ったのやら。
まるで無邪気な子供のよう。
なんか自分の決意を笑われたようで腹立たしい。

「ちょっと……なに笑ってんのよ」
「はは、悪い、悪い。だってよおかしいじゃねえか……俺は悲壮な想いで決意を語ったのに、それがお前とほぼ同じだぜ。笑えるさ、
俺が必死で悩んで決めた決意は人と似てるとかさ。そしたらさ、あれだけ張り詰めていた緊張の糸が切れてな。途端笑いたくなっちまった……くくっ」
「貴方ね……ふふっ」

私も釣られて笑ってしまう。
なんか恭介の笑顔を見てると変に緊張をほぐれるのだ。
はは、さっきまで殺し合いしようとしてたのに……なんだろうこの緩み。
決して決意は鈍って無いのに。
恭介にはそんな雰囲気を変える力でもあるのかしら?

「俺とトルティニタは似てるんだな……きっと」
「似ている……私と貴方が?」

私と恭介が似ている?
何故よ?
808名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:14:49 ID:cXRL8hUL
 
809名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:14:51 ID:Dbr5+YFs
 
810名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:15:32 ID:MK6L71j9
811名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:16:10 ID:3R4Q9I4c
 
812 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:16:11 ID:Z2CHM8Ld
「だってよ、ここまで考えがにてるなんてそれは驚きさ。お互いに乗った理由、その決意。罪すら厭わない事。そしてそれは護るべきものの為にだ。
 正直びっくりした……たぶん過去とかにてるんじゃーねえか?」
「まさか。でも確かに似てる……」
「だろ?」

……確かに。
そうかも知れない。
あそこまでにてるとかは想像できないわ。
でも過去はきっと違うわ。
私みたいに全てを捨て誰かに尽くした事なんて無いはず。
そこまで同じなら。
きっとそれはある意味奇跡で運命よ。
まあありえないが。

そんな事を考えてると恭介はなにやら難しそうな顔で考えている。
そして恭介がはっした言葉は予想外だった。

そうそれは

「……ちょうどいい。手を組まないか? トルティニタ」
「……え?」

恭介からの共闘の誘い。
この一人しか生き残れない殺し合いでのありえない誘いだった。
何でそんな誘いを?
813名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:16:32 ID:cXRL8hUL
 
814名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:17:16 ID:Dbr5+YFs
 
815 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:18:11 ID:Z2CHM8Ld
「何故よ……?」
「簡単さ、俺のプランには出来れば仲間が欲しい。確実にする為にだ、そこでお前だ……なんか安心できるんだここまで似てるとな」
「プラン? 聞かせてよ?」

プラン? ただあった人間を殺すだけじゃないの?
私にはちんぷんかんぷんだった。
どんなのだろう?
恭介は一回頷き説明し始めた

「いいか……俺達はあんな不思議な力はない。普通にやり合ったら負けるだろう」
「そうね……」
「ならその力に対抗するならどうすればいい? それに変わる力は?」
「……解んないわ」

なんだろう? それ。
あんなの私が対抗できる力はあるの?

「それは……情報だ」
「じょう……ほう?」
「そう、俺たちはそれを操っていく」

情報で?
何言ってるのかさっぱり理解できないわ。
どうやったらそんなものが力になるというのよ。
816名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:18:30 ID:Dbr5+YFs
 
817名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:18:40 ID:3R4Q9I4c
 
818名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:18:44 ID:sYcLXCx3
 
819名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:19:05 ID:cXRL8hUL
 
820 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:19:18 ID:Z2CHM8Ld
「わかんなそうだな……んじゃま説明するか」
「当たり前よ」
「じゃあま、例えばな今俺達は【棗恭介&トルティニタ=フィーネ。助けたい人達の為に殺し合いに乗っている】という状態な訳だ。 
 まずプランの最初はだ。この情報を【棗恭介&トルティニタ=フィーネ。主催者に反抗】というものに変える」
「……つまり、殺し合いに乗っていないと偽るって事?」
「そのとおりだ、まず手始めはこうだ」

要するに偽る事で隠れながら殺していくという事か。
でもそれはとても情報でやっていくように思えないし、いずればれる危険性だって高い。
それに2人で組むメリットも無いような。
私がそう考えてる時、恭介は
「待て、トルティニタ。それだけじゃない。本番はむしろこれからだ」
「これから? 偽って殺してく訳じゃないの?」
「そうだ。まあいずれはそうなるが……最初は違う。むしろ余り積極的に自分で殺しにはいかないさ」
「……はあ? なに言ってるのよ!? 殺しに乗ってるのでしょう!?」

全く何言ってるのよ、この男は。
あんな宣言までして、その果てが殺さないって。
馬鹿じゃないの?

「おいおい、焦るな。違う、殺してはいくさ。ただし『間接的』にな」
「……間接的?」
「そうだ。一番狙うは主催者に反抗するものの同士討ち、誤解によるな。そしてその誤解を俺達の力で作る」
「同士、討ち?」

同士討ちですって?
確かに自ら手を汚さないしその状況を作れるならかなり楽になる。
だけどそんなの簡単に作れる訳が無いじゃない。
それをどうやってやるのよ?
821名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:19:50 ID:Dbr5+YFs
 
822名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:20:29 ID:x9OkNXCH
 
823名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:20:34 ID:sYcLXCx3
 
824 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:21:04 ID:Z2CHM8Ld
「まあここからが肝だ。例を出して説明していくぜ。まず俺達が偽って最初の主催反抗チーム……Aとするか。それと接触。
 ここで俺達はAと情報交換、そこで俺達は他の主催反抗者B、殺し合いに乗った人間Cという情報を手にしたと仮定しよう。 そしてその後Aのチームと分かれるとするが……」
「Aに対してどうするの?」
「何もしない」
「はあ? どうして?」
「もし相手に能力者がいた場合は勝ち目が無いし、いない場合でも殺し損ねたら全てがパアだ、それは避けなきゃいけないんだ」

確かに恭介の話を聞いていると偽っている事に意味があると思う。
それがばれた場合は駄目なんだろう。
でも肝心の中身を私は聞いて無いわ。

「とりあえず続きだ。その後俺達は反抗チームDとあったとする。そこで情報交換をするのだが……ここで情報を作り変えるんだ」
「作り変える?」
「ああつまりこちらの情報【主催反抗者B。殺し合いに乗ってない】という本来の情報を【B。殺し合いに乗っている】という情報に作り変える。
 それに【C。殺し合いに乗っている】を【C。乗っていない】にしてもいい。こうして相手を勘違いさせていくんだ。 
 またそこでDからさらに情報を手に入れていくとしていく……暫くはこれを繰り返す。まあ一例なんだが……つまり」
「つまり?」
「俺達がやっていこうするのは沢山の参加者の情報の入手。それをその情報を巧みに改竄して残りの主催反抗勢を内部からガタガタにするんだ。
 沢山の情報をこちらは正しく把握してるが相手は誤解したまま。つまりは情報戦さ。どれだけ正しく多くの情報を持ってるかが鍵さ」
825名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:21:08 ID:cXRL8hUL
 
826名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:21:43 ID:9hWt8GWQ
827名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:22:03 ID:Dbr5+YFs
 
828名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:22:14 ID:x9OkNXCH
 
829 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:22:21 ID:Z2CHM8Ld
凄い、ただ単純にそれだけを思った。
もしそれだけのことができるのならば私達は手を下さなくても勝手に誤解で人が死んでいく。
しかも私達は殺し合いに乗って無い風にも思われているんだ。
ん、でも?
「もし私達が教えた情報が偽の情報だってばれたらどうするのよ?」
「別にそこまで困った事じゃないさ。俺らも違う奴から聞いて騙されたといえばいい。情報ってのは直に変わっていく。実際乗って無かった人間が乗る可能性だってある。その逆もだ
 なら俺たちが知っていたのは昔の情報とでも言えばいい。そしてだれから騙されたと聞かれたら死んだ奴にでもといえばいいさ、死人にくちなしってな
 それに常に嘘の情報ばっか教えるんじゃない。正しい事だけを教えるだけでもいい。最も安心できると思われるメンバーにでも。嘘と真実。上手く使い分けるさ
 まあ基本はこんな感じだ。わかったか?」

えーとつまり。
1:自ら主催反抗といつわり他の主催反抗のメンバーと接触。
2:そこから情報を得る。
3:自分に危害が出ないように他の対主催の悪評を伝え歩く、十分な情報を得たらそのメンバーと別れる。
4:序盤は積極的には人を殺さない。基本同士討ちを狙う。情報最優先。
って事かしら。

「まあなんとなくは」
「なんとなく……まあとりあえずはいいだろう。ちなみ終盤では元々反抗側から乗った人間排除。のち疲労した主催反抗から狙う……それでだな……
「ストップ」
「何だ?」
「クリスや貴方が探してる人間が見つかった場合は?」

そうクリスや鈴とかいう人達、つまり護るべき人達のことだ。
情報を集める最中でクリス達が見つかった場合の事、そのときはどうするのだろうか。
830名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:23:55 ID:cXRL8hUL
 
831 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:24:05 ID:Z2CHM8Ld
「無論、即保護だ。理樹達がともに行動していた仲間は時機を見て排除する。……が不運にも中々合流できない場合は一旦安全なチームに身を隠すさ」

ふうん、ちゃんと考えているのね。
なるべくなら直に合流はしたいけど。
こんな広い島で出会えるかしら。
……いえ見つけなきゃいけないんだ。
クリスは私の力で護らなきゃ全力で。

そう恭介は言い切るとさらに目が鋭くなって
「さて……ここから組むのなら互いに確認しなきゃならない事だ……いいな?」
「何よ」
「もし……もしだ。最悪なパターンを考えた場合の話だ。落ち着いて聞けよ……俺が探している理樹、鈴。お前が探しているクリス。そのどちらが死んだ場合だ」
「なっ!? 何言ってんのよ!?」

頭に血が一気に昇った。
クリスが……死ぬ?
ありえない!
絶対させない!
させるものか!

「落ち着け! トルテニィタ! 最悪のパターンだ。理樹達も普通の人間だ。いつどうなるか分からない。この事実を受け止めろ!」
「っでも!」
「そんな最悪な結末にならない為に俺達が行動するんだ! わかるか……うけとめろ」
「……っ」
「とりあえず、いいな……死んだ場合だ。俺は理樹……鈴が……しんだ……場合。俺はお前達が生き残れるようサポートに徹する。約束する!
 そして最後お前ら2人と俺とで優勝をかけて戦おう。そして逆も然りだ。もしそうなった場合協力できるか? トルティニタ 
 ……そして本当に最悪のパターンだが……互いの探し人が全員死んだ場合、互いに協力して優勝目指そう……そして最後に戦おう
 どうだ? これがチームを組むための約束事だ、これを含めもう一度聞く。手を組まないか?」
832名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:24:12 ID:9hWt8GWQ
833名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:24:24 ID:Dbr5+YFs
 
834名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:24:54 ID:sYcLXCx3
 
835名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:24:55 ID:cXRL8hUL
 
836名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:24:58 ID:9hWt8GWQ
837名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:25:29 ID:x9OkNXCH
 
838名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:25:34 ID:SxOGqLkm
839 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:25:59 ID:Z2CHM8Ld
恭介の提案、そして再度の勧誘。
どうする? 私は。
さっき恭介が言ったこと、クリスが死んだ場合とかで動転してしまった。
クリスは死なせない、絶対。
でもクリスの居場所なんてわかんない。
じゃあ……どうすればいい。
頼るのは?

……情報。

彼の案に乗って情報を沢山手に入れれば……きっと近づく。

でも、でも分からない。
聞く限りでは恭介一人でも出きる筈。
それに何故、私?
……利用するだけでは、私を?
気になる。気になって仕方ない。

「私にメリットは? それにこれは貴方一人でも出切る筈。何故私を誘った? そして何故私なの?」

恭介は何処かキョトンとした表情をしてでも満足そうに笑った。
やっぱりその笑顔は無邪気な子供の様で。
何故か私を笑わせてくれる、そんな笑顔だった。

「無論トルティニタにもメリットがあるさ。まずやはり自ら参加者を襲うより安全だ……お前は普通の少女だろ? ならなおさらだ。 
 そして上手くいけばクリスの情報を直に手に入れられるさ。どうだ? 魅力的だろ」

確かに襲うよりは安全ね、クリスの情報も手に入れられるかもしれない。
でもそんなの知ってる、一番聞きたいのはその先。
840名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:26:27 ID:MK6L71j9
841名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:26:58 ID:sYcLXCx3
 
842名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:27:05 ID:Dbr5+YFs
 
843 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:27:17 ID:Z2CHM8Ld
「いや二人でやるメリットは大きいぞ。第一に、もし一人で『私殺し合いに乗ってないんですぅ』といってきた奴安心できるか?」
「い、いや……あまり信用できないわ……ちょっと気持ち悪いわよ?」
「茶化すなよ。だろう、余り信用したくない。だが2人だとどう思う。例えばお前が殺し合いに乗っていたやつに襲われていたのを俺が助けたといって近づけどう思う?」
「私が本当に襲われた風に演技できれば……まあ納得できるわ。けど貴方そんな力あるの?」
「いっただろう? 炎を吐けるって」
「嘘だっ! 冗談もいい加減にしてよね」
「いや……だから、どうして気合を入れるんだ?」

恭介が冷や汗をかいてる。
いや何となく言いたくなるのよ、この言葉。
何故かしら?

「まあ兎も角一人よりも2人の方が納得されやすいんだよ。まさか殺し合いに乗ってる人間がつるんでるとは思わないだろしな。他にもメリットあるんだが、取り敢えずは納得したか?」
「ん……まあわかったわ」

まあとりあえずは。
確かに恭介一人だとお気楽な怪しい青年だ。
間違いなく疑われる。
そういう意味では誰かいるほうがいいのだろう。
そして次こそが私を選んだ理由なのだ。
胸が高鳴る。

「そんでお前を選んだ理由なんだが……まあぶっちゃけると一番最初にあったからだ」
844名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:28:06 ID:4aO3c9G7
 
845名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:28:12 ID:Dbr5+YFs
 
846 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:28:55 ID:Z2CHM8Ld
いやいや。
そんな理由ですか。
……いや納得できるといえば出来るけど。
なんか期待しすぎたのか。
うーんいやまあいいけどさ。
なんというかもやもやだ。
だけど恭介の言葉は終わらなかった。

「そうだったはずなんだけどさ……ちょっと違うんだ。なんか気になるんだよ、お前」
「は?」
「なんつーかな。似すぎなんだよ、お前が、俺と。そうやって助けたいもの為に我武者羅で、危なっかしいんだよ」
「私と貴方が?」
「ああ……だから自分から手を貸したくなっちまった。最初断られたら殺そうと思ったよ……でもさ今は違う純粋に手を貸したい……トルティニタ。お前に
 俺に似すぎてるお前と……畜生、俺は決意したつもりだったがとんだ甘ちゃんだよ……馬鹿だな……ああ大馬鹿者だ」

なによ……それ?

「ふふふ……あはははははははあはははは!!!!!」
「なぁ!? わらうんじゃねえ!」

馬鹿よ……馬鹿。
結局貴方も甘いじゃない。
馬鹿……大馬鹿者よ。
確かに似てるけど……私そこまで馬鹿じゃないわ。

恭介はなんか笑ってる。
やはり彼の笑顔は私を楽しくする。
不思議な人だ。
もう答えは決まってる
847名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:29:12 ID:Dbr5+YFs
 
848名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:29:15 ID:cXRL8hUL
 
849 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:30:20 ID:Z2CHM8Ld
「あはは……いいわよ。貴方の提案に乗るわ……くくっ……私は演技も自信あるしまかせなさい……はは」
「そうか……なら交渉成立だな……トルティニタ。よろしく頼む、これか……」
「トルタ」
「はっ?」
「トルタよ。私の愛称。あまり本名で呼ぶのよくないのよ、恭介」
「そうか、よろしくなトルタ」
恭介が手を差し出す
私もそれに従い握手をする。

これで契約は行なわれた。
私と恭介はパトーナー。

「くくっ」
「だあ……笑うなあああ」

まるで殺し合いに乗ってるパートナーじゃないみたいよ。
全く、全くね。




850名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:30:22 ID:ar6TaOrs

851名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:30:46 ID:4aO3c9G7
 
852名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:31:00 ID:Dbr5+YFs
 
853名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:31:06 ID:x9OkNXCH
 
854名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:31:12 ID:3R4Q9I4c
 
855名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:31:24 ID:cXRL8hUL
 
856 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:32:24 ID:Z2CHM8Ld
「それでこれからどうするの?」
「街に向かおうと思う、人も多いだろうしな」

恭介の意見にはもっともだ。
反対する理由も無いし
「じゃあ……それでいいわ」
「ああ……そうだ」

恭介はちょっと遠い風にどこかを見て

「……もしもの話だが脱出が確定的なった場合反抗派に移ろうと思う……どうだ?」
「別に出来るならいいわ……もっとも無駄だと思うけど」
「そうだな……いくか」

やっぱり。
恭介は修羅になりきれて居ない。
こういう甘えがでるのだから。
でもそういう甘さも好きだ。
……私も甘いのだろうか?

それに気付いた事が一つ。
もし理樹と鈴二人が生き残った場合どうするのだろうと。

恐らく恭介は片方が死ぬ可能性が高いと考えているんだろう。
妙にリアリストだし。
でもそれはきっと口にだすことは無いだろう。
こういう男なんだろう。
自分自身の幸せなんて考えてないのだろか?
857名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:32:36 ID:SxOGqLkm
858名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:33:02 ID:Dbr5+YFs
 
859名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:33:36 ID:9hWt8GWQ
860貴方と私は似ている。 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:33:54 ID:Z2CHM8Ld
「貴方……理樹達のことばっか考えてるけど自分のことを考えてないの? 自分自身のことよ」
「さあな……考えたことはなかった。そういうお前はどうなんだ? 聞いた所によるとクリスは恋人ではないんだろ?」
「ええ……そうね私も考えてなかったわ」

言われて思う。
そうかも知れない。
私はどう思ってるんだろう。
私にも幸せは来るのだろうか。
今はわかんないわ
そして気になる。
恭介がどうしてそこまで2人を助けたいのだろう。
その動機となる過去が。
私とにてるかも。

「気になるな……」
「なにがだ?」
「恭介の過去……もしかしたら一緒かも」
「さあな……まあおいおい話すさ……ただわかるのは……俺自身報われることは無い事を解っていた。そう言う過去さ」

なにそれ……
私の過去そして今と一緒よ。

ああ……本当に。
本当に。

貴方と私は似ている。


861名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:34:18 ID:9hWt8GWQ
862名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:34:26 ID:Dbr5+YFs
 
863名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:34:35 ID:ar6TaOrs

864名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:34:40 ID:cXRL8hUL
 
865貴方と私は似ている。 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:35:04 ID:Z2CHM8Ld
【F-1 草原/1日目 深夜】

【2人の共通方針】

1:他の対主催のメンバーと接触。
2:そこから情報を得る。
3:自分に危害が出ないように他の対主催の悪評を伝え歩く。
4:十分な情報を得たらそのメンバーと別れる。もし理樹、クリスがいるメンバーなら合流。その後隠れながら邪魔な対主催メンバーを排除。
5:もし中々合流できない場合、もっとも安全だと思われるチームに合流。(戦力の面で、信頼関係も含め)
6:序盤は積極的には人を殺さない。基本同士討ちを狙う。情報最優先。終盤は対主催の中心になりなるべくマーダー排除。のち疲労した対主催から狙う。
7:最悪クリス、理樹、鈴がどちらかが死亡した場合は片方のサポートに徹する。両方死亡した場合は互いに優勝を狙う。二人になった場合一騎打ち。
8:ただし完璧に脱出ができる状況になったらそのまま対主催に変更。


【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備:SIG SAUER P226(15/15)】
【所持品:予備弾45 不明支給品0〜2】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:共通方針の通りに行動し理樹、鈴を優勝させる
1:人の多いところへ。
2;トルタに奇妙な共感
3:トルタの過去に興味
※トルタを信頼してます。
866名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:35:20 ID:9hWt8GWQ
867名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:36:03 ID:Dbr5+YFs
 
868名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:36:24 ID:4aO3c9G7
 
869貴方と私は似ている。 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:36:28 ID:Z2CHM8Ld
【トルティニタ=フィーネ@シンフォニック=レイン】
【装備:Sturm Ruger GP100(6/6)】
【所持品:予備弾36 不明支給品0〜2】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:共通方針の通りに行動しクリスを優勝させる
1:人の多いところへ。
2;恭介に奇妙な共感
3:恭介の過去に興味
※恭介を信頼してます。
※登場時期はアルルートのアルが復活した頃。
870名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:38:22 ID:Dbr5+YFs
 
871名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:38:50 ID:cXRL8hUL
 
872貴方と私は似ている。 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:41:41 ID:Z2CHM8Ld
投下終了しました。
沢山の支援ありがとうです。

タイトルは『私と貴方は似ている。』
元ネタはガンダムSEEDの曲から
873名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:42:05 ID:Dbr5+YFs
投下乙、その発想はなかった。
恭介とトルタの扇動マーダーコンビ。しかも恋愛&友情フラグもお手の物だw
まあ、最初はせいぜい1stのつぐみと音夢みたいなレベルかぁ、と高をくくっていた自分を叱ってくださいw
改めて投下、GJでした!
874。 ◆UcWYhusQhw :2008/03/19(水) 03:43:16 ID:Z2CHM8Ld
すいません。
タイトルは貴方と私は似ているの方が正しいです。
875名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:43:36 ID:sYcLXCx3
>>872
投下乙です
これは珍しい……なんという変化球なマーダーコンビ
誰がこんな展開を予測し得ただろうか
それと、二人が同時に乗った理由を言い合うシーンが凄く良かったです
流石台詞の魔術師
876名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:43:49 ID:cXRL8hUL
投下乙です

これは珍しい頭脳派ステルスマーダーコンビ
二人の宣言の台詞回しの上手さに痺れました
恭介トルタコンビの今後に期待
877名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:48:50 ID:3R4Q9I4c
投下乙!です

情報撹乱ステルスマーダーチーム……まずその発想が面白い!
タイトルにもありますが、恭介とトルタの境遇が確かに似てる。その見せ方も上手い。
うーん、心理描写が冴える文体だ。も一回乙!
878名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:48:57 ID:xVW/RWH2
投下乙です。
この形のコンビは新しいw
トルタのほうは知らないんですが、かなりシンフォやりたくなりました。
879名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 03:52:58 ID:wHpgMRph
乙です。
面白い方針ですね。恭介ならいかにも考えそうな作戦なのもグッドです。

ただ一度も実行する前から全部(特に読者に)バラしちゃってるのが、逆に失敗フラグに見えて不安な一面も。
すでに完成された戦略のように見えるのがなおさら。
880 ◆jRWsRROwBY :2008/03/19(水) 04:10:26 ID:QHSILiiP
あ、wikiに収録する際自作品にてトーニャの所持品に
「マッチョスーツ型防弾チョッキ」を追加してもらってよろしいでしょうか?
どうも入れわすれていたようです
881名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 07:11:06 ID:NjOhGICy
予想がつかないハイレベルのssが多い

士郎マーダー、ハサン非マーダーなんてかなり凄すぎる
俺も書いてみたいが、なぜかプロキシエラーで書き込めないぜ
だからせめて応援だけはさせてくれ
みんな頑張れー!
882名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 09:20:27 ID:E/ZWecl3
>Let's Play?
やっぱ、一人で喋りすぎだ。この人はw
なにげに黒幕の存在を疑っているのも良し
クリスと会えるのだろうか

>固有の私でいるために 
来ました。世界に続くエゴイストその2
彼女らしさが良く出て組ましたよ
彼女は本当にやばいんだよな、レオ大丈夫か

>至高の筋肉
なんという漫才コンビの結成
一発ネタにならないのは、奴らだからと言うか
つか、真人の行動方針が、あまりもらしすぎる

>私と貴方は似ている。
境遇の被せ方が良いね。
トルタの切なさと病んだ恋心、
恭介のリアリストの部分と少年っぽさの描写が良い
この策略コンビどこまで場をかき乱してくれるか
883名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 09:27:02 ID:E/ZWecl3
>真逆
まさかの展開。ハサン先生がああなるとは
fateキャラは全く予想がつかん
理樹もかっこ良くてよいな

>I am bone of my sword 
敢えて正義の味方ではなく、こっちで来たか
でも、桜死んじゃったよ。どうすんだシロー
…そして、リセの最後が哀しすぎる

>天から舞い降りたシ者 
まさにカオス。何を制限してるんだコトミーw
お父さんもお疲れさまです。
何気に支給品の解説にも小ネタが
884彼等の本気 ◆nrFxk81wlQ :2008/03/19(水) 14:34:45 ID:zC1JkfVr
周囲には所狭しと樹木がひしめいており、地面は傾斜状になっている。
まごうことなき山の中だ。と、岡崎朋也は思った。
自慢ではないが、朋也は自身の事をごくごく平凡な一般人であると認識している。
魔法だとか超能力だとか、創作物ではよくある超常現象なんぞには縁もゆかりもなく、
またそういったものはこの世に存在などしていないのだと、そう思っていた。
しかし先程の広間で起きた出来事や、今こうやって自身が瞬間移動を体験した事から、
少なくとも過ぎてしまった超常現象は存在するものとして認識を改めなければならない。
それはまぁ別に構わないのだが。
「面倒臭い事になったよな……」
朋也は呟きながら頭を掻き、それから深く溜息を吐いた。
過ぎた事を現実として受け入れるとするならば、殺し合いを強制させられている事も現実で、
状況から察するに逃げる事は出来そうにない事も、また現実なのだと認めなければならない。
朋也が否定しても現実は変わってくれたりなんかしないだろうから、認めなければなけなかった。
鏡がないので目視はできないが、くだんの爆弾付きらしい首輪は確かに首に巻き付いているし、
支給品なのか、手には見覚えの無い地味なリュックサック型の鞄を持っている。抜かりなし。
これはもう素直に認めよう。自分は殺し合いをさせられているのだ、と。
だからといって、殺しを行うかどうか、それはまた別の話だった。
ひとまず朋也は鞄の中を覗き、そこから最初に目に付いた一枚の紙を取り出した。
何の変哲もない紙だ。そこにはびっしりと文字が書かれている。しかし。
「読めん」
朋也が立っている場所は、木の真下だった。枝葉が影を作って朋也の視界を邪魔している。
鞄の中に照明器具はあるだろうか、そう考えて鞄に手を伸ばしかけたが、
すぐに思い留まり、月明かりの差す場所へと移動した。明かりを点けるのは迂闊だと、直感で判断する。
自然の光だけでも問題なく確認できたので、そのまま紙に目を通した。
既に判ってはいたが、それは名簿だった。
885名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 14:36:50 ID:jTAO8h/p
支援
886彼等の本気 ◆nrFxk81wlQ :2008/03/19(水) 14:37:23 ID:zC1JkfVr
岡崎朋也。自分を見つける。そしてすぐさま、自分に続くように記された名前が目に飛び込んで来た。
「渚っ……!」
考えるより先に、朋也はその名前を口にしていた。
古河渚。朋也の同級生の少女。病気で留年しているので、彼女の方が年齢は一つ上だが。
演劇部を作りたいという彼女に感化され、その手助けをする中で──
朋也は彼女に惹かれ、そして二人は結ばれた。
渚は大切な人だ。それはいい、それはいいとして。
部を作り、文化祭での公演も成功させた。しかし渚は体調を崩して、今は療養中の筈だった。
それがどうしてここにいるのか。
答えは簡単だろう。自身と同じで、強制的に連れて来られたのだ。
だが渚は、殺し合いどころか、満足に動き回れるような状態ですらない。
最悪の場合、殺されてしまうかもしれない。そんな予想は立てたくなどないけれども。
真っ先に見つけ出して、保護しなければならない。いや、保護なんて言い回しではなく。
「守ってやらないと……!」
名簿を持つ手に力が入ってしまい、紙が少し皺になったが、あまり問題ではない。
渚を見つける。それが何よりも最優先だ。
その為には何をすればいいのか。それはもちろん、動く事だ。
渚の方からやって来るなんて都合主義な展開を考えてはいけない。
できれば安静にして、あまり動いたりはしてほしくないのだし。
朋也はもう一度、名簿に目を通す。
確か神父達は、60ウン人、正確には何人だったか、とにかく60人台もの人がここにいるのだと言っていた。
基本的には日本人名が多いが、外国人名や、偽名なのかフルネームすらない者の名前も記されている。
この中で何人が積極的に殺しを行うか、名前を見ただけでは判らない。
渚以外で間違いなく信頼できるのは、友人の藤林杏、渚の父親である古河秋生、この二名だけだ。
ここにいる事を喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。ともかく他に知り合いの名前はない。
杏の双子の妹である椋や、渚の母親であり秋生の妻である早苗の名前はなかった。
自分の父親もここにはいない訳だし、どうやら家族ぐるみという訳ではないようだ。
887名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 14:39:27 ID:E/ZWecl3

888彼等の本気 ◆nrFxk81wlQ :2008/03/19(水) 14:40:58 ID:zC1JkfVr
知り合い以外で信用できそうな者がいるならば、渚の捜索を手伝ってもらいたい。
殺し合いをしろと言われて、皆が皆、そう簡単に乗るとは──
唐突に、朋也の元へ耳慣れない破裂音が届いた。そして近くの木が、小さく爆ぜる。
なんだこの音、どこから、まさか銃声?
朋也は瞬間的に周囲をぐるりと見渡した。その間にも、またもう一発。しかし朋也には当たらない。
銃の腕は危惧するものではないのか。それともわざと外しているのか。いや、だとしたら何の意味が。
朋也の視線は人影を捉えた。その名の通り、人の影だ。それが誰かなど判らない。
距離は十何メートル、いや何十メートル、闇で距離感が判らない。とにかく離れている。
遠い人影。けれど朋也が見つけた瞬間、目と目が合った。ような気がした。気のせいかもしれない。
しかしその瞬間に、人影は朋也のいる場所とは反対の方向へと離れて行った。
ようするに逃げられた、のだろうか。
最後に朋也が見たのは、長い髪を翻したそのシルエットのみ──まさか、藤林杏?
一瞬の事で咄嗟にそう思ったが、朋也はすぐに自身の判断を否定した。
長い髪の女なんて、この世には沢山いる。即座に数人程度なら例を挙げられるくらいだ。
つまり、この殺し合いに連れて来られた人々の中にも、長い髪の女は沢山いる、という事になる。
朋也は逃げた人影をどうするか考え、結局追いかけはぜずに、
自身も相手が逃げた方向とは真逆へ移動する事にした。最初のうちは、走る。
二発の銃声を聞きつけて、誰かに来られたら面倒だ。来るのが安全な奴とは限らない。
そうだ、もう殺し合いは始まっているんだ。今、身をもって体験した。
こちらが隙を見せれば、奴らはすぐに命を奪いに来る。汚い手段すらも使って。
前言を撤回しなければならない。知り合い以外で信用できそうな者、そんな奴いる訳がない。
人間なんて、何を考えているのか判りやしないんだから。
信用して油断を見せた隙に殺されるくらいなら、こっちから先に殺した方が簡単だもんな。
よく判ったよ。教えてくれた、あの長い髪の女には感謝する。危ないから、いつか殺すけど。
だってあいつを放っておいたら、そのうち渚を狙うかもしれないしな。
排除だ。渚を危険に陥れる可能性がある奴は全部排除だ。だから知らない奴は全員排除だ。
889名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 14:43:24 ID:jTAO8h/p
シエン
890彼等の本気 ◆nrFxk81wlQ :2008/03/19(水) 14:44:46 ID:zC1JkfVr
 
 
 ◇
 
 
この殺し合いがテレビの騙し企画、いわゆるドッキリの類ではないという事を、
芸能人という立場上そういったものにそこそこ縁のある如月千早は理解していた。
自分は本当に、殺し合いの中に放り出されたのだ。法律なんて関係ないのだろう。
千早は高校一年生でありながら芸能事務所に所属するアイドルである。しかし、それだけだ。
世間的には特殊な立場であっても、この場所で、そのステータスは何の意味も為さない。
歌える事が、人殺しに何の役に立つのだろうか。立たないだろう。
しかしそれでも千早は、死にたくなかった。まだまだ歌っていたかった。
歌えなくなるくらいなら死んでもいいと、そう思い始めたのはいつからだったか。
それは間違いだと、千早は考えを改める。今は、そう──歌えなくなるくらいなら人を殺してもいい。
ステージは、家にも学校にも居場所のなかった自分が、やっと手に入れた唯一の居場所なのだ。
人殺しは禁忌だなんて、そんな事は判っている。しかし殺さなければ殺されるのだ。
幸いにも、ここには死んでも困る人はいない。
同じ事務所に所属する菊地真と高槻やよいの名前はあるが、しかし、彼女らが死んでも支障はない。
彼女を指揮するプロデューサーと、そして共に活動する少女に比べれば、ここにいる二人の価値は低い。
千早は自身を冷たい人間だと思っていたが、ここまで冷酷だとは思ってもいなかった。
むしろライバルが減るだなんて、そんな事を少しでも思った自分は最低だ。
しかしそれ以上に死にたくない。最低だ最悪だと罵られても、死にたくないのだ。
死の淵に立たされると、人はこうまでも自分に甘くなれるのか。
しかし、これが自分だったのだと受け入れるしかない。受け入れなければ、ここから動けない。
「春香……すぐに帰るから」
千早は、共に活動する少女へと思いを馳せた。
891名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 14:46:39 ID:jTAO8h/p
sien
892彼等の本気 ◆nrFxk81wlQ :2008/03/19(水) 14:47:14 ID:zC1JkfVr
ユニット結成前から、周囲に壁を築こうとする千早に、懲りずに何度も話し掛けて、
親しくなろうとしてくれたのがその少女、天海春香だった。
千早の数少ない──いや、千早も自覚している。千早の唯一の、親友だった。
アイドルではなくボーカリストとして芸能界で生きたいと思っていた千早だが、
しかし春香とのユニットならアイドルと呼ばれても構わないと、そう思える程だ。
辛いことも厳しいことも二人で乗り越えて来た。
アイドルランクはまだまだ高いとは言えないけれど、しかし二人はこれからだったのだ。
新曲のレコーディングは、もうとっくに済ませてある。プロモーションビデオの撮影も終わっていた。
これから宣伝をして、売り出して。そういう、二人にとっての重要な大切な時期だった。
それがどうしてこんな事に。
嘆いても殺し合いは終わらない。自分が終わらせるしか道はないのだ。
躊躇がないといえば嘘になる。そかし、それすらをも断ち切らなくてはならない。
これはその為の、いわば決意表明なのだ。
千早は、彼女に与えられた武器、アサルトライフルを構える。
銃身の下に刃物が取り付けてある、大きくて、そして重たい。
両手で持っているのに、どこか不安定だ。
正確には89式5.56mm小銃というらしいが、千早にとっては、名前なんてどうでもよかった。
千早は銃器など扱った事はない。しかし、イメージはできる。付属の説明書も読んだ。大丈夫。
目線の先には、月明かりに照らされた男。山の中を移動していたら、偶然、見つけた。
その時から今まで、動くような気配は全く見せていない。何をしているのか。
とにかく、今しかないのだと思った。すなわち、狙撃のチャンスは。
千早は唾を飲み込み、深呼吸をした。そして息を止める。
狙いを定めて、力一杯トリガーを引いた。
手元から破裂音が響き渡る。こんなに凄いとは思わなかった。
しかし驚いている場合ではない。続けてもう一発、撃つ。
手が震えていた。重いからなのか、それとも。こんな状態で撃って、はたして当たったのだろうか。
千早は酸素を補給しながら確認する。
変わらず人影は立っていた。無傷。当たっていない。それどころか。
男と目が合う。──逃げなくては!
893名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 14:48:52 ID:E/ZWecl3

894彼等の本気 ◆nrFxk81wlQ :2008/03/19(水) 14:51:36 ID:zC1JkfVr
瞬間的にそう思った千早は、すぐさま踵を返して走り出していた。
千早は冷静ではなかった。とにかく今すぐにここから逃げ出さなくてはと、そう思ってしまった。
殺せなかった。それだけが千早の頭中を占めている。
撃ち続ければ殺せたかもしれない。そもそも成功するか判らない狙撃を選ぶ必要はなく、
人畜無害を装って接触して、真後ろから撃てば殺せたのかもしれない。
しかし千早は冷静ではなかった。千早は戦いとは無縁の少女だ。
いつも通りの、冷静な如月千早でいられる訳がなかった。
的確な判断ではない事に気付いた今は、しかし、どうする事もできない。
あの場所からは既に遠ざかっているのだ。
男が追って来るような雰囲気はないし、戻っても、留まっている可能性は低いだろう。
千早は立ち止まり、地面に膝を付いた。
アサルトライフルを置き、荒い呼吸を整えようと努めれば、自然と頭も冴えてくる。
あの男に顔が知られてしまったかもしれない、と千早は思った。
千早はアイドルだ。テレビにだって何度も出ていて、顔が広く知れ渡っている。
襲ってきたのが如月千早であると判ってしまったに違いない。名簿と照らし合わせれば一発だ。
目が合ったのは一瞬のみ。しかし充分だ。現に千早も、相手の顔を覚えているのだから。
いや、今はまだ、覚えている。
千早は既に相手の顔を忘れかけていた。こちら側からすれば、初めて見る顔なのだから。
顔だけがあやふやで、髪の長さ、それから月に照らされた薄い色のブレザー、ネクタイ、
そういった部分的な特徴だけが記憶に刻まれていた。だてに、相手の様子を伺っていた訳ではない。
あの男に「アイドルの如月千早は殺し合いに乗っている」と広められたら厄介だ。
まだ殺し合いは始まったばかりなのに。どんな不利を引き起こすか、判ったものではない。
千早は自身の詰めの甘さを悔いた。
次からは慎重に行わなくては。落ち着いて、冷静に、的確に。
最後の一人になる為には、些細なミスも許されはしないのだ。
これはオーディションではない。落ちても次があるだなんて考えてはいけない。
早く殺さなければ。千早は考える。あの男を見逃してはいけない。
様子見で節約して、単発式にしていたから当たらなかったんだ。
895名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 14:55:38 ID:E/ZWecl3

896名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 14:55:43 ID:jTAO8h/p
支援
897彼等の本気 ◆nrFxk81wlQ :2008/03/19(水) 14:56:09 ID:zC1JkfVr
ただの素人なんだから、普通に撃っても当たる事はないだろう。
千早は決めた。次に会ったらその時は連射を浴びせてやると。
それから、あの場所へと戻るのは難しい話だという事に気付いた。
とにかく必死で、どこをどうやって走ってきたのか全く覚えていない。ああ、迂闊だった。
単純に180度回転して真っ直ぐ進んだとしても、戻れる可能性は無いに等しいだろう。
だったらどうするか。予測をするしかない。
あの男が向かいそうな場所を予測し、その道中で待ち伏せるしかない。
今いる場所が、山の南西側付近である事は既に確認済みだ。
考えるのよ、千早。あの男が移動するとしたら──。
 
 
【D-3 山中 深夜】
 
【如月千早@THE IDOLM@STER】
【装備】89式小銃(28/30)
【所持品】支給品一式、交換マガジン(30x2)、確認済アイテム0〜2(武器は無し)
【状態】健康、動揺
【思考・行動】
基本:優勝を目指す
1:あの男(岡崎朋也)の行き先を予測し、早期発見、殺害する
2:優勝を目指す。その為の策を練る
【補足】
※D-3、D-4、E-4のどこかに自分がいると考えています
※現時点で、自分の顔が広く知れ渡っているものと思っています
※春香とデュオユニットを組んで活動中。ユニット名不明。ランクはそこそこ
898名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 14:59:33 ID:E/ZWecl3

899名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 14:59:35 ID:jTAO8h/p
シエン
900彼等の本気 ◆nrFxk81wlQ :2008/03/19(水) 15:00:34 ID:zC1JkfVr
 
 
 ◇
 
 
朋也は走り続け、それからしばらくして速度を緩め、今度は慎重に歩く事にした。
足音にも注意をしなければならない。そう考える。
先程は、月明かりの差す場所にいただけで狙われたのだ。極力、目立つ行為は控えたい。
周囲の音や気配に気を配りながら、身を低くしながら歩き、周囲には誰もいないと判断すると、
朋也は一度その場で止まった。名簿を握ったままだった。それを仕舞うついでに、鞄の中を確認する。
武器、何か武器、武器、武器武器武器。
自分にでも扱える強力な武器があれば、銃撃の場所に戻って、来る奴を待ち伏せて殺すのもアリだ。
今すぐあの長い髪の女を追いかけ直して殺してもいい。とにかく武器武器武器。
朋也は鞄の中から、自身へと与えられた物を取り出した。それは、はたして。
 
 
【D-3 山中 深夜】
 
【岡崎朋也@CLANNAD】
【装備】なし
【所持品】支給品一式、未確認アイテム1〜3
【状態】健康、渚中心の思考
【思考・行動】
1:武器が欲しい
2:渚を見つけて守る。知らない奴は殺す。髪の長い女は特に危険視
3:その後の事を考えるという発想がない程に、平静ではない
【補足】
※渚ルート文化祭以降より召集
901彼等の本気 ◆nrFxk81wlQ :2008/03/19(水) 15:01:22 ID:zC1JkfVr
投下終了です。支援ありがとうございました
902名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 15:02:24 ID:UX1WJnM+
千早さんマーダー化は予想してたんだけど、参戦してない春香とのデュオってのは考えてなかったわ。
確かにこういう方向性の方が一本の筋が通るね。
GJ!
903名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 15:09:55 ID:Dbr5+YFs
投下乙です。
やばいw まさか朋也までが今流行の対主催マーダーになるとはw
知り合い以外はみんな殺すとなると激動の予感w
904名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 15:18:00 ID:E/ZWecl3
投下乙
どっちもマーダー化とは予想外、2ndは殺伐すぎるぞ
って、渚の親父にあわせる顔ないだろ

一般人でも相応の策を持っているこのロワで
その場しのぎで素人っぽさ全開の二人
これからどうなるか気になる
905名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 16:21:10 ID:wCSziLMG
投下乙!
む…よりによってこの二人がマーダー化してしまうとは。
他の参加者はやばい連中が多いぞ、大丈夫か?
とはいえ素人マーダーが面白い存在である事は変わらないし、楽しみですな。
906名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 16:57:05 ID:09CGvJ+8
Wikiの第一回放送までの死者を編集しました。
ご連絡しておきます。
907名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 17:37:58 ID:NjOhGICy
うーん。
ネタ思いついたのに、プロキシで書き込めないのってマジ悔しいぜ。
しばらく置いても無理だったし、一体どうなってんだ?
908名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 19:02:21 ID:E/ZWecl3
>>906
乙です

>>907
プロキシ使わなければ良いじゃん。何か問題でもあるのか
909名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 19:44:02 ID:NjOhGICy
>>908
使ってねーのに反応するから困ってるんだ
予約しないで投下するの有りならまだ何とかなるのだが。
910名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 19:45:11 ID:c+G3ggg9
つ 携帯
つ ネカフェ
911名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 19:54:08 ID:NjOhGICy
>>910
携帯持ってないし、ネカフェ近くに無いんだよ
912名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 20:13:59 ID:92QaEUaZ
>>911
とりあえず予約だけでも知人か何かに頼め
予約さえしたらばに入れば、後はこのスレに書き込んでも
『よっぽどやばいss』以外なら何とかなる
913名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 20:26:07 ID:KV6RJwdL
914名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 20:27:37 ID:KV6RJwdL
sage忘れ申し訳ない。
915Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:00:56 ID:xVW/RWH2
血まみれのまま教会に飛ばされたわたしはなにをするでもなく泣き崩れていた。
タカくんとタマお姉ちゃんが死んだ。
わたしの目の前で。
こんなのは悪い夢だ。
そう思い込めればどんなに幸せだろう。
でもタマお姉ちゃんに叩かれた頬の痛みがこれが現実なんだとわたしに告げる。
タマお姉ちゃん……。
思い出すのは最期の言葉。

『……このみ。駄目だよ、あなたは生きなくちゃ』

無理。

『このみ、雄二――頑張って生きてね』

無理だよお姉ちゃん。
わたしひとりじゃ、生きられないよ。
タカくんや、タマお姉ちゃんが生きていたら、みんなと合流すればなんとかなる。
そんな希望もあったかもしれない。
でもタカくんもタマお姉ちゃんも、もういない。
この島にはユウくんも居るはずだけど、会えない。
わたしのせいでタマお姉ちゃんが死んでしまって。
お姉ちゃんを犠牲にして生き延びたわたしには立ち上がる気力もなくて。
タマお姉ちゃんの死を無駄にしてるわたしにはユウくんに会わせる顔が無い。
916Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:01:59 ID:xVW/RWH2
どのくらいの時間泣いていたのだろう。
わたしの居る建物のドアが乱暴に開けられる音がした。
ドアを開けたのは金髪のポニーテールの女の人。
両手には豪華な銃を持っていて、そのうち片方がゆっくりとわたしにむけられる。
ああ、わたし殺されるんだ。
首輪を爆発させられそうになった時、あんなにも怖かった死が今はもうそれほど怖くない。
それよりもタカくんやタマお姉ちゃんの居ない世界で、1人で生きることの方が怖い。

タマお姉ちゃんにはせっかく助けた命を無駄にするなって起こられてしまうかもしれないけど。
だいじょうぶ、許してくれるよね。
タマお姉ちゃんやさしいもん。

タカくん、タマお姉ちゃん待っててね。
もうすぐそっちに行くから。

ちゃる。よっち。おかあさん。
ごめんなさい。わたしはこれから命を捨てます。

ユウくん。
がんばってね。わたしやタカくん、タマお姉ちゃんのぶんも生きて。

そうしてわたしは目をつぶった。

祈るものの居ない、寂れた教会。
血まみれの少女に向けられた銃の引き金に指がかかり。
僅かな逡巡の後、銃声が鳴り響いた。
917名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:03:28 ID:LaCBTFYr
 
918Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:04:35 ID:xVW/RWH2
銃声を聞きながら、タカくん達との思い出をふりかえる。
みんなで遊んだ幼い頃。
タマお姉ちゃんが帰ってきてくれた春休み。
タカくんと同じ学校に通えるようになったことが嬉しかった入学式。
タカくんとの幼馴染という関係から一歩踏み出したあの日
楽しかった過去を思い出して枯れたはずの涙がこぼれた。

ああ。
やっぱりわたし、死にたくないな。
みんなのいない世界で生きるのはつらいけど。
みんなとの楽しかった想い出を思い出せなくなるのはもっとつらい。

でも、もう手遅れ。
すでに引き金は引かれてしまった。
わたしは──
919Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:05:19 ID:xVW/RWH2
「おい」

予想していた痛みは一切無かった。
頭を一瞬で打ち抜かれたら、痛みを感じる暇も無いのかな?
だったらタカくんもタマお姉ちゃんも痛みを感じなかったのかな?
だったら少しだけ───

「聞いてんのかてめぇっ!」

首元を掴まれ、いきなり揺さぶられた。
不思議に思ってゆっくりと目を開けると目の前にはわたしを殺したはずの女の人が。
女の人は舌打ちを一つすると。

「聞きたいことがあるだけだ。別に殺しゃしねーよ」

と言い捨て、乱暴にわたしを放り投げた。
しりもちをついたわたしはその痛みでようやくまだ死んでいないことに気づいた。
920名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:05:23 ID:KV6RJwdL
   
921名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:05:46 ID:8SBDttPN
 
922名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:06:07 ID:8SBDttPN
 
923Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:06:12 ID:xVW/RWH2
◆◆◆

「で、落ち着いたか?」

返事をしようとしたけど、さっきのショックで震えてうまく声が出せない。
しかたなく首を立てに振って意思表示をする。

「さっきも言ったが聞きたい事がある。吾妻怜司って男かアインって女を見なかったか?」

言い終わると同時に銃を突きつけられる。
たとえ銃なんて無くても、睨まれただけですべてしゃべってしまいそうになるほど鋭い眼光。
体の震えが更に大きくなるが必死に首を横に振って知らないことを伝える。
すると女の人は舌打ちをしながら、

「ちっ。まあてめえみたいな温い餓鬼があいつらにあって生きてるはずもねえか」

そして彼女の右手にある銃の引き金に指がかかる。
嫌だ。
さっきまで死にたがっていたわたしはもうどこにも居なかった。
幸せだったあの日々を忘れたくない。
死にたくない。
死にたくない、死にたくない。
死にたくない、死にたくない、死にたくな───
924名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:06:46 ID:KV6RJwdL
  
925Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:06:48 ID:xVW/RWH2
「やめだ、やめだ。下らねえ。抗うそぶりも無しかよ」

その言葉と同時に突きつけられた銃が下ろされる。
助かった───の?

「お前、さっき殺されかけたやつだろ?」

───っ!?
あの光景がフラッシュバックする。
音を発する首輪。
永遠にも思えた数十秒。
そしてわたしの身代わりをかってでたお姉ちゃんのうしろすがた。

「そんなやつがさっさと諦めてんじゃねえよ。胸糞わりい」

金髪女の罵倒は止まらない。

「知り合いの命を奪ったあいつらが、せっかく助けてもらった命を奪おうとするあたしが憎くねえのか?」

憎くないはずが無い。
私の大切な人たちの命を奪ったあの男達が。
大切な人に守ってもらったこの命を散らそうとする眼前の女が。
───憎くないはずが、ない。
926名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:07:19 ID:LaCBTFYr
 
927名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:07:22 ID:KV6RJwdL
  
928Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:07:27 ID:xVW/RWH2
「命捨ててまで助けた餓鬼がこの様じゃ、あの女も無駄死にだな」

金髪の女はそう言い捨てると背中を向けて去って行く。
このまま黙っていたら見逃してもらえるのかもしれない。
タマお姉ちゃんに救ってもらった命を無駄にしなくてすむのかもしれない。
なのにわたしの口は勝手に言葉を紡ぎだしていた。

「───憎い。憎いよ」

それは心の底から響く怨嗟の声。

「だったら殺せよ」

歩みを止め、髪をなびかせつつ振り返った女は事も無げに言い放つ。

「殺して、殺して、殺して、この島にいる奴ら、全員ぶち殺して最期ににやけ面したあの野郎共に鉛玉ぶち込んでやればいい」

そう言って女の人は獰猛な笑みを浮かべる。
でもそれは強い人の理屈。

「私だって───私だってタカくんやタマお姉ちゃんの仇が討ちたいよ!でも無理、私なんかにそんなこと出きるはずないよ!」

私なんかがこの殺し合いに生き残れるわけが無い。
仮に生き残ったとしても首輪がある。
タカくんとタマお姉ちゃんの命を奪った首輪が。
これがある限り、仇なんて討てるはずが無い。
そんなことは目の前の女性も分かっているはず。
929名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:07:50 ID:KV6RJwdL
   
930名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:08:14 ID:8SBDttPN
 
931名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:08:29 ID:KV6RJwdL
  
932Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:08:52 ID:xVW/RWH2
「あの二人以外の連中には大して興味も無かったが、こいつがあるなら話は別だ。いいぜ、乗ってやるよ」

心底楽しそうな笑みを漏らしながら、彼女がわたしの鞄から引き抜いたのはただの懐中時計だった。
彼女は懐中時計を首から提げ、胸の谷間に仕舞い込むと、変わりとばかりに弾丸を何発か取り出してわたしに向かって投げた。

「こいつの代価にその銃ひとつじゃ安すぎる。それもやるよ、とっときな」

そう告げると彼女はわたしに背を向けて去っていく。
わたしに注意を払っている様子は全く無い。
もう一度銃を向けてみる。
その瞬間に彼女は振り向いた。
───また?

「そういえばまだお前の名前を聞いてなかったな。おい餓鬼、お前の名前は?」

偶然?

「ん?」

彼女は訝しげにこっちを見つめる。
しまった!銃を構えたままだ!

「ゆ、柚原このみでありますっ!」

急いで銃を下ろす。
ばれて───無いよね?
彼女は特に不審に思った様子も無く、

「そうかい。あたしはドライ、ただのドライだ。」

そう言ってまた私に背を向ける。
もう一度ドライさんに銃を向ける勇気は私には無かった。
933名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:09:26 ID:KV6RJwdL
  
934名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:09:37 ID:8SBDttPN
 
935Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:09:39 ID:xVW/RWH2
再び歩き始めた彼女が付け加えるかのように呟く。

「これは復讐者の先輩としての忠告だが───」

ドライさんは振り向くことなく続ける。

「銃を持ったら躊躇うな。ありったけの殺意をこめて標的を撃ち殺せ」

最初みたいに銃を向けられている分けじゃない。
ただこっちに背中を向けて歩いているだけ。
怖がる理由はどこにも無い。
その筈なのに。
そう告げたときのドライさんが一番怖かった。

「三度目は期待してるぜ」

今度こそ本当にドライさんは去って行った。
やっぱり気づいてたんだ。
その姿や立ち振る舞いは映画に出てくる殺し屋さんみたいで本当に格好良かった。

そんなことを思った直後、そんなことを思えるまで元気になっている自分に驚いた。
とても一時は死のうとしていた人間とは思えない。

もしかして───あれはあの人なりの励ましだったのかな?
彼女が本当に殺し合いに乗っているのなら、わたしを殺さない理由なんて無い。
よく考えればわたしを殺せるチャンスなんて、いくらでもあった。

TVでこんなお話を見たことがある。
大切な家族を失い、生きる気力を失った少女に、「君の家族を殺したのは僕だ」そんな悲しい嘘をつく事で少女に『復讐』という生きる目標を与えた少年のお話。
数年後、少女は少年の嘘に気づき、少年の優しさに恋をする。でも少年に酷いことをいっぱいした自分は少年の傍に居る資格は無いと思い悩む。
それでも幼いころに交わした約束をよりどころに少年の傍に居て罪滅ぼしと恩返しを続ける。
そんな切ないながらも幸せな日々の中、突然その少年に思いを寄せる別の女の子が現れて───
936名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:10:02 ID:KV6RJwdL
 
937Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:10:18 ID:xVW/RWH2
どうなったんだっけ?
思考が横道に反れたけど、とにかく復讐という感情は生きる意志を失った少女を蘇らす魔法にもなる。
もしかしてドライさんはその事を知っていて敢えてあんな態度を?

これはあくまでも現実で、TVみたいに優しいお話じゃない。
私の大切な人達を奪った悪魔は存在する。
でもタマお姉ちゃんの優しさで命を繋いだ。
ドライさんの優しさで生きる気力を貰った。
その優しさに気づけた私はTVのヒロインのように優しくされた人に尽くそう。

『……このみ。駄目だよ、あなたは生きなくちゃ』

ありがとうタマお姉ちゃん。

『このみ、雄二――頑張って生きてね』

私もユウくんも絶対に死なない。タマお姉ちゃんの分も精一杯生きるよ。
返事は出来なかったけど、泣きじゃくるしか出来なかったけど。
私もユウくんも頑張って生きる。
それは私とタマお姉ちゃんが交わした約束。
そう決めた。
タマお姉ちゃん。最期まで心配かけてごめんね。
でももう大丈夫。
私頑張るから。この約束があれば頑張れるから。
だから見守っていてね。
938名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:10:23 ID:KV6RJwdL
939Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:10:56 ID:xVW/RWH2
そうと決まればいつまでもこんなところに居られない。
今までの時間を取り戻すように、急いで鞄を確認する。
中を確認して驚いた。
そこにあったのは地図やコンパス、名簿、食料などの当たり障りの無いものを除けば3つ。
説明書、そして防弾チョッキ、そして時計だった。
説明書は銃の取り扱い方について簡単に書かれたもの。私が銃を扱えないことを見越してドライさんが入れて置いてくれたんだろう。
そして防弾チョッキ。
私の鞄の中で銃とつりあう価値のあるものといえば精々これ位だろう。なのにドライさんはあえて時計を選んだ。
ううん。それどころか、ここに時計があるということはそれすらも持って行ってない。多分あれは最初からドライさんの鞄に入っていた時計。
それを敢えてわたしの鞄から持って行ったように───

ドライさん、良い人過ぎるよ。
ドライさんにもちゃんと恩返し、しなきゃ。

この殺し合いに集められた人たちの中でわたしが知っているのは4人、タカくん、タマお姉ちゃん、ユウくん、ドライさん。
みんな良い人ばっかりだ。
みんなで力を合わせれば、殺し合いなんて起こらない。
最初あれだけ絶望していたわたしの心は、いつの間にか希望に満ち溢れていた。


【B-1 教会 深夜】
 
【柚原このみ@To Heart2】
【装備】イタクァ(5/6)、防弾チョッキ
【所持品】支給品一式、銃の取り扱い説明書。銃弾(イタクァ用)×12
【状態】健康
【思考・行動】
基本:頑張って生きる。
1:ユウくんとの合流を目指す。
2:ドライさんにももう一度会いたい。

【備考】 制服は血で汚れています。
940名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:11:19 ID:8SBDttPN
 
941名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:11:23 ID:KV6RJwdL
  
942Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:11:27 ID:xVW/RWH2
◆◆◆

「───らしくねえな」

このみと別れ、当ても無くうろつきながら先ほどの行為を振り返る。
……あの時の自分を殺したくなるほどむずかゆい。
最初に放った銃弾。
あれは殺すつもりの一発だった。
だが放たれた銃弾に気づいて居るはずなのに避けようともしない、あの餓鬼を見て、
───下らねえ。
そう思った瞬間に銃弾は逸れていた。
外したのではない、勝手に逸れたのだ
あの説明書に書かれていた「銃弾をある程度操作できる」という馬鹿みたいな説明はどうやら本当だったらしい。

「本当に───らしくねえ」

そこまではまあよしとしよう。
あたしがしたいのはあくまでも殺し合い。
こっちに反撃したり、必死で逃げようとするのならともかく、無抵抗の子供1人殺したところで面白くもなんとも無い。
あの餓鬼に銃をくれてやったのも問題無い。
「銃弾をある程度操作できる」面白い玩具ではあるが、そんな玩具に頼ってあいつらを殺しても仕方ない。
アインを、怜司を、ファントムを殺すのはあたし自身の力でやる。
幸い銃はもう一丁ある。こっちも怪しげな銃だが、変な誘導機能はついてないみたいだし問題ないだろう。

───だが。
だがあの態度は何だ?偉そうに説教くれやがって。どの面さげてほざいてんだよ。
943名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:12:25 ID:KV6RJwdL
 
944Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:12:33 ID:xVW/RWH2
思い出すだけで苛立ってくる
まあ良い。
何も悪い事ばっかりってわけでもなかった。
手のひらに収まる懐中時計を眺めて思う。
オルゴールが中に仕込まれた想い出の一品。
出来れば怜司に会う前に入手したかったこいつを一発で手に入れたのだ。
それに比べればあの程度の恥、何てこと無い。

「ったく調子狂うぜ」

あの餓鬼───たしかこのみとかいったか。
あんな餓鬼が殺し合いを生き残るとも思えない。
だがあの小娘の憎しみが本物なら。
もしかしたら、もう一度あたしの前に現れるかもしれない。
その時は───

「こいつを聞かせて殺してやるよ」

胸の懐中時計の感触を確かめつつ呟く。
その事を思えばむしろあの場はあれで良かったのかも知れない。

「ま、精々頑張んな。期待してるぜ」


【B-2 深夜】
945Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:13:00 ID:xVW/RWH2
【B-2 深夜】
 
【ドライ@Phantom 】
【装備】クトゥヴァ(10/10)@デモンベイン
【所持品】支給品一式、マガジン×2、懐中時計(オルゴール機能付き)@Phantom
【状態】健康
【思考・行動】
基本:殺し合いを楽しむ。
1:アインと怜司を見つけ出して殺す。
2:見つけた人間を片っ端から襲う。

※クトゥヴァ、イタクァは魔術師でなくとも扱えるように何らかの改造が施されています。
946名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:13:03 ID:KV6RJwdL
947名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:13:12 ID:8SBDttPN
 
948Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:13:44 ID:xVW/RWH2
以上で投下完了です。
多数の支援ありがとうございました。
感想、指摘等お待ちしています。
949名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:14:52 ID:KV6RJwdL
GJ!投下お疲れ様でした!
キャルカッコイイよキャル。
そしてこのみ。踏みとどまれて良かったなぁ。
……まぁ、この場合、果たして踏みとどまってよかったは不明だがw
950名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:21:08 ID:09CGvJ+8
投下乙でした
このみ……踏みとどまったのはいいけど次の放送で……
951名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:25:00 ID:bhHtru+S
投下乙です。
このみ持ちこたえたのは良かったけど、雄二はもう……


一つ疑問。
>>928>>932のつながりに違和感を感じるのですが、シーンが抜けていませんか?
952Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:27:32 ID:xVW/RWH2
>>951

指摘ありがとうございます。
思いっきり抜けてましたorz
953Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:28:24 ID:xVW/RWH2
「出来るさ。出来なきゃお前の憎しみはその程度だっただけの話だ」

なのに眼前の彼女は簡単に言ってのける。
そして手に持った銃をわたしのほうに向け───
そのまま放り投げた。

「そいつはくれてやるよ。そいつと相手を殺したいって怒りがあれば───誰だって殺せるさ」

もっとも無料って訳にはいかねえがな。
そんなことを呟きながら近くに放置していた私の鞄を漁り始めた彼女を尻目に手の中にある銃を見つめる。
人の命を奪う凶器の筈なのに、その銃はとても美しかった。
でもこれは紛れも無い凶器。
銃口を向け、引き金を引くだけで人を殺す武器。
───たとえば、鞄を物色するのに熱中していて私のことを気にしていない、彼女だって殺せる。
そう思って銃を持ち上げていった瞬間、彼女の動きが止まった。
───気づかれた?

「───へえ。確か言峰とか言ったっけ?あの野郎も中々粋な真似するじゃねえか」

どうやら違うみたい。
安心して胸を撫で下ろす。
わたしに配られた道具の中に何かいいものでもあったのかな?
954名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:28:45 ID:8SBDttPN
>>901
投下乙です
まさか岡崎までマーダー化とは……これは悲劇の予感
千早の一般人らしい動揺っぷりも良かったです

>>948
投下乙です
このみ……立ち直ったのは良いけど、更なる不幸フラグが幾つもw
次の放送で雄二が呼ばれるし、ドライと会ったら襲われるし
早くもカワイソス過ぎる……w
955Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 21:29:27 ID:xVW/RWH2
>>953>>928>>938の間に入れて読んでください。
読みにくくなってしまい申し訳ありませんでしたorz
956名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:49:34 ID:8SBDttPN
次スレ立てておきました
此処が容量限界or1000レスいった場合は、こちらへどうぞ
ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド2
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1205930505/l50
957名無しくん、、、好きです。。。:2008/03/19(水) 21:53:19 ID:8hrUXPkt
>>nr氏
投下乙です
しょっぱなからマーダーvsマーダーのバトルが見れるとは
これは目が離せない。
それにしても知名度の高いアイドルも大変ですね

>>GW氏
こちらも投下乙です。
ファントム全然知らないですけど、ドライがかっこよすぎる
このみにイタクァが渡るとは…これは面白くなってきました
それと誤字報告ですが、デモンベインでは「クトゥヴァ」ではなくて「クトゥグア」という名前です
958 ◆GWJrhWwbC6 :2008/03/19(水) 22:37:16 ID:xVW/RWH2
>>957
素で間違えてましたorz
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959体は金属で出来ている ◆cACcJW./lA :2008/03/20(木) 00:14:58 ID:OD35Dpmb
ここは地図でいうところのF-7にある駅。
駅の構内には寂れた宿舎があり、その中には一人の男がいた。
彼の名は如月双七、この理不尽なゲームに巻き込まれた参加者の一人である。

「あいつら……言峰と神崎ってやつらもやっぱり人妖なのかな」

人妖――正式呼称「後天的全身性特殊遺伝多種変性症(ASSHS(アシュス))」、
通称「人妖病」と呼ばれる遺伝性とされる原因不明の奇病に罹患した人々を総称する言葉である。
彼らは例外なく科学では説明できない人智を超えた能力を持っている。
あの神崎という男の戦闘力、言峰という男が最後に使った参加者たちを瞬間移動させた能力。
やはり、あれも人妖としての能力なのだろうか?
それに巨大な蛇に化けた双子の女の子たち、あれは人妖どころではない、まるで本物の妖のようだった…。

「考えてもきりがないな。まずは、自分にできることを試してみよう…」

すでに二人の人間を死に至らしめたこの首輪―
主催者に逆らうにしても、脱出を狙うにしても間違いなくこの首輪がネックになるのは間違いない。
自分の人妖としての能力を使えばこの首輪について少しでも何か分かるかもしれない。

如月双七、彼の人妖としての能力は金属との意思疎通・対話である。
もちろんこの首輪も金属でできている。
もしこの首輪の協力が得られれば、うまくいけば首輪の解除、最悪でも首輪の構造くらいは分かるだろう。
自分の右腕に埋め込まれている爆弾―手負蛇は完全に体内に埋まっているのでどうしようもないが、
少なくともこの首輪は体外にある。きっと外す方法はあるはずだ。
960体は金属で出来ている ◆cACcJW./lA :2008/03/20(木) 00:15:53 ID:OD35Dpmb
双七の手から何本かの“赤い糸”がでてくる。この赤い糸は双七にしか認識することができない。
この糸を金属と接触させることにより金属と心を通わせることができるのだ。
そうして糸を引っ張ることで手元に引き寄せたり、また金属の形状を無理やり変えたりすることもできる。
もちろん首輪を無理に外そうとすると首輪が爆発するらしいので、そんなことはできないのだが。

(おい…首輪…首輪よ…)
彼は、首輪に語りかける。しかし、
(おかしいな…全く反応がない?死んでいるわけじゃなさそうだけど…)

それでも諦めずにずっと首輪に語りかけてみる。しかし全く反応がない。
あえて無視されているといった感じだった。
ためしにこの場にある他の金属を適当に探して能力を使ってみたがやはり何の反応もなかった。
彼の能力は金属を操ることであるが、それは金属の協力が得られるという大前提に基づいている。
これでは何もできそうにない。
考えてもみれば、この首輪は敵側が用意したものだ、自分達に協力的である道理はないだろう。
それに能力が制限されると神崎という男が言っていた。
能力が制限されているのか、ただ非協力的なだけか、あるいはその両方か、どちらにしろ使えないことに変わりはない。

確かに自分の能力はこういった殺し合いの場では驚異的だと思う。
たとえ敵が現れて、その敵が銃や剣を持っていても自分の手元に引き寄せるか使用不能にしてしまえば勝負にさえならないだろう。

「はぁ、そうそううまくはいかないってわけか…」

とりあえず首輪に関しては一端保留とすることにし、デイパックの中身を確認することにした。

◆◆◆
961体は金属で出来ている ◆aP52n3jgXk :2008/03/20(木) 00:17:06 ID:OD35Dpmb
――――コンコン

ドアから控え目なノックの音が聞こえた。
誰かが来た?ノックをするということは中に誰かいるということを知ってるということか?
なぜ?自分は最初からここに飛ばされて、中に入るところを見られるはずもないのに…
そうこう考えているうちにドアがゆっくりと開かれた。
大丈夫だ。少なくともノックをするということは、すぐにでも殺し合いをする可能性は低い―

「こんばんわ。私は風華学園一年の深優・グリーアと申します。殺し合いには乗っていません」
あからさまに緊張している双七とは対称的にその少女はとても落ち着き払っていた。
「―あ、俺は神ざ…、いや…か、神北学園二年の如月双七です、俺も殺し合いには乗っていません」
あやうく、神沢学園と言ってしまうところだった。神沢市は人妖都市と呼ばれるほど人妖が多いという特徴を持つ町である。
昨日まで普通の人間だと思っていたのに、いきなり人妖病だと判断される、あるいは発覚することがある。
そういった人間、いや人妖はほぼ強制的に人妖都市神沢市に行かなくてはならなくなる。
つまり神沢市は人妖を閉じ込めるための監獄都市といってもいい。
この国で起こる凶悪犯罪のほとんどは人妖が起こしていて、人妖のせいで家族や親しい人を失った人はごまんといるのだ。
だから悲しいことに、一般の人は人妖に対して憎悪や畏怖といった感情しか持っていない。
この国に住む者なら神沢市を知らないはずはない。
せっかく殺し合いに乗っていない人物に出会えたというのに、わざわざいらぬ警戒心を抱かせる必要はないだろう。
嘘をつくのは気がひけるが、双七は自分が人妖であることは隠すことにした。

◆◆◆

「そういえば、今ドアをノックしてから入ってきたけど、中に誰かいるのを知っていたの?」
「はい。物音が聞こえましたから、中に誰かいるのは明確でした」

確かに金属を探して歩き回ったりしていたかもしれないが、そんなに大きな音を立てていたのか。
次からは気をつけよう…双七はそう思った。
実を言うと、深優の正体はアンドロイドで人間の何倍も聴力がいいだけなのだが、双七はそのようなことは知るよしもなかった。
962体は金属で出来ている ◆aP52n3jgXk :2008/03/20(木) 00:18:07 ID:OD35Dpmb
そんなことよりも今は、せっかく殺し合いに乗っていない人間に出会えたのだ。
情報交換をするべきだろう。そう思い二人は、参加者名簿で知り合いの情報を交換することにした。

「玖我なつき、杉浦碧、藤乃静留…この3人がグリーアさんの知り合いなんだね?」
「はい、ですが殺し合いに乗っているかどうかまでは分かりません。それと私のことは深優で構いません」
「わかったよ、深優。俺のことも双七でいい。ところで、あの神崎という男とも知り合いというのは…?」
「私の通っている学園の生徒会副会長を務めているだけですので直接の面識はありませんが…」

どういうことだろう?神沢市には神沢学園と金嶺学園しかないはず。風華学園だなんて聞いたこともない。
神崎という男が人妖という考えは間違っていたのだろうか?
やはり、考えても分からない。残念だけど、どうやら自分は考察キャラではないようだ…
気を取り直して、今度は双七が知り合いの名前を挙げていく。

「俺の知り合いは、一乃谷刀子、一乃谷愁厳、アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ、加藤虎太郎、
それと、九鬼…耀鋼の5人だよ。この5人はこんな殺し合いには乗らないはずだ」

九鬼耀鋼――如月双七に戦い方、そして生き方を教えてくれた彼の人生の師とも言うべき存在。
彼の人格形成に多大な影響を与えた人物である。
もう何年も会ってはいないが、彼は今人妖追跡機関ドミニオンに所属しているらしい。
ドミニオンは人妖の犯罪者を取り締まる軍隊のような機関だ。
もしかしたら、人妖を収容する病院から脱走した自分のことを追っているかもしれない。
殺し合いに乗っていないと信じてはいるが、もし自分が九鬼耀鋼と出会ったら一体どうなるのだろうか。
やはり、戦いになるのか?でも、もしも九鬼先生が協力してくれるならこれ以上ない味方になってくれるはず…
963体は金属で出来ている ◆cACcJW./lA :2008/03/20(木) 00:19:18 ID:OD35Dpmb
「…双七?どうかしましたか?」
「あ、いや…何でもないよ」

九鬼耀鋼のことを考えていてぼーっとしていたようだ。
話題を逸らそうと、双七はあたりを見回してみる。
視線が深優にぶつかった。
無機質で冷たさを感じる顔立ちをしているが、全体的に見てもとても奇麗な少女だと思う。
しかしそんな少女の首にもやはり無骨な首輪が確認できた。

(首輪か――あ、そうだ…)

双七はここにきて、深優の首輪にも自分の能力を使ってみようと思った。
先ほどと同じでほぼ無理だろうが、もしかしたらということもあるかもしれない。
それに大した手間でもないし、試してみる価値はあるだろう。
早速双七の右手から、双七にしか認識できない“赤い糸”が深優に向かって伸びる。

「ここにずっと留まっていても仕方ありません。私は出発しますが、双七はどうしますか?」

そう言って深優が立ちあがる。その結果赤い糸は首輪を大きく外れ深優の体に思い切り突き刺さってしまった。
慌てて引き抜くが、この赤い糸は“人体には”何の影響もないので、双七は気にも止めなかった。
だが―――

“…アリッサ様もいませ…無理に戦う必よ…―れより今は情報…―”

(――えっ…?今、この娘の声が聞こえた…?)
「どうかしましたか双七?」
「あ…ああ、ごめん。考え事をしていた。俺も一緒に行くよ」

果たしてこの先、彼は信頼しあえる“金属”に出会うことができるのだろうか?
964体は金属で出来ている ◆cACcJW./lA :2008/03/20(木) 00:20:04 ID:OD35Dpmb
【F-7 駅/1日目 深夜】
【如月双七@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備: なし】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:今、この娘の声が聞こえた…?
2:一乃谷兄妹、トーニャ、虎太郎を探す
3:九鬼耀鋼にはできれば会いたくない

[備考]
:自分が人妖であることは話すつもりはありません
:深優の知人の情報を入手しました
:能力に制限がかかっています。よほど自我の強い金属でないと能力が使えないようです。

【F-7 駅/1日目 深夜】
【深優・グリーア@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備: なし】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:アリッサのもとに帰る。
2:そのために、優勝すべきか脱出すべきか最も効率のいい方を選ぶ。
3:そのために、まずは情報(首輪について、脱出について)を集める。
4:双七と一緒に行動、今は様子見に徹する。

[備考]
:自分がアンドロイドであることは話すつもりはありません
:双七の知人の情報を入手しました
:ヒメ同士のバトルが激化する前からの参戦、エレメントは使えません
:これからどこに行くのかは後続の方に任せます。
965体は金属で出来ている ◆cACcJW./lA
投下終了です。
タイトルの元ネタはfateの「体は剣でできている」です。
修正点等ありましたら、ご指摘お願いします。