FFDQバトルロワイアル3rd PART10

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1名前が無い@ただの名無しのようだ
━━━━━説明━━━━━
こちらはDQ・FF世界でバトルロワイアルが開催されたら?
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。

参加資格は全員、
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。

作品に対する物言い、感想は感想スレで行ってください。
sage進行でお願いします。
詳しい説明は>>2-10…ぐらい。

感想スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1140452583/
過去スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1099057287/ PART1
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101461772/ PART2
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1105260916/ PART3
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1113148481/ PART4
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1119462370/ PART5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1123321744/ PART6
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1128065596/ PART7
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1130874480/ PART8
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1142829053/ PART9
2名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 11:38:25 ID:fSa7uGkB0
+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><着火器具・携帯ランタン><参加者名簿>が支給される。
 また、ランダムで選ばれた<武器>が1つから3つ、渡される。
 <ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る。(FFUのポシェポケみたいなもの)
・生存者が一名になった時点で、主催者が待っている場所への旅の扉が現れる。この旅の扉には時間制限はない。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。

+首輪関連+
・参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
 この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
 または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・放送時に発表される『禁止技』を使ってしまうと、爆発する。
・日の出放送時に現れる『旅の扉』を二時間以内に通らなかった場合も、爆発する。
・無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
・たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止魔法が使えるようにもならない。

+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します。召喚魔法は魔石やマテリアがないと使用不可。
・初期で禁止されている魔法・特技は「ラナルータ」
・それ以外の魔法威力や効果時間、キャラの習得魔法などは書き手の判断と意図に任せます。
3名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 11:39:32 ID:fSa7uGkB0
+ジョブチェンジについて+
・ジョブチェンジは精神統一と一定の時間が必要。
・10-2のキャラのみ戦闘中でもジョブチェンジ可能。
・ただし、スペシャルドレスは、対応するスフィアがない限り使用不可。
・その他の使用可能ジョブの範囲は書き手の判断と意図に任せます。

+戦場となる舞台について+
・このバトルロワイヤルの舞台は日毎に変更される。
・毎日日の出時になると、参加者を新たなる舞台へと移動させるための『旅の扉』が現れる。
・旅の扉は複数現れ、その出現場所はランダムになっている。
・旅の扉が出現してから2時間以内に次の舞台へと移らないと、首輪が爆発して死に至る。


━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活は認めません。
※新参加者の追加は一切認めません。
※書き込みされる方はCTRL+F(Macならコマンド+F)などで検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に、【死亡確認】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
4名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 11:40:58 ID:fSa7uGkB0
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。
 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・自信がなかったら先に保管庫にうpしてください。
 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない保管庫の作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
・巧い文章ではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。
5名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 11:42:14 ID:fSa7uGkB0
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・ …を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
6名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 11:43:22 ID:fSa7uGkB0
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
 (今までの話を平均すると、回復魔法使用+半日費やして6〜8割といったところです)
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
 本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
・『展開のための展開』はイクナイ(・A・)!
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。


+修正に関して+
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NGや修正を申し立てられるのは、
 「明らかな矛盾がある」「設定が違う」「時間の進み方が異常」「明らかに荒らす意図の元に書かれている」
 「雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)」
 以上の要件のうち、一つ以上を満たしている場合のみです。
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
7名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 11:44:35 ID:fSa7uGkB0
■参加者リスト
FF1 4名:ビッケ、ジオ(スーパーモンク)、ガーランド、アルカート(白魔道士)
FF2 6名:フリオニール、マティウス(皇帝)、レオンハルト、マリア、リチャード、ミンウ
FF3 8名:サックス(ナイト)、ギルダー(赤魔道士)、デッシュ、ドーガ、ハイン、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 7名:ゴルベーザ、カイン、ギルバート、リディア、セシル、ローザ、エッジ
FF5 7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、クルル、リヴァイアサンに瞬殺された奴、ギード、ファリス
FF6 12名:ジークフリート、ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、ティナ、エドガー、セリス、ロック、ケフカ、シャドウ、トンベリ
FF7 10名:クラウド、宝条、ケット・シー、ザックス、エアリス、ティファ、セフィロス、バレット、ユフィ、シド
FF8 6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア、ラグナ
FF9 8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、ガーネット、サラマンダー、エーコ
FF10 3名:ティーダ、キノック老師、アーロン
FF10-2 3名:ユウナ、パイン、リュック
FFT 4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス

DQ1 3名:アレフ(勇者)、ローラ、竜王
DQ2 3名:ロラン(ローレシア王子)、パウロ(サマルトリア王子)、ムース(ムーンブルク王女)
DQ3 6名:オルテガ、アルス(男勇者)、セージ(男賢者)、フルート(女僧侶)、ローグ(男盗賊)、カンダタ
DQ4 9名:ソロ(男勇者)、ブライ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ミネア、ライアン、トルネコ、ロザリー
DQ5 15名:ヘンリー、ピピン、リュカ(主人公)、パパス、サンチョ、ブオーン、デール、レックス(王子)、タバサ(王女)、
        ビアンカ、はぐりん、ピエール、マリア、ゲマ、プサン
DQ6 11名:テリー、ミレーユ、イザ(主人公)、サリィ、クリムト、デュラン、ハッサン、バーバラ、ターニア、アモス、ランド
DQ7 5名:主人公フィン、マリベル、アイラ、キーファ、メルビン
DQM 5名:わたぼう、ルカ、イル、テリー、わるぼう
DQCH 4名:イクサス、スミス、マチュア、ドルバ
8名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 11:45:48 ID:fSa7uGkB0
生存者リスト

FF1 0/4名:(全滅)
FF2 3/6名:フリオニール、マティウス、レオンハルト
FF3 4/8名:サックス、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 1/7名:カイン
FF5 4/7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、ギード
FF6 6/12名:ゴゴ、リルム、マッシュ、エドガー、ロック、ケフカ
FF7 3/10名:ザックス、セフィロス、ユフィ
FF8 4/6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー
FF9 3/8名:ジタン、ビビ、サラマンダー
FF10 1/3名:ティーダ
FF10-2 2/3名:ユウナ、リュック
FFT 3/4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ

DQ1 0/3名:(全滅)
DQ2 0/3名:(全滅)
DQ3 3/6名:オルテガ、アルス、セージ
DQ4 5(6)/9:ソロ、ピサロ、アリーナ(2も)、ライアン、ロザリー
DQ5 7/15名:ヘンリー、リュカ、パパス、ブオーン、タバサ、ピエール、プサン
DQ6 5/11名:イザ、クリムト、ハッサン、ターニア
DQ7 1/5名:フィン
DQM 3/5名:わたぼう、ルカ、テリー
DQCH 1/4名:スミス

FF 34/78名 DQ 24/61(25/62)名
計 58/139(59/140)名
9名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 11:46:52 ID:fSa7uGkB0
■現在までの死亡者状況
ゲーム開始前(1人)
「マリア(FF2)」

アリアハン朝〜日没(31人)
「ブライ」「カンダタ」「アモス」「ローラ」「イル」
「クルル」「キノック老師」「ビッケ」「ガーネット」「ピピン」
「トルネコ」「ゲマ」「バレット」「ミンウ」「アーロン」
「竜王」「宝条」「ローザ」「サンチョ」「ジークフリート」
「ムース」「シャドウ」「リヴァイアサンに瞬殺された奴」「リチャード」「ティナ」
「ガーランド」「セシル」「マチュア」「ジオ」「エアリス」「マリベル」

アリアハン夜〜夜明け(20人)
「アレフ」「ゴルベーザ」「デュラン」「メルビン」「ミレーユ」
「ラグナ」「エーコ」「マリア(DQ5)」「ギルバート」「パイン」
「ハイン」「セリス」「クラウド」「レックス」「キーファ」
「パウロ」「アルカート」「ケット・シー」「リディア」「ミネア」

アリアハン朝〜終了(6人)
「アイラ」「デッシュ」「ランド」「サリィ」「わるぼう」「ベアトリクス」

浮遊大陸朝〜 (21人)
「フライヤ」「レオ」「ティファ」「ドルバ」「ビアンカ」「ギルダー」
「はぐりん」「クジャ」「イクサス」「リノア」「アグリアス」
「ロラン」「バーバラ」「シンシア」「ローグ」「シド」「ファリス」
「エッジ」「フルート」「ドーガ」「デール」

浮遊大陸夜〜夜明け(2人)
「テリー(DQ6)」「トンベリ」
10名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 11:48:06 ID:fSa7uGkB0
■GF継承に関する暫定ルール
「1つの絶対的なルールを設定してそれ以外は認めない」ってより
「いくつかある条件のどれかに当てはまって、それなりに説得力があればいいんじゃね」
って感じである程度アバウト。
例:
・遺品を回収するとくっついてくるかもしれないね
・ある程度の時間、遺体の傍にいるといつの間にか移ってることもあるかもね
・GF所持者を殺害すると、ゲットできるかもしれないね
・GF所持者が即死でなくて、近親者とか守りたい人が近くにいれば、その人に移ることもあるかもね
・GFの知識があり、かつ魔力的なカンを持つ人物なら、自発的に発見&回収できるかもしれないね
・FF8キャラは無条件で発見&回収できるよ
11名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 11:50:21 ID:fSa7uGkB0
■その他
FFDQバトルロワイアル3rd 編集サイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3log/
FFDQバトルロワイアル3rd 旧まとめサイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3rd/index.html
1stまとめサイト
http://exa.to/ffdqbr/
1st&2ndまとめサイト
http://ffdqbr.hp.infoseek.co.jp/
番外編まとめサイト
http://ffdqbr.fc2web.com/
保管庫
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/2736/1057165790/
したらば
http://jbbs.livedoor.jp/game/22429/
あなたは しにました(FFDQロワ3rd死者の雑談ネタスレ)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/22429/1134189443/
ロワらじ
http://jbbs.livedoor.jp/game/22796/
お絵かき掲示板
http://dog.oekakist.com/FDBR/

現在の舞台は浮遊大陸(FF3)
ttp://ffdqbr.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/up/source5/No_0069.jpg
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/2736/1057165790/152-153(参考にどうぞ)
12名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 12:36:55 ID:/9EusQ6d0
>>1
おつ
13名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 13:00:58 ID:XjgnIyw30
即死阻止
14名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 14:25:47 ID:EkSpkOH+0
乙。保守活動はやっぱ必要か・・・
15名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 15:51:48 ID:UTyKYnWhO
>>1
乙&即死回避
16名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 20:36:36 ID:gy0kw3pqO
オシュ
17名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 23:57:40 ID:iL+UVaAj0
保守
18名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/29(水) 03:22:49 ID:uo2/vxYG0
保守
19名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/29(水) 08:21:20 ID:9qCfyaRi0
fosyu
20鋭きナイフは風を裂き 1/7:2006/03/29(水) 15:12:47 ID:yS9OX+xY0
木々の間を縫うように進む鎧の戦士の姿がある。
幸運にも右手には侵入者を阻む、そしてその向こうの建造物を示す壁が聳え立つ。
やがて走り抜けてきた森から開放されて視角の半分を覆う壁のはるか上に騎士は星空を見る。


「大丈夫か? 少し休もうか」
「…まだ大丈夫だよ」
隣を歩く少年の顔にはまだ余裕とでも言いたげな笑みが貼りついてはいるが、さすがに色濃い疲労がわかる。
フィンを気遣って既に二人は歩いてサスーンへ向かっており、その分ジタンは警戒と探査を強めていた。
黙ってはいるものの、先ほども誰かが接近した気配があった。何者かの移動の痕跡もいくつか見つけている。
森という障壁があるとしてもアリアハンがそうだったように城は目立つ場所、誰がいるかは分からない。
そこがどうなっているのかも。


腕を振り、腿をあげ、一切を省みらず一陣の疾風がサスーン城へと向かう。
その風の名はゼル=ディン。
仲間のために彼は闇を切り裂いて走る、走る。
左右に黒く無機質な城壁が見える。中央に星明りの天へ伸びる二つの塔を持つ建物が見える。
目的地へと辿り着いた、その当面の安堵を手に持つレーダーが吹き飛ばす。
自分と城門との間に点が一つ。


物事には優先順位というものがある。
命ある限り主人のために戦うことを決したピエールにとって謁見の前にやらねばならぬことがある。
森の中盗み聞いた会話。盗み見た表情。
我が主君以外のすべては皆討ち果たさねばならぬ。彼が敵意を持つのならばなおのこと。
わずかな差で奴らよりも先んじて城に辿り着くことができた幸運を利せねばならない。
1対2。ならば策で上を行かねばならない。
手持ちのアイテム、周囲の地形、自身の技能…すべて武器としよう。
短時間で手際よく戦闘準備を整えていく。
丁重にもてなすべき客をピエールは出来得る限りの準備と共に正面で出迎えた。
21鋭きナイフは風を裂き 2/7:2006/03/29(水) 15:15:40 ID:yS9OX+xY0
「追いついたぜ、このたまねぎ野郎」
「……貴様は……」

ゼルの走力(+ヘイスト)が異常というだけなのだが、だからこそ追いつかれたことが驚きなのであろう。
一言呟いてそれっきり、うねった刃を持つ変な剣とオートボウガンを構える相手をゼルはそう解釈した。
そして、この相手にどのような受け答えを為すにしろ言葉は要らないということも。
気合を乗せた叫び声と共に疾風は暴風となってスライムナイトに襲い掛かる。

向けられたオートボウガンからの射撃を予期してそれを回避すべく左右へとステップを繰り返しつつ接近。
弾力あるスライム部分がたわみ、向かい来る速度に応対しようとするものの
射撃武器のように点で捉える攻撃ではゼルを捕捉出来ないのか、それが矢を吐き出すことは無い。
スピードを乗せた閃光のごときハイキックが騎士の頭部を捉える刹那、するりとその像が遠くなる。
(あの体勢からバックステップ!? って人じゃねーんだよなあ! クソッ!)
目線の先、離れていく魔物と目が合う。その線上に下からスッと機械式の弓が現れる。

「させるかぁっ!!」

照準を外すべく鋭く身を屈め、脚力に物を言わせて強引に急加速。
わずかに反応が遅れた隙をゼルは見逃さない。低姿勢から一気に跳ね上がっての回転蹴り!
身体にこそ当たらなかったものの硬質の音が蹴り飛ばしたオートボウガンと一緒に地面を転がっていく。
何とか抵抗しようとしたのだろう、怪しく光るねじれた剣はゼルの残像を払うだけ。
回避運動、そのまま回転を利して強烈なローキックが騎士を弾き飛ばす。

障害を乗り越えた先の拳でのコンタクトはしかし二人の間に起こる小爆発で引き裂かれる。
(魔法も使うって言ってたな……っても、こいつは目くらまし。そうだろ?)
弾けた光と音の向こうで相手が何を考えるか?
森での戦闘、ここでの戦闘から接近戦ではまあ…大体互角。
向こうもそう見るだろう。ならば勝負を決するのはその他の部分。つまりは――
22鋭きナイフは風を裂き 3/7:2006/03/29(水) 15:20:44 ID:WU8KpMLm0

「ボウガンを拾いに行く! ってわけだ、甘いぜ!」

二つの影が爆裂魔法でかき乱された大気を掻いて一つの物体へと殺到する。
動き出しは両者ほぼ同時、ならばわずかに距離が近いゼルの方が早い。
脅威のダッシュからその慣性を乗せてブレーキ代わりに目標の機械の上へ足という鎚を振り下ろす。
破壊の感触、後方の消えた気配、違和感。
考えるより、振り向くよりも先に爆音と威力の乱流がゼルを包み込む。


既に矢を撃ち出さないオートボウガンでの最大限のブラフ。
固執しているように見せてインスタントの囮に仕上げる。
もっとも現実に向けられている銃口に対してそれに対応しないことなどそうそう可能なことではない。。
戦闘と言うのは単純化すればポイントの取り合いだ。ファーストヒットは許してもポイント先取はこちら。
ピエールは何の動きすらも見せないままにその敵をじっと探す。
その感情無き瞳にイオラの残滓から現れる真紅の帽子と煌くベストが映る。
戦闘開始時に見えていた嫌な感じの像のブレは既にそこにはない。


「追いつけねえからって瞬時に捨て駒か…たいした判断力だよ、お前は。
 でも…よかったのか? 後は殴り合いだぜ?」

胸、肩、腕と無事を確認するかのように触れながら余韻の間からゼルが姿を見せる。
イオラの直撃。露出していた肌のある部分は焦げ、別の部分には血を流す傷が。
それでも、手足は、身体は十分に動いてくれる。それでも、まだ烈風を止めるには程遠い。
最大の脅威となる飛び道具はもう無い。
規模の違う二種類の爆発を引き起こす攻撃魔法は今、そして以前にも『見た』。
厄介なのは分かるがゼルにはその欠点も既に見えていた。
モーションもある程度見切れているし、距離が離れると精密性が落ちることも見抜いた。遅い、そして甘い。
接近戦のスペシャリストたるゼルに対してはこの速さで間合いを制御することは出来ない。
相手にはもう剣技以外にゼルを制御できる小技を持たないのだ。
23鋭きナイフは風を裂き 4/7:2006/03/29(水) 15:22:55 ID:yS9OX+xY0

「いくぜ、たまねぎ野郎ッ! デュエルスタートだ!」

焦げ臭さを巻き込んだ風はピエールへ向かい直進、急角度でフェイントをかけて右へ飛ぶ。
転回点で例の小爆裂、読みどおり。
ヒュウと一息、一歩遅れたスライムナイトの側面より拳で強打。
さらに遅れて飛んでくる剣の軌跡を上半身だけのスウェイでかわしてのける。
間合いから逃れようとしたスライムナイトを逃すまいと地を蹴り、再接近。

この時点でゼルの戦略はたった一つ。
体力の続く限り超接近戦を相手に強い続け、必殺の連撃までつなぐこと。
この距離を保つ限り相手の爆発魔法は相打ちだ。そして根性勝負なら自分が上を行ってやる。そして、ぶっ倒す!

剣と拳、剣は細かい傷を増やし続け、拳は体力を容赦なく削り続ける。
では。
では、ピエールにはどのような戦略が残っているのか?
影のように執拗に執拗に追ってくる、引き剥がせない相手。
魔封じの杖? ひきよせの杖? ようじゅつしの杖?
否、わずかな隙、タイムロス、それが致命打。交戦する男のジャブはそのどれよりも早い。
では魔法? お得意のイオラ?
否。相打ち上等のこの距離、そしてここで相手を倒すという覚悟において両者の差はほとんどない。
むしろ皮肉にもリュカの存在のためにピエールの方がわずかに劣っているほどだ。
しかもイオラの発動にも隙がある。爆裂を突き貫いてストレートが届くに十分ではないか。
では、ピエールは命を削る消耗戦に乗る以外に手は無いのか?

24鋭きナイフは風を裂き 5/7:2006/03/29(水) 15:26:06 ID:LWc+M6hW0
唐突ではなく定められたように決着の瞬間が迫っていた。
圧縮された時間、濃密な交錯。
ついにピエールは音をあげたのか、戦闘のど真ん中へ向けてイオを炸裂させる。
閃光、衝撃、熱量が両者へ降り注ぐ。けれど肌でつかんでいる戦闘の気配そのものをゼルは離さない。
無論、ピエールも承知の上。このイオは杖を取り出すわずかな隙を作り出すための苦心の一手。
よく狙え。外すな…!
そして、振り下ろされた一本の杖から光弾がほとばしった。

「悪いな、そいつも聞いてんだ! その隙、もらったあっ!」

ピエールの動きから読み切ったその手、光弾は当たることなくゼルの肩の上を抜けてゆく。
向こうには大きな隙、こちらには決め技のチャンス。
電光石火の左右連打――ラッシュパンチが遂に憎むべきスライムナイトを捕らえる。
ぐらつく身体へ向けて鮮烈なるマッハ・ロー・キック。
弱点を過たない。本体が下のスライムであることはテリーから既に伝え聞いている。
苦悶のうめきをあげる魔物へ向けてさらなる猛攻、振り上げた足がかかとからスライムを抉る。
死まで導く力と技の狂風。止める術などピエールのどこに残されている?
些細な抵抗かゼルの腹へと伸びる騎士の腕、すがるように足へ絡みつくスライム部分、
それを無視してゼルは情け無用の次なる一撃へ――………?



感覚が異変を教えている。
腹部に発生した熱い痛覚はドルフィンブロウへと移行しようとしていた動きに合わせて増幅しながら広がっていく。
抜ける力を奮い立たせて大地を蹴り目標を捉えぬままイルカは水面より跳ね上がる、だが勢いはない。
(――ナイフ!? どこから!?)
手品のように、ワープのように、一体どのタイミングで奴は刺した?
宙から見下ろしたゼルの眼に映るのは自分の胸から生えるナイフ、そして体液を撒き散らしながらもこちらへ掌をかざす姿。
呪文が、紡がれる。

「イオラ」
25鋭きナイフは風を裂き 6/7:2006/03/29(水) 15:27:43 ID:WU8KpMLm0

引き寄せの杖。
遠くの人や物を一瞬で手元へと転移させる魔法を秘めた杖。
外れた光弾の先にこそピエールが狙ったものがあった。仕掛けておいた奇襲、真の飛び道具。
杖で繋いだ線を貫きやってくる、それは聖なるナイフ。


体験二度目の爆裂がゼルを包み、傷の増えた身体を容赦なく焦がしていく。
真紅の帽子が闇へと舞い上がる。
勢いに吹き飛び倒れるその身体を殺人者は見逃すはずもない。
動きの鈍ったゼルが周囲の判断を取り戻すよりも早くスネークソードは彼の喉笛を噛みちぎっていった。

(ダメ…いや、まだ……せめて届け、轟音…!!!)

最後の力が右手拳へ、そして全力で大地へと叩きつけられる。
最期の、バーニングレイヴ。轟音がサスーンに存在する全てを叩き、反響する。



「〜〜〜っっ!! なんて音だよっ!」
「何? ジタン、何喋ってるの? 爆発?」
「何だ、フィン? あー耳、おかしくなっちまったか。とにかく…何があったんだ」

勝利を実感する背後で完全に仕留めたはずの相手が生み出した常識はずれの轟音。
その強震の真っ只中からピエールは飛び込んできた別の空気の振動で我に返る。
誰かがやってきた、ならばそれはおそらく森で垣間見た二人。
今はまずい。策は使い果たした、すぐに閃く事もない。勝算が見当たらない。
落ちているレッドキャップを素早く拾い上げ、スライムナイトは城門を押し開けて中へ飛び込んでいく。
26鋭きナイフは風を裂き 7/7:2006/03/29(水) 15:28:56 ID:WU8KpMLm0

取り憑いたかのような残響が引いた後にはかえって偽りなき静けさが後に残るだけ。
声ならざる最後のメッセージはどこまで届いたか?

風は、止まった。

【ピエール(HP1/6、MP1/3)(感情封印)
 所持品:スネークソード、毛布、魔封じの杖、死者の指輪、王者のマント、
 ひきよせの杖[1]、ようじゅつしの杖[0]、レッドキャップ
 第一行動方針:リュカに王者のマントを渡す
 第二行動方針:回復と戦闘準備
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【現在位置:サスーン城内】

【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス
 第一行動方針:音の発生源を確認する
 第ニ行動方針:サスーンに向かい、真相を確かめる/フィンの風邪を治す
 第三行動方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す
 最終行動方針:ゲーム脱出】
【フィン(風邪)
 所持品:陸奥守、魔石ミドガルズオルム(召還不可)、マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:サスーンに向かいとにかく休憩する
 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:サスーン城前】

【ゼル 死亡】
【残り 57名】
※音の規模に関しては後続の方の裁量にお任せします。
27名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/30(木) 00:19:41 ID:SfvIcVw4O
保守
28名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/30(木) 06:47:51 ID:b87bOQ4PO
保守
29名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/30(木) 14:05:03 ID:RsQemP1vO
保守のペースは何時間おきにするのがいいかな?
30名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/30(木) 22:28:58 ID:ZMRmg9zQ0
保守
31名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/31(金) 09:14:45 ID:hGZ+peSzO
とりあえず保守
32名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/32(土) 02:24:23 ID:reSfrND2O
32日保守
33名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/32(土) 18:14:24 ID:zgM8g6oK0
保守
34名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/02(日) 00:00:24 ID:keXIU7Mq0
保守
35名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/02(日) 11:30:16 ID:Mf9JPLCq0
保守
36名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/02(日) 17:19:11 ID:fKdZqUBw0
>>20-26
無効
37名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/03(月) 07:02:52 ID:hThKLW7vO
ほし
38名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/03(月) 14:07:56 ID:c6+L2uvn0
保守
39名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/04(火) 03:21:14 ID:7p+7eMOnO
捕手
40名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/04(火) 04:24:00 ID:IslaU3UMO
ゼルゥゥゥゥゥゥゥ!!
41名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/04(火) 13:33:15 ID:mWoMutMbO
保守
>>29
午前1回午後1回で良いとオモ
42名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/05(水) 00:29:26 ID:wL33PZvB0
保守
43名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/05(水) 11:16:27 ID:q8zVwIMhO
捕手
44名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/06(木) 00:14:30 ID:OfdNcO/s0
保守
45名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/06(木) 05:42:51 ID:TRhzCnYiO
ついでに保守
保守ばっかで笑えるけど保守
46名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/06(木) 16:27:31 ID:FOfPe6wvO
ここは保守派の集うスレですな
47名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/06(木) 23:38:59 ID:OfdNcO/s0
また落ちたら嫌だからな
保守
48名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/07(金) 06:38:39 ID:JpPZo+FPO
仕事前に保守
49名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/07(金) 22:34:35 ID:YUjibzt8O
ゼルが死んでもうすぐ10日…
何も進展がないけど保守
50名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/08(土) 10:37:04 ID:BSliWCIt0
ほしゅ
51名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/08(土) 21:51:10 ID:5xGRVl7g0
糞スレ晒しage
52名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/08(土) 22:38:03 ID:seuOJS080
>>51討伐開始
53名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/08(土) 23:08:29 ID:iIUMYSxkO
ムセタスレだな
54名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/09(日) 16:05:51 ID:WUF9+Sjp0
筆が進まない分保守
55名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/09(日) 21:40:01 ID:n/rdfv9CO
>>92は無効です
56THE GRAVITY OF DARK SIDE 1/15:2006/04/10(月) 01:43:15 ID:ECO+dCq/0
完全に地の利を味方につけたサックスはそれでも追跡を気にしながら慎重に村から離れていた。
結果としてここが浮遊大陸であることが彼を助けたわけである。
けれど慎重を期した代償である些細なはずの時間経過が彼に次の不運を呼び込むのだ。
同じ場所を北へ、少し前に通過していったルカたちとの時間差はほんの30分程度でしかない。
しかしその時間のうちにカズスの入り口である北の峡谷部はゲストの到着を許していた。
勇者アルス。黒騎士レオンハルト。
悪の巣へと向けて歩みを進める彼らにはいまや戦いの緊張感と決意がみなぎっている。
そうして、南北から峡谷を抜けようとした彼らは出会った。

時間が欲しかった。たとえ答えが出なくても、迷いが深まるだけでももう少し一人でいたかった。
なのにフリオニールを振り切り村を離れられたと思ったらまた別の人達だ。
カイン達に騙されてカズスへ誘導されている人達だろうか。
ともかく、誰かと顔をあわせるということは会話するにせよ戦闘するにせよ決断せねばならないということ。
確かに勝利者になる決意はした。けれど、何の関係もない人を殺してしまう覚悟はまだぼやけたまま。
遭遇を回避するため岩陰に身を隠しつつサックスは切にギルダーへの問いを反復していた。


「隠れてないで出て来てくれ。そちらに悪意が無ければ害意を加える気なんてない」

夜の暗さにさらに濃淡を付ける岩陰、そこに感じた気配にアルスは呼びかける。
聞いた話が本当ならばカズスは来訪者を殺す罠、或いは殺人者達の砦。
だから、油断はしない。だから、身に付けた武装の端まで整った闘志が満ちている。

「僕はアリアハンのアルス。もう一度言う。…静かに、姿を現してくれ」
57THE GRAVITY OF DARK SIDE 2/15:2006/04/10(月) 01:45:27 ID:ECO+dCq/0
アルス?
聞こえた名乗り、名乗られた名前は彼女が仲間だと語っていたそれ。
平時のサックスであれば「信頼した仲間の仲間」というだけで心を許していたろう。
けれどゼル達に見放され、ルカ達に見放されて膨れ上がった孤独。
殺し合いの中で1人生き残る事を彼に唆すほどにまで育った孤独は今また恐怖を彼に囁く。

彼らが僕のことを悪し様に聞いていない保証はない。
それに嘘をつかずに自分の身の上、カズスでの出来事を説明して信じてもらえる自信もない。
いや、その前にフルートの死に責任がある自分を彼が許してくれるなんてなぜ簡単に思える?
彼女は確かに信頼した仲間だ、でも彼は僕にとって「初対面の他人」じゃないか。

もはやサックスの思考はネガティブな方向から逃れることができない。
そして揺らいだ精神が場に漂う緊張に堪えられなくなるまでほとんど時間は要さない。
逡巡の後、彼はこの場から逃れ去ることを決断した。
苦労してようやく抜け出してきたカズスへの後退を。


もしサックスが使い慣れた剣を手にしていたならば二人は暫し誰もいなくなった岩陰を警戒し続けていたかもしれない。
けれど、現実に彼の手にある不慣れな槍の長柄はそれを担ぐサックスの頭上から二人に微かな反射光を投げる。
それは些細な違和感を与える程度でしかないが満ちた緊張を行動させるには十分で。

「何だ、動くもの………!! 見張りだったか!? レオンハルトっ」
「わかっている。追うぞ!」


背後に追跡の気配を受けながらサックスは冷静さを乱しつつ走っていた。
地の利とマテリア:スピードの力で客観的に見れば追いつかれる道理はないのだがサックスには余裕がない。
どうする、二人と戦うのか? それともどこかに隠れて今度こそ何とかやり過ごそうか?
無意識に狭めた選択肢が彼の心理の姿を示している。
何の答えも出せぬまま急き立てられるように村の外れまで戻って来たところで立ち止まった。
いや、その先にある足を踏み入れたくない領域に押し留められたのだった。
58THE GRAVITY OF DARK SIDE 3/15:2006/04/10(月) 01:48:34 ID:ECO+dCq/0

「…気が付いたらサックスの姿が見えなくなっていたという訳か?」
「そうなるな」
「お前は何をやっていたんだ!?」
「迂闊だったと思っている」
「お前のミスだろうが!」
「はっ、カインよ、自分なら何のヘマもしないとでも言いたいのか?」
「もういい黙れ。……くそっ!」

ルカ、ハッサンに逃げられ、今またサックスまでもがカズスから姿を消した。
合流したフリオニールに彼の不在を問い詰め、その事実をカインは認識する。
サックスは殺されたのかもしれないとも思ったが、それを問うことをカインはしなかった。たいした差は無い。
ともかく苛立たしいやり取りの後、少し離れて立っているフリオニールとは口をきいていない。

どうすれば良いのか?
待ち合わせの時間:タイムリミットが迫っている。なのにシナリオは壊れきった。
二度三度にわたる弥縫策のもともとの原因もそれをさらに突き崩したのも、すべて隣の男のせいだ。
フリオニール。引き込んだ駒がこれほどマイナス要因になるとは考えていなかった。
期待しているスミスの帰還もまだだ。飛行と言う最良の移動手段を使えるスミスがこれほど遅れるのは、
どこかでトラブルに巻き込まれているか、…裏切られたか。
何もかもが上手くいっていない。何もかもが思惑を外れてしまっている。
計画はすべて放棄するべきかもしれない。そう、馬鹿の役立たずに全てを擦り付けて。
仕方ないがいいさ、もとより一人で戦い抜くつもりだったのだから。


どうしてやろうか?
あからさまに不快感を示したカインとの決裂はもう取り返しはつかないだろう。
サックスを手駒とするのに失敗したのは痛いが自分にはエッジから奪い取った武器がある。
ザックの中に眠る大型の機械。ひとたび火を吹けば豪雨のように全てを抉る武器。
大型マシンガン。カインには教えてもいない。奴とてこれを浴びればひとたまりも無いはずの威力。
必要なのは設置して撃つ、そのための隙を作ること。
このゲームに勝者は一人、それは貴様も分かりきったことだろう?
59THE GRAVITY OF DARK SIDE 4/15:2006/04/10(月) 01:52:00 ID:ECO+dCq/0


目の前にはカズスの廃墟、後方からは追跡者。
思考は混乱し、なんら行動できないまま徒にサックスはタイムリミットを迎える。

「武器を捨てろ。それから両手を上げて振り向け」

アルスの声。追いつかれた。もう戦うしかないのか?
ビーナスゴスペルを持つ手に緊張が走る。2対1だ。僕は死ぬのだろうか。

振り返ると共に槍で薙ぎ払おうとした動きはしかしレオンハルトにより阻まれる。
抵抗を察し一気に肉迫した彼の剣はサックスの手元に近い部分で槍を押さえ、容易にその動きを止めたのだ。
サックスを包んだ驚愕が晴れたとき、彼はその手から槍を奪われ取り押さえられていた。

「その顔はサックス、か」
「………」
「イクサスを殺したんだってな? お前もカインやフリオニールと組んでいると言うわけか」
「違う! …違うんだ」
「何が違う? 殺人者」

見上げたアルスの顔は紛れも無く正義を信じる者の冷たい顔で。視界の端には刃がギラリと映る。
死ぬのだと思った。自分は彼らに断罪されて死ぬのだと。
けれど、カインやフリオニールの同類だと言われたままなのは我慢がならない。
信じなくてもいい、聞いてくれ。サックスはそう静かに呟きこの世界で自分の見てきたものを語り始めた。

鉱山でのこと。ロランの事、イクサスの事、ギルダーの事、フルートの事、ゼル達への想い。
カインに襲われたこと。ルカ達に助けられた事。
カズスの村で見た面々のこと。マッシュとスコールの事。その後のこと。
そして、どうにか自分はそこから逃げ出してきたのだと言うこと。

「そして、君達に出会った。その後はこの通り。わざわざ言わなくてもいいだろう?
 ああ……結局、僕は何も護れなかった、な」
60THE GRAVITY OF DARK SIDE 5/15:2006/04/10(月) 01:54:15 ID:ECO+dCq/0
不思議と後悔はない。語りたいことはすべて語ったから。
アルスは先程と同じ表情のまま目してサックスを見下ろしているまま。けれどその視界から彼の命を奪う予定だった刃がスッと引かれて消えた。

「レオンハルト!」
「アルス。城で出会った二人の言葉を覚えているか。
 『心を入れ替えて、生き直そうとしてるヤツでも殺すのか?』だ」
「覚えているさ」
「では貴様がそれになんと答えたかは?」
「…覚えている」
「『遺された人が悲しむ事を知っていて、なお他人を殺せる様な奴ならば』だったな。
 この男はどうだ? そうでないように、見えるか?」
「………」
「悪を絶つ、その覚悟は立派なものだ。
 だが手にした正義の光の前に目を閉ざしてはいけない、盲いてはいけない。
 本当は彼をどうしたいか。貴様もわかってはいるのだろう? 見誤るな」

組み伏せられているサックスの上、沈黙が場を支配する。
アルスは黙してただ何かを考えている。レオンハルトは黙してただ彼の答えを待っている。

「嘘で無いならこの村に残っているのはカインとフリオニールだけか。
 …サックス。君の罪は消えたわけじゃない。だが今は君よりその二人討つほうが先決だ」
「アルス」
「レオンハルト。彼の身柄は君に預ける。どうするかの判断も任せよう」

捻り上げられていた腕を解かれ、地面とアルスの間からサックスが解放される。
肩透かしになった死の覚悟をぶら下げたままきょとんとするサックスを睨み、アルスは言い加える。

「サックス。僕はまだ君のことをそれほど信用しているわけじゃない。
 でも大事なのは…。そう、大事なのは『これからの事をどう思っているのか』だ。
 もう一度、その後で話を聞く。行こう、レオンハルト」
61THE GRAVITY OF DARK SIDE 6/15:2006/04/10(月) 01:57:32 ID:ECO+dCq/0
カズスの村の奥へと強い視線を移し、アルスは遮蔽物を利しつつその中心へと近づくべく離れていく。
その背中をじっと見つめたまま目で追うサックス。

「…贖罪の為に戦う。それならばサックス、貴様と俺は大して変わりはしない」
「え……」
「この生は俺にとって二度目の生。一度目は力に溺れた果ての終幕だった。
 ほら、受け取れ」

ビーナスゴスペル。先程サックスの手から奪ったそれを、レオンハルトは差し出している。

「貴様も共に来い。
 たった今、貴様は一度死んだのだ。ならば俺と共に贖罪の戦いへ身を投じないか?」

レオンハルトの言葉が熱く胸を打つ。二度と得られることは無いと思っていた信頼の言葉。
少なくとも目の前にいるこの人は僕を信じ、同道を許してくれる。こんな、僕を。
そっと伸ばされた手がしっかりと槍を掴み、サックスは立ち上がる。
視界を滲ませる熱いものを感じ、サックスは奮い立たせるようにそれを片手でぬぐう。

「ありが…ありが、とう、レオンハルト。僕は……僕は、本当は一人で、生き延びようと」
「言うな。言わなくていい。孤独、不安、絶望、それらは人の心を捻じ曲げてしまう。
 人が堕ちるのは容易いものだ。だが、這い上がってくればいい、絶望の荒野に果てる前に。
 さて。ではあまりアルスに一人で先行させるわけにもいくまい。我々も行くぞ」
「……あ………はい! はい、もう……もう大丈夫です、行けます! 行きましょう!」
「良し! 標的はフリオニール、奴の捕獲を第一目的とする。
 サックス、ここで死ぬな。すべて為してこその贖罪、それはまだ続くのだぞ」
「はい!」


62THE GRAVITY OF DARK SIDE 7/15:2006/04/10(月) 02:01:14 ID:ECO+dCq/0
隙を突いて先手をとって動こうというつもりなのだろう。
明らかに解るであろう不快感をぶつけておいたため可能性もあると読んでいた通り、
うつむき加減で考えていたカインの視界の端からフリオニールの姿が消える。それを追って地を蹴ったカインは夜空へ舞い上がった。
この時点で二人の決別は確定した。
むしろ好都合、それならば、ラムザやユフィに語ったことを真実にしてしまえばいい。
爆発の後もまだ立体を保つ脆い足場へと軽やかに着地し、カインは影を追って跳ぶ。


要はマシンガンの発射準備までたどり着けるか、その前に死ぬかだ。
爆発になめされた村の中ではまだ遮蔽物が多く残る方向へと駆けるフリオニール。
無論、カインはしつこく追ってくるだろうからこちらはそれを退けねばならない。
まるでノミのように地面、柱、屋根と細かく素早く飛び跳ねながら追ってくる相手を認識して考える。
ならばどうしようか。走りながら、思いついた魔法を唱えるべく魔力を集める。
フリオニールにとっての嬉しい誤算、カインにとっての悪い誤算はその時に起こった。


幾度目かの飛翔の一瞬、全身を走り抜ける悪い予感にカインは咄嗟に跳ぶ角度を変え、地面へ向かう。
天を舞台とする優れた竜騎士なら荒天の日に感じることができる落雷の予感。だが、あまりに不自然ではないか。
訝しさは夜空より降ってきた一条の雷が吹き飛ばす。

「竜騎士カイン! 失われた命、貴様が奪った命に代わり僕がお前を討つ!!」

通電のショックに顔をしかめながらヒーロー気取りの名乗りの方を目で確認。
攻撃を挨拶代わりに現れた第三者の出現、事態は予想以上に悪い。
よりによってフリオニールとの共同戦線が崩壊したこのタイミングで現れるとは。
「フリオニール、どこだ」と叫ぶ聞き覚えある声がさらにカインに追い討ちする。
あれはレオンハルト。なるほど、奴が引き連れてきたという訳か。
偶然にしてはできすぎたタイミング、おそらくは自分達が蒔いたカズスへの誘引策を聞きつけたのだろう。
それが裏目に出たというわけだ。
リュカ達かゼル達かは知らんが接触による情報の広がりを考えるとかなり不味いことになっているのかも知れない。
苛立ちが募る思考は迫り来るドラゴンテイルにリセットされ、カインはギリギリでその爪を逃れる。
63THE GRAVITY OF DARK SIDE 8/15:2006/04/10(月) 02:03:50 ID:ECO+dCq/0

「フリオニール、どこだ! どこにいる!!」
全員を殺すつもりなのだから特定の相手にこういうのは可笑しいが、殺したい相手の声を聞いてフリオニールは哂っていた。
サンダーかサンダラか知らないが同じ雷の魔法を考えてカインを攻撃した奴がいる。恐らくレオンハルトの仲間だろう。
たなぼたで転がってきたノーマークの時間、フリオニールは捜索の時間から目を付けていた四方の壁が残る屋根のない廃屋へ。
速やかに死を運ぶ鉄塊を取り出し、鋼鉄の死神を組み立てる。


かつての崩壊前の姿、そして廃墟と化した現在の姿。
二つのカズスを脳内で重ね合わせながらサックスはレオンハルトに付き従う。
形ながらも遮蔽物として残っている壁や柱の影をおさえながらフリオニールの居所を絞っていく。
誰よりもこの地に精通しているサックスの助力を得て彼らは的確に動き、程なく一箇所に目星を付けた。
周囲から少しだけ孤立した位置に、バリケードのように壁だけが残っている廃屋。

「そこにいるのだろう、フリオニールよ! 姿を現せ! 剣を抜け! 尋常に、勝負せよ!」

返事は奇妙に澄んだ鋼鉄の死神の咆哮。廃屋の壁の一方を突き崩して飛び出し、爆発を生き残っていた壁を粉砕する。
同種の攻撃に晒された事のあるレオンハルトの即断に従い、二人は転がるように遮蔽物の裏へ。
大体でこちらの方向を把握したのか、それとも残った廃墟全てをあの攻撃で粉砕するつもりか、
断続的に続く機械の歌声と共に壁が、柱が、瓦礫の山までもが銃弾の雨に苦悶の合唱をあげる。

「あの狂人と同じ類の武器? なるほど、これが一網打尽の罠の本質か。
 しかし…いつまでも誰もが驚愕すると思うな。すべて使うは人の手、限界は易々とは超えぬわ。サックス」
「はい」
「辛い役だが囮を頼む。奴の注意をこちらに釘付けのままにして欲しい。
 攻撃は俺が近づいて止める。あの破壊の雨が止んだら一気に飛び込んで来い」
「はい、え、でも、どうやって……あっ」

疑問を差し挟むより早く取り出した何かの粉末を浴び、レオンハルトの姿がかき消えてゆく。
『フリオニールは必ず止める。だから…信じろ』
誰もいない空間から聞こえた声に、サックスは大きく、力強く頷いた。
64THE GRAVITY OF DARK SIDE 9/15:2006/04/10(月) 02:05:41 ID:ECO+dCq/0

それ程距離の離れていない規則的で耳障りな音が二人のBGM。
帯電したような自分の肉体が、周囲の空気が落雷の雰囲気をカインに予告している。
だが、その源は空に浮かぶ雲ではない。
悪を滅するいかづちの根源は正面で鞭を振るうアルスと名乗った青年。
そして、カインは今焦燥に極みにあった。

槍の穂先は青年をキッと指し、竜の尾は地面からカインを見上げる。
だが何よりもカインを焦燥せしめているのは自らの手で血を流す小さな引っ掻き傷である。
(この指輪…力がっ、失われているッッ!!?)
確かにかつて他人の指に見た際の妖しく紅い輝きはそこにない。
鋭き槍を止め、スミスのプレスからさえ持ち主を守ったその力は今カインを守ってはくれないのだ。
悪くなる状況の中でもカインを一段上の心理的な優位に置いていた要素が彼を見限っているのだ。
(何故、何故だ。馬鹿なあッ!)
焦燥は加速して、思考は減速していく。
思考時間を求め停滞を願う頭脳を笑うように青年の腕から柔らかに加速される鞭は判断の鈍ったカインに回避を許さず、槍と小手で受けることを強いる。
それは、再び彼の指に傷をつけ、単調な、繰り返しの、二度目のプロセス。
だから、再び動揺する。読みが甘くなる。程度を甘く見る。差異を見逃す。
アルスの姿が消えたのではない。見ていなかったのはカインのせい。
眼前に現れた青年から盾を放り捨て速度の乗った拳が顔面へと叩きつけられる。
久方ぶりの衝撃、ダメージ、痛みがカインの中を走りぬけ、かえってそれが温んだ脳漿を冷却する。

殴り飛ばされ地面に倒れたカインに冷酷に落ちる竜の尾撃を身をひねってかわす。
為すべき事は何か?
再起動した思考は短い言葉を連ねて提示してくる。奴は強い、だから、逃げろ。
65THE GRAVITY OF DARK SIDE 10/15:2006/04/10(月) 02:08:34 ID:ECO+dCq/0


響き続く、機械音。
「フリオニール! 僕だ、サックスだ。あなたからまんまと逃げおおせたサックスだ!
 聞こえています? もう、止めませんか。戦いあっても仕方ないでしょう?」
打ち続く、機械音。
「魔女が、あんなに冷たく笑える魔女が救いを与えてくれるなんて本当に思っているんですか!?」
叩き続く、機械音。自分の声の残響が、心を撫でていく。
「勝利の果てで染み付いた罪まで誰かが赦してくれるなんて思っているんですか!?」
降り続く、機械音。必死の叫び、紡ぎだす言葉は己の身体へも潜り込む。
「汚れた手を大切な誰かに差し伸べるんですか!?」
引き続く、機械音。サックスの叫びはまるで自分の影へ呼びかけるようで。
「違うでしょう! 自分が不幸だからって人の命を奪っていいなんて!」
ただ続く、機械音。ここで出会った自分の形をした影に向けて必死に呼びかけているようで。
「気付いているんでしょう! 自分が間違っているって!」
―――音が、止んだ。

66THE GRAVITY OF DARK SIDE 11/15:2006/04/10(月) 02:11:20 ID:ECO+dCq/0

自分を裏切り、のこのこと戻ってきた小僧の声に苛立ちつつフリオニールは引き金を引き続ける。
立場を逆転されて貶められただ足元で、心の底でざわめいていた影がわずかに起き上がってくる。
だが、抵抗もそこまでで押さえつけられたそれは哀しそうに揺らぐだけしかできない。
虚ろだったフリオニールの身体を満たした自分の影はもはやフリオニールそのもの。
例えそれが以前とどれほど違おうと、彼こそが現在のフリオニールであることは違いないのだ。
だから、レオンハルトのようなことを言うガキを憎んだ。むかついた。死を願った、この機械の牙で。
だが規則的に続いていた音の終わりは唐突に、横合いからの乱暴な衝撃がフリオニールを襲う。
『聞いたか、あの説得を? だが貴様は、相変わらず愚考に取り付かれたままか?』
奇妙に澄んだ残響がゆっくり倒れていくでくのぼうから抜け落ち、黒い空気へ霧消する。
痛覚より何が起こっているのか分からない驚愕が勝った状態でフリオニールはさらに見えない打撃を浴びる。
カインの方向にはしっかりと注意を割り振っていたはずだが、一体何が?
『もう逃がさんぞ。目を覚ませ、フリオニール』
「ッッ、レオンハルト!? レオンハルトか! 何をした? 姿を現せ!」
『誘いを断ったのは貴様の方だろうに。いまさらお願いか?』
激昂に乗って抜き放たれたラグナロクが何の手ごたえも無く空間を薙ぐ。

「どこにいる! 出て来い!」
「レオンハルトさん!」

聞こえた呼び声、近づいてくる足音、宙に浮かぶ半透明のロングソード。
像が構えを取る。時間切れの消え去り草の効力に合わせ少しずつ少しずつ人の形が浮かび上がる。

「さて…改めて話し合おうか。フリオニールよ」
「戯れ言を…。ふざけるなよ、兄弟!」

閃光の一合。気圧したレオンハルトの剣が武器の力を超え、フリオニールを下がらせる。
そして――――そこに、死が訪れた。

67THE GRAVITY OF DARK SIDE 12/15:2006/04/10(月) 02:13:32 ID:ECO+dCq/0

なお続く機械の音と誰かの叫び声を背景に二つの氷の意思が渡り合う。
はっきりとした視認が不可能な速度で舞い襲う鞭相手の殺陣、槍よりもさらに広い間合いを制圧できる相手にカインは攻撃を当てられないのがやっと。
だが、小手先の策はないわけじゃあない。
ぼろぼろでふらふらだった男が自分の攻撃を受けたときどのようにそれを脱したのだったか。

ツーアクション。
不意打ちでアルスめがけて投げつけられた暗赤色の指輪。
カチリとスイッチが入る隠し持っていた機械。

勇者が攻撃の合間に拾っておいた自身のドラゴンシールドで些細な反撃を止め、
反撃を再開する前にカインは彼が制している空間から逃れ去ることに成功していた。
あとは、再度鞭の間合いに飲まれる前に常人が持ち得ない跳躍力を持って宙空へ逃れるのみ。
彼の足が地を離れた瞬間、示し合わせたように耳障りな音が消えた。


眼下に捉えるは三方を壁に囲まれた中で呆けたようなフリオニール。
吹き上がるは憎悪、思考の努力を投げるほどの感情の炎。
アルスという青年にレオンハルト。この二人を相手にしてフリオニールに勝算があるとは思えない。
けれど、計算よりも損得よりも、カインに強く芽生えた憎悪はその手で奴に引導を渡すように唆す。
ワンクッション、降りた地面にかつてなく力をかけて一本の槍と化し天へ舞う竜騎士。
切り札にして自身最大の攻撃。一撃集中一点狙撃、軌道修正不能の高空からのジャンプ・アタック。
夜空から落ちる竜星は―――そこに、死を導く。
68THE GRAVITY OF DARK SIDE 13/15:2006/04/10(月) 02:15:29 ID:ECO+dCq/0

サックスは火が出るような二つの剣の激突を見、そして、流星を見た。
訳が、わからない。
剣を手にしたレオンハルトの勇姿が見えた、そう思ったはずなのに
彼の眼は串刺し刑のように一本の槍で縫い止められた彼の姿を見ていた。
声が、出ない。
激突の反発か、槍と共に流星はいずこかへ跳ね去り、そしてフリオニールの剣が黒騎士を肩口から裂く。
全てが、受け付けられない。
視界の端にアルスの姿が見える。遠さと暗さは彼の表情を読ませてはくれない。
けれど、その視線に非難、不信、憤怒が乗せられている気がしてサックスの心は震え上がる。
僕は、また。
黒い空へ飛翔し消えるカインがいた。近づいてくるアルスの姿がいた。
抱いた希望が反転した絶望はサックスがここに居続ける事を拒絶する。
ここにはいられない。僕はまた、一人で、やらなくちゃ。
駆け出していた。
前ではない方向へ。ここではないどこかへ。足のみが知る行き先へ。


血と鉄の臭気、夜と返り血のコントラスト。
望んだ勝利は望まぬ勝利、己が剣にあまりに呆気なく身を裂かれた親友。
砂のような虚ろな感触に漂い、落ちてきた憎悪が残した目を無感情に受け止める。
最も闇に近しい男は新鮮な肉塊と化した友を一瞥し、その名前だけを闇に閉じ込める。
それから、雷撃の勇者の声に気付いてフリオニールは顔を上げた。
その強さは昼間身をもって体験している。
素早く蹴倒されていた大型マシンガンをザックへと詰め込んで正面切って彼とぶつかることを避け、
フリオニールは廃墟の闇へと溶け込んでいった。
69THE GRAVITY OF DARK SIDE 14/15:2006/04/10(月) 02:18:46 ID:ECO+dCq/0
不吉をかきたてていた音の方角へと消えたカインを追って荒廃した建物の間をアルスは走り抜ける。
そして、
地に突き立ち跳ねる流星の如き一条の筋を見、
不自然に踵を返すサックスの姿を見、
廃墟の間へ揺れ隠れ消える憎むべき背中を見、
温かさを残したままに靴で凌辱された戦友の無残な骸を見た。

裁つべき悪は空へ逃し放してしまった。悔恨を信じた友は裏切られてしまった。
そして僕は、傲慢なままにただ立ち尽くす―――

影は纏い付くスモッグのようにアルスの心の目を覆い閉ざす。



揺れる枝に木の葉ずれの音を立てて降りる。
カインは一度だけ粉々に破砕された策謀の舞台を見返し、その後樹を蹴って跳ねた。

何の力か突然に姿を現し軌道に割り込んだ誰かがいなければカインの槍はフリオニールを捉えていたろう。
歯噛みするような失敗は自分の槍の下で誰が死んだのかさえ気に留めさせない。
けれど、戻るという愚行を犯さない程度の冷静さもまたカインには残されている。

これから、何をするか、どこへ向かうか。
逃れることを優先しなりゆきで向かう先は南西。暗く横たわる稜線が近い。
竜騎士たる自分の能力を持ってすれば常人では険しい山岳地帯もさほど労せず越えることができるだろう。
(南西……カナーンか。ラムザらの目的地でもあったな)
午後は本当に災難だったと今にして思う。利なく、意味なく、損と悪名ばかりがかさんだ。
明日は――、と考えかけてカインは自分の愚考をあざ笑った。


招待客の諸君にも一方的のなのは心苦しいが今宵のディナーの待ち合わせは破棄させてもらう。
スミス、貴様はどこで油を売っているか知らんがスミスよ、こんな事情だ、理解しろ。
暫くはそれぞれ独力で生き延びるとしよう。怨むなよ?
70THE GRAVITY OF DARK SIDE 15/15:2006/04/10(月) 02:20:31 ID:ECO+dCq/0

【アルス(MP3/5程度)
 所持品:ドラゴンテイル、ドラゴンシールド、番傘、ロングソード、官能小説1冊
 第一行動方針:フリオニールを追う
 第二行動方針:倒すべき悪(アーヴァイン、スコール、マッシュ、フリオニール、カイン、サックス)を殺し、PKを減らす
 最終行動方針:すべての悪を消す】
【現在位置:カズスの村】

【カイン(HP2/3程度、疲労)
 所持品:ランスオブカイン、ミスリルの小手、この世界(FF3)の歴史書数冊、加速装置、
 草薙の剣、ドラゴンオーブ、レオの顔写真の紙切れ
 第一行動方針:カナーン方面への転進
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【現在地:カズスの南西 高山との境界付近】

【フリオニール(HP1/3程度、MP1/2)
 所持品:ラグナロク、三脚付大型マシンガン(残弾5/10)
 第一行動方針:来敵へのゲリラ戦での勝利を目指す
 最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【現在地:カズスの村 廃墟の奥】

【サックス (負傷、軽度の毒状態、左肩負傷、心理的疲労)
 所持品:水鏡の盾、スノーマフラー、ビーナスゴスペル+マテリア(スピード)
 第一行動方針:この場から逃走する(無意識にウル方面へ)
 最終行動方針:出来ればこの現実を無かった事にしたい】
【現在地:カズスの村を出てウルの村へ】

【レオンハルト 死亡】
【残り 56人】
71THE GRAVITY OF DARK SIDE (修正):2006/04/10(月) 02:39:40 ID:ECO+dCq/0
それぞれを以下のように修正いたします。

5/15
アルスは先程と同じ表情のまま目してサックスを見下ろしているまま。

アルスは先程と同じ表情のままでサックスを〜

5/15
…サックス。君の罪は消えたわけじゃない。だが今は君よりその二人討つほうが先決だ」

〜だが今は君よりその二人を討つほうが先決だ

9/15
そして、カインは今焦燥に極みにあった。

そして、カインは今焦燥の極みにあった。

14/15
招待客の諸君にも一方的のなのは心苦しいが今宵のディナーの待ち合わせは破棄させてもらう。

招待客の諸君にも一方的な通告は心苦しいが今宵のディナーの待ち合わせは破棄させてもらう。


ミスが多くて憂鬱です。すみません。
72Ocean's Eleven 1/11:2006/04/11(火) 03:01:58 ID:dmW3wnmd0
夜のサスーン城。
そこに爆音が響き、城の一室にいた男達に不安な表情が浮かんだ。
何かを感じ取ったからなのか、不安が何か嫌な考えを生み出したからなのか、それはわからない。
だがその音がまさか一人の男によって放たれた音なのだという事は夢にも思わなかった様だが。
「お兄さん……」
「ん?あ、タバサおはよう」
「ねぇ、さっきの音……」
大きな爆音を聞いたタバサが目覚め、近くにいたセージに話しかけた。
セージはタバサに不安を煽らない様に、極めて普通に答えるよう勤める。
だが彼女自身にも何か思うものがあったのだろう、回りを見渡して言った。
「嫌な予感がするの……」
その言葉が部屋で反響する。セージやエドガー達の耳にその言葉が入っていく。
見事なまでに部屋を静寂が包んだが、リュカはタバサに微笑みかけた。
「心配しなくてもいい。父さん達がいるだろう?」
「うん……」
父の微笑みに対し、タバサは笑顔で返した。だがその顔には若干不安が残っていた。


警戒の為に剣を静かに構える魔物が、城のある一室にいる。
ピエールは城の内部に潜入した瞬間に人の気配を感じて潜伏をしていた。
この城が戦場となった時から生き残り、そして未だ人間がいるという事を理解したのだろう。
入り口に残る足跡と血痕。強力な魔法の影響で起こったであろう城の外観を損ねる傷跡。
更にはアリーナにも聞いた話―――これらが確実にこの城の現状を示していた。
そうなると、この城にいるであろうリュカに早く会って渡すべき物を渡したい。
主の障害になるであろう者を全て排除しておきたい。
だが、少ない魔力と減らされた体力。これらが彼の歩みを遅くする。
だが決して止まることは無い。止まるわけには行かない。
ピエールは部屋の中で幾度と無く、高等回復呪文「ベホマ」を唱えていた。
魔力の消費に伴い疲労が襲うが、しかしそれでも身を覆う怪我は少しずつではあるが回復へと向かっていた。
彼はこの城の中で、中途半端な魔力に頼るつもりなど無いのだろう。
誓いを込めた剣で立ち塞がる者を薙ぎ払い、主を勝利へと導く為に、彼はその体を癒し続ける。
73Ocean's Eleven 2/11:2006/04/11(火) 03:11:05 ID:dmW3wnmd0
「―――で、その詠唱を終えた後にいつもの様に呪文の名前を唱える。
 これでモシャスは発動……問題はこれだけで使えるかどうかなんだけど……」
「ありがとう!」
「でもとりあえず、回復魔法の事を優先して教えておこうかな。
 じゃあ最後に、モシャスを試してくれない?力量が見たいしね」
「う、うん……不安だけど、頑張る」

数刻の時間がたった後。
互いに魔法を教えあうセージとタバサの会話を聞きながら、エドガーは研究メモを見返す。
現在彼らの行っている「魔法」は自分達の世界では一度は廃れていた代物だった。
だがあのゲームの主催者である魔女はその力を有り余らせていた(様に思えた)。
しかし首輪の構造を推測するに大部分は機械だ。しかし何故魔女が機械に拘るのか。
首輪全てを魔法で生成した物質にするという事も可能ではないのか。
そうすれば少なくとも自分のような機械に詳しい人間にも悟られずに済むのだが。
いや、だが考えてみれば魔法物質の生成などは魔石といったものが……、
「タバサ!やっぱり君は凄いよ!」
エドガーの思案を吹き飛ばすように……否、遮る様にセージの声が響いた。
大きな声で喋ると人を集めて危険だぞ、とエドガーは咎めようと彼らに視線を移した。
その時―――エドガーは固まった。それもそうだ。目の前には……。
「やった!私変身できたのね!」
と言いながら嬉しそうにはしゃいでいる黒スーツの男―――マティウスがいたのだから。
エドガーが何かの間違いかと目をこする。するとその間にマティウスは消えていた。
マティウスがはしゃいでいた場所にはタバサがいた。どういう事なのだとセージに尋ねるエドガー。
「ああ、さっき話してたんだけどこれモシャスって言ってね。変身できるんだよね」
モシャス……ああ、あのシンシアも使っていた便利な呪文か、とエドガーは納得した。
「でも初めてでこれは上出来だ。でも数秒しか持たなかったねぇ、残念」
「ごめんなさい……」
「いや、謝ることじゃないさ。っていうかなんで今マティウスだったの?」
「全然体格とかが違う人になれたら凄いな、って思って」
「なるほど」

いや、それなら結局リュカとかでいいんじゃないのか?とエドガーは心の中でツッコミを入れた。
74Ocean's Eleven 3/11:2006/04/11(火) 03:17:16 ID:dmW3wnmd0
「じゃあ次は回復呪文だね。急ピッチでバリバリ行こうか〜」
「で、できるかなぁ……」
「大丈夫だよ。ほら、自信持って」

自信。果たして今の自分には、自分の論理に関しての自信があるのだろうか。
しかし我ながらこの研究メモが間違っているとは思えない。
つまり、それが自信か。とエドガーが思うが、それでもやはりあの映像が離れない。
右手。首輪の爆発により失われた右手。激しい痛みを伴い喪失した右手。
失敗すれば次は何を失う?決まっている、"信用"だ。
今度こそは失敗するわけには行かない。はやくカラクリを見極めなければならない。
そうなるとやはり必要なのは仲間だろう。様々な力に精通する仲間を集めなければならない。
首輪に対し機械の知識が必要ならその知識で、
魔法の知識が必要なら魔法の知識で迎え撃つしかないのだから。
―――もう一度メモを見て考える。
首輪が機械なのは間違いない。問題はそれを統率するものだ。
魔力を生み出す特殊な物質という線は薄い。
そんな貴重なものを100個以上の首輪に使えるはずが無いからだ。
ならば何かの魔法の力で首輪本体を生み出したと考えるのが妥当か。
―――待て。考えてみれば、魔法の中にはモノに魔力を封じ込めてナンボだという種類のものもある。
魔力を生み出すパーツを組み込まずとも、首輪のパーツの何かに魔力を込めればいいだけの話なのだ。
特殊なパーツを使わず、どんなに調べても通常の機械の設計と変わらず、
だが魔力を感じるとなるとこの可能性は高い。そうすればコストも少なく量産することも可能だ。
そしてそれを解除するだけで首輪の効果が消えるという可能性も生まれる。
しかしこの仮説が正しい場合、おそらくこの首輪の大部分の機械はフェイクとなる。
機械の知識が役に立たず、魔法の力を持つ人間に頼るしかない。
幸いここにはセージとタバサがいる。だが果たしてこういったものに精通しているかどうか。
―――とにかく今はまだ動くときではない。様々な仮説を立て、それらを消去して絞らねばならない。
エドガーは戦う。魔女の戦略と。自身の頭脳の限界と。首輪の構造と。思い浮かぶ仮説と。
そして自身を蝕もうとする不安と。

そんな戦いの最中、あの男は目覚めた。
75Ocean's Eleven 4/11:2006/04/11(火) 03:21:57 ID:dmW3wnmd0
ピエールは既に部屋を後にし、気配を殺しながら廊下を進んでいた。
疲れは殆ど癒した。魔力はほぼ尽きたが怪我はもう心配は無い。
頼れるのは剣と盾、そして己の腕のみ。眼光を鋭くし、進む。
王者のマントが呼んでいるのだろうか、偶然にも足は東塔へと進んでいた。
とにかく彼は、仲間だった人間二名を待たぬままに進んでいた。

―――あの男と女は、確実に自身を亡き者にするつもりだ。
特にアリーナ。彼女は確実に約束など破るに決まっている。
ウィーグラフもどうだ。大方似たような事を考えているのではないか。
共に行動していれば同士討ちを狙えて結果的に良かったかもしれないが、
主の身に危険が及ぶことだけは避けたい。ならばこれしか道は無い。
大きな賭けだ。だが自分は死ぬわけには行かない。

そういえば、アリーナ達はどうしているだろう。大方野垂れ死にそうになっているところだろうか。


アリーナとウィーグラフは城より南東の森で立ち往生をしていた。二人の目の前には二つの人影がある。
悪魔の角を模した髪飾りと派手な服が、二つの影の正体を物語っていた。アリーナはそれを見て舌打ちする。
「久しぶりだな、アリーナ」
「久しぶりね……黒服!!」
目の前にはマティウスとゴゴ。彼らはアリーナ達の先回りに見事に成功していた。
まさか城の内部ではなく外部で出会ってしまうとは思わなかった、とアリーナは誤算に押し潰されそうになっていた。
―――数刻前。マティウス達はギードの救出の為、確かにその方向へと向かっていた。
途中でマティウスが自分とゴゴに対しヘイストを使うことで、更に速度は増す。
しばらく走っていると、二人組の男女が視界に入った。
女のほうは見知った姿。男はわからないが、ギードは確認できない。
殺されて放置されたか、逃亡したか。だが自分達が間に合ったということは足止めは成功していたということ。
見つからぬギードに心中で礼を言い、そして二人組の前に彼らは姿を現した。

―――そして、時間は出会った瞬間に戻る。
これがアリーナの言う黒服なのだな、とウィーグラフは剣を正眼に構えて警戒する。
そんな状況の中で、皇帝は静かに微笑を浮かべていた。
76Ocean's Eleven 5/11:2006/04/11(火) 03:26:59 ID:dmW3wnmd0
「で、俺は気絶してここに運ばれた……そういう事ッスね」

突然ではあるが……爆音から数分のディレイを置き、ティーダは遂に―――いや、今更目覚めた。
そして目覚めた瞬間ティーダは相当驚いた。当然だ、自分の記憶には無い場所に寝かされているのだから。
色々と焦っていると、エドガーが現状の説明という名の助け舟を出した。
自分達の自己紹介、そして自分達ゲームに乗っていないこと。ティーダの身に起こった事。
それらをエドガーが一から順に話し終えると、ティーダは前述の様な台詞を言ったのだった。

「で、聞いたんだけどさ。うろついてたらしいじゃない……なんで?」
セージが頬杖をつきながらティーダに尋ねた。ティーダは朗らかな声で答える。
「いや、実はユウナ……」
そこまで口に出した瞬間、ティーダはある事を思い出し、はっとした。
そう、自分はあくまでも「偵察」をしているのだ。自分の素性を簡単に言っていいものか。
しまった、まずい。今の言葉は無しにしてもらいたい。いや、無理だ。
それならばせめて皆が聞き逃していて欲しい……。

「ユウナ?」 「誰?」 「女の人……かな?」 「っぽいよねぇ。彼女?」

無理でした〜〜〜〜〜!あああ、皆自分に聞き返してるしぃ!!
ティーダは心中で素っ頓狂な声を上げてげんなりとする。
「それで、ユウナが何?君の事をずっと待ってるとか?」
セージは更に追求をする。ティーダは答えに迷った。しかしここで無意味に答えないのも怪しまれるか。
やましい事はしていないし、ここは正直に肯定した。
そしてとりあえずこの事以外は下手に話さないようにしておこう、とこれ以上の事は言わなかった。
「……そういや、俺のザックどこッスかね?」
ティーダはふと、自分のザックがなくなっていることに気が付いた。
寝ている間に没収されたのだろうか。だがゲームに乗っていない彼らのことだから恐らく……。
「ああ、それなら預かっているよ」
ティーダの予想は的中。リュカがザックを右手に持っていた。
とりあえずは安堵する。このまま略奪だの何だのされたら困っていたところだ。
「そうだ。中身なんだけど、見てもいいかな?」
「良いッスよ。まぁあんまりいいのも入ってないけど」
77Ocean's Eleven 6/11:2006/04/11(火) 03:28:59 ID:dmW3wnmd0
そのやり取りが交わされると、リュカは色々と取り出そうと手を突っ込んだ。
そしてまず取り出したのは剣と盾。自分のハリセンとえらい違いだ、とセージは思う。
更にごそごそと取り出す。出てきたのは服が数着。更に見ると、なんと意外なものが出てきた。
「……エドガーさん、これは……」
「これは………」
リュカの手に握られているものは首輪。それを確認するとエドガーは急いでメモに文章を書きなぐった。
"私は首輪の解析をしている。だが盗聴の危険性がある為そのことは伏せて会話をせねばならない"
エドガーが書きなぐり、そしてすぐに翳したメモにはこう書かれていた。
「気が付かなかったなぁ」
セージは主語を入れずにそう言う。勿論首輪の情報に関する事だ。
彼はそのままメモの隅に、返事を書きなぐる。
"ちゃんと僕らにも言って下さいよそれ。そんな目的があったなんて、まったく"
それに対し、"多少ごたごたして話す機会が無かった。申し訳ない"とエドガーは返信をした。

「ところでティーダ君……これは、一体?」
その間にリュカはもう一つ意外なものを引き当てていた。
それは血文字で書かれた文章。不気味にもただ"キンパツニキヲツケロ"とだけ書かれている。
「これ……俺もよくわかんないんスけど……不気味、ッスよね」
エドガーはそれをじっくりと見たが、異常性が目立つだけで何もわからない。
「どう思いますか」
「怖い、とだけ言っておこう。それよりも大事な話がしたいからな」
エドガーは机にそれを置き、全員に視線を戻した。そして言う。

「改めて言うが、我々はこれから同士だ。力を合わせて共にこの状況に終止符を打とう」

エドガーのその言葉に、反対をするものはいなかった。
それを見てエドガーはふっと笑みを浮かべる。
「さしあたって……リュカ、セージ、タバサ。頼みがある」
そう言って全員を一度見渡す。彼は緊張している様子の皆を見てくすりと微笑むと、
「私は皆の上司ではないから、もう少しフランクに接してくれないか?
 丁寧語や敬語で私に話しかけるのは城の配下だけで十分だ。息苦しくてかなわない」
そう言い、軽く笑った。
78Ocean's Eleven 7/11:2006/04/11(火) 03:32:36 ID:dmW3wnmd0
「あ、いいの?じゃあそうしようかな」
「え?セージ君?順応性早くない?」
セージが早速エドガーに普通に話し始めた事に、リュカがツッコミを入れる。
「いいんだいいんだ。ロックもティナもそうだったんだ。リュカもほら、遠慮せずに」
「いや、僕はいいです。なんか落ち着かないですし……」
リュカは苦笑しながら断った。エドガーは残念そうにため息をつく。
その様子を見て、タバサとセージはくすくすと笑っていた。それ見ながら、ティーダはある提案をした。

「そうだ、俺の仲間も城にいるんスよ。連れてきて良いッスか?」
「ああ、さっき話に出てきたユウナか?それはかまわないが」
「なら良かったッス!俺もずっと気絶してたから心配してるんじゃないかなって思って。
 それにアンタらは信用できそうだから、良かったらユウナ達も置いて欲しいなって」
説明をしながらティーダはドアへと歩む。
「とりあえず呼んでくるッス!あ、担保ついでに武器以外の荷物置いてくんで!」
「あ、ちょっと待って」
今にも走り出しそうなティーダをリュカが呼び止める。
「今ユウナ「達」って言ったよね?他にも誰かいるのかい?」
「ああ、男の人も一緒ッス!バーテンダーみたいなおっさんで……まぁ、実際会ったほうが早いッスね!」
「え?そうか……あ、その男の人の名前は?」
「じゃ、行ってくるッス!」
最後の質問が耳に入らなかったのか、ティーダは慌しく部屋を出て行った。
無視されたリュカがぽつんと寂しそうに固まる。後ろでセージがポツリと呟いた。
「まぁ担保置いていったり、さっきの言葉から見て逃げられた訳じゃないし……待つか」


ティーダは走る。西の隠し部屋にいるユウナ達に会うためだ。
会ったらどうしようか。まずはあの小説に関しての弁明かな、と苦笑する。
とにかく信頼できる仲間が出来たのだ。これをユウナとプサンに教えなければ。
そうすればしばらくは安心していられる。うきうきとした気分で階段を下っていたその時、彼の足は止まった。
視線の先には、一匹の異形の騎士。ティーダはその騎士と鉢合わせをした。
騎士はしばらく無言でティーダを見ていたが、しばらくすると話しかけてきた。
79Ocean's Eleven 8/11:2006/04/11(火) 03:43:28 ID:+MLZeojU0
「貴様、リュカ様を知らないか?ここにいると聞いたのだが」
「リュカ様……?アンタ何者?それを言ってくれない限りはこっちも答えられないッスよ」
「落ち着け、リュカ様に危害を加える気は無い……」
相手に告げながら、ピエールはティーダを観察した。持っているのは鋼の剣のみ。その気になれば倒せる。
だがもしもの事もあるし、それに彼はまだ自分に戦いを挑もうとしているわけではない。
ならばまずは相手から情報を聞き出さなければならない。ピエールは自分の名を名乗った。
「私の名はピエール。リュカ様に従うものだ。離れ離れになった主を探しているのだが……」
するとティーダの表情が、先程自分を警戒していた表情から一転、気を許した表情になった。
「なんだ、リュカの仲間ッスか!?だったら早く言えよ〜!」
この極端すぎる変化にピエールは驚いた。どうやら自分を仲間だと思い込み、警戒を解いている様子。
これはチャンスだ。ピエールは彼にリュカの居場所を問う。するとティーダは簡単に答え始めた。
「リュカは、東塔の部屋にいるッスよ。ほら、あそこッス」
「そうか、感謝する……ところでその部屋には、リュカ様以外の人間がいるのか?」
「リュカ以外なら……セージとタバサとエドガーって奴がいるッスよ」
その名を聞いて、ピエールははっとする。タバサ、それは主の娘だ。
いや、だが最早それも関係は無い事。ピエールは感情を押し込めティーダに礼を言った。
それに素直に喜ぶティーダを見て、ピエールは思う。こいつは馬鹿だ。
心中でほくそえむ。彼のおかげで部屋の中にいる人数もわかった。もう用済みだ。
「マホトラ」
ピエールが呟くと、優しく灯った光がティーダの体から浮かび上がり、ピエールに吸い込まれた。
「え?何スか?これ。え?え?」
それを確認すると、混乱するティーダにを無視して、スネークソードを斬り上げた。
波打つ刀身鋼の剣を持っているティーダの右手首を正確に捕らえ、宙へと飛ばした。
一瞬何が起こったのか理解が出きずに彼は呆けていた。だが生じた痛みで我に返り、叫んだ。
「イオ」
痛みに耐えられずに叫んだティーダを無視し、爆破呪文を唱える。
ティーダの背に位置する城の壁に穴があいた。穴から見えるは夜空。そして外の景色。
80Ocean's Eleven 9/11:2006/04/11(火) 03:46:56 ID:+MLZeojU0
「騙してすまなかった。私の名はピエール。確かにリュカ様に従うもの」
「だったら……なんでだよ……!?」
「主を、リュカ様を優勝させることこそ我が願い。貴様らとは相容れぬ存在にあるのだ。
 貴様は私の事をリュカ様と共に戦う仲間だと勝手に勘違いしていたようだが……な」
「そんな……そんな事……」

ティーダは更に混乱する。
鉢合わせた騎士。それがリュカの為に戦うと言った。殺人鬼が戦う理由がリュカ。
リュカの仲間が殺人を犯す。リュカは動かない。リュカはリュカで仲間と話をしている。
笑っている。裏ではピエールが殺しをしている。ピエールは殺す。リュカは殺さない。
ピエールはリュカを主という。主の為に殺す。ピエールはリュカを優勝させる。
じゃあリュカは自分達を騙していた?リュカは自分達と談笑しながらピエールに人を殺させていた?
仲間に気付かれないままにゲームに乗っていた?じゃあ東塔の奴らは俺と同じ様にリュカに騙されて―――

「情報感謝するぞ、人間」

ピエールはティーダの胸に鋼の剣を刺し、すかさず抜く。
ティーダは、自分の胸から大量の血が吹き出るのを見た。しかし何も出来ぬままに呆ける。
刹那、ピエールは暇も与えずにスネークソードでティーダを薙ぎ払った。
後ろに倒れるティーダの体は、そのまま彼の真後ろに開いた大穴に吸い込まれていく。
ティーダは城から大地へと落ちていく間に、ピエールが落下している自分を見下ろしている事に気付いた。
―――しかし、何も出来ぬままに、ティーダは大地へと墜ちた。

嫌な音がした。腕や脚が変な方向に曲がっている。
ティーダは自分が絶望的な状況に瀕している事を悟った。
早く知らせなければ。せめて誰かにピエールとリュカという殺人者がいることを教えなければ。
そしてユウナ達をどこか安全な場所に連れて行ってやって欲しい。
ティーダは最早気力だけで命を保っていた。だがそれも限界か、そうティーダが絶望した時だった。

「おい、大丈夫か!?」
「え……?」
81Ocean's Eleven 10/11:2006/04/11(火) 03:51:01 ID:+MLZeojU0
幸運が訪れた。目の前には金髪の少年と、緑のフードをかぶった少年。
彼らが自分のことを心配している。早く、早く伝えなければ。
ティーダは体中から湧き上がる痛みに耐えながら、ジタン達に話し始めた。

「俺はもう……無理だ……でも、頼みがある、ッス……。
 西塔に行って……ユウナと、プサ、ンさん……を、連れて、逃げて、くれ……殺人鬼が……いる」
「殺人鬼!?名前はわかる?」
今度はフィンがティーダに尋ねた。ティーダは咳き込みながら、ぼやける頭の中を整理し、思い出す。
「……ピエールって……いう、魔物が……」
「魔物!?」
「魔物は……リュカ様の為に、殺しをしてる……もしかしたら、城にいるリュカも……」
「魔物がリュカの仲間……って、リュカが城にいるのか!?」
ジタンが感情を抑えられぬままにティーダに叫び、問う。
「城に……リュカは、いるッス……東塔……部屋、に……」
その言葉を聴き、フィンが震えていた。ジタンに言った夢の内容と合致していたからだろう。
そして何も出来ない自分に悔しい思いをしている。それはジタンも同じだった。
だが何も出来ぬまま、ティーダの体は冷たくなっていく。

「最期に……ユウナ……」

ティーダは力無くそう呟くと―――目を閉じた。
「おい!おい!起きろ!目を開けろよ!おい……おい!!……畜生ォ!!」
ジタンが叫んで体を揺するも無意味だった。ティーダの亡骸をそっと地面に横たえると、フィンに言った。
「フィン……そのユウナとプサンって奴の救出は、お前に頼む。風邪引いてるし、無理はさせられない」
「え?じゃ、じゃあジタンは……?」
「俺は、戦ってくる」
「戦う……リュカと?」
「そうだ、戦う。西塔の奴らの保護は頼んだ。行ってくる!」
フィンの問いに、ジタンはリュカへの怒りを込めた表情で答えた。
するとフィンは先に城へと入り、西塔に向かって行った。
それを確認した後、ジタンも城の中へと走っていった。
82Ocean's Eleven 11/11:2006/04/11(火) 03:54:47 ID:+MLZeojU0
「やっぱりそうだったのかよ……」
東塔へ向かうジタンが、呟く。
「それがお前の戦い方だったんだな……騙されちまったよ」
怒りを秘めた声で、呟く。
「リュカ……お前は……俺が、討つ!!」
彼の覚悟は、決まった。

「リュカ様……また私は人を殺しました」
ピエールは新たに鋼の剣を手に入れ、それを左手に装備する。
「しかし全てはリュカ様の為。その為なら私は、タバサ様も殺しましょう」
歩き始める。
「もう相容れることも無いでしょう。ですがこのマントを受け取り、生き残って欲しい」
東塔の一室へと進むために、階段を上り始める。
「この剣と、あの男から奪った少しの魔力で、私は自らの鎧を赤く染めましょう。全ては、リュカ様の為に」

「やっとこれを使える時が来たか」
マティウスはビームウィップを構える。ただの短い棒から、光線が浮かび上がった。
「嬉しそうだな、マティウス」
ゴゴはソードブレイカーを構える。それと同時にその身に皇帝と同じ覇気を廻らせていた。
「遊んでる暇なんて無いわよ」
アリーナはいつでも攻撃が出来る構えに入っている。瞬殺、それが彼女の望む全てだった。
「貴様が言うな」
ウィーグラフは変わらず正眼。そのまま、始まるであろう戦いに身を投じる覚悟をした。

「また音が……やっぱり、変」
タバサは自分に圧し掛かる負の予感に怯えるように呟いた。
「爆発か。魔法のものだとすると……襲撃者、か」
セージは冷静に状況を分析する。彼の頭にもまた嫌な予感が過ぎった。
「ティーダ君が戻ってこないとなると……まずいですね」
リュカはエドガーにそう言い、警戒をする。
「そうだな。皆……戦いが、始まるぞ」
エドガーはそう告げ、自身を奮い立たせた。
83Ocean's Eleven:2006/04/11(火) 03:55:32 ID:+MLZeojU0
【ピエール(HPほぼ回復、MP少量)(感情封印)
 所持品:スネークソード、鋼の剣、毛布、魔封じの杖、死者の指輪、王者のマント、
      ひきよせの杖[1]、ようじゅつしの杖[0]、レッドキャップ
 第一行動方針:リュカに王者のマントを渡す
 第二行動方針:リュカ以外の城にいる人間を殺す
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【現在位置:サスーン城内部→東塔へ】

【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
 所持品:E:普通の服、ストロスの杖、キノコ図鑑、悟りの書、服数着、ファイアビュート、雷の指輪
 第一行動方針:回復呪文を覚える
 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】
【リュカ(MP1/2 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)+マテリア(かいふく)、ビアンカのリボン、ブラッドソード
      ティーダの支給品(青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、ティーダの服)
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【エドガー(右手喪失 MP1/2)
 所持品:天空の鎧、ラミアの竪琴、イエローメガホン、血のついたお鍋、再研究メモ、ライトブリンガー
 第一行動方針:首輪の研究/アリーナ2を殺し首輪を入手/仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 MP1/2程度)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子
 第一行動方針:タバサに回復呪文を優先的に教える
 基本行動方針:タバサに呪文を教授する(=賢者に覚醒させる)】
【現在位置:サスーン城 東棟の一室】
84Ocean's Eleven:2006/04/11(火) 03:56:44 ID:+MLZeojU0
【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス
 第一行動方針:リュカとピエールを討つ
 第二行動方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す
 最終行動方針:ゲーム脱出】
【現在位置:サスーン城内部→東塔へ】

【フィン(風邪)
 所持品:陸奥守、魔石ミドガルズオルム(召還不可)、マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:サスーン城にいるユウナとプサンを救出、保護する
 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:サスーン城内部→西塔へ】
85Ocean's Eleven:2006/04/11(火) 03:57:46 ID:+MLZeojU0
【マティウス(MP1/2程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)、ビームウィップ
 第一行動方針:アリーナ達を探し、倒す
 第二行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ(MP1/2程度)
 所持品:ミラクルシューズ、ソードブレイカー、手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:マティウスの物真似をする】

【アリーナ2(分身) (毒、スリップ) 】
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 第一行動方針:ゴゴとマティウスを殺す
 第二行動方針:ピエールを葬り、サスーンに向かってリュカを殺す
 第三行動方針:ラムザを殺し、ウィーグラフにアリーナを殺させる
 最終行動方針:勝利する】
【ウィーグラフ (疲労、毒、スリップ)
 所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×6、ブロードソード、レーザーウエポン、
 フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
 黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾 首輪×2、研究メモ
 第一行動方針:目の前にいるゴゴとマティウスを殺す/ラムザを探す
 第二行動方針:アリーナを殺してリュカとエドガーに近づき、二人を利用してピエールを服従させる
 基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】
【現在位置:カズス北西の森南部】


【ティーダ 死亡】
【残り 55名】
86Ocean's Eleven 訂正:2006/04/11(火) 08:51:46 ID:eI/vFIR80
×【ピエール(HPほぼ回復、MP少量)

○【ピエール(HP1/3、MP少量)

×波打つ刀身鋼の剣を持っているティーダの右手首を正確に捕らえ、宙へと飛ばした。

○波打つ刀身が鋼の剣を持っているティーダの右手首を正確に捕らえ、宙へと飛ばした。
87名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/11(火) 19:06:00 ID:S0JM26zVO
>>72-86は無効
88名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/11(火) 19:08:35 ID:LLSn31ak0
>>87は無効
89名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/11(火) 21:04:21 ID:EKAi0wsX0
>>72-86は物理的、時間的に展開が不可能な話ということが判明しました。
よって無効とさせて頂きます。詳細は本スレ参照。
90名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/11(火) 23:53:43 ID:4aBfhrioO
衝撃の事実!
ここは本スレではなかった!!
91名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/12(水) 09:58:58 ID:5WRjsWlaO
90に不覚にもワロタ保守
92名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/12(水) 10:15:41 ID:LpY8w3ML0
>>55より、>>92は無効です。ホシュです。
93名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/12(水) 19:31:49 ID:Ut79y6ab0
>>89
無効の可能性もあるが今現在は雑談スレで検証中
とりあえず保留程度におさめておいたほうがいい
94名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/12(水) 19:41:45 ID:pStCg6EW0
いやー、もう無効でいいだろー。
95名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/13(木) 00:36:06 ID:+PX/tvnx0
軽々しく結論を出すべきではないよ。
よって有効。
96名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/13(木) 08:55:42 ID:Mk8hks3lO
保留が正解
しばらくは修正待ち
ゅっくり待ちましょ
97名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/13(木) 23:25:29 ID:9FyVXba/0
ほりゅ
98名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/14(金) 00:26:54 ID:jCMm92x70
バトロワの時代は終わってしまったのか…
99名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/14(金) 17:57:01 ID:NoImAz1E0
いや、まだだ
100名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/15(土) 11:26:53 ID:HV6SJFoyO
保守
101名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/15(土) 15:23:54 ID:OSjYhXZk0
ほりゅって響きいいな。
102名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/16(日) 00:39:04 ID:ego4yKrU0
今夜来ることを期待して保守
103名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/16(日) 12:13:41 ID:iZDhsqBg0
ほりゅ
104名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/16(日) 22:00:21 ID:Xr0+g/CWO
105名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/17(月) 01:39:35 ID:77cxVpEuO
106名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/17(月) 12:23:20 ID:eVUlBpG+O
107名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/17(月) 13:14:12 ID:fnDgZWQ5O
108名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/17(月) 13:21:14 ID:YLPiVOxp0
109名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/17(月) 14:41:08 ID:XGSLbPrO0
110名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/17(月) 22:51:54 ID:jGTKBZX30
==糞スレ終了==
111名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/18(火) 11:36:08 ID:KZqZ3Ivs0
>>110
このツンデレさんめっ
112名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/18(火) 17:02:32 ID:8DTLLxg4O
113577 ◆H8CDKaXNjE :2006/04/18(火) 18:50:46 ID:JxD5zGO+0
>>72-86は無効です。理由は雑談スレて。
114名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/19(水) 13:05:28 ID:kRyuDJd00
保守
115名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/20(木) 07:32:25 ID:4bDLwvt0O
保守
116ウルに明かりが点いたわけ 1/7:2006/04/20(木) 19:35:58 ID:mZTnfCt80
「ええっ、ソロ戻って来てないの? っかしいなあ、交代したのになあ」

レナとバッツと一緒の帰り道。
これで全員集合だねってハッピーな気分のままヘンリーと話してびっくり。
確かに見送ったはずなんだけど、ソロはどこ行っちゃったんだろう。
多分自主的に見回ってんだろーなーって一人納得してうんうん頷くヘンリー。

んー、しょうがない、ちょっとあたしが探してきてあげよう!

「レナは先に行ってて。みんな心配してたんだよ〜?
 エリアもそろそろ起きてるかもしれないしさ、早く顔を見せてあげないとね。
 あたしはソロ探してくるから、レナが起きたーって!」
「おう、頼むぜリュック。じゃオレはまだこの辺回ってるからまた声掛けてくれよ」
「了解! ほらバッツ、早くレナをみんなのとこに連れてってあげなよ」

すぱーんって空いてる方の肩をはたいてバッツを後押し。
それからソロを探して駆け出した。

117ウルに明かりが点いたわけ 2/7:2006/04/20(木) 19:36:49 ID:MWGsUVL/0
流石のあたしでも闇雲じゃ見つけるのは簡単じゃない。ほら、暗いし、ここ結構広いし。
でもあっさりソロを見つけることができたのは、防具屋のお店の前にぱっと点いたあかりに照らされた彼を見つけたから。

「ねえねえソロ〜、レナ起きたんだよお」

って呼びかけながら走り寄るあたし。くるりと振り向いてこっちに気付くソロ。

「リュックさん、何かあったんですか? レナさんが目を覚まして…」
「あ、んーん、そうじゃなくて、レナは大丈夫なの。
 大丈夫だから、今みんな宿屋に集まってるところなのね。で、ソロが戻ってないから――」
「探しにきてくれたんですね。要らない心配を掛けてしまったのか、すみません」
「そーんなの気にしなくていーよう。でもってソロは一体何やってたの? ライトアップ?」

ソロの手にある支給品の火種と明るいお店の外灯を交互に見る。
その時のあたしは随分と好奇心と興味のあふれた目をしてたみたい。

「ソロが点けたんでしょ、これ」
「はい。説明しますね……では宿屋に向かいながらにしましょう」

118ウルに明かりが点いたわけ 3/7:2006/04/20(木) 19:37:34 ID:rNxmAOn/0
「うん、危ないとこだったんだなあ」

あたしは向こうできらめく宿屋の光を見ながら腕組みしておーーきく頷いた。
隣ではソロが別の外灯に明かりを灯している。
もう一度宿屋を見る。うん、よ〜く目立ってる。

「すごいね、ソロは」
「いえ、すごくないです。むしろ暗い村に明かるい建物が1つだけってことが
 どれだけ目立つかということにもっと早く気付くべきでした。無警戒すぎました」
「でもソロは気付いたんじゃない。やっぱりすごいよ」
「いえ…」

さっきより明るくなった村の中はさっきよりずっとよく見通せる。
ほら、やって来る人影も―――って

「なあ、お前等何やってるんだ?」

ヘンリーでした。もー、脅かすなよぅ。
驚き顔のあたしをおいといて、ヘンリーさん、と返事してあたしに教えてくれたことと同じことを丁寧に説明しようとするソロ。
あっともともとの目的を思い出したあたしはそれを制止して二人を宿屋に急き立てることにした。
それくらいはあたしの時と一緒で歩きながら話せるし、
いつまでもレナやみんなを待たせるわけにはいかないしね。

119ウルに明かりが点いたわけ 4/7:2006/04/20(木) 19:38:39 ID:MWGsUVL/0
―――それで、みんなでこの後の事とかマスタードラゴンって偉い人の事とか
天空の剣の事とかスミスってモンスターの事とかターニアの事とかあって。

村の守りについて盛り上がったのはヘンリーが出てったあと。
宿屋だけが明るくて目立ってたこととそれを紛らわせるためにいくつかの門灯や街灯を灯して回った事をソロが報告。
みんなの意見をミックスしてさらにアイデアを集めて会議会議。

で、今あたしの手にはローソクと布とお皿があるわけ。
宿屋の物置とか部屋とかから調達したってバッツは言ってたっけか。
と・も・か・く。
ずーっと頑張り過ぎって位に頑張ってきたソロには休んでてもらって
あたしとバッツとビビであちらこちらの建物にローソクを仕掛けて回ることになった。
片っ端から外灯を灯して回り、屋内にローソクと適当に加減してカーテンみたいに布を張って。
イベントの準備みたいでちょっとだけ楽しかった…てのは不謹慎かな。

そーいうわけであちらこちらの建物に偽装工作を仕掛けて、
村はとっても明るくなった。やっぱり暗ーく沈んでるよりキラキラ明るい方がいいよ、ホント。


120ウルに明かりが点いたわけ 5/7:2006/04/20(木) 19:39:49 ID:81tQf/OH0
即席の工作の出来栄えをひとしきり眺めてふいー、と一息。
いい雰囲気になっちゃった村を通り抜けて戻ってきた宿屋のそばで向こうから来るソロと鉢合わせ。

「ねえソロ、もしかして…もなくて見張りに出る気だよね?」

はいって力強い返事が返ってきたけどなんかもー、あきれたっ、って感じかも。
だから、言ってやった。

「ダメだって。頑張りすぎだよぉ。
 あのさ、もっと仲間を信頼してくれてもいいってあたしは思うよ。ほんとずーっと頑張り過ぎだって。
 そりゃレナやバッツには無理させられないけどあたしは元気だし、ほら、見てみて、
 まだまだ全然平気。だから―――」

優しそうな笑みとちょっぴり困惑したような目をしたソロがいた。

「ありがとうございます、リュックさん。
 でも、やっぱり僕が休んでいるわけにはいきませんから。
 リュックさんはみんなのそばを守っていてくれませんか? お願いします」

あたしにだって分かる目、止めても聞かないんだろうなあって目だったよ。
結局、そんなソロの視線にあたしは押し負けちゃったんだろうなあ。

「はぁ、まったく。ホントに無理しちゃダメだよ?
 えっとねぇ、じゃあ、宿屋のカウンターにいるから、一回りしたら替わろ?
 みんな、みんなを守りたいって気持ちは一緒なんだからあたしにも見せ場をちょーだいっ、てね。
 それじゃ、約束だよっ」

せめてのお返しとばかりに強引に約束を押し付けて返事より先に横をすり抜けてダッシュ。
途中でぶらぶら見張り役のヘンリーと手を上げて声を掛け合って、宿屋の中へダイブする。
奥の明かりを確認してから入り口そばのカウンターの中へ。
光源のある場所から少し離れて薄暗がりへ店番みたいに腰掛けた。
121ウルに明かりが点いたわけ 6/7:2006/04/20(木) 19:40:30 ID:81tQf/OH0

今もどっかでがんばってるユウナとティーダ、二人の顔を薄墨のスクリーンに思い描く。
その隣にパインの顔を思い出して、アーロンを思い出して、届かなかった距離に切なくなった。
カウンターに突っ伏して目を閉じて、まだ届くところにいる二人を思う。
ユウナん、怖い目とか苦しい目とかにあってないかなぁ? 安全なところにいてくれてるかなぁ?
ティーダ、一人で走り過ぎて危ない橋渡ったりしてないかなぁ? ユウナんのこと心配してるだろうなぁ。
あー、ほんと自分の力の限界ってヤツを思い知らされるよ。
ここでどんなに無事を願ったって―――って弱気はよくないねっ。
あたしにだって出来ることはある。みんなを守るとか、困っている他人を助けるとか、悪いヤツを懲らしめちゃうとか。
それに、生きてりゃ希望の明日はやってくるんだからっ!


物思いにふけってるとなんだか凄い速さで時間が流れてるって思わない?
あたし、どれくらい顔を伏せたままでいたんだろう。
がばりって顔上げたらあたしを見上げてるビビがそこにいた。
どうも心配されちゃったみたい。

「お姉ちゃん、大丈夫? 疲れてない?」
「ビビったらいつからそこで見てたのー? ぜんっぜん気づかなかったよ。
 なんでもないって。ちょっと考え事してただけ―――」

距離のせいでぼやけてる乾いた爆発音が小さく、でも聞こえた気がした。
ビビの反応が、あたしだけじゃないってことを教えてくれてる。
何かが起こったことを察して体中に一気にスイッチが入る。
立ち上がった足元に派手な音を立ててイスが寝っ転がった。

122ウルに明かりが点いたわけ 7/7:2006/04/20(木) 19:41:03 ID:mZTnfCt80
【リュック(パラディン)
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣
 ドレスフィア(パラディン) チキンナイフ 薬草や毒消し草一式 ロトの盾
 第一行動方針:どうする?
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【ビビ 所持品:毒蛾のナイフ 賢者の杖
 第一行動方針:どうする?
 基本行動方針:仲間を探す】

【現在位置:ウルの村 宿屋・カウンター】

【ソロ(魔力少量 体力消耗)
 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
 第一行動方針:見張りとして村を周回中
 基本行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】

【現在位置:ウルの村】
123名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/21(金) 16:01:44 ID:0ln4k8fSO
保守
124アンタッチャブル 1/5:2006/04/22(土) 00:23:10 ID:ioHmjmbiO
歩きながらできる暇潰しといえば、雑談くらいしか思いつかない。
という訳で、ルカとハッサンとアンジェロ、二人と一匹は話していた。
最初の話題は新参アンジェロについて。
ここでようやく、本当のマスターがリノアという少女であることが判明した。
ついでにスコールはリノアの恋人だという事も。
ルカは通訳なので忙しい。
「そういえばスコールの兄ちゃんに会った時、真っ先にそのこと聞かれたね。ねぇハッさん」
「そーだったかぁ? 覚えてねぇなぁ」
「もー、にわとり頭なんだから」
「トサカじゃねぇぞ、これはモヒカンだ」
もちろん髪型ではなく記憶力の事だったのだが。
「……そうだね、もひかんだね」
本人がまるで気付いていないようなのでこのネタは流す。
にわとりは三歩で忘れるが、ハッサンは昼間から一歩も歩いていない。
(……リノアって名前、聞き覚えあるんだけどな。テリーに聞いたのかな)
と、ルカ。昨夜、テリーが再会する前に一緒に行動していた中の一人だろう、と結論づけた。
実際にそうなのだが、なにぶん教えられた名前が多すぎてハッキリ覚えていない。
(そう。スコールはリノアの事を心配してくれていたのね……)
と、アンジェロ。それはつまり、スコールはリノアに会えなかったという事になる。
それでも、スコールの胸の中にリノアがいる事が、なにより嬉しかった。
(にわとり……肉が食いたくなってきたな)
と、ハッサン。でも鶏肉よりは牛肉の方が食べたかった。
「恋人かぁ。ハッさんいる?」
「!!! な、なにがだ!?」
ハッサンは見なくてもわかるくらいに動揺した。うっかり爆発しなければいいが。
一応、ルカとアンジェロは数歩離れた。
「だから今、恋人とかいるの? まさか結婚してる?」
「か、関係ねぇだろ。別に恋人くれぇ一人や二人っ!」
「二人いたらおかしいよね」
『そうね、二股ね』
ちなみにハッサンは現在恋人募集中。だからといって過去にいた訳でもないと思われる。
125アンタッチャブル 2/5:2006/04/22(土) 00:24:52 ID:ioHmjmbiO
「なんで呪われてるアイテム装備しちゃうかな」
「ただならぬ事情ってぇのがあったんだ。もう自爆覚悟だったんだがよ」
ハッサンの爆発の指輪の話。
この話題に至るまでにも色々と話題を経由したが、本当にくだらないので省略。
「ハッさんみたいにイカツイ人だから、何度も爆発に耐えられてるのかもね」
「フン、まぁな」
「俺だったら、きっと一回も爆発に耐えられないよ。そもそも装備しようとしないけど」
「よせ、照れるじゃねぇか」
褒めてない。
『ある意味、ハッサンのハッサンによるハッサンのためのアイテムね……』
シャナクの巻物を持つテリー達は、もしかしたら北側に移動しているかも。
という事を、ルカは口に出さなかった。
ハッサンも口では言わないが、きっと呪いを解きたくて仕方ないと思ったから。
大きいほうのテリーにしても、小さいほうのテリーにしても、その名前を出せばやきもきさせてしまう。
だから言わない。もちろん心配だが、それでも言わない。
更にテリー達がカズスに向かっている可能性もある。心中で、別の場所に行っていてくれと祈った。
「……けどさ、ハッさん。俺が砂漠を通らなかったらどうするつもりだったの。移動とか」
「さぁなぁ、どうにかなってただろ」
「ならないでしょ」
このゲームの参加者で、ハッサンを運べる手段を持つ人は少ない。とルカは考える。
揺らさないように巨漢を背負って運ぶのは、大の大人であろうと、まず無理。
ケフカが使っていたレビテトも、足を動かさないと進めないというデメリットがある。
ハッサンを荷台か何か乗せて、レビテトをかけて引っ張る。という方法ならば可能かもしれない。
その引っ張り役も、かなり体力がいるが。
「……うーん、台を引っ張って、足を引っ張られる……」
「何の話だ?」
「なんでもない」
126アンタッチャブル 3/5:2006/04/22(土) 00:28:33 ID:ioHmjmbiO
次にマーダー情報の交換。おそらく一番重要。
「アリーナっていう若い女と、名前は知らねぇが銀髪ロンゲのスカした野郎はマーダーだ。
 特に本物のアリーナには気を付けろ。コピーは改心させたから平気だぜ!」
「意味不明なんだけど」
当然のツッコミを頂戴し、ハッサンは一からアリーナについて説明する。
と言ってもアリーナ本人から貰った情報が全てなのだが。
アリーナが分裂した事、コピーアリーナは残忍だが更生した事、オリジナルアリーナはネコ被った邪悪である事。
余談だがミネアとの出会いにまで遡っていたので、説明がかなり長くなっていた。特にミネアの美談。
ルカとアンジェロは大人しく話を聞いていたが、後半になるにつれて表情が変わっていった。
「……し、信じられなーい」
ルカの感想第一声。ケフカの真似である。あまり似てない。
「信じらんねぇのも無理ねぇが、世の中には、こんな狡猾で計算高くて血も涙もねぇやつがいるってこった」
「じゃなくて、ねぇ」
『そうねぇ』
ルカとアンジェロは、更に離れてハッサンを見つめた。じっとりとした視線で。
「な、なんだその目は!」
「だって。目の前で殺人したばっかの人の話を、そのまま信じるってのも、なんか」
『良く言えば、純粋ね』
「んだと、今の話のどこが疑わしいってぇんだ! えぇ!?」
「えー、どこって」
ハッサンの怒鳴りにも怯まずに指折り数え挙げていくルカは意外と肝っ玉座ってる。
「本当に、会ったのがコピーで会ってないのがオリジナルなのかなー、とか。
 本当に、そのアリーナって人は反省したのかなー、とか」
ルカに合わせてアンジェロは頷く。
「本当に、会ってない方は悪者なのかなー、とか。
 本当に、分裂なんてしちゃったのかなー、とかさ」
「あいつはミネアさんを殺したことを後悔してるっつったんだ! 心から!」
興奮して、ハッサンは拳をわなわなと握り締めた。もちろん怒りで。
「それも嘘だっつぅ気か? 自分で聞いたのか? わかったような口聞くんじゃねぇ!!」
そして案の定、爆発した。
ハッサンの身はもちろん心配だが、やっぱり離れていてよかったと、子供と犬は安堵した。
127アンタッチャブル 4/5:2006/04/22(土) 00:32:54 ID:ioHmjmbiO
「…………けっ」
爆発した事で興奮が冷めたのか、ハッサンは大人しくなる。
「ハッさん、俺は俺の思った事を言っただけだからね」
あくまでルカは考えを述べたまでで、押しつけたり否定したりをしたいわけではない。
「思うのは勝手でしょ。なんだっけ、そーぞーのじゆう?」
ハッサンは顔をフイと背けた。大人しくなった代わりに、口を聞こうとしなかった。
大人気ない。
「……ナナメだよ。機嫌が」
『しばらくは触れない方がいいわね。精神的には』
「身体的にもだけど」
ルカは溜め息を吐いてアンジェロを見下ろした。彼女も首を横に振る。
「……俺の話はあとでいっか。進もう」
ハッサンは何も答えない。
スライムナイトの事や、ギードから教えられた「銀髪はやばいのが多い」事などを伝えたかったが、こんな状態では無理そうである。
ハッサンを連れながら、ルカとアンジェロは適当に話をする事にした。
『恩人のミネアという女性が絡んでいるから、アリーナという少女を信じたいのかしら』
ハッサンが怒ったという事は、少なからず疑いを持ったという事。
それでも感じたのは、信じたいという願望。ルカは、そんな気がした。
「どうなんだろ……もう何を信じたらいいのか、わかんないね」
『そうね。この世界にいると、全てを疑いたくなってしまうわ』
「そんなのいやだよ」
ルカは一瞬だけ淋しそうな表情を浮かべるが、すぐにしっかりとした目付きに変わる。
「俺は、アンジェロのことは信じてるからね」
『ありがとう。私もよ』
雲に乗った仏頂面の巨漢と、犬と、それと会話する子供。
見た目だけでも妙な組み合わせの三つの影は、ただひたすら草原の中を進んでいった。

何が嘘で何が本当なのか、今はまだわからない。
何が嘘で何が本当なのかわかるときが来るのか、それもまだわからない。
何を信じて何を疑うか、結局は、自分自身で決めるしかない。
128アンタッチャブル 5/5:2006/04/22(土) 00:35:24 ID:ioHmjmbiO
【ルカ
 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 風のローブ
 シルバートレイ ひそひ草 様々な種類の草(説明書付き・残り1/4)
 第一行動方針:アンジェロをスコールに会わせる
 最終行動方針:仲間と合流】
【ハッサン(HP1/10程度、危機感知中)
 所持品:E:爆発の指輪(呪) ねこの手ラケット チョコボの怒り 拡声器
 第一行動方針:ふてくされる
 第二行動方針:オリジナルアリーナと、自分やルカの仲間を探す/呪いを解く
 最終行動方針:仲間を募り、脱出 】
【アンジェロ 最終行動方針:スコールに会う】
【現在位置:カズス北の草原】
129名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/23(日) 00:04:50 ID:Alekl7zcO
二次創作なんてキモイよ
130伝説は終わらない:2006/04/23(日) 12:38:26 ID:zHxOhb+K0
シュウゥゥゥゥ……ホシュウゥゥゥゥゥゥゥ…………

フェイスヘルムから漏れ出る呼吸音が夜の静寂に微かな波紋を響かせる。
夜空に踊る月が照らし出すは白銀の甲冑。
始めは東、次は西。幽鬼の如き足取りで放浪を続ける鉄の騎士。


各地で巻き起こる怒号と悲哀。
当然のように繰り返される出会いと別れ――――――――そして、死。


同じ世界に在りながらそれら全てと無関係な楽園に彼は居る。
彼は、居る。

ホシュウゥゥゥゥ……ホシュウゥゥゥゥゥゥゥ…………


【リック
 所持品:ゾディアックストーン 黄金の腕輪 E:さまようよろい(DQ5)
 第一行動方針:ひたすら彷徨う
 基本行動方針:スレの保守】

【現在位置:???(実はアルティミシアの居城で三角座りしてる可能性も捨てきれない)】
131名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/23(日) 21:10:19 ID:wSSPhGbk0
>>129
ツンデレ乙。
132人を殺したりするのはいけないことです 1/4:2006/04/24(月) 04:31:29 ID:RGSbXZtq0
焼けるようなのどの奥の痛みに苦しみながら、何とかぎりぎりでそれを胃の腑へと送り返すことに成功する。
この程度の光景など戦場では当たり前のことじゃねえか? 畜生!
割と凄惨なものが残されているとはいえ新兵のような反応を見せる自分に心中で悪態もとい活を入れる。

命のやり取りの事実を雄弁に語る血の香りが鼻を刺激する。
どうしてそうなったのか考えるまでもない回復の光とそれに包まれた女が見える。
傍目にももう生きていないことが明白な身体が見える。
ライアンがそれに近づいたため光が当たり、形の歪んだ頭の無残な姿が目に入った。


分かった。知りたくもない事であったが、いま分かった。
オレはあの時、灯台で死んでいたらしい。
さんざアマちゃんを馬鹿にしていたが歩く死人予備軍だったのは自分も同じだったってワケだ。


湧き上がる気持ちに任せてアリーナを罵り、切りかかる事をしなかったのは
嫌悪感と強がり、そして弱気の異なる要素が一様にブレーキの役割を果たしたからに違いはない。
だがその負の加速度に引っ張られて今度もたらされるものは劣等感と自己嫌悪。


分かった。分かっていたさ。
自分の実力なんかたかが知れてるって。
だが、この程度でビクつくほどに心の奥まで病んでるなんざ考え…いや、目をそらしていただけだ。
生存のために必要なものさえ傷ついた現実、正直自分に腹も立つし気に入らない。
しかし、だからといってオレには生き残る価値が無いなんてことがあるか?

133人を殺したりするのはいけないことです 2/4:2006/04/24(月) 04:32:43 ID:RGSbXZtq0
ライアンとウネの婆さん、眼に包帯を巻いた見たことのない奴の三人が何事か話しているのが見える。
交わされているであろう反吐が出るような会話内容を想像し、けれどアルガスに出来る事など地面を蹴りつけることぐらい。
口中に溜まった唾を吐き捨てる。


分かっている。よーく分かっているさ。
この世にゃ正義とか正当防衛とか宗教とか殺しを正当化しちまうクソがいくらでもある。
そいつが目の前で現在進行形、分かっているから苛立たしい。
人殺しは平気な顔で仕方なくだとか仲間のためだとかいうのだろう。
でなくとも言い訳すれば慰めの言葉をもらい、悲劇のヒロインぶれば同情をもらって回るのだろう。
ああ、信頼される奴はいいねえ。言われなくても分かってるさ、英雄ってのはそんなもんだ。
貴族たるオレが懸命にやって手に入れられないものを簡単に手にしてやがる。
ラムザもそうだったな。自分の正しさを信じ、俺が抱える正しさを一顧だにしやがらねえ。
だから、オレは嫌い憎むわけだ。ラムザも、こいつもな。


アリーナの回復に当たっているウネ、その紹介を受けたクリムト、二人から受けた説明、得た情報はライアンを少なからず動揺させる。
ボロボロの白いコートの男=ロザリーたちが待っているサイファーという男、ということ。
「そいつは、ちょいと面倒なことになったねえ」
苦々しく顔をゆがめて二人を見回す。
「この子が起きりゃもう少し詳しく分かるかもしれないが、今はわかってる事を正直に話すしかないだろう」
「私も説明に赴くべきであるとは思うのだが、今は手を離すことも出来ぬ」
「いえ、ウネ殿、クリムト殿、説明のほうは拙者に任せてくだされ。
 それよりもどうかアリーナ殿のことを頼みますぞ」
「……ああ、任せとき!」

134人を殺したりするのはいけないことです 3/4:2006/04/24(月) 04:34:19 ID:RGSbXZtq0
説明の任を負い、再び治療に向かう二人から離れたライアンは
さっきはそこに立っていたはずなのに姿が見えないアルガスに驚き、すぐに見つけられたその姿に安堵する。
「アルガス殿、アルガス殿」
当然のように声をかけたライアンに反応し、じっと見ていたものからこちらへと視線を移すアルガス。
「なんだよ、ライアン。うるせーな」
「おや、名簿…何か取り込み中でしたか、これは失礼」
「ふん……それで。何がどうなったっていうんだ? それにあの流しの回復屋は誰なんだ」
「回復屋? 包帯の方ですか、あれはクリムト殿という賢者殿だそうですぞ。
 ああ、あの死亡した方はテリー殿と言ってクリムト殿と同行していたそうなのですが……」
テリー、な。銀髪が気になって名簿を見直したからわかっているさ。
「もともと精神が不安定な状態があったそうですが、突然暴れ出して。
 核心の部分はクリムト殿も気絶して知らぬそうで、詳細はアリーナ殿が目覚めないことには。
 加えてロザリー殿とイザ殿が待つといっておられたサイファー殿がどうやら間に割って入ったらしく」
チンピラがねぇ、と声に出さずに言う。
「緊急避難としてクリムト殿がバシルーラで吹き飛ばしてしまったと……
 それでですな、もう一度ロザリー殿とイザ殿のところへ説明に行くのですが、アルガス殿も来ませぬか」
「あいつらのところにか」
色を被せられたテリーの文字と、写真に一瞬だけ視線を戻し、ぱたりと名簿を閉じる。
小さく鼻で笑った次の仕草にはライアンは無反応、
気づかれなかったようだ。どう反応したものかわからなかっただけかもしれないが。
「まあいい。それじゃさっさと行くとするか」


殺しに足が竦んじまおうとオレはオレ、自分の命こそが最優先に守るべき価値だ。
中には自己犠牲バカもいるだろうが、ほとんどの人間いや生命にとってこいつは正しく縋るべき価値だろう?
それはいいさ。いつ考えても究極的にはこれ以外の答えは見つからないだろうから。
大事なことは汚れた人殺しなんぞに英雄面されたくないってことだな。
イザのアマちゃんはアリアハンでの情報交換のときテリーを仲間だと言っていた。
ぶちまけてやったらアイツはどう思うだろうか?
「アリーナがお前の仲間のテリーを殺しちまいました」ってな。

135人を殺したりするのはいけないことです 4/4:2006/04/24(月) 04:36:09 ID:RGSbXZtq0
【アリーナ (左肩・右腕・右足怪我、腹部重傷、昏睡) 
 所持品:プロテクトリング、インパスの指輪
 第一行動方針:不明
 基本二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【ウネ(HP 3/4程度、MP消費) 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:アリーナの回復
 基本行動方針:ザンデを探し、ゲームを脱出する
【クリムト(失明、HP2/3、MP消費) 所持品:なし
 第一行動方針:アリーナの回復
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーンの町・中央部】

【アルガス
 所持品:カヌー(縮小中)、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク
 妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、
 マシンガン用予備弾倉×5、タークスのスーツ(女性用)、エクスカリパー
 第一行動方針:ライアンについていく
 第二行動方針:人殺しのアリーナさんの事について讒言する
 最終行動方針:脱出に便乗してもいいから、とにかく生き残る
【ライアン 所持品:兵士の剣、折れたレイピア、命のリング
 第一行動方針:イザとロザリーにサイファーのことについて説明する
 第二行動方針:アルガスに借りを返す】
【現在位置:カナーンの町 移動中】
136暗き森での出来事 1/12:2006/04/24(月) 17:09:35 ID:gCxbqkOX0
マティウスとゴゴは運良くウィーグラフとアリーナに遭遇することに成功した。
ヘイストを使い何とか先回りができた。
「どうやら上手くいったようだな。…覚悟はいいな?アリーナよ」
とビームウィップをとりだす。いままでただの棒だったものは光線を出し始めた。
そしてゴゴもいつでも戦闘に行けるようソードブレイカーをかまえた。

アリーナはまさか外で奴らと遭遇されるとは思わなくて動揺したが、すぐに
臨戦態勢に入る。
(関係ない。今度は負けない!外で出会ったのは計算外
だけど、この地形は利点もあるわ!!)
「それはこっちのセリフよ!」

一方のウィーグラフもいつでも戦えるように間合いを取った。

…しかしどう出るべきか
さっきの放送までに読んでいた本によると
この黒服―――マティウスは相当の実力者であることがわかった。そして、実際
対峙してみると並ならぬ威厳と威圧感をも持っていた。その隣にいる男、ゴゴについてもあの本で調べた。昨日のことといい、奴の技はかなり脅威だ。何といっても他人の行動を真似ることができる。うかつにこちらの技をだすことは危険だろう。
…が、こいつは付け入る隙もある。どうやら、奴の物真似はその真似した対象者の資質…つまり魔力などは真似できないようだ。地力さえ負けていなければ
対処できないこともない。ただ他人の技を使えるというのは
やはり脅威でありことには変わらないが。この二人、なかなか手ごわい面々だ。しかし、
137暗き森での出来事 2/12:2006/04/24(月) 17:11:31 ID:gCxbqkOX0
ウィーグラフは決して臆することはない。戦いにおいてそのような精神面での動揺は
命取りになるということをわかっているからだ。
そんなことを考えていた時
「黒服の隣にいる奴は私に殺らせてくれない?」
隣にいるアリーナはそう言った。



「それは…魔石!!」
「ロックよ、貴様はこれを知っているのか?」
ピサロは珍しくロックに尋ねた。ピサロはこれから戦闘に遭遇
することに備えて持ち物を確認している時、ロックがたまたま
ピサロの持っている魔石を見つけたのだ。
「ああ、これはおそらく魔石バハムートだ。これを持った状態
で暫く戦闘をすればフレアという魔法が覚えられる。また、バハムート自体を
呼び出すこともできるぜ。」
興味を持ったのか、ピサロはいろいろとロックに質問している。ザンデもその魔石の魔力に興味を持ちロックとピサロの会話を聞いている。ケフカは…相変わらずである。
「すると、貴様はもともと魔法が使えなかったのか?」
「ああ、俺の世界では魔法というものは遥か昔に失われた存在だったからな。」
ロックは魔石によって魔法が使えるようになった。しかし、
その威力というのはティナやセリス、リルムに
比べると劣っている。魔力がそこまで高くないからだ
138暗き森での出来事 3/12:2006/04/24(月) 17:13:23 ID:gCxbqkOX0
…まぁこの世界では回復魔法などはそこまで
その人自身の魔力とは関係ない。だから彼の魔法も無視できないが。

「この魔石を持ったまま魔法を唱えると通常よりも魔力が高い状態で
魔法を唱えられるようだ。」
「え…本当かよ?それは知らなかった。」
「ぼくちんは知っていましたがねぇ、この男もすぐに気づいたのに
お前はほーーーーんと鈍感ですねぇー」
と横槍をいれるケフカ。
いちいちうるせぇなと呆れるロック。



「何か策でもあるのか?」
ウィーグラフは視線を変えずに言った。アリーナはうなずき
「必ずしとめるわ、だから黒服をひきつけておいてくれない?」
ウィーグラフは少しの間迷った。…だがアリーナの返答を聞く限り、迷いは
なかったし、その語調は自信に満ち溢れていた。また、夕方のようなラムザのことを話した時とも違う。
本当に何か策があるのだろう。
それに、奴らを分断させた方がこちらも戦いやすい。
ウィーグラフは無言でザックからあるものを取り出した。

「くるぞ!!ゴゴ、気をつけろ!!」
「くるぞ!!マティウス、気をつけろ!!」

ウィーグラフが取り出したのはグリンガムの鞭。彼は鞭については疎いが、
攻撃するために出したわけではない。鞭に注意をひきつけられればよいのだ。
幸いにもこの鞭自体の殺傷能力は高い。
攻撃対象はややマティウスよりにする。
マティウスは数歩下がり間合いを取りながらビームウィップで迎撃する。一方ゴゴは横に
動くことにより鞭の攻撃範囲から逃れる。その刹那、アリーナが持ち前のスピードで
ゴゴの間合いに詰め寄る。完璧なタイミングであったがゴゴは冷静であった。
139暗き森での出来事 4/12:2006/04/24(月) 17:14:51 ID:gCxbqkOX0
ミラクルシューズの効果で間合いを再びとり、ソードブレイカーで牽制する。
アリーナには攻撃する隙はほとんど無かった。
「ちっ…」
ウィーグラフは敵の冷静な判断に舌打ちをした。しかし、
アリーナが再び持ち前のスピードと格闘術でゴゴを追い詰める。
(む…やはりこの女の素早さは高いな。間合いをかなりとらねば危険だ。)
ゴゴはその場から遠ざけられ、二人は暗き闇の森に消えていった。
結果的には二人を分断させることに成功した。しかし、マティウスは
「さて、貴様の実力を見せてもらおうか」
とわずかながら笑みを出し余裕をもって言った。

なぜだ…なぜこんなにも冷静なのだ…!?
仲間を分断させられたのに。
ウィーグラフは疑問に感じた…がすぐに気持ちを切り替えて鞭をしまい、プレデターエッジを取り出した。


一方でマティウスたちも彼らに遭遇するまでに何も考えていなかったわけではない。
「敵は我らを分断させてくるかもしれない。」
マティウスは言った。
ゴゴは今マティウスの物真似をしているため彼の言ったことの真意が
大体わかる。なので、黙って聞いている。
「アリーナは一度多人数での戦いで敗れている。私たちにな。だから
その苦手意識が無意識にあるだろう。また、先ほどの青年の話によると
おそらく敵は二人。今度は二対二になる。」
ここでマティウスは一息を入れた。
140暗き森での出来事 5/12:2006/04/24(月) 17:16:13 ID:gCxbqkOX0
「そのような互角な状態でもアリーナ…いやそのもう一人の方も一対一に
持ち込むほうが良いと考えるだろう。」
この話とマティウスの思考を総合してみてゴゴは全てを理解した。
「そうだな、敵のほうは一時的の結託であろう。お互い利用しあっていて隙あれば
寝首をかく、そういう関係だな。一緒にはなるべく戦いたくない。」
「そういうことだ、遭遇したらおそらくアリーナは私を殺しにかかるだろう。
一度殺されそうになった相手に挑むのだ。一刻も早く殺したいだろう。
…まぁ私はそうなることはないだろうがな。」
最後の方は微笑しながら言った。
そしてこうつけくわえた。
「ここでいっているのはあくまで机上の空論。確率はそこまで高くないし、
何より奴らに遭遇することができないかもしれぬ。」

そして、少しの間の後
「だが、もしそうきたらどうする?」
ゴゴは尋ねた。

「あえて敵の作戦に乗ろう。下手に小細工はしない方がいいだろう。奴らは相当な
実力を持っているが我らも実力では負けていないはずだ。」
最後にマティウスは
「…ゴゴよ。絶対に死ぬな。あくまで最終目標は魔女を討伐することだ。
それまで死ぬわけにはいかぬ。そして何より…」
「私の大切な友だから失いたくない…か?」
ゴゴは言った。自分で言うのは変だと思ったがマティウスの自分に対する
気持ちがいたいほどわかり、自分もこのことを言いたかったからだ。
141暗き森での出来事 6/12:2006/04/24(月) 17:17:44 ID:gCxbqkOX0
マティウスは
「さすが、物真似師だな」
笑いながら言った。


「さぁ来なさいよ、殺してあげるから♪」
マティウスの言った『机上の空論』はほぼ現実となったが
唯一の違いはアリーナが標的としたのはゴゴであったことである。
アリーナは状態異常があったが自信はあった。
(一対一なら私は絶対に勝てる!!その証拠に奴は私のスピード
に完全にはついていけなかった!)
彼女の言った策とは『一対一での絶対の自信』のことである。
昼間での城でのゴゴの四連撃を受けた時、自分より力は劣っていたし
そして今素早さも自分の方が上だと確信した。
この絶対的な自信は偽りがなく本物だった。
(いける!!)
アリーナはいっきにたたみかけようとした。

「サンダガ」

その瞬間に天から雷が降りてきた。最初に言っておくがゴゴはアリーナに
当てるためにやったわけではない。まず、一つ目はマティウスに自分の位置を教えるためである。
他の参加者に気づかれると考えたが予想以上にマティウスと距離が
離れてしまった。そのためだいたいどの辺に自分がいるのか、それを分からせる
142暗き森での出来事 7/12:2006/04/24(月) 17:19:03 ID:gCxbqkOX0
必要があった。二つ目はアリーナへの牽制である。ゴゴは彼女の素早さを
分かっており、それがどれだけ脅威かも理解していたからだ。

尚、本来なら悪魔の尻尾を装備しているアリーナは黒焦げになるはずだったが
その前に木が避雷針の役割をした。当然このことは二人とも分かるはずはなかった。

(危なかった!そうね…こいつもやっぱりあなどれない。一度こいつに私は
殺されかけた。だから絶対に殺してやるんだから。……もう奴の魔法、物真似、
そして全てを軽視しないわ!!肝心なのは死なないことよ!)
アリーナは己の慢心を反省し、再びゴゴに襲い掛かる。

場所は変わってこちらはもう一つの戦いの場。そこには二人の男が
一進一退の攻防を繰り広げていた。
「貴様、なかなかやるではないか」
相変わらず余裕さえ見える口調で話すマティウス。
(本通りだな…かなりの強敵だな。ここまでの実力を持った
奴とはあったことがない。しかし、戦闘での経験などは
私も負けていない!!)
ウィーグラフはマティウスに斬りかかる。マティウスも上手く
ビームウィップを使いその攻撃に対応する。
とそこにさっきのサンダガが見えた。
そして、マティウスはその雷の意味を察知し彼もそれに応える。
「なっ……!?」
マティウスが繰り出したのはいんせき。空から何百のいんせきが…とまではいかないが
ウィーグラフを襲う。
143暗き森での出来事 8/12:2006/04/24(月) 17:20:17 ID:gCxbqkOX0
マティウスは意図的にいんせきの数を少なくした。ゴゴに教えるだけでいいしおそらく多く繰り出しても、
敵の実力から見てかわされるだろうと思ったからだ。
案の定ウィーグラフは
予想外の攻撃に驚愕を隠し切れなかったが、冷静に対処しいんせきをかわすことができた。
(ラムザを殺すまで…私は死ぬわけにはいかない!!)
「行くぞ!!死兆の星の七つの影の 経路を断つ! 北斗骨砕打!」



魔石の話がひと段落したすぐ後に例の雷、そして空から降ってきたいんせきを確認した。
「あれは…まさか!!…っておいザンデ!!」
ザンデはサスーン城の方角からその出来事の方に足を向けた。
「あれはおそらくメテオに近い魔法。相当な魔力を持つものに違いない。
協力を求めに行くのだ。」
「何か前にもこんな場面があったような気がするな…
ってそんなことより、じゃあ雷のあったほうはどうするんだよ!?」
ロックはこの魔法が意味することはゲームに乗っている奴が戦っていると
確信した。だからもう一つの魔法の方面も放っておけなかった。
だがザンデは即座にこう答えた。
「知れたこと、私は力のある方を求めにいくだけ。」
おいおいと溜息をつくロック。
「ならばロックよ。貴様が行けばいいではないか?」
ピサロはロックに言った。
「待てよ、俺はこいつらを野放しには…」
144暗き森での出来事 9/12:2006/04/24(月) 17:21:18 ID:gCxbqkOX0
ロックは何か言いかけたがピサロは無視して、冷酷に言い放つ。
「私は夕刻にいったはずだ、中途半端では何もできないままに死ぬことになると。」
ロックの心中では夕方のあのピサロの言葉がフィードバックされた。
続けてピサロはこう言った。
「ザンデはおそらくまだ牙をむかぬ。そしてそこにいる道化師もしかりだ。」
ザンデはもう魔法の発信源の元に向かっている。ケフカもまた駄々をこねながらも
ついていく。ロックは即決した。
「分かった…。後でまた落ち合おう。」
ロックは雷の落ちた場所に向かおうとする。
「待て…これをもっていけ」
ピサロはロックに何かを投げた。それはさっきの魔石バハムートだった。
「貴様の方が扱いなれているだろう。……早く行け」
「ピサロ、すまない…!!」
ロックは礼をいい今度こそ雷が落ちた場所に向かった。
ピサロもザンデを追いかけ始めた。彼は最後ロックに何か言いかけたがやめた。

(この森で唯一この腐ったゲームに乗っていないとわかる奴だ。
そう簡単に死なれても困る。)



「あれは…!?」
「かなりの魔力を持つものが放った魔法のようじゃな」
145暗き森での出来事 10/12:2006/04/24(月) 17:22:37 ID:gCxbqkOX0
ラムザとギードもまた二つの魔法を見ていた。
「どうします?もしかしたらテリーもあそこに…」
「……他に探すあてもない。テリーたちが襲われている恐れもある。
暗闇の森はかなり危険じゃ。だがわしは止まるわけにはいかぬ。それでも…
おぬしはくるか?」
「はい!!」
二者はさらに暗く深い森に入っていく。二人は急いだ。
しかし、ギードは傷や疲労でその足取りは重い。そしてヘイストの効果もまもなく切れてしまう。
ラムザは一刻も早く向かいたかったがギードの歩調にあわせる。
自分の選んだ道はまっとうしたい。この方を…死なせたくない。そのような
気持ちが強かった。
二人は近かった方の魔法…マティウス達のいる方向に向かった。

この森は今、修羅場となる。

【ギード(重傷、MP大幅消費、ヘイスト) 所持品:首輪
 第一行動方針:魔法の発信源(マティウスとウィーグラフがいるところ)に向かう
第二行動方針:テリー、ルカとの合流
 第三行動方針:首輪の研究】
146暗き森での出来事 11/12:2006/04/24(月) 17:24:06 ID:gCxbqkOX0
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)(HP4/5、ヘイスト)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:同上
第二行動方針:ギードに随行し、彼の仲間たちにテリーを託してからユフィを探す  
最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
※ヘイストがまもなくきれます。

【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
 第一行動方針:魔法の発信源(マティウスとウィーグラフがいるところ)に向かう
第二行動方針:サスーンへ向かう
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/2程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 黒のローブ
 第一行動方針:同上
第二行動方針:ザンデ・ケフカを監視しつつ同行 
 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ケフカ(MP2/5程度)
 所持品:ソウルオブサマサ、魔晄銃、ブリッツボール、裁きの杖、魔法の法衣
 第一行動方針:同上
第二行動方針:観察を続けながらザンデに取引を持ちかけるタイミングを待つ
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】

【ウィーグラフ (疲労、毒、スリップ)
 所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×6、ブロードソード、レーザーウエポ        
ン、 フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、 黒マテリア、
グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾 首輪×2、研究メモ
第一行動方針:マティウスを殺す
第二行動方針:アリーナを殺してリュカとエドガーに近づき、二人を利用してピエールを服従させる
基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を探し殺す(ラムザが最優先)】
147暗き森での出来事 12/12:2006/04/24(月) 17:25:12 ID:gCxbqkOX0
【マティウス(MP1/2程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)、ビームウィップ
 第一行動方針:ウィーグラフを倒す
 第二行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】

【アリーナ2(分身) (毒、スリップ) 】
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 第一行動方針:ゴゴを殺す
第二行動方針:ピエールを葬り、サスーンに向かってリュカを殺す
 第三行動方針:ラムザを殺し、ウィーグラフにアリーナを殺させる
 最終行動方針:勝利する】
【ゴゴ(MP1/2程度)
 所持品:ミラクルシューズ、ソードブレイカー、手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:アリーナを倒す
基本行動方針:マティウスの物真似をする】

【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート
 第一行動方針:魔法の発信源(ゴゴとアリーナ2のいるところ)に向かう
 第二行動方針:事態の処理後、ピサロ達と合流する
第三行動方針:ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】

【現在位置:カズス北西の森南部】
148名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/25(火) 23:05:28 ID:veQ0TvFkO
149闇に生まれる 1/2:2006/04/26(水) 00:21:37 ID:SLWD7jbH0
暗い暗い暗黒の洞窟。
その闇の中でスミスはゆっくりと目を覚ました。
昼間のブオーンとの戦いから既に6時間以上の時間が過ぎ去っている。

「ふぁあ〜〜よく寝た」

そういってスミスはゆっくりと身体を起こした。

「あれ?」

そして自分の身体の違和感に気付く。
身体は以前より幾分も巨大になり、濃紺の鱗に覆われていた。
折れた翼は完全に再生され漆黒に染まっている。

「これは一体……あの爺さんを食べたせいかな?」

その通りだった。
古の大魔導師ノア。その強大な魔力を受け継いだドーガ。
スミスはドーガの身体を食事という形で体内に取り込むことでその魔力を吸収したのだ。
そしてその魔力はスミスをより強大な存在へと変態させた。
その姿は世界によっては「闇のドラゴン」と呼ばれただろう。

「まあいっか。強くなったみたいだし不便はないよね」

あっけらかんとスミスは自身の変化を受け入れると洞窟の外に出ようと足を踏み出した。

「あいたっ!」

全身に激痛が走り、スミスは再び身体を伏せる。
ブオーンの痛恨の打撃の後遺症と強引な変態による影響によって
スミスの身体は未だ満足に動ける状態ではなかった。
150闇に生まれる 2/2:2006/04/26(水) 00:23:04 ID:SLWD7jbH0
「う〜ん、自由に動けるようになるにはもう少し休まないと駄目だなぁ」

彼個人としてはなるべく早くゲームに復帰したかったのだがこの状態で無理に外へ出ても
何も出来ないだろう。
すぐに殺されるか満足に動くこともできず放置されるだけだ。

「仕方ないね」

恐らくカインとの約束の時間も既に過ぎ去っているだろう。
手遅れならばカインには悪いが無理に急ぐ理由もない。
スミスは諦めると再び目を閉じた。
次に目覚める時こそゲームに復帰する時。
その時はこの新しく手に入れた力で自ら殺しに行ってもいいかも知れない。
そんな事を考えながらスミスは自身を回復させるための眠りに落ちていった。

そして闇の洞窟の中に動く物は再び無くなった。
しかし、確実に一つの脅威が産声を上げていた。

【スミス(HP1/5 変身解除、洗脳状態、闇のドラゴン)
 所持品:魔法の絨毯 ブオーンのザック
 第一行動方針:眠り、身体を癒す
 第ニ行動方針:身体が癒えたらカインと合流する
 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地:封印の洞窟 地下1F】

※スミスはドラゴンライダーから闇のドラゴン@DQ7へと変化しました。
 全体の能力がアップしましたが、巨大になったため飛行速度が若干減退しました。
 ・激しい炎 ・氷の息 ・かまいたちの3つの特技を新たに使用できるようになりました。
151名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/26(水) 20:36:17 ID:fAjSAdfCO
保守
152カポコン 1/13:2006/04/27(木) 00:09:48 ID:QhdHJ+BHO
眠ったタバサをベッドへ寝せる為、リュカとセージは隣の部屋まで運んだ。
それまでいた部屋のベッドは一つきりで、それをティーダが占領していたから。
しばらくして、セージだけが戻ってくる。その事を考慮してエドガーは尋ねた。

「父上は添い寝か?」
「付き添いですよ。変態ですか」
「リュカがか?」
「貴方が」

そんなやりとりをしつつ、二人は二日間の出来事と情報を交換し合う事にした。
色々あって、まだまともに話し合いも出来ていなかったので。

「僕は始まってすぐタバサと出会って、割と危機感の薄い初日を過ごしました」
「薄いのか」
「タバサにとってはハラハラだったかもしれませんが、ね」

ビアンカと一悶着あった再会。ギルダーと一悶着あった出会い。
二日目、旅の扉でビアンカと離れ離れになった事。そしてカイン達との出会い。

「カインとスミスか。そういえば、待ち合わせの事をすっかり忘れていたな」
「さっきもチロッと言ってましたね。マティウスさん達が向かったんでしたっけ」

ちなみに、さっきとは日暮れちょっと前の事。

「ああ。この約束はもう諦めた。……が、それよりも気になる事がある」
「もったいぶらないで、どうぞ」
「カインは、タバサと君に会ったことなど何一つとして語らなかった。
 もちろんタバサがリュカの娘と知りながら、な。
 何かを隠している気はしたが、はたしてその事だったのか」
「ふぅむ?なるほど」
153カポコン 2/13:2006/04/27(木) 00:13:47 ID:QhdHJ+BHO
セージは顎に手を当てて考えるポーズを取った。
エドガーも似たようなポーズを取るつもりだったが、先を越されたので仕方なく腕を組む。
しかし片手が無いので組みにくい。些細な事の方が不便さを感じやすかった。

「……見捨てて置き去りにした事を、パパに叱られるとでも思ったとか?」
「そんな馬鹿な」
「そんな馬鹿は置いといて。意図はあったんでしょうね、あまり良くなーい意図が」

良くない意図。ぼんやりと、言いたいことは伝わった。
エドガーも同じような事を考えていたから。

お人好しの完全な白か、アリーナと協力関係にある完全な黒か。
アリーナを助けていた事を考えると、そのどちらかしかない。
そして今の話で天秤はやや黒に傾いた。だが、明確な証拠も確信も無い。

「グレーゾーンに留めて、警戒しておくのが得策ですよ。さて、どこまで話しましたっけ」

セージは話を再開した。
サスーンへ向かい、カインらとはぐれる。
ビアンカとギルダーの亡骸との遭遇。マティウスらとの出会い。
立て続けにアリーナの逃走。デールの強襲に、アグリアスの死。
セージは淡々と話した。

「で、貴方がたに会って以下省略」
「……そうか」

まさか自分がデールを追い払った所為で被害が出るとは、そこまで考えていなかった。
その事を話すべきか話さぬべきか。
エドガーは迷ったが、とりあえず先に自分の情報を伝える事にした。
154カポコン 3/13:2006/04/27(木) 00:17:54 ID:QhdHJ+BHO
「私は、最初にバーバラという少女と連絡を取っていた。
 ひそひ草というアイテムで……そういえば、あれは何処へ行ったのだろうか」

デッシュと出会い、行動を共に。盗聴されている為、首輪の研究については口にしない。
ザックス、シンシア、ランドと出会う。それから“ちょっと色々あって”片手を失った。

「詳しくは後で説明するが」
「そうですか。じゃあ後で」

エドガーがそう言うのだから、今は話せない理由があるのだろう。
そう思い、セージは特に追求しなかった。

「それから……君は、プヨプヨに鎧が乗った出で立ちのモンスターを知っているか?」
「なんですか急に。ぷよぷよろい?」

セージは勝手に略した。吹き出しかけたのを堪え、エドガーは続ける。
旅の扉の前で、待ち伏せていたそのモンスターに襲われた。
デッシュとランドを殺され、ザックスと分断させられる。

「そのモンスター……まずい事に、ちょっとばかり心当たりがありますよ」

セージは引きつった笑いを浮かべ、名簿を引っ張り出してページをめくった。
しばらく手を動かし、求めるページを探し当てると、エドガーに渡す。
驚き、エドガーは瞳を大きく見開いた。

「まさしく、こいつだ!ピエールと言うのか……知っているのか?」
「知っているも何も、タバサとリュカさんの仲間なんですよね。はぁ……」
「…………はぁ!?」
155カポコン 4/13:2006/04/27(木) 00:22:54 ID:QhdHJ+BHO
エドガーは名簿から顔を上げ、溜め息を吐くセージを見る。
それから慌てて隣の部屋を振り返った。
もちろん目線の先には壁があるだけで、様子は見えないが。

「あの二人の仲間だと?」
「そうです、お隣さん家の仲間です。
 彼等の知人に殺されかけたので、今さら何があっても驚きはしませんが」

このゲームは人を変える、その事は身に染みていた。
ピエールは人ではないが(別に差別ではない)。

「けど、流石に言いにくいなぁ。ちょっとエドガーさん、教えてきて下さいよ」
「無理だ」

エドガーは即答した。言いにくいのは同じ。
一通り見終えた名簿を返しながら続ける。

「あいつは今、精神的低空飛行の真っ只中だ。
 タバサが居ることで、かろうじで墜落しない高さを保っているだけの、な。
 そんな時に仲間の暴走を告げてみたまえ。どうなる」
「逆に言えば、タバサがいる限り墜落はしない。そういう事になりますよ」
「……そういう事になってしまうな。訂正するから少し待て」
「大丈夫です、言わんとしてる事は伝わってますから」

セージは名簿をザックへ戻そうと思ったが、やめた。
話は続くだろうから、まだまだ確認事項があるかもしれない。

「でも、伝えない訳にもいかないのが現実ですよ。むしろ伝える義務があります。
 この話はリュカさんが戻ってきてからしましょう」
「そうだな、仕方ないが。……シンシアと旅の扉へ入り、この世界へ来た訳だが」
156カポコン 5/13:2006/04/27(木) 00:29:59 ID:QhdHJ+BHO
デールに襲われているリュカを発見し、救出と逃走(結局言わなかった)。
その後にカインとスミスに会い、アリーナを回復させてしまい、シンシアを殺される。

「そしてここへ向かい、同じく以下省略だ」
「なるほど。浮遊大陸へ来てから出会った人は同じ訳ですね」
「そのようだ。…………クソッ」

アリーナの事を思い出すと、苛立ちが起こる。エドガーは奥歯を噛み締めた。

「しかし、よくもまぁ、あんな捻くれた生物が存在できるものですよ。
 まるで、生まれた瞬間から既に悪で、善という概念が存在しなかったかのような」
「気が立っている時に訳の判らぬ話をされると八つ当たりしたくなる」
「ちょっと格好いい事行ってみたかっただけです。サラッと受け流して下さい」

手持ち無沙汰で、セージは名簿をパラパラとめくりながら言う。
あ行にリストされている人物のページで手は止まった。
勇者アルス。未だに出会っていないが、どこで何をしていのるか。セージは考える。
彼は助平だけど実力は確かで何故か人付き合いに恵まれているから心配はない。
が、せめて目撃情報くらいは欲しかった。

「……リュカさんとも、あまり情報交換はしていないんですよね。
 ぷよぷよろいの事を知らなかったという事は」

どうもセージはこの呼び方が気に入ってしまったらしい。語感が。
思わず気が抜けかけたエドガーだが、とりあえず首を縦に振る。

「一応、タバサが探している仲間の名前を教えておきますよ。エドガーさんは?」
「ああ。私の仲間も伝えておこう」
157カポコン 6/13:2006/04/27(木) 00:34:29 ID:QhdHJ+BHO
タバサは、ヘンリーとプサンと一応ピエールを。
セージは、アルスとその父のオルテガを(探してないがついでに)。
エドガーは、マッシュとロックとリルムを。注意人物としてケフカを。
それぞれ名簿を確認しながら教え合った。

「しかし、互いに欲っする情報を特に持っていないとは」
「そこの新参君の話を聞けば、新しい情報を入手できるかもしれませんけど」

セージは未だに気絶中のティーダを見た。エドガーも続いて目を向ける。

「……起こすか?」
「ベッドに先客がいるから、わざわざ隣まで運んだのに。
 でもま、いつまでも暢気に寝ていられるのも不愉快ですからね。起こしますよ?」
「ああ、頼む」

エドガーは白紙と筆記具を取り出しながら答えた。
それを不思議に思いながらも、セージはベッドに寄り、ティーダの身体を揺さ振る。

「おーい、気絶君。朝だよー」

しかし起きない。よほど疲れているのか、単に寝起きが悪いのか。
見兼ねたエドガーは、ザックからイエローメガホンを取り出すとセージに投げ渡した。
反射的にそれを受け取り、セージはぱちぱちと瞬きをする。

「何ですか、これは」
「それで彼を叩き起こして、ついでに状況説明をしておいてくれ。
 私は少し書き物をする時間が欲しい。終えたらコレについても話すつもりだ」

エドガーは無い右手を振って見せる。
やれやれと、メガホンで自らの頭をコツリと叩きながら、セージは溜め息を吐いた。
そして袖をまくる。なんだかんだでノリノリだ。
158カポコン 7/13:2006/04/27(木) 00:39:03 ID:QhdHJ+BHO
「必殺、賢者流ツッコミの術」

カポコン!
と、なんとも小気味良い音が部屋の中に響いた。
脳天の痛みに導かれ、久方ぶりにティーダは現実へと帰ってくる。

「ンなんだよワッカ……あと五分……」

しかし寝ぼけていた。そして寝返りをうって布団を被りなおす。
セージはティーダの耳元にメガホンを当てると、思い切り息を吸い込んだ。

「──わッッ!!」
「んが!?」

文字通り跳ね起きると、ティーダは周囲を見回して混乱した。
見知らぬ部屋に見知らぬ男が二人。
落ち着けという方が無理な状況ではあるが。

「え、え、何!誰、あんた!なんか頭痛い!ていうかどこ!」
「落ち着いて。メガホンで人を叩き起こすような人間に悪者がいると思う?
 とりあえずベッドの上に立つのは止めようね」
「わけわかんねッス!あんた誰だよ!」
「僕はセージ。あっちはエドガー。そして君は」
「ティーダッス。じゃなくて!はぁ?」

黙々と何かを書いているエドガーを尻目に、セージは状況説明をした。
一人でいる所にエドガーが話し掛けたら驚いて転んで気絶して仕方がないので保護。
現在位置と、隣の部屋にリュカとタバサの親子が居る事も伝える。
話を聞きながら自分の格好悪さに小さくなっていくティーダだった。
そのうち落ち着くと、記憶が整理されてきたのか、思い出す。
159カポコン 8/13:2006/04/27(木) 00:41:32 ID:QhdHJ+BHO
「そうえば、あんたセージだよな?さっきアルスって男が探してたッスよ」
「そう、アルスが…………え?」
「放送のちょっと前に、ここの本城で会ったんだけど」

ごつん、とセージはテーブルに頭をぶつけた。物凄いニアミスに魂が抜けた。
そしてエドガーは気にせず黙々と何かを書き続けている。

「大丈夫ッスか?」
「大丈夫……どんどん垂れ流していいよ」
「タレ?……そうだ、それと、エドガーってロックとリルムの仲間ッスよね、機械マニアの。
 ちょーっとあんたにお願いがあるんだけど、良いッスか?」

エドガーは黙々と何かを書き続けている、その手を止めた。
紙からティーダへと目線を移すと尋ねる。

「その二人に会ったのか?」
「ロックとは離れ離れになったけど、リルムとは待ち合わせ中ッス」
「待ち合わせ?」
「そッス。サスーン調べた後に……あああああああ!」

肝心な事を思い出し、ティーダは声を挙げた。
東棟が安全かどうかを調べて、ユウナ達の所へ戻るという使命があったのだ。

「やべッス!俺、どんくらい寝てた!?」
「数十分くらいだが、その待ち合わせの時間か?」
「それもそッスけど!ちょっと人待たせてるんで戻るッス!」
「ちょーっと落ち着こうね」
160カポコン 9/13:2006/04/27(木) 00:47:34 ID:QhdHJ+BHO
カポコン!!
と、本日二回目のメガホンの音が響いた。
物凄くセージとメガホンの相性が良いので、エドガーは譲ってやろうと思った。
そっちの方がメガホンも喜ぶだろうし。

「※◎〒≦☆∬&!!」
「何故か知らないけど君は欲しい情報の宝庫みたいだから。
 中途半端な所でいなくなられると困るんだよね」
「そうだな。まだ私も、君に話したい事がある」
「つーかココにタンコブあるっつーの!」

転倒時に出来たそれにメガホンが当たったらしい。
ティーダは涙目になって本気で痛がっていた。

「ごめんごめん。治してあげるから、君の置かれている状況を教えてほしいなーみたいな」

制限があるとはいえセージの魔力を持ってすれば、たんこぶ程度、ホイミで充分だった。
呪文を唱えながら手をバンダナ越しのティーダの後頭部にかざす。
ティーダの痛みは徐々に和らぎ、そして最後には消えていた。

「おお、すげーッス!……ん?」

しかし、よく考えたらサギだ。
イエスとは言っていないのに、治してもらったからには話さなくてはいけなくなった。
ここで頑なに話さない手もあるのだが、お人よしのティーダにはその考えが浮かばない。
161カポコン 10/13:2006/04/27(木) 00:50:22 ID:QhdHJ+BHO
「別に話すのは構わないけど、でも早く戻らないと、きっと心配してるッス」
「誰が、どこで?」
「ユウナとプサンが、本城で」
「……ここにも最新情報がありましたよ、エドガーさん」
「どれだけ情報を持っているんだ君は」
「何がッス……あそっか」

ティーダは隣の部屋にリュカとタバサがいる事を思い出す。
その二人はプサンの知り合い。親子もプサンを探していたのだろう、と考えた。

「なーんだ、じゃ早速、呼んでくるッスよ!」
「待て待て待て」
「どぉっつ!」

部屋を飛び出して行こうとするティーダの服を、エドガーは慌てて掴んだ。
急に引っ張られて転びそうになるが、ティーダはなんとか踏ん張る。

「ユウナというのは誰だ?」
「何だっつーの急に!俺の仲間ッスよ」
「女性か?」
「そッスけど」

ほほう、とエドガーは微笑む。
そして書きかけの『誰にでも判る首輪の盗聴に関する注意書き』のメモをポケットに突っ込んだ。
162カポコン 11/13:2006/04/27(木) 00:55:50 ID:QhdHJ+BHO
「レディを歩かせて、こちらは待機というのも無礼だな。私もお迎えにあがらせてもらおう」
「は?」
「その道中で君の話も聞いてやる。さぁ行こう」
「はぁ?」

ティーダは顔をしかめた。
エドガーが女好きだという事をまだ知らない。
しかもストライクゾーンが幅広い事も知らない。

「構わないな、セージ」
「一向に。僕はリュカさんに伝えておきますから」
「そうか。では行ってくる」
「なーんで勝手に決まってるんッスか!」
「行ってらっしゃーい」

セージは笑顔を作りながらメガホンを振って二人を見送ろうとした。
しかしその時。
三人の耳に、不可解な轟音が飛び込んでくる。
すぐ近くではないが、割と近くのような、それくらいの音が。

「な、なんッスか今の音!」
「さぁねぇ……レディファイトの合図かな?」
「レディはレディでも女性じゃない方のレディだが、な」
「はぁぁ?」

妙に落ち着き払った二人をティーダは交互に見る。
そんなティーダを他所に、二人は瞬時に作戦を練った。
163カポコン 12/13:2006/04/27(木) 00:59:52 ID:QhdHJ+BHO
「セージはリュカ達を頼む」
「ええ、気を付けて。ティーダ君もね」
「え、は?」
「行くぞ、少年!」
「え、あ、おッス!」

走り出したエドガーの意図を一応理解して、ティーダは流されるままに付いて行った。
今度こそ本当に見送ると、セージは隣の部屋へと向かう。
だが扉の前まで行くと、中からリュカが飛び出してきた。

「あ!セージ、今の音は……!?」
「判りません。エドガーさんとティーダ君が様子を見に行きました」
「ティーダクン?」
「気絶君の名前です。とりあえず僕達は待機しておきましょう。
 ……少し、話したい事もありますし」
「?」

本城にプサンがいるという事は伝える事にした。それから簡単に状況説明を。
今ここで、ピエールの件をリュカに言うか、セージは悩む。
その本人が迫って来ている事など、もちろん知る由も無い。
164カポコン 13/13:2006/04/27(木) 01:03:35 ID:QhdHJ+BHO
【エドガー(右手喪失 MP1/2)
 所持品:天空の鎧、ラミアの竪琴、血のついたお鍋、再研究メモ、ライトブリンガー、盗聴注意メモ(書きかけ)
 第一行動方針:音(ゼルの轟音)の発生源を調べる
 第二行動方針:首輪の研究/アリーナ2を殺し首輪を入手/仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服
 第一行動方針:音(ゼルの轟音)の発生源を調べる
 第二行動方針:ユウナ達の所へ戻る/首輪の解析を依頼する
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【現在位置:サスーン城 東棟の一室→外】

【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 魔力1/2程度)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子、イエローメガホン
 第一行動方針:待機&簡単に状況説明
 基本行動方針:タバサに呪文を教授する(=賢者に覚醒させる)】
【リュカ(MP1/2 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)+マテリア(かいふく)、ビアンカのリボン、ブラッドソード
 第一行動方針:待機
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【タバサ(睡眠中 HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
 所持品:E:普通の服、E:雷の指輪、ストロスの杖、キノコ図鑑、悟りの書、服数着、ファイアビュート
 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】
【現在位置:サスーン城 東棟の一室】
165名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/27(木) 03:51:50 ID:YnI7YmDrO

166名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/28(金) 15:52:00 ID:r2Wb5HdE0
保守
167巡る意思・継がれる遺志・騎士の意志 1/9:2006/04/29(土) 04:58:13 ID:toYICx9O0
「着いたぞ、フィン! 城だ!!」

ゼルが最後に放った轟音から数刻。
あれから僅かに歩みを速めたジタンとフィンは、ようやく森を抜け
サスーン城の門前まで辿り着いた。

「さっきの音が気になる。ここからは慎重にいかないと…」
「あっ! ジタン! あそこ、人が倒れてる!!」
「何!?」


「こいつは…。確か、ゼル、ってヤツ…。リノアの仇を取ると言っていた…。
 …ダメだな。死んでる」

城の前に横たわるゼルの死体。
その躯は所々が焼け焦げ、喉笛が切り裂かれ、背中にはナイフが突き立てられている。
そしてその体は、まだほんのりと赤く、温かい。が…、
すこしずつ、だが確実に、熱が奪われ冷たくなりつつあった。

「まだ死んでから間も無い…か。それに…」

ジタンは、横たわるゼルの右手の部分に目を移す。
右の拳が地面に撃ちこまれており、まるで地雷でも炸裂したかのように陥没し、そこから無数の裂け目が地面を走っている。
まだ微かに残る、舞い上がった土砂と、爆発でもしたのだろう、煤の様な臭いが鼻につく。
168巡る意思・継がれる遺志・騎士の意志 2/9:2006/04/29(土) 04:59:18 ID:toYICx9O0
「さっきの音の正体はどうやらこいつか。恐らく死に際に放ったんだろうが…。
 火薬の臭いはしないから技か魔法のどっちかだとは思うが…大した根性してるぜ」

ゼルの瞼を下ろし、背中に刺さったナイフを抜きつつ、ジタンがつぶやく。

「どうする? …お墓、つくってあげようか」
「いや…。この人を殺した奴はまだ近くにいる筈だ。
 そいつが敵か味方かもわからない以上、ヘタに動くわけにはいかない。
 ……勿論放っておくわけにもいかないが、それは安全を確保してから、だな」

(致命傷は首を切られた傷。それと背中から胸へのナイフ。出血からしてナイフが先…少なくとも刃物は二本。
 リュカはナイフはもちろん刃物一本持っていなかった…。犯人はリュカじゃない?
 いや、ナイフ程度ならどうとでも…。それに、配下の魔物がやった可能性も捨てきれない…。)


その時、二人は地面に点々と残った真新しい血痕と、人のものではない体液の痕に気付く。
その痕が続く先は……、城門。そして城の中。

「どうする……行くか?」

ジタンの問いに、フィンは暫く無言のまま、熱でぼんやりとした頭を巡らせていた……。
169巡る意思・継がれる遺志・騎士の意志 3/9:2006/04/29(土) 05:00:40 ID:toYICx9O0
エドガーとティーダは、情報交換や世間話などをこなしつつ東棟の階段をゆっくりと降りていた。
向かう先は中央の城…ユウナとプサンがいる隠し部屋だ。

「そういえばエドガーさん、さっき言ってたお願いッスけど」
「ん? ああ、なんだい?」
「リルムが言ってたんッスけど、かなり機械に詳しいらしいッスね。改造したり作ったり出来るくらい。
 んで、この首輪…。こいつ、解せk…」
「しっ」
「な、何スか!?」

エドガーは一旦ティーダの口を塞ぎ黙らせると、先ほどポケットに突っ込んだ
書きかけの『誰にでも判る首輪の盗聴に関する注意書き』のメモを取り出し、ティーダに見せる。
書きかけではあるが、要点は十分に書き込まれている。それを見て軽く青ざめるティーダ。
続けてエドガーは別の紙を取り出すと、何かを書き込み始める。

『解析は勿論試みている。だが、私の首に首輪が嵌ったまま、という事でまあ現状は分かるだろう。
 だが、無論諦めた訳は無い。解析しようにも情報が足りないのだ。
 今はとにかく情報が欲しい。それ次第では…ということだ』

それを見てティーダは少しうなだれた…が、すぐに気を取り戻した。
可能性は消えてはいない。ならばまだ道はあるのだ。

「で、そのリルムについてだが…」
170巡る意思・継がれる遺志・騎士の意志 4/9:2006/04/29(土) 05:01:34 ID:toYICx9O0
一方、ゼルを殺害した張本人…ピエールは、城の物陰深くに身を潜め、じっと体を休めていた。
先ほどの戦闘で受けたダメージ、決して軽いものではない。動くのがやっとな程だ。
回復呪文はかけてはいるが、この世界ではまださしたる効果は望めない。
自分にはやるべき事がある。まだ倒れるわけには行かない。
リュカ様に王者のマントを届け、リュカ様以外の参加者を始末する。
冷静になれ。無理はするな。今は耐え、忍び、力を蓄えるのだ。


その時、東棟から何者かが出て来ようとしているのに気がついた。
回復呪文をかけていた手を止め、気配を絶ち、五感を研ぎ澄ませ、様子を探る。
足音が聞こえる。一人……いや、二人か。
次第に話し声も聞こえ始めた。…男が二人。片方の声には聞き覚えがある。
前の世界、旅の扉の前で仕留め損なった男。確かエドガーとかいったか。
あの時取り逃がしたもう一人…シンシアという女は先程の放送で名前を呼ばれたようだが。
向こうはこちらに気付いてはいない。ならばここで奇襲を仕掛けるか。
否。相手は二人。加えてこちらはこの状態。
もし相手が単独ならば、この状態でも隙を衝き、策を練り仕留める事もできよう。
或いは体調が万全ならば、二人を同時に相手をする事も出来たかもしれない。。
銃を持っていたならば狙撃で仕留める事も出来たであろう。
無理をするな。分の悪い賭けに乗る必要は無い。それよりも当面の目的を達成する事が重要。
此処は身を潜め、やり過ごすのだ。まだ動くには早い。
と、その時城門の方からも気配が二つ、感じた。
あの者達は…リュカ様が魔物を使って人を襲っているのではないか、と疑っていた者達。
まずい。だが、今出るわけにもいかない。どうすれば…
待てよ。このままなら間違いなくあちらの二人とこちらの二人は衝突する。
その隙をつく。これしか、ない。
そのように思考を巡らせ、ピエールは沈黙を保ち続ける。
山のように動かず、林のように静かに…。
171巡る意思・継がれる遺志・騎士の意志 5/9:2006/04/29(土) 05:02:16 ID:toYICx9O0
城門をゆっくり押し開け、城の敷地内へと入るジタンとフィン。
二人は東棟の方から出てくる人影に気付き、得物を構え、そちらへと向かい駆け出す。

話を交わしつつ東棟から出てきたエドガーとティーダ。
二人は城門がゆっくりと開く音を聞き、こちらに向かう二つの人影に気付く。
そして…四人は相対した。

「動くな。妙な動きを見せたら…容赦しない」
「ちょ、ちょっと! いきなり何ッスかあんたたち!?」
「穏やかじゃないねぇ。こっちはレディを待たせてるというのに」
「黙れ。……質問に答えてもらおう。
 外にあった死体……先ほど殺されたばかりだ。やったのはあんた達か?」
「死体!? …いや、知らないな。僕達はずっとあの塔の中にいたから」
「俺は気絶してたみたいッスから…エドガーさんが知らないのなら俺も知らないッスよ」
「……本当か?」
「本当だよ。…あ、ひょっとしてさっきのすごい音……それかい?」
「…………」

「この人たち、嘘はついてないみたい…かな」
「フィン? どうしてそう思う?」
「うん…。風邪と熱でボケてて忘れてたんだけど…。
 僕、以前魔物使いって職業やってたことがあって…。他にも海賊とかもやったけど。
 それからかな。目を見ると、何となくわかるんだ。嘘をついてるか、そうでないか。…ちょっと時間かかるけどね。
 この人たちの目は…嘘をついてる目じゃないし、ましてや悪人の目でもない。綺麗に澄んでる目だよ」
「……そうか。フィンがそう言うなら……」
「疑いは晴れたッスか?」
「ああ……。いきなりすまなかったな」
「何。こんな状況じゃ仕方が無いさ。それよりその死体、気になるな…。
 知り合いという可能性もある、一応確認しておきたい。案内してくれないか」
「ああ。こっちだ」
172巡る意思・継がれる遺志・騎士の意志 6/9:2006/04/29(土) 05:03:28 ID:toYICx9O0
そうして四人は城門の外へと足を進めた。
そして見てしまった。少し前まで行動を共にしていた人の、無残な姿を。

「ゼル!!」
「ティーダ君! 知っている人か!?」
「ああ、昼にカズスって村で出会って、それから暫く一緒に居た人ッス!
 夕方ぐらいに一旦別れて、俺たち三人でサスーンを調べてから合流する予定だったんッスよ。
 アーヴィンとリルムと一緒に居た筈ッスけど…はっ、そういえば二人は!?」
「何、彼もリルムと一緒に居たのか!?」
「そうッス! ああ、どうなってるんスか……。
 どうしてゼルがこんな所まで…。二人は無事ッスかねえ…」
「落ち着け。…死体が無い、という事は、とりあえず無事の可能性が高いだろう。
 彼が独走したのか、或いは二人を逃がすために彼が盾になったのか。それは分からんが…ん?」

エドガーは、少し離れた茂みの影に何か光るものを見つけた。
草を掻き分け、それを拾い上げ、手に取る。

「これは…、対人レーダーじゃないか!」

対人レーダー。だが、これは前の世界で、持ち主だった者…デッシュとともに失ったはず。
それが何故ここにあり、今自分の手に…。まさか、デッシュの遺志、とでも言うのか?
だが、このレーダー、首輪の研究をする上ではまず間違いなく重要なモノだ。。
しかもこのレーダーは、人数がかなり減っている現状では、人を探すのにも、自衛としても大いに役立つ。
これを再び手に入れることが出来たという事は、間違いなく大きな収穫となるだろう。
173巡る意思・継がれる遺志・騎士の意志 7/9:2006/04/29(土) 05:04:25 ID:toYICx9O0
「リノアのネックレス…」

ティーダは、ゼルの手首に巻かれた、ライオンの彫られた指輪が通ったネックレスを外す。
リノアの死体を埋葬するとき、首輪と一緒に外したネックレス。
別れる前、ゼルは言っていた。必ずリノアの仇を取ると。
そしてこのネックレスを、スコールに必ず渡す。渡さなきゃいけない、と。

「ゼル…、あんたの遺志、俺が引き継ぐッス。
 必ずこのネックレス、スコールって人に渡すッスよ…」

そう誓ってティーダは、手の中にあるネックレスを、かたく、握り締めた…。


「…で、この男を殺した奴は、ついさっき城に入って行った筈だ。
 お前ら、怪しい奴とか見かけたりしなかったのか?」
「見なかったねえ。少なくとも、東棟には居ないよ。全員アリバイもあるし
 とすれば、西棟か、中央の城…」
「ああっ! てことは、ユウナ、それとプサンのオッサンが危ないかもしれないって事じゃないッスか!
 こーしちゃいられないッス! 急いで向かうッスよ! ユウナ〜〜!!」
「あっ、おい!」

言うが早いがダッシュで走り出すティーダ。それを追ってエドガー、ジタン、フィンの三人も城へ向かう。
174巡る意思・継がれる遺志・騎士の意志 8/9:2006/04/29(土) 05:05:00 ID:toYICx9O0
四人の話を密かに盗み聞いていた者…ピエールは考える。
まず話からすると、中央の城に居るのはティーダという男の仲間が二人。
ユウナという者と、プサン殿……マスタードラゴン様がいるとは驚きだが。
ならばリュカ様がいるのは西棟か東棟のどちらか。
そしてエドガー。片手を失っているあの男が単独で今まで生き抜いてきたとは考えにくい。
誰かと行動を共にしていた筈。…そう、恐らくはリュカ様。
ならばリュカ様が居るのはあの男が出てきた東棟の可能性が高い。
そしてエドガー含め6人が中央の城に居る。すなわち今は手薄になったという事。
この機を逃す手は無い。今こそリュカ様の元へと向かう時。

もしかしたら、リュカ様は私のことをエドガーから聞いているかもしれない。
何人もの人をこの手にかけている事を。ならばリュカ様と共に居る事は出来ぬ。
だが、それがどうした。元より我が独断で動いた事。己が蒔いた種。
今はこの王者のマントをリュカさまの元に届ける。それだけなのだ。
あとは再びこの身を独り野に放ち、リュカ様以外の者を始末すればよい。この身、朽ちるまで。
全ての悪名はこの身に浴びよう。そしてその罪と共に冥府に落ちよう。
そう、それが我が意志、我が望み……。
175巡る意思・継がれる遺志・騎士の意志 9/9:2006/04/29(土) 05:06:02 ID:toYICx9O0
【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服、リノアのネックレス
 第一行動方針:ユウナ達の安全を確認
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【エドガー(右手喪失 MP1/2)
 所持品:天空の鎧、ラミアの竪琴、血のついたお鍋、再研究メモ、ライトブリンガー、盗聴注意メモ(書きかけ)、対人レーダー
 第一行動方針:ティーダを追う
 第二行動方針:首輪の研究/アリーナ2を殺し首輪を入手/仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス、聖なるナイフ
 第一行動方針:ティーダを追う
 第二行動方針:ゼルを殺した者を探す/真相を確かめる/フィンの風邪を治す
 第三行動方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す
 最終行動方針:ゲーム脱出】
【フィン(風邪)
 所持品:陸奥守、魔石ミドガルズオルム(召還不可)、マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:三人についていく
 第二行動方針:休憩する/風邪を治す
 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:サスーン城中央の城1F→隠し部屋】


【ピエール(HP1/5、MP1/4)(感情封印)
 所持品:スネークソード、毛布、魔封じの杖、死者の指輪、王者のマント、
 ひきよせの杖[1]、ようじゅつしの杖[0]、レッドキャップ
 第一行動方針:リュカに王者のマントを渡す
 第二行動方針:回復と戦闘準備
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【現在位置:サスーン城内→東棟】
176巡る意思・継がれる遺志・騎士の意志 修正:2006/04/29(土) 23:40:37 ID:toYICx9O0
以下のように修正します。すみません
エドガーの一人称:僕→私

3/9
エドガーとティーダは、情報交換や世間話などをこなしつつ東棟の階段をゆっくりと降りていた。
向かう先は中央の城…ユウナとプサンがいる隠し部屋だ。

エドガーとティーダはユウナとプサンの待つ隠し部屋へと向かうべく、東棟の階段を駆け下りていた。
その間も、それぞれが持つ情報の交換などをこなしつつ。

エドガーは一旦ティーダの口を塞ぎ黙らせると、先ほどポケットに突っ込んだ

エドガーは咄嗟にティーダの口を塞ぎ、二人はその場で一旦足を止める。
そして先ほどポケットに突っ込んだ
177名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/30(日) 23:27:38 ID:tbSrbFet0
保守
178カーペット・"レ"ミングス 1/4:2006/05/01(月) 00:33:55 ID:4I03ySk00
遠くでまた、戦闘を暗示するように雷、ついで流れ星が落ちる。
森から幾分か離れていた分だけ、ユフィはそれをはっきりと受け取ることができた。
最初に自分が向かった光の方向からはずいぶん北西に遠い。
その遠さを教えてくれるようにだいぶ遅れてそれらのものであろう音がわずかにごう、と鳴った。

「行かなきゃ」と「遠いなぁ」を同時に心中で発声。
ポジティブな部分は仲間や誰かのピンチを想像させてユフィの危機感を煽り、
ネガティブな部分はみじめで一人ぼっちの現実を掻き立ててユフィの無力感を煽る。

「動くな。争いを求めぬならば我らの話を聞いてくれるか」
「私はパパス、そちらがオルテガ殿だ。そなたの名は?」
「ひぃええっっ!??」

すっとんきょうな声をあげて全身で吃驚仰天を表現するユフィ、
疲労と不安は接近していた気配を見落とすほどに彼女を追い込んでいたらしい。
その怪しい動きに反応してオルテガの斧がユフィに迫り、頸部にその武骨な刃が突きつけられた。
残っている腕をあげ、降参の意を示す。

「す、ストップッッ! 抵抗しないからっ!」
「……落ち着いてくれ。私はパパスで、そちらがオルテガ殿。そなたの名は?」
「あ、あたし、ユフィ……です。あの、斧、オノ、下げて欲しいな…くれませんか?」

二人の男の間に無言の合図が交わされ、スッとオルテガが離れる。
あまりにも簡単に突きつけられていた警戒心が解かれたことに拍子抜けするユフィ。
その疑問を制するようにパパスが話し始める。

「ははは、目を見れば大体その人の善悪くらいは知ることができる、経験と言うものかな。
 さて、では自己紹介もすんだところで情報の交換でもいかがか?
 そなたはずっと一人で行動していたのかな」


179カーペット・"レ"ミングス 2/4:2006/05/01(月) 00:36:40 ID:4I03ySk00
「でねっ、追いすがるそいつらを振り切ってなんとか逃げてきたんだけど…
 ラムザとケフカと、はぐれちゃって」
「悪の総帥と参謀、それに部下の三人組、か」
「…それに、カインのことも心配なんだ。誰かが…多分フリオニールって奴だと思うんだけど、
 悪ーい噂を広めて回ってるみたいなの。
 カインは結局フリオニールをどうにかするんだって一人でカズスへ行っちゃったけど
 大丈夫かな。無事でいるかな…」

右腕を失った経緯、セフィロスのこと、そして浮遊大陸にやってきてのもろもろ。
夜に入ってから森で遭遇した出来事までノンストップでユフィの話が進む。
パパスは、ユフィが仲間だと語ったケフカというあの道化師の人となりを思い出し、最後に垣間見た彼の表情を、あの時の違和感を思い出していた。
そして、今はそれを確かめる好機だということも理解する。

「つい先刻遠くに見た落雷と流星も戦闘の影響だろう。この森はまさに今戦場か。
 しかし……手が足りぬな。どうする、パパス殿」
「オルテガ殿、ユフィを頼めるか? 私が森へ入りラムザとケフカを探して来ようと思う。
 いや、もとより危険は承知。だが我らが分かれるほかあるまいよ。
 オルテガ殿はユフィを連れてカズスへと向かってくだされ」
「そんなっ…」
「了解した!」

低い声でオルテガが答える。一度ずつ頷きあったあとでパパスは即座に北へ向かって行った。

「待ってよパパス! あたしの代わりに危ない目になんて遭わせられないよっ!」
「心配するな、パパス殿は強い。今のそなたなんぞより何十倍も頼りになるぞ。
 さて、任されたカズスの方もかなり火急を要するな。急ぐぞ!」
「わわわぁ!?」

意向を尋ねられることも無くお姫様抱っこで持ち上げられるユフィ。
オルテガの強靭な肉体は負担を微塵も感じさせず彼女を軽々と抱えたままカズスの方角へと爆走を開始した。
180カーペット・":2006/05/01(月) 00:38:22 ID:4I03ySk00

「大丈夫だって、恥ずかしいからっ! もう、自分で走るってば!」

ユフィの抗議が聞き届けられたのは右手に夜の砂漠を見るようになってからしばらくしてのこと。
結果として爆走は一時停止となる。
こちらに背を向けてどこかうつむき加減で悲しげなユフィの姿を
オルテガは精神的な苦労と肉体的な疲労による消耗、不安、弱気のためだと判断した。
こういうときに必要なものは何か、と考える。

その時ユフィは「強引過ぎるよ」とか「お姫様抱っこなんてぇ」とか愚痴っていたわけだが、
ともかく状況の急変に心の整理を付ける。
パパスとオルテガはあたしを助けてくれるんだから、今はカズスに一緒に行ってカインと合流しよう。
二人を信じて、一緒に行こう。うん、正義は負けないんだから!
大きく深呼吸をして、振り返る。

「それじゃ、カズスへ行こっ………ってナニソレーーーッッ!??」

オルテガがいた場所には代わりにみょーな覆面を付けた男が立っている。
ってあのミスリルアクスはオルテガのだからあれはオルテガなのー?

「ぷっ、あはははははははっ、ごめん、くくっ、あはははは!!」

ご丁寧にマントまで付けたその格好は渋かったオルテガと打って変わって
まるで変しt……とにかく微塵もシリアスさの無い姿。

「ごめ、ごめん、でも、でも、あはははっ、なっ、ナニその格好?
 ナンデ、どーしてそんなコトになっちゃったのー!??」

彼女をどこか侵食しつつあった暗さ、それを吹き飛ばすように笑い転げる姿。
それを見てオルテガは満足げに頷く。
ネガティブなものをぶっ飛ばす最大の良薬はやはり笑いをおいて他に無い。
そればかりか自分も高揚し新たな活力が湧いてくる気分でさえある、不思議だ。
181カーペット・":2006/05/01(月) 00:40:41 ID:4I03ySk00


「では行こうではないか、我がタッグパートナーよ!」
「おうさ、オルテガー!!」

覆面、マント、オノの三点セットを備えた筋骨隆々の変態もといあらく…じゃなくてオルテガと
そのテンションに適応し異常に意気投合した片腕の少女、ユフィは爆走を再開する。

マスクド・オルテガとユフィ・ザ・ニンジャ。
タッグを組んだ二人の行く先にはバラ色の未来と栄光の勝利が待って……
いや、正直不安である。


【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:ラムザとケフカを探し、カズスでオルテガらと合流する
 第二行動方針:自分のケフカに対する疑いを探る
 第三行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:サスーン南東の森へ】

【オルテガ 所持品:ミスリルアクス E:覆面&マント
 第一行動方針:ユフィを連れてカズスへ向かう
 第二行動方針:アルスを探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【ユフィ(疲労/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
 第一行動方針:オルテガと共にカズスへ向かう
 第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
 第三行動方針:マリアの仇を討つ
 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズス西の砂漠の北辺】
>>180タイトルが変になりました。同タイトル 3/4 です。
182名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/01(月) 00:41:42 ID:4I03ySk00
駄目だ…
>>180 カーペット・"レ"ミングス 3/4
>>181 カーペット・"レ"ミングス 4/4
です。すみません。
183名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/02(火) 17:15:53 ID:rJcmjn9U0
ho★shu
184ユフィのまんこ:2006/05/03(水) 03:22:33 ID:fVQ0iWeVO
オルデカ「ユフィー!逝くぞ!」
ユフィ「あはあああああんvvvv将太ぁvvvvvv」
ユフィは子供が出来てゲームも無事に抜けて幸せに暮らした

【FFDQバトルロワイアル・終】
185名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/03(水) 05:46:20 ID:RjzuJprA0
>>184は無効です。
保守乙。
186Persuasion and Compromise 1/7:2006/05/03(水) 10:50:12 ID:cKlEcqUc0
「マス…、プサンがこの城にいるって?」
「ええ。ティーダ君と一緒だったらしいですよ。今エドガーと二人で迎えに行っているところです」

タバサの眠る部屋に入りながら、セージはとりあえず言い易い方の情報だけをリュカに話した。
問題はこの後。
仲間のマーダー化情報など言い難いだけではなくリュカだって聞きたくないだろう。
だが、言わないなら言わないで問題を先送りにするだけだし、事実を認識していないことはこの世界では命取りになる。
いや、だが、しかし、やはりここはタイミングというものが……。

「何か、言い難い情報があったんですか?」
「え、いや、特に何も」

咄嗟に否定の言葉が出てしまい、セージはそれとなく視線を外す。
明らかに怪しい動きではあるが、実際、この「目」に見つめられてしまえば嘘も誤魔化しも効かないのだ。

「あー、すみません。ホントはとっても言い難い情報があるんです」

耐えかねたセージは深く、それこそ床に額が付くくらい、頭を下げた。
リュカならこの行動に素早く反応して「そんな、謝らないで下さい」と言いそうなものだが、何故かこのときは反応が無い。
不信に思ったセージがチラと視線を上げると、リュカはじっと、何か真剣そうに部屋の扉を見つめていた。

「どうかしました?」
「聞こえるかい?」

リュカは視線を扉から移さずに問う。
セージはリュカに倣い、少し難しい顔をして扉を睨み、聞き耳を立てた。
何か足音のようなリズムの、だが足音よりずっと平和的な音が微かに聞こえる。
擬音語にするなら「ぷよんぷよん」とか「ぽよんぽよん」とかいう音だ。
187Persuasion and Compromise 1/7:2006/05/03(水) 10:51:26 ID:cKlEcqUc0
不意にリュカが扉へと向かう。
慌ててセージは止めようとしたが、リュカは「大丈夫」と言って微笑んだ。
その微笑があまりに嬉しそうだったものだから、ついセージはその場で固まってしまった。

何の警戒も持たずにリュカは扉を開ける。
そして、ちょうどこの扉の前にいた彼に向かって、彼の名を呼んだ。



調べるのは東塔。
探すは主君。
塔自体は本城に比べ随分と小さいが、それでもワンフロアに幾つかの部屋が存在する。
なるべく早く、先ほどの四人が戻ってくる前にリュカ様を御探し申し上げなければならない。
何かを成すには時間は少なく、己の状態も万全ではない。
さらに言うならこの城にいる「敵」の数が思ったより多そうだということ。
先ほどの四人に加え二人。これは確実。
それにアリーナの言っていた黒服と貫頭衣。不確定ながらラムザ=ベオルブという男。
黒服と貫頭衣は先ほど森で突然現れた二人組のことのようにも思えるが。
今の自分に全員を相手することは出来ない。
だが何は無くとも、このマントだけはお渡ししなければならない。

ピエールは焦っていた。
塔の下の階から探し、主君は見つからない。時間は無い。
自然と早足になる。気配を絶つことへ十分な集中力をまわせない。スライムが揺れる。
ピエールは幾番目かの扉の前に立つ。
そこで僅かに人の気配を感じ、扉ではなくスネークソードに手が伸びる。
扉の開く音がする。

ピエールはその名を、彼に呼ばれた。
188Persuasion and Compromise 3/7:2006/05/03(水) 10:52:54 ID:cKlEcqUc0
「ピエール」

その名前自体に電撃の性質があるかのような衝撃に、セージは見舞われた。
リュカは今なんと言った?
先ほどの音はどんな音だった?
今開かれた扉の向こうにいるのは何者だ?

「よかった、無事で。本当によかった」

リュカはピエールの騎士の手を取る。
ピエールは動けずにいる。余りに突然のことで、体全体が硬直している。
先に動いたのは、セージの方だった。

「リュカさん。彼から離れるんだ!!」

敵単体を確実に狙い打てる炎の呪文をセージが紡げば、
ピエールはリュカの手を振り払いスネークソードでセージを狙う。

「メラゾ…」
「ピエール、やめるんだ!!!」

凛とした声がピエールとセージの一連の行動を停止させた。
ピエールはスネークソードを収めると、リュカに向き直り騎士の礼を取る。

「御無礼を致しました」
「彼は僕の仲間なんだ。タバサをずっと守ってくれた。敵じゃないよ」
「御意」

リュカはスーッと息を吐くと、今度は固くこの忠臣を抱きしめた。
189Persuasion and Compromise 4/7:2006/05/03(水) 10:53:53 ID:cKlEcqUc0
セージは何がなんだか分からずにいた。
自分に向けられたピエールの殺意は明らかで、それだけで彼がマーダーだという裏づけになる。
しかしリュカに向けられるその態度は、どんな王宮でも通用する騎士のもの。
さらに彼は無防備に背中を自分に晒し、リュカに弱点であるスライムの頭を下げた。
けれど己の体液のほかに明らかに他者の、もっと言えば人間のものである血を浴びたその姿は、
彼が今まで何をしていたのかを物語るのに十分であるはずなのだが。

「セージ君。彼がピエールだよ。ようやく会えた」
「リュカさん。言い難いんだけど彼は…」
「ピエール!? やっぱり、ピエールね!!」

意を決して搾り出した言葉はタバサの声に被る。
どうも騒ぎすぎたのか、目が覚めてしまったようだ。
タバサもまた、ピエールの元へ駆け寄った。

「よかった。ピエールなら大丈夫だって思ってたけど、よかった、本当に」
「……」
「無事、だけど、怪我いっぱいしてるんだね。
 お兄さん。ピエールの怪我、治してくれますか?」

「な〜にいってるんだよ。当然じゃないか。
 あ、どうせだから回復呪文の勉強も兼ねてやってみるかい? 大丈夫、僕がついていてあげるから」
そんな応えを、タバサは期待していた。
けれどセージは難しい顔をしてピエールを睨んだまま。

「二人とも、悪いけど、ピエールの傍から離れてくれないかい?」

タバサは不安な表情を見せる。
リュカは気付いたようにピエールの姿を見て、セージに視線を戻し、そしても一度ピエールへと移す。
ピエールは軽く頷き、リュカはタバサの手を引いてピエールと少し距離を取った。
190Persuasion and Compromise 5/7:2006/05/03(水) 10:55:22 ID:cKlEcqUc0
「あのね、彼は、エドガーの仲間を殺しているんだ」

つい先ほど聞いた話である。
だからセージは慎重に言葉を選び、事実だけを、少なくともエドガーの話を信じるとした場合の事実だけを伝える。
タバサは口元に手をあて目を大きく見開いた。
リュカは微かに眉をひそめた。

「そうなのかい。ピエール」
「ここに来るまでの間に幾人かの敵を殺したのは事実です」

リュカの瞳が悲しみに沈み、セージが一歩前に出る。
だがタバサは、そのセージとピエールの間に割り込みセージに向かって両手を広げた。

「違う、何かの間違いだよ。ピエールは魔物だもの。誤解されることだってある。
 ピエールが、ピエールに限って自分が生き残るためにゲームに乗るなんて、そんなことありえないよ。そうだよね」

タバサは振り返り、ピエールの目を見つめる。
ピエールは頷き、臆することなくタバサの目を見つめ返し、そしてリュカへと視線を移す。
その目は、偽りの曇りなど微塵もなく輝いていた。

「その目を見れば、本質が見える。ピエールの目には狂気も、邪気も、悪意も感じません。
 僕の知っているピエールそのものです。それでも危険だと、信用できないというなら、僕が彼を連れてここから出ます。
 でもタバサは……」
「私も一緒に行く。お兄さんにはお世話になったけど、でも、ピエールは大切な仲間なの」
191Persuasion and Compromise 6/7:2006/05/03(水) 10:56:29 ID:cKlEcqUc0
セージは頭を抱えた。
自分に相手を見てその本質を言い当てる能力などありはしないのだけれど、リュカに対する忠誠心が偽りであるとは思えない。

「わかった。わかりましたよ。とにかくエドガーが戻るまでは様子を見ましょう。
 実際襲われたのは彼だし、リュカさんも詳しく事情を聞きたいでしょう?」

ただし、とセージは付け加えると、ピエールに向かってマホトーンを唱えた。

「それと武器も差し出してくれ。と・り・あ・え・ず・ね」

満面の笑みとウインクをしてみる。
セージにしてみれば、少しおどけて敵愾心を解きほぐそうと思ったのだろうが、ピエールの無反応に空気が重くなる。
そんなことはお構いなしに、ピエールはスネークソードをセージにではなくリュカに差し出す。
そして、同時にザックの中にあった王者のマントを取り出した。

「これは…、王者のマントじゃないか」
「このマントをお渡しするために、私は参ったのです」
「そうか、わざわざありがとう」
「そのような、当然のことをしたまでです。リュカ様こそ、御無事で何よりでした」
「でも、本当にひどい傷だ。ねえ、セージ君…」
「回復も、エドガーが戻るまで待っていてもらえませんか?」
「いえ、この身のことなどリュカ様のお手を煩わすことではございません。それでは私はあちらにて」

ピエールは選んで下座に座る。
下座といってもすぐに逃げ出せるほど扉に近いわけではなく、セージの監視の目を十分に受けることのできる位置である。
その位置に関しては、セージには文句の付け所がなかった。
192Persuasion and Compromise 7/7:2006/05/03(水) 10:58:05 ID:cKlEcqUc0
考えろ、考えろ、考えろ。
武器はなく、呪文も封じられている。
だがそんなことより、今この場でこの二人を手にかけてはいけない。
リュカ様の目の前で、少なくとも今はリュカ様の仲間と称するものたちを殺してはいけない。
それは、リュカ様を傷つけることになる。
体ではなく心を、リュカ様の心を傷つけることになる。
そのようなことは絶対にあってはならない。
あの方の心を汚してはならない。
考えろ。
すぐにあの四人とそれに加え二人がここに戻ってくるだろう。
自分は或いは殺されるかもしれない。
リュカ様はかばってくださるだろう。
だがそのために、リュカ様が傷つくようなことはあってはならない。
考えろ。
リュカ様を安全な場所に保護し、かつ敵を屠るためにはどうすればよいか。
そしてアリーナ。
あの女が来る前にリュカ様をなんとしてでも避難させなければ。


スライムナイトは思考に沈む。
その目は、いつかの輝きと同じ忠義の色。
しかし、リュカは気づいているのだろうか。
その目にかつてあった豊かな感情が、深い闇に沈んでいることを。
その目にかつてあった主の娘に向ける忠義の印が、今は掻き消えてしまっていることを。
193Persuasion and Compromise:2006/05/03(水) 10:59:09 ID:cKlEcqUc0
【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 魔力1/2程度)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子、イエローメガホン
 第一行動方針:ピエールを見張る
 基本行動方針:タバサに呪文を教授する(=賢者に覚醒させる)】
【リュカ(MP1/2 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)+マテリア(かいふく)、ビアンカのリボン、ブラッドソード、
 スネークソード、王者のマント
 第一行動方針:待機
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
 所持品:E:普通の服、E:雷の指輪、ストロスの杖、キノコ図鑑、悟りの書、服数着、ファイアビュート
 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】

【ピエール(マホトーン、HP1/5、MP1/4)(感情封印)
 所持品:毛布、魔封じの杖、死者の指輪、ひきよせの杖[1]、ようじゅつしの杖[0]、レッドキャップ
 第一行動方針:リュカを無事に逃がす方法を考える
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】

【現在位置:サスーン城 東棟の一室】
194名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/04(木) 03:09:25 ID:VbhBLJ4jO
リュカは小説の名前
195SILHOUETTE-MIRAGE 1/8:2006/05/04(木) 05:58:42 ID:2L1jjG100

「ボディが…ガラ空きよッッ!!」

十歩ばかり離れた距離を保つべく呪文を紡ごうとしたゴゴの予想を越えた反応でアリーナが襲い掛かる。
速度をとり咄嗟にランクを落として放たれたファイラの炎が対手を巻きこむより早く腹部に一撃。炎を突き破るように飛び出してきた影がさらにゴゴを蹴り飛ばす。

「こんな威力? 見かけより大した事ないのね」

プロテスの加護に助けられながら体勢を立て直すゴゴの七歩ほど先。
同じく炎の魔法から体勢を立て直したアリーナは行動する間を与えぬようさらなる攻撃を狙う。
応じるようにブリザガを編もうとしてしっかり捉えた対手の姿はたちまちに近づき、ゴゴは短剣を持つ右手を脇を狙う一撃の防御に当てざるを余儀なくされる。
残った左手は再びランクダウンのブリザラをアリーナへ向けるが対手を完全に止めるには力不足。
しっかりと両腕を自分に巻きつけて弾丸のように冷気を貫いてきた対手からの正拳突きが抉りこまれる。
くの字に折れる身体、さらに真下から突き上げられるアッパーカットをゴゴはすんでのところで弾き飛ばした。
お返しとばかりに突いたソードブレイカーは残像をかすめるだけで空を裂く。

「魔法使い役は向いてないんじゃない?
 というより一人じゃなーんにもできないのかな、お前は!」
「……迅い」

噛み合わないやり取り。
五歩ばかり離れての対峙。一呼吸の間。
196SILHOUETTE-MIRAGE 2/8:2006/05/04(木) 06:00:36 ID:2L1jjG100

(いいかしら、よく考えなさい。私は勝利しなくちゃならないのよ?)
心をクールダウン、頭脳をクロックアップ。
まさに敵対するこの男と自分の間にある優劣は何か。

近距離、一対一の直接戦闘。
これでほかに何の条件も考えないとしたら自分「達」に比肩できる者がどれくらいいるだろう。
圧倒的な力、速度、技量。見ての通りこれが自分の優位点と考えていい。
だが一方、不安な点が二つ。
第一は相手が有し自分は有さない力、魔法。
射程や引き起こす効果の広さは自分にはできない芸当だ。
これに対する最も単純な回答は可能な限り速度と手数で上回ること、
赤帽子の男を葬ったときのように撃たせなければどうと言うことは無い。
だが、第二の不安点がある。「物真似」、物真似師と称するゴゴがもつ特異な力。
見たまま体験したままのことに推測を加えて言えばそれはおそらく人の技量を真似る能力だ。
現に城では黒服の剣を真似てみせ、そして自分の連撃を真似てみせた。
同行していたくらいだからアグリアスが放ってきた様な技も使えるのかもしれない。いや、使えると考えるべき。
逆転のため、どれくらい隠し玉を残しているのか?

まとめよう。
力と速度では私が勝っているのは間違いない。当然ね。
けれど、悔しいけれど可能性、逆転の可能性は考慮しなければならない。
それではそれを打ち消す勝機は?

(単純に、小賢しいまねをされる前にこの拳でぶちのめせってことね。
 いいわ、わかりやすくって!)
197SILHOUETTE-MIRAGE 3/8:2006/05/04(木) 06:02:03 ID:2L1jjG100

(ふむ、どうだこの尽きぬ興味は。マティウスならばどのように彼奴を討とうと考える?)
心をクールダウン、頭脳をクロックアップ。
まさに敵対するこの女と自分の間にある優劣は何か。

近距離、一対一の直接戦闘。
過去、マティウスの技量でさえわずかに上回って見せたアリーナは天才であり、化け物だ。
ではこの条件下において自分はどのような対抗策を取り得るか。
第一は魔法だ。
いかにアリーナとて、手足が届かない距離を攻撃するなどできはしない。
また例え当てることはできなくとも牽制や補助的に用いる事もできる。
しかしあの素早さがそうは集中、詠唱の時間を与えてはくれない。
あの猛襲を身に浴び、相手の流れに巻き込まれしまっては勝機は無いのだ。
では第二、自身の能力にしてライフワーク、「物真似」。
武器や拳を扱う技術、魔力により生み出される魔法、ありとあらゆる他者の行動を真似る能力。
とはいえ通常の動作や声ならば一度会えば自在に芸とする事ができても、個々の技量においてはそうではない。
いかにゴゴといえど自分の力を超えた力をモデル無く真似て見せることはできない。
一対一の現状、アリーナの技量についていくためにできることは何か?

まとめよう。
逢い難き天才と言えるアリーナの戦闘技術は圧倒的だ。明白だ。
残念ながらこと戦闘という幕においては自分の方が劣っていると考えざるをえない。
けれど、互角を演出することはさほど難しいことか?

(ふふふ、ある面において最高峰を極めし者の真似などそうそうできる経験ではないな。
 面白い、やって見せよう!)
 
198SILHOUETTE-MIRAGE 4/8:2006/05/04(木) 06:03:17 ID:2L1jjG100

取り出した何の変哲もない鉄製の杖を柔らかな森の土に突き立てる。
武器として用いるつもりではなくここから後ろには下がらないという攻めの決意の現れ。
逸らすことなく睨み続ける視線の先で、物真似師は呆れるような変化を見せる。
気付けばゴゴは自分と鏡写しのように同じ構えを取って見せていた。


手にしていた特徴あるギザギザ刃の短剣をそばにある木の幹へと突き立てる。
半端に武器を用いるつもりではアリーナに抗する事はできないと判断してだ。
射抜くような鋭い視線の前で、物真似師は五体を緩やかに動かし驚くような変化を見せた。
気付けばゴゴはアリーナと鏡写しの同じ構えを取って見せている。


「面白い冗談ね?」
「楽しんで頂けると幸いだな」

アリーナからしてみればそれは挑発の応酬で、
しかしゴゴからしてみればそれは率直な言葉でもある。
歪んだ笑みを浮かべるアリーナ、布の奥に表情を隠したゴゴ。
わずかな静寂を経て同時に地を蹴った二つの鏡像が暗い森の奥で交錯する。
同じ構え、同じ動き、同じ速度、そして同じ狙い。
拳と拳、蹴りと蹴り、ステップとステップ、等分された空間。
激突の一点を境に分かたれた二人が躍動する四拍子の輪舞。
199SILHOUETTE-MIRAGE 5/8:2006/05/04(木) 06:04:50 ID:2L1jjG100

それは二度目――自覚したのは初めて、の感情で、紛れもない憎悪の一種。
ただし、激しく歪んだ自己愛や認めたくない部分と混ざり合って奇妙な色をしているだろうが。
(ほんと…ぶち殺したいわね)
速さに真っ当についてこられるという経験。
この奇妙な技を持つ男に会わなければオリジナル以外には抱く事もなかっただろう感情。
高揚と苛立ちと焦燥とむかつきと憎しみが同時進行する。


それが二度目――一度目はマティウスの真似について、の満足感で、紛れもない一つの達成。
もちろん、陶酔にも似たその自己満足がどれほど今の状況に不似合いかゴゴも十分に理解しているだろうが。
(素晴らしいな)
知る限りの速さの限界を踏み越えるという経験。
この邪心ある女に会わなければ体験し得なかった領域を真似るという得がたき世界。
奇妙なほどの冷静の中に高揚と称賛が同心円を描く。



二つの姿。
かたや相似たる姿を踏み殺す憎悪、かたや相似たる姿の完璧なるへの満足。
写し取られたもの同士に生じた差はその根源さえ越えて行こうとする意志の有無。

「要らないんだ、お前も! アリーナもッ! あたしだけでいいっ!」

水面に映る像が歪み消えるように鏡写しの構図は砕け散る。
高速の四拍子を停止したアリーナ、ゴゴが目の当たりにするのは未見の動き。
転調は、突然にやってくる。
200SILHOUETTE-MIRAGE 6/8:2006/05/04(木) 06:06:50 ID:2L1jjG100
突き立てられた貫手が無慈悲に大樹の幹をくりぬく。
持ち上げられた質量は変化に半歩遅れたゴゴへとうなりを上げて向かい、ぶち当たる。
それだけで、保たれてきた均衡は崩壊していた。

「……何よ」
仰角から加速度と共に降りてきた蹴り足がゴゴの頭部を捕らえる。

「半端なマネはやめてよね」
ぐら付いた貫頭衣の喉元をめがけて凶器たる手刀が突き込まれる。

「あたしならかわして見せたわよ?」
下りの螺旋を描いて足元を狙う円が重心ごと足を刈り取っていく。

「この偽者がっ!」
倒れたゴゴの首付近をめがけ、全体重にスピードを加えて踏みしだく。
そして以前のアリーナなら選んでいたであろう惨めな相手を悠然と見下すという選択肢を選ばず、間髪いれずとどめへ。

「最後のプレゼント、あたしからの特別レクチャーね。
 あの世であたしの強さでも宣伝なさいな、芸人さん」

全身から生ずる加速度を収束して遠心力と共に打ち出す。
分厚い鉄板すら打ち抜くという必殺の、会心の拳がゴゴの胸板へ向けて深く――


201SILHOUETTE-MIRAGE 7/8:2006/05/04(木) 06:08:21 ID:2L1jjG100
(………我が力、及ばず。マティウスよ、すべては自分の未熟ゆえ、すまぬ)
一瞬の暗転だった。
単に未熟なるものが敗れ去るというだけだ。視界を覆ったのは暗黒にすら浮きあがる死のシルエット。
さりとて、極技ともいえる速度には全能力を持って付き合いきったのだ。それは、残された満足。
最期の吐息がこぼれる。
(…ウボァーーー……)


(ふふ、あはは…! 勝った! アリーナ、どう? やったわよ、あたしは!!)
格別な勝利だった。
単に強敵に勝った、というだけではない。打ち破ったのは常に自分に付きまとうミラージュ。
写しとはいえ、誰よりも何よりも最も乗り越えたい能力を自らの手で負かしたのだ。それが何より嬉しい。
自然、笑みがこぼれる。
「〜〜〜よおしっ!!」



リュカと、マティウス。
二つの顔を思い出し、口の端を吊り上げる。
それからアリーナは暗い森の奥へと姿を消した。
相応しいものを振りまくために、次に死すべきものの顔を思い浮かべながら。
202SILHOUETTE-MIRAGE 8/8:2006/05/04(木) 06:15:26 ID:2L1jjG100
【アリーナ2(分身) (HP3/4、毒) 】
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 イヤリング ヘアバンド 天使の翼
 ミラクルシューズ、手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:サスーンに向かいリュカを殺す or 引き返してマティウスを殺す
 最終行動方針:誰かにアリーナを殺させ、勝利する】
【現在位置:サスーン東南の森】

【ゴゴ 死亡】
【残り 55名】

※スリップ停止、鉄の杖とソードブレイカーは放置。
203名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/05(金) 12:15:24 ID:JHGcEnFVO
保守
204LE CALMANT 1/12:2006/05/05(金) 14:02:05 ID:izxoshRX0
夕焼けの空が一面に広がる。懐かしい潮風の匂いがする。
紅色の水平線をぼんやりと眺めていると、暖かい手が肩を叩いた。
「まーだ練習やってたのか?」
ビサイド・オーラカ往年の名選手は、いつもと同じように呆れ半分の苦笑を浮かべる。
「熱心なのはいいけど、身体壊さないようにしろよ?
 …お互い、ルーには怒られたくねぇだろ」
本人が近くにいるわけでもないのに、最後の方は耳元でこそこそと囁いてきた。
こう言う時、ワッカさんには悪いけれど、『しつけが行き届いているなぁ』と思ってしまう。

「で、どんなもんだ?」
ビサイドへの帰り道。つり橋を渡る途中でワッカさんが問い掛けてきた。
「2分と5秒。まだまだっす」
一応謙遜してみたけれど、本当は2分を越えられたことが嬉しくて。
ワッカさんも私の気持ちを見抜いたのか、笑いながら言ってくれた。
「そんなことねぇって。一年前に比べたら、ずいぶん上達したってもんだ」
「でも、ワッカさんには敵わないよ」
「俺は最近トレーニングしてねぇからな。いい加減、鈍っちまってるよ」
「そういえば、ちょっと太ってきてない?」
「…そう思うか?」
「うん。なんかぷにぷに感が出てきてる」
「くぁーっ。やっぱ運動しないとダミだなぁ」
ワッカさんは頭をぽりぽりと掻いた。
水しぶきの音と、涼しい風が薄闇を駆け抜けていく。
心地よさと、奇妙な懐かしさを胸に、私たちは歩き続けた。

やがて村が見えてきた頃、ワッカさんが昨日と同じ事を聞いてきた。
「明日も練習するのか?」
私は笑って肯く。
一昨日も、その前も。毎日このやり取りを繰り返していた。

『キミのこと、忘れたくないから――』
205LE CALMANT 2/12:2006/05/05(金) 14:04:18 ID:izxoshRX0
「ユウナさん! 起きてください!」
ゆさゆさと揺さ振られ、私は目を開ける。
いつの間にか眠ってしまっていたみたい。
ぼんやりとした頭を左右に動かしてみると、焦った表情のプサンさんがいた。
「すぐに支度をしてください!」
良くわからないけれど、有無を言わせない迫力を感じる。
私は首を傾げながら荷物を持ち、階段の方へ走っていくプサンさんの背中を追う。
走って走って、二階に続く隠し扉のところまで来てから、ようやく彼は足を止めた。

「あの、一体どうしたんです?」
「どうしたもこうしたも……あの音に気付かなかったんですか?」
「あの音?」
おうむ返しに呟くと、プサンさんは私に向きなおり、口を開いた。
その時、ばむっ!と勢いの良い音を立てて、隠し扉が開いた

「ユウナーーーッ! 無事ッスかーーー!?」
「え?」
ティーダは、いきなり入ってきたと思ったら、何の脈絡もなしに私を抱き締める。
「ユウナ! 良かった、無事だったんッスね!
 俺、ユウナまで殺されてたらどうしようかと……」
ええと……殺されるって、何がどうなってそういう話になってるの?
その前にプサンさんが『どうしよう』な状態になってるけど。

「ティーダさん。痛いんですが」
よろよろと、扉と壁の間からプサンさんが這い出してくる。
ティーダは口をぽかんと開けた。
「ああ、オッサンも無事だったんだ。良かったー」
「たった今、無事じゃなくなりましたがね」
眼鏡は割れなかったけど、鼻を打ちつけてしまったみたいでハンカチで抑えている。
バツが悪そうに頬を掻くティーダに、プサンさんが尋ねた。
206LE CALMANT 3/12:2006/05/05(金) 14:07:10 ID:izxoshRX0
「今の音は、やはり敵襲だったのですか?」
「そうです。既に一人、命を落としています」
答えたのはティーダではなく、扉の向こうから現れた男の人。
長い金髪を真後ろで束ねた、二十台後半ぐらいの男性だ。
どこかで見たような気がするけど思い出せない。
彼は戸惑う私を見つけると、なぜかうやうやしく頭を下げた。
「初めまして、美しいレディ。
 私の名はエドガー、フィガロという小国を治めている者です。
 あなた方にはリルムが世話になったようで、感謝の言葉もありません」
私の手を取り、その甲に口付けようとして――ティーダに後ろ髪を捕まれる。
「何やってるんスか、エドガーさん」
「レディに対する礼だが。騎士の一般常識だぞ」
「そんな常識聞いた事ないっつーの」
「文化の違いだな」
「うそつけ!」
「ユウナか…素敵な名前だな。
 安心してくれ、君のことはオレが守る。襲撃者には指一本触れさせないぜ」
「ってあんたも! どさくさに紛れて何やってんだよ!」
「みんな…そんなことやってる場合じゃないよ」
……もう何がなんだかわからない。
エドガーさんについては思い当たる節があるけれど、その後からやってきた二人組は誰なんだろう?

「ナンパは後にしなよ…ゴホゴホッ、遊んでられる状況じゃないんだから」
黒髪の男の子が、咳き込みながら金髪の男の子を睨みつける。
私の肩に手をかけていた彼は、尻尾をくたりと下げ、誤魔化し笑いを浮かべた。
その後ろで、エドガーさんが咳払いをする。
「レディには礼を尽くすのが私の主義でね。それに襲撃者も城内に逃げたわけではないようだし」
「どういうことッスか?」と、ティーダは首を傾げる。
「簡単だ。ゼル君の遺体の周囲には緑色の体液が滴り落ちていた。
 襲撃者が手傷を追っていることは間違いないだろう。
 だが、城内には体液や臭いといった痕跡が存在していない。それにこのレーダーにも……」
207LE CALMANT 4/12:2006/05/05(金) 14:09:07 ID:izxoshRX0
私は反射的に、説明を始めたエドガーさんの手を掴んだ。
「今、なんて言いました?」
「そ、そうッス! それなんだよ、ユウナ」
詰め寄ろうとした私の言葉を遮り、ティーダがまくし立てる。
「ゼルが死んでたんだ、城の前で。
 誰かに襲われたみたいで、多分さっきの爆発もゼルがやったんだと思う。
 でもアーヴィンとリルムはいなくて、近くにもいないみたいで、それで……」
聞いても全然わからない。
ゼル君が死んだなんて、どうしてそんな笑えない冗談言うんだろ?
ゼル君はリルムとアーヴァイン君と一緒に山の中にいるはずなのに……
「冗談なんかじゃないんだって……俺にだってわかんないっつーの!」
ティーダの声で、私は我に返る。
頭に浮かんだこと、いつの間にか声に出していたみたいだ。
今にも泣き出しそうな顔で叫ぶティーダからは、ふざけている様子は見受けられない。
じゃあ、本当にゼル君は死んでしまったのだろうか?
眠っている間に起きた現実に、頭がついていかない。
混乱する私に、追い討ちをかけるように、エドガーさんが大声を上げた。

「しまった!」
全員の視線がエドガーさんに集中する。
エドガーさんの視線は、彼自身が持っているマキナに向けられている。
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもない……奴は建物の影に隠れて我々をやり過ごしていたんだ」
何でそんな事がわかるんだろう?
眉をひそめる私たちに、エドガーさんはマキナの画面を見せた。
中央に幾つかの光がともっていて、そこから離れた場所にある光が一つ、端っこの方を掠めていく。
「この光…もしかして」
「そうだ。動きが無かったから、犠牲者がもう一人いるのかと思っていたのだが……
 だが、この光点が奴だったんだ。そして今、東塔へ向かっている!」
「東塔って……! セージとリュカとタバサ、ヤバイんじゃないッスか?!」
ティーダの言葉に、金髪の男の子が目を見開き、尻尾をぶわっと逆立たせた。
けれど、ティーダとエドガーさんは気付いていないようだ。
208LE CALMANT 5/12:2006/05/05(金) 14:11:34 ID:izxoshRX0
「セージは大丈夫だが、リュカとタバサが問題だ。
 襲撃者がゲームに乗っていることを知らない上、奴と知人ときている」
「!! もしかして、襲撃者とはピエールさんのことですか?!」
眼を見開くプサンさんに、エドガーさんは大きく肯いた。
「はっきりと見たわけではありませんが、間違いないでしょう。
 元々このレーダーは、ピエールが私の仲間を殺して奪ったものです。
 それに緑色の体液を持つ参加者など、奴以外に考えられない」
断言するエドガーさんに対し、プサンさんは腕を組み、じっと考え込む素振りを見せる。
「魔物とはいえ、ピエールさんは立派な騎士でした。
 彼が無実の人間をこぞって殺すなど、信じ難いのですが……」
「リュカの知人のデールという青年も、リュカを襲い、同行していた女性を殺しました。
 この殺し合いは人を変えます。今、ここにある現実を見据えるべきでしょう」
加害者の名前は聞いていなかったけど、プサンさんが似たような話を喋っていた。
同行していた女性っていうのが、多分リノアさんのことなのだろう。
デールという人は放送で呼ばれていた。
ゼル君がこの事を知ったら、少しは気が楽になるだろうか?
そんなことが一瞬思い浮かんで、伝えられないことに気付いた。

「リュカの知人……人を変える……なら、やっぱり」
一方で、尻尾の男の子が小さな声で呟いた。
それで始めて、エドガーさん達は彼の様子に気付いたようだ。
「どうかしたのか?」
「いやな。あまり言いたくないんだけどよ」
そう前置きしてから、尻尾の男の子は黒髪の男の子を見やる。
「こいつ、フィンがさ。
 湖で魔物に襲われて、何とか逃げ出したんだけど行き倒れて、その時に夢を見たらしいんだ。
 ――つーか、実際に誰かに助けられて、教えてもらったんじゃないかって思うんだけどよ」
「あんまりよく覚えてないんだよね…ゴホゴホ。
 湖に落っこちて、ドーガさんが殺されて、必死で逃げてたら、風邪ひいちゃったらしくて」
フィンと呼ばれた男の子は、火照った顔を俯かせた。
風邪を引いたというだけあり、見るからに具合が悪そうだ。
209LE CALMANT 6/12:2006/05/05(金) 14:15:56 ID:izxoshRX0
「それで?」
「声を聞いたんだ。タバサとリュカって魔物使いが、魔物を操って人を殺させてるって。
 それにタバサは僕を襲った奴――ギルダーって赤魔道士の仲間なんだって」
フィン君の話が終わり、エドガーさんとプサンさんが「うーん」と唸る。
「確かにタバサとセージはギルダーという男と一時同行していたらしい。
 しかし、セージは『ギルダーは改心してビアンカに横恋慕していた』と言っていたが」
「おい。ビアンカってリュカの奥さんじゃねーのか?」
「そうらしいな。わざわざリュカが席を外している時に話してきたからな」
……変な本を持ってたり、いきなりナンパしてきたり、人妻に横恋慕したり。
こんなこと考えてる場合じゃないんだけど、『男の人ってみんなこうなのかな』と思ってしまう。
そんな私の心情を知ってか知らずか、エドガーさんとフィン君達は真面目に話を続ける。

「フィン君やリュカのような眼力は持っていないが、私が見た限りでは二人は白だ。
 父親も娘も疑わしい行動は取っていないし、むしろ信頼に足る人間だ」
「俺だって疑いたくはないさ。リュカには俺の兄貴を助けてもらったしな。
 だけど、俺の兄貴は殺し合いに乗ってたし、そのことをリュカも知ってた。
 それにリノアと、リノアのダチ。どっちもリュカの知り合いが殺したわけだろ。
 だから、もしかしたらって思っちまうんだ」
「疑わしい行動は取ってなくても、この状況そのものが疑わしくて仕方ないよ。
 それに他人を操って殺し合いをさせる人は……ゴホゴホ、誰よりも疑われないように行動するだろうし」
エドガーさんは眉間に皺を寄せ、腕を組む。
重たい空気の中、プサンさんが口を挟んだ。

「どちらにしても、今すぐリュカさん達に危害が及ぶ確立は低いでしょう」
「何故ですか?」
エドガーさんがプサンさんに視線を移す。
「ピエールさんはリュカさんに絶対的な忠誠を抱いています。
 ですから、忠誠心ゆえに殺し合いに乗ったということは考えられます。
 私は、リュカさん自身は潔白だと思っていますけれどね」
210LE CALMANT 7/12:2006/05/05(金) 14:19:09 ID:izxoshRX0
何か言おうとするフィン君達を手で制しながら、プサンさんは話を続ける。
「リュカさんは自己犠牲回復呪文の使い手ですし、自分のために他人が傷つく事を由としない人です。
 リュカさんの目が届く場所で殺人を行えば、彼自ら命を捨ててしまう可能性があります。
 よって、リュカさんが潔白であるならば、彼の目が届く範囲ではピエールさんも殺人を犯せないでしょう。
 逆に万が一にもリュカさんやタバサ嬢が黒幕であるならば、二人に危害が及ぶわけがありません。
 それに自分達の近くで殺人を犯されれば、彼らにも疑いが向けられるということは心得ているでしょう。
 ですから、ピエールさんを逃がし、何処か遠くに移動させようとするはずです。
 唯一問題が発生するとすれば、ピエールさんが自己保身の為に殺人に乗った場合ですが……
 それでもリュカさんがいるのならば、変心を見抜けるでしょうし、説得も可能でしょう」

「えーと、つまり、ピエールって奴を逃がそうとしたら怪しいってことッスか?」
「状況にも寄りますけどね。
 私が知るリュカさんは、家族と仲間は手元に置いて守ろうとするでしょうし
 部下が罪を犯したと知れば、その責を負おうと考える人です」
プサンさんの説明に、しかしエドガーさんが難色を示す。
「そうは言いますが、城内にはセージもいます。
 リュカ親子が白か黒かは置いておくとして、ピエールを放置しておけば彼に被害が及ぶ可能性が高い。
 捨て置くわけにはいきません」
「しかし、貴方とピエールさんは一度交戦しているのでしょう?
 貴方は厄介な目撃者として認識されていてもおかしくない。
 迂闊に戻れば、それこそピエールさんが暴挙に及ぶかもしれません。
 追い詰められた手負いの獣ほど、狂暴なものはありませんから」

「じゃあ、僕が様子を見てくるよ……ゴホゴホ」
「キミは止めた方がいいよ!」「大人しく寝とくッス!」「無茶するなよ!」
外へ出て行こうとするフィン君を、私を含めた全員が制止する。
顔を真っ赤にして、咳き込んでいて、頭をフラフラ揺らしている人を偵察になんて向かわせられない。
代わりに、尻尾君が手を上げた。
211LE CALMANT 8/12:2006/05/05(金) 14:23:58 ID:izxoshRX0
「オレが行くぜ。オレならリュカと顔見知りだし、ピエールの事も知らないフリができるからな。
 その代わりってわけじゃねーけど……悪いけどそいつ、どっかで休ませてやってくれないか?」
私は3階にあった、暖炉つきの部屋を思い出した。
「わかりました。ここの奥にある部屋に、毛布を運んで寝かせてあげましょう」
「ああ、頼んだぜ!」
「あ、その前に」
走り出そうとした尻尾君を、プサンさんが呼び止める。
「何か、魔力を持つアイテムを持っていませんか?
 用途や種別に関わらず、とにかく強い魔力がこもっていれば何でもいいんですが」
「んー。……強い魔力なら、これなんてどうかな」
そう言ったのは尻尾君ではなくフィン君だ。
彼が取り出した不思議な石を見て、エドガーさんは半ば呆れたように呟く。
「魔石…そんなものまで支給されているとはな」
「使い道もよくわからないし、ただ持っているだけじゃ意味が無いから」
フィン君がプサンさんに石を渡し、プサンさんはそれを尻尾君に手渡した。
彼の力を知らない二人とエドガーさんは、揃って困惑の色を浮かべる。
「説明は省略しますが、魔石を目印にした遠見の術だと思って下さい。
 その石があるところで起きた出来事は、私も知ることができます。
 あくまで一方的なもので、連絡は不可能ですが」
「一種の監視カメラのようなものか?」
「そうです。転移魔法や旅の扉を使われると見失ってしまいますがね。
 今日一日の間は有効だと思います」
「要するに、オレに何かあっても知らせることができるってわけだな。
 ありがとよ、オッサン!」

尻尾君は宙に放り上げた魔石をキャッチし、階段を駆け下りていった。
プサンさんはフィン君に肩を貸し、奥へ向かう。
ティーダがプサンさんを手伝おうとしたけれど、やんわりと断られた。
「この人のことは私に任せて、貴方達はアーヴァイン君達の所へ戻ってあげなさい。
 何か知らせたいことがあったからこそ、ゼル君もこちらに来たのでしょう。
 命を賭した思いを無にしては、彼も浮かばれないというものです」
その言葉に、ティーダはぐっと拳を握り締める。
212LE CALMANT 9/12:2006/05/05(金) 14:26:35 ID:izxoshRX0
「わかってるけどさ……でも、大丈夫なんスか?」
「隠し部屋の中ですから、城ごと吹き飛ばされたりしなければどうにかかなるでしょう。
 何でしたら、看病ついでに、錬金釜でも試していますよ」
プサンさんはぱちりとウインクして、フィン君とともに通路の奥へ姿を消した。


結局名前を聞かなかった尻尾君に、フィン君にプサンさん。
三人と別れた私達は城外に出た。
数時間ぶりに見上げた空は、すっかり夜の色に染められている。
「いいんスか? セージとリュカ達のこと」
ティーダがエドガーさんに声をかけた。
「仕方がないだろう。あの御仁の言う通りだ。
 私が出て行ったところで事態が悪化することはあっても、収拾できるとは思えない。
 それにリュカとタバサが潔白であれば、やはり仲間を庇おうとするだろう。
 デッシュ達の仇は取ってやりたいが……」
彼は一旦言葉を切り、ふう、とため息をつく。
「あの青年も馬鹿ではなさそうだし、セージはあれで意外とやり手だ。
 私情で仲間割れを起こすぐらいなら、二人の判断に任せた方がマシだろう。
 それに実際問題としてリルムのことも心配だ。大人びていてもまだまだ子供だからな」
「そうッスね……」
「最も、ティーダ君がユウナ嬢と二人きりになりたいというならば、野暮な真似はしないが」
「なななな、何でそんな話になるんスか!!?」
「冗談だ。私は彼氏がいようがいまいが気にしない性質なのでね」
「それは気にしろっつーの!」
「だから冗談だと言っているだろう」

ピエロみたいにふざけたやりとりを後ろに、私は城門を潜る。
草叢の中、視界の端に、横たわる彼の姿を見た。
「冗談じゃ……なかったんだね」
動かなくなってしまった彼に触れる。
昼間、もうダメだと諦めた時は、無事に帰ってきたのに。
今、こうして冷たい体を見せ付けられても、現実味が沸いてこない。
213LE CALMANT 10/12:2006/05/05(金) 14:28:29 ID:izxoshRX0
「ユウナ」
ティーダの手が私の肩に触れた。
「連れて行ってあげられないかな?」
肯いてくれる事を期待して問いかけてみる。
でも、ティーダは、そうしてくれなかった。
「野晒しじゃ可哀相だってのはわかるけど、今はあんまり時間ないんだって。
 どこかに隠しておいてさ、アーヴィンとリルム連れてきてから埋葬しよう?
 その方がゼルも喜ぶッスよ。何だかんだ言って、あいつらと仲良しだったから」
ああ、とため息が出た。
受け入れられてないのは私だけなんだ。
ティーダの中では、ゼル君は本当に死んでしまっているんだ。

ティーダがゼル君を背負って、茂みの奥に連れて行く。
城壁のそばの深い植え込みだから、一目では気づかれないだろう。
「行こう」
戻ってきたティーダは、そう言って私の手を握った。
夜だからだろうか。すごく冷たい気がする。
何ともいえない、もやもやした思いを抱いていると、ティーダは唐突に頭を下げた。
「あの……さっきはごめんな」
「え?」
「俺、ユウナと会えただけで嬉しくてさ。ユウナの気持ちとか全然考えてなくて。
 せっかく会えたのに、ユウナのことあんまり見てなかったよな。
 おまけにあんな本まで読んで……だからユウナも怒ったんだろ?
 ……ホント、ごめん」

違う。
確かにあの時感じたムカツキは、ティーダが言ったとおりの理由かもしれないけど。
今、私の胸で渦巻いている感情は、そんなんじゃない。
214LE CALMANT 11/12:2006/05/05(金) 14:30:03 ID:izxoshRX0
思い出にしがみついて生きることが正しい事だとは思わない。
でも……私が死んだら、ティーダは私の死を受け入れるんだろうか。
隠しておくとか、物のような言い方をして、物のように運んだりするんだろうか。
生きている人のために後回しにされるようになるんだろうか。
もしかしたらそれは仕方がないことなのかもしれないけれど。
キミがいなくなった時のことと、私がいなくなる時のことが頭に浮かんで、

 物になって、思い出になって、そうしていつか忘れられてしまうような気がして――

胸の奥が、ずきりと痛んだ。


【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服、リノアのネックレス
 第一行動方針:待ち合わせ場所に戻り、アーヴァインとリルムの無事を確認する
 第二行動方針:サスーンに戻り、プサンと合流
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【エドガー(右手喪失 MP1/2)
 所持品:天空の鎧、ラミアの竪琴、血のついたお鍋、再研究メモ、ライトブリンガー、盗聴注意メモ(書きかけ)、対人レーダー
 第一行動方針:リルムの無事を確認する
 第二行動方針:首輪の研究/アリーナ2を殺し首輪を入手/仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【ユウナ(魔銃士、MP1/2、落ち込み気味)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子、官能小説2冊
 第一行動方針:ティーダについていく
 第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【現在位置:サスーン城→サスーン南東・アーヴァイン達の居場所へ】
215LE CALMANT 12/12:2006/05/05(金) 14:31:18 ID:izxoshRX0
【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス、聖なるナイフ、魔石ミドガルズオルム(召還不可)
 第一行動方針:リュカ達と合流し、様子を探って真相を確かめる
 第二行動方針:フィンの風邪を治す
 第三行動方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す
 最終行動方針:ゲーム脱出】
【現在位置:サスーン城の隠し部屋→東塔へ】

【フィン(風邪)
 所持品:陸奥守、マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:風邪を治す/ジタンを待つ
 基本行動方針:仲間を探す】
【プサン 所持品:錬金釜、隼の剣
 第一行動方針:フィンの看病をする/ジタン達の様子を探る
 第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
(*旅の扉を潜るまでは、魔石ミドガルズオルムの魔力を辿って状況を探ることができます)
【現在位置:サスーン城3F・暖炉がある部屋】
216名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/05(金) 18:21:58 ID:HoP5irnb0

217Avengers 1/10:2006/05/06(土) 06:20:02 ID:oKltyAnz0
「死兆の星の七つの影の 経路を断つ! 北斗骨砕打!」
 叫びと共に、骨をも砕く聖剣技が放たれる。
 いくら皇帝マティウスといえど、初見の未知なる技に対処するのは難しい。
 だが、聖剣技ならば幾度か見た。その性質にも察しがつく。

 タイミングを計り、マティウスは後方に跳躍し攻撃範囲から逃れ、同時に剣の握りを狙い鞭を振るう。
 握り手を弾かれ、宙を舞うフラタニティ。
 ウィーグラフはすぐさまザックよりブロードソードを取り出し、同時に斬撃。
 不意打ち気味に放たれた一撃を、慌てるでもなくマティウスは紙一重でかわしきる。
 そのまま退きながら鞭で牽制し、マティウスは距離をとる。

 この男、想像以上に強い。
 体術は互角、装備の面で僅かにコチラが有理か。
 だが、魔法に置いては完全に遅れを取っている。
 そして何よりも、恐ろしいまでに的確な状況判断。
 一対一の戦闘では勝ち目は薄い。
 勝てぬなら、退く事も念頭におかねばならん。
 何よりも優先させるべくは己の生存。
 私は復讐者。
 復讐者は死ねない。
 憎き仇を討つまでは。
218Avengers 2/10:2006/05/06(土) 06:22:10 ID:oKltyAnz0
 距離をとったマティウスは詠唱を始める。
 させじとウィーグラフは駆け寄り、斬撃を見舞う。
 だが、振るわれる鞭に、斬撃は絡めとられ、捌かれてゆく。
 その隙に、皇帝の詠唱は完成する。
 広げられた片腕がウィーグラフに向かって差し向けられた。

「フレア――――16」

 激しい灼熱と閃光がウィーグラフを襲う。
 咄嗟に身を引き直撃を避けるが。
 巨大な熱量はかわしきれるものではない。
 全身を灼熱に焼かれる。

「クッ………!」

 そのダメージは浅くはない。
 何とかザックからエリクサーを取り出し、その中身を飲み干す。
 独特のハーブ臭と共に火傷は癒え、失われた体力が回復する。

 傷は癒えた。しかし、このままではマズい。
 地力で負けている以上、そのうちジリ損で負ける。
 ――――退くか。

 牽制のためブラスターガンを取り出そうとした、瞬間。
 夜の森に声が響いた。


「――――テリー!」
219Avengers 3/10:2006/05/06(土) 06:24:52 ID:oKltyAnz0
 探し人を求め、戦場へと向かう話術師ラムザと賢者ギード。
 二人は遠方に、交戦する二つの影を発見する。
 夜の森のは暗く、この距離ではその影が何者であるかを特定する事は出来ない。
「僕が見てきます、貴方はここに」
 ヘイストの効果は切れ。重症のギードの歩みは遅い。
 ギード自身者もその事は自覚している。
 このまま付いて行っても足手まといになるのは明白。
 ギードは素直にラムザを見送る。
「………気を付けるんじゃぞ」
 無言でラムザは頷き、一人ぶつかり合う影へと向かう。

 影は激しくぶつかり合い、戦いの火花を散らす。
 そこに灼熱の閃光が放たれた。
 激しい魔法の光に、銀の髪が照らし出される。

「アレは………!」

 それを見つめ、その銀髪に探し人を思い至り。
 駆け寄りながらラムザがその名を呼んだ。

「――――テリー!」
220Avengers 4/10:2006/05/06(土) 06:26:56 ID:oKltyAnz0
 ラムザの呼び声が、夜の森に響いた。
 だが、その呼び声に反応したのは銀髪の青年ではなく、対峙していた騎士の方だった。
 騎士は激しく目を見開き、対峙する男のことすら忘れ、声の方に向かい叫ぶ。


「――――――ラムザ・ベオルブッ!!」


 凄まじいまでの怒声が夜を打つ。

「ウィーグラフ!?」
 予想外の登場者にラムザが驚愕の声を上げる。

「見つけたぞ、ラムザ!!」
 叫びを上げながら、凄まじい勢いでウィーグラフは駆ける。

「待て、ウィーグラフ! 僕は戦うつもりはない!」
 向かい来るウィーグラフにラムザは静止の声を上げる。
 だが、そんな事で騎士の疾走は止まらない。
 衝突は必至。

「我が妹、ミルウーダの仇を今ァ――――!」
 追い求めた仇にたどり着いた騎士が、その刃を振り下ろした。
221Avengers 5/10:2006/05/06(土) 06:29:12 ID:oKltyAnz0
 自らとは逆方向に駆けて行く騎士を見送り、皇帝は一人取り残される。
 先ほど弾き飛ばしたフラタニティを拾い上げ、どうしたものかと思案する。

 何者かに向かって行った騎士を追うべきか。
 それともゴゴの加勢に向かうか。
 アリーナは危険な相手だ。
 あの実力、残虐性は半端なものではない。
 ゴゴを信頼していないわけではないが、悪い予感が僅かに過ぎる。
 ゴゴの加勢に向かう事を決断し、マティウスは踵を返す。
 その目の前に。

「メテオを放った術者はお前か?」

 奇妙な取り合わせの三人組がいた。
 漂う魔性と気品、その様は貴族のよう。
 派手な化粧に笑い声、その様は道化師のよう。
 感じ取れる凄まじい魔力、その様は魔術師のよう。
 ただ共通しているのは全員がとてつもない実力者であると言う事。

「なんだ、貴様等は」
 立ちふさがる三魔王に向かい、皇帝はフラタニティを構える。

「剣を収めろ、コチラに敵意はない」
 貴族はあくまでも冷静に。

「『敵じゃない』ヒャヒャヒャ、そんな言葉信じるバカがいますかねェ? アヒャヒャヒャ!」
 道化は場を乱すように。

「ファファファ。我々は貴様と交渉しにきただけだ」
 魔術師は己のペースを崩さず。

 三者三様、それぞれの声を発した。
222Avengers 6/10:2006/05/06(土) 06:34:02 ID:oKltyAnz0
「交渉だと? 生憎、話を聞いている暇はない。今は道を急ぐのでな」
 そう言って、三人の横を素通りしマティウスは歩を進めた。

「ほう。何をそんなに急いでいるのだ?」
 そう言って魔術師は、当たり前のようにマティウスに付いて歩き始めた。

「………仲間が交戦中だ。加勢に向かわねばならん。
 だから今は貴様等の話を聞いている場合ではない」
 事情を話すまでこの魔術師は離れまい。
 そう思い、マティウスは仕方なく事情を漏らす。

「なに。かまわん、向かうがいいさ。
 話はその道中にでもさせてもらおう」

「……………」
 どうやらこの魔術師は自分の話を終えるまで離れる気はないようだ。
 この手の輩は追い払おうとするだけ時間の無駄というもの。
 そんな無駄な事をしている時間はない。
 今は、好きにさせるとしよう。

 マティウスは三人を気にせず、ゴゴが知らせた落雷の方向へ向かった。
223Avengers 7/10:2006/05/06(土) 06:37:25 ID:oKltyAnz0
「―――ッ!? ゴゴ!!」

 一人、落雷に向かって駆けつけたロックが見たもの。
 それは、嘗ての仲間の無残な姿だった。
 それでもロックはゴゴに駆け寄り、その身に触れ生死を確認しようとした。
 すでに息はない。だがその身にはまだ僅かに温もりが残っていた。
 戦闘から間もない証拠だ。
 ならば、ゴゴを殺した殺人者はまだ近くにいるはずだ。
 だが、まだ近くにいるのなら、すぐに追えば追いつく可能性は高いだろう。
 追うのなら今しかない。

 ロックは顔を上げ辺りを見わたす。
 そして遠くに動く小さな人影を発見した。

 どうする? 追うべきか?
 だが、一人で殺人者を追うのは危険だ。
 いったん戻りピサロたちと合流したほうがいい……。
 ……おいおい、ロック。
 オマエはいつからそんなに薄情なヤツになったんだ?
 仲間が殺されても怒れず、自分の身可愛さに殺人者を野放しにするつもりか?
 そんな事は出来ない。
 戦う戦わないは別として、追いつき居場所くらいは突き止めるべきだ。
 その後は状況を見て対処すればいい。
 そう決断し、ロックは仇を目掛け駆け出した。
224Avengers 8/10:2006/05/06(土) 06:39:49 ID:oKltyAnz0
「―――――――」

 たどり着いた皇帝は何も言えず、その場に立ち尽くしていた。

「アヒャヒャヒャヒャ!! コイツはたしかボクちんを殺そうとしたヤツらの一人じゃないですか!
 いい気味だ! アーヒャヒャヒャヒャ!!」
 そこに、道化師の甲高い笑い声が響く。

「――――黙れ道化」

「ヒャ………」
 静かに放たれたその声に、ケフカの笑い声が一瞬止まる。

「ヒィー! ぼくちん、怖ぁーい!」

 しかし、それも一瞬、悪びれるでもなく、ケフカが再度甲高い声で騒ぎ始めた。
 しかし、そんなケフカにはもはや興味がないのか。
 騒ぐケフカを無視し、マティウスはザンデに向き直る。

「………ザンデと言ったな、貴様の計画とやらに手を貸してやる。」
「ほう」
「………ただし、条件がある」
「ふむ。条件とは?」

 マティウスは木の幹に刺さったソードブレイカーを引き抜き、その剣に誓うように言い放つ。

「――――我が友の仇を討つ。貴様等の手を貸せ」
225Avengers 9/10:2006/05/06(土) 06:41:51 ID:oKltyAnz0
【ギード(重傷、MP大幅消費) 所持品:首輪
 第一行動方針:ラムザを待つ
 第二行動方針:テリー、ルカとの合流
 第三行動方針:首輪の研究】

【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)(HP4/5)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:ウィーグラフに対処
 第二行動方針:ギードに随行し、彼の仲間たちにテリーを託してからユフィを探す  
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【ウィーグラフ
 所持品:ブロードソード プレデターエッジ レーザーウエポン グリンガムの鞭
 暗闇の弓矢 ブラスターガン 毒針弾 神経弾 不思議なタンバリン エリクサー×5
 スコールのカードデッキ(コンプリート済み) 黒マテリア 攻略本 首輪×2 研究メモ
 第一行動方針:ラムザを殺す
 基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を探し殺す(ラムザが最優先)】

【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート
 第一行動方針:ゴゴの仇の影(アリーナ2)を追う
 第二行動方針:事態の処理後、ピサロ達と合流する
 第三行動方針:ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
226Avengers 10/10:2006/05/06(土) 06:44:02 ID:oKltyAnz0
【マティウス(MP 1/2程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)ソードブレイカー フラタニティ ビームウィップ
 第一行動方針:ゴゴの仇を(アリーナ2)討つ
 第二行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード ウィークメーカー
 第一行動方針:マティウスの協力を取り付ける
 第二行動方針:サスーンへ向かう
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/2程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 黒のローブ
 第一行動方針:同上
 第二行動方針:ザンデ・ケフカを監視しつつ同行 
 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ケフカ(MP2/5程度)
 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール 裁きの杖 魔法の法衣
 第一行動方針:同上
 第二行動方針:観察を続けながらザンデに取引を持ちかけるタイミングを待つ
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】

【現在位置:カズス北西の森南部】
227名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/06(土) 14:42:21 ID:eFC6gJu30
裏方雑談スレはこちらに移行します
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1146893353/l50
228名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/07(日) 09:00:21 ID:3E20N8LN0
ho
229名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/07(日) 17:42:53 ID:XNmTPHsR0
230名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/07(日) 18:41:59 ID:mnl4NaaV0
231名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/07(日) 20:01:28 ID:yUmub/HyO
ひゅ
232名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/07(日) 20:15:38 ID:SivjvjAUO
233名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/07(日) 20:54:03 ID:DTXt/5DJO
234名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/08(月) 02:48:46 ID:5UfA3Y4vO
235名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/08(月) 05:21:17 ID:PJ8cTFcv0
236名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/08(月) 09:21:15 ID:sOKxKmcgO
やあ (´・ω・`)
ようこそ、バーボンハウスへ。
突然だけれども、ここを訪れた君に一生セクロス出来ない呪いをかけたよ。
ああ、君が怒るのも無理はない。
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
この呪いから逃れる方法はただ一つ、
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1146416399/
のスレに
「アッー!」
と書くだけなんだ。
うん、重ね重ね強引なのはわかっている。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
じゃあ、注文を聞こうか。
237Surprise 1/13:2006/05/08(月) 16:15:04 ID:wG3KVNl50
状況を見てから対処するはずだった。
しかし、仲間を殺された怒りがその選択肢を除外させた。
「見つけたぞ…!」
アリーナは先刻の喜びで男の気配に気づかなかった。
それはその男が気配を消せる能力を心得ていたのも
あったからかもしれない。
「よくも…よくもゴゴを殺したな…!!」
アリーナは内心動揺したがすぐに立て直す。
今の自分ならどんなことがあっても乗り越えられると
確信していたからかもしれない。
そして開き直るかのように
「だからな〜に〜?あいつが私より弱かった、
それだけのことよ?ここは殺し合いをするゲーム会場。
何か私悪いことしたかしら?」
と最後は笑いながら言った。
それを聞いた男はアリーナを睨みつけた。

その男…ロック=コールの目は怒りに満ちていた。
あくまで自分の感情を抑えてアリーナに言う。
「そうか、じゃお前が俺に殺されても文句はねぇよな?」
「そうね…まぁそんなことはないと思うけどね♪」
アリーナは戦闘体勢に入る。
「ほら早く来なさいよ!ゴゴと同じく殺してあげるから!!」
ロックは無言でクリスタルソードを出して構える。
238Surprise 2/13:2006/05/08(月) 16:16:22 ID:wG3KVNl50
「言われなくてもな!!」



(つまらん!!)
ケフカは苛立っていた。あの取引のことはまだしも、何かいいようのない
物足りなさを感じていた。あくまで最終目的は全ての破壊。
ここにいる者たちは皆自分と同等の能力を持つ。
だからここで一つこいつらに衝撃を与えてやりたい。
方法はなんでもいい。
そんなことを考えた。
そして、ケフカはあることを閃く。
(今こそぼくチンの壮大なる計画を発動するときがきたようですね〜)
といっても今考えたことだが。
しかし、ケフカには自信があった。



(こいつは元の世界からゴゴの仲間のようね。ということは…。)
アリーナは持ち前の素早さを用いてロックに襲い掛かる。
彼女の中では身体能力では絶対に負けていないと考えていた。
しかも、おそらくゴゴとあまり変わらない…とも考えていた。
以上から皆伝の証による四連撃はかわせないと確信した。

しかし…ロックはその四連撃を全て完璧にかわすことができた。
これにはアリーナは驚愕を隠しきれなかった。
(嘘…でしょ?)
自分に対する自信が絶対的にあっただけに。

「俺とゴゴの素早さが同じだと思っていたのか?」
239Surprise 3/13:2006/05/08(月) 16:17:24 ID:wG3KVNl50
ロックは皆伝の証を知っており、それがアリーナに装備されていること
を確認していた。また、ロックの素早さは参加者の中では間違いなく
早いほうに位置している。また、ゴゴの仇敵でも冷静でいれた。
しかし、余裕はまったくなかった。
(やべぇな…想像以上だ…早すぎる)
さっきの事柄、皆伝の証の存在を確認できたこと
       その効果を自分が知っていたこと
       アリーナと自分との素早さがほぼおなじだったこと
       冷静でいれたこと
が一つでも欠けていたら、今の攻撃はかわせなかっただろう。
(おまけに力も相当あるな…マッシュと大差ねえよ・・・。)
予想以上のアリーナの能力に驚かされた。
しかし、悲観をすることはなかった。
力、勢いは相手のほうが上だろう。だが、
経験、知識については負けていない。
さらにロックは知らないが魔法が使えるというアドバンテージもある。

アリーナは魔法が使えない。

「行くぞ!」
「今度こそ殺してやるわ!!」



ケフカはタイミングを待っていた。
240Surprise 4/13:2006/05/08(月) 16:18:24 ID:wG3KVNl50
誰でもいい…。ある言葉がくるのを待っていた。
「まさかあのアリーナがゲームに乗ったとはな…。」
「貴様は奴の仲間なのか?」
「…ふん、半分正しくて半分違うといっておこうか。」
ピサロもアリーナがゲームに乗っているという事実には
少々驚かされた。
「もはや自分の仲間を完全には信じるのは危険のようだな」
「アリーナめ、ゴゴの仇は必ず!!」
ケフカ相変わらずの態度を装って、その機会を待っていた。
今、全員アリーナに気を取られている。
「その女の実力はどんなものか…。まぁ、この男の協力のためだ。死んでもらうがな」
「早く…早く行かねば…!」

ケフカはこの言葉を待っていた。そして、その瞬間その場にいる全員の身体
が軽くなる。
「……!?」
「ヒッヒッヒその女をとっとと殺してお前の酔狂の
再開にいきますか…。」
ケフカが唱えたのはヘイスガ…だとそこにいる誰もが思った。
241Surprise 5/13:2006/05/08(月) 16:19:51 ID:wG3KVNl50
それは間違ってはいない。

……問題なのはケフカが唱えたのはそれだけではなかったということだ。

二つ同時に魔法を唱えるのは通常では不可能だがケフカのある
支給品がそれを可能にした。
それはソウルオブサマサ。そしてもう一つの魔法はある場所に放った。
(幻獣どもを魔石に変えたのと同じ要領で上手くいきましたね。
こいつらの驚いた顔が楽しみですな…!アヒャヒャヒャ!!!)
魔王、皇帝でさえもアリーナのことで気を取られて、なおかつヘイスガの魔力も
ありもう一つの魔法が放たれていたことに気づくことはできなかった。



「ヘイスト!!」
ロックとアリーナの戦闘は続いていた。
「魔法を唱える余裕があるならその剣で切りかかってくれば!?」
とアリーナは間合いをつめて拳をふるう。
しかし、さっきのヘイストで素早さが増したロックは
それをかわして逆に切りつける。
「ぐ…!」
痛みと共にアリーナはあることに気づく。
「これな〜んだ?」
ロックは切りつけたと同時にアリーナの装備品、悪魔の尻尾
を盗みだした。ぶんどるとは違い切りつけながら盗むのではなく
242Surprise 6/13:2006/05/08(月) 16:21:17 ID:wG3KVNl50
切りつけてさらにアリーナに隙がありそこでとっさに悪魔の尻尾を盗んだのだ。

何かしらあの女の戦力が落ちるのではないかと考えた。

「なめてるの!?…許さない!!もうお遊びは終わりよ!!」
アリーナはミラクルシューズを装備し先ほどと違い、かなり
増した素早さでロックに襲い掛かる。
ヘイストがロックにもかかっていたが
「ぐぁ……」
四連撃の全てをかわすことが出来ず2発直撃してしまう。
(なんて素早さだ…くそ!)
ミラクルシューズの効果は大きかった。
ロックは間合いをとり魔法で対抗しようとした。

………その時であった。

不幸なことにロックの後ろにそれは現れた。
それを見たアリーナは本能的に逃げ出した。
…あれのそばにいてはいけない。
…いたら死が待っていると…。

ロックもそれに気づいた。そしてそれが何なのか
すぐに分かった。
243Surprise 7/13:2006/05/08(月) 16:21:58 ID:wG3KVNl50
それはケフカが放ったもうひとつの魔法…デジョンであった。
これに飲み込まれた者は異次元に送還される。

…つまり、それは死を意味していた。

誰が…?

そんな場合ではない、すぐに逃げようとするが気づくのが遅すぎた。
(魔法の詠唱で気づけなかった…)

(ちくしょう……!!!)

ロックの体が飲み込まれていく。

…ごめんゴゴ、仇取れなかったよ…。
…ごめん皆、生き残ることができなかったよ…
…ごめんティナ……そしてセリス、生き抜いて
このゲームの真実を知ることができなかったよ…


最期にロックはとっさにいまだに効果が分からないキューソネコカミ
244Surprise 8/13:2006/05/08(月) 16:23:40 ID:wG3KVNl50
を投げることができた。
希望をつなぐために…。


そして…ロックはいなくなった…。


マティウス達は戦闘があった場所に到着した。
魔王、皇帝はその戦闘跡に困惑を隠しきれなかった。

誰もいないというのはどういうことだ?
アリーナがロックを殺したとすれば奴の死体があるはず。
また、その逆でも最低でもロックはいるはずだ。
マティウスは仇敵を探した。
「アリーナはどこいった!?」
そういいながらキューソネコカミを拾う。
「それはロックの…」
「アヒャヒャヒャ二人とも死んだんですかね〜!?」
「不可解だ、実に不可解だ。」
ザンデも理解できなかった。
ピサロは
「今後どうするか話さねばならぬようだな。」
と言った。

ケフカの笑いはしばらく止まることはなかった。
あいつらをあざむきあの二人を最低一人は殺すことができたからだ。
何より絶望をあの二人に与えられたからだ。
245Surprise 9/13:2006/05/08(月) 16:24:33 ID:wG3KVNl50



…しかし、ケフカでさえもある一つの誤算には気づくことはなかった。



・ デジョン【魔法】
 これを受けたものは異次元にとばされ通常では死亡するが
 この魔法は『空間移動』という効果もある。今回は後者のみを
適用としている。

対策法・活用法
これを受けても諦めるな!強い敵とあったらこれを
使って逃げるのも効果的かもね!!

『公式基礎知識完全攻略アルティマニア解体ガイドブック』より



「…く!」
ロックは地面に叩き落された。
「ここは…?」
どうやら死んではいないようだ。
彼はデジョンに飲み込まれたとき完全に諦めていた。
なので生きている喜びは大きかった。
しかし、疑問も残る。
246Surprise 10/13:2006/05/08(月) 16:25:29 ID:wG3KVNl50
(なぜだ…なぜ俺は生きているんだ?)
彼はデジョンの『空間移動』のことなど知る由はなかった。


ピサロたちやケフカはどうしているんだろうか…。
ソロたちは無事だろうか。
フリオニールは本当にゲームに乗ったのだろうか。
そして、憎きアリーナ。

さまざまなことが交錯する。

そんなとき彼の視界には二人…いや三人の人影を確認できた。
(今はあの人たちと接触してみよう…それから今後について考えよう)

……ロックが再び驚愕することになるのには時間がかからなかった。


【アリーナ2(分身) (HP3/5、毒) 】
 所持品:E皆伝の証 Eミラクルシューズ イヤリング 
     ヘアバンド 天使の翼  手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:とにかくその場から離れる
 最終行動方針:誰かにアリーナを殺させ、勝利する】
247Surprise 11/13:2006/05/08(月) 16:26:52 ID:wG3KVNl50
【マティウス(MP 1/2程度、ヘイスト)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)ソードブレイカー 
     フラタニティ ビームウィップ  キューソネコカミ
 第一行動方針:今後について話し合う
 第二行動方針:ゴゴの仇を(アリーナ2)討つ
 第三行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ザンデ(HP 4/5程度、ヘイスト) 所持品:シーカーソード ウィークメーカー
 第一行動方針:同上
 第二行動方針:マティウスの協力を取り付ける
 第三行動方針:サスーンへ向かう
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
248Surprise 12/13:2006/05/08(月) 16:28:30 ID:wG3KVNl50
【ピサロ(MP1/2程度、ヘイスト) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 黒のローブ
 第一行動方針:同上
 第二行動方針:ザンデ・ケフカを監視しつつ同行 
 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ケフカ(MP2/7程度、ヘイスト)
 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール 裁きの杖 魔法の法衣
 第一行動方針:同上
 第二行動方針:観察を続けながらザンデに取引を持ちかけるタイミングを待つ
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】

【現在位置:サスーン東南の森】

249Surprise 13/13:2006/05/08(月) 16:29:58 ID:wG3KVNl50
【ロック (HP7/10 MP若干消費 ヘイスト 所持品:クリスタルソード 魔石バハムート 悪魔の尻尾
 第一行動方針:近くにいる人と接触をはかる
第二行動方針:接触後、今後のことを考える
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】

【アリーナ (左肩・右腕・右足怪我、腹部重傷、昏睡) 
 所持品:プロテクトリング、インパスの指輪
 第一行動方針:不明
 基本行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【ウネ(HP 3/4程度、MP消費) 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:アリーナの回復
 基本行動方針:ザンデを探し、ゲームを脱出する
【クリムト(失明、HP2/3、MP消費) 所持品:なし
 第一行動方針:アリーナの回復
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーンの町・中央部】
250名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/08(月) 19:26:54 ID:wG3KVNl50
>>237-249
は無効です

お騒がせして申し訳ありませんでした
251名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/08(月) 19:37:56 ID:1XQAcrbd0
なんで?
252名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/08(月) 20:47:27 ID:O0vxVJfz0
>>251
雑談スレへ
253名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/09(火) 17:35:14 ID:LNMisDxs0
ほしゅ
254二重写しの死影 1/14:2006/05/09(火) 18:00:38 ID:rHP5a04y0
何者かが追ってきている事には気付いていた。
相手をしようかとも思ったが、喉元から込み上げる吐き気が制止した。
澱のような感覚は、動けば動くほど全身に浸透していく。
やけに梃子摺らせてくれたカメ。あいつが使ったという毒の魔法の影響だろう。
これだから魔法使いは嫌いだ。

早くリュカに会いたい。
あいつは回復呪文を使っていたから、キアリーぐらい覚えているだろう。
ピエールかエドガー、あるいはリュカの娘とかいう子供――タバサを捕まえて、丁寧に壊しながら頼めばいい。
そうすれば、きっと昼間みたいに親切に、あたしの身体を癒してくれる。

目指すはサスーン。
方位磁針を取り出すまでもなく、ゴゴ達がやってきた方角だ。
あたしはザックから薄汚れた翼を取り出し、マントを羽織るように装備する。
テリーの奴が使えたんだから、あたしにだって使えるに決まってる。
炎の爪といった魔法の道具を使う要領で、意識を集中させた。
灰色の羽が微かに音を立て、あたしは宙へと舞い上がる。
地上から十センチほど浮いたところで一旦停止、全速力で前へと駆ける。
こうすれば石ころだの木の根だのを気にしないで済むし、転ぶ心配もない。
少し頭が疲れてくるけれど、うざったい追跡者もどうにか撒けそうだ。


何分ほど空を翔けただろう。
木立が途切れ始め、露出した岩を目にした辺りで、ようやくあたしは異変に気付いた。
来た道を振り向き、左手の方へ視線を向ける。
森の中からでは決して見えなかった双塔のシルエットが、月明かりに照らされていた。

おかしい。あたしはゴゴ達が現れた方角に進んできたはずだ。
わざわざ山岳地帯を通ってきたのか?
一体何のために?
フルスピードで回転し始めた思考は、やがて一つの結論を導き出す。
255二重写しの死影 2/14:2006/05/09(火) 18:01:53 ID:rHP5a04y0
ウィーグラフの話では、ピエールは突如現れた自称竜騎士の白魔導士と子供達を追っていったという。
だとすればどこかで派手な戦闘を繰り広げていたのかもしれない。
それを見かけたゴゴとマティウスが、助太刀を行ったとしてもおかしくはない。
加えて思い出す。ウィーグラフが言っていたもう一つの情報を。
白魔導士とは通常、回復の技を心得ている者を指すらしい。
その中でも特に高レベルな者だけが、ピエールを吹っ飛ばした攻撃魔法を扱えるそうだ。
つまり子供と魔物を助けた男は、回復魔法のスペシャリストということになる。

作戦変更。
邪魔をした白魔導士を探し出して、利用してから、子供共々始末しよう。
そちらの方がリュカ達を脅すよりも手軽だ。
何せ、普通の白魔導士ってのは魔法以外何の取り得も無い虚弱な連中だって話だし。
あの子供もタバサと違って、ただ震えているだけだった。

手頃な高さの木を探してから、翼に意識を集中させる。
高度を上げ、枝に飛び乗り、また高度を上げてを繰り返し、天辺近くまで登る。
そうして地上を見下ろしてみると、百メートルほど離れた地点に、小さな明かりが灯っていた。
普通に森を歩いているだけでは決して気付かない場所。
でも、地形だの何だのに安心して、焚き火を熾したことが間違いの始まりだ。

くすっと笑いながら地上に戻ると、かすかな眩暈があたしを襲った。
全力を出して戦ったせいで、毒の回りを早めてしまったのだろうか?
それとも翼を使うのに精神力を削ったせいか。
どちらにしても、早めに治療しておかないとまずいかもしれない。
負けて死ぬのもごめんなら、のたれ死ぬのも真っ平だ。

ゴゴから奪った靴を履き、地面を踏みしめながら、あたしはゆっくりと獲物に近づく。
焚き火の傍にいるのは、カンテラを抱いた例の銀髪の子供と、金髪の少女と、白いローブを着た人間。
魔物がいないことを除けば、あたしの読みは完全に当たっていたようだ。
どこかに隠れているのかとも思ったけれど、視界の片隅に墓らしきものを認め、事態を理解する。
高揚する気分を抑え、慎重に距離を詰めていく。
残り数メートルに達したところで、一旦足を止め、耳をそばだてた。
256二重写しの死影 3/14:2006/05/09(火) 18:03:53 ID:rHP5a04y0
「兄ちゃん、リルム……みんなは大丈夫だよな?」
「大丈夫だよ。ゼルはね、町一個吹き飛ぶ大爆発から生還した男だよ?」
「そうそう。ゴゴなんて、物真似で世界を救った奴だし」
「ギードだって、プロの格闘家顔負けの勢いで渡り合っていたじゃないか」
「ツノ男は謎だけど、あの物腰は只者じゃないからきっと強いって」

現実も知らず、好き勝手に言っている連中を横目に考える。
果たして誰の身柄を押さえるのが一番いいのか。
最も近くにいて取り抑えも簡単なのは銀髪の子供だが、白魔導士が攻撃してくるかもしれない。
カメのことは遠慮なく切り捨てていたのだし、一概にお人よしと決め付けられない相手だ。
ならば白魔導士本人を捕まえてしまうべきか。実力がわからない少女にするべきか?

思案に耽る間もなく、魔導士が動いた。
「テリー。もう夜だし、リルムと一緒にお休みしなさい。
 心配しすぎても疲れちゃうし、あっちの岩陰なら風も来なくてぐっすり眠れるよ」
「……そうだね。一眠りして目が覚める頃には、みんな戻って来てるよ」
思わず舌を打ちたくなった。あの子供、髪の色ばかりではなく名前まで『テリー』と同じらしい。
人の苛立ちを他所に、リルムと呼ばれた子供が、テリーの手を繋いで立ち上がる。
そうして二人は、あたしがいるのとは正反対の方向に歩き出した。
一方で、魔導士は大きなあくびをしながら、あたしの方へ向き直る。
絡まっていた思考は、その瞬間に行動を命じた。

だらしなく口を開けた男の目前に踊り出て、両手を掴み取る。
右足を相手の左足に絡めて手前に引き寄せ、体勢を崩させたところでジャンプ。
左の膝で顎を蹴り飛ばし、押し倒しながら胸の上に着地して、男の身体を組み伏せた。
もちろん全ての動作は最大限に手加減している。
本気でやれば簡単に殺せるが、今回ばかりはそれでは意味が無い。

「動かないでね。そこのガキもよ。
 少しでも変な真似したら、首をへし折るから」
耳障りな悲鳴を上げる子供達を制し、膝の下に視線を移す。
257二重写しの死影 4/14:2006/05/09(火) 18:07:02 ID:rHP5a04y0
目深に被っていた白いフードが脱げ、若い男の顔が露出している。
顔立ちこそ違うが、ウェーブのかかった長髪と青い瞳がエドガーを思い出させた。
魔法使いというだけで十分むかついていたけれど、目と髪のせいで百倍増しだ。
テリーはテリーで言わずもがなだし、リルムはタバサと同じ金髪で、年頃も近い。
元々逃がす気はないとはいえ、ますます苛立ちと憎しみが募る。
でも、その前に、やらせるべきことはやらせないといけない。

苦しげに顔を歪める男に、あたしは軽く微笑みを向けた。
「頼みがあるの。素直に聞いてくれたら見逃してあげるわ」
「たの……み?」
胸に体重をかけているためか、苦しそうに息を吐く。
この調子なら、面倒な真似をしなくても応じてくれそうだ。
「そう。そっちの子供が連れてたカメに変な魔法かけられたの。
 だから責任を取ってほしいのよ。シロマドウシなら、キアリーぐらい使えるんでしょう?」
「き、きあり〜……?」
理解力がないのか、とぼけているのか。あたしは両手と膝に力を込める。

「このまま手首と肋骨折ってもいいのよ?」
男は小さく息を飲み、ゆるゆると首を横に振った。
それから絞り出すように、か細い声を上げる。
「ちょ、いや、だから、『きあり〜』って、何のための魔法なんだよ?」

ああ、とあたしは心の中で手を打った。
ゴゴが使った魔法のように、同じ効果の技でも、他の世界では名前が違っているんだろう。
ダメだダメだ、こんな短絡思考。本物のアリーナじゃあるまいし。
自分には冷静さを、魔導士には頼み事を、改めて命じる。
「解毒の魔法よ。使えるでしょ、それぐらい」

すると魔導士はぱちぱちと瞬きをし、それから焦ったようにまくし立てる。
「む、無理だ、今は。傷を治すのに、魔力を使い果たしちゃったんだよ。
 二十分……いや、十五分待ってくれ。そうしたらどうにか唱えられるから」
「あら、そうなの」
258二重写しの死影 5/14:2006/05/09(火) 18:08:42 ID:rHP5a04y0
あたしはとびっきりの笑顔を作り、筆を折る時のように右手に力を込めた。
思ったよりは筋肉がついていたけれど、三秒ほどでバキッと渇いた音がする。
「うわああああああああああああッ!?」
よっぽど打たれなれてないんだろう。予想外に盛大な悲鳴が上がる。
聞き分けのない体がびくんと跳ねて、思わずバランスを崩しそうになる。
おまけにバカなところまでそっくりなテリーが、「兄ちゃん!」なんて近寄ろうとしてきた。
あたしは折れた右腕を全力で捻り上げながら命令する。

「ね、お兄さん。言ってあげなさいよ、近づくなって」
「く、来るな、テリー……はやく、逃げ」
余計な事を言う前に、片足を軽く浮かせて、つま先を股間に押し付ける。
「余計な事言うと踏み潰してすり潰すわよ?」
汚いから本当にやるつもりはないけれど。
間に受けたのか、逆に冗談だと思ったのか、か細い声で呟いた。
「この、サディスト女……そういうのはマゾの奴にやれよ……」
微妙に意味がわからないけれど、とりあえずふざけるだけの余裕はあるらしい。
右手を潰してやろうかと思ったけれど、向こうも予測してるだろう。
目を抉るのもクリムトにやったし、ワンパターンはつまらない。
「こんなの、片方だけあれば十分よね」
あたしはそう言って右手を離し、落ちていた木の枝を拾い上げる。
そうして呆気に取られる男の耳に、脳を突き破らない程度に突き刺した。

「ッぐああああああーーーーーーーーーーーッ!!」
先ほどよりも大きな悲鳴を迸らせた辺り、これはかなり効いたらしい。
派手に動かして反応を楽しんでみたかったけれど、流石に遊んでいる場合ではないと自制心が働く。
子供達の様子を伺い直したが、二人とも地面に手を当てて睨みつけているだけだ。
見捨てて逃げれば、片方ぐらいは生き延びられたかもしれないのに。
バカガキ二人を嘲笑いながら、残っている左耳に顔を近づけて、そっと囁く。

「ねぇ。治してくれる?」
男は何度も口を動かした。
どうやら「わかった」と連呼しているらしい。
259二重写しの死影 6/14:2006/05/09(火) 18:10:17 ID:rHP5a04y0
あたしは手を小刻みに動かしながら、枝を引っこ抜いた。
軽い手ごたえを感じる度に、足元で痙攣するのがうっとおしかったけれど、仕方ないだろう。
そうして完全に抜いてやると、男は半分白目を剥きながら息を吐く。
か細い声で何かの文句を唱え始めたのはしばらくしてからだった。

もうすぐだ。
もうすぐでこの疎ましい気だるさから解放される。
あたしはそっと目を閉じ、未来のことへ思考を移す。
マティウスにリュカ達にピエール。それに本物のアリーナ。
倒さないといけない連中は一杯いるのに、回復手段が心もと無いのが痛い。
……癪に障るが、この男は極限まで生かしておくべきかもしれない。
徹底的にしつけた上で片耳と口だけ残しておけば、薬草の代わりになる。
あたしも学習した。
大人のテリーのように早く切り捨てても、何もいいことなんてない。
利用できるものは限界まで利用することを考えた方がいい――

「――」

「……?」
男が押し黙ったことに気付き、あたしは我に返る。
「何よ。さっさとしなさいよ」
促すつもりで、喉に手をかけた。
だが、みっともなく歪んでいたはずの顔は、うって変わった表情を浮かべる。
苦痛の色さえ塗り潰した不敵な笑顔。
それが合図であったかのように、後方に殺気が生まれた。
「おらぁッ!!」
振り向くと同時に気合の入った掛け声が響く。
あたしは盾にするために、素早く男の身体を引き上げた。
しかし。
「ガーデン生を、甘く、見るなよ!」
わけのわからないことを叫びながら、男が片手で大地を突き上げ、身を捻る。
260二重写しの死影 7/14:2006/05/09(火) 18:11:59 ID:rHP5a04y0
反動で回転する身体。
予想外の動きにあたしは反応しきれず、長大な剣の目前に投げ出された。
目前に迫る切っ先。サイドステップは間に合わない。
あたしは男の身体を突き飛ばし、切っ先を片手で挟んだ。
痺れるような衝撃と刃を、真横の地面に受け流す。
同時に死角となった『元前方』から迫る何かを避けようと、振り向き様に飛び退いたが。
「援護射撃と女のコの相手はっ、僕の専売特許だよ!」
忌々しい魔導士が、自由になった左手であたしの服を掴んで引き寄せた。
体勢を崩したあたしの目に飛び込んできたのは――アリーナの姿。

「リルム様を舐めてると痛い目見るんだぞ、凶暴ズンドー女!」
しゃがみ込んだ子供達。その前にある地面が奇妙に彩られている。
その意味を知るより早く、アリーナが間合いを詰めてくる。
『消えろ、偽者!』
唸りを上げる右ストレート。それは物真似ではない、紛れもないあたし自身の拳。
とっさに翼に意識を集中させ、宙に浮いて交わしつつ、魔導士に蹴りを入れて弾き飛ばす。
そのまま着地して連続攻撃に移ろうとしたが、水晶の剣が間合いを詰めていた。
「余所見してる暇は無いぜ!」
銀色の髪を持つ乱入者が懐に飛び込んでくる。
あたしは身を捻りながらフックで迎撃。
攻撃動作に移る前に相手を殴り飛ばし、どうにかまともに斬撃を浴びることだけは避けた。
奪った靴がなければ危なかったところだ。
体勢を立て直される前に、あたしはバック転して間合いを取り直す。
アリーナの姿はどこかへ消えていた。
あたしは指の間から流れる血を舐め取りつつ、残った三人と一人に視線を注ぐ。

「ロック!」
襲撃者の姿を認めたのか、リルムが驚いたように声を上げた。
一方で、ロックと呼ばれた銀髪の剣士は、魔導士を見やりながら面白くなさそうに鼻を鳴らす。
「何でお前がリルムと一緒にいるんだよ」
「い、色々あってさ〜。それにしてもロックさんが近くにいたなんてラッキーだよ。
 あれ以上の引き伸ばしなんて、正直自信無かったしさ〜……」
261二重写しの死影 8/14:2006/05/09(火) 18:14:26 ID:rHP5a04y0
魔導士は右耳を抑えながら、相変わらずの情けない声を出す。
何度か蹴飛ばしはしたが、耳と右腕以外は大したダメージではないだろう。
アリーナならともかく、あたしは目的を忘れるほどバカじゃない。
それに無理な体勢と毒の影響で、力も上手く入れられなかった。
杖を拾い上げ、ロックの傍に逃げている余裕こそが、その証拠だ。

「うるさいふざけるな近寄るな馬鹿野郎。
 お前の事はヘンリーから聞いたんだ。自分がしたこと忘れたとか言うなよ」
「ぼ、僕よりあっちの方がヤバイってば〜。あいつ、ティーダ狙ったストーカーだよ?
 それに……落雷だの隕石だの、この近くでマティウス達とあいつが戦ってたと思うんだけど〜……」

ゴゴの名前を聞いて、あたしは思わず笑みを浮かべた。
「へぇ。やっぱり知り合いだったの」
人のことを睨み据えていた二人に、履いている靴を見せ付けてやる。
意味を悟って顔色を変えたのは、魔導士と子供達だけだった。
「このズンドーまな板……ゴゴをどうしたんだ!」
顔を紅潮させながらリルムが吠える。
どの辺りがズンドーでまな板なのか、歯をへし折りながら聞いてみたいところだが。
「会いたいなら今すぐ案内してあげるわ。地獄への片道切符と一緒にね」
苛立ちを抑え、意趣返しとばかりに挑発してやると、二人の男は両極端な反応を見せた。
片やわざとらしく身を震わせ、片や眼光鋭く睨みつけ。
ただしその瞳に宿る色は、リルムと同じ、明確な敵意。

「ねぇ、どーするの?
 僕の立場としては、ヘンリーさん達が怒るようなことはしたくないんだけど」
「そりゃ、余裕があれば穏便に生け捕った方がいいだろうな。余裕があれば」
「それ、『余裕がないから以下略』って意味で、ファイナルアンサー?」
「「ファイナルアンサー!」」

少女と剣士の唱和した声が、二度目の開戦合図。
あたしが大地を蹴り、間断挟まずロックが駆ける。
262二重写しの死影 9/14:2006/05/09(火) 18:17:05 ID:rHP5a04y0
この男、素早さは本来のあたしと同等かそれ以上だ。
だが、あたしは魔法の靴を履いてるし、相手は中空への攻撃手段を持っていない。
限界までひきつけた上で、翼を使って上空へかわす。
足首をわずかに切りつけられたけど、所詮は浅手だ。
そのまま空を駆け、先にリルムを仕留めに向かう。
魔導士を捕らえている間は気付かなかったが、リルムの回りには幾つもの絵が描かれていた。
普通の絵ではない。精密なスケッチは全て、魔力特有の薄ぼんやりとした光を放っている。
悔しがり、歯噛みするフリをしながら描いていたのだろう。
そしてテリーの持つカンテラの光が、あたしの目を誤魔化す役割を果たしていたのだ。
「テリー! 銃出して!」
リルムは叫びながらスケッチに目を書き足す。
魔法の線画はあっという間に彩られ、魔導士と同じ顔をしたコート姿の男が浮かび上がった。
実体化した絵はテリーから奇妙な武器をもぎ取り、こちらに向き直る。
同時に悪寒が走り、あたしはとっさに身を沈めた。
『3seconds SHOT!』
爆発魔法に似た音が立て続けに大気を震わせ、衝撃が走る。
ぐらりと眩暈が起き、気がつけばあたしは地上に落下していた。
大量の羽が舞い散る中、後方でばさりと音がする。
だが、音の意味を探る余裕は無かった。
「リルム! もういい、逃げるんだ!」
そう叫ぶ声は真上から。
しかし、魔導士の姿よりも先に、大きく広がる闇が落ちてくる。
幻影が着ていたのと同じコートだと認識した時には、あたしの身体に覆い被さって、動きと視界を遮った。
起き上がる間も無く、風が唸りを上げる。
「ゴゴの仇、討たせてもらうぜ!」
裂帛の気合と共に濡れた音がして、次の瞬間には痛みに摩り替わった。
腕を斬られたのだと一々感じている余裕さえない。
あたしは地面を転がり、執拗に追い縋る斬撃を避ける。

どうすればいい?
派手に動き続ければ毒に身体を蝕まれる。魔導士を殺せば毒を消す手段が減る。
だが、このままでは待ち受けるのは敗北だ。
263二重写しの死影 10/14:2006/05/09(火) 18:20:26 ID:rHP5a04y0
躊躇いが間違いなく死に繋がる状況。
ならば――迷う必要などどこにある?

「いつまでも……調子づいてんじゃないわよ!」
吐き気と眩暈を怒りで抑え、あたしはコートを跳ね飛ばす。
手加減していたのをいい事に、散々人を甘く見ていただろう忌々しい魔導士。
そいつの鳩尾に全体重とスピードを乗せて裏拳を叩き込む。
「がはっ!」
クリーンヒット。
ついでに吹き飛ぶ前に延髄を刈り、完全な止めを刺そうとする。
だが、何故か足が反応しない。
首を傾げる前に、魔導士の身体は岩に叩きつけられ、ずるずると滑り落ちた。
「この野郎!」
剣士が迫る。その手には、あたしが身に付けていたはずの皆伝の証が握られている。
あたしはヤツの二度目の攻撃を思い出した。
上手く迎撃できたと思っていたが、あの時に既に掏り取られていたとしたら――
あたしは小さく舌打しながら、流水のような連撃を迎え撃つ。

一撃目、上段からの振り下ろしをサイドステップでかわし。
二撃目、斜めの薙ぎ払いをバックステップで。
三撃目、腕を返しての突きは身を捩り。
その勢いを利用して、大きく弧を描く回転斬りの軌跡を飛び越える。
連続攻撃が途切れる瞬間こそが最大の隙。
今まで皆伝の証を使っていたのはあたしだ。そのことはよーく知っている。

「なっ!?」
驚愕の表情を浮かべるロックの胴体に、ソバットキックをぶちかます。
ミシ、と鈍い手ごたえ。肋骨ぐらいはへし折ってやれただろう。
そのまま身体を地面に叩きつけ、倒れたところで即座に足首を掴む。
「ロック!」
様子を見ていたリルムが、最後に残った絵に触れた。
264二重写しの死影 11/14:2006/05/09(火) 18:22:52 ID:rHP5a04y0
子供騙しの技でどうにかできると思っているのだろうか。
現れた幻影は、やはりというべきかあたし自身。
絵という形でコピーを作り出すのは、賞賛に値する能力だけれど。
一度に一枚分だけ、しかも一撃で終わりではこけおどしにしかならない。
やっぱりこいつもただの曲芸、紛い物だ。

「本物はあたし一人で十分なのよ!」
しっかりとロックの身体を捕まえたまま、全力でスイング。
遠心力を利用したパワーにロック自身の重みを乗せて、偽者に向かって放り投げる。
あたしに向かってきていた幻影は、巨大な弾丸と化したロックに薙ぎ倒され、消えた。
愕然とするリルムを、ロックの後を追って駆け出したあたしの拳が捉える。
「お休みなさい」
悲鳴さえ響かない。
玩具のように軽い身体は、呆気なく木の幹に叩きつけられた。
動かなくなった少女と男に止めを刺す前に、あたしはテリーに向き直る。

こんなガキでも侮ってはいけない。
他の三人に構おうとした隙に、背後から剣を突き立てようとするかもしれない。
避ける自信があろうと自惚れは禁物。今まで散々学んできたことだ。

テリーはカンテラを左手に握り締めたまま、あたしを睨みつける。
「よくも……よくもみんなを……!」
みっともなく震えながら、テリーは細身の剣を持ち上げた。
魔導士が言っていたようにさっさと逃げれば良かったものを。
それともウィーグラフかピエールの襲撃を気にしていたのか。
どちらにしても、既に命運は尽きている。
足掻くだけ無駄というものだ。
「怒らなくても、皆と一緒に送ってあげるわよ」
あたしがそう言って慰めてやると、
「……こ、の、悪魔めぇえええええ!!」
テリーは叫ぶなり、身の程知らずにも真っ直ぐに向かってきた。
265二重写しの死影 12/14:2006/05/09(火) 18:25:47 ID:rHP5a04y0
やっぱりバカだ。大人のテリーと同じ、救いがたいバカだ。
丁度いい。あいつの分も一緒にわからせてやろう。
最後に勝つのはあたしだってことを。
お前が抱いているちっぽけな思いも、お前自身の命も、何の価値もないんだってことを――

「テ、リー……!!」
「……スロ、ウ……!」
「!!?」
あたしの背後で、男の声が二つ、響いた。
ほんの一瞬、視界を閃光が満たす。
スローモーションで流れていた光景が二重に加速する。
衝撃。そして、のめり込むような激痛。

繰り出した鉄拳は、込めた力を開放する前に、テリーの胸に当たっていた。
スピードだけの攻撃は子供の身体を貫くこと叶わず、ただ、弾き飛ばすだけで終わる。
激突した時に取っ手が壊れたのか、宙を舞ったカンテラが落ちて割れる。
反射的に破片を目で追うと、あたし自身の胸から生えた、剣の束に気がついた。

「え……?」
鮮血と間抜けな声が、あたしの口からこぼれる。
「兄、ちゃん……」
立ち上がろうとしたテリーの身体が崩れ落ちた。
あたしも立っていられずに、片膝をつく。
どんどん力が抜けて、視界が狭まっていく。

わからない。何が起きたのか。
割れたカンテラから流れた油が燃え上がる。
赤い光に照らされたあたしの手が、砂のように崩れていく。
そして消え行く意識の中、あたしじゃない『アリーナ』の記憶が脳裏に浮かぶ。
266二重写しの死影 13/14:2006/05/09(火) 18:29:42 ID:rHP5a04y0
 長い冒険の旅で戦ってきた、数多の魔物達。
 その中には、死体も残さずに消滅するものがいた。
 どうしてそうなるのか、老魔術士と神官に聞いたことがある。
 神官の答えは、『彼らは自然の理から外れた者。神の御許に行く事は許されないのです』
 魔術士の答えは、『所詮は紛い物の命。塵は塵に、無は無に戻るだけのことですな』……

――違う。
あたしがアリーナだ。
あたしは紛い物なんかじゃない。
手を伸ばす。赤い炎に。その中に映る赤い髪の女に。
あたし自身の、アリーナの、本物であるはずのあたしの姿に――

「あたしは……あたしは――!!」



――揺れる光と静寂が辺りを包む。
 杖を振るった狙撃手は、髪を塗らす血の感触すらわからぬ、昏迷の闇に飲み込まれた。
 魔法を唱えたトレジャーハンターは、血を吐きながら、地面に身体を横たえる。
 重い一撃に意識を刈り取られた絵描きの少女は、大木の幹に身体を預けている。
 友の形見に守られた少年は、受けた衝撃と限界に達した緊張から、気を失う。

 模造品の身体は砂へと朽ち、身に付けていた首輪を埋もれさせる。
 残されたワンピースとマントは、油を伝わった炎に包まれ燃え上がる。
 四発の銃弾に撃ち抜かれた天使の翼の破片を前に。
 誰も動かない世界の中で、焔だけが勢いを増す。

 その光景を見る者、見た者は誰も居らず。
 ただ、塵は塵へ、無は無へ還り――
267二重写しの死影 14/14:2006/05/09(火) 18:31:14 ID:rHP5a04y0
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失)
 (昏睡+重傷、右腕骨折、右耳失聴)
 所持品:竜騎士の靴、ふきとばしの杖[0]、手帳、首輪
 第一行動方針:?】
【リルム(HP1/2、気絶、右目失明、魔力消費)
 所持品:英雄の盾、絵筆、祈りの指輪、ブロンズナイフ
 第一行動方針:?
 第二行動方針:仲間の帰りを待つ】
【テリー(DQM)(気絶+軽症、右肩負傷(5割回復))
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3
 鋼鉄の剣、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
 第一行動方針:?
 第二行動方針:ギードを待つ/ルカ、わたぼうを探す】
【ロック (気絶+重傷)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート 皆伝の証
 第一行動方針:?
 第二行動方針:事態の処理後、ピサロ達と合流する
 第三行動方針:ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】

*アリーナ2の所持品とコルトガバメント(予備弾倉×3)はその場に放置。
 天使の翼は壊れています。一部アイテムは燃えてなくなる可能性もあり。
 
【アリーナ2 消滅】
268名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/10(水) 23:24:28 ID:hZY++hdc0
保守
269名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/11(木) 08:54:37 ID:GFmnliR90
270Grim 1/9:2006/05/11(木) 19:03:01 ID:6BPf2p0P0
ギードの位置まで届いた声はすでに明瞭さを無くしており、ただ込められた激情だけをかろうじて解することが出来た。
しかし行動を決断するにはそれで十分で、彼は既に躍動を開始した二つの影へ向けて動き出す。
自分に助力してくれる青年を救うために。


すんでのところで騎士の突撃をかわし、地上より3メートル上の横に伸びた枝へ飛び移る。
下方からは憎しみに燃える、良く知った相手がいつかのような目をして自分を睨みつけている。
ウィーグラフの戦いの思考ならばこの間合い、次は彼の得意技。
そう察したラムザはとっさにその場所を離れ、必殺の聖剣技の焦点を逃れる。

「おのれェッッ!!」
「ミルウーダの仇!? ウィーグラフッ、それがあなたの目的かッ!」

両足を再び木の根の張った森の地面へつけ、吐き出すように問う。
着地したラムザを逃すまいと剣を振り上げ猛然と突進、その問いに対し動作で肯定するウィーグラフ。
負けじとブレイブブレイドを打ち合わせて防ぐ。

「ラムザッ、ようやく見つけたぞ! 貴様の命で我が妹ミルウーダの冥福を祈らせてもらうッッ!」
「まだそんなことを…ッ! あなたはこんな世界に身をおいてそれしか考えることは無いのかッ!
 どうしてみすみす魔女の思惑に乗るッ!
 義勇軍として立ったあなたならこの理不尽な世界に抵抗するという考えが理解できるはずだッ!
 わかっているくせに、あなたは目を背けているッ!」
「口達者は変わらんな、ラムザ=ベオルブ! しかし背景がどうであれこれは私に与えられた機会ッ!」
271Grim 2/9:2006/05/11(木) 19:03:54 ID:6BPf2p0P0
一段と増した圧力に屈するように後方へ弾け飛ぶ身体、そして剣。
しかし、それがウィーグラフの優位を示すものではないことをラムザは次の動きで教えてみせた。
刹那の見切り――侍という戦闘者に伝わるすばらしき回避技術により追撃は身に触れることなくラムザの両手の間で停止した。
宙を舞っていたブレイブブレイドが少し柔らかい音を立てて地面に突き立つ。

「聞けッ、ラムザ=ベオルブ! そんなこと、と言ったなッ!
 それが全てを失った私に残された目的なのだッ! 他のすべては私にとって瑣末なことに過ぎんッッ!!」
「夢も、理想も…善悪の判断さえも失ったか、ウィーグラフッ!」
「これは貴様と私の問題だッ! 戯言など不要ッ!!」

両手に捕まえた剣から与えられる負荷が消滅する。
それだけでラムザはためていた両足から力を解放してその場を離れていた。
しかし、ウィーグラフにとってもそれは計算に入っていること。

「大地――いや、我が怒りがこの腕を伝う! 防御あたわず! 疾風!地裂斬!」

地を伝う衝撃が複雑な凹凸を乗り越え突き抜けて走る。貪欲で情熱的なそれは地面から剣の身を一足で駆け上り、それをつかんだラムザの腕を絡め取った。
小さな音混じりの吐息がこぼれる。それでも、揺さぶられる身体を仕方なさ気に受け入れて剣を地の封印から抜き去り次に備える。
相手は再び手に握りなおした幅広の剣を手に一気呵成に向かってくるウィーグラフ。

「ウィーグラフッ! あなたの意志はよく分かるッ!
 だが、それでも僕にはあなたと戦う理由なんて無いんだッッ!
 個人的な決着はあとで必ずつけよう、だから今は剣を収めてくれッ、ともに……」
「黙れェェッッ!!!」

加速のついた力の方向を下へそらすように受け流す。
再びジャンプ。樹の幹を経由して空中を駆け、さらに戦場を移動してゆく。
272Grim 3/9:2006/05/11(木) 19:05:29 ID:6BPf2p0P0


金属の振動が共鳴を奏でる。小さな火花。空気の振動。二つの影が離れる。
離れていく。
ゆっくりと地を這っていたギードの視界から、闇へと溶けていく。
自分の足ではとても追いつかない、だから仕方がないのかもしれない。
少しでも長く生きるために、マスターと再会するために自分の命をつないでいた分の魔力。それを使うことにした。
レビテト。ゆっくりと大きなカメが浮上する。
それから、器用に使用魔力・威力共に必要最小限に抑えた爆発…フレアを解き放つ。
狐火のように突如森の奥に現れた炸裂は浮いている彼の身体を動かす推進力となり、滑るようにギードは二人を追った。


気づけば木々はまばらとなり、代わりに岩が場所を占める風景へと様変わり。
効果をなさない話術による説得、ジャンプと白刃取りによる回避を交互に繰り返しながら移動していたラムザが最初に気づいたのは赤――炎の色であった。
追いかけるウィーグラフとの交戦を拒否しながら、ラムザは自然、その場所へと近づいていく。
心底にあったのはウィ―グラフとの決着を避けたい気持ちだったか。
ともかく最終的にはそれは大きな過ちではあったのだがこの時点で彼を責めることなど誰に出来ないだろう。
接近に従い炎の次に他に目に入ったのはオレンジの照り返しを浴びた白いローブ…白魔導士だ。
さらには倒れている男一人、子供の小さな姿が二つ。
ラムザ達の到着を待っていたようにはじけた爆発で不安と焦燥の発見は歓迎される。
騒がしい空気、熱と血と灰の臭い。
揺らめく炎と相伴う影の生無きダンスの舞台背景のごとく誰一人動くものは無い。皆死んでいるのか?
273Grim 4/9:2006/05/11(木) 19:06:53 ID:6BPf2p0P0
慄然とする光景を判断するよりも先に後方に生じた殺意をかわす為に跳ね上がる。
聖剣技の力を誇示するヴィジョンがラムザのいた場所を突き上げたのを眼下に確認しつつ、今まで移動してきた方向へと身体の向きを変えながら少し小さくなり燃え続ける火のそばへと軽やかに着地した。
森の間から姿を現したウィーグラフと向き合う。
これまで足を止めるたびに敵意をたっぷり含んだ言葉を投げつけてきた彼もさすがにこの異様な状況に口を開かない。
それでも燃え盛る眼はラムザだけを射抜いていたが。

「………テリー?」

沈黙の対峙、しかし目の端、2メートルほど離れた位置で炎に照らされている見覚えある銀髪に思わず反応する。
その隙を見逃すウィーグラフではない。

「貴様は人を気にかけていられるような立場では無いッッ!」

振り上げられた剣、帯電していく空気、続けてほとばしる幾条もの白い雷光。
無双稲妻突き、聖剣技を扱うものが最も信頼を置く技、その攻撃は否応無く辺りを巻き込む。
不注意だったと思う。
わずかに遅れた反応は電流となってラムザを蝕んだが、そのことではない。
それよりも問題なのはその範囲に、落雷の渦に巻き込まれた少年のこと。
体験からよく知る威力の雨が小さな身体を蹂躙する。
エネルギーを受けた炎がひと時散り乱れる。金属の剣が、小片が衝撃に跳ねあらぬ方向へ転がり散っていく。
ラムザは始動していた回避運動に従い地面を転がり、その勢いのままに立ち上がって叫んだ。

「関係ない人を巻き込むなッ! これは僕とあなたの問題なんだろうッ!?」
「貴様に物理的に係わっている時点で無関係ではないのだッ!」
「貴様ッッ!」
「なんとでも罵るがいいさッ、私は何の痛痒も感じんッッ!」
274Grim 5/9:2006/05/11(木) 19:10:06 ID:6BPf2p0P0

繰り返される動き。
ラムザはここを離れるべきだと即断していたが、それが行動に移されることは無い。
なぜならば、次の瞬間にはウィーグラフの身体は吹き飛んでいたからだ。


残り少ない魔力と生命を燃料に、低空を滑るそれは確実に二つの影を追っていた。
そして燃える火、落ちる雷を合図に最後の加速をかけたそれは増加した運動エネルギーをウィーグラフの背中へと叩き付けた。
恋焦がれた仇に向けて集中していたウィーグラフが高速で飛び込んできた予想外の円盤に反応できるはずも無い。
十分にエネルギーを受け取ったその身体は奇妙な緩慢さで浮き、放物線を描いて落ちる。

「追いつけた…間に合ったようじゃな、ラムザよ」
「何だ……ギードッ!? なんて無茶をッ??」
「そのような問題ではなかろう、あの男は危険な相手じゃぞッ!」
「わかっています、彼とは古い知り合い……」
「貴様ら……動くんじゃないッ! この娘の命が惜しくないならだッ!!」

ラムザは驚きが勝り、突撃に専念したギードもまだラムザ以外を認識していない、そんなタイミング。
ギードを認識し、二人の関係を認識したウィーグラフが誰よりも早くその先へと動いていた。
その生死は分からないけれど小さな体を樹へと預けている少女、その上に騎士の手と幹に支えられてギロチンのような刃が。

「そんなところまで堕ち果てたというのかッ、ウィーグラフッ!!」
「二度言わせるな、私はもはや全てを失ったのだッ!
 復讐のために魂すら悪魔に売り渡した私だぞ? 理解しろッ、ラムザ=ベオルブ!」
「……貴様ッッ!」
「動くなと言っているッッ! 余計なことをするな、カメェッッ!」

搾り出すように大きな声で警告。その裏で探り当てるように自身の荷物へと片手を伸ばす。
275Grim 6/9:2006/05/11(木) 19:11:31 ID:6BPf2p0P0

何か手を考えていたのは隣のギードも同じだろう。
けれど双方の間に横たわる決定的な思考の差、他者の生命の尊重するか否かの差が対応の速度を決定付ける。
単純化された目的を有するが故、冷酷なまでに不要な価値を決している故。
三つの別の音がラムザとギードの動きを縛り付ける。

一つ目はウィ―グラフの手から放られた紙のような何か。実際には聞こえていない軽い音をたてて地面に落ちる。
二つ目は傍らの地面に倒れ臥している少年から聞こえた小さなうめき声。
そして三つ目、片手で卑劣な刃を支持したまま伸びたウィーグラフの手が拾い上げた一本の細身の剣。一度だけ、杖のように地を突いたそれはひとかけらの躊躇も無く次に空を切った。
注視の雰囲気、ラムザが見ている前で風きり音を叫んだそれは口から血を垂れ流したまま動かないバンダナの男の左足、膝上を抉る。赤い泉が湧き出す。
ギードの目の前で、小さく苦痛をもらしたはずのよく知る少年は後続を示さない。

「やめろ…やめろッ、ウィ―グラフッッ!」
「戦場の定石ッッ! よもや貴様が知らぬわけではあるまいッ!
 だが1対2は望まん、選択権は貴様らにあるッ!
 私はここから退かせてもらうぞ、ラムザ=ベオルブよッッ!
 今を望まないのならば地図に示した場所まで一人で来るがいいッ!」
「待てッ! 待てーーッッ!!」
「次の魔女の刻まで待つッ、さらばだッッ!!」

人形のように静かだった眼帯の少女もろともに炎の赤の及ばない樹の影へとウィーグラフが消える。
このままではいけない、追うか?
反射的に地を蹴ろうと身構えた勢いは強い主張を再開した嗅覚に崩されて霧散した。
276Grim 7/9:2006/05/11(木) 19:12:32 ID:6BPf2p0P0

「…ザ、ラムザよ!」

ギードの声は音として認識されてはいるのみ。
脈を為す血の泉を左足の腿に刻まれた錆の臭いに包まれた男がいる。
未だ生死すら定かでなく崩れ落ちている金髪の白魔道士がいる。
最初から説得を考えずにウィーグラフを殺すつもりで戦わねばならなかった。
結局のところ同情があったのかもしれない。歴史に、体制に志を潰されていった男に対しての。
少し語勢を強めたギードの声が聞こえる。

「回復の手段は持たんのか? ラムザよ、聞いておるのか? ラムザよッ!」
「えっ、はい? あ、いいえ、努力しますッ!」
「……頼むッ!」

思考再開。今はこの死の淵に瀕した彼らを助ける手段を見つけねばならない。
アイテムはあることを期待するほうが間違っている。
本職ではないとはいえいくらかの白魔法は習得してはいるが話術士の魔力では力不足だ。
だが、ジョブを変えるとなれば彼らの命をこの場に留めたままにすることは出来ないだろう。
すでにギードは回復呪文をテリー似の少年へと浴びせていたが、ギードだって重傷だ。

選択権は貴様らにある、とウィーグラフは分かっていてそう発言したのだろう。
だが選ぶ事のできる時間は極わずか。
ラムザは身につけた技能のうちから「白魔法」を選び出し、なお酷い出血を続ける男へと駆け寄った。


火の赤、影の黒、夜の闇が舞い踊る白いスクリーン。
地面に切り取られたその異質な四角は地図、その一点には確かな傷が刻まれている。
炎は心情もろとも照らす如く蠢く人間の影を揺らし続ける。
277Grim 8/9:2006/05/11(木) 19:13:05 ID:6BPf2p0P0
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失)
 (昏睡+重傷、右腕骨折、右耳失聴)
 所持品:竜騎士の靴、ふきとばしの杖[0]、手帳、首輪
 第一行動方針:?】
【テリー(DQM)(気絶+重傷、ショック、右肩負傷(5割回復))
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3
 鋼鉄の剣、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
 第一行動方針:?
 第二行動方針:ギードを待つ/ルカ、わたぼうを探す】
【ロック (気絶+重傷、左足重傷・失血中)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート 皆伝の証
 第一行動方針:?
 第二行動方針:事態の処理後、ピサロ達と合流する
 第三行動方針:ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ギード(重傷、MP大幅消費) 所持品:首輪
 第一行動方針:負傷者の回復
 第二行動方針:ルカとの合流
 第三行動方針:首輪の研究】
【ラムザ(話術士 アビリティ:白魔法)(HP4/5)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:負傷者の回復
 第二行動方針:ギードに随行し、彼の仲間たちにテリーを託してからユフィを探す  
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】
278Grim 9/9:2006/05/11(木) 19:14:12 ID:6BPf2p0P0

【ウィーグラフ(HP2/3)
 所持品:ブロードソード プレデターエッジ レーザーウエポン グリンガムの鞭
 暗闇の弓矢 ブラスターガン 毒針弾 神経弾 不思議なタンバリン エリクサー×5
 スコールのカードデッキ(コンプリート済み) 黒マテリア 攻略本 首輪×2 研究メモ
 第一行動方針:地図に示した地点まで移動
 基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を探し殺す(ラムザが最優先)】
【リルム(HP1/2、気絶、右目失明、魔力消費)
 所持品:英雄の盾、絵筆、祈りの指輪、ブロンズナイフ
 第一行動方針:?
 第二行動方針:仲間の帰りを待つ】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】

※地図には1点を示すように傷が付けられています。
※手榴弾は消滅。他は未確認。
※すべての未定の事項は後続に委ねます。
279名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/12(金) 07:24:05 ID:DVoMLBJWO
スコールのカードデッキの出番を今か今かと期待age
280名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/12(金) 19:41:49 ID:XOK0iaUD0
以下を修正。すみません。

7/9
>未だ生死すら定かでなく崩れ落ちている金髪の白魔道士がいる。

未だ生死すら定かでなく崩れ落ちている茶髪の白魔道士がいる。
281名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/14(日) 00:36:05 ID:5axAEBFf0
hosyu
282名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/14(日) 21:18:44 ID:CkRKdrFz0
保守
283名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/15(月) 10:36:06 ID:MW6XvcSm0
hosyuage
284名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/15(月) 22:42:45 ID:BfKHaGeK0
★守
285名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/16(火) 08:37:52 ID:fnsfqOxrO
カレーライス
286名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/16(火) 19:35:36 ID:1+u9TtGn0
287名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/16(火) 23:42:12 ID:ZUWuKeO4O
アルテマウェポン+ティナの魔石=アルティナウェポン

うん、ごめん
288名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/17(水) 22:33:46 ID:VG1GtNLd0
しゅ
289名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/18(木) 13:27:43 ID:lGWlPnizO
290名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/18(木) 23:15:27 ID:qyz8MTVt0
291名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/19(金) 20:14:23 ID:6RrhVd7H0
292名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/19(金) 21:58:49 ID:BGWKcU9HO
293名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/20(土) 05:39:03 ID:VEvpJmBoO
294名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/20(土) 13:56:20 ID:cy7Ixyko0
295名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/20(土) 16:55:55 ID:Xwp6yvjW0
296名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/20(土) 18:09:02 ID:dOs2gGtE0
297名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/20(土) 19:20:12 ID:JVL0u5eb0
298名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/20(土) 19:59:07 ID:fUNSYu0Q0
299名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/20(土) 20:29:08 ID:Ztp2ZXed0
300名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/20(土) 22:33:07 ID:p2crhKp80
301名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/20(土) 22:56:34 ID:EZaE22ujO
302名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/20(土) 23:53:14 ID:JVL0u5eb0
303名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/21(日) 01:11:00 ID:k6Xhx+kg0
304名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/21(日) 01:11:42 ID:I4wLyaAoO
305名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/21(日) 01:11:55 ID:4xslnKWm0
306名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/21(日) 01:40:34 ID:mgxzNi2sO
iikagen surechigai

shine
307名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/21(日) 17:05:20 ID:nWFEuiLTO
>>352は無効だよ
308名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/21(日) 19:25:42 ID:M/DqUgyc0
それなら>>326も無効
309名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/22(月) 02:48:27 ID:7mUK2y2vO
6時間保守
310名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/22(月) 13:33:00 ID:0aeHxFj40
保守。
311輝きと曇りと自嘲の輪舞1/6:2006/05/22(月) 16:41:14 ID:kq0mTUIn0
悪を逃してしまった。
仲間も未だに見つけられず、そして―――

仲間を守れなかった。

後悔と怒りが混ざる心の内を乱暴に足並みで表現しながら、アルスは消えた影を追って走り続けた。
(許せない――逃がさない―――)
手にした武具を力強く握り廃墟のガレキを踏み荒らし進むアルスの頭の中を守れなかった友の姿が去来する。

遠くへは行っていない。確実にいるのだ、この廃墟のどこかに。
そう確信を持ちつつ駆け続ける。二度も戦友の命を奪った憎き悪を追って。
アルスは叫んだ。友と同じセリフを。

「そこにいるのだろう、フリオニール! 姿を現せ! 剣を抜け! 尋常に、勝負しろ!」

一方でフリオニールはその足音を静かに聞きながら機を待っていた。
だが、先刻のレオンハルトとのやりとりがもやもやと蠢いているのを否定しきれず、彼もまた言い知れぬ不快感にとらわれる。
この不快感、どうしてくれるか。
あの少年をさっさと血祭りにあげてやりたい。
そんな彼を押しとどめるのはあの男が強いという認識と、もう一つ、銃声の中でかすかに聞こえたサックスの声。
「気付いているんでしょう! 自分が間違っているって!」
「聞いたか、あの説得を? だが貴様は、相変わらず愚考に取り付かれたままか?」
サックスの声とレオンハルトの声。二人の声が重なって苛立ちを募らせる。
(黙れ…黙れッ!)
だが、フリオニールが戦っているのはアルスでもサックスでも、ましてやレオンハルトでもなかった。
かつて仲間を取り戻したいと願った自分はすでに敵として認識され、影であったはずの自分がそれを必死に押しこめる。
二人の声が再び元の自分を浮き上がらせ、それを影は再び…
そんなやりとりを途切れさせたのは、すぐ目の前に迫った足音と、足下へと落とした視界に映った鉄の殺人兵器の輝きだった。

怒りに任せただ憎き敵を探し続けるアルス。
こみ上げる怒りを必死に抑えながら敵を狙うフリオニール。
対称的な二人が行動を起こすきっかけもまた、対称的だった。
312輝きと曇りと自嘲の輪舞2/6:2006/05/22(月) 16:43:13 ID:kq0mTUIn0
怒りの炎が胸の奥で燃え盛る一方で、アルスの頭の中にはかすかによぎる言葉の数々があった。
それは無力で傲慢な自分というモヤの中に隠れてなかなか出てこない。
怒りの影で何となく、思い出す。
シドの快活な言葉遣い、レオンハルトの戒めの言葉。
二人からもらった鉄拳の痛み―――今となってはそれも微笑ましく忘れがたい思い出の一つ。
そしてそれを、あの悪魔は奪い去った。まして奴は自分が倒すべきマーダーだ。許すことはできない。
一向に見つからない敵の姿に苛立ちを覚えてドラゴンテイルを振りかざそうとしたその時、友の声が聞こえた。
モヤの中から、まるでその言葉が自力でモヤをかき分けてきたかのように。

「悪を絶つ、その覚悟は立派なものだ。
 だが手にした正義の光の前に目を閉ざしてはいけない、盲いてはいけない。」

怒りが途切れた瞬間、かすかな物音に気付きアルスは咄嗟に跳んでいた。


フリオニールはひたすらに自分の影と戦っていた。
元は本来の自分だったはずの影が、あってはならない存在であるかのように忌々しくただ押し殺したい。
その思考が止まったとき、同時に近づいてきている少年の声がした。

「そこにいるのだろう、フリオニール! 姿を現せ! 剣を抜け! 尋常に、勝負しろ!」

自分を姿を消すという鬱陶しい手段で惑わせた忌々しい兄弟。
その男レオンハルトがさっき発したばかりのセリフに、影が全てを支配したフリオニールの怒りは一瞬だけボルテージを上げる。
モヤのようににじみ出てきた善の自分が、一瞬で完全に消えうせた。
313輝きと曇りと自嘲の輪舞3/6:2006/05/22(月) 16:46:06 ID:kq0mTUIn0
だが、その一瞬の乱れた心が、物音を立ててしまった。
大型マシンガンを構えた瞬間の金属音。同時に互いの行動のきっかけを作った二人のうち、引き金を引くタイミングがかすかにずれる。
跳び退いたアルスを追って連射の反動に跳ね上がる銃口を動かすが、そのまま建物の影へと身を隠してしまったアルスに鉛と硝煙の死を与えることはできなかった。
「チィッ!」
舌打ちを残して急ぎマシンガンをかかえ、別の影へと移動するフリオニール。
奴は怒りに身を任せているせいである程度の判断力を失っている。何も今の一撃がすべてじゃない。やれる。冷静になれ。
そう言い聞かせて再びマシンガンを構える。今度は逃がさない。次の一撃で確実にその忌々しい口を引き裂いてやる―――
フリオニールは大きく、それでいて静かに息を吐いた。

建物の影に隠れたアルスは銃声が止むと同時にする足音を聞き逃がさなかった。
怒りに打ち震えていても冷静さを失わない。それはかつて仲間達と共に魔王に立ち向かったときもそうだった。
そんな彼の目をも曇らせた激しい怒り。それを覚まさせたのは友の声。
(レオンハルト…そうだった。怒りに身を任せて敵を殺すなんて、マーダーと変わりない)
殺さなければならないのは、どうしようもない悪だから。止まりようのない殺意だから。
フリオニールにはそれがあった。だからきっと、止めるためには殺すことだって選択肢に入れなければならない。
だがそれは、いかなる理由があろうと業になる。それを怒りで正当化するようなことはあってはならない。
それは勇者として母に、王に、仲間に教えられ、そして何より自分自身が心に刻んでいたこと。
(ありがとう、レオンハルト。君が願ったこと、僕が成し遂げる。シドも見ていてくれ)
同じ目的。だがアルスの目の輝きは今怒りに震えていた自分とは全く違う、勇者の輝きだった。

どれぐらいの時間が経っただろうか。実際には感じるほど長くない時間だったが、それでも互いの動きを探る二人にとっては十分すぎるほどに長く感じられる。
時間が経てば経つほどアルスは冷静さを取り戻す。
時間が経てば経つほどフリオニールの苛立ちは募る。
上昇と下降、鮮やかな]を描くように互いの距離を縮める二つの線。それが一つになった時―――

影が、動いた。
314輝きと曇りと自嘲の輪舞4/6:2006/05/22(月) 16:51:26 ID:kq0mTUIn0
フリオニールは募る苛立ちを押さえつつも考えていた。ノコノコと獲物が出てくる瞬間を待ちながら。
奴が移動すれば足音がする。影と影を伝って接近してくるかもしれないからそれは十分に注意しなければならない。
おまけに相手はあの強力な魔法を使ってくる。迂闊にこっちの位置をバラしてしまえばあの強烈な電撃に晒されるだろう。
ならば隠れた所からこのマシンガンでじわじわと削り殺すのがいい。
にっくきレオンハルトと同じセリフを口走った腹立たしい少年に、この鉄の悪魔で死の制裁を加えてやる。
だが今動いたこの場所への足音は聞かれているだろう。ならば別の場所へ。もちろん、奴が移動する音も聞き逃さないように―――
フリオニールは移動するためにマシンガンを再びかかえようとした。

だが、その動きに使おうとした体内のエネルギーは方向を逸らし、銃声へと変わる。
予想外の場所から聞こえた音。
耳に神経を集中していた分余計に過敏に反応した体は咄嗟にその方向へ向けてマシンガンの引き金を引いていた。
だがそこには何もない。囮―――
気付いたときにはアルスはすぐそこまで迫っていた。
大型のマシンガンでは反応し切れない事を瞬時に察知しラグナロクを取り出してロングソードの一撃を受け止める。
さらにアルスが両手で握った剣から片手を離し、滑りざまに何かへ手を伸ばしたのと同時に昼間に使っていた盾がどちらにも持たれていない事にフリオニールは違和感を感じる。
その違和感は、ドラゴンテイルの連撃となってフリオニールの体に降り注いだ。
できる限りの反応でその連続した打撃のうねりをかわすが、その半分は体の至る所にヒットする。
少しでもダメージを減らすために距離をとり、すかさずマシンガンを拾おうと駆け寄るが、その動きをアルスは見逃さない。
「させるかっ!」
さらにドラゴンテイルの追い討ちがフリオニールに迫り、回避行動によってマシンガンとの距離を離される。
しかし攻撃を受けるだけでは終わらない。ラグナロクをダメージを受けつつも斬り返し、ロングソードを弾き飛ばす。
さらに一撃を入れようとラグナロクを振りかざすが、その一撃はアルスが取り出したドラゴンシールドに防がれてしまった。
一撃、もう一撃。だが昼間同様アルスはラグナロクの攻撃を受け止め続ける。
315輝きと曇りと自嘲の輪舞5/6:2006/05/22(月) 16:53:58 ID:kq0mTUIn0
そんな不安定な均衡が崩されたのは、それほど後の話ではなかった。
昼間から硬く切れ味も鋭いラグナロクの攻撃を受け続け、ドラゴンシールドはあちこちが傷だらけで今にも割れそうだった。
アルスはその盾を頑固にも構えたまま守り一辺倒だったが、一度だけ。
そう、一度だけ、ラグナロクの上からの切り込みに対応するために構えた盾が二人の視界を遮った。
ラグナロクが盾に接触し、上に弾かれる。フリオニールはそれをそのまま頭上に大きく振りかぶり、重力を味方につけて振り下ろした。
(殺った!)
フリオニールの目から見てももう渾身の一撃を耐えるだけの余力はこの盾にはないことがわかる。
案の定盾は割れ、勢いは殺されても剣の刀身はその奥へと深々と食い込んでいった。
だが、その奥に憎い敵の姿はなかった。

次の瞬間、体中に降り注ぐ連続した衝撃にフリオニールの意識は途切れてしまった。

廃墟の殺風景な地面を赤に染めるように、血がしたたる。
二人の視界を盾が遮った瞬間、攻撃を受ける直前に横に大きく跳びのいたアルスだったが
ドラゴンシールドの割れた衝撃とさらに食い込んでくるラグナロクの攻撃が重なり、左腕に傷を負ってしまっていた。
「グッ…!」
低いうめき声をもらし、アルスはその痛みに視線を移す。
肘から手首にかけて、大きく裂けた傷が鮮血を噴出していた。
ベホイミをかけつつ傷口を押さえ、止血作業をしつつ、今しがた倒した男に目をやる。
(死んだ…?)
倒れた際にフリオニールが落としたラグナロクと囮に使った番傘、そして弾かれたロングソードを先に拾い上げ、その傍へと歩み寄る。
動かないフリオニールを見下して、アルスはロングソードを構えた。
まだ息がある。しかしこいつは何人もの人を殺している。これ以上尊い命の芽を摘む者達を見逃すことはできない。
「シド、レオンハルト!仇は取る!」
手にしたロングソードを逆さに持ち替え、横たわった体に刺そうとする。が、それはすぐにフリオニールの息の根を止めることはなかった。
316輝きと曇りと自嘲の輪舞6/6:2006/05/22(月) 16:55:11 ID:kq0mTUIn0
レオンハルトの声、サイファーの声、ユウナとティーダの声…様々な声が今になって頭をよぎる。
そう、元は自分もそうだったはずだ。殺したくなんかない。その残り香が、自分の弱さがアルスの動きを止めた。
(僕は…いや、でもこいつを生かしておけば…ッ!)
アルスの中で何人もの自分のやりとりが繰り返される。

殺せ。やつは悪だ。レオンハルトの言葉を忘れたのか。だが許せない。相手は無抵抗だ。
殺せ。許せ。いや殺せ。だめだ、許せ。
ころせころすなころせころすなころせころすな

「うわああああぁぁぁーーーーっ!!!」
ロングソードが突き立てられる。フリオニールの体の、数ミリ横の地面に。
荒くなった息を乱暴に吐きながら、アルスは呆然と立ち尽くした。

どうしようもない悪は殺すんじゃないのか。目の前に横たわる男は少なくとも二人の友を殺した。放っておけばきっとまた殺す。
それなら自分がここでとどめを刺すべきだ。だが、相手はもう無抵抗。殺さずともいいんじゃないか。
決意したはずの心に、そんな考えがよぎり、アルスの判断を鈍らせる。

殺すことはできない。自分の体にそう命じても腕まで届かない。僕の内にある甘さが邪魔をして。
結局僕は傲慢なだけなのか。殺すべきマーダーですら殺せない。僕は誰も止めることはできないのか。
そんな僕の目に留まるのは、持ち主の手を離れた二つの武器。


フリオニールを放置して、アルスはカズスを去った。
無抵抗になってしまった人間を殺すことなど自分にはできない。ならばせめて人が殺せぬようにする。
いくつもの命を奪ったマシンガンというこの鉄の筒。そして一振りの剣を奪って。
このマシンガンは危険すぎる。これは僕の手で処分すべきだ。どこか海にでも棄ててしまおう。
これからの行動を考える。カインは逃がしてしまった。フリオニールと戦った時間もある。サックスも今では追いつけないだろう。
ふと、サイファーの顔が脳裏をよぎる。
「必ずやり遂げろ、か。何が決意だ。僕は…傲慢だ…ッッ!」
強く握られる拳。去り際に、フリオニールが未だ横たわっているであろう町を振り返り―――

そして、自分を嘲り笑った。
317輝きと曇りと自嘲の輪舞+LAST:2006/05/22(月) 16:57:07 ID:kq0mTUIn0
【アルス(MP1/4程度、左腕軽症)
 所持品:ドラゴンテイル、ラグナロク、三脚付大型マシンガン(残弾4/10)、官能小説一冊
 第一行動方針:マシンガンの遺棄、処分
 第二行動方針:倒すべき悪(アーヴァイン、スコール、マッシュ、フリオニール、カイン、サックス)を殺し、PKを減らす
 最終行動方針:すべての悪を消す】
【現在位置:カズスの村出口】
【フリオニール(昏倒、MP1/2)
 所持品:
 第一行動方針:?
 最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【現在地:カズスの村 廃墟の奥】
318名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/22(月) 17:02:12 ID:kq0mTUIn0
軽症とか書いてるし…軽傷ですねごめんなさいorz

何気に初カキコな私。FFDQバトロワ、楽しく見させてもらってます。
元々この界隈にあまり顔を出していないので注意や基本ルールに関して見落としている部分があるかもしれません。
その際は遠慮なくご指摘お願いします。
319名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/22(月) 19:19:56 ID:kq0mTUIn0
アドバイスによる訂正分を書いておきます。

【アルス(MP1/4程度、左腕軽症)
 所持品:ドラゴンテイル、ラグナロク、三脚付大型マシンガン(残弾4/10)、官能小説一冊
 第一行動方針:マシンガンの遺棄、処分
 第二行動方針:倒すべき悪(アーヴァイン、スコール、マッシュ、カイン、サックス)を「倒し」、PKを減らす(戦力を奪う)
 最終行動方針:すべての悪を自分なりの方法で倒す(具体的には苦悩中)】
【現在位置:カズスの村出口】
【フリオニール(昏倒、MP1/2)
 所持品:
 第一行動方針:?
 最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【現在地:カズスの村 廃墟の奥】
320不愉快な彼は歩き出したばかり 1/6:2006/05/22(月) 19:24:53 ID:wNXKLEAb0
こいつは、オレの自信とプライドの問題だ。
自分はもう戦場の人間としてダメになっちまった。
どれだけグロいったって死体にさえビビるなんざもう言い訳できるレベルじゃねえ。どこの女子供だ。
引き裂かれる人の肉、流れ出る人の血液、そういう光景が神経に焼きついちまってる。
想像するだけで………人になんか剣は振るえないだろうな。
だいたいそんな状態じゃ遅れをとるのがオチだ。



「おいイザ、お前テリーとか言うヤツを探していたな?」
真っ暗とはいえ記憶に新しい街路を抜け、あいつらの隠れ家へと飛び込む。同時に言葉を吐く。
聞こえたはずの三人は突然のこと、突然の訪問に短い音で聞き返すしか出来ない。
「テリーだ。仲間にそういう名前の奴がいると言ってたろ?」
「あ、ああ、そうだよ、アルガス。いきなり何だい?」
彼の善人振りを示すように問い返すイザの表情には悪い予感と言うものはまだ見えない。
傍らで驚いた顔のライアンが見える。少し黙って聞け、というニュアンスで手のひらを見せる。
「いいか? テリーは死んだ。殺したのはアリーナだ」


321不愉快な彼は歩き出したばかり 2/6:2006/05/22(月) 19:26:39 ID:wNXKLEAb0
剣はやめておこう。いや正直に言えばそれで人を刺すということが今の自分には出来そうも無い。
魔法のカヌーは移動用。盾は盾。しっぽは旅の扉を見つけてくれるし、時計も便利だ。
だがこれで人を殺せと言われてもどうしろと?
では残りはなんだ。インクと羽ペン。灰。本体の無い弾倉。服。
こいつらは今のところ有用性を見出せないアイテム。
もちろん、誰かにとっては意味のあるものかもしれない。
だがほとんどの人間はこいつらに有用性を見出せないと言う自分の考えに賛同してくれるだろう。
…文句言っても仕方ない、今更ながらあとで説明書でも隅まできっちり見てみるか。



「そのような言い方は無いでしょう、アルガス殿!
 まだ事態の詳細はわからないのですぞ!」
分かっていたとはいえ側面の中年から擁護の大声が響きうんざりする。
これは聞き流すとして、ターゲットの二人は明らかにさっきと目の色が変わっている。
それだけで少しだけアルガスはいい気分になる。しかし、まだ足りない。
「さあ? しかしひどい有様だったぜ、テリーだったものはよ。
 どうしたらああなるんだって感じのな。腕も足も。…頭もぐちゃぐちゃさ。
 もっともアリーナも似たようなもんだったけどな」
小さなせせら笑いをあとに続けた。
言葉が無い、言葉に詰まるってのはああいう状態を言うのだろう。
イザの奴は精一杯強い視線を崩さないように懸命だし、嬢ちゃんは口に手を当てて固まっている。
隣からいっそう怒気を孕んで自分の名前が呼ばれた。
「わかったよ、全くうるせえな、ライアン。
 おまえらとにかく見てきたらどうだ? 何なら案内もしてやるぜ」


322不愉快な彼は歩き出したばかり 3/6:2006/05/22(月) 19:28:12 ID:wNXKLEAb0
こいつは、オレの自信とプライドの問題だ。
できるってとこを自分に見せつけてやらなきゃならない。
俺は誰も殺せないだろう、しかし手段はいくらでもある。
人が死ぬのは何も戦闘ばかりじゃあない。どころか政治なんてやつはもっと多くの人を殺せるじゃないか。
自分の手が使えないなら舞台を、道具を、策略を使えばいい。
上手い具合に舞台は整いつつあるし、道具はそこらにいる。策は無ければ生み出せばいいだけ。



「あの…ライアン様、それでアリーナ様のご様子は…?」
オレではなく、ライアンへ向けて嬢ちゃんがか細くたずねる。
イザのアマちゃんが激昂して動いてくれりゃ面白かったんだが、そう簡単には行かないか。
「あ、ああそうですな、今のところはウネ殿とクリムト殿が手当てをしております。
 拙者は回復呪文というものに疎いため詳しくは分かり申せぬため…その」
「そう………ですか」
途切れた言葉の間にイザを見た視線は明らかにそいつに気を使っているものだった。
つられてイザを見、一緒に表情を曇らせたライアンがこちらを見る。
件のことも教えてやればいい、というようにあごで示してやった。
少しの逡巡ののちに元々伝えるはずであった情報について切り出すライアン。
「……イザ殿、ロザリー殿、心して聞いてもらいたい。実は……」
結果として追い討ちになる話。淡々と伝え聞く三人。
冷淡にそれを観察するアルガス。
イザ、ロザリー、ライアン、ウネ、クリムト、アリーナ。
冷徹に値踏みする。


323不愉快な彼は歩き出したばかり 4/6:2006/05/22(月) 19:30:21 ID:wNXKLEAb0
少なくとも自分を殺した男と比較するには軟弱すぎるとは思うが―――イザ。
こいつには一人の男がオーバーラップする。
できもしないくせに嘆きと抵抗する気だけは一級品、たいした力も持たねぇ人間。
同じ境遇に呼ばれたかわいそうな妹がいるところまで一緒だしな。
ともかくロザリーとライアンは身内、ウネとクリムトは妙に肩入れしているとなれば
この舞台で狙うべき動かせる駒はこいつというわけだ。



与えられた情報によりますます沈む雰囲気に割って入る。
わざとらしく声を潜め、密談的雰囲気をわざとかもし出しながら。
「なあ、お前等、信じられねぇかも知れないがちょっと聞いてくれ。
 あ…ライアンはもう聞いているんだったか? まあいい。
 アリーナだ。いいか、あいつは二人いる。…ふざけてるんじゃないぞ」
冷静に聞けばとんでもない戯れ言だが意外にも誰も驚いた顔をしていない。
どういうことかと訝ったアルガスに対して逆に説明が為される。
「知っているなら手間が省けていいな。そのアリーナについてなんだがなあ……」
説明が省けたこと、そしてイザ自身に改めてこのことを確認させたのは好都合。
「いいか、落ち着いて聞けよ。本当のところあの女、ゲームに乗っているんじゃねえのか?
 あいつは悪い分身が人を殺して回っているって話してるみたいだが
 本人とつるんだ上での策略じゃないなんて誰が証明してくれる?」
「アリーナ殿に限ってはそのようなことはありえませんぞ!!
 何を言い出すのですか!」
「本当か? なあ、本当に本当か? 下手な仲間意識は人の迷惑、邪魔なだけだぞ。
 お前等はそうやって盲信して騙されるかもしれねえがオレは無関係、もっと客観的さ。
 わかるよな、後ろからやられたあとじゃ遅すぎる。
 いいか、完全に同じ姿だってんなら見分ける手段さえないんだぞ?
 意思疎通の利くもう一人の自分と善人役と悪人役を演じ分けてみせる。
 追及すれば『私を信じて』油断すれば『影』のおでましってな。
 どうやって考えたかは知らねえがとんでもなく恐ろしいね」

324不愉快な彼は歩き出したばかり 5/6:2006/05/22(月) 19:31:40 ID:wNXKLEAb0

焚き付けられるだけ悪し様に表現したが、自分で言っていて空恐ろしいな。
考えるほどに、あの女はどれだけ恵まれた立場にあるのやら。
本当のところどちらなのかは想像の彼方だが、生き残る立場という奴は十分にあるってわけだ。
…マジで気にいらねえな。



ライアンが煩い。
事実と、悪意をこめた推論の突きつけは十分終わった、だからアルガスはさっさとここを離れることに決めた。
すぐに動かなかろうと答えの出ない時間を与えれば動くように仕向けられるだろう。
「とにかく。オレから伝えたいことは全部言ったぞ。後は自分で考えて行動しな」
「アルガス殿っ! 何と勝手な…イザ殿、アリーナ殿なら大丈夫でござる。
 他人を虐げるような考えなど持つ筈がござらん! では失礼いたす!」
彼らは現在隠れているという前提を忘れたのか声量の大きいその台詞を背後から受け、
アルガスは静かにほくそえみ暗い街路を歩んでいく。

それから。
「ああ悪かった。さっきはオレが言い過ぎたよ。少し神経質になっているのかもしれない」
橋の上。明かりなき町と今も懸命な回復が行われているであろう奥の灯を一望する位置。
やや熱くなって咎めるライアンと欄干にもたれかかって聞き流すアルガス。
「ああ、わかってるって、お前の仲間の名誉のために謝っておくよ。
 目を覚ましてちゃんと話を聞けばきっとオレも信用できると思う。まあ…お互いこれぐらいにしとこう。
 夜は長い。あんまり頑張っても持たないぜ?」
「……そう、ですな。きっとわかって頂けると思っておりますぞ」
それきりで二人の男は会話を打ち切り、あたりは沈黙の闇に没入していく。
頬をなでる夜の風はさらに冷たさを増していた。


325不愉快な彼は歩き出したばかり 6/6:2006/05/22(月) 19:32:53 ID:wNXKLEAb0
見切りをつける、ってのは大事な判断だ。
曲がりなりにも賢者とかいう二人を除けば残りの連中に何が期待できる?
役立たずはそろそろ整理すべき段階へ移りつつあるのかも知れない。
別に急ぐ必要は無いが仕掛けは丁寧に準備しておくべきだろう。
だとして、どこに屠殺如きに己の手を汚す領主が居るよ。
いいか、お前等。
誰が上にいるのか、誰が支配するべき立場なのかを理解しやがれ。
家畜は所詮家畜だってことを…理解すべきだろうが。
そうだ、オレは貴い側だ。オレは生き残るべき。オレは下賎な存在を利用して良い人間だ!
証明してやる、こいつは、オレの自信とプライドの問題なんだッ!!


【アルガス
 所持品:カヌー(縮小中)、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク
 妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、
 マシンガン用予備弾倉×5、タークスのスーツ(女性用)、エクスカリパー
 第一行動方針:様子見
 最終行動方針:脱出・勝利を問わずとにかく生き残る
【ライアン 所持品:兵士の剣、折れたレイピア、命のリング
 第一行動方針:町の警戒
 第二行動方針:アルガスに借りを返す】
【現在位置:カナーンの町 中央部の橋】

【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、マサムネブレード
 第一行動方針:次の行動を思考中
 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル、E猫耳&しっぽアクセ
 第一行動方針:イザを見守る
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:カナーンの町 魔法屋】
326名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/22(月) 20:23:21 ID:kq0mTUIn0
ロングソードに関する記述を忘れていたので再訂正orz

アルガスの前にあるアルスVSフリオの分です。

【アルス(MP1/4程度、左腕軽症)
 所持品:ドラゴンテイル、ラグナロク、ロングソード、三脚付大型マシンガン(残弾4/10)、官能小説一冊
 第一行動方針:マシンガンの遺棄、処分
 第二行動方針:倒すべき悪(アーヴァイン、スコール、マッシュ、カイン、サックス)を「倒し」、PKを減らす(戦力を奪う)
 最終行動方針:すべての悪を自分なりの方法で倒す(具体的には苦悩中)】
【現在位置:カズスの村出口】
【フリオニール(昏倒、MP1/2)
 所持品:
 第一行動方針:?
 最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【現在地:カズスの村 廃墟の奥】
327名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/23(火) 00:20:27 ID:RiQPizzaO
うーん……

>>305を無効にしておくか
328名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/23(火) 00:23:11 ID:RiQPizzaO
しかも間違えたしよう
>>308が無効だよなぁ……
329名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/23(火) 17:19:18 ID:9WccA11k0
ほっしゅ
330名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/23(火) 21:03:27 ID:bmmavxFw0
               r'゚'=、
               / ̄`''''"'x、
          ,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
      __,,/    i!        i, ̄\ ` 、
  __x-='"    |   /ヽ      /・l, l,   \ ヽ
 /(        1  i・ ノ       く、ノ |    i  i,
 | i,        {,      ニ  ,    .|    |  i,   http://www.youtube.com/watch?v=R-fjqo3dNhg
 .l,  i,        }   人   ノヽ   |    {   {
  },  '、       T`'''i,  `ー"  \__,/     .}   |
  .} , .,'、       },  `ー--ー'''" /       }   i,
  | ,i_,iJ        `x,    _,,.x="       .|   ,}
  `"            `ー'"          iiJi_,ノ
331名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/23(火) 23:17:56 ID:irtqxLza0
>>330
遂にこの板まで侵食してきたか・・・。
332名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/24(水) 18:02:55 ID:OpQ1r8Iz0
保守
333名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/25(木) 14:41:18 ID:zbA8Bgh3O
捕手
334名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/26(金) 06:51:53 ID:Fb+L+cGnO
ホシュ
335名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/26(金) 17:48:33 ID:AWMEwf830
hosyu
336名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/27(土) 08:16:33 ID:4FZr8klPO
337名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/27(土) 12:08:26 ID:z5w80lvR0
338名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/27(土) 23:48:58 ID:Walwj5cY0
339名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/28(日) 04:41:54 ID:yGyn2mcyO
アルガスがやっと家畜発言をしてくれました。
340名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/29(月) 03:18:17 ID:SpoIBN8p0
保守
341ユフィの体内:2006/05/29(月) 23:20:58 ID:2F3gFcsW0
オルテガはユフィの体が気になって仕方がないようだ
ジロジロ・・・
怪しい視線にユフィは気づく
「きゃあーエッチ!新羅ばんぞう!」
「ぐわあ」
そしてオルテガは死んだ
「ああ・・・殺しちゃった・・・」
可憐な少女であるユフィは罪の重さに絶えれない。
そして絶えれなかったユフィは変身した。背中から巨大な翼を生やし目は真紅の宝石のようだ。
姿が美しい女神のよう・・・
「この力で殺す!」
ユフィは伝脊ツイのオメガアルテマを唱える。さらにオーディンが100人もやってきた
そして色々たくさん死んだ。
ユフィは神になりつつあった

【ユフィ(変身)
 所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
 基本行動方針:かなり強い。セフィロシュが100人いても勝てない】

【オルテガ ラムザ ロック テリー アーヴァイン ウィーグラフ リルム ザンデ マティウス ピサロ 死亡】
342名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/29(月) 23:34:55 ID:9bBIwAxY0
>>341は無効です。保守乙。
343迷走と覚悟と現実 1/8:2006/05/30(火) 06:02:36 ID:LMgEdJA80
「…誰です?」
誰何の声が殺気を帯びたその背を引き留める。
サラマンダーはゆっくりとその声に振り返った。
眼前には少年というには逞しく、青年というには幼げな影があった。やけに重そうな華美な盾を肩にかけ、剣は抜き身だが垂れたその切っ先に殺気はない。
「お前は?」
「僕はソロ。誰かを捜しているのですか?」
「捜す…そうだな、誰かを捜しているんだろうな。俺は」
言う唇が歪み、低い嗤いが漏れた。
あからさまに吹き出すその邪気をソロは無言で見つめている。
「この下らない茶番劇、だが俺が今ここにあるのは事実…」
閃光一閃、道の両脇でゆらめく仄明かりを映し、金属の鈍い光がソロの胸元に躍りかかった。
が、既にそこにソロの影はない。跳躍して飛びすさった彼は舌打ちするサラマンダーの面前、4、5歩先で盾と剣を構えている。
「あなたもか!茶番と言いながら魔女の意のまま操られるのを愚かな事だとどうして思わないんです!僕らはこのゲームを壊そうと思ってる。そうすれば誰も傷つかない!あなた自身もだ!」
「くだらんな」
サラマンダーが跳ねた。風を切って振り下ろされた左拳が龍頭の盾に弾かれて鈍い音を立てる。
ソロはそのまま身を沈め、間髪開けずに左脇腹を抉ろうと襲いかかる右の爪を跳躍してかわしざま、サラマンダーの向こう脛を剣の腹でしたたかに叩きつける。
殺すのが目的ではない。敵の戦闘意欲を失わせれば戦気は自ずと去っていく。
だが。
「ヘンリーさん!」
ソロの大声が響く。それは救援を求めるものではなく、生存の確認の点呼。
「ヘンリーさん!!」
いらえはない。夜のしじまにソロの声は消えていく。
「ヘンリーさんがいたはずだ…まさか…」
敵意に充血するサラマンダーの眼がにやりと歪む。
「…だったらどうする」
「…!」

344迷走と覚悟と現実 2/8:2006/05/30(火) 06:03:27 ID:LMgEdJA80

先ほど自分が点した街の灯りに照らされ、リュックは走った。剣戟の音は近づき、方向が正しい事を心の裡に確かめる。背後のビビのばたつく衣の音との距離が開いていく。
ついに暗がりに浮かび上がって激しく撃ち合う二つの影を見つけ、大振りの戦闘用ナイフを引き抜く。

ソロの眼前に飛び込んできた焔色の髪、思った通り顔面めがけて繰り出される拳を僅かに体を開いて避け、続く右の爪が左半身を引き裂こうと振り下ろされるのに盾を向けつつ飛び退く。
空を切った巨大な爪は勢い余って地面を抉り、そのままその手を軸に、サラマンダーの脚がソロの脇腹を狙ってうなる。ソロは更に一歩、後方へ跳ぶ。
待避しながら、その一連のコンボにソロの眼が細まる。なるほど。
対峙するサラマンダーは防御ばかりで攻撃の手を出してこない相手に焦れていた。
見かけ倒しと判断した盾は驚くほど強固で且つ軽量らしく、持ち手の動きを妨げるどころか、繰り出す攻撃のことごとくを阻まれている。
(…強い)
サラマンダーの心に二つの矛盾した想いが沸き上がる。
強い敵と打ち合う事への興奮。
だが思惑通りにいかない闘いへの苛立ちと…このゲームに於ける敗北が意味する結果への…。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
心の隅でひくりと動いたその感情を打ち消すため彼は吼え、再び地を蹴る。
正面から右の爪を振り抜くと見せ、サラマンダーはソロの目前で体を落とす。左手を地に突いて右足で足払い。は、空を切る。飛び上がった敵を視界の端に認めながら体を起こし、伸びきったソロの体、左上段へ回し蹴りが襲いかかる。
ソロは瞬時に身を沈め、伸びかかる大蛇のごとき脚を頭上へやり過ごす。強烈な蹴りにソロの緑の髪が一房、弾き切られて宙を舞った。
ソロの剣が動いた。
眼前に晒された剥き出しの銃創めがけ、鋼鉄の鈍い光が走る。
唐突に腿に走った灼熱感にサラマンダーの息が乱れる。
致命傷ではない。だが膠着した戦況下で再び開いた傷口から流れ続ける血液は、やがて耐え難い不快感でその集中力を奪うだろう。
反射的に来る逆足の蹴りを後転でかわし、距離を開けてソロは再び防御姿勢を取る。

345迷走と覚悟と現実 3/8:2006/05/30(火) 06:05:42 ID:LMgEdJA80
「ソロ!!」
突然、緊張した声が睨み合う二人の間に割って入った。
視界の右端にリュックの金髪が揺れるのへ、ソロは声を返す。
「ヘンリーさんがいません!!捜してください!」
その声にリュックは躊躇する。休養も足りていない身で一対一の闘いを?
その惑いを感じてソロは再度大声を張る。
「いいですから!早く!」
「わ、わかった!」
僅かな時間にもソロの技量に余力を認め、リュックは闘いの場を背に街路を走り抜ける。

「…舐めてくれるな…」
「…そんなつもりじゃないですよ。邪魔されたくないんでしょう?」
焔色の髪の下で口角がつり上がった。
「…面白いぞ」
言うや地を蹴り、左肘が当て身を狙って襲いかかる。
当然盾がそれを遮るがそのままサラマンダーの左手は盾の端を掴んでソロの正面をこじ開ける。
盾は左腕と共に弾き上げられ、がら空きになった前面に右の爪が頭上から振り下ろされる。
ソロは読んでいた。上体をわずかに反らし、紙一重で己の上着を切り裂いていく爪の軌跡を冷静に見つめながら、天空の盾を天地逆に振り下ろす。
「なっ!」
サラマンダーの爪は盾の龍爪に捉えられ、地面に深々と縫い止められていた。
ソロはそのまま盾を手放し、両手に剣を握ってとびすさる。
なんたる愚昧!焔の髪の男は棄てられた盾を除けようとして…愕然とした。
馬鹿な!あれほど軽快に操られていたはずのその盾が、まるで岩山のように動かない。
右手を地に突いて前方を伺えば、羅刹の表情で近づく敵の姿。
「ッ」
舌打ちしつつアヴェンジャーを外し、振り下ろされる剣から転がり避ける。

346迷走と覚悟と現実 4/8:2006/05/30(火) 06:08:19 ID:LMgEdJA80
リュックから遅れてしばし、やっと騒ぎの元を暗がりに見いだしたビビは駆け寄る。
リュックの姿はない。が、街路沿いの窓灯りに緑に照らされた頭髪を見ると、片方はソロだろう。
「ソ…」
掛けようとした声が、跳びすさって街灯に照らされた人物の姿を見て消える。
驚愕に両の瞳を見開き、震える声が漏れた。
「…なんで…」

空拳。だが敵も盾を失った。これがどちらに有利に働くのか。
サラマンダーは様子見に間合いを詰める。
予期していたソロは待たず退き距離を取る。
ソロの記憶の中の明るいオレンジ色の髪が、眼前の敵の燃え立つ赤色のそれに重なる。
格闘の使い手との他流稽古ならかつての旅の中で飽きるほどやった。彼女にはこんなに飢えたような戦意はなかったが。
タイプの異なる拳闘士で、一概にどちらの技量が上とは言えないだろうが、スピードは明らかにその少女の方が上に思える。
格闘家と闘う時、剣の間合いを保ち続けるのが要点。それが彼女との打ち合いで学んだ事だった。
ソロの退く間に、サラマンダーは相手の懐に飛び込むべく、身をかがめて全身の筋肉を跳躍に備える。
たわんだバネが反発しようとするその瞬間。
「サラマンダー!!」
勢いを殺がれた跳躍はタイミングを失い、ソロにかるく避けられる。
追わずに今度はサラマンダーが、ソロの剣の間合いを離れて声の方に目をやる。
「…ビビ?」
街灯に照らされて、とんがり帽子が立っていた。
「何を…何してるの…?」
「…」
サラマンダーは答えない。ゲームに勝ち残る、そう決めた時からこんな場面が来る事は予想できてはいた。だが現実にそれを目にしてみれば。サラマンダーは心が急速に冷めていくのを感じた。
闘いの高揚感が静まるのに反比例して、体の傷の痛みが押し寄せる。
それへソロが修羅のように剣を構えて躍りかかる。
「ソロ!やめて!」
ビビの叫びが響く。殺したくないって言ってたじゃないか。戦いを止めるって言ったじゃないか。サラマンダーは怪我してるじゃないか。なんで攻撃するんだ。
二人の間に飛び込もうとするビビの肩を後ろから掴んだ手が引き留める。
347迷走と覚悟と現実 5/8:2006/05/30(火) 06:11:43 ID:LMgEdJA80
「!」
「やめろ!殺されるぞ!」
誰に?振り返った場所にあったのはバッツとレナの姿。争う気配に目を覚ましたのだろう。
「止めなきゃ!友達なんだ!」
半泣きの声でもがき訴えるビビにレナが言う。
「…ソロは殺さない。大丈夫よ」
「だって!」
再び前方のソロを見やって叫ぶ。あの表情。もとからきつい顔立ちが今や敵を見据えて敵意を迸らせている。あれが殺意じゃないっていうのか。

「殺さないって…?」
ビビの言うより早く、疑問を投げたのはバッツの声。
「…彼、本気じゃないわ」
「…え?」
「…逃がそうとしてる…」

(…勝てない)
サラマンダーは明らかな不利を悟っていた。
ならば。
腰にくくってあったザックに片手を突っ込み、手に触れた球体をつかみ出す。
(何…?)
それを見留め、見慣れない道具にソロの緊張が走る。
サラマンダーは後方へ跳ね跳ぶと同時に、前の地面に向けて玉を持つ手を振りかぶる。
「みんな避けろ!」
脳内に鳴り響くアラームにソロも同様に後方へ飛び退きながら叫んだ。
逃げ遅れたのはビビ。
地面に叩きつけられたボールは割れ、白い霧状の粉が空気に舞う。
「げはっ!」
即効性の毒がビビの気管を爛れさせ、血を吐いて昏倒するその姿に気づいたか気づかなかったか。
焔色の頭髪は白い煙幕の向こうに走り去った。
ソロが叫んだ。
「レナさん!毒消しは!?」
「リュックに渡したままだわ!」
348迷走と覚悟と現実 6/8:2006/05/30(火) 06:16:10 ID:LMgEdJA80
ソロは剣を鞘に落とし込み、裂けた上着で口を押さえてビビに走り寄る。小柄な体を右脇に抱え上げて走り出しながら、バッツとレナを振り返る。
「宿に行きます!リュックさんを捜して下さい!!」
「わかった!」

片足を引き気味に走りながら、サラマンダーは更にそのザックを探る。
剣がある。特殊な力を秘めた物だ。あまり使い勝手のよい代物ではなかったが、負傷した身に得物がないよりはマシだ。
どういう仕組みになっているやら、小さな袋の中に剣の柄を見いだし、そのまま鞘を払うようにザックから剣を抜き出す。
剣身が袋から離れた、その途端。
「!ん、な、何だ!」
どうした事か。あり得ない程の剣の重さに、サラマンダーはあやうく剣を取りこぼしそうになる。
「…く…」
引きずるように街路を進む、が、それが限界だった。四つ辻の中程で彼はついに剣を諦め、そのままその重量にまかせて地に切っ先を沈める。
あとはまるで強力無比な磁石で留め付けたようにびくとも動かなくなった。
得物は失われ、敵は強すぎる。そして数も増えている。その中には…
(…出直しだ)
徒手となった彼は街の外へ向けて走り続けた。

宿では、戻ったリュックから渡された毒消しで、ビビが正常な呼吸を取り戻していた。
エリアとターニアを看病役に残して、他の5人は再びヘンリー捜索に出ている。
解毒は出来たが意識を取り戻さないビビをターニアが心配そうに覗き込んだ。
「ヘンリーさん…大丈夫かな」
「…」
答える言葉も無いまま、エリアは目を伏せた。

349迷走と覚悟と現実 7/8:2006/05/30(火) 06:17:54 ID:LMgEdJA80
「なんでトドメを刺さなかった?」
バッツが並ぶソロに問いかける。
「できたはずだ」
ソロは答えない。
「ヤツは明らかにゲームに乗ってるぞ。体制調えたら絶対にまた来る。まだここを動くわけにはいかないんだろう?」
「…その時にはまた追い返しますよ」
言ったソロの面にほとんど傲慢とも言えるような不敵な笑みが浮かんだ。
レナはそれを見て少し驚いた。今日の彼は意外な貌をよく見せる。
自分の力に対する自覚とそれに裏打ちされた自信。かつてレナはピサロから彼の事を聞いた。その表情は、この物腰柔らかげな少年のそんな過去を一瞬彷彿とさせるものだった。
「…でも…」
その足先に視線を落として立ち止まったソロが呟く。横目で窺った顔に表情はない。
「全力で当たらなきゃならない敵が来たら…その時は」
言いながら両の拳を握り締め、それを眼前でゆっくりと開いて見つめる。
「僕は…殺さなきゃならないんでしょう…ね」
護るために。殺す覚悟を以て挑む。
伯仲以上の実力者に相対した時、小手先の技でお茶を濁すなど不可能事だ。まして護る者を背後にしてのハンデを伴う闘い。決死と必殺の戦いを強いられる事になる。
ピサロが去り、その助力が期待できない今、ソロに余裕はない。安閑としていた危機感覚が今の一幕に刺激され、その心の裡に硬質なものが固まってくる。
ソロの独白を否定も肯定も出来ず、レナとバッツはソロの背後で顔を見合わせた。
重苦しい空気を破ったのはソロの身じろぎだった。
「なに…?」
「…いえ…」
顔を上げ、前方を透かし見るようにじっと見つめている。
「まだ誰かいるのか?」
それには答えず、黙って暗がりに向かって歩き出す。
付いて行った先に在ったのは街の明かりに鈍く光る金属、やけに装飾的な意匠の剣が街路の四辻に突き立っていた。
「なんだあれは。今の奴の落とし物…」
言いながらソロに目をやって、口をつぐむ。
ソロは驚愕にその目を見開き、眼前の剣を見つめていた。
(…ああ、そうか)
ソロの肩にかかる龍面の盾、その剣の纏う気配はその盾に酷似している。
350迷走と覚悟と現実 8/8:2006/05/30(火) 06:21:02 ID:LMgEdJA80
「あれは、あんたの剣だ。そうだろ?」
無言のまま、剣に歩み寄ったソロがその柄を握り、地から引き抜く。
どう見てもバランスの良い剣の造りではない。それが全く重さを感じさせずに、彼の意のまま、その手に納まる。
揺らめく街灯に飾られた湿っぽい夜気の中、風切音が一つ鳴った。


【サラマンダー(右肩・左大腿負傷、右上半身火傷、MP1/5) 
 所持品:紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、各種解毒剤
 第一行動方針:怪我を癒す
 第二行動方針:態勢を立て直して再戦を挑む
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【現在地:ウルから街の外へ】

【ソロ(魔力少量 体力消耗)
 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング  ラミアスの剣(天空の剣)  ジ・アベンジャー(爪) 
 第一行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:PPK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す】※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり。
【バッツ(左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ
 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【レナ(体力消耗 怪我回復) 所持品:なし
 第一行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:エリア、バッツを守る】
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
351迷走と覚悟と現実 8+1…/8:2006/05/30(火) 06:22:42 ID:LMgEdJA80
【リュック(パラディン)
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣
 ドレスフィア(パラディン) チキンナイフ 薬草や毒消し草一式 ロトの盾
 第一行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在地:ウルの村 屋外を盛んに移動中】

【エリア(体力消耗 怪我回復)
 所持品:妖精の笛 占い後の花
 第一行動方針:ビビの看病
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【ビビ 所持品:毒蛾のナイフ 賢者の杖
 第一行動方針:休息 (気絶中)
 基本行動方針:仲間を探す】
【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草
 第一行動方針:ビビの看病
 基本行動方針:イザを探す】
【現在地:ウル宿屋】

※ラミアスの剣・天空の剣の判断と、サラマンダーの逃げた方向は次の方の考えに任せます。
352名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/31(水) 05:38:35 ID:Tn9st8S/0
朝の保守
353343-351作者:2006/05/31(水) 19:55:13 ID:1uSlqk3Y0
以下修正します。

7/8の5行目の「体制」→「態勢」
8/8のソロの状態:「PPK」→「PKK」

指摘どうもありがとうございます。
354名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/01(木) 19:54:12 ID:WBV0JURk0
6月初の保守
355名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/02(金) 20:41:13 ID:u+XQhNVjO
6月2日目の保守
356名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/03(土) 15:30:20 ID:UICpfUHu0
保守3日…
357名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/04(日) 17:54:24 ID:7VJ8Thfy0
保守4日・・・
358Opposite Directions1/5:2006/06/05(月) 00:03:39 ID:yo/chx8F0
どこに行けばいいんだよ?

ネルブ谷をぬけたザックスに選択が迫っていた。
彼はカナーンに今までいたため、この辺りの状況がまったくわからない。
わかることといえばパパスとオルテガがこの周辺に
いるかもしれないということだけである。

ザックスは歩きながら考える。


今一番の目的は何としてでもエドガーと再開することだ。
それを達成するための最良の方法は…町や城に行くことだろうな。
建物のあるところに行けば参加者に遭遇できる可能性が高い。
そこに行けば、エドガーの所在を知る人に会えるかもしれないし、
もしかしたら、本人と再会できる可能性もある。
もちろん、ゲームに乗っている奴に出会うかもしれない。
が、ある程度のリスクは止むを得ないだろう。
それにゲームに乗っていない人にも会える…はずだ。
そうなると、俺が行くべき場所はサスーン城かカズスに絞られるな。
ウルは除外だ。ここからウルまで相当な距離があるし、何より自分の体力を考慮
するとかなりきつい。ここから比較的近いサスーン城、カズスにポイントを
当てるしかない。地図はあの野郎にザックごと奪われちまったが、その前に地図を確認
しといてよかったぜ。大まかな場所は頭に入っている。
…まさか地図が書き換わっているとは思わなかったがな。
359Opposite Directions2/5:2006/06/05(月) 00:04:52 ID:lYCCMlsH0
しかし、これではまだどこに彼がいるのかまったく特定できない。
…ならば今度は視点を変えてみるか。


エドガーならどうするか?


彼は片手を失っており、武器などはほとんど持ち合わせていない。
よって戦闘などをするのは非常に困難な状態だ。
もし不意打ちなどをくらえば一気に危険な状況になるだろう。なのでそのような
状況に陥りやすい場所には極力移動しないはずだ。
…例えば森などの見通しの悪い場所には。
さらに彼はこの世界に来てからシンシアと行動を共にしていただろう。
彼の性格上、女性を危険な場所には連れて行かない。
仮に彼らのスタート地点が森や洞窟だったとしてもすぐに移動するはずだ。

…だから、森にいる可能性はかなり低いと俺は考えた。彼の状況から考えると、
デメリットが多すぎる森にはいない。
……そういえば昨晩、森で襲われたと言っていたな。俺もそうだったけれど。
もう…間違いないだろう。俺の行くべき道は決まった。

生きていてくれよ……!

ザックスはカズスへ歩を進めだした。



奴だけは許せない…!

ザックスより遅れて盆地に到着したギルガメッシュ。彼にもまた選択が迫っていた。
360Opposite Directions3/5:2006/06/05(月) 00:06:30 ID:lYCCMlsH0
彼の目的は唯一つ、復讐を果たすことである。
彼の探している人がいずこにいるかわからないが必ず探さねばならない。
しかし、何も考えずに闇雲に探していては埒が明かないのもまた事実であった。

フリオニールの立場になって考えるんだ。
奴はゲームに乗っている。奴にとって参加者を狩る絶好の穴場はどこなんだろうか?
安全に確実に殺せる場所……。
…俺だったら森などの視界の利きにくい所を選ぶだろうな。
今の時間帯森は闇に包まれている。それこそ、奇襲に会えば戦いに手馴れの
者でも危険な状況に陥るはずだ。まして、まともに戦えない参加者もいる中に、
混乱を誘って分断させれば一網打尽をすることも不可能ではない。
もし襲撃に失敗して、追跡されても町や平原と比べて逃げやすい。

フリオニールなら考えるかもしれない。
おまけに奴は魔法もある程度熟知しているようだし、強力な武器もある。
かなりの戦闘手段を携えている。
俺はこう結論付けた。
それらを最大限に生かせるのは森ではないか――と

…奴がいる場所はだいたい見当がついた。


よし、戦闘に備えて持ち物をもう一度確認しておくか。

銅の剣は少し頼りないが一応接近戦には使える武器だ。
…この銃は確かに強力だが連射能力には長けていないようだ。
361Opposite Directions4/5:2006/06/05(月) 00:07:44 ID:lYCCMlsH0
一発打ったら違う方法で戦わないとまずいな、こりゃ。
それに狙いが微妙に外れるから熟練がいる武器だ。
しかし、よくこんなものを作り出すなぁ。
……この履物はどうでもいい。
次にあのガキから奪ったザックの中身だ。
この杖、説明書によると違う人物に化けられる代物なようだな。
…まぁ、物は使いようってやつか。
そして…さっきも見たがこれはなんなんだ?
何か物を写し取れることができるもののようだが、俺のいた世界では
こんなもの見たことないし、何より技術力が違いすぎる。…何とも言えねぇな。
だがさっきは銃の試し打ちでこれは見ただけだったが、
説明書のおかげでいろいろわかった。
このボタンを押して……と
……どうやらもう既に何枚か写し取られているようだ。
…これは試し撮りみたいだな。
もう一つ、女の子が写っていた。参加者だろうな。風景を見ると高い場所で
撮られたことがわかる。どっちも日付が今日の夕方前ぐらいになっている。
一応、フリオニールの情報があると期待したが無駄足だったようだ。
ああ、予備電池というものがあるから使えなくなる心配はないようだ。
だが、この中身は今の俺には必要ない。しまっておこう。

……今、信じられるのは自分しかいない。
自分がやらなくてはならない。
自分が決着をつけなければならない。
仇を…この手で必ずとる!
362Opposite Directions5/5:2006/06/05(月) 00:09:02 ID:lYCCMlsH0
例え、それで果てようとも俺は……フリオニールを討つ!!

この手で、必ず……!

ギルガメッシュは暗くそして深い森へと向かった。

二人は考えた末に自分の行くべき道を見出した。
しかし、二人は選択した道の逆に、求めている者がいるということには
気づくはずがなかった。
そしてこの選択が何を齎すのかこの時点では誰もわからない。

【ザックス(HP1/3程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
 所持品:バスターソード
 第一行動方針:カズスへ向かう
基本行動方針:エドガーを探す
 最終行動方針:ゲームを潰す】
【現在地:カズス北西の森西の平原】

【ギルガメッシュ(HP1/2程度・人間不信気味)
 所持品:厚底サンダル、種子島銃、銅の剣、デジタルカメラ、デジタルカメラ用予備電池×3 
変化の杖、りゅうのうろこ
 第一行動方針:森へ向かう
基本行動方針:フリオニールを倒す】
【現在地:サスーン南東の山脈付近→森へ】
363切なる想いに眼は曇る 1/10:2006/06/05(月) 07:47:41 ID:y7VgYMcc0
ここに二人、本城に四…いや六人。合わせて八人の我が標的、我が阻害者。
この城を目的地とする忌むべき旧盟友、二人の危険要因。
他にも森で遭遇した二人組、仕留め切れなかった一行……為さねばならぬ事は枚挙に暇がない。
遂に見えた主君を意識の中心に置いて身じろぎ一つせずピエールは思考する。
達成せねばならぬ事は二つ。
第一にリュカ様の安全。第二に己に課した使命の遂行。
魔法も武器も使えぬ今頼れるは杖のみ。だが、主君のためここで動くわけには行かぬ。


ようやく見えた主に従って大人しく控える魔物騎士。
彼を控えさせたまま、静かに席につき黙するその主、何を想うのか。
僕はどうすれば良いのだろう。
他者に危険を及ぼす存在は排除されて然り。これは合理的。
しかし一方仲間であった相手はできる限り説得したい、救いたい。これは感情的。
かつての彼らの絆は余程強いのだろう、リュカとタバサは今感情的判断に大きく傾いている。
僕がピエールを敵視するほど逆に二人の感情を刺激する事になる。
今は彼の動きを見張り続けるほかにやれそうな事を見つけられない。
だが、エドガー達が戻ってきたところで何の解決になるだろう。
説得――? 言葉だけでどこに落とし所を見出せるだろう?


リュカには借りがある。だから、できるならピエールって奴を倒して円満解決といきたい。
けれど、そうはならないだろう。
フィンが言う通り状況はリュカを疑うことはできるだけの材料を揃えている。
仮定どおりだとすれば――戦う、のか、リュカと?
それは考えたくない。自分はあいつを信頼したい。
だが仮定と異なるとしてもプサンはリュカとピエールの信頼関係を強調していた。
クジャにさえ結局情けをかけた彼がようやく会えた仲間を見捨てられるだろうか?
その時、オレは、リュカは、どういう関係になる?
導かれ得るかもしれない結果予想に逡巡しながらジタンは星天下の回廊を駆け抜け塔へ。
364切なる想いに眼は曇る 2/10:2006/06/05(月) 07:49:25 ID:y7VgYMcc0


「…やっぱり簡単にでもピエールの傷を手当てしてあげたい。
 セージ、君に負担はかけない。全部僕がやるから許可してくれないか?」

言葉の無い空気を破る提案。
予想はしていたが実際に直面してみると返答に困るセージ、さらに畳み掛ける声あり。

「ねえ、お兄さんっ。私からもお願いします。
 あんな痛そうなのに、そのままにしておくのはピエールが可哀想。あの、だからっ……」

側面攻撃。
明らかに人を殺した魔物を回復させるなんて普通なら迷う余地無く却下の問題。
なのに多数決でも雰囲気でもそういう流れになっている。まるで自分が悪役だ。
タバサの表情に浮き上がっている必死さは返答を待たずにピエールに駆け寄って手当てを始めても可笑しくは無い。
ギルダーの時のように他人を納得させながら更正と償いをはかる方法に妥協する準備は自分にだってある。
しかし、だからこそ橋頭堡として、第一の試練としてのエドガーを待たねばならない。
殺人者が生き延びるということについての他人の感情に気を配らねばならない。
リュカがそれを理解しないとは思えないが、今の精神状態が阻害しているのだろう。
取り繕った笑顔で少女に答えてリュカの目を見つめ返す。

「…残念ながら不許可です、リュカさん。
 あなたの癇に障る判断かもしれませんが、酷いとはいえピエールはすぐに死ぬような怪我ではないようです。
 回復はもっと詳しい話を聞いてからでも遅くは無いでしょう。
 エドガーさん達が戻ってくるまでそれほど時間がかかるとも思えませんし、どうかここは自制して……」
365切なる想いに眼は曇る 3/10:2006/06/05(月) 07:51:11 ID:y7VgYMcc0
目の前で曇っていく表情。ちらりと目の端で動く影。
予想したとおり少女はそれでも行動することを決断した。

「もうちょっとの我慢だからね、ピエール。私が回復の呪文で治してあげるからっ。
 一生懸命覚えたの、きっと上手くいくからじっとしてて!」
「タバサ!」

娘の名前を呼び、確認するように、事後承諾で押し切るかのように強い視線でこちらを見た彼もピエールへ駆け寄る。
予想していたこととはいえ、この済し崩し進行を無理に止めてまで悪役を演じるつもりはなかった。
やれやれといわんばかりに手のひらでメガホンをぱこんっ、と弾ませる。
説明のハードルは上がってしまうがエドガーならきっと事情を分かってくれるだろう。
とはいえ流石のセージにとっても次の展開までは予想不能であったが。
不動無言のピエールをそれぞれ回復呪文の光で照らす父娘と別方向、扉の向こうにかすかな――気配?


足音を、息遣いを、気配を殺して火を入れられた燭台の続く東塔を進む。
そしてたどり着いた人の気配のある部屋の前。
まずは様子見と扉越しに音、気配、雰囲気を探る。
特徴ある音は無い。騒がしい気配も無い。危険な雰囲気も無い。ただ、聞き取れない小さな会話が聞こえるだけ。
意を決してジタンは扉をノックする。
どうぞ、と聞いたことのない声に相手されて扉を押し開けた。
部屋に入る自分に警戒含みの注目を投げていたのは良く知る顔、メガホンを手にした男、小さな女の子、そして鋭い目。

「……リュカ」
「ジタン、君か。一人なのか?」

あまり見たくなかった場面に不本意ながら硬直する。
いつか兄に向けられていた光、それが照らしていたのは鋭くこちらを睨む悪名聞こえたモンスター。
彼らの仲間としてのつながりがその一場面に凝縮されていた。
366切なる想いに眼は曇る 4/10:2006/06/05(月) 07:53:40 ID:y7VgYMcc0
「知り合いなんですか、リュカさん。えーと、ジタン君と」
「ええ、昨夜から今朝まで行動をともにしていたんだ。
 でもジタン、あれからクジャは結局……助からなかったんだね」
「兄貴は……最期まで立派に罪を償って死んだよ。
 それよりもさリュカ、一緒にいるのは誰だい? オレに紹介してくれないか?」

言いつつ、聞いた話と照合しながら他の三人を見回す。
このメガホンの男がセージ。女の子がタバサ。警戒以上の視線で睨みつけているモンスターがピエール。
聞いてはいるがリュカに紹介させることに意味がある。

「ああ、この子はタバサ。僕の娘だ。
 向こうにいるのがセージ。賢者で、このゲームの最初からタバサを保護してくれた恩人なんだ。
 それから――ピエールだ。見ての通りモンスターだけど、まぎれもなく大事な僕の仲間だ。
 …ああ、ピエール、ジタンは敵じゃない、僕らを傷つけたりなんかしない。
 だからそんな…そんな目はもう止めてくれ」
「………御意」

俯いたことで視線が切られ、注がれていた敵意は途切れた。
ここまでの言動、行動だけでも既にピエールを殺して解決するという手段は容易でないことが分かる。
エドガーの話ではセージからピエールの悪行について伝え聞いていてもおかしくない訳だがリュカはそれを踏まえても仲間だと発言しているのだろうか。
思考の色を慎重に押さえて次を考える。

「そっか、なんとか家族に会えたんだな。良かった…とは言えねえか。
 知ってるだろうけど探してた名前、呼ばれちまったもんな」
「……うん、分かって、いるさ。でも、だからこそ僕はタバサとピエールを守る。
 もうこれ以上…失いたくないんだ」
「ああ。そうだな。そうだよな」
「………でもね、ジタン。君には何か…隠していることがあるんじゃないかな。
 言い方は悪いかもしれない、でも目を見れば嘘か真実かわかるんだ。
 ジタン、頼む。伝えることがあるのなら話して欲しい」
367切なる想いに眼は曇る 5/10:2006/06/05(月) 07:55:23 ID:y7VgYMcc0


隠していることがある。
現れた男への主君の指摘を聞いてピエールは想像する。
隠している内容ではない。もう一人の男は今何をしているかについてだ。
ジタンと言う名のこの尻尾の男の怒りに満ちた顔を自分は忘れてはいない。
その落ち着いた顔の裏には我が主への害意が渦巻いているに違いないのだ。


正面切って真剣に見据えられて初めて体感する優しく全てを見通すような瞳。
実際に向けられてみねばそれを言い表すことなどはできないだろう。
ともかく、それでもジタンは全てを明かさないように取り繕う努力をした。

「ああ、えーと、な、本当は本城でプサンやティーダに会ってここのこと、聞いてたんだ。黙ってて悪かった。
 プサンは調子の悪い奴の面倒見てて手が放せないからさ、代わりに様子を見てきて欲しいって」
「そうじゃない!」
「え……あー、なんだよリュカ、いきなり大声出してよ」
「違うんだ、ジタン。それじゃない。君はまだ何か嘘をつき通そうとしている。
 正直に。…だいたい分かっているんだ。でも、正直に答えて欲しい。
 君は………」


ジタン君が隠していることがある。
リュカの指摘を聞いて一つの予測を得たセージ。 
それはすぐに彼の発言によって裏付けられた。
彼は既にエドガー達に会っている。事情を呑みこんだ上でここへやって来たのだ。
しかし、それならばエドガーはどうして自身で戻らず彼を送り込んできたのか?
隠された意図を推測する。しかし、事態はセージの思考速度より早く進んでいく。
368切なる想いに眼は曇る 6/10:2006/06/05(月) 07:56:30 ID:y7VgYMcc0

その瞳でジタンを追い詰めるリュカが息を継ぐために置いた発言前の小さな間。
そこにピエールの声が割り込む。

「リュカ様! すぐにそやつからお離れになって下さい!
 その男、リュカ様を害するつもりです! さあ、我が身を盾に!」
「ピエール!?」

声ばかりでなく視線がぶつかる二人の間にスライムナイトの身体が割ってはいる。
反射的に飛び退いてグラディウスを抜き放つジタン。応じるように残った魔法の杖をかざすピエール。

「貴様、リュカ様が魔物を操って殺戮を命じておるなどと誰から聞いた!
 我が主の名誉にかけてその誹謗、断じて許さん!」
「ピエール、待てっ、落ち着いてくれ!」
「リュカ様は私の後ろへお下がりください!」
「ジタン! やっぱりそうなのか、君もピエールのことを誰かに聞いたんだね!
 でも信じてくれ、ピエールの心には狂気も、邪気も、悪意も見えないんだ。
 何かの間違いなんだ! いや、魔物の姿が誤解を生んでいるのかもしれない。
 でも信じてくれジタン、ピエールがゲームに乗るなんて、そんなことはないんだ!」

ようやく詠唱準備を整えてセージが構える。
緊張をはらむ三人の向こう側には驚きだけを素直に浮かべているタバサ。
最低でも彼女を守ることを自分に課すものの、一触即発の危険に下手に動けない。
事態はまさに予想した最悪。

369切なる想いに眼は曇る 7/10:2006/06/05(月) 08:00:09 ID:y7VgYMcc0
リュカの瞳の力を知らなかったこと。ピエールにどこかで見られていたこと。
不運か、ミスか。毒づいても始まらない。予想した最悪の対峙に追い込まれてしまったのだ。
ここに至ってもリュカが白なのか黒なのか自分には見極められない。
もっともそればかりか開戦への一歩は選べない。説得の言葉も見つからない。
考えても混乱するだけ。ジタンは動けないのだ。

全員を押しつぶすような緊張の空気。高い声がお父さん、と呟いた気がした。
局面を動かしたのは何がしかの威厳を伴ったその父の言葉。

「ジタン」
「………」
「ジタン、今度は僕が頼む番だ。剣を収めてくれ。
 僕が彼を連れてここから出る。僕がピエールを誤解から守ってやらなくちゃならない。
 セージ、我が侭を言ってすまない。でもここで…別れよう。
 タバサは……」
「一緒に行くっ!」

再び、滞った空気を裂いて、タバサは今度は父の脚へと飛びつく。
微笑をわずかな時間だけ浮かべたリュカは手で指示を出し、迅速に二人を扉へと誘導していく。
ピンで縫い止められたかのようにセージとジタンはその光景を不動で見つめるだけ。
そんな彼らへ向かって深々と、父娘が頭を下げる。

「ジタン、せっかく再会したというのにこんな事態になってしまった。
 でも分かってほしいんだ、ピエールは悪の存在じゃない、モンスターだからってみんなが悪じゃないって。
 みんなにも伝えて欲しい」
「お兄さん、今までありがとうございました。私はお父さんと、ピエールと行きます。
 本当はみんな一緒に……ううん、それじゃ、また会えたら…」

370切なる想いに眼は曇る 8/10:2006/06/05(月) 08:05:14 ID:y7VgYMcc0
力ずくでもピエールを倒すべきなのかもしれない、行かせてはいけないのかもしれない。
でもリュカと戦うなんていう決断はまだ選べない。黒白は断ぜられない。
心理の紐に絡め取られていたジタンは彼らが扉に向こうに消えるギリギリで一つのアイデアにたどり着いた。

「待ってくれ、リュカ! 引き止めたりはしない、だから一つ聞いてくれないか?」
「なんだい、ジタン」

二人を先に廊下へ送り出し、最後に部屋を出ようとしたリュカは振り返り足を止める。
そんな彼にジタンは奇妙な輝きをたたえた石を投げてよこした。

「これは?」
「どうしても、道を違えてしまうということがある…仕方ないのかもしれない。
 でもさ、いつかまた合流できるかもしれない。そんな約束の代わりだよ。
 良ければ何か、オレに預けてくれないか? 次に再会したときにつながりがあるように、さ」
「…ありがとう、ジタン。じゃあ……………これを」

約束代わりにリュカから返ってきたのは緑色にきれいに輝く球体。
それから最後にもう一度室内の二人へと深く一礼し、三人はここを離れていった。


371切なる想いに眼は曇る 9/10:2006/06/05(月) 08:08:30 ID:y7VgYMcc0
緊張から解き放たれた屋内の空気。
おーーーきく、聞こえるようなため息を漏らすのはセージ。恨み節が口をつく。

「えーとジタン君? 君が来てからとっても激動の展開だったんだけれどさぁ。
 何しに来たの?」
「あーー、こうなるなんて思わなかったよ俺も。
 ピエールの奴を刺激しないようにって俺が来たのに結局一緒だったってことかよ…
 でも、まあ…最低限の仕事はできた」
「仕事って最後の交換のこと? メガホンで一発いっとくかい?
 大体エドガーになんて説明すればいいのかな」
「エドガーは城を離れたぜ? まあ、とりあえずプサンのところへ向かうとしよう。
 詳しい話は途中でしてやるからさ」


【リュカ(MP1/4 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)、ビアンカのリボン、ブラッドソード、
 スネークソード、王者のマント、魔石ミドガルズオルム(召還不可)
 第一行動方針:タバサとピエールを守る
 第二行動方針:二人を連れてサスーンを離れる
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
 所持品:E:普通の服、E:雷の指輪、ストロスの杖、キノコ図鑑、悟りの書、服数着、ファイアビュート
 第一行動方針:リュカについていく
 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】
【ピエール(マホトーン、HP1/3、MP1/4)(感情封印)
 所持品:毛布、魔封じの杖、死者の指輪、ひきよせの杖[1]、ようじゅつしの杖[0]、レッドキャップ
 第一行動方針:リュカに従う
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【現在位置:サスーン城 東棟の一室→城門方向へ】
372切なる想いに眼は曇る 10/10:2006/06/05(月) 08:11:04 ID:y7VgYMcc0

【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 魔力1/2程度)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子、イエローメガホン
 第一行動方針:ジタンと一緒にプサンのところへ
 基本行動方針:情報を得て事後の方針を定める】
【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス、聖なるナイフ、マテリア(かいふく)
 第一行動方針:セージと一緒にプサンのところへ戻る
 第二行動方針:フィンの風邪を治す
 第三行動方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す
 最終行動方針:ゲーム脱出】
【現在位置:サスーン城 東棟の一室→サスーン城3F・暖炉がある部屋へ】
373名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/05(月) 12:29:51 ID:DljpJ+FTO
保守
374名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/06(火) 23:59:06 ID:4ciXhO4nO
375名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/07(水) 03:28:05 ID:nm/4mQrXO
hoshu
376保守:2006/06/07(水) 03:55:56 ID:MasnixR40
俺たちの殺し合いは、まだまだこれからだ!

 



 
           (完)
377名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/07(水) 09:12:10 ID:rOO1I5v2O
なにその書き手先生の次回作にご期待下さい
378名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/08(木) 12:52:12 ID:mRmeq2McO
保守
379名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/09(金) 13:08:58 ID:88xOZ7bYO
ホシュルーラ
380名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/10(土) 23:44:52 ID:H2upKSDNO
ホシュフレア
381父親と息子 1/9:2006/06/11(日) 03:04:00 ID:5JqKHMtz0
少し前まではあたりは闇に包まれていように思えたのに、見上げてみれば、そこは星空。
まるで殺し合いの会場にいることが嘘であるかのように、月が淡く光る。
月の光に照らされて輝く砂の上を爆走する軽装の二人組。
ユフィとオルテガである。

「くしゅん!
 にしてもさオルテガ〜、そんな格好して寒くない?
 ほら、ここって風きついし、夜の砂漠は冷えるっていうし、実際冷えるし」
「なに、これでも鍛えている。多少の寒さなど屁でもない」

オルテガはポーズを取る。
だが、その油断が命取り。
今日もさまざまないたずらをしてきた風の精霊によって、
一陣の風が彼らへと吹き付ける。

「うわっ」
「ぶるうぁっっっっくしょん!!!」!!

それをまともにくらったオルテガは思わず大きなくしゃみをしてしまう。

「鼻に砂が入ってしまったか、それとも誰かが噂をしているのかな?」
「あはは、無理しちゃって。オルテガも寒いんじゃん。そのまんまじゃ風邪ひいちゃうよ?」
「ははは、これは参ったな」
382父親と息子 2/9:2006/06/11(日) 03:04:34 ID:5JqKHMtz0
風は気まぐれだ。
ときに強くなったり、弱くなったり、思わぬ方向から吹いてくることもある。
先ほどより、数段強い風が、二人の後方から吹き抜ける。

「な、何も見えん、どうしたというのだ! 俺の瞳よ! 精霊よ! 我に光をぉぉぉぉぉ」

ただ後ろから吹き抜けた風が彼のマントを吹き飛ばし、それがオルテガ自身に覆いかぶさっているだけだ。
だがオルテガはまるで芸人のように大げさに、滑稽に、あたかも視界を奪われたかのように(実際に見えていないが)振る舞う。
「ちょ、ちょ、まって! もういいって! お腹痛くなっちゃうよ!」

空を見れば、先ほどの突風が空にわずかに残っていた雲までも吹き流したのか、あたりは一面の星空。
煌く空、それに照らされて輝く地面は、真夜中というのにまるで昼間のように二人の姿をはっきりと映し出す。

「もう、ヒック、オルテガがこんなに面白いだなんて思わなかったよ」
「はっはっは、楽しんでもらえたのなら光栄だな」
「だいたいその衣装ってなんなのよ? あ、それも支給品なんだっけ?」
「確かにこれは私の支給品だが、私のいた世界では割とポピュラーな衣装だな。
 新しい自分を見つけるとき、何かの事情で素顔を隠しておきたいとき、
 己を高ぶらせるとき、このような格好をする男性は大勢いるんだ」
「へえ、違うなあ。私の世界じゃ、美少女連れてそんな格好をしてると、警察に連れていかれちゃうよ」
「う〜む、さすがにそれは困るな…。パパス殿と合流する前に着替えるとするか」

この格好では本当に他人に怪しまれても文句は言えまい、か。
勇者ロトの父親ともあろうものが、仲間に誤解され覆面マント姿のまま殺されたということになったら、末代までの恥だろう。
夜だからこそ、光のコントラストとかいうやつのために、いっそう怪しく見える。そのギャップが彼女には面白いのだが。

「あれれ? 冗談のつもりだったんだけど…。
 ちょっと冷えるし、そうしたほうがいいのかもね。着替えるんなら、むこうに向いとくけど?」
「いや、今はちょっとマズイ。誰か来る」

月明かりに照らされるは、一つのシルエット。剣を持った、つんつんとがった頭の男。
383父親と息子 3/9:2006/06/11(日) 03:06:50 ID:5JqKHMtz0
「なんか神妙そうな顔してるけど、どうしよう? 接触してみる?」
「――よりにもよって、再会がこの姿、とはな」

オルテガのテンションが急に下がる。

「なんかヤバいやつなの?」
「いや、……私の息子だ」

ぴゅうううと風が吹く音がした。

「その格好、メジャーなんじゃないの?」
「何事にも時と場合というのがあってな…」
「…確かにそのとおりだね」

どうやら、ヤバくはないが、トップクラスにマズいということはよく分かった。
要するに、覆面マント姿では感動の再会がぶち壊しということだ。
こんな姿で年頃の少女と行動など、親としての見識を疑われる。
ユフィとしても、非常に反応に困る展開である。
オルテガは、この一瞬だけは名簿を写真入りで支給した魔女を恨んだことだろう。

「名前を呼ばないといけなくなったらどうすればいい?
 ほら、知らない人と出会ったら普通名乗りあうじゃん?」
「そうだな、そのときにはポカパマズという名前を使ってはくれないか?
 名簿を確認していないこと、が前提なのが難しいところだがな」
「ポカパマズ…。ギャグ言ってる場合じゃないよ?」
「いやいや、私は本気だが。パパス殿もなかなかいい名前だと言っておられたぞ?」

困ったことが起きると、反射的に他の事に意識が向くのは珍しくはないだろう。
自然の美しさ、ちょっとした変化を堪能できる瞬間だと思う。
月に雲がかかったのか、あたりが暗くなった気がする。
やはり文化の差はあるものだと思いつつ、アルスという名は母親が付けたのだと確信した。
384父親と息子 4/9:2006/06/11(日) 03:07:26 ID:5JqKHMtz0
二人はアルスへ向き合う。
アルスがゲームに乗ってはいないということは、すでにサイファーたちから聞いている。
ユフィ、オルテガともに武器を地面へ落とす。
アルスも敵意がないことを示すため、剣を地面に突き刺す。
鈍い輝きを放つ武器が、砂の上に横たわる。

普通なら、恐怖の自己紹介へと続くところだが、今回は違った。
アルスが先に質問をしてきたからだ。

「突然で済まないが、聞きたいことがある。あなたたちはゲームに乗った人間について、どう考える?」
「どうって…」

ユフィの脳裏にまず浮かんだのは、ゲームに乗った人間そのものよりも、その被害者たちのこと。
マリア。エッジ。死んでしまったかつての仲間たち。
そして、死を知ったときに感じた、どうしようもない無力感と、深い悲しみ。
最後に、あの悪魔。フリオニール。エッジを殺したときの、あの邪悪な笑顔。
空は、雲が流れてきたのか。あたりが暗くなってきた。星空も、ユフィの表情も見えなくなる。

「ぜったいに許せないよ!
 他の人が悲しむってのに、他人を殺して自分だけ生き残ろうとするようなやつなんてね!
 そんなやつは、このユフィちゃんがまとめて成敗してやるよ!」

「他の人が悲しむのに、か…」
アルスが自嘲を含んだ笑いを浮かべる。

「…なんかおかしなこと言った?」
何か触れてはいけないことを言ったのだろうかと、アルスの反応に少し戸惑うユフィ。
一陣の風が吹き抜ける。気温も低くなってきたのだろう、先ほどと比べて冷たい感触だ。
385父親と息子 5/9:2006/06/11(日) 03:07:59 ID:5JqKHMtz0
オルテガもアルスに何があったか、気になっていた。
夕方、サイファーたちに聞いたのとはずいぶん様子が違う。
悪を討つという使命に向かって奔走しているということだったが、
今の様子は、まるで正義の炎が燃え尽きて灰になってしまったかのようである。
風が吹けばすぐに散ってしまいそうだ、それくらい儚い印象を受ける。

「何があったのか、言えることだけでいい、話してはくれないか?」
アルスは、その言葉を皮切りに、今までの出来事を話し始める。

シドやイクサスとの出会い、フリオニールの悪行、
サイファーと出会いによる殺人者討伐の決意などなど。
そして、今先ほどレオンハルトとともにカズスに集まった殺人者たちを一網打尽にしようとしたが、
その過程でレオンハルトは殺され、二人の殺人者には逃げられ、
残ったフリオニールには勝ったものの、殺すことはできなかったということ。
「覚悟があると散々人に語り、仲間に語り、
 だがそれでも自分は悪を殺せず、悪を逃がし、悪から逃げ、そして今ここにいる。
 …結局、僕は何もやり遂げることができなかった」

アルスが大きなため息をついた。
ユフィは初めこそはフリオニールの暴れぶり、特にエッジだけでなくシドまで殺害したことに怒りを募らせ、
またアルスがフリオニールを見逃したことに納得がいかない様子だった。
それに、残り二人の殺人者が誰なのか、カインはどうなったのか、
まさかカインを殺人者と誤認しているのではないかなどと様々な疑問を持った。
だが、アルスの悲痛な表情、一目で苦しんでいると分かるその様子を見て、それらを口に出すことはできなかった。
386父親と息子 6/9:2006/06/11(日) 03:09:34 ID:5JqKHMtz0
アルスは、自分が傲慢でそれでいて意気地なしなのだという。
だがオルテガにとっては、アルスは傲慢でも意気地なしでもない。
悪を討つという使命を遂行しようとしているのではなく、
悪を討つという使命に押しつぶされそうになって苦悩しているようにしか見えないのだ。
すべてを一人で背負い込み、過剰に苦しんでいる一人の青年にしか見えないのだ。
実際そうなのだろう。仲間の死を体験したことで、余計に気持ちが焦っているのではないだろうか。
心の奥底では、まだ平和的な解決を願っていながら。
その重荷を、どうにか取り除いてやりたい。

「君は何も責められるようなことはしてはいない」
「何故だ? 僕はみすみす殺人者を見逃してしまったんだぞ?」
「確かに、そのこと自体はミスなのかもしれない。
 そやつは、これからカズスに向かってなんとかする。
 だが、殺害に関しては、…君は心に大きな迷いがある。
 たとえ殺人者といえども、殺してしまっていいものなのか、という迷いがな」

心の迷いを指摘され、少なからずアルスは驚く。
彼は、幾度もの葛藤の結果、迷いを払拭し、
フリオニールを殺さなかったのは、優位に立ったことからの哀れみ、自身の甘さ、傲慢さからくることだと思っていたのだ。
オルテガが話を続ける。

「アルス、君はゲームを止めるために、殺人者を殺そうとしていた。それは間違いないな?」

アルスは頷く。
たとえ元の仲間であろうとも、殺人を犯したなら斬り捨てようとしていた。

「殺人者なら殺しても許されると当然のように考えてしまいがちだ。
 だが、殺してしまえば殺人者だという事実が常に付きまとうことになる。
 この矛盾を受け止める覚悟は、あるか?」
387父親と息子 7/9:2006/06/11(日) 03:10:06 ID:5JqKHMtz0
「もし受け止めることができなければ、君はさらに苦しむことになる。
 だが、今ならまだ間に合うのだ。何も、殺すだけがゲームを止める手段ではない。
 無理だと感じたなら、他の方法に切り替えることも考えておきなさい。
 誰も責めることはない。どの道を選んでも、君が魔女に抗しようとしているのは確かなのだからな」

カズスのこともある。本来なら大いに悩めといいたいところだが、時間があまりないようだ。

「ますます混乱させるようなことを言ってすまないな。
 決断するのは君自身だ。だが、決して自分を押し殺そうとしてはいけない。
 ――もちろん、思考に思考を重ねたうえで、今までのように悪を討つという方針を採ることもあるだろう。
 それならばそれでいい。確実に成長はしているはずなのだからな」

「自分を押し殺すな、か…。僕は本当は、どうしたいんだろう…」
一人空を見上げるアルス。

「ねえ…、私たちと来ない? 何をするにしたって、一人で全部やる必要はないよ」
「いいのか?」
「そうだな、君の採るべき道が明確に見つかるまでは、…いや、このゲームを潰すまで、協力しよう」

そうだ、こういうときに必要なのは、仲間の存在。
答えを提示することはできないが、支えて、答えへと導いてやることはできる。
彼が、彼にとって最善の選択をできるように。

「ありがとう。どうか、頼む…!!」

いつの間にか、またあたりは明るくなっている。
雲の隙間から覗く星々の光が、アルスを照らす。
388父親と息子 8/9:2006/06/11(日) 03:10:41 ID:5JqKHMtz0
ユフィは思う。これは父と子のドラマ。
カズスのことは気になったが、とても自分が割り込めるような雰囲気ではなかった。
もしかして、アルスはもうオルテガのことに気付いているのではないか。

「そういえば、まだ名前も聞いていなかった。僕はアルスだ」
「アタシはユフィ。マテリアハンターの、ユフィだよ。んで、こっちは…」

初めは父の威厳を保ちたいと思ってのことだったが、
苦しむ実の息子を目の前に、正体を隠して、偽名など名乗っていいものだろうか。
いや、そのようなことをしては恥というものであろう。
オルテガが覆面を外した。

「ユフィ、くだらぬことにつき合わせて悪かったな。
 私はオルテガだ。以後、よろしく頼む」
まるで時間が止まったかのようだ。どんな細かい動きも、今なら見逃さないような、
どんな細かい音も、今なら聞き逃さないような、そんな気がした。
ほら、今も現に手をグッと握る音が聞こえてくるではないか。
389父親と息子 9/9:2006/06/11(日) 03:11:25 ID:5JqKHMtz0
【アルス(MP1/4程度、左腕軽症)
 所持品:ドラゴンテイル ラグナロク ロングソード 官能小説一冊 三脚付大型マシンガン(残弾4/10)
 第一行動方針:マシンガンの弾の処分
 第二行動方針:これから自分はどうするか考える
 第三行動方針:倒すべき悪(アーヴァイン、スコール、マッシュ、カイン、サックス、スミス)を?
 最終行動方針:苦悩中】

【オルテガ 所持品:ミスリルアクス E:覆面&マント
 第一行動方針:ユフィとアルスを連れてカズスへ向かう
 最終行動方針:ゲームの破壊】

【ユフィ(疲労/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
 第一行動方針:オルテガ、アルスと共にカズスへ向かう
 第二行動方針:マリアとエッジの仇を討つ?
 第三行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
 基本行動方針:仲間を探す】

【現在位置:カズス西の砂漠の東部】
390父親と息子 9/9(修正):2006/06/11(日) 21:13:06 ID:5JqKHMtz0
【アルス(MP1/4程度、左腕軽症)
 所持品:ドラゴンテイル ラグナロク ロングソード 官能小説一冊 三脚付大型マシンガン(残弾4/10)
 第一行動方針:マシンガンの弾の処分
 第二行動方針:これから自分はどうするか考える
 第三行動方針:倒すべき悪(アーヴァイン、スコール、マッシュ、カイン、サックス、スミス)を…?
 基本行動方針:苦悩中
 最終行動方針:ゲームの破壊】

391名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/12(月) 06:16:18 ID:C9ewZ71wO
保守
392名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/12(月) 21:41:07 ID:unfmwDQF0
ほしゅ
393名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/13(火) 16:38:14 ID:lo62K70l0
HOSHU
394バッツ ◆u2ynRS6pwM :2006/06/13(火) 22:31:02 ID:PIAi1QKH0
たまにはオレが
保守
395三者の集う場所で1/15:2006/06/14(水) 15:09:22 ID:Y2xSj3TQ0
なんなんっすかこの金髪はぁ!いや、俺も金髪だけどさ。
ことあるごとにユウナに絡んで…ああっ!ユウナもなんでそんなまんざらでもない顔してるんッスか!?
くそっ!早くアーヴィン達に合流して話題を変えないと!…じゃなくて!皆が無事かどうか確かめないと!
それにしても…首輪の話で盛り上がってさ、俺完全に蚊帳の外じゃないッスか。
もういいッス、一人で寂しく…ってそうだ、首輪。俺についてるのも何とかして外せないッスかね〜。
ちょっと手をかけてみたその時、エドガーさんの一言。

「あ、ユウナ君、首輪はあまりいじらないように。ヘタに手を加えると爆発してしまうからね」
…やっぱやめとこっと…

そんなこんなで数分。待ち合わせの場所も大分近づいてきた頃、俺の耳に聞こえたのは聞いたことのない声。
まさか…おい、まさかゼルがこっちに来たのは…嘘だ、嘘だ!
「あっ!どうしたの!?ねえ、待って!」
ユウナの声も聞かず、俺はアーヴィンが、リルムが待っているはずの場所へと駆けていた。
396三者の集う場所で2/15:2006/06/14(水) 15:10:20 ID:Y2xSj3TQ0
「力を貸せ、か。よかろう、どの道貴様とも手を組むならこちらも相応の誠意を見せねばな」
ピサロはその様子を見てマティウスに危険性がないことを確信する。
ザンデはマティウスの力量を瞬時に見抜き、自分の仲間として必要であると判断する。
マティウスはただ一つ、ゴゴの仇討ちのために。
となれば、目的は一つ。アリーナを殺すこと。
「ヒャヒャヒャ、友情って素っ晴らし〜!な〜んて言うと思います?ボクちん不愉快!」
「話がややこしくなる。少し黙っていろケフカ」

さて、この時点でアリーナがどこへ向かったか、四人には知るよしもない。
ただ判断材料として存在するのは、ウィーグラフとの交戦中に現れた少年の行く先だ。
正確には、ウィーグラフが少年を追って消えた先。
あれだけの怒声の応酬だ。ゴゴを仕留めたアリーナもその様子はある程度感づくはず。となれば。
マティウスは森を見渡した。やはりと言うべきか、そこかしこに傷のついた木々が点在する中、明らかに特異な方法で破壊された部分が見つかる。
それは、ウィーグラフとの交戦で見た聖剣技の爪痕。この痕跡をかなり大げさに残して行くあたり、相手は相当冷静さを欠いているのだろう。
追うのはたやすい。
「こっちだ。」
それだけ言って早足で進みだすマティウスに、ザンデは興味深そうに顎をさすりながら、何も問うことなく後に続いた。
397三者の集う場所で3/15:2006/06/14(水) 15:11:13 ID:Y2xSj3TQ0
「どうだラムザ!そっちは何とかならんか!」
「出血は止めました!けど失血状態はどうにも…僕一人で補うには限度が…」
「顔色は!?」
ティーダとマティウス。二者が向かうその交差地点で一つの戦いが行われていた。
それは死との戦い。死なせるわけにはいかない。その一心でラムザとギードはもてる限りの手を尽くしてロック達の治療にあたっていた。
「なんとか大丈夫そうです!でもまだ…」
ただひたすらにケアルを唱え、少しでも早く傷が癒えるように尽力する。
だが、ラムザにはウィーグラフのこと、連れ去られたリルムのことが気にかかっていた。
未だウィーグラフの手中にあるリルムの身柄も、何とかして取り返さねばならない。
そのためにはここで魔力を浪費していいものかと心の片隅で葛藤するラムザ。
ここでもし誰かが加勢に来てくれたら…
次のケアルを唱えようとしたその時、ラムザとギードの耳に、叫び声が聞こえてきた。
398三者の集う場所で4/15:2006/06/14(水) 15:11:58 ID:Y2xSj3TQ0
「アーヴィン!?アーヴィン!!ロックまで!どうしたんスか!」
それは意識を失った仲間を目視できるところまで来たティーダの悲痛な叫び声。
やや遅れて少女と男性が走ってくる。
少年はそのままラムザ達には目もくれずアーヴァインの元へ駆け寄って肩を揺らし始める。
「アーヴィン!何があったんスか!しっかりしろって!死ぬな!」
「待って!君!彼はかなり危険なんだ、揺らしちゃいけない!」
ラムザの一言にティーダが止まる。
「あ、あんたは…?」
「彼らを治療するのを手伝ってくれないか。僕とギードさんだけじゃ手が足りないんだ!」
「ティーダ!どうしたんだいった…ロッ…ク…?」
続いてきたエドガーがその動きを止める。目の前にいるのは意識を失った仲間の姿。
今までの軟派な態度が嘘のようにラムザを押しのけ、自らケアルを唱えるエドガー。
ティーダは唖然としてその様を見つめていたが、ユウナが傍にきたことで我に返る。
「これは…どうして、ひどい…」
「ゆ、ユウナ!そうだ、アーヴィンがヤバいんだ!手当てしなきゃ!」
「君たち、白魔法は!?」
「俺はムリっす…!」
ラムザはティーダの反応を見るとすぐアーヴァインの治療に入った。
ユウナにも目をやったが、ショックのほうが大きいのか動きが緩慢で、治療を任せられる状態ではない。
「ロック、しっかりしろ!」

三人が加わってもいまだ変わらぬ死と隣り合わせの修羅場。
そこに聞こえたのはさらなる合流者の声。ここに三者は集った。
399三者の集う場所で/15:2006/06/14(水) 15:12:46 ID:Y2xSj3TQ0
「ロック…!?」
マティウスに続きその場所に現れた三人。一番最初に口を開いたのは、ピサロだった。
さらにロックとエドガーの姿にケフカが声を上げる。
「ヌッ!誰かと思えばフィガロのお坊ちゃんじゃないですか!?まぁだ生きてたのね〜!」
「ケフカ!?」
「おやおや?一人で走って行ったと思えば随分息があがってるようで!?いっそ死んじゃえばいいのに!」
ピサロの刺すような視線がケフカをとらえたせいか、ケフカはそっぽを向き、それ以上何も言わなかった。
同時に傍にいるマティウスがエドガーの視界に入る。
「マティウスか…?」
「エドガーと言ったか、また会ったな」
「すまぬ、お主ら!我らだけでは手が足りぬ!手伝ってもらえぬか!」
ギードの声に呼応してなのか、薄々感づいていたのか、ピサロはケガ人の一人一人に目をやった。
その途中、こちらを見ていたラムザと目が合う。
「あなたは以前に…ピサロさんですか!」
「む…ラムザ、か。ファリスとテリーはどうした?」
「それは…今はとにかくこの人たちを!」
まあ、それが先決だろう。そう思いうなずいてロックに歩み寄ろうとしたピサロは、何を思い出したかもう一度ケガ人を見回す。
(ふむ、やはりか)
目に映った一人の男を見て自分の予感が確信へと変わる。それは、ソロと共にいた時に裏切りを起こし、周囲の命を脅かした男、アーヴァイン。
それを傍にいる金髪の男は助けようとしている。
「おい、そこの金髪、待て」
400三者の集う場所で6/15:2006/06/14(水) 15:18:00 ID:Y2xSj3TQ0
見逃すわけにはいかない。後の危険因子になるのならばここで始末したほうがいいのかもしれない。
「この男を生かしておけば後々面倒になる。治したところで裏切られるのがオチだ」
動かないアーヴァインに詰め寄ろうとするピサロに、思わずティーダが立ちふさがる。
正直なところ、この目の前にいる相手の威圧感に気付いていないわけではない。
というか怖い。ぶっちゃけ逃げたい。だけど―――
「ま、待てって!裏切るってなんだよ!」
「この男のことを知らないのか?ゲームに乗って散々殺しまわった上介抱した相手にすら牙を剥く男だぞ」
確かにアーヴァインはそう話していた。頭の中にあるアーヴァインの記憶を出せるだけ引っ張り出してみる。
ティーダが会ったアーヴァインは、すでに記憶を失い殺人者ではなくなったアーヴァインである。
記憶が戻れば彼はまた人を殺すのだろうか。そんな疑問が頭をよぎるが、それを意地で跳ね除ける。
401三者の集う場所で7/15:2006/06/14(水) 15:18:55 ID:Y2xSj3TQ0

だって、あんなに笑いあったじゃないッスか。

その一言だけで十分だった。少なくとも、ティーダの感情が爆発するには。
「ふざけんなよ!アーヴィンのこと知らないのはアンタの方だっつの!」
怒声がその場一体に響き渡り、傍にいたユウナはもちろん、治療に当たっていたラムザやエドガー、ギードもまた驚きのあまり手を止める。
「あーそうさ!あいつは人殺した!それは事実だけど、だけど!あいつは記憶をなくしてからすっげえ思いつめてた!
 俺が狙われる心配がないようにって嘘までついて俺のこと突き放したくらい、いっぱい思いつめてたんだ!俺はアーヴィンを信じるッス!」
ピサロはその激昂した目の前の少年にソロの面影を見ていた。甘い。何と甘い男だろうか。
おまけにこの男、まかり間違ってもソロのように甘さゆえの障壁を跳ね除けられるだけの力はないと見た。
それでもこんな風に自分に立ち向かって、それはまるでソロやその仲間達を相手に言い合っているようで。
どこか懐かしい気持ちにとらわれたピサロは、心の中で自分を嘲笑した。
(フッ、ソロだけじゃない。私も十分甘いな。)
一方何も言わないピサロにハっとしたティーダ。自分でもわかるくらい冷や汗が垂れまくっている。
(やっべえ、調子乗りすぎた…殺される!?)
「…好きにしろ」
「え?」
殺されなかった。というか許容されてしまった。目が点になるティーダをラムザとユウナが引っ張る。
「ほら、治療していいんですよ!手伝ってください!」
「君の気持ちが伝わったの!だからホラ!一生懸命手当てするッス!ね!」
「え?…あ、そうか、うん」
さっきまでの勢いはどこへやら。自分の背でそのやりとりを聞きながらピサロは額に手を当ててため息をついた。
だが、それはすぐに真剣な顔つきに戻る。ロックの姿を見て駆け寄ると、エドガーの手伝いをはじめた。
ロックの持ち物から魔石を探り出し、それを媒体にしてホイミをかける。片腕のエドガーよりもずっと効率のよい治療方法だった。
「それは…魔石」
「これを媒体にすることで魔法の効果を上げることができる。私にとってもロックは味方だ」
「そうか…頼む!」
402三者の集う場所で8/15:2006/06/14(水) 15:20:22 ID:Y2xSj3TQ0
そんなやりとりの傍ら。
「仇討ちはいいのか?それが交渉の条件だったはずだが?」
ザンデは何もせず立ったままのマティウスを一瞥して問う。
元々ザンデの現在の目的は仲間を集めることだが、この者たちを助けることで利があるかどうか。
これだけの手負いだ、仮に助けたとてすぐにまともな戦力にはならないだろう。だとすればここで時間を費やすメリットは少ない。
だが、マティウスやピサロの力はほしい。この場をあしらえば恐らく今治療に専念しているピサロとは袂を分かつことになろう。それは避けたい。
ここはナンセンスではあるが、多数決を自分の行動方針としよう。目の前の男がどういう行動を取るか、今しばらく見届けさせてもらおう。
だが、次のザンデの問いは、すぐに口から発せられた。
意識のないロック達に駆け寄ったマティウスを見て。
「さっき森で見た男の仇を討つのではないのか?こちらとしても時間を無駄にすることは避けたいのだがな」
「行きたいのなら勝手に行け。仇は私一人でも取る。ただ…」
「ただ?」
「…今はものまねがしてみたくなった。ただそれだけだ。」
403三者の集う場所で9/15:2006/06/14(水) 15:21:27 ID:Y2xSj3TQ0
全く下らないことだと自分でも思う。だがマティウスはゴゴやアグリアスと接するうちに仲間というものの大きさを無意識に感じ取っていた。
(ゴゴよ、お前がしていたこと、果たして私にもできるかな?)
仇を討つにしてもアリーナの情報に乏しい今ではそれも容易ではない。ならこの酔狂に一時身を委ね、この者達から情報を聞き出すのも悪くない。
何よりこの目の前にいるエドガーとロックは、かつての仲間だったそうだ。それならば私が助ける義理もある。
エドガーのケアルをじっと見つめる。
「ふむ、なるほど」
「マティウス、すまないが彼を助けるのを手伝ってほしい。」
「まあ、今しばらく待て」
「?」
手から発する光の質、エドガーの体から流れる魔力の動き。これならば十分にトレースできる。
エドガーとピサロを押しのけ、ロックの体に手をかざす。
「おい、何を…」
「単なるものまねだ」
返答が早いか、マティウスの掌からエドガーが放ったそれと同じものが患部に流れる。
「これは…ケアルラ!?」
ケアルを真似た者がケアルラを放つ。マティウスの魔力が常人のそれを逸しているからこそできる芸当だった。
だが、元々まともに使ったこともない魔法である。通常使っている魔法よりもずっと魔力を消耗していることが自分の体を通して感じ取ることができた。
だがエドガーやピサロの魔法がすでにかなり効いているため、それだけで十分なほどロックの失血状態は治癒されかけていた。
「マティウス、後は私に任せてくれ。」
「いいだろう、ものまねは思いのほか大変だな」
エドガーと交代し、自分の掌を見つめる。
(ものまね、か…ゴゴよ、お前の仲間を助けることで少しはお前への弔いになっただろうか)
その掌をグっと握り締め、改めて仇アリーナの打倒を決意するマティウスだった。
404三者の集う場所で10/15:2006/06/14(水) 15:22:39 ID:Y2xSj3TQ0
一方、テリーの治療に専念していたギード。小柄故にギードの消耗した状態でもその治癒は体中に行き渡り、何とか一命を取り留めることに成功した。
しかし、ラムザ達を追うまでにかなりの浪費を強いられたギードには、それが精一杯だったようで、テリーの無事を確認すると自分もその場にへたり込んでしまった。
「驚いた、魔物すらもこのゲームに参加させられていたとはな」
エドガーと交代したマティウスが話しかけてくる。
黒服に身を包んだ男。その話によればいつぞやのウィーグラフやピエールと共にいた少女を探しているのだという。
見たのはウィーグラフだけだということを伝えると、マティウスは残念そうに戻っていった。どうやらテリーの容態を見てアーヴァインの治療の方が先決と見たらしい。
となれば、ここまで治療が捗ればラムザには余裕ができるだろう。
先刻のやりとりを見る限り、ラムザにはウィーグラフからリルムを取り戻せるだけの余裕を持たせてやった方がいい。
「ラムザよ、ここにいる方々に任せ、お主はあの男のもとへ行け」
「は、はい!でも…」
「自分の心の内は決まっているのだろう?ならば行け、ただし生きて帰るのだ」
ラムザは深々と頭を下げ、駆けていった。
連れ去られた少女を取り戻すために、そしてウィーグラフと決着をつけるために。
405三者の集う場所で11/15:2006/06/14(水) 15:37:29 ID:Y2xSj3TQ0
「アーヴィン、しっかりするッス」
「大丈夫だよ、皆で手当てしてるんだし、きっと助かる!」
ティーダはさっきのゼルを見たときの落ち込みはどこへやらと言わんばかりに自分を励ますユウナを見た。
「…な、何?」
「強いッスね、ユウナは」
俺は弱い。剣を使ったってアーロンには勝てないし、ユウナやワッカの方がずっと精神的に強いと思う。
俺に存在価値なんてあるのかな。
そんな考えすら頭をよぎると、なんだか嫌な気分になって。
本当はもっとすがっていたいのに、傍にいたいのに心にもない行動を取りたくなる。
「なんでもないッス」
ふいっとそっぽを向いてみる。やっぱりユウナは心配してくれるけど、彼女じゃどうしようもないことを俺は知っている。
俺自身が強くならなきゃいけないっていうのを俺は知っている。

「…っだー!もー!何考えてんだ俺!」
「うるさい、こっちはただでさえ慣れぬ回復魔法を使うんだ、静かにしろ」
「あ、すんません」
406三者の集う場所で12/15:2006/06/14(水) 15:38:40 ID:Y2xSj3TQ0
そっとマティウスの奥にいるアーヴァインを見る。
アーヴィン、俺のこと仲間だと思ってくれてるよな。だからこそあんな嘘ついてまでさ…
わけもわからず襲われたときも、俺のこと助けてくれたし…
そうだよ。ユウナだってアーヴィンだって、俺が助けてやるんだ!
俺だってガードだから!
今度は元気いっぱい、息を吸い込んでマティウスの傍へと駆け寄るティーダ。
「よーし!手伝うッス!アンタ、俺は何すればいいッスか!?名前呼ぶ!?添え木する!?」
「だ ま っ て て く れ」
「ハイ…」
407三者の集う場所で13/15:2006/06/14(水) 15:40:05 ID:Y2xSj3TQ0
そんなやりとりを見ながらユウナがつぶやいた言葉。それは彼に聞こえることはなかった。
「君の方が、ずっと強いんだよ。」
きっとティーダは自分ではわかってないんだろうな。ゼルを見たときの自分に比べてずっと気持ちの切り替えも早い。
今だって一転してやる気満々。その前向きな気持ちこそ、彼の強さだとユウナは思った。
「よし、私も手伝います!魔法ですか!?それとも励ませばいいですか!?」
「だ ま れ」
「はい、黙ってます…」
どことなく似た二人の姿を見比べて、傍にいたマティウスは手をアーヴァインに当てたまま、奥で見ていたピサロは再び額に手を当てて呆れたようにため息をついた。



交錯する想いはその形を留めぬまま、更けてゆく夜を彩りながら。
地図に記された場所は、誰の墓場となるのか。それを知る者は、いない。
408三者の集う場所で14/15:2006/06/14(水) 15:41:56 ID:Y2xSj3TQ0
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失)
 (昏睡+軽傷、右腕骨折、右耳失聴)
 所持品:竜騎士の靴、ふきとばしの杖[0]、手帳、首輪
 第一行動方針:?】
【テリー(DQM)(気絶+軽傷、ショック、右肩負傷(7割回復))
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3
 鋼鉄の剣、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
 第一行動方針:?
 第二行動方針:ギードを待つ/ルカ、わたぼうを探す】
【ロック (気絶+軽傷、左足負傷)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート(ピサロが一時的に所持中) 皆伝の証
 第一行動方針:?
 第二行動方針:事態の処理後、ピサロ達と合流する
 第三行動方針:ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ギード(重傷、残MP微量、疲労) 所持品:首輪
 第一行動方針:負傷者の回復
 第二行動方針:ルカとの合流
 第三行動方針:首輪の研究】
【ラムザ(話術士 アビリティ:白魔法)(HP4/5、MP3/5)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:ウィーグラフからリルムを取り戻し、決着をつける
 第二行動方針:ギードに随行し、彼の仲間たちにテリーを託してからユフィを探す  
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【マティウス(MP 1/3程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)ソードブレイカー フラタニティ ビームウィップ
 第一行動方針:ゴゴの仲間を助ける
 第二行動方針:ゴゴの仇を(アリーナ2)討つ
 第三行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
409三者の集う場所で14/15:2006/06/14(水) 15:43:29 ID:Y2xSj3TQ0
【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード ウィークメーカー
 第一行動方針:マティウスの協力を取り付ける
 第二行動方針:サスーンへ向かう
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/3程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 黒のローブ
 第一行動方針:ロックの治療
 第二行動方針:ザンデ・ケフカを監視しつつ同行 
 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ケフカ(MP2/5程度)
 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール 裁きの杖 魔法の法衣
 第一行動方針:同上
 第二行動方針:観察を続けながらザンデに取引を持ちかけるタイミングを待つ
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服、リノアのネックレス
 第一行動方針:アーヴァインの治療
 第二行動方針:サスーンに戻り、プサンと合流
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【エドガー(右手喪失 MP1/3)
 所持品:天空の鎧、ラミアの竪琴、血のついたお鍋、再研究メモ、ライトブリンガー、盗聴注意メモ(書きかけ)、対人レーダー
 第一行動方針:ロックの治療
 第二行動方針:リルムの無事を確認する
 第三行動方針:首輪の研究/アリーナ2を殺し首輪を入手/仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【ユウナ(魔銃士、MP1/2、落ち込み気味)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子、官能小説2冊
 第一行動方針:ティーダについていく
 第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】
410名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/14(水) 15:44:33 ID:Y2xSj3TQ0
あ、14/15のままだった…

訂正、今の現在位置表示で15/15です。
411名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/14(水) 22:11:27 ID:Y2xSj3TQ0
訂正です。全員分の表記順を変えるので少々長くなります。

14/15から。

【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失)
 (昏睡+軽傷、右腕骨折、右耳失聴)
 所持品:竜騎士の靴、ふきとばしの杖[0]、手帳、首輪
 第一行動方針:?】
【テリー(DQM)(気絶+軽傷、ショック、右肩負傷(7割回復))
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3
 鋼鉄の剣、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
 第一行動方針:?
 第二行動方針:ギードを待つ/ルカ、わたぼうを探す】
【ロック (気絶+軽傷、左足負傷)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート(ピサロが一時的に所持中) 皆伝の証
 第一行動方針:?
 第二行動方針:事態の処理後、ピサロ達と合流する
 第三行動方針:ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ギード(重傷、残MP微量、疲労) 所持品:首輪
 第一行動方針:負傷者の回復
 第二行動方針:ルカとの合流
 第三行動方針:首輪の研究】
【マティウス(MP 1/3程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)ソードブレイカー フラタニティ ビームウィップ
 第一行動方針:ゴゴの仲間を助ける
 第二行動方針:ゴゴの仇を(アリーナ2)討つ
 第三行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
412訂正続き:2006/06/14(水) 22:13:23 ID:Y2xSj3TQ0
【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード ウィークメーカー
 第一行動方針:マティウスの協力を取り付ける
 第二行動方針:サスーンへ向かう
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/3程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 黒のローブ
 第一行動方針:ロックの治療
 第二行動方針:ザンデ・ケフカを監視しつつ同行 
 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ケフカ(MP2/5程度)
 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール 裁きの杖 魔法の法衣
 第一行動方針:現状の静観(やむを得ない場合のみ治療に参加)
 第二行動方針:観察を続けながらザンデに取引を持ちかけるタイミングを待つ
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服、リノアのネックレス
 第一行動方針:アーヴァインの治療
 第二行動方針:サスーンに戻り、プサンと合流
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【エドガー(右手喪失 MP1/3)
 所持品:天空の鎧、ラミアの竪琴、血のついたお鍋、再研究メモ、ライトブリンガー、盗聴注意メモ(書きかけ)、対人レーダー
 第一行動方針:ロックの治療
 第二行動方針:リルムの無事を確認する
 第三行動方針:首輪の研究/アリーナ2を殺し首輪を入手/仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【ユウナ(魔銃士、MP1/2、落ち込み気味)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子、官能小説2冊
 第一行動方針:ティーダについていく
 第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】

ケフカのみ微訂正してあります。
413訂正続き2:2006/06/14(水) 22:15:07 ID:Y2xSj3TQ0
一行あけてラムザを表記。

【ラムザ(話術士 アビリティ:白魔法)(HP4/5、MP3/5)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:ウィーグラフからリルムを取り戻し、決着をつける
 第二行動方針:ギードに随行し、彼の仲間たちにテリーを託してからユフィを探す  
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】

【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】

※場所そのものはラムザも移動し始めたばかりなので一緒にしてあります。
414名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/14(水) 22:36:13 ID:Y2xSj3TQ0
本文訂正。ユウナのジョブチェンジの表現を追加しました。

7/15のピサロに「好きにしろ」と言われた後
殺されなかった。というか許容されてしまった。目が点になるティーダをラムザとユウナが引っ張る。

殺されなかった。というか許容されてしまった。
ロックの治療をエドガーたちに任せ、アーヴァインの治療をしていたラムザと何時の間にか白魔導師へとジョブをチェンジして治療に当たっていたユウナが目が点になって立ち尽くしたティーダを引っ張る。


ちょっとくどい感じもしますが、裏方スレでの指摘にあわせました。
またそれに付随してユウナのステータスを変更。

【ユウナ(白魔導師、MP1/3、落ち込み気味)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子、官能小説2冊
 第一行動方針:ティーダと共に行動する
 第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】

ややこしくなってしまいましたがよろしくお願いします。
415三者の集う場所で9/10訂正:2006/06/14(水) 23:04:49 ID:Y2xSj3TQ0
全く下らないことだと自分でも思う。だがマティウスはゴゴやアグリアスと接するうちに仲間というものの大きさを無意識に感じ取っていた。
(ゴゴよ、お前がしていたこと、果たして私にもできるかな?)
仇を討つにしてもアリーナの情報に乏しい今ではそれも容易ではない。ならこの酔狂に一時身を委ね、この者達から情報を聞き出すのも悪くない。
何よりこの目の前にいるエドガーとロックは、かつての仲間だったそうだ。それならば私が助ける義理もある。
エドガーのケアルラをじっと見つめる。
「ふむ、なるほど、ケアルラか」
「マティウス、すまないが彼を助けるのを手伝ってほしい。」
「まあ、今しばらく待て」
「?」
手から発する光の質、エドガーの体から流れる魔力の動き。
自分も一度ケアルを使った身、これならば十分にトレースできる。
エドガーとピサロを押しのけ、ロックの体に手をかざす。
「おい、何を…」
「単なるものまねだ」
返答が早いか、マティウスの掌からエドガーが放ったそれと同じものが患部に流れる。
「これは…ケアルラ!?」
驚くエドガーを尻目にケアルラを放つ。マティウスの魔力が常人のそれを逸しているからこそできる芸当だった。
だが、元々まともに使ったこともない魔法である。
たとえ自分の習得している魔法の上位のものであっても、通常使っている魔法よりもずっと魔力を消耗していることが自分の体を通して感じ取ることができた。
だがエドガーやピサロの魔法がすでにかなり効いているため、それだけで十分なほどロックの失血状態は治癒されかけていた。
「マティウス、後は私に任せてくれ。」
「いいだろう、ものまねは思いのほか大変だな」
エドガーと交代し、自分の掌を見つめる。
(ものまね、か…ゴゴよ、お前の仲間を助けることで少しはお前への弔いになっただろうか)
その掌をグっと握り締め、改めて仇アリーナの打倒を決意するマティウスだった。
416名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/14(水) 23:09:18 ID:Y2xSj3TQ0
コメント忘れてた…しつこく再訂正すみません。

これは最初に上げた「三者の集う場所で9/15」を書き換えたものです。
実際にうpするときはこの訂正版を訂正前に差し替えてあげていただけると幸いです。

お手数をおかけしますがよろしくお願いします。
417名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/15(木) 21:35:52 ID:K35z8Yvc0
補習
418三者の集う場所で13/15訂正:2006/06/15(木) 23:13:01 ID:pIIgGS+X0
そんなやりとりを見ながらユウナがつぶやいた言葉。それは彼に聞こえることはなかった。
「君の方が、ずっと強いんだよ。」
きっとティーダは自分ではわかってないんだろうな。ゼルを見たときの自分に比べてずっと気持ちの切り替えも早い。
今だって一転してやる気満々。その前向きな気持ちこそ、彼の強さだとユウナは思った。
「よし、頑張るッス!ケガはどうですか!?私も魔法で精一ぱ…」
「だ ま っ て 手 伝 え」
「はい…」
どことなく似た二人の姿を見比べて、傍にいたマティウスは手をアーヴァインに当てたまま、奥で見ていたピサロは再び額に手を当てて呆れたようにため息をついた。


交錯する想いはその形を留めぬまま、更けてゆく夜を彩りながら。
地図に記された場所は、誰の墓場となるのか。それを知る者は、いない。

※※訂正が多いですが雑談スレでの熱い議論のたまものということでどうかご容赦ください…
  ユウナとマティウスの最後のセリフのみ改変。同じようにこちらも訂正前のものと差し替えてうpお願いします。
419Dual Moon 1/13:2006/06/16(金) 07:21:14 ID:elVCY6Yh0
天に輝くは紅玉のような月。投げかけられるは血の色彩。時はただ尽きるのみ。


ウルの村、その北に外れた場所に位置する建物の前。
木々の向こう、およそ不釣合いに煌々と輝く灯を遠目にサイファーは不釣合いに考え込んでいた。

ヒーローの定義。
弱きを助け、巨悪を挫く。シンプルかつロマンティック、皆に頼られ称えられる存在。
なのに、自分はどうだ。
目前にした殺人も止められず、守るべき存在とも切り離され。
なお自分が選んできた側が正しいのだという絶対の自信はあるがあげられた成果を考えるだけ悔しさと苛立たしさがこみ上げる。
これでヒーローと言えるのか、いやとても。

遠い光を背景にした闇から紅が浮かび上がったのはそんな中であった。
無言で現れた上背ある影は表情の見えない距離をおいて立ち止まる。
武器の類は不所持のようではあるが明らかな警戒距離は何を意味するか。
疑わしい、とても疑わしい。けれどいきなり切りかかるのはスマートじゃない。
手にした剣の握りをさり気無く確かめながらとりあえず呼びかけてみる。

「俺はサイファー、あんたは誰だ?」

サラマンダーと呼べ、とだけ答えさらに沈黙を通す不審な男。
話すでもなく、交渉するでもなく、といって襲ってくる様子でもない。
読めない相手の思考に苛立ち勢い声が荒げられる。

「おいサラマンダー、黙ってんじゃねえ、なんか言えよ!
 村の方から来たのか? 今どうなってる? …いや……
 あんたは1人で何をやっているんだ?」
420Dual Moon 2/13:2006/06/16(金) 07:23:03 ID:elVCY6Yh0
武器より遠い間合いはその小さな挙動をわずかな違和感としてしか認識させえない。
だから、肌で感じる一変した雰囲気と反射神経がサイファーを反応させた事になる。
弾けるように撥ねあげた剣身がカチンッと軽い音で空間をはじく。
放たれたのは小さな小石と小さな敵意。

「ッの野郎! やっぱり…そういうことかよッ!?」

圧縮集中した時間と感覚を剣から男へと戻せば影はもうそこには存在しなかった。
当然に続いての攻撃予想を外し感情をぶつける相手を喪失したサイファーは十秒弱の空転を経てようやく影の行方に思考をめぐらせる事ができた。
一体どこへ消えたのか?
建物を背にした自分の前には奥の光に比して暗い森が135度。残り一方には道であろう間隙が。
男がやってきたのは暗い森の一方だが、奴の次の目的、悪人の考えなど分かるはずも無い
舌打ちの後、苦虫を噛み潰した顔は無数の灯りへ、その間に横たわる暗い森へ向けて真っ直ぐ走り出した。


ウルの村、その北に外れた場所に位置する建物の上。
遭遇した男との戦闘を避けたサラマンダーは屋根の上、独り座していた。
二次元で無く三次元、彼が逃れた道は上方の領域。
数メートル下から聞こえる足音が遠ざかっていく。

二日前には純白だったろうコートを着た男、サイファー。
暗闇の中、目くらましと腕試しを兼ねた指弾を弾いて見せたその腕も確か。
現れた更なる強敵。
ソロ、駆けつけたその仲間達、…ビビ、そしてサイファー。
己の選んだ道に立ちはだかる壁は高く、険しい。
ともかく今は態勢の建て直しを最優先すべしとサラマンダーは精神を一段集中させていく。

西の稜線を見据えたサラマンダーの瞳の中で、赤い半月が鈍く煌いて消えた。

421Dual Moon 3/13:2006/06/16(金) 07:24:55 ID:elVCY6Yh0

「それが天空の剣か?」
「いえ……」

表情を変えずしかし歯切れの悪い否定一つ。
盾と剣を揃えた勇者の姿は一段と整って見えているからバッツにはそれが意外だった。

「いや、どう見てもそれは一揃いの武具だろ?
 特別な血筋にしか扱えない盾、それと調和する剣。なのに、違うのか?」
「いや、どう言えば……僕が使っていたものとは細部形状が異なるんです。
 異なるんですが…感覚、雰囲気…どういえばいいのか。ともかくそういう部分が『これも』天空の剣だと感じさせてはくれますが」
「似ているけど違う?」
「自分ひとりの感覚で言い切るのは抵抗がありますが、本質は同じものでしょうね。
 しかし、この剣について考えるのはあとにしましょう。今はヘンリーさんです」
「ああ、けど……いや、ゴメン」

語らずとも思考が伝染したのだろう、会話が途切れる。
サラマンダー、とビビが呼んでいた男が逃げ去った方向を二人は担っていた。進む間に光の領域は背後へと流れていく。
灯る光は近くわずかな距離しか離れていないのに夜の世界は深くあたりを覆い隠し、見るものすべてに不安、いや絶望さえ投げかけて。

「ヘンリーさん!」
「ヘンリー!」

返事なし。しじまは細波すら返さない。
最悪を想定せねばならない覚悟はできているにしろ自ら希望を捨て去る断定はできるはずもない。
せめて気絶、あるいは重傷で生きてくれている事を願うのみ。
屈みこんだソロが茂みの下、さらに低く這い広がる闇に捜索の視線を投げる。バッツもまた別の植物の盛り上がりを探る。

地を這う二人を天空より紅玉の半月が見下ろしていた。
422Dual Moon 4/13:2006/06/16(金) 07:26:54 ID:elVCY6Yh0


宿屋より西南方向。村の南側の入り口近辺を担当した一人と一匹は中央広場を行く。
けれど不意に立ち止まったレナは四方より照らされた広場の一隅へとその視線を向けた。

「? どうしたの?」
「ごめんなさい! でも、そう…」

その急停止に不思議そうに小首を傾げるわたぼうを差し置いて駆け出す。
記憶をつなぎながら広がりを縦断してたどり着いた先、路傍の草にわずかに隠れて鈍く照り返す金属の刃。

「あった、エクスカリバー……」

金属の冷たさを帯びたそれに静かに手をのばしてそっと掴む。
わずか一日ほどとはいえ慣れ親しんだ手のひらでの感触、重さ。
温かい光が夜闇をなんとか押しのけている高さまで持ち上げてその刀身に付着した汚れに気がついた。
エリアを守ると誓った剣、それは過ちの証人でもある。
今日一日の傷跡にそっと手を当てておぼろげな記憶の中から傷つけた相手の姿を掬い上げようとする。
それから真後ろに近づいた軽い足音へ向けて、いや本当は聞き手がいなくても構わなかったのかもしれないが呟く。

「わたぼう、どうしてさ、リュックじゃなくて私についてきたの?」
「………?」
「やっぱりまだ疑ってるところがある? それとも一人じゃ危なっかしく思われてるのかな?
 …ごめんね。みんな優しいから……何も言わないしむしろ気を遣ってさえくれてるけど。
 蟠る部分がきっとあって、ううん、誰よりも私がそう思ってほしいのかな。
 なんにもまだ償ってないのに優しくされるのにちょっとだけ気後れしているのね。
 だから!」
423Dual Moon 5/13:2006/06/16(金) 07:28:56 ID:elVCY6Yh0
すくっと立ち上がって背筋を伸ばし、精一杯天を衝いて騎士剣を掲げ挙げる。

「我が姉の名に、友の名に、失われたすべての魂に誓って!
 この刃に誓って、正しきものたちを遍く悪意より守ると誓います!」

背後へと視線を落とすとまんまるの両眼がじいっと私を見ていた。
ちょっと格好つけすぎたかなって、恥ずかしくなるくらい好奇と興味の目で。
何かを閃いたいたずらっ子のような笑いを浮かべて自分の荷物をごそごそ漁った彼の手が持ち出したのはなんと傘。
それをふわふわした身体の上に垂直に持ち上げる。

「あ…ヘンリーさんを探さないとね。行きましょ、わたぼう」
「えへへー。
 このヤイバに誓って! ねえねえ、ボクもカッコいい戦士になれるかな?」

も一度いたずらっぽく笑ってくれた。
改めて、自分に恵まれているもの。支えてくれるもので守るべき目的。仲間達の存在に感謝して。
感謝して、レナはエクスカリバーとアンブレラを軽く打ち合わせ、わたぼうと笑みを交し合った。
それぞれの誓いの剣を手にした一人と一匹はそれから決意も新たに担当すべき領域の捜索へ向かう。
村の南方入り口付近、高揚した気持ちは不安にめげず希望を追う。

だが何気なく見た西の空、不思議な赤い半月が鈍く煌いて消えた。
それはどこか寒気と怖気を呼び起こし、不安を掻き立てる凶兆の光。


424Dual Moon 6/13:2006/06/16(金) 07:37:07 ID:elVCY6Yh0
不運であったというなら、あまりにバタバタとした為に情報分析の時間が与えられなかったことだ。
不運であったというなら、ソロとサラマンダーが激突したのが宿屋の裏側、ちょうど北の倉庫への道に続いていく辺りであったことだ。
不運であったというなら、最初に反応した音と二人の戦闘の音。時間差はあったはずだが混同してとらえたことだ。
不運であったというなら、サラマンダーが敵を警戒して回り込んだ結果二つの音源が大きくずれたということだ。
不運であったというなら………

つまりは、大声を張り上げながらヘンリーを捜し求めるリュックは道なりに北の倉庫へ続くエリアにいた。
倉庫へ向かう道はちゃんとはっきり道があるのに井戸の方にはちゃんと分かる道がないってのも不運の一つで、
要するに見当違いのところを彼女は必死に捜索しているのだった。
だから、不運にも時だけが費やされていく。

その必死さを嘲るように頭上では紅を引いた半月がにやついていた。



断片的な情報。一気に押し寄せた慌しく異様な雰囲気。
意識不明のビビ、行方不明のヘンリー。
ベッドの傍ら、ターニアは小さな黒魔道士にじっと視線を落としていた。

「大丈夫、呼吸は安定してるから。ビビちゃん、きっとそのうち目を覚ましますよ」

エリアが双方を気遣ってかけた言葉にも振り向かず、そっと手をかざしてみる少女。
癒しの魔力を行使する姿を真似た手から、しかし当然回復の光が生ずることなどない。
ゆっくりと手を引っ込めてこちらを向いた表情は無力への戸惑いを語っている。

「エリアさん。わたしにできることって…祈るくらい、なんですよね」

ベッドに腰をかけ、自身のザックを引き寄せる。
数度かき混ぜるように探った手で不似合いな黒い鋼鉄の塊を掴み出した少女の心のうちを推し量って、
エリアは胸が締め付けられるようだった。
425Dual Moon 7/13:2006/06/16(金) 07:40:57 ID:elVCY6Yh0
「ヘンリーさんは…逃げるなって。わたしも頑張ろうって思いました……だけど。
 みんなわたしを安全なところに置いて…自分たちを危険に晒して。
 こんなこと、こんなに真剣に考えた事ありませんでしたけど、
 自分がどれだけ守られる側に居るのか……どれだけ守られてきたのか。
 今だってヘンリーさんを助けにもいけないし、ビビ君だって見守るしかなくて……
 エリアさん、わたしは…何ができるんでしょう」

否応無く生存という問いに向かい合わされる死と暴力のゲーム。
その中で何の力も持たない少女はどういう思いを抱いて時を過ごしていたのか。
血に怯え、悲惨な事実に苛まれ、どれ程の無力感を味わってきたのか。

「ターニアちゃん、お兄さんがいるんでしたっけね?
 お兄さんに心配かけないように。…悲しませないように、
 早く笑顔を見せてあげられるように元気でいる、ってだけじゃダメかしら?」
「でもっ…!
 ヘンリーさんだって、ソロさんだって、リュックさんや…バッツさんも……
 みんな会いたい人がいて、待っててくれてる人がいるんです!
 そんな人達が危険に立ち向かってるのにわたしはまだ何も…動けなくてっ……」

生命は平等でも力は不平等、この子はわかっているから自分の価値を必要以上に貶めて考えてしまう。
究極的には自己犠牲に至る博愛思考の持ち主。
だからこそ無力な自分が安全なところにいて、一方で傷つき失われる人が出ることに苦しんでしまう。
博愛思考、どうにもシンパシーを感じてならない。
426Dual Moon 8/13:2006/06/16(金) 07:42:54 ID:elVCY6Yh0
「…無理しなくていいの。
 気持ちはわかるわ。やっぱり、自分がみんなのためにしてあげられること、自分の役割。
 何もしてないと自分の居場所って実感しにくくなっちゃいますものね。
 でもね、ヘンリーさんも言ってました、
 『危険から身を護ること。傷ついた人を救うこと。それだって立派な戦い』です、ってね。
 私達は確かに守られる側だけど、今だってビビちゃんを守っています。
 夕方には私やバッツさんだって守ってもらいました。そうよね、ターニアちゃん」
「そう…かもしれないです」
「うふふ、まだ自信ないですか? お夕飯だって作ってくれました。
 ね、あなただってみんなと一緒、ちゃんと役割を担ったみんなの仲間ですよ。
 苦手なことは補い合って、苦しいときは手を差し伸べあって。
 だからソロさん、バッツさん、レナさん、リュックさん、わたぼうちゃん。
 みんなを信じましょ?」
「………」
「ね?」

こくりと頷いてみせる姿に、きっとまだ納得できてないんだろうなあ、とその心中を読む。
そう思えるのはこの子はきっと私と同じだから。
だから、心中にずっと秘めているある決心が彼女を悲しませちゃうだろうこともわかる。
いざとなったら、私が盾になってもこの子達を守ろうっていう決心。
それが自分にできる数少ないことととわかってはいてもそんなアイデンティティ、やっぱり悪いなあと心のうちに思う。
全てを覆い隠すように、抱き包むように、エリアは優しく微笑んでいた。

想いは尽きず、しかし紅い月の下に時は尽きる。待ち人たちの空間にも時間は過ぎていく。


427Dual Moon 9/13:2006/06/16(金) 07:46:09 ID:elVCY6Yh0
複雑に生い茂った樹木の海をようやくの事で抜け、二人は狭隘な谷の向こうに光を見る。
街の灯、それはこの死の臭いに満ちた世界に場違いとしか言い様がない。

「随分とまた派手な出迎えだなー」
「待て、マッシュ。時間が惜しいのは確かだ、しかし少しだけ考える時間をくれ」
「オーケー1、2分ならな。それだけ待ったら置いてでもオレは先行くぞ」
「……それでいい」

スコールの足を止めた要因は当然眼前に届くウルの村の灯だ。
一日半の殺人ゲームを経験してこの妙な光景に何の疑問も違和感も抱かないのは鈍感と言うほかないだろう。
わざわざ村全体を燭台にしたのは参加者にほかならず、当たり前だがそこにはなんらかの意図が込められている。
ましてやウルにいるはずなのは危険な金髪、緑髪、そしてアーヴァイン。
これは思考を強いるクエスチョン。
何らかの罠か、罠としたらどういう類が想定される?
罠でないならどういう意図があって来訪者にアピールしている?
あいつだって素人じゃない。策略、トラップ、一通りの知恵と技術は身についているはずだ。
安全に行くには一体どうすればいい。
一秒、十秒、時は身を刻み思考は走る。

「スコール、そろそろだ」
「時間をとって済まなかった。行こう」
「よしっ、じゃこの2分ロスの分急ぐぜ! ダッシュだ!」

時間もなしの正面突撃、行けば分かるの大無謀。らしくない……か?
だが安全策だけで何とかなる、そんな正答なんてこの世界のどこにもない。
それにどうせどれだけ考えたところでマッシュを留まらせるなどできるはずもないし、
自分にとっても引き返す、時を費やすなんて選択肢を取るつもりなどありはしないのだ。
リスクを冒さないと得ることはかなわない。失いたくなければ、その前に自分の手で救うしかない。

空高く、相変わらず紅玉のような月が血の彩りを夜空に添えていた。
428Dual Moon 10/13:2006/06/16(金) 07:49:14 ID:elVCY6Yh0



岩肌の凹凸にも、はだかる絶壁にも、全身でそぞろ鳴く痛覚にも挫けることなく。
流れ落ちた星を追った巨獣は折れず挫けない強くそして狂おしい心を支えに稜線へとたどり着いていた。
岩石のくすんだ黒の壁が途切れて一気に視界が開ける。
眼下には南北に長くウルの峡谷が横たわり、そのはらわたに星雲の如き輝きを呑みこんでいる。

落ちた星が砕けた光か、燃え上がる火か。獲物だ。

サラマンダーが、レナが、わたぼうが見た月。
睥睨する残された眼がより怪しい光を持って輝きを増し凝視する。
それは歓喜か、狂気か、憤怒か。
挫けず折れぬ心はひときわその温度を上げ、巨体は興奮を高める。
続くは目を閉じて、ひとしきりの静止。全身が打ち震え、わななく。
弓を引き絞るように、感情を力を心を練り上げ凝り固めていく。


その身が次に動くとき、彼は彼方の赤き月へ、漆黒の天へ咆哮するのだろう。
それから峰を蹴り、宙を滑り、巨岩が転がり落ちるように、野分が荒ぶるように、光の中へ降り立つのだろう。
災厄は、今まさに来たらんとしていた。


【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:サラマンダーを追う
 第二行動方針:協力者を探す/ロザリー・イザと合流
 基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス、アリーナ優先) 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:ウルの村北郊外の森】
429Dual Moon 11/13:2006/06/16(金) 07:50:04 ID:elVCY6Yh0
【サラマンダー(右肩・左大腿負傷、右上半身火傷、MP1/5) 
 所持品:紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、各種解毒剤
 第一行動方針:怪我を癒す
 第二行動方針:態勢を立て直して再戦を挑む
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【現在地:ウルの村北の倉庫上】

【ソロ(魔力少量 体力消耗)
 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング  ラミアスの剣(天空の剣)  ジ・アベンジャー(爪) 
 第一行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す】※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり。
【バッツ(左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ
 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【現在地:ウルの村北郊外の森】

【レナ(体力消耗 怪我回復) 所持品:エクスカリバー
 第一行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:みんなを守る】
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在地:ウルの村南入り口付近】
430Dual Moon 12/13:2006/06/16(金) 07:51:10 ID:elVCY6Yh0
【リュック(パラディン)
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣
 ドレスフィア(パラディン) チキンナイフ 薬草や毒消し草一式 ロトの盾
 第一行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在地:ウルの村東の外れ】

【エリア(体力消耗 怪我回復)
 所持品:妖精の笛 占い後の花
 第一行動方針:ビビの看病
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【ビビ 所持品:毒蛾のナイフ 賢者の杖
 第一行動方針:休息 (気絶中)
 基本行動方針:仲間を探す】
【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草
 第一行動方針:ビビの看病
 基本行動方針:イザを探す】
【現在地:ウル宿屋】

【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石、神羅甲型防具改、バーバラの首輪、
 レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
 吹雪の剣、ビームライフル、エアナイフ、ガイアの剣、アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
【第一行動方針:急いでウルに向かう
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 第三行動方針:ゲームを止める】
【現在地:ウル南の森を脱出→ウルへ】
431Dual Moon 13/13:2006/06/16(金) 07:52:38 ID:elVCY6Yh0
【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:力をためて……
 基本行動方針:頑張って生き延びる/生き延びるために全参加者の皆殺し】
【現在位置:ウル西方の山岳地帯・稜線】
432名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/17(土) 08:07:12 ID:ZugQNlFmO
433名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/17(土) 23:03:23 ID:tmtvjmmj0
434名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/18(日) 11:54:06 ID:ire2zOMa0
保守
435名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/19(月) 10:15:32 ID:TtIaOf+A0
hosyu
436名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/20(火) 13:02:11 ID:+t8ooov50
マッシュ!
437名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/21(水) 01:43:37 ID:cwVGcY8ZO
>>487は無効だっちゃ
438名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/22(木) 01:49:51 ID:M4WbID+6O
無効はいやだっちゃ
439名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/23(金) 00:48:03 ID:V6lUqcgn0
hosyu
440名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/24(土) 05:52:35 ID:5BJ6pigu0
保守
441名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/25(日) 10:49:06 ID:neEXznZ/0
hoshu
442名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/26(月) 01:45:04 ID:fx0khl0xO
ホす
443名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/26(月) 04:51:22 ID:Acs9IYKSO

       暗 黒 期 突 入

444名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/26(月) 16:24:55 ID:hPiJVwvl0
只今

        暗  黒  期  中  期
445名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/26(月) 16:49:36 ID:I5F3HUh50
ho
446名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/26(月) 17:36:15 ID:2sVubDI4O
shu
447名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/26(月) 18:14:53 ID:jIw6zsTwO
あ ん こ く
448名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/27(火) 01:22:11 ID:YfAKmMswO
クレクレマン出動!
449名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/27(火) 19:28:28 ID:Yzn0PJv70
暗黒の使いがあらわれた
450名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/27(火) 21:31:20 ID:JLsxSSeX0
おんみょうだんをくらえ!
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451クレクレマン:2006/06/27(火) 21:37:33 ID:YfAKmMswO
ぐはっ…しかし!まだやれる!くらえ!クレクレビーーーム!
452名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/28(水) 15:46:44 ID:q+op1v/0O
SLHSF
453名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/29(木) 22:37:33 ID:Eo6otsVo0
保守
454名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/29(木) 22:39:01 ID:Eo6otsVo0
保守
455名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/30(金) 18:56:35 ID:rIscjQtAO
ウルトラマンホシュ
456名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/01(土) 01:41:56 ID:d5cIiMiy0
ほしゆ
457名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/02(日) 02:22:13 ID:R5YyMPCs0
期待保守
458その背の免罪符 1/3:2006/07/02(日) 13:53:03 ID:W0r8jtU80
静けさの中に規則正しいリズムが息づいている。
自分のものではない、背中で目覚めない少女のそれに幾ばくかの注意を払いながら、
ウィーグラフは鬱蒼として深い闇の森を切り裂いて進む。
警戒しながらもその足は留まる事なく目的として定めたルートを辿っていく。



託された捜索、密かに求める疑念の答えを見つけ出すために森を行く男が一人。
威風堂々たるその男パパスは今、声無き驚嘆を目前に現れた光景にぶつけていた。
ラムザもケフカも見つけられぬまま森の奥へと北上を続けた先に現れたもの。
それは何か得体の知れない力でなぎ倒された樹木、それが道となり、結果開けた空間が森を引き裂いているのだ。
ほぼ真北とおよそ北東方向の二方向へとその道は伸び、暗闇に消えている。

「圧力をかけられ折られておるな。一体どのような腕力…いや、巨躯か?
 モンスターなのであろうか。しかしこれほどの大きさの? …こっちは焼け焦げている」

開けた空間の幅、人が草にそうするように樹木をなぎ倒し、焼き払っていくサイズ。
推定した情報で自身の前にそれを対峙させる。期せず、全身から冷や汗が噴き出る。
あまりに大きく、あまりに凶暴なその像。
――勝てぬ。だが、気がかりなのは……
倒木の痕跡から巨獣は北から来、ここで北東へ向きを変えたようだ。気がかりなのはその行き先。
だが、それ以上にパパスを心配させる事はこのモンスターの方向転換の理由。
単なる気まぐれならそれで良いが、そうでないなら何を恐れた?

ふと我に返り、驚きと思考に時間を費やしたことを悟ったパパス。
気を取り直して捜索を続けようという前に自分と別方向からここへやってきた相手に気付いた。

459その背の免罪符 2/3:2006/07/02(日) 13:54:43 ID:W0r8jtU80
暗みより月光下に現れた男。
この破壊に自分と同じように驚いているのかあたりを機敏に見回す彼とパパスの目が合う。
歴戦の戦士であろうしっかりした体躯、しかし何より目を引いたのは彼が背負う子供。
ほんのわずかな背後を気にする素振りのあとで素早く長剣がパパスを指して抜き放たれる。

「待たれよ、戦士殿。剣で争う気はござらん。
 私はパパス。まずはあなたの名前を聞かせてもらえぬだろうか?」
「…ウィーグラフ=フォルズだ。悪いがそちらと関わる気は無い。
 失礼ではあるが、できるなら早々に立ち去ってもらいたい」
「何故にそのように拒むのか?
 一体どのような事情がありそのような子を連れて夜の森を移動しているのです?」
「………」

無返答。いっそうウィーグラフの眼光は鋭く、敵意は増す。
冷静に考えれば不審な振る舞いであるが殺人ゲームはむしろそれを薄めてしまう。
ウィーグラフと彼が連れている子供の関係はわからないものの保護されるべき対象の存在がすべてを勝手に補完する。
現にパパスも、その不審さを気に留めながらもその態度を強引に納得していた。
もし自分が同じ立場、愛する我が子を連れた状態でこの悪意の世界に曝され続けたとしたら、
どれだけ冷静と友好的態度を貫きつづけられるだろう。

「ではせめて一つだけ。あなたがやってきた方向、つまりここより西、そちらで何かあったのですな。
 それは一体?」
「確かに騒ぎはあった。だから私はそれを避けようとしている。
 ……もういいだろう、私は行く」
「ありがとう、あなたも気をつけて……その子を守りきってくだされ」
460その背の免罪符 3/3:2006/07/02(日) 14:01:01 ID:W0r8jtU80

なおも警戒を切らすことなく、言葉を交わす事も無くウィーグラフは北東、森につけられた道をたどるように去っていった。
心配とわずかな羨望の入り混じった気持ちで闇に混ざるその姿を見送ってから、
ようやくパパスは託された目的に立ち戻った。

「騒ぎ、か……仲間を置いて途絶えた足跡、何かに巻き込まれたと考えるが妥当なところ…」

西方、暗い森をじっと凝視。
それからパパスは再び捜索のため強い歩調で飛び込んでいく。

【ウィーグラフ(HP2/3)
 所持品:ブロードソード プレデターエッジ レーザーウエポン グリンガムの鞭
 暗闇の弓矢 ブラスターガン 毒針弾 神経弾 不思議なタンバリン エリクサー×5
 スコールのカードデッキ(コンプリート済み) 黒マテリア 攻略本 首輪×2 研究メモ
 第一行動方針:地図に示した地点まで移動
 基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を探し殺す(ラムザが最優先)】
【リルム(HP1/2、気絶、右目失明、魔力消費)
 所持品:英雄の盾、絵筆、祈りの指輪、ブロンズナイフ
 第一行動方針:?
 第二行動方針:仲間の帰りを待つ】
【現在位置:森林中央部→北東へ】

【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:ラムザとケフカを探し、カズスでオルテガらと合流する
 第二行動方針:自分のケフカに対する疑いを探る
 第三行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:森林中央部→西へ】
461名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/04(火) 07:49:30 ID:Df0WWTlPO
ほしゅ
462名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/05(水) 23:20:04 ID:n54HB6c80
のわぁ
463名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/07(金) 12:38:06 ID:W2aYI0Y00
保守
464名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/09(日) 09:34:59 ID:6LfBXdnGO
保守
465名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/09(日) 23:22:37 ID:x+dmEO3+O
あげ↑↑↑
466名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/10(月) 01:25:34 ID:+TyiFAUFO
糸冬了
467名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/10(月) 03:05:04 ID:Zzxjf6VqO
↑は無効        
468ギルダー:2006/07/10(月) 21:42:36 ID:vmL04Sym0
アリーナ2が殺されたと聞いて飛んできますた^^
469名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/12(水) 21:11:43 ID:47w2m7WVO
470名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/13(木) 15:23:22 ID:wcuxGoIUO
471名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/13(木) 15:50:27 ID:B/uGR8ql0
472名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/13(木) 18:16:43 ID:W/Ltr78+0
473名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/13(木) 18:42:48 ID:huKbZX91O
↑× あ
474名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/14(金) 00:39:48 ID:9cUeIIC8O
475名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/14(金) 16:52:08 ID:mXSF8FNT0
476名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/14(金) 23:37:00 ID:cr2lAiP5O
おい糞馬鹿野郎ども!子供の頃、夢はありませんでしたか。その夢が壊れてしまったこと、ありませんか。そんな古い子供のおもちゃのような夢を持った人、もう愛せませんか。
477ゆめうつつとうつつのゆめ 1/11:2006/07/15(土) 23:56:04 ID:vDGkAd370
殺風景な廊下だった。
壁も扉も真っ白で、飾り気というものがまるでない。
何で自分はこんなところにいるのだろうと疑問に思ったけれど、それは大したことじゃなかった。
僕の頭にあった悩みは、扉を開けるべきか、開けざるべきかということ。
部屋の中から聞こえる声は、僕の耳にも届いていた。
バカ騒ぎとしか表現できないやり取りは、聞いていても楽しそうで。
けれど、一度入ったら、そこから出れなくなりそうな気がして。
結局、僕は廊下をうろうろとしていた。

変化は唐突だった。
扉がかちゃりと開いて、見慣れた青色のワンピースが飛び出してきた。
えもいわれぬ懐かしさを覚えた僕は、すぐさま彼女を呼び止めた。
でも、彼女は振り向かずに、そのまま別の部屋に入っていってしまった。
思わず手を差し伸べた、その時だった。
僕の身体が、セロファンのように透き通っていることに気がついたのは。

(――僕は、死んでしまったのか?)
記憶も思考も、何もかもがぼやけていた。知っているはずのことも思い出せなかった。
ただ、彼女に気付いてもらえなかったことが、無性に悲しくて。
僕は意を決して、彼女が入っていった部屋に入ろうとした。
だけど、足を一歩踏み入れようとした瞬間、背後で扉が開いた。
そしてもう一人、僕が良く知っている奴の喋り声が聞こえたんだ。
そいつは、扉のところに立って、中にいる人達と話していた。
詳しい内容までははっきり聞こえなかったけど、誰かの事を話題に出そうとしていたみたいだった。
……もしかしたら、僕のことを話しているんじゃないだろうか?
そう思い、近づいてみた。無駄だとはわかっていたけれど、声も掛けてみた。
「呼んだ?」
するとそいつは、一瞬だけ驚いたような表情を浮かべた。
それからこう言ったんだ。
「こっち見んな。つーか……お前はさっさと帰れ」
僕から目を逸らして、廊下の一角を指差した。
その先には、いつの間にか小さな扉があった。
478ゆめうつつとうつつのゆめ 2/11:2006/07/15(土) 23:57:45 ID:vDGkAd370
(なんで?)
僕一人で、どこへ帰れというのか。僕はここにいてはいけないのか。
帰るべき場所があるなら、なんであんたや彼女が帰らないのか。
聞きたいことは一杯あった。
けれども、僕が口を開く前に、そいつはひらひらと手を振った。
まるで虫でも追い払うかのように。
そこにあったのは、これ以上もないほどはっきりとした拒絶の意志だった。
だから、結局、何も聞けなかった。
彼女と違って僕が見えていて、声も通じたというのに。
「は〜い……」と生返事を残すのが精一杯で、そのままふらふらと、扉を開けた。


――すぅっと身体が浮いたような気がする。
――誰かが遠くで叫んでいる。


薄目を開けた。闇色の視界に、見覚えのある輪郭が滲む。
ざぁざぁと潮騒に似たノイズがざわめく中で、聞き覚えのある声が響く。

「アーヴィン、アーヴィン!」
ゼル、じゃない……ティーダ。そう、ティーダだ。
名前を思い出すのに、十秒近く掛かった。
泣きそうな顔で僕を見つめている。宿屋のベッドで話していた時も、こんな表情をしていた。
「起きたのか? なぁ、俺がわかるか?」
視界が揺れた。ティーダが僕の身体を掴んだらしい。
横から伸びた白い手が、彼を制止する。
「ティーダ! 揺さ振っちゃダメだってば!」
女の子の声。奇妙な郷愁を掻き立てる、懐かしい音。
でも……懐かしいだなんて、そんなはずはない。
彼女はユウナだ。カズスで会った、ティーダの恋人。
ティーダと、もう一人……プサンさんと、三人でサスーンに向かったはずだった。
そしてゼルは――そうだ。3人を助けるために、追いかけていったのだ。
479ゆめうつつとうつつのゆめ 3/11:2006/07/16(日) 00:00:18 ID:Bk2egvEX0
断片的な記憶が、おぼろげに浮かび上がってくる。
そして思い出すたびに、疑問が生まれる。
リノアは何処にいったんだろう? ゼルは何処にいるんだろう?
僕はなんでこんなことになっているんだろう?
聞きたかったけれど、声は出なかった。
口どころか、目玉も瞼も、手も足も動かない。自分の身体が自分のものじゃないみたいだ。
そのくせ、眩暈と吐き気はしっかりと感じる。
右耳や、頭や、右腕が、焼け付くように熱い。……いや、痛い。

「落ち着け。単なる反射だ、意識が戻ったわけではない」
ティーダとは真逆の、冷静で感情の篭らない声。
外観はすぐに思い出した。名前は……マッシュだっけ? 何か違うような。
とりあえずリルムが言う所のツノ男だ。
……リルム? リルムと、子供のテリーは?
ジャイアントスイングをかまされていたロックは、あの貧乳ストーカー女はどうなった?

自由にならない。思い通りに動かない。
身体も思考も記憶も、何もかも。
熱いコーヒーに浮かべたホイップクリームのように、どこまでも曖昧に溶けるばかりだ。

「だが、大分容態も安定してきたようだな。
 この様子なら、貴様らだけでも問題あるまい?」
ツノ男が二人を見やり、それからあらぬ場所へ目を向ける。
わずかに映った横顔。その視線の先にあるものは、僕にはわからない。
でも、ユウナとティーダは、理解しているらしかった。
「あ……そ、そっすね。ありがとうッス!」
「ごめんなさい、マティウスさん。ずっと手伝って頂いて」
ああ、そっか。マティウスだっけ、この人。
奇妙な感慨に浸る間もなく、黒い長身はすっくと立ち上がった。
「起きたら伝えろ」
そう言って、マティウスは銀の髪を揺らしながら、どこかに歩いていった。
480名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/16(日) 00:01:35 ID:jruQlARLO
シエン
481ゆめうつつとうつつのゆめ 4/11:2006/07/16(日) 00:05:27 ID:Bk2egvEX0
「……ードさんに……リーく…、……ョウブかな」
ユウナが俯く。右耳の近くで喋っていたから、何を言っているのかは殆ど聞き取れない。
「最悪ッスよ……なんでゼルやアーヴィンやリルムやロックや、あんな小さい子がこんな目に会うんスか?
 アーヴィンのことどうこう言う前に、まずあいつらをどうにかしれってんだよ。
 だいたい、安全かどうか確認できるまで腕は治すなとか、物みたいに言ってさぁ……
 カインの名前使ったからとか、そんな程度のことで疑いすぎだっつーの。
 あんなストーカー女に本名名乗れる奴なんかいないっつ―の!」
ティーダが声を荒げ、地面を叩いた。何故か、遠くで咳払いの音が聞こえる。
ユウナは顔を引きつらせながら、人差し指をティーダの唇に当てた。
「あのね。大声で言わない方がいいと思うんだ」
「……うん」
相変わらずティーダは困った奴だ。
僕のこと助けるし、イクサスに見つかるし、僕のこと誘うし、カインなんかに騙されるし、余計なこと言っちゃうし。
良く言えば純真で裏表のない性格。悪く言えばひたすら間抜けな、詐欺事件の被害者筆頭候補。
ソロやユウナやゼルにも似たようなことは言えるんだけれど、ティーダが一番危なっかしい。
戦闘時以外のスコールや、世間知らず丸出しの時のリノアを見ているようだ。
でも、リノアは……リノア? 彼女は……そうだ、彼女は。

(――リノアは死んでしまったんじゃないか)

僕はやっと、夢の意味を理解した。
それから、ティーダが僕達やロックと一緒に、ゼルの名前を挙げた理由も。

「ゼルのことも、本当の事は言わない方がいいッスかね。
 俺たちを逃がすために残ったとか……そう言う風に誤魔化した方が」
「そうだね……アーヴァイン君の性格じゃ、まず自分を責めちゃうだろうしね。
 本当に、マティウスさんがいてくれて良かったよ。
 私達だけじゃ、事情もわからないままだったから」
そう、か。……僕が頼んだせいでゼルは死んだのか。
恐らくは目的を達成することもないまま。
ゼル。SeeDはガーデン最高の精鋭傭兵なんじゃなかったのか?
帰還もしないで、任務すら成し遂げずに死ぬなんてどういう了見だよ。本当に。
482名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/16(日) 00:06:21 ID:jruQlARLO
483ゆめうつつとうつつのゆめ 5/11:2006/07/16(日) 00:07:01 ID:Bk2egvEX0
……でも、わかってるさ。あんたはやっぱりSeeDだ。
命がけでティーダとユウナを助けてくれた。使命を果たしてくれた
バカで単細胞だったけど、あんたはスコール=レオンハートの次に偉大なSeeDだよ。
これで生きて戻ってくれれば……スコール以上って言ってやったけど……な……

視界が滲んでいく。
瞼は開いているはずなのに、闇の帳が世界を覆う。
二人の会話は、ただの音の羅列になる。
もう一度落ちていく。無意識の深淵へ……


――古臭い部屋に、人の声が響く。
「ロザリーさん、行きましょう」
有無を言わせぬ迫力を持って、青髪の男が少女の手を取る。
「早くサイファーを探さないと。
 彼に何かあったら、僕達だけではセフィロスに立ち向かえない」
少女はうなだれ、しかし、躊躇するように男を見やった。
「イザさん。ですが、アリーナ様が……」
「言ったはずです。
 僕は、彼女を完全には信用できないと」
「わかっています。治療を、とは申しません。
 けれども、せめて、あの方の身を守る結界だけでも張らせてください」
少女の言葉に、男は口を閉じたまま、悲しげな視線を注いだ。
永遠とも思える数秒の沈黙が流れ、男は、ゆるゆると首を横に振る。
「わざわざ時間を割かずとも、クリムトさん達がいるでしょう。
 彼女に何もしない。――これが最大限の譲歩です」
「イザさん!」
「僕は、アルガスの言葉を信じなかったために、取り返しのつかない過ちを犯しました。
 ……貴方達の仲間であったという以外に、彼の憶測を否定する要素はどこにもない。
 それに、結界を張るのにアイテムを使えば、その分だけ貴重な戦力を減らすことになる。
 時間を費やせば、その分だけ、サイファーを見捨てることになる」
男は、出口に向かって歩き出しながら、言葉を続けた。
484名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/16(日) 00:07:28 ID:jruQlARLO
485ゆめうつつとうつつのゆめ 6/11:2006/07/16(日) 00:08:28 ID:Bk2egvEX0
「ロザリーさん。
 貴方をこの世界で守っていたのは、サイファーではないのですか?
 貴方の、僕らの味方だと断言できるのは、彼女ではなく彼の方でしょう?」
そして彼は、ドアノブに手をかける。
「……僕は彼女に何もしません。
 貴方が彼女のために何かをしたいというならば、ここでお別れです。
 僕は、僕の仲間のために戦ってくれた、友人を探しに行きます」
「イザさん! ……待ってください、イザさん!」
少女の制止も空しく、扉は男の姿を飲み込んで、パタリと閉じた。
残された少女は、涙を頬に伝わらせながら、両手を組んで目を閉じる。
「ピサロ様、ソロ様……どうかアリーナ様を助けてください。
 あの方は邪悪な罠に陥れられ、無実の罪を着せられているのです」

涙が床の上に落ちた。
透明なはずの雫は、何故か血のように赤く、宝石のように丸く輝いている。
「私は……イザさんと共に行きます。
 私を救ってくれた方のために、イザさんと共に行きます。
 誰か、誰か、私の声が届いているならば、アリーナ様を助けてください。
 サイファーさん……もしも私の声が届いているならば、アリーナ様を許してあげてください……」
悲しみに満ちた祈りの声が、風景共々、薄れ始めた。
霧が霞むように、暗闇の中にフェードアウトしていく。
「云われ無き罪に問われたあの方を……
 誰か、どうか………
 …………」

 
――また、夢か。
――変な夢だったな。


周りの音で目が覚める。さっきよりは頭も感覚もすっきりしていた。
だからだろう。皆が騒いでいる事に気がつけたのは。
486名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/16(日) 00:11:41 ID:jruQlARLO
487ゆめうつつとうつつのゆめ 7/11:2006/07/16(日) 00:13:02 ID:Bk2egvEX0
いつの間にか身体を横に倒されていた。ありがたい事に、右耳が下になっている。
声は割合はっきり聞こえるけれど、見えるのは、僕のと似たようなカラーリングのローブを着たユウナだけ。
でも、彼女は成り行きを見守っているだけのようだ。
知らない人と、ティーダと、マティウスよりもずっと冷たくて重苦しい声――ピサロが喋っている。
「信じ難い話だな。距離的にも、時間的にも辻褄が合わない」
「だから言ってるだろ?! あの女、なんでか知らないけど瞬間移動できるんだよ!
 アレだ、軽トラが支給されてるぐらいだし、ワープするアイテムとかあるんじゃないのか?」
「確かに、キメラの翼や空飛ぶ靴といったアイテムの支給は有り得る線だろうな」
「しかしだな。少年の無意識が作り出した、単なる夢ではないとは言い切れないだろう?」
「だけど!
 本当にあの夢がロザリー姉ちゃんのお祈りだったら、みんなアイツに騙されてるんだよ!?」
幼子特有の甲高い声が夜闇に響く。
テリーだ。無事だったのか……良かった。
でも、夢って……テリーも、僕と同じ夢を見ていたのか?
僕が心の中で首を傾げた時、突然、皆が口をつぐんだ。
何があったんだろうと思う間もなく、途切れ途切れの言葉が聞こえた。
「う……くそっ、……あの女……」
「「「ロック!」」」
喋っていた三人の声が唱和する。
「あ……エドガーに、ティーダ?
 何でお前ら、こんなところに……」
「そいつはこっちのセリフっスよ!
 少しはピサロやマティウスやテリーから話聞いたけどさ! なんであんたまで!?」
「俺か? 俺は……って、そんな話してる場合じゃねぇ!
 おい、アリーナの奴があんたの恋人とターニアの兄貴のところに転がり込んでるぞ!?」

わー。ロックまで同じ夢見てたんだー……ってそんなのアリ!!??
アレですか? 電波ですか? 三人揃ってコヨコヨからのメッセージ受信しちゃいましたか?
そんな突っ込みをする余裕も、代わりにしてくれる人も無い。
困惑する僕を他所に、ティーダとピサロとエドガーとロックとテリーと、
マティウスと、全然知らないオッサン声の人が、会議宜しく話し始める。
488名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/16(日) 00:14:20 ID:jruQlARLO
489ゆめうつつとうつつのゆめ 8/11:2006/07/16(日) 00:15:08 ID:Bk2egvEX0
ユウナは、なんか僕の様子を見てくれているらしくて、話し合いには参加していなかった。
僕は、皆の話を真面目に聞いても良かったんだけど、生憎ちょっと気になることがあった。
僕を見ているユウナ。その背後で、ピエロみたいなド派手な人が、地面をいじり回しているのだ。
砂の中から、何か黒っぽいものを引きずり出して、ニヤニヤ笑っている。
良く良く見てみれば、テリーのカンテラらしきものや、誰かのザックが散乱していた。
きっと、世間一般で言うこそドロって奴に違いない。
皆が話に気を取られている隙に、人の道具を盗んでいるんだろう。
ドロボーだと叫んでやりたかったけど、無理だったから諦めた。
それにまぁ、ピサロはかなり目ざといから、いずれ見つかって怒られるのがオチに決まってるよ。

――ああ、どうやら話がまとまったようだ。
「ロック。貴様はしばらく休んでいろ。
 不服もあろうが、その足では移動すらおぼつくまい」
「わかってるさ。自分の身体だからな。
 ……ケフカの奴から目ぇ離すなよ」
「アーヒャヒャヒャ、相変わらず信用ありませんねぇ〜。
 お前の信用なんかこちらから願い下げですけどね!」
またまた知らない声――って、多分こそドロ道化師だろうけど――がロックをおちょくる。
それとは別に、テリーと、カメのギードが、マティウスに声をかけている。
「おじさん。助けてくれてありがとう」
「私が連れて来たわけではないし、大したこともしておらん。
 それに、お前を助けたのはギードだ。例なら本人に言え」
「でも、ギードやアービン兄ちゃんの怪我、治すの手伝ってくれたんでしょ?」
「フン……アリーナの行き先を知りたかっただけだ」
マティウスさーん……そういう態度のこと、なんて言うか知ってる?
ツンデレって言うんだよ。ツンデレ。
僕はやれやれと、頭の中で肩を竦めてみた。
490名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/16(日) 00:15:39 ID:jruQlARLO
491ゆめうつつとうつつのゆめ 9/11:2006/07/16(日) 00:17:05 ID:Bk2egvEX0
さて。そんな僕の目前では、ユウナと、ティーダと、エドガーらしき人と、ゴツいオッサンが集まっている。
どうやら、エドガーが何かのメモをみんなに見せているようだ。
何が書かれているのかは知らないけど、それなりに深刻な話題らしい。
まぁ、重要な話なら、後で教えてくれるだろう。
そして話の終わりに、オッサンはエドガーから二枚のメモを受け取り、三人から離れていった。
代わりにマティウスがやってきて、ティーダと剣を交換する。
珊瑚礁の海の色をした剣を、ティーダはとても嬉しそうに振り回した。


やがて、ユウナとティーダは僕の傍に座り込み、四人分の気配が遠くへ去っていく。
聞こえる声音からして、エドガーとロック、ギードとテリーは残ることにしたらしい。
多分、重傷者と回復役を置いていったのだろう。
僕も本調子じゃないし、またまた眠たくなってきたから、もう少し寝てよう。
何だって寝てれば治るしね。一晩で。

……あれ? そういえば、リルムはどうしちゃったんだろ?
僕みたいに、まだ動ける状態じゃないのかな。
まさか、誘拐されたってことはないだろうし。

……ふわぁ〜。あーダメだ……本当に寝よう。
お先に……お休みなさ〜い……

492名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/16(日) 00:17:59 ID:jruQlARLO
493ゆめうつつとうつつのゆめ 10/11:2006/07/16(日) 00:19:15 ID:Bk2egvEX0
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失)
 (昏睡→中度の意識障害に回復、軽症、右腕骨折、右耳失聴)
 所持品:竜騎士の靴、ふきとばしの杖[0]、手帳、首輪
 第一行動方針:動けるようになるまで寝てる】
【テリー(DQM)(気絶+軽傷、ショック、右肩負傷(7割回復))
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3 、鋼鉄の剣、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
 第一行動方針:怪我の治療/ギードと同行する
 第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】
【ロック (気絶+軽傷、左足負傷)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート(ピサロが一時的に所持中) 皆伝の証
 第一行動方針:怪我の治療
 第二行動方針:ピサロ達と合流する/ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ギード(重傷、残MP微量、疲労) 所持品:首輪
 第一行動方針:負傷者の回復
 第二行動方針:ルカとの合流/首輪の研究】
【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:フラタニティ、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服、リノアのネックレス
 第一行動方針:負傷者の治療、リルムの無事を確認する
 第二行動方針:サスーンに戻り、プサンと合流
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【エドガー(右手喪失 MP1/3)
 所持品:天空の鎧、ラミアの竪琴、血のついたお鍋、ライトブリンガー、対人レーダー
 第一行動方針:負傷者の治療/リルムの無事を確認する
 第二行動方針:首輪の研究/アリーナ2を殺し首輪を入手/マッシュを探す
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【ユウナ(白魔導師、MP1/3、落ち込み気味)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子、官能小説2冊
 第一行動方針:ティーダと共に行動する
 第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】
494ゆめうつつとうつつのゆめ 11/11:2006/07/16(日) 00:20:50 ID:Bk2egvEX0
【マティウス(MP 1/3程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)ソードブレイカー 鋼の剣 ビームウィップ
 第一行動方針:カナーンに向かい、ゴゴの仇(アリーナ2)を討つ
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ザンデ(HP 4/5程度)
 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー、再研究メモ、研究メモ2(盗聴注意+アリーナ2の首輪について)
 第一行動方針:マティウスの協力を取り付ける
 第二行動方針:カナーンへ向かいアリーナを探す。可能ならば首輪を奪う。
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/3程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 黒のローブ
 第一行動方針:ロザリーとイザを探す
 第二行動方針:カナーンでアリーナを探す。ザンデ・ケフカを監視しつつ同行】
【ケフカ(MP2/5程度)
 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール 裁きの杖 魔法の法衣  アリーナ2の首輪
 第一行動方針:ザンデ達と同行
 第二行動方針:観察を続けながらザンデに取引を持ちかけるタイミングを待つ
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近→カナーンへ】

【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、マサムネブレード
 第一行動方針:サイファーを探す
 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル、E猫耳&しっぽアクセ
 第一行動方針:イザと同行する
 基本行動方針:ピサロを探す
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:カナーンの町 魔法屋→街の外へ】
495ゆめうつつとうつつのゆめ 11/11:2006/07/16(日) 00:22:09 ID:Bk2egvEX0
すいません、一部状態を直すのを忘れてました


>493
【テリー(DQM)(軽傷、右肩負傷(7割回復))
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3 、鋼鉄の剣、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
 第一行動方針:怪我の治療/ギードと同行する
 第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】
【ロック (軽傷、左足負傷)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート(ピサロが一時的に所持中) 皆伝の証
 第一行動方針:怪我の治療
 第二行動方針:ピサロ達と合流する/ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
496名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/16(日) 00:36:47 ID:9RnYej+LO
497名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/16(日) 01:15:24 ID:Si/73HlF0
497なら437は無効
498dark of inside 1/10:2006/07/16(日) 07:13:00 ID:nNCbljOn0
「………………ぅ〜ん」
 闇に産声を上げた飛竜は、その胎盤たる闇の中で目を覚ました。
 目を覚ました飛竜は辺りを見渡そうとするも、その目に映るのは暗闇のみ。
 既に日の光は完全に落ち消え、明かりの無い洞窟内は完全に暗闇に包まれていた。
 だが、その完全な暗闇を穿つように遠方に僅かな月明かりが差し込んでいる。
 飛竜はその光を頼りに、出口へと向かい緩く両翼をはためかせた。

 洞窟より抜け出し、見上げた空は墨色に染まり、見下げた泉はただ天上の月を写すのみ。
 眠りに落ちる以前の喧騒が嘘のように、その場は静寂に包まれていた。
 静寂の中、飛竜は月下に翼広げ、自らの身に起きた変化を再認する。

「あ、夢じゃなかったんだやっぱり」

 広げた翼は夜の闇に負けぬ漆黒。
 その大きさも前よりも一回りは大きい。
 戦闘能力がほぼ皆無だった以前と違い。
 今の自分なら、直接交戦し実力で参加者を殺す事も出来るだろう。
 ま。
 そんな手段は取るつもりはないが。
 自分で手を下すのはめんどくさいし、何より面白みがない。
 自分の思惑通りに人が動き殺し合うように仕向ける。
 それが何より楽しいんじゃないか。
 その手段は、取るとしても最後の切り札としてだろう。

 ニタリと竜らしからぬ笑みを口元に張り付かせ、飛竜は生まれ変わった漆黒の翼をはためかせる。
 ゆっくりとその体は宙に浮かび、天高くへと舞い上がってゆく。
 上空から辺りをグルリと見渡した後、飛竜は同盟相手の居るカカズへと向かい一直線に風を切った。
 約束は完全に遅刻。同盟相手は怒っていることだろう。
 そりゃあもう、完全に。
 土産はこの身と子供一人と魔物一匹をいい方向に導けた事。
 まあ、魔物に関してはコチラも手痛い目にあったのだが、それは置いておこう。
 さて、この土産であの相棒は怒りを静めてくれるだろうか?
499dark of inside 2/10:2006/07/16(日) 07:15:13 ID:nNCbljOn0
 そんな事を考えながらカカズに向かう途中の森で奇妙なモノを発見した。
 見下ろした巨大な森に、あの巨大な魔物の仕業だろう、森の木々は踏み倒され出来た奇妙な一本道が存在していた。
 それはいい。あの魔物が暴走している証拠だ。体を張った甲斐があったというものだ。
 問題は、その道のすぐ脇の大木にに座りこむ人影がある事だ。
 こんな辺鄙な場所でいったい何をしているのか。
 居眠りと言う事もあるまい。

 調べて見るか?
 今は無用な危険は避けたいところだが。
 今、自分がいるのは、地上より天高く離れた遥か上空。
 漆黒の身は夜の闇に紛れ、発見することは叶わない。
 運悪く発見されたところで、白兵戦など、上空に届くべくもなく。
 天に向け放たれる魔法や狙撃など、上空に逃げ回避することなど造作も無い。
 この天地は決して覆らない。
 ならば、何の問題も無いだろう。
 危険は避けたい、だが危険がないなら行うべきだ。
 なにより、土産は多いほうがいいだろう。

 スミスは静かに、飛行の高度を下げる。
 佇む男に反応は無い。
 気付いてはいない、気付けるはずもない。
 ゆっくりと高度を下げながらスミスは男の思考にアクセスしてゆく。
 男の精神がスミスの脳裏に流れ込む。
 断片的な単語が頭の中に焼きついてゆく。



 ―――――そして、闇を見た。

500dark of inside 3/10:2006/07/16(日) 07:17:45 ID:nNCbljOn0
『…璧………ノバ…………』

 ?

『星を巡る命の循環天からの災厄生命の巡り全て破壊。
 黒マテリアメテオ降り注ぐ災厄破壊破壊破壊破壊再生。
 白マテリアホーリー古代種障害殺害による排除。
 再生のエネルギー星の力片翼の天使は神となる』

 なんだこれ?

『ジェノバ細胞はリユニオンするジェノバの子供達人形達失敗作。
 魔洸神羅ソルジャーライフストリームジェノバプロジェクト。
 呪われた力呪われた剣呪われた細胞呪われしジェノバ呪われし私。
 星の力生命の力呪いの力手に入れる手に入れる手に入れる』

 なんだこれ?
 なんだこれ?

『殺し合いの儀式死の循環を留める儀式ゾンビの様に変化する参加者。
 増加する怨念増加する無念増加する呪い増加する死増加する暗い闇。
 絶望狂気怨念外道暴力残虐罪罰死恐怖最悪凶殺害殺害殺害殺害。
 斬殺刺殺絞殺惨殺撲殺殴殺毒殺焼殺銃殺圧殺爆殺呪殺。
 男を殺す女を殺す剣士を殺す騎士を殺す魔物を殺す魔女を殺す。
 ありとあらゆる手段戦術戦略戦力道具を用いて全員、殺す』

 ―――なんだ、コイツは?
 コイツは、違う。
 こんな闇を、人間が持っているはずが無い。
 こんな闇に、人間が耐えられるはずが無い。
 つまり、コイツは人間なんかじゃない。
 ならば、人間でないのならば―――涼しい顔をしてこんな物を抱ている―――アレは、なんだ?
501dark of inside 4/10:2006/07/16(日) 07:20:08 ID:nNCbljOn0
「…………………………」
 ―――――――煩い羽虫だ。

 瞑想を続けていたセフィロスの目蓋が薄く開いた。
 視線のみを上空に動かし、夜を舞う黒竜を正確に見据える。

 過ぎ去るだけならばと放置していたが、長居するようでは些か鬱陶しい。
 放置するか。駆逐するか。
 ジェノバ細胞による肉体の再生は行われている。
 現在どの程度回復しているか、現状把握は必要だろう。
 では、アレを使って自身の復旧状況の確認を行うとしよう。

 長らく根を張っていた、重い腰がユラリと上がる。
 幽鬼のように怠慢な動きは一瞬のみ。
 その動きは次の瞬間、疾風に変わっていた。
 疾風の行く先には10メートルを超えようとする巨大な大樹。
 このまま突き進めば衝突は必至。そのままの勢いで聳え立つ大樹に突撃する。
 だと言うのに、疾走の勢いは止まらない。
 その足は大地ではなく、大樹の幹を蹴っていた。
 重力すら意に介さないその踏み込みで、足場の木の幹を踏み砕きながら天へと向かい駆け上がる。
 瞬きの間に大樹の頂点に達し、瞬時にセフィロスは細く伸びる枝葉に飛び移る。
 その重さに弓の弦のように枝葉がしなる。
 そして、放たれる矢の如くセフィロスの体が空に舞った。
502dark of inside 5/10:2006/07/16(日) 07:22:13 ID:nNCbljOn0
「え……?」

 声を漏らしたのは飛竜だった。
 それは一瞬の出来事。
 気付けば、絶対の制空権を持っていた飛竜の優位は崩れ、覆るはずのない互いの天地が入れ替わっていた。

 跳躍が頂点に達した体は重力に従い落下を始める。
 落下に遅れた銀髪が舞う。
 月光に照らされ輝く髪は、広げられた天使の翼のよう。
 銀翼を広げ、片翼の天使が夜に舞う。

 舞い落ちる天使が死を持って刃を突き落とす。
 飛竜も咄嗟に身をかわそうとするも、その動き遅すぎる。
 空中で突き下ろされた刃が、飛竜の左翼に突き刺さった。
 そのまま刃は勢いを止めることなく横一文字に振るわれる。
 一枚だった竜翼がトンボの様な二枚の翼に引き裂かれた。

「ギャアアアァァァァァァァアアァァアア!」

 叫びを上げ墜落する飛竜。
 片翼で何とかバランスを取ろうとするが僅かに落下速度を減速させるのが精一杯。
 地面との衝突は避けられず、大きく砂埃を上げ墜落する。
 僅かに遅れその横に、セフィロスが音も立てず着地した。
 着地したセフィロスは飛竜には目もくれず、片腕を確かめるように見つめ握り開きを繰り返す。

 ………ふむ。悪くはない。
 生命力はともかくとして、運動性能は7、8割復旧している。
 ある程度のレベルの戦闘ならば支障は無いだろう。
 とはいえ、万全には遠い。
 クジャレベルの強敵や複数の手練を相手にするにはまだもの足りない。
 今一歩、と言ったところか。
503dark of inside 6/10:2006/07/16(日) 07:24:19 ID:nNCbljOn0
「ガッ………ぁぁ………」
 漏れた声を見つめれば、落ちた飛竜がピクピクと翼を痙攣させていた。
 まだ息がある事を確認し、次の行動を思案する。

 肉体の復旧状況の確認は完了した。
 ならば、次は情報といくか。
 刻一刻と動き続ける戦場において、情報は立派な武器となり、情報の遅れは立派な命取りとなる。
 数時間に及ぶ瞑想の間、全く行動できず、得られた情報は皆無だというのは痛い。

「貴様の知っている事、全て話せ」
 剣の切っ先を竜の喉下に向けそう言い放つ。
 話さなければ殺す、それはシンプルな脅迫だった。
 だが、皮肉にも、先ほどこの男の中にある”闇”を垣間見たスミスにはよく分かる。
 一瞬でも答えを躊躇えば、それこそ躊躇いなく、瞬時にこの喉元は貫かれているだろう。

 だから話した。
 自分の知りうる事すべてを。
 これまでの記憶、経緯、成果その全てを。
 カインの事を、フリオニールの事を、カインとの計画を。
 さらには先ほど山のような魔物をけしかけた事を。
 魔術師を喰らったことも、自らの肉体の変化も。
 その全てを、洗いざらい話した。
 虚言は無かった。虚言とバレれば殺されるから。
 だけど、話した理由はそれだけじゃない。
 心の奥で確信があったんだ。
 この男に話したところで、計画に支障はないと。
 いや、むしろゲームの進行という目的は果たされることだろう。
 この男が他の参加者に今の話を言いふらす事はない。
 この男は得た情報を駆使して参加者を殺し回ってくれるだろう。
 結果として目的は果たせたはずだ。
 そう後は、どうやってこの場を死なずに立ち去るかが問題だ。
504dark of inside 7/10:2006/07/16(日) 07:26:20 ID:nNCbljOn0
「――――――――ほぅ」
 話を聴き終え、セフィロスの口元にかすかな冷笑が浮かぶ。
 私が瞑想中、この飛竜も同じく深い傷を受け昏睡中であったらしい。
 そのため、その間の情報は得られなかったが、予想外の、実に益のある情報が得られた。

 コイツとカインとやらの悪巧み?
 知った事か。
 こいつ等が何をしようが私の知るところではない。
 そんな物の成否になど興味はない。

 先刻私の前を通り過ぎた山のような魔王の話?
 くだらん。
 あの魔物が誰を殺して、どこで死ぬのかなど微塵の興味も沸かん。

 注目すべきは別の話だ。

 そう、それはこの黒い飛竜自身の話。



 この飛竜が――――変化した参加者、実例二人目だと言う事だ。

505dark of inside 8/10:2006/07/16(日) 07:28:25 ID:nNCbljOn0
 進化とも呼べる急激な肉体の変化。
 通常的にはそんな事は起こり得ないだろう。
 重大な肉体の損傷。
 魔力物の摂取。
 急激な肉体の再構築。
 これは変化の要因ではあるが原因ではない。
 では原因はなにか?
 上記の過程の中に異物が混入したのだ。
 その異物とは――――。

 ――――――――闇だ。

 この舞台に漂う闇。
 死者の怨念、漂う狂気。
 それは呪いと言ってもいいだろうし、それは魂と言ってもいいだろう。
 死者が増えるたび、その密度を増している、暗い闇。
 それこそ魔女の求めるもの。
 それこそ私の求めるもの。
 狂気のエネルギー。
 人のエネルギーだ。

 このエネルギーを取り込み、肉体を変化させる為の条件は、朽ち果てた肉体と堕ちた精神か。
 いや、むしろ重要なのは精神か…………?
 リユニオンによる肉体再生の際に、私自身になんら変化がないのはそれが原因か。
 狂気との同化を果たすに、私の精神力、自我は強すぎるのだろう。
 オリジナルジェノバを差し置いてリユニオンを律する精神力が、狂気に侵されるを許さない。
 自らの精神を弱める手段が必要だ。
 何らかのアイテム、何らかの設備がこのゲーム内にあるだろうか?
 力を得るために、力を失う、か。
 その矛盾にセフィロスは苦笑する。
506dark of inside 9/10:2006/07/16(日) 07:31:05 ID:nNCbljOn0
 ふと目の前の飛竜を見つめる。
 情報は得た、もはやこの飛竜に用はない。
 殺してもいいが、有益な情報の代価に、見逃してやっても構わないだろう。

「……失せろ」
「…………………………は?」
 脱出の思惑を巡らせていたスミスは、その言葉に思わず間の抜けた声を上げた。

「聞こえなかったのか。気の変わらん間に失せろ」
 余りの思惑通りの言葉に、スミスの思考は一瞬止まってしまったが。
 すぐさまその言葉を理解し、その場を立ち去ろうと慌てて方向を変えた。

「………ああ、そうだ」
 そこに、思い出したようなセフィロスの呟きがかかる。
 立ち去ろうとしたスミスはその呟きに動きを止め、その先を待った。

「――――――――黒マテリアを、知らないか?」

「黒、マテリア……………?」

 そう飛竜は、僅かに呆けた声を上げた。
 その様子を見つめ、得られるものはないと判断したのか。
 それとも、元よりこの質問に期待などしていなかったのか。

「……………もういい、知らないのなら。行け」

 あっさりと質問を取り下げ、セフィロスはその場に腰を下ろす。
 飛竜は泥にまみれ地を羽ばたきながらその場を去った。
 そんな飛竜にもはや興味はないと、セフィロスは瞑想を再開した。
 そして瞑想の中、勝者となりえた己の姿を幻視する。
507dark of inside 10/10:2006/07/16(日) 07:33:23 ID:nNCbljOn0
 さて、勝者となり全てを取り込んだ暁には、私は何になるのだろうか。
 ――――それが、今から楽しみで仕方がない。

 思わず口元が歪み、彼らしからぬ笑みが浮かんだ。
 漆黒だった空は僅かに青みを帯び始めていた。
 時刻はじき明稜に差し掛かろうとしてる、上る朝日は僅かに遠い。

【セフィロス(HP 1/5程度)、
 所持品:村正 ふういんマテリア いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠
 第一行動方針:瞑想
 基本行動方針:黒マテリア、精神を弱体させる物を探す
 最終行動方針:生き残り力を得る】

【スミス(HP1/8 左翼負傷、重度の全身打撲、変身解除、洗脳状態、闇のドラゴン)
 所持品:魔法の絨毯 ブオーンのザック
 第一行動方針:この場から離れる
 第ニ行動方針:カインと合流する
 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】

【現在地 湖南の森】
508名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/18(火) 02:39:59 ID:mtDTvqMnO
ほっ
509名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/19(水) 21:30:47 ID:vuG1lrHp0
しゅ
510dark of inside 10/10 修正:2006/07/19(水) 22:01:23 ID:PE/bEk490
 その幻想に、思わず口元が歪み、彼らしからぬ笑みが浮かんだ。

 天上では雲が流れ、夜を穿つ月の姿を隠そうとしてる。
 夜は深まり光は消え去る、空は一色漆黒に染まった。
 そろそろ日を越え、新しい日を迎える頃だろう。

 さて、勝者となり全てを取り込んだ暁には、私は何になるのだろうか。
 ――――それが、今から楽しみで仕方がない。

【セフィロス(HP 1/5程度)、
 所持品:村正 ふういんマテリア いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠
 第一行動方針:瞑想
 基本行動方針:黒マテリア、精神を弱体させる物を探す
 最終行動方針:生き残り力を得る】

【スミス(HP1/8 左翼負傷、重度の全身打撲、変身解除、洗脳状態、闇のドラゴン)
 所持品:魔法の絨毯 ブオーンのザック
 第一行動方針:この場から離れる
 第ニ行動方針:カインと合流する
 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】

【現在地 湖南の森】
511生まれる思いは様々で 1/11:2006/07/21(金) 04:01:23 ID:0vWSoHGH0
「ジタン君……だっけ?」
「ジタンでいい。慣れないしな」
「あ、そう? じゃあそれでいこうか。それと僕はセージだ。よろしく」
「セージ? そうか、お前がエドガーの言ってた……こっちこそよろしく」

「で、本当に君は何しに来たわけ? あのタイミングでアレは無いと思うんだけどさぁ。
 物々交換してそれで終わりって……もうちょっとさぁ、必死で引き止めるとかしようよ」
「んな事言ったってあれが限界だったっつの。事情も完璧に理解できたわけじゃねぇし」
「あぁそう……ところでさぁ、君はエドガーと会ってるんだよね?」
「なんで知ってんだ?」
「リュカさんと会った時に驚きがなかったからね。ここに来る前に誰かと打ち合わせしてたのかなって。
 その中で消去法で考えてみると、ピエールが来る前に部屋を出てたエドガーがそれっぽいかなって思ったんだ」
「なるほどな。確かにお前は頭の回るやり手みたいだ」
「あ、でもそれじゃあエドガーはどうやってあのピエールが僕らの所に向かったってわかったんだろう」
「ああ……それは話すと長いから後で説明する。悪いな」

「そう……じゃあもう一つ。何でエドガーじゃなくて君が来たわけ?」
「エドガーが仲間の安全を確認したいって言ったからな」
「じゃあ…… ”自分の仲間>今の状況” っていう優先順位に落ち着いた理由をお願い」
「”リュカも馬鹿じゃなさそうだし、お前……セージは意外とやり手だ。
 だから私情で仲間割れを起こすぐらいなら、二人の判断に任せた方がマシだ。
 それに実際問題として仲間が心配だ、まだまだあいつも子供だし”……ってな具合だ」
「へぇ………」
「……怒ってるのか?」
「怒ってないよ。まぁ仲間が子供だから危ないというのは正論だしねぇ……仕方がない、かなぁ?」
「………セージ」
「何?」
「焦るなよ」
「……何が?」
「お前は俺が策も無くお前らの所に特攻したと思ってるだろうが、誤解するなよ。信用してくれ」
「それは話を聞いてからかな。今はなんとも言えないよ」
「……弁明は部屋でする。その時に俺の印象を改めてくれれば怒らないから大丈夫だ」
512生まれる思いは様々で 2/11:2006/07/21(金) 04:03:48 ID:0vWSoHGH0
探り合いにも似たピリピリとした空気を持つ会話をしながら、彼らはあの東塔の部屋から移動している。
そしてその会話が締めくくられると同時に、あのジタン達の潜伏していた部屋の前に辿り着いた。
「俺だ。ジタンだ」
そういってドアを開け、中に入る。セージもそれに続いた。
中を見ると、そこにいたのは部屋に居たのはバーテンダー風の中年男性。
そして具合でも悪いのか、青い顔で眠っている緑色の小柄な少年。
だがそれ以外はいない。ティーダも、エドガーも。

「ようこそ、あなたがセージさんですね」

突然話しかけられた。ただそれだけなのに、セージは何故か体が強張った。
リュカのその瞳の力に気づいた時に似ている。この男から恐ろしい力を感じる。
―――それは、覇気。だが魔王等がもつ醜悪なものではない。何か別のもの。
しかし見た目はしがない中年男性だ。わけがわからない、とセージは心中で呟いた。

一方、プサンもセージを見て感じるものがあった。
青髪の彼は「元の世界で自身に仕えていた者・自身が選んだ者の持つ高貴さ」に似たものを感じさせる。
勇者の様に「天」ではなく、自分ではない別の「神」に彼は選ばれているのか、という突飛な憶測まで浮かぶ。
そしてこの中年男性という仮の姿に何かを感じ取ったと見れる相手の反応―――興味深かった。

ジタンは二人の思案の続く現在の状況が呑み込めないまま、フィンの傍に座る。
だが、「彼は眠りましたよ」とプサンに教えられると、「じゃあ邪魔をするわけにはいかないな」とセージの傍に移動した。

「あなたが……」
「私はプサン。それ以上でもそれ以下でもないただの男です」
何も言うな、という事なのだろうか。
敢えてセージの言葉を切った。そしてジタンに視線を移し、続ける。
「あなたの事はエドガーさんから聞いています。そしてジタンさんも同じく、エドガーさんからあなたの話を聞いています」
「なるほど……じゃあまずは今までの状況を説明して欲しい、かな」
「彼があなたを連れて来た時点でそう来ると思っていました。良いでしょう、お話しします」

513生まれる思いは様々で 3/11:2006/07/21(金) 04:06:56 ID:0vWSoHGH0


「ピエール、やっぱり回復を……」
「私ごときに今その様な事を行うなど愚の極みかと」
「だけど……」

サスーン城の門前に到着したリュカとタバサとピエール。彼らは今どうするべきか、どこに行くべきなのかと迷っていた。
だがピエールだけは違っていた。彼の考えている事、それはリュカに悟られずにタバサを抹殺する方法、それだけだった。

―――果たしてその好機はいつなのか。

主に悟られるわけにはいかない。主の心を壊してはいけない。主は優しいから。
主は主であってほしい。だがそれは自分の無謀な期待に過ぎない。
最後にはどうせ発覚することなのだ。だが、それは出来るだけ計画の最終段階であってほしい。

しかし、そんな事が可能なのか。
主に悟られぬ内に近くで人を殺す等、そんな事は可能なのだろうか。
答えは限りなく「否」に近いだろう。しかし自分は出来る限り善処しなければならない。
彼女をここで殺すのをしばらく諦めるという手もある。
だがこのチャンスを逃し、主が大勢の人間を仲間にするなどの行為を行うなどの状況に陥れば更に難しくなる。
ありえる話だ。主の人や魔物を分け隔てなくを引き付ける力はもはや神業だ。

―――この様な事態になった今、主の心を傷つけてでもタバサ様を殺さねばならないのかもしれない。

だがその決断にはまだ早いだろう。場所も場所だ。
しかしもしチャンスが無ければ……目の前ででも――――

「ピエール」
突然呼ぶ声がした。気がつけばタバサがピエールの両手を握っていた。
「私は、信じてる。絶対……信じてるから」
状況も会話の流れも無視した唐突な言葉。だがそれは何かを感じての行動なのだろう。
しかしその言葉は、最早主以外の人間などに興味が無いピエールには届くはずも無かった。
514生まれる思いは様々で 4/11:2006/07/21(金) 04:10:25 ID:0vWSoHGH0


「なるほど」
「はい、ですから彼がリュカさんに渡した魔石でリュカさんの身に起こった事はわかります。
 これもとっさの機転を利かせてくれたおかげですよ。時間が無いのは……同じですがね」
「そういう事だ」
「………認識、改めておくよ。そして向こうで寝込んでるのがフィン、と」
「ええ。そっとしておいてあげてくださいね」

丁度その頃プサンとセージとジタンの三人は対話を続けていた。
自分達が今までどのような行動をしていたか、等の情報も全員手に入れた。
そして今はジタンの行動の意味と、現在どのくらい危険な状況に陥っているかという再確認を行っていた。
その為既に自身の情報は晒しており、更に一同は各々の信頼も得ている。
だからプサンの魔石での監視能力、というものも納得できたし、ジタンのあの行動の意味も理解できた。

そこで問題。この状況でどうやってピエールをタバサ達から引き離すか。
セージは必死にその頭脳をフル活用して考え始めた。

実際自分がタバサ達の所に行っても意味はないどころか事態は悪化するだろう。
時間を置き、ピエールがボロを出すまで粘るしかない。だが遠くまで行かれると好機に間に合わなくなる。
大体ピエールがボロを出すという状況は「タバサの抹殺遂行」「本当のピエールを知る第三者の介入による衝突」という、
好機どころか一歩間違えれば危険すぎるものばかりだ。そこでうまく立ち回ることが出来るかと考えると不安だ。
まだまだ、もっと考えなければならない。理性的に、冷静に、理知的に。

「あのぷよぷよろい……ゴタゴタ起こさないと良いけど……」
「は? ぷよぷ……なんだって?」

セージが忌々しく呟いた言葉に、ジタンは怪訝そうな表情を浮かべる。
その間、プサンはリュカの様子をじっと眺め続けていた。

515生まれる思いは様々で 5/11:2006/07/21(金) 04:12:53 ID:0vWSoHGH0



「これからどうするのですか?」
「潜伏……がいいと思うんだ。そうすれば休息も取れる」
「でも都合よく地下室があるわけじゃないし……どこがいいのかしら」

「………森」
「え?」
「暗い森の中で潜伏するのはどうでしょうか。
 地図から察するに、東は宛ら天然の迷宮の如き大森林ですが」
「確かにそうだね……けれど、殺人者が既に森の中に潜伏している可能性もある。
 現に僕は森の中で沢山の殺人者を目撃してる。一歩間違えれば戦場となる可能性は高い」
「………成る程」
「じゃあ……お父さん、ピエール。しばらくこの城の周辺で留まってみるのはどう?」
「城周辺って、ここの周辺の事かい?」
「うん。別に今敢えて動かなくても良いと思うの。しばらく冷静になって考えて、それから行動しても良いし。
 私たちが動かない間に、他の人達……ヘンリーさん達に何かあるかもしれないけど、私たちが焦っても何もないでしょ?
 それにその間もピエールの傷を回復したりも出来るし……だからここはしばらく待ってみるのも……」
「私の回復には及びません。リュカ様の魔力がこんな事で消費されては……」
「大丈夫、私だって手伝う! それに、ピエールが怪我してるの見てられないもん! ……本当は、痛いでしょ?」

「………リュカ様、私は」
「ピエール、この子の言う事も尤もだ。それに僕も怪我を負っている君を見る事が辛い」
「………そう、ですか……では、仰せのままに……」

「それじゃあタバサの意見に僕も賛成だ。けれど城門の近くだと誰かが来るかもしれない。
 今はみだりに他人と接触をしない方が良い。城門の正反対……城を南に据えた場所にしよう」
「じゃあこのままぐるりとお城沿いに北に移動すればいいのね?」
「そうだね。よし、さっそく行動開始だ。ピエールの為にも、皆の為にもだ」
「うん!」
「御意……」
516生まれる思いは様々で 6/11:2006/07/21(金) 04:14:33 ID:0vWSoHGH0

ピエールは内心舌打ちをしたい衝動に駆られていた。
余計なことを言ってくれたものだ、と吐き捨てたくもなった。

彼としては森での行動を推しておきたかった。
暗く視界の悪い森の中でなら一計を案じやすかっただろう、と考えていたからだ。
誘拐や暗殺、狂言等の様々な選択肢を生むことが可能だったはずだ。
闇に紛れてこそ出来る芸当。ピエールはそれらを当てにしようとしていたのだ。

だがタバサの案はそれを潰す物だった。
開けた平地で暗殺など、そんな事は不可能。リュカがどこかに行けば話は別だが。
しかし主が娘から目を離すなど……と、ピエールは自らその淡い期待を断ち切る。


―――やはり本当にリュカ様の目の前で……だがそれは最後の……しかし今を逃せば……。


早計過ぎるかもしれない。だがこうして誰かが介入していない時にやらねば機を逃す。
けれど無理に実行するべき事ではないとも言える。いやしかしこのままでは……。

ピエールの葛藤は続く。
何も進展することもなく。
何かが決定されることもなく。

それはある種、場内で静かに時を過ごす者達にとっては幸運だったのかもしれない。
517生まれる思いは様々で 7/11:2006/07/21(金) 04:17:48 ID:0vWSoHGH0



「……どうやら全員で城沿いに北に向かっているようです」

リュカの動きに気づいたプサンがセージ達にありのままの事を話した。
彼らに動きがあった事に一番敏感に反応するのは、やはりセージ。
「どこまで向かうつもりなのか……は、わかりませんか」
「流石にそこまでは。簡易的な魔法ですので」
「なるほど……でもこのまま城沿いに真北に行くと、確か山脈にぶつかるはずだよねぇ……」

呟きながら地図を開き、確認をするセージ。そして自分の記憶は正解だった事が確定した。
確かに城の北は山脈だ。しかも想定していたよりもかなり険しく、壁のように邪魔をしている。
「じゃあつまり……」
「城の北に移動するって事か? 一体何の為に……」
「ちょっとピクニック気分でも味わって落ち着こう、とか」
「あるあ……ねーよ」
ジタンはつっこみを入れながら自分のザックの地図を取り出す。
そしてそれをじっくりと読み込みながら考え始めた。
自分ならどうするか。子供までいる状況で何をするか……。

だが真剣にそれを考えている間、セージが部屋の端に移動して何か奇妙な事をしていた事に気づいた。
「ええええい都合よく目覚めて僕のテレパシー能力ー!!」
真っ赤な帽子を頭にかぶり、何かを念じながら叫んでいる。
「……何をやってんだ?」
「あの世にいるこの帽子の持ち主に知恵を借りれたらなぁと半ばヤケになってるだけ」
「ああ、そうかい……」
「……ギルダーの赤と僕の職業で……レッドセージ? よし、レッドセージテレパシーを受け取れギルダーッ!!」
「おいエドガー……こいつのどこがやり手だって?」

ツッコミを入れる気も失せたらしく、今は遠いエドガーに疑問を送った。
だがジタンには申し訳ないが、単純に「馬鹿と天才は紙一重」だという事が実証しただけなのである。多分。
518名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/21(金) 04:23:49 ID:3tjoy+Ai0
sien
519名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/21(金) 04:26:07 ID:3tjoy+Ai0
sien2
520生まれる思いは様々で 8/11:2006/07/21(金) 04:40:15 ID:0vWSoHGH0
数分後。セージは帽子を片付け奇行もやめた。
そして座ると右手を虚空に差し出し、呟きだした。それはよく聞くと呪文の詠唱だった。
「ヒャド」と彼が唱えると、手から氷の刃が現れ、天井に刺さった。
またもう一度同じ詠唱をする。結果は同じだった。
「調子が出ないのですか?」
その奇妙な行動に疑問を持ったプサンが尋ねると、セージは小首を傾けながら答えた。
「実は前の世界は僕の住んでた世界なんですよ。そこで呪文を使った時、
 いつもより調子が良くて詠唱も不思議とスムーズだったんです。でも今この世界ではいつも通りなんですよね」
その言葉を聞いたプサンは、部屋にあったペンと紙を取り、「これ以上は口に出さない方が」と走り書きした。
理由もない突然のその文章。だがセージは「何かまずい事に足を突っ込んだのか」と考え、従った。
一方プサンは、先程のセージの言葉を心中で反芻し、考えを巡らせる。
『魔力の調子が世界で変わる……?
 それが真実ならそれはこの世界を管理する為の必要要素か、もしくは副作用? 首輪関連か?
 相手は強大な魔力を持つ存在、ならば……いや、一人で深読みをするのは避けておかねば……』

プサンとセージが互いに悶々とする中、ジタンはもう一度あの疑問に触れた。
「本当になんでリュカは北側に回ったんだろうな?」
するとセージが「推測だけど……」と語り始めた。
「城の周りは森と山脈しかないし、視界の悪い闇夜にそこに行くのは危険だ。
 そしてそれを回避……したはいいけど結局行く所も無いし、消去法で城周辺に留まったと」
「なるほど」
「後は城門と正反対に行くのも、なるべく他人には会いたくないのかもねぇ。
 まぁでも良かったよ。森の中に入られてたら、 ピエールはタバサの誘拐や暗殺とかの強行に出ただろうし」
セージは仮説を並べ立てながらザックの中のアイテムを取り出し、また戻した。
手持ち無沙汰に駆られて意味のない行動を続けながら、セージは更に口を開いた。
「ただ……それはピエールが自分のイメージを壊したくなかったり、
 後はリュカがなるべく精神的に傷を負わないようにしたい、とピエールが考えていた場合、だ。
 もし、彼の脳内で ”好機を逃したくない>リュカさんへの気遣い” という図式が完成した場合……」
521生まれる思いは様々で 9/11:2006/07/21(金) 04:42:06 ID:0vWSoHGH0

ここで一呼吸置く。それは微かな現実への抵抗。
考えたくない結論。今のこの状況でそれをはっきりと言いたくないという心の抵抗。
だが現実を受け入れ、はっきりと示さなければならない。嫌々ながら口を開く。

「……図式が完成した場合……それは、タバサの死が確定するということだね」

自分でもよくこんな縁起でもないことを言ったものだとセージは苦笑する。
しかしながらこれが現実。自分……否、あの少女が立たされているのは今にも崩れそうな崖の上なのだ。

「セージ、ハイテンションとマシンガントークは終わりか?」
「………」
ジタンの言葉が何も言わない相手に突撃をかける。
だがそれは悪意のある皮肉ではなく、そして安易な慰めでもない。
「まぁ、現実を見りゃテンションも低くなるってもんだな……。
 でも充分騒いだり別の事考えたりして気分転換は出来ただろ? 今度は俺らが動く番だ」
「………そうだね」
「俺もお前も互いにこれ以上の犠牲は増やしたくない。そうだろ?
 こうなったら俺ら二人でどこまでも足掻いてやろうぜ。幸運にもリュカにはプサンっていう警備員に監視されてる。
 被害を増やすことなく一気に叩こう。あのピエールってヤツを完膚なきまでにさ」
「………ありがとう……じゃ、ここでそろそろ策でも考えてみないとねぇ。誤解も解きたいし」
「よし、その粋だ」

二人の瞳に再び焔が宿る。プサンはそんな彼らの姿をただただ見ていた。
そして彼らが精神的な復活を遂げた事を確信すると、また監視に意識を戻した。


ここからは異形の騎士の行動しだいで全ては決まる。
結果がどうなるのかは、盗賊も賢者も竜神も知る事は出来ない。
だが、盗賊と賢者の意思の焔は確かにその瞳に宿っていた。
522生まれる思いは様々で 10/11:2006/07/21(金) 04:43:31 ID:0vWSoHGH0

【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 魔力1/2程度)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子、イエローメガホン
 第一行動方針:待機/タバサの救出策を練る
 第二行動方針:タバサとリュカから受けた誤解を解く
 基本行動方針:ゲーム脱出】

【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス、聖なるナイフ、マテリア(かいふく)
 第一行動方針:待機/タバサの救出策を練る
 第二行動方針:フィンの風邪を治す
 第三行動方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す
 最終行動方針:ゲーム脱出】

【プサン 所持品:錬金釜、隼の剣
 第一行動方針:フィンの看病をする/リュカ達の様子を探る
 第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
(*旅の扉を潜るまでは、魔石ミドガルズオルムの魔力を辿って状況を探ることができます)

【フィン(風邪、睡眠中)
 所持品:陸奥守、マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:風邪を治す/ジタンを待つ
 基本行動方針:仲間を探す】

【現在位置:サスーン城3F・暖炉がある部屋】
523生まれる思いは様々で 11/11:2006/07/21(金) 04:44:55 ID:0vWSoHGH0

【リュカ(MP1/4 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)、ビアンカのリボン、ブラッドソード、
 スネークソード、王者のマント、魔石ミドガルズオルム(召還不可)
 第一行動方針:サスーン城の外(北側)で休息を取る為移動
 第二行動方針:ピエールの回復
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】

【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
 所持品:E:普通の服、E:雷の指輪、ストロスの杖、キノコ図鑑、悟りの書、服数着、ファイアビュート
 第一行動方針:リュカについていく
 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】

【ピエール(マホトーン、HP1/3、MP1/4)(感情封印)
 所持品:毛布、魔封じの杖、死者の指輪、ひきよせの杖[1]、ようじゅつしの杖[0]、レッドキャップ
 第一行動方針:リュカに従う
 第二行動方針:リュカに気づかれない様にタバサを抹殺する
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
(*ピエールはタバサの抹殺の機会を失った場合、リュカの目の前ででもタバサを抹殺するかもしれません)

【現在位置:サスーン城外 城門→城沿いに北側に移動中】


>>516の誤字を訂正。

×場内で静かに時を過ごす者達

○城内で静かに時を過ごす者達
524生まれる〜 作者:2006/07/21(金) 16:12:28 ID:QAyF+pwP0
>>511のジタンのセリフ
「セージ? そうか、お前がエドガーの言ってた……こっちこそよろしく」

「ああ、こっちこそよろしく」

に変更します。
525名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/22(土) 22:30:03 ID:FUF8gWkDO
保守あげ
526名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/24(月) 08:36:55 ID:12kbAFgQO
ほっしゅ
527名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/25(火) 22:44:45 ID:UjOsVkre0
保守
528名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/26(水) 00:10:15 ID:o7Y+3UJU0
hosshu
529MiBgestalt 1/3:2006/07/28(金) 08:03:02 ID:BEuNFkqY0
最初の異変は音、いや振動する大気だった。
次の静寂が恐ろしく感じられるほどの激変。誰もがあまりに突然の事に全身を緊張させ、周囲に注意を配る。
独り、夜空を眺めていたサラマンダーだけがいち早く災厄を見届けていた。

ボロボロの羽根は巨大な身体をやっとのことで支えながら、滑るように目標へ誘う。
第二の異変はその動きがもたらす隠れざる気配であり、さらに地を伝う震動がそれに続く。
だが、捜索という任を帯びて村の各地へと散っていたものの多くはまだ常識外れの存在に想像を馳せるには至らない。
不安を隠さない表情でついさっき西の空低く見た凶兆の方角を眺めていたレナは地面から足へと知覚された震動の方角を正しく捉えてその影を見た。

わずか一度、熱望する跳躍で地に散りばめられた光の中心へと巨体は降り立った。
二度目の咆哮が天を指して放たれ、≪災厄来たれり≫と告げる。
呼応するように虚空から無数の雷条が到着歓迎の花火のような光と破裂音を伴いウルの村を穿つ。
部屋全体を揺るがされ、それでも目を覚まさぬビビを心配しながらエリアとターニアは手を取り合い不安げに視線を彷徨わせていた。
しかし突然の閃光と衝撃は二人の手を引き離し、部屋を照らしていたランタンを吹き飛ばしてしまう。

弾ける稲妻が立ち並ぶ建物をえぐり、温かみある光を災いの赤き種へと変えた。
だがそれを足らぬと見たか、巨獣はその口から燃え盛る炎を光ある村へと吹きかけていく。
うねり這い進む業炎は次々と触れる物を飲み込み、あたりを朱に染めていく。
村の北の森へと入り込んでいた二人、いや三人も先ほどの稲妻の光から起こりつつある事態に気付きつつあったが、時は既に遅い。
紅蓮の舌は建物を越えて森へまで到達し、同様に赤い身体をのたくらせる。
彼らはいまや炎の波の中―――

530MiBgestalt 2/3:2006/07/28(金) 08:11:50 ID:BEuNFkqY0

駆け戻った広場の南から変わり果て荒ぶる赤色に染め上げられた村を呆然と眺める。
先刻エクスカリバーを探した広場は今は暖かな灯ではなく赤々と炎に照らされている。
宿屋は落雷の直撃を受けたのか建物の形は崩れており、小さな火が点いてはいるもののいまだ炎に包まれてはいないことだけが幸いという有様であった。
エリア、ビビ、ターニア、その奥にいるはずの顔が脳裏に浮かぶがしかし、動けない、いや足が動かせない。
赤と黒に彩られて夜空へそびえる影、その頂点近くから狂気を孕んだ紅い半月がレナを見下ろしている。
幾多の怪物、数多の魔物と刃を交えてきた経験はあっても、今まさに肌に触れるこの威圧感・重圧感には正直足が竦む。
しっかりと剣を構える両手の指に不安を感じて改めてなおいっそう力を込める。
早く行かなきゃ、助けなきゃ、早く―――
ぐるぐると思考ばかりが加速して注意は目の端、火の赤へとつい向いてしまう。
だから、そびえた影の一部が一文字に裂けてさらに深い闇をさらけ出したことに気付けない。
紅蓮の光が不注意なレナの目で閃いた時には全身を痛みが灼いていた。

油断を悔いるよりも先にふわふわでもこもこの衝撃に跳ね飛ばされて、どうなったのかを考えなければならなくなった。
目の前にはふわふわのわたわた…わたぼうの赤の光線に輝く背中が見える。
振り返ったその眼は変わらない、子供のような眼をしていて、それから後ろ向きにもう一度カサを天へと掲げて見せてからバウンドするボールのように大きな影へと挑んでいく。
いまや完全にレナとわたぼうを敵として認識したビッグ・モンスターは荒々しい息の噴出に伴う低音を響かせて迎撃の態勢を取る。
宿屋は完全に巨体の向こうだ。立ちあがって。立ち上がって、戦わなければ何も守れない。
重々しく地面をゆるがせ叩き付けられた太い腕を、肘を、肩を足場にわたぼうが昇っていく。呼応してレナは手から離れていた剣を掴み直し迷いを振り払うように、勢いよくリスタート。
疾風の如きアンブレラが眉間を、迅雷の如きエクスカリバーが脚を、それぞれ同時に撃つ。
一瞬の硬直、けれどまるで≪効かぬ≫と言わんばかりに鼻を鳴らした巨獣は羽虫のような敵を振り払う。
暴れる両腕、両足を辛くも逃れた一人と一匹はその全身を覆う何らかの魔法――スカラ――の光を見た。
531MiBgestalt 3/3:2006/07/28(金) 08:13:29 ID:BEuNFkqY0

両者間に少しだけ距離を置いて、場面はわずかな時間、動から静へ。
水平にエクスカリバーを保持する手の延長線上で再び赤い眼と対峙する。もう、足が竦む事は無い。
くるくると宙返りで降りてきたわたぼうがふわりと構えた剣の上に着地する。

「…私たちだけで、どれだけやれるかな?」
「大丈夫っ、力を合わせればなんでもやれるわた!」
「そう、そうだね………よしっ、行こっ!」

まるでバドミントンのシャトルを打ち上げるように呼吸を合わせて小さな魔物を跳ね上げる。
地上に残されたレナは注意をひきつけるように気合の叫びを発しつつ一気呵成に突撃する。
天地の一角を紅く燃やして、死闘の幕は開かれた。

【レナ(体力消耗 怪我回復) 所持品:エクスカリバー
 第一行動方針:モンスターを押さえつつ宿屋への血路を開く
 基本行動方針:みんなを守る】
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:レナに協力する
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在地:ウルの村中央】

【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:潰す
 基本行動方針:頑張って生き延びる/生き延びるために全参加者の皆殺し】
【現在位置:ウルの村中央】

※ウルの村は炎上、宿屋は半壊、ウル北の森は炎上開始
532名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/29(土) 16:35:50 ID:tz/iMllT0
新作乙保守
533名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/29(土) 19:33:27 ID:5Bl2YZ1cO
↑↑↑上げ↑↑↑
534ユフィの足の裏:2006/07/30(日) 16:04:29 ID:MG9NOFB9O
アルスはユフィが可愛くて困った。
ユフィを見るとアルスは勃起するのだ・・・。
オルテッ「俺もだ」
するとアルスは背中から手が生えた。
「犯す〜〜〜〜〜〜〜」
ユフィは千本の手にクミシカレ〜レイプ!
「いやあぁ〜〜〜!クラウド助けて!」
ユフィ背中と顔と胴体から三千本の手に生やしッタ!
アルスは六千本の手に潰されて死亡・・・。
うぞっ
「何てことだ!ユフィが手の化け物に!」
だが・・・もはやユフィではない・・・それは・・・伝説の。
オルテッが命をかけたので元に戻った。ユフィは最強になった!

【ユフィ
 コウドウ方針ニ最強になった】
【アルスオルテッが死亡】
535名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/30(日) 17:49:46 ID:zO28c/yh0
>>534は無効です
536名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/30(日) 18:47:38 ID:ewvWi9kJ0
>>529-531
タイトルを「Miβgestalt」へ修正いたします。
537Miβgestalt 4/5:2006/07/30(日) 19:32:36 ID:ewvWi9kJ0

【サラマンダー(右肩・左大腿負傷、右上半身火傷、MP1/5) 
 所持品:紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、各種解毒剤
 第一行動方針:状況を様子見
 第二行動方針:態勢を立て直して再戦を挑む
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【現在地:ウルの村北の倉庫上】

【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:状況判断・分析中(具体的には不明)
 第二行動方針:協力者を探す/ロザリー・イザと合流
 基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス、アリーナ優先) 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:ウルの村北郊外の森(延焼開始)】

【ソロ(魔力少量 体力消耗)
 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング  ラミアスの剣(天空の剣)  ジ・アベンジャー(爪) 
 第一行動方針:村方面の異変を認識、次の行動を決断する
 第二行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す】※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり。
【バッツ(左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ
 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:村方面の異変を認識、次の行動を決断する
 第二行動方針:ヘンリー捜索
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【現在地:ウルの村北郊外の森(延焼開始)】
538Miβgestalt 5/5:2006/07/30(日) 19:33:30 ID:ewvWi9kJ0
【エリア(体力消耗 怪我回復)
 所持品:妖精の笛 占い後の花
 第一行動方針:状況不明  第二行動方針:ビビの看病
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【ビビ 所持品:毒蛾のナイフ 賢者の杖
 第一行動方針:状況不明  第二行動方針:休息 (気絶中)
 基本行動方針:仲間を探す】
【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草
 第一行動方針:状況不明  第二行動方針:ビビの看病
 基本行動方針:イザを探す】
【現在地:ウル宿屋(半壊、まだ本格的な火災は免れている)】
539名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/30(日) 19:35:36 ID:ewvWi9kJ0
>>529-531に以上の>>537-538を追加いたします。
重ねての修正、失礼いたします。
540名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/02(水) 13:25:43 ID:2d67Bxn40
ぼうそうしたまりょくがばくはつをおこす!

島は粉々に消し飛んだ!
541名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/02(水) 22:31:57 ID:boGJTp1V0
マダンテは無効です。
542名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/03(木) 15:25:11 ID:jae3/QqW0
>1000は無効です
543名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/04(金) 22:35:36 ID:Iq7VsED6O
>>1-542は無効です >>544-1000も無効です
544名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/05(土) 17:54:16 ID:oSkKXQAw0
>>542-543は時効です
545名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/05(土) 19:23:17 ID:hwagSZqA0
>>555は無効です
しかしながら>>552は保守です
546名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/06(日) 11:08:54 ID:8j+t13FS0
  ,、‐'''''''''ヽ、
    /:::::;;-‐-、:::ヽ             _,,,,,,,_
     l::::::l  _,,、-‐"iiiiiilllllllllllliiiiiiiー-、__ゞ:::::::::::`ヽ,
    ヽ::`/: : : : iiiiiilllll||llllliiiiii: : : : : : ヽイ~`ヽ:::::::i / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.     /;,..-‐、: : : : : l|l: : : : : : : : : : : : : \ ノ:::::} | やったね! トラトラトラのしまじろうが24GETだよ!
     /: /: : : : :`.: : : : : : : : :/´ ̄\ : : : : : ヽ:::ノ  | みんな、たまには早く寝てみよう! 早起きは三文の得だよ!
.    !: : : :iflllli、: : : : : : : : : : : : : : : :ヽ: : : : : :.!   |
    |: : : :llllf l: : : : : : : : : : :.iflllli、: : : : : <iiii|   |>>1くんへ いいすれっどをたてたね! これからもがんばろう!
    |: : : :|llll |: : : : : : : : : : .llllf l: : : : : : : : :.|   |>>2くんへ こんどは24をとれるようにがんばろう!
    |: : : :.!lllll!' : : : : : : : : : : |llll |: : : : : : : : :i  <>>3ちゃんへ まじれすしようかどうするかまよったのかな?
   /: : : : :    ○    : : .!lllll!' : : : : : : : :.i    |>>4くんへ おまえみたいなばかはおとなになってもやくにたたないからはやくしのう!
   ̄|: : :"  ,,,,,,,,,,,,,|____    : : : : : : : :.<iii/    |>>5ちゃんへ がきのうちはなんでもゆるされるとおもったらおおまちがいだよ!
.  /!.:   |:::::/    ̄''''''''l ヽ: : : : :-─/─   |>>6-23くんへ もういいいからしね!
    ヽ   ヽ/        ノ    : : :ヽ/     |>>24いこうのみんなへ いつかはしぬんだからはやめにけいけんするのもじんせいだよ!
     \  \,,_    _,,,/     : /\     \___________
       `''‐、、__  ̄ ̄   __,,,、-‐"
.     //:::::/ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ノ::::/\
.   / /:::::/  ` ̄ ̄ ̄/:::::/.  \
547名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/06(日) 21:27:29 ID:U5d72GJOO
>>543が無効だと思う人の数↓↓↓
548名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/06(日) 22:37:58 ID:ejZLH6pT0
返事がない>>547も無効のようだ
549名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/08(火) 19:11:37 ID:Qi/uu/9uO
550名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/08(火) 19:14:02 ID:zeu9z/BoO
551名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/08(火) 21:02:44 ID:hF7kNtwP0
552名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/09(水) 05:22:42 ID:W2UiL7pi0
>>540-548は内容は無効ですが、保守でした。
553夜に見る光 1/7:2006/08/09(水) 05:27:31 ID:W2UiL7pi0
自分の負の感情のままに作り出した不安定な状況は、しかし次の展開へとは至らない。
そんなただ徒に潰すしかない時間を前に、暴言へのたしなめと仲間の弁護を始めたライアン。
やれ「今は一致団結して苦難に当たるべき。不和を招くような発言はできるだけ避けたほうが賢明です」だの
「アリーナ殿にも何か止むに止まれぬ事情があるのでしょうぞ、理由なく力を振るう方ではない」だの
「戦う力を持つものが傷ついたもの、戦えぬものを守るのは当然のことですぞ」だの。
思ったとおりの仲間擁護に古臭い本にでも出てきそうな精神教条、そんなライアンを疎ましく思い、
感情的に衝突したアルガスは彼の制止も聞かず一人、カナーンの街を歩く。

脱出と勝利を両天秤にかけたアルガスの思惑はどこか中途半端のまま。
理由は自分でもわかっている。
どちらに乗るにしても、賭けるに足るだけの条件はまったく整ってはいないからだ。
だから、今のところ彼にできるのは夜風に向かって愚痴りつつ時間をつぶすことぐらいしかなかった。
一人気を紛らわせる場所を求めてコツコツと階段を上がり、風が吹き抜ける城壁上へ。
間抜けなことに保身を思考の中心においてきた男はこのとき、自身がどれ程危険な状況かが頭から抜け落ちていた。

その来訪者は、見た目を大きく裏切る軽く小さな着地音とともにアルガスの前に「降って」きた。
城壁の上だ、視界は悪くない。特に東に広がる城外の平原は良く見通せる。
だが上から来る相手など想像の外、驚きの叫びよりも先にアルガスの眼前には槍の穂先があった。
「盾」のいない今はまさに俎上の鯉。目の前の金属光は全身を冷たくさせる。
だが反省や後悔よりもアルガスの頭脳は打開策を求め、必死に言葉を繋いでいた。
時間圧縮もかくやの電気の閃光がニューロンを駆け、なんとか一つ活路をひねり出す。

「た、頼む、殺さないでくれ! 何でもあんたに従うから!」

喉から搾り出したかすれ声。情けなさ満点で命乞い。
われながら良い演技ができた…なんて自己評価は強がり以外の何物でもないが、これがアルガスの打開策。
554夜に見る光 2/7:2006/08/09(水) 05:30:02 ID:W2UiL7pi0
不十分とはいえ計算可能な目がそこにあるのだ。
現れた男、こいつが正義面した奴なら自分に怯える相手を害することはないだろう。
たとえ殺人者であっても、こいつはすぐに自分を殺すことを選択しなかった。つまり交渉の余地はある。

目の前には動揺を見せぬまま冷たく輝く槍先。
フォローではなく沈黙と言う反応は相手は善人ぶっているわけではないことを教えてくれる。
前者であれば楽だったのだが、とにかく交渉に移れるところまで漕ぎ着けなければならない。
もう一押し。緊張感と半ば本音の気持ちを混ぜて叫ぶ。

「オレはまだ死にたくないんだ! なあ、殺さないでくれよ! なあ!」

失笑だろう、ククッ、と影が漏らす。
気に障るが、それは今は飲み込まなければならない。すべては最後に生き残ることで清算できる。
ともかくそんな屈辱の対価としてまずアルガスは殺人者から言葉を引き出すことに成功した。

「そんなに怯えるな。そうだな、この街は初めてでね。いろいろ教えてくれないか?」
「命さえ助けてくれるなら知ってることは何だって喋る。だから頼む、」
「わかったわかった、落ち着け。
 ちょっと人を探していてね、今この街には誰がいるのか。知っている範囲で良い、教えてくれ」
555夜に見る光 3/7:2006/08/09(水) 05:32:31 ID:W2UiL7pi0
第二ステップ、向こうからの提示。しかしまだこれは一方的な収奪だ。
情報を搾られるだけ搾られてゴミのように殺される、これではダメだ。
欲しいのは取引、自己の安全の確保。
とりあえずこの流れをぶち壊さないように留意して大きくわざとらしく深呼吸。

「何度でも確認する。あんたの知りたいことを喋るから、殺さないでくれ」
「それはわかっている。さっさと喋れ」
「オーケー、取引成立か。頼むぜ?
 ってと、えーと、そうだな。街の広場の北の端のほうだったかな。
 アリーナってぼろぼろの怪我人の女と、それを治療してる賢者の婆さんとおっさんがいるぜ。
 そいつらの名前は……ウネとクリフト、あいや、クリムトだ」
「ふむ賢者、か」
「あと街の中心の橋のところにライアンって戦士がいたな。
 でもそれはオレが最後に見た場所だ。カカシじゃあるまいしいつまでもボーっと突っ立ったままもないよ」
「戦士か。他は?」
「これだけさ。ああ、予想はついてるかもしれないがライアンと賢者連中はつるんでるぜ」
「だろうな。……で、お前は一時でも一緒に行動した人間を売るというわけだ」
「ああ、まあな。他人の命より自分の命、あんただってよーくわかってるだろ?
 さて、ここからは取引といきたい」
「取引だと?」

何をバカな、と言うニュアンスを含んだ相手の一言を無視し、アルガスはザックを投げ出す。
開けてあった口から剣や盾、なにやら金属のケースの一部がごろごろと姿を覗かせた。

「そう、取引さ。あんたはこのオレを雑魚だと思っているんだろう?
 ああ、わざわざ言うこともない。今だって風前の灯さ。
 だがね、そんなオレはあんたにできないことができるんだぜ?」
556夜に見る光 4/7:2006/08/09(水) 05:37:40 ID:W2UiL7pi0
生意気にもいくらか気勢を強めたアルガスの変化を鋭敏に察知し、男は立場を理解しろといわんばかりにゆっくりと槍先を近づけて見せた。
それから、言葉で押さえつけようとする。

「最初とは随分態度が変わったな。まあいい、取引だと? できないことができる?
 ――笑わせるな」
「ははっ、雑魚相手にそう凄むなよ。まあ聞けって。
 あんたは孤独一匹狼の殺人者なんだろ。最後の一人まで勝ち抜くのが目標ってわけだ。
 でもな、ぶっちゃけた話この世界から生きて逃げられるなら方法は問わない。同意してくれるよな?」
「………」
「一人勝ちってのはわかりやすいが、全員を殺すってのは実際ホネだぜ。
 まああんたは身に染みてるのかもしれないけどな。ああ、気を悪くしないでくれよ」
「………」
「でだな、殺しに乗らない連中も連中で何とか脱出の策は考える。当然だ。
 もし仮にそれが成果を出すとして、あんたはそれに乗れるわけがない。そこなんだ。
 殺人者でないオレができることってのは」
「………」
「こいつは保険さ。双方に利益のある、な。
 オレはあんたからの安全を手に入れ、正義面した連中の情報をあんたに流す。
 あんたはオレから情報を手に入れ、そいつを殺しに活かせばいい。
 脱出策が完成すればそれを利用し、一方で着実に数を減らす。両天秤で動けるわけだ」
「そして数が減ってきたところでオレを殺して自分が勝利すると言うわけか?
 ふふ、一度裏切った人間は二度三度とやらかすものだ」
「だから雑魚に凄むなよな、そんなに自分に自信がないか?
 そこにザックだって差し出してるんだぜ? 丸腰なのがわからないか?
 だいたいあんたと戦って勝てるなんて思わないね」
557夜に見る光 5/7:2006/08/09(水) 05:51:36 ID:W2UiL7pi0

存在を強調すべく、ほらよと足で蹴り転がしたザックからついに一本の剣が滑り出す。
それがアルガスにとって計算外の幸運をもたらした。
すぐ側まで転がって来た剣を拾い上げた男は突然、声を上げて笑い出した。

「…ふふっ、ははは、はーーっはっは!
 いいだろう、その保険とやらを受けよう。貴様の名前は?」
「アルガス=サダルファス。あんたは?」
「カイン=ハイウインド」
「カインか、分かってくれて嬉しい。よろしく頼む。ところで話は変わるが怪我人なんざ切り捨てる対象だよな?」
「…いきなり何を言い出す」
「役立たずは切り捨てるべきってことだ。さっき話した4人!
 賢者って言うなら何か知恵でもありゃ良いが…あいつらにはねえよ。
 実際には無駄な他人助けばかり。こいつらは脱出には役立たず、前進もしない連中さ。
 まずはこいつらの掃除からオレ達の関係を始めるといこうじゃないか」
「条件次第だ。別にオレは危険を冒すつもりはないぞ」
「ある程度の戦力は把握している。一人一人分断する任はオレが負ってもいい。
 あんた、竜騎士…だよな? オレは空から降ってくる人間なんてほかに知らないぞ」
「……いいだろう。お前が一人ずつ誘き出せ。オレが奇襲で仕留める」
「決まりだな。その剣、気に入ったなら持ってって良いぜ。
 おっと、一つ忘れてた。魔法屋に閉じこもってるイザとロザリーって若い男女がいる。
 そいつらはオレの駒というか…とにかく殺さないでくれよ?
 別行動中のオレの『盾』。理解してもらえるよな」
558夜に見る光 6/7:2006/08/09(水) 05:54:41 ID:W2UiL7pi0


作戦の動きを打ち合わせてアルガスは再び街の闇へと階段を降りていった。
一人、城壁の上に残ったカイン=ハイウインドは手にした剣をかざす。

光の剣。
パラディンとなった『友人』セシル=ハーヴィが愛用していた剣。
皮肉にもこんなところで再会した死せる友人の剣。
正義を象徴する彼は早々にこの世界に屈し、裏切りにまみれた自分はまだ生き延びている。
この剣との出会い、裏切り者アルガスとの出会い。奇縁と言うものを感じざるを得ない。

だから、アルガスの案に乗ってみようと思った。
裏切り者が勝利するために。薄汚れた自分を最終的な勝利で清算するために。
まだ情報を隠していた点といい、少なくとも褒めるに値する度胸といい、アルガスは完璧に信用すべき相手ではない。
利用されているのもわかるし、再度の裏切りには注意しなければならない。
だが、『掃除』の話を出したときの態度からこの街では彼が裏切ることはないだろうことは予想できる。
私怨の影がそこには覗いていたから。
自分もかつて抱いていたことのある思い当たる感情をそこに見出せたから。


薄汚れた裏切り者が薄汚れた裏切り者をあれこれ評する。
まるで自分のことを語っているような気がして、漏れるは皮肉の笑いばかり。
城壁の内側の縁に立ち、暗闇に沈んでいるカナーンの街を一望してから、
カインは亡き友の正義の剣を自身のザックへと投げ込んだ。
559夜に見る光 7/7:2006/08/09(水) 05:58:17 ID:W2UiL7pi0
【カイン(HP2/3程度、疲労)
 所持品:ランスオブカイン、ミスリルの小手、この世界(FF3)の歴史書数冊、加速装置、
 草薙の剣、ドラゴンオーブ、レオの顔写真の紙切れ、光の剣
 第一行動方針:アルガスの策に乗り奇襲での一撃必殺を狙う
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【現在地:カナーンの街】

【アルガス
 所持品:カヌー(縮小中)、皆殺しの剣、ミスリルシールド、パオームのインク
 妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、
 マシンガン用予備弾倉×5、タークスのスーツ(女性用)、エクスカリパー
 第一行動方針:カインとの作戦を成功させる
 最終行動方針:脱出・勝利を問わずとにかく生き残る】
【現在地:カナーンの街】
560名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/11(金) 19:02:04 ID:yoEYyR42O
ほしゅー
561名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/11(金) 21:18:16 ID:GPbArNtE0
ほしゅ

職人さんクォリティタカス
562名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/14(月) 06:28:31 ID:Cx1ZSjIq0
保守ーーー
ヘタレコンビに期待
563名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/16(水) 16:40:22 ID:57Z4Th9G0
保守
564名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/17(木) 22:20:22 ID:AeH1DfbB0
保守
565名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/18(金) 18:08:50 ID:oPP4G56n0
職人さん頑張って〜続き楽しみにしとるよ。

ほしゅ
566未完の魔手 1/6:2006/08/20(日) 16:50:32 ID:IJKKwu8g0
「どーゆうことなのよ!」

砂の上で足を止めて前を行く二人へと大声で疑問を表現する。
訥々と目的地でのできごとの詳細を証言していたアルス、聴いていたオルテガが同時に振り向く。

「だいたいアルス、それじゃ最初からカインを敵だと決め付けてたわけなのよね!? どうしてよ!?」
「………逆に聞きたいな。どうして君はカインの肩を持つんだい?」
「なんでって……カインはエッジの仲間で、えーとエッジと一緒に世界を救ったかけがえのない大事な仲間なのよ!
 それをどうして悪人なんて言うの?」
「それだけかい?」
「それだけ!? 何よその言い方はっ! エッジはあたしを助けてくれて、それからねえ……」
「ユフィよ、落ち着け。アルスも挑発は止せ。とにかくまずは言い分を全て出し切ろうではないか。
 アルスは何を以ってカインを敵だと見るに至った?」
「証言者がいる。そうだな、詳しく話すと少し長くなるけれど良いかい」
「上等よ、聴こうじゃない!」

雄弁ではないが力強く、アルスはレオンハルト、ティーダ、ケフカらの証言を自分なりにまとめて語る。
初めは元気に反発の相槌を返していたユフィもしだいに静かに、沈黙していた。

「……以上だ。
 直接的にアーヴァイン、フリオニールといった人物と組んでいたという証言が二人、
 またカズスで何らかの策謀を実行すべく人を集めていたという証言がさらに複数。
 そして何より、僕はカズスでカインと戦い、フリオニールもそこにいた。
 結論から言ってフリオニールと組んでいたと見るしかない。
 ユフィ、これでも君はカインは純真にもフリオニールに騙され続けているなんて言うのか」
「それは…でも、そんなこと……」
「まだ言うかい?」
「だってフリオニールがエッジを殺したんだよ?」
「カインにはフリオニールを実行犯に用いそれを裏から操っていた、という印象さえある。
 君を騙していたように良い顔を使い分けていたなら尚いっそう最悪だ」
「それじゃカインは信頼してくれる仲間まで全部騙してたってこと?
 そんなの………ないよ」
567未完の魔手 2/6:2006/08/20(日) 16:52:09 ID:IJKKwu8g0



それを実際に目にしていない人間には決して理解できないだろう事物は実在する。
必死に説明してみたところで夢でも見たのだと一蹴されるのがオチ、そんな話だ。
だが、それは確かに実在しているのだ。
同様の体験を共有する数少ない者はそれを認めてくれるはず。


自分は静穏の暗闇の中で惰眠をむさぼっていなければならないはずだった。
なぜなら自分は負けたから。負ければ死ぬはずだから。
にもかかわらず遠雷のような、潮騒のような不明瞭な音が聞こえ続けている。
やがて不規則な音はかすかに言葉のようなリズムある揺らぎへと移り、さらにはかすれた像を結ぶ。
まるで異国の言語のように聞き取れない台詞、乱れた画像のドラマ。
扉の向こうへ去り行く男、血の涙を流す少女。
何を理解させるでもなく祈りとともにそれらはフェードアウト、
入れ替わるように胸を震源として全身を焼くような痛みが苛んだ。

『塵じゃない、無じゃない。ここにあるんだ、あたしはっ! あたしの力はッ!』
『あの悪魔、あいつを殺せ! 姉さんを取り返せ!』
『私は死なない……生き残る、生き残る、生き残る生き残る生き残る』

今度は判別不能ではない、大音量で響く三者同時の絶叫。
全身は焼き尽くされるような痛みに覆い包まれている。
それからフリオニールの意識は濁流の如き騒音へと曝されていく。
568未完の魔手 3/6:2006/08/20(日) 16:55:54 ID:IJKKwu8g0

「――あなたがどんな人なのか知らないけれど、殺し合いをさせられる覚えはないわ!」
………………!?
――もう一度だけ……会いたかったな……ごめんね――
「ああ、そのことなんだけど――」「あーあ。何だか、疲れちゃったわ…… 殺し合いとか、戦いとか……もう、うんざりよ……」「…にしても…疲れたな…」
「おおそうじゃ、戦いの前にはまず神に祈りを…」「てり、ありがとう」「ああ、やべぇ……そろそろ行くわ、俺」「ん?なんだ?」「オノレ…オノレ…ニンゲンフゼイガ…」
「君を、止める」「どうして、デールさん? ……止めて、止めて……!」「でモな、ニイさん……イマなら……みんなの気持ち、なんとナク……わかる気ィ、しま……す、わ……」
「お、俺には……、まだ……価値が……」「これさえ、あれば…」「お前が何を言おうが……俺は仲間を殺した人殺しを―――――」「さて…改めて話し合おうか。フリオニールよ」「――さようなら」
―――私の死が、彼を苦しませることに、なりませんように。


統一性の無い雑踏の音のような声が四方より聞こえてくる。
繰り返す音が耳の奥、頭蓋の中、血液を振動させまるでハウリングを起こすかのよう。
音が、自分の身体になっていくような気がした。
喪失の悪夢、途端に恐怖に囚われた精神はしかしその奔流から逃げることができない。
569未完の魔手 4/6:2006/08/20(日) 16:57:49 ID:IJKKwu8g0

最初は自分の無力をかみ締め、状況の絶望を認識するところから始まる。
もちろんこの程度の症例は誰しもが通過するもの。
だからこそばら撒かれたこの病の根は深い。

第二段階では力を求め始める。
無力、絶望に対するために必死に見つけた答えが力というわけだ。
もちろん、この病にとって大事なのはそこではない。
力は手段に過ぎない。大事なのはそれがどこを向いているかということ。
患者当人は何も自覚しないだろう。ただ病根は静かに心を侵食していく。
そろそろ、本来の自分の心は歪み捩じれ失われていくだろう。

第三段階――重なり合う喪失が患者をこの段階へと導く。
希薄になる感情、大切な人の死、折れたプライド、敗北。こんなところか。
ここに至りこの病はその牙を見せ始める。
心に根を張り巡らせたそれが喪失を埋めるために患者のため残された救済を提示してくれる。
そろそろ、本来の自分の姿は完全に崩れているはず。

この症例まで辿り着いた者は奇しくも最期には腕を失った2人の男女のみ。
起こっている事態を目撃し、理解しようとしたのはわずかに1名。
これは魔女が知っていることなのか、意図したことなのか。
最終段階。
深く重く病が進行し続けた者が肉体的、生命的な喪失の危機に陥るとどうなるか?
育ちきった病根はその喪失さえ埋めるための手段の提示――いや、強制を始める。
心を失い、命さえ失いかけたそれこそが依り代となる。
時ごとに量を増し、集められ、世界に満ち…圧縮されていく負のエネルギー、そのものの。
570未完の魔手 5/6:2006/08/20(日) 16:59:19 ID:IJKKwu8g0

いつか、死体のように横たわっていた身体は起き上がり、ただ廃墟の闇を眺めていた。
焦点の定まらないその目が見ていたのは今はもう懐かしき彼女の勇姿。
彼女をかき消したのは現実の揺らぎ、闇が教える遠い気配。

能面の如き無表情がたちまちに悲しみの色へ染まる。
けれど身動き一つせずに、彼はただ、訪れた誰かを待ちぼうけた。


571未完の魔手 6/6:2006/08/20(日) 17:01:30 ID:IJKKwu8g0

「許さない」

信じていたはずのカインは大嘘吐きだった。
突きつけられたショックは時間とともにすべて怒りへと転じていく。

「フリオニールの奴も、カインも。エッジの仇…二人ともあたしが取るわ!
 オルテガ、アルス、急ぎましょ!」

片腕の少女は普段の陽気さとはかけ離れた雰囲気を背中にまとわせて砂の上を駆けてゆく。
その背中に複雑な気持ちを感じてアルスは誰に向けてでもなく言葉を吐き出す。

「……因果応報……。
 これで僕が殺さなかったフリオニールを彼女はきっと殺す」
「ああ、ユフィはお前とは異なる道を行く。
 ユフィの感情、決断、そして覚悟を責めることはできぬ。
 だが…いや、うむ、言うまい。
 とにかくユフィはユフィ。お前はお前なりの判断をすれば良い。
 忘れるな、見据えるべきものを。失うな、己の判断を」
「わかっています。止められない――僕だって仇を討ちたいという心情はわかりますから。
 フリオニールは誰かに断罪される、それだけのことをやってきた。
 そういうことを受け入れなくてはならない」
「アルス」

呼びかけに反応せずに、そのままゆっくりとアルスはユフィの方向へと歩き出す。
向こうでは早くも結構遠くまで走ったユフィが大げさなジェスチャーで二人を急かしている。
息子の歩みをしばらく心配げに見つめてオルテガは悩める息子の後を追った。
572未完の魔手 7/7:2006/08/20(日) 17:03:00 ID:IJKKwu8g0

「でも僕はこんな結果を………いや、そんなわがままを言う資格はないか。でも……
 ………僕は結局どんな結末を――理想を、望んでいたんだ?」

迷える小さな呟きは誰の耳にも入らずに夜風にかき消された。

【アルス(MP1/4程度、左腕軽症)
 所持品:ドラゴンテイル ラグナロク ロングソード 官能小説一冊 三脚付大型マシンガン(残弾4/10)
 第一行動方針:これから自分はどうするか考える
 第二行動方針:倒すべき悪(アーヴァイン、スコール、マッシュ、カイン、サックス、スミス)を…?
 基本行動方針:苦悩中
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【オルテガ 所持品:ミスリルアクス E:覆面&マント
 第一行動方針:ユフィとアルスを連れてカズスへ向かう
 第二行動方針:アルスを見守る
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【ユフィ(疲労/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
 第一行動方針:オルテガ、アルスと共にカズスへ向かう
 第二行動方針:マリアとエッジの仇を討つ!
 第三行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズス西の砂漠の東部】

【フリオニール(MP3/5)
 所持品:無し
 第一行動方針:?
 最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【現在位置:カズスの村 廃墟の奥】
573ユフィの万引:2006/08/22(火) 17:29:21 ID:/uBXwoXeO
「殺す!」
そしてユフィはフリオニールを殺しまった
「殺した!」
ユフィは殺したので目覚める。闇が・・
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
「アルス!逃げるぞ!」
間に合わず死亡。
怒りに燃えるオルテガ一気打ち!
「攻撃!」
「神羅晩鐘!」
オルテガは攻撃しか出来ないのでユフィがカタッ
そしてユフィは変身した。聖天使アルテマだ!そしてラムザは思たが
ひきさかれ、死亡「強い」
「殺す殺す殺す殺す・・」ユフィは可愛いので安心
ユフィの力が強い。ユフィは手をあげると、メテオが降り、しんだ
そして強い羽は・・広がった
「ユフィちゃんの力でたおす」

【ユフィ(アルテマの服に変身)
 行動方針:強い。セフィロスが100人いても勝てない】
【フリオニール、アルス、オルテガ、ラムザ死亡】
574名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/22(火) 17:37:19 ID:8wpj8yVg0
>>573は無効です
575名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/23(水) 00:06:01 ID:7kbm+Fmx0
わ か っ て る よ
576名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/23(水) 17:21:02 ID:Ar0gg9TXO
あげ
577名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/25(金) 20:02:30 ID:HJKYoNQ/0
保守
578名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 07:04:42 ID:dcXsaur40
保守します…
579名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 09:28:51 ID:WdOGCefw0
雑談スレ落ちた?
580名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 09:49:45 ID:nvtj8oxRO
落ちたな…
だれか じすれ たのむ
581名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 11:32:29 ID:P/98GSn80
>>580
FFDQバトルロワイアル裏方雑談スレPART10
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1156558388/

ゆうどう しつれい しました
582名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 17:09:08 ID:WWjfkRWL0
>>581は魔列車
583名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/28(月) 17:23:17 ID:HrpsLT/I0
hosyu
584未完の魔手(1/7修正版):2006/08/29(火) 07:15:12 ID:3Y2YnO/C0
「どーゆうことだよ!」

砂の上で足を止めて前を行く二人へと大声で疑問を表現する。
訥々と目的地でのできごとの詳細を証言していたアルス、聴いていたオルテガが同時に振り向く。

「だいたいアルス、最初からカインをまるっきり敵扱いってのはなにさ!? ちゃんと説明してほしーね!」
「………逆に聞きたいな。どうして君はカインの肩を持つんだい?」
「ハァ!?……カインはエッジの仲間で、えーと一緒に世界まで救ったそれはかけがえのない大事な仲間なんだよ!
 それがいったいどうしてそんな話になるのさ? おかしーよ!」
「それだけかい?」
「それだけ!? 何その言い方っ! エッジはあたしを助けてくれて、それからねえ……」
「ユフィよ、落ち着け。アルスも挑発は止せ。とにかくまずは言い分を全て出し切ろうではないか。
 アルスは何を以ってカインを敵だと見るに至った?」
「証言者がいる。そうだな、詳しく話すと少し長くなるけれど良いかい」
「上等だね、聴いてやるよ!」

雄弁ではないが力強く、アルスはレオンハルト、ティーダ、ケフカらの証言を自分なりにまとめて語る。
初めは元気に反発の相槌を返していたユフィもしだいに静かに、沈黙していた。

「……以上だ。
 直接的にアーヴァイン、フリオニールといった人物と組んでいたという証言が二人、
 またカズスで何らかの策謀を実行すべく人を集めていたという証言がもう数人。
 そして何より、僕はカズスでカインと戦い、フリオニールもそこにいた。結論から言ってフリオニールと組んでいたと見るしかない。
 ユフィ、これでも君はカインは純真にもフリオニールに騙され続けているなんて言うのか」
「それは…でも、そんなこと……」
「まだ言うかい?」
「だってフリオニールがエッジを殺したんだよ?」
「カインにはフリオニールを実行犯に用いそれを裏から操っていた、という印象さえある。
 君を騙していたように良い顔を使い分けていたなら尚いっそう最悪だ」
「それじゃカインは信頼してくれる仲間まで全部騙してたってこと?そんなの………ないよ」
585未完の魔手(6/7修正版):2006/08/29(火) 07:16:30 ID:3Y2YnO/C0
「許さない」

信じていたはずのカインは大嘘吐きだった。
突きつけられたショックは時間とともにすべて怒りへと転じていく。

「信義を知らぬは犬にも劣る……んな感じだったかな……
 ともかく仲間を騙す! 仲間の仇と仲良く手を組む! そこまでやって生き延びる?
 そんな自分勝手な外道はみーんなまとめてアタシが片付けてやる!
 オルテガ、アルス、急ぐよ!」

片腕の少女は普段の陽気さとは別物の雰囲気を背中にまとわせて砂の上を駆けてゆく。
その背中に複雑な気持ちを感じてアルスは誰に向けてでもなく言葉を吐き出す。

「……因果応報……。
 これで僕が殺さなかったフリオニールを彼女はきっと殺す」
「ああ、おそらくな。ユフィはお前とは異なる道を行く。
 ユフィの感情、決断、そして覚悟を責めることはできぬ。
 だが…いや、うむ、言うまい。
 とにかくユフィはユフィ。お前はお前なりの判断をすれば良い。
 忘れるな、見据えるべきものを。失うな、己の判断を」
「わかっています。止められない――僕だって仇を討ちたいという心情はわかりますから。
 フリオニールは誰かに断罪される、それだけのことをやってきた。
 そういうことを受け入れなくてはならない」
「アルス」

呼びかけに反応せずに、そのままゆっくりとアルスはユフィの方向へと歩き出す。
向こうでは早くも結構遠くまで走ったユフィが大げさなジェスチャーで二人を急かしている。
息子の歩みをしばらく心配げに見つめてオルテガは悩める息子の後を追った。
586名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/31(木) 22:12:45 ID:QAs3lwhE0
保守
587今そこにある危機:2006/09/01(金) 02:25:01 ID:hLpHkiO+0
「追ってはきてないよな?」
『うむ、どうやらそのようだ』
横島は周囲を確認し安全だとわかると安堵のため息と同時にその場に座り込み、
乾いた喉を潤すために水を補給する。
「それにしてもあのコスプレねーちゃんはなんだったんだ?」
『問答無用に我らを襲ってきたことから考えると十中八九ゲームに乗った者であろうな』
「ちきしょー、ちょっと可愛いくて婦警のコスプレなんてしてると思ったらこれだもんなぁ…」
『まあ、そんなに嘆くでない。今回は運が悪かったと思って諦めろ。
それよりも、今後はこの様なことがないよう気をつけるべきだな』
「わかっ、ん?おい、バンダナ、何か人の気配がしないか?」
『貴様に言われるまでもない。確かに誰かがこちらに近づいているようだな』
「まさかさっきのコスプレねーちゃんか!?」
『その線もある。ひとまず隠れて様子をうかがおう』
588今そこにある危機:2006/09/01(金) 02:28:10 ID:hLpHkiO+0
そして現れたのは制服姿の女子高生一一天道あかねであった。
『さっきの輩ではないようだな。さてどうする?』
「さっきの例もあるけど何とか接触したいところだな。何かの情報を持ってるかもしれないし
(なんたって相手は制服女子高生!それに顔を見る限り現役!声をかけないでどうするってんだ)」
『また良からぬことを考えているようだが、お主の言うことも一理あるな。よし、声をかけてみろ。
ただし油断するでないぞ』
バンダナとのやりとりの末、接触することにした横島はあかねの前に飛び出した。
「き、急になんなのよ、あんた?ゲームに乗ってるなんていったらただじゃおかないんだから!」
急に飛び出してきた横島に対しあかねは一瞬は驚いたものの速やかに間合いをとり
片手に手榴弾をしっかりと握り構える。
「い、いや、俺は横島忠夫。決して怪しいものじゃないんだ!」
『(こやつ、何も考えずに飛び出しおったな…)』
「そんなの信用できないわ!ゲームに乗ってないっていうんだったらそのバッグをこっちに投げてみなさいよ!」
『どうやらむこうはゲームに乗ってないようだ。バックを渡してみろ』
横島はすぐさまあかねに向かってデイバックを投げた。
「本当に信用していいのね?」
「だから俺は本当にゲームには乗ってないって!」
「いいわ、信用してあげる。いろいろと疑っちゃたりしてゴメンね、横島君。あたしは天道あかね、よろしくね」

589名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/01(金) 02:29:22 ID:hLpHkiO+0
誤爆…
590名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/02(土) 14:55:51 ID:QAx782/P0
こ、これは意外な展開だ!
591名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/03(日) 13:20:35 ID:iKEN1Rrq0
一応無効宣言しようぜ…

>>587-588は無効です。
592名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/04(月) 15:11:36 ID:lKCbqOOc0
593名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/05(火) 16:22:28 ID:ARJdahM00
保守
594名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/05(火) 18:51:50 ID:tRNaZdvw0
保守
595名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/06(水) 22:40:11 ID:zvekvxBS0
このスレには…価値が…くはっ


596名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/07(木) 02:52:47 ID:ptjAaqFX0
ないよ、そんなの……てか容量もないし、いい機会だ。
本スレと統合しないか。
どっちも過疎すぎるよ。一本化して勢い取り戻したら再度分離でいいと思う。
597名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/07(木) 12:49:16 ID:G9rotpEb0
本スレってどこよ?
598名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/07(木) 20:15:07 ID:I6vHi16M0
>>596
あるわよ
599名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/07(木) 20:15:45 ID:I6vHi16M0
ごめん、誤爆った。
>>595
あるわよ
600名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/07(木) 20:56:13 ID:FPxpuWHB0
>>597
ここが本スレ、で雑談がこっち
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1156558388/l50
601オッス俺ザックスなわけだが 1/2:2006/09/08(金) 01:22:36 ID:U+itUbA90
さて、あれからずっと森を歩いている俺なわけだが。
やっぱソルジャー1stの俺にはこんな物は屁じゃないぜ。
夜道の任務とかあったしな、うん、全然大丈夫。大丈夫!!


とまぁ、自分を奮い立たせている俺なわけだが。
数十分ほど前から俺はカズスに向かう為に森を歩いていた。
森の中とは言っても、そこは南側の範囲の広くない場所である。
理由は簡単だ。昨日離れ離れになってしまったエドガーに会う為だ。
俺のヘマでこんな面倒なことになっちまったんだ。自分で責任は取らなければならないしな。
突然自分が消えたことであいつにも迷惑かけただろうし。
だからこそ! だからこそ俺は自分の手で仲間を探すんだ!!


とか言いながらここでなんと、歩いているうちに段々苦しくなってきた俺なわけだが。
いや何がって、息が。あの鎧でぷよぷよした……ここでは「よろぷよ」としよう、仮に。
「ぷよぷよろい」って案もあったんだがな。でも何となく長いし……ダサくないか?
ってそうじゃねぇ、そうじゃねぇよ。とにかく俺はあのよろぷよに変な杖で口が開かない体にされちまったんだから。
ありえねぇよな? 呼吸できないし。会話出来ないし、飯食えないし。飲み物飲めないし。
喉乾くっつの。先生、お茶。先生はお茶じゃありません、なんつってな。馬鹿か俺は。馬鹿馬鹿。
しかしこうやって気を紛らわさないとやってらんないってのも一つの事実だったりするわけで。


そんで遂に希望が見えてきた俺なわけだが。
何故かって? そりゃあれだ、なんと俺は森を抜け切ったんだ。
さてここで確認する。ずっと俺は東へと歩いていた。つまり今はカズスの北辺りだろう。
カズスに行くためにはどうするか……簡単だ。このまま南下すればいい。
602オッス俺ザックスなわけだが 2/2:2006/09/08(金) 01:25:50 ID:U+itUbA90


しかしだ、ここでちょっと困っている俺なわけだが。
正直に言おう……南ってどっちだ、わからん。ザックが無いからコンパスが無いんだよ。
多分……多分俺はちゃんと真東に進んでたと思う。方向感覚は過去の任務で培っていたから
進行方向のラインを大きく外れる事が無い自信はあるんだが……こればかりは困った。
事前に地図を見ていたとはいえ、これは……うん。ヤバい。


……いや、ちょっと待て! ここである事を思い出した俺なわけだが。
確か大森林は北へと範囲を拡大させていた。そして俺が進んでいたのは森林の中でも南の末端だ。
つまり俺が今歩いていた方向からそのまま右に曲がれば良いんじゃないか。
こんな事も気づかないなんて、余程俺の頭には余裕がないらしい。


そして遂に南へと進みだした俺なわけだが。
これでやっとカズスへと辿り着けそうだ。敵がいなけりゃの話だけどな。
どこが勝負だが、どうなるか。流石によろぷよはいないと思うがどうだろうか。
ここで捕まると非常に拙い展開になってしまう。いや、もう冗談抜きで。
口が開かないこの状況では本当に穏便に行きたい。
ああ、本当にどうなるんだろうか俺。運命に翻弄される、とかいうのは勘弁してくれよ。


早くカズスに辿り着きたい。心底そう思う俺なわけだが。


【ザックス(HP1/3程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
 所持品:バスターソード
 第一行動方針:カズスへ向かう
 基本行動方針:エドガーを探す
 最終行動方針:ゲームを潰す】
【現在地:カズス北の平原】
603名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/08(金) 04:29:11 ID:T86yJe2rO
☆★レシピ板にバカ女が降臨しましたよ、まだまだ間に合いますよ★☆ 
 http://food6.2ch.net/test/read.cgi/recipe/1148641917/l50
 
 【胡椒】料理の画像をうpしよう part1【油】 
 
 ある男がパンチラ画像ねだる→パンチラくらいならと画像うp→住人に乗せられる→パイチラもうp 
 ちやほやされる→だんだん過激に→しかし画像の消し方を知らない事が判明 
 プチ祭りに 
 
 596:まなみタン :2006/09/06(水)22:39:23 ID:5Z9t6N3U
 llii|ili(つω-`。)illl||ill うえ〜ん誰か消し方教えてぇ〜
604名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 12:43:35 ID:ybp+yauR0
>>601-602は無効です。
605名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 14:41:10 ID:x/bpcFX/0
>>604
なんで無効なの?
最初はネタかと思ったけど普通の話じゃん。
つーわけで>>604は無効です
606名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 15:54:08 ID:jh9T9Dt5O
>>605は無効

書き手本人が無効宣言したものを勝手に復活させるな
607名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 16:01:56 ID:jh9T9Dt5O
>>605
ついでに無効に至った経緯を知りたいなら裏方雑談スレの70レス辺りからを見れば分かる
608夜空に星を 1/9:2006/09/09(土) 22:22:03 ID:56ktx3600
その夜も、ラインハットは騒がしかった。
一夜のうちに失踪した王と、その兄夫婦を探し、兵士達が国中を駆け回っているのだ。
けれども、彼らの働きを嘲笑うかのように、手掛かりは見つからず。
皇太后がいくら怒鳴ろうとも、三人の足取りは掴めずにいる。
「ええい、誰も彼も怠けおって!
 よいか! 王が見つかるまで兵には休息も睡眠も取らせるな!
 これは我が国の存亡が掛かった一大事! 身を投げ打ち、死ぬ気で探せと伝えるのじゃ!」

無茶苦茶な命令にも、反論できる者はいなかった。
実際問題として、一国の王と、王位継承者が居なくなっているのだ。
デール王とヘンリー夫妻が見つからなければ、ラインハットを継ぐ者は幼いコリンズただ一人。
彼を王の座に立てるとすれば、皇太后が実権を握る形になるだろう。
だが、皇太后は……
魔物に誑かされたといえ、ヘンリーを葬ろうとし、長年の悪政を敷いた元凶ともいうべき人物だ。
民衆の支持も薄い彼女が権力を握ればどうなるか。
王室に仕える者達は皆、口を揃えて『考えたくない』と言うだろう。

皇太后との謁見を終えた後、大臣は自室に戻り、椅子に腰掛けた。
顔色が悪いのは、身体的な疲れよりも心労のせいだ。
「このまま王とヘンリー様が戻らなければ……王家の血も途絶えるかもしれぬな」
悲しげに俯きながら、彼は日記帳の入った引出しを開ける。
すると、視界に、緑色の物体が飛び込んできた。

ぴょい〜ん。ぴょーん。ぴょいんぴょい〜〜ん。
ケロケロケーロ。ゲコゲーコ。ケロケロケロロー、ケロケロロー。

「ッ何じゃこりゃあーーッ!!」
引出しから飛び出したカエルの群れ。その姿に驚いた大臣が大声で叫ぶ。
カエル達は、机の上をみるみるうちに占領し、コンサート会場と変えてしまった。
609夜空に星を 2/9:2006/09/09(土) 22:25:34 ID:56ktx3600
ケロケロー、ケロケロゲコゲコー、ケローケローケーロケロー。
かーえーるーのーうーたーがー、きーこーえーてーくーるーよー……

呆然とする大臣を他所に、カエル達は楽しく歌っている。
誰の仕業かなど、問うまでもない。
こんな悪戯をするのは二十年前のヘンリーと、コリンズ以外にはいないのだから。
「本当に……ラインハットも終わるな……」
カエルの気持ちがたっぷりつまった大合唱を聞きながら、哀れな大臣はがっくりと項垂れた。


「コリンズ王子! こんな所に居られたのですか」
城の外。水面を見つめるコリンズに、兵士が優しい声をかける。
「太后様も心配されておりますし、夜風に当たっていてはお体に触ります。
 今宵はもう、寝室にお戻りになってお休みください」
「うるさいぞ、トム。
 カエルも触れないお前に、命令される筋合いなんかないからな」
コリンズはふんと鼻を鳴らし、そして、膝を抱えて俯いた。
「どうしてもって言うなら、母上か叔父上を連れてこいよ。 
 そうしたら、部屋に戻ってやってもいいぞ」
「……」
トムと呼ばれた兵士は、哀れみの混ざった視線を落としながら、黙ってコリンズの隣に座った。
そして、幼い王子と同じように堀を見つめた。
鏡のような水面は、夜空を映し、きらきらと輝いている。

「トム。お前には星が見えるか?」
コリンズが言った。
それがあまりに唐突だったものだから、トムは困惑してしまう。
何も答えられずにいる兵士を見やり、コリンズは嘲るような笑みを浮かべた。
610夜空に星を 3/9:2006/09/09(土) 22:29:47 ID:56ktx3600
「父上が言っていたんだ。
 夜空の星は、希望と同じ数だけ輝いて見えるんだって。
 星が見えないなら、お前には希望も何もないってことだな」
「なんですか、それ?!」
口を尖らせ、慌てて空を見上げるトムを他所に、コリンズは立ち上がる。
ひとしきり衣服の汚れをはたいてから、城内へ戻る扉に手をかけた。

「父上……星、全然、見えないよ」
少年のか細い呟きは、誰にも届かずに、空気に溶けていった。



「……くそったれ……」
痛みは、身体よりも精神を苛む。
零れ落ちる血は薄紅の水面に溶け、濡れた衣服は無情なほどに体温を奪う。
水深自体は浅かったが、今の状況では慰めにもならない。
意志に反して、意識はどんどん曖昧にぼやけていく。
それでもヘンリーは、星が瞬く空を見上げ、壁面に背を預けながら身を起こした。

気配と足音は、既に感じない。
サラマンダーは遠くへ逃げ、そして、ウルに居るはずの誰もがここで起きた戦闘に気付いていないのだ。
ヘンリー自身も、カーバンクルも、傷を塞ぐ力は持っていない。
助けを呼ばなければ――呼べなければ、待っているのはたった一つの結末のみ。

「っ、はぁ……はぁっ、ぁ……」
揺れる汲み桶、その彼方で輝く小さな星を見つめる。
セントベレスの頂で、助けも希望も、星空を見る自由もないまま、十年の歳月を過ごした時代――
あの時に比べれば、この程度の状況が何だというのだ。
どうしようもなくてもどうにかなる。
どうにかならないなら、どうにかすればいい。
簡単に死んでは、二度も三度も守ってくれたG.F、カーバンクルに。
そして妻に、弟に、亡くなっていた者達に、申し訳がつかない。
611夜空に星を 4/9:2006/09/09(土) 22:32:22 ID:56ktx3600
星を見る。
頭上で瞬く輝きは、『生きる』という希望。
どこかで生きている親友と、恩人に会うために。
帰りを待っている、愛すべき生意気な息子と会うために。
生き延びる。絶対に――

敵に気付かれるかもしれない、という思考はどこか遠くへ消え去っていた。
手を翳す。
出し切れない声の分まで、ありったけの魔力を込める。
狙うは、滑車の上で揺れる枝の影。
ロープが切れないことを、誰かが気付いてくれる事を祈りながら、今まで何度も唱えてきた呪文を放つ。

「イオ!」

光と爆音が空を切り裂き、解き放たれた熱波が木々を打つ。
緑の瞳が己の打ち上げた花火を映し――そして、とうとうヘンリーは気を失った。



「はんちょー達、どこ行ったんやろな〜。
 遊びに行くなら、声かけてくれたっていいのに。
 そしたら、花火とか海水浴とか、はりきって計画立てるのに〜」

ベッドの上に寝転がりながら、セルフィがぼやく。
他人の部屋で、よくもまぁこんなにくつろいでいられるものだと感心しながら、キスティスは椅子を軋ませた。
「そのことなんだけど……
 本当に、遊びに出かけただけなのかしら?」
「ん〜? どゆこと〜?」
脳天気な声が返ってくる。
もふもふと枕を抱えているセルフィに向き直り、キスティスは、ずっと抱えていた不安を口にした。
「誘拐とか、拉致されたとか、そういう状況に陥ってるとしたら……ってことよ。
 だってそうでしょ? 連絡もないし、あの五人が揃って姿を眩ますなんて、普通じゃないわ」
612夜空に星を 5/9:2006/09/09(土) 22:34:10 ID:56ktx3600
「誘拐〜? スコールやサイファーが〜?」
セルフィは首を傾げ、それからすぐに声を立てて笑った。
「そら、アービンやゼルなら、騙して連れ込めるかもしれんけどなー。
 はんちょ〜なんて、腕づくでも絡め手でも引っ掛かりそうにないやん。
 それに誘拐やったら、今ごろ悪の組織が身代金せびってきてるって。
 エスタ大統領の子息でガーデン司令官だもん、100万ギルぐらい余裕で請求できるよー」
だが、キスティスの表情は暗いままだ。
「それはそうなんだけどね……」
椅子を回転させ、机上の端末に視線を移す。
モニターには幾つかの文章が映し出されていた。

『・先日紛失が発覚した、囚人用特殊拘束具G-22号試作設計図の捜索を行う。
  協力者として、サイファー・アルマシー及び、Seed五名の派遣を要請する。
 依頼者:フューリー・カーウェイ』
『・時間圧縮世界にて観測された時空間跳躍ゲートの開発研究を行うため、
  大海のよどみにてオダイン博士の護衛を依頼する。
 依頼者:エスタ科学局』
『・旧魔女討伐班員を派遣してほしい。重大要件のため、概要は口頭で説明。
 依頼者:キロス・シーゲル』

「……何かが、私たちの知らない所で動いてる。そんな気がするの」
白い指先がキーボードを弾き、キスティスは呟く。
スコール達の失踪、急に舞い込んできた幾つもの依頼。
サイファーがガルバディア軍を掌握していた頃に紛失したとされる、試作品爆弾首輪の設計図。
そして、キロスが伝えてきた、エスタ大統領・ラグナの蒸発。
もしかしたらだ。
もしかしたら、これらの事実は全て、一つの絵を作り上げるためのピースなのかもしれない――
その推測に理由や根拠があるわけではない。
単純に、女の勘という奴だ。
それでもキスティスは暗い想像を拭えずにいるし、一方でセルフィは心配しすぎだと笑い飛ばす。
613夜空に星を 6/9
「考えすぎだってばー。
 そんなに心配してるとハゲちゃうよ〜? ツルツルに〜」
ベッドの上を転がりながら、セルフィはからかい半分に言う。
すっかりくしゃくしゃになったシーツを見やり、キスティスは小さくため息をついた。
「いいわね、あなたは気楽で……」

これくらい気楽な性格の方が、幸せに生きていけるのかもしれない。
キスティスの、呆れ混じりの憧憬を知ってか知らずか、セルフィは窓から夜空を見上げる。
青緑の瞳には、満天の星々が映り込んでいた。



あと五分遅かったら、誰にも気付かれなかったのだろう。
だが、気付いた者がいたことが幸運だったとも言い切れまい。

「何だぁ?」
先を走っていたマッシュが、訝しげに林を見やる。
攻撃というには静かな爆発音と、花火というには弱々しい光。
無数のライトアップといい、地面から伝わる振動といい、遠くで聞こえる獣の雄叫びといい、
一体この村で何が起きているというのか。
じっくり考える暇など、どこにも有りはしない。
スコールは剣の束を握り締めながら、木立に足を踏み入れる。

捜し求めている男は、木々が生い茂る山中で四人の人間を葬った。
この世界でも同じように、木陰に紛れての奇襲攻撃を繰り返しているのかもしれない。
だとすれば……止めなくてはならないだろう。
スコールはそう思っている。
そして、彼の気持ちを知っているから、マッシュも黙って後を追う。