+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><着火器具・携帯ランタン><参加者名簿>が支給される。
また、ランダムで選ばれた<武器>が1つから3つ、渡される。
<ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る。(FFUのポシェポケみたいなもの)
・生存者が一名になった時点で、主催者が待っている場所への旅の扉が現れる。この旅の扉には時間制限はない。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。
+首輪関連+
・参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・放送時に発表される『禁止技』を使ってしまうと、爆発する。
・日の出放送時に現れる『旅の扉』を二時間以内に通らなかった場合も、爆発する。
・無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
・たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止魔法が使えるようにもならない。
+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します。召喚魔法は魔石やマテリアがないと使用不可。
・初期で禁止されている魔法・特技は「ラナルータ」
・それ以外の魔法威力や効果時間、キャラの習得魔法などは書き手の判断と意図に任せます。
+ジョブチェンジについて+
・ジョブチェンジは精神統一と一定の時間が必要。
・10-2のキャラのみ戦闘中でもジョブチェンジ可能。
・ただし、スペシャルドレスは、対応するスフィアがない限り使用不可。
・その他の使用可能ジョブの範囲は書き手の判断と意図に任せます。
+戦場となる舞台について+
・このバトルロワイヤルの舞台は日毎に変更される。
・毎日日の出時になると、参加者を新たなる舞台へと移動させるための『旅の扉』が現れる。
・旅の扉は複数現れ、その出現場所はランダムになっている。
・旅の扉が出現してから2時間以内に次の舞台へと移らないと、首輪が爆発して死に至る。
━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活は認めません。
※新参加者の追加は一切認めません。
※書き込みされる方はCTRL+F(Macならコマンド+F)などで検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に、【死亡確認】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。
みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・自信がなかったら先に保管庫にうpしてください。
爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない保管庫の作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
・巧い文章ではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・ …を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
■参加者リスト
FF1 4名:ビッケ、ジオ(スーパーモンク)、ガーランド、アルカート(白魔道士)
FF2 6名:フリオニール、マティウス(皇帝)、レオンハルト、マリア、リチャード、ミンウ
FF3 8名:サックス(ナイト)、ギルダー(赤魔道士)、デッシュ、ドーガ、ハイン、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 7名:ゴルベーザ、カイン、ギルバート、リディア、セシル、ローザ、エッジ
FF5 7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、クルル、リヴァイアサンに瞬殺された奴、ギード、ファリス
FF6 12名:ジークフリート、ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、ティナ、エドガー、セリス、ロック、ケフカ、シャドウ、トンベリ
FF7 10名:クラウド、宝条、ケット・シー、ザックス、エアリス、ティファ、セフィロス、バレット、ユフィ、シド
FF8 6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア、ラグナ
FF9 8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、ガーネット、サラマンダー、エーコ
FF10 3名:ティーダ、キノック老師、アーロン
FF10-2 3名:ユウナ、パイン、リュック
FFT 4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス
DQ1 3名:アレフ(勇者)、ローラ、竜王
DQ2 3名:ロラン(ローレシア王子)、パウロ(サマルトリア王子)、ムース(ムーンブルク王女)
DQ3 6名:オルテガ、アルス(男勇者)、セージ(男賢者)、フルート(女僧侶)、ローグ(男盗賊)、カンダタ
DQ4 9名:ソロ(男勇者)、ブライ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ミネア、ライアン、トルネコ、ロザリー
DQ5 15名:ヘンリー、ピピン、リュカ(主人公)、パパス、サンチョ、ブオーン、デール、レックス(王子)、タバサ(王女)、ビアンカ、はぐりん、ピエール、
マリア、ゲマ、プサン
DQ6 11名:テリー、ミレーユ、イザ(主人公)、サリィ、クリムト、デュラン、ハッサン、バーバラ、ターニア、アモス、ランド
DQ7 5名:主人公フィン、マリベル、アイラ、キーファ、メルビン
DQM 5名:わたぼう、ルカ、イル、テリー、わるぼう
DQCH 4名:イクサス、スミス、マチュア、ドルバ
■生存者リスト
FF1 0/4名:(全滅)
FF2 3/6名:フリオニール、マティウス、レオンハルト
FF3 5/8名:サックス、ドーガ、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 1/7名:カイン
FF5 4/7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、ギード
FF6 7/12名:ゴゴ、リルム、マッシュ、エドガー、ロック、ケフカ、トンベリ
FF7 3/10名:ザックス、セフィロス、ユフィ
FF8 4/6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー
FF9 3/8名:ジタン、ビビ、サラマンダー
FF10 1/3名:ティーダ
FF10-2 2/3名:ユウナ、リュック
FFT 3/4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、
DQ1 0/3名:(全滅)
DQ2 0/3名:(全滅)
DQ3 3/6名:オルテガ、アルス、セージ
DQ4 5(+1)/9(+1):ソロ、ピサロ、アリーナ、ライアン、ロザリー、(アリーナ2)
DQ5 8/15名:ヘンリー、リュカ、パパス、ブオーン、デール、タバサ、ピエール、プサン
DQ6 5/11名:テリー、イザ、クリムト、ハッサン、ターニア
DQ7 1/5名:フィン
DQM 3/5名:わたぼう、ルカ、テリー
DQCH 1/4名:スミス
FF 36/78名 DQ 26(+1)/61(+1)名
計 62(+1)/139(+1)名
■現在までの死亡者状況
ゲーム開始前(1人)
「マリア(FF2)」
アリアハン朝〜日没(31人)
「ブライ」「カンダタ」「アモス」「ローラ」「イル」
「クルル」「キノック老師」「ビッケ」「ガーネット」「ピピン」
「トルネコ」「ゲマ」「バレット」「ミンウ」「アーロン」
「竜王」「宝条」「ローザ」「サンチョ」「ジークフリート」
「ムース」「シャドウ」「リヴァイアサンに瞬殺された奴」「リチャード」「ティナ」
「ガーランド」「セシル」「マチュア」「ジオ」「エアリス」
「マリベル」
アリアハン夜〜夜明け(20人)
「アレフ」「ゴルベーザ」 「デュラン」「メルビン」「ミレーユ」
「ラグナ」「エーコ」「マリア(DQ5)」「ギルバート」 「パイン」
「ハイン」「セリス」「クラウド」「レックス」「キーファ」
「パウロ」「アルカート」「ケット・シー」「リディア」「ミネア」
アリアハン朝〜終了(6人)
「アイラ」「デッシュ」「ランド」「サリィ」「わるぼう」
「ベアトリクス」
浮遊大陸朝〜 (19人)
「フライヤ」「レオ」「ティファ」「ドルバ」「ビアンカ」
「ギルダー」「はぐりん」「クジャ」「イクサス」「リノア」
「アグリアス」「ロラン」「バーバラ」「シンシア」「ローグ」
「シド」「ファリス」「エッジ」「フルート」
『ティーダの服のポケットに、持ち主の人の手帳と鉛筆が入りっぱなしになってたらしい。
白紙のページも多いし、頼んでみたら譲ってくれたので、色々書き残すのに使おうと思う。
また記憶を無くした時、困ったり迷惑かけたりしないように。
あと、記憶が戻った時に、またみんなを裏切ったりしてしまわないように。
僕は今、ゼル達と一緒にいる。
カズスで偶然再会することができた。
本当はもう少し前に再会できていたかもしれなかったらしいけど
どっちにしても無事で良かった。
でも、そんな風に再会できたのも、ティーダと、ソロ達と、レナさん達のおかげだ。
いつかきちんと謝って、お礼を言おうと思う。
相変わらず、一日目のことは思い出せない。
誰を傷つけて誰を殺めたのか、スコールに何をやってしまったのか、
騙した女の子って誰なのか、バーバラと僕がどんな関係だったのか
肝心なことは何一つダメだ。』
『思い出せるのは、リチャードとギルバートを殺した時のことと
宿屋の中でヘンリーさんに散々家族自慢を聞かされたのと
何だか女の子ばっかり相手にしてた気がするのと
今以上に似合わない格好をしてた気がするってことだけ。
それ以上は思い出そうとしても頭が痛くなってくる。
イクサスの毒、種類はよくわからないけど、まだ症状が残ってる。
毒そのものの症状というより、後遺症なのだろう。
カズスに行くまでに結構時間が掛かったっていうし
命が助かっただけでも実は奇跡的だったのかもしれない。
それでも、ユウナやリルムが魔法で手当てしてくれた分、少しはマシになってきた。
こうして文字も書けるし道具も持てる。
ただ、やっぱり指先に力が入れられない。』
『ユウナの銃を借りたけど、トリガーが重くて引けなかった。
銀球鉄砲なんて子供の玩具、軽くしてもいいと思うけど、あれじゃ実銃並みかそれ以上だ。
それで、プサンさんが試しにと、とても軽い剣を貸してくれたので
ガーデンでのシゴキを思い出しながら素振りしてみたら
危うく殺害リストにティーダかプサンさんを載せてしまいそうになった。
しっかり握れないのに物を振り回すのは危険だってことを心で理解した。
剣は返して、ティーダの杖を貸してもらうことになった。
杖ならすっ飛んでも死人は出なさそうだから。
二度目の休憩。多分三時過ぎだろうか。
一時間ぐらい歩いたけど、やっぱり疲れる。それに木の根っこのせいで転んでばかりで足が痛い。
だいたいサスーンは遠すぎる。
じゃんけんで勝ったゼルが決めたのだが、人への配慮が足りないと思う。
図書委員の子がなんであいつに惚れたのか理解に苦しむ。』
『お腹が空いたから袋の中を調べてみた。
パンと水と、カンパンとビンヅメとふわふわの黄色いパンケーキが入っていた。
ゼル達の荷物には、カンパンもケーキも入っていないらしい。
ヘンリーさんが食料がどうこう言ってたけど、これのことだったんだろうか。
で、パンケーキを食べようとしたら、リルムに全部取られた。
仕方なくカンパンをかじったけど、何だかとても惨めになった気がした。
それで、パンケーキは誰が焼いたのかとか考えていたら
無性に悔しくなってきた。
ターニアちゃんお手製(だと思う)パンケーキ、一口ぐらい食べたかった。
突然、ゼルがセルフィって人のことを聞いてきた。
その人に言われたから日記を書いてると思ったらしい。
全然違うけど、面倒だから適当に相槌を打った。
誰だろう。図書委員の子? シュウの名字? 前に見かけたすげー巨乳な女子生徒?
CC団のダイヤのどっちか? カードクィーン? それとも大穴で風神の本名って…有り得ないか。』
道程は、至って平和だった。
どれぐらい平和だったのかといえば
6人という大規模な集団なのに、誰かに――見ていた者はいたのかもしれないが――襲われることもなく、
談笑などをしながら森の中を歩いて、毒や怪我の治療をし直したり、遅すぎる昼食や間食にありついたりして、
あまつさえ持ち出した服のポケットに収まっていた手帳などで日記をつけたりする余裕さえあったほどだ。
横たわっていた、少女の遺体を見つけるまでは。
ティーダにしてみれば、昨夜の、頭を踏み潰された男を思わせるほど酷い有様だった。
機関銃でも撃たれたのか、胸も腕も顔も爆ぜるように抉られていた。
それなのに人の姿を確かに留めていた。青いワンピースは赤黒く汚されていた。
その女性を見知らぬティーダ達さえ、あまりの惨状に激しい怒りと恐怖を覚えたのだが――
問題は、無関係ではない人間がいたということだ。
『リノア=ハーティリー。
僕らの仲間だ。友達と言った方がいいかな』
淡々と言ったアーヴァインは、冷静というよりも、諦めたような表情をしていた。
その脇で、ゼルが遺体に縋り付きながら少女の名前を呼び続けていた。
繰り返し繰り返し、壊れたテープレコーダーのように。
「――ティーダ?」
ふと、名前を呼ばれる。
顔を上げると、ユウナが気遣うような視線を向けていた。
「どうしたの? ボーっとして」
「……なんでもない。ちょっと考え事してたッス」
首を横に振りながら答える。
それでも納得がいかないのか、ユウナは別の質問を投げかける。
「心配なの? ゼル君たちのこと」
ティーダは首を縦に振る。
そんな二人に、プサンが横から口を挟んだ。
「気持ちはわかりますが、一緒にサスーンに行くよりは安全でしょう。
あそこまで頭に血が上っていては、命に関わる勇み足をしかねませんよ」
「そりゃわかってるッスよ……でも、リルムとアーヴィンだけで、平気かなって」
「そういうことは、答えようがないですねぇ。
未来を知るなど、人にも魔王にも神にも無理な相談ですから」
悟った事を言う中年男に、ティーダは大きくため息をつく。
「……そりゃそうだけどさぁ。
そこはフツー、『二人を信じましょう』って励ますところじゃないッスか?」
「無責任なことを言うのは好きではないんですよ」
リュカやタバサが聞いたら、呆れるか突っ込むかしそうなセリフをさらっと吐いてみせる。
それからこほんと一つ咳払いをして、話を続けた。
「とにかく、彼らに天運の加護があることを祈るのみですよ。
そもそも人の身を案じる前に、自分の身を案じた方がいいかもしれません。
リノアさんを殺した人物は、間違いなくサスーンの方角へ向かったのですからね」
――その本性こそオーブに封じてしまったといえ、プサンは曲がりなりにも『神』であった身だ。
未来こそ知ることはできないが、残されたオーラや魔力を手がかりに、人物やアイテムが辿った過去を見ることができる。
ただし、それなりの時間と気力を使い、静かな場所で深く瞑想をすれば――という話だ。
それにゴールドオーブのような、かなり強い力を放っている品でないと痕跡自体が残ってくれない。
しかも近くに同質の力を持つアイテムがあったりすると、途中で入り混じってわからなくなることもある。
ドラゴンオーブを中々見つけ出せないのもそのせいで、元が彼自身の力だけに、自分のオーラと判別がつかないのだ。
だが、長時間の過去視でなければ。
その場所でごく最近に起きた出来事を見るだけならば、そこまでの時間や気力を使わずにすむ。
そしてまた、直接歩いてオーラを辿るのは、犬が匂いを辿るのと同じぐらいに容易い。
「リノアさんが持っていたアイテムのオーラは、まだはっきりと残っています。
彼は確実に、数時間前にここを通り、城へ向かった。
もちろん、今はもう城を発っているかもしれませんが、ばったり鉢合わせないとも限りません。
ですから、我々の方も気をつけていかなければ……」
――そんなプサンの言葉を、しかしティーダは殆ど聞き流していた。
あの時の、二人の姿を思い出していたために。
『許さねぇ……絶対に許さねぇ。リノアをこんな風にしやがって……』
握った拳から血を滴らせ、イクサスに似た目つきで復讐の誓いを呟き続けていたゼルのことを。
『ちょっと剣貸してよ。ゼルにバレないように、埋葬するついでに首輪取っておきたいから』
そう言って仲間の首を切り落とし、首輪とネックレスを拾っていたアーヴァインのことを。
確かに、ゼルをサスーンに連れて行くことは良い判断とはいえないだろう。
リノアを殺した犯人がいれば、無鉄砲に突っ込んでしまうかもしれない。
彼女に関わった者がいれば、犯人でなくても殴りかかったりしかねない。
それでなくても殺し合いを強制されている状況だ。
判断を一つ誤ればゼル自身の命が危ないし、最悪の場合、無関係な相手と戦闘を起こしてしまうことだって有り得る。
そうなるよりは、比較的落ち着いているこの三人で用事を済ませ、後で合流した方がいい。
麓とはいえ山の中なら、通る人間も敵に会う確率もずっと少ないはずだ。
刺激を与えなければ、時間に比例して感情も多少は落ち着くはずだ。……が。
(ゼルだけじゃなくて、アーヴィンもどっかおかしいって……
向こうにはリルムもついてるけど、まだ子供だし……そんな、頼りには……)
「大丈夫ですよ」
唐突にプサンが言った。
心を見透かされたかのようなタイミングの良さに、ティーダは動揺の色をありありと浮かべる。
そんな彼を余所に、プサンは言葉を続ける。
「人の心は、確かにガラスのように砕けてしまうこともあるかもしれません。
ですが、鋼のように、打たれることで強靭さを増すものでもあります。
強くもあり弱くもある……弱くもあり、強くもある」
そこで彼は一旦言葉を切った。
――常人であれば、起きた出来事を知っていたなら、決して言えないであろう言葉。
だが、全てを知るが故に、人ではない彼は言う。
「信じましょう、彼らの強さを」
――
『―― 突然、ゼルがセルフィって人のことを聞いてきた。
その人に言われたから日記を書いてると思ったらしい。
全然違うけど、面倒だから適当に相槌を打った。
誰だろう。図書委員の子? シュウの名字? 前に見かけたすげー巨乳な女子生徒?
CC団のダイヤのどっちか? カードクィーン? それとも大穴で風神の本名って…有り得ないか。』
気楽で、脳天気で、平和な文章。
一通り目を通したあと、ページをめくる。
『###ノ###を見####け##。#### ###### #### ### ### ####
血####おい##が##て#%歩######っ##らぶよ####し####のを踏####けた
##足###%##ノ##が##た####リノ####も##リノ#####なかっ####
ゼ###は泣###けど僕####け#####っ#### ### ## #### #### ##
####アは顔####もぜん####たずたで####くて ######
青####ン##ー####赤##く##なっ####て######### ##### ###
####た頭か####か落ち####色##ぶよ####して#### ####
#####ダがいろ####声をか####た####### ####
や####り僕は####の####し####だ #### ## ###』
###僕####ィ####に頼####で#########た #### ####
上####力##入れ#####な###た####足####んづ####切####
####ノ####も####ノ#####ゃな#####ら ####た首か####輪を取##
僕####生######めに##必##な######から ###
#####で穴####って######じゃなく######た####アを埋#####』
殴り書きの上から、乱雑に塗り潰された文章。
その隣、殆ど白紙のページに、たった一行だけ書かれた言葉。
『 考えるな 忘れろ 』
――それで、終わっていた。
リルムは手帳を閉じ、そっと地面に置く。
同時にがさがさと茂みが揺れた。
「あー、面倒くさー。僕、この手の地味な肉体労働なんて向いてないよー。
ねぇ、これだけあれば一時間は持つよね?」
リルムの挙動に気付くことなく、青年は抱えた木の枝を地面に置く。
焚き火の燃料になるはずのそれは、けれど細く小さいものばかりで、あっという間に燃え尽きてしまいそうだ。
自分の身体を影にして、手帳をザックの傍に寄せながら、リルムは意地の悪い微笑を浮かべてみせた。
「そだね。三十分持てばマシってところだけど、足りなくなったら集めてきてくれるもんね」
その言葉に、青年はあからさまに顔を引きつらせる。
けれど言い返そうとはせず、変わりに大げさな身振りで肩を竦めた。
「はーいはいはい……わかったよ、わかりましたよお嬢さん。
……で、ゼルの様子はどう?」
「少しブツブツ言ってたけど、寝ちゃったよ」
リルムは絵筆を手にとり、筆先ですぐ横の岩陰を指す。
そこには、すやすやと寝息を立てるゼルの姿があった。
「そっか……眠れるぐらい落ち着いたなら、もう大丈夫かな」
「落ち着いたってより、疲れてたのもあるだろうけどね。
……でも、話聞いてくれてよかったね。
サイアク、スリプルかけちゃおうかって思ってたから」
「うわー、カゲキ」
「殴るのもカゲキだと思うよ。
『リノアのカタキ討つ前にやることがあんだろーがこのバカゼル!』、なーんて叫んでさ」
「……言わないで。そういう風に聞かされると自分でクサくなってくるから」
「いいじゃん。クサいの、嫌いじゃないよ」
そう言って微笑みながら、リルムは十数分前のことを思い出していた。
『……なんつったっけかなぁ、このライオン』
ゼルは地面に寝転がりながら、手首に巻きつけたネックレスを揺らす。
『ライオン?』
聞き慣れない言葉に、手帳を読んでいたリルムはふと顔を上げた。
ゼルは答えずに、しばらく、ネックレスに通された指輪を見つめていた。
そしてまた、唐突に呟く
『リノアと、約束してたんだ』
『約束?』
『この指輪……スコールのと、そっくり同じ奴作ってやるってよ。
それで、オレがスコールから借りたんだ』
『………』
リルムは文章から視線を離し、銀色の輝きに目をやった。
幻獣のような魔物のような、見たことの無い動物が彫られた指輪。
『テメーが借りたモンは、責任もって返しにいけよ、か……
そうだよな……カタキ討ちたいのも、オレだけじゃねぇしな……』
そう言って、ゼルは疲れたように目を閉じた。
「――まぁ、ゆっくり寝て、ちっとは頭冷やしてくれればいいけどね。
こんな状況で感情に任せて動いたりしたら、……大変なことになっても、知らないっての」
アーヴァインは愚痴でもいうかのように独り言をこぼす。
言葉の最後が震えていたのは、少女の気のせいか、そうでないのか。
リルムは遠慮しがちに口を開いた。
「……あのさ」
「ん? 何?」
きょとんとした様子で振り向くアーヴァインに、リルムは躊躇う素振りを見せ――俯く。
「ううん、何でもない」
アーヴァインは首を傾げ、リルムを見つめた。
拗ねるように俯く少女に、青年は途惑いのこもった瞳を向ける。
そうして、薄赤に染まり始めた空の下、しばしの沈黙が過ぎていく。
「あのさ」
やがて、意を決したようにリルムが呟いた。
「そこのニワトリ頭みたいにさ……辛い時は辛いって、悲しい時は悲しいって、素直に言った方がいいよ。
無理に我慢してても、余計辛くなるだけだよ」
青年は目を見開き、動揺と狼狽の色を見せた。
しかしそれは一瞬のことで、すぐに仮面のような微笑が口元に浮かぶ。
「……悲しいのは確かだけど、そこまで辛くもないさ」
わざとらしく明るい調子で答える青年に、少女は射抜くような視線を注ぐ。
「嘘つき」
「嘘じゃないってば。見てよ俺の目、嘘つきの目はこんな綺麗じゃないだろ?」
アーヴァインは道化じみた所作で、リルムの顔を覗き込んだ。
リルムは呆気に取られたが、すぐに肩を竦めてこう返す。
「そうだね。とても濁ってるよ」
「……絶望した。君のその一言に絶望した」
青年は額に手を当て、がっくりと肩を落とす。
けれども、ふざけた態度はそこで終わりだった。
ふう、とため息をつき、アーヴァインはゆっくりとリルムに視線を戻す。
「ま、こっから先はマジな話だけどね。
冗談抜きで、俺はそんな傷ついてないから大丈夫だよ」
そう言いながら腰を降ろし、子供のように前髪をくるくると指で巻き取る。
「ゼルはね。ネアカの単純熱血バカだから、リノアが死んだなんて考えようともしなかっただろうしさ。
リノア以外にも、俺のこととか、フルートって奴のこととか、色々あったから……
ショック受けて、プッツンキレるのも仕方ないさ。
でも、俺は違うんだ。今までのことは全部発散したし、リノアについても覚悟ができてた」
彼はそこで一旦言葉を切り、積んだ木の枝の一つを手元に寄せると、先端を地面に突き刺した。
手持ち無沙汰そうに動く手に従い、枝先は地面に乱雑な模様を描く。
「大体さ、リノアの力をバーバラが使ったってことは、リノアに何かあったって考えるのが筋だろ。
……ずっと最悪の可能性しか考えてなかったし、ストレートに言えば諦めてたんだ。
だから、ショックなんか大して受けてない。
だいたい俺だって男だ、女の子に心配されるほど落ちぶれちゃいないよ」
「男だ女だって、それって男女差別だよ。そういうこと言ってると似顔絵描くぞ」
むすっとしたようにリルムは頬を膨らませると、ぴこぴこと絵筆を動かした。
その意味を図りかねつつも、アーヴァインは言い返す。
「年齢も問題だってば。これでも17歳だぞ17歳。
スコールやゼルやティーダと同い年なんだからな」
「6歳しか違わないじゃん。セリスとロックより差ないよ」
「11歳児に甘えるよーなヘタレにはなりたくないの〜。
……とにかく、気ぃ使うならそこのバカに使ってやりなよ。
俺は……平気だし、無理してるわけでもないからさ」
青年の言葉に、リルムは口を尖らせる。
しかし何かを言おうとはせずに、アーヴァインと同じように枝を取ると、地面の上で小刻みに動かし始めた。
二頭身にデフォルメされた、しかし一目で青年とわかる絵が瞬く間に描き上がっていく。
アーヴァインはしばらくその様子を眺めていたが、やがて何かを思い立ったように立ち上がった。
「俺、もう少し焚き火用の枝集めておくよ。
この世界、結構風が強いし、夜になって寒くなったら大変だからねー」
そうして、相変わらず作り物のような微笑を浮かべてみせてから、青年は少女に背を向けた。
残された少女は、土の上を見つめていた。
刻まれた線でしかないはずのそれに、触れてもいないのに色が塗られていく。
肌色、茶色、白、オレンジ、青……
そうして完成した『絵』は、まるで水面から抜け出すように、ふわりと浮きあがった。
――それから、十数分後。
「ふー、やれやれ。やっぱ地味な肉体労働は向いてないよー。
ねぇ、これだけあれば二時間は持つよね?」
戻ってきた青年は、先ほどと似たようなことを言いながら木の枝を置く。
そして横の地面を見やり、眉をひそめた。
「ねぇ……なんで泣いてるの、この絵。
さっきはもっと元気な顔してただろー?」
「リルムのせいじゃないよ。
リルムの絵はコピーだから、モヤシがそうだからこうなったんだよ」
「……まーたまた、そんなテキトーなこと言っちゃって〜。
俺のこと、そんなに泣かせたいわけ? サイファーじゃあるまいし、勘弁してよ」
青年は怒ったように、けれども張り付いた笑顔崩さぬまま、リルムの頭を軽く小突く。
「さーて。ちょっとだけ火、熾してみよっか。
都会人だから寒いの嫌いなんだよね」
彼はそう言って自分のザックを空け――「あれ、この手帳出しっ放しだったっけ?」――着火器具を探し始めた。
リルムは青年の後ろ姿を見ながら、小さな声で呟く。
「……さっきからオレオレって、それでカッコつけてるつもりかよ」
それから手を伸ばして枝を取り、泣き顔の絵の上からぐりぐりと線を描いて、塗り潰した。
「ちょっとは信じなよね、バカ」
【リルム(右目失明) 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪 ブロンズナイフ
第一行動方針:見張り&休憩】
【ゼル(睡眠中)
所持品:レッドキャップ ミラージュベスト リノアのネックレス
第一行動方針:スコールを探してネックレスを渡す 第二行動方針:リノアの仇を討つ】
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失)
所持品:竜騎士の靴、自分の服、ふきとばしの杖〔3〕、手帳、首輪
第一行動方針;見張り&休憩】
【共通行動方針:ティーダ達を待つ】
【現在地:サスーン南東・山の中、森との境付近】
【ユウナ(ジョブ:魔銃士、MP1/2) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子】
【プサン 所持品:錬金釜、隼の剣
【ティーダ(変装中@シーフもどき)
所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服
第一行動方針:サスーンを探索した後、リルム達と合流する
第二行動方針:機械に詳しい人を探し、首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける】
〜カナーン地方〜
【レックス(埋)、ドルバ】:『カナーン北の草地』
テリー(DQ6)、クリムト:『カナーン北の山脈の麓→カナーンへ』
サイファー:『カナーンの町から北→カナーンへ』
ザックス、オルテガ:『カナーンの町南部の平原』
アルガス、ウネ、ライアン、アリーナ:『ジェノラ山→カナーンへ』
オルテガはザックスを移動させたらしい。
サイファー、オルテガ組は町からかなり近いところに。
テリーとクリムトの時間軸は他より多少進んでいるようなので注意。
〜カナーンの町〜
ロザリー、イザ:『カナーンの町北部』
ギルガメッシュ、パパス:『カナーンの町東部』
【ファリス】:『カナーンの町南部』
※ダガー:『カナーンの水路』
何気にダガーが一本水路に落ちてる。使われる可能性は非常に低い。
ファリスの死体は放置、他の二組も放置気味。そのうち誰かと会うだろう。
カナーンは町だと言い張ってみる。
新作乙です。
日記に何が書いてあったのかを推測したくなる。
何となくは分かるけど。
☆湯
保守。
ほ
し
保守
ゅ
( ^ิu^ิ)
hosyu
32 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/08(土) 19:19:21 ID:54omG1Vn
age
ほしゅ
34 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/11(火) 00:33:24 ID:G/HWy3cQ
保守
ゅしほ
ほし
hosyu
傍らでは怪我を負った全身赤い服の男がときおりうわごとのように人の名を呼んでいる。
とりあえずベホイミで傷を塞いだところ疲労が蓄積していたのだろう、男はそのまま眠りに落ちた。
応急処置として複数回かけておいたが、この世界ではその効用は疑わしい。
故に早いところ適当な屋内へ移動してこの男を休養させたいところなのだが、
そのパパスの思いは残念ながら叶ってはいない。
壁の内側にある町はしばらく静かなままだが、様子を見にいったオルテガも帰ってこないまま。
下手に動くこともできずにただ時間だけが過ぎていく。
「すまねぇ…バッツ……」
また、誰かの名を呟いている。
彼がうわごとで繰り返す名前は数人。
回数が多いのがバッツとサリィで、次にレナとファリス。そしてクルルという名も。
うちクルルの名前は放送で聞いた覚えがある。ファリスには会ったことがある。
バッツはその彼が仲間と言っていたか。妹がいるとも言っていた。
おそらく彼らは同じ世界、あるいはこの世界での仲間なのだろうと判断したが、
なぜ謝り続けているのかはパパスにはわからないままだ。
仲間を助けられなかったこと、仲間を助けられないことへの悔いだろうか。
普段より近く見える午後の青空を眺めながら、
パパスもまたこのゲームに参加させられた不幸な仲間、そして子供達のことに思いをはせる。
サンチョ。頼りになる男だった。だがもう、この世界に彼の愛嬌ある姿はない。
ヘンリーとデールの兄弟。思えばラインハットでの出来事は彼らにとっても不幸なことだった。
ビアンカ。息子の幼馴染で、そういえば随分勝気な娘だったな。
そして未だ出会うことのない息子、リュカ。
名簿で見た4人は既に成長した姿であったが、今彼らはどうしているのだろうか。
姿の変化は戸惑うだろうが、自分の記憶ではみな愛すべき子供達のままだ。
何とか生き延びていてくれればいつか会うことはできるはず。
町を囲む壁から伸びる影が少しずつその長さを増す中、パパスはただ、じっと待っている。
後方に見える建物に常に気をつけながらイザは剣を手にゆっくりと町を探っていた。
二人と別れたあとはとりあえずすぐに魔法屋の安全を確認。
そこではたと思い当たる。この町で戦闘があったことは疑いない。
だからその一方の当事者があのスライムナイトだとして、その相手が必ずいるわけだ。
背中に冷たいものが走る。
どうして、悪い方の予感を排して考えることができるだろう。
そいつが他人を殺してまわっている悪人ではない、なんて、だれも証明してはくれない。
フラッシュバック。刀に貫かれるリディアの姿。
だから、多少誇張してでも危険とけが人がいたときの救急治療の必要性を説いて、
ロザリーには屋内で救護用の結界を張ってもらうことにした。
向かいにあった建物は武器屋、でも今は中を調べる余裕は無い。
後ろに注意のポイントを背負ったままでは広い範囲を探索するなど不可能で、
川の向こう、つまり町の西側などとても無理だ。
とりあえず見てきた範囲では特に何も見つからず、イザはいくらか安堵した。
残りはサイファーが(できるなら一緒にアルスも)帰ってこないと仕方ないだろう。
この世界でのここまでの経験で実感したことは、
自分が強くないということ。願うことすべてをやり遂げるような強さなんかないということ。
負傷者を見つけたら当然助ける。しかし、まずは自分を、手にした仲間を、
守らきらねばならない。
周囲に危険がないことは確認し、とりあえず魔法屋まで戻ってきた。扉を開く。
「あ、イザさん。お帰りなさい。誰か…いましたか?」
「いや、この近くには今は誰もいないみたいだ。ところで結界のほうは?」
室内には魔法陣が描かれ、あちらこちらにアイテムが配置されている。
「ええ、大丈夫。この本があれば私でもできますから。
それにしても、ずいぶん経ちますね。お二人はどこまで行ったのでしょう」
イザはほんの少しだけ最悪の事態を想定するが、すぐに振り払う。
手の届かないことについては、信じるほかない。
ザックスが時々筆を休めるなか、時間をかけて状況説明が続いていた。
オルテガは彼が伝えたいところを自らの考えで補いながら話を整理する。
初めに描かれたのはたまねぎ、いや目がある。オルテガはスライムだろうと理解した。
その上に鎧をまとった何者かが乗っている。これはオルテガの知識の範疇に無い。
ザックスはその絵の下に『モンスター』『おそわれた』の字を加える。
それからオルテガの目線を確認して、
『まほう→口』、そして書いた口の字に×をつける。
「スライムの上に乗った何者かに襲撃され口が使えなくなった。それでいいか?」
うなずくザックス。
次に『テリー』と書き丸で囲む。確か、そういう名で呼ばれていたはず。
その横に同じく丸で囲み『なかま』、二つの丸を線で結ぶ。
それらの下に『ごかい、バトル』の文字を書き加えると、ふむ、と相づちがはいった。
筆代わりの棒で注意を引き、先ほど書いたスライムの騎士を指す。
少し考えたあとそこに『りだつ→再アタック』と書き加えた。
「むぅ…。片方はテリーという名の二人組の第三者がさらに参戦し、やむなく交戦。
その隙をついて最初の奴が逃げた振りから奇襲をかけてきた? …でいいのか?」
初めは吟味するように小さく、そして追認するように大きくうなずくザックス。
そして『なかま』に×を重ね、『テリー』から矢印を延ばしその先に『とうそう』、
新たに『自分=きぜつ』を書き足した。
「その奇襲でテリーとやらの仲間がやられ、テリーは逃走。
そなたも気絶したというわけか。そこまでか?」
ザックスは再び大きく首を縦に振り肯定を示した。
「ふむ…私もそなたを見つけてすぐ場を離れたからわからぬな。
ではあの近くに死体、そしてそやつがいたということか。
だが、まずは私の仲間と合流するとしよう、少し待たせすぎたかもしれん。
続きはそれからだな。……立てるか?」
カナーンの町はジェノラ山や北の山地に連なる東側と北側が高くなっている。
街並みを一望できるその北の高台にはためく白いコートがあった。
アルスはどこかへ飛ばされてしまったし、あのモンスターにも逃げられてしまった。
こうなれば早いところあいつらのところへ戻らねぇと。
駆けていた間も止まっている今も、時間とともに漠然とした嫌な不安が足を急き立てる。
少しの間だけ立ち止まった眺望に別れを告げ、一気に町へ駆け下っていく。
「しかしあいつらは今どこにいるんだ? …落ち合う場所くらい決めときゃよかったぜ。
もしかして町中探すしかねぇのか?」
そうしてサイファーは町の中心部へ向け急ぐ。
今そばを通り過ぎた魔法屋の中に二人がいるなどと思いもせずに。
ザックスを連れパパスたちと合流したオルテガは
簡易に事情を説明するとその足で町の中へ向かうことを提案した。
即座に同意し、パパスは立ち上がると眠ったままのギルガメッシュを背負う。
目的は、テリーの仲間を弔うことと休憩に適した屋内への移動。
この町で倒れた者が昨日別れた相手だとは思いもせずに。
カナーンの空もいつしかほんの少しずつ青から赤へ移りつつあった。
【ザックス(HP1/4程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
所持品:バスターソード
第一行動方針:オルテガ達と情報交換
最終行動方針:ゲームの脱出】
【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
第一行動方針:死者の埋葬と休憩場所の確保、それからザックスと情報交換
第二行動方針:アルスを探す
最終行動方針:ゲームの破壊】
【ギルガメッシュ(HP1/3程度・睡眠)
所持品:厚底サンダル 種子島銃 銅の剣
第一行動方針:不明】
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
第一行動方針:死者の埋葬と休憩場所の確保、それからギルガメッシュの治療
第二行動方針:仲間を探す
最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:カナーンの町の東→カナーンの町へ】
【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
第一行動方針:サイファーとアルスを待ちつつ待機。負傷者がいたら救う
基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル
第一行動方針:同上
基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:カナーンの町・魔法屋】
【サイファー(右足軽傷)
所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
第一行動方針:ロザリーとイザを探す
基本行動方針:ロザリーの手助け
最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:カナーンの町・中央の橋】
――人はみな彷徨える羊
己の行く末さえ知らず 道無き荒野に放られた
俺はふらふらと歩いていた。
一人でもセフィロスを倒しに行くか。
リノア達を探して、事情を話して合流するか。
どうすればいいのか、決められずに。
――実際に剣を交えた今ならわかる。
いくら重傷を負っていようが、セフィロスは決して一人で勝ちきれる相手ではない。
負けが許されないことを考えると、やはり迂闊に追いかける気にはなれない。
だが……リュカ達を見つけて、追いつけたとして、果たして力を貸してくれるだろうか?
二人からすれば、自分は裏切り者同然だ。
なにせ、子供や仲間の仇であるクジャを助けろと懇願したのだから。
そんな相手を、再び仲間として受け入れてくれるものだろうか。
それに探しても見つけられなければ、相手に回復する時間を与えてしまうことになる。
今という最大最高の好機を逃してしまったら、二度と勝機を見出せなくなるかもしれない。
悩んで悩んで、悩みぬいた。
それでもやっぱり道を見出す事はできなくて、仕方なしに歩くことにした。
とりあえず移動していれば、セフィロスなり、リュカ達なり、俺の知らないヤツなり……
誰かしらに出会えるだろうと考えて。
そうして、見つけた相手次第で、自分の出方を決めようと思って。
――見果てぬ地を探し 閉ざされた門の前を彷徨う
哀れな羊よ その身体 安らぐ時は訪れず
その六人組を見かけたのは、太陽が大分傾いてきた頃のことだ。
格闘家っぽい金髪の男と、髪を切ったダガーにちょっとだけ似た女性と、酒場でシェーカー振ってそうなオッサンと、
絵筆を持った子供と、似合わないバンダナを巻いた剣士と、背の高い白魔道士。
そのうち最初のヤツが、リノアの言っていた『仲間』と似ているように思えた。
『こーんなツンツンのトサカ頭で、顔にペイントしてるの。
身長はわたしよりちょっと高いぐらいかな。男の子にしたらちっちゃいよね』
名前は確か、ゼル……だったか。
着ている上着と帽子こそ、参加者リストや攻略本に載っていた写真とは違っていたけど、他の特徴は完璧に一致する。
俺は声を掛けようと、六人に近づいた。
だが、目的を果たす事はできなかった。
彼らの傍に作られた土の山を見てしまったせいで。
彼らの会話が聞こえてきたせいで――俺の足は、止まってしまった。
「……早く、サスーンへ……リノアの仇を……」
その言葉の意味を理解するまでに、数分を要した。
受け入れるには、もっと長い時間が掛かった。
俺が我に返った時には、六人組はとっくの昔にサスーンの方へ歩き出していた。
声を掛けて事情を聞き出す勇気は、俺にはなかった。
木陰の影で立ち竦んだまま、六人組の後ろ姿を見送った。
それでもやっぱり信じたくなくて、否定する材料がほしくて。
連中が去った後、俺は大急ぎで盛られた土を掘り返し始めた。
――人の愛を求め 夢なき眠りの中を彷徨う
哀れな羊よ その魂 癒される事は決して無く
出てきたのは、あまりにも予想通りで、想像だにしていなかった代物だった。
一体どこのどいつが想像できるっていうんだ?
たった半日前まで自分の隣を歩いていた相手が。談笑してた相手が。
上半身を蜂の巣のように撃ち抜かれ、首を切り落とされた無残な姿で、土の中に横たわってるなんて。
しばらくの間、俺はリノアの遺体を見つめていた。
そうしているうちに、自分の心に黒い何かが沸き起こるのを感じた。
絶望なのか、無力感とでも言えばいいのか。
虚ろな何かが、覚悟や決意や正義感といったもの全てを飲み込む暗闇が、心に広がっていくのを感じた。
どれほどの時間、呆然と突っ立っていたのかは、自分でもわからない。
やがて俺はリノアを埋め直し、その場を後にした。
やらなきゃいけない事があると頭は告げる。
リノアの仇を探す、姿の見えないリュカを探す、セフィロスを倒しに行く。
どれか一つでも――いいや、その全てを成し遂げなければならないのだと告げる。
でも、心が動いてくれない。
真っ黒に塗り潰されたようで、ぽっかりと穴を開けられたようで、気力が沸いてこない。
どこへ向かうべきなのか、何を考えればいいのかさえもわからない。
それでも、身体は勝手に歩き続けた。
行く宛てもないのに、歩き続けた。
――時が流れている限り この世の全ては移ろい行くか
哀れな羊よ その心も 行く道すらも定まらぬ
そうして、空が赤らんできた頃だ。
ふと、遠くに人影が見えた。
どこか見覚えのある気がする、緑の帽子を被った、自分と同年代の男。
俺としては声を掛ける気力なんて無かったけど、今回は相手の方も俺に気付いた。
「……あ、こんにちは」
ひどく青白い顔をしたそいつは、右手を剣の束に当てて、俺を見据えながら言った。
警戒しているんだか呑気なんだかわからない挨拶に面食らいながらも、俺は何となく会釈を返した。
こんなことをしている時間は無いんだと、頭の中で繰り返しながら。
何もしたくない、立ち話すらも面倒だと、内心で呟きながら。
「……あの……一つ聞いておくけど、殺し合いに乗ってるってことはないよね?」
男の言葉に、俺は呆れ帰る。
乗ってる人間が『ハイそうです』と答えてくれるとでも思っているのだろうか。クジャなら言うかも知れないが。
「乗ってねーよって答えたら、あんたは信じるのか?」
「態度にもよるね……笑顔で肯定してたら疑ってた。
君みたいに、マリベル並にビシビシ言ってくる人は信じるかな。
ま、本当に殺し合いに乗ってる人は、最初から僕に付き合ったりしないだろうけど……」
「マリ……ベル?」
俺は引っ掛かるものを感じて、まじまじとそいつの顔を見た。
そして、記憶の中から、キーファの言葉と参加者リストの一ページを引き出す。
『俺の友達なんだけど、どっかズレてるヤツでさ。
会話もワンテンポ遅れるし、ボケたこと言うしで、マリベルにしょっちゅうどつかれて……』
そうだ。間違いない。こいつの名前は確か――
「あんた、もしかして、フィンか?」
俺の言葉を肯定するように、そいつは大きく目を見開いた。
――来た道行く道どちらも知らず お前は何を目指すのか
哀れな羊よ その道を 示す光はどこにある
クジャ。俺の兄貴が殺してしまったキーファの仲間。
そいつが目の前にいるという事実が、止まりかけていた俺の心を動かした。
気がつけば、俺は今までのことを一気にまくし立てていた。
城の中で、キーファとリノアの三人で話したことを。
キーファの最期を、キーファを殺したクジャの最期を、クジャを殺したセフィロスのことを。
サイファー達のことを、リュカとリノアのことを、思いついたこと全てを手当たり次第に話した。
そうして何もかも話し終えた後。
フィンは俯いて、疲れたように呟いた。
「そうか……それじゃあ、アレはただの夢だったのかな……」
「夢って?」
俺が聞き返すと、フィンは何度か鼻をこすりながら話し始めた。
アルカートってヤツと一緒にいた時に、殺し合いに乗ったギルダーって男に襲われたってこと。
ドーガという老魔道士と一緒に、ギルダーを追いかけたこと。
けれど追いつけずに、この世界まで来てしまったこと。
湖に潜んでいた巨大な魔物に、ドーガを殺されてしまったこと。
そして、夢なのか現実なのかわからないけれど、誰かが囁いた言葉――
『リュカと、リュカの娘でギルダーの仲間のタバサが、魔物を操って何人もの人を殺している』
昨日の俺なら「そんなことあるわけねえよ、ただの夢だろ」と笑い飛ばせただろう。
でも、今の俺にはできなかった。
全身を銃で撃ちぬかれたリノアを見た、今の俺には。
リノアは殺された。銃で殺された。
だが、リノアは主催者と同じ『魔女』だ。並みの相手に呆気なく殺されるようなタマじゃない。
――その、リノアを、呆気なく殺せるとすれば……例えば、仲間に、急に襲われたとしたら……?
人の心なんて、何かの切っ掛けで簡単に転んでしまう。
クジャのように、あるいは俺自身のように、固い決意でも変わってしまう。
――だから、例えば、息子の仇を救ってしまった自分を許せなかったとしたら?
――例えば、そんな罪悪感を抱いた状態で、殺人者になった娘や娘と一緒にいる殺人者と出会ったとしたら?
――例えば、大切な娘の為といって唆されたりすれば?
俺は心の中で否定する。(そして頭が反論する)
リュカはそんな人間じゃない。(だが、銃を持っていることは事実だ)
リノアは首を切り落とされていた。リュカもリノアも剣なんか持っていない、だから違う。
(アリアハンにあった死体と同じで、通りがかったヤツが首輪を取るために後でやったのかもしれない)
だいたい、リュカは自分の家族の仇すら見逃してくれたんだ。そんな彼がリノアを裏切るはずが無い。
(殺人者が改心するなら、その逆だって有り得るだろう?)
リュカは自分やクジャとは違うんだ。リュカに限って、そんなことはない。
(本当に? あのサイファーだって、一度はアルティミシアの手下になったりしてたって言うじゃないか)
(弱みにつけこまれたら? 娘の命を盾にされたら? 魔女の意志に屈してしまったら?)
(可能性は0じゃない。完全否定なんてできない――)
「僕、西の城に行くつもりなんだ」
唐突に響いたフィンの声が、葛藤し続けていた俺を正気に引き戻した。
「水に濡れたまま寝ちゃったから、ちょっと風邪っぽくて……少し休みたいんだ。
その、セフィロスって奴は許せないけど……今の体調じゃ、足手まといにしかならないからね」
……当然の話だろう。
俺としても、鼻水垂らしてフラフラしてるようなヤツを、セフィロスとの戦いに連れて行く気なんかない。
けれども、俺は立ち去ろうとしているフィンを呼び止めた。
「なぁ。城って、サスーンに行くのか?」
「うん……そうだよ。そこが一番近そうだから」
フィンは首を傾げながらも答える。
俺はやっぱり迷ったけれど、今回はすぐに決断できた。
「なら、一緒に行かせてくれないか。
セフィロスを倒す前に、確かめたいことがあるんだ」
リノアの墓の傍にいた六人組が言っていた。
「早くサスーンへ」と。そして、「リノアの仇を」と。
その言葉とあの連中を信じるなら……サスーンに行けば、真実をつかめるはずだ。
誰がリノアを殺したのか、リュカを信じていいのか、はっきりするはずだ。
「いいのかい? 相手を倒すチャンスなんだろ? 逃したら後悔するのは君じゃないか?」
「いくらセフィロスが強いたって、半日やそこらで立ち直れっこないさ。
俺達だって結界と回復魔法使いまくって、丸一晩かけて、やっと6割回復したって程度だったんだぜ?
それにどの道、俺一人で勝ちきれる相手じゃないしな。
城に行けばリノアの仲間にも追いつけるだろうし、声を掛ければ協力してくれるかもしれないだろ」
こんな理屈、殆ど自分に言い聞かせてるようなもんだ。
本当は、リュカへの疑いをどうにかして晴らしたいだけなのに。
けど、それでもフィンは俺の言葉に納得したようだった。
「……そっか……うん、わかったよ。
よろしく、ジタン」
――人はみな彷徨える羊
行く手に待つものさえ知らぬ 果て無き荒野の迷い子よ――
【ジタン(左肩軽傷)
所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7) グラディウス
第一行動方針:サスーンに向かい、真相を確かめる
第二行動方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【フィン(風邪) 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)、マダレムジエン、ボムのたましい
第一行動方針:サスーンへ向かい身体を休める 第二行動方針:ギルダーを探し、止める。
基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズス北西の森・北東部→サスーン城】
50 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/16(日) 19:25:30 ID:VyHkonSC
新作記念age
51 :
三対一 1/10:2005/10/16(日) 23:33:15 ID:hGxU77Y5
エドガーは一国の王である。多くの民から愛され、尊敬されている。
多少女好きという欠点はありながら、そこも愛嬌というわけだ。
私が言いたいのは、そんな王が何故雑用をしているというかという、
悲劇的なシュチュエーションに自分でも笑ってしまうぐらいだ。
あの金色の小娘に調味料が切れたからとって来いというものだ。
勿論、断ったけど……女の頼むは断れないのが私の長所なんだから仕方がない。
そう自分に言い訳しながらため息をつくエドガーだった。
「リルムよりは年は下かな?………だとしたら………」
もう一度、ため息をつくエドガーだった。
砂糖や湖沼やそこらにあった調味料あらかた箱に積み込んだ。
食料倉庫から1階のエントランスを抜けて2階の広場に行く道が一番近い。
1〜2時間、この城を徘徊したおかげで城の構造はあらかた頭に入っている。
「それにしても、この城は古風で趣深くロマンチックだな。
フィガロ城は機械仕掛けの近代的な城であれば、
ここはクラシックな素朴な城だ。ここの門を曲がれば豪華なエントランスだ。
がんばれエドガー!!」
少し気分も乗ってきた。
この分だと、タバサには笑顔で会えそうだ。
そんなのも束の間、エドガーの視界にあるものが入る。
52 :
三対一 2/10:2005/10/16(日) 23:34:39 ID:hGxU77Y5
エドガーは体中が高揚し憎悪と怒りの感情が体を包んだ。
赤い悪魔はこちらを見て笑う。
「エドガーじゃない?何時間ぶりかしら?とても会いたかったのよ。」
女は不適に笑う。
女の連れの男と魔物は黙って様子を伺う。
「私もだよ。今すぐに君の首を切り取って挙げたいよ。この悪魔め!」
エドガーは目を血走らしせ歯をむき出しながら言う。
「騙される男が悪いのよ。いい年こいてプレイボーイ気取ってんじゃないわよ。虫けらが!!」
お互い睨み合っている。
魔物と男は両者の関係を理解し、戦闘体勢に切り替える。
といっても、二人には相手の力量は大体察しがついており、
それに加えて3対1という状況に多少油断はしている。
先手を取ったのはエドガーだった。
持っていた調味料、特に湖沼がクリーンヒット!!!
三人とも咳き込んだ。
このとき、エドガーは少し甘く考えていたのかもしれない
………アリーナと自分の力の差を…………
エドガーは敵に背を向けて、逃げようとしたとき、背中に激痛が走る。
思わずしゃがみこんでしまう。
「っつう!!!!」
53 :
三対一 3/10:2005/10/16(日) 23:36:50 ID:hGxU77Y5
「げほ!!げほっ!!!やるじゃないピエール!!」
そう、ピエールがザックからオートボウガンで背中を射抜いたのだった。
勿論残弾0のボウガンは使い物にならないから投げすてた。
一人前に出ていたアリーナには湖沼のダメージは大きくとも、
後ろの二人には数回咳き込む程度だった。
やはり三対一の差は大きい。
三人はゆっくりと歩み寄ってくる。
『エドガー=ロニ=フィガロ。考えろ。三対一で勝てる方法を…………。
………嫌……………勝たなくていい…………せめて……助けを呼ぶぐらい…。』
そう思った矢先、シンシアの顔がよぎる。
『何を言っているんだ!!エドガー=ロニ=フィガロ。
もう誰も死なせたくない。シンシアのようになってほしくない。
リュカの悲しむ顔も見たくない。
何とかしてここは煙に巻くんだ。
とりあえず来た道に戻ろう、あそこは少し幅の狭い廊下だ。あそこならここよりは有利だろう。』
そう思い立ち上がって、さっき曲がった角をもう一度ターンする。
「どうする?追うのか?」
「当たり前でしょ!!!それと魔法とか大きな音は立てないでよ。気づかれるから。」
三人はエドガーの後を追う。
54 :
三対一 4/10:2005/10/16(日) 23:38:39 ID:hGxU77Y5
アリーナは考えていた。
今の状況を。
『ここでエドガーに仲間を呼ばれてしまっては厄介だわ。
前見たときは4〜5人だったけど今は何人に増えているかわからない。
非ゲーム参加者のネットワークはそれほど広い。
それに、ゲームが進むにつれて非ゲーム参加者は群を作っていく。
だから、戦いはいつも1対3はめずらしくない。
私達が最後にとる戦法はゲリラ戦しかない。
この城で一人になった非ゲーム参加者を狩っていくのが最も無難な方法。
だから、今は事を荒立てたくないの。』
ピエールも仲間を呼ばれるという考えは一緒だ。
『ただ、リュカ様には自分がマーダーであるとは悟られたくないのだ。
王者のマントを渡しずらいのもあるが、
リュカ様にもしも説得されてしまうと自分の意思を貫く自信はない。
なんとしてもエドガーを殺して、一時こいつらとははぐれなくてはならん。』
ウォーグラフはまったく別の事を考えていた。
『ただ、奴がいる。自分もわかるようにあちらも気づいているだろう。』
その一点であった。
エドガーは距離をとり、振り向いた。
55 :
三対一 5/10:2005/10/16(日) 23:39:42 ID:hGxU77Y5
先頭はアリーナ、その跡に二人が続く形である。
エドガーがたどり着いた廊下は、
天井もそれほど高くはなく幅は大人2人が横に並ぶぐらいの幅である。
この城を熟知しているが故の戦術であるが戦況は思わしくない。
「どうやら観念したようね。死ね!!!!!!!!」
掛け声とともにエドガーの方へ飛び掛る。
恐らく彼女はとび蹴りを噛まそうとしているのだろう。
エドガーは立ち止まったまま静かに目を閉じ呪文を唱える。
何かを呟くと同時にアリーナの体が青く光る。
「ん?!!」
空中でとび蹴りの構えのままアリーナの体は上昇する。
そして、二つの鈍い音がなる。
一つは天井に頭をぶつけた音。
もう一つは地面にお尻をぶつけた音。
そう・・・・エドガーの放った魔法は”レビテト”である。
本来はサポート魔法であり、地響きなどから守る技である。
だが今回は体を浮かせるというのを応用した結果となった。
「もう!!超最悪!!!!」
アリーナ体の埃を払いながら起き上がる。
後ろの二人はひるむ様子もなく、ただ手品を見ている感じだった。
56 :
三対一 6/10:2005/10/16(日) 23:42:19 ID:hGxU77Y5
エドガーは焦っていた。今のは間一髪で運がよかっただけだ。
二度は通じない。早く手を考えないと・・・
そう思っている最中、目の前に黄色い光が見えた瞬間エドガーの体は壁にたたき付けられる。
ピエールに放ったイオラはエドガーの手前で爆発しその爆風で後ろに吹き飛ばされた模様だ。
これに対してアリーナは猛反発する。
「あんたあたしの言ってた言葉聴いてたの?気づかれたらどうすんの?」
「この程度の音では不振には思わない。それよりも止めを刺しにいくぞ。」
ウィーグラフは思った。
『アリーナも少しは神経質になりすぎだ。
だけども、この状況でああも簡単に行動に移せるものなのか?
これだけの洞察力と度胸は一級品だ。
この魔物・・・・・
どうやら数々の修羅場をくぐっているみたいだ。
願わくば、こいつとは二度と会いたくわないな。』
そう思うのだった。
「わかってるわよ!早く片付けましょ!!」
そう言って三人はこちらに近づいてくる。
『さて?どうしようか…………………。
相手は魔法が使えないと思っていたんだけどな。
それにしても、ダメージを受けすぎた。
あれはなんだ?ボムの自爆に似ているような気がした。
さっきは運がよかった分、今回は大負けだな。
まず第一にあの爆発が顔面にもろに食らってしまった。
それに、片手がない分、受身が十分じゃなかった。
さっきの矢もさらに深く刺さってしまった。
私らしくもない、早く矢を抜くべきだったなぁ……………
しかし、さっきの話からすると仲間を呼ばれるのは嫌いらしい。
なら………………………………………………………』
どうやら、とどめはピエールがさすらしい。
ピエールが壁にもたれかかるエドガーに剣を振りかぶった。
そして勢いよく雷鳴剣を振りおろす。
キーーーーーーーーーーン!
しかし、聞こえたのは断末魔ではなく金属の鈍い音。
それは部屋中に響き渡る。まるでサイレンだ。
エドガーの頭にかぶった血のついたお鍋は雷鳴剣でさえ貫通はできなかった。
無論、この騒音被害の一番の被害者はエドガーであるが。
アリーナは怒りのあまりエドガーのわき腹に蹴りを入れる。
「ふぐぅ!!」
どうやらアバラは一本いったらしい。
もう一発はパンチを腹に打ち込む。
エドガーは血を口から吐き出す。
そして、すっとアリーナは立ち上がり目を放す。
「流石に今のはNGだな。奴らも感づくだろう。」
「とりあえずあの虫けらを殺して、死体を隠せばやりすごせるわ!」
「で?その虫はどこいったんだ?」
ウィーグラフの指摘は正しかった。
三人は辺りを見渡すがエドガーの姿は見えない。
まるで、神隠し。
目を離したのは数秒のはず…………
アリーナは呆然とする。
「………た…………い……退却!!ここはいったん退却よ!」
気が動転しているアリーナはウィーグラフを引っ張り一目散に
エドガーが来た倉庫へと退却した。
だが……………
ピエールはその場で佇んだままだった。
その目線はゆっくり地面を這う透明な何かを見ていた。
その何かからは微かに血の臭いが漂っていた。
( 「命を、見るとよい」 )
クリムトの声が頭によぎった。
目に頼りすぎる人間も問題なのかもしれない。
ピエールはひとまず瀕死の案内役の後をこっそり追うのだった。
「まだ、勝ち運に恵まれてるみたいだな。」
あの瞬間、自分が消えたらいいと思った。
だから、自分にバニッシュをかけた。
でも、この作戦はぎりぎりだった。
背中に刺さった矢まで消えるのかというのが問題だった。
しかし、深く刺さったのが逆に作用してなんとか消えてくれた。
それに奴らも鍋サイレンで気が動転したのだろう。
血の臭いを正確に嗅ぎ取る余裕なんてなかった。
なにはともあれ、エドガーの勝利。
あの、絶体絶命のピンチからの脱出は大きい。
でも、これは序章にしかすぎない。
サスーンの日は沈み夜へと近づいていく。
多くの運命がサスーン城へと近づいている。
いったい何人がサスーンの朝日を拝めるのだろうか?
【エドガー(右手喪失 矢傷 骨折 HP1/2 MP1/2)
所持品:天空の鎧 ラミアの竪琴 イエローメガホン 再研究メモ
第一行動方針:仲間の場所へ戻る
第二行動方針:アリーナを殺し首輪を手に入れる
第三行動方針:仲間を探す 第四行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】
【ウィーグラフ 】
所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×7、ブロードソード、レーザーウエポン、
フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾 首輪×2、研究メモ、
第一行動方針:ラムザを探す
基本行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】
【アリーナ2(分身) (HP 7/8) 】
所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
第一行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
最終行動方針:勝利する】
【共通第一行動方針:やりすごす
共通第二行動方針:利用できるうちは同盟を護る】
【ピエール(HP MAX MP MAX) (感情封印) 】
所持品:雷鳴の剣、対人レーダー、スネークソード
王者のマント ひきよせの杖[2]とびつきの杖[1]ようじゅつしの杖[0]
死者の指輪、毛布 聖なるナイフ 魔封じの杖
第一行動方針:エドガーを泳がし、リュカの所へ案内させる
第二行動方針:リュカを探し、王者のマントを渡す
基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す 】
【現在位置:サスーン城】
フリオニールはマッシュとスコールが村の入り口に向かってきているのに気付いた。
二人ともかなりの実力者だと一目で見抜いたが、マシンガンもラグナロクがあるため、さほど恐れてはいない。
だが、まったく別の方向より、さらに数人やってきたのを見て、再考。
どちらかの組でも、ゲームに乗っていれば彼には好都合だが、さすがに自分に有利な前提条件で考えるわけにもいかないのだ。
子供の存在や人数から考えても、絶対ではないが向こうの三人組がゲームに乗っている可能性は低い。
さらに、大男は雲に乗っていて機動力は高そうだし、子供の方は銃をくるくると回している。
目の前の二人組を相手にすれば、上空から近づかれたり、撃たれたりする可能性がある。
三人組を相手にするのはダメだ。さっきは不意打ち(といっても断末魔をあげられてしまったが)だったのにもかかわらず、
マシンガンでは一人も殺せなかった(といっても一人は回復したわけだが)。
三人を一瞬で仕留め切れなければ、近くの二人組と接近戦を行わなければならなくなる。
さらに、マシンガンを脇に置いたまま数人相手に戦うのはどう考えても無謀だ。
戦っている隙にマシンガンを取られかねない。
ここは、全員が合流するのを待つべきだ。
まとまって緊張が解けたところに不意打ちをかけ、全員蜂の巣にしてやればよい。弾数の節約にもなる。
全員仕留めきれなくとも、二方向を同時に相手にすることはなくなる。
こう考え、フリオニールは他に気付かれぬよう、茂みで待機することにした。
一方、マッシュ達もハッサン達に気付く。
「……」
「……」
ハッサンとマッシュ、サックスとスコール、お互いに相手を見極めるかの如く、武器を構え、無言で相手の目を見る。
といっても、ハッサンの構えているのはラケット、サックスの構えているのは盾、銃を構えているのがルカ。
しかもハッサンが止まれない。風に煽られ、雲が少しずつ流されていく。
端から見ればなんとも奇妙な光景だ。フリオニールは失笑を抑えきれなかった。
「なぁ、ルカ。これ、どうやれば消せるんだ?」
マッシュの方を見ながら、真顔でこう尋ねた。
「僕たちも君たちと一緒、ゲームには乗っていないからね。しっかり目を見ればすぐに分かることだから」
すぐにこう言って、銃の構えを解き、魔法を唱え、すでに場から離脱しかけていたハッサンを雲から下ろした。
「あんたたちがフリオニール、…というわけでは無さそうだな」
カインから聞いた特徴と一致しない。
さらに、この名前が出たことで、フリオニール自身も攻撃を思いとどまった。
「俺はマッシュで、こっちは」
「スコールだ」
スコールは自分で答えた。
「俺はハッサンで、こっちがサックス、こいつがルカだ。フリオニールってやつを見てないか?」
「一通り調べてみたが、この村には何もないし、誰もいないぞ。死体がいくつかあるだけだ。
建物も…ほら、この通りだ。建物の中には人はいないはずだ」
スコールが近くにあった壁らしきものを軽く叩く。
それだけで壁は粉々に砕け、崩れ落ちた。
原型をとどめた建物はあるが、それに入ろうものなら、それだけで生き埋めになってしまいかねない。
「ということは、まだ来てないみたいですね」
「そうだね」
「俺たちはもう行く。ここにいても無駄だからな」
スコールが村を出ようとするのを、マッシュが制す。
「まあ待てよ。せっかくだし、情報交換くらいはしておこうじゃないか。探している仲間の手がかりもつかめるかもしれないぜ」
「それもそうか。どうやら、他にも誰かと待ち合わせているようだしな。」
「あれ、どうして分かったんですか?」
疑問に思うサックスに、ルカが答える。
「ハッさんがフリオニールさんとスコールさんたちを間違えたから、だよね。
僕たちはカインさんに話を聞いたんだよ。待ち合わせているのは、そのカインさんとケフカさんって人だよ」
「ケフカだって!?」
マッシュが素っ頓狂な声をあげ、話を続けようとしているのを遮る。
「あんたら、本当にケフカと待ち合わせてるのか!?」
「そんなに驚いて、どうかしたの?」
マッシュの様子の変化に四人ともとまどいを隠しきれない。
「そいつは俺と同じ世界から来たヤツでな。一度は世界を滅しかけたやつだ。
性格は残酷非道で、抜け目がない。
俺がアルティミシアを信用するような人間だとしても、ケフカだけは信用しないだろうな。とにかくそんなヤツだ」
ハッサンら3人には話が理解できない。
彼らのケフカ像は、ちょっとふざけすぎている面もあるが、戯けていて、気のいい道化師、というものなのだ。
何より、ハッサンは怪我を治してもらっており、彼は恩人である。世界を滅ぼしかけた人間などと考えられるはずもない。
「人違いじゃないの? ケフカさんは大怪我していたハッさんを助けてくれたし、
ゲームに乗っているような様子も全然ないよ。
それに、確かにすごい魔法を使うけど、世界を滅ぼせるような強さはないと思う」
人違いのはずがないのだ。ケフカという名の人物は一人しか参加しておらず、名簿にあの顔が載っているのだから。
だが、マッシュには、ルカとハッサンが嘘を付いているようにはどうしても思えなかった。
「いいケフカ、なんて想像もできないな」
「改心したんじゃないのか?」
「あいつが改心するとは思えないんだけどな」
ここで、マッシュはふと思い出した。
ケフカは魔法を使えるようになるために手術を行った際、心が壊れたと聞いたことがあったのだ。
大体ケフカは一度倒したはずだし、死んだはずのレオ将軍も参加していた。
つまり、過去の人物も参加しているということだ。
過去、ケフカはセリスが手術を受けるのを気の毒に思って、自分が身代わりになったという。
「…スコール、悪いがもう少しここにいさせてくれないか?
ケフカのやつを見極めようと思う。
あいつが何か悪事を企んでいるのなら、すぐに潰さないといけないし、
もし今のあいつが悪人でないのなら、兄貴や仲間にも伝えておく必要があるからな」
「ああ、そうだな…」
スコールは賛同した、が、少し考えた後、別の問いを返す。
「あんたたち、リノアに会ってはいないか?
黒髪の、青いワンピースを着た女なんだが…」
「俺は会ってないな。お前らはどうだった?」
サックスもルカも、首を横に振る。
あの時確かに聞こえたリノアに似た声。同じころにマッシュが見たという光。そしてこの町の惨状。
リノアの声が聞こえてきたときから嫌な予感はしていたのだ。
本当は今すぐにでもここを離れてリノアを探しに行きたいのだ。
リノアに会い、自分の心配はただの考えすぎだということを証明したいのだ。
だが、全く手がかりなしに彼女を捜しても、徒労に終わる可能性が高いのだというのも理解している。
ここは演劇や物語の世界ではないのだから。
「そうか、悪かったな。あんた達、まだ話の途中だったよな」
「え、ああ、そうそう。それで、カインさんがフリオニール、スミスって人と待ち合わせをしているとも言っていたんだ」
「俺のことだな。俺がフリオニールだ」
ここで狙ったように現れたフリオニール。タイミングを狙っていたから当然ではあるのだが。
彼らが警戒したり流されたりで近づかず、もどかしく感じているところで、
三人組がカインと待ち合わせをしていると聞いて、再考。
彼らがゲームに乗っているようには見えないので、
カインかスミスに何か策があるのではないかと判断。
たてつづけの戦闘で疲労しているし、ならば今ここで敢えて交戦する必要もないと考えたのだ。
「ところで、カインとスミスはどうしたんだ?」
「カインさんには、少し用事を頼まれてもらったんだ。
本当は僕たちがやらないといけないことだけど、ハッさんが動けなくて…。
今頃はケフカさんと一緒にこっちに来ていると思う。スミスさんは分からないや」
そして、ユフィ。彼女はちょうど今たどり着き、近くに潜伏して様子を伺っていた。
マシンガンは危険だし、フリオニールのまわりに数人いることもあって、
カインと出会うまで接触するのは避けようと考えたのだ。
だが、フリオニール達の交わしている会話を聞いて、彼女は混乱していた。
(ちょっと、どういうことよ? どうしてあいつがカインのこと知ってるのよ。しかも、カインを仲間みたいに言っちゃってるし)
エッジが信用していたし、会ったときも紳士的にふるまっていたこともあり
ユフィはカインがゲームに乗っているとは微塵も考えていなかった。現在もそうである。
フリオニールがゲームに乗っているのは明白。
そして、フリオニールはカインが仲間であるかのような言動を取っている。
そこから導き出される結論。
(カインは騙されてる?)
「カインさんはここから西の方にいますけれど、探しに行きますか?」
「いや、いい。あいつならそう簡単にくたばることもないだろう。少し休みたい。
それから、片腕のない小娘、カイン以外の金髪の騎士、燃えるような赤い髪の男のどいつかを見かけたら教えてくれ。
そいつらは敵だ。俺を狙っているかもしれない」
(気をつけろって…。 ちょっと、先に仕掛けてきたのはどこのどいつよ!)
確かにユフィはフリオニールにとっては敵である。
が、これではまるでユフィがゲームに乗っているような言い草だ。
さらに、スコールが反応する。
「そういえば、キンパツニキヲツケロとかいう紙を拾ったな。そいつのことか」
ユフィも全く同じ内容の紙を拾っていた。
(あの金髪がゲームに乗ってたの? というか、なんでそいつと一緒にあたしを出すかなぁ…。誤解されちゃうじゃん)
さらにサックスが追い打ちをかける。
「もしかして、その赤い髪の男、サラマンダーって名乗っていませんでしたか?」
「さあ、名前までは聞いていないが。どんなやつだ?」
「ゲームに乗っていて、好戦的な男です。何度も襲われました。僕の仲間も殺されてしまって…」
サックスの表情が暗くなる。サックスはロランがサラマンダーに殺されたと思っているのだ。
ハッサンやルカに、それなら余計に生きないといけないと励まされ、一応気持ちは落ち着いたものの、
やはり悲しみや恨みといった感情を簡単に捨て去ることはできないのだ。
その表情を見て、マッシュが答える。
「とにかく、余計に警戒した方がいいみたいだな」
一方ユフィ。
(どっちもゲームに乗ってたのかよ! っていうツッコミもしたいけど、
そんなことよりも、なんかあたしもついでに殺人者認定されちゃってない…?)
挙げられた三人のうち、二人がゲームに乗っている。
ということは、そのままもう一人もゲームに乗っていると思われても変ではない。ましてこの状況だ。
(最悪じゃん。カインはここにはいないし…。
カインは西の方にいるんだっけ、何とかフリオニールのやつの正体を教えて、誤解を解いてもらわないと)
話の感じから、フリオニール以外はゲームに乗っていないように思えた。
カインになんとか説得してもらって、彼らを味方に引き込めば、フリオニールも倒せるだろう。
ユフィは気付かれないように場を脱出すると、西の方へ向かって走り出した。
【ユフィ(疲労/右腕喪失)
所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー
ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
【第一行動方針:フリオニールの正体をカインに教え、協力して倒す
第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズスの村→カズス西の砂漠へ】
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石、神羅甲型防具改、バーバラの首輪、
レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
吹雪の剣、ビームライフル、エアナイフ、ガイアの剣、アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
【第一行動方針:情報交換を済ませ、ケフカを見極める
第二行動方針:アーヴァイン、リノアかエドガーを探す
第三行動方針:ゲームを止める】
【フリオニール(HP1/3程度 MP1/2)
所持品:ラグナロク ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) 三脚付大型マシンガン(残弾9/10)
第一行動方針:カインと合流する
最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【サックス (負傷、軽度の毒状態 左肩負傷)
所持品:水鏡の盾、スノーマフラー
最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【ルカ(浮) 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 、風のローブ、シルバートレイ
行動方針:ギードたちと合流する】
【ハッサン(HP 1/5程度)
所持品:E爆発の指輪(呪) 、ねこの手ラケット、チョコボの怒り、拡声器
行動方針:オリジナルアリーナと自分やルカの仲間を探す、特にシャナクの巻物で呪いを解きたい
最終行動方針:仲間を募り、脱出 】
【共通第一行動方針:休んで、カインと待ち合わせ】
【現在地:カズスの村入り口】
5行目
過去、ケフカはセリスが手術を受けるのを気の毒に思って、自分が身代わりになったという。
↓
過去、ケフカは幼いセリスが実験段階の改造計画に参加するのを不憫に思って、彼女の参加を取り下げてもらったらしい。
もちろん、ケフカにも参加命令は下っていたらしいし、後の実験にはセリスが加わったのは確かだが、
そのころのケフカに情というものがあったというのは推測するに難くない。
70 :
ユフィの決意:2005/10/17(月) 10:45:15 ID:6Cb59OCm
「待って!私はゲームに乗ってないわ!乗ってるのはそいつよ!」
ユフィは自分が悪人にされているのが、耐えきれなくて飛び出した
「何!そうだったのか!?」
マッシュは驚いてフリオニールに殴りかかった。疲労したフリオニールはあっさりと吹っ飛ばされる。しかし
「違う!その女の子が俺を襲ってきたんだ」
まだ息はある
「なんで死なないのよ〜〜むかつく!」
ユフィは思わず言った。
「何っ!俺は騙されたのか」マッシュが驚いた。
「違うわ!私あいつに処女奪われそうになって…信じて…(うるうる)」
「そうか」フリオニールは無様に殺された
「ユフィ大丈夫か…もう大丈夫だ」
「ありがとうマッシュ。でも私筋肉は嫌いだなぁ」
「酷いなあ」
カズスに楽しそうな笑い声がした。
みんなユフィにメロメロだったユフィは肩をもんでもらった
右腕が復活して万全な状態になった!
「これで私も頑張るわ!」
72 :
疑惑交差修正:2005/10/17(月) 18:10:32 ID:0DOUSW5A
2レス目、上から10行目
「僕たちも君たちと一緒、ゲームには乗っていないからね。しっかり目を見ればすぐに分かることだから」
↓
「俺たちも君たちと一緒、ゲームには乗っていないからね。しっかり目を見ればすぐに分かることだから」
3レス目、上から8行目
僕たちはカインさんに話を聞いたんだよ。待ち合わせているのは、そのカインさんとケフカさんって人だよ」
↓
俺たちはカインさんに話を聞いたんだよ。待ち合わせているのは、そのカインさんとケフカさんって人だよ」
5レス目、上から12行目
本当は僕たちがやらないといけないことだけど、ハッさんが動けなくて…。
↓
本当は僕たちがやらないといけないことだけど、ハッさんが動けなくて…。
ルカの一人称を僕→俺と読み替えて下さい
お手数おかけしてすみません。
眼下にあるのは広い湖と、その真ん中辺りにぽっかりと浮かぶ、島。
もし情報を得ていなければ、それが魔物だとは思わなかっただろう。
そのことを知れただけでも収穫は収穫なのだが、スミスは、面白くなかった。
この距離では相手の深い思考は読み取れないが、集中すれば単純な感情くらいなら感じ取れる。
それは不安と恐怖。
あのずぶ濡れの男の心に染み込んだ恐怖や、直接この目で確かめたことから、この巨大な魔物は十中八九随分な実力者のはずだ。
なのにこいつときたら、ただ怯え、隠れ、おそらくこの世界に来てから一歩も動かずにやり過ごそうとしている。
ゲームの参加者である義務を、半ば放棄しているのだ。
これがその辺にいる町娘なら、まだ腹も立たないが、
ひとたびその力を解き放てば幾人もの参加者を葬り、ゲームの成功に一役も二役も買えるくせに!!!!
(いっそのことけしかけてやろうか? でもカインとの約束もあるしなぁ…)
カインとの約束は、サスーン城周辺とカズズの間にいる人間の状況の調査。
参加者がいても接触はしない。隠密行動を心がける。
(でもなぁ、ぶっちゃけバレなきゃいい訳だし、もしバレたとしても…)
二人の利害は今のところ一致している。
カインは優勝を目指し、スミスはゲームの成功を望んでいる。
つまりカインの優勝の為に協力することはやぶさかではないが、別に、優勝するのがカインでなければならない訳でもない。
それはカインだって、承知の上のはずではないか。
カインと組んでいることはなかなか楽しい。
それはドラゴンライダーと竜騎士の相性がばっちりだから、だと言うことだけかもしれないが。
もう少し人数が減ったあとなら、全面的にカインに協力してやってもいいけれど、何分まだ生者は多い。
時には予想を超える混乱を招く必要だってあるはずだ。
いや。
だが。
しかし。
魔物の真上で、スミスは2、3周旋回し、逡巡する。
魔物は動かない。
その心の奥では、早くどっかへ行ってくれと、願っていたことだろう。
だがスミスは、結論を導く前に行動を余儀なくされた。
一発の銃声と、翼に響く痛み。
森の影から姿を見せたのは、貴族風の男。
(う…、わぁ〜〜〜!!!!
何か、何か響いた。何あれ、バンッって言ってたよ。魔法?
なんでもいいから俺様に気づくなよぉ〜〜〜。
って、アイテ。
何か降って来た。鼻の辺りにつっかかったかな。
あ、これ上の方で飛んでたドラゴンじゃないか。
何だよ。まだいたのかよ。さっさとどっか行ってくれよなぁ、もう。
しかも何だコレ? 変な臭い。鉄臭っ!!! 血か? 血なのか? 血を流しているのか?
やめてくれ〜!! そんな鼻許で血なんか流されたら、鼻血出たときの気分になるだろ!!!)
負傷して集中力が切れたとはいえ、直接相手に触れればそいつの考えていることの大体はわかる。
ここまでくれば不可抗力として、カインに言い訳も立つだろう。
もちろん不注意をなじれられるぐらいは覚悟しなければならないだろうが。
それに、この魔物はまだ森影の男を認知していない。
このままこいつが動かなければ、むしろこっちが危うい。
(……さっきから黙って聞いてたら、ヒト(?)が怪我してるってのに、随分身勝手なこと並べれくれるじゃないか)
魔物は僅かに体を振るわせた。
多分端から見ればわからないくらい、である。
(そうだよ。僕は心が読めるんだ。ドラゴンライダーだからね。まぁ、あんまり詳しくはわからないけど)
魔物の心はまだ、自分に関わるな、さっさとどこかへ行ってしまえ、と唱えている。
(まあ、そういうなよ。君、片目は見えているんだろう? だったら目の前の森の影に隠れている男が見えるんじゃないか)
しばらくの後、肯定の感情が流れてきた。
(僕、今さっきそいつに撃たれたんだけどさ、実はそいつ、本当は君を襲いに来たんだよ)
飛び回るハエ、もといドラゴンを打ち落としたデールであったが、もちろんそれで満足したわけではない。
流石に遠距離過ぎて急所は外れているだろう。
湖で休息を取っていたところに、偶然とはいえ舞い込んできた獲物だ。ちゃんと壊してあげなくちゃ。
島に不時着したドラゴンに、デスペナルティの狙いをつける。
近くまで出向いて止めを刺す方が確実なのだが、あいにくデールは湖を渡る手段を持っていない。
もしやはり距離の所為で壊しきることが不可能なら、残弾数が心もとないがマシンガンを使ってもいい。
まだ多少の疲れは残っているが、一対一で、しかも手負いの畜生相手に、
まさか自分がやられるなど、デールは露ほども思っていなかった。
(ほら、この殺気。君に向けられているだろう?
だからね、君が逃がした緑の帽子の男が、仲間たちに触れ回ったんだよ。
ここに巨大な魔物がいる。危険だ。早く倒してしまうんだ、ってね。
この男は先鋒だよ。あの森の奥から、さらにむこうの森の外から、何人もの人間がここに押し寄せてくる。
しかも、とびっきり強い奴等ばかりがね)
一気に捲し立て、恐怖が臨界点へ向かっていくのがわかる。
あともう少しだ。
今度は魔物に聞こえないよう呪文を紡ぐ。
『マヌーサ』
目の前が、突然霧に包まれた。これでは狙いが定まらない。
デールは得物をマシンガンに持ち替え、そして、乱射を開始した。
そのいくつかはスミスにも当たった。
だが大半は、島に被弾する。
それは致命傷にはならないが、痒いし、痛いし、何より、ウザイ。
恐怖に怒りが上塗りされたとき、傷の塞がらぬ左目が疼く。
地の底から響きわたる咆哮。
銃声などとは比較にならないほどの震え。
振動に一匹のドラゴンが耐えかね、落下しようと、もはやそんなことに構うわけもない。
いま、島は、巨山は、魔物は、
動いた。
78 :
巨山動く:2005/10/18(火) 01:33:35 ID:BvG1qeZo
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
第一行動方針:???
第ニ行動方針:サスーン方面の偵察 終了次第カズスへと戻る
行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地:湖(水中)】
【ブオーン(左目失明、一部火傷) 所持品:くじけぬこころ、魔法のじゅうたん
第一行動方針:怒りに任せ、目の前の男(デール)を倒す 第二行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:封印の洞窟南の湖の真ん中】
【デール 所持品:マシンガン(残り弾数1/6)、アラームピアス(対人)
ひそひ草、デスペナルティ リフレクトリング 賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能) ナイフ
第一行動方針:ドラゴンに止めを刺す
基本行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】
【現在地:湖と南の森との境】
二人の利害は今のところ一致している。
カインは優勝を目指し、スミスはゲームの成功を望んでいる。
つまりカインの優勝の為に協力することはやぶさかではないが、別に、優勝するのがカインでなければならない訳でもない。
それはカインだって、承知の上のはずではないか。
カインと組んでいることはなかなか楽しい。
それはドラゴンライダーと竜騎士の相性がばっちりだから、だと言うことだけかもしれないが。
もう少し人数が減ったあとなら、全面的にカインに協力してやってもいいけれど、何分まだ生者は多い。
時には予想を超える混乱を招く必要だってあるはずだ。
いや。
だが。
しかし。
魔物の真上、こちらを認知されることを恐れてかなり距離をとった上空で、スミスは2、3周旋回し、逡巡する。
そして結論は、とりあえずカインへの義理立てを優先させると言うものだった。
まだサスーン城付近までの偵察は行っていない。
今ここで混乱の種をまいた場合、一応の任務であるそれを果たせない可能性も出てくる。
任務を果たせなかったときのカインの冷たい態度は、前の世界で経験済みだ。
(あれは、流石にさ、ちょっと悲しかったし…)
とにかくその偵察を終え、帰りがけに寄ってその時どうするのかを決めようと、スミスは森へ向かって降下し始めた。
飛びっぱなしだった翼を休めるためだ。
そして、もう少しで森に届くと言うその瞬間。速度を落とすために翼を大きく広げた瞬間。一発の銃声が響いた。
うかつだった。
あまりに魔物に集中力を注ぎすぎていた。
翼に走る激しい痛み、落下の際に打った、身を蝕む鈍い痛みが、己の不注意を責める。
森の影に何者かがいるかなんて、考えてなければならなかったのに。
その何者かが、今確かに自分に向かって距離を詰めている。
止めを刺す気だ。
翼の負傷は、飛べなくなるほどではないが、速度を奪い、飛ぶ距離を奪うだろう。
地上を行けばこの巨体だ。森の木々が進路の邪魔をする。
闇雲に逃げても、逃げ切ることは出来ない。
だがスミスは、この襲撃者とまともに殺し合う気はなかった。
何のためらいもなく攻撃を仕掛ける、まさにあの湖の魔物とは対極のこの参加者をただ殺すなどもっての他だ。
かといって、まだゲームも中盤のこの時期に、大人しく殺させるのも気が引ける。
ならば。
この状況を最大限に利用させてもらうまで。
ニ、三本の木々のむこうに、奴の姿を確認した。
思ったより優男だ。貴族風の、大人しそうな男。
だが、とても嬉しそうに自分に得物を向けてくる。
スミスには馴染みのない武器、銃であるが、そこに込められた殺気を感じ取れないわけはなかった。
スミスが行動を起こす前に、男は銃の引き金を引く。
先ほど被弾した翼を前にし、致命傷を避ける。
スミスは男に突進するわけでもなく、森の奥へと逃げるわけでもなく、傷付いた翼をはためかせ、湖へ向かう。
バランスを崩し、何度も水面に叩きつけられそうになりながら、後方から容赦なく銃弾を浴びせかけられながら、
スミスは何とかあの魔物の許へ降り立った。
(う…、わぁ〜〜〜!!!!
何、何なんだ。何だよあれ、バンッ、バンッって言って。魔法?
なんでもいいから俺様に気づくなよぉ〜〜〜。
って、アイテ。
何かくっついた。鼻の辺りだ。むずむずするな。
ちょっと待てよ、俺様寄せ目って苦手なんだよなぁ。
ん〜と、これはドラゴンかな? 何でもいいから、さっさとどっか行ってくれよなぁ、もう。
しかも何だコレ? 変な臭い。鉄臭っ!!! 血か? 血なのか? 血を流しているのか?
やめてくれ〜!! そんな鼻許で血なんか流されたら、鼻血出たときの気分になるだろ!!!)
負傷して集中力が切れたとはいえ、直接相手に触れればそいつの考えていることの大体はわかる。
こうなればもう引き返せない。
カインには後で何とか言い訳しよう。
もちろん不注意をなじれられるぐらいは覚悟しなければならないだろうが。
(……さっきから黙って聞いてたら、ヒト(?)が怪我してるってのに、随分身勝手なこと並べれくれるじゃないか)
魔物は僅かに体を振るわせた。
多分端から見ればわからないくらい、である。
(そうだよ。僕は心が読めるんだ。ドラゴンライダーだからね。まぁ、あんまり詳しくはわからないけど)
魔物の心はまだ、自分に関わるな、さっさとどこかへ行ってしまえ、と唱えている。
(まあ、そういうなよ。大体は、君の所為なんだから。
君、片目は見えているんだろう? 森の方にいる男が攻撃を仕掛けてるのはわかるよね)
しばらくの後、肯定と否定の入り混じった感情が流れてきた。
(そいつは僕を攻撃しているだけだって? 違うね。僕は君の仲間だと勘違いされただけ。魔物だからね。
あいつは本当は、君を倒すためにここに来たんだよ)
サスーン城の戦闘を終え、デールは休息の為にこの湖に立ち寄っていた。
すると後にしてきた森から、一匹のドラゴンが飛び立ったではないか。
デールのいた世界は、マスタードラゴンと言う一匹の竜が治めている世界である。
この世界の住人なら多かれ少なかれ『竜』と言う存在を特別視している。
特に旅から旅で様々な魔物とともに多種多様なドラゴンと接してきたリュカとは違い、デールは本物のドラゴンを見たことなどなかった。
初めて出会えたドラゴン。
興奮はそのまま、「壊したい」という衝動に変わった。
ドラゴンは島に不時着した。
この距離では銃撃によって止めを刺すことは不可能だ。
だが、あいにくデールには湖を渡る手段など持っていない。
忌々しい。
せっかくの獲物なのに。
腹立たしさを紛らわせるために、届かぬと知りつつもデスペナルティをニ、三発撃つ。
銃声だけが、湖に響いた。
(ほら、この殺気。君に向けられているだろう?
だからね、君が逃がした緑の帽子の男が、仲間たちに触れ回ったんだよ。
ここに巨大な魔物がいる。危険だ。早く倒してしまうんだ、ってね。
この男は先鋒だよ。あの森の奥から、さらにむこうの森の外から、何人もの人間がここに押し寄せてくる。
しかも、とびっきり強い奴等ばかりがね)
一気に捲し立て、恐怖が臨界点へ向かっていくのがわかる。
あともう少しだ。
今度は魔物にはわからないよう呪文を紡ぐ。
『マヌーサ』
この距離だ。
かからないはずがない。
彼の視界にのみ霧がかかる。
霧の中には、幾人もの敵の姿が見えていることだろう。
恐怖はさらに煽られる。
その霧がかかったのと、デールの放った銃弾が掠ったのとは、ほとんど同時だった。
それは致命傷にはならないが、痒いし、痛いし、何より、ウザイ。
恐怖に怒りが上塗りされたとき、傷の塞がらぬ左目が疼く。
地の底から響きわたる咆哮。
銃声などとは比較にならないほどの震え。
振動に一匹のドラゴンが耐えかね、落下しようと、もはやそんなことに構うわけもない。
いま、島は、巨山は、魔物は、
動いた。
84 :
巨山動く 修正:2005/10/19(水) 01:30:44 ID:zIUhqCHK
【スミス(変身解除、洗脳状態、右翼負傷、全身打撲、ドラゴンライダー) 所持品:無し
第一行動方針:???
第ニ行動方針:サスーン方面の偵察 終了次第カズスへと戻る
行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地:湖(水中)】
【ブオーン(左目失明、マヌーサ、一部火傷) 所持品:くじけぬこころ、魔法のじゅうたん
第一行動方針:怒りに任せ、目の前の男(デール)を倒す 第二行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:封印の洞窟南の湖の真ん中】
【デール 所持品:マシンガン(残り弾数1/6)、アラームピアス(対人)
ひそひ草、デスペナルティ リフレクトリング 賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能) ナイフ
第一行動方針:ドラゴンに止めを刺す
基本行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】
【現在地:湖と南の森との境】
ほしゅ
ドーガは気配が動くのを感じ、瞑想から目を覚ました。
見るとブオーンが再び立ち上がっている。
その気迫とドーガに背を向けていることから、対岸を攻撃しようとしているようだ。
対岸は流石に離れすぎているためドーガの視力でも何があるのか判らない。
身体の回復は充分ではない。しかしこれ以上ブオーンの凶行を許すつもりもない。
「レビテト」
ドーガは立ち上がり、浮遊呪文を唱えて水面の上を歩き始めた。
「な、何だコレは!」
突如として湖に現れた怪獣を目の当たりにしてデールは驚愕した。
小さな山ほどもある巨体はデールを押し潰すほどの威圧感を放ってくる。
そう、魔獣は怒り狂っていた。
「俺は戦うつもりはなかった! なのに何故邪魔をする!!」
「う、うわあああああああ!?」
ブオーンの咆哮に怯え、デールはマシンガンを取り出してブオーン目掛け乱射した。
銃弾はブオーンの身体の肉をこそぎとって行く。
「ぐおおおおおおおおお!!」
ブオーンの目にはスミスのかけたマヌーサの効果によって敵であるデールの姿が幾十人にも見えている。
その全てから一斉に攻撃を受けたと錯覚し、ブオーンは逃れるためにそのデールの軍勢に向かって
激しい炎を吐いた。
強烈な火勢がデールのいる南岸一帯を焦がす。
「ぎゃぁああああ!?」
こうなればマヌーサも何も関係はない。成す術もなくデールは炎に焼かれてしまう。
攻撃が止んだことを確認し、ブオーンはデール「達」に向かって進み始めた。
今度は特大のいなずまをお見舞してやるつもりだった。
全身を焼かれながらも距離があったため致命的なダメージを避けることができたデールは
炎上するマントを脱ぎ捨て、地面に転がってまだ燃えている服の消火をする。
(こ、こんな奴に勝ち目などない! ここは逃げなければ!!)
初めて出遭った自分ではどうしようもできない圧倒的な敵を前にデールは逃げ出そうとした。
森の中に駆け込んだところを今度は無数の光条が閃き、森の木々を破壊する。
ブオーンのいなずまだ。
「ぬぅ!? 通じない?」
いなずまを放ってもデールの幻はその場を動かない。
それを見て攻撃が効いてないと錯覚したブオーンは再びいなずまを放った。
距離がまだあるためにブオーンは遠距離広範囲攻撃しかしてこない。
それがデールにとっては仇となった。
マヌーサで幻覚を見せられていてもほとんど関係がないからだ。
しかも相手の攻撃にはデールのリフレクトリングも効果がない。
森の木々が避雷針となってデールを護ってくれているが、飛び散る木の粉や枝が
デールの進行の邪魔をする。
このままでは直撃を受けてしまうと、デールはブオーンの動きを止めるために
再びマシンガンをブオーンへと向けた。
カチリ、引鉄を引く。
――――暴発した。
「うっぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
マシンガンは弾層部分から破裂し、デールの右手首を吹き飛ばした。
微細な鉄片がデールの右半身と右目を貫く。
乱射によって加熱していたところにブオーンの激しい炎を受け、マシンガンは限界まで加熱していたのだった。
「ひ、ひぃ!」
デールは全身を掛け巡る激痛を堪え、恐怖と共にその場を駆け出した。
今度こそわき目も振らずにその場を離脱していく。
デールがブオーンの射程範囲内から離脱した瞬間、ブオーンを縛っていたマヌーサの効果が解ける。
湖の南岸を取り巻くようにしていた人影が一つ残らず掻き消えた。
「な、何だったんだ?」
ブオーンは今までのことは全て幻だったのだろうかと疑う。
だが全身を貫くこの傷と痛みは現実の物だった。
そういえばあのドラゴンもいつの間にか居ない。
死んだのか、逃げたのか……考えようとしてブオーンは止めた。
関係ない、これでもうこの場には誰も居なくなったのだ。もう自分の潜伏の邪魔をするものはいない。
そうして再び島に化けようと振り向いた先に……湖の上に立つドーガがいた。
「き、貴様! 生きていたのか!」
「そうやすやすとは殺されてはやれぬよ。まだ目的を果たしていないのでな」
そういってドーガは湖の南岸の破壊痕をみやる。
「また誰かを襲ったのか……やはり捨て置くことはできぬようだ」
ドーガは魔力を収束して最大攻撃魔法の準備をする。
そしてブオーンのほうにはある疑惑が沸き起こっていた。
(何だ? あの幻だか何だかが消えた後にこうも都合よくコイツが現れるんだ?
まさかコイツが全部仕組んでいたのか?)
あのルドルフのようにコイツにも自分はしてやられたのだろうか。
疑惑は瞬間確信へと変わり、怒りが噴きあがってくる。
「だから人間は嫌いなんだ! 姑息な手段ばかり使いやがって!!」
ブオーンは大きく息を吸い込み最大級の炎を吐こうとする。
そうこうしているうちにドーガの準備が整った。
「殺生は好まぬ。だがお主をこのまま放置することは出来ぬ!
この場にて焼滅せよ! フレア!!」
その瞬間ブオーンの口からも超高温火炎が生み出された。
「ぐぁあああああああああああああああああああああああ」
フレアの生み出した爆熱によってブオーンの全身は焼け爛れ、爆風がその巨体を破壊していく。
巨大な水しぶきを上げ、ブオーンは崩れ落ちた。
ドーガもまたブオーンの炎によって吹き飛ばされた。
異形となったその時から属性攻撃には耐性のあるドーガだったが、生命力の弱っているこの時に
この激しい炎に抗するのはいかにも無理があった。
僅かに残った生命力をも焼き尽くされ、ドーガは湖の水面へと叩きつけられた。
――フィンよ……おぬしの仇は取った……だがどうやらこれまでのようじゃな……
ウネよ……ザンデよ……サックスとギルダーを……頼む……
その思考を最期にドーガの意識は暗い闇の中へと沈んでいった。
全てが終わってしばらくしてから。
ブオーンの近くの水面にブクブクと泡が立った。
「プハァッ」
そこから水飛沫をあげ、現れたのはずっと湖底に隠れていたスミスだった。
口にはザックを咥えている。
ブオーンがやられた衝撃で湖へと落とし、沈んできた物だった。
スミスは水の中では上手く動くことは出来ないが、竜であるため人間よりはずっと潜水可能時間は長い。
キョロキョロと辺りを見回す。
湖の南岸は破壊しつくされ、湖には焼け爛れたブオーンが浮かんでいる。
そこからしばらく離れた場所にはこちらも焼け爛れた老人が浮かんでいた。
どうやら湖に浮かぶ木の枝に引っ掛かって沈まなかったらしい。
「相打ちになったのか……勿体ないなぁ。あの翡翠色の髪した人はどこいったのかな?」
それもあの岸辺の破壊されようを見ると生存しているとは思いにくい。
ブオーンをけしかけることでブオーンに戦闘意欲が生まれ、あの襲撃者も逃げ延びるというのが
最善だったが、どうやら最悪の結果に終わったようだ。
向こうで浮いている老人のことは良くわからないが、役に立たないなら興味はない。
「まぁ終わったことはしょうがないよね。最後にサスーンでも見てからカインの所に戻ろう」
ジャブジャブと泳いで岸へと目掛けて移動する。
その時――
―― オマエノセイダ ――
――声が聞こえた気がした。
「え?」
キョロキョロと辺りを見回すが何もいない。
(気のせいかな?)
思い直して再び岸を目指す。
するとまた声が聞こえた。
―― オレハタタカウツモリナカッタ……ナノニオマエガキタカラ…… ――
今度はハッキリとその声を認識してスミスはブオーンを見る。
その巨体がブルブルと震えていた。
いや、声ではない。強烈な思念。それも憎悪の思念だ。
「 オ バ エ ド ゼ イ ダ ァ ア ア ア ア ア ア ア ア ! !」
死んだと思っていたブオーンが突如として立ち上がり、盛大な水飛沫を上げる。
大波がうねり、スミスは足を取られ溺れそうになる。
翼の皮膜が損傷しているのが不安だが、こうなったらそうも言っていられない。
スミスは翼を広げ、湖から飛び立とうとした。
しかしそこに影が落ちる。
見上げるとブオーンがその大槌のような巨腕を振りかざしていた。
「ちょ、ちょっと待って! 話を聞い……」
「ジネェェエエエエエエエエエエエ!!」
聞く耳も持たずにブオーンは腕を振り下ろし、スミスの身体を砕いて水面へと叩きつけた。
スミスは翼を砕かれ、全身を打たれ、血を吐きながら深い湖底へと沈んでいく。
ブオーンはそれを確認もせずにゆっくりと移動し、岸へと上がった。
ずるり、べちゃ、と爛れた皮膚が捲れ、地面を擦る。
立ち上がることもできずにブオーンは四つん這いのまま進んでいく。
「ブォオオオオオオオオンッ!」
咆哮。
フレアの炎によって喉を焼かれ、声がかすれている。
だがそんな状態でも声を出せるということが逆にブオーンの異常な耐久力を示していた。
ブオーンには戦うつもりはなかった。ずっと隠れていることが望みだった。
だが他の奴らはそんなことはお構いなしに自分を襲ってくる。
自分は死にたくはない。一度死を体感すればそれで充分だ。
何があっても生き延びる……それが彼の決意。隠れても無駄なのならば……殺すしかない。
(殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる
俺は生き延びるんだ。こんな所で朽ち果ててたまるものか……)
生への渇望、執念。それだけが今のブオーンを動かしていた。
ずるり、べたん、ずるり、べたん
全身は爛れ、剥がれた皮膚を引き摺り、動くたびに全身に激痛が走る。
その痛みはブオーンに正常な思考を許さない。。
ただ、痛みから逃れるために、このゲームから逃れるために、ブオーンは進む。
自分以外の参加者を皆殺しにするために。
ゆっくりと、ゆっくりとブオーンは南へと向かって這い進んでいった。
ザパァ
ブオーンが湖から去った後。またしても湖から浮上するものがあった。
それは魔法の絨毯に身を横たえたスミスだった。
最後のブオーンの攻撃で瀕死の状態だが、未だにその息は途絶えていなかった。
ゴプッ、と血の混じった湖水を吐き出す。
(さすがに……ヤバイかな? これじゃ死んじゃうかも……)
絨毯を水面スレスレに移動させ、水面に浮かぶ死魚を掬い上げる。
先ほどの爆発の影響でそこらじゅうに魚が浮いていた。
数匹ほど掬い上げ、食べる。咀嚼し、飲み込むと再び魚を掬い上げ、食べる。
(駄目だ……こんなのじゃ栄養が足りない。この怪我を癒すにはもっと栄養を取らないと……
栄養、栄養を……栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養)
栄養を探して湖の上を絨毯で飛び回る。
そして……見つけた。
先程より更に北岸の方向に流されていたドーガの死体を。
(栄養!)
すぐに近づいて、何も考えずにその死体に齧り付いた。
ガブリ、グシャ、バリ、ボリボリ、グチャ、ゴブリ、ゴクン、ゴクン、ゴクン……
ドーガの肉を啄ばみ、骨を噛み砕き、内臓を食い破り、その紫の血液を飲み下す。
どのくらいの時間が経っただろうか。
そこにはもう、紫に染まった水面と黒く焼け焦げたボロ布しか存在しなかった。
「フゥ〜〜〜ごちそうさま」
紫色に染まった口元を湖に浸して濯ぐと、今度は北岸に向かって絨毯を進ませた。
(何とか栄養は取れたけれど身体はボロボロのまんまだ。
飛ぶことはもちろん、動くことすら難しい。ここはおとなしくしばらく隠れるべきだね)
湖を隔てた場所に近づくものは、恐らくいないだろう。
空を飛ぶことが出来る者がいるなら話は別だが、自分以外にそういう者がいるとは思えない。
湖の北岸はこの上ない安全地帯である筈だった。そして進んでいくと洞窟が見える。
(こりゃ都合がいいや。あそこで休もう)
絨毯に横たわったままスミスは洞窟へと入り、しばらく進むとゆっくりと絨毯を着地させる。
(さすがに限界だぁ……ごめんねカイン。約束の時間までには戻れそうもないや。
まぁ僕が戻るまでしばらく一人で頑張ってよ……)
そして……スミスは身体を癒すための眠りへとついた。
かの大魔道士ノアの魔力を受け継いだドーガ……その血肉をスミスは取り込んだ。
それが彼に何をもたらすのか……まだ誰も知らない。
「ひぃ、ひぃ、ひぃいっ」
デールは走っていた。
すでに失われた右手首を押さえ、右目から血の涙を垂らし、それでも走っていた。
右の脇腹と肩口ににマシンガンの破片が突き刺さり、動くたびにデールに痛みを伝える。
それでもデールは走っていた。
「ひぃいっ、ひぃ、ひぃ、……」
どうしてこうなってしまったのかわからない。
何が間違っていたのかわからない。
運が悪かったとしか思えない。
自分は上手くやっていた筈だ。歯車は上手く回っていた筈だ。
なのに何故こうなってしまうのか。
デールは走る。訳の分からない恐怖に突き動かされて。
湖から東へと駆け、すでに山岳地帯へと入っている。
木々を掻き分けながらデールは闇雲に進んでいく。
(嫌だ、嫌だ、死ぬのは嫌だ。私は壊すんだ、全てを。
そうだ、あのマリア義姉さんも、リュカさんもタバサ王女も壊した。
その他の奴らも私がみんな壊すんだ。そうだ、ヘンリーも私が壊すんだ。
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ、だから死ぬの嫌だ。私が死ぬわけがない。私は全てを壊すんだ!)
ただそれだけを思い、駆けていく。
普通ならばもう動くことなど出来る筈もないダメージを受けながら、
それでも走っていく。その姿は……最期のティファに通じるものがあった。
デールはただ一心に駆けて、駆けて、駆けて、そして……彼は足を踏み外した。
山の斜面、いやもはや崖と呼ぶべき傾斜に足を取られデールは成す術なく転がり落ちていった。
【スミス(両翼骨折、重度の全身打撲、変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー)
所持品:魔法の絨毯 ブオーンのザック
第一行動方針:眠り、身体を癒す
第ニ行動方針:身体が癒えたらカインと合流する
行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地:封印の洞窟 地下1F】
【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷、)
所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
第一行動方針:生き延びるために全参加者の皆殺し 第二行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:封印の洞窟南の湖→南へと移動(速度は遅い)】
【デール (中度の火傷、右目失明、右腕喪失、いくつかの鉄片が身体に食い込んでいる)
所持品:アラームピアス(対人) ひそひ草、デスペナルティ リフレクトリング
賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能) ナイフ
第一行動方針:湖の魔物から逃げる
基本行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】
【現在地:湖と南の森との境→東へ】
【ドーガ 死亡】
【残り61名】
※マシンガンの残骸は湖の南岸付近に放置
ドーガは気配が動くのを感じ、瞑想から目を覚ました。
見るとブオーンが再び立ち上がっている。
その気迫とドーガに背を向けていることから、対岸を攻撃しようとしているようだ。
対岸は流石に離れすぎているためドーガの視力でも何があるのか判らない。
身体の回復は充分ではない。しかしこれ以上ブオーンの凶行を許すつもりもない。
ドーガは再び氷結魔法で氷の船を造り、己の異形の手足を櫂として
ブオーンへと向かって進み始めた。
「な、何だコレは!」
突如として湖に現れた怪獣を目の当たりにしてデールは驚愕した。
小さな山ほどもある巨体はデールを押し潰すほどの威圧感を放ってくる。
そう、魔獣は怒り狂っていた。
「俺は戦うつもりはなかった! なのに何故邪魔をする!!」
「う、うわあああああああ!?」
ブオーンの咆哮に怯え、デールはマシンガンを取り出してブオーン目掛け乱射した。
銃弾はブオーンの身体の肉をこそぎとって行く。
「ぐおおおおおおおおお!!」
ブオーンの目にはスミスのかけたマヌーサの効果によって敵であるデールの姿が幾十人にも見えている。
その全てから一斉に攻撃を受けたと錯覚し、ブオーンは逃れるためにそのデールの軍勢に向かって
激しい炎を吐いた。
強烈な火勢がデールのいる南岸一帯を焦がす。
「ぎゃぁああああ!?」
こうなればマヌーサも何も関係はない。成す術もなくデールは炎に焼かれてしまう。
攻撃が止んだことを確認し、ブオーンはデール「達」に向かって進み始めた。
今度は特大のいなずまをお見舞してやるつもりだった。
全身を焼かれながらも距離があったため致命的なダメージを避けることができたデールは
炎上するマントを脱ぎ捨て、地面に転がってまだ燃えている服の消火をする。
(こ、こんな奴に勝ち目などない! ここは逃げなければ!!)
初めて出遭った自分ではどうしようもできない圧倒的な敵を前にデールは逃げ出そうとした。
森の中に駆け込んだところを今度は無数の光条が閃き、森の木々を破壊する。
ブオーンのいなずまだ。
(さすがに限界だぁ……ごめんねカイン。約束の時間までには戻れそうもないや。
まぁ僕が戻るまでしばらく一人で頑張ってよ……)
そして……スミスは身体を癒すための眠りへとついた。
かの大魔道士ノアの魔力を受け継いだドーガ……その血肉をスミスは取り込んだ。
それが彼に何をもたらすのか……まだ誰も知らない。
「ひぃ、ひぃ、ひぃいっ」
デールは走っていた。
すでに失われた右手首を押さえ、右目から血の涙を垂らし、それでも走っていた。
右の脇腹と肩口ににマシンガンの破片が突き刺さり、動くたびにデールに痛みを伝える。
それでもデールは走っていた。
「ひぃいっ、ひぃ、ひぃ、……」
どうしてこうなってしまったのかわからない。
何が間違っていたのかわからない。
運が悪かったとしか思えない。
自分は上手くやっていた筈だ。歯車は上手く回っていた筈だ。
なのに何故こうなってしまうのか。
デールは走る。訳の分からない恐怖に突き動かされて。
湖から東へと駆け、すでに山岳地帯へと入っている。
木々を掻き分けながらデールは闇雲に進んでいく。
(嫌だ、嫌だ、死ぬのは嫌だ。僕は壊すんだ、全てを。
そうだ、あのマリア義姉さんも、リュカさんもタバサ王女も壊した。
その他の奴らも僕がみんな壊すんだ。そうだ、ヘンリーも僕が壊すんだ。
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ、だから死ぬの嫌だ。僕が死ぬわけがない。僕は全てを壊すんだ!)
ただそれだけを思い、駆けていく。
普通ならばもう動くことなど出来る筈もないダメージを受けながら、
それでも走っていく。その姿は……ティファの最期に似ていた――。
デールはただ一心に駆けて、駆けて、駆けて、そして……彼は足を踏み外した。
山の斜面、いやもはや崖と呼ぶべき傾斜に足を取られデールは成す術なく転がり落ちていった。
【スミス(両翼骨折、重度の全身打撲、変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー)
所持品:魔法の絨毯 ブオーンのザック
第一行動方針:眠り、身体を癒す
第ニ行動方針:身体が癒えたらカインと合流する
行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地:封印の洞窟 地下1F】
【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷、)
所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
第一行動方針:生き延びるために全参加者の皆殺し
基本行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:封印の洞窟南の湖→南へと移動(速度は遅い)】
【デール (中度の火傷、右目失明、右手首喪失、いくつかの鉄片が右半身に食い込んでいる)
所持品:アラームピアス(対人) ひそひ草、デスペナルティ リフレクトリング
賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能) ナイフ
第一行動方針:逃げる
基本行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】
【現在地:湖と南の森との境→東へ】
【ドーガ 死亡】
【残り61名】
※マシンガンの残骸は湖の南岸付近に放置
新作記念age
ふぉしゅ