2 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/25 09:26:03 ID:PnP2AsnM
2を取らしてくれよ・・・・・・頼む
まだちょっと早いだろ。500位で良かったのに。
>>1 乙!
>>4 閉店は5:12ですがオーダーストップは5:00からなんです。
>>1新スレ乙!
同じくちょっと早い気もするけどドタバタするより余裕あっていいかな
新スレおめ|
8 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/25 15:32:36 ID:NANF5bHX
1おめでとう
そして死んでくれ
9 :
プロトゾーン:04/09/26 16:50:05 ID:P+AZ/d/z
おい、止まってる出
10 :
プロトゾーン:04/09/26 17:14:25 ID:ydkeLztb
まだ新しいネタないのかよ
11 :
プロトゾーン:04/09/26 19:36:08 ID:P+AZ/d/z
ぱくんなよ。
新スレ乙です! では前スレの
>>710から続きってことで…
タバサが息を切らして、謁見の間の脇にある階段を駆け上がった。
一段と濃さを増してきた霧のためか、不安の海もさらに大きく、そして深くなる。
この先に彼女の母ビアンカがいるはずなのだが…
(お願い… お母さん、無事でいて…)
何度心の中でつぶやいたか分からないタバサの祈りの言葉。
しかし、タバサのその願いは、覆しようのない現実の前にはかなくも打ち砕かれる。
両親の寝室に駆け込んだタバサの目の前に広がる光景が彼女の小さな心臓を凍りつかせた。
「お母さん……?」
目の前が真っ白になる。手足がガチガチに硬直したかと思うと、指先の力がスゥーと抜け
腕がだらりと垂れ下がった。 ビアンカは倒れていた。全身から血を流して……
「お母さん!!」
タバサが走り寄ろうとしたが、物陰に隠れていたバートが姿を現してそれを止めた。
「動かないでもらおうか。タバサ王女」
「バートさん……!」
タバサの頬を冷たい汗が伝ったとき、倒れていたビアンカがノロノロと顔を上げた。
「タバサ… なんで… 来ちゃった、の……?」
ビアンカがうつろな瞳をタバサに向けた。その声は限りなく弱々しい。
「なんでって… お母さんの命が狙われてるっていうから……」
タバサは戸惑い涙声で答えたが、ビアンカは首を横に振った。
「彼の狙いは私の命じゃない… 本当の狙いは… あなたなのよ」
「え…?」
「そういうことだ」
バートが顔色一つ変えずに言った。タバサの胸がかつてないほどの怒りに震える。
「私一人のために、グランバニアを襲ったの? そのためにお母さんに
こんな大ケガをさせたの? それだけのために関係のない大勢の人を巻き込んで…」
タバサがキッと目をむいてイオラの呪文の詠唱を始める!
「私はできることならあなたとは闘いたくなかった。
でも、もう闘うことでしか、あなたを止めることはできないんですね?」
タバサの手の平に集まる魔力が、みるみるうちに渦を巻いて大きく力強くなっていった。
しかしその途中で呪文は、霧に吸い込まれるようにしてかき消されてしまう。
「そんな、どうして…?」
「さっき霧が濃くなっただろう? この霧の中では呪文は無効化される」
それを言われて初めてタバサは自分たちが罠にかかったことに気付いた。
「でも… 魔法を封じられたときのための訓練だって私は…」
言いかけてタバサは黙りこんだ。バートがどれだけ強くなっていたとしても
あの母ビアンカを相手にして無事でいられるはずはない。
それなのに目の前にいるバートは、かすり傷一つ負っていなかった。
「抵抗しようとは考えるな」
バートの背に隠れていた小さな男の子が顔を覗かせるのを見せ、タバサは喉がカラカラに
干上がるのを感じた。バートがその子供の喉元に地獄のサーベルの冷たい刃を突きつける。
人質はビアンカとこの子供の二人。少しでも何かをしようものなら
バートはなんのためらいもなくこの男の子を斬り捨てることだろう。
タバサの心の奥底から静かな怒りと、それ以上に抑えようもない悲しみが
ふつふつとこみ上げてきた。
「バートさん。あなたは誰よりも深く、大切な人を失う悲しみを知っているはずでしょう?
なのに… どうして…? どうしてこんなことをするんですか?」
タバサの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。
「タ、タバサ様…! ぼ、僕のことはいいから… た、闘ってください!」
子供が喉を震わせて、声を振り絞るようにして叫んだ。
足が恐怖でガクガクと震え、目には涙を浮かべている。それでも子供は続けた。
「タ、タバサ様はお姫さまだから… ぼ、僕のせいで死なせたらいけないから…」
必死に訴える少年の瞳をじっと見つめて、タバサは柔らかく微笑んだ。
「怖い思いをさせてごめんね… でも、もう大丈夫。すぐ終わるから」
そしてバートの瞳をキッと見据えた。
「あなたの要求は… なに?」
ギガデーモンの鋭い打ちおろしに、激しいなぎ払いがレックスを襲う。
レックスはそれをなんとか紙一重で避け続けていた。
『ククク、すばしっこいじゃねぇか。けど反撃できなければ意味はないぜ?』
「そうだね、一撃でも食らったらひとたまりもないや。けど二つだけわかった」
レックスは右腕でアゴからしたたり落ちる汗をぬぐいながら静かにつぶやいた。
『ほう? 何に気付いたかは知らんが、俺も急いでるんでな。さっさと終わらせるぞ!』
ギガデーモンが叫びをあげながら渾身の力をこめて棍棒を振り下ろした!
しかしレックスはそれを冷静に避けて、逆にギガデーモンの肩に一太刀を浴びせる!
「一つ、攻撃後の隙が大きい。まぁ、それだけ重い武器を使っていれば当然だけど」
『この… ガキ!!』
ギガデーモンが巨大な棍棒を振り回したが、それはレックスにかすりもしない。
「二つ、攻撃前に大きく振りかぶらなきゃならないから、棍棒の軌道がすごく読みやすい」
『……』
ここにきて初めてギガデーモンの表情から余裕が消えた。
『なるほどな… どうやらお前を少しみくびっていたようだ…』
ギガデーモンの目の色が変わった。まっすぐにレックスを見つめ、瞳を油断なく光らせる。
レックスは、その魔物の瞳に一人の戦士の魂を見たような気がした。
『勇者よ、俺に本気を出させてくれた礼として、俺の最大の技でお前を殺してやろう』
ギガデーモンが目を閉じて大きく息を吸い込んだ。きあいためだ。
レックスは一歩後ろに下がって剣を構えた。
今うかつに踏み込めば一瞬でやられてしまう!
ギガデーモンがゆっくりと棍棒を振りかぶった。
彼が狙っているのは究極の打撃攻撃ともいわれる禁断の技「皆殺し」
これを受けたものは、その原型をとどめることなく破壊されつくされるという。
レックスの心の奥に死に対する恐怖の念がじわじわと湧いてきた。
しかし逃げるわけにはいかなかった。彼の戦士の魂がそれをかたくなに拒んだので。
「その勝負、真正面から受けてたつ!!」
レックスの天空の剣が光り輝き始めた……!!
「『いくぞ!!』」
魔物の巨大な体と、勇者の小さな体がほぼ同時に動きだした!
二人の間合いは、まばたきをする間もなくつまり、二人の視線が一瞬だけ交わる。
ギガデーモンが力強く右足を踏み切りながら棍棒を振り下ろし、
レックスがさらに輝きを増す天空の剣を構えて、大きく地面を蹴った!
うなりをあげる巨大な棍棒と、光り輝く剣とが激しくぶつかりあい火花が散る!!
『うおおおおおおっ!!!』
「ハァアアアアアッ!!!」
速さではレックスに分があったが、腕力はギガデーモンの方が遥かに上。
そのあまりの怪力の前に、天空の剣がきしみ、腕が折れそうになるのをレックスは感じた。
―――このままじゃ前と変わらないじゃないか……!!
天空城での戦いでギガデーモンに天空の剣を折られた瞬間が、レックスの脳裏によぎった。
生まれて初めて味わった敗北。心のど真ん中にぽっかりと穴を開けられたかのような
喪失感。そして自分たちを守るために城に残ることを選んだ父アベルの優しく、
それでいてどこか少しだけ寂しげないつものあの笑顔。
たった一回だけの戦いなのに失われたものはあまりにも多く、そして大きかった。
―――もう、あんな思いはしたくない……
『うがぁあああああっ!!!』
理性を捨て去ることで己の持つ潜在能力をすべて解放した
ギガデーモンの雄叫びがこだまする! レックスは歯を食い縛り、目をギンと見開いた!
「僕はもう負けない―――!!」
レックスが叫ぶのと同時に、周囲を包む深い闇を
真昼の太陽のような強烈な光が振り払った!
『……!?』
ギガデーモンの動きが止まった。いや、何かに止められた。
困惑する魔物の瞳に理性の光が戻る。と、同時にギガデーモンの顔が蒼ざめた。
レックスと天空の剣を包む光の闘気が、ギガデーモンを拘束している!
『こ、この剣技はまさか……!?』
「うおおおおおおお!!!」
決着は一瞬でついた。レックスが肩で息をし、片膝をつく。そんな彼をギガデーモンは
苦しげな瞳で見つめ… そして地面にドウッと音をたてて崩れ落ちた。
魔物の巨大な棍棒は真っ二つに割れて、魔物の胸からどっと血が流れ出る。
『ふふ… 天空城のときとは逆の結果になってしまったようだ』
「ギガデーモン……」
ギガデーモンが力なく笑った。その瞳からゆっくりと命の光が消えてゆく。
『この土壇場でアルテマソードとはな… 大したヤツだ…』
「アルテマソード?」
『なんだ、自分の放った技の名前も知らなかったのか? クク… まぁ、いい。
……俺の負けだ… とどめを刺せ―――!』
レックスが口をへの字に結んで、天空の剣を手に取った。
「ごめん…」
一瞬だけためらい、そしてレックスはギガデーモンの心臓に剣を思い切り突きたてた。
ギガデーモンは薄れゆく意識の中で笑った。数百年前の勇者を騙まし討ちにしてまで
功を焦った自分に対する戦士としてのけじめが、これでやっとついた。そんな気がした。
ヘルバトラーが腕を振るうたびに肌が裂け、炎を吐くたびに皮膚が焼け焦げた。
コリンズとピピンは荒い息をつきながら目の前の強敵を睨みつけた。自分たちがこれだけ
ボロボロにされているというのに、敵は傷らしい傷をほとんど負っていないのだ。
「な、なぁピピン? ヘルバトラーってこんなに強かったっけ?」
「う〜ん、僕の知る限りではこんなには強くは…
ていうか、明らかにウチのバトラーよりも強いですよ、コイツは!!」
『俺をそのへんのヘルバトラーと一緒にしてもらっては困るな。
なんたって俺は、数百年前の魔界では四天王と呼ばれていたのだから』
ヘルバトラーが肩を揺すって笑い、コリンズは口をあんぐりと開けて絶句した。
「し、四天王だと!? こんなのサギだ!!」
ヘルバトラーが凄まじい勢いで二人に飛びかかってきた。その死をも恐れぬ闘争心の前に
二人は圧倒されて、次第に追い詰められてゆく!
「コリンズ様、まだ闘えますか?」
疲れの色が見え始めてきたコリンズにピピンが笑いながら尋ねた。
「も、もちろんだ! まだまだ俺はいけるぜ!」
コリンズは慌てて答えたが、同時にこの絶体絶命のピンチのときに笑っていられる
ピピンの神経の図太さに舌を巻いてもいた。だが、ピピンが次に言ったセリフが
さらにコリンズを驚かせることになる。
「まだまだ元気ですか。それは良かった。けど残念ながら僕は
これ以上、真っ向勝負を続けられそうにはありません」
「な、なに言ってんだよ? あきらめるのか? それとも俺一人で闘えってのかよ!?」
「そうではないのですが」
『何をブツクサ言ってやがる、闘いの最中だぞ!』
ヘルバトラーが怒声をあげ、さらに攻撃の激しさが増す!
その攻撃を槍でしのぎながら、ピピンが小さくつぶやいた。
「コリンズ様、それではあとはよろしくお願いします」
「は?」
あっけにとられるコリンズを尻目に、ピピンが叫びをあげながらヘルバトラーに向かって
突進していった!! だがその決死の特攻はあっさりと避けられてしまった。
『馬鹿め!』
ヘルバトラーがニタリと笑い、鋭い鍵爪の生えた右手をピピンの腹にねじこむ。
それはピピンのミラーアーマーを突き破り、彼の腹を深くえぐった。
「うっ…」
「ピピン!!」
苦痛に顔を歪めるピピンを見て、コリンズが悲鳴のような声をあげた。
ヘルバトラーが満足げに笑ったが、次の瞬間、その笑顔が凍りつく。
ピピンがヘルバトラーの両腕にガッシリとつかみかかり、体の自由を奪ったのだ!
『き、貴様、放せ!!』
「放さないですよ… 例えこの身が朽ちたとしてもね…!!」
ヘルバトラーが彼の腕を振り払おうとしたが、ピピンはその凄まじい腕力で
魔物を押さえつけて決して放さない。
「コリンズ様、今です! やっちゃってください!!」
「うわああああああ!!!」
コリンズが叫びを上げながら走りこんできた!ヘルバトラーの顔に恐怖の色が浮かぶ!
『に、人間めーーーーーー!!!!』
それが最後だった。次の瞬間には、ヘルバトラーは眉間を叩き割られ絶命していた。
「おい、ピピン! しっかりしろ!」
コリンズが泣きそうな顔で床に崩れ落ちたピピンを抱き上げた。
その手はまたたく間にピピンの鮮血で真っ赤に濡れた。
「…最後の一太刀お見事でした。それだけカッコよく決まれば
コリンズ様も女の子にモテモテ間違いなしですよ……」
「バカヤロウ、もうしゃべるな!!」
コリンズの瞳に涙が浮かんだとき、レックスが走りこんできた。
「コリンズ、ピピン!」
「レックス! ピピンが…!!」
ピピンの腹から滝のように流れ出す血を見て、レックスはすぐにべホマを唱えようとした。
しかし、それはまたしても黒い霧にさえぎられてしまった。
「くそ… やっぱりこの霧をどうにかしなきゃダメか…
レックス。このままじゃピピンとタバサがやばい! どうする!?」
レックスは一瞬だけ考え込むような表情をしてからコリンズの肩をつかんだ。
「タバサはどこにいる?」
「たぶん、一番上の階だ。タバサがそう言っていた」
レックスは首を大きく縦に振った。
「わかった。コリンズはピピンを奥の教会に連れて行って。
神父様に頼んでピピンの応急手当をしてもらうんだ。僕はタバサのところに行く!
もしかしたらそこに霧を操っているヤツがいるかもしれないから…」
コリンズが力強く頷き返す。
「わかった。ピピンを送り届けたら俺もすぐに行く!
それまではタバサのこと、頼むぞ……!」
コリンズがぐったりとしているピピンを担いで、
レックスがタバサやビアンカのいるはずの部屋を目指して、それぞれ走り始めた!
ただただ皆が無事であることを祈りながら……!!
「まぁ、仮にバートをやっつけたとしても霧は消えやしないんだけどね」
グランバニア城を一望することのできる小高い丘の上に寝そべりながら
黒衣の少年が独り言をつぶやいた。彼の視線の先に浮いている薄紫色の水晶が
顔を怒りに歪めながら走り続ける勇者レックスの横顔を写し出す。
少年はニタニタと笑いながら右手の上で、三つの小さな指輪をもてあそんだ。
それぞれが淡い神秘的な光を放つ聖なる指輪。この世と魔界とをつなぐ鍵になるとも
言われている世界の至宝。すなわち炎のリングと水のリングと命のリング。
「ふふふ… 面白いね。僕がこうやって寝転んでいる間にみんなして殺しあっている。
その憎しみや悲しみを霧が貪欲に吸収して、僕らはますます強くなる。滑稽だなぁ…」
少年が頬を歪めて、おかしそうに肩を揺すった。
「こんなところで高みの見物かい?」
突然、少年の背後から何者かの声が響いた。少年の顔から笑顔が消えた。
しかし、その声の主に気付いて、いかにも嬉しそうにゆっくりと唇の両端を持ち上げた。
「なんだ… やっぱり、生きていたんだ」
龍を模したエメラルド色に輝く杖を片手に、紫紺のマントをひるがえしながら
その男はゆっくりと少年に近づいてくる。
絹糸のように柔らかな黒髪が風にたなびき、透明に澄んだ漆黒の瞳の奥では
力強い不屈の意志が静かに燃えていた。
「借りを返しにきたよ…」
その男がニヤリと笑ってみせた。
そこに立っていたのは、グランバニア王アベル―――
今日はここまでです!
乙
いよいよ佳境ですね
これからの展開楽しみにしてます
皆格好良すぎるな。
タバサは窮地でも気丈でレックスはアルテマソードまで会得、ピピンはあくまでピピンらしいけど闘志は凄い。
そして どこへ行ってたんだッー!俺たちは君を待っていたッッッ!!
アベル王!!
23 :
プロトゾーン:04/09/26 22:13:31 ID:P+AZ/d/z
途中から読むのがシンドい
あらすじ教えてください
24 :
プロトゾーン:04/09/26 22:18:13 ID:VFe4pvVW
途中から読むのがシンドい
あらすじ教えてください
それは、形としては細長い棒のようなものである。
が、持ち主のその時の状態によって、大きくなったり小さくなったりする。
使えない人もいるが、持つ人によっては非常に有効な武器になる。
また、より体力のある男性が使ったほうが大きくなるであろう。
これを見たときに、こんなにでかくなるのかよ!? と驚いた人もいるのではなかろうか。
26 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/27 00:35:53 ID:cFgoBsF1
鏡の中の群像、正直面白い
>23
いや、なんつーか・・・もう少し頼み方をだなあ・・・
だが、他人が書いた自分の作品のあらすじとかを読みたいのも事実!誰か書いてくれw
28 :
プロトゾーン:04/09/27 01:29:49 ID:RstmMqDR
おねがいしますよ、ホント
書いてくれないと、また荒れ狂う炎と化しますわたしは
まとめサイトに載せていただいてるんで別にいいかなー、とも思いましたが
一応書いてしまったんでとりあえず投稿しときます。まとまりのない文章ですみません。
あらすじっぽいもの
世界に平和が戻ってから五年後、レックスとタバサの双子は十五歳の誕生日を迎える。
グランバニアの国民の誰もが、二人の健やかなる成長を喜び、世の平和を噛みしめていた。
ある日アベル一家はラインハット城に遊びに出掛ける。昔語りに花を咲かす大人に退屈を
感じたレックスはタバサとコリンズを伴い、祖父パパスの墓参りをしに古代の遺跡へと
向かった。何事もなく終わるはずであったが、しかしレックスたちは古代の遺跡で
レックスそっくりの黒ローブを身にまとった少年と出会う。戸惑うレックスたちに少年は
いきなり竜の魔物をけしかけてきた。なんとか竜を撃退するも、彼らは重傷を負わされ、
また世にただならぬことが起きはじめていることを痛烈に感じるのであった。一方、
レックスたちの力を認めた黒衣の少年も自身の目的を果たすために動くことを決意する…
竜との闘いの後、深い眠りに陥ったレックスは、夢の中である男の人生をかいま見る。
十数年前、太后の偽者による恐怖政治の中で家族を奪われてしまった青年バートの人生。
眠りから覚めたレックスの心に彼の憎しみのこもった瞳が強く印象に残る。バート青年は
すでに故人であるはずだった。しかし、例の黒衣の少年はバートに接触をかけることに
成功していた。死んだはずの彼を地獄から呼び出したのはこの自分であると一言告げて。
31 :
プロトゾーン:04/09/27 01:46:02 ID:RstmMqDR
おねがいします。あらすじですよね?
その後、レックスが夢で見た青年バートに似ている男が、名産品博物館から禁断の巻物を
盗み出した疑惑があることが判明する。一連の出来事を重く見たアベルはレックスたちを
連れて天空城へと向かった。マスタードラゴンの話で、竜の魔物の正体が数百年前の
魔界にいた、四天王であることが明らかになる。そんな中、黒衣の少年がバートと四天王
ギガデーモンを連れて天空城を急襲する。ギガデーモンのあまりの力の前に圧倒される
レックスたち。アベルは自分一人が天空城に残り、レックスたちを逃がす道を選ぶ…
自身の力の無さを思い知らされたレックスたちは更なる力を手に入れることを決意。
妖精の城から過去へと向かい、そこで出会ったバーバラの元で修行をする。様々な試練を
乗り越えて強くなった彼らは天空城の奪還に成功するが、その隙をついて黒衣の少年と
バートがグランバニア城に奇襲をかける。グランバニア城に舞い戻ったレックスたちは
三手に別れて応戦するが、彼らの目的は三つのリングと、人々の放つ負の感情の収集、
そしてタバサだった。人質をとられて身動きがとれなくなるタバサ、タバサの元へと
急ぐレックスに、闘いの中負傷したピピンを担いで走るコリンズ。それぞれの闘いを
繰り広げている中、行方不明になっていたアベルと黒衣の少年とが対峙していた……
33 :
プロトゾーン:04/09/27 01:54:28 ID:RstmMqDR
なるほど。それで最後の投稿とリンクするわけだな?
ご苦労だったな。
……微妙。
こういう人ってリアルではどういう人間なんだろう
子供なのかな?
駄々をこねて泣くぞと文句をいえばなんでもしてもらえるなんて、最近の子供は幸せですね
しかもえらそうに
お前らクズコテなんかの相手する必要ないのに…
NGワードはプロトゾーン、saga、sineな。
38 :
PROTZONE:04/09/27 18:11:08 ID:RstmMqDR
NGなんかにさせない
>>30 荒らしに反応すべきでは無いと思うけど、あらすじイイ!!
あぼーん
あぼーん
42 :
PROTZONE:04/09/27 19:24:10 ID:zB7EXlZS
NGなんかにさせない
43 :
プロトゾーン:04/09/27 20:10:26 ID:RstmMqDR
なんか最近俺の語りがいるな。めいわく
44 :
プロトゾーン:04/09/27 20:21:59 ID:zB7EXlZS
こいつの存在チョー迷惑
面白いのであげときます
46 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/27 20:58:33 ID:zspaathd
はいすみませんミスりました
(´・ω・`)ショボーン
前スレ
>>730からの続きです。
ブスブスと、何かが焦げる匂い。
痛みと痺れで思うように動かない身体に苛立ちながら、テンは視界を覆うプックルの身体が横にずれていくのを見つめていた。
四肢に力を込め、炎の連弾から身体を盾としてテンを護り、そのまま力尽きる事を良しとせず、テンの身体を下敷きにせぬよう身体を横倒しにしたのだった。
「プックル……!!」
やりきれなかった。
ソラが、プックルが、こうして傷を負って倒れたのは自分の不思慮が原因なのだから。
「フン……ギガデインといいマヒャドといい……ガキにしてはなかなかどうして。多少、驚いた。成程これならイブールや大魔王を倒したというのも頷ける」
そうひとりごちながら、魔導師は、テンと自分の間で倒れているソラの元へ歩き、ソラの顔を鷲掴みに自分の目線まで持ち上げた。
「さて、どうするか」
「やめ、ろ……! ソラから手を離せ!!」
剣を支えに立ち上がりながら、テンが叫ぶ。
「ほう、立ち上がったか。……フ、構わんぞ? 立ち上がった褒美だ!」
そう言って、魔導師はソラの身体をテンへ向けて投げ捨てる。
「あ……うッ」
地面に叩きつけられたソラが苦悶の声をあげる。
「ソラ……!! お前、よくも……!!」
「構えるな、勇者。その剣を渡せば退いてやろう。今は剣だけで満足してやろう。貴様の双子の片割れと獣を殺し、貴様を人質にグランバニアに乗り込まれたくないだろう?」
簡潔に、されど見逃す事のできない意味の言葉を、魔導師は言い放つ。
「この状況でどうする? 自分の力を弁えろ、勇者。妹と獣を半死半生に陥れたのは貴様だ。貴様にはその程度の実力しかないのだ。そんな貴様一人でどうする? オレの機嫌を損ねぬようにするのが最善だと思うが?」
「それ、は」
ちくしょう。勇者なのに、ぼくは、どうして――――
「さて、問おう。剣を渡せばそのまま退いてやるが?」
「……そんな、こと、信用できるか……!」
――――こんなに、弱いのだろう……?
「最初に言っただろう? オレの目的は神秘の探求だと」
「神、秘……?」
「この世全ての神秘を解明し吸収しこの世全ての力を我が物としこの世司る真理へと辿り着く。それがオレの目的だ、勇者、故に貴様本人などにさしたる興味など無い」
ふざけるな、と奥歯を軋ませる。
「貴様らに言っても理解できないだろうとも言ったな? ああ、誤解の無いように言っておくが、世界征服などに興味がなければ貴様らの命にも興味はない。根源に辿り着きたいという単純な個人の欲さ。まあ、貴様らの身体を解剖してその血その力を調べてみたくもあるが――」
怒りがこみあげる。だったら、尚更だ。たかがそんな事のために、この剣を? この剣とそんなくだらない欲望が釣り合うとでも思っているのか。
だって、この、剣は――――
「勇者とはいえただのガキ、それよりもそのガキに、オレの爪を傷つける程の力を与えるその剣に魅せられた」
魔導師にはもはや自分など眼中にない――つまり、勇者であれど、天空の武器防具が無ければ価値を見出さない、と。
ああ――耐えられない。垂れ流される言葉などはどうでもいい。
自分が弱者であるという事など、とうに承知している。耐えられないのは、この剣を大層な値打ち物であるかのように注ぐその視線。
多分、ここで剣を渡せば、魔導師は本当に退くのだろう。ソラもプックルも、確実に死なずに済むのだろう。
だけど、それでも――――
「それでも、渡せない」
自分とソラとプックルの命を天秤にかけて尚、テンは言った。
その言葉に、誰よりもテン自身が戸惑っていた。
なんで、自分はこんなに怒っているのだろう。
この剣を、手放すわけにはいかないと訴えているものは何なのか。
例え伝説の剣であれど、命には代えられないはずなのに――――
その時、父の背中が脳裏に閃いた。
母、世界の危機、勇者や大魔王、様々な事がおぼろげだった。
自分が勇者だということの重大さもぼんやりとしかわからずにいた。
脳天気に、彼の背中についていった。
物心つく以前から天空の勇者だと、世界を救う英雄だと、ちやほやされて育ってきた。
それを盾にわがままを言った覚えは無いけれど、自分が特別な存在なんだといい気になっていた覚えは有る。
そんな自分を恥じている。
母を探す旅、大魔王を倒す旅。
その長い旅の中で、自分が本当に必要不可欠な場面なんて、いくつあっただろう……?
憧れたのは祖父。人質に取られた息子のために躊躇無く剣を捨て、堂々と、魔物の攻撃を受け続けたという。
憧れたのは父。祖父と祖母の最後の希望となって、どんな困難にも屈せず、倒れることなく前へ進み続けた。
――彼らにとても及ばない自分が、勇者だから、魔王を倒した英雄の一人だから、と父と同列に称えられるのは苦痛だった。
誰よりも、自分自身に許せない。
ぼくは、本当は弱いから。ソラのように聡明でもない。ピピンのように堅い信念をもって修練を重ねたわけでもない。
強いのはぼくじゃなくて、伝説の武器防具。
彼らの力を借りて、ようやく足手まといにならずに済んでいただけなのだから――――
ふと、思い出す。旅立つ以前、指南役だったピピンとの会話。
彼と剣を打ち合わせて、そして当然、何度も負けた。
いつかの訓練の合間の休憩、ピピンは強いねとぼくは言った。ぼくは勇者なのに、全然勝てやしない。
今の貴方はあまりにもお若い。私に負けてしまうのは仕方有りません。しかし大丈夫ですよテン様。貴方はすぐに、私など追い越してしまうでしょう。
……ぼくが、勇者だからすぐに強くなれると思うの?
いいえ、私は学がないものですから、勇者とか、天空とかといった事には詳しくありません。
じゃあ、どうして?
貴方が、王のご子息であらせられるから、貴方が強くなれると信じているのです。
貴方のお父上は私などよりもっともっとお強いのですよと彼は続けた。
王に憧れて兵士になったと言った。平和を築くために戦い続けてきたぼくの父の事を、自分の事のように誇らしげに話してくれた。
王の助けになることが、幼い頃からの自分の夢なのだと。そのために、ずっと鍛錬を続けてきたのだと。
強くなれるといったピピンの言葉。その意味が、あの頃は実感できなかったけれど、今ならわかる。
確固たる理由を見つける事ができたそのときこそ、真に強くなりたいと思える、強くなろうと頑張れるから――――
「そんな、ことだったんだ」
なんだって今頃気づくのか。
顔を上げる。
あきらめるなと訴えているものはその身体。
倒れる事を否定しているのはその心。
ここでアイツの言葉に甘んじることは、決定的な物に心を屈してしまうこと。
今、いや、今までもずっと、心の底から強くなりたいと思っているから。
この剣の『本当の持ち主』である彼らの背中に、いつか追いつけるようにと。
天へ向けて少年は左掌をかざす。光が仄かに、灯っていた。
左掌を中心に光が広がる。それは、まっすぐに道を照らす勇気の輝き。テン自身を、ソラを、プックルを優しく包み、その身を癒すベホマラーの光。
光の中にソラは見る。天空の勇者としてではなく、世界の柱としてでもなくただ一人の男として、道を見据える金髪の少年の姿を。
「プックル、立てる? ソラを、お願い」
胸が、高鳴った。ただの一言が、何よりも頼もしい。その眼差しが、何よりも頼もしい。
人々に勇気を与える存在が勇者だというのなら、今の彼の姿が、まさに――――
決めた。
さあ、行こう。
倒れようとする自分自身を打倒し続けながら、立ち塞がる敵を打倒しよう。
彼方に見える遠い背中を目指して、前へ――――!!
――――初撃は迷いなく、直線そのままに真正面から――――
右足(うそく)を踏み込んで繰り出すは下段から上段への逆袈裟。
天空の剣に導かれたものではなく、テンが自身の意志のみで繰り出す、基本に乗っ取ったまっすぐな一撃。
魔導師は、五指から伸びた剣の如き爪でそれを受ける。
腕力ではなく、身体の回転を以って撃ち出されたその剣戟は――――
「な――――に!?」
剣を受けた魔導師を身体ごと後方に吹き飛ばすほど、強烈なものだった。
小さな身体に不似合いな、あまりにも苛烈な剣戟。
天空の剣がそれを可能にさせた。
――天空の剣には、意志がある。剣自身に、魔を討とうとする意志がある。
天空の剣が勇者に与える攻撃力とは、切れ味もそうだが、なによりその意志にある。
大魔王を倒す旅においては、自ら身を翻すように少年の手に飛び込み、少年を引っ張るようにして、敵へ向けてその刀身を閃かせていた。
だが今は、剣はその意志を勇者に委ねていた。
今、剣のその力は、敵を討つための力ではなく、勇者を高めるための力となる。
そう、剣は今このとき、認めたのだ。
テンを「単なる勇者の資格を持つ人間」としてではなく、「自身の力を預ける相棒」として――――
「――――ッ!!」
放心を歓喜に代え、魔導師はバランスを保ったまま軽やかに着地。
少年の追撃を迎え打たんと腕を振りあげる。
「フ、ハハハハハ!! 素晴らしい力だ! ますますその剣が欲しくなったぞ、勇者アッ!!」
「負けない!! 剣も、渡さない!!」
テンは吼える。自身の力を、心を、ありったけぶつけるように。
負けられない、この剣は渡せない。
だって、
この剣は祖父のものだ。
この剣は父のものだ。
――――偉大な彼らが、人生を懸けたものなんだから――――!!
とりあえずここまで。
第2ラウンド開始といったところでしょうか。
つーかSS書くのって難しいっすね……orz
SS職人さんの皆さんマジ尊敬します。
テンのヘタレっぷりとピピンの真面目さ、天空の剣の意志云々は久美沙織の小説版の影響です。
前スレ
>>733さん
>このピンチにピピンは救援に来るのかな?
ピピンの出番は無いっす(´・ω・`)
代わりといっては何ですがプックルはまた活躍しますので。
>力では圧倒的に負けてるけど知恵と勇気で乗り切る〜みたいなテンソラ期待
勇気はともかく……知恵なんてありゃしません。てか頭脳戦を書く力量がありません(´・ω・`)
気合と根性のみですw
魔導師の外見はハドラーですか……こんなところでハドラーの名前が出てくるとは。
作者のイメージとしてはクロノトリガーの予言者が一番近いですね。
前スレ
>>747さん
>始まりが唐突だけど迫力あるバトル描写で面白いです
はじまりが唐突=描写がないってのは作者の力量不足故です。精進します。
>一回世界を救った勇者が手も足も出ない敵側の正体も気になるポイント
単に私の書くテンがヘタレなだけっす(´・ω・`)
ではまた。続き頑張ります。
あぼーん
あぼーん
>>52 なんとなく雰囲気が久美小説版と似てるな〜と読んでいたので納得
小説版ピピンは数あるピピンの中で唯一のかっこいいピピンだし
自分の存在意義を守りたいからという理由で
剣を渡さない未熟な王子はへたれっぽいけど、しっかりと剣の価値と戦う理由を理解して
敵に立ち向かう王子はいい感じ
鏡の中の群像の作者さん、前スレ
>>727さん、お疲れ様です。
佳境に入っていく『鏡の中の群像』、タバサ&ビアンカは、
その元へ急ぐレックスは、コリンズ&ピピンは、・・・どうなっていくのか非常に楽しみです。
727さんのSS、ピピンかっこいいです。
レックスも「意味」を理解して、前へ進む迷いのない姿、かっこいいですね。
小説版はまだ発見できていないのですが、天空物語と平行して読めたらなぁ、と・・・。
楽しみにしてますー。
>>52 組センセティストもだけど、それ以上にハリウッドですね……。
58 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/29 14:49:32 ID:hTquAoTu
下がりすぎ。
IEで見るとき拾うの大変だから上にしといてよ
59 :
age屋 ◆ZkxHGou166 :04/09/29 16:40:24 ID:XHTaij4b
ageます
また人多すぎにならないかな。
sageます
天空の剣だけがアイデンティティというのは悲しいな。
双子が気の遠くなるような過去に戻ってDQ3のゾーマと闘う展開キボン
Vの勇者と魔法使いは王子と王女にはまる、とリメイクVをプレイしながら思った
悩みどころは性格とか残りのメンバー
age
sine荒らし、saga荒らしに続いて…懲りないもんだ。
67 :
52:04/09/30 00:00:28 ID:d9kPx9UL
>>55 >なんとなく雰囲気が久美小説版と似てるな〜と読んでいたので納得
ふ、雰囲気が似てる!?((;゚Д゚) どの辺りがですか?
キャラの性格はたしかに久美小説版ベースですが……
SS書くの初めてなので、他人の影響が自分流にアレンジできずにもろに出てしまってるんでしょうか
>>56 >レックスも「意味」を理解して、前へ進む迷いのない姿、かっこいいですね。
いや、ふつーに頑張って強くなりゃ悩むこたねえ!! って開き直って投げやりになっただけですよ( ・ω・)
小説版はオススメです。情景描写がまた良いんですよこれが。草原山岳洞窟海原の景色とか朝方から真夜中までの風景とか自然の匂い食べ物の匂いとか。
私は天空物語はわずかにしか読んだ事はないんですが、どちらかというとシリアスな話の方が好きなのでちょっと好みに合わなかったですね。
続き楽しみにしていただいてありがとうございます。
>>57 ハ、ハリウッドとはなんですか!?((;゚Д゚)
>>62 むしろオヤジの背中がアイデンティティ……のつもりで書いたのです。(それもまたどうなんだろ)
筆力不足がもろに出てますね……_| ̄|○ 頑張ります。
つーかこのスレ的には王女こそが王子の存在意義であるべきなんだろうか
>>63 5主人公、ビアンカ、王子、王女、ピピン、プックル、6主人公、ハッサン、ミレーユ、バーバラ、チャモロ、テリー
こいつらが数の暴力でダークドレアムに挑むシーンなら妄想した事ありますノシ
68 :
52:04/09/30 01:00:52 ID:d9kPx9UL
>>62 間違えた。周りからみて、王子は天空の剣が無ければ用はないというのは悲しいな、って意味ですね。
まあ、ある意味王子が被害妄想入ってると思って頂ければ。勇者に生まれついちゃったプレッシャーみたいなもんです。
周りからすればギガデイン使える王子は十分戦力になってます。主にザコ戦で( ・ω・)
>>52 お疲れさまです! 闘いに臨むテンの心理描写がすごくうまいなぁ、と思いました。
続きに期待です!
>>20より続きです
第六章、鏡
つい先程まで晴れ渡っていた空が、まるでグランバニアに起きた悲劇を嘆くかのように
ぶ厚い雲に覆われた。あたりは一段と暗くなり、時おりきらめく雷光がその二人の顔を
照らし出す。アベルと黒衣の少年は互いの顔を眺めやったまま、動こうとはしなかった。
お互いに相手がどう動くのか警戒しているのだ。その長き沈黙に耐えかねて
先に口を開いたのは少年のほうだった。
「やっぱり、足を踏み外したのはワザとだったんだね?」
アベルはニヤリと笑った。
天空城でレックスたちと別れたあともアベルとギガデーモンたちの闘いはしばらく続いた。
最初は互角に闘っていたアベルであったが、多勢に無勢。次第にアベルは
追い詰められていった。そして、雲の端でアベルはうっかりと足を踏み外して、
はるか地上へと消えていった…… ように見えた。
「僕にはルーラがあるからね」
こともなげにアベルは言ったが、少年がつまらなそうに肩をすくめる。
「そんなことだろうとは思っていたけどさ。アベルは神の居城を守ることよりも
自分の命を守ることを選んだわけだ? なんかそれってみっともないよ」
アベルが目を閉じてゆっくりと答えた。
「奪われた物は取り返せばいい。壊されたものは直せばいい。
けど、失われた命だけは二度と取り戻すことはできない」
「……で?」
「あの優しい子供たちのことだ。あそこで僕が死ねば、きっと自分たちのことを責める。
一生その背に重い十字架を背負って生きていくことになる。
僕はあの子たちにはそんな思いは絶対にさせたくなかった」
アベルが目をうっすらと開けて遠くを見つめた。壮絶なる父パパスの死と、
波乱に満ちた自らの半生が思い出され、アベルは口の中が少しだけ苦くなる思いがした。
「まぁ、結局のところ死ぬのが怖かっただけなんでしょ?」
「そうかもしれないね」
あえて否定はせずにアベルはくすぐったそうに笑った。
「どちらにしても、この妖しい霧は君が操っているんだろ?
こいつをどうにかしないと城に入れそうにない」
少年はアベルの全身をなめるように見回してからクスリと笑った。
「僕と闘う気なの? 言っておくけど今の僕は強いよ」
「…君の方こそあまり僕をなめない方がいい」
「ふふ… 遠慮は無用か。わかった。それじゃあ殺し合おうか…」
「……」
少年が衣の内側から剣を取り出した。それはまさしく天空の剣―――
タバサがかすかに呻いてバートの腕の中に倒れこんだ。
バートがタバサのみぞおちに鋭い拳を叩き込んだのだ。タバサは無抵抗だった。
最後まで毅然とした態度で、臆することなくバートの瞳を見据えていた。
「…気丈な娘だ」
バートが驚きと尊敬の念のこめられた眼差しでタバサを見つめる。
彼の傍らで震えていた人質の男の子の手を乱暴に振り払い、
バートは気を失ったタバサを脇に抱えてテラスに出た。
強くなったり弱くなったりを繰り返す風がバートの髪を乱暴にかきあげた。
「いい風だ…」
バートがうっとりとつぶやいた。そんなバートをビアンカがキッと睨みつける。
「タバサを… どうするつもりなの? 返しなさい…」
「それはできない。俺の目的のためにはタバサ王女がどうしても必要なんだ」
「目的……?」
「あんたは知らなくてもいいことだ。どちらにしてももうすぐ終わる」
―――そう、もうすぐ終わる。何もかも……
バートがそっと目を伏せ、ふところからキメラの翼を取り出した。
「エルヘブンへ……!」
大きく天を仰いで、バートが空に向かってキメラの翼を放り投げた。
二人の体が淡い光に包まれ、そして空のかなたへと消えていった。
レックスが部屋に駆け込んだのはその直後であった―――
レックスがビアンカをそっと抱き上げてベッドの上に寝かせる。
「ごめんね… レックス… タバサを守れなかった」
ビアンカが途切れ途切れにしゃべった。差し出されたビアンカの手を
レックスがそっと握りしめて柔らかく微笑んだ。
「心配しなくてもいいよ、母さん。タバサは必ず僕が助けるから。
だから今はゆっくりと休んで」
ビアンカはそれに答えるように笑ったあと、ゆっくりと目を閉じた。
「悪いけど、母さんにしばらくついていてくれないかな?
ちょっと城の様子を見てきたいから」
ビアンカが穏やかな寝息をたてはじめたのを確認してから、
レックスが子供の頭をなでながら頼んだ。男の子が緊張した面持ちで二度頷いた。
部屋の外に出たレックスは周りをグルリと見回し、誰もいないことを確認すると
人目につかない影の奥に潜り込んだ。壁に両手をつき、
胸の内にたまっていた様々な思いをすべてぶちまけるように、大きく息を吐き出す。
そしてレックスは歯を食いしばり、うつむきながら壁を思い切り殴りつけた。
「タバサ……!」
肩がブルブルと震え、疲労とやりきれなさで目が血走る。
「間に合わなかったのか?」
レックスの後ろから沈鬱な声が響いた。
振り返るとそこには腕組みをしたコリンズが立っていた。
「…バートがタバサをさらってエルヘブンに飛んだらしい。何を目的にしているかは
分からないけど、たぶんあいつらの計画通りにことはすすんでいる」
「レックス… お前…」
「心配しなくてもいいよ、コリンズ。僕は大丈夫だ」
レックスが顔を上げてコリンズの瞳をまっすぐに見つめた。
「バートはタバサを殺さないで、わざわざさらっていった。
多分ヤツらはタバサに何かをさせる気なんだ。僕らにはできない何かを」
「……そうだな。確かにそう考えるのが自然だろうな」
コリンズが少し考えてから頷いて見せた。
「まだヤツらの計画は成就していない。まだ間に合うんだ。だから僕はあきらめない。
必ずタバサを助けてあいつらを止めてみせる……!」
「ああ。レックス… 俺もできる限り力になるよ」
若き二人の瞳に決意と闘志の入り混じった雄々しき炎が燃え上がった。
その奥に潜む後悔と悲しみをなんとかして打ち消そうとするかのように。
黒い霧の外側、アベルと黒衣の少年の闘いは熾烈を極めていた。
両者一歩も譲らずに、激しい攻撃が次々と繰り出される。
しかし、アベルの顔はひきつり、少年は終始笑顔のままだった。
「なんか闘うのが辛そうだね、アベル。やっぱり自分の子供そっくりの
人間を殺さなきゃいけないのはイヤ? 君の本気はそんなもんじゃないでしょ?」
「それを言うのなら君も本気を出してはいないな。まだまだ隠れた力を感じる」
「うん、そうだね」
少年が笑いながら天空の剣を振り下ろした。空を切り裂き、鋭いうなりをあげる剣の
閃きのあとには空気の焼け焦げた匂いが残る。アベルは背筋が寒くなるのを感じた。
少しでも態勢を崩そうものなら即座に容赦のない剣閃が襲いかかってくる。
―――この速さにこのセンス、恐ろしいほどの一撃の威力に、寸分の乱れもない正確さ。
そして極めつけは、この光り輝く伝説の剣。 本物だ…… すべて!!
剣の嵐をなんとか受け流しつつアベルは思った。レックスと同じなのだ。何もかも。
ただ一つ違う点をあげるとするならば、レックスと違ってその笑顔からは暖かさは
微塵も感じられず、ただ冷たさのみが漂っているように思われるということであろうか。
「楽しいよ、アベル。本当に君は強い。いよいよ君の本気を見てみたくなった」
どれだけ斬りつけてもアベルはうまく避けきる。剣の腕に絶対の自信を持っていた
少年にとってこの事実はちょっとした屈辱であり、同時に限りない喜びでもあった。
少年が一歩後ろに下がって呪文の詠唱を始める。アベルはその詠唱に聞き覚えがあった。
勇者しか唱えることを許されないはずの、いかずちの呪文。
単純に威力だけをみるなら、それはタバサのイオナズンをも凌駕する最強の攻撃魔法。
「ギガデイン……?」
レックスが唱えていたときはのんきに、強くて便利な魔法だなぁ、と考えていただけの
アベルであったが、それをいざ敵にまわすとなると、改めてその呪文の
恐ろしさと凄まじさを思い知らされることになる。
さぁ、どうするアベル? どうする?」
少年が楽しそうに笑う。アベルが腕を振り上げて大きく手の平を開いた。
「こうするまでだ!!」
少年の詠唱が終わる寸前に、アベルの手の平からバギマの呪文が放たれた。
もうもうと砂煙をたてて、巨大な真空の渦がうねりをあげながら少年に襲いかかる!
「!!」
少年は大きく横に跳んで紙一重でバギマを避けた。
「あぶないあぶない。けどこれで最後かな!?」
少年の瞳が残忍に輝いた。ただでさえ暗かった空が黒雲に包まれ、さらに闇が深くなる。
凄まじい魔力が少年の体中からあふれだし、爆発しそうになる魔力が手の平に集まり、
一筋の光となって、ゴウ!と音をたてながら一直線に、はるか天空を突き刺した。
詠唱の完了。ゆっくりと、しかし確実に少年の唇がその呪文の名を紡ぎだした。
「ギガ… デイン―――!!!」
その刹那、空がカッと輝いた。空間そのものを引き裂くように幾重にも重なった稲妻が
アベル目がけて降り注ぐ。雷鳴そのものの轟音と、大地が弾け、崩れるような
爆発音がほぼ同時に響き渡り、グランバニア大陸全体が地響きをたてて激しく揺れた。
そのあまりの威力にあたり一帯の地形が一瞬で変わってしまう。
少年がギガデインを落とした跡を覗き込んだが、そこにはもはや何も残っていなかった。
「あはは、ちょっと派手にやりすぎちゃったかな?」
少年が愉快そうに笑った。が、次の瞬間、彼の頭を何かが思い切り引っぱたいた!
「なっ!?」
信じられないといった様子で目を見開く少年の瞳に写ったのは、ドラゴンの杖と
それを振りぬいているアベルの姿。少年はあさっての方向に吹っ飛ばされ、
大地にその身を強く打ちつけられた。
「な、なんでだ? まさかギガデインを避けたっていうのか?」
少年がうろたえた。雷を避けることのできる人間などいるはずがない!!
最強の呪文であるギガデインならなおさらだ。
「まぁ、いくらなんでもギガデインを避けることは出来ないよ。
ただし、それは僕のいる場所に雷が落とされていたらの話だけどね」
「ひょっとして… アベル」
少年の顔が蒼ざめた。
「ルーラの呪文にはこういう使い方もあるってことさ」
バギマは少年の呪文の詠唱を止めるのではなく、砂煙をたてることで煙幕の役割を
させることがその真の目的。少年の視界からアベルが消えた一瞬の隙をついて
アベルはルーラで少年の背後に回りこんだ……
「やられたよ、アベル…」
少年が薄く微笑んだ。アベルが彼の喉元にドラゴンの杖を突き付ける。
「そろそろ君の正体と目的を話してもらおうか」
「残念だけどそれはできそうにないね。この体にはもう限界がきてるみたいだから」
「なんだって?」
アベルが眉をひそめた途端にその変化は起こった。シューッと音をたてて
少年の体から白い湯気のようなものがたち始めたのだ。
かと思うと、彼の線の細い華奢な体が見るも無残に崩れ、溶けてゆく。
「これはいったい…?」
突然の事態の変化にさすがのアベルも戸惑いの色を隠せない。
「ねぇ、アベル。レックスに伝えておいてくれないかな? 魔界で待っているよって」
「魔界… だと?」
「そうさ。魔界がすべての始まりの地だから… すべての決着をつけるのに
これ以上ふさわしい場所はないでしょ? フフフ… フフフフ……」
体中がドロドロに溶けるという凄惨な状態であるにも関わらず、
不敵な笑みを浮かべる少年。アベルはただ押し黙ってそれを見つめる。
意味深な言葉とふくみ笑いを残して少年は完全に崩れ、消えてしまった。
少年が消えたその後に残されていたのは小さな木彫りの人形だけだった。
アベルは片膝をついてそれを拾い上げてしげしげと眺め、小さくため息をついた。
彼が持っていたはずの三つのリングと薄紫色の水晶、
そして天空の剣とゴールドオーブはそこには無かった。
今日はここまでです!
>>52 ムズイといいつつここまでの描写が書けることに素直に尊敬
俺なんかではとても書けねえですわ
続き期待しております
ところでタイトルがあれば教えてください
なければ保管するときにこっちゃでつけときます
>>77 乙
サブタイトルに鏡が
親父元気でえがったのぅ(ノД`)
>>77 乙、流石だよアベル先生。パパス並に頼りがいがある。
この戦いはある意味父と子の本気バトルと言えるものかもしれない。
タバサ奪回を誓うレックスとコリンズはどうなるかも楽しみだ。
>>77 乙です!
展開が燃えますよ
あと人質を取っておきながらビアンカに止め差さないバート萌え
81 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/30 20:47:21 ID:v7e+dq+W
つーかマホステ使えよ。そもそもルーラがそんなふうに使えるのはオカシイ。
アベルが使えるのはマホキテ。
ゲームエンディングから数年…アベルはトベルーラを会得してたんだよ!
って脳内補完汁!
ギガデーモンを倒した王子が霞んでしまう勢いの父さん
まだまだ若い者には負けないか
85 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/10/01 00:16:44 ID:791iHqGc
トベルイーラってダイのやつだっけ?
どうせなら流マ陣とか登場させてよ。ドルオーラで
グランバニアが灰になる展開とかキボン
そういやギガデーモンって何の色違いだったっけ?
>>87 久しくDQWやってないから忘れていたよ。ありがとさん。
残るはエビプリか
海老プリッツ(゚д゚)ウマー
前スレのペコ氏のSSやけに中途半端に終わってると思ったら容量オーバーだったのか
こっちで続きキボン
>>51からの続きです
「ふっ…………!!」
剣と一体となった少年は敵の間合いを一瞬で侵略。
突き出される爪の一撃を、魔導師の右腕下、腰と二の腕の間に潜り込む事で回避した。
二撃目もまた下段から。右足を踏み込み、身体の左後方より振り上げられた剣が魔導師の首を断たんと半円を描く。
魔導師は動じることなく、右足を下げて上体を仰け反らせ、鼻先から僅かの隙間を余して銀閃から身を躱す。
剣戟は続く。三撃目、速度を緩めぬまま竜巻の如く身体を旋回させ、魔導師の左足をめがけて上段より打ち下ろし。
それも躱した。魔導師は今度は数ミリ余しではなく、間をとるように大きく後方に飛び退いた。
――――しかし、連撃は途切れない。
テンは振り下ろした剣戟の速度に振り回されることなく、反動を溜めるように一瞬停止し、それを爆発させるように、身体を捻り剣を右に大きく振りかぶりながら左足を踏み出した。そして、
ダン、と左足を杭のように地面に打ちつけ――――
「は――――あ――――!!」
引き絞った身体を横薙ぎとして解き放つ――――!!
「ハ、――――」
予測を越えた斬撃を、魔導師は四爪を揃えた両手の爪を交差させて受ける。
しかし渾身で叩き込まれた剣は彗星の如く。
斬撃はガラスを削るような高音と共に両手の爪を粉砕し、その衝撃は未だ宙にある魔導師の身体を更に後方へ吹き飛ばした。
そしてテンは更に追撃をかける――――
初撃後の焼き直しのような光景。
異なるのは魔導師が今度は地面を削るように着地した事と――――
「クッハハ、ハハハッ!! いいぞ、更に力が増している! その力の全てを見せてみろ――――!!」
――――魔導師の表情が更なる喜悦に歪んでいる事だった。
「プックル、だめ。まだ、だめだよ」
二人に割り込まんと力を溜め、戦気を漲らせているプックルを宥めながら、尚も続く両者の攻防をソラは見つめる。
ギャン、と堅い音をたてて魔導師の爪は再生し、天空の剣と対抗していた。
ソラは苛立っていた。原因はふたつ。
ひとつは魔導師のデタラメな実力。全霊を込めて攻撃を繰り出すテンに対して、魔導師は笑みを浮かべどこまでも余裕を残していた。まるでテンの力を味わうことを楽しむかのように剣風を受け続けている。
簡単に手を出すわけにはいかない。相手がただの戦闘狂であればプックルの乱入も歓迎するだろうが、敵の視線はあくまで天空の剣のみに注がれている。ヘタに手を出せば容赦なくこちらを排除しにかかるだろう。
そして、もうひとつの原因は、
――――テンのばか、なにひとりだけで戦ってるつもりなのよ。
少年の現状だった。
何も知らないくせにお前は弱いだのなんだのと勝手な事をほざいた魔導師に、毅然と剣を渡さないと言い放ったことには素直に心の中で喝采を送った。実力で勝る相手に、怯むことなく向かっていくその姿に見惚れもした。
だけど今、魔導師と一緒になって、わたしたちを忘れて闘いに没頭しているのはいったいどういうことだ。わたしたちの援護をあてにしている様子が全然無いのはいったいどういう了見だ。
剣が力を貸してくれているから良いようなものを、もしそうでなければとっくに殺されているかもしれないのに。
この瞬間も、いつ魔導師がテンに見切りをつけてしまうかわからない。まさに命の危機の真っ只中にテンはその身を置いているのだ。
だというのに今は声をかける事ができない。安易に呼びかけて魔導師から注意をそらさせてしまえばそれもまた致命傷に繋がりうる。
ソラは歯軋りとともに唇を結ぶ。
わたしたちは、あなたが頑張っているのを知っているのに。
わたしたちは、あなたの強さを知っているのに。
わたしがあなたを一番の頼りにしているように、あなたもわたしを一番頼りにしてくれてると思っていたのに。
わたしは、あなたと心をひとつにして戦いたいのに――――
波立つ心をよそに、ソラの聡明な頭脳は回転を続けていた。
魔導師は未だ無傷。しかし自分たちの攻撃が効いていないのではない。無傷なのは自分たちの攻撃を全て回避しているからだ。
それは例え魔導師が人外の存在であれ、人間の手で傷つかない身体ではないということ。
無敵であるならば、防御行動をとる必要など無いのだから。
故に、勝機はそこにある。
すなわち奇襲。
――――魔導師が余力を吐き出す前に、必殺の一撃を以て終わらせる――――
――脳髄が白熱する。
禍々しく伸びた爪、肥大化した身体、呪文の遠隔操作、全ては人外の力。
だが、この魔導師は元は人間だったのではないかとテンはぼんやり思う。
――神経が灼熱する。
魔族には、天敵である天空を神秘とみなす感覚はない。力を得るというのなら天空の武器防具よりも、オリハルコンやメタルキングに魔力を付与する方を選ぶはずだ。
だから恐らく、この魔導師の力は、根源を目指すというその欲を叶える過程で身につけた力なのだろう。
――筋肉が断裂する。
どのような手段、どのような研究を以てその力を身につけたのかは知らない。どのようなきっかけで真理なんて途方もないものを目指しているのかも知らない。
大体そんなもの目指してどうするんだ、とも思う。
――呼吸が点滅する。
そして、人であるという事を捨ててまで力を求めるなんていう事にも自分は一生、理解に至らないだろう。
周りを顧みずに、殺す事を厭わず只々自分本位に力を求めるなんていうことは絶対に間違っている。
――しかし勇気は衰えない。
命を命とも思わぬ存在が振るう力は必ず人々に害を為す。
そしてその存在が今、自分に牙を剥いている。ならば、ここで斬り伏せなければならない。
――しかし意志は退かない。
例え自分にそれを為しえる力が無くとも、負けそうになる自分を、倒れようとする自分を斬り伏せて、必ず成し遂げてみせる。
敵を斬って自分を斬って限界を越えて、その先へ一歩、進んでみせる――――
徐々に相手に圧され始めている事への不安を叩き潰し、は血の気失せる程に唇を引き締めて、少年は剣を振るう。
「プックル、来て」
そうして、自身の剣の回収にソラは走った。移動したその先で妖精の剣を拾い上げる。
剣を右手に握り、胸の高さに水平に寝そべらせる。
そして自己に埋没するように瞼を閉じ、左手の人差し指と中指を揃えて口元へあてた。
「――バイキルト」
囀るように口ずさむ。
息吹を吹きかけられた二本の指先に宿るは淡い青光。
瞼を開き、眼前で光灯る指を剣の刀身に走らせる。
光は剣身に染みこむように消失。瞬間、ヴゥン、と音が鈍く響き、妖精の剣に魔力の波動が漲った。
確かめるように剣を一振り。魔力の残滓が剣閃の軌跡を残す。
よし、とばかりに強化した剣を握り直し、眦を魔導師とテンへ向ける。
そして二人の攻防を睨む双眸は、少年のみを捉えた。
剣の如き意志を以て剣を振るい続けるその姿に、しっかり者でおませな少女は微笑みをみせる。明るく優しいけれど、いつまでも子供っぽい少年を愛しむように。
――そんなふうに戦っていたら、いつか絶対に折れちゃうじゃない。
「……ほんとに、テンはわかってないんだから。ね、プックル?」
つぶやきは穏やかに。
ほんの少しだけ困ったような響き、されどこめられた親愛はこれ以上なく。
――わたしがそうであるように、あなたにもわたし達がいないとダメなんだよ?
――あなたを死なせはしない。
――あなたの誇りである剣も、奪わせはしない。
「プックル、もうすぐ行くよ」
表情から笑みを消し、気を取り直してプックルに告げる。
今度は確実に視界に二人を収めた。
左掌をテンと魔導師の地点へ向け、そのやや前方に照準をセット。
左掌に魔力を宿らせ、タイミングを逃さぬよう集中を高める。
――――だから覚悟しててね、テン。アイツを倒したあとで、思いっきりひっぱたいてやるからね。
今回はここまで。
第二ラウンド開始、ソラ&プックルver.な場面です。
つまるところ話は全然進んでいません( ・ω・)
バイキルトを武器強化にするか腕力強化にするか迷ったのですが、このSSにおいては武器強化ということでご容赦ください。
それと
>>94の最後の行、誤字がありました_| ̄|○チクショウ
>徐々に相手に圧され始めている事への不安を叩き潰し、は血の気失せる程に唇を引き締めて、少年は剣を振るう。
→徐々に相手に圧され始めている事への不安を叩き潰し、血の気失せる程に唇を引き締めて、少年は剣を振るう。
>>69 心理描写を誉めて頂いてありがとうございます。
鏡の中の群像、いずれ最初から通して読もうと思って今の場面はあまり目を通していないので、
何も感想をコメントする事はできなくて申し訳ないですが、応援しています。続き、頑張ってください。
>>78 >ムズイといいつつここまでの描写が書けることに素直に尊敬
こ、こんな駄文をそこまで誉められたら逆に申し訳ねえっす(汗
>ところでタイトルがあれば教えてください
しまった。何か忘れてると思ってたらタイトルかw
……すいません。タイトルつけ、ぜひお願いします。
王子王女キラパンが通り魔とマジバトルするだけのSSなのでさっくり深く考えずにつけちゃってください。
>>95 王子メインだから王女はこのまま空気、と思ったらちゃんと見せ場が。
右手で妖精の剣、左手で呪文な感じかな
>>95 乙!
王女も熱く活躍していていいですね。
続きにさらなる期待を!
もうお二人のSSが素晴らし過ぎて入るとこないって感じ?
続き投下ー!前スレ
>>768カラー
「タバサ、お兄ちゃんと結婚するもん!」
続けてタバサが言いった。
け・・・結婚・・・?ってタバサ・・・僕らは兄妹だから結婚はできないんだよ・・・って
「そうね。みんなずっと一緒にいられるし、レックスとタバサが結婚するのもいいかもね?」
お、お母さんまで・・・ああ・・・お父さんもウンウンってうなづいてるし・・・。
「お兄ちゃんはわたしのこと好き?わたしはお兄ちゃんが大好きだよ!」
「どうなの、レックス?」
「どうなの?お兄ちゃん?」
「う・・・。ボクは・・・あ〜!グランバニア見えてきたよ!ほら!!」
慌てて話題を変えちゃった。
タバサがあからさまにふてくされてるや。
そんな・・・好きとか嫌いとか・・・嫌いじゃないし・・・好きといえば好きだけど・・・ねぇ?
皆の前では恥ずかしいって言うか・・・って!これだとタバサを好きってことになるの?
グランバニアではもうぶっちゃけ皆出来上がってました。
ええ、酔ってます。
ボクらの横を物凄いスピードで駆け抜けてった人は恐らくプサンさんだね。
わぁ・・・お酒クサイ・・・でもみんなうれしそう・・・。
そうだね、こんな風景が見たくてボク達戦ってたんだもんね。
よかった・・・。あれ?不意に涙がこぼれてきたや。
今更・・・?だけど、身体が震えてる・・・。
「どうしたの?お兄ちゃん・・・?」
タバサが心配そうな顔で優しく声をかけてくれた。
「わかんない・・・なんだか・・・急に・・・。」
そう言って、ボクはその場にいてもたってもいられなくなって駆け出した。
胸が苦しい・・・うまく言えないけど、心臓を握り締められてる感じだ。
お城の屋上まで来たら、押さえてた感情が口の中から飛び出した。
ボクは・・・ずっと・・・怖かったんだ。
小さい頃、遊びでお父さんの荷物の天空の剣を持った時、お城のみんなは
「勇者様!」と言ってボクをもてはやした。
それから、ボクは勇者と呼ばれるようになって・・・お父さんとお母さんを探す旅に出て・・・
みんなの期待に答えて・・・逃げ出したくなるような強い敵とも戦って・・・痛くって・・・。
殴られる痛さより、魔物を傷つける方が痛い時もあった・・・。夜、一人で泣いたりした。
でも、勇者だから・・・って我慢してた。
なんでボクは勇者なの?
お父さんの方がボクより強いのに・・・天空の装備が出来るから?
ボクは・・・。
──────────
「お兄ちゃん・・・。」
タバサ後は追い、レックスを呼び止める。
レックスは涙を拭き、うまく笑えないまま返事をした。
「ど、どうしたの・・・?みんなの所にいなくていいの?」
背中をタバサに向けたまま、屋上の手すりをギュッと握りしめたまま、レックスは溢れ出る感情をグッとこらえた。
「どうしたのはお兄ちゃんに言うセリフです・・・。急にはしってっちゃって・・・。」
「ご、ごめん・・・急になんだか・・・すぐ戻るよ・・・。だから心配しないd・・・。」
レックスが全てを言う前にタバサはレックスの背中を抱きしめる。
「もう・・・無理しなくてもいいんでよ?
・・・本当は、ずっと怖かったんだよね?辛かったんだよね?
なんで自分だけが勇者なんだって悩んでたんだよね?」
タバサの一言がレックスの心臓を貫くほどの衝撃を与える。
「・・・知ってたの・・・?」
レックスの問いにタバサはコクリとうなづき、
「お兄ちゃんのことはいつも見てるから・・・なんでもわかっちゃうんです・・・。」
「タバサ・・・。そ、そうなんだ・・・。」
そう言って、レックスは照れ隠しなのか、頭をポリポリと掻いた。
「あのね、お兄ちゃん!勇者って・・・『勇気がある者』って意味なの知ってた?
だからね、お兄ちゃん以外でも勇者さんはいるんだよ?
お父さんもお母さんも・・・一緒に戦ってくれた魔物さんも・・・みんな・・・勇者なの・・・。」
「え?あ、うん・・・そうだね・・・でも・・・天空の装備はボクしか出来ない・・・よ?」
タバサの優しい慰めに、レックスは問いかける。
「・・・勇者さんはいっぱいいるんです・・・。勇気がある人は・・・いっぱい・・・。
だから・・・いっぱいいても、わたしがお兄ちゃんを見失わないように・・・お兄ちゃんだけが装備できるんです・・・。
遠くからでも・・・すぐにお兄ちゃんってわかるように・・・。」
タバサは顔から火を出しながら、ポツリ、ポツリと答えた。
「・・・ありがとう・・・タバサ・・・。」
「ううん・・・お兄ちゃんが悲しい顔してると・・・わたしも悲しくなっちゃいますから・・・。
それに・・・お兄ちゃんのこと・・・大好きだ・・・し・・・。」
まさかの告白。
さすがにこうもハッキリ言われたからには、はたから見れば少し抜けたレックスも気づかないわけがないはず・・・だが。
「あ、ありがとう・・・ボ、ボクも・・・タバサが悲しい顔してると・・・悲しいよ・・・。」
「・・・うん。」
「そ、そろそろお父さん達の所に戻ろうか・・・。きっと心配してるし・・・。」
「・・・・・・うん。」
タバサは自分がレックスを好きと言ったのにその返事があいまいすぎることに少し瞳を涙を溜める。
レックスの後ろを歩くタバサ。レックスが突然振り返りこう告げる。
「あ、あのさ・・・今・・・タバサに言われてわかったんだけど・・・。
ボクも・・・その・・・タバサのこと・・・好き・・・だよ。」
照れ隠しなのか、少し目線を下げ、頬をポリポリと掻き話すレックス。
そう、レックスはしっかりとタバサの気持ちを受け止めていた。
そして、タバサは顔に笑顔を戻した。
「・・・お兄ちゃん!」
と答えて駆け出し、
「ん?」と言いながら目線をタバサに向ける。
「だ〜いすき!」と叫び、レックスに抱きつくタバサ。
「うわっ・・・!」
レックスは飛びついてきた事に驚き、タバサを受け止め、優しく抱きしめた。
──────────
これで終わりじゃないぞ?もうちとだけ続くぞ。
ここまで書いたならセックルシーンもお願いします。そんなに農耕でなくてもいいから
手コキぐらいで。
エンディングの会話をモチーフした話は萌える
お気楽そうに見えて実は色々悩みや恐怖があった王子と
そんな王子を励ましつつアタックする王女に(;´Д`)ハァハァ
皆さんお疲れ様です! 方向性の違う両作品ですが、
それぞれの持ち味が うまく出てていいなぁ、と思いました!
>>77より続きです
レックスとコリンズは城に散らばる魔物を掃討しながら霧の操り主を探していた。
早く呪文を使える状態に戻さなければ、ピピンをはじめ重傷を負った者を
助けることができなくなるかもしれないと考えたのだ。しかしそんな二人の心配をよそに
急に霧がサッと晴れて、魔物もこつ然と姿を消してしまった。
つい先程まで死闘が繰り広げられていたのが嘘のような静けさに、
レックスたちは安心をしつつも、胸の内にわだかまる疑問をぬぐえないでいた。
「なんでいきなり霧がなくなったんだ? まぁ、いいことなんだけどさ」
イマイチ釈然としないといった様子でコリンズが頭をボリボリとかく。
「分からない… けど今は教会に急ごう。回復魔法を使うチャンスだ」
レックスに促されて、コリンズも教会へと急いだ。
教会ではホイミスライムのホイミンたち回復呪文を得意とする者が
所狭しと駆けずり回っていた。床中に兵士が寝転がり、苦しげにうめいている。
「あの、神父様、みんなは大丈夫そうですか?」
せわしなく動く神父を呼び止めてレックスが聞いた。
「えぇ、ピピンがかなりの重傷を負っていますが、命に別状はないと思われます。
他の者の傷はピピンに比べれば軽いものです。心配はいりません」
「……? ということは、死者はでなかったんですか?」
「はい、まさに奇跡というより他はありません。彼らの奮闘を称え、
そして我々を見守ってくださった神に感謝をしましょう…」
そう言って静かに神父は祈りの仕草をする。黙って彼の真似をするレックスであったが
その目は何かを考え込むかのように細く、そして鋭くなる。
ピピンが無事であることを知ってコリンズは心底ホッとした様子であったが、
険しい表情をしているレックスに気付いて、笑顔をひっこめた。
「どうした、レックス? なんかマズイことでもあったのか?」
「あ、いや… なんでもない。さぁ、そろそろ母さんに城の状況を報告しに行こうか!」
レックスは笑顔を作って足早に教会を後にした。
彼らが寝室に戻るとビアンカが丁度起き出したところであった。
「もう、起きても大丈夫なの?」
レックスが問いかけ、ビアンカがそれに応えるように微笑んだ。
「心配かけたわね。私はとりあえず大丈夫そうよ。まだちょっと傷がいたむけど」
顔をしかめて肩の傷をさするビアンカを見て、レックスがすかさずべホマをかける。
たちまち傷はふさがったが、ビアンカの吐息がまだかすかに苦しげに
震えていることにレックスは気がついた。本来ならまだ起き上がるべきではないのだ。
はたから見ると、とても怪我人とは思えないように振舞うビアンカの健気な姿に
レックスは王妃として、また二児の母としての誇りと責任感を見たような気がして
胸がじんわりと熱くなるのを感じた。
「タバサのことは残念だけど… 焦ってはだめよ。落ち着いてまずは現状を把握しましょ」
ベッドの上に腰掛けながらビアンカが言った。男二人が顔を見合わせ、
レックスが小さく頷いて一歩前に進み出る。そして少しためらってから、切り出した。
「その前に報告しなきゃいけないことがあるんだ。父さんのことなんだけど…」
「アベルがどうかしたの? 確かにさっき深刻そうな顔していたけど…」
「あぁ… ん? さっき? さっきっていつ? まさか父さんに会ったの!?」
顔色を変えてまくしたてるレックスの見幕にキョトンとしながら、
ビアンカはテラスの方を指差した。
「そこにいるじゃない。ていうか、ずっと一緒にいたんじゃなかったの?」
レックスたちの話し声に気付いたのか、その人はゆっくりと部屋に入ってきた。
いつもと変わらぬ、限りない優しさの中に少しの悲しみを隠した微笑をたたえて。
レックスの頭の中が一瞬だけ真っ白になり、体が石にでもなってしまったかのように
ガチガチに固くなった。もう、会えないかもしれない。口には出せずにいたが、
常に頭から離れずにいた不安。心の深いところを覆い尽くしていた巨大な氷塊が、
何か暖かいものに包まれて優しく、ゆっくりととけてゆくのをレックスは感じた。
「父さん……」
やっとそれだけをつぶやいた。顔を紅潮させてうつむくレックスの肩に
アベルは何も言わずに黙って自分の手を乗せて、微笑んで見せた。
「なに? 二人ともどうしたの?」
彼らの身に起こったことを知らないビアンカは不思議そうな顔をして首をかしげた。
それから程なくして緊急会議が開かれた。レックスたちの他、
サンチョやオジロンといった城の重鎮たちも席を連ね、さらにその端っこの方には
なんとマスタードラゴンの化身プサンまでもが控えていた。
「ど、どうしてあなたがここに?」
「いえ、元の姿ではここには入れないですから。私ももはや無関係ではないですしね」
プサンがニヤリと笑った。
最初にレックスとコリンズ、そしてアベルがこれまでに起こったことを報告した。
レックスたちが、ラインハットに旅立ってからグランバニアに帰ってくるまでの
一連の出来事に、タバサがさらわれてしまったこと、そしてバートがエルへブンに
飛んだらしいことを話し、アベルがグランバニア城の近くの丘でレックス似の少年と
闘ったことなどを話した。アベルが喋り終えて息をついたとき、
皆、一様に黙り込んでしまい、会議室は重苦しい空気と沈黙に包まれてしまった。
しばらく続いたその沈黙を、遠慮がちな低い声でサンチョが破った。
「彼らの行先は本当にエルへブンなのでしょうか? ただ単にこちらを混乱させるために
一度エルへブンに飛び、さらに別の場所に飛んだということも考えられるのでは?」
しかしアベルはそれをやんわりと否定した。
「たぶん、エルへブンは本当に目的地なんだと思う。いや、正しくはエルへブンの
北にある海の神殿を通って、魔界に行くのが目的なんだ」
「魔界?」
「あぁ、そうだ。あの少年は三つのリングを盗み出していた。
残念ながら僕はそれを取り返すことはできなかったけど」
ビアンカが眉をひそめた。五年前の戦いが終結したあと、海の神殿にある魔界への門は
エルへブンの民によって封印しなおされ、その門を開く鍵となる三つの指輪は
グランバニア国で管理することになった。アベルとビアンカにとってはせっかくの
婚約指輪である炎のリングと水のリングであったが、そういった事情のために
命のリングともども城の宝物庫で厳重に保管されることになったのである。
しかし、そのリングはバートたちに奪われてしまった……
「それじゃあ、彼らは本当に魔界に…?」
「たぶんね。それに彼は言っていた。魔界でレックスを待っていると…」
アベルがレックスの方に向き直る。思わぬ所で自分の名前を呼ばれてレックスは戸惑った。
「でも、あいつは父さんがやっつけたんじゃなかったのか?」
ゴクリと喉を鳴らしながら言うレックスの目の前に、
アベルが小さな木彫りの人形を放り投げた。
「これは……?」
「そいつが、あの少年のなれの果てだ。恐らく、どこかに本体がいて、
遠くから操っていたんだ。なぜそんなことをする必要があるのか? それは……」
「本体が魔界にいるのかもしれない、ということですね…」
プサンが口を挟み、呆れたように首を振った。
「魔界にいながらして、こちらの世界に分身を作り出し、さらには四天王まで操るとは。
いやはや、恐ろしい魔力の持ち主もいたものです」
「魔界… か」
レックスが腕を組み、その上にアゴをそっと乗せてつぶやいた。
そこにタバサがいる。そこで彼が自分のことを待っている。
彼らとの最後の戦いが始まろうとしていることを感じてレックスは人知れず戦慄した……
その日のうちに、彼らは魔界に向けて旅立つ決心を固めた。
魔界に行くメンバーはレックスとコリンズ、そしてアベルの三人に決まった。
準備を手早く済ませて城門へと向かう。そこには大勢の者が彼らの見送りに集まっていた。
「本当はあたしもついて行きたかったんだけどね」
ビアンカが残念そうに肩をすくめた。
「今は、ビアンカは無理しちゃいけない。ゆっくりと体を休めてくれ」
「うん、分かってる」
オジロンは例によって猛反対したが、タバサのことを触れられると黙り込むしかなかった。
「すみません、オジロンさん。けれども、ことはグランバニアだけの問題ではありません。
彼らを放っておけば、また世界は危機にさらされるかもしれない。王としても、
戦士としても、そして一人の父親としても僕は彼らを野放しにしてはおけない」
「…そうだな。悔しいことだが、この事態を打開できるのはお前たちしかいないだろう。
だが、ワシはお前たちを失いたくはない。タバサともども必ず生きて戻ってこい……!」
差し出されたオジロンの手をガッシリと握って、アベルがニッコリと笑った。
「レックス様!」
群集を掻き分けて男の子が一人レックスの前に駆け込んできた。
「君は……」
レックスは彼に見覚えがあった。その男の子はバートに人質に取られていた子供だった。
「あの、その… これからタバサ様を助けにいくんですよね?」
「うん、そうだよ」
「あの… 絶対にタバサ様を助けてください… じゃないと… 僕は…」
涙ながらに訴えるこの男の子をレックスはじっと見つめた。まだ、あどけない顔立ちの
彼ではあったが、そのつぶらな瞳は嘆願と自責の念とであふれ返りそうになっている。
この子もこの子なりに戦っていたんだな、とそのときレックスは思い至った。
レックスは腰を低くかがめて目線の高さをこの男の子に合わせ、優しく微笑んでみせた。
「絶対に助けるよ… 約束する」
「ほ、本当?」
「ああ、本当さ」
暗く沈んでいた男の子の顔がパァ、と明るくなる。二人は互いに笑いあって、指きりをした。
海の神殿は山を貫く外海と内地とをつなぐ川の先にあった。
元は小さな流れだったであろうものを人為的に拡大していったその水路は
大型帆船が入ってもなお余る横幅と高さをあわせ持つ。
「こんなすげえモンをよく造れたよな…」
コリンズがその広さに圧倒されて呆然とつぶやく。もし、これを人が作ったのだとしたら
どれだけの年月が費やされて、どれだけの数の人間が働いていたのだろう。
それを考えるだけで、気が遠くなりめまいのする思いがした。
とても人が、人の通るために造ったとは思えないような大きな扉を開けて、
レックスたちは神殿の内部に入っていった。
「これは……?」
アベルが目を大きく見開いてつぶやいた。神殿の内にある三体の女神像には、
それぞれ指輪が捧げられていた。それで魔界への扉は開くはずであったのに、
しかし、扉は閉じられたままだったのである。彼らについてきていたプサンが
女神像の一体に手をヒタリとあててつぶやいた。
「…門が内側から閉じられていますね。タバサにそうさせているのか、彼女の内に眠る
エルへブンの民の力を無理矢理引き出しているのか、どちらかは分かりかねますが」
「どういうことですか?」
「三つのリングはあくまで扉を開くきっかけにしかなりません。
エルへブンの民の力と、リングの両方が揃って初めて扉が開くのです」
「じゃあ、タバサをさらったのは、タバサの力でこの扉を開けさせて
さらに、内側から閉じるためだったということですか?」
「そうですね。もっとも、それがすべてではないのかもしれませんが…」
「なんだよ、それ!」
レックスが腹立ち紛れに、近くに転がっていた小石を思い切り蹴飛ばした。
「あいつは、僕を待っていたんじゃなかったのか?」
「えぇ、待っているんでしょうね。レックス、あくまで君を」
プサンに真正面から見つめられて、レックスはどぎまぎした。プサンの意図が
つかめなかったのだ。それに対し、アベルは彼の言いたいことに気付いて苦笑いをした。
「なるほど、そういうことか…」
「父さん?」
目の前の滝以外に何もない空間に歩み出るアベルの後姿を
レックスが不思議そうに見つめた。そのまま振り返らずにアベルが言った。
「レックス、これから僕がこの門をこじあける。タバサの魔力にどれだけ対抗できるかは
分からないが、必ず開ける。その隙にお前が魔界に乗り込むんだ」
レックスが息を飲んだ。確かに、レックスにはエルへブンの民の力はほとんどない。
エルへブンにいる四長老の力も決して大きいとは言えない。
門を開けるのに十分な力を持つ者はもはやアベルしかいなかった。
「お前一人行かせるわけにはいかねぇよ。俺も、行くぞ。レックス」
大きく頷きながら進み出るレックスの横に、コリンズも並んだ。
「…頼むよ。すまないな、二人とも。お前たちにこんな重荷を押し付けてばかりで」
アベルの瞳が辛そうに揺れた。だがしかし、レックスは笑いながら首を振った。
「押し付ける? それは勘違いだよ、父さん。これは僕自身が選んだ、僕のための戦いだ」
「……」
アベルがゆっくりと振り返ってレックスの瞳を見つめた。
「信じてもらえないかもしれないけど… 僕はパパスおじいちゃんに会ったんだ」
「…父さんに?」
「ギガデーモンに負けて、剣も折られて、僕は自分を見失っていた。
修行と称して、ただ自分でも何がなんだか分からずにひたすら剣を振り回していた。
そんな僕におじいちゃんは言ってくれた。自分のために闘え、自分のために生きろって。
簡単なことのようですごく難しいけど… 僕は生きるよ、自分自身のために。だから
僕は魔界に行く。タバサを必ず取り戻す。バートにもう一度あって必ずケリをつける」
「レックス……」
「大丈夫。僕らに任せて、父さん……!」
「…わかった。もう僕からは何も言うことはない。行ってこい… レックス、コリンズ!」
そう、一声叫んでアベルは全身全霊をこめて意識を集中させた。
それに反応するかのように、三体の女神像が同時に光りだし、あたりが大きく揺れ始めた。
アベルの魔力とタバサの魔力が反発しあっている!
凄まじい、熱風が襲いかかり、レックスたちは思わず両腕で体をかばった。
しかし、アベルだけはひるみもせずに両腕を目の前に突き出しながら
その場に立ち尽くし、宙を睨みつけている。
「タバサ… 確かにお前の魔力はとんでもない。僕なんかじゃ到底かないやしない。
けど、お前は心の底から門を閉じることなど望んではいないはずだ……!」
突然、あたりが雷光のような光に照らされた。かと思うと宙にぽっかりと大きく、
そしてどす黒い、もやもやとした穴が出現する! それこそが魔界への門……!
「行くぞ、コリンズ!!」
「お、おう!」
門に向かって一直線に飛び込んでいく二人。門に入る直前レックスは振り返り
アベルの顔を見た。アベルは大きく頷き、そしてレックスに向かって微笑んでみせた。
門の奥へと消えていく二人の背中を見送りながらアベルは祈る。
―――父さん… もし、あなたが僕たちのことを見ていてくれてるのならば…
どうか、レックスたちを守ってやってください……!
今日はここまでです!
>>115 魔界突入でいよいよクライマックスな感じになってる。
オールスターメンバーで魔界かと思ったらレックス達だけなのか
あくまで主人公は次世代キャラか。
魔界編期待
ちょっとのん気なビアンカ萌え。
王子だけしか呼ばれて無いのにちゃっかりコリンズも付いていってるし。
まあ、途中でなげずに最後まで書いてね。おねがいしまつよ・・
ひっそりと残りを投下
玉座に戻ると、みなはレックス達を今か今かと待っていた。
「遅かったわね。さ、宴を始めましょう!」
ビアンカがそう言うと、アルスは恥ずかしそうに玉座から立ち上がり深々とお辞儀をした。
グランバニア国王から皆への挨拶が済むと待ちわびていた鼓笛隊が高々にファンファーレを奏で始める。
そしてゆるやかな音楽が流れ出し人々は手に手を取ってダンスをいとしむ。
踊りだす王と王妃。
それを見ながら、タバサはレックスの耳にそっと囁く。
「お兄ちゃん。」
「ん?」
「さっき・・・好きだよ・・・ってお兄ちゃん言ったよね?あれ・・・ウソじゃないよね?
・・・夢じゃないよね・・・?」
「うん。好きだよ。だから・・・これからもずっと一緒だよ。」
「うれしい・・・な。お兄ちゃん!ずっと・・・ずう〜〜〜っと・・・だよ?」
タバサはレックスの右手をギュッと握り締める。
「うん。ずっと・・・だよ・・・。」
その手をレックスはギュッと握り返した。
「あなた・・・見て・・・。」
「ああ・・・・・・・・・・・・・・・。」
遠くから優しく見つめる視線をタバサは感じながら心の中で呟いた。
────このままお兄ちゃんの手を離したくないな・・・。
────今も、これからもお兄ちゃんといたい。
────だから・・・おじいちゃん。おばあちゃん。
────わたし達、ずっと・・・この平和を守っていきます・・・ね・・・。
遥か彼方で輝く未来の光は二人をこれからもずっと照らし続けるだろう。
おしまい
以上、DQ5ED俺流SSでした。もう一個の方も終わらせないとな・・・。
121 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/10/06 00:04:29 ID:I7LcQhms
_,. -─- 、
,.イ´ ヽ、 `ヽ、
/ ! i ヽ ヽ \ \
,/ i l!ヽ、 トーヽ-ヽ \
// | ハトゝ⌒ _,.-ヽ ヽ、
/ ,' レ' --─- ' ,..ニヽ \ \`ヽ、 < ぬるぽ〜(棒読み)
. / i l _,.ニ-r 「;;;;;lヽ! \ \ ` ー- _
,r' / ! l ハ;;;;;;ゝ 、  ̄ l_、,.. `ヽ、 ヽ `ヽ、
/ / l ハ_ '´ _,.. r /-┐| ``ヽ、_
__,.. '´ / .l lニヽ ヽノ / l ト、 `ヽ、
/ / l | ヽ ヽ- ._,.ィ | lヽ \ `ヽ、
,' / l ヽ トr ‐r-‐K`ヽ、 ! l \ ``ヽ、_
/ / リ 〉 }| |! ヽ ヽl L─-、ヽ、 `ヽ、
/ / ,.ィ〈ヽ / /|! li ヽ \_`ヽ、ヽ \ \
// /' _,.-! 〉 / | l l ヘヽ ヽ⌒i } } ヽ ヽ
// /{ l { ィ〈 〈 ! l l i \ V // l_,.ィ‐- 、
/ ./ _,..../_ ヽ ヽ i iヽヽ ! l ! l. ヽ V」ゝ ,r'"-'
/ ,.r'´ 7ヽト、」..L l |\ヽ l ! , ヘ \ ヽ7 / { ⌒ヽー-
r ゝ,. ⌒_/ ヽ\三ニ} } | | l /l i __/ V ヽ `ー-
- '´ヽ/ -ニヽ! ヽ | / イ ,.ェ-〉 レ' LL_/ \\i \ ⌒r'
`ーァヽr─ fニ7-‐i } l! ! { 〈 レ ├─-==コTヽト 〉/ヽ ``ヽ⊥
/ 7⌒7 i /´ |! | \ヽ | l l二二l! {ヽ // \\
. i / /! ト ' /ハ__ヽ| ーTニl | l V /j ヽ、 ヽ、_ /
. | i /l / _ノ / ├─‐/,.-===TT==ヒT | l!`ヽ、.二二
ヽ L/ `Tヽ_,. -ニ -‐' ,ィ/ ̄/´\ l l ト、i /l
ペコさん完結おめでとうございます、そしておつかれさまでした。
たのしくみさせていただきました。
もう1個のSSも、焦らずに進めていってください。
お体にお気をつけください。
鏡の中の群像の作者さん、魔界にいよいよ突入ですね。
レックス&コリンズの活躍が見ものです。
あと『Epilogue』の訂正をお願い致します・・・
文の途中のEpilogue(1)やEpilogue(3.5)は
便宜上つけたものですので、お時間があるときに
訂正(削除)していただけると助かります。
お手数をおかけしまして申し訳ありませんm(__)m
>>120 完結乙、ラストの2人はいろいろ想像かきたてられますな
俺の妄想を具現化したような作品ですた
職人の皆さん乙
ペコ氏も完結乙
>>122 訂正しておきました
他に何かあれば遠慮なくドゾー
>>120 お疲れ様ーー!面白かったです!
もう一つの作品の続きも楽しみに待ってますよ!
>>124 3スレ目のログ補完キボン
旧の方には最後の方が載ってないみたいだから
>>124 只今確認いたしました、ありがとうございました。
ペコさん、完結乙です!もう一つの作品の続きを楽しみにしつつ投下!
>>115より続きです
陰鬱な冷たい空気と、息苦しさを常に感じさせる狭い暗黒の空。地面はじっとりと湿り、
うっそうと生い茂っている樹木の姿は、まるで今にも襲いかかってきそうな獣のよう。
大地が何かを恐れるかのように細かく震え、うねる大気が大きな波となって彼らを襲う。
「これが… 魔界なのかレックス?」
「……」
「レックス?」
緊張した面持ちで振り返ったコリンズの顔がサッと固くなる。視線の先に、
額を押さえながらうずくまるレックスの姿が飛び込んできたのだ。
「大丈夫かよ、レックス! のっけからこんな調子でよ!」
「いる……」
「あ?」
「感じるんだ、あいつの存在を間近に。あいつが僕を呼んでいる。僕を待っている…」
ゆっくりと立ち上がりながら放心したようにレックスがつぶやいた。
「もう平気だよ、コリンズ。北の方向からあいつの力を感じた。そしてタバサの力も……
たぶんエビルマウンテンだ。さぁ、行こう」
「じゃあ、タバサは無事なのか!?」
「たぶんね。少なくとも死んではいないよ」
「そうか良かった… けど、レックス。調子悪かったら遠慮せずに言えよ」
「サンキュー」
レックスが微笑みながら歩き出す。コリンズにはどちらの方向が北なのかは
まったく見当がつかなかったが、とりあえずはレックスに黙ってついて行くことにした。
今、ジャハンナでは多くの民が謎の頭痛に悩まされていた。住民のほとんどが家で
横になり、店屋もそのほとんどが看板を降ろしている。マスターの意地で
唯一営業している酒場もがらんと静まり返り、ほぼ開店休業状態。
ただ一人、背の曲がった小柄な老人のみが、店の隅で今日も一人静かに水を飲んでいた。
「じいさん、もっと真ん中においでよ。どうせ他の客は来やしないんだし」
女マスターがずきずきと痛む頭にけだるそうに手をあてて、この老人に声をかけた。
彼女にすら背を向けていた老人であったが、呼びかけを受けてゆっくりと腰をひねり
その顔をマスターに向ける。老人の顔は皮肉のたっぷりとこめられた笑みに歪んでいた。
「真ん中に寄ったところで、あんたと話すことなど何もないぞ」
「ホント憎たらしいじいさんだこと。まぁ、いいわ。
これは結局なんなんだい? こんなのが続いたら商売になりゃしない」
「そんな心配は無用じゃ。どうせ近いうちにすべて滅びて消えてなくなるんじゃからな」
マスターの頬がひきつった。知らず知らずのうちに彼女の指先は細かく震え始めている。
「よしてくれよ、縁起でもない。こんな状況でそんなことを言われたら
冗談に聞こえないじゃないか?」
「ワシは冗談を言ったつもりなどこれっぽちも無い。この不快感こそが滅びへの前兆だ」
意地悪くつぶやいた後、老人はまた彼女に背を向けて水を飲みだした。
マスターは軽く肩をすくめてカウンターの上で頬杖をつき、苛立たしげにため息をついた。
こんな老人を相手にしていたのでは気分など晴れやしない、と心の中で悪態をつきながら
誰か他の客が来てくれることを彼女は切に願う。
もっとも、こんなときに動き回ろうなどという酔狂者がいるとはとても思えないのだが…
彼女がそうあきらめかけたとき、ガチャリと店の扉が開く音がした。
わずかばかりの期待をこめて扉を開けたレックスであったが、すぐにがっくりと
肩を落とすことになった。ジャハンナの町全体から活気が失せている。
それは酒場とて例外ではなかった。中は閑散として静まり返り、
いる者といえば枯れきって今にも折れそうな老人と、妙に眉が吊り上がり
殺気だっている厚化粧のマスターだけ。こんな所では情報収集をするのも難しい、
そう思ったレックスは、困ったような顔を後ろに控えているコリンズに向けた。
「いいんじゃねぇか? どのみち俺たちも少しだけ休憩するつもりでいたんだ。
そのついでにとりあえずの探りはいれてみようぜ。期待薄だけどな」
コリンズがレックスの耳元で囁いてから、カウンターへまっすぐに向かった。
「しっかし、あんたたちよく平然としていられるね。まぁ座りなよ。お代はいいからさ」
マスターが驚きの念をこめながら二人に水の入ったグラスとピーナッツを勧める。
「今この町に何が起こってるんですか? 以前のような活気がまるで感じられない」
「何が起こってるってあんた… ん? もしかして、あんたらこの町の人間じゃないの?
まさかおもての世界から来たとか…」
そう言いかけた彼女だが、すぐに自分の頭に浮かんだ馬鹿げた考えを振り払おうとして
豪快に笑った。しかし、レックスはつとめて真面目に「はい、そうです」と低く答えた。
「なるほど、確かにその小僧どもはおもての世界の人間なのだろうよ。
しかもこっちの金髪はあの伝説の勇者らしい」
いつの間にか彼らの背後に近づいてきた老人がじろじろと無遠慮に二人を眺め回す。
「本気で言ってるのかい、じいさん」
彼女が目を丸くした。その発言と、老人が自らこちらに近づいてきたことの両方に驚いて。
「ああ、本気さ。こいつが持っているこの剣はあの天空の剣だ。
それにこいつ自身かなりの実力者だ。…見ればそれくらいは分かる」
レックスはこの老人にただならぬものを感じ、油断なく瞳を光らせて頭を下げた。
「あなたの言う通りこれは天空の剣です」
「それで? 伝説の勇者がこんなところに何をしにきた。よもや観光旅行ではあるまい?」
レックスはこの老人にどこまで話していいものか少し悩んでから、
決意を固めたようにゆっくりと口を開いた。
「…ここで少し休んでから、すぐにエビルマウンテンに向かいます」
この答えは彼の予想の域を出なかったらしく、老人は別段意外そうな顔もせず一人笑った。
「なるほどな。やはりあの鏡を叩き割りにわざわざ魔界まできたのか」
「鏡?」
レックスが顔をしかめて聞き返す。
「今、鏡と言いましたか?鏡とエビルマウンテンになんのつながりがあるんです?」
「なんと、鏡のことも知らずにエビルマウンテンに乗り込むつもりじゃったのか?
お前さんがたがどんな思いを背負ってあの山に行くつもりなのかは知らんが、正体も
分からぬ敵のところにむやみやたらと突っ込んでゆくのは決して賢いとは言えないぞ」
あきれたように老人が首を振り、レックスとコリンズは決まり悪そうに
互いの顔を見合わせた。正直なところ、二人ともあのレックス似の少年の
正体も目的もほとんど分からないままに魔界に来ることになってしまったのである。
「なぁ、じいさん。もしあんたがその鏡とやらについて何か知っているなら
悪いけど俺たちに教えてくれないか?
「イヤだと言ったら?」
コリンズの問いに、老人が意地悪く口元を歪めて笑いながら答える。
コリンズは一瞬ムッとしたような顔つきになったが、すぐに表情を崩した。
「力ずくでも口を割らせる、と言いたいところだけどよ。あいにく今は一秒の時間でも
惜しいんだ。役立つ情報がすぐに手に入らないなら、とっとと行くことにするよ」
そう言って立ち上がりかけるコリンズを老人が片手を上げて制した。
「待て。若い者はどうもせっかちでいかん。だれも話してやらんとは言ってないだろうに」
「じゃあ、教えてくれるんですか?」
「あぁ、丁度いい暇つぶしになる」
「手短に頼むぜ」
「口の減らない小僧じゃ。まぁ、いい。一度しか話さんから心して聞けよ」
老人は苦笑したあとで、やや大袈裟にオホンと咳払いをした。興味深げな顔をして
レックスたちの近くの席に腰を降ろしたマスターが、老人の空のグラスに冷たい水を
注いでやる。それをうまそうにすすってから、老人はおもむろに語り始めた。
「エビルマウンテンの最深部、かつて魔王ミルドラースが潜んでいた場所にその鏡はある。
結論だけ言ってしまうと、あの鏡はただの鏡ではない。それ自体が意志を持ち、
目の前に立つ者の心の奥底に潜む、本人ですら気付いていないような願望を写し出す。
もっとも心弱き者は、鏡の魔力に飲み込まれてその人格を鏡に奪われてしまうだろうが」
「それじゃあ、ミルドラースは鏡に操られていたんですか?」
「いや。ミルドラースは鏡の力を意のままに操ることのできた数少ない者の一人じゃ。
鏡は魔王を尊敬し、魔王に忠誠を誓っていたんじゃな」
レックスとコリンズはごくりと唾を飲み込んで、老人の話に耳を傾けた。
「そして… あの鏡にはもう一つ大きな力がある。
それはこの世にあらざるものを、呼び出すことのできる力だ」
「この世にあらざるもの?」
老人はニヤリと笑いながら、ふところから古びた巻物を取り出し広げてみせた。
「これは… 禁断の巻物?」
レックスが驚きのあまりに思わずつぶやいた。博物館に展示されていたそれとは違い、
ところどころが破けてボロボロではあったが中身は紛れもなく本物だ。
「そこは驚くところではないぞ。なにせ、この町の名産品だからの。
もっともこんなものを好き好んで持ち歩く者などワシぐらいしかおらんが…」
言いながら老人は巻物の一点を指差した。そこはレックスには読めない文字で
びっしりと埋めつくされ、その脇にはなにかおどろおどろしい姿をした怪物が描かれている。
「進化の秘宝に関する項目じゃ。ほれ、この怪物の右腕のところに腕輪があるじゃろ?」
パッと見ではよく分からなかったが、目を懲らしてよく見ると確かに
腕輪と思われる何かがそこには描かれている。
「黄金の腕輪じゃ。進化の秘宝を完全なものにするためにこいつは
決して欠かすことはできない。本当ならば黄金の腕輪は数百年前の戦いで勇者たちに
葬り去られたはずだった。しかしミルドラースは腕輪を手に入れることに成功した。
それがなぜなのかは言わなくても分かるだろう?」
「その鏡の力で、この世界ではないどこかから黄金の腕輪を呼び出した?」
「御明答。その通りじゃ」
「そんな力、もはや鏡じゃねー……」
コリンズがあきれたようにつぶやくその隣で、レックスは心の内側が黒くよどんで
不快になってゆくのを感じていた。その鏡とやらにそんな力があるというならば、
あの少年の正体は何者かが呼び出した、いわば異世界のレックス、
というふうに考えることができるではないか。レックスは自分の拳をギュッと握りしめた。
―――僕が闘わなければならないのは僕自身なのか……?
「さて、ワシの話はこれで終わりじゃが。お前さんがたは本当にこれから
エビルマウンテンに行くつもりなのかな?」
「もちろん行きます! そのためにここまで来たんだっ!!」
いきなり立ち上がって大声を上げるレックスに驚いて他の三人はビクッと震えた。
「な、なんだよレックス? いきなり」
「いや… ごめん…」
皆の視線に気付いて我に返ったレックスは何かを誤魔化すように微笑んだ。
「あー、その… お話ありがとうございました! そろそろ僕たち… 行きます!」
「…フッ、まぁせいぜい頑張るんだな」
レックスとコリンズは頭を下げて礼を言い、そしてきびすを返して酒場を後にした。
「じいさん、あの子らにはやけに優しかったじゃないか。
ジャハンナの人間ですら知らないようなことも、しゃべりまくっていたし」
「気のせいじゃろ」
老人は店の隅の席に戻っていって、また一人静かに水を飲み始めた。
彼は昔ミルドラースの傍仕えをしていた。そこでマーサと出会い、
彼女に感化されて、人間になったのである。そんなマーサの孫であるレックスに
彼は助言をせずにはいられなかったのだ。もっとも彼はいまだにミルドラースに対する
敬愛の念も完全には捨てきれずにいたのだが…
(ミルドラース様。もう黙って見てはおられんですよ…)
老人がマスターには気づかれないように小さくため息をついた。
エビルマウンテンの最深部、鏡の間―――
かつてレックスたちと魔王ミルドラースが死闘を繰り広げた空間の
さらに奥にあるその部屋に少年はいた。山鳴りにも似た低く重い音が絶えず
響いているなか、少年はニコリと笑いながら部屋の一番奥に飾ってあるそれを見上げる。
そこにその鏡はあった。
縦に伸びた細長い楕円形、その高さは少年の背丈の丁度二倍くらい、
横幅は彼が両腕を広げて足りる程度のものであった。
その妖しく光る金色の縁には古代文字がびっしりと刻まれ、
さらにまがまがしい顔をした何匹もの悪魔のレリーフがその周囲には彫られている。
「もうすぐ終わりますよ、ミルドラース様……」
少年がポツリとつぶやいて、部屋の中央に歩み寄る。そこには小山と見間違えても
おかしくはないほどの大きさを持つ鮮やかな真紅の物体があった。
それを見て満足げに頷きながら、少年はその物体の上によじ登った。
真紅の物体が彼に抵抗するかのようにかすかに身じろぎをする。
「強くなったね、バート……」
彼の左手には、広げられたままの禁断の巻物が握られている。
少年は目を細めて、空いている右手で真紅の物体を愛おしそうになでまわした。
まるで我が子の成長を喜ぶ親のように。
「ほう、それが貴様の言っていた人間のなれの果てか」
柱の影から、僧衣を身にまとった年老いた魔物が不機嫌そうな顔をのぞかせてきた。
その真紅の物体の腕に輝く黄金の腕輪の存在を認めて、さらに彼は顔をしかめる。
「そうだよエビルプリースト。君も感じるだろ? すごい力を。
うんうん、ホントにバートは今までよく頑張ったよね!」
無邪気にはしゃぐ少年を見て、エビルプリーストと呼ばれた魔物の額に青筋が立った。
「ワシは納得いかないぞ!」
「……」
ドン、と柱を殴りつけて激昂する魔物を、少年は冷たい瞳を光らせて無表情で眺めやった。
「なぜ進化の秘宝をワシにではなくそんなどこぞの馬の骨かも分からんような
ガキに施すのだ? それに貴様の采配にも納得がいかん。
我ら四天王をまるで捨て駒のように扱いおって!
我ら四天王は世界を支配するための要なんだぞ? それに… 」
「あのさぁ、エビルプリースト。前々から思っていたことなんだけどさ」
「 ん? なんだ?」
少年の瞳が冷酷な色にギラリと輝いた。
「君、いらないや」
「な… に?」
少年が指をパチンと鳴らすのと同時に、唖然とするエビルプリーストの体が
みるみるうちに溶け、崩れ始めた。突然の出来事に魔物は慌てふためいたがもう遅い。
「なぜだ…? 今度こそ、世界を我が手中に収められるはずだったのに… な… ぜ」
それが最後だった。
ものの十秒でエビルプリーストだった物体は完全に消滅してしまった。
後にはしわくちゃの僧衣と神官帽、そして不気味な静寂のみが残される。
「君はどうにも自我が強すぎた。僕の力で生かされていただけの存在のくせにさ」
少年が口をへの字に結んで天井を仰ぎ見た。
「それに… あいにくだけど僕らは世界の覇権なんてものに興味はないんだ。ごめんね」
少年が抑揚のない声で小さくつぶやいたそのとき、
部屋の外から何者かが駆け込んでくる音がした。
「来た……!」
少年は唇の両端を持ち上げ、この上ない喜びをこめて笑った。
バン!と乱暴に扉が開かれ、息を切らしたレックスとコリンズが部屋になだれこんだ!
少年とレックスの二人の視線が交差する……!
「待っていたよ、レックス」
「あぁ、これが最後の戦いだ……!」
レックスを見下ろす少年と、彼を見上げるレックス。
柔らかく微笑む少年と、彼を鋭い瞳で睨みつけるレックス。
瓜二つだが決して相いれることのない二人が対峙したそのとき、
最終決戦の始まりを告げる鐘が、静かに鳴り始めていた……
今日はここまでです。エビルプリーストの扱いは我ながらひでーなぁ…
エビルプリーストは原作のツケがやってきてしまったか・・・
四天王で一番輝いたのはギガデーモン
鏡の謎も解けてあとはレックス対レックスを残すばかり、続き期待
エビプリつД`)
まだコリンズに負ける役のほうが救われていたかな。
139 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/10/09 13:22:01 ID:3IA2puI/
いくらなんでも下がりすぎだろ
age
ちょっと質問!!過去ログって●(だっけ?)なしだと大体2〜3ヶ月とありますが
初代スレすら見れないとは・・・見れる方います?(●なしで)
>>140 過去ログならまとめサイトの方にいけばあるよ
双子萌えスレの過去ログ見たいけどこっちは●じゃないと無理か…
にくちゃんねるで見れない?
この板に限らず多くの板では今後過去ログが見られるようになる可能性は低い、とのこと。
専用ブラウザ導入してログとっておくのが一番いいよ
そうですか、こんな質問に答えてくれてありがとうございました〜
盛り上がってるね。
挿絵欲しい?
148 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/10/12 16:30:34 ID:uZqqEGlA
キボン!ぜひ。
リクエストは?
またクズレス野郎か。
だれもお前なんか期待しちゃいないからもう来なくていいよ>>セラギネラ9
どなたか、名前をティミーとポピーで小説を書いて頂けませんか?
よろしくお願いします。
脳内補完しろやハゲ
書こうと思っていた作品の双子の名前はティミーとポピーにしてみようかな、フロ嫁だけど。
>>152 ごめん、笑っちゃった。
普通に王子と王女の名前をティミーとポピーに置換すればいいじゃんw
久美小説をベースにした王子王女が見たいのかは知らんけど。
自分の付けた双子の名前に置換はやったことあったり
了解!では書いてきますね
>>136より続きです
最終章、光と闇の鎮魂歌
かつて世界を我が物にしようとし、あわよくば神の座を手に入らんと欲した人間がいた。
人間は気の遠くなるような長い年月を経て、強大な力と魔王の称号を手に入れ、
世界の真の支配者となるまであと一歩のところまで登りつめた。
しかし、その野望は伝説の勇者とその一族によってはばまれ、魔王は消滅した……
それから五年後―――
勇者と魔王の決戦が行われた地エビルマウンテンで
今まさに世界の命運を賭けた一つの闘いが始まろうとしていた。
険しく切り立った山をくりぬいて造られた大迷宮の最深部、深い闇に包まれた空間。
それぞれの思いを胸に秘め、彼らはそこで最後の闘いに望む覚悟を決めていた。
レックスとコリンズがそれぞれの武器を構えながらレックス似の少年の顔を睨みつける。
そんな二人に少年は微笑みながら優雅に礼をした。
「…ようこそ鏡の間へ。初めまして、は変かな?」
「……いや」
アベルは、おもての世界でレックスたちが出会った少年は、
今レックスたちの目の前に立っている少年の分身に過ぎなかったと言っていた。
その力を見極めようとレックスは目を細めた。見た目は以前と変わった様子はない。
実力もおもての世界で出会った分身と大差はないようにレックスには感じられた。
(勝てない相手じゃない…)
「タバサを返してもらうよ」
「いいよ。ただし彼に勝てたらね」
「彼?」
問い返すレックスに答えて少年が指さしたのは彼が乗っている真紅の物体。
レックスとコリンズの視線を感じたのか、その物体はけだるそうにもぞもぞと動き出した。
「!?」
一見するとそれはノロノロとして動きが鈍い、体の大きさだけが取り得であるような
怪物に思われた。しかし二人は瞬時に気付いた。
その物体の内にとてつもない力が秘められていることを。
レックスとコリンズが目をカッと見開き、緊張した面持ちで身構える。
剣の柄を握る手は汗でじっとりとぬれて、心臓の鼓動が大きく、そして速くなった。
―――こいつは一体なんなんだ…?
「バートだよ」
レックスの心の内を読んだかのように少年が冷たく言い放った。
「なんだって……?」
レックスは背筋がゾッと寒くなるのと同時に、顔面蒼白になった。
唐突に突きつけられたその言葉を信じられず
呆然とその物体を見つめるレックスに、少年はさらに追い討ちをかけるように言う。
「だからね、こいつはバートなんだ。これが進化の秘法の神秘ってやつさ」
「そんなのウソだ! なんでバートが……!」
「バートがそうなることを望んだからさ」
少年は普段とまったく変わらぬ様子でニコニコ笑いながら言った。
「この世のすべてを超越することのできる力を彼は欲しがっていた。
だから僕があげたんだよ。もっともその反動で今のバートは闘い以外のことは
何も考えられない頭になっちゃってるけどね」
「お前……!」
レックスの表情が途端に険しくなった。
「そこから降りて来い! 自分で闘え!!」
詰め寄るレックスを無視して少年は薄く笑った。
「もう遅いんだよ、レックス」
少年が何かの呪文らしきものを唱えた。それに反応するようにして黄金の腕輪が
キィイーンと耳を切り裂くような甲高い音をたてながら妖しく光りだす。
『グォオオオオオオオオオオアアア!!』
真紅の物体が悲鳴のような雄叫びをあげた。
「バート……!!」
戸惑いとやりきれなさとで顔をしわくちゃに歪めたレックスがうめく。
彼の声が届いたのか届かなかったのか、物体の閉じたままだった目がゆっくりと開いた。
感情の動きがまるでない瞳でギロリと二人を睨みつける。
「さぁ、キミの力を僕にも見せておくれ…」
そして物体はその巨体には似合わぬ、素早さで猛然と襲いかかってきた……!
その物体がひとたび腕を振り回すと、壁という壁が一瞬で瓦礫の山と化し、
大きく跳ね上がるたびに床が崩れて、次々とまともな足場が消えていった。
部屋全体がバートの力に耐えきれずにガラガラと音をたてて崩れてゆく。
天井から降ってくる瓦礫を無意識に腕でかばいながらコリンズは舌打ちをした。
レックスとコリンズは間一髪でその攻撃を避け続けているが、
そのあまりの猛攻の前になかなか反撃できずにいたのだ。
「くそっ! レックス、下手すると山が崩れて生き埋めになっちまうぞ!!」
「分かってる。ていうかこのままじゃラチが明かない!」
レックスが素早くスクルトの呪文を唱えた。
またたくまに淡い橙色の光が彼らを守るように包み込む。
「少しくらいのダメージは覚悟して一気に攻めよう!」
叫びながらレックスが天空の剣を振り上げ、バートに向かって脇目もふらずに突き進む!
「正気かよ、あの野郎… ちくしょう!」
コリンズもなかばやけっぱちにレックスとは逆の方向から斬りかかっていった。
バートの巨体から繰り出される攻撃が二人をかすめるが、
それでもレックスもコリンズもひるみなどしなかった。
「「うおおおおおおお!」」
二人の渾身の一撃がバートを捉らえる。それぞれの剣が一筋の弧を描いて
バートである真紅の怪物の両腕を一思いに切り落とした!
『ガァアアアアア!』
耳をつんざくばかりの悲鳴があたりにこだまする。
―――バート……!
レックスは心臓をえぐられるような痛みを覚えて思わず胸をおさえた。
「ボサッとしてる暇はないぞレックス! 油断するにはまだ早い!」
コリンズがレックスに向かって怒鳴りつける。
「コリンズの言うとおりだよ、レックス。
こんなの今のバートにとってはなんの問題にもならない」
二人の耳の中で少年の声が響いた。
「それは、どういう意味…」
言いかけたレックスの口の動きが止まる。眼前に広がる光景に目を奪われてしまったのだ。
『グ… ガ… グゥォオオ!』
バートが吼えるのと同時に、切り落とした腕の付け根から乳白色の液体が飛び散った。
かと思うとみるみるうちに新たな腕が生え始めたではないか!
唖然として見つめる二人にバートである物体はニタリと不気味な笑みを浮かべてみせた。
それはまさに一瞬の出来事。
「まさか、斬った腕が元通りになっちゃうとはね…」
「元通り? 冗談じゃねえ。さっきよりも腕、太くなってるじゃねえかよ!」
コリンズが悲鳴にも似た叫び声をあげた。
「関係ないさ。相手が再生し続けるなら、こっちはそんな暇をやらなきゃいいだけだ…!」
そう。ためらってはいけないのだ。たとえ敵があのバートであったとしても。
できることならレックスはこんな形でバートと再会などしたくはなかった。
叶うことならばバートと闘いたくなどなかった。もちろん、どんなに辛くとも
今この場から逃げ出す気などレックスにはさらさら無かったのだが。
―――自分のための戦いを選ぶってのは結構むずかしいことなんだね。
レックスが自嘲気味に微笑みながら天空の剣を構えなおし、顔を引き締めつつ
変わり果てたバートの姿を睨みつけた。何かを考え込むように黙り込み、
そうしてからギンと目を見開く!
「いくぞ! バート!!」
レックスが再びバートに斬りつけた!たとえどんなに手ひどく殴られようとも、
どんなに強力な火炎を浴びせかけられようとも、レックスとコリンズは
攻撃の手を休めずに剣を振り続けた。 何度も。 何度も……!
「ホント猪みたいな闘いぶりだね。でも、すごく効果的だ。やるじゃん」
頭の中で響く少年の声に惑わされまいとしてか、レックスとコリンズの攻撃は
さらにその激しさを増した。両腕を再び切り落としその真紅の体に無数の傷を刻んでゆく。
「だけどね、バートはこんなこともできるんだよ」
次の瞬間、バートの体がちかりと光った。あふれ出す魔力が渦を巻き、
その巨体がギラギラと輝く赤銅色の光に覆われてゆく。
「これは……!」
その光の正体に気付いてレックスは蒼ざめた。
「まずいコリンズ! 次の攻撃はなにがなんでも避けろ!」
いきなりの作戦変更にコリンズはあっけにとられた。
「何言ってんだ! あともう一息だってのに…」
文句を言うコリンズに向かってバートの頭突きが繰り出される!
「へっ、そろそろ楽にして…」
言いかけたコリンズの顔から血の気がひく。
―――違う! 今までの攻撃とは段違いに……!
コリンズの足は本能的に回避を選んでいた。迫り来る怪物の頭を紙一重でかわしながら、
彼は思わず自分の体を見回してしまった。自分が生きていることを確認して
ホッと息をついたその後、全身を冷汗が流れ始める。
コリンズがつい先程まで立っていた床はもはやその原型をとどめていなかった。
まるで隕石でも落とされたかのような巨大な穴が、
怪物の頭が埋まっている場所を中心にして広がっている!
「バイキルトだ……!」
レックスがつぶやいた。もともとの力が凄まじいのに筋力を倍に増強されてしまっては、
いくらスクルトを重ねがけしたとしても、攻撃がかするだけで致命傷になってしまう。
天空の剣でバイキルトを無効化してから再度切り込む手もあるが、
バートは何回でもバイキルトをかけ直すだろうし、
そもそも剣の力が発動する前に攻撃をされでもしたらたまらない。
「コリンズ、僕がしばらくバートをひきつけておくから、呪文を!!」
レックスがバートを誘うように、剣閃をわざと大振りにした。
「任せたぞ、レックス……!」
闘いの場を一時レックスに預けて間合いをはかり、呪文の詠唱を始めるコリンズ。
彼の集中力が極限にまで高まったとき、その両手から巨大な炎の渦が巻き起こる!
「 ……べギラゴン!」
それは彼が使いこなすことのできる最強の閃光の魔法であった。
突き出された両腕から、魔力の凝縮された火炎が吹き出し、左右両方向から
バートに襲いかかる! しかし炎が届くよりも先に、その怪物は何かをつぶやいていた。
その途端、バートの巨大な体を淡い光を放つ光の壁が覆いつくす。
「マホカンタ……!?」
「マジかよ!」
呪文で生み出された炎が光の壁に跳ね返されて、逆にコリンズに襲いかかってきた。
「うわぁあああ!!」
ある程度距離はあったので真正面から炎をかぶることはまぬがれたが、
コリンズの左足が大きく焼けただれてしまい、床に転がりこんでしまう。
「コリンズ!」
「クッ… 俺のことは構うな! 闘いに集中しろ!」
苦痛に顔を歪めながらも必死に叫ぶコリンズの気持ちをくんで、レックスがバートに
向き直る。しかし、レックスの頭は突如として湧いてきた疑問に揺れていた。
(なんか変だ。理性を奪われたバートがこんな高位呪文を使いこなすことができるのか?)
振り回されるバートの巨大な拳を避けながらレックスは考えた。
バートでもなく少年でもない誰かの力が働いているような気がしてならないのだ。
このまま闘い続けていると、何かひどく大事なものを失ってしまいそうな気がして、
レックスの心は正体のわからない不安に揺れ動いた。
なんにしても、これ以上闘いが長引けば自分たちが不利になる一方である。
しかし、恐ろしいほどの攻撃力を持つ相手にうかつに攻め込むのはあまりにも無謀だ。
レックスが使える手は二つ。一つは、いつかバートの再生能力に限界が訪れることを
願って、敵の大振りの攻撃の隙をついて、じわじわと相手の体力を削っていく方法。
もう一つは、いちかばちかの賭けにでて、ギガデーモンとの闘いで習得したあの技で、
一撃必殺を狙う方法……!!
「やっぱ、これしかないや……!」
レックスの瞳の奥で不屈の炎が雄々しく燃え上がった!
彼の全身から放たれる真昼の太陽のような黄金の光がバートの巨体を瞬時に覆い尽くす!
「ん?」
少年が顔をしかめた。光に包まれたバートの体の動きが鈍くなっていたからだ。
「これは… そうか、アルテマソードか……!」
レックスが大きく跳ね上がり思い切り剣を振りかぶった。
「これで… 決める!!」
「けどさ。本当にそんな強力な技を使っちゃっていいの?」
「なに……?」
―――……ちゃん
「え……!?」
突然、彼の耳の奥に誰かの悲痛な声が飛び込んできた。
いや、レックスはその声が誰のものなのかは一瞬で気がついていた。
それは彼が会いたくてたまらなかった人の声そのものだったので。
驚いたレックスは振り下ろしかけた剣の太刀筋を途中で曲げた。
レックスの目がカッと見開かれて、心臓がドクンと強く脈打ち、汗がどっと噴き出す。
「やっと気がついたみたいだね、レックス……」
「まさか……」
レックスの脳裏に最悪の結末が鮮やかに描き出されていった。
確かに目の前にいるの真紅の物体がバートであることは間違いない。
しかし、その中にはまったく別の人間が取り込まれていたのだ。
認めたくなどなかった。信じたくもなかった。
誰でもいいから今レックスが思ったことは間違いであると言って欲しかった。
しかし、レックスは確信していた。バートの巨体からあふれだす魔力の源泉の正体を。
―――タバサ……!!
今日はここまでです!
乙です、おもしろいです
いよいよ最後の決着がつくんですね
楽しみに待ってます、頑張ってください!
>>166 ついに最終章か、続き期待
コリンズが意外に健闘してて良かった
バート凶戦士化しちゃったか…
>>166 乙です。コリンズがしっかりやられ役をこなしてますね。
タバサがバートの中に……何となくですが破壊魔定光を思い出しました。話はぜんぜん違いますが。
このスレで生存確認されてる、連載中のSS職人さんは3人だけ?
これで群像さんが終わってしまったらどうなるんだろうと心配……。
俺は人間をやめるぞレックスゥゥゥゥ!!
ラスボスは偽レックスの方かと思っていたけど違ったか。
鏡の中の群像の作者さんお疲れ様です。
続き期待してますー!
ちょっとしたネタが頭をよぎるのですがなかなか文章にできません。
まったりと暇なときに書いてはいますが・・・やはり読書不足なのでしょうかね(汗
>>171 それよりも勉(ry
やっぱり小ネタなら無理に膨らますより短編かな
受験ですか。
落ちると思いますよ。こんなとこで遊んでいるようでは。
すべりどめくらいなら受かるんじゃないか
浪人時の俺はスベリ止め以外全滅だったが...
>>161のシーンでベルセルクのゾッド戦が思い浮かんだ
次ぐらいで最後かぁ…
すべりどめで満足できるのか?
人生のうち4年もの長い年月と莫大な金がかかるんだぜ?大学進学ってのは。
だいたい卒業までに1千万円かかるっていわれている。そしてこれからの人生も
決まる時期だ。それを理解しているならすべりどめでもいいかなんて思えないはずだが。
俺は多くの受験生を見てきている経験上ひとこと言わせてもらいますた。
みんな優しいですね。
まぁ、そのあれだ。後悔だけはしないように頑張ってくだされ。
数々のレスありがとうございます。
もちろん、滑り止めでいいなんて思っていません。第一希望の大学しか考えられません。
(他の方のように根詰めて勉強しているかと問われれば自信を持ってYesとは答えられませんが・・・。)
今は11/27の試験日に向けて小論文と面接の対策にも精をだしているところです。
それでは、失礼致します。
まあ頑張ってよ。
クククッ挫折の苦しみフハハハ
お前の応援は誰も必要としていないと思うぞ。
>>180 お前の存在も誰も必要としていないんだからメル欄に変な言葉入れて上げるの止めてくれ。そして死ね。
>>179 根詰めすぎないでたまにはストレスをハッサン汁。
前向きに逝こう。
・・・ハッサン汁ってなんかぃゃだなw
// ,ィ
ト、 ./ /-‐'´ .|
| V .⊥,.ィ /'7
| / // / ./ /
| // | / // /
_>-‐|/l/‐-く/ヽ、
/ `<⌒
あぼーん
185 :
てんあい:04/10/17 04:06:01 ID:9Uuvj1yJ
1レスさん、前スレ727さん、ペコさん、鏡の作者さんお疲れ様です。
このSSもやっと十話目に突入しました。始めたときは夏休み中に終わるつもりだったのですが…。
今は気が向いたら書いている状態でして、次に書きたいと思ってるネタばかり考えています。
アイデアノートだけが埋まっていく…。
翼の欠けた天使たち 第十話
「ソラ、もう行ったみたいだよ。」
「うん…。」
ボクの後ろから顔をひょっこりとのぞかせてそれを確認するソラ。
ヘンリーさんとのやり取りの間、ソラはボクの背中にずっと隠れたままだった。
今のソラは人見知りをするのかな。これまではボクと一緒で人見知りをすることなんて
無かったのに。
「何だかソラのことには気づかなかったみたいだね。」
「…あのひとだれですか?」
「お父さんのお友達でヘンリーさんっていう人だよ。」
「はい…。」
さてと、お父さんからの頼まれ事も済んだし、これからどうしようかな。まだ休暇は今日を
入れても六日もあるわけだし…。
ヘンリーさんの話だとコリンズくんがいるみたいだけど、正直ボクとソラはコリンズくんが
苦手なんだよね…。見つからないうちにこのまま…。
「おーい、テン!」
帰ろうと歩き始めた瞬間、彼の大きな声がボクを呼んだ。
見つかっちゃったみたい…。
ソラはまたボクの後ろに隠れてしまった。
「や、やぁ…。」
「さっき親父から連絡もらってな。…何だよ、帰ろうとしてたのか? せっかく来たんだから
オレの部屋に寄ってけよ。」
「べ、別に帰ろうとしてたわけじゃ…。」
「そうかそうか。じゃあ来いよ、茶でも出すからさ。」
あーあ、カンネンするしかないみたい…。
186 :
てんあい:04/10/17 04:09:33 ID:9Uuvj1yJ
コリンズくんの部屋は玉座の間やヘンリーさんたちの部屋からは少し離れた場所にある。
この部屋にはちょっとした仕掛けがあって、それでボクやソラはコリンズくんにからかわれたりも
した。でもお父さんがその仕掛けを教えてくれたんだ。後で訊いたら、お父さんもヘンリーさんに
同じことをされたんだって。
部屋にはお茶とお菓子が用意されていた。今のソラなら喜んで食べそうなくらいとても
美味しそうなお菓子だった。
「親父に何か用だったのか?」
「…うん、お父さんにちょっと頼まれてね。」
「ふーん。お前一人でか? ソラちゃんは一緒じゃないのか?」
「ま、まぁ、一緒って言えば一緒かな…。」
「何だそりゃ。街にでも行ったってことか? ソラちゃんも顔くらい見せてくれればいいのに。」
いや、そういうことでは…。
「どうした? そんなとこに立ってないで座れよ。」
「う、うん。じゃあご馳走になろうか?」
後ろに隠れているソラに尋ねる。
「はい…。」
そう言うと、ソラはようやくボクの後ろに隠れるのをやめて、おそるおそる顔を覗かせる。
「あれ、そのコは?」
ようやくソラに気づいたコリンズくん。
「ひゃ…。」
コリンズくんの声に驚いたのか、ソラはまた隠れてしまう。
「あ、いや、その…。信じられないかもしれないけど、実はこのコが…。」
「そうか! お前、もう一人妹ができたのか! しかもソラちゃんそっくりですごく可愛い
じゃないか。いいよなぁ、お前の親はまだ若いもんな。ホントうらやましいよ。オレのとこ
なんかさぁ…。」
何言ってるんだよ…。
ボクの説明を遮って一人で話を進めているコリンズくん。
「ところでそのコの名前は何ていうんだ?」
…こういう場合はソラが自分で言ったほうがコリンズくんも納得するかも…。
187 :
てんあい:04/10/17 04:15:02 ID:9Uuvj1yJ
「…ほら、ご挨拶してごらん。」
と、ボクは言ったけど、ソラはほとんど怯えていてボクの服を掴んだまま離さない。
小さな声で言うのがやっとのようだった。
「ソラ=グランバニア…。」
「ソラ…? ソラちゃんと同じ名前なのか?」
「いや実はこのコがあのソラなんだ…。」
それを聞いてコリンズくんは驚きの表情でうろたえる。
「…お…おい、冗談だろ…?」
そう言ってコリンズくんがソラに詰め寄る。
「なら何でこんな姿してるんだよ…!」
「…!」
ソラの細い腕を掴み、ボクの後ろから引っ張り出そうとするコリンズくん。
「やめろよっ!」
ボクは自分でも驚くくらいの大きな声を出してコリンズくんを制していた。
「…テン、お前…。」
「…おにいた…っ、ふぇん…。ふぇ〜ん、おにいたああんっ。」
「ソラおいで…。コリンズくん、実はね…。」
泣きじゃくるソラを抱いて慰めながら、ソラが小さいときの姿になってしまった理由を
説明する。
「…っく。ひっく。おに…たぁ…ん。」
「今のソラは小さな子供と同じなんだ…。」
「そう…だったのか…。悪かったな…。オレ、気が動転しててあんなこと…。」
そう言って、コリンズくんはうつむいてしまった。
「ボクも急に大きな声出してゴメン…。ボクたちもう帰るから…。」
「ああ…。」
調子に乗ってまた挿絵描いてみました。第四話ラストのソラです。
ttp://smcf.xrea.jp/dq5/cgi-bin/ibbs/img-box/img/20041017041252.jpg
188 :
てんあい:04/10/17 04:21:01 ID:9Uuvj1yJ
>>188 挿絵GJ!!
この見えそうで見えないあたりが…
>>188 お疲れさん!てんあいさんが続きを書いてくれていてよかった。安心しました!
某304さんの、まとめサイトにあるSSも佳境に入っているようだし、
期待しながら続き待ってます!
コリンズ天然だなー、幼女ソラにも惚れるのだろうか
絵(*´д`*)
本当だ、まとめサイトBBSのSS更新されている。悪タバサはツボにはまった。
だーいぶ間が空いていたDQ外伝「なんだかよくわからないけど進化の秘法っぽい話」を投下。
きっとまとめサイトさまの方に前回分は収録されているはずなので忘れた方はどうぞ見てやってください。
雲は月を厚く覆い、男は右手に持ったランプで足元を照らしながら、
コツン、コツンと静まり返った廊下をゆっくりと歩いていた。
その男はクルリと振り返り、まるで誰かに説明する様な口調でポツリ、ポツリと話し始めた。
「サンチョです・・・寝静まった場内を一人歩いております・・・。
サンチョです・・・メガンテ覚えたからって早速そこらの雑魚モンスターに試さないで下さい
サンチョです・・・口笛ぐらいしか使い道ないとか言わないで下さい・・・。
サンチョです・・・この作品でやっと登場しました・・・。
サンチョです・・・・・・・・・。」
再び振り返り歩き始めたサンチョ。タバサの部屋の前まで来て、部屋の中の物音に気づき、静かにドアを開ける。
暗闇に見えるぼんやりとした明かりの先では、
アルスがいつから続けているのかタバサの部屋の掃除を一人もくもくと作業していた。
「ぼ、ぼっちゃ・・・いえ、王様・・・こんな夜更けまで作業されては明日の友好国首脳会議に支障をもたらしますよ?」
友好国首脳会議・・・聞こえはいいがそれはグランバニア王アルスと友好国のヘンリーとが集まる世間一般に言う飲み会。
今回はここグランバニアが会場であり、サンチョもおつまみ作りにたった今まで精を出していたところである。
サンチョの声と明かりに気づき、顔をあげるアルスは額の汗を腕で拭い、さわやかな笑顔でこう答える。
「やぁサンチョ!う〜ん・・・出来たら今日中に片付けたかったけど・・・そうか、もう明日なのか・・・。
そうだね、今日はこれくらいにしてそろそろ部屋で休むことにするよ。」
身体についたホコリをパッパと払い、アルスはサンチョと一緒にタバサの部屋を出る。
サンチョはアルスが部屋を出ると、静かにドアをまた閉め、アルスを寝室へと送るために元来た道を歩き始める。
「あ、待ってサンチョ。ちょっと子供達の寝顔を見て来てもいいかな?」
そう言ってアルスはタバサの部屋の隣まで歩きそっとドアを開けて中の様子を窺う。
さすがに暗闇では部屋の様子は見れずアルスがしかめ面をすると、
横からサンチョがにっこり笑ってランプをアルスに差し出す。
「ありがとう。」
小声でお礼をしてランプを受け取るアルス。
静々と中を照らすと、ベッドにはレックスの後姿が視界にはいってくる。
「あれ?レックスだけかな?」
アルスは今日はタバサと部屋を共同で使うはずなのにと疑問の顔を浮かべソロリソロリ中へと進んでいく。
ランプに照らされたレックスとその横にスゥスゥと寝息を立てて眠るタバサの顔を見てアルスは穏やかに微笑む。
「サンチョ、見て。やっぱり双子なんだね。寝てる姿を見たらどっちがどっちだかわからないよ。」
アルスに手まねきをされて呼ばれたサンチョが一礼してアルスの側へと向かう。
二人の顔を覗き、サンチョも「これはこれは」と声をこぼしてアルスと一緒に微笑む。
「さ、行こうか。起こしちゃうといけないからね。」
「そうですね。」
二人はボソボソと話、部屋を後にする。
パタン────
ほんの微かな音をたててドアが閉まると、フとレックスが目を覚ました。
「ん・・・誰か来たのかな・・・・・・サブッ・・・窓開けっ放しだっけ?」
布団をどかして感じる思いもよらない身の震え。
レックスはタバサを起こさないようにと静かにカーテンを開けるが、窓は閉まっている。
「おかしいなぁ・・・。」
不意に厚い雲が流れ、月明かりが窓からレックスの部屋をかすかに照らす。
窓枠からベッド、そして部屋の中央まで届いた月明かりを追うレックス。
体制を直そうと右手を上げ再びベッドに置いた瞬間・・・。
フニ────
この世のものとは到底思えない柔らかさがレックスの右手を包む。
「ん?なんだこれ・・・?」
フニフニ────
2回、3回とその右手の感触を確認するレックス。
月明かりが部屋の中央からじょじょに窓へと戻っていった時、レックスは思わず自分の目を疑う。
「!!!!!!!!!!」
なんと、レックスの隣で眠っていたタバサはあろうことか一糸纏わぬ姿。
レックスが何かと思って触っていたのはタバサのあまりにも小さn(げふんげふん)胸であった。
「え????????」
さらに自分の姿を確認してさらに驚くレックス。自分も裸なのだ。
「な、なんで!!???」
レックスが身体を後ろに引いたとたん、タバサが小さな声を漏らして眼を覚ます。
「ぅ、んーん・・・。」
おいしい所?でつづーく
待ってました。久しぶりです。そしていきなりR15…(;´Д`)ハァハァ
パパンがほほえましい光景だと思っていたものがここまでよこしまなモノだったとは・・・
続きを切に願う
小さいのに感触は最高だなんて素晴らしい
きもいよ
>>201 この本読んだことあるw
ストーリーによって兄の性格が全然変わるのがちょっと読んでて萎えたけど、全体的には面白かったな。
天空物語読んでない人にはまったくわかないし
贔屓目に見ても王子x王女ではないけれど書いてみる。
*カデシュ、お帰りなさい*
―・・・・確か・・・ここだったな・・・
人がたっている。
女のものともとれる美しい顔立ちをしているが、
その体つきが女ではないことを証明している。
―・・・・・元気・・・だろうか・・・
男はそうつぶやくと、グランバニア城門を押して城下町へと入っていった。
突然、ボールがその男の体にぶつかる。
男はボールがやってきた方向を見やると、キラーパンサーが申し訳なさそうにしているのを見つけた。
――フッ。
随分と前にも同じようなことがあったな、と男は思う。
「・・・ほら。」
男は一瞬微笑むと、キラーパンサーにボールを蹴り返してやった。
またしばらく歩いていくと、そっくりな二つの影が向こうから近づいてくるのを男は見た。
何を思ったのだろうか、男はまた微笑んだ。
「――― テ、テ、テン?」
二つの影のうちの片方―女の子らしい―が、もう片方の影に手をやる。
「ソ・・・ソラ! もしかして!」
二人が男の前にかけよってくる。
「あ、あの!」
「ひょっとして・・・カ、カデシュ・・・?」
ソラ、と呼ばれた女の子が男に言った。
少しの静寂。
やがて―
「・・・・あぁ、そうだ。」
カデシュ、と呼ばれた男が答えた。
とたんにぱぁぁっと二人の顔が明るくなる。
「あぁ、やっぱりカデシュなのね!」
「カデシュ、おかえり! あのね、聞いて、お父さん、見つけたんだよ!」
「ちょっとまってて! ドリスもよんでくるわ!」
「・・あ、おい」
カデシュは二人に手をやったが、
二人はそんなことには気づかず階段を駆け上がってお城のほうに駆けていく。
――やれやれ。 ・・・城はどこだか忘れてしまったんだが・・・。 こっちだったか?
それにしても、二人とも変わってない、私のしっているテンとソラだ。
すっかり取り残されたカデシュも、迷いながらもお城の方へとゆっくり歩みだしていった。
うああああ。・゚(ノー`)゚・。
皆を心配させないように匿名で書いたのに名前出しちゃった○| ̄|_ ギコナビよ・・・
**
廊下テンとソラに連れられたドリスたちに出会った。
「カデシュ! ・・・おかえり。 ほら、これ!」
そういってドリスはストロスのペンダントをカデシュの胸におしつける。
「・・・ほんっとに心配したんだから。」
――ドリス。お前も変わってないな。
「はじめまして、カデシュさん。 テン、そしてソラの父親です。
僕がいないころ、二人によくしてくださったみたいで・・・本当にありがとうございます。」
「問題ない。」
カデシュのツンケンとした態度にちょっとだけまゆをしかめた父親を見て、
あわててテンとソラが付け加えた。
「お父さん、そんな顔しないで。カデシュはあんまり喋りたがらないんだ。」
「そう、そうなのよ。 でも、すごく優しい心を持ってるのよ・・・。」
「そ、そうか・・・ カデシュさん、僕・・・ ごめんなさい。」
「・・・いや。」
「ねぇねぇ、カデシュ! 話したいこといっぱいあるんだ、聞いて!」「わたしも!」
「・・・私だってあるよ。 こっちきなよ!」
――騒がしい奴らだ。 まぁ、たまにはいいか・・・。
「・・・わかった。」
そういって、テンやソラ、ドリスに促されて
カデシュもゆっくりと歩みだした。
――そうだな、私も土産話の一つでもしてやろうか・・・。
なんて考えながら、カデシュは奥の部屋に入っていった。
ドアの向こうからは一日中ずっとテンやソラの嬉しそうな声が聞こえていた。
fin
--(あとがき)
ごめんなさい。
>>207 ( ´∀`)σ)Д`)
おお、天空物語のあの別れのその後っすか
旅に出ていた兄貴を迎えるように喜ぶ双子、和む
>>207 |д゚)σ)Д`)
b(ryは置いといて、GJ
みなさんお疲れ様です! というわけでこっそりと…
>>166から続きです
「お前… タバサをどこへやった……!!」
レックスが声を震わせて叫ぶ。少年は一瞬、キョトンとした顔つきになって
それから腹を抱えて笑い始めた。
「いやだなぁ。今、君が思った通りだよ。それとも何かい?
もう一度改めて僕の口から説明したほうがいいのかな?」
「くっ……」
レックスがギリリと奥歯を噛みしめて、少年を怒りのこもった目で睨みつけた。
天空の剣を構えなおそうとしたが、不意にレックスの体がぐらりと揺れた。
呼吸が早く荒々しくなり、目がどんよりと曇る。立っているのがやっとの状態だ。
「無理はしないほうがいいよ、レックス。
本当はまだアルテマソードを使いこなせていないんだろ?」
「……」
その通りだった。アルテマソードは、己の限界まで高めた闘気を解放することで
敵を拘束する強力な檻を作り出し、体の自由を奪った後で檻ごと敵を粉砕する剣技だ。
そのため、相手の体が大きければ大きいほど気力の消費もまた激しい。
まだこの技を使い慣れていないレックスにとってはなおさらである。
「そろそろ終わりかな?」
「いや、まだ終わらせはしない……!」
「フッ…… じゃあ、これでどうかな」
少年が微笑んだ途端、レックスは胸をギュッと締めつけられるような
切ない何かが体の内側に流れこんでくるのを感じた。
(これは、タバサの…… 魔力?)
そう思った瞬間、いきなり空気が重くなって息苦しくなるのをレックスは感じた。
部屋中に転がっている瓦礫がカタカタと音をたてて震えだし、
張りつめたような緊張感があたりを支配する。
「まさか……」
視界がおぼろげに霞むなかレックスがつぶやく。
押し寄せる魔力の波に大気が震え、全身の毛がザワリと逆立ち、鳥肌が立った。
発動前にこれほどの威圧感を感じる魔法など、レックスは一つしか知らなかった。
「やばい、コリンズ! 伏せろ……!」
かすれた声で、レックスは声を振り絞って叫んだ。もう間に合わないということは
十分に分かっていた。それでもレックスは叫ばずにはいられなかったのだ。
レックスの顔に絶望の色が浮かんだその瞬間、それは放たれた。
爆発系の最上級魔法――― イオナズン!!
部屋のど真ん中に集められた魔力の塊が引き起こす想像を絶する爆発。
それはタバサが唱えるイオナズンの威力をも凌駕していた。
激しい閃光が一瞬で空間全体を覆い尽し、飢えた獣のように全てを貪欲に飲み込んでゆく。
壁という壁があっけなく吹き飛ばされ、魔の山全体が崩壊を始めた。
レックスのあまり大きいとは言えない体に強烈な衝撃が叩きつけられる。
爆風にその身をさらわれながら、レックスは目の前が白熱して、
時間がゆっくりと流れてゆくのを感じていた。
すさまじい爆発音が鳴り響いているはずなのに、それは不思議と耳には入ってこなかった。
ただただ肌を焼きつくされる苦しみと、飛び散る破片の衝撃の痛みだけが頭を支配する。
(タバサ……)
レックスは目をつぶった。
海の神殿の奥深く、魔界への門の前。そこにアベルは座り込んでいた。
右足をぶっきらぼうに地面に投げ出し、左足の膝を立ててその上に頭をもたせかけている。
目を薄く閉じていたが寝ているわけではない。アベルは扉の奥で起こっているわずかな
変化をも逃さず捕らえようとして、その神経を極限にまで集中させていたのだ。
そのためか、今の彼はどことなく近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
不意に、柔らかな生暖かい風がふわりとアベルの頬をなでた。
アベルの体がピクッと揺れて、閉じられていたまぶたがスゥーッと開く。
「どうやら状況が変わったようですね」
アベルの傍らで腕組みをしながら立っていたプサンが厳しい顔で言った。
彼らの視線の先にあるのは、つい先程までは強固に閉ざされていた魔界への門。
それが彼らをいざなうように、いきなりぱっくりとその大きな口を開き始めたのだ。
「……いったい何が起こっているのでしょうか?」
アベルがすっと立ち上がりながらプサンの方に向き直る。
「レックスたちがタバサの救出に成功したのか、あるいは
敵がタバサの魔力を、門を閉じるのではなく他のことに利用し始めたか…
どちらにしても魔界で何かが起こっているのは間違いありませんね」
「なるほど……」
アベルがあごに手をあてて、少し考えてから口を開いた。
「レックスたちが気になる。僕はこれから魔界に行きます。
プサンさん、城のみんなによろしく伝えておいてもらえませんか?」
言うだけ言って、返事も待たずにさっさと歩き出すアベルの肩にプサンの手が乗せられた。
「私も行きましょう」
アベルは振り返って、驚きをこめた表情でじっとプサンの瞳を見つめた。
にこやかに頷いてみせるプサンを見て、アベルは黙って一礼をした。
イオナズンの大爆発の後には何も残されてはいなかった。耳に痛いほどに
不気味な静寂があたりを支配し、そよそよと冷たい風のみが通り過ぎてゆく。
少年は無言だった。バートの巨大な体の上から周囲をぐるりと見回し、
それから無意識のうちにこみ上げてくる笑いを押し殺そうとして肩を震わせた。
「すごいよ… 本当にすごい、バート!!」
いつもは冷静な彼が興奮気味に、やや上ずった声ではしゃいだ。
「でも、もう少し力を抑えてくれたらよかったんだけどな。
レックスともう少し遊びたかったから」
首を横に振りながら少年は微笑んだ。言葉とは裏腹にその様子はまんざらでも無さそうだ。
「いや、まだ終わりにするには早い……」
「!!」
瓦礫の山の一角が崩れ、そこからレックスがはい上がってきた。
体中が血にまみれているが、それでもレックスは剣を放していなかった。
「へぇー、爆発の中心にいたのに良く生きていられたもんだ。
レックス、キミのしぶとさはゴキブリ並だね!」
少年の顔が歓喜の色に輝いた。気力を使い果たしても、全身をズタズタに引き裂かれても
なお立ち上がるレックスの姿に少年はちょっとした感動すら覚えていたのだ。
「まだあきらめていないんだね。そういう顔をしてる」
「あきらめる覚悟があるんだったら、始めからこんなところに
危険を冒してまで来たりはしない」
レックスが膝についた砂屑を払い落としながら笑ってみせた。
「フフ… それもそうか。で、突破口は開けたのかい?」
「どうかな」
少年の問いを曖昧にぼかしながら、レックスが勢いよく天空の剣を振り上げた!
天空の剣が、力強く輝く銀青色の光を放ち、バートの真紅の体を照らし出す。
ゴォオオオ!と唸りを上げる光の波動が一瞬にして
バートの体を覆っていたバイキルトとマホカンタの呪文をかき消した。
「へぇー、凍てつく波動か。でも、それって意味あるのかい?」
レックスの行動をあざ笑うかのように、バートである真紅の物体の体がチカリと輝き、
かき消された二つの呪文をすぐにかけ直す。
「まだだ!」
レックスはもう一度、凍てつく波動を放った!
「だから、意味無いって!」
すぐに唱え直されるバイキルトとマホカンタの呪文。
それを打ち消すレックスの天空の剣の光。両者の応酬が延々と繰り返される。
「……何やってんだ? あいつらは」
瓦礫の山の中からやっと抜け出してきたコリンズが、レックスたちの様子を
眺め見て呆れたようにつぶやいた。レックスたちはさっきから同じことを
繰り返しているばかりで、戦いは一向に進展するきざしを見せないのだ。
だけど、レックスはやけっぱちで闘うようなヤツじゃない、
そう考え、コリンズはレックスの狙いを見抜こうとして、目を鋭く細めた。
確かにタバサがバートの中にいると分かった以上、この呪文をどうにかしない限り
レックスたちには打つ手はない。攻撃を食らわないように細心の注意を払いながら
ちまちま斬りつけても勝てる望みは薄い。相手は底なしの再生能力を持っているからだ。
アルテマソードのような一撃必殺技を放とうにも、
それではタバサまで巻き込んでしまう危険が非常に大きい。この手も使えない。
(だからって、凍てつく波動連発してどうなるんだよ!?)
彼が何をしたいのかさっぱり分からず、イラついてコリンズは髪の毛を掻きむしった。
しかし、自分だけいつまでも黙って見物しているわけにはいかない。
コリンズが大きくため息をついて立ち上がった。火傷でただれた足が痛み、コリンズは
思わず低くうめいたが、その足に自身の平手を食らわせて歯を食いしばった。
(こんな程度の痛み… レックスやタバサに比べたら大したことはねぇ……!)
コリンズは目の前の敵をキッと見据えて、剣の柄をきつく握りしめた。
バートが呪文を唱えるたびに、確かにその巨体の内からタバサの魔力が
あふれ出しているということをレックスは感じていた。
それはバートの内にタバサがいるのだ、という事実を
レックスに改めて確認させるのと同時に、彼に新たな希望を与えてもいた。
天空の剣を振りかざし、大きく横に跳躍する。そしてバートが呪文を唱えなおしたら
もう一度天空の剣を使ってその呪文を無効化し、別の足場に向かって飛び跳ねてゆく。
「分からないなぁ、レックス。キミは何がしたいの?
もしかしてバートの魔力が底をつくのを狙っているとか?」
「……」
「もし、そうだったとしたらやめておいたほうがいいよ。
タバサの魔力が尽きるだけでバートにはなんの影響もないし。
むしろタバサの体が悪くなっちゃうかもしれないよ?」
レックスがパタリと足を止めて微笑んだ。
「そうだね。それじゃあ、これで最後だ」
レックスの天空の剣から放たれる神々しい光がバートの呪文を振り払う。
この短いわずかな時間にいったい何十回放たれたのだろうか。
「これで終わり? 本当にキミが何をしたかったのかが分からないや」
バートの巨体を照らしだすその光を見つめながら、少年は首をかしげた。
「レックス!」
自分を呼びかける声に驚いたレックスが振り返ると、そこにはコリンズが立っていた。
「コリンズ! …もう大丈夫なのか?」
足を引きずりながら歩く彼を見て、レックスは心配そうな顔つきになった。
「へっ、全身流血ヤロウに心配される筋合いはねぇよ。
それよりもさっきの凍てつく波動の連発には、ちゃんと意味はあったんだよな?」
「もちろんさ」
「ならいい」
レックスとコリンズが互いにいたずらっぽい笑顔を交し合った。
そして改めて眼前の敵に向き直り、瞳を鋭くギンと光らせた!
今日はここまでです。
本当はあと一回で終わらせるつもりだったのですが
うまくまとめられそうにないんで、多分あと二回に分けると思います。
すみません…
以前から思っていたけど戦闘の駆け引きが秀逸です。
タバサのこともあってか今までに無いほど熱いレックス王子。
どんな風に王子がこのピンチを乗り切るか楽しみです。
>>216 回数増えるの全然オッケー、むしろ増やしてほしいくらい
うむ。毎回楽しみだから回数分けて引き延ばしてほしい。どこかの週刊少年漫画誌みたいにw
少年誌的引き延ばしだといきなりトーナメント展開か
レックス「ついにバートを倒したぞ!」
プサン「よくやりましたレックス」
レックス「マスタードラゴンさま!?なぜここに」
プサン「実は今までの戦いはあなた達の力を試すものだったのです、天空五輪大武會に出場する資格があるかどうか」
タバサ「天空五輪大武會ですって!?」
レックス「知っているのかタバサ!」
ジャンプ編集部みたいなことやめれ(´Д`;)
もうちょっとだけ続くんじゃ
何かここでDBと双子のコラボネタ考えた、悟飯とレックスが入れ替わって、レックスがセル倒して、悟飯がミルドラ倒すって話。OK?
>>223 それは面白そう、外見が似てる異国の人間との入れ替わりネタはありきたりだけど
ここまで違う世界観だと新鮮
DBキャラが普通に悟飯と思ってセル戦に引っ張る姿や
タバサに恋する悟飯とか想像してしまった
悟飯の初期髪型=王女
悟飯の超サイヤ髪型=王子
だよな
>225
いや、おかっぱはナメック星編。
このスレ、まだ続いていたのか!?いや、いい意味でね?
レックスクエスト好きだったんだけど今でも続いている?まとめサイトにはレックスクエスト外伝しかなくてショボーン
>>227 本編は完結、作者さんの短編はまとめサイトにある。
>>215より続きです
「へぇー……」
少年はレックスとコリンズの二人を見下ろして微笑んだ。
レックスだけでなくコリンズまでもが立ち上がった。
一見、無意味に思えた凍てつく波動の連発にも何かの狙いがあるらしい。
少年は背筋がゾクゾクと震え、また胸がドキドキと高鳴るのを感じていた。
この連中はいったい、いつになったらあきらめるというのだろう?
進化したバートの決して果てることのない不死身の体に、揺るぎない圧倒的な実力、
そして絶望的な状況で人質に取られたタバサ。
これだけの要素がそろっているのに、もう身も心もズタボロに疲れ果てているはずなのに
どうして彼らは今もなお立ち上がり、あまつさえ笑っていられるというのか?
そのちっぽけな体のどこにそんな力が隠されているというのだろう?
「本当におもしろいよ、キミたちは……!」
少年はうなずいた。彼らがどこまでやるのか見てみたい…! そう思ったのだ。
もっともその欲求は一歩間違えれば己の身を滅ぼす両刃の剣にもなりかねない。
それでも少年はあえてレックスたちの勝負を真っ向から受ける決意を固めた。
「来い、レックス!!」
少年が高らかに笑った。
「ギガ… ディーーイン!!」
レックスが右手を天にかざしながら叫んだその刹那、
深淵の闇の中を一筋の鋭い光が駆け抜けた!
「ギ、ギガデインだと!?」
「気でも狂ったの? バートにはマホカンタがかかって……」
コリンズと少年の顔が驚きに歪むのがほぼ同時。しかし、ギガデインの聖なる雷が
向けられたのはバートではなかった。ギガデインの雷に打たれたのはレックス自身!
ギガデインの強烈な雷が滑るようにレックスの右腕にまとわりついて、うねりをあげた。
バチバチッと激しい音をたてて荒れ狂う強烈な光がレックスの右の拳と一体になる。
「コリンズ、あとは頼んだ……!」
レックスは満足げに微笑み、声を一際高く張り上げてバートに一直線に突っ込んでいった。
躊躇もせずに拳を振り上げるレックスの姿に少年は戸惑い、舌を巻いた。
(タバサを巻きこんでもいいというのか?いや、レックスがタバサを見捨てるはずがない。
もしかしてレックスはタバサがどこにいるのか分かっているんじゃ……)
そこまで考えて少年の胸に電撃のような衝撃が走った。レックスの狙いに気付いたのだ。
(そうか、タバサのいる位置を測るのが目的だったのか!)
レックスが天空の剣を使い続けた真の目的は、魔法を打ち消すことではなく
むしろバートに魔法を使い続けさせることにあった。バートが魔法を使う度に
その体の内からタバサの魔力が引き出されていることをレックスは気づいていた。
その魔力がバートの体のどこから発生しているのかを、レックスは丹念に調べていたのだ。
タバサのいる場所さえ把握できたなら、あとはそこを傷つけないようにして闘えばいい。
「レックス… やるじゃん」
少年が脇目もふらずに突進してくるレックスを見てつぶやいた。
走りながらレックスは左手に握っていた天空の剣を振りかざす!
剣先からほとばしる光の波動がマホカンタとバイキルトを瞬時に消し去った。
『グ……!』
レックスの攻撃が届く前にマホカンタを唱えなおすのは不可能と判断したのか、
バートはその豪腕を繰り出してきた。 レックスはとっさに体を横にひねったが
岩石のような重さを持つ拳が、容赦なく左肩に叩きつけられる。
「てっ……」
ゴキッと骨の砕ける嫌な音がした。レックスの顔が苦痛に歪む。
だが、それでもレックスは止まらなかった。大きく息を吸い込んだ後、
呼吸を止めて狙いを見定める。レックスの右足が瓦礫の山を力強く踏み切った!
「ハァアアアアアアアッ!!」
聖なる雷の強烈な光をまとうレックスの拳がバートの体を貫いた!
その瞬間、まばゆいばかりの閃光が視界全体を覆いつくし、
ドォオオオン!と耳をつんざくような凄まじい音が、空間そのものを揺るがした!
『グ… グガァアアアオオオアアッ……!!』
身の毛もよだつようなバートの叫び声がこだまする。
「レックスのヤツ… あのでけー体をたった一撃でブチ抜きやがった……!」
コリンズはバートの体に穿たれた大穴を見てゾッとした。
「コリンズ、タバサはその穴のすぐ脇にいるはずだ! タバサを頼む…」
レックスの声がコリンズの耳に突き刺さる。コリンズは我に帰ってハッと顔を上げた。
考える間もなくコリンズはダッと駆け出していた。火傷を負った左足がズキズキと
痛んだがそんなのはお構いなしだった。
―――お前がそこまで体張ってんなら、俺も頑張らないわけにゃいかねぇだろ!
コリンズがバートのどてっ腹に大きく空いた穴に潜りこみ、中を覗きこむ。
生物の体内のあまりの生々しさに、コリンズは一瞬吐き気を覚えて口を押さえた。
思わず目を逸らそうとして横を向いたとき、コリンズの目にそれが飛び込んできた。
そこには半透明の球体があった。大きさは大人の男が小さく丸まって、やっと中に
納まるくらいのもので、まわりはつややかな真珠色の殻のようなものに覆われている。
コリンズが緊張した面持ちで中を覗き込むと、その中に人影らしきものが見えた。
「タバサ……」
コリンズが呆然つぶやき、その顔がみるみるうちに紅潮していった。
その球体の中にタバサはいた。両膝を抱え、生まれる前の赤ん坊に似た格好で
うずくまりながら瞳を閉じている。それはさながら卵からかえる前のヒナのようだった。
「今、助けるぞ……!」
言いながらコリンズはなんとなく気恥ずかしい気分になった。
しかしすぐに真面目な顔に戻る。
そして剣をやや低めに構えながら息を詰め、一思いに真珠色の球体を斬り払った!
一筋の光もさすことのない暗黒の空間。そこには前も後ろも、右も左もなく、
ただただ決して果てることのない無限の闇だけが目の前に広がっている。
タバサはその暗闇の中を、どこを目指すということもなくさまよっていた。
聞こえる音といえば彼女自身の寂しい足音と、細かく震える弱々しい息づかいばかり。
彼女にはわかっていた。
たとえどんなに歩き続けても、絶対に光の出口を見つけられはしないだろうことを。
それを分かっていてもタバサは歩き続けずにはいられなかった。
何かをしていないと自分が自分でいられなくなるような不安を感じていたのだ。
そして今までわかっていなかった。孤独というものの真の恐ろしさを。
名前を呼んでも、泣いても喚いても誰も応えてはくれない。誰も来てはくれない。
ずっとひとりぼっち。タバサは歩きながら、そっと天を仰ぎ見た。
父アベルの優しい顔が思い浮かんだ。母ビアンカの元気という言葉を
そのまま形にしたような姿が思い起こされ、コリンズのやんちゃな笑みが目に浮かんだ。
オジロンやドリスにサンチョ、へンリーとマリア、そしてバーバラ。
今まで出会った人々の顔が次々と頭に浮かんでは消えていく。
今となってはピピンのスケベ面でさえ妙に懐かしく感じられるから不思議だ。
そして…… 最後に同じ血をわけた兄レックスの底抜けに明るい笑顔が浮かんだ。
タバサの瞳から一筋の涙がつつっとこぼれ落ちる。
「みんな… 会いたいよ…」
バートの要求をのむことを決意したときに、タバサは愛しい人々と永遠に別れることをも
覚悟したはずだった。それでもタバサはあふれ出す涙を抑えることはできなかった。
「……未練がましいかな?」
タバサが薄く微笑んでまぶたをゆっくりと閉じた。と、そのときだった。
―――…バサ!
「 え……?」
自分を呼ぶ声が聞こえたような気がした。タバサは耳を疑った。空耳かとも思った。
しかし彼女を勇気づけるように、今度は力強くはっきりとその声は響いた。
―――タバサ……!!
レックスとコリンズの声だ…! そう気づいた瞬間、今まで重く張りつめていた
緊張の糸がプツンと切れた。暖かく優しいものに心が満たされてゆき、
硬く凝り固まっていた心がゆっくりと、解きほぐされていく。
「来て… くれたんだ」
またタバサの瞳から涙があふれだした。同じ涙でも先程のものとは意味がまるで違う。
タバサの目の前に広がる闇がサッと払われて、その縁から暖かな光が差し始めた……
―――……
タバサの目がゆっくりと開いた。まだ視界がぼやけていてよく見えないが、
目の前に誰かがいる。そして自分を抱きかかえてくれている。それだけは分かった。
「…… ここは……?」
「!! タバサ…!」
「心配したんだぜ!」
タバサの瞳を覗きこんでいたレックスとコリンズの顔から安堵の笑みがこぼれる。
その声の主に気づいて、タバサの顔にもやっと笑顔が戻った。
「お兄ちゃん、コリンズ君…… その… 来てくれてありがとう……」
立ち上がろうとしたタバサの体が危なげにフラついた。レックスとコリンズは
慌てて彼女の体を支えて、その繊細で華奢な肩をきつくきつく抱きしめた。
「まだ無理はしちゃいけない」
「ご、ごめん……」
顔を赤らめ、申し訳なさそうに低く謝ってからタバサがハッと顔を上げた。
「それよりバートさんたちは? もう闘いは終わったの?」
「いや… まだ後始末が残っている……」
言いながらレックスとコリンズは後ろの方を向いた。彼らの視線の先にあったのは、
大きな傷からだらだらと緑色の液体を垂れ流している真紅の物体。
その隣では黒衣の少年が難しい顔をして立っている。
「もういいのかい? レックス」
「……戦闘中に背を向けていた僕らが悪いんだ。別に攻撃してきてもよかったんだぞ?」
「いや、今さらそんなことはしないよ。それよりもキミたちには本当に驚かされた。
さすがミルドラース様を倒してしまっただけのことはあるね」
「…ミルドラース様? やっぱり今度の戦いにはミルドラースが関わっているのか?」
少年はいったん目を伏せて低い声で何かをつぶやいた。それからスッと顔をあげた。
「……まぁ、いいか。どうせ最後だし全部教えてあげるよ」
ぶるぶると震えて身もだえしているバートをチラリと見てから少年は薄く微笑んだ。
レックスは無言のまま彼の顔をうかがい見た。その顔からたった一瞬だけ
いつもの余裕が消え失せ、哀愁の色が浮かんだ。そんな気がした。
「キミたちも知ってるだろうけど、ミルドラース様には世界の真の支配者になるっていう
高い志があったんだ。結局それはキミたちの活躍で阻止されてしまったけどね。
だけど、その体が消えてなくなってしまう直前にミルドラース様は
最後の力を振り絞って、あの鏡の力を使ったんだ。自身の野望を絶やさないために」
よどみなく流れるように語る少年の瞳を、レックスはまじまじと眺めた。
「もしかして… そのときに生み出されたのが君なのかい?」
レックスの問いに少年がにっこりと笑いながら頷いてみせた。
「ミルドラース様ってば茶目っ気のある方だよね。
本来、世界を救うはずの勇者レックスに世界を征服させようとしたんだから。
まっ、それだけキミのことが嫌いだったってことだろうけどね」
「魔王なんかに好かれようとは思わないよ」
レックスは声のトーンを落としてそっぽを向いた。それを無視して少年は続けた。
「そうとう悔しかったんだろうなぁ… なにせ人間の体を捨ててまで手に入れた力を、
十歳にも満たないキミにあっさりと破られてしまったんだから。
キミの勇者としての才能と血筋の力に、心の底から嫉妬していたのかもしれないね」
「それが… キミが僕にこだわった理由かい?」
「うん。ミルドラース様直々にご指名があったからね。キミをじっくりゆっくり
痛めつけてから殺せってさ。最初僕はそんな面倒な命令を聞く気はなかったけど…
キミのギガデーモンとの闘いぶりを見ているときに気が変わったんだ」
「……」
レックスの瞳の奥に五年前の死闘と、魔王の憎悪と恨みがこめられた目が鮮明に
写し出された。最後の闘いが始まる直前にミルドラースが、気の遠くなるような
年月を経て強大な力を手に入れた、と言っていたのを思い出した。そんな魔王にとって、
レックスの強さはとても許しがたい性質のものだったのかもしれない。
もちろんレックスの強さは本人の努力によるものが大きい。
しかし血筋と才能によるところも、また同じくらいに大きいのだ。
レックスは体の底からどっと疲れが湧き上がってくるのを感じた。
「…もう、くだらねぇ話は終わりでいいだろ。あとはお前を倒せば終わりなんだからな」
コリンズが吐き捨てるように言った。少年の眉がピクリと動く。
「僕を倒せば終わり? 何を言ってるのさ。まだバートがいるだろ」
「バートがいるって…… あれだけの攻撃を食らったらさすがにバートでも…」
言い返そうとしたコリンズの口の動きが途中で止まった。
今まで身をかがめてうずくまっていたバートの体に、突如として変化が起こり始めたのだ。
神秘的な黄金の光と暗い邪悪な闇の二つが同時にバートの体を包み込みはじめる。
光と闇は渦を巻きながら一つの点に集まり、やがてそれは奇妙なオーラへと姿を変えた。
「これは……?」
光と闇のどちらでもない不思議な力。なぜだかは分からないがレックスは急に
得体の知れない恐怖に襲われた。心臓の鼓動が自分でもそうだと意識できる程に速くなり、
冷たい汗にまみれた肌着が、体中にべったりと張り付いた。
まわりの空気が重く肩にずっしりとのしかかり、魔界全体が何かにおびえるように震えた。
「なんか、やばい雰囲気だぞ、レックス……!」
「あぁ、そうみたいだね……」
そのオーラから放たれる無言の圧力にレックスたちは思わず息をのむ。
『グォ… グググォ… ガァアアアアアアア!!!!』
バートが吼えた。レックスたちは互いをかばうようにして身を寄せ合う。
「来るべきときが来てしまったって感じかな」
少年は冷たく言い放った。そして静かに付け加える。
「僕とタバサの魔力の二つを合わせてやっと、バートの力を制御できていたんだ。
悪いけど僕にはもう彼を止めることはできない」
「……!!」
ここでレックスは初めてタバサをさらった意図を悟った。今までタバサの魔力を
戦力の補強のために利用しているものとばかり考えていたが、実はまったく逆だったのだ。
「もう手遅れなんだよ。バートはこのまま世界を滅ぼす。必ずね……」
少年が天を仰ぎ、そっと微笑んだ。その顔が少し寂しげに揺れ動いた。
今日はここまでです!
引き伸ばしても構わないよー、ていうレスすごくありがたかったです。
ていうか感想とかご指摘とか本当にいつもありがとうございます!
書いてる人間としてはマジでメチャメチャ嬉しかったです。
なんだかんだで引っ張ってしまったんで、予定通り
次で終わりになると思います。よかったら最後も目を通してやってください。
>>238 乙 乙!!
タバサが無事でなにより
生まれる前の赤ん坊のような姿・・・
(*゚∀゚)=3ムッハー
最後も楽しみにしちょります
頑張って下さい
すごい!おもしろいです!
続き楽しみにしてます
がんばってください
いや〜取りあえず乙です。
かなり面白い展開で毎度待ち焦がれてます。
ぶっちゃけ下手な少年誌の漫画とかより面白いです!
余り分の構成や流れに関して詳しくは無いですけど読んだ感じでは
読みやすいですしテンポもいい、伏線の張り方も巧いですし素晴らしいと思います。何より話が燃える。
この調子で最後まで突っ走って下さい。期待してます!
>>238 GJ!
まさに最終決戦という感じですね
最後までへたれ化せず貫禄たっぷりな偽王子の悪役っぷりに燃え
243 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/10/27 16:13:49 ID:+7KhQeom
保守
>>238 乙です〜
続き凄い楽しみです!
頑張ってください!
ぶっちゃけ下手な少年誌の漫画とかより面白いです!
お世辞はやめときな。みっともないよ
コリンズめ、おいしい役どころをもらったな(;´Д`)ハァハァ
ギガストラッシュならぬギガナックルか。
>>238 お疲れ様です
最近非常に楽しませて頂いています
そろそろHalloweenですね。
DBとのコラボだとレックスだとセル倒せないから、
セル戦の直後タバサがDB世界に来て、DB世界にゲマが登場して、Z戦士を封じ込めて、タバサと悟飯が助けにいって危なくなってレックスが助けに来るって話考えたけど…
書こうと思っても文才ないから書けねー誰か代わりに書いてくれ。
>>249 ハロウィンキャンペーン中の店に入ったら女性店員が黒マント+黒帽子姿だった
王女がそんな格好したらハリポタのハーたんみたいになって似合いそう
>>249に触発されて軽くハロウィンSSをつくってみました。
2回に分けてお送りします。 カデシュがでてるのは知らない方ごめんなさい。
*とりっく おあ とりーと!*
「とりっく おあ とりーと!」
僕がドアを開けるやいなや、ソラの元気な声が・・・って。ソラじゃない?!
明らかに不自然なモンスターがそこにいて、突然のことに僕は少しびっくりした。
「わっ、わ・・・?」
思わず変に高くなった声がでちゃった。
でも、確かにこの感じはソラだよ! ―ん、間違いない!
僕がちょっとあわててると、そのモンスターが頭をごそごそ動かした。
頭がとれた(!)かと思うと、顔をだして舌を出してえへへ、って舌を出しながら笑うソラの顔が見えた。
――ほら、やっぱりソラだ。
かわいいな、ソラは。・・・ミニデーモンなんかに変装してさー 。
それに、こんな近くまで来られてただでさえドキドキしてるのに、こんな笑顔されちゃ・・・
「やっぱりソラかー! でも何でそんな格好してるの? とりっく おあ とりーとって?」
僕が尋ねると、ソラはちょっと苦笑いをして言った。
「テン、今日はハロウィンって言われるお祭りの日なんだよ。」
「は、はろうぃん??」
僕は頭の中がはてなマークでいっぱいになった。
「うん、そう。子供がお化けに仮装してね、大人にお菓子もらったりするんだって。
本で読んだんだけど、すごく遠い国ではじまったお祭りみたいなの。
私、テンと一緒に仮装したいなぁ、って思って!」
「お菓子!? お菓子をもらえるの?」
お菓子って言葉に反応しちゃった。 食べるのも大好き!
「もう、テンたらそればっかり・・・。 で、大人にお菓子もらうときに言うのが、Trick or treat!よ。
とりっく おあ とりーと。 お菓子くれないとイタズラしちゃうぞー って意味の遠い国の言葉なんだって!」
へぇー。面白そうだなぁ。
でも・・・ソラ、なんでそんな目で僕を見るの?
「で! 私はベビーサタンのミニモンになろうと思って♪
でね、テンのために仮装衣装を私もつくったの。 はい、コレ!」
そういってソラは僕の前に袋をさしだした。
僕は袋の紐をすばやく開けた。 ソラから僕に―。
懐かしいな。前も僕に布で作った僕の人形をくれたっけ・・・。
「これは・・・ゲレゲレ?」
でてきたのは、キラーパンサーの着ぐるみ・・・なのかな?
「よかったぁ・・・ちゃんとゲレゲレに見えるんだね。」
ソラ、安心したみたい。 ―やっぱり不安だったんだね、ちょっとわかるけど・・・
おっと、ソラには秘密、秘密っと!
僕はゲレゲレに、ソラはミニモンにへんしーんっ!
さぁ、準備は整ったぞ!
「じゃあテン、いこっか! 」
「うん!」
-------
前半はここまでです。
後半はまた出かけるので帰ってきたら・・・
すいません訂正依頼です。
>>254 L1 ベビーサタン→ミニデーモン ○| ̄|_
ただいまーです。
>>256さんにもらったお菓子を食べつつ、続き投下します(n'∀')η
*
僕たちが部屋をでて廊下を歩いていると、曲がり角で
ピピンにばったりあった。
「ピピーン!!」
「はっ!お城、異常なしですっ。 ・・・・・・!!」
あはは。びっくりしてるや〜!
って!お願いだから、槍をこっちに向けないで!
「うん、お疲れ様、ピピン! あの、僕だよ!テンだよ!」
ピピン、やっと落ち着きをとりもどしたみたい。
「あ、テン王子・・・?し、失礼しましたっ。 格好いい変装ですね。
ミニモンにかわいらしく変装なさっているのははソラ王女でしょうか?」
「ええ、そうよ。」
さっきみたいに頭をとってソラが挨拶した。
「かわいらしいお姿でございますね。」
あ、そうそう お菓子お菓子っと。
「ね、ピピン? 『とりっくおあとりーと!』 」
間に一瞬の沈黙が。 ・・・あれ?
僕合言葉間違ったかなぁ・・・?
「と、とりっくおあとりーと・・・って、何ですか?」
ピピンが頭をかきながら僕に聞いてきた。
(あ、・・・ピピンも知らなかったんだね、ハロウィン。
ん! ピピンはやっぱりピピンだね!)
(テンもさっきまで知らなかったじゃない)
(あはは・・・)
ソラ、痛いよ・・・
「ううんっ、なんでもないのっ。 お城の警備頑張って!」
ソラがそういうと、僕たちは首をひねって考えている
ピピンを置いてまた歩き出した。
(は、はろうぃんって何だろう? テン王子、ソラ王女、教えてくださいよ〜!)
そのまま歩いていたら、向こう側からスラっとした影が見えてきた。
あ、カデシュだ!
「とりっ・・」
僕が言おうとしたら、カデシュがいきなり僕とソラに大きな袋をおしつけた。
「・・・・・・お前たちのいいたいことはわかってる。 Trick or treat!だろう。
・・・・・・いっとくが、たいしたものははいってないぞ。」
わぁ、なんでわかるんだろ。ピピンはわからなかったのに。
「カデシュ、ありがとう!」
僕たちはその袋を持ってまた走り出した。
後ろのほうでなにやら話し声が聞こえるけど・・・ まっ、いいか!
(あんなこといわないで、ちゃんと言えばいいじゃん!
あれ、手作りのクッキーなんでしょ〜?)
(・・・・・・。)
(とぼけたって無駄よ〜? アタシを甘く見ないでよねっ。
昨日、台所で必死になってるアンタを見たんだから!)
(・・・・・・!!・・・誰にも言うな・・・。)
―いろんな人に合言葉を言ってたら、あっという間にお菓子で一杯になって、
とうとう僕もソラも持ちきれなくなっちゃった。
「ね、いっぱいだね! そろそろ部屋にもどろうかー」
「そうね・・・・・・ちょっと重いわ・・・」
仕方ないなぁ、ちょっと持ってあげるよ。ホラ。
部屋の前の廊下にさしかかると、サンチョが僕たちの部屋の前にたっている。
何だろう、僕たちに何か用かな。
おーい、サンチョー!
「ゲレゲレとミニモンではないですか。 王子と王・・・」
「「とりっく おあ とりーと!!」」
サンチョ、ちょっとびっくりして固まってたけど、
すぐに元に戻って僕たちにやさしく言ってくれた。
「あぁ、そういえば・・・今日はハロウィンでしたね。
お二人ともすばらしい仮装ですよ。
では、サンチョの特製デザートをどうぞ!」
そういってサンチョは僕たちを部屋につれていってくいれた。
サンチョの部屋の戸棚からでてきたのは・・・
わぁ、チョコレートケーキだ!サンチョのチョコレートケーキって
とびっきりおいしいんだよなぁ・・・
「「わぁーい!」」
僕たちはケーキをむさぼった。
*
幸せそうにチョコレートケーキを食べている
二人を見ながらサンチョは一人考え事をしていた。
――坊ちゃんもこの時期になるとモンスターに仮装して
サンタローズの村中の大人に声をかけてまわってましたね・・・
あぁ・・・坊ちゃん、ビアンカさま、今どちらにいらっしゃるのですか・・・?
1秒でもはやく、あなたがたにこの二人の最高の笑顔を・・・
また、明日からは船の旅が始まります。こんどの行き先は――
「「ねぇ、サンチョ?」」
二人がサンチョを見上げた。
「は、はいテン王子、ソラ王女。なんでしょうか?」
「早くお父さんとお母さん見つけようね!」
「お父さんとお母さんにも来年はTrick or treat!っていうんだ!」
二人はそういうと、お皿の上に残っているチョコレートケーキを食べる作業に再びとりかかった。
――ええ、そのために先ほどお部屋のほうへお呼びにいったのですよ――
fin
いいね、お菓子をあげたくなるような子供らだ
モンスターが珍しくないこの城じゃあんまり驚いてもらえないのがしょんぼりかな(ピピソ除く)
ええ話や。・゚・(ノД`)・゚・。
まあまあだね
どっちかというとイタズラされたいであります
レスありがとうございます。゚(ノー`)゚。
モノ書きとして嬉しい限りでございます。
ハロウィンネタはなんか新鮮だ。
ミラーサイト掲示板のSS、ついにロト登場で続き楽しみ。
268 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/11/03 20:37:03 ID:kkxNZ4n+
HOSYU
寂れたなぁ・・・( ´・ω・`)
まぁそんなもんでしょ。良く持ったと思うよ。
個人的には話しが途中な新人職人氏とペコ氏の作品の続きを読みたいところだが。
生きているのかな。
まだ双子熱がさめない私はどうすれば。゚(ノー`)゚。
>>268 ペコ氏はわかるが新人職人氏っつーのは誰?
>>270 >生きているのかな。
ひょっとしてイ・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
……そのネタはやめなさい。
鯖復帰キタ─wwヘ√レvv〜─(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─!!!!
復活おめ
>>237より続きです
バートはおぞましい咆哮をあげながら暴れ狂った。
欲望のおもむくままに、周りにあるものを手当たりしだいに壊し続けている。
バートがたくましい腕を振り回せば、その先にある物は、たちまち跡形も残らず消えた。
耳をつんざくような雄叫びをあげれば、その巨体を包み込む不思議なオーラが
無数の光弾へと姿を変えて飛び散り、それに触れるもの全てをことごとく破壊しつくした。
「これが… バートの真の力……」
吹きすさぶ光弾の嵐をかわしながらレックスが無意識のうちにつぶやいた。
バートは笑っていた。ただ単純に破壊そのものを楽しんでいるようにも見えた。
何かにとりつかれたかのように暴れ狂うその姿は、まさに破壊の化身そのもの。
レックスが顔をしかめたとき、横からタバサの叱咤がとんできた。
「お兄ちゃん、気をたしかに持って! 気持ちでおされたら負けよ!」
「え? あ、あぁ。大丈夫! 心配いらないって!」
もしかしたら魂が抜け落ちてしまったかのようなマヌケ面をしていたのかもしれない。
レックスは思わず苦笑した。そして右手で天空の剣の柄を力強く握りしめた。
そうするだけで不思議と心が落ち着き、力が湧いてくる気がした。 ……まだ闘える。
「来いバート! 決着をつけるぞ!」
レックスが腹の底から声を張り上げた。
すばらしい切れ味を持つ剣が鋭くうなり、必殺の威力を秘めた豪腕が繰り出された。
数々の強力な呪文が惜しみなくぶつけられ、強烈な光弾が豪雨のように降り注ぐ。
闘いは果てしなく長く続いた。少なくともレックスたちはそう感じていた。
体はまるでボロ雑巾のように荒れ果て、滝のごとく溢れ出る血が全身を冷たく濡らした。
足は鉛のように重くなり、視界は遠く霞んで焦点がまるで定まらない。
治癒の呪文を幾度となく唱えていたが、今ではそれも追いつかないほどに体はボロボロだ。
一方のバートの勢いは衰えるどころか、時間とともに攻撃の激しさを増すばかりだった。
「あいつ… なんか、どんどん強くなっていないか!?」
コリンズがふと頭によぎった疑問を口にした。
「闘えば闘うほどに強くなる… それが進化の秘法の本当の力なのね……」
タバサがうめくようにつぶやいた。
「けど、進化の秘法には黄金の腕輪ってのが必要なんだろ?
俺たちが最初にヤツの腕を斬り落としたとき、一緒に黄金の腕輪も落としたはずだぜ?」
「…黄金の腕輪って人間の腕に丁度ピッタリなサイズのはずよ。あの大きな腕に
はまるわけがない。たぶん二人がみたのは、彼が用意したフェイクなんじゃないかな」
「マジかよ…… じゃあ、どうする」
コリンズが頭をボリボリとかいた。
「いくらバートや進化の秘法がすごくてもこの世に完璧なんてありゃしない。
絶対になにか手はあるはずなんだ」
レックスがニヤリと笑ってみせた。そんな彼の顔をタバサは無言で見つめた。
目の前にちらつく、度重なる絶望の影にも屈さず、前を見据え続けるレックス。
その姿はタバサとコリンズの心に、たしかに暖かな勇気の炎をともしてくれた。
単なるやけっぱちではない。レックスは冷静に状況を見極めて勝利への突破口を開こうと
その瞳を熱く燃やしている。みんな一緒に生きて帰る。ただそれだけのために。
「ったく… 何を根拠にすれば『絶対に手はある』なんて言えるんだ?」
「でも、私もそれを信じてみたい。ここであきらめたら終わりだから……」
一瞬消えかけた闘志の炎が、ふたたび彼らの瞳の奥で燃え始めた。
それを見てとって、笑っていたバートの顔が憤怒に歪みしわくちゃになった。
彼が見たいのはそんな顔ではないのだ。
『キニ… イラ…ナイ!』
「え?」
不意にバートが喋った。
『ソノ目… キニ…イラナイ……!!』
あっけにとられたレックスたちに、一瞬あってはならない隙が生まれてしまう。
『キエロ……!』
バートが両腕を高く天に突き上げて、凄まじい叫び声をあげた!
彼の真紅の巨体を中心として、突如肌が焼けつくような熱風が巻き起こる。
激しい衝撃の波はエビルマウンテンを容赦なく破壊した。
「バート。キミは本当にすべてを壊すつもりなんだね…」
黒衣の少年が抑揚のない声でつぶやいた。
彼は自身の母体である鏡に寄りかかり、舞い散る岩石の破片を見つめていた。
ときおり、その体に瓦礫のかけらがぶつかったが、少年はまるで無頓着だった。
目の前で起こっている崩壊の嵐を、まるで人事のようにぼんやりと眺めている。
彼が視界をさえぎる前髪を無造作に払ったとき、
不意にパリィィーーン… と乾いた音が響き渡った。
少年の頬を何かがかすめて、そこから一筋の赤い血が流れ落ちた。
鏡が割れた。 絶え間なく叩きつけられる衝撃に、ついに耐えられなくなったのだ。
「……」
少年は無言のまま切り裂かれた頬をそっとなぞった。指先がじわりと赤く染まった。
起こったことの意味を理解しても、少年は顔色一つ変えることはなかった。
「この闘い… 最後まで見届けたかったんだけどな」
少年は笑った。その体がゆっくりと透け始める。
鏡の消滅はそのまま、彼の存在の消滅を意味していた。
それでも少年は身動き一つせずに微笑み続けた。その微笑は限りなく安らかだった。
「バイバイ、バート……」
やがて少年の姿はこの世から消えてなくなってしまった……
ギラギラと光るオーラが、バートの両手の先に集まり、
みるみるうちに膨張していった。それが爆発したらどうなってしまうのか?
想像したタバサの足がすくみ、戦慄のあまりにザワッと鳥肌がたった。
タバサは周囲を見回した。コリンズが何かを叫んでいる。レックスが剣を手に走りだした。
山の崩壊がより一層すすみ、目の前を覆うばかりの瓦礫と、激しい怒号が飛び交う。
バートに向かって放たれた火炎の渦が衝撃波にかき消される。
レックスの体が弾き飛ばされ、高々と宙に舞った。
誰かの叫び声、何かが崩れる音、衝撃波が発生させる独特の風切り音。
様々な音が同時に耳に飛び込んで、それは死の旋律へと姿を変える。
そして、それは唐突に起こった。すべてを崩壊へと導く爆発。
タバサは目を大きく見開いてそれを見つめた。
一瞬にして目の前の風景が崩れていった。叫び声も、爆発音も何も聞こえなかった。
ただ耳の奥だけがキィィーンと鳴り響く。時間の流れがひどく遅く感じられ、
粉砕される岩石の一つ一つの粒でさえ見分けられる気がした。
レックスがタバサを守るようにして、勢いよくその体に覆いかぶさる。
その直後、エビルマウンテンは魔界から姿を消した―――
月明かりがタバサの柔らかな頬をそっとなでた。ついさっきまで激しい戦いが
繰り広げられていたのがウソのように、あたりは静まり返っている。
洞窟の奥のこもった空気と違い地上の空気は爽やかで肌にひんやりと染みて心地よかった。
タバサは仰向けのまま天を見上げていた。
エビルマウンテンは完全に崩れた。いや、山そのものが吹き飛ばされた。
あたり一帯が廃墟と化し、だだっ広い荒野と空ばかりが視界に広がっている。
タバサは右手を動かしてみた。激痛が走ったが、それでもかすかに動いた。
もう一度力を入れてみると今度は手を握り締めることができた。
タバサは胸のうちにたまっていた何かを吐き出すように大きくため息をついた。
まだ生きている。あの爆発の中にあって、なぜかは分からないけれどもまだ生きている。
目を動かすと隣でレックスが寝転んでいた。タバサの視線に気づき、優しく微笑む。
タバサが痛みをこらえてレックスの近くに寄り、彼の耳元でそっと囁いた。
「私たち… 生きてるの……?」
「みたいだね」
「……コリンズ君は?」
一瞬、間を置いてからレックスがゆっくりと首を振った。
「…わからないんだ」
タバサが泣きそうな顔になるのを見て、レックスは慌ててつけくわえた。
「爆発の直前にスクルトを重ねがけして、ついでにフバーハかけたんだ。
だからきっと大丈夫だよ。これで死ぬほどあいつは弱いヤツじゃない」
タバサは目を丸くした。あの短い時間でよくそれだけのことを出来たものだと、
感心をするのと同時に呆れもする。笑っていたレックスの顔が真顔になった。
「でも僕たちも助かったって言えるのかどうか分からない。バートはまだ生きている」
「うん……」
二人が黙り込み、また静かになった。不気味な静寂。嵐の前の静けさ。
これがずっと続けばどれだけ平和であったことだろうか。
しかし、次の瞬間にそれは破られる。
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!と大地を揺るがす低い音が鳴り始めたのだ。
「来る……!」
目を閉じて耳を澄ましていたレックスが短く叫び、起き上がった。
瓦礫の山が音をたてて崩れ去る。その中から紅い影がのそりと姿をのぞかせた。
不機嫌そうに頭を振りながら、地中からバートが這い上がってきた。
真紅の悪魔がレックスとタバサの顔を確認して、ニタリとしわまみれの頬を歪ませる。
『マダ… 生キテイタ… ノカ……』
「……」
空気の流れが変わった。地上に出てきても、その身も凍りつくような威圧感は健在だ。
レックスがゆっくりと立ち上がった。右手を振りかざすと、
その掌がキラリと輝き、どこからともなく天空の剣が飛び込んできた。
キッと前を向き、目の前の巨大な敵に向かってゆっくりと歩き寄ってゆく。
「お兄ちゃん……」
タバサは、どろりとにじむ血で、真っ赤に染まったレックスの背中を見て言葉を失った。
もう限界だ。これ以上闘い続けることのできる体などではない。
そんな体であるにも関わらず、レックスの全身からは裂帛の気合がほとばしり、
その目は、臆することなくバートの冷たい瞳を睨みつけている。
『イイ加減ニ アキラメテ 死ネ……』
「タバサもコリンズも死なせない… 僕も死なない… バート…ここで君を倒す…!!」
レックスの中で燃え上がる静かな闘志に呼応して、天空の剣が輝き始めた。
いきなりタバサの瞳から、涙がとめどなくあふれ始めた。
焼け付くような全身の痛みをこらえて、タバサがゆっくりと立ち上がる。
「また、助けられちゃったね… お兄ちゃん。
でも今度は私の番だよ…… 今度は私が助けるから―――!!」
誰にも聞き取れないほど小さな声でつぶやいたあと、
崩れ落ちそうになる自分の体に鞭打って、タバサは両腕を目の前にかざした。
タバサの口が、彼女自身まだ一度も唱えたことのなかった呪文の詠唱を始める。
初めて唱えるはずであったのに、タバサの唇はなめらかにその詠唱の言葉を紡いだ。
彼女の足元を中心として広範囲に、黄金の光を放つ魔法陣が描き出される。
途端にヴァン…と音が響いて、どんよりとした魔界の空気を一度に振り払うような、
凛とした清涼な気配があたりを支配し始めた。
『ナンダ…? コレハ……』
バートの顔色がサッと変わった。異変に気づいたのだ。
そうしている間にもタバサの内からほとばしる強烈な魔力の渦が、
彼女の足元の魔法陣に集約され、ますますその光の強さを増してゆく。
密度濃い魔力の塊が、うねっては弾け、また集まり一つの大きな力へと姿を変えていった。
『ソレハ… ソレハ、イッタイ、ナンダーーーー!!!』
危険を感じたバートが奇声をあげながらタバサに向かって突進を始めた!
そのバートの右腕に突然大きな傷が走り、乳白色の液体が飛び散った。
彼の全身が淡い輝きを放つ光に包まれて、バートの動きがわずかに鈍くなっている。
『グ… ガッ!?』
「邪魔はさせない……!」
レックスの渾身の一太刀、アルテマソードがバートの右腕を斬り裂いたのだ。
だが、その必殺の剣技ですら腕一本斬りおとすにはいたらなかった。
顔を歪め空中でバランスを崩したレックスの体にバートの左腕が襲いかかる!
「お兄ちゃん……!!」
タバサが絶叫した。どうすることも出来なかった。ここで呪文の詠唱を止めれば
すべてが無駄になる。最後の力を振り絞ってタバサをかばったレックスの行動がすべて
無に帰してしまうのだ。タバサはあまりの歯痒さに奥歯をギリリと噛みしめた。
『死ネ……!!!』
しかしバートの左腕はレックスに当たらなかった。
彼の左腕に叩き付けられた極大の炎が、それをはばんだのだ。
豪腕をかわし、地面に着地したレックスは呆然とその炎を見つめた。
「やらせねぇよ……」
言いながら姿を現したのは、身をボロボロにやつしたコリンズ。
レックスの顔がパァッと明るくなり、それに答えるようにコリンズが笑ってみせる。
べギラゴンの炎はバートの体に火傷を負わせることもできなかった。
しかし、それで十分だった。レックスとコリンズが高らかに叫んだ……!!
「「タバサ……!!」」
長い詠唱を唱えきり、タバサが呪文を完成させた。
それはゼニスの城でバーバラから伝授された、いにしえの最強魔法……
「……マダンテ―――!!」
タバサがその呪文の名を口にした瞬間、彼女の小さな体に秘められた全魔力が
一度に解き放たれた。うなりをあげて暴走する魔力がバートの周囲に拡散し、
まばゆいばかりの閃光が駆け抜ける。深い暗黒の闇に包まれた魔界が
太陽を思わせる輝きが照らしだされ…… すさまじい爆発が引き起こされる!
―――ズガァァアアアアアーーーーーーーンッ!!!!
『グ… グ… グォォァオオオオアアアアア……!!!』
怪物の悲鳴があたりにこだました。バートを中心として光の柱が立ち昇る。
うなりをあげながら突き上がるそれは、一瞬にして天を刺し、魔界の雲海を焼き払った。
巨大な光の柱は、大地をことごとく破壊しつくして
バートの真紅の体をズタズタに引き裂き、その肉片を一瞬で消滅させる!!
「す、すごい……」
レックスが信じられないといった目つきでその光景を眺めた。
これが、タバサの魔力をすべて注ぎ込んだ力の結晶だった。
「こんだけやればいくらヤツでも…」
助かりはしないだろう、と言いかけたコリンズの顔がサッと曇った。
砂煙の奥から、こちらに近づいてくる巨大な影が見えたのだ。
『オレハ… 負ケナイ……』
バートがゆっくりと姿を現した。目を剥き、全身を震わせて怒りをあらわにしている。
「この野郎……!」
コリンズが気色ばんだが、それを押しとどめてレックスが天空の剣を手に取った。
バートの体の大部分は消失して、全身からだらだらと緑色の液体を垂れ流していた。
肉体の再生のスピードも遅い。短時間で膨大な魔力を休みなしに使い続けた代償だった。
「……終わらせてくる」
レックスは無言のままバートに近づいていった。その間一度も彼から目をそらさなかった。
闘いのなかで乱れたレックスの髪を、横殴りの風が乱暴にふり払う。
『オヤジ、オフクロ、アニキ、ミミ… オヤジ、オフクロ、アニキ、ミミ…
オヤジ、オフクロ、アニキ、ミミ… オヤジ、オフクロ、アニキ、ミミ…
オヤジ、オフクロ、アニキ、ミミ… オヤジ、オフクロ、アニキ、ミミ…
オヤジ、オフクロ、アニキ、ミミ… オヤジ、オフクロ、アニキ、ミミ…
オヤジ、オフクロ、アニキ、ミミ… オヤジ、オフクロ、アニキ、ミミ……!!』
真紅の怪物が叫んだ。その瞳からは大粒の雫がいくつもこぼれ落ちていた。
「バート…… もう、終わりにしよう…」
レックスが悲しげな静かな声でつぶやいた。
眼の奥が熱くなり、思わず目を離したくなったがレックスはグッとこらえた。
天空の剣の柄を握り直し、崩れゆくバートの体をキッと見つめた。
怪物の瞳の奥に、たった一瞬だけ人間であったころのバートの姿を見たような気がした。
「お兄ちゃん……」
「レックス……」
レックスが全速力でバートに向かって突進し、天空の剣を大きく振りかぶった!
「うぁああああああああああーーーーーー!!!」
天空の剣の聖なる刃がバートの真紅の体を真っ二つに切り裂いた……!
バートの傷口から幾筋ものの光があふれ、その光が魔界全体を明るく照らしだす。
その光景は幻想的で妖しく、また美しくもあった。
バートの体がカッと燃え上がり、爆発を起こした―――
大地に大きな亀裂が走り、足場がガラガラと音をたてて崩壊を始めた。
「やべぇ! タバサ、ルーラを!」
「ごめん、さっきので魔力を全部使っちゃったの……」
「な、なんだって?」
揺れがさらに激しさを増し、彼らは体のバランスを崩してしまった。
闘いの最中にはあまり気にならなかった傷が、今さらになってひどく痛んだ。
レックスたちは目の前に迫り来る死を肌で感じた。
「……ここまでか?」
「いや、お前たちをここで死なせはしない」
顔を歪めてうずくまる彼らの頭の上から、不意に暖かく柔らかな声が響いた。
その声の主は紫紺のマントを颯爽とひるがえし、傷ついた彼らの体をひょいと抱き上げた。
そこに駆けつけたのはアベル。
「父さん……」
「良く頑張ったな……」
アベルは彼らの顔の一つ一つを確認して、優しく微笑むとすぐさまルーラの詠唱を始めた。
柔らかな光の渦が彼らをつつみ、ルーラが発動しかける。
そのときだった。
レックスの瞳に、瓦礫と共に地の底へと沈んでゆく小さな人影が映ったのは。
「あれは……」
瞳を大きく見開き、そしてレックスは弾かれたように駆け出した―――
―――……
「まったくムチャしてくれるよ。お前らしいと言えばらしいが」
「マスタードラゴン様が助けてくれなかったら、お前絶対死んでたぞ」
アベルが苦笑しながら腕を組み、コリンズがレックスの頭を小突いた。
「ご、ごめん」
レックスがちょこんと頭を下げて謝った。
「まぁ、そのお陰でゴールドオーブを回収できたんですけどね」
プサンが神々しい光を放つ球体を取り出して片目をつむってみせる。
「ゴールドオーブと闇の水晶。光と闇のまったく逆の力を組み合わせ
さらに黄金の腕輪で魔力を増幅することにより、光でも闇でもない新たな力を……」
「……どうして俺を助けた?」
談笑する彼らに背を向けていた青年がポツリとつぶやいた。
全員の視線が一斉に、その青年に集まる。その青年はポケットに両手を突っ込んだまま
その場に立ち尽くしていた。やや痩せている背の高い青年。彼はバートその人だった。
足元には砕けた黄金の腕輪と、博物館から盗まれた禁断の巻物が転がっている。
進化の秘法の魔力が失われ、バートは人の姿に戻っていたのだ。
レックスはバートの正面に回りこみ、困ったように頭を掻いた。
「なんでって言われても… 僕が助けたいと思ったから助けた。
それだけだよ。昔からそういう性分なんだ」
レックスはバートの瞳を真正面から見つめた。バートも無言のままそれを見つめ返す。
しばらくの間それは続いたが、やがてバートは目をそらして息を深々と吐き出した。
「人間が存在する限り、いつかまた必ず権力を振りかざす輩があらわれる。
そいつのために大勢の人間が死ぬことになるんだ。それは永遠に変わりはしないぞ」
「……」
バートの声が低くかすれ、その表情にどこか悲しげな影がさす。
重苦しい沈黙にあたりが包まれるなか、レックスがゆっくりと口を開いた。
「そうだね。たぶんバートは間違っちゃいない」
レックスの脳裏に、あの夢の光景がありありと映し出された。
善良なごく普通の人間が狂気に囚われる瞬間を、レックスは確かに見た。
「けどさ、僕はもう少しだけ信じてみたいんだ。
間違いを正すことのできる人間の可能性…ってヤツをさ」
「本気で言っているのか?」
「僕はいつだって本気だよ」
バートは大真面目にいうレックスの顔をジッと見つめた。
彼はやがて、放心したようにドサリとその場に仰向けに寝転んだ。
その肩が震える。こみあげる笑いを何とか抑えようとしたがかなわなかった。
耐え切れずにバートは声を出して笑った。その顔は何か憑き物が落ちたような表情だった。
彼の瞳に燃える憎しみの炎が、だんだんと小さくなっていく。
バートはひとしきり笑い終わったあと、静かに自分の手の平を見つめた。
「……どうやら、これまでのようだな」
「え……?」
バートの体が一瞬チカリと輝いた。彼の全身から細かい光の粒子が空に舞い上がり、
その体がゆっくりと透き通り始める。バートがそっとまぶたを閉じた。
「バ、バート……?」
「……俺は元々死んでいる人間だ。世界を憎む感情があまりにも強くて、
世界を滅ぼしたいという願いが強かったからこそ、あいつに呼び出されたんだ。
その思いが消えてしまえば俺がこの世界に存在する理由が無くなる。 …俺も消える」
「なんだよ、それ……」
レックスの顔が戸惑いの色に揺れた。
「まぁ、お前が俺を助けたのも、結局は無駄な努力だったってことだ」
「無駄なんかじゃないですよ…」
意地悪くいうバートに対して、タバサが首を振った。
「あなたが… 笑ってくれました」
「……」
バートは柔らかく微笑むタバサの顔をまじまじと見つめた。
その表情からは、悪意や憎しみは微塵も感じられなかった。バートは打ちのめされた。
彼は無抵抗のビアンカを傷つけ、タバサの力を利用した。
そんな人間に対して、なぜ彼女は笑いかけることができるというのか。
―――完全に俺の負けだな……
バートが薄く微笑んだ。その瞳から一筋の涙がこぼれ落ち、つつっと頬を伝った。
彼の体を包む淡い光が、その体を次々と光の粒へと変えていく。
そして… バートは宙へと溶けていった。
最後に一言… ありがとう… という言葉を残して……
エピローグ
―――魔界での闘いの決着がついてから三ヵ月の月日が過ぎようとしていた。
その日もビアンカは手すりから身を乗り出して、城の中庭を見下ろしていた。
鼻歌を歌いながら、あくせくと働く庭師の様子をながめる。
職人の手で、手慣れた様子で刈り込まれる木々を見るのが彼女の密かな楽しみだった。
「ここにいたのか、ビアンカ」
アベルがにこにこ笑いながら彼女の元に近づいてきた。
襲撃されたグランバニア城の修築がつい先日終わり、怪我人も順調に回復していた。
ピピンは今日も元気に女の子をナンパしている。
「なんてゆーか、やっと元通りになったって感じよねー」
ビアンカが両腕を突き上げて大きく背伸びをした。
「そうでもないさ」
そう言いながら、アベルがビアンカにりんごの果実を渡してやった。
「城壁は前よりもかなり強固になっているし、
ピピンなんかは前に比べると、かなりモテているんだよ」
「……安易に将軍の地位につけたのがいけなかったんじゃない?」
「ハハハ、そうかもしれないね」
冷たく言うビアンカに対して、アベルは笑ってごまかした。
「……それにさ、レックスとタバサも変わったよ。
なんていうか、見違えるように大きくなった」
「いいの? 旅立ちの許可なんてだしちゃって。王族の子供だけで旅だなんて
相当、常識はずれよね。そもそも、あの子たち、ちゃんと帰ってくるのかしらね……」
「二人とも優しいから… きっと帰ってくるよ」
「もし帰って来なかったら?」
アベルは考え込むような表情になって一瞬間を置いた。
「そのときはそのときさ。それに本音を言うと僕はあいつらには自由に生きて欲しいんだ」
「相変わらずいい加減ねー」
アベルとビアンカがお互いに笑いあい、そして短い口づけをかわした。
そのころレックスとタバサは、ラインハットの城下町の郊外にいた。
よく使い込まれた旅装束を身にまとい、一見すると王族とは思えない姿をしている。
その隣には同じく旅支度をすっかり整えたコリンズが立っていた。
彼らの目の前には、古ぼけて薄汚れた小さな墓があった。
博物館の受付嬢ミミがその墓に向かって熱心に祈り、レックスとタバサもそれにならう。
「これが私の家族の墓なの。もう何年も参っていなかったけど」
静かにつぶやいてから、ミミがスッと立ち上がった。
「兄さんは… バートは、最後に笑っていたのよね?」
「はい…… 確かに笑っていました」
戸惑うレックスに代わって、タバサがしっかりと頷いて見せた。
「そう… 兄さんは最後に希望を見つけてくれたのかな…… 良かった……」
ミミが目を細めた。その目は遥か遠く、家族がいるであろう世界を見つめている。
しばらくしてから、ミミはレックスたちの方に向き直った。
「それじゃあ、私はそろそろ行くわ。博物館の仕事もあるし」
「あっ、それならルーラで送り届けましょうか?」
タバサが進み出たが、彼女は笑ってそれを断った。
「いいの、いいの。今はちょっと船に揺られたい気分だから」
そしてミミは三人にごきげんよう、と挨拶をしてその場を去っていった。
その後ろ姿を見送りながら、レックスが静かにつぶやいた。
「バートが安心して見守っていられるような世界がずっと続けばいいね」
「うん… でも、それを作っていくのは私たちの役目だよ。王族とかそんなの関係なしに」
レックスの横顔を眺めながらタバサが笑った。
「そうだね……」
三人はなんとなく厳粛な気分になった。
「さて、そろそろ行くか。期限は半年なんだろ? どこに行くかさっさと決めようぜ!」
コリンズが二人をせかしたので、レックスは腕を組み、あれこれと思いをめぐらした。
「まずは古代の遺跡なんてどうかな。
そこできちんとパパスおじいちゃんに挨拶しなおしたいんだ」
彼らにとって、古代の遺跡こそが今回の闘いの始まりの地だった。
今にしてみると、あの戦いのすべてが、よくできた幻のようにさえ思えるから不思議だ。
「よっしゃ。そうと決まれば、とっとと行くとするか!」
「ちょ、ちょっと待って。古代の遺跡の次はどこに行くか決めておかないと…」
さっさと歩き始めるレックスとコリンズに向かって、タバサが慌てて尋ねる。
振り返ってレックスがニッと笑った。
「いいよ、そんなの後で決めれば」
「何よそれ! そんな無計画な旅がうまくいくわけないでしょ!」
「ハハハ、いざとなったらルーラお願いねー!!」
笑いながら、レックスが風のような速さで走って行ってしまった。
「もうーーーー!!」
タバサは走り去るレックスを怒りながらも追いかけだした。
空はどこまでも青く澄み渡り、雲がゆったりとながれてゆく。
見渡す限りに広がる草原が、優しく吹く風に身をゆだねて揺れた。
それはいつもと変わらぬ何の変哲もない風景。
そして、これからも続いていくはずの自然の姿であり、
彼らが必死に戦って守り通したものでもあった。
レックスたちは広大な世界へとその歩みを進めた。
勇者であるとか、王族であるとかそんなものは関係なしに一人の若者として。
今また、新たなる探求の旅が始まろうとしていた―――
(完)
そんなわけでやっとこさ、完結です。
ムチャクチャ長くなってしまいましたが、
なんとか終わらせることができました。
とりあえず一安心といった気分です。
いろいろあったけど連載中にスゲーたくさんの感想とかご指摘とかいただけて
ものすごく嬉しくってありがたかったです。 いや、本当に!
最後まで書ききれたのも、読んでくださってる方がいてくれるんだなーって思えたからだと思います。
読んでくださった方、本当にありがとうございました!
おお、ついに完結ですか。スレの伸びも鈍くなっているんで寂しい限りですわ。
ラストなんですが、最後くらいはコリンズは王位に、双子は旅に…でも良かった気もするけど、
全体のバランスがとても良い(当方、偉そう)ので良しと言い聞かせますです。
おつかれさんです。
鏡の中の群像さん、長期連載お疲れ様でした。
とても面白かったです。
ところで、読んでいて思いましたが、
最後のあたりは天空物語7巻のドラゴンマット戦をモデルに?
乙です
見事な物語でした…
>>294 2ヶ月半にわたる連載と、108000字以上もの文章、お疲れ様でした!
最後ですから言わせていただきますと、
誤字脱字のまったく見あたらない文章に、ちゃんとしっかりチェックしてるなあと感心し、
うまいんだかヘタなんだかよくわからない表現力に、作者さんのセンスの有無について首をひねり、
フツーの人間なら絶対しないであろうバカ親切な会話の文に、やはり神は二物を与えずと感じ、
意外性とスマートさと既存の入り交じったストーリー展開に、これほどのSSはやはり漏れには書けないなと当然のことを自嘲しながら、
毎回の更新を楽しんで拝読しておりました。
最終的な感想「若いっていいなあ〜!」
今夜はゆっくり休まれて、また明日から次回作の構想をよろしくお願いしますw このスレのため双子萌えのため!
・゚・(つД`)・゚・ 群像さん終わっちゃった、毎日の楽しみ1つ減っちゃった……。
この状態で果たしてDQ8祭りを乗り切れるか?
万一落ちたら双子スレと統合になっちゃうかな。どっちが先かって話だけど……。
よくよく考えればせっかく頂いた指摘、作品の中に生かせてないなぁ…
ダメじゃん! 俺!
最後の戦いは天空物語の影響かなり受けてますね、うん。
>299
もしよければ、前の方のレスに出てたDBとのコラボSSを書いてはくれないでしょうか?
>>298 >108000字以上もの文章、
数えたのかw
>>294 乙!
最後まで先が読めない展開でハラハラものでした
タバサの修行の成果は忘れられてるものとばかり・・・
少年とバートの最後には(´Д⊂ヽ
感動しました。鳥肌が立ちました。
そして、長い間の連載お疲れ様でした。
では、>196の続きから書いてきますねノシ
108000字となると文庫小説並?まさに乙彼さまです
ドラゴンマッド戦、言われてみてなるほどと思った
>>303 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
期待待ち
さすがに長いこと間があいてたので作者も忘れてるかもしれないあらすじっぽいもの
いつからか自分の妹に恋をしていたレックス。
しかし、タバサはコリンズという共通の幼馴染とすでに婚約をしていた。
それを知りながらも、日に日に妄想と想いを募らせるばかりのレックスは、ある日タバサにそっくりの少女に出会う。
実は彼女はタバサが魔力で作り出したもう一人のタバサ(しかもメイド風)。
そして、魔界のプリンス・ピサロと創造主マスタードラゴン、ついでの果てには進化の秘法という
作者も自分で知らない間にどんどん大きくなった話をまとめれるかどうか困惑しつつ
なんと進化の秘法でタバサは今までとは180°性格が変わってしまう。
はたして、タバサの黄金の指輪に込められた願いとは?
もう一人のタバサはなぜ生み出されたのか?
ピサロはロザリーの許しをもらって家に帰れるのか?
もう一度サンチョに出番はあるのか?
そして・・・一糸纏わぬ姿で寝ていた二人を待ち受けるシチュエーションは・・・?
その他もろもろの問題(ぉ)を抱えつつ、新感覚ドタバタ学園ラブコメドラクエ劇場をもう少しの間だけお付き合いください・・・orz
***以下、>196からのつづき***
「な、なんでそんな格好で寝てるんだよ!!!」
小さく叫ぶレックス。
なるほど、大きな声など出せるわけがない。さっきまでアルスが部屋にいたのだ。
「な、なんでって・・・(ムグムグ)。」
返事を返すタバサの口をレックスは右手でおさえる。
「ちょ、ちょっとそんな大きな声出すなよ!だいたい、なんで一緒のベッドに寝てるの?
ボクがなんのためにソファーで寝てたんだか・・・ってそうだよ!
ボクはタバサをベッドに寝かせてボクはソファーで寝たんじゃないか!なんで一緒になってベッドの上に・・・?」
レックスは 混乱している。
頭を掻き毟るレックス。
布団のシーツで身体を隠し、大きな翠色の眼をパチクリとさせたあと、クスクスと笑い出すタバサ。
「な、なにが可笑しいのさ?」
レックスは 混乱している。
半分涙目なレックスがタバサを睨みつけると、タバサは両手で口を抑えてさらに強く笑い出す。
「アハハハッハハハ、だって・・・レックス面白いんだもん・・・あーだめだ、お腹が痛い・・・。アハハハ。」
「お、面白いって・・・。あのさぁ・・・。」
レックスは 混乱(ry
「ご、ごめんごめん。・・・ウン。」
笑いすぎて出てきた涙を人差し指で拭い、ただ前を隠すだけだった布団のシーツを身体に巻きつけるタバサ。
その動作にレックスは目を奪われる。
レックスは ドキドキしている。
「あ、それとさぁレックス・・・。」
「え?な、なに?」
声をかけられ、ハッと我に返るレックス。
「前・・・隠したら?(笑)」
右手人差し指を軽く曲げ、口に押さえてクスっと笑うタバサ。
それを聞いてレックスは視線を自分の局部に下ろし・・・
ガバッ─────
顔を真っ赤にさせ、両手を使って身を守った。
今日はこの辺りで・・・続く
ああッ・・・!最高よッ・・・!
堪んないッ・・・!この光景・・・!
もっと濡らしてッ・・・!もっと汚してッ・・・!
この血肉の雨でッ・・・!
そうよ・・・!生命なんてこんなモノ・・・!
斯くも脆くバタバタと死んで逝く・・・!
大量にッ・・・!無味乾燥にッ・・・!ゴミ同然にッ・・・!
避けられぬ生命の宿命・・・!生命の本質・・・!
さあ嘆いて御覧なさい・・・!この凄惨な現実の上に立って・・・!
生まれてこなければよかったと・・・!この世はクズだと・・・!
生命は遍く虚しい物だと・・・!
そんな平素の顔をして。
何も感じていない振りをして。
その実、身体の芯に、抗えぬ熱い火照りを感じながら…。
素直に成れば良いのに…。
血肉の雨に濡れながら、身を捩らせて…。
滑りを持つ素肌に、指を這わせて…。
轟音の最中で、悲鳴の如く喘いで…。
死滅と淫欲の、赤き海で悶えながら…。
吐息を漏らし…!身体を跳ね付かせて…!
恍惚の笑みを…!血潮と涙で彩って…!
果ててしまいたい…!
世界で最も破滅に近しい、この無上のエクスタシー…。
"死"と共に交わす、熱く淫らで、暗い契りを…。
>>307 レックスに萌えてしまった(*´д`*)
>>308 無性に殺したいのよ。
だから黙ってなさい。
自殺イクナイヨ
11月27日は大事な用事があってスレにアクセスできないので
他の方できたらよろしくお願い致します・・・>dat落ち保守
8をプレイしながら保守るかな、主人公の名前はレックスで。
>307の続き
「と、とと、とにかく服を着てよ・・・。」
レックスは背中を向けソファーの上に放り出された服に手をやりタバサに渡し、
自らもいそいそと決してタバサの方は見ないようにと心に決め服を着始める。
「(でも、なんでベッドで寝てたんだろう・・・全然覚えてないや・・・)・・・ヨイショっと・・・タバサ?服は着た?」
レックスが振り返ると、そこにはタバサは先ほどまで身体に巻いていたシーツを取り、
月明かりで妖しくも美しく光るタバサの裸体が目に入る。
「だ、だから服を着なって・・・。」
レックスが両目を左手で覆い視界を逸らすと、タバサは返事をすることなく、レックスに一歩、また一歩と歩み寄りはじめる。
「タ、タバサ・・・。」
レックスは近づくタバサの気配を感じ、後ずさるが、
すぐに部屋の中央に置かれたテーブルにそれを遮られてしまう。
「あいて。」
乾いたゴンッとした音が部屋中に響き渡り、テーブルの上に置かれていたグラスがカタカタと身を振るわせる。
「・・・また・・・キスしよっか?」
タバサが口を開くと、レックスはハッとタバサを見つめるが、見た先の光景に目のやり場に困って下を向く。
「ま、またって・・・なんで・・・。」
そうは答えるものの、レックスは昼間のタバサとの衝撃的なあのキスを思い出す。
思い出しては、身体の一部がじょじょに熱くなっていくのを感じる。
─────ねぇ・・・
タバサとの距離がなくなり、レックスはギュッと目を強く瞑る。
─────また・・・
タバサの手のぬくもりがレックスの左胸に伝わる。
─────キ・・・s
タバサが最後まで言葉を発することなく、レックスはタバサの手を握り、その口を塞ぐ。
「んん・・・!」
タバサが声を漏らすと、レックスはいったん身体だけを後ろに引き、
再び強くタバサの唇に自分の唇を押し付ける。
─────どれくらいの時間が流れたのだろう・・・?
10秒?10分?・・・一瞬にも永遠にも感じるその時間を、レックスは何を思い過ごしたのだろうか?
キスキタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!!!
キス・キス・キス キス・・・したくなっちゃった
─────ポタッ
突如、右腕にしたたる水。
レックスはそれに気づき、目を開けタバサを見つめる。
そこには、目から大粒の涙を溢すタバサの姿が・・・
「ど、どうしたの・・・?」
レックスが心配そうに尋ねると、タバサは一言、声を震わして呟いた。
「ごめんなさい・・・お兄様・・・ラリホー・・・・・・!」
その瞬間、紫色の空気がレックスの周りを包み込む。
「!!!!!・・・・・・・・・な、なんで・・・?」
強い眠気に襲われて、薄れ行く意識の中でレックスは問いかけた。
・
・・
・・・
─────しかし、その答えは聞こえてはこなかった・・・。
つづーく
*ぬくもりを求めて*
「オ、オ、オジロンさま!!」
40か50代くらいの男であろうか、太った中年男性が王の間へと駆けてくる。
「これ、サンチョ 走るでない! どうしたのだ、いきなり。」
落ち着いてオジロンはその中年男性―サンチョのほうを向く。
「も、申し訳ありません、オジロンさま。 しかし、ついに王と王妃を見たという目撃証言が!!
ここより北西にある、その昔魔物に滅ぼされたというレヌール城だそうです!」
「な、なんだと!! やったな、サンチョ!!」
喜んだ後、オジロンは少し小声になってサンチョに言った。
「こ、このことは王子と王女には内緒にしておかねばな・・・
あの二人のことだ、絶対行くって言って聞かないだろうからな。」
「ええ・・・特にレックス王子ですね。 タバサ王女ならばなんとか・・・」
サンチョも同調する。
ゆっくり進行。次回に続きます。
>>318 ラヴ展開かと思ったらシリアスムード。
別れの予感?
>>319 両親探しエピソード良いね、レヌールで両親のように夜の冒険するのだろうか。
百済ねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
妻らねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Gaia Canser 16th
セラギネラ9
厨房
猫がいる。
黒と白の斑を持った、若い猫だ。毛並みも顔つきも、非の打ち所がない、完璧な美しさと可愛らしさ。
静かな裏通りの真ん中を、尻尾を立てて歩く姿は優雅だった。
その動きが、ふと止まる。
猫の前に、人間の足が二本立っていた。薄汚いスニーカーに色褪せたジーンズ。
猫がキョトンとした顔で見上げるにつれ、白いロング・コートが見えてくる。
サラリーマンなんかが着るような高級品ではない、若者向けの安物コート。
まだ秋に入ったばかりなのに、その人物はコートのボタンをしっかりと留めている。
若者はコートのポケットに両手を突っ込んでいる。
その上に、若い男の顔があった。二十才くらいに見える。
髪は自分で切ったのかアンバランスで、整髪料も使っていないようでボサボサになっている。髭だけは剃っているようだ。
若者の顔は青白く、無表情だった。冷たい瞳がゆっくりと、猫の方へと向いた。
ニャオン。
猫が鳴いた。
若者の足元に、猫が体を擦りつけた。
若者の肩がビクリと震えた。
もう一度、猫が鳴いてみせる。媚を売り、餌をねだるように。
若者が、ポケットから両手を抜き、猫へと近づけていく。その動作は何処かぎこちなく、緊張しているようでもあった。
小動物に触れることに、慣れていないのかも知れない。
右手が、猫の頭に触れた。そっと撫でる。猫は大人しくしていた。
若者の瞳が、僅かに和んだ。
ふと思い出したように、若者は猫の喉を撫でてみた。猫は気持ち良さそうに目を細めた。
若者が微笑を見せた。それまでの荒んだ雰囲気には似合わない、優しい笑みだった。
普段は2オンリーの某骨のお姉さんがTOPに双子のイイ絵を置いてくれてる。
12月20日までこれで放置だってさ。
双子・・・・(´∀`)・・・・ かわいすぎる、、らぶりーv
ローレシア=レックス
ムーンブルク=タバサ
サマルトリア=コリンズ
アイゴーTOP絵が2のものに戻ってるニダ!更新停止中はあのままだと
思ったのに。
まあもともと2のファンサイトなんだから当たり前なんだけどね。
>>324 だが、それはすぐに消え、代わりに別の表情が浮かんできた。
それは、恐怖、だろうか。
或いは、憎悪、であったのかも知れない。
若者の変化に、猫は気づかない。そのまま撫でられるに任せている。
若者の両手が、震えながら、猫の頭部を挟んだ。最初は軽く。
猫は困ったような顔で、再び鳴いてみせた。
十秒ほど、若者は、そのまま動かなかった。若者は歯を食い縛り、頬を引き攣らせ、
目を大きく見開いて目の前の可愛らしい猫を睨んでいた。
ニャオン。
猫が四度目に鳴いた時、若者は両手に渾身の力を込めた。
ギャブッ。
猫の体が激しく暴れた。前足の爪が若者の手を引っ掻いたが、若者は手を緩めず、更に強い力を込め続けた。
赤い液体が、両手の間から滴っていく。
ビクンビクン、と、猫の体が痙攣し、そして、動かなくなった。
その時になってやっと、若者は手を離した。
完璧な可愛らしさと優雅さを誇っていた猫の頭は、潰れた肉塊に変わっていた。はみ出した眼球の後を追って、脳の一部が流れ出す。
若者は、自分の行為の結果を見つめていた。
「現実とはこんなものだ」
そう呟く若者の顔が、泣きそうに歪んでいた。
ふ、と、無表情に戻ると、若者は血のついた両手をポケットに戻し、歩き去っていった。
後には猫の醜い死骸だけが残された。
(軌道修正も兼ねてこっそりぬくもりの続き)
しかしこの二人の思いもむなしく終わることになった。
オジロンとサンチョは王の間の正面玄関のドアが5cmほどあいていることに気がつかなかった。
二人のやり取りは全て、そのわずかな隙間からレックスが覗いてしまっていたのだ。
レックスは静かにドアを元通りに戻してから、二人の部屋へと駆けていく。
「こら!レックス王子。 廊下は走るものではありませんよ。」
「うん、ごめんごめーん!」
城のメイドの言葉をレックスは軽くあしらいつつ、二人の部屋のドアをダーンッ、といきおいよく開けた。
「きゃっ! びっくりした」
タバサはイスに腰掛けて『魔法使い用呪文集』を読んでいるところだった。
レックスはテーブルの上にあった紅茶の入ったカップを取り上げて一口すする。
「レックス、さも当然のように私の紅茶を飲まないでよ・・・」
ちょっと怒ってるタバサを見てレックスは苦笑しながら両手を合わせてタバサに謝る。
「あははー、のどが乾いてたんだもん、ごめんごめん」
「で、何なのよ?いきなり」
タバサがレックスを追及する。
「うん、えっとね 実は・・・」
レックスは今さっき聞いてきたサンチョとオジロンのやり取りのことを喋った。
「――お父さんが・・・!」
タバサは両手で口を覆った。目には涙がたまっている。
「いこう、レヌール城へ! 」
レックスが手を差し伸べる。
「ええ、お父さんとお母さんに会いに!」
タバサがその手をしっかりと握る。
ルーラ!
次回に続きますー。
>>334 乙!
手を握りあう双子萌え
ルーラで飛んだ先が気になる、旅前は城からあまり出たことなさそうな印象だから
さりげなく間接キッス
誰かこの陰謀双子を何とかしてくれ
755 名前: リュカ 投稿日: 04/11/09 11:15:22 ID:312hOGNs
とりあえず、俺が一番不幸で決まりな
756 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日: 04/11/09 16:19:15 ID:dAAXfBH1
>>755 でも肉体年齢20代で世界征服を果たしたし、あとの人生やりたい放題だろ
長生きすればひ孫の代までKINGだぜ
758 名前: 5勇者 [sage] 投稿日: 04/11/10 02:25:31 ID:oZlBJkuI
>>756 勇者はボクですからね。
“パパス王の息子”を慕う古い臣民と、“天空の勇者”を慕って来た新住民とで
グランバニアは真っ二つ、とかね。フフフ・・・
759 名前: 5王女 投稿日: 04/11/11 08:59:46 ID:Cu6e+obm
そして両者が戦争して互いに潰し合った後に、私と母上で国を頂くわ。ウフフ・・・
こ、こんな黒い双子私は認めない!
ギレンとキシリアか!
「レックスさん、お願いがあります!!!」
突然、足元から大声で自分の名前を呼ばれレックスは驚く。
レックスの名を呼んだのは旅の仲間であるプチヒーローのヒロりんであった。
自分のほぼ股下にいるヒロりんの目線に会わせるため
レックスはしゃがみ込み返事をした。
「ヒロりんじゃないか、どうしたの?」
「はい!実はレックスさんに・・・いやレックスのアニキに頼みがあるんです!!」
「ア、アニキぃ!?」
またしても驚くレックス、妹であるタバサならともかく
まさかヒロりんから『アニキ〜』と呼ばれるとは思わなかったからだ。
その言葉の響きに恥ずかしいような…、お小遣いをねだられそうな…
気持ち悪いような…そしてちょっと嬉しい感じをレックスは受ける。
「そうです、おれにとってレックスさんはアニキなんです!
なんたって本物の勇者なんですから!」
勇者だからと聞いてなるほど、とレックスは思う。
ヒロりんは常日頃から勇者を目指している、ということはすでに勇者である自分は
彼の先輩にあたるのでアニキ呼ばわりも納得できる、と。
「別にそう呼んでくれてもいいけど…それで頼みって?」
照れくさそうに頬をかきながら頼みの内容をたずねる。
「はい!ズバリどうやったらアニキのように勇者になれるのか知りたいんです!!」
「ゆ、勇者か…」
それはレックスにとっても大いなる謎だった。
何しろ生まれついて勇者だったので、どうやってなるかと聞かれても答えにつまる。
それでもヒロりんの期待の眼差しに答えるため精一杯の知識で答えをさがす。
「え、えーと…たしか勇者は天空人とエルヘブンの人の血が混ざって生まれたとかなんとか…」
うろ覚えながらそれらしい答えをする。
「わかりました!天空人とエルヘブン人の血を浴びればいいですね!それじゃさっそく…」
「ちょっとまったーーー!!!」
髪の毛を掴み、ものすごく勘違いしてそうなヒロりんを静止させる。
「いたいっすよ、アニキ!それじゃどうしたらいいんです?」
しかしレックスにはこれ以上考えが思いつかない。
どうしようかと悩んでいる時、タバサが通りかかるのが見えた。
「おーい、タバサ〜!ちょっときて!」
タバサに助け舟を出す、彼女ならきっとよい答えを知ってるだろうと。
「あれ?レックスとヒロりんじゃない、どうしたの?」
「ちょっとさ、タバサに聞きたいことあって。ヒロりんの聞きたいことなんだけど
勇者ってどうやったらなれるんだろうね?」
言い切ってしまった後にレックスは『しまった!』と思った。
そう、タバサに勇者絡みの話は禁句なのだ。
なにしろレックスとタバサは双子、にも関わらず勇者であるのはレックスだけ。
そのせいでタバサは勇者という存在に複雑な感情を持っている。
「あ…やっぱりいいや!ヒロりん他の人に聞きに行こう!」
レックスはヒロりんの髪の毛を引っ張り、急いでこの場から離れようとする。
しかしそれより早くタバサの口が開く。
「勇者……そうねお兄ちゃんは勇者だもんね……あれ?わたしはわたしは勇者じゃないよそれじゃわたしは
なんなの勇者じゃなかったらなんなのだっておんなじお父さんとお母さんから生まれたのにあれあれ
あれわたしいらないこ?いらないこ?そうなんだやっぱりそうなんだわたしなんてみんないらないと思ってるんだ
ねえこたえておにいちゃんわたしってなんなのねえなんなの……ブツブツ」
虚ろな目をしたタバサから怒涛の勢いで沈んだ言葉が放たれる。
これはまずいと感じたがもはや手遅れに近いほどタバサのテンションは下がって(上がって?)きた。
「そういえばアニキは勇者だけどタバサさんは勇者じゃないんですよね〜…ぶべらっ!!」
無神経なヒロりんの脳天にチョップをお見舞いすると同時にレックスはタバサをなだめようとする。
「タ、タバサ落ち着い…」
「みんなわたしなんていらないとおもってるんだるいーだにおきざりにするんだわたしなんてわたしなんてわたしなんて…」
「どうすればいいんだ…」
ひとつレックスはある事を思い出した。
それは先日、父と母が言い争いをしていた時のことを。
とても険悪な二人であったがキスをしたかと思うと
それまでが嘘のようにいつもの仲のよい二人に戻ったのだ。
もう手段は選んでられないと思ったレックスは見よう見まねでタバサを抱きしめ
自分の唇をぶつぶつ呪文を唱えてるかのようなタバサの唇に重ねた。
…
…
…
一分、数分間とも思えるほどの静寂が続いた。
レックスが唇を封じてからタバサは死んだように静かになった。
その様子をみて、もういいかな?と思ったレックスは唇をそっと離す。
唇の呪縛を解かれたタバサは時が止まったみたいに瞬き一つせずレックスを見つめている。
「さすがレックスのアニキ!いきなり女の子にキスするなんて、そこにしびれる!あこがれる!」
はやしたてるヒロりん。
「…つまりこれぐらいの勇気がないと勇者になれないってことだよ」
「わかりましたアニキ!」
ヒロりんが勇者になる道のりはまだ遠い…
久々に単品の萌えるネタだわぁ(#´∀`)
>勇者への道氏
「あれわたしいらないこ?」タバサ萌え・・・GJ!
ツッコミをひとつ・・・
2/4の タバサに助け舟を出す、〜ではなく、
タバサに助け舟を求める、〜が正しいかとオモワレ。
電波な王女たん萌え
鯖移転か
───────────────
時を少し遡り、魔界エビルマウンテン頂上
「この辺りでいいか・・・少し掃除をしよう。」
男が静かに瞑想をはじめると、男の周りの空気がピリピリと振るえはじめる。
「・・・ハァツ!!」
両手を左右に広げると同時に強い波動が周りを貫き
───ズガガガガガッ
一瞬にして山の頂上を平らな足場にかえてしまう。
「さて・・・タバサ。君のお兄様はいつ来てくれるのかな?」
一仕事終えた男は手を払いタバサに近づく。
両腕を拘束されているタバサだが、強気に男に向かい言い放つ。
「お兄ちゃんは来ないわよ!何度言ったらわかるの?」
ヤレヤレ・・・とした表情を見せ、男は
「君のお兄様は来てくれるさ。あの子にも連れてくるように言ってある。」
それを聞いてタバサは一瞬にして顔色を変える。
「あの子・・・って・・・。」
「残念だね、タバサ。あの子は私の言うことも聞くのだよ。ククク・・・。
それにしても、よもやミルドラースの指輪を君が持っていてくれたことが幸運だった。」
タバサから遠ざかり、光のない天を仰ぐ男。タバサはうつむき、唇をかみ締める。
「あのまま奴が持っていれば、後十数年は先でないと私は生まれなかった。
それを、たった4年だというのだから・・・君の魔力はやはり興味深い。」
静かに微笑する男。タバサは泣くこともなく、ただじっと下を向く。
「・・・・・・。」
「さぁ・・・早く来い!勇者レックス!!私の望みは君を倒すことだけ!!!」
───────────────
(来ちゃダメ・・・お兄ちゃん・・・。)
「タバサ!!」
ベッドから飛び起きたレックス。
額に手をやり、汗を拭う。
「なんだ・・・今の夢・・・タバサが魔界に・・・?」
起き上がると辺りを見回し、ここがグランバニアではないことに気づく。
「ここは・・・どこだろう・・・?」
重い足で建物の外に出ると、そこは地平線すら見渡せる何もない真っ白な空間。
「何も見えない・・・それに、ちょっと息苦しいし蒸し暑い・・・。
あの子がボクをここに連れてきたんだろうか・・・。」
一歩踏み出し階段を下り、後ろを振り返り、自分がさっきまで居た建物を見上げる。
「変な形・・・でも、どことなくメダル王の城に似てる・・・横のあの大きな砂時計はなんだろう・・・?」
レックスの視線の先にある砂時計。中には白い砂が光を帯びキラキラと静かに流れ落ちている。
建物に背を向け、まっすぐ歩こうとすると、後ろから聞き慣れた声がレックスを呼び止める。
「あまり遠くに行くと・・・もう二度とここには戻って来れなくなりますよ?」
声がする方に身体を向けると、そこにはタバサの姿が。
「君は・・・君はタバサじゃなかったんだね・・・。ここはどこなの?・・・タバサは?どこにいるのか教えてもらえるかな?」
ゆっくりともう一人のタバサの方へ歩くレックス。
タバサは下を向き、震えた声で話し始める。
「ごめんなさい・・・いろいろと騙してしまって・・・ご主人さまは・・・ここにはいません。
ここには・・・わたしとあなたしか・・・。」
最後の方は声がかすれて聞き取れなかったのか、レックスは首を傾げて笑顔を見せる。
「じゃあ、ここから出て早くタバサの所に行こうよ。アイツもきっと君を待ってるから。ね?」
レックスが手を差し出す。
しかし、差し出した手に手を重ねることはなく、タバサはポタポタと目から涙を溢す。
「ど、どうしたの・・・?」
慌ててレックスが駆け寄ると、タバサはレックスの胸に飛び込み声をあげて泣き始める。
「わたし・・・わたしはご主人さまのように強くなれなかった・・・ご主人さまは・・・
毎日こんな辛い思いをして・・・(あなたを好きで居続けているのに・・・)。」
レックスは泣いているタバサの頭に手を置き、子供をあやすように優しく撫で始める。
「どうしたのかよくわからないけど・・・君は君のままでタバサの側に居てあげて欲しいな・・・。
ほら!アイツの周りって同い年の女の子の友達っていないんだよね?
ボクにはコリンズがいるけど・・・さ。」
コリンズという名前を出すと、レックスの心にツキンと忘れていたあの痛みが走る。
しばらくしてタバサは泣き止み、レックスは再び問いかける。
「それで・・・タバサは・・・どこにいるのかな?」
両目の涙を拭き取り、タバサは静かに口を開く。
「ご主人さまは・・・魔界にいます・・・。あの人の所に・・・。」
「魔界・・・あの人って・・・?」
「これ以上は・・・あなたを危険な目にあわせたくはありません。
あの人はあなたを倒すことだけを目的と生まれました・・・。
それに・・・絶対にご主人さまには手を出さないと言ってます・・・!だから・・・だからこの安全な場所でわたしと・・!」
タバサはレックスを強く抱きしめる。・・・が、レックスはそれに応えることはなく、まわされた手を優しく解く。
「・・・ごめんね、タバサが魔界にいるなら迎えに行かないと・・・。」
「・・・・・・・。」
立ち上がり、建物の中に入るとひとつの扉を見つける。
レックスはその扉を指差し
「ここが出口かな?」
レックスが聞くと、タバサも立ち上がりそれに答える。
「・・・はい。」
力なく答えると、レックスは笑顔で「ありがとう。」と一言お礼を言って扉を開けた。
「どうか・・・生きて帰ってきてください・・・お兄ちゃん・・・。」
最後に呟くタバサの言葉は・・・レックスの耳に届いたのだろうか?
果たして、魔界で待つ敵とは?
エビルマウンテンを一瞬にして崩すその実力とは?
全ての謎を解き明かすため、今・・・勇者レックスは魔界へと旅立つ・・・!
タバサ弐号とはやはり結ばれないのか。・゚・(ノД`)・゚・。
できればタバサと偽の方は同性の双子っぽく仲良くなってほしいところ
ツバサのピークは温泉でランと百合った時
354 :
353:04/11/17 15:36:59 ID:bn9ouoq2
誤爆スマソ
精神と時の部屋キターと思ったら修行しないでいっちゃった
356 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/11/19 16:15:35 ID:vhGYB83T
hosu
ぬくもりを求めてまったり続き
>>334 <第一章> レヌールへの道のり
かくして二人はルーラの光につつまれ、タバサの思う場所へと飛んだ。
・・・・・
レックスが目をあけるとそこはラインハット城だった。
二人はまだ物心もついていないほどずっと幼い頃に一度だけラインハットへ来たことがあった。
タバサの記憶の奥深くに眠っていたこの経験が二人をここへ呼んだに違いなかった。
「ここはどこだろう・・・」
二人は顔を見合わせる。
「どこかのお城のようだけど? グランバニアじゃないよね。」
レックスはそういってあたりをキョロキョロと探索しはじめた。
タバサも置いていかれないように小走りになってそれについていった。
「あっ。 ま、まってよ〜!」
問題はここからどうやってレヌール城を目指すのか、であるが・・・・。
「あーっ! おまえら、この城のやつじゃないな! でてけー!」
二人の後ろからなにやら声がする。
(せ、せーの で一緒に振り返ろう! ・・・せーのっ!)
二人は恐る恐る振り返った。
どうやら立派な服を身にまとった緑色の髪の少年のようだ。
「な、なんだびっくりした・・・。」
兵士につまみ出されるかと思っていた二人はほっと胸をなでおろした。
「はじめまして、僕 レックス。」
「私はタバサよ。 貴方の名前は?」
やや間をおいて少年が答える。
「ふん!お前らに教えられる名前なんてないなぁ?」
この少年、二人が今まで経験したことのないタイプらしい。
「あ、あのね・・・。」
「何だよ、あ、わかったぞ。 子分にしてほしいんだな!
でも残念だな、お前らみたいに弱そうな奴を俺が子分にするわけないだろ!」
(・・・・うあちゃ〜・・・ レックス、どうしよう・・・。)
(どうしようっていったって・・・。)
その少年は今まで二人が接してきたどのタイプにも似ないものだったので
二人はお互いに顔を見合わせて対応にあくせくしていた。
そのときだった。
「こるぁっ、コリンズっ! 他人に向かってなんという物言いだ!」 ポカッ!
「い、いてっ!」
--
ここまでしかかけなかった( ´・ω・`)続きはまた今度でお願いします
>>360 GJ!!コリンズ登場激しくイイ!
続き期待
父とラインハットを訪れる前にヘンリーやコリンズと会っていたという展開は面白い
保守
「そんなに待っても無駄よ!お兄ちゃんは来ないんだから!・・・お兄ちゃんは・・・。」
タバサの目に涙が溜まる。
来ないと口にはするも、心の中では必ず来てくれるという矛盾。
男は両腕を組んだまま目を瞑り、一歩も動くことなく、長い尾をユラユラと左右に揺らしながら無言の回答をする。
「・・・。」
「だいたい・・・なんでお兄ちゃんを倒すなんて望んでいるの?・・・ミルドラースの敵討ち?」
続けて言うタバサ。男は目をあけ高らかに笑い出す。
「クックク・・・敵討ち?ミルドラースの?・・・ハーッハッハッハッハ。
私はただレックスの・・・いや、彼のみが持つ力が欲しいだけさ。」
「・・・力?・・・勇者の・・・?」
「そう、勇者の力!その力が加われば、私は完全体と進化する!!」
完全体への進化・・・今でもタバサは気圧されるほどのプレッシャーを感じているのにこれ以上の進化を男は望むというのだ。
「そんな・・・せっかく訪れた平和なのに・・・。でも・・・、そんなことは・・・させません・・・。
グランバニア王国第一王女の名にかけて・・・セル!あなたをここで倒します・・・!!」
言い放つと同時に自らの魔力を解放し、架せられた拘束を解く。
「ほう・・・私の作り出した拘束具を外すとは・・・やはり素晴らしい魔力だ・・・。
ふん、面白い。レックスが来るまでのウォーミングアップといこうか!」
そう言って、セルは両腕を組み、両足を揃えたまま強く尾で地面を叩く。
「天と地に遍く精霊達よ・・・その力を・・・わが耳に傾けたまえ・・・」
詠唱をはじめ、タバサの両腕に魔力の渦が集約され、あたりの空気が一変する。
「イオナ・・・ズンッ!」
極限まで高められた魔力から解き放たれる爆発系最大呪文。
タバサから放たれたイオナズンは、セルを中心に激しい爆発音と共にはじけ飛ぶ。
濃い煙幕がやがて薄く流れていく。
しかし、タバサは手を休めることなく、自らの周りに無数のイオラを作り出す。
その数約100個。
そして、それを一斉に煙幕の中心にいるセルへと放つ。
衝撃と轟音が辺りに響く。
チリチリと空気の焼ける匂い。それでもタバサは手を休めず再びイオナズンを繰り出すため詠唱を始める。
「イオナ・・・ズ・・・ッ!!」
呪文を放つよりも速く、タバサの口を緑色の冷たい手が塞ぐ。
「・・・少々汚れてしまったか・・・なるほど、確かに君は人間の中では強い部類にはいる。
だが、それでは私は倒せないなぁ・・・。」
掴んだタバサを軽々しく左腕一本で持ち上げ、不適に微笑むセル。
「ン・・・ググッ・・・!」
抵抗するタバサだが、身体能力の差が明らかな以上、その術もない。
「残念だが、ウォーミングアップにもならなかったようだ・・・。
仕方ない、君の骸をレックスへの手土産としてこちらから出向くと行くか・・・。せっかく特製の闘技場を作ったのだが・・・。」
右手の指を揃え、タバサの喉元へと突きつけるセル。
「(お兄ちゃん・・・。)」
タバサの目から涙があふれ頬を伝う。
伝った涙の雫がこぼれ落ち、地面に出会う刹那の時、一筋の閃光がセルの右腕を切り落とす。
「!!!」
セルが閃光の発生した方を振り向いた瞬間、顔面に蹴りの衝撃が入り吹き飛ばされるセル。
宙に放られたタバサは何が起きたのかまだ理解できていない。
そして、タバサを抱きとめ、セルに鋭い眼光を突きつけたまま
「うちのタバサにイタヅラしないでもらえるかな?これでも嫁入り前なんだからさぁ・・・?」
暖かい体温、大好きな匂い、心安らぐ声。この世で一番大好きなものに包まれたタバサ。
その声の主の腕の中で、タバサは光悦の表情を見せ、顔を埋める。
「(お兄ちゃん・・・来てくれた・・・!)」
勇者レックスの登場である。
つづく
前にどなたかが言ってたレックスVSセルのコラボになりました。
はあぁ〜〜〜〜〜〜〜〜。(うわさのノートを3階に陳列したときのゆうじいのため息)
ここに
>>223さんのネタを平然と書けるヴァカはまさかいない(
>>223さんに罪はないです。念のため)と思ってたのに、
よりによってペコさんがやるとは……。
漏れも今でもDBは好きなんですけどね。
コラボレーションネタという世界観の私物化をどうしても書きたいなら、自己サイトか専用スレでやってください。
鳥山先生キャラとDQキャラという、明らかに世界観の違うキャラどうしを組み合わせて文句を言われずに済む方は、鳥山先生ただ一人だけです。
まあかくいう漏れも、この板でDBネタは言うに及ばず、シスプリキャラでDQ3リプレイ書いたり、最萌えトナメネタをSSで使いまくったりしてましたけどね……。
思えば漏れも若かったなあ。しみじみ。
さて。あと4日となりましたが、保守のご準備はよろしいでしょうか?
/ ̄⌒⌒ヽ
| / ̄ ̄ ̄ヽ
| | / \|
.| | ´ ` |
(6 つ / 若本様キタ━━━(゚∀゚)( ゚∀)( ゚)( )(゚ )(∀゚ )(゚∀゚)━━━!!!!!
.| / /⌒⌒ヽ
| \  ̄ ノ
| / ̄
>>367 毎度のことだから長文書く気はないが、
なんであんたが偉そうに「ヴァカ」とか言ってんの?
批評だとしても言い方があるだろうに、なんでいつも
そんなに偉そうに言うんだか...
>>367 お前いつもなんか人をバカにしてる風に見えんだけど、
ここは双子SSを書く場所だから双子出てるだけでスレ違いになんないんだし、職人がやる気そぐようなこと言うのはやめとけ、ぶっちゃけお前荒らしだろ?
セルを出すのはいい感じだけどちょっと登場が唐突過ぎるとオモタ
今回の話では無理に出さず別ネタに使った方が良かったと思う
>>一行レス氏
自分に気に入らない作品だからといって即批判もどうかなーと。
書きたくなければ書かない、読みたくなければ読まないスタンスで。
(ただし自分の胸の中にとどめて何も言わないこと。)
つか貴方、前にもスレで問題になってたな・・・
>>ペコ氏
気にせず書いてくださいな。
374 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/11/24 10:27:09 ID:mz0Y67Yx
hosyu
SSを書いてみましたので投稿します
タイトルはすごろく(仮)で
世界から魔王の脅威が去って早一年…
大きな事件も無く穏やかな時が流れ、世はまさに平和そのものと言ったところ
しかし、その平和の立役者でもある伝説の勇者こと
グランバニア国・王子レックスはお城の屋根頂上に腰掛け
不満そうに空を眺めています
はぁ…、と時折りため息をつきながら王子は
かつての冒険の日々を思い出していました
( あの頃は楽しかったなぁ
楽しいことばかりじゃなかったけど、みんなで世界中を冒険して…
それにお父さん達もあんまり勉強とか気にしなかったし )
王子は勉強や宮廷作法の類が苦手で、よく教えを途中で抜け出す少年でした
以前ならそれでもサンチョが軽くお小言を言う程度だったのですが
世界が平和になり、お城に戻ってからは状況は一変しました
これまで少年には周囲から「勇者」としての期待と責任があり、彼もそれに応えてきました
しかし現在、少年に求められているのは「勇者」ではなく「王子」としての役割でした
今まで父から教わっていた剣がペンに代わり
母から習っていた呪文がテーブルマナーに代わりました
生活は以前と180度変わったのです
ただでさえまだまだ遊び足りない年頃の王子にとって
この慣れない生活は苦痛でした
だから王子は隙を見てはこっそり授業をさぼり、ここ城の頂上で昔を思い出していた
「お兄ちゃん〜〜〜」
意外な声が下の中庭から聞こえてきたので王子は下に眼をやります
声の主は彼の双子の妹のグランバニア国・王女タバサでした
てっきりサンチョやピピンあたりが小言に来るとばかり思っていた王子は少し驚きました
「タバサじゃないか、どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ、また歴史の授業をさぼってこんなところにいるなんて」
やってくる人は違っても話の内容は同じでした
「ふぅ…タバサもか」
「? とにかく早く降りてきて」
( タバサはいいよなぁ…ぼくと違って勉強ができるから )
ふてくされながらも下に降りる
「タバサは昔のこと思い出さない?」
「昔のこと?それはたまには思い出すけど…」
「あの頃は良かったよね」
「良くはないよ…大変なことばっかりだったじゃない」
同じように冒険をした二人だけど感じ方はそれぞれでした
「たしかにそうだったけど楽しいこともあったじゃない」
「楽しいことって、例えば?」
「例えばって、えーと…………すごろくとか」
「すごろくか。うん、すごろくは楽しかったね」
騒がしいことを好まない性格の王女ですが、すごろくは別なようです
冒険中でもたびたび父親にすごろくを催促をしていました
そんな王女を見て王子は提案します
「それじゃあ…今日の夜こっそりお城を抜け出してすごろくに行かない?」
「夜にお城を…?だめよ、明日も課題があるんだから
行くのならちゃんとお父さんの許可をもらってからじゃないと」
「そんなのいつになるか分からないし、待ちきれないよ!
タバサだって早くすごろく行きたいだろ? す・ご・ろ・く」
「でも……」
「だいじょうぶだって!明後日に倍がんばればいいだけじゃないか、ね?」
「うーん………一日だけならだいじょうぶかな……」
王子の強引な誘いと、すごろくの誘惑に負けたのか
王女は生まれて初めて授業をさぼることを決意してしまいます
それをうけて王子は大喜び、なにしろすごろく場へ行くには王女のルーラが必要不可欠だからです
「よし!それならお城の消灯時間になったら出発しよう」
「う、うん…」
平和な世界のまたその中、平和な国グランバニア
他国やモンスターが襲ってくることも無いので良くも悪くも警備は厳しくありません
ですから王子・王女という身分ある者でも城を抜け出すのは簡単でした
加えて王女がルーラという便利な呪文を使えるのでなおさらです
二人がルーラで向かったのは魔界のすごろく場
すごろく場自体は地上にも幾つかありますが人目を考えて二人は魔界を選んだのです
「うわぁ、久しぶりだなーここ!」
「うん、そうだね!」
冒険以来訪れたこともなかったすごろく場
二人にワクワク感と共に懐かしい気持ちがこみ上げてきました
出発前はしぶしぶ…という感じの王女もすっかり乗り気です
「よ〜し、さっそく遊ぼう!」
「うん!」
「すいませんね〜お客さん、今日は満員なんですよ〜」
受付の男の言葉に二人はいきなり出鼻をくじかれた
「満員って…それじゃ今日は無理ってこと?」
たしかに辺りを見渡すと大勢の人…いやモンスターが列を成していた
「ええ今日も無理ですし明日も明後日も、二週間先までは予約でいっぱいなんすよ〜」
『に、にしゅうかんーー!!?』
思わず二人は大声をあげた
いくらなんでも二週間も城を留守にするわけにはいかない
「魔王が倒れて平和になってからはいつもこんな風に満員なんですよ〜
いや〜勇者様様ってやつですかね」
「え、えーとおじさん、なんとか明日くらいになりませんか?
ほら!この男の子が魔王を倒したその勇者なんです!」
王女は王子を指差して答えた
久しぶりに勇者扱いされた王子は少し照れてしまう
「この小っこいのが勇者〜?ハハハ、お嬢ちゃん冗談はいけねえや〜」
思わずドテッ、と倒れこむ王子
「…う〜ん、思ったよりお兄ちゃんのこと知れ渡ってないのね♪」
「なんで嬉しそうな顔するんだよタバサ…」
「あ、ごめん。でも困ったね、別のすごろく場を当たってみる?」
「他のところか…」
地上のすごろく場は全て制覇していたので悩みます
かといって二週間も空きを待つことは無理なのは明らか
このさい地上でも仕方ないと思い始めたその時
「ねえねえ、君たちすごろくがやりたいの?」
見知らぬモンスターに二人は声をかけられました
小柄な体躯とギョロっとした一つ目に大きな帽子をかぶった
あまり見ないタイプのモンスターでした
「うん。でもここは満員で別のところに行こうと思って」
「へえ、そうなんだ。ちょうどいいやボク、ここよりもっと楽しいすごろく場知ってるよ」
『ホント!!』
「もちろん本当さ。エビルマウンテンの南に毒の沼地帯があるだろ?
その沼地帯の中に新しくすごろく場ができたんだ
MAPの広さもここよりずっと広いし、お宝もアトラクションも盛りだくさん
何より出来立てのほやほやだから来る人も少なくて空いてるよ」
その小人の口から出たのは願っても無いような話
しかしだからこそ王女は怪しみます
( そんなにいいすごろく場があるならここで並んでるモンスターさん達は
みんなそっちにいきそうだけど… )
そんな王女とは逆に王子はすっかり小人の話に夢中の様子
「すごいや!ねえタバサさっそく行ってみようよ」
「お兄ちゃん……なんだか怪しくない?そんなすごろく場があるなんて」
横で王女が王子にささやきます
王子も言われてみればたしかに少しうま過ぎると思いました
「もしかしてボクの話疑ってる?ホントのホントだって
毒の沼地の中になんて造っちゃったからあんまり知られてないけど
ほら、これが証さ。君たちにあげるよ」
小人が手渡したのは二枚のすごろく券
そのすごろく券には「すごろく場〜エビルマウンテン〜」と書かれています
「ほら、本当にあるって。タバサは心配性すぎるよ
ありがとう、ぼくたちこれからそこへ行ってみるよ。ほらタバサ早く〜」
「あっ!お兄ちゃん待ってよ〜……」
心のモヤモヤは晴れていませんが王子を追いかけるため
タバサは仕方なしにその場を後にします
「存分に楽しんできてね、勇者くん…」
声が聞こえたような気がして王女は後ろを振り返りました
しかし、振り返った先には小人の姿もなくモンスターの行列が見えるだけです
( いまたしかに「勇者」って聞こえた気がしたんだけど… )
「お〜いタバサ〜。早くルーラ、ルーラ!」
「あ、もーちょっと待ってよ〜」
「魔界のすごろく場以上のすごろくか〜楽しみだなー!」
「嘘だってもしらないからね。〜〜〜〜ルーラ!!」
ルーラで空を翔る二人をギョロっとした眼が睨みます
「ふふふ……期待しているよ。天空の勇者くん……」
続きます
>>375-381 乙〜!
ほのぼの、笑い、サスペンス。こういう話大好きです。今後の展開が楽しみ。
理不尽なすごろくで虐められちゃったりするんでしょうか、プレイヤーみたくw
ところで一応。句点をつけないのは何かしら意図があるのでしょうか。
技術的には、くどかったり簡単すぎたりと描写にムラがありますが、少し気になる程度ですね。
それと、面倒でもトリップはつけたほうがいいと思います。
避難所にもSSがきてます。
読んでいて楽しい上に萌え(*´Д`)なお話でした。作者さんここ見ていらしたらGJ!
>>382 指摘感謝。トリップ付けてみました。
普段あまり長文を書かない&会話多用癖でつい単調な文になりがちだったり
もっと他の作者さんのSSや本を読まねば
>甘辛物語氏
父親の少年時代の冒険を双子版にリメイクしていてイイ!
天空物語とは一風変わったツッコミテンもイイ!
>ところで一応。句点をつけないのは何かしら意図があるのでしょうか。
>技術的には、くどかったり簡単すぎたりと描写にムラがありますが、少し気になる程度ですね。
避難所とか保管所に投稿されてるSS面白いからこっちに投稿してほしいな
あは みつかっちゃった!
水門の鍵を持つラゴスのごとく避難所に潜んでいた者です。
しばらくは気づかれないと思っていましたが、意外と早く見つかってしまいました。
避難所のあれはパイロット版として書いたものです。
評判は悪くないようなので、今後本編はこちらに投稿したいと思います。
若干キャラに癖があるのでイメージを大切にする方はスルーをお願いします。
これからも生暖かく見守ってやってください。
いい双子の日の記念書きことして、投稿予告でした。
11/25でいい双子・・・気づかなかった。
11/22でいい夫婦は気づいたんですけど。 ○| ̄|_
おなじく気づかなかった…orz
双子の日ってそういう意味だったのか
389 :
てんあい:04/11/26 22:43:54 ID:Pw99oGon
お久しぶりです。SS職人の皆様お疲れ様です。第十一話いきます。
翼の欠けた天使たち 第十一話
「ソラ…、ごめんね。ボクがあんなことさせたから…。」
「…っすん。おにいたんは…わる…くないのぉ。」
なかなか泣きやんでくれないソラをボクは懸命になだめていた。
「…うん。でもコリンズくんだって悪気があってソラにあんなことしたわけじゃ…。」
「あのひとは…、わるいまものさんです…。…ふぇ〜ん…。」
「いや、その…。」
参ったな…。すっかり機嫌を損ねちゃったみたい。
でも、このくらいの年の女のコってどうすればキゲン直してくれるんだろう…。
「おにい…たぁん。」
などと考えていると、ソラが両腕をボクの後ろにまわすようにして抱きついてきた。
「…こら、変なトコに顔を擦りつけないの…。」
ソラはそんな意識無いんだろうけどこれはちょっと…。
「…ほ…ほら、もう泣かないで。せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「…べつにいいもん。」
うーん…。
「そうだ! じゃあ何かおいしいもの食べに行こうよ。ね?」
「おいしいもの…?」
「うん! ソラが大好きな甘いものとかさ。」
「はい…。いきます。」
そう言うと、ソラはボクの体から少し離れるようにして、ボクの顔を見上げる。
ソラの目にはまだ涙が残っていたのでボクはハンカチを取り出しそれを拭ってあげた。
「ほら、この方がずっと可愛いよ。」
「ほんと…?」
「うん。…じゃあ行こうか? あそこのお店にしようよ。」
と、歩き出そうとするとソラがボクの服を掴んでそれを制する。
390 :
てんあい:04/11/26 22:46:13 ID:Pw99oGon
「ソラ…?」
「…だっこして。」
「へ…?」
ボクは思わず間の抜けた声を上げてしまう。
「だっこ〜。」
こんな街中だし、少し恥ずかしいんだけど…。でもまたキゲン悪くなってもな…。
「…じゃあおんぶでいい?」
「うん、いいよ。」
ボクがしゃがみこむとソラは後ろにまわりこみ、ボクの首に腕をまわすようにして抱きつく。
「いい? 立つよ。」
「わ〜い! おにいたん、たかいよぉ!」
「危ないからじっとしててね。」
「うん!」
でもこれってよく考えたらだっことあんまり変わらない気が…。
ボクは人目を避けるように駆け足で目的のお店に向かった。
「にゃはは、おにいたんはやいです〜。」
「いらっしゃいませー!」
お店に入るとウェイトレスのお姉さんの声がボクたちを迎えてくれた。
おぶっていたソラを降ろし、テーブル席に腰かける。
このお店はお菓子屋さんと喫茶店をあわせたようなところで結構賑わっていた。
「ソラは何が食べたいの?」
「えとね、ぼくはね…、これ!」
メニューとにらめっこしてから、そこに描かれたチョコレートサンデーのイラストに指差すソラ。
「お決まりになられましたか? ご注文をお伺いいたします。」
そこに現れたウェイトレスのお姉さんにそれを伝え、ボクも適当にドリンクを頼んだ。
ふー、これでやっと一息つけるかな。
…と、思いつつ周りを見てみると女のコばかり、というよりこのお店のお客さんは全員がボクと
同じくらいの年齢の女のコだった。
391 :
てんあい:04/11/26 22:51:38 ID:Pw99oGon
な、何だか視線がボクに集中しているのは気のせいかな…。
「おにいたん、どしたの?」
そんなボクを気づいてか、隣に座っているソラが見上げて言う。
やっぱりこういう女のコばかりのトコって馴染めないなぁ…。
「お待たせいたしました。」
そこに、注文したチョコレートサンデーとドリンクを運んできたウェイトレスのお姉さんが現れた。
「うわぁ〜、すごくおいしそうだよおにいたん!」
スプーンを手にして早速食べ始めるソラ。
「あまくておいしいです! おにいたんもたべる?」
「…ボクはいいから早く食べちゃおうよ…。」
「はい、おにいたん。あ〜んして!」
スプーンにフルーツを乗せてボクに差し出してくるソラ。
「や…やめろよ、ソラ…。」
「くすん…。たべてくれないの…?」
とたんにソラは涙目になってしまった。
これじゃさっきのことの繰り返しになっちゃうな…。ちょっと恥ずかしいけど…。
「…あ、あ〜ん。」
「…えへへ、はい! あいしい?」
確かに甘くて美味しいけど…。
そのとき周りから『クスクス』と笑う声が聞こえた。
それがボクに対してのものだと気づくと急に恥ずかしさかこみ上げてきて、お金をテーブルに
おいてソラを連れてお店を飛び出してしまった。
「あぁ、おにいたん!?」
392 :
てんあい:04/11/26 22:54:51 ID:Pw99oGon
お店を飛び出して少し街を歩いたけどボクの顔はまだ熱かった。きっと他の人が見たらここまで
顔を赤くしていることに驚くに違いない。
「おにいたんのせいであんまりたべられなかったです…。」
「ゴメンねソラ。でもボクああいうところ苦手なんだよ…。」
「ぶー、あのおかしおいしいからもっとたべたかったのにぃ。」
不満を口にするソラをなだめつつ、ボクはこれからの予定を考えていた。
せっかくお父さんにもらった一週間の休暇だし、日も少し傾きかけているからそろそろ決めないとな…。
「じゃあソラ、お詫びに世界中のいろいろなところに連れて行ってあげるよ。」
「せかいじゅうの…?」
「そ。ボクもね、小さい頃にお父さんに連れてってもらったんだ。今度はボクがソラを連れて
行ってあげるよ。」
「え〜、すごいです! いきます、いきます!」
「決まりだね。じゃあすぐ出発だよ、そうしないと世界中回りきれないからね。」
「うん!」
ソラと二人きりで世界旅行か…。どこに行こうか考えただけで楽しくなるよね。
お父さんやお母さんが小さい頃に過ごしたサンタローズやアルカパを訪ねてみようかな。
久しぶりにダンカンお祖父さんに会いに行くのもいいかもしれない。
今のうちに、ボクがボクでいられる間にソラとの楽しい思い出をたくさん作っておきたいから…。
「おにいたんどこにいくの?」
「そうだな…、歩きながら考えようか?」
第十一話終了です。それではDQ[をプレイに行ってきます。
>>392 続き乙
端からみたらむちゃくちゃ仲のよさそうな兄妹なんだろうな( ´∀`)
コリンズは・・・イ`
[は明日買えるかな・・・
394 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/11/27 14:39:10 ID:TVFvZBG8
保守浮上
またてんあいさんの挿絵期待。
予想以上にお気に入りスレが落ちてる…よって保守
都合によりドラクエ8は出来ないし、保守のつもりで投稿するよ。
冒険のはじまり
僕とソラの間を重苦しい空気が支配していた。
「どうしても行かなきゃ駄目なの?」
長い沈黙をソラが破った。今にも消えてしまいそうなか細い声で。
「仕方ないよ。」
僕の声にも力が入らない。正直僕だって行きたくない。
そして、再び、長い沈黙。
「お二人とも準備は整いましたか。」
次に沈黙を破ったのは召使のサンチョだった。
ソラにはその言葉が死刑宣告に聞こえたことだろう。
僕とソラは小さくうなずくとサンチョのあとについていく。
うつむいて歩くソラの姿はまるで断頭台へ向かう死刑囚のように見えた。
これから僕たちは行かなければならない。あのコリンズ君のいるラインハットに。
それにしても、ソラがここまでコリンズ君を嫌っているとは思わなかったなぁ。
僕の名前はテン。グランバニアの王子をやっている。
妹の名前はソラ。僕たちは双子の兄妹なんだ。
今日はラインハットでコリンズ君の誕生パーティーが開かれる。
コリンズ君はラインハット王の弟であるヘンリーさんの子供だ。
僕たちはグランバニアの王族の人間だから来賓として招かれたんだ。
398 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/11/28 17:50:42 ID:Sw1VrmSB
僕たちは馬車に荷物を詰め込んだ。ソラはまだ沈んだままだ。何か声をかけなきゃ。
「あまり好き嫌いをするのはいけないよ。お父さんやお母さんが見たら悲しむと思うよ。」
自分でも何を言っているのか良く分からない。もっといいセリフは言えなかったものか。
「うん……。」
ソラは小さな声で返事をする。
元気を出してくれソラ。ソラが辛いと僕も辛い。
「あら、どうしたんだい。浮かない顔して。」
ドリスお姉ちゃんが話しかけてきた。ドリスお姉ちゃんはお父さんのイトコにあたる人だ。
行方不明中のお父さんとお母さんに代わって、僕たちの面倒を見てくれている。
「今日はおめでたい席なんだから笑顔で行かなきゃね。
ソラは堅苦しい席が苦手なのかい? それで元気がないのかな。」
ドリスお姉ちゃんがソラに語りかける。
「そういうわけじゃないの……」
「あたしは苦手なんだ。お作法とかマナーとかさ。しょっちゅう間違えてるよ。
それでパパに『恥をかかせないでくれ。穴があったら入りたいぞ。』なんて言われるんだ。
でも、そんなところで穴に入ったらそっちの方がマナー違反だよね。
……あはっ。やっと笑ったね。ソラは笑顔が一番似合うよ。
その笑顔はきっと一番のプレゼントになるはずさ。」
ドリスお姉ちゃんのおかげで少しソラが元気を取り戻した。僕と違って頼りになるね。
ラインハットへキメラの翼で行く。市販品とは違い行き先が指定できるものだ。
行くのは僕とソラとドリスお姉ちゃんとサンチョ、それに護衛の兵士が何人か。
これだけの人数でも馬車に入ればキメラの翼で全員運んでいける。
本当はサンチョはラインハットには行きたくないらしい。理由はわからないけど。
それでも僕らだけで行かせるのがもっと不安なのか、こうしてついてくるのだ。
準備はすべて整った。サンチョはキメラの翼を天高く放り投げた。
コリンズ君の誕生日を祝う式典は滞りなく進んでいった。
グランバニアからのプレゼントも無事に渡されたようだ。
僕は、『プレゼントは毒消し草でいい』と言ったけど却下された。
結局プレゼントが何になったのか知らないけど、きっとモンスターチェスだろう。
確かグランバニアの職人に何か作らせるって話だったから。
ここまでは僕とソラは直接コリンズ君と話す機会がないので気が楽だ。
問題はこのあとのパーティーなんだよね。
パーティーではコリンズ君は来賓一人一人に挨拶している。今日の主役だからね。
僕たちも挨拶しに行かねばならない。今日は何を言われるのだろう。
「おめでとうコリンズ君。」
「おめでとうなの。」
僕とソラが祝辞を述べる。しかもソラは笑顔でだ。兄は少し感動したぞ。
「おう。お前たちか、よく来たな。今日は親分の誕生日だ。大いに祝ってくれたまえ。」
「それじゃ僕たちはこれで……」
「なんだ。まだいいじゃないか。ちょっとこれを見ろ。父上からのプレゼントだ。」
そう言うとコリンズ君は変わった帽子を取り出した。
「風の帽子って言うんだ。魔法の力が宿ったチョー珍しい一品だぞ。お前も欲しいか?」
「別に……」
「はーん? よく聞こえないなあ……。」
明らかに聞こえているのにそんなことを言うコリンズ君は、堅気の人には見えません。
「……すごく欲しいです。」
「わははははっ。だれがお前みたいなヤツにやるか!」
……言うと思った。
「ソラはずいぶんお洒落してきたな。まあ、親分の誕生日だから当然だな。
なかなか可愛いぞ。『馬子にも衣装』とはよく言ったもんだ。」
それは誉め言葉ではないね。こう言われてもソラは笑顔を忘れないから立派なものだ。
「ホントに可愛いな。こんなに可愛い衣装は見たことがないぞ。ホントに可愛い衣装だ。」
可愛いのは衣装の方かよ。きっとコイツは単にソラのことを馬鹿にしたいだけなんだ。
……お父さん、お母さん、ごめんなさい。僕はこいつが嫌いです。
コリンズ君はすでに別の来賓に挨拶をしている。
「まあ、ずいぶん腕白な子だね。ソラが元気のなかった理由が分かったよ。」
と、ドリスお姉ちゃん。
「コリンズ君は私たちが嫌いなの。私たちはお友達になりたいって思っているのに。」
僕は違うけど。それにしても、ソラはなんて健気な奴なんだ。
「それは彼もそう思ってるんじゃないかな。でも、どうしていいか分からないんだね。」
「僕にはそうは思えないよ。ソラのことをからかって喜んでるんだ!」
「あれは、ソラのことを可愛いって言いたいのに恥ずかしくて素直に言えないだけさ。
もう少し親分子分ごっこを続けてあげなよ。きっとあの子のいいところも見えてくる。」
本当にそんな日が来るのだろうか。僕にはコリンズ君が悪意の塊にしか見えなかった。
「あの子とは長い付き合いになるよ。
テンとソラのお父さんとあの子のお父さんは大親友なんだから。
それにさ……」
こう言ってドリスお姉ちゃんはクスクス笑い出してしまった。
「それに、なんなの?」
「ん、いやね。それに将来コリンズ君はソラの旦那さんになるかもしれないからね。」
「ええええ!」
「ドリスお姉ちゃん、それは酷いの!」
いくらなんでもあいつと結婚するなんてソラが不憫すぎる。
「だって、二人はグランバニアの王女とラインハットの王位継承者だ。
取り合わせとしては申し分ないよ。」
「次期国王のテンとしても、二国間の友好関係が保てるんだから悪い話じゃないだろ。」
「そんなことないよ!」
僕が国のためにソラを差し出すって? 冗談じゃない。
「あんまりなの……」
ソラは今にも泣き出しそうだ。そんなことになったら僕だって泣きたい。
「あ、ごめんごめん。もちろんテンや二人のお父さんが、
コリンズ君とソラちゃんを無理やり結婚させることなんてないから安心しなよ。
でも、政治はいつだって男のものだからね……。」
何ですか最後の意味深なセリフは。
パーティーは夜遅くまで続いた。
僕たちはしばらくの間ラインハットに滞在する事になっている。
明日もコリンズの相手をしなければならないと思うとすごく気が重かった。
そして、夜が明けた。
――続く。
ごめんなさい。398で名前とメル欄入れ忘れた。
GH!
だ、だめだこんな外道な奴のところに嫁にいったら((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
話の続き期待
>>403はGJの間違い。
話に引きずり込まれているので激しく続き期待中です。
で、気になった点1つだけ。気に障ったら申し訳ないです。
ドリスはソラのこと呼び捨てにしてるけど、後の無理矢理結婚〜の部分はちゃん付け。
>>381からの続きです
小人からの情報を頼りにして、
エビルマウンテンの南にある毒の沼地帯の前まで来た二人。
しかし、いざ目前まで来てみると初めからその存在を疑っていた王女はもとより
王子でさえとまどいを隠せなかった。
なにしろ二人の目の前一面に広がるのは草木一本ない毒の沼地。
過酷な環境の魔界の中でも、もっとも過酷な場所。
こんな不毛の大地にきらびやかなすごろく場があるとは、にわかには信じられない話である。
しかし王子は信じていた、この中にすごろく場があることを。
掌の中でくしゃくしゃになったすごろく券の「すごろく場 〜エビルマウンテン〜」の
文字を再確認し、券を握り締め沼地に一歩踏み出します。
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん…!本当に行く気?絶対あんな話ウソだと思うの!」
王子の無謀な前進を止めようと、王女は王子のマントを引っ張ります。
だけど前進は止まらない。
むしろ王女の方がズルズルと引っ張られる形になってしまいました。
それでも必死に王子を制止する王女でしたが
そうこうしてる間に王女の身体も
毒の沼地の中にゆっくりと侵食していきます。
「ええ!? はわわ〜おお兄ちゃん本当に止まってぇ〜〜〜!!ストップーーぎぶあっぷーーー!!!」
愛妹の叫びが聞こえているのかいないのか。構わず王子は黙々と前進を続けている。
毒の沼から吹き上がるガスに神経をやられてるせいもあり、
王子は周りの事など気にせず、ただただ前にのめり込んで行った。
ずぼっ!
王女は驚いた。
突然、自分の視界から王子が消えた!
…かと思うと同時に自分の体も急に軽くなった気がしたのだ。
どたっ!…っとお尻に激痛が走って初めてわかった。自分は沼の落とし穴にはまったのだと…。
「タバサ大丈夫かい?」
「うん、なんとか…それにしても…ここどこなの?」
王女は辺りを見渡し、そう述べた。
たしかに其処は一般的な沼の底とは違っていた。
暗くて全ては見渡せないが、かなりの大洞窟なのは間違いない。
「…! もしかして…!!」
王子は勢いよく立ち上がり、そのまま洞窟の奥の闇へ走り去って行く。
「あ、ちょっと待ってよ〜」
それを追いかけるように王女も洞窟の奥へ奥へ進む。
ほどなく闇を照らす明かりが見えてきた。
それは壁に備え付けてある明らかな人工物だった。
( こんな明かりがあるなんて…ここはただの自然の洞窟じゃないのね )
明かりの存在にホッとすると同時に、なにかとても不吉な予感を王女は感じた。
この洞窟は誰かしらの手が加わっている場所…。
しかしここは魔界。それは人ではなく魔物の所業…。
いかに魔王が倒れてから人に害を成すような魔物はいなくなったとはいえ
まだまだ未知の世界が広がる魔界では安心することはできない。
この洞窟がかつての魔王の居城すぐ傍にある事実も不安に拍車をかける。
「タバサーーー!!!きてくれーーー!!!」
先に行っていた王子の呼び声が洞窟内にこだまする。
その大声に不安になった王女は急いで声のする方へ走った。
石階段を二段、三段と落ちるように駆け下りる!
下りきった先に飛び込んできたのは王子と……巨大な扉であった。
「見てよタバサ!こんな大きな扉があるんだ、さっそく開けて中へ入ってみよう!」
興奮を抑えきれない王子は扉の取っ手金具に手をかける。
「ちょっと待って!やっぱり変!ぜったい変だよ!」
強い拒絶、この扉を見てから王女の感じていた言い知れぬ不安は確信に変わった。
この扉を開けてはいけない、扉の向こうには邪悪が満ちている、と。
「なにも変じゃないさ、ここがさっき聞いたすごろく場なんだって♪」
( すごろく場……?違う!この感じはとてもそんな楽しげなモノじゃない! )
そんな王女の不安と焦燥感は王子には伝わることはなく、
王子はそのまま力いっぱい扉を押す…。
扉はギシギシと悲鳴をあげ開いていく…
そして二人の目に飛び込んできたものは…
『ウェールカムーー!!!ようこそ!すごろくエビルマウンテン支店へ!!!』
「キャーキャーかわいいお客さーーん♪♪♪」
「魔界一、いえ世界一の豪華すごろくパークへようこそ、ボーイアンドゥガール!!」
……飛び込んできたのは黒ずくめの陽気なピエロ達と
ボン・キュ・ボン!のこれまた陽気なバニーガールたち。
そして彼らの後ろに広がるきらびやかなマス目状のコース。
サイコロを持ったマッチョ像がにこやかに微笑んでいるそこはまぎれもないすごろく場だった。
「ね!すごろく場だっただろう?」
得意げに胸を張る王子。
「う、うそ……」
あまりに予想していたものと違う光景に意気消沈し、
へなへなと地面に座り込む王女。
「いやー、よく来てくれたね。ようこそボクのすごろく場へ」
陽気な人だかりの後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
現れたのはバニーガールに抱えられた先ほどの小人だった。
「あ、君はさっきの」
「ええ!?」
二人は驚いた。なにしろ場所を教えてくれたその本人がここに現れたのだから。
「ふふふ、驚かせてしまったね。申し遅れたがボクはこのすごろく場のオーナー、
名前をピロロという。以後お見知りおきを」
あっけにとられていた二人だが、王女は立ち上がりキッとした眼で小人・ピロロを睨む。
わざわざ自分達にこの場所を教えたのも気になるし、
先ほど去り際に「勇者」と発したのも引っかかる。
「なんで私たちにここの事を……
それにさっきお兄ちゃんのこと勇者って言いませんでした?」
心の中の疑いをそのまま声にする。
横にいる王子も、言われてみれば…と不審な顔をピロロに向けた。
「君は天空の勇者と双子のグランバニア国王女だったね」
( わたしのことも…!! )
「そんなに不審がることも無いじゃないか。あの魔王ミルドラースを倒し
世界を救った勇者たちと言えば、ここ魔界で知らぬ人なんていないほど有名さ」
さっきの男とは違い、ちゃんと自分のことを知っていたことに嬉しくなる王子。
そんなでれでれ顔の王子とは違い、まだ疑い晴れずという様子の王女。
「実はさ、ここにすごろく場を造ったのはいいけど
毒の沼の中なんていう辺鄙な所だから全然お客さんが来なくてね。
だから君たちを誘ったのさ、勇者様なら毒の沼なんてものともしないだろうし
勇者様が遊んでくれたと噂が広がれば大きな宣伝になるからね」
たしかに彼の言うことは筋が通ってる、だがまだ王女は納得がいかなかった。
扉が開いてからますます強くなる阿寒。
これはもう頭で怪しいとか思ってるからのレベルではなく
自分の精神・肉体の内から出でる拒否本能。
それは陽気なバニーガールたちを見ても、すごろく場そのものを見ても
納得のいく説明をされたっておさまるものではなかった。
「タバサどうしたのさ?もうわかったじゃない、
ここはちゃんとした立派なすごろく場だって。
もうお城を出てだいぶ時間も経っちゃったし早く遊ぼうよ」
王女の思いとは裏腹にすっかり信用しきった王子はさっそく遊ぼうとしている。
それを止めようとしたが…やめた。
普通に考えたらこんなに疑っている自分の方がおかしいのだと思ったからだ。
「う、うん…」
弱々しい口でそう答える。
それを聞いたピロロはにこ〜っと微笑み
「やったー、遊んでくれるんだね。どうぞどうぞ今は誰も待ってないから
今から遊べるよ。ちなみにここはサイコロを99回振れるから」
「99回!!? すごいや、きいたかいタバサ?」
「う、うん…」
「あとね、ここのすごろくは一度に参加する人数は一人じゃなくてもいいんだ
パーティまるごと参加OK、だから君たちも二人一緒に参加できるよ」
「へえ〜そうなんだ!やったねタバサ、一緒にすごろく遊べるよ」
「ええ…」
それを聞いて王女も少しホッとした。
たとえ自分の予感どおり危険な事態になったとしても
彼、最も信頼できる双子の兄・勇者レックスが傍にいれば安心だと…。
「それでは勇者様一行二名様ご案内〜」
バニーガールたちが二人を取り囲みスタート地点まで案内しようとする。
「勇者さまってこんなに可愛かったのね〜がんばってね勇者さまぁ〜ん♪」
周りの美女たちにちやほやされ王子はでれでれ顔でご満悦。
「もぉ〜…お・に・い・ちゃ・ん?」
「あいたたたた!!
ぎゅぅぅぅ、とそのにやけた顔をつねる王女。
( 考えていても仕方ないよね。とにかく今は楽しもう、
せっかく久しぶりにお兄ちゃんと城の外で遊べるんだから… )
そう自分に言い聞かせ王女もスタート地点に向かう。
「そう、楽しめばいいのさ。辛いこと、嫌なことなんかみんな忘れてね。
誰だって永遠に子供のまま遊んでいたいんだから…
そうだろう? 勇者くん」
人気のなくなった扉の前に声だけが響く……。
続きます
おつかれさまです。私も続きいきまーす。(ぬくもり)
>>360がこの間の最後
コリンズと呼ばれた少年の背後から一際背の高い男性が現れた。
彼は少年と同じ緑色の髪をしているし、見れば見るほどその目はコリンズのそれとよく似ていた。
彼はコリンズの父親なのだろう、とタバサは思った。
彼は二人に向き直って言った。
「いや、私の子が失礼をして申し訳なかった。
私は国王の兄でヘンリーと言う者。それで、今日はこのラインハットに・・・・・・
・・・・・・もしかして?」
キョトンとしている二人を尻目にヘンリーは続ける。
「もしかして、キミたちはレックスとタバサかな?」
「そ、そうですが・・・ なぜ、私たちの名前を知っているんですか?」
タバサが聞き返す。
「おー、やっぱりそうか! 大きくなったなぁ!
二人が覚えてないのも当然だけど、小さい頃に一回だけ会ったことがあるんだよ。
まだ1歳にもなってなかったのかな。」
嬉しそうにヘンリーは話す。
コリンズは依然ヘンリーの後ろに隠れたままだ。
「ところで、今日は二人だけじゃないよな? 父さんはどうしたんだ?」
「・・・・・・・実は――」
二人はゆっくりと、六年前に起きた出来事のこと、そして今なぜここにいるのかを話しだした。
「そうだったのか・・・行方不明・・・・あいつが・・・・・・」
ヘンリーはうつむいて何かを考えているようだ。
「レヌール城は、このラインハット城とはちょうど正反対の位置にあるんだ。
ここからだと結構遠いなぁ。」
「大丈夫です!僕たちどんなに遠くても頑張れます!」
レックスが語気を強めて言う。
ヘンリーは軽くうなずいて話を続ける。
「まず、ここからラインハットの関所を通り、サンタローズ・アルカパを経て北上するんだ。
この辺りはちょっと強い魔物が出るんだ。二人じゃ危険だろうな・・・。
んー、 よし!コリンズをそこまでお供につけよう! いいな、コリンズ?」
ヘンリーが後ろを振り返る。
「え、お、おれ? 父上、なんでおれがっ!」
ポカッ! ヘンリーの拳がまたしてもコリンズの頭に直撃した。
「い、いてっ!」
「さっきの失礼の罰だよ、いってこい!」
「・・・・ちぇっ。 わかったよ、父上。 お前ら、いくぞ!」
コリンズは二人を置いてどんどん城門のほうへ向かっていく。
レックスとタバサはコリンズの態度に戸惑いながらも焦って追いかけていった。
遠くから聞こえるヘンリーの応援の声を背中に受け、三人はまずはラインハットの関所を目指した。
「わぁ、こんな広い草原がどこまでも続いてるなんて!」
「うわぁ、グランバニアは森ばっかりなんだよ。 すごいやっ!」
二人は初めての(正確には二度目であるが)「森」以外の景色に思わず見とれてしまう。
「ふん、世間知らずな奴だな。俺様がついてこなかったらどうなってたんだ?」
コリンズくん、言うなぁ・・・。
ってタ、タバサ?その左手にある小さな氷の刃は何さ!
(し、しまって!コリンズくんを怪我させたらヘンリーさんが心配するよ!)
―そ、そうよね・・・。
タバサは左手のそれを地面にたたきつけた。 ヒャドをたたきつけられた場所が微かに凍る。
三人はさらに進む。
「そこの三人、お待ちなさい!」
レックスの頭の上のほうから甲高い声が聞こえてきた。
声のするほうを見やると、緑色のスライムと思しき物体が目の前に落ちてきた。
続きはまた今度でお願いします。
8発売後だけど豊作で皆さん乙っす!
捕手
>>417 ヘンリー閣下コネ━━━━━━(;゚Д゚)━━━━━━!!!!!
スライムナイトは敵か味方か・・・・
>>402からの続き。
「コリンズ様! 服にネズミを入れるのはやめてください!」
目が覚めるとお城の中は大騒ぎ。朝からコリンズ君は元気です。
コリンズ君が変なことを言い出さないうちに今日やることを僕が決めよう。先手必勝だ。
せっかくプレゼントしたチェスがあるのだからそれをやるのがいいだろう。
「ねえ、コリンズ君。昨日のプレゼントだけどさ。勝負しない?」
「何だと?」
何だととは何だ。
「せっかくだから勝負しようよ。」
こう言うとコリンズ君は混乱でもしたような顔で考え込んだ。
そして、何かをひらめいたようにこう言った。
「そうか。あれが勝負下着と言うものか。」
これを聞いて今度は僕が混乱した。何ですか、勝負下着って?
頭をフル回転させて僕は理解した。プレゼントはモンスターチェスじゃなかったのだ。
そういえば、グランバニアには有名な下着職人もいるんだっけ。
なにかすごい下着が国宝になっているなんてふざけた噂まであるくらいだ。
……しかし、プレゼントに下着とは誰のセンスだ。中身くらい確かめておけばよかったな。
でも、コリンズ君は勝手に納得してくれているようだし、まあいいか。
「ところで、下着での勝負ってどんなルールなんだ?」
「お前たち、今日はオレ様を隊長にコリンズ探偵団を結成するぞ。」
結局下着で勝負することはできず、コリンズ君は別のことを思いついたようだ。
どうでもいいけど、探偵団なら隊長じゃなくて団長だよ。
「最近父上の様子がおかしいのだ。一人で城から抜け出してどこかへ行っているのだ。
今日は尾行して何をしているのか真相を突き止めるぞ。」
はあ、そうですか。まあ、ヘンリー大親分に限って変なことはしていないと思うけどね。
「では出発だー!」
「さて、諸君。コリンズ探偵団は現在結成以来最大の危機に直面している。」
いきなりかよ。僕たちはヘンリーさんを見失ってしまっていた。
「だが、安心したまえ。こんなこともあろうかと、次の策の用意がある。」
それはそれは準備のよろしいことで。
「オラクルベリーの町に有名な占い師がいる。父上の場所を探してもらうぞ。」
それが策ですか。僕とソラは相変わらず声も出さずについていく。
「ズバリ言うわよ。あなた、『エテポンゲ』に改名しなさい。しないと地獄に落とすわよ。」
占い師は大盛況だ。先に占ってもらっている人がとんでもないアドバイスを受けている。
……大丈夫か、この占い師。
「あなた男前だから無料で占ってあげるわ。」
僕たちの番が来た。良かったねコリンズ君。ストライクゾーンの広い人で。
「父上のいる所を教えてくれ。」
「あなたのお父さん? ……見えたわよ。この町から南にある修道院に行ったみたいね。」
おお、あっさり分かった。ホントかどうか知らないけど。
「ほかに何かないかい?」
「せっかくだから、お前たちの父上と母上のことも占ってもらえよ。」
行方不明のお父さんとお母さん。二人の居場所を知る手掛かりはまったくない。
僕とソラはコリンズ君の言葉に従って、二人の居場所を占ってもらった。
「あなたたちのお父さんとお母さんね。……ん〜。これは……」
占い師はそこまで言って考え込んでしまった。
「ごめんなさいね。私の力では分からないわ。魔法か呪いの力が働いているみたいね。
でも、あきらめちゃ駄目よ。あなたたちが自分たちで探すの。
あなたたちがご両親を探すのよ。あきらめなければきっと見つかるわ。
これからあなたたちはいろんな人たちに出会う。その人たちの力になってあげなさい。
いいことをすれば、それがめぐりめぐって自分のところに帰ってくるものよ。
一見遠回りのようだけど、それがご両親に会える近道だわよ。」
子供だと思ってそれっぽいことを言ってごまかされた気がしないでもない。
でも、僕にはお父さんとお母さんに会える希望が見えた気がした。
僕たちは占い師にお礼を言って修道院に向かうことにした。
「あなた『ポカパマズ』に改名しなさい。」
占い師は次の客を占っている。……やっぱりちょっと不安だ。
修道院のシスターの話では、確かにヘンリーさんはここに来ていたらしい。
「ここには男手がないものですから、時々いらして手助けしてくれています。」
昔ここで、ヘンリーさんとコリンズ君のお母さんのマリアさんがお世話になったらしい。
だからヘンリーさんが御礼に来ることはごく自然なことだろう。
僕のお父さんもいっしょにお世話になったそうだ。僕もなにか御礼をした方がいいのかな。
この修道院に来る前お父さんたちは光の教団というところに捕まっていたらしい。
そこからはマリアさんのお兄さんの助けがあって逃げて来ることができたそうだ。
マリアさんのお兄さんのヨシュアさんは妹をお父さんたちに託した。
同じようなことになったとき、僕は誰かにソラを託すことができるだろうか。
僕にはソラと離れ離れになることですら想像できなかった。
「お兄ちゃん、ここでは花嫁修業もしてくれるんだって。」
唐突にソラが話しかけてきた。
「ふーん。シスターっていいよね。清楚で温かくて、きっといい奥さんになるだろうね。」
そういえば、ソラがお嫁に行くときには、ソラを結婚相手に託すってことになるのか。
「じゃあ、私もここで花嫁修業しようかな。」
「だ、駄目だよ絶対!」
「えー、どうして?」
「だって、ほら、ソラはお転婆なところがあるから。向いていないんじゃないかな。」
僕の言葉でソラの機嫌が悪くなってしまった。……そんなにお嫁に行きたいのかな。
僕はコリンズ君の顔を見た。まさかコイツにソラを託すことにはならないだろうな。
ソラを託すことができる人なんているかな。う〜ん。たとえば伝説の勇者様とか。
でも、勇者様がとてつもなく変な奴だったらどうしよう。僕はしばし悩んでいた。
「父上の行き先が分かったぞ。」
ヘンリーさんはアルカパという町に行くと言っていたそうだ。
僕らはその町に向かうことにした。
僕たちはアルカパでヘンリーさんを見つけた。
ヘンリーさんは町の人にしきりに何かを聞いて回っていた。
僕らはヘンリーさんに話しかけられた人を捕まえて、何を聞かれたのか尋ねた。
ヘンリーさんは光の教団について調べているらしいことが分かった。
「それから、行方不明の夫婦の事を聞かれたよ。」
「きっと、お父さんとお母さんのことなの。」
絶対そうだ。ヘンリーさんもお父さんのことを心配してくれているんだ。
「父上は、ラインハット復興のためにお前たちとの父上との旅を断念したそうだ。」
コリンズ君が語りだした。
「旅を続けたかったのかもしれないけど、国の復興は父上にしかできないことだからな。
本当は、今も父上は世界中を周ってお前たちの父上を探したいのだろう。
だけど、国を離れるわけにはいかないから、こうして自分にできることをしているんだ。」
「ヘンリーさん……」
僕は胸が熱くなった。
「お前たちは、国で自分のできることがしたいか。それとも、旅をして父上を探したいか。」
コリンズ君からの唐突な質問。
確かに二人を探すのに自分の国でできることもたくさんあるだろう。でも……
「僕は、自分の力でお父さんとお母さんを探したい。」
「私もです……」
「そうか……」
何故かコリンズ君は『良く分かったよ』とでも言いたげな顔をしている。
「なんだか毒のないコリンズ君はコリンズ君らしくないね。」
「あのなぁ、オレに言わせれば、お前のほうが毒あるぞ。」
――続く。
>>404さん
ありがとうございます。
>>405さん
ドリスのセリフは私のミスです。でも、もっと大きなミスが。
テンが、ヘンリーをラインハット王の『弟』と言ってしまっています。
何度も見直したのに、なかなか気づかないものです。
(こんなんだからGHがGo to Hellの略かと思った。)
>> ◆sUGODsLilsさん
キルバーンはでますか?
>>ぬくもりの方
若干設定がかぶってしまいました。すみません。
勇者に託すって勇者はあん(ry
事実を知ったときどんな反応するか楽しみだ
たしかに王子は普通そうに見えて一番毒吐きタイプ
ぬくもり書いてる人ですが、全然きにしないでください、
あやまんないでくださいっ・・・
甘辛物語、私も楽しみにしてます♪
ちょっとマジメ?なコリンズくん発見!
私の書くコリンズくんはきっとダメダメっぽいです・・・
保管庫の人のSS更新キタ━━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━!!!
>>426からの続き。
僕たちはラインハットに帰ってきた。
ヘンリーさんの怪しい行動の正体が分かったので、コリンズ探偵団は解散だ。
部屋まで来ると、『ちょっと待ってろ』と言ってコリンズ君はどこかへ行ってしまった。
「お兄ちゃん。はやくお父さんとお母さんを探しに行きたいね。」
「そうだね。世界中を旅して僕たちが見つけだそう。」
でも、今の僕たちは世界中を旅するどころかお城から出してもらえることもほとんどない。
それに、手がかりもないからどこをどうやって探していいのかさっぱり分からない。
「お前たちにこれをやる。受け取れ。」
部屋に戻ってきたコリンズ君は僕たちに何かの紙を差し出した。
「ビスタ港から出る船の乗船券だ。それ一枚で馬車一台乗れる。使え。」
コリンズ君の言葉に僕とソラはきょとんとした。
「お前たちは自分たちで父上と母上を探すんだろう。船に乗れば西の大陸にいける。
向こうのルラフェンという町には魔法に詳しいベネットって爺さんがいるそうだ。
占い師がお前たちの父上と母上には魔法の力がかかっているって言っていたろう。
その爺さんのところに行ったら何か分かるかもしれないぞ。」
ものすごくびっくりした。コリンズ君が僕たちのためにこんなことをしてくれるなんて。
「ありがとうなの、コリンズ君。」
ソラがそう言うとコリンズ君の顔は真っ赤になってしまった。
「本当はオレ様もついていきたいところだが、それは無理だからな。
オレは船に乗せてもらえないだろうから。この国の王子だって流石にばれるだろう。」
「コリンズ君は来ないのか。それじゃ、僕とソラの二人で行くことになるね。」
僕がこう言うとソラはこの国に来てから一番の笑顔になった。
ソラはまだコリンズ君のことが嫌いなのかい?
「それから、これも持っていけ。」
そう言うとコリンズ君は白い箱をくれた。
僕たちはコリンズ君のもう一度お礼を言うと馬車へと向かった。
これでお父さんとお母さんを探す旅ができる!
でも、僕にはちょっと腑に落ちないことがあったのだった。
「ここにいれば来ると思っていたわ。」
馬車にはニコニコしながらドリスお姉ちゃんが待っていた。
「ドリスお姉ちゃん、どうして私たちがここに来ることが分かったの?」
ソラがお姉ちゃんに聞く。でも、僕にはその理由に見当がついていた。
「この乗船券をコリンズ君に渡したの、ドリスお姉ちゃんでしょう。」
絶対そうだ。だって、コリンズ君が船のチケットを手に入れる手回しが良すぎたもの。
それがどうにも腑に落ちなかったんだ。
「バレちゃったか。実はコリンズ君に相談されたんだ。
プレゼントのお返しがしたいから、二人が欲しがっているものを知りたいってね。
私は、二人は両親を探したがっているから手伝ってあげなさいってアドバイスしたの。
コリンズ君は、二人が本当に旅に出たいと思っているなら協力したいって言ったわ。
それでコリンズ君が二人の意思を確かめている間に私が券を用意しておいたのよ。」
そういえばコリンズ君はヘンリーさんのやっていることを知っていたような口ぶりだった。
僕たちの気持ちが知りたくて、ワザワザあんな真似をして僕たちを連れまわしたんだ。
まさかコリンズ君がそこまで僕たちのことを考えてくれていたとは。
「コリンズ君はそんなにプレゼントがうれしかったのかな……」
だって、下着だよ。下着で喜ぶなんて、ちょっとアレだよ。
「プレゼントそのものよりも、二人にもらった事がうれしかったんでしょうね。」
「そんなものかな。」
「私にはちょっぴり分かるの。私、ホントはコリンズ君の帽子がうらやましかったの。
だって私たち、お父さんからプレゼントなんてもらったことないから……」
ソラはそんな風に見ていたのか。
よし、いつかお父さんが見つかったら何かプレゼントをおねだりしてみよう。
僕にプレゼントをくれるなら、ソラにも絶対くれるはずだからね。
それにしても僕たちのプレゼントをそんなにコリンズ君が喜んでくれていたのか。
僕は中身が何かすら知らなかったのに。コリンズ君にすごく悪いことをした気がする。
僕はちょっぴり反省した。来年のプレゼントは真剣に考えよう。
「さて、じゃあコリンズ君の好意を受け止めて早速ビスタ港に行きましょう。」
「ドリスお姉ちゃんもついて来るの?」
「当然。こんな面白そうなこと……じゃなかった。
危険な旅に可愛い子供二人だけで行かせるわけにはいかないでしょう。」
「もしかしてお姉ちゃん、自分が旅に行きたいからコリンズ君に協力したんじゃ……」
「さあ、どうかしら。でも、そうだとしても何も悪いことはしてないでしょう。
二人とコリンズ君は仲良くなれるし、これは二国間にとってもいいことよ。
ソラとコリンズ君が結婚してくれれば、それはもっといいことだと思うけどね。」
またその話を持ち出すの?
何だかドリスお姉ちゃんがお見合いさせて男女をくっつける親戚のおばさんに見えるよ。
本人には『おばさん』なんて口が裂けても言えないけど。
「あ、それから、どっちみち子供だけじゃ船に乗せてもらえないから、そのつもりでね。」
どうやらドリスお姉ちゃんを連れて行くしかないようだ。ここまで計算していたのか。
政治は男のものだなんて言ったけど、ドリスお姉ちゃんは政治家に向いている気がする。
「あら、確かにお金と政治を動かすのは男よ。でも、女は男を動かすの。
ソラもよーく覚えておいてね。」
僕の意見にドリスお姉ちゃんはこう答えた。頼むからソラに変なことを吹き込まないで。
……もう、いっそのことドリスお姉ちゃんがコリンズ君と結婚すればいいじゃないか。
ドリスお姉ちゃんならきっとコリンズ君を操って、ラインハットの影の支配者になれるよ。
「あら、この箱は何?」
ドリスお姉ちゃんはコリンズ君からもらった箱を指差した。
「コリンズ君がくれたの。」
これはドリスお姉ちゃんの仕込んだものではないのか。
「開けてみましょう。」
ドリスお姉ちゃんがそう言うとソラは箱を開けた。そして、直後に悲鳴を上げた。
箱の中にはネズミが入っていた。……やられた。コリンズ君のイタズラだ。
よし、お返しに来年のプレゼントは人喰い箱に決定だ。
それは冗談だけど、これでプレゼントを知らなかったことは帳消しだからね。
とにもかくにも僕らはビスタ港へと向かった。
これから僕たちの、お父さんとお母さんを探す旅が始まるのだ。
――冒険のはじまり 完
連投で失礼します。
冒険始めるだけでずいぶん大変だった。今後父親を見つけるまでちゃんと続くんだろうか。
サービスのつもりでいろいろ書きすぎたかな。まあ、最初だからいいか。
>>ぬくもりの作者様
ありがとうございます。感謝の気持ちを込めて福引券を差し上げますじゃ。
('A`)つ[福引券]
うちのコリンズはいい奴になってしまいました。
少なくとも今後しばらくは出る予定はないので最後の見せ場かもしれません。
>>保管庫の方
保管お疲れ様です。避難所のアレは一緒に保管して下さると幸いです。
感謝の気持ちを込めて双六券をさしあげますじゃ。
('A`)つ[双六券]
GJ!
仲間になったのはコリンズじゃなくドリスか
甘辛のコリンズくんイイ・・・(・∀・)!! GJ!
この世界のコリンズくんならソラxコリンズでも・・・おっと なんでもありません。
福引券をもらったのでさっそくPS2DQ5で引かせていただいたところ、
なんとファイトいっぱつがあたりました。
・・・SS書きをがんばれってことでしょうか。
439 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/05 10:48:56 ID:jqGS0xHt
コリンズ株の変動が激しいな
保守
ぬくもり続き。
>>417が前回の終わりです。
「わ、わぁっ? 緑のスライムだ!」
「バブルスライムじゃないよね。 かわいい〜!」
・・・・・・タ、タバサ。
レックスとタバサが近づいていこうとするのをコリンズが止めた。
「バカ!お前ら こいつはスライムナイトっていう魔物だっ!
どこかに騎士の本体がいるはずだ!」
「なんだって!」
二人は驚いてその場から離れる。
「そうだ、よくわかったな!だが遅いっ!」
二人に気を取られていたコリンズは背後から思い切り剣を切りつけられた。
レックスは即座にコリンズにホイミを唱える。
「くっ!ふざけんなっ・・・イオ!」
コリンズの指先に現れた小さな光が玉となってスライムナイトに襲い掛かった!
だが、スライムナイトの体はびくともしなかった。
平然と、何事もなかったかのようにその場から微動だにしていない。
スライムナイトは静かに口を開いた。
「・・・おぬし、もっと勉学が必要と見える。我々にそのような呪文が通じるとでも?」
そういって、スライムナイトの剣が再びコリンズを捕らえにかかる。
「ええい、なら!メラ!」
今度は指先から火の玉がほとばしった!
だが、結果は変わらなかった。
「攻撃呪文は聞かないのね・・・あ、なら!」
ラリホー!
タバサが眠りの呪文を唱えた。この間覚えたばかりの呪文だ。
超音波がスライムナイトを襲った!
「無駄なこと!コリンズとやら、覚悟――!」
だがスライムナイトはそこから進むことはなかった。
・・・どうやら、下のスライムがラリホーの超音波にやられてしまったらしい。
「――こ、この愚図スライムがっ!1000Gもはらって雇ったのよ〜!?」
あのスライム、雇われてるんだ・・・。
レックスはそう思いながら、左隣にいるタバサをちらっと見る。
「スライムも大変なのね。」タバサが突っ込む。
結局、三人はこのスライムナイトが少し可哀想になったのか、
倒せない、とだけ言い残して去っていった。
取り残されたスライムナイトはまだスライムの頬をぺちぺちやっていた・・・
三人はとうとうラインハットの関所までやってきた。
日が暮れかかっていた。
夕陽に映える小川がきれいだ。
「結構長い道のりだったね・・・」
レックスはラインハット城があるはずの方向を見つめながらいった。
そんなのんきなレックスにコリンズとタバサがふうっとため息をついた。
「バカ、まだこの倍はあるんだぞ。 今日はこの辺りで休もうか。」
「そうよ、おにいちゃん。まだ気を抜いちゃダメなの!」
コリンズくんならともなく、タバサにまで言われちゃおしまいだ。
いけない、しっかりしなくちゃ。
レックスは頬をぴしゃりと叩いた。
「うん・・・そうだったね、ゴメン!」
今日はここまでですー。
スライムナイトは再登場しそうな予感
[のミーティア姫は王女の成長した姿っぽいな
ブラコンな点だとゼシカがそれっぽい
保守
保管庫更新おつかれさまですヽ(´∀`*)ノ
あげないでください!!
なんでagaってきてるの?これじゃあ作品うpできないですよ!!!!
>>449
あんたの仕業か
ぬくもりの続きです。いつも妄想爆発ですみません○| ̄|_
前回の最後は
>>444です。
トンネルの向こうにトムはいた。
「これはこれはコリンズ王子。ヘンリーさまより伝令が届いております。
しかし、今日はもう夜になります。レックスさま、タバサさまも
今日はお休みになられてはいかがでしょう?こちらにベッドもご用意してございます。」
「あぁ、ありがとうトム。俺たちもそのつもりだったんだ。」
そこまで言ってコリンズはベッドに向かいだした・・・と思ったらいきなり振り返った。
「だけど、トム。ベッド3つしかないぞ。俺たちに貸しちゃってトムはどうするんだ?」
トムは軽く微笑むと、
「はは、コリンズさま。私は鍛えられたラインハット兵ですよ? 床で寝るなんて朝飯前です。
ご遠慮なくお使いください。ささ、どうぞ!」
といって3人をベッドまで促した。
それをタバサが遮ってぴしゃり言い放った。
「ダメです! この辺り冷え込んでるから・・・風邪ひいてしまいます!
私たちは一つのベッドで十分ですから・・・だから、私たちで1つ、コリンズくんで1つ・・・
そして、トムさんで1つ。 ね、3つで足りますよ。」
それからタバサは得意げにトムに微笑んだ。
声をかけられたトムはそのタバサの優しい心遣いに目を濡らした。
「ありがとうございます、タバサさま・・・。」
そうして、一夜があけた。
二人はトムにお礼を言い、ラインハットの関所を後にした。
(・・・コリンズさま。必ずやアレを使ってくださいね。
あの二人にはサンタローズを見せたくありませんから・・・)
トムはキメラの翼をコリンズに託してから三人を見送った。
出発して少し行った先にある小高い丘の上でコリンズはレックスたちのほうを向いた。
「さて・・・ここからはレヌール城の領地だ。とはいっても滅びてからは
父上の話だとサンタローズはサンタローズ、アルカパはアルカパでやってるようなんだけどな。
で・・・だな、実はさっきトムからキメラの翼をもらったんだよ。
あいつ、ベッドを進めてくれた御礼だから受け取れって聞かないんだ。
詳しく聞くと、どうやらアルカパを記憶したものらしい。
ここはトムに感謝して、ショートカットさせてもらおうぜ!」
道具袋から、アルカパの街の印のついたキメラの翼が取り出される。
そのキメラの翼をみて二人は嬉しそうに飛び上がった。
「ほんと!?」
「ソラのおかげだね!後でトムさんにもお礼いわなくちゃ。
コリンズくん、さっそく使おうよ!」
レックスに促されて、コリンズはキメラの翼を空高く放り投げた。
三人がいっきに青白い光に包まれる。
体が軽くなったかとおもった瞬間、目の前には街の姿があった。 ―アルカパだ。
アルカパの街の門をくぐると、いきなり兵士がコリンズのもとにつかつかと歩み寄ってきた。
「あ、コリンズさま! おはようございます。それでですね、
お父上、ヘンリーさまより大至急、城に戻るようにとのことでございます!」
「ち、父上がぁっ? 何だろう・・・父上がついていけっていったのに。」
コリンズは必死で考えをめぐらしている。
「あっ、ひょっとして!レックス、タバサ、逃げるぞっ!」
あることを思い出したコリンズの顔がみるみる真っ青になる。
しかしその逃げ出そうと向きを変えるコリンズの襟元にすかさず兵士の手が襲った。
「コリンズさま!早くお戻りにならればヘンリーさまに大目玉をくらいますぞ!
――私めもまだ死にたくはありません・・・!」
そう言うと兵士はコリンズを抱き上げ、こちらに向かって一礼すると走り去っていった。
「い〜〜や〜〜〜だ〜〜〜!!」というコリンズの叫び声を残して。
レックスとタバサは二人のやり取りには苦笑しつつ二人が見えなくなるまで見送ってから、
アルカパの街を後にした。
レックスとタバサは二人のやり取りには苦笑しつつ二人が見えなくなるまで見送ってから、
アルカパの街を後にした。
「ここから北西にあるのか・・・」
「まってて、お父さん、お母さん・・・!!」
しばらく魔物に遭遇することもなく西へ西へと歩いた。
感覚に人一倍鋭いタバサは心なしか辺りがだんだんと暗くなっていくような気に襲われていた。
「・・・だんだんと辺りが暗くなってるみたい。お昼なのに・・・」
珍しくレックスも同じような雰囲気を感じ取ったのだろうか、うなづいて言った。
「レヌール城に良くないことが起こっているのか・・・?」
まさか、そんなはずはない―と思いつつも、レックスは考えをめぐらす。
――おやぶんゴーストがまた住み始めたのか?
――ゲマとかが実はいきていたり・・・?
「お兄ちゃん・・・どうしよう。 ちょっと怖い・・・」
はっと気づくと、タバサは僕のマントの端を握り締めていた。
おっと、いけない、こんなこと考えているよりも・・・。
「がんばれ。 お兄ちゃんが守ってやるからな。」
「お、お兄ちゃん・・・。」
あれ? 気のせいかな、ちょっとタバサの顔が赤いような・・・。
ここからは二人だから、もう一度よく作戦を練らなくちゃ。
さっきのコリンズくんとの雑談でこのあたりにはベビーパンサーやともしびこぞうがでるって聞いた。
「うん、やっぱりタバサはマヌーサをお願い。僕はこの剣とこのファイトいっぱつで相手をたたっきる!」
「うん、わかったわ!」
さぁ、行こう。
その途端、ガサガサッ。 草むらが揺れた。二人はすぐに身構えた。
IDがdq5って珍しいですね、本当にいい記念です。
続きはまた次回に。 揺れた草むらの先には何が?!
・・・・・・多分予想通りかと思います○| ̄|_
>>460 私は、こういう者だ。
始まりを否定せよ!始まりの在らざることを知れ!
終わりを見据えよ!終わりの在ることを知れ!
その意義。終わりから終わりへと。
それはまるで"彼"の見る夢のように。
そして願わくば、此の愛が此処に在らざる子供達へ届かん事を。
つまらないっすよ?
またあがるな
もうどこから続きなのか・・・
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん〜〜!!バカバカバカ!なんで来ちゃうのよ!!
アイツはわたしが復活させちゃったんだからわたし一人で倒すのに!!
もうバカバカバカバカ〜〜〜!!」
「ちょ・・・タバサ・・・痛い・・・痛いよ・・・!」
ドンドンとレックスの肩を叩くタバサ。
レックスは笑いながらタバサの愛情表現(?)を受け止める。
「あ・・・ごめん・・・。でも・・・うれしかった・・・。スゴク・・・スゴク・・・。
もしかしたら・・・二度と会えないと思ってたし・・・。」
ぎゅっとレックスの首に絡みつくタバサの両腕。次第に力もこもる。
「タ、タバサ・・・今度はく、苦しい・・・。」
バシバシとタバサの背中をタップするレックス。その様を見て慌てて手をほどく。
「ご、ごめん・・・。」
やっと自由になったレックスはゲホゲホと咳き込む。
息を整えたレックスは、タバサをゆっくりと地に立たせ、優しく抱きしめる。
「タバサ・・・無事でいてよかった・・・。ボクだって・・・もうタバサには会えないって思ったんだからね?」
「うん・・・ごめん・・・なさい・・・。」
レックスの胸の中、小さくうなづくタバサ。
顔をあげ、レックスは未だ土煙舞うセルの飛ばされた方をキッと見つめる。
「待っててくれなくてもよかったのに・・・。不意打ちは得意なんでしょ?」
タバサもレックスが声かける方を見つめ、ゴクっと息を飲む。
「ふん。わたしをそこらの下等モンスターと一緒にしないでもらえるかな?」
身体のホコリを払い、ゆっくりとレックス達に近づくセル。
タバサはサッとレックスの背中に隠れじっと見つめる。
「それよりどうかね?気に入っていただけたかな?邪魔だった瓦礫をどかしてふさわしい戦いの場を用意してみたんだが?」
肘から先がない右腕を少しも苦痛と感じることもなく両手を広げる。
辺りを見回すレックス。かつて建っていたエビルマウンテンはもはや微塵も残っていなかった。
「・・・悪くないセンスだね・・・。」
レックスが答えると、セルはクククと笑い、切り落とされた右腕を拾う。
「それ、早くお家に帰ってくっつけたほうがいいんじゃない?片腕だと不便でしょ?」
レックスの一言にも顔色ひとつ変えず、セルは自らの右腕を静々と眺める。
「残念だが、どうやら左腕一本でもわたしは負ける気がしないようだ・・・。」
「・・・お兄ちゃん・・・挑発にのっちゃだめ・・・二人して力を合わせて倒そう?ね?」
ボソボソとレックスに耳打ちをするも、レックスは片手でタバサを制止させ
「大丈夫、タバサは安全なところに行ってて。」
「でも・・・。」
「ボクが負けるわけないだろ?それに、こんなにワクワクするのは父さん達と冒険していた頃依頼なんだ!」
「う、うん。わかった・・・。」
タバサはレックスの言葉を信じ、後ろを向き小走りで距離をとる。
「・・・ワクワクだって・・・お兄ちゃん変わってないね・・・。うん、お兄ちゃんが負けるわけない!
負けるわけないんだけど・・・スゴク・・・嫌な予感がする・・・よ・・・。」
つづく といいな
>>467 \\\\ ///
ヾヽ\ヾ\ //// //
\丶\\ ////
|・\ _____ /・> ///
/ ̄ ̄ ̄ ̄\,, ミ\.\ヽ|||liiiii||/ /./彡 ////
|・\ /_____/・> /\.\|||iii||l//彡 ノ(
ミ \.\ヽ|||liiiii||/ /./ノ( / / (,-、 ,:‐、 ) \ ⌒ヽ
\.\|||iii||l// | ⌒ .|/ ─////─ ヽ |
|(,-、 ,:‐、 ) 6 l |. ////── | .| \\\
. ////Vヽ ,-′ ////'VVVヽ | l
////ェ∧/_ /ヽ . //// γ l / /
//// |/\/ l ^ //// i∧ェェェ∧/ / /
//// | |//// l━━(t)━━━━┥
>>467 乙!
少年漫画チックなレックスも熱くていい
オッス、オラレクウ
471 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/12 10:47:44 ID:r0sv5cfU
とうとうネタ切れでドラゴンボールのキャラがでてきましたか。
>>435からの続きになります。(このSSを単独で読んでも問題ありません)
失われたもの
僕と妹のソラ、そしてドリスお姉ちゃんは船に乗って西の大陸を目指していた。
目指すはルラフェンという町に住むベネットさんという人だ。
この人に会えばきっと行方不明のお父さんとお母さんの手がかりがつかめるはずだ。
そういえば、いきなり仲間が増えたのだ。コリンズ君のくれた箱に入っていたネズミだ。
こいつが大ねずみと言うモンスターで、倒したら仲間になりたそうな顔をしてきた。
どうやらソラにはお父さんの血を受け継いで、モンスター使いの才能があるらしい。
名前は『マウス』とつけてやった。大ねずみのマウス、なんというダイレクトな名前だ。
マウスはまだ普通のネズミの大きさだが、これからどんどん大きくなっていくのだろう。
船はポートセルミという町に着いた。僕とソラは初めての町に大はしゃぎだ。
ドリスお姉ちゃんが少し休みたいと言うので僕とソラは町を探索して情報収集を始めた。
なんと町の東の灯台に恐ろしい魔物が住んでいると言う話を聞いた。
冒険らしくなってきた。よし、早速退治しに行こう!
東の灯台にはおじさんと猫が一匹いただけだった。
猫を見てマウスだけは大騒ぎだが、これが恐ろしい魔物なんだろうか。
そういえば昔、猫に化けて人を襲う魔物が出てくる絵本を見たことがある。
「猫さん、マウスをいじめないで欲しいの。」
ソラがそう言うと猫はソラの側によって来て喉をゴロゴロさせて鳴いた。普通の猫だね。
灯台に魔物がいると言っていたおじさんにもう一度話を聞くと、冗談だったと白状した。
なんでそんな意味のない嘘を吐くのさ。人はこうして疑うことを覚えていくんだろうね。
「ルラフェンはこの町のずっと西にあるそうよ。」
ドリスお姉ちゃんが目的の町の情報を手に入れていた。
僕たちは町を出ると西を目指して歩き出した。魔物が出てきても僕がやっつけてやる。
途中モーザやメタルライダーといったモンスターが襲い掛かってきたけど難なく撃退した。
僕の剣よりもソラの魔法とドリスお姉ちゃんの回し蹴りが活躍したよ。ちょっと虚しい。
ルラフェンは町全体が複雑な迷路のようになっていた。
きっと無計画に家を建てまくった結果なんだろうね。
僕たちは町の中を歩き回って何とかベネットさんの家を見つけた。
ずいぶん煙が出ているけど大丈夫かな。
ベネットさんの家には大きな釜があって何かがぐつぐつ煮立っていた。
これって飲むものなのかな。死なないまでも確実に体に悪そうだよ。
「なんじゃお前さんたちは? お前さんたちも煙たいとか文句をいいに来たのか?」
ベネットさんは不機嫌そう。ここはドリスお姉ちゃんに任せた方がいいだろうね。
「ベネットさん、私たちはあなたを頼ってここまで来たのよ。
あなた魔法に詳しいのでしょう? 私たちに力を貸してください。」
「ふむ、魔法の話か。詳しく話してみなさい。」
どうやらベネットさんに話を聞いてもらえそうだ。
僕たちは占い師に言われた言葉をベネットさんに話した。
行方不明のお父さんとお母さんに魔法か呪いの力がかかっているらしいと。
「スマンがそれだけではどんな魔法の力が働いているのか分からんの。
せめてもう少し詳しいことが分かれば協力のしようもあるのじゃが。」
ベネットさんはこう言い放った。そんな、ここまで来たのに何も分からないなんて。
「二人とも気を落としちゃ駄目よ。何の進展もなかったわけじゃないわ。
ベネットさんも魔法の種類が分かれば協力してくれるって言ってくれているじゃない。
冒険はまだ始まったばかりよ。これから世界中を回って情報を集めるのよ。」
ドリスお姉ちゃんが僕とソラを励ましてくれる。そうだ、落ち込んでいる暇はないんだ。
「お前さんたち、世界を冒険しなさるのか。だったら、いい呪文を教えてやるぞ。」
『ルーラ』と言う呪文じゃ。一度行ったことのある場所に一瞬で移動できる魔法じゃぞ。
ただし、魔法をやるのはわしの研究に協力してくれればの話じゃがな。」
そんな魔法が使えたら冒険がずっと楽になるね。でもタダでくれないのか。……ケチ。
「わしが今復活させようとしている魔法なんじゃがひとつ材料が足りなくての。
今研究しているのは『パルプンテ』と言って普通の魔法と違い効果が一定でないのじゃ。
使い方次第では術者本人にも害を及ぼすかもしれん恐ろしい呪文じゃよ。」
なにそれ。そんな魔法復活させて大丈夫? 協力したら共犯にならない?
「魔法とは本来多かれ少なかれ使用者にも何らかの形で影響するものじゃ。
魔法は体力がなくても使えるが、使うにはそれなりのリスクがあるということじゃな。
そっちのお嬢ちゃんは魔法の才能があると見た。よく心得ておくのじゃな。」
ソラには魔物使いだけじゃなく魔法使いの才能もあるのか。いいなソラばっかり。
「魔法使いって体力が少ないの。もしかして冒険に向いていないのかな?」
「確かに魔法使いには体力がない。で、あるから前線で戦うには向いていないのじゃ。
じゃが、必ずしも冒険に向いていないわけではないのじゃ。
魔法使いは冒険や戦闘のサポートにこそ真価を発揮するのじゃよ。
状況に応じて魔法を使い分けることが出来れば冒険に欠かせない存在になれるぞ。」
「魔法と言うものは気持ちを込めるほど強くなるものなのじゃ。
誰かの力になりたいという思いがあれば、きっと強力な魔法が使えるようになるぞ。
これはワシが長いこと魔法の研究をしていて思ったことなんじゃがな。」
ふーん。僕も魔法を使うときには何かを強く思うことにしよう。
「私たくさん魔法覚えます。それでお兄ちゃんのことを思って魔法を使います。」
ソラ、君はいい子だ。お兄ちゃんはとてもうれしいよ。
待てよ。ソラって攻撃魔法が得意なんだよね。僕のことを思ってって、もしや……
僕たちはベネットさんに協力して魔法の材料をとりに行くことにした。
それは『ハテナ花』といって、ポートセルミから南にあるカボチ村で採れるという。
思ったより近くで助かったよ。でも、これが手に入らないなんてほかの材料って何だろ。
身の回りのものかな。もしかしたら魔法って結構簡単に復活できるのかもしれない。
僕たちはルラフェンを出てポートセルミまで戻り、そこから南に向かった。
途中で襲ってきたモンスターもドリスお姉ちゃんとソラが蹴散らしたさ。
ソラ、僕の力になると言っていたけど、僕の方が力になりたいです。
僕たちは道中なにか冒険に役立つ魔法を覚えることにした。
ソラは洞窟や塔から一瞬で脱出できるリレミト。僕は弱い魔物を寄せ付けないトヘロスだ。
ソラは魔物と戦うことが嫌いだから僕がトヘロスを使ったらきっと喜ぶよね。
でも、僕たちはなかなか魔法を習得できなかった。
そうこうしているうちにカボチ村の近くまでやってきたよ。
「ああ、そうだ。村の中には二人で行って来てね。」
ドリスお姉ちゃんは馬車に残るそうだ。まさか、もう冒険に飽きたの?
「あんまり歩くと足が太くなっちゃうからさ。」
だったら回し蹴りやめたら? でも、ドリスお姉ちゃんの足は太くないと思うよ。
まあ、いいや。僕とソラは二人で村の中に入った。ついでにマウスも一緒だけど。
マウスはソラにべったりだ。ソラはもともと動物に好かれるけどモンスターもそうなんだ。
ソラも始めてマウスを見たときは悲鳴を上げたくせに、いまじゃ可愛いなんて言っている。
「なんだべお前たちは? よそ者がこの村になんの用だ?」
「僕たち、『ハテナ花』を探しに来ました。」
「はん! よそ者に分けてやる花はないべ。とっとと帰るだ!」
な、なにこの人。ムチャクチャ感じ悪い……。もういいや、早く違う人に聞こう。
しかし、驚いたことに村人みんながこれと同じような反応だったのだ。
「おにいちゃん。私たち何か悪いことしたのかな……」
ソラが今にも泣き出しそうな声で言った。僕たちが何をしたというんだ。
「おめぇたち、外から来たんだな。ちょっとこっちに来るだ。」
僕たちが途方にくれていたとき、突然おばさんから声をかけられた。
いままでの人とは違い、優しそうな人だったので僕たちはおばさんについていった。
僕たちは剣や魔法が使えるからいいけど、良い子は知らない人について行っちゃ駄目だよ。
「おめぇたち、これを探してるんだろ。これがハテナ花だ。遠慮することねぇ、持ってけ。」
「えっ、いいんですか? ありがとうございます!」
僕たちは思いがけず目的の物を手に入れることができた。
「この村のこと悪く思わないでね。この村のもんは皆よそもんが嫌いなんだ。
昔、ちょっとした事があってね。よそから来た旅人に村全体が騙されたと思ってるんだ。」
酷いことをする人がいるもんだ。おかげで僕たちまで散々な目に遭ったよ。
「あの、思ってるってことは本当は違うの?」
ソラが聞いた。なかなか鋭い突込みだ。お兄ちゃんは気づかなかったぞ。
僕たちはおばさんから事情を聞いた。昔この村が化け物に荒らされたこと。
その化け物を退治した旅人のこと。その旅人が、化け物と一緒にいたことを。
「みんなその旅人が化け物を使って村を襲ったと思ってる。だけんど、オラは違うだ。
あの人は化け物を改心させることができたんだ。それで一緒にいたんだべ。
皆はモンスター使いなんて物語の中だけの存在だと思ってる。でも、実際にいたんだ。」
モンスター使い。それって、もしかして、やっぱりお父さんのことなのかな。
そうだとしたら、お父さんはこの村でさぞかし辛い目に遭ったんだろうな。
お父さんの冒険は楽しいことばかりじゃなかったんだね。
僕たちはなんとなくすっきりしない気持ちのまま村を出ようとした。
そのとき、どこからか大きな声が聞こえてきた。
「モンスターだ! モンスターが襲ってきたぞー!」
今日はここまでです。
なかなか時間が作れません。DQ8ができるのはすっかりネタバレされたあとでしょう。
>>ぬくもりの作者さん
双子だけの冒険になりましたか。コリンズには合掌。
>>DQ外伝@ペコさん
セル戦と言えば最後に悟空から御飯への世代交代がありましたね。
……まさかレクッスパパが……
478 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/12 13:50:56 ID:r0sv5cfU
つーかさ、いま8で盛り上がってるのにここみてる人っていないんじゃないのプゲラッ
モンスターきたー!(・∀・)
480 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/12 19:15:45 ID:kHgx5KiV
>>476 \\\\ ///
ヾヽ\ヾ\ //// //
\丶\\ ////
|・\ _____ /・> ///
/ ̄ ̄ ̄ ̄\,, ミ\.\ヽ|||liiiii||/ /./彡 ////
|・\ /_____/・> /\.\|||iii||l//彡 ノ(
ミ \.\ヽ|||liiiii||/ /./ノ( / / (,-、 ,:‐、 ) \ ⌒ヽ
\.\|||iii||l// | ⌒ .|/ ─////─ ヽ |
|(,-、 ,:‐、 ) 6 l |. ////── | .| \\\
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////ェ∧/_ /ヽ . //// γ l / /
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//// | |//// l━━(t)━━━━┥
>>461 トム気が利く奴だ
流石にサンタローズはまだ知らないほうがいいね
おやぶんゴーストやゲマのことをなんで知ってるのかがちょっと引っかかった
>>467 やはりこんな奴はもっと痛めつけてやらなきゃ・・・とか言い出して失敗するのかな
>>477 テンにはもうちょい頑張って欲しいな
勇者・魔法使い・武道家のパーティは理想的だけどまだ勇者覚醒前か
スレ違いかもしれないのですが他にDQ5のスレが見当たらないのでお聞きします
どこかのスレで種を使うとレベルアップ時のステータスが変更?されるって書いてあったのですが
種をレベル低い時に使うと結果的に損してしまうのでしょうか?
ちゃんと検索したのか小一時間(ry
タネをつかうと該当するステータスが+1〜+3(ランダム)されます。
PS2リメイク版ではレベルアップ時のステータス上昇値はランダムに
設定されているので損をすることはないと思いますよ。
レベルを満足いくまで上げたあと、足りないと思うステータスを
タネで+するなり低いうちからガンガンつかって強くするなり
そのあたりは貴方の判断だと思います。
種は全て王子に使い込むのが王道
485 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/13 14:06:27 ID:CJh45rmq
勇者の能力がバランスよすぎ。
ところで、8のクオリティで5を作ってほしかったという意見が多数あるが、皆さんは
どうか。しょせん鳥山明のデザインなので、孫御飯そのまんまの王子タンには
萌えられないので、おれは反対だが
8風の5か、ぜひ見てみたいな。
8の子供キャラをみる限りでは問題なく萌えられそう。
馬姫様が主人公をお兄様と呼んだ…( ´∀`)
>>457 レックスタン妹の名前間違えてますからー! 残念!! 馬姫と種馬王子斬り
レックスとタバサ
テンとソラ
だよな?
王女が馬か犬の姿に呪われてしまう話をキボンしてみる
490 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/14 17:00:07 ID:+WQOmOjW
ネタバレするな
「最後の別れは済んだのかね?」
「・・・。」
セルの問いには答えず、レックスは天空のつるぎを背中の鞘から抜く。
途端に、剣先の形状に変わる。
「それが天空のつるぎか・・・美しい・・・。さあ、その切れ味をわたしに見せておくれ・・・!」
セルは猛スピードでレックスとの間合いを詰め、左腕を大きく振りかぶる。
───ドゴンッ!!
セルの拳は激しい音と共に大地を砕く。
しかし、レックスはジャンプ一番その攻撃をかわし、セルの身体めがけて一直線に剣を振り下ろす。
───ガシッ!!
「な!?」
レックスは驚き声をもらす。まさか片手で止められるとは・・・。
すぐに戦闘態勢に戻し、セルから離れる。
「どうした?そんなものか?」
天空のつるぎを握りなおし、刃先に力を込める。今度は止められないようにと。
「まだまだぁ!」
真っ向からセルに向かい、真横に一閃。
セルはブリッジの体勢でそれを交わし、続けざまに出したレックスの足払いをバク転で軽やかにそれを避ける。
494 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/14 23:43:57 ID:+WQOmOjW
たのむからセルとかそういうDBのキャラ出さないでくれ。マジで萎える
「ハァッ!」
着地してすぐに蹴りを繰り出すセル。
しかし、レックスは天空のつるぎでそれをしっかりと受け止める。
そのまま連続して蹴りを放つセル。
「ワ、ワ、ワ、ワッ!」
防戦一方のレックス。何発にも及ぶ蹴りを防いだことで右手の感覚がなくなっていくのを感じる。
───ギィンッ!
ついにレックスの手から剣が離れた。
「し、しまった!」
慌ててセルの蹴りを後方にジャンプしながら大地に突き刺さった剣を取りにいく。
「遅いっ!」
いつのまにか平行してレックスと並ぶセル。ゆっくりと左手を振り上げ、身体めがけて振り下ろす。
「・・・ベギラマッ!」
紙一重で放った閃光の炎はセルの身体をつつみ、動きをほんの一瞬鈍らせる。
───ドガッ!
「ナニッ?」
振り下ろした場所に手ごたえはなく、セルが前を向くとそこには剣を構えるレックスの姿。
496 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/14 23:52:19 ID:+WQOmOjW
おい、やめろ
つーかセルネタとリンクなんていう池沼が問題なんだろうが。
ま、新たな敵さん考えるの大変だけどな。
鏡の中の群像っての大きくDQの世界と逸脱するところがなかったので
おもしろかったよ:。
499 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/15 15:28:38 ID:dnQzusIE
なんだ、貼り付けの途中で逃げやがったのか?
鏡の中の群像は面白かったな。同意。
つーかsageてないと荒らしだと思われるぞ。
>>495 続き期待、自分はこういうネタ好きだけどダメな人多いのか…
>>498 群像は設定の使い方とかが巧かった
502 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/15 17:31:47 ID:dnQzusIE
ただでさえトリヤマ絵でDBを連想してしまい、苗そうになるのを必死でシゴいて立たせてる所に
もろDBのキャラがでりゃ、もう即インポですよ。
ぶっちゃけレックスとタバサ(テンとソラ)が出てればなんでもいい
>>476からの続き
モンスターが村を襲撃しに来たのか! 僕とソラは声のした方に走っていった。
はっきり言ってこの村は好きじゃないけど、僕たちが村を守るんだ!
村の広場では笑い草とガップリンが村人を襲っていた。
「行くぞ、ソラ!」
ソラに声をかけて僕は笑い草に切りかかった。ソラは魔法でガップリンを凍らせる。
僕たちだって強くなったんだ。これくらいの魔物に遅れをとるものか。
しかし、この思い上がりがいけなかった。
魔物を倒して得意になっていた僕は、周りの異変に気がつかなかったのだ。
「お兄ちゃん、なにか甘い匂いが、す…る……の……」
ソラの声で僕ははじめて異臭に気づいた。同時に僕の意識が遠くなっていくことにも。
僕が薄れ行く意識の中で最後に見たものは、甘い息を吐くお化けきのこの姿だった。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」
ソラの声が聞こえてくる気がする。ああ、もう朝なのかな。
「ふあぁ。お早うソラ。」
僕は能天気な挨拶をする。……あれ、まだ夜じゃないの。周りはずいぶんと暗いよ。
「よかった、お兄ちゃん。目が覚めたの。」
ソラの声はずいぶん心配そうだ。
そうだ。確か僕はカボチ村を襲ってきたモンスターに眠らされたんだっけ。
「ここはどこ? 村の人は? モンスターはどうなった?」
僕は矢継ぎ早に質問をする。
「あのね。あのあと私たちはモンスターにつかまって洞窟に連れてこられたみたいなの。
ほかの村の人たちも一緒よ。モンスターは村をまるごと奪うつもりみたいなの。」
うーん、なんて奴らだ。早く村に行って奪い返さなきゃ。
でも簡単にはいかないようだ。洞窟は牢獄に改造されていて僕たちは閉じ込められていた。
「村の人はみんな無事なのかい?」
「うん。村の人は全員連れてこられたみたい。でもね、マウスがいないの。」
マウス。あのネズミモンスターか。まさか僕たちを見捨てて逃げたんじゃあるまいな。
「とにかくここから出る方法を考えよう。」
僕たちは武器を奪われていた。牢屋の鍵も簡単に開きそうにはない。
これは何かできる状況ではないようだ。
「へっへっへっ。気分はどうかな。」
それからしばらくたったあと、牢屋の外から誰かが声をかけてきた。
それは人間ではなかった。山賊ウルフというモンスターだ。2匹いる。
「カボチ村は俺たちモンスターのものになった。お前たちは俺たちの食料だ。」
「そんなのイヤなのー!」
ソラが叫ぶ。村人もざわざわと騒いでいる。僕もモンスターの餌になるなんてごめんだ。
「さっそく頂くとしよう。誰か1人連れて行くぞ。」
これは外に出るチャンスかもしれない。
「僕が行くよ。」
「お前は駄目だ。お前は結構強いからな。さっき戦っていたところを見たぞ。」
くそ。そう簡単にはいかないか。
「オラがいくだ。」
そう言ったのは僕たちにハテナ花をくれたおばさんだった。
「いい心がけだな。よし、お前を連れて行くことにしよう。」
「駄目なの!」
「これはオラたちの村の問題だ。よそ者のあんたたちに迷惑はかけられねえだ。」
おばさんはそう言うと僕たちににっこり微笑んだ。
「よし、お前はこっちに来い。ほかの奴らは離れていろ。」
これでは隙を突いて突破することも出来そうもない。
おばさんが一匹の山賊ウルフに連れて行かれる。僕たちは何もできない。
「こいつらのせいだ! よそ者が来るたび村が酷い目に遭うだ!」
突然村人の一人が僕たちを指差し叫んだ。何言ってるの? このひと。
しかし、ほかの村人たちも口々にそうだそうだと言い出した。何て奴らだ。
「はーっはっはっは。お前らも災難だな。
こんな村に来たおかげで俺たちの餌になれるばかりか村人にも大歓迎されてな。」
残った山賊ウルフが笑いながらそう言った。嫌な奴だ。
「この村は昔から目をつけていたのだ。俺たちは前にも一度この村を襲おうとした。
だが、そのときは失敗に終わった。この洞窟に住んでいた魔物に邪魔されてな。
その魔物がいなくなったおかげで俺たちは体勢を立て直し襲撃を実行できたのだ。」
山賊ウルフは一人でしゃべり続ける。
「この村にはいろいろ笑わせてもらえるぜ。こいつらはその魔物退治を旅人に依頼した。
だが、その旅人は魔物を倒したら村人から悪者に仕立て上げられたそうだ。」
「何言っているだ! あいつは化け物とグルだったんだ!
あの男は化け物退治の報酬をオラたちから騙し取ったんだべ!」
さっきの村人がそう叫ぶ。名前がないのもなんなので、村人Aと呼ぶことにする。
「はっ。それだけ強力な魔物と組んでいたらそんな回りくどいことはしないさ。
そのモンスターと一緒に直接村を襲って金品を強奪すればいいんだからな。」
村人Aは絶句した。ほかの村人もなんだか落ち着かない様子だ。
山賊ウルフの言ったことがまだ信じられないのだろう。
村人たちは放心状態だ。そんなことよりもここから出る方法を考えなくてはならない。
誰かに助けを求めるか。でも、声を出して叫んでも外までは聞こえないだろうな。
それに、たまたま助けてくれそうな人が聞いてくれるとは限らない。
第一モンスターの出る洞窟をここまで来られる人なんて……1人いた。ドリスお姉ちゃんだ。
そういえばドリスお姉ちゃんはどうしたんだろう。確か村の外にいたはずだけど。
正義の味方よろしく助けに来てくれないかな。そんな都合のいいことないだろうけど。
そのとき山賊ウルフの後ろに人影が見えた。
「ドリスお姉ちゃん!」
僕が叫ぶと同時に山賊ウルフが地面に転がった。
お姉ちゃんの蹴りが一瞬できまったのだ。
いやー、世の中都合のいいことって起こるもんだね。
ドリスお姉ちゃんは牢屋の鍵のありかを探しだし扉を開ける。
「そうだドリスお姉ちゃん! おばさんが連れて行かれなかった?」
僕はさっきの出来事を手短に話した。
「残念だけど見ていないわ。早く追いかけた方がいいわね。」
「今から追って間に合うかな……」
僕は牢屋の外にあった武器をとり、装備を整えながらそう言った。
「間に合わせるしかないわね。」
「侵入者がいたぞ!」
奥の方から声が聞こえてくる。ほかにも見張りのモンスターがいたのか。
「ここは私に任せて二人で先に行きなさい。」
ドリスお姉ちゃんが僕とソラに向かって言った。
「でも、どうやって外に出るの?」
「ソラのリレミトを使うのよ。」
確かにリレミトなら一瞬で洞窟から出られる。でもソラはまだその魔法を使いこなせない。
「ベネットさんが言っていたでしょう、魔法は誰かのために使った方が強くなるって。
ソラがそのおばさんを助けたいって気持ちを込めれば、きっとうまくいくわ。」
「私、やります。おばさんには親切にしてもらったの。絶対に助けたいです。」
ドリスお姉ちゃんの言葉にソラは力強く答えた。
「リレミトで村人全員は移動できないわ。あなたたち二人で行くのよ。
村は洞窟から東よ。村に向かうまではテンのトヘロスが役に立つわ。」
ドリスお姉ちゃんの言葉に僕たちは頷いた。そして、ソラはリレミトを唱えた。
気がつくと僕たちは洞窟の外にいた。もしかしてこれで牢屋からも出られたんじゃ……
とにかくカボチ村へ急ごう。僕はトヘロスを唱えた。
……成功した。僕もおばさんを死なせたくはなかった。思いが通じたんだ。
僕たちは急いでカボチ村へと走った。
途中におばさんと山賊ウルフの姿は見えなかった。おばさん無事でいてよ。
村が見えてきた。このまま全力疾走で村の中へ突入だ。
そして村の広場まで来た僕たちは、そこで思いがけない光景を目にしたのだった。
――続く
今回の話はなんとなく結末が読めると思いますが、多分そのとおりの展開になります。
前回は眠らされるところで区切ればよかった。今回の引きは狙い過ぎかも知れないけど。
それにしてもテンの切れが悪いなぁ。突っ込みのテンに対してボケ役がいないからかな。
ソラをボケ役にしてもテンは毒のある突込みはしなさそうだし、ピピンあたりにでも……
>>481さん
テンの活躍する機会はあんまりないかもしれませぬ。
>>491 誰にでも間違いはあるわけで……この言葉を送っておきます。
('A`)つ「気にすんな」
>>ペコさん
私も続き楽しみにしています。
ところで『ふたご座流星群』というのが来ていたらしいですね。
村人の誤解を解くきっかけを作った山賊ウルフに乾杯。
予想以上にスリルある話になって面白い
ドリスが村にこなかったのも伏線だったのか。
513 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/16 21:56:29 ID:28NNgIIP
山賊ウルフGJ!
>>509からの続き
「ええい! なぜ邪魔をする。そこをどけ!」
「ダメ。タベル、ダメダヨ。」
一匹のガップリンがおばさんの前に立ちはだかり、ほかのモンスターと闘っていた。
「あの子、私が倒したモンスターなの。」
そうだ。確かこの村でソラはガップリンを倒していた。そのとき邪悪な心が抜けたのか。
「あいつのおかげで間に合ったね。ソラにモンスター使いの才能があってよかった。」
僕たちはモンスターたちの前に立ちはだかった。
「む! 貴様らどうやってあの牢屋から抜け出した?」
そう叫んだのは魔物使いと呼ばれるモンスターだ。こいつが魔物たちを扇動していたのか。
お父さんやソラのようにいいモンスター使いもいれば、こいつみたいのもいるんだな。
「そこまでだ! これ以上お前たちの自由にはさせないぞ!」
魔物使い率いるモンスターの大群との戦いは熾烈を極めた。
とにかく敵の数が多い。倒しても倒してもきりがない。
なんとかボスである魔物使いをやっつけなければならない。
しかし、魔物使いはほかのモンスターを盾がわりにしていて攻撃ができない。
このままでは埒が明かない。僕は魔物たちの間を掻い潜り魔物使いに近づいた。
「やあっ!」
掛け声とともに切りかかる。
しかし、僕の攻撃はかわされ、逆に魔物使いの振る鞭の一撃を食らった。
「ぐっ!」
敵の攻撃に僕はうめき声を上げた。
「お兄ちゃん!」
心配したソラが僕に駆け寄ってくる。
「駄目だ! 後ろに敵が!」
僕に気をとられて隙のできたソラの背中を山賊ウルフの剣が狙っていた。
ザクッ!
山賊ウルフの剣が深々と突き刺さる。
「お兄ちゃん!」
僕はソラをかばって左肩に剣の一撃を受けてしまった。
かなりのダメージだ。今、狙われたらかなりまずい。
「よぉし、お前たち。まずはこっちのガキから始末しろ!」
僕の考えを読んだかのように魔物使いがほかのモンスターに号令をかける。
この状態でモンスターの総攻撃をかけられたらひとたまりもない。
「お兄ちゃんを苛めないで!」
ソラの声が聞こえた。そして、直後に大きな爆発音。
ソラの唱えた爆撃の魔法であるイオが炸裂した。
ほとんどのモンスターが遠くまで吹き飛ばされてしまった。
そして、一人残った魔物使いが呆然としていた。こいつも満身創痍だ。
どうやらまたソラに助けられたようだね。僕は剣を大きく振り上げた。
「おのれ……なぜこんなことに……あの魔法は通常よりずっと強かったぞ……」
ぼろぼろの魔物使いがつぶやく。
きっとソラは僕を助けようとして必死で魔法を放ったのだろう。
「これがきっと、強い気持ちを込めた魔法の力なんだ。」
「そんなもの……オレは認めんぞ……」
ほかの魔物を盾にするようなこいつには一生理解できないかもしれないな。
魔物使いがやられたことでほかのモンスターたちも蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
村にいた魔物は皆いなくなった。いや、一匹だけいた。ソラが改心させたガップリンだ。
「あなたがおばさんを守っていてくれたのね。ありがとう。」
「ガップル、ナカマ、シテ!」
「あなた、ガップルちゃんって言うのね。もちろんあなたは私たちの仲間よ。」
「ガプッル、ナカマ! ガプッル、ナカマ!」
ガップリンのガップルが仲間に加わった。これかも仲間はどんどん増えていくのかな。
「あんたたち、モンスター使いだったんだね。やっぱりモンスター使いはいたんだ!」
おばさんがニコニコしながらそう言った。あんたたちと言うかソラだけなんだけどね。
ソラばかり活躍している。僕も少しは何か兄としていいところを見せておきたいな。
「おーい。テーン、ソラー、無事だったー?」
ドリスお姉ちゃんの声が聞こえてきた。タイミングよすぎだよ。どこかで見てたの?
お姉ちゃんは洞窟から村の人たちをみんな連れて出してくることができたようだ。
「ひー! まだ化け物がいるでねーか!」
村人Aがガップルを見て叫ぶ。
「この子は化け物なんかじゃないだ。私を助けてくれたんだよ。」
おばさんが村人Aに向かって言う。
「そんなこと言って、よそ者に騙されてるんじゃねーだか?」
「アンタまだそんなこと言ってるのかい。この子達が私たちを騙して何の得があるのよ。
この子達はモンスター使いなのよ。村を救ってくれた英雄じゃないのさ。
昔村を救ってくれた旅の人もモンスター使いだったのよ。それをアンタは……」
おばさんがこういうと村人Aは黙ってしまった。洞窟で聞いたことを思い出したのだろう。
「オラたちは旅の人にひどいことをしただ。どうやってお詫びをすればいいんだべ。」
村人Aはすっかり落ち込んでしまった。なんだか小さくなったような気さえする。
「これからは旅の人たちを歓迎するようにしたらいいんじゃないかな。
いいことをすれば巡り巡って、いつかその人に届くかもしれないよ。」
僕は村人Aにこう言った。ソラがくすくす笑っている。まあ、占い師の受け売りだからね。
「そうだな。オラたちにできることといえば、それくらいしかないようだ。」
「でもさ、誤解をしていたことがわかってよかったよね。
その人のことをずっと誤解したままだったらそっちの方が悲しいもん。」
いいこと言うな僕って。これも本からの引用だけどソラは僕のことを見直したことだろう。
「そうね。誤解は解けたんだ。今日からこの村は生まれ変わるだよ。
さあ、せっかく旅の人がきているんだ。さっそくこの子たちを歓迎しましょう。
あんた村長なんだから、みんなの前で村が変わったことを宣言するだよ。」
おばさんがそう言った。なんと! 村人Aは村長だった!
こうして村を挙げてのお祝いの席が開かれた。
村の英雄と呼ばれて僕はちょっと照れ臭くなってしまった。
でも、この村のごちそうって野菜ばっかりなんだよね。ソラって嫌いな野菜が多いんだ。
だけど、村の人の善意だから食べないと悪いし。ソラは野菜を食べるいい訓練になるね。
村の人たちは僕たちを歓迎してくれている。これからこの村は生まれ変わるのだろう。
お父さん。お父さんがここでなくした物、僕たち見つけることができたみたいです。
ねえ、ソラ。いつかこの村にお父さんを連れてこよう。村の人たちの歓迎にきっと驚くよ。
でも、何があったのかは黙っていようね。二人だけの秘密だよ。
「私は無視なわけ?」
う……ドリスお姉ちゃん、聞いていたの。ここはなんとか話題を変えてごまかそう。
「ああ、お姉ちゃん。洞窟では助けてくれてありがとう。」
「それは私が悪いんだもの。まさか村がモンスターが襲ってくるとは思わなかった。
二人でお使いができると思って頼んだけれど、危険な目にあわせちゃったわね。
私の考えが甘かったわ。ごめんなさい。」
もしかしてお使いは僕たちを自立させようとしてのことだったのかな。
「でも逆にそれで助かったよね。みんな捕まっちゃっていたらもっと危なかったもん。
それにしても、よく僕たちが捕まっていた場所が分かったね。」
「それはこの子のおかげなのよ。」
ドリスお姉ちゃんはそう言って道具袋から何かを取りだした。……マウスだ。
「馬車にいた私のところにこの子がきて服を引っ張るのよ。
心配になって村を覗いてみたらモンスターに占領されているじゃないの。
そのあとこの子が洞窟まで走っていって、牢屋の近くまで案内してくれたのよ。
きっと二人の匂いを必死になって追っていったのね。
この洞窟にはこの子の苦手な猫のモンスターがいるのにね。」
マウス。すっかり忘れていた。あいつが陰でこんな活躍をしていたなんて。
「ゴメンよマウス。僕はてっきりお前が逃げたと思っていたよ。お前は勇気のある奴だね。」
僕は素直にマウスに謝った。
「でもさ。誤解が解けてよかったじゃない。
昔読んだ絵本にもあったわよ。ずっと誤解したままだったらその方が悲しいってさ。」
こうして僕たちはハテナ花を手に入れてベネットさんのもとに届けることができた。
パルプンテはこれで復活するだろう。僕たちは約束どおりルーラの魔法を教えてもらった。
この魔法はソラにしか使えなかったんだけどね。
でも、これで僕たちはいつでも冒険に出ることができるようになった。
そこで、僕たちはルーラを使って一度グランバニアに戻ることにした。
ううう。それにしても恥ずかしかった。自分の言ったことと同じことを指摘されるなんて。
そのうえドリスお姉ちゃん、引用元が絵本だってことまでばらすんだもん。
それを聞いたときさ、いくらなんでもソラ、笑いすぎだよ!
確かに失った古代の魔法とお父さんの信用は取り戻すことができたさ。
だけど、僕の失った兄の威厳はしばらく取り戻せそうにないよ……
――失われたもの 完
――――――――――――――――――――
一応フォローしておくけど、テンが思っているほどソラは酷い笑い方はしていないっす。
今回は「カボチ村変わりすぎじゃない?」とか「なんで娘がルーラ使えるんだよ!」とか、
そういった疑問を、主人公の石化時代の出来事として脳内補完した話でした。
もっと二人が村の誤解を解くと言う形にしたかった。これでは山賊ウルフの手柄だ。
主人公サイドのセリフにするとなると、なんか説教くさくなりそうだったのでやめた。
ところで小ネタのために二人の母親をフローラにしようと思うんだが、問題ないですよね。
本文内に二人の髪は金髪って明記してない限り問題無いと思うし
作者さんの思うように書いてもらいたいです
>>519 フローラ嫁派としてはぜひに
しかしどんどん魔法使い、魔物使いとしてレベルアップするソラと違って
テンは…
なんでルーラ使えるか、はたしかに疑問だったな
あれだけ主人公の時に苦労したものを初期で覚えているから
そういう所を補完してるのは面白いっす
一気に読めたし、面白かったです。
兄の威厳は取り戻せそうにないとかテンはいってるけど
私は別にそれはそれで構わなかったり・・・(;´∀`)ゞ
母親問題は頭の中で金髪双子に設定されてるので私も問題なし。
で、ぬくもりのその後のお話のあらすじだけ書いておきます。
本文を投稿しない理由は書いててとてもじゃないが読みたくなるものに仕上がらなかったので。
アルカパからレヌール城を目指して出発した二人。
草原を抜け、森の中に入っていく・・・・・・途中で二人は草をかき分ける音を聞く。
二人が瞬時に身構えたとたん、音のした方向からなんとベビーパンサーが!
ベビーパンサーの攻撃力は強く、今の二人にはやや荷が重いように思われた。
が、タバサの呪文マヌーサとレックスのファイトいっぱつによる強力な攻撃によって
なんとか勝利を手にすることができた。
二人は更に進んでいきついにはレヌール城へと到達したが、
雰囲気がなんだかおかしいということを感じ取っていた。
探索を続けるうちにだんだん日も落ちていき、辺りが薄暗くなる。
なんとか両親の手がかりをと探索を続けていた二人はふとしたことではぐれてしまう。
はぐれた先でレックスはレヌール王と、タバサはレヌール王妃に会う。
実は二人がなんだかおかしいと感じとっていたのはこのことだった。
二人はそれぞれを親と見間違えてしまい、落胆するが、
王と王妃は数年前にお化け退治をした男の子と女の子の話をする。
二人はその話に没頭した――そうして夜が明けた。
いつの間にか二人は眠っていたらしい。
朝日が差し込み、その光を受けてタバサがふと目を覚ました。
タバサがあたりを見回すとそこにはレックスが!
なんと、二人は城の外で一緒になって寝ていたようなのである。
タバサが驚いているとレックスも目を覚まし、同様に驚いた。
こうして不思議な体験をした二人はそれぞれお互いの出来事を話し合い、
その男の子と女の子が両親であると断定するに至る。
その後、1日中城探索を続けたが結局手がかりが出てくることはなかった。
日暮れ時、タバサがこの旅のことをサンチョ達に告げていないことに気づく。
慌てたタバサは瞬時にルーラの詠唱に入ったが、
レックスはそれを止めて母親の生地、アルカパ行きを希望する。
タバサも一瞬迷うが、すぐに決断し二人はアルカパへと飛んだ。
事を終えグランバニアに戻ってきた双子を待ち構えていたのは
サンチョの怒声とドリスのキック、そしてたくさんの「おかえりなさい」の言葉だった。
fin
>>522 >で、ぬくもりのその後のお話のあらすじだけ書いておきます。
>本文を投稿しない理由は書いててとてもじゃないが読みたくなるものに仕上がらなかったので。
あらすじをそのまま書くんじゃなくて嘘予告にしてみたらどうでしょう。
527 :
96:04/12/19 16:52:48 ID:1K3KbSYH
よし、やっと準備できた。
ごぶざたしてました。
>>95からの続きです。
敵より遙かに劣る腕力を、天空の剣から伝わる魔力と身体の旋回で補い、両手で剣を叩きこむ。
だが、それは敵の四爪、右腕一本のみに受け止められた。
剣と右爪が噛み合い、お互いを押し合いながら動きを止めて睨み合う。
「どうやら、ここらが限界のようだな?」
魔導師が口を開いた。
一撃の威力が、片腕で受けきられるほどに弱まっていた。
見れば少年の手は、膝は震えている。恐怖でもダメージでもなく、疲労によって。
紫に変色しかけている唇が、それを如実に表していた。
されど少年の、敵を見据える眼差しは変わらない。
それを見て、魔導師は罵る。
「よくよく粘った事は賞賛するが、そろそろ飽いた。いい加減不愉快だ。もう、終わりにしてやろう」
魔導師の右腕が振り抜かれ、テンの身体が後方へ押しやられる。
幾らか開いたその間合いから、魔導師の前蹴りが少年の腹部へと突き刺さり、テンの身体を弾き飛ばした。
「グ、ホ……ッ!!」
苦悶の声をあげ、背中から地面に落ちる。苦しみもがきながら、それでもすぐさま立ち上がろうとする。
もうほとんど狂気に近い意志で苦痛をねじ伏せる。
決してうつ伏せになってうずくまるようなことはしない。
敵から目を離さぬよう仰向けのまま地面に手をつき、上体を起こして尻餅をついた格好になったその時。
右掌をこちらへ向けている魔導師の姿が視界に入った。
「……っ!」
立ち上がろうとして、立ち上がれないことに戦慄した。
攻防の逆転をひと区切りに、心が身体の疲労を自覚してしまったのか。
身体が重い。膝がガクガクと震えて、動かすこともままならない。
そんなはずはない。戦わなければならない理由があるのに、立ち向かえないなんてことがあってはならない。
立たなかったら負ける。父なら立つ。
だから動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け――――
決して、諦めたわけではなかった。
決して、挫けたわけではなかった。
それでも。
立ち上がろうとする足は機能せず。
立ち向かおうとする心だけが暴走する――――
「え……!?」
「ム――!?」
瞬間、爆音が二人の耳朶を打った。
側で地面が穿たれ、黒煙が吹き上がる。その向こうから弾丸のように飛び出す影がひとつ。
闘いに水を差す不遜な者を制裁せんと、魔導師がその影に目を落としたその瞬間、その影はふたつに分裂した。
ひとつは真正面。魔導師の首筋めがけて前脚を振るうは肉食の魔獣、地獄の殺し屋キラーパンサー。獲物の肉を抉る凶爪が風を切り裂き疾る。
ひとつは上方。魔獣の背を踏み台に高々と舞い上がるは天の少年の半身にして空の少女。妖精の剣の切先を直下にした急降下攻撃。
上下からの同時攻撃。一瞬、魔導師は迷い。
――――そして、その一刹那が明暗を分けた。
肥大した魔導師の筋肉、それによって持たらされる膂力は肉食魔獣をも凌駕する。
「グ――――!?」
しかしそれも、キラーパンサーを魔獣たらしめている俊敏性、その助走から繰り出される不意打ちには及ばなかった。
受け止める事はできたが、ウェイト差もあいまって軽々と吹き飛ばされ、宙を舞う。
魔導師の胸の内に、ケダモノ如きに打たれたという屈辱の念が湧き、しかし所詮ケダモノはケダモノだという侮蔑もそこに湧いた。
そう、その場から魔導師を吹っ飛ばしてしまったのでは、ソラは妖精の剣を突き降ろす事ができないではないか。
魔導師は体術を駆使し、見事に着地。所詮、ケダモノとガキの考える事などこんなものだと表情に嘲笑を浮かべながら、前方を向いた瞬間。
煌めく剣の切先が、顔面を貫こうとしていた。
「――――ッ!?」
文字通り、度肝を抜かれた。
ソラの狙いは急降下による突き降ろしではなく、上空からの強化剣の投擲だった。
魔力の煌めきを尾のようになびかせたそれは、天空より飛来する一条の流星のよう。
「ガ――――ァッ!」
――――だが、その流星ですら敵を倒すには至らず、咄嗟に顔を捻った魔導師の右頬を抉りとるだけにとどまった。
敵は尚健在。
それは、つまり。
――――これで、打ち止め――――
しかし、これで終わりではなかった。
そう、魔導師の相手は魔獣と、少女と――――そして、もうひとり。
ごめんなさい。急な外出の用事ができました。
続きは数時間後。あるいは翌日の朝になりそうです。
半端で長さで本当にすいません。
>>524 あらすじだけなのはちょと残念
気が向いた時にでも完全版を書いて欲しいです
>>527 続きキタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!
王女&キラパンの見せ場がついに
動け動けのところでエヴァを思い出した無礼者は俺1人だけでいい
つい8で忙しくて間が開いてしまいましたが
>>413の続きです
〜〜 〜〜
「あぁ〜1か〜!」
「やった、刃のブーメランゲット!」
「うわっ!モンスター!!」
すごろく場に王子の叫び声がこだまする。
時折混じる笑い声から、その喜び具合がわかる。
そんな冒険以来久しぶりの開放感を満喫している王子とは対照的に
横で王女は暗い顔をしていた。
もっと楽しまなくちゃ…、と自分に言い聞かせてみてはいるものの
心は楽しむどころかどんどんと不快な気持ちが募るばかりである。
「タバサ、やっぱり楽しくない?すごろく」
王子も王女のうかない表情に気付いており、気をつかってはいるが
やはり「すごろくをやめる」という選択肢まではでてこない。
「ううん…ちょっと気分が悪いだけだから…」
「そ、そう…、それじゃ…」
その返事が強がりだと知りつつも、また王子はサイコロをふった。
出た目は6、喜びを抑えつつ王子は王女を連れてマス目を進んでいく。
たどり着いたマスは「サイコロの振れる回数が5増える」
これで現在の振れる回数は残り「89回」
( タバサの体調も悪いしさっさとゴールしたいな… )
ゴールする…王子の目的に変わりはない。
しかし振れるサイコロの数からも分かるようにクリアまでの道のりは遠い。
いっそ落とし穴にでも落ちればどんなに楽だろう、
そう思いながらも王子は黙々とサイコロを振り続ける。
王女はずっと考えていた。
心の奥底まで侵食する不快さと全身に広がる寒気と鳥肌。
すごろくが開始してから注意深くおかしなところが無いか探しているが
今のところ特に変わった様子は無い。
あえて他とは違うところを挙げるとすれば、とにかくもの凄く広いという点。
まるで終わりなんて無いかのように広がるマス目の道。
( もしかして私たちここから出られないんじゃ…… )
考えれば考えるほど不安は大きくなっていく。
横にいるそんな不安とは無縁そうな王子を見て羨ましくさえ思ってしまう。
( ふぅ…いいなぁお兄ちゃんは気楽で……きゃっ!? )
「ワーーーー!」
「キャーーー!」
本日二度目の落下。落とし穴にはまったようだ。
普段なら腹が立つことこの上なしであるこの罠だが落下する二人のほっとした表情からして
今回ばかりはありがたいものであるのかもしれない。
ゲームオーバーとはいえこのすごろくから開放されるのだから。
どすん!
………しかし落ちた場所は相変わらずのすごろくコース内であった。
「ゲームオーバーじゃなかったね…」
「うん…」
落とし穴に落ちれば絶対にゲームオーバーという訳では無い。
プレイヤー救済のためにこんなコースに続く落とし穴もあるのだ。
だが普段ならラッキーと思うこの救済処置も今回に限ってはありがた迷惑。
結局、二人は一つ下の階層に落ちただけだった。
…ドクン…
…ドクン…
( ―――えっ!? )
突如、不思議な音を王女は聴いた。
王女は驚き辺りを見渡したが周囲にはそれらしい音を出してるようなものは無い。
「お兄ちゃん、聴こえた?今の音…」
「え、音ってなに?」
どうやらその音を聴いたのは王女だけのようだ。
…ドクン…
( ―――また…! )
絶えることなく周期的に聴こえてくる音。
それはまるで脈打つ心音のようにも聴こえる。
( もしかしてこの音は……! )
ぞくっ、と王女の全身に鳥肌が立った。
この音を生物の心臓の鼓動だとすると、
今まで漠然と感じていた不安の正体がとても具体的なものとして想像できるからだ。
( この場所の地下深くに何かいる…。
それもとても恐ろしい存在のものが……!!! )
「―――サ!…バサ!お〜いタバサ〜?」
やっと王子の呼びかけに気付いた王女はハッ、と我に返った。
「どうしたんだよ、ぼーーっとしちゃってさ。それより次は分かれ道みたいなんだ
タバサはどっちに行ったらいいと思う?」
「そんなことよりお兄ちゃん!! 早くリタイアしましょう!!」
王子の質問には答えずもの凄い剣幕でゲームの中止を呼びかける。
あまりの勢いに王子はたじろぎつつも、その様子からそれがただ事でないことを察知した。
「わかった、結構満足したし今日のところはもう止めるよ。
お〜〜〜い僕たちリタイアするからね〜〜〜?」
大声ですごろく場の人に呼びかけるが
それはむなしく洞窟にこだまするだけで返事はない。
「返事ないね、どうしようかタバサ?」
「そんなのいいから早くでましょう!」
王女の勢いに押される形でコースから降りようとする王子、
だが…バチッ!と目の前に電撃が走ったかと思うと
勢い良くはじきだされコースに戻された、まるで見えない壁があるかのように。
通常のすごろく場にこんな仕掛けはされていない。
明らかに参加者を出させない仕掛けに王子もようやく異変に気付いた。
ここのすごろく場はどこかおかしい、と。
「おーーい!!聞いてるのかーーー!!僕たちはリタイアするぞーーー!!!」
口調を強めて再び王子は大声で呼びかける。
しかしやはり返事はない、ムッとした王子は鞘から剣を抜いた。
「そっちがその気なら!!」
そのまま見えない壁に向かって力一杯斬りつけた!
バチィ!と剣と目の前の空間に火花が散る。
王子は見えない壁の反動に負けないよう、ありったけの力を込めるが
「―――うわっ!」
結局先程と同じようにはじかれてしまい、後ろに尻餅をつく。
「はぁはぁ……なんだこれ!? もの凄い力だ!」
息を切らしながら悔しそうに目の前の空間を睨みつける。
小さくても彼は世界を救った勇者、その剣が通じないなんて並みの仕掛けではない。
「天空の剣があれば……」
王子の右手に握られた剣は極々ありふれた鋼鉄の剣。
彼の愛刀であり、その力の源とも言うべき天空の剣は今この場にはない。
天空の剣は国宝扱いで厳重に宝物庫に保管されており、そう簡単には持ち出すことはできない。
それが内緒の外出だったのなら尚更だ。
「それなら私の呪文で―――」
と、言いかけて王女はやめた。
二人で寝そべるのが精一杯の広さのマス目にいる現状では
呪文の威力で自分たちも巻き添えになってしまうと考えたからである。
「タバサ、リレミトで抜けられそう?」
「ううん、だめ。なにか不思議な力で効果がかき消されて…」
「そんな…どうしようか」
「少し危険だけど私の呪文で壁を―――」
『それはやめた方がいいよ、君たちもまだ死にたくないだろう?』
聞き覚えのある声が場内に響いた。
声の主はすごろく場の支配人ピロロ。
今まで呼びかけにまったく応じなかった彼が、ようやく沈黙を破り二人に話しかけてきた。
「―――お前は…!!僕たちを騙したな!!」
「ふふ、騙したなんて人聞きの悪い。何かボクのすごろく場に不満でも?」
「あるさ!!僕たちを閉じ込めてどうする気だ!!」
「閉じ込めた?それは違うね、ボクはキミの願いを叶えてあげたのさ
毎日のようにずっと遊んでいたい…それを形にしたのがそれだよ」
「なっ―――!」
悪びれる様子も無くピロロは答えた、この仕業は君達の望みなのだと。
当然そんなこと望んでいないと反論したい王子だが、
どこか心に引っかかりを覚えてそれを声に出すことができない。
( たしかに僕は城で勉強ばかりが嫌だった…
自由に外でずっと遊んでいたいと思ってたけど…でも!! )
王子は横にいる王女を見た。
全身の震えを抑えてじっと耐えているその健気な姿に王子の心は奮い立たされた。
そして声の方向を睨みつけ叫ぶ。
「たしかにお前の言うとおりかもしれない!!
でもそんな風に考えてたのは僕だけだ!タバサは関係ない!!」
『そうだね、ずっと遊んでいたい…それは君だけの願いさ。
でもね、ボクはそちらのお嬢さんの願いも同時に叶えたんだよ?
キミとずっと一緒にいたいという願いを……』
それを聞いて王女は驚いた、そして同時に恥ずかしい気持ちが込み上げ
黙りこくったままうつむいてしまった。
自分の心を見透かされている…年頃の少女にとってこれ以上の罰は無い。
そんな王女を見て王子はますます怒りを強める。
なぜ王女がそんなに落胆したのか、彼はそのことを理解していないが
それでもピロロが王女を悲しませたことは王子にもわかった。
「―――お前!!もう許さないぞ!! タバサしっかりしろ!!ここから逃げるんだ!!!」
うつむく王女の手を取り強引に前を向かせ、肩を組み天井を見上げる。
『ふふ…脱出か、キミたちにできるかな?そんなことが。
言っておくがその呪壁…たとえイオナズンを使おうと破ることは不可能さ。』
自分の仕掛けに絶対的な自信を持っているのか、
ピロロは王子と王女の反逆に少しも動揺することはなかった。
彼から見れば二人は籠の中の鳥のような存在なのだろう。
「…やってみなくちゃわからないさ……!!!」
王子の怒りが更に高まっていく。それと呼応するかのように彼の魔法力も高まりをみせる。
( ……僕の中の勇者の力、もう一度力を見せてくれ――― )
祈るように呪文の詠唱を続ける王子。
傍らの王女はそれを不安そうに見つめ続ける。
周囲に渦巻く魔力の波動、それが最高潮にまで達したかと思うその時
王子はキッ!と目を見開いてこれから放つ呪文の名を唱えた。
「――――――ォォォォオオオ…!! ギ ガ デ イ ン !!!」
魔王ミルドラースの戦い以来使われることの無かった
彼・勇者レックスの最強の呪文ギガデイン
王子はその秘呪文を今この場で解き放った!
「―――えっ!?」
王女はぽかんと辺りを見渡した。
ギガデインはたしかに発動された…しかし周囲にはなんの変化もなかった。
『……残念だったね勇者くん、ここが地下だってこと忘れてもらっちゃ困る。
幾層に阻まれたこの場所まで天の雷はとどくことはできない。』
流石のピロロも王子がギガデインを唱えたことにひやりとしたようだ。
だがすぐさま現状を把握して余裕の態度を崩さなかった。
しかしそれは王子も同じだった。呪文を唱えたのに効果がないことを
まったく気にしていないかのように余裕の表情でピロロに向かって声を放つ。
「わかってないのはそっちさ!!ギガデインは並の呪文じゃない。
たとえどんな邪魔があっても全部、貫く!!」
そう王子が言ったほぼ同時に、彼の真上の天井が光輝きだした。
その天井の隙間からあふれ出てる光は
今にも天井そのものを吹き飛ばしてしまいそうだった。
『くっ…!まさかここまでやるなんてね。
しかしこのままだとキミたちの上にギガデインが落ちて死んでしまうぞ!』
その言葉通り、このままだとギガデインは王子と王女の真上に落ちてしまう。
周囲を呪壁によって囲まれたマス目上は完全な密室。逃げることは不可能だ。
「―――タバサ!!」
王子はそう叫んだ!
その叫びに呼応したように頭上の光の輝きははちきれ、
そして二人の元に……
「――――――マホカンタ!!!」
落ちることはなかった。
二人の絆がなせる技か、ギガデインが降り注ぐその直前に
王女のマホカンタが発動した。
マホカンタに反射されたギガデインはそのまま落ちてきた道を抜け
再び天空へと還っていった……。
そして後に残ったのは地上まで突き抜けている天井の大穴。
「よし成功だ!タバサ、ルーラを!!」
「うん! ルーラ!!」
大穴を抜け道にルーラで飛び去る二人。
その姿をしてやられた、という風に見つめるピロロ。
しかし、やはり彼はすぐに冷静になって笑いながらつぶやいた。
「凄いね彼らは……ボクの想像以上だよ。……だがこれは嬉しい誤算だね。
ちょっと面倒な展開になったけど、まあいいさ
ボクの計画に狂いはない………!!」
―――ルーラで地上を目指し飛ぶ王子と王女
その時に王女は先程まで自分たちがいたコースを真上から見た。
「こ、これは……」
今まで何気なく進んできたコース、しかしそのコースの形は
「ま、魔方陣―――」
〜〜 〜〜
続きます
>>427 死神の方は今のところたぶんでないと思います
>>493 若本セル好きなのでぜひ続きを期待です。
>>524 その気持ち凄くわかります、自分も頭で筋書きができても文章がついてこない…
>>527 王女の妖精の剣を使った攻撃がすごくツボにはまりました
呪文以外の必殺技チックで
545 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/21 00:04:25 ID:A+Ftbn8G
ドラクエ1〜8の世界のどれかに双子が丸投げされて冒険するストーリーよく妄想する
元からいる勇者達と共闘するのとか燃える
547 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/21 01:06:52 ID:fUzf/PJo
546>DQ3で戦ったゾーマは影で、ゾーマ本体を他のシリーズの勇者と倒しに
行く話とかはどうよ。漏れは書けないけど。
漏れがよくする妄想
DQ4のエンディング後、勇者が自分を生け贄にしてシドーを降ろして世界を破壊
尽くす。ピサロはそれを阻止するため進化の秘法を使って怪物になるけど全然歯が
立たない。勇者にボロ負けして5の隠しダンジョンの場所に沈む。ピサロが負けた
後、天空城が落とされたり地形が大きく変わり5の世界の形になる。DQ4勇者は
魔王が居て勇者が居る状態にするため各シリーズから勇者を召還する・・・内容が
ほとんどLIVEだ。
セルとかはさすがに違う感じがするけど、ゾーマならおもしろそう
おまえら普通はセルよりフリーザだろうが!!
ドラゴンボールを出してくる事そのものが問題だろうが!
ギャグ、一発ネタならまだしも、設定のすり合わせをしてないクロスオーバーなんて論外だろうが!
>>546 そういえばYの隠しダンジョンには双子とサンチョがいたな
セル登場は
>>223-226,248,250 のリクエストに答えたものでしょ。
それでこの酷評じゃリクエストしたところで書こうなんて人は出てこんぞ。
>>551 姿は子供の使いまわしで(´・ω・`)ションボリック
>>552 別にそんな妙なリクエストに応えんでもよかろ
>>552 酷評してるのがリクエストした人たちなら問題ですが、おそらくそうではないでしょうから……。
このスレを代表して出したリクエストというわけでもないでしょうし。
漏れは……レクタバもテンソラも好きですけど、それ以前にDQとその世界が大好きなので。
☆ チン
☆ チン 〃 ∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ ___\(\・∀・) <
>>530続きまだ〜?
\_/⊂ ⊂_ ) \_____________
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
| 愛媛みかん |/
フリーザのSSキボンヌ
レックス
剣
槍
ブーメラン
格闘
勇気
タバサ
杖
弓
ムチ
格闘
愛情
[の世界で二人を冒険させたいところ
明日はクリスマスイヴ
ここは豊かな森に囲まれた東の小国グランバニア。
この国は六年前に起きた王と王妃失踪事件以来どこか暗いムードが続いていました。
しかし今日の様子はそれまでと違いました。
城の近くにひときわ大きくそびえ立つ針葉樹には星をかたどったキラキラ光る飾り物がかけられ
城下町にはまばゆいばかりにキャンドルが灯されています。
いつもはピリピリ顔の兵士たちは鎧の代わりに真っ赤な服と帽子、それに付け髭を生やしています。
そう今日はクリスマスイブです。
クリスマスといえば子供たちにサンタクロースがプレゼントを届けてくれるのが一番のイベント。
ですがこのグランバニアには子供といえる年頃の子は
王子であるレックスと王女のタバサのお二方のみ。
そのためここ数年間はクリスマスというお祭りは半ば忘れ去られていました。
今回クリスマスがこんなにも大掛かりに復活したのは
この国唯一の子供たちレックス王子とタバサ王女のたっての願いがあったからでした。
「わあ〜大きなケーキ!」
何重にも積み重ねられた特大のクリスマスケーキに
今回の主賓であるレックスとタバサは大喜び。
「すごいや!今日はごちそうだらけだね」
食いしん坊なレックスはさっそくケーキにかぶりつきます。
「こんなに豪華な食事…、お金だいじょうぶなのかな?」
しっかりもののタバサはレックスとは対極に少し心配そう。
「ハハハ、子供はそんな心配しなくていいの!しっかり食べて大きくならなきゃ」
そう言ってタバサの肩をポンと叩いたのは大臣の娘ドリス。
ドリスの言葉を受けてタバサもレックスと一緒にご馳走をつつき始めました。
嬉しそうに食事をする二人の姿を見てドリスも自然と笑みがこぼれます。
「ふう、なんとか喜んでもらえたみたいね。さて問題は…」
ドリスはそのままパーティー会場をそっと離れて
地下の物置部屋に入っていきました。
「ねえそっちは準備OK?」
物置の中には真っ赤な衣装に身を包んだふくよかな老人と
立派な角を生やしたトナカイがお酒を飲みながら談笑していました。
「ちょっとちょっと!何やってのよあなた達、子供の夢壊すつもり!?」
ドリスは真っ赤な老人とトナカイに喝を入れてお酒を取り上げます。
「いやぁ面目ない、ついつい賑やかな雰囲気につられてしまいました」
付け髭が外された老人の顔は王子と王女の教育係であるサンチョのものでした。
「しょうがないじゃないですかぁーーぼくらはパーティーにも出られずこんな薄暗い部屋に缶詰でー
あぁーーぼくもパーティに出たいぃ女の子と語らいたいぃ…ぐすん」
トナカイの頭がぽっかり外れると真っ赤な顔の衛兵ピピンがでてきました。
「あんた泣き上戸だったんだ…、それはともかくサンチョもピピンもあなた達が今回の
主役なんだからね。しっかりサンタしてよ」
そうクリスマスといえばサンタクロース。
レックスとタバサを喜ばすためサンチョとピピンはサンタに変装していたのです。
「それじゃあ私はそろそろ二人のところに行くから、あなた達も予定通りにね」
そう言ってドリスはパーティー会場に戻っていきました。
「あれ?どこにいったんだろ」
ドリスが戻ってみるとそこに二人の姿は見当たりません。
まわりのメイドたちに聞いてみたところテラスの方へ行ったらしいとのこと。
不可思議に思いながらもドリスもテラスへ向かいます。
「レックス、タバサ、あなた達こんなところで何してるの?外は寒いから風邪ひくよ」
二人は夜空を見上げるのをやめてドリスに話しをします。
「ぼく達サンタさんにお願いしてたんだ」「してたの」
声をそろえて答えます。
「へぇ〜フフ、それでふたりはどんなお願いしたの?」
そう聞かれて気恥ずかしそうにもじもじしながら二人は答えます。
「わたしたちお父さんとお母さんが帰ってきますようにってお願いしたの」
「そうなんだ、サンタさんってどんな願いでもかなえてくれるっていうから」
ドリスの笑顔が凍りつきました。
流石に王と王妃を用意するのは無理な話でした。
「え、え〜とレックスにタバサ?サンタさんのプレゼントに人は無理なのよ?」
それを聞いた二人は少し落ち込んでしまいました。
「そうなんだ…」
落ち込む二人をドリスは必死でなだめます。
「で、でもサンタはきっと二人が喜ぶプレゼントを持ってきてくれるわ」
少し笑顔を取り戻した二人はドリスに言いました。
「うん、早くサンタさんに会いたいな。サンタさんはどっちの方角からくるんだろ」
「きっと、あのお月様の方からじゃないかしら」
ドリスは月の方角を指差しました。
「トナカイにソリをひかせて飛んでくるのよね、わたしご本で読んだわ」
「へ〜空を飛んでくるのかーよしサンタさんが来るまでここで待ってようよタバサ」
またもや笑顔が凍るドリス。それも無理だと説明したいところですが
「そ、そうよ飛んでくるのよ、いえ飛ばせてみせる!」
これ以上期待を裏切ることもできずついつい無理な注文を引き受けてしまいます。
「でもサンタさんは煙突から入ってくるらしいけど、わたしたちのお城には煙突がないからどうしよう」
「えんとつえんとつ…そうだ!サンチョの家にあるよ」
レックスはそう閃きました。
「う〜んあんな小さな煙突でサンタさん入ってこれるかな?」
タバサは少し不安そう。
「だいじょうぶ、絶対に入ってこれるはずよ!というかねじ込むから」
さらにドリスは無理な注文を勢いで引き受けてしまいました、実行する当の本人の了承もなく。
「よーしそれならサンチョの家へ行ってサンタさんを待ってようよ!」「うん」
レックスとタバサはそのままサンチョの家へ駆けだして行ってしまいました。
さて大変なことになったのは変装サンタたちです。
「ということであなた達は飛んできて煙突を通って二人にプレゼントを渡して」
サンタとトナカイに扮したサンチョとピピンは驚きました。
「そんな飛ぶなんて無理っすよ!」「気合よ気合!」
「私の体型であの煙突はちょっと…」「根性だ根性!」
ドリスの猛烈な気迫に押されて二人は無理難題を引き受けてしまうことになりました。
「それじゃ私は二人のところに行ってるからまかせたわよ」
無責任にも事を告げるとドリスはさっさと出て行ってしまった。
後に残されたサンチョとピピンのどうしたものかと沈んだ様子です。
サンタ役にも要望を伝えたのでドリスは安心してレックスとタバサの待つサンチョ宅へ行きました。
「お〜い二人ともサンタは〜…ってあれ?」
目の前のベッドにはレックスとタバサが一緒になって寝ていました。
明かりはついたままですしパジャマにも着替えてないことから
サンタが来るのを待ちきれずにそのまま寝てしまったようです。
「フフフ可愛い寝顔しちゃってまあ。ごめんね二人とも本当に欲しいものあげられなくて
次のクリスマスこそは…ね」
そっと寝ている二人に毛布をかぶせて立ち去ろうとします。
そこへドンガラガッシャン!と大きな音がしました、二人は眠ったままです。
音が止むと暖炉からもそもそと真っ黒なトナカイがでてきました。
「あいたたた、あドリス様…はっ!しまった、ヒヒーンヒヒーンボクトナカイ」
「クスクス、もういいのよピピン。あれ、ところでサンチョは?」
そう言われて初めて気が付いたのかピピンは暖炉から煙突の中を覗き込みました。
「あああああ!サンチョさん詰まってるぅ!?」
びっくりしてピピンはさっきの落下音以上の大声をあげました。
その大声に寝ていたレックスとタバサはピクっと反応をみせました。
「ちょ、ちょっとそんな大声出したら起きちゃうじゃない!もうさっさとプレゼント置いて消えなくちゃ」
「は、はいい」
用意したプレゼントを枕元に置いてドリスとピピンはサンチョ宅から出ようとして
最後に眠っている二人の方を向いて
「メリー・クリスマス、レックスタバサ・・・」
バタンとドアが閉まる音がするとそれに合わせたようにレックスが眠そうな顔で眼を覚ましました。
眠い目をこすりながら枕元を見るとプレゼントの存在に気がつきます。
「わっ、タバサ起きてみなよサンタさんが来てたよ」
クリスマスイブの夜に子供たちの明るい笑顔が響き渡りました。
終
「みなさん私のこと忘れてますね・・・」
結局サンチョは煙突の中でイブを過ごし救出されたのはクリスマスになってからでした。
思いつきでこんな季節ネタを書いてしまいました
双子があまり目立ってないのにちょっと反省
ピピン以上に寂しいイヴを過ごしていますorz
レックスとタバサがいるからへーきだもん!
ほら、双子の呼ぶ声が・・・(´∀`)
569 :
:04/12/25 00:59:41 ID:3jKiSj39
>>568 え?声だけ?
おれはグランバニアで楽しげなパーティーがやってるから、
いまから参加しに行くところだが
570 :
たばさ:04/12/25 01:41:25 ID:hJFQWVnb
∧ ∧
|1/ |1/
/ ̄ ̄ ̄`ヽ、
/ ヽ
/ ⌒ ⌒ |
| (●) (●) | >>おにいちゃん
/ |
/ |
( _ |
(ヽ、 / )|
| ``ー――‐''"| ヽ|
ゝ ノ ヽ ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧ ∧
|1/ |1/
/ ̄ ̄ ̄`ヽ、
/ ヽ
/ ⌒ ⌒ |
| へ へ | ふふ、呼んでみただけ♪
/ |
/ |
( _ |
(ヽ、 / )|
| ``ー――‐''"| ヽ|
ゝ ノ ヽ ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
>>570 (*´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア / \ ア
馬姫に萌えた漏れでもカバはキツいぜ
ファミ通文庫「三月、七日。〜その後のハナシ〜」ネタ
血のつながりがある私たちは、決して結ばれる事はないけれど。
それでも私は、テンの事が好き。
これから何年も経っても。
他に好きな人ができても。
一緒にいられなくても。
きっと、ずっと、好きでいる。
好きでいて、結ばれないまま、ずっと好きでいて、何十年も、ずっとずっと好きでいて、それで――
自慢、しよう。
私は何十年もひとりの人が好きだったんだ、って。
自分の子供や孫に。
たくさんたくさん、伝えることができたなら。それはきっと、素敵なことだから。
>>575 非血縁展開除けばこういうのがハッピーエンドなのかなぁと思った
8のEDで主人公=王子 ミーたん=王女 チャゴス=コリンズと脳内変換したのは俺だけだろうか
あんな豚に変換されたコリンズが不憫すぎるよヽ(`Д´)ノ
「た、タバサ……い、いいんだな?」
「うん……コリンズ君。
で、でもね……やさしくしてくれなくちゃ、イヤだよ?」
「も、もちろん、わかってるって。
あ……あのさ、その、タバサ……タバサって、は、初めて、なんだよな?」
「……コリンズ君。どうしてそんなこと聞くの?」
「あ、そ、その、うたぐってるとかじゃないぜ? タバサ。
ただその……えっと、まあ、なんだ……。
も、もし初めてとかじゃなくても、オレはぜんっぜん気にしないっつーか、ちゃーんとやさしくするっつーか……」
「……わたし、ほんとに初めてだよ、コリンズ君」
「そ、そうだよな。はっはっは、そ、それならいいんだ(良かったー!)。
タバサって、あいつと……レックスとさ、今でもすげー仲良いだろ。だから、ひょっとしたらって……。
はは、ちょっとバカ言ったな、オレ。忘れてくれ」
「もう、コリンズ君。
いくらわたしとおにいちゃんが仲良しでも……しょせんは、兄妹でしょ。
だから、どんなにいっぱいしちゃっても、カウントされないじゃない」
580 :
:04/12/29 04:51:03 ID:LcejFcQ/
ラスト一行
笑いが漏れた
米国人が家族でキスしまくりでもファーストキスには考慮されないのと一緒だな
まあグランバニアではそれがエスカレートして(ry
582 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/29 06:36:20 ID:LcejFcQ/
上から下へとエスカレート
兄妹←なんて読むんだ?
584 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/29 19:46:23 ID:LcejFcQ/
きょうだいでいいだろ
きょうまいなんて読みたくもない
>>578 性格悪いだけならともかくルックスがああではなあ・・・
おかっぱが悪いのか
jマゲスの荊の呪いで荊になったグランバニアを助ける双子旅キボン
大変遅れてしまいました。申し訳ありません。
>>527の続きです。
魔獣の背を蹴りながら、少女は少年に視線を送っていた。
視線が交錯し、意志が交錯する。
視線を合わせたのはただ一瞬。
次の瞬間には既に、少女は颯爽と天空を駆け上がり、敵を見据えて投擲の姿勢をとってしまう。
そうして、剥がれた視線の先で、無様に地べたに尻餅をつく少年が残された。
――――真剣そのものの眼差しにこめられた多くのものを、正しく受けとった少年が。
ああ――――とつぶやきを漏らす。
彼女の、自分と同じ天空色(そらいろ)の瞳。そこには怒りがあって、叱咤があって、親愛があって、信頼があったから。
全ての悲観は霧散し、胸が昂ぶり、全身に力が漲って。
剣を持ったまま立ち上がる。その一方で熱暴走していた頭は冷えていた。
自分はひとりで何でもできる勇者ではないとわかっていたはずなのに。
一緒に戦ってくれる仲間を頼ろうとしなかったなんて、なんてバカらしい。
そんな苦々しい思いを抱えて、しかし少年は微笑む。
プックルの姿を、ソラの姿を久しぶりに見たような気がする自分に呆れながらも、彼女たちの姿が目の前にあることが、何故だかとてもとても嬉しくて。
――――強くなるために、立ちふさがる敵も弱い自分自身も斬り伏せて、その先へ。
そんな道を歩むことを、ソラは決して許してくれないだろうなと今さら思い当たる。
そんな道を歩んで得た強さは、祖父や父に届く強さだろうかと今さら考える。
自分はやっぱり子供なんだなと思う。
確固たる理由を見つけたときこそ、真に強くなれると思えると気づいた。そこまではいい。
その後がよくなかった。強くなりたいと叫びながらがむしゃらにつっこんだだけ。恥ずかしい。
――――周りを忘れて強さを求めるなんて、あの魔導師とやってることが同じじゃないか。
ソラの投擲した一撃が、魔導師の頬を抉り、鮮血が撒き散らされるのをみた。
そう、戦っているのは自分ひとりではない。自分が敵に勝てないのなら、自分以外の他者を選じればいいのだし、何より共闘すればいい。
右手に握った剣が微かに唸り、光芒が散った。――何を今さら、とからかうように。
かつて、この剣を握った勇者たちはそんなこと、当たり前のように知っていたのだろうか。
だから、強くなろうというテンの思いを認めて、力を与えた。テンが周りを見えていないことに気づかなかった。
――――こんなやつが勇者なんて、ごめん。
ソラの落下地点をめがけて怒る魔導師が走る。テンは両手で、頭上に剣を掲げる。
――――だけど、愛想を尽かしたかも知れないけれど、もう少しだけ、力を貸してほしい――――
「……ッ!」
ソラは息を呑んだ。着地際、魔導師の突進に対してどうしても無防備になってしまうことを恐れて。
武器はない、既に投げてしまった。
呪文は使えない、敵にはマホカンタの呪文がかかっている。
既に敵は至近まで迫っている。もう、為す術がない。
「あ、――――」
魔導師の爪が振り上げられる。
直後にやってくるであろう激痛に目をつぶる。
だが、その時、魔導師に向かって凍てついた波動が吹きつけられた。
「な、んだと――――!?」
魔導師は驚愕する。なんとその波動は魔導師の、呪文を返す幻鏡を取り払っていくのだから。
そして、少女の元に、波動が発生する方向から声が届いた。
「ソラぁぁっ!!」
幼い勇者。世界という重荷を背負う双子の少年が、自分をみてくれていた。
運命を共にする仲間として、自分に言葉を送ってくれていた。
「いっけぇぇぇ――――っ!!」
久しぶりに、自分に声を向けてくれた気がして、何故だかとてもとても嬉しかった。
胸に勇気が灯る。両手を敵へ突きだす。
恐れはもう無い。
ただ、力を込めて、呪文を紡ぐのみ。
「イオナズン――――!!」
「し、しまっ……!!」
……爆裂の華が、咲き荒れた。
目の前の地面が広範囲に焼け焦げている。
至近距離から放たれた爆裂系最強呪文は如何なる威力を発揮したのか。
敵の姿は肉片一つ残さず見あたらない。
断末魔の叫びを終えることなく、完全に、消滅していた。
「終わっ、た――――」
脱力感に心身を襲われたテンは、地面に剣を突き立てて支えにする。
そうして、はあ、とため息をついて。
思い返して自分があまり役に立った気がしないことや、ソラが戦いに介入してからほんの間もなく決着がついてしまったことなどに、いろいろ思考に沈んでしまいたかったれど、まずはなによりも。
ありがとう。
この剣へ、感謝を。
――また、唸るように剣が震えた。
反応が返ってくるとは思っていなかったので、わずかに驚き、目を見開いた。
ちらりと零れる光芒は、――気づいたのならそれで良いだろう、と許してくれているようで。
思わず、笑みがこぼれた。
全力で呪文を叩き込んだソラもまた疲弊して、地面に座り込んでしまっていた。
プックルが歩み寄ってきて、頬をぺろぺろと嘗める。そのくすぐったさが心地良い。
そうして、戦いが終わったと安心してテンをみれば、剣を支えにうつむいている。
……うつむいたまま、座り込んでいる自分に駆け寄ってくる気配もなく。
様子を見に近づいてみれば、力尽きているわけでもなく、なにやら笑みを浮かべている。
その表情はいかにも『おおきなくなんをのりこえてまたひとつれべるあっぷしました』という達成感に満ち満ちていて。
それをみて、ソラはこめかみをひきつらせた。
――――ああ、またわたしたちのことわすれてるんだなこのにぶちんのばかちんのおたんちん!!
ここはほら、無事に生き残ったことを感動的に抱き合って喜ぶところじゃないのか。
そんな呑気な少年に、少女は大きく息を吸い込んで、怒声を叩きつけた。
「なにをへらへら笑ってるのよっっっ!!」
ふがぁお、とキラーパンサーの呆れたようなキラーパンサーの声がやけに大きく響いた。
寝そべったプックルが見つめるその先に、ふたつの影。
腰に手を当て、仁王立ちで「お説教」をする少女。
少女の対面に正座をして、その剣幕に首をすくめている少年。
もっともプックルの目には、剣幕にビビっているだけで、そのお小言のほとんどは聞き流されているように映っていたのだけれど。
ただ、少女が最後にいった言葉だけは、少年は真摯に受けとめた。
――――あなたが死んだら、わたしも半分死ぬんだからね――――
この言葉だけは、目を背けて、照れくさそうに顔を赤らめて、少女は言った。
自分の背で、お互いに背中を預けるように寄り添って眠るふたりを起こさぬように、ゆっくりとプックルは帰路を辿った。
そんな気づかいもむなしく、グランバニアで彼らを迎えた王と王妃は彼らを起こし、コトの顛末を問いつめたのだけれど。
まあ、これだけ傷と埃に汚れていれば当然だったか、と詰問されるふたりを見ながら、口が裂けそうな大きな欠伸をし、彼らの問答を余所に、その場で寝入る。
――――明るい金色の髪をした三つ編みの少女。ふたつの三つ編みの先を飾るリボンを、猫に似た小さな魔獣に結んだ後、少年と向かい合い、少年にもリボンを渡す。
別れを惜しむように、しかめっ面をして涙をこらえる紫の少年がいて。
三つ編みの跡が波形に残る髪を風になびかせた金の少女がいた。
あたしに逢えなくなって寂しいからって泣いちゃだめよ! とお姉さんぶって少女は言う。別れが辛いのは少女も同じだろうに。
そんな風に、向かい合っていた少年と少女。
そんなふたりと一緒の時間を過ごすことは叶わず。三者は別々に時間を過ごす。
小さな魔獣は大きくなって、大きくなった少年と再会し、大きくなった少女と再会した。
だけどまた、三者が同じ時間を過ごすことは叶わなかった。大きくなった少年と大きくなった少女は、ふたりの赤ん坊を残して、長い間姿を消してしまう。
ふたりが残したふたりの赤ん坊と同じ時間を過ごして、ふたりの赤ん坊は大きくなった。
紫の少年と金の少女と重なるくらいに成長した、そんなふたり。
そんなふたりはキラーパンサーの目に、どのように映っているのだろうか――――
(完)
これで、終わりです。
初めて書くSSだから、と、そんなことを言い訳にはしたくないのですが――――
何の主張もないSSで本当にごめんなさい_| ̄|○
つーか
>>590に誤字あるよ……。めっちゃ萎えますなこーいうの。
>ふがぁお、とキラーパンサーの呆れたようなキラーパンサーの声がやけに大きく響いた。
→ふがぁお、とキラーパンサーの呆れたような声がやけに大きく響いた。
さて、最初から読み返してみて思ったのですよ。なんて中身のないハナシなんだと(´Д⊂グスン
前にも書いたことなんですが、SS職人の皆さんを改めて尊敬します。
なんなのさアンタら、アンタらの前で正座してうなだれてやるからうまい書き方教えやがれってんだコンチキショウ。
それから今まで感想レスつけてくれた皆さんへ、感謝を。
本当に励みになりました。ありがとうございます。
それとSS保管庫管理人様へ、タイトルをつけて頂いて本当にありがとうございます。
正直、こんないいタイトルつけてもらっていいのか? と恐縮でした。
だって最後まで王子ヘタレじゃないですか(;゚Д゚)
SSの出来はともかく、SSを書くことはホント楽しかったです。
今、長編で書きたいネタがあるのですが……まずは短編たくさん書いて力つけることが先か(´・ω・`)
来年もまた、いろいろ書いてみたいので皆さんよろしくお願いします。
では。
>>594 いやいや、十分面白かったですよ
なんなのさ
>>594、
>>594の前で正座してうなだれてやるからうまい書き方教えやがれってんだコンチキショウ。
って感じです
>>594 GJ!!たしかに敵の正体とか目的とかの話の部分が余り語られてなかったけど
その分戦闘描写が凝ってて細部まで描かれていてヨカタ
王子は結局ヘタ…もといアシスト役になってしまったのも思えばある意味原作通り
影の主役はプックルか
次回作も期待
皆さんグランバニアからお手紙が届きましたよ。
┌────┐ 早いもので2004年ももうすぐ終わりますね。
│ ------ │ 皆さんはどんな1年でしたか?
│ ------│ 私達はお父さんとお母さんを見つけることができて嬉しい1年でした。
└────┘ 2005年も楽しい年になるように願っています。
グランバニア王子レックス 王女タバサ
今年は君たちのおかげで萌え分補給しまくりだったよ(*´∀`*)
来年も君たちには更なる冒険を期待しているよ
テン・グランバニアってことは国名が苗字なのか?
あけましておめでとう!
今年も君たちにはお世話になります。
>>600 普通、王子の姓名には
自分の国の名前がはいるはず。
例外もあるけど・・・
あけおめ!
つ[お年玉]
グランバニアではどんな新年パーティーをするのだろ
王子と王女はきっと姫はじ(ry
ふたなりの大冒険
お父さんお母さんも戻ったから三人目の子供誕生、と思ったが
考えたら2人とは年齢差がサザエとカツオ並に離れるわけか
話に絡ませにくい・・・
あけましてオメデトウゴザイマス!
だらだら続いてたけどこれで終わりデス!ノリで書くもんじゃないね!
以下、>495から
そこからは一進一退の攻防。
お互いの剣と拳がぶつかり合う度に衝撃があたりに走る。
「ククク、いいぞ!もっと!もっとわたしに力を見せてみろ!」
「コ、コイツ・・・余裕ありすぎ・・・!」
息を切らすレックスとは対照に、セルの顔は喜びで歪む。
「ベギラマァッ!」
レックスの左手からさっきよりも大きな閃光の灼熱がほとばしる。
「・・・!!」
しかし、その炎を気合だけで打ち消すセル。
「ハハハ・・・うそぉ?」
肩で息をし始めたレックスは思わず苦笑する。
「まいったなぁ・・・後先考えてたら負けちゃうや・・・ガンガンいかないと!」
今立つ位置より2,3歩後ろに飛ぶレックス。剣を収め、右手を空にかかげ呪文を唱える。
「ギガ・・・デインッ!」
突如上空に広がる暗躍の雲。雲と雲の間からすさまじい轟音と共に稲妻がレックスの身体に落ちる。
暗転して光に包まれるレックスの身体。セルは身震いを覚える。
そして、セルの視界から一瞬姿を消すレックス。
───ドガッ!
次にセルの視界に映った時、レックスの右拳はセルの腹部にめりこんでた。
「ガ・・・ハッ・・・!」
不意打ちを喰らったセルは悶絶の表情を浮かべる。
───ズガッ!!
続けざまにまわし蹴りがセルの顎を捕らえ宙に舞う。
「ハァァァァァッ!!」
それに追い討ちをかけるべく、レックスは再び天空のつるぎを抜き、渾身の力を込め、最強の一撃を繰り出す。
「ギガスラーーーーッシュ!!」
───ガガガガガッズガーッン!!!
「グアアァァァァアア!!」
繰り出した一撃の反動に逆らうことなく身体を回転させジャンプするレックス。
「まだまだぁ!!これで・・・終わりだぁぁぁ!!」
「ガァァッァアッァアアア!!」
そして、セルも痛恨の一撃をレックスに向けて放つ。
───ガガガガガッズガーッンゴゴゴーーッン!!!!
うごめく雷鳴、とどろく轟音、砕け散る大地、吹き荒れる旋風。
2発も連続で撃つギガスラッシュによる激しい音と光と衝撃が、離れた場所に立つタバサにも届く。
「!!・・・お兄ちゃん・・・!」
やがて辺りは静かになる・・・が、胸騒ぎがじょじょに大きくなっていったタバサはレックスの元へと走り出す。
「ハァハァハァ・・・。・・・お兄ちゃん!」
精巧に作られた石像と石像の間から飛び出してくるタバサ。
そして、目に飛び込んでくる倒れたまま動かない人影・・・。
「お兄ちゃん!!」
急いで抱き起こし、必死に呼びかける・・・が、息がない。
「ウソ・・・お兄ちゃん・・・?」
耳をレックスの胸に当てるが、心音が聞こえない。
「そんな・・・。」
「あ・・・そうだ、この間こっそりカジノに行った時に・・・!お兄ちゃん、これ世界樹の葉だよ?これで・・・もう大丈夫だよ?」
タバサは思い出した様に道具袋の中から世界樹の葉を取り出す・・・が、ここで気がつく。
「・・・すり鉢と一緒に流し込むお水・・・!って、こんな所にそんなのあるわけないし・・・。」
考えるタバサ。いったんお城へ戻ろうにもMPも使い切ってしまったため、ルーラも出来ない。
一晩ここで夜を明かそうにも、急がないと魂がレックスの身体から離れてしまう。
そうなってはもうどんな力でも生き返らすことは出来ない。
ポトポトとこぼれる涙を拭い、タバサは意を決して世界樹の葉を自らの口の中に入れる。
モグモグと噛み、レックスの唇に唇を運ぶ。
「(お兄ちゃんを助けるには・・・コレしかないもんね・・・。)」
そう自分に言い聞かせ、決して飲み込まないようにそれを口に入れたまま、そっと口付けレックスの身体に世界樹の葉を流し込む。
「(お願い・・・生き返って・・・。)」
唇を離し祈るタバサ。
あたりはシンと静まり返り、先ほどまでの戦いが嘘のような沈黙だ。
トクン、トクンとタバサの心音にもうひとつ、ト・・クン、ト・・クンと小さな心音が重なる。
「!!!お兄ちゃん・・・!」
閉じた目蓋がうっすらと開き、焦点の合わない瞳がタバサを捕らえる。
「う・・・ん・・・タ・・・バサ?」
「よかったぁ・・・。」
安堵の息を漏らした途端、止まったはずの涙が再び流れ出す。
「お兄ちゃん・・・!」
ギュッとレックスの首を抱きしめるタバサ。
「グエッ!」
とレックスの苦しむ声が聞こえたが、そんなことより今は・・・と、レックスのぬくもりを感じる。
「タ、タバサ・・・ちょ・・・苦しい・・・。は、離して・・・?」
レックスが懇願するも、タバサはブンブンと首を振り
「ヤダ!すっごく怖かったんだもん!お兄ちゃんがもう生き返らないんじゃないかって!」
泣いているのか、タバサの声は震えていた。
「・・・心配させてごめんね。ボクも怖かったよ・・・。」
タバサの頭をポンポンっと叩き、レックスが言う。
「・・・グスン。・・・アイツと戦ってる時・・・?」
「違うよ」と呟き首を振るレックス。
「ボクが怖かったのは・・・」
レックスが口を開くと、タバサが手を放しレックスの顔をじっと見つめる。
「ボクが怖かったのは・・・タバサの声が聞こえていたのに・・・声が出なくて・・・身体が冷たくなっていくのがわかったんだ。
タバサが呼んでいる方とは逆に足が向かってくんだけど・・・ずっとタバサのことを考えてた。
あ、ボク死んじゃうのかな・・・って思ってたら、急にボクの目の前にタバサが現れて、ボクの手を握って足が向いてる方とは逆にボクを連れてってくれたんだ。」
そう言って、レックスはタバサをギュッと抱きしめる。
「ア・・・。」
タバサは突然の行動に驚き、心臓を締め付けられる痛みを感じる。
そして、レックスはゆっくりとタバサにこう言った。
「・・・タバサが好きだ。・・・世界中の誰よりも・・・タバサを愛してる。」
レックスの腕から広がるぬくもりと、耳に残る優しい言葉。
目の前にいる大好きな人からずっと聞きたかった言葉。
今更なのにどうしていいかわからない。
おかしいな、今みたいなことをずっと夢見てきてて予行練習はバッチシなはずなんだけど・・・。
いざとなったら・・・言葉がもう出てこない・・・涙は・・・溢れてくるのに・・・ね。
「タ、タバサ・・・?」
困った顔をしたレックスがタバサの顔を覗きこむ。
(伝えるのは・・・言葉だけじゃないよね・・・。)
「・・・!?」
覗き込んだレックスの唇に、タバサは自らの唇を重ねる。
・・・一瞬にも似た永遠の時間。
タバサの唇はレックスの唇から名残惜しそうに離れ、一言、たった一言だけこう呟く。
「これがわたしの答え!」
レックスは唖然とした顔から笑顔に戻り、タバサも恥じらいながら笑顔でレックスを見つめる。
「エヘヘ、お兄ちゃ・・・ん・・・んちゅ・・・。」
今度はおかいしにとばかりにレックスがタバサの唇を奪う。
「・・・ん・・・タバサ・・・ちゅ・・・んん。」
何度も、何度も小鳥の様なキスを交わす二人。
やっと開放されたタバサの唇はうっすらと光っていた。
「・・・わたしの唇・・・食べられちゃった・・・」
「これが・・・ボクの答え!」
「・・・バカ。」
Fin
中途半端に終わっててもスルーしてください!お疲れでした!!
GJ!
>>611 素晴らすい! バードキスレクタバ(;´Д`)ハァハァ
いえ実は、勝負の結末と甘々路線の決着を考え、この話をおさめるにはどうするのがベストかと漏れが検討してみた上での必要事項が、ほぼ尽くされていたんです。
すべてはペコさんの構想内だったのでしょうが……。とにかく安心したといいますか、さすがといいますか……。
お暇があったらまた新作読ませてください。待ってます。
ですが一言……。
世界観の異なるキャラクターを共存させるということは、
打者ごとのストライクゾーンというルール内での許容範囲の問題ではなく、テニスボールで野球をして楽しいか否かという問題です。
どうしてもテニスボールでやりたいというのであれば、ここはテニスボールを使わなければならないと納得できるだけのストーリー的文脈的必然性がなくてはなりません。
そして、野球プレイヤーだけでなくテニスプレイヤーにも、違和感に戸惑う人は少なくないであろうということを考えておいてください。
では改めまして。王子たん王女たん萌え萌えな方々、あけましておめでとうございます。
漏れも双子萌え、劇場屋の端くれとして、本年もスレとネタが続く限りスレ汚しさせていただくつもりですが、なま暖かい目で見守ってやってください。
今年こそは萌える話を書いてやるー!!
乙です、最後は萌えで締めていて満足
世界樹の葉だけに世界中の誰よりも…
今度は大魔王バーンでな
天地魔闘の構え!?
618 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/04 23:36:29 ID:3gkV6W1M
父親救出〜母親救出で二年経ってると聞いたけど、どう考えても二年も時間経ってると思えない
誰か二年経ってると納得できるような物語書いてくれないかな
ルーラ、リレミト、魔法のじゅうたん、鍵の入手を度外視して考えてみた。久美沙織の小説版参考。
主人公石化解除→グランバニアへ帰還→門出の準備→エルヘブンへ向けて船出→海を航海→岬の洞窟へ→洞窟を抜け、上陸→エルヘブン到着、情報収集→
天空の城が沈む湖へ向けて船出→洞窟を抜け、再び大洋へ→海路を進む→天空城が沈む湖に一番近い海岸線へ→下船、陸路に転じる→湖へ至るトロッコ洞窟へ→
洞窟にてプサン発見→天空城到着→ゴールドオーブを求め、出立→トロッコ洞窟を戻る→陸路、来た道を戻る→船を泊めてあった海岸線へ戻り、乗船→
サラボナ南の迷いの森へ向けて船出→海を渡る→森の近くの海岸線で下船→陸路→森へ到着→森を歩く→王子と王女が妖精発見→妖精の村へ→情報収集→
妖精城へ向けて出発→森を戻る→陸路を戻る→船を泊めてあった海岸線にて乗船、船出→海を渡る→妖精城に一番近い海岸線へ→下船、陸路を歩く→妖精城へ到着→
ゴールドオーブ入手、妖精城を出発→陸路を戻る→船を泊めてあった海岸線にて乗船、船出→海を渡る→天空城が沈む湖に一番近い海岸線へ→下船、陸路に転じる→
湖へ至るトロッコ洞窟へ→天空城到着→天空城浮上、城の住人も復活、情報収集→ボブルの塔へ向け、天空城で空路を進む→ボブルの塔を塔頂から地下へ向けて探索、ドラゴンオーブ入手→
地下から塔頂まで戻り、天空城へ→マスタードラゴン復活→マスタードラゴンで空路を進み、セントベレス山へ→山頂の神殿広場から地下への階段を下りる→地下にて、イブールを倒し、いのちの指輪入手→
来た道を戻る、途中、マーサと会話→神殿広場へ到着、ビアンカ石化解除
見づらいけどこんなもんか?
陸路の長さ、海路の長さはそれこそ推測するしかないけど、船の物資の補給のためにポートセルミとかサラボナへ寄り道したりするとか、そういう手間もかかるだろうし、
デルパドールへいくにも長い海路を往復しなきゃならない。
他にも主人公がグランバニアに帰ったときは、帰還祝宴とか石化で錆びついた身体の静養で何日かかかったかも知れない。
行く先の街での情報収集だって一日で済ませたとは限らない……と考えてくとキリないけど、こうしてみると主人公救出からビアンカ救出まで結構な日数が必要だよな
更にカジノやすごろくに名産品集めでかなり時間くってそう
623 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/06 02:14:43 ID:k66n19uu
>>622 旅の過程を物語にする場合、それらの描写いらなくないですか?
単に折れの個人的な好みの話なんですが、ストーリーの下地がシリアスだったら(赤ん坊の頃から行方不明である親を捜す)
わざわざそういう寄り道や遊びを入れないでほしいと思うんだよなあ。王子王女のほのラブとかならまだしも。
ストーリーのはじめから終わりまで、まっすぐな針金通してくれたほうが良いと思うんだけどなあ。
ageてしまった……。ごめんなさい_| ̄|○
書き始める前にひとつ質問させてください。
DQ4のクリアリ風味な双子SSはこのスレでも大丈夫でしょうか?
あ、クリアリ風味というか・・・
単純にお堅いタバサ、無意識攻めレックスを書きたいだけなのかもしれませんが。
>>627 なんだDQ4のパラレルってわけじゃないのか。
原作の双子を激しく逸脱しない限り、平気だと思う。
つーか、モノ書きは着想思い立ったら忘れないうちにはよ書け。
正座してお待ちしております。
「おりゃーきえー」とか言い出すタバサが出てくるのかと思ったw
俺も正座して待ってます。
>>627 おお、そのシチュ良さげな予感
魔法の勉強一筋な王女が天然な王子にじょじょに惹かれていく…とか勝手に妄想が膨らむ
全裸で正座して待ってます
631 :
627:05/01/06 21:33:48 ID:IEhEI/+Z
あーーーっ!もう! 私ったらなんということを言ってたの。
確かにまだあの時は8歳だったよ・・・・だったけど!
私はグランバニアの王女タバサ。15歳。
私には双子のお兄ちゃん(つまり王子ね)であり、
あの『伝説の勇者様』でもあるレックスがいる。もちろん、15歳。
あー、今思い出しても恥ずかしいの。
・・・え?違う違う。 お兄ちゃんが好きなのは昔も今も変わらないよ。
632 :
627:05/01/06 21:36:01 ID:IEhEI/+Z
ただ、ほら。私とお兄ちゃんはどうあがいても結婚できない。
私、本で読んだから知ってるけど、こういうの近・・・あ、ダメ。やっぱり言うのは恥ずかしい。
・・・とにかく!だめなものはだめなの。
だから、私は恐れ多いことを言っちゃったんだなぁって恥ずかしがっていたの。
さっきも言ったけど、お兄ちゃんのことは大好き、世界中の誰よりも。
簡単に忘れられるわけないし、私は絶対に忘れてやらない。
この気持ちは隠しながら生きてやるんだ――
苦しいけど、お兄ちゃんには言えないね、心配させちゃう。
それに、もし私が好きだ何ていったら、いや言わないけど、
『そんなのが何だっていうんだよ!』って絶対つっぱしっていっちゃうしね。
633 :
627:05/01/06 21:39:12 ID:IEhEI/+Z
ひょっとしたら、お兄ちゃんも私のことが好きなのかもしれない。
・・・あ、だめなの。やっぱり言い切る自信ない。
もしかしたら、それは男女の間にあるものじゃなくて、兄妹の間にあるものかもしれないから。
あぁ、もう朝じゃない? お日様が昇ってきたわ。お兄ちゃん、起こさなきゃね。
* 朝の挨拶 *
634 :
627:05/01/06 21:40:06 ID:IEhEI/+Z
コンコン。 一応ノックはしてみた。
・・・暫く待ったけれど、やはりというか、その部屋の持ち主の声は返ってこなかった。
コンコンコン。 今度はさっきよりちょっと強めにノックしてみる。
・・・・・・。 やっぱり、反応はない。
しょうがないな。 その場でお兄ちゃん、ゴメンね。 と言ってから私はドアを開けた。
開けたとたん、下から何かが・・・・・・。
「へっへー!」
まるで、悪戯が成功したときのようなにんまりした顔で私のほうを見つめてくるのは――
「タバサだと思った! タバサ、おはよう!」
635 :
627:05/01/06 21:40:58 ID:IEhEI/+Z
あ、あれ? お兄ちゃん、寝てなかったの?
「お、おは、おはよ! ・・・・・・。」
動揺した。突然だったから、その、心の準備ってものができてなかったの。
私と同じ青い澄んだ瞳で。 まっすぐこっちを見つめてくるお兄ちゃん。
・・・・・・朝からこんな攻撃、反則よぅ・・・・・・。
きっと、私の顔すっごく赤いだろうな。
でも。
「タバサ、いつも起こしにきてくれてありがとうね。」
私のお兄ちゃんは多分わかってないんじゃないかな。
私がお兄ちゃんを起こす理由は二つある。
一つはもちろん、小さな頃から変わってないおねぼうさんのお兄ちゃんを朝食に間に合わせること。
636 :
627:05/01/06 21:42:15 ID:IEhEI/+Z
もう一つは、お兄ちゃんの寝顔を見ること。
起こす理由が二つになったのはいつからだったかな。
"あの"セリフを発した時ぐらいからかな。 世界がやっとやっと平和になった時。
「いいえ、どういたしましてっ。 大丈夫、これからも起こしてあげるからね!」
もし神様がいるのなら。 どうかお兄ちゃんがいつまでもおねぼうさんでありますように。
「ね、今日は何する?どこかいく?」
私はお兄ちゃんに尋ねます。
「うーん、そうだなぁ。・・・タバサはいきたいとこある?」
「え、私?」
いつもはお兄ちゃんが今日は森だ、丘だ、教会だ、なんて決めるんだけど。
今日はどうしたんだろ?
637 :
627:05/01/06 21:43:14 ID:IEhEI/+Z
「・・・私はね、妖精の村にいきたいな。」
「妖精の村かぁ。確か町の外すごろく場があったっけ。」
「は?」
「タバサもすごろく好きで嬉しいよ。頑張って賞品もらおうね。」
「はぁ・・・。」
「あれー? あ、タバサはすごろく場にいきたくないの?」
あぁ、そんな目でみないで。 その子犬がお預けをくらってしまったような目を。
ほんとに、こんな顔をする人が世界を救った『勇者様』だなんて思えないわ・・・。
というか、こんな目で見られたら私は絶対うんとはいえないの。
「・・・いきたい・・・です。」
「ん、よかった。」
にこっとうれしそうに笑うお兄ちゃんの顔も、もちろん大好き。
638 :
627:05/01/06 21:44:46 ID:IEhEI/+Z
あーうー。 ・・・いや、確かに私もすごろくは大好きよ。
でも、今日はすごろく場にいこうなんてぜんぜん思ってなかった。
お兄ちゃんとあの村を散歩して、それであのきれいな湖のほとりにあるお花畑で
ほんのちょっとだけ一緒に過ごせたらいいな、なんて思っただけ。
うーん、やっぱりお兄ちゃん、私のことなんとも思ってないのかしら・・・。
あ、いけない。もうこんな時間・・・お父さん達が待ってるわ。
「さ、お兄ちゃん。 もうそろそろ朝食の時間だよ。身支度したら降りてきてね!」
あんまり待たせてはいけないから―私も自分の部屋にいくことにした。
639 :
627:05/01/06 21:46:38 ID:IEhEI/+Z
「遅かったな、二人とも。」
食卓の椅子には既に両親が座っていて、
テーブルの上には既においしそうな料理がたくさんのっていた。
お父さん。
「ごめんなさい、遅くなって。」
いつもよりちょっと遅かったから、ちゃんとあやまっておかないと。
母親が軽くタバサをからかう。
「タバサもおねぼうしちゃった?」
「ううん――あ、まぁ、そんなとこです・・・。」
私は面倒だったから、そういうことにしておいた。
「あらあら。・・・ふふっ、全然構わないわよ。さぁ、こっちに座って、一緒にいただきましょう。」
「うん!」
とりあえず、私も食事にありついた。
640 :
627:05/01/06 21:49:11 ID:IEhEI/+Z
「ごちそうさまー。」
いつものことながら、食欲旺盛。ま、いいことなんだけど。
満足そうに微笑んでるお兄ちゃんを見てると私まで嬉しくなりそう。・・・私が作った料理じゃないけど。
むー。私もいつかお兄ちゃんを満足させられる料理をつくってあの微笑みを独り占めしてやる。
「タバサ、はやくいこうよっ!」
「ん、どこかいくのか?二人とも。」
「うん、タバサとね、妖精の村まで!」
「そうかそうか。」
これまた満足そうに微笑む私のお父さん。
641 :
627:05/01/06 21:50:16 ID:IEhEI/+Z
「あー、うん。 これ飲んだら・・・・うん、ごちそうさま。」
私も、最後に暖かい紅茶を一杯いただいてから、席をたった。
「気をつけていってくるんだよ。」
「うん、気をつける。じゃ、タバサお願いね!しゅっぱーつ!」
「いってきます。 ・・・ルーラ!」
向かう先は、妖精のすごろく場。
fin
642 :
627:05/01/06 21:56:39 ID:IEhEI/+Z
あの、お付き合いありがとうございました。
>>641 イイ!自分の考えていた妄想以上に萌えました
ぜひまた作品投下キボン
>>642 も、萌え死にさせる気ですか……。
冒頭から直撃食らった上に、連打連打サンドバッグ状態で、もう腰が立ちません。
地の文が必要最低限に簡潔なところも、
会話が自然なところも、語りが見事に甘美主義な女子中学生っぽいところも……スバラシイ!
どこがクリアリ風味なのかはわかりませんでしたが、とにかく拍手喝采っす。
次回作も是非! ずっと正座してお待ちしておりまーす。
15歳ぐらいだと精神的に男は子供っぽくて女は大人っぽい感じかな。
だけど身体的には男は大人っぽいからそのギャップが良い。
>>594の『brave』を書かせて頂いたものです。短編書いてみたので投下ー。
お父さんが、泣いている。
とても強くて、優しくて。いつもわたしたちを安心させてくれるお父さんが、泣いている。
わたしたちがいるから、何度も、何度も、涙をこらえようとしているのがわかった。
わたしたちを安心させようと、なにかを説明しようとするのがわかった。
けれど、お父さんの言葉は嗚咽にしかならなくて。
だからわたしも哀しくなって、目に涙が浮かんだ。
そんなわたしの手を、隣にいるテンが強く握る。
泣くな、というように。
見れば、テンも泣きそうに顔を歪めていた。だけど、こらえていた。
しっかりと床を踏みしめて、うつむくことなく。
そう、今は、わたしたちが泣いたらダメなんだ。
泣くのがみっともない、なんて理由じゃない。
お父さんが、泣いているから。
お父さんが、哀しんでいるから。
だから、今、わたしたちが泣いてはいけなかった。
お父さん、と声をかける。
やさしい声を出せるように、必死で哀しみを押し殺す。
「いいの、なにも言わなくて」
声をかけた途端、哀しみがせり上がり、目に涙が盛り上がった。
テンの手をもっと強く握って、こらえる。
哀しみを表に出さないように。
哀しみを声に乗せないように。
言葉を、続ける。
――――だから、泣くのをがまんしないで――――
妖精城のある一室。目の前には、一枚の絵。
それは心を映し出す、一枚の鏡であり。
その心象風景へと誘う、一枚の扉であり。
お父さんが、通って帰ってきた道だった。
わたしとテンは手をつないで、その絵の前に立っている。
お父さんの姿はない。無事にゴールドオーブを持って帰ってこれたことを報告するために、女王様に謁見している最中だった。
そのお父さんの目を盗む形で、わたしたちはここに立っている。
お父さんが涙を流しているとき、思ってしまったのだ。
今ここに、お母さんがいれば、と。
お母さんがいれば、哀しむお父さんを癒してくれるのに、と。
そして、哀しむわたしたちを慰めてくれるだろうに、と。
それはずっとずっと心の底にあった想い。
お父さんの涙をきっかけに、それは溢れ出していた。
目を閉じて、強く祈る。お母さんに逢いたい、と。
ふたりで、じっと、じっと祈りを続ける。
なにも変わらない。お願い、早く、早く連れて行って。
お父さんがわたしたちを捜しに戻ってきてしまう。
過去へ行くには、強い覚悟と、意志が必要だと女王様は言っていた。
そうでなければ、過去を改竄する誘惑に耐えられないから。世界を、壊してしまうから。
願う、願う。強く願う。
―――ひとめ逢えるだけでいいから。ずっと捜しつづけている面影に。
―――ほんの少し触れるだけでいいから。ずっと求めつづけている温もりに。
時間だけが過ぎていく。
去っていく時間をつなぎとめるように、お互いの手を強く握り、歯を食いしばった。
―――願いは、届いた。
世界が変わり、色彩が死んで。
時や、人や、花が乱気流へと逆転してゆく。
そして、唐突に静止。
周りを見渡せば、そこは。
見慣れた故郷、グランバニア。
正門の前で城壁を見上げた。
お母さんを捜す旅に出てから、そういえば帰ってくるのははじめてだな、と思った。
だけどこのときは懐かしさよりも、緊張の方が勝っていた。
お母さんが、近くにいる。
手をつないだまま城下町を歩く。街はどこか浮ついた、喜びの雰囲気に満ちていた。
街の人々の会話が、耳に飛び込んでくる。
―――王子様はいつ王位につくんだ。
―――それよりも奥方様のご出産が先じゃないのか。
―――男の子と女の子、どっちなんだろうねえ。
王子様、奥方様、出産、男の子、女の子。これらの言葉を聞くたびに心臓が跳ねる。
本当に、ここは過去なんだ。
本当に、ここにお母さんがいるんだ。
ここではわたしたちは見知らぬ子供でしかない。だから城内を自由に歩くことができない。謁見の間や王室に近づいたら見張りの兵士に咎められてしまう。
夜まで待とうか、と逡巡して、その考えを捨てる。夜になる前に現実へ戻されるだろう。
そもそも、過去の世界に居続けるなんてこと、そんなに時間に余裕があるとは思えない。
なによりも、お母さんが近くにいると思うと夜までなんて待っていられなかった。
飾り彫りの多い壁を登ってうまく見張りの人をかわして、外へ。
そうして、外周を回り、王室のテラスの下へと辿り着いた。
お母さんがいるだろう、その場所。
だけど。
「ここから、どうしよう……?」
ここから見上げるテラスの位置は高く、壁も平坦で登れそうになかった。
いつまでもここに留まっているわけにもいかない。見張りの人にみつかってしまう。
目に涙が浮かぶ。こんなに近くにいるのに。
ほんのちょっとだけ、ほんの一瞬だけでいいから。
「こら、きみたち、どこから入ってきたんだ?」
みつかった!!
頭の中が真っ白になる。見張りの衛士さんがふたり、わたしたちの方へやってくる。
逃げようか? ううん、だめだ。今を逃したら現実へ連れ戻されてしまう。
ぎゅっ、と手に確かな感触。テンが力強くわたしの手を握って、わたしの動転をおさめてくれた。
わたしを庇うように前にでて、衛士さんに声をかける。
「あ、あのっ」
一瞬、口ごもって。決心したように、口を開く。
王妃様に逢わせてください、と。
あたりまえのことだけど、その懇願は聞き届けられなかった。
わたしも声をあげてもう一度お願いしたけれど、その人はすまなさそうに、それはできないんだよ、と言った。
あきらめきれなかったけれど、わたしたちの必死さを受けとめて、真摯にこたえてくれた衛士さんをこれ以上困らせることもできなくて。
やっぱり、だめなのかな。お母さんに逢うためだけに過去へ行こうなんて、間違っていたのかな。
目が熱くなり涙がこみあげる。胸が哀しみに押しつぶされそうになる。
逢いたい、よ。
お母さん、お母さん。
―――なあに? どうしたの?
まるで。
祈りにこたえるように。
わたしにこたえるように。
その声はわたしとテンの後ろから。
「ビアンカ様、お体の方は……」
「大丈夫よ。からだを動かしていた方が、お産にも子供にもいいんだって。それに今、王室に戻るところだから。それで、その子達は?」
「は、どうも先程からビアンカ様にお会いしたい、と……」
「あたしに?」
背中の女の人の意識が、わたしたちへと向けられる。
それを感じただけで、うるさいくらいに鼓動が脈打つ。
振り向いた。緊張でこわばったからだを、もどかしい思いで動かした。
やっと、逢えた。
物心ついてはじめて、その人を目に映す。
明るい金色のまとめ髪、わたしたちと同じ。
瞳は透き通った空の色、わたしたちと同じ。
おおきなお腹にある命は、わたしたち。
言葉が、出てこない。胸が感動でいっぱいで息が詰まる。
知らず、テンの手を握っていた。
涙を流してお母さんをびっくりさせないように。お母さんの姿が、霞まないように。
「ふたりは兄妹、なのかな? 仲がいいのね」
わたしたちのつないだ手を見ながら言う。
あたたかい声だった。お父さんやサンチョとは、別の種類の優しさがここにある。
「あたしに、なにか用事かな?」
お腹を押さえながら床にひざを落として、目線を合わせる。
そんななにげない動作すら、わたしの心に染みこんでいくものだから。
せっかくお母さんが話しかけてくれるのに、涙をこらえて首を振るだけが精一杯だった。
不意に、お母さんは、そんなわたしたちをそっと抱き寄せる。
「――――!?」
おどろきで、言葉が詰まる。どうして、とお母さんへと顔をあげた。
「なにがあったのか、わからないけれど」
お母さんの、こたえ。
――――泣くのをがまんしないで――――
ああ―――
お母さん、お母さん。この人が、わたしのお母さん。
その言葉に、甘えたかった。
この人の胸に顔を埋めて、声をあげて泣きたかった。
だけど、だけど。
これ以上、甘えてしまったら―――
だから。
そっと。
その人から、はなれた。
「ごめんなさい。すごく、すごくうれしいんです。だけど、今はまだ、泣いちゃいけないと思うから」
お母さんと目を合わせる。
「そう? うーん、ちょっとさびしいなあ」
これがお母さんと交わした、はじめての言葉。
拒絶したわたしたちに気を悪くした様子もなく、彼女は明るくこたえる。
「でも、ほんとに意地を張ってがまんするのは良くないわよ〜?」
いたずらっぽく、言う。なんとなく、テンに似てるな、なんて思って、自然と笑みがこぼれた。
そのテンが、大丈夫です、とこたえを返す。
「甘えたい人が、別にいるから。今はまだ、逢えないけれど。いつか逢えた日には、その人に甘えて、いっぱい泣きます」
その言葉に、お母さんは目を丸くした。だけど詮索はせずに、ただ、ひとこと。
「その人に逢えるように、あたしも応援してるわ」
「……はい!」
そうしてお腹を重たげに、お母さんは立ちあがる。
お別れの前に、わたしはひとつ尋ねた。
「どうして、見ず知らずのわたしたちにやさしくしてくれたんですか?」
そんなわたしの質問に、お母さんはお腹を慈しむように撫でてから、こたえてくれた。
「この子が大きくなって、さっきのあなたたちのように涙をこらえていたなら。素直に、泣いてほしい」
なんだか不思議なんだけど、あなたたちにはそんなことを思ったから、と彼女は続けた。
―――それは、あなたのお腹にいるのが、わたしたちだから。
「じゃあ、わたしたちは行きます。お逢いできて、よかった」
名残惜しさを振り切るように、わたしは言う。
「丈夫な赤ちゃん、産んでくださいね」
「それは心配ないわ。こ〜んなにおおきな赤ちゃんだもの」
彼女は知らない。そのお腹には、赤ちゃんがふたりもいることを。
テンとふたり、視線を交わして笑い合った。
「また、逢えるといいわね?」
「……はい。また、いつか」
「いつか必ず、逢いに行きます」
そして。
世界が変わり。
色彩が死んで―――
まるで何事もなかったように、目の前には一枚の絵があった。
現実へ、戻ってきたのだ。
「なんか、さっぱりした」
テンがぽつりと言う。
そういえば、涙はもう出なくなっている。
「そうだね、さっぱりした」
「ねえ、ソラ」
「なあに?」
「かならず、お母さんをみつけよう」
「うん、そうして、いっぱいいっぱい、泣いてあげようよ」
決意は新たに。
さあ、いこう。
お父さんが、待っている。
>>653で名前欄ミスりました_| ̄|○
7/8ですな。
DQ5初プレイ時に主人公が過去サンタローズにいった後、他のキャラならどうなるんだろう? と思って並び替えて妖精に話しかけてみたら、
なんだ主人公しか過去にいけないのか(´・ω・`)ショボーン と思ったことを今でも覚えています。
つまりはそういうネタです。はい。
SS書くのはやっぱりムズイ。でも楽しい。批判意見歓迎。
リアルタイムキタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━━━!!!!
キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!
ぉっです。
>>655 GJ!
子どもたちが健気すぎて目頭熱くなった。
批判というか要望としては母との対面にテンをもっと絡ませて欲しかったな。
>>655 よかったです、GJ!
妖精の村のあの絵画はSSの材料としても映えますね。
なんていうのかな、うまく表現できないけれど。
ちゃんと、親の気持ちを理解しようと頑張っていて。
それでいて素直で。我慢もしっていて。・・・こんな子ども達、好きです。
鯖復活
鯖復活かよかったねぇ
>>631-641 朝の挨拶 (side タバサ)
の対になるものとして 朝の挨拶 (sideレックス)を作ってみました。
おかしいな、私からもクリアリに見えない。(--;)
宜しければ今後のために良かった点や悪かった点をご教授いただきたいと思います。
では↓どうぞ。
662 :
661:05/01/10 11:30:09 ID:YQslz/+e
タバサの夢を見た。
思わず、目が覚めてしまう。今、何時だろう。
どきどき。
あぁ、まだ胸の高まりがおさまらない。
『ダメっ。 お兄ちゃんは私と結婚するの!』
妹のあのセリフは本当なのかな。
いやいや、何を考えているんだ、僕は。そんなはずがないよ。
あれは妹が僕を慕うあまりについ言葉になったもの。
そこには兄妹以上の感情なんて、ないはずだから――。
663 :
661:05/01/10 11:30:58 ID:YQslz/+e
僕はグランバニア王子、レックス。15歳。
僕には双子の妹、タバサがいる。つまり、グランバニアの王女。
もちろん、同い年。
あぁ、でも何か期待せずにはいられないな。
え、何でかって? 笑わないでくれよ。 僕はタバサのことが好きなんだ。
つまり、期待してるのは、タバサが僕のことを、
あー・・・その、好きだと思ってくれているかもしれない・・・ってこと。
あ、笑ったね?あぁ、もういいんだ、別に。
兄妹で結婚なんて、できないからね。タバサは僕より賢いから多分知ってる。
664 :
661:05/01/10 11:31:33 ID:YQslz/+e
好きだ、なんて言うつもりはない。
一生、隠しながら生きていくつもりだよ。
考えてみてよ、タバサなんかに言ったら大変でしょ。
『お兄ちゃん、大好き!』で住めばいいけど、『兄妹で結婚した例ならあるわ!』って
まーた分厚い本をひっさげて僕のところにくるに違いないよ? ははっ。
・・・空が白み始めてきた。 朝になってしまった。
そういえば、タバサもそろそろ僕を起こしに来る頃だなぁ。
この時間に起きているなんて久々だし、うん、いっちょ脅かしてやろうかな。
* 朝の挨拶 side レックス *
665 :
661:05/01/10 11:32:02 ID:YQslz/+e
コンコン。 遠慮がちにドアを叩いてくるのは、タバサ。
そのノックの仕方は絶対にタバサしかありえない。
だって、父さんならもう少し力強いし、母さんのノックは絶対に4回。サンチョは・・・。
コンコンコン。 先ほどより少し強めにノックされる。
さぁ、はやく入ってこいっ。 くく・・・ あぁ、いけない。悟られないようにしないと。
ガチャ。 ドアが開かれる。
今だ!
ばっ!
しゃがんでた僕はタバサの前に素早く陣取って、いっきに立ち上がった。
おぉ、驚いてる、驚いてる。
666 :
661:05/01/10 11:32:35 ID:YQslz/+e
「へっへー!」
声にだしてにんまりしたのは、あんまりにも驚いたタバサが可愛かったのと、
僕のびっくりし掛けに驚いてくれた嬉しさとが合わさったから。
にやけ顔を見られたくなかったから、あくまでも悪戯が成功して
やったと喜んでいるかのように見せかけたんだ。
――ところで、タバサは気づいてるのかな?
今君がしているその瞳が、決心した僕を惑わすことを。
髪に触れたい。抱きしめたい。独占したい。
あ、いけない!思わず、見とれてしまった。
・・・大丈夫かな?
あれ、タバサの顔がちょっと赤みをましてるような・・・
えーっと、もしかして・・・
667 :
661:05/01/10 11:33:05 ID:YQslz/+e
――気のせいだ。落ち着け、レックス。
あぁ、そうだ。レックス、落ち着くんだ。
僕はやっとのことで今の煩悩を振り払うことに成功した。
落ち着くために、何か違うこと、違うこと。 そうだ、お礼いってない。
「タバサ、いつも起こしにきてくれてありがとうね。」
ちょっと間があったけど、タバサはすぐに答えてくれた。・・・とびきりの笑顔つきで。
「いいえ、どういたしましてっ。 大丈夫、これからも起こしてあげるからね!」
あぁ、神様。どうかタバサの笑顔をいつまでもお守りください――
668 :
661:05/01/10 11:33:29 ID:YQslz/+e
「ね、今日は何する?どこかいく?」
タバサが僕に尋ねてくる。
「うーん、そうだなぁ。 ・・・タバサはいきたいとこ、ある?」
「え、私?」
――もう、だいたいのところは行ったし。
森も、丘も教会も。それに町や城だって、ラインハット、アルカパ、サンタローズ。
他にもエルヘブン、サラボナ、・・・・・・。 やっぱり、だいたいのところは行ってる。
たまには、タバサのお勧めの場所にでもいってみたいな。そう思ったから。
「・・・私はね、妖精の村にいきたいな。」
妖精の村。 あそこは、暖かいし、どこか陽気で。
それに、たくさんの種類の花が育っているし、きれいな湖もある。
あそこだけは何か恥ずかしくて、わざと行き先からはずしていた。
669 :
661:05/01/10 11:34:01 ID:YQslz/+e
タバサは何を期待してるの?
僕がそこにいくことで期待するのは、もちろん――。
あ、いや待て待て。 やっぱりそんな話があるわけない。
確かすごろく場が妖精の村の外にあったはず。
タバサは旅の途中に珍しくすごろくしたいとせがんだぐらいだから、
よっぽど好きなんだと思う。
「妖精の村かぁ。確か村の外にすごろく場があったっけ。」
「は?」
「タバサもすごろく好きで嬉しいよ。頑張って景品もらおうね。」
そんなにうまくいかないよな。 はーーっ。
あ、やばい。絶対今の目みられた。 あぁ、僕のバカ!
670 :
661:05/01/10 11:35:34 ID:YQslz/+e
「・・・いきたい・・・です。」
・・・なんとか大丈夫だったみたい。
「ん。よかった。」
にこっと僕はタバサに笑いかけた。 よかった。
長い沈黙。
その沈黙を先に破ったのはタバサ。
「さ、お兄ちゃん。 もうそろそろ朝食の時間だよ。身支度したら降りてきてね!」
あ、そうか。もうそんな時間か・・・。
もうちょっとタバサと一緒にいたかったけど、こればかりは仕方ないか。
僕はまず顔を洗った。
671 :
661:05/01/10 11:36:15 ID:YQslz/+e
「遅かったな、二人とも。」
食卓の椅子には既に両親が座っていて、
テーブルの上には既においしそうな料理がたくさんのっていた。
横を見ると、タバサも降りてきてた。
「ごめんなさい、遅くなって。」
? タバサが謝ることないのに。
「タバサもおねぼうしちゃった?」
はずれ!ちゃんとタバサは僕のこと起こしにきてくれたよ。
僕がちょっと悪戯したせいだから・・・
僕がごめんって言いかけたとき、タバサの唇がまた動き始めた。
672 :
661:05/01/10 11:36:57 ID:YQslz/+e
「ううん――あ、まぁ、そんなとこです・・・。」
え? またなんでタバサ違うこと言うのさ。
「あらあら。・・・ふふっ、全然構わないわよ。
さぁ、こっちに座って、一緒にいただきましょう。」
「うん!」
まぁ、いいか・・・。
おなかペコペコだよ、いただきまーす!
「ごちそうさまー。」
うん、よく食べた食べた。
タバサのほうをチラッと見ると・・・やっぱり。
今日も信じられないって言いたげな目を向けるなよ。
思春期の男にはこれぐらいの栄養が必要なんだぞっ。・・・たぶん。
673 :
661:05/01/10 11:38:07 ID:YQslz/+e
「タバサ、はやくいこうよっ!」
すごろく、楽しみだな!
・・・ほんとにすごろくが楽しみなのか?僕は?
「ん、どこかいくのか?二人とも。」
「うん、タバサとね、妖精の村まで!」
すごろくはモンスターがでたり、力がついたと思えば足の動きが遅くなったりで
結構危険だってことは旅の途中でもイヤというほど経験してる。
だからお父さんやお母さんはすごろくをやるなんて言ったら絶対反対すると思う。
だから本当の行き先がすごろく場だってことは、とりあえず言わないでおいた。
「そうかそうか。 」
満足そうに微笑むお父さん。この笑顔が大好き。
僕もいつかこういう風に微笑むことができるようになりたいなぁ。
674 :
661:05/01/10 11:38:30 ID:YQslz/+e
「あー、うん。 これ飲んだら・・・・うん、ごちそうさま。」
うんうん、だから早く飲んでっ!・・・よし、飲み終わったね!
さぁ、行こう。
「気をつけていってくるんだよ。」
「うん、気をつける。じゃ、タバサお願いね!しゅっぱーつ!」
「いってきます。 ・・・ルーラ!」
向かう先は、妖精のすごろく場。
fin
675 :
661:05/01/10 11:40:01 ID:YQslz/+e
お付き合いありがとうございました。
>>675 萌え萌え(;´Д`)
4日間正座してお待ちしていた甲斐がありましたw
ほとんど無駄のない文章、それでいて引っかかることなくスムーズに読める流れ、
あまつさえ萌えを十二分に表現できるというのはセンスのなせる業。うう、うらやましい……。
指摘してほしいということなので、ごく細かいところを2カ所だけ。
>>666>>667>>668の「――」からはじまる内的独白。レックスの心の、さらにその中の心の声ですね。
>>667での使い方を見たときは、うまい!と感じましたが、
>>668で、あれ、使い方統一してない、もったいないなと思いました。
ここは心の声というよりほとんど説明に読めますので、「――」を使うなら、
たとえば「――タバサとは〜」と二人一緒に行ったことを強調して感情を乗せるか、「――もう、行くところなんてある?」と冷ました台詞のほうがいいと思います。
>>667も「ところで」という論理接続詞はなくしたほうがいいでしょう。漏れなら「――ねえ。タバサは〜」と色気をこめてしまうところですがw
それから、
>>673中段のパラグラフ、「すごろくは〜おいた。」
前のレックス自身の台詞と、「すごろくは〜。」の文が一見無関係で、せっかくすんなり読めてきた流れがここで途切れてしまっています。
「すごろくは危険なので両親が反対される。だからすごろくのことは黙っていた」と読者を待たせるよりも、
「すごろくのことは黙っていた。なぜならすごろくは危険なので反対されるから」としたほうが、読者を不安にさせず、流れを切りません。
では、次回作も……さすがに正座は疲れたので羽織袴着てお待ちしておりまーす。
レックスサイドキタ━━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━!!!!
意識してなさそうに見えてどっちもどっちでしたか
なにかいやされました
GODJOBです
679 :
661:05/01/10 22:29:24 ID:YQslz/+e
>>643-646さん
>>676-678さん
私の作品をお読みいただきました上、
身に余るお褒めの言葉を頂きまして私は本当に果報者でございます。
また1レス劇場さんの2つのアドバイスは今後にしっかりと生かさせていただきます。
それでは、題材を考えつつまたROMに戻ります。ありがとうございました。
>>519からの続きです。少し間がきましたが。
親子の絆
僕の名前はテン。グランバニアという国の王子だ。
妹の名前はソラ。ソラは名前のとおり空の様な青色の髪をもつ女の子だ。
僕たちは行方不明のお父さんとお母さんを探していた。
「ねえ、お兄ちゃん。世界地図を見ていたら『うわさの祠』っていう場所を見つけたの。
もしかしたらお父さんとお母さんの噂があるかもしれないよ。行って見ましょう。」
うわさの祠は西の大陸の交通の要所でいろいろな人と情報が集まってくるらしい。
「へー。なんだか怪しい祠だね。ドリスお姉ちゃんも誘って行ってみようか。」
僕がこう言うとソラは黙り込んでしまった。
「どうしたの?」
「あのね。ドリスお姉ちゃんは誘わないで欲しいの。」
「なんで? ドリスお姉ちゃん、鬼のように頼りになるのに。」
「でもね、ドリスお姉ちゃん忙しいみたいなの。オジロンさんのお手伝いしているの。」
そういえば最近ドリスお姉ちゃんは国の仕事を手伝っているらしい。
国王であるお父さんがいない間、国のことは大叔父のオジロンさんが取り仕切っている。
だけどちょっと頼りないところがあるからドリスお姉ちゃんが助けているんだね。
「それじゃ二人で行こうか。ああ、マウスとガップルも連れて行く?」
マウスとガップルはソラが仲間にしたモンスターだ。ソラはモンスター使いの才能がある。
僕の言葉にソラは『うん。』と返事をしたので、僕たちは旅の準備を始めた。
みんなが心配しないように置手紙をしておこう。
前にラインハットから勝手に旅に出ちゃったらサンチョが死ぬほど心配していたらしい。
ちょっと悪いことしちゃったとは思うけど、取り乱しすぎだと思うよ。
うわさの祠はルラフェンから南に行けばいい。ソラはルラフェンへ向けてルーラを唱えた。
僕らはうわさの祠で情報を集めた。お父さんたちの話はなかったけれど面白い話を聞けた。
遥か天空にお城があって、そこに住んでいる竜の神様は何でも知っているということだ。
そして、その神様に会えるのは天空の武器防具を身につけた勇者様だけだそうだ。
竜の神様だったらお父さんとお母さんがどこにいるかも知っているはずだよね。
その竜の神様に会うために、僕たちは伝説の勇者様を見つければいいんだ。
勇者様の話だったらお父さんたちと違っていろいろな情報が集められそうだよ。
「勇者様のことだったらテルパドールっていう国にいけば何か分かると思うの。
その国では昔の勇者様を祀っているらしいの。天空の防具のひとつもあるんだって。」
流石ソラはよく勉強しているね。よし、これからその国を目指して冒険だ。
テルパドールは遥か南の大陸にある砂漠の中にある国らしい。
陸路だけでは行くことができない。そのうえ、今は定期船も出ていないみたいだ。
「自由に使える船がないと駄目みたいだね。どこかにそんな都合のいい船はないかな。」
「お兄ちゃん。ルドマンおじいちゃんに頼んでみようよ。」
ルドマンおじいちゃんか。確かにおじいちゃんは自分の船を持っていたよね。
「ルドマンオジイチャンッテ、ダーレ?」
ガップルが聞いてきた。
「ルドマンおじいちゃんは僕たちのお母さんのお父さんなんだ。
サラボナって町に住んでいて、お金持ちだから船だって持っているんだよ。」
「スゴーイ。ルドマンオジイチャン! ルドマンオジイチャン!」
「あはは。ガップルは可愛いね。」
僕とソラの会話を聞いていたソラが突然こう言い出した。
「ルドマンオジイチャン! ルドマンオジイチャン!」
「急にどうしたんだい? ソラ。」
「……なんでもないです。」
そう言うとソラは顔を赤くして黙ってしまった。
もしかして物まねだったのかな。だったら『似てるよ』って言ってあげればよかった。
僕たちはルドマンおじいちゃんに船を貸してもらうためサラボナへと向かうことにした。
サラボナはうわさの祠からさらに南にある。
僕たちはうわさの祠の南の洞窟を越えてサラボナの近くまでやってきた。
「もうすぐ町に着くはずなの。」
ソラが地図を見ながらそう言った。
ガサガサッ。
突然物陰から音が聞こえてきたと思ったら、見たことのないモンスターが飛び出してきた。
こういうときは先手必勝だ。僕は剣を構え凶悪な顔のモンスターに切りかかる。
「くそ! 一撃じゃ倒せなかったか。」
その頑丈なモンスターは僕の一振りに動じることはなかった。
しかし、モンスターは様子を見るばかりで攻撃してくる様子はない。
「チャンスだ。今のうちに一気に倒すぞ!」
さらに僕は剣で切りつける。
「ソラも援護してくれ!」
僕はさっきから戦闘に参加する気配のないソラに向かって叫んだ。
そんな僕に対してソラはこう返してきた。
「お兄ちゃん! このモンスター、爆弾岩なの!」
爆弾岩。それはうわさに聞くあのモンスターですか。あの魔法を使うモンスターですよね。
自分の命と引き換えに敵に大打撃を与えるメガンテの呪文を使うモンスター……
「メ、メガ……」
僕が呆然とした隙に爆弾岩が呪文を唱えようとしていた。
「ソラ! お前だけでも馬車の中に避難しろ!」
「イヤなの!」
僕はソラを無理やり馬車に押し込んだ。……さよなら、ソラ。
僕は静かに目を閉じた。
「ラリホー。」
唐突に男の人の声が聞こえた。……ラリホー、敵を眠らせる呪文だ。
僕が目を開けると爆弾岩の眠っている姿が目に入った。
「大丈夫かい? 今のうちにこの場を離れよう。」
僕にそう言って来たのは優しい顔をした詩人風のお兄さんだった。
「そうか。アンディがテンとソラを助けてくれたのだな。例を言うぞ。」
僕たちはサラボナのルドマンおじいちゃんのところに来ていた。
爆弾岩から僕たちを助けてくれたお兄さんはアンディさんというらしい。
「テン、ソラ、あまり危険なことをしては駄目だよ。」
「はい、おじいちゃん。」
「ごめんなさいなの。」
そう言われると船を貸して欲しいってことを切り出しにくいなぁ。
「ところで今日はどんな用で来たんだい? ただ私に会いに来ただけじゃあるまい。
こんなところまで子供二人で来るなんて、よっぽどのことなんだろう?」
流石おじいちゃん、何でもお見通しだね。僕たちは船を貸して欲しいとお願いした。
「確かに私は船を持っているがね。子供たちだけで船旅をさせるわけにはいかないな。」
ルドマンおじいちゃんは渋い顔をした。僕たちを心配してくれているのだろう。
だけど、僕たちは自分たちの力でお父さんとお母さんのことを探すと決めたんだ。
僕とソラは必死でおじいちゃんに船を使わせてくれるようにお願いした。
「うーん。では、私のお使いを頼まれてくれたら船を貸してあげよう。これでいいかな?」
ルドマンおじいちゃんはついに折れた。僕たちはおじいちゃんのお使いを引き受けた。
「じつはこの町の北にある山奥の村の西の小島に小さなほこらがあるんだが、
そのほこらの中に置いてあるツボの様子を見て来てもらいたいのだ。
そこへ行くための船は用意する。お前たちも船の感触がつかめてちょうどいいだろう。
ちゃんとできたら船を貸そう。いろいろ準備が要るから今日は泊まっていきなさい。」
変なお使いだけど、それで船が貸してもらえるんだ。がんばって壷を見てこよう。
――その夜。
僕は夜中に目を覚ました。そしてベッドから抜け出して部屋を出た。目指すのはトイレだ。
トイレを探していると灯りの点いた部屋があった。まだおじいちゃんが起きてるのかな?
部屋の中から話し声が聞こえてくる。おじいちゃんとおばあちゃんの声だ。
「ねえ、あなた。テンとソラに船を貸すなんて辞めてください。
二人はまだ小さいんですよ。船での旅なんて危険過ぎますわ。」
「テンとソラはフローラとあの人の子供だ。船を貸さずとも旅をやめることはあるまい。
だから、私たちにできることは二人の旅をサポートしてあげることぐらいなんだ。」
「それに、本当にフローラたちは無事なんでしょうか。」
「きっと無事だよ。信じるんだ。私たちは信じるしかない。」
「でも幼いあの子達を残して今まで姿を現さないなんて……」
「そんな顔をしてはいけないよ。私たちがフローラの無事を疑ってどうするんだい。
それに、そんな顔をテンとソラに見せてごらん。二人まで不安にさせてしまうよ。」
「……そうですわね。ごめんなさい、私がどうかしていました。
私たちにはあの子達の旅の無事を祈るしかないようね。二人を笑顔で送り出しますわ。」
あんな弱気なおばあちゃん始めて見たよ。きっと夜には人の一番弱い所が出てくるんだね。
暗い夜に見せる顔を見ることができるのは、その人の一番近くにいる人だけなんだ。
そんなことを思いながら僕はベッドに戻った……んじゃなかった。トイレに来たんだっけ。
次の日、僕とソラはおじいちゃんに頼まれた壷の様子を見るお使いに出た。
途中で襲ってくるモンスターを撃退して僕たちはお使いを成し遂げた。
壷の様子をおじいちゃんに伝えると、おじいちゃんの様子が一変した。
僕たちに一刻も早く船で旅に出た方が良いなんて言い出したんだ。
お使いの前にはもう『少し泊まっていきなさい』と言っていたのに。
あの黄色く光る壷に何か秘密があるのかな。
「あれがルドマンさんの船です。ここからずっと南に行くとテルパドールです。
海には強力なモンスターが出るといいます。しっかり準備していきましょう。」
と、アンディさんが言った。僕たちはおじいちゃんの船があるポートセルミへ来ていた。
おじいちゃんの頼みでアンディさんがこの旅に同行してくれることになっていた。
僕たちの乗った船は大海原へ出た。これからしばらくは船での旅が続く。
周りの景色が水平線だけになってしまったので僕たちは船の中の様子を見て回っていた。
すると、突然大ねずみのマウスが騒ぎ出した。
「どうしたのマウス? この樽に何かいるの?」
ソラがマウスに向かってそう言う。確かにマウスは樽に向かって鳴いているようだ。
僕たちは樽の中身を調べた。なんと女の人を見つけた。しかも二人も。
二人の女の人はどちらも踊り子のような格好をしていた。
「お願いです! どうか見逃してください!」
見逃してといわれても、これって密航ってヤツだよね。とにかく話を聞いてみよう。
名前を聞いたところ一人はクラリスさん、もう一人はスーザンさんと名乗った。
「何で密航なんて真似をしたの?」
「私たちはポートセルミの舞台で踊っていた踊り子です。
そこの座長が『光の教団』に入信してしまいました。
彼は教団に払うお布施の代わりに私たちを教団に引き渡そうとしたのです。」
「教団に連れて行かれて帰った人はいないわ。私たちはこうして逃げるしかなかったの。
この船を選んだのはテルパドールへ向かうと聞いたからよ。クラリスの故郷だからね。」
光の教団! 昔、お父さんが捕まっていたというところだ。
それを聞いちゃ二人をポートセルミに追い返すわけにはいかないよね。
僕は二人を船に乗っていていいと言った。
「ありがとう! 雑用でも何でもやらせてもらうわ。」
そう言ってスーザンさんは僕に抱きついてきた。ちょっと照れるよ。
ん? どうしたんだいソラ。そんなに恐い顔をして。
船に乗っている間、時々モンスターが襲ってくる以外は結構時間があった。
そのときに僕たちはアンディさんからお父さんとお母さんのことを聞いた。
なんでもアンディさんとお母さんは幼馴染だったらしい。
それで、お母さんの花婿候補としてお父さんと競い合ったことがあるという。
「フローラの家は資産家ですから、財産目当ての男も花婿候補になっていました。
そんな男の妻になってフローラが不幸になるくらいなら僕が結婚しようと思いました。」
「まさか、お父さんも財産目当てだったんじゃ……」
「いやいや、それは違います。花婿候補へ与えられた試練は大変危険なものでした。
単なる財産目当ての男ならそこまでして結婚しようとは思わないでしょう。それに……」
「それに、なんなの?」
「ええ、それに君たちのお父さんはフローラを妻にすることを自分で決めました。
君たちのお父さんは天空の武具を集めていて、フローラの家には天空の盾がありました。
フローラは君たちのお父さんが天空の盾が目当てで結婚すると思っていたようです。
そんな中、彼は一人の女性を連れてきました。彼の旅を手助けしてくれた女性です。
フローラは君たちのお父さんが本当はその女性のことを好きなのだと思ったようです。
それで、彼はフローラとその女性のどちらと結婚するか選ぶことになりました。
ルドマンさんは彼がどちらを花嫁に選んでも天空の盾を与えると約束しました。
彼はフローラを選びました。彼は自分の意思でフローラを妻とする事を決めたのです。
今、こうして君たちがいるのも、君たちのお父さんがフローラを選んだからなのですよ。」
ふーん。初めて聞いたよ。お父さんとお母さんにそんな馴れ初めがあったんだ。
「僕は花婿を決める試練で怪我をしてフローラに心配させてしまいました。
怪我が治ってからは自分を磨こうと思って魔法の勉強をしていました。
おかげでこうして僕の力を君たちのために使うことができましたよ。」
このあとソラはアンディさんに今でもお母さんのことが好きなのかと聞いた。
アンディさんはお母さんのことを妹のように大切な存在だとだけ答えた。
僕たちの船旅はこんな感じで続いていった。
――続く。
しばらく間をあけてしまいました。なかなか時間が取れないです。
かなりあっさり書いているつもりなのですが。
この調子でちゃんと最後まで書けるかな……
しかも、なんだか当初と方向性が変わってきてしまっている。
どんどんテンがボケキャラになっていっているような……
>>661 一つの話を二つの視点で見るのは面白い、次の作品も期待待ち。
>>680 意外な人たちが仲間になりこれからどんな話になっていくか楽しみ。
689 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/11 00:21:24 ID:Fp2v96ZV
>>687 GJです。
ところで、誰か、王子に近づこうとする女の子が現れて
王女が嫉妬する・・・みたいなSS書いてくれませんか?
コリンズ→王女←王子なSSを読んで、逆パターンも見てみたくなったんです。
690 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/11 00:31:02 ID:3ik7RRFm
なんだここは。
実質2,3人しかおらんくせに妙にagaってるね。
というか、必死で保守するさまが傍からみてても失笑ものだがな
691 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/11 01:32:28 ID:4lvXNGf8
ヘタレでない格好いいアンディ、新鮮っす。
花婿を決める試練で怪我をして・・・
火山の暑さでへばってリタイアしたとは言えないか流石に。
あれから修行して男爵ディーノ並に化けた彼に今後も期待。
>>689 原作キャラ使うとなるとテルパドール娘や、その国の女官や女王あたりか
フロ双子とビアンカの三角関係SSはあったけど年齢差が大きすぎるのが少し問題
>>689 天空物語最終巻にでてきた15歳くらいになった双子でその話なら面白いとオモ
>>689 >>693こんな感じの?
ある晴れた天気の朝、村人達は白い息を吐きながら挨拶を交わしている。
寒さになれた格好の村人とは違い、極限までに服を重ね着し、
両手に大きな荷物を持った女性がつり橋の真ん中からグランバニアを見下ろす。
「やっと見つけたべ。なぁなぁ、あれがグランバニアけ?」
女性が通りかかった子供に指をさして聞くと、
「そうだよー。あれがグランバニアだ。それにしても、ねーちゃんなまら変な格好してんな。そんな寒いのけ?」
子供が鼻水を垂らしながらそう答える。
「寒いってもんじゃねえぞ!おらの国は南も南の砂漠の真ん中さあるからな。
『ゆき』ってのも生まれてはじめてさ見ただよ。」
女性はつり橋のロープにのっている雪を手で掴みまじまじと眺める。
「『ゆき』じゃなくて『ユキ』だぞ。」
発音の違いを指摘する少年に
「どっちでもいいべ。」と答える女性。
ふもとに下りた女性はキョロキョロと辺りを見回しながらグランバニアへの道のりを歩いていく。
「やっと会えるんだな、勇者さまに・・・。勇者さま、オラのこと覚えてさいるかな・・・。」
そんな淡い期待を胸にいだく女性の背後に、大きな魔物の影が忍び寄る・・・。
ガサガサッ・・・ザワッ・・・!
草むらから何かが出てくる音と静寂な森の空気を一風させた気配を女性は感じ取り後ろを振り向く。
「ウウウウゥゥゥゥゥゥ・・・・!」
低いうなり声と鋭い眼光で女性を威嚇する魔物の影。
一瞬にして恐怖のどんぞこに落ちた女性は腰を抜かし手ではいずりながら後ろに後ずさる。
「ヒ、ヒィィィィィ・・・!オ、オラがオメェになんかしただか?オラを食べてもうまくないだよー!!」
近くにあった荷物や石ころを魔物に投げつける・・・が、軽い身のこなしの魔物がそれを叩き落とす。
「ゥゥゥゥゥゥゥウウ・・・・ウェーーールカーーーーーーッムバァーーーーック!!!!」
「???」
突然のアームライオンの咆哮とわけのわからない言葉にあっけに取られる女性。
アームライオンの横ではライオネックがマラカスをシャカシャカしながら腰を振り踊っている。
「いやぁああ、お嬢さんはグランバニアに観光でいらっしゃったのですか?」
「え?え?」
「ガッハッハッハ、驚くことな何もないぜ、お嬢さん!俺たちはグランバニア王国に仕える兵士さ!」
ビシッと3本の腕の親指を同時に胸に突きつけそう答えるアームライオンと、いまだ踊りやまないライオネック。
その二人(?)を交互に見ながら女性は安堵のため息をつく。
「はぁぁぁぁ・・・なんだ、オラを襲って食べるってわけじゃねえのか・・・。」
「食べる?ヲイヲイ、俺たちは人間なんて食べねえよ!」
「そうですよ。ただ、重そうな荷物を持ってグランバニアに向かっているお嬢さんを見かけましてね。
ピピン隊長より『お客様は神様です』と教えられているゆえ・・・お城まで送って差し上げようと思ったのですが驚かせてしまったみたいですね。申し訳ない。」
がさつなアームライオンとは対象に紳士的な態度のライオネック。
手を差し伸べ、尻餅をついた女性を立たせようとするが
「す、すまねえだ。・・・・・・・・って・・・・腰さ抜けてる・・・・・・・・。」
ペタンと再び尻餅をついた女性。
それを見てアームライオンは高らかに笑いヒョイと女性を自らの肩に乗せて歩きはじめる。
「お城までおぶってってやるよ。おい、ライオウ!荷物頼むぜ。」
「ああ、まかせておきたまえ。」
そう答えたライオウは、両手で荷物を持ち上げアームライオンの後ろをスタスタと歩き出す。
グランバニアへと歩き出したライオウ達。肩に乗った女性にアームライオンは話掛ける。
「そうだ、俺の名前は『アムール』んで、こいつが『ライオウ』ってんだ。あんたの名前は?」
ハッと普段見慣れない景色から我に返った女性が両手を胸にあて答える。
「オ、オラか?オラの名前は『ミーシャ』だ。」
話し方や格好とは裏腹の女性らしい名前に一瞬噴出しそうになるアムール。
「・・・ッ、そうかミーシャちゃんか。いい名前だな。
「そ、そうけ?友達からは名前負けさしてるってよく言われる・・・。」
「ま、まあよいではないですか。それより、グランバニアにはどのようなご用事で?
見た所・・・観光・・・にしては荷物が多いようですが・・・?」
左右の手に持った荷物を見つめ問いかけるライオウ。
「ああ、オラ、グランバニアのある男性と結婚さする約束してな。そんで嫁ぎに行くんだ。」
「ほぅ、結婚か〜。ミーシャちゃんの旦那さんになる男は幸せ者だなぁ・・・ッハッハッハ。」
おだてに弱いミーシャは頬を染めながらアムールの頭を小突く。
「やっだなぁはずかしいべ!」
笑い声と重い足音を響かせながら、ミーシャ達はグランバニアに到着する。
「さ、着いたぞ。立てるか?」
ゆっくりと肩からミーシャを降ろすアムール。
「ああ、ありがとな。アムール。」
トンっと左足からゆっくり地につけ両足で踏みしめる。
「うむ、荷物は宿屋まで運べばいいかな?それとも・・・」
ライオウがその先を話そうとしたその時、城内の2階から大きな爆発音が聞こえてくる。
ドッゴーーーン!!
「な、なんだべ?この音は?」
驚くミーシャとは逆に顔を見合わせフゥと息をつくアムールとライオウ。
「ん、これは・・・まぁ・・・。」
「グランバニア名物といいますか・・・。」
「ほぇ?」
ミーシャが顔をあげ首を傾げると、真後ろにある階段の上から2人分の足音と女の子の大きな声が聞こえてくる。
「ちょっと待ちなさいテンッ!またあたしの楽しみにしてたケーキ食べたわね!?」
「わわ、ソラ!これにはちゃんとした理由があるんだ!聞いてくれ・・・!」
テンと呼ばれた少年は階段の前で立ち止まり後ろを振り向きソラと呼ぶ少女の肩に両手を乗せる。
一瞬ドキッと後ろに下がったソラは「な、なによ?」と答え、その先の言葉を待つ。
真面目な顔をしたテンはソラの瞳を見つめ
「ボク、ソラがこれ以上体重を気にしないようにと思ってやったんだ。」
プチッ
ソラの中で何かが切れる音がした。
「やばっ・・・!」
テンは苦い笑いを浮かべ、一目散に階段をかけおりる。
「ん待ちなっさーーい!今日という今日は新魔法の実験台にしてやるんだから!!!」
「そ、それは勘弁〜〜〜っ!!」
ソラが追い、テンが逃げる。
これがグランバニアの名物だというのだからごく自然に毎日行われていることなのだろう。
城下町に住む人々は終始笑顔でその様子を見ていた。
そう、たった一人を除いては・・・。
とりあえず今日はここまででぇ。
か、かっぺ!? 某魔法遣いみたいなキャラを勝手に想像した
押しかけ女房タイプな流れになる?
699 :
689:05/01/12 16:41:09 ID:fwFdRbyV
おぉ、早速リクに答えていただき、有難うございます。ソラが男勝りなキャラになりすぎないことを祈りつつ、続きを楽しみにしてます。
700 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/12 18:15:27 ID:81zK5j6s
700get
あの言葉遣い
今は無きDBのチチを思い出しまつな。
いやー懐かしい。
701 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/12 19:13:13 ID:pwi1z450
チチは永遠に不滅です
甘辛物語の作者さんもペコさんもお疲れ様でしたv
続きもまったり楽しみにしております〜
「勇者様、どこへいかれるのです!」
「伝説の勇者、レックス様に栄光あれ!」
「勇者様のお通りだ!」
どこへいっても勇者様、勇者様、勇者様。
勇者・・・ゆうしゃ・・・ユウシャ・・・・・・ゆ、う、し、ゃ?
ねぇ、”ゆうしゃ”って何のこと?
僕は神官様みたいに賢くないし、偉くもないよ?
呪文もお母さんやタバサみたいにうまく使えないよ?
それに剣の腕前だって、まだまだ。お城の兵士に負けちゃうんだよ?
*ゆ、う、し、ゃ*
704 :
703:05/01/13 22:17:30 ID:9KDM8b1d
僕があの日、天空の剣を抜いてから、みんなの態度がちょっと変わって。
たとえば髪がとんでもないことになっちゃった時。誰かに頼もうと思って声をかけても
『もうレックスさまも6歳なのですから、ご自分で身支度いたしましょうね。』なんて言われて。
それで仕方なく自分のそれと悪戦苦闘してたら、タバサがきてくれて。
そして、いつもの言葉を聞くんだ。『お兄ちゃん、私やってあげる。』
それが今は違う。
朝起きて、髪がとんでもないことになってるのに気がついて洗面台へ行こうとドアを開けたら
隣に人が居て。それで、何を言うのかと思ったら、『レックス様、おはようございます。おぐしをとかせていただきますね。』
それで、全部やってくれる。
つまりね、みんなが今まで以上に優しくなってる気がするんだ。
みんな、変なの。
705 :
703:05/01/13 22:19:13 ID:9KDM8b1d
そうそう、タバサも何か変になっちゃったんだ。
僕が天空の剣を引き抜くまでは、楽しく遊んだり、普通にいっぱいしゃべったりの毎日。
でも、今はなんか違うんだ。
『わたし、”ゆうしゃ”じゃないもん。』 『わたしは必要じゃないんだもん。』
ねぇ、タバサ。そんな顔しないで。そんな声ださないで。
なんで、どうして?
・・・サンチョにこの間こっそり聞きにいったんだ、”ゆうしゃ”って何?って。
サンチョは”ゆうしゃ”について、いっぱいお話してくれたよ。
『伝説の勇者様は世界の危機に現れて、世界を平和に導いてくださるのです。』
『レックス様、貴方はお父様やパパスおじい様が探し続けられた、導きの勇者様なのですよ。』
706 :
703:05/01/13 22:20:01 ID:9KDM8b1d
正直、僕には難しい話だったけど、なんとなくはわかったつもり。
ええと、”ゆうしゃ”・・・勇者、つまり僕には、大変な役目がある。
だから、皆が僕のことを大切にする。優しくする・・・と。
・・・いらないよ。
僕がその勇者なのはわかったよ。
でも、そのことで僕に今まで以上に優しくして欲しいとは思わないよ。
今まで通りにしてよ、みんな。
勇者だから、世界を平和に導く人だからとか、そんなの関係ないよ。
僕は僕なんだよ? 変わらない、いっこの人間なんだよ?
707 :
703:05/01/13 22:20:51 ID:9KDM8b1d
もう一つ、サンチョから聞いた。
『タバサ様はご自分が勇者でないことを気にしておられるのです。』
ねぇ、タバサ?
タバサが勇者じゃなくて、僕はほっと安心してるんだよ。
え、何でって? わからないかなぁ?
だって、タバサを危ない目にあわせられないよ。 僕の大事な大事な人。
それからもう一つ、タバサは必要なくなんかない。
僕は、タバサがいたからやりきれたことだっていっぱいあるんだよ。
たとえば、ピアノの授業。先生のいってることがよくわからないけど、タバサにはよくわかるんだよね。
その授業があった日は決まって僕を誘って音楽室に連れて行ってくれて。
教室には二人・・・・・・タバサが先生役で、僕は生徒役。
ね、ほら。必要でしょ?
708 :
703:05/01/13 22:22:49 ID:9KDM8b1d
だから、そんな顔しないで。いつものように笑ってて。
それから、いつものように髪をとかしてほしいな。
fin
709 :
703:05/01/13 22:27:32 ID:9KDM8b1d
・・・実は終わり方にすっごく悩みました。
悩みに悩んで、レックスくんの独白だけで終わりにしたのですが・・・
いつもSSを書いている皆さんには頭があがりません、ホント。
今回もご指導いただければ幸いでございます。。
710 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/14 00:32:41 ID:JnCSWAJW
とりあえず、保守
>>703 乙!
勇者扱いはいいことづくしかと思ったら…。
2人の間に亀裂入るのは痛い。
647の小説、青い地平線(英訳)というサイトのある小説に似てるんだけど
ご本人様かな?
>>712 ここは2chだし匿名で投稿してるんだから
詮索するのはやめましょうぜ、兄さん。 といってみる。
>>686殻の続きです。
僕たちの船は目的の大陸へ着いた。ここからは馬車で砂漠を突き進まなければならない。
結局昼のうちに城へ到着することはできず、砂漠で一晩野宿することになった。
交代で見張りを立て、僕が馬車で休んでいるときクラリスさんが話しかけてきた。
「あなたたちって本当に仲のいい兄妹ですね。私にも弟がいるけど喧嘩ばかりでしたよ。
小さいころ弟はお姉ちゃん子で、なかなか姉離れしてくれなかったのを思い出します。」
「そういえば、僕はソラと喧嘩なんてしたことないな。」
「羨ましいわね。私は踊り子になるとき父とも喧嘩別れしてしまって。
本当はいまさら家に帰れた義理じゃないんですよね。」
それでもクラリスさんは家に帰ろうとしている。これが家族って言うのものなのかな。
「お兄ちゃん! モンスターが襲ってきたの!」
ソラの声で僕たちの話は途切れた。急いで馬車から出るとマドルーパーが3匹いた。
アンディさんがマヌーサで牽制し、ソラがイオで攻撃、そして僕が剣で斬る。
2匹は倒しだが1匹残ってしまった。その1匹の一撃を僕は顔面に食らってしまった。
攻撃を受けながらも僕はなんとか反撃してマドルーパーを倒した。
「お兄ちゃん大丈夫なの?」
ソラが心配そうに声をかけてきた。
「だ、大丈夫だよ。これくらい。」
僕は強がってみせたけど、ちょっとくらくらする。油断すると鼻血が出そうだ。
「少し横になっていたほうがいいですよ。このまま馬車で休んでいてください。」
アンディさんがそう言ってきたので僕はその言葉に従うことにした。
ソラが心配そうに僕の顔を覗き込む。ソラは心配性だね。でも、うれしいよ。
「たいしたことないって。そんなことじゃいつまでたっても兄離れできないよ。」
ソラを心配させないように僕がそう言うと、ソラは黙り込んでしまった。
「どうしたんだい、ソラ?」
「……お兄ちゃん。お兄ちゃん離れって、しなきゃいけないことなのかな。
私、ずっとお兄ちゃんと…… きゃあ! お兄ちゃん、鼻血が出ているの!」
次の日の朝には僕の体調は回復した。そして、ようやく砂漠を抜けることができた。
テルパドールへ到着すると僕たちは宿を取ってそこからは別行動をすることにした。
僕とソラは当初の目的どおり勇者様の情報を集めることにした。
この国を治めるアイシスという人は勇者様に詳しいらしいが会うことはできなかった。
残念だけれど仕方がない。僕たちは城や町の人から話を集めることにした。
町の人たちの話によると、勇者様は世界が闇に包まれそうになったときに現れるという。
そして、世界を包もうとする闇を打ち払い世界を救ってくれる存在だということだ。
しかし、具体的な勇者様の話はなく、思ったほど情報は手に入らなかった。
中には、『天空の武具を装備できるのはこの世で勇者様だけ』なんてガセネタまであった。
天空の剣なんて僕にも装備できるのに、そんなわけないのにね。
僕たちが宿に戻るとクラリスさんとスーザンさんが何か話し込んでいた。
「もう、そんな昔のこと水に流してくれてもよさそうなものじゃないの!」
「仕方ないわ。私は家出同然でこの国を出たんですもの。許してもらえなくても……」
「だからって……あ、ねえ、テン君ソラちゃん聞いて。さっきクラリスが家に帰ったのよ。
そしたらクラリスのお父さんが『うちにお前みたいな娘はいない。』なんて言うの。」
「わー、それは酷いね。」
せっかく探し出したお父さんにそんなこと言われたら僕も落ち込むと思うよ。
「私ね、踊り子になるとき、いつかきっとお父さんに認めてもらおうって思っていたの。
結局できなかったけどね。一度でいいからお父さんに踊りを見てもらいたかったな。」
「それだったらまだチャンスがあるかもしれませんよ。」
アンディさんが話しに割り込んできた。
「このテルパドールで演芸大会が開かれるそうです。それに踊りで参加するのですよ。」
「出てみましょうよ、クラリス。優勝すればお父さんも認めないわけにはいかないわよ。」
「そうしなよ。僕たちも協力するからさ。ソラもいいだろ?」
「はい。私もお手伝いします。」
クラリスさんを説得し、僕たちはテルパドール演芸大会に参加することになった。
テルパドールの演芸大会は1週間後だった。
アンディさんの笛に合わせてクラリスさんとスーザンさんが踊りを舞うことになった。
僕とソラもバックダンサーとして参加する。初めてのことだからワクワクするね。
僕とソラの衣装も用意した。さすがに踊りの服ではないけど、結構露出の高い服だな。
こうして僕たちは時間の許す限り練習を重ね、演芸大会当日を迎えた。
「それではエントリーナンバー8番、クラリスさんたちによる『演舞』です。」
僕たちの番がやってきた。僕たちは練習のとおり一生懸命踊った。
クラリスさんとスーザンさんはさすがに舞台慣れしていてすごく上手に踊る。
アンディさんの笛は軽やかな音楽を奏でる。僕とソラの息もぴったりだ。
ガップルも手伝ってくれている。まぶしい光で舞台を照らす役目だ。
僕たちの演舞が終わると会場は拍手の渦に包まれた。
すべての出場者の出し物が終わり、今は審査に入っている。
「みんなうまく踊れましたね。これなら優勝も狙えますよ。」
「そうなるといいわね。私もなんだか久しぶりに楽しく踊れた気がするわ。
ソラちゃんも楽しそうに踊っていたわね。ねえ、踊り子になる気はない?」
クラリスさんがそう言うとソラは困ったような顔をしてしまった。
「ふふふ、冗談よ。でも、もし本気でなる気があったらいろいろ教えてあげるわ。」
「大変長らくお待たせいたしました。優勝チームの発表です。
優勝は、……エントリーナンバー15番、旅の劇団による演劇です!」
会場は優勝者に向けて惜しみない拍手が送られた。僕たちも拍手をする。
それにしても残念だったなー。優勝できると思ったのにね。
「みんなありがとう。優勝はできなかったけど、とっても楽しかった。
これからお父さんにはゆっくり認めてもらうことにするわ。」
クラリスさんがお父さんと分かり合える日が早く来るといいね。
「ねえ、あそこにいるのクラリスのお父さんじゃない?」
スーザンさんが柱の方を指差してそう言った。柱の影には男の人がいた。
「お父さん!」
クラリスさんがお父さんに近寄る。
「人違いだ、うちに娘はいない!」
なかなか頑固そうなお父さんだね。
「……ところで、これはオレの独り言だが……
踊り子なんてわけの分からん連中と付き合っているんじゃないかと心配していた。
だが、アンタにはいい友達がいるようだな。」
なんだ、やっぱりクラリスさんのことが心配だったんだね。
クラリスさんがお父さんと仲直りできるのもそう遠くはないかもしれないな。
僕たちは宿屋に戻ってきた。舞台に立って踊ったから疲れたよ。
それにしても、勇者様の情報も手に入らなかったし、これからどうしようかな。
いったんグランバニアに戻って考え直した方がいいかな。
そんなことを考えているうちに僕は椅子に座ったままウトウトと眠ってしまった。
「もう! お兄ちゃん、こんなところで寝たら風邪を引いちゃうの。」
僕はソラの声で目を覚ました。
すっかり眠り込んでしまったようで、あたりはもうすっかり暗くなっていた。
「ああ、ソラ。起こしてくれてありがとう。アンディさんたちはどうしてる?」
「アンディさんとスーザンさんなら隣の部屋にいるの。」
隣の部屋へのドアはわずかに開いていた。僕はなんとなく部屋の中を覗いてみた。
「今日は本当にありがとう。あなた達のおかげでクラリスは家に帰れそうだわ。
船に勝手に乗り込んだ私たちを連れてきてくれただけでも感謝の言葉もないのに。」
「乗りかかった船というやつですよ。いや、あの場合は航海しかかった船かな。
それに、おかげで私も目の前ですばらしい踊りを見ることができました。」
部屋ではアンディさんとスーザンさんが向かい合って話し合っていた。
僕からはスーザンさんの背中とアンディさんの正面の姿が見える。
「アンディさんお眼が高いわね。クラリスはポートセルミでも一番の踊り子だったのよ。」
「スーザンさんの踊りだってとても美しいですよ。見ていると心が洗われるようです。」
「ふふふ。男の人って体ばかり見るの。踊りのことを言ってくれたのはあなたが始めてよ。
ねえ、アンディさんの初恋の人ってあの子達の母親のフローラさんなんでしょ?
妹みたいに大切な人だって言うけど、本当はまだ好きなんじゃない?
でも、彼女はもう人妻よね。私にもアンディさんの恋人になるチャンスがあるかしら。」
あらら。スーザンさんストレートだね。
「……すみません。僕はまだフローラのことを忘れることができません。」
「あら、そんな大切な人のことを忘れるつもりなの? 別に忘れることないじゃない。
ただ、フローラさんよりもちょっとだけ多く私のことを好きになってくれればいいの。」
うわー、スーザンさん大胆だなー。
「スーザンさん。その、お気持ちはうれしいのですけれど、僕は……」
「ふふふ。言い訳は許しません。私の気持ち、しっかりと受け止めてね。」
そういうとスーザンさんはアンディさんのほうに身を乗り出して手を差し伸べた。
あれ、これはもしかして…… えー、これはちょっと教育上問題が……
「どうしたのお兄ちゃん?」
わっ! ソラ!
「なんでもないよ!」
僕は小声でそういうと隣の部屋へ続くドアをそっと閉めた。
ソラにアレは見せられないね。ソラはあんなことしちゃ駄目だよ、賭けポーカーなんてさ。
次の日の朝、僕たちは宿屋で朝食を食べていた。
僕はアンディさんとスーザンサンを交互に見た。この二人、結構お似合いだよね。
このまま結婚したらスーザンさんもおばあちゃんみたいになるのかな。
アンディさんにだけ、暗い夜に現れる弱い顔を見せるようになるのかな。
「どうしたの? テン君。私の顔に何かついている?」
「ううん。スーザンさんがアンディさんには夜の顔を見せるのかなと思っただけだよ。」
「ゲホッ!」
アンディさんが飲みかけていたコーヒーでむせた。
「ど、どうして突然そんなことを思ったの?」
スーザンさんも何故か焦っているようだ。
「うん、昨日見たんだ。ゆうべは二人で楽しんでいたみたいだったから。」
僕がそう言うとアンディさんがスプーンを落としてガチャンと大きな音を立てた。
なにか、僕悪いことを言ったかな? でも、二人でポーカーを楽しんでいたよね……
そのあと、ドアをノックする音がして、クラリスさんが部屋に入ってきた。
「なんとかお父さんに許してもらえそうなんです。皆さんのおかげですよ。」
クラリスさんはお父さんと一晩よく話し合っていたそうだ。
勇者様の情報は手に入らなかったけれど、テルパドールに来てよかったよ。
「さて、これからどうしよう。もうグランバニアに帰ろうか。」
これ以上テルパドールでやることはないだろうからね。
「あら、あなたたちグランバニアに住んでいるの?
さっき聞いたけど、行方不明だったグランバニアの王様が見つかったそうよ。」
嘘! いつの間に…… これはもうお城に戻るしかないね。早く帰ろう!
僕たちはすぐにグランバニアへ帰ることにした。帰りはルーラが使えるので楽だ。
まずはアンディさんとスーザンさんをサラボナに送る。
スーザンさんはアンディさんにくっついてサラボナまで行くそうだ。
二人を無事届けると、ソラはグランバニアに向かってルーラを唱えた。
今日はここまで。どうも萌えは苦手だ。無理に入れることもないかと思ってきた。
書いてて楽しいのは、さりげなく爆弾発言をするテン。いいのか?
そして結局たいした活躍のないままアンディは退場です。
>>ペコさん
そんなすぐさまリクエストに応えられるとは。私には真似で来ませぬ。
>>703さん
勇者の悲哀。やはり勇者も楽じゃないでしょうね。
せっかくなのでアンディが某男爵のように活躍するバージョンを書いた。
―――――
「地獄の魔術師(ヘルズ・マジシャン)といわれたこのアンディ。
久しぶりの闘いに胸がときめきます」
そう言ってヘタレでお馴染みのアンディさんが前に出てきた。
アンタ弱いんだから下がっててよ。それと、地獄の魔術師なんて誰も言ってないけど。
しかし、そのあとアンディさんは驚くほど善戦し、最後は敵を道連れに激流に飲まれた。
僕たちはアンディさんのことを忘れない。いつまでも心の中で生きていてね。
722 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/15 03:44:22 ID:pjQzhCqC
それから、大空にシルクハットを被ったアンディの顔が大きくうかぶと。
踊り子王女たん(;´Д`)'`ァ'`ァ
アンディ・スーザンのなれそめエピソードでもあったのか、なるほど
先輩、、、ごっつぁんです。
>>697の続きからです。
題名決まってないので、
>>689さん決めちゃってください!
「ゆ、勇者さま・・・!」
ミーシャが震えた声でテンを呼んだ。
「ん?」
テンとソラは足を止め、声のする方を振り向く。
「誰?・・・ソラの知ってる人?」
テンがミーシャを指さし、ソラに問いかける。
「う、ううん。知らない人だけど・・・テンの事は・・・知ってる子みたい・・・ね。」
ソラは首を横に振り表情を曇らせてそう答えた。
トトトトトッ
「はぁはぁはぁ!」
突然、駆け出すミーシャ。
「お、おいミーシャ・・・!」
「だ、だめですよ!グランバニア城内に入るにはきちんと手続きをしないと!」
アムールとライオウは頭から大きな汗をかいて止めようとする。
タッタッタッ
階段を駆け足で上るミーシャ。
長いスカートを両手でたくし上げ、一目散に目指すはテンの胸の中・・・?かと思った次の瞬間、
ズベッ!ビターン!!
「!!!!!」
勢いあまって転んでしまったミーシャ。
「キ、キミ!だ、大丈夫?」
テンが急ぎ足で駆け寄り、うつぶせに倒れたミーシャを抱き起こす。
「へ、平気だ。オ、オラ身体はがんじょうだから・・・!」
鼻を両手で抑えて返事をするミーシャ。二人の元にアムールとライオウ、もちろんソラも駆け寄ってくる。
「こ、こら!ミーシャ!」
「し、失礼しましたテン王子、ソラ王女。」
アムールがテンからミーシャを受け取り、ライオウはテンとソラに深々と頭を下げる。
「ううん、気にしないで!・・・それより、この子は?アムール達の友達なの?」
「いえ、友達ではないんですが・・・。さあ、ミーシャもお二人に無礼をわびなさい。」
ライオウが立ち上がったミーシャにそう言うと、ミーシャはショボーンとした顔でテンとソラに頭を下げる。
「あ、あの・・・オラすっかり舞い上がっちまったみたいで・・・すまなかっただ。」
「い、いいのよ。えっと・・・ミーシャさんでしたっけ?グランバニアには観光か何かでいらしたのですか?」
ソラがにっこりとミーシャにハンカチを差し出し声をかける。
そして、ミーシャの出す答えにこの後、グランバニア全体を巻き込む大惨事になることは、
この時まだ誰も思いもしなかったのである・・・。
「いえ、観光じゃねえんだ。オラ、勇者さまの所さ嫁ぎに来ただ!小せえ頃約束したんだ!」
「ええ?」
「なっ!!」
「・・・・。」
ミーシャの一言に、そこに居た多くの住民達や兵士、もちろんソラも一斉にテンに視線が集まる。
「・・・え?ボク・・・と?」
「はい!」
テンがそう言うと、ミーシャはニッコリと笑顔で短くそう答えた。
─────ギュィッ!
「○×△□×○!!!」
突然、テンは飛び上がり横に立つソラを見つめるが、ソラはツーンと横を向いている。
「あ、あのさぁ・・・。ぼ、ボクだって何のことかわかんないんだからそんな怒らなくてもさぁ・・・。」
小声でソラに耳打ちをするテン。
「あら?なんのことかしら?」
ソラはテンの言葉をスルリと流し、ポンッと手を叩いて話し始める。
「いけない、わたしサンチョの所に行かなくっちゃ!えっと、テン、彼女のことヨロシクネ?
それから、アムールとライオウは彼女の荷物をお城の客室に運んであげて下さい。」
「え、あ・・・はぁ。」
「御意。」
「ちょ、ソラ・・・!」
テンが自分のお尻をさすりながらソラを呼び止めるも、ソラはスタスタと小走りであっという間にテン達の視界から消えてしまう。
今日はこの辺りでつづく
729 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/16 18:08:14 ID:BYV9JRCb
嫉妬するソラ、ぼけるテンGoo。
フローラがどの様な対応を取るか楽しみでつ。
ミーシャの喋りが萌えないのはあくまで王子×王女だからミーシャとくっ付くのを
防止するためなのだろうか
731 :
689:05/01/17 13:21:43 ID:v/8aC1lp
GJです。波乱の展開を迎えそうですね。
さて、題名を決めさせていただけるということで考えてみました。
「リフレイン〜約束〜」なんてどうでしょうか。
あ、気に入らなかったら変えて下さい
732 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/17 23:18:44 ID:v7z6b8zL
サブタイトルは今後の内容を見てからリクエストさせて頂きまつ。
ちと気が早いが次スレのタイトル案を考えてみた。
ふたりの物語〜DQ5の王子と王女SSスレ7〜
ふたりは仲良し
ふたりは兄妹
天空のふたり
ふたりのお惚気
最後のやつに一票
ふたりのものがたりに一票
736 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/18 01:40:12 ID:0j1hjdkR
最初のに一票
737 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/18 08:37:53 ID:itkm5GL3
ふたなりの物語に一票
>>733 やはりふたりの物語かな、オーソドックスでいい
保管庫の更新乙です。
次スレはもう少しあとでも平気かな?
740 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/19 23:40:27 ID:z20OBxnK
737>いつか来るとは思っていたが、やっぱり来たよ。
ふたりはプリキュアのように言われるのがデフォか>ふ○○り
742 :
杉山青貴&OMEGA TRIBE:05/01/20 02:58:13 ID:vBsrTyuC
となるとテーマソングはやっぱ コ レ !
「ふたりの夏物語〜NEVER ENDING SUMMER」
ondorya〜君に囁く〜♪
743 :
647:05/01/21 03:52:10 ID:cqeVEbIo
大変遅レスですが
>>656 >ぉっです。
どもです。
>>657 あまりテンには喋らせたくなかったのですよ。ソラの手握ったりソラの前に出たり、行動のみでなんかできないかなと。
描写不足でした。精進します。
>>658 頑張る子供、っていいですよね。
>>712 『If…』ですね。はじめて読んだDQ5SSがこれで、いつか同じシチュで書いてみたいと思ってたんですが……。
いざ書いてみたらただの劣化コピーにしかなってないですね。読み返してみて鬱でした。精進します。
744 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:05/01/21 23:28:36 ID:igNrt2ER
hosyu!!!
*お帰りなさい*(
>>203リメイクver)
ザッザッザッ・・・・・・。
男は深い森の中を歩いていた。目指しているはグランバニアという名の城。
枯葉を踏みしめる音が妙に心地よく聞こえるのは男の気のせいだろうか。
・・・・・・ザッザッ、ザッ。
その男―この体つきはまるで女のようだが―はふと歩みを止めた。
そこはほんのすこしだけ、他のところよりもひらけた場所だった。
(テン、ソラ、サンチョ。そしてドリス――皆は元気だろうか。)
突然、ぼんやりと考えていた男の胸に激痛が走った。
右手で胸を押さえた。が、痛みは和らがない。どうしようもなく、地面に倒れこんだ。
だんだんと酷くなってきている。そう、あの時よりも。
(痛い――。私の命は一体いつまでもつのだろうか? しかし私は約束した。必ず城へ帰る・・・と。)
やがて痛みが止むと男はこれまで進んできた森の中に視線を落とし、立ち上がり、
そんな嫌な思いを払いとばさんと再び足を、今度は先ほどよりも少しだけ早く、進めた。
そのまましばらく歩くと、男の目の前に大きな城が現れた。
変だな。城下町がない。 ・・・あぁ、そうだった、男ははっとした。
(・・・・・・この城は城下町が城の内部に設けられているのだった。)
男は城門をくぐり、そのまま内部へ続く扉を開けた。
城の中は可笑しいくらいに騒がしかった。
(国営のカジノがあるわけでもない。踊り子達のショーがあるわけでもない。それなのに何故――。)
「おい。何故こんなに騒がしいのだ。」
男は側にいた荒くれに話しかける。
「兄ちゃんよ、何いってんだい、寝ぼけてんのか?国王様、そうあのアベル王が帰ってきたんだよ!
一時期はどうなるかと思ったけどこれで安泰だぜ!これが騒がずにいられるってんだい!」
(アベル王? ・・・・・・そうか、テンとソラの――。)
「王子と王女はどこにいる?」
「あのお二人なら今頃は中庭じゃないか?」
答えてから荒くれは怪訝な顔をする。
「中庭か。 いや、何でもない。ちょっと気にかかっただけだ。」
「ふうん・・・。 ま、いいやな!」
余り深く疑問に突っ込まないのも荒くれの性格である。
「じゃあ俺は向こうで飲みなおしてくるわ! じゃーな!」
それには答えず、中庭のほうへ向かおうとするとそこに別の荒くれが近寄ってきた。
「何しけた顔してんだよ〜 兄ちゃん酒足りないんじゃないかい?
ほらこれは俺のおごりだ!飲め飲め〜!」
この荒くれ、よっぽど酔っているようだ。
「断る。」
男は無視して立ち去った。
「なんだよ、あいつ・・・・・・。」
男に取り残された荒くれは男のほうを見やりながら手に持っていた酒を一気に飲み干した。
中庭に出ると、男の体にボールがぶつかった。
「ガ、ガルッ。」
ボールの投げられた方向を見るとキラーパンサーが申し訳なさそうに立っていた。
あぁ、お前か、ゲレゲレ。
ふっと男は一瞬微笑んでから、ボールを蹴り返してやる。
(そういえば昔にも同じようなことがあったな――。)
当時のことを思い出すと胸が高鳴らずにはいられない。
早く、会いたい。 ――あの時からだ。この感情は何というのだ――
中庭では男の子と女の子が仲良く遊んでいた。
「ねぇ、テン。 私これ作ったの。」
そういって女の子が男の子―テンに差し出したのは花で作った王冠だった。
「ソラ、ありがとう。 ・・・・・・へへ、似合うかな?」
テンは頭に貰った王冠をかぶせてから女の子―ソラのほうを見る。
「うん、似合う似合う!」
そういってソラは左手でグーサインをだす。
「へへ、ありがとう。 じゃあこれは・・・お返し! 」
テンはポケットの中からこれまた花で作った指輪をだした。
「わぁ、ありがとう! ねぇテン、つけてみてもいい?」
「もちろん! ソラだからきっと似合うよ!・・・ホラねっ。」
二人の笑い声が中庭に響き渡る。
「・・・・・・あぁ、そうだな。似合うな。」
突如、男の声がテンとソラの背後から降ってきた。
二人ともこの声には聞き覚えがあった。
忘れるはずのない、いや、忘れることのできない声。
「カ、カデ・・・?」
いいながら、恐る恐る後ろを振り返る。
あの時の声そして雰囲気に身なり。全てそのままだ。
「カデシュ!お帰り!」
「カデシュ・・・よかった、よかった・・・・・・!」
男―カデシュ―に飛びつく二人を支えながらカデシュは言った。
「心配かけてすまなかった。
・・・・・・テン。"あの時"みせたお前の力は本物だった。しかし魔物を全滅させるなどとはもう言わない。
スラりんやゲレゲレ、ホイミンたちがいい魔物もいるということを証明してくれたからな。
そう、お前とともに私は魔物の王を打ち砕けば悪い魔物はいなくなるのだろう?
そしてソラ。約束していたな。後でお前に新しい呪文を教えよう。」
「ありがとう、カデシュ!今夜は泊まるんでしょ? 夕食の後お部屋に迎えに行くわね!」
「カデシュも旅についてきてくれるんだ、ありがとう!
あ、ねぇ。カデシュ? 聞いて!僕らのお父さんがやっと見つかったんだ!」
「そうなの、カデシュ!私達もう嬉しくって!
あの後、石像になったお父さんを城の人達が見つけてくれたのよ。
後はお母さんだけど、あぁ、お父さんもカデシュもついてくれるんならすぐに見つかる気がするわ!」
カデシュに、彼の帰還に思いっきりはしゃいでいるテンとソラ。
その三人を二階のテラスから見ている人物が二人いた。
テンとソラの父アベルとそのいとこドリスだった。
「ふぅん・・・・・・彼がカデシュなんだね。」
「坊ちゃん探しの旅に同行した魔法使いよ。もっとも、元王子という肩書きもあるけれど・・・。
彼の国ストロスの宝、ストロスの杖を私達に預けてくれたんだ。
坊ちゃんもお礼くらい言ったら?」
アベルが手のワイングラスを口へ持って行く。
「あぁ、そうだね。 ドリスも彼に挨拶をしなくていいのかい?」
そしてグラスの中のものを一飲みしてからグラスを置き、マントに手をかける。
(挨拶か・・・・・・言いたいこといっぱいあるなぁ・・・。)
「おーい、ドリス。いくよー!」
「あ、まってよ坊ちゃん!」
ドリスは思考を中断させてアベルの後を追った。
そのまま中庭に腰を降ろして話を聞いていたカデシュ達。
「ねぇカデシュ。私達の部屋にいかない? もっとお話したいし、見せたいものもあるの。」
そのソラの提案にたまにはいいか、とカデシュは腰を上げて服についた草を払い落としながら言った。
「あぁ、そうだな。」
「カデシュ!」
背後から聞こえた声にカデシュは振り返る。
「・・・・・・ドリス、お前か。」
その変わらない声を聞いて安心したのだろう、ドリスの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「もう、あそこでいきなりいなくなっちゃって・・・もしものことがあったらって・・・
ずっとずっと・・・!!でも、良かった・・・良かったよ・・・・!!」
「ドリス・・・・・・。」
テンとソラがドリスにかけよる。
ドリスの先にはアベルがいる。
カデシュはアベルのほうへ向かう途中に「お前にも話したいことがある。夜に、中庭で。」
そうボソッとドリスの耳だけに聞こえるような小声を放った後、アベルに向かって一礼した。
「貴方がグランバニアの王か、初めてお目にかかる。私はカデシュ。魔法使いだ――。」
アベルはカデシュに微笑むと左手でカデシュの右手を持ち上げ、自分の右手と握手させた。
「僕を助けるために手を尽くしてくださったそうで、感謝しています。本当にありがとう。
テンとソラも貴方に懐いているし、ドリスも・・・おっと、口が・・・ とにかく!
僕としては貴方にはこれからもグランバニアにいていただきたい。もちろん生活には困らせない。どうかな?」
(ずっとグランバニアに・・・・・・か。)
カデシュはすぐ側にいるドリスとテンとソラの双子を見る。
「なに、返事は今すぐにとは言いません。しばらく考えてみてください。 では、私は国務がありますので・・・・・」
そういうとアベルは階段をのぼっていってしまった。
「ねぇ、カデシュ?ドリスが・・・・・・」
テンがカデシュのローブの端をつかんでいる。
「ん?」
ドリスのほうを改めてみると、既にドリスは泣き止んでいた。
手にはあのペンダント。
「さぁ、カデシュ。約束は覚えてるよね? これ、返すから・・・・・・」
カデシュの首に再びかけようとした手を押さえて再びドリスの首にかけさせる。
「持っておけ。 もう私には必要のないものだ・・・・・・それに、私よりお前のほうが良く似合っているからな。」
「カ、カデ・・・!」
「あれ〜〜?ドリス、顔まっかだよ?へんなの〜〜!」
「テ、テン、うるさいわねっ!」
「わぁ、ドリスが怒った〜!」
「フフ・・・。」
テンが駆け出す。ドリスがそれを追いかけて行き、それを微笑んで見つめるソラ。
何も変わらない風景。
(毎日こんな生活が続くのもよいかもしれない。
明日グランバニア王に返事をしよう。 いさせていただく、と。)
カデシュが空を見上げると、太陽が城の見張り台の先にかかろうとしていた。
(明日も晴れだな――。)
fin
リメイク版(・∀・)イイ!! よりハッピーエンドぽくなって。
花で王冠指輪つくる2人はほほえましいし
>>720からの続き。
お父さんが戻ってきたという話を聞いて、僕たちはグランバニアに戻ってきた。
「お待ちください。」
僕たちが城へ入ろうとしたとき、一人の兵士に呼び止められた。
「お二人に大切なお話があります。どうぞ、こちらへ……」
今、急いでるんだけどな。後にしてもらえない?
でも話を聞かないと中に入れてもらえなさそうだったので、兵士についていくことにした。
「念のため確認させていただきます。テン様とソラ様で間違いありませんね。」
人気のないところまで来ると兵士はそう聞いてきた。僕たちは間違いないと答えた。
「分かりました。それではお二人にはここで死んでいただきます。」
そう言うと兵士は突然襲い掛かってきた。兵士は正体を現した。死神兵だった。
あっという間に死神兵を打ち倒した僕たちは、グランバニアの城の中を走っていた。
今、この城の中で何かよくないことが起きている。早く何とかしなければならない。
階段を駆け上り、通路を疾走し、玉座の間へ続くドアの前へ来た。僕はドアを開けた。
玉座には紫のターバンをかぶった男の人がいた。その横には二人の子供がいる。
……僕とソラ……?
「どういうことだ、テンとソラが二人いるぞ?」
部屋の中にいたオジロンさんがそう叫んだ。
目の前にいるのは僕とソラの偽者だ。きっとこのお父さんも……
「なんだ、お前たちは? オレのガキの偽者か?」
紫ターバンの男がそう言った。
「偽者はそっちだろう!」
僕は叫んでいた。せっかくお父さんに会えると思ったのに、こんな偽者だなんて!
「口で言っても分からないか。お前たち、相手をしてやれ。」
紫ターバンがそう言うと、僕とソラの偽者が襲い掛かってきた。
僕は僕の偽者の攻撃を剣で受け止める。ソラも自分の偽者を相手にしている。
一度相手と間合いを取ると今度は僕から攻撃を仕掛ける。
相手は剣で受け止めるが僕は続けて切りかかる。相手は防戦一方だ。
僕の攻撃に相手の防御は追いついていない。僕は剣を振りかぶった。
「うわっ!」
突然僕の手に激痛が走り、思わず剣を手放してしまった。いったい何が起こったんだ?
「ふふん。子供を守るのは親の役目ってかー。」
紫ターバンの声だ。奴が雷の杖を振りかざして攻撃してきたのか。
武器を放してしまった僕に対し、偽者が襲い掛かってくる。
僕は何とかその攻撃をかわした。しかし、落とした武器からは離れてしまった。
敵はそのことを見逃すはずもなく、丸腰の僕に攻撃してくる。
僕は紙一重で攻撃をかわし続ける。僕は徐々に部屋の端のほうへ追い詰められていった。
敵は剣を構えている。僕は壁を背にして後がなくなってしまった。
僕と僕の偽者はどちらも動かないまましばらくにらみ合っていた。
「どうした? 早く始末しろ。」
業を煮やした紫ターバンが僕の偽者に命令した。
その言葉に反応して敵はじりじりと間合いを詰めてきた。
そして、剣を大きく振りかぶった。
「べギラマ!」
剣を振りかぶり隙のできた敵めがけて僕は攻撃呪文をぶち込んだ。
そして、相手がひるんでいる間に僕は部屋の隅へと走った。
そこには大きな袋があった。お父さんの荷物が入っている袋だ。
この中にはいくつかの武器も入っている。僕はその中のひとつを取り出した。
その直後体勢を立て直した敵が襲い掛かってきた。僕は手にした武器で迎え撃つ。
勝負は僕の勝ちだった。敵は僕の前で崩れるように倒れた。
しかし、勝利の余韻に浸っている暇はない。僕はすぐにソラの元へ向かった。
そこには二人のソラがいた。二人はほとんど同じ格好をしていた。
「おやおや、妹を助けるべくお兄様が駆けつけて来てくれたか。
妹の援護はしないのか? はやく妹の偽者を斬ってしまえばいいだろう。」
紫ターバンがそんなことを言った。
「どうした? まさか自分の妹がどちらか判らないわけではないだろうな。
例え同じ姿をしていても、どちらが本物かお前には簡単に判るのだろう?」
本物と偽者のソラを見分ける方法はある。僕は攻撃の対象を決めた。
「わかった、行くよ。もし本物だったらゴメンね。」
僕は剣を構えると、敵めがけて走っていった。
「ソラ! 援護だ!」
僕はそう叫ぶと紫ターバンめがけて剣を振りかざした。
攻撃の当たる直前、ソラのバイキルトが僕にかけられた。
「あ、あれだけ挑発してやったのに冷静な判断だったじゃないか……
それとも貴様には妹の見分けが付かなかっただけかな?」
紫ターバンの正体はデッドエンペラーだった。よかった、本物のお父さんじゃなくて。
「そんなことは関係ないよ。例え偽者でも僕にはソラを斬ることなんてできなかった。
ただ、それだけのことだよ。」
「お前、そ、それだったらなんで親の偽者は斬れるんだ……」
「だって僕、お父さん見たことないもの。」
「そ、そうでしたー!」
そう言い残してデットエンペラーは崩れて消えた。
「大丈夫だったかい?」
僕はソラに向かってそう言った。僕にバイキルトをかけてくれたのが本物だ。
「ありがとう。私は平気なの。」
「良かった。さて、この偽者はどうしようか。」
僕は偽者のソラの方を見た。
「私一人生き残るつもりはないわ。さっさと殺しなさいよ!」
ソラの偽者が叫んだ。こんな気丈なソラはちょっと新鮮だ。
「あのね、お兄ちゃん。この子を許して欲しいの。
この子あいつに命令されて、無理やりこんなことをやらされていたのよ。」
「そんなことだと思ったよ。ソラが本気を出せばとっくにけりが付いていただろうからね。
ソラが本気を出せないってことは、なにか理由があると思ったんだ。
それに僕の偽者もさ。せっかくのチャンスになかなか攻撃してこなかった。
まるで僕のベギラマの詠唱が終るのを待っていたみたいだったよ。
だからとどめは刺していない。気絶してるだけだからそのうち目を覚ますよ。」
「……じゃあ、コロヒロは生きているのね。」
そう言うと、ソラの偽者は泣き出してしまった。ソラの顔で泣かれると困るよ。
僕とソラの偽者はコロヒーローとコロマージというモンスターだった。
二人はデッドエンペラーに無理やり僕たちの偽者にさせられていたそうだ。
「テン! ソラ! 今までどこに行っていたのよ!」
突然、僕たちに怒鳴り声が降って来た。
「あ、ドリスお姉ちゃん。」
あれ、『今までどこに行っていたのよ!』って、お城には僕たちの偽者がいたじゃないか。
「私があの二人が偽者だって気づかなかったとでも思って?
モンスターが為政者に化けるなんてのは昔からある手よ。
今はまだ確証がなかったから、あいつらの様子を見ていたわけ。
そんなわけだから、偽国王に何一つ好きな様にはさせなかったわ。」
ドリスお姉ちゃん鋭いんだなー。
「私はまったく気づかなかったよ……」
わっ、オジロンさん! そういえばずっとこの部屋にいたんだっけ。
「もう、パパはなんでもすぐに信じちゃうんだから。もっとしっかりしてよ!
まあ、本物の二人はテルパドールへ向かったって、私は知っていたからね。
二人に船を貸したって手紙をルドマンさんから貰っていたからさ。」
ああ、そんなカラクリがあったのか。
「とにかく、二人とも私に黙って城を抜け出すなんて……」
あ、ドリスお姉ちゃん怒ってる? もしかしてこのあと雷の杖より激しい雷が……
「あんまり私たちを心配させないでよ。」
僕とソラはドリスお姉ちゃんの両腕にぎゅっと抱きしめられた。
ドリスお姉ちゃんって意外と心配性なんだね。
……あれ、なんだかずっと昔にもこんなことがあった気がする……
「まったく、テルパドールまでいったい何しに行っていたのよ。
……あら、テン。今手に持っているその剣は……」
「ああ、これね。お父さんの道具袋にあったんだ。ちょっと借りただけだよ。
あの道具袋は触っちゃ駄目だって言われていたけど、緊急事態だったからさ。
この剣のおかげで敵を倒せたんだ。もしかしたら、お父さんが守ってくれたのかもね。」
「お兄ちゃん、これって天空の剣なの……」
「うん。たまたまこの剣が最初に見つかったからね。」
「天空の武具は伝説の勇者様しか身につけることができないんだよ。
……お兄ちゃんが伝説の勇者様だったの?」
ああ、なるほど。あの噂が本当だったらそういうことになるね。
…………え?
「ぼ、僕が伝説の勇者様だって!?」
そんな、まさか! いきなりそんなこと言われても困るよ!
ずっと探していた勇者様が僕自身? それはちょっと間抜けな気が……
お父さんも、そのお父さんであるパパスおじいちゃんも探していた勇者様。
勇者様さえいればおばあちゃんを助けることができると信じていた。
でも、その勇者は僕だった。これから僕はどうしたらいいんだろう……
――親子の絆 完
―――――
容量やばかった。
次スレ立てちゃいますね。
……できませんでした……
>>765 ドンマイ!そしてGJ!次スレはもうちょっと待ってもいいんじゃない?たぶん
GJ!
ついに勇者覚醒か〜
,〃,⌒⌒ ヽ.
!∞,,i_Li Lハ!o
. !i_l_,i! (┃┃i!|
>>768 ヾ,ゝ、 ワノ" 乙彼様〜!!
. /.〃"ヾ
|l'”`y"〉
| .〉〉 il
|// il
んヾ._ _.il
`ト-.r-i´
./ / |
. /、./ l .!
〈. _〈 !-.}
ヽ_)l__ノ
残り4kb!
>>768さん
乙です。こっちはのんびり消費しましょう。
771 :
647:05/01/24 11:33:39 ID:aEut57J9
埋め立て兼ねて嘘予告をひっそりと投下してみる。
DQ5とDQ6のクロスオーバーネタ。DQ4も設定だけちょっと拝借。
ビアンカは夢を見る。
それは懐かしくて、暖かくて、だけど、記憶にないヒトの夢だった。
剣士テリーは旅の途中、空から落ちてきた子供と出くわす。
子供の背には、剣が背負われていた。その剣はテリーが知る伝説の剣と瓜二つ。
彼が知る伝説の剣、その剣の名は、ラミアス。
目の前には、テンシがヒトリ。
「そん、な」
ビアンカがつぶやきを漏らす。
どうして。どうして。
あたしはあの人を知っている。あの人のぬくもりを知っている。
覚えている。赤ん坊だったあたしを包んでくれたその愛情を、覚えている。
肩まで伸びる、流れるような黄金色の髪。
神秘を宿す、透き通る碧の瞳。
肌は真珠をまぶしたように美しく、その裸身をしなやかな白衣が包み、踝で翻っていた。
……だが、しかし。
その背中の翼は抱くべき白色ではなく、障気を孕む禍々しい漆黒であり。
そのたおやかな手には愛撫すべき赤子ではなく、身の丈上回る双身刀を携えていて。
―――それは、悪夢。目を背けたくなる、残酷な現実の具現。
―――それは、黒夢。現実を黒く塗りつぶす、絶望の具現。
「おかあ、さん――――」
母親のカタチをした悪夢を前にして、ビアンカは絶望にくずおれた――――
天高く、光が弾ける。
光の窓から現れたるは赤毛の少女。頭の上で束ねられた髪をなびかせ舞い降りる。
光の残滓が漂う中、トン、と軽やかに着地。
そして意志と怒りを宿した杏色の瞳で、女性を睨みつけ、
「現れたか、カルベローナの長」
「あいにく、今はゼニスのいち客人でしかないわ。そんなことよりも、あんたの目的、話してもらうわよ――――
敵意を込めて、誰何の声を叩きつける。
――――Dark dreamッ!!」
「まだ立つか。イズュラヒーンよ」
レイドック王子イザは立ちあがる。何度でも、何度でも。
「何度でも立ってやるさ……! 負けない、絶対に、絶対に、お前を倒してみせる!」
ラミアスの剣が、イザに呼応するように輝きを増す。
「夢は、終わらせなきゃ、母親と闘うなんて悪夢は、必ず終わらせなきゃならないんだから……!!」
怒りを押し殺すように小刻みに体を震わせていたソラは、やがてグッと顔をあげ、吼える。
「この身は勇者であらざれど、しかしこの魂は誰より勇者に近きもの!!」
だから、わたしは、目を塞がない! 耳を塞がない!
哀しい。涙が止まらない。それでも、濡れた瞳のまま、その女性から目をそらさず、その「敵」から目をそらさず、
泣きながら、
確かな声で、
確かな意志で、
その決意を、
「あなたを――――倒しますッ!」
自分の祖母に、告げた。
テンは剣の柄を握り締める。強く、強く、強く。剣の記憶を汲みあげる。
年月を隔て、
世界を隔て、
人の手を渡っていったその記憶を汲みあげる。
――――かつて、この剣を振るって魔と闘ったひとりの勇者の記憶を。
「……はっ、ぐ……ッ!」
指先の毛細血管が破れる。血がぽたぽた滴り落ちる。
容量限界。進化の秘法を打ち破ったかつての勇者に比して少年はあまりにも未熟――――
歯を喰いしばる。今、今、この瞬間さえ耐えればいい。ただこの力を集めるための歯車となれ。制御しろ、この全てを。
廻せ、廻せ。柄から汲みあげた魔力をこの身体を経由して刀身へ。刀身の魔力が溢れ出さぬよう押さえつける。
圧縮、圧縮、圧縮。魔力は稲妻へとカタチを変え、堅い悲鳴をあげる。
敵を―――その女性を睨みつける。
「いくぞ――――」
赤い世界の中、敵の体は白のまま。敵の翼は黒のまま。
「ギガ――――
雷鳴を纏った剣を振りかぶる。踏み出す足に力を込める――――!!
ソード――――!!」
敵は進化の秘法+天空人+ダークドレアムのごった煮キメラ!
襲いくる悪夢を天空の少年と少女は乗り越えることができるのか!!
Coming Soon...!
うーん、いまいちですかね?(´・ω・`)