腕にかかる力が急速に衰えていくのをトルファは感じた。瓶の中身は変哲のない
ただの水だ。砂の精が水に弱いというのは本当らしい。
闇の中を巨大な何かがのたうちまわっている。トルファは少女を後ろに下がらせると、
水に濡れた右腕の拳を固めて殴りかかった。まるで、紙を切り裂くように
トルファの右拳がザラザラした魔物の体を安々と引きちぎる。
再度、魔物が悲鳴をあげた。それは、そのままずるずると音を立てて位置をかえると、
窓を叩き割って逃走した。同時に部屋の中に月の光が射し込んでくる。闇の中、
崩れた魔物の体が砂の海に溶け込んでいくのを、トルファはじっと見つめた。
砂の精との最初の戦いは終わった。ほっと一息をつくトルファにかわり、
少女が部屋の扉を開けて中に光を招き入れる。
「意外と大したことがなかったな」
「あれは下っ端ですよ」
しれっと答えられたことに苦笑いしながら、部屋から出たトルファは、踊り場を
見て絶句した。下へと通じる階段が、砂のように崩れてしまっていた。
「どうしましょう?」
「ロープを使って降りるさ」
トルファは道具袋の中から愛用のロープを取りだした。特別太く誂えたため、
人がぶらさがっても切れることなどない。これを使えば難無く下の階へ降りられる
だろう。
ロープをつたって、トルファ達は下の階の踊り場に降り立った。この階の踊り場には、
下に続く階段の他に、二つの白い扉があった。
「まずは、こちらから探ってみるか」
トルファは階段に近い方の扉から当たっていくことにした。
扉の中は倉庫だった。格別危険な気配を宿す持ち主もなく、トルファは薄汚れた
象牙の指輪とロープを見つけた。指輪の中央はくぼみ、宝石は何者かの手によって削り
取られてしまったようだ。あとは、ガラクタばかりだ。
「きゃっ!」
と、突然トルファの左脇に控えていた少女が悲鳴を上げて飛び上がった。
見ると、足元に白い鼠がまとわりついている。
鼠はそのまま足元を走り抜けると、壁の隙間に消える前に捨てぜりふを残して去った。
驚いたことに、人間の言葉でだ。
「砂漠の鬼に会いたいんだったら、ここから二階下に降りるんだね」
少女の悲鳴に気を悪くしたのか、かなりぞんざいな口調だった。
少々気まずい思いにかられて、トルファは少女を伴って部屋を出た。
踊り場に出たトルファは、次の部屋へ向かった。
白い扉をあけた先に待っていたものは、空っぽの棚だった。
部屋の中の大きな窓が外に向かって開いている。風が鳴く音がした。
「風の精もいない。砂の精もいないようだな……」
部屋の中は何年も使われていないようだ。あたりの棚にはうっすらと埃が積もり、
めぼしいものは何もない。トルファがそう思ったとき、
「あっ、トルファさん。これを見てください」
窓の側の床にしゃがみこんだ少女が、キラリと光る何かを拾った。
慌てて駆け寄ったトルファは、少女の手の中で緑色に輝く宝石を見つけた。
エメラルドだ。エメラルドには赤い屋根のついた門のマークが彫られていた。
無くしたオパールと同じだ。
「これは、トルファさんのものですね」
少女がそう言って宝石をトルファの手に渡した瞬間、怖気を振るうような
しわがれた声が部屋の中に轟いた。
「渡さん…その石は渡さん……」
部屋の入り口から、巨大なサソリが侵入してきた。
トルファが鋼の剣を抜き放ち、恐ろしい速さで接近してきた蠍の毒針を弾き返す。
「くらえ!」
掌からギラの呪文を解き放ってトルファが反撃する。
ギラの炎熱で拒まれつつも、サソリは怯まない。尻尾を縦横無尽に
振るい、築きあげた毒針の壁でトルファの剣を牽制し、左右の鋏で少女の身体を
捉えようとする。伸ばした鋏が少女の身体をくわえ込もうとしたとたん――
少女の身体を蒼い光が覆い、眼の前に迫ったサソリの鋏を弾き返す。
「これで止めだ!」
動きの止まったサソリめがけてトルファが上段から剣を振り下ろす。
横合いから振り下ろされるトルファの剣をかわしきれず、サソリは尾ごと身体を
両断された。グシャッという小気味良い音を立てて毒虫は絶命してしまう。
二人はほっと胸をなで下ろした。
この階にはもう用はない。トルファは部屋を出て踊り場へ向かった。
以前と違い、階段は腐らずに残っており、トルファと少女は問題なく下へと降りる
ことができた。降りた階で二人を待っていたのは三つの扉だ。
黒色の扉に白色の扉、そして、青色の扉だ。
1.黒い扉へ
2.白い扉へ
3.青い扉へ
サイコロ適当に振ってみたら3が出たので3
>>626 すまん。
オルフィーはちとネタに困った結果になったようだ。
637 :
華龍光臨:03/10/02 00:26 ID:HVwvedKF
「知ってる事と言っても私は本来の魔王の直属の部下ではありません。かなり限られた範囲ですが。」
「何でも良い。我々は正直なところ何も知らないのだから。」
「ありがとうございます。」
「んじゃあ、まず、親玉の名前とやらは知ってるのか?」
地面に寝転がりながら張飛は問う。
「…わかりません。名前は名乗らなかったです。」
「ならば。死道、という言葉に心当たりはないか?」
「死道?」
「うむ。」
「ちょっと待ってください。魔王から聞いたわけではありませんが聞き覚えはあります。」
男は少し考え込む。
「そういえば、銀の狼に封印される前に聞いたことがありますね。」
ガボの先祖が封印する前…となるとずいぶん昔のことか。
「…魔王の軍勢は様々な世界を同時に攻略しようとしていたようです。」
ここや、我々の世界だけではなく、か。
…あれ以上の軍勢を持っているというのか。
「死道はその魔王の一大軍団と聞いたことがあります。」
一瞬沈黙が辺りを包んだ。
「…魔王とやらはほかにどの程度の軍勢を持っているのだ?」
「わかりません。ですが。死道に関して言えば一つの国家を飲み込んだ後、破壊の神を復活させたのですがその世界を守護する神龍によって討伐され、死道の残党はその国の首都にある神殿ごと下界に逃げ出したということです。」
首都…?神殿の話は聞いたことがある。洛陽のことか?
「その後、神龍は絶命しましたが事後をマスタードラゴンと竜王に託しました。竜王は後に主命に背いたようですが。死道にはもはやそれに付け込む力はなかったのでしょう。」
ふうと男は溜息をつく。
「私が知っているのはここまでです。魔物の姿をしているときには気付かなかったことが多すぎるのです。魔物として長く生き過ぎましたね…」
男はうつむきながら続ける。
「…私にはもう戦う力はありません。せめてここで私が殺めた人々の供養をしてあげたいのです。」
638 :
華龍光臨:03/10/02 00:27 ID:HVwvedKF
この部屋…といって良いだろうか。の片隅に簡素ながら祭壇がある。
…彼はもう世に出ることをやめてここで生きていくことを選んだ。
ここですべての罪を背負い孤独な一生を過ごすことになろう。
それが彼の選んだ道。
「…そこの少年はそういえば私が呪いをかけた少年ですね。」
男はガボを見やる。
「ああ。だが、意外とうまくやっているぞ。」
ガボは張飛の腹の上で座ってこちらを見ていた。張飛は気にしないといった様子でいつの間にか眠りこけていた。
「そうですか。それはよかった。…もう、私には呪いを解くことはできません。」
男はガボを呼ぶ。呼ばれたガボは不思議な様子でこちらにやってくる。
「…ですが、残された私の力を使ってせめて、この世の中で不自由なく暮らしてほしいと願うばかりです。」
男は念を込めて不思議な光る球体を作り出した。
どこか暖かい。そんな光だ。
ガボは不思議そうな表情でその光の球体を手に取る。
光の球体はガボの体の中へ何の抵抗もなく入り込んだ。
「…あ?なんだ?これ?」
「おお!」
皆、息を飲んだ。
「成功のようですね。」
なんとガボが、話し出した。
「スゲェ!ありがとうおっちゃん!」
「せめてもの罪滅ぼしです。」
「イヤッホー!これでこのおっちゃんときこりのおっちゃんに話せるぞ!」
「相当喋りたかったのでしょうね。」
アルスが駆け回るガボを目で追いながらそう言う。
そのガボがドスドスと張飛の腹の上でジャンプする。
さすがに苦しいか顔をゆがめる。…が、やはり眠ったままだ。
「これこれ。それではさすがに苦しいだろう。」
言われたガボは張飛の顔の横に座ってぺちぺちと顔を叩き始める。
639 :
華龍光臨:03/10/02 00:33 ID:HVwvedKF
「…これを。」
その光景を見て微笑む劉備に男は石版を差し出す。
「これは!」
「私の棺に入ってました。…必要なのでしょう。私にはわかります。」
男は軽く微笑んで。
「これで少しでも罪滅ぼしができればいいのですが…少し疲れました。申し訳ないですがそろそろ休みたいのですが。」
「うむ、そうか。色々と教えていただきありがとうございました。…翼徳、起きろ。そろそろ行くぞ。」
寝ぼけ眼を擦りながら張飛が立ち上がる。
一礼をして劉備が階段を下りていく。
降りていく途中、ガボが喋るようになったのに気付いた張飛がびっくりしたような声をだし、みんなで笑う声が響く。
最後に階段を下りることになったガボが一番最後に手を振っていたのが男の目に焼きついた。
──そして、男は一人、残される。
「仕方がありません。」
棺の中に寝転ぶ。
「私にはその資格がありませんから。」
ゆっくりと瞼を閉じる。
男は数刻後寝息を立て始めた。
>935
バトルかっこええのう。白が好きなので2で。
>639
謎が明かされる展開でゾクゾクします。頑張れ!
2で。
2.白い扉へ
部屋の中には樽があった。中身は何が入ってるか分からない。
トルファは樽の中を調べてみたが、残念なことに空っぽだった。
トルファは少女に向かって肩をすくめてみせた。
「外れだ。次の部屋に行こう」
ところが部屋から二人が出ようとしたとき、上から砂がかぶさってきた。
砂の精の攻撃だ!
トルファがそう思う間もなく、部屋の中を猛々しい風が駆け抜けて砂を
吹き飛ばしてしまった。どこからか笑い声がした。聞き覚えのあるひゅうひゅうと
耳に鳴る音程。風の精が助けてくれたのだ。風によって吹き散らされた砂の塊が、
砂塵となって部屋の入り口にたゆたう。見守るトルファ達の前で、砂がその本性を
露わにした。
643 :
華龍光臨:03/10/07 00:43 ID:EfJJZ1zm
<「人形」 〜ヒトガタ〜>
眠い目を擦りつつ目をあける。
グランエスタード城下町の宿屋の二階。
そういえば昨日は一階の酒場で酒盛りをしたのだったな。
バーンズ王が常々考えていたらしい居住地区拡張計画が始まったのだ。
これからはこの島だけではなくほかの人々の移住も考えられることから工事の開始に踏み切ったのだ。
昨日は手伝いに明け暮れていたが楽しい一時だった。
真横から豪快ないびきが聞こえる。
張飛のいびきである。
正直、酒臭い。
ちょうど真正面に壁に身を預けて関羽が眠っていて、ベッドには孫尚香が眠っている。
軽く伸びして窓を開け、外を眺める。
朝日が今日も暖かい。
外では朝早くなのに人で溢れている。
「ふむ。」
部屋の出口の扉を開けて部屋の外へ。
この宿の利用者とすれ違いに一礼しながら階段を下る。
酒場の空いている椅子に適当に座る。
しばらくすると朝食が運ばれてくる。
ゆっくりと味わいつつ食べているうちに他の三人も降りてくる。
「翼徳。飲みすぎだぞ。」
「す、すまねぇ。」
張飛は頭を抱えていた。見事な二日酔いである。
644 :
華龍光臨:03/10/07 00:44 ID:EfJJZ1zm
「兄者。何か夢にでも見ましたか。」
「ふむ。隠し事はできないな。」
三人の分の食事が運ばれてくる。
食事を一段落して劉備はアルスから送られてきた書簡を眺めながら言った。
どうやらあのダイアラック跡地から送られてきた書簡のようだ。
「…私が蜀の地を手に入れる前。劉表殿がお亡くなりになられた後だ。」
曹操の大軍の前に多くの民を連れて江夏へ逃げ延びる時のことだ。
関羽は一旦先に江夏へ向かい、張飛は長坂橋でただ一騎で大軍を足止めして。
「あの時はまさに絶体絶命でしたな。」
この未曾有の危機から何とか脱した劉備はこれを契機に飛躍の時になる。
孔明の働きで呉との同盟に取り付け赤壁で勝利を収めた。
そして荊州を得て、蜀を得た。
まさにこれからというときに死道はやってきたのだ。
さっと書簡を読む。
どうやら町の名前を決めてほしいとのことだが。
シムが送ってくれた案には臆面もなく「劉備横丁」だとか「劉備タウン」など書いてある。
思わず苦笑いを浮かべずにいられない。
これをアルスが見たときの顔が容易に想像できる。
…そうか。
この違和感。こういう時にすぐ近くで…
「違和感の原因がわかったようですな。兄者。」
じっと劉備を見つめていた関羽が言う。
「ああ。…夢で見たのだ。戦場を駆ける姿を。」
喉の奥まで出かかった言葉が出た。
夢にまで出てきたのだ。
果たしているのだろうか。
これから向かう場所に。
296です。現在OCN規制に巻き込まれて投稿することができません。
しかも、したらば系統のBBSにもアクセスできないので何とも。
OCN最悪。
>>645ですが
規制で書き込みできなくなってしまった296 ◆kYB5EDmqcoさんより
代理でレス承ったものです。(煽りとかではないので、、296さんを含め
このスレを見ていらっしゃる方々に分かりにくい書き込み、お詫び申し上げます。)
647 :
華龍光臨:03/10/11 07:00 ID:zh3xlWwo
見える。
戦う姿が。
…間違いない。
「兄者。着きましたぞ。」
「ん。ああ。」
一陣の風が自身のの身を切る。
風の囁きに耳を傾ければこの地で苦しむ民の声が聞こえる。
…ここは。過去。
未来を抹消された民たちが光を求める世界。
「…兄者。また。見えたのですかな?」
「ああ。戦場を駆ける姿が。」
あれから夢で幾度となく姿を見た。
そして、今、ここに到着する際に最も強く感じた。
間違いない。ここに、いる。
周囲を見回してみる。
海に岩山。
どうやらここには人が住んでいそうな気配がない。
「まずは何をするにも人がいるところへ行ってみよう。」
「そうですな。」
しばらく海岸沿いに歩くと開けた場所に出た。
648 :
華龍光臨:03/10/11 07:02 ID:zh3xlWwo
「あれ、なんですかね?」
「む?」
アルスの目は遥か先の何か動くものを見つけていた。
「人ではないか?」
劉備も目を凝らしてそれを見ようとする。だが、米粒のようにしか見えない。
「人間じゃないぞ。劉備のあんちゃん。」
張飛の肩の上でガボがそれを見つめていた。
「魔物ですね。…恐らくは。」
「何処へ向かっているかわかるか?」
「こちらには来ませんようですね。見つかってはないようです。」
「しっかし、かなり多いぞ。両手、両足で数えてもたらねぇぞ。」
要するに二十以上であるようだ。
「とりあえず後を追ってみようぜ。」
見つからないように森に身を潜めつつ様子を見る。
…数はざっと見て百程。思っていたよりも多い。
「からくり?」
「僕も詳しくはわかりません。ですが…色々と近くで見るとそうとしか思えません。」
あれだけ高度な技術のものは見たことありませんが。と付け加える。
精々知ってる限りではゼンマイ式のオルゴールがやっとのこと。
元々そういった技師がいなかったグランエスタードではからくり技術はなかなか発達しなかったのだろう。
そういえば以前孔明がその妻と共に様々な兵器を開発していたが似たようなものがあった覚えがある。
最もそれは実践投入されることはなかった。
「奴らは町へ向かってるようだぜ。町を襲う気か?」
より近くまで偵察に行ってたキーファが戻ってきた。
ここからは見えないが森を抜けた先に町があるということだ。そこに奴らは向かっている。
「…急ごう。あれだけの数を相手するのは厳しいがやるしかあるまい。」
急ぎ森を抜けようとしたところ町があろう方向から警鐘が聞こえてきた。
649 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/10/11 19:40 ID:lTIm5T6b
650 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/10/11 19:49 ID:1NfTwKNU
_____________
/ \ ____
| 今だ!650ゲットォォォーー!!!! | / /
\ / / /
 ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ / 2ch /
/| ̄ ̄ ̄ ̄|\ / /
/ | ∧_∧ | \ / TOP GAN /
/ |(´∀` ) | \ /______/
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /___
/| 2ch Air Force / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡
/ |________/ / ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡
 ̄ ̄ |\  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄
| \_____________|
 ̄ ̄ / ||| \
\ ||| /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
651 :
代理:03/10/15 15:01 ID:G1y21j3m
>>642の続き
砂塵の中より現れたのは三体の魔物だった。白いローブで全身を
包んだ醜い顔の魔物。そのうちの二体が手にした杖をかざして詠唱を始める。
「させるかっ!!」
床を蹴って、トルファが疾走する。
人間にはとても発せない金切り声をあげて魔物が迎え撃つ。
真正面から無数の砂礫がトルファを襲う。
突進するトルファの速度も含めてとてもかわしきれる量ではない。
手にした剣で胴体の急所、左腕で顔面の急所をかばう。
突き刺さるような砂の圧力を全身に感じる。棘のように食い込む礫の激痛に耐えながら、
トルファは身体全体を回転させ、剣を魔物に叩き付ける。
最初に、右手の剣、次に、背後を見せながら左手でヒャドを放つ。
魔物の放った礫はトルファの身体を痛みはしたが、動きを止めることは出来なかった。
トルファの剣を受けた魔物は、全身を波打たせてローブごと砂となって消え去った。
呪文の攻撃を受けた魔物は、胸部を氷の矢で貫かれ、ローブの隙間からこぼれ落ちる砂とともに崩れ落ちた。
「ほう……なかなかにやるようだな。上の階で蠍を倒したのは貴様か」
中央に陣取っていた残る一体の魔物が、笑いながら無造作に間合いを詰めてきた。
652 :
代理:03/10/15 15:05 ID:0MDKc+FM
魔物のだらりと下げられた手から、小さな何かがトルファめがけて飛んでくる。肘は全く動いていなかった。指と、手首がかすかに震えただけにも関わらず、その何かは一直線にシードの顔面めがけて飛んできた。
「なっ!」
見た事のない技での攻撃にトルファは驚いた。
咄嗟にサイドステップでかわしたトルファに、次々と同様の攻撃が行われる。
魔物は両腕を伸ばして、その手から無数の弾を撃ちだしてきた。
「ちっ」
舌打ちとともに、トルファが身体を振る。半径一メートルほどの
円の中を踊るようにしてトルファは全ての攻撃を回避する。
機械的に正確な動作が驚異的な速さを生み、トルファの身体をぶれて見せる。
攻撃が途切れる。そして同時に、白装束は右腕で懐から何かを掴み出す。
攻撃が止んだ。トルファは足に力を込めると、そのまま跳躍する。
天井高く飛び上がったトルファの身体が放物線を描いて魔物めがけて落下する。その瞬間、魔物の左腕が翻り、弾を撃ちだしてきた。隙を見せたのはフェイントだ。
「甘いね!」
幅広の剣の刃が弾を弾きかえす。右腕に強い手応えを感じると
ともに、トルファは飛来してきた物体の正体を知った。泥の塊だ。
たかが泥が、金属に耳障りな音をあげさせるまでに硬質化されている。
あたれば無傷ではすまなかっただろう。
衝撃で放物線が捻れ、トルファは魔物の隣に着地する。この隙に魔物
は宙に飛んで剣の間合いから逃れると、空中から攻撃を仕掛けてきた。
653 :
代理:03/10/15 15:09 ID:0MDKc+FM
宙に浮かんだ魔物を追いかけるように、崩れ落ちた魔物の残骸から
砂が噴き上がった。手にした杖を振り上げた魔物の身体を、衛星のように砂が
旋回する。周囲に展開した砂のリングを敵に叩き付けるべく、
魔物が杖を振り下ろした。帯状の砂の集まりがトルファめがけて押し寄せる。
「下がって! 吹雪で応手します!!」
少女が放つヒャダルコの冷気が、押し寄せる砂の塊を横合いから受けとめた。
渦を巻くように冷気の一部が砂の流れを回り込んで魔物に襲いかかる。
かわしきれず、魔物は全身を無数の氷の矢で貫かれて絶命した。
トルファの目の前に、かつて魔物であった砂の塊が滝のように流れ落ちて
きた。
戦闘シーンカコ(・∀・)イイ!
スピード感のある文章が好きです。
空っぽの樽と砂の山が部屋の中に残された。この部屋にはもう何もないだろう。
トルファが部屋の中を出ようとしたとき、砂の山からキラリと光を発して何かが飛び出してきた。
球体はそのままトルファの荷物袋に口から突っ込むと、光を鎮めて中に納まった。
「な、何だ!?」
慌てて袋の中を確認したトルファが目にしたものは、象牙の指輪のくぼみにはめ込まれたオパールだった。
宝石の中に赤い門のマークがにぶく輝いている。
「儲けましたね、トルファさん」
少女が嬉しそうに話しかけてきた。
トリップ入れ忘れた。スマソ。上のは自分です。
>>655続き
白い部屋を出たトルファの前には、二つの色違いの扉が残されていた。
黒い扉と青い扉。トルファが黒い扉に手をかけようとしたとき、少女が話しかけてきた。
「次は、青い扉にしてください」
手を止めてトルファは少女に振り向いた。
「青い扉を?」
「はい。ここに人間の知り合いがいるはずなんです」
ここに来てから初めてになる少女の自己主張、しかも、青い扉の先には少女の知り合いだという人間
がいるらしい。二重の興味からトルファは先に青い扉を開けることにした。
「しかし、何だって急に……」
「いつも扉を閉めずに開けっ放しにしている人なんです。扉の色が青だってことなんて、当人も覚えてないと
思います……」
「……成る程」
トルファがそう呟いた途端、青い扉がひとりでに動いた。
廊下を揺らしながらエレベーターのように扉が上に昇っていく。バタンと閉じるような音をたてて扉が止まった。
「野放図で悪かったな」
入り口のところに意地悪そうな顔をした男が立っていた。
男はトルファと少女を部屋の中に招き入れると、椅子に座ってコツコツとのみを振るい始めた。
傍若無人な振る舞いに苦笑した少女が、男に代わって紹介をはじめる。
「えーと、私の方から紹介しますね、トルファさん。この人はゲイルさんと言って風の女王に
雇われた細工師です」
「トルファだ。よろしく」
トルファが男に向けて手を差し出す。男は握手を求めるトルファの手に見向きもせず、面を上げてトルファの
顔をじっと凝視する。
「ほう、多少は商売ができそうだな。おい、小僧、手にした剣をよこしな」
1.渡す
2.渡さない
1
規制に負けずに乙です
659 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/10/18 01:41 ID:Q6Zt1wQp
660 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/10/18 18:21 ID:XGPF3DEC
>>659 そんなんやってたんだ。久美スレにでも貼ればどうだい?
あと貼るとしたら、どこだろ?
やっちゃいけないんだけど、出先から更新。
1.渡す
トルファは腰に差した鋼の剣を帯から外し、男に差し出した。
「よしよし、いい子だ」
掴んだ鞘から剣を抜くと、男は刀身をためつがめす眺め始めた。
「剣を振る前に俺に会えて良かったな。よく観な」
蝋燭の火を受けた剣の刀身が輝き、無数の細かなヒビををあぶり出す。
「まるで焼き物だな……」
「さっきまで何ともなかったのに……」
茫然とトルファと少女が呟く。
「砂の精どもを斬ったことで、いままでの戦で剣にかかった負担が
いっぺんにあふれでてきちまったのさ。今まで物騒な物を斬って
きただろう?」
無言で黙り込むトルファに向けて、ゲイルは引き出しの中から鋼の剣と液体の
つまった瓶を取りだして放り投げてきた。
「こいつは責任もって俺が治してやるから。お前は水と剣を持って
さっさと砂漠の鬼を倒しにいきな。奴らがいなくならないと商売
にならないんだ」
「それはいいんだが、あんた細工師だろう。鍛冶屋のまねごとなんて
できるのか?」
「俺は細工師だ。それ以上でもそれ以下でもないね」
トルファの質問に、答えにならない返事を返して男は黙々と作業を始めた。
トルファの後ろで少女がくっくと忍び笑いをもらす。
「わかった。頼りにしているよ」
トルファは男の背にそう声をかけると、来たとき同様に、少女を
伴って部屋の外に出た。二人が廊下に出るころを見計らったように、
蒼い扉がズドンと音をたてて部屋を閉ざした。
こうして、最後に黒色の扉が残った。
黒い扉を開けると、中には水色の衣装をまとった女がいて、悲しそうに
顔を伏せていた。彼女はトルファが入ってきたの気が付くと、パッと
顔をあげたが、その表情は深い憂いに満ちている。
そして、おずおずとこう言った。
「あなたは……どなたですか? ここにはわたしたちと砂の精しか
いないはずなのに……」
女の目が、トルファから少女に移動する。
そのとたん、女の顔がパッと輝いた。
「まぁ、イーシャ。どうしてこんな危険な場所に……」
嬉しそうに、彼女は少女に駆け寄ってきた。
「知り合いか?」
トルファの問いに少女はコクンと頷いて答えた。
「シフール……風の女王の側近です。シルフィング、こちらはトルファさん。
赤い扉の旅人だそうです」
「まぁ、貴方があの……。トルファ様、先程はご無礼を。女王の側近の一人で、シルフィングと申します」
「そうか……水をさすようで悪いが、下に降りる階段はどこだ?
俺は、この下にいる『砂漠の鬼』とやらに用があるんだ」
「……『砂漠の鬼』に用、ですか。女王が貴方に何を仰られたのか
は存じ上げませんが、あれは人間が簡単に倒せるような魔物ではありません」
「不幸なことに、自分より強い奴と戦うことには慣れてるんでね」
トルファと女性の目が交錯する。根負けしたのは風の精の方だった。
「……下の階段への入り口は、先程砂の者達の手で閉ざされました。
そこまで彼らを追い詰めた貴方を信じましょう。私の手をおとりください」
軽くため息をつくと、彼女はトルファに手を差し出した。
665 :
華龍光臨:03/10/21 22:03 ID:hl/g1xaV
警鐘のなった元へと急いで駆けつける。
そこには後をつけていたからくりの兵たちの一団。そして町の入り口だろうと思われる城門がそびえていた。
からくりの兵たちは城壁に取り付いて破壊工作をしているようだ。
…長い戦いの末に城壁はところどころ崩れている。
復旧もままならないほど戦闘は激しいのか。
劉備たちは防衛側の攻撃が届かない林の中で様子を伺う。
これでは下手に援護もできない。
「兄者。あれを。」
関羽の指差した方角に衝車が。
まだ城門にたどり着くには距離がある。
「なんと!こんなところに衝車があるとは!」
「衝車?」
アルスが衝車を見つめながら劉備に問う。
「うむ。我々の世界にあった対攻城兵器だ。」
「しかし、あの門はやばいと思うぜ。かなり攻撃を受けてボロボロだぜ。」
張飛の言うとおり門はかなりボロボロになっている。
もしかしたら衝車の攻撃を受ければ崩壊されるのやも知れない。
防衛側もただただやられるわけにもいかないといわんばかりの矢の雨を降らせているがからくりの兵の装甲の前にはじかれている。
「衝車を止めるしかないな。」
「できれば壊したほうがいいわね。」
衝車には護衛のからくりの兵が一体だけ。
衝車は自動で城門へと向かっている。からくり技術が施されているのだろう。
他の敵影は…ない。
限界まで近づき機会を待つ。
666 :
華龍光臨:03/10/21 22:06 ID:hl/g1xaV
そして目の前を衝車が通る。
「いくぞ!」
一気に草むらから飛び出す。
アルスたちは衝車へ。
そして劉備たちは護衛のからくりの兵へ。
「もらった!」
一気に踏み込んで狙うは装甲とのつなぎ目の僅かな隙間。
しかしからくりの兵は胸部を横回転させてすさまじい斬撃を放つ。
張飛は思わず後ろへ飛びのいた。
近づいた敵を皆巻き込む五月雨斬り。
「むう。これでは近づけんな。」
そしてからくりの兵がこちらを向いて一歩足を進めた。
空を切るその斧は鈍い光を放っている。
激しい攻撃に幾度となく剣が悲鳴を上げる。守るのが精一杯だ。
「兄者、どいてくれ!」
張飛の声が聞こえた。
咄嗟に横に転がって間合いを取る。
からくりの兵の姿が見えなくなるのは少し怖いが張飛のことだ。大丈夫だろう。
「どりゃああああ!!!!」
すさまじい気合の声と共に地が震えた。
667 :
華龍光臨:03/10/21 22:09 ID:hl/g1xaV
「…!?」
瞬時に埃が辺りを覆う。
敵の姿が視界から消える。
「……」
一瞬であったが空白の時間が生まれる。
そして埃が晴れ、敵の姿を探す。
目の前に…影が。
敵かと思い構える。が、それは杞憂だったようだ。
からくりの兵は巨大な岩の下敷きになっていた。
張飛は武器での打撃は効果的でないと考え近くにあった岩を投げつけたのだ。
とりあえず一つ息を吐き衝車に向きなおる。
衝車のほうは何かアルスが上半身を衝車後方に開いてある穴の中に突っ込ませ、何か操作している。
しばらくするとガスンプスンと音を立てて止まった。
マリベルがアルスを引っ張り出す。
「とりあえず止めました。」
「うむ。…ふむ。壊すには惜しいものやも知れないな。」
壊そうとしてもいざ目の前にこれがあると壊すのが惜しくなる。
「とりあえず逃げたほうがいいわよ。」
マリベルが城門付近を眺めて呟く。
「そうだな。」
先ほどの張飛の大声に城門付近のからくりの兵が一部向かってきている。
とりあえず衝車は放置して近くの草むらに隠れることにした。
やはり、そろそろ新スレを立てるべき時だな。
風の精の手を取った瞬間、空間が旅の扉を通り抜けるときのように歪んだ。
気が付いたとき、トルファと少女は見知らぬ廊下に立っていた。目の前には赤色の扉と
青色の扉。
「砂の王は青色の扉にいます」
風の精の声が聞こえた。
1.赤色の扉を開く。
2.青色の扉を開く。
そこで迷わず1の赤色の扉ですよ!
表示は512だけど、実際は500なので、そろそろ新スレの準備を
した方がいいかもですね。
あらすじまとめるの大変そうですが……。
ドラクエの小説スレッドパート2
前スレ
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1029930091/ 細かいことは
>>2-7以内に
リレー小説
トルファの冒険のルール
1)主人公は旅の扉を使って新しい町へゆき、そこで冒険し、また次の町へ 旅の扉から旅立ちます。冒険中の行動を全て書き手さんが決めても、途中にゲームブック風の
選択肢が登場しても構いません。ただし、冒険の最後の旅の扉の行き先だけは
複数の選択肢を用意してください。
2)次に書く人は、どの選択肢を選んだか明記して進めてください。書き手以外の人が希望を書き込む事も可能ですが、必ずその希望に沿って進むかどうかはわかりません。
3)書き手は選んだ選択肢以外については、書く事ができません。以前の選択肢に出たのに選ばれなかった場所を再び選択肢に出す事は可能ですし、過去に行った場所の事を思い出す、等はOKです。
例:A、B、Cの中からAに行ったとしたら、B、Cに行った場合の話をAの中で書いて
ゆくことはできません。
4)基本的にはひとつの冒険をひとりで書いた方がやりやすいように思いますが、
途中で書き手が交代してもOKです。
5)旅の扉が出た時点で、次の書き手さんに交代します。書き手希望者がいない場合は続行もOKです。
6)ドラクエ世界の中なら、どこへ行っても構いません。アリアハンの次にフィッシュベルへ飛ぶ等もアリです。
7)小説の連作と、これからの展開の相談を同じスレでやる事になると思います。
以前の話がわからなくならないように、小説の連作部分はレスアンカーを入れながら
書いてください。
☆ありそでなさそなQ&A☆
Q:短編って何レスまで使っていいの?
A:今の所、レス数制限は特に考えていません。
Q:エロはなし?
A:話の流れ次第ですが、エロで続けるのは禁止です。1レスでやめてください。
Q:これ、いつ終わるの?
A:皆で書きながらエンディングを考えましょうw
Q:感想とか希望とか書き込んでいいの?
A:是非書いてください。皆で楽しく進めようYO!
Q: トルファの出ないSSをこのスレに書いてもいいの?
A:ぜひぜひ!ただし、混乱するので、最初にタイトルを決めて、明記しておいてください
前スレまでのトルファの冒険のルート
レヌール城→アッテムト→ラダトーム 竜王戦→ルプガナ〜ムーンペタ→イシス(現在継続中)
華龍光臨
7ベースの物語で現在フォロッド。
書いて置いてなんだけど、第三番目の冒険のあらすじに負けそう。作るの難しい……
アヒャーン
乙
なんとか、次スレしあげた〜。死ぬ〜。もっと、映画の粗筋を書いて修練しないとな。
レヌール城以外、あんまり出来がよろしくない。
676 :
凸:03/11/09 18:15 ID:uq6rpd5Q
小説書いていいか?
このスレって生きてるのかな…テストん
容量オーバー間近だが