【機械化】サイボーグ娘!八人目【義体化】

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1名無しさん@ピンキー
サイボーグ娘に萌えるスレです。
人工皮膚系・金属外骨格系どちらも(それ以外も)OKです。
事故や病気で体を失って機械化した娘、特殊な作業に特化した体を得る為に機械化した娘、萌えるじゃないですか!
自分の機械の体で悩む娘も、能天気な機械化娘も、萌えるじゃないですか!
そんな趣旨のスレです。

アンドロイド娘とはかなり方向性が異なるので別スレにしてみました。
アンドロイド娘は完全人工な娘、サイボーグ娘は生身だったのを機械に改造した娘です。
区別の目安としては、脳味噌が生身か造り物か、という事になります。

前スレ
【機械化】サイボーグ娘!六人目【義体化】 (実質七人目)
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1126369982/
前々スレ
【機械化】サイボーグ娘!六人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1120438550/
【機械化】サイボーグ娘!五人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1115785525/
【機械化】サイボーグ娘!四人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1109861097/
【機械化】サイボーグ娘!三つめのパーツ【義体化】
http://pie.bbspink.com/feti/kako/1082/10828/1082827604.html
【機械化】サイボーグ娘!二回目の手術【義体化】
http://pie.bbspink.com/feti/kako/1064/10645/1064515330.html
【機械化】サイボーグ娘!【義体化】
ttp://wow.bbspink.com/feti/kako/1062/10626/1062698217.html
2名無しさん@ピンキー:2005/12/17(土) 07:31:36 ID:Ia3yQ+iu0
2ゲットなら真央ちゃん優勝
33の444:2005/12/17(土) 13:42:43 ID:WPcXoVEq0
 佐々波さんとカズミさんの面会から、 一週間が過ぎた。
  今、 私は義体換装手術の真っ最中。 私の脳みそは、 今頃きっと、 慣れ親しんだ標準義体から切り離さ
れて、 新しい義体へ移されるのを待っているところだろう。
  義体換装手術なんて言っちゃうと、 どうしても大掛かりな手術を想像しがちだけど、 吉澤センセイに言わ
せると、 実は、 たいした手間じゃないそうだ。 作業としては、 標準義体から、 硬いケースに包まれた脳み
そと、 脳みそを生かしておくための生命維持装置だけを取り出して、 新しい義体に移植するだけ。 しかも、
脳ケースも、 生命維持装置も、 義体の分解検査をする時とか、 今回みたいに義体を換装する時に便利な
ように、 ユニット化されて、 カンタンに取り外したり取り付けたりできる仕組みになっているんだって。
「手術自体は接続チェックも含めて30分くらいで終わっちゃうよ」
  吉澤センセイは、 こわごわ手術室に入ってきた私に向かって、 こともなげにそう言った。
  確かに、 センセイの言うとおり、 換装手術自体は、 たかだか30分程度のカンタンな作業なんだろう。 で
も、 短い時間とはいえ、 義体から引き剥がされて、 眼も見えず、 耳も聞こえず、 身体の感覚すら失った状
態で過ごすことが、 こんなにも苦しくて、 恐ろしいことだなんて、 私は知らなかったよ。

  生身の肉体の全てを失って、 今の私に残されたのは脳みそだけ。 義体化手術が終わって目覚めたあと
で、 吉澤センセイから、 そう聞かされても、 私、 イマイチ実感が湧かなかったんだ。
  だって、 私には、 機械仕掛けの代用品とはいえ、 見た目も肌触りも、 生身の身体と何ら変わりのない、
自分の思い通りに動く手足が与えられていて、 眼もちゃんと見えるし、 耳も聞えるんだもの。 失われてしま
った感覚も多いけれど、 日常生活をするうえで、 不便だって感じることはないんだもの。
43の444:2005/12/17(土) 13:43:52 ID:WPcXoVEq0
  だから、 手術台に寝かされて、 タマちゃんから
「今から、 サポートコンピューターと脳の接続を切るからね。 覚悟はいい?」
  って聞かれた時にも、 まだ、 それが何を意味するのかよく分かっていなかったんだ。 ちょっと身動きが
でとれなくなる程度のことで「覚悟はいい?」なんてずいぶん大げさなことを言うなあ、 なんて、 のん気に思
っただけだった。
  でも、 いざ、 義体の電源を落とされて、 サポートコンピューターと脳の接続を断ち切られて、 はじめて、
タマちゃんの言っていた「覚悟」っていう言葉の意味が、 分かった。
  生身の部分なんて脳しか残されていない今の私にとって、 身体感覚っていうのは全部、 義体のセンサ
ーが受け取った電気信号が、 サポートコンピューターを経由して、 脳にもたらされている擬似的なもの。 だ
から、 サポートコンピューターと脳の接続を切られるってことは、 身体の感覚を全て失ってしまうことなん
だ。 視覚も、 聴覚も、 触覚も、 何もかも全て。
   ただ目をつぶっただけなら、 まぶた越しにうっすら光の存在が感じることができるし、 どんな闇夜でも、
星だけは明るく輝いているよね。 光が決して届くことのない、 深い深い海の底にだって、 明るい輝きを放つ
生き物がいるっていうよ。
  でも、 今、 私が閉じ込められている世界は、そんな生易しいところじゃない。 暗闇にたとえることすら、
生ぬるく感じる。 これは、 そう、 無だ。 宇宙が生まれる前の、 虚無の世界に自分の意識だけがぽつんと
漂っている、 そんな感じだ。
(嫌だ。 何なのこれ。 タマちゃん、 助けてよう! 誰か、 助けてよう!)
  はじめ、 私は、 気が狂ったように、 喚き続けた。 でも、 すぐに、 どんなに泣き喚いたところで、 私の声
は闇の中に消えていくだけで、 誰にも届きっこない、 助けなんか、 来るはずがないってことに気がつく。 今
の私にできることは、 「覚悟」を決めて、 この、 光も、 音も、 上下の区別すらない、 脱獄不可能な魂の牢
獄の中で、 無の恐怖に怯えながら、 ひたすらじっと耐えることだけなんだ。
53の444:2005/12/17(土) 13:44:38 ID:WPcXoVEq0
  義体のお陰で、 普段は何の不自由もなく身体を動かしている私だけど、 ホントの自分は機械の助けが
なければ何一つできない、 赤ん坊より無力なただの脳みその固まりにすぎないってことを嫌というほど思い
知らされてしまった。

  一体、 どれくらい、 時間が過ぎたんだろう。
  虚無の世界に、 唐突に白い英語の文字が浮かび上がった。 アルファベットと数字の羅列は、 まるで、
映画館の巨大なスクリーンで洋画のタイトルロールを見ているみたいに、 真っ黒な空間を埋め尽くして、 下
から上に向って、 流れていく。
  きっと、 これ、 サポートコンピューターの立ち上げ画面に違いない。 立ち上げ画面を私の脳が見てい
る、 というか、 感知しているんだ。 やっと、 私の脳が、 サポートコンピューターと繋がったんだ。
  何が書いてあるのかは、 さっぱり理解できなかったけど、 それでも、 私は、 この世界から逃げ出すた
めの蜘蛛の糸が天から降りてきたように感じていた。 どんなつまらない、 意味のないものでも、 何かを感知
できるっていうだけで、 今までの虚無の世界に較べたらどれだけましか分からないよ。
  しばらく、 ぼんやりと、 次から次へと現れては消えて行くアルファベットを、 眺める。
  そのうち、 OK(それだけは分かった)という文字が表示されたかと思うと、 突然、 背中に、 硬い手術台
の感触が蘇った。 いままで、 宙をふわふわ漂っていた身体がふんわりと、 手術台の上に仰向けに軟着陸
したみたいな、 不思議な感覚。
  まぶたの向こうに光を感じて、 ゆっくりと眼をあける。 まぶしいライトの白い光が、 天井から私のことを
照らしていた。
「八木橋さん、 ご機嫌いかが?」
  背後から強い光を浴びて、 逆光になったタマちゃんの黒いシルエットが、 私を見下ろす。
  五体満足っていうのは、 すばらしい! それが、 たとえ、 作り物の擬似感覚だったとしても。
  ライトのまぶしさに、 思わず眼を細めながら、 私は思った。
63の444:2005/12/17(土) 13:46:23 ID:pQjHQg+C0
「うー、 機嫌いいわけないじゃないか。 私、 恐かったんだから。 本当に恐かったんだから・・・」
  完全に感覚遮断のトラウマを植えつけられた! 三年に一回の入院検査のたびに、 こんな目に遭うのか
と思うと、 憂鬱! そんなふうに愚痴の一つや二つ、 タマちゃん相手にこぼそうと思ったんだけど、 言いかけ
て、 あわててのどを押える私。
  私の声、 変わってる・・・。
  事故で身体を失った私は、 今まで、 標準義体っていう外見から何から規格化された義体に入っていた
んだ。 声だって、 もちろん昔と違ってしまっていて、 ものすごい違和感があったんだよ。
  でも、 この声は、 正真正銘、 私自身の声だ。 まだ生身の頃の自分の声だ。
「ふふふ。 八木橋さん、 声が変わっているのに気がついた? 八木橋さんのおじいさんから、 昔の八木橋さ
んが映っているビデオをイソジマ電工に送ってもらいました。 それを基に、 義体開発課の人たちが、 八木
橋さんの声を再現してみたのでーす。 八木橋さん自身が聞く、 自分の声も、 そのビデオと、 もとの骨格か
ら推定して、 再現したと言っていたけれど、 うまくいったかな?」
  戸惑う私をおかしそうに眺めながら、 タマちゃんは言った。
「あー、 あー、 あー。 タマちゃん。 元どおりだ。 私の声、 昔のまんまだよう! すごいよ! すごいよ!」
  愚痴をこぼすのも忘れて、 私は思わず興奮してしまった。
  私が私の声って認識している声と、 他の人が私の声って認識している声は違う。 ビデオに映った自分の
声を聞くと、 なんだか別人の声に聞こえるみたいにね。 そして、 ビデオに映った自分自身の声をそのまま
再現するのは、 それほど難しいことじゃないと思う。 でも、 今、 私が聞いているのは、 世の中で私だけしか
知らないはずの、 私自身が聞いている声なんだ。 そんなのどうやって調べるんだろう。
  私は嬉しかった。 もちろん、 この声だって、 ホントのことを言えば、 昔の肉声とは違う。 ただ、 昔の声
を真似した電気合成音がスピーカーから流れているだけ。 分かってる。 そんなことは分かってるよ。 でも、
例え、 そうだとしても、 この義体を作ってくれた人たちの、 少しでも義体から感じる違和感を取り除いてあげ
ようっていう、 努力と心意気が私に伝わってくる気がしたんだ。
73の444:2005/12/17(土) 13:47:58 ID:pQjHQg+C0
  それにしても、 おじいちゃん、 いったいどんなビデオを送ったんだろう。 まさか、 運動会で、 スタート直
後に転んだときのビデオじゃないだろうね。 そう思って、 ちょっぴり不安になってしまう私なのでした。
「じゃあ、 起き上がってみようか?」
「うん」
  タマちゃんに促されて、 私は、 ゆっくりと身体を起こして、 周囲をみまわす。
  吉澤センセイは、 私と同時に換装手術を受けているはずの佐々波さんのところにいるんだろうか。 手術
室には、 私と、 タマちゃんしかいなかった。 ううん、 正確に言えば、 もう一人。
  私の寝ていた手術台と、 丁度並ぶような形で、 もう一台手術台が置かれている。 そして、 その上に、
もう見慣れてしまった、 綺麗な顔の女の人が、 生まれたままの姿で眠っている。 もう、 私とは何の関係もな
い、 ただの抜け殻のはずなのに、 彼女の裸を見るのは、 やっぱり妙に気恥ずかしかった。 
(短い間だったけど、 本当に有難う。 あなたも、 私の命の恩人だよ)
  私は、 彼女に向って、 頭を下げた。
  ホントは、 あなたの出番なんか、 もう来ないのが一番いい。 私みたいな目にあうのは、 もう私だけでた
くさん。 でも、 そんな理想を言ったってしょうがないよね。 たくさんの人がこうして社会を築いて生きている限
り、 やっぱりどうしても、 不慮の事故は起きてしまう。 だから・・・だから・・・。
 (次に、 また誰かの役に立つ、 その時まで、 ゆっくりとお休みなさい)
 
「八木橋さん。 ハイ、 これどうぞ」
  手術台から、 ぴょんと飛び降りた私に向かって、 タマちゃんが手渡してくれたものは、 鏡と眼鏡。
「換装手術が終わったばかりの人は、 みんな、 真っ先に自分の姿を見たいって言いまーす。 八木橋さん
も、 そうでしょ」
  確かに、 タマちゃんの言う通り。 ようやく自分の身体を手に入れた私。 一度、 診察室で自分の義体を
見ているとはいえ、 やっぱり、 ちゃんと、自分自身が中に入った状態で、 自分を見たい。 そう思うのは自然
なことだよね。
83の444:2005/12/17(土) 13:49:02 ID:pQjHQg+C0
  眼鏡をかけて、 タマちゃんから受け取った鏡を、 おそるおそる覗き込む。
  鏡の向こうで、 昔のまんまの私自身が、 じぃっと私のことを見つめている。 フレームのない、 小さな眼
鏡の奥でかすかに光る、 今の私の黒い瞳は、 強化ガラスとプラスチックでできた作り物かもしれない。 で
も、 その機械の瞳の奥底に、 私は自分自身の強い意志の力を感じた。 この機械の身体の中に、 確かに
私の命が宿っている。 そう思ったら、 嬉しくなった。
「こ、 ん、 に、 ち、 は」
  私は鏡に向かって言った。 鏡の向こうの、もう一人の私も同じように口を動かした。
「これから、 一生あなたのお世話になります。 八木橋裕子といいます。 宜しくね」
  鏡の向こうで、 17歳の女子高生が笑った。 久しぶりに聞く、 正真正銘、 自分の声での笑い声だった。

「ところで佐々波さんは、 どうなったの?」
  私は、 自分の姿に満足した私は、 もう一つ、 とても気になっている、 私と同時に換装手術を受けている
はずの人のことを聞いた。
「ふふふ。 佐々波さんの換装手術は、 もう終わってるよ。 一度あなたに挨拶しておきたいって、すぐ外の待
合室で、 あなたが来るのを待ってまーす」
  そう言って、 タマちゃんは、 手術室の観音開きのドアを指差した。
  このドアの向こうに、 佐々波さんがいるんだ。 男になった、 佐々波さん。 いったいどんな姿をしているん
だろう? 結構、カッコ良かったりするんだろうか?
  今まで、 何度も会っているけど、 でもはじめて会う。 なんだか、 とても不思議な感覚だ。
「えと、 私はもう出ていいのかなあ?」
「もちろん! どうぞ、 こちらへ」
  タマちゃんは、 私を出口まで導くと、 うやうやしく大げさな調子で頭を下げながら、 手術室の大きなドアを
開いた。
93の444:2005/12/17(土) 14:02:32 ID:mwsV1KQV0
>>1
スレ立て乙です。

即死防止に、出来ている部分だけでもupしておきます。
なので、まだ完結していません。次回投下で、最後です。

>>前スレ503
ご意見ありがとうございます。
確かに、レイプまがいとはいえ、強制ではなく、逃げようと思えば
逃げる自由もあったのだから、これは和姦です。
なんて言い張るのはなしですか・・・。やっぱり。
ともあれトラウマになっちゃうことは間違いなさそうですね。

> 割と緻密な心理描写とか、リアルな (リアルっぽい?)風景描写・
> 科学考証がヤギー物語の魅力の一要素
そんなふうに言っていただけてありがとうございます。私自身には
科学の知識なんて全然なくって、ただ、スレのみなさんからいただいた
ネタをいろいろ取り入れさせていただいているだけなのです。
ですので、皆さんには感謝、感謝。
新スレでも宜しくお願いします。
10名無しさん@ピンキー:2005/12/17(土) 20:44:33 ID:Ia3yQ+iu0
真央ちゃんが(゚ーÅ)ホロリ2ゲットしたかいあった…
11名無しさん@ピンキー:2005/12/18(日) 11:34:09 ID:6jTN3CJY0
ほぜ
123の444:2005/12/18(日) 13:56:40 ID:oLWAp+Bm0
  手術室には窓なんてないから気がつかなかったけど、 待合室に出てみると、 もう夕暮れ。 府南病院の
義体科の待合室は、 傾きかけた陽の光に照らされて、 影がくっきりと浮かび上がって、 まるで、 黒とオレン
ジの二色に染め分けられてしまったかのようだった。
  もう、 診察時間も終わったんだろうね。 人影もまばら、 しーんと静まり返った待合室の、 整然と並べら
れた長椅子の端っこに、 女の人が二人ぽつんと腰掛けている。
  一人は私も知っている。 相変わらず、 びしっと凛々しくスーツを着こなした、 佐々波さんの恋人のタチバ
ナカズミさんだ。 そして、 もう一人は、 私と同じ、 白くてぶかぶかの入院服を着た、 私の知らないショートヘ
アの女の子。 長身のカズミさんと並ぶと、 座っていても、 頭半分くらい背丈が違っちゃうほど小さくて、 いか
にも健康ですって自己主張しているような小麦色の肌をした、 綺麗っていうよりも、 やんちゃな子猫を思わ
せるような愛くるしい顔立ちの子だった。
  佐々波さんらしき男の人は、 どこにも見当たらない。
「あなた、 八木橋裕子さんでしょ。 話はれいじ君から聞いてるわ。 ずいぶんお世話になったみたいね」
  私を認めたカズミさんが、 立ち上がって、 手を差し出した。
  私は握手をしながら、 面会の時の自分の痴態を思い出して、 思わず苦笑い。 カズミさんは、 初めて私
に会ったように思っているかもしれないけど、 私達、 ホントは、 二度目まして、 だ。 でも、 あなたに、 あん
なことや、 こんなことをされました、 なんて言えるはずがない。
「佐々波さんは、 どこにいるの?」
  私の問いかけ、 カズミさんと、 女の子は、 顔を見合わせて笑った。
「よう、 メガネザル」
  小さな女の子が立ち上がって、 馴れ馴れしい調子で、 私の肩に手をかけた。
  私の知る限り、 私のことをこんなふうに呼ぶ人は一人しかいない。
133の444:2005/12/18(日) 13:57:37 ID:oLWAp+Bm0
「あなた、 さ、 佐々波さんなの? ホントに?」
「なんだよ。 そんなに驚くことかよ」
「だって、 だって、 佐々波さん。 男になったんじゃなかったの?」
  私は、 もう一度、 目の前の佐々波さんの身体をまじまじと見つめる。 ひょっとしたら、 女の子に見える
だけで、 実は男の子なのかなあって思ったんだけど、 入院服の上からでもはっきりわかる胸のふくらみは、
どう考えても女の子のものだった。
「オレは、 前からずっと、 男だよ」
  佐々波さんは、 不機嫌そうに、 ぷいっと私から目を逸らした。
  そうか、 そういう言い方をしたら怒る人だったね。 あわてて言い直す私。
「佐々波さん、 男の身体にするんじゃなかったの? だって、 男として覚悟は決めたって言ったじゃないか。
カズミさんと結婚するって言ったじゃないか?」
「男らしく割り切って、 女の身体で生きていく覚悟を決めたってことだよ。 男の身体だと、 カズミと結婚できな
いからな」
「え、 だって、 カズミさん、 女じゃないか。 佐々波さん、 何言ってるんだよう」
  カズミさんは女だから、 佐々波さんがカズミさんと結婚するためにも、 当然男の身体を選ぶものだと思っ
ていた。 なのに、 佐々波さんは、 カズミさんと結婚するために、 あえて女の身体を選んだのだという。 わけ
わからないよ。 女同士だったら、 結婚できるはずないじゃないかよう。
143の444:2005/12/18(日) 13:59:54 ID:oLWAp+Bm0
  戸惑ってる私に向かって、 カズミさんがぽつりと呟く。
「私、 こう見えても身体は男だから」

         ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!
          cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・
ミミ:::;,!      u       `゙"~´   ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ  ゞヾ  ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/   ゙̄`ー-.、     u  ;,,;   j   ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\   ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/    J   ゙`ー、   " ;, ;;; ,;; ゙  u ヾi    ,,./ , ,、ヾヾ   | '-- 、..,,ヽ  j  ! | Nヾ|
'"       _,,.. -─ゝ.、   ;, " ;;   _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ  | 、  .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
  j    /   ,.- 、  ヾヽ、 ;; ;; _,-<  //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─--  エィ' (. 7 /
      :    ' ・丿   ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、  i     u  ヾ``ー' イ
       \_    _,,......::   ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... '  u ゙l´.i・j.冫,イ゙l  / ``-、..- ノ :u l
   u      ̄ ̄  彡"   、ヾ ̄``ミ::.l  u   j  i、`ー' .i / /、._    `'y   /
              u      `ヽ  ゙:l   ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_   ̄ ー/ u /
           _,,..,,_    ,.ィ、  /   |  /__   ``- 、_    l l  ``ーt、_ /  /
  ゙   u  ,./´ "  ``- 、_J r'´  u 丿 .l,... `ー一''/   ノ  ト 、,,_____ ゙/ /
        ./__        ー7    /、 l   '゙ ヽ/  ,. '"  \`ー--- ",.::く、
       /;;;''"  ̄ ̄ ───/  ゙  ,::'  \ヾニ==='"/ `- 、   ゙ー┬ '´ / \..,,__
、      .i:⌒`─-、_,....    l   /     `ー┬一'      ヽ    :l  /  , ' `ソヽ
ヾヽ     l      `  `ヽ、 l  ./  ヽ      l         )  ,; /   ,'    '^i

153の444:2005/12/18(日) 14:01:32 ID:2YD9W88E0
「はじめまして、 私、 立花一巳といいます」
  私の目の前の美女が言った。

  失礼かなと思ったけど、 今度は一巳さんの身体をまじまじと見つめてしまう。 だって、 一巳さん、 すごい
美人で、 スタイルだっていいし、 確かに女性にしては少し背が高いかなって思ったけど、 このくらいの背丈
の女性だって、 いないことはない。 男だなんて言われても、 とても信じられないよ。
「くくく、 うまく、 化けてるだろ? オレもはじめは騙されたんだ」  
  佐々波さんは、 言葉を失って立ち尽くす私を、 面白そうに眺めた。
「れいじ君は、 どう頑張っても女の子にしか見えないからね。 後で後悔して、 泣き言を言うんじゃないよ」
  一巳さんは、 そんな佐々波さんにピシャリと言い放つ。
  そうなんだ。 佐々波さんは、 これから一生、 この女性型の義体で生きていかなくてはいけない。 もしも
女の子だったら、 男の子にちやほやされそうな、 とっても可愛らしい顔立ち、 でも、 どう頑張っても男に見
られないというのは、 男としての意識を持つ佐々波さんにとっては、 辛いことかもしれない。 一巳さんが、
面会の時、 佐々波さんに、 後悔しないか、 覚悟はあるか、 しきりに聞いていたのを思い出す。
「分かってるさ」
  佐々波さんは、 カズミさんの顔を見上げて言った。
「カズミだって、 男の身体のままなんだ。 オレだけが、 男になってラクをするわけにはいかないよ」
  そんなふうに言い切るカズミさんは、 どんなに身体が可愛らしい女の子でも、 やっぱり男の心を持ってる
人なんだって、 思ったよ。
  えーと、 佐々波さんは、 身体は女性だけど、 男性の心を持っていて、 そして、 一巳さんは、 男性だけ
ど、 女性の心を持っている。 でも、 心の性と身体の性は一致しなくても、 お互いに男と女ということには変
わりが無くて・・・なんだかとってもフクザツ。
  でも、 私、 分かってる。 難しく考えるからいけないんだ。 ホントは、 もっと単純なこと。 男の心と、 女の
心が、 お互いを愛し合い結びついた。 ただそれだけのことだよね。 どんな姿をしていようと関係ないよね。
16名無しさん@ピンキー:2005/12/18(日) 14:02:32 ID:2YD9W88E0

「それにしても、 メガネザルって・・・」
  今度は佐々波さんが、 感心したように私のことを上から下まで見つめる。
「もっとオバサンかと思ってたけど、 意外と子供だったのな」
「な・・・な・・・な・・・」
  絶句する私。
  それは、 何かい。 佐々波さん、 私のこと、 今までずーっと、年増のおばさんだって思ってたってことか
い。 ひどい。 そんなのひどすぎるよ。
  あなたの心が男であるように、 私の心は17歳の女子高生。 決しておばさんなんかじゃないんだからね。

悔しいっ!

                おしまい
173の444:2005/12/18(日) 14:06:12 ID:2YD9W88E0
以上で、
「義体換装」終了です。
二ヶ月にわたってお付き合いいただきましてありがとうございました。
なんだか、難しいテーマに手を出してしまい、疲れました。
次は、もっとお気楽な話が書きたいです。
18名無しさん@ピンキー:2005/12/18(日) 14:59:07 ID:yHvgYgGJ0
乙です!


いきなり巨大AAにはこっちがびっくりしましたw
19名無しさん@ピンキー:2005/12/18(日) 19:34:04 ID:/QDBlQav0
お疲れ!

てっきり誰かの悪戯かと思いました。<AA
「うわ、絶妙なツッコミ!」なんて思ったら本人。
やられたぁ〜_| ̄|○

次作も楽しみにしております!
20manplus:2005/12/19(月) 01:09:12 ID:x3IvK98W0
 4Y000D00H00M00S。
えりかが、火星に旅立つ日がやってきた。私も新しい身体に完全に慣れることが出来たところであった。
私は、えりか達、第一次火星開発チームの出発を見送ることになった。「お姉ちゃん、火星で待っているからね。」
「えりか頑張るんだよ。火星はあなたたちが受けたシュミレーション以上に過酷な環境なんだからね。
いってらっしゃい。すぐに追いかけることになるわ。」
 私とえりかが地球上で交わした最後の会話だった。次は、火星上で会話がなされることになるのだった。
 えりか達、第一次火星開発チームのサイボーグアストロノーツ達は、促されるようにサイボーグ搬送用カプセルに
積み込まれ、惑星探査宇宙船に運ばれるために、シャトルに積み込まれていった。
私もあのように積み込まれていったのかと思うと、懐かしい光景に感じてしまった。
あのサイボーグ搬送用カプセルに積み込まれるときに、私は、完全に人間という立場ではなくなって、
火星探査機材という立場になったことを実感させられたことを思い出したのである。
そして、今度は、火星の住民になるためにサイボーグ搬送用カプセルに乗せられることが決まっているのだった。
 私は、えりかが乗ったシャトルが私の高性能の視覚システムから完全に見えなくなるまで見送ったのだった。
 いよいよ、火星への移民が開始された日であった。今、火星にいるサイボーグアストロノーツも含めて、
サイボーグアストロノーツ達は私たちのように地球への帰還を許されることのないミッションに向かっていったのであった。


21manplus:2005/12/19(月) 01:11:29 ID:x3IvK98W0
 5Y000D00H00M00S。
私たち第一次火星移民団の旅立ちがやってきた。
私や瑞穂さん、木村局長、未来などの火星での指導者として旅立つ選抜された人類である
サイボーグアストロノーツは、個別のサイボーグ搬送用カプセルに積み込まれ、一般移民者として、
移民するラバーフィットスーツ装着者達は、5人単位で乗り込むことが出来るシャトルで、
移民船が停泊している月周回軌道上へ移動することになった。この第一次火星移民は、
超大型の移民用宇宙船にラバーフィットスーツ装着者を40名、サイボーグアストロノーツを
15体積み込むことが可能であり、その船が、今回は、山積の船団を組んで出発することになっていた。
つまり、指導者の立場のサイボーグアストロノーツが45体、被支配者として活動をするラバーフィットスーツ装着者が
120名、火星に永住するために旅立つのであった。
3ヶ月後には、もっと大がかりな船団が出発する予定になっている。
今回のメンバーのほとんどは、火星では、サイボーグアストロノーツについては、
最高指導者となるメンバーだけであるし、ラバーフィットスーツ装着者にしても、サイボーグアストロノーツ達の
指示を忠実に仲介する中間指導的役割を果たすアストロノーツ達であった。
言うなれば、選抜された中の選抜メンバーであった。
 私たちサイボーグアストロノーツは、月面基地にひとまず下ろされて出発までの時間を過ごすことになった。
各人が月面上で身体を慣らす時間に当てられたのであった。
その間に、みさき達、この移民船団のパイロット達が、移民船のコントロールシステムと繋げられて、
出発までの最終調整に入っていった。
 私は、月面基地では、身体を慣らす必要がないので、月面を自由に歩き回り、地球を眺めたり火星を
眺めたりして過ごした。
22manplus:2005/12/19(月) 01:12:06 ID:x3IvK98W0
 もう、地球をこんな近くで見ることはないと思うと感傷的な気分になったが、反対に火星を眺めると、
私たちは、火星人になれるという気分の高揚感が拡がるから不思議である。 
ちなみにラバーフィットスーツ装着者達は、専用カプセルから、ラバーフィットスーツ装着者専用のカプセルに
入れられる作業を行われていたのであった。
このカプセルは、ラバーフィットスーツ装着者が半覚醒状態のまま、旅の長さを感じずに
火星まで運ばれることが出来るように彼らの身体機能を最大限に落とすことによって、冬眠状態と同じ状態で、
火星にいけるようなシステムになっていた。彼らは、本当の積み荷状態で出発を待つことになるのだ。

 瑞穂さんをはじめとした、私と未来、浩、美紀の4体を除いたサイボーグアストロノーツにとって低重力下の
体験は初めての経験であった。
 それでも、機械部品と電子機器にほとんど置き換えられたサイボーグアストロノーツの身体は、
すぐにこの環境に対応し、サイボーグアストロノーツのみんなが月面を自由に動きまわっていた。
 瑞穂さんが、私に話しかけてきた。
「はるか、地球上よりも快適に動けて月面って面白いわね。それに、地球があんなに青くてきれいだなんて、
あそこで、ちっぽけな利害で争って、汚染を繰り返す人間の存在が愚かに思えるわね。
地球への郷愁もあるけれど、新しい新天地を地球のように我々が壊していく事がない世界を
作らないといけないという使命感を感じるわ。はるか、私と一緒に頑張って欲しいわ。
火星を理想郷にするために頑張りましょう。」
私は、瑞穂さんの決意を改めて聞いて、この人についていくことを新に心に誓い、
「よろしくお願いします。」
と短く言った。

23manplus:2005/12/19(月) 01:23:23 ID:x3IvK98W0
 私たちが積み込まれる前に、移民船に積み込まれる重要な積み荷があった。
それは、一般には極秘になっているものであった。それは、私たちから採取され、冷凍保存された卵子や精子が、
地球上と半分ずつに分割され積み込まれた。
そして、選抜されて採取された数千人分の卵子と精子とそれらの採取された人の詳細なデーターと共に
積み込まれたのであった。
これらの冷凍卵子と冷凍精子は、必要な時に必要な組み合わせによって人工受精卵として、
私たちの子孫を造り出すのに利用されるのである。その時に利用されるのが、実は、
ラバーフィットスーツ装着者の子宮なのであった。
彼女たちの子宮を自分たちが使えないようにして残されている理由は、私たちの卵子と精子で造られた受精卵の
着床の場所として使用する目的があったのである。
そして、火星での選りすぐられた子孫を造り出すための試験管として使用されるのである。
その為に子宮を女性のラバーフィットスーツ装着者が温存されていることの理由はひた隠しにされていたのであった。
そして、今後も、一部のサイボーグアストロノーツだけが、その場面まで知るだけの事項なのであった。
 冷凍された精子と卵子は、大切に、しかも極秘裏に移民船に積み込まれた。

24manplus:2005/12/19(月) 01:26:38 ID:x3IvK98W0
 また、移民船と船団を組む一緒に火星に飛行する3隻の貨物船も、大量の火星開発のための資材が
積み込まれ、そして、惑星探査宇宙船操縦用サイボーグの据え付けも完了し、準備が完了したのであった。
 私たち、火星用のサイボーグアストロノーツが、月面を離れ、最後の積み荷として、
3隻の移民船に積み込まれていった。
 私は、瑞穂さんと同じ宇宙船に搭乗し、船内のサイボーグアストロノーツ惑星間搬送用保護カプセルに入り、
作業員に拘束され、動けない状態になった。
作業員は、その状態を確認してからサイボーグアストロノーツ惑星間搬送用保護カプセルのふたを閉めた。
私たちはそれぞれのカプセルの中に閉じこめられた。ラバーフィットスーツ姿の作業員が、
「行ってらっしゃい。幸運を祈っています。」
と声をかけて宇宙船を出ていった。宇宙船のエアロックが閉じられて出発の準備が整った。 
私たちが最初に火星に行った時はたった一隻の宇宙船だったのが、今度は6隻での航海になる。
それももう帰ることのない航海になるのだ。
 みさきが、機材の最終チェックと秒読みの交信を続けていた。
 そして、私の頭に、みさきの声が聞こえてきた。
「2度目の火星への航海だね。そして、今度は火星での新しい生活を始めるための航海だよ。
みんなを安全に運ぶから、ゆっくりしていてね。」
 そう言って間もなく、カウントダウンが0を数えた。
 メインエンジンが点火され、振動がサイボーグアストロノーツ惑星間搬送用保護カプセル越しに
私の身体にも伝わってきた。瞬く間に、月の周回軌道を離脱し、火星への進路に入っていった。
そして、私は、みさきからのコントロールによって、火星に着くまでの永い眠りにつくことになる。
だんだん意識が無くなっていった。
 今度起きる時は、赤い星の周回軌道上になるのであろう。
 私は、再び、火星人となることを思い描いてサイボーグアストロノーツ惑星間搬送用保護カプセルの中の
積み荷になっていったのであった。
 人類の希望を乗せた幌馬車隊が、新たな約束の地を目指していくのであった。
−完−
25manplus:2005/12/19(月) 01:34:45 ID:x3IvK98W0
皆さんご無沙汰しています。
やっと、「星へ往く人」全編を書き上げることが出来ました。

次ぎに書きたいことの構想も温めています。

つたない文章に長らくお付き合いしていただきまして
ありがとうございました。

3の444様
私の駄文を保管していただきましてありがとうございます。
感謝いたします。
ヤギーワールド、次回はどの様な展開の物語になるのか
楽しみにしております。
私は、年末年始で新作を考えて、近いうちに投稿しようと思っております。
今後ともよろしくお願いします。

Dark Mater様
はじめまして。
新作投下、楽しませていただきました。
次回投稿楽しみにしています。
26Dark Mater(架琉魔):2005/12/19(月) 04:46:13 ID:rz9wPOXS0
「Bal-31A、ただ今参りました。」
サイボーグ達の中で、自分をシリアルナンバーで呼ぶ者は私しかいない。
サイボーグは通常、自分を人間の一員と思いたがるからだ。
「キーちゃあん♪」
「撃たれたくないならそこらでストップして頂けませんか?
神菜 無双女医。」
私は裂薬弾入りのライフルを女医の胸に押し当てた。
「あん、イケズねぇ。」
美人、旧世界ではそう定義されていたであろう容姿を持つ者、それが神菜女医だ。
しかし、彼女は性癖がちょっと…アレだ。
しかも何故か私に性的欲求を求めたがる迷惑な奴である。
メンテナンスの時、機体に変な改造されないかという事が不安でならない。
27Dark Mater(架琉魔):2005/12/19(月) 05:16:01 ID:rz9wPOXS0
「何用ですか女医?」
「うーん、夜這いすると君怒るだろ…解った、解ったからライフルで叩くのはやめてよん♪」
女医は今にもライフルを振らんとする私を宥めた。
確かに私の握力でこれはマズいか。
「まずはこれね、何気に傑作っぽいから見せるってのが一つ。」
女医は奥からモニターを引き出すと、モニターに少女が映る。
現在、軍のサイボーグは生身の頃と同じ顔が付けられ、人間の味方と判断される。
しかし、その少女の顔は、私の知るすべてのサイボーグとも違った。
「Hac-00型サイボーグさ。
うーん、何時見てもかわいぃのぅ。」
一瞬自分が神奈女医になった気がした。
その娘は、可愛いと美しいの中間の様な顔質で栄養液の中に浮かんでいた。
28Dark Mater(架琉魔):2005/12/19(月) 05:35:10 ID:rz9wPOXS0
「あとねぇ…この娘、君が預かって。」
「はぇ?」
突然の事に私はらしくもない間抜けな返事をしてしまった。
これが、後に私を人と機械の本当の関係を教えてくれる者との出会いであった。

Dark Mater
/Set up OK_
Let's,Start
29Dark Mater(架琉魔):2005/12/19(月) 05:50:07 ID:rz9wPOXS0
>1さん、新スレ立てお疲れさまです。
何時までも英字だとアレかなと思い、ペンネームを横に書いてみました。
Dark Mater
は題名って事でお願いします。
>manplus様有り難う御座います。

あと、架琉魔の読みはカルマ(業)でお願いします。
30名無しさん@ピンキー:2005/12/20(火) 02:26:43 ID:oBvUwaBA0
<<前スレの撃沈を確認>>

前スレのラス話にレスできなかったんでこっちで。

チュリー、死ななくてよかったじゃんw

444さん乙です!
31名無しさん@ピンキー:2005/12/20(火) 10:11:54 ID:v6c9HXwz0
manplus様

堂々の完結、おつかれさまでした。
とにかくスケールが大きく、読み応えのある作品でした。リアリティ
のある描写がよかったです。特に、改造シーンは萌えでしたね。
あまり軽々しく萌えなどと言ってはいけない骨太な作品だったとは
思いますが。
女性の子宮は、ただの道具ですか?最後まで鬼畜ですなあw
ラストは、すんなり終わりすぎてしまったようで、ちょっと物足りなかった
かも。戦争になるかもしれない、なるかもしれないという伏線をずっと
臭わせていたのだから、それを生かして、もっとスリリングな展開に
できたのではないかと思いました。
あと、登場人物が、あれほどたくさん出てきたにもかかわらず、みんな
同じ考えによって行動しているのは、宗教がかっていて不気味な感じ
がしました。ある種の不気味さを感じさせることが作者さんの狙いなら、
それは成功。でも、そうでないとしたら、もっといろんな考え方の人物
を出したほうが、物語により深みがでたのかな、と思います。
文章は、そして、そして、の連発をやめたら、もっと読みやすくなると思い
ました。
次回作の構想もすでにあるということで、楽しみにしております。
これからもよろしくお願いします。
32名無しさん@ピンキー:2005/12/20(火) 23:56:10 ID:bG1/Echv0
神菜さん、(・∀・)イイ!! 。こういうマッド系のキャラクター、好きだあ!
33Dark Mater(架琉魔):2005/12/21(水) 01:09:34 ID:W92UBMVJ0
Dark Mater
Page2・Hac−00

私はサイボーグの生産においての終着点の前に立った。
生々しい巨大な子宮口の様な物がぶら下がっている。
サイボーグ・メカトロニクスと人の脳は
我々が<母神>と呼ぶこの奥の疑似子宮内にて結合するのである。
私はもはや化け物だし、よくそれを自覚している筈だが、母神だけはどうにも好きになれない。
これを見ると、今はもう有り得ない筈のパーツが…疼くから…。
34Dark Mater(架琉魔):2005/12/21(水) 01:41:21 ID:W92UBMVJ0
此処は…何処や?
身体の感覚が無い…
ウチは…ウチは…あき……
ずくん
−「!…あっ…はぁ…っ!」−
ずくん、ずくん、ずくん…
な…何…?
身体が、なんや痛みでも擽ったさでもない、指先からどんどん性感体になってく様な衝撃は…?
ずくん、ずくん、ずくん…
−「ひうんっ!?…やっ、はきゅうっ!?」−
動く感覚のない身体で、必死に悶えても、四肢を性感が浸食していく。
不思議な事に、性感の襲った跡から、身体が痙攣が始まった。
周りは粘性のある液体に満たされていた。だから痙攣を起こしたあとも、ジグジグと性感は身体を這い上がる。
35Dark Mater(架琉魔):2005/12/21(水) 02:00:58 ID:W92UBMVJ0
−「ひあぁんっ!や…だめ、やだぁっ!」−
性感は四肢の付け根まで達した。
ぎちゅん
−「ぎ…にゅう…っ!?」−
ついに女性にとって大事な箇所に達した。
次の瞬間からは、一際強い衝撃が身体を蝕む。
こうなるともはや性感とも言い表せなくなる。
言うならば、租借される感覚である。
−「ああがっ!
ぎゃ…あぁぁ…」−
拷問は気が遠くなるまで続いた…。
36架琉魔:2005/12/21(水) 02:09:38 ID:W92UBMVJ0
今回は、某蛇食いさんの名言(?)しかり、性欲を持て余して書いてみました。

>32「あらん?
そんなにマッドかしらぁ♪」
373の444:2005/12/21(水) 22:48:12 ID:PwkauA150
>>30
中里忠弘のチュリーって愛称いいですね。ジュリーみたいでw
気に入ってしまったので、これから使わせてもらいますね。
38無名:2005/12/24(土) 13:12:44 ID:BjNrNwLt0
【義体開発現場】1

 私、神無月慶介は義体の開発を観るために、バイオテクス社にやってきた。ここは、
ハイブリット義体の研究と開発を行なっている唯一の義体メーカーで、設立されてから
15年しか経っていない若い会社だ。私は院長に、今度新型の義体が開発されるそうだから、
バイオテクスを見学してみたらどうだ、と言われたので、わざわざ研究所のある静岡へ
やってきたのだ。

 バイオテクスは、私の病院でいつもお世話になっているということもあって、専用の
許可書を作るように頼むことができた。そのため、見学者として施設の中に入ることが
できるのだ。車を駐車場に止め、研究所がある建物の入り口までやってくると、メガネを
かけた長身の男性が一人、入り口のそばに立っていた。

 「神無月慶介さんですね。お待ちしていました。私はハイブリット義体研究者の
和智といいます」

 和智と名乗る研究員は、私を研究施設の中へ案内した。

 「ここでは、新型のハイブリット義体の研究が進められています。すこしでも人間に
近い義体をモットーに私たちは仕事をしているんですよ」

 そこには、試作品である数体の義体が並んでいた。どうやらこれは、研究材料に使われ
ているようだ。和智は奥へ進みながら義体のことを話し始めた。

39無名:2005/12/24(土) 13:13:59 ID:BjNrNwLt0
「我々研究スタッフは、今まで数々の義体を開発してきました。最初は現在のもの
とは程遠い完成度でしたが、他部門のバイオテクノロジーを応用して、人間とほぼ
同じ皮膚や内臓などを作ることに成功しました。だから、私たちはハイブリット義体
の開発に成功したのです」

 この会社は、本社以外にも数々の関連部門が協力する形で成り立っている。つまり、
それぞれの役割を分担することで、1つの義体の開発ペースを早めることも可能なのだ
という。これは、他社にも真似できないシステムなのだろう。普通は義体開発は1つの
部門として成り立っているのだから、画期的ともいえなくはない。

 しばらく進んでいくと、大きなドアが目の前に見えてきた。おそらくそこは義体の工場
か何かだろう。私は和智に案内されてドアをくぐった。

 「ここが、わが社の誇る義体組み立て工場です」

 そこは、義体の骨格パーツが並べられ、職人の手で次々と組み立てられている現場だった。
とはいっても、ガラスごしでしか観られないのだが。

 「これは驚いたな。すべて手作業で組み立てるとは」

40無名:2005/12/24(土) 13:16:16 ID:BjNrNwLt0
「はい。我々の会社はオーダーメイドに近い形で義体を製作しますので、
基本的に手作業になります。人間はロボットではありませんからね」

 普通の義体は、作業工程を統一化するために専用の工場で基本の骨格を
作ってしまう。そのため、身長や体型もある程度しか調整できないように
なっている。だから義体によっては本来の身体と違うところが僅かながら
存在するのだ。和智の話だと、手作業にすることで義体の細かいセッティング
が可能になっているらしい。ここまで義体患者のことを考えている会社は他に
ないかもしれない。

 「ここでは、主に基礎となる骨格の組み立てを行なっています。さきほども
言いましたとおり手作業ですので、一つの骨格が完成するのに二日ほどかかり
ます。骨格が一通り組み立て終わりましたら、次の工程へと進みます」

 和智は次のルームへ続くドアを開いた。

 「ここで人工筋肉や神経等のパーツを取り付けます。デリケートな作業ですので、
慎重に作業を行ないます。もし不都合があったときは、最初からやり直すように
しています。機械とはいえ、人の身体ですものね」

 神経などの作業は、仕事上私も経験があるのでいかにデリケートなのかは解る。
しかしここでは、その作業を毎日のようにしているので手術よりハードかもしれない。

 「ある程度組みあがった義体は、持ち運びやすくするために再度分解して梱包
されます。あとは病院へ運搬されるのを待つだけです。皮膚などの貼り付けは、
病院側で行なうことになります。といっても、あなたには解っているでしょうがね」

 和智はけらけらと笑った。

41無名:2005/12/24(土) 13:21:41 ID:BjNrNwLt0
「人工内臓などのセッションはどうなっていますか?」

 私がその事を聞いてみると、和智は、人差し指を口にあてて言った。

 「それは秘密、トップシークレットというものですよ。なにせそれは、
とても重要なものですから、そうやすやすと見せられるものではないんです。
その代わりといっては何ですが、面白いものをお見せしましょう」

 私は和智の案内でエレベーターに乗った。どうやら上の階に面白いものが
あるらしい。エレベーターは3階で止まった。

 「この階に私たちの研究室があります。そこではある実験をしています。
それをぜひあなたに見せたいのです」

 私たちは研究室のドアを開いた。そして私は、とんでもない物を目の
あたりにしたのだ。

42無名:2005/12/24(土) 13:41:44 ID:BjNrNwLt0
おひさしぶりです。無名です。なんとか年末にまにあいました。とはいっても
前半だけですが・・・。今回は義体の開発現場(製造工場)の話です。神無月
先生の目を通して義体の研究開発を見ていく内容にしましたが、いかがでしょうか。
後半は来年の初めくらいに掲載する予定です。
>架琉魔 さん けっこう過激なシーンがあるみたいですね。母神というアイディア
はなかなかいいとおもいますよ。これからもがんばってください。
>manplusさん ご完結おめでとうございます。私は途中からしか見ていないのですが、
こういったスペーストラベルものはサイボーグネタではありそうであまり無いように思います。
それに、終わり方が終わったように感じないところが私的にはいいんじゃないかと思うのですが。
次の作品を期待します。
43名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 13:55:33 ID:oiAF3Dxi0
実験?まさか可奈ちゃんが…
((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
443の444:2005/12/24(土) 17:01:28 ID:poK7Hf8k0
http://comic-ekk.homeftp.org/user/hailaer/tentestuki/tentetsuki/hokanko-index.htm
保管庫を更新しました。
方針転換。
もうどんどん、載せます。そうしないと保管庫にならないから。
ということで、無名さん、架琉魔さん。掲載に問題ありましたら
言ってくださいね。削除しますので。
45無名:2005/12/26(月) 13:27:52 ID:rEohcWuf0
無名です。3の444さん、保管庫掲載ありがとうございます。
メインタイトルは、【かなちゃんと神無月先生-心のキャッチボール-】です。
あと、いままで掲載した小説の改訂版を送りたいのですが、送る方法を
教えてください。ただし、私の場合、家から送るわけではないので、(近くの
インターネットカフェからなので)それでも送信できるかどうかも教えて
ほしいです。まことに勝手ではありますが、よろしくおねがいします。
46名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 15:55:21 ID:AAoHMedo0
こんな機械化娘がおったら萌

ttp://blue.gazo-ch.net/bbs/15/img/200508/405371.jpg
473の444:2005/12/27(火) 00:48:23 ID:IGuYXewh0
無名さん
了解しました。
じゃあ、私のサイト兼保管庫の掲示板を見てください。
48Dark Mater(架琉魔):2005/12/27(火) 01:45:45 ID:LQl3byl70
「キーちゃん(Bal-31A)はぁ、名前が思い出せないよね?」
「…あぁ。」
女医の部屋で私と女医は新型のサイボーグの映るディスプレイを横に話した。
「サイボーグは通常、神経系を除いて全て機械化されているけど、逆に言えば生体パーツでしか神経系は造ることはできない。
だから、母神の中で母神の神経細胞をダイレクトに植え付けるんだよね。
でもね、君も体験済みだろうけどそれは人間にとってはものすごい苦痛なんだよね。
だから果ては精神分裂や記憶喪失を起こす者が居るのさ。」
「…この娘も…今、脳を陵辱されているのか…。」
49Dark Mater(架琉魔):2005/12/27(火) 18:24:25 ID:LQl3byl70
もはや快楽とさえ感じてきた租借感の中、ウチはもう何も考えることが出来なかった。
ただ、身体中を襲う感覚と感覚の狭間のほんの一瞬、次に襲いくる感覚に恐怖した。
しかし、次に襲ってきた感覚は、そんな生優しいものではなかった。
−「…うっ、くあぁっ!?」−
突然、ウチの秘部に激痛が走る。
訳が解らない、ウチはただ暗闇の中悲鳴をあげた。
まるで、赤ちゃんを出産する母親のように…。
ー「あっ、あっ…はあああああぁぁっ!」ー
う、産まれる!

バシャア…ずりゅっ…

…母神から大量の液体と共に産まれ出た娘を、私はキャッチするように抱えた。
鉄製の人工肌がぶつかり合う感触は、今の生々しい生誕と矛盾した。
「Happy Berthday To Hac-00…そしてようこそ、地獄へ。」
50架琉魔:2005/12/27(火) 18:34:30 ID:LQl3byl70
架琉魔です。
Hac-00編やっと終わったとです。
3の444様<まだ途中でしたので保管庫に追加お願いします。
無名様<グロっぽいシーン多くてスミマセン。
    次は比較級でまともになるかもとです。
密かじゃなくともヒ●シのファンだとです。
51ヤギーの時給は 【1061円】 なので 【吉】 :2006/01/01(日) 13:00:01 ID:PHCoLzdE0
皆さん、あけおめ。
52名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 15:48:33 ID:3SZCe3Ut0
あけおめ、こと新くれよろ〜w
533の444:2006/01/02(月) 00:33:39 ID:chuM33470
皆さん明けましておめでとうございます。
今年もヤギーを宜しくお願いします。
とりあえず次作の「ナンパ」を執筆中です。
54架琉魔:2006/01/03(火) 17:48:17 ID:394A2ru60
遅れましたが
あけおめことよろとです。
55架琉魔:2006/01/03(火) 17:52:05 ID:394A2ru60
遅れましたが
あけおめことよろとです。
563の444:2006/01/04(水) 19:06:49 ID:cKn7hO2I0
「ヤギーは可愛いと思うし、 ヤギーと一緒にいると楽しいけどさ。 付き合うとか、 そういう感じじゃないんだよ
な。 なんというか、 妹と遊んでいるみたいな感じなんだよ」
  加納君は、 なんだか言いずらそうに、 頭をかきながら、 そう呟いた。
「ははは・・・そっか。 そうだよね」
  私は加納君から目をそらして、 緑色に濁った池の水面の、 あめんぼの作り出した小さな波をぼんやり見
つめながら、 笑った。 こういうとき、 涙をこぼさずにすむのは、 義体のいいところだよね。 相手に余計な気
を使わせなくてすむもの。 本心を隠して笑っていられるもの。 良かった。 私、 機械の身体で本当に良かっ
た・・・。
「変なこと言って、 ごめんね」
  私は、 お尻についた埃をパンパン払いながら腰を上げると、 ベンチに立てかけていたごっつい黒塗り
の、 自分の自転車にまたがった。 そして、 あわてて立ち上がる加納君をわざと無視するように、 強くペダ
ルをこいだ。 後ろは振り返らなかった。
  私はひどい女だ。 もてないどころか性格もねじけてる。
  大事な話があるから来てくださいって言って、 同じ学部の男友達の加納君を、 大学の裏庭にあるぽっち
ゃん池まで連れ出したのは私のほうなのに・・・。

  この前、 研究室の有志でキャンプに行った時のこと。 夕食は、 当然、 みんなで飯盒を囲んで輪になっ
て並んでカレーを食べるってことになったんだけどさ、 私は食事なんかできないし、 その場にいて、 みんな
が美味しそうにカレーを食べるところを眺めていても面白くもなんともないから、 用事ができたふりをして、
一人で抜け出して、 川原に行ったんだ。 そしたら、 加納君、 そんな私を気遣ってくれたのか、 一人で川に
向って石を放り投げていた私のところに来てくれたんだよね。
  なんだか、 私にだけとりわけ優しくしてくれたような気がして、 今まで加納君なんか意識したこともなかっ
たのに、 それから妙に意識するようになっちゃった。 それに加納君も私に気があるように思ったから、 ジャ
スミンや佐倉井の後押しもあって、 私、 思い切って告白してみたんだ。
  でも、 私に気があるなんて、 全部私の勘違いでした。 一人で勘違いして舞い上がって、 私って馬鹿み
たい。
573の444:2006/01/04(水) 19:10:08 ID:cKn7hO2I0
  まただ。 またふられた。 私っていっつもこうなんだ。 分かってた。 どうせ、 今回だって、 こうなるって、分
かってたよ。 ヤギーは色気が無い。 妹みたい。 高校生みたい。 ロリコン受けしそう。 いつも、 いつも言わ
れるのはそんなことばかり。 私だって、 もうハタチだ。 ハタチっていったら、 立派なオトナの女だよ。 でも、
誰も私をそんな眼で見てくれない。

  16歳の夏、 私は交通事故が原因で、 脳以外の肉体の全てを永遠に失った。 その代わりに私に与えら
れたのが、 義体っていう、 作り物の機械の身体。 機械の身体っていっても、 とてもうまくできていて、 外見
は生身の頃の私と何も変わりはないし、 もちろん、 日常生活をする上で不便だって思うこともない。 だか
ら、 私が全身義体障害者で、 私の身体が実は機械だなんて、 大学の仲間たちは、 誰も知らない。 みん
な、 私のことをごくフツーの、 そこらへんにいくらでも転がっている女子大生と思っているはずだ。
  でも、 いくら生身の肉体そっくりにできているとはいっても、 この身体が機械であることには変わりはな
い。 私の身体の時を刻む針は、 16歳で、 永遠に止まったまんま、 もう、 決して動くことはない。 もちろん、
月に一度の定期検査の時に、 オプションで追加代金を払えば、 年相応の外見に変えてもらえることができ
るって言われている。 でも、 毎月毎月、 一生懸命引越し屋さんでアルバイトをしても、 定期検査代金に足り
なくて、 事故の時におりた保険金を切り崩している私に、 そんなオプション料金なんて払える余裕があるは
ずないよ。
  だから、 いくら自分のことをハタチで大学二年生ですって言い張ってみても、 私の外見年齢は16歳のま
ま。 これじゃ、 オトナの女として扱ってもらえなくても無理ないのかもしれない。
583の444:2006/01/04(水) 19:11:58 ID:cKn7hO2I0
  それにね、 私は思うんだ。 いくら見かけだけは生身の身体と変わらないっていっても、 義体なんて所詮
機械。 だから、 普通の女の子なら必ず持っているはずの、 異性を惹き付けるフェロモンみたいなものが、
私には全く備わっていないんじゃないかって。 そして、 男の人の野生の本能ってものが、 そのことを敏感に
感じ取って、 たとえ頭では理解してなくても、 本能で、 私のことを繁殖能力のないただの機械人形で、 恋愛
対象外なんだって嗅ぎわけているんじゃないだろうかって、 そう思ってしまうんだ。 認めたくないけどね・・・。
  でも、 だからといってあきらめきれない私がいる。 だって、 どんなに身体が機械になってしまっていて
も、 私の心は決して機械じゃないもの。 ハタチのフツーの女の子だもの。 私にだって、 男の子にもてたい、
ちやほやされたいっていう気持ちは、 やっぱりあるよ。 ヤギーは色っぽい、 とか、 綺麗だ、 とか言われて
みたいよ。

  翌日。 わいわいがやがや騒がしい、 お昼休みの学生食堂にて。
  私とジャスミンと佐倉井の三人は人波をかきわけかきわけ、 ようやくのことで自分たちの席を確保した。
  もちろん私は、 フツーの食事をとることはできないから、 ジャスミンの持ってきた星大学食イチオシの日
替わりスターランチと、 佐倉井の持ってきたカツカレーを横目でちらっと眺めながら、 いつものように手ぶら
で席に着いた。 ジャスミンも佐倉井も、 ダイエットをしているっていう私の言い訳にはもう慣れっこで、 席に
座るなり、 なんのためらいも遠慮も無く、 美味しそうに料理を口に運ぶ。
  私は料理の味なんて、 もうよく覚えていないし、 お腹が空くってこともないから、 別に食事ができて羨まし
いなんて別に思わないし、 目の前で食べられても平気。 だいたい、 いちいち食事をとらなきゃ生きられない
なんて、 時間がかかって不便だよ。 義体なら、 充電がちょっと面倒くさいけど、 寝ている間に済ませればい
いことだし、 脳を維持するには栄養カプセルを飲むだけで事足りるもんね。 生身の身体より、 ずっと便利な
んだから。
「ヤギー君、 ヤギー君。 そんな眼でカレーを見ないでくれ給え。 食べにくくなっちゃうよ」
  佐倉井がスプーンでカレーを口に運びながら、 上目づかいに私を見た。
593の444:2006/01/04(水) 19:21:56 ID:cKn7hO2I0
「別に無理にダイエットしなくても、 ヤギーは太ってるわけじゃないし、 食べたいときに食べればいいと思う
よ。 ほら、 あげようか?」
  佐倉井は苦笑いしながら、 食べかけのカレーをお皿ごと私の前にずらした。
「うー、 大丈夫。 いらない、 いらない」
  あわてて、 カレーを佐倉井のほうに押し戻す私。 そんな私の様子をみて、 ジャスミンがくすりと笑った。
  わ、 私、 そんな物欲しげな眼で、 カツカレーを凝視してたんだろうか。 恥ずかしい。  
  私、 別にカレーなんて欲しくない。 ちっとも羨ましくなんかないんだから。 ちっとも・・・。

「で、 結果はどうだったの?」
  私の向かいに腰掛けたジャスミンが、 割り箸をぱちんと開きながら、 待ちかねたように口を開く。
  私、 加納君に告ろうかな? なんて二人の前で、 うっかり口を滑らしてしまったのが、 間違いのモト。 昨
日は今がチャンスと言わんばかりに、 私と加納君が二人っきりになるように変に告白のお膳立てをされてし
まったし、 今日は今日で、 この場で、 昨日の告白の結果を発表しなければならないなんてね。 私は、 あん
たたちの話題提供マシーンじゃないんだからね。
「誰にも言わないでね」
  私は注意深くあたりを見回しながら、 ぼそっと呟く。
  二人はまるでキツツキみたいに、 激しく首をタテに振った。 周りがうるさいから、 私たち三人は自然と身
を乗り出して、 頭を寄せ合う格好になった。
「もっとオトナっぽい子が好みって言われた。 はっきり言って振られました」
「そっかー・・・」
「あいよー・・・」
  そのまま言葉が続かずに肩を落として、 ため息をつきあう女三人。
  湿っぽい雰囲気のまま、 お葬式みたいな食事タイムに移ってしまうのもナンなので、 私は思い切って、
普段から気になっていることを切り出してみた。
603の444:2006/01/04(水) 19:24:08 ID:cKn7hO2I0
「あ、 あのね、 二人からみて私ってどうなんだろう。 やっぱり子供みたいに見えるんだろうか?」
「うん! でも、 それがいい! それがヤギーの魅力!」
  即答するジャスミン。 少しは考えるふりくらいしてほしい。
「顔はね。 考え方はババくさいけど」
  佐倉井は、 いつものように余計な一言を付け加えてから、 手にした飲むヨーグルトをストローでちゅうち
ゅう吸った。
「ヤギー君、 年幾つだったっけ?」
 佐倉井は、 今度はこんがり揚がったカツを口の中で、 もぐもぐさせながら私に聞く。
「はたちだよ」
「つまり、 私たちより、 一つ年上なわけだ」
  そう。 私とジャスミンと佐倉井は同級生だけど、 ストレート入学の二人に対して、 私は高校のとき義体化
手術のせいで留年しちゃってるから、 実は年は私のほうが二人より年上なんだよね。
「でもさ、 こうして見ると、 ヤギーってセーラー服を着てても全然違和感ないよね」
  頬杖をつきながら、 私の顔をまじまじと見つめるジャスミン。
「う・・・あんまり、 こっち見るなよう」
  私は、 あわてて、 手の平で顔を覆った。
  ジャスミンの見立ては全く正しい。 少なくとも私の外見はセーラー服を着ていた高校生の頃と全く変わっ
ていない。 そのことと私の身体が義体だってことを結びつけて考えられたらどうしようと、 内心冷や汗もの。
「まっ、 可愛らしくていいんじゃない。 今回は加納君が、 たまたま老けセンだったってだけでしょ。 大丈夫、
ヤギーは、少なくともロリコンには大モテだよ」
  佐倉井は、 相変わらず頬っぺたの片方でもぐもぐやりながら、 なんの慰めにもなっていない言葉を口に
した。
「そっ、 そんなの嫌だよう。 私、 可愛らしいなんていわれてもちっとも嬉しくないんだ。 私は少なくとも、 あん
たたちより年上で、 オトナなんだからね」
  膨れっ面をする私。
613の444:2006/01/04(水) 19:25:53 ID:cKn7hO2I0
「まあまあ。 ヤギー君も、 もっとオトナっぽい格好をしてみたらどうかね? それで、 だいぶ変わると思うよ」
  佐倉井は、 そんな私の反応を面白そうに見つめながら言った。
「オトナっぽい格好?」
「だいたいさ、 まず、 その服装がだめ。 ヤギーいっつもユニロクTシャツにジーンズでしょ。 ひどいときは、
ジャージで大学に来ることあるじゃない。何なのあれ?」
  佐倉井は手にしたお箸で、 私のことを指しながらけらけら笑う。
「いや、 その、 講義の後でバイトが入ったりしているからさ、 私、 あんまり綺麗なカッコって、 できないんだ
よね」
「そういえばヤギーのバイトって引越し屋さんだったね。 でもだからってヤギー君、 芋ジャーはないでしょ。
芋ジャーは。 芋ジャーなんて、 いまどき高校生だって着ないよ」
  芋ジャーと三回連続で繰り返し強調して佐倉井はくすくす笑った。
「ヤギーも星ヶ浦のブティックストリートにでも行ってさ、 流行の服の一つや二つ買ったらどうってこと」
「星ヶ浦のブティックストリートかあ」
  私は天井でぐるぐる回ってる南国風の大きな扇風機を見つめながら、 ため息をついた。
  星ヶ浦は、 武南電鉄でいうと、 星修学園前の入舸浦よりの隣駅にあたるところ。 それなりに綺麗なビー
チがあって、 夏には海水浴客とか、 サーファーで賑わうし、 海岸沿いには、 芸能人の別荘があったり、 お
しゃれなカフェがあったり、 ブティックがあったりして、 流行ファッションの発信源の一つとされているところ
だ。 星ヶ浦の雰囲気に憧れて、 星修大学に入る女の子も多いっていうよ。 ま、 私には縁のないところだけ
どね。
  自慢じゃないけど、 私は、 宮の橋のヤマイデパート6階に入っているユニロクとか、 トンパチの量販店で
しか服を買ったことがない。 そりゃあ、 デザインがイマイチ垢抜けないものしかないのは私だって分かってる
けど、 なんたって安いからさ。
623の444:2006/01/04(水) 19:35:17 ID:cKn7hO2I0
  もちろん、 星ヶ浦にいけば、 ファッション誌のグラビアを飾っているような最新流行のモード系とかストリ
ート系の服がよりどりみどりなのは分かってるよ。 でも、 バイトに追われて、 毎月の検査代を稼ぐのにいっ
ぱいいっぱいの私に、 星ヶ浦のブティックで、 一着ウン万円の服を買う余裕なんてあるわけないよね。
  でも、 こんな私でも、 きちんとしたカッコをすれば大人っぽく見られるのかなあ? 

「ヤギーがオトナっぽい格好するなんて、 私は反対」
  それまで黙って私たちのやり取りを聞いていたジャスミンが口を挟んだ。 ジャスミンは右手を振り上げ
て、 私たちの注目を集める。
「速やかならんを欲するなかれ、 小利を見るなかれ。 速やかならんを欲すればすなわち達せず、 小利を見
ればすなわち大事成らず」
「何それ? どういう意味?」
  きょとんとする私。
「またジャスミンお得意の『ロンゴ』だ」
  佐倉井はあきれ顔で、 大げさにため息をついてみせた。
  なんでも、 孔子サマは、 ジャスミンの母方の遠いご先祖にあたるってことで、 子供の頃、 おばあちゃん
から、 論語が暗誦できるようになるまで、 みっちり仕込まれたんだって。 そんなわけで、 彼女はことあるご
とに、 得意げに論語の引用をする癖がある。
「目先の利益や結果ばかり追いかけたらだめってことよ。 服を変えたからって、 すぐに人のヤギーを見る眼
が変わるわけじゃない。 まずは、 やれるところから、 ゆっくりとやったらどう?」
「やれるところから、 ゆっくりって例えばどんなことをさ?」
「例えば、 そうね。 ヘアスタイルを変えてイメチェンしてみるなんて、 どう? 高いお金を出して服を買う前に
いろいろやることは、 あるんじゃないかなあ?」
  やれるところからって、 どういうことかと思ったら、 そういうことかい。
  私はジャスミンの話を聞いて悲しくなってしまう。 髪型を変えたり、 髪を染めてみたり、 確かに普通の女
の子だったら、 簡単にできることだよね。 普通の女の子なら・・・ね。
633の444:2006/01/04(水) 19:41:02 ID:cKn7hO2I0
  でも私は、 身体が作り物なら、 髪だって人工繊維でできた作り物。 だから、 染めようとしても色なんてつ
かないし、 脱色することもパーマをかけることもできない。 髪を切ることはできるけど、 一度切ったら二度と
自然には伸びてこない。 もちろん、 定期検査の時に、 ついでに髪を植毛し直せば、 髪の長さは元どおりに
なるし、 ウェーブのかかった髪にすることだってできる。 だけど、 それって、 ものすごくお金がかかるんだよ
ね。 だから、 私にとってはヘアスタイルを変えることは、 簡単なことじゃない。
  ジャスミンは、 追い討ちをかけるように言葉を続ける。
「それに、 今のヤギーが無理にオトナっぽい服を着ても、 きっと似合わないと思うよ。 そのままでも充分か
わいいんだから、 せっかく服を選ぶなら、 無理にオトナぶらなくたって、 今しかできないカッコを楽しんだっ
ていいんじゃない? どうせ、 誰だっていつかは年とるんだしね」
  ジャスミンの言うことは、 いちいちもっとも。 悪気なんかゼンゼンなくて、 むしろ私のためを思っての親身
なアドバイスだってことも分かってる。
  でも、 私は、 年にあわせてファッションを変えていくなんていう芸当はもうできない。 私の身体は、 いつ
までも若いまま。 永遠の若さだよ。 みんな私のことが羨ましいはずだよ。 そう自分に言い聞かせて、 無理
やり納得しようとしたけど、 やっぱり駄目だった。 ジャスミンや、 佐倉井が血の通った暖かい身体を持って
いるってことが、 たまらなく羨ましかった。 自分の身体が冷たい機械だってことが、 たまらなく悔しかった。
「馬鹿にしないでっ! 私は、 今だって充分オトナなんだ!」
  イライラがおさえられなくなった私は、 とうとう両手をバンって勢いよく机に叩きつけてジャスミンに向って
怒鳴ってしまった。
643の444:2006/01/04(水) 19:42:05 ID:cKn7hO2I0
  がやがや騒がしかった学食が、 一瞬しんと静まり返って、 みんなが食事の手を休めて一斉に私のほう
を振り返るのが分かった。 ジャスミンと、 佐倉井は、 何で私が突然怒ったのか分からず、 箸とスプーンを
持ったまま、 ぽかんと間の抜けた顔で、 私のことを見つめた。
  無理して背伸びしてオトナぶらず、 外見に相応しいカッコをしてろだって? いずれ、 オトナっぽいカッコ
が似合う日が来るだって?
  いくら待っていても、 機械の身体の私にはそんな日なんか永久に来やしない。 じゃあ、 私みたいな貧乏
人の全身義体の障害者は30になっても40になっても、 高校生らしい外見にあわせてセーラー服でも着てる
のがお似合いってこと? そんなの冗談じゃない! 私はれっきとしたハタチの、 女なんだ! 外見は、 どう見
えようとも、 もうオトナなんだ! 私は可愛いって言われるより、 綺麗って言われたい。 素敵な服を着て、 似
合ってるよって言われてみたい。 私だって・・・、 私だって・・・。
「ふん! ジャスミン、 今に見てなさいよ。 私だって、 ちゃんとしたカッコさえすれば、 オトナの女に見えるん
だからね。 星ヶ浦のブティックストリート上等じゃないか。 私、 これから、 星ヶ浦で服買ってくるから。 あとで
私を見てせいぜい驚きなさい」
  あっけにとられる二人の前で啖呵をきった私。 もう周りの目なんておかまいなし。
  洋服代なんて、 いくら星ヶ浦ブティックストリート謹製だからって、 毎月の定期検査代に較べたらずっと安
いはず。 頭髪交換にかかるお金に較べても、 まだ安い。 ちょっと我慢して、 引越しのアルバイトをいつもよ
り多めにいれればいいだけの話だ。
「さやか。 私、 何かヤギーを傷つけること言っちゃったのかなあ?」
  ジャスミンは、 私の剣幕にうろたえて、 こっそり佐倉井に耳打ち。
「いんや。 私もヤギーがなんで怒ってるのか分からない。 でもなんだか面白そうなことになったねえ。 け
けけ」
  佐倉井は、 ひとしきり笑うと、 何事もなかったかのように最後にお皿の底に残ったカツカレーを平らげ
た。
653の444:2006/01/04(水) 19:49:59 ID:cKn7hO2I0
「ナンパ」はじまり、はじまり。そんな長い話ではありません。
今日は、ここまでです。

皆様、あらためて明けましておめでとうございます。
本年もヤギーを宜しくお願いします。
66名無しさん@ピンキー:2006/01/04(水) 23:12:02 ID:3qA/XMS80
>>65
いつも乙です

ところで前から思ってたんですけど、ヤギーさんの世界には高額医療費の
還付制度ってないんですかね?
ttp://www.office-fujimoto.net/01_management/qa_and_opinion/social_insurance/medical.html
義体の調整やメンテナンスって、ヤギーさんの世界では確か医療行為で
健康保険の対象だったような気がしましたけど、違ったかな?

フィクションにこういうのを持ち込むのもアレかとは思いますけど、ヤギーさんが
いつも金欠で泣いているのを見るとテラカワイソスと思うわけで、たまには何か考えて
あげてホスィと思いまつ
67名無しさん@ピンキー:2006/01/05(木) 01:27:04 ID:zAZaFx7I0
鋼鉄の足長おじさんがいればいい。

少しでも安くしようとしたら中国や韓国で作られたパーツを使うという手もあるけど、
何分人の命がかかってるからなぁ・・・
68名無しさん@ピンキー:2006/01/05(木) 01:32:11 ID:/6mbn0Y30
足長おじさんが現れても、ヤギーは施しを受けるのを潔しとしない希ガス。
いや、なんとなくだけど。
69名無しさん@ピンキー:2006/01/05(木) 06:55:49 ID:HZwsV1Rh0
ヤギーにほれるようなロリコンな足長オジサンは、大人になるための投資はしないように思われ。
70名無しさん@ピンキー:2006/01/05(木) 11:17:37 ID:O3xUrC7q0
>>66
それより今で言う一級障害者手帳を持っているはずだけど、
お話が駄目になるから。書いてる人も分かてるんだろうけど。
71名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 00:44:32 ID:tJskyJsG0
そだね。ヤギーはいい娘なのに不憫だねぇ・・・
家族みんな死んじゃって、自分も脳みそだけになっちゃって、すっごく辛いはずなのに。
それに輪をかけて自分の身体の維持で金欠なんて、この世界の厚生福利制度ってどうなってるんだ?と(ヤギーに思いっきり肩入れしていますが・・・)嘆いてしまう。
ヤギーはきっと、この世界の国民年金にはチャンチャラおかしくって加入してないんだろうね、きっと。
72名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 00:45:13 ID:tJskyJsG0
やばっ、さげ
73名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 01:19:34 ID:3uT7zmx90
義手とか義足とかは9割保険・1割負担って話を昔どこかで聞いた稀ガス。
今は何割か知らないけど。
でも、一度全額払ってから、後で戻ってくる制度なので、数十万円〜百万円
程度は手元に無いと義足とかが作れないんだそうな…
ヤギーの世界の義体も同様に、後で戻っては来るものの(ずっと)後の話で、
とりあえずは大金を積まなきゃならないとか、戻ってくるまでサラ金(汗)に
借りてるとかしてるのかも。
74名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 02:14:22 ID:WN3D0gQV0
>>73
つ[事故の保険金]

そうでなくても、貸付制度とかあるんでないか?
義手義足と違って、利用できないことが即命に関わる代物だし。
753の444:2006/01/06(金) 12:15:58 ID:eoTXamLT0
皆様、いろいろなご意見ありがとうございます。
義体の保険制度については、リハビリ編の次作【適性検査】に反映
させたいと思いますので、いろいろ教えていただけるとありがたいです。

さて、ナンパ編では次回ヤギーは星ヶ浦のブティックストリートにいく
のですが、女性のファションにてんで疎い私は、ブティックがどんなところ
かも実はよく知らないわけです(苦笑)
オトナっぽい服ってどういう服?とか、ファッション用語とか、簡単に分かる
ようなサイトをご存知の方がいたら、教えていただけると嬉しいです。
あと、こんな服を着せたいというリクエストがもしあれば、イメージに合う
ようならリクエストにお応えしたいと思います。
宜しくお願いします。
76名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 19:33:29 ID:y6sEcb5I0
ジャージで学校にワラタ
77無名:2006/01/07(土) 16:19:52 ID:OSJlSph40
おそくなりましたが、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくおねがいします。
小説の続きですが、もう少し時間がかかってしまいます。
早ければ今月の中ごろになると思います。
あと少しお待ちくださいませ。
78名無しさん@ピンキー:2006/01/07(土) 22:06:52 ID:SVOKTOSz0
保険のアドバイスしていいなら・・・。
山羊さんは今の現実の日本社会なら多分一級障害者手帳を持っているはずだ。
もしこんな人が本当にいたら一級義体障害者手帳
(一級は脳を除く全身が義体)みたいになるんかな?
79名無しさん@ピンキー:2006/01/07(土) 22:11:40 ID:oEfEEqkm0
>>78
「初デート」より

>「すみません、あのう、これで・・・」
>最後のほうは、 ごにょごにょ言葉を濁してしまう。 つらいつらい一瞬だ。 手帳を見た
>駅員さんは、 ぎょっとして私を見て、ふと憐憫の表情を浮かべてすぐ目をそらす。
>この手帳を見た人の反応はみんないっしょ。 ああ、 かわいそうだな・・なんて冗談
>じゃないよ!
>私の障害者手帳には「義体化一級」なんて文字がご丁寧に赤字で書いてある。
>義体化一級というのはつまり何でしょう、 えと、自分の持ち物は脳みそだけってこと
>です。 あとはぜーんぶ機械なの。サイボーグ技術が日進月歩の昨今だけどさすが
>に一級という人はあまりいないみたい。 私の知る限りはね。 だけど日常生活には
>何一つ不便はないし、普通の人より便利な身体だなって思う事も結構あるのに
>障害者手帳は逆差別だよね。 と、 いうことで私は極力これは使わない。今みたいな
>非常事態を除けばね。 時には今日のように半額で切符が買えたりする役得もあるけど、
>さっきみたいな何ともいや―な反応と引き換えだよ。黙っていれば、 普通の人と
>見かけは何もかわらないんだから、 多少お金を払ったって、 できれば手帳は使いたく
>ないものです。

という事。
80無名:2006/01/09(月) 16:34:26 ID:tApHzjQb0
「こ、これは…!?」

 そこには義体用のベッドがあり、その上には、15歳位の少女の義体が横たわっていた。
その義体は両腕と両足が機械の骨格がむき出しになっている状態で置かれていた。

 「なぜこんなものがここに…?」

 「ここは私の担当している義体の実験場でね、試作した人工筋肉や骨格などをテストする
ためにこの義体を使っているんです」

 和智は淡々と答えた。それにしても少女の義体を実験につかうとは…。いくらなんでも度が
過ぎているような気がする。

 「…それで、この義体で何をやろうとするんですか?」

 「まあ、観てなさい。これからこの子を目覚めさせますから」

 和智は近くにあるパソコンを起動させ、パスワードを打ち込んだ。ヴウウン。
起動音が鳴り、彼女は目を覚ました。

81無名:2006/01/09(月) 16:37:08 ID:tApHzjQb0
 「おはよう、カオリ」
 「おはようございます、お父さん」
 カオリという名の少女は、和智に挨拶をした。これをみていると、本物の
親子のように見えてしまう。皮肉なものだ。
 「こちらの人は誰ですか?」
 「この人はお父さんのお友達の神無月慶介さんだよ」
 和智が私を紹介すると、カオリはにっこり笑って挨拶をした。
 「始めまして、慶介おじ様。私、カオリと申します」
 「ああ、こちらこそ」
 彼女を見ると、まるで人間の娘のような感じがしてならない。
そんな気がした。
 「どうかしましたか、おじ様」
 「い、いや、なんでもない」
 それにしても、和智は何を考えているのだろう。こんなものを
私に見せるなんて…。そうしている間に和智が何かの準備を完了
していた。
 「さて、これからがメインイベントです。彼女には新しく開発した
人工筋肉のテストをしてもらいます。さあカオリ、起き上がりなさい」
 和智はパソコンでパスワードらしきものを入力して、ENTERキーを
押した。ガシャン、プシュー。カオリは上半身だけ起き上がった。
そして、骨格と筋肉がむき出しの足を投げ出し、床に下ろした。

82無名:2006/01/09(月) 16:40:57 ID:tApHzjQb0
 「ああああっ!」
 そのとたん、彼女は喘ぐような声をあげた。
 「だ、だいじょうぶか?」
 私はカオリのそばへ駆け寄った。しかし彼女は何事もなかったようにこう答えた。
 「だ、大丈夫です。いつものことですから」
 カオリはもう片方の足を下ろし、ガマンしながら立ち上がった。そしてゆっくりと
すこしずつ、出入り口のほうへ歩いていった。
 「では、私たちもテストルームへ行きましょう」
 和智はカオリの機械の手をとって、廊下の方へ歩いていった。それにしてもカオリ
って子はどこかおかしい。普通だったらここまで感じることはないはずだ。それに、
なにか人間らしい感情があるように見える。私は疑問を抱きながら和智達の後を
追うのだった。
 「ここが、我が研究所が誇る義体専用のテストルームです」
 テストルームは同じ階の南側にあった。一見、普通のトレーニングルームにしか
見えないのだが、測定用の機械などが置かれている所を見ると、義体用のテストルーム
だということが分かる。そこでは、義体の能力測定などが行なわれているのだろう。
 「まずは、腕力のテストでもしましょうか」
 和智は、すこし奥の方にある腕力測定器がある場所を指差した。そこで人工筋肉の
テストをするのだろう。
 
83無名:2006/01/09(月) 16:50:10 ID:tApHzjQb0
「まずは、腕力のテストでもしましょうか」
 和智は、すこし奥の方にある腕力測定器がある場所を指差した。そこで人工筋肉の
テストをするのだろう。
 「じゃあカオリ、そこへ座りなさい」
 「は、はい。お父さん」
 カオリは測定器の椅子に座った。そのときも彼女はがまんしているようだった。
 「うっ…ああっ…んんっ…」
 彼女の細く小さな喘ぎ声が聞こえてきた。なにやら苦しそうな感じがする。和智は
こんな状態で彼女にテストをするつもりなんだろうか。見るに見かねた私は、カオリ
のそばに近寄った。
 「大丈夫かい、だめだったらやめてもいいんだよ」
 しかし、カオリはにっこり笑いながら首をふった。
 「いいえ、このくらい平気です…。このくらいで気を失うわけには行きませんから…」
 いったい和智はなにを考えているのだろうか。いくらアンドロイド(?)のカオリ
でもここまでする必要があるのだろうか。
 「それでは、始めましょう」
 そんなこともかまわず和智はテストを開始した。
 「まずは30kgから始めますか。カオリ、そのバーベルを右手で持ち上げなさい」
 カオリは無言で頷くと、30kgのバーベルを右手で持ち上げた。
 「OKです。それでは、50kgまで上げますか」
 50kgの設定にしたバーベルを、カオリは軽々と持ち上げた。そして60kg、
70kg、80kg、90kgとカオリは次々とバーベルを持ち上げていった。
しかしそれとは裏腹に彼女の表情は次第に厳しくなっていく。やはりムリをして
いるようだ。
 そしてついに100kgのバーベルまで持ち上げることに成功したのだった。

84無名:2006/01/09(月) 16:52:48 ID:tApHzjQb0
「よし、そのくらいにしましょう。次は、脚力のテストをしましょうか」
 測定の記録を終えた和智はルームランナーのようなマシンの設定を始めた。そこで
カオリの脚力テストをするのだろう。
 腕力のテストを終えたカオリは床に横たわってハアハア言っている。やはりさっきの
テストのせいなのだろうか。機械の身体が小刻みに震えている様だった。
 「カオリ、ムリしているんじゃないのか」
 しかしカオリは首を横に振りながら答えるのだった。
 「こ…このくらい大丈夫です…。実験の時はいつもこんな状態になるんです…。
このままでいれば治まりますから…」
 彼女がこんな状態でも和智は表情ひとつ変えずにもくもくと準備を進めている。
いくら実験用の義体だからとはいっても、慰めのひとつ位かけてあげてもいいはずだ。
それなのに、彼は黙ったままだ。これじゃ、カオリがかわいそうだ。
 「これから脚力のテストを行ないます。さあカオリ、この上に乗って」
 準備を終えた和智は、横たわっていたカオリのそばに来て、手を貸してあげた。
ルームランナー型の測定器に乗ったカオリは、手足を動かし始めた。
 「では始めます。よーい、スタート!!」
 和智はスイッチを押した。ウイーン。ルームランナーのベルトがゆっくりと動き
始めた。それに従い、カオリは走り始めた。速度は三分も経たないうちに10kmを
超えていた。
 「大丈夫なんですか?彼女、ムリをしているようですが」
 私は、和智にカオリの体調のことを話した。しかし和智は、冷静な態度でこう言うの
だった。
 「心配要りませんよ、カオリの身体はけっこう丈夫にできていますから」
 どうやら和智はカオリの精神面ではなく、身体のことを心配しているようだ。いくら
アンドロイドでも感情を持っているはずなのに、和智の心は痛まないのだろうか。それとも
何かわけでもあるのだろうか。

85無名:2006/01/09(月) 16:56:21 ID:tApHzjQb0
 測定器のメーターが20kmを越えた。カオリは苦しいのをガマンしながら、
走るスピードを上げていった。21,22,23、24と順調に速度を上げていく。
そして25kmまで来たとき、足下から煙みたいなものが出始めてきた。
 「なんか焦げ臭くなっているような気が…」
 気のせいではなかった。彼女の足首が急激な負担によって悲鳴を上げ
始めたのだ。このままではカオリの身が危ない。私はルームランナーの
スイッチを止めようとした。だが和智はそれを止めた。
 「なぜです?このままでは危ないんですよ!彼女を殺すつもりですか?」
 「なんとか30kmまでもたせるんです。目標は30km台ですから」
 27,28,29…カオリの足は次第に軋みが激しくなっていった。
そして30km……。
 バキッ!ついにカオリの足首が外れてしまった。私はあわててスイッチを
切った。だが、足首を失ったカオリは高速でルームランナーの外へ投げ出されて
しまった。その先には窓があった。このままでは彼女は屋外へほうり出されてしまう!
私はカオリを助けようと窓の方へ走り出した。
 「だめだ、間に合わない!」

 そのときだった。和智が何かを窓の方に投げた。バッ!それはエアバッグだった。
エアバッグのおかげでカオリは外へ投げ出されずにすんだ。
 「おい、しっかりするんだ、カオリ!!」
 和智は我を忘れてカオリの下へ走っていった。ほんの少し前とはまるで別人の
ような表情で。
 「お…お父さん…」
 「だいじょうぶかカオリ…いくら義体が丈夫にできていてもこんな高いところから
落ちたら死んでしまう…お前はたった一人しかいないのだから」
 その言葉を聞いて私は気づいた。やはりカオリはアンドロイドではなくてサイボーグ
だということを。そして和智とは本当の親子だということを…。

86無名:2006/01/09(月) 16:59:52 ID:tApHzjQb0
「もう、テストはやめにしよう…。これ以上お前をこんな目に遭わせたく
ないからな…」
 和智はカオリを近くにあったキャリーに乗せた。
 「すみませんね、神無月さん。こんなことになってしまって…」
 「いえ、いいんです。それよりも、カオリのこと、大事にしてあげてください。
彼女もそれを望んでいます」
 私はキャリーに乗せられたカオリの前にしゃがんだ。
 「カオリ、いいお父さんをもったな。ちゃんと心配をしてくれるお父さんが
いるから、君は幸せだよ」
 カオリは無言で頷いた。
 「それでは、失礼します。帰りは近くの警備員に案内させますので」
 そう言って和智はカオリと共に研究室へと戻っていった。私は警備員の案内で
施設の出入り口へ戻った。

 その日帰り道、車の中で私は、カオリの事を考えていた。カオリにも、かなの
元気を分けてあげられたら、どんなに強く生きることができるだろうか。実験台に
なってまで生きなければならない彼女は、普通の人よりも辛い人生を送らなければ
いけないのかもしれない。あのとき、和智は彼女のことをどれだけ心配したのだろうか。
いくら冷静さを装っていても、心の中では娘のことを心配する、一人の父親であったに
違いないのだ。私はせめて二人が幸せであるようにと、ただ願うしかなかった。
87無名:2006/01/09(月) 17:15:59 ID:tApHzjQb0
みなさんこんにちは。無名です。思っていたより早く出来上がったので
「義体開発現場」の後編を掲載しました。なぜカオリが研究所の実験体に
なっているのかは、後のストーリーで執筆しようかと思います。
さて次回は、かなちゃんのお話になります。おたのしみに。
 
88名無しさん@ピンキー:2006/01/10(火) 23:06:31 ID:JbDPLTQy0
 無名氏の作品には常に冷酷さを感じるのは何故だろう?
89名無しさん@ピンキー:2006/01/11(水) 00:29:27 ID:gw3FRI770
だがその冷酷さがイイ。
90名無しさん@ピンキー:2006/01/13(金) 23:09:52 ID:cVyPtB4E0
作者さん達は正月明けで忙しいのかな?
91名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 10:32:10 ID:An5K9cgH0
作者さん達に投稿の義務はない
読者には催促する権利はない ただ待てばよい
92名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 23:11:30 ID:2JAIlXE90
>>91
まあまあそんなにキツく言わないでも

>>90
それならキミも何か書いてヒーローになろう!!(藁
とりあえず保守トンクス
93名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 07:58:21 ID:1MoLf+pq0
3の444さま
貴殿のHPにアクセスできなくなってますが、どうしました?
943の444:2006/01/16(月) 10:06:17 ID:JA7rtTan0
>>93
間借りしているサーバーが落ちてしまっているため、現在サイトを見ること
ができなくなっています。
本日夜、もしくは明日中には回復すると思います(多分)
95名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 13:23:28 ID:FS0fRAtr0
91お前何様だ氏ね
あげてやる
粘着であらすからなそのつもりで
96旅人:2006/01/16(月) 14:39:04 ID:litZTq5m0
>>95
そこ、情けないからやめた方がいいですよ−
97名無しさん@ピンキー:2006/01/17(火) 02:29:53 ID:uwBsROJJ0
つーか、このスレを荒らすとか言ってる時点でここのマトモな住民ではないわけなんだがw
ただの便乗荒らしと思われ。ほっとくがヨロシ
98名無しさん@ピンキー:2006/01/17(火) 19:06:46 ID:iLPGPLLs0
神が投下しない間もどんなサイーボーグが最も萌えるか話し合うのが
正しい住人の姿ではなかろうか?
99名無しさん@ピンキー:2006/01/17(火) 21:37:07 ID:wZmkRm680
>>98が良いこと言った!
自分で書こうとしたが、力不足で挫折したんだが...。
不器用なサイボーグ娘とかどう??

もともと不器用、でも芸術家志望の娘さんがいるわけよ。
毎日毎日彫刻の練習をして、やっと展覧会に出せるところまで来た!!
でも運命の悪戯か、大怪我をして義手に。
「あたしにはもう、作品なんか作れない!」
「練習してヘラを自分の指先のように使えるようになったんだ。義手だって...」
「気休めはやめてよ!」

そんなある日、同じく義手で絵を描く老婆に会う。にこやかに手がある喜びを
語る老婆の話を聞いて、もう一度頑張ろうと誓う娘さん。
一年後、作品展に再挑戦する娘さんの姿があった...。(第一部)
10099:2006/01/17(火) 21:43:50 ID:wZmkRm680
展覧会に出品したものの、評価は散々。理由は
「機械で削り出したら正確につくれて当然。これは作品とは呼べない」
確かに人が手作りするときの「揺らぎ」がない作品に、娘さん自身も
悩んでいたのだった。

そして...。娘さんは、担当医師のところへ行くわけだ。
「先生。この義手を外して補助コンピュータのない機械式義手に替えてください」
「だが、重いし今みたいには使えないよ?リハビリも以前よりずっと大変だ」
「構いません。私にはどうしても必要なものなんです」

重く不恰好な義手を使いこなすため、むすめさんの苦闘は続く...。(第二部) 
101名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 20:15:47 ID:+yp+NgBf0
アンピュティーマニアとサイボーグ娘マニアは人種が違うと思うが如何か?
102名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 00:59:42 ID:/zBjW+1o0
ちょっと違うよなというか全然違うわな
1033の444:2006/01/19(木) 00:59:55 ID:Ur1b+CI00
  午後9時の星ヶ浦ブティックストリート。
  ヨ−ロッパのガス灯を模した、 ゴテゴテした装飾のついた、 黄色く光る街路灯。 規則正しく地面に敷き
詰められた赤茶色のレンガ。 通りをカラフルに彩る横文字の店名を掲げたオシャレなカフェバーのネオンサ
イン。 あちこちのお店から、 私が初めて聞くような、 物珍しいアップテンポの洋楽が鳴り響く。
  道行く女のコは、 みんな、 この星ヶ浦っていう舞台のヒロインを演じるのは自分だって言わんばかりに、
ファッション誌から抜け出してきたみたいな垢抜けたカッコをしてる。 ここの海岸から眺める満天の星空が綺
麗だってことで、 昔の人は、 ここを星ヶ浦って名づけたんだけど、 今の町の主役は、 水平線の遥か上に煌
く星々じゃなくって、 色とりどりの明るいネオンや着飾った女の子。 こうした地上の星たちの明るさには、 き
っと夜空に輝く夏の大三角、 デネブもベガもアルタイルもタジタジだろうね。
(でも、 私だって負けてないはずだよ)
  今私が身につけているのは夏らしいノースリーブの襟付きシャツ、 それから、 膝丈くらいの浅いスリット
の入ったタイトスカートとハイヒール。 「NANA」って雑誌のオトナの着こなし特集に紹介されていた人気ブティ
ックの「グランシャリオ」で、 さっき買ったばっかりのものだ。 しかもしかも、 みんなワンサイズ一点入荷の特
注品なんだってさ。 つまり、 ファッションの中心地の星ヶ浦でさえ、 この服を着ているのは私だけってことな
んだよ。
「街で同じ服着てる人に会うなんて嫌でしょ? だから、 ウチにあるのは、 みーんな違う服なのよ」
  ちょっと個性的でいて決して奇抜でなく、 落ち着いたオトナな感じ。 なんとも大雑把で抽象的な私のリク
エストに応えて、 あれこれ服を選んでくれたグランシャリオの店員さんが、 私に向かって語ってくれたお店の
ポリシーを思い出す。
  全く、 彼女の言うとおりだよ。 誰もが着ているような流行ファッションなんて、 つまらないし、 なにより個
性がない。 ちょっと予算はオーバー気味だったけれど、 私も、 この星ヶ浦っていう大掛かりな舞台で、 みん
なに負けずに自分を演じ切るには、 このくらいの武装はしないといけないよね。
1043の444:2006/01/19(木) 01:00:46 ID:Ur1b+CI00
(うん、 カンペキ)
  黒い街路灯にもたれて、 ぼんやりと道行く女のコのファッションを観察して、 それから改めて自分のカッ
コと見比べた私は、 密かに自画自賛。
(どうだ、 ジャスミン! 私だって・・・私だってやればできるんだからね)
  肩から下げたエスニック調のバックをギュッと握り締めると、 鼻息荒く、 私は夜の街を歩き始めた。

  と、 言っても、 私にどこか行くあてがあるわけじゃない。 私の身体じゃ、 一人で近くのカフェバーに入っ
てカクテルを注文、 なんて洒落た真似をしようにも、 飲めないカクテルと睨めっこするのが関の山。 カラオ
ケに行っても、 一人じゃ虚しいだけ。
「面白そうだから、 一緒についていく」
  と言った佐倉井や
「私が服を選んであげる」
  と言ったジャスミンに向かって意地を張って、 あくまで一人で行くって言い張った私だけど、 仲良く手をつ
ないで歩くカップルとか、 横一列に広がって、 大声で楽しげに話しながら歩く仲良しグループを見るにつけ、
やっぱり、 みんなで一緒に来れば良かったなあ、 ジャスミンのへったくそな夢崎ひなたを聞きたかったな
あ、 とチョッピリ一人で来たことを後悔してしまう私なのでした。

  ふと気がつくと、 行く手に人だかりが。 ちょうど、 ブティックストリートの角の交差点のところにある海鮮イ
タリアン「セッテベロ」の入り口に、 女の子たちが、 二三十人、 固まっている。
(なんだろう?)
  好奇心にかられた私の足は、 自然と人だかりのほうに向かっていた。
「なんか、 あそこのレストランに中里忠弘が来てるらしいよ」
「えーっ! マジマジ?」
  早足で私を追い越していった女の子二人組の会話が耳に入った。 
(マジですか!)
  私は興奮した。
1053の444:2006/01/19(木) 01:01:29 ID:Ur1b+CI00
  私は中里忠弘、 いやいや呼び捨てにしちゃいけないね、 チュリー様の大ファンなんだ。 リリースされた
アルバムだって当然全部持っているし、 彼の出演するテレビは全てチェックしている。 その、 憧れのチュリ
ー様が、 今、 なんと私の半径50m以内にいるだなんて、 興奮しないはずがない。
  そうこうするうちに、 出迎えの車らしき真紅のスポーツカーが、 モーゼの十戒さながらに、 入り口近くに
たむろする女の子たちをかき分けながら、 停車した。
「出てきた、 出てきた」
「キャー!! チュリー、 チュリーっ! こっち向いてえ」
  女の子たちの嬌声が一段と高くなる。 チュリー様が、 レストランから出てきたに違いない。
  こうしちゃ、 いられない。 私は、 佐倉井たちにチュリー様の生画像でも送ってやろうと、 カメラ機能つき
の携帯をあわててバックから取り出すと、 人だかりに向って一目散に駆け出した・・・つもりだった。 でも。
「きゃっ!」
  タイトスカートにハイヒールなんていう慣れないカッコで、 いきなり駆け出したものだから、 私は足がもつ
れて思いっきり転んでしまった。 それこそ、 でんぐり返しの一回転しちゃうんじゃないかって勢いでね。
「いたたた・・・」
  顔をしかめながら、 ばつが悪そうに周りを見回す私。

「大丈夫?」
  という言葉とともに、 突然、目の前に手が差し出された。 私はおずおず上目遣いに手の差し出されたほ
うを見上げる。
  二十代半ばくらいのスーツ姿の男の人が、 中腰の姿勢で私を見下ろして、 ニコニコ笑ってる。 背が高く
って、 痩せぎすで、 鹿みたいな優しそうな目をした人だった。
  チュリー様ほどじゃないけど、 ちょっと私の好みかも。 もしも私が少女漫画の主人公なら、 きっと顔を赤
らめて胸を「とくん」と、 ときめかせたことだろう。 ま、 機械の身体の私は、 もう顔が赤くなるようなことも、
胸が高鳴ることもないんだけどさ。
1063の444:2006/01/19(木) 01:02:59 ID:0hOAGIse0
「うー、 どうもありがとうございます」
  私は、 お礼を言いながら、 彼の手をつかみかけて、 あわてて引っ込める。 私の身体は、 体重120kgの
全身義体なんだ。 うっかり体重をかけようものなら、 彼を転ばせるだけだもんね。
「大丈夫かい?」
  一人で立ち上がって、 スカートの裾を直している私に向って、 男の人は、 もう一度優しく声をかけてくれ
た。
「だ、 大丈夫です」
  私はうつむきながら、 つぶやくように言った。 恥ずかしくて彼の眼をまともに見れなかった。
  彼には、私はどう映っているんだろう? 着慣れないタイトスカートと履き慣れないハイヒールを、 背伸びし
て身につけたあげく、 転んでしまった間抜けな女の子って思われてしまっただろうか?
「君、 一人で来ているのかい?」
「は、 はい」
  曖昧にうなずく私。
「ちょっと、 こっちで話をしない?」
  彼が指差す先は、 ちょうどチュリー様騒ぎのレストランの向かいの喫茶店。 ほどよい明るさに調節され
た間接照明に浮かび上がる、 シックな雰囲気の木目調の内装が遠目にもよく分かった。 いかにも、 ゆった
りとしたクラシック音楽がかかっていそうな、 オトナな雰囲気の喫茶店だ。
「え?」
  一瞬何を言われているのかよく分からなくて、 呆けたように口をぽかんと空けてしまう。
  ちょっと、 こっちで話をしないって、 近くの喫茶店で、 お茶でもどう? ってことだろうか。
  もしかして、 これって、 ナンパってやつ? 私、 ひょっとしてナンパされちゃった?
「あ、 あのあのあのあの」
  こういうとき、 どうすればいいんだろう。 えーい、 落ち着け。 落ち着け私。 もう心臓なんかないんだ。 ド
キドキしてどうする。
1073の444:2006/01/19(木) 01:04:10 ID:0hOAGIse0
「ご、 ごめんなさい。 私、 久しぶりにハイヒールを履いて、 そ、 その、 普段はこんなことないんだけど、 転
んじゃって、 みっともないところを見せちゃいました」
  ゼンゼン落ち着いてない。 そんな話してどうする。
  男の人は、 いかにもおぼっこい私の反応を見て、 クスリと笑った。 駄目だ。 こんなことでは呆れられて
しまう。 ナンパなんて慣れっこですって顔しなきゃ駄目だ。
「お話。 いいですねっ」
  ナンパキタ━━ヽ(゜∀゜)ノ━( ゜∀)ノ━(!   ゜)ノ━ヽ(  )ノ━ヽ(゜  )━ヽ(∀゜ )ノ━ヽ(゜∀゜)ノ━━!!
↑こういう本心を隠して努めて平静を装いつつも(でも言葉尻がうわずった)、 私は出来る限り魅力的な
笑顔を浮かべるべく最大限の努力を払う。
  もう、 チュリー様なんかどうでもよくなっちゃった。 チュリー様は、 今日のところは、 他の女の子にくれて
やろう。 アンタたちが、 決して実らない恋に血道をあげている最中に、 私は、 ムーディーな喫茶店で素敵な
ひと時を過ごすんだからね。 コーヒーなんか、 飲めなくてもかまわない。 こうして、 星ヶ浦の喫茶店で、 男
の人とおしゃべりできるだけでも、 私は充分幸せだ。 もしかしたら、 新しい恋がここから始まるかもしれない
しね。
  私は、 内心のウキウキを押し殺しつつ、 彼の後ろを黙ってついていく。 なんだか、 身体がフワフワして
夢でも見ているみたい。 チュリー、 チュリーって騒々しい女の子たちの金切り声が、 どこか別の遠い世界
から聞こえてくるような気がした。

  と、 こ、 ろ、 が。 彼は、 例の喫茶店「アキテーヌ」には目もくれず素通り。
  どうしたの。 ここで、 二人でお茶するんじゃなかったの?
1083の444:2006/01/19(木) 01:04:41 ID:0hOAGIse0
「あ、 あの・・・」
  ひょっとして、 考え事しながら歩いていて、 通り過ぎちゃったんじゃないだろうか。 そう思った私は、 彼の
背中を指でちょんちょんつつく。
「どうしたの?」
  彼は、 変わらぬ笑顔で、 私を見つめた。
「いや、 どこに行くのかなあと思って」
「はは、 もう着いたよ」
  彼は、 「アキテーヌ」の隣の、 まるで愛想のない白くて四角い建物を指差した。 その建物の入り口には、
なんて看板が下がっていたと思う?
・・・『星南警察署星ヶ浦交番』だってさ。
  交番の中で、 何か書きものをしていた若いお巡りさんは、 彼の姿を認めると、 手を休めてご挨拶。
「西村刑事、 お疲れ様です」
「や、 ご苦労様」
  彼は・・・西村刑事は、 慣れた調子で、 お巡りさんの隣の椅子に腰掛けて、 勢いをつけてくるっと一回転
した。
「この子は?」
「うーん、 多分家出の女子高生だと思うんだよね。 最近多いからね。 さ、 君、 住所と電話番号と名前を言
ってごらん。 それから高校名もね」
  だ、 か、 ら。 私はハタチなのっ! 大人なの! なんでみんなわかってくれないんだよう。 嫌、 嫌。 もー
嫌っ!

       おしまい
1093の444:2006/01/19(木) 01:08:20 ID:HuN3YFyf0
ちょっと間があいてしまいましたが、これにてナンパ終了です。

次回は銀河鉄道999のラセンさんに捧ぐってことで「ネジ工場」
にしようと思っています。お楽しみに。
110名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 01:31:51 ID:O0bq0mTb0
>>109

オチにワロタ


>人気ブティックの「グランシャリオ」
>海鮮イタリアン「セッテベロ」
>喫茶店「アキテーヌ」

(・∀・)ニヤニヤ
111名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 03:20:19 ID:Ea5hLUNr0
ヤギーたんがハタチの大学生だってバレたときの警官の顔が見てみたかった気がするよww

>>101,>>102
違うことは違うが、かなり重なる部分が大きいのも間違いないと思うが。
ヤギー物語なんてまさに重なった部分の一つの典型例だし。
その方面は詳しくないけど、萌え属性分類学だとどっちも大分類「不治の病属性」に分類されるのかな?
112名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 01:39:21 ID:82jlRa6R0
>>109
GJ。可愛いなあヤギーw
113名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 22:08:14 ID:jrxn49sf0
3の444さんGJ〜
「チュリー」採用感謝です。


>>110
「カタラン・タルゴ」なんかもちょっとレストランぽい名前だぞ。とかいってみる。


114110:2006/01/21(土) 02:19:54 ID:e9c1mu2D0
>>113
タルゴって開発者が作った造語だから、店の名前とかに使うのはまずいんじゃないかなぁ
・・・などと書くのはどう見てもスレ違いです
ありがとうございました
115名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 01:40:56 ID:LjszN8dB0
意識あるままメンテするのって萌え。

定期検診(定期メンテ)のため入院。下半身を切り離し、上半身だけ
固定した状態でさらに生命維持系の装置のうちいくつかを取り外し・
外付けのに切り替え(当然ケーブル・チューブ接続されまくり)して、
その状態で「どこかお変わりありませんか?」などの医者の質問に
答えるなどのやりとりをする。
検査は一日では終わらないのでベッドに泊まるが、検査に回されるため
手足と内臓の一部は取り外される。外された内臓の代りの機械に接続する
チューブがつながった状態で寝る。明日寝るときは、手足ではなく目と
耳が取り外されるらしい。明日は目・耳と引き換えに手足が戻るまで
足のかわりにタイヤがついた下半身をつけるらしい。

こんな感じで。
116名無しさん@ピンキー:2006/01/26(木) 22:25:52 ID:qKnEzEA40
>115
おまえ100だろ
117名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 00:21:23 ID:uBNrGLlb0
昨日発売されたFFにサイボーグ娘っぽいのが出ている件について

PV
http://video.google.com/videoplay?docid=-7985073303233220183&q=Dirge+of+Cerberus
118117:2006/01/27(金) 00:23:01 ID:uBNrGLlb0
2分40秒のところね
119115:2006/01/27(金) 02:30:52 ID:QCd61m2J0
>>116
残念だけど違いますw
1203の444:2006/01/28(土) 00:08:51 ID:dvTJNTDn0
  ちゃりん、 ちゃりーん。 私達の投げ入れたお賽銭は、 かろやかな音をたてて、 賽銭箱の中に消えてい
く。
  ぱんぱん。
  私とジャスミンと佐倉井の三人は、 お賽銭箱の前で、 仲良く横並びに並んでかしわ手を打った。
(今年こそ、 ステキな彼氏ができますように。 それで、 キスくらい、 できたらもっといいな)
  私は神棚に向ってお辞儀を手をたたきながら、そんなことを考えていた。

  年も改まって永康24年のお正月。 私達は、 八軒坊の町外れにある、 名前も知らない小さな神社に初詣
に来ています。 もちろん、 八軒坊から電車に乗ってちょっと行ったところには、 参拝ついでに海から昇る初
日の出も同時に見れちゃう火環大神宮なんて超有名どころもあるけど、 そんなところに行こうものなら、 ラッ
シュの菖蒲端にも負けないくらいの、 ものすごい人手で、 参拝するのに2時間待ちなんてことはザラ。 お参
りに来たのか、 人混みにもまれに来たのかよく分からないことになっちゃうのは目に見えてる。
  だから、 今回は甘味追及の旅の以外のことになると途端に出無精になる佐倉井の提案もあって、 彼女
の家のすぐ近所の神社に行くことにしたんだけど、 これが大当たり。
  今はすっかり葉っぱも落ちて幹だけになっちゃった鎮守の森に囲まれた、 江戸時代から続いているって
いう古びた小さなお社。 普段は、 訪れる人もまばらな、 時の流れに取り残されて、 神様だけがひとりぼっ
ちで暮らしているみたいな寂しいところだけど、 今日だけは別の顔。
  お社に面した、 ブランコとかすべり台みたいな遊具も置いてある近所の公園も兼ねた小さな広場には縁
日がたっていて、 初詣に来た近所の人らしい家族ずれで、 どこの露店も、 それなりの賑わいを見せてい
る。 空を見上げれば、 雲ひとつない冬ばれの空に隣の河川敷から上がっているんだろう、 カラフルな凧
が、 二つ、 三つ、 真っ青な空に、 ほどよいアクセントを与えている。 足もとはといえば、 何百年分もの枯
葉が積もってできた鎮守の森の黒い土。 都会では、 滅多に味わえない、 ふんわり柔らかな土の感触が、
足に心地よい。
1213の444:2006/01/28(土) 00:09:52 ID:dvTJNTDn0
  眼に入る光景の一つ一つが、 まるで、 ♪もーいくつ寝ると、お正月っていう有名な歌の、 そのまんま一
シーンみたい。 大きな神社には、 大きな神社なりの良さがあるんだろうけど、人の暮らしに密着した、 こう
いうお正月風情はやっぱり、 小さなところじゃないと味わえないよね。

  私とジャスミンは、 苔むした小さな石灯籠によっかかりながら、 食べ物を仕入れに縁日の人だかりの中
に消えていった佐倉井の戻りを待っていた。 いかにもお正月らしい鮮やかな花柄の晴れ着を着たジャスミン
は、 さっきから、 歯の根をカチカチ鳴らしている。 さむいさむいとしきりにつぶやく彼女の口から、 白い息が
こぼれる。
「今日は、 久々の冷え込みなんだって。 最高気温は5度らしいよ」
  ぽってりとした厚手のフェルト地のグリーンのコートを着込んで、 いかにも寒そうにマフラーに顔をうずめ
ながら、 そう答える私は、 実はちっとも寒さなんか感じていない。 悲しいかな、 私の義体には外気の温度
を肌で感じる機能はついていないんだ。 だから、 ジャスミンみたいに寒さに震えることもないかわりに、 冬と
いう季節を肌で感じることは、 もうできない。 私の脳を補助するサポートコンピューターの容量では、 生身
の人間の感覚を100%忠実に再現するのは難しいんだってさ。
 でも、 もう、 この身体になって四年目。 こうやって、 毎日毎日天気予報の最高気温を記憶しては、 今日
は寒いとか、 暑いとか言って、 友達に向かって演技することにも、 もう慣れっこだよ。
「ちなみにヤギーは、 さっき何をお願いしたの?」
  ジャスミンは、 指がかじかんでいるのか、 はめている赤い毛糸の手袋に息をふうふうふきかけながら、
言った。  
「えと、 それは、 秘密です。 ひみつ」
  曖昧に笑ってはぐらかす私。
  今年こそは彼氏が欲しい、 キスがしたいってお願いした、 とは、 なかなか答えにくい。 ましてや、 その
先のことも、 ちょっとは期待してる、 なんて言えるわけがない。 そんなことが二人にバレた日には、 それを
ネタに、 ずーっとからかわれ続けちゃうのは目に見えてるからね。
1223の444:2006/01/28(土) 00:10:39 ID:dvTJNTDn0
「ははーん。 口に出して言えないくらい、 いやらしいことだね。 けけけ」
  突然、 背後からそうささやかれて、 あわてて振りいたその先に、 佐倉井がニヤニヤ笑いながら立ってい
た。 彼女が、 大事そうに抱えている小さな紙包みから、 本日の釣果、 湯気のほかほか上がっている美味
しそうな鯛焼きが、 半分顔をのぞかせていた。
「ちちち、 違うよう。 なんでそうなるのさ」 
  佐倉井に自分の内心を見すかされた気がして、 動揺した私はハゲしくどもってしまう。 余りにも分かりや
すい私の反応に、 二人はお腹をかかえて笑った。
  私の、 このいじられキャラって立場、 どうにかならないだろうか。 まったく!

  三人揃ったところで、 次にやることといえば、 おみくじをひくこと。 小さな神社だから、 巫女さんがいる
わけじゃなし、 おみくじは自動販売機で買う仕組みになっていて、 ちょっと味気ないけど、 初詣といえばコレ
がなくちゃ始まらないよね。
  手に、 それぞれが買ったおみくじを握り締めて、 小さな輪を作って向かい合う私達三人。 買ったおみくじ
は、 ジャスミンの提案で、 「いっせーのせ」で、 三人いっぺんに開くことに決まったんだ。
「じゃ、 用意はいい」
  やけにまじめくさった表情で問いかけるジャスミンに向って、 心持ち緊張気味にうなづく私と佐倉井。 ジ
ャスミンの作り出す雰囲気に飲まれて、 なんだか試験の合格通知の封書を空けるみたいに、 ドキドキして
るんだ。 おみくじを開く。 ただ、 それだけのことでも、 こんな芝居がかった儀式をして楽しんじゃう私達なの
だった。
「いっせーの、 せっ!」
  掛け声とともに、 一斉に、 丁寧に折りたたまれているおみくじを開封。
「げげっ」
  あからさまに、 うろたえた声を出したのは私。 私のおみくじから表れたのは、 字面からして禍々しい
『凶』の一文字。 
1233の444:2006/01/28(土) 00:14:20 ID:dvTJNTDn0
「へぇー、 私、 凶なんてはじめて見たよ」
  佐倉井は、 自分の引いた中吉のおみくじの中身を読むより先に、 ひょいっと私のおみくじをひったくる
と、 書かれている内容を読み上げた。
「えー、 遊びは熱中しすぎに注意。 探し物、 見つかりません。 願い事、 強く望めば実現の可能性あり」
「巧言令色少なし仁。 少なくとも願い事はかなうってことでしょ。 私のおみくじみたいに、 不気味なくらい、 い
いことばかり書いてあるよりよっぽど信用できそうじゃない」
  ジャスミンは自分の引いた大吉のおみくじを見せながら言った。
「うー、 ジャスミン、 それ、 ひょっとして、 慰めてるつもり? それとも自慢してるの? 大吉を引き当てたアン
タにそんなこと言われても、 ちっとも嬉しくないよ」
  私は不満げに口をとんがらせた。 でも、 書かれていることが悲惨なことばかりではなかったので、 実
は、 ちょっとホッとしてるんだ。 ステキな彼氏とキスをするっていう願いがかなうのなら、 この際、 遊びに熱
中しすぎてひどい目に遭っても我慢するよ。 探し物なんか見つからなくていいよ。
「ヤギーのいやらしい願い事、 かなうといいね。 けけけ」
  佐倉井は、 今度は意味ありげにウインクして、 肘で軽く私をこづいた。 この親父ギャルめ!
「お正月早々凶なんかを引いちゃった、 可哀想なヤギーには、 これをあげちゃう」
  ジャスミンは、 財布から、 一枚のカードを取り出しすと、 かっこよく二本の指で挟むように持って、 顔の
前でひらひらさせた。
「何、 コレ」
  ジャスミンから手渡されたのは、 クレジットカードサイズの厚手の紙でできた緑色のカードだった。
「ハチ銀(八軒坊銀座)のカラオケボックス『ムーンライト』のポイントカードよ。 だいぶ通いつめたから、 それ
使えば一人分は無料になるの。 どう、 今から厄払いに行かない?」
「厄払いね・・・ははは」
  ホントは、 ジャスミンにとって厄払いなんて、 どうでもいいこと。 何かカラオケに行く理屈をつけたいだけ
なんだろう。 それが分かっている私は思わず苦笑い。 でもさ、 ジャスミンの言う厄払いじゃないけど、 カラ
オケに行って、 ぱーっと騒いで、 おみくじのことなんか忘れるのって、 いいアイディアかもね。
1243の444:2006/01/28(土) 00:15:28 ID:dvTJNTDn0
  私だって、 ジャスミンに負けず劣らずのカラオケ好き。 だって、 歌を歌うってことは、 美味しいモノを食
べたり、 スポーツをして気持ちのいい汗を流すなんていうヒトとして当たり前の喜びを奪われた私にとって
は、 数少ない普通のヒトと同じように楽しめる娯楽の一つなんだよ。 私の声は、 作り物の電気合成音にす
ぎないかもしれない。 でも、 歌を歌って楽しいって思う私の気持ちは決して作り物じゃないもの。
「OK。 行こう。 行こう」
  明日は朝からアルバイトが入っているから、 ホントは今日は早めに家に帰るつもりだった。 でも、 好き
なカラオケをただで楽しめちゃうなんて、 そんなうまい話を私が断れるはずがない。 バイトと、 無料カラオ
ケ、 秤にかけるまでもないよね。

  こうして、 私は、 正月早々、 カラオケに行くことになったんだけど、 後から思えば、 これが全てのケチの
つけはじめだったんだ。

「ごめん。 私、 もう帰らなきゃ」
  夢崎ひなたとか喜国更紗みたいなキーが高くてアップテンポで、 いかにも消費カロリーが激しそうな曲を
5曲連続で歌いきったあと、 さすがにネジが切れたみたいに、 ソファの上で、 うつぶせにぐったりしているジ
ャスミンに向って私は言った。
  いつの間にか私の腕時計の針は、 11時45分をまわっている。 菖蒲端行きの終電の八軒坊発は12時10
分。 まだゼンゼン歌いたりないけど、 明日は朝からバイトだから、 さすがにもう帰らないとマズイ。 そのくら
いの理性は私にだってある。
「りょうかーい」
  うつぶせで、 ぐったりしたまま片手だけ上げてバイバイするジャスミン。
「に、 してもヤギーはタフだねえ。 あれだけ大騒ぎして、 ヤギーだけは、 なんともないわけ? 別に帰らなく
てもいいじゃん」
  佐倉井は、 マイクを握り締めたまま、 床にしゃがみこんで苦しそうに小刻みに息を吐きながら、 私を見
上げた。
1253の444:2006/01/28(土) 00:16:23 ID:dvTJNTDn0
「うー、 そんなことないよ。 私も疲れたよ」
  佐倉井の指摘にぎくりとした私は、 つい、 わざとらしく息が切れているふりをしてしまう。 一緒に歌ってい
た三人のうち、 二人がぐったりしてるのに、 私だけケロリとしてるのは、 なんか変だもんね。
  私の声は、 喉の奥にあるスピーカーから出る肉声を真似た電気合成音だから、 いくら声を出し続けても
喉がかれることはないうえ、 稲城修吾の渋いバリトン調の曲から、 喜国更紗のエッジのきいた透明感あふ
れるキーの高い曲まで自由自在に歌いこなせちゃう。 三人の中で持ち歌のレパートリーが一番多いのは実
は私だったりするんだよね。
  だから、 カラオケに行くと、 ノリノリになってしまい、 ついつい終電に帰りそびれて始発電車が動き出す
までエンドレスで熱中してしまう私だけど、 さすがに明日の朝からバイトっていう情況でカラオケにのめりこむ
わけにはいかないよ。
  と、 部屋に備え付けのスピーカーから、 ヘビメタの重低音が鳴り響く。
「おっし。 ジャスミン君。 次いくよ。 次。 OERの『スケベニンゲン』」
「オッケー。 さやか。 今日はエンドレスだね!」
  今までぐったりしていたくせに、 音楽が鳴ったとたん、 二人はマイクを握り締めて、 弾けたように立ち上
がる。
  ♪オレはスケベニンゲンじゃない、 スケベニンゲンじゃない! スヘフェニンゲンだぁー!!
(あんたたちのほうが、 よっぽどタフだよ)
  私は苦笑いしながら、 カラオケボックスのドアを閉めた。

 昼間、 あんなに天気が良かったのに外に出たら小雨がパラついていた。 カラオケボックスに、 かれこれ
8時間くらいいたからね。 それだけの時間が経てば、 中で脳天気に歌っている間に、 外の天気がすっかり
変わっちゃっても不思議はないよね。
  傘なんか、 もちろん持ってきてるわけないんだけど、 幸いなことに東八軒坊の駅は、 八軒坊銀座のどん
づまりにあって、 ここからさほど離れてはいない。 コートのフードですっぽり頭を覆った私は、 人気のない、
夜の商店街を駅に向って駆け出した。
1263の444:2006/01/28(土) 00:18:48 ID:dvTJNTDn0
  駅にはものの2分足らずでついた。 でも、 なんだか様子がヘン。 普段、 客待ちのタクシーが列をなして
いるはずの駅前ロータリーは、 ガランとして車が一台も止まっていない。 終夜営業の駅前コンビニのこうこ
うと光る白い明かりが、 やけにもの寂しく感じる。
  東八軒坊といえば、 宮の橋なんかと違って、 急行も止まるような、 大きな駅なんだ。 いくら、 夜中の12
時近いっていっても、 もう終バスが出たあとのこんな夜更けなら、 終電で帰宅する酔客目当てのタクシー
が、 必ずロータリーに止まっているはずだよ。 この駅から菖蒲端や入舸浦の方向に帰るお客さんだってい
るはずだよ。 なのに、 なのに、 いくらお正月っていっても、 まだ終電前なのに、 駅前に誰もいないなんてこ
とがあるだろうか? なんだかいやな予感がする。
(なんで? なんで?)
  焦る私をあざ笑うかのように、 今まで小ぶりだった雨足が突然強くなる。 足を速めた私の顔に、 眼鏡
に、 大粒の水滴がぶつかってはこぼれ落ちた。
  私の不安は、 駅の入り口に来て、 現実になった。
  駅は真っ暗で、 入り口のシャッターも、 もう閉まっちゃってる。 おかしい。 私がカラオケボックスを出たの
は11時45分。 だから0時10分に出る菖蒲端行きの最終にはまだ余裕をもって間に合う時間のはずなのに。
  あわてて腕時計を見る私。 そこで、 私は気がついた。 さっき見たときと同じ11時45分をさしたまんま秒
針が、 ピクリとも動かないってことを・・・。
  電池切れ? それとも故障? いずれにしても、 この時計は、 もうあてにならない。
  私は、 サポートコンピューターにアクセスして義眼のディスプレイに現在時刻を表示させてみた。 こういう
機能を使うと、 嫌でも自分の身体が機械だって思い知らされちゃうし、 視界の中を数字がチラつくのもうざ
いし、 サポートコンピューターにアクセスした瞬間に、 一瞬だけ目が変な色に光るみたいで、 特に暗いとこ
ろだと目立っちゃうから、 普段はほとんど使わないんだけど、 非常事態の今、 そんなこと言ってられない。
どうせ周りには人っ子一人いないんだ。
1273の444:2006/01/28(土) 00:20:45 ID:dvTJNTDn0
  0:42
  視界の右下に、 緑色の文字が浮かんだ。
  0時42分だってさ。 ははは。 電車なんか、 とっくに終わってるよ。
  身体の力が一気に抜けた私は、 その場にへなへな座りこんでしまった。
  私の脳裏に、 昼間にひいたおみくじの「遊び・・・熱中しすぎに注意」ってコトバが浮かんだ。 カラオケは
大好きだけど、 ジャスミンや佐倉井と一緒に遊ぶのも大好きだけど、 アルバイトはもっと大事なんだ。 一生
懸命働いて、 お金をかせがなきゃ、 義体の検査代が払えないんだよ。 検査できなかったら、 義体の故障
で、 突然死んじゃうかもしれないんだよ。 そんなに大事なことなら、 私、 どうしてもっと帰る時間に気を配ら
なかったんだろう。 バカバカ、 私のバカ。 ちょっと気をつければ時計が止まっちゃってることなんて、 すぐ気
づいたはずじゃないか。
  今の私の気持ちを代弁するみたいに、 ずぶぬれの顔の瞳のあたりから水滴が、 涙みたいに頬っぺた
を伝って流れ落ちた。
  ここからタクシーに乗って帰るだけのお金なんかもってるはずがない。 もし、 持っていたとしても、 そんな
無駄金使えるわけがない。 タクシーが使えないなら家まで走って帰るしかない。
  星ヶ浦、 星修大学前、 団子坂、 宮の橋。 駅にしたら、 たったの四つ。 距離にしたら10キロないくらい。
どうせ、 私は機械女なんだ。 いくら走っても、 身体が疲れることなんかないし、 どんなにずぶ濡れになって
も、 風邪をひくことなんかないんだ。 私、 この身体で、 ホントに良かったよ。 はは。
  正月早々、 おみくじいきなり当たりです・・・orz
1283の444:2006/01/28(土) 00:26:08 ID:dvTJNTDn0
「ネジ工場」はじまりはじまり。でも、題名は「おみくじ」の
ほうがいいかなあと思っています。ちょっとだけ季節はずれのお正月もの
です。
今回は日常生活的な描写が多くて、サイボーグ萌え分がちょっと少なかった
かもしれませんね。

それにしても、最近は作品アップが少なくなって、ちょっと寂しいです('・ω・`)
129名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 03:24:31 ID:QxWOeBpW0
ヤギーたんXBOX当籖おめでとう!!!!!(違

関係ないけど、ヤギーたんの声は電気合成ではなくて電子合成だと思う。
電気楽器→何かの音をマイクで拾って増幅する楽器
     例1: 金属板を叩いた音を増幅して流すエレキピアノ(電気ピアノ)
     例2: ギターの音を録音して増幅するエレキギター(電気ギター)
電子楽器→電気回路そのもので発生した信号を音に変換して出す楽器
     例1: アナログ回路で電気信号の波形を発生・加工するアナログシンセサイザー
     例2: デジタル計算によって波形を発生・加工するデジタルシンセサイザーやサンプラー

体の中になんらかの物理的音源(笛みたいなのとか)が入ってて、その音を
一旦録音してから加工・増幅して出してるなら電気音声だけど、合成してない
から「電気合成」にはならないし・・・
130名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 04:49:56 ID:1Rx3G+ZO0
>>128
ネジ…どっかで聞いたことあるような…

>それにしても、最近は作品アップが少なくなって、ちょっと寂しいです('・ω・`)
いくらかはあなたの責任ですよ(笑)(もちろん責めているわけではありませんよ!)
131名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 06:47:16 ID:jlSyusjH0
>>87
カオリを実験台に人工膣の開発希望。
132名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 10:13:59 ID:Khfg4xGt0
>>130

つ【銀河鉄道999】

ネジの雨が降る星の話がある。
ラセンさんだったかな?
133無名:2006/01/28(土) 18:41:29 ID:NN4D6jxp0
一言の勇気

 キーンコ―ンカーンコーン。
 今日も何事もなく授業が終わった。あとは掃除をして帰るだけだ。かなはまさる君と
鹿沼祐喜ちゃん、それに今野和真君で裏庭の掃除をするために外へ出ることにした。
 「なんか張り切ってないか、お前」
 和真君がかなに突っ込みを入れた。
 「へ?そうかなあ」
 「お前はノー天気でいいよなあ。裏庭の掃除ったって、すぐ終わるもんじゃない
だろう。ごみが捨てきれないくらいあるって噂だぞ」
 「でも、私たちが掃除しないとごみがたまってしまうわ」
 後ろから祐喜ちゃんが声をかける。
 「でもよ、俺たち4人だけで片付けるなんて、到底ムリな話だぜ。だいたいなんで
裏庭なんかにごみ置き場があるんだ?もっと近いところだったら人の目に付きやすいだろうに」
 「そうもいかないのよ。だって目立つところにゴミなんか置いたら、学校が汚いっていうイメージ
がついちゃうじゃないの。そうしないために、しかたなく裏の方へゴミ置き場を設置したのよ」
 祐喜ちゃんの言い分も正しいけど、こんな目立たない所に置かなくったってねぇ。これじゃあ、
どうぞここにゴミを置いてくださいって言ってるみたいじゃないの。

134無名:2006/01/28(土) 18:43:40 ID:NN4D6jxp0
「とにかく、みんなで掃除すればきれいになるんだから、協力して
早く終わらせましょう」
 「そうだな、さっさと終わらせようぜ」
 

 というわけで、かなたちは裏庭の掃除を始めることにした。まさる君
と祐喜ちゃんは右側の倉庫のある場所へ、かなと和真君は左側のゴミ置き
場の周りをそれぞれ掃除することにした。
 ゴミ箱の周りはけっこうゴミが散らかっていて、片付けるのに時間がかかりそうだ。
 「けっこう散らばってるな」
 「見えない所だから余計そうなのかもね」
 ゴミ自体はそんなに大きいものがないんだけど、量が多くて、30分経ってもまだ3分の1
ほどしか片付けられなかった。これじゃあ、日が暮れる前に片付けるなんてムリだよぉ。
 「な、なんできれいにならないんだ。これじゃ、あと1時間以上は軽くかかるぜ」
 「こんなにがんばってるのにね。やっぱ二手に分かれるんじゃなかったねぇ」
 まだ残ってるゴミを見て、かなと和真君はがっくりとひざをついてしまった。
 
135無名:2006/01/28(土) 18:46:09 ID:NN4D6jxp0
そのとき、地面がグラグラと揺れた。地震だ。これは震度3くらいだろうか。
「このごろ地震が多いみたいだな」
和真君がそう言ったそのとき、倉庫のほうから大きな音が聞こえた。
 「な、何だ今の音は!?」
 和真君は立ち上がって倉庫の方を見た。さっきの音は重いものが落ちた音だった。
まさか、二人に何かが起きたんじゃ…。なんかいやな胸騒ぎがする。
 「もしかして荘野と鹿沼になにかあったかも知れねえな」
 「そうかもしれないね。早く倉庫へいかなくちゃ」
 かな達はほうきを放り投げて倉庫の方へ走った。
 「おかしいな、別に何も起きてないぞ」
  倉庫の前にきたかな達は、周りを見渡した。外側は別にこれといった異常はなかった。

136無名:2006/01/28(土) 18:56:41 ID:NN4D6jxp0
「別に何もなかったんじゃないのか」
「でも、まさる君と祐喜ちゃんの姿が見えないよ。やっぱり何かあったんだよ」
 すると、中からゴトッて音が聞こえた。
「まさか、この中に閉じ込められたんじゃ…」
「お、おい、冗談だろ。何で二人がこの中にいなくちゃいけないんだ」
「とにかく、助けなくちゃ。何とかして扉をあけなくちゃ!」
 かな達は倉庫の引き戸を開けようとした。でも中から荷物が引っかかってて、
開けられそうになかった。
「これじゃあ、中に入ることもできねえ。おい、鹿沼!荘野!!無事だったら
返事しろ!!」
「まさる君!祐喜ちゃん!!」
 かなと和真君は、大声で二人の名前を呼んだ。すると、倉庫の奥の方から
声が聞こえた。
「か、かなちゃん、和真君…」
 祐喜ちゃんの声だ。よかった、無事だった。

137無名:2006/01/28(土) 19:00:40 ID:NN4D6jxp0
「祐喜ちゃん、まさる君は?」
「そ、それが…」
 祐喜ちゃんは悲しげな声で言った。
「荘野君、私をかばって物置箱の下敷きに…」
「内側から開けることはできないのか!?」
 和真君が扉をたたきながら叫んだ。
「ムリよ。長い棒が何本も入り口をふさいでるから私一人の力じゃ
開けられないわ」
 これじゃあ、かな達の力だけじゃどうすることもできない。先生たち
を呼んでこないと。
「先生を呼んでくるから、和真君はここで待ってて!」
 かなは全速力で職員室の方へ走った。もしかなに扉を壊すほどの力があったら、
まさる君と祐喜ちゃんを助けることができるのに…。サイボーグなのに何もできない
なんて、なんて無力なんだろう。
「先生!大変だよ、早く来て!!」
 職員室へ駆け込んだかなは、日野先生のいる所まで走った。
「どうしたんだ和多田、なにかあったのか?」
「裏庭の倉庫小屋にまさる君と祐喜ちゃんが閉じ込められてしまったんです。早く助けて!!」
 かなは泣きそうになりながら日野先生に言った。
「さっきの地震のせいで閉じ込められたんだな。よし、助けに行こう」
 日野先生はかなの頭を撫でながら答えた。
「すいません、誰か手伝ってくれる先生はいませんか?」
 すると職員室にいる他の先生が全員、日野先生の下へ来てくれた。
「みんなで力をあわせましょう。そうすれば早く救出できるはずです」
「シャベルやつるはしも持って行きましょう。扉を壊すのに必要でしょう?」
 校長先生も、つるはしを持って校長室から出てきてくれた。これで鬼に金棒だ。
「よし、作業は一刻を争う。早く救出に向かうぞ」
 かなと先生達は、裏庭の倉庫小屋へいそいで向かった。

 

138無名:2006/01/28(土) 19:04:31 ID:NN4D6jxp0
「あっ、先生!こっち、こっちだ!」
 倉庫小屋に駆けつけたかなと先生達を、和真君が手を振って迎えた。
「今野!鹿沼と荘野が閉じ込められているのはここだな?」
「はい、早く二人を助けてください!おい、鹿沼!先生が来てくれたから
もう大丈夫だぞ!」
 でも、祐喜ちゃんは自分のことよりまさる君のことを心配してた。
「先生、それより早く荘野君を助けてください。箱の下敷きになってて
動けないんです!」
 もうあの事故がおきて30分近く経っているから、まさる君の体力も限界かも知れない。
いくらサイボーグでも長時間押しつぶされたままじゃ、耐え切れないだろう。
「よし、つるはしで扉を壊そう。鹿沼、扉から離れるんだ」
 日野先生はつるはしで扉を壊し始めた。
「私も手伝いますぞ」
 校長先生と他の先生も扉を壊し始めた。早く救出しないとまさる君が大変なことになってしまう。
「先生、救急車を呼んだ方がいいんじゃ…」
「そうだな、よし和多田、急いで携帯で救急車を呼ぶんだ。荘野の怪我がひどいとなると、ここじゃ
手当てしようにもできないだろうからな」
 さっそくかなは天王山病院へ電話をした。まさる君は義体患者だから、この近くでは天王山病院
じゃないと診てもらうことができない。かなは手っ取り早く説明して、救急車を学校に向かわせる
ように頼んだ。

139無名:2006/01/28(土) 19:06:17 ID:NN4D6jxp0
 「よし、もう少しだ、がんばれ!」
 先生達のおかげで、倉庫の扉は壊すことができた。和真君は祐喜ちゃんを背負って、
保健室まで運んだ。
 後はまさる君を落ちた整理箱の下から助けるだけだ。
 ピーポーピーポー。やっと救急車が来た。レスキュー隊は先生達と一緒に下敷きに
なったまさる君を助け出した。
 「大丈夫か、荘野!」
 でもまさる君は返事をすることができなかった。手足はボロボロになり、傷ついた
ところからは機械が露出していて危険な状態だった。さすがの日野先生もこれを見たとき
には青ざめていた。無理もない。自分の生徒が義体だということを知ってしまったからだ。
 重体のまさる君と付き添いの日野先生を乗せて、救急車は病院へと走り去っていった。
他の先生達も、後片付けをした後職員室へ帰っていった。

140無名:2006/01/28(土) 19:08:39 ID:NN4D6jxp0
 後片付けを終えたかなは、二人のいる保健室へ足を運んだ。
 「祐喜ちゃん、足大丈夫?」
 そこには、足に包帯を巻かれた痛々しい姿の祐喜ちゃんと、脇で心配そうに
見ている和真君がいた。
 「うん、捻挫しただけだから…かなちゃん、荘野君は?」
 「さっき救急車で病院へ運ばれたよ。重傷だって」
 それを聞いた祐喜ちゃんは、顔をうつむいてしまった。
 「荘野君…私のせいで…大怪我をさせてしまった…」
 「どういうことなの?なんで祐喜ちゃんが悪いの?」
 「私と荘野君が倉庫のまわりを掃除していたときに、私が倉庫の中も掃除したら
いいんじゃない、って言ったの。そうしたら荘野君は『それじゃ一緒に中を掃除しようか』
って私と一緒に倉庫の中に入ったの。そのときに地震がおきて倉庫の棚の上から荷物が
落ちてきて…」
 祐喜ちゃんはそのときのことを思い出したのか、だんだん涙声になっていった。
 「荘野君は私を突き飛ばして…自分は下敷きになってしまった…わ、私が倉庫の中を掃除
しようって言わなければよかったのよ…あのときやめておけばよかったのよ…」
 ついに祐喜ちゃんは泣き出してしまった。そうか、まさる君は自分を犠牲にして祐喜ちゃん
を助けたんだ…。
 「それは違うよ、祐喜ちゃんは悪くないよ。まさる君だってそうなるとは思っていなかったんだから」
 でもそれはかえって逆効果だった。祐喜ちゃんは泣きながらうずくまってしまった。

141無名:2006/01/28(土) 19:15:57 ID:NN4D6jxp0
 「鹿沼はさっきのことがショックだったんだろうな…」
 和真君がぽつりとしゃべった。和真君も祐喜ちゃんの事、けっこう心配してるみたいだ。
 「和多田、鹿沼のことは俺に任せて、お前は先に帰ってろ。俺は鹿沼の母ちゃんが来るまでここで待ってるから」
 「うん…あ、あのね…」
 「ん?なんだ?」
 「い、いや、なんでもない。それじゃあね」
 かなはそそくさに保健室を後にした。やっぱり言ったほうがいいんだろうか…いくら事故に遭ったとはいえ、まさる君の
正体が分かってしまった以上、かなも自分が義体だってこと言わなくちゃいけないんだから。でもそれを言ってしまったら、
かなはどうなってしまうんだろう。前の学校のまさる君のようにみんなにいじめられたり、陰口を言われたりするんだろうか。
…もしそうなったら、この学校でかなのいる場所が無くなってしまうかもしれない…。そんなの、いやだよ。誰にも相手に
されずに陰口叩かれて生きるのは…。怖さと苦しさに悩まされながらかなは学校を後にした…。
142無名:2006/01/28(土) 19:32:28 ID:NN4D6jxp0
みなさんこんにちは、無名です。
「一言の勇気」の前半を掲載しました。
今回もちょっと重い話ですが、次の話は明るい話にする予定
です。おたのしみに。
>>131
人工膣開発の実験ですか・・・あとで考えておきますね。
>>3の444 さん
カラオケで声の高低が調節できるのって、なんかうらやましい・・・
でも、いくら電子音声でも歌い続けたら声がおかしくなってしまう
のではないでしょうか。 (ある程度負担をかけると変な声になって
しまうとか・・・)それにしても『スケベニンゲン』・・・(笑
1433の444:2006/01/29(日) 04:08:13 ID:yOIrcJIW0
どうも。「ラセンさんLOVE」の3の444です。

無名さん

作品アップが少ないなどと言ったそばから、投稿されてる。とても
嬉しいです。

いいですねえ。
自分の身体が機械であることを告げなければならない苦しみと不安。
告げなくてもバレやしない。でも告げなかったら、庄野君を裏切る
ことになる。
こういう心の葛藤こそサイボーグものの真骨頂だと思います。
(ていうかヤギーはそればっか・・・)
>>131の話も是非お願いします。かなちゃんで18禁展開が望めない
ぶんは、彼女に背負ってもらいましょうw

今日は回線の調子がよいので、久々に保管庫更新しておきました。
144YC146:2006/01/29(日) 09:56:07 ID:rli3NkU/0
”その手は”

 その手は、硬く冷たい金属でできていた。
 整いすぎた彼女の細く美しい指が、私のRを艶めかしくなぞる。
 通った鼻筋から紅さす頬、シャープな顎のラインを経て、細く長い首を伝う。
 鎖骨の窪みをもてあそんでは胸の隆起を越え、そのまま薄く浮いた肋骨を伝い・・・
 その緻密な指は私を映し、あるいは虚空を映し、万華鏡のように色を変えた。
 重く鈍く光を放つ彼女の手は、今は私のものになっていた。

 彼女は、俗に言うサイボーグだった。
 名前を、楊子と言った。
「・・・つき合って下さい」
 そう切り出したのは、私だった。
 一目惚れだった。
 なかなか接点を持てず、ずっと遠くから見ていた。
 本当に、奇麗な人だった。
 他の男子なんて、目に入らなくなった。
 この広いキャンパスで、彼女以外のいかなる人間にも興味を持てなくなってしまった。
 彼女以外の人とつき合うなんて、考えられなくなっていた。
 それ以外は、もうどうでもいい。
 告白を受けた彼女は、躊躇いを隠せなかった。
 それでも、私を受け容れてくれた。
 この、心を病んだ健全な身体を。
145YC146:2006/01/29(日) 09:57:10 ID:rli3NkU/0
 初めてその事実を知ったのは、つき合ってから一月ほど経った頃。
 その日、私と楊子は初めて一緒に寝た。
「これが・・・私」
 楊子は羞恥に顔を伏せ、垂れた前髪越しに泣いているのがわかった。
「黙っていて・・・ごめんなさい。私、サイボーグなんです」
 すっかり服を脱いでいた彼女の肢体には、関節など部分部分から機械部品がのぞいていた。
「私・・・機械なんです。お人形なんです・・・」
「・・・」
 私は、言葉もなかった。
「・・・ツクリモノなんです」
 彼女は、自嘲めいた笑みを浮かべながら、表皮のコーティングらしきモノをゴソゴソ外すと、首から下はすっかり機械の身体だった。
 俗に言う、全身義体。
 身体機能の80%以上が損傷した際、生命維持を目的として作られた機械の身体。
「これでも・・・私を愛してくれますか?この・・・ツクリモノの、私を」
 楊子は、ハッキリと私を見ながら言った。

 ためらいはしなかった。
 私は、力の限りに彼女を抱きしめた。
 私も、服は着ていなかった。
 私の肉から、彼女の金属へと熱が移るのがわかる。
 少しでも、その想いが届けとばかり。
「もちろん」
 私は、彼女の耳元でささやいた。
「あなたの身体が金属なら・・・私はその金属を愛します。
あなたの身体がゴムなら・・・私はそのゴムを愛します。
 あなたの身体が木材なら・・・私はその木材を愛します。
 あなたの身体が何であっても・・・私はその身体を愛します。
 その身体にあなたの魂が共にあるなら・・・私は、あなたを愛します」
146YC146:2006/01/29(日) 09:57:56 ID:rli3NkU/0
 こうして、二人の契約は成立した。
 私と楊子は、抱き合ったまま思いっきり泣いた。

 それからと言うもの、私たちはより親密な関係を続けていた。
「あなたの手、キレイ」
 私は楊子の手を、機械むき出しの状態で愛でるのが好きだった。
「・・・そう?」
 たとえキレイであっても、キレイなだけでしかない。
 所詮、人工物に過ぎないのだから。
 そう楊子は言ったが、私はそれでも楊子の手が好きだった。
「あ〜あ、この手が私の手だったらなぁ・・・」
 私は、ため息をつきながら自分の左手をさすった。
 そこには、かつて手首を切った傷痕が生々しく刻まれていた。
 一命は取りとめたが、完全に筋を切ってしまったらしく、左手はほとんど役に立たない。
「私は・・・あなたの手の方が好きだけどな」
 楊子は微笑して、私の手をそっと包み込んだ。
 硬く、冷たい彼女の優しさが、この上なく嬉しかった。
「だったら、取り換えちゃおうか?」
 私は、冗談っぽくそう言った。
「・・・それもいいわね」
 楊子は苦笑した。
147YC146:2006/01/29(日) 10:16:12 ID:rli3NkU/0
 楊子の訃報を聞いたのは、ある冬の日のこと。
 彼女に唯一残された肉体である脳に障害が起き、そのまま帰らぬ人となったらしい。
「すみません、二人っきりにしてもらえますか・・・?」
 わずかに許された、楊子と一緒に過ごせる最後の時間。
 ためらいはなかった。
 そんな猶予もなかった。
 私は彼女の左腕を、工具を使って肘から切断した。
 その位置に、予め切断しておいた私の左腕を、棺の中へ代わりに安置した。
 別れのキスを一度だけ交わすと、私は足早に葬儀場を立ち去った。
 一度として、振り返ることはなかった。

 私がサイボーグ手術を受けたのは、それから2日後のこと。
 楊子の左腕は私の肘から先の欠損を補い、私の一部となった。
 私の左腕は、もう焼かれたのだろうか。
 楊子へ対する、私の想いと共に。
 私は、この左腕と共に生きていこう。
 機械の身体に、健全な魂を宿した彼女の記憶。
 健全な身体に、歪んだ魂を宿す私の今。

 その手は、硬く冷たい金属でできていた。
 重く鈍く光を放つ彼女の手は、今は私のものになっていた。
 私はこの手を、こよなく愛している。
148YC146:2006/01/29(日) 10:22:10 ID:rli3NkU/0
・・・ハイ、これでおしまいです。

短い話です。
義体の少女と、精神を病んだ少女の話。
自慰をする時、
「この手が好きなあの人の手だったら、どんなにいいだろう」
そんな妄想で書きました。

つたない筆ですが、お気に召したら光栄です。
頓首。
149YC146:2006/01/30(月) 07:12:47 ID:AWvQX8g/0
>3の444さま
いつも八木橋さんの物語、楽しみに読ませて頂いています。
これからも、頑張って下さい。w

>無名さま
3の444さまの言うように
>心の葛藤こそサイボーグものの真骨頂
で、総括されてしまいましたが、まさにその通りだと思います。
緻密な文章づくりができる人って、尊敬します。
これからも、楽しみにしています。
150名無しさん@ピンキー:2006/01/31(火) 23:54:11 ID:4V1jhBwI0
(´-`).。oO(能天気な機械化娘にも萌えたい・・・
151名無しさん@ピンキー:2006/02/01(水) 19:15:12 ID:HrGrPwfN0
>>150
ぎゃは!♪
152Dark Mater(架琉魔):2006/02/01(水) 23:27:09 ID:mAme/eP10
Dark mater
page3-新人・命名

たった一つ、大きな窓があった。
大きな窓で遮られた二つの部屋がある。
片方の部屋では、例の[新型サイボーグ]は虚ろな目をしてパイプ椅子に座っている。どうやら窓はマジックミラーらしい、 ソレ からもう片方の部屋は見えない。
もう片方では神菜女医が楽しそうに受話器を片手に電話をしていた。
「そうそう、やっと出来たんだよぉ♪
…うん、リハビリテーションは他のサイボーグと同じようにするからさん…
悪いけどお披露目までまだ暫くかかるわ。
あははっ、イメージと違って話が分かる奴等でたすかるよん♪」
電話から少し声が漏れる。
「−何を言うかと思えば、一番彼女を待ちわびていたのは…貴方様でしょう?−」「…ん…まぁ、確かにね。
でもあたしゃ誰よりも時間余ってるから。
じゃ、一段落したらそっち行くから。」
ガチャ
「ジャマー(盗聴防止機)6つも付けて私用の電話は止めろ。」
鬼女がドアを開けて神奈女医に話しかける。
153Dark Mater(架琉魔):2006/02/02(木) 00:27:00 ID:JSrIQXRC0
「あらやだぁ、聞いてたのん?
あんまり嬉しくないぞん♪」
神奈女医が鬼女の頬をつつく。
「人の行動見て言える立場か…。」

「本当に私がヤらなければならないのか…。」
神奈女医とは反対側の部屋で鬼女は言った。
ーザザッ「だってこんな可愛い娘を男にヤらせる気かい?」ー
鬼女は神奈女医の言葉に血の気が引いた。
母神から産まれ出たばかりのサイボーグは完全に意識が四散している。
そして、それを纏めるために最も効率的な方法は、それを…
犯すことなのだ。
生き物と同じように…。
154Dark Mater(架琉魔):2006/02/04(土) 23:14:30 ID:IJPDyKvJ0
「あぁっ、金髪美少女と黒髪大和撫子の禁断の交わり…
何ともイイわぁ。」
「黙れ変態。」
反対側の部屋で思わず身を捩る神奈女医を背に、私は新型を観察していた。
「…ヤり易さを考慮して人間と同じ箇所に性感帯があるのは知ってるよねん。」
私があまりにも長い間新型を眺めていてじれったく感じ始めた神奈女医。
「あ、あぁ。」
正直、私は困り果てていた。
この身体になって、疑似女性器を捨ててからというものの、この様な事態とは全く無縁だったのだから仕方がない。
「……。」
まずいな、神奈女医が頭を掻くのは限界に来てる証拠だ。
ええい、ままよ!
私は何の準備も覚悟も無しに彼女の性器を指で開いた。
155Dark Mater(架琉魔):2006/02/05(日) 00:41:23 ID:yuBSV+kA0
「ふぁ…」
新型は少しばかりながら反応を見せた。
私は彼女の膣内をを刺激し続ける。
「あ…あぁん…」
「はぁ、はぁっ。」
彼女の喘ぐ姿に不思議と興奮を感じた。
「ひっ…うくうぅっ。」
私はもう片方の手で彼女の陰核の皮を剥ぎ、出現した肉珠を押し潰す。
「ひあぁん!?」
彼女の身体がビクリと跳ね上がる。
「や…ふぁっ…やぁっ……!
んーーっ!」
どうやら軽くイった様だ。
だが、身体の奥から湧いてくる私の隠された濁った欲望は
そのまま行為を止めさせてはくれなかった。
パイプ椅子から倒れた彼女に、縋るように近寄り、
そして…
かたい人工表皮を擦り合わせ逢いながら、
黒と金色、二つの長い髪を絡ませ合いながら、
私は彼女を陵辱し続けた。
156架琉魔:2006/02/05(日) 00:48:29 ID:yuBSV+kA0
お久しぶりです。
なんか、かなり間が開いてしまいましたが、
新型陵辱・命名編、 続きます。
エロシーン、書く気力が続くといいな。
157Dark Mater(架琉魔):2006/02/05(日) 14:43:23 ID:SN2B1o2N0
ウチは…誰なんや?
「あっ…あぁっ、んあぅっ!」
犯されてるのに、こんなに恥ずかしい声が出とるのに、
「はあぁっ、んにゃあぅっ!」
ウチの意識は全く別の物へと向いていた。
「い…いあっ、はきゃっ、ああぁっ!」
見えるのは、森、森、森。
「くっ、くあっ…」
逃げまどうウチを追いかける者…
それは、人だった。
頭に強い衝撃が走る。
それを泣きながら観ている女の子…
ー「…ママぁっ!」ー

「はっ…あああぁぁっ!」
158Dark Mater(架琉魔):2006/02/05(日) 16:19:44 ID:SN2B1o2N0
新型の少女が3度目の絶頂を迎えて、
やっと私は懐かしい[肉欲]から解放された。
「はぁ、はぁ、はぁ…。」
人工の肺が酸素を欲して激しく稼動している。
しかし三回の深呼吸でそれは止まった。
…頭がまだぐるぐると回っている。
「きーちゃんも極度の百合…と。」
神奈の声に顔が赤くなる。(感覚だけ。)
「何のメモだよそれ…。」
これが…人間か…。

突然サイレンの音が辺りを包む。
ー「機械兵侵入!機械兵侵入!」ー
「ちっ!
警備兵はどうしたんだ!?」
私は走って部屋の端に脱ぎ捨てた黒いコートを羽織り部屋を出ようとした。
しかし、機械兵が壁を突き破り部屋に侵入してきた。
大きさは中型車程度、しかし完全な奇襲だった。
サーモ、XRay、どのセンサーにも反応が無かった筈なのに…。
159名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 17:39:36 ID:+pdjttaE0
架琉魔さん乙です。
いいですね。いいですね。盛り上がってきましたね。
最近不足気味の「戦う女の子」萌えを担う存在として
期待しています。
160Dark Mater(架琉魔):2006/02/05(日) 17:51:28 ID:SN2B1o2N0
「くあぁっ!」
戦車型機械兵は私にマシンガンの雨を浴びせる。
「ちっ!先日の礼のつもりか!?」
私は背中の一部が分離して自動的に諸刃の剣へと変形させた。
機械兵の放つ弾幕を弾き返しては避けて機械兵と近距離に達する。
機械兵は私を牽き倒そうとキャタピラを回転させる。
私は片手で剣を片方のキャタピラ突き立てる。
「づあああああぁぁぁっ!」
そしてもう片方の拳を機械兵の頭部と思しき部分に叩き込んだ。
しかし、機械兵の後部ハッチから本体が飛び出し、マジックミラーを割って神奈女医に襲いかかった。
しかし…

ぐしゃ…

気を失っていたはずの新型が、目にも見えない速さで…
神奈女医の眼前まで来ていた機械兵を握りつぶした。
そして…
「ごめんな…無双…。」
意味不明な言葉を呟いてその場に倒れた。
161架琉魔:2006/02/05(日) 17:58:42 ID:SN2B1o2N0
<159様、どうも有り難う御座います。ノ( 。。)ノ深々
でもエロシーン書く気力が長続きしませんでしたとです。
1623の444:2006/02/07(火) 02:49:20 ID:UAJQLZmk0
  じりりりりりりりりりりりりりりりりり。
  入舸浦の露天骨董市で買った小さな赤いブリキの目覚まし時計の、 7時を告げるベルの音で私は目を
覚ました。 枕元に置いてある眼鏡を手探りで探り当てると、 今度は寝転んだ姿勢のまま、 右手だけ動かし
て、 脇腹から伸びる充電用のコンセントプラグのコードを引っ張る。 軽い手ごたえとともに壁のコンセントか
らコンセントプラグが外れた。
『バッテリー残量75%』
寝転んだまま、 天井の梁をぼんやり見つめていた私の眼に、 体内のバッテリーに蓄えられた電気の残
量を報告する文字が浮かんだ。 満タンにほど遠い数値に、 思わずため息をつく私。
昨日の夜、 終電に乗り遅れた私は、 東八軒坊から宮の橋のはるにれ荘まで雨の中を走って帰ってきた
んだ。 駅にしたらたったの四駅、 距離にして10km、 このくらいなら、 私の足なら家まですぐ、 なんて思った
んだけど甘かった。 団子坂峠は、 武南電鉄ならトンネルで一直線。 でも、 道路は曲がりくねった峠道。
10kmなんかじゃ、 とてもきかない。 全身ずぶ濡れになりながらはるにれ荘についた時には結局2時半をま
わってたんだ。 正味の充電時間が4時間もないくらいじゃ、 バッテリーがフルチャージになるわけない。 今
日はバイトなのに、 全く先が思いやられるよね。
朝から憂鬱になることが、もう一つ。
たいていの人がそうしているように、 私も二度寝しないように、 わざと寝床のすぐ横じゃなくて、 寝ながら
じゃ手の届かない机の上に目覚ましを置いているんだ。 で、 その目覚ましを止めるために立ち上がったつ
いでに、 眠気を覚ますために窓を開けたんだけどさ。
(晴れてる・・・)
長い歳月を経て、 ちょっとだけ歪んで建てつけの悪くなった窓枠をカタカタ両手で交互に揺らしながら、
ゆっくり窓を開けた私の目に飛び込んできたのは冬のやわらかな日差し。 昨日の夜、 空をあんなに厚く覆
っていた雲は、 二三のきれっぱしを残して、 すっかりどこかに消えうせてしまった。
1633の444:2006/02/07(火) 02:50:40 ID:UAJQLZmk0
  すがすがしい朝、 なんて思えるはずがない。 結局、 あの雨は、 私が走っている間だけしか降っていな
かったってことじゃないか。 トラックに水しぶきをかけられながら必死で夜中の峠道を走った昨日の私は一
体なんだったんだろう。 しみこんだ雨水を拭うために、 夜中のはるにれ荘の流しで雑巾みたいにシャツを絞
った昨日の私は一体なんだったんだろう。
神社で凶なんか引かされたうえに、 雨にまでたたられるなんて、 私、 ひょっとして、 思いっきり神様に馬
鹿にされてる? 正月の二日からアルバイトしなきゃいけない、 けなげで、 か弱き女子大生に向かって、 そ
んな仕打ちをするなんて、 神様も情け容赦ないよね。

もうこれ以上、 外なんか眺めたくなくって、 膨れっ面で窓をピシャリと閉めた私は、 気分転換にテレビの
スイッチを入れた。 どうせ、 正月三が日の朝なんて、 録画の、 世にも下らない番組しかやってないって分
かってるけど、 晴れ上がった空を見上げているより、 よっぽど気がまぎれるような気がしたからね。
そのテレビ、 三流お笑いタレントのちっとも笑えないお決まりのギャグでも流れるかと思ったんだけど、
なんだかちょっと様子がおかしいんだ。
テレビ画面に映し出されたのは、 14インチサイズのブラウン管一面を覆い尽くさんばかりにもくもく広がる
ドス黒い煙。 それから真っ赤な炎。
(なんだ、 なんだ?)
予想もしなかった画像に思わず息を呑む私。
ヘリコプターからの中継だろうか。 テレビカメラは、 だだっ広いコンクリートの広場を、 空から見下ろして
いる。 画像の中心にあるのは、 翼のかたっぽがもげた飛行機の胴体。 灰色のお腹を上に向けて、 裏返し
にひっくり返ったまま、 機体のちょうど真ん中くらいのところから炎と黒煙を高々と吹き上げている。 飛行機
の残骸を遠巻きに取り囲んで消防車が放水しているけれど、 火勢は一向に衰える気配はない。
1643の444:2006/02/07(火) 02:51:39 ID:UAJQLZmk0
余りにも非現実的な画像だったから、 私は、 はじめ、 ゴヅラか何かの怪獣映画でもやっているのかと思
った。 でも、 画面にはいつまでたってもゴヅラも地球防衛軍も登場しないし、 勇ましい調子のバックミュージ
ックが鳴ることもない。 淡々とした、 感情のこもらない平坦な口調で、 ひたすらどこの誰かも分からない名
前を読み続けているアナウンスが続くだけ。
“138名の搭乗者の名前をお伝えします。 ナカタヒデヒトさん、 32歳男性。 ホンマアキエさん、 26歳女性。 イ
チカワサユリさん、 44歳女性、 シマダユキヤさん、 68歳男性”
テレビ画面の下にテロップが浮かび上がる。
『全日航501便千歳行き、離陸に失敗。横転炎上』
ここまできて、 起きぬけで、 ぼんやりしている私の頭でも、 ようやく事態が飲み込めた。
飛行機の墜落現場だ。 ってことは、 あのコンクリートの広場は羽田空港。 墜ちたのは旅客機。
“スガワラサトシさん、 40歳男性。ク ドウフミアキさん、 17歳男性。 ノザワマコトさん、 45歳男性。 イシヌキ
シゲヒサさん、 25歳男性”
次々に読み上げられていく名前。 この人たちのうち、 何人が生きているんだろうか? あの、 飛行機の
状態を見たら、 正直あんまり希望がもてそうにない。
それに、 もしも助かった人がいたとして、 私みたいな身体になってしまったとしたら、 どうだろう。 それで
もやっぱり命が助かって良かったと思ってくれるんだろうか? 季節の移り変わりを肌で感じることができな
い、 美味しいものを食べることもできない、 悲しいときも嬉しいときも涙を流すことができない、 正月の二日
でもアルバイトしなきゃ、 命をつなぐことさえできない、 機械の身体になってしまったとしても・・・。
“タナカカズマさん、 31歳男性。 タナカキヨミさん、 30歳男性。 タナカユウキくん、 4歳男性。 タナカタイキく
ん――“
1653の444:2006/02/07(火) 02:53:00 ID:3kenzFIk0
  私はテレビを消した。 これ以上、 画面を見ていることに耐えられそうになかった。 別に、 搭乗者の家族
のことを思うと胸が張り裂けそうとか、 そういうごたいそうな気持ちじゃない。 ただ、 事故の画像を見ている
と、 私、 どうしても思い出してしまうんだ。 自分の肉体や家族と、 永遠に別れることになってしまったあの事
故の瞬間とか、 自分の身体が機械になってしまったって知った、 あの日のこととかをね。 自分では、 もうと
っくに過ぎ去った昔のことなんだって、 割り切ってるつもりだったけど、 やっぱり駄目。
きっと今頃、 全身義体の人だけで構成された特別レスキュー隊の人たちが、 いつ大爆発を起こしてもお
かしくない機内で、 危険を顧みず懸命の救出活動を続けているはず。 でも、 同じ機械の身体なのに、 私に
はそんな勇気も、 能力もない。 私は、 現場から何十キロも離れた小さなアパートの中で、 テレビ画面に映
る事故現場さえ直視できずに震えることしかできない臆病者だ。 みんな、 私のことを知ったら機械の身体の
くせに何もできない弱虫って罵るんだろうか。 それとも、 国民の税金をなんだと思っているんだって怒るんだ
ろうか。
全身義体なんていう先進技術のカタマリは、 とても個人の負担で賄いきれるシロモノじゃない。 当然、 こ
の身体の大半は、 国の補助金でできている。 月々のメンテナンス費用だって、 決して安くないけれど、 国
の負担する分に較べれば、 個人負担分なんてほんのチョッピリだ。 目の飛び出るほど高価な義体を与えら
れて、 みんなの払ってくれる税金で生かされて、 それでも特殊公務員の道に進まなかった私は、 国に対す
る裏切り者なのかもしれない。 生きているだけで迷惑な存在なのかもしれない。
  でもね、 例えそうだったとしても、 私は、 死にたくないよ。 生きていたい。 ジャスミンや佐倉井と遊びた
い。 恋だってしたい。 だから、 国民のみなさん、 ごめんなさい。 私は、 みんなのためには何もできないけ
れど、 自分が生きるために、 アルバイトに出かけます。
1663の444:2006/02/07(火) 03:02:49 ID:3kenzFIk0
今日はここまでです。
なかなか筆が進まず申し訳ないです。萌えにまかせて勢いでぐりぐり
書いていたころが懐かしい。
文章はちっともうまくなってないくせに、次の展開をあーだ、こーだ
考えてはボツにしてしまう今日この頃です。
167名無しさん@ピンキー:2006/02/09(木) 00:50:53 ID:xpXeE85G0
もし×箱360にサイボーグ娘同士の格ゲーがあったら買ってもいいな・・・
168名無しさん@ピンキー:2006/02/09(木) 02:22:52 ID:LWD4KORx0
>>167
凶360→買ったその日からディスクシュレッダー(泣
PS3→ソニータイマー憑きで一年でアボン(なんか某ミソッカス嬢のやうだw
大切なサイボーグ娘とはいつまでも一緒にいたいから、せめて任天堂に…orz
169名無しさん@ピンキー:2006/02/09(木) 02:31:21 ID:LWD4KORx0
ちなみにそんな漏れは、32Xのサイバーブロール持ってる(爆
全然萌えないけどw
早くクリアすると真のエンディングになる事を知ってる人はほとんどいない
どっちにしても自分だけ助かって終わるからあんまり救われないけどorz

ひそかに、人間のかたちを逸脱したサイボーグに萌えるようになったのは、
あのゲームに出てきた蛇型サイボーグ娘(人間の脚だったのに下半身を蛇型の
義体に改造)のしわざだったりするのかもしれなかったりする。
首から上も蛇(こっちはサイボーグ化する前から元々)だから、奴自身には
ちっとも萌えないけどw
1703の444:2006/02/10(金) 01:43:02 ID:rHz4oYwX0
  今日のアルバイト先はネジ工場。 学生相談所のアルバイト紹介の掲示板によれば、 商品の簡単な運搬
作業って書いてあったから、 まあ、 単純な肉体労働だよね。 ガテン系の仕事なんて、 フツーの女の子なら
嫌がるのかもしれないけど、 私は結構好き。 だって、 コンビニのバイトなんかより、ずっと時給が高いも
の。 もちろんホステスさんとかコンパニオンみたいな水商売系なら、 もっと給料がいいのは分かってるけど
さ、 外見年齢16歳の私は、 まず見た目で断られてしまいそうだし、 だいいち、 この身体じゃ、 お酒やジュ
ースを飲むことなんかできやしない。 そんな私にとって、 肉体労働は、 一番わりのいいアルバイトなんだ。
  肉体労働なら実入りがいいぶん身体がキツいって思うかもしれないけど、 機械の身体なら、 いくら酷使
したところで、 普段より電気を多めに食うくらいで疲れを感じることはないし、 翌日筋肉痛に悩まされること
もない。 腕力だって、 いくら日常生活用に義体出力を抑えられているっていっても、 並みの男の子に負け
ないくらいはあるんだからね。
  ま、 決して疲れない機械の身体での肉体労働なんて、 他の人が一生懸命汗水流して働いているのに、
私だけ道具を使ってラクしてるみたいで、 ちょっとずるい気もするけど、 私だって、 労働のあとの美味しい
ご飯やビールとは無縁なんだ。 だから、 おあいこだって思うことにしてる。
  ネジ工場のある山王橋は、 小さな工場がたくさん集まった町。 私の住む宮の橋からだと、 山王川ってい
う二級河川のドブ川を越えてすぐの隣町だけど、 こっちの方に来る用事なんて滅多にないから、 ご近所さん
とはいえ、 実は余りよく知らないんだ。 学生相談所でもらった、 縮尺のデタラメな地図に頭を悩ませつつ
も、 なんとなくそれらしい方向に自転車を進めていったんだけど、 細い道が、 やたらに分岐しているから、
この道で正しいのかどうか、 だんだん自信がなくなってくる。 人に聞いちゃえば早いのかもしれないけど、
道を聞こうにも、 お正月休みの真っ只中の工場街に、 外を出歩く人なんかいるわけないから、 頼れるのは
自分の方向感覚だけ。  
1713の444:2006/02/10(金) 01:43:46 ID:rHz4oYwX0
  細い道の脇に無造作に転がっている赤錆びたドラム缶や、 道にせり出して整然と積み上げられた木箱
なんかに気をつけながら、 私は、 ゆっくり自転車を走らせて、 道の両側の工場に出ている看板を一つ一つ
確認していった。
  大きな工業団地なんかと違って、 このあたりの工場には塀も、 広々とした駐車場もない。 道のすぐ両側
は、 小さな町工場の、 くすんだ灰色っぽい壁。 だから、 何かを叩く音やら、 金属を切る耳障りな音が、 そ
こかしこからひっきりなしに漏れ聞えてきそうなものだけど、 さすがにお正月だけあって、 どの工場も火が消
えたみたいに静かだった。
(あった、 あった)
  なかなかお目当ての工場が見つからなくって、 おまけにどこの工場もお休みみたいだったから、 学生相
談所に騙されたんじゃないだろうかって不安になりかけた頃、 ようやく目指す『セノハチネジ工業』という、 白
地に黒いペンキで書かれた、 所々錆びの浮いた看板を探し当てた。
  屋根があって壁さえあればいいだろうという、 すがすがしい開き直りさえ感じられる、 真っ青なトタンの壁
でできた工場。 窓は一応あるけれど、 建物の大きさにくらべたらずいぶん小さくって、 まるでトイレの窓み
たい。 ずいぶん陰気な建物だなあというのが第一印象。
  この辺の工場がみんなそうであるように、 ここも個人経営の工場みたいで、 工場と母屋が繋がったつく
りになっている。 母屋のほうの玄関には「瀬野」っていう表札がかかっているから、 きっと社長は瀬野八郎さ
んとでもいうんだろう。
  母屋と、 工場とどちらの呼び鈴を鳴らすか一瞬迷ったあと、 私は工場のほうの呼び鈴を鳴らした。
  ちょっと緊張しながら、 工場の入り口のすりガラスのついた引き戸の前で返事を待っていると、 意外なこ
とに母屋の玄関のほうのドアが開いて、 スリーサイズがぜんぶ100cmを越えていそうな、 丸々と太ったおば
さんがドアの隙間から顔をのぞかせた。  
「どちらさま?」
  私のことを新興宗教か何かの勧誘に来たんだと勘違いしたんだろうか。 おばさんは露骨に疑わしげな視
線を私に向けた。
1723の444:2006/02/10(金) 01:44:34 ID:rHz4oYwX0
「あ、 あの、 星大の学生相談所でアルバイトの紹介をされて来たんですけど」
  私は鋭い視線に気おされたように、 二、三歩後ずさりしながらおずおず切り出した。
「ええっ! あなたが、 アルバイトさんなの?」
  おばさんは、 今度は、 肉で埋もれそうな眼を大きく見開いて驚きの声を上げた。 まあ、 これは予想通り
の反応。 私って、 選ぶアルバイトがアルバイトだから、 どこに行っても初めは驚かれる。 雇い主は、 男の
子が来るんだと思い込んでることが多いからね。
  おばさんは、 私が「そうです」と答える前に、 「ちょっと待ってて」と言い残してドアを閉めた。 ドスドスとあ
わてて廊下を走る地鳴りのような音が、 私のところまで響いてきた。
「ねえ、 なんか、 女の子が来ちゃったんだけど」
  なんて、 困ったように誰かに相談するおばさんの声も、 ドア越しに、 こっちまで聞えてきて、 思わず苦笑
する私。   
  しばらくして、 再びドアが開く。 さっきとは打って変わって申し訳なさそうなおばさんの顔。  
「ごめんねー。 せっかく来てもらって悪いんだけど、 力仕事だから男の子を希望しているのよね。 こっちは、
男の子を頼んだつもりだったんだけど、 何かの手違いだったみたい。 少ないけど、 これ、 交通費」
  そう言って、 おばさんは、 千円札を一枚、 私の手のひらに押し付けた。
  女の子だったら、 働いてくれても邪魔になるだけ。 無駄な給料は払いたくないから、 できれば帰ってほ
しい。 そんなふうに話がついたんだろうか?
  私が女の子でも、 渋々働かせてくれるところがほとんどなんだけど、 今日はいつもと勝手が違う。 私は
焦った。 ここで追い返されたら、 昨日何のために楽しいカラオケを切り上げて、 雨の中走って帰ってきたの
かわからないよ。 それに、 たかがバイトかもしれないけど、 こっちは命がかかってるんだ。 千円札一枚もら
ったっだけで、 ありがとうございますって素直に引き下がるわけにはいかないんだ。
「わ、 私、 力なら男子に負けないつもりです。 使ってくれればわかります」
  私は、 押し付けられた千円札を、 もう一度おばさんの手に戻しながら、 食い下がった。 ちょっと、 挑発
的なもの言いになっちゃったかもしれないけど、 そんなこと気にしてられない。
1733の444:2006/02/10(金) 01:45:42 ID:cHiz2t2+0
「とてもそう見えないけど」
  おばさんは、 私のことを値踏みするように頭から足のつま先までゆっくり眺めたあとで、 疑わしそうに、
そう言った。
  おばさんがそう思うのも無理はない。 もしも私が、 女子プロレスラーみたいな男顔負けの肉体だったら、
まだしも私の言うことを信じてもらえたかもしれない。 でも、 私、 見た目はフツーの女の子とおんなじ。 こん
な細っこい腕の女の子が、 力なら男の子に負けないなんて言ったって、 滑稽なだけで、 説得力なんかまる
でありはしない。 分かってる。 そんなこと、 分かってるんだ。
  でも、 義眼でも光らせてみせて、 私の身体が全身義体だってばらしちゃえば雇ってくれるかといえば、
絶対そんなことはない。 そんなことしたって薄気味悪がられるのがいいオチだ。
「信じてもらえないかもしれないけど、 ホントなんです。 もし、 役に立たなかったら、 お金は、 いりませんか
ら。 働かせてください。 お願いします」
   私は何度も何度も繰り返し、 おばさんに向かって頭を下げた。 自分の身体が義体だってばらせない以
上、 私にできるのは、 やる気と誠意を見せることだけだもの。
「いやー、 そう言われても、 私も困っちゃうんだよねえ」
  おばさんは、 すがるような眼つきで必死に食い下がる私から眼をそらすと、 困ったように曖昧に笑った。
  しばらく、 玄関先で、 そんなやり取りを繰り返していただろうか。 不意に背後の工場ドアが開く音がし
て、 私はあわてて後ろを振り返った。
(誰だろう)
  振り返った私の目の前に、 油で所々黒ずんでいる青い作業服を着た、 おじさんが立っていた。 背は、
私と同じくらいで、 男にしては小さいかもしれないけど、 腕も首も眉毛も、 何から何まで太い、 がっしりした
体つきのおじさんだった。
  おじさんは、 鷲か鷹を思わせる鋭い目つきで、 ちらりと私を一瞥したあと、
「来な」
  と短く一言だけ言うと、 くるりと私に背を向けて、 工場に入っていった。
  私はおずおず、 おばさんのほうを振り返る。
「全く、 あの人は・・・」
  おばさんは、 あきれたように軽く笑って、 そうつぶやいたあと、
「行ってきなさい」
  と言って、 私の肩を押した。 
1743の444:2006/02/10(金) 01:47:19 ID:cHiz2t2+0
今日はここまでです。
前置きが長くなっちゃいましたけど、ようやくアルバイト開始です。
175名無しさん@ピンキー:2006/02/10(金) 01:53:26 ID:P9wN6wpR0
>セノハチネジ工業

(・∀・)ニヤニヤ
176名無しさん@ピンキー:2006/02/10(金) 03:48:05 ID:POTEfUr10
毎度444タン乙彼〜
「義体は疲れない」というのは多分ウソ。
義体の状態をうまく肉体の感覚に変換できるのが良い義体だと思う。
イソジマのはそこらへんに特に力を入れてるはずだから、人工筋肉やモーター
などの発熱や、電気残量の少なさ、電気残量の急激な減少などは疲労感覚に
変換されて脳に伝えられるんじゃないかな。実際そういう状態で無理に体を
動かし続けたら、体が動かなくなってしまう事にもつながるわけだし。
まあ、ストーリー上は「疲れないとヤギーが勘違いしてる」とか「生身よりは
疲労時の苦痛感が少ない」とか解釈できるわけだけど。
(多分絶対、義体設計者は生身より苦痛を少なく設定してしまうと思う。
そして多分それは必要な苦痛より少なくなってしまっていると思う。
たぶんそんな風にするつもりがなくても無意識のうちにそういう設計になると
思う。)
177名無しさん@ピンキー:2006/02/10(金) 06:55:40 ID:H0t6hOEQ0
町工場でバイトすると体の腐食早そう。
1783の444:2006/02/10(金) 10:42:54 ID:RdDxPpVx0
>>176
ご意見ありがとうございます。
本当は、義体であっても、疲れを感じるのが一番いいのだけれど、サポート
コンピューターの容量不足で、組みこめたくても組み込めなかった、という
設定にしたら、どうでしょう?
電力の残量とか、状態についてはデータとして送れば充分で、疲労感という
形に変換することは、視覚とか聴覚なんかの再現にくらべれば、優先順位
は低いと義体設計者は考えたわけです。
179名無しさん@ピンキー:2006/02/10(金) 23:30:33 ID:POTEfUr10
>>178
うーん、視覚聴覚とか手足とかは無くても行動が制限されたりするだけで
生存には直接影響しないけど、疲れとかの「体の危険信号」は無視すると
そのままお亡くなりになる分、重要度は上のような気もする。
道路を横断してる最中に突然全く目が見えなくなったり手足がもげたりしたら
超危険だけど、そういう極端な状況でもないかぎりむしろ重要度は低いと
思う。
生まれつき痛覚が完全に欠落している女の子が、自分の体を傷つけて、
家族がいくら制止しても傷つけるのをやめず、しまいには片目を失明して
しまったという話をテレビか何かで観たことがある。
視覚聴覚や手足が無くても常人より元気に動き回ってるような人もいるのを
見ても、やっぱり痛覚とか疲労感とかの方が重要度が高いと思う。
疲労感がコンピューターの処理を食うなら、疲れてくると視覚がコマ落ち
したり解像度が落ちてきたり映像が白黒になったり、最後には立体感が
なくなる(片目ぶんの映像だけ処理して情報量を半分にする)というのは
どう?(コンピューターの負荷を下げるため)
1803の444:2006/02/11(土) 01:28:33 ID:dB0UJmBg0
>>179
視覚とか聴覚より、疲労感のほうが実際には重要ということには、なるほど、
完全に同意しますが、そこは、それ、リアルさと萌えのせめぎ合いですよ。
ヤギーの物語にとって、肉体の喪失感というのが欠かせない要素である以上、
やっぱり疲労は全く感じないことにしたほうがいいのかな、とも思うのです。
これから先、高校編を書いたら、陸上部への復帰のエピソードも出てくると
思いますが、その時ランニングして、普通の人間と同じように疲れを感じて
元に戻れて嬉しいと思うか、疲れを全く感じない身体にショックを受けるか、
私がどちらを取るかといえば、やっぱり後者。
腕相撲編で、病院送りになっちゃったのも、疲れを感じない身体だからこそ、
ですよね。
そういうところに「萌え」を感じつつ、でも、荒唐無稽な話の中にも「リアル」
さを追求したい(一応SFですから。ええ)という気持ちもあり、全く疲れない
身体と、義体の疲労感をうまく伝える方法、という矛盾する要素を、どう両立
させればいいのか、たかがSSかもしれないけど、結構悩んでしまいます。
> 疲労感がコンピューターの処理を食うなら、疲れてくると視覚がコマ落ち
> したり解像度が落ちてきたり映像が白黒になったり、最後には立体感が
> なくなる
このアイディアは面白そうですね。いただきまーす。
181無名:2006/02/11(土) 17:12:47 ID:xow/ogp80
「ただいまー」
 家に帰ったかなは、誰にも会わずに自分の部屋へ入った。色々あって頭がパニックになりそうだよ。
だから、ゆきなおばちゃんにも会わないで部屋に入っちゃった。
 ランドセルを机の上に投げ捨て、かなはベッドの上へうつぶせになった。まさる君、大丈夫かなぁ…。
いまはきっと、手術の真っ最中なんだろうなぁ…。おにいちゃんが手術するから大丈夫だろうけど、
ちょっと心配だ。こんなときにまさる君のそばにいられないのが残念だよ。
 かなはベッドの上でごろごろ寝返りを打った。…もし、かながまさる君の約束を破ってしまったら、
まさる君はショックを受けるだろうな…。でも、サイボーグだって言ってしまったら、みんなと目を
合わせるのが辛くなるなあ…。どうしよう…。
 「かなちゃん、どうしたの。部屋に閉じこもって」
 部屋の外からゆきなおばさんの声が聞こえた。
 「ちょっと入ってもいいかしら」
 部屋の中へ入ってきたゆきなおばさんは、椅子に腰掛けた。
 「学校で何かあったの?友達とケンカしたとか」
 「ううん、違うよ。今日ね、友達のまさる君が大けがをしたんだ。それでまさる君が義体だって事が
みんなに分かってしまったの。でも、かなは自分が義体だっていえなかった…。まさる君と約束したのに…
ねえ、ゆきなおばさん、かなってずるい子なのかなぁ…。正体がばれるから自分だけ逃げるなんて、
卑怯だと思うよね…」
 ゆきなおばさんは、悩んでるかなをじっと見て、答えた。
 「私はかなちゃんの事を卑怯だなんて思わないわ。ただ、かなちゃんには勇気が足りないと思うの。
たしかに義体というだけで違和感を感じる人もいるけど、それを理解して友達になる人だっているのよ」

 
182無名:2006/02/11(土) 17:15:35 ID:xow/ogp80
 「えっ…それってどういうことなの?」
 「つまり、たとえ機械の身体でも、心が通じ合えればそんなことは関係ないの。
慶介お兄ちゃんのお友達にね、全身が義体になった人がいたの。その人はね、重い
病気にかかってしまって、首から下を機械にしないと助からないって医者から言われたの。
もちろん彼はショックを受けたわ。自分が機械の身体になってしまうんだから。
でも慶介お兄ちゃんはこういったの。
『お前が機械の身体になったって、友達には変わりないだろ』
ってね。それで彼は義体になっても生きる道を選んだのよ」
 「それで、その人はどうなったの?」
 「元気になって警察官になって働いているわ。それがきっかけで、慶介お兄ちゃんは義体医師の
道を選んだの。それがなかったら、お兄ちゃんは義体医師にはならなかったかもしれないわね」
 そうか、それでお兄ちゃんは義体医師になったんだ。だからあんなに一所懸命がんばってるんだね。
 「…でも、かなにそんなこと、できるかどうか分からないよ」
 ゆきなおばさんは、にっこり笑いながらかなの頭を撫でた。
 「かなちゃん、勇気を振り絞って、一言言えばいいの。怖がらなくても大丈夫、
みんなにも分かってもらえるわ」
 おばさん、こんなにかなの事応援してるんだ…。よーし、期待にこたえなくちゃ。
 「ありがとうゆきなおばさん。かなは覚悟を決めたよ。明日義体だって事、友達に言うことにするよ」
 ゆきなおばさんはにっこり笑って、もう一度かなの頭を撫でた。これで勇気100倍だ!
 「さあ、夕ご飯ができてるから一緒に食べましょう。早くしないと冷めちゃうわよ」
 そういえばもう七時過ぎちゃってるね。もうお腹がすいちゃったよ。
 「じゃあ、早く食べよっ。おばさん、先に行ってるからね」
 かなはダッシュで居間の方へ走っていった。

183無名:2006/02/11(土) 17:19:02 ID:xow/ogp80
そして次の日。かなはいつも通り学校へ登校した。学校内では昨日の事故のことが
話題になっていた。
 「よう、和多田」
 和真君が声をかけてきた。
 「なんだか、昨日のことで学校中が騒いでるみたいだな」
 「そうみたいだね」
 教室に入っても話題はまさる君の事ばっかりだった。まさか、本当にまさる君の
正体が分かってしまったんだろうか。
 「どうしたんだよ和多田、顔が青ざめてるじゃないか」
 おどおどしてるかなの顔を、和真君が心配そうに見つめた。
 「い、いやね、まさる君の事が心配になっちゃったんでね…」
 席にランドセルを置いたかな達は、すぐ後ろの祐喜ちゃんの席へ集まった。祐喜ちゃん
の机の脇には松葉杖が置かれていた。
 「祐喜ちゃん、学校に出てきて大丈夫なの?」
 「大丈夫よ。このくらいで休んでいられないわ。私が休んだら、荘野君に悪いもの」
 やっぱり祐喜ちゃんはまだ昨日のことを気にしてるんだ…。
 「それにしても、これだけ大げさになっちまうと荘野が気の毒になっちまうなあ。噂だと、
荘野は機械なんじゃねえのかって言われてるんだけどなあ」
 和真君の言葉に、祐喜ちゃんはびくっとした。
 「そ、そんなこと言わないで!荘野君が機械でも、私を助けたのに変わりはないの。
荘野君は人間なのよ!」
 そうだよね、いくら義体でもまさる君は人間なんだ。
 「それもそうだな。荘野は俺達の友達だからな」
 和真君も分かってくれたみたい。よかった、これでかなも本当のことを言う決心がついた。
 「二人とも、聞いてくれる?」
 「なんだよ、改まって」
 「実はね、かなはサイボーグなんだ」
 一瞬、周りの空気が凍りついたような気がした。それもそうだ、いきなりそんな事を言い出すんだから。

 
184無名:2006/02/11(土) 17:26:10 ID:xow/ogp80
 「おい、お前、冗談で言ってるんだよな?」
 「嘘じゃないよ、本当にかなの体は義体なんだよ」
 かなはポケットに入れてあった義体患者用の手帳を、二人の目の前に見せた。
 「かなちゃん…本当にかなちゃんはサイボーグなの…」
 祐喜ちゃんも驚いた顔でかなを見ている。
 「かなは二年前に事故に遭って義体化の手術を受けたんだ。だからこの腕も、
この足も、作り物なんだ…」
 言った、言ってしまった…。もうこれでかながサイボーグだってことが二人に
分かってしまった。でも、かなは後悔しない。まさる君だって命を懸けたんだから。
 「なんでもっと早く言わなかったんだよ…」
 和真君は肩を震わせながらつぶやいた。
 「俺達友達だろ…。なんでこんな大事なこと言わなかったんだ?俺はな、お前が
サイボーグだろうと、人間だろうと関係ねぇんだよ。俺にとっちゃ、お前も荘野も、
そして鹿沼も大事な友達なんだよ!」
 「かなちゃんは、かなちゃんじゃない。他の子がなんといっても私達はかなちゃん
と荘野君の味方よ」
 和真君…、祐喜ちゃん…。ありがとう、かなはこんな友達を持って幸せだよ。
 「それじゃあ、荘野もサイボーグってのは、本当なのか…」
 「うん、まさる君は自分が義体だってみんなに分かってしまうのが怖くて、
秘密にしてきたんだ。だからかなに会うまでは、いつも一人ぼっちだったんだよ」
 「…荘野君がこんなに苦しんでいたなんて…私、もっと早く気付いてればよかった」
 「そうだな、あいつも相当苦労してたんだな…」
 二人ともまさる君のこと、心配してるみたい。
 「そうだ、今度の土曜日にまさる君のお見舞いに行こうよ。まさる君もきっと喜ぶよ」
 「うん、荘野君も喜んでくれるし」
 「だったら何か持ってってやろうぜ。ケーキとかお菓子とか」
 「ちょっと和真君、まさる君は病人だし、そんなの食べれないよ」
 「それもそうだな。ははははは」
 和真君が笑った。それにつられてかなも祐喜ちゃんも笑った。

185無名:2006/02/11(土) 17:28:50 ID:xow/ogp80

その後、和真君がこんな事を言い出した。
 「そうだ和多田、このことは俺達の秘密ってことにしないか?幸いなことにみんなにばれてないし」
 「でも…やっぱりみんなにも話した方が…」
 「今はみんなに話すときじゃないと思うの」
 祐喜ちゃんが意見を出してきた。
 「こんな状態でこの事を話してしまったら、みんなはますます混乱してしまうと思うの。だからもう少し
時間が経ったら話すようにしたらいいんじゃないかしら」
 …そうかもしれないな。今は他のみんなに話す時じゃないかもしれない。もう少し待ってみたほうがいいかも。
 「分かったよ祐喜ちゃん。今話すのはやめるよ」
 授業の始まりのチャイムが鳴った。教室のみんなは何事もなかったように静まり返って、自分の席についていった。

 放課後、かな達三人は、先生に職員室へ来るように言われた。話の内容は昨日の事故の事だった。
その事は日野先生も心配してたようで、早く元気になってほしいって何度も言ってた。やっぱり
ショックだったのかもしれないな。その時にかなは、先生にも自分がサイボーグだって言ったんだ。
先生にも分かってほしかったからね。それを聞いた先生は、最初は驚いた顔をしてたんだけど、
かなの肩を叩いてこう言ったんだ。
 「先生はお前や荘野がサイボーグでも、嫌ったりなんかは絶対しない。大切な生徒だからな」
 その言葉でかなは、なぜか大粒の涙を流してしまった。きっと先生がかなとまさる君のことを大切に
思ってるからうれし泣きしてしまったんだろう。やっぱり先生は教師の鑑だよ。かなやまさる君を
ちゃんと人間として見てくれるんだもの。ありがとう、本当にありがとう先生…。


186無名:2006/02/11(土) 17:30:16 ID:xow/ogp80
その週の土曜日の朝、かな達三人は、天王山病院へまさる君のお見舞いに行った。まさる君はまだ
歩けるほどまではいかないけれど、順調に回復してるようだ。
 「みんな、心配かけてごめん。僕のためにこんなことをしてもらって…」
 「バカいうなよ、俺たち友達だろ。そんなに気を使わなくてもいいんだよ」
 和真君がぶっきらぼうに言い返した。これでもまさる君の事、励ましてるんだよね。
 「あの…荘野君、この前はごめんなさい」
 花束を持った祐喜ちゃんが、まさる君に謝った。
 「なんで謝るんだよ?謝りたいのは僕の方だ」
 「でも、荘野君は私のせいでこんな怪我をしてしまったのよ。もしものことがあったら、
私はどうすればよかったのよ?」
 まさる君はしばらく黙った後、祐喜ちゃんの目を見つめた。
 「鹿沼さん、僕は君を助けたかったからこんな事をしたんだ。だから、
もう自分を責めないで」
 それを聞いた祐喜ちゃんの目から、一筋の涙が流れた。
 「ありがとう、荘野君…」
 祐喜ちゃんはお花を近くの花瓶にさした。
 「きれいだね、この花…」
 「え、ええ…きれいね…」
 これで二人の間にあった誤解は消えていった。

 今回かなが気付いたこと、それは一言言う勇気があれば、どんなことでも
後悔しなくて済むこと、そしてそれでみんなと分かり合える事。たとえ体が
義体になってしまっても、心はそのままだって分かってくれれば、人間と
認めてくれるし、友達になることだってできるはずだって、かなは思うんだ。
187無名:2006/02/11(土) 17:38:54 ID:xow/ogp80
皆さんこんにちは、無名です。
「一言の勇気」の後編をお送りしました。皆さんのご意見、どうも
ありがとうございます。いつもでしたらここで終わるのですが、
今回はもう一本ございますので、続けてご覧ください。
188無名:2006/02/11(土) 17:41:07 ID:xow/ogp80
【眠れない夜】

 「ううーん、暑くて眠れないよう」
 7月に入って暑い日が続いてるこんな夜に、かなはうだるような暑さのせいで
眠れないでいた。一番上の階にあるかなの部屋には元々がロフトということもあって、
エアコンという便利な物なんて置いてない。その代わりに扇風機が一つ置いてあるだけだった。
 「むうー早く寝るんじゃなかったなぁ」
 一応窓は開けてるけど、全然風が入ってこないんで、なんにもならなかった。それどころか、
部屋の中は熱気がたまったような感じになってて、余計寝苦しくなってしまうのだ。これじゃあ、
いくら扇風機つけたって涼しくなんかならないよ。
 「熱くてのどが渇いちゃった。水飲みにいこ」
 かなは、下の階の洗面所へ行って、水を飲む事にした。
 ごくごくごくん。ぷはーっ。少しは熱くなくなったかなぁ。安心したかなは、自分の部屋へ戻った。
でもやっぱり部屋が暑いのは同じなので、すぐに暑苦しくなった。
 「うーん、ダメだぁ」
 ガマンできなくなったかなは、窓から屋上に出て風に当たることにした。
 裸足でそろっと外へ出て行くと、足元がひんやりしてて気持ちよかった。でも、まだ体が熱くほてってる
感じだ。
 「そうだ、誰も見てないんだし、パジャマを脱いじゃおうかなぁ」
かなは一度部屋に戻って、パジャマの上と下を脱いでからまた屋上に出た。
 今のかなは肌着とパンツしか着てない、人がいたら間違いなく恥ずかしい格好をしてる。でも、これで涼しく
なるならこんな格好をしててもかまわないんだ。
 「あっ、きれいな星空…」
 空には満天の星空が広がってた。こういう所で見られるんだから、かなはなんてラッキーなんだろう。

189無名:2006/02/11(土) 17:43:25 ID:xow/ogp80
「この星空、お父さんやお母さんに見せたら、喜ぶだろうな…」
 こんなの見たら、急にお父さんとお母さんのことを思い出しちゃった…。あれは何年前だったかなぁ。
お父さんと一緒に流れ星を見に行ったとき、このくらいの星空を見たときがあったんだ。その時に
お父さんが星座のお話をしてくれたんだけど、そのころのかなはまだ幼稚園くらいだったから、それが
何だかさっぱりわかんなくて、お父さんは困った顔をしてたなぁ。そんなかなにお父さんは、星や星座の
本をいっぱい買ってきてくれた。最初は全然解んなかったんだけど、読んでいくうちに少しずつ星のことに
興味をもっていったんだ…。
 今では展望台へ行って星を眺めたり、プラネタリウムに行ったりして星の事を勉強してる。宇宙には壮大な
ロマンがあるってお父さんは言ってたけど、今になってその言葉の意味が分かったような気がするよ。かなも
大人になったら、お父さんと同じように星や星座の事を子供たちに教えてあげられるようになりたいなぁ…。
 そんなことを思い出したら、何だか涙が出ちゃった…。お父さんもお母さんもきっと、星になってかなのことを
見守ってるはずだもの、かなはくじけたり、寂しがったりしないよ…。でも、もう一度でいいからお父さんと
お母さんに会いたいよぉ…。かなはうずくまって大泣きしてしまった。

 その後かなはしばらくの間、寝転んで星空を眺めてた。そうしてるうちに、少し眠くなってきた。
 「もう戻ろっか」
 かなは窓から部屋へ戻った。時計の針はもう11時を回ってた。それじゃもう寝ようかな、と思った
そのとき、身体がなんか変な感じになっていることに気付いた。
 「…何これ…身体が…熱い…」
 さっき外で涼しんだばっかりなのに、身体が熱く感じる。特に股の部分が。いったいどうしたんだろう。
興奮してるからだろうか。
 熱いのをガマンできなくなったかなは、そのままの格好でベッドへうつ伏せになった。そして熱くなった
股を冷やすため、パンツを脱ぎ捨てた。

190無名:2006/02/11(土) 17:50:23 ID:xow/ogp80
 はあ…はあ…お尻を丸出しにしても、全然冷めないよぉ…かなは股を冷やすために
何か冷たいものがあるか探した。…あった、金属製の小さなペンケースが。それを
当てれば冷めるかもしれない。かなは足元にあったペンケースを足の指でつかんで
股の間に挟んだ。
 「ああ…気持ちいいよぉ…」
 金属でできたペンケースがかなの股の所にピッタリくっついた。金属部分はけっこう
冷たくて、熱くなった股を冷ましていった。ほてりが無くなって気持ちよくなったせいで、
急に眠気が襲ってきた。やばい、このままの格好で寝ちゃうと駄目だ…そう考えている
うちに、かなは深い眠りについてしまった…。

 目が覚めたときには、もう七時半を回ってた。しまった、寝過ごした。かなは慌てて
ベッドから飛び起きた。
 「うわぁっ!」
 起きたとき、かなは自分がパンツをはいてないまま寝ていたのに気が付いた。早く脱ぎ捨てた
パンツをはかないと…!
 「おい、かな、早くしないと学校に遅れるぞ」
 ドアの向こうからお兄ちゃんの声が聞こえる。なんでこんなときにくるんだよー。それよりも
パンツパンツ。うわぁー、どこなんだよー。
 「かな、いつまで寝てるんだ」
 ドンドンとドアを叩くお兄ちゃん。だめだー、散らかってて見つからないよー!!  
 「いい加減におきないとだめだ…あっ」
 ついにお兄ちゃんがドアを開けてしまった。もちろんかなはパンツをはいてないまま。
かなの顔は恥ずかしさのあまりに真っ赤になった。
 「ぎゃあー、お兄ちゃんのすけべー!!」
 おもいっきり枕をお兄ちゃんに投げつけちゃった。まったく、こんな格好お兄ちゃんに
見られるなんて最低だよ。あーあ、なんてこった。
191無名:2006/02/11(土) 17:58:39 ID:xow/ogp80
「眠れない夜」をお送りしました。
今回新しい試みをいくつかしました。少しギャグ(?)を入れたことと、
ちょっとHを入れてみたことです。(でも、ちょっとベタかも・・・)
これで少しは重い空気も軽くなったと思います。
あと、少しですが、かなちゃんの過去のことを入れてみました。星が好きだなんて
ちょっと意外だったかな?
次回は「一言の勇気」の続きを書きます。かなちゃんはついに自分がサイボーグだという
ことをみんなに話すのですが・・・。次回もよろしくお願いします。
192名無しさん@ピンキー:2006/02/11(土) 18:01:09 ID:xsxkao5c0
無名さん乙!

「眠れない夜」、ほのえろ(ほのかにエロ)ですなー。
でもできれば、「なぜ腰が加熱したか」とか、そのあたりの具体的・技術的な説明がほしかったところですね。
そゆ描写にハァハァするもんで(だめぽだな俺)。
193名無しさん@ピンキー:2006/02/12(日) 03:40:54 ID:xVFA9mut0
ねえ、アン・マキャフリー&マーセデス・ラッキー の「旅立つ船」ってどんなかね? あるいは「歌う船」。

「かわいそうな少女を生かしてやれる可能性はただひとつ、 殻人プログラムに入れてやるということです」
7歳のおしゃまな女の子を突然襲った病は、容赦なく彼女を全身運動麻痺にまで追いこんだ。
が、果敢にも自力で病因をつきとめようと決心した少女は、ついに宇宙船として生まれ変わった!

古本屋では見つけられなかったから、通販にしようかと思うけど、知ってる人がいたらどんなか教えてほしい。
このスレの住人が読んで楽しめるかな?
194いくつか前の82:2006/02/12(日) 11:57:01 ID:znWf7C0k0
>>193
SF版に細く長く続いています。

歌う船 ♪〜The Ship Who Song
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/sf/1026473784/l50

アクアノート
尻切れトンボで終わってしまいましたが常駐ROMしています。
気が向いたら残りをupしたいとは、思っていますが。


195名無しさん@ピンキー:2006/02/12(日) 12:03:54 ID:YMnDxqQX0
アクアノートの休日。
196名無しさん@ピンキー:2006/02/12(日) 15:38:51 ID:dzllR1nc0
>>いくつか前の82
首を長〜〜〜くして待ってます。
197名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 03:56:50 ID:F9Eo/q5C0
>>193
「歌う船」
全ての宇宙船型サイボーグの元ネタ…というか、ちまたにあふれる全ての
宇宙船娘(キャナル某嬢とか)のパクリ元ですな。
普通に人間成長ドラマとしてもSF物語としてもサイバーパンク(パンク
してるかは微妙だけど)としても非常に名作と名高いから読まなきゃ損!
ですな。やっぱり大元の元ネタ、本物は格が違う。
萌え的な観点では、人によりけりなところもあると思うけど(特に人形姫
方面とはかなり対極に近いところにある。というのも、宇宙船娘はあくまで
主人公であり、徹底的に一つの人格を持った一人の人間として書かれている)
萌えツボにはまらない人にも萌えネタ探しの役にはきっと立つはず。
ちなみに漏れは萌えた。サイボーグ化娘の人間ドラマとかが割に萌え対象
なんで。
できれば生身の部分も残ってればもっと萌えたんだけど。(除去はされない
けど機能しなくなる)
シリーズで一番萌えたのは、やっぱり「旅立つ船」だったけど、萌えだけで
終わらせるのも絶対もったいないので他のも読むべし。
漏れの場合、小まめに古本屋を回ってかき集めた(自分の行動範囲全ての
古本屋をチェックした)のでシリーズのほとんどがゲットできた。
古本屋に恵まれない地域に住んでる場合はスマソ
でもサイボーグフェチを自称するからには絶対読んでおきたい一品ですな。
198193:2006/02/13(月) 12:24:02 ID:113Yc3Sw0
>197
了解。注文した。
194が教えてくれたSF板のほうも読んでみた。ねたばれがあるかもしれないから簡単に読んだだけだが、
それでも評価が高いことはわかった。新品買わせていただきます。
199名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 17:50:12 ID:YOElZUhY0
機械化娘萌えの諸兄に聞いて頂きたい夢を見た

ルパン三世のコミック(モンキー・パンチの原作のほう)を漫画喫茶か
どこかで見つけて読んでる夢なのだが、それはどこか外国の機械化婦警部隊が
出てくる話だった

婦警たちはモンキー・パンチと松本零士がごっちゃになった絵柄で、
ジェット型のヘルメットとライダースーツ(もしくは宇宙戦艦ヤマトの
森雪の宇宙服)みたいな姿
とはいえ、その制服以外は一見、生身の人間と変わらない

その彼女たちが何者かに操られ、当人たちは正当な命令だと信じて
銀行強盗をさせられる
逮捕された婦警たちは命令を受けたと抗弁するが、口封じのため
口の部分(顎をまるごと)取り外されて連行されていく
(そこで初めて彼女たちがサイボーグなのだとわかる)
・・・という話だ
そこまでのストーリーにルパンは全然絡んでこないわけだが(汗

原作じゃ絶対ありそうもないストーリーだが、アニメ版だったらわからん
かもね
あー、続きが読みたいなあ・・・
200200ゲト!!:2006/02/14(火) 00:44:49 ID:AsIOw3RQ0
>>199
それはもまいさんが書けという神の掲示なりよ。
ルパンじゃなくてもいいから。
201Dark Mater(架琉魔):2006/02/14(火) 01:55:10 ID:aS28+i1V0
目覚めたのは瓦礫だらけの部屋
右手には鮮血と機械が混ざったグロテスクな残骸

ウチは…誰なんや?

ウチの言葉を聞いた二人は、ただ、哀れみの目でウチを観ていた…。

「まさか記憶が丸ごと消えちゃうとは思わなんだ。
うーん研究不足。」
神奈女医は頭を抱えながら唸った。
「女医、あのサイボーグはどうするんだ?」
「…少し外してくれないかい?」
…私は黙って部屋を出た。
神奈女医は悔しそうに爪を噛んだ。
彼女の顔は、普段からは想像できないほどに歪んでいた。
それが怒りによる物なのか、
悔やみによる物なのかは、
誰もまだ知らない。
202名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 22:35:18 ID:HdESPpXq0
グリーバス将軍とかどんなもんでしょうか
あれはまるでロボ娘にも見えるけど
2033の444:2006/02/17(金) 02:28:53 ID:LLXP/ISB0
  工場の中は、 ちょうど私が通っていたような1クラス40人くらいの学校の教室を横にぶち抜きで二つ繋げ
たくらいの大きさ。 でも、 何に使うかよく分からないけど、 薄緑色のレバーがたくさんついた、 いかにも機械
らしい機械が何台も置いてあって、 そのせいで、 広さの割には随分狭く感じた。
  私は、 足元にでたらめに這い回るコードを踏まないように気をつけながら、 おじさんの後ろをついて歩
く。
「あ、 あの、 私、 ここで働いてもいいってことですか?」
  ずーっと黙って歩くのも気まずかったから、 私はおじさんの背中越しに遠慮がちに声をかけてみた。 で
も、 おじさん、 何も答えてくれない。 私のことを振り返りもせず、 機械の隙間を縫うように早足で歩いていく
だけ。
(何も無視しなくたって、 いいじゃないかよう)
  むっとした私は、 心の中でアッカンベーをした。
  この人が、 さっき私を追い返そうとした張本人だよね。 私をフツーの女の子だと思って馬鹿にしてるに決
まってるんだ。 大方、 重いものでも持たせて、 私を試そうっていうんだろう。
(ふん、 今に見てろ。 今、 その気難しそうなへの字口が、 あんぐり開いて、 間抜け面をすることになるんだ
からね)
  私は、 パドックで気合充分、 荒々しい鼻息をはきながら、 今か今かとスタートを待ち構える競走馬みた
いな気分で、 おじさんの背中をにらみつけた。
  
  ようやくおじさんが立ち止まったのは、 工場の一番奥の本棚のお化けみたいな大きな棚が何列も並んで
いてる一角。 棚の中には、 ダンボール箱が、 隙間無くぎっしり収められている。
「この箱を、 棚から引っ張り出して、 持ち上げる。 一人でできるか? 無理なら、 邪魔になるだけだから、 こ
の仕事はあきらめろ」
おじさんは、 一番手近な足元にある箱を指差しながらそんなことを言う。 案の定、 私をテストする気だ
ね。
2043の444:2006/02/17(金) 02:29:51 ID:LLXP/ISB0
  箱の大きさは、 幅はギリギリ両手で抱えられるくらい、 高さは、 箱を抱えたら、 箱のてっぺんが丁度頭
のてっぺんと同じくらいになりそうだった。 中に何が入ってるのか知らないけど、 確かにフツーの女の子な
ら、 持ち上げられそうもない。 フツーの女の子なら、 ね。
  でも残念でした。 私は異常な女の子なんだ。 たとえ中に本みたいな重いものがぎっしり詰まっていたとし
ても、 この程度の大きさなら私にとって持てない大きさじゃない。 箱の大きさを見て、 私が怖気づくとでも思
ったんだろうけど、 そうはいかないんだから。
「これくらいなら、 まあ、 なんとか持てると思います」  
  私は、 箱をポンポン叩きながら、 つぶやく。
  緊張感のかけらもなく、 スイカの中身でも確かめるかのような私の仕草を見て、 おじさんの口元がわず
かに緩んで、 その分だけ皺が深くなる。 おじさん、 今、 笑ったね。 私が強がりを言ってるだけだと思ってる
ね。
  論より証拠だ。 私は、 しゃがみこんでダンボール箱を引き出すと、 両手で抱えた。 中にはモノがいっぱ
い入ってるんだろう。 さすがにズシリと重い手ごたえを両腕に感じた。 でも、 まだまだ私の義体出力からす
れば、 余裕がある。
  顔色一つ変えずに 箱を持ち上げる私を見て、 おじさんの顔から笑いが消えて、 その代わり眉毛のはし
っこが、 ぴくっと動いた。 表情は変えなかったけれど、 ゼッタイ驚いてる。 ふふふ、 でも、 まだまだ驚くの
は早いよ。 本番はこれから。
「これでいいですか?」
  私は、 バーベルでも持ち上げるみたいに肘をびしっと伸ばして箱を掲げ上げた。 そして、 まだ余裕なん
だぞって分からせるために、 笑ってみせたんだ。 いつもなら、 こんな馬鹿な真似はしないんだけど、 この気
難しやのおじさんの驚いた顔が見たくって、 ついつい調子に乗ってしまった。
  笑顔の私と高く持ち上げた箱を交互に見比べるおじさんの顔は、 驚きをとっくに通り越した、 あきれ顔。
作業服の胸ポケットから取り出したタバコに火をつけるのも忘れて、 呆けたようにあんぐり口を開けている。
2053の444:2006/02/17(金) 02:30:55 ID:LLXP/ISB0
しばらく、 金縛りの魔法でもかけられたみたいに、 そのままの姿勢で固まったあとで、 ようやく我にかえって
「わ、 わかった、 わかった。 充分分かったから、 箱を下ろせ」
  うろたえたような上ずった声で、 やっと、 それだけ言った。
  どうだ、 まいったか。

  こんな力が出せるのは、 私の身体が機械だってことの証明みたいなもの。 だから、 この男まさりの腕
力、 昔は大嫌いだった。
  でも、 義体ってこと以外に何のとりえもない私が手っ取り早くお金を稼ぐには、 やっぱり義体の力を借り
るしかなかったんだ。 それで、 大学に入ってから力仕事のアルバイトを嫌々はじめたんだけど、 慣れてくる
と、 これはこれで結構楽しい。 義体の力がいくら強いっていっても、 一般生活用にリミッターがかかってい
るから、 力はあくまでも人間の常識の範囲内。 義体だってばれない限りは、 気味悪がられることはないし、
それどころか、 女の子なのにすごいねーって、 みんな驚きながらも褒めてくれるし、 頼りにもしてくれる。 ホ
ントは私がすごいんじゃなくて、 イソジマ電工製の義体がすごいだけなんだけどさ、 それでも、 人から頼ら
れたり、 驚かれたりすることに嫌な気分はしないよね。
  だけど、 このときの私は図にのりすぎた。
  予定通り、 おじさんのへの字口をこじ開けることができたことに気分を良くした私は、 つい気が緩んで、
持ち上げた箱を胸の位置から放り出すように床に落としたんだ。
  それを見ていたおじさんの顔、 みるみる真っ赤になって、 太い眉毛がつりあがって、 次の瞬間、
「バカヤロー!!」
  カミナリが私の頭の上に思いっきり落ちていた。
「ひっ!」
   怒鳴られた私は、 さっきまでの得意げな顔はどこへやら、 情けない声を出して、 亀の子みたいに首を
縮めた。
「貴様っ! この部品が何か分かってるのか!」
   おじさんは、 箱についていたラベルを乱暴にびりっと剥がすと、 私の鼻先につきつける。 私はおじさん
の剣幕におどおどしながらも、 そのラベルに書いてある文字を眼で追いかける。
2063の444:2006/02/17(金) 02:32:55 ID:oHP+HHB10
(イソジマ電工義身体専用ネジ、 納入先、 イソジマ電工・・・。 使用義体形式CS-20・・・)
  これってまさか――まさか――
  私は、 驚きのあまり、 声も出せなかった。 おじさんの手から、 そのラベルをひったくるようにして取ると、
そこに書かれている小さな文字をじぃっと見つめた。
  なんて偶然なんだろう。 ラベルに書かれていたのは、 私のよく知ってるメーカー名。 私のよく知ってる商
品名。 この箱の中に入っているのは、 私が使っているのと同じ、 イソジマ電工のCS-20形義体に使うネジ
なんだ。
  私が、 そのラベルに書いてある言葉が理解できなくて固まってしまった思ったんだろうか。 おじさんは、
私に向かって説明をはじめた。
「義体って知ってるだろ。 事故とか、 病気とかで身体を失くしてしまった人のための機械の身体だ。 これは
な、 その義体を作るのに使うネジなんだ。 つまり、 人様の命を預かる大切なネジってことだ。 人の身体も
同然ってことなんだ。 もっと大切に扱わんか!」
   最後に、 おじさんは、 もう一度私を怒鳴りつけた。
   私は、 とてもおかしな気分だった。 おじさんに思いっきりカミナリを落とされて、 しゅんとしてしまってい
る自分がいる一方で、 喜んでいる自分もいる。 いや、 むしろ、嬉しさのほうが大きいかもしれない。
   だって、 おじさん、 義体用のネジを、 人の身体の一部も同然で、 もっと大切に扱えって私を怒ってくれ
た。 人の身体でも何でもない、 ただのネジなのに、 義体に使う部品だからって、 人の身体のように思えっ
て言ってくれたんだよ。 自分には、 ホントの身体なんかなくって、 私の身体のように見えるコレは、 ただの
機械のカタマリ。 事あるごとに、 それを思い知らされるばかりの私にとって、 そんな嬉しい言葉が他にある
だろうか?
  私の身体に使われているネジも、 きっとこの工場の人たちが作ってくれたんだ。 私の命の恩人は、 吉
澤先生やタマちゃんだけじゃない。 この人だって私の命の恩人。 義体を組み立てるたくさんの人がいて、
その部品を作るもっともっとたくさんの人がいて、 そうして、 いろんな人の力が合わさって私は命をもう一回
もらったんだって、 今更ながら気がつかされたんだ。
2073の444:2006/02/17(金) 02:34:02 ID:oHP+HHB10
「ありがとうございます!」
  私は思わずおじさんに向って深々と頭を下げていた。 だって、 私、 嬉しかったんだ。 お礼を言わなきゃ
気がすまなかったんだ。 たとえ義体でも人の身体とおんなじ。私の身体に使われているちっぽけなネジの一
本一本に、 そんな想いが詰まっているってことが分かったんだもの。 この義体のネジは、 ただ機械部品を
繋ぐためのものじゃない。 きっと、 もっと大きな何かを繋ぎとめてくれている。 私、 そんな気がした。
  でも、 顔を上げて、 ぽかんとした表情のおじさんと眼があって、 私は自分がとてもヘンなことを言ったこ
とに気がついた。 おじさんは、 私が、 まさにその全身義体障害者なんだってことを知らない。 ネジを雑に扱
って、 怒鳴られているのに、 何でお礼を言ってるんだろう、 変な子だな、 なんて思ってるよね、 きっと。
「あ、 いや、 その、 本当に、 すみませんでした」
  あわてて、 もう一回、 神妙な顔つきで頭を下げる私。
「人の身体に使われる部品なら、 人の身体も同然。 本当にその通りだと思います。 私は、 ただネジを投げ
たんじゃなくって、 人を放り投げたのと同じことをしてしまったんだと思います。 だから、 私はホントは、 この
ネジを作った人だけじゃなくて、 このネジを使うことになる人にも謝らなきゃいけないんです。 本当に、 本当
に申し訳ございませんでした」
  許してもらえなくてもいいや。 もう、 ここで働けなくてもいいや。
  私、 いつの間にか、 そんな気分になっていた。 決して投げやりになったからじゃないよ。 だって、 私、
それだけのことをしちゃったんだし、 おじさんが怒るのも当然だ。 私が、 ここで働く資格なんかないこと、 よ
く分かってる。
  許してくれなくってもいい。 私は謝りたい。 心をこめてネジを作っているおじさんにも、 それから、 これ
からこのネジを使うかもしれない全ての人に対しても。 私の義体は、 法律の上では、 ただのモノにすぎない
かもしれないけど、 でも気持ちの上では私の身体も同然。 私のかけがえのないパートナーなんだ。 私だっ
て、 やっぱり自分のパートナーが雑に扱われたら嫌だもんね。 ごめんなさい。
2083の444:2006/02/17(金) 02:34:36 ID:oHP+HHB10
  それから、 おおっぴらにはいえないけど、 ありがとうおじさん。 おじさんみたいな人が、 私の体の一部を
作ってくれているってわかっただけでも、 なんだか生きていく勇気が湧いてきた気がしたよ。
  私は、 頭を下げながら、 そんなことをずーっと考えていたんだ。
  しばらくの沈黙の後、 おじさんは、 手に握ったままの煙草に思い出したように火をつける。 そして、
「ま、 分かればいいってこった」
  そうつぶやくと、 美味しそうに煙を吐き出した。
「ところで、 お前、 靴のサイズはいくつだ?」
  煙草の吸殻を灰皿代わりのコーヒー缶に入れながら、 おじさんは私に聞いた。 なんなんだろう、 藪から
棒に。
「24センチです」
  いきなりの質問に、 戸惑い気味に答える私。
「ちょっと、 ここで待ってろ」
  おじさんは、 私の言葉をきくなり、 そう言い残してこの場から立ち去った。

  しばらくして戻ってきたおじさん、 両手に一足ずつ黒い靴を持っている。
「ほれ」
  おじさんは、 私の足元に、 きちんと揃えて靴を置いた。
「あの、 これは・・・」
「安全靴だ。 つま先のところに鉄板が入ってる。 それ履きな。 もしさっきの箱がお前の足にでも落ちたら、
どうなってたと思ってる! ヘタしたら骨折するぞ! 作業するなら、 きちっとした靴をはかないとな」
  そう言って、 おじさんは白い歯をむき出しにしてニヤっと笑った。
「それじゃあ・・・」
  私は、 息を飲んでおじさんの顔を見つめる。
「――いいよ。 雇ってやる」
  おじさんは、 なんだか照れくさそうに鼻の頭をこすった。
「だがな」
  急に厳しい顔に戻るおじさん。
「もう一度、さっきみたいな真似をしてみろ。すぐたたき出すからな」
「ハ、ハイ」
  あわてて背筋を伸ばす私。
「お前、名前は?」
「や、八木橋裕子と言います!宜しくお願いします!」
2093の444:2006/02/17(金) 02:35:59 ID:ySDt8Js20
今日は、ここまでです。
210名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 06:51:16 ID:WSRijeop0
>>208
精密機器系って静電気も気にすると思うのですが
裕子の体ってアースとってるの??
211名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 13:50:49 ID:/9impFEg0
パソコンが帯電していても平気で使えている場合もいるし、
ノートパソコンでさえアース取らないとまともに使えない場合もある。

そんなもんだ。
2123の444:2006/02/17(金) 22:55:48 ID:wdUMkxlx0
>>210
静電気を帯電すると、実際どんな不都合が義体に起こりそうですか?
そのあたり、うまくネタにできないかと思ったり。
213名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 00:47:02 ID:3wltVKt10
痛覚端子が誤作動して、リューマチ状態になるとか。

冬場は身体の節々が痛む裕子さん・・・・・・って、ご老体?w
214名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 01:49:41 ID:iajjZuQs0
> 義体ユーザーは雇用保険をはじめ、多くの場合、常体とは異なる扱いが
> 適用されるため、入学、または就職決定時に、組織の責任者、または
> 雇用責任者に自身が義体であることを報告しなくてはいけない義務があります。

・・・じゃなかったっけか?と無粋な指摘をしてみるテスト
アルバイトの場合は義務じゃないのかな?

>>212
板的には、何もしてないのに体が勝手に感じちゃうとかw
あとは充電用などの端子のカバーが勝手にパカパカ開いちゃうとか

少なくともイソジマの義体の場合は表面には金属は露出してないっぽいから、
静電気に対しては完全にシールドされてるということにしちゃってもよさそうだけどね
215名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 10:22:28 ID:w6ZT7MgK0
ヤギーまとめサイトのトップ絵が変わってる!
216無名:2006/02/18(土) 13:33:32 ID:WDiqPLhY0
【にせものと本物と】
 「今日は、みんなに話したい事があるんだ」
 午後のホームルームで、かなはあることを話そうとしていた。この前の事件のことで、
みんなに言わなければならないこと…自分が義体だってことを言うためだ。事件からだいぶ
経ってるから、今ならいえると思って、今回のホームルームで話そうと思ったんだ。
 「…この前、荘野君が怪我して病院へ運ばれたことは、みんなも知ってるよね。その事故で、
荘野君がサイボーグだって分かってしまったから、学校の噂話にまでなってしまった。
でもそれって、荘野君に悪いと思うよ。いくらサイボーグだって人間なんだから、それを変な
話のネタにするのはよくないよ」
 みんながざわざわし始めた。やっぱり、まさる君がサイボーグだった事が、みんなにとって
ショックだったんだろう。
 「それにね、サイボーグになってる人は他にもいるんだから、その人たちにも悪いと思う。
もし自分がサイボーグだったらどうするの?自分を話のネタにされるといやになるんじゃないの?」
 誰だって自分のことを悪いネタにされたらいやに決まってる。でもそれが他人事だと手を
返すように噂話のネタにしてしまう。面白いと思ってるからそんな事をするんだろう。それでも
そんな事をネタにするのは駄目な事だと思う。
 
217無名:2006/02/18(土) 13:35:22 ID:WDiqPLhY0
「それじゃ、聞きますけれど、人間とロボットの違いって何ですの?いくら人の形を
してましても所詮は機械なんじゃないんですの?」
 左前の席から失礼な質問をする人がいた。姫宮文香だ。姫宮は有名会社の令嬢で、
とっても高飛車な性格のいやな奴だ。
 「ロボットじゃないよ、サイボーグだよ。姫宮さん、所詮機械なんていうけど、
元は人間なんだよ。そんなこと言ったら他のサイボーグの人に失礼だよ」
 「あら、そうですの。それじゃ、もしあなたがサイボーグでしたらどうするつもり
なのかしら?人間らしく生活する事が出来るかしら?」
 まったく、人の気も知らないで。よくこういうことが言えるなぁ。どうせかなは
サイボーグですよーだ。
 「答えないつもりですの?ふふっ、やっぱりあなたも怖いんでしょう?機械だらけの
人形になるのが」
 笑い飛ばす姫宮。もう怒った。言ってやる、かながサイボーグだって証拠を見せてやる!
 「怖くなんかないよ!だってかなは、全身が機械のサイボーグなんだから!!」
 そういったかなは、ポケットから義体患者手帳を出してみんなに見せびらかした。
 「う、嘘おっしゃい。そ、そんなもので証拠になるとでも思っていますの?」
 さすがの姫宮もこれにはびびって、声が震えてるようだ。他のみんなもざわざわと騒ぎ始めた。
 「静かにしろ!」
 横で見ていた日野先生が一喝を入れた。
 「和多田の言っている事はすべて本当だ。だからといって、お前達は騒ぎすぎだぞ!特に姫宮!
お前はサイボーグのことを軽視しているみたいだが、もしお前の友達や親兄弟がサイボーグに
なったらどうするつもりだ?!」
 先生の一言に対し、姫宮は開き直ったかのように答えた。
 「あら先生、わたくしのお父様やお母様がサイボーグになるなんて、誰が決めましたの?
そんな事はあるはずありませんのに」
218無名:2006/02/18(土) 13:36:47 ID:WDiqPLhY0
 だめだ、いくら姫宮にサイボーグとして生きていく事がどんなに辛いのかを教えたって、この調子じゃ
これっぽっちも解ってもらえない。それどころか先生に対してこんな事を言うなんて、何様のつもりだよ。
 「それに和多田さん、もしあなたがサイボーグだとしましても、あなたの存在が本物であるという証拠が
ありますの?人の形をしていましても中身が機械では、それはにせものなのではありませんこと?」
 そ、そんなこと、本物に決まってるじゃない。
 「いくら外見が人と同じでも生身の人間とは違いますわ。所詮、人形は人形でしかありませんのよ、
おほほほほっ」
 ひ、ひどい。そんなこと言うなんて。それじゃあ、かなは機械仕掛けの人形だっていうの?この腕も、
この足も全部にせものだっていうの?
 「おい、どうしたんだ、和多田」
 かなはその場へしゃがみこんでしまった。姫宮の言葉が頭の中で何度も響いてくる。違う、かなは人形
なんかじゃない。人間なんだ。みんなと同じ人間なんだよ…。
 「あら、どうしましたの?そんなに機械の身体がいとおしいんですの?」
 い、いやだ。そんなの、絶対いやだ!
 かなはゆっくりと立ち上がって、生意気な姫宮目がけて、履いてた上履きを両方とも投げつけた。そして、
大声で叫んだ。
 「姫宮のバカ――――――!!」
 怒りと悲しみが入り混じったまま、かなは教室を飛び出して言った。
219無名:2006/02/18(土) 13:39:25 ID:WDiqPLhY0
 裸足のまま外に飛び出したかなは裏庭の倉庫の前に来ていた。
どうして解ってくれないんだろう…。なんでそんなこと言われなくちゃ
いけないんだろう…。倉庫の壁に寄りかかってかなはそんな事を考えてた。
本当のことを言えばみんな分かってくれるはずじゃなかったのかなぁ…。
やっぱり言わなければよかったのかなぁ…。そう考えてるうちに目から涙が
溢れてきた。どうしよう…みんなになんて顔向けすればいいんだよぉ…。
 「やっぱりそこにいたのか、かなやん」
 うずくまっていたかなの前に、和真君が迎えに来た。
 「あ…和真君…」
 「どうしたんだよ、お前らしくないぜ」
 「う…か、和真君…悔しい、かな、とっても悔しいよ…解ってくれると
思ったから言ったのに、こんなことになるなんて…」
 和真君はかなの肩を叩いて慰めてくれた。
 「そんな事ないと思うぜ。姫宮だって別に悪気があって言ったわけじゃ
ないんだ。ただ考え方が違うだけなんだよ」
 「だったら何であんな事言ったりするんだよ。あれじゃあ、かなやまさる君
のことをただの機械人形だと思ってるとしか考えられないよ!」
 姫宮の言った事がかなは許せなかった。だからそんなことを言ってしまったん
だろう。それを見かねた和真君は、かなのほっぺたを軽くひっぱった。
 「落ち着けよ、かなやん。この前俺達に言ったときのこと、思い出してみろよ。
あの時お前は勇気を振り絞って、本当のことを話したんだろ。だったらその勇気を
姫宮にぶつけてみろよ。姫宮のことだから、一回だけじゃ無理かも知れねえ。でもよ、
何回か勇気をぶつけたら、解ってくれるんじゃないかな。他のみんなだって信じて
もらえないんだったら、信じてもらうまで何回も言えばいいんだよ。だから諦めるな!
ここで諦めたら、お前は一生信じてもらえなくなるぞ!!」
 和真君…。そこまでかなの事を心配してくれるんだね…。ありがとう…。
220無名:2006/02/18(土) 13:42:09 ID:WDiqPLhY0
 「…解ったよ、もう一度姫宮やみんなに話してみるよ。そうだよね、ここで諦めたら逃げるのと同じだもんね」
 「それでこそ、俺達のかなやんだ!!さあ、行こうぜ」
 「うん!!」
 かなは涙を拭いて立ち上がった。今度こそみんなに分かってもらうために、さあ、いくぞ!
 

 かなと和真君が教室へ帰ってくると、クラスメイトのみんなは待ってましたと言わんばかりに
ざわざわし始めた。それもそうだ、ホームルームをほったらかしにしてしまったんだから。
 「まったく、なにをしてらしたのかしらねぇ、恥を知りなさいよ」
 姫宮は怒りを抑えてかなの前までやってきた。
 「さっきはごめんね、上履き投げちゃって」
 「ふん、おかげでわたくしはひどい目に遭いましたのよ。こんな汚い物を顔に当てるなんて、
あなたどうかしてますわ」
 そう言って姫宮は、かなの上履きをまるで汚物を扱うように放り投げた。そんな態度をとる
姫宮を見てたら、また怒りが身体の中で渦巻いてきた。でも、かなはガマンした。
 「こ、これからは気をつけるよ」
 あぶないあぶない、もう少しでさっきの様になる所だった。
 再び教台に戻ったかなは、ホームルームを再開した。
 「みんな、さっきは中断しちゃってごめんね。で、さっきの事なんだけど、いくらサイボーグ
とか義体だからといっても人間に変わりないんだから、別に気を使わなくてもいいんだよ。いくら
身体が機械でも心は人間のままなんだしね。世の中には義体の人を気味悪いとか、引いちゃうなんて
言ってる人もいるけど、それって人種差別と同じことだよ。これでいいと思うの?いいわけないよ。
まさる君も前の学校で義体というだけで、みんなに馬鹿にされたり、相手にされなかったりしたんだよ。
学校はみんなと仲良く勉強したり、遊んだりするところなんだよ。それを義体とか、サイボーグだから
というだけで相手にしなかったら、その人がかわいそうじゃないの。だからみんなもお互い理解して、
義体の人と仲良くなろうよ。そうじゃないと、その人に失礼だよ」
 それを聞いたクラスメイトのみんなの話し声が消えた。もしかしたらみんな分かってもらえたのかも。
 
221無名:2006/02/18(土) 13:44:11 ID:WDiqPLhY0
 「たしかにそうですわね。でも、わたくしは認めませんわ。こんな薄汚くて野蛮なあなたに
言われましても、わたくしはそんなことする気にもなりませんもの」
 って姫宮、あんたそこまで言うか。まったく、意地っ張りなんだから。
 「今分かってもらえなくてもいいよ。でも姫宮、いつかあんたにもそのことを分かる日が
きっと来る。現にあんたはもう義体患者に接してるんだからね」
 頑固で高飛車で、それに意地悪な姫宮にも、かな達義体の人がどんなに辛い思いをしてるのかを
解ってもらいたい。たとえ時間がかかったとしても、義体の人達と仲良くなってもらえればそれで
いいんだ。そのためなら、かなは勇気を振り絞って自分が義体だって事を言ってやるんだ、何度でも。
 「ふっ、まあいいですわ。わたくしには関係ないことですもの。まあ、そんな事があるかどうか
なんて、分かりませんものね」
 姫宮は時計を見ながら静かに席を立った。
 「もうホームルームは終わったのでしょう。わたくしはこれからお稽古に行かなければなりませんので、
失礼しますわ」
 そして、そそくさと姫宮は教室から出て行ってしまった。最後の最後まで生意気な奴だ。
 「もう4時を過ぎてしまったな。和多田、もうそのくらいでいいだろう。ではこれでホームルームは
終わりだ。みんな、帰っていいぞ」
 
222無名:2006/02/18(土) 13:51:20 ID:WDiqPLhY0
 クラスメイトのみんなは解放されたかのように教室から去っていった。これでみんなにも義体患者の苦しみを
分かってもらえたんだろうか…。
 「先生、こんな事のためにホームルームを使わせてもらって、ありがとうございます」
 かなは先生に向かってお辞儀をした。
 「お前や荘野のような義体患者の事を少しでも他の生徒に解ってもらえたんだ。こっちが礼をいいたいくらいだ」
 先生…。ほんと、心から感謝してるよ。
 「ところで和多田、お前裸足で外へ出ただろう。足跡がついてるぞ」
 「ま、まさかぁ…って、え―――っ!!!」
 入り口を見たら、真っ黒い足跡がくっきりと付いていたのだ。急いで戻ってきたから足洗うの忘れたんだ。そうなると、
そのまま上履きはいちゃったから…かなは恐る恐る上履きを脱いで、上履きの中を見た。うわぁ、しっかり付いてるよ、
すごいのが。
 「早く汚したところを掃除してこい!」
 すいません先生、今やりまーす!
 

 結局、掃除するのに1時間もかかっちゃったよ。和真君にも手伝ってもらっちゃって、とほほな気分だよ。
 「ごめんね和真君、手伝ってもらっちゃって…」
 「いいんだよかなやん、これでお前が人間だってこと証明できたんだから、このくらいどうってことないさ」
 和真君、あんたには本当に感謝してるよ。もしあの時、和真君が後押ししてくれなかったら、かなは逃げたまま
だったんだもの。
 「あっそうそう、その事あいつにも報告しないとな」
 そうだ、まさる君にも言っておかないと。もうこれでまさる君のこと、悪く言われることも無くなったんだし。
あいつを除いてはね。
 「うん、きっとまさる君も喜んでくれるよ。いままで苦労してたんだもんね」
 かなはぺたぺたと裸足のままで、モップ置き場へ掃除道具を置きに行った。上履き履けなくなっちゃったからね。
223無名:2006/02/18(土) 13:56:08 ID:WDiqPLhY0
 「それにしてもお前、明日裸足のまま授業受ける気かよ」
 「しょうがないよ。かながしたことだもん。それに明日ガマンすればもって帰って洗えるんだし」
 見るに見かねた和真君は、自分のロッカーの中からあるものを取り出した。
 「ほらよ、ちょっと汚いし破れてるけど、ないよりましだろ」
 それは古くなった和真君の上履きだった。和真君、そんなにかなの事心配してくれるんだ…。
 「あ、ありがとう。じゃあ、ちょっとだけ借りるね」
 かなは和真君の古い上履きを履いてみた。ちょっと大きくてぶかぶかだけど、それほど気にならなかった。
 「どうだ?ゆるかったりしないか?」
 「う、うん…大丈夫だよ…」
 その時、かなの目から大粒の涙が流れてきた。きっとこれは嬉し涙だ。かな、和真君と友達になって、
本当によかった…。
 「お、おい、本当に大丈夫かよ…。って、うわ!」
 かなは嬉しさのあまり、和真君に抱きついてしまった。だって、こんなに嬉しいことってないもの…!
 「和真君、大好きだよ…。ほんとにほんとに大好きだよ」
 「だ、だからって…ま、まあいいか」
 勇気を振り絞ることがいいことにつながるなんて、なんてすばらしいことなんだろう。落ち込むことも
あったけれど、みんなが支えてくれるからそれが勇気や自信へとつながっていく。だから人の心は、
折れてもまた蘇って強くなっていくんだ。今日は最低の一日だったけど、最高の一日だったよ!
 
 
224無名:2006/02/18(土) 14:06:32 ID:WDiqPLhY0
 皆さんこんにちは、無名です。「一言の勇気」の続編、「にせものと本物と」
をお送りしました。自分の正体を明かしてまで、義体の人と仲良くしようとする
かなちゃんと、それを拒絶しようとする姫宮の対立が、今回のスポットです。
みんなはそれをどう思っていますか?仲良くしたいと思いますか?それとも・・・
皆さんのご意見、ご感想をお待ちしています。
 さて、次回もかなちゃんのお話です(神無月先生のお話はもう少し先になって
しまいますが・・・)よろしくお願いします。
2253の444:2006/02/18(土) 14:58:59 ID:qou0xrF+0
>>224
かなちゃん、優しいですね。
ヤギーなら姫宮さんと大喧嘩ですよ。きっと(笑)
なんか昔、授業か何かで見た「みんな仲良し」とか「明るい仲間」
(内容はほとんど忘れたけど何故か歌だけ覚えてる)を思い出しました。
あと、なぜか東武日光線も思い出しましたw
ところで、いったん接続を切って再度繋ぎなおせば連投できますよ。
IDは変わっちゃいますけど時間の節約になります。

保管庫、更新したのですが、物語の順番は
「一言の勇気」→「眠れない夜」→「にせものと本物と」でいいですか?
「一言の勇気」と「にせものと本物と」は前、後編みたいな形なので
続けたほうがいいのかな、と思いましたが、そうすると「眠れない夜」
をどこに入れたらいいのか分からなくなります。アドバイスお願いします。
226無名:2006/02/18(土) 15:43:44 ID:WDiqPLhY0
無名です。
「一言の勇気」と「にせものと本物」とは少し時間が離れているので、
その間に「眠れない夜を入れましたのでそれでOKです。
ご迷惑をかけてすいませんでした。
227無名:2006/02/18(土) 17:14:35 ID:WDiqPLhY0
すいません、>>224
の文章で、(自分の正体を明かしてまで、義体の人と仲良くしようとする)
というのがありましたが、間違いで(自分の正体を明かしてまで、普通の人と仲良くしようとする)
が正しい文です。すみませんでした。
228Dark Mater(架琉魔):2006/02/20(月) 01:10:57 ID:xxPaDd630
「…何の用だ?
さっきからついて来ているが…。」
「んー…よう解らへん。」
新型は、私の後ろを伺うようについてくる。
「記憶がないなら、神奈女医の所に居た方が良いだろう?」
「ウチ、記憶が無いんかー?
…そうかー、だから名前も思い出せへんのやなー。」
その言葉を聞いて、私は足を止めた。
心配になった。
何故なら…この何も知らない少女は、これから戦場へと赴かなければならないのだから…。
そして…
「じゃあ…
ウチは…ウチは人なんか?
ロボットなんか?」
新型は、縋るように聞いた。
229Dark Mater(架琉魔):2006/02/21(火) 00:26:14 ID:NG5rX+6X0
私は言葉を失った。
私には答えようのない問題だった。
人としての記憶が無いのなら、この娘は…
私は、少し黙り込んでから彼女に言った。
「私には理解しかねる問題だ。」
「そっか…」
彼女は悲しそうな顔で俯いた。

やめろ、やめてくれ、そんな顔をしないでくれ。
私には答えようが無いんだ!
それを言ったら、名前を知らない私はどうなるんだ!
私の体は機械だし、心だって…!

でも、でもこのサイボーグは…人の心を持っているんだ…。
私は…言ってしまった。
「言葉が話せるのなら、何時かは記憶も帰ってくるだろう。」
少女は、金色の髪を揺らして私を見た。
「ホンマに!?」
「あぁ、ホンマに。」
私は微笑む演技をして彼女を騙してしまった。

私は、ウソツキになってしまった。
230名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 00:51:22 ID:zJGozfsb0
「嘘!でも、美しい嘘・・・」


誰の台詞だったかな・・・飛雄馬のネーチャンだったかな?
231Dark Mater(架琉魔):2006/02/21(火) 01:07:32 ID:NG5rX+6X0
暫くしてから、例の新型は私の作る、新たな小隊に赴任することとなった。
どうやら神奈女医が上に志願したらしい。
あの女の事だ、どうせ無茶をしたのだろう。
男性に対しては、滅法容赦がないからな…。

そして私の書斎にて、
「大尉ぃ、何やっとるんですかぁ?」
新型は私が書いている書類をマジマジと見た。
「役所に届ける書類。
私達の名前を決めてるのさ。
名前が無かったら、格好つかないだろう?」
「名前っスかー?」
「あぁ。
今日から貴女の名前は欽丈。
欽丈・恵委歌だ。」

私は嘘をついた。
だからこそ、私はそれをつき通そう。
「そして私の名は鬼塚・亜矢女だ。」

私は、鬼女であり通そう。

Dark Mater
STEARTED To The Farst Mission. 
232架琉魔:2006/02/21(火) 01:19:02 ID:NG5rX+6X0
架琉魔です。
最後の名前が非常に読みにくいとです。
亜矢女はアヤメで、恵委歌はエイカとです。

<<230
慨存のネタがあっても、私には知りようが無いんだ!
233名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 03:41:56 ID:ffkcXSGWO
英語のスペルチェックくらいしようぜ
2343の444:2006/02/25(土) 16:30:21 ID:fjx+DGIP0
  安全靴のヒモをしっかり結んで、 続いておじさんが持ってきてくれた軍手をはめて、
「男物しかないけど、 サイズは合うか?」
  と笑いしながら手渡してくれた、 おじさんと着ているのと同じデザインの、 胸に小さくセノハチってオレン
ジ色の糸で刺繍がしてある青い作業服の袖に腕を通す。 これで、 たちまち私も立派なガテン系の女の子に
ヘンシン。
「おっ! 女の子がこの服を着ているのを見るのははじめてだけど結構板についてるな。 さすがに、 こういう
仕事をやり慣れてるって言うだけのことはある」
  おじさんは作業服姿の私を見て、 腕組みしながら感心したようにうなづいた。 でも私はフクザツな気分。
おじさんは褒めてくれたつもりなのかもしれないけど、 綺麗な服を着ていて似合ってるって言われるならまだ
しも、 こんな服を着ている姿が板についてる、 なんて言われても、 ちっとも嬉しくないよね。
「私、 どんな仕事をすればいいんでしょうか?」
  私は、 苦笑いしながらおじさんに聞いてみた。 大学からは、 簡単な運搬作業ってことしか聞かされてい
ない。 試験代わりにあんな箱を持たされるなんて、 今日のバイトは一体どんなことをするんだろうって気に
なったからね。
  おじさんは、 うむ、 と軽くうなずくと説明をはじめた。
「正月明けすぐに新しい機械を入れことになった。 だから、 それを置くスペースを作らなきゃいけないってわ
けだ。 で、 ここ」
  おじさんは、 私たちの立っている、 棚の並んでいるあたりをぐるりと見回した。
「今、 ここにネジやネジの材料になる鉄板とかステンレス板が置いてある。 これを全部裏の倉庫に持ってい
く。 簡単だろ。 この程度の作業で正月から社員を呼ぶのも面倒だからアルバイトを雇うことにしたってわけ
だ」
  おじさんは 私を手招きすると、 私たちが入ってきた入り口とは反対側の裏口のドアを開けた。
  倉庫は工場のすぐ裏手にある、 工場と同じようなつくりの青トタンでできた建物だった。 でも、 窓はゼン
ゼンないから中は昼間なのに真っ暗。
2353の444:2006/02/25(土) 16:31:03 ID:fjx+DGIP0
  パチン。
  おじさんが倉庫の電気をつける。
  蛍光灯の白い明かりに照らされた、 ちょっとしたコンビニくらいの広さの倉庫の中には、 図書館みたい
に、 工場の中にあったのと同じような棚がいくつもいくつも並んでいた。
  おじさんは、 つかつかと一番近くの棚に歩み寄る。 後ろをついていく私。
  図書館みたいっていったけど、 近づいて見ると上中下三段に分けられた棚自体は図書館の本棚なんか
よりずっとごっつくて大きい。 上段なんて、 私が背を伸ばしてやっと届くかどうかっていう高さだ。
「さっき八木橋が持ち上げた箱にラベルがついていただろ。 ネジの入っている箱には全部あんなふうにラベ
ルがついてる。 で、 ラベルに印刷されている商品番号と同じものが、 こっちの棚にもそれぞれ貼ってある。
向こうから持ってきた箱を、 こっちの棚の同じ商品番号のラベルが貼ってあるところに入れる。 いいか、 間
違えるなよ。 同じメーカーへ納品するネジでもいくつも種類があって、 それぞれ商品番号が違うから、 商品
番号は下一桁まで、 しっかり見て確認するように」
  おじさんは、 棚に貼られたラベルを指で指し示しながら言った。
(なるほど。 商品番号が重要・・・と)
  心にしっかり刻み付ける。
「えと、 棚は三段になっていますけど、 一番上の段まで私の背、 届きません」
  私は棚を見上げながら苦笑い。 いくら力があったって背が届かなきゃ箱を置くなんてことは物理的に無
理だよね。
「そのときは、 あれを使え」
  おじさんが指差した倉庫の隅には脚立が置いてあった。なるほど。
「ま、 上の段の作業は俺も手伝ってやるから、 とりあえず一段目と二段目からうめていきな。 脚立に登りな
がら重い箱を持つなんて芸当は、 さすがの八木橋サンでも難しそうだからな。 じゃ、 頑張れ」
  おじさんは私の肩をポンと叩くと、 そそくさと倉庫から消えていく。
(まだ私の力が分かってないみたいだね。 いいよ。 三段目も一人で全部終わらせて、 おじさんを驚かせて
やるんだから)
  私は、 倉庫の中で一人ほくそ笑んでいた。
2363の444:2006/02/25(土) 16:32:06 ID:fjx+DGIP0
  作業自体はおじさんの言うように簡単なもの。 でも、 実際やってみると、 思った以上に大変な作業だっ
てことが分かった。 別に重たい箱を持ち運ぶのが大変ってわけじゃない。 並みの男の子なら音を上げちゃ
うくらい重くて大きな箱でも、 全身義体の私にかかれば鼻歌交じりに発泡スチロールの固まりでも持ち運ぶ
ような感覚で簡単に持ち上げることができるんだ。 それに、 さっき私が試しに持ち上げた全身義体用のネ
ジが入った箱は特別大きかったみたいで、 あそこまで大きい箱は実はそんなに多くなかったしね。
  やっかいなのは箱を倉庫に持っていくことよりも、 倉庫の中で、 その箱を収めるべき正しい位置を探し
出すこと。 こんな小さな町工場でも、 作っているネジの種類は私が思っている以上にたくさんあって、 私は
持っている箱のラベルと、 倉庫の棚に貼ってあるラベルを交互に見比べながら、 迷路の中に放り込まれた
ハツカネズミみたいに倉庫の中をあちこちウロウロしなければならなかった。
  でも、 大変なことは大変だけど、 ネジの中には誰でも知ってる超有名電機メーカーの製品に使われるも
のもあったりして、 例えば、 私が今運んでいる電子ジャー用のネジは、 将来どんな家にいってご飯を炊くこ
とになるんだろう、 なんて思いをめぐらせたりして、 私と社会が繋がっているんだって実感できるのは決して
悪い気分じゃないよね。
 
  はじめ、 工場からいちいち一つ一つ箱を持ってきては倉庫の棚に入れていた私だけど、 工場と倉庫を
何度も出入りするのは面倒だから、 作戦を変えることにした。
  工場にある箱をいったん全部倉庫の中に運び入れてしまう。 倉庫の入り口のあたりに、 ちょっとしたス
ペースがあるから、 とりあえずいったんそこに箱を積み上げちゃうんだ。 そして、 脚立を使わなきゃいけな
いやっかいな三段目の棚は後回しにして、 とりあえず一段目と二段目の棚に入るべき箱を片付けていく。
2373の444:2006/02/25(土) 16:33:13 ID:zf+Yzfmn0
  普通の身体なら、 一時間くらい働いたらちょっと疲れたから小休憩ってことになるのかもしれないけど、
義体なら疲れを感じることもないから作業はすこぶる順調。 時折倉庫にやってきては、 仕事のはかどりっ
ぷりに目を丸くするおじさんを横目で見て、 なんだか自分が義体であることが誇らしげな気分になっていた。
いつもいつも、 この機械の身体にコンプレックスを感じてばかりだけど、 こうして作業に没頭していれば、 そ
んなことは忘れてしまえるし、 こうやって人の役に立つことができるんだ。 だから、 どんなに友達に変わり者
って思われようが、 私はこういうアルバイト、 好きだよ。
  
  こうして、 お昼前には、 三段目を残すばかりになっていた。
  お昼の休憩を挟んで作業再開。 いよいよやっかいな三段目にとりかかる。
  まず一番手前の棚から埋めていくことにした私。 脚立を登って、 棚に貼られたラベルを確かめる。
(あ・・・)
  そこに、 書かれた文字に私は思わず息を呑んだ。
『イソジマ電工義身体専用ネジ、 納入先、 イソジマ電工。 使用義体形式CS-20。 20ケース4000個入り』
(例の義体用のネジだ!)
  私は、 脚立から飛び降りると、 さっき工場でおじさんに向かって抱えてみせた、 ひときわ大きな箱を探
す。 そして、 ちょっと緊張しながら、 ゆっくり抱くように持ち上げた。
 ここにあるネジは、 どのネジ一つ取っても世の中の役に立つとても大事なネジ。 だけど、 この義体用の
ネジは、 全身義体の私にとってはやっぱり一番大事。 将来人の命を繋ぐことになるかもしれない部品。 人
の命そのもの。 心を込めて丁寧に運ばなきゃと自分に言い聞かせながら私は脚立を登っていった。
  ちょうど、 その時だ!
『バッテリー残量50%、 節電モードに移行』
  私の視界の片隅を電気が切れかかっていることを警告する赤い文字が流れていく。 次の瞬間、 私は箱
を抱えていた右腕に、 妖怪こなきじじいがぶら下がりでもしたかのような重さを感じて、 思わず箱を取り落と
してしまった。
2383の444:2006/02/25(土) 16:33:56 ID:zf+Yzfmn0
(しまった!)
  どん!
  重たい箱が床に落ちる鈍い音に、 思わず一瞬目をつむってしまう私。 上下逆さまに落ちた箱の中から、
安っぽいお弁当箱みたいな、 ネジを収めた半透明のプラスチック製のケースが、 いくつもいくつも雪崩みた
いに溢れ出ていった。
  それだけでも充分冷や汗ものの大失敗。 なのに、 神様はまだ私を苛めたりないらしい。 床に落ちたショ
ックで、 一つのケースのフタが開いちゃって、 中から、 ざらざらざらざら大粒の雨が降るような音をたてなが
ら、 銀色のネジが倉庫の床一面に散らばっていく。
(どどどど、 どうしよう、 どうしよう、 どうしよう)
  あわてて脚立から飛び降りた私だけど、 まるでバケツで水をぶちまけたみたいに床一面に広がったネジ
を見つめたまま、 どうすることもできず立ち尽くすばかり。
  よりによって、 こんな時に節電モードになっちゃうなんて、 私ってなんてついてないんだろう。 それも、 私
にとって一番大事なはずの義体用のネジを運んでいるときに・・・。

  義体の動力源はバッテリーに蓄えられた電気。 だから、 生身の身体のヒトがご飯を食べなかったら力が
出なくなっちゃうのと同じように、 私たち全身義体障害者は電気がなくなったら当然身体を動かすことはでき
なくなっちゃう。 私のように一般生活用に使われる義体だとバッテリーに貯蔵できる電気の量はそんなに多
いわけじゃない。 たとえ満タンでも普通に生活しているだけで二三日。 もしフルに身体を動かし続けたとした
ら24時間くらいしかもたない。
  もちろんバッテリーに蓄えられた電気がなくなっても最低限の生命維持用の電力は補助電源から供給さ
れる仕組みになってるらしいからしばらくの間は死ぬことはないし、 たとえ誰もいない山奥で電気が無くなっ
て行き倒れになっちゃったとしても頭についてるアンテナからイソジマ電工のカスタマーセンターに向かって
救難信号が発信される仕組みになっていて、 カスタマーセンターの人が私を探し出してちゃーんと助けてく
れることになってるんだけどさ、 だからといって、 毎回電気がなくなるたびにぶっ倒れてカスタマーセンター
の人に迷惑をかけてるわけにはいかないよね。 突然死んだように動かなくなって、 そのせいで自分の体の
事がバレても困るし。
2393の444:2006/02/25(土) 16:34:34 ID:zf+Yzfmn0
  そういうことを防いで、 少しでも長く義体が活動できるようにするために、 バッテリーに蓄えられている電
気の残りが50%を切ったら自動的に節電モードに移行することになっている。 節電モードになると、 ごく自然
な人間らしい体温を維持するための機能とかエッチをしたときの性感信号とか、 そういう人間らしさを装うた
めにお飾りの機能がまず制限されちゃう。 それから、 義体出力にもリミッターがかけられて、 ある一定以上
の力が出せなくなるようになっちゃう。 今まで軽々と運んでいた箱なのに、 突然重さを感じるようになって、
落としちゃったのはそのせいなんだ。
  昨日はさんざんぱらカラオケで騒いだあげく時計が止まっていたせいで終電に乗り遅れて走って家に帰
るなんて真似をしちゃったから電気をいつもよりたくさん使ってた。 家に帰ってから一応充電はしたけれど、
朝起きた時でもまだバッテリーは満タンにはほど遠い状態だったんだ。 なのに、 こんな力仕事をしたら、 す
ぐ節電モードになっちゃうに決まってるよね・・・。 電気の残りの量には気をつけるようにいつも松原さんから
口酸っぱく注意されてるっていうのに、 調子に乗って重いものを運びまくって、 そんな基本的なことが頭から
すっぽり抜けちゃうなんて、 私って何て馬鹿なんだろう。
(今度同じことをしたら叩きだすからな)
  ふと、 さっきのおじさんの厳しいコトバを思い出して身震いする私。
  あれだけネジを大切に、 人の身体のように扱えって繰り返したおじさんのことだ。 もし、 私がまた義体の
ネジの入った箱を落としちゃった、 なんて知ったら、 今度こそ間違いなくクビなんだ。
  私は看守の出迎えを待つ死刑当日の死刑囚みたいな絶望的な気分で倉庫の入り口のドアを見つめた。
けれど、 おじさんはいつまでたってもこっちに飛んでくる様子はない。 今の箱が落ちる音、 どうやら隣の工
場にいるおじさんにまでは届かなかったみたい。
(助かった・・・)
  胸を押さえてほっと安堵のため息をつく私だけど安心するのはまだ早い。 私が箱を落としてネジを床に
こぼしたってバレないように、 今のうちに早く片付けなきゃ。 こんなところで、 ぼーっと突っ立ってる場合じゃ
ないよ。
2403の444:2006/02/25(土) 16:49:27 ID:CEsS0y510
  私は足元に転がっている、 中のネジをすっかりぶちまけて空になったケースを拾い上げた。 ケースに
は、 『二百本入り』というラベルが貼ってある。
  要は、 床に落ちたネジを200個拾い集めてこのケースに入れればいいってことでしょ。 それで万事元ど
おり。 大丈夫、 ちゃーんと200個、 見つかるに決まってるよ。
  私は作業服を腕を捲りをすると床に四つんばいになって、 散らばったネジを一個一個数えながらケース
に入れていく。 作業服の膝のところが白く汚れちゃったけど、 そんなこと気にしてる場合じゃない。 早く全部
拾わなきゃ。 おじさんが来ないうちに一秒でも早く。
  ほとんどのネジは脚立の近くで一かたまりになっていたから、 190個くらいまではあっという間にケースの
中に収まった。 苦労したのは残り十個を切ってから。 ネジの頭は丸いから、 落ちどころが悪いと棚の下と
か倉庫の隅っことか、 とんでもないところまで転がっていっちゃう。
  私は床に頬っぺたをこすりつけんばかりに近づけて、 棚の底を覗き込んでは、 ジャージを埃だらけにし
ながら棚の底に腕を突っ込んで、 ネジを一つ一つ拾い上げていく。 棚の底なんて、 光がほとんど差し込ま
なくて真っ暗だけど、 それでも私の機械の眼にかかれば丸見えだ。 どんなところに隠れたってゼッタイ探し
出してやるんだからね。

  そして、 十数分という時間が経過。
  埃まみれになりながら見つけたネジの数は199本。 199本目のネジを見つけ出してから、もう5分が過ぎ
ていた。 あと一本、 あと一本がどうしても見つからないんだ。 見つからないんだよう。
(ひょっとしたら、 数え間違えただけで、 もう200本集めてるのかもしれない)
  私は藁にでもすがる思いで、 ケースの中に入れたネジをもう一度イチから数え直してみた。 でも、 やっ
ぱり一本足りない。 どう数えても199本しかない。
『探し物、 見つかりません』  
  昨日引いたおみくじに書いてあった不吉な言葉が唐突に頭に浮かんだ。 これだけ探しても見つからない
なら、 もう、 自分で見つけるのはムリなんだろうか?
2413の444:2006/02/25(土) 16:50:45 ID:CEsS0y510
(私は、 おじさんの言いつけをちゃーんと守ってネジを大切に扱ってたじゃないか。 悪いのは私じゃなくて私
の義体だよ。 義体が私の言うことを聞いてくれなかっただけなんだから、 しょうがないよ。 私は悪くない)
  途方にくれる私に、 頭の中にいるもう一人の私がささやく。
  そうだよ。 義体がいきなり節電モードになっちゃうからいけないんだ。 私は悪くない。
(それに、 どうせ、 誰に見られたわけでもないんだ。 このまま黙ってれば分からないよ)
  このまま放っておく。 そして、 何食わぬ顔をして作業を進めちゃう。 黒ヤギーの提案は、 とても魅力的
だった。 幸い、 おじさんにはバレていない。 そ知らぬ顔をしていれば怒られることもクビになることもない。
  私はネジが一本足りないケースを元通りに箱に収めて、 もう一回箱を持ち上げた。 さっきまでなら片手
で箱を抱えて片手で脚立を握るなんてことができたけど、 節電モードになった身体では、 もうそんなことはで
きない。 両手でようやっと箱を抱え上げて、 うまくバランスをとりながら脚立をよじ登る。
  でも・・・でも、 やっぱり・・・
  脚立を三段登ったところで、私の足が止まった。
  ひょっとして、 このネジのことを何も知らされてなかったとしたら、 頭に住み着いた黒ヤギーの言うがま
ま、 おじさんには黙っていることができたかもしれない。 それで何食わぬ顔して働いてアルバイト料をらっ
て、 満足して家に帰ることができたかもしれない。 私だって自分が一番可愛いんだ。 バカ正直に本当のこ
とを話してバイト料を不意にしちゃうことはないんだ。 せっかく頑張ってここまで働いたんだもの・・・。
  でも、 私は、 このネジが義体に使われるネジだって知ってしまった。 私の義体にも使われているネジだ
って知ってしまったんだよ。 もしも、 ネジが一本足りなかったせいで、 ホントなら完成するはずの義体が完
成しなくて、 そのせいで助かるはずの命が一つ失われたらどうする? そうなったら私は人殺しだ。 直接手
を下さなくたって私が殺したのと同じことなんだ。
2423の444:2006/02/25(土) 16:51:27 ID:CEsS0y510
  私はもう一度後戻りすると、 箱をそっと床に置いて、 思わず自分の顔を両手で覆った。 節電モードにな
って体温維持機能の切れた私の顔は、ひどく興奮しているはずなのにひんやり冷たかった。 そう、 今の、私
の身体は機械仕掛け。 この義体のお陰でやっと生きられてるくせに、 自分のミスを義体のせいにして私は
悪くないなんて、 そんなことがよく言えたもんだ。
  私のせいじゃない――そんなふうに言い訳して知らんふりするなんて、 最低の人間のすることだ。 そん
なことしたら私を信じて雇ってくれたおじさんを裏切るだけじゃなく、 義体の人たちみんなを裏切って、 大切
な自分の身体さえも裏切ることになるんだ。 そんなこと私にはできないよ。 身体がこんなふうに冷たくなって
しまっても、 心まで冷ややかになんかなれっこないんだ。
(ちゃんとホントのことを話しておじさんに謝ろう)
  私は立ち上がって、工場に向かってとぼとぼ歩きはじめた。
  怒られるかもしれないし、 アルバイト料ももらえないかもしれない。 でも、 私がホントの事を言えば、 少
なくともおじさんは新しいネジを作ってくれるだろう。 そして、 私が、 身体だけじゃなく心まで人でなしになる
こともないんだ。
  私は、 ありったけの勇気をふりしぼって、 工場の入り口のドアノブをまわした。

  おじさんは、 私が中身を持ち去って、 空になった棚を片付けているところだった。
「おう、 八木橋。 どうした、 作業は順調か?」
  おじさんは、 棚を止めているネジをドライバーで外しながら言った。
「あ、 あの・・・」
「どうした」
  おじさんは、 ようやく私に向かって顔を上げた。 その、 おじさんの太い眉毛と鋭い目を見ていたら、 やっ
ぱり私は怖気づいちゃって、 後に続く言葉を出せなくなった。
「なんだ、 黙ってちゃ分からないぞ」
  おじさんは苛立ったようにそう言うと、 再び棚のネジを外しはじめる。
  正直に言うんだ。 頑張れ私。 私は両拳をぎゅっと握って唇をかんだ。
2433の444:2006/02/25(土) 17:03:14 ID:CEsS0y510
「わ、 私・・・」
  ついに思い切って私が口を開きかけたそのとき、
「ちょっと、 あなた、 あなた」
  太っちょのおばさんが血相を変えて母屋に繋がる廊下からバタバタ大きな足音をたてながら工場に入っ
てきた。 よっぽど急いできたんだろう。 おばさんの声は荒々しい息で途切れ途切れ。
「あなた、 大変。 今、 イソジマさんから、 電話があって、 CS-20義体用の、 ネジ、 4000本、 大至急、 工場
まで届けてくれ、 だって」
  よりによって私がなくしちゃった義体用のネジが必要になるなんて、 私って何て間が悪いんだろう。 それ
も4000本だってさ。 ちょうどさっき私がこぼした箱、 一箱ぶんじゃないか。おばさんの言葉を横目で聞きな
がら思わず頭をかかえる私。 だけど、 よくよく考えたらとってもヘンだ。
  今はお正月。 お正月なら、 いくらイソジマ電工の工場だってお休みのはず。 急に義体を作らなきゃいけ
ない、 なんてことがあるだろうか? しかもネジが4000本分の義体だなんて・・・かなりの数だよね。
(あ・・・!)
  私は朝に見た映像を思い出して、 思わず叫びそうになる。
  私の頭の中に、 滑走路の真ん中で飛行機がひっくり返って炎を吹き上げている今朝の凄惨な光景が鮮
明に浮かび上がった。
  あの事故だ。 あの事故のせいで緊急に義体が必要になったんだ。 あの飛行機の様子を見たら、 私み
たいな素人でも五体満足で助かる人はそんなに多くないだろうなってことくらい想像できる。 義体化しなけれ
ば命が助からない人だって、 きっと何人もいるはずなんだ。 普通の病院に常備されてる標準義体だけじ
ゃ、 とても足りないくらいね。
  おじさんは、 すぐさま、 工場のはじにあるデスクがいくつか並んでいる一角に走る。 そして、 その姿に似
つかわしくない慣れた手つきでコンピューターを操ると画面を見つめながら力強くうなづいた。
「4000本? よかった。 CS-20用の義体のネジなら在庫ストックがちょうど4000本分あるはずだ」
  ゼンゼンちょうどよくない。 あの箱の中のネジ、 一本たりないんだよう。 言わなきゃ。 私、 一個ネジをな
くしちゃったって言わなきゃ。
2443の444:2006/02/25(土) 17:04:58 ID:CEsS0y510
「あの・・・、 わ 「八木橋!」
  私がもう一度おずおず口を開いた瞬間、 おじさんの声が上からかぶさった。
「ハ、 ハイ」
  思わず気をつけの姿勢で返事をしてしまう私。
「さっきの義体用のネジの入った箱、 分かるな? 悪いが、 あの箱を丸ごとここまで運んできてくれ」
「わわわ、 わかりました」
  おじさんの言葉の勢いに気おされて、 私は、 まわれ右して倉庫のほうに走ってしまう。 倉庫のドアを閉
めた私は、 ドアによっかかったままの姿勢で、 頭を抱えて床に崩れ落ちた。

  どうしよう。 言いそびれちゃったよ。 今更、 私、 ネジなくしちゃいました、 なんて言えるわけないよ。
  もう一回、落ち着いてこの中を探す?
  でも、 さっきあれだけ探したんだ。 そんなカンタンに見つかるとも思えない。 ネジはすぐに必要なんだ。
  やっぱりそしらぬ顔してネジが一本たりないこの箱をおじさんのところに持っていっちゃおうか?
  駄目だ、 駄目だ。駄目駄目。 人の命がかかっているんだ。 そんなことできるはずがないよ。
  じゃあ私、 どうすればいいんだ? どうする? どうする? どうする?

  名案なんか思いつくわけないのに気ばかり焦って、 今度はあてどもなくウロウロ倉庫を彷徨う私。 足元
がお留守になって、 何かに蹴つまづいて転んだ。
(痛いじゃないかよう)
  こんな時に転んじゃうなんて泣きっ面に蜂。 私は、 苦々しい思いで、 私を転ばせたモノを睨みつけた。
  私を転ばせたものの正体は、 30cmくらい長さの細長くて頑丈そうな黒い箱。 なんの気なしにその箱をあ
けると、 いかにもネジ工場らしく、 中にはいろんな大きさのドライバーが入っていた。
 (ドライバー?)
  ふと手にしたプラスドライバーを見て、 急に私ひらめいちゃった。 なんで今まで気がつかなかったんだろ
う。 よく考えたらCS-20形義体のネジなら、 ここにいくらでもあるじゃないか!私の身体の中にいくらでも!
2453の444:2006/02/25(土) 17:06:30 ID:CEsS0y510
今日はここまでです。
いつもどおりの不幸、かつお約束展開ですw
246名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 03:28:04 ID:8SAP28pD0
ネジってあんまり「個」単位では計らない気がする
247名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 09:25:52 ID:tcC61Olb0
ガキの頃、車の往来が激しい道路を自転車で無理矢理渡ろうとして
急停車させてしまったライトバンが、プラスチックの通函に何種類
ものネジを積んでいて、降りてきたおじさんに荷台を見せられて
 「これが混ざっちゃったら大変なんだぞ!」
とこっぴどく叱られたエピソードを思い出した。
248名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 10:20:22 ID:UTrHjkcO0
ディスカウントストアとかだと個数で販売するけど、紙とかネジってグラム売りがほとんどだよね。
どっちでも良いんだけど、紙とかネジって正確に作らないといけないから、グラム売りでも
正確な個数で販売できるってのがあるけどね。
何個くださいって言うのと何グラムください、ってのが同じ意味な訳だ。
ミリ、マイクロ単位で調整してる技術力の証ってことかな。
249無名:2006/02/26(日) 11:31:55 ID:5+GneHZP0
【独りぼっちの夏休み】

 明日からは待ちに待ってた夏休み。一ヵ月半近くある夏休みをどうやって過ごすのか、かなは考えていた。
夏祭りには行きたいし、海でたっぷり泳ぎたいし、山へ行ってキャンプなんてのもいいよね。
もう、明日が待ちどおしいよ。
 というわけで、放課後かなは和真君と祐喜ちゃんを呼んで、夏休みどこへ行くのかを話すことにした。
 「ねぇ、みんなで山か海へ行こうよ。みんなでいくほうが楽しいよ」
 「そうねえ、みんなでどこかへ行くのもいいわよね」
 「俺は断然山だな。なんたって空気がきれいだし、川で釣りできるからな」
 それぞれ色んな意見を出し合ってるうちに、あっという間に日が暮れてきた。
 「でもまさる君には気の毒よね。夏休みの間リハビリしなくちゃいけないんですもの」
 そっか…、まさる君は病院でリハビリしてるんだっけ。せっかくの夏休みなのに一緒に行けないなんて、
何か悪いなぁ。
 「だったら、まさるの分まで遊んだらいいんじゃないか?そんで、写真やお土産を持っていけばいいだろ」
 うーん、そうだね、せめてお土産で行った気分になれば少しは喜んでくれるかもね。
 「じゃあ、まさる君のために何かお土産を買おう。ものすごいものをね」
 「…ものすごいものってなんなのよ…」
 「おっきいおもちゃとか、おっきい地図とか、おっきい食べものとか!」
 「…おいおい」
 …ちょっと調子こいちゃったかなぁ…
 「まあ、とにかく何処へ行こうか考えておこうよ。それで行き先を決めよう」
 いやー、我ながらいい考えだ。これで夏休みの計画のひとつは決まったも同然だ。とりあえず、
何処へ行くのか考えておこーっと!
250無名:2006/02/26(日) 11:32:53 ID:5+GneHZP0
 次の日、ついに待ちに待った終業式を迎えた。まずは全校集会があって、それが終わってから先生から通信簿をもらった。
中身は…秘密ってことで…。そして学校が終わったら、いよいよ待ちに待った夏休みの計画発表だー!ところが…
 「えーっ!二人とも旅行に出かけるってー!?」
 なんと和真君も祐喜ちゃんも旅行へ行くことになってしまったのだ。ガーン!!
 「そ、そんなぁ…なんでこんなときに旅行なんだよー」
 「だってしょうがねえじゃんか。昨日いきなり温泉へ行くって、親父に言われたんだからよ…」
 「ごめんねかなちゃん、パパが早いうちに行かないと混んじゃうからって、勝手に決めちゃったのよ」
 そ、それじゃあ旅行に行く予定のないかなは、その間誰と遊べばいいんだよ…。
 「とはいっても、行けなくなるんじゃないんだし」
 「私達が旅行に帰ってからでも計画は立てることができるんだから、それまでガマンしてね」
 とほほほ、なんてこった…。二人と別れたかなは、重い足どりで家へと帰って行った。こうなったら、おばさんにどこかへ
連れてってもらおう…。
 「ただいまー」
 家に帰ったかなは玄関先で、どこかへ出かけようとするゆきなおばさんに会った。
 「…ゆきなおばさん、もしかして旅行に行くの?」
 「前にも言ってなかったかしら?今日から1週間くらい昔の友達と台湾へ旅行に行くって」
 …ああ、そうだった。そんなこと言ってたっけ。すっかり忘れてたよ。
 「じゃあ、行って来ます。テーブルの上にお昼とお菓子、それとお金を置いてきたから。あと夕食は冷蔵庫とレンジの中に
入ってるから、それを食べてね」
 ゆきなおばさんは、車に乗って出かけてしまった。
 「はあぁ、行っちゃった…。おばさんにどこか連れてってもらおうと思ったのに…」
 しょうがない、家でテレビでも見てようかなぁ。あっそうだ、お兄ちゃんならどこか行こうって言ってくれるかもしれない。
お兄ちゃんが帰ってきたら、休みの日にどこかへ連れてってくれるように頼んでみよう。
 お兄ちゃんが帰ってくるまで、かなはテレビやマンガを見て暇をつぶした。そして…。
251無名:2006/02/26(日) 11:34:27 ID:5+GneHZP0
「ただいま」
 お兄ちゃんだ、やっとお兄ちゃんが帰ってきた。
 「お帰りお兄ちゃん、お仕事の方はどうなのかなぁ?」
 なんて言ってみて、お兄ちゃんのご機嫌を見てから、どこかへ連れてって、って言おうと思った。
でもお兄ちゃんから出た言葉は…。
 「それがね、急に北海道の病院の方へ行かなければならないんだ。前に診た義体患者の容態が悪化して
しまって、緊急に手術が必要になってしまったからね。明日の朝早く出発しなくちゃいけないんだけど、
留守番頼めないかな?帰ってくるまででいいから」
 そ、そんなぁ、それじゃあ、かなはどこへも行けなくなるじゃないかぁ。ひどいよ、お兄ちゃん。
 「ねえお兄ちゃん、何日で帰れるの?」
 「うーん、5日位かな。とにかく容態が安定してから帰る事になると思う。できるだけ早く帰れるよう
にするから」
 ど、どうしよう。これから5日間、かなは独りぼっちになっちゃうよ。夏休みの初めから、こんな事に
なっちゃうなんて…。かなはなんて不幸なんだろう。
 

 夏休み最初の朝、目覚ましのベルの音で目を覚ましたかなは、洗面所で顔を洗いに行った。こんなに寂しい
朝を迎えたのは生まれて初めてだよ、とほほ。顔を洗ったあと、朝ごはんを食べにキッチンに向かった。
…やっぱり誰もいない。テーブルの上にお兄ちゃんが作ってくれたおにぎりと手紙、それとお金が置いてあるだけで、
他には何もなかった。
 「はぁ…一人で朝ごはんか…」
 家に誰もいないと、こんなに広く感じるんだなぁ…かなは寂しさを紛らわせるため、テレビをつけた。でも、
テレビなんかで紛らわす事なんてできなかった。
 「どうしようかなぁ…遊び相手もいないし…とりあえず宿題済ませようか…」
 こんなに暇だったら、ある程度宿題を済ませたほうが、あとで楽になるはずだ。さっそく自分の部屋から勉強道具を
引っ張り出してきて、勉強を始める事にした。
 …宿題に取り掛かる事30分後…
 「だめだー、全然集中できないよー」
 見てくれる人もいなければ、教えてくれる人もいない。一人で勉強するのがどんなに辛いのかが、やってみて解った
ような気がする。これじゃあ、勉強どころじゃないよ…。結局宿題はほとんど手付かずのまま終わってしまった。
 
252無名:2006/02/26(日) 11:40:23 ID:5+GneHZP0
 家にいるのが嫌になってきたかなは、外へ出て気分をリフレッシュする事にした。
とはいっても何処へ行けばいいか、迷った。山の方に行って昆虫取るわけでもないし、
町の方へ行くとしても別に何かを買うわけでもない。しょうがないので、適当なところを
ぶらぶらと散歩する事にした。
 「うー、今日は一段と暑く感じるなぁ」
 朝の天気予報では、関東は最高気温34℃まで上がるといってたから、これからもっと
上がるんだろうな…。どこか日陰になるところはないかなぁ…。なんて探してるうちに、
どこかで見覚えのある白い高級車がかなの目に前で止まった。
 「あら和多田さん、どこかへお出かけですの?」
 あー、やっぱり姫宮だ。
 「ま、まあね。これから遊びに行こうとしてたとこ」
 すると姫宮は、自慢げに自分の行き先を語り始めた。
 「おほほほっ、まあ、そんなところでしょうね。これからわたくしは、海外へ行くところ
でございますのよ。常夏の南の海で、優雅な夏休みをとりますの。あなたには到底ムリでしょうけど」
 うわぁ、こんなの聞いてるとなんかむかついてくるなぁ。
 「まあ、あなたも普通の夏休みを楽しみなさい。それでは、わたくしはこれで失礼しますわ、
おほほほほほ」
 姫宮を乗せた高級車は、かなを残して走り去っていった。
 「ああ、なんか悔しいなぁ」
 ついに姫宮までこの町から出て行ってしまった。なんか、かなの周りだけ知ってる人がいなく
なったような気がする…。
 「…寂しいなぁ…本当に独りぼっちになっちゃったよ…」
 ほんと、どうすればいいんだろう…。


253無名:2006/02/26(日) 11:43:18 ID:5+GneHZP0
行く当てのないかなは、とぼとぼと町外れの方へと歩いていった。気が付けば、橋を渡って隣町の方まで来てしまっていた。
 「もうこんな所まで来ちゃったよ…」
 河川敷の方を歩いてくと、川の側に小さな男の子が一人で遊んでるのを見かけた。あの子も一人なんだ…かなは川の側まで
降りて、男の子に声をかけた。
 「どうしたの?お友達はいないのかなぁ?」
 男の子は寂しそうにかなの方へ顔を向けた。
 「うん…誰も僕と遊んでくれないんだ…」
 「そっか、実はかなも一人なんだ。一緒に遊ばない?」
 かながそう言うと、男の子は驚いた顔になった。
 「え…いいの?こんな僕でも…」
 「いいのいいの、かなも暇だし。それに一人より二人の方が楽しく遊べるじゃない」
 「うん、そうだね。じゃあ遊ぼう、かなお姉ちゃん」
 あら、自己紹介してないのに名前覚えられちゃったよ。
 「君、何て名前?」
 「たくと、星崎たくと。小学三年だよ」
 たくと君かぁ…。ちょっと珍しい名前だね。それに小三かぁ、かなより一つ年下というわけだ。
 「和多田かなって言うんだ。よろしくね」
 「さっきからかな、かなって言ってるじゃない。もう覚えちゃったよ」
 ああそうか、かなは自分のことを名前で読んじゃうからね。すぐに覚えちゃうよね。
 
254無名:2006/02/26(日) 11:44:06 ID:5+GneHZP0
 というわけで、かなとたくと君は、川で石の投げっこをしたり、一緒にかけっこしたりして遊んだ。にらめっこしたり、鬼ごっこもしたっけ。
いっぱい遊んでるうちに、あっという間に日が暮れていった。
 「もうこんな時間だね。帰ろっか」
 かながそう言うと、たくと君はかなの手を引っ張って、帰るのを止めようとした。
 「もっと遊んでいこうよ」
 「でも、早く帰らないとお母さんに怒られるよ」
 「じゃあ、明日遊んでくれるって約束してくれる?秘密の場所連れて行ってあげるから」
 そうだね、せっかく友達になったんだもの、また遊んであげないとかわいそうだもんね…。
 「よし分かった、また明日遊んであげる。その代わり、早く家に帰るんだよ」
 「うん、じゃあ明日の朝10時にここに来てね、絶対だよ」
 たくと君は手を振ってかなと別れた。…星崎たくと君か、けっこういい子だよね。こんな子は今どき珍しいかもしれないな。かなはたくと君が
見えなくなるまで手を振り続けた。


 次の日、かなは朝早く起きて二人分のお弁当を作る事にした。たくと君と2人でピクニックに行くんだから、いっぱい作らないとね。えっと、
何作ろうかなぁ…。
 「そうだ、おにぎり作っちゃおう」
 メインは決まった。次はおかずを作らなくちゃ。そうだねぇ…冷凍庫にから揚げがあったから、それにしますか。後は玉子焼きも入れちゃお。
 でもそれからが大変で、作るのにけっこう時間がかかってしまった。気が付いたら8時半を過ぎてたよ。
 「早く行かないとたくと君に文句言われそうだ。急がなくちゃ」
 かなは急いでキッチンの後片付けを済ませて、服を着替えた。そしてお弁当を入れたリュックと大きな水筒を持って、麦わら帽子をかぶって、
お気に入りのサンダルを履いて、家を後にした。
 今日は風がそよそよと吹いて、けっこう涼しく感じられた。こんなに気持ちいいのは久しぶりだよ。かなはポケットに入れてある携帯の時計
を見て、10時に間に合うように小走りで約束の場所へ急いだ。
255無名:2006/02/26(日) 11:51:06 ID:5+GneHZP0
 「あっ、いたいた。おーい、たくとくーん」
 かなが河川敷に着いたのは、ちょうど10時だった。
 「ごめんごめん、待たせちゃった?」
 「ううん、僕もさっき来たばっかり」
 よかった、遅刻しなくて。小走りしたおかげでちょっと疲れたけどね。
 「じゃあ、早く行こうよ」
 えっ、もう行くの?ちょっと休んでから行こうよー。そんなかなをよそに、たくと君は
かなの手を引っ張って秘密の場所へと連れて行くのだった。

 
 「待ってよー、そんなに早く行かないでよー」
 たくと君はどんどん森の山道を進んでいく。そんなに険しい森を進んでいけるなんて、
たくと君ってけっこう体力あるんだなぁ。かなは荷物の分だけ重いから辛いんだよねぇ…。
 「もう少しだよかなお姉ちゃん、この先に秘密の場所があるんだ」
 そう言ってたくと君は、茂みの中へ入っていった。こんなとこまで行くのぉー。かなは
しぶしぶとたくと君の後を追った。
 「着いたよ。ここが僕の秘密の場所さ」
 たくと君は目の前にある場所を指差した。…そこには大きな木が一本、崖の所に堂々と
立っていた。樹齢は何百年だろうか。とにかくこの木は大きかった。
 「…すごいねぇ、けっこう大きいじゃない」
 「でしょ、ここは父さんがいつも連れてってくれたとっておきの場所なんだ」
 そっか、ここはたくと君とお父さんの思い出の場所なんだね…。だからかなに教えてくれたんだ…。
 「あっそうだ。かなね、たくと君のためにお弁当作ってきたんだよ。もうお昼だし、よかったら
ここで食べようか」
 「うん、ちょうどおなかがすいてたんだ」
 というわけで、大きな木の下で特製お弁当を食べることにした。
256無名:2006/02/26(日) 11:57:48 ID:5+GneHZP0
「うわぁ、おいしそう」
 「かな特製のスペシャルおにぎりとから揚げだよ。いっぱい食べてね」
 「ありがとう、かなお姉ちゃん。それじゃあ、いただきます」
 よかった、たくと君すごく喜んでるよ。では、かなもいただきますか。
 「どう、おいしい?」
 「おいしいよ、かなお姉ちゃん。料理の天才じゃない?」
 いやぁ、それほどでもないよ。まさかほめられるなんてね。
 「あっ、から揚げも食べてよ。それから玉子焼きも。サラダもあるよ」
 たくと君に好評だった特製お弁当は、あっという間に空っぽになった。やっぱ作ってきて正解だったね。
 「ああ、おいしかった。ごちそうさま」
 「おそまつさま。たくと君、少し休んだらこの木に登ってみない?ここから眺める景色は、きっときれい
だと思うよ」
 「うん、そうだね。一度この木に登ってみたかったんだ」
 「じゃあ、そういうことで決まりだね」
 そういいながらかな達は大の字になって草の上に寝転んだ。

 そんなわけで、かなとたくと君はこの木に登る事にした。最初は登るのに手こずったけど、なんとか上の方まで
登ることができた。
 「うわー、高い高い」
 「ねっ、登ってよかったでしょ」
 木の上から眺める景色は、圧巻の一言。遠くの町まで見渡せるくらいいい眺めだった。
 「あっ、僕が住んでる団地だ」
 たくと君は山のふもとにある団地を指差した。たくと君、こんな所に住んでるんだね。
 「ああっ、見てみて、病院も見えるよ」
 左側のはるか向こうには、かながお世話になってる天王山病院が見える。ここから見ると、病院もミニチュアみたい。
すぐ右側にはかなの町の商店街、そこからさらに右側に行くと駅と線路が見えた。
 
257無名:2006/02/26(日) 11:58:43 ID:5+GneHZP0
 「たくと君のお父さんって、いいとこ知ってるんだね」
 かながそう言ったとたん、たくと君は寂しそうな顔になった。
 「あれ、どうしたの?そんな顔して」
 「僕の父さん、最近出張ばっかりで遊んでくれないんだ…。最近ここに一緒に来たのも半年くらい前だったんだ」
 そうだったんだ…たくと君のお父さん、そんなに忙しいんだ…。
 「母さんは他の子とも遊びなさい、って言うんだけど、僕は父さんと遊ぶのが一番楽しいんだ。それに、みんな
僕の事、仲間はずれにするんだ。あいつは好きじゃないから、仲間に入れられないって…」
 たくと君の目から涙がこぼれ落ちた。
 「たくと君、どうしてそんなこと言われると思う?それはね、たくと君が一緒に遊ぼうって言わないからだと思うの。
一人で遊ぶよりも、みんなで遊んだ方が楽しいよ。僕も仲間に入れて、って言う事も大事なんだよ」
 かなが今の学校に転校したばっかりの頃は、誰にも相手にしてもらえなかった。でもその時に和真君が『一緒に遊ぼう
って言わないと誰も遊んでくれないぞ』って手を引っ張ってくれたおかげで、みんなと仲良く遊べるようになったんだ。
それからはみんなと遊ぶときは、『一緒に遊ぼう』って言う事にしてる。やっぱり声をかける事って大事なんだよね。
 「うん、分かったよ。今度学校に行ったときに言ってみるよ」
 そしてたくと君は、かなの近くによって耳元でささやいた。
 「ありがとう、大好きなかなお姉ちゃん」
 うへへへ、ちょっと照れるなぁ。
258無名:2006/02/26(日) 11:59:42 ID:5+GneHZP0
 それからは、二人で木の上でかくれんぼしたり、歌を歌ったりしてすごした。そうしているうちに、だんだん日が暮れ始めてきた。
 「もう夕方だね。そろそろ降りようか」
 かなとたくと君はお互い手を取り合いながら木を下りていった。ところが、下に下りようとしたとき、木の下に置いてあるはずだった
かな達の靴が無くなってたのだ。
 「ど、どうして僕達の靴がないの」
 するとデブと痩せの小学生が二人、茂みの影から顔を出してきた。
 「おいお前ら、そこは俺達の場所だぜ。勝手に登るんじゃねえよ」
 二人の両手には、かな達の靴が握られていた。
 「それ、かな達の靴じゃないの!返してよ!!」
 「やなこった。勝手に登った罰だ、返してやんねえよ」
 そういってデブは、自分が持っていたかなのサンダルを、崖の方へ投げてしまった。
 「ああーっ!かなのお気に入りのサンダルがー!!」
 サンダルはそのまま崖の下へと消えていった…。ああぁ…なんてこったい…。
 「そんじゃあ、こっちの靴も落としちゃおうかな」
 今度は痩せてるほうがたくと君の靴を投げ入れようとしていた。このままだとたくと君の靴まで捨てられてしまう。かなは靴を取り返すため、
木から飛び降りて二人のいる所まで走った。
 「あんた達、こんな事してただで済むと思うなよー!」
 突進してくるかなを見て驚いた二人は、森の方へ移動しながらたくと君の靴をパスし始めた。
 「ははははは、取れるもんなら取ってみろー」
 ふーん、そんなことするんだぁ…とりあえず、こいつらには痛い目に遭わないと駄目みたいだねぇ…。かなは相手に力を見せるために、近くの
木に向かってパンチした。すると当てたところがめり込んで、拳の跡がついた。
 「どうだ、これでもこんなことできると思ってるのかなぁ?」
 絶対的な力(?)を見せ付けられた二人のガキは、怖がってびびりまくっていた。
 「ひいいっ、ごめんなさーい」
 二人はたくと君の靴を放り投げて逃げていった。まったく、こんなことで義体の力を使わなければいけないなんてねぇ…。でも、これで精一杯
だったんだよ。危なかった。
259無名:2006/02/26(日) 12:09:08 ID:5+GneHZP0
「たくと君、もう降りてもいいよ」
 恐る恐る降りてくるたくと君。それもそうだ、かなのバカ力を目の前で見てしまったんだから。
 「黙っててごめんねたくと君、かなね、実はサイボーグなんだ…。だから、さっきのような事ができちゃうんだ」
 でもたくと君はそんなことお構いなしに、かなの側まで駆け寄ってきた。
 「そんなこと関係ないよ。かなお姉ちゃんは僕の靴を取り返してくれたんだから」
 そっか、たくと君にはかなの事、恩人だと思ってるんだ。
 「でも、これはやりすぎじゃないの?」
 たくと君は、さっきかなが殴った木を指差した。ちょっとやりすぎたみたいだね…。
 「じゃあ、早くここから逃げよう」
 かな達は大急ぎで元来た道を降りていった。


 「かなお姉ちゃん、裸足で帰って大丈夫なの?」
 帰り道、たくと君はかなの足元を見て心配そうに言った。
 「平気平気。このくらいどうってことないよ」
 ほんとはサンダル捨てられて相当ショックなんだけど、たくと君に悪いから平気なように振舞ってるんだ。
 「ところで、さっきの二人は誰なの?」
 「学校で有名ないじめっ子だよ。あの二人のせいで仲間に入れてもらえないんだ…」
 なるほど、そういうことだったのか。だったら話は早い。
 「じゃあ、またいじめられそうになったら、あのお姉ちゃんに言っちゃうぞー、って言えばいいよ。そしたらあいつらも手出しできないよ」
 「うん!そうするよ」
 そしてたくと君は、かなに抱きついて、こう言ってくれた…。
 「ありがとう、かなお姉ちゃん。また遊ぼうね」
 そういってたくと君は自分の家へ帰っていった。たくと君の予想外の行動で、かなはしばらく立ち尽くしてしまった。
 「たくと君、意外と大胆な事をするタイプなのかも…。って、まさかね」
 かなは裸足でぺたぺたと自分の家に向かって歩き始めた。なんかいろいろな事があってよかったなぁ。またたくと君と遊べればいいなぁ…。
 また風がそよそよと吹き出した。遊びまくって熱くなった身体にこの風は心地よかった。今度遊ぶときは、たくと君をかなの家に招待しようかなぁ。そう思いながらかなは家に帰っていくのだった。

260無名:2006/02/26(日) 12:09:49 ID:5+GneHZP0
 「へぇ、俺がいない間にそんな事があったのか」
 3日後、旅行から帰ってきた和真君が、かなの家へ遊びに来た。その時にたくと君と遊んだ話をしたんだ。和真君はすごくビックリしてたよ。
 「よかったじゃねえか。これでお前も独りぼっちで過ごさないですんだな」
 「えへへへ、まあね。それでね、今日たくと君がここへ遊びに来るんだけど、一緒に遊んであげてね。でも、絶対いじめたりしないように」
 かながそういうと、和真君は口を尖らせながらつぶやいた。
 「はいはい、分かりましたよ。ちゃーんと可愛がりますよ」
 そのとき、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
 「あっ、来た来た。たくと君が来た!」
 かなは玄関の方へ走った。
 「こんにちはかなお姉ちゃん、約束通り来たよ」
 「いらっしゃいたくと君、今日はお姉ちゃん達といっぱい遊ぼうね」
 「…達って?」
 かなは、はっとして後ろを振り返った。い、いない。和真君がいない。どこ行ったんだろう。
 家の中へ入ったかなとたくと君は、リビングの方へ入った。すると…!
 「んばぁ―――――――!!」
 突然変な仮面をかぶった和真君が目の前に現れた!!
 「んぎゃあ―――――――――!!」
 かなは驚いて腰を抜かしてしまった。いきなり現れるんだもん、あービックリしたー。
 「かなお姉ちゃんって、強い割には怖がりなんだね」
 驚いたかなの姿を見て、たくと君はけらけらと笑い出した。
 「なんだよ、お前が驚いたら意味ないじゃんか」
 仮面を脱いだ和真君もあきれた顔をしてる。こんな姿をたくと君に見られるなんて…。もう最悪だよ…。
261無名:2006/02/26(日) 12:26:16 ID:5+GneHZP0
 こんにちは、無名です。今回はかなちゃんのお姉さんぶりが十分に発揮される
お話ですが、いかがでしたか?でもいじめっ子二人に対して、かなちゃんがした行動は
ちょっとやりすぎかな?なんて思ったりしています。
 この次のお話もかなちゃんのお話です。神無月先生のファンの方はもう少し待っててくださいね。
>>3の444さま
 前に書き忘れましたが、ヤギーさんって、けっこう気が強いのかな、って思ってしまいました。
 (かなちゃんが優しすぎるだけかも知れませんが)
 最近、ここが過疎化してるような気がします。皆で盛り上げていきましょう。
 接続を切って再接続するのは、ちょっと無理みたいでした。(一度切ってしまったら、繋がりにくく
なってしまったので。)
 あと、「眠れない夜」で、股が加熱した理由ですが、後のお話でそのことについて書く予定ですので
もう少し待っていてくださいね。
262名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 19:24:14 ID:cjeAtJ8T0
>けっこう気が強いのかな
まあ、強いほうかと。
無名さんもがんばってください。僕たちも応援しますよ。
263名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 19:29:29 ID:cjeAtJ8T0
気が強いというより、意思表示が強いといったほうが正しいかな。
かなちゃんの場合は優しいだけじゃなくて、思いやりがあったり、
他人のことに気を使うタイプじゃないかと。
2643の444:2006/02/26(日) 23:42:28 ID:fdmZgIJF0
>>261
小学生らしい、かなちゃんのほのぼのした目線で語る物語がいいなあ
と思います。小学生向けのテレビドラマを見ているような感じです。
気付いてみればもう八話目なんですよね。物語を1〜2回の連載で
短くテンポよくまとめる構成力にはいつも驚いています。

ところで、今までかなちゃんの義体は並みの小学生と同じくらいなの
かなあと思っていたのですが、今回の話で実は大人顔負けの力がある
ことが分かりました。でも、そのくらいの力があれば、庄野君を自力で
助けられたのでは、とも思ったのですが、実際どのくらいの設定なので
すか?

ヤギーは間違いなく気が強いほうでしょう。就職活動編では怒って席を
立ち、検査入院編では茜ちゃんをひっぱたき、ナンパ編ではジャスミンの
なにげない一言にぶち切れたりしているので。
2653の444:2006/02/27(月) 03:09:49 ID:/JlPtvqW0
連投スマソ
ヤギーと藤原が知り合って愛が深まっていく過程を電車男ふうに義体板っていう架空の
掲示板上で、藤原が住人に全身義体障害者がどういう人たちなのかを教わりつつ
自らの体験をレポートしていく形式でやってみたら面白いだろうか、なんて考えています。
で、2chの形式をまんまパクッた(もちろんカキコミはできないけど)板を作ってその
スレッドの一つで物語を展開させていこうかと。

その板には2chと同じように、藤原の話が展開するスレの他にもスレタイが
いくつも並ぶわけですが、そのスレッドタイトル(中身はありません。スレタイだけ)
を考えるのに、みなさんに協力願えないかと思っている次第です。
だいたい40タイトルくらい必要なのですが、一人で考えるとどうしてもタイトルの
発想の仕方が似てしまうと思うので、八木橋ワールドの住人になったつもりで、
どうか考えていただけないでしょうか?
一応下記が参考までに私が考えてみたものです。

1: サイボーグって差別用語なの? (522) 2: 新しい愛のカタチ 七粒目の涙 (426) 
3: パラリンピックってインチキだと思う香具師の数→ (66) 4: 【訴えてやる】サイボーグ協会【会費高杉】 (242)
5: 深町香織が実は三十過ぎのババアの件 (422) 6: 義体フェチ (26) 
7: 義体患者のリハビリ日記Part6 (235) 8: 感覚遮断 (869) 
9: 好きになった人が全身義体障害者でした (280) 10: 【完全義体】ギガテックスVSイソジマ電工【全身義体】Part6 (610)
11: 義体ってセックルできるの?part5 (423) 12: あなたがもう一度食べたいもの (319)
13: 義体化一級ってぶっちゃけロボットと同じだろ (231)
266無名:2006/02/27(月) 12:43:57 ID:GlNn5RwQ0
>>264
 庄野くんの時は、助けたくても助けられなかったんです。自分がサイボーグ
だということが分かってしまいますので。今回は、いじめっ子を驚かすために
力を使いました。それでもかなちゃんは、この力を使うことはしたくないんだ
と思います。あと設定ですが、今のところ詳しい設定を作っているところなので、
後々発表したいと思います。
267無名:2006/02/27(月) 19:31:48 ID:GlNn5RwQ0
>>266
とはいっても、このときのかなちゃんは結構無理をしてます。
というのは、普通それだけの力を出すことは、かなちゃんの義体ではかなりの
オーバースペックなんです。だからあの時「危なかった」って言ってるのは
これ以上力を出せない、もういっぱいいっぱいだったということです。
腕が壊れちゃいますからね。
 そのことも改めて設定に書こうと思います。
268名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 22:25:39 ID:h8BrFlHI0
14: ヌルポして1時間ガッされなければ神29 (77) 15: ↑と↓のタイトルを合体させるスレPt.60 (881)
269名無しさん@ピンキー:2006/02/28(火) 12:57:57 ID:qto3acYa0
ネジって、雨樋用のを売っていたことあるんだけど、数で数えないで、重量で
図っていました。箱は1000本入りで表記してるんですけど、無くす分を考慮
して10本入りの子袋を100袋作っていくと5〜6本は余るようになっていました。
水道のパッキンとかの小物類は、殆どこのやり方です。きっちりの数より多めに
入っていることでトラブルを無くしているようです。
270名無しさん@ピンキー:2006/02/28(火) 22:56:13 ID:8PUJhrfH0
3の444氏援護ネタでひとつ。

一般的なネジは確かにグラム売りですが、特殊なネジとしてチタン製のネジがあります。
軽量・高剛性、高耐久性と、性能面ではいうことなしなんですが、いかんせん値段がバカみたいに高い。
ざっとネットで調べたら、M6のボルトで売価が一本1500円ぐらいします(汗
値段が値段なので、このぐらいになると一本売りが普通みたいです。

ちなみに、チタンは生体に対する悪影響が少ないので、メガネのフレームやインプラント、人工関節などに用いられたりします。
これまたサイボーグにうってつけなわけで。
271名無しさん@ピンキー:2006/02/28(火) 23:04:39 ID:R263APaf0
攻殻だとサイボーグの頭蓋骨はチタンって設定だったかな。
2723の444:2006/03/01(水) 02:55:46 ID:FVoFxLFc0
  ネジの一本くらい抜いたところでたいしたことはない。 次の定期検査の時、 松原さんにちょっとガミガミ
小言を言われるのを我慢すればいいだけのこと。 とはいえ、 ネジを外すのはちょっと厄介。 いくら私の身体
が機械でも、 安っぽいロボットじゃあるまいし、 見かけは一応普通の人とそっくりにできているから、 身体の
表面のカンタンに取れそうな場所にネジがついているわけじゃない。 まさかこんなところで腕を外すってわけ
にもいかないし、 だいいち私が腕を外したらいったい誰がネジを外すんだよってことになる。
  自分一人でなんとかネジを外せそうなところで私がぱっと思いついたのは電源の入出力端子。 私の左
脇腹には、 まるで家の壁みたいに電気出力用のコネクターが、 右脇腹には掃除機みたいに充電用のコン
セントプラグが納まっている。 確か両方ともコネクターやプラグの横のすぐ外せそうな位置にネジがついてい
たと思う。 右利きの私が外しやすそうなのはやっぱり右脇腹ってことになるのかな。
  そう思った私は例の200個入りのネジケースとドライバーを持って、 棚の陰になって倉庫の入口から直接
見えない位置まで移動した。 これで、 いつ誰が入ってきてもなんとか身づくろいする時間の余裕があるは
ず。 着ている作業服の右側の裾をちょっとだけまくり上げて端子の継ぎ目を隠すために貼られた肌色のカ
ムフラージュシールを剥がす。 そして、 シールの下から現れた肌と同じ色に塗られたコンセントカバーを指
先でそっと押すと、 安っぽいオモチャみたいにバネ仕掛けでパカっとカバーが開いて、 皮膚の下に隠されて
いるコンセントプラグやら暗灰色の機械類が顔をのぞかせる。 外見をどんなに普通の身体に似せようとも
結局自分の身体は機械なんだって思い知らされるいやーな瞬間。 でも、 ここまでは、 毎晩充電の時にやっ
てる動作だから慣れっこだ。
  いつもなら、 このあとズルズルとコンセントプラグを身体の中から引っ張り出して充電することになるわけ
だけど、 今日はちょっと勝手が違う。 私は身体を「くの字」に折り曲げて、 コンセントプラグの横っちょに確
かに銀色のネジがついているのを確認したあと、 手に取ったドライバーのさきっちょでためらいがちにネジ
山に触れる。 でも緊張の余り身体が強張って、 うまく手が動いてくれない。
2733の444:2006/03/01(水) 02:56:49 ID:FVoFxLFc0
  義体の中身の部品一つ一つにまで痛覚センサーがついてるわけじゃないから、 別にネジを外したところ
で身体に痛みを感じるわけじゃない。 だけど、 自分の義体に使われている部品を自分で外すのはやっぱり
恐いし、 気持ち悪いよね。 でも、 ためらっている場合じゃないんだ。 早くしないとおじさんが来ちゃうよ。
(大丈夫、 大丈夫に決まってる。 ネジ一本抜いたくらいで壊れちゃうほど義体はやわじゃない)
  私は、 そう、 強く自分に言い聞かせたあとドライバーを握り直して、 ようやく慣れない手つきでネジを外
し始める。 工作なんかてんで苦手な私だからドライバーを使って作業するなんて今までまるでしたことないの
に、 まさか自分自身の身体でこんなことをする破目になるなんて夢にも思わなかったよ。 とほほ・・・。
  ある程度ネジがゆるんだところでネジの頭を指でつまんでくるくる回すと、ネジは思いのほかカンタンに外
れた。 ネジを取ってしまったけど、 とりあえず身体が動かなくなることもないし、 義眼ディスプレイに義体の
異常を知らせる情報が表示されることもなかったから、 とりあえずほっと胸をなでおろす。 でもまだ油断は
禁物だ。 念のため箱から新品のネジを一個ケースから取り出して自分の身体から外したネジと見比べる。
長さも太さも見た限りは全く同じ。 試しに新しいネジを、 今外したばかりのネジ穴に突っ込んでくるくる回して
みると、 確かな手ごたえとともにネジは穴の中に入っていった。 どうやら間違いなく同じネジだ。
  私はふうっと一つため息をつくと、 今まで自分の身体の一部だったネジと、 新しいネジと二本、 ケース
の中に入れてパチンとフタを閉じた。

「こら、 遅せえぞ! 何やってる! 急ぎだって言っただろうが!」
  義体用ネジが4000本、 ようやくのことで一個たりとも違わず揃えたその箱を私が抱え上げたのとほぼ同
時に、 勢いよく倉庫のドアが開いて、 おじさんの怒号が飛んだ。
「す、 すみません。 三段目に載せた箱を下ろすのに手間取ってしまいました・・・」
  私はとっさに思いついた嘘をつく。 その瞬間足元がふらつき、 よろめいた。 節電モードになってしまった
私の義体出力は普段の半分くらいに制限されてしまう。 そのせいで、 さっきまで軽々と運んでいた箱が今は
やけに重たく感じた。
2743の444:2006/03/01(水) 02:57:36 ID:FVoFxLFc0
  おじさんは、 あわてて私に駆け寄ると、 反対側から箱を抱えてくれた。
「どうした、 さすがにへばったか?」
  私と一緒に箱をかかえたおじさんは、 私と向かい合う格好で後ろ向きに歩きながら、 さっきとはうってか
わって優しげな声を私にかけた。
「すみません。 ちょびっとだけ」
  私は、 思いのほか優しいおじさんを意外に思いつつも、 まだ平気なんだってことをアピールするために
笑ってみせた。
  ホントはゼンゼン大丈夫。 ちっともへばってなんかいない。 義体は疲れなんか感じないんだ。 ただ、 電
気がなくなっていつものような力が出せなくなっちゃっただけだよ。 でも、 おじさんには、 私のも笑いはただ
の強がりと受け取られたらしい。
「無理するな。 あれだけの量の箱を、 これだけの時間で片付けたんだ。 疲れて当然だわな。 気付かない
俺が悪かった」
  おじさんはくるくる変わる私の顔を見て、目尻と口元を緩めた後、 急にまたもとの鋭い目つきに戻って、
低い声で言った。
「今朝の飛行機事故、 知ってるよな?」
「はい」
「人が大勢死んだ。 それから大勢大怪我をした」
「はい」
  私の頭に、 また今朝の凄惨な光景が蘇る。
「このネジはな、 大怪我をした人たちを助けるために出荷されるんだ。 一分でも早く届けにゃならん。 だか
ら俺も焦っていた 。お前のことまで気が回らなかった。 すまんな」
  おじさんはそう言うと、 じっとおじさんのことを見つめていた私から、 照れくさそうに目をそらした。
  私の思ったとおり、 やっぱりこのネジは今日の飛行機事故で大怪我した人を助けるためのものだった。
だったら一刻を争うのは当然のこと。 頭の中が真っ白けになって、 他のことなんか何にも考えられなくなっ
ても無理ないよ。 私ごときに気が回らなくてもしょうがないよ。
2753の444:2006/03/01(水) 02:59:00 ID:B0BB+EMU0
  私、 最初おじさんのこと、 なんて愛想のない人なんだろうって思った。 恐いだけの人かと思っていた。 で
も、 違うよね。 私には分かる。 おじさんが厳しいのは自分の仕事に自信と誇りを持っているから。 でも、 そ
れだけじゃない。 おじさんは、 ネジ一本でも人の身体と同じだと言ってくれ、 義体用のネジを一秒でも早く納
めるために他のことになんかまるで気が回らなくなってしまう。 それはおじさんが、 見ず知らずの人の命でさ
えも、 まるで自分のことみたいに考えてしまうとっても優しい人だからだよね。
  そんなふうに物思いにふけりながら、 おじさんに導かれるままに歩いていくうち、 私はいつの間にか工場
の外に出ていた。

  門の外に白い軽トラックが一台止まっている。 きっと私が倉庫で自分の身体のネジを外しているときに、
おじさんが用意したんだろう。
  二人がかりで荷台に箱を載せるのももどかしく、 おじさんはトラックの運転席に飛び乗った。
「助かるといいですね! このネジで人がいっぱい助かるといいですね! たとえ機械の身体になってしまって
も、 生きてさえいればきっといいことありますよね!」
  私はトラックの窓に手をかけると、 窓ガラスを隔てて運転席に座っているおじさんに聞こえるように大きな
声で叫んだ。 半分はおじさんに向けて、 でも半分は、こ れから義体化手術を受ける私の知らない人たちに
向けて。
  たとえ命が助かっても、 生身の身体を失って、 機械仕掛けの身体になってしまうなんて死んだほうがま
しだ。 せっかくもらった命なのに、 ひょっとしたら昔の私みたいにそんなふうにを考えてしまう人もいるかもし
れない。 もしそういう人に会ったなら私は言ってあげたい。 あなたの身体の中のネジは、 こんな心の暖か
い人が作ってくれたものなんだよって。 だから、 決して冷たい機械なんかじゃない、 ちゃんと心の通った立
派な身体なんだって言ってあげたい。
2763の444:2006/03/01(水) 02:59:44 ID:B0BB+EMU0
「そうだな」
  おじさんは車の窓を開けると、 窓越しに青い空を見上げた。
「いっぱい助かるといいな。 助かってくれてよかったと思ってくれるといいな」
「あなた、 急ぐのはいいけど、 気をつけてよ。 あなたが死んだら元も子もないんだからね」
  いつの間にか私の横に来ていたおばさんが、心配そうにおじさんに向かって釘をさす。
「大丈夫、 じゃ、 あとはたのんだぞ。 八木橋も頑張れよ」
  おじさんは軽く手を上げたあと、 挨拶代わりにクラクションを一回鳴らした。 おじさんの運転するトラック
はみるみる小さくなって、 やがて曲がりくねった道の向こうに消えた。

  さあ、 もう一頑張り。
  気合を入れなおすために私はその場にしゃがんで靴紐を結び直す。
(あれ?)
  紐を結ぶ私の視界の端っこに気になるものが見えた。
  男ものの、 ちょっと大きめの作業服を着ている私は、 裾のところを折って丈を短くしてズボンを履いてい
る。 その、 えり状に折ったズボンの裾の中に何か小さな物が入っている。
(なんだろう)
  袋状になった裾に手を入れて、 手探りにその小さなものを手にとった。
  ネジだった・・・。 それも二個。 なんで二個?
  機械の身体のくせに、 背筋を冷たいものがすうっと走った気がした。
  これ、 間違いなくさっきの義体用のネジだよね。 何度探しても見つからないと思ったら、 こんなところに
紛れ込んでいたなんて・・・。 四つんばいになってネジを探していたときに紛れ込んじゃったに違いない。 で
もさ、 何で、 二個も出てくるのさ。 見つからなかったネジは一個だけのはずなのに。 私、 ひょっとしてネジ
の数、 数え間違っちゃったんだろうか? あんなに何度も数え直したのに・・・。
「うー」
  私は靴紐を結びかけたまま固まってしまう。
2773の444:2006/03/01(水) 03:00:04 ID:B0BB+EMU0
「あら、 どうしたの?」
  おばさんが心配そうに私に声をかける。
「なんでもないです。 なんでもない」
  私はあわてて立ち上がると、 手にしたネジをポケットの奥に突っ込んだ。
(どうしよう、 今、 ここにネジが二個あるってことは、 おじさんの箱の中のネジ、 確実に一個たりないよ)
  私は一瞬走ってトラックを追いかけようかな、 と思ったけどすぐに思いなおす。 今更トラックを追いかけ
たって、 いくら私の足でも追いつけるはずないし、 この電気の残量じゃ、 行き倒れて恥をさらすのがいいオ
チだ。
「義体用のネジなんて、 とても大事なものですよね。 あの、 もしも、 もしもですけど、 ネジが届いてみたら一
本少なかったなんてことになったら、 やっぱり大変なことになっちゃいますよね」
  私は恐る恐る、 おばさんに聞いてみた。
「ずいぶん心配性なのね」
  おばさんは、 まあ、 あきれた、 とでも言いたげに目を丸くしてみせる。
「ネジはとっても小さい部品だから失くしやすいの。 だから最初から失くすのを見越して、 例えば二百個入り
のケースだったら二百個きっちり入っているわけじゃなくて、 二三個多く入れることになってるの。 だから一
本くらい少なくても何の問題もないわ」
「なんだ、 そっかー。 そうなんですねー。 はははは、 はぁー・・・」
  私の力ない笑いが途中からため息に変わる。
  あんなに一生懸命ネジを探したのに、 自分の身体のネジを外してまで二百個ネジを揃えたのに、 私の
血のにじむような(いや血なんか流れてないけど、このさいそれは置いておいて)努力は結局無駄だったって
ことだよね。 あー、 どうして私っていつもこう間抜けなんだろう。
  緊張が解けて身体中の力が抜けた私は、 そのまま地面にへなへなへたりこんでしまう。 
「あら、 どうしたの? もう疲れちゃった? でも、 あともう一頑張り。 お給料分はきっちり働いてもらいますか
らね」
 おばさんは私を見下ろしながら、 大きな身体を揺さぶって笑った。
2783の444:2006/03/01(水) 03:04:35 ID:TaI9JFBe0
今日はここまでです。
>>269さんの案を取り入れてみたのですが
>>270さんの言うように義体用のネジがチタン製の高価なネジだとすると、
余分に入っているのもおかしな話ですね。
うーん、まとめサイト掲載時にはどうやってまとめよう。
ともあれ、ネジ工場、次回で最終回です。
279名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 15:11:55 ID:2tsFftzX0
>278
義体用にチタンのねじがたくさん出回ってる世界だと安くなってるかも
280名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 20:47:19 ID:8IMeVrcb0
3の444さん、見事な切り返し・・・といいたいところですが、

200本のネジに2,3本余計に入っているとして、203本。
ヤギーが数えたネジは、「"200本"に1本足りない」。

・・・・・・やっぱり足りないんでは?(汗
281名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 21:07:51 ID:S0bL3lu80
>>280
他の200個入りねじの箱の余分まわせば全部で2000個は超える
282名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 21:08:02 ID:NY00dykt0
>>280
他のケースに余分が入ってるだろうから無問題。
合計20ケースあるんだから・・・
283280:2006/03/01(水) 21:14:59 ID:8IMeVrcb0
なるほど。それを聞いて安心しました。


・・・つか、早合点テラハズカシスorz
284名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 00:15:32 ID:H0ciS2wG0
一山百円のネジ<チタンのネジ
チタンのネジ<<<<<<人命

だから、いくら一本何千円なんてネジでも義体用ともなれば余分が用意されるはず。
製造工程でミスがゼロでも、運搬中とか義体組立中にミスが起こらないはずは無いし。
多分二百個入ケースそのものが一個多く入ってるとか、そういうレベルなのでは。
285名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 00:29:08 ID:H0ciS2wG0
多分、ヤギーはあとで見つけたネジを自分につけたんだろうけど、ネジって素人が扱うと
怖いシロモノだからどうなるかドキドキだよ(ぉ
ネジ締めって甘いと抜けてくるし、きつく締め過ぎるとネジ山がバカになるし。
漏れは電子機器のネジしか回したことがないヘタレなんで、ものすごい力がかかる上に
人の命がかかってるバイクのネジなんて怖くて怖くてとても回せないよorz
義体のネジなんてモロにバイクのネジみたいなものだからかなり危ない気がする。
膝関節なんて普通に立ったり歩いたりだけで体重の十倍とかの力がかかるわけだし。
場所にもよるんだろうけど、下手に素人が義体のネジなんて回したら、一カ所失敗
するだけで変な風に体に歪みが発生して、体全体が突然バラバラに!なんてスプラッタ
事件にまでなりかねないような。

(さらに設計耐用年数なんて怖い言葉が頭にチラついたけど、気にしないでおくことにしようw)
286名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 00:35:48 ID:eF45OkyW0
容赦なく自分で車(二輪&四輪)のブレーキ周りをバラす俺が来ましたよ。

ネジって本当は、サイズごとに適正トルクが決まってるんだよね。
ネジによっては、頭に記号で適正トルクが書いてある。

初心者の頃は、ネジをねじ切ったこともしばしば。
「ぐにゅ」って手ごたえがあったと思ったら、バキン。
で、一巻の終わり。さよならヤギー(違う

#ちなみに、折れたネジは、逆ネジが切ってある専用のドリルで穴を開けていくと抜けてきます。
287名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 08:15:25 ID:R62j5V4V0
>>286
ネジの頭の番号は硬度の表示だと思ったんだが。
288名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 14:11:08 ID:vD9xqdYt0
サイボーグの外装のねじって簡単に外せないように頭が特殊な形状をしてるような気がする。
289名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 20:02:46 ID:/ByEX6EO0
トルクスねじくらいホームセンターに売ってる。
290名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 21:31:34 ID:1S/UYLKQ0
番号は硬さのはず。
熱が加わると安もんボルトはポキっと逝く。
だからマフラーのフランジとかに使うボルトはカーショップで買った方が良い。
もしくはヤギーに頼んで職場でクスネてきてもらうか。
291名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 22:05:06 ID:+FiBGFoX0
半導体とかやってますが、まずネジ締めと半田が基本です。
先輩にネジ締め3年半田7年といわれました。
とにかく感覚で覚えるものなので、経験がものを言う世界です。
292名無しさん@ピンキー:2006/03/03(金) 00:31:16 ID:Oxl6uAbR0
>>287
ボルトの頭の番号は主にボルトの材質(材料・熱処理)からくる強度区分を示す。
硬度はある程度強度に比例するが、厳密には全く別物。

>>286
ボルトサイズ毎に適正トルクが決まっているわけではない。(目安はあるが)
もちろんボルトサイズも関係するが、ボルトで締められる被締結物の弾性率とボルト
自体の弾性率なども適正トルクを決める要素である。
したがって、同じサイズ・同じ首下長さのボルトでも、ステンレス製(通称SUS製)、
クロームモリブデン鋼(通称クロモリ)製、アルミ製、チタン製で全て適正トルクは
違ってくるし、被締結物がアルミ製なのか鋼材なのか、厚いのか薄いのかでも全部違
う。
ボルト締結のメカニズムは、被締結物・ボルト双方のバネ弾性で被締結物を締め付け
るものだが、双方のバネ弾性による応力を超えた外力が加わると被締結物のいわゆる
”口開き”が発生する。
また、”ねじ切る”とは、ボルトの弾性限界を超えて塑性域に達するほどの軸力をボ
ルトに与えてしまった状況を言う。

>>291
私は機械設計をしてるが、ボルト締結は感覚で覚えたり経験がものを言う世界ではな
く、きちんとした理論がある世界。

興味のある貴兄は、JISハンドブックの『ねじ』あるいは機械工学便覧でも読んでみ
られよ。
293名無しさん@ピンキー:2006/03/03(金) 12:09:27 ID:obiIzrva0
設計の段階でボルトの種類とトルクは指定するんじゃないの?
294名無しさん@ピンキー:2006/03/03(金) 14:46:04 ID:UEKocQZ90
>>292
『興味』程度で気軽に読める値段じゃないぞ、JISハンドブック。

>ボルト締結は感覚で覚えたり経験がものを言う世界ではなく、
>きちんとした理論がある世界。

だから、その理論を正確に、均一に行うためには感覚と経験が必要だ、ぐらいに汲んでやれよ。
そこで言葉をとめたら、現場軽視に聞こえる場合もある。
設計のミスを現場ベテランが発見するなんてことだってありえる話だろうに。
295名無しさん@ピンキー:2006/03/03(金) 17:51:24 ID:tjKBQ1ya0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
このスレはイソジマの技術者が義体の強度設計について議論するスレになりますた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
296名無しさん@ピンキー:2006/03/03(金) 22:08:54 ID:HE9xtPrP0
>>295
まずは人工マンコの強度について
297名無しさん@ピンキー:2006/03/03(金) 23:30:39 ID:2GKhEjWt0
手ルクレンチ論者とトルクレンチ論者の論戦マダー?チンチン
298名無しさん@ピンキー:2006/03/04(土) 10:33:10 ID:LFNbVOIq0
東海地方だけかも知れんが、
いまテレビで人工ボディなるものがやっている。
ほんと人間そっくりの義手、義足。
同時に肉体の一部をなくした人って、
それをコンプレックスに思っているんだなってこと。
これ見ると八木橋の気持ちもわかるよ。
299名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 03:10:08 ID:4iT/KgAa0
もまいら、そんな超専門話で萌えるなんて猛烈にサイボーグフェチですね。
もれついていけなかったよ・・・orz
もれだって・・・もれだって攻殻機動隊の欄外のサイボーグ蘊蓄に素でついていけるほどにはマニアックなのにorz
(全く考え込まずに普通にスラスラ読めるということ。)
銃夢のあちこちにツッコミ入れながら読んでるくらいにはマニアだというのにorz
300名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 03:13:23 ID:4iT/KgAa0
・・・とりあえず師匠と呼ばせてください。>超サイボーグマニアのエロいひとたち
301名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 09:29:10 ID:F0DTAqh10
マニアかどうかは関係ないよ。
萌えるか否かだ。
302無名:2006/03/05(日) 12:52:40 ID:iWXayNXF0
【思い出の場所】

 「ねえ、今日こそ連れてってくれるんでしょ?もう待ちくたびれちゃったよ」
 8月も半ばに入ったある日、かなは慶介お兄ちゃんにある所へ連れて行ってくれるように頼んでいた。でもお兄ちゃんは忙しくて、かなの言う事に耳を貸してくれなかった。
 「ごめん、今は忙しいから、また今度な」
 そういって、そそくさと病院へ出かけてしまった。
 「もー、約束したのにー。また今度っていつなんだよ」
 ぷーっとほっぺをふくらませて、かなはぷんぷんと怒って自分の部屋に入った。
 あーあ、どうしようかなぁ…どうしてもあそこへ行かなくちゃ駄目なのに…ベッドの上でゴロンと横になって、かなは何とかしてあの場所に行けないかと考えていた。このままじゃいつ連れてってくれるか分からない。もし連れてってくれなかったら…。
 「うーん、どうしたらいいんだろう…」
 電車やバスで行くとなると、どうしてもお金が多くかかってしまう。今持ってるお金はどのくらいあるんだろう…。かなは机の引き出しにしまってある貯金箱を出して、金額を数えてみた。
 「…全部で四千円ちょっとか…」
 これで往復できるかどうかのお金しかないなぁ…せめてもう千円あればなぁ…。かなはあとのお金をどうすればいいか考えた。
 ここからあの場所へはそんなに遠く離れていないから、電車とバスを乗り継げばなんとか行けるはずだ。でもけっこう乗り変えないといけないからお金がかかるんだよね…。
 「そうだ、ゆきなおばさんにお金を頂戴って言えばいいんだよ」
 さっそくかなはおばさんのいる二階のリビングへ行く事にした。
 「おばさーん」
 おばさんには無駄使いは駄目って言われてるんだけど、あそこに行くためにはどうしても必要だから、なんとかお金を手に入れたいんだ。
 「あら、どうしたのかなちゃん」
 「あのね、お友達と行くところがあるから、千円ほどほしいんだけど」
 ごめんねおばさん、どうしてもお金が必要なんだ…。
 「しょうがないわね、でも無駄使いは駄目よ」
 やったー、これでなんとか行けるぞー!
 「ありがとう、おばさん!」
 とりあえず行くだけのお金はできたぞ。あとはそこの場所へ行って…そうだ、お花も買ってこないといけなかったんだ…とりあえずそれはあとで考えるとしよう。
303無名:2006/03/05(日) 12:53:30 ID:iWXayNXF0
次の日の朝。いつもより早く起きたかなは、さっさと朝ごはんを済ませて外へ出る準備をした。もちろんあの場所へ行くために。
 「うーん、こんなもんでいいかなぁ」
 あそこへ行ったらまず会わなくちゃいけないから、ちゃんとした格好をしなくちゃ。そうだねぇ…、あれも着たいし、こっちも捨てがたいし…。
 「よし、これでいいや」
 かなが選んだのは、白くて花柄の模様が入ったワンピース。それと麦わら帽子とリュックを持って出かけることにした。
 「かなちゃん、これをもって行きなさい」
 かなが出かけようとしたとき、おばさんはお弁当が入ったランチボックスを渡してくれた。
 「あ、ありがとうおばさん」
 行き先言わないで行くのに、なんか悪いなぁ…。
 「気をつけて行くのよ。最近は物騒な世の中だから」
 「はーい、分かったよおばさん」
 サンダルを履いたかなは、元気な声でいつもの挨拶をした。
 「行ってきます」
 こうしてかなは、一人で約束の場所へ出発したんだ…。
 

 
304無名:2006/03/05(日) 12:55:15 ID:iWXayNXF0
 ガタンゴトン。ローカル線の線路を電車が走る。その電車にかなは乗っていた。あの場所に行くために。
 「ここまで一人で来るのは初めてだから、ちゃんと行けるかどうかちょっと心配だなぁ」
 まず電車で終点まで行って、それからバスで目的地の近くまで移動する。そこからは歩いていかなくちゃいけないんだ…。
 「とりあえず場所は覚えてるんだし、なんとかなるかも」
 なーんてのんきな事をいってるうちに、もう終点に着いた。電車から降りたかなは、バスが来るまで近くのスーパーで必要なものを
買い揃える事にした。
 とりあえず買ったのは、お花とペットボトルの水と飲み物、それとお菓子を少し。これで準備完了だ。
そろそろ時間だからバス停へ急がなくちゃ。
 かなは急いでバス停へ走った。バス停に着いたときにはもうバスが止まっていた。
 「すいませーん、乗せてくださーい」
 ドアが閉まる寸前に、かなはバスに乗り込んだ。ふーっ、ぎりぎりセーフ。こうしてかなを乗せたバスは目的地に向かって
走り出した。ここから終点まで乗らなくちゃいけないから、けっこうお金かかるんだろうな…。でもここまで来たんだから、もう後へは引けない。あそこへ行くって決めたんだから、覚悟を決めなくちゃ。

 
305無名:2006/03/05(日) 13:04:56 ID:iWXayNXF0
バスは目的地に向かって走っていく。バス停に止まるたびに乗客は次々と降りて、終点に近くなる頃にはバスに乗ってる乗客はかなだけになった。
 「おや、もしかしてお嬢さん、終点まで行くのかい」
 バスの運転手さんがマイクを通して話しかけてきた。かなはバスの前に移動して運転手さんに話し返した。
 「はい、そこに実家があるんです」
 かながそう答えると、運転手さんはにっこり微笑み返した。
 「そうかい、おじいさんとおばあさんに逢いに行くんだね」
 「まあ、そんな所です」
 本当はおじいちゃんもおばあちゃんも、かなが小さいときに亡くなってるんだけどね…。
 「うちの娘もお嬢さんくらいの年でね、毎年実家へ遊びに行くたびにおじいさんとおばあさんに会ってよかったって、いつも言うんだよ…。今頃娘は一人で実家へ行って、うちの両親に逢ってるところだろうよ」
 そうなんだ…。ちょっと羨ましいな…。
 「お嬢さんも実家に帰ったら、今のうちにおじいさんおばあさんに甘えておいた方がいいぞ。大人になるとそんなこと出来なくなるからな」
 「うん…、そうします」
 もしおじいちゃんやおばあちゃんが生きてたら、かなもおもいっきり甘えたいよ。でも、もうそんなことは二度と出来ないんだ…。
 「次は終点、千寿山です。お忘れ物のございませんようお気をつけてください」
 運転手さんの声がバス中に響き渡った…。
306無名:2006/03/05(日) 13:05:41 ID:iWXayNXF0
 バスから降りたかなは、目的地に向かって歩き出した。
 「ここに来るのって久し振りだなー」
 緩やかな坂を上りながら、かなは周りの景色を見回した。あっ、この木覚えてるよ、懐かしいな。小さい頃この木でよく遊んだっけ。ここの垣根もそのままだ。ここで遊んだりして怒られたこともあったなぁ。
 「…なんか、懐かしくて涙が出そうだよ…」
 かなは足早にここを去った。だって、懐かしくて胸がはちきれそうだもの…。
 そこからしばらくは緩やかな坂が続いていく。そしてその頂上にかなのいく場所があるんだ。かなは少し歩くスピードを上げた。あともう少しだ。
 「今何時だろう、おなかがすいてきたな」
 時計を見ると、もう12時を過ぎていた。でも、もう少しで到着するので、着くまでお弁当を食べるのをガマンした。
 頂上に行く手前のカーブを曲がれば、広いお花畑が見える。その奥にかなが住んでいた家があった。
 「…ただいま、帰ってきたよ…」
 そよ風が花を揺らしていく。まるでかなの帰りを迎えるように…。帰ってきたんだ、懐かしい思い出の場所に。
 「そうだ、お父さんたちに逢いに行かなくちゃ」
 かなはお花畑の先にあるお墓へと歩いていった。
 
 お花畑の道を抜けると、森が見えた。その中にかなのお父さんたちが眠るお墓があった。
 「お父さんお母さん、おじいちゃんおばちゃん…、逢いにきたよ…」
 そこには大きなお墓が三つ、静かに立ち並んでいた。一つはご先祖様のお墓、一つはおじいちゃんおばあちゃんのお墓、そしてもう一つがお父さんとお母さんのお墓…。数年前はこの場所で一緒に暮らしてたのに、今では誰もここからいなくなってしまった…。
 「…今からお花とお水をあげるからね…」
 かなはリュックに入れてあったお花とペットボトルのお水を出して、お花とお水ををそれぞれのお墓へ添えてあげた。いつもここに来てあげられなくてごめんね…。かなは静かに手を合わせた。
 (…ずっとここにいて寂しかったでしょ…、少しの間だけど、ここにいてあげるからね)
307無名:2006/03/05(日) 13:06:42 ID:iWXayNXF0
お参りを済ませたかなは、お花畑の方へ歩いていった。
 このお花畑は、おじいちゃんとおばあちゃん、お父さんとお母さんと一緒に遊んだ場所…。だからここには楽しい思い出が沢山あるんだ。追いかけっこしたり、お花を摘んだり、寝ころんだり…。今ではもう思い出でしかないんだけどね…。
 「ここでお弁当にしよう」
 かなは、ゆきなおばさんが作ってくれたお弁当を開けた。
 「うわあ、俵のおにぎりだー」
 中には俵型のおにぎりが四つと鳥のから揚げ、玉子焼きにじゃが芋の煮物が入っていた。
 「いただきます」
 お花畑の中で食べるお弁当は格別だった。あの時もお花がいっぱい咲いてたなぁ…。わざわざ表にテーブルを運んで、みんなでお昼ご飯を食べたっけ…。その時にスープの中に花びらが入って、きれいだなーって思ったときもあったなぁ…。

 お弁当を食べ終わったかなは、自分の家だった場所の庭へ入った。庭は荒れてて草も伸び放題で、とても二年前とは思えないほど変わっていた。
 「ここでおじいちゃんが盆栽をやってたんだよね」
 その奥には盆栽が置かれていた台があった。所々壊れてるけど、間違いない。ここでおじいちゃんが松の手入れをしていたに違いないんだ。小さい頃、面白がってみてた事があったもの…。
 「おじいちゃんが死んでからは、お父さんが手入れしてたんだっけ。でもあんまり覚えてないなあ」
 反対の方にも行ってみようか…。そっちはかなと、お父さんお母さんが住んでた部屋の方だ。
 「…何もないなぁ…」
 部屋の中は片付けられていて、空っぽの状態だった。タンスも、テーブルも、机もない。そこにはかなの思い出の物は残されていなかった。
  
308無名:2006/03/05(日) 13:14:15 ID:iWXayNXF0
 「そうだよね、誰もいなくなっちゃったんだから…」
 おそらく、2階の物も全部無くなってるだろう。もうこの家には、思い出のものは無くなってるのかもしれないな…。
 かなはさっきの場所に戻って、縁側に腰を下ろした。
 …何も無くったって、かな達の住んでた家には違いないんだ。でも、思い出のものがほとんど無いなんて、寂しすぎるよ…。
もしこの家も壊されてしまったら、思い出の場所が無くなってしまうんじゃないだろうか…。そんなの絶対いやだよ。お父さんたちと
暮らした場所が無くなるなんて、かなには考えられない。できるなら、ずっとこの場所が無くならないでほしいよ…。
 「うっ…うう…逢いたいよう…お父さんお母さんに逢いたいよう…」
 お父さん達のことを思い出したら、急に涙がこぼれてきた。…逢いたい。もう一度お父さんやお母さんに逢いたい…。逢って抱きしめたいよぉ…。
 泣き疲れてしまったかなは縁側で横になって眠ってしまった。
309無名:2006/03/05(日) 13:14:44 ID:iWXayNXF0
  目が覚めたら、かなはお花畑に立っていた。どうしてこんな所にいるんだろう…。
 (…かな…かな…)
 向こうから、かなを呼ぶ声が聞こえる。どこかで聞いた事のある声だ…。
 「誰…?誰がかなを呼んでるの…?」
 かなが声のする方向へ顔を向けると、そこには二人の人間の姿があった。そしてその人達は、見覚えのある姿をしていた。
 「…お父さん…、お母さん…!?」
 (かな…元気でいるかい?)
 間違いない。お父さんとお母さんだ…!
 「うん、元気だよ。でも何でお父さんたちがここにいるの?」
 (かなの事心配してるから逢いに来たのよ)
 (見ないうちに大きくなったな、さすが僕達の娘だ)
 そうか…、お父さんたちはかなの夢の中へわざわざ逢いに来てくれたんだ。
 「お父さんお母さんは元気…なはず無いよね…」
 (おいおい、そんな寂しい顔するなよ)
 (大丈夫、私達はあっちの世界で幸せに暮らしてるわ)
 そうだよね、二人とも幸せそうだもんね。
 「おじいちゃんとおばあちゃんは?」
 (おじいちゃんもおばあちゃんも、あっちで仲良くしてるよ。きっとかなの事を心配してるはずだよ)
 おじいちゃんおばあちゃんも仲良くしてるんだ…よかった…
 「でも…本当はかなもお父さんたちと一緒に暮らしたいよ。また一緒に遊びたいよ」
 それを聞いたお父さんたちは、首を横に振った。
310無名:2006/03/05(日) 13:22:09 ID:iWXayNXF0
 (それはだめだよ、まだお前はこっちの世界に来てはいけないんだ)
 (お母さんお父さんはね、かながお母さんたちの分まで生きてほしいから逢いに来たの。だから元気を出して。どんなに苦しくて辛い事があっても、いつもお母さんたちがついてるから心配しないで)
 「お父さん…お母さん…ありがとう…」
 かなはお父さんの胸の中へ飛び込んだ。いいよね…今だけは一緒にいてもいいよね…。
 (おいおい、そんなにきつく抱きつくなよ)
 (かなったら、お父さんのこと、大好きだものね)
 「かな…お父さんとお母さんの子供でよかったよ…だって、こうして会うことができたもの…」
 たとえ夢でもいい。お父さんとお母さんに思いっきり甘えたい。思いっきり抱きつきたい。…かなはそう思った。でも、そんな事は長く続かなかった。お父さんが寂しそうな顔をして、こんな事を言い出したんだ。
 (かな、もうお父さんたちはお別れしなくちゃいけないようだ)
 「いやだよ、もっとお父さんお母さんと話したいよ。もっと一緒に遊びたいよ。まだ抱っこだってしてもらってないじゃない」
 (また逢えるわ、きっと)
 (それまで元気でいるんだぞ、かな)
 そう言いながら、お父さんとお母さんは遠くへ行ってしまった。
 「待ってよ、お父さん、お母さん…!」
 かなはお父さんたちを追いかけようとした。でも、周りが闇に包まれてかなの行く手を塞いでしまった。そして…。
311無名:2006/03/05(日) 13:25:04 ID:iWXayNXF0
 かなが目を覚ました時には、もう夕方になっていた。やっぱりあれは夢だったのかなぁ…。ううん、そうじゃないよ。きっとお父さんお母さんが、かなの心の中に入って逢いに来たんだよ。そうだよね、お父さん、お母さん。
 かなは庭の外へ出て、お花畑を見つめた。
 「きっと神様が、お父さんお母さんに逢わせてくれたんだ……」
 かなはもう一度お父さんたちが眠ってるお墓へ行こうとした。でもそこから人が出てきたんで、いったい誰が来たのかと思って近づいてみたら…。
 「け、慶介お兄ちゃん!」
 なんとそこにいないはずの慶介お兄ちゃんがいるじゃないか!
 「どうしてここにいるって分かったの?」
 「お前が行くところといったらここだろうと思ったから、わざわざ早退してここに来たんだ。しかしお前にはあきれたよ。自分で勝手に墓参りに行っちまうんだからな」
 そうだよね、毎日のように連れてってって、言ってたもんね…。
 「でも何で今日行ったって分かったの?」
 「母さんから『かなちゃんがお墓参りに行ったから、仕事が終わったら迎えに行ってあげて』って言われたからだ。お前も馬鹿だよなぁ、今日じゃなくてもよかったのに」
 ううん、そうじゃないよ。今日ここに来たからお父さんお母さんに会うことができたんだから、今日で良かったんだよ。
 「まあ、予定が繰り上がっただけだし、こうしてお前のお父さんたちに挨拶できたんだから、今日のところは許してやるよ」
 お兄ちゃん、かなが黙ってここに来た事怒ってないんだ…。
312無名:2006/03/05(日) 13:30:30 ID:iWXayNXF0
「あ、ありがとう、お兄ちゃん…!」
 かなは嬉しくてお兄ちゃんに抱きついた。そうだよね、お兄ちゃんも分かってくれるんだよね…。
 「おいおい、そんなにきつく抱きつくなよ…!」
 お兄ちゃんの言葉で、かなはパッとお兄ちゃんの胸から離れた。
 「お兄ちゃん、ほんとにありがとう。かな、お兄ちゃんの事、世界中の誰より好きだよ」
 この言葉は、嘘じゃないよ。かなは、誰よりもお兄ちゃんの事が好きなんだから。
 「じゃあ、もう遅いから帰るか。母さんも心配してるからな」
 「あっそうだ、最後にお父さんたちに挨拶しなくちゃ」
 かなはお墓がある森の方へ向かって大声で叫んだ。
 「お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、また来るねーっ!」
 そう、ここはかなにとって思い出の場所であって、故郷でもあるんだ。だからまたいつか、ここへ帰ってくるよ。それまでお父さんたち、ここで見守っていてね…。
313無名:2006/03/05(日) 13:48:57 ID:iWXayNXF0
みなさんこんにちは、無名です。「思い出の場所」をお送りしました。
今回は、かなちゃんが両親と祖父母のお墓参りをするお話です。
お墓参りのお話というと、湿っぽくなってしまうのですが、できるだけ
そうならないようにしたつもりです。(それでも湿っぽくなってしまったかも)
ヤギーさんもお盆でなくてもいいですから、両親のお墓参りに行ってあげて下さい。
この次のお話は少し時間をさかのぼりまして、かなちゃんのお誕生日のお話をする
予定です。お楽しみに。
さて、このスレでねじの話をしていますが、やっぱり義体の人にとってはねじ1本でも
自分の体の一部ですから、外してしまったら大変なことになってしまうのではないのでしょうか。
(ねじがついている場所にもよりますが)ねじが抜けてしまうと体の調子が悪くなるとか、へたすると
外した部分からばらばらになってしまうとか。
 あと、上にも書かれていますように、ねじは(ワッシャーとかナットなども)少し余計に入っている
ケースが多いそうです。あまり詳しいことはわかりませんが。
314名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 16:58:27 ID:wkskVTRG0
無名さん乙。

ところで、義体みたいなものを組む時は、あまりねじを使わないような構造にするのがいいような希ガス。
箱根の組み木細工みたいな、複雑な勘合(ハメコミ)を多用して、どうしても必要な場所だけネジ留めするとか。
いずれにせよ、万一ネジが緩んだり抜けたりしても、パーツが脱落したり調子が狂ったりしないような仕掛けをするのがよさげ。
315名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 19:06:11 ID:vVoYm7Kd0
体格を再現するために、パーツが多いと嵌め込みは難しい気がする。
ヤギーの足が、長くらる記述とかあったからある程度標準パーツの組み合わせなんだろうけど
ネジ止めもしょうがないんじゃないのかな。
316Dark Mater(架琉魔):2006/03/06(月) 14:55:28 ID:GITKaD4T0
page3.5 永遠という名の母

「断固破棄すべし!」
「脳改造を施し完全な兵器とした方が得策である!」
…帰りてぇ…。
「アタシの意見は無視?」
例の記憶を無くした娘の処理が議会で勝手に騒がれているってので、
ホントは来たくなかったのだが…アタシは久しぶりに議会に赴いた。
案の定、ガキ豚共は非道な意見を吐き合っていた。
「愚問である!
自動機械共の二の舞を踏む気か!」
「はーい、普通に軍に入隊させたら良いと思いまーす。」
アタシはあえて小学生のように手を挙げて言った。
しかし、議員共の罵り合いは止まらなかった。
アタシは髪をももしゃくった後、ピストルを構えた。

かちゃ…

ピストルを構える音は、やかましい罵声の中でもよく響いた。
「……か、神奈女医!?」
「サイボーグができた頃には赤ん坊だったガキ共が、
イッチョマエにこの話題で人の意見無視してんじゃねえよ。」
317Dark Mater(架琉魔):2006/03/06(月) 14:56:20 ID:GITKaD4T0
「う…。」
議員共はやっと黙り込んだ。もちろん、ただの女医がこんな事して、許されるはずがない。
まして、戦争のせいで更に知能指数の下がった男共の政権だ。
本来は女と言うだけで議会には参加できないだろう。
まぁ、アタシは例外だがネン♪

議会を終えた後神奈女医が去っていった後、新人の議員が悪態をついた。
「…あれが神奈無双女医か。
かなり若く見えますけどねぇ。」
「前世紀薬物学の産物…
不老不死のメデューサか…。」
318Dark Mater(架琉魔):2006/03/06(月) 14:56:51 ID:GITKaD4T0
架琉魔です。
今回はサイボーグ無しですみませんとです。
あ、でも薬物改造人間…駄目でしょうか。(回線切る準備
というわけで次回は
恵委歌視点で神奈女医の話をしようと思います。
319manplus:2006/03/08(水) 00:16:46 ID:rxC+xrzW0
【ボディーケース】

 私の恋人であり、秘書である杏奈が手術台の上に横たわっている。
私は、彼女を自分だけの存在にしようと思っていた。彼女の美しさもそのままにして、完全な生きた人形として・・・。
杏奈をそうすることが私には可能だった。
「桐島社長、本当にいいのですか?水沢さんに処置を施してもいいのですか?」
「私の意志は変わらないよ。谷本ドクター、執刀と執刀後のリハビリと訓練をお願いする。」
「わかりました。それでは手術を開始します。」
「その後のリハビリと教育、訓練も君に任せる。水沢君を私の本当の秘書にしてくれ。」
「わかりました。」
 その言葉を聞いて、私は、部屋を出て行った。数ヶ月の後、再び杏奈と逢う時は、彼女は、
私が望む姿になっていることだろう。

 桐島伸二が部屋を出て行ったのを確認して、谷本は、アシスタントに声をかけた。
「さあ、水沢さんへの処置を開始します。」
そう声をかけながら、谷本は、『社長の性癖にも困ったものだわ。でも、彼女は幸せかもしれない。
だって、社長は性癖のおかげで、普通の女性を愛することなんてないんだから、だから、
水沢さんへの愛の深さは本物だし、処置を終えた水沢さん以外の女性に社長の心が動くことはないのだから。
おめでとう、水沢さん。社長の愛を永遠に受ける権利を持つ世界で一人の女性になれたのよ。』と呟いた。
 そして、手術台の杏奈への処置を指示したのであった。

320manplus:2006/03/08(水) 00:17:28 ID:rxC+xrzW0
 杏奈は、最新式の神経感覚除去システムと麻酔により、昏睡状態におかれて管理されていた。
谷本は、全く意識のない杏奈を見下ろして、アシスタントに指示した。
「まず体毛の除去と皮膚機能の停止処置を行って。」
 アシスタントは、まず、杏奈の身体をウェスのようなもので丁寧に拭いた。そのウェスには、
脱毛のための特殊な薬剤が染みこませてあり、アシスタントに拭かれた部分の杏奈の身体から、
体毛が抜けていったのである。
頭部の毛髪の部分は、アシスタントが、丁寧にシャンプーのような液体で洗うようにすると毛髪がみるみるうちに
抜け落ちていった。こうして、あんなのからだから体毛が全て取り除かれていった。
次ぎに杏奈に施されたのは、毛根や汗腺を潰し、皮膚の機能を失わせるための薬品であった。
アシスタントは、細心の注意を払い、杏奈の全身に丁寧に万遍なく何度も何度も薬液を塗布していった。
 この処置は、杏奈が意識がある時に行われれば、想像を出来ない苦痛に襲われる程の処置であった。
 杏奈は、薬の効果が出るまで、丸一日休みなくこの薬液を塗り続けられたのであった。
これらの処置が終了し、杏奈の皮膚は完全に機能しなくなったのであった。
 谷本は、杏奈の皮膚組織が、落ち着くのを待つため、24時間、杏奈を安静にし、
容態を監視するように指示を出し、仮眠をとるため休憩室に向かっていった。
これから、谷本の本当の戦いが始まるため、その備えのために鋭気を養おうと思ったからであった。

「いよいよ、手術開始ね。」
谷本がそう独り言を言いながら手術室に入ってきた。
 彼女は看護士に杏奈の内蔵の洗浄をするように指示をだすと、看護士が、
杏奈の口と肛門に内蔵洗浄機のノズルを取り付け、内臓洗浄を開始した。
杏奈の内臓にあった排泄物や未消化の内容物が、口からの高圧洗浄水に押し出されるように
肛門に取り付けられたノズルから勢いよく出てきた。杏奈の内臓内の残留物が完全になくなるのを確認して、
看護士は、杏奈の口と肛門から、内蔵洗浄機にノズルを抜き取った。
次ぎに、尿道カテーテルによる導尿と栄養点滴を行い、これで杏奈への手術の準備が全て整ったのである。
321manplus:2006/03/08(水) 00:18:04 ID:rxC+xrzW0
 彼女は、杏奈の全身を改めて見つめた。杏奈の全身には、体毛がいっさい無く、汗腺や毛根などが全くなくなり、
ツルツルの身体になっていた。彼女の皮膚の機能は完全に喪失しているため、
皮膚による温度調節機能を代替する機械を杏奈に取り付けるように助手に指示を出した。
 助手たちは手早く、杏奈の膣から、体温調整機能の代替機械のノズルを挿入した。
杏奈のからだが無意識に震えるのがわかった。
「意識が無くても、性的刺激を感じる物なのね。」
谷本は、そうつぶやいて、杏奈の身体が落ち着くのを待ってから、谷本は、杏奈の身体の処置に入ることになった。
「それではオペを開始します。」
谷本はそう言うと杏奈の胸部を首から股下まで一気にメスを使い切り裂き、
切り裂いた皮膚と筋肉組織を処置台の上に広げて固定した。杏奈の胴体は、
内臓組織が剥き出しの状態になった。谷本は助手に指示を出し、
杏奈に人工血液の輸血と栄養液の点滴を開始させ生命維持の安定を図った。
「水沢さんの意識レベルを視覚と聴覚だけ覚醒状態に戻して下さい。」
谷本の指示に従い、助手は、杏奈の頭部にコードで接続されている神経感覚除去システムの
コントロールパネルを調整した。
 そうすると、杏奈の視覚と聴覚が戻った。
「水沢さん、これからあなたを社長秘書であり、婚約者として最適な身体にするための手術と
我が社が開発に成功した長期着用型宇宙服の着用実験者としての宇宙服装着処置を開始します。
この処置は、桐島社長からの命令により行われるものです。
もちろん、社長はあなたを自分のものだけにしたいという願望があって、
長期着用型宇宙服をあなたに装着するということは、貞操用のフルボディーケースとして着せることを
最大の目的にしています。
322manplus:2006/03/08(水) 00:26:36 ID:rxC+xrzW0
それに、秘書が、新開発の宇宙服を着せられているということで、
我が社の製品の強力な広告塔としての役割を期待しています。
あなたは、桐島社長に永遠に愛される唯一のものとなるのです。大きな代償を払うかもしれないけれど、
素晴らしいことだと思うわ。あなたには私の言っている意味が理解できるはずよ。覚悟してね。それから、
水沢さんの視覚と聴覚を活かしておくから、これから自分に起こること全てを見聞きして、
理解してもらうことになります。それでは、手術を開始します。」
 杏奈は、自分にこれから施されるであろう処置のことをすぐに理解した。
自分が人間として生きることを許されないことの悲しさと、桐島が、普通の性癖を持つ人間でないために、
彼の性癖の中で杏奈を受け入れるために最良の処置を受けさせてくれることの嬉しさが交錯した。
そして、この処置により生まれ変わる自分を受け入れ、仕事に私生活に桐島のパートナーとしての人生を
歩もうと決意した。その決意は、杏奈の心に至上の満足感をもたらすのであった。
 仰向けに横たわった杏奈のちょうど視線の位置にモニターがあった。そのモニターには、
今の杏奈が移っていた。杏奈は、自分の身体がツルツルなのを見て恥じらいを覚えた。
髪の毛から、眉毛、陰毛に至るまで、全ての体毛が無くなった杏奈の肉体は、淫靡な印象があった。
杏奈は、私は、人形となり桐島に心底愛されることの喜びに再び浸ってしまったのであった。
 杏奈は、心の中でクスリと笑った。
何故なら、自分が生を受けた肉体をいじくり回された上に二度共との状態に戻ることのない手術を受けるのに、
それが嬉しいと思い至福の感覚を味わっている自分が可笑しかったのであった。
323manplus:2006/03/08(水) 00:34:01 ID:rxC+xrzW0
munplusです。

ご無沙汰しています。
構想は出来ていたのですが、なかなか時間がなかったのと、
文章として構成でに悩んだものですから、久しぶりの投稿になりました。

文才がないもので申し訳ありません。

今回は、ちょっと変わったシュチュエーションに挑戦してみます。
人形フェチとサイボーグフェチの境界で、サイボーグフェチとしての領域での
物語を書いてみます。

キーワードを貞操帯、人形化にしてみたいと思います。
このスレと嗜好が違ったら、そのような指摘をしてください。
その時点で、この作品の投稿を中止しようと思います。

ぼちぼちと書き始めますので、お付き合いをお願いします。
前作のように、改造手術シーンは、丁寧に書くつもりです。
何せ、私自身が、手術シーンに萌えなのですから・・・(笑)。
3243の444:2006/03/09(木) 02:32:00 ID:JtvU3lrP0
  ネジ工場でのアルバイトが終わって私がはるにれ荘に戻ったのは、 夕陽が団子坂峠の山の向こう側に
沈んで空が薄黄色から黒味がかった深い青色へと徐々に色合いを変えて、 星が輝きはじめた頃。
  玄関のドアを開けた私の耳にまず入ってきたのは、 みんなの楽しそうな笑い声。 ちょうど玄関から真っ
直ぐ続く廊下の突き当たりにある食堂から漏れ聞こえてくる。 私の足は、 その声に引き寄せられるように一
瞬食堂のほうに向きかけたけど、 あわてて思いなおしたように立ち止まる。
  きっと、 この時間だったら、 みんなアニーの作った美味しい晩御飯を食べているに違いない。 そんなと
きに食堂に行ってもちっとも面白くないし、 かえってみんなの気をつかわせてしまう。
  そう思った私は帰ってきたことをみんなに気取られないように(と、 いってもアニーにだけはバレバレだと
思うけど)、 わざと明かりをつけずに暗いままの階段を、 足音をたてないように気をつけながらゆっくり登っ
て、 二階の自分の部屋のドアをそっと閉めた。 そして、 机に座って、 引き出しから栄養カプセルの入った
プラスチックの瓶を取り出すと、 一粒だけを口に放りこんでいつものように一人ぼっちの夕食を済ませた。
  今の私に残された人間としての部分は脳みそだけ。 その脳みそを維持するためには、 この小さな栄養
カプセルさえ飲み込んでおけばことたりる。 っていうか、 それ以外の食べ物を食べられるように、 この義体
はできていない。 たとえ食べることができたとしても、 飾りでついているだけの舌で味なんかわかるわけな
い。 でも、 そんな私でも脳みそだけはもとのままだから、 むかしむかし、 まだ私が生身の身体を持ってい
た頃の、 美味しいごはんを食べた時の味とか舌触りとか歯ごたえなんていう記憶は頭の中にちゃーんと残
ってる。 陸上部の練習が終わったあとの晩御飯みたいに、 一日ずーっと身体を動かして、 身体がクタクタ
になって、 お腹もぺこぺこになったところで、 ほかほか湯気の上がった炊き立てのご飯を食べたらどんなに
美味しいんだろうか、 なんて考えては時々ひどく虚しくなるんだ。 どうせ、 どんなに望んだって適わない夢な
んだから、 いっそのことそんな記憶、 なくなってしまえばラクになるのにね・・・。
3253の444:2006/03/09(木) 02:32:31 ID:JtvU3lrP0
  食事なんてとても言えないだたの作業を終えた私は、 机に頬杖をついてはぁーっと深いため息を一つ。
節電モードになったことで擬似体温を失なって、 冬の冷たい外気に当たりっぱなしだった私の頬っぺたは、
まるで氷みたいに冷たい。 それで、 今の私には暖かい肉体はもうない、 今の身体はただの冷たい機械な
んだってことをあらためて思い知らされてしまう。

(駄目だ、 駄目だ。 こんなことばかり考えてちゃいけない)
  私はいやいやするみたいに大きくかぶりを振ると、 頬っぺたから手を放して自分の頭をコツンと拳固で
叩いた。 
  いったん鬱モードに入ったら際限なく落ち込んじゃうよ。 もっと楽しいことを考えなきゃ。
  えと、 昨日ひいたおみくじの内容、 今のところけっこう当たってるよね。
  カラオケに熱中しすぎて時計が止まっていることに気がつかず電車に遅れてしまったことも、 結果オーラ
イだったとはいえ肝心なときになくしたネジが見つからなかったことも、 全部おみくじの預言どおりだった。
  だったらさ、 おみくじにたった一つだけ書いてあったポジティブなこと。
『願い事、 強く望めば実現の可能性あり』
  これだって、 ひょっとしたら当たっちゃうかもしれないよ。
(ひょっとして私、 キスなんかできちゃったりして。えー、神様、私はキスがしたいキスがしたいキスがしたい)
  現金なもので、 私はすぐ機嫌を直すと、 かっこいい男の人とキスしている自分を思い描いて一人ニタニ
タ。 ハタからみたら、 さぞかし薄気味悪い光景だろう。
  いくら私は人間なんですっていっても、 結局全身義体なんて機械仕掛けのお人形さん。 そんな私の事を
不気味に思う人は多いだろうし、 この身体も一つの個性って認めたうえで私のことを好きになってくれるなん
て滅多にいないだろう。 そんなこと、 私にだって分かってる。 でも、 妄想することだけは私の自由だもん。
  それに、 セノハチネジのおじさんみたいに義体のネジ一本だって心をこめて作ってくれる人だっているん
だ。 この世の中だって、 そんなに捨てたものじゃないはずだよ。 きっと、 この世界のどこかには、 私の身
体が機械だって知っていても、 私のことを好きになってくれる人だっているはずだ。 いや、 きっといる。 いる
に決まってる。
3263の444:2006/03/09(木) 02:33:20 ID:JtvU3lrP0
(人様の命を預かる大切なネジ。 人の身体も同然)
  私はおじさんの言葉を思い出しながら、 ポケットをごぞごそさぐって中からネジを二本取り出すと、 机の
上に転がす。 義体用のネジはスタンドの明かりを反射してキラキラ光った。
  節電モードになってしまって荷物を運ぶ足取りがおかしくなった私を見かねたおばさんは、 仕事が終わる
までずーっと私と一緒に棚の整理を手伝ってくれた。 その時の私の力じゃ、 一人でネジがぎっしり入った箱
を片付けるなんてとても無理だったから、 ものすごく助かったんだけど、 そのお陰で隙を見て義体の充電を
することも、 ネジをもう一度元の場所にはめ直すこともできなかったんだ。 だから、 結局ネジを外したまま
の状態で自分の部屋まで戻ってきちゃったんだよね。
  まあ、 いいや。 あとで須永さんからドライバーを借りて、 もう一度ネジをもとの場所にはめ直せば万事元
通り。 なくしたネジの代わりに自分の身体のネジを外したときには、 定期検査のとき松原さんにどんなに怒
られるかと思ってびくびくものだったけど、 これでそんな心配もしないですむ。
(でも、 その前に充電しておかなきゃね)
  私は机から立ち上がった。
  いくらおばさんに手伝ってもらって二人がかりでの仕事だったとはいえ、 節電モードになった身体で午後
も働きづめ。 いくら節電モードで普段よりは電力消費量が少いっていっても、 もう電気は、 ほとんど残って
いないはず。 今から朝までずーっと充電しておかないと、 次の日の生活にも差し障っちゃう。 それに、 いつ
までも擬似体温が失われたままの冷たい身体でいるなんて私は嫌。 所詮作り物の体温だって分かっていて
も、 暖かい身体に戻しておきたい。
(ネジは明日締めなおせばいいよ。 とりあえず、 今日はのんびり寝ながらテレビでも見て、 ずーっと充電し
てよう)
  私は押入れから布団を引っ張り出すとテレビの横に敷く。 もちろん布団なんて義体の私には本当は必要
ないもの。 だけど、 寝るとなったらやっぱり毛布にくるまって眠りたいよね。 たとえ、 身体を冷やして風邪を
ひくなんてこととは無縁な身体だったとしてもさ。
3273の444:2006/03/09(木) 02:34:16 ID:85ZHwJD/0

  テレビはどこのチャンネルも予定を変更して今朝の飛行機事故の特番をやっていたけど、 テレビ帝都だ
けは相変わらずマイペースで、 こんな時でものんきに味めぐり温泉紀行。 普段は、 美味しいだけじゃなくて
見た目も派手な郷土料理が出てくるような番組なんて見る気もしないけど、 事故のレポートを延々と聞かさ
れるよりはずっとまし。
  私は布団の上に正座すると、 リアクションばかり大げさなくせに美味しいを連呼するしか能が無いボキャ
貧の女性タレントを横目でみながら、 慣れた動作で右脇腹から充電用のコンセントプラグを引っ張りだし
た。
(あれ?)
  なんだかいつもとコードの手ごたえが違う。 っていうか、 引っ張っている手ごたえ自体ない。
  不思議に思いながらも、 私はそのままコンセントを引き出していく。 ところが、 いつものように、 これ以
上コードを伸ばせないっていう印の、 コードに巻かれた黄色いビニールテープのところでコードは止まらず、
そのまま・・・、 義体から抜けちゃったんだよう!
(どうしよう、 どうしよう)
  コードの断端から顔を覗かせている茶色の銅線を見つめながら固まってしまう私。
『警告:充電用ケーブル断線』
  義眼ディスプレイ一杯に義体の異常を報告する真っ赤な文字が流れる。
  きっと私がコンセントプラグの横のネジを外しちゃったからだ。 だから、 充電用のコードと義体の接続が
緩んでコードが取れてしまったんだ。 原因は、 それしか考えられない。
  どうしよう、 これじゃ充電できないじゃないかよう。 もうバッテリーの電気の残りも少ないっていうのに。

  どうしよう。
3283の444:2006/03/09(木) 02:42:00 ID:85ZHwJD/0
すみません。ちょっと間があいてしまったので
出来上がった分だけ、先に投下します。次回で、本当に完結します。
>>manplusさん
お久しぶりです。復帰、楽しみに待っておりました。
前回は、国に尽くす女性でしたけど、今回は一人の男性に尽くす
女性というわけですね。
manplusさんのウリである、執拗な改造シーンの描写、楽しみに
しております。本人が萌えて書かれているものは、読者が読んでも
楽しいものです。
329名無しさん@ピンキー:2006/03/09(木) 03:34:20 ID:GMtM7bVa0
>>327
>テレビ帝都
関連テレビ局に、テレビ玉南とかテレビ高尾山とかがあるわけですね?ニヤリ
330名無しさん@ピンキー:2006/03/09(木) 11:04:38 ID:GHzuX0+R0
>>manplusさん
前作の淡々と執拗な改造シーン、超萌えました。
新作も非常に楽しみにしてます!
331名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 00:00:05 ID:ZkN4VtbS0
『バーチャコール』っていうOVAに
主人公がサイボーグの女性とSEXする場面が
(短いけれども)あって、燃えたなぁ。
332無名:2006/03/11(土) 12:46:37 ID:ZQ3wFy1N0
【忘れられた誕生日】

 三月に入って、小学三年の三学期も終わりに近づいたある日の放課後、かなはある心配事をしていた。
 「ひな祭りも終わっちゃったし、その次はホワイトデーかぁ…」
 かなにはそのホワイトデーが好きじゃなかった。だって、みんなホワイトデーに注目してて、その次の日のかなのお誕生日を忘れてるんだもん。
前の学校のときだって、クラスのみんながホワイトデーばっかり気にしてて、肝心のかなのお誕生日を覚えてる人がいなかったんだ。だからかなの
お誕生日には誰も来てくれなくて、いつも家族だけでお誕生パーティーをすることになるんだ。でも今年はかなのお誕生日を祝ってくれるお父さんもお母さんもいない…。
お兄ちゃんもゆきなおばさんもかなのお誕生日なんて覚えてるはずも無いだろうし…。なんか寂しいなぁ…。
 「どうかしたの、和多田さん」
 後ろの子がかなに声をかけてきた。
 「う、ううん、なんでもないよ。あれ、ええと…」
 「祐喜、鹿沼祐喜よ。和多田さんはホワイトデーにもらってくれる子がいるの?」
 「え、ど、どうかなぁ…」
 鹿沼さんもホワイトデーの事を気にしているみたいだ。それもそうだよね。かなのお誕生日なんか、鹿沼さんが
知ってるはず無いもんね…。
 
333無名:2006/03/11(土) 12:47:08 ID:ZQ3wFy1N0
 「和多田さんって、今年の年明けにここへ転校したばかりよね。学校のこともそんなに知ってないみたいだから、ホワイトデーの事も知らなくて当然よね」
 「って、どういうことなの、鹿沼さん。まさかホワイトデーに何かあるの」
 かながそう言うと、鹿沼さんはその通りと言わんばかりに頷いた。
 「ここの学校はね、ホワイトデーが創立記念日なの。だからその日は学校がお休みになるのよ」
 どういうことなんだろう。よりによってホワイトデーが休みなんて…。ホワイトデーは大事な日じゃなかったの…。
 「それじゃあ、ここのホワイトデーはどうするんだよ。その日が休みじゃ渡せないんじゃないの」
 「だからここの学校では、その前の日に渡すようにしてるのよ。土日が記念日の場合は金曜日に渡しちゃうんだけど」
 ガーン!何てこった。それじゃあかなのお誕生日なんか、忘れられちゃうじゃないか…。
 「あの、鹿沼さん、土曜日か日曜日にならないかなぁ、創立記念日…」
 「それはムリよ。だって今年のホワイトデー、月曜日だもの」
 ああ…、もう駄目だ…。これで今年のかなのお誕生日は消滅したのも同然だ…。
 「どうしたのよ和多田さん、ホワイトデーに何か悪い思い出でもあったのかしら」
 「ううん、別に何もないよ」
 ほんとは大有りなんだけど、鹿沼さんに言うのも悪いから、ここはグッとガマンしよう。
 「あっ、もうこんな時間。和多田さん、私もう帰らなくちゃいけないからこれで失礼するわね」
 「うん、じゃ、またね」
 鹿沼さんはそそくさと帰っていった。それにしても、まさかホワイトデーが休みなんてね…。かなのお誕生日が休みだったらよかったのになぁ…。
334無名:2006/03/11(土) 12:48:54 ID:ZQ3wFy1N0
 結局誰にも自分のお誕生日の事を言い出せずに帰ることになってしまった。はあ、参ったよ…。家に帰ってもかなのお誕生日の事なんか話題に載るはずもないし、かといって今更今月の15日が
かなのお誕生日です、なんてクラスのみんなに言えるはずもないし…。これじゃあ今年のお誕生日は寂しく迎える事になりそうだよ…。
 「ただいまー」
 家に帰っても誰もいないんじゃ、話す事もできないなあ…。ゆきなおばさんは今日から検査で入院だし…。慶介お兄ちゃんは忙しいからかなの事なんかかまってくれないだろうし…。
 「あーあ、かなはなんて不幸なんだろう」
 自分の部屋に入ったかなは、ベッドの上でゴロゴロして憂鬱な気分を晴らそうとした。でもそんな事で気分が晴れるはずもなく、ただ時間が過ぎていくだけだった。
 そうしてるうちにあっという間に夜になって、慶介お兄ちゃんが帰ってきた。
 「ただいま。あれ、かなはどこ行った」
 お兄ちゃんが帰ってきたって、どうせかなのお誕生日の事なんか何も言ってくれないよ。だって知ってるんだったら、『今度のかなの誕生日にほしいもの買ってあげるよ』って言ってくれるはずだもの。それなのに何も言ってくれないんだから、
お兄ちゃんは忘れてるに決まってるよ。
だからかなはこうして部屋に閉じこもってお兄ちゃんの事を無視してやるんだ。
 「おーい、かなー、いるんだろう、早く出て来いよー」
 
335無名:2006/03/11(土) 13:09:27 ID:ZQ3wFy1N0

ふんだ。プレゼント買ってくれないお兄ちゃんなんてもう知らないもんね。そうしてるうちにお兄ちゃんが上に上がってきて、かなの部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。
 「かなー、ここにいるんだろう、出て来いよー」
 知らない。かなのお誕生日を覚えてくれないお兄ちゃんなんか知るもんか。かなは布団を頭からかぶって、ドアを叩く音を聞こえないようにした。
 「出てこないとお前の好きな納豆チャーハン作ってあげないぞ」
 そんな手には乗らないよ。いくらかなの好きな納豆チャーハンでも、ここから出て行くつもりは無いからね。
 そのとき、かなのおなかのムシがグーッって鳴り出した。家に帰ってから何も食べてなかったから鳴ったんだね、きっと。…まあ、ご飯食べるくらいならいいかなぁ…。
 結局納豆チャーハンに釣られて、かなはキッチンの方へ出てってしまった。食べ物に釣られるとは、ほんとなさけないよ。

 次の日のお昼休み、かなは和真君に呼ばれて屋上に行くことになった。一体何の用事があるんだろう。
 「よっ、来たな。実はこの子がお前に用があるんだって、俺に言ってきたんだ」
 和真君がそう言った時、屋上の物置の影から女の子が出てきた。あれ、セミロングにメガネ…この子どこかで見たような…。
 「和多田さん、実はあなたにお願いがあって呼んだの」
 そうだ、思い出した。あの時ホワイトデーの話をしてきたあの子…
 「鹿沼さん!…で、なんの話なの?」
 「単刀直入に言うと、和多田さん、あなたと友達になりたいの!」
 ええーっ!あの近寄りがたい鹿沼さんがそんなこと言うなんて…。
336無名:2006/03/11(土) 13:10:08 ID:ZQ3wFy1N0
 「く、詳しく話してよ」
 「実は私、和多田さんがここに転校してきたときから、言おうと思っていたの。でもきっかけを作る事ができなくて…。昨日思い切って和多田さんに話しかけてみたんだけど、そのときにはそのことが言えなかったの。
だから今日ここで言おうと思って、和多田さんと仲がいい今野君にお願いしてここに呼んだの」
 そうか、そうなんだ。鹿沼さん、いや祐喜ちゃんはかなと友達になりたいと思ってたんだ…。
 「祐喜ちゃん、友達になりたいんだったらもっと早く言ってくれればよかったのに。そうしたらかなも喜んで友達になったんだよ。あと友達なんだから、和多田さんって言わないでかなって呼んでほしいんだ」
 「ありがとう和多田…いえ、かなちゃん。お礼といっては何だけど、かなちゃんのお誕生日、私と今野君でお祝いしようかと思うんだけど」
 ええっ!祐喜ちゃん、かなのお誕生日知ってたの?
 「あ、ありがとう。でもどうしてかなのお誕生日を知ってたの?」
 「実はね、今野君に教えてもらったのよ。かなちゃんとお友達になるんだから、お誕生日くらい知っておかないとね」
 「ごめんな。どうしてもって言われたから」
 和真君が顔を真っ赤にして照れくさそうにしてた。
 「じゃあ、お誕生日の夕方に、かなの家へ来てよ。みんなでお誕生パーティー開こう」
 「そうね、じゃあ私はケーキとプレゼントを持ってくるわね」
 「俺もプレゼント持ってくるよ」
 「それじゃあ、決まりだね」
 よかった、これで寂しいお誕生日をむかえなくてすんだよ。
337無名:2006/03/11(土) 13:10:44 ID:ZQ3wFy1N0
そしてお誕生日の夕方、和真君と祐喜ちゃんがプレゼントとケーキを持って、かなの家へ遊びに来た。
 「うわあ、おっきいケーキ。おいしそう」
 かながケーキに手をかけようとすると、祐喜ちゃんがストップをかけた。
 「ちょっと待って。まだ神無月さんが来てないでしょう。神無月さんが来てから始めなくちゃ意味ないじゃない」
 あ…そうだった。でもお兄ちゃんはかなのお誕生日、覚えてるんだろうか。昨日だってかなのお誕生日のこと一言も言ってなかったんだもん。
 そうしてるうちにだんだん日が暮れてって、夜の6時になった。
 「遅いわね」
 「神無月さん、仕事が忙しいのかな」
 やっぱり忘れてるんじゃないんだろうか。いくら仕事が忙しいからって、そんなに遅くなるもんなのかなぁ。
 そのとき、玄関のドアが静かに開いた。もしかして…!
 「ただいま。おっ、お友達もいるのか」
 あれ、お兄ちゃんが持ってる箱は…
 「お兄ちゃん、これは…」
 「ああこれか、お前の誕生日プレゼントだよ」
 ええっ、お兄ちゃん、かなのお誕生日忘れてなかったの?
 「お兄ちゃん…覚えててくれたんだ…」
 あれ、おかしいな。急に涙が出てきちゃったよ。悲しくないのに…。
 「おいおい、そんな事で泣く奴があるか」
 「だって、嬉しいんだもん。みんなかなのお誕生日の事覚えててくれたんだもん。嬉しすぎて涙が出ちゃったよ」
 「そうか、ここにきて始めての誕生日だもんな。嬉し涙が出てもおかしくないな」
 というわけで、お兄ちゃんを入れた四人でお誕生パーティーを開いたんだ。みんなと一緒にお誕生日を迎えられるなんて、かなはとっても幸せだ。今日は一生忘れられない日になったよ。
338無名:2006/03/11(土) 13:24:33 ID:ZQ3wFy1N0
 こんにちは、無名です。
「忘れられた誕生日」をお送りしました。なぜここでかなちゃんの誕生日の
お話になるというと、かなちゃんの誕生日がこの季節なのと、祐喜ちゃんと友達になった
きっかけにお話を作っていなかったためです。
さて次回は、神無月先生のお見合いのお話か、かなちゃんたちがキャンプに行くお話か
どちらかになる予定です。
>>314さま
ごもっともです。義体は取り外すところ意外はできるだけネジを使わないほうがよいと
思います。もし外れてしまったら大変なことになってしまいますものね。
>>3の444さま
ヤギーさんのコンセントが抜けた件ですが、そういうことを想定して呼びのコンセント
を内蔵している、という設定はあるんでしょうか?もしなかったら、かなり大変なことに・・・
339無名:2006/03/11(土) 13:38:40 ID:ZQ3wFy1N0
>>manplusさま
新連載おめでとうございます。改造シーンが細かく書かれているのに驚きました。
これからどうなるのかわかりませんが、よい結末になってくれるよう期待しています。
340無名:2006/03/11(土) 15:37:11 ID:ZQ3wFy1N0
>>3の444さま
忘れましたが、「輪捨てられた誕生日」は、「なぞの転校生」
の前のお話なので、それの前へ載せてください。お願いします。
341名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 16:21:28 ID:KO9WR/6k0
思うんだがさ、最近の作品てさエロがねえんだよな、日常生活ネタっばっかりでよ
342名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 17:16:14 ID:1WJhHKD60
>331
 それってエロゲーの「バーチャコール2」に出たキャラ、「ちさと」っていう娘だね。
確か「ちさと」って、あそこの部分はSEXだけでなく、赤子も産めるように、その奥にある子宮や卵巣を残してもらっとるというのが、熱く燃えるね。
343331:2006/03/11(土) 18:19:38 ID:lG0mcjJp0
>>342
分かる方がいらっしゃったか!
344名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 21:16:00 ID:FUpNZr500
>>341
俺も同意。淡々とした日常話が続くよりは一発物でいいからエロいのを読みたい。
とはいえ俺はそんな我侭を言える立場では無いが。単なるいち読者だしね。
345名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 00:44:53 ID:VQ3M7DLN0
確かにエロさが足りない。最近のはまるで「義体少女の日常」みたいな感じで
文学性すら漂って、屈折した嗜好どころか女子供にも優しいスレと化してる
346名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 02:11:57 ID:Hm+oNpNo0
そうか、よく考えたらここってフェチ板だったなw

ただ、ヤギーやかなちゃんを否定するつもりはないし、むしろ無理に路線変更とかしないでこのまま行ってほしい。
その上で、エロ路線の作品があったらいいなーなんてまあそのつまり
347名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 03:33:17 ID:8BwK6kJZ0
>>331,>>342
サターンのバーチャコールSにも出てくるね。
ややサブキャラ扱いだったので絵の数とかストーリーの濃さとかが
露骨にメイン級キャラ達より少ないのが残念だったけど…
単に「恋人が実はサイボーグでした。自分を守るために腕がもげました。」
だけじゃイマイチ萌えられないんだよなー。
やっぱりちさとさんの私生活とか、ちさとさんの体をメンテする場所・
スタッフなどを知るところまで踏み込まないと、サイボーグ萌えだけじゃなく
恋愛の話としてすら成立してないような…。
一応エンディングでは結婚して一緒に生活することになっている以上は。
348名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 08:09:51 ID:WYGqOp2b0
まあ、フェチ板だから露骨なエロ描写が無くても各自の嗜好さえ満たせればOKって考えもある。
だが、そっち系の作品も欲しいところか。
349名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 08:12:43 ID:MBquwUC/0
>>347
サターン版はエロシーンが少ないのは仕方なしとして、
本家本元の「バーチャ2」でもエロシーンは少なかったし。
一方ちさとの身体をメンテする場所は、彼女の苗字がつく研究所が
あり、ちさとに初めて会う前に彼女の電話番号を入れると、
「こちらは、人工臓器や義足等を開発している研究所です」と台詞が出る。
あと、ちさとの私生活は、他のキャラを攻略中にゲーセンに行くと、
ちさとに遭遇することがある。(どうやら、シューティング系が好きらしい)
しかも、その服装は結構大胆で、赤い革のミニスカに、おっぱいが半分出ている
黒革の胸あて、へそもむきだしというのだから、驚きである。
350名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 10:14:01 ID:520Bljno0
流れを豚切るようで悪いが、
かなり前のスレで紹介されてた人工筋肉を作ってる会社なんだけど、

ttp://www.toki.co.jp/BioMetal/BMX/index.html

なんか、オンラインで販売もしてるようだ。

商品を見たんだが…これが結構、力を出せるみたいだ。
シャーペンの芯よりちょっと太いくらいの直径で30Kgのおもりを単三電池一本で持ち上げられるとか
書いてある。

でこれを何本も束ねれば、腕くらい作れそうだなぁ、なんて妄想したり。
今は電池も結構進んでるから、携帯あたりの電池を使えば…

と言う訳で誰か、誰か義手から作って見てくれ。たのむ。

351名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 11:05:00 ID:Hm+oNpNo0
問題は反応速度だよな。
「シャーペンの芯よりちょっと太いくらいの直径で30Kgのおもりを単三電池一本で持ち上げ」るのに、2時間も3時間もかかってちゃ意味ないし。
3523の444:2006/03/12(日) 11:47:28 ID:suAV5zr/0
(そうだ! 須永さんに直してもらえばいいんだ!)
  私は一階に住んでいるサングラスがトレードマークの大家さんの顔を思い浮かべた。
  はるにれ荘の大家の須永さんは、 ギガテックスでロボットのAI開発に携わっている人。 ひょっとしたら義
体のことは専門外かもしれないけど、 でも義体化一級障害者用の全身義体と人間型ロボットは、 脳で身体
を動かすかAIで身体を動かすかっていう違いだけで、 構造自体に大きな差はないって言っていたことがあ
る。 だったら須永さんにだって、 外れたコンセントをもう一度義体に取り付けるくらいのことはできるだろう。
自分の担当医師でもない人に身体の中をいじられるのは余り気が進まないけど、 今はそんなこと言ってら
れる場合じゃないよね。
(私って冴えてるう)
  思い立ったが吉日。 私は早速、 机の上に置いたままのネジと身体から抜けてしまった充電用のコンセ
ントプラグを握り締めると、 部屋から飛び出して階段を駆け下りて、 管理人室の隣の須永さんの部屋のドア
をノックした。

「須永さん、 須永さん、 須永さん!」
  何度ノックしても返事がないからドアごしに名前を呼びかける。 須永さんは勤務時間が不規則な人で、
変な時間に寝ていることもあるからノックだけじゃ起きないのかもしれない。 寝ている人を無理やり起こすの
は悪いと思ったけど、 そうも言ってられない。
「浩一さんなら、 今、 いないよ」
  私の背後で声がした。
  あわてて振り向く私の後ろに立っていたのは、 台所で洗い物の仕事を終えたばかりなのか、 水はねの
しみが目立つエプロン姿のアニー。 見た目はひな人形を思わせるような色白の肌に真っ黒い髪が目立つ、
可愛らしい女の子。 でも、 この子の正体が、 実は、 はるにれ荘の全てを掌握している天下無敵のスーパ
ーコンピューターだなんて、 分かっていてもなかなか信じられることじゃない。
「お正月から仕事だってさ。 泊り込みで二、三日は帰って来ないんじゃないかしら」
  生みの親がここにいないこと語るアニーの口調はちょっぴり寂しそう。 でも、 今の私にアニーの気持ちを
推し量ってやれるような心の余裕なんかあるわけない。
3533の444:2006/03/12(日) 11:48:19 ID:suAV5zr/0
(留守だなんて、 二三日帰って来ないだなんて、 そんな・・・、 どうしよう)
  アニーの言葉を聞いた動揺した私の手からコードがポトリと床に落ちた。 いくら節電モードになっていると
はいっても、 須永さんの帰りを待っていたら間違いなく電気切れだ。
  ちょうどその時だよ。
『バッテリー残量20%、 節電モード第二段階に移行』
  私の視界一杯に例の警告分が表示されたかと思うと、膝が力を失ってがくりと折れて、 そのままへなへ
なへたりこむように床に崩れ落ちてしまう。 同時に私の視界に一瞬ノイズが入ったかと思うと世界が色を失
った。 天井をともす白熱灯の黄色い灯りも、 使い込まれてつやつや光るこげ茶色の廊下も、 黄ばんだ白壁
も、 何もかもがまるで古い写真みたいな白黒画像になってしまった。
(やばい、 やばい、 やばい)
  私はドアノブに手をかけて、 腕の力も借りて、 やっとのことで半病人みたいにふらふら立ち上がる。 で
も、 壁にもたれて身体を支えてなければ、 すぐにでも倒れてしまいそう。
  節電モードも第二段階になったら義体出力が普段の五分の一に制限されちゃうんだ。 そうなったら、 走
ることはもちろんできないし、 ただ立ち上がることさえ、 こんなふうに支障をきたすありさま。 さっきまで普通
の女の子だったらとても持ち上げられそうもない重い箱を自慢げに持ち上げていたくせに、 バッテリーの電
気がなくなりかけただけで小学一年生にも腕相撲で負けちゃうくらいの力しか出せなくなっちゃうなんて、 義
体も便利なんだか不便なんだか分からない。 残り少ない電気を使い果たさないために、 無闇やたらに動か
ずにじっとしてろっていう義体からの警告なんだろうけど、 それにしたって、 今の私は余りにも情けないよ
ね。
「どうしたの? 義体の調子でも悪いの?」
  私の様子を心配そうに見つめるアニーの顔は、 今の私の目には大昔の映画に登場する銀幕スターのよ
うな白黒画像でしか映らない。 力を失ったのと同時にサポートコンピューターは、 電気を食う画像のカラー
処理をしてくれなっちゃうんだ。
3543の444:2006/03/12(日) 11:49:15 ID:suAV5zr/0
「充電用のコードが身体から抜けちゃったんだよう。 だから、 須永さんに直してもらおうと思ったのに、 いな
いなんて・・・。 このままじゃ充電できなくて電気がなくなっちゃって、 私動けなくなっちゃうよう」
  私は、 もう半べそ状態。 いや、 半べそどころじゃない。 この身体は涙を流せるってわけじゃないけど、
気持ちは大泣きだ。 こんな時に須永さんがいないなんて、 どうして私はいつもこう間が悪いんだろう。
「ああ、 そういうこと」
  床に落ちてくるくるとぐろを巻いている黒いコードを見ながら、 アニーはくすりと笑った。
「そういうときは義体同士で電気のやり取りをすればいいじゃない。 私の義体の電気を分けてあげる。 そう
すれば、 まだまだもつでしょ」
  ことも投げにそんなことを言い放つアニー。
「お言葉は有難いけどね、 コードが抜けちゃったのに、 どうやって電気のやり取りをするわけ?」
  私はため息をついた。 そんな当たり前のことも分からないなんて、 人の心に限りなく近いスーパーAIの
言うこととはとても思えない。
  でもアニーは私の言ったことを理解したのかどうか・・・。 機械とは思えないような動物的な仕草でペロッ
と自分の口の周りを嘗め回すと、 私に近づいて私の肩に手を置いた。 私はなんだか嫌な予感がして後ずさ
りして逃げようとして、 後ろは壁で逃げ場なんかどこにもないって気がつく。
  アニーは、 ずいっと背伸びをしながら私の耳元でささやいた。
「義体の規格が異なったり何らかの理由により電源入出力用のコンセントプラグ使えない場合には、 義体
同士の舌を接触することによりお互いのバッテリー内に貯蔵された電力のやり取りすることができる・・・って
習わなかった?」
  そういえば昔タマちゃんに、 宇宙空間なんかで活動して、 どうしても電気のやり取りをしなくちゃいけない
ときの非常手段として、 舌にはそういう機能もついているって教わったような気がする。 でもさ、 舌を接触っ
て、 それってどう考えても・・・キスだよね。
「ちょっと待ってよ。 舌を接触するって・・・、 私、 あんたとキスしなきゃいけないわけ?」
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃん、 私はただのコンピューターで、 人間の女ってわけじゃないんだ
し」
3553の444:2006/03/12(日) 11:50:39 ID:ejzvOCNY0
「そんなの嫌だよう。 私絶対嫌だからね」
  私は思わずアニーから顔をそむけた。 いくらアニーが機械だからっていっても、 外見はどうみても中学
生くらいの女の子でしょ。 私だっていくら機械の身体だって女には変わりないんだ。 女同士のキスなんて、
絶対嫌。
「ま、 嫌ならいいけどさ」
  アニーは私が抵抗するまでもなく素直に私から離れた。 そして、 拍子抜けして、 ぽかんとアニーを見つ
める私に向かって、 人を小馬鹿にするように鼻をならして、 唇のはしっこを吊り上げて意地悪っぽく笑うん
だ。
「前みたいにイソジマ電工のカスタマーセンターの人のお世話になりたければ、 お好きにどうぞ。 バイバイ」
  アニーは、 そういい残すと、 身を翻してその場を立ち去ろうとする。
(前みたいにイソジマ電工のカスタマーセンターの人のお世話になりたければ・・・)
  思い出すのも恥ずかしい「ひとりえっち義体フリーズ事件」の顛末が私の頭に浮かんだ。 あの事件以
来、 カスタマーセンターの篠田さんとまともに顔を合わせることができていないのに、 久々の再会が義体の
電気が切れて、 壊れた人形みたいに変なカッコで固まっている情けない姿だなんて、 そんなの嫌すぎる。
恥ずかしすぎるよ。
「待って、 アニー!」
  私は、 節電モードになっていることも忘れてアニーを追いかける。 案の定身体がついていかなくて、 派
手な音をたててその場に転んだ。
「うー、 私とキスしてください」
  地面を這い回るドン亀みたいな情けないカッコで、 うめく私。
「えーっと、 よく聞こえなかったんだけど、 もう一度言ってくれない?」
  アニーは私を見下ろすように仁王立ちして勝ち誇る。 はるにれ荘のことなら蟻の歩く音だって把握してそ
うなアニーのこと、 私の声が聞こえなかったはずはないのに、 なんて意地悪なんだろう、 この子は。
「アニー、 お願い。 私とキスして」
  恥も外聞もなく私はアニーに向かって懇願する。 いくら嫌だろうと、 私には他に選択肢は残されていな
い。
3563の444:2006/03/12(日) 11:51:29 ID:ejzvOCNY0
「あらぁ、 ずいぶん素直なのね」
  私の横にしゃがみ込んだアニーは嬉しそうにそう言うと、 布団でもたたむように慣れた手つきで私の身
体を仰向けにひっくり返すと、 舌で私の口をアニーの舌でこじ開けて・・・。

  キスしたいっていう私の願い事、 適いました。 おみくじ、 また当たりです。 大当たりですよう・・・orz

               おしまい
3573の444:2006/03/12(日) 12:04:23 ID:ejzvOCNY0
ネジ工場、以上で終了です。
この話はそんなに長くするつもりはなかったのですが、思いのほかいろいろな
要素が入り込んでしまい、結構長くなってしまいました。

次回はリハビリ編の続きを、と思っていたのですが、エロの要望が強い
ようですね。確かに、近頃エロの要素が薄くなってきたかもしれません。
あたためていた藤原との絡みを入れたエロネタでも書いてみますか。
かなちゃんと被りますが、誕生日ネタです。
>>346
路線変更じゃなくって、ヤギーにだってもともとエロ作品はあるんです(涙)
私が拙いせいで、エロって感じてもらえないかもしれないけど・・・。
358346:2006/03/12(日) 12:49:08 ID:Hm+oNpNo0
>>3の444様

あいや、そういうことじゃなくて^^;
「無理矢理に」エロ路線にもっていかなくてもいいってことですよ。「毎回」エロい見せ場あり、とか。

GJ八幡っす(ローカルネタ)
359名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 14:27:04 ID:j11+yFCO0
ヨコハマ買い出し紀行ネタ?
360名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 16:36:16 ID:s6AixcvY0
誰か職人さん!
デカレンジャーに出てきたフローラみたいなロリ系
アンドロイド(サイボーグでもOK)のH小説を書いてください!
361manplus:2006/03/12(日) 18:23:41 ID:1FpxjAIq0
 杏奈の手術が始まった。杏奈に施されるサイボーグ処置は、実際に長期着用型宇宙服の着用者に
施される手術とは若干違っていた。
その違いは、桐島が喜ぶ身体にするためと、秘書用サイボーグとしての手術が併せられているところの違いであった。
 谷本の執刀により、杏奈の胴体は、顎から股にかけて切り開かれ、内蔵がむき出しの状態になった。
杏奈は人ごとのように、まるで人体標本のようだと思っていた。杏奈には、意識があっても、
痛みを全く感じないようにシステムによって維持をされているため、モニターに映っている自分に
施されている処置は人ごとのように思えてしまうのだ。
それを察したかのように、
「水沢さん。今、モニターに映っているのは、自分なのよ。
だから、自分に何が起こっているのかをよく見ておくのよ。これからの生活に自分の身体が、
どの様な構造になっているかわかっていると便利だからね。」
谷本の声が、頭の中に飛び込んできた。
そうなんだ、これは自分のことなんだと杏奈は思い返した。
「心臓と肺の除去と高性能血液循環用心臓代替ポンプの取り付けを行います。
外部設置型人工心肺へのバイパス処置と人工血液への交換処置を開始して下さい。」
谷本の指示にアシスタントドクターや看護師が、てきぱきと行動しているのが解った。
それでも谷本にとっては心許なく映るのか、
「もっと、動作を速くしないと、実験体のスペアはないのよ、普通の実験体とは違う貴重な素体なのを忘れないで!
もっと機敏に動かないと実験体が死んでしまうわ。」
「すみません!」
現場にさらなる緊張感がみなぎって、 スタッフの動きがもっと機敏になった。
杏奈は、自分が実験動物の一種であることを痛烈に思い知らされたのであった。
谷本が用意された外部設置型人工心肺装置に、心臓に繋がる動脈と静脈を肺動脈と肺静脈をのぞいて
手際よくつなぎかえ、心臓と肺を一気に杏奈の身体から取り除いた。
取り除いた臓器は、生体移植用として、移植を待つ患者の元に手際よく搬送されていった。
杏奈は、自分の分身が誰かの身体で生きていくことになることを思い、少し、ホッとした気分になった。
362manplus:2006/03/12(日) 18:25:08 ID:1FpxjAIq0
 杏奈の人工心臓は、桐島からの注文により、心拍音が出ないように万遍なく人工血液をサイボーグ体に
供給できるようなポンプタイプの特殊なものが設計された。
ロータリー式のポンプであるため、効率的に体内へ血液を搬送できる設計になっていた。
このタイプの人工心臓は、私たち、サイバーヒューマン社の新商品となっていくのであった。
杏奈は、この人工心臓の移植第一号でもあったのである。
杏奈は、もうこの時点で心臓の鼓動という人間本来の音をも失うことになってしまったのである。
 谷本は、素早く杏奈の心臓のあった位置に杏奈の新しい心臓になる人工心臓を納め、
循環液の満たされたタンクと循環液を再使用するための循環液クリーナー、
使用不可になった循環液をためるタンク、そして、循環液の流れや再利用か廃棄かを選択するための
コンピューターが、杏奈の肺のあった位置に納められた。
それらの機材を素早く接続し、外部設置型人工心肺に繋がれていた動脈と静脈類を人工血管を使用しながら、
杏奈の新しい人工心臓であるロータリーポンプに素早く繋ぎ変えられた。
そして、人工心臓等の循環液の体内循環システムを体外の動力供給システムと繋げていった。
杏奈の身体に新しい血液である循環液が流れ込むのを谷本は確認して、
杏奈の体内を流れていた赤い本来の血液と人工血液が混じり合った液体を完全に杏奈の体外に排出した。
この処置により、杏奈の身体を流れる血液は、淡いピンク色をした循環液だけとなった。

363manplus:2006/03/12(日) 18:26:39 ID:1FpxjAIq0
「さて、次は内臓の摘出ね。」
谷本は、そう言うと、迅速な手さばきで、杏奈の消化器官を喉から、食道、胃、小腸、大腸に至るまでを全て摘出した。
もちろん、肝臓や膵臓、腎臓や膀胱も全ての内臓が、杏奈の身体から摘出されていった。
一時的に、杏奈の身体は、杏奈に新に与えられた人工心肺システム以外のスペースは全て空になったのであった。
杏奈の喉には、除去された声帯の代わりに、脳からの音声信号をデジタル波に変換して外部との無線による
会話が出来るようなコミュニケーションシステムと人形のような音声を発声できる人工声帯音声スピーカーが
取りつけられた。
そして、その空間を埋めるように杏奈の首から胸部までのコントロールを補助する補助コンピューターが納められた。
彼女が長期着用型宇宙服を未着用で外部に直接聞こえるような声を必要とするのは、
片桐と二人の時だけなのである。その時の声は、出来る限り作り物の声に近い方が、
片桐の恋愛対象になるのであった。片桐の特別な恋愛観を満たすためにも、
人形やロボットのような声にする必要があったのであった。
ちなみに長期着用型宇宙服にも外部スピーカーが装着されていて、そちらの方は、
杏奈本来の声を再現できるように外部スピーカー兼人工声帯が調整されるようになっていた。
本来は、宇宙空間での作業を大気中と同じようにこなせるようにするために装着される長期装着型宇宙服であるため、
オリジナルの設計では、外部とのコミュニケーションは、デジタル無線コミュニケーションシステムのみであるのだが、
杏奈が地球上で生きた広告塔になるために特別に付け加えられたうちの一つが、
この外部人工声帯スピーカーであった。
このシステムのおかげで、彼女は、宇宙服を着せられている状態でも周りの人間と普通に会話することが
出来るのであった。
364manplus:2006/03/12(日) 18:27:50 ID:1FpxjAIq0
 次に谷本は、杏奈の腹部の処置に移った。
腹部の大きな空間には、通常の長期着用型宇宙服の着用者の三分の一の大きさの循環液貯蔵タンクと
廃液貯蔵タンクが納められた。そして、こちらの循環液貯蔵タンクにも淡いピンク色の循環液が満たされていった。
胸部のタンクと腹部のタンクで、杏奈は宇宙服のバックパックにある循環液再生システムに頼らない状態で、
丸一日間生命維持が可能になったのである。
通常の装着者は、標準人体単独での生命維持は、240時間可能になっていた。
 杏奈の単独生命維持の時間が極端に短いのは、長期装着型宇宙服を脱いでいる時間が、
片桐との二人だけの時間に限定され、それ以外は、長期着用型宇宙服を脱ぐことを許されていないのと、
彼女が、宇宙服の故障でのバックアップサポートまでの放置時間が、地球上での活動が主なために、
それほど長く放置されることがないという点、そして、秘書用サイボーグとしての電子機器を
併設して納めるような設計であるための三つの理由によるのであった。
杏奈は、通常の長期着用型宇宙服の着用の宇宙飛行士と違い、地球上での長期着用型宇宙服を未着用の姿での生活は、
許されていないのであった。
唯一許されているのは、片桐のプライベートでの相手をするときのみであった。
 次に、谷本は、杏奈の腹部の空いた空間に、秘書業務をこなすための外部コンピューターとのダイレクトアクセスや
コンピューター通信網との接続、彼女の記憶や視覚、聴覚、会話記録等のデーター保存、
補助頭脳としての記憶領域、彼女の生命維持サポートなどの秘書業務や生命維持をカバーするための大容量の
コンピューターが取り付けられた。
そして、杏奈の身体の全ての電子機器や機械部品に電力を供給する発電ユニットと蓄電ユニットが納められた。
発電や蓄電ユニットも、体内に置かれるものは、長期着用型宇宙服のバックパックに不具合が生じたときや
長期着用型宇宙服を脱いでいるときの補助のイメージが強いものであった。
365manplus:2006/03/12(日) 18:29:08 ID:1FpxjAIq0
 肝臓、膵臓、胆嚢などの特殊な内臓の代替をする人工器官も杏奈の身体の中の電子機器類の空いた空間に収納された。
膀胱や腎臓といった血液の老廃物を除去する内臓は、循環液が全ての老廃物を取り除いてしまうので
必要がないため、代替器官の人工臓器は、長期着用型宇宙服の装着者にとっては、不用の器官となったのであった。
 杏奈の腹部で数少なく残された内臓は、性器と直腸と肛門ぐらいであった。
その残された臓器もこれから谷本のメスが入ろうとしていた。
 谷本が、杏奈に話しかけた。
「水沢さん、これから、あなたと社長の性生活を充実させる処置を行うわよ。いいわね。」そう言うと、
谷本は、杏奈の女性器に手を付けた。
 まず、卵巣から、卵子を採取する作業を開始した。人工的に生理を短期間に何度も起こし、
排卵を促進して、卵子を多数採卵した。数分に一度起こる生理の時の血液が、淡いピンク色をしていて、
杏奈の体内には、本来の赤い血液が一滴も残っていないことを杏奈に実感させた。
 採卵された卵子は、冷凍保存され、もしも、杏奈と片桐が子孫を残したいと考えたときに人工授精により、
代理の母胎での出産が出来るようにしたのであった。
 杏奈の性器は、谷本の手により、採卵が終わると卵巣を除去され、子宮も卵子が着床できないような処置を施された上、
性感を増幅すると同時に生理がこないようにホルモンをコントロールするためのコンピューターが
子宮の横に取り付けられた。
杏奈の性感を高めるために、クリトリスの包皮を切除され、ヴァギナの組織が何度ペニスを挿入されても
拡がることがなく、常に締まりの好い状態を保てるように、人工筋肉が、ヴァギナ周辺の筋肉に編み込まれていった。
そして、子宮の横に取り付けられた性器をコントロールをするためのコンピューターにより、
片桐にとって最適な性器として、杏奈の性器が保てるようなコントロールが行われるようになった。
卵巣の代わりとして、片桐が、杏奈の性器以外の性器では絶対に物足りないと感じるようにするための分泌液を
分泌する装置が、谷本の僅かながらの杏奈へのプレゼントとして、密かに取り付けられた。
366manplus:2006/03/12(日) 18:43:54 ID:1FpxjAIq0
膣から腹部の廃液タンクに杏奈が受け入れた精液を膣から排出するためのカテーテルが連結された。
このカテーテルは廃液タンクの内部の負圧を利用して、杏奈の膣に精液が溜まらないようにするものであった、
性器のコントロール用のコンピューターの制御により、男性からの射精が終わるたびに膣洗浄と精液の除去を
自動的に行い、常に杏奈の性器を清潔な状態に保つようになっているのであった。
杏奈の性器が何度もの性交に耐えられるようにしたのであった。杏奈の性器は、片桐以外の男性にとっても、
一度セックスするともう、杏奈の性器の虜になるような設計がなされていた。
こうして、ほぼ、作り物のようになった杏奈の性器を谷本は、満足げに眺めて、
「水沢さん、私が考えられる最高のセックス専用性器をプレゼントしたわ。片桐社長に心ゆくまで愛されてね。」
そうつぶやいて、今度は、杏奈の肛門の処置に移った。
 杏奈の肛門は、排便するために残されたのではなく、直腸と共に、アナルセックスのためだけに残されたものであった。
彼女の肛門は、片桐のペニスが入る最適のサイズに拡張され、その大きさで緩むことのないようにオーリング状の
人工筋肉でその大きさを固定されたのであった。彼女のアナルは、片桐にとって最高の性器になったのであった。
そして、直腸も片桐の性器のサイズよりも少し細い状態で保持され、性器挿入時に少しきつい位の最適な挿入感覚と
収縮性を保持するように、状の人工筋肉で覆われた。
つぎに、この収縮をコントロールするための装置が取り付けられ、この装置と子宮横のコンピューターが
ケーブルで接続された。
杏奈が受け入れた男性の精液を廃液タンクに吸い取るカテーテルが、直腸の片方に取り付けられ、
その脇に、杏奈の性器の虜に男性をしてしまう分泌液を合成分泌する装置から伸びたカテーテルが取り付けられた。
367manplus:2006/03/12(日) 18:45:04 ID:1FpxjAIq0
 次に、谷本は、杏奈の肛門と性器をカバーする特殊樹脂製の自動開閉式のカバーを取り付けた。
このカバーは、杏奈のマスターである片桐の静脈マスターキー以外での開閉は不可能であった。
局部洗浄液のタンクが身体に取りつけられ、性器制御コンピューターの制御により、
定期的に杏奈の尿道の位置に尿道に代えて取りつけられたノズルにより、カバーの中でヴァギナと
アナルの洗浄が出来るようになっていた。
洗浄した廃液は、再びノズルを通じて腹部の廃液タンクに吸収される仕組みになっていた。
 こうして、杏奈のアナルは、杏奈の第二の性器として、ヴァギナ同様に谷本の最高傑作品となったのであった。
 杏奈は、自分の下腹部の三つの穴が、全て人工のものになり、そのうち二つは、
セックスをされるためのものになったのであった。
 その上、杏奈の性欲は、性器制御コンピューターの制御により、制御され、
長期着用型宇宙服を着用している時は、性欲がゼロになるようになっていて、未着用時は、
片桐の持つ性欲コントローラーによって制御されることになっていた。
368manplus:2006/03/12(日) 18:47:05 ID:1FpxjAIq0
 谷本は続いて、腹部の最後の空いたスペースに、杏奈の身体の体温調節システムを埋め込んだ。
杏奈は、体内に電子機器や機械装置がめいっぱい詰め込まれていることにより、
普通の人間より発熱量が多いことに加えて、杏奈の皮膚は、汗腺が無くされてしまった上に人工皮膚で
覆われてしまうために放熱することが不可能になってしまうため、体内温度調整システムの
お世話にならないといけないのである。
このシステムは、発声した熱を電気エネルギーに変換して蓄電ユニットに蓄電すると共に、
人工皮膚を人間の体温になるようにするためのヒーターとなっていた。長期着用型宇宙服を着用している時は、
人工皮膚への熱の供給を最低限に抑えて、バックパックの放熱システムを通じて外部に
放熱されるようになるのであった。
長期着用型宇宙服の着用時は、皮膚の体温が宇宙服内の温度を上げてしまうため、その放熱をすることを
考えるよりも、人工皮膚に温度を与えないで、直接熱を放出してしまう方が、都合がよいと考えられたからであった。
逆に、作り物となったからだとはいえ、人間の体温を持っていたほうが、より、杏奈を感じやすいという片桐の
リクエストによるものであった。
 杏奈の身体の胴体部分の変更が終了した。
369manplus:2006/03/12(日) 18:54:51 ID:1FpxjAIq0
munplusです。

今日は、一気に、改造シーンを書き上げようと思ったのですが、
余計な事も書いて長くなりました。
頭部の改造と仕上げのシーンは、次の投稿にします。

確かに、最近エロい作品が少ないですね。
かくいう私も、サイボーグフェチで、しかも、改造シーン萌えなものですから、
改造シーンで、満足してしまって・・・。

この作品で、少し、マニアックな性描写をしてみようと思います。
普通のエロいシーンとは、ちょっと違う事になるかもしけませんが、
エロいシーンをいれようと思っています。

杏奈に3の444さんのヤギーや無名さんの香奈ちゃんのようなほのぼのとした
女性の部分も体験させたいのですが、私の性癖が許さないもので・・・。
それでも、今回は、女らしさも出してみようと思います。
370名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 06:25:47 ID:Os9kgN2o0
人型を留めていないものに改造するてのはアリですか
自動販売機に女の子の顔がついてたりとか
パチスロ機に女の子の顔がついてたり・・・
371名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 14:40:44 ID:HqZ1Tbav0
四肢切断までが限度だと思う。
異型でもノーマルフォームが人型ならいいんでないの?
3723の444:2006/03/13(月) 17:00:13 ID:tsXbQUaM0
私は人としての意識がありさえずれば、ヒト型にはこだわらないけどね。
目標額を貯めれば人間型の義体を与えてもらえると約束され、
日々しゃべる自動販売機として販売活動に勤しむ女の子。
毎日決まった時間に缶コーヒーを買いに来る青年との間にいつしか
淡い恋心が、なんて、萌えではないですか!
373名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 17:03:08 ID:ygAsZ0Hk0
一応、サイボーグって区切りならどんなものでもOKって形だったはず。
今では鬼畜ものは無いが、初期は非人間型でも構わない。むしろそっちの方がイイ。って人もいたし。
いやならセルフあぼんで処理してくれ。
3743の444:2006/03/13(月) 17:05:57 ID:tsXbQUaM0
さらに言うと、顔なんてついてなくていい。
外見は自動販売機そのもので、青年は自動販売機が
人間だって気がつかないくらいのほうがいい。
375名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 00:28:13 ID:QJnoOEbv0
内側ではいろんな思考が渦巻いてるんだけど、
実際に声に出せるのはプログラムされた営業セリフのみ、とか?
3763の444:2006/03/14(火) 00:51:39 ID:1dwZX4rd0
>>375
声は自分の意志で出せるけど、何かの事情で人間バレしてしまうと二度と
人間型の義体が与えられないという設定。
それで、好みのタイプの男が来るとジュースを二個出しちゃうとか
男が彼女ずれで来ると、彼女には何を押しても麦コーラしか出さないとか。
基本的には人魚姫みたいな悲恋のイメージで最後は海の泡ならぬ、スクラッ
プ工場行きかな?
377名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 04:35:57 ID:qIeGqHDm0
>>370
ありだと思う。
その娘の脳が無改造で、サイボーグのQoL(クオリティーオブライフ)確保には
非人間型化以外の現実的選択肢が無くて、ちゃんと完全に一人の人間であると
社会的にも認められている場合に限れば。
個人的に鬼畜なのは好きじゃないので…。(苦笑)
あと、顔はやっぱりついてた方が良いな。ついてないと人間に見えないし。
ロボ顔でもいいから、最低限人のような形をした顔が欲しいところ。
それと、サイボーグ娘なら女の子に見える顔じゃないと萌えないw
顔はあるけどそこについてる目や耳が機能してないというのは可。
顔についている眼球がダミーで、目の前に人がいても全く見えない完全盲目で
実際には視神経がコンピューターに接続されてて仮想空間が見えるとかだと
むしろ萌える。
でも、そうなると販売機型サイボーグは有人なので、「自動」販売機では
なくてもはや「販売機型した販売員」かも。
そういうサイボーグ娘をつくる場合、ただの自動機械にできる事をやらせても
あまり意味がないので、パチスロ娘よりは販売機娘(売るものにもよるかも…
たとえば特定の人にしか売ってはいけない物とか)やコンピューターの
オペレーター娘とかの方が良いかも。
378名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 20:42:24 ID:QJnoOEbv0
>>377
初心者向けの新幹線券売機みたいな?
「曖昧な定義を補完して条件付けを決定」ってなサポートは結構需要あるかも。
379名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 21:38:51 ID:kpJlZcYn0
筒井康隆「お紺昇天」の場合はまったくの人工頭脳だが、脳と維持装置を
載せてドライバー不要の”自動自動車”になり客を載せて稼ぐというのはどうか。

話はそれるが昔のSFでは人工臓器は肝臓だけが困難だとされていた時期が
あって「アルファルファ作戦」ではじじいが降りられない肝臓車に乗っている。
380Dark Mater(架琉魔):2006/03/14(火) 22:00:22 ID:shq/VpHs0
page5 恵委歌のレポート

廃墟、ハイキョ、はいきょ。
ウチは今、廃墟の真っ直中に居る。
瓦礫の中から大量の金属球が現れる。
中空を浮遊するそれ等は、会話するように振動し合った後、四方に散っていく。
ウチは、その仕草に親しみを感じ、眺めていた。
−「Hac-00!何をしている、早く狙撃せよ!」−
ウチはハッとして銃を金属球達に向ける。
照準が重なり、ウチは彼らを狙撃した。
かすっただけの球は弱々しく地面に落ちる。
何かの作戦か、それとも自発的にか、一体の球が瓦礫から飛び出し、かすった球の周りを浮遊する。
「うっ…」
撃つことを躊躇うウチの背後から銃を持った手が延びる。
「…!やめ…っ!」
「失望したぞ恵委歌。」
鬼塚隊長はそう言って銃のトリガーを引いた。

「全く、ひどい結果とは思わんかね?
えぇと…鬼塚大尉?」
ウチをあんまり気に入っていない教官がいう。
「お言葉ですが教官、彼女は人間だった頃の記憶がありません。
恐らくは捕虜機械に情を移したのではないかと思われますが…。
現にホログラムを使った演習では完璧な成績を納めているでしょう。」
鬼塚隊長は淡々と答えた。
「…はっ、実践向きではないね。」
381Dark Mater(架琉魔):2006/03/14(火) 22:01:06 ID:shq/VpHs0
足音のみ響く廊下でウチは隊長に謝った。
「すみません、隊長。」
「一つ聞く、本当に情を移したのか?」
ウチはハイと答えた。
次の瞬間、ウチは隊長の容赦ない張り手で壁に頭を打ちつけた。
「ぐうっ…!?」
「ここで死ぬか?」
隊長の放つ信じられないほど冷い発言にウチは困惑した。
「今度機械相手に躊躇してみろ、その場で殺してやるよ。」
隊長はそう言い放ってその場を去った。
そして廊下には愕然としたウチとウチの顔がめり込んだ跡だけが残った。

「確かに、アタシもキーちゃんと同意見だね。」
神奈女医は呆れ顔で言った。
「エイちゃんには悪いけど、これは戦争なんだよ。
そして、その戦争の被害を被って滅びた国で彼女は私に拾われた。
そんな彼女だ、もし相手が君じゃなかったら、今ごろ本当に息の根を止めていただろうね。」
「…。」
女医は言った。
「この時代、そんな人は大勢居るよ。
何を隠そう、アタシもその内の一人さ。」
ウチは俯いていた顔を上げて言った。
「神奈はんも?」
女医は頷いて言った。
「前世紀の話だよ。」

アタシは、大学を出た後、同じ生物学者であった親父と一緒に、同じ研究をしていたよ。
不老不死の遺伝子をね…。
382架琉魔:2006/03/14(火) 22:14:45 ID:shq/VpHs0
架琉魔です。
サイボーグの用途としては、どれもに実用的ですけれども、改造される側としてはやはり原型に何かしら執着するところがあると思います。
だから顔くらいは付くのではないでしょうか。
ちなみに、ダークマターの作中にも振れたように、人権保持のために人と確認されるための顔は必要と思われます。
<377様 ナカーマ( )人( )
383M.I.B:2006/03/14(火) 23:26:23 ID:hkzUA7sX0
ヴァーチャルサイボーグ

「それじゃあ、始めるわよ」
 女の声が響き、ライトが身体を照らす。
 手術台に固定され、首から下は動かすことも出来ない。
「お願い、止めて」(止めないで)
 恐怖に震える声で拒否する私。
 その声を無視するように首筋に注射が打たれ、声を出すことも出来なくなる。
 メスが掲げられ身体が切り裂かれた。内臓が切り取られていく。
 その光景を鮮明にみながら、私は恐怖とともに興奮を覚えた。
 臓器のみならず皮膚や筋繊維までもが解体され、骨格すら回収されていく。
 それと同時に幾つもの金属製のパーツが運び込まれ、私の身体があった場所で組み合わさっていく。
 新たに金属製の骨格と身体が組み立てられていく。
 人型でありながらまったく人と異なるもの。その姿を見ながら私の意識は消えていった。
384M.I.B:2006/03/14(火) 23:27:23 ID:hkzUA7sX0
 目が覚めると世界は変わっていた。
 ゲームで見るようなアイコンやターゲットが表示されている。
 リクライニングシートに寝転んでいるようだが、身体を動かそうとすると
 <システムエラー>
 と目の前に赤文字で現れた。
「どうなっているの?」
「目が覚めたようね。HBF−1」
 先程、手術を行っていた女性があらわれ、手元のコンソールを弄る。
 <ランクE行動許可>
 先程と同じような文字が映り、身体が動くようになる。
 投げ出されるように地面に足をついたが、不思議な感じがする。
 見るとそこには銀色に冷たく輝く金属製の足があった。
 咄嗟に手や腕、胴体も確認する。
 同じだ。銀色に硬く輝く金属製の手が、腕が、胴体がそこにあった。
「これが今の貴女の姿よ」
 女性がそう言うと、壁の一角が開き大きな姿見が現れた。
 そこに映っていたのは、銀色に輝く金属製の女性型ロボット、としか言いようも無いものだ。
 全身が銀色の金属で出来ており、モデル体系と言ってもプロポーションをしていたが、人肌の温かみはなく、ただ金属の冷たさだけを感じさせていた。
 髪の毛も銀色の繊維で作られており、まるで刃物の様だ。 
 ただ顔だけが肌色のパーツで構成されている。そこに自分の顔があるのが不思議なほどだ。
385M.I.B:2006/03/14(火) 23:28:27 ID:hkzUA7sX0
(これが私?)
 信じられないという気持ちとともに、喜びを感じている自分がいた。
 失ったはずの心臓が早鐘のように高鳴る。
「嘘…、嘘よ」(いいえ、本当よ)
 否定する言葉を口にする自分と肯定する自分が存在する。
「元の身体に戻してください」(このままにして)
 懇願する言葉を心の中で否定する。
「残念だけど、もう元に戻すことは不可能よ」
「そんな…」(うれしい、ずっとこのままの身体でいられる)
 口に出る悲しみの言葉と歓喜に震える自分。
「これで仕上げよ」
 女性が片手に銀色のマスクを持ち近づいてくる。
「これを付ければ貴女はもう二度と逆らうことは無いでしょう」
 冷たい金属の仮面が近づいてくる。
 鼓動の高鳴りは恐怖か歓喜か分からなくなっていた。
 そして、マスクが顔に付けられたとき世界が真っ白になった。
386M.I.B:2006/03/14(火) 23:30:52 ID:hkzUA7sX0
「予定時間を終了しました。継続される場合はもう一度フロントで処理をしてください」
 合成音声が告げるのを聞きながら固定装置が外れるのを待って、スピーカーと一体になったヘッドディスプレイを外す。
「まずい、またやっちゃった…」
 専用スーツによって隠れているが股の内側から伝わる感覚が洪水が起きていることを示している。
 カプセル型のヴァーチャルマシンから抜け出し更衣室へ向かう。
 ロッカーから取り出した服に着替えるため全身タイツの様な専用スーツを脱ぐ。汗と混ざり合った雌の臭いが隙間から激しく臭った。
 見ると予想どおり股間は愛液でビチョビチョになっている。濡れティッシュで手早くふき取る仕草は慣れたものだった。
 返却所にスーツを持っていくと、見知った顔の女性がいた。
「また、随分派手にやったわね。アダルト用ディスク?」
 ここのオーナーである高校の部活のOBの薫さんだ。私の持っていたプレイディスクを手早く奪うとタイトルを確認する。
「CYBORG? また、この手のディスク? よくこんなものでこんなになるわね」
 スーツの染みを見ながら呆れたような声で言う。
「良いじゃないですか。好きなんですから」
 私は顔を真っ赤にしながら答えた。

 ヴァーチャルムービーはこの10年で一気に発達したレジャーだ。
 使用者は専用のスーツとヘッドディスプレイを装着してヴァーチャルマシンに入る。マシンは専用のディスクを再生し、使用者はその作品の主人公やヒロインを疑似体験することが出来るのだ。
 初期は非常に高価な物だったが、技術革新が進み学生の小遣いで楽しむことが出来るレベルまでコストダウンが行われた。
 それと共に様々な作品がヴァーチャルムービーとして製作された。ヴァーチャルムービーは主人公やヒロインになることで楽しむもののため、従来の映画とはまったく違う手法で製作された。
主人公やヒロインの視点で、彼女たちの聞いた音を、彼女たちの感じた感覚を、視聴触の3つの感覚がデータとして収められそれを体感するのだ。
 CYBORGという作品もそんな雑多な作品のうちの一つだった。ただ一つの点を除いては。
387M.I.B:2006/03/14(火) 23:32:27 ID:hkzUA7sX0
「これって例のムービーですよね?」
「ああ、実際の人間を改造したって噂か? 嘘に決まってるだろ。そんなことしたら表には出せないぞ」
 あまりにもリアルな手術シーンとヒロインの動きから、本物の人間を改造して撮影したという噂が流れたのだ。
 だが、実際に体験してみるとよく出来てはいるが生の感覚とは程遠い作り物ではしかない、という感想がせいぜいだった。
「やっぱり、皮膚触感と視聴覚だけじゃまだまだリアルとは程遠いですよ」
「言うね。その割りにこんな洪水にして」
 その言葉にまた一気に顔が赤くなる。
「また今度続きを見に来ますから」
 一緒に借りたディスクを押し付けて、店から飛び出した。

「サイバーガール、メタルレディ、本当に好きだね。でも、おかげで手間が省けそうよ」
 そう呟くと、専用スーツを廃棄ボックスに放り込み携帯電話を取り出したのだった。
388M.I.B:2006/03/14(火) 23:45:52 ID:hkzUA7sX0
久々に書いてみます。
短めに終わらせられたら良いなぁ・・・

>サイボーグとと顔
顔はある意味その人の象徴ですから、残す形がいいですね。
ほのぼのモードでも以前のその人を認識する手がかりになりますし、
鬼畜モードでは、顔とそれ以外のギャップが楽しめる。
389名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 01:14:41 ID:IiCMsxi50
>>379
「脳と生命維持装置を載せて」って時点で有人なんだから「ドライバー不要の自動自動車」じゃないじゃんw
でも上半身だけが車に固定されてるタクシー娘なんかは萌えるかも。腕の神経が操作系に直結してるから腕やハンドルやペダルなどが省かれてるとか。それなら盗んでも動かせないから車輛盗難(人間だから盗難じゃなくて誘拐か)とかも起きないかも。
タクシーは無人じゃできないからね。目的地を告げると自動で目的地に向かう自動機械ができたとしても、何かタクシーとしての面白みがないというか。
タクシーの運転手って色々な事に詳しかったりするから、話すのが楽しかったりするけど、それが自動車固定型タクシー娘だったりした日にはもう…。
390manplus:2006/03/15(水) 01:53:16 ID:pU6oiKWM0
私としても、人型をとどめていた方がいいのかな。
その方が萌えると思います。

ドライバーだったら、自動車レースのレーシングドライバーで、
反応速度を上げるために、手脚を付け根から切り取って、
腕や脚の神経が、操作系の機器と直結していて、
レーシングカーを自在に操れる代わりに、
シートに自分の意志では乗り降り出来ない状態で、
縛り付けられる状態でレースのためだけに生きる
女性サイボーグなんていうのもいいかもしれませんね。

そんな女性レーサーが実在したらもうテレビに釘付けだと・・・。

続きをひねり出す意欲が湧かないので、
この話に参加させてもらいました。
391名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 11:09:45 ID:JWIeIjhH0
創元SF文庫のアン・マキャフリー著「歌う船」シリーズ
奇形で生まれたため人間としての意志を保ったまま生体コンピュータとして宇宙船の中に組み込まれた女性の物語。
392名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 18:22:33 ID:8ppzXhHK0
かなちゃん、お誕生日おめでとう!
393名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:59:49 ID:F0QUtee20
歌う船は、ユニットごと船から降りれなかったっけ?
かなり前に読んだから忘れてる。
394名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 07:03:18 ID:rQ8ClHF70
歌う船のは、別に自分で船を降りたり、降りた後自分で歩いたりできるわけじゃないし。
何かに組み込んで使う事を設計の前提にした、最小限の機能しかない(手足など当然ない)
義体によるユニットシステムって萌える。
>>377な世界観で、某デッキマンやソケットマンみたいな形の機械化娘なら猛烈に
萌えまくり。もちろん脳は無改造で、人格は保たれたままで。
頭部(ここだけほぼ生身)と胴体の上半身部分(もちろん機械、手足なし)だけという形状はもっと萌えかも。
395名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 21:55:31 ID:yEKxYZEP0
人間型のボディもちゃんとあるが、所詮リモコンでしかない、というのもいい。

愛されてるのは自分自身なのか、それとも身体(リモコン)なのか・・・
396名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 11:41:19 ID:YhFMwEsk0
保守
397名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 12:17:11 ID:+8RFk+wi0
死刑が完全に廃止された世界で、あまりに凶悪だったり何度も脱獄を試みる悪質な場合は
某ソケットマンに改造されるというネタもありかも
自前の手足はないので、軍や警察がそれに目をつけて政府の闇の仕事をやらされたり
なんて事もでてきそうだ
398無名:2006/03/19(日) 14:32:26 ID:pKRqgI/K0
【星から来た老人】

 今日はかなと和真君と祐喜ちゃん、それに慶介お兄ちゃんの四人で山へキャンプに行く日だ。お兄ちゃんがこの日のために有給休暇を使ってくれたおかげで、キャンプに行く計画が実現したんだ。場所もあらかじめ予約したんだって。気が利くね、お兄ちゃん。
 というわけで、かな達はお兄ちゃんのワゴンでキャンプをする山へ出発したのだ。
 「うわー、すごい森だー」
 「って、何驚いてんだよ」
 大きな森を見てビックリしてるかなに、突っ込みをいれる和真君。
 「ほんと、二人を見てると飽きないわね」
 そりゃないよ祐喜ちゃん。突っ込まれてる身にもなってよ。
 「よし、この近くのドライブインでお昼を食べるとしよう。お前達もいい加減騒ぐのはやめろよ」
 「はーい。分かりましたー」
 和真君、ちゃっかりしてんなー。今まで一緒に騒いでたくせに。
 そんなこんなで、かな達を乗せたワゴンは川の近くのドライブインに到着した。それにしてもけっこう家族連れの人達がいるなー。遠くから来てる人もいるみたいだね。車のナンバーで分かるもん。
 「トイレに行きたい人は今のうちに行って来いよ。あとでしたくなりました、なんて言わないように」
 そんなこと分かってるよお兄ちゃん。でも、もう我慢できないから、早く行ってこよーっと。かなは猛スピードでトイレへ駆け込んだ。
 「いやあー速いこと速いこと。ほんとに我慢できなかったんだな、かなやんの奴」
 よ、余計なお世話だよ。こっちは急いでるんだから。
399無名:2006/03/19(日) 14:35:20 ID:pKRqgI/K0
 ふーっ、やっと出られたよ。トイレから出たかなは、お兄ちゃんたちが座ってる席を探した。
 「けっこう人がいるねぇ。これじゃあ探すのに時間がかかるよ」
 いったいどこでお昼を食べてるんだろう。こんな人ごみじゃ見つけるのに一苦労だ。
 かなはお兄ちゃん達がいる席を探した。でも、どこにもいないよー!困ったなあ。しょぼーんとしてるかなの前に、知らないおじいさんが現れた。
 「どうしたんだい?迷子にでもなったんかい?」
 「実は…そうなんです…」
 困ってるかなを見かねたおじいさんは、かなの手を握りしめた。
 「じゃあ、一緒に探してあげるよ」
 そんなわけで、かなはおじいさんと一緒にお兄ちゃんたちを探す事になった。でもお兄ちゃんたちは一向に見つからない。
 「外に出て探してみたらどうかい?」
 おじいさんの言う通り、外に出て探してみたら、いたいた、いましたよお兄ちゃんたちが。
 「おーい、お兄ちゃんたちー!かなはここだよー」
 驚いて後ろを振り返るお兄ちゃんたち。よかった、かなを置いてどこかへ行っちゃったと思ったよ。
 「どこ行ってたんだよ、俺達かなやんの事探しまくってたんだぞ」
 「ごめん、道に迷っちゃったんだ。でもね、おじいさんが一緒に探してくれたんだ。ねっ、おじいさん…って、あれ…」
 かなはあたりを見回した。い、いない。おじいさんがいつの間にか消えてるよ。お礼も言ってなかったのに。
 「どこへ行っちゃったんだろう。あのおじいさん…」
 それにしても、あのおじいさん、とっても不思議な感じがしたなぁ…。お兄ちゃんたちのいる場所を見つけてくれたし。今度会ったらお礼しなくちゃ。
400無名:2006/03/19(日) 14:44:41 ID:pKRqgI/K0
 「やっぱり!でもなんでこんな所にいるの?」
 「実はね、おじいさんは探し物をしてるんだよ」
 探し物?いったいなんだろう。
 「おじいさん、探し物ならかなも手伝ってあげようか?」
 「いや、いいんだ。それよりお嬢さん、水を運ぶの大変だろう?おじいさんが手伝ってあげよう」
 え?手伝ってくれるの?とかなが言おうとしたとき、おじいさんはポケットから変なカードを取り出して、かなが持っているポリタンクにかざした。
 「あ、あれ?ポリタンクが…」
 なんと急にポリタンクが軽くなったのだ。
 「これなら楽に運べるだろう?さあ、早くもって行きなさい」
 かなはおじいさんに言われるままにポリタンクをキャスターに積んだ。
 「おじいさん、ありがとう」
 お礼を言って振り返ったら、いつの間にかおじいさんはいなくなっていた。いったいどこへ行ったんだろう…。
 「あ、そうだ。早くお水運ばなくちゃ」
 時間を食っちゃったからみんな心配してるだろうな…。とりあえずかなは軽くなったポリタンクを持ってみんなのところへ急いだ。

 「おい、いったいどこまで水汲みに行ったんだ」
 かながキャンプ地に戻ったときにはお兄ちゃんたちがかなの帰りを待ちわびていた。
 「ごめんごめん、探すのに苦労しちゃって…うわっ」
 かながキャスターからポリタンクを下ろそうとしたら、急に重くなって前のめりになってしまった。おじいさんのカードの効果が切れたんだ。
 「これからは迷ったりするなよ、分かったな」
 「う、うん。分かったよ」
 
401無名:2006/03/19(日) 14:47:28 ID:pKRqgI/K0
みんなが集まったところで、ようやく夕ご飯作りを始めることにした。それにしてもさっきのおじいさんの超能力…いったいなんだったんだろう。それにおじいさんの言ってた探し物も気になるなあ。でも今は夕ご飯の準備が先だ。今は忘れよう。
 今日の夕ご飯はカレーライス。キャンプと言えばこれ、という定番メニューだけど、大自然に囲まれて食べるカレーは、家で食べるよりもおいしく 感じられる。多分それは大自然という環境に囲まれてるからじゃないかなぁ。まあ、けっこう
動き回ったからおいしいと感じるのかもしれないけど。
 それはそれとして、かな達はカレーをおいしく食べた。もちろんおかわりだってしたよ。おなかがいっぱいになって少し休んだら、近くの温泉に行って今日の疲れを癒すことにした。でもお兄ちゃん、よくそんなところ知ってたよね。本当は温泉好きだったりして…。
 
 「それじゃ、1時間経ったらここへ集合するように」
 目的地の温泉に着くと、お兄ちゃんが脱衣所の前でこう言った。ここからは男湯と女湯に分かれるんだから、しょうがないと言えばしょうがないけど。とにかく、かなと祐喜ちゃん、お兄ちゃんと和真君に分かれて温泉に入る事にした。
 「こっち覗かないでね、和真君」
 「バ、バカ言うな。誰がお前の裸なんて見るかよ」
 ははは、照れてやんの。和真君ったら、本当かわいいところあるんだから。
 「長く入っててのぼせたりするなよ」
 「はーい。分かったよ」
 そんなわけで、みんなそれぞれ温泉に入るのだった。
402無名:2006/03/19(日) 14:51:09 ID:pKRqgI/K0
「うわー、広い広い。おー、いい景色だねー」
 温泉から見える景色を見て、かなは驚いていた。
 「やめてよかなちゃん。誰もいないからってそんなに騒がなくてもいいのに…。見ているこっちが恥ずかしいわ」
 だって、こんなにきれいな景色を見ながら温泉に入れるんだもん、驚かない方がおかしいよ。
 「それじゃあ、さっそく入りますか」
 そのまま温泉に入ろうとするかなを、祐喜ちゃんが止めた。
 「ちょっとかなちゃん、タオル巻いたまま温泉に入る気?ここではタオルを外してから入るのがマナーよ。そうしないとお湯が汚くなっちゃうでしょう?」
 祐喜ちゃん…。何でそんな事知ってるの…。もしかして温泉マニアなのかも…。
 「それに、まだ身体を洗ってないじゃないの。ちゃんと洗わないと温泉に失礼よ」
 結構温泉には厳しいんだね、祐喜ちゃんは。
 身体を洗ったかなと祐喜ちゃんは、ゆっくりと温泉に入った。うーん、かなり効くわー。こんな身体でも、温泉に入るとぽかぽかあったまる感じがするよ。やっぱここに来てよかった。
 「けっこう気持ちいいね」
 「何かお肌がすべすべしてきたわー」
 そういえばこの温泉って、お肌にもいいって書いてあったな。だからお湯が少しにごってるんだね。
 かな達はしばらくの間、湯船に使ったり温泉の外に出たりして満喫した。そんな時、かなは祐喜ちゃんを見て、あることに気が付いた。
 
403無名:2006/03/19(日) 14:51:44 ID:pKRqgI/K0
 「祐喜ちゃんの胸って小学生にしては大きいんじゃない?」
 そうなのだ。今まで気付いてなかったんだけど、祐喜ちゃんは小学生にしてはけっこうプロポーションとか、身体のバランスがずば抜けていいみたいなのだ。一緒に温泉に入らなくちゃ分からなかったんだけどね。
 「ええっ、そんなに大きいかな、私…」
 うんうん、ほんとに大きいよ、羨ましいくらいに。ちょっと悔しくなってきたので、かなは祐喜ちゃんの胸を後ろから揉んでやった。
 「ほらほら、こーんなにおっきいよ、手で持てちゃうもんね」
 「ちょっと、何するのかなちゃん。やめ…ああんっ」
 うわぁ、ほんとにおっきいわ。ようし、もっともみもみしちゃお。
 「いや、やめてよ…あはぁっ…んっ…」 
 …なんか、かなのやってる事って、オヤジがやってる事と変わらない感じがするなぁ。もうこのくらいでやめようかなぁ。悪く感じたかなは、祐喜ちゃんの胸から手を離して後ろに下がった。
 「ごめんごめん、ふざけすぎちゃった。許して祐喜ちゃん」
 あれ、返事が返ってこない。祐喜ちゃん怒っちゃったのかな…。
 「祐喜ちゃん、ほんとにごめんね。だから怒んないで…」
 そのとき、祐喜ちゃんがかなに向かってお湯をばしゃばしゃと飛ばしてきた。
 「よくもやったわねー!お返しよ、お返し」
 ご、ごめんよ。祐喜ちゃん、許してー!お湯をぶっかけられたかなは、全身ずぶぬれになってしまった。まさかこんな事になるなんて…。やっぱやらなきゃよかった。
404無名:2006/03/19(日) 14:53:44 ID:pKRqgI/K0
 「あー、いい湯だった。って、お前ら何やってたんだ」
 女湯から出てきたかなと祐喜ちゃんを見て、お兄ちゃんが驚いていた。そりゃそうだ、温泉で大変なことしてしまったんだから。
 「い、いえ、何でもありませんでしたわよね、かなちゃん」
 「う、うん、別に何もやってないよ、かな達は」
 かなと祐喜ちゃんは温泉の出来事を必死に隠そうとした。もうばればれかも知れないけど。
 「それにしてもお前等、騒がないで温泉に入ることができないのか。私と和真君はそんな事はしなかったぞ」
 ありゃー、もうばれてたのね。そんな事なら言い訳しなければよかったよ…。
結局かな達はお兄ちゃんに謝るはめになってしまった。やっぱ悪い事はできないもんだね…。
 数分後、和真君がニヤニヤしながら男湯から出てきた。
 「かなやんの暴れっぷり、すごかったぜ」
 …やっぱり和真君にもばれちゃってるみたい。とにかくかな達はキャンプ場に戻る事にした。
 キャンプに戻った後、かなはさっきの事を祐喜ちゃんに謝った。
 「ごめんね祐喜ちゃん。あんなことして」
 「ううん、いいのよ。私もふざけてたんだし。でも、もうそんなことしないでね」
 よかったぁ。まだ怒ってるのかと思ったよ。安心したら急に眠くなってきちゃった。
 「あらかなちゃん、もう眠くなっちゃったの?ふふふ」
 今日はいろいろな事があったからなぁ。疲れちゃったんだよ、きっと。
 「じゃあ祐喜ちゃん、お休み…」
 「お休みなさい」
かなはそのまま寝袋にもぐりこんで眠りについた。
405無名:2006/03/19(日) 15:12:43 ID:pKRqgI/K0
こんにちは、無名です。
「星から来た老人」の前編を掲載しました。後編は近いうちに掲載する予定です。
その次が神無月先生のお見合いのお話になります。
 >>370さん
用途によってですが、あってもいいのではないでしょうか。販売機に人の脳を入れるという
のもありといえばありです。(AIのほうが安くつくという話もありますが・・・)昔みた漫画で
そういうお話があった記憶があります。(たしか移動販売機の話だったような)昔のことなので忘れて
しまいましたが。377さんのように、人権があればそれを認める設定にすれば、販売機に脳を入れても大丈夫
かも知れませんね。

406名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 18:02:39 ID:EhTftjwY0
>>399>>400の間
抜けていませんか?
407無名:2006/03/19(日) 19:34:01 ID:4Ky2Gk8b0
>>406
すいません、抜けてしまってるみたいですね。
後で掲載しなおしますのでもう少しお待ちください。
408無名:2006/03/19(日) 19:38:48 ID:4Ky2Gk8b0
 「着いたぞ、どうだ、いい景色だろう」
 ドライブインを出発して約一時間後、かな達は目的地のキャンプ場に到着した。
 「ほんとだ、いい眺めだね」
 「向こうの山まで見えるぜ」
 ここのキャンプ場はけっこう高いところにあって、遠くの山まで見える場所だった。こういうところでキャンプできるなんて、なんてラッキーなんだろう。
 「それじゃあ、みんなでテントの準備をしようか。車からテントを持ってきてくれないか」
 あ、そうだったね。テントを張らないとキャンプできないもんね。
 「じゃあ、かなと和真君でテントを持ってこよう。祐喜ちゃんはテントを張るところをきれいにして」
 「うん、分かったわ」
 というわけでかな達は、テントを張ったりキャンプ道具の準備をしたりした。でも手こずってしまって、すべて終わった時にはもう夕方になってしまった。テント張るのってけっこう時間がかかるんだなぁ。
 「ふーっ、やっと終わったー」
 「疲れたー」
 へとへとになったかな達を見て、お兄ちゃんが呆れてため息をついた。
 「おいおい、これから夕飯作らなくちゃいけないんだぞ。早く薪取りと水汲みに行って来い」
 そりゃないよお兄ちゃん。少しだけでいいから休ませてよー。

 そんなわけで、かなは水汲みに、和真君は薪を取りに行く事になった。お兄ちゃんと祐喜ちゃんは夕食の準備をすることに…。それにしても何でかなが水汲みしなくちゃいけないんだろう。お兄ちゃんのほうが力あるのに…。
 「あと1回運ばなくちゃいけないのかぁ・・・」
 キャンプ地から近くの水道までは少し遠い場所にあって、緩やかな坂を上り下りしなくちゃいけない。そのうえ、帰りはポリタンクに水が入ってるから、キャスターを使ってもけっこう重いんだ。
 「これを持ってこの坂を上がらなくちゃいけないんだ…」
 下ってきた坂を見て、かなはへなへなと座ってしまった。
 「どうしたんだい、お嬢さん」
 そのとき、草むらから突然人が現れた。その人はかなが会った事のある人物だった。しかもすぐ最近に。
 「あれ、もしかしてドライブインのおじいさん?」
 かながおじいさんに質問すると、おじいさんはにっこり笑って頷いた。
409無名:2006/03/19(日) 19:43:07 ID:4Ky2Gk8b0
すいませんでした。とりあえず408に >>399>>400の間のお話を入れておきました。
本当にご迷惑をおかけしました。後で改めて掲載してほしいのでしたら、遠慮なく書き込んでください。

410名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 22:51:23 ID:8rCPyXvi0
>>409
>後で改めて掲載してほしいのでしたら
少し日本語を勉強した方が良いかもね?
(自分のミスなら「させて頂く」と言う立場でしょうに?)
411名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 02:48:41 ID:EBkweh9g0
あまりうるさい事は言いたくないが、我々の方が「拝見させていただいてる」立場だって忘れてないか?
いつでも「文句言うならもう小説書いてやらない」って言う権利があるんだよ、無名氏には。
412名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 04:37:39 ID:dTGgBKCY0
「ご要望があれば」の方が適切な気はするけど、いちいちそんなことに突っ込んでもしゃあない。


読んでくれる人が居るからわざわざスレに書く人が居る。
書いてくれる人が居るからわざわざスレを読む人が居る。
持ちつ持たれつの精神で行こうよ。
413無名:2006/03/21(火) 14:04:39 ID:O+CJVMAy0
>>410 >412さん
すいませんでした。「ご要望がありましたら」でしたね。
あの時は時間がありませんでしたので、間違いを直すのを忘れてしまいました。
これからはそんなことが無いようしますのでこれからもお願いします。
それでは、「星からきた老人」の前編を改めて掲載しますので、ごゆっくりお楽しみ
ください。
414無名:2006/03/21(火) 14:05:43 ID:O+CJVMAy0
【星から来た老人】

 今日はかなと和真君と祐喜ちゃん、それに慶介お兄ちゃんの四人で山へキャンプに行く日だ。お兄ちゃんがこの日のために有給休暇を使ってくれたおかげで、キャンプに行く計画が実現したんだ。場所もあらかじめ予約したんだって。
気が利くね、お兄ちゃん。
 というわけで、かな達はお兄ちゃんのワゴンでキャンプをする山へ出発したのだ。
 「うわー、すごい森だー」
 「って、何驚いてんだよ」
 大きな森を見てビックリしてるかなに、突っ込みをいれる和真君。
 「ほんと、二人を見てると飽きないわね」
 そりゃないよ祐喜ちゃん。突っ込まれてる身にもなってよ。
 「よし、この近くのドライブインでお昼を食べるとしよう。お前達もいい加減騒ぐのはやめろよ」
 「はーい。分かりましたー」
 和真君、ちゃっかりしてんなー。今まで一緒に騒いでたくせに。
 そんなこんなで、かな達を乗せたワゴンは川の近くのドライブインに到着した。それにしてもけっこう家族連れの人達がいるなー。遠くから来てる人もいるみたいだね。車のナンバーで分かるもん。
 「トイレに行きたい人は今のうちに行って来いよ。あとでしたくなりました、なんて言わないように」
 そんなこと分かってるよお兄ちゃん。でも、もう我慢できないから、早く行ってこよーっと。かなは猛スピードでトイレへ駆け込んだ。
 「いやあー速いこと速いこと。ほんとに我慢できなかったんだな、かなやんの奴」
 よ、余計なお世話だよ。こっちは急いでるんだから。
415無名:2006/03/21(火) 14:06:19 ID:O+CJVMAy0
 ふーっ、やっと出られたよ。トイレから出たかなは、お兄ちゃんたちが座ってる席を探した。
 「けっこう人がいるねぇ。これじゃあ探すのに時間がかかるよ」
 いったいどこでお昼を食べてるんだろう。こんな人ごみじゃ見つけるのに一苦労だ。
 かなはお兄ちゃん達がいる席を探した。でも、どこにもいないよー!困ったなあ。しょぼーんとしてるかなの前に、知らないおじいさんが現れた。
 「どうしたんだい?迷子にでもなったんかい?」
 「実は…そうなんです…」
 困ってるかなを見かねたおじいさんは、かなの手を握りしめた。
 「じゃあ、一緒に探してあげるよ」
 そんなわけで、かなはおじいさんと一緒にお兄ちゃんたちを探す事になった。でもお兄ちゃんたちは一向に見つからない。
 「外に出て探してみたらどうかい?」
 おじいさんの言う通り、外に出て探してみたら、いたいた、いましたよお兄ちゃんたちが。
 「おーい、お兄ちゃんたちー!かなはここだよー」
 驚いて後ろを振り返るお兄ちゃんたち。よかった、かなを置いてどこかへ行っちゃったと思ったよ。
 「どこ行ってたんだよ、俺達かなやんの事探しまくってたんだぞ」
 「ごめん、道に迷っちゃったんだ。でもね、おじいさんが一緒に探してくれたんだ。ねっ、おじいさん…って、あれ…」
 かなはあたりを見回した。い、いない。おじいさんがいつの間にか消えてるよ。お礼も言ってなかったのに。
 「どこへ行っちゃったんだろう。あのおじいさん…」
 それにしても、あのおじいさん、とっても不思議な感じがしたなぁ…。お兄ちゃんたちのいる場所を見つけてくれたし。今度会ったらお礼しなくちゃ。
416無名:2006/03/21(火) 14:11:46 ID:O+CJVMAy0
 「着いたぞ、どうだ、いい景色だろう」
 ドライブインを出発して約一時間後、かな達は目的地のキャンプ場に到着した。
 「ほんとだ、いい眺めだね」
 「向こうの山まで見えるぜ」
 ここのキャンプ場はけっこう高いところにあって、遠くの山まで見える場所だった。こういうところでキャンプできるなんて、なんてラッキーなんだろう。
 「それじゃあ、みんなでテントの準備をしようか。車からテントを持ってきてくれないか」
 あ、そうだったね。テントを張らないとキャンプできないもんね。
 「じゃあ、かなと和真君でテントを持ってこよう。祐喜ちゃんはテントを張るところをきれいにして」
 「うん、分かったわ」
 というわけでかな達は、テントを張ったりキャンプ道具の準備をしたりした。でも手こずってしまって、すべて終わった時にはもう夕方になってしまった。テント張るのってけっこう時間が
かかるんだなぁ。
 「ふーっ、やっと終わったー」
 「疲れたー」
 へとへとになったかな達を見て、お兄ちゃんが呆れてため息をついた。
 「おいおい、これから夕飯作らなくちゃいけないんだぞ。早く薪取りと水汲みに行って来い」
 そりゃないよお兄ちゃん。少しだけでいいから休ませてよー。

 そんなわけで、かなは水汲みに、和真君は薪を取りに行く事になった。お兄ちゃんと祐喜ちゃんは夕食の準備をすることに…。それにしても何でかなが水汲みしなくちゃいけないんだろう。
お兄ちゃんのほうが力あるのに…。
 「あと1回運ばなくちゃいけないのかぁ・・・」
 キャンプ地から近くの水道までは少し遠い場所にあって、緩やかな坂を上り下りしなくちゃいけない。そのうえ、帰りはポリタンクに水が入ってるから、キャスターを使ってもけっこう重いんだ。
 「これを持ってこの坂を上がらなくちゃいけないんだ…」
 下ってきた坂を見て、かなはへなへなと座ってしまった。
417無名:2006/03/21(火) 14:12:50 ID:O+CJVMAy0
「どうしたんだい、お嬢さん」
 そのとき、草むらから突然人が現れた。その人はかなが会った事のある人物だった。しかもすぐ最近に。
 「あれ、もしかしてドライブインのおじいさん?」
 かながおじいさんに質問すると、おじいさんはにっこり笑って頷いた。
 「やっぱり!でもなんでこんな所にいるの?」
 「実はね、おじいさんは探し物をしてるんだよ」
 探し物?いったいなんだろう。
 「おじいさん、探し物ならかなも手伝ってあげようか?」
 「いや、いいんだ。それよりお嬢さん、水を運ぶの大変だろう?おじいさんが手伝ってあげよう」
 え?手伝ってくれるの?とかなが言おうとしたとき、おじいさんはポケットから変なカードを取り出して、かなが持っているポリタンクにかざした。
 「あ、あれ?ポリタンクが…」
 なんと急にポリタンクが軽くなったのだ。
 「これなら楽に運べるだろう?さあ、早くもって行きなさい」
 かなはおじいさんに言われるままにポリタンクをキャスターに積んだ。
 「おじいさん、ありがとう」
 お礼を言って振り返ったら、いつの間にかおじいさんはいなくなっていた。いったいどこへ行ったんだろう…。
 「あ、そうだ。早くお水運ばなくちゃ」
 時間を食っちゃったからみんな心配してるだろうな…。とりあえずかなは軽くなったポリタンクを持ってみんなのところへ急いだ。

 
418無名:2006/03/21(火) 14:13:35 ID:O+CJVMAy0
 「おい、いったいどこまで水汲みに行ったんだ」
 かながキャンプ地に戻ったときにはお兄ちゃんたちがかなの帰りを待ちわびていた。
 「ごめんごめん、探すのに苦労しちゃって…うわっ」
 かながキャスターからポリタンクを下ろそうとしたら、急に重くなって前のめりになってしまった。おじいさんのカードの効果が切れたんだ。
 「これからは迷ったりするなよ、分かったな」
 「う、うん。分かったよ」
 みんなが集まったところで、ようやく夕ご飯作りを始めることにした。それにしてもさっきのおじいさんの超能力…いったいなんだったんだろう。それにおじいさんの言ってた探し物も気になるなあ。でも今は夕ご飯の準備が先だ。今は忘れよう。
 今日の夕ご飯はカレーライス。キャンプと言えばこれ、という定番メニューだけど、大自然に囲まれて食べるカレーは、家で食べるよりもおいしく 感じられる。多分それは大自然という環境に囲まれてるからじゃないかなぁ。まあ、けっこう動き回ったから
おいしいと感じるのかもしれないけど。
 それはそれとして、かな達はカレーをおいしく食べた。もちろんおかわりだってしたよ。おなかがいっぱいになって少し休んだら、近くの温泉に行って今日の疲れを癒すことにした。でもお兄ちゃん、よくそんなところ知ってたよね。本当は温泉好きだったりして…。
 
 「それじゃ、1時間経ったらここへ集合するように」
 目的地の温泉に着くと、お兄ちゃんが脱衣所の前でこう言った。ここからは男湯と女湯に分かれるんだから、しょうがないと言えばしょうがないけど。とにかく、かなと祐喜ちゃん、お兄ちゃんと和真君に分かれて温泉に入る事にした。
 「こっち覗かないでね、和真君」
 「バ、バカ言うな。誰がお前の裸なんて見るかよ」
 ははは、照れてやんの。和真君ったら、本当かわいいところあるんだから。
 「長く入っててのぼせたりするなよ」
 「はーい。分かったよ」
 そんなわけで、みんなそれぞれ温泉に入るのだった。
419無名:2006/03/21(火) 14:24:42 ID:O+CJVMAy0
「うわー、広い広い。おー、いい景色だねー」
 温泉から見える景色を見て、かなは驚いていた。
 「やめてよかなちゃん。誰もいないからってそんなに騒がなくてもいいのに…。見ているこっちが恥ずかしいわ」
 だって、こんなにきれいな景色を見ながら温泉に入れるんだもん、驚かない方がおかしいよ。
 「それじゃあ、さっそく入りますか」
 そのまま温泉に入ろうとするかなを、祐喜ちゃんが止めた。
 「ちょっとかなちゃん、タオル巻いたまま温泉に入る気?ここではタオルを外してから入るのがマナーよ。そうしないとお湯が汚くなっちゃうでしょう?」
 祐喜ちゃん…。何でそんな事知ってるの…。もしかして温泉マニアなのかも…。
 「それに、まだ身体を洗ってないじゃないの。ちゃんと洗わないと温泉に失礼よ」
 結構温泉には厳しいんだね、祐喜ちゃんは。
 身体を洗ったかなと祐喜ちゃんは、ゆっくりと温泉に入った。うーん、かなり効くわー。こんな身体でも、温泉に入るとぽかぽかあったまる感じがするよ。やっぱここに来てよかった。
 「けっこう気持ちいいね」
 「何かお肌がすべすべしてきたわー」
 そういえばこの温泉って、お肌にもいいって書いてあったな。だからお湯が少しにごってるんだね。
 かな達はしばらくの間、湯船に使ったり温泉の外に出たりして満喫した。そんな時、かなは祐喜ちゃんを見て、あることに気が付いた。
 「祐喜ちゃんの胸って小学生にしては大きいんじゃない?」
 そうなのだ。今まで気付いてなかったんだけど、祐喜ちゃんは小学生にしてはけっこうプロポーションとか、身体のバランスがずば抜けていいみたいなのだ。
一緒に温泉に入らなくちゃ分からなかったんだけどね。
 「ええっ、そんなに大きいかな、私…」
 うんうん、ほんとに大きいよ、羨ましいくらいに。ちょっと悔しくなってきたので、かなは祐喜ちゃんの胸を後ろから揉んでやった。
420無名:2006/03/21(火) 14:26:00 ID:O+CJVMAy0
「ほらほら、こーんなにおっきいよ、手で持てちゃうもんね」
 「ちょっと、何するのかなちゃん。やめ…ああんっ」
 うわぁ、ほんとにおっきいわ。ようし、もっともみもみしちゃお。
 「いや、やめてよ…あはぁっ…んっ…」 
 …なんか、かなのやってる事って、オヤジがやってる事と変わらない感じがするなぁ。もうこのくらいでやめようかなぁ。悪く感じたかなは、祐喜ちゃんの胸から
手を離して後ろに下がった。
 「ごめんごめん、ふざけすぎちゃった。許して祐喜ちゃん」
 あれ、返事が返ってこない。祐喜ちゃん怒っちゃったのかな…。
 「祐喜ちゃん、ほんとにごめんね。だから怒んないで…」
 そのとき、祐喜ちゃんがかなに向かってお湯をばしゃばしゃと飛ばしてきた。
 「よくもやったわねー!お返しよ、お返し」
 ご、ごめんよ。祐喜ちゃん、許してー!お湯をぶっかけられたかなは、全身ずぶぬれになってしまった。まさかこんな事になるなんて…。やっぱやらなきゃよかった。

 「あー、いい湯だった。って、お前ら何やってたんだ」
 女湯から出てきたかなと祐喜ちゃんを見て、お兄ちゃんが驚いていた。そりゃそうだ、温泉で大変なことしてしまったんだから。
 「い、いえ、何でもありませんでしたわよね、かなちゃん」
 「う、うん、別に何もやってないよ、かな達は」
 かなと祐喜ちゃんは温泉の出来事を必死に隠そうとした。もうばればれかも知れないけど。
 「それにしてもお前等、騒がないで温泉に入ることができないのか。私と和真君はそんな事はしなかったぞ」
 ありゃー、もうばれてたのね。そんな事なら言い訳しなければよかったよ…。
結局かな達はお兄ちゃんに謝るはめになってしまった。やっぱ悪い事はできないもんだね…。
 数分後、和真君がニヤニヤしながら男湯から出てきた。
 「かなやんの暴れっぷり、すごかったぜ」
 …やっぱり和真君にもばれちゃってるみたい。とにかくかな達はキャンプ場に戻る事にした。
 
421無名:2006/03/21(火) 14:26:45 ID:O+CJVMAy0
キャンプに戻った後、かなはさっきの事を祐喜ちゃんに謝った。
 「ごめんね祐喜ちゃん。あんなことして」
 「ううん、いいのよ。私もふざけてたんだし。でも、もうそんなことしないでね」
 よかったぁ。まだ怒ってるのかと思ったよ。安心したら急に眠くなってきちゃった。
 「あらかなちゃん、もう眠くなっちゃったの?ふふふ」
 今日はいろいろな事があったからなぁ。疲れちゃったんだよ、きっと。
 「じゃあ祐喜ちゃん、お休み…」
 「お休みなさい」
かなはそのまま寝袋にもぐりこんで眠りについた。

 かなが目を覚ましたのは、夜中だった。また寝ようとしたけど、早く眠ったせいでなかなか眠くならなかった。
 「そうだ、眠くなるまで外で涼しんでこよーっと」
 祐喜ちゃんを起こさないようにそーっと外に出たかなは、森の方へ歩いていった。
 「はあぁ、涼しいー」
 暑苦しいテントの中に比べて外はとても涼しかった。それに夜の空は星が輝いていて、見ていても飽きないほどだった。
 「もう少しこのままでいようかな…」
 そのとき、森の方角から光る物体が落ちてくるのを発見した。もしかして宇宙人…?かなは恐る恐る光の方へ歩いていった。
422無名:2006/03/21(火) 15:35:27 ID:O+CJVMAy0
「星からきた老人」を改めて掲載しました。
本当にご迷惑をおかけしました。その代わりにといっては何ですが、続きを少しだけ掲載しました。
すいませんでした。
423無名:2006/03/21(火) 16:10:23 ID:O+CJVMAy0
すいません、
[その代わり」ではなくて[お詫び]でした。ごめんなさい。
424名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 18:24:30 ID:giYbfG4N0
無名さん、間違えるのは仕方がないこと。
412さんの言うとおり、読んでくれる側と載せてくれる側の関係を大切にすることが
いいことなんだと思う。これに負けないで無名さんにはよい作品を送ってほしい。
425名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:06:41 ID:iyV5HKuY0
どこか外部にWiki借りるなりしない?
うpする人も読む人も楽になると思うんだけど。
426名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:26:58 ID:3i0LOpfK0
>>425
tokiwa @Wikiという所を知ってるか?
427旅人:2006/03/21(火) 23:24:09 ID:0pvRIKkU0
4283の444:2006/03/22(水) 01:13:30 ID:U8ySbSwF0
>>426-427
ホワイトエンジェルとか、僕の従姉は・・・とか好みの良作揃いなのに更新が
久しく止まっていて悲しいです。
>>425
2ch投下はリアルタイムでお話を読んでくれた人の感想が読めたり、意見交換
できるっていう、書き手にとっては大きな魅力がある場なので、私はこの
スタイルを変えるつもりはないです。
多少読みづらい部分はあるかもしれないけど、そのあたりはまとめサイトで
補完ということでお願いします。
429名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 14:52:24 ID:+/K+0a3+0
もっと「メカギャル掲示板の逆襲」にカキコしたらどうだろう?
ここはほとんどSS投下場所になってサイボーグそのものの議論はできないし
430pinksaturn:2006/03/23(木) 19:44:44 ID:peNkKGZD0
(ちょっと妄想してみたのですが)

 「オプションパーツ」
−−(1)某帝国主義国家の小惑星資源収集艦兵員待機室における会話−−

航法装置の音声:「月軌道横断10分前です。」

マサ:「今度の任務もあと1日チョットになったわね。」
リホ:「3年ぶりの地球かぁ、そして3年分の休暇150日っと。」
リエ:「休暇前のメンテで使えるオプション権ってみんなどうするの?。」
エリ:「そういえば3年間は宇宙仕様品しか付けられなくて選択の余地が少なかったからポイント余ってるわね。
私、緊急召集で前の休暇中断させられたから、今度は250日の長期休暇でメンテ2周期分以上地球で暮らせるんだ。
思い切り好きなの付けちゃおぅ。」
マサ:「うーん耐放射仕様だと髪の色なんて6色しかないし、足はプルトニウム電池とイオンエンジンの付いたのがバレエ型しかなくて決められちゃってるもんねぇ。」
リホ:「そうそう、重量制限で消化器官も外しちゃってたし、地上に降りたら久しぶりの食事も楽しみだわ。」
リエ:「このバレエ足は最低よね。
重量軽減とかいってアルミ外皮むき出しだし、足首なんか30度しか曲げられないから靴も履けないし、いつも裸足なんてまるで土人じゃない。
地上に降りたら頭のてっぺんからつま先までぜーんぶスケルトンで統一しちゃうの。
透明な服にガラスの靴で街に出たら注目間違い無しよ。」
エリ:「そりゃ過激だわ。いくら普段重量制限にむかついてるからって、わざわざ高いパーツ使ってそんな思い切りキモイ体にするの?。」
マサ:「頭がスケルトンだと植毛もできないよ。顔なんか標準素材無いから一点制作にするしかないじゃないの。」
431pinksaturn:2006/03/23(木) 19:50:37 ID:peNkKGZD0
リエ:「顔は今のままにしとくわよ。いくらかかるか判らないし、ガラス系素材じゃ表情作れないしね。
ただ同窓会に脳味噌丸見えのスケルトンで行ってみんなの度肝を抜いてやりたいんだ。
植毛は無しでいいのよ。大体さぁ、私らサイボーグの髪って所詮かつらと変わらないじゃん。
かといってスキンヘッドじゃ生身でも出来るからつまらないし単に髪は諦めましたって感じになっちゃうでしょ。」
エリ:「それを言っちゃおしまいよ。せめて髪型くらいはシビリアンの娘たち並みに楽しめるようにって、3ヶ月毎に植毛やり直しても余るオプションポイント支給してくれてるんだし。
宙軍当局だって精一杯わたしらの人間性に配慮してくれてるつもりなんでしょ。」
リエ:「いかにも人工って感じのが6色だけじゃすぐに飽きちゃうけどね。まあ、重量制限きつい宇宙ではこれでも人間性のためだけに大変な贅沢なんだってのはわかるけど。」
リホ:「人間性かぁ。どうせ思いやりをくれるなら終身徴兵制を見直してくれないかなぁ。」
リエ:「自由も良いけど退役するとき元の体を返してくれられるわけじゃないんだから一生ちゃんとメンテしてくれる方がいいわよ。」
エリ:「徴兵されるのって100人に1人か2人でしょ、何で私がって泣いたなぁ。
素体養成所に入ってすぐに生殖器摘出されたときもこれでもう元に戻れないんだって思って泣いたっけ。」
マサ:「私は素体召集令状が来た時の悲壮感って、お父さんが禿げたときと大差なかった気もするね。
これで人工とはいえ一生15歳のコギャル姿でいられるぞしめしめって気持ち半分だったなぁ。」
エリ:「マサはコギャルファッション好きだからねえ。素体になる前は男だったのにねぇ。」
マサ:「好きなものは好きだもん。生身のコギャルはせいぜい3年しかできないけど、宙軍兵なら一生分の休暇期間を足したら15年分ぐらいだし。」
432pinksaturn:2006/03/23(木) 19:51:36 ID:peNkKGZD0
リホ:「うーん、まあシビリアンだって遊んで暮らせる訳じゃないしね。
年あたりの休暇日数が2倍あるだけ我々は恵まれてるのかもね。殆ど病気しないから休暇は有効に使えるもんね。」
リエ:「サイボーグ体および素体は女性に限るっていうおかしな規制もマサみたいな娘にはかえって好都合なんだね。」
エリ:「考えてみると不思議な規制よね。我々みたいなシビリアンからの徴兵だけじゃなくて、皇族や貴族の士官も例外無しだし。」
マサ:「私らは中学出てすぐ徴兵されて勉強と言えば素体養成所では人工器官学、脳脊髄神経学と宇宙技術しかやらないから、歴史とか法律は弱いのよね。」
リエ:「そういえば、法科大学に行った同級生がサイボーグに関する法規って殆どが初代皇帝朝子1世陛下の古い勅令のままだって言ってたわ。」
リホ:「ふーん。もしかしたらその頃密かに実施された人体実験で男性のサイボーグがどうしてもうまく出来なかったとかいうことなのかな。」
エリ:「階級ごとに所定のポイントを支給されてオプションパーツを選ぶ制度も帝国の初期からあったって言うもんね。」

当直士官の音声:「艦長より伝達。訓示を行うので当直を除く全乗組員は会議室に集合せよ。」

エリ:「いまさら訓示?。何かしら。今回は資源収集もうまく行ったようだしボーナスポイントでもでるのかな。」
マサ:「早く行きましょう。遅れるとボーナスどころか減点かもよ。」

(評判しだいで続く)
433manplus:2006/03/23(木) 23:50:56 ID:3pmkU3Ni0
 谷本は、腹部を接合せずに杏奈の頭部の処置を開始した。
 まず、谷本は、杏奈の嗅覚の剥奪を行った。鼻の嗅覚細胞を全て破壊し鼻の中に生体融合タイプの充填剤を
詰めていった。
この作業に併せて、鼻の整形を行い、杏奈本来の鼻のラインより高くて鼻筋が通った形に整形していった。
この処置によって、杏奈は臭いを楽しむということが出来なくなってしまったのであった。
長期着用型宇宙服にほとんどの時間、閉じこめられることになる杏奈にとって嗅覚という感覚は
全く不要なものであると考えられたのである。
もちろん、通常の長期着用型宇宙服の着用を行われるアストロノーツに施される処置においても
同様の初期の段階では、この処置が行われるのであった。しかし、未着用時が、杏奈のように短い被験者と違い、
地球上では、普通の人間と同じような生活を行うことが許されるアストロノーツにとっては、嗅覚の欠如というのは、
生活に不具合をきたすということが確認されたため、後のタイプのサイボーグ処置では、
人工嗅覚への転換という処置に変更されるのであった。
 次ぎに処置されたのが、目の部分である。杏奈の眼球は、眼窩から引き出され、視覚神経から切り離されて、
その代わりに人工眼球が視覚神経に取りつけられた。
この人工眼球は、高性能デジタルCCDとなっていて、ダミーとなっている瞳は動くことがないような設計になっていた。
杏奈の新しい目の性能は、人の目と変わらない性能があったが、人形の目のようにして欲しいという片桐の
リクエストにより、瞳が動くことがないような設計になっていたのであった。
それでも、充分な視野を確保できるようになっていた。
 谷本は、視神経に分岐コネクターを取りつけて、杏奈の耳たぶの裏の部分に取りつけた外部接続ターミナルとを
ケーブルで結んだ。
その上で慎重に眼窩に人工眼球を戻し、動くことがないように固定した。
そして、杏奈の瞼と人工眼球の間に透明な高強度樹脂の保護カバーが取り付けられた。
434manplus:2006/03/23(木) 23:52:33 ID:3pmkU3Ni0
その表面は、瞼を開け閉めするのに支障がないように適度の潤滑性が保たれていた。
耳たぶの裏の外部接続ターミナルは、長期装着型宇宙服のフェースプレートから伸びるコードが宇宙服の
着用時は、接続され、杏奈の人工眼球での視覚を遮断し、フェースプレートが彼女の
視覚になるようになっているのであった。
長期着用型宇宙服のフェースプレートは、大きな画像レンズとなっていて、彼女の宇宙服着用時の
視覚となると共に、バックパックのコンピューターから供給される色々な情報がディスプレイされるようになっていると
同時に彼女の秘書サイボーグとしての腹部のコンピューターや外部ネットワーク接続時の外部コンピューターの
情報を表示したり、彼女がコンピューターとの直接アクセスでワークしている情報が
表示されるようになっているのであった。
その為、彼女は、コンピューターとのアクセスにキーボードなどを介する必要が無くなるようになったのである。
杏奈に与えられた新しい視覚システムは、杏奈が見たものをそのままデジタルデーターとして、
杏奈の体内のコンピューターまたは、長期着用型宇宙服のバックパックのコンピューターに
データー保管できるようになることが可能になっていた。
 そして、脳と腹部などの内蔵コンピューターとの接続が丁寧に行われると共に、首筋に
外部コンピューターとの接続ターミナルとバックパックのコンピューターとの接続端子が新設された。
宇宙服未着用時には、外部コンピューターとの直接の光LANケーブルによるアクセスとなるが、
宇宙服を着用している時は、バックパックのコンピューターを介して外部のコンピューターとのLANを
組むようになるのであった。
 続いて、谷本が、杏奈の聴覚の改造に取りかかった。両耳の鼓膜がこじ開けられて、内耳の聴覚組織が
聴覚神経ごと引き出された。そして、長期着用型宇宙服の未着用時に杏奈の聴覚として作動する
高性能デジタル集音システムと聴覚神経が接続され、外部との会話を行う
デジタル無線コミュニケーションシステムも同時に接続されていった。
このシステムにより、宇宙空間や遠距離との交信が可能になるのである。
435manplus:2006/03/23(木) 23:53:12 ID:3pmkU3Ni0
続いて、杏奈の三半規管に変わって、宇宙空間のような無重量状態でも自分の置かれた位置が
解るような絶対的平衡感覚取得システムに交換された。
このシステムによって、杏奈は、自分の絶対的な平衡感覚を手に入れると同時に自分が今どこにいるのかを
地球上や宇宙空間で把握できる現在位置把握システムが備わることになったのである。
杏奈の現在位置は、新視覚システムにディスプレイされるようになっていた。
そして、聴覚神経を電気ケーブルで分岐させ中耳部分に接続コネクターを取り付けるられ、
聴覚システムの全てが谷本の手で丁寧に杏奈の耳の奥に再び収納されていった。
内耳の接続コネクターは、長期着用型宇宙服を着用しているときの宇宙服の集音システムと
接続するためのものであった。
 頭部の改造の最後は、口腔部の改造であった。既に杏奈の口は、食べ物を食べるためや、
空気を呼吸するためや、言葉を喋るために存在するものではなくなってしまっていた。
今の杏奈の口は、ただ、存在するだけのものでしかなかった。
 そのような杏奈の口に谷本は、新たな役割を与える処置に入ったのであった。
 杏奈の口腔内は、杏奈と膣と同様のひだが形成され、口腔の奥行きが片桐のペニスが勃起した時に
丁度すっぽり収まるサイズに調整された。そして、喉仏は切除され、精液を胸部の廃液タンクに吸引するための
カテーテルで、廃液タンクと結ばれた。口腔全体の感度が性器並みの敏感さに神経組織を調整された。
そして、歯は、全て除去された上、新に、軟質シリコンの義歯を植え付けられた。
この処置は、杏奈がフェラチオを行っている間に片桐に怪我を万が一させるのを防ぐためであった。
もう、固形物を咀嚼する必要が無くなっているため、歯の硬度は必要なくなっているのも事実であった。
喉の奥に口腔を洗浄する洗浄液のタンクと洗浄液噴射ノズルが取りつけられた。
そして、唾液腺からは、愛液同様の粘度の分泌液が分泌されるようになっており、この分泌液も、
杏奈の虜になってしまう媚薬が含まれているのであった。
436manplus:2006/03/23(木) 23:53:48 ID:3pmkU3Ni0
舌は、少し長くされて、異性の身体を万遍なく舐める愛情表現がとりやすくなる様に調整された。
新に性器に変更された杏奈の口腔部は、喉元に取りつけられた口腔部性器制御コンピューターで
制御されるような処置が加えられたのであった。
口腔部性器制御コンピューターは、杏奈の口が理想的なフェラチオを行うように口や舌の動きを制御することが
出来るのであった。
 谷本は、杏奈の頭部の電子機器や機械から伸びるケーブルを手早く腹部の所定の場所に接続していった。
 次ぎに、杏奈の骨をカルシューム素材の本来の物から、物質元素変換器によって、
宇宙空間でも脆くなることの無く、しかも、しなやかさのあるシリコンセラミック素材に転換するために、
物質元素転換器を杏奈の腹部の骨の露出したところに接続し、骨を、シリコンセラミック主体の物質に変換した。
 ここまでの処置が終わると次は、谷本は、彼女の全ての関節に関節の動きをサポートする
超小型関節制御用リニアモーターを取りつけていった。
このモーターの働きにより、長期着用型宇宙服を着用している時は、宇宙服の重さや不自由さを感じないように
すると同時に少し余計に力が出せるようになっていた。
このモーターの役割は、通常の長期着用型宇宙服装着アクアノーツならこれだけの機能なのであるが、
杏奈にはささやかなオプションが追加されているのであった。
そのオプションというのは、宇宙服を脱がされた時に、片桐の持つコントローラーにより、
通常の動きに差し障りがないように関節をしておくように作動するところから、
関節を杏奈の意志では動かすことが出来ないように負荷をかける状態までの調節が出来るというものであった。
つまり、杏奈は片桐の意志によって、人形のごとく勝手にポーズを
作られる状態にされてしまうこともあるというものであった。 
谷本は、杏奈の身体内部の処置が終了したのを再チェックで確認し、腹部を生体融合接着剤で切開跡が
完全に消えてしまうように丁寧に融着した。
「水沢さん、後少しの我慢よ。頑張ってね。」
そのように谷本は、杏奈を励ました。これは、谷本自身へのエールが含まれた言葉のようであった。
437名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 23:54:08 ID:MDGPOY4n0
444氏へ業務連絡

四肢着脱は前半部分と後半部分で作者が違ったような気が…
438manplus:2006/03/23(木) 23:54:24 ID:3pmkU3Ni0
 谷本は、杏奈の身体を理想的な体型に整形していき、バストもいかにも作り物に見えるようなきれいな紡錘形の
バストを形作っていった。
この杏奈の新しいバストは、その中に性感制御コンピューターと刺激に対して標準人体の20倍の感度を
持つように神経を過敏にする装置が入れられていて、コンピューター制御により、宇宙服を未着用の状態のみ、
絶大な感度を持つように調整されていた。さらに、杏奈の女性器同様、宇宙服を未着用状態では、
桐島の持つコントローラーにより、性感をコントロールされるようになっていた。
 最後に、谷本は、杏奈の身体の皮膚を人工皮膚と融合させる処置に入った。頭の上から、脚まで、
万遍なく人工皮膚が生体融合接着剤によって貼り付けられた。数時間すると杏奈の身体の皮膚は
全て今貼り付けられた人工皮膚と同化してしまうことになるだろう。
杏奈に貼り付けられた人工皮膚も片桐の要望により、光沢のあるラバーとセルロイドが合わさったような
いかにも人形のの表面のような作り物の艶を持った人工皮膚なのであった。
 最後にアシスタントが、杏奈の頭部にロングの毛髪を植毛し、睫毛や眉毛も人工の毛が移植された。
 この瞬間、杏奈は、人間ではなく、サイボーグであり人形でもある姿に生まれ変わったのであった。
杏奈は、モニターに映る自分の姿を見て、片桐の愛情を独り占めできる身体になったことの喜びと作り物の
身体になってしまったことへの悲しみを味わっていた。
それでも、杏奈は、自分が片桐に永遠に愛されることになることの喜びの方が強かったのである。
片桐は、普通の生身の女性を愛することが出来ず、人形だけが恋愛対象の特殊な性嗜好の持ち主であったのだ。
しかし、片桐は、杏奈に人間の女性としての愛情を感じて、仕事上の秘書としての境界を越えて、
人生のパートナーにしようと決断したのであった。
しかし、その時、同時に杏奈を人間の女性でそのまま迎え入れることが出来ない片桐の性癖の特殊性から、
片桐自身が悩んだ末、杏奈を人形のような女性にして受け入れることにしたのであった。
その意味で、片桐が完全に望んでいた最高の女性に杏奈はなったのであった。
439名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 00:01:27 ID:MDGPOY4n0
うわわ割り込みスマソ

…リロードしろよ漏れ…orz
440manplus:2006/03/24(金) 00:05:52 ID:IH7bt6Cd0
セックスドールであり、秘書サイボーグである杏奈がここに誕生したのであった。
しかし、片桐の性癖は、それだけではなかった。
片桐は、自分の愛する女性を他人に直に触らせることを許すことが出来ないのであった。
そこで、自分の会社が開発した長期着用型宇宙服を杏奈に装着し、杏奈を片桐がセックスドールとして
必要とする時だけ宇宙服を片桐が脱がすことが出来、それ以外の全ての時間は、杏奈を宇宙服の中に閉じこめ、
他の誰もが杏奈を着説触れることが出来ないようにすることを考えたのであった。
片桐は、秘書が自分の会社の商品の着用者として、PR効果を狙うと共に、全身貞操帯、つまり、
ボディーケースとして長期着用型宇宙服を杏奈に装着することを思いついたのであった。
だから、杏奈の装着する長期着用型宇宙服は、片桐も生体静脈キーのみでしかファスナーを
開けることが出来ない仕掛けになっている特製のものであった。
つまり、これから着用する長期着用型宇宙服を杏奈が着用させられれば、杏奈は、
完全に片桐のものになるのであった。


 杏奈は、手術が終わり、改めて自分の身体を見つめる時間が出来た。
谷本の怒濤のようなサイボーグ手術によって、自分が生まれてから慣れ親しんだ生身の部分は
どこにもなかった。杏奈の今の姿は、まるで子どもの頃に自分が遊んでいた人形そのものであった。
杏奈は自分の人形のような身体にある種の陶酔感を覚えて、自分の今の姿にうっとりしていたのであった。
441manplus:2006/03/24(金) 00:09:56 ID:IH7bt6Cd0
こんばんは。

杏奈がついにサイボーグとしての人生を歩む事になりました。
今度は、長期着用型宇宙服を着せられて行く事になります。

pinksaturnさま
初めまして。
今後の展開を期待しております。
素体養成所での手術や訓練の様子や、
徴兵がどの様におこなわれるのかなど
興味があります。
442いくつか前の82:2006/03/26(日) 01:28:04 ID:d2D3OwxV0
pinksaturn氏の登場人物生き生きとしています。
任務の時体と、オフの時の体の使い分けが萌えです。
それぞれの状態での、心理描写をもっと書いて下さい。
443pinksaturn:2006/03/27(月) 00:20:42 ID:27JtsAHp0
 manplus様といくつかまえの82様にポジティブな意見を頂けましたので続ける意欲がわいて参りました。

 manplus様
 手術シーン、素体養成訓練をとのご要望につきましては、私も歴代スレをROMって来た読者の一人として当然だと思います。
しかしながら、現状は技術的合理性と萌えの追求との狭間で悩んでいて、まだ手を着けておりません。
宇宙兵には水着で宇宙遊泳を楽しんで欲しいので、生体部分はなるべく少なくし気密容器を縮小するのが望ましいです。
反面、生体部分の使用が少ないと手術が脳摘出のみであっさり終わってしまい、執拗な臓器摘出や四肢切断の必要性が乏しくなってしまいます。
また、ディジタルインタフェースに神経を接続する難易度は、接続点が中枢神経に近いほど難しくなることや、水頭症のリスク回避を
重視すれば脳と脊髄を分断せず一体で搭載すべきですが、背骨の可撓性と気密性の両立が課題になります。
 徴兵制度と養成訓練につきましても、強制終身徴兵と軍務に無関係なオプションパーツの自由が共存する微妙な人権状況、
その背景となる帝国の政体、素体に筋力は無用なのに鬼軍曹・鬼教官によるしごきを成立させるには、などが要検討であります。
以上の事情により、当面の目標を地球帰還と直後メンテナンスとしており、改造場面にたどり着くまでは長い道のりになりそうです。
 いくつか前の82様
 SFを書こうとしても、へぼな捏造技術論文に化けてしまう悪い癖を避けようとしたら、会話だけの内容になってしまったのです。
この先は皇族、貴族、メンテナンスエンジニア、シビリアンなどに登場願う必要があるのですが、妄想規模>>筆力なので破綻懸念中です。
 3の444様
 自前サイトが超恥ずかしいゴミため状態で改善の目処がないので、保管庫の仲間に入れてください。
444pinksaturn:2006/03/27(月) 01:05:49 ID:27JtsAHp0
−−(2)会議室にて−−
真理亜大尉(運用士官・青の公家出身):「殿下。全員そろいました。」
朝子10世大佐(艦長・皇族):「皆さん、3年間の任務ご苦労様でした。
作戦の重点目標であるチタン資源につき過去最高の埋蔵量10万トンを含むと推定される小惑星を発送できました。
この功労に対し、先ほど宙軍省より3億ポイントのオプションを増配する通達がありました。」
みんな:「うおぉ」「らっぴー」「殿下大好きぃ愛してますぅ」「萌えーー」
真理亜:「はいはい、静かに聞きなさい。殿下、ご無礼申し上げました。」
朝子10世:「プゲラ...。嬉しくて騒ぎたいのはわたくしもですのよ。
それで配分ですが、規定に従い尉官には1000万ポイント、下士官には800万ポイント、
1等兵には600万ポイント、2等兵には500万ポイントが配分されます。
幹部士官は個別査定になりますので艦長室に出頭して下さい。
運用士官、出頭スケジュール設定をお願いします。
それから初めての娘もいるようですので、支給手続きも説明してあげて下さい。
では、みなさん入港まであと少し気を抜かずに努めて下さい。
万一、事故を起こすと原因者はボーナスが没収されることもありますので油断しないで下さい。以上です」
真理亜:「艦長殿下に対し敬礼!。」
リエ:「よしよし。これでシンデレラ作戦にかかれるわね。イルミネーション追加かな。」
真理亜:「士官諸侯への支給は例によって所属家の功労ポイント口座に振り込まれます。
徴兵はこの場で体内私用CPUのウォレットに反映したので今から艦内私用物資に使ってよし。
特例志願兵は障害者福祉公団の口座経由になるから、静止軌道到達時に
体内私用CPUを公団サーバーに接続して個人の受領分を反映させるように。」
マサ:「あのぉ−、真理亜侯様、特例志願兵って何ですかぁ?。」
真理亜:「なに、知らないのか。プッ。まあいいわ、マサは該当者じゃないからすぐに600万使えるわよ。
はい解散、各自持ち場に復帰、入港に備えよ。マサ一等兵、ぼけっとしてないで急ぎなさい!」
445pinksaturn:2006/03/27(月) 01:12:11 ID:27JtsAHp0
−−(3)艦内通路での立ち話−−
マサ:「特例志願兵ってなんだっけ。」
リホ:「またぁ、マサは脳天気ね。あんまり聞くもんじゃないんだけどなあ。」
マサ:「知り合いにいないもん。」
リホ:「サンプル分析班の冬子って特例だよ。資源探査中はよく会ってたじゃないの。」
マサ:「冬子って、休憩時間も分析室にこもってて、3年間ジェットシルバーのセミロングを代えなかった娘だよね。
階級からすると私らと同期くらいだと思うけど、素体養成所で会った記憶無いんだよね。
で、特例ってなんなの?。」
リホ:「私たちみたいに義務教育中の適性観察に基づいて強制徴兵されたんじゃなくて、
全身麻痺とかの重い障害者を対象に募集している志願兵らしいんだ。詳しいことは聞いて無いけどね。」
マサ:「あっ、冬子だわ。噂をしたせいかな。」
リホ:「おはよう。帰りの航路では分析を依頼する機会がなかったから久しぶりね。」
冬子:「うん。ボーナス目当てで仮分析の検証急いでたから分析室に入り浸りで。ふふふっ。」
リホ:「ボーナス決まったから当たり前かも知れないけど、やけに嬉しそうね。」
冬子:「ええ、これでやっと食事が出来る体になれるから」
マサ:「そりゃ、3年ぶりだけど地上で長期休暇の時は普通真っ先に選ぶオプションでしょ。リエみたいな変態は別にしてさぁ。
元は自分の体にあった肝臓とか小腸をユニットに詰めただけなのにランニングコストとかいってポイント取られるのはむかつくけど。」
446pinksaturn:2006/03/27(月) 01:14:01 ID:27JtsAHp0
冬子:「そういえばマサって特例志願のこと全然知らなかったんだっけ。私って頸椎損傷で息も自前で出来ない状態だったんだ。
それで5年目に特別志願の制度出来たんで飛びついたって訳。サイボーグなら自前で動けるようになるって大喜びでね。
ところが、普通のサイボーグは脳と脊髄セットで使うのに、私のは脊髄がダメじゃん。今の技術じゃ接続してもまともに動かないんだ。
でさ、脊髄は取っちゃって代わりに身体制御CPU増設してくれたんだけど、これのプログラムって個人毎に新規開発でさ、
原価で2000万ポイントかかっちゃってるのよ。で、半額は軍の研究予算で面倒見るけど、残りは福祉公社からポイント借りて
働いて返すって条件付きで志願が受理されたの。おまけに5年間流動食だったから消化器も使えなくて、遺伝子組み替えブタを新調する
ことになってね。こっちは自腹のオプションだから4000万完済しないと引き渡してくれなくて、今度のボーナスでやっと手に入るんだ。」
マサ:「高ぁい!。豪邸建っちゃうじゃん。燃料電池直結でも酒なら飲めるのによくそこまでしたわね。
私ならその分で高級ブランデ−飲むなあ。」
冬子:「もう一度子供と食事したくてね。もともと私が車で調子こいて自損やって怪我したんだ。幸い後遺症無かったけど
子供も巻き添えにしちゃって、それっきり何もしてやれなくて。」
マサ:「ごめんね。あんまり聞かない方がよかったみたいね。でも普通は下士官にならないと結婚許可降りないから子持ちってちょっと
うらやましいなあ。私も子供産みたかったな。」
リホ:「...(そりゃ徴兵されてなくても無理でしょ、が言えない絶句)」
冬子:「私も結婚許可は無いの。仮に許可取れてもシビリアンが相手では無理だから離婚して素体になったんだけど、
迷惑かけっぱなしだったのに、彼は絶対再婚しないからいつ帰ってもいいよって言ってくれててね。」
447pinksaturn:2006/03/27(月) 01:16:31 ID:27JtsAHp0
マサ:「うるうる。ひっく、ああでも涙がでないよお。泣けるオプションほしい−−。」
冬子:「かえってごめんね。重い話で。でもその”ひっく”ってリアクションも羨ましいんだ。脊髄の無い身にはね。」
マサ:「うるうる。私そんな大変な人が一緒に乗ってるなんて知らなくて。資源探査だってテキトーに予定消化するだけだったわ。」
冬子:「いいのよ。そもそも私だってシビリアンの税金があんなに安いのは軌道工場の製品で外貨稼いでるからだなんて宇宙に
出て軌道工場の資材選別やるまで知らなかったの。3年半でも気楽に専業主婦出来たのって徴兵された娘のおかげだから感謝してるわ。」
リホ:「工場勤務だったんだ。1等兵で艦隊勤務は初めてって珍しいから、海底基地あたりから転属かと思ってた。」
冬子:「運動性能が不完全でも危険が少ないので特例の娘は殆ど工場に回されるみたいなの。コロニーと隕石鉱山の往来もゴンドラだし
宇宙遊泳資格が無くても務まるから。ただ宇宙遊泳資格がないと他に特技無しじゃなかなか三等兵から昇進できないし、
艦隊のような割り増し支給ポイントもないからつまらなかったわ。工場要員確保のため特例志願が始まったんだから贅沢は言えないけど
艦内分析室への異動願いが通ったときは嬉しかったな。」
マサ:「素体養成所で見かけなかったのは昇進が遅かったせいだったんだ。」
冬子:「それは違うわ。私たちは年齢差や体を動かせないとか、手足が無いとか一人ずつ訓練メニューを調整しなきゃいけないから
障害者福祉公団内の臨時素体養成所で訓練されたの。幸い私は元から女だし寝たきりのときにBCIを使っていたので、逆に徴兵の娘より
短期で済んだの。サイボーグになっても脊髄のせいで障害者手帳が残っちゃったのはちょっとがっかりだったけどね。」
448pinksaturn:2006/03/27(月) 01:21:07 ID:27JtsAHp0
真理亜:「おいゴルァ、マサ、まだこんなとこで油売ってたのか。」
マサ:「ああううっま、真理亜侯さま、すみませんです。冬子のこと初めて聞いたもので泣けちゃって」
冬子:「申し訳ございません。」
真理亜:「冬子が制限付きの体なのにがんがってるのは事実なんだからいいのよ。
マサはバカっぽ杉。特例の制度なんて誰でもアクセスできる一般軍規集に出てるのに。
大体、惑星間航行中は暇だって、ゲームにはまってばかりなんて全然進歩ないんだから。」
まさ:「あのぉ−、あれは宙軍公式訓練プログラムですがぁ、スコアポイントもたんまり頂いてますしぃ、
重機で微小惑星収集する手際がずいぶん進歩したって仰せだったのでは...。」
真理亜:「重機操作だけはね。でも、軍規、輸送計画、惑星開発シミュレーションのスコアが空白じゃ下士官にはなれないわよ。
そもそも北米連合に全身サイボーグの技術が漏れない限り重機で射撃戦なんてやる相手が居ないんだからトータルスコアがいくら高くても
昇進にはつながらないの。宙軍は人が少ないのに藻前のような頭の軽い娘が混じるなんて徴兵適性基準の見直しを上ネ申しなきゃダメかしら。」
マサ:「そんなぁ。素体召集令状には偏差値95ってなってましたよ。尻は軽くても頭はそんなに軽くないですぅ。」
真理亜:「あちゃ−、バカの2乗だわ。肝心なことに気づいていないのね。」
マサ:「えっ。だって偏差値95って算術応用力や反射神経が抜群ってことでしょ。」
真理亜:「あのねえ。徴兵適性基準の生殖組織バンク均衡条項ってどうせ知らないでしょ。
要するに、将来の素体供給を安定させるため、徴兵の半分はなるべく男子からできるように性転換リスクの少ない子は加点するってこと。
マサは元男でコギャル趣味だから、限度いっぱいに加点されたはずよ。体内CPU使いこなしてないようだから応用力は並み以下かもね。」
マサ:「そんな思い出したくない過去のこと...。真理亜様がいじめるよお、一昨日は愛してるって仰せだったのにぃ。」
449pinksaturn:2006/03/27(月) 01:22:36 ID:27JtsAHp0
真理亜:「息抜きイベントのVR乱交会でヒットしただけで本気になられちゃ迷惑よ。そもそも貴族と結婚したいなら、
まず特務少佐に昇進して1代貴族に列せられなきゃね。私の愛が欲しかったら昇進して監督者ポイントに貢献してちょうだい。
ついでに言っておくと貴族は緊急時に脳脊髄ユニット開けられなきゃいけないし、新兵が入る時期に地上にいると改造手術にも
動員されるから脳外科限定医師免許も取っておくことね。」
マサ:「休暇中、大学に行けと仰せで?。私、中卒なんですが、軍で高卒認定証明をいただけるのでしょうか。」
真理亜:「またぁ。サイボーグは体内CPUで知識処理が出来るからダウンロードしてディレクトリ読むだけで座学は高校から大学まで免除よ。
体育や芸術、教養理科実験なんかの単位は素体養成所の教練受けてるから、今すぐでも軍務局サーバーから高専相当の証明取れるの。
シミュレーション実習は航行中にできる公式訓練プログラムでポイントを上げれば互換単位認定されるのよ。
後は現場実習20回で免許が下りるから新兵改造の時期に助手をやっていれば1シーズンで回数を満たせるかもね。
次に私が新兵改造に動員されるまでに単位取れてたら助手にしてこき使ってあげるわよ。
藻前じゃ、1代貴族までの道は遠い気もするけど、とりあえず次の勤務からは小脳や脊髄だけでなく体内CPUも鍛えなさい。」
マサ:「わかりました。では、次の勤務も真理亜様の愛を目指して今の編成で飛ぶんですね。」
真理亜:「決まりじゃないけど、他の艦に異動しても藻前を引き取ってくれるような軽いノリの小隊を見つけるのは難しいわね。
さあ、判ったら部署に急ぐのよ。売るほど余ってるなら潤滑油の支給は1回パスで良いわね。」
マサ:「はっ了解しました。潤滑油は真理亜様の愛で代用できますです。失礼します。」「ゴルァ...力が抜けた」
450名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 00:50:21 ID:KBKdfca/0
pinksaturn様 乙

内容と味のある会話なので、改行、空白行を
もうすこし入れてみられてはいかがでしょうか。
451名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 05:40:26 ID:J5ZZYqZQ0
保守(メンテナンス)。

メンテナンスといえば、手足だけ専門チームにまわすために手足を外して、
生命維持装置も肺や心臓や栄養供給部(栄養タンクから取り出した栄養を
生体用循環用体液(血液など)に混ぜる系統)も全部外して、かわりに外部の
心肺装置につなぎかえて、ハンガーにがっちり固定された状態で、担当の
女医さん(一応配慮のため同性の医者が担当する)と世間話やら体の状態やら
会話を交わしてるメンテ中サイボーグ娘なんか萌える。
肺がなくて声が出せないから、きっと女医さんの方は読唇術とか使うんだろう。
さらに人工眼球も他チームが検査するために摘出して、視力を持たない仮の
ダミー義眼を仮にいれてたりとか。(表情そのものは豊かなのに、目の黒目を
よく見るとどう見ても視力を持たない義眼ってパターンは萌える)
個人的には、メンテで体がバラバラな時に意識がある方が萌えなので、どう
しても意識を落とすか感覚全遮断しなければできないような作業以外は
意識があって担当医なんかとコミュニケーションしてたりする方が萌える。
意識が落ちてる時も、必要のない限りは、うつろな目でお人形さんのように
全く動かないよりは、幸せそうな安眠(かすかな動きもあり)の方が萌える。
452名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 15:14:53 ID:/SGtKkmn0
『あー退屈・・・・・・代車、じゃない代体出してくださいよぅ・・・』

「ごめんなさいね、いつもの筐体が例の規制で使えなくなっちゃって」

『あーもう!PSE法はんたーい!』
453名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 23:53:17 ID:J5ZZYqZQ0
>>452
PSE法はレンタル対象外。
とツッコんでみる。
4543の444:2006/03/31(金) 03:10:05 ID:WZoIhTBS0
  今日は藤原の二十一歳の誕生日。 この日のために私はジャスミンを拝み倒して星ヶ浦のはずれの海を
臨む高台にあるジャスミン一家の別荘を一晩ただで貸してもらったんだ。 今日は、 ここで藤原のために、
昔私が大好きだったたこ焼を作ってあげることになってるんだよ。
  海に面した広いリビングルームは海側の壁一面がガラス張り。 大きな窓からは太平洋が夕陽を浴びて
宝石でもばらまいたみたいにキラキラ輝いているのが見える。 寝室のダブルベッドはダブルどころか四人く
らい軽く寝れちゃうくらい大きくて、 おまけに天蓋までついていて、 まるでおとぎの国の王様の寝るベッドみ
たい。 床は木張りのフローリングなんてケチくさい作りじゃなくて、 一面白亜の大理石。 洗面所の蛇口とか
天井からぶら下がるシャンデリアは金ピカの真鍮製。 部屋の中のものは空気にまで値札がついているんじ
ゃないかと思うくらい何から何まで高級品だ。 これみよがしの貴族趣味に辟易して、 これだから成金は趣味
悪いよね、 なんて心の中で悪態をついてみても、 この別荘のもの全てが今日と明日だけは私と藤原のもの
なんだって思ったら悪い気はしない。 それどころか、 遠足を明日に控えた子供みたいにどきどきわくわく。
もちろん子供じゃできないこともするつもりだけどね。
  藤原は仕事が終わってすぐこっちに直行してくれることになってるから、 到着は夕方の5時過ぎになりそ
う。 それまで私はこの広い別荘に一人っきりなんだけど、 ふかふかのベッドに寝そべったりジャグジー付き
の広いバスタブの蛇口を意味もなくひねってみたりして一人ではしゃぎまわっているうちに、 あっという間に
時は過ぎていった。

  ピンポーン。
  約束どおり、 きっかり夕方5時に来客を知らせるチャイム。
  藤原だ。
「すぐ開けるからちょっとまってて」
  玄関ドアについてる覗き穴の向こうに藤原の姿を確認すると、 私はドア越しにそう言い残して、 いったん
お風呂場の横の更衣室に走る。 そして、 藤原に喜んでもらうべく、 あらかじめ用意してきた「ある衣装」に
着替えると、 もったいつけるようにわざとゆっくり玄関のドアを開けた。
「藤原、 お誕生日おめでとう!」
4553の444:2006/03/31(金) 03:10:50 ID:WZoIhTBS0
「え、 えーっと」
  藤原は私を一目見るなり絶対零度の冷凍光線を浴びたみたいにカチンコチンに固まってしまった。 私か
ら目をそらして落ち着きなく床に視線を彷徨わせる藤原の顔が、 ゆでダコみたいにみるみる赤く染まってい
く。
  予想通りの藤原の反応に私は嬉しくなって、
「ふふん、 藤原。 どうしたのさ」
  って、 ついつい意地悪く聞いてしまった。
  ホントは別にわざわざ聞かなくたって藤原が固まってしまった理由は分かってる。 今、 私が着ている「あ
る衣装」のせいなんだ。 それが、 衣装って言えればの話だけどね。
  今の私は、 アニーから借りた白いエプロン以外は何も身につけていない、 いわゆる裸エプロン姿。 エプ
ロンがかろうじて胸から股下までの肝心な部分をかろうじて覆いかくしているだけで、 ほとんど裸もドーゼ
ン。 下着は何も身につけてないから後ろを向けばお尻は丸見え。 これって見ようによってはただの裸よりも
よっぽどエッチなカッコだよね。 いきなり彼女が玄関先にこんな姿で立ってたら、 びっくりするのも無理ない
よ。
  でも、 私だって何も好き好んでこんなカッコをしているわけじゃない。 私がこんなカッコをしているのは藤
原がこのカッコが大好きだって知ってしまったから。 藤原の彼女として、 彼氏を喜ばせてあげたかったから
なんだ。
  
4563の444:2006/03/31(金) 03:11:24 ID:WZoIhTBS0
  話は、 ちょうど二週間前に遡ります。
  その晩、 私は藤原といつものように菖蒲端のワイ横のホテルに泊まっていたんだ。 その時の、 その
う・・・、 エッチの合間の中休みにさ、 ちょっといやらしい深夜番組を見たんだよね。 その番組っていうのが、
裸エプロン姿の女の子が料理を披露するっていう世にも下らないやつで、 女の私から見たら、 女の子の裸
エプロン姿なんかより包丁を持つ危なっかしい手つきのほうにドキドキしっぱなしだったんだけど、 藤原はテ
レビに向ってしきりに突っ込みを入れる私を尻目にいつになく真剣にテレビに見入っていた。 それこそ、 視
線でテレビに穴が開いちゃうんじゃないかって思うくらいにね。 あんまり熱心にテレビを見ているから私はち
ょっと悔しくなって、 ふざけ半分に藤原の頬っぺたをつっついたりしたのに、 ゼンゼン私のことをかまってく
れない。
  すぐ横の手を伸ばせば届く距離に女の子が裸で寝そべってるっていうのに、 ブラウン管の中の女の子に
釘付けだなんて、 ずいぶん失礼だよね。 それで私は、 むっとして膨れっ面で
「ふ−ん、 藤原ってこういう趣味だったんだ。 このド変態!」
  って精一杯嫌味を込めて言ってみた。 でも、 藤原ってば
「裸エプロンは男のロマンだ」
  なんて拳に力を込めて力説しちゃって・・・、 その嬉しそうな顔を見ていたら、 私、 それ以上何も言えなく
なっちゃったんだよう。 もちろん番組が終わったあとで、 藤原はいつものように私を優しく抱いてくれたんだ
けど、 でも私、 テレビの裸エプロンの女の子に負けたみたいな気がしてちょっぴり悔しかった。 それと同時
にちょっとエッチに工夫がなかったかもしれないって反省もした。
  思い返せば藤原は私が浴衣を着ていたとき、 えらく興奮していたみたいだし、 きっと裸なんかよりもちょ
っと変わった格好をしたほうが萌えてくれるタチなんだろう。 なのに私はカンタンに裸になるばっかり。 いつ
もいつも単調なエッチばかりじゃ、 そのうち飽きられてしまうかもしれない。
(よし、藤原の誕生日に、私もあんなカッコをして藤原を驚かせてやるんだ)
  コトが終わって私の横で気持ちよさそうにすーすー寝入っている藤原のほっぺたをつねりながら、私はこ
のときそんなことを考えていたんだ。 
4573の444:2006/03/31(金) 03:12:20 ID:dsA7QXPP0
  私にだって、 藤原の望む理想の女性になって、 藤原を喜ばせてあげたいっていう気持ちくらいある。 い
やむしろ、 普通の人よりずっと強くそう思っているつもりだ。 どんなに自分は人間なんだって言い聞かせて
みても、 この身体が人をかたどった機械にすぎないという事実を変えることはできないし、 ニセモノの身体
を藤原に抱かせてしまっているという罪悪感を拭い去ることもできない。 そのことが無意識のうちに私の負
い目になってしまって、 藤原を喜ばせたい余りに、 ハタから見たらやりすぎって思えるくらい、 とっぴな行動
に出てしまうのかもしれないね。

  私のスジ書きでは藤原は私の「衣装」に最初こそ驚くけど、 すぐに子供みたいにはしゃいでくれるはずだ
った。 でも、 眼の前の藤原は、 俯いたっきり真っ赤な顔でもじもじもじもじ。 藤原がそんなふうだから、 私も
軽口をたたくきっかけを失って、 玄関先で向き合う二人の間に気まずい沈黙が流れる。
(どうしたの? 裸エプロンは男のロマンじゃなかったの?)
  はじめのうちこそ、 「どうだ藤原、裸エプロンだぁ。萌えるでしょ」なんて誇らしげに思っていた私だけど、
藤原がいつまでたっても顔を上げてくれないから、 私は、 ひょっとしてハズしちゃったんじゃないかって徐々
に不安になってきた。
  私が身につけてるエプロンは、 テレビの女の子が着ていたような、 胸にあてる部分がハート型になって
いて、 オレンジ色のフリルがついているようなかわいいものじゃない。 むしろ給食とか弁当屋のおばちゃん
が着けているほうが似合いそうな、 天ぷら油の染みの目立つエプロンなんだ。 これじゃ、 藤原も気分が出
ないのかもしれない。
  それとも裸エプロンなんてテレビで見ている分にはファンタジーとして楽しめるのかもしれないけど、 実際
に眼の前に自分の彼女が裸エプロン姿で立っていたら、 ドン引きしちゃうのかもしれない。
  どうしよう。 藤原、 私のこと、 なんて間抜けなカッコをしてるんだろうって思って、 内心あきれて果ててい
るんだろうか? どうしよう。
「ふ、 藤原、 やっぱりちょっと引いちゃったかなあ?」
  私は恐る恐る上目遣いに藤原の表情を伺う。
4583の444:2006/03/31(金) 03:12:54 ID:dsA7QXPP0
  興奮して自分に酔っているうちは、 まだいい。 でも、 こうして自己陶酔の解けた冷静な頭で今自分のし
ている滑稽なカッコを思い浮かべると、 急に自分のしていることが恥ずかしくてたまらなくなってくる。
  ふと、 目線を下に落とすと二つの乳首がエプロンの薄い布地を押し上げてはっきりとそのありかを自己
主張していた。 いくら彼氏の前とはいえ、 こんな小さな布切れ一枚しか身につけずに人前に立っているなん
て!
(恥ずかしい!)
  羞恥心にかられた私は、 あわてて両腕をバツの字を作るように胸の上にあてがって、 乳首のありかを
隠そうとした。 そしたら、 いくら小さい胸とはいえ、 こんなカッコをしているだけに、 いつもより目立っていた
胸の谷間がよりいっそう強調される形になって、 かえって恥ずかしいカッコになっちゃうことに気がついた。
  それが良かったのか、 悪かったのか、 どうやら私のその仕草が藤原の欲情に火を付けちゃったみた
い。 藤原は「ふるふる」という擬音が聞えてきそうなほど大きく首を横に振ったかと思うと、 私の小さな両肩
に手を置いて、
「裕子さん。 ぜんぜん引いてなんかいないよ。 俺、 今、 モーレツに感動しています。 ちょっと驚いただけ。
イイよ。 裕子さん。 すごくイイ!」
  盛んに「イイ!」を繰り返す藤原の眼は、 私の羞恥ゲージが上がっていくのと反比例して、 いきいきと輝
きはじめる。
「ははは・・・」
  藤原に肩をつかまれて思いっきり身体を揺さぶられたおかげでずり落ちてしまった眼鏡をかけなおしなが
ら、 私は思わず苦笑い。 余りの藤原の豹変っぷりに、 今度は私がちょっと引き気味だ。
  藤原は、 そのまま欲望の赴くままといった風情で、 自分の靴を勢いよく脱ぎ捨てると、 私をまるで蝶々
の標本みたいに壁に押し付ける。 私の耳に藤原のハァハァっていう荒い息がかかった。
「こ、 こら。 やめろよう。 やめなさいった――」
4593の444:2006/03/31(金) 03:13:55 ID:dsA7QXPP0
  抗議の声を上げようとした私の口が藤原の口付けでふさがれる。 私の口を閉ざしたことで調子に乗った
のか、 舌を交わす激しい口付けをしながら、 藤原はエプロンと身体の隙間に右手を差し入れて、 いつもよ
り荒っぽく私の胸をつかみ、 もみしだく。 それから乳首の周りを円を描くようになでまわす。 藤原の手の中
で私の乳首が固く尖っていくのが自分でも分かった。
「んんっ!」
  動いているのは手だけじゃない。 私の両足を割っている藤原の左足が、 絶妙な角度で私のアソコを刺
激する。 それだけで脳が溶けてしまいそうな快感が身体中を走りぬけて、 私は口をふさがれたまま思わず
喘ぎ声を漏らしてしまう。 私のあそこがじんじん熱くなって、 中から温かいものが溢れ出てくるのが自分でも
分かった。
「駄目駄目駄目っ! 今ここでしちゃったら、 私、 なんのためにこんなカッコしたか分からないじゃないかよ
う」
  私は理性を総動員して藤原を両手で突き放して乱れたエプロンの裾を直す。
「わ、 私は料理を作るために、 エプロン姿になったの。 約束どおり、 何も食べてきてないよね。 私がこれ
から藤原の夕食を作ってあげるんだから。 だから、 今は駄目だから。 ね? ね?」
  まるで駄々っ子をあやすような口調で藤原をなだめる私。 だけど、 言葉とは裏腹に、 つんと尖ってしま
った私の乳首が、 さっきよりもはっきりと、 淫らにエプロンを押し上げている。 これじゃ、 まるで説得力なん
てありはしない。
「裕子さん、 そう言うけどさ。 眼の前でそんなカッコされたら、 俺、 我慢できないよ」
  藤原はエサを取り上げられた子犬みたいな恨めしげな目つきで私を見つめた。 藤原の股間に目をやる
と、 ジーパンの厚い生地越しでもはっきりと分かるほど藤原のモノがその存在を誇示していた。
4603の444:2006/03/31(金) 03:14:49 ID:D7oMz2cQ0
  藤原がこんな様子じゃ、 せっかくとっておきの料理を作っても、 エッチのことばっかり考えられて上の空
になってしまう。 そんなの悔しいよ。 それよりは、 ここで一度藤原にすっきりした気分になってしまったほう
がいいのかもしれない。 そう思った私は、 人間よりも獣に近くなってしまった藤原に内心あきれつつも、
「分かったよ。 じゃ、 今本格的にはじめるのもアレだから、 口でしてあげる。 そうすれば落ち着くんでしょ」
  と言いながら藤原に抱きついてあげた。
  その言葉を聞いたときの藤原の嬉しそうな顔ったらないよ。 欲しがっていたおもちゃが手に入った子供
みたいに無邪気にはしゃいじゃってさ、 全く男って単純だよね。 藤原は特に単純。 でも、 そんな子供みた
いなところが私は大好きなんだ。

「私が脱がしてあげる」
  私は藤原の前で膝立ちの姿勢をとって、 藤原のジーパンのベルトを外すと、 ジーパンをトランクスごと一
気に膝の位置まで引きずり下ろした。 私の目の前に、 お腹にくっついちゃうくらい誇らしげにそそり立ってる
藤原の男のシンボルがぴょこんと姿を現した。 見ようによってはとってもグロテスクなものなのに、 好きな人
のそれはどうしてこんなに愛おしく思えてしまうんだろう。
(かわいい!)
  私は思わず藤原のそれに、 そっと口付け。
「うっ」
  という藤原の呻き声が上から聞こえた。
(ふふっ。 藤原ったら、 感じてるんだ)
  そう思ったら、 私はまた愛おしい気持ちで胸が一杯になってしまう。
「いつも言ってるけど、 出ちゃいそうになったら言ってね」
  膝立ちの姿勢で上目遣いに藤原を見上げる私。 無言でうなずく藤原。 フェラをする時はゼッタイ口の中
に出したら駄目。 それが二人の間の暗黙のルールだ。
4613の444:2006/03/31(金) 03:15:29 ID:D7oMz2cQ0
  私の身体は義体だから、 口から栄養カプセル以外のもの摂取できる構造にはなっていないし、 水すら
飲むことができない。 だから、 もし私の口の中で藤原がイっちゃったら、 ちょっとやっかい。 そのまま放って
おいたら義体の不具合の原因になるから、 義体をバラして洗浄しなきゃいけないんだ。 そんなことになった
ら、 お金がかかるし、 何より私がどんなことをしていたのかお医者さんにバレバレになっちゃうから、 死ぬ
ほど恥ずかしいし。 だから私は、 よくあるアダルトビデオみたいに精液をゴックン、 なんてことは、 ぜーった
いできない。 ま、 聞いた話だと苦くてマズイらしいから別に飲み込みたいとも思わないけどね。
 
「じゃ、 いただきまーす」
  私はおどけたようにそう言うと、 藤原のものをぱくっと口に含んだ。 そして、 とくんとくんとわずかに脈打
つ藤原自身の感触を確かめるように、 舌でゆっくり舐め回す。 私の舌は、 ただ飾りでついているだけで味
覚はないから藤原のものがどんな味がするのか分からない。 嗅覚もないから男の匂いを鼻一杯に感じるこ
ともできない。 でも、 いいんだ。 私がこうすることで、 藤原が気持ちよくなってくれれば、 それで私は充分幸
せなんだ。
「藤原、 気持ちいい?」
  私は、 口いっぱいに藤原の分身を頬張ったまま、 藤原に問いかけてみる。 私の声は、 喉の奥にあるス
ピーカーから流れる電子合成音。 だから、 声を出すのに口を開ける必要はないから、 こんなふうにフェラし
ながら話すこともできるんだよ。
  藤原は答えるかわりに私の髪を優しく撫でてくれた。 ただ髪を触れられる。 たったそれだけのことで、
髪の毛が性感帯にでもなったみたい。 さざなみみたいな柔らかい快感がそこから生まれて私の全身に広が
った。
(駄目だ。 駄目だ。 このままだと私までおかしくなって料理どころじゃなくなちゃう)
  私はいっとき舌を動かすのをやめて、 ぎゅっと目を閉じて身体を快楽が身体を通りすぎるのを待つ。
「ゆ、 裕子さん?」
  急に動きが止まった私をいぶかしむ藤原の声。
4623の444:2006/03/31(金) 03:16:08 ID:D7oMz2cQ0
(分かったよ。 フェラ、 続ければいいんでしょ。 続ければ)
  私は藤原のお尻に両腕をまわして、 ぴとっと藤原に身体を密着させた。 そして、
  ちゅぽ、 ちゅぽ。
  藤原自身を口に含みながら、 アイスキャンデーでも味わうみたいに私はゆっくりと顔を動かす。 いつの
間にか、 私、 何もされていないのに自分のアソコを突かれているみたいな錯覚に陥っていた。 深く藤原を
飲み込むたびに、 まるで藤原を受け入れているみたいにあそこが震えて、 目が眩むような快感が全身を突
き抜ける。 私の動きにあわせて、 身に纏ったエプロンと、 すっかり硬く尖った乳首がこすれあって、 そこか
らもまた違う快楽が生まれて、 身体中に渦を巻いた。
  つーっと私のあそこから生まれた液体が股間を伝い落ちて大理石の白い床を濡らす。
  とりあえず藤原を満足させようとしてはじめたフェラだけど、 やっぱり駄目。 私、 もう我慢できそうにな
い。
(我慢するのは身体に悪いよね。 もー、 滅茶苦茶にいじっちゃえ)
  そう決心した私は藤原の腰に回していた右手そーっと股間にもっていった。 そして。
  つん。
  指で軽くクリをつつく。
「んんっ!」
  あそこから弾けるように全身に広がる鋭い快感に私は思わずくぐもった呻き声を上げてしまった。 もっと
欲しいっておねだりするみたいにあそこがひくひくひくひく蠢めき、 愛液がよだれのようにぐちゅっと湧き出し
た。 私は、 快楽への期待感から両目をぎゅっとつむると、 親指ですっかり大きくなってしまったクリを押しつ
ぶすようにこすりながら、 人差し指一本を恐る恐るあそこに潜らせた。 中は溢れ出たものですっかりどろど
ろになっていたから、 何の痛みもなく奥まで入れることができた。 それから、 フェラの動きにあわせるよう
に、 指を深く浅く、 リズミカルに出し入れする。 ぴちゃぴちゃといやらしい音が響いたけど、 そんなの気にす
る余裕なんかとっくになくなってた。
4633の444:2006/03/31(金) 03:16:59 ID:+JAVZZWX0
「裕子さん、 ひょっとして自分でさわってる?」
  息を乱しながらも、 まだ冷静な藤原の突っ込みが上から聞こえる。
「う、 うるさいっ! 見るなよう。 藤原が悪いんだから。 ううっ。 ぜんぶ藤原のせいなんだからっ! んんっ!」
  藤原にこんな姿を見られてる。 恥ずかしい。 やめなきゃ。 頭では分かっていても、 あそこをいじりまわ
すのをやめられない。 それどころかかえって興奮して右手をよりいっそう激しく動かしてしまうんだ。 いつの
間にか出し入れする指は一本から二本に増えていた。
  悔しいっ! 藤原が我慢できないっていうからフェラをはじめてあげたのに、 どうしていつの間にか私がオ
ナってて、 しかも藤原より乱れないといけないのさ。 でも、 悔しいけど、 私、 もうダメだ。 気持ちよすぎて気
が狂いそう。 頭が真っ白になって、 「藤原大好き」ってコト以外は何も考えられなくなって、 そのくせ手だけ
は快楽をつむぎ出すために別の生き物みたいに激しくあそこを這い回ってる。 こんな快楽、 本物じゃない
のにっ! ただの電気信号なのにっ!
「ごめんね。 藤原まだだよね。 でも私、 もうダメだ。 いっちゃう。 いっちゃうよう」
  もう何がなんだか分からない。 私は雌の本能が命じるままに指を深く突き入れながら、 クリを強く押しつ
ぶす。
「藤原、 好きだ。 好き! 好き! 好き! 大好き! 大好き! 大好き!」
  右手の人差し指と中指にずきんずきんと何かを刻みこむような律動を感じながら私は昇天した。 膝立ち
の姿勢で全身をわななかせて、 何かに取り憑かれたように激しく藤原自身を吸い続ける。
「ゆうこさん。 きれいだ! ゆうこさん。 僕も大好きだよ!」
  どこか遠くのほうで藤原の叫び声を聞いた。 それで、 余りの快感の深さに失いかけていた意識が現実
に引き戻される。 と思う間も無く私の口から藤原自身が引き抜かた。 藤原のそれは、 私の目の前でびくび
く脈打ちながら、 白い体液を勢いよく吐き出して、 私の顔を穢していく。 でも、 それは決して悪い気分じゃな
い。
4643の444:2006/03/31(金) 03:18:27 ID:+JAVZZWX0
「ははは・・・。 藤原も、 いっちゃった、 ね」
  私はぺたんとお尻をついたかと思うと、 あおむけに床に崩れ落ちた。 大理石の床の固い感触を背中に
感じる。 眼鏡にかかった藤原の体液のせいで、 高い天井が白く濁って見える。 さっきの絶頂感の余韻が身
体に心地いい。 私は、 自分の愛液でぐちょぐちょに濡れた右手で顔にかかってしまった藤原の精液をこす
り、 まるで化粧をするみたいに頬っぺたに薄くのばし、 広げる。 藤原の身体から出たものだと思うと、 こん
なものですら愛おしくてたまらない。
「藤原。 私、 ものすごくよかったよ」
  私は顔をゆっくりと伝い落ちる藤原の体液を頬に感じながら、 物憂げに口を動かした。
「裕子さん。 俺、 これ一回やってみたかったんだ。 ありがとう」
  藤原はぼーっと快感の余韻に浸る私を見下ろしながら、 照れ隠しに頭をかきかき。 下半身脱ぎっぱなし
で、 欲望を吐き出して萎えてしまったモノを股間にブラブラさせたままの藤原の間抜けな姿についクスリと笑
ってしまう私。
  あー、 これから料理を作らなきゃいけないっていうのに、 私ってば一体何をやってるんだろう。
4653の444:2006/03/31(金) 03:21:16 ID:+JAVZZWX0
今日はここまで。

皆さんお久しぶりです。今回は予告どおりエロ話にしたんですが
義体ならではって感じでもなくなっちゃいました。すみません。
466pinksaturn:2006/04/02(日) 10:49:21 ID:VxjTRbMs0
(オプションパーツの続きです。450様。レスども。国語赤点のプロだったので改善状況はいまいちですが。)

−−(4)静止軌道工場衛星−−

通信員:「ベイより発光信号、外扉解放よし、進入許可出ました。」
艦長:「操舵を指導員に交代、重力区画ドラム停止、総員重力変化に注意、進入せよ。」
操舵員:「ヘッドフィギュアリモートボディリンク渡します。身体感覚復帰プロトコル開始、ふう、指導員さま、おいしいとこドゾー。」
指導操舵員:「リモートボディリンク継承、前進秒速5m、ベイ中心軸捕捉よし、角加速始め、ゲート通過、前進秒速1mに減速、
相対角運動量低下、ベイ中心軸に対し0.1度毎秒、前進終了、降下速度0.5m/s、ヴァギナルハッチ開口、ロックポール亀頭接触、
ひっ、着底まで1m、うっ、着底感知、ロックポール結合、あふっ、ロック確認、ベイ外扉閉塞確認、ベイ気圧上昇中、毎秒0.01気圧、
姿勢制御エンジンコック閉鎖、ベイ内0.05気圧なお上昇中、ヘッドフィギュア口腔ロック解放、ベイ内気圧0.2気圧、安定しました、
ヘッドフィギュアハッチ開口、舌出します、ヘッドフィギュアリモートボディリンク切断、入港作業終了しました。」
艦長:「総員、所属小隊長に従い退艦、地上降下スケジューラーの指揮に従え。これで部隊編成を解く。
みなさんご苦労様でした。また、次の任務で会えることを楽しみに思います。ごきげんよう。
奈々侯、幹部小隊の点呼をお願いね。私は私物をとってきて舌に直行しますから。」
奈々中佐(副長、緑の公家)「殿下、全員イントラで所在確認しました。舌に向かわせます。では後ほど舌で。」
467pinksaturn:2006/04/02(日) 10:51:18 ID:VxjTRbMs0
リエ:「いつもながら、このヘッドフィギュアが白目剥いてあかんべした停泊姿は間抜けねえ。」
マサ:「ヘッドフィギュアって初代皇帝陛下なんでしょ。不敬罪にならないのかしら。」
真理亜:「初代陛下の素体番号は0000001、即ち全身サイボーグの初号機であらせられる。
また、リモートボディリンクによる高機動艦体制御の発案者でもあらせられ、大型艦にはその功績を称えたフィギュアが搭載される。
お茶目な方で、舌を搬入路とすることも自らお命じになったのだから、不敬にはなりません。
サイボーグなら、これくらいは生体脳にも覚えておきなさい。軍曹!。点呼よ!。」
タラ軍曹:「第29採鉱小隊整列!。公用CPUID−素体番号対応確認申告。...点呼よし。真理亜侯、退艦確認終了です。」
真理亜:「命令、わが小隊の降下は、6時間5分後、出荷カプセル407号への便乗となった。集合は5時間30分後に梱包場である。
持ち物は梱包場に各自預けること。厚生エリアの利用許可が出ているので、それまで自由休息とします。」
468pinksaturn:2006/04/02(日) 10:53:17 ID:VxjTRbMs0
冬子:「真理亜侯、義肢製作所の同期を訪問したいのですが許可取れますか?。」
真理亜:「待って、確認するわ...うん、下肢課の方ね、OK。立ち入り許可出たわよ。ライン監視室を直接訪ねなさい。」
マサ:「あのぉー。H型燃料電池の組み込みを見学したいので一緒に行っていいですかぁ。」
真理亜:「あら、藻前が見学したいなんてどういう風の吹き回し?。ネットカフェでメンテオプションの予約でもするのかと思ってたけど。
まあいいわよ。マンドクサイので今のアポ登録”29採掘小隊一行”で入れたから。」
マサ:「予約の方は先月版のスタイルシート見て航行中に圧縮メールとばしましたので。少しは仰せのように体内CPUも鍛えようかと。えへっ。」
リエ:「なんか怪しげー。ところで、真理亜様も出荷便で降りられるのですか、普通、貴族方は乗用機を使われるのでは?。」
真理亜:「殿下が4,5日滞在されるので乗用機はしばらく出ないのよ。工場幹部との意見交換やら工場指令主催のパーティがあってね。」
タラ:「宇宙でパーティでありますか。耐放射シールドケースで消化ユニットを上げたのですか。さすがですなぁ。」
真理亜:「まさかぁ、VRよ、どうせ。私たちだって消化ユニットが貴重なのはシビリアン兵と一緒なんだから、そんなリスク冒さないわよ。
直結で酒だけっていっても、そのためだけに腹から下全部組み替えて、すぐまた戻してじゃ大変杉。私たちは合体超合金ロボじゃないのよ。」
マサ:「殿下がVR乱交ですかぁ。艦内レクには一度もお出ましにならなかったじゃないですか。」
真理亜:「作戦中は操を立てておられたのよ。工場指令の華子殿下がパートナーなんだから、ここではお淫りになる方が当然だわ。」
マサ:「へ−へ−へ−、へ−ボタン。殿下は既婚かぁ。でも、ザンネン。」
真理亜:「この尻軽娘、私の愛が欲しいとやらはもういいのかしら。」
マサ:「あ、軽いのは軽いですが、本命はやはり真理亜様でありまして。」
真理亜:「バカの6乗!。冬子!、頭痛くなるからこんな香具師早く見学先に連れて逝きなさい。」
469pinksaturn:2006/04/02(日) 11:02:52 ID:VxjTRbMs0
冬子:「おじゃましまーす。おひさしぶり−。」
マサ:「初めまして、どもー。」
ひとみ:「ようこそ。冬子は調子どうだった?。こっちはちょっとねえ...。」
冬子:「私は艦でも何とか使いモノになっていけそう。ひとみ、足どうしたの?。」
ひとみ:「あんまりよく転ぶので調べて貰ったら、増設身体制御CPUのレジストリが膨張しすぎていてね。
私、脳性麻痺だから制御が重くて、手足同時に動かすと不安定化して。で、腕が動かないと仕事出来ないでしょ。
仕方ないので足を外してドライバも削除してレジストリ圧縮したの、
応急に輸送ホバー貸して貰って、電源もここから取ってるの。
そんなわけで足無しの浮遊ユーレイ状態なんだ。足を作る仕事やってるのに皮肉ねえ。」
冬子:「直るの?」
ひとみ:「軍研究所の調査によるとマックロソフト系のOSじゃ処置無しなんで、アイ・タロン系で新たに起こすことになったの。
特異な症例ってことで、悲田院に補助申請してくれて幸い通ったので自己負担なしだから、気楽に待つだけね。
これじゃ、地上に降りても困るから休暇の先送りも頼んじゃった。いくら1級手帳持ちでも今更車椅子なんかゴメンだもんね。
そりゃそうと、新型の足、見にきたんでしょ?。自信作なのよ。」
マサ:「今度のってH型燃料電池が搭載されるんですよね。」
470pinksaturn:2006/04/02(日) 11:05:07 ID:VxjTRbMs0
冬子:「おじゃましまーす。おひさしぶり−。」
マサ:「初めまして、どもー。」
ひとみ:「ようこそ。冬子は調子どうだった?。こっちはちょっとねえ...。」
冬子:「私は艦でも何とか使いモノになっていけそう。ひとみ、足どうしたの?。」
ひとみ:「あんまりよく転ぶので調べて貰ったら、増設身体制御CPUのレジストリが膨張しすぎていてね。
私、脳性麻痺だから制御が重くて、手足同時に動かすと不安定化して。で、腕が動かないと仕事出来ないでしょ。
仕方ないので足を外してドライバも削除してレジストリ圧縮したの、
応急に輸送ホバー貸して貰って、電源もここから取ってるの。
そんなわけで足無しの浮遊ユーレイ状態なんだ。足を作る仕事やってるのに皮肉ねえ。」
冬子:「直るの?」
ひとみ:「軍研究所の調査によるとマックロソフト系のOSじゃ処置無しなんで、アイ・タロン系で新たに起こすことになったの。
特異な症例ってことで、悲田院に補助申請してくれて幸い通ったので自己負担なしだから、気楽に待つだけね。
これじゃ、地上に降りても困るから休暇の先送りも頼んじゃった。いくら1級手帳持ちでも今更車椅子なんかゴメンだもんね。
そりゃそうと、新型の足、見にきたんでしょ?。自信作なのよ。」
マサ:「今度のってH型燃料電池が搭載されるんですよね。」
471pinksaturn:2006/04/02(日) 11:09:33 ID:VxjTRbMs0
(470のダブり、スマソ)

ひとみ:「マサさん詳しいみたいね。
今まで地上生活用の足って、膝のすぐ上から18cmの範囲にかけて皮下に換気プレートがあったでしょ。
非サイボーグの股関節離断者が使うときに断端が蒸れないような設計だったの。
ところが、サイボーグ用A型燃料電池ってボディに給電するから股関節離断者用N型の2倍も水蒸気が出るのね。
それで、水滴が垂れるってクレームが多くてね。換気のためミニスカしか穿けないからお漏らしに見えて困るって。
極めつけの香具師は、お気に入りの本皮サイハイブーツがカビカビになったの弁償しろだって。
こんどは、薄型の換気プレートが開発されてアルコールタンクを包む配置で太股全体から換気するから、こういうバカやる香具師にも困らないわ。
H型だとセル毎に配管が分かれてるから低出力時は使うセルを選べば膝付近が蒸れるのも避けられるしね。
あと、もう一つ利点があってね。今までの製品は海外の男性股関節離断者から服に困るってクレームがあったの。
たぶんN型の換気量なら、生地を選べばズボンも大丈夫だから輸出を増やせるわ。
そうそう、輸出って言えば最近海外でメタロリっていうサイバーパンクとゴスロリが合わさったファッションが流行ってね。
それで、腕機能併合型の販売が急増しているの。もともと癌なんかで肩胛骨削っちゃった人のQOL用だから生産少ないのに。
断端の神経トランスミッタ手術が海外技術移転禁止だから経済特区の病院までやりに来るでしょ。
特区の医療は何でもありなんで、両手足だと儲かるからどんどん引き受けていて、おかげでこっちまで忙しくなっちゃった。」
マサ:「...(私ってバカ?)」
472pinksaturn:2006/04/02(日) 11:17:39 ID:VxjTRbMs0
マサ:「...(私ってバカ?)」
冬子:「あははは、マニュアル見ない娘っているものねえ。ストッキングは専用品か網タイツ以外ダメって書いてあるのに。
大体さあ、本国は熱帯だよ。私はわけありで、ファッションに金かけないから詳しくないけどブーツにこだわるかなあ。」
マサ:「ちゃんと網タイツだったのよぉ。靴の制限なんか書いてなかったもん。サイボーグは暑さなんて関係ないし。」
ひとみ:「えええっ、あれ貴方だったの。ゴメン。前言撤回。
私だって、かわいい靴にこだわる気持ちはよくわかるわ。足が不自由だとなおさらね。
でも、今度は燃料電池セル選んで使ってね。下から2セル停めれば膝上12cmまで蒸れなくなるから。
私も直ったらロングブーツ買おうかな。いつか、みんなでピンヒール登山マラソンに出てみない?。」

(軌道工場、おしまいです。 次回予告:”(5)大気圏突入”)
473無名:2006/04/02(日) 11:42:51 ID:wHVoaPTQ0
かなが目を覚ましたのは、夜中だった。また寝ようとしたけど、早く眠ったせいでなかなか眠くならなかった。
 「そうだ、眠くなるまで外で涼しんでこよ〜っと」
 祐喜ちゃんを起こさないようにそーっと外に出たかなは、森の方へ歩いていった。
 「はあ〜、涼しい〜」
 暑苦しいテントの中に比べて外はとても涼しかった。それに夜の空は星が輝いていて、見ていても飽きないほどだった。
 「もう少しこのままでいようかなぁ…」
 そのとき、森の方角から光る物体が落ちてくるのを発見した。もしかして宇宙人…?かなは恐る恐る光の方へ歩いていった。
 「おや、昼間のお嬢さんじゃないか」
 光の方へ近寄ろうとしたとき、あのおじいさんがかなの前に現れた。
 「あれっおじいさん、こんな時間に何やってるの?」
 「探し物をしてるんだけど、ちょうどこのあたりに落ちたはずなんだ。夜になれば光りだすから分かるはずなんだけどね」
 もしかして、さっき光ってたあれの事!?もしそうだとしたらそのことをおじいさんに教えてあげないと…。
 「おじいさん!探し物ってこれじゃないの?」
 かなはさっき光っていた物体があった方向を指差した。
 「そうだよ、間違いない」
 そんなわけで、かなはおじいさんの手を引いて、光る物体が落ちている場所へ案内した。
474無名:2006/04/02(日) 11:43:30 ID:wHVoaPTQ0
 「えーと、どこへ落ちたんだろう?たしかあっちの方だと思うんだけど」
 かなとおじいさんは光が落ちたあたりを探したが、それらしきものは見つからなかった。
 「あれー、おかしいなぁ。たしかこっちに落ちたはずなんだけど…」
 「どうやらそこで正しかったみたいだよ」
 おじいさんは草むらを指差した。でも光るものなんて全然落ちてないじゃないか。本当にそこなのかなぁ…?
 「あったあった。これだよ、私が探していたものだよ」
 それは小さいボールみたいなもので、所々にしましまの模様があった。もしかしてそのボールから光が出てたのかも…!
 ボールを拾い上げたおじいさんに、かなはそのボールを貸してほしいってお願いしてみた。
 「おじいさん、かなにも触らせてよ。少しだけでもいいから」
 「でも、これは優しく扱わないと駄目なものなんだが…」
 「お願いだよ、壊したりしないから」
 「…じゃあ、少しだけだよ」
 おじいさんはかなにボールを渡してくれた。やったー!でもこれって何に使うんだろう。かなはボールを回しながら色々と眺めてみた。
 「ふーん、これがさっきまで光ってたんだ…」
 でもボールはかながいじっても何も変化しなかった。
 「おじいさん、何もおきないよ」
 かなはボールをおじいさんに返した。おじいさんの手に渡ったそのとき、ボールが光を出し始めた。
 「あれ、何でおじいさんが持つとボールが光るんだろう。まさかおじいさん、光る仕掛けでもしてるんじゃないの?」
 おじいさんはにっこりと笑いながらボールを両手で持った。
475無名:2006/04/02(日) 11:45:44 ID:wHVoaPTQ0
「何も仕掛けなんて無いよ。このボールは生きてるんだよ」
 えっ、それって生き物だったの?
 「へえ、そうなんだ。この子、迷子になってたんだね」
 「だから私がここまできて探して来たんだよ。寂しいだろうと思ってね」
 かなが持ったときはきっと怯えてたんだね。だから光らなかったんだ。
 「よかったね。おじいさんに逢えて…」
 おじいさんはかなにこんな事を言ってくれた。
 「お礼といっては何だけど、明日の夜、またここに来てほしいんだけどいいかな?お嬢さんにいい物を見せたいんだ」
 「うん、いいよ。何見せてくれるの?」
 「明日来てからのお楽しみと言う事で…」
 そういっておじいさんは森の方へ去っていった。明日か…。何を見せてくれるんだろう。不思議なおじいさんだから、きっとすごいものを見せてくれるに違いないよ。かなはルンルンな気分でテントへ帰っていった。

 「かなちゃん、いつまで寝てるのよ」
 翌朝、祐喜ちゃんの声で目を覚ましたかなは、寝ぼけながら昨日の夜の事を考えていた。そういえば昨日の夜、おじいさんがあそこへ来てほしいって言ってたっけなぁ…。
 そんなかなをよそに、和真君達は川で水遊びに行くための準備をしていた。
 「おい、かなも準備しないのか?今日は川で遊ぶって約束だったはずだろ?」
 お兄ちゃんがかなの肩を叩いた。
 「あっ、そうだった。かなも水遊びの準備しないと」
 今は考えるのやめよう。せっかく遊びに来たんだから、思いっきり遊ばないと。そうじゃなきゃここへ来た意味がなくなっちゃうよ。
476無名:2006/04/02(日) 11:53:17 ID:wHVoaPTQ0
朝ご飯を食べたあと、かな達は車で下の川辺へ移動した。今日はここで水遊びやバーベキューをして楽しむんだ。
 「それじゃあ私は買出しに行って来るから、気を付けて遊ぶんだぞ。あまり遠くへ行かないようにな」
 水遊びの準備をしたかな達を置いて、お兄ちゃんは食材の買出しに出発した。
 「んじゃ、俺達は川で遊んでようぜ」
 というわけで、かな達は川でボール投げをして遊ぶ事にした。
 「かなやん、こっちにボールいったぞ」
 「えっ、どこどこ…うわぁ」
 受け損ねたボールは川の向こうへと飛んでいってしまった。
 「ごめん、ボール取ってくるから」
 「あっちは深いんじゃないの」
 「大丈夫、すぐ取ってくるから平気だよ」
 かなはボールが飛んでいった所まで歩いていった。と、そのとき!
 「うわっ!」
 急に足元がずぶずぶと沈んでいった。深い所へ入ってしまったのだ。
 「かなちゃん!」
 「今行くから動くんじゃねぞ」
 和真君がかなを助けるため、こっちへ歩いていく。だめだ、和真君までおぼれちゃうよ。かなは来ないでって言おうとしたけど、口に水が入って思うようにしゃべれなかった。
 このままじゃ二人とも大変な事になっちゃうよ。そう思ったそのとき…。
 『お嬢ちゃん、私が助けてあげよう』
 あのおじいさんの声が聞こえた。その瞬間、かなは深い所からまるで竿で釣られたように引き上げられた。
 「かなやん!大丈夫かよ!?」
 浅いところまで引き揚げられたかなの下へ、和真君が心配そうな顔で助けに来た。
 「はは…、どうやら助かったみたい」
 「まったく、いい加減にしてくれよ。お前はどうしようもないドジッコなんだからな」
 和真君はかなをおんぶして川辺へ戻っていった。
 「ごめん、ほんとにごめんね。和真君に迷惑かけて…」
 「慶介さんにも言われただろ、危ないところへ行っちゃ駄目だって」
 ごめんね和真君、かなのせいで和真君まで危ない目にあわせちゃった…。でもさっき、おじいさんが助けてくれたのはどうしてなんだろう…。もしかして、おじいさんがかなの事いつも見守ってるんじゃないじゃないかなぁ。もしそうだとすると、
どうしてそんなことするんだろう。
477無名:2006/04/02(日) 11:54:18 ID:wHVoaPTQ0
 それからしばらくするとお兄ちゃんが買出しから戻ってきた。
 「お前たち、ちゃんと留守番してたか?」
 「慶介さん、じつは…」
 和真君があの事を言い出そうとしたとき、かなは和真君の口を塞いだ。
 「はーい、ちゃんと留守番してましたー」
 「ああ、そうか…だったらいいんだ」
 ふーっ、危なかったぁ。そんなこと言われたらお兄ちゃんに怒られちゃうじゃないか。
 「それより、早くバーベキューしようよ。おなかすいちゃったよ」
 「わかったよ、それじゃあ少し早いけどバーべキューやるか」
 そんなわけで、かな達はバーベキューの準備をすることになった。材料を切るのが祐喜ちゃんで、焼くのがお兄ちゃん。で、和真君とかなはお皿やテーブルなどの準備をすることにした。
 ジューッ、ジューッ。お肉を焼いてるにおいがこっちへ漂ってきた。
 「ああ、いいにおい…」
 そのにおいのせいで、かなは自然と鉄板の方へ引き寄せられていた。
 「かなやん…、俺達は食器の準備だろ」
 あ…そうだった。つい鉄板の方を見てしまった。
 「ごめんごめん、かな達はこっちの方だよね」
 う〜ん、これってかなの悪い癖なんだよね。これからは直さなくちゃね。
 準備が終わったかな達は、焼けたお肉を食べる事にした。
 「う〜ん、お・い・し・い」
 「ほんと、よく焼けてるわ」
 なんて言ってるうちに、あっという間にお肉がなくなってしまった。
 「お前達、肉ばっかり食べないで野菜食べろよ」
 お兄ちゃんが言うのもごもっともだけど、おいしいんだからしょうがないよ。
 「焼けたジャガイモもおいしいぜ」
 「とうもろこしもけっこういけるね」
 そんなこんなであっという間に全部食べてしまった。もうおなかいっぱいだよー。
 食べたあとはまた川で遊んで一日を過ごした。それにしてもさっきのおじいさんの声…。和真君達には聞こえなかったんだろうか。もしかしてかなの頭の中でしか聞こえなかったのかも知れないな。何でこうなったのか、今日の夜おじいさんに聞いてみよう。

478無名:2006/04/02(日) 11:55:22 ID:wHVoaPTQ0
楽しかった川遊びも終わって、かなたちはキャンプ場に戻ってきた。この後は昨日と同じ温泉に入ってから夕ご飯を食べて、テントの中で寝るんだ。でもかなはおじいさんの約束があるから、みんなより早く寝る事にした。
 そして夜中の11時を過ぎた頃…、かなはそ〜っと起きておじいさんが待ってるあの場所へと向かった。
 「おじいさん、何見せてくれるんだろう。もしかしてお星様のところへ連れてってくれるのかも」
 かなはわくわくしながらおじいさんの待ってる場所へと走っていった。
 やっとあの場所に着いた。でもおじいさんはまだ来ていないみたいだ。来るのが早すぎたかなぁ…。
 そのとき、森の向こうから人影がボーッと浮かんで、おじいさんが現れた。
 「約束通りきてくれたんだね。私は嬉しいよ」
 「おじいさん、聞きたいことがあるんだけど」
 かなは川での出来事をおじいさんに話した。
 「ああ、あの時はたまたま通りすがってね、お嬢さんが危なさそうだったから助けてあげたんだよ」
 「そうだったんだ。ありがとう、おじいさん」
 かなはおじいさんにお礼を言うと、昨日の事を言おうとした。
 「あの、昨日のことなんだけど…」
 「お嬢さん、実はね」
 おじいさんの顔がさっきとは違って真剣な顔つきになった。
 「私はこの星を調査をしに来た宇宙人なんだ。それでこの星をどうするか私の星で会議したんだが、その結果、この星は近いうちに滅んでしまうという結果が出たんだ」
 「え…どういうことなの」
 「ここの人間は自然を大切にしない人が多いと言う事なんだよ。だからこの星は近いうちに木や草がなくなって、いずれ滅んでしまうんだ」
 「そんな事無いよ!たしかに木を切ったり川を汚したりする人もいるけど、自然を守る人もそれ以上にいるんだ。だからこの地球は滅んだりなんかしない。もっとわかりあえば…」
 「いや、このままではいずれこの星は滅んでしまうよ。この星には、お嬢さんのような人よりも自然を壊す人の方が多いんだよ」
 そんな…。このままだと地球が滅んでしまうなんて…。どうしたらいいの。
 
479無名:2006/04/02(日) 12:08:20 ID:wHVoaPTQ0
 「でも、このまま滅んでいいわけないよ。みんなだって森や川がなくなるなんて嫌に決まってるもん。だからかなは自然を大切にしようって、みんなに言うよ。それで地球を救えるんだったらかなは何だってする。身体をはってでも自然を守るよ」
 おじいさんはしばらく考えた後、にっこりと笑って答えた。
 「そうか、お嬢さんの言う事はよく分かった。私もお嬢さんたち地球人の言うことを信じてみましょう」
 「本当に?ありがとうおじいさん!」
 「仲間にもお嬢さんのこと、よく言っておくよ。この星には自然を愛する人がいるってね」
 そしておじいさんは例のカードをポケットから出して、ボタンを数回押した。
 「お嬢さんにまだお礼をしてなかったね。これからいいところに連れて行ってあげるよ」
 おじいさんがそう言ったとたん、周りの景色が宇宙へと変わっていった。まるで巨大なプラネタリウムにいるみたい。
 「す、すごいよおじいさん。こんな事が出来るなんて」
 「こんなのまだ序の口さ。見ててごらん」
 おじいさんはまたカードのボタンを押すと、今度は小惑星の上へ移動した。これって夢じゃないよね。
 「どうかなお嬢さん、気に入ってくれたかな?」
 「うん、とっても気に入ったよ。おじいさんってすごい人なんだね」
 「それほどでもないよ。そうだ、お嬢さんにいいものをあげよう」
 そう言っておじいさんは首にかけているペンダントをはずした。
 「これは私の星で採れる鉱石でね、不思議な輝きを持つことから『輝きの石』と呼ばれているんだ。これを持っているとその人は幸せになると言われているんだよ」
 「へえ、そうなんだ」
 おじいさんはそのペンダントをかなに手渡した。ペンダントに埋め込まれた石はキラキラと輝いて、とってもきれいだった。
 「どうもありがとう、おじいさん。かなはこの事を一生忘れないよ」
 かながそう言ったとたん、もとの森に戻った。
 
480無名:2006/04/02(日) 12:08:54 ID:wHVoaPTQ0
 「さてと、もう行かないと。お嬢さんもみんなが心配してるだろうから、早く帰ったほうがいいよ」
 「…もう行っちゃうの?まだここでゆっくりすればいいのに」
 おじいさんは横に首を振ってこう言った。
 「私は次の仕事があるからもう行かなくちゃいけないんだ。お嬢さんと逢えてよかったよ」
 おじいさんは背を向けて立ち去ろうとした。
 「また逢えるよね…。またここに来るよね」
 「いや、それは約束できない。私達は星という星を調査しなければいけないからね。こんどいつ逢えるか分からないんだ」
 そんな…。それを聞いたかなの目から大粒の涙が流れてきた…。
 「それじゃあ、もう逢えないんだね…。せっかくおじいさんと友達になれたのに…」
 「大丈夫だよ、私はいつでもお嬢さんを見守っているよ。このペンダントを持っている限りはね」
 そうか、だからおじいさんは大事なペンダントをあげたんだね。
 「…うん、大事にするよ。だからおじいさん、いつまでもかなの事忘れないでね」
 「ああ、忘れないよ。それじゃ、これでお別れだ。運があったらまた逢おうね」
 おじいさんはそう言いながら森の奥へと消えていった。本当に不思議なおじいさんだったなぁ…。そう思いながらかなはキャンプへと戻っていった。この事はみんなに内緒にしたほうがいいかなぁ。言ったって信じてくれないしね…。

 
481無名:2006/04/02(日) 12:09:34 ID:wHVoaPTQ0
 楽しかったキャンプも終わり、かな達は車で家路につく事になった。帰りにまさる君のお土産を買いにドライブインに寄っていく事にした。
 「まさる君が喜ぶものにしましょう」
 「って言われても…どれにしたらいいんだろう」
 色々悩んだ末にそば饅頭とペンダントを買う事にした。
 お土産を買って外に出たとき、どこかで見覚えのある後姿を見つけた。まさか、おじいさん?!
 「ごめん、先に行ってて」
 かなはおじいさんの後姿を追いかけようとしたが、いつの間にかおじいさんの姿は消えていた。
 「…さっきのはおじいさんだったの?もしそうだとしたら…」
 もしかしたらおじいさんはかなの姿を一目見ようとここに来たのかもしれない。やっぱりおじいさんの言ってた事は本当だったんだ。
 「おーい、かなー、もう出発するぞー」
 お兄ちゃんがかなの事を呼びに来たようだ。
 「まってよお兄ちゃん、置いてかないでよー」
 この3日間の出来事はとにかく不思議な出来事だった。そして大切な思い出になった。かなはこの思い出を大人になっても忘れないだろう。それがおじいさんとの約束なんだから。
482無名:2006/04/02(日) 12:23:29 ID:wHVoaPTQ0
みなさんおしさしぶりです、無名です。
前回はご迷惑をかけてしまってすいませんでした。今回はちゃんと掲載してありますので
大丈夫だと思います。これからも皆さんのご要望に答えつつ、小説を書きつづけようと思います。
さて次回はお約束どおり神無月先生のお見合いのお話です。お楽しみに。
483無名:2006/04/02(日) 12:55:48 ID:wHVoaPTQ0
>manplusさま
秘書を独り占めするためにわざわざこんな仕掛けをするなんて・・・
片桐さんも罪な人ですね・・・。いくらPRとはいえ、杏奈さんも大変だと思います。
これからどのように杏奈さんがサイボーグの道を歩むのか気になるところです。
>451さん
メンテナンスについては患者を一度眠らせて、その間にするのが本当はいいのですが、
ちょっとしたメンテナンスのときはそれもありかも知れませんね。メンテする場所にも
よりますけど。
>pinksaturnさん
はじめまして。今回の小説は会話中心で構成されているみたいですね。450 さんの言うとおり
改行したり空白を入れたほうがいいですよ。(私もそういわれたときがありました)そうすれば
もっと読みやすくなるはずです。これからもがんばってくださいね。私も応援しています。
4843の444:2006/04/02(日) 13:58:02 ID:FwKJ0vTF0
>>482
そりゃあ私だって森や川は大好きだよ。っていうか嫌いだって思う人なんかいないはず。
でも、それと同じだけ、ううん、それ以上に、将来は今よりもよりいい暮らしをしたいと
思っているんだ。それがどこかで自然の破壊に繋がるってわかっていてもね。
開き直るわけじゃないけど、極端なハナシ私が今こうやって生きているだけでも自然破壊
だよね。だって私は全身義体なんだもの。ただ生きているだけでも普通の人以上に多くの
お金も、資源もかかっているんだもの。私がこの身体で、それでも生きたいって思う以上
自然を守ろうなんて言う資格なんか、これっぽっちもありはしないんだ。
でも、そんな私でも地球には滅んでほしくないって思ってる。自分ではこれだけ自然を破壊して
おきながら我がままって思うかもしれないけどね。でも人間なんてみんなそう。みんないい
暮らしをしたい。でも地球には滅んでほしくない。そんな我侭な人たちが50億人集まって、
自己矛盾に頭を悩ませながら一生懸命暮らしているんだ。
だから、おじいさんみたいに隣町にお出かけするような感覚でひょいっと宇宙に出られる
くらい科学が発展して、いい暮らしができて、なおかつきっちり自然も守れるなんて魔法
みたいな方法があるなら意地悪しないで教えてほしいよ。いや、私に教えてくれても
わからないからさ、世界中の偉い人たちに教えてよ。お願いします。

うーん、ヤギーならどんなことを考えるかなあと思って書いてみたのですが、新しい技術を教えて
もらったとしても今の地球ではその技術をめぐって必ず利権争いが起こりそうです。それで
今よりもひどい状態になっちゃいそうですね。人間って難しいです。
485名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 15:13:29 ID:ggDnluxN0
>>484

※以下、某同人誌から引用。
※元ネタありだと思うが、俺的にかなり衝撃的だったので。

「人類の発展を最優先してくれればいい、生態系も何もかもその為に利用して破壊してかまわない」

「えええっ でもそれじゃ・・・」

「ああ 地球はボロボロになってしまう それでいいんだ
 "人類"を産んだ時点で地球は役目を終えた
 後は"人類"が地球の資源をつぎ込んで外の世界へ飛び出すだけだ
 残された地球が例え死の星になってしまったとしても---
 それは花が枯れた後に種子を周囲に散らすのと同じ・・・自然な事なんだよ・・・
 だから君たちには---
 いつかくる別れの日までに"人類"が乳離れして自立できる様に・・・
 地球を保護する前に"ちゃんと使う"ことを考えて欲しい」

「地球は・・・それで悲しくないんですか?さみしくないんですか?」

「別にぃ 人類に食い尽くされるなら私は本望だよ
 だって かわいい子供達だからね」

「あなたは一体---誰なんですか?」

「君たちが"神"と呼ぶもの---つまり
 このほしのいのちさ」


※・・・いまだに同族同士で殺し合いやってるような今の人類では、その思いに応えるのは到底無理な話なわけだが・・・ orz
486架琉魔:2006/04/02(日) 23:39:17 ID:VvqwFVfN0
3の444大明神様<
ヤギー嬢のエロキター!!!!
ヤギー嬢のフェラキター!!!!!!
ヤギー嬢の裸エプロンキター!!!!!!!!!
あぁ、心の眼福…(心眼
487架琉魔:2006/04/02(日) 23:59:03 ID:VvqwFVfN0
はっ…!
取り乱してしまいました。
訳あって暫く来れなかったもので…。

無名様<…考えさせてくれますね。
(先ほどまで浮かれていた奴の言うことではない。)
多分、人であれ、宇宙人であれ、サイボーグ、機械、超人であれ…
地球や惑星を滅ぼす権利なんか無いと思う。
皆偶然惑星の一部や様々な偶然のおかげで生まれてきた訳で、惑星の意志だの何だのは全く関わってなんか無いってのが自分の意見とです。
488名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 00:00:22 ID:/LwGKPCO0
>>485
アメリカではマジでそれに似た考えがかなりの勢力を持ってるそうだけど。(鬱)
なんでもいよいよ地球がダメになった時には第二のノアの方舟で宇宙に逃れるんだそうで。
そう考えれば、確かに湾岸戦争やイラク戦争で劣化ウラン弾を垂れ流ししたりとか
世界中が二酸化炭素削減に腐心してるなかアメリカだけ足並み乱しまくりなのも
説明はつくな…。

…つーか、つくづくアメリカって歪曲したキリスト教信仰に染まった国だよな。
イラク戦争の時も「邪教イスラム打倒のキリスト十字軍」宣言してたが、
当のローマ法王はイラク戦争に(もちろんアフガニスタン戦争もだが)大反対してたし。

つーか、進化論を教えるのは神に反するとか堂々と言ってるような国だが、
聖書のどこに「人間以外の生物は神の子ではない」なんて書いてあるんだよ…。
489架琉魔:2006/04/03(月) 00:05:05 ID:5Ag8MDDV0
要するに俺等[思考を持つ全ての存在]は、他人に迷惑かけない限り好きにしてなさいってこった。
490架琉魔:2006/04/03(月) 00:14:34 ID:5Ag8MDDV0
488様<宗教でも愛国主義でも、
いつの時代でも人を不幸にするのは現実と虚構の区別のつかない輩なんですよ。
現に最初の仏教は
「天国も地獄もないんだから好きに生きろ」で…
あ、話が板違いになってますかね?
491名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 01:02:23 ID:yV8E9vLJ0
そろそろ次スレですね。
容量がやばめ…
492名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 01:55:17 ID:/LwGKPCO0
新テンプレ、定番作品とか2以降あたりでリストアップしません?
攻殻機動隊とか歌う船シリーズとかACCESS機械じかけの(略)とかあたりをあげとくとか。
4933の444:2006/04/03(月) 02:05:27 ID:xCtNE2OA0
リミットちゃん
銃夢
ブルーソネット
銀河鉄道999
最終兵器彼女
494pinksaturn:2006/04/03(月) 13:13:36 ID:8FFUVEtj0
>>493
なるほど、改造経緯が
・事故
・地方によりそれが当たり前
・死の商人組織がスカウト
・不老不死追求
・徴兵
と、これで主要なパターンの大半をカバーしてまつね。
欠けているのが、
・趣味
・ファッション
・純鬼畜
・就職(非戦闘員として)
・仇討ち
といったところですが、
メジャー作品はあんまり無さそうです。
こういった分野は、スレ住人が自作するしかないですね。
495名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 23:58:54 ID:cMwaWsi20
シリウスの痕
スプリガン
アームズ
496名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 10:15:30 ID:ipkC1Rpl0
BROTHERS
497名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 13:38:19 ID:VqaYLFr40
ここはSSの投下に専念して検証やネタ集めはメカギャル掲示板を使えば
いいと思う。
4983の444:2006/04/04(火) 22:36:04 ID:nCAdNbGs0
保管庫更新しました。
pinksaturn様
作品を保管させていただきました。
で、章ごとのタイトルはついているようですが作品全体のタイトルが
分かりません。何か、腹案はありますでしょうか?
>>437
よくよく過去スレを見直したら、そうでした。
ということで早速訂正しました。ありがとうございます。
499pinksaturn:2006/04/05(水) 11:31:34 ID:rw2qNCI30
業務連絡
 3の444様
 お世話になります。
 実は、
 >>430 3行目の「オプションパーツ」
が全体のタイトルのつもりだったのですが、書き方が、地味杉でしたね。
スマソです。
 今、読み返すとドラクエVの起動画面見て、一瞬「詐欺にあった!?」と思ったことが、
フラッシュバックして笑えちゃいました。
気候のせいか、妄想爆発中を起こして体内CPUリソースが不足し、
タイトルデータが圧縮されてしまったようです。
素体適性低いなぁ、漏れ。
でわでわ。
500sage:2006/04/08(土) 01:08:09 ID:817SaHCj0
>>494
もう少しマイナーな所では
フェミニズム
性転換
味方の足手まといにならないため(兵士になるのに似ていますが)
といったものもありますね
仇討ちはどちらかというと敵役の方でありそうですよね(アメコミでは見方もありそうだが)
サイレントメビウスのキャラの一人はどちらかというと復讐なのでこれに当てはまるかは微妙です
個人的には「ただ、なんとなく」というのもそれはそれでアリだとは思いますが
501名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 02:12:14 ID:AMXMhHau0
>>497
掲示板、という意味においては、逆の使い方の方がいいんじゃないか・・・?
502名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 04:07:55 ID:837fPYQB0
人のいる場所じゃないと書き込んでも…
503pinksaturn:2006/04/08(土) 10:09:22 ID:vnLpK52I0
 容量やばめの用ではありますが、
5`ならいけそうなので、次章投下しまつ。

−−(5)大気圏突入−−

梱包マシンA:「シブツワ、コチラノ、Uパックニ、オサメテクダサイ。」
梱包マシンB:「セイフクヲフクム、ソトヅケノ、カンキュウヒンワ、コチラデ、ヘンノウネガイマス。」

マサ:「いつもながら、むかつくモノ扱いだわ。出荷品に紛れて降下は別に良いけど。
前回なんか、品名”ダッチアンドロイド”って全裸で梱包しやがって。」

リエ:「ぼやくなって。ここは外国に対して無人工場ってことになってるんだから。
万一、よそに落ちたときの機密保持は大事よ。ロボット喋りでも練習したら?。」

マサ:「別に良いじゃない。北米連合が全身サイボーグ開発したって。
新参者なんか、のこのこ出てきたら、私が宇宙の藻屑にしてやるんだから。」

真理亜:「あのねー、藻前一人がいくら射撃うまくても戦争に勝てるわけないでしょ。
本国を核攻撃されるわけにゃいかないのよ。大事な素体の生産は本国でしか出来ないでしょ。
奴らが月のヘリウム資源独占を狙って、満漢人民共和国の有人飛行妨害したの知ってる?。
我々が大がかりな有人宇宙開発をやってるのに気づいたら何されるか判らないのよ。
人口の多い満漢なら、兵士をスプートニク2号の犬と同様に使い捨てできるけど、
人口が少ない我が帝国じゃ、素体が一番の貴重品よ。」

マサ:「は、まあ自分が満漢の兵士でなくて良かったです。ハイ。」
504pinksaturn:2006/04/08(土) 10:11:36 ID:vnLpK52I0
梱包マシンC:「オツギノカタ。コチラニオメシカエヲ」

冬子:「これって民族博物館にあったリカちゃんだ。子供がほしがるだろうなぁ。
頼んでみたこと無いけど、持ち帰りってできるのかな。」

リエ:「えっ。葉っぱが1枚だけって、ちょっとお、故障じゃないの。」

梱包マシンC:「アナタノ、コンポウヒンメイワ、ダッチアンドロイド・イブデス。エラ−デワアリマセン、オススミクダサイ。」

マサ:「リエにキタ−−−−。それ前回私がやられたやつよ。ぼやくなのお返しぃっと!。
あ−−っ。真理亜様の品名、西欧型女神像だって。ゴールドプルーフの髪が似合い杉ですー。」

リホ:「なになに。マサはゴスロリ人形・黒か。あんたなら当たりじゃないの。」

マサ:「前回は貧乏籤だったんだから、ちゃんと調整してくれてるのよ。」

エリ:「確かに同じの二度当たったこと無いなあ。ってことは、いずれダッチかあ。いやだわ。」

リエ:「う−−。恥ずかしいよお。この体のままで全裸はきついよ。
スケルトンで中が見えてるってのなら、全然違うんだけどなあ。」

タラ:「さっさと箱に入っちゃえばいいじゃないの。感覚切り替え準備は良い?。
扱いはモノでも貨物監視任務忘れちゃダメよ。」

梱包マシンD:「フタヲシメマスノデ、シンタイセイギョCPUヲサスペンドシテクダサイ。」
搬送マシン:「シュッカカプセルニイドウシマス。コレカラチャクリクマデウゴカナイデクダサイ。」
505pinksaturn:2006/04/08(土) 10:17:58 ID:vnLpK52I0
出荷監視員:「貨物リスト照合よし。カウル閉鎖。閉鎖完了。機器類チェックよし。
アイスシールド両面装着。接合、液体窒素噴射。氷厚み5m、不要突起無し。
着氷確認よし。レ−ルガン進路クリア。通電開始。」

射出マシン:「シュッカカプセル407ハッシャ。カソクセイジョウ。リダツ。ゲートハッチヘイサ」


マサ:「うっひょー、落ちる落ちる−−。突入寸前のこの迫力好きだわー。」

タラ:「はしゃいでないで軌道チェック!。15秒後に全員の結果をクロスチェックよ。」

真理亜:「予想落下地点は基地のど真ん中か、良いようね。」

タラ:「続けてパラシュ−トと荷崩れモニタチェックよ。ん、行けます。」

真理亜:「そろそろ上層大気摩擦が来るわ。全員、外壁温と氷の厚みを見張って。」

マサ:「溶ける溶ける...シャア少佐助けて下さい..」

リエ:「なんじゃそりゃ」
506pinksaturn:2006/04/08(土) 10:29:17 ID:vnLpK52I0
リエ:「なんじゃそりゃ」

マサ:「中学校古典の授業でやらなかった?。昔のSFの台詞よ。大気圏突入って題で。」

真理亜:「私は12歳で素体訓練に入ったから古典なんてやる暇なかったなあ。」

タラ:「ずいぶん早いのですね。皇族や貴族の方々も大変ですね。」

真理亜:「その後、帝国大学に行って、適性で外交官要員を選別する都合もあって早まってるの。
その分、未改造素体期間が延びてるから、病気など例外を除きサイボーグ化の時期は一緒よ。
外交官に指名されちゃった人は、30代まで未改造素体のまま過ごすけどね。」

タラ:「なるほど、確かにサイボーグを外交官に出したんじゃ機密保持は無理ですよね。」

真理亜:「非友好国や国連外交は特区自治政府が受け持ってるでしょ。
だから、帝国本体で出す外交官はもともと少なくて済むのだけどね。
それに特定友好国の駐在武官だったら、大使令嬢を装ったサイボーグ外交官も居るわ。
それでも、その他で一応の友好国だと全面的に貴族抜きって訳にいかないから。」

エリ:「外壁温は異常ありませんね。氷の厚みもまだ80cm残ってます。」

リホ:「高度70Km、減速順調です。」
507pinksaturn:2006/04/08(土) 10:31:10 ID:vnLpK52I0
リホ:「高度70Km、減速順調です。」

タラ:「高度50Km、氷、飛ばします。予備パラシュート出ました。」

真理亜:「コース微調整西に3Kmかな、マサやって」

マサ:「お任せ−−、チョイチョイチョイのホイ戻しっと、どうです。」

真理亜:「いいわね。タラ、メインパラシュート出して。」

タラ:「出ました。着地まで約3分です。」

マサ:「キタキター、1000m、500m...」

タラ:「逆噴射行きます。」

真理亜:「着いたようね。みんな出ていいわよ。」

マサ:「よーし固定バンド解除っと。地上だ地上だわーい...あ、とと、いったーい」

冬子:「ジャイロスタビライザー入れたの?。地上でこの足じゃ健常者でも転ぶわよ。」

マサ:「うう−。せっかくのゴスロリが...。ちくしょう。早く足換装したーい。」

(大気圏突入は成功裏に終了です。 次回予告:”メンテナンス・センター”
換装については、一人一人の娘に妄想が宿るので長大化しそうです。
ご迷惑をかけるかも知れませんが宜しくおながいします。)
508メタルセクレタリー:2006/04/08(土) 22:38:21 ID:Kz3amYeI0
「登録希望の柏木です」
「はい、承っています。3階の第一会議室へどうぞ」
 全身メタリックな外装の受付嬢が笑顔で促す。
 その姿に自分の姿が重なる。
 近い将来、私も身体になるのだ。

 第一会議室、と書かれた扉をくぐり部屋に入ると一人の女性が待っていた。
 しかし、その姿は先程の受付嬢と同じく銀色の金属で出来ていた。髪は美しい黒髪だが人工物の感じがする。瞳も瞬きする様子が無い。
「どうぞ御掛けください」
 促されて、ソファーに身体を沈める。
「柏木晴香さんですね」
「はい」
 綺麗な声だ。
「私は機械化事業部のMS-2KAORIです」
「え?」
「ああ、私はサイボーグですが人格権の譲渡をしているので、登録名が個体名になっているんです。」
 サイボーグ化に伴い人格権を売却する事で、人間を止める事が国際法で認められたのが2年前で、日本も1年前に認めている。
 目の前の彼女はそれの適用者だと言うことらしい。
「驚きのようですね。私の場合、個人的な都合で大金が必要でしたので、私を買い取ってくれたこの会社に感謝しているんですよ」
 彼女はそういって微笑んだ。その様子から悲しみは感じられない。

「話題が逸れましたね。弊社の機械化秘書派遣プログラムに登録をご希望だと言う話ですが」
「はい、よろしくお願いします」
「分かりました。なおここでの会話は記録されています。裁判などで証拠として用いられる可能性があります。」
「分かりました」
「はい、それでは説明を開始します。が、その前に一つだけ確認します。このプログラムにはサイボーグ化手術が含まれます。最低レベルのものでも完全に元の身体に戻る事は出来ません。それでも構いませんか?」
「構いません」
 答えてつばを飲む。サイボーグ化は今でも一部ではタブー視されている。それを自ら望んで行おうと言うのだ。
509メタルセクレタリー:2006/04/08(土) 22:39:00 ID:Kz3amYeI0
「それでは説明を続けさせていただきます。プログラムは大きく3つのコースに分かれています。Cコースは作業補助用のコンピュータを身体の中に埋め込むものです。これは機械化部分が身体の20%を下回る所謂5級機械化体です。以前とほとんど変わらない生活が可能です」
 前触れも無くモニターに人型が映し出される。
「これがCコースの改造体です。補助用のコンピュータとバッテリーだけなので生体機能を失うことなく改造できます」
 確かに上半身の内臓が無い場所のみに埋め込まれている。
「このCコースでは、補助のみなので機能的には約50人程度までの対応が可能です」
 
「Bコースでは通信機能と内蔵コンピュータと大型バッテリーの埋め込み、生理機能の機械化を行います。これは機械化部分が身体の約50%程度となる所謂3級機械化体です。食事などは不可能ですが、出産は可能です」
 モニターに新たな人型が映し出される。
「これがBコースの改造体です。生理機能ほぼ完全に機械化されています」
 上半身の内臓部分はほとんど機械に置き換わってしまっている。
「このBコースでは、通信機能を活用し機能的には約500人程度まで対応可能です」

「最後にAコースは脳と脊髄の一部以外は完全に機械化します。これは特定部分以外完全機械化した所謂完全機械化体です。生活は完全機械化体特有のものへと変更しなくてはなりません」
 モニターに映った人型は完全に機械に置き換わっていた。
「御覧の様にAコースの改造体は特定部位以外は完全に機械化されています。また機械化特別法により外装も金属製の物にしなくてはなりません」
「このAコースでは1万人以上の規模でも物理的な制限による限界までは対応可能です」
「お分かりだと思いますが、私はAコースの改造と同程度の改造処理が行われています」
 KAORIさんは両手を広げ身体を見せるようにしながら言った。
510pinksaturn:2006/04/09(日) 16:47:04 ID:RBolqSZu0
>>508 >>509
就職ものも良いですね。
ところで、晴香、メタリック外装、というとC.W.様を連想してしまうのですが、
もしかして、同じ方ですか?。
もしそうなら、あっちの晴香がどこまで再改造されるのか気になっていたので、
気が向いたら、再登場お願いします。
511名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 18:17:00 ID:xoDa6bzs0
WIKIの僕の従姉は???
が更新されてる!
512メタルセクレタリー:2006/04/09(日) 20:06:03 ID:2YEBJji10
「Aコースはさらに3つに分かれます。機械化人権法の人格権譲渡・停止が可能となるからです。A1コースでは人格権を弊社に譲渡していただき、弊社所有の特殊備品という扱いで各企業にレンタルされます。
A2コースでは人格権は一部停止し、弊社の契約備品として各企業にレンタルされます。A3コースでは人格権の譲渡・停止は行わず、契約社員として各企業に派遣されます」
「A1コースは終身契約のみとなり、以後は契約違反以外の如何なる理由をもっても特殊備品側からの解除は不可能です。A2・A3コースでは最低5年、以後2年毎に更新が基本となっています。
10年、20年、終身契約コースもございます。双方からの契約解除は違約金が発生します」
「Bコースは最低3年、以後1年毎に更新で、5年、10年、20年の各コース。Cコースでは最低半年、以後3ヶ月毎に更新、1年、3年、5年の各コースがございます」

 KAORIさんが胸元に収納されていたパンフレットを取り出し提示する。各コースの契約金が並んでいるが、A1コースが圧倒的といっていいほど高い。50億新円…平均的な男性の生涯収入の約20倍だ。A2終身契約でも20億新円。
「これらのコースは、いわば契約者様をこちらで買い取る事に等しいことです。この程度の金額が相応しいと経済学者の回答を頂いています」
 A2・A3のその他のコースは初期契約金と労働時間給の組み合わせになっている。私が必要な5億新円以上の初期契約金が支払われるコースは、A1・A2コースの全パターンとA3コースの10年契約コース以上だ。5年間人間を止めるのと、10年間働くのどちらが良いのだろう…
513メタルセクレタリー:2006/04/09(日) 20:07:17 ID:2YEBJji10
「お悩みのようですね」
「え、いえ」
「当然の事です。不可逆な改造処理を受けることになります。それを悩まない方が人間として不自然です」
「そうでしょうか?」
「私の時も非常に長い間悩みました。まあ、最終的に金銭的な理由で人格権の譲渡という選択をしました。よろしければカウンセラーの先生に相談なされては如何でしょう?」
「カウンセリングですか?」
「はい。機械化処理同意書の提出が必要ですので、そのカウンセリングの際にご相談ください」
「分かりました。そうさせていただきます」
「では、弊社の契約医の所でカウンセリングを受けて下さい。カウンセリング料は弊社が負担いたします」
 この日はカウンセリングの予約をし大量の資料を受け取り帰宅する事になった。
514メタルセクレタリー:2006/04/10(月) 00:45:40 ID:PqqRLnEB0
「柏木さんですね?」
「はい」
「私は工藤由香里です。」
 カウンセリングルームに待っていたのは、白衣の下に金属製の身体を持った女性だった。
「工藤先生も完全機械化体なんですか?」
「もちろんです。機械化処理同意書は担当医の等級以下のものに対して出せません。だから完全機械化体に対する医師は完全機械化体じゃなくてはいけないんです」
 そう言って金属製の胸を張る。
「この身体は便利なんですよ。カルテの記入も考えるだけで出来ますし、触るだけで患者さんのバイタルデータも分かります」
 そう言って、私のおでこに触れる。
「36.5℃、熱は無い様ね。でも少し疲れが溜まっているようね」
「そうですか?」
「ちょっと寝不足気味みたいね。良ければ睡眠薬の処方をしておくけど?」
「それじゃあお願いします」
「はい。じゃあ、帰りに受付で処方箋をもらってね」

「それじゃあ、本題に入りましょう」
 椅子に座りなおして先生が告げた。
「知っていると思うけど、自発的改造処置には専門の医師による管理下での機械化処理同意書が必要になります。
これは改造処理が本当に本人の意思による物かを確認するために必要です。未承諾での改造や外部からの脅迫などで本人の意に沿わない改造が行われないための処置です」
「はい、知っています。私は自分の意思で改造処置を受けます」
「ええ。分かりました。それとこれには改造の適性の検査と言う側面もあります。精神的に不適格な方もいますので、該当されると改造処置を受ける事は出来ません。
柏木さん貴女は完全機械化体への改造処置を希望とありますが、これで正しいですか?」
「はい、間違いありません」
「それでは完全機械化体への適性検査と意思確認を行います。私の目を良く見てください」
「はい」
 工藤先生の瞳を覗き込むと、少しずつ点滅を繰り返していく。
「はい、だんだん楽になります…」
 工藤先生の声が遠くなってきた…
515メタルセクレタリー:2006/04/10(月) 00:46:29 ID:PqqRLnEB0
「晴香… はるか… HARUKA…」
 目の前がぼやけている…
「起動しましたか? 改造処理は終了しましたよ」
 白衣の人間の先生が笑顔で語りかけてくる…
「御覧なさい。完全機械体の身体ですよ」
 銀色に輝く身体が視界に入る。
 これが私の身体?
「成功ですよ。嬉しいですか?」
 嬉しい。心の底の方から喜びが湧き上がって来る。
 綺麗な身体。ああ、そうか、私この身体に憧れていたんだ。
「嬉しいです… こんな身体にして下さってありがとうございます…」
「元の身体に戻れないのよ。それでも嬉しいの?」
 何故そんな事を聞くの? こんなに綺麗な身体で嬉しいのに。
「この身体がいいんです… 戻りたくなんてありません…」
「そう。じゃあ、ずっとその身体よ。良かったわね」
「はい…」
 先生も分かってくれてる。嬉しい。
「ところであなたは何?人間?」
 先生と自分の身体を比べる。違う。でも先生は人間だ。じゃあ私は人間じゃない。
「違う…」
「それじゃあ、何?」
 機械で出来た身体。機械は人間じゃない。人間が使う道具だ。じゃあ私は道具だ。
「人間が使う道具です…」
 先生が驚いた顔をしている。当たり前のことなのに…
「はい、ちょっとスイッチを切るわよ。目を瞑って…」
 首の後ろに触れる感覚がして、私の意識は消えていった…
516メタルセクレタリー:2006/04/10(月) 00:47:04 ID:PqqRLnEB0
「晴香さん。晴香さん」
 工藤先生が覗き込んでいた。
「あれ?機械?生身?」
「混乱しているようですね。ちょっと催眠術が深くかかりすぎたかな?」
「あ、先生」
「はい、自発意思を持っていることが確認できました。適性も最高ランクです」
 あ、さっきのが適性検査だったのか。
「ただ、あなたの場合、機械化後の他者依存度が高すぎる部分がありますね。人格権の譲渡を考えていますか?」
 ドキッとする。さっき自分の言った言葉が思い出される。でも、譲渡は流石に嫌だ。
「いえ、譲渡は考えていません」
「それじゃあ、停止は?」
「えっ?」
「貴女の場合、他人に物として扱われる事を望んでいるわ。より安定していたいなら、人格権の停止で備品として契約する事をお勧めするわ」

 様々な書類を抱えた少女が扉から出て行くのを確認し、由香里はデータの再確認をしていた。
「まさかSSSランクなんて実在するとはね」
 示しだされたデータは先程の少女が、現存する最高ランクの適性を持っていることを表していた。
「この様子では近いうちに人格権の放棄でもしかねないわね」
 人間である事よりも機械として扱われたい。そんな少女の願望が由香里には恐ろしかった。
517名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 02:40:37 ID:c0Ms4T7N0
メタルセクレタリーGJです。
5億新円が今すぐにでも必要なんて晴香さんはいったい何をしでかしたのでしょうか?
続きが気になります。
518名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 03:54:09 ID:eAg/UCRS0
個人的にはBコースかA3コースが萌え。
519名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 21:05:31 ID:MbcObOsN0
520名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 00:26:32 ID:IrpSSeuB0
もうすぐ480K超えるので次スレの準備が必要かねえ。
521名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 02:45:04 ID:ZxY7s2ib0
僕の従姉は???
連続更新来てるぞー!!
もっとおねーちゃん壊されて欲しいwwww
522メタルセクレタリー:2006/04/11(火) 21:39:29 ID:3KpsjwMs0
「それではA3コース10年契約と言うことで良いですか?」
「はい」
 結局、人間じゃなくなることが怖かった。カウンセリング結果は人格権の放棄すらしかねないレベルらしいが、少なくとも今の私には停止する事すら恐ろしかったのだ。
「報告書には表層ではAAランクですが、深層ではSSSランクとありますから、A1コースの選択もあるかと思いましたが…」
「あの適性ランクって詳しく分からないんですが、どのランクがどの程度のものなんですか?」
「あれ?ご存知じゃなかったんですか? わかりました。簡単に説明しますね。
 ランクは全部でGからAまでとAA、AAA、S、SS、SSSの12種類です。Gは全く適性がなく機械化に耐えられない、Fは20%以下の5級機械化体程度は受け入れられる、Eは40%から20%の4級、Dは3級、Cは2級、Bは1級、Aは完全機械化体を受け入れられる人間です。
 ちなみにA級で1千人に1人程度です。AAは短期的な人格権の停止を受け入れられる、AAAは長期の人格権の停止を受け入れられる、Sは永続的な人格権の停止を受け入れられる、SSは永続的な人格権の譲渡を受け入れられる、SSSは人格権の放棄を望む人間です。
 さらに細かい種別がありますが、主なものはこの様になっています。ちなみにSSSは1億人に1人いるかいないかです」
 そのSSSが私だと言うのだろうか? そんな気持ちは無いのに。
「契約は基本的には中断できませんが、上位の契約への変更は受け付けます。もし変更する気があるなら、その時に担当者に言ってください」
「そんな事はありませんよ」
 笑顔が引きつっているのが分かる。それでもそんなことは無い筈だ。
523メタルセクレタリー:2006/04/11(火) 21:40:42 ID:3KpsjwMs0
「あとは細かいオプションですね。機械化法により顔は生身の時のものを再現させていただきます。
これは被改造者の人格維持にとても大きな意味があり、非人間型の改造体でもインターフェイスにはその人の顔が使われます。
 失礼ですが、自分の顔にご不満があるなら整形手術を生身のうちに受けてください」
「いえ、このままで構いません」
 自分の顔には不満は無い。
「性処理用擬似性器はデフォルトで搭載されています。ただし、完全機械化体は全裸である方も多いため、カバーを付けさせていただきます」
「はい」
 いくら作り物でも丸出しと言うわけにはいかない。
「なにかオプションを付けますか?」
 差し出された資料には、擬似排泄孔や擬似乳腺などまである。それぞれにかなりの額の料金が記載されている
「オプションは要りません」
「わかりました。では次に…
 さらにいくつかのオプションの説明がなされていった…

「それでは正規の書類と確認できましたので、契約に移る事になります」
 KAORIさんは一枚の書類を取り出した。
「これは改造契約の宣誓書です。記録を撮りますので、発声による宣誓の後指紋捺印をお願いします」

 改造契約同意書

 私はMS社の機械化秘書登録プログラムに従い、完全機械化体への改造を望みます。

  柏木 晴香

 声をあげて読み上げる。ナイフで切った指先から滴る血で拇印を押す。
 これで私は改造を受けることが決まった。

「ご苦労様です。それではこれより改造へ向けてのスケジュールへと移行させていただきます。まず、表情パターンの採取。
改造への心構えをカウンセラーの先生にお聞きください。さらに秘書としても教育も受けていただきます」
524名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 22:38:05 ID:VyrYHpxb0
新スレ
【機械化】サイボーグ娘!九人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1144849034/l50
525名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 03:33:07 ID:uVV2kHOe0
あああああヒマだヒマだヒマだ。
あたしは暇をもてあます事にもどかしさを感じていた。
ここで今する事はなにもない。この体では今できる事もなにもない。
ただぼーっと過ごす以外に時間をつぶす方法が無かった。

散歩をしたいとも思ったけれど、部屋から出ることは許されていなかった。
仮に許されたとしても、直径20センチ以上はある太いパイプが背中につながっているので、
いずれ外には出られそうもなかった。
あたしの生命維持に必要なありとあらゆるもの、例えば電源や栄養液の供給、老廃物の排出は
このパイプで行われているので、まさか外すわけにもいかなかった。
それ以前に、あたしの義足は両足ともふとももまでしかなく、歩く事もまったくできなかった。
お医者さんの話によると、あたしの耳の人工三半規管の精度が、バランスをとって歩くのには
まったく足りない物であるうえに、義足用の人工筋肉やモーターは、バランスをとって歩けるほど
精度や反応速度が出ないという事だった。
一応、実験室レベルでは、歩くことのできる義足や三半規管が無いわけではないらしいけれど、
生活で使えるほどの安全性が確立されてなく、製造コストもとんでもなくかかるうえに、
製造にとても時間や手間がかかるため、まったく実用にはならないものらしかった。

あたしのお気に入りマンガを何冊も持ってきてもらっていたけれど、これも役に立たなかった。
あたしの義手も、やっぱり両腕とも肘よりすこし上までしかなかった。
だからマンガを持ってページをめくる事もできなかった。
これもやっぱり、高性能マニピュレータが実用にはならないからだった。
そして、あたしの義眼は、マンガを読めるほど解像度が高くなかった。
表紙を見ても何が描いてあるのかさえ分からないほどに、ぼやけた絵しか見えなかった。
お気に入りのマンガなのに…あたしはとてもショックだった。
526名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 03:33:38 ID:uVV2kHOe0
サイボーグ化手術の後、初めて目がさめたときは、あたしは自分の身に何が起きたかもわからず
パニックで、退屈を感じるヒマも無かったのだけれど、まだショックをうけたまま立ち直れて
なくても、数日もたてばさすがに我慢できないくらいの退屈を感じてもいた。
もちろん、他人の世話になるばかりで自分は何もできない事に対するいらだちも退屈感を助長
しているのだろう。

退屈でいらいらしていたので、あたしはベッドの上でゴロゴロ転がったりジタバタもがいたりなど
慣れない体を動かして欲求不満のはけ口を求めていた。
とはいえ、歩けない精度しかない義体のうえ背中からのびるパイプが邪魔で、思うように体を
動かすこともままならなかった。
5273の444:2006/04/16(日) 06:29:07 ID:kzaZO1Yh0
  ジャスミンの別荘ご自慢の、 友達を大勢呼んでホームパーティくらい軽くできちゃいそうな広いダイニング
ルーム。 その真ん中にデンと鎮座しているのは映画の中のお屋敷でしかお目にかかったことがないような
横長の長方形の大きなテーブル。 今日は私達の貸切ってこともあって、 テーブルには真っ白なテーブルク
ロスが敷いてあるだけなんだけど、 普段はきっと人数分のフォークやナイフやきちんと折りたたまれたナプ
キンがテーブルマナーの教科書どおりに並べられているんだろう。 それから、 テーブルの上には銀製のア
ンティークの燭台とかバスケットに山盛りに入った色とりどりのフルーツが置いてあるに違いない。 メインディ
ッシュは、 まるまる太った七面鳥の丸焼きってトコかな? ゲストは当然、 きちんとドレスアップした紳士淑女
の皆様方だよね。
  実際に眼にしていないのにこんなふうに華やかな晩餐会の光景がカンタンに想像できちゃう、 二人で使
うには余りにも大きすぎるテーブルの片隅にちょこんと腰掛けた私達。 藤原は、 仕事帰りでパーカーにジー
ンズ姿っていういつものラフないでたちだし、 私は裸エプロンなんてゼッタイ他の人には見せられないカッコ
でタコ焼きを焼いている。 もし、 この部屋に意志があるなら、 余りにも場違いな私達に苦笑すること間違い
なしだね。

「さあ、 藤原、 できたよ」
  私はタコ焼き用の鉄板の上でホカホカ湯気を上げている焼きたてのタコ焼きを小皿に取り分ける。 そし
て、 テーブルの上に四つんばいになって思いっきり背伸びをして、 私のちょうど真向かいの椅子に座ってい
る藤原に、 タコ焼きの載ったお皿を突き出した。 私はこんな身体になってしまってタコ焼きを焼くことはおろ
か料理自体まるでしなくなっちゃったから上手く作れるか不安だったけど、 出来上がったタコ焼きは少なくと
も外見はきれいなまんまるで、 七年のブランクを感じさせないデキだと自分では思う。 でも味はどうだろう?
昔、 お母さんが作ってくれたタコ焼みたいにうまくできているだろうか? 外の薄皮はカリカリに焼きあがっ
て、 でも中はトロトロにとろけていて、 焼きたてホッカホカのやつに、 ソースとマヨネーズと青海苔をたっぷり
つけて、 口をはふはふさせながら食べていた、 あの頃の味になっているだろうか?
5283の444:2006/04/16(日) 06:29:54 ID:kzaZO1Yh0
  味覚を失った私には自分で味見なんて真似はできないから、 ぶっつけ本番の大勝負。 藤原は喜んでく
れるだろうか。 私はタコ焼き鉄板の丸いくぼみに、 もう一度タコ焼き用の鉄板に生地を流し込みつつも、 心
持ち緊張しながらチラリと上目遣いに藤原の反応をうかがう。
  でも、 藤原はいつまでたっても、 目の前に置かれたたこ焼に箸をつけてくれない。 そうこうしているうち
に、 鉄板の上のタコ焼きは食べられるあてもないのに、 次々に焼きあがってしまう。
(このままじゃ、 焦げちゃうじゃないか)
  私はため息をつきながらタコ焼き鉄板のスイッチを切って、 焼きあがったタコ焼きを皿に移していく。
「ほら、 藤原。 早く食べないと冷めちゃうよう。 熱いうちがイチバン美味しいんだからね」
  なんだか口うるさいどこかのお母さんみたいな口調で藤原をせかす私だけど、 藤原はお箸を手にしたま
ま困ったようにタコ焼と私を交互に見比べるばかり。
  藤原がお腹が空いているのは分かってる。 前もって、 何も食べないで来てねって言っておいたし、 そも
そも職場から真っ直ぐこっちに向かってきているはずの藤原に食事をとる時間があったとは思えない。 その
うえ、 私達は、 さっき、 その、 アレしたばかりだしさ、 もし昔の私なら、 食べて下さいって勧められる前にお
皿の中が空になっちゃってるはずだよ。 ハラペコで、 食べたくて食べたくてしょうがないくせに我慢するなん
て、 これじゃ、 いつものデートとおんなじじゃないか。

  そう、 藤原は、 いつも私とのデートの時にモノを食べてくれない。
  その理由は聞いたことがないけど聞かなくても分かってる。 藤原は私に遠慮してるんだ。 人間らしい食
べ物なんか何一つ口にすることも味わうこともできない私の前で食事するのは私に悪いって思っているん
だ。
5293の444:2006/04/16(日) 06:30:59 ID:kzaZO1Yh0
  私は全身義体障害者だから、 脳みそ以外に生身の部分なんて何一つ残されていない。 エプロンだけ身
に纏った私のこの身体、 見かけは普通の女の子そっくりに見えるかもしれないけど、 所詮は女の子の形を
装った作り物の機械。 そんな身体だから、 私は食べ物なんて食べる必要はもうない。 今の私が口にできる
のは、 脳を維持するための小指の先ほど大きさの小さな栄養カプセルだけ。 義体には食事をとる機能なん
かついていないし、 舌だって一応ついてはいるけど外見だけ普通の人間と同じように見せるための飾りみた
いなもので、 味なんか分かりはしない。 でも、 脳みそだけは元のままだから、 甘いとか辛いとか苦いとか、
実感を伴わない昔の記憶の残骸だけはいつまでも頭にこびりついて離れないんだ。 だからみんながおいし
そうにご飯を食べているのを見ると、 いつもみんなの暖かい生身の身体が羨ましいって思うし、 時には嫉ん
だり僻んだりもしてしまう。
  藤原は、 そんな私の気持ちを気遣って、 デートの時は自分がどんなにお腹が空いてても、 私の前では
決してものを食べないように我慢してくれている。 今だってきっとそう。 でもね、 いつまでもこのままじゃいけ
ないんだ。 だって、 もしも、 もしもだよ、 将来藤原と一緒に暮らすなんてことになったとしたら、 藤原はどう
したって私の前で物を食べないわけにはいかないし、 私だっていちいち藤原が食事をするたびに落ち込む
わけにはいかないもの。 私達は二人とも、 目の前で食事をすること、 されることに慣れていかなきゃいけな
いんだよ。
  そう思って、 私は、 藤原の誕生日に私の大好きだったタコ焼きを焼くことにしたんだ。 外食はムリでも、
私の作った手料理ならひょっとしたら食べてくれるかもしれないって思ったからさ。
  でも、やっぱりダメなのかなあ。
(なんで我慢するのかな? やっぱり私に遠慮してるのかな?)
  私はがっくり肩を落として、 目の前の行く当てのないタコ焼きの山をみつめた。

「ねえ、 藤原。 聞いて」
  私は椅子に腰掛けると、 真剣なまなざしで、 まっすぐ藤原をみつめた。
5303の444:2006/04/16(日) 06:32:08 ID:NNQyrGsw0
「そのカッコで料理する裕子さん、 やっぱりいいなあ。 そのカッコが見れただけで俺は、 お腹いっぱいです。
ごちそうさま」
  ふざけた調子でペコリと私に向かって頭を下げる藤原。
「ちゃかさない!」
  私は、 ぴしゃりとそう言ったあとで藤原を睨みつけた。
  藤原は私の様子を察したのか、 ごくりと唾をのみこむと心持ち姿勢を正す。 なんだかお見合いの席で初
めて会話を交わすかのような緊張感が二人の間に漂った。 もっとも、 私はこんなカッコだし、 私達の間にあ
るのは山盛りのタコ焼きだし、 ハタから見たら吹き出しちゃうような滑稽な光景かもしれないけどね。
「藤原がタコ焼きを食べてくれないのはさ、 私の前で何か物を食べるのは、 機械の身体で食事ができない
私に申し訳ないって思って同情してるからでしょ」
  私は視線を藤原の手元に置かれたタコ焼きに落としながら、 そう切り出した。
「そっ、 そんなことないよ。 俺だって、 食べたいときには食べるさ。 でも、 今日はまだ腹減ってないから」
  あわててかぶりをふる藤原。
  でも、
  ぐぅー
  言葉とは裏腹に絶妙のタイミングで藤原のお腹の虫が鳴った。 ほらみろ。 腹ペコじゃないか。 まったくも
う、 素直じゃないんだから。
「あ・・・、 いや、 これは、 その」
  真っ赤な顔して蚊の泣くような声で弁解しようとする藤原。 もじもじ肩をすぼめる様子が相変わらず可愛
らしい。 藤原の仕草にいつも私の母性本能はくすぐられっぱなしだ。 一生懸命まじめぶった表情を作ってい
た私だけど、 藤原の腹の虫の不意打ちに思わず唇のはしっこが緩んでしまう。
「ふふっ。 お腹がすいてないなんて嘘ばっかり。 ふん。 いいんだ。 どうしても食べないっていうなら私にだっ
て考えがあるんだからね」
5313の444:2006/04/16(日) 06:32:55 ID:NNQyrGsw0
  私はほっぺたを膨らませて、 わざとらしく拗ねてみせたあとで、 すっくと立ち上がると、 藤原の隣に腰掛
ける。 そして、 藤原が所在なげに握っていたお箸を奪い取って、 藤原の前に置いた小皿の中からタコ焼き
を一つだけ、 薄皮を破らないように慎重につまみ上げた。
(えーい)
  私は苦い薬を飲まされる子供みたいに、 目をぎゅっとつぶって恐る恐るたこ焼きを口の中に半分だけ入
れた。 舌の先に、 何か丸いものが触れる感触。 でも、 悲しいかな、 分かるのはそれだけ。 焼きたての小
麦粉の香ばしい香りが口の中いっぱいに広がることもないし、 熱くて我慢できなくて、 口をはふはふさせる
こともない。
「裕子さん! そ、 そんなことしたらダメだっ!」
  私がタコ焼きを口に入れた瞬間、 藤原は、 ビルの屋上から飛び降り自殺を図ろうとしている人でも見つ
けてしまったかのように、 さーっと顔色を変えて叫んだ。 どきどき脈打つ藤原の心臓の音が私の耳にまで聞
こえてきそうなうろたえっぶり。
  藤原は、 私がそのままタコ焼きを食べてしまうと思ったんだろう。 食事を取る機能のない私が無理やり
何か食べても、 ただ義体を壊しちゃうだけだってことくらい、 私と付き合っているんだから、 藤原も知ってい
る。
  でも、 大丈夫。 私がタコ焼きを口に含んだのは何も私が食べるためじゃないよ。
「あーんして」
  私は、 タコ焼きを口に入れたまま、 はっきりとそう言った。 発声するのに喉も唇も舌も使わなくてすむ電
子合成音の声はこんな時には便利だよね。 ははは。
「え?」
  藤原が、 蒼ざめた顔のまま聞き返す。
「あーんしてって言ってるんだよう。 聞こえなかったの?」
  もう一度ゆっくり繰り返す私。 私は藤原の両肩に手を置いて、 向かいあってキスするみたいなポーズを
とった。
5323の444:2006/04/16(日) 06:33:51 ID:NNQyrGsw0
「あ・・・ああ」
  藤原は、 ようやく私のしようとしていることに気がついたのか、 ちょっと照れたように私から眼をそらして
うつむきながらも口を半開きにした。 私は、 藤原の頭を掴んで無理やり私のほうを向かせると、 タコ焼きを
くわえたままゆっくり顔を近ずけていって、
(えい)
  タコ焼きを口移しに藤原に食べさせる。
  よっぽどお腹がすいていたんだろうか。 藤原は、 二、 三回噛んだと思ったらあっという間に飲み込んで
しまった。 私は、 もう一度、 今度はタコ焼きを箸でつまんで藤原の目の前に持っていく。 そしてエサを待つ
ヒナ鳥みたいに大口を開けた藤原の口にタコ焼きを放り込んだ。
「どう、 美味しい?」
  藤原がタコ焼きを飲み込むのを待って、 私は藤原に聞いた。
「裕子さん。 このタコ焼き、 すごく美味しいよ。 こんな美味しいタコ焼き、 俺、 食べたことないよ」
  驚きで大きく見開かれた眼、 口の中の粘膜にへばりついた残りかすまで舐めとろうと動く舌。 藤原は好
物のハンバーグをペロリと平らげた小学生に負けないくらい感情豊かに、 顔いっぱいで美味しさを表現して
くれた。 ただのお世辞じゃないってことは、 その顔を見ればよく分かる。
  でも、 藤原は、 そう言ったあとですぐバツが悪そうな苦笑いを浮かべて
「ごめん・・・」
  って一言付け加えて黙り込んでしまったんだ。

  みんなが美味しそうに食事しているのを指を咥えて眺めていなくちゃいけないのは虚しいよ。 みんなが美
味しいケーキを食べに行くのをいつも作り笑いで見送るのは悲しいよ。 でも、 好きな人が、 美味しいものを
食べて、 満ち足りた幸せそうな顔をしているのを見ていれば、 私は、 それだけでとても幸せな気分になれ
る。 例え、 自分自身は食べることができなくてもね。 それが、 私の作った料理ならなおさらだよ。
  なのに・・・なのに、 どうして私、 藤原に謝られなきゃいけないのさ。 藤原は美味しいと思ったから素直に
美味しいって言っただけじゃないか。 そのことで、 どうして藤原が私に罪悪感を抱かなきゃいけないのさ。
そんなのってヘンだよ。
5333の444:2006/04/16(日) 06:35:09 ID:0DWJDzvT0
  友達に食事をされるのは嫌だけど彼氏ならいい。 そんなの単なる私の我儘だ。 分かってる。 そんなこと
分かってるよ。 でも、 私の身体が普通の人と違うから遠慮する、 なんてことは藤原にはしてほしくない。 好
きな人には私の身体が機械だってことを意識してほしくない。 そうされることで、 私はかえって自分の身体
が冷たい機械の固まりなんだって思い知らされちゃうじゃないか。
  藤原の態度にむっとした私は、 山盛りのタコ焼きにソースとマヨネーズと青のりをたっぷりかけたあと、
内心のイライラを隠そうともせず、 態度の悪いウェイトレスみたいにつっけんどんに山盛りのタコ焼きが載っ
たお皿を藤原の前に突き出した。 そして、 呆気にとられて私を見つめる藤原を睨みつけながら叫んだ。
「私たち、 つきあってるんだよね? 彼氏と彼女だよね? だったら・・・、 だったら私に遠慮なんかするな!
えっちしたい時には藤原はすぐしちゃうくせに。 それと同じように、 お腹が空いたんならコンビニ弁当でもな
んでも買って食べろ! なんなら一緒にレストランに入ったっていいんだ! 食べたいものがあったら私に言っ
てくれれば今みたいに料理だってしてあげる! 大丈夫。 私なら平気だよ。 私はお腹が空いてるのに我慢し
てる藤原の作り笑顔を見てるより、 おいしいものを食べて嬉しそうな藤原を見ていたい。 私はこんなふうに
食事なんかできない身体だけど、 藤原が私の分まで美味しいと思ってくれることが、 今の私にとって一番嬉
しいことなんだ! 私は、 それで充分幸せなんだよ」
  私は、 そこまで一息にまくしたてると拳をぎゅっと握り締めて俯いた。 昔だったら溢れる感情を抑えるこ
とができなくて途中で泣き出していたんだろうけど、 今の作りものの義眼は、 こんなときでも涙に曇ることなく
鮮明な画像を脳に送りこんでくれる。 私は普通の身体のように涙を流せない顔を見られるのが恥ずかしくな
って、藤原に抱きついて、その胸に顔をうずめた。
  藤原は、 何も言わずに私の髪を優しくなでて、 それから背中に手をまわして私を抱きよせる。
「藤原、 お願いだよう。 私を、 幸せでお腹いっぱいにしてよう」
5343の444:2006/04/16(日) 06:35:57 ID:0DWJDzvT0
  私は藤原に抱かれながら胸の中で甘えた声を出す。 それに応えて、 藤原はぎゅうっと私をいっそう強く
抱きしめてくれた。 剥き出しの背中にあたる藤原の手の平の感触。 それを感じるだけで、 機械に閉じ込め
られて歪んでしまった私の小さな心が癒されていくみたいだった。

「裕子さん」
  藤原は、 小皿に山盛りに盛られたタコ焼きを、 一度に三個づつ口の中に入れるという、 頬袋にどんぐり
をいっぱいためこむ欲張りリスもびっくりの芸当で、 あっという間に平らげると、 頬杖をついて藤原が食べる
様子を面白そうに眺めていた私の両肩をつかんだ。
「な、 なにさ」
  タコ焼きにだけでは飽き足らず私まで取って食わんばかりの勢いにうろたえる私。 わ、 私なんか食べた
って、 中身はネジや電線ばかりで、 ちっとも美味しくないんだからね。
  思わず身を引こうとする私を無理やり抱き寄せる藤原。 藤原の顔が私に迫る。 私にキスしようっていう
んだね。 だけど、 だけどさ・・・。
「ぷぷっ、 くくくくくっ」
  可哀想だから我慢してキスに応えてあげようと思ったんだけど、 やっぱりダメ。 私はテーブルにうつぶせ
になって身をよじらせて大笑い。
「何がおかしいんだよ」
  私の笑い声にやる気をそがれた藤原は、 唇をとんがらせて不満顔。
「だってさ。 藤原。 ほっぺたに食べかすがついたままなんだもの。 おまけに歯は青海苔だらけ。 それで、
まじめな顔してキスしようとするから、 なんかおかしくってさ。 ごめん、 ごめん。 いくらおなかが空いているか
らって、 何もそんなに急いで食べなくたっていいのに。 はははは」
  答えるために顔をあげたら、 もう一度藤原のまぬけな顔が眼に入ってまたテーブルを拳でドンドン叩きな
がら大笑いする私。
「え、 あ・・・あの」
  食べかすを指で落としながら、 藤原は顔を真っ赤にして固まっている。
  それだけ私の作ったタコ焼きが美味しかったってことだよね。 ありがとう、 藤原。 そこまで喜んでくれて、
私、 とっても幸せだよ!
5353の444:2006/04/16(日) 06:43:33 ID:0DWJDzvT0
まだ、多少容量に余裕があるのでこちらに投稿します。
気を遣ってあげたほうがよかったかと思ったら、遣わないほうがよかったり
ヤギーと付き合う藤原君もいろいろ大変なのです。

>>525
サイボーグ技術がまだ完全に確立されていない頃の話ですね。
サイボーグが当たり前の世界の話は多くても、そういうテーマって
今までみたことなかったような・・・。
かなり新鮮なお話です。続きをぜひ。
536名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 03:13:00 ID:m+/LWHk20
>>535
>続きをぜひ。
困りましたね、一発ネタのつもりだったもので…(苦笑)

>サイボーグ技術がまだ完全に確立されていない頃の話ですね。
というか、やっぱり何億年もかけてできた生身に、人間の浅知恵で作られた
義体が完全に勝つなんて事はありえないという思いがあるので、基本的には
圧倒的にサイボーグは生身より劣るものという世界観になってしまいます。
つまり、あれは、「完全に生身にとって代われるようになる過程での不完全」
では無くて、「将来大きく改善される事はあり得てもこれで一つの完成形」
なのです。スーパーサイボーグになるには何かを犠牲にしなければならない
(例えば高性能職能義体は単機能で、パーツ交換しないかぎり転職もできない
とか)という事です。
それでも限られた知恵であがけば、神に勝つことこそできなくても何とか
生活できるところまでは実用化できる、という世界観がサイボーグの醍醐味
だと思います。
(もちろん他の世界観を否定するわけでは無いですが)

ヤギーの世界観は、サイボーグにも色々不自由な点があるので、かなり
シンクロ率が高いです(w
(不自由なりにちゃんと人間として生活できてる所も含めて)
537名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 21:46:20 ID:efm0vRpB0
>>536
次スレにあった耐用年数ってのにも萌える。サイボーグも機械だから
可動部は磨耗するだろうからねぇ。
5383の444:2006/04/19(水) 01:22:45 ID:PxC1dEab0
>>536
いやいや、人間の浅知恵もなかなか捨てたものではなくて
鳥が何億年もかけてようやく成し遂げたことを、人間はたかだか
300万年程度で実現しています。宇宙にいけるという意味では
鳥を完全に越えてますね。
一応現段階でも反応速度の問題があるとはいえある程度思い通りに
動く義手もできていますし、義眼も一応ありますから、もし全身義体が
実現するのであれば、さすがにその初期段階でもマンガ本を何とか
読めるくらいにはなっているのではないかと。
読んでいて、女の子が可哀想になってしまったので、ちょっとそんなことを
思ってしまいました。
まだ実験段階のサイボーグということで、私は、眉村卓(だったかな)の小説
に出てくるサイボーグ1号の谷ナントカさんというおばちゃんを思い出し
ました。確か首から上は生身だけど身体は全て機械で、義手を使ってうまく
編み物はするけど脚までは実用化されていないとか、そんな段階のサイボーグ
だったと思います。
539名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 19:02:10 ID:Xj7C3L6f0
次スレもうレス番号が100で100KB…。
もう1/5かよ…早っ!!
540名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 08:28:22 ID:kqUZ9vgA0
保守
541名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 23:41:35 ID:OcbI3g8L0
最後の保守

NHKの立花隆のみたか。
542名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 22:47:58 ID:1J0PIsFq0
実は最後じゃ無かった保守
>>541
録画失敗したよママン(泣
543名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 20:35:13 ID:9KvbhqR+0
保守
544536
>>538
>いやいや、人間の浅知恵もなかなか捨てたものではなくて

>>536で書いた通り、「神に勝つことこそできなくても何とか 生活できるところ
までは実用化できる」のが「捨てたものではない」という解釈なのです。
それを分かりやすく誇張したのが>>525です。
手足が無かったり目が悪かったりというのは、人間が神に勝つことはできない
という象徴で、ヤギーが物を食べられないのと同じようなものをもっと強調
しているだけです。
限られた技術でも、それらを活用すれば可能性は無限なわけで、例えばもっと
単機能で人間離れした設計の義体に換えるなどすれば、ある特定の能力に限れば
生身では実現できないような事もできるという訳です。
生身を忠実に再現しようとすると>>525の様になってしまう世界観だからこそ
機能を絞ればすごい事ができるということが引き立つかと思います。
(ヤギーも食べられない代わりに腕力が凄かったりしますが、似たようなものを
もっと大袈裟にしています)
ちなみに、>>525は、今の現実の延長上にある未来では無くて、そういう別世界
を想定して書いてます。
だから、今の技術をそのまま発展させた未来と比べると色々おかしく見える部分も
あると思いますが、あの世界では、安全性をとても重視していたりとか義体部品の
生産性やコストの問題がいろいろからんでたりとか色々あるみたいです。
もちろんそれ以外にも、患者がどんな姿になるを希望するかもわからないまま
人間離れした義体をつけるわけにもいかないとか、無理につけても訓練されて
なければダメとか、いろいろある訳ですが。