ゲンドウとシンジの同居生活

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1名無しが氏んでも代わりはいるもの
漫画版で、ミサトが
「申請すれば、お父さんとお父さんと住むことだってできるのよ」
と言ってましたが、もしそこでシンジがそれを望んだら、
ゲンドウと一緒に住んだらどんな生活になるのだろう?

ケース1
今日、掃除をしていたらビデオデッキにHなビデオが入っていた。
父さん・・・こういうのは子供の目の届かない所に隠してよ(´A`)
2名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/01(木) 16:14:07 ID:???
毎日萌えるセックス
3名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/01(木) 16:24:52 ID:???
(谷)
41:2005/12/01(木) 16:27:50 ID:???
ケース1 その後
(テープが巻き戻っている・・・成長したな、シンジ)
5名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/01(木) 16:30:44 ID:???
シンジ「父さん、今日の夕食はすき焼きにしようと思うんだけど…」
ゲンドウ「悪いが今日はレイと食事に行く。」
シンジ「それなら僕も一緒に!」
ゲンドウ「それはできんな」
シンジ「え?」
ゲンドウ「人とはそういう悲しい生き物だ」
シンジ「は?」
6名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/01(木) 16:46:25 ID:BAsuTAUS
やっと父さんが帰ってきた。

「シンジ、帰ったぞ」
「シンジ君、こんばんわ」

なんてこった、今日は、あの金髪の女と一緒だ。
月に一度はあの女を連れて帰ってくる。

父さんは、女連れのときはいつもそうするように、僕に二枚の千円札を握らせた。

「あー、今夜はおじさんの家に遊びにいくといい。冬月おじさんが、お前に会いたがっていたぞ」
「父さんは一緒に来ないの?」
「私は昼に会っているからな」
「父さん、僕を愛してる?」
「ああ、愛しているとも。お前は私の誇り、私の宝だ」

父さんは僕の額にキスをした。
眉の間に父さんのヒゲが当たるのが、ちくちくするけど、僕は好きだった。

「じゃ、僕、行ってくるよ」
「気をつけてな」
「気をつけてね、シンジ君」

最後に呼びかけられた金髪女は無視して、父さんにだけ手を振った。
僕は、くしゃくしゃの二千円だけを持って、夜の町へと駆け出した。
7名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/01(木) 17:19:30 ID:q+DKvUPm
その後何してんだWW
8名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/01(木) 18:36:44 ID:???
ただ行く宛もなく夜の街をさまよう。父さんはあの女の人と何をしてるんだろう。
ただ、とても不安になる、今までも家族なんていやしなかったけど、せっかく父さんと
同居しているのに、僕が邪魔みたいだ、母さんに何て言えばいいんだろう。





母さん・・・どうして氏んでしまったの?
9名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/01(木) 18:56:03 ID:???
今日は久々に父さんと夕食を食べる。
父さんは僕の作った料理を黙々と食べてるけど、美味しいのかな・・・?
お互い無言が続いて、いたたまれなくなってテレビを点ける。
テレビでは丁度バラエティ番組をやっていた。
テレビが面白くて僕が笑っても、父さんは何も反応しない。
それどころか、テレビも見ていない。
「それではここで、本日のスペシャルゲスト
 小倉優子ちゃんで〜す!」
その声に父さんはテレビの方に目を向けた。
父さんはどうやら小倉優子が好きらしい。

最近、父さんの事が少しずつ解ってきた気がする。
10名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/01(木) 19:30:08 ID:???
痛い・・・
11名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/02(金) 00:23:29 ID:???
仕事が忙しくてなかなか家に帰らないゲンドウに電話をかけるシンジ。
ゲンドウ「ああ、私だ。
     お前の口座に三千円振り込んでおいた。大事に使うんだぞ。
     お前はあと2.4のシンクロ率上昇で次のレベルになるぞ。
     今日はもう寝るのか?」
シンジ「ううん。もう少し勉強してから寝るよ。」
ゲンドウ「そうか。お前はユイに似て頑張り屋だからな。
     無理はするんじゃないぞ。じゃあ、またな」
     ガチャン ツーツーツー

そんな心温まる親子の会話。
12名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/02(金) 07:58:07 ID:???
MOTHER?
テラナツカシス
13名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/02(金) 11:48:24 ID:???
>>9 ワロスww
1411:2005/12/02(金) 13:30:58 ID:???
今、マザー1+2を主人公の名前シンジでやってて、こんなの思いついた。
他スレも見てて思うけど、意外にマザー好きは多いのかな?
15名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/03(土) 08:51:58 ID:???
父さん、僕は知ってるんだよ。
父さんが毎朝天気予報を見るのは、天気なんかよりお天気お姉さんが可愛いからだよね。
だってネルフに行けば、リアルタイムで最高の天気予報をMAGIがしてくれる事くらい、
僕だって知ってるんだからね。
16名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/04(日) 13:54:35 ID:3mtE6gt5
父さんが作るカレーは味が濃いし、具の切り方も雑だ。
父さんが言うには、これが男の料理だと言うけれど
僕の方が美味しく作れるんだからね。
僕が作ったカレーを食べた父さんは、少し寂しそうだった。
17名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/04(日) 14:25:36 ID:???
このスレを読む名無しも、少し寂しそうだった。
18名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/04(日) 15:16:40 ID:???

            ,、‐ ''"  ̄ ``'' ‐- 、
        /イハ/レ:::/V\∧ド\
       /::^'´::::::::::::i、::::::::::::::::::::::::::::\
     ‐'7::::::::::::::::::::::::ハ:ハ::|ヽ:::;、::::::::::::丶
     /::::::::::::::/!i::/|/  ! ヾ リハ:|;!、:::::::l
    /´7::::::::::〃|!/_,,、   ''"゛_^`''`‐ly:::ト
      /|;ィ:::::N,、‐'゛_,,.\   ´''""'ヽ  !;K
        ! |ハト〈  ,r''"゛  ,       リイ)|
          `y't     ヽ'        //
         ! ぃ、     、;:==ヲ  〃    
         `'' へ、   ` ‐ '゜   .イ
              `i;、     / l
                〉 ` ‐ ´   l`ヽ

シンジ シンジ シン シン シ〜ンジ  (ホッ!ハッ!)
使徒が踊るよ シ〜ンジ アスカでヌく〜よ シ〜ンジ
シンジ、シンジ、シンジと仲間達! (ホッ!)
チムポを立てろ〜〜〜 ホッホッホ〜! ホッホッホ〜〜〜!
阿呆たちがついて来る〜 〜〜 ♪
反則OK シ〜ンジ タイガージェットだ シ〜ンジ
シンジ、シンジ、シンジと仲間達 ♪
19231 ◆hFF06WgFzU :2005/12/08(木) 10:59:42 ID:???
良スレsage
20名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/08(木) 11:30:43 ID:???
ゲンドウはシンジを見ている。
シンジは視線を反らした!

シンジはゲンドウを見ている。
ゲンドウは視線を反らした!

以下ループ
21名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/08(木) 14:33:30 ID:???
www
ポケモン?
22名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/08(木) 15:06:38 ID:???
いや、エヴァ2。
23名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/08(木) 19:22:20 ID:???
扱いにくい親子だなwwww
24名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/09(金) 00:21:51 ID:???
ゲンドウ「シンジ、朝ご飯を食べる時ぐらいS-DAT聞くのやめろと言っただろ」
シンジ「家にいる時ぐらいサングラスと手袋外せって言ったべ、このマダオ」
チーン
ゲンドウ「ユイ、聞いたか?今の。私達の合作は今あんな感じ。ゴールの見えない
反抗期に、私はもうリタイア寸前だよ」
25名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/09(金) 01:04:50 ID:???
今が反抗期まっさかりですよw
26名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/09(金) 04:52:23 ID:???
ぼくンち

シンジ「父さん、燃えるゴミと燃えないゴミはちゃんと分けてよ」
ゲンドウ「問題無い。燃える」
シンジ「燃えるとかじゃなくて、色んな毒素が出るんだよ!」
ゲンドウ「そこは頑張ってもらえ」
27名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/11(日) 02:33:24 ID:???
>>24 白黒www
28名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/16(金) 19:24:00 ID:???
ワロスwwwwwwwwwwwwww
29名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/27(火) 08:45:51 ID:???
保守
30リュウ ◆MueRj0QrOs :2005/12/27(火) 08:57:30 ID:???
『ぼくンち』って漫画あるんだね…
『あたしンち』のパロディだったつもりなのに…orz
31名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/27(火) 08:59:39 ID:???
コテハン消し忘れた…きにしないで下さい。
32名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/28(水) 01:31:47 ID:???
夕食の時
食事をしながらの会話
シンジ「母さん死んでもう何年経つと思ってるの?」
ゲンドウ「.....」
シンジ「早く再婚して母さんを安心させてやりなよ。死んだ人より生きてる人と幸せにならなきゃ。」
ゲンドウ「ああ」
シンジ「いつもの生返事かよ。男手ひとつで育ててくれたことは感謝してるけど、僕は高校は全寮制にするからね。大学も学費と生活費だけでいいよ。もう、リツコさんを泣かすようなことしないでくれよな。」
ゲンドウ「シンジ、赤城くんとのことはもう終ったことだ。再婚なんかしたらユイに申し訳ない」
シンジ「だからバカなんだよ。一途もいいけれど再婚して幸せになってよ。僕も弟か妹がいたらいいなと思うしリツコさんがお母さんになってくれたらうれしいね。」

仏壇の前に座るゲンドウ
ゲンドウ「ユイ、シンジが再婚の話をしてきたよ。どうしたらいいだろうね?」
「弟や妹がいたら楽しいとまで言われたし、赤城くんをこれ以上泣かすなと言われたよ」「成長してるんだなシンジは。ユイ、俺は生きている人と幸せになりたいよ。キミが一番望んでる気がしてたまらないから」
そう言うとゲンドウはユイの位牌に手をあわせた。

33名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/30(金) 14:56:25 ID:???
ちょっとほろっときた
34名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/12/30(金) 15:25:46 ID:???
>>32
それのどこがシンジなの?
35名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/06(金) 23:31:59 ID:???
たしかにゲンドウに対して強く出過ぎてるけど、全米が泣いたからおっけ〜。
33からもらい泣きしそうになった
36名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/12(木) 16:19:14 ID:???
保守
37名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/15(日) 23:55:44 ID:ee4nADlO
  |/i;;;;;;;;;;;;;| r==(         )/⌒ヽ(          )彳 |;;;;;;;;;;;i 
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     ヾ;;;;;ヘヽ       /::' ゝ´`: :´:  ´ '\: : : : : : : : : : ∧;;;;;/   .
    /ー《;i \     /: : .'  _ _ _: : : : :ヽ: : : : : : : : //;;=ヘ   
     i /::::''ヘ;i  ヽ    : ::  /_,. -ー- .,_\: : : : : : : : : :://;;r'て | 
    ! ::' ;:::ヘi      ::' /^~      ~^\: : : : : : : : /;;/)ヽ |  
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38名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/25(水) 00:07:36 ID:???
あんまりにも親子の会話がないので何かのきっかけになればと
父の日のプレゼントを買ってきた。
そしたら今日に限ってやたら早く帰って来るもんだから
テンパッたあまり思わずソファーのクッションの裏に隠しちゃった。
あーあ、タイミング悪いなあ。…まあいいや。食後に渡そう。
え?何で今日に限ってTVの前に座るの?!
はあ?ニュースステーションが見たい?!知るか!
つか、やめて父さん!いやマジで!

……ぐしゃ。

このクソ親父。
もう絶対僕からは一生口きかない。

39名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/25(水) 16:11:13 ID:???
頭にきたので自分の部屋に戻って引きこもった。
気がついたら朝だった。

学校に行かなきゃいけないので部屋から出て
ダイニングに行くと、父さんが既に起きてて
コーヒー飲んでた。
…ぐちゃぐちゃに割れた、僕が昨日買って来たサングラスをかけて。

「父さんそれ…」
おろおろしたような僕の声に父さんは振り返りもせずに
コーヒーを飲みながら呟いた。
「問題ない。使える」

何となく嬉しくなって僕は父さんの分もパン焼いてあげた。
でもそれでネルフにいくのはやめた方が良いと思うよ父さん。

40名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/25(水) 16:58:16 ID:???
いいじゃねーか(つД`)
41名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/25(水) 19:35:39 ID:vrYBpuQE
あげ
42名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/25(水) 19:48:49 ID:???
数日たってそんな事も忘れかけたある日のこと、僕が学校から帰ってきて
疲れたぁ〜、などと呟きながらソファーに座ると、尻の下に妙な違和感を感じた。
気になって覗いて見ると、クッションの下から僕が前から欲しがっていた
S-DATの新しいプレイヤー。流石に壊れてはいないけど、ちょっと透明部分の部品が
割れてしまった。あーあーあー、と思ってると一緒に何かカードがついていた。

【問題ない。使える】

わざとかよクソ親父。
この間の仕返しかよ。とかやっぱりこれ使ってるところ見せてあげなきゃいけないのかな。とか
色んな事が頭をよぎったが、最終的にどうでもよくなって何だか笑ってしまった。

ちょっとだけ父さんとの生活が面白く思えてきた。
43名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/25(水) 21:55:07 ID:???
相互リンク

もしもゲンドウが優しかった場合を考えるスレ
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1045701803/
44名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/25(水) 22:37:22 ID:???
>>16泣いた
45名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/26(木) 02:30:13 ID:???
<<42
吹いたwwww
46名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/26(木) 09:49:27 ID:???
>>38>>39>>42
まことに見事な三連コンボだw
47名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/26(木) 19:23:13 ID:???
今朝、珍しく父さんの方から僕に話しかけてきた。
なんだろと思ったら、どうも今晩は実験で遅くなるので
夕食は先に食べろということらしい。

何気なく父さんはどうするのか聞いてみたら、実験が終わった後
綾波と一緒に外食する予定だとあっさり言われた。
一緒に連れて行って欲しいな。と一瞬思ったけど、どうも上手く言えなくて
結局「そう…」とか適当に言葉を濁してしまった。
学校に行ってもなんだか胸の辺りがもやもやして、授業に全然集中できなかった。

もし成績落ちたら「クソ親父がロリコンなので毎日が辛いです」と
いのちの電話に電話かけてやる。
48名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/26(木) 19:34:11 ID:???
学校から帰っても、もやもやは全然収まらなかった。
薄暗い部屋の中は妙にがらんとしていて、僕は何だか泣きたい気持ちになった。
それもこれもあのクソ親父のせいだと思うと、何だか僕はむしょうにイライラして
父さんの部屋に入ると、机の上においてある、僕のあげた修理から還ったばかりの
サングラスを床にたたきつけた。ついでに足で踏んづけといた。

何となくせいせいした気分で風呂に入っていると、父さんが帰ってきた気配がした。
僕は風呂からあがり、恐る恐る父さんの部屋を覗いてみると
父さんは半端なくぶっ壊れたサングラスを手に持って立っていた。
顔は見えなかった。でも何だか肩ががっくり落ちていて、寂しそうだった。

いい気味だな、と思った。
でも何だか胸の奥がちくちくと痛んで、僕はその夜全然眠れなかった。
49名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/27(金) 03:01:56 ID:???
続きみてぇw
50名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/27(金) 14:51:26 ID:???
見事なまでの
「むしゃくしゃしてやった。今は後悔している」
だなこのシンジはw
51名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/27(金) 21:46:51 ID:???
あれから僕と父さんはますます口を利かなくなった。
折角楽しくなってきたと思えてきた同居生活も
いつの間にか前と同じ、グレーの日々に戻っていった。

元はといえば僕のつまらないわがままから始まった事なんだよね。
僕は自分の行いを反省しながら、ネルフの廊下で立ち止まると溜息をついた。
すると前の方から歩いてくる父さんの姿が目に入った。

仲直り、しなきゃ。
僕は勇気を出して父さんに話しかけた。これからお昼なんだけど、一緒にどう?って。
一緒にお昼を食べて、そこで謝ろうと思ったんだ僕は。
でも父さんは僕のことを振り返りもせずに、悪いが仕事が忙しい。とだけ言うと
すたすたと僕を追い越していってしまった。

ああそうかよ。クソ親父に殊勝な気持ちになった僕がバカだったよ。
もう二度と一緒に食事になんか行ってやらないからな。

…一度も行ったことないけど。

ふとその事に気がついて、僕は無性に情けない気分になった。
52名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/28(土) 00:59:12 ID:???
何となく家に帰りたくなくて、学校が終わっても僕は街をうろついていた。
日が落ちても、夜が更けても。
あんな家に帰るくらいならいっそ何処か遠くへ行って父さんのことも、
エヴァのことも忘れて君と暮らそうか。
などと昭和の匂いのする考えが僕の頭をよぎる。ていうか『君』って誰。

結局どこに行くことも出来ず、僕は午前0時をとっくに過ぎた頃ようやく家に戻った。
恐る恐るドアを開けるとリビングの電気がまだついている。
見ると父さんがソファーに座ってじっと時計を見つめていた。
ただいま、と震える声で僕は父さんに声をかける。僕の方をちらと見ると父さんは
ふうと溜息をついて僕に何かを手渡した。見るとそれは、レストランの食事券だった。
「外に食事に行きたいなら、初めからちゃんと言え」
父さんの声が冷たい部屋に響く。

そういう問題じゃねえよ。

僕は父さんの目の前でそれをびり、と破いてみせた。楽しくもないのに僕は何だか
笑えてきて仕方がなかった。それから何だか情けなくなって僕は父さんに向かって呟いた。
「やっぱり叱ってくれないんだね。…分かってたけど」
それだけ言うと、僕は部屋を飛び出した。
風がなんだか冷たい夜だった。
53名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/28(土) 01:18:11 ID:???
気がつくと僕は盗んだバイクならぬ盗んだエヴァで夜の街へと走り出していた。
当然5分で捕まった。

「個人的動機によるエヴァの私的占有及び無断起動。これらは全て犯罪行為だ。
 …何か言いたい事はあるか」
執務室に呼ばれた僕に、父さんの冷たい声が降りかかる。
僕は笑いながらバカにしたような声で父さんに向かって叫んでいた。
「父さんはエヴァに乗る僕しか必要ないんでしょ?!だから乗ってあげたんだ。悪い?!」
その言葉に突然父さんは立ち上がり、気がついたときにはその拳が僕の頬を捉えていた。
その衝撃で僕は「モルスァ」とか言いながら壁まで吹っ飛んだ。
驚いたような顔で僕は父さんを見つめる。すると小さく呟きのような声が聞こえた。

「甘ったれてひねくれる前に、自分が今通さなければならない筋はなんなのか、よく考えろ」
その言葉に僕の目から涙がこぼれた。
ごめんなさい。ごめんなさい。と呟きながら僕はわんわん父さんの前で泣き出していた。

それが、生まれて初めてはじめて父さんに叱られた夜だった。
どんな手を使ったのか知らないけれど、父さんは綺麗に修繕されたサングラスをかけて
何も言わず、でもずっと僕が泣き止むまでそばに立ってくれていた。
54名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/28(土) 02:26:55 ID:???
モルスァワロスwwwwそして良い話。
55名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/28(土) 11:50:22 ID:???
>そういう問題じゃねえよ。

誰よ、これ
シンジはこんなこと言わないよ
56名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/28(土) 16:48:01 ID:???
そこだけ取り出して見たらそうかもしれんが全体的にシンジのキャラを
捕らえ損なってる訳でもないよ。これくらいなら許容範囲かな

つか
>気がつくと僕は盗んだバイクならぬ盗んだエヴァで夜の街へと走り出していた。
>当然5分で捕まった。

確かにそりゃそうだw5分しか動かないもんなあwww
いい話なのに地味に笑えるwwww
57名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/28(土) 19:00:04 ID:???
オモシロカータ
58名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/29(日) 00:42:09 ID:???
やべえ、「盗んだエヴァで走り出す」がツボに入ったwww
59名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/29(日) 01:46:34 ID:???
ようやく涙が止まりしゃくりあげる僕を尻目に、父さんは執務室の扉を開けた。
じっとそれを見つめている僕に父さんが声をかける。
「何をしている。早く来い」
その言葉に僕は慌てて立ち上がると、父さんの後を追いかけた。

どこに行くのかなと思っていると、タクシーに乗せられ僕と父さんは
とあるレストランに行き着いた。
呆然としている僕を父さんは無言で促すと店に入る。僕もそれに素直に従った。
席に通され高価そうな店内に緊張している僕を他所に、父さんはさっさと何かを注文する。
それから僕の方を向くと、何かを差し出した。
「新しいIDカードだ。お前からレイに渡しておけ」
それは綾波のIDカードだった。何でそれを父さんが持っているのか、何故それを僕に渡すのか
全く意味が分からない。でも僕はうん、と返事をするとそれを受け取りポケットにしまった。


一旦落ち着いてしまうと僕は急に恥ずかしくなった。
多分父さんは気付いてしまったんだろう。僕が父さんと一緒に食事にいけなかったことに
腹を立ててわがまま言っていたことに。そうとしか考えられない。
自分でもあまりの子供っぽさに呆れているくらいなのに、父さんはどう思っただろう。
だらだら冷や汗を流すと、僕は緊張を解こうと目の前のグラスを手に取り、一気飲みをした。
その途端、父さんぎょっとしたように僕を見つめる。何だかおろおろしてるみたいで、
そんな顔をしている父さんが妙に可笑しくて、僕はくすくすと笑った。

僕の記憶はそこからいきなり消えた。
60名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/29(日) 01:57:04 ID:???
気付いたら僕はタクシーに乗せられていた。
なんだかふわふわする。身体が熱いような気持ち良いような不思議な感じに
僕はまたくすくすと笑った。隣で呆れたような溜息が聞こえる。
何だかまた僕は眠くなっってきた。

眠りに落ちる直前、僕はずっと言いたくて言えなかった言葉を呟いた。
「ありがとう、父さん…」

遠くから「ああ」という返事が聞こえてきた気がした。
目を閉じると、父さんの匂いがした。
僕は多分これが加齢臭ってやつなんだな、と思いながら眠りについた。
とても幸せな気分だった。
61名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/29(日) 03:20:59 ID:???
朝起きたらすごく頭がガンガンしていた。いったいどうしたんだろうと思いながら僕は
頭を押さえつつダイニングに行った。父さんは相変わらずコーヒーを飲んでいた。
でも昨日までとは部屋の空気がちょっとだけ違う。
僕は嬉しくなって父さんの分だけパンを焼いてあげた。とても気分が悪かったので僕は
パンは食べれそうになかったから、ヨーグルトを冷蔵庫から出してコーヒーと共に流し込んでいた。
父さんも僕が食べているのを見て、ちょっと欲しくなったのか知らないけど自分で冷蔵庫から
それを出して食べ始めた。
何だかくすぐったいような気分になってふふ、と僕が笑うと父さんは少し照れているみたいだった。
と、ぼそりと父さんが呟く。

「まだ中学生のくせに酒を飲むからそうなるんだ。今度から気をつけろ」
僕は驚いて父さんの顔をじっと見つめた。それからようやく僕は二日酔いになったんだなと気がつく。
多分昨日一気飲みしたグラスは父さんので、ワインか何か入っていたんだろう。
だから父さんはあんなにあの時驚いていたんだ。
あの時の父さんの顔を思い出して僕は再びふふ、と笑った。僕の笑いが気に触ったのか
父さんは憮然とした顔で更に続ける。
「朝はちゃんと食べた方がいい」
何だか初めて父親らしい言葉をかけてもらった気がする。嬉しくなった僕は素直にうん、と頷いた。

そうだよね父さん。いつか父さんが二日酔いになったら、僕が心をこめてとびっきり美味しい朝食
作ってあげるからね。父さんもちゃんと食べてね。

微笑みながらそういったら、父さんは何故だか急にそっぽを向いて、咳払いを、した。
62名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/29(日) 23:47:33 ID:???
学校に行っても気分の悪さは収まらない。トウジやケンスケがいろいろ僕に
話しかけてはきてくれているんだけど、正直それに反応する余裕は僕になかった。
綾波の席を振り返ると、そこには誰もいなかった。欠席みたいだった。
僕は昨日父さんに渡されたポケットの中のIDカードを握り締めた。

学校が終わると担任に住所を聞いて、僕は綾波の家に向かっていた。
そこは廃墟のような人の気配のないマンションの一室だった。インターホンを鳴らすが反応はない。
僕は意を決してドアに手を掛けた。扉はあっさりと開いた。
ごめんください、と声をかけて部屋の中に入る。綾波はいなかった。
ただ無機質な、人の住んでいるとは思えない空間がそこには広がっていた。
その中でたった一つだけ人の気配のようなものがする存在があった。僕は恐る恐るそれを手に取る。
それは、黄色いフレームの、レンズ部分が割れている眼鏡だった。
フレームには『gendou.ikari』と刻まれている。

『父さんの…?』
僕は何故ここにそれがあるのか疑問に思いつつ、それをあわせてみた。
似合うかな、と思い鏡を覗き込もうとしたとき後ろで人の気配がした。
振り向いた僕の目に飛び込んできたのは、シャワーからあがったばかりなのか
タオルを首にかけた綾波の肢体だった。
63名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/30(月) 00:01:19 ID:???
と、怒ったように綾波が僕に向かってつかつかと歩み寄る。全裸で。
そして僕のかけていた眼鏡を奪い取った。焦ってしまった僕はバランスを崩して
純白のパンツやブラジャーにまみれながら倒れこんでしまった。…綾波の身体に覆いかぶさるように。

一瞬、時が止まったような気がした。
掌の中には、綾波の小ぶりながら形の良い胸。僕は
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
 ⊂彡
と叫びだしたい気持ちを堪え、あわてて彼女から飛びのいた。
そんな僕を無視しながら綾波はさくさく着替えを済ませていく。何の用?と聞かれてようやくここに来た
目的を思い出した僕は、慌ててポケットから彼女のIDカードを取り出し机に置いた。何を言っても言い訳に
しかならない気がして僕はごめん!と謝り部屋を飛び出した。

後悔する道すがら、僕は綾波の無機質な部屋の中を思い出した。
僕は父さんと一緒に暮らせているけれど、綾波には誰もいないんだ。
そう思うと何に対してだか分からないけれど、僕はとてもすまない気持ちになった。

でもそれ以上に僕の心を捉えて離さなかったのは、父さんがかつては笑福亭鶴瓶のような
眼鏡をかけていたんだという、その事実だった。
64名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/30(月) 00:51:59 ID:???
おい、このシンジ





アホか?w
65名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/30(月) 01:16:25 ID:9tjysHuF
良スレage
66名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/30(月) 13:43:36 ID:???
僕は多分これが加齢臭ってやつなんだな、と思いながら眠りについた。
バギバロスwwwwwwww
67名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/30(月) 23:17:03 ID:c31A/PXe
ちょwwこれは良スレですねww
68名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/30(月) 23:34:42 ID:???
どっちかっていうと貞本シンジだな
69名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 00:00:18 ID:???
ガチャ。玄関の扉が開く。
夜になってようやく帰ってきた父さんは何故か綾波を連れていた。
「シンジ、新しい母さんだ」
「は?何で綾波が
バシッ
綾波のは容赦なく僕の頬をぶつ
「母さんと呼んで」
「っ!何で綾波にぶたれなきゃ
バシッ
「母さんよ」
「何で呼ばなきゃ
バシッ
「母さん
「嫌だ
バシッ
「かあさ
「嫌
バシッ
僕の頬は腫れ上がっていく…
〜3時間後〜
バシッ
「…があざん」
「それでいいのよ」
やっと納得したのか綾波は靴を脱いで家にあがった
70名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 00:49:32 ID:???
綾波が母さんだなんて、そんなの嫌だ。だってそうだろ。
『母さんは同級生』だなんて、性質の悪い冗談としか思えない。
僕は腫れ上がった頬を押さえながら父さんに向き直った。

「これなんてエロゲ?」
僕の言葉に父さんはそっぽを向いて遠くを見た。そして呟く。
「お前レイの部屋で…いやなんでもない」
その言葉に僕はピンと来るものを感じ、にこ、と笑った。
「あ、あの笑福亭…」
「うおっっつほんっ!!!」
いきなり咳き込む。僕は確信を得たように鶴…とかあの眼鏡…とか問いかけてみたが
父さんはそのたびごほごほと咳をしてそれを遮った。
正直その反応が楽しくて、夢中で色々単語を操る僕に業を煮やしたのか父さんはむすっとした顔で
何処かに出て行ってしまった。

そして部屋には僕と綾波だけが残された。
71名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 01:11:06 ID:???
空気が気まずい。僕はなんとかこの空気を破ろうと綾波におずおずと話しかけた。
「あの、さ…父さんとほんとに結婚したの…?つか無理だよね14なんだし…」
「私には何もないもの」
僕の問いににこりともせず綾波はそう呟く。悪いけど答えになってない。
と、綾波が僕を振り返って更に続けた。
「冗談よ。指令に頼まれたの」

冗談で3時間に渡るビンタプレイは辛かったです母さん。
僕が項垂れていると、綾波は部屋を出て行こうとする。僕は慌ててそれを遮った。
こんな夜遅くに女の子を一人で返して何かあってもいけないし、父さんは出て行ったままだ。
「良かったらご飯食べて行って。一緒に食べると楽しいよ。父さんもいればもっとよかったんだけど」
僕は綾波にそう言って笑った。何だか驚いたような顔をして、それでも綾波はこくりと頷いた。

一緒に食卓を囲む。何だか家族が増えたみたいで僕はちょっと嬉しかった。
「美味しい。碇くん、料理上手ね」
「そ…そうかな?慣れただけだよ。これくらい誰でも直ぐできるようになるよ」
僕の言葉に綾波がおずおずと探るように呟いた。
「私にもできる…?」
何だか頬を染めている。ちょっと可愛くて僕はドキドキした。できるよ、と微笑んで見せたら綾波は
嬉しそうに、にこ。と笑った。最上級の笑顔だった。
72名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 01:26:41 ID:???
何だかちょっとムカついた。
この綾波の笑顔は多分、父さんのものだったから。
母さんとか言う小芝居は冗談だったにせよ、綾波が父さんに惹かれているのであろう事は
幾らなんでも僕にも分かったから。そのうちマジで『母さんは同級生』が実現する日が
来るのかもしれないと思うと、正直頭痛がする。

「あのさ。綾波はどうしてエヴァに乗ってるの?」
思わず話題をそらしてしまった。僕の突然の問いに、綾波は無表情のままぽそりと呟いた
「絆……」
父さんとの?どうしてそんなにあのヒゲが信用できるの?と聞くと綾波は逆に問いかけてきた。
「碇君は信用できないの?お父さんの仕事が」
僕はムカつきに拍車がかかり、信用できるわけないよヒゲだし笑福亭だしロリコンかもだし。と呟いていると
綾波の掌が僕の頬を打った。3時間打たれ続けたどのパンチよりもそれは効いた。
「…殴ったな!父さんには殴られたことあるけど!」
有名な台詞を改変して僕は叫んだ。我ながら意味が通ってない。つうか滑ったかも。
「ごめんなさい。こんなときどんな顔したら良いか分からないの」
綾波にツッコミを期待するだけ無駄だった。だから僕は微笑んでこう言ったんだ。
「笑えば良いと思うよ」

綾波は笑ってくれなかった。
73名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 02:03:33 ID:???
シリアスだかギャグなんだかわかんなくなってきた
74名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 02:10:08 ID:???
くっ!半分荒らす気でネタ投下したのに見事に順応しやがった!
化け物め…
75名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 02:29:10 ID:???
もう私たちに職人を止めることはできないわ。
素直にGJ!
76名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 08:00:37 ID:???
LRSはイラネ
ゲンドウとシンジだけでよかったのに
77名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 17:13:56 ID:???
出オチで滑った、みたいな微妙な空気に僕は押しつぶされそうだった。
と、突然家の電話が鳴る。ほっとした僕はそれを慌てて取ると、それは何故か警察からだった。
よくよく話を聞いてみると、どうも父さんが小型自動二輪車窃盗の現行犯で捕まったとのこと。
僕の頭が真っ白になる。つか何やってんだよあのヒゲメガネ。
とりあえず身元引受人として僕は警察に行く旨を伝え、電話を切る。
綾波に警察に行くから待ってて、と伝え家を出ようとした僕の後を彼女も何故かついて来た。
追い返すわけにもいかないので、そのまま二人で警察へ向かう。

そういえば何で父さんは急に綾波に芝居までさせて家に連れてきたんだろう。
綾波に聞いてみても首を振るだけで何も知らない様子だ。
と、何かに気付いたように綾波が呟いた。
「そういえば碇指令、碇君が私の部屋であの眼鏡かけてたこと伝えた途端、態度がおかしくなったわ」
その言葉にああ、と合点がいく。あの眼鏡は父さんにとっては消したい過去だったんだ。
そりゃ笑福亭じゃあ僕でも勘弁したいよ。だったらそんなもの渡すなよと思いはしたが、
多分綾波の部屋に誰かが入ることなど想定外の出来事だったに違いない。
綾波のことだから玄関でIDカード受け取って、すぐに扉バタンだろうと高をくくったのだろうなと
僕は父さんの思考回路が手に取るように分かった気がして、ちょっとびっくりした。

だからってビンタ3時間はやりすぎだし。記憶が飛ぶ前に僕の命が飛んでいったら父さんは
どうする気だったんだろうか。
僕は父さんに、命とは何か。と言うことを小一時間問い詰めたい気持ちで一杯になった。
78名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 17:32:38 ID:???
…ていうか、ひょっとして。

僕は父さんの不可解な犯罪の動機が分かった気がして頭が痛くなる。
綾波のビンタであの眼鏡の事ごまかそうとしたけど、却って薮蛇な形で僕に余計に突っ込まれた。
だから父さんってばぶち切れて、いい年こいて本当に『盗んだバイクで走り出す』やっちゃった訳?
うわぁ、中学生の僕でも躊躇ったのに恥ずかしい。僕恥ずかしいよ父さん。
そしてそこまで理解できてしまう自分もちょっと痛いなあ、と少し赤面する。
それから、ぶち切れたときの自分と同じ行動パターンを取る父さんに、僕は親子の絆をひしひしと
感じざるを得なかった。
でも僕はできればもっと別の形でそれを実感したかった。

いきなり赤面した僕に綾波は不思議そうに首をかしげる。それを誤魔化しながら歩いていると
いつの間にか僕達は警察署についていた。
警察の人に「碇ゲンドウの身元引受人です」と伝えると年配の警察官が僕の姿を見て
同情したように、こんな真面目そうな子供がいて…坊やも嬢ちゃんも苦労するね。と呟いて
飴をくれた。僕そこまで子供じゃないんだけど。と思いながらも素直に受け取っておいた。

はじめて、人の情けが身に染みた気がした。
79名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 17:56:50 ID:???
小さな小部屋に通されると、僕の目に飛び込んできたのは怒ったような顔をしている
蕎麦屋の主人と、米搗きバッタのようにぺこぺこと頭を下げ続ける冬月副指令の姿だった。
父さんはというとひたすら「アレは当時は正解ファッションだったんだ…みんなしてたんだ…」と
ぶつぶつ呟いている。いやそれ今どうでもいいから。ていうか出前のバイクで走り出したのかよ。
ああ、こんな歳になっても父さんに振り回されてるんだこの人。気の毒に…と同情していると、
父さんは蕎麦屋の主人に見えないように副指令に不厚い封筒の束を手渡した。
副指令はそれを受け取るとにこやかに御主人にそれを握らせる。
すると御主人も「いやいやいや、そんな…」といきなり態度を一変させた。

大人って汚い。
と、呆れ顔で佇む僕の存在に、ようやく父さんと副指令が気付いたようだ。蕎麦屋の主人も
納得したようにいや、悪気があってしたことじゃないしここは示談成立ってことで。とか言いながら
部屋を出て行った。これが大人の処世術というヤツなのか。正直僕は見習いたくなかった。

僕は無罪放免となった父さんと副指令と綾波とで帰路についていた。かなり異色のメンバーだった。
と、冬月副指令が僕の顔をまじまじと見つめている。なにかな、と思っていると
ユイくんにそっくりだなシンジ君、きみは。と僕に話しかけた。どうやら母さんを思い出していたらしい。
そっか僕母さんにそっくりなんだ。と思っていると、大学時代はそりゃあ君の母さんは優秀な研究者で…
とか語り始めた。うわ、語り入っちゃったよ年寄りの話は長いんだよなあ。とうんざりしたけれど
助けてもらった恩もあることだし僕は我慢してその話に相槌を打っていた。

綾波と父さんはいち早くはるか遠くを歩いていた。
僕は一日で、人の世の情けと薄情を同時に知った。少しだけ大人になった気がした。
80名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 18:31:42 ID:???
GJ!
81名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 19:02:06 ID:???
イイヨイイヨーGJ!!
出来ればカプ梨でお願いっ!!
ゲンドウとシンジの関係が薄くなるから!
82名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 20:21:21 ID:???
もう、とことん付き合っちゃうよ、俺はw
お気に入り指定決定ww
83名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 21:23:34 ID:???
>>82オメガ高いwwwwwwwwwwww
84名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/01/31(火) 21:37:58 ID:???
親子そろって何やってんだwwwバロスwww
85名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 04:20:18 ID:???
>ていうか出前のバイクで走り出したのかよ。

なんだよこの語呂の良さはwwwww
86名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 21:13:51 ID:???
副指令の話は永劫の刻より長く続きそうな勢いだった。
「ユイ君は聡明で胸の大きな優しく、すばらしい女性だった。教育者の私でも尊敬すらしていたよ。
 ただ、男の趣味だけが最悪だった…」
僕は間にさらりと混ぜられていた胸の話題にだけ注目した。そうか母さん巨乳だったんだ。
それは世界一どうでも良い話題だった。
「それなのにユイ君…ああ、ユイ君…」
何かちょっと危なくなってきたぞ。
と、副指令が僕を見つめて幸せそうな笑みを浮かべた。
「そこにいたんだな、ユイ君…」
目がヤバイ。明らかにイってる。脳内麻薬を自己精製できるタイプの人間がいるとは知っていたが
間違いなく副指令はそのタイプだ。僕は身の危険を感じ、走り出すと慌てて父さんの背中に隠れた。

副指令の顔が悔しそうに歪んだ。
父さんはというと、背中に隠れる僕の顔と副指令の顔を見比べてちょっと満足げだった。
そんな父さんの態度に気を悪くしたのか副指令は、にやりと意地悪そうに笑い呟く。
「碇、お前の身元引受人になるのは2度目だな」
その言葉に驚いて僕はぴょこんと父さんの背中から顔を出して訊ねた。
「え、父さん前にも走り出した事あるんですか?」
「いや、その時は単なる酔っ払っての喧嘩だったか。なあ碇?」
その言葉に父さんの表情が見る見るうちに固まった。ああもう、消したい過去ばかりだなこの人の
人生は。そのうち父さん昔はジュノンの読者モデルだったんだとかいうのまで飛び出しそうだ。

いや、それはないか。僕は父さんの人相の悪い顔を見てあわてて首を振った。
87名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 21:33:34 ID:???
父さんってDQNだったんだ。僕は何となく納得したような顔で父さんを見上げた。
いや過去形じゃないな。現在進行形でDQNだ。僕はちょっと呆れ顔で父さんに言った。
「もうイイ年なんだし、文字通りオザキは『卒業』したほうがいいよ父さん」
僕の言葉に父さんはそっぽむいて聞こえないふりをし咳払いした。
僕はこういう中年になるのは絶対に止めようと心に誓った。

と、そんな父さんに副指令は更に追い討ちのように言葉をかける。
「碇、そういえば食堂のおばちゃんが最近お前が昼飯に来ないと嘆いていたな」
え、そうなの父さん?僕は思わず父さんの顔を見上げた。綾波の顔が一瞬にして険しくなった。
実は最近父さんにお弁当を持たせていたからだ。いや自分がお昼にパンとか食べるの飽きたので
自作するついでに父さんの分も作ってあげただけなんだけど。
「何だ、言ってよ父さん。そうだよお昼って職場の人とコミュニケーションとるのに最適の場所
なんだから、お弁当はまずかったよね。ごめん気付かなくて」
すまなそうに項垂れる僕に、父さんは冷や汗を描きながらぷるぷると頭を振る。
その間も綾波は般若のような顔で僕をガン見していた。正直かなり怖かった。
「いや羨ましい息子だな碇?私はそういうものとは無縁の生活だからな。家庭料理か。実に羨ましい」
何か言いたげな副指令の表情に、僕は思わずじゃあ副指令の分も…と言おうとして父さんに留められた。
「かわいそうだからといってむやみに餌を与えるな。結局苦労するのはお前だぞシンジ」
あんまりな言い草に同情しつつ、僕は確かにその通りだと思ったので、はい、父さん。と素直に頷いた。

副指令の表情が一気に落胆したものに変わった。
88名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 21:55:02 ID:???
僕は副指令の、この年になってまで年齢=彼女いない暦なのだという勇気ある告白に
ちょっとだけ引いた。流石父さんと長い付き合いだけあって、一見まともそうだけど
この人もまともな大人じゃないな、と思った。ていうか僕の周りそんなのばっかりだ。
なんて考えていると、綾波が般若のような顔の上から切なそうな顔の仮面を被って
ぼそりと呟いた。

「碇君お弁当美味しそうね。指令が羨ましいわ」
本来褒められてるはずの言葉がちょっとだけ怖い。僕はおずおずと綾波に声をかけた。
「父さんがいらないなら、材料余っちゃうし。良かったら綾波食べてくれる?」
僕の言葉にしてやったりという顔で綾波が頷いた。と、それを父さんが押し留める。
「私は迷惑ではない。外食が続くと健康に悪いからな」
父さんお言葉に綾波の表情が再び般若に変わった。怖い。怖すぎる。
「…だがレイには作ってやってくれ。ほっとくとまともにものを喰わないのでな」
その言葉に綾波は嬉しそうに笑った。やっぱり可愛い。

結局僕は明日からお弁当を余計に一個作る羽目になった。
つくづく副指令の方を断っていて良かったと僕は心底父さんに感謝した。
そんなこんなで綾波を部屋まで送り副指令と別れて、僕と父さんは家に戻った。
そういえば父さんの分の食事、綾波が食べちゃった。と言うと、父さんはがっくり肩を落としていた。
僕はその後姿が可哀想になって、お茶漬けなら出来るよ?と声をかけると父さんはああ、頼む。と
言って少し嬉しそうにしていた。

最近気付いたけど、時々父さんは口元を歪ませてヘンな顔をする事が多くなった。
それが父さんの笑顔なんだと気付いたとき、僕は驚きのあまり腰が抜けそうになった。
それはものすごくキモチワルイ表情だったからだ。僕は母さんに似て生まれて心底良かったと思った。
89名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/02(木) 00:56:54 ID:???
脳内麻薬を自己精製できる冬月ハゲワロスwwwww
90名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/02(木) 01:47:20 ID:???
このシンジ妙におっぱい星人だなw
91名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/02(木) 07:34:31 ID:???
ツマンネ
92名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/02(木) 11:36:47 ID:???
激しくGJ!!!
93名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/02(木) 18:17:34 ID:???
ワロス
94名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/02(木) 19:30:28 ID:???
「あー、疲れたぁ。父さん今日は店屋物でいいよね?」
僕はばたりとソファーに倒れこんで父さんにそう問いかけた。
最近僕と父さんの関係は、どちらかというと僕の方にやや有利に傾いていた。
そりゃそうだ。初めのうちこそ僕は父さんにみっともないところを見せはしたけれど
父さんのそれは僕の比じゃなかったから。
その上日常生活の全てを僕が面倒見ている。父さんといえば金を出すくらいのことしか出来ない。
だから僕がこう提案しても、父さんには拒否権はないんだ。

今日僕はドイツから来るという新しいエヴァと、そのパイロットを迎えに行った。そこで使徒に
遭遇したのだ。何とか新しいパイロット…惣流・アスカ・ラングレーと名乗る少女と共闘して
その殲滅には成功したけれど、彼女の生意気で意地悪な態度に僕はもうぐったりしてしまったのだ。
確かに可愛い娘だったけど、正直仲良くやっていく自信がない。というか相手にその気がない。
僕は、はあー。と大きな溜息をついた。

「報告は受けている。シンジ、今日はご苦労だった」
父さんの言葉に僕はびっくりして顔を上げた。よもや父さんから労わりの言葉が聞けようとは。
感動している僕に父さんの言葉は更に続いた。
「セカンドともうまくやっていけているようだな。流石私の息子だ。鼻が高いぞ」
ちょっと父さん褒めすぎ…。僕は普段の父さんらしくない言葉に照れつつ顔を上げた。
…ちょっとまって父さん。そのデジカメ何?

父さんは僕の問いに、いつもの気味の悪い笑顔で振り返った。
95名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/02(木) 19:44:24 ID:???
「急なことでプラグスーツの用意も出来なくてすまなかったな、シンジ」
気味の悪い笑顔に拍車がかかる。僕はその言葉に慌てて父さんの手の中のそれに
目を走らせた。その瞬間、僕は自分の全身から血の気が失われていくのがわかる。
やりやがったよ、この親父…。
僕は父さんの手の中のそれを呆然と見つめる。そこには女性物のプラグスーツに身を包み、
恥ずかしそうに俯く僕の姿。ていうか、いつ撮ったのこれ。
「うむ。加持くんが報告書と共に参考資料として提出してきた」
父さんは勝ち誇ったように僕を見つめそう言った。嘘だ。絶対あらかじめ頼んでおいたんだ。
僕はあの無精髭の顔を思い出して悔しくなった。

「ところで腹が減ったな、シンジ」
何気なさを装ってはいるけれど、どう見てもその顔は勝ち誇っている。悔しい。
でも僕は素直に頷くしかなかった。
「…父さん、何が食べたいの?」
のろのろと僕は立ち上がりエプロンをつけて台所に立った。そろそろ児童虐待で訴えれば
勝訴の一つも勝ち取れるような気がして僕は小さく溜息をついた。

僕は追い詰められた中年パワーの凄さを思い知らされた気がした。
96名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 01:17:49 ID:hOi+VEYi
age
97名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 01:31:33 ID:???
    グッジョブーン!!

  ( ^ω^)   n
⊂二   二二二( E)
  |  /
  ( ヽノ
  ノ>ノ
三レレ
98名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 02:15:04 ID:???


シンジ「お父さん・・・おはよう」
ゲンドウ「・・・」
シンジ「朝はパンでいいよね?」
ゲンドウ「・・・」
シンジ「あ!やっぱりご飯だよね!ははは・・・」
ゲンドウ「・・・シンジ、朝はネルフで済ませるからいい」
シンジ「そっか、じゃあ自分の分だけ作るよ」
ゲンドウ「・・・」
ゲンドウ「・・・今日は食べて行く」
シンジ「え?・・・ホント?うん!じゃあ何か作るよ!」

なんか、考えてもいいネタが浮かばないな・・・
お題からして、ネタがいくらでも作れるはずなのに・・・
99名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 02:25:25 ID:???
アスーカ!アスーカ!
100名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 07:08:58 ID:???
100
101名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 20:35:21 ID:???
「なあんでアタシがそんな事しなきゃいけないのよ!」
アスカの怒声が響き渡る。それもその筈で、ミサトさんが言うには、2体に分かれてしまった
使徒を倒すには二人で息の合った同時攻撃が必要とのことで。それは、分かる。
でもなんでその特訓のためだからって、二人一緒の部屋で過ごさなきゃいけないんだ?!
しかも5日間も。僕もアスカに賛同するようにうんうんと頷いた。
「大体何かあったらどうすんのよ!この可憐なアタシの身体にバカシンジがその気になったら、
 どこにも逃げられないじゃない!」
いやそれはない。神に誓って。
アスカの叫びに思わずそんな言葉が口に出かけたが、僕は必死でそれを押しとどめた。
そんな事いったが最後、あのアスカのことだ。ボコボコにぶん殴られた挙句フィニッシュは
キン肉バスターだ。間違いない。と、ミサトさんがふうと溜息をついた。
「指令もそう言って反対したのよ。でも大丈夫よん♪監視カメラ設置しといたから」
ちょwww監視カメラってwwww
思わずミサトさんにツッコミながらも僕は意外な思いがしていた。父さんがそんな常識的な理由で
作戦に反対するなんてありえない。多分真相は僕が5日間も留守にしたが最後、パンツの替えが
どこにあるかも分からないとかそういう理由だろう。
僕がぼーっ、とそんなことを考えているとアスカはバタンと扉を開けた。
「こうなりゃ指令に直談判よ!ちょっと、バカシンジも一緒に来なさいよ!あんた息子でしょ?!
 アンタからも何か言ってやりなさいよ!あの女を左遷するくらいには役に立つでしょ!」
そう言って僕の腕を引っ張ってずるずると引き摺った。すると何故か綾波まで、私も行くわ。と言って
ついて来た。
正直流石の父さんも、仕事に関しては案外あれで冷静だろうから無駄なんじゃないかなあと
思ったのだが、アスカの剣幕にその言葉が僕の口から出ることはついになかった。
102名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 20:39:38 ID:???
「チルドレンが雁首そろえて私に何の用だ。」
父さんは僕達を見据えると威圧的にそう呟いた。こうして見るとホント鬼指令って感じで、
家にいるときの父さんとのギャップは凄まじい。これもひとつの猫かぶりというヤツだろうか、
と僕はぼけっと父さんの顔を見つめていた。アスカも流石に父さんの無駄な迫力には
勝てなかったらしく、しおらしく呟くことしか出来なかったようだ。

「指令からも何か言ってください。第二次性徴期の男女が一緒の部屋で過ごすなんて、
 どう考えても危険です。所詮男の力に女は叶わないですから。指令もそう仰ったんですよね?」
アスカの言葉に父さんは何のことだ、と呟いた。そして目を丸くする僕達に更に続ける。
「私はシンジが危険だ、と葛城君に言ったのだ」
なんじゃそりゃあ!とアスカの目が叫んでいた。僕はこの後のことを考えると本当に頭が痛くなった。
父さん、たとえその心配が本当のものだとしても、それ言っちゃったら後で苦労するの僕なんだけど。
だけど僕の訴えるような視線に父さんは何も応えてはくれない。
はいはいフォローなんて期待してませんってば。
「確かにシンジは男としては全く魅力的ではないが、仮にもネルフの最高司令官である
 私の一人息子だ。ゆくゆくは私の跡を継ぎ最高の権力と財産をその手に握ることになる。
 それを見越して今のうちに手をつけようとする者がいないと、一体誰が言えるというのだ。
 私はそれを危惧した。だが監視カメラをつけるというなら私に異存はない。話はそれだけか?」

いつになくめちゃくちゃ饒舌な父さんに僕は思わず目を丸くした。というか父さんそれ、僕を
心配するフリした自分マンセーだろ絶対。
103名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 20:45:31 ID:???
結局僕達はそのまま執務室を追い出された。父さんの発言に呆れ顔の僕を他所にアスカは
ふるふると身体を震わせぼそりと呟く。
「アンタの父さん、サイテー」
「そうね。酷いわ碇君」
綾波も賛同する。…って、僕が?!何でそんな話になるの?!
戸惑う僕を尻目に、アスカは目を輝かせると綾波の手をとった。
「やっぱファーストもそう思う?!そうよね、酷いわよね!アンタいつもむすっとしてて
 嫌な女かと思ってたけど、結構いいヤツじゃない。私達仲良くなれそう!」
「問題ないわ」
二人で手を取り合いこちらをじと、と睨みつけてくる。

二人が仲良くしてくれるのは僕にとっては有難い限りだけど、父さん、恨むよもう。
僕は溜息をつくと、とぼとぼとミサトさんの元へと戻った。

結局僕とアスカは5日間一緒に過ごすことになった。アスカの目が怖いのもそうだけど、
僕はその後家に帰ったとき、どれだけ家の中が荒れ果てているかということの方が気になっていた。
何しろ父さんは僕が家事全般を始めてから、折角今まで頼んでいたハウスキーパーの人を
断ってしまったからだ。おそらく3日は持つまい。

僕はすっかり主夫になってしまった自分に、再び溜息をついた。
104名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/04(土) 01:52:08 ID:???
「父さん、ちゃんとご飯食べてるのかなあ」

僕はぼそりと呟いた。そういえば第三新東京市に来てから、父さんと離れて暮らすのは
初めてのことだった。
それほど大した時間は経っていないはずなのに、僕にはもうそれ以前の生活のことが
遠い昔のことのように思えていた。
考えてみたら司令官である父さんは、僕がここに来てから家に帰って来ない事は一度も
なかった。遅くなるときはあっても、必ず朝僕が起きたときには、いつもの位置でコーヒーを
飲んでいる父さんの姿があった。
僕はその姿を見ているだけで、何だかいつも安心できていたんだと言うことに気がついた。

「なによ、あんたファザコン?!」
不機嫌そうにアスカが呟く。僕はそんなんじゃないよ、と唇を尖らせた。それからふと気になって
アスカは父さんとか母さんは?と聞くといきなり不機嫌になり煩いわね!と叫びだした。
しばらく無言の時が続く。と、アスカがいきなり口を開いた。
「いるわよ両親。…育ての親だけどね。私を生んでくれた母さんは死んじゃった。」
いきなりしゃべりはじめたアスカに僕はお父さんは?と聞くと少し眉根を細め、それでもぼそぼそと
話し始めた。
「精子バンクって知ってる?私の母さんはそこで精子を買ったの。試験管の中で私は生まれた。
 母さんの買った精子は超一流の男性しか登録できない精子バンクのものなの。勿論買う相手にも
 それなりに資格が必要よ。要はアタシは超一流の精子と卵子が合わさった、いわばエリートなの!
 もともとアンタなんかが口をきける存在じゃないの!分かった?!」
最後はほとんど叫び声だった。僕はなんだかアスカが泣いているような気がして、それでもこくりと
頷くことしか出来なかった。
105名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/04(土) 01:54:42 ID:???
やがて就寝時間が来て僕達はベッドに入った。隣からはアスカの規則正しい寝息が聞こえてくる。
ふと、アスカが密かに呟くように声を上げた。
「ママ……」
その声に、僕は強気で乱暴で、意地悪な女の子だと思っていたアスカが、実は普通の女の子なのだな
ということに気がついた。
そして、多分ここに来る前の僕と同じ、心に吹く冷たい風の止め方の分からない、道に迷った
子供なのだということも。
そういえば僕は、いつの間にか何事にも迷わなくなっていたことに気付いてふと笑みを漏らした。

父さん、僕はなんだか変わってきているみたいだ。

ここにいるはずのない存在に呟いて、僕もゆっくりと眠りに落ちていった。
朝起きてもここに父さんはいないけど、それでも僕は不安になったりはしない。
あの家で父さんは僕を待っていてくれるから。

それだけで、僕は何だか自分がとても強くなれる気がしてふふ、と笑った。
106名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/04(土) 01:56:16 ID:???
アスカよりレイの方が先にキン肉バスターを仕掛けそうな件について

かわいいやつらめ 良い仕事しやがってもー
107名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/04(土) 17:16:26 ID:???
>>106
いや、そこは折角だからアスカとレイでシンジとゲンドウにマッスル・ドッキングをw
108名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/04(土) 18:38:50 ID:???
学園オヤジver〜

2人、こたつでくつろぎながら、
ゲンドウ「シンジ、タバコ買ってきてくれんか?」
シンジ「え〜やだよ、寒いのに」
ゲンドウ「ほら、釣りはやるから(懐から千円取り出す)」
シンジ「二箱買ってきてあげるから二千円出してよ」
ゲンドウ「馬鹿言うな」

でも結局二千円だしちゃうパパン
109名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 00:26:41 ID:???
特訓の成果、無事使徒殲滅に成功した僕とアスカは、晴れて同居生活に終わりを告げ
それぞれの家に戻っていった。
ああ、何だか久しぶりに帰ってきた気がする。僕は何だか新鮮な気持ちで家のドアを開けた。

「ただいま、父さん」
うきうきした気分の僕を迎えたのは、これ以上ないほどにぐちゃぐちゃになった我が家の
無残な姿だった。
「なにこれ!父さん何やってんの?!」
僕は暢気にコーヒーを啜りながらソファーで寛ぐ父さんに叫んでいた。だけど父さんは
事も無げに言葉を綴る。
「うむ、おまえが居ないことを赤木君に伝えたら部屋の掃除に来てくれると言ってくれてな」
……?何の事だかさっぱり分からない。というか何で掃除に来て僕が出て行ったとき以上に
散らかるの。いや散らかるとか言うレベルじゃない。これは最早『破壊』と言って差し支えないだろう。
それとも何?明日から僕は赤木博士を心の中で『デストロイヤー赤木』とでも呼べばいい訳?
などと疑問符に囲まれた僕を無視して更に父さんは続けた。
「レイはレイで、何の風の吹き回しか知らぬが作ったこともないだろうに夕食を作ると言い出してな」
なに?惚気?自分モテモテとかいう自慢?!
僕は思いっきりむっとした。この中年、僕がご飯の心配してる間も、可愛い女の子と色っぽい
姐さんに囲まれてウハウハだったわけ?!などと僕が心底頭に来て、今まさにその後頭部を
打ちのめさんとしたその瞬間、父さんがふう、と溜息をついた。
110名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 00:27:42 ID:???
シンジが「え〜やだよ」なんて言えるような親子関係を築けたとは
なかなかやりおるなゲンドウ
111名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 00:29:23 ID:???
「だが顔を見合わせた途端、どういう訳だか知らぬが、突然レイと赤木君が激しいキャットファイトを
 始めたのだ」
…何ですと?
僕はちょっと父さんの話題に興味が湧いてしまったので、鈍器のようなもので父さんの後頭部を
一撃するのは止め、話を聞くことにした。それはつまりこういう事らしい。

曰く、二人ともなかなかの容姿だ。これは金になると判断した父さんは、二人を止めるのをやめ
好きにさせることにした。それをビデオに収めてネルフが独占発売することにしたのだという。
何しろネルフは今、深刻な経済困難だ。エヴァの度重なる修理代も決して安くはない。たとえ僅かな
資金でも逃すわけにはいけないというのが父さんの理屈のようだった。
…あのねー。
最早僕は突っ込む気にもなれずに溜息をついた。それでその後始末をするのは僕な訳だよね。
僕の呆れたような声に父さんはうむ、とさらっと頷いた。その悪気のない態度に僕の頭の奥でぶちんと
何かが切れる音がする。
「僕知らないからね?!大体何だよ父さんは!僕が父さんのお陰でどれだけ綾波やアスカに
 嫌われてると思ってるんだよ?いい加減僕の迷惑もちょっとは考えてよ!!!」
叫ぶような僕の言葉に父さんは意外にも、む。と言葉を詰まらせていた。その姿にちょっと言い過ぎた
かな、なんて僕が反省して言葉を発しようとしたその瞬間、父さんは諭すようにこう語り始めた。
112名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 00:30:46 ID:???
「よく覚えておけシンジ。複数の女と共に男が平和に過ごそうと思ったら、男は嫌われ役に徹するのが
 一番だ。共通の敵を得ることで女は仲間意識を感じる。それには両方に平等に男は嫌われなくては
 いかんのだ。辛いだろうが、今は耐えろ。今にお前にとって一番良い結果になる」

イイ話キタコレ。

僕はふーん、と気のない返事をした。何故ならこの間父さんの本棚を漁っていた時に見つけた、
池波正太郎の本に全く同じことが書いてあったからだ。
というか父さんこそ、それを一番実践すべき立場なのではないだろうか、と僕は思った。
これほどでっかい心の棚を持ってる人間も珍しいな、と僕は呆れてモノも言えない。
だけど何だか僕は、そういうちょっと抜けた父さんとネルフで見た威厳のある父さんの、両方の姿を
知ってるのは僕だけなのかもなあ、と思ってちょっとおかしかった。

くすくすと笑う僕に、父さんはちょっと不思議そうに首をひねっていて、僕はそれが余計におかしくて
しばらくずっと笑い続けていた。
113名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 06:07:16 ID:???
誰かエヴァ2の釣りエンドの続きを・・・
114リューク:2006/02/05(日) 10:33:09 ID:???
やっぱりゲンドウて面白!
115名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 14:08:02 ID:???
リンゴないから死神は帰れ
116幕間。ゲンドウの独り言:2006/02/05(日) 14:47:06 ID:???
ユニゾンの特訓で今日から5日間、シンジはこの家を留守にすることになった。
私はがらんとした部屋を見つめ、ふ、と溜息をつく。
思えばアレが共に暮らすようになってからの日々は、私にとって予想外の出来事ばかりだ。
私はシンジが来たからといって、何も変わらないと思っていた。勿論シンジが自分を捨てた私を
許すはずがないということも想定していた。
だが、いつの間にかあの息子は私の傍で、笑顔さえ見せるようになっていた。
そして一番驚いているのは、それを好もしいと思ってさえいる自分の感情だ。

きっかけはシンジが何を思ったか私にサングラスを寄越した事だろう。
あの日から歯車は、少しづつ違う方向へと回り始めた。
不覚にもそれは私の心を激しく揺らした。認めたくはないが、嬉しかった。
それからだ。私の中でシンジという存在が色を持ち始めてきたのは。
悲しい顔をして、叱って欲しいと呟くシンジに心が痛んだ。
酔いつぶれて、それでも私に礼を言うシンジの寝顔が…ひどく安心できた。
アレのもたらす出来事の全てが、私を巻き込み突き動かしていった。それは私にとって
本来忌むべきものだというのに、それを好もしいと思ってしまう自分がいた。

私は…変わり始めていた。
117幕間。ゲンドウの独り言:2006/02/05(日) 14:59:18 ID:???
私は変化を受け入れることに戸惑いを感じている。
変わってしまうことへの怖れを感じている。
それは。私が変わるということは、それは妻への憧憬を薄めてしまうことにはならないだろうか、
という怖れだった。それはそのために今まで生きてきた、その証を。道標を失うことだったからだ。
私はいつの間にか自分の心の中のシンジの存在が、喩えようもなく深いところに根を下ろし始めて
いることに怖れを感じていた。

だが、それでも私はシンジを今更手放す気にはなれなかった。それをして一番後悔するのは、
おそらくは自分だったから。
私は自嘲気味に笑みを漏らす。どうしようもない、己の欲深さに。

「シンジ……」
私はその名前を呟いた。この部屋にいるはずもない、その存在に向かって。
それなのに私の脳裏には、妻と同じ笑顔で振り向き返事をする息子の姿が浮かび
思わず笑みを漏らしていた。
いつの間にか私は、慣れてしまったはずの孤独に、今にも押しつぶされそうになっていた。
118幕間。ゲンドウの独り言:2006/02/05(日) 15:23:11 ID:???
3日目が過ぎた頃、私はついに孤独に耐えかね、赤木博士の掃除をしてくれるという申し出を
受けることにした。正直気が進まなかった上、誰もシンジの代わりになどなれはしないと
分かっていたが、それでも私は独りであの部屋にいることがもう耐えられなくなっていたようだ。
それならば部屋に戻らねば良い、ネルフで仕事でもしていればよいと自分でも分かっていた。
事実シンジが来るまでは、あの部屋にはろくに戻っていなかったのだから。
だが、それさえも私には出来なかった。
シンジがもし戻ってきたら、などと無意味な仮定をしてしまっていた。ありえないと
分かっているにもかかわらず、だ。
もしかしたら私は、それを期待していたのかもしれない。

私はふと思いついてレイを呼ぶことにした。
赤木博士と二人きりで、シンジと暮らすこの部屋で過ごすことは何となく気が進まなかった。
特に深い意味はなかったのだ。だが、彼女らはそうは思わなかったようだ。
気がついたらとんでもない戦いの火蓋が私の目の前で切って落とされていた。
それを呆然と見つめながらも私は、ああ、シンジが帰ってきたときこの部屋を見たら
きっと烈火のごとく怒りを露にするのだろう。ということの方が気になっていた。

だがその姿を見てみたくなった私は、掃除をするのは止めておいた。
シンジの帰りが、私は楽しみで仕方がなかった。
119名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 21:36:53 ID:???
パパン・゜・(ノД`)・゜・
120名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/06(月) 06:07:37 ID:???
やっぱりかわいいとこもある人だったのか
121名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/06(月) 20:37:51 ID:???
僕と父さんはその日一緒に外出していた。
部屋の中の完膚なきまでに破壊された調度品や雑貨などを買いなおさなければ
ならなかったからだ。
ちょうど今は修学旅行中で授業はない。ここを離れるわけにはいかない
僕達パイロットを残して、クラスの皆は沖縄へと旅立っていた。

「んー、父さんこれどっちがいい?」
僕の声に振り向いた父さんの顔が固まる。何故なら僕の手に握られていたのは
ペアのマグカップだったからだ。
とはいえ、単なる同じデザインの種類違いなわけだが。
「…お前の好きなものでいい」
父さんはちょっと上擦った声でそう言うとぷいとそっぽを向いてしまった。
僕は思ったとおりの反応をする父さんの姿がちょっとおかしかった。

「家具や調度品なんかは専門の人に任せた方がいいよね。あとは、何が必要だっけ」
びつぶつとそう呟く僕の姿に父さんはただじっと黙ってそばに立っていた。
正直言うと大した進歩だ。と、僕は少し感動していた。
なにしろあの父さんと一緒に買い物なんて、一年前には想像も出来なかったから。

ぼくはしみじみと幸せを噛み締めていた。
122名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/06(月) 20:58:14 ID:???
きょろきょろと辺りを見回し店内を物色する僕の目に書籍コーナーが入ってきた。
僕はそういえば、と思い出して父さんと一緒にそこに向かう。
「参考書買わなきゃ。休んだりすること多いから授業についていけないんだよ最近」
そういいながら一冊の本を手に取る。それをレジにもって行き父さんを探すと
父さんは釣り雑誌をじっと読んでいた。

「…父さん釣り好きなの?」
僕の声に驚いたように振り返ると、そのままその本を棚に戻した父さんは
そういう訳ではない、とだけ呟いてすたすたとその場を離れてしまった。
その後を慌てて追いかけながらも、僕は素直でない父さんの姿に僕はくす、と笑った。
何故なら僕は知っていたからだ。父さんの部屋の本棚には「釣りバカ日誌」のビデオと
マンガが全巻そろって置いてあるということに。

やがて買い物を終え、僕達は家に戻った。まだ荒れ果てた部屋だけど、やっぱり
家は落ち着くなあ、なんて言いながらソファーに寝そべる僕を父さんは少しだけ
目を細めて見つめてきた。
なんか、こういうのいいなあ。と僕は幸せな気分に浸る。

特に何もない平和な日常が、僕にはすごく新鮮でとても嬉しかった。
123名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/06(月) 22:14:04 ID:???
あんたの作品はギャグがあってもなくても面白いよ
あんたのは無理してギャグ入れずに自然体なのがいい
124名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/07(火) 17:14:50 ID:???
「あれ?父さん今日出張とか言ってなかった?」
いつものようにコーヒーを啜る父さんの姿に、僕は驚いたような声を上げた。
「冬月に任せた」
僕の問いにそれだけ言うと父さんは再びコーヒーを口に運ぶ。あーあ。相変わらず貧乏くじ
引かされてるなあと副指令に同情すると、僕は朝食とお弁当の用意に取り掛かった。
いつもの朝のはずなのに、僕はやけに今の状態がすごく幸せなような気がしてふふ、と笑った。
父さんはそんな僕を首をひねりながら見つめている。
こんな日がずっと続くといいな。僕はなんとなくそう思いながら出来上がった皿を父さんの前に
運ぶと、にっこりと微笑みかけた。父さんも訳の分からぬそぶりをしながらも、僕の顔を見つめ、
ふ。と目を細める。

不自然でない父さんの笑顔。

その顔がやけに僕の心に印象的に刻み込まれて、僕は良く分からないけど、幸せな筈なのに
ちょっとだけ不安な気持ちになった。
125名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/07(火) 17:17:45 ID:???
「堕ちてくる使徒を受け止める?!なにそれ?!」
アスカが呆れたような声を上げた。非常召集で呼び出された僕達を迎えたのは、暗い顔をした
ミサトさんと父さんの姿だった。
「作戦ともいえない作戦よ。…でもこれしか方法はない。指令とも何度も話し合ったの。でも駄目。
 大気圏外で動く使徒に、この間のような高粒子砲も役には立たないわ。あとはエヴァのATフィールドの
 届く範囲で直接攻撃するしかない」
「受け止め損ねたら、ジ・エンド。だけどね」
アスカが暗く呟く。その言葉にミサトさんはそうね、と暗い声を上げた。父さんはその様子をただじっと
見詰めている。
何も言わないけれど、その姿は僕には何だかとても辛そうで、僕の胸がずきりと痛む音がした。
そうだよね。こんなこと命令なんかしたくないよね、誰だって。
僕はうん、と頷くとミサトさんに出来るだけ明るい調子で声をかけた。
「僕やるよ。大丈夫、受け止めれば勝機はあるんでしょ?どうせ何もしなくても死ぬんだもん。だったら
 やるだけやってみた方が全然いいよ」
「勝率は0.00001%…まさに奇跡でも起きなきゃ出来ないわよ」
アスカがそう呟く。僕はその言葉に微笑みで返した。その姿にむっとしたようにアスカも叫ぶように
声を上げた。
「やってやろうじゃないのよ!奇跡でも使徒でも何でも、どんとこいっつーの!アタシは負けないわ!」
「…問題ないわ」
綾波もそれに賛同する。僕達の明るい姿にミサトさんはようやくほっとしたように笑い、それから
にこにこと声をあげた。
126名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/07(火) 17:20:20 ID:???
「作戦成功したら、みんなでスキヤキよん♪もち、アタシの奢り」
「わーいスキヤキスキヤキー」

僕達は昭和三十年代の子供のようにはしゃいでみせた。と、今まで黙り込んでいた父さんが
突然口を開く。
「スキヤキは牛肉を最もまずく食べる調理法だ。…せめて魯山人風スキヤキならばまだ食えたものを」
だったらアンタが食わせなさいよ、とミサトさんが口の中でもごもごと父さんに聞こえないように
文句を言った。
「じゃあ海原先生…じゃないや父さんの奢り?やったあ!あ、でもどうせなら僕スキヤキより
 焼肉がいいな」
「私、ラーメンがいい」
僕の言葉に被せるように綾波がぼそっと呟く。父さんはその声に戸惑ったように僕と綾波とを
交互に見つめた。迷ってるみたいだ。僕は父さんどっちを選ぶのかなー、なんて思ってそれを
見つめているとアスカがちょっと不思議そうな顔をして綾波に問いかけた。
「なあに?確かに焼肉みたいな匂いの強いの、アタシも出来ればゴメンだけど。何も奢りだってのに
 ラーメンじゃなくてもいいんじゃない?もっと御馳走っぽいもの色々あるじゃない。レストランの
 高級ディナーとかさ」
「お肉、きらいだもの」
綾波のその言葉に僕は慌てて声を上げた。
「それ先に言ってよ。いいよ僕もラーメンで。ね、父さん?」
僕の言葉にほっとしたようにとうさんもうむ、と頷く。綾波はちょっと不満そうにそれを見つめていた。
127名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/07(火) 17:22:48 ID:???
それから僕達は出撃の準備のため、部屋を出ようと歩き出す。
父さんはそんな僕達をただじっと見つめていた。
僕は擦れ違いざま父さんに、さよなら。と声をかけた。
父さんの動きがぴたりと止まる。でも僕はそれを振り返りはしなかった。

最期に思い出すのは、今朝見た父さんのあの笑顔がいい。
だから僕は父さんの姿を絶対に目に入れないようにして、黙ってエヴァに乗り込んだ。

有難う、父さん。

僕は心の中でそっと呟く。ここに来てから、僕はずっと幸せだった。だから、父さんを守って
死ねるなら、もうそれでいいとさえ僕には思えていた。

後悔はない。僕は、本当に父さんに出会えて嬉しかった。だから、もういいんだ。

「エヴァンゲリオン、出撃!」
ミサトさんの号令がエントリープラグ内に、響き渡った。
128名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/07(火) 22:37:37 ID:???
GJ!
美味しんぼワロスww
129名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/08(水) 00:33:17 ID:???
結果から言うと、僕達は無事作戦を成功させた。
約束どおりラーメンを奢ってもらったあと、皆と別れて僕と父さんは二人で
家路についていた。その道すがら、突然父さんがぼそりと呟いた。

「もう二度とあんな言葉を言うな」
僕は何のことだか分からず、一瞬聞き返す。すると父さんは少しだけ
震えた声で更に呟く。
「お前まで私を…置いていくつもりだったのか」
父さんの肩が震えていた。僕はその言葉にようやく自分が発したあの言葉のことを
思い出し、ごめん。と呟いた。
それから、母さんが死んで一番辛いのは僕だったのだと思っていたが
実は父さんの方が何倍も辛い思いをしていたことにも気がつく。
置いていかれた辛さを、父さんは僕よりもずっと長い間感じていたことに。

僕は父さんの方を向き直るとぺこりと頭を下げた。
「もう絶対言わない。ゴメン父さん、僕は忘れてたんだ。置いていかれる辛さを。
 あんなに辛かったのに、僕は今が幸せすぎて忘れてたんだよ」
その言葉に父さんは分かればいい、とだけ呟いた。
130名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/08(水) 00:45:01 ID:???
そのまま少しだけ無言で歩く。僕はふと思いついて、父さんに言葉をかけた。
「ね、父さん。いつかは使徒も襲ってこなくなるのかな?もしそんな日が来て
 平和になったらさ、一緒に釣りに連れて行って」
僕の突然のそんな言葉に驚きつつも、父さんはああ、とだけ呟いた。
僕はその返事ににっこりと微笑んだ。

「じゃ、約束ね。全部終わったら、僕等は一緒に釣りに行く。それまで僕は絶対死なない。
 どんな事があっても僕は必ず帰ってくるよ。だから父さんは安心して僕を待ってて」
僕の言葉に父さんは再びああ、とだけ呟いた。
その声はさっきよりももっと震えていて、僕は父さんの方を出来るだけ見ないようにしてあげながら
にこにこと微笑んでいた。

もう僕は、さよならは言わない。
131名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/08(水) 11:54:49 ID:???
>>130
全米が泣いた
132名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/08(水) 18:21:00 ID:???
微妙に(要所要所だけだが)本編とリンクされてるよーだが
これラストまで行くつもりなのか?
133名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/08(水) 21:50:20 ID:???
マジでイイ…
ちょっとうるっと来てしまった
こんな風に、本編の2人も分かり合えたかも知れないと思うと、涙が出るよ

何はともあれGJ!!
134名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/08(水) 22:33:27 ID:???
涙ちょちょぎれた
135名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/08(水) 23:31:04 ID:???
良スレあげ
136名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 00:10:30 ID:???
僕は今日再び父さんと一緒に出かけていた。母さんの命日だからだ。
たくさんの同じ形の墓標が並ぶ丘に、僕と父さんは立っていた。
「ここにあるのは形だけだ。遺体すら、ここにはない」
父さんはぼそりとそう呟いた。
僕は三年前に逃げ出してから、ここには来たことがなかった。
ここに来たら母さんは本当に、この世にはいないのだということを認めてしまうような気がしたから。
だけど今は、少しだけ僕は落ち着いた気持ちでここに立つことが出来ていた。
それはきっと、父さんが僕の隣にいてくれるから。
僕は父さんに向き直るとおずおずと問いかけた。

「写真とか、残ってないの…?」
「全て処分した。想い出は心の中にある、それだけでいい」
僕の問いに父さんはそう呟く。僕は父さんが『想い出は重いで』などと口走らなくて
本当に良かったと思った。
「でも僕は、母さんの顔さえ覚えていないんだ」
僕の呟きに父さんはむ。と言葉を詰まらせるとポケットから何かを取り出し僕に握らせる。
それは、小さな四角いポケットミラーだった。僕は父さんのボケも中々堂にいって来たなと思いつつ
それをポケットにしまった。
正直今日くらい親子漫才は勘弁して欲しかったからだ。母さんの前で滑ってもイヤだし。
そんな僕の態度に父さんは少ししょんぼりしながら、小さく呟いた。
137名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 00:21:55 ID:???
「想い出は記憶の中にある、それだけではない。お前の持つ全て…身体や
 血や肉。お前を形作る全てがユイの残した想いであり、記憶の一部だ」
僕は父さんの言葉に何となくよく分からない顔で、それでもこくりと頷いた。
言いたいことは今の僕には良く分からなかったけれど、それでも僕の身体は
僕だけのものではないと、その事だけは僕には良く分かったから。
いつかきっと父さんの言葉が僕にも分かる日が来るのだろうな、と僕は納得した。

「時間だ。先に行く」
バラバラと父さんを迎えに来たヘリが都合よく僕達の頭上に現れた。
僕は父さんってアダルト系ギャンブル雑誌の漫画の悪役のようだなと思いながら
それをただ見送っていた。言葉はかける必要はなかった。
僕の伝えたい言葉は、いつだって父さんにはもう伝えてあったから。

ヘリの中には綾波が乗っていた。僕はそれを見つめながら父さんをじっと見送った。
それから、何故だかここに綾波がいなかったことが、僕は少し残念に思えて
ちょっと驚いた。綾波が母さんの墓参りに来る必要はないのに、何故そう思えたのか
僕にはさっぱり分からなかった。
でもそれは、父さんを迎えに来た綾波の、少し寂しそうな表情がひょっとしたら僕に
そう思わせたのかもしれないと思えてきて、少しだけ僕の心が痛む音がした。

僕は綾波の、ヘリの中から僕を見つめる顔を思い出して、少しだけ溜息をついた。
138名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 03:41:11 ID:???
親子漫才というかゲンドウの一人コントだな
似たものどうしの親子いい感じだよいい感じ
139名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 04:18:06 ID:???
要所要所に散りばめられている淡いギャグが好き
海山先生はワロタ
140名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 07:03:06 ID:???
神。さりげなく入るギャグが巧み。シリアス展開も感動展開もイイ!!
トウジの話しをどう処理するのか気になりんぐ
141名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 21:28:44 ID:???
今思うに、僕は多分浮かれて調子に乗っていた。
父さんとの関係は驚くほどに良好で、それに比例するかのようにシンクロ率も伸びていった。
アスカはそれが面白くなかったみたいで、今日も挑発するように僕をけしかけてきた。
「無敵のシンジ様なら、私たちなんかいなくっても余裕よね?」
いつもなら受け流すその言葉にむっとした僕は、突如現れた球体の使徒に先制攻撃を仕掛け。
…僕は突然地面にできた妙な空間へと、呑み込まれていた。

「いつまでこうしてればいいんだろう…」
僕は生命維持モードに切り替えたエントリープラグの中で膝を抱えぼそりと呟いた。
辺りには何もない。出口どころか自分がどこにいるのかさえ分からない奇妙な空間に僕はいた。
「寒い…。もう、駄目なのかな…」
僕はぶる、と身体を震わせた。心の中で父さんの顔が蘇る。僕はごめんなさい、と小さく呟いた。
僕が調子に乗ったから、だからこんな事になってしまった。
父さんはきっと悲しむだろう。せっかくした約束も、もう守ることが出来ないのかもしれない。僕は父さんに、
またあんな思いをさせてしまうかもしれない。

ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。

僕はきりきりと胸が痛む音を聞きながら、そう呟くとそっと目を閉じた。
142名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 21:31:47 ID:???
と、僕の目の前に突然さまざまな映像が蘇る。
父さんに捨てられた頃の僕。泣き出して、それでも誰も自分の下には来てくれないと絶望するように
泣きじゃくる僕。
砂の山を蹴る僕。僕はあの時、お家を作っていた。父さんと母さんと僕とが住む、幸せなおうち。
だけど砂で出来たそれには、当たり前だけど僕も父さんも母さんも入ることなど出来なくて、それが
頭にきて僕は折角作ったそれを泣きながら蹴り崩していた。
どうしてこんな事を思い出すのだろう。
僕は不思議だった。これは全て『過去のこと』だったから。
今は僕はもう、父さんと暮らせているし『おうち』も手に入れた。父さんは僕の傍にずっといた。
だからもう、こんな過去は忘れてしまっていいはずだった。
『本当にそう?』
僕の中で誰かが問いかけてくる。
僕はあたりまえだ、と呟いた。昔は色々辛かったけど、でももう僕はそんな思いはしないですむ。
父さんは僕を見つけてくれた。僕達はもう分かり合えた。だから昔のことなんて、小さなことだった。
『分かり合うって何?父さんの何を知ってるというの?』
再び問いかけてくる、声。
僕はびくんと体が震えるのを感じた。
父さんは何故僕を置いていったの?何故会いにも来てくれなかったの?何故今、僕を呼んだの?
エヴァに乗せるため。エヴァのパイロットが必要だったから。
「でもそれは!そうかもしれないけど、でも今はそれだけじゃなくなった!」
僕は不安を振り払うかのように誰もいない空間に叫んでいた。
「忙しかったんだ…母さんが死んだのが辛くて、だから父さんは仕事をすることでそれを忘れようと
 したんだよ…!」
自分に言い聞かせるように、呟く。だが響く声は尚も僕を追い詰めた。
『仕事って何?エヴァって何なの?父さんは何故それに関わる仕事をしているの?何故それが
 母さんを忘れるための手段になるの?』
その言葉に、気付いたら僕は耳を塞いでいた。
「知らない!そんなの僕知らないよ!でももういい!だって僕はもう死んじゃうんだ!」
僕の叫びに、再度その声が響いた。耳を塞いでもそれは僕の頭の中から響いていた。

『…もう、いいの…?』
その言葉と共に、声の主が僕の前に現れた。それは小さな頃の姿をした、僕、だった。
143名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 21:33:51 ID:???
「………!!!」
エントリープラグの異変に気がついて僕は身体を震わせた。
「血の匂い…!浄化機能が…落ちてるんだ…!」
瞬間、たとえようのない恐怖が僕を襲った。ふと僕の脳裏に父さんの顔が浮かぶ。
「助けて…!死ぬのは嫌だ…僕はまだ、死にたくない…!お願い父さん、僕を助けて…!!!」
そう叫んだ瞬間、僕の意識は闇に、堕ちた。

気がついたら僕は病院にいた。目の前に見えたのはここに来たときのような知らない天井ではなくて、
父さんの顔だった。
僕はそれに安心したように笑みを浮かべる。そんな僕に父さんがぼそりと呟いた。
「よくやったな…シンジ」
その言葉に僕は、助かったのはおそらくエヴァの暴走によるものなのだと悟った。ここに来たての
時と同じように、僕はエヴァの暴走によって助けられた。
…父さんじゃ、なかったんだ。
僕の心が少しだけ痛んだ。でも僕はそれを直ぐに振り払うと再び父さんに笑いかけた。
『当たり前だよ。だって無理だよ。父さんだってどうしていいか分からなかったに決まってる…』
無理やり僕はそう納得しようと心の中でそう呟く。

でも僕の心に響くあの声が、いつまでもいつまでも僕の中で繰り返されていて、僕は父さんの顔を
まっすぐに見ることが出来なかった。
144名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 21:47:59 ID:???
良作
145名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 23:07:05 ID:???
マジで泣きそうになった、GJG!
期待してますよd(*`∀゚)
146名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 23:12:49 ID:???
ああ…こんな話が書きたかった…
147名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 00:42:17 ID:???
マジでがんばれ
すごい好きだこの話
148名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 01:28:17 ID:???
本編ではシンジに力を与えた「よくやったな」が
ここでは反対の意味になったんだな

すごい考えさせられる話だ。正直初めはここまでとは思わなかった
GJ!
149名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 01:38:08 ID:???
Zです。
いい意味で人間くささにみちあふれてる。
エヴァ後半の魅力はその人間くささだったけど、
オリジナルとは逆のベクトルなこの親子の心の移り変わりを捉えて描ける創造力は、
ま さ に ネ 申
最初ギャグっぽかったのに、それすら包括して話を前にすすめた貴方の筆力に脱帽。

GREAT JOB!
You're No.1!
150名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 16:39:56 ID:???
この板で最高の良作の予感
151名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 16:55:11 ID:???
やっぱエヴァは父と息子の物語だ。
152名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 21:41:57 ID:???
神を肉眼で確認した
ログ取ってHTMLで保存しても十分にいいぐらいの良作だろ
153中の人:2006/02/11(土) 02:44:37 ID:???
なんかもうたくさんの身に余る褒め言葉に腰が抜けそうです。
ガクブルしてます。
とりあえずラストまで話は出来てるわけなのですが
今書いてない部分の展開に重大な穴を見つけたので
一晩ばかし練り直します。

ありがとうございます。本当に嬉しいです。スレ独占みたいな状態が心苦しかったのですが
少しだけ気が楽になりました。
でも自分以外の人も書いて欲しいです。心から望んでます。
自家発電ばかりは、嫌ぁぁぁぁ!w
154名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/11(土) 03:38:46 ID:???
乙w存分に抜きまくれ
155名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/11(土) 09:00:16 ID:???
オレにはここで自家発電する事しかできない。
だが君になら、君にしか書けないものがあるはずだ。
まぁ、後悔の無いようにな。
156中の人:2006/02/11(土) 22:28:42 ID:???
今自分は、初め屁で空を飛んでいた筈のキン肉マンが、徐々にシリアス展開に突入していった時の
ゆでの気持ちがこれ以上ないほどよく分かる。

穴は塞がるかどうか分からんが、考えててもうまくいかんのでとりあえず書きはじめたり。
うはwww怖いくらい見きり発車wwww
157名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/11(土) 22:29:47 ID:???
シンクロテストが続く。僕のシンクロ率は以前とは比べ物にならないほどに低下していた。

溜息をついてシャワー室に向かう僕に、アスカが少しだけイラついたように声をかける。
「なによ?あんな事くらいで調子崩しちゃって、バッカみたい!」
僕は正直彼女の相手をする気にもなれなくて、無言でそれを受け流して歩き出す。と、
追い討ちをかけるように綾波の声が響いた。
「碇君、死ぬのが怖いの?」
その言葉に僕の身体は自分でもびっくりするくらい震えた。思わず振り返る僕に、綾波は
遠い目をして更に続けた。
「羨ましいわ。私は、そんな事感じたことない」
その言葉に驚いて目を丸くする僕を他所に、アスカは綾波に向かって呆れたように声をかけた。
「感じたことないって、知らないだけでしょ?人形じゃあるまいし、感じないなんてことないわよ?!」
しかし綾波は少しだけ悲しそうな顔で、アスカに向かってこう言った。

「私は、人形かもしれないわ」
158名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/11(土) 22:31:00 ID:???
僕の心がずきんと痛む音がする。気付くと僕は綾波に向かって叫んでいた。
「人形なんかじゃない!だって綾波は言ったじゃないか。美味しい料理が作れるようになるか?
 って。人形はそんな事思わない!綾波は、人形じゃないよ!」
そこまで言って、僕は少しだけ自分の心が冷たく冷えていくのを感じて身体を震わせた。人形。
なんでも言うことを聞く、自分のない存在。それは、まるで。
「人形は…僕の方なのかもしれない…」
エヴァに乗ることも、死なないと約束したことも。全てそれは父さんの望んだことだった。僕はただ
それを守ろうとしただけで、そこに自分の意思はあったのだろうか?

僕は急に分からなくなった。と、綾波が抑揚のない、いつもの声で僕に向かって声をかけた。
「あなたは人形じゃない。あなたと私は同じだもの。私が人形じゃないなら、あなたも、人形じゃないわ」
その言葉に救われたような思いがして、僕は少しだけ微笑みながら、こくりと彼女に向かって頷いた。

なによ、意味分からない!アンタ達二人ともバッカじゃない?!というアスカのイラついた声が
部屋の中に、響いた。
159名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/11(土) 23:34:59 ID:???
その後僕はシャワーを浴び、家に戻ろうとネルフの廊下を歩いていた。と、その時ミサトさんと
赤木博士の声が聞こえてくる。
「4号機の実験中に米国の第二支部が消失したそうじゃない。しかも原因不明。それで3号機は、
 こっちに引き取ることにした訳?厄介払いねまるで」
「S2機関…。よく分からないものを、無理に使おうとするからそうなるのよ」
「…それはエヴァも同じじゃない」

深刻そうな、でも妙に気になるその話題に僕はこそりとその部屋を覗いた。ミサトさんはちょっと
不機嫌そうに呟き、赤木博士から何かファイルを受け取っていた。
「それで?パイロットは?…待ってちょうだい。よりによって、なんでこの子なの?!ただでさえ
 シンクロ率が落ちてきているのに、こんなの知ったらあの子…!」
突然出た僕の話題に、びくりと体が震える。その物音に二人が僕の存在に気付いて振り返った。
「シンジ君…」
ミサトさんの声が震えている。僕は立ち聞きしていたことを詫びながら、それでも気になるそれに
話題を繋げる。
「パイロットって…僕の知ってる人なんですか?教えてください。僕は平気です」
僕の真剣な声にミサトさんは戸惑いがちに、しかし諦めたように僕にファイルを手渡した。
「隠していても仕方がないわ。…いずれ分かることだもの」

僕は手渡されたそれに目を走らせて。その瞬間、僕の手からそれはするりと離れ、床に渇いた音を立てた。
160名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/11(土) 23:37:09 ID:???
「うそ…どうして…どうしてなんですかミサトさん!!!」
僕の叫びにミサトさんは辛そうに眉根を寄せた。

「マルドゥック機関が選出した、最適の適格者よ」
ミサトさんの代わりに赤木博士がそう僕に伝えてくる。言葉の意味がよく分からない。
僕に分かるのは、選ばれたパイロットは、それはここに来て初めて出来た、僕の大切な友人だと
いうことだけだった。

「…父さんに聞いてきます!」
僕は慌てたように部屋を飛び出す。ミサトさんは焦ったように僕を呼び止めたけれど、
僕はそれに構っていられなかった。振り向きもせず僕はミサトさんに叫ぶように答えてネルフの
廊下を走り出した。

どうして!
どうして父さん!!!

僕は初めて父さんの仕事に、疑問を持ち始めていた。
161名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 00:31:56 ID:unUaXYvC
続待ちage
162名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 00:55:50 ID:???
やっぱいいよあんたの話は続きが気になるよ
163名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 01:21:38 ID:???
執務室の扉を開ける。父さんは深刻な顔をして副指令と共に、応接テーブル置いてある
ソファーに向き合って座っていた。
「父さん…」
僕は静かに声をかける。父さんは初めてその声で僕の存在に気付いたように振り返り、
それから抑揚のない声でぼそりと呟いた。
「…シンジか。私は忙しい。話ならば帰ってから聞く」
その声に僕は静かに目を伏せた。
そうだよね。父さんは今、とても大変で重要なときなんだね。

…副指令との将棋の対局で!!!

僕の頭の奥でぶちんと何かが切れる音がする。僕は副指令に向かってにっこり微笑んだ。
「副指令、父さん明日、お弁当要らないみたいです。良かったら副指令召し上がりますか?」
僕の言葉に副指令はまるで荒岩主任の弁当を貰ったときの、金丸商事のハゲ常務のように
小躍りして喜んでいた。
それから父さんに向き直ると、碇、オタこの対話というのは大切だぞ。などと言いながらいそいそと
部屋を出て行った。

僕はその察しの良さと、現金さに感謝しつつ父さんの傍まで近寄った。
164名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 01:24:11 ID:???
「何の用だ」
溜息をついてそう問いかけてくる。僕はちょっとだけ躊躇した後、それでも勇気を出して言葉を発した。
「トウジが…僕の友達が、新しいエヴァのパイロットになるって、本当なの…?」
僕の言葉に父さんは少しだけ溜息をつくと、いつものようにああ。とだけ呟いた。僕はその言葉に頭に
血が昇るのを感じる。
「どうして?!どうしてトウジなの?!」
叫ぶような僕の言葉に父さんは少しだけ言葉に詰まり、しかしきっぱりと僕に向かって言葉をかけた。
「パイロットは必要だ。新しいエヴァが来る、それはお前たち三人で対処できる問題ではない」
それは至極当たり前の論理だった。しかし僕はそれでも納得などできはしない。
「でも友達なんだ。…僕の友達に、こんな危ない真似させられないよ…!嫌だよ僕は…!!!」
そんな僕の言葉に、父さんは少しだけ眉根を寄せて僕に向かって強い口調で呟いた。

「ならばお前は、友人でなければいいのか?」
「………!!」
父さんの言葉に僕の体が震える。何もいえなくなった僕に、父さんは無言で部屋を出るよう促した。
追い立てられるように僕は執務室の扉を閉じると、深く溜息をつく。
父さんの言っていることは正論だ。多分、間違っているのは僕の方だ。それでも僕は納得できなかった。

どうしようも出来ない事実に、僕の心は押しつぶされそうなほどに暗いところに沈んでいった。
165中の人:2006/02/12(日) 01:30:18 ID:???
うっわ、この状況でとんでもねえ誤字w

誤 オタこの対話

正 親子の対話

です。うは恥ずかしいwまあ普段からよく誤字脱字ありますから慣れっこかもしれません皆さん。
…ごめんよく推敲する…。酔って文章書くもんじゃねえなあやっぱり。
166名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 09:35:23 ID:???
屁のつっぱりはいらんのですよー!!
167名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 09:38:26 ID:???
すごい修羅場になってきたな
本編とは違った神児の弱さが出ていてとても面白いよ
168名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 10:02:47 ID:???
>>165
読者らの脳内補完に頼ればいいと思うよ
169名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 16:51:03 ID:???
僕は重い気持ちを引き摺りながらネルフの廊下を歩いていた。
と、自販機が僕の目に入る。とりあえず落ち着こうと僕はコーヒーを買ってソファーに腰を下ろした。
頭の中はもうぐるぐるだ。トウジのこと、エヴァのこと、父さんのこと、シンクロ率のこと。…僕の気持ち。
溜息をついてコーヒーを啜る僕の目に、女性職員を軟派に口説く加持さんの姿が目に入ってきて、
余計にイライラさせられる。
いい気なもんだよ、と思っているとあえなく振られた加持さんが突然僕にお茶でもどうだ?
と声をかけてきた。
「僕、男ですよ?」
軽く睨みながらそう答える。この無精髭には嫌な思い出しかない。僕はかつてアスカの
プラグスーツを着た僕の姿を激写された過去を思い出し、イライラに拍車がかかった。
しかしそんな僕に構わず加持さんは強引に僕の腕を取り何処かへ連れて行く。この不精髭は
全く人の話を聞いていないようだ。僕は諦めて溜息をつきながらも、それについて行くことにした。

連れて行かれた先はスイカ畑だった。目を丸くする僕に、加持さんはホースで水を撒きながら
楽しそうに呟く。
「可愛いだろう、こいつらは俺の子供みたいなもんだ。植物はいいぞ。手を掛ければ掛けるほど、
 応えてくれるように大きく育つ。それに人間みたいに裏切ることもないしな」
僕はその言葉にずきんと胸がいたむ。
「聞き分けのない子供は、親を裏切ってるんでしょうか…」
僕の呟きに加持さんは振り向くと、表情も崩さずぼそりと呟いた。
「子供だからと言って、親の望む人生を歩む必要はない。自分の人生を決めるのは他でもない
 自分自身だ。それが親の意に背くことであっても、それは裏切りじゃない」
その言葉に、少しだけ気が楽になる。僕は無意識のうちに、頭の中でずっとぐるぐるしていた疑問を
口に乗せていた。
170名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 16:54:12 ID:???
「エヴァって何なんだろう…」
僕の言葉に、加持さんは少しだけ眉根を寄せると僕の耳元で囁くようにこう言った。
「知りたいか…?」
びっくりして顔を上げる。加持さんの真剣な目が僕を射るように見つめていた。
「加持さんは…何か知ってるんですか?どうして」
「なに、アルバイトさ。俺も真実を知りたい口でな」
片目を閉じてそう微笑む。僕はいちいち気障なひとだな、と思った。
真実。僕はそれを突き止めたい欲求に駆られる。父さんは僕に何かを隠している。何かを父さんは
しようとしている。
それを知りたくて、でも何も言ってくれないからこんなにも不安なのだと、僕は気がついた。

でも。

僕は加持さんの目を見つめると、ふるふると首を振る。
「…僕は、父さんの口からそれを聞きたい。だからいいです」
加持さんはそうか、とだけ呟くと溜息をついた。僕はそれを見つめながら更に続けた。
「加持さんも、できたら危ないこと止めてください。加持さんの知りたい真実が何なのか
 分からないけど、何か分かったら加持さんにもお知らせします。だから…加持さんに何かあったら、
 悲しむ人がいるんでしょう?その人のためにも、お願いします」
171名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 16:55:54 ID:???
僕の脳裏には父さんの顔が浮かんでいた。僕に何かあったら、父さんは悲しむ。それは唯一僕が
知っている真実だった。
「…考えとくよ」
加持さんは複雑そうに微笑みながらもそう答えた。僕はにっこりと微笑みながらぺこりと頭を下げ、
苦笑いをする加持さんにお礼を言う。

それからふと思いついてスイカ畑を眺めながら僕は加持さんにこういった。
「今度、このスイカ2〜3個戴けますか?僕スイカ料理作ります。加持さんも食べに来てください」
「おいおい、俺の子供達を君は食っちゃうつもりかい?」
加持さんの言葉に僕はくすくすと笑った。
「なに言ってるんですか?スイカがこんなに甘く大きく育つのは、誰かに食べて欲しいからじゃ
 ないんですか?僕ならそう思います。だから、ちゃんと食べてあげなきゃ可哀想ですよ」
その言葉にちょっと納得したように加持さんはふむ、と呟くとにっこり笑ってこういった。

「楽しみにしてるよ」
その言葉に微笑みで返して、加持さんと別れた僕の足はまっすぐ家に向かっていた。
迷いはまだあるけれど、僕の胸にはひとつの決意が浮かんでいて、それが僕を追い立てるように
急がせていた。

僕は生まれてはじめて、父さんに反抗する事にした。
172名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 18:56:09 ID:???
今なんとなくアフリカのどっかの部族の干しスイカを思い出した
173名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 22:30:58 ID:???
「ただいま…」
僕はおずおずと家のドアを開けた。父さんは珍しくもう家に帰ってきていた。薄暗い部屋の中で、
何かを考え込むようにソファーに座っている。
僕の足が震える。怒られるかもしれない、呆れられてしまうかもしれない。…また、見捨てられるかも
しれない。
でも僕は止まる訳にはいかなかった。父さんを信じたかった。だからまっすぐに父さんの元へ歩き出す。
「シンジか…」
父さんが僕を見上げる。サングラスに遮られて、父さんの目が何を言おうとしているのか分からない。
僕はごくりと唾を飲み込むと、父さんに向かって声を上げた。
「3号機には僕が乗る」
父さんが驚いたように僕を見上げた。僕はそれに気付かぬ振りをして言葉を続ける。
「…父さんの言ってる事は尤もだよ。エヴァは4体、パイロットは3人。だから、パイロットを増員する
 ことには僕はもう文句は言わない。でも、危険かもしれないエヴァに、僕の友達を乗せるのは嫌だ。
 …聞いたんだ。3号機を作った支部は原因不明の事故で消失したんでしょ?」
「初号機はどうする」
父さんが動揺を隠さぬ震えた声で僕に問いかける。僕はそれに頷きながらそれに答えた。
「実験の間だけでいいんだ。起動実験、するんでしょ?それには僕が参加する。そこで安全が確認
 されたら、そしたらもう僕は父さんに反対しないから…!」
僕の言葉に、父さんは迷っているみたいだ。言葉を詰まらせて固まるその姿に、僕はふり絞るように
言葉を繋げる。
174名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 22:32:49 ID:???
「一度でいい。お願いだから、僕の好きなようにさせて。お願い父さん。…僕を信じて…!」

信じて。
僕は自分で言ったその言葉を、複雑な想いで心の中で繰り返す。僕は父さんに僕のことを信じて
欲しい。その想いに嘘偽りはない。でも、それ以上に僕の心にある思いは。

信じたい。

父さんを信じたい。父さんの仕事を、想いを。…父さんの作った、エヴァを。僕は信じたかった。
僕の真剣な瞳に、父さんはようやく渋々といった態度で、しかしきっぱりと頷いてくれた。
僕はありがとう、と父さんにお礼を言って夕食の準備に取り掛かる。
これが終わったら、僕は父さんに尋ねてみよう。
エヴァのこと。父さんがやろうとしていること。父さんの仕事のことを。
答えてくれるかは分からないけど、それでも僕は逃げちゃいけないと、そんな気がして僕はもう一度
父さんの顔を見つめた。

サングラスが電気の明かりで反射して、僕には父さんの表情が、よく分からなかった。
175名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 00:28:34 ID:Rr8lw0OF
加持とトウジの死亡フラグが消えた…
(トウジは元々死亡じゃないか)

変わり始めてるな、世界が

期待age
176名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 00:28:53 ID:???
ktkr
177名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 00:35:40 ID:???
うあ、シンジが3号機に乗るのか
どんな展開になるんだろ…気になる

職人さん頑張ってくだちい
178名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 00:44:16 ID:???
楽しみでしょうがないからスイカ干してきますね
179名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 02:08:17 ID:???
意外な展開ktkr
でも、もしシンジとゲンドウの仲が原作よりいい方向に向かっていたら
こんな展開もありえるかもしれない、と思わされてしまう。
まぁ実際原作のシンジよりは強気なんだけど。
続き期待!
180名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 10:45:45 ID:7hivQRpJ
えぇとアニメ化が決定したスレはここでつか?
181名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 11:46:42 ID:???
でつまつはやめて。
182名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 18:28:53 ID:???
数日後、僕はミサトさんたちと共に松代にいた。3号機の起動実験のためだ。
「緊張してるの?大丈夫よん♪でもシンジ君が起動実験に来るって聞いたときは
 ちょっち驚いたわよー?」
ミサトさんは僕の緊張を解きほぐそうと、いろいろ声をかけてくれる。僕は少しだけ
その気持ちが嬉しくて、ミサトさんに微笑みかけた。
「僕は大丈夫です。実験、始めましょう」
本当は足が震えてしまうくらい怖かったけれど、僕はそれを出来るだけ周りに悟らせまいと
必要以上に元気に振舞っていた。
そのままエントリープラグに乗り込む。いつも通りに内部がLCLで満たされて、エヴァに挿入された。

大丈夫。何もおかしなことはない。

僕がそう安堵の溜息をついた瞬間『それ』は起こった。
「………!!!!」
喩えようのない、違和感。それは見る間に僕の全てを飲み込みはじめる。戸惑う僕の耳に、
ミサトさん達の焦ったような言葉が飛び込んできた。
「異常事態よ!パイロットの救出、急いで!…キャァァァァ!!!」

その言葉を最期に僕の意識が何者かに、呑まれた、気がした。
183名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 18:30:56 ID:???
気がついたら、僕はゆっくりと街を歩いていた。正確に言うと3号機が僕の意思とは
関係なく動いていた。
僕はまるでそれを映画でも見るかのような、現実感のない目線で見つめている。
頭がはっきりしない。全身の感覚が薄い膜で包まれているかのようにぼんやりとしか
感じられなかった。
勿論3号機自体、僕の意思では腕一本動かせはしない。

『暴走…?これが…そうなの…?。』

いつもは気を失ってしまう間のエヴァの状態に、僕は何となく怖れを感じる。
自分の意思で動かない身体。隙あらば僕を飲み込もうとする、何かの意思。僕はエヴァに、
自分ではない『何か』の存在を感じていた。
「これは…なに?エヴァって何なんだよ…!」
体が震える。喩え様もない恐怖が蘇る。死を感じたあの時と同じ感覚。僕は叫びだしたい
ほどの恐怖を感じていた。

「あ……!」
それを留めたのは、僕の目に映るエヴァ。…零号機と、弐号機。
一瞬だけ僕は安堵する。だけどそれはすぐさま、別の恐怖にすり変わった。
184名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 18:31:58 ID:???
「アスカ!綾波!!!!」
一瞬で破壊される2体のエヴァ。その瞬間僕の心が張り裂けそうに痛む音がした。
「嫌だ!嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!!!!」
僕の手で仲間達が傷ついている。その事実に心が悲鳴を上げていた。それから僕は
ある事実に気付いて、再び身体を震わせる。

「3号機はどこに向かっているの?…まさか?!」
僕の胸が恐怖で再び満たされる。
「嫌だ!父さん逃げて!逃げて!お願いだから逃げて!!!」
3号機の向かう先は、ネルフ本部。
それに気が付いて、僕は夢中で叫びだしていた。

でもどれだけ叫んでも僕の足は決して止まる事がなくて、それでも僕はただ泣き叫ぶ
ことしか出来なかった。
185幕間。レイの独り言:2006/02/13(月) 18:33:35 ID:???
破壊された零号機から私は救出された。
使徒を殲滅できなかった。任務を遂行できなかった。
その事が私の心に影を落とす。と、指令に呼ばれる。私は躊躇う事無く彼の元に向かった。
「初号機を出す。レイ、行けるか」
指令の言葉が私に降りかかる。私は頷くとすぐに初号機の待つ格納庫へと向かった。
任務を遂行できなかった私への、2度目のチャンス。
私は絶対にそれを失敗するわけにはいかなかった。指令が私を信じてくれた。私を必要としてくれた。
それだけで、私は何でも出来る。
…それが、何が何でも碇君を救出したいという、あの人の心ゆえの命令だとしても。

私は初号機のエントリープラグに乗り込んだ。
何度も乗ったことがある、でも今はあの時と違う。初号機の中は、碇君の匂いで満たされていた。
心を重ねる。エヴァに、碇君の初号機に。でもそれはいつものように上手くはいかなかった。
「私では駄目なの?」
私の問いに彼女は何も答えない。瞬間、私の脳裏に碇君の顔が浮かんだ。
嬉しそうな笑顔。まるで今にも『チャンスタイム、突入』とでも言い始めそうなその笑顔に
私の顔が少しだけゆがむ。
「…駄目なのね。当たり前だわ。私、碇君のこと嫌いだもの」
私は諦めたようにぼそりと呟いた。

そう、嫌いよ。私は碇君のことが嫌い。
大嫌いあの笑顔。確変突入画面は私なのに、私の笑顔は何だか妙に縦に長くて、碇君の
あの笑顔に勝てはしない。私はあの笑顔が大嫌い。

あの笑顔があると、あの人は私を見てくれない。私の出番が少なくなる。私の台詞がもっていかれるの。
…私の居場所がなくなるの!
だから嫌い。碇君なんて私、大っ嫌いよ!!!
186幕間。レイの独り言:2006/02/13(月) 18:35:53 ID:???
「でも、駄目なの。それは駄目なの…!」
私は震える手で操縦桿を動かした。無駄だと分かっていても、それでも私は諦めることなど
出来なかった。
碇君を助けなきゃいけないの。あの人がそれを望んだの。だから私、その任務を
遂行しなきゃいけないの。
がちゃがちゃと操縦桿をただ無意味に動かし続ける私の脳裏に、碇君のいつかの言葉が蘇る。

『綾波は僕に、美味しいご飯がつくれるか?って、聞いたじゃないか!だから綾波は
 人形なんかじゃない!』
わたしはきり、と前を見つめた。
そうよ。私は碇君に美味しいご飯の作り方、教えてもらってない。
碇君のご飯じゃなきゃ駄目なの。碇君のお弁当、美味しいの。私、あのご飯が食べられなくなるの、嫌なの。
だから助けたいの。碇君を私、助けたいの!

「お願い…動いて…!!!」
呟いた瞬間、私の頬を温かいものが伝う。これは何?私は何をしているの?
「これは…涙?私、泣いてるの…?」
初めて流す涙。碇君の笑顔が戸惑う私の脳裏に浮かぶ。

その瞬間私の耳に、初号機の咆哮が、聞こえた。
187名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 21:15:39 ID:???
ヽ(゚∀゚ )ノ キテター!

>まるで今にも『チャンスタイム、突入』とでも言い始めそうなその笑顔
>確変突入画面は私なのに、私の笑顔は何だか妙に縦に長くて
緊迫した雰囲気の中で突然笑わせてくれるなYO!
すっかり油断してて吹いたジャマイカwww

つかパチネタかよwwwセカパク稼動開始age
188名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 22:26:34 ID:???
相変わらずギャグ投入のタイミングが上手いですなwwww
途中バッドエンドかと思ってひやひやしましたw
綾波の意味あり気な独り言が気になります。
189名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 22:30:56 ID:???
上手く言えんが、あんたの書くエヴァキャラ達、全員が等しく愛しくて堪らん。
エヴァが更に好きになったよ有難う。
190名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 23:57:50 ID:???
今まで貞シンでもなきゃ庵シンでもないこのシンジが何なのか
よく分からなかった。でも今やっと分かったよ

パ チ ン コ の シ メ シ ゙だ 。
191名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 00:04:22 ID:???
そうなるとカヲルは大当たりなわけですね



セカパクは首落ちなんだろ?
192中の人:2006/02/14(火) 00:31:31 ID:???
とても素敵なゲンドウを逆ゲリオンスレで貰ったので
みなさんにおすそ分け。
親父のアホ姿嫌いな人は要注意。

ttp://www.sweetnote.com/images/9f9698f3a8e23a30082c4e298c7e2b92.jpg

もうね、大好きこの親父。
193名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 03:05:16 ID:???
>>192
あれ?ここに僕の中の人がいるみたいだ
194名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 03:18:21 ID:???
いやまて、それは私のおいなりさんだ
195名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 04:55:37 ID:???
最低だそれって
196名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 11:53:14 ID:???
>>192
普通にかっこいいと思ったw
裸エプロンとかだったらヽ(`Д´)ノだがw
197名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 20:49:27 ID:???
>>192
ナイスwwwカッコいいよw
異様に髪がツヤツヤなトコロもイィ(・∀・)!
198名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 21:51:06 ID:???
僕は絶望したような気持ちで街を歩いていた。身体は相変わらず動かない。自分には何も出来ない。
仲間達は自分の所為で傷ついた。
あとはもう、父さんが一刻も早く今の状態を把握して、ネルフから逃げてくれることを願うだけだった。
『僕を信じて!』
自分で言った言葉が後悔と共に蘇る。
信じなくていい。お願いだから、信じないで。
僕は駄目だ。もう、駄目なんだ。だから逃げて。もう待ってなくていい。見捨ててくれていいんだ。
父さんを危ない目に合わせるくらいなら、捨てられた方がいい。だから逃げて。

だけど僕のそんな思いは叶わなかった。
目の前に現れたのは、初号機の姿。
『どうして動いてるの…まさか、綾波?』
僕がそれを確認する暇もなく、初号機は僕に襲い掛かってきた。
いつも僕を守ってくれている初号機。それは、外から見ていると畏怖の対象でしかない。恐ろしげな顔、
圧倒的な強さを見せるその力。それが僕に襲い掛かってくる。
僕は安堵を覚えながらも『それ』に恐怖を感じていた。
『僕は…なんてものに乗っているんだ…』
震える僕を他所に、3号機はそれでも初号機に果敢に反撃を繰り出し、そして。
「綾波?!」

僕の手が、綾波の首、を。
199名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 21:52:33 ID:???
「嫌だぁぁぁぁっっっっ!!!!」
僕の精神はもう限界だった。嫌だ。傷つけるのは嫌だ。僕はもう傷つけたくない。誰も、
仲間も、父さんも。…自分も!
指が動かない。どうしても動かないんだ。このままじゃ、死んじゃうのに。どうして動かないんだよ!!!
焦る僕の脳裏に、何故だかトウジの明るい笑顔が浮かんだ。
『ああ、でも』
辛いことばかりだ。エヴァに乗っていて僕は一度も良かったと思ったことなんかなかった。
父さんの役に立てるのは嬉しかったけど、でもそれはエヴァに乗らなくても出来た事。
『こんな思い、トウジにはさせなくて済んだ…よかった…』
僕が何気なくそう思った瞬間、頭の中に小さく声が響く。

『ありが、とう』
その瞬間、ほんの一瞬だけ。
僕の指が…掌が、動いた。

「綾波、今!!!!」
僕は夢中で叫んでいた。応えるように初号機は僕の掌から抜け出して、反撃を開始する。
「うわぁぁぁぁ!!!」
反射的に僕は叫んでいた。初号機が僕の腕を引きちぎる感触がダイレクトに伝わってくる。
痛い。脳の先まで痛みが僕を支配した。そのまま引き倒される。足の骨が砕かれ、僕はもう
自分が悲鳴をあげているのかさえ分からなかった。
でも痛みとは裏腹に、僕の心は安心していた。
200名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 21:53:24 ID:???
『良かった。もうこれで、傷つけなくて…傷つかなくて、済む…』
エントリープラグが引き抜かれる感触がする。
次の瞬間、僕の身体は放り投げられた。その辺のビルに思いっきりぶつかって、エントリー
プラグの中までその感触が伝わってくる。
『綾波…乱暴すぎ…』
心の中で呟きながら、でも僕は助かったという安堵感で胸が一杯だった。

全てが終わり、エントリープラグが開けられる。
一番初めに僕の目に飛び込んできたのは父さんの顔。手袋が熱で焦げて焼け爛れている。
その掌の火傷の跡を見て、僕は父さんが焼けたハッチを強引に開けて、僕を助けてくれたんだな
ということを理解した。
安堵感と嬉しさが僕の胸を満たしていく。気付くと僕は父さんにこう呟いていた。
「ごめんね父さん。…僕、どんな顔していいのか分からない」
言いながら、でも僕は自分の顔が泣き出しそうに歪んでいるのを感じていた。
父さんは何も言わなかった。ただ僕の顔をじっと見つめ、黙って僕を抱き上げてエントリープラグ
から連れ出してくれた。その途端僕は父さんの胸で、堪えきれず泣き出してしまう。

僕は夢中で父さんの名を呼びながら泣き続ける事しか出来なくて、それでも父さんはただ僕を
黙って抱きしめてくれていた。

僕の耳に、遠くから綾波の「やっぱり殺しとけばよかった」という声が聞こえてきた。
201名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 22:33:31 ID:???
GJ!!!!
>>198バギワロスwwww
202名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 23:36:23 ID:???
やっぱりあなたでしたかwww
綾波の殺しとけばよかったが本気か冗談かわからなくて怖いw
203名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 23:43:54 ID:???
誰か頭悪い俺にもわかりやすいようにこの職人について三行で説明してくだちい

ワロチwwwwww
204名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/15(水) 05:30:21 ID:???
>203
2ちゃんねる
エヴァ板
シンジスレ
205名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/15(水) 06:26:52 ID:???
>>204
そうじゃねえって
206名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/15(水) 07:45:06 ID:???
作者は某氏なのか?某氏好きの人なのか?
207名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/15(水) 10:15:05 ID:???
〉203
今までの投下を見るかぎりから推測可能なのは

ゲンドウ萌の
パチンコと料理が趣味の
エヴァ好きなホモ
208名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/15(水) 15:44:33 ID:???
腐女子だろw
209名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/15(水) 22:31:41 ID:???
数日間の入院で僕は家に戻ってきた。
あれで綾波は手加減してくれてたらしい。嬉しいような怖いような複雑な思いで僕は
家のドアを開ける。
「ただいま」
そう声をあげて部屋に入っても、父さんはまだ帰ってきていない。夕暮れ時の部屋の
中は薄橙色に染まっていた。
鞄を置いてソファーに座る。でも何だか落ち着かない。まるでこの世界に独りっきりに
なったような気がして、僕は少しだけ身体を震わせた。入院中のベッドの上でも頭の中を
占めていた感情が僕を捕らえていく。
僕は少しだけ迷った後、父さんの部屋のドアを開けた。

ベッドに近づいてシーツに包まってみる。僕は少しだけ安心した。そこは、父さんの匂いがした。
手足を小さく縮ませ、頭からシーツを被る。
哀しくもないのに、僕は涙が出てきて仕方がなかった。身体はいつの間にかがたがた震えて
いて、とても自分では止められそうにない。
僕はそんな自分をどうすることも出来なくて、ただベッドの中で声も出さず泣き続けるしかなかった。

カタン、と音がして僕は目が覚めた。どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
泣き疲れて眠ってしまうなんて、まるで子供みたいだ。僕は少しだけ自己嫌悪しながら
上体を起き上がらせる。
「シンジか。何をしている」
既に部屋に入ってきていた父さんは、上着をクローゼットにしまいながら僕に声をかけてきた。
何となく恥ずかしくなって、俯いている僕に父さんの言葉は続く。
210名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/15(水) 22:32:49 ID:???
「まるで赤ん坊だな」
涙の跡を見られたのだろうか。それとも、もう中学生にもなっているのに、父さんの匂いに
安心している僕に気付いたのだろうか。分からないまま僕は、父さんの言葉に少しだけ
情けない思いがした。
「ごめんなさい。僕、子供みたいだね。もう中学生なのに。もっとしっかりしなきゃ
いけないのに」
呟くような僕の声に、父さんは少しだけ驚いたような顔をして僕の隣に腰掛けた。
それから、ぽん、と頭を撫でられる。
「構わん。幾つになってもお前が、私の息子である事実は変わらない」
その言葉に僕の目から再び涙がこみ上げる。気付いたら僕は父さんの前で声をあげて泣いていた。
僕の心をずっと占めていた想いが堰を切ったように唇から流れだす。
「ごめんなさい父さん。僕、怖いよ…。戦うのが…エヴァが…。エヴァに乗って戦うのが
ずっと僕、怖くて仕方なかったんだよ…!」
僕の叫ぶような言葉に父さんがどんな顔をしたのか、確かめる余裕は僕にはなかった。
ただ莫迦みたいに怖いよ、と繰り返しながら僕は父さんの隣で泣き続ける。
「エヴァに乗るの、怖いよ父さん。僕はあれにもう乗れないかもしれない。怖いんだ…
怖いんだ…!どうしたらいいの…?!」
身体を震わせ泣きながらそう呟く僕に、父さんは再び僕の頭をぽんと叩いた。
「ならば、止めるか」
その言葉に僕は驚いて顔を上げる。父さんは表情を崩さずそんな僕をずっと見つめていた。
「初号機は…どうするの?」
おずおずとそう尋ねる僕の言葉に、父さんはさらりとこう答える。
211名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/15(水) 22:34:30 ID:???
「私が乗る」
「はあ?!」
その言葉に思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。と、父さんはごほんと咳払いをして
冗談だ、と続けた。
そうだよね、と僕も納得する。しかしちょっと引っかかる出来事があったのを、次の瞬間
僕は思い出してしまった。
いつだったか、新品を下ろしたはずの僕のプラグスーツが、やたら伸びきっていた事があったのだ。
『まさか…ね』
僕は何となく、じっと父さんの顔を見つめてた。父さんは相変わらず無表情を決め込んでいる。

父さんの真意が分からない。僕の心がきりきりと痛む音がした。
「お前の好きにすればいい。誰もお前に強制はしない。その後のことは、私の仕事だ」
父さんの言葉は嬉しかった。でも僕がここに呼ばれた、その理由は。それは。
「エヴァを降りたら…僕はまたあそこへ帰らなきゃいけないんでしょ…?」
誰も僕を見てくれない、父さんのいないあの場所。
僕はもう二度とあそこには戻りたくなかった。だからずっと頑張ってエヴァに乗ってきた。
父さんの言葉に頷いたら、僕は帰らなきゃいけない。そんなのは絶対に嫌だった。
僕は青ざめた顔でふるふると首を振る。

「嫌だ…僕はここにいたい。帰りたくない。だから降りられないよ…!」
だけど次に聞こえてきた父さんの言葉は、僕にとってとても意外なものだった。
「帰る必要はない。降りたければ降りろ。だが、お前はここに居ればいい」
212名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/15(水) 22:35:38 ID:???
その言葉に僕の目が見開かれる。帰らなくていい、ずっとここに居ていい。…エヴァの
パイロットじゃない僕なのに?
「いいの…?」
戸惑うように震える僕の声に、父さんは事も無げに応えた。
「当然だ」

その言葉にようやく僕の心の痞えが降りた気がして、僕の目からは再び涙がこみ上げた。
今度は、嬉しいほうの涙が。
安堵の涙を流しながら、僕は父さんの名前を呼び続けていた。
嬉しかった。父さんはずっと僕の傍に居てくれるんだ。役にも立たない僕でも、居ていいと
言ってくれるんだ。
その言葉が僕の心を救い出す。
父さんはそんな僕の姿を、何も言わず傍でずっと見つめていた。

だけどその時、僕は気が付いていなかった。
僕がエヴァを降りるということは、それはどういう結果をもたらすのかということに。

そのときの僕には、どうしても気付くことが出来なかったんだ。
213名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/15(水) 23:38:06 ID:???
>もう中学生なのに
ってとこで、逆にシンジがまだ中学生ってのを思い出した。
中学生なんて小学生に少し毛が生えたようなもんだもんなー。
そう考えるとエヴァのチルドレンって…(つω;`)ウッ
214名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/16(木) 00:51:45 ID:???
>僕のプラグスーツが、やたら伸びきっていた
ワロスwww
215名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/16(木) 01:27:25 ID:???
今回の引きで、
まさか・・・ゲンドウがプラグスーツを着て出撃するなんて・・・

というアホ展開を妄想してしまったwww
216名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/16(木) 01:46:14 ID:???
GJ( ̄Λ ̄)ゞ
217名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/16(木) 06:25:36 ID:???
逆ゲリオンヌレ見て、プラグスーツネタ楽しみにしてたw
今回も激しくGJです!
218幕間。レイの独り言:2006/02/16(木) 19:14:11 ID:???
今週のモーニング見たらものごっつい久しぶりに
金丸商事のハゲ常務が荒岩主任から弁当貰って小躍りしてた。
あまりのタイミングのよさに自分は何かヘンな電波でも
受信したのかと思って素で吹いた。

そのお陰で頭の中で固めてたネタが全部吹っ飛んだので
今日は一回休みだ。
文句はうえやまとちに言ってくれw
219中の人:2006/02/16(木) 19:15:44 ID:???
名前欄間違えた。

やはりよほどの衝撃だったようだな。
220名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/16(木) 19:24:53 ID:???
意外に毒舌だったんだな。綾波って。
221名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/16(木) 22:15:58 ID:???
ハヤシバラの声で想像してしまったじゃないかw
222名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 20:01:21 ID:???
僕は独りきりの部屋の中、ふうと溜息をつく。僕はあれ以来学校を休んでいた。怪我はもう
すっかり良くなっていたけれど、アスカや綾波に会うのが怖くて、僕はどうしてもそこに
向かうことが出来なくなっていた。
父さんは何も言わない。僕はネルフのIDカードをポケットから取り出すと、もう一度溜息をつく。
本当にどうしても無理なら、いつでも資格を抹消する。
そう父さんに言われ、渡されたID。僕は未だ自分がどうしたら良いのか決めかねていた。
ふいに思い立って窓の外を眺めてみる。外は良く晴れていて、とても気持ちがよさそうだ。
僕はうん、と頷いて夕飯お買い物がてら街に出ることにした。
家の中でいくら悩んでいても気持ちが塞がる一方で、答えが見つかるとは思えなかったからだ。

久しぶりの街は、僕の気持ちなど関係なく、いつも通りの装いで僕を受け入れた。
なんとなく苦笑しながらも、僕はその中で人ごみに紛れ埋没して行くことがなんとなく心地よかった。
と、それを打ち破ったのは突然鳴り響く警報の音。
『使徒……!』
逃げ惑う人々のざわめき、混乱する街の姿。恐怖に包まれる人々の顔。僕はただ呆然とそれを見つめていた。
と、そんな僕に声をかけるものが居る。
「シンジ君じゃないか。ここは危ない、こっちだ」

それは加持さんだった。僕の腕を取ると、あの時と同じように加持さんは僕をあのスイカ畑へ連れて行く。
223名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 20:03:14 ID:???
「加持さんはどうしてここに?」
もう僕の事を知っているのだろう。何も言おうとしない加持さんに、僕はおずおずとそう尋ねた。
すると加持さんは少しだけ苦笑いしながら僕にこう答える。
「君の忠告どおり、アルバイトはやめたよ。それ以来ここで水を撒いてる」
その言葉に僕は少しだけほっとする。加持さんはそんな僕を見つめ、表情を変えずそのまま続けた。
「君は俺に、真実を教えてくれるんじゃなかったのか」
「………!!!」
加持さんの言葉に、僕の体が震えた。
何も答える事が出来ず、僕は俯いてしまう。だけど加持さんはそんな僕にそれ以上何も
言おうとはせず、ただじっと僕の姿を見つめていた。
沈黙が重い。僕が言葉を発しようとした瞬間、僕の目に使徒と戦う零号機と弐号機の姿が飛び込んできた。
「あ……」
僕の視線の動きに気付いたように、加持さんは眉根を寄せる。
「俺は君に約束を強制しはしないさ。誰だって、怖い。まして君はまだそんなに幼いのだから」
加持さんの言葉と、戦うエヴァ。そのどちらもが僕の心を震わせる。幼い。綾波やアスカだって、
同じだ。まして彼女達は女の子なのに、それなのにああして戦っている。
「…俺にはこうして、ここで水を撒くことしか出来ない。だが君には、君にしか出来ないことが
 あるんじゃないのか?…ま、せいぜい後悔しないようにするんだな」
僕の心の動きを知ってか知らずか、加持さんは僕を振り返る事無くそう呟いた。その言葉に、
僕の身体がびくりと震える。
224名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 20:03:59 ID:???
僕はじっと戦うエヴァを見つめる。苦戦している。アスカも綾波も、圧倒的な使徒のその力の前に
為す術もない。ただ僕の目の前で傷ついていく。

『傷つくのは、もう、嫌だ。でも』

僕の心が再び震えた。僕の脳裏に逃げ惑う街の人々の姿が蘇る。はじめて見た、僕が使徒と
戦っている間の街の喧騒。為す術もなく瓦礫から逃れようと走る人間。シェルターに誘導するサイレン。
煙と轟音に包まれる街の姿。
それらが目の前の彼女の姿とオーバーラップする。

『でも僕は、誰かが傷つくのを見るのは、もっと嫌だ…!』

君には君にしか出来ないことがある。
僕の心に突き刺さる、加持さんの言葉。僕は気付くと走り出していた。ポケットの中のIDカードを確認する。
『僕にしか出来ないこと、それは…』
僕の足は、迷う事無くそこに向かっていた。ネルフへ。父さんが、エヴァが待つ『そこ』に。

僕が行く場所は、そこにしか存在しなかった。
225幕間。ゲンドウの独り言:2006/02/17(金) 20:07:22 ID:???
私はエヴァ格納庫で溜息をつく。

使徒が現れた。シンジの、初号機の居ない今の戦力で、とても殲滅は叶わないだろう。
レイとサードチルドレンの力が劣っているわけではない。初号機は特別だ。ただ、それだけの事だ。
私はシンジの恐怖をわかってやれなかった。あれは、いつも笑顔で出撃していた。
心配しないで。がんばる。そう言いながら。だから私は安心しきっていた。

幼くとも、息子は男なのだと。恐怖に打ち勝つ術を、あれは自身の力で手に入れているのだなと。
だが、それは私が何も気付いていなかっただけなのだ。
シンジはいつも恐怖で震えていた。泣き出したいほどの恐怖で、何度逃げ出したいと思って
いたのだろうか。
それを気付かせもせず、私の前で笑顔でい続けた息子の気丈さと、己の莫迦さ加減に私は
情けない思いがする。

これ以上シンジに無理をさせることは出来ないと、私はそう思った。だからエヴァに乗ることを止めさせた。
ネルフの総司令として、それは許される判断ではない。だがそれでも私はシンジにそれを
強いることなど出来はしなかった。
226幕間。ゲンドウの独り言:2006/02/17(金) 20:08:17 ID:???
息子の失態の責任を取るのは、親の役目だ。

私は無言でエントリープラグへと近づいて行く。後ろで冬月の驚愕したような声がしたが、
私はそれに構っている暇はなかった。そのまま、それに乗り込む。
初号機…。ユイと共に、私はシンジを守る。その決意を止めることなど、誰にも出来はしなかったのだ。
だがそんな私を嘲笑うかのように、初号機は何の反応も示さない。私は絶望感に打ちのめされた
ように呟いた。

「ユイ…私を拒否するというのか…」
呆然と操縦桿を握る私に、冬月のあたりまえだろう、という声がどこからか聞こえてきた。
そういえばもうすぐ賃金規定の見直しの時期だ。ネルフは今深刻な経済危機にある。いろいろと
見直さなければならない時期に来ているようだな。
私はそう呟くと、初号機を降りた。もう為す術はない。あとは二人のチルドレンに全てを委ねる事しか
出来はしない。

何故だか後ろでおろおろしている冬月を置いて、私は司令室へと戻ろうと踵を返した。
だが、そんな私の目に飛び込んできたのは、意外な風景だった。
227名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 20:10:34 ID:???
僕はネルフに到着すると、一目散にエヴァ格納庫に向かった。一刻も早く、二人を助けなきゃ。
残された時間は少ない。と、そんな僕の耳に、驚いたような父さんの声が聞こえる。
「どうしてお前がここにいる」
僕はその声のする方向を見上げながら、叫ぶように言葉を発した。

「僕は…僕はエヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジで…うぇ?!」
僕の目に飛び込んできたのは、僕のプラグスーツを着込んだ父さんの姿だった。
「なにやってんの…」
僕の言葉に父さんは何もこたえようとしない。僕は副指令の顔をじっと見つめた。副指令は
ぷるぷるとただ首を振っている。
ああ、一応止めはしたんだ…。
僕は諦めたように溜息をつくと、なるべく父さんの全身を目に入れないように気をつけながら微笑んだ。
「やっぱ駄目だね。僕が居ないと父さん、何しでかすか分からないもん」
そう言って迷わずエヴァに乗り込む。
僕の心に迷いはないわけじゃなかった。でも、それでも僕はもう逃げたくはなかった。

僕は男で、戦いは、男の仕事。
アスカや綾波にだけ辛い思いをさせることなんて、僕はしたくなかった。
守りたいんだ。この街を、二人を、…父さんを。
それだけあれば、どんなに辛くても僕は頑張れる。怖くてたまらないけど、それでも僕は頑張れるんだ。

ミサトさんの出撃命令を聞きながら、僕は戦場へと向かった。
228中の人:2006/02/17(金) 20:14:19 ID:???
>215を見て書きたくなった。今も後悔していない。
229中の人:2006/02/17(金) 20:22:43 ID:???
って、違う!アスカはセカンドチルドレンだっつの!
自分がなんでこんな打ち間違いしたのかさっぱり分からん。
鬱出汁脳。
230名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 22:28:55 ID:PMXcOlOq
うっかりさん晒しアゲ
だがそんなあんたが好きだw
231名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/18(土) 00:37:23 ID:???
>>229
すげー笑えたがシンジすっきりしてていいよ
なんかの汁が出そうです><
232名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/18(土) 06:00:01 ID:???
ココに来ると何故かゲンドウ萌えになる(;・∀・)
233名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/18(土) 12:47:00 ID:???
ゲンドウが優しかったスレもお奨め
234名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/18(土) 14:32:52 ID:???
235名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/18(土) 15:08:11 ID:???
ホモは嫌
236ロメオ ◆rHza36ec2U :2006/02/18(土) 19:16:04 ID:???
>>198
メッセージってここでいいのかな?
どうもありがとう。このスレの1から書いてるのかな?
まだ全然読んでないけど君はマジメでストイックなんだね
文章読んでてそう思った。
俺は折角職人になったので宣伝もかねてあちこち行って
エヴァとエヴァが好きな人たちと遊んでもっとエヴァを楽しみたいと
思ってやってるだけなんだ。他意はないんだ。嫌な気分になったのなら
謝るよ。

お詫びに俺もシンジとゲンドウ書こうかな?でも思いつかないんだよね
アニメでもマンガでもそんな場面ないから完全オリジナルになってしまう
だからねえ・・・でも劇場版の最後にゲンドウは息子に別れを告げる
場面は勝手に挿入しようと思ってる。まだまだ先だけどね
とりあえず僕を見捨てないでネ

そういいながら例のスレで>>917のケンカ売るみたいなレス書いてしまった
カヲルくんの真似してみただけだから気にしないでw
237中の人:2006/02/18(土) 21:08:50 ID:???
>236
ロメオ復活オメ!どういたしまして、礼には及ばないよ。
バカシンジ好きだからね。最後まで読みたかっただけだ。
自分は>38から書かせてもらってる。誰も何も言わないのをいいことに
強引にストリートコントーションをさせてもらってるよ。
だいぶ道を塞いでしまってるから警察が来たら直ぐにでもどかなきゃいかんねw
まあ、コテハンでその辺のスレに書き込むことには何も言わん。
バカシンジがずいぶん投下されない状況だと「この野郎んなことしてねえでさっさと書けw」と
思うくらいのモンだよ。自分へのレスとしては、とても嬉しい。
読んでどう思ったのかも聞きたいところだよ。何しろまだまだヒヨコだからね。

しかしストイックで真面目かw果たしてここへの投下見たあとでも、その感想が
出てくるのかものすごく気になるよw
シンジとゲンドウは、気が向いて何か思いついたら是非書いて欲しいな。強制はしないけどね。
見捨てないよ。見捨てるのはバカシンジをお前が捨てたときだけだねw
頑張ってくれ。自分も頑張る。今まさに予想できていたでっかい穴と格闘中でね。
ロメのコメントがありがたかったよ。あっちのレスは気にしてないよ。
自分でも暑苦しいなあオイwと突っ込んでたし。必死だったんだよこっちもw
今回の感想はあっちのスレでもう書いたけど、ハゲワロタよw流石だね。じゃ、また。
238中の人:2006/02/18(土) 21:15:48 ID:???
そんな感じで今でっかい穴と格闘中。
ついでに回転寿司が88円だったので食ってきて胃痛と格闘中。
今晩中頑張るけど、投下遅くなるかも。

みなさんの感想がとても力になる。すごく嬉しい。いつも何も反応できないけど
心から感謝してるよ。これからどこまでもオリジナルな展開になるけど、付いていける範囲で
読んでくれると嬉しい。

ところで遅レスだけど>206は一体誰と自分を勘違いしてるんだろ?
おおよそ名前のついた行動はしてないよ自分は。
サイトも本もやってない。だから多分他人だと思う。知らんけどね。
まあ、出来れば先入観なく話だけを読んで欲しい。強制はしないけどね。
239名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/18(土) 23:10:08 ID:???
「作者はロメオ氏なのか、それともロメオ氏好きの人なのか」ってことじゃないでしょうか。
穴埋め頑張ってください。続きまってます。
240名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/19(日) 00:51:40 ID:???
>>239
その推測は多分あってるだろうと思うが
あまりプレッシャーをかけるなよ
ぶっちゃけ最後の一言が一番胃に痛いだろうよ
241中の人:2006/02/19(日) 01:40:26 ID:???
言えない…。
本当に 食 い 過 ぎ で の 胃 痛 だなんて…。

いやもう、気持ちは嬉しい。239の気持ちも240の気持ちも、等しく嬉しい。
自分は基本的に書いてるだけで満足な人間でね。昔から感想を重要に思ってなかったんだ。
それこそ金庫にしまって「よくやったぞ、自分」って自分を褒めてやるだけで充分だった。
でもここにきて、読者のありがたさを思い知ったのさ。読者の反応を己に取り込むことで
新しい世界を知ったのさ。それが分かっただけで、自分には大きな収穫だった。
だからプレッシャーを感じるほど、自分は繊細な人間ではないのさ。
でもほんとに有難う。頑張るよ。丸井で買った輸入物のレンジでチンで出来上がり、な
ポップコーンをつまみにウーロンハイを呑んでるのんき物に、あったかい言葉有難う。
酔いつぶれて寝てしまうかも試練が、気長に待っててくれ。

つか、ロ メ と 間 違 わ れ て た の か よ w
お前、ロメがあんな自作自演できるヤツなら、自分はもう掘られていいと思うくらいにヤツに惚れるよw
すごい勢いでびっくりしたよ!
242ロメオ ◆rHza36ec2U :2006/02/19(日) 04:49:50 ID:???
まだ全然読んでないけど君はマジメだと思うよー

>>バカシンジがずいぶん投下されない状況だと「この野郎んなことしてねえでさっさと書けw」と

少なくとも一週間に1回は投下してるんだからちょっとは待てw
今のペースで行ったら4月初頭の分まではストックはある。でも最近は落ち着いて情熱がなくなってきた
新しいモノがかけそうにない。もうそろそろ完結してしまう哀しみって奴かな?

>>読んでどう思ったのかも聞きたいところだよ。何しろまだまだヒヨコだからね

ゆっくり読むよ。でも俺もヒヨコよ?去年11月にこの板に来て12月に書き出して20日にスレ立てれた
それまでアク禁だったから。今は劇場版を書くのに格闘してる
自分では板住人全員ひれ伏すような作品だと書いてる時は思うけど実際投下すると不安だからね
なんかリスベクトされると自信つくね。やっぱ俺スゴイかったんだって気づいてしまうよね
まあ君のような凡人なら書いてると壁にぶつかるのだろうが
知らなかった自分を真正面から認識して楽しんでやることだな
ではまた来るぞフハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハッハッハッハッハ
243名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/19(日) 08:17:44 ID:???
職人同士で馴れ合いすぎないようにな
244名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/19(日) 16:13:40 ID:???
 僕の目に飛び込んできたのは両腕と頭を?ぎ取られた弐号機の無残な姿と、そして。
 「綾波?!」
 ATフィールドを強引に破り、N2爆弾をその手に持った、零号機の。
 「駄目だぁぁぁぁぁ!!!!」

 叫び声は届かなかった。僕の目の前で綾波は捨て身の攻撃を仕掛け、倒れていく。
 僕は怒りに満ちた目で目の前の使徒の姿を見据える。腹が立って仕方がない。

 よくもアスカを。よくも綾波を…!!!

 勢いのまま僕はそれに掴みかかる。憎しみを全てぶつけるかのように僕は使徒に素手で挑みかかった。
 怒りが心に満ちる。…そして、哀しみも。
 どうして戦わなきゃいけないんだ。こんな思いをしてまで、どうして僕達は戦わなきゃいけないんだ!
 使徒って何だ。エヴァって何だ!
 父さんは何をしようとしているの!

 そして僕は、一体何をやっていたんだよ!!!
245名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/19(日) 16:15:22 ID:???
 こんなにも彼女達を傷つけたのは僕が弱かったからだ。僕の心が弱かったから、彼女達から僕が
逃げ出したからだ。
 迷いのない彼女達の目が怖かった。自分の弱さを見せ付けられるようで、それが嫌で僕は
戦いから逃げ出した。
 その結果がこれだ。全部自分の所為だ。だから、せめてこれ以上傷つく人を出しちゃ駄目だ。
守らなきゃ駄目なんだ。 その為になら、僕がどれだけ傷ついてもいい!
 
 そして僕は使徒を追い詰め、あと一歩。あともう少しで、コアを破壊できる。その時。
 「そんな…!内部電源が……」
 僕は焦ったように操縦桿をがくがくと揺さぶった。駄目だ、駄目なんだよ。今止まっちゃ駄目だ。
今動かなきゃみんな死んじゃうんだ!今じゃなきゃ駄目なんだよ!
 僕の目から涙がこぼれる。
 「動け、動け。動け動け動け動け!!!」
 アスカも、綾波も、父さんも。僕が逃げた所為で死んじゃうなんて嫌だ。そんなの嫌だ。だから、
お願いだから動いて。

 「動いてよぉぉぉぉっっっ!!!!」

 僕の叫びに応えるように、ドクン。と何者かの鼓動が、僕の身体に、響いた。
246中の人:2006/02/19(日) 16:17:54 ID:???
>243
ごめん肝に銘じる。自分としても、馴れ合いは望むところじゃない。
247幕間。ゲンドウの独り言:2006/02/19(日) 16:58:34 ID:???
私は呆然と暴走した初号機を見つめていた。格納庫から司令室に戻った私と、誰一人として目を
あわせようとしない。冬月までもだ。だが私にはそんなことはどうでもいい出来事だった。

「エヴァを…喰ってる…」
「S2機関を取り込んでいる…もう誰にも、初号機を止めることは出来ないわ」
初号機が咆哮を上げる。私にはその声が、私を連れ行く地獄の使者の囁きのように聞こえていた。
シナリオどおりだ。全てはこれでいい…筈だった。
私の目的は達せられようとしている。
だが何かが私の心を冷やしていく。心臓に何かが突き刺さる。

冬月もまた、何も言わない。ただ私から目をそらし、しかし何か言いたげに口をもごもごさせている。
言いたいことがあるならはっきり言え。昔からこの男はそうだ。心底うっとおしい。
「碇、とりあえず使徒は殲滅成功だ。…そろそろ着替えてきたらどうだ」
私の視線に気付いたのか、冬月がぼそりとそう呟く。そういえば若干汗をかいた。私は冬月にその場を
任せると、ロッカールームへと向かった。
シンジはまた傷ついて帰ってくるだろう。その時私はどんな顔をしてあれを迎えてよいか分からず、
溜息をついた。

私の中で、迷いは大きくなるばかりだった。
248名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/19(日) 19:36:44 ID:???
『エヴァを喰ってる』って負けたのかと思っちゃったwww
249名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/19(日) 21:08:12 ID:???
きっとエヴァも使徒だという事実を陰ながら伝えようtうわ何をすrrrrrr

そんなことないお茶目な君が好きです><
250中の人:2006/02/19(日) 23:42:35 ID:???
うわもう、人が気分転換にエヴァパチ(しかもセカパクでなく初代)打ちに行って
2 0 0 0 回 ハマって帰ってきたと思ったら…!

うわぁぁぁぁん!ぐれてやるぅぅぅぅ!!!

ごめんなさい指摘有難うございます。死のう。
251中の人:2006/02/19(日) 23:46:14 ID:???
明日からの抱負。

投 下 前 に 読 み 返 せ 自 分 。

…当たり前すぎ…自動書記で書く癖、ちょっと見直そう…。
252名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/20(月) 00:20:33 ID:???
>251
カワイイ…GJ!
253幕間。アスカの独り言:2006/02/20(月) 00:41:40 ID:???
「なによ、これ…!」
アタシは呆然と初号機のエントリープラグ内部の映像を見つめた。中には誰もいない。
ただバカシンジのプラグスーツだけがLCLに漂っていた。
赤木博士の言うには、アイツはこのLCLに溶けてしまったらしい。シンクロ率400%の正体が、これ。
アタシはふるふると身体を震わせた。

「ふざけんじゃないわよ!アンタまた逃げる気?!」
思わず叫びだす。そう、アイツは逃げた。戦うことが怖くて。
でもそんなのアタシはへっちゃら。あいつなんかいなくたって、アタシは勝つの。もう二度と
負けられないのよ、このアタシは。
…でも、アタシは負けた。そして逃げたはずのあのバカが、勝った。助けてなんて頼んでないのに、
アタシはあんなヤツに助けられてしまった。
ああ嫌。何でアタシがこんな気分にならなきゃいけないの!
あの時にも感じた。アイツがヘンな穴に落ちたあの時も。
アタシの所為だった。アタシがアイツをけしかけたりしなきゃ、アイツあんな目にあわなかったかも
しれない。あれからよ、アイツがおかしくなったの。

でもそれは、アイツが弱いから。バカシンジが自分の強さを信じきれていないから。アタシは
迷わないの。だからあんなヤツにあたしが負けるはずないのに!!!
254幕間。アスカの独り言:2006/02/20(月) 00:45:47 ID:???
大っ嫌いバカシンジなんて。

イライラするわ、あの幸せそうな笑顔。父さん父さん、って、本物のバカよあいつは。
指令に頼って、甘やかされて。そりゃ、小さい頃は独りだったかもしれないわ?でもそんなの
アタシだってそうだったもの。
でもアタシは負けなかった。独りで立ち上がったの。
アイツは指令に引き上げてもらってようやく立ち直れたんじゃない!
アタシは誰にも頼らない。あたしは独りで生きていけるもの。
強いのはアタシよ?!それなのになんでアイツはいつもアタシに勝てるの!!!!
シンクロ率だって、あんなことなきゃ、アタシが負けてた。
アタシが独りで倒した使徒は、たった一体。
あとは全部アイツがいなきゃ、勝てなかった。
嫌よ、そんなの。アタシはアスカ。惣流・アスカ・ラングレーよ。生まれながらのエリートなの。
誰にも負けるはずがないの。だから、バカシンジになんか負けないの。

「帰ってきなさいよ!このまま帰ってこなかったら、勝ち逃げなんかしたら、アタシあんたを
 一生許さない!許さないんだからぁぁぁぁぁ!!!!」

アタシの叫びだけが、静かな部屋の中に響き渡っていた。
255中の人:2006/02/20(月) 00:53:12 ID:???
何で自分はこんな捨て身のギャグやってるんだ…
メル欄…。

駄目だ今日は何をやっても上手くいかない。もう寝よう。
256名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/20(月) 01:08:56 ID:???
だがそれが君のいいところ
257名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/20(月) 03:25:06 ID:???
指令 は 司令 じゃね?

と、死人にむち打つ様な事は、俺にはとても出来ない!!!
258名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/20(月) 04:11:34 ID:???
新しい世界に目覚めそうなくらいむち打つとはやりおるな
259名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/20(月) 15:56:21 ID:???
何この泣きっ面に蜂な職人w

面白いから上げちゃえ
260名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/20(月) 20:45:17 ID:???
上げんなよバカっバカっ
261名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/20(月) 23:00:58 ID:???
ここはSだらけのインターネットですね
262中の人:2006/02/20(月) 23:55:23 ID:???
お ま え ら 酷 す ぎ w 
いいよいいよ畜生。盗んだバイクで走りだしゃいいんだろ自分はw

まあアレだ。マジで反省した。
これから書いたものは一晩寝かせて推敲することにする。
今までより投下ペース落ちるけど、ごめんよ。
今まではノリと勢いが優先されたし、現状に合わせる必要もあったしで
書いたら書いただけ投下してたけど、これからの部分はややこしくなるし
こんなことで素に戻って、落ち着いて文が読めなくなったら本末転倒だ。

でも多分それでも 司令→指令 レベルの変換ミスはすげえありそう…。
多分ウッカリ者でなく、自分は単なる粗忽者だ。
263名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/21(火) 00:16:45 ID:???
粗忽タン(;´Д`)ハァハァ
また投下待ってるよ(;´Д`)ハァハァ
264名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/21(火) 06:17:45 ID:???
続きはのんびりまってるよ。
粗忽職人GJ!
265名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/21(火) 18:44:18 ID:???
粗忽者←読み方分からない馬鹿な漏れが来ましたよ
266中の人:2006/02/21(火) 19:31:23 ID:???
ウッカリ 【うっかり】 春の日差しのように暖かく柔らかな気持ちに、何となくさせてくれる
             天然素材のおっちょこちょい <類>ドジっ娘

粗忽【そこつ】     真夏の日差しのような、逃げ場のないくらいに直線的な間違いを
              悪気はないのに繰り返すため、誰も文句をいえない <類>無能


バカとアホの関係に似てますね。
267名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/21(火) 20:42:01 ID:???
気が付くと僕は、水面を見上げていた。
海の中から上を見上げているような感覚。波間がきらきらと光っていて、とても、綺麗だ。
僕は酷く安心していた。手足の感覚がない、自分が何処にいるのかさえ分からない。普通なら
怖いはずなのに、僕は安心していた。
『気持ちいい』
ずっとこうしていたい。遠い昔にも、僕はこうして浮かんでいた事がある、そんな気にさせられる。
と、遠くから声が聞こえた。
『女の子ならレイ、男ならシンジだ』
父さんの声。赤ん坊の泣き声。誰か、生まれたのかな。
ああ…違う。あれは僕だ。遠い昔の、僕。
父さんが名付けてくれたんだ、僕の名前。僕はそれを知っていた。ずっと忘れてたけど、でも僕はずっと
前からそれを知っていた。
『女の子なら、レイだ』
綾波の名前だ。僕はそれも知ってた。だから僕はあんなに腹が立ったんだ。綾波と父さんが一緒に
食事に行くと聞いたとき。

「私にお父さんをとられるの、怖いの」
いつのまにか目の前に綾波が居た。僕は知らない間に電車の中に居た。
「そんな事ない…父さんが僕の父さんであることは、変わらない事だもん」
僕の言葉に綾波はなにも答えず、僕をただじっと見つめている。
『ふざけんじゃないわよ!アンタまた逃げる気?!』
アスカの声が聞こえた。目の前に、アスカが立っていた。
「逃げてない…逃げたかもしれないけど、でも帰ってきた。アスカや綾波を助けたかったから
 帰ってきたじゃないか」
僕の言葉にアスカはふんという顔をして、腰に手を当てて僕を見下ろしていた。
268名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/21(火) 20:43:29 ID:???
「サイテー」
「そうね、酷いわ碇君」

二人で僕を睨みつけてくる。何でそんな事言うんだよ?僕は何もしてない。僕はいつだって、
二人のこと許してきたじゃないか。なのに何でそんな酷い事言うの?!
「ほらまた逃げた」
アスカが僕をバカにしたような顔でそう言い放った。僕の心がずきんと痛む。分からないよ、
何で僕が悪いの?
「僕は優しくしてきたじゃないか、二人に。死にそうな目にあってもアスカのこと責めたりしなかった。
 綾波にお弁当作ってあげた。何言われても、怒ったりしなかった。…なのに何で僕ばっかり
 責めるんだよ?!」
叫ぶような僕の声に、二人は表情も変えず僕をただ見つめている。嫌だ。その目は嫌だ。
どうしてそんな目で僕を見るの。何がいけないの?どうして僕を好きになってくれないの?!

「嫌いだからよ」
「碇君なんて、大っ嫌い」

酷いよ。意味が分からない。僕が何をしたの?!どうして僕の事嫌いになるの?どうして僕に優しく
してくれないんだよ?!
「出たわね、本音が。アンタはアタシ達に優しくしたんじゃない。アンタが優しくして欲しいから、だから
 アタシ達に優しくしたのよ」
アスカの言葉が僕の胸に突き刺さる。
「何がいけないんだよ…優しくして欲しくて、何がいけないんだよ?!どうして甘えちゃ駄目なんだよ?!
 ずっと独りだったんだ。寂しかったんだ。でもやっと居場所を見つけたんだ。皆が僕の事見てくれるんだ!
 父さんも、僕に笑ってくれるんだ!それが嬉しくて、もっとそうして欲しくて何が悪いんだよ!!!!」
耳を塞いで僕は叫びだしていた。嫌だ。嫌われるのは嫌だ。
だって皆に嫌われたら、誰も僕の事見つけてくれない。僕がいなくなっちゃうんだ!
269名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/21(火) 20:45:41 ID:???
「アタシはアタシ。誰に否定されても、アタシは消えない」
「私は人形じゃない」
嘘だ。だって僕はいなくなっちゃう。いらない子に戻ってしまう。そんなの嫌だ。嫌いだ。みんな
嫌いだよ。そんな事言う皆は嫌いだ。
僕の事捨てた父さんも、僕の事好きになってくれない二人も大嫌いだよ!
「へえ、本当にそうなのバカシンジ?」
アスカが僕を責めたてる。もうやめて。嫌だ、嫌だよ。嫌いになりたくない。父さんのこと好きでいたい。
二人のこと、嫌いになりたくない!
僕は…僕が嫌いになりたくないんだ!!!

いたい。
いたいよ。
僕がいたい。心が痛い。僕はここに居たい。
もう嫌だ。怖いよ。エヴァも父さんも、戦いも仲間も。嬉しいことも哀しいことも、みんな怖い。
ヒトが怖い。付き合うのが怖い。だからずっと笑ってきたんだ。だってそうしてれば、誰も僕から離れて
いかない。
「そうやって人の顔色ばかり伺ってるから、自分が嫌いになるのよ。バカシンジ」
アスカの声が冷たく響き渡る。
そうだよ、僕はずっとそうしてきた。だから僕は僕が嫌いだ。こんな僕は大っ嫌いだ。
でも僕にはそうするしかなかったんだ!

でも、もうやだ。疲れたんだ。僕はもう疲れた。
休ませて。僕は精一杯頑張ったんだ。だからもう許して。

耳を塞いで僕は殻に閉じこもる。
二人の声が聞こえないところまで深く、僕の心は沈んでいった
270名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/22(水) 07:39:36 ID:???
初のファーストGJができたぞ
271名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/22(水) 19:57:52 ID:???
僕は砂で出来たおうちを蹴っていた。あの時と同じように、泣きながらそれを蹴り崩す。
「どうして壊すの?折角作ったのに」
突然声が響いた。僕はその声に表情も変えず呟く。
「意味がないからだよ」
そう、意味がないよこんなもの作ったって。夢のお家なんて、作ったって意味がない。本当に
みんなで暮らせなきゃこんなもの、意味なんかないじゃないか。

同じだ。僕はあの時と同じことをしてきたんだ。
僕と父さんの暮らしもこの夢のお家と何ひとつ変わらない。
おままごとみたいなもんだ。だってほら、こうして僕が望めば、直ぐにでも壊れてしまう。
「でもあの人は、あなたを愛してくれたわ」
僕はその言葉に眉をしかめる。
そう、父さんは愛してくれた。死ぬなと言ってくれた。僕を待っててくれた。逃げ出そうとする僕を、
許してくれた。
僕は幸せだった。夢のように幸せだった。
もう何もいらないと思うくらいに、僕は幸せだったんだ。

それなのに、僕の心は乾いていく。
もう何もいらないはずなのに、なのにまだ『何か』を求めている。
どうして?どうしてなんだよ?!
幸せなのに、父さんが僕を見つけてくれたのに。なのに何で僕はこんなにもまだ寂しいの。
分からない。どうしてなのか分からないんだ。
誰か僕を見つけて。ここに居てもいいんだと言って。僕は僕なんだって、誰か教えて…!
272名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/22(水) 20:00:07 ID:???
「足りないのね」
そうだよ、足りないんだ。僕の中に何かが足りない。何かが欠けたような感覚が、僕を焦燥に導いていく。
もっと優しくして。もっと、僕を気に掛けて。
お願い、僕を、誰か。
「誰か僕を抱きしめてよ…!」
僕の呟きに、世界が突然変わる。暖かい温もりを僕は肌に感じていた。この感覚は、これは。
僕はこれを知っている。

昔、ずっと昔僕を包んでくれていた暖かい温もり。絶対の安心感をくれる、広くて大きな温かい心。
「もっとあなたを、抱きしめておくべきだったのね。あなたの元を離れてはいけなかったのね」
声が、震える。これは、この声は。僕の心に響くこの声は、まさか。
「母さん…?」
僕の問いに返事は聞こえてこなかった。でも僕はそれを確信していた。
母さんはずっと『ここ』にいた。ここで、僕をずっと守っていてくれたんだ。だから僕はあんな恐ろしい
戦いに、負けることがなかった。僕は母さんに捨てられたんじゃ、なかった!
「もう離さないわ、シンジ…。もうずっとこのまま、一緒にいましょうね…」
母さんの言葉に僕は頷く。もう離れない。ずっとずっと、僕はここに居るんだ。
母さんのところに、僕は、還って来たんだ。

満ちる、心。欠けていたものがすっと埋まる感覚。
僕はようやく『それ』を見つけて、安堵の涙を流した。
273幕間。ゲンドウの独り言:2006/02/22(水) 20:02:34 ID:???
夢を、見た。

シンジが泣いていた。
寂しいと、怖いと。誰か傍にいてくれと。そう叫ぶようにただ泣いていた。
私はずっとあれの気持ちを分かってやれなかった。それは当然だった。私はそのことに、ずっと
前から気付いていた。

人は本当の意味で、分かり合うことなど出来はしない。

ユイが私の元を去ったあのときから、私はその事実に気付いていたのだ。
私は人類の未来など、どうでもよかった。ユイがただ、そこにいてくれるだけで私は満たされていたのだ。
だがユイは私の元を去った。二度と帰ってはこなかった。
あれほどに私を理解してくれていたと思っていた彼女は、私の一番の望みを理解できてはいなかった。
私は孤独を思い知った。辛かった。寂しかった。
どうしようもなく孤独は私を追い詰めた。

だから私はシンジを捨てた。人は独りで生きていくものだから、温もりなどは必要ないと。
温もりを知るから、人は寂しくなる。それを追い求める。だから初めから知らなければ、それを
追う事もあるまいと。
274幕間。ゲンドウの独り言:2006/02/22(水) 20:04:09 ID:???
だが、シンジはそれでも求めていた。
私もまた、既にそれを知っていた。

分かり合うことが出来ぬはずの存在を、何故だか私達は追い求めていた。
欠けたものを埋めるように、私達ヒトはそれを追い続けるものなのだ。
だから、必要なのだ。『補完』が。
迷いなどあるはずもなかった。全てはこのために存在していた。シンジの存在すらも、このためにあった。
全てが終わり、そして始まるときシンジもその事を理解してくれるだろう。
その時こそが本当の意味で『分かり合えるとき』なのだと。
…そう思っていた筈、だった。

だが、私は迷っていた。
シンジが初号機に…ユイに、溶けた。
あの笑顔がいない部屋に、私はどうしようもなく怯えている。
真っ暗の部屋の中は酷く冷たく、私を責めたてる。
これは、私の罪なのか。罰なのか。私は断罪されようとしているのか。
それともこれもまた、あるべきシナリオの一部なのか。
私には分からなかった。
ただひとつ分かることは、シンジもまた私を置いて行ってしまったのだという、その事実だけだ。

「私の何が間違っていたというのだ。ユイ…。シンジ…!」
私の呟きはシンジに届くはずもなく、ただ暗い部屋の中に響き渡るだけだった。
275名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/02/22(水) 22:28:57 ID:???
GJGJ!!
276名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/23(木) 00:15:15 ID:???
ここのゲンドウは本当にイイオヤジだな。
277名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/23(木) 01:08:51 ID:???
似た者どうしの親子だと実感させられるな
278幕間。冬月の独り言:2006/02/23(木) 21:18:09 ID:???
碇の息子が、シンジ君が初号機に取り込まれてから早や15日目が過ぎていた。
「2度目だな」
私の呟きに碇はどこか遠くを見つめながら、ああ。とだけ呟いた。その姿に、かつての姿を思い出す。
私は…私達はこれを以前にも経験していた。ユイ君が初号機の実験に参加したときのことだ。

あの時、彼の息子もそこにいた。
明るく無邪気で、利発そうな子供だった。楽しそうに笑って窓の外の初号機を見つめていた、彼の
笑顔が印象的だった。
『人類の明るい未来の象徴を、この子にも見せておきたいのです。』
そう言って彼女はその子の前で初号機に乗り。…そのまま二度と帰ってはこなかった。
その後の彼の戸惑いは、今にしてみれば良く分かる。
周りの大人たちの喧騒、母親が突然目の前から消えた恐怖。だが私も碇も、他の職員も誰も彼の事を
気に掛けている余裕は、その時にはなかった。

事故処理がとりあえず一段落して、私達がシンジ君の存在を思い出し彼を探し始めた時のことは、
今もはっきり覚えている。
彼はその辺に脱ぎ捨ててあったのだろう、碇の上着とユイ君の白衣を頭から被って、部屋の隅で泣いていた。
幼い子供が声を上げるでもなく、ただ目を恐怖に見開いてぼろぼろとただ涙だけを流していた。
大人たちが彼を呼んでも何の反応もしない。がたがたと震えて、ただ全てを拒否してそこに座り続けていた。
そして遅れてやってきた碇がようやく彼を抱き上げたとき、シンジ君は初めて声を上げて、泣いた。
碇はただそれを黙って聞いていた。
279幕間。冬月の独り言:2006/02/23(木) 21:20:41 ID:???
その後、碇は彼を遠く離れた場所に預けた。

あれ以来不安定になったシンジ君は、たびたび夜中に恐怖に震えた叫び声を上げるのだと、
私は碇に聞いていた。
だから私はそれに反対をしなかった。ユイ君の忘れ形見をもう二度と、あんな恐怖に巻き込みたくは
なかった。静かな安全な場所で、この事を忘れてしまった方が彼のためにも良いと思ったからだ。
だが碇は再び彼をこの場所へと呼び戻した。私は少しだけそれを恐れていた。
だが彼はそんな私の心配をよそに、思いがけず明るい、事故前の時見せたようなあの笑顔で
淡々と戦いに参加していた。
私は安心していた。ユイ君の息子は、彼女の思いを理解しているのだなと勝手に思っていた。誰も
彼の心の痛みを、分かってなどいなかった。

そして今、彼は姿を消した。
ユイ君の元で彼は、漸く平穏を見つけたのだろうか。私は少しだけ彼が羨ましかった。
「息子が羨ましいだろう?」
私は少々意地の悪い気持ちになって、碇にそう訊ねた。私達は共犯者だった。だからきっと、碇も
こんな気持ちに違いないと、私はそう思っていた。
だがその反応は、私の思っていたものとは違っていた。

「ああ…そういえば、そうだな」
まるで今初めてそのことに気付いたかのように、碇は呆然とエントリープラグ内部の映像を映す
モニターを見詰めている。
ユイ君に再び出会う。そのためだけに今まで進んできた碇の、初めて見せる彼女以外への執着に、
私はその時気付いたのだ。
280幕間。冬月の独り言:2006/02/23(木) 21:22:23 ID:???
「私は…間違っていたと思うか?冬月」

碇が珍しく私に意見を求めてきた。私はその言葉にどう反応してよいか分からず、ただ彼と共に
モニターを見つめる事しか出来なかった。
迷いが私達の心を惑わせる。
シンジ君の存在は、ひととき私のユイ君への憧憬を薄れさせた。彼女に似たあの笑顔は、あの時
止まったままの私の時間を、ゆっくりと動かし始めていた。
それは碇にとっても、同じだったのだろうか。
「そうかもしれん。だが今更、どうするというのだ、碇?」
私の言葉に碇は何も答えない。初号機の暴走以来、ほぼ不眠不休の状態で処理に当たってきた
碇の目の下には、疲れきった証拠ともいえる濃い隈が刻み込まれている。
虚ろな目で碇は、さあな。とだけ呟くと再び部屋のドアを開け、赤木君と共に対策案の検討に
奔走し始めていた。

私は取り残された部屋で、己の発した言葉をもう一度心の中で繰り返した。
『今更、どうするというのだ』

答えはどこからも返ってはこなかった。
281名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/24(金) 02:24:16 ID:???
282名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/24(金) 02:26:09 ID:???
「ユイくんの白衣を頭からかぶって」
なにやってんのwww
283名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/24(金) 02:33:44 ID:???
ユイの存在を冬月の言葉で思い出すゲンドウの心理描写がいいな。

>>282
ちょwwそこ笑うところじゃないwww
284名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/24(金) 13:19:14 ID:???
最初の頃のサラリとしたネタが好きだったな
285名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/24(金) 14:00:59 ID:???
>>284
そう??俺はこーゆーシリアスな流れも好きだけどな
職人さんにまかせるべ
286名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/24(金) 16:58:51 ID:???
どうやらシンジ限定プチインパクト勃発中のようだから
暗くなるのはどうしようもないんじゃねえの?
287幕間。レイの独り言:2006/02/24(金) 23:57:53 ID:???
碇君が戻ってこなくなって、30日余りが過ぎた。
あの人は日を追うごとに疲れきり、憔悴していく。私の存在はもう、あの人にとって何の意味も
もたらさない。
こうして隣にいても、あの人の目に映るのは何も映し出さないモニターの画面だけ。そして私は
ただそれを、見つめていることしか出来ない。

酷いわ碇君。
あなたは何もかも持っている。
幸せな生活も、笑顔も、あの人の心さえも。
なのに、それでも尚足りないというの。
私には何もないのに。

嫌いよ碇君。私はあなたを大嫌い。
あなたはそれを恐れるの。あなたは自分が全てに好かれていないと気がすまないの。
そういうところが、嫌い。
でもあなたが帰ってこないと、あの人は壊れてしまう。私を見てくれなくなってしまう。だから
私、あなたが帰ってこないと困るわ。

私は祈る。初号機に…あの人に。
あの人は誰?あの人は私、かつて私であったもの。
その存在に心を重ねる。拒否されるかもしれない。でも、あの人を失うのは、私は嫌なの。だから、祈るの。
碇君を帰してと。

私の心は、深い深層へと降りていった。
288幕間。レイの独り言:2006/02/25(土) 00:04:51 ID:???
「碇君」
私は声をかける。彼はびくりと震えて私を見つめた。
構ってはいられない。あの人はもう限界なの。碇君でなければ、救えないの。だから私は
碇君を連れ戻す。
「何故怖いの。私には分からない」
碇君は私の言葉に眉を顰めた。見たこともない、彼の不快そうなそんな顔。
「綾波には分からない。綾波は、父さんがいればそれでいいんでしょ?」
その通りよ。だから、私はあなたを連れに来た。
「僕は母さんがいればそれでいい。だから、それでいいじゃないか。何も問題ない」
碇君の自嘲気味なその言葉に、私はどう例えていいか分からない程の暗い感情に囚われる。

どうしろというの?司令はあなたのことしか見えていない。なのに、何故私が貰えばいいと、
そんなことが言えるの?
「手放す気なんか、ないのに?」
私は感情の篭らない声でそう呟いた。そうよ、碇君は彼を離す気なんかない。彼も彼女も、いつだって
あの人の心を奪ってきたわ。私はそれを得るための手段でしかなかった。

「あの人を私に返して」
私にはそれしか呟けない。そして碇君はそんな私を、冷たい目で見つめることしかしてくれない。
そして、彼女も。
それでも私にはその言葉しか口に乗せることしか出来なった。
「司令を返して。碇君、戻ってきて」
私の言葉に碇君は眉根を寄せて叫びだす。
「うるさい!煩い煩いうるさいうるさいうるさい!!!!綾波は勝手だ!僕の事なんか、これっぽっちも
 心配してない!嫌いだ!綾波なんか大嫌いだ!!!」
叫びと共に、私は拒否される。私の心は彼の…彼女の中から弾き出されていく。
「駄目なのね…もう、私には何も出来ない。あの人のために」

その言葉を最期に、私は深い闇から弾き出されていた。
289幕間。レイの独り言:2006/02/25(土) 00:10:59 ID:???
「駄目です!自我境界がループ状に固定されています!」
「発信空間がクライン状に囚われている…帰ってきたくないの?」

ざわめく世界。碇君を救おうとする人々。あなたは、これを拒否した。
もう駄目、戻ってはこないの。碇君も…あの人の心も。
私は何も出来なかった。ただ碇君を傷つけただけ。だから、帰ってはこないの、彼はもう二度と。
私の心に絶望が満ちる。

目を開いた私の眼に飛び込んできたのは、ぐらりと揺れて地に倒れる、碇司令の姿だった。
290名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/25(土) 00:41:33 ID:???
ゲンドウダウン!
291名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/25(土) 16:10:15 ID:???
これはシンジの代わりにユイが出て………くるわけないか。

シンジはユイと居るために還ってこないんだからなぁ。
292名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/25(土) 17:53:32 ID:???
何気に感動した(つд`)
293幕間。ゲンドウの独り言:2006/02/26(日) 00:10:56 ID:???
私は深い闇の中にいた。シンジが幸せそうにユイに包まれている姿が見える。ああ、私は
確かにこれを求めていた。
その事実と、現実に私は苦笑する。

「幸せか…シンジ。ならば、それでいい」
私の言葉にシンジの目が見開かれる。それは、戸惑い。
私はその目をじっと見つめた。ユイと同じ黒い瞳だった。
その目が私をいつも追い立てた。喜びに、戸惑いに、迷いに。…焦燥に。
知ることもなければこんな想いをすることもあるまいと、かつての私ならばそう思っただろう。
だが今の私はそれすらも決して不快ではなかった。
いま初号機のコントロールを失うことは、即ち私の計画の破綻を意味する。だがそれさえ必然の
ような思いがして、私は知らず苦笑した。

「どうして…?父さんは、僕が要らないの…?」
泣きそうな声でシンジはそう呟いた。だがその問いに答える必要などはない。
私の伝えられる言葉は、思いは。シンジには伝えてあったはずだった。それでも尚、息子は
この道を選んだ。
ただそれだけの事だった。

私はユイに向かって言葉をかける。私の思いを終生理解してはくれなかった、私の妻に向けて。
294幕間。ゲンドウの独り言:2006/02/26(日) 00:13:38 ID:???
「ユイ、シンジを頼む。これは寂しがりだ。いつも泣いてばかりいる」
思い出すのは笑顔より、泣き顔ばかりだ。目にする機会が多かったのは笑顔のはずなのに、
私の脳裏に映る息子の姿はいつでも、泣いているシンジの姿だった。
「だが忘れるなユイ。これは幼くとも男だ。そして男はいつか旅立つもの。守られているばかりの
 子供の期間は、決して長くはない。私達はその短い期間をあまりに無駄に過ごしてしまったようだ」
世界がぐらりと揺れる。ユイもまたその事に気付いていたようだった。

私達は一番大事なものを守ることさえ出来ない、無力な存在だと。それなのに人類の未来などという
大仰なものに、私達は囚われていた愚かな親であり、ヒトだった。
そのことに気付くのが私達はあまりに遅すぎた。それ故にシンジをここまで追い込んだ。だから私に
それを止める資格など、あるはずもなかった。

私は踵を返し、彼らに背を向ける。別離のとき。いつか必ず訪れる、子供の旅立つ刻。私には少々
それが早く訪れた、ただそれだけの事だ。
歩き出す私の背に、シンジの震える叫びが追いすがる。
「嫌だ!父さん…行かないでよ…僕を捨てちゃ、やだよ…!」
その言葉に私は振り返る。それは違う、と私は首を振ってそれに応えた。
「私が捨てるのではない。捨てるのは…置いていくのはお前だ、シンジ。だが、それでいい」
子が親を捨て置いていく事は必然で、当たり前の出来事だ。私はそんな当たり前の事さえ、怖れすぎていた。
だから開放する。全てから。全ての柵からシンジを。

私は振り返る事無くその場を去った。シンジの声にならない叫びだけが辺りに木霊して、私の心が
酷く、軋む音がした。
295名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/26(日) 02:37:26 ID:???
「帰ってきてよ父さん…嫌だ…僕は父さんもいなきゃ、嫌なんだよ…!」
僕は泣きながら叫んでいた。でもそれは決して届かない。父さんの姿は消えて、もう見えなくなってしまった。
もう二度と会えないんだ。
その事が僕の心を酷く責めたてる。僕は父さんと暮らしたあの生活を思い出していた。

初めてここに着いた時、僕はいきなりエヴァに乗せられた。何がなんだか分からなくて、それも
いきなりの実戦だった。そんなことを僕に要求する、父さんの気持ちが僕には全く分からなかった。
僕のことが、嫌いなんだと思った。
ずっと会いにも来てくれなくて、やっと会えたと思ったら冷たい叱責の言葉をかけられて。
それが頭にきて、半分反発心から僕はエヴァに乗った。
初陣は初号機の暴走のお陰で勝つことが出来た。退院した僕にミサトさんは、あなたが望めば
お父さんと暮らすことも出来るのよ、と伝えてきた。僕は正直、気が進まなかった。

でも。

僕はその時思ったんだ。確かめてみたい、と。
本当に父さんが僕のことが嫌いなら、その時に改めて独り暮らしをはじめたらいい。本当に単純に、
僕はそう思って申請を出した。
そして申請はあっさりと、通った。僕は父さんと暮らすことになった。
296名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/26(日) 02:40:17 ID:???
初めのうちは本当に親子の会話なんかなかった。父さんの帰りは毎日遅くて、顔をあわせるのは
朝起きた時だけだった。
気まずくて、でも僕も口下手でどうしようもなくて。僕はそれでも何とかしたいと思った。
父さんと毎日顔をあわせているうちに、僕には何となく父さんに対する苦手意識が消えて
きていたから。
何も言ってはくれないけれど、でも必ず帰ってきてくれる。それだけで僕は、なんだか安心していた。
だから僕の方から、初めの一歩を踏み出す決心をした。それを父さんは受け取ってくれた。
僕は父さんが大好きになった。いいや、多分初めから僕は父さんのことが大好きだった。

その父さんと、もう二度と会えなくなってしまう。

『嫌だ』
僕の心が叫びだした。嫌だ。父さんに会えないなんて嫌だ。会いたい。僕は父さんに、
もう一度、会いたい!
その心に、母さんの声が問いかける。
「あなたがあの人に再び会うということは、再び他人の恐怖が始まるということ。あなたは、
 それを望むの?」
その言葉に僕はびくんと震えた。怖い。その感情が僕から消えてしまっていたわけではなかったから。
297名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/26(日) 02:42:52 ID:???
「何を望むの?」
分からないよ母さん。父さんにはもう一度会いたい。でも僕は、怖い。母さんから離れるのが。
また会えなくなってしまうのが怖いんだ。
「私には、会えるわ。あなたを造るかたちは、私とあの人の身体の一部。私達の心の一部。
 だからあの形をとどめる限り、私達は常にあなたの傍にいる。そして私は、ずっとここにいる。
 エヴァに乗れば、いつでもあなたは私に会いにこれるの」
その言葉に、僕はあの時の…母さんのお墓参りに行ったときの、父さんの言葉を思い出した。
『お前の持つ全て…身体や 血や肉。お前を形作る全てがユイの残した想いであり、記憶の一部だ』
あの時分からなかったその言葉の意味。それは、多分。

「母さんと父さんの気持ちが込められてるんだね、僕の身体には。僕は、それを捨てようとした」
父さんは言った。『捨てるのはお前だ』と。それは本当にそうだった。怖くて、逃げて。全部捨てて。
父さんと母さんの想いも捨てて、それでも父さんと母さんは、僕を許してくれた。こんな酷いことを
しようとした僕を、それでも赦してくれたんだ。
僕は初めから捨てられた…要らない子なんかじゃ、なかった。僕がそれに気付かなかっただけだ。
そう思おうとしていただけだった。

僕は酷い人間だ。アスカや綾波が、僕のことを嫌いだというのも、当然だ。僕は彼女達のこと何も
分かろうとせずに、それでいて僕のことだけは分かってもらおうとばかりしていた。
初めてその事に気が付いて、僕の目からは後悔の涙が溢れていた。
298名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/26(日) 02:45:21 ID:???
「こうして溶けてしまえば、簡単に分かり合えるんだよね。多分」
僕はぼそりと呟いた。心がこうして混ざり合ってしまえば、何も言わなくても、聞かなくても僕達は…
綾波やアスカは、僕の事分かってくれた。僕も彼女達の気持ちを、分かることが出来た。
でも、それは。
「でも、それじゃきっと駄目なんだ。僕は初めから聞こうとしなかった。知ろうとしなかった。綾波や、
 アスカのこと。そして僕のことを分かってもらおうとも」
僕の心に後悔と、そして強い欲求が満ちていく。

会いたい。
全ての人たちに、会いたい。
会って話をして、そして分かり合いたい。
こんな風に何もかも分かり合うことは、きっと無理だけれど。それでも僕は会いたいんだ。

「怖いよ。ずっと怖かった。今も、ヒトは…他人は、怖い。判ってもらえなくて、拒否されるのが怖い。でも」
僕は母さんから少し離れて、立ち上がった。
「分かり合おうとすることは…怖いことじゃない。それは多分、きっとすごく嬉しいことなんだ。だって
 僕と父さんはずっと幸せだった。だからきっと、それは幸せなことなんだよ」
僕の言葉に母さんは何も言わない。でも僕はそれを怖いと思うことはなかった。母さんは僕を分かって
くれる、たった一人の僕のお母さんだから。最後に僕の存在を赦してくれる、父さんと母さんがいるから、
僕は一人で立ち上がれるんだ。
「何を望むの?」
母さんの言葉に、僕は、答えた。それは。

『もう一度、会いたい…!』

僕の身体はその言葉と共に、光に包まれた。
遠くでミサトさんが、僕を呼ぶ声が、聞こえた。
299ロメオ ◆rHza36ec2U :2006/02/26(日) 17:32:54 ID:???
中のヒト乙
お体に気をつけて頑張って下さい
300名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/26(日) 20:33:57 ID:???
僕はうっすらと目を開けた。隣のベッドで父さんが横になっているのが見える。
『父さんだ』
それだけで僕は何だか安心して、再び目を閉じた。

気がついたら電車の中にいた。夕暮れの陽に染まる車内には、僕と父さんだけが乗っている。
かたんかたん、と揺れる感覚が心地いい。僕は向かいの座席に座る父さんをじっと見つめた。
会えばやっぱり嬉しくて、僕は少しだけ不安になった。
父さんはいつだって何も言ってはくれないから、だから僕は不安だったんだ。
でもそれは僕もいけなかった。
「父さんは、どうしても何も言ってくれないの?」
僕は父さんに尋ねた。父さんは僕をじっと見つめて、ぼそりと返事をする。
「お前が聞かなかったからだ。お前が何かを疑問に思っていたのは、分かっている。だがお前には
本当にその答えを、受け止めるだけの覚悟が出来ていたか?」

父さんの言葉に僕の心がびくんと音をたてた。
覚悟。それは、恐怖に打ち勝つ心。確かに僕にはそれが足りていなかった。だから何度も訊ねようと
思いながら、僕にはどうしてもそれを口に出すことは出来なかったんだ。
僕は何も言えなかった。父さんはそんな僕を見つめているだけだった。
301名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/26(日) 20:35:16 ID:???
やがて、電車は駅に着いた。

父さんは席を立ち、扉に向かう。僕にはそれをただ見守ることしか出来なかった。
そんな僕に振り返って、父さんは言葉を紡ぐ。
「私はここで降りなければならない。だが、お前はそれに追従する必要はない。お前はお前の速度で、
お前の降りるべきところを決めればいい」
父さんの言葉に、僕はこくりと頷いた。父さんは嬉しそうにそんな僕を見つめ、目を細める。
「私達は常にお前の元にある、それだけは忘れるな。そして、それだけでいい。分かっているな、シンジ」
それだけ言うと、父さんを降ろした電車は走り出す。僕はそれに揺られながら、父さんの言葉を
思い出していた。
『お前はお前の速度で、お前の降りるべきところを決めればいい』
父さんの言葉は、僕に勇気をくれる。いつだってそれは、僕の背中を押してくれる大事な言葉だった。

僕は目を細めて、そして、席を立った。
電車は僕の降りるべき駅へ、ゆっくりと走り出していた。
302名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/26(日) 22:27:41 ID:???
目を覚ますと、僕のいるベッドの傍には綾波がいた。僕は隣のベッドに目を走らせ、溜息をつく。
「何だ。父さんがいたと、思ったんだけどな…」
僕の言葉に綾波はいつもの口調で呟いた。
「碇司令ならもう退院したわ」
僕はそれに、そう。とだけ答えると、綾波の顔を見つめた。
じっと見つめるその目。僕はずっとそれが怖かった。
父さんを独占している罪悪感。どうしてそんなことを思ってしまうのか分からないけど、僕は綾波の
その目が怖かった。
そして綾波もきっと、そんな僕の気持ちが。

僕は綾波に向かって勇気を出して声をかける。
「綾波は僕が嫌いなんだよね」
綾波は少しだけ驚いた顔をして、ぼそりと呟く。
「そうよ」
分かっていたけれど、やっぱりキツイ。僕はそれでも綾波に笑いかけた。
「ごめんね綾波。僕は綾波に、酷い事言った」
僕の言葉に綾波がびくんと震える。僕はそれを見ないふりをしながら、もう一度彼女に笑いかけた。
「ありがとう綾波。迎えに来てくれて、僕は本当は嬉しかったんだ。それなのにあんな酷いこと言って、
 ごめんね」
僕の言葉に綾波は俯く。その肩が、ふるふると震えている。

…綾波は、声も出さず泣いていた。
303名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/26(日) 22:31:17 ID:???
「涙…。また私は、泣いてる」
綾波がぼそりと呟いた。僕はそんな彼女を莫迦みたいに見つめることしか出来ない。
「碇君だけなの。碇君以外の理由で私は、泣いたことがない。…あの人を想って、泣いたことがないの」
綾波は流れる涙を拭きもせずに、僕をじっと見つめてくる。そして僕もそんな彼女から、目をそらすことが
出来なかった。
「初めてあの人に何かしたいと思ったの。おいしいもの食べさせてあげたいと思ったの。碇君がいなければ、
 私はそんな事思わなかった。それに、私に涙をくれたのも、碇君なの」
綺麗な涙だった。僕は何かに魅入られるように、それをただ見つめていた。
「私が人形じゃなくなったのも、碇君がそう言ってくれたから。…私は碇君が嫌い。でも私は、あなたが
 いなきゃ嫌だったの。碇君がここにいなければ、嫌だったの」

ぽろぽろと涙が零れ、床に跡を残す。僕は綾波の言葉に、少しだけ救われた想いがして、こくりと頷いた。
綾波は少しだけ照れくさそうにそれに頷いて、それからにっこりと笑った。
「碇君が教えてくれたの。…嬉しいときにも、涙は出るのね」
綾波はそう言って、ふと思い出したように涙を拭った。それからもう一度僕に、にっこりと微笑みかける。
とても綺麗な笑顔。父さんを思ってあの時見せた笑顔と同じくらい、それは綺麗な笑顔だった。
安堵と嬉しさと、それから喜びとが混ざり合って僕の心を粟立たせる。僕は、やっと帰ってきた。綾波が
それを教えてくれた。

僕は綾波にもう一度微笑む。綾波もそれに、にこりと答えるように笑ってくれた。
「笑顔を教えてくれたのも、碇君だったわね」
ふと思い出したような綾波の言葉に、僕はとてもとても、幸せな気分になった。
窓の外には明るい陽の光が、いつものように街を照らしている。僕はそれを感じていることが嬉しくて、
綾波にただ、にこにこと微笑みかけていた。
304中の人:2006/02/27(月) 01:28:16 ID:???
とりあえずでっかい穴は、無事埋まりました。もう一個の穴も何とか書いてるうちに目処が立ちました。
励ましてくれた人も、つまんないと言ってくれた人の存在も、自分にとって等しく嬉しい出来事でした。
そして読んでくれた人たちみんなに有難うございますと伝えたくて、ラストでもないのにコメントなんぞ
書かせてもらってます。
人に「道化師の仮面の下の素顔なんぞ見ても、観客は面白くないんだ」とかほざいておきながら、
ろくでもない間違いをして笑われてみたり、何とも修行不足な自分の文を読んでくれる人がいることが、
とても嬉しいです。
コテでも名無しでも、その言葉の重さは変わらない。だから一括してお礼を言います。
有難う。とても、嬉しい。

これからはまた、くだらなかったりシリアスだったりが混在する、自分でも訳の分からない
展開になると思う。そしてとりあえずラストは、すげえくだらないのが既に確定だwww
できればついていける範囲でこれからも読んでくれると嬉しい。本当に有難う。
そしてこれからも、宜しく。ついでに他の人も何か書いてくれと何回言わせたら(ry
305名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/27(月) 01:47:33 ID:???
>>304
乙乙!
このスレ覗くの楽しみにしてるよ
ご自分のペースで投下ヨロ〜
306名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/27(月) 02:21:57 ID:???
寝る前の日課になってしまったよ
307名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/27(月) 09:59:40 ID:???
GJ!くだらないのもシリアスもどっちもいい。
なんか補完されちゃったよ
308名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/27(月) 14:03:26 ID:???
中の人の唯一の欠点と言っていいのは
投下が早すぎて感想書く暇がないというところw

でも短所と長所は等価値なんだ。僕にとってはね
309中の人:2006/02/27(月) 23:59:27 ID:???
せっかちなんで頭の中身をさっさと形にしてしまわんと
ケツの座りが悪いのですよ。
概ね一回分一時間前後もあればなんとか形になるしなー

でも今日はおねむなのでもう寝るノシ
310名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 12:47:13 ID:???
長文になってから読まなくなった俺。
皆サラバ
311名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 14:50:59 ID:???
そりゃおまえ随分初期のころから読んでなかったんだなw
モツカレー
312名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 21:37:19 ID:???
退院した僕が一番初めにしたことは、僕を助けようとしてくれた皆にお礼を言いに行くことだった。
所謂お礼参りというヤツだ。

とりあえず最初にネルフに行って赤木博士やミサトさん、その他実務に携わった人たち全てにお礼と
お詫びの品を持って行く。
気を使わなくていいのよ、とミサトさんたちは言ってくれたけれどこういう事は気持ちの問題だし、何より
僕の気がすまなかったから。
そんな僕の姿にミサトさんはしみじみと溜息をつく。
「シンちゃんも随分変わったわよね〜。ここに来たての頃は当たりこそ柔らかかったけれど、それこそ
 何考えてるのかよく分からなかったもの」
容赦のない言葉に僕は思わず苦笑する。笑って誤魔化す癖は僕の中でやっぱり健在だった。まあ、
そうそう人が変われるはずもないし、と僕は何となく納得する。
それでも僕の中で何かが変わったのは確かで、その事をミサトさんは言っているのだろう。
流石伊達に年は食ってない。年中暇さえあればビールを飲んでるアル中作戦部長かと思ったけれど、
やっぱり見ているところは見てるんだなと僕はちょっと感心した。
でもそれを口に出すとすごい事になりそうだったので、僕はにこにこと微笑んでその言葉に頷く。

「そうだね、何だか一皮剥けたって気がするよシンジ君は」
「そうそう」
青葉さんと日向さんもミサトさんに同意する。するとマヤさんがその言葉にぼそっと、不潔です。と呟いた。
改めてそう言われると、かえっていやらしく聞こえてしまうのは僕の気のせいだろうか。
その辺りのツッコミは大人に任せることにして、僕はもう一度皆にお礼を言うと次に向かった。
313名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 21:39:06 ID:???
冬月副指令へのお礼は簡単だ。前に父さんのお弁当を代わりに食べてもらう約束が、そのまま曖昧に
なってしまっていたのでそのお詫びも兼ねて豪華三段重ねの重箱に入ったお弁当を持っていく。
案の定ものすごく喜んでいて、僕は副指令ともあろう立場の、しかも既に老人と呼んで差し支えのない
年齢の大人がこんな事でいいのだろうかと少し心配になった。
ついでに量が多すぎるから一緒に食べていかないか、と誘われたけれど僕はそれを丁重にお断りする。
この上長話にまでつき合わされたら、お礼どころかボランティアになっちゃうし。そういう要求は市役所に
出して下さいと僕は心の中で呟くと、ネルフの廊下を歩き出した。

前の方から綾波が歩いてくる。ちょうどよかった、と僕は彼女を呼び止めた。
実はアスカへのお礼だけまだ決まっていなかったからだ。
綾波とアスカは結構仲良くやってるみたいだし、何がいいか分かるかなと思って一緒に買い物に
付き合ってもらえないか頼んでみる。でもその依頼はあっさりと断られた。
そりゃ、まあね。好き好んで嫌いな人間と買い物に出かける人はそうそういないよね。とは思ったものの、
僕はここで引くのも何となく癪だったのでポケットから有機野菜専門レストランの食事券を出す。
「これ、父さんと二人で行ったらいいよ。僕は今日はネルフの人たちに夕飯誘われてるから、父さんにも
 そう言っておいて」
僕の言葉に何かを悟ったのか綾波が急遽態度を翻した。
「買い物、行ってあげる」
その言葉に僕はにっこり微笑んでお礼を言うと、それを綾波に手渡した。

僕は段々自分が父さんに似てきたような気がして、少しだけ鬱になった。
314名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 21:40:53 ID:???
綾波と一緒に街に出て色々見てみる。アスカは何を喜ぶのかな?と聞いてみたけれど綾波はいつもの
無表情で、よくわからないわ。とだけしか答えてくれない。
そういえばそうでした。
僕は明らかに人選を間違ったことに気がついて軽く溜息をついた。と、綾波がふと気付いたように言葉を
漏らす。
「惣流さん、この間言ってた。そろそろ香水とか色々揃える年齢よね?って。大人に負けたくないって」

そ れ だ 。

僕は答えが分かった気がして、綾波にお礼を言うと一緒にデパートの香水売り場まで行った。
よく分からなかったけれど散々迷って僕はピンクのラベルのついたそれを選ぶと、そのまま包んでもらう。
それから二人でアスカのアパートへ向かった。
ちょっと不機嫌そうに出てきたアスカは、それでも綾波がいる所為か素直に部屋に招き入れてくれた。
女の子の部屋なんて綾波の部屋以来だし、アレは女の子の部屋というには若干問題があるだろうし。
僕は少しだけ緊張して部屋に上がると薦められた紅茶を口にする。あったかくて、美味しい。
素直な感想を述べるとアスカは少しだけ嬉しそうにしながらも、当然よ!と少し声を荒げて僕を睨みつける。
正直かなりの前途多難だと思う。初めっからアスカは僕に対してあまりいい印象を抱いていないみたいだし、
僕の態度自体も気に入らなかったみたいだし。
でも僕はできれば彼女と仲良くしたい。そう思って素直にあの時の御礼を口にした。
315名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 21:42:41 ID:???
「アスカの声、聞こえたよ。ありがとう」
そう言ってにっこり微笑む。正直かなりキツイ言葉だったけれど、でも僕はアスカがそう言ってくれ
なかったら自分の悪いところなんて気付けなかったと思う。だから、お礼は言わなきゃいけないんだ。
それにアスカが何を考えているのかも、少し知りたい。
多分僕とアスカはすごく似てると思うから。
僕はそうだ、と思い出してさっき綾波と選んアスカへのプレゼントを差し出した。

「グランサンボン…なによ、初心者向けってこと?レディーに贈るならもうちょっと気の利いた香りに
 しなさいよ」
包装を解いたアスカががっかりしたように声を上げる。失敗だったのかな。
「いろいろ匂いは確かめさせてもらったんだけど、僕はこれが一番いい匂いだと思ったんだ。石鹸の香りと、
 花と果物の香りがいい感じに混ざり合ってて、アスカにすごく似合うと思ったんだけど」
僕の言葉にアスカは少しだけ顔を赤らめる。それを慌てて振り払うように殊更に声を荒げた。
「なによ!懐柔しようったってそうはいかないんだから!これで用は終わり?!ならさっさと帰って!
 もう、バカシンジのバカが伝染ったら、こっちまでバカになっちゃうじゃない!」
そう言って部屋を追い出される。僕はやれやれ、と溜息をついて綾波と別れて再びネルフに向かった。

みんなの心づくしの祝宴に僕はすごく嬉しい気持ちになった。
ミサトさんもすごく楽しそうにビールを呑んでいる。ついでに僕も勧められたけど、丁重にお断りして
ウーロン茶で乾杯をした。ていうか未成年をもてなすのに居酒屋はどうかと思う。
まあその辺りは無礼講ってことで、なんてミサトさんは僕に微笑んで生ビール<大>を注文した。いやそれ、
自分が呑みたかっただけなのでは。と思ったけれど僕はあえて突っ込まなかった。こうしてみんなと
わいわい席を囲むのは思っていたより結構楽しくて、僕は本当にいろいろと損をしてきたのだなと思えて
仕方がなかった。
316名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 21:44:10 ID:???
やがて夜も更けて、僕は家路につく。退院した初日だというのに自分でも酷いもんだと思うけど、
でもそれ以上に僕は嬉しい気持ちで一杯だった。
そして、帰る家があるという事実も。
今日は父さんは綾波と食事で、帰ってくるのは遅いだろうけど。それでも僕はこの家に帰ってくることが
嬉しくて仕方がなかった。
うきうきした気分で扉を開ける。真っ暗だろうなと思った部屋の中には電気がついていて、父さんは既に
ソファーでのんびりと寛いでいた。
「あれ?綾波と食事じゃなかったの?」
僕の疑問に父さんはああ、と答えつけっぱなしのTVに目を走らせながら言葉を続けた。
「食事には行った。だが今日は早めに済ませた」

へ?
僕の何が何だか分かってない表情に父さんはやれやれといった顔で更に呟く。
「今日は退院の日だからな」
その言葉にようやく僕は父さんの言葉の意図が分かって、何だか嬉しくて少し恥ずかしくなった。
それから父さんに向き直るとぺこりと頭を下げる。

「ただいま、父さん」

僕の言葉に父さんは、ああ。とだけ答えるとそのまま再びTVに視線を戻した。
その横顔は何だか少し照れているみたいで、僕はそれが嬉しくてずっとにこにこと微笑み続けていた。

ただいま。

帰ってきた喜びと、迎えてくれる人のいる嬉しさ。
僕は一晩中それに包まれながら、とてもとても幸せな眠りについた。
月明かりがとても綺麗な、よく晴れた夜だった。
317名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 23:52:35 ID:???
乙です。毎夜見ています
318名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/01(水) 00:04:30 ID:???
>所謂お礼参りというヤツだ。

シンジそれ違うwwww
319名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/01(水) 23:53:21 ID:???
>>中の人 GJ!
>>100辺りからしばらく読んでなかったんだけど今日一気読みしました。
最初の方のギャグ路線もよかったけど今の真面目な話もさらに良いですね。
原作通りなら完結まであと少し!楽しみにしてますので頑張って下さい。
320名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/02(木) 11:23:35 ID:???
しかしサルベージまでのネタって読んでるこっちもキツかったけど
書いてる方もキツかっただろうね
自分が今まで積み上げてきた話をあそこまで
完璧にぶっ壊せるとは、正直感心した。
あんなのやっちゃうと疲れたでそ
しばらくゆっくり休むといいと思うよ
321中の人:2006/03/03(金) 01:06:29 ID:???
捨てる神あれば拾う神ありとはこの事か。
有難う有難う。全ての人の意向に沿う話などある筈もないし
穴埋めすると決めたときから多少反発はあるだろう事は覚悟してた
話に対しての解説や言い訳も泣き言も、口に出すのは性に合わん
だから淡々と話だけを落とせればスマートなんだろうけれど
いかんせん修行不足で、こうしてコメントを書いてしまうんだな。
見てる人もそろそろウザイだろう。ごめんよ。

とりあえず確かに自分の中で張り詰めていた糸が切れてしまったのは確かで
でもそれをしなければでもエヴァにならなかったから後悔はしてない。
だから笑いの神が降りてくるまで素直に休養させてもらうことにするよ。
その方がかえって早そうだし。書くのは早いが、その前段階には一週間はいつもかかるんよ。
だから前倒しで固めてたけど、全部吹っ飛んだしなw

しかしエヴァ板はいい板だ。ここで話を投下できて幸せだ。
ありがとう。感謝してもしきれないよ。
322名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/03(金) 06:54:17 ID:???
ゆっくり休んで気の向くままに書いてくれ
いつでも待ってるからな
323名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/07(火) 23:34:46 ID:???
保全
324名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/08(水) 20:32:41 ID:???
シンジ「あっ、やっ、父さん、親子同士でそんなの…、あんっ!」

ゲンドウ「問題ない、私はおまえが好きだからな」

シンジ「そんなの…、やっ、父さんが良くても僕は…。ハアハア。」

325名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/09(木) 10:11:03 ID:77xOTLE2
アスカでヌイてる所をゲンドウに見られたシンジ・・・
シンジ 「初号機に残されてるあと185秒これだけあれば
     本部の半分以上は壊せるよ」
マヤ  「シンジ君聞いて碇指令が見たのは、混ぜてもらいたかったのよ」
シンジ 「そんなの関係ないって言ってるでしょー 父さんは、あいつは
     アスカまでもモノにしようとしたんだ。この僕の唯一の楽しみまでも・・・
     父さんそこにいるんだろ答えてよー」
ゲンドウ 「れいの物を映せ」
マヤ 「え・・」
ゲンドウ 「子供のダダに付き合ってるヒマはない」

初号機の中暗闇に流れる映像それは、ゲンドウがヌキ用に撮影していた
ユイとゲンドウのあられもない姿・・・

シンジ 「う・畜生・畜生」
マヤ 「シンジ君放出しますた」
冬月 「こんな所で役に立つとはな 撮影したかいがあったものだ」
ゲンドウ 「ふ・・・」 

326名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/09(木) 10:41:26 ID:???
エヴァ2の釣りエンドが見たーい
327名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/09(木) 14:04:09 ID:???
上がってるから何か動きがあったのかと思ったら・・・ショボンヌ
328名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/09(木) 20:16:13 ID:???
>>324
耳かきしてんのか
329名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/10(金) 16:23:25 ID:???
>>327
そんなこと言っちゃダメよ
330名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/10(金) 21:51:15 ID:???
きれいな歌が聞こえる。少し哀しいような、でもとても綺麗な旋律が辺りに波紋のように広がって、
空気を揺らしていく。

『死に向かう歌よ…そして、生命の歌でもあるの』
『私には音楽のことはよく分からん』
『聞くことくらいは誰にでもできるわ。それでいいの』

どこかで聞いたことあるような声。そして再び流れ出すメロディー。僕はそれにうっとりと耳を傾けながら、
ゆらゆらと揺られていた。
遠い遠い、どこかの記憶。自分のもののような、誰かのもののようなはっきりとしない思い出。
でもきっとすごく嬉しい思い出。

僕はそれに揺られながら、ゆっくりと深い眠りに落ちていった。
331名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/10(金) 21:53:11 ID:???
「うわ、もうこんな時間?!寝坊だよっ父さん!」
時計の示す時刻に目を丸くしながら慌ててリビングに駆け込む僕を、父さんがコーヒーを啜りながら
呆れたような顔で振り返る。酷い。先に起きてたなら起こしてくれたっていいじゃないか。
「もーっ!今日はお弁当ないからね!」
ぶつぶつと文句を言いながら目覚めのコーヒーを淹れる僕の後姿に、父さんの更に呆れたような
声がかかる。
「何処にいく気だ」
なに言ってんの?学校だよあたりまえじゃないか。こちらも負けじと呆れたような声を出してそう返事を
する。と、父さんの深い溜息が後ろから聞こえてきた。
「今日は祝日だ…」

………あ。
慌ててカレンダーを確かめる。そういえばずっと初号機の中にいたから、曜日の感覚がまるっきり
狂っていたらしい。
僕は安堵の溜息をついて、へなへなと椅子に座った。
父さんはそんな僕の姿に、若干笑いを押し殺したような微妙な表情でコーヒーを啜っている。相変わらず
気味が悪い笑顔だ。
でも悔しいけど何も言い訳できない僕は、気を取り直して朝食の準備に取り掛かかった。
332名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/10(金) 21:57:06 ID:???
『そういえば、今日何しよう』
卵を割りながらそんなことを考える。何しろ今日は学校は休みで、ネルフにも行かなくていい本当の
休日だった。この機会に何かしておきたいんだけど、と考えていると僕の頭にかつてした加持さんとの
約束がふいに思い浮かぶ。
「そっか、スイカ!」
ずっと前に加持さんとした、スイカで料理を作ってあげるという約束をすっかり忘れてた。加持さんにも
励ましてもらったんだからお礼しないと。
それについでだからみんなも呼んで、この間みたいに騒ぐのも楽しいかも。アスカや綾波とも一緒に
あんな時間を過ごしてみたい。

そうと決まれば父さんに許可もらわなきゃ。
そう思い振り向いた僕の目に飛び込んで来たのは、いつの間にか電話口で冷や汗を流しながら
『イシャはどこだ』とか喚く父さんの姿だった。いやそれマニアックすぎるから父さん。
僕はかなり冷たい目でそれを見つめながら、声をかけた。
「父さん電話するならついでに、ミサトさんとかネルフの皆にもしておいて。今日スイカパーティーするって。
 あ、副司令にも一応ね」
何だそれは?と言いたげな父さんに一から説明するのもめんどくさかったので、僕は加持さんに
携帯で連絡を取る。スイカパーティーの説明をすると、加持さんも楽しげな声であっさりスイカの提供を
引き受けてくれた。
僕は電話を切ると再び父さんに声をかける。
「じゃ、父さん連絡終わったらスイカ取りに行って。場所は後で説明するから」
目玉焼きとウインナがのった皿をテーブルに運びながらそう言う僕に、父さんはまるっきり事態の
把握できていない顔で頷いていた。

僕は何だか楽しくなってきて、パンにバターを塗りながらふふ、と笑った。父さんも不思議そうな顔を
しながらも、そんな僕の姿に少し安心したように目を細める。
また楽しい日常の始まる音が聞こえた気がして、僕はもう一度にこにこと、笑った。
333名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/10(金) 22:00:28 ID:???
大慌てで仕込みをする僕の後ろで、父さんも連絡網を回している。と、思ったらミサトさんに
残り全ての連絡を押し付けていた。さすが父さんやることがセコイ。
それからまたどこかに電話してるなと思ったら、外から突然爆音が聞こえてきた。
まさかと思って窓の外を覗いて見ると、案の定ネルフのヘリが屋上のヘリポートに到着している
ところだった。
ちょっと待って。まさかアレでスイカ取りにいく気じゃないだろうね、なんて不安に思っていると
思ったとおり父さんが出かける準備をしているので、僕は慌ててそれを引き止めた。
「父さんバカなことしないで!あんなの停められる場所なんかないから!」
そんな僕の言葉に父さんは不思議そうに首をひねる。
「畑なら広いだろう。問題ない」

問題ありまくりです。
嫌だよ僕、スイカ殲滅の罪に問われて法廷に立つ父さん見るのは。
僕の必死の説得に父さんも不承不承、納得したようにヘリを返す無線をかける。無駄に空輸送で
往復する羽目になったヘリを見つめながら僕は、日ごろ経費節減とか経済困難とか言ってる割には、
父さんも無駄使いが過ぎるのではないだろうかと少しだけ心配になった。
その後普通にタクシーを呼んで出かける父さんの後ろ姿を見つめながら、僕は軽く溜息をついて
再び仕込みに取り掛かる。
作り置きが多少あるとしても、フォンやら野菜のブイヨンやら、ソース用の出汁だけでも時間が相当
必要だ。頭の中でレシピを組み立てながら、僕は父さんに足りないものの買出しもついでに頼む
電話をかけると再び作業に戻った。

父さんが帰ってきたら、今度は部屋の掃除と飾りつけも頼まなきゃ。今日は本当に忙しくなるぞ、
なんて思いつつ、僕は夜が来るのが楽しみで仕方がなかった。
334幕間。加持の独り言:2006/03/11(土) 02:08:42 ID:???
「よう、遅かったじゃないか」
収穫を続ける俺の畑にタクシーが横付けされる。シンジ君が来たんだろうと思い気さくにそう声をかけ
振り返ると、そこには思いも寄らない人物がいた。
「い…碇司令?!」
「よくおめおめと私の前に姿を現せたものだな」
憮然とした顔でそう呟く。いやあんたが自分から来たんじゃないすか。とは思ったものの、俺は苦笑いで
それを受け流すことにして、スイカの入ったダンボールを碇司令に手渡した。
とりあえず俺にはスイカ畑でオヤジと見つめ合う趣味はなかったからだ。
「御子息からの頼まれ物です。楽しみにしているとお伝えください」
そう言って畑に戻ろうとする俺に、再び碇司令が声をかけてきた。
「シンジの用件はまだ済んでない。これから買出しに行かねばならん。行くぞ」
…そりゃアンタが頼まれた用件だろう。
喉まで言葉が出かかったが、妙に有無を言わせぬ迫力に思わず俺まで一緒にタクシーに乗ってしまう。

市街地まで向かう車内は妙な緊張感に包まれていた。正直に言うとかなり居心地が悪い。
「確か俺は今日、キャストではなくゲストだったと記憶してるんですがね」
「構わん、問題ない」
沈黙の重さに思わずそんな軽口を口に出す俺に、司令はあっさりとそう返事を返してくる。
いや構う構う。つかそれアンタが決めることじゃないですよ?
俺の心の叫びが聞こえたのか知らないが、司令は無意味に咳払いをして窓の外を眺めるしぐさをした。
シンジ君も毎日これでは大変だろう。
俺は彼に深く同情すると、盛大に溜息をついた。
335幕間。加持の独り言:2006/03/11(土) 02:13:25 ID:???
とりあえず店に着くと、俺は司令に何を買うのか訊ねてみる。
「ふむ。確か酒と魚と肉と野菜と果物と調味料だ」

司令それ大雑把過ぎですよー。おーい、シンジ君このオッサンお遣いさえまともに出来てませんよー。
俺は心の中で激しく溜息をつくと、シンジ君に電話をかける。
このオッサンに任せていては、いつまでたっても部屋にたどり着くことは叶わないだろう。
恐縮しているシンジ君を宥めながらも、買い物リストを完璧に作成した俺、かなりGJだと自分で
自分を褒めてあげたい。
だが司令はそんな俺に構わず適当に買い物籠に商品を放り込んでいて、俺の頭は更に痛みを
増していった。

それでも何とか買い物を済ませると、俺達はそれを待たせていたタクシーに積み込みシンジ君の待つ
部屋へと向かう。
既にぐったりと疲労困憊している俺を他所に、司令は涼しい顔で窓の外を眺めていて余計に脱力
させられた。しかし何故だか俺は、以前よりもこのオッサンのへの印象が妙によくなっている自分に
気付いて愕然とさせられる。
アレか。どんだけつまらんデートでも好感度が上がってしまうという、奇跡のギャルゲー効果という
ヤツかこれが。
思わず自己嫌悪する俺を他所に、車は司令のマンションに到着する。
重い荷物を引き摺りながらエレベーターに乗り込むと、司令もそれに続いた。つうか何気にアンタ
軽いものばっかり持ってませんか。と心の中で突っ込んでいると、突然司令はぼそりと呟くように
俺に声をかけてきた。
336幕間。加持の独り言:2006/03/11(土) 02:15:13 ID:???
「なるほど、完全に足を洗ったというのは本当のようだな。…明日から護衛を付けさせよう」
俺はその言葉に驚いて思わず司令の顔を見つめてしまう。

気付いていたのか、俺を付けねらう『あちら』の刺客の存在に。

流石腐ってもネルフの総司令らしい。感心したように鼻を鳴らす俺に、少し憮然とした表情で司令は
更に怒ったような声音で呟いた。
「勘違いするな。お前に何かあると、シンジが寝覚めの悪い思いをする。それだけだ」
その言葉に俺は勿論ですとも、と頷くと足早に彼の待つ部屋へと歩を進めた。

笑顔で俺達を出迎えるシンジ君の姿に、俺は軽く微笑むとかつての彼の言葉を思い出して苦笑いをした。
『僕は父さんの口から、真実を聞きたい』
今はその気持ちが、少しだけ分かる気がした。
少なくとも彼と出会ってからの司令は、何かが変化してきている。それを待ってみるのも悪くはないと
思えてきて、そんな風に思ってしまう自分自身に、俺は再び苦笑いをした。
337名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/11(土) 12:25:34 ID:???
GJ!!!
338名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/12(日) 02:21:31 ID:???
ゲンドウが分かっててヘリ呼んだのか気になるなあ
お帰りage
339名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/12(日) 03:07:20 ID:???
イイヨイイヨー
スイカ料理の話は俺も気になってたんでかなり期待!
こうゆう平和な感じがすげー好き。
340名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/12(日) 03:43:57 ID:???
ちょwwwつげ義春wwwww

この職人の趣味がもう分からないwww
341名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/12(日) 12:22:03 ID:???
「イシャはどこだ」噴いたwwwwwwwwwwww
元ネタは知らないがワロスwwww
342名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/12(日) 14:43:37 ID:???
まさかここで「イシャはどこだ」を見られるとは。
斜めゲンドウwww
343名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/13(月) 02:45:11 ID:???
kwsk
344名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/13(月) 12:53:55 ID:???
つげ義春 ねじ式 でググれ
345幕間。アスカの独り言:2006/03/14(火) 01:20:42 ID:???
珍しくミサトの奴から電話がかかってきたと思ったら、どういう訳だかバカシンジの家で妙なパーティーを
するらしく、その誘いだった。
当然即答で断る所だったけど加持さんも来るというミサトの言葉に、アタシはそれを思いとどまる。
何でも加持さんの育てたスイカを食べる会らしい。
その言葉に少なからず、アタシはショックを受ける。全然知らなかった、加持さんが園芸が趣味だったなんて。

「何でアイツが、そんな事知ってる訳?」
アタシは誰もいない部屋に向かって呟いていた。
加持さんと久しぶりに会えるのは嬉しいけれど、何だか素直に喜べない。
それでも加持さんのために、アタシは精一杯のお洒落をしようとクローゼットの扉を開けた。
あれこれと服を選ぶアタシの目の端に、小さな瓶が入ってくる。
この間アイツから貰った香水の瓶。少し迷ってアタシはそれを手に取った。
「アイツが喜ぶからじゃ、ないんだから。モノはモノだもの」
言い訳のようにそう呟きながら、中身を掌にのせる。
そうよ、アイツのためなんかじゃない。最愛の人に会う時に他のオトコに貰った香りをつけるなんて、
アタシってなんて悪いオンナ。
バカシンジはその事を思い知るといいんだわ。

ふふんと鼻を鳴らしながら、アタシはお気に入りのピンクのワンピースに合わせたリボンを結ぶ。

耳の後ろに塗った花の香りがアタシの鼻腔をくすぐって、アタシは何だか誰かにふわりと包まれている
ような、とても不思議な気分になった。
346ロメオ ◆rHza36ec2U :2006/03/14(火) 04:27:50 ID:???
乙GJ!
萌えもかけるんじゃないかー
347名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/14(火) 07:49:45 ID:???
LASはキモイ
348名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/14(火) 10:19:43 ID:???
作者は過去にカプは入れないって明言してるし
LASではないんじゃない?
349名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/14(火) 12:53:45 ID:???
あのシンジが気付くわけねえ。
350名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/14(火) 21:43:50 ID:???
え?このスレはゲソドゥ×シンジじゃねぇの?
351名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/15(水) 12:20:05 ID:???
あくまで同居するスレであって別にカプスレではない
352名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/16(木) 05:29:26 ID:???
この程度でいちいち反応する方がどうかとオモ

アスカらしくてイイヨイイヨ-
あんたが書くEVAキャラ皆好きだ
誰かOVAにしてくれ。
353中の人:2006/03/17(金) 01:07:21 ID:???
このアスカって萌えだったのかw

そういえばカプ入れないって話はしたけど、それシンジに絡むカプは入らないって意味だった。
加持とミサトとか、本編に絡むカプは入るかも。ただしそういう話があるってわけでなく
単に設定として入るってだけだけど。
チルドレンに関しては全員恋愛以前の問題があると思うので、カプはまるで入らない。

ところで明日の夜からアニバーサリーのため色んな海辺をフナムシのようにのたくって参ります。
出発前にスイカイベントこなして行きたかったのだけど、無理だったw
とりあえずめったに喰えないホテル飯食って、スイカレシピの参考にしてきます。
354名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/17(金) 07:46:03 ID:???
>シンジに絡むカプは入らない
>加持とミサトとか、本編に絡むカプは入るかも

全然おk
むしろそのほうが良い
355名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/20(月) 21:42:31 ID:???
保守
356名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/23(木) 21:00:03 ID:???
「はろ〜♪シンちゃんお誘いありがとねん」
ミサトさんの明るい来訪を皮切りに、僕の部屋には続々と人が集まり始めていた。僕はしばらく
その対応に追われる。
加持さんも手伝ってくれて、ようやくあらかたのお客を招きいれ、僕は料理を運ぶ方に専念できる
ようになった。
「ね、ね、これなに?」
僕の運んできた皿を眺めて、ミサトさんがわくわくした顔で問いかけてくる。僕は少し照れながら
料理の説明を少しだけした。

ええと、白い皮の部分の浅漬けとぬか漬け。それから同じく浅漬けにした皮を水に晒して塩抜き
した後、千切りにしてサラダに混ぜたもの。ドレッシングにはコンソメにスイカ果汁を混ぜて、少し
酢を利かせたジュレを用意した。
コンソメジュリエンヌの中にも同じものを入れておく。セロリより癖がなくて、我ながらいい出来だと思う。
冬瓜に見立ててあられに切って、一番出汁で浅く炊いたもの。それから赤貝をレモンでしめて、
スイカの果汁で三倍酢風に味を調えたもの。平目のカルパッチョにも、ルバーブのジャムと
スイカの果汁を混ぜて、野菜ブイヨンで味を調えたソースを添える。

それからメインディッシュは、アタリを少しきつめにつけた鴨のローストに、グリル野菜。脇に
同じくローストしたスイカを添えたもの。完熟トマトを添えている料理にヒントを得てみた。
甘さの度合いはどちらも同じくらいだし、なかなか合うと自分では思っている。
飲み物にティーパンチ。丸く刳りぬいたスイカをメインに、各種フルーツを賽の目に切って、
紅茶とラムで風味をつけて炭酸水で割ったものに浮かべる。器はスイカの皮を細工したもので
作ってみた。乾杯に使うシャンパンにも、スイカシャーベットを浮かべて料理は全部完成。
あっと、忘れてた。カットしたままのスイカ。これがなきゃ、やっぱりスイカを食べた気にならないよね。
357名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/23(木) 21:01:40 ID:???
「…何かすごいわねえ。シンちゃんプロでもやっていけそうね?」
僕の説明にミサトさんは溜息をつく。その言葉に僕は少し照れてそんな事ないです、とだけ呟くと
テーブルにそれを乗せていった。と、玄関でまたチャイムの音が鳴る。
僕は慌てて出迎えるためにそちらへと走った。

「来てあげたわよ。感謝なさい」
アスカと綾波が連れ立ってやってきた。僕はにっこり笑うと彼女達を部屋の中に案内する。
「あ、綾波、制服じゃないんだ」
僕はいつもと違う装いの彼女の姿に驚いたように声を上げた。その途端アスカが呆れたように
声を上げる。
「そうなのよ!こいつ普段着全然持ってないって言うから、アタシがわざわざコーディネイト
 してあげたのよ!」
言葉の割にはあまり不快そうでないその口調に、僕は少しだけ微笑ましいような気分になる。
「そっか、これアスカの服だったんだ。でもちゃんと綾波にも良く似合ってるね。アスカって
 センスいいんだね」
僕はお世辞ではなくそう口に出す。綾波の髪の色と同じ、ライトブルーのツーピース。
白いレースの襟が綾波の白い肌を際立たせていて、とてもよく似合っていた。
アスカはそんな僕の言葉に気を良くした様ににっこり笑うと、一目散に加持さんのほうに走っていった。

走り抜けた彼女の軌跡をなぞるように花の香りが僕の鼻をくすぐって、僕は何故だか
嬉しいような気持ちで彼女の後ろ姿を振り返った。
358名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/23(木) 21:02:41 ID:???
あらかた人数も揃ったようなので、僕はパーティーを始めようとグラスと皆に配る。と、その途端
玄関の方から激しい物音が聞こえてきた。
見ると副司令が息を切らせながら入ってくるではないか。
そういえば副司令がまだだったな。なんて暢気に僕がそう思っていると、少しだけ憮然とした
表情で副司令は僕の元につかつかと歩み寄る。
「シンジ君、酷いとは思わないのかね。私を呼ばないとは一体どういうつもりなんだ」
その言葉に僕の目が丸くなる。いや、確か父さんに声をかけておくように頼んだはずなんだけど。
僕は父さんの方をちらと見ると、父さんは少しだけにやりと微笑んで僕から目をそらせた。

うわ、絶対わざとだよこの人。
僕は大人気ない父さんのやり口に少しだけ溜息をつくと、冬月副司令にどう弁解したものか
頭を働かせた。と、そんな僕の後ろから綾波のいつもの冷静な声が聞こえてくる。
「碇君、前に言ってた。じいさんはしつこい、じいさんは用済み。って」
ちょwwwwいきなり何言い出すんですかこのアマwwwww
焦ったようにぷるぷると首を振る僕の姿に、副司令は諦めたように溜息をつく。僕は既に誤解を
解くのもめんどくさくなってきたので、そのまま副司令にグラスを手渡してにっこり微笑みかけた。
「ただの連絡の行き違いですよ。副司令、乾杯の音頭お願いします」
僕のその言葉にようやく気を取り直したのか、副司令はごほんと一回咳払いをするとそのまま
慣れた手つきで乾杯の仕草をする。流石年の功だと僕は感心しながらそれに従った。

楽しい夜が始まる合図が聞こえて、僕は何気なく周りを見渡す。
楽しそうなたくさんの笑顔が僕の目に飛び込んできて、僕は幸せな気持ちで、にこにこと
ただ微笑んでいた。
359名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/23(木) 23:27:17 ID:969p6YGg
続きキテター!!
360名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 00:47:34 ID:???
乙です
なにこの高すぎるクオリティ
誰か料理の写真うpしてくれwwww
361名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 01:16:47 ID:???
書いている人は調理師ですか。
362名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 02:44:07 ID:???
じいさんは用済みテラワロスwwwwwwwwwwwwwwwww
363名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 12:28:51 ID:???
料理がプロ並みのシンジとかありえないから。
キモイ妄想乙。
364名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 13:16:51 ID:???
…そう考えている時期もありました。
365名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 15:07:32 ID:???
つうか料理がプロ並みだと何でキモイ妄想なの?
その思考の流れがよく分からんのだが
366名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 16:21:11 ID:???
>>363は料理ができない→俺ができないんだからシンジもできないはず
367名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 16:31:13 ID:???
正直俺も
この手のご都合設定ウンザリ
368名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 16:38:38 ID:???
まあLASとかで良くあるわな。
完璧美少女(w)アスカ→でも家事はダメ
に対して
平凡な少年シンジ→でも家事プロ級(w)
・・・でバランスとってるつもりなんだろうな。
本編でシンジが家事してるシーンがあった→家事プロ級かと。
369名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 19:34:15 ID:???
面白けりゃ問題ない。
370名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 19:48:22 ID:???
文句があるなら読まなきゃいい
あるいは自分で書いてうpしろ
371名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 19:53:25 ID:???
なんとか話のネタを作り出そうとして、安易な設定を用いるのはよくあることです
ヲタの妄想書き物なんだから大目に見ろよ
372中の人:2006/03/24(金) 20:26:53 ID:???
なんじゃこりゃあwスイカ料理が一晩でえらい波紋を呼んでるではないですかwww
一応ちょっと小器用な中学生なら問題なく作れるようなレシピしか選んでないのに
何でまたこんなことに。
というかシンジ料理上手設定って、かなり初期の頃から入れてた設定だけに
今更何でまたこんな議論になってるのかさっぱり分からん。
まあいいや。自分の書く話はとにかく必要な設定しか入れてないし、必要な場面だけを
書くようにしてるし無駄なモンは全部カットするようにしてる。
それを御都合設定といわれても、そりゃしょうがないのでどうしようもないわ。
自分に出来るのは書くことだけで、受け取る側がどう思うかまでは強制なんか出来やしない。
好きなように思っててくれて問題ないです。
良い意見があれば取り入れるし、自分にとってどうしても引けない部分は悪いが好きなようにさせてもらう。
その上で楽しんだりつまらなく思ったりしてくれて全く構わんので、各々好きなように読んでくだちい。

まあFFなんてまず妄想ありきの代物だし。そこは基本の立ち位置なんだからキモイ言われても知らんがなw
でも話をひねり出すために無理くり書いてるわけではないよ。そんなだったら書かないほうがマシ。
この辺は自分で何をどう言ってもしょうがない事だけどね。まあ生あったかくヲチしててくださいな。
373名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 20:35:30 ID:???
「アスカ、食べてる?」
僕は加持さんの傍から離れようとせず、おしゃべりを続けるアスカに近づくとそう声をかけた。
その途端アスカがむっとしたように振り返る。目がジャマすんなと語っていて凄い迫力だ。
「うっさいわね!最近あんまり食べないようにしてるの!大体何よアンタ、レディーに声かけるなら
 もうちょっと色気のある会話になさいよ!まったく子供だったらありゃしない」
自分だって子供の癖に。そう言いたげな僕の視線をアスカは思いっきり睨みつけてくる。と、そんな
様子の僕達を宥めるように加持さんがまあまあ、と間に割って入ってきた。
「まあ、シンジ君はもうちょっと女心を分かってあげた方が良いな。折角香水までつけてお洒落して
 きてくれてるのに、ノーコメントじゃ切ないだろ」
その言葉にアスカは嬉しそうに微笑みつつも、慌ててそれを否定する。
「違うわ!アタシは加持さんのためにお洒落してきたの!こんなバカに気付いてもらえなくたって結構よ!」
僕はそのやりとりを聞きながらふーん、とただ納得していた。

色々めんどくさいもんなんだな女の子って。なんて思ってると僕の鼻腔を再び花の香りが擽った。
「そっか、何かさっきから不思議な匂いがすると思ったら、香水だったんだこれ。いい匂いだね」
僕の何気ない呟きに、アスカが呆れたように溜息をつく。
「アンタねえ…自分が寄越したモンくらい覚えてなさいよ…」
それからしまった、という顔をして慌てて口を噤んで加持さんの顔を見上げていた。何が何だか僕には
さっぱり分からない。
加持さんはそんな僕とアスカの顔を面白そうに見比べると、にっこり微笑んでアスカの頭をぽんぽんと
叩いてみせる。
374名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 20:38:25 ID:???
「前途多難だな。まあ、しっかりやるんだぞ」
そう言って手を振りながらミサトさんのほうに歩み寄る加持さんに、アスカは慌てたように違うったら!!!
と叫んでいたが加持さんは聞いているのか分からないまま、僕達の前から離れていく。アスカはその
後ろ姿にがっくりと肩を落として俯いてしまった。
「アンタのせいよ…どーしてくれるのバカシンジ!」
ふるふるとアスカの身体が震えたかと思うと、突然僕に向かって凄い剣幕で怒鳴り散らす。僕はさっぱり
何のことだか分からなくて、ただぽかんとしているだけだった。
そんな僕の姿にアスカはますます険しい顔つきで僕を睨みつけると、そのまま僕の持っていた皿を奪い取る。
「こうなったらヤケ食いよ!もう、さっさと何でも良いから持ってらっしゃいよこのバカ!」
さっきまでと言ってる事が違うんだけど。そう思いながらも僕はとりあえず、彼女の剣幕に押されるように
慌ててテーブルから料理を色々取ってくることにした。

その後彼女の隣にぼけっと突っ立っている僕に、アスカはフォークを操りながら険しい顔でぼそりと呟いた。
「知ってる?ドイツの田舎ではね、昼食はフランボワーズのタルトやリンゴのパンケーキとポテトの
 ポタージュを合わせるのが相場なのよ。ママも昔よく作ってくれたわ。しょっぱいモノと甘いものの
 組み合わせ、日本じゃあまりしないのに何でアンタこんなの知ってるの?」
握られたフォークがかすかに震えていた。僕はなるべくアスカの方を見ないようにしながらその問いに答える。
「僕にもよく分からないよ。でもひょっとしたら昔、母さんがそんな料理を作ってくれたのかも知れない。」
その言葉にアスカはそう、とだけ答えると再びフォークを操る音が聞こえてくる。
僕は身体を少しずらせると、背中に庇うようにアスカの前に立った。なるべく彼女が他の人の視界に
入らないように気をつけながらも、背中越しにアスカの嗚咽の混じった吐息を感じて、少しだけ
僕の胸が痛む音がした。
375名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 20:40:49 ID:???
しばらくしてようやく落ち着いたらしいアスカに、僕はハンカチを手渡した。途端思いっきり鼻をかむ音が
聞こえてきて思わず僕は苦笑する。
少しだけ目が赤い。アスカは何を思い出したんだろう。そう思いながら僕は彼女に問いかけた。
「おいしかった?」
僕の言葉にアスカはこくんと頷く。僕はそれによかった、とだけ答えると皿を片付けようと台所に向かう。
と、その後ろからアスカの声が聞こえてきた。

「何でこんなの作れるのよ。男の癖に」
僕はその言葉に少しだけ苦笑いで答えると、アスカに向き直った。
「ずっと自分の事は自分でするように言われてきたから。でも、ここに来てからはおいしいもの作りたいって
 思うようになったんだ。食べてくれる人がいるからね」
僕の返事にアスカは何も答えなかった。僕もそれ以上は何も追及せずに、黙って皿を片付ける。
それからふと思いついてアスカにこう声をかけた。
「アスカも、加持さんに何か作ってあげたらいいじゃない。楽しいよ?食べてくれる人の事考えながら
 料理するの」
僕の言葉にアスカの顔が見る間に赤く染まった。なんで?!と狼狽したように呟く姿に僕は思わず
噴き出してしまう。
幾ら僕でもあれだけあからさまな態度とられたら、アスカが加持さんのこと好きだって事くらいは分かるよ。
でもあの、女と見れば誰彼構わず口説きまくる加持さんが、アスカだけには無関心を装っている理由は
さっぱり分からないけど。
僕はおろおろしているアスカって何か可愛いなあ、と思いながら台所に向かった。
376名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/24(金) 20:42:18 ID:???
僕に対するアスカの態度は相変わらずだけど、でも僕は前ほどそれが苦痛ではなかった。それは
綾波に対しても同じことで、僕は自分が出来る精一杯を彼女達にしてあげられるだけで、満足して
しまっている自分に気がついて苦笑する。
そう。やるだけのことをやって、そこから先を決めるのは彼女達自身だ。それを僕がどうこうできる訳じゃない。
彼女達から見る僕自身はきっと、僕が思っているそれとは違うけれど。でも多分それもまた僕が
自分で気付いていない僕のもうひとつの姿。
だから人が僕を嫌いになったとしても、それは仕方のないことで、でもそれは僕にとってはとても大事な
視線なんだ。
僕は酷くあたりまえのことを実感できた気がして、少しだけ微笑んだ。

父さんから見た僕。アスカや綾波から見た僕。ネルフの皆から見た僕。それぞれ少しづつ違うけれど、
でもそれは全部僕自身の偽りのない真実の姿だ。
僕はそれを確認したくて、今日みんなを呼んだのかも知れない。
ぼおっとそんな事を考えている僕の耳に、ミサトさんの楽しげな声が聞こえてきた。
「さーて、宴もたけなわになって来たところで、そろそろかくし芸大会よん♪トップバッターは誰かしら?」
…何それ。初耳なんですけど。
僕は突拍子もないその発案に思わず苦笑しながら、でも何となく楽しくなってくる気持ちを抑えきれずにいた。
僕を確認したかったのもそうだけど、やっぱり僕は他の人のことも知りたくて今日のこの日をを設定した。
人は自分とは色々違っていて、でもそれが当たり前で。
父さんも僕が知っている事とは違う面を知っている人もいるかもしれない。二人だけで過ごしても
それは絶対に分からないことで、だから皆でいると楽しいんだ。
僕は酷くはしゃいだ声を上げて、ミサトさんの案に乗っかることにした。

まだまだ楽しい夜は続いていく。
377名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/25(土) 01:12:02 ID:???
久々の連続投下オツ!
しばらくないだろうとすっかり油断してたー!
寝る前に覗いてよかった・・・

何だか昼間荒れてたみたいね
あまり気にせずやりたいように書いてください
378名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/25(土) 02:44:19 ID:???
本を参考に作ったとでも脳内補完
379名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/25(土) 03:21:29 ID:???
思いついて初めから読み返してて思ったんだがこの話は
親子の和解→自分との対話→他者との関わり
というのを順を追って書いてあるのな
エヴァのテーマから離れてる訳でなし、展開が違えば多少はキャラも変わるだろう
散々本文中に「僕は変わってきている」って言ってるくらいだしなー

強いて言えば含まれてないのは「男女の性」ってテーマくらいかw
中の人乙。EOEあたりまでのテーマを全てこなしてしまったこの話がこの先どうなるのか
ワクテカしながら読ませてもらうよ
380名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/25(土) 03:44:00 ID:???
マンセーしないカキコは荒らしですか。
381名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/25(土) 04:00:02 ID:???
少なくとも中の人はそんな事は言ってないように見えますが何か?
382名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/25(土) 17:30:25 ID:???
絵コンテ書くからアニメ化して
383名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/25(土) 19:29:55 ID:???
>>381
誰も中の人の話なんて言ってませんが何か?
384名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/26(日) 23:14:39 ID:???
いい廃れっぷりですね













ハイここからなぜかgjのカキコが続きます
385名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 06:22:31 ID:???
春だからおかしいのが沸いてもしょうがないか。
中の人毎度乙です。
386名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 06:47:50 ID:???
と、おかしいのが申しております
387名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 07:42:14 ID:???
気持ち悪い・・・
388名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 08:45:46 ID:???
赤ちゃんできちゃった
389名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 12:05:22 ID:dhgMtS0l
何だかよく分からないけど上げときますね
390名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 12:44:58 ID:???
ここでお決まりの台詞↓
391名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 12:46:44 ID:???
日本は、天皇中心の神の国
392名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 14:39:33 ID:???
おもしろいです
393名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 18:58:55 ID:???
>391
森元総理乙
394名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 23:22:22 ID:???
かくし芸と言っても何すればいいんだろう。僕がそう悩んでいると、既に簡単に用意された舞台には
ぐでんぐでんに酔っ払ったロンゲが上がっていた。
「俺のギターテクニックをとくと見よ!」
そう叫ぶとノリノリでエアギターを始める。それはいいけどBGMのない状態でのそれは、傍から
見ていると結構寒い。
玉の汗がキラキラと蛍光灯に光って、それだけ見ると意外に感動的っぽい映像が、却って皆を
ドン引きさせていた。
決めのポーズにお義理の拍手を皆が済ませると、会場は水を打ったように静まり返ってしまう。

流石青葉さん、見事な芸人殺しです。次に現れる猛者は一体誰なんだろうと却って気になって
僕は舞台をじっと見つめた。
すると冬月副司令が父さんに追い立てられるようにして舞台に上がってくる。
父さん。この空気でよりによって副司令をチョイスとは、クオリティ高すぎです。
微妙な空気に負けぬほどの妙な雰囲気をかもしだしながら、副司令はおもむろに尺八を取り出した。
演じますは春の海。季節外れもいいところです。

案の定微妙な空気が更に冷たくなった頃、父さんが満を持して登場した。さあこの空気からどう
ひっくり返すのか、真に見ものな一番です。全く期待は出来ませんが。
異様な空気に押されて思わず僕は、往年の古館一郎のごときアナウンスを口に出していた。
395名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 23:24:07 ID:???
「冬月、例の曲だ」
偉そうにそう命令すると、父さんは副司令の尺八の旋律に合わせて歌い始める。
「波の谷間に〜命の〜花ぁがぁぁ〜〜〜♪」
兄弟船キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
オッサンの心の故郷、東北は猟師町の片隅で熱いソウルを奏でます。歌うは鳥羽一郎の兄弟船。
碇ゲンドウ魂の叫びです!
動揺のあまり思わず素人のど自慢を再現してしまう僕。つうか父さんそれ微妙すぎにも程があるから。
僕の心のツッコミに構わず、父さんは完璧な旋律で見事にそれを歌い上げていく。その満足そうな
姿に僕は心底頭が痛くなった。
この空気、最早修復不可能です。
思いきり深い溜息をついていると、父さんは僕に手招きをする。思わずつられて舞台に上がる
僕の耳には、意外な言葉が聞こえてきた。

「シンジ、お前がこれに乗れ」
工エエェェ(゚Д゚)ェェエエ工
いきなり何言い出しやがりますかこのヒゲ。この空気で僕に一体何をしろっていうの。
そんな事のために僕を呼んだの?無理だよそんなの。出来るわけないよ!!!
だいいち何だよ、その『見ろよ…やり遂げた漢の顔だぜ…』とでも言いたくなるような爽やかな笑顔は。
お膳立ては全て整った、みたいなイイ顔しないで下さい。

僕の困惑とは裏腹に、周りの空気は既に僕にこの空気に乗ることを要求していた。
なんたるデジャヴ。僕はこれを…この空気を知っている。
大人の都合に振り回されるしかない己の立場を呪いつつ、僕は諦めたように溜息をついた。
「…やります。僕が乗ります」
乗りたくない。初号機の100倍は軽く乗りたくない。
でもこうなってしまっては仕方がないので、僕は自分に何が出来るか考えてみる。ヤケクソでも何でも、
今はやるしかない。
そんな僕の頭に浮かんだのは、今朝見た夢のあの不思議な旋律。僕は父さんにちょっとまってて、
とだけ伝えると自分の部屋に戻って押入れにしまいっぱなしだったチェロを取り出した。
リビングに戻ると相変わらず微妙な空気が僕を包む。どうしようもないし、僕は久しぶりに心の中で
『逃げちゃ駄目だ』と繰り返しながら舞台に上がった。
396名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 23:25:55 ID:???
僕は頭の中であのメロディーを思い出す。
それは遠い昔に聞いたことのあるような、硝子のように綺麗で哀げな歌。そして何故だか深い海に
沈んだような、懐かしいような気持ちにさせられる。そんな歌だった。

僕の身体が勝手にその旋律を紡ぎだす。譜面もない、聞いただけの状態で演奏するなんてしたこともない。
でも何故だか僕は、何度も練習したことがある曲のようにそれを奏ではじめていた。
気付くと綾波が舞台に上がってきていた。そしていつの間にか隣に立って、おずおずと僕に問いかけてくる。
「一緒に歌ってもいい?」
綾波もこの歌を知っているのだろうか。いつ何処で聞いたんだろう、弾いている僕でさえもどこでこれを
聞いたのか分からないのに。
でも僕はこくりと頷くと、一旦演奏をやめた。と、その途端ストップの声がかかる。
そしてそのまま父さんは急いで自分の部屋に戻ると、何処から調達したのか謎に満ちた録音機材を
持ってきた。
僕の心にいやな予感が満ち溢れる。まさかいつぞやのビデオ宜しく、この音楽を録音して売り出そうとか
考えてるんじゃないだろうね。
でも僕の嫌な予感は案外よく当たる。恐る恐る父さんの顔を見つめると、父さんは確信的な笑みで
僕の視線に答えてきた。
僕は反論を唱えても仕方がないので、綾波に目で合図すると再び演奏を初めからやり直した。
397名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 23:33:39 ID:???
綾波の歌声が僕の演奏と重なり合う。

それは波に揺られているような、溶け合っていくような、不思議な感覚だった。
波間を薄く射し込む光と、誰かに抱かれているような暖かい温もり。
物悲しいその旋律とは対照的な感覚が、僕の心を包み込んで辺りに波紋のように広がり響き渡っていく。
いつのまにか静まり返った部屋の中に、僕達の音だけがただ響いていて、とても不思議な空間を
作り出していた。
まるでここに居る皆と心が繋がったような、そんな感覚。僕は決して不快ではないその感覚に笑みを浮かべる。

やがて演奏を終え、ぺこりと頭を下げる僕達をみんなの拍手が包み込んでいった。
僕は酷く嬉しい気持ちになって、微笑みでそれに答える。
多分僕はこの日のこの思い出を、きっと忘れることがないだろう。同じ音楽を聴いて、同じではないかも
しれない、それぞれの想いを感じていたこの時間のことを。
それはきっと僕の中でなにより綺麗な思い出となって、僕の心の中で輝き続けるのだろう。
こうして同じ思い出を誰かと共有できる、その事が僕を自然に微笑ませていた。

「なかなかやるじゃない」
舞台から降りた僕にアスカが声をかけてくる。彼女はこの瞬間に、一体何を思ったのだろうか。
「アンタにこんな趣味があるなんて、意外ね」
アスカの言葉に僕は苦笑いする。何故なら僕がこれを続けていたのは、単なる惰性でしかなかったから。
誰も止めろと言わなかった、だから僕はこれを続けていた。でも。
「趣味って訳でもないよ。でも、今はちょっとだけこれを習ってて良かったって思えてきた」
その言葉にアスカが不思議そうに僕をじっと見つめてくる。
「僕の演奏を聞いてくれる人がいる。一緒に歌ってくれる人がいる。何だかそれが今、凄く嬉しいんだ」

僕の言葉にアスカは何も言わない。僕も彼女に何を問うでもなく、ただ隣でにこにこと微笑んでいた。
398名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 23:51:31 ID:???
いかん!ウンコが漏れそうだ!
399名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/27(月) 23:52:53 ID:???
すいません誤爆ですorz
400名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/28(火) 00:14:28 ID:???
どこと誤爆したんだw
そして中の人乙です!
401名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/28(火) 02:04:01 ID:???
2ヶ月あまりPCが死んでる間に職人が神にレベルうpしているだと!!



とりあえず、お気に入り登録完了w
402名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/28(火) 12:17:36 ID:???
>399
あながち誤爆でもないぞ
何故なら俺もウンコもれそうなほどワラタし面白かったw
なかなかいい誉め言葉だな
訳の分からん迫力がある

という訳で乙!
ウンコもれそうw
403名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/29(水) 10:38:46 ID:???
冬月「15年ぶりだな」
ゲンドウ「ああ。間違いない、便意だ」
404名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/29(水) 12:31:40 ID:???
15年もウンコしなかったの?
405名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/29(水) 13:02:41 ID:???
問題ない
406名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/29(水) 13:42:41 ID:???
問題あるよ父さん!むしろ大問題だよ!!!
407名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/29(水) 13:57:02 ID:???
「ああ・・・」
「どっちなんだよ父さん・・」
408名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/29(水) 22:40:51 ID:???
「ああ。サボテンの花が咲いているな」
「とぼけるなよ、父さん」
409中の人:2006/03/29(水) 23:55:35 ID:???
「シンジ、もう私を見るのはやめろ。人は所詮独りで生きていくしかない
 私はずっとそうしてきた」
「………。」
(ウンコの話でまさかこんな大げさな説教貰うとは思わなかったよ、父さん…)




おまいら面白すぎだwこっちがウンコもれそうだよwww
410幕間。加持の独り言:2006/03/30(木) 02:51:09 ID:???
「うえぇぇ〜〜〜!ぎもじ悪い…」
葛城は独り言のようにそう呟くと、俺の手を離れて植え込みに突っ伏していた。完全に酩酊極期のようだ。
「楽しい酒だったみたいだな」
俺は少しだけにやりと笑って見せると、彼女にこう声をかけた。その言葉に葛城は少し拗ねたように
唇を尖らせる。
「いいじゃないのよ〜。たまには羽目外したって」
「お前の場合、羽目というよりは箍が外れたというべきだろうな」
憎まれ口を叩きながらも、俺はそんな様子のコイツをみるのが結構好きだった。
むくれたような顔をして、ぽかぽかと俺の胸に向かって握り拳をぶつけてくるのを避けながら、俺は
ふと葛城の顔を見つめる。

俺の生きてきた時間の中で、唯一輝きを放つ笑顔。
二人で笑いあい、時間と思い出を共有し。この世の全てが二人だけになったような、そんな忘れられない
思い出の中にある彼女の笑顔は、いつでも俺の中で特別な存在だった。
俺はその思い出だけで、どんな事があろうとも笑って死んでいける。ずっとそう思って今まで生きてきた。
「…なによ、ジロジロ見ないで」
拒否の言葉とは裏腹に、俺達の視線は深く絡み合っていく。
じっと俺の目を見つめていた葛城の瞳が、不意に潤んで俺を驚かせた。

「加持くんはずるいわ。私のことなんて見えてなかったくせに…いいえ、他の誰もあなたは好きじゃ
 なかったくせに。なのに私の全部を絡めとっていくのよ。だからあなたから逃げたのに…父と同じ
 種類の人間である、あなたから私は逃げ出したのに…それなのに、あなたはまた私の隣にいる」
411幕間。加持の独り言:2006/03/30(木) 02:53:02 ID:???
葛城の言葉に俺はかすかに苦笑いをする。
「とんだ誤解だ。俺にとってあの頃の思い出だけが、生きてきた証のようなものなのにな」
「でも、あなたは私の前から消えようとしてたわ。私はいつか来るその日が怖かったの。私を置いて
 いくのよみんな。私を省みることのなかった父も、私の元を去ったわ。…最期に中途半端に優しさ
 だけを残してね。あなたも、同じよ」
そう言って涙を堪えるように彼女は上を向く。つられて見上げた夜空には星が綺麗にままたいていて、
まるで世界に自分達しかいないような、そんな懐かしい感覚に捕らわれて俺は軽く微笑んだ。

葛城の言っている事は全く的を射ている。俺はいつでも生に執着していなかった。自分が納得できる
事実を知ることが出来れば、それだけでいつでも消えてしまって構わなかった。
だが、今は。
「人は変われるものだ。…彼らを見ていると、その事がよく分かる」
この年になってまで、そうそう考え方や生き方など変えられる筈もない。自分が不毛な道を歩んで
いるなという自覚はあっても、俺にはそれを変える事など出来はしないと思っていた。
だが、いつのまにか俺は変わり始めていた。
シンジ君の言葉が俺を違う道に導き、碇司令の緩やかで、しかし確実な変化が俺の硬く強張った
考えに波紋を投げかけた。
変わることが出来る。幾つになっても、その気と受け止める相手がいれば、人はいつでも変わることが出来る。
だから俺はシンジ君が答えを出すまで、待とうという気になれたのかも知れない。
そして、彼女との関係もまた。

俺の言葉を意外そうに聞き入る葛城に、俺は静かに微笑みかけた。
「もうすぐ俺の中で全てが終わる日が来るさ。…その時が来たら、八年前に言えなかった言葉を言うよ」
俺のその言葉に、葛城は潤んだ瞳で俺をじっと見つめ。
そしてふ、と微笑を見せた。
それはあの頃と同じのような、しかし決して同じではない。だがそれは、俺の中で一番輝いていた
あの笑顔と同じに輝いていて。
俺の心にもうひとつ大事な宝物が増えた事に、俺は知らず笑みを浮かべていた。
412名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/30(木) 09:04:28 ID:???
GJ! ウンコもれそうw
ミサトー!
413名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/30(木) 23:45:21 ID:???
演奏が終わってしばらく僕は、皆と他愛もない話で盛り上がっていた。

「この間あいのり見てたんだよ、あいのり。したら何かメンバーがどっか屋台でホットドッグ食っててさ。
 それが普通の奴じゃなくてフランスパンみたいのの中身くりぬいて、ソーセージ中に挿してあるんだよ。
 野郎連中大興奮で『うはww共食いwww』とか大はしゃぎだったんだけど、それがどう見ても仮性です
 本当に有難うございました、でさ。…いやあ全国放送で本当に勇気あるねあいつら。
 真の勇者を肉眼で確認したぜ俺は」
青葉さんの半ばセクハラじみた話に、マヤさんはいつものように不潔…と呟いていた。
そのわりに下ネタのある場所には、必ず彼女がいるのは僕の気のせいだろうか。
そんな事を思いながらふと辺りを見渡すと、加持さんとミサトさんの姿が見当たらない。
まあ加持さんは酔いつぶれたミサトさんの介抱でもしてるんだろうな、と思い直し僕は皆との会話へ
戻ろうとして、そこでアスカも部屋の中から居なくなっている事に気がついた。

その途端、僕は何故だか理由はよく分からないけれど、とても嫌な予感がして身体を震わせる。
考えすぎなのかもしれないけど。でも少しだけ僕は心配になって、アスカを探しに部屋を出て表に向かった。
外扉や非常階段の付近とエレベーターホールを探してみるけれど、そこにらしき人影はいない。
あとは階下に降りた中庭の辺りくらいしか、このマンションの敷地で簡単に行ける所はない筈だ。
僕はとりあえずそこに向かうことにした。
414幕間。アスカの独り言:2006/03/30(木) 23:47:48 ID:???
アタシは今、自分がここに居ることをこれほど後悔したことはなかった。
何気ない好奇心だった。加持さんが酔っ払ったミサトを連れ出しているのを見かけて、二人で何処に
行くのかが凄く気になった。だから二人を追いかけた。
ただ、それだけだった。

「その時が来たら、八年前に言えなかった言葉を言うよ」
そう言ってミサトに微笑みかける加持さんの表情。アタシはあんな加持さんを知らない。
いつもの何もかも見透かしたような、含みのあるあの笑顔じゃない、無邪気に…幸せだと心からそう
思っている笑顔。
全然相手に気を使っていない、素のままの加持さんの笑顔。
それを向けられているのは、アタシじゃなかった。

どうして?
何でアタシじゃなくてミサトなの?アタシがまだ子供だから?
初めに出会ったのが、ミサトだったから?!
そんなのない。そんなのアタシがどれだけ努力しても、どうしようも出来ない事じゃない。
生まれた順番は変えられない。出会った順序はもう動かせない。でもアタシにはそれ以外ミサトに劣る
ところなんか、何ひとつないわ?!
身体だって今にミサトなんかよりよっぽど成長してみせる。加持さんのために最高にいい女になる筈
だったの、アタシは。

だけど選ばれたたった一人は、アタシじゃなかった。
415幕間。アスカの独り言:2006/03/30(木) 23:51:15 ID:???
アタシは呆然と二人の姿を眺めることしか出来なかった。
幸せそうな加持さんの笑顔に、アタシの胸が酷く軋む。
選ばれた特別な存在なの、アタシは。頑張って努力して上だけを見つめてきて。
…加持さんだけを見つめてきて!
なのに、そのアタシが一番選ばれたい相手に、選んでもらえないなんて。そんなの嫌。そんなの嘘よ!
嘘だって言って。誰か、これは夢だと言って。
誰か。
お願い、誰か…!

ふいにアタシの肩が誰かに叩かれた。アタシは不機嫌な顔をしてそっちの方を振り返る。
「アスカ、ここにいたんだ」
視線の先には一番見たくない、あの憎たらしい笑顔がいた。
何でアンタがここに居るのよ?
こんな時ばっかりアンタはアタシの前に現れる。でもアタシはアンタに助けられるのだけは、死んでも嫌!
「…アタシ、帰る」
「え、どうしたの急に?具合でも悪いの?」
アタシの無愛想な声にもめげずに、バカシンジは労わるような言葉をかけてくる。それが余計にアタシの
心をイライラさせていった。
「なんでもないわよ!つまんないから帰るの。来るんじゃなかったわ、こんなトコ」
叫ぶようなアタシの剣幕に、バカシンジは少しだけ哀しそうな顔をして、でもにっこりアタシに向かって
笑ってみせる。
「そっか、ごめんねアスカ。僕女の子の楽しいこととか、よく分からないから退屈させちゃったね。
 …もう夜遅いし、送るよ」
あくまでも『優等生』な返事。それがアタシのイラつく心を引けない所まで昂らせていく。
何でコイツは怒らないの?アタシにいつもこんな酷い言葉をかけられて、それで何でいつまでもアタシに
優しく出来る訳?
分かんないわ。余裕なの?それとも哀れみ?
いずれにしてもコイツの行動は、アタシの腹が立つ理由にしかならなかった。
416幕間。アスカの独り言:2006/03/30(木) 23:54:45 ID:???
「アンタなんかに送られるのなんか、真っ平ゴメンよ!アタシ、アンタなんか大っ嫌い。一緒の空気を
 吸うのも嫌!」
勢いのまま酷い言葉を投げかける。バカシンジも流石に傷ついたみたいで、そのまま俯いてしまった。
その姿にアタシの心がずきんと痛む音がする。

分かってる。これは八つ当たりだって。
コイツは何も悪くない。悪いのはアタシ。でも、自分でもどうしようもないの!
嫌よ。コイツといると、アタシどんどん嫌な子になっていく。
だからアタシの前に現れないで。アタシの傍に来ないで。
アタシの心に入ってこないでよ!!!

アタシは、逃げるようにその場から走り出してしまう。
堪えていた涙が一気に溢れ出して、でもその止め方が分からなくて。アタシは泣きながら夜の街を
一気に駆けぬけていく。
ずきずきと痛む胸を押さえながら、アタシはただひたすらに走り続けるしかなかった。
417名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/30(木) 23:57:39 ID:???
呆然とアスカの後ろ姿を見送ったあと、僕は部屋に一人で戻った。
相変わらず部屋の中は明るい活気に包まれていて、それが僕の心を少しだけ痛ませる。
と、そんな僕に綾波が近づいてきた。

「惣流さん、どこにいったか知らない?」
常にピンポイントで一番痛いところをついてくる綾波のタイミングの良い問いに、僕はそれでも何とか
笑顔を浮かべて答えることが出来てほっとする。
「ん、もう帰るって言って出て行ったよ。送るって言ったけど、断られちゃった」
はは、と誤魔化し笑いをしていると綾波は少しだけ残念そうな顔で呟いた。
「そう。一緒に帰ろうと思ったのに」
その言葉に僕は少しだけ驚いてしまう。

「珍しいね。綾波が他の人のこと気に掛けるなんて」
そう?と不思議そうな顔をする綾波にうん。と答えると綾波は自分の着ている服を引っ張ってみせた。
「お礼、まだ言ってないの」
そっか、とだけ返事をすると僕は綾波を置いてそのまま他の皆の元へと向かう。
アスカのことをこれ以上話すのは、今の僕には少しだけ辛かった。分かっていて覚悟してたことだけど、
それでも誰かに拒否されることに耐えるには、僕はまだ慣れてはいなかったから。

僕は皆に見えない方を向いて、少しだけ溜息をついた。
何だかとても疲れてしまった気がして仕方がなかった。
418名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/30(木) 23:59:58 ID:???
パーティーを終え皆を送り出してから、僕と父さんは綾波を彼女の部屋まで送っていった。

その帰り道、父さんはふと思いついたように自動販売機で缶コーヒーを買い僕に手渡すと、そのまま
道路の車寄せにあるガードレールを背にして休みはじめた。
疲れたのかな、と思って僕も隣で渡されたそれを飲んでいると、父さんが不意に口を開く。
「何かあったのか」
驚いて父さんの顔をまじまじと見つめる僕に、父さんは何も言わずただコーヒーを啜っている。
僕は何となく気が楽になって、父さんに向かって微笑んだ。
「分かり合えないって、やっぱり辛いもんだね」
「ああ…そうだな」
僕の呟きに、父さんもしみじみとそう答えてくる。父さんもやっぱりこうやって人に拒否されて、それが
辛くてこんなに無愛想になったのだろうか。
僕は何となく、そうなってしまった父さんの気持ちが分かる気がして、苦笑いをする。

でも僕はもう逃げないって決めたから、だから分かり合おうとすることをやめたいとは思わない。
そんな僕を父さんは、どう思うのだろうか。
「…お前はそれでも、そちらへ向かおうとするのだろうな。私には選べぬ生き方だが、お前にはその方が
 いいのだろう」
まるで僕の考えていることが分かっているかのような、そんな言葉に僕は少しだけ安心していた。
僕に父さんの考えがちょっとだけ理解できるように、父さんにとっても僕の考えはお見通しなんだろう。きっと。
それは血は争えないという事だけではなく、きっと今まで積み上げてきた父さんとの生活が、互いの
考えの理解を助けているのだと。
419名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/31(金) 00:02:55 ID:???
僕は少しだけ、今日見た彼女の後ろ姿に思いを馳せた。
寂しそうな背中だった。彼女が『何か』を求めているのは、僕にもよく分かる。それはかつて、僕も
通った道だったから。
でも僕はアスカのことを何も知らない。何を求めているのかは分からない。そしてアスカも、僕を
拒絶し続けている。でも、いつかは。

「分かるように、なるのかな。僕と父さんみたいに」
「お前が前に進むのをやめない限り、道は開かれるだろう。ただそれは酷く辛い道かもしれぬがな」
父さんの眉がほんの少しだけ顰められるのを見て、僕は酷く嬉しい気持ちになった。それは僕のことを、
心配してくれている証拠のようなものだったから。
「やめろって言う?」
ちょっとだけ意地の悪い僕の言葉に、父さんは呆れたように目を細めて僕をじっと見つめてくる。
「止めろと言って聞くお前ではないだろう。全く、誰に似たものやら」
「どう見ても父さんゆずりです。本当に有難うございました」
僕の素早いツッコミに父さんはバツの悪そうな顔をして、ふいと夜空を見上げるふりをした。
僕もつられてそのまま上を見上げる。

今にも降って来そうなほどの、満天の星空。
街の明かりが少ないせいか、父さんが子供の頃よりは星もよく見えるようになったらしい。
その明るくて、でも微かな輝きに何だか澱のように僕の心の奥にたまっていた、濁った思いを洗い
流されるような気がして、僕はしばらくそれから目が離せないでいた。
父さんもそんな僕に付き合って、ただじっと夜空を見上げている。

明日、アスカに会ったら何を話そうか。
僕は意外に諦めの悪い自分に気がついて、少しだけ複雑な気分になった。

星はまだ輝いている。
420名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/31(金) 02:11:01 ID:???
乙!!
やはりゲンドウとのからみが一番見ていて幸せになれるなあ

でもミサトも幸せになれてよかったしアスカも幸せになれるのかな?
いやLASって意味じゃなくてさ
本編ではみんなかわいそうだったからさ・・・
421名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/31(金) 08:29:44 ID:???
ゲンドウ萌age
422名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/31(金) 10:35:43 ID:???
GJ!
423名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/31(金) 10:52:07 ID:???
シンジ・・・2ちゃんねらーだったのかw
424名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/32(土) 01:13:36 ID:???
3月32日記念マキコ

そして乙
ウンコ話に食いついておきながら直後にこんな話を投下するとは
やりおるな、おぬし
425名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/32(土) 15:58:56 ID:???
萌えage
426名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/04(火) 19:49:54 ID:???
保守
427名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/04(火) 19:53:04 ID:9iAsNQJP
保守
428幕間。アスカの独り言:2006/04/05(水) 21:00:53 ID:???
「あーあ、加持さんとしばらく会えないなんてつまんないー」
「日本についたら新しいボーイフレンドなんて沢山できるさ。サードチルドレンは男の子だって
 言うじゃないか」

アタシと弐号機を乗せた船が日本に入る前の晩、アタシ達はこんな会話をした。
「アタシが好きなのは加持さんだけよ!加持先輩になら、キスだってその後だって…!」
でも、アタシの精一杯の告白は簡単にはぐらかされてしまう。

アタシはもう大人よ。子ども扱いしないで!
そう言って曝け出した胸さえ見てもらえなかったの。
アタシは、加持さんに見て欲しかったのに。アタシの全てを受け取って欲しかったのに。
だけど加持さんにとって、アタシはいつまで経っても子供のまんま。だからあたしを見てくれ
なかったの。
だからあんなホルスタイン女に目がくらんだのよ!
嫌!嫌嫌嫌!そんなの嫌!
何でアタシを見てくれないの?何でアタシじゃ駄目だったの!

アタシは一人、ベッドの中で涙を流す。
429幕間。アスカの独り言:2006/04/05(水) 21:02:11 ID:???
「誰もアタシを見てくれない。だからアタシは、一人で考えて一人で生きていくって決めたの。
でも加持さんだけは、アタシの中に入ってきてもいい人だったの…!」
アタシは一人。生まれたときからたった一人だった。
ママはずっと研究で忙しくて、でもアタシはいい子にして待ってたの。きっとお仕事が終わったら、
ママはアタシを見てくれるからって。
でもママは二度と帰ってこなかった。アタシを見てくれることはなくなったの。
ママの胸の中に居たのはアタシの名前をした、人形だった。アタシは人形じゃないのに、
ママは人形のアタシの方がよかったの。
だからアタシは、捨てたの。アタシの中からママを。

付き合いのために愛想を振りまくなんてカンタン。育ててくれたパパやママにとって、愛想のいい
カワイイ子供の方が育てる甲斐があるもの。だからそうしてきたの。
でも本当のアタシを誰も、知らない。
友達だって仲間だって、アタシの上っ面しか知らないの。
アタシっていう愛想のいい器があればそれでいいの。
「嫌い嫌い。みんな嫌い…!」
アタシを見てくれない加持さんなんて嫌い。ミサトも嫌い。ファーストも嫌い。
あのムカつく笑顔を振りまくバカシンジは、一番イヤ!
幸せそうに笑って、アタシなんかよりずっと成績も実績もあって。何もかも持ってるあいつ。
才能も期待も人望も、全部アイツのもの。アタシじゃなくてあいつのものなの!
大っ嫌い、あんな奴アタシは大っ嫌い!!!
罵倒を続けるアタシの頭に、あのバカの言葉が蘇る。
『アスカの声、聞こえたよ。ありがとう』
少し照れたような笑顔でアタシにお礼を寄越す、あの時の姿が蘇ってアタシの胸はキリキリと
痛んでしまう。
「でも一番嫌いなのは…アタシ…!」

アタシはベッドの中で一人、膝を抱える。
長い長い夜はまだ明けそうにもなくて、アタシはいつまでもじっとそうして震えているしかなかった。
430名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/05(水) 21:04:14 ID:???
今日は久しぶりの三人揃ってのシンクロテスト。

初号機に溶けていた前よりも、僕はずっと調子がよかった。
でもアスカは酷く調子が悪そうで、以前とは比べ物にならないくらいに彼女のシンクロ率は落ちている。
「ついに抜かれちゃった。あーあ、天才シンジ様には敵いませんわね本当に」
嫌味っぽいアスカの言葉に、僕は少しだけ眉を顰める。
「アスカの調子がちょっと悪かっただけだよ。前のアスカならまだ全然敵わないもん」
そんな僕の言葉にアスカは無言で掌を振り下ろしてきた。
ぱあん、と勢いのいい音が響いて、僕の頬が赤く染まる。

「なによ、同情のつもり?余裕って訳?!バカシンジの癖にいい御身分ですこと!サイテー!」
僕の癖にって、なにそのジャイアニズム。そうは思ったものの僕はそれに反論することも出来ず、
無言で頬を押さえて俯いてしまう。
ヒリヒリと痛むのは頬だけではなくて、僕は軋む音を聞きながら足元の床をただ見つめていた。
アスカはそんな僕を置いて、さっさと着替えに行ってしまう。綾波もまた何も言わず僕の隣を通り過ぎていく。

僕はその後ろ姿を見つめ、しばらくそこで立ち尽くす事しか出来なかった。
431幕間。アスカの独り言:2006/04/05(水) 21:06:28 ID:???
着替えを終えたアタシとファーストは、何となくそのまま一緒にエレベーターに乗る。
こいつと一緒のとき話しかけるのはいつもアタシからで、そうでないと何時間でも無言のまま。
でも今日は気を使う気にもなれなくて、アタシはそのままだんまりを決め込んでいた。
すると珍しくファーストの方からアタシに話しかけてくる。

「心を開かなければ、エヴァは動かないわ」
慰めてくれるのかと思ったら単なる忠告で、その抑揚のない声音にアタシは少しだけむっとした。
アタシが心を閉ざしてる?ロボット相手に心開けってーの?
そんなアタシの呟きにファーストは表情も変えずに更に続けた。
「そう、エヴァには心がある。…あなたにも分かっているはずよ」
ファーストの言葉がアタシの心を抉る。そうよ、分かってるけど出来ないのよ!
ファーストはいつだってソツなくこなせるわ、何だって。まるで何も感じないみたいに冷静で、
アタシみたいに調子を崩す事だってない。だからアンタにアタシの気持ちなんか、分かるはずないのよ!

ううん、誰もアタシの気持ちなんか分かってくれないの。
幾ら仲がいいフリしてたって、ファーストにアタシの気持ちなんか分かるはずなかったの。そんなの
当たり前だわ。
「人形みたいなアンタにまで同情されるなんて、アタシもお終いね」
アタシの意地の悪い言葉にもファーストは顔色ひとつ変えない。それがアタシの心を益々イラつかせる。
「私は人形じゃない」
だからファーストのそんな反論に、アタシは益々激昂した。
「何が違うのよ!碇司令の言うことなら何でもほいほい言う事きいて、アンタ碇司令が死ねといったら
 死ぬんでしょ!」
「そうよ」
躊躇いのないその言葉に、アタシは思わず掌を振り下ろしていた。
432幕間。アスカの独り言:2006/04/05(水) 21:08:36 ID:???
『アスカちゃん…ママと一緒に死んで頂戴…』
『イヤ、ママやめて!死にたくないの!殺さないで!』

蘇るあの時の記憶。イヤ、思い出したくないのにどうして思い出してしまうの!
アタシは人形じゃないから、死ななかった。でもこいつは死ぬというの。やっぱり人形じゃない!アタシは
人形相手に友達ごっこしてた、ママと同じ!!!
「でも碇君は、きっと死なないわね」
チン、と音を立ててエレベーターの扉が開く。アタシは何も言わず飛び出すと、振り返りもせずに走り出す。
アイツとファーストを打った掌は、まだ少しだけヒリヒリとしていて、アタシは無意識のうちそれを庇うように、
胸の辺りで握り拳を作っていた。

『もう嫌…こんなアタシ嫌い…。お願い加持さん助けて、助けてよ…!』
とぼとぼと廊下を歩くアタシの目に、自販機の前でくつろぐ加持さんの姿が目に飛び込んでくる。
「加持さ…」
ぱあっと心が温かくなって、思わず声をかけようとしたその視線の先に、そこにいるもう一人の存在に
気がついてアタシは慌てて物陰に隠れていた。

「アスカ、大丈夫かしら…」
「気になるのか?まあ、あいつなりに色々悩むところがあるんだろう。そういう年頃だしな」
アタシの話題。アタシはミサトの言葉にもやもやとした苛立ちを感じる。
ミサトのことは初めからあまり好きじゃなかった。ドイツに居るときから、何かあの明るさがあざとい気がして
仕方がなかったから。
「あの子加持君に憧れてたから…。私はだから、迷ってるわ。私だけが幸せになっていいのかな、って」
偽善的な言葉。そうよ、ミサトのこういう所もアタシは嫌い。
だけど加持さんはそんな嫌らしい言葉にもふ、と微笑んでみせる。
433幕間。アスカの独り言:2006/04/05(水) 21:10:47 ID:???
「思い出すのよ。私はセカンドインパクトから生還したたった一人。あそこに居た人たち全ての命を
 犠牲にして、私は生き延びたの。暗い部屋の中でその事だけ考えてた子供の頃を思い出すのよ、
 あの子を見ていると」
「俺達の世代でそう思ってない奴はいない。みんな誰かしらの死を目の当たりにして、それを
 踏み台にして生き延びてきた。だから俺自身そんな風に思ってた時期もある。…けどな、葛城。
 あんなことなくたって、人間ってのは…いや生き物ってのは誰かしらの命を犠牲にしないと
 一日だって生きられはしない。俺は年端もいかない子供に、そんな事を教わった」

アタシは二人の会話に、がつんと頭を殴られたような衝撃を感じる。分かってしまった、何故加持さんが
ミサトでなきゃ駄目だったのか。
先に出会ったからじゃない。大人だからじゃない。
ミサトと加持さんは、同じ思いを共有してる。それを二人で乗り越えようとしてるの。だからアタシじゃ
駄目だったの。
アタシは加持さんに寄りかかろうとしてただけだから!
でも、でもアタシはじゃあ、どうしたらいいの?

「あれ、加持さん何でネルフに居るんですか?」
ふいにあたしの耳に飛び込んでくる、あいつの声。加持さんとミサトはそれを微笑みで受け入れた。
434幕間。アスカの独り言:2006/04/05(水) 21:12:15 ID:???
「お、スイカ先生のお出ましか。君の父上は人使いが荒いな。畑仕事にかまける暇があるなら
 さっさと復帰して仕事しろ、だとさ。参ったよ」
「ご、ごめんなさい。でもなんですか?スイカ先生って…」
あら加持君の言ってたのって、シンジ君なの?そんなミサトの疑問に楽しそうに加持さんは
笑いながら答えていた。
「サン=テグジュペリは『一番大事なものは、目に見えないんだよ』と言ったが、大事な言葉ほど
 言った本人はそれを覚えてないもんだな。君の『スイカは誰かに食べて欲しいと思ってる』って
 言葉、なかなかの至言だったよ」

アタシはそれ以上彼らの話を聞きたくなくて、その場から逃げるように立ち去った。

酷く、心が冷えていく。
アタシは子供だ。加持さんの言ってた通り、ただの子供。
でもどうしたらいいの?
アタシはこんなに寒いのに、誰もアタシの隣にはいない。
震える体を両手で抱きしめてアタシはその場に蹲る。もう駄目、アタシもう歩けないの。誰か助けて。

でもそんなアタシに降りかかってきたのは、誰かの暖かい腕じゃなくて、聞きなれた警報の音だった。
435名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 00:13:46 ID:???
キタア

超乙!
436名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 11:45:26 ID:???
キタコレ!
437名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 19:29:36 ID:???
待ってました!
438名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 20:51:50 ID:???
「初号機は凍結?何故ですか!」
僕の抗議にミサトさんは少し困ったように父さんの方をを見つめた。
「碇司令の絶対命令よ」
父さんの?!僕は思わず父さんを振り返る。でも父さんは何も言わずいつものポーズで僕達を
見下ろしているだけだった。
「あんな事があった直後だもの。仕方がないわ」
ミサトさんの言葉に僕は言葉に詰まってしまう。そんな僕を他所に、ミサトさんは綾波に言葉をかけた。

「レイ、いける?」
「問題ありません」
その返事に頷くと、ミサトさんは指示を始める。
「零号機発進、超長距離攻撃用意!アスカはバックアップとして発進準備」
ミサトさんの言葉にアスカの顔色が変わった。
「バックアップ?アタシが?!冗談じゃないわ、私が出る!」
そう言って飛び出す。ミサトさんはそれを止めようともせず溜息をついた。
「いいわ、好きにさせましょう。弐号機、先行して発進」

呆然としている僕を他所に、アスカは雨の降りしきる中発進していく。そして綾波も零号機で待機する
ために部屋を後にした。僕はそれを見送りながら父さんの顔をじっと見つめているより他なかった。
439名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 20:54:16 ID:???
モニターに映る弐号機。衛星軌道上の使徒を迎撃するには、射程距離内まであっちから降りて
こない限りどうしようもない。
アスカはじっとそれを待っていた。
と、突然激しい光が弐号機に向かって降り注ぐ。
「敵の視光線兵器なの?!」
「いえ、熱反応ありません」
突然の事態に司令室はざわめきに包まれる。僕も慌ててモニターの画面を見つめた。

「心理グラフが乱れています!精神汚染、始まります」
マヤさんの言葉と同時に、アスカの悲鳴が辺りに響き渡った。
「アスカ!…父さん、僕を出して!今すぐ!!」
その声にいてもたってもいられず僕は父さんに向き直り、叫ぶようにそう口に出していた。しかし
父さんはそれをきっぱりと拒否する。
「敵は精神を侵食するタイプだ。今初号機を侵食されることは避けねばならん」
「だったらやられなきゃいいんでしょ?!」
「その保証はない」

父さんの言葉に僕の中で何かがぶちんと切れる。このままじゃアスカが危ないのに、なに暢気なこと
言ってるんだよこのクソヒゲ!
保障も何も、使徒と戦って勝てる保障自体ある訳ないだろ。
僕は気がつくと思いっきりそのへんの壁を拳でぶん殴っていた。があん、という大きな音が響き渡って
一瞬司令室が沈黙に包まれる。
「…父さん、半年ほどお弁当と食事抜いてみる?」
自分でも驚くほど冷たい声が響いてびっくりする。父さんも目を丸くして僕の顔をじっと見つめていた。
でも僕はそれに怯む事無くそのまま続ける。
「はい、一秒指示が長引くたびに更に一日食事抜きが加算されます。…いち、にい…」
僕のカウントと同時に父さんは冷や汗を流しながら慌てて声を上げた。
「…初号機の凍結を現時刻をもって解除」
僕はその指示を聞くや否や、部屋を飛び出して初号機の元へと向かった。

待っててアスカ、今助けるから。
僕の耳にはいつまでもアスカの悲鳴が響いていて、僕はそれに追い立てられるようにして走り続けていた。
440名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 20:55:51 ID:???
僕はバックアップのために用意されていた粒子砲を、目標めがけて発射する。しかしそれは使徒の
ATフィールドによってあっさりと弾かれてしまった。ATフィールドを破るには熱量が足りなかったのだ。
でもこれ以上距離は縮められない。

「アスカ、撤退して!」
「イヤよ!今撤退するくらいなら死んだ方がマシ!」
ミサトさんの指示にもアスカは耳を貸そうとしない。そして再び僕の耳にアスカの悲鳴が聞こえてくる。
「アスカ!」
迷う暇もなく、僕はアスカに向かって走り出していた。そのまま彼女の身体を突き飛ばして、光の中から
はじき出す。
「うわあああああっ!」
その瞬間、僕は頭の中を掻き乱されるような奇妙な感覚に、叫び声をあげていた。
何かが、僕の心を覗いている。
記憶の奥底に眠る、自分でも覚えていない隅々まで捲られ、僕は痛いようなその感覚に身体を震わせた。

『碇、ここは託児所ではないぞ』
『すいません先生、私が連れてきたんです』

副司令と母さんの声。知らない記憶。いいや、忘れていた…忘れたかった記憶が僕の脳裏に蘇る。
エヴァに似た残骸が所狭しと打ち捨てられた場所。水と光。閃光。人々の喧騒。
母さんが消えた、その、瞬間。
僕が忘れていた、捨てた記憶。突然目の前から暖かい温もりが消えた瞬間。
あの日以来、僕の前から全ての希望が消えた。
441名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 20:57:21 ID:???
「どうして…こんなの思い出させるんだよ…!」
僕の目から涙がこぼれる。その感情さえ誰かに覗き見られているような、そんな感覚に僕は夢中で
頭を振った。
「嫌だ…!僕の中に入ってこないで…!」
僕は自分の呟きに、アスカの姿が重なったような気がして、驚きのあまり顔を上げる。

「使徒は、知りたがってる…?僕のことを?」
不愉快なこの感覚。自分の全て知ろうとする視線に、僕はアスカが僕を拒否しようとする気持ちが
分かったような気がして、溜息をついた。
そして自分と同じことをしている、この視線を受け入れる覚悟をきめる。
知りたいなら、知ったらいい。僕は僕から逃げない。あの時の記憶も、僕の一部だから。

あの時。誰も僕を振り返らなかったあの時。
父さんと母さんの匂いだけを支えにして、震えていた僕。
怖かった。寂しかった。でも…。
父さんが抱き上げてくれたんだ。どんなに怖いことがあっても、父さんは僕を見つけて抱き上げて
くれたんだ!
だから僕は負けない!負けるもんか!!!

降り注ぐ光の中で、僕は耐えるようにじっと上を見つめ続けていた。
442幕間。ゲンドウの独り言:2006/04/06(木) 20:58:28 ID:???
私は呆然とモニターを眺めていた。
シンジの絶叫が辺りに木霊する。精神汚染はシンジの精神を蝕もうとしている。
私は委員会の命令にかこつけて、シンジをアレから守ろうとしていた事に気付き、自嘲気味に
笑みを漏らした。
「汚染レベルY、危険領域に突入します!」
だが、シンジは私の命令に背いた。だが私はそれに腹を立てる気持ちには更々なれなかった。
アレはそういう性質だから、止めることなど初めから私には無理な話だったのだ。
流石ユイの息子だけあって、いざという時に私の言うことなど耳に入れる筈もない。
だが、このままシンジも初号機も失うわけにもいかない。私はレイに指示を出した。

「レイ、ドグマを降りて槍を使え」
私の言葉に冬月が焦ったように声を上げる。
「ロンギヌスの槍をか?碇、それは…」
「ATフィールドの届かぬ衛星軌道の目標を倒すにはそれしかない。急げ」

もう一刻の猶予もそこにはなかった。私は祈るような気持ちでただモニターを見つめるだけだった。
443名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 21:00:02 ID:???
「何よなによ!何で来たのよバカ!こうなる事くらい分かってたじゃないのよ!」
アスカの怒声が僕を現実に引き戻す。僕はそれになるべく穏やかな声で答えた。
「だってアスカがこんな辛い目にあってるの、ただ見てるだけなんて嫌だったんだよ…」
僕の言葉に、アスカは震える声で問いかける。
「何でよ…なんでアタシのためにそんな事してくれるのよ。アタシあんたに酷いことばっかりしてきたのに!」
モニターに映るアスカのその表情に、僕は少しだけ笑みを浮かべると彼女に声をかける。

「何でって、なまかじゃないか僕達」
あ、噛んじゃった。仲間だ仲間。
僕がそう訂正しようとするより早く、アスカは僕に向かって叫びだす。
「アンタは香取慎吾の孫悟空か!」
流石アスカ、往年のキャラメルの前説で近江谷太郎にツッコむ上川隆也を超えた高速ツッコミに、
僕は思わず苦笑いを浮かべた。するとアスカはそのまま更に攻撃を続けてくる。
「大体なによ、アンタが孫悟空ならファーストは沙悟浄?アタシは猪八戒なワケ?!アタシが
 豚扱いなんて許せない!」

誰もそんな事言ってません。
止まらない暴走列車に乗ってしまったアスカを、どう引き戻そうかと僕が悩んでいる間も、アスカの
快進撃はまだ続いていた。
444名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 21:01:32 ID:???
「大体三蔵法師は誰なのよ!」
いきなり話を振られて、僕は焦りながらも律儀にそれに答えてしまう。ていうか、今こんな事してる
場合じゃないんだけど。
「え?えーと、えーと…と、父さん?」
「あんなヒゲ面の三蔵法師がいてたまるかっ!!!謝れ!深津絵里に謝れ!!!」

いやいやいや!そうじゃなくて!
大体何で精神汚染受けてる最中なのに、僕はこんな夫婦漫才繰り広げてなきゃいけないんだよ。
「もー、アスカやめてよ!使徒に人類はいっつもこんなバカ会話ばっかりしてるのかって誤解されたら、
 嫌だよ僕!」
「アンタこそ何の心配してるのよ、緊張感のない!」
アスカに言われたくないです。
その後も軌道修正が出来ず緊張感のない会話を繰り返す僕達に業を煮やしたかのようなツッコミが、
綾波の手から槍の形となって使徒に突き刺さる。

「いいかげんにしなさーい!」
綾波の棒読みの台詞は見事使徒を殲滅して、僕はようやく精神汚染攻撃から逃れられた。
ほっとする僕に、アスカはふてくされたような顔でぼそりと呟く。
「お礼なんか、言わないんだから」

相変わらずなその言葉に、僕はようやく心からの笑みを、浮かべた。
445名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 21:12:31 ID:???
乙!!
期待
446名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 21:55:33 ID:???
これほど緊張感のない22話を読めるとは思わなかったw
超乙!
油断した頃に爆撃のように投下始めるから目が離せないよ
447名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/07(金) 00:39:27 ID:???
笑いとシリアスを両立できるなんてすごすぎるな
しかし………

無視されまくりのアラエル、カワイソス(´・ω・`)
448名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/07(金) 22:03:18 ID:???
「ここに居たんだ。大したことなくてよかったね」
僕は座り込んでいるアスカに声をかける。僕と彼女の間を『立ち入り禁止』のテープが遮っていて、
僕はアスカがどんな顔をしているのかはよく分からなかった。
「ちっとも良くないわよ。よりによってアンタに助けられるなんて…!やっぱりアンタだけ居ればいいのよ。
アタシ達なんか要らないのよ…」
そう言ってアスカの肩が震える。僕はどうしていいのか分からなくて、ただそこに突っ立っていることしか
出来なかった。

僕とアスカを遮るテープは、きっとアスカの心と同じで。
それを無理に超えようとしていたから、僕はアスカに嫌われた。それが分かっても、泣いているアスカを
みるのは僕は嫌で、だからこうして声をかけてしまう。
「そんな事ない…アスカが一緒に居てくれて、気をそらしてくれたから、僕の精神汚染も大したこと
なかったのかもしれないし。それに使徒を殲滅したのは、綾波だし」
「ウソよ。アタシはバカみたいに隣でぼけっとしてただけ。そうね、要らないのはアタシだけだわ」
アスカのその言葉に、僕はついかっとなってしまう。
『要らない自分』という言葉に、僕の心が抉られる様な痛みを感じて、気がつくと僕はきつい口調で
アスカに叫んでいた。
「自分が要らないなんて言うなよ!そんなことない…要らないなんて、アスカがそんな事なんてないよ!」
僕の言葉にアスカが振り返る。泣き腫らした目が今も潤んでいて、酷くそれが僕の心を痛ませた。
「本当にそう思ってる?」
「当たり前だよ!」
アスカは僕の返事に薄く微笑むと、立ち上がってゆっくりと僕の方へと近づいてきた。
そしてテープギリギリまでの場所で立ち止まると、少し明るい笑顔で僕に囁きかける。
「ね、シンジ。…キスしよっか」

思いもかけないアスカの言葉に、一瞬時が止まったかのように感じる。
風がふわりとアスカの髪を揺らし、僕の鼻腔をあの花の香りが擽って、僕はただ呆然とアスカの顔を
眺めていることしか出来なかった。
449幕間。アスカの独り言:2006/04/07(金) 22:05:34 ID:???
アタシは無力感に苛まれていた。
何も出来なかった。ただ無謀に使徒に対峙して、そして助けられただけ。
他には何にも出来なかった。エリートが、選ばれた人間が聞いて呆れるわ。アタシはただの役立たずよ。

でも、このバカはそんなアタシでも『要らないなんてことない』って言ってくれた。意地悪ばっかり
言って可愛くないアタシを助けに来てくれた。
コイツを見てるとムカつくけれど、でもコイツはアタシを必要だと言ってくれるの?
それなら、いいわ。
アタシの全てを受け入れてくれて、抱きしめてくれるなら。アタシこいつでも、もういい。
アタシだけ見つめてくれて、アタシの味方で居てくれるなら、バカシンジでも誰でもいい。
誰でもいい、誰かアタシを受け止めて。

「ね、シンジ。…キスしよっか」
だからアタシはこう言ったの。
アンタにアタシをあげるから、だからアンタをアタシに頂戴。
そしたらアタシ、また元気なアスカに戻れるかもしれない。
驚いているみたいな顔をして、ぼけっと突っ立ってるシンジの首に、アタシは腕を絡ませる。
顔を近づけてじっとその両眼を見つめた。綺麗な目。結構こうしてよく見ると整った顔してる。女の子
みたいな顔して、加持さんみたいに男らしさは欠片もないけれど。
まるで他人事みたいにそんな事を考えながら、アタシはシンジに唇を近づける。

あともう少しで触れてしまう、アタシはそれに覚悟を決めて目を閉じた。
450幕間。アスカの独り言:2006/04/07(金) 22:07:32 ID:???
でもその瞬間、アタシの身体は慌てたようなシンジの腕によって引き剥がされていた。
「ま…待ってよアスカ!どうしたんだよ急に」
なによ、怖いの?男の癖に。
アタシはむっとしてじっとシンジの顔を見つめる。
「このアタシがここまでしてやってるのよ?さっさと来なさいよ」
アタシの言葉にシンジはかっと頬を赤らめて俯いてしまう。まったく乙女かアンタは。
アタシがふてくされたようにそのままじっと睨んでいると、シンジはおずおずとアタシに向かって
問いかけてきた。

「アスカは…加持さんのことが好きなんじゃなかったの?」
その言葉に、アタシの体がびくりと震えた。
「好きでもない相手とこんなの、良くないよ。何か嫌なことあったのなら相談に乗るし、僕に出来る
 ことがあるなら何でもするよ。だから止めよう、こんなの」
その言葉に、アタシは思わずかっとなる。
「こんなのって何よ!アタシは相談相手なんか欲しくない!そんなの欺瞞よ。悩んでるアタシを
 上から見下ろして、いい気になってるだけ!何よ、アンタもファーストと同じで友達ごっこが
 したいだけ?!ならアタシにもう構わないで!あんたアタシを傷つけるだけなの!」
涙が、溢れてくる。アタシを抱きしめてもくれないくせに。アタシを受け入れてもくれないくせに!
友達なんて、仲間なんていらない。アタシが…アタシが欲しいのは!

「アスカ!」
後ろでバカシンジの呼ぶ声が聞こえる。アタシはそれに振り返ることもせず、逃げるように走り出していた。
やっぱり誰もアタシなんて要らないんじゃない。
もういい。もう、どうでもいいわよ、アタシなんて。

アタシの心はぽっかり空いた空洞に、呑み込まれる様に落ちていっていた。
451ロメオ ◆rHza36ec2U :2006/04/08(土) 01:37:39 ID:???
乙です。
かなりリアティがあるチルドレンだなぁ
子供らしさがよく出てますね
452中の人:2006/04/08(土) 01:56:30 ID:???
ありがとうさん。今こっちもそっち見てるよw
453名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 13:15:46 ID:???
>>ロメ
リアティとは何なのか小一時k(ry
454名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 14:15:11 ID:7CsywaE2
【リアティ】 【名】 釈迦入滅より56億7千万年後、リアス式海岸付近に現れるとされる伝説上の生き物
           ヒマラヤ山脈のイエティ伝説にちなんで名づけられた
       【形】 『〜がある』 
           伝説上とされる生き物さえ、そこにいるように感じるさま       
455幕間。ゲンドウの独り言:2006/04/10(月) 20:09:33 ID:???
使徒を殲滅せしめたロンギヌスの槍は、そのまま第一宇宙速度を突破し、現在は月軌道に移行して
いる。最早回収は不可能だろう。
安堵の溜息をつく私とは対照的に、冬月はどことなく落ち着かない様子だった。

「碇、老人達が黙ってはいないぞ」
やかましいなこの男は。第一自分が既に老人の域に達しているというのに、他人を老人呼ばわりとは
感心せんぞ。
私の心の声が聞こえたのか、冬月は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。
私はとりあえず面倒なのでそのまま黙っていようと思ったのだが、奴の『何とか言え』と言わんばかりの
表情にしぶしぶ口を開いた。
「理由など存在さえすればいい。ゼーレは既にエヴァシリーズの量産に着手している。チャンスだ冬月」
冬月の無言の催促に、もっともらしい理由を述べる。
だが実際には私が完全に私情で槍を使ったのだということくらい、この白髪にはお見通しなのだろう。
それが分かっていて訊ねるのだから、まったく始末に負えない捻くれジジイだ。
いずれにせよ、槍は私達人類の手を離れ、回収不可能な場所で漂っている。その代わり弐号機と
初号機は無事だ。全く何の問題もない。

私はまだ何か問いたげな冬月を置いて部屋を出る。
この男の言うとおり、老人達は私をここぞとばかりに責めたてるだろう。全く鬱陶しい事この上ない。
だが冬月と違って彼らは放っておくことも出来ぬところがまた面倒だ。
私はその対策を講じるための準備を始めなければならん。この猪木顎に無駄な時間を使っている暇は、
一瞬たりとも存在しないのだ。

私は残業にならないような時間配分を、老人達への言い訳と共に必死で頭の中で組み立てていた。
456幕間。ゲンドウの独り言:2006/04/10(月) 20:11:22 ID:???
家に帰って来たシンジは、何処となく元気がないようだった。

精神汚染の影響は少ないと報告は受けているし、私にはその原因はさっぱり分からぬ。
ただ何かにシンジが落ち込んでいる様子なのは私の目にもみて取れて、私はそのまま黙り込んでしまう。
私はこういう時にもあまり気の利いたことはいえぬ性質で、気まずい空気が食卓を包んでいるのを、
ただ受け流すことしか出来はしない。
するとシンジの方からこの空気に耐えかねたのか、重い口を開いた。
「ねえ父さん。キスって好きな人とした方がいいよね?それとも女の子にとっては違うものなのかな?」
それは、思いのかけない言葉だった。思わず目を
  。 。
 / / ポーン!
( Д )
と飛ばしてしまう私に構わず、シンジは深刻な顔で俯いたままだ。
『シンジ…私の知らぬ間に、そのようなことを考えるようになったか』
私はわが子の成長に、少々度惑いながらも喜びを隠し切れなかった。しかしながら私に的確な答えが
出せよう筈もない。
その手のことをナチュラルに女を利用する手段として使用してきた私にとって、シンジのまっすぐな瞳は
眩しすぎた。
しかしシンジにそのような事実を伝えるわけにもいかず、私は思わず口ごもってしまう。
457幕間。ゲンドウの独り言:2006/04/10(月) 20:12:25 ID:???
「僕の事嫌いだって言ってたんだ。…同じ空気を吸うのも嫌だって。それでも、キスは出来るのかな?」
シンジは私の焦りなど気にも留めない様子でそう続ける。
いやその前に待て、そこkwsk。
つまりアレか。そういう事か。

「……ふむ、シンジ、赤飯だ」
「はあ?!」
察しの悪い奴だ。初体験には赤飯で慶事を祝う。これこそ日本人の伝統というものだろう。
私の言葉にシンジは真っ赤に頬を染めている。
そうかそうか、遂に息子も大人になったということなのだな。
一人でうむ、と納得している私に、シンジが突然慌てたように声を荒げた。
「ななな何誤解してるんだよ父さん!初体験も何も、僕まだ何もしてないよ!」
その言葉に私は再び目を丸くする。

すると何か、この息子は女から有難く恐れ多くも誘われたというのに、据え膳喰うこともせずにおめおめと
その期を逃したというのか。
おお、なんと情けない。勇者が全滅した際のローレシア城の王の気持ちが、今の私にはこれ以上ないほど
よく分かる。
だがシンジには何故それがいけなかったのか、さっぱり分かっていないようだった。
「ユイ…私はシンジの教育をどこか間違っていたようだ…」
私ははあ、と溜息混じりに呟くと、頭を抱えた。
458名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 20:15:05 ID:???
父さんはどうもいつも何かずれている。僕は呆れ顔で父さんの顔を見つめた。

だいいち僕は初体験がどうとかいう相談がしたいんじゃなくて、アスカがどうしてあんなことをしたのか、
何を求めているのかが知りたかったんだ。
ついでに言うと父さんに何か教育された覚えも一切ないし。
だけどそれを言うと、ちょっと触れてはいけない傷に触れてしまいそうで、僕はそれを誤魔化すように
浅く溜息をついた。

「僕にはやっぱりよく分からないよ。どうして相談すらしたくない相手に、キスとかできるのさ。それも
 他に好きな人がいるのにだよ?」
溜息交じりのその言葉に、父さんはやれやれといった顔で首を振った。僕はちょっとその態度にカチンとくる。
すると父さんは不貞腐れたように唇を尖らす僕を見て、更にオーバーアクションで「オゥマイガッ!」とか
胡散臭い外人のリアクションをとっていた。
これはアレですか、僕に欧米かっ!とツッコまれたいのですか父さん。でもそれ昨日の笑点見てないと
意味わかんないし、そもそも答えにすらなってないし。
459名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 20:17:23 ID:???
僕が呆れ声でそう文句を呟いていると、父さんは不意に真剣な顔をして語り始める。
「シンジ、女とは所詮男には理解不能な生き物だ。どれだけ子供でも、それ自体は何も変わらん」
父さんの言葉はどうも僕にはよく分からなかった。それが本当なら、僕がアスカのことを分かろうと
するのは、無駄だってこと?
「ロジックではないものだからな。…しかし」
父さんは遠い目をして呟くように答える。
「求められるままにお前が何を与えても、恐らくなんの解決にもならんな。その娘が真実欲するもの
 でない限り、渇きは尽きる事がない。…お前にも覚えがあるだろう」

父さんの言葉に、僕はこくりと頷いた。
それは僕も感じていたことそのままだったから。
アスカが欲しいのは僕じゃなくて、きっともっと別の何かで。でもそれが僕には何なのか分からない。
だからどうして良いのか分からないんだ。
泣いているアスカを見ていると、なんだか僕の心は落ち着かない。ずっとずっと昔に感じた胸の痛みが
僕の心に蘇るような気がして、僕は居ても立ってもいられなくなるんだ。

「どうしたらいいんだろう…」
僕の言葉に父さんはさあな、とだけ答えて黙り込んでしまう。
でも僕は間違っても『使えないオヤジだな』などと思ったりはしない。父さんは分かる範囲で僕の疑問に
答えてくれて、そこから答えを見つけるのは、僕のすることだから。
そうは言っても何をしたら良いのかなんて、全然分からないけれど。

僕の脳裏には今も、アスカのあの泣き顔が焼きついていて。
父さんに笑いかけながらも僕は、再び深く溜息を、ついた。
460名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 22:06:41 ID:???
またキテル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
461名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/11(火) 00:46:28 ID:???
白髪はなんとか堪えたが
猪木顎でコーヒー噴いたw

冬月相変わらず扱いヒドスw
462名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/11(火) 01:36:16 ID:???
烏龍茶噴いたw
463名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/11(火) 08:32:19 ID:???
猪木顎でも吹いたが
。 。
/ / ポーン
(Д)
でとどめをさされた
464名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/11(火) 15:20:27 ID:???
>でも僕は間違っても『使えないオヤジだな』などと思ったりはしない。

思ってない限りこんな言葉出てこねえYo!
シンジさりげなくひでぇwww
465名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/15(土) 12:44:01 ID:???
あげ
466名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/15(土) 20:55:33 ID:???
もう大好きwwww
467名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/16(日) 02:33:37 ID:???
欧米かwwwwwwwwwwwwwwww
468名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/16(日) 14:26:36 ID:???
実際暮らしてみると意外と家庭的なオヤジという罠
469名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/16(日) 14:29:46 ID:???
「いいかシンジ。窓を拭くときに下手に粉末洗剤を使っちゃいかん。
 こういうのは新聞紙で「ハァー」と息をはきながら吹くのが
 一番きれいになるんだ」
「は。。はい。。お父さん。。」
「いいかシンジ、風呂を洗うときはナイロンタワシは駄目だ
 タマネギの袋の中にスポンジを入れて使いなさい」
「は。。はい。。」
「いいかシンジ、畳を掃除するときは掃除機を使っちゃいけない。
 こうやってほうきを使うんだ。「ササーッ」っとだぞ。傷をつけるなよ」
「はい。。」
470名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/16(日) 17:10:46 ID:X+G+zpR3
「待てシンジ!」
「ビクッ な、なんだよ父さん…」
「掃く前に畳にお茶の葉を撒いておけ」
471名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/16(日) 17:15:21 ID:???
シンジ「父さん…それってNHKの芝わんこでやってたヤツじゃ…」
ゲンドウ「…黙って、やれ!」
472名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/16(日) 18:00:08 ID:???
>>459 gj
473名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/16(日) 18:50:40 ID:???
>>469-471 これぞ碇クオリティ。彼ら親子に掃除を頼んだら
     使途より頑固でしつこくて強烈な汚れも
     すぐに落ちる。それでもって本業忘れて
     掃除屋を始める碇親子。
     さぁシンジの運命は?
474名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/17(月) 17:28:22 ID:???
良スレage
475名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/17(月) 20:47:06 ID:u3BO4Jlk
なんだこの良スレw
476幕間。レイの独り言:2006/04/17(月) 22:13:28 ID:???
カナカナと煩いくらいに啼きわめく昆虫達。
肌を刺す日差し。
壊れかけた建物。
沢山の水。
蒼い空、真っ白な雲。吹き抜ける風。
アスファルトから立ち上がる熱い空気。歪む景色。

ここは何処。
第3新東京市、私がいる街。ネルフのある街。
エヴァと使徒が戦う街。
街。ヒトが作り出したもの。
人。
ヒトって何。

人、ヒト、ひと。
学校にいるヒト、同級生。
よくわからないもの。
笑っているヒト、碇君。仲間。
嫌い。でも一緒に居るのは、嫌じゃない。
怒っているヒト、惣流さん。セカンドチルドレン。
沢山話しかけてくれる人。お洋服を貸してくれた人。あの人への気持ちが、何なのかを教えてくれた人。
仲間?そう、仲間。でも仲間と少し違う。
あったかい存在。あの人とも碇君とも違う、とても気になる人。これは、なに?

『トモダチ』
これが、友達?
惣流さん、怒っている人。泣いている人。笑っている人。
一緒に居て、嬉しいヒト。

私の、友達。
477幕間。ゲンドウの独り言:2006/04/17(月) 22:17:28 ID:???
「ロンギヌスの槍、回収は我々の手では不可能だよ」
「何故使用した。エヴァシリーズ、まだ予定には揃っていないのだぞ」
案の定私は老人達に呼び出されて、ここぞとばかりにクソミソに叩かれまくっている。まあ仕方が無い、
これも予定通りの出来事だ。
「使徒殲滅を優先させました。やむを得ない事情です」
勿論私の言葉など老人達は聞く耳を持たぬ。まあ当然だろう。
だが今はそれだけでいい。

「やむを得ない、か。言い訳にはもっと説得力を持たせたまえ」
「最近の君の行動には、目に余るものがあるな。それに初号機凍結の命、忘れたわけではあるまい」

やっぱりそれも来たか。
私がどう言い繕おうかと思案していると、実にいいタイミングで目の前の電話が鳴る。
ナイス冬月。このしゃくれも、たまには役に立つときもあるものだと私は思わず感心する。
「冬月、審議中だぞ」
老人達の手前そう答えるが、私の心の中では
  _n
 ( l    _、_
  \ \ ( <_,` )
   ヽ___ ̄ ̄  )   グッジョブ!!
     /    /

のAAが吹き荒れてまくっていた。
478幕間。ゲンドウの独り言:2006/04/17(月) 22:18:24 ID:???
「……分かった」
私は受話器を置くと、老人達へと向き直る。
「使徒が現在接近中です。続きは後ほど」
「その時君の席が残っていたらな」
私の言葉に、老人達も最後っ屁のような嫌味を忘れない。
私は心の中で、あっちの老人もこっちの老人も、とかく年寄りというのはくどいものだと溜息をつきながら、
回線を切った。

「碇、ゼーレを裏切るつもりか」
切りざまに聞こえてきた呟きのような言葉に、私は思わず苦笑する。そうかもしれん、と思いながら。
元よりこの老人達に最後まで付き合うつもりはなかったが、今感じている感情は、それよりももっと
確信に満ちたそれだ。

これを裏切りと呼ぶのならば、そうなのだろう。
そして彼らの思い通りになるつもりは、私には一切なかった。
479幕間。ゲンドウの独り言:2006/04/17(月) 22:24:08 ID:???
「零号機を32番から地上に射出。弐号機はバックアップに回して。…初号機の判断は碇司令の指示に
 従って頂戴。凍結解除とはいえ、まだ私の判断で動かせる権限は無いの」
遅刻作戦部長の電話の指示が響く。委員会の決定ゆえ、初号機は一時的な凍結解除はしたものの、
その指揮権は私が持つ事になっている。それを葛城三佐は根に持っているのか嫌味っぽくそう伝えて
きたのだ。ああもう、あっちでもこっちでも嫌味ばっかりか私の人生は。
「零号機発進、迎撃位置へ」
「弐号機は現在位置で待機を」
私はその指示を遮って、弐号機発進を命ずる。

と、そこへようやく遅刻娘が息せき切ってやってきた。というか、一体この状況下で何をやっていたのだ、
このアル中作戦部長は。
私の不機嫌を他所に、このアル中娘は一応テキパキと指示を出していく。これで多少私の負担も軽く
なるというものだ。

後はシンジへの言い訳だ。と、思った瞬間、私の心を見透かすように、初号機から通信が入る。
「…父さんどういうこと?凍結は解除したんじゃなかったっけ」
まずい。表情こそ穏やかなものの、目が完全に怒っている。
480幕間。ゲンドウの独り言:2006/04/17(月) 22:27:59 ID:???
「葛城君の指示だ。お前はバックアップに回れ」
だが私の口からは、息をするかのようにすらすらと嘘がついて出る。これも内外の老人達と化かし合いを
重ねてきた成果だろうか、どんな経験も無駄にはならぬという事だな。

下を見ると葛城三佐は不満げにこちらを見ているが、私はそれに関わっている暇はなかった。
だが彼女の口元が
「言い切ったわね、このヒゲ司令」
と動いていたのを肉眼で確認。私は今度の昇給にその事を反映させる事にした。

いずれにしても使徒はそのパターンを青からオレンジへと変化させ続けている。マギもその判断は
不可能なようだ。先に出撃したレイにも、待機命令を出すしかない。
私はじっと使徒を映すモニターを眺め、その時。
「来る」

レイの声が聞こえ、その瞬間レイに使徒が襲い掛かっていた。
481中の人:2006/04/17(月) 22:51:32 ID:???
なんか面白い事やってたところスマン。
しかし自分、何か名前付けた方が良いのかなあと思ってみたり。
いやこっちが名無しのままだと他の人がネタ書きにくいのかな、と。

でも思いつかないんだよね。タイトルも無いし。
数字コテしかないか?
482名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/18(火) 01:53:17 ID:???
乙!
とりあえずコテに関してはやりたいようにやってくれとしか。
小ネタはまれにそういう空気の時には書き込むときもあるけど
投下待ちみたいな面もあるし
つーかコテあってもなくても分かるしw
483名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/18(火) 02:18:36 ID:???
今回もGJ!
唐突なAAワロスwwwww

コテはつけてくれた方が嬉しいな。
簡単に数字コテでも、適当なトリップでも何でもいいと思いますよ。
その方が中の人さんも、他の書き手さんが現れた時の心配しなくていいだろうし。
っていうか単に自分が後で読み返す時に便利だかr(ry

まぁ、一意見として聞き流してくだされば嬉しいです。
484名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/18(火) 14:42:46 ID:???
実に明快な書き方がいい!
AA笑い氏にそうだったwwww
485名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/18(火) 22:13:20 ID:4aRAehHu
。 。
/ / ポーン
( Д)
486幕間。ゲンドウの独り言:2006/04/19(水) 20:56:43 ID:???
光の輪のような形からロープ状の発光体に変化した使徒が、零号機に向かっていく。
ライフルで応戦するも、まるで効いていない様だ。と、零号機に掴まれながらも使徒はその胴体へと
向かい、そして。

「目標、零号機と物理的接触」
「使徒が積極的に物理的接触を試みているの…?」
エヴァのATフィールドを侵食しながら、使徒は零号機の生体部品をも侵していく。
精神を侵食するタイプに続き、今度は肉体を侵食。使徒は我々人類を、一体どのように見ているのだろうか。
だが私にはそのような思考に耽っている暇などはなかった。
このままではレイが、私の希望が。
…いいや、かつて希望であったものが失われてしまう。

「エヴァ弐号機、発進。レイの救出と援護をさせて!」
だが私が口を挟むまでもなく、葛城三佐の指示が飛ぶ。伊達に作戦部長を勤めてはおらぬようだ。
だがその安心も長くは続かなかった。
ケイジから出撃するはずの弐号機が、動かない。
「出撃よ、アスカ!どうしたの?!」
「駄目です。シンクロ率が二桁を切っています!」
動かぬ弐号機を退避させると、私は呆然とモニターを眺める。そこには最早一刻の猶予もなかった。
「シンジ、出撃だ」
この件で私は、再び委員会から激しい突き上げを喰うだろう。だが今はそのような事など構っては
いられぬ。
レイ、彼女を失うわけにはいかなかった。いいや、もう二度と失いたくはなかったのだ、私は。

「頼んだぞ…シンジ」
祈るような想いで、私はそう呟いていた。
48738:2006/04/19(水) 20:58:37 ID:???
「ATフィールド全開。レイの救出、急いで」
ミサトさんの指示に応えながら、僕は使徒の姿を確認する。
零号機はそのほとんどが侵食されていて、大きな塊のようなものがその姿を現していた。
あれがこの使徒の、本来の姿なのだろうか。
そう思うまもなく光が僕をめがけて襲い来る。寸でのところでかわしたものの、ライフルは大破して
しまった。
それでもまだ勢いをとめないそれを掴んで止める。だけどその掌からさえ、侵食が始まり。

「シンジ君、プログナイフで応戦して!」
僕はその指示に従うと、一気に使徒に突き立てる。途端、綾波の叫び声のようなものが聞こえた。
そして使途の姿が、綾波の形になって。
「綾波!!!」
叫んだ瞬間、僕の目の前の風景が、変わった。

綾波が、いた。二人いた。
いいや、片方は違う。綾波じゃない。
「使徒…私達が使徒と呼んでいるヒト?」
「私と一つにならない?」
二人には僕の姿が目に入っていないようだ。俯いて水に浸かった綾波の姿をしたものは、彼女に
そう問いかける。
だけど綾波はそれに応じない。
「私の心をあなたにも分けてあげる。痛いでしょ、心が痛いでしょう?」
「痛い?いいえ、これは…寂しい」
48838:2006/04/19(水) 20:59:33 ID:???
痛い心。寂しい心。
それが僕の心にも流れ込んでくる。
ヒトは沢山いるのに、自分には誰もいない。寂しい。見て欲しい、自分の事を分かって欲しい。
僕はこの感情を知っている。

昔の僕。先生のところにいた頃の、ネルフに来る前の僕。
使徒は、僕と同じように寂しかった?
だから僕の心を覗こうとした?そしていま、僕や綾波を取り込もうとしているの?
寂しいから…一人は嫌だから…。
溶け合ってひとつになってしまえば、もう孤独じゃなくなるから。

「この感情は、まるで人間じゃないか…」
今まで敵だと教えられてきた、使徒。
それに初めて触れ合えたような気がして、僕はとても不思議な気持ちになる。でも。
「駄目だ…これじゃ駄目なんだよ…!」
こんな事では、本当の意味での孤独からは逃れられない事を、僕はもう知っていた。だからこれを
受け入れるわけにはいかない。
使徒。寂しい心。
僕と同じ心を持つ、生きているもの。
だからひとつには、なれない!

心がそう叫んだ瞬間、僕は現実へと引き戻された。
489幕間。レイの独り言:2006/04/19(水) 21:02:49 ID:???
碇君に向かう心。
一つになろうと走る光。

あれは、私の心?碇君とひとつになりたい。いいえ違う。私は、碇君になりたい?
あの人の隣で笑う彼。おいしいご飯を作ってあげられる彼。
あの人の血を、その身体に貰って生まれた彼。
一緒の家に住んで、一緒に笑って。同じご飯を食べて。
私はずっとそうしたかったの?
碇君に…家族に、なりたかったの?

「駄目」
それを望んでは駄目。あの人が悲しむ。
碇君でなきゃ、それは駄目。私では駄目。なら私は、なに?
私は心が引き裂かれるような痛みを感じる。
寂しい。私は寂しいの?
でも駄目。私は、碇君になっちゃ駄目。

私はATフィールドを一気に反転させた。
碇君を掴んでいた私は、そのまま私の身体に戻ってくる。
これでいいの。あの人を悲しませるくらいなら、私が消えたほうがいい。
私が死んでも、代わりはいるもの。
490幕間。レイの独り言:2006/04/19(水) 21:04:41 ID:???
「レイ、機体を棄てて逃げて!」
葛城三佐の指示が聞こえる。でも、それは駄目。私がいなくなったらATフィールドが消えてしまう。
だから、駄目。

私はドライブをモード:Dに切り替えるレバーを握る。
これを引けば、使徒を殲滅できる。私と一緒に。
躊躇いはない。私が三人目になるだけ、それなのに。
「震えてる…どうして?」
手が動かない。全身に走る鳥肌のような感覚。そして、酷く震える心。
「これは何?どうして手が動かせないの」
がたがたと震える私に、碇君の声が聞こえてきた。

「綾波!!!」
碇君の声。死ぬ事が怖かった彼。
『感じないんじゃなくて、知らないだけでしょ?』
あの時の惣流さんの言葉が蘇る。
これが、怖いという事?私は死ぬのを怖がっている?
どうして。でも、私の中にひとつの疑問が沸き起こる。

『死んでしまったら、私はどうなるの?』
491幕間。レイの独り言:2006/04/19(水) 21:05:41 ID:???
嬉しかった。惣流さんと話が出来て。服を貸してもらって一緒にパーティーに行って。
私が『いい匂いがする』って言ったら、少しだけ複雑そうにして、でも嬉しそうに笑っていた。
哀しかった。惣流さんを怒らせてしまった事。
あの時彼女、泣いてた。私はまだ彼女に謝ってない。

私は一人目の私を、知らない。
私のことを三人目の私は、きっと知らない。覚えていない。

『私達、仲良くなれそう!』
そう言って笑った彼女の姿を、きっと次の『私』は覚えていない。
こんなにも温かい心をもらった事を、覚えていない。
取り合った手の温もりを、覚えていられない。
あんなに嬉しかったのに、忘れてしまうの。知らない私に戻ってしまうの。
「そんなの嫌。また私は…」
マタワタシハ、ヒトリニモドッテシマウ。
それだけ口にして、はたと気付く。私はこの寂しい心とは、違う。だって私は…私には。

「…私は寂しくなんかなかった」
一人じゃないもの。惣流さんがいたもの。
私には、友達がいたもの!
「出て行って…あなたは私じゃない。私は、私!」
私がそう叫んだ瞬間、私の身体を何かが包んだ。それは。

「AT…フィールド…!」
気がつくと私は、私自身のATフィールドで、使徒を引き剥がしていた。
49238:2006/04/19(水) 21:06:54 ID:???
僕の目の前では、信じられない光景が繰り広げられていた。

何故だか理由は分からないけど、零号機は使徒の侵食から逃れていて。そして、そのまま使徒を。
「お母さんみたいだ…」
思わずこの場にそぐわない台詞を口に出してしまう。
零号機はきっちり正座して、使徒をまるで雑巾のようにぎゅっと絞っていた。それはなかなか
シュールな光景だ。

ぶちぶちぶち、と嫌な音がして使途の身体が動きを止める。
平然とそれを行う綾波の姿はあまりに怖い。怖すぎだ。
多分彼女の将来は、間違いなく新世紀鬼嫁日記。
僕はやはり彼女に逆らうのは、できるだけ止めておこうと深く心に誓った。
そしてねじりドーナツの姿で活動を停止した使徒に、少しだけ僕は同情する。

「寂しかったの、か…」
流れ込んだ心は、僕の心を痛ませる。
こんな形ではなくて、言葉が通じていたら。
そうしたら僕たちは分かり合えたんだろうか。分かり合おうとすることが、出来たのだろうか。
使徒と分かり合うなんて、馬鹿げていると。父さんは笑うだろうか。怒るだろうか。
それでも僕はあの痛みが、忘れられそうもなくて。

「何で、戦わなきゃいけないんだろう」
僕は誰にも聞こえないように、そっと口の中で呟いていた。
49338中の人:2006/04/19(水) 21:08:25 ID:???
とりあえずメインの文に数字コテ入れることにしました
独り言はそのままで。読みにくいしw

なので他の人もガンガンネタ書いてくださいw
494名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/19(水) 21:42:50 ID:???
GJ
共通のコテを入れておいてくれると、後で一気に読むときに、
検索できるのでありがたい
495名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/19(水) 21:57:30 ID:???
GJ!
だから、なんでシリアスなシーンに脱力させる描写を書けるのか、小一時間(ry
496名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/20(木) 00:24:59 ID:???
途中までで泣かせる気かよ、と思ったがまさか笑わせる気だったとはな(ww
何はともあれGJ!!
497名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/20(木) 22:36:48 ID:tYf9TmXL
新世紀鬼嫁日記WWW
498名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/20(木) 22:57:25 ID:???
使徒を雑巾しぼりw
499名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/20(木) 22:59:37 ID:???
イイヨイイヨー
500名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/20(木) 23:03:17 ID:???
まさか雑巾ネタをココで使うとはwww
501Alice:2006/04/21(金) 00:50:53 ID:???
ぉつです゜勤務中なのに…ここまで読んじゃいました…ゲンドウにドキドキです゜頑張って下さいネ
502名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/21(金) 16:20:07 ID:???
小説に一切の文句なんてないが・・なんかスレの趣旨からずいぶん
ずれてないか?シンジとゲンドウの同居生活じゃなかったのか?
503名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/21(金) 19:32:32 ID:???
>>502
スレの趣旨というのをどう捉えるかで判断が分かれるところだな
>>502の言いたい「スレの趣旨」ってのはきっと

・ゲンドウとシンジが同居している「様子はどんなのだろう」

というスレではないのかここは?と言いたいんだと思うけど、違ったらごめんね
それに対して中の人が書いてるのは

・もしもゲンドウとシンジが同居したら「どうなるのだろう」

という世界なんだと思う。
広い意味で捉えればスレ違いではない、とは思うんだけど・・・
ごめん、わかんない
504名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/21(金) 22:24:34 ID:???
そんなことより「小説」がスレ違いな所が問題だろ。
505名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/21(金) 22:36:39 ID:???
>504
小説書くスレじゃないってこと?
506名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/21(金) 23:16:04 ID:???
>>504
なんでさ?
507名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/22(土) 01:38:44 ID:???
>>504
ん?ゲンドウとシンジが永久に泣いて笑って喧嘩してっつー、
そういう話以外はスレ違いって事?

いや、そういう話は好きだけど確かに
>504が書けばいいじゃんそういうのを。誰も止めないよ?
508名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/22(土) 12:50:19 ID:???
糞スレになってしまった
509名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/22(土) 13:38:07 ID:???
>>504
スレタイには小説禁止とはないし、エヴァ板には職人さんが
善意で話書いてるスレがたくさんあるんだから問題ないと思われ。
小説ではなくネタと考えればさらに問題なし。





ぇ?釣り?マジでorz
510中の人:2006/04/22(土) 22:36:44 ID:???
スレ違いと言われるとは思ってもみなかった。
自分のスタンスは>>503の言ってるのが一番近い感じで
それでも、この話はゲンドウとシンジの話である事は間違いない。
そう思って書いてきた。

だけどそれはそれとして、>>503前半のような感じがこのスレの趣旨であるなら
自分の話はスレ違いなのかもしれない。
38-40辺りまでは、確かに自分もそんな感じで書いていたから。
でもそれ以降の続きは完全に「この二人が同居したとしたら、エヴァの世界は変わるのか否か」と
いうスタンスで話を進めてきたのは確かだ。

正直「小説を書く事そのもの」がスレ違いだとは思わない。
それはエヴァ板の文化を否定するものだから。
でも内容がスレ違いで、他でやれという事なら致しかたないと思う。
ここは自分のチラシの裏ではないのだから。

住民の人がどう思うのか聞かせてください。それはできたら、「最後まで読みたいから続けて欲しい」
という主観的な話ではなく、客観的に第三者の目で「この話はスレ違いなのかどうか」という事を判断した
意見をお願いします。

もう自分では、どう判断してよいのか分からないので。
511中の人:2006/04/22(土) 22:48:09 ID:???
あ、誤解しないで欲しいのは、たとえこの場で「スレ違いだ」という判断が
下されたとして、それでも自分はこの話しを描き続けることを止めようとは考えていない
そしてそれを読みたいと思う人に、それを提供する場を作る事は
必ず約束する。だから、客観的な意見を聞かせてくれ。

この場所が好きで、エヴァ板が好きだ。
だから住民が望まぬ形でこの話を続けることは、自分の本位ではない。

宜しくお願いします。
512中の人:2006/04/22(土) 22:54:56 ID:???
うわあ、こういう話のときさえ誤字ですよ…

本位→本意

でヨロ。
513名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/22(土) 23:32:12 ID:???
スレ違いなんて言う人が出てくるとは思わなかった。
これをスレ違いなんて言い出したら、また一つ新しいスレがいる。

ってか雑巾絞りGJ!
他のどこでもなく、ここで読み続けたい。
514名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/23(日) 01:25:05 ID:???
>>502>>504がどういうつもりで趣旨からずれてるとかスレ違いとか言ったのか
さっぱり分からん。
いるなら出てきて詳しく説明してくれないかな本当に。

それとこの話はスレ違いじゃないと思うな。
ゲンドウとシンジが同居してる話なのは間違いないし。
でもある程度長くてテーマのある話を書き始めたらこの二人ばっかり出す訳にも
いかないでしょ。
たまたま二人が出ない話が続いたからっていきなりスレ違いってのも何か違わないかな?
少なくとも作者が「この話はシンジとゲンドウの話だ」っていうなら文句は何もないよ。
515ロメオ ◆rHza36ec2U :2006/04/23(日) 02:00:01 ID:???
壮大に釣られるなよw
そんなことより次カヲルくん登場じゃない?
その後アニメ版25、26話とEOEじゃない?
どうなるか激しく楽しみです
516名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/23(日) 03:05:18 ID:???
漏れもどこがスレ違いなのか分からん
まったく国が一つ傾くよ
客観的意見ならば漏れの意見は>>509の意見に激しく同じ

続きが楽しみだよ職人さん。
517名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/23(日) 03:46:33 ID:???
502は503みたいな意味で発言したんだと思うけど、
同居の様子だけではスレのネタがここまでもっていなかったんではないかな。
実際、この話しをスレ違いだと感じたことは少しもないです。
むしろ同居ってネタだけでここまで話しをもって来れたのは凄い。
502が二人の様子を読みたいのなら、それもスレ違いではないので
502自身も何か小ネタを投下してみるといいと思うよ。
後に続いて投下する人がいるかもしれないよ。

504は日本語でおk。
518中の人:2006/04/24(月) 22:23:51 ID:???
とりあえず休日平日と2日間待ってみて「スレ違いじゃボケ」という意見は
出なかったので、このまま行ってよいと判断する事にします。

なんつーか、全力で釣られてスマンかった。
一応その可能性を考えないでもなかったんだが、少なくとも502の書き込みからは
本気の匂いを感じてしまったのと、それによって自分自身が「スレ違いなのかも試練」と
疑問を抱いてしまったが故に、つい聞いてしまった。

でも皆の本気レスが有難かった。本当に有難う。
そしてもう駄目かもわからん、と本気で引越しの準備を始めてしまった自分。勇み足すぎだ。
ともかく最後まではこのスレでやらせてもらいます。
そしてこれからがヒゲの見せ場です。最後までお付き合い願えるなら、これほど嬉しい事はありません。
でも投下はもうちょっと待って。
いつも週末に書いて平日投下だったもんだから、今回全然やってねえwww
519名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/25(火) 00:55:10 ID:???
よかったまたここで続きが見れるんだね
のんびり待ってるから、ガンガレ
520名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/25(火) 12:14:54 ID:???
俺の中の全米が泣いた。そして吹いた。
毎回GJです。ガンガレ!
521名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 23:42:58 ID:???
何となくタイトル見てたら、サードインパクト後全ての女に縁を切られた
碇親子が毎日トンカツ喰いながらあれこれ画策し、ナオンと彼らだけの
蜜あふるるネルフを取り戻そうとする話が頭に浮かんだ。

けど>>1見たらスレ違いだね。
522名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/28(金) 00:40:16 ID:???
ワロタwww面白そうだけど確かにスレ違いだw

【オヤジ】ゲンドウの日記 2冊目【心の補完】
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1145365827/l50
ここらあたりで日記風に進めたら案外おもろいかも試練よ?
今のところ誰も書いてないみたいだし。
523名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/01(月) 16:18:09 ID:???
誰もいないなーみんなゴールデンウイークか?
524名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/01(月) 18:08:01 ID:OiGVLwx/
期待
525中の人@エヴァ2プレイ記念番外編:2006/05/01(月) 20:07:17 ID:???
「ねえねえ、父さんこのゲーム知ってる?造られしセカイって言うんだよ」
【ゲンドウは話に乗った】

いやいや、ここでまでゲームっぽく応答しなくていいから父さん。
僕は父さんに携帯ゲーム機を見せると、内容を説明する。
「まだ『それでもやっぱり世界が好き』ってシナリオしかしてないんだけど、結構夢中になるよ。
 あ、ほらみて、父さんが来た」
僕は画面を父さんに見せつつプレイを続ける。
と、ゲームの中の父さんが僕に話しかけてきた。すごいやこんなに積極的な父さん、普通の状況じゃ
ありえねえ。
僕は苦笑いを浮かべつつ『微笑む』を選んでみる。

何だか知らないけど、すっごくいい感じだ。
ふと隣を見ると、父さんはなんともいえないくらい複雑な表情を浮かべていた。多分、照れてるんだと思う。
相変わらず分かりにくいなあ、もう。
僕はついでにそのままゲームの中の父さんに『話しかける』を選んでみる。あ、良かった話に乗ってくれた。

「あれ?この『近づく』ってなんだろ」
「さあな」
コマンドの中に見たことのない選択肢が現れる。
ま、いっか。と何気なくそのままそれを選んで、瞬間僕と父さんの目が同時に丸くなった。
526中の人@エヴァ2プレイ記念番外編:2006/05/01(月) 20:09:46 ID:???
【ゲンドウとシンジは強く抱き合った】

って、おいおいおい!!!
何このゲーム。父さんも既に何も言えず固まっている。
ま、まあいいや。他のコマンド…って、えええええ?!
何ですかこの【キスをする】って!
おかしいおかしい。絶対おかしい。
でも僕は『どうなってしまうんだろう』という好奇心に勝てず、ついついそれを選んでしまう。

「………シンジ…何をしている…」
父さんは既に脱力しきっているようだ。うん、その気持ちは分かる。でもまあ、これゲームだし
そんな凄い事になんないでしょ。
でもその後の対応は僕の予想をかなり超えたものだった。

【嬉しそうなそぶりを見せる】

うわ、この父親、息子にキスされて嬉しいそうですよ?!
どーすんのさ父さんこれ。
「私がしたわけではない…」
僕の物言いたげな視線に、父さんは呆然とそう呟いている。
まあ、そりゃそうだよね…。
僕は気を取り直すと、とりあえずリアルで「欧米か!」と突っ込んでおいた。そうとでも思っとかないと
このゲームは僕には理解不能だ。
527中の人@エヴァ2プレイ記念番外編:2006/05/01(月) 20:12:42 ID:???
とにかくなんだ、まともそうなコマンドは…。
「あ、これいいじゃない。『魚釣りに誘う』だって」
僕は迷わずそれを選ぶ。

おそろいの麦藁帽子を被って魚釣りをする僕と父さん。
ものすごく似合わない。特に不気味なほどに優しげな横顔と、麦藁帽のコラボレーションはすごかった。
だけど、なかなかいい感じ。
僕の作ったお弁当とビールを、おいしそうにゲームの中の父さんは食べていた。
自分で言うのもなんだけど「葱味噌卵焼き」を作れるとは、ゲームの中の僕、クオリティ高すぎです。
何でこれが作れるのに、普段のゲーム中では必ず「悪夢の残飯弁当」しか作れなかったのか、僕は
不思議で仕方がなかった。

「早くお前も呑めるようになればいいな」
ゲームの中の父さんの言葉と、隣の父さんの言葉が重なる。
「…そうだね」
僕は頷くと少しだけ遠くを見つめた。

父さんと一緒に、お酒を飲みながらいろいろ話をするのは、きっと楽しいに違いない。
僕はいつか来るその日が楽しみになって、ふふ、と笑った。
やっぱり僕は、このセカイが好きだ。
父さんと一緒に生きているこの世界を僕は、大事にしていきたい。
そしてそれは、きっと。

僕は父さんをじっと見つめると、再びにこにこと、笑った。
528名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/01(月) 22:20:28 ID:???
激しくGJ!!
529Alice:2006/05/02(火) 20:48:35 ID:???
続きマダーGWも仕事な聖職者
530ロメオ ◆rHza36ec2U :2006/05/03(水) 05:20:48 ID:???
エヴァ2って面白そうだな
531名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/03(水) 23:22:20 ID:???
ここで空気を読まずに私が面白いと思ったゲームレビューを投下

ttp://bohyou.vis.ne.jp/eva/index.htm
532名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/04(木) 23:11:51 ID:???
           _.ノノノ,,   
        ●'''" * ""'';;,      よろしかったらここを
         \.从 从 ;;;ミ    
           ゝ´∀`*ν ;;;ミ     もぐに貸してくれませんか?
         ∞こ  つ ;;;ミ    
          O_,,,O_,,,,,.ノ'〜   迷惑だったらすぐに居なくなります 


533名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/05(金) 22:42:54 ID:???

ガチャ

シンジ「あ、父さんお帰りなさい」
ゲンドウ「ああ」
シンジ「ご飯できてるよ食べる?」
ゲンドウ「ああ」

(沈黙の中2人で食事)

ゲンドウ「シンジ」
シンジ「え、何?」

(すっとシンジの前にビニール袋を置く)

シンジ「父さん…これ、柏餅?」
ゲンドウ「…今日は、子どもの日だからな」

シンジ「…ありがとう、父さん」
ゲンドウ「…ああ」


子どもの日に便乗して。
流れ無視してすんませんorz

534名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 09:10:58 ID:???
ゲンドウ「やらないか」

シンジ「いいよー」
535名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 13:53:21 ID:???
あぅあぅ、良スレあげですっ><
536名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 14:11:51 ID:???
>>533
なごむねー
ほのぼのしてて
537名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 15:07:04 ID:???
同居生活

1日目
ゲンドウ「・・・・・」
シンジ「・・・・・・・」
2日目
ゲンドウ「・・・・・・」
シンジ「・・・・・・・・」
3日目
ゲンドウ「・・・・・・・・醤油とってくれないか、シンジ」
シンジ「あっえっは、はい!」
4日目
ゲンドウ「・・・・・・・・シンジ・・」
シンジ「は、はい・・・」
ゲンドウ「薄口がいい」
シンジ「・・・・・・(父さん・・)」
538名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/09(火) 21:00:22 ID:???
保守 職人まってる
53938 幕間。アスカの独り言:2006/05/09(火) 21:35:00 ID:???
アタシは弐号機の中で呆然と空を見つめていた。
動かないの、エヴァが。これだけがもう、アタシがここにいる理由だったのに。
使徒はファーストが倒した。
アタシとは違って、自分だけで。バカシンジの手助けなんて必要ともせずに、ファーストはそれが
出来たの。

バカなアタシ。
アタシなんていなくたって、大丈夫だったのに。それなのにずうっと自分が一番だと思い続けてたの。
そうじゃないとアタシが嫌だったから。だからそう思い込もうとしてたの。

でも、もうどうでもいいわ。
ここに居る理由なんて、もう失ってしまった。
誰もアタシを見つけてくれないこの場所に、アタシも未練なんかない。
アタシがいなくなっても誰も何も変わらない。
なら、消えてしまおう。

アタシはぼんやりとロッカーに向かい、制服に着替える。
誰もアタシの姿に気付かない。みんな使徒を殲滅できた事に沸き立っていて、アタシの姿を
振り返らない。
惨めだわ。でも今はそれがありがたい。
だってこうして誰にも気付かれずに、消えてしまえるから。
ネルフを後にするアタシの後を、誰も追いかけてくる気配はない。でもこれでいいの。
54038 幕間。アスカの独り言:2006/05/09(火) 21:36:31 ID:???
アタシは口の中でそっと呟いた。
「さよなら」

加持さん。
アタシの事見つけてくれなかった、でも一番大好きだった人。
幸せになってなんて言えない、いいたくない。でも加持さんがそれを望むなら、アタシそれを
止められない。

ファースト。
アンタ本当にワケわかんない子だった。友達だと思ってたのって、アタシだけだったのかもね。

……シンジ。
アンタは本当に嫌い。
でも助けに来てくれて、あの時だけは本当に嬉しかった。
ありがとうって、一回くらい言ってあげたら良かったのかも。

でもそれも、もうどうでもいい。
さよならみんな。アタシの弐号機。そして、アタシ。
アタシの呟きと共に、昼間の明かりはアタシの身体を包みこんで。
地上に出たばかりのアタシの目にはそれは眩しすぎて、世界が一瞬だけ、歪んだ。
54138:2006/05/09(火) 21:38:47 ID:???
着替えを済ませた僕に、綾波が戸惑ったように声をかけてくる。
「惣流さんがいないの」
言われてはじめて、僕は彼女の姿が見当たらないのに気がついた。
「先に帰ったのかな…?」
僕の言葉に綾波は何となく不満げに、でも頷いて慌てたように走り去った。

あんなに慌てた綾波をみるのは初めてだ。
僕はちょっと驚きながらも、そのまま彼女を見送ってしまう。
なんとなく不安な気になりながら、僕は司令室に向かって歩き出した。
何故だか酷く父さんの顔が見たかった。
寂しい心が今でも僕の心に突き刺さっていて、僕はどうしても父さんに確かめたくて、仕方がなくなって
しまったのだ。

『どうして何も言ってくれないの』
『お前が聞かなかったからだ。本当にお前には、それを聞くだけの覚悟は出来ていたのか』

僕の心の中には昔夢の中で聞いた、父さんの言葉が繰り返される。
僕は覚悟を決めて司令室の扉を軽く、叩いた。
54238 幕間。ゲンドウの独り言:2006/05/09(火) 21:39:45 ID:???
私はいつもどおりの呼び出しに、軽く溜息をついた。
用件など聞かずとも分かっている。老人達は目の上の瘤になり始めた私の存在を、快くは思ってはいまい。
だが所詮彼らには、せいぜい釘を刺すことしか出来はしない。
そう侮っていたのは事実だ。
それゆえか、この程度の要求さえ予想できなかったのは。

「初号機パイロットの尋問を求める。異存はないな、碇よ」
忌々しい声が響いて、私は心の動揺を押し隠すべく無表情を決め込む事しか出来なかった。
人柱、という訳か。
まさか命をとられるという事もあるまいが、しかし素直に差し出すには、あまりにリスクが高すぎる。
しかしそれを突っぱねるだけの理由も私には存在しない。

返答に詰まる私をおいて、老人達は次々と去ってゆく。
最後に残ったのは議長、ただ一人だ。
「…ユイの子か。あれは、今幾つになった」
「もう14になります。ようやく会う気になりましたか」
私の言葉に、返事は返ってこない。
そしてそのまま取り残された私もまた、その場所を後にした。
「シンジ…」
呟きはそのまま、溜息に変わる。
私は決断しなければならなかった。自分の行く道を。
そして、この世界の行く末を。

惑う私の耳に、扉を叩く音が聞こえてくる。
私にはその来訪がまるで、標の訪れる音のように聞こえて、苦笑いを浮かべた。
543名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/09(火) 23:56:40 ID:9Xvr1Bp2
ktkr!
544名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/10(水) 01:56:13 ID:???
アスカとシンジWピンチの予感

乙!
つかGW前にこの状態で待たされなくて良かったw
545名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/10(水) 13:11:36 ID:???
まってた、まってたよ!
いよいよ物語も佳境だな!
546名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/12(金) 01:41:04 ID:???
保守
547名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/14(日) 15:53:25 ID:???
ホッシュホッシュ
548名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/16(火) 19:52:26 ID:???
ほしゅ

ぬるぽ
549名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/17(水) 00:23:26 ID:???
ガッ
550名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/17(水) 01:47:38 ID:???
(゜∀゜
ヤラレタ
551名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/17(水) 11:37:23 ID:???
ワッフル
552名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/17(水) 13:32:59 ID:???
おはようマクガー(ry
553名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/17(水) 23:20:50 ID:???
age
554名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/18(木) 05:42:54 ID:???
ホッシュドポテト
555名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/18(木) 20:52:07 ID:???
捕手
55638 幕間。ゲンドウの独り言:2006/05/18(木) 21:06:26 ID:???
昔の、話だ。
まだセカンドインパクトも使徒もなく、それらがただの夢物語のごとく語られていた平和な時代。
ただ安穏と日常を謳歌し、享受できていた世界。
私もまたその中の一人にすぎなかった。

平凡な家庭だった。
ただ、いつも私は一人だった。
金だけを置いて両親は仕事に出かける。私は食事も生活にまつわる支度も、全てを自分で賄っていた。
それが普通だと思っていた。
自らが渇いているという自覚すら、抱いていなかった。

人に好かれることは苦手だ。
自分にとっては普通の応対が、他人を酷く傷つける。
そしてその痛みは、より激しい攻撃となって返ってるのだ。
私は疲れ果てた。だから他人とは、関わらぬと決めた。
だがそれでも放っておいては貰えなかった。

私はいつの頃からか強さを求めるようになっていた。
強い力を得る事が出来れば、もう誰も私に関わっては来ないだろうと。
それはいつしか腕力から、権力へと。
私はより強い力を求め、そうして彼女の存在を知った。
彼女の背後にある『力』を求めて、私は彼女に近づいた。
おそらくそれを彼女は知っていたのだろう。だがそれでも、彼女は……ユイは、私を受け入れた。
彼女と出会って初めて、私は渇いていたのだという感覚を、思い知った。
55738:2006/05/18(木) 21:09:28 ID:???
「昔話だ……」

司令室に僕を招き入れた父さんは、酷く疲れているような口調でそう呟いた。
そこで聞かされたのは、父さんの生い立ち。
僕と同じように、ただ何かを求めていた父さんの過去だ。
正直DQN時代の武勇伝でも聞かされるのかと身構えていた僕に、父さんのその話は驚きを与えた。
「おまえが生まれたとき、私は戸惑った。どうしてよいのか、皆目見当もつかなかったのだ。私には
 そんな経験は、何ひとつなかったからな」
遠い目をして父さんはさらに呟く。
僕は自分がここに来た目的も忘れて、その言葉にただ聞き入っていた。

父さんと母さんの出会いと、その思い出。
利用するためだと、父さんはそう言ったけれど。それでも母さんの話をするときの口調も眼差しも、
酷くいとおしそうで僕は何となくそれに安心していた。
「ユイがいなくなって私の戸惑いは限界に達した。私が何をしても、おまえを傷つけるばかりに
 思えて仕方がなかった。……だから手放した。だがそれが一番おまえを傷つけるのだという事を、
 私はあの時判っていなかった……」

父さんの言葉に僕の体がびくりと震える。
捨てられたのだと、ずっと思っていた。
呼びかけても泣き喚いても、振り返りもせずに僕を置いていった父さんの背中。
それを思い出すたび、今でも胸がきりきりと痛む音がする。

だけど、あの時。
ひょっとしたらあの時父さんも、泣いていたのかもしれない。
こうするしかないという絶望感に塗れて。
だから振り返る事が出来なかったのかもしれないと、僕はなんとなくそう感じていた。
55838:2006/05/18(木) 21:13:08 ID:???
「すまなかった……シンジ」
項垂れてそう呟く父さんに、僕はふ、と笑いかけてみせた。
それからゆっくりと首を振る。
「……もう気にしてない。だって父さんはここにいるじゃない。だから僕はもう、平気だよ」

僕はずっと父さんは昔から『父さん』なんだと思っていた。
でもそうじゃなくて、父さんも昔は僕と同じ子供で。
傷ついたり哀しい事があったり、でもきっと嬉しい事もあって。そうして今の父さんがここにいる。
それが今の僕にとっては、どんな事よりも嬉しい事だったから。
僕の言葉に父さんは少しだけ目を細め、それからまた辛そうな顔をする。
「父さん、何かあったの……?」
その問いに父さんは真剣な顔つきで何かを考え込むと、ふいに僕に向き直り、呟くように
声をかけてきた。

「ユイの祖父は、彼女を溺愛していた。私は彼らの目的を遂行するに相応しい能力を示す事で
 ようやく認めては貰えたが、未だ私を赦してはおらぬ」
突然の話題に、僕は何だかよくわからない顔をしてしまう。
だけどそんな僕に構わず、父さんはそのまま話を続けた。
「お前にも決して会おうとはしなかった。私の血を引いているお前は、あの男にとっては忌々しい
 存在でしかなかったのだろうな。……お前の曽祖父にあたる男だが、会えばおそらくお前を
 傷つけるだろう。お前は、会ってみたいと思うか?」
真剣な目が僕をじっと見つめてくる。
いきなりそんな事を言われても、僕にはどう答えていいのかわからなかった。だけど、母さんの
おじいさんという存在は、僕の興味を少しだけそそる。
55938:2006/05/18(木) 21:16:10 ID:???
「言っておくが、会うのは『碇シンジ』としてではない。あくまで初号機パイロットとしてのお前に、
 彼らは用ががあるのだ」
あまり会って欲しくないのだろうか。煮え切らない父さんの口調に、僕はずっと感じていた疑問を口にする。
「……彼らって、何?母さんのおじいさんだけじゃないの?」
僕の問いにようやく父さんは気付いたようにああ、と説明を始めた。
「ゼーレ……ネルフは彼らの目的を遂行するための組織だ。その資金も、彼らに依存している。
 そして私がユイに近づいた理由でもある存在だ」

目的?

少しだけ、僕が聞きたかった話に近づいてきたみたいだ。
僕は改めて父さんに訊ねてみる。
「ネルフをその組織が作ったんだとしたら、どうして使徒とか知ってて、それが来るって分かってたの?
 使徒って何なのか、その人たちなら知ってるの…?」
僕の問いに、父さんは少しだけ頷いてみせる。僕はそれを確認すると、わかった。とだけ返事をして
父さんの目をじっと見つめた。
サングラスに遮られて、読み取りにくい表情だ。でもその奥にじっと僕を見つめる瞳があった。

父さんは多分、僕を心配している。
その『ゼーレ』という組織に僕は呼ばれていて、そこで僕が何か辛い目に合わされるのではないかと。
だから僕が会うのを拒否すれば、きっと父さんは何としてでもその話を断るつもりに違いない。
何だかその気持ちだけで心が少し温かくなったような気がして、僕は父さんに薄く笑いかけた。
「会うよ。会って、僕も聞きたいことがある」
僕の返事に父さんはそうか、とだけ答えてそのまま黙ってしまった。
56038:2006/05/18(木) 21:18:23 ID:???
何かを考え込んでいるみたいで、僕はそのままそれを邪魔しないように部屋を出ようと扉に向かう。
父さんに尋ねたかったことは、多分その『組織』が教えてくれるだろうから。
それは多分僕にとっては、あまり嬉しい事ではないのだろうけれど、それでも僕はその場所に
向かう事を覚悟する。

と、その背中をふいに呼び止められて、僕は振り返りもう一度父さんの姿を見つめた。
真剣な顔つきは変わらない。
ただじっと僕を見つめて、そして何かを考え込んでいる。
僕はそれを見つめながら、反応を待つしかなかった。
「……ついて来い」
やがて父さんは何かを決心したように立ち上がると、そのまま僕をどこかに誘い歩き出す。
訳も分からず、僕はただその後をついて行っていた。

父さんの緊張している横顔を見つめながら、僕は薄暗い通路を降りて地下へと向かう。
人の気配のないひやりとした空気が僕達を包み、流れをつくっている。
その黴臭いような、湿気を帯びた空気の流れは僕の緊張をいや増して、僕は無意識のうちに
父さんの上着の裾を掴みながら歩を進めていた。

どこに向かっているのか、父さんは何も言わない。
僕もまたそれを聞くことはなかった。

僕はただ父さんを信じて、その背中についていく事しか、出来なかった。
56138中の人:2006/05/18(木) 21:43:02 ID:???
>DQN時代の武勇伝
自分で書きつつ頭の中でこんなん流れて大変でした。

            トウサンイツモノヤッタゲテ!
      _,          _| ̄|
     ( ゚∀゚ )        (ロ∀ロ)
      ( ∞ )       Σm9 )>
      < \        <<

Oh!キキタイカオレノブユウデン!!
      _,          _| ̄|
     ( ゚∀゚ )        (ロ∀ロ)
     ( ∞ )         <(  )>
    / >           < \

            ソノスゴイブユウデンヲユッタゲテ!
      _,          _| ̄|
     ( ゚∀゚ )        (ロ∀ロ)
      ( ∞ )       Σm9 )>
      < \        <<

  オレノデンセツベストテン!!!
      _,          _| ̄|
    \(゚∀゚ )        (ロ∀ロ)
     ヾ ( V)        <(  )>
       < \        < \
56238中の人:2006/05/18(木) 21:44:24 ID:???

      解読不能な暗号作る♪

       _,          _| ̄|
       (゚∀゚ )        (ロ∀ロ)
  βακα...φ )        <(  )>
        < <         < \

      自分も忘れて迷宮入りに♪
       _,   ??      _| ̄|
       (゚∀。 )      ヽ(?∀?)ノ 
  βακα...φ )         ( へ)

       ブユウデンブユウデン♪
       _,           | ̄|_
      ( ゚∀゚ )        (ロ∀ロ)
     〃 (O )o        o( O) ヾ
        < >         < >

       ブユウデンデンデデンデン♪
       _,           | ̄|_
     ┐(゚∀゚ )        (ロ∀ロ)┌
       (  )└      ┘(  )
       < \       / >

 カッキーン!!!
              トウサンカッコイー!!
        _,        _ | ̄|
     \( ゚∀゚ )      (ロ∀ロ)
       ( V)      -o-o )
       < \       < <
563名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/18(木) 21:51:26 ID:???
ちょw
564名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/18(木) 22:15:18 ID:???
シリアスな展開でワクテカだったのに
武勇伝で吹いたwwww
565名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/19(金) 01:43:49 ID:???
せっかくの読後感が職人本人によって台無しに・・









だがそこがイイ! ので上げてやる
566名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/19(金) 03:33:08 ID:???
おもしれーww頑張ってね
567名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/19(金) 22:39:35 ID:???
マジおもしろすぎる!
頑張ってくれ〜
568名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/20(土) 00:01:52 ID:???
某ゲンドウスレが終焉を迎えた訳だが、ここも結構佳境だしそろそろ終わっちまうのかな
569名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/20(土) 07:41:57 ID:???
そんな事言わんといてーな
570名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/22(月) 22:48:01 ID:???
ゲンドウ「ミソくれよ」
571名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/23(火) 02:47:53 ID:2LNxj2H2
シンジ「うんこでいい?似てるし」
572名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/23(火) 18:42:19 ID:kA2aq/Rt
問題ない
573名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/23(火) 19:17:51 ID:???
大問題だよ!
574名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/27(土) 00:46:49 ID:6iXmVxLk
なんにち
575名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/27(土) 01:13:56 ID:???
>>562バカスwww
576名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/28(日) 22:17:53 ID:1vI0alcN
保守
577名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/31(水) 21:07:30 ID:qAa0cM0k
保守
578名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/02(金) 09:20:10 ID:X923cNLr
保守o(´□`o)ぽんぽん!
579名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/03(土) 22:17:19 ID:???
o(´□`o)ぽんぽん!
580名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/04(日) 20:47:50 ID:???
ぽん
581名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/06(火) 21:54:36 ID:???

シンジ「あ…」
ゲンドウ「…」

ネルフ内でばったり鉢合わせたシンジとゲンドウ。

ゲンドウ「…」
シンジ「えっと…」

何となく気まずい雰囲気の中遠くからアスカの声が。

アスカ「シンジーなにやってんの!帰るわよ!」

シンジ「あ、…う、うん!」
ゲンドウ「…」
シンジ「父さん…あの、じゃあ、先に帰ってる、ね…」

少し寂しそうに微笑んで踵を返すシンジ。
582名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/06(火) 21:57:38 ID:???
ゲンドウ「シンジ」
シンジ「…え?」

振り返るシンジ。

ゲンドウ「今日は、早く帰る」
シンジ「父さん?」

ゲンドウ「ケーキを買って帰るから、待っていなさい」
シンジ「!」

少し照れたように顔を背けながら色眼鏡を押し上げるゲンドウ。

シンジ「…うん!!待ってるね父さん!」

きょとんとした後に、満面の笑顔で走り去ってくシンジ。
ケーキ買ってくるなんて言ったものの、
ケーキ屋なんて何処にあるかわからないからリツコ君に相談しようと考えているゲンドウ。


なんだかんだで幸せな父子。



だといいのになあ!

流れぶった切ってすんません。
シンジくんお誕生日おめでとう。
583名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/06/06(火) 23:44:31 ID:???
なんだか呼んでて微笑ましかったよ。

職人さんの出現を毎日毎日首を長くしてまつ日々・・・


もうお腹ぺこぺこだよ〜orz
584名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/08(木) 00:04:37 ID:???
ほしゅ
585名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/09(金) 00:10:02 ID:???
ほしゅあげ
586名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/09(金) 02:40:38 ID:???
シンジ「ただいま…。」

リビングをちらっと覗くシンジ

シンジ「ちょっと父さん、いるなら何か返事ぐらいしてよ。」

椅子に座り新聞を広げるゲンドウ

ゲンドウ「あぁ、おかえり、シンジ。」
シンジ「(溜め息)……今日は早いんだね。」

ゲンドウに少し距離を置くシンジ

ゲンドウ「あぁ。冬月先生にムリヤリ帰されてしまってね。
たまには家でゆっくり休んだらどうだと言われたよ。」

シンジ「へぇ…そうだったんだ…。」

その場を動かないシンジ

ゲンドウ「なんだ、何か用があるのか?シンジ。」
シンジ「えっ?あっ、あぁ…いつも新聞ばっかり読んでるなぁ、と思って…。」ゲンドウ「なに、うまく生きていくために最低限の
知識を得ているにすぎんよ。深い理由は無い。」
シンジ「…」

新聞をめくるゲンドウ
587名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/09(金) 02:44:57 ID:???
シンジ「あの…父さん。」

ゲンドウ、新聞を読みながら

ゲンドウ「なんだ、用があるなら早く言え。」
シンジ「た、たまには親にテストの結果を見せなさいって先生が…。」
ゲンドウ「…そうか。見せたくないなら見せなくてもいい。
どちらでもかまわん。好きにしろ。」
シンジ「あ、でもせっかくだから見てよ…。」

数枚の紙を差し出し、うつむくシンジ
ゲンドウ、新聞を片手に

ゲンドウ「…数学が良くないな。」

テストをシンジに返すゲンドウ

シンジ「勉強する時間がないんだ…忙しくて。」
588名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/09(金) 02:48:01 ID:???
新聞を広げ直すゲンドウ

ゲンドウ「まぁ私も学生のころ得意ではなかった。
お前にとやかく言う資格は無い。」
シンジ「…」
ゲンドウ「今度リツコ君に教わるといい。
彼女なら私より教えるにふさわしい。」
シンジ「わかったよ、今度頼んでみる…。」

自分の部屋へ向かおうとするシンジ

ゲンドウ「…」

新聞に目をやったまま

ゲンドウ「シンジ。」

立ち止まるシンジ

ゲンドウ「どれ、数学のテスト、見せてみろ。」

振り向くシンジ、そして照れ臭そうに微笑む

ゲンドウ、眼鏡の下で目元が微かにゆるむ
589名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/09(金) 09:25:14 ID:???
微笑ましいぜ…(*´∀`)
590名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/09(金) 12:43:03 ID:???
こんなゲンドウは嫌。
591名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/09(金) 13:57:24 ID:???
ほんとは不器用なだけの親子なんだよな、この二人
59238 ゲンドウの独り言:2006/06/10(土) 02:55:38 ID:???
…シンジか。

誕生日だったのだな。遅くなってすまん、ケーキを買ってきた。
どうした、何を驚いている。
大きすぎる?問題ない、大は小をかねるものだ。

てっぺんの人形?ドレスの女とタキシードの男のようだな。
それがどうかしたのか。
ああ確かにウエディングとか書いてあるな。
問題ない、喰える。

どうした、そんなに喜ばなくていい。
泣くほど喜ぶとは、いつまで経ってもお前は赤ん坊のようだな。

フッ、私の誕生日の事など気にするな。
どうせもうとっくに過ぎているしな…
どうした。
何故口をきかない、シンジ。

…引きこもってしまった。これが噂の反抗期なのか、ユイ。
59338中の人:2006/06/10(土) 02:57:43 ID:???
すいませんちょっと多忙だた。
とりあえず生存報告まで

>>581-582
>>586-588
好きな雰囲気。GJでした!
594名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/10(土) 03:43:25 ID:???
>>592
GJ かわいい くぁいいよ ゲンドウ シンジ(´Д`*)

>38氏
のんびりでも全然問題ないですよ
自分のペースでまったりやってください
595名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/12(月) 07:31:44 ID:0/L8g8Li
ほしゅあげ
59638 幕間。レイの独り言:2006/06/12(月) 23:16:08 ID:???
傾きかけた陽の光が肌に纏わりついてくる。
人気のないマンションに、かつんかつんと響く靴音。
薄暗い階段を昇ると、私は呼び鈴を押した。
反応はない。それはこの部屋に、彼女はいないということ。
私は踵を返して再び階段を駆け下りる。

どうしてだかわからない。
不安でたまらない。
何故自分がそう感じるのかも、よく分からないわ。
いつでも彼女はそこに「いた」から。
『アンタってなーんにも知らないのね?いいわ、教えてあげる』
そう言って私の知らないことを色々教えてくれた彼女。

女の子はお洒落をするものよ、と言って洋服を貸してくれた。
一緒にお買い物にも行った。
私にはよく分からなかったけど、楽しげな彼女を見ているのは、とても楽しかった。
一緒にお茶を飲んだ。
彼女とお茶を飲んでると、心がふんわり温かくなるような気がした。
一緒に居て、私はとても嬉しかった。
59738 幕間。レイの独り言:2006/06/12(月) 23:18:38 ID:???
いつでも彼女は、明るく笑っていた。
その傍で私も幸せな気分になれた。
だからなのかもしれない。彼女が辛そうにしているのが、私はとても嫌だった。
どうにかして笑って欲しくて。
なのに泣かせてしまった。怒らせてしまった。
私、まだ彼女に謝ってない。

どこにいるの?
私にはわからない。
この街の空気、この街の意識。
私とは違うものたち。
その中に私を溶け込ませても、彼女を見つけられない。
どこにもいない。
どこにもいないの。
「お願い。閉じてしまわないで」
もうすぐ全てを殻に閉じ込めて、膝を抱えて眠ってしまう。
そうなったらもう私には彼女を見つけ出せない。
間に合って。
もう一度、彼女に会わせて。
「惣流さん応えて。お願い…!」

私は夕暮れの街を、滑るように走り続けていた。
59838:2006/06/12(月) 23:20:17 ID:???
大きな、扉。
まるで迷路のような地下道を抜けてたどり着いたのは、厳重なロックに守られたその扉だった。

「ヘヴンズ・ドアだ」
天国への門。
やたらメルヘンチックな名前に似合わず、それは僕の前に仰々しく立ちふさがっていた。
父さんがIDを翳すとそれはゆっくりと開いていき。
「うわぁっ?!」
「うおっ?!」
僕と父さんは同時に叫んでいた。

扉が開いた瞬間、目に飛び込んできたのは、青白い副司令の顔。
手に持っている懐中電灯の所為で、下から光源気味の白髪ロング顎の存在は、目に入れるには
心の準備が必要だ。
「さすが冬月先生、お化け屋敷にでも転職なさっては如何です」
流石の父さんもかなり驚いたらしく、不機嫌そうに副司令にそう言い放っている。
ちょっと酷いなと思ったけど、僕も心臓に悪かったのには同意なので、フォローできる自信がない。
可哀想に二人分の冷たい視線を浴びせかけられ、副司令は横を向いて俯いてしまった。

「碇、いいのか」
それをさくっと無視して横を通り過ぎようとする父さんに、ぼそりと副司令が声をかける。
その問いに軽く頷く姿を確認すると、副司令は少し諦めたように溜息をついて僕達の後ろについてきた。
僕は父さんに誘われるまま扉の向こうに一歩踏み出して、目前の異形に目を奪われる。
59938:2006/06/12(月) 23:25:11 ID:???
巨人、だ。
辺りにはLCLに似た液体。
磔になっているひとがた。
これが使徒が目指している、接触を許せばサードインパクトが起きると聞かされていた『アダム』
なのだろうか?
僕の何か言いたげな目線に、父さんは首を振りつつ答える。
「これはリリス。第二の使徒、我らが人類の母たるもの。そして、人類補完計画になくてはならない
 存在だ」

のっけから濃い話ktkr。

僕は電波臭いその内容に、それでも素直に耳を傾けた。
でも正直、現物がなくて話してるのが父さんじゃなかったら、相手をヤバイヒト認定するところだ。
というか初耳の話題が多すぎで、どこから突っ込んで良いのか僕にはもう分からない。
頼むから自分だけに理解できる発言をする癖は、やめて下さい父さん。
「えーーーと、これは第二の使徒で、リリスって名前で。それが人類の母…?」
頭の整理をしようと、とりあえず僕は言われた台詞を反芻する。けれども駄目だ、よくわかんない。
その中でも、とりわけ一番分からないのが。

「人類補完計画…って、何?」
僕の疑問に、父さんは遠い眼をしながらぼそりと呟いた。
「世界は不完全な形で存在している。限りある命と、それを奪う事で続く螺旋。その中で憎しみ合い
 傷つけあう人類。何もかもが不合理で、破滅に向かっている。それがリリスより生まれしモノ達の
 宿命だ。それを正そうとする動き、それがゼーレの補完計画の始まりだった」
60038:2006/06/12(月) 23:29:13 ID:???
はあ、えらく壮大な話になってきました。
つまり父さんの言っていた『ゼーレ』という集団の目的が、それって訳らしい。
「全てはセカンドインパクト…その時から始まった。永劫の命を持つアダム。終焉と
 原罪のない世界の姿。神を手に入れようとした人類への罰は、新たな可能性の姿を
 我々に見せつけた」
「罰を受けるかもしれないと、分かっていてそれに手を伸ばさずにはいられない。神話の
 時代から、人とは愚かなものだ…」

頼むから僕に分かる言葉で説明してください。
つかいつの間にか、副司令まで電波に乗っかってきやがりましたよ。
それでも僕はステレオタイプで聞かされる、そのにわかに信じがたい話を、ただ黙って
聞き入る事しか出来ない。
「あの日、南極で人類は神を手にした。奢れるものはその意味に気付こうともせず、また
 気付いていてもその手を止められなかった。それがあの瞬間を生み出した。傲慢なものだ。
 …だからこそ原罪をもつ存在たるのかもしれないがな」
「その原罪を贖い、全てをはじまりに…それが人類補完計画。…くだらん話だ。だがそれに
 縋らずにいられぬものがいることも、また事実だ」

…要するにあのセカンドインパクトは、人間の所為で起きたってこと?
それも『何かが起きるかも』と、分かってて。
その所為で世界中が大混乱に陥って、それでもまだその原因である存在にしがみついて、何かを
しようとしている。
60138:2006/06/12(月) 23:31:08 ID:???
なんだよそれ。全く意味が分からない。

加持さんの言っていた真実とは、これの事だったのだろうか。
そして僕が知りたかった「父さんのしようとしている事」も。
人類補完計画という名前の、こう言ってはなんだけど、究極のおせっかい計画。
それが僕をこの街に呼んだ理由だっていうの?

「父さんは、何でそれをしようと思ったの」
問い詰める声が、ついつい不機嫌になってしまう。
僕の言葉に父さんは、苦笑いをすると目の前の「リリス」を見上げ、溜息をついた。
「もう一度逢いたかった…ただ、それだけだ」
そう言って、寂しそうに笑う。
僕はそんな父さんに、何も声をかけることが出来なかった。

「私の用はこれだけだ。帰るぞ」
黙ったままの僕を父さんが促して、僕達は再び地上に向かって歩き出す。
帰り道、僕は父さんの顔を見ることが出来なかった。
正直言って今聞いた話は、僕の許容範囲を遥かに越えている。
でも僕は父さんの気持ちが分からないでもなくて、だからこそ混乱していた。
こんなのは間違っていると、そう切り捨てるのは簡単だ。
でも僕が父さんと同じ立場だったら、それを選ばないとは決して言えなくて。
だからただ黙って父さんの後ろを歩き続けていた。

途中遅れそうになって、僕は慌てて父さんの上着の裾を掴もうとして。
一瞬だけ、躊躇った。
僕はそのまま歩く速度を速めて父さんに追いついた。
父さんは何も言わず僕を待っていて。

何故だか僕は、それに酷く心を刺されるような、気がした。
602名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/12(月) 23:57:35 ID:???
試合中にキテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
そんでもって日本逆転負けキタ━━━━━━('A`)━━━━━━ !!
60338中の人:2006/06/13(火) 00:06:48 ID:???
後半思わず白熱して真面目に見ちゃったら
あれよあれよという間に…

欝だ
604名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/13(火) 01:32:54 ID:???
日本オワタ

>>597-601
>つかいつの間にか、副司令まで電波に乗っかってきやがりましたよ。

そういえば、冬月、ゲンドウは本編では必ずといっていい程、
電波な掛け合いをしてたなw
ストーリーに見入ってるせいで、彼らのやり取りが相当、
逝っちゃってるという事をすっかり忘れてた。思い出させてくれてアリガトw GJ!
605名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/13(火) 10:22:45 ID:DBxWUwUA
期待age
606名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/13(火) 20:53:49 ID:???
グッドエンドな予感になってきたかな。
607名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/14(水) 00:52:24 ID:???
久々の新作!乙!!
608名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/14(水) 07:04:48 ID:???
昨日の夜にこのスレ見つけて今読み終わりました


れ、零号機が使徒をぞうきん絞りて・・・


キーボードに野菜生活が飛び散ったのは言うまでもありません
609名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/14(水) 15:23:20 ID:???
れ、零号機


???
610名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/14(水) 16:52:05 ID:???
マジレスすっと
零(ぜろ)号機を読み間違ってるよな?
貞エヴァだけの人なのかな
611名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/14(水) 18:35:55 ID:???
違うだろ。
レイとれい(零)を掛けてみたかったんだろw

…という冗談は置いといて。 次回からこのスレ見るときは飲み物
飲みながらはやめようなw
612608:2006/06/14(水) 19:32:44 ID:???
スマン、癖なんだ・・・

ちなみに、キーボードは新調したばかりなんだ・・・
613名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/15(木) 14:17:01 ID:???
俺もリアルにこないだの武勇伝ネタでキーボードに吹いたorz
気持ちはよく分かるよ。
ちゃんと拭きとって乾かしたら大丈夫だったから頑張れ。



馬鹿だよな俺…
614名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/16(金) 21:02:20 ID:???
自分はベビースターを…



馬鹿よね私…
615名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/16(金) 21:14:17 ID:???
なあに、かえって免疫力がつく
616名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/17(土) 13:55:53 ID:???
だがショートする恐れもあるのではないか?
617名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/17(土) 14:50:52 ID:???
>>616
問題ない。すべては計画通りだ
618名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/17(土) 20:56:53 ID:???
貞エヴァにもルビはあるわけで
619608:2006/06/17(土) 21:09:16 ID:???
うんわかってるよ
それでも70%の確率で「れい」と読んでしまうわけで
勿論アニメ版も全部見たわけで
それでも(ry
620名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/19(月) 10:29:48 ID:???
621名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/20(火) 00:52:10 ID:???
期待上げ
622名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/20(火) 02:09:56 ID:???
いいすれ
623名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/21(水) 02:04:40 ID:???
最初から読んでやっと追いついたw

ただただ38氏の才能に脱帽…(゚д゚;)
これ、普通にノベライズしたら売れそうな気がするのは俺だけですか?


三人のチルドレンとゲンドゥさんの今後にwktk!

つか、シンジはねら〜だったのかwww
62438 幕間。アスカの独り言:2006/06/21(水) 22:44:04 ID:???
日が沈む瞬間は、いつも憂鬱。
夜にはベッドで寝なくちゃいけないなんて、誰が決めたのかしら。
冷たいシーツの感触は嫌い。
電気が消えた部屋の中で隣の部屋から聞こえてくる、楽しそうなパパとママの笑い声。
アタシは耳を塞いでそれが聞こえないように、いつも丸くなって眠っていた。
この街に来てからもその癖は直らなくて。
アタシは聞こえるはずのないその声に、震えながら眠りにつくのが日常で。
たった一人の部屋は、自分以外の音は一切ない筈なのに。
それなのにアタシは、聞こえるはずのない物音を間近に感じ怯えていた。
ファーストはそう感じる事は、なかったのかしら。

いつだったか入ったことがある、なんにもない部屋。
人の気配のない空間。
あんな所に一人で、寂しくはなかったの?
「私には何もないもの」
口癖のようにそう呟いていた、あの子。
アタシはその言葉に少しだけ安心していた。
一人なのはアタシだけじゃない、コイツも同じだって。
だから一緒に居ると暖かかった。
…だから一人じゃないバカシンジが、大嫌いだった。
ファーストもそうだと思ってた。
だけどあいつは嫌いだって言いながら、結局シンジとも上手く付き合っていたわ。

馬鹿なのはアタシ。
嫉妬じゃない、まるで。
ファーストはきっと、アタシと違って一人でも平気なの。
だからそうでない自分が、腹が立って仕方がなかったの。
その気持ちを全部ぶつけて殴った。
白い肌が自分の所為で赤く腫れていくのを見るのが怖くて、あの場所から逃げ出したアタシ。
「痛かった…よね」

アタシは誰もいない廃墟の屋上で、沈んでいく夕日をただじっと見つめていた。
62538 幕間。レイの独り言:2006/06/21(水) 22:46:00 ID:???
「みつけた」

彼女の思念。私を想ってくれている。
私は急いでその場所に向かった。
日がもうすぐ沈んでしまう。その瞬間を逢魔が刻というのだと、何かの本で読んだ事を不意に思い出す。
その時はよく分からなかった、ヒトの心の隙間。
現れる何かは、ヒトの心の生み出す幻覚のようなもの。
今はそれが少しだけ分かる気がする。

浚われてしまう心。消えていく想い。
夕日に溶けて消えてしまいそうな、そんな感覚。
寂しくて哀しい、薄紫と橙の時間。
寂しくない時間があるから、ヒトは一人ではないから。
だからそれに気がつくの。
私にそれを教えてくれたのは彼女だった。
「惣流さん」
声をかける。彼女はぼろぼろの柵の向こうで、ゆっくりと私のいる方を振り返った。

「何しに来たのよ?」
感情の伴わない声で、惣流さんはそう呟く。
閉じかけた心。
浚われてしまう、この夕日に。そんなの私、嫌だわ。
だから彼女向かって歩き出す。だけどそんな私の姿を、彼女は拒否するように叫びだした。
「来ないで!」
どうして?
間に合ったのに。あんなに探して、やっと逢えたのに。
「それ以上近づいたら、ここから飛び降りるから!」
泣きそうな目で、それだけ叫ぶ。
私は驚いて彼女の顔をじっと見つめていた。
62638 幕間。レイの独り言:2006/06/21(水) 22:48:35 ID:???
飛び降りる?
ここは廃墟ビルの屋上。そこから飛び降りたら、どうなるの?
彼女の身体は空を切って、地上に衝突する。
ヒトの身体はその衝撃に耐えられない。生命維持に困難をきたすわ。
どうしてそんな事をするの?
私と違ってあなたに代わりはいないのに。
「どうしてそんな事するの?」
私の問いに、惣流さんは皮肉な笑みを浮かべた。
「もう、どうでもいいからよ」

『どうでもいい』
この世界が?だから飛び降りるの?
全てを捨てるの?
この街も、空も、空気も。
私も……?

嫌。

あなたがいなくなったら、私また一人なの。
だから嫌。
でも惣流さんは死ぬって言ってる。
どうすればいいの。私は、どうしたいの?
「駄目」
私の唇は考えるより先に、言葉を紡ぎ出していた。
62738 幕間。レイの独り言:2006/06/21(水) 22:49:37 ID:???
「一人で行くのは、駄目」

そう。
残されたら私はまた一人になってしまう。でも彼女はもうここにいたくないと言うの。
だから私がついていくの。
司令のことは問題ないわ、3人目がいるもの。
惣流さんがいないなら、私の記憶はなくなっても問題ないもの。
だから私は彼女についていく。
私は再び彼女の元へと近づいていった。惣流さんは驚いて私の顔をじっと見つめたまま。
「飛び降りるって言ってるでしょ?!来ないでよ!」
叫ぶ彼女を尻目に、私は柵を越えて彼女の手をとった。

温かい。
彼女の手は、温かいわ。
この手の感触を抱いたまま、私はあなたと一緒に消えるの。

「もう飛び降りてもいいわ。一緒に行くから」
私のその言葉に、惣流さんは怯えたように身体を震わせて。
じっと私の瞳を見つめていた。
62838 幕間。アスカの独り言:2006/06/21(水) 22:51:38 ID:???
アタシは信じられない想いでファーストを見つめていた。
一緒に行くってどういうこと?!
不意にアタシの靴に弾き出されて、からんからんと小石が足場から滑り落ちる。
その音に足元をふと見つめて、アタシの足は無意識のうちにがくがくと震えだしていた。

まるで、奈落。
地面は遠くて、落ちたはずの小石の音も聞こえない。
ファーストの、手をきつく握ってくる感覚が、アタシを酷く怯えさせる。
このまま本当にファーストが飛び降りたら、アタシも落ちてしまう。死んでしまうわ。
ファーストは相変わらずいつもと同じ、無表情な瞳でアタシの事を見つめているだけ。
何を考えているのか分からない。
分かるのは、アタシと一緒にこいつはここから飛び降りようとしている、その事だけ。
嫌よ。
アタシ、死にたくない。

死ぬのは嫌。
死ぬのは嫌。
死ぬのは嫌。
死ぬのは嫌。

「死ぬのは、嫌ぁ!!!」
アタシは気付いたら、ぼろぼろと涙を流しながらその場に座り込んでいた。
62938 幕間。アスカの独り言:2006/06/21(水) 22:54:59 ID:???
『アスカちゃん…ママと一緒に死んで頂戴』
『やめてママ!殺さないで!』

アタシの脳裏にあの時の感情が蘇る。
あの時アタシの首に手を掛けたママ。
息が苦しいかったわ。
そんな中でアタシは、じっとママの目を見つめていた。

ママの目にずっとアタシは映っていなかった。
だけどあの時。
あの時のママの目には、はっきりとアタシが映っていた。
だから、アタシは。
『分かったわ…ママと一緒に死ぬ…だから…』
だからママをやめないで。
アタシを一人にしないで…!

しゃがんで震えるアタシを、ファーストが見下ろしてくる。
「一人で行かないで。もう私を、一人にしないで」
無感情な声音。
だけど、その声にアタシは驚いてファーストを見上げていた。
それはアタシがママに叫んだ言葉と同じ。
63038 幕間。アスカの独り言:2006/06/21(水) 22:56:46 ID:???
アタシ、ママが好きだった。だから置いていかれて、ずっと哀しかったの。寂しかったの。
ファーストも、そうなの?
「私には何もないもの。惣流さんしか、いないもの」
アタシも同じ、ママしかいなかった。
だからなの?一緒に行くって。
アタシはあんたの事、変な奴ってずっと思ってたのに。
友達面して、なのにアンタの気持ち疑って。それなのに私しかいないなんて言ってくれるの?

繋いだ掌から、温かい何かが流れてくる。
冷たい女って思ってた。訳が分からない奴とも。
そんな奴でも一人きりよりはマシだったから、一緒に居ただけ。
だけど違う。
本当に冷たいのはアタシ。ママと同じに、ファーストを悲しませたのもアタシ。

「惣流さんのしたいほうでいいの。私はついていくだけ」
ファーストはぽそりとそれだけ呟いて、アタシを見つめてくる。
アタシのしたい事?
アタシは、どうしたいの?

『ママ……アタシは…』
アタシは。
アタシは、ママと一緒に行きたかった。
ママと一緒に生きたかった。
生きたかったの…!

気付いたらアタシは、子供のようにわんわん声を上げて泣き出していた。
ファーストは不思議そうに、そんなアタシを見下ろしていて。
不意にぽんぽんと、背中を撫ぜてきた。
昔、ママがしてくれたように。
アタシは懐かしいその感触に、涙が溢れて止まらなくなっていた。
631名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/21(水) 23:45:01 ID:???
突如としてキターー(゚∀゚)ーー!!


アスカ…綾波…(´;ω;`)
632名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/21(水) 23:45:14 ID:???
・・・いい話だ
久々にきてよかったよgj
633名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/21(水) 23:46:22 ID:???
素晴らしい GJ
634名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/21(水) 23:50:19 ID:???
今回もGJですぜ38氏!
相変わらずいい仕事をなさる…。
635名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/22(木) 00:15:56 ID:???
あぁGJだ、文句ない
636名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/22(木) 00:23:55 ID:???
仲の良いアスカと綾波って新鮮だな。こんなに良いものだったんだ。
ゲンドウとシンジが和解すればこんな嬉しいサプライズがw
637名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/22(木) 01:00:32 ID:???
待ったかいがあった
38氏の作品が読めて嬉しいっす
638名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/22(木) 09:42:20 ID:???
>アタシは、ママと一緒に行きたかった。
>ママと一緒に生きたかった。
>生きたかったの…!

ここのくだりで俺の中の全米が泣いた
ギャグがうまい人は泣かせるのもうまいってのは本当だな
gj!
639名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/22(木) 18:38:25 ID:???
いや、普通にキモイから
640名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/22(木) 22:07:03 ID:???
639がなんといおうとも


GJ
641名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/23(金) 02:03:21 ID:???
全ては心の中だ
今はそれだけでいい
642名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/23(金) 11:04:09 ID:???
これ読んでるとマジで鬱展開の原因は全てゲンドウにありそうな気がしてきた
643名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/23(金) 11:08:47 ID:???
ゲンドウがシンジとアスカにもう少し優しくしてやれば
あそこまでならなかったかね。あと問題はカヲル
644名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/23(金) 18:17:40 ID:???
>>642
あれは一概に誰かのせいと言えるものではないとは思うけどな
むしろシャツのボタンをかけ違うと最終的にぐちゃぐちゃになるって典型のような
その初めが単にゲンドウとシンジの心のすれ違いだったのでは?
でもゲンドウがその気になればあの展開を回避できたのは確かかも
645名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/26(月) 08:30:22 ID:???
保守点検作業
646名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/28(水) 17:36:27 ID:???
保全
647名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/29(木) 06:22:59 ID:???
保全再
648名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/29(木) 13:51:43 ID:???
649名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/30(金) 12:16:28 ID:???
ー保守点検中ー
-NOW SAVING-
650名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/01(土) 23:59:14 ID:???
ほもっしゅ
651名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/06(木) 00:18:46 ID:???
ほす
652名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/06(木) 09:39:09 ID:???
マギの自律保守
653名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/06(木) 12:07:22 ID:???
そろそろ待ち揚げ
654名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/06(木) 13:10:11 ID:???
「ぬるいな‥」
「ああ」
爽やかな朝の食卓。
「ご…ごめん父さんお味噌汁温め直すよ…で、どうして毎朝冬月先生がウチにいるんですか?」

「問題ない」
「ボク…わからないよ‥」
655名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/07(金) 00:29:26 ID:???
問題大蟻だw
656名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/07(金) 09:30:15 ID:???
ゲンドウとシンジとコウゾウの同居生活
657名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/07(金) 11:27:20 ID:???
なんだか悲しみがそして始まりそうなんだが。
658654:2006/07/07(金) 16:43:48 ID:???
「…碇、たまには野沢菜でもどうだね」

――冬月先生がお土産でくれた野沢菜が食卓に上る。
「シンジ君、鮭のハラスの焼き具合が絶妙だな」
「あ…ありがとうございます」
そこに差し出された茶碗を持つ白い手。
「綾波、野沢菜とご飯だけじゃダメだよ。ほら卵焼きも食べなよ?」

「…こんな時どうすればいいか、わからないわ」

「食べればいいと思うよ‥」

「問題ない、食事を続けろレイ」

「…はい」

(明日はもう少しご飯多めに炊かなきゃ)
659名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/07(金) 20:17:58 ID:???
「…ごめんなさい。こんなとき、どこで笑えばいいのかよく分からないわ」
660名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/07(金) 20:32:53 ID:???
私は多分三人目だと思うから…
碇くんのご飯美味しいからって司令が言ったから。
三人目に食べに来たのに引っ掛けたの。
つまらなくてごめんなさい。
661名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/08(土) 01:37:31 ID:???
>>660
それをストーリー中に説明したらいいと思うよ

ロジックじゃないもの
また書いてくれるならそうして
いいえ、そうしてくれると嬉しい

でもゲンドウとシンジの出番が多いともっといい…
662名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/10(月) 09:10:46 ID:???
保守
663櫻 ◆zw3/7kSZM2 :2006/07/10(月) 17:20:17 ID:???
1/2
今日は父さんの誕生日だ。
何としてでも2人っきりで食事がしたい。
綾波には説得で何とか出来たけど…
問題は冬月先生だ。
「どうしたの?シンクロ率が悪いわよ、シンジ君」
リツコさんがマイクで声をかけてきた。
今日は一人でのテストだから話してみよう。

「わかったわ。私が何とかしてあげる」
「ホントですか!?」

その後のテストは順調で僕はネルフの車で市場迄連れていってもらった。
*****

「こいつめ!こいつめ!」
シンジの声と玄関先の血痕…
まさか…
ゲンドウは焦った。

「シンジ!?」
「お帰り、父さん」

返り血を浴び、床に叩きつけていた包丁の先には







鱈が解体されていた。
664櫻 ◆zw3/7kSZM2 :2006/07/10(月) 17:23:33 ID:???
2/2
「鱈って骨がグネグネしてて手こずっちゃった」

その姿と言葉にユイの在りし日の姿が重なった。
(ふっ…お前そっくりだ)
新婚当時全く同じ事があったのは黙っておこう。
「じゃっぱ汁とお鍋、どっちがいいかな?」

「鍋にしろ。たまにはビールでも飲まんかシンジ」

「僕、未成年だよ?」

「問題ない。男ならこれぐらいは、な」

「うん!」

僕はとても幸せな気分になった。

*****

「何故私が呼ばれたのか…」
冬月はゼーレに連行されていた。

「お誕生日おめでとう、父さん!」

「あ、ああ」

照れながらゲンドウはシンジと久しぶりに親子水入らずの食事を楽しんだのだった。
665櫻 ◆zw3/7kSZM2 :2006/07/10(月) 17:27:58 ID:???
>>661さん
654です。
下手ですが投下させて戴きました。
なかなか携帯だと難しいですね(^^;)
66638 幕間。アスカの独り言:2006/07/10(月) 21:36:50 ID:???
さんざん大泣きした後、結局アタシはファーストと一緒に自宅に戻っていた。
道中ずっとファーストはアタシの手を握って離そうとしなくて、でも温かい掌の感触はアタシの心を
段々と落ち着かせていた。
アタシはつい、とファーストの横顔を見つめる。
ファーストもふと気付いたように視線を動かして、薄く笑う。
それだけなのに、何だかとても嬉しい気持ちになった。
「寄って行きなさいよ」
だからアタシは部屋に着いたとき、ファーストにそう声をかけたの。それにファーストが二つ返事で頷くと、
アタシ達はすっかり暗くなった部屋の中に足を踏み入れた。

電気をつけて、紅茶を淹れる。
「美味しいわ」
勧めるとファーストは嬉しそうにそう言って、アタシに微笑みかけてくる。
ファーストはアタシの紅茶がお気に入りなの。アタシもこうして淹れてあげて褒められるのが嬉しくて、
よく部屋に誘ったわ。
ファーストの笑顔を眺めつつ、アタシもカップに口を付ける。
薫り高くてすっきりとした味わいのこの茶葉は、アタシの一番のお気に入り。それをゆっくりと口に含むと、
アタシの中で澱のように溜まっていた感情も一緒に流れていくみたい。

だけど静かな時間は次の瞬間、一気に崩れ去っていた。
66738 幕間。アスカの独り言:2006/07/10(月) 21:39:16 ID:???
くるぅぅぅぅ〜!

ほう、と溜息をついた瞬間アタシのお腹が猛烈な自己主張を始める。
「惣流さん、お腹減ったの?」
聞こえない振りしてくれればいいのに、ファーストはデリカシーがホントに足りないわ。
それにしても今日はほとんど何も食べてないから、アタシのお腹はもう限界寸前。こんな事なら
コンビニに寄って何か買って帰れば良かった。
そんな事をぼけっと考えていると、突然ファーストが立ち上がり台所に向かう。
「ご飯、作ってあげる」
……アンタ食事の支度なんかした事あるの?
いかにも意外そうに呟くアタシに、ファーストはさらりと否定の言葉を口に出す。
アタシは何だかとても嫌な予感がした。

「惣流さん、碇君の家で出たあの料理美味しかった?」
アタシの困惑を他所に、ファーストはさっさと冷蔵庫を吟味しながら訊ねてくる。アタシが頷くと、
じゃあそれにするわ。とガスに天ぷら鍋を設置し始めた。
66838 幕間。アスカの独り言:2006/07/10(月) 21:40:03 ID:???
天ぷら鍋……?

早くも予想不可能な行動に驚いていると、ファーストは独り言のようにぶつぶつと何かを呟きながら
冷蔵庫の中を引っ掻き回して、中からいろんな物を取り出していく。
「お肉嫌いだから豆腐にする。あと、スイカはここね」
ああ、豆腐だから固めるために揚げるのね。
でもうちに豆腐やスイカなんて、あったかしら?
なんて考えつつ、ちらっと手元を覗いてみてアタシは思わず叫びだしていた。
「ちょっとアンタこれ杏仁豆腐!それにスイカってこれ?!」
ファーストが持っていたのは、アタシのおやつの杏仁豆腐とスイカバー。
慌てるアタシが止める暇もなく、ファーストは一気にそれらを煮えたぎる油の中に投入していた。

「おかしいわ。溶けていく」
当たり前よ!アンタは「噂の!東京マガジン」の人気コーナーやってT〜RYに出てくるTRY娘かっ!
恐る恐る鍋の中を覗き込むと、無残にも油の中で杏仁豆腐とスイカバーは、激しい油ハネと共に
固形から液体に変化していた。
アタシは自分の嫌な予感がバッチリ当たった事に、深い溜息をつく事しか、できなかった。
66938:2006/07/10(月) 21:42:39 ID:???
「加持さん…それにミサトさんも」
地上に出る扉の向こうに彼らの姿をみつけ、僕は思わず驚きのあまり声を上げていた。
何故、こんなところに。
そう僕が尋ねるまでもなく、加持さんはいつもの気障ったらしいウインクを交えつつ、僕に向かって
声をかけてきた。
「ここに入る君達の姿を見かけてね。…その顔つきからすると、真実は決して喜ばしいものでは
なかったようだな」
加持さんのその言葉に胸を抉られるような痛みを覚え、僕は無意識のうち話を逸らすように、
隣にいるミサトさんに問いかける。

「えと……ミサトさんは、どうしてここに?」
僕のその言葉に、加持さんは顎でミサトさんの方を示しながら、苦笑いをする。
「こいつも他人事じゃないからな。あの時南極にいた、葛城調査隊。…こいつはその唯一の生存者さ。
 真実を聞く権利は充分にあるだろう?」
「え……」
思いがけない加持さんのその言葉に、そのまま僕は俯いて、何も言う事が出来なかった。
ショックというよりも、頭の整理が追いついていないというのが正直なところだ。

父さんはあの時、何かが起こる事を知っていた。
その出来事に巻き込まれた人がいる。それも、こんなにも自分の身近に。
目の前のその事実が、僕の心を迷わせていた。
僕は父さんがどんな事をしていても、受け止められると思っていた。どんな事があっても、僕の父さんを
思う気持ちに変わりはないと。
それは今でも変わらない。だけど、何かが心の中でちくちくと痛んで、その痛みに僕の心が酷く
沈みこんでいく。
そんな僕の様子に気付いたのか、加持さんは少しだけ溜息をつくと、僕に向かって微笑みかけてきた。
67038:2006/07/10(月) 21:44:06 ID:???
「……何を見たのか、今言えとは言わないさ。君の頭の中で整理がついた、その時でいいんだ」
加持さんはあくまでも労わるようにそう言ってくれる。きっとミサトさんも、そう思ってくれているんだろう。
二人とも何も言わず、ただ薄く微笑みながらじっと僕を見つめているだけだ。
自分があんな目にあって、理由なんか今すぐにでも知りたいはずなのに、それなのにこうして僕を
思いやってくれている。
こんなにも優しい人達を苦しませた、セカンドインパクト。
その核となる場所に、多分父さんは、いる。
僕にはその両方ともが大事で、だからこそ、どうして良いのか分からなかった。
と、今まで黙っていた父さんが、僕達の会話に割り込むように声を発する。

「…シンジに訊ねるまでもない。聞きたいことがあるなら、私が質問に答えよう。加持リョウジ・葛城ミサト、
 両名は後ほど私の執務室に来るように」
僕が驚いてぽかんとしている間に、父さんはついと僕の前に立ち、加持さんにまるで命令のように
そう言い放つと、彼らを置いて再びすたすたと歩き出した。
僕は慌てて二人にぺこりと頭を下げると、そのまま父さんについていく。
歩きながら父さんの背中を、僕はじっと見つめていた。
少しだけ猫背気味で、並んで立っていると後から必ず誰かに『二人とも立ち姿がそっくりだ』なんて
からかわれたものだ。
だけど父さんの背中は僕よりもずっと大きくて、見ているだけで何故だか安心していられた。
それは多分、今も。

「……あの…父さ…」
黙ったまま歩き続ける父さんに、僕は声をかけようとして。
瞬間、それは突然僕のポケットから響いた音に遮られた
67138:2006/07/10(月) 21:46:22 ID:???
『波の谷間にぃ〜 命の花がぁぁぁ〜♪』

すいません、本っ当ーにすいません。僕がいけませんでした。
ついついあの時の父さんの宴会芸を携帯で録音してしまい、あまつさえ着メロにしてました。
ええ、僕が全部悪いんです。それに異存はありませんとも。
笑いのひとつも取れるかと、浅はかな考えで軽はずみな行動をした事を、深く反省いたします。
…だけどこの失われてしまった緊張感を、どうしてくれるんだよ父さん!
僕があまりの脱力感に壁に手をついてぐったりしていると、父さんは『早く電話に出ろ』といった素振りで
僕の方を振り返る。
心なしか、その頬が赤い。
恥じらいならまだしも、喜びの赤面だったらどうしようと思いつつ、僕は慌てて通話ボタンを押した。

『遅っそーいー!何やってるのよバカシンジ!』
電話の主はアスカだった。
もう駄目だ。
ただでさえこんな空気は修正不可能なのに、アスカまで加わっては、もうどうにも止まらない。
僕にはもはや心の中でそっと、山本リンダの気持ちを噛み締める事しか出来そうになかった。
その間もアスカは受話器の向こうで大騒ぎをしているようだ。
よくよく聞くと、遠くで綾波の声まで聞こえてくる。
67238:2006/07/10(月) 21:48:39 ID:???
『キャー!!!ファースト!鍋!火柱!』
『…てんぷら油の自然発火温度は、約360℃から380℃。水分は触媒的要素となりその反応を
 加速させる。…問題ないわ、自然現象だもの』
『そういう事じゃなーい!火事っ!火事になるわよ!早く消してよ!』
『密閉することで油は燃焼できなくなり、炎は消えるわ』
『だったらさっさと手を動かしてよぉっ!』
『命令ならばそうするわ』
『いいからとっとと消せーーーーっ!!!』

「……なにやってんの?」
思わず呆れ気味で僕が発した言葉に、ようやくアスカは気付いたように、僕に向かって受話器越しに
怒鳴りつけてくる。
『何?じゃないわ!アンタ、ファーストになに吹き込んだのよ!アンタのせいでファーストがうちで
 料理始めて、えらい事になってるじゃないの!』

なんじゃそりゃ。

疑問符を大量に浮べる僕に構わず、アスカは一方的に怒鳴りつけてくる。
『いーからさっさとうちに来て、ファーストに料理教えなさいよ!アンタ約束したんでしょ?材料も
 持ってくるのよ?!分かったわね!」
それだけ叫ぶとぶつんと電話は切られてしまう。
67338:2006/07/10(月) 21:49:40 ID:???
呆然とする僕を、父さんも呆れ顔でじっと見つめてくる。それからぼそりと僕に向かって、いつもの
口調で呟いた。

「話は全て聞いている。よくやったな、シンジ」
「父さんそれ台詞違う」
僕のツッコミに、父さんは少しだけ嬉しそうにしていた。
「…問題ない」
問題あるよ!
そうは思ったものの、これ以上不毛な会話をしていても仕方がないので、僕は心の中でだけそれを
ツッコんでおくことにした。
それから父さんにアスカの用件を伝える。
「えと、何かよく分かんないけど今日これから僕、アスカの家で綾波に料理教えなきゃいけないみたい…。
 悪いけど父さん、今日は晩御飯適当に済ませておいてくれるかな」

その言葉に父さんが頷くのを見て、僕はほっと安堵の溜息をついた。
何故だかよく分からないけれど、今日だけは父さんの顔を見ながら食事をするのが気が重い気がして。
それは兄弟船効果だけではないということに、僕は気付かないふりをして、アスカの家に向かっていた。
67438中の人:2006/07/10(月) 21:51:31 ID:???
猛烈に長いので今日はいったんここで切ります
675名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/10(月) 23:55:19 ID:???
乙!
今日はってことは近日中にまた来るの?

やってと〜らいバロスwww
676名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/11(火) 00:57:06 ID:???
「美味しいご飯の作り方を教わっていない」の伏線が今来たのか。

>僕にはもはや心の中でそっと、山本リンダの気持ちを噛み締める事しか出来そうになかった。
不覚にも吹いた。
このシンジって、かなりの若年寄だなw
677名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/11(火) 13:00:54 ID:???
緊張感のあるシーンに突然の兄弟舟は反則だよ。吹いてしまった…w GJ!
678名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/12(水) 01:04:18 ID:???
アスカと綾波が漫才コンビと化しているw
679名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/13(木) 16:15:15 ID:???
本当にシリアス⇔コメディの転換がうまい
腹いてぇwww
680名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/15(土) 07:18:49 ID:???
いかん、兄弟舟おもしろすぎるwww
681名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/17(月) 00:40:48 ID:???
1人凄い実力者がいる。
682名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/18(火) 01:24:20 ID:???
休み明け期待上げ
683名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/20(木) 10:38:56 ID:???
保守リング
68438 ミサトの独り言:2006/07/20(木) 21:34:34 ID:???
初めて会った時は、随分冷めた子供だと思ったわ。
一人暮らしの部屋を用意されてると伝えたときも、特に不満そうな顔もせずにそれを受け入れようとした。
私は何故だかそれが気に入らなくて、望めば同居する事も出来るのだと教えたの。
彼は…シンジ君はそれを聞いて、少しだけ悩んだ後『じゃあそうします』とだけ答えたわ。
本当に何を考えているのか、さっぱり分からなかった。
特に問題も起こさない、聞き分けのいいパイロット。それが私には不満だった。

でもいつの頃からか、シンジ君は少しづつ変わっていった。
その最たる行動が、あの時の尾崎豊かしら。
後先も考えずにエヴァに乗って、マヌケにとっ捕まって。
流石の碇司令も、彼のとっぴな行動にはおかんむりだった。だけどあの時から、彼らを取巻く
空気が変わったの。

シンジ君は自分の気持ちを、素直に言葉にするようになった。
司令はそれを戸惑いながらも、受け入れるようになった。
私はそれを感じて安心している自分に、少しだけ驚いたものだわ。

ひょっとしたら私は、自分の願いを彼らに重ねていたのかもしれない。
68538 ミサトの独り言:2006/07/20(木) 21:35:51 ID:???
私たち家族を省みなかった、私の父親。

大嫌いだと思っていた。彼がどうなろうと、私の知った事ではないと。
だけどあの時。
命がけで私を助けてくれた、あの時。
私は分からなくなった。私は本当はどう思っていたのか。
父は私を、どう思っていたのか。
それを訊ねようとしても、もう彼はこの世にいない。
この疑問は私の中で、いつまでも消える事無く渦巻いていくだけだった。

最初に出会った頃のシンジ君は、きっと私と同じだわ。
父親を憎んで、自分を嫌って。
それにも疲れて全てを拒否していた、言葉を失っていた頃の私。
あの頃の私にはもう戻れないけれど、それでも彼らは変わっていくことが出来る。だから私は
加持君の考えに賛成したの。
理由を知る事は私にとって必要な事。それをしないと私も前には決して進めないから。
だけど、それは急がなくてもいい。

目の前を通り過ぎていく彼らの姿を見つめながら、私はふ、と微笑った。
離れていく後ろ姿が、本当にそっくりだったから。
「さて、どうするかな作戦部長殿?」
加持君がにやりと笑って見せながら、私にそう訊ねてくる。
聞くまでもなく、あなたももう決めているくせにね。
「決まってるでしょ」
私は彼の腕をとると、どちらともなく微笑みあいながら、薄暗い廊下を歩いていく。

ドグマへの鍵は、彼らが去った後も開いたままだった。
68638:2006/07/20(木) 21:37:54 ID:???
ピンポーン。

軽やかな音を響かせて、インターホンがこの部屋の主を呼ぶ。
僕は両手に大荷物を抱えてアスカの部屋の前にいた。
「遅いわよっ!」
それが鳴り終るか否か、といったタイミングでアスカは僕を出迎える。
部屋の中に通された僕を迎えたのは、頬に手を当てて不思議そうな顔をしている綾波と、
疲労困憊している様子のアスカ。
それから滅茶苦茶になった台所の惨状だ。
「アンタのおかげでもうクタクタよぉ」
なんで僕の所為なんだよ。と思いつつもアスカの疲れきった様子に、僕は反論は諦めて
台所の片づけを始めることにした。このままじゃ料理を教えるどころじゃない。

ガスコンロ辺りの煤を払い、天ぷら鍋に凝固剤を放り込んで脇にどけておく。
何故だか調理台に飛び散っている粉を綺麗に拭き取ると、なんとか体裁は整ったようだ。
「お腹減ったぁ〜」
その間もアスカは後ろで、ぐでんとテーブルに突っ伏すようにしながら、ぶつぶつと文句をいっている。
ここの所様子がおかしかったみたいだけど、なんだかもう大丈夫みたいだ。やっぱり僕には
女の子の考えてる事は、よくわかんないや。
苦笑いしつつ横目でそれを眺めると、僕は綾波に手招きをした。
68738:2006/07/20(木) 21:42:19 ID:???
「じゃ、始めるよ。ご飯は買ってきたから、簡単に玉子丼にしようか?これなら綾波も
 食べられるよね」
こくんと綾波が頷くのを確認して、僕は買ってきたものの中から材料を取り出すと
綾波の前に並べていく。

「料理を始める前に、材料を全部そろえて下ごしらえをしておくんだ。そうしておけば
 焦って失敗しなくなるからね」
そう言って玉葱を手渡す。皮をむいて、薄切りにするよう指示を出すと、ぎこちないながらも
それなりに出来ているようだ。
「じゃ、まず僕が作ってみるから綾波はよく見てて」
僕は目玉焼き用の小さなフライパンを棚から取り出すと、出汁をあわせていく。
「調味料は別の器にとって、少しづつ味を見ながら加えるんだ。…こんな感じ。今日のところは
 玉子でとじるから、ちょっと濃い目にするといいよ。味を見てみて」
僕の説明に、綾波は真剣な目で頷く。なんか本気で美味しく作りたいみたいだ。こうなると僕も
教える手に力が篭る。
買ってきたご飯を丼によそうと、温めて横において準備は完了。

「火を使い始めたら一気に全部ね。玉子も先に溶いておいて、これでよし。じゃあいくよ」
出汁を張ったフライパンを火にかけると、玉葱を入れる。透明になってしんなりしたら火が通った
証拠だから、玉子を入れるんだ。菜箸を添えて、ゆっくり回しかける様にね。
玉子を入れたら「のの字」を書くように絶えず鍋を揺らす事。じゃないとくっついちゃうから気をつけて。
玉子液が少し固まってきたかな、くらいで出来上がり。余熱で火が通るからね。
丼に移すときにはフライパンを傾けて、丼のふちをこんこん叩くようにすると、綺麗に盛れるよ。
盛り付けたら三つ葉を乗せて、蓋をして出来上がり。
68838:2006/07/20(木) 21:44:07 ID:???
「…こんな感じ。じゃ、綾波も同じようにやってみて」
僕がこう勧めると綾波は頷いて真剣な様子で、僕の教えた手順を完璧になぞっていく。
「これでいい?」
綾波の声に僕は手元を覗き込む。出来上がったそれは、なかなかのものだった。
「凄いね、綾波ってカンがいいんだ。初めてでこれなら、すぐ色んなもの作れるようになるよ」
僕の褒め言葉に、綾波は嬉しそうに笑った。と、そんな僕達の会話にアスカが割り込むように
捻じ込んでくる。

「へえ、簡単そうじゃない。アタシも作る!」
負けず嫌いktkr。
僕は苦笑いをしながら頷くと、アスカにも手順を説明する。
聞いてるんだかなんだか分からない様子のアスカに、僕は少々不安になりながらも、
作ってみるよう促した。
流石というか、開始早々からアスカは慌てっぱなしだ。これでは上手くいくものも、
そうじゃなくなってしまう。

「ちょっとシンジ!煮汁足りなくなってくるわよ!」
火が強火です。出汁を足して。
「なによ、薄いじゃない!」
入れすぎ…。
「キャー!玉子が一気に入ったわよ!」
だから菜箸を使えと(ry
「何よこれ!盛り付けらんないじゃないの!」
揺らしてないし玉子は量が多いし…ああもう、焦げてる…。

案の定というか、予想通りというか。アスカの作った玉子丼?は散々な出来だ。
例えるなら激しく焦げて形の崩れた、スパニッシュオムレツ丼カツオだし風味といったところか。
アスカも流石に失敗作であることは分かっているみたいで、むすっと頬を膨らませている。
68938:2006/07/20(木) 21:47:16 ID:???
「なによもう、サイテー」
アスカは悔しそうにそう呟くと、失敗作をゴミ箱に持って行こうとしていた。
「ちょ、ちょっとアスカ!何やってんだよ」
僕の制止の言葉に、アスカは不機嫌そうに振り向くと吐き捨てるように呟いてみせる。
「何って、捨てるに決まってるじゃない。食べられやしないわこんなの」
「駄目だよ、勿体無いし。だいいち味付けは普通なんだから。そうだ、よかったらこれ
 僕が食べていいかな?いつも自分が作ったものしか食べられないから、たまには
 人が作ったもの食べたい…」
僕がそう言い終わる前に、丼が素早い動きで僕の手から奪い取られる。見ると綾波が
僕の事をじろっと睨みながら、大事そうにそれを抱え込んでいた。

「駄目、これは私が食べるの。惣流さんが私のために作ってくれたの」
「え、綾波は自分が作ったのがあるじゃないか」
僕の言葉に綾波はぷるぷると首を振る。
「あれは惣流さんのために作ったの。碇君は自分が作ったのがあるもの。それ、食べたら」
「ええ?ずるいよ綾波たちだけ交換なんて!」
なんだか仲間はずれにされたような気分が嫌で、思わず僕はムキになって綾波と
アスカの作った丼を取り合ってしまう。

と、そんな僕達の態度に機嫌を直したのか、アスカは嬉しそうに僕たちを制し始めた。
69038:2006/07/20(木) 21:48:59 ID:???
「もうあんた達ったら、しょうがないわね!シンジ、今回は残念だけど諦めなさい。それは
 ファーストのものよ?」
その鶴の一声で、僕達の抗争には決着がついてしまう。
とりあえず冷めるといけないので、僕達は席についておとなしく食事を摂ることにした。

「惣流さんの作ってくれたご飯、おいしいわ」
「そお?アンタのも、まあまあね」
二人とも見事に僕を無視するように互いの健闘を讃えあっている。僕はなんだか面白くなくて、
ちょっと溜息混じりに呟く事しかできなかった。
「ちぇっ、いいなあ二人とも」
僕のその言葉がまた二人の優越感を刺激したみたいで、二人は嬉しそうに互いの目を見交わして、
にっこり笑い合っていた。
まあ二人が仲良くするのは、いいことだし。と僕も思いなおして、黙々と自分の作った食事を口に運ぶ。

美味しくできたけど、でも何だか美味しくない。

だけどこうして三人で食卓を囲むのは初めてのことで、楽しそうにしている二人を見るのは嬉しかった。
なによりアスカが楽しそうに笑っている顔を見るのは、すごく久しぶりだ。
結局僕は彼女にとって、何の役にも立たなかったみたいだ。だけどあのままのアスカを見ているよりは、
ずっといい。
僕は少しだけ寂しいような、でも安心したような複雑な気持ちで、二人の姿を見つめていた。
そんな僕の様子が気になったのか、アスカは横目でちらりとこちらを気にしながら、僕の造った
お吸い物を口に運ぶ。

「ま、あんたの作ったこれも、それなりにイケてるわよ」
少しだけ照れくさそうなその言葉に、僕はなんだかほっとしたような気分になった。
69138:2006/07/20(木) 21:51:00 ID:???
ともかくこうして三人で一緒にいるのは、なんだか凄く心が落ち着いていく。
先刻までのもやもやした気分も、少しだけ楽になる気がして僕はもう一度二人の姿を見つめると、
少しだけ笑った。

その後洗い物を済ませると、僕はアスカに向かって家に帰る旨を伝え、一人で玄関に向かう。
綾波に送っていこうかと申し出ると、今日はここに泊るという返事が返ってきたからだ。
アスカが玄関まで一緒に見送ってくれるつもりらしく、後ろをついてくる。
「じゃ、おやすみ」
靴を履いてそう声をかけると、アスカは複雑そうな顔をして僕に微笑みかけてくるだけだ。
なんだか妙な気分になりつつも、僕がドアを開けて外に出ようとした瞬間、アスカは小さな声で
呟くように僕に向かって声をかけてきた。

「ダンケ、シンジ」

一瞬なんだかよく分からなくて聞き返してしまった僕に、アスカは恥ずかしそうに別にいいの!
などと叫んで、追い立てられるように僕は玄関から弾き出されてしまった。
「また明日ね、アスカ」
扉が閉まる直前、彼女に問いかけた声は聞こえていたのか、そうでなかったのかよく分からないままだ。
僕は閉まってしまった扉を少しだけ眺めると、彼女の部屋を後にする。
明日もこうやって楽しく話が出来たらいいなと思いながら。

その時の僕は、それを疑う事もなく信じきっていた。
明日は今日と同じ日常なのだと。

その時の僕はそれ以外の可能性なんか、気付いてもいなかったんだ。
69238 幕間。アスカの独り言:2006/07/20(木) 21:58:15 ID:???
薄暗い部屋、冷たいシーツ。

大嫌いだった。だけど今日は、なんだかそれが酷く安心できる気がする。
それはきっと、隣に誰かの温もりを感じていられるから。
だけどそれは、儚いもの。明日になったらまた不安が襲ってくる。

「ずっと夜が続けばいいのに…」

だから嫌いだった筈の夜に、今はすがり付いてしまう。
明日なんか、来なければいい。そうすればこのままでいられる。
もうあそこにアタシの場所はないって事に、気がつかないで済む。
だけどどれだけ願っても、明日は必ず来るの。それで全部オシマイ。アタシはネルフにとって
不要な役立たず。
きっともうアタシの居場所はあそこには、ない。ここも出て行かなきゃいけなくなる。
ファーストともシンジとも、サヨナラね。

「明日なんか、こなきゃいいのに」

アタシは誰にともなく呟く。ファーストはそんなアタシを不思議そうに見つめているだけ。
ファーストには分からないだろう、この気持ち。嫌味ではなく、諦めでもなく今はそう実感する。
だからこそ今は…ううん、ずっとこのまま、こうしていたい。
楽しかった。あんな楽しい晩御飯、初めてだった。
ファーストもシンジも、アタシの事見つめてくれて、一緒に笑ってくれる。
この温かい気持ちのまま、時間が止まってしまえばいいのに。

それきり黙ってしまったアタシを、ファーストはただじっと見つめてくるだけだった。
693名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/20(木) 22:41:38 ID:???
>>691
事件フラグktkr
相変わらず乙です。
694名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/20(木) 23:08:36 ID:???
続きktkr
ていうかなんでそんなに玉子丼に詳しいんだ…
69538中の人:2006/07/21(金) 00:05:14 ID:???
大昔バイト先で取った杵柄です
卵も同時に2個割れるようになりました
何の役にも立ってない特技だけどなー
696名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/21(金) 08:28:45 ID:???
乙!

>その最たる行動が、あの時の尾崎豊かしら。
思い出しちゃったよw
あれはファーストインパクトだった・・・
697名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/26(水) 11:36:09 ID:???
保守
698名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/28(金) 02:56:11 ID:???
保守
699名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/30(日) 15:00:47 ID:???
卵を同時に2個割れるってスゴイなー
700名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/02(水) 20:43:14 ID:???
1個でも片手だと割れない
絶対カラが混じるんよorz
701名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/02(水) 22:07:13 ID:???
>>700
ちょっと思い切りが足らないかな。一発で割れないとカラ入りやすくなる。
70238 幕間。レイの独り言:2006/08/03(木) 22:26:50 ID:???

 Guten Abend, gut' Nacht,
 mit Rosen bedacht,
 mit Nag'lein besteckt,
 schlupf'unter die Deck':
 Morgen fruh, wenn Gott will,
 wirst du wieder geweckt,
 morgen fruh, wenn Gott will,
 wirst du wieder geweckt.
 
 Guten Abend, gut' Nacht,
 von Eng'lein bewacht,
 die zeigen im Traum
 dir Christkindleins Baum:
 Schlaf' nun selig und suβ,
 schau' im Traum's Paradies,
 schlaf' nun selig und suβ,
 schau' im Traum's Paradies.
70338 幕間。レイの独り言:2006/08/03(木) 22:27:55 ID:???
哀しそうな顔をしている。
「明日なんか、来なければいいのに」
そう言って目を閉じた心が流れ込んでくる。
あなたは、それを望むのね。

あなたの笑顔が好きだった。
あなたの淹れてくれる紅茶は、温かい味がした。
泣き顔を見ているのは心が痛いけれど、それでも私を見ていてくれる事は、嬉しかった。
それももう見られなくなってしまうのね。

でも、それでもいい。彼女が辛いなら私の心は痛いままでいい。
大丈夫、あなたはもう辛い思いをしなくていい。
私が守るもの。
二度目の言葉。一度目は、命令だからそうした。
だけど今は自分がそうしたいからあなたを守るの。
あなたの心を温かい綿で包んで、全てのものから守ってあげる。

だからもう……いいの。
70438 幕間。レイの独り言:2006/08/03(木) 22:28:45 ID:???

 眠れよ吾子 汝が夢路を

 天つ使い 護りたれば

 眠れ、今はいと楽しく

 夢の園に ほほえみつつ



彼女の身体を抱きしめて、謡うのは私の心。
眠るのは、あなたの心。

彼女は幸せそうに目を閉じて、私の中に、還る。
70538 幕間。ゲンドウの独り言:2006/08/03(木) 22:30:15 ID:???
薄暗い部屋だ。今日は特にそう感じる。
私はいつも通り傍に控えたままの冬月に向かって、重い口を開いた。

「私は許されざる存在だな」
その言葉に少しだけ驚いたように冬月は私を見つめ、軽く苦笑いで答える。
「なに、私も同罪だよ……」
そう言って自嘲気味に笑うこの男を、この道に引き込んだ理由は一体何であったか。
出会う前からその存在については、ユイの口から聞いていた。
愚直で誠実そうな人柄は、言葉を交わした瞬間に見て取れた。
そして彼女への想いも。
その想いを利用して、私はこの男の知識を得たのだ。

冬月が私についてきたのは、いざという時に私を止めるためなのだろう。ユイの配偶者となった
私の野心に、彼女が巻き込まれないために。

だがそれもあの時……狂った。
70638 幕間。ゲンドウの独り言:2006/08/03(木) 22:32:16 ID:???
私と冬月は、ユイのサルベージに全てをかけた。
結果は失敗し、生まれたのは魂のない塊。何度試してもそれは変わる事のない事実だった。
それは冬月にとって絶望の、そして私にとっては希望の塊。
…皮肉なものだ。
私はその瞬間の事を今でもはっきりと覚えている。
そして恐らくそれは、この男にとっても同じなのだろう。
私の提唱した「人類補完計画」それは私たちにとって必然であり、全ての始まりだった。

その日から私と冬月は……共犯者になった。

「冬月、ユイはあの時…死んでいたのだな……」
私のその言葉に冬月は驚く様子もなくああ、とだけ答える。

そうだ。

私たちは初めからそれを知っていた、分かっていた。
ただ認めたくなかっただけだ。
魂が残る限りそれは、死ではないと。再び逢えるのだと。
ユイの残したレポートは、その為の彼女のメッセージなのだと。
そう思う事で私と冬月は彼女のいない空洞を、埋めようとしていた。

だがそれも、もう。
70738 幕間。ゲンドウの独り言:2006/08/03(木) 22:33:59 ID:???
それ以上冬月は何も言わず、私もまた口を噤む。
私たちはただ黙って、この馬鹿げた計画の終わりを告げるノックの音を待つだけだ。
だが終焉のラッパは私たちが思っていた形ではなく、緊急用の内線電話の呼び出し音となって訪れた。
それは、最悪の事態となって。

『こちら保安部、目標…サードチルドレンをロストしました』

焦るような声音のその言葉に、私の掌から受話器が滑り落ちる。それを冬月が受け止め、奴もまた
事態を把握したらしく呆然とそれを耳に当てたままだ。
原因は分かっている。老人達はとうとう強硬な手段に出ることにしたというわけだ。

唇を噛み締める私の耳にノックの音が聞こえる。
この終焉に向かうシナリオは、私の漠然とした予感を決意に変えるのに、充分すぎるものだった。
708名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/04(金) 00:30:04 ID:w0eKzC5H
乙!
シンシが大変なことに・・・
709名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/04(金) 02:36:14 ID:???
乙!
ここのゲンドウ好きだ。

エヴァを見返した時、尾崎豊な碇親子や
プラグスーツを着たゲンドウを思い出すという弊害なんて気にしなければ問題ない
710名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/04(金) 10:14:52 ID:???
>>709

  _  ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
 ⊂彡

も結構クルよ
あのシーン見返すたびに頭の中で突っ込んでしまうw

ところでアスカ今回の話で戦線離脱?
711名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/09(水) 00:29:12 ID:???
保守
712名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/09(水) 23:42:38 ID:???
保守age
713名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/10(木) 12:55:42 ID:???
保守
714名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/14(月) 12:15:25 ID:???
保守
715名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 22:47:44 ID:???
このスレのゲンドウがTRICKの上田と被ってきた
716名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/16(水) 03:01:48 ID:???
どんとこい超常現象
717名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/16(水) 07:42:59 ID:???
>>715
キーボードやっちまった。
お前のせいだ、どうしてくれる。
718名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/16(水) 19:23:14 ID:???
>>717
何故君はベストを尽くさないのか
719名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/16(水) 21:20:42 ID:???
どんとこい水没現象
720名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/16(水) 21:34:00 ID:???
>>715
同じ阿部寛なら「結婚できない男」の方がイメージが近いような
しかしこう見ると本当に実写版ゲンドウそのものだw
http://www.trick2.jp/03cast/img/photo02.jpg
721名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/17(木) 07:15:43 ID:???
>>716
どんとこい巨大兵器群
722名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/17(木) 08:51:40 ID:???
中の人はお盆休みなのかな…
続き期待しているよ保守
723名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 07:06:02 ID:???
お前らのせいで阿部寛がゲンドウにしか見えなくなったOTL
72438中の人:2006/08/19(土) 23:37:07 ID:???
明日から数日間、第3新東京市に行って来ます
出発までに一回落として行きたかったんですが…半分くらいまでで力尽きました
>>720
どうも阿部寛の出てくるドラマよく見てしまうなあと思ってたら…
そうか…そういうことかリリン…!
725名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/23(水) 04:04:39 ID:???
ご無事な帰還を待ってまーす
72638:2006/08/24(木) 22:39:08 ID:???

進化の行き着く先は自滅

知恵の実のもたらす物は、死と諍い

そして希望

命の実のもたらす物は……絶対的な、自由




72738:2006/08/24(木) 22:39:57 ID:???
「おじい様の身体は、どうしてこんなにも機械がたくさんなの?」

無邪気な瞳で、幼子は問う。
それは世の終局をこの目で見届けるため。
ほんの少しの時間を稼ぐ事で、それを得られるのなら苦痛など軽い代償だ。

「みんな死んでしまうの?私は、嫌だわ」

それが我らの罪だからね。
だがお前が死んでしまうのは、確かに嫌だな。

「死んでしまうのが分かっているのに、何故神様は私たちをお作りになったの?」

神の御心など誰にも分かりはしないよ。
消えてしまえば、誰も無に帰るだけだからね。

「なんだか嫌だわ。せめて人がこの世にいたことを、誰でもいいから知っていて欲しい。
 だって生きているんですもの」

それもそうだな。
神が我らに知恵の実を与えたのも、案外そんな理由かも知れぬ。
そしてその代償が、この欠けた心。

「私が覚えておくわ、おじい様のこと。だからおじい様は死なないの」

そうかそうか。
お前は本当に優しい子だね、ユイ。
72838:2006/08/24(木) 22:41:01 ID:???
母さんの名前。

それを呼んでいるのは、誰なんだろう。
意味の判らない会話。父さんと同じ見事な電波。
その発信源は…母さん?

「これがサードチルドレン…碇の息子か」
「似ても似つかないな」
「だが油断は出来ん。何せあの碇の息子だからな」

何処なんだろうここは。僕を取り囲み降り注いでくる声。
失礼しちゃうな、油断できないとか。それはこっちの台詞だよ。
だけど僕の口は開かない。
真っ暗だ。自分が目を開けているのかすらよく分からない。
僕はどうしてしまったんだろう?アスカの部屋を出て、それから家に向かって……その後の記憶がない。
なんだかぼんやりする。意識がぼんやりと遠のいていく。

ここに居るのはだれ?
父さんは……何処にいるの?

僕の意識は、また闇をさまよう。
72938 ミサトの独り言:2006/08/24(木) 22:42:41 ID:???
私たちは緊張した面持ちで執務室の扉を叩く。
ややあって内部からロックが外され、私は加持君に手を引かれる様な形でそこへと足を踏み入れた。

「用件は手短にしろ。事情が変わった」
入るなり碇司令のこんな言葉が私たちに降りかかる。
何事かと思い正面を見据えると、そこには妙に青ざめた二人の姿。

なんだか変だわ。

だけど私の困惑を他所に、加持君は二人に詰め寄るようにつかつかと部屋の中心へと向かっていた。
「では単刀直入にお伺いします。……セカンドインパクトの本当の原因、それは何ですか」
その言葉に思わず私の背筋も正される。
父の命を奪った、私の胸に消えない傷を残した『それ』は、誰が引き起こし、何の目的があったのか。
それを知ることが、今日私たちがここに来た一番の目的。
加持君の言葉に碇司令はいつものポーズのまま、低い声で私たちに向かって語り始めた。
「セカンドインパクトは初めから定められていた事象だ。あの時我ら人類はその役目を終え、新たなる
 生命にその襷を手渡す筈だった。……文書にはそう記されていた」
司令の言葉を、私たちはただ黙って聞いているしかない。

あの時担った父の南極での役目は、時間稼ぎ。アダムを卵の形まで還元し、約束の時を少しでも
遅らせる事。
そしてアダムより作り出したエヴァで、サードインパクトを阻止する。それはネルフの目的と合致した
話だった。
そして目的は半分だけ成功し、半分は失敗した。それがセカンドインパクトの真実。

でも、まだそこには矛盾があるわ。
73038 ミサトの独り言:2006/08/24(木) 22:47:27 ID:???
「大義名分は、でしょう?人類補完委員会……そしてあなたの目的は、そこにはない。そうですね?」
私の感じた疑問を加持君は確信に満ちた笑みで投げかける。その様子に動じる事もなく、碇司令は
未だ私たちをじっと見つめたままだった。
「ユイ君…シンジ君の母親は生前こう言っていたよ……人の生きた証を残したい。エヴァに込められた
 人の心は、その証となりえるとね。全ては流れのままにと言って彼女は実験に参加し、消えた。
 ……シンジ君のために。だがそれを受け入れるには、私も碇も彼女の事を愛しすぎていた……」
「全てを一つに還すことで原罪を償い、人の欠けた心を補完する。ゼーレの目的と私の手段は合致した。
 故に私はそれを実行に移していたのだ。その向こうにある、彼女の存在だけを拠所にな」

二人はそう言って溜息をつく。随分とロマンチストなのね、大の男が揃いも揃って。
……それが他人を巻き込んだ話でなければ、だけど。
私の心にイライラが降り積もっていく。
男はいつもそう。自分の理想ばかり追い求めて、残された人間が何を想い何を願うのかなんて
考えもしないんだわ。

「揺り籠を揺らすように我が子を守る母の愛と、それを以って戦えと子に強いる父の愛の産物という
 わけですか、エヴァは」
加持君が呆れたような声を上げる。
私も同意見だわ。そしてその行為の果てにあるのが、サードインパクトというわけ?
一体それを誰が望んでいるというのよ。
人類補完委員会?碇ユイ?誰よそれ、全然知らない人じゃない!そんな人のためにあんなものに
乗れと言われるシンジ君の気持ちを、誰か考えた事があるの?
73138 ミサトの独り言:2006/08/24(木) 22:49:06 ID:???
「シンジ君がかわいそうだわ」
私の呟きに、碇司令がぴくりと身体を震わせる。だけど私の言葉は止まる事がなかった。
「ずっと放っておかれて、呼び戻された理由がそれだなんてシンジ君が可哀想よ!自分勝手だわ。
 そんな愛を貰うくらいなら、いっそ憎ませてくれた方が良かったのに……なんで中途半端に想いを
 かけるのよ。それがどれだけ子供を迷わせるのか、碇司令は考えた事がないんでしょ!」
叫ぶようにそういい終わると、私は肩で息をつく。無意識のうちに私は涙を流して碇司令をにらみつけていた。

父親……この人も、シンジ君の父親。
私の憎むべき存在。私の敵。
それなのに、何故そうさせてはくれないのよ?

「人に好かれるのは苦手だ。疎まれる事には慣れた。…だがシンジに憎まれるには、私の心は弱すぎた」
まるで懺悔のように司令はそう言って天を仰ぐ。
そうだわ。あの人も私たち家族から逃げ続けた、ずるくて弱い人。一番欲しくない形で愛情という枷を
私にくれた、たった一人の私の父親。
きちんと向き合ってくれれば、私も母さんもあなたの事を大好きなままでいられたのに。
好きなのに憎み続けるのは、とても辛かったのに。
私は、父が。
こんなにも好きだったのに……!

目の前の司令の姿が、父の姿と重なっていく。
喚くように泣き続ける私の身体を、加持君が優しく抱きとめてくる。
優しい人。私から逃げずに、向き合ってくれた人。
私の父と同じでずるい人だったのに、いつしか変わっていった彼。その彼が碇司令に向かって、
諭すように呟いてみせる。
73238 ミサトの独り言:2006/08/24(木) 22:50:45 ID:???
「俺にはこのままのあなたを、シンジ君が許すとは思えませんけどね?」

加持君の言葉に司令は分かっているとでも言いたげに、軽く頷いた。
「今更赦しを得ようとは思わん。私たちは愚かな親だ。いいや、親にすらなれなかった只の
 愚かな人間…ヒトだ。だがそんな存在でもシンジには必要だった。そして私の希望もまた、
 形を変え始めてきている」
司令の言葉に私も加持君も、目を見張って彼の姿を見つめる。

彼が変わったように、碇司令もまた変わり始めている。
私は加持君の言葉を思い出して、苦笑いをした。
「君達にはもうひと働きして貰わねばならん。……頼めるな?」
碇司令の決意に満ちた声。私たちは目を見合わせて、微笑でそれに頷く。

希望。

いつだったか暴走するJAを止めたときの、効かないパスコード。
だけどそれは私たちにとっては、いつでも未来へのパスワードだわ。
そしてそれは、きっと。

私はシンジ君の笑顔を思い出して、再び笑みを漏らした。
733名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/24(木) 23:12:23 ID:???
久しぶりにキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!

んで第3はどうでしたw?
734名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/25(金) 15:40:44 ID:???
おつ

ミサトがなんかリアルでいい
735名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/25(金) 22:24:40 ID:???
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!

いよいよ終幕へ向かってますな本当GJ!
736名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/26(土) 06:24:59 ID:???
やった、続きktkr
737名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/28(月) 01:04:10 ID:zBkU+GwD
wktk
738名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/28(月) 23:14:44 ID:???
732の流れで

そのとき扉は開け放たれ、一人の使途が部屋に進入する

時田「合言葉は希望だ!!!!!!!」

その後、颯爽とJA改にのってシンジを救出する時田ちゃん
73938中の人:2006/08/28(月) 23:53:35 ID:???
>>733
個人的に第3はもうマニアの域ですw
湯のレポなんかは該当板でやるとして、本当に箱根はいい。
マターリできます。
でも夏に日帰り入浴はやばかった。
「血流を良くすると共に、汗をかきにくくする泉質です」とか堂々と書いてあって、
なにその熱中症万歳温泉wと軽く突っ込んでしまった。

【今月の教訓】 温泉は秋に入れ。
740名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/29(火) 03:07:02 ID:???
「シンジ!起きろ!」
「父さん…そのエプロンは…?」
「今日は私が弁当を作ってやる。」
「(マジかよ…)」
「(料理に掛かる)」
「…」
「腹が痛い(火とガスつけっぱ)」
「(気付いていない)」
「父さん…?(台所が燃え始める)火事だよ!火事!」
「(トイレから怒鳴る)問題ない。」
741名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/29(火) 04:48:07 ID:???
ちょwwwなんだこの良スレwww
742名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/31(木) 00:22:25 ID:C6L8Yf5g
ほほっしゅ
743名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/02(土) 04:40:26 ID:???
>>740に何となーく続く感じで)
「ううおおおおおおお、あっちゃちゃあ!(ガラガッチャガッチャーン)」
「ちょ、父さん!鍋つかみあるから使ってよ!」
「レイ!大丈夫か!」
「綾波はそんな鍋には入ってないよ!」
「そうか」
「そんな素敵に微笑まれても困るんだけどね。ほら見てよ、黒コゲだよ」
「問題ない」
「え、食べるんだこれ・・・」
「食うなら早く食え。食わないなら出てけ!」
「まあ父さんがせっかく作ってくれたんだし、食べてみようかな・・・
 って、父さんが出てくのかよ!」
「悪いが、仕事がある」
「逃げちゃ、ダメだ」
744名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/03(日) 03:04:05 ID:???
>>743
ちょwゲンドウwww
745名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/03(日) 03:05:22 ID:???
>>743を読んで、なんとなくバックトゥザフューチャーのドクを思い出したw
連カキコすまねぇ
746名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/05(火) 23:19:28 ID:sgH9h0m+
ゲ『シンジ、不動産屋に行ってきてくれ』
シ『なんで??』
ゲ『いつまでも段ボールではマズイだろ。もうすぐ冬だぞ・・・』
シ『・・・うん』(逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ・・・)
747名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/09/11(月) 01:03:27 ID:+kNgNt91
ヤヴぁイ・・・・
なんなんだ!
この良スレは!!
748名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/12(火) 00:48:45 ID:oSdzz1v2
いつの間にか追いついてしまった…
38サンGJ!!
749名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/13(水) 02:55:36 ID:CityoF8T
38氏、超GJ!!!!

基本、オリ展開なのにも関わらずグイグイ読ませる構成、シリアスからネタへの切り換えしの妙はマジすごいすよ!!



…で、一気読みしてしまったワケだがwwwwwwwww



そのクォリティを維持しつつ、ここまで話進ませてるのも
途中で書くの止めちまった作品・・・('A`)
がある俺に比べたら尊敬もんすよ1111111
是非、最後までがんがってくらさい!!
応援してまつ
750名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/15(金) 00:35:31 ID:5T+Kr/gW
ageヽ(`Д´)ノ
751名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/15(金) 02:03:20 ID:tWi0r94R
良スレアゲ
752名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/17(日) 05:18:07 ID:???
エヴァのシンクロテストが明日に変更になった。と、たった今連絡が入った。
私はシンジにそれを伝えるべく、シンジが今いるであろう風呂場へ向かった。
が、脱衣場にはシンジはいない。入浴中か。
「・・・」ここから中へ声をかけてもいいが、それではそっけない・・・
べ、べつに息子の成長を、肉眼で、た、確かめたいわけぢゃ・・・ないんだからね!ちなみに下ネタでもない。
ガラッ「おいシンジ」
「と、父さん!!」





そこには服を着たまま、まさに今、湯船の栓を抜かんとしている息子がいた。
シンジ、そんなに私が使った後の湯が嫌か。

父の復讐が始まる!
753名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/17(日) 21:55:44 ID:QQEVbwJd
アゲンドウ
754名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/19(火) 01:31:34 ID:q8xGAZu3
755名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/19(火) 01:34:50 ID:1Y+a7n4u
ケース2 
 父さん!なに綾波のコスプレしてるの!
756名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/19(火) 03:00:21 ID:???
ゲンドウ「朝起きたらこの格好だったんだ」
シンジ「う、嘘つき!でなくとも怖いよ!」
757名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/20(水) 03:41:41 ID:qpHyehNo
「父さん、どうしたのその服?女物・・・だし」
「これは母さん、ユイが着ていた物だ」
「母さんの・・・」
「・・・なぁ、シン「い、嫌だよ!」
「着てくれ」
「言っちゃった!」
758名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/20(水) 08:13:16 ID:???
ゲンドウ(テレビゲームか。内向的なあいつらしいな)
シンジ「あ、父さん」
ゲンドウ「ん、お前がいるな?」
シンジ「うん。僕達みたいな人型兵器のパイロットがたくさん出てくるゲームなんだよ」
ゲンドウ「なるほど、これが例のゲームか」
シンジ「うん。僕やアスカや綾波とかが出てくるんだ」
ゲンドウ「ほう」
シンジ「綾波は途中で離脱しちゃうけどね」
ゲンドウ「……何故だ?」
シンジ「さあ?半分お約束みたいだけど」
ゲンドウ「お約束だと!いつもそうなのか!?」
シンジ「それなりの確率でいなくなるし……いつも二人目が死んじゃって三人目になったり…」
ゲンドウ「おのれ!よくもレイをそんな目に!」
シンジ「こういっちゃなんだけど、たいてい父さんのせいなんだよ…」
電話を取り出すゲンドウ
ゲンドウ「冬月!至急バン○レ○トとのアポをとれ!」
シンジ「待てやオヤジ」
759名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/20(水) 13:00:39 ID:???
「と、父さん、食事中くらい・・・サングラスとろうよ」
「問題ない」ずずっ
「味噌汁の湯気でサングラス曇ってるよ」
「ふふ、問題ない」
「ははは・・・なんか面白いや」
「・・・シンジ」
「なぁに?」
「味噌汁、旨いぞ」
「・・・ありがとう」

760名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/20(水) 20:01:14 ID:???
良スレ発見
761名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/21(木) 18:42:41 ID:???
試しに覗いたら、良スレでした。w
762名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/22(金) 03:13:46 ID:???
>752続。
「シンジ・・・無駄使いは駄目よ、お湯でもね」
とにかく冷静に場をとりつくろってみる。某許斐剛なみのCOOOOLなモードの私に不可能は無い。
「えっ・・・いや(父さん、オカマ言葉っぽかった)シャワーだけでいいかなって」
シンジが妙に挙動不審だ。あやしい。
763名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/22(金) 21:44:08 ID:???
>>757
バロスwww
764sage:2006/09/28(木) 16:04:40 ID:???
保守
765名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/29(金) 11:11:06 ID:???
暗証番号を打ち込み指紋認識を終えて家の扉は開く。
カシャン 即、全開までスライド。玄関、廊下とその奥のリビング、そしてこちら側もまる見え。
シンジはこの手の扉はなんとなく好きではない、それになんとなく気まずいのだ、父も住んでいるから。
766名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/29(金) 20:26:40 ID:???
驚いたことに、今日はすでにリビングに明かりがともっていた。
「(父さん・・・帰ってたんだ)」
父ゲンドウの帰宅はいつも遅く、シンジが寝静まる前、寝室にこもっている時間になる。
現在の時刻、7時前。
767名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/30(土) 04:36:32 ID:???
恐る恐るリビングを覗くと、父がいつもの顔の前で指を組むポーズでソファーに座っている。
「あ・・・た、ただいま」思わずどもる。
そういえば、父とこの家でまともに顔をあわせたのは自分の引っ越し以来だ。
「・・・」
「今日は早いんだね」
「ああ」
サングラスに手袋、上着は脱いであるが服は着くずしてはいない。仕事中の父とはなんら変わりはない。
「・・・あの」
「シンジ」
「!な、に?」
なんだろう。と、なにかを期待している自分がいる。
父はかたわらの荷物を取り、おもむろに立ち上がった。
768名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/30(土) 04:58:43 ID:???
差し出されたものは、ケースに入ったプラグスーツだった。
「へ?」
「新しいものだ、明日持っていけ」
「・・・う、うん」
どうして父さんがわざわざ、わざわざ持ってきたのだろう。
「腹が空いたな」
「そ・・・それなら僕が・・・作ろうか?」
僕はなにを言っている。
「それには及ばん、外で食う」
やっぱりだ。
「・・・そうだよね」さっきまでの気分が一気に冷めた。
僕はさっきまでは嬉しかったのだろうか。
「いくぞシンジ、支度はできているな」つい、とサングラスを押し上げながら言う。
「へ?!・・・うん」
返事はしたが、僕は呆然と、父が上着を着るさまを見ていた。
ただただ驚いていた。
769名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/30(土) 13:37:16 ID:???
夕食を食べたのは和食レストランだ。
僕は今までで一番多く父と話をした。といっても綾波との会話くらいそっけないものだが。
内容は仕事のことが主だった。が、父から言われた父らしい言葉が一つあった。
「ほら、もっと沢山食ってデカくなれ」
僕は大食いではないが頑張って沢山、父さんと同じ量を食べてしまった。
その夜、僕は初めて父さんにお休みなさいを言った。今日は初めてのことばかりだ。
いや、昔の僕らにはごく当たり前のことだったのだろうか。
だったら今日の父の態度は普通なのだろうか。
昔の僕らは確かにどこかにあった。

翌日。

「ちょっと〜バカシンジ〜なにニヤけてんのお?きもっ」
770名無しが氏んでも代わりがいるもの:2006/09/30(土) 23:47:05 ID:???
>>765-769

乙。
最近バロス展開が多かったがこーゆーのも好き
771名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/01(日) 10:25:20 ID:???
アスカは小脇に新しいプラグスーツを抱えながらいった。アスカが意地の悪いことを言う時の顔もニヤけてるのでは。
「え?笑ってた、僕?」自分の頬を揉んでみる。
「違うわよ、ニヤけてたの。珍しいわね〜」そんな顔、
とアスカは言った。どんな顔だろう。
「そうなの?」
「さぁ?それよりなんかあったの?」
なにかあったとは、夕食のことで、僕はそれで気分がいいらしい。
「ちょっとね、ちょっとだけイイことがあったんだ」
アスカはいかにも、へぇというような顔をして言った。
「あらそ、よかったわね。でもねえ、そんなに都合よくいくばっかじゃないわよ〜この先」
あぁもうこんな時間さきに着替えてくるわ、といって更衣室に入っていった。
「都合よくか・・・」
父のことでなければ、アスカのちょっとした憎まれ口も気にはならないのに。
772名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/01(日) 12:07:29 ID:???
更衣室の中の長椅子に腰掛け、昨日父から貰ったばかりのプラグスーツを鞄から取り出した。
少しヒヤリとする感触。手渡された時はなんとなく温かかった。あれは父さんの体温だ。

アスカの言ったことも気になるが、あれくらい親子としては普通であり、なんら特別なことではない。
悩んでる暇はない。早く着替えなくては。
僕はシャツの第三ボタンまで外し、中のTシャツと一緒に、いっぺんに脱いだ。
773名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/01(日) 23:27:20 ID:???
下も上着と同じように脱ぐ。ズボンと下着と靴下と靴が一緒くたに足下に丸まる。
普段はこのように脱ぎ捨てることはしないのだが、今は時間がない。
シンクロテストに遅れたら、沢山の人に迷惑だ。
プラグスーツに脚を通した時、何かが内腿に触れた。
「ん?」
774名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/02(月) 02:09:10 ID:???
続きは?!
7751:2006/10/02(月) 22:24:42 ID:???
ほんの出来心で建てたスレが、いつの間にかこんなに成長して…
職人さん方、GJ!!
776名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/02(月) 23:17:00 ID:???
>>1
いつから放置したwww
777名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/03(火) 05:25:14 ID:???
たて逃げかよwww
778名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/03(火) 05:28:47 ID:???
今のエヴァ板なんてネタスレばっかじゃんw
779名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/03(火) 22:05:11 ID:???
なんだろうか、内腿に手をすべらせ、そのものを取り払ってみる。
「(なんだゴミか、髪の毛か)・・・」


「シンジく〜ん、どうしたの?シンクロ率下がってたわ。体調は悪くないわね」
ミサトさんがため息がてらに言う。
「あっら〜?シンジくーんってば、さっきまではご機嫌だったじゃない、どうかしたの?」
今はアスカの機嫌のほうがよさそうだ。
「・・・碇司令よ」
綾波の言葉と同時に父がやって来た。

「アッー!」
僕は思わず叫んだ。全ての事柄がリンクしたのだ。
わざわざ家で手渡された妙に温いプラグスーツ。
新しいはずなのになぜか少し緩いそれ。
そして、その中には僕には無いはずの、ちぢれた毛。
父さん。
『もっと沢山食ってデカくなれ』
父さん、だいぶキツかったの?
あぁ、アスカの言ってたことが、本当だった。
あぁ、父さんがわからない。本当に。


数週間前。

「碇、あれは不味いぞ」
「何がだ」
780名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/05(木) 09:41:29 ID:???
着たのかw
781名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/05(木) 20:56:00 ID:UC1oM6J2
ゲンドゥ
782名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/05(木) 21:11:33 ID:???
38さん、放置プレイですか?ハァハァ
じゃなくてw、忙しいのかなぁ。
783名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/06(金) 22:33:50 ID:???
初めて読んで、すばらしい文才に
ただただGJ!!!の嵐。
たまらん、職人さんGJ!!!
楽しみにしているよ。
784ロメオ ◆rHza36ec2U :2006/10/07(土) 03:42:50 ID:???
38さん途中で投げ出したらいけないよー。
やっぱ一気に書き上げないとな。
785名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/07(土) 11:34:14 ID:???
>>784うじゃい
78638中の人:2006/10/09(月) 02:32:59 ID:???
お久しぶりです。すいませんスッカリ放置プレイ中…。
いや、投げ出してない。本当です。

ちょっと最近環境が変わりまして。
来週すごい大事な試験あるんですよ。なので今しばらくは
そちらに専念させていただいて、それから続きかきます。
亀の呪いがかかってるんで、ちょっと時間かかるだろうけど。

なのですいませんお待たせしてしまうだろうけど、ちょうど今GJな話が投下されてるようなので
いいかな、なんて思ってみたりwww
そっちの方は試験終わってから一気読みします。楽しみだ!

つかロメお久しぶり〜!
何か本当に終わったら居なくなっちゃったから少し寂しかったよー。
でもそこがまたいい。元気そうでよかった。有難うね。
787名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/09(月) 09:18:29 ID:???
>>38

楽しみに待っとるよー
788名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/10(火) 02:06:33 ID:???
キタキタ!生きてたのかw
安心したよ。
試験頑張ってくれ、
心から応援する。
そして待ってるよ。
789名無しが氏んでも代わりがいるもの:2006/10/11(水) 00:42:33 ID:???
よーしじゃあ
これからも定期的に覗くかww

まってるよ〜
790名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/11(水) 05:18:23 ID:???
試験受かるといいですね!
応援しています。
791名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/15(日) 06:23:06 ID:???
保守
792名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/16(月) 17:43:08 ID:???
ゲンドウ「夢だけど!」

冬月「夢じゃなかったー!」

キール「ワッショーイ!」
793名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 01:24:29 ID:???
キールお茶目だな
794名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/22(日) 03:43:00 ID:???
795名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/24(火) 20:53:46 ID:???
ほす
796名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/27(金) 19:01:38 ID:???
保守
797名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/30(月) 03:38:21 ID:???
しょうがないから保守しといてあげるわ!
798名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/02(木) 19:53:21 ID:???
保守
799名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/05(日) 00:14:42 ID:???
800名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/08(水) 14:51:04 ID:???
あげ
801名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/08(水) 15:55:20 ID:???
ヤオイ
802名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/09(木) 02:31:07 ID:???
>>801
早くケツ出せ
保守
803名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 13:55:16 ID:???
ほす
804名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 16:32:21 ID:jSdFXnZx
シンジ、もう私が風呂に入った後のお湯を捨てたり、洗濯物を私のと別にするのは
止めろ。お前は思春期の娘ではないはずだ。
805名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 18:45:20 ID:???
シンジ「うるさいわね!!お父さんのと一緒に洗濯すると変なバイキンが付く気がするのよ!!」
806名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 23:47:31 ID:ZssKkqzY
ほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおしゅ
807名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/11(土) 10:44:04 ID:???
オレ初めてこんなに泣けるスレ見た。
中の人頼みます、続きを、続きをおおおお!!!
808:2006/11/11(土) 23:38:01 ID:???
809:2006/11/11(土) 23:53:17 ID:???
810名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/12(日) 04:10:59 ID:???
父さん、座って司令ポーズとってる暇があったら、いい加減に空調設備直してよ
暑くて暴走しそうなんだけど
ほら、綾波が暴走した…
811名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/15(水) 15:13:50 ID:???
そして保守
812名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/18(土) 19:17:40 ID:???
さらに保守
813名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/21(火) 03:02:22 ID:???
まめに保守
814名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/23(木) 12:10:08 ID:???
もっと保守
815名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/27(月) 00:38:30 ID:???
たまに保守
816名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/28(火) 17:59:32 ID:???
いつも保守
817名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/30(木) 22:35:13 ID:???
そして保守
818名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/02(土) 23:24:13 ID:???
ほす
819名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/06(水) 10:47:38 ID:???
保守
820名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/08(金) 18:34:32 ID:???
学校を終え、帰宅するシンジ
「ただいまー。」
返事がない・・・、
「靴はあるのに・・・。」
シンジの父、ゲンドウは基本的に無愛想で、人付き合いが悪そうな人間のように見えるが、いつもシンジが帰ってくると、「お帰り」と、これまた無愛想な、しかしどこか嬉しそうな感じに返事をしてくれた。
しかし今日はその返事がない、
どうしたんだろう…
シンジは靴を脱ぎ、手洗い、うがいをすませ、テレビでも見ようと居間へ向かおうとした。
しかしシンジはある事に気付いた、風呂に誰かがいる。浴槽の湯が揺れるような音がしたので、シンジは、ゲンドウかも知れないと思い
「父さん?」
と声を掛けてみたが、反応はない。そもそも学校から帰ってくる時間帯に風呂に入ってるなんて、まず無い、気のせいかな。と考えたが、シンジはもう一度声を掛けてみた、
「父さん?・・・いるの?背中流そっか?」
・・・やはり返事は無い。
中を確認すれば良かったのだが、もしいた場合、気まずくなると思ったので
さっきの音は・・・やっぱり気のせいかな?と思い、シンジは居間へ向かった。そして居間へのドアのノブを回そうとした。
だが次の瞬間!!
パチッ!
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
突然の不意打ちにシンジはかなり驚いた、どの位驚いたかと言うと、朝目覚めると、ゲンドウが裸で隣に寝てたぐらいに驚いた。
シンジは何とか気を落ち着かせ
「何だ、静電気か。」と言い、今度は大丈夫!と気を取り直し、再度、ドアノブを、あくまで慎重に触れ、回した。
そして引いた、このドアは手前に引いて開けるドアだからだ。
ガチャ、キィー
いつものドアの開く音は、今のシンジにとって、何故かとても不気味に感じられた、
ドアを開き、そこで信次が目にしたのは!!!
「やあ・・・帰っていたのか、シンジ。」
821名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/10(日) 23:44:03 ID:???
 
822名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/11(月) 09:26:23 ID:???
全力で保守
823名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/13(水) 11:36:52 ID:???
小力で保守
824名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 22:20:04 ID:???
ほしゅぅぅぅぅぅ
825名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/18(月) 16:33:50 ID:???
まだ?
826名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/19(火) 02:49:28 ID:???
>>375の加持さん、もろFF6のエドガーじゃないか。
827名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/21(木) 17:10:50 ID:???
まーつーわ
828名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/22(金) 01:34:14 ID:???
わたっしまーつーわ
829名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/23(土) 03:36:07 ID:???
俺も保守
830名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/24(日) 18:45:55 ID:+8TQFIIZ
保守
831名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/26(火) 08:53:22 ID:???
いつまでもまーつーわ。
832名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/26(火) 22:57:48 ID:???
てれっててれてれてれてーれれててれってー
833名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/31(日) 10:46:28 ID:8sIR8dpr
[sage]
保守
834名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/03(水) 14:38:28 ID:???
もまいらあけおめ。そしてほす
835名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/05(金) 15:19:02 ID:???
遅くなったがあけおめほす
83638:2007/01/05(金) 18:54:53 ID:???
閃光。
おびただしい光と喧騒。
部屋の隅で震える子供。

あれは僕だ。まだ何も分からなかった頃の僕。そして父さん。
父さんに抱き上げられた途端に、泣きじゃくる僕。
だけどそれを見つめる父さんの目は誰も映していなかった。
そう、誰も。
僕の姿さえ、そこにはなかった。

目の前が光に包まれたかと思うと、急に目の前の風景が全然違うものに変わる。
薄暗い部屋の中、ただ呆然と椅子に腰掛ける父さんの姿。
それに誰かが声をかける。
女の人だ。見たことがない人。だけどどこかで見た覚えのあるような気がする。
「気落ちなさらずと言っても無理ですわね……所長」
「……赤木君か」
誰も見ていない瞳でそう呟くと、父さんは再び空を見つめ続ける。女の人はそれを当然とも言いたげに
頷いていた。

『赤木君』

父さんは確かに彼女の事をそう呼んでいた。
僕が知っているその名前の持ち主は、目の前の女の人と少しだけ似ている。
その彼女が、父さんに近づいて。
僕は目の前の情景にただ目を見開くしかなかった。
83738:2007/01/05(金) 18:55:59 ID:???
これは一体なんだ。
近づいていく二人の顔、唇、身体。
交じり合う吐息と声。
目の前で行われているこれは一体何なのだろう。
知らないわけじゃない。確かに知識としては知っている。
だけど目の前のそれは僕にとっては信じがたく、受け入れがたいものだった。
母さんがいなくなったばかりなのに。
それなのにどうしてこんな事が出来るんだろう?

疑問よりも不快感が心を支配して、僕の身体に悪寒が走る。
僕は父さんのこんな姿、見たくはない。
だけど僕のそんな想いが届くはずもなく、二人はただその行為に没頭しているだけだ。
父さんは母さんの事が好きなんじゃなかったの?
僕には全然判らない。この行為の意味も、父さんの気持ちも。
『……気持ち悪い』
急に目の前の父さんが自分の知っている存在とは全く違ったものに見えてきて、だけどそんな風に
思ってまう自分が信じられなくて。
僕にはその理由が全く分からなく、だからこそ、目の前の行為が酷く汚らしいものに見えて仕方がなかった。
83838:2007/01/05(金) 18:58:43 ID:???
『ねえシンジ、キス…しよっか』
そんな僕の目の前に、突如としてあの時のアスカの姿が現れる。
潤んだ瞳。哀しそうなその表情。
何とかして力づけてあげたい。
……だけど。
「嫌だ!」
僕は考えるより先に彼女の身体を引き剥がしていた。
こんなのは嫌だ。
どうしてこんな事しなきゃいけないんだよ?
僕はこんなこと望んじゃいない。好きでもない人とこんな事したくない!
だけど目の前のアスカはそんな僕の姿を、冷たい瞳でただ黙って見つめてくるだけだ。

『父親の知らない姿を見てショックなのかい?』
どこからか知らない声がする。僕はその声に軽く首を振った。
そうじゃない。
僕は父さんが何を考えているのかわからなくて、何故こんな事をしているのか分からなくて。
それが嫌だった。
『分かるはずなんてないわ!アンタにアタシの何が分かるの?』
アスカが僕を詰る声が聞こえる。
分からないよ。
だってアスカは何も言わないもの。何も言わずに分かってくれなんて、出来るはずない。
83938:2007/01/05(金) 19:01:30 ID:???
『司令はあなたに何もかも話してくれたの?』

今度は綾波の声。
何もかもじゃないかもしれないけれど、昔のことを教えてくれた。母さんの事を誰よりも大事に思って
いたのだということも。
だからこそ僕は、父さんのしたことがよく分からない。
分からないから、痛いんだ。

『司令はあなたじゃないもの。わたしはわたし、あなたじゃない』

そんな事分かってる。父さんが僕と違う人間だなんて、当たり前じゃないか。
父さんの事は好きだけれど、ヒゲメガネは僕にはまだ早い。つかなりたくない。
僕は違う存在である父さんの事が知りたかった。分かりたかった。
……そうできると思っていた。
だけど、僕は父さんの考えている事が未だ、よく分かっていない。
それとも分かり合うことはできないの?
そうしたいと願う事は、無駄なのかな。
だから痛いと思うのかな?
84038:2007/01/05(金) 19:02:16 ID:???
『私と一つにならない?』
『私の心をあなたにも分けてあげる。痛いでしょう?心が痛いでしょう?』

僕の心に、あの時の痛い想いが流れ込んでくる。
心臓がちりちりと痛い。
ぽっかりと空いた隙間に心が堕ちていってしまいそうな焦燥感に追い詰められるようで、僕はただ
その場で身震いするしかなかった。

『痛い?いいえ……これは、寂しい……』

そしてあの時と同じ綾波の言葉が僕に重なると同時に、再び父さんの姿が目の前に現れていた。
父さんの背中は丸く縮こまっていて、あんなに大きく見えた背中が今は酷く小さく見える。

『寂しいから求めるの』
『誰かと一つになりたい』
『他人の中でしか、自分を見つけられないから』
『でも自分を見つければまた、寂しくなる』
『それは業』
『生まれながらにして人が持つ原罪』
『誰もその痛みから逃れる事は出来はしない』

『……だから必要なのだ。補完が』

最後に聞こえた声は誰のものだったのか。
分からないまま、僕は暗い部屋の中で目を、開けた。
84138 幕間。ゲンドウの独り言:2007/01/05(金) 19:05:37 ID:???
夜が明けた。

シンジを見失ってから酷く永い時が過ぎたように感じるが、実際はほんの数時間の出来事だ。
終焉のときは近い。
時計の針は戻せぬが、自らの手で進める事は出来る。
だがそれは早めてはならぬものだった。それを悔いる時間も、もうない。
老人達がどのような手に出るのか、私には正直予想も出来ぬ。だが。

『ただいま、父さん』

あの時の声が蘇る。
シンジは帰って来た。あの時も私の元に。もう絶望しきっていた私の元に。
あの時もこんな朝日が昇っていた。
だから、という訳ではない。
だが私はもう決してあんな思いは御免だ。その為に講じられる手段を全て尽くす。
ただ、それだけの事だ。

あの時と同じ朝日はただ煌いている。
84238 幕間。ゲンドウの独り言:2007/01/05(金) 19:08:11 ID:???
「司令」
と、私に声をかけるものがいる。
振り向くとそこには、見慣れた少女の姿。
「……レイか」
こんな早朝に実験の予定はない。私は不審な顔をしていたのだろう、レイは少しだけ困った様な顔をして
私を見つめ返した。
「どうした」
訊ねると、少しだけ彼女は表情を曇らせる。

「惣流さんの入院手続きに来ました」
レイの言葉に私は少しだけ困惑する。
惣流……セカンドチルドレンの事か。シンジが気に掛けていた娘だな。
しかし先程までやたら元気に振舞って、シンジを呼び出して食事まで作らせていたではないか。
私の疑問が伝わったかのようにレイは言葉を続ける。
「惣流さんはエヴァが動かせなくなったことを気に病んでいました。自分の存在意義がなくなったように
 感じて。だから、もういいと言ったの。だから彼女は今眠っています。……多分、これからもずっと」

なるほど、あの鼻っ柱の強そうなあの娘の事、非常にありうる話だ。
だがそれを私に報告してどうなるというのだ。私は今それどころではない。
「碇君がこの事知ったら、悲しみます」
そうだろうな。シンジはやけにあの娘を気に掛けていた。

……いやちょっとまて。
84338 幕間。ゲンドウの独り言:2007/01/05(金) 19:09:13 ID:???
「レイ、セカンドチルドレンを叩き起こせ」

私は慌ててレイにそう命令する。だが彼女の返事は、いつものそれとは違っていた。
「嫌です」
きっぱりとそう言い放ち、私を見つめ返す。
今までのレイにはなかった反応に、私は酷く戸惑っていた。
「彼女がそう望んでいます。私はそれを手伝いました。……だから駄目です」
「私に背くというのか、レイ」

私の言葉に彼女は酷く悲しそうな目で私を見つめ返し、そして呟く。
「私はあなたの人形じゃない」
それだけ言うと踵を返し、彼女は私を尻目に立ち去っていく。
私はただそれを呆然と見守っているだけだった。

……正直そこまで言われるほどの要求をした覚えはないのだが。

一番うまくいっていたはずのレイとの関係ですらこれか。
私はがっくりと肩を落とし、空を見つめる。
シンジ、どうやらこの世界は私にとって生きにくいことは変わらぬようだ。
だがそれでも。

「私はどうかしているな」

悪くない、と思ってしまう自分に気付いて、私は苦笑いをした。
844名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/06(土) 00:47:35 ID:/LQrCpJo
おぉぉぉキター!
お帰り。そして乙!
845名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/06(土) 07:30:13 ID:???
神が戻ってキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!!!!

お帰りなさい!
さっそく読ませてもらったけど、相変わらず神。
846名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/08(月) 03:49:11 ID:???
待ってました!
847名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/11(木) 09:41:52 ID:???
おかえりー。
物語も佳境に入りつつ中の人の試験の結果も気になるが
とりあえずGJ!
848名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/11(木) 16:43:00 ID:???
GJ!待ってました!!
最初から読み直します
849名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/12(金) 20:24:53 ID:???
あれ……
閉鎖したら……
続き……




orz
85038中の人:2007/01/13(土) 02:23:50 ID:???
なんか諸説色々あるようで、一体どこら辺を信じていいのか分からないところではありますが。
まあ自分の書いてる物に関しては続きは読める形で提供できますよ、と。

そうでなくとも、もーすぐ900だし。
どっちにしてもまとめサイトなり何なりてめーで作るがよしでしょうかね。
でもまとめサイト自体もちょっと微妙な動きを見せてるようなので、まとめるとしたら
自分のものだけになるのかな?

あ、試験は無事受かりましたです。御心配頂いた方有難うございます。
続きはやはり遅くなるでしょうけど、ぼちぼち投下しますのでよろしくです。
851名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/13(土) 04:32:16 ID:???
閉鎖なんかしないもん!
閉鎖しないもん!
へ…閉鎖なんか…



ウッ(´;ω;`)
852名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/13(土) 07:24:45 ID:???
……(´・ω・`)(´;ω;`)ホロッ
あなたの小説が大好きです。
続き、読めるということで嬉しい。
ありがとう。
853名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/13(土) 07:26:34 ID:???
>>852
>>850の中の人 へね
854名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 01:41:44 ID:???
855名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/19(金) 16:36:21 ID:???
ほすあげ
856名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/21(日) 02:01:46 ID:???
明日バイトだってのに夜中の12時から2時間かけて読んじまった。
38氏 応援してます、頑張って下さい。
857名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/25(木) 10:12:40 ID:???
age
858名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/27(土) 10:42:00 ID:???
85938中の人:2007/01/27(土) 17:19:50 ID:???
一応作ってみましたよ。
アクセシビリティには配慮したつもりだけど、不具合とか表示崩れあったら
御連絡くださいな。

http://x7net.com/~ifamily/

つかタイトル付けるの苦手なんで参りましたw
あと意外にファイル多くてびっくりだ。
誰だこんなクソ長ぇ文章書いたやつは。手前だ。
などと一人ツッコミしつつちまちま作ってました。

世の中のまとめサイト作ってる人は偉いなあ。
860名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/27(土) 17:58:10 ID:???
GJ!いいね。
デザインとかなんか柔らかくて好み
861名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/27(土) 19:35:15 ID:???
>>859
キタ――ヽ(・∀・)ノ――!!!!むしろ、キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
ありがたく読ませていただきます。
862名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/29(月) 02:13:18 ID:???
gj

これでゆっくり読み返せますありがとう
863名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/29(月) 04:29:15 ID:EBRvEQ/o
携帯から読めたー。
中の人GJ!
864名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/29(月) 23:50:59 ID:???
僕と父さんの同居生活が始まった。父さんは株をやり始めていた。
シンジ「と、父さん。今日の夕飯外食しない?」
ゲンドウ「悪いが取引がある。」
シンジ「で、でも取引の時間終わってるじゃないか。」
ゲンドウ「時計の針は元には戻らない。が私は戻せる。」
そう言うと父さんはおもむろにパソコンの表示時間を戻した。
ゲンドウ「何故動かない?!私を受け入れないのか!」
父さんは一晩中「もう一度最初からやり直せ!」と叫んでいた。
次の日起きると父さんはもうパソコンに向かっていた。しかし画面は有料エロサイトの請求メールで埋まっていた。
ゲンドウ「ただユイに会いたかっただけだったのに。その報いがこの有様か。すまなかったなシンジ。」
シンジ「駄目だよ父さん。みんなに言わせてもらうよ。」
その途端父は銃を僕に向けて、「碇シンジ君本当に〇△★◇。」
シンジ「裏切ったな!」
ゲンドウ「全てはパソコンの中だ。」
865名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/30(火) 21:14:56 ID:???
864がなにげに面白い。
866名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/30(火) 23:46:11 ID:???
GJ!
867名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/31(水) 00:56:13 ID:???
僕はこのスレに会うために生まれてきたのかもしれない
868名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/31(水) 02:36:59 ID:???
一気に読みふけってしまった。
学園エヴァとは違う、あの世界での幸せの形を見た気がして何だか救われた。特にチルドレンが食卓を囲む様子にじんわりと涙が…(つД`)

職人さんGJです!本当にありがとう!
869名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/31(水) 04:56:03 ID:???
>859
最後まで見れない・・・・
870名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/31(水) 07:58:02 ID:???
>>869
このスレでも投下されてないから、まとめサイトで続きが見れないのは当たり前。
871名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/31(水) 18:10:08 ID:???
続きがめちゃくちゃ気になるじゃないか!
872名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/03(土) 16:26:48 ID:???
873名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/07(水) 20:24:17 ID:???
あげ
874名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/07(水) 22:54:33 ID:ho7ocRlT
シンジ「父さん、そろそろ夕飯にしないかな?」

ゲンドウ「・・・」

シンジ「ねぇ、聞いてるの?父さん?」

ゲンドウ「・・・」

シンジ「父さん。父さんってば。父さ・・・!!」

シンジ「し、死んでる・・・。」














ゲンドウ「引っ掛かったな。おまえもまだまだ子供だな。」

シンジ「と、父さん。生きてたんだ・・・。」
875名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/08(木) 01:30:10 ID:???
でも、その後すぐに死んだんだ…
僕を残して…。
876名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/08(木) 19:55:01 ID:???
>>874
なんだこの妙に可愛い親子はwwwwww
877名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/09(金) 18:12:24 ID:???
かつて私は父に尋ねたことがある。
「人生とは何か」
そして父は呟くようにこう言った。
「儚いものだ…」
幼い頃の私にはその意味がよくわからなかった。
「お前も好きな人や家族を持てばわかるようになるさ」
父が死に、長い月日が経った。私もまた父親という立場になり、かつて父が言ったことが少しだがわかるようになった。
人生という名の私の物語。それは残酷な現実に過ぎない。
私は愛する人を失った。
いや、愛する人は姿を変えて私の前に佇んでいる。
紫色の巨人。人はそれをエヴァと呼ぶ。馬鹿馬鹿しい。
アレはユイだ。だがそんなことを言っても誰に理解されるわけでもない。
皮肉なものだ。今の私は、護れなかったアレに護られて生きている。

「儚い」

そんなロマンティックな言葉で人生は語れないよ。父さん。
878名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/09(金) 23:13:11 ID:???
ゲンドウもやはり人の子だったんだな……(´・ω・`)

GJ!!
879名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/10(土) 14:39:48 ID:???
ユイが唸り声を上げ、シンジが嗚咽を洩らす。
愛する者が変わり果てていく中で、
私は何を求めているのか。
ユイが戻ってこないことなど初めからわかっている。
私は認めたくないのだ。過去を。現実を。自分の弱さを。

「父さん」
息子は私をこう呼ぶ。
幼い頃の私と同じように。
だがそう呼ばれる度に、
私は何かに憑かれたような戦慄すら感じる。
何か許されないことをしているような、そんな感覚だ。


「父さん」か。

やはりこの言葉は私には重すぎるな。
88038中の人:2007/02/11(日) 01:25:24 ID:???
ナ〜イス>>877&879!

凄い好きな雰囲気。

最近本当に最近忙しいです。毎日帰るのが日付かわるギリギリ…。
881名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/11(日) 23:15:08 ID:???
>>38
がんがれ、でも体は大切に…
いつか時間ができたら、また投下してくれ。それまで待ってるZE
882877中の人:2007/02/12(月) 23:16:57 ID:???
>>880
38氏に誉めてもらえるとは…
ちょっとゲンドウの内面を考えてみました。
ゲンドウに対する「父さん」の存在が劇中では全く語られませんでしたが、
もしいたとしたらどんな親ですかねw
やっぱりゲンドウのようなツンデ…な気がします
883名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/21(水) 20:35:15 ID:???
ほしゅ
884名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/22(木) 01:15:29 ID:???
保守
885名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/22(木) 03:31:50 ID:???
かなり遅れてこのスレに来たが…すごいな。
カプ無しの物語でここまで引き込まれたのは初めてだ。
緩急自在の38氏誠に乙!!
886名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/26(月) 19:51:24 ID:???
保守
887名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/02(金) 18:23:32 ID:???
守る…
888名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/06(火) 03:08:02 ID:???
保守
889名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/08(木) 15:14:53 ID:???
保守あげ
890名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/10(土) 20:40:27 ID:???
ほす
891名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/14(水) 08:03:42 ID:LsCY5ZKN
ほしゅ
892名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/17(土) 17:30:33 ID:???
人類保守計画
893名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/17(土) 19:26:56 ID:???
age
894名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/17(土) 19:31:06 ID:???
間違えたww
ageてなかった。
895名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/17(土) 19:54:01 ID:???
このスレを見てると、みんなシンジとゲンドウには仲良くしてほしいんだね
最近のエヴァオタも捨てたもんじゃねぇや
896名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/22(木) 01:38:45 ID:???
inファミレス

ゲンドウ「チョコレートパフェ一つ」
シンジ『好きになれるかも知れない!!』
897名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/22(木) 21:34:19 ID:???
チョコパ到着
ウエイトレス「チョコレートパフェのお客様?」

ゲンドウ「私だ」
シンジ「…お前には失望した」
898名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/24(土) 22:10:15 ID:???
「父さんって意外に料理上手なんだね。」
「ふっ、私を誰だと思っている。」
「碇ゲドウ。」
「なぜ一文字削る。」
「それで?」
「ユイとは家事を分担していた。私は料理担当だったのだ。
独身時代から得意だったからな。」
「そうなんだ。」
「料理が得意だと、女にモテたからな。」
(…今度母さんの墓参りの時に報告しよう。また父さんうなされるだろうな)
899名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/27(火) 23:47:22 ID:???
保守
900名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/31(土) 18:43:45 ID:???
保守あげ
901名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/31(土) 20:19:59 ID:LaerQa9o
ゴーストうんこ:出たと思って下を見ると、便器には落ちてない。でも紙にはちゃんと付くうんこ。
クリーンうんこ:出たと思って下を見ると、確かに出ている。でも紙はよごれないうんこ。
ウェットうんこ:50回ふいても、まだ付いている気がするうんこ。万一のことを考えて、
         パンツにトイレットペーパーをあてがってトイレを出る。
セカンドうんこ:終わってパンツを上げかけたところで、再びもよおすうんこ。試してみると、確かにまだ出る。
ヘビーうんこ:食べ過ぎ飲み過ぎの翌日のうんこ。重くて流れにくい。
ロケットうんこ:すごい速度で出てくるので、パンツをすばやくおろさなくてはならない、そんなうんこ。
パワーうんこ:勢いがあるので、水がピチョンとはねかえってくるうんこ。広範囲をふかなくてはならない。
リキッドうんこ:液状で、一般に痛みと音がすさまじいうんこ。3日たっても痛いことがある。
ショッキングうんこ:においが強烈なため、便後1時間は誰もそのトイレに入れない、そんなうんこ。
アフターハネムーンうんこ:すぐそばに他の人がいても、平気で音とともに出せるようになる、そんなうんこ。
ボイスうんこ:あまりにも固くて切れないので、出すのにかけ声が必要なうんこ。
ブレイクうんこ:量が多すぎるため、休憩をとっていったん水を流さないとあふれてしまううんこ。
バック・トゥ・ネイチャーうんこ:森の中や田舎のあぜ道、時にはビルの地下などにナチュラルにしてあるうんこ。
インポッシブルうんこ:絶対にトイレに行けない状況のときにもよおすうんこ。すべてをあきらめるか、バック・トゥ・ネイチャーうんこしかない。
エアーうんこ:出そうな気はするのに、何回やっても屁しか出てこない仮のうんこ。
ノーエアーうんこ:屁だと思って軽く力を入れたら、出てきてしまったうんこ。 ←ここ
            多くの場合、取り返しのつかないことになる
902901:2007/03/31(土) 20:20:54 ID:LaerQa9o
すまん、誤爆だ
903名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/31(土) 20:40:15 ID:???
なつかしいコピペだなw
904名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/31(土) 20:41:20 ID:KEjZL7yO
>>902
「ふっ問題ない!」
905名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/02(月) 21:55:04 ID:???
レイ 「・・・シンジ君」
     レイの声が聞こえた気がして目を覚ますと枕元にレイが座っている
シンジ「あれ?レイ?」
レイ 「・・・おはよう・・シンジ君」
シンジ「おはよう、朝からどうしたの?」
レイ 「・・シンジ君の事・・私・・シンジって呼んでも良い?」
シンジ「ドキッ!いっ良いよ、モチロン」
レイ 「・・・うれしい・・・」
シンジ「そう?あは あはっあはははは」
      ガチャン ドアの開く音
ゲンドウ「起きたか?シンジ。今日からお前の新しいお母さんのレイだ、仲良くするように」
906 ◆LRvRIPAn.s :2007/04/03(火) 22:44:12 ID:???
「冬月。何故、ここにいる」
「お前こそ、自分の家の玄関前で何してるんだ?鍵でも忘れたか」
「……考え事だ」

ふと、耳を澄ましてみる冬月。聞けば稚拙ではあるものの低音の美しい調べが聞こえてくる。
「そうか。チェロをやるんだったな、シンジ君は」
「……」
「中に入って聞いてやってはどうだ?」
そう、ニヤリと笑っていう冬月。
「いや、その」
何か言いかけるゲンドウ。しかし、からかわれてグチグチと言いごまかす男ではない。
「俺が居るとあいつは弾き間違える。鑑賞に堪えん。だからここで聞いている」
「そうか……」
ふっと冬月の顔が優しい笑顔に変わる。少々あわれむ様子でもあるのだが。

「碇、ではまた明日」
「その……冬月」
「判っている。NERVはお前の怖面でもっている。誰にも言わんよ」
「……ふん」
吐き捨てるゲンドウ。視線をそらすその仕草は、なんだか不良少年が照れているかのよう。
振り返り、家路につく冬月。しかし、思わず溜息をついて夜空を見上げずにはいられない。

(さしずめ、これが君の言っていた可愛いところと言う訳か……君がいればギクシャクしないで済んだだろうに)
907名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 00:41:12 ID:???
908名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 00:42:11 ID:???
文字入れるの忘れた。>>906
GJ
909名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 12:59:34 ID:???
>>691でアスカがシンジに「ダンケ」と言っていますが、どういう意味なんでしょうか?気になって仕方ありません。
誰か教えてくださいまし。
910名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 13:08:27 ID:???
>>909
ドイツ語でのありがとうという意味
911age:2007/04/06(金) 14:15:32 ID:???
age
912名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 15:55:41 ID:???
>>910
ありがとうございます、これですっきりしました。
913名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 17:48:21 ID:???
あの「闇の中で」で言った「げっふん」の意味の方が知りたいんだが。
914名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 18:04:26 ID:???
どこのこと?レス番は?
915名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 19:15:51 ID:???
>>914
むむ、すまん。
アニメみて疑問に思っただけだ。スレ違いだから取り下げる。

時に、そろそろ次スレ?
916名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 19:45:22 ID:???
>>980ぐらいでいいんじゃないかな
917名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 20:08:53 ID:???
ゲーエン!!!だろ
918名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 20:36:55 ID:???
気になって思わずアニメ見返したけど、やっぱりどこのことか分かんないぜ?
ゲンドウとかがエヴァを起動してるときの掛け声の事なの?
919名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 21:30:36 ID:???
>>918
エヴァ3機に乗り込んで作戦会議した後、落ちたライフルを取りに行く前。
作戦開始の瞬間。
920名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 21:40:47 ID:???
gehen ドイツ語で「行く」。だから、英語で言うところの「GO!」だと思えばいい。
921名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 22:00:06 ID:???
あそこか!よく気付いたっつか聞き取れたなw
そしてためになるなあこのスレ。
ドイツ語はグーテンモルゲンぐらいしかわかんないから悩んだよ。
「バームクーヘン」よりはマシかなと思いつつ似たようなものかな。
922913:2007/04/06(金) 22:59:59 ID:???
教えてくれてありがと。そしてスレ汚しスマンカッタ
92338 リツコの独り言:2007/04/07(土) 22:49:37 ID:???
「そうなの……。仕方がないわ、猫にも寿命はあるもの。……泣かないでおばあちゃん。
 私も暇を見つけてそっちに帰るから」
受話器を置いて私はほうと溜息をつく。

猫が死んだ。

もうずっと構っていなかったけど、こんなにあっさりといなくなってしまうものなのね。
考えていると、滅入ってくる。
私はそれを振り払うようにドグマのあの部屋に向かった。
仕事をしていれば。あの人の役に立っていれば、この感情から逃れられる。
私は足早に彼女が待つあの部屋に向かった。
そこは私の存在意義の、証明だった。

「あなたが碇司令の命令を拒否するなんて、珍しい事もあるものね」
注射針を彼女の腕に刺しながら意外そうに呟く私に、レイは自分でも意外そうな表情で
こくりと頷いて見せる。
「絆……」
それからぽそりと呟かれた言葉に、私は何のことか分からず聞き返してしまう。すると
彼女はそのまま誰にともなく言葉を続けた。
92438 リツコの独り言:2007/04/07(土) 22:52:53 ID:???
「あの人と私を繋ぐ絆。みんなとの絆。それがあるから、私は私でいられた」
あくまでも無表情でそう呟くレイの姿に私は少し畏れのような感情を抱き、慌ててそれを
振り払うように頭を振る。しかしそんな私の様子も、彼女には見えていないかのよう。
「……傷ついた人がいるの。私は助けたかったのに、あの人との絆が彼女を傷つけていったの。
 これからも多分傷つけるの。だから、もういいと、言ったの」
うわ言のようにそう呟くレイ。彼女……アスカのことね。そんなに仲良くなるなんて、私にとっても
碇指令にとっても予想外だったわ。

「あの人が見ているのは私をつくるかたちと、役割だけ。でも、彼女は違った」
だから碇司令に背いた?
そんなこと、分かりきっている事なのにね。
「私は私を見つけられたの。彼女が、見つけてくれたの。……でもあなたには誰がいるの?」
突然彼女の瞳が私を映す。
鏡のようなその瞳のまま、レイは私に向かって問いかけてきた。
「あなた、誰?」
感情のない声音は私の心を揺さぶり、追い詰めていくよう。それでも尚、彼女はその問いを
止めようとはしなかった。

 あなた、誰?
 あなた、誰?
 あなた、だれ?
 あなた、だれ?
 アナタ、ダレ?
 誰?誰?誰?だれ?だれ?ダレ?
92538 リツコの独り言:2007/04/07(土) 22:54:56 ID:???

「やめなさい!!」
気がつくと私は夢中でレイの首に手をかけていた。
ただでさえ白い肌が圧力によって青白く染まる。その事に私ははっとして慌てて手を振り解いた。
「あなたは私の協力がなければ、一日だって生きられはしないの。その事を忘れないで」
「……はい」
そう言って私は彼女を置いて部屋を出る。
なるべく、レイの姿が目に入らないようにそっぽを向いて。

『あなた、誰?』

だけど頭に繰り返される問いは、私の心を追い詰めていくかのようにただ繰り返されて。
私は扉を閉めてからも、夢中で頭を振る。

何故だか私は腕の中に、もういなくなってしまったあの子の柔らかいぬくもりを抱きたくて
仕方がなかった。
92638:2007/04/07(土) 22:57:12 ID:???
ここはどこだろう。

僕は真っ暗闇の中、目を凝らしながらきょろきょろと辺りを見回した。
辺りには何も無い。僕の服もない。てかいつの間にやらマッパの僕。
目が覚めたら見知らぬところにいて、しかも服を脱がされてるという状況に僕は明らかな
犯罪の香りを感じ、辺りをより慎重に観察する。
すると何も無いと思っていた空間に自分を取り囲む妙な四角い物体を発見し、その大きさに
思わず僕は天井を見上げた。

『ようやくお目覚めかね、サードチルドレン』
『まったく、碇の息子だけあって人を待たせるのが殊のほか好みのようだな。迷惑な事だ』
『左様、君達と違って我らは暇ではないのだよ』

その瞬間、四角い物体に赤い文字のようなものが浮かび、同時にそんな言葉が僕に向かって
降りかかる。
勝手に人を訳の分からない場所に連れてきた挙句、いたいけな青少年の服を脱がすとかいう
変態行為に及んでおいて、何でこっちが責められなければならないのか僕にはさっぱり
意味が判らない。

普通に呼んでくれりゃ、こっちだって時間通りに現れますが何か。

心の中でぶつぶつと文句を言う僕にお構い無しに、その声は僕に向かって次々に質問を
浴びせかけてくる。
92738:2007/04/07(土) 22:59:09 ID:???
『第拾六と拾伍の使徒、その何れもが君に…いや人類に積極的な接触を試みた』
『初号機凍結の命を破ってまで、君はそれに応じた』
『それも碇の描いたシナリオの一部かね』
『我らの意思に背いて、あの男は新たなシナリオを描こうとしている』
『曲がり角でパンを咥えた美少女にぶつかってパンツがチラリというシナリオだ』
『我らに背いた罪は重い。その手駒である君も同じだ』

とりあえず僕は聖徳太子じゃないんで、いっぺんに喋るのやめてください。つか何か変なの
混じってませんでしたか。
などと心の中で突っ込んでいるうちに、僕を取り囲む四角い板の中の人たちは何だか勝手に
盛り上がり始めているようだ。

『我らの希望は既に具象化されている』
『だが、その前にパンドラの箱を開けようとするものがいる』
『その奥にある希望が現れる前に、箱を閉じようとするものがいる』
『神に等しき力を得んとするもの』
『その力で、幼馴染の美少女が毎朝起こしにくる世界を作ろうとしている』
『阻止せねばならん』

……いい世界じゃないですか。
つかどこまで続くんだろう、この電波交じりの妄想話は。
とりあえず僕は「寒いなあ」などと思いつつ彼らの言葉に耳を傾ける事しか出来なかった。
92838:2007/04/07(土) 23:01:46 ID:???
彼らの話には、僕の興味をそそる部分がある。

『使徒が積極的に接触を試みている』

彼らは確かにそう言った。確かにそれは自覚している。
確信はないけど、何故だかは分からないけれど。でも。
確かに使徒は僕を知ろうとしていた。その理由を、この人たちは知っているのだろうか。
僕はおずおずと周りの物体に向かって声をかけた。
「使徒……。天使の名を持つ、僕らの敵。僕はそう教えられてきました。でもどうして、
 彼らは襲ってくるんですか?どうして戦わなきゃいけないんですか?どうして、それが
 来ると知っていたんですか」

そんな僕の問いに一瞬だけ、時が止まる。
触れてはいけないものに触れてしまったような、そんな感覚。だけど僕にはそんなことに
構っていられる余裕はなかった。

だけど返ってきた言葉は、僕の欲するそれではなくて。
92938:2007/04/07(土) 23:02:36 ID:???
『真実を知るものが必要だ』
『人柱が』
『碇にとっての、な』

そんな彼らの言葉に僕はびくりと身体を震わせた。
自分を取り囲むモノ達が、怪しく光る。そして僕はその光に照らされて。
「うわぁぁぁぁぁぁあっ!!」
思わず、叫んでいた。

記憶。思念。時の流れ。
自分の知る由もない時代の空気。
一瞬で消えていく生き物。残された苦しみ。飢え。渇き。痛み。苦しみ。
……世界の終わり。
そんなものたちが一瞬で僕の身体を駆け巡る。そしてその向こうに潜む、誰かの願いも。

「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ…あぁぁぁ!」

裏切りと殺戮と貪欲な生への執着。そして悲しみ。
冷たく凍る世界。悲しみに満ち満ちた世界。そんなモノが僕を駆け抜け、通り過ぎていく。
僕はただその感覚に震え、ただ耐えることしか出来なかった。
それでも僕を貫く痛みは消えそうもなく、終わる道さえ見せず責めたてる。

果てのない恐怖に僕はただ目を見開き、叫び続けていた。
930名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/07(土) 23:04:42 ID:???
リアルタイムktkr。相変わらずGJです。
93138中の人:2007/04/07(土) 23:06:53 ID:???
とんでもなく間が空いてしまって申し訳ないです。
でもいろんな人のネタが読めて嬉しい。
>>906
ゲンドウ可愛い親父だ。有難うございます。
また長編読めるのを楽しみにしてます。

そして何気に>>898の「何故一文字削る」がツボだった。www
932Adrienne ◆HI8ebVe8lo :2007/04/07(土) 23:29:28 ID:???
>>931
乙です。
やっぱり読みごたえあるな〜。

>とんでもなく間が空いてしまって申し訳ないです。
あまり根を詰めずに、のんびりどぞ。
ってか、FF書くのって、本当にしんどいもんね〜。
933名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/08(日) 01:45:58 ID:ntBAgJj2
乙!
復活オメあげ
934名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/14(土) 00:51:17 ID:???
保守
935名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/16(月) 20:05:37 ID:???
ミ・д・ミ
936名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/20(金) 23:54:35 ID:???
保守
937名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/21(土) 00:20:30 ID:???
ミ・д・ミ ミ・д・ミ
938名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/27(金) 05:24:22 ID:PoAep6Bf
保守
939名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/29(日) 17:54:53 ID:???
保守
940名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/05(土) 13:48:26 ID:???
保守
941名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/12(土) 00:43:16 ID:???
保守
942名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/15(火) 14:34:16 ID:???
保守
943名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/18(金) 13:18:00 ID:???
944名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/19(土) 22:11:24 ID:???
職人はいずこに
945名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/20(日) 16:43:44 ID:???
元気にやってるといいなア…
946名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/20(日) 17:40:12 ID:???
職人さん応援してます。
947名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/26(土) 18:19:41 ID:???
職人町保守
948名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/26(土) 22:22:45 ID:???
次スレはどうする?
949名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 02:45:39 ID:???
次スレは980辺りで良いんじゃね?
950名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/01(金) 01:04:15 ID:???
捕手
951名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/01(金) 01:39:58 ID:Z+vilWMO
ガッシュ
952名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/01(金) 22:13:51 ID:???
ヌルポ
953名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/02(土) 00:32:14 ID:???
ガッ
954名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/02(土) 05:23:21 ID:???
リョウスレ
955名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/02(土) 23:20:25 ID:???
最終投下から約一月……、職人さんは無事なんでしょうか……?
補完計画の行方……、そしてシンジがどうなるのか……。ゲンドウとの同居の結末……。
気になります!
956名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/02(土) 23:37:59 ID:???
LOVEほっしゅ
957名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/02(土) 23:40:03 ID:???
>>955
同意∩゚∀゚∩
958名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/04(月) 19:44:31 ID:???
全力で保守
959名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/06(水) 02:08:57 ID:???
ゲンドウ「シンジ、誕生日おめでとう」
960名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/06(水) 14:47:21 ID:???

 父であるゲンドウが家に居ることは少ない。
 しかし、この日は違った。

「ただいま……。」
 返って来る言葉は無い。
 シンジは溜め息混じりに靴を脱ぎ始める。
 今日は6月6日。碇シンジの誕生日ではあるのだが、当の本人は諦めている。祝ってくれる者など皆無に等しいからだ。

 靴を脱ごうと、身を屈めると直ぐに違和感に気付く。

 靴がある……。

 玄関には、サイズの大きい革の靴が脱がれている。

 父さん?

 シンジは、少しだけ速まった鼓動を抑え、リビングへ向かう。

 リビングからは微かな光が漏れ、人の気配が感じられる。
 シンジは扉まで辿り着き、廊下とリビングを隔てる扉に手を掛けた。
 しかし、不安からだろう。ドアノブを掴んだまま固まってしまう。
 自分の部屋は廊下から直に行ける。なにもリビングへ入る事は無いのだ。
 しかし、シンジはドアノブを離そうとはしない。
 期待と不安のジレンマ。シンジはそれに嵌り込んでしまった。
 と、ここで天の声とも思える声が放たれる。
961960:2007/06/06(水) 14:48:24 ID:???

「なにをしている。入るのなら入れ。」

 常人ならば脅されていると思うような声だが、シンジにとっては父と自分を結ぶ歪んだ糸。
 シンジはゆっくりとノブを回す。
 滑らかに扉は開く。

 シンジの目に飛込んだのは、部屋着である股引を穿き、アイスのカップを前にして何時ものポーズをとっているゲンドウの姿だった。

 あぐらをかいていながらも色眼鏡はおろか手袋までしているゲンドウの向かいに腰を下ろすシンジ。

「よく来たな、シンジ。」

 いや、ここが僕の家なんですけど……。

 などと、内面世界で呟くシンジ。
 そして、長方形の箱を目の前に置き、ゲンドウが口を開く。高圧的な物言いはそのままに。
 「受け取るなら受け取れ。受け取らないならば帰れ。」
 どこかで聞いたような台詞を口走るゲンドウ。
 シンジは呆然とその光景を見つめている。

 デジャヴって言うのかな……。

 下らないことを考えながら、嬉しいという気持ちが滲み出てくる。
962960:2007/06/06(水) 14:53:28 ID:???

「も、貰ってもいいの……?」
 かなりオドオドしているが、贅沢は言えないだろう。
「ああ。」と、短い返事を受け、シンジは包みへ手を伸ばす。
 それは意外に軽い。
中身を聞こうと口を開くが、遮られて言葉にならない。
「これはただの余り物だ!それ以上でも以下でもない!」
 碇ゲンドウはそう言い残すと自室へ籠る。
 心なしか顔が紅潮していたのは気のせいだろうか……?

 とにかく、シンジはその包みを持って自室へ入る。
 中身はなんなのであろうか。
 はやる気持ちを抑えながらもどかしく包みを破く。
 出てきたプレゼント。
 それは。

 青紫のサングラス……。

 碇シンジが同居を解消しようと考えた、最初の一歩である。




963名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/06(水) 14:56:16 ID:???
おお!GJ!親子いいな
ゲンドウツンデレw
シンジ誕生日おめでとう
964名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/10(日) 13:37:38 ID:???
ъ(゚Д゚)グッジョブ!!
ゲンドウに萌えたアッー
965名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/11(月) 21:01:17 ID:???
保守
966名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/15(金) 02:38:43 ID:???
967名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 10:07:04 ID:???
968名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/18(月) 04:58:44 ID:C+vN/yck

969名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/21(木) 16:55:44 ID:???
970名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/23(土) 10:38:55 ID:???
971名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/26(火) 16:29:12 ID:???
保志ゅ
972名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/28(木) 21:01:45 ID:???
HO
973名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/29(金) 06:29:33 ID:???
ほす
38氏生きてるかぁ〜?(´Д`)
974名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 05:05:42 ID:???
いったい何回保守したんだろうな?
975名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 17:30:41 ID:12Bns6j4
>>974
それでも俺は保守するぜ?
すべては結末をみるために
97638中の人:2007/07/02(月) 22:57:35 ID:???
お久しぶりです。
投下もなしで書き込むのもどうかと思ったんですが
ここまで期間が空いていると生存そのものを疑われそうなので
一応生存証明だけでも…。

とりあえずここ数ヶ月身内に不幸があったり色々あって
全然パソコンに向かう暇がなかったです。
その間、たくさん保守してくれてありがとです。
なんとか続きを落としたい気持ちはありますが、今しばらく
お待ちいただければ嬉しいです。

>>960
同居解消しちゃうのかよw
エヴァ2の授業参観イベントの
「僕はトイレで小一時間泣いた」を思い出して
クソワロタw
977 ◆FO9j4sCVs2 :2007/07/03(火) 00:54:05 ID:???
ガンガレ
978名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/03(火) 00:55:13 ID:???
コテ着けたままだったorz

ご愁傷様です。頑張って下さいな
979名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/04(水) 07:43:15 ID:???
待っとります、頑張って下さい。
980名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/05(木) 22:32:29 ID:???
ほーしゅ
981名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/06(金) 21:52:14 ID:???
ほっしゅるほっしゅる
982名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/07(土) 18:17:17 ID:???
983エヴァスレ1000まで埋め埋め委員会:2007/07/08(日) 20:27:58 ID:???
埋め埋め
984980:2007/07/09(月) 07:29:53 ID:???
俺は次スレ立てれ無いから誰か頼む

前に
>980辺りでいいんじゃね?
って人がいたの忘れて保守してた
985名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 07:43:09 ID:???
>>990辺りでもいいだろこの調子なら
986名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 08:03:52 ID:???
その前にスレ落ちするのに10ペリカくらい・・

ちなみに、981以降は24時間以内にカキコが無いと落ちるので
普通なら983の前に落ちてるから
987名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 08:22:32 ID:???
テンプレはどうしよう
>>1と同じ?
まとめサイトはテンプレに入れていいのかな?

*************************

漫画版で、ミサトが
「申請すれば、お父さんとお父さんと住むことだってできるのよ」
と言ってましたが、もしそこでシンジがそれを望んだら、
ゲンドウと一緒に住んだらどんな生活になるのだろう?

前スレ
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/eva/1133421128/l50

■38中の人まとめサイト■
http://x7net.com/~ifamily/


*************************

こんな感じでいいなら立てるけど




988名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 16:13:58 ID:???
989名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 16:16:56 ID:???
>>987
いいと思うよ。
990名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 16:57:01 ID:???
991名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 17:17:20 ID:???
>>990
992名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 17:37:34 ID:???
安心して埋め
993名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 21:44:03 ID:???
梅埋め
994名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 22:53:10 ID:???
>>990乙しつつ埋め
995名無しが氏んでも代わりはいるもの