【作品を投下される職人さんへ】
可能であれば、職人さんにセルフ保管していただけるよう、お願いいたします。
<作品ページを新規作成>
新規ページの作り方
@:「@wikiメニュー」から「新規ページ作成」をクリックしたら「新しいページ名を入力して下さい」と言ってくる
A:タイトルをフォーム打ち込んだら(チェックはWikiモードのままでOK)「新規ページ作成」のボタンをクリック
B:下に出てくる空白にSSをコピペして、ついでに修正
C:「プレビュー」を押してチェック
D:問題なければ「投稿」を押す
<各SSリストを開いて編集>
編集の仕方(SS本文の修正も同様)
E:各SSリストを開き、そこで「編集」から「このページを編集」をクリック
F:下に出てくる文章の適当な箇所に
-[[作品タイトル(ページ名)]] と入れる。
G:プレビューを見て問題なければ「投稿」して終了
何か失敗するかどうしても無理そうなら、そのときに言ってくれれば誰かしら対処しますのでご安心を。
霧江=ベルン
絵羽=ラムダ
6 :
名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 01:40:04 ID:vi+lghgo
くすくす
(・ー・) み〜☆
金蔵×理御
甘いウィル×理御で一つ…!
うみねこで一番ツボったんだこの二人…
いいっ
前スレ最後で出たベアバトとウィルリオのザッピングの話のアイディアが出来たので
ちょっと書いてみます。
一人で連投してすみません。できたらこっそり保管所に置いておきます。
自分のでは萌えないので他の人が描いた奴が読みたいです。切実に。
>前スレの方
ベルン×ベアトはいいネタができたら書いてみます。
さくたろー×源次で
大月教授×鯖吉で書いてください!
そこで理御の0721を覗いてしまう朱志香ですよ
じゃあ俺はキリバトをいつまでも待ってる…!
マルソーの会長×霞で頼む
ベルフェゴール×ルドルフ
待ってるぜ
ネタバレ
EP8は朱志香の無双の巻
朱志香×戦人がくるとEP7まで裏切られ続けて、EP8でジェシバトがくると信じ続けてる俺がいる……
EP8で現存する戦人絡みの全カップリングが完全破たんすることを信じている
ジェシバトはもうないんじゃない?
ep7で全ての真相はほぼ書き終わったらしいし
でも嘉音との事が帳消しになるなら可能性あるかもしれないけど
でも朱志香→嘉音を散々やってきて今更全部なしっていうのもそのカプ好きじゃなくてもどうなんだろうと思う
朱志香のアイデンティティの一つが欠けてキャラが薄くなった気もするし
ひぐらしと違ってフラグをリセット出来ないしな
ひぐらしならどんなカプでも後日譚は書けるんだが
もみもみ
きんぞー☆の頑張り物語は、相手がヤスや理御とならふんぱん手前のセクハラのほうがおいしい
誰とでもカップリング妄想できるように曖昧な戦人ハーレムっぽい雰囲気で終わるだろ
ですよね
うー
新しいネタが思いつかんなあ
気が向いたらウィルリオで目隠しプレイとか書いてくれないかな
金蔵は出さない方向で
むぅ…
誰かリオジェシで書いてくれー
ひぐらしの詩音に誘惑されて自宅で一人でオナニーする悟史みたいな話も見たいな
視姦もの少ないから見てみたい
オナニー系をたのむ
み〜☆
オナニー似合いそうなキャラってうみねこだと朱志香?
ひぐらしだと詩音が夢オチでそういうネタ多かったけど、うみねこでは朱志香が似合いそうな気がする
待ってるぜ
くすくす
, -―-、__
,イ / , ヽ `ヽ、
/ { { lヽ } i !_
/{ i N\リーソヽ lハi;;;ヽ.
|;ヽル-‐ ‐‐- ソ }l;;;;;|
{;;;;| { _, "∠ノ |;;;/ あぅあぅ♪
(⌒)ゝ、 _ , イノ(⌒)
lヽ!rイ/ノ ! />、,!/ヽ 僕のssまだ?
!:.:.:ヽイ l i// /{}.:.:.:.:.!
|:.:.:.:/! / / /{}.:.:.:.:.:.:
ににににぱー☆
昨日一つ書いてWikiに直接投稿した者なんだけど
あれってカプ別のリストとかとリンクさせないとまずいのかな
普通に投稿したあとに不安になった
必要があるならあとで直すんだけど
書き手次第だろ。
俺は自分で書いたひぐらしのやつはリンクさせてないし
>>42 そうなのか、ありがとう
あとで時間がある時に修正することにする
雛姉可愛いね雛姉
雛姉で百合はいいね
萌えた
(…3…)
(・ー・)みー☆
ひぐらしのなく頃に 愛欲 罪滅し編A
私と礼奈が夫婦同然の生活をするようになって一ヶ月ほど経ちました。
今では娘は私の寝室で寝起きしてます。
勉強や身支度などは、それまで通り自分の部屋でするのですが、夜眠
るときは必ず一緒です。
どうやら露骨にセックスを目的に一緒に布団に入るのが気恥ずかしい
らしく、たいてい、私より先に布団に入って身を横たえています。
寝室の襖を静かに開けると、枕元のスタンドでほんのりとオレンジ色
に照らされた室内に奥を向いた礼奈の寝姿が浮かび上がっていて、ジ
ンワリと胸が熱くなります。
掛け布団をめくり、娘の後ろに体をすべりこませ、背後から胸に手を
回して首筋に顔をうずめると、湯上りの温かい肌から乳液の良い匂い
が漂ってきます。
柔らかく弾力にあふれた礼奈の体をそっと起こして上に向けさせ、パ
ジャマのボタンを一つ一つ外していき、胸元をグッと開くと、中学二
年生の割りに豊かな乳房をあらわになり、てっぺんにチョコンと乗っ
た淡い色合いの乳首が、少女の儚さを象徴しているようです。
たならなく愛おしくなってしまい、チュッと口づけして「あっ…」と
息を詰めた礼奈の下半身に潜り込み、早くも愛液を溢れ出させて桜色
に濡れている性器に唇を寄せ、舌を這わせます。
礼奈は、快楽によがっている姿を見せるのが恥ずかしい事だと思って
いるらしく、そういう自分を見せることを懸命にこらえているような
ところがあります。
初めて礼奈とセックスをしたころは、その若く瑞々しい体に溺れきっ
て自分の欲望を叩きつけるだけでしたが、余裕の出始めた今は、恥ず
かしがる礼奈の、まだ未熟な性感覚を開発させようとする余裕がでて
きました。
肉割れのミゾにそって、愛液を掬い上げるように舌を上下させたあと、
すぼめさせた舌先を熱くて狭い奥へ…そこから新鮮な淫蜜が湧き出し
てくるのが感じられます。
女性器の中でもっとも敏感で可愛らしい突起を舌先で捕らえ。クニュ
クニュと嬲りまわすと礼奈は、もはや耐え切れなくなったように顔を
左右に振って、「んっ、はうっ…」と息を吐いてあっさりと果ててし
まいました。
放心したようにグッタリと裸体をさらけ出した礼奈の体を眺め、奇妙
な勝利感に浸ったあと、私は自分の性欲処理にとりかかるのです。
イッた直後の半ば無感覚になった礼奈の体を抱え込み、ヌルヌルと愛
液をしたたらせる性器に、待ちかねたように怒張しているペニスを挿
入して激しく抜き差ししても、ほとんど反応がなく、まるで薬を使っ
て昏睡させた娘を犯しているようで、倒錯した興奮が頭をよぎります。
私が射精をして、さらに二度目の愛撫に取りかかるころ、礼奈も自分
を取り戻して再び甘い喘ぎを漏らしはじめる…そんな行為を二度、三
度と繰り返すのが私たち父娘の毎夜の性生活でした。
そんな、新婚当時が戻ってきたような幸福な毎日に陰りが差し始めた
のは、それからしばらくの頃でした。
礼奈が私とのセックスに、変に鈍く…というより疎んじているような
素振りを見せ始めたのです。
娘は、私の夜の要求に対して恥ずかしがるような様子は見せても、嫌
がるようなことは絶対にありませんでした。
破瓜直後の行為のときですら、私に気をつかわせまいと必死に痛みに
耐えていたほどです。
もともと、妻に捨てられた私を慰めるために始めたようなものなので
すから、私に罪悪感を抱かせまいという気配りは怠りませんでした。
なのに、いつの間にかセックスの前後の礼奈の挙動が、義務的な行為
を早く終わらせたいという風なそぶりを帯びているようになっていま
した。
そんなはずがない、思い過ごしだと自分に言い聞かせる反面、かつて
の妻との間のセックスの末期が丁度こんな風だったことを思い出して
しまい、心の暗雲は晴れません。
(つまり、好きな男の子ができたのだろうか…?)
おそらく、というよりそれ以外に考えられませんが、まさか礼奈に面
と向かって聞くわけにもいきません。
一計を案じた私は、礼奈が出かけたあと、彼女の部屋に入って日記を
盗み読むことにしました。
几帳面な礼奈は小学生の頃から一日も欠かさず日記をつけていること
を私は知っていました。
日記は勉強机の一番上の鍵のついた引き出しに入っていましたが、し
ょせん子供向けの机です。
下の段の引き出しを全部はずし、下からハンマーでゴツンとたたいて
底板を外し、簡単に手にとることができました。
その内容は大半は学校の特に仲のよい仲間たちとの楽しい思い出で綴
られていましたが、今年の春以降の部分はその頃転校してきた男の子
のことを中心に書かれていました。
「今日は圭一くんがつまらない冗談を言ってみんなを笑わせた、つま
らなくても圭一くんが言うと何だか楽しくなってくる」
「今日は体育の時間に沙都子ちゃんが足をくじいたから、圭一くんが
放課後の部活は中止にしようと言った。 沙都子ちゃんを残して他の
みんなだけでやったら可哀想だからって。圭一くんはとっても優しい」
そんな具合で、はっきりと好きだと書かれてはいないものの、この少
年に恋心を抱いていることは一目瞭然でした。
その少年なら、私にも覚えがありました。一度礼奈に電話をかけてき
たことがありましたし、狭い村のことなので何度かすれ違ったことも
あります。
きちんとした挨拶のできる、なかなかに印象のよい男の子でした。
なにより都会から転校してきただけあって、身振りや言葉遣いが垢抜
けていて、こんな田舎の野暮ったい男子しか知らない女の子たちが好
きになってしまうのは無理もないことでした。
女の子たち…そう、圭一くんに恋をしているのは娘の礼奈だけではあ
りませんでした。
礼奈の仲良しグループには女の子が4人いるのですが、日記を読んだ
感じでは、みんなが圭一くんに好意を持っているようなのです。
しかしその内2人はずっと年下、というより子供に過ぎないので、礼
奈にとってライバルというと、ひとつ年上で仲間たちのリーダー格で
ある魅音という女の子ということになります。
この子も礼奈に負けず劣らず可愛らしく、しかも彼女の家は村一番の
名家ということもあって、ぼんやりしていたら圭一くんを取られてし
まうんじゃないかという恐れが文面から感じられました。
決定的だったのは、ある日のレクリエーションで圭一くんがゲットし
たお人形を礼奈にくれたことです。
魅音ちゃんの心中を気遣って、礼奈もあからさまに喜ぶことはしなか
ったようですが、やはり嬉しくてたまらなかったようです。
しかしその夜、魅音ちゃんから一見グチ混じりの相談のような、実の
ところその事を怨じているような電話がかかってきて、礼奈はかえっ
て心配になってしまったようです。
要するに、私は彼が好きなんだから手を出すなという遠回しに牽制を
してきたのでしょう。
「あの子は圭一くんに本気だ、何をするかわからない。お人形の件で
私が有利ってことがわかったから、劣勢を挽回するために大胆なこと
を仕掛けてくるかも」
「圭一くんは都会っ子だから、向こうではかなり進んでいたかもしれ
ない…魅ぃちゃんもそれを考えてエッチなことさせてあげて既成事実
を作ろうとするかも」
そんな、礼奈らしくもない陰に篭もった憶測も書かれていました。
かと言って、先んじて礼奈の方が圭一くんに体を差し出すということは、
到底出来ないことなのでしょう。
かつて母親の浮気を起因とした離婚に憤り、それがトラウマになるほど
のショックを受けた礼奈にしてみれば、父親である私との関係を続けつ
つ圭一くんに身を投げ出すというという行為は、あれほど憎悪した母親
と同じことするに他ならないのですから。
日記にすら書かない、そういう心理が手に取るようにわかって辛くなり、
私は日記を閉じました。
その夜、私はいつものように同衾する礼奈の体をむさぼり尽くしました。
娘の体は少女らしくほっそりとしていますが、全身がはちきれそうな生
命力で溢れています。
その若々しい肉体も、全開になった男の性欲には押し負けてしまい、初
めてセックスを知った若者のようにガンガンと陰茎を打ち込んでくる私
から逃れようと体をよじらせています。
「どうしたの、お父さん…なんか今日は変だよ、もっと優しくして…」
必死に息を吐きながら懇願する礼奈を無視して、射精を遂げては体位を
変え、変えてはその体を責めさいなみました。
六度目のときには礼奈は、精も根も尽き果ててしまったようにダラリと
弛緩した体を布団の上に広げて、ただ「…あっ…あんっ…」と微かに息
を漏らすだけだでした。
私もここまで来てしまうと容易に射精もできず、何百回目かの抽送でよ
うやく私は絶頂に達しました。
続けざまの激しい摩擦で、私のペニスは痺れたようになっていたが、礼
奈の整った美しい顔立ちを眺めつつ、叶うことならこれで娘を妊娠させ
てしまいたいと思いながら、ほとんど無色透明になっているであろう精
液を放ち、私は最後のセックスを終えました。
いつもと違いすぎる私の振る舞いに、少し不安を感じたのか、あるいは
自分の最近の様子が私を傷つけたと思ったのか、礼奈が顔を寄せて
「どうしたの、お父さん…レナは逃げたりしないよ?」と優しくささや
きました。
私の心の中を見透かしたような言葉に、ようやく決心が固まりました。
「これで終わりにしよう礼奈、やっぱり親子でこんなことをしてちゃい
けない」
突然のことに礼奈はビックリして体を起こしました。
「え?でもっ…」
「いつかは止めなくちゃいけないことだ、それが今日だっただけだよ」
私は礼奈の返事を遮るようにしてその体を抱きしめ、髪を撫で透かしま
した。
「…本当に、いいの?お父さん」
念を押すように言う礼奈に、黙ったままうなずいて、その夜私たちは手
をつないで眠りました。
異変が生じたのは、翌々週の末でした。礼奈が「みんなと市街に遊びに
行く」と言って出かけた翌日のことです。
誰かの知り合いの家に泊めてもらうとかで、今夜は帰らないと言われて
ピンと来ました。
きっと圭一くんと二人で行くのだろう、そしてホテルにでも泊まるのだ
ろうと思いました。
なぜなら礼奈が前日に郵便局に行って、お年玉を貯めた貯金をおろして
いたことを知っていたのです。
それを止めるほど私は野暮な父親ではありませんが、胸を焦がす嫉妬に
似た苦しみは抑えられず、あの感じの良い圭一くんを憎みたい衝動に駆
られました。
酒を飲んでなんとか気持ちを鎮め、翌日いつもより遅く起きたころに、
礼奈が帰ってきました。
俯いた顔と足を引きずるような歩き方、その哀しげな雰囲気に私は驚き
ました。
ただいまも言わずに自分の部屋に戻った礼奈を見ながら
(上手くいかなかったのだろうか…?)と思い、心配する気持ちと、妙に
嬉しい気持ちとが心の中でせめぎあっています。
部屋の前に立ち、そっと中を伺うと、礼奈の啜り泣いている声が聞こえ
ました。
心配のあまり、翌日私はまた日記を盗み見てしまいました。
そこには驚くべきことが書かれていました。
圭一くんが、行為の途中で礼奈が処女でなかったことに腹を立て、帰っ
てしまったというのです。
今までの圭一くんからは考えられないような酷い言葉を投げつけられ、
罵られたようです。
傷ついた礼奈が、泣きながら行為の後始末をし、自分でホテル代を払っ
て帰ってきたのかと思うと涙が出てきます。
それから幾日かの礼奈の様子は痛々しくて見ていられないようなもので
した。
そもそも礼奈の処女を破ったのは私なのですから、罪悪感を感じずには
いられません。
礼奈にしてみれば私を恨んでも良さそうなものでしたが、そんな様子は
微塵も無く、むしろ心配させまいとして明るく振舞う姿に胸が詰まります。
それとても、どうにか演技をする気力だけは出てきたというだけのこと
よいな
なのでしょう。
毎日、当の圭一くんと顔を合わせ、仲間たちの一人として言葉を交わさ
なければならないのですから、その苦痛は想像するに余りあります。
私は心配のあまり、数日置きに日記を読み続けました。
その中で更に礼奈を哀しませる出来事が綴られ始めました。
驚いたことに圭一くんが、今度は魅音ちゃんと親密になり始めたという
のです―。
ひぐらしのなく頃に 愛欲 罪滅し編Bに続く
激しく続きを期待
保管庫にザッピングss置いてくれた職人さんありがとう!!
リクともいえないぼやきだったのに超感謝
期待
☆
久しぶりのひぐらし期待
古手梨花の大嫉妬とかは未完で終わるのかな
待ってるぜ
うみねこも過疎気味だし、
ひぐらしに至っては廃れて・・・・新作待ってます
>>65 Wikiに幾つか新作上がってるよ
見に行くといい
確かにスレだと長い話は切れちゃうし規制食らうこともあるからなー
自分もWiki上げでまた何か書こうと思ってる
うみねこだけど
wiki見てなかった
愛欲 罪滅し編ってなんだろう、この良く言えばレトロ
悪く言えば古臭いセンスは…
なんか書店の告白近親相姦みたいなエロ小説雑誌に
載ってそうな文体と展開だ
ひぐらしの二次創作なんて大抵ポップな文体で
必要以上に元作の「にぱーっ」とか「かな、かな」を連発して
オリジナルキャラの個性をアピールするものなのに
そりゃ懐かしい私小説風の文章だからだろ
独白型なら口癖もいらないしな
うー
新しいネタが思いつかんなあ
朱志香の自慰ネタは?あと理御とか
久しぶりにひぐらしで考えてみようかな
ふひ
七姉妹をそれぞれ個人ネタとか
書き分けるのが難しい上に面倒くさい
「郷田ー!お腹空いたー!」
そんな元気な声が部屋に響く。
今日の仕事は終わり、俺は休憩をとっていた。だが、俺の仕事はまだ終わりそうにない……。
「ベルゼさん、今日はどのような物を御用意しましょうか?」
「郷田におまかせ☆」
料理人の俺は、この暴食の悪魔ベルゼブブの食事を作るのが当たり前になっている。
悪魔の姉からも頼まれたのだから仕方ない。俺のお人好しは、悪魔でも関係ないらしい。
取り合えず、自分の朝飯と同じ物を作り、差し出す。
「いただきまーす!」
暴食の悪魔というものだからなのだろうか。ベルゼブブは一分も経たない内に全て食べ終えた。
「ごちそうさま!美味しかったわ!郷田の作る料理って最高!」
本当に味わって食べたのだろうか。
「ありがとうございます。また、いらして下さい。美味しい料理をお作り致しますよ。」
心の中でツッコミを入れても、必ず出てしまうこの言葉。
食べ終わった後のあの笑顔を見れば言いたくなる。また、来てほしい。
また、自分の料理を食べてほしいと心から思う。
「またって、今日はずーっと郷田といるもんっ」
「は?」
ベルゼが突然抱きついてきたのだ。
あまりにも突然で俺は、一瞬貫かれるかと思った。
「郷田……大好き……。」
そう言ったベルゼの顔は紅に染まっていた。これが告白というものなのか。
「あ、ありがとうございます……。」
こんな事しか言えないのか、俺は……。
「あ、あの!郷田!こ、ここここれ!」
ベルゼの差し出した手には、コン○ームが握られていた。ベルゼのやりたい事がやっと分かった。
「あの、わ、私でよければ」
「本当!」
この時のベルゼの笑顔は、これまで見た笑顔の中で最高の笑顔だった。
エロ展開誰かお願いします
>>79 といっても、ベルに性的な意味で暴食されてしおしおのぱーになるオチしか思いつかないw
はう
82 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 10:03:37 ID:I98R1I8h
沙都子のちょっと変わった設定のを思いついたんで書いてみる
土曜に貼る
84 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 14:45:02 ID:N276jA0U
>>30 ・ウィルが目隠しされる理御の頑張り物語
・理御が目隠しされるライト卿の夜の異端審問
どーっちだ
ID変わらんかった84です
まじめな話、自分のものじゃ萌えられないから
>>85にも書いてもらいたかっただけなんだが
みっともないことしてすまんかった。
お抹茶頂いてくる
>>84 ウィルさん目隠し状態で理御の性別分からない状況であれこれっていう
理御目隠しってのも見たいけど
>>85 >>30だけどネタ思いついたんなら時間がある時にでも良かったら書いて欲しいな
今日はごちゃごちゃしてるな
圭一と悟史の女装やおい物を書いてるんだが
それはココで良いのか?
j
801スレでもどっちでもいいかも
こっちで投下の場合は最初に注意入れたら良いんじゃね?
93 :
85:2010/11/05(金) 00:54:16 ID:KbIx0bOr
>>87 そういう意味だったかww
場合によっては話を一旦解体してまた違うネタにして出そうかと思ってたけど
大丈夫そうなら試しに書いてみるよ
出来たら雛姉の時と同じくWikiに直接投稿してみる
>>88 >ウィルさん目隠し状態で理御の性別分からない状況であれこれっていう
>理御目隠しってのも見たいけど
それも是非読んでみたいんだが
みー☆
95 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 07:27:28 ID:hekceqwb
夜の異端審問という響きが面白すぎてツボに入ったので
目隠し祭りに便乗して
>>84の前者とも後者とも言えない何かを書いてもいいかい?
>>90 圭一受けが多いからたまには女装した悟史が圭一に、という話の方が見たい
女装した圭一が梨花ちゃまと疑似百合
>>95 いいどころかむしろこちらからお願いいたす
愛欲 罪滅し編Bの筆が進まないので、今日即興で書いた別のを張ります
ひぐらしのなく頃に 交錯 夢現つ編
(あ、まただ…)
いかにも地元っ子らしい軽装の少女が、リュックと紙袋を重苦しくぶら下げた野暮ったい男性が
通り過ぎていくのを横目で一瞥しながら思った。
ここは岐阜県白川郷。日本古来の合掌造りの集落がそのままの形で残されており重要文化財の指
定を受けている。
当然数多くの観光客が訪れ、よそ者の姿など珍しくもなんともない。
なにしろ10年ほど前に世界遺産に登録されてからは年間で万単位の観光客が訪れているのだから。
そんな光景に変化が始まったのは、3年ほど前だった。一般の観光客に混じって、妙に年が若く
お決まりのようにジーンズや紙バッグを持った男性が見られるようになった。
理由はすぐに知れた。
コミックマーケットというイベントで売られている同人ゲームの大ヒット作の舞台が、この白川
郷をモデルにしているということで、そのゲームのファンがやって来るようになったのだった。
それがTVアニメになるに及んで、観光客の比率は逆転してしまった。
(お母さんは邪魔くさいとか言ってたけど、あたしは別にどうでもいいな…)
小石をコツンと蹴りながら、その少女−北村里子−は思った。
里子はそんな事にはちっとも興味がない。そのゲームのタイトルすら覚えていなかった。
その日暮らしとか何とかいう、なんだかのどかなタイトルだったが、実はホラーなんだと同級生
の誰かが話していたが…。
そんなことより、と里子はうつむいて考え込んだ。
今度の修学旅行で使うお小遣いをどうしようかと憂鬱な気分の里子なのだった。
里子の家庭は少々複雑である。母親が再婚した相手の男性がいささかズボラなタチで、しばらく
前に失業したあと、職探しもせずに家でゴロゴロしている。
しかもその弟がチンピラまがいの男で、ヤクザといさかいを起こし、身を隠すようにして里子の
家に居候をしていた。無論仕事をしていなければ金を入れもしない。
修学旅行の費用の積み立てはずっと以前からしていたから、これまで払った分が無駄になるくら
いならと、今も母が払ってくれているが、持っていくお小遣いの方は期待できそうもなかった。
何しろ、毎月の小遣いも満足にもらえず、里子が自分のお年玉の貯金から切り崩しているのだ。
以前なら、バイトをしている兄にねだれば何とかしてくれたのだが、最近彼女が出来たとかで、
めっきり里子にかまってくれなくなった。
バイト代はもっぱら彼女とのデートやプレゼントに消えているようだった。
(みんなが自由時間にお店に行ったり買い物したりしてるときに、あたしだけブラブラしてるなん
てヤだなぁ…)
こういうときの子供の心理は単純である。お金が使えないことよりも仲間外れが嫌なのだ。
ポツンと時間をつぶしているミジメな姿の自分を想像して、思わずポロッと涙が出そうになった。
「あのさー…ちょっと君、いい?」
唐突に声をかけられて里子が顔を上げると、ついさっき通り過ぎていった男がいた。
「ああー、やっぱりだ!クリソツだぁ…ねえ君、僕と一緒に写真撮ってくれない?」
値踏みするような目つきが里子の全身を嘗め回している。
小学生の里子にとって、男から一緒に写真を撮ってくれなどと言われたのは初めてだ。
イケメンなどとは程遠い、見るからにオタクっぽい男だが、悪い気はしない。
憂鬱な気分がちょっとだけ晴れたような気がして
「え、まあ、暇だしいいけど…」と、ちょっと勿体をつけつつ、応じてあげることにした。
「あ、本当?じゃあこれに着替えてくれるかな」
男は手に持った紙袋を広げて見せた。中にグリーンのセーラー風ワンピースが入っていた。
クリーニングしたてのように薄いビニールでパッキングされている。
「ええっ?でも…」
「あそこで着替えれるからさ、ね?君って沙都子にソックリなんだよね、俺今日ずっと探してた
んだ、沙都子にそっくりな女の子をさ、そんでやっと見つけたわけ、ね、ね」
男は興奮気味にまくしたててくる。
どうやらこの男のお気に入りのキャラに自分が良く似ているらしい、それで自分にそのキャラの
コスプレさせて彼らの言うところの「聖地」で記念撮影したいというわけかと、里子は理解した。
(名前まで同じなんて奇遇だな…)字が違うのだが、無論このとき里子には判らない。
男が指差した方にある公衆トイレをチラッと見た。
撮影に応じてあげるのに、着替えまでするのは嫌だなと思った。そこまでしてあげる義理はなか
った。そんな里子の気持ちを見透かしたように、男が
「そりゃ、そこまでさせてタダとは言わないよ、1000円あげるからさ、10分もかかんないのにだ
よ?いい稼ぎだろ?」
と持ちかけた。
里子の目がグッと見開いた。
(お金…そうだ、こんなチャンス滅多にないかも…)
里子がうつむいてしばらく考えたあと、おずおずと
「あの、2万円くれませんか…?そしたら撮影だけじゃなく、何してもかまいませんから…」
と、つぶやいた。緊張のあまり敬語になってしまっている。
男がギョッとする。
「えっ、それって…」思わず男の喉が鳴る。
「つまり、その、2万円くれたら、エッチなことしていいです、あたしに…」
かすれて上手く言葉が出ない。こんな事を言って呆れられたらどうしようという心配もあった。
「あのさ…君、いつもこんなことしてんの…?」
「まさかっ!初めてですっ」
里子がブンブンと頭を振る。
「ふーん、そっかぁ…そうだろうね」男は鼻息も荒く里子の体つきを眺め回す。
小学校5年生にしては胸は大きい方だろうが、それだけに微妙な曲線が芸術的なほどだ。
背は平均よりやや低く、体型はほっそりしていて少女嗜好者にとっては理想に近い肢体かもしれ
なかった。
「それでさ、エッチって、セックスまでしちゃっていいの?」
「いえ、それはちょっと…」
里子にも女の子らしい理想がある。初めては本当に大好きな人と、それもイケメンで、優しくて
スタイリッシュで、出来ればリッチで…そんな男性とムードのあるホテルで…と思っている。
目の前のオタクと公衆便所というのは、あまりにも理想とかけ離れていた。
「じゃっ、キスしていい?」
「いえ、それもちょっと…」
里子は当然ながらファーストキスもまだである。
「じゃあその、フェラ…オチンチンくわえてくれる?」
「あの、それもちょっと…」
さすがに言いにくそうに拒絶する里子に、男が落胆しつつつ呆れたような声を上げた。
「なぁ〜んだ、それじゃナニも出来ないじゃん」
「ゴメンナサイ…でもそれ以外なら、何でも…」
申し訳なさそうな顔をしつつ、なんとかして食い下がろうとする里子に
「それじゃぁな…じゃあ1万円でいい?なら、それでも…」
と応じる姿勢を見せた。
「はい、それでいいです…」
仕方ない、1万円あればなんとかなる、と思った。
男は頷くと、里子の手を引いてトイレに向かって歩き始めた。
男が密室の中で豹変してレイプに転じないかという心配は、子供なりに対策を考えていた。
あの公衆トイレは観光客向けに地元自治体が設置したもので、障害者が車椅子のままで入れるよ
うに広く作ってある。
更には異常事態があった場合のための非常ベルボタンが備わっていた。
いざとなったらそれを押せばいい。行為の最中は、手を伸ばせばボタンが届く位置にいるように
しようと考えながら里子は男に手を引かれ、公衆トイレに向かった。
先にトイレに入って、着替えをするためドアを閉めようとした里子の腕を押さえて男が一緒に入
ってくる。
思わず身をすくめる里子に
「これからココでエッチなことするのに、着替えの間だけ出てたって仕方ないだろ?」
ちょっと小ばかにしたような口調にムッとしつつも、それもそうだと里子は大人しく着替え始めた。
男の持ってきた服は、アニメのキャラのコスチュームにしては外で着ても普通の可愛い服として
通りそうなデザインだった。
仕立てもコスプレ衣装にしては悪くない。
一般の服から似たものを探して、仕立て直したもののようだった。
トイレと言っても、観光客用に作られたそれは広く清潔で、壁をくりぬいたような荷物置きの棚
もあって着替えるのに苦労はなかった。
自分の着ていた服を代わりに紙袋に詰め込んで里子が向き直ると、男が感嘆にうなった。
「うわっ、ますます似てるなあ、髪も栗色でイメージに近いし…ちょっとイッとしてみてくれる?」
里子が言われたように口をイッと開くと、八重歯がこぼれて見えた。
「凄い、こんなとこまで一緒なんて、これは天の導きかもしれないぞ」
男がブツブツとつぶやきながら、里子の足元に擦り寄るとスカートを捲り上げてフトモモに顔をこ
すりつけた。
「あっ…」里子が身をすくめる。
男は里子の足首をつかむと器用にパンティを脱がして、抜き取った。
スカートだけになった下半身にヒヤリとした空気があたり、なんだか心細い。
男は立ちすくんでいる里子の足元にしゃがみこむと、右足をぐいと持ち上げた。
「きゃ…」反射的に男の頭を押しのけようとしたが、男は意に介せず剥き出しになった里子の性器
をしげしげと眺め回した。
鼻息が敏感なそれに当たり、くすぐったくて腰をよじる。
「見られるとムズムズしちゃうかな?」
「ち、違います…あ、ふぅっ…」
男の舌が太股の中央にある秘裂にもぐりこんできた。
里子が一度だけ鏡に映してみたことがある。桃色の柔らかい粘膜の張った肉が花びらのようだった。
その、自分で触ることさえためらわれた秘密の場所が、今日会ったばかりの男のいやらしい舌先で
ヌリュヌリュとこじあけられていた。
ゾクゾクとしたものが体の奥から這い上がってくる。恥ずかしいという気持ちと今まで感じたこと
のなかった何かが合わさって、こんな行為を許してしまっている自分を責めさいなんでいるようだ
った。
隠しようもなくジワジワと滲み出してくる淫蜜を大げさに喉を鳴らして啜りこんで
「へへ、ずいぶん敏感なんだね…」と囁く男に、ゾクゾクするような被虐的な興奮を感じてしまった。
(ど、どうしよう、あたしのアソコ濡れてるんだ、恥ずかしいけど、嫌じゃなくなっちゃうなんて、
そんなのって…)
里子の指先が恥丘に触れ、サワサワと撫でた。産毛がその辺りだけ少し濃くなっているが陰毛とい
うにはほど遠い。
くすぐったくてたまらない、そして益々気持ちよくなってしまう。
里子が自分で弄り始めたことに気付き
「なんだ、我慢できないんだな」と男がさも嬉しそうに見上げる。
「そ、そんなんじゃな、あっ…」里子は顔を赤くして言い訳をしようとしたが、何も思いつかない。
もはや里子の指は丘を通り抜けてクリトリスを捉え、クニュクニュとそれを嬲っている。
男に下から性器を舐められながら、自分の一番敏感な部分を弄るというあさましい行為にわずかな
自己嫌悪が張り付いているが、女の子の本能に勝てない。
ただ『もっと気持ち良くなりたい』という言葉だけが頭の中をグルグル回っていた。
「エッチな沙都子ちゃんだな、クリちゃんを自分でこね回すなんて、ああもうガマンできない」
片手を壁につき、全身に力を入れて一生懸命にクリトリスを刺激している里子の姿を眺めながら男は
耐えかねたように立ち上がった。
今気持ちいいのは里子だけなのだ。男は興奮だけを味わいながらお預けを食わされているようなもの
だった。
「いい物見せてあげるから、そのまま続けて、ね」
そう言って男はジーンズとパンツを一緒に引き下げた。
里子の目の前に、太く赤黒い肉棒がギュンっと突き出される。
「ほらっ」
「ほらって言われても…」
恥ずかしそうに目を背けたが、好奇心には逆らえなかった。実父とは幼いころに別れ、義父や叔父を
嫌っていて一緒に風呂に入ることなど思いもしない里子にとって、それは始めて見る大人の陰茎だっ
た。
あらためてマジマジと見つめると、形容しがたいほど淫猥な、イヤラシイ形をしている。
先からはカウパーがトロトロに滲み出して泡を作っていた。
「ね、どう?」
「…エッチなカタチ…それに、なんかピクピクしてる」
「だろ?僕も我慢の限界なんだよ…ほら沙都子ちゃんはこれを見ながらオナってごらん。僕もするから」
「やだっ…」
そう言いながらも里子は指を動かし始めた。その視線は肉棒から離れない、というより離れられない。
男も、そうやって自分のペニスを見ながら割れ目を弄っている里子を眺めながら、自分の根太いペニス
をズリズリとしごき始めた。
「あ、すごい、それ、ますます大きくなって…ああんっ、やだっこんなの、恥ずかしいっ…」
「うおう、たまんない、くそおぉぉっ」
トイレに二人のうわごとのような喘ぎ声とヌチュッ、ヌプッという濡れた音が満ちる。
男は突然しごきを中断すると里子の肩をつかんで壁に押し付けた。
突然のことに、感じまくっていた里子が我に返り
(あっ、いけない、ええと、スイッチ…)
と片手で壁をまさぐる、が手先にはタイルと目地の感触しか伝わってこない。
男は視線を移す暇も与えず、自分のいきり立ったペニスを里子の股間に押し当てた。
「や、やめて、お兄さん!お願いっ、あ、はぐうっ…」
息も途絶えがちなほど疲労していた里子はろくに抵抗もできない。
ぐっしょりと濡れていた股間に、ほとんど抵抗もなくペニスが突き刺さった。
「あ、あぐっ…!」
痛みはない、だが熱いものが股間を通過したことだけが感じられた。
「いや、やめてください、それ抜いてぇっ…!お、お願い…」
「ああっ、いいよ、沙都子ちゃん、もっとジタバタして、ううぅっ」
男が快楽の極みで悶絶する。
動けば動くほど男が喜ぶことに気付いた里子がフウッと力を抜いた。
もう言葉を吐く元気もなかった。いまさらペニスを引き抜いたところで、失った処女が帰ってくるわ
けでもないのだ。
男を恨む気持ちよりも自分のバカさが情けなかった。いざとなったら非常ボタンを押せば大丈夫と小
賢しい計算をして男をナメていた自分がいけなかったのだと泣きたくなった。
「ふっ、ううっ…」
突然顔を伏せて涙声を漏らした里子に男が驚いた。
「ど、どうしたのさ、沙都子ちゃん?」
アセッた声に、里子が泣き声で
「だっだって、お兄さんオチンチン入れちゃうんだもん、あたしセックスはしないって言ったのに…」
と応えると、男がホッとしたように
「な、なんだぁ…違うよ、ちょっと見てごらん、大丈夫だから」
里子が目尻をこすりながら下のほうを見ると、ペニスは自分に挿入されていなかった。
股間と両方の太ももの付け根が作る三角のゾーンに挟まれて、ヌルヌルになったそこでペニスが抜き
差しされていたのだった。
「あ、ホントだ、入ってないや…」
里子は安心のあまり気が抜けた。
「そんな事しっこないさ、オタクってのは紳士なんだ、自分が愛している者に対しては特にね。沙都子
が嫌がることなんかするはずないだろ」
言いながらも腰の動きを止めない男に、安心した里子が
「ありがとう、お兄さん、ゴメンね、セックスはできないけど、これで思い切り気持ちよくなってね…
あ、ああん、あたしも気持ちイイのっ…」
とうわずった声で答える。激しく、そして優しい快感が幼い体を丸ごと包んで身悶えさせていた。
「うっく、ううっ、ふぐううっ…!」
男も言葉にならない声を上げながらますます腰の動きを速める。
「あ、あたし、すごい感じちゃってる、あたし、どうしようぅ〜!」
「い、い、いい、出るうぅ〜!!」
二人の声がひときわ大きく響いたとき、男がズリュッとペニスを引き抜き、猛烈にしごきたてた。
それを里子が弄ってるクリトリスの間際に持ってきたとき、ドクッドクッ、ドクンッと激しい勢いで
射精が始まり、里子の指と性器を白く汚した…。
「ああ、すごい、良かったぁ…」
「お兄さん、白いのがいっぱい出たね…」
放心したようにつぶやく男に、里子が嬉しそうに声をかけた。
「ああ、うん、気持ち良いと出る量も多いのかな…ああ、そうだ一万円だったよね」
男は財布からシワクチャの一万円札を出して里子に渡すと、里子が脱いだ衣装に飛び散った
自分の精液のシミを気にしながら紙袋に収めた。一過性の快楽よりも保存すべきコレクションに執着
するのはオタクの本能のようなものだ。
(オタクのお兄さんも悪い人じゃないんだな、喜んでくれたし、あたしも気持ちよかった上にお金も貰
ったし、今度お母さんが悪口言ってたら弁護してあげようっと…でも今日のことはとても言えないけど)
そんなことを考えながら、里子は男と分かれた。
ちょっとハイになってウキウキした気分の里子は、通りの書店で、あのゲームを漫画にした単行本を
見つけた。
鬼隠し編、綿流し編、祟殺し編…。共通のキャラクターたちが、ほぼ似通った世界で、別々の事件に
遭遇していく物語…。
全く興味がなかったため見たこともなかったが、ちょっと手にとって見る気になったのは、自分が似て
いるというキャラがどんなものか知りたくなったからだ。
−北条沙都子−。なるほど、かなり似ていると思った。年恰好は当然として、フンワリとした色のショー
トカット、トレードマークのような八重歯、クリッとした大きな眼、あのお兄さんの言っていた通りだった。
それに、姓も名も…。ついでにそのまま読み続けているうちに、奇妙な感覚が里子を襲った。
似ているのはあたしだけじゃない、この沙都子の家庭環境と家族構成、どこか自分の家庭に似ていないか?
兄が付き合い始めたという彼女は、確か双子だと言っていた。
そして沙都子の親友というキャラの古手梨花、古手梨花…?
(隣のクラスに神社の子がいた、髪が長くて日本人形みたいな女の子、あの子の名前は、確か…古宮里香…)
ゾワッと寒気のようなものが背筋を走った。
里子はパラレルワールドの理論をどこかで聞いたのを思い出した。
我々の世界は、ほんの少しずつ違った世界が無数に重なっている内のひとつである、近い位置にある世界
ほど似通っているが、遠く離れるにつれてかけ離れた世界になっていく…。
もしこの「ひぐらしのなく頃に」というゲームの作者が、何か特殊な力の持ち主で、遠く離れた世界で実際
に起こったことを見通して物語を書いたのだとしたら…自分は北条沙都子に似ているのではなく北条沙都子
そのものではないか?
ひぐらしという作品に書かれた世界から、かなり遠く離れているこの世界の北条沙都子が自分なのではない
か…?
もしそうだとしたら、中学には前原圭一、竜宮レナ、園崎魅音によく似た人たちがいるのだろうか。
気付いてはいけないことに気付いてしまった自分、気付いたことを誰かに知られたら抹消されてしまうよう
な、そんな得体の知れない恐怖に捕らわれて、里子はいつまでも立ち尽くしていた…。
−完−
わっふるわっふる
わっふるわっふる
くすくす
みー
むぅ
今更だがwikiに理御オナニーネタあげてくれた職人GJ!!
GJ
wiki見たら沙都子関連は少ないなあ
キャラスレとはえらい違い
あぅあぅ
キャラスレの住人は18才以下だからこっちには来ないんだよ
むぅ
にゃーにゃー
にゅるにゅる
>>48 久々に着てみれば、続きがあったのかwwGJ!
圭ちゃんが外道過ぎるだろ
鬼畜悟史シリーズよかマシ
にぱー☆
くぱー☆
んっふっふ☆
カナカナカナ・・・
熊沢さんによる夏妃・理御・朱志香の性生活実況日記が見たいです…職人さまあ…っ
むしろ源次さんがそういう現場に遭遇しちゃうとか
家政婦は見た!
137 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 23:01:10 ID:bbBS1L3V
いつもお世話になっている、とあるおっぱいサイトに多大なるインスパイアを受け、その拍手絵を元に書いてみました。
カプは入江×沙都子で、ジャンルはパイズリ物となっています。
「ン…………んふぅ……。くは……んっ! ぁ……はあぁ……」
職員室の一角に設けられた来客用の空間。後に保健室の役割も担う様になったそこでは、沙都子がひっそり
と自慰に耽っていました。
やり始めこそ車の付いた椅子の移動と回転に振り回されていましたが、じきに背もたれを事務机に押し付け
て固定させることで、沙都子の腰付きは大胆且つ艶かしい動きになっていきます。肘掛けに跨って、女の
もっとも敏感な場所を押し潰しては身体を丸めて堪えたり、背筋を伸ばして鳴いたり。
縦をいっぱいに使い、腰を前後に滑らせる動きは『鉋掛け』を思わせますが、洩れ聞こえる音は真逆。
それは湿り気ではなく、もはや汁気を多分に含んだ淫音です。
「……ダ……ダメ、ぇ……。あぁ……あっ! ……こんなことして、ちゃダ……ぁンンッ!! な……のに、
ぃィッンっ! んウーぅッ!!」
くちゅっ……ぐちゅっ……。ぬに……ぬちゅっ、ちゅうっ! ぐちぃ、ぬぷちゅっ……くぷっちゅ! ぬぱちゅぶぷちゅぷっ!!
木を削る「しゅるっ……しゅるっ……」という小気味のいい音とは似ても似つかぬ音が、沙都子が腰を拗らす度に聞こえ、
次第に引き伸ばされ……そしてついには粘度を伴って、職員室に鈍く響く様になりました。
胸にきつく手をやり、そんな自分が奏でる音に嬲られて、今にも入江が来るだろう恐れと、それでも止められない淫行に、
沙都子は目元に涙を浮かべて切ない喘ぎを零し続けます。だから下駄箱のすのこの上で慌しく
スリッパに履き替える音と、その彼が廊下を駆けてくる足音に沙都子は気付いてはいません。
それからすぐに職員室の扉が開けられると同時、そこで沙都子はやっと彼の到来に――敵の接近に気付いた
小動物の如く――警戒の眼差しをそちらに向けます。
「さと……っ、沙都子ちゃん? 梨花…………ちゃん……? どこ、に……ベッドに、いるのですか?」
一見すると、入口からは無人の職員室に見えるのでしょうが、入江は他の場所へ探しに行くことなく、
この保健室に歩いてきます。
今から少し前に、梨花が電話で「――で、沙都子が急に胸を押さえ出して……。恐らく心臓が肥大化するっていうアレね、きっと。
胸がデカいと心臓疾患に罹りやすくなるって聞いていたけど……って言うか、
心臓肥大化がそのまま豊胸になるんじゃないかしら……。女の武器を得るか命を取るか…………そんなの決まっているわよね。
私も沙都子もまだこれからなんだから! とゆーワケだから、入江。今から、私の沙都子の制服を
バチオペしに来なさいよね」という頓痴気且つ嫉妬に塗れた知らせを受けたからです。
医者の彼がよもや、梨花の戯言を真に受けたわけではないでしょうが、九月の炎天下に自転車を飛ばして
きたのでしょう。入江は肩で息をし、額には大粒の汗が光っています。
鷹野が一線から退き、彼女の分まで入江が雛見沢症候群の治療と撲滅に心血を注ぐ傍ら、今まで通り村人の
健康も見守る彼を呼び出すなどという暴挙を、どんな理由があるにしろ許してやる道理はありません。縁結び
の神様として、これから行われる部活で梨花をこてんぱんに負かし、罰ゲームはレナのおもちゃにしてやるのです。
ちなみに僕と沙都子とぼんくら梨花の三人は、今はかくれんぼの真っ最中で、六時間目の授業が終わる
のを待っているのですよ。
沙都子は入江の声に緊張を和らげるも、それも一瞬。椅子の肘掛けに跨ったあられもない自分の姿に脱兎もとい、
逃げるザリガニの如く肘掛けから後ろへ大きく飛び退きましたが……。
「きゃうンっ?!」
着地地点を見誤り、図らずも肘掛けから肘掛けへ……。テーブルを挟んだ向かいのソファの肘掛けにお尻から落ち、
さらに後ろへぴょーんと跳ね飛ばされ……ばったーん。
「…………えっ……と。沙都子、ちゃん……?」
リング下に投げ落とされたレスラーの如く、仕切りを押し倒した沙都子は入江の前で大股開きのひっぷ
あたっくを披露しました。
「か、監督…………きゃっ!!」
ぱんつじゃないけど恥ずかしい沙都子は強かに打ったお尻と頭の痛みも忘れ、全開に捲れ上がっていたスカートを
女の子座りをして取り繕うのでした。
「いやー。元気な様で何よりです。安心しました」
「お……ほほ。お恥ずかしいところを、見せてしまいましたわ……」
出された麦茶を美味しそうに飲む入江をよそに、沙都子は胸を押さえ、革張りのソファの上で縮こまっています。
その頬は未だに赤く、クーラーと麦茶で人心地の付いた入江とは対照的。薄く開いた口からは濡れた
舌先がちろちろと見え隠れし、渇くくちびるを舐めています。
「……ところで沙都子ちゃん。さっきからずっと、胸を押さえていますが……どうしました?」
「これは…………あぅ」
(……困った顔といい、沙都子が「あぅ」って言うと、可愛さ爆発ね!)
(……そこの覗き魔女がうるさいのです)
今さら隠す間柄でもない入江の目から隠そうと、沙都子は両手で胸を掻き抱こうとします。
(って、沙都子がなぜ胸を隠しているのかなんて、あんたならさっきの電話で知っているはずでしょっ!)
入江は椅子から立ち上がるとテーブルに片膝を付き、その長い腕を沙都子に向けて指先を伸ばします。
「沙都子ちゃん……? それで隠しているつもりですか〜? えい」
ぷにゅ。
「やあっ?!」
はたしてこれも「頭隠して尻隠さず」と言うのでしょうか。
強く抱き締められた胸が両腕の“上と下”から盛り上がり、はみ出た“肉”が制服の生地をぱっつんぱっつんに
張り詰めさせます。そのあまりにも発育の良すぎる胸は、沙都子の細い腕などでは到底隠し切れるもので
はありません。そして入江の猛攻は続きます。
「それ! そら! とう!」
ぷにゅんぼにゅんぐにゅん。
「あっ、あんっ! やっ! いや……アっ!! か……監督、お止めになっ……うンッ!!」
沙都子はなおも無駄な抵抗をし、入江の手によって性感が刺激され……引いては、声が色めいたものになっていきます。
入江はさらに沙都子へ肉迫。その小さな身体に跨り、至近距離から本格的に攻撃を仕掛け出します。
「ナウマクサンマンダーボダナン……。アビラウンケンソワカ……」
「な…………なんですの……?」
ふざけたときの能天気な声にしては低い、真剣味を帯びた声に、沙都子が入江を見上げます。
真言を唱えつつ、にぎにぎと。その手付きは、かぁいいものを前にしたレナと、えろおやじのそれを連想させます。
「イリー、おっ破拳!!」
ぐにゅにゅぐっ、にゅう……。ぐにゅ、ぐにゅう。ぐにゅん……っ! ぎゅにゅん! ぐにゅ……むにゅ、にゅうぅ……。
「ンああーッ!! あっアふうっ! ぁ……は、あ……あンッ!!」
強弱を付けた愛撫に胸を搾られ、沙都子がもがき喘ぎます。これが沙都子の爆乳化の秘密。ふたりの愛の
成せる業なのです。
「……椅子の肘掛け。なぜか濡れていましてね」
「あ……! う……ぁ……。それ、は」
「どうです……? 沙都子ちゃん? 私の精液ではなく、自分の愛液を胸に揉み込まれるというのは」
「ふあ、アアあーっ!! 言わない、でそんなこぉンっ? ンあーッッ!!」
梨花のせくはら攻撃と一人遊びで弱っていた沙都子に、入江のこの胸攻めは止めとなりました。
「胸だけで、こんなに悶えて……。もっと私の手で……沙都子ちゃんの善がり乱れる姿を見せてください!」
「あっアっ! あ、ああーうっんむっ? ンう……ぅ……ん、ん…………」
さらに耳元で、沙都子のツボである愛の囁きが筋となって“女の芯”を貫き、細い身体がぴんと反り返って
――女の声が入江のくちづけに呑み込まれ、沙都子は身体を弓なりにして悦びに震えます。
「……一週間ぶりでしたから、沙都子ちゃんも溜まっていた様、ですね。……綺麗ですよ…………沙都子ちゃんっ!」
沙都子の媚態を目の当たりにし、それまで余裕を保っていた入江の箍が吹き飛びました。
甘い巨房を寄せては引き伸ばし、こねくり回しては押し潰す……。
獣欲に駆られた入江は制服の破れが拡がることも気に止めず、沙都子の双房が淫らに歪む様をてのひらで愉
しみ続けます。そうしている内に制服が“上に”、そのあまりにも大きい胸に引き上げられ、スカートの下か
ら丸見えとなったしまぱんがタイツを透けて、入江をさらに熱くさせます。腫れた股間を沙都子の太ももに、
腰を前後に擦り始めるとそれが合図となり、沙都子が入江の背中に回していた腕で白衣を脱がせます。ベルト
を緩めてズボンを下ろし、そして現れたのは長大な一物。容姿に反して入江は「馬並み」の持ち主なのです。
その日本人離れした男性器に、沙都子はてのひらで先走りをまんべんなく伸ばし付けると、入江の口からく
ちびるを離します。その際、ふたりの間に掛かる透明な橋を粘液に滑る指で絡め取り、艶めく口でちゅぴり。
そして上目遣いで八重歯を零します。
「くっ、沙都子ちゃん……っ!」
「……ええ。このまま乳内<なか>に……挿乳<いれ>てくださいまし」
梨花に破かれた制服の胸元を沙都子はぐにっと、その穴から覗く肉の谷間を拡げて見せ、“入江”を挿乳<さ>し込みます。
「くぅ……はア゙ア゙ッ!!」
どびゅどびゅっ!!
「あ……? もう……? あ、ああ…………熱い。な、乳内に出てますわ……」
ふぐりを残し、鞘が乳内に収まった途端に、入江が四肢を突っ張らせました。ソファを掴む指が白く、
腰といわず全身を戦慄かせ、入江は長く続く射精の間、けだもの染みた声で喘いでいました。
「はあ、ぁ…………。すごい量……。匂いも……ふぁ、ぁ…………」
「は――……っ、は――……」
沙都子と入江は交わった直後――ふたりにとっては性交と同義でしょう――のまま、抜かずの状態で熱い息
を吐いています。
「……うあっ?! あ、ああ……。今、退きます」
「まだ…………。すぐに、綺麗にしますわね……」
沙都子がソファの上をずり下がることでずるりと乳内からペニスが引き抜かれ、未だ硬くそそり勃つモノが
びたんと童顔を叩きました。それで顔が汚れるも沙都子は気にせず、大きく口を開け、黄ばんだ樹液に濡れた
長幹をその洞の中に呑み込んで、ちゅうちゅう……。どうやら沙都子の言う「綺麗にする」とは外観ではなく
その中、管を指している様です。
余計なお世話でしょうが、その愛くるしい小顔で咥えられたら……それも愛して已まない沙都子のフェラ
では、入江が黙っているわけがありません。
「どぷどぷどぷっと、愛しの沙都子ちゃんに喉奥射精――ッッ!!」
「んんッ?! ウッ……うぶっ?!」
相手の先を読むことに長けたトラップマスターなら、こうなることは解りそうなものなのですが……。
ですが、それが沙都子と言うものなのです。
「沙都子ちゃん。そのまま背中を浮かせて、はい。汚さない様、服を脱ぎましょう」
差し出された洗面器に首を振り、沙都子は精液諸共、生臭い吐き気も腹に収めると、タイに手を……掛ける
前に、しゅるり。入江によって、制服のカラーからタイが引き抜かれます。
「あ……。ありがとうございます、わ……きゃ? え……あ……? いつの間に……」
間髪入れず沙都子を剥き、その上に白衣が掛けられました。
「……ふふ。北条家のご主人様たる者、この程度のことが出来なくてどうします?」
入江は沙都子の足元に恭しく跪き、気障な台詞を嘯きました。流石は賢者タイム。とても「愛しの沙都子ちゃんに
喉奥射精にゃり――んッッ♪♪」などと口走っていた男とは思えません。流石は賢者タイム。びっくりしたから
二回言うのです。あう。
「……一週間でこんなに……。ぶよぶよの塊で……あむ。濃くて喉、に……っ? へばり付い、んっ、んンっ!
ぅう、っッ! こんなに、お溜めになって、ま……ったくぅ……」
「暑い上に仕事が忙しくて。それに……ひとりで済ますなんて味気無いじゃないですか」
「う、ん…………。そう、ですわね……」
お腹に零れたモノは入江が拭き取り、それ以外――胸を上に寄せて、乳内と谷間の精液を一緒にしたモノ――は
沙都子が口で処理しながら、夏休み明けの日々を語り合います。
「どうでしょう、沙都子ちゃん。これを機に、制服を新調してみませんか?」
胸が大きく裂けた制服を見ながら、入江がそんな提案をしてきました。対して沙都子は首を振り、でもすぐ
に微笑んでお礼を述べます。
「だって、この制服は監督が、私の胸に合わせて、その…………おっきくなるたびに、仕立て直してくれた
から……。ですからまだ……」
「……ありがとうございます、沙都子ちゃん。では、このメイド服は来年の、沙都子ちゃんの進学祝いにということで」
入江は鞄からいそいそと皺一つないメイド服を取り出すも、沙都子の言に頷いて、入江は気持ちを切り替え、
沙都子の制服をちくちく。裁縫道具と医者の余技によって、制服の胸周りが再び成長を遂げます。
「…………あの、監督。このメイド服……待っている間に着てみて、もよろしい……ですかしら…………?」
「え? ええ。どうぞどうぞ」
仕切りに掛けられたメイド服を前に、沙都子は初々しいほどにおどおどでれでれして見せます。梨花同様、
沙都子のつんでれべるも相当に高く、見ていて微笑ましくて堪りません。
「……ちょっと、監督! そんなにじっと、私の着替えを見ないでくださいましっ!」
「無理です」
「そんなきっぱりと、あ、ああ……! 手に針が刺さり」「あいた!」「ほらもう! 言っているそばからぁ
〜!! まったく、このひとはもう……」
着替えの途中だった沙都子は肩を怒らせて、つかつかとヘッドドレスに長袖のブラウス姿で入江に迫ります。
「沙都子ちゃ〜ん。絆創膏の前にちゅうちゅうしてくれませんか?」「……仕方がないですわねぇ…………
はぁ……む」「え……? ぅわっ?! ちょちょ……っ! 沙都子ちゃん、これは」「……いあ、でふの?」
「のノッ! NOOOoooo――ッッ!!」
チャックをじー。馬おちんちんをぶるんと取り出して、お口にあむ。これは沙都子の『勘違い』というより
『さぷらいず』の様です。
「二かひもお…………お射精<だ>ひシタのにまだ…………こんなに硬くして……。しょうのないひと……」
(スカートも穿かずに、タイツ丸出しでちんこマイクにかぶりついている方がよっぽどイヤらしいわよっ!!)
いちゃつく沙都子と入江を、仕切りと仕切りの隙間から邪気眼を飛ばしている梨花の痺れが切れ掛かっている様です。
「ふふ……っ! おっぱひに……ん、ふ……ぁ。ふふ……挿<はさ>んで、あげますわね? ん……んん」
「くっ! さ……沙都子ッ……っ!!」
「うふふ……。好きなだけ、私の乳内でイって、くださいまし……。ねぇ……? 京介さん……」
フェラチオからパイズリ――それもボタンを外さず、ブラウスのボタンとボタンの隙間から乳内に、自重な
らぬ乳重で挿乳<さ>し込んで、胸元から顔を出した馬面、その鈴口を舌で穿り、生み出た珠の蜜をペニスごと
バキュームフェラで愛し。それを入江が達するまで…………否。
「落ち着いて沙都子ちゃ……ん! どっ、どうしてっ?! くっ、うっ?! ぐあ゙……ッ! ア゙ガア゙ッ゙ッ!!」
一回、二回、三回……。
入江がやむなく頭を掴んで引き離そうとしても、沙都子はそれ以上の喰い付きで。結果としてイマチラオの
形となり、入江の体力に気力が尽きようとも、愛する少女の変容に悲痛な声を上げる男の想いを引き裂いても、沙都子は“彼”を放しません。
「あは……すごいすごい。まぁだ…………まだまだ、でふゅわあぁ……。もおっと、もお……っと。うふふふっ!
……精液、飲ませて……はァ……む。くらはいまひぃ……ねぇ? きょうふえさん……ふふ、ふふふふふふ…………」
乳内から精液が溢れ、顔にブラウスが汚れてもむしろ嬉々として、沙都子は入江を搾り尽くしに掛かります。
…………万が一を考え、こうして張っていましたが、ここが「出時」の様……で、す……? ぐぐっ!
…………はにゅっ? うん……にゅーっっ!! …………は……。
「はにゅ――っっ!! 冷蔵庫が開かないのです――――っっ!!」
「この……淫乱メイドがあーっ!! いい加減、目を覚ましなさいッ!!」
「ンきゃふうっ!!」
「おぐふっ?!」
僕の代わりに梨花が板張りの床の上をついーっと滑り、どでか頭から沙都子のお尻に突っ込みました。
「ハローウ……ナイスバディー沙都子。それと……泥棒猫」
ゆらりと立ち上がって制服を払い、頭を振って流れる黒髪を正す少女の手には注射器。
「りっ…………梨花ぁ……。あな……っ。あなたまだ……っ? だっだってさっき、他の場所に行くって……!」
「くすくす……。躾の成っていないメイドには私の……熱いコレを、ブチ込んであげる」
顔の前にかざした注射器、そのガラスの筒にくちびるを寄せて、梨花は艶然と沙都子を見下ろすのでした。
続く
すみません。上げてしまいました。
>>138 乙
>>136 ウィルさんと理御たんの情事を熊沢さんがのぞいたりするのか・・・
なんか怖いなw
抜いた
金蔵にひたすらぺろぺろされるだけの理御
あぅあぅ
みー☆
沙都子と梨花は家族がいないし
魅音は、まさかあの婆ちゃん相手に自分をおじさんとは言わないだろうが
レナは家庭でも父親相手に「かな、かな」とか「かあいいよぅ〜」とか
あのアホみたいな言葉遣いをしてるのかな?
してない
家族の前じゃ普通の言葉遣いだったと記憶してる
そうか
愛欲 罪滅し編の続きを書いたんでメッセの人に読ませてみたら
「レナに見えない」と言われたから
レナ言葉に書き換えてみたんだが
そうしてみたら今度は物凄く不自然なんだ、父親との会話だと
レナはわざとキャラ作ってることがあるんだっけ?
ひぐらしのなく頃に 愛欲 罪滅し編B
好きだった男の子との関係が壊れ、さらに親友にその男の子を取られ
てしまった礼奈の心の傷は推し量りがたいものでした。
むろん私には何も言わないし、私も知らない振りをする以外ありませ
ん。
父親として、娘を傷つけた圭一と魅音には怒りを感るのが自然なので
しょうが、正直に言うと全くと言っていいほどそういう気持ちが湧い
てきませんでした。
なぜなら、あれ以来礼奈が私との時間を長く大切に過ごしてくれるよ
うになったからです。
それまでの礼奈は仲間たちと過ごす時間が一番楽しかったでしょうし
放課後も休日も目一杯彼らと遊んで過ごしていました。
娘の幸福を喜ぶ反面、寂しさと少々の妬ましさもあったのです。
しかしあの事件以来、礼奈が仲間と過ごす時間は半減しました。
なにしろ好きな男の子に捨てられた上、その男と元の親友が仲良くし
ているのを目の前で見せられ、しかも作り笑いをしていなければなら
ないのです。
居心地が良いはずがありませんし、他の二人も何かしらあったのだと
感づいているでしょう。
その二人も大の親友らしいので、結局二つの仲良しコンビに挟まれて
礼奈一人が孤立しているような状態なのでしょう。
部活動と称したレクリエーションも半減したようで、ちょくちょく早
く帰ってきては、私との安らぎのひと時を持ってくれるとなると怒り
どころか、感謝したい気分にすらなってしまうのです…。
その日、珍しく遅く帰ってきた礼奈と一緒に夕食を過ごしたあと、ふ
とした思いつきで酒をすすめてみました。
「ダメだよ、お酒はハタチになってからっ、ね?」
ちょっとおどけて抵抗してみせたあと、一口、二口と口に含み、思い
切ったように飲み下してくれました。
それだけで顔を真っ赤にして、ちょっとハイになって明るく笑い出し
た礼奈を見て、私も胸のつかえが取れたような気持ちになりました。
礼奈はグラスを片手でもてあそんで、ちゃぶ台の上に顔を乗せた、ち
ょっとお行儀の悪い格好で、屈託のない微笑みを浮かべながら
「ね、お父さん、またしようか…?」
とっさに何を言っているのか理解出来ずにいる私に
「お父さんね、あたしとしなくなってから一人でしてるでしょ?だか
らね、あたしはいいよ、またしても…」
私は自分の鼓動がギュンッと速くなるのを感じました。
確かに私は礼奈とのセックスが無くなって以来、自分でマスターベー
ションをして性欲の処理をしていました。
礼奈に気付かれないようにしていたのは当然のことですが、どこかで
見られてしまっていたのか、あるいは、礼奈が私の部屋のゴミ箱を捨
てる時にゴミの中にたくさん紛れ込んでいる丸めたティッシュとその
匂いに気付いたのかもしれません。
礼奈さえ応じてくれるのなら、またあの桃源郷のような娘との肉の快
楽に溺れてみたいという気持ちと、娘の言葉に待っていたように飛び
つくことへの抵抗感、自分の浅ましさに恥じ入る気持ちとが混じって
返事をしかねているうちに、礼奈は組んだ両腕に顔をうずめて寝入っ
てしまったようでした。
スヤスヤと寝息を立てている娘の安らかな表情に、ホッとしたような
、残念なような思いを押さえ込んで、私は礼奈の体を抱え上げて、子
供部屋に運び込みました。
中学生にもなった娘はかなり重くなり、もともと体力のあるほうでは
ない私にはキツく、階段を登る足が震えているのは情けない限りです。
娘の体をベッドに寝かせるとき、落としてしまいそうになるのを、か
ろうじてこらえて横たえました。
礼奈はまだ制服のままですが、起こさずに着替えさせるのはさすがに
無理なようです。
せめて体が休まるようにとスカートの腰のホックを外したとき、三つ
折りの白靴下を脱がして、その湿り気を指先に感じたとき、抑えよう
もなく男の淫欲が鎌口をもたげてしまいます。
そっと乳房に手を触れ、指先にコリコリと乳首の感触が伝わると…も
うダメでした。
もう終わりにしようと、あれほど決意したのに、覚醒剤中毒患者がど
んなに固く更生を誓っても、どうしても断ち切れないように私も再び
娘の肢体に覆いかぶさって行ってしまうのでした。
礼奈は寝入ってしまって全く意識が無いようでしたが、むしろそのお
陰で私も開き直ってセックスに没入することにしました。
カーッと熱くなった頭をブルブルを振って僅かに冷ますと、礼奈の頭
を両手で抱きかかえ、柔らかい唇に口付けして舌をねじりこみました。
かすかに礼奈が舌を絡めてくれたような気がしてギョッとしましたが、
呼吸が苦しくなったがゆえの反応だったようです。
長いディープキスを堪能して礼奈の甘く生温い唾液を味わった後、下
着を脱がし、自分のズボンを慌しく下ろすと、待ちかねたように勃起
しきったペニスがブルンッと顔を出します。
私は体格は貧弱なほうでしたがペニスに関しては人並み以上という自
信があります。
礼奈の性器は当然のこと全く濡れていませんが、それを補うためにペ
ニスの先から滴るカウパーを亀頭をハケ代わりにして塗りつけ、テカ
テカと濡れ光らせていきます。
そうしてもう一度馬乗りになると礼奈の両足を持ち上げ、容赦なしに
一気に突き入れました。
陰茎の根元まで礼奈の熱い膣壁に包み込んでもらうのは、体ごと礼奈
に包まれているような心地よさです。
奥一杯まで入れて、激しく前後に動いたり、礼奈の体を左右に揺らし
ていると、礼奈の表情が心なしか切なそうになり、呼吸が荒くなって
いくようです。
礼奈に意識がないことは障害にならず、むしろ私の興奮を加速させて
しまいました。
「ああっ、礼奈っ、好きだよ…」
私は礼奈を両腕でギュウッと抱き締めて可能な限り全身を密着させる
と無我夢中でペニスの出し入れを繰り返しました。
ズリュッ、ヌリュッという粘膜の絡み合う音が室内に弾けています。
久しぶりの礼奈との交わりとはいえ、酔いの残っている私はなかなか
射精に至らず、10分ほど填めた後、礼奈の柔襞に包まれたペニスから
間欠泉のようにドピュッ、ピュピューッと激しく精液を放ちました。
それは頭の芯が痺れるような背徳的な快感でした。
疲れ果てた私はそのまま礼奈のベッドで一緒に眠ってしまいました。
明け方に目が覚めたとき、礼奈がまだ眠っていたのをいいことに、礼
奈に判らないように後始末だけはキチンとして、私は子供部屋を後に
しました。
「してもいいよ」と言われていたとはいえ、眠っている礼奈の体を使
ってしまったことは、動物的な行いのようで、なにやら恥ずかしかっ
たのです。
翌朝、起きてきた礼奈と朝の挨拶を交わすときは少々緊張しましたが
どうやら気付かれてはいないようでした。
ふと思いついて「どこかに出かけようか?好きなところに連れて行っ
てあげるよ」と私が言ったのは罪の意識の裏返しだったのかもしれま
せん。
「…ん、そうだね、じゃあ引っ越す前によく行った、あの遊園地行こ
うか」と礼奈が答えたのは、そこに行きたいというより、せっかくの
私からの誘いを無下にするのは悪いと思ったからかもしれません。
引っ越す前というのは、もちろん茨城の事ではなく最初にここに住ん
でいたころ、つまり礼奈が幼いときに妻と三人で行っていた興宮の市
立公園遊園地のことでした。
この、かなり近いレジャー施設を選んでしまったことが、私たち父娘
に更なる哀しい思い出を作らせることになってしまうのでした…。
ひぐらしのなく頃に 愛欲 罪滅し編Cに続く
うーん
>>157 おつー
メイド理御たんがウィルさんにご奉仕する展開が見たいです我が主
むぅ
男のメイド姿かよ……と書こうと思ったら圭一という前例があった
男でも男の娘でもいいけどどっちかと言うとおにゃのこ理御たんがメイドのが見たいかな
いやいっそスカートで隠れて性別分からない状態でというのも捨てがたry
あぅあぅ
リオジェシの尻つねりプレイに妄想を掻き立てられているなんて恥ずかしくて誰にも言えないでござる。
朱志香の尻をぱんぱん叩きまくりたい
虐めて泣かせてMに目覚めさせたい
『沙都子っぱいに挿<はさ>まれて』の続きです。
今回はパイズリではなく、微えろに馬鹿話が主体となっています。
途中、沙都子の嘔吐描写がありますのでご注意を。それと中盤の末に、梨花と羽入の百合描写があります。
――ハローウ……ナイスバディー沙都子。それと……泥棒猫。
つるぺたな床を腹這いで滑ってきたつるぺた梨花は立ち上がるなり、そのつるぺたっぷりに驚く沙都子と入江に
そう挨拶をすると、まったく無い胸をぺしぺし叩きながら「『ぱちぱち〇んち』で巨乳化よ! ぼいんぼい〜ん」
などとどりーむをほざくわ「えぶりばでぃ」を「ないすばでぃ」って(笑)。冗句のねたが、梨花は魅音並みにおじさn
「…………羽入。アンタだけ、もういっぺん死に戻ってみる……? ジョーダンよ冗談。ジョークごっくん。……だっ、だからホラっ! 私が冗句を言ってあげたのに、そんな眼で怖がるんじゃないわよ……。……って言うかっ!
沙都子みたいな純真な村の子供が見たら真似しかねないから、今後は止めなさいよね。それとレナの前でも、
ゼッタイに禁止! ったく! あんまり危なっかしいことをするんじゃないわよ!」
「あ゙ゔゔゔ。ごれ゙ば梨゙花゙のお゙や゙じぎゃぐが寒゙がっだの゙も゙原゙因゙な゙の゙でず。ぞれ゙ど冷゙蔵゙庫の
ことはごめんなさいなのです。反省。なのでお詫びに、鬼に見つかったときに言おうとしていた決め台詞を言うのです!
呼ばれて飛び出てはにゅにゅにゅ――ん!」
「……濁点雑じりで煩い。それと、人を指さして寒がるな。止めに、その決め台詞パクリだから」
「あうちっ!」
「外人か!」
「とんでもねぇ。僕ぁ〜は神様なのです」
「だからパクるなっての!」
「それは梨花もなのです!」
「さて、と。これで掴みはおkよね」
「あう! ばっちりなのです」
「……でも、沙都子も入江も固まったままなんだけど……もしかして滑った?」
「それは梨花だけなのです」
「喧しい。いちいち話を胸に結び付けるんじゃないわよ。って言うか『地の文』を入れなさいよね、まったく。
まだアンタの視点なんだから、せいぜい体裁を整えて、それっぽく騙りなさい」
「語るなら、毎月ちぇりおっている梨花の方が」
「先に、口の減らない牛女を黙らせようかしら……」
「あううーっ?!」
がちん!
「ん゙んっ!」
手に持った注射器の針から液を飛ばして迫る梨花に怯えた羽入が後ずさると、彼女の角と八重歯とがぶつかった。
「……っと。大丈夫ですか? 沙都子ちゃん」
そうなる前にと、彼が間に入ってきたものの、それはほんのタッチの差で叶わなくて。
「ほ、ほほっ! ちょちょ……っと、びっくりしただけですわ」
入江は羽入の角についたソレを拭き、沙都子の口元にも医者の眼を向け、気にかけてくる。
「なかなかいい音がしたけど、それより沙都子。あなた、さっき様子が変だったけど……」
そう問いかけてくる梨花の眼。それは羽入も入江も、その眼と言わず表情は憂いに満ちていて……。
「ぁ……ああぁ……。おほほほほほっ! 大丈夫で……ぐ…………え゙あ゙ッ?!」
「沙都子ちゃんっ!!」「沙都子……?」
「…………沙都子」
あんなにも……今回は特に、ジューズよりもおいしく感じていた、彼の精液。
その入江がさり気なく、梨花と羽入から隠すように沙都子の顔についていた精液を拭き取る際にソレが口……
舌に触れるとだんだんと苦く。そして叔父の味を思い出した。
「だ、だっ…………だいじょう……ぶ。大丈夫で、すか、あ゙ッっ?! やあ゙、ぁ……げ、え゙はっ! ア゙が……
うえぐっ!! げあ゙ア゙ア゙ーッ!!」
だんだんと欲深く……異常に彼が欲しくなった。あのひとの、例の……鬼を欺くほどの衝動。
「…………すみません。すみませんでした……沙都子ちゃん」「沙都子、貴女は強い。強くて優しいレディ
なんだから負けるんじゃないわよ! 貴女の隣には私が! 女王の私が居てあげるんだから!!」
「沙都子、ご……っ! がんばるのですっ!!」
流し台に覆い被さって吐き続ける沙都子の両隣には、謝罪の彼と哀願の親友。それと後ろからしがみついて
くる温もりに、旨くコトが水に……事が運んでいることに、沙都子は笑った。
「監督はそんなに……謝らないでくださいまし。梨花も……ごめんなさいまし。私、またあなたを……」
「沙都子ちゃん」「沙都子ぉ……」
「ぁ、うぅ……」
「もう……みなさんして、まったく……。もう……えいっ!」
「あう?!」
ぐにゅん。
「……おほほ。スキ有り……でしてよ。羽入さん」
やんわりと入江と梨花を解きほぐしたり、羽入の双房を軽く寄せたりして気を逸らせ、汚れた流しを綺麗にする。
「をほほほ。梨花ったら、せっかくの美人さんが……あら。そうでもないですわねぇ……。
詩音さんが、巨乳と涙は女の最強の武器だと言っていましたし。でしたら、私の嘘泣きも胸も……恥ずかしい
くらいにありますし。けど、梨花の涙はもう、反則すぎですわね……」
「ヱっ? なっ?! ナニ沙都子っ?! ほほっ、頬に手を当ててきて……ゆっ、ユリキスねっ?!」
涙を拭ってあげようとしただけなのに、梨花はなにを勘違いをしたのか。意味不明な単語を、そのタコみたいに
すぼめた口で呟きながら、沙都子に抱きついてくる。
「は……はは……。はぁぁ……」「ちょっ?! かか? 監督っ?! いきなりへたり込んでどうしましたのーっ?!」
「ンなの、今になって腰に来たに決まってんじゃない。それより、私にもこのけしからんミルクタンクに
バチフェラバキュームをさせなさいって、ソレは今夜でいいのよ! クールになれ、私!
具合はっ?! 頭は大丈夫なのっ?! って言うか、あのぐげげ女房。私の沙都子に妙なことを吹き込んだ
りしていないでしょうねえッてソレは入江だ入江ええエエッ!! このヘタレ鬼畜眼鏡がああアアーッ!! よくも私の沙都子のでかぱいをろり☆ばくなんて、レアなシロモノに魔改造してくれたわねっ! 私にもしなさいよーッ!!」
「…………梨花……。あなた少し、頭の方を落ち着かれた方がよろしいですわよ……?
私は、だいじょうぶ。お見苦しいところを見せてしまいましたけど……もう大丈夫ですのよ」
「こんぐらっちゅれ〜しょーん!!」
「きゃっ?」「……なに、羽入? 私たち、これからコングラッチュするところなんだけど……んー」
「や……ンっ! り、梨花あぁん、みゅっ……んぷぱっ! い、をぷン、ん……」
羽入のファンファーレに驚いた沙都子の口が、それまで胸の谷間に埋めていた梨花が顔を上げるなり、
熱烈なキスによって塞がれた。
「あうあう、あうう あうう、あうあう♪
沙都子の『鬼の衝動』は、入江と梨花の愛によって最小限に沈静化。これでもう今までどおりシテいれば、
そんなに心配しなくてもいいのですよ」
「……鬼の…………衝動……」
いつもの、優しくもやや大人びた表情の羽入が『鬼』と。沙都子と同じく、あの性衝動をそう捉えた。
「本当……羽入さんって時折とっても鋭い、的を得たことをおっしゃいますのね……」
「アイタタタ。
爆乳同士で何が『鬼の……衝動……だと?』よw。やーい。この中二びょーウっ?!」
「沙都子、ぐっじょぶなのです」
「羽入さん。あなた、私の『アレ』が誰なのか」
沙都子は、すまきにした梨花の茶々を絞めて黙らせて、羽入を見つめて。
(梨花……もしくは、村の誰かから。まあ、知られたところで別に構いはしませんわ。それよりも……)
「沙都子、入江。しばらく僕と、大事なお話をしましょう」
それから入江の、渋くなった思案顔を見上げた。
派手に嘔吐をして見せて、先の淫行を同情でうやむやにできたと思ったのだけど、そうは問屋は卸してはくれなかった。
「道理で、山に籠って六月を越えても、この光景は拝めないわけよね」
「なのです」
「い、いや〜……。あ、ははは……」
「山に……籠って…………? 梨花? それってなんのことですの?」
水を注す為にも、沙都子は話の合間に質問を挿み込んだ。
「って言うか、沙都子爆乳化って、どの世界でも起こっていたのかしら?」
「世界によって人の性質は微妙に違いがありますですから。沙都子の身体的、身持ち次第。それと入江の、
沙都子への変質的な愛情がこの爆乳を生んだのですよ! あうあう♪」
しかし、見向きもされなかった。
「愛情と言うより、ペドフィリアってヤツよ、コレは。
沙都子はいつでも、どの世界でも所構わずぷるぷるしていたから、胸が欲しいだなんて思いもしなかったでしょうし?
……ねぇ、沙都子。試しに『あのー……にーにー? 男の人におっぱい揉んでもらうと大きくなるって聞きましたの……。
その……こ、こんなこと頼めるのにーにーしかいなくて。あの……うう……』って言ってみて?」
「えっ?! いいっ、イヤですわよ恥ずかしい」
「だったら僕が。
『あのーぉ……にーにー? ぁ……。男の人におっぱい揉んでもらうと、大きくなるって聞きましたの……。
その……。こ、こんなこと頼めるのにーにーしかいなくて、あの…………ううぅ……』
こんなんでどうですか?」
「誰がアンタが言えって言うか、細かいところまで雪〇声で演じられていて、べらぼうに上手いわねーっ!
ご褒美に、後でお腹を壊すほどシュークリームを奢ってあげるから覚悟しなさい!」
「あう〜ん! 梨花の太っ腹〜」
「太っ腹じゃなくて、梨花様とお呼び!」
「い、いや〜……。あ、ははは……」
「野郎がいつまでもデレてるんじゃないわよ!」
羽入の言った『大事なお話』は、まずは沙都子と入江の馴れ初めから話すことになった。
梨花と羽入のふたりは、ここではない別の雛見沢うんぬんの話を抜きにしても、こちらの話そうとする内容
……沙都子と入江の関係をすでに知っている節があった。
入江がこのざまなので沙都子がそのことを、羞恥に耐えかねついでに訊くと「「前からずっと覗いていたのです♪」」
などと異口同音でのたまってくれたので、もれなく新作トラップの実験台にしてあげた。
沙都子はともかく、猫を被る入江は、梨花と羽入の話術の前にたじたじにされ、そして止む無く沙都子と入江は
今日までの自分たちを話した。
六月の二十四日。沙都子の誕生日に入江から告白をされ――それから週に一回、それもすぐに土日となり、
夏休みに入ってからは毎日。時間と、ふたりの気力に体力の許す限り――胸を愛されて……その結果。
「ちなみにコレ……いくつあ」
「バスト89、アンダー60のHカップですが何か?」
「喧しいっ!!」
「きゃっ?!」「くっ……っ!」
「あう。胸では沙都子に負けたのです」
問い掛けを途中で邪魔されたからか。梨花が怒り、トラップに掛かったまま手に持っていた麦茶を投げつけてきた。
そこへ入江が割って入り、今度はしっかりと沙都子を守った。
「監督! あっ……ありがとう、ございますわ」
「…………いえ……」
彼が繕ってくれた、卸し立ての制服が濡れることはなく。制服の件も含め、沙都子は麦茶に濡れた広い白衣
の背中にハンカチを当てる。入江はでれでれと鼻の下は伸ばしてはいるものの、言葉数は硬いその一言だけ。振り向きかけた眼鏡越しのまなざしは、沙都子と交わることはなく。
「あうう……」
代わりに、羽入の悲しげな声が耳に届いた。
「ふん。すでに、歳の差夫婦が透けて見えるわね」
「そんな、夫婦だなんて」
梨花の物言いに、沙都子は頬が熱くなるのを感じた。
「あうう〜! 胸が邪魔で僕には、このとらっぷは抜けられきゅー!!」
「……そんなに胸が邪魔なら、私が手伝ってあげるわね……」
「あうう〜。これがほんとの、おっぱいがぽろり…………なの……ですっ!!」
『悪魔に挑む無謀な少年』と名づけた束縛系のトラップは、梨花のスリムボディを捕らえることは叶わなかったが、
羽入はその大きな胸が災いして全身を縛られていた。それと梨花が下から足を引っ張ることで、特にその胸が食い込み、隙間からはみ出た巨房が今にも制服のボタンを弾き、はちきれそうな様相で。それも羽入がトラップに、
その豊かな長髪を絡めてうにうにともがくと見事、てのひらに握られたねこじゃらしのように抜け出して見せる。
「……では、お話も済んだ様なので、私はこれで……あ。そうです、沙都子ちゃん」
新作のトラップの出来栄えの視ていた沙都子に、入江が鞄を手にして話しかけてくる。
「明日から念の為、注射を一日三回にして……ああ。そうすると、今週の分が足りなくなりますか……」
「でしたら……これから私も、診療所に伺いますわ」
沙都子もランドセルを背負って、入江の隣に寄り添う。
「あううー! まだなのですー! 僕の話を聞くのですー!」
帰りかける自分たちを、羽入があわてて回り込んで、保健室の出入り口を塞いでくる。
「……そうね。沙都子も入江も、もう少し、羽入に付き合いなさい」
「……はぁ。梨花までですの? 監督も素直に聞いて……まったく」
いつもはなにかと沙都子の肩を持ってくれる梨花も、今は羽入と真剣な顔で目配せをして、入江も椅子に腰掛けた。
まさかここにきて、自分と入江との関係を解消するように、なんて言うつもりでは……。それに入江の態度
もどこかよそよそしく。身を挺して沙都子を庇ってくれたその前……。思い返せばそのとき、彼の精液を吐い
てしまったときから……沙都子の好きな、やさしい顔は悔恨のまま硬く。
「沙都子。入江。ふたりを不安にさせるお話ではないのです。沙都子も知っている『症候群』のことについてなのです」
自分たちの顔色から思っていることを察した羽入の言葉に、沙都子はとりあえず胸をなで下ろすも、
入江の表情に変化は見られない。
「まず始めに。
僕も梨花も、ふたりの御付き合いを反対しているわけではないことを伝えておくのです」
「えっ?」「……っ?!」
次いで語った羽入の言葉に声をあげた沙都子の態度が、彼女にはいたく心外だったらしい。梨花は同じく
驚いている入江も睨み、今やそれが地なのではというはすっぱな態度で毒づく。
「……ったく。んなこと、当ったり前でしょう? って言うか、私の沙都子を嬉し鳴き以外で泣かせたら極刑
ものだから。OK? 入江」
入江の顔の前に白く細い人差し指をすくい上げるように指し出し、梨花は沙都子への愛情と剣呑を彼に突きつけた。
「お……っk、です。梨花さん」
彼女に気圧された入江は掠れた声で、思わず梨花をさん付けで呼んだ。
「よろしい。で、沙都子。
よりにも、私の一番の親友があんまりな態度を取ってくれちゃったから、あ゙〜。一言余計な羽入にツッコミ
入れる気が萎えた〜……と思わせて、打つべし! 撃つべし!」
「なんの! 神・無限のおっぱい!!」
梨花は肩を竦めたかと思うと、羽入に向けて右のジャブの連打を――胸を張ってガード。
そんな親友のじゃれあう姿――正確には、梨花の拳を弾いて受け流すたびに上下左右にたわみ、変幻自在に
形を変える羽入の胸に、入江の眼鏡越しの瞳もキラキラと揺れ、手は”わにわに”といやらしい手つきで。
口と言わず顔はだらしのない、助平顔に変わり果てて。
「……88の57。羽入ちゃんも〇学生にあるまじき、実に素晴らしいおっpあいいっ?!」
「……そんな慌てなくても……ヤキモチなんて私、焼いたりしませんわよ?」
ようやく……。ようやくいつもの、締まりのない顔つきになったおっぱい馬鹿に強がりを言って。
「後は、雛見沢症候群のことですかしら? ほほ。それなら毎日、あのお注射を打っていますから大丈夫ではございません?」
この村特有の風土病のことなら以前に境内で、入江たち大人と梨花を交えて話しているのを聞き、魅音の家
でも説明されたので知っている。だから自分の状態も、頭の中にいる『これ』の正体も沙都子なりに捉えてもいる。
「でも、あなたの場合はね、沙都子」
「家では梨花と僕とで。外では、さっきも言った様に入江としっぽりよろしくシテいれば大丈夫なのです。ですよね? 沙都子」
「え……ぇえと。あぅ……」
「シテいればってねぇ……。でもまあぶっちゃけ、セックスはストレス解消になるからって、私もいくつかの
世界でソレを、入江と発症したあの子たちとで実証してみたりもしたけど……」
「とゆーわけで沙都子。この場で入江をめちゃくちゃにシテおしまい! なのです〜」
「この淫獣。人の話をいちいち蔑ろにするんじゃないわよ」
「……監督をめちゃくちゃに…………」
「私は受け決定ですかって、沙都子ちゃん……?」
「沙都子。これが僕たちからの、最後の試練なのです。
ふたりのらゔいパイズリしーんを見せて欲しいのです。それも『もうひとりの沙都子』と仲良くできているところを、なのです」
「……? なに、その『もうひとりの沙都子』って? また中二設定?」
「そんなのじゃないのです〜! 梨花なら、その……ぁ……あううぅ〜……」
「ぁ、ああぁ……」
同居人が、かつてはとんだ不良娘、癇癪持ちだと。
雛見沢に来てからまだ二ヶ月ほどの羽入があの頃の沙都子を知るはずもなく。これも村人か、それとも梨花
が話して聞かせたのだろう。
羽入の浮かべた哀れみの表情に梨花も合点がいったらしく、すぐにその白い顔に同じ感情を浮かべた。
そしてオヤシロさまの生まれ変わりの少女は、ときどき自らを村の守り神だとふざける彼女の、やさしい泣き顔に
慈愛の微笑みを贈った。だと言うのに彼女<沙都子>は、またふたりの巫女に――そして入江に対し、妖しく瞳を細めて見せ……。
(…………く。さっき、あれだけ愉しませてあげたのに……彼女<私>はまだ、満足しませんのっ?!)
その胸の内で、沙都子は治まらぬ自分の劣情に恥じらう。
「でも、その前に。まずは私の用件を済まさせてもらうわ」
「……梨花ちゃん、も実は意外、と空気が……読め、ない人……なんですねー」
「――圭ちゃん。今、おじさんのこと呼んだ?
――はあ? 何でテスト中に、魅音に話し掛けなくちゃならねえんだよ?!
――園崎さん、前原くん。答えが埋まったら静かに見直しをしていてください。でないと、埋葬しちゃいますよ?
――魅ぃちゃんもやっと、オヤシロさまの声が聞こえたんだね。でも…………村を捨ててどこかへ行こうだなんて……そんなこと、魅ぃちゃんに限って、考えていないよね? あははははははははははははははははは!!
――レナのニーソバカ!! よりにも、何でテスト中にオヤシロモードになってんだよっ!! 先生に埋葬さr。
――今日の放課後は三人共、カレー菜園の肥やしになってもらいます♪
――アルェ〜?
――理不尽だあああ――ッッ!!
――あははははははははははははははははははははは…………はあ。で、圭一くん。『レナのニーソバカ』
…………かぁー。とっさの一言にしては不自然……だよね?
圭一くんってレナのこと、いつもそんな風に見ていたっていうことでいいのかな……かな…………?」
「あう? どうやら、今日の部活は無くなっちゃったみたいなのです」
「圭一の命も、亡くなり掛けているみたいだけどね……」
職員室の奥にあるこの保健室にまで聞こえてくるクラスメイトたちのやり取りに、放課後に穴が開いたことを知る。
「エアコンもないのにホント、元気よねぇ……って言うか。
向こうからの声は窓を全開にしているからとして、なんでこっちからの『空気を読め』が聞こえたのかしらねぇ……?」
梨花はベッド代わりの長椅子の上で脚を組み、優雅にじろり。麦茶を傾けながらこっちに来いと、入江に手招きをする。
「あう〜。文明の利器の勝利なのです〜。
それが『みおんくおりてぃ〜』というものなのです〜」
羽入は丸椅子に座って、クーラーの冷風を直に受けて和んでいた。
「ん〜、そう……ですねぇ。少し、落ち着かせる為にも先、に梨花ちゃんの用件を聞きましょうか」
入江はさっきからずっと、羽入の突飛な申し出を聞いてからソレを取り出そうとしていた。彼には恥じらい
というものがないのだろうか……? でも、そんなにも彼は……梨花と羽入の前だというのに。それに、自分
もまだ……彼を欲しているから。
「あう〜……。それで、空気嫁の梨花は入江に何の用があるのでででにゅにゅ――っ?!」
「だから、一言余計だっての。……ふん。用というのは他でもない。
入江。あなたのそのゴットハンドを、私の……私のこの胸にも、揮って欲しいの」
――少しだけ、私たちに時間をください。
入江はそう断って、梨花と羽入と入れ替わりに、沙都子を連れてカーテンの向こうに。
「カーテンに仕切られた保健室のベッドでふたりっきり……。
これじゃあ、あなたの言う『最後の試練』とやらが拝めないわね」
「あ……っ、あふぅ……」
梨花はガムの辛味で平伏させた羽入の上に腰を下ろし、味が薄くなってきたらまた一枚。ふたりの消えた
白のヴェールの前に陣取り、梨花は羽入を尻で躙る。
沙都子ばっかり胸を大きくさせて……。これ以上“差”を付けられるのは正直、面白くない。でも入江の、
沙都子を想う気持ちは解らないわけはなく。故に、入江に時間を、断ってもいいという選択肢を与え。
(……て。このペラい小娘はナニを偉そうに、上から目線でほざいているんだか……)
ガムの、鼻に抜ける辛さで頭もクールになったお陰で、己の矮小さを。そして何より、沙都子と入江のしあわせを
願う親友としての心を改めて自覚し……愛の囁くまま、いつもの様に。
「……あ、あうぅ……? り…………梨花……?」
「ん……」
羽入の声に梨花は曖昧に頷いて、指を……羽入のその硬く湾曲した角に添えた。羽入には苦痛……
苦汁としか感じていないものを軽減させてあげようと……五指一対で双角を撫で擦る。
梨花と羽入は、仲睦まじい沙都子と入江の姿を見つめていく内に、身体を重ね愛う関係になった。
「はあ……っ! り、梨花あぁ……」
「……どう、羽入。まだ辛い? それとも、気持ちいい?」
「ああん……イイのれ、すぅ……」
梨花の愛撫に羽入は、まるでペニスに手淫を受ける男性の、否――梨花に甘美極まる声で鳴いて魅せる。
「……羽入。もっと……鳴かせてあげる」
「ンあっ! あはああーっ!」
「んん……。くぁ……は……」
馬乗りになった羽入の背中からの微熱で「女」が疼き、股間でぐりぐりとウエスト越しにふたなりを刺激してあげる。
羽入のその硬さと声に。それと先程から聞こえ出した“ガヤ”と、カーテンの向こうからの声に嬲られ、
梨花は急速に上り詰めていき……。
「はあっ、あアっ! くはっ! あ! く、あっ……くうっ!」
びびくうっ!!
もどかしい弓なりの背中ではなく、胸と同様、こんもりとした尻に肉芽を押し付けて、梨花がまず達した。
「あああっ?! あうっ、うう――っ!!」
びゅびゅびゅるるっ!! びくっ、びゅくくっ!! びるる!! びぶしゃばるるるっ!!
「アひゃっ? うああっ!!」
股下からの不意を衝いた震えに、梨花は立て続けにトばされ……。
「えやっ? うっ、やあ……! でっ、でちゃううーっ!!」
ぷしゃ……しゃあああああー。
「あ、あうぅ……。梨花のおしっこが熱くて……気持ちイイのれすうぅ……」
「ば、ばかぁ……。そんなこといンっ! 言わ、ないで……」
羽入は脚で梨花の背中をぐいぐいと前へと押し、しかも“落ちてくる梨花の速度を緩めて受け止める”が如く尻を振って、
しかも同時に再自家発電までこなしている様だった。
「……なあ、岡村」
「そろそろ、隠れないか?」
「中の古手たちに覗いているのがバレたらまずいし、鬼が来るから……」
「監督と北条も中で……やっぱり、また」
「あんなからい黒★黒をかむ梨花ちゃんの口がなにかを……たぶんお尻の下の羽入ちゃんに話しかけているみたいだね。
そしてかわいいお尻をふりふりしていたらおしっこを漏らして……。おまるでおしっこする梨花ちゃん、絶・萌へーッ!! …………僕は岡村傑<すぐる>。キン〇マンじゃないよ」
「い、いや……そんな間違いは誰もしないし。それに、ガン見していたと思ったら、いきなり説明口調でなに言って」
「そして僕のとなりで保健室を覗いているのは、また沙っちゃんのおっぱい見たさに来たらまたまた監督に
寝取られていたことにへこんでいる、このへたれめがね青びょうタンは富田大樹<だいき>。
はっぱの絵描きさんと同じ『樹』だなんて……。豆腐屋だからってちょっとなまいきだよね? ゔぃんちょうタン
みたく『タン』なんて、つけてやるんじゃなかったよね? 駄めがねだよね?」
「オイーっ!! ナニそのツッコミどころ満載な、あからさまなこけ下ろしっぷりは!!」
「あ。やっと元気になった。それで僕たちは今、かくれんぼのまっさい中なんだよ」
「人の話を聞けよー!」
「あ。富田のココも元気にはみちん」
「うそっ!! ちょ……うっ、うぁ……」
※
「それで他には……。私には、用事はござ」
「はい、お話は以上です。ではさっそくぅおぷっ?!」
大事なお話があると、入江にこの保健室の白いカーテンに囲われた空間に誘われて。
こういうときの男女はですねと、こんなときばかりリードの上手な入江を長椅子のベットで膝枕をしてあげて。
「…………用件だけすませて、後は梨花とお愉しみ……。私が許したとたんに、ずいぶんと乗り気ですわねぇ?
……まったく。いつもはがつがつと、私の胸の中でいつまでも暴れているくせに」
「おぱっ! こっ……れ、はっなんとい、うおっぱい天獄ッ!!」
「ふあっ! くっ……お、おほほっ! ですから、お……おっぱい空間に引きずり込めですわっ!」
「イーッ!」
「ほほっ!」
起き上がろうとした入江の頭を、つい膝を上げて、胸で挟み込んでいて……。
「あ……」「ぅっ!!」
両手をどうしようかと……。だったら膝裏に回して締め付けて、もっと悦ばせてあげようと思いつき、
途中で偶然に手が、ソコに触れて。すると、自分が驚くよりも彼の方が強く反応して見せたので。
「……あは。監督ってば、梨花を相手にする前からこんなに腫らして…………ふふ……」
もしくは偶然などではなく、故意に……?
「……相変わらず、熱いですわよ……監督のおちんちん。ズボン越しでも分かるくらいに」
この胸の中の母が……それとも、自分の悪戯……?
それを確かめる術も気も、すでに沙都子の胸中には無く、自分たち“三人”を悦ばせる想いしかなかった。
「こんな長いと、取り出すのも苦労しますわよねぇ……」
一手一殺とばかりに、体育座りの膝からはみ出した脇乳に入江の右手を喰い込ませて、左手はおしりの下敷きに。
「……すぐに、済ませて差し上げますわ。監督が窒息する前に」
入江を撫で擦っていた悪戯な左手。その人差し指をズボンのチャックに挿し込んで、じじじ……と拡げ、
彼が苦労していたペニスを苦も無く、慣れた手つきで取り出して見せた。
続く。
保管庫にあった『沙都子っぱいに挿<はさ>まれて 1TRAP』は、タイトルにあるとんがりカッコが原因で
リンクがうまく張ることができていませんでした。それを本日に訂正しましたが、そのせいで『〜1TRAP』がダブっています。
なので、やや見苦しくなりましたことを伝えておきます(すみませんでした)。
会話ばっかし
ニーソバカって何?
みー☆
暇だぬ
んっふっふ
あうあう
にゃー
むぅ
カナカナカナ・・・
194 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/19(日) 21:22:38 ID:Z9Acjjon
古手梨花容疑者(12)がワインの中に覚醒剤を所持していた疑いが強まったとして、
警視庁は7日、覚醒剤取締法違反(所持)容疑で逮捕状を取った。
同庁が東京都港区内の古手容疑者の自宅であるプレハブ小屋を家宅捜索し、
微量の覚せい剤が押収されたという。
古手容疑者は、同居している自称神様の古手羽入容疑者(12)が3日に覚せい剤取締法違反(所持)容疑で興宮署に逮捕されたあと、
友人の北条沙都子(12)とともに行方が分からなくなった。
沙都子は6日、東京都内の古手容疑者の知人、赤坂衛氏の家に預けられていたことが確認された。
古手容疑者から託された赤坂氏が3日から預かっていたという。
部活メンバーによると羽入容疑者の逮捕直後から、古手容疑者宅の電話がつながらなくなった。
同庁幹部によると、4日夕に1回、山梨県内で古手容疑者のロリ電波が検知されたが、
その後は再び電波がつながらない状態となったという。
195 :
放課後:2010/12/20(月) 00:44:23 ID:EdmHSasd
注意書きなど
理御(金蔵率75%)が男で朱志香をいじめているだけ、挿入なし。1985年。
196 :
放課後1/4:2010/12/20(月) 00:44:44 ID:EdmHSasd
ふんふんふーん。ぱんぱんぱーん。鼻歌と乾いた音が、放課後の生徒会室に響く。
防音対策はしっかりしているようで、それらが外に漏れることはなかった。そして、ふたつの音の間に、弱々しい声が混ざりこんでいた。
「んッ!ぅ、やぁ……も、やめて……いた、っ」
ぱしん。またひとつ、音が鳴る。涙ながらに許しを請う少女は、彼女の尻を無遠慮に叩く青年を見上げる。
彼はゆったりとソファに腰を下ろし、膝の上に少女の腹を乗せて。もうかれこれ一時間ほど折檻を続けていた。
「駄目ですよ、朱志香。私の可愛い妹が、こんな点数を取ってきたとは。お仕置きが必要なことくらい、分かるでしょう」
彼の視線がソファの前にあるテーブルに向く。繊細なレースのテーブルクロスの上に、乗っているのは一枚の紙切れ。
先日の期末考査にて、右代宮朱志香が解答した答案用紙だった。点数は……百を満点とするなら、どう考えても喜ばしくない程度。
故に、負い目を感じている彼女は、おずおずと口にする。
「それは、……悪かったよ。でも、きゃぅ!」
腫れた尻を気にしながら、弁明を試みた。けれども、それは彼の指先ひとつで封じられてしまう。
「いけませんね。お尻を叩かれて、こんなに興奮する子は。世界中の何処を探したとしても、……あなたひとりだけですよ……?」
一言ずつ区切りながら、尻を離れた彼の手は、少女の内股へ伸びていた。スカートをくぐり、下着の上へ。
既に湿ったそこを弄ばれ、朱志香が甲高い悲鳴を上げた。
「こ、興奮なんかっ、してない……!」
声高に叫んだところで、所詮砂上の楼閣のようなもの。ひちゃひちゃと、粘った水音が耳にこびり付いて離れないのだから。
朱志香はそれを追い出そうと、頭を振った。
「んやあ!」
だが、そんなか細い抵抗など無意味で。強く嬲られ、簡単に身体は疼いた。
197 :
放課後2/4:2010/12/20(月) 00:45:19 ID:EdmHSasd
「あぅ……だめ、だよぉ……にいさぁん……」
思わず、そう呼んでしまう。何時もはからかいと、ほんの僅かな羨望を込めて『次期当主』と呼んでいるのに。
今、彼女が理御を兄と呼ぶのは、皮肉なことに。この許されざる時間に限られている。
兄と妹であるにも関わらず、ふたりは幾度も身体を重ねてきた。無論、最初は強要されて。
性的なことに疎かった朱志香は、初めそれがどういった意味を持つ行為なのか理解できず、ただ痛みに怯えていた。
だから、何時ものちょっと口喧しいけれど、優しい兄に戻って欲しくて、そう彼を呼び続けていた。
「ぁ、ひ。うく、……ッ」
けれど、今ではもう。兄に犯されている自覚に、更なる興奮を覚えてしまっている。だから、そう口にしてしまうのだ。
それを彼女の理性は恥じている。でも、本能が打ち勝ってしまっていた。
理御は妹を見つめ、柔らかく微笑んだ。けれど、口にするのは刃ばかりだ。
「物欲しげな顔で言われても。説得力ありませんよ?」
「ちが、ひぁ。あっ」
下着越しに、少しだけ指を埋める。沁み出した液体を指に絡め取り、舐めた。
妹の甘ったるい味に、兄は満足気に目を細める。視界の端に、真っ赤に顔を染めた少女を留めながら、予定を滞りなく消化していく。
「今日はこれを使いましょう」
彼がポケットから取り出したのは、白くて小さな。朱志香は、先程より更にうろたえながら眼を瞠る。
「な、何、これ……」
「あなたのものでしょう?何知らんふりしてるんですか」
その通り。昨晩使用後、巾着袋に入れて、更に数重に渡って仕舞い込んだ品。自室から出したことはない。
自分以外の人物に晒したこともない。だというのに、自身ではない彼がそれを持ち、ここでそれを見せ付けてくる。
その事実に、見っとも無く少女は困惑し、狼狽した。
「ちが、あ、私は」
「言い訳は嫌いです。ほら、立って」
ふらふらと、少女が言われるままに立ち上がると、まだまだ兄の追い討ちが続く。
「ああ、服は脱いで畳んでおきなさい。皺になると母さんに怒られますよ」
198 :
放課後3/4:2010/12/20(月) 00:45:40 ID:EdmHSasd
視線が突き刺さるのを感じながら、それでも、いや、尚のこと身体が火照っていくのを感じていた。
震える指先で制服を脱ぐ。リボンを取り、ブラウスのボタンを外し、スカートを下ろして。
下着姿になっても、理御は何も言わない。言う必要がないからだ。今更、言うまでもない。
朱志香は、極力兄の視線から逃れながら、ブラジャーのホックを外した。ぷるん、とふたつのふくらみが開放される。
それから、下へ。濡れて張り付いた下着に手間取りながらも、それを脱いだ。
「ほら。私は忙しいんです。急いでくださいね?」
白い小物を投げる。たどたどしい動きでそれを受け取り、躊躇いながらそれを纏う。
既に濡れていたおかげで、何時もよりずっとスムーズに入り込んだ。
それを確認して、理御がスイッチを入れた。ヴゥ……ウンと、鈍いモーターの音が生温い部屋に響き渡る。
「ふああ!っあ、ひう……!」
濡れた秘部が無遠慮に抉られる。その度に少女が咽び泣いた。
「善がり狂いが、いいですね。あなたは気楽で」
「あっひう……ん!ああ……ぅっく、ひいん……」
「何自分だけ気持ちよくなってるんですか……?何時までその醜態を、私の目前で晒しているつもりです」
薄っすらと微笑んでいたが、眼は少しも笑っていなかった。狂いそうな快楽を必死で抑えて、朱志香は彼を窺った。
「早く。朱志香」
「ら、らって……ッあ、うう……!」
腰が砕ける。朱志香はのろのろと四つん這いで理御に近付く。ぴくん、と時折身体が跳ね、その度に崩れ落ちながら。
「今日は流石に中に出せませんし。それで我慢してもらうとして、さっさと舐めてください。噛んだらまたお尻を抓りますから」
彼は避妊具など好まない。だが、妊娠でもしたら後処理が面倒だ。醜聞とか、そんなことはどうでもいいし、行為ができぬわけでもなし。
が。臨月の前後はそうも行かない。両親を黙らせるのも面倒。面倒事は嫌いだった。だから、理御は朱志香に先を促す。
199 :
放課後4/4:2010/12/20(月) 00:46:04 ID:EdmHSasd
漸く彼の膝元に辿り着いた妹は、兄の下半身に手を伸ばしてそれを取り出す。
そして膨らんだ男根を、小さな唇に含んだ。
「んっ、んくぅ……」
「相変わらず下手ですね」
ローターの強度を上げる。朱志香の体が大きくしなった。
「ん!っふぐううう!!」
「ほら、ちゃんと根元まで咥えて」
後頭部を押し込むと、喉に当ったのか少女が僅かに咽た。
「ぅぐっ、……うぁ……む」
舌を回し、きゅ、きゅと締め付けたり舌先で軽く突いて。
「ほら、もっと吸いなさい」
言われるままに、じゅっと啜り上げる。
少しでも気を抜くと己の下半身に意識を持っていかれそうで。懸命に兄に奉仕することで、それを抑えるのだった。
理御は、限界を感じていた。快楽と羞恥でどろどろに爛れた少女を見下ろし、その肩を押す。
下半身に意識が行っているせいか、先端を軽く含んでいる程度だったせいで特に衝撃もなく妹の身体は崩れ落ちた。
その裸体に向かって、己の欲望を叩きつける。
「うぁッ!ふ、ぁ……、あつ、いぃ……」
白く汚れた体彼女を確認し、ズボンのチャックを上げて。理御は立ち上がった。
「それじゃ。私はもう行きますから。朱志香も寄り道しないように」
「は、……はい、うぅ……」
薄い肩が震えて、涙が零れ落ちた。
どうでもいいが舞台は生徒会室だ
親子丼もありだと思うんだけど、誰かくれ。おかしいなぁ、最初は家具×朱志香のほのぼのレイプだったのに
GJ! こういう理御もまた良いものだ
202 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/23(木) 18:59:01 ID:PaE2Riev
gj
キャッキャウフフしてるガプベアとか
やさぐれ縁寿の天縁エロとか
理御兄設定の甘々理朱エロとか
理御姉設定のもじもじ朱理エロとか
ifの世界でほのぼのしてる九羽ベアと理御とか
410と45のにぇにぇきゅーきゅーエロとか
ゼパフルに調教されるシャノカノとか
ゼパフルに調教される戦人とか
妄想のストックだけはあるのに
ストックだけは
クリスマスにこんなスレに書き込んでる人って恥ずかしいと思わないの?キモイよ
はじめてだから優しくしてね
207 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/26(日) 00:30:02 ID:d5zvwGmn
クスクス
208 :
いつかきっと:2010/12/26(日) 15:46:47 ID:tpnPqRus
EP8発売前にバトベア投下
時系列はEP3〜EP4ぐらい?
「むー、此処にもおらぬなー。」
今日も戦人をからかおうと戦人を探す――が、何処を探しても居ない。
もう一度戦人の部屋に行ってみる。
ガチャリ
ノックもせずに勝手に扉を開け、黄金の頭が覗かせた。
中に入りキョロキョロ見渡す。
「…、やっぱりおらぬ。何処に行ったのか…。」
ずっと歩き回ったので探すのに疲れていた。
「うー!戦人がいないとつまらぬつまらぬ!妾は退屈だッ!!」
そう言ってぷくっと両頬を膨らませ、ぼふっと戦人のベットに倒れる。
丁寧にメイキングされたベットはふかふかで気持ちいい。
シーツに顔を埋める。そのまま、すうっと息を吸った。
―――戦人の匂いがする。
「………戦人……。」
急に切なくなり、この部屋の主の名をぼそっとと呟く。
いつになったら、そなたは約束を思い出してくれるのか。
いつになったら外の世界に出られるのか。
いつになったら妾という存在を認めてくれるのか。
「………妾は…、いつまで永遠に拷問されればよいのだ…?」
悲しみや怒り、憎しみ…、いろんな感情が混ざりあって胸の底から強く湧き出た。
その感情は戦人に届くことはない。戦人が気づくまで待つしかないのだ。
ドレスの上から胸に手を置く。
戦人は、胸は大きい人がいいとそう言った。
ドレスを肩から少しずりさげた。
豊満な白い胸が現れる。
急に湧き出て、この混ざった感情を無理矢理でも消し去りたかった。
少しでも忘れたかった。
自身で胸をゆっくり優しく揉む。
「………っ…。」
むにむにと柔らかい感触が自身の手を通して感じる。
弄っていく内に、ぴんと乳房の先が立つ。
そして、ピンク色のそこを指でくりくりと自身で弄った。
時折そこを人差し指と親指でつまみ上げる。
「………んっ…、ぁ……。」
さっきよりさらに息が漏れる。ぴくっと身を縮こませた。
動かした足がシーツを擦る音を出した。
ドレスのスカートを上げる。真っ白なストッキングとショーツが覗く。
ショーツの上から指でなぞると少し湿っていた。
そして、花芯を探りあて布の上から擦る。
「あ……、ん……っ…。」
少し爪を立ててそこを弱く引っ掻ったり、指でつまみ上げたり、時折人差し指でそこを強く押す。
頬っぺがほのかに熱くなっていく。
指で弄るたびに太ももがピクピク震えた。
花芯がコリコリ硬くなっていくのが分かる。
次々に溢れて出てくる蜜がショーツを濡らしていった。
もっと快楽が欲しいとさらに火がついた。
ショーツを膝まで下ろす、秘部とショーツの間に糸が引いた。
指で秘部を触る。そこはビショビショになって愛液がぬるぬるとしていた。
指に愛液が絡み付く。
中に中指をゆっくり差し込む。
「ひぁ…っ、ああ…」
ぬるっと入った。指を往復させ抜き差しする。
中で自分の弱いところを探りそこを押す。
「んっ…はぁ…、ああ…!」
息が荒くなっていく。もう片方の手でシーツをギュッと握る。
体から汗が滴った。
まだ足りないとでもいうかのように中指だけでなく薬指も入れてそこを二本で掻き回す。
「…ふぁ…、は…、ぅ…!ああん…ッ!!」
グチュグチュと卑猥な音がさらに大きくなった。
親指で花芯もクリクリいじる。既に花芯は赤く充血して勃起しており、硬くなっていた。
喘ぎも激しくなり甘さを増す。
「…あ、あんっ!!…戦人…!ばと…、らぁ…っ…!!!」
ぎゅっと目を閉じながら、今、まるで此処にいるかのように…、彼に抱かれてるかのように、彼の名を呼ぶ。
シーツに顔を埋め、今は此処にいない愛する人の匂いを感じながら激しく掻き回す。
太ももがガクガクと震えた。そろそろ限界のようだ。
中がギュッと二本の指を絞りとるように締まる。
そして嬌声を上げて絶頂に達した。
「…やっ、ばとらぁ…!!!!あ、ああっ…!ああぁああぁっ――!!!!」
頭が真っ白になって、何も考えられなくなった。ビクビクと跳ねて体が仰け反る。
足がピンとはった。強い快楽が通りすぎる。
「ぁ…、はあ…、…はぁ…っ…」
肩で息をし、ぐったりと力が抜けた。
心臓がドクドクと鳴ってるのを感じる。
シーツが汗で少し濡れていた。
身体が重くてだるい。いつの間にかベアトはそのまま…まどろんでしまった。
――――――――――――――――――
「―――何してんだ…?」
まどろみの中、声をかけられ、目を見開き、上体を起こして、ばっと布団で自分の身体を隠しても既に時は遅かった。
目の前には、戦人が立っている。一気に顔が熱くなった。
自分でも真っ赤になっていくのがわかる。戦人の目に映る自分は、とても無様だろう。
「えっ、あ、……これは、…そのだな…。」
この場をごまかす方法なんて、あるわけがない…。
勝手に人のベットに入りこんで、胸をはだけさせ、スカートは託し上げ、ショーツを足にひっかけて、汗だくな自分の姿を見られて、他に誤魔化す方法なんてあるわけがない。
何をしてるんだろう自分は…人のベッドで。
あまりの恥ずかしさにうぅ…と唸ってしまう。まさに穴があったら入りたい気分だ。
「人がいないときにこっそり人のベッドで…、か…。」
「ふ、ふん…!…わ、笑うなら笑えばいいであろう…。」
開き直ったつもりだったが、肩がプルプルと震えた。
戦人は今、自分のことどう思ってるだろう…。
「…別に笑わねぇよ。ま、人のベッドでやるのはどうかと思うけどな。」
いっひっひと笑いながら言った。笑ってるじゃねぇかと心の中で思っていると、
戦人がつかつかと自分の方に近づいてくる。
そして身体を隠していた布団を引き剥がし、押し倒された。
「きゃっ…!い、いきなり何を…!!」
ずいっ、と戦人の顔が近づく。戦人の瞳に自分が映っていた。
「異性の部屋でベッドに忍び込む時点で…もう覚悟は出来てんだろ…?」
「それはちが…、んんん…っ」
いきなり口付けされる。
戦人の舌が自分の口内に入った。舌を絡められる。
「…んん…、ん、ふ……」
とろとろと舐められる。気付いたらベアトも舐め返していた。
互いの唾液が混ざり合う。水音と互いの吐息が静粛な部屋の中に満たされる。
たっぷりと絡められて、口を離す。間にとろっと唾液が糸を引いた。
ベアトはいきなりキスをされて戸惑っているのか既に顔を真っ赤にし、ぽうっとした目で戦人を見上げていた。
「あっ…!や、だぁ…っ…」
足に引っかかっていたショーツを取られた。
そして、脚を掴まれて大きく広げさせられる。
戦人は脚の間に顔を入れて秘部を覗く。ベアトの秘部は少し時間が立ってもまだ
べったりと濡れており愛液がてかてかと光っていた。
「…すげぇべちょべちょだな…。気持ち良かったんだな、よっぽど。」
「…るさい…っ…!」
恥ずかしそうに真っ赤な顔で戦人をきっ、と睨む。
しかし、戦人は舌でそこを舐め始めるとその表情はなくなった。
「…やめ…、…んんっ…」
一回イったあとだからかそこはさらに敏感になっていた。
蜜を舐めとっても次々と新しく出てくる。
ベアトの蜜が戦人の顎について垂れた。
「…っ、ぃや…っ!」
いきなり花芯を強く吸われて、びくんと足が跳ねた。
ベアトは指を噛んで耐え、ふるふると首をふった。
中に二本指を差し込まれて持ち上げられる。花芯と両方攻められた。
「ふぁっ…、ん…!」
無意識に戦人の頭を押し返すが、無駄な抵抗だった。
戦人は花芯を舌でつついたり、歯を立てたりする。
「…、んぁ…ぁ、…っ、…イっちゃう…」
その言葉を聞いて、戦人は行為をやめた。
爆発しそうだった快感が急に止まる。
ベアトはとろんとした顔をし、肩で息をしていた。
「はあ…、はあ…、ぁ…」
愛液がついた指を顔の前に差し出される。ベアトはそれをしばらく見た後、指にしゃぶりつき舐めとった。
独特のしょっぱい味が口に広がる。戦人の口の回りに付いていた愛液も綺麗に舐め取り、またキスをした。
「………んっ…。」
ちょっと暴れ回ったのからか、ベアトの綺麗に結ってあった髪の毛が少し乱れていた。
コサージュとピンを外す。黄金の波がシーツに広がった。
髪を下ろしたベアトは普段と雰囲気が違うようだった。髪の毛を手に取り、口付けを落とす。
「……もう待ちきれないか?」
「……っ、…く…。」
ニヤニヤと笑ってる戦人を悔しそうな顔で見上げた。
ベアトは我慢できないという風に膝を擦り合わせる。絶頂の寸前を止められたので不満なようだった。
秘部は早く中に挿れて欲しいとヒクヒク蠢き、蜜が垂れ、シーツを濡らしている。
そして、戦人もまた我慢の限界だった。
ベアトのそこをぐちゃぐちゃに抉って、味わい尽くしたいと肉棒がズボンを押し退けるようにギンギンに張っていた。
カチャカチャとベルトを外す音が聞こえる。
ビンビンに勃起した肉棒が覗いた。
早く早くと急かすように、先端には先走り汁が少し垂れている。
ベアトはそれをじっと見た。ドキドキと鼓動が高まる。
そして、戦人はベアトに覆い被さった。
「あぅ…、ぅ…。」
「はぁ…っ、ベアト…」
肉棒が秘部を擦りつける。蜜がにゅるにゅると滑り、絡み付く。
そして突き立てて、一気に奥に挿れる。
「…ぐっ…、…ぅ…!!」
ベアトの身体がびくんと跳ねた。
シーツをぐっと握り、歯を食い縛って、嬌声を上げないよう耐える。
戦人の肉棒は熱くて硬かった。指を挿れた時より太くて、強い圧迫感がある。
目を潤ませ、少し涙を浮かべた。
お互い熱をしばらく感じた後、戦人は動く。肉棒がゆっくりと出入りした。
ベアトの中は動きを拒むようぎちぎちと締め付けている。
「…んっ、んっ、んぅ…」
思いっきり甘い声を上げると負けのような気がして、口を手で塞ぐ。
揺すられながら、必死に我慢した。
そのベアトの行動に戦人は顔をしかめた。
そして、動きを止め戦人は口を開く。
「…………、声出せよ。お前独りの時は、気持ち良さそうにもっとエロい声出してただろ…?」
その台詞にベアトは目を見開いた。
「は………!?、まさか、そなた…!!」
冷や汗がダラダラ垂れる。
戦人はにやぁと笑った。
「ああ…、見てたぜ、最初から。」
「…んな…ッ!!!!!」
ベアトの顔がさらに真っ赤になった。耳まで真っ赤だ。
「毎回の如く、お前と血まみれな遊びに付き合うのはゴメンだからな。お前が俺を探してるとき、上手いように逃げていたら俺の部屋に入ったあとしばらくしても出てこない。罠でも仕掛けてるのかと思って覗いたら…」
「………〜っ!?こ、こここここの…ッ、ド変態っ!!……ひあぁああ…ッ…!!」
いきなり強く突かれる。
ベアトは嬌声を上げた。きゅんと奥が締まる。
「…っ、勝手に、人のベッドでエロいことしてた奴に言われたくねぇなぁ…」
「あっ、あっ、ぁ…!!くぁ…ッ、大馬鹿ものぉ…っ…!!ああん…っ!!」
手首を掴まれシーツに押さえつけられたので、声を抑えることが出来ない。
ベアトは甘い声を上げて、されるがままだった。
「こんな風に俺にめちゃくちゃにされたかったんだろ…?」
「…やぁ…っ…!違う…っ…!あっ、あっ、ああ…ッ!!」
ぬちゃ、ずちゅと卑猥な音がなる。
ベアトの蜜と戦人の精液が混ざった。
「違う…?ここを自分の指でぐちゃぐちゃにして俺の名前を呼んでたじゃねぇか。」
「っあ…!言うなぁ…っ!!」
突かれるたびに快感の波が押し寄せて来て、よだれを垂らしてしまう。
激しさが増すとさらに甘く鳴いた。揺すられながら豊満な胸が少しぷるぷる上下に動くのを見て、戦人はその先端に吸い付く。
「ひぁ、だめ…、戦人ぁ…っ。ふぁ…あ…!」
下も上も攻められて、快楽に溺れ、喘いだ。
苦しくなって、吸い付くのを止める。
ベアトの胸の先端が戦人の唾液でてかてかと光っていた。
「はぁ…っ、あっ、あっ、あっ、戦人ぁ…!!ばと、らぁあ…!!」
あの時のように戦人を呼ぶ。まさか本当に抱かれるなんて思ってなかった。
「…っく…!ベアト…!」
抱いていると主張するように、戦人もベアトの名を呼んだ。
押さえつけていた手を離し、戦人はベアトを抱きしめて、ペースを上げて強く奥を突いた。
「ふぁ…っ…!!あぁあ…!ばとらぁ…っ!!」
ベアトも戦人に抱きついた。
離したくないと主張するように戦人の腰に脚を絡める。
互いの身体は熱く、その熱さは抱いているとさらに知らせるようだった。
戦人の汗とベアトの汗が混ざり、シーツに落ちる。
戦人の肉棒は今にも爆発しそうなくらい膨張していた。
ベアトの中は全て絞りだそうと締め付けている。そろそろ限界だった。
「…うぁ…っ、く…!ベアト…出すぞ…!」
「ひぁ…!ばとらぁあ…っ!」
両者ともさらに強く抱きしめる。
奥の奥に捩じ込み、絶頂を迎えた。
「あぁあああっ!!!!」
肉棒がビクンビクンと動くのを感じ、中に熱いのが勢いよく流し込まれるのが分かった。
ベアトは身体を反り、甲高い声を上げる。強い快楽が駆け抜けて、何も考えられなくなった。
抱きしめてた腕の力が抜けて、シーツに落ちた。
「はあ…、はあ…っ、はぅ、んん、んぅ…」
息が荒いまま口付けをする。息が整ってないので凄く苦しいが、
それでもお構い無しだった。互いの歯がカチカチとぶつかる音がなるほど、深く深く舌を絡める。
時折荒い息が漏れて、吐息を感じた。
「んんっ」
長い間口付けをし満足して離す、とろりと糸が引いて光った。
全て出しきった肉棒をゆっくりと抜く。
ベアトは身体をひくりと縮めた。
中から入りきれなかった精液がどろりと溢れる。
そして、戦人はベアトの隣にぐったりと倒れた。
「……戦人ぁ」
「……ん…。」
とろんとした顔でベアトは戦人の身体を軽く抱きしめて、名前を呼んだ。
まだ荒い息をしている戦人が軽く返事をしてこっちを見た。
1000年間待った。
この1000年間ずっとずっと会いたいと願った。約束を果たすために…。
『女の期待を裏切らないッ!』
ふと、第ニの盤で戦人が言ったことを思い出す。期待なんていくらでもしてもまた裏切られるって解ってる。
―――でも…。
ベアトは全ての願いを込めて戦人の唇にちゅ、と音を立ててキスをした。
END
GJ!!自慰ベアトかわええええ
バトベアありがとう
216 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/29(水) 01:36:42 ID:/WbRqslM
gj
217 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/30(木) 02:49:02 ID:avmW8pur
レナぁ
さて、これからはアウアウ×戦人と、ベルン×戦人の時代がくる訳だな
シチュ的には美味しすぎるかと思う
正直、戦人×八城はうみねこで一番ツボに来たかもしれない
新年あけおめ
これからは八代×戦人の時代だぜ!!
前スレで八城×戦人をこっそり希望したら
本編で叶ってしまった…これはハマれってことなのか
あ、あけおめ!
今だから言うけど
漫画でバトマリプッシュしすぎなのと
10年後に食べる、とかフラグ立ててるんで
戦人は真里亞とくっつくのかと思ってた
そうならなくて心底安心している
あっ誤爆した
ただ、八城は名前が致命的にダサいのが欠点
他は完璧だぜ
226 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/01(土) 19:08:54 ID:y2M6roSI
うー
EP8も終了して大分鬱憤が溜まってきたうえに、ネタも上がりつつあるな
ここも賑わうといいな
ゲロカスOKッ、ゲロカス上等ッ!!
ていうかゲロカスしかねえよ…
縁寿の戦人知的強姦とか幾子×戦人(十八)のいちゃらぶとか
GMバトラの上位組プレイとかネタはあるのに書く人がこないとなぁ……
230 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/06(木) 12:59:38 ID:9N6Gcl3o
くくく
幾子さんと十八の濃厚な12年性活を想像するだけでもう
さぁ文章に!
まとめサイトみたけど、ロノウェ×お師匠様ってないんだね…。
この二人のエロは言葉攻めロノウェと純情お師匠様でいいのかな?
うみねこ完結後にロノワルな俺はどうすれば・・・
>>233 もっと需要なさそうなロノベアが読みたいな
イメージは有閑マダムとツバメ
なぜ理御×戦人が流行らない!
ヤス的思考でいけば問題なし
全てが猫箱の中だからどんな組み合わせがあっても不思議ではない。
つまり何が言いたいかっていうと郷田さんや南條先生にも幸せな出会いがあってもいいと思うんだ。
郷田はベルゼブブに告白されてたね
ロノウェ(の作った料理)より郷田(の作った料理)の方が好きよ、って
ベルゼにはその括弧の中が1番重要だろうw
八城十八×寿ゆかり
十八がまだ車椅子になる前の頃、戦人の記憶に苦しめられ
衝動的に家を飛び出した
見知らぬ場所を彷徨っているときに偶然ゆかりに出会う
お互い名前も身の上も明かさぬまま、一夜の関係を持つ
とか考えたけど無理あるかな
猫箱だからいいんじゃね
410 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/11(火) 19:05:38 ID:X3QVjZyQ [1/3]
ああっ、もうダメッ!ぁあ…縁寿出るっ、縁寿出ますうっ!!
ビッ、ブリュッ、ブリュブリュブリュゥゥゥーーーーーッッッ!!!
いやああああっっっ!!見ないで、お願いぃぃぃっっっ!!!
ブジュッ!ジャアアアアーーーーーーッッッ…ブシャッ!
ブババババババアアアアアアッッッッ!!!!
んはああーーーーっっっ!!!エッ、エンッ、縁寿ェェェッッ!!!
ムリムリイッッ!!ブチュブチュッッ、ミチミチミチィィッッ!!!
おおっ!縁寿ッ!!エッ、エンッ、縁寿ッッ!!!縁寿見てぇっ ああっ、もう
ダメッ!!はうあああーーーーっっっ!!!
ブリイッ!ブボッ!ブリブリブリィィィィッッッッ!!!!
いやぁぁっ!あたし、こんなにいっぱい縁寿出してるゥゥッ!
ぶびびびびびびびぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!ボトボトボトォォッッ!!!
ぁあ…縁寿出るっ、縁寿出ますうっ!!
ビッ、ブリュッ、ブリュブリュブリュゥゥゥーーーーーッッッ!!!
いやああああっっっ!!見ないで、お願いぃぃぃっっっ!!!
ブジュッ!ジャアアアアーーーーーーッッッ…ブシャッ!
ブババババババアアアアアアッッッッ!!!!
んはああーーーーっっっ!!!エッ、エンッ、縁寿ェェェッッ!!!
ムリムリイッッ!!ブチュブチュッッ、ミチミチミチィィッッ!!!
おおっ!縁寿ッ!!エッ、エンッ、縁寿ッッ!!!縁寿見てぇっ ああっ、もう
ダメッ!!はうあああーーーーっっっ!!!
ブリイッ!ブボッ!ブリブリブリィィィィッッッッ!!!!
いやぁぁっ!あたし、こんなにいっぱい縁寿出してるゥゥッ!
ぶびびびびびびびぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!ボトボトボトォォッッ!!!
ぁあ…縁寿出るっ、縁寿出ますうっ!!
ビッ、ブリュッ、ブリュブリュブリュゥゥゥーーーーーッッッ!!!
いやああああっっっ!!見ないで、お願いぃぃぃっっっ!!!
ブジュッ!ジャアアアアーーーーーーッッッ…ブシャッ!
ブババババババアアアアアアッッッッ!!!!
んはああーーーーっっっ!!!エッ、エンッ、縁寿ェェェッッ!
翼読んで留弗夫×ベルフェに萌えた人はおらんか
義理堅くて真面目なベルフェに色々教えて自分好みに仕立てる留弗夫とか
勿論その後は霧江さんによる音速嫉妬鉄拳制裁
鉄拳で済むのか
そして霧江は相手の女をお抹茶するイメージ
244 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/14(金) 02:41:07 ID:ifKZGj09
!
245 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/15(土) 08:36:37 ID:SM4kSOUv
紗音とセックスしたい
紗音のおっぱいに顔を埋めたい
紗代が戦人を襲うような話が読みたい 挿入なしで
何そのぶち殺す宣言
ふたなりヱリカが我慢できなくなって我が主にヤラせてと懇願する感じのを是非
250 :
sage:2011/01/25(火) 22:58:40 ID:7YNgAGIp
アニメ予告ネタのオネショリーチェとオネッティの失禁ネタとか
完結の高揚も冷めてきたから何か書こうと思うけど
何から書くか迷い中
書きかけなうちに本編でゲロカス呼ばわりされると
何となく書けなくなるなぁ
俺は好きだぜ、ゲロカス妄想。
445 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/01/29 19:54:58 ID:5jUythOi [9/13]
ヱリカ「あぁ可哀想にッ!本物のミステリーを読んだことがないんですねぇ!」
450 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/01/29 20:08:31 ID:5dfUGjvx [13/16]
紗音に「私、生物学上は男ですけど」っていわれて
人生どうでもよくなっちゃった譲治の犯行
453 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/01/29 20:11:23 ID:su5mez2U [2/2]
推理とかは別にして 誰を犯人にしたら面白いと思う?
454 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/01/29 20:12:11 ID:yPOQcwF+
ヱリカ「…可哀想に、同情しますよ?今の今まで、ミステリーと勘違いしてミステリーに憧れてそれっぽいものを書いている三流作者達の単純明快あっさり解決な駄文しか読まずに、高尚なる本物のミステリーを一度も読んだ事無いなんてッ!!」
「ああ!…でも寧ろ良かったんじゃないですかァ?貴方の脳が壊れるほど難しい物を読まなくて。……くすくす、ふっふふふふふふふ、あっははははははは!!」
455 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/01/29 20:13:28 ID:Juw0eQPC [2/4]
>>453 熊沢
仮面を剥がすとそこには瑞々しい肌をした美しい女性が…
霧江「明日夢さん…貴女、生きてたのねッ!」
458 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/01/29 20:14:43 ID:LZ+Tj3JJ [4/4]
譲治はヤスにちんこ生えていようがフラれようがntrれようが逆に興奮する
468 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/01/29 20:22:41 ID:ZGT/Fi3b [3/3]
マジレスすると 霧江の子が朱志香で 霧江と朱志香が共犯っていうのがよかった
480 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/01/29 20:41:10 ID:p9I5YvIC [2/2]
目が疲れてる時に女子力って言葉を見ると女ヱリカに見える
114 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/30 16:27:13 ID:GZtw/STb [7/13]
次回作は
金蔵主人公のエロゲ(基本レ○プゲーム)
留弗夫主人公のエロゲ(道行人達をナンパしてヤるゲーム。霧江に殺されたらゲームオーバー)
戦人主人公のエロゲ(幻想キャラ達とヤりまくるゲーム。縁寿に手をつけたら色んな意味でゲームオーバー)
さあ選べ
138 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/30 17:10:28 ID:9qwchVT5 [1/2]
戦人×真里亞とさくたろうじゃなくて
さくたろう(真里亞)×戦人になる予感しかしない
142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/30 17:19:32 ID:CnD52iaq
夏妃の実家は借金の形に娘を取られた挙句、神経症の患者のように書き散らされて
さぞ怒ったろうな
147 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/30 17:24:29 ID:O7GzxOMG [9/12]
>>114 天草、ウィル、戦人がヱリカ争奪を巡って熱い戦いを繰り広げるラブコメ
プレイヤーは3人の中の誰かを選んで動かし、ヱリカをゲットすべくアプローチをして好感度を上げて行く
間違った選択をして好感度を下げ過ぎたら他のキャラにヱリカを掻っ攫われる
初期のバロメーターの高さによって
イージー:天草
ノーマル:ウィル
ハード:戦人 と難易度が設定
ヱリカと戦人のエロが
ちょっと書いてみた。
こういうの初挑戦だから長くなっちゃったんだけど、一回にどのくらいの長さ書き込めるんだろ。
あんまり分割されるならここ向きじゃないかな?
暇な時に携帯でちょこちょこ作ってたら、よくみたら17000バイトになってた…
>>256 長くても構わないんじゃなおか?
俺は102分割くらまでなら見たしてん
>>257 ありがとう、最後もうちょっと修正したら書き込んでみるよ。
840 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/02 22:58:15 ID:IcGaGbMf [23/33]
ep6で結婚してから戦人とベアトは肉欲ざんまいだったのかな
毎晩どころか一日中ヤりまくってたのかな
841 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/02 22:58:53 ID:ALFsgRxB [1/2]
>>837 戦人は好きなのは“ヤス”ではなく“ベアトリーチェ”なんだから
熟女厨であってるだろ
845 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/02 23:01:30 ID:8x52FAfB [23/25]
ベアトリーチェを愛してるって創作のキャラを愛してるみたいなもんだから二次元厨みたいな感じなのかな
855 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/02 23:09:09 ID:wFrZhKy/ [2/2]
>>845 少し違うな…
小学校の頃に好きだった子を思って
二十年後もずっとその子を脳内で犯してオナニーしてる俺からしたら
金蔵は尊敬するレベル
920 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/03 00:10:33 ID:7vgiltuq [1/6]
ヱリカにお箸を突っ込んで焦らして「もっと太いのくだひゃいいいぃ」って言った所を「あれ?お箸がいいんじゃなかったの?」っていじめたい
どこに突っ込むとか猫箱だから変態とかじゃないから
そもそもなんでお箸だったんだ?
ヱリカの性癖に説明あったっけ?
>>258 ぺろぺろ
出来た!
とりあえず、初めての文なので変なとこあっても多目に見て下さい。
戦人犯人説、ゲロカスOKな人じゃないと読んでて嫌になっちゃうかも。
設定が微妙に本編と違っても見逃してもらえるとありがたい…。
261 :
1:2011/02/03(木) 12:31:52 ID:Z/ag4fTf
全てを猫箱へ閉ざし、平穏を取り戻した黄金郷。
繰り返されていたゲームも決着がついたことで、かつては敵対していたヱリカでさえも、渾身のトリック持参で戦人相手にミステリー談義にやってきたりするらしい。
ベルンカステルのような航海者達はまた退屈から逃れるために去っていったが、『千年後くらいに気が向いたら遊びにくる』と言ったその表情は穏やかだった。
戦人は一人書斎にこもり、窓の外一面に広がる薔薇を眺めながら紅茶を楽しんでいた。
領主の証であるマントと片翼の印されたジャケットを脱ぎ、いつもより少しラフな格好でいたにも関わらず、黄金郷の主として威厳と貫禄に満ちたその姿はただ座っているだけでも洗練された仕草を際立たせる。
「随分こ洒落たティータイムじゃない。」
自分以外誰もいないはずの書斎から突然響いた声に驚きもせず、戦人は薔薇園を見つめたまま答える。
「なかなかの眺めだろ?気に入ってんだ。」
ゆっくり振り向いた戦人は、やっぱり何の驚きもなく客人を迎えた。
「みんな弁当持って森へピクニックだと。ロノウェもついて行ったから美味い紅茶は期待すんなよ。」
戦人の前に黄金の蝶が集まり、センスのいいティーポットとカップが現れる。
空中で浮いたまま注がれた紅茶は、ほのかに薔薇の香りを漂わせながら客人へ振る舞われた。
「全然驚かなくてつまんない奴ね。」
「書斎に入ってこれるようにしてやったのは俺だぜ?」
「なーんだ、最初から気付いてたんだ。ますますつまんない奴ね。」
ドスンと音を立ててソファーに飛び乗ると、戦人は苦々しく笑った。
「まったく、相変わらず客のくせに図々しいやつだな。まだ千年どころか三ヶ月も経ってないぞ。ベルンカステルなら来てないぜ?」
戦人の前に立つのは、去ったはずのラムダデルタだった。
262 :
2:2011/02/03(木) 12:40:43 ID:Z/ag4fTf
ラムダは、戦人が黄金郷の平穏を勝ち取るために、傍観者でありながら共に死線を潜り抜け力を貸した。
そこまでさせるほどに戦人の“絶対”は強かった。
ラムダは過去に力を貸してきた絶対の意志を持つものの中でも、戦人の強さは筋金入りだと認めている。
でもそれは、中身が何であれ絶対の意志を純粋に愛すラムダには、戦人の意志に逆らえないような妙な感覚にとらわれてしまう要因だった。
誰の“絶対”に力を貸してやるかはラムダの気紛れではあるけれど、それすら戦人の“絶対”に引き込まれた結果のように思えてしまう。
力関係は圧倒的に自分の方が上なのにそんなことを思うのは癪だったので、それを気取られぬようわざとらしくおどけてみせる。
「をーっほっほ!あんたみたいに女心のわからないやつには理解出来ないだろうけど、離ればなれの時間だってなけりゃ愛は深められないのよ。ああ、私のベルン…今頃どこで何をしているのかしら。」
次に会う時はジャムのお風呂でホイップクリームのシャンプーをして、チョコレートのシャワーをかけてたっぷり愛してあげるからね。
そんなことを言いながら恍惚と語る自分に戦人が呆れたような溜め息を返すのを見て、ラムダはちょっぴり安堵した。
「ということで、別にあんたに用はないのよ。アウアウローラに呼ばれたんだけどいないみたいだし。」
「あうあう…って、あのフェザリーヌに?」
「ええ。楽しませてくれた礼をするって言われて立場上断るわけにもいかないから来たけど。どうせあの人のことだから、そんなこと言ったのも忘れて退屈のあまりボケて寝込んでるんじゃない?」
「お礼ねぇ…ろくなもんじゃなさそうだな。」
「ま、そんな訳よ。これアウアウローラにと思ったけど、仕方ないからあんたにやるわ。お茶菓子の足しにしなさいよ。」
ラムダは立ち上がると、フェザリーヌに渡すにしては大きすぎる紙袋を出した。
戦人は、彼女がしっかり黄金郷の住人の分まで手土産を用意して訪れていることを察して思わず微笑む。
「もう帰るのかよ?せっかく来たんだからゆっくりしてけよ。お礼をしたいのは俺も同じだからな。郷田のフルコースでもてなすぜ。」
「あんたまでお礼?何か気持ち悪いわ。まあ私を崇めたくなっちゃうのは当然だけどね!」
「失礼だな。まあ真面目な話、お前が力になってくれていなかったら今の俺たちはないからな。感謝は尽きないぜ。…ありがとう、ラムダデルタ。」
ラムダは次の言葉を言い淀んだ。
ラムダの力の恩恵を受け感謝する者は沢山いるが、人の情に脆い一面があるとはいえ残酷さも併せ持つ彼女を恐れない者はいない。
戦人のストレートな感謝の言葉に畏敬ではなく純粋な親しみが込められているのを感じ、少しの温かさと同時にそれとは真逆のざわつきを胸に感じた。
263 :
3:2011/02/03(木) 12:46:51 ID:Z/ag4fTf
「な、何よ改まって。私はあんたたちの言う最高のハッピーエンドが見たかっただけよ。この超パーであるラムダデルタちゃん様がほいほい力を貸すわけがないじゃない。」
「はあ〜お前も素直じゃねぇな。お礼くらい素直に受け取っとけよ。お人好しのくせに。」
戦人の言葉を最後まで聞くことを待たず、それなりに楽しげな様子だったラムダの表情から笑みが消えていく。
悦に入ってもいい場面なのだ。
なのにこの胸に渦巻く不快感はなんだ。
この馴れ合った会話を終わらせろと本能が知らせる。
ラムダは自分でもよくわからない不安感を振り払うように、場の空気も一変させた。
「…ちょっと。これまで何だかんだで見過ごしてやってたけど、あんまり私をなめてもらっちゃ困るわね。前にも忠告したはずだけど。」
それまでの無邪気な振る舞いからは想像できないような威圧的な光を瞳に宿して凄むラムダに、戦人は怯むことも、また謝罪することもなかった。
戦人は笑う。
それは不穏な空気を更にかき乱すような、挑発的な響きだった。
「別に悪ぶらなくなっていいじゃねえか。お前は何だかんだいいつつ、いつも俺の味方だった。お前は悪役じゃなくて“絶対”に律儀なだけだろ。」
忠告を無視されたのだから、今すぐ力で捩じ伏せて立場をわからせてやればいい。
頭ではそう思っているはずなのに、戦人の有無を言わさない眼光の強さがそうさせてくれない。
そうだ、私はなぜか戦人に逆らえない。
こいつはこの鋭さと強かさを武器に巧みに生き、黄金郷を作り上げた男だ。
ラムダの肌が、密かに粟立った。
「…っ!!?」
そのモヤモヤとした思考も、戦人の不躾な行為によって強制的にかき消されることになる。
自分がソファーに押し倒されたことを理解した時には、もう身動きがとれなかった。
それは体格のいい戦人にガッチリと組みしかれたからだけではない。
顔を上げれば嫌でも間近で絡む視線に息苦しさを覚え、無意識に目を逸らす。
「お前、怖いんだろ。」
戦人の逞しい身体にすっぽりと覆い隠され、体温まで伝わってきそうな距離にさすがのラムダも動揺を隠せない。
高級感のある真紅のシャツと、燃える様に赤い髪。
灼熱の地獄へ引き込まれたようでクラクラする。
なのに、氷のような瞳がラムダを突き刺すようにい抜いていた。
「地獄へ蹴落とす側にいて初めて安心する、か。それだけじゃない。自分の幸せも怖いんだろ。地獄をさ迷いながら、ありもしない温かな夢を見ているのかもしれないと。」
「…ヱリカね。お喋りなやつ。まったくどいつもこいつも随分私をなめてくれるじゃない。」
ラムダは過去のゲームの中でヱリカと語ったことを思い出した。
自分やベルンカステルの経験したことは、所詮他人に話したところで理解できることではない。
ただあの時は話してもいいかなと思った。
もしかしたらラムダも少しだけ、自分のことを理解して欲しかったのかもしれない。
264 :
4:2011/02/03(木) 12:55:01 ID:Z/ag4fTf
「絶対の魔女が現実を絶対と思えないなんて滑稽で笑っちまうぜ。」
どうせ理解されないとわかっていたことでも、一言くらいは言い返さねばあまりにも不様だ。
「あんたに何がわかるのよ。私はあんたみたいに出ようと思えば出れる地獄に甘んじてたわけじゃないわ。誰も助けにくることもない正真正銘の地獄から、死に物狂いで這い出たのよ。」
わかるものか。
この腕を掴む温もりも、惨めな自分が産み出した幻想かもしれない恐怖を。
目を閉じれば、あの肌を包むおぞましい空気すら鮮明に蘇る。
ああ、何でそれをわかっているのに今こんなにも固く目を閉じてしまったんだろう。
目を閉じることで何から逃げ出したかったというの。
戦人から?馬鹿げてる!
ラムダは自問自答を繰り返す。
でも本当はとっくに答えを見つけている。
戦人の大きな瞳が、その奥の冷酷な鋭い光が、そして長い睫毛が作り出す憂いのある影が、端整な顔に浮かぶ薄い笑みが、怖い。
身体中の血を沸騰させるのは、怒りだけではなかった。
ラムダは意を決して目を開ける。
目を閉じていた時間は十数秒ほどの短い時間だったが、心は軽い疲労感を覚えていた。
「…はいはい。笑えばいいわよ。もう離して。帰るわ。」
「逃げるなよ。」
戦人は尚も手を緩めない。
「逃げてないわよ。大体何のつもり?私を馬鹿にして笑うだけならもう用は済んだでしょ。」
「まだ、済んでない。」
ヒッと情けない声が出てしまったかもしれない。
唐突に、ラムダの肌を戦人の手が滑った。
それも本来ならドレスに隠れた場所である大腿を撫で上げられたことにより、嫌でも戦人の思惑を理解することになった。
「何すんの!?ちょ、ちょっと、ま、わ!」
覆い被さった戦人の唇が首筋をなぞる。
電流のように一瞬で、ラムダの全身に甘い痺れが走った。
「俺に見せろよ。夢か現実かわからずに苦悩しながら悶える不様なところ。お礼にもうお前の地獄は閉ざされたことを思い知らせてやるから。」
吐息が鎖骨に当たり、その熱さがゆっくりと下へ移動していく。
重なった身体から、鼓動が大きく響いた。
自分の?戦人の?
わからない。わからないけど苦しい。
「あんた正気?仮にも新婚でしょうが!ベアトを裏切るわけ!?」
流されてしまいそうな理性を振り絞って口にした言葉は、的確に戦人の動きを止めた。
安心していいはずが、なぜかラムダ自身の胸にもチクリと痛みが走る。
ゆっくりと顔を上げた戦人は、やはり高級感のある漆黒のタイをシュルシュルと緩めながら、口元だけで笑った。
まるでそれは課せられた枷を自ら外していくようだった。
265 :
5:2011/02/03(木) 12:58:13 ID:Z/ag4fTf
「俺を誰の息子だと思ってんの?」
「る、ルドルフ…」
「ベアトは好きで俺の傍にいる。俺は何も強制していないし懇願もしていない。」
戦人はラムダの癖のない柔らかな髪を指で掬い、キスを落とす。
そしてサラサラとこぼれ逃れるプラチナブロンドの輝きを楽しむかのように見つめ、再びラムダに向き直った。
「お前も本気になったら簡単に俺の腕からすり抜けられる。…お前は、好きで俺から逃げない。」
俺は、最初から。
…こういう奴だぜ?
そう耳元で囁いた戦人は、恐ろしいまでに冷たい瞳で笑っていた。
でもラムダは見てしまった気がする。
その瞳の中に、愛に裏切られ傷付いた悲しみが燻っているのを。
何よ。
あんただって怖いんじゃない。
無償の愛をもらっても、信じるのが怖い。
どうか自分の存在意義を愛して認めてと言いながら、裏切りを恐れて自ら孤独の世界へ足を踏み入れる。
やっと手に入れた安息の地でさえ信じられずに失うのではないかと、怯えてる。
ラムダを見下ろす戦人の顔に、赤髪がハラリと一筋垂れて目にかかった。
「…泣いてるみたい。」
「え?」
ああ、もうダメかもしれない。
ラムダの中で何かが崩壊していく。そして崩壊へ向けて亀裂の走った隙間から数々の謝罪があふれ出る。
ベアトごめん。ごめんなさい。
「…教えてよ、私が今ここにしっかりと存在してるって。拒絶なんかしないから、だから私を抱いてよ!幻想なんて吹き飛んでしまうくらいに!」
最後まで言えたかどうかわからない。
戦人の舌が絡む。
歯列をなぞられ、何度も角度をかえて口付けては急速に下半身に疼きを植え付けられた。
いつの間にか背中に回っていた手が素早くファスナーを下ろし、みるみるうちに淡いピンクのドレスから、白く柔らかい肌がさらけ出されていく。
戦人の手つきは荒々しいようで、至極丁寧だった。
ラムダも拙い動きながら舌を絡め、手探りで戦人のシャツのボタンを外していく。
直に素肌に触れると、恋しいような苦しい気持ちが込み上げた。
ラムダのはだけた胸元から、ベアトほど豊満ではないが形の良い膨らみがこぼれ出る。
羞恥を覚えるより早く熱い手のひらで包まれ、敏感な先端を口に含まれ、舌で転がされた。
「あ、んっ」
胸からお腹へ、腿へと戦人の唇が触れていく。
焦らさないで。お願いだから。
早く私を翻弄して。
ラムダは今にも飛び出してしまいそうな言葉を、最後の意地で飲み込んだ。
266 :
6:2011/02/03(木) 13:06:03 ID:Z/ag4fTf
「戦人…、…。」
「…ん。」
それでも戦人はわかっているというかのように返事をする。
その一連の流れに恋人同士の睦み合いを連想させられ、ラムダは軽い目眩を覚えた。
戦人は慣れた手付きでガーターを外し、下着をスルリと滑らせる。
そして既に疼きを誤魔化しきれなくなってしまったラムダの秘部に、躊躇いなく顔を埋めた。
「あ!!はあ…んん!」
花芯を舌で弄び、とろけた蜜を啜る。
ねっとりと舐め上げられるだけで腰が震えてしまうような快感に襲われる。
その間にも、戦人の片手は胸の柔らかな膨らみと先端の小さな飾りを愛撫するのを忘れない。
「ラムダ…お前。白くて柔らかくて…マシュマロみたいだ。」
戦人が大腿に軽く歯を立てる。
「あ、あん、んっ…」
もう、戦人の熱い吐息がかかるだけで全身が溶けてしまいそうだった。
「それから甘い。なんか、ほっとする。」
予想外に穏やかな表情を浮かべながらも戦人は再びラムダの秘部を舌でなぶり、中を指で探る。
クチュクチュと響く水音が嫌でも耳に入り、羞恥と興奮で余計に溢れてしまうのを感じた。
もう指では足りないと、全身が表していた。
「戦人…!舐めながら中もしたら、あ!あダメ、ん!」
「…我慢しないでイケよ。」
「やだやだやだ、あっあ…ああ!お願い入れて!戦人のでイキたい…私を一人にしないで!」
きつく閉じた目尻に涙の粒が溜まった瞬間、ラムダの中へ熱くたぎった戦人が一気に侵入した。
「ひああっ!」
「く…、う、キツイ。」
まだ幼い子供のように小柄なラムダには戦人のそれは圧倒的な質量で、身体の内側から壊されてしまいそうだった。
でもそれは痛みでではない。
頭の中が金平糖の花火でスパークして、毒入り蜂蜜の甘い痺れに全身を貫かれるかのよう。
「ばとら…ばとら!はあっ、あ、あん」
ラムダは戦人を受け止めながら無意識にキスをねだり、戦人もそれに応えて深いキスを何度も落とす。
「痛くないか?」
「痛くない…き、気持ちいい、ん、あ、ああっ、もっと…もっとして!」
ラムダの目尻に大きく膨らんだ涙の粒は、律動に合わせて今にもこぼれ落ちそうに目尻で揺れる。
生理的な涙なのか、感情的な涙なのかラムダ自身よくわからない。
267 :
7:2011/02/03(木) 13:08:14 ID:Z/ag4fTf
「…泣くなよ。」
戦人の唇が目元に押しあてられた。
どうしてそんなことするの。
強姦まがいなこと平気でする冷酷男のくせに、どうしてそんなに柄にもなく優しくするの。
その表情の中に、本当の戦人を知ったと錯覚してしまうじゃない。
ラムダは心の中で戦人の気紛れな行動を恨めしく思う。
「…泣いて、ない。」
「泣いてんじゃねえか。」
「そんなこといいから…お願い…ん、はあ…もう、私…」
「…わかった。」
戦人の律動が早まると、ラムダはどんどん高みに上りつめていく。
戦人もそれは同じらしく、苦しそうにしかめた顔はゾクゾクするくらい色っぽかった。
すぐそこに見える絶頂に向かって、離さないというようにラムダの中はヒクヒクと戦人のものをくわえ込んだ。
「あんっあっ、ああ、イク…もうイッちゃううぅ!!」
「はあ、う、く…!」
奥深くまで貫かれた瞬間、ラムダの膣は激しく戦人を締め付けた。その刺激に合わせ、戦人はラムダに深く身体をうずめて精を放った。
汗や愛液で卑猥に濡れた身体で重なりあったまま、乱れた呼吸だけが室内に響く。
まだしっかりと繋がった下半身だけでは足りないかのように、戦人はラムダを両手にかき抱き閉じ込めた。
ラムダもまた、戦人の身体の重みを心地よく感じながら、背中にしがみつくように腕を絡ませていた。
爪痕をつけてしまったかしら。
ぐちゃぐちゃな頭の中で、妙に冷静な考えが過った。
戦人が身体を起こす。
…寂しいなんて思ってしまったのは、今まで密着していた素肌が冷たい空気にさらされて寒かったからに違いない。
「また来いよ。ベルンカステルより愛してやるぜ?……俺はお前を逃がさない。」
はだけたシャツを直しながら言った戦人の表情には、愛し合う二人が身体を重ねて最後の壁を壊し、心が深く結び付いた時に生まれる穏やかさは…なかった。
「…バカ言うんじゃないわよ。今のはベルンと再会するまでのほんの暇潰しよ。あんまり調子に乗ると、ベルンじゃないけど最低最悪なカケラの深淵にぶちこむくらいはするからね。」
ラムダは戦人を押し退けて立ち上がり、足元に落ちたドレスを拾う。
どうしてか顔を見られたくなくて、戦人に背を向けて袖を通した。
268 :
8おわり:2011/02/03(木) 13:15:42 ID:Z/ag4fTf
背中のファスナーをあげるため身をよじろうとしたとき、一瞬先に戦人の温かい手が重なった。
意図を察し、大人しく身を任せて手を引っ込める。
愛してやるですって?
愛なんて“絶対”信じないくせに。
惚れた女も殺せるくらいに非情なあんたの言うことなんて聞いてたら、“絶対”報われないに決まってんじゃない。
ああ、あんたの言う通りこれはしっかり現実だわ。ほんとにしっかり教えてくれたわけね。
こんな苦々しい幻想、わざわざ地獄で夢見るはずがない。
ゆっくり丁寧にファスナーが上げられていく間の僅かな時間、ラムダの瞳から涙が一粒流れ、小さな小さな飴玉になってキラりと落ちる。
その輝きの美しさを誰も知ることのないまま、飴玉は砕けて消えていった。
絶対の魔女は最後に祈る。
願わくは、黄金郷での永遠の安息がいつか戦人を癒しますように。この黄金郷以外では叶わなかった彼の潔白は、悲しみと孤独で赤く沈んでいくのだから。
――――――――――――――
「起きていたの?とっくに眠りについたんだと思ってたわ。」
よく知った声が思考を遮り、フェザリーヌはほんの少し意識をそちらに向けた。
「…持て成しをせぬことを許せ、我が巫女よ。もう少し思考を楽しんだら梅干し紅茶とやらを入れてやろう。」
目を瞑ったまま告げると、フェザリーヌは再び思考の波へと意識を漂わせる。
「嫌に上機嫌ね。筆をとる楽しさが再燃したみたいだけど、どうせ人を好き勝手引っ掻き回した挙げ句飽きて投げ出すだけでしょ。」
ベルンカステルの言葉にはからかうような響きはない。
表情を見ずとも、彼女が辛辣にフェザリーヌを批難していることがわかった。
「そう厳しいことを言うな。私は序章の数行を書いただけ。気に入らなければ先を読まずに引き返すことも出来るくらい数行だ。」
ベルンカステルは訝しげな表情を浮かべながら、フェザリーヌの意図を探ろうと素直に耳を傾ける。
「そしてもし読み手が先を望んでも、私は干渉も鑑賞もしない。本に鍵をかけ、登場人物だけが見る束の間の夢を邪魔しない。私はその夢がどんな物になったかを想像することで、一緒に夢を見た気になって楽しんでいるだけだ。」
「…つまり、結局引っ掻き回して楽しんでるだけね。」
…フェザリーヌは、もう答えない。
このままフェザリーヌが沈黙を決め込むことを察したベルンカステルは、小さく舌打ちして踵を返した。
「やれやれ。ふらりと帰ってきたと思いきや所詮は野良猫、気まぐれなものだ。…こう不機嫌では、物語の配役を聞いたら鋭い爪で引っ掻かれ兼ねぬ。」
足音が躊躇いなく遠ざかっていくのを聞きながらも、フェザリーヌは引き留めることなく小さく笑う。
笑みを浮かべたまま目を瞑り、観劇の魔女は無限に広がるエピローグを楽しむのであった。
おわり
263 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/04(金) 22:51:35 ID:sdOktXEE
「真里亞お姉ちゃんバッカみたい、きゃーきゃっきゃっきゃっきゃっきゃ」がロリ縁寿の実像
423 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/05(土) 08:00:12 ID:BJHY58mK [1/11]
天草「お嬢、なにしてんすかっ!?」
縁寿「ハッピーバレンタイン、女の子のおしりからはマシュマロが
出るって聞いたことある?」
天草「いや、ないスけど・・・ていうか、なんかもう展開読めるんでやめて下さい・・・。」
縁寿「うるさいわね。今日はマシュマロじゃなくてチョコレートが出る・・・の・・・よッッ!!」(脱糞)
455 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/05(土) 10:16:30 ID:IGdEfmor [3/18]
留弗夫で運がいいんだか、悪いんだか分からんなw
2人が同時に妊娠→片方死産。でまた愛人が妊娠→妻死亡。
で家庭が二重になることないし。
って呪われてるな留弗夫…。誰か孕ませるたびに死人が出てる。
461 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/05(土) 10:39:03 ID:X6IjHCcp [2/13]
霧江明日夢同一人物説を捨てきれない
二人は同時に現れないというのが気になる
910 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/05(土) 19:21:04 ID:r8YPD1oD [15/17]
るどるふ「ぶきやぼうぐ、ひにんぐはただかうだけじゃだめだぜ。ちゃんとそうびしないとな」
932 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/05(土) 19:46:08 ID:gQ331Hd+ [2/5]
子供が出来ない夏妃に業を煮やした絵羽が留弗夫を焚きつけて種付けさせる同人誌ってある?
944 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/05(土) 20:00:42 ID:e74A0SAB [36/44]
「うー、秀吉おじさん、これなにー?」
「これはウィンナーや。美味しいでぇ、舐めてみ。」
とか言って真里亞が秀吉のちんぽぺろぺろする同人とか無いの?
967 :名無しさん@お腹いっぱい。:11/02/05(土) 20:23:39 ID:e74A0SAB [40/44]
光の灯らない目で空を見つめながら「うー、うー、うー」と呻く真里亞を
「いーーっひっひっひっひッ!いいぃぃぃぃーーっひっひっひっひッ!!」と奇声を上げながら犯す戦人とか見たかった
うみねこのなく頃に part1094
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1297006170/814/ 408 :11/02/07(月) 22:35:12 ID:w23WtLWL [8/10]
まぁ一番興味あるのは幾子さんがどんなパンティ履いてるかって事だな
411 :11/02/07(月) 22:42:43 ID:w5RSWZDT
楼座さんと幾子って同い年くらいなんかな
やべーな、楼座さんマジで戦人落とせたかもしれないんじゃないの
680 :11/02/08(火) 18:27:18 ID:Hfm7QCu9 [5/6]
戦人は巨乳好きだから幾子を口説くなんてありえない
824 :11/02/08(火) 21:21:33 ID:NHbMZYdx [10/25]
幾子さんが顔真っ赤にして十八を口説こうとしてるとこを見てみたい
845 :11/02/08(火) 21:40:31 ID:NHbMZYdx [11/25]
十八と出会って一周年記念日に胸躍らせてプレゼント用意したのに
十八は何のプレゼントなのかサッパリわからずリアクションも小さく
ガックリして枕を涙で濡らす幾子さんとか萌えるよな
848 :11/02/08(火) 21:43:34 ID:NHbMZYdx [12/25]
幾子さんは自分からベッドに誘っておきながらすっごいマグロなタイプなんだろうな
850 :11/02/08(火) 21:44:33 ID:y1kCunor [4/7]
ベルンと楽しそうにキムチ鍋をつつく十八と
涙目になりながら参加したそうな幾子さんなら萌えるかもしれない
855 :11/02/08(火) 21:49:36 ID:NHbMZYdx [13/25]
「幾子さん、もしかして・・・」
「す、すまぬ・・・は、はじめてなのだ・・・」
とかいう会話がなされたのか
859 :11/02/08(火) 21:51:12 ID:ULJ45NZV [13/16]
戦人→幾子に拾われて色々あって→成れの果て(白髪)
864 :11/02/08(火) 21:53:34 ID:j2W8qLDh
幾子さんもうちょっと孤高の存在なのかと思ったら
友達のいない引きこもりで婚期も過ぎそうとか割とアレな人だったな。
自分を過小評価しててたのに
売れたとたん尊大な態度をとり始めるとか、いい性格してる。
882 :11/02/08(火) 22:04:36 ID:ULJ45NZV [14/16]
後ろから羽交い絞めにしつつ幾子作の濡れ場の朗読
うみねこのなく頃に part1096
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1297312535/ 318 :11/02/11(金) 04:54:40 ID:q/FxFFty [7/10]
>>312 右代宮や六軒島の存在は未来の情報から確定している
でも譲治の婚約者や朱志香の片想いの情報はない
戦人は自室で1人で推理小説を読んでいた形跡だけが残っていただけ
真里亞はアレだし
六軒島や右代宮家の存在云々とヤスの存在はまたちょっと違う気がする
確かにあの日、紗音でも嘉音でもヤスでもいいけど一人の使用人がいたのは本当
でも事件の黒幕なんかじゃないし従兄妹たちと何の関係も持っていなかった つまり「ヤス」じゃない
ヤスがいないことで変わってくるのはボトルメールを書いた人物の存在が消えるということだな
それは誰か 生き残った戦人の可能性が高い
自分がとんでもないことを言っているのはわかるがOSSってこんなむちゃくちゃでも言っていいんだろ?
349 :11/02/11(金) 09:45:33 ID:RFMQqGtd [3/5]
4年の時間と15000円をかけて待ち望んだ結末は「お前が決めろ」
これで納得するとお思いか
みんな真相が知りたいから叩かれてるんだろうに
485 :11/02/11(金) 17:14:17 ID:IwVMUYyS [1/7]
ひぐらし 圭一(主役)→俺がレナと魅音を殴り殺してしまったんだー
おはぎに針なんて入ってなかったんだー 注射器だと思ったらマジックだったんだー
皆は俺を心配してくれたのに俺はなんてことをすまぬ → イイハナシダナー
うみねこ ブサイク(脇役)→
***父も母も兄も悪くない******
→絵羽には留弗夫一家全員犯人に見えたことはなんとなくわかったがサッパリモリアガラナイハナシダナー
505 :11/02/11(金) 18:22:08 ID:ajR7fyAz [6/7]
EP3 残念でしたぁ、魔女はぁ反省なんかしませぇん☆ →「ぬおー!やられたけどおもしろかったわー」
EP8 残念でしたぁ、真相は明らかにしませぇん☆ →「え、ちょ、まじで?ってかふざけんなおい」
EP3くらいの出来じゃないとエンタメとしても成り立たないね
700 :11/02/12(土) 02:23:12 ID:6MAOqx/P [4/8]
EP8の反応を知ったら大原さやかも昇天
742 :11/02/12(土) 07:26:16 ID:rKpsqAd5 [1/2]
読者批判でググるとうみねこばかりヒットする
812 :11/02/12(土) 12:21:49 ID:39d77Tmx [10/21]
EP3の目がみえなくなった朱志香ってさ、ヤりたい放題じゃね?
839 :11/02/12(土) 13:30:52 ID:syeJhxnA [1/3]
いくらビーチェが死んだからって
実娘の九羽鳥ベアト相手にパンパン腰振ってる金蔵
927 :11/02/12(土) 17:35:46 ID:ylLdxGsG [2/2]
この作品のキャラは、アヘ顔が似合いそうなキャラがとても多いんだが
エロいことというか一番変態シーンが似合うキャラはヱリカ
一番クリムゾンされるのが似合いそうなのはルシファーあたり(煉獄ハード的な意味で)
M字開脚させて放置プレイしたいのは制服ベアト。リアクションも期待できるし一番エロ家具に適してると思う
でもやっぱり湧き上がるエロスを感じるのはbba組
920 :11/02/12(土) 17:09:32 ID:AT3Nwatd [1/7]
ベルンを男に入れ替えたらヱリカとの関係が酷いことになる
つまり目の前で他の女とイチャイチャされ、挙句の果てに「こいつのことは気にしなくて良いんだよ。
こいつはどんな扱いされても尻尾を振って俺にくっついてくるんだから」と言われ、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにするヱリカ
可哀想すぎる
とてもじゃないが元彼に浮気の証拠を84点も提出して責め立てたヱリカと同一人物とは思えない
うみねこのなく頃に part1097
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1297501838/ 97 :11/02/12(土) 23:38:44 ID:Zw4HDlj+ [7/7]
朱志香が主人公の男(プレイヤー)を監禁して犯しまくるルートと
逆にプレイヤーが朱志香を犯して性奴隷に調教していくルートがあるエロゲ出したら需要あるだろ
99 :11/02/12(土) 23:43:54 ID:ITFXxBIf [2/3]
ルドルフが七姉妹召還したら面白い事になりそうだな
と思ったが召還する度に霧江がぶち殺しそう
101 :11/02/12(土) 23:44:06 ID:39d77Tmx [17/18]
右代宮留弗夫のチン遊記
七姉妹調教
六軒島の魔王 譲治
126 :11/02/13(日) 00:19:45 ID:QBjv66wY [1/10]
なんで朱志香厨は朱志香がMで虐められて泣くとか思ってんの?
朱志香って男の股間踏みつけて
「こんな粗末なモノでも使い物になんなくなったら嫌なんだろ?あ?つーかなに勃ってんだよウゼェ。これで興奮するとかマジで変態だなぁ」
ってせせら笑うようなそういう女の子だろ?
145 :11/02/13(日) 00:32:22 ID:HDfgeFMD [2/4]
「うぜーんだよこっちみんな童貞野郎」
って男に言うけど、いざ襲われたら
「いや・・・やだやだやだ助けてお父さん!!!!嫌ぁあああ!!」
って言って泣き叫ぶタイプ
なので
>>129と同じ強気M。Sは似合わん
170 :11/02/13(日) 00:51:49 ID:HDfgeFMD [4/4]
なんかねぇ・・・・ep7から急激に出番が減って、唯一の望みの喘息も仮病で・・
365 :11/02/13(日) 08:21:53 ID:UmwbAzOE [1/4]
楼座さんのガバマンにインゴットを突っ込む同人誌
370 :11/02/13(日) 08:54:21 ID:4GVMWG/Q [2/7]
細木数子にうみねこキャラを語らせたら楼座と夏妃を滅茶苦茶叩いて絵羽をマンセーしそう
でもって霧江が縁寿を守るために最期に絵羽を煽ったことも理解しそう
多分ヱリカ大好きだと思う
393 :11/02/13(日) 11:13:29 ID:4GVMWG/Q [5/7]
絵羽縁なんかにスポット当てるより次男一家の問題とかああなるに至った霧江の幼少期からの掘り下げをして欲しかった
595 :11/02/13(日) 16:03:22 ID:RDJcHGdY [1/2]
キタエリのにぇは実にハマリ役だった
あれでキタエリを知った
今見てるまどマギにも出てるが、こっちの演技はフツーだな
663 :11/02/13(日) 18:35:25 ID:+UResJUK [4/7]
ヱリカが全身にチョコ塗って「はい、バレンタインです。我が主」
691 :11/02/13(日) 19:58:36 ID:baK7l5Gu [28/35]
誰か金蔵がクワドリーチェを強姦するシーンを生々しく克明に描いたSS書いてくれよ
694 :11/02/13(日) 20:06:03 ID:QBjv66wY [61/69]
「なんか金蔵が妾の上で変な動きしてて股の所が痛いなー」って思ってたのか
「いやぁぁあああ! お父様やめてぇっ…お願い、やめてぇっ!」って泣き叫んだのか
698 :11/02/13(日) 20:11:41 ID:FwCLuJIl [4/13]
「それは知っていマス。しかし、駒は、出来ないことは出来ナイ。
そして、本来の性格に相応しい行為を得意とスル。
……だから、あれは確かにあなたの、……戦人の成し得たことデス。
だから、あなたに感謝するのデス。」
密室から脱出してベアトくるくるは本来の戦人の性格に相応しい行為だったって事なんだろう
747 :11/02/13(日) 20:52:21 ID:e+96B19p [1/10]
うみねこ=戦人が駆け落ちの約束して忘れて幻想として成就するまでの話
751 :11/02/13(日) 20:57:55 ID:QLW7fDMi [11/14]
ひょっとしてEP7お茶会こそが絵羽の日記の内容だったんじゃね
ベルラムが縁寿に見せようとした時に
「あの日に何があったかって?教えてなんてあげないわ。
ヘソでも噛んでしんじゃえばぁ?」って言ってただろ
あれこそが絵羽の日記の内容っだったって根拠になり得る
756 :11/02/13(日) 21:04:04 ID:QLW7fDMi [12/14]
>>752 そう、EP7のお茶会の序盤で理御と縁寿が劇場の椅子に拘束されてて逃げようとした縁寿をベルンとラムダが捕まえて
劇場で上映が始まるまさにその時に聴こえて来た絵羽の台詞だよ
んでそれを聴いた縁寿が「絵羽伯母さんよ、あのババァの声だわ」って言ったじゃん
816 :11/02/13(日) 22:31:27 ID:Euc9Y5C6 [15/16]
>>813 譲治お兄ちゃんに大人は殺せないよ
子供は殺せるけど
の辺りが印象的だったよ!
836 :11/02/13(日) 22:57:50 ID:U1Lsbh4C [18/21]
よく考えたら絵羽と縁寿の和解らしきものはEP4ですでにやってるよね
837 :11/02/13(日) 23:00:37 ID:QBjv66wY [67/69]
>>836 あれでじゅうぶんだったよね ep8まるまる使う必要なかった
>>268乙
久々にきたら書きてが現れたか
この調子でフェザー(幾子)×戦人(十八)が見たいぜ
うみねこのなく頃に part1098
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1297614398/ 853 :11/02/15(火) 22:35:15 ID:QFiHgiSJ [30/31]
楼座って子供の頃のあだ名が便座だったりしそうだよな
909 :11/02/15(火) 23:29:12 ID:+R+7XtE4 [13/19]
幾子は激しいけど、基礎のしっかりしてる女性だから
手コキやフェラ、乳首舐め、アナル舐めと言った基本プレイがしっかりしてる
ローションやバイブ、冷水プレイとか窒息プレイみたいな邪道は好まない
だから実はノーマルな戦人は非常に満足したのであった
940 :11/02/15(火) 23:51:31 ID:U0KFdSHd [7/8]
十八は多分幾子に対して色々世話してくれたし母親みたいな感情を持ってそうなイメージ
でもある日幾子に襲われて関係持った感じかな
金蔵に無理やり犯された二代目ベアトみたい
>>275 十八の話は二次サイトでも書いてる人少ない(気がする)しな
幾子×十八か戦人かで随分変わるが
どっちがいいんだろう
うみねこのなく頃にpart1101
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1298093610/924 924 :11/02/21(月) 02:11:44.12 ID:Y3qV9pnV
ep1ボイスパッチ出来ました
preview
http://www.youtube.com/my_playlists?p=D0054F5D2DD52AB0 http://boards.4chan.org/jp/res/6981809 927 :11/02/21(月) 02:25:27.42 ID:xg2bLrLI
>>924 わざわざPS3からボイス抽出したのか 作者は暇人だな
943 :11/02/21(月) 06:26:35.54 ID:CafbfmHD
白い魔法というのは、ようは
「手品だとうすうす認識していながらも、そこから目をそむけて魔法だと自分をだます」というものじゃないか。
この宗教は、最初にその詐欺性を自ら認めてしまっているわけだから、崩すのは簡単なんじゃないか。
「何でもかんでも魔法だと信じる」のではなくて、「うすうす手品だとわかっていても魔法」というわけだから。
「ぷっ、手品だよー、人間とトリックでできますー」と言われても「でも魔法」というわけだから。
「魔法で自分を騙せなくなるほどの圧倒的な力をもった現実」があれば白い魔法というものは破綻する。
これは俺が考えるに「痛み」がキーポイントだ。
たとえば、君が俺にフルボッコにされているとする。ここで、君が白い魔法を使えるか?
現に君は俺に殴られて「痛い」わけだし、それをごまかすどんな魔法があるのか。
EP4ではなんか縁寿が霞に形勢逆転しちゃったようだけど
あれの形勢逆転がない、どうごまかしようもないバージョンだと思ってくれれば良い。
白い魔法は現実的に与えられる痛覚の刺激を解消させることはできない。
白い魔法は、痛覚の圧倒的で現実的な力をかえることはできない。
なぜなら痛覚は直接からだにはいってくるものだから。
うみねこを破綻させるポイントはここにある。
とりあえず夏まで「おら! 白い魔法でなんとかしてみろよ! ボコボコ!」そして救いはない。
というどうしようもない拷問SSを何本もつくりあげてスレに投稿することで
うみねこという作品のメッセージを明確に否定して、竜騎士はクソ、という評価をあたえるのが、うみねこ否定
949 :11/02/21(月) 07:02:51.11 ID:sISs4+hm
>>943 沙都子は目明しでちょっと近い状況になっても自分を貫ききって死んでいったな
うみねこの魔法マンセーキャラ達に沙都子並の根性があるとしたらせいぜい真里亞くらいか
952 :11/02/21(月) 07:24:05.31 ID:Ta3qz4uY
つまり黒き魔女vs真里亞withシエスタ姉妹兵の再戦SSを書くのか…胸熱
職人さんがすっかりいなくなってしまったな・・・
代わりに転載嵐がおる
>>279 この状況じゃ書くに書けないよ
もう少し様子を見てみようと思います
wikiに載せるという手もありますぜ?
自分はもう書かないと思う
こっちに書いてもWikiに書いてもは反応薄いし
スレは荒れてるしメリットが無くなってしまった
読みたい、ばかりで感想が無いと次を投稿する気にならない
他の方頑張ってくれ
ほ
カナカナカナ・・・
ほ
ほしゅ
もう誰も書き込まないのか…
ひぐらしからエロパロは書いてたけどね
もう良いかなって・・・
レナのおっぱい
『沙都子っぱいに挿まれて』の三話目です。
中盤から二人のオリキャラが出てきます。彼女たちの滴る百合シーンはTIPSで、保管庫に投稿予定です。
「あ、はあぁあ……。もっと強くおっぱいを……おくちいっぱいにすっ……てぇ…………」
沙都子がそう熱っぽく囁きながら、体育座りで抱え込んでいた入江の頭の締め付けを緩めた。その意図を察した入江は、制服越しの
乳肉を口内に飲み込む様にしゃぶりつく。
「ンンうーっ! はあッ! ン……イイ……。はあ……あっ、あぁ…………」
媚肉によって喉を塞ぐ形に押しやられた舌。その裏側でぷりぷりにしこった乳首を撫でると、沙都子が何とも言えない喘ぎ声を漏らした。
そうして沙都子を味わう入江の耳にはツルを伝わって、乳圧で眼鏡が押し潰される悲鳴に雑じってエアコンの駆動音が。それと校庭
で遊ぶ子供たちの声が聞こえていた。
(……はて? 梨花ちゃんと羽入ちゃんの声は…………。二人の声が聞こえません)
自分と沙都子が座る、ベッドを模した長椅子を白く囲む向こう。先程までカーテン越しに、二人の話し声がシルエットと共に在ったはず。
「あっ、くアあッ! おっぱいちろちろもこりこりもいイッ、あんっ!!」
(居ないのでしたらもう少し、愉しんでいましょうか)
本来ならこの後、梨花と交わした用事を済ませる予定だった。
気紛れか、それともかくれんぼの鬼の接近に気付いて、場所を移したのか。
もしも後者なら、沙都子の為にも場所移動をするべきだ。
(なら、続きはそこで……ああ。ですが、もうそろそろ診療所に)
「はあンっ!! ……これではまたおっぱいが…………。おっぱいが良すぎて、またおっきくなってしまいますわ……」
(は優秀なスタッフがいますから、問題ありません!)
村の命運を賭けた使命感が顔面諸共、沙都子の切ない呟きと天獄プレスによって押し潰された。
自分の行き先は診療所を出るときに伝えてあるので、何かあれば分校の、この職員室兼保健室に知らせが届くはず。
「……っ、ぅ……ぅっ! ッ〜ううっん!」
「ぅ……う……ふふ。おくちもおちんちんも、監督……とっても苦しそう。ですから……ほらぁ。早くイきませんと本当に窒息、して
しまいますわよ……?」
弛緩させた身体を二つ折りにし、沙都子が仕返しとばかりに再び巨房で入江の顔を蹂躙し始めた。そう、蹂躙だ。この激しい攻め方は。
(抜群の発育の良さといい性格といい、流石はあのひとの娘です。始めこそ驚きましたが…………血は、争えませんね……)
「もっと……。もっとですわ……。さっきみたいに……おくちいっぱいにおっぱいを、飲み込んでくれませんと……私も、気持ち良く
ありませんのよ……。ほらぁ……ほらあぁ〜っ!」
「ウぷおっ! おぽッ……っぷ!」
胸がいざられることにより、媚肉詰め状態に隙間が生まれ、呼吸の確保はできたものの、口から“おしゃぶり”が外れ、胸に見合った
大きな乳首がこりこりぐにゅぐにゅと、顔面をもみくちゃにしてくれる。
愛する女性の膝で、それも爆乳に顔を埋めて逝く……。
沙都子に『ぱふぱふ』をしてもらうたびによぎるコレに、医者の自分がこの様なことを考えるのはどうかと思うが、男なら一度は
憧れる死に方であろう。
そんな己の性癖に笑って、それと先の沙都子との事――梨花と羽入が来る前の、沙都子の豹変の様――に、余りの嬉しさに泣きそう
な声を上げてしまった自分に羞恥を覚え……。が、今は脇にでも置いておく。
「…………あら……。生存本能も刺激、されましたのですかしら……? 監督のココ……がっちがちになりましてよ……?」
根元付近に緩い手淫をしていた沙都子が強く握って、竿の硬さを口にした。
ここまで沙都子に何度も射精されたことで、ペニスに当初の“芯”は感じられないが、それでもまだ余力はある。
沙都子を感じる限り、入江は何度でも勃ち上がり、完全なる萎えは無いと思っている。
『限定絶倫』とでも言うのか。自慰では至れぬ領域を沙都子となら……。沙都子の居る場所が世界の中心……。かつて彼女の母親と
愛し合っていた、あの蜜月の日々と同じだった。
「…………監督、もしかして梨花のことを考えていません? それとも、私のは…………。私こそ、余計なことを考えてしまいましたわね……」
女のカン……それとも、まさか入江の一物、その脈動から感じ取ったでも言うのか。てのひらを滑らせる沙都子の所作は文字通り、
探る手つきだった。その動きを緩め、そして止まった。
「…………ぅ……? 沙都子ちゃん……?」
「……監督も、もっと私を……気持ち良くしてくださいまし」
心なし調子を落とした声で言い、沙都子は脇乳に磔にしていた入江の右手と尻に敷いていた左手を解放し、顔面への乳圧も緩めた。
「解りました。では……」「ンンウーっ! ああ…………あはぁ……」
ぷっくりと膨らんだ乳首にキスをすると、沙都子はそれだけで熱い溜め息を零し、身体を震わせた。
「ん……アぁ……」
自由になった右手で沙都子の、黒タイツに包まれた脚を撫で擦る。沙都子は愛撫が好みらしく、やさしくすれば全身が性感帯とも
言えるほどの感度で女の反応を示す。
時間があればこのまま胸と脚、それと言葉攻めでじっくりと沙都子を愛してあげるところだが、ここは職員室。最後の授業を終えた
知恵が、それと校長が帰ってくる頃だ。
「ああ! ア……はあっ! んっ! イッ、イイっンふあんッ!!」
だいぶ無理に沙都子の身体に巻き付き、極められていた両腕。その左手の痺れが薄れてきたので、愛撫に参戦。制服の上から背中に
かけて……そして汗の浮いたうなじにいやらしく纏わり付かせる。右手も、爪先からふとももへと熱くマッサージをする様に滑らせて、
沙都子と協力して双房の先端を口に咥え込むことに成功。離してなるものかと、やや強めに噛むも沙都子は悦びの声を上げ、再び入江
の顔面に媚肉を押し付けてくる。しかし、それはすぐに、入江のミスによって離れることになる。
「――っ?! ぇアっ?! んヤあっ!!」――「くっ……!」
叔父の鉄平との行為で、沙都子は女性器への刺激に嫌悪しか感じなくなった。
その脚の付け根に愛撫の手が触れてしまい、沙都子は腰を引く代わりに身体を起こした。だが、入江は糸に引かれるかの如く、離れ
く肉の天蓋に追い縋っていて……思わず噛んで捕らえた乳首は伸び、乳房が釣鐘型に引き伸ばされていた。そして刹那、その現象は起こった。
「ふああっ! ンアっ……あああーっ!!」
かちっと歯が鳴るのと同時、ゴムの如く伸びていた乳首が離れ、釣鐘の肉房と化した美乳を打ち、制服の下の胸がぶるんと波打つの
を見た気がした。
「うぅ……。くッ、く……」
その豊艶極まる沙都子のバストを目にし、入江も彼女の小さなてのひらの中で驚喜に打ち震えた。
「ア、アあぁ……っ。でっ……。漏れ、て……あぁ…………」
「はあっ! く……うぐっぐっ!」
その小さな身体に納まり切らない快感と共に、溢れてしまう女汁を堪える沙都子が思い切り握り締め、立て続けにペニスが白く弾けた。
「ぁあ……! あぉおあーふん! いいが! くく、ふるちあおっぱいほ……おいいべうばもめてくははい!(さ……! 沙都子
ちゃーん! 息が! くく、苦しいからおっぱいを……惜しいですが退けてください!)」
「…………もう何度もイきましたのに、監督は元気……ですのねぇ。おっぱいならお好きにして構いませんですから、もう少し、休ま
せて……くださいまし」
くたりと身体を二つ折りにして腹部に入江の顔を挟んだまま、沙都子はまだ動く気はない様だが僅かに上体を上げ、見えるのは視界
いっぱいに実った、大きな肉房。その下乳に隠れているのは、ひと房半の長さのファスナー――制服の寸法直しをする際に、入江が
内緒で縫い付けた物――の存在に気付いていた沙都子はぞんざいに摘みを横に引くも、どうにも開け難いらしい。痛がっているわけで
はないから、肉を噛んでいるのではないだろう。
不良品だったのか、それとも縫い付ける際にヘマでもしたか……。
そのときの状況を振り返って、入江が己の落ち度を掬っていると、沙都子は下乳を持ち上げ、制服と素肌とに隙間を作ってから摘み
を横に滑らせた。すると今度はじじじと開き、そこから肌色が見え出すも、沙都子の手はなぜか止まってしまう。そうしてしばらく耳
をすませるとファスナーを閉じ、膝から入江を降ろし、沙都子は「んしょ」と声に出してベッドから腰をあげた。
「眼鏡眼鏡……」
「ここ。おでこにありましてよ」
「……おや?」
白いカーテンの隙間から外を窺う沙都子が振り返り、ちょんちょんと自分の額を指差した。
「とうとう鬼がやって来ましたか……」
入江は眼鏡を掛け直し、その小さな背中に張り付いて、倣って保健室の様子を窺う。そこには誰の、梨花と羽入の姿もなく、代わり
に見知った二人の少年の顔が窓の外にあった。
「どど……っ! どうしましょう沙都子ちゃん! 私たちの愛の営みがみっ……見見!」
冷房効果を高める為、保健室の窓に引かれたクリーム色のカーテン。その下にできる隙間から室内を覗き込んでいた富田と岡村は
目が合うと、入江がした様に頭を引っ込めた。
「大の男がみーみーうるさいですわよ。
やっぱり、梨花と羽入さんはいませんわね……。それになんだか…………くんくん……って、あら? ここ、濡れていますわ」
「ささ……っ?! 沙都子ちゃん……」
無造作に白いカーテンから出た沙都子は、外の少年たちの存在を歯牙にも掛けず、小さな鼻をひくひくさせながらタオルで床を拭き出す。
「……さっきは、すみませんでした…………」
「……私こそ…………。ごめんなさいましね、監督」
「……沙都子ちゃんが私に謝る必要なんて、ありません」
このまま流そうと思ったものの、だから入江は唐突に先の愛撫の失敗を詫びていた。するとすぐに沙都子も、それも謝ってきたから
恐縮し、自分も周りの片付けを始めた。
テーブルのコップを流しに運び、洗面器に浸けてあったタオルと一緒に洗おうとすると、真っ赤になった沙都子に噛み付かれた。
ならと、ベッドメイク――濡れやすい沙都子の為に敷いて置いたタオルがほぼ吸収した模様。……ああ、なるほど――をしていると
外から、かしましい子供たちの声が聞こえてきた。
『岡む〜、ゲッツ!』『わ〜。紫<ゆかり>ちゃんに捕まっちゃった〜』
『と〜ふやのムスコをげ〜ぇ……ちゅ!』『うわわあっ?! えっ……江堀! ドコ触ってるんだよ!』
「おーっほっほっほ! そんな目立つ所でいつまでも、出歯亀根性を晒しているからですわー!」
鬼役の二人の少女に引き摺られていく富田・岡村の両少年を、沙都子が高笑いで見送る。
「……今の内に、ここから離れましょう」
鞄を片手に、保健室からの辞去を沙都子に促す。
「ですわね。では……あ、そうそう。あれを持ってきていましたわ」
沙都子は背負いかけたランドセルから麦茶のパックを取り出した。
圭一たち上級生を待つ間、沙都子たちは校長と職員室で茶菓子を摘んでいることがあり、そのお礼にと、こうして時折家から持って
きては補充しているのだという。
「もう、羽入さんったら! 食べたらちゃんとゴミを捨てていただきませんと……うぅ、それにこれって、知恵先生のおやつ
じゃあ……。なんて命知らずなことを……」
中身の減った容器にパックと水を足して、冷蔵庫に仕舞った沙都子がわなわなと肩を震わせて、そんなことを呟いていた。肩越しに
沙都子の手元を覗き込むと『激辛カレーシュークリーム』と書かれた、いくつものビニールの包みがあった。
「……辛い物とはいえ、好物の“形”だったから思わず、手を出してしまったのでしょうね」
入江が沙都子と共に、羽入の身を案じてわなわな震えていると鐘の音がした。校長が六時間目の授業の終業を知らせているのだ。
「沙都子ちゃん! い、急いでここから離れましょう」「……そ、そうですわね!」
ここにいては……これでは自分たちまでコレを食べたかと、知恵に誤解されかねない。
つうかあでやり取りをして、沙都子がビニールの包みをゴミ箱に捨てて。
「……あっ! メイド服! メイド服はどうしましょう?!」「くっ! こうしましょう!」
置いていってもよかったのだが、仕切りに掛けられたメイド服を前に慌てる沙都子のランドセルを開け、入江は窓際に干して置いた
ブラウスと一緒に収めた。
「では沙都子ちゃん。行きましょう」「はっ、はい!」
知恵との鉢合わせを避けるべく、外に面した引き戸からの脱出を計り、手を掛け……る前に横にスライドされるや、裸の巨漢が現れた。
「がはははははー!!
諸君っ! 私は武道が好きだ!! そしてブドウも好きであーる……おお。これは入江先生。それに北条くんも。二人して手を繋いで、
どうされたのですかな?」
「ここっ! ちょ……っ」
巌の上半身を、頭から流れ出る滝の汗で筋肉美へとビルドアップさせた校長の姿に入江は慄いて、舌がまともに回らないでいた。
すると沙都子が代わりに、これからお暇すると言葉少なめに告げて、おほほほと笑う。その笑い声が、校長の後ろから少女が現れると、
ぴたりと止まった。
「塾長ー。『武道』と『ブドウ』って、か……やっぱりここにいやがったか、沙都子。それと、監督も一緒か。
ちっ。結に付き合ってなけりゃ、時間内に捕まえられたなー」
「お……おほほ。なかよしさんがアダとなりましたわね」
「……へっ。まあ次は、その胸の肉まんが仇となって、沙都子はオレに捕まるけどな」
「……私と違って、紫さんは胸がない分、フットワークが軽そうで羨ましいですわ〜」
「へっへっへ……」
「ヲホホホホ……」
話の矛先が胸にいき出すと雲行きが怪しくなったので、入江は白衣のポケットから飴玉を二つ取り出し、沙都子と紫の口に入れた。
「おっ。コーラとは解ってるじゃん、監督」
「あら? バナナ味とは、変わっていますわね」
「うむ! よきかなよきかな!
ところで入江先生。ブドウ味の飴はありますかな?」
額を突き付け合って牙を剥いていた少女たちの頬が飴玉で膨らんだ様子に、校長と目を細めていると、背中から職員室の戸が開けられる音がした。
支援
「カレー菜園に行く前に〜。今日も一日お疲れサマーな私に、カレ〜シュ〜をご馳走するっぴょ〜ん♪」
「ちえるせんせ〜ぇ。い〜とししたおんなきょうしのぶんざいで〜ぇ『ぴょ〜ん♪』は〜ぁ、はずいと〜ぉ、ゆいちゃんはおもいま〜す★」
「うぬ! 古手くんと羽入くんの居ない代わりに、江堀くんが来た様であるな」
「どうしたんだ、知恵先生。キャラがぶっ壊れ気味じゃん。ってか結。『お疲れサマー』はスルーかよ」
あの真面目な知恵がギャグを飛ばすほどに、かの『カレーシュー』を食すことを楽しみにしていたのだろう。そして、それが一つ
残らず羽入の腹の中だと知った知恵が取る行動は……。
「羽入さんのばかぁ……。
下手をしたら、今夜は朝まで家庭訪問の刑ですわぁ……」
「……そ、それは確かに……埋葬よりも辛そうですね……」
今というか、今夜に訪れる危機を前に半泣きになる沙都子に同情し、入江はその頭を撫でた。そこでふと思い付く。
屈んで、耳元に口を寄せて……。
「沙都子ちゃん……。今夜、家に来ませんか?」
気が付くと……彼女だけに聞こえる声で、そんなことを囁いていた。
「え? でも、明日も学校がありますし…………ぁ」
目の前で見せられて、コツは掴んだつもりだった。
触れた手が吸い付いて離さない、沙都子の瑞々しい巨房。それと自重が働いた結果、ファスナーの摘みの金具に胸の肉が吸着。だから
動かなかったのだと、入江は先の現象を分析した。
「ぁ、ぁ……。やめ……っ。か、監督……」
校長と紫の目があるので、腹を擦るふりをして素早く、左手で下乳を持ち上げる指を右から左に滑らせる動きに合わせ、右手の摘みも
動かす。すると思った通り、ファスナーは何の抵抗もなく開けられた。
「い……ッ、イヤッ!」
「……あっ? ぁ…………ッ」
「ンぁ……っ」
腕の中の、この体温と感触。それと立ち昇る色香に、頭の芯がじぃんとぼやけ…………そしてまた、いつもの様に沙都子を辱めてしまった。
息を乱した沙都子を心配する校長とは別に、同じ高さの目線で自分たちを面白そうに見ている紫の目がどうにも気恥ずかしく。
入江は居たたまれない気持ちで一言断り、その場に後にしようと沙都子の手を引く。
「おつかれ〜さま〜そるときっく〜ぅ♪」ぴゅんっ!「いたっ?!」
背中から再び間延びした声がした瞬間、後頭部に何かがぶつかった。そしてこれを皮切りに、ドミノ倒しの如く、事が起こり出す。
「ここで『お疲れサマー』キタってか、結。そりゃサマソというよりバク転じゃね?」
「ぬぬう……。あれも、サマーソルトの一種であるな。それも“溜め”が短く、放った後の隙も少ない。わしも江堀くんに倣って、体操を習ってみようかの」
「塾長は今のまんまでもボスキャラ並みに強いじゃん。ってか、塾長の白タイツ姿なんざ見たくヌェー」
「うわばきうわばき〜ぃ。
イリ〜ぃせんせ〜ぇ。ゆいちゃんのうわばきかえして〜ぇ」
「……結ちゃん。レディが、人に向けて上履きを投げてはいけません」
「やあ〜っ! そんなたかいところにのせないで〜ぇ!」
保健室を出ようとするたびに邪魔が入ったり、徒に沙都子を辱めたり、そんな姿を小さな子供に哂われたり……。
感情の揺れ幅の大きさに、自身のコントロールがうまくいかず……白衣の襟に入った上履きを掃除用具入れの上に乗せ、今度こそ沙都子と。
「ほ…………っ。北条、こっちっ!」「あ……っ?」
「監督〜。どうせなら僕に、結ちゃんの上履きをくれればいいのに〜」
それは一瞬の出来事だった。
泣かせてしまった結の、その泣き声に体が硬直。すぐに上履きを取りあげた校長が結に肩を貸して、履かせている姿に見入っていたところに窓から富田が現れて、沙都子を攫っていってしまった。
「岡む〜。クーラー点けっから、ソコ閉めといてくれよなー」「イエッサ〜であります」
「ま……っ、待って」
伸ばした指先が、閉められた戸で危うく挟まれかける。
「はっはっは! なかなかに素早しこい少年たちである! やられましたなー、入江先生」
「おんなをくいものにするぺどやろうには〜ぁ、い〜きみ?」
「……どいつもこいつもデカチチキチガイがっ!
ってか結! シスターのコスした知恵先生が出ていったんだけど、カレーパンを買い占めた吸血鬼でも出たのかーッ?」
「ん〜と〜ぉ……。はにゅりかちゃんに『げきからかれ〜しゅ〜くり〜む』をたべられちゃったんじゃないかなぁ〜。
ってかゆかりん。『きちがい』にはいちお〜〇でふせよ〜ね〜」
「そう言うお前もな。
知恵先生はそれで、はにゅ梨花を探しにいったのか。
ってか、沙都子のヤツ。富田を使って、絶妙なタイミングで逃げやがったな。計ってやがったか?」
「入江先生。診療所から電話ですぞ。……ぬう? 先生までぼうとして、もしや医者の不養生というやつですかな?」
続く。
おつー
>>291乙
誰かウィルリオSS書いてくれないかな
乙
ザ・ワールド
GJ!
hosyu
うみねこはやっぱりベアバトが多いな
戦人×夏妃が好きなんだけど…
なっぴーはルドルフといい夫婦すぎて…
組み合わせ自体は俺も好きなんだけどな。
なっぴーとルドルフが夫婦って時点で問題ありすぎだろ
蔵臼「…………」
322 :
名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/20(月) 20:46:26.95 ID:rSjplO9i
(・ー・)
留弗夫×夏妃か…
「兄貴なんかより俺と結婚してたら、夏妃姉さんも子供がいないって理由で絵羽姉さんたちに苛められなかったんだぜ」
ってか。
なんとなくだけど。
蔵臼は淡白そうで、子供できなさそう。
さらに夏妃が本当に思いを寄せていたのは、
若き日の金蔵だった。
で、戦人にその面影を見出してしまって、
戦人を誘惑する夏妃。
「な、夏妃さんっ……!」
なっぴーは誘惑するイメージないなあ
どちらかというと黒戦人がっていうなら分かるけど
ひぐらしのSSとかも減ったね
蔵臼が死んで嘆き悲しむ夏妃を
慰める黒戦人ですか。
なっぴーは誘惑するというより
若金蔵の面影を色濃く受け継ぐ若い男によろめくイメージ
それなら、父親に妙にこだわる絵羽にも、
少しだけ、その気があるかもな。
「どうすれば、認めてもらえるんですか!」
直接父に問いかけても冷たくあしらわれるばかり。
どうやったら、父を喜ばせることが出来るのか。
父の厳しい表情しか思い出すことができない。
「絵羽伯母さん」
どれくらいそうしていたのだろう。
戦人君に呼びかけられて我に返る。
「あ・・・」
戦人君の笑顔に釘付けになってしまう。
昨日はなっぴーの日だったけど、0721ってオナn…ゲフンゲフン
なっぴーはオナニーのセンスがありそう
寝室にはエログッズが山のようにコレクションされていて、ちょっと淫らな気分の日は「…気分が優れないわ。源次、夕方まで休むから寝室には誰も近づけないように」
そして――
という訳だ。でも貞淑だから決して蔵臼のより大きいサイズの道具は使わない誓いを立てており、自慰の妄想相手も9割方夫である
頭痛というのは全て自慰をするための嘘であり、1日数時間、丸1日オナニーをし続ける日もざらにある夏妃
一人上手……ゴクリ
激しいオナニーの最中に緊急事態で呼び出され、格好こそ取り繕ったものの完全発情モードの火照った身体で一同の前に現れる夏妃
理由は分からないが全身から漂うエロスな雰囲気に勃起する童貞達
一同の前でヱリカにアダルトグッズを全て暴かれ、逐一使い方と感想を説明させられる夏妃
>>333 童貞ってことは戦人、嘉音、あと譲治?
家具×奥様…いや家具→奥様か…ゴクリ
発情奥様を襲っちゃう戦人…ありだな
戦人×紗音とか紗音×戦人とかひとつも見掛けないけど人気ないのかな・・・
ラブラブな二人が見てみたい
紗音が需要ないんじゃまいか。
ベアトならあると思うけど。
大人しくて巨乳メイドとか最高だと思うんだが紗音好き少ないのか
いつかうpしてくれる職人さんを期待しないで待つよ
でも、男かもしれないし、
胸が無いことが確定しているから
難しいかもな。
自分で書けば良いじゃん。
なんか書く気が失せた
バトシャノなら本編のベアトを紗音に脳内変換すればいいんじゃね
342 :
名無しさん@ピンキー:2011/08/04(木) 02:37:44.64 ID:Cx8BeyTd
譲治の目の前で、戦人に貫かれる紗音とかは?
黒戦人に寝取られ話とかは面白そうだね。
紗音「あん……あっ!戦人さんのっ…久しぶりで……感じ過ぎちゃいます…!」
譲治「紗代!?君は…まだ…だったんじゃ…」
エヴァト「ほぉら、譲治。母さんの言った通りでしょう?こんなアバズレの便器女にあなたのコレを汚されなかったのはラッキーなことなのよぉ?」スリスリ
部屋の中から良く知る人のあえぎ声が聞こえた。
ドアに耳を押し当て中の様子をうかがう。
「あっ……、んっ……あぁぁ……っ、戦人様っ……。
き、もち・・・…いいですっっ……。……あぁぁぁん……。」
僕は歯を食いしばり、こぶしを思い切り握り締める。
しかし、情けないことに
僕の分身はいきり立ち、大きなテントを作る。
こんなに大きくなったのは見たことがなかった。
ベッドのきしむ音が大きくなる。
比例してあえぎ声も。
「あぁぁん、あっ、あっ、あっ、
いぃ、すごく、ああぁあん、あっ……。」
ベッドの上で獣のように貪り合う二人の姿を想像する。
正直に認めよう。
僕は、このシチュエーションに、
かつてない興奮を感じている。
そして想像する。
ことが終わったあとは、
紗音にお仕置きをしなければならない。
どんなお仕置きをしようか。
>>350
安価で展開を決めるのか、それとも後を任せたのか……
とりあえずksk
ここって彼岸花ありなの?
総合スレだし彼岸花もありじゃね?
まぁ第一話からアレだしエロパロ向けではあるな
うみねこ見てると、もうやだこの一族と心底思った。右代宮家、頭おかしい奴多すぎでしょう。
社会的影響度という点では、沢越・伊能一族にも劣らない、PCゲー史上最悪の一族だと思ったわ。
近親相姦やってるし。解釈によっちゃ、プラトニックだけどホモも。
竜さんもこんな暴投投げるくらいなら、もうエロゲーにしちまえばよかったろうに。
戦人が、霧江、縁寿、夏妃、朱志香、絵羽、楼座、真里亞、理御(♂)と
孤島の館で酒池肉林に浸る話でも書いたほうがよかったんじゃねーの?
実母、実妹、叔母、従姉妹、従兄弟とハードセックスとか胸熱。
縁寿と真里亞をやるのは、どう解釈しても犯罪だからNG?知らんな。
理御は女の子でお願いします。
駄目?
個人的には原案通り男でお願いしたい
そうだな
戦人の頭がおかしいフルコース的な意味で理御は男がいい
でも男は中性的な理御だけでいい(ほかの男はいらん)
あとは熟女・妙齢の乙女・幼女とやりたい放題で
雑食派にとっては充実したエロゲになりそうだ
無理やり理御をアッ-
な感じですか。
あの細い体じゃ
抵抗できないだろうなぁ。
すみませんが、続きを……書いてくれませんかね(期待)
理御は自分も男でいいと思う。
ふぅ・・・
やっぱ中性的な青年は美味しいなあ(変態)
実は、うみねこの竜絵は全作品の中でも一番エロイと思っている。
ここは、竜さんにep:R-18を作ってもらうようお願いしなければならない。
つ、続きを!
801板でやれよ
理御たんが女の子ならOK?
自分的には理御が受けなら、
男でも女でもどっちでもいい(変態)
>>359 わかる。
うみねこの絵の良さは
表情と立ち絵のシルエットの
ふつくしさにあり。
プロポーションがいいのかなぁ。
もっとエロ可愛い立ち絵を
書けばいいのに、なんて思ったり。
竜はアヘ顔書いている場合じゃないっしょ。
>>360 続きは書きたいのですが、
服着ている立ち絵だと
本番は書きにくいので悩み中です。
かといって
裸の立ち絵は描きたくないし見たくない。(赤)
多分無残な事になると思うw
理御君のコンプレックスや羞恥心を
ちくちく苛めながら服着たまま先に進めるか、
表情だけでどうにかなるかなぁ?
>>361 801じゃねえんだよ
変態戦人の餌食のひとりでしかねえんだよ理御は(;´Д`)ハァハァ
ゆったろ?熟女・JK・幼女込みって(;´Д`)ハァハァ
理御以外の男は願い下げだって
>>362 女のほうが近いのにあくまで実際の性別は男、というジレンマを抱く
理御が大好物なので(男の娘じゃないってのが実に(・∀・)イイ!!)
男なのに男らしくなれないコンプレックスを突くってのは有効やね
ふぅ……
と思ったら、やっぱり修羅場(語源通り)じゃないかwww
うみねこだからね、仕方ないね。
>>365 面白かったです。乙でした
この組み合わせも悪くないなぁ
しかし最後の状況何だw
戦人が理御としてたのは足止めの為でその間に
次男夫婦がジェノサイドということか
戦人もおもいっきり犯人なんだなこの作品では
戦人が無能じゃなくて、切れ者かつベアト真っ青の鬼畜変態だったらどうなるんだろうと妄想。
プロットだけ長くなった上に尻切れトンボでスマン
まず、密かに六軒島に舞い戻り、碑文の謎を解いて金蔵に報告。
ベアト(ヤス)と引き合わさせて、六年前の約束を果たす。
ベアトとの結婚の意志を金蔵に告げ、遺書及び言質を取って、
戦人はめでたく次期当主の地位を獲得。金蔵は幸せな笑顔を浮かべて往生。
金蔵死亡を隠蔽しようとする長男夫婦の所業と着服の事実を確認したうえで、
蔵臼が仕事で、朱志香が学校で六軒島を留守にしている間に、遺書を御旗に掲げ、
源次を筆頭に福音の館あがりのメイド(武装済み)を率いてクー↑デター↓を起こす。
夏妃を問答無用で拘束、「おおっぉおぉお、おのれぇええええぇえぇッ!!!」と叫ぶ伯母を尻目に、右代宮家の銀行口座と納税の記録を突きつける。
「俺知ってるんですよ。諸費で落とされているこのお金、全部架空だって。これって横領ですよねえ」(鬼畜モードの小野大輔声で)
「何のことを言っているのです!」「いいんですかあ、ばらしちゃいますよー、これって絶縁ものですよねえ」
「主人は関係ありません」「あなたじゃ話にならないから、朱志香を呼んで来てください」「それだけは止めて!」「じゃあ、俺と取引しましょうか」
といった会話を経て、全裸に剥かれる夏妃。パドルでばしばしスパンキングする戦人。その後、一本鞭を手にベアトが登場。
「ひーっひひっひひひひひひひひひひひひ!!久しいのう、夏妃いぃ〜、19年振りじゃなあ。
この島の主たる妾を崖から投げ捨てるなど、不敬にもほどがあるのう。ここは妾自ら教育してやらねば」
青ざめる夏妃。館は欧州本格SMの領域に突入する。
ベアトが積年の恨みを晴らしている頃、戦人は残りの金蔵の四人の子供に別々の手紙を出していた。
共通点は、「金蔵が死んで、自分が当主になったから、葬式に来い。態度によっては、遺産の分配は考えてやる」というもので、
蔵臼には、「夏妃は家の金を横領したことがわかった。お前にも嫌疑が懸かっている。連座したくなかったらしばらく島に帰ってくるな。代わりに朱志香を遣せ」
絵羽には、「この葬儀は密葬で、金蔵の子供だけで行うから、自分一人で来い」
留弗夫には、「通例の親族会議通りに、縁寿も連れて来い」
楼座には、「通例の親族会議通りに真里亞と一緒に来い」
かくして、可能な限り男性を排除して親族を集める。
当然、館に三兄弟が来るや否や、戦人に詰め寄り、朱志香は怒る。
しかし、サブマシンガンを構えたメイドのお出迎えを受け、一同は震え上がる。
一人ずつ別の部屋に監禁。ただし、楼座と真里亞は同室。また、留弗夫の部屋だけは、なぜか大画面のモニターが複数設置。
その後、監禁中の夏妃を除いた女性全員を集め、ベアトとともに登場。自分が当主に就いたことを改めて表明するとともに、
「サバト」の開始を宣言する。意味を理解し顔が引きつる絵羽と楼座、意味がわからず困惑する朱志香と縁寿、無邪気に喜ぶ真里亞。
一旦散会し、戦人はベアトとともに書斎へ戻る。そこには、各部屋の監視カメラからモニターを通じて映像が流れる。
ベアトに会って喜んでいる真里亞に、右代宮家名物優しくない暴力を振るう楼座の姿が映る。早速、マスターキーを使って部屋へ。
「児童虐待はしてはいけない(戒め)」と言って抑える。更に逆上する楼座をスタンガンで黙らせると、新設した拷問室へ連行。
悲しむ真里亞を「これから、真里亞を苛める悪い魔女を、ベアトリーチェと一緒にママから追い払うんだよ」と言いくるめて一緒に連れて行く。
後は、サバトで悪魔を祓うなどとうそぶき、自分の子供を産むことを引き換えに借金を肩代わりする契約を負わせた上で、
戦人は楼座を容赦なく犯し、いたぶる。両穴を抉り終えた後、仕上げに真里亞にアナルフィストさせる。
その他、須磨寺家のスパイ容疑を掛けて、霧江を拷問(映像はリアルタイムで留弗夫に中継)、
更に自分の子供を産むよう強要し、霧江が戦人の実母であることを留弗夫に口を滑らせて、
絶望する実母を思うのまま犯し、嬲る。絶叫する実父を嘲笑。
絵羽には、秀吉を救うことを引き換えに体を売らせる。
鷲の紋章が入った衣装を剥ぎ取った上で、焼却。
「雌に家紋なんていらねえんだよ(男尊女卑)」などと言い放ち、容赦なく人間便器に。
後、真里亞に縁寿の「教育」をさせる。
朱志香に嘉音の正体を明かした上で、現実を受け入れられない朱志香を、ベアトに嬲らせるとか
妄想だけは広がるが、執筆するのはしんどいお……
ただ、これだけは言える。自分は変態だと。
無能じゃない戦人は戦人じゃない
まで呼んだ
乙
一つだけ言いたい、ベアトは「〜じゃ」とは言わない
↓で頼む
655 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/03/16(水) 13:18:20.15 ID:yPnN46eoO
>>653 「あなた!今日は…あの、排卵日だから、早めにお帰りになってくださいと言ったではありませんか!!
うっ…私、早めにお風呂に入って下着も替えてずっとお待ちしてましたのに…
ううぅうー!!」
…なんて色気のないことを散々言ってたんだろうかとか考えるとちょっと萌える
372 :
名無しさん@ピンキー:2011/11/12(土) 21:53:36.18 ID:iC1WFakR
レナ成分が・・・・・っ足りない・・・っ
test兼ねて投下
縁寿→戦人? エロなし。
EP3黄金郷からの逃亡後、少し落ち着いた頃。
一体、何を考えているんだ、この男は。
私は、のんびりソファにふんぞり返り紅茶を啜っている青年を睨み付ける。
暢気にお茶なんかしてる場合か!! と怒鳴り散らしてやりたいのを、苦労の末飲み下す。
青年はティーカップをソーサーに戻すと、クッキーに手を伸ばす。あんた、それ、いくつ目よ?
いい加減にしとかないと豚るわよ。口には出さず、しかし目には険を思いっ切り込めてやる。
「な、何よ? コレ。」
青年が自身で食べるとばかり思っていたクッキーを、ついと私の目の前に差し出した。
「何って、クッキーだぜ。」
馬鹿か、この男は。そういう意味じゃないだろうが。
「そんなの見れば分かるわよ。何でコッチに持って来るのかって訊いてんでしょうが。」
「食えよ、美味いぜ。」
「いらない。」
「腹、減ってんだろ?」
「減ってない。」
「そう言わずに、ほら。」
半ば強引に、私の口の前にグイグイと突き出して来る。それ以上言い争うのも馬鹿らしい
気がして、素直に開いた口の中にぽんと放り込まれた。
「おいしい。」
何の抵抗もなくホロホロと崩れ落ちていく。適度な甘さに仄かな塩味。後からバターの風味が
ふうわりと香る。
「だろ? ロノウェは、スイーツ作りの天才だからな。」
自分が焼いたわけでもないくせにと思いつつも、無邪気さ全開の満面の笑みに何も言えなくなる。
そう、私はこの笑顔が好きだった。ずっとずっと見たかった。やっと会えた。
目頭が熱くなり、じわじわと涙が滲んでくる。でも、まだ駄目。泣くのは彼を連れ帰ってから。
1998年に生きて一緒に還ってから。それまでは冷静に冷徹に、全てを凝視めて分析する。推理の
邪魔にしかならない愛情なんていらない。
胸の奥から突き上げてきそうな感情を、力を入れて押さえ込む。それでも足りない気がして、
彼に向って口を開いた。
「何だ?」
「もう一枚。」
「一枚と言わず、二枚でも三枚でも十枚でも、どんどん食えよ。まだまだ、たんまり有るぜ。」
「そんなに食べたら太る。」
ぼそりと言う私に、青年がニヤリと笑った。
「なんだ、ダイエット中か? あぁ駄目だぜ、全然駄目だ。」
ちっちっちっ、と指を振る。
「そんなだからイライラするんだ。痩せたいなら、しっかり食べてしっかり動く。これが一番。」
腕組みして一人でうんうん頷いている。もしかして、私が空腹でイライラしてると思っていたの
だろうか? それでクッキーを勧めて来たのか?
「そう思うなら、早く頂戴よ。」
一々説明するのも面倒なので、そのままにしておく。まぁ久し振りに甘えられる機会だし……。
「ほう、なかなか美味そうだな。」
これでいいか? いや、あっちのジャムが載った方がなどとやりとりしている間に、
天敵がやって来ていた。黄金の魔女ベアトリーチェ。
「妾にも一枚。」
「ああ、いいぜ。ほら。」
青年が皿ごと差し出す。
「生憎と妾は今、手が空いておらぬ。」
先刻まで手ぶらだったくせに、いつの間にやら黄金の煙管と扇を持っている。
「ああ、そうか。」
こらっ! 簡単に騙されるな、馬鹿戦人!!
そんなだから赤字で無能呼ばわりされるんじゃない!!!
煙管の先で好みのクッキーを所望する魔女に、素直に従う青年。
させるかっ!!
ぱくっ。
「コレもなかなかいけるわね。」
サクサクとクッキーを噛み砕く私を、青年と魔女が呆気に取られて見ている。
誰があんたなんかに食べさせるもんですか。
「あっはっはっはっ。そんなに気に入ったのか?」
「ええ、私とっても気に入ったわ。だから、全部私が食べる。」
「折角、戦人が妾に……。」
「あんたはアッチのを食べなさい。」
うるうると涙ぐんでいる魔女に向って、素知らぬ顔で新しい紅茶の用意をしている
ロノウェの方を顎で示して見せる。ワゴンの上には新しく焼けたクッキーが山盛りに
なった皿。
「妾もそっちの方が良いぞ。」
「だからって、はいそうですか、とはいかないわね。」
「おいおい何も喧嘩しなくても、まだたっぷり残ってるぞ。」
女二人の気持ちを知ってか知らずか(多分知らない、否、絶対知らない)
のんき者の彼に、バチバチッと火花満載の視線を二人揃って浴びせる。
流石の極楽トンボも黙った。
「ゲームを始める前に、お互いの立場ってものを再確認した方が良いようね。」
「黄金の魔女に喧嘩を売るとは、なかなか見上げた根性だ。」
ゴゴゴゴゴゴ。地が鳴り、風吹きすさび、稲妻光る。いざ始めん。
決戦の火蓋が今切られる……はずが。
「ああーっ!! お前等! 何をしておるっっ!!!」
目の前の敵が忽然と消えた。声をした方に振り向いた途端、目眩がした。
何をやっているんだ、あの男は?
左手でクッキーの皿を捧げ持ち、右手で横並びになった煉獄七姉妹に一つ一つ
食べさせてやっている。まさに雛にせっせと餌をやる親鳥。
「長姉の私に恥かかせたら承知しないからね!」
「そっちのチョコ味も食べたい!」
「ちょっと! ちゃんと順番守りなさいよ!」
「まったりとしていて、それでいてしつこくもない、流石はロノウェ殿!」
「あーん。私まだ食べてなーいっ!」
「まだ、妾も食べさせて貰ってないというのにーっっっ!!!」
ある者は主人の憤怒に慌てふためき、ある者は急いで飲み込もうとして
喉に詰まらせ、目を白黒させている。阿鼻叫喚の様相を呈してきた。
おや? ひぃ、ふぅ、みぃと頭数を勘定すると、右往左往している姉妹の数が
足りない?
「ほっほっほっほっ。若い人達は元気があってよろしいこと。」
また増えた。その横で、追加の皿を抱え込んでクッキーをバリバリ食らっている
ドリル縦ロール。
なんか、頭痛がして来た。もうやだ、帰りたいかも。
そんな賑やかで騒々しい部屋の外、ドアの隙間から覗く二つの影。
「うりゅ。負けないで、縁寿。僕が蔭ながら応援してるから。」
「ああ縁寿。今すぐ会いに行きたいのに、恥ずかしくて行けない。
なんて言えばいいのかしら…。ああ、駄目。緊張で脚が震えてきちゃった。」
新しいゲーム盤が用意されるには、まだ少しばかり時間がかかるようです。
-END-
乙。えんじぇぅう
鬼曝し後、after前の夏美(一見M実はS)×暁(どこから見ても立派なM)
夏美が故障中で、途中ぐぎゃります
遠くで虫が鳴いている。涼やかな鈴を転がすような虫の声。
時に力強く時にか弱く、何かを嘆くように鳴いている。
その声に潜み隠れようとするかのような音がする。低くくぐもった音。
ぐつぐつと煮える粥が立てる気泡の弾けるような音。世を恨む者が
唱える呪詛のような音。ブツブツと老婆が口の中で念仏を唱えるような声。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
誰かが謝っている。誰に対してなのか、何に対してなのか分からない。
唯々、静かに謝罪している。声を震わすでも、泣き叫ぶわけでもなく、
淡々と謝り続けている。それでも聞く者に悲哀の情を催させる声音だった。
どんな事をしでかしたにしろ、つい許してしまいたくなる、そんな声音
だった。
どこかで聞いたことのある声だった。自分と同年代だろうか?
若い女性の声。つい最近も耳にした覚えがある。……夏美!!
一気に目が覚めた。慌てて立ち上がり電灯を点ける。隣で眠るはずの
夏美がいない。まただ。まずい、すぐに見つけないと……。
そこで気付いた。夢の所産だと思っていた声が、未だ聞こえている。
声を追って部屋を出る。
居た。キッチンの床に影が見えた。灯りもつけず、床に直接座り込んで
いるようだ。
「夏美。」
背後からそっと声をかける。だが、気付いた様子は見せず、先刻から、
否、俺が目覚めるずっと以前から続けていたであろう動作を、ひたすら
続けている。
右手に持ったプラスチック製のナイフを左手首に当て、引く。手首に
当て、引く。手首に当て、引く。そして呪文のように呟き続ける。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
夏美の左腕は、数え切れない自傷の結果、醜く引き連れている。
一時は自殺願望が強すぎて目を放す事が出来なかった。包丁、ペティナイフ、
カミソリ、果てはハサミやパレットナイフまで、肌を傷つける恐れのある
物は全て隠さざるを得なかった。そして現在、夏美が持ち出せる物はと
言えば、ナイフとは名ばかりの品だけだ。硬くなった夏美の皮膚を傷つける
ことなど叶わない。それでも飽きる事なく、己の左手首に斬り付け続ける。
そうする事が唯一の救いの道であるとでも言うように……。
「夏美、風邪をひいてしまうぞ。」
脅かさないようにそっと、右手のナイフを取り上げる。ゆっくりと夏美が
振り返る。そこに居るのが誰か分からないように、誰かが立っている事さえ
分からないように、中空に視線を彷徨わせる。
ふっと元の姿勢に戻り、今度は自分の爪で左手首を掻きむしり始める。
ガリガリガリガリ。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ガリガリガリガリ。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ガリガリガリガリ。
「もう止めるんだ! 夏美!!」
もう見ていられない。とにかく止めさせようと、背後から夏美を
羽交い締めにした。
「夏美が謝る事は無い! 悪いのは全部俺だ!!」
「私ガ全部悪インデス。私ハ悪イコデス。私ニハ生キル資格ハナインデス。」
強く抵抗はしない。それでも、自分を傷つける事を止めようとはしない。
「夏美は悪くない。夏美は何もしていない。」
夏美の身体を振り向かせるが、下を向いたまま手首を掻き続ける。
「夏美の家族を殺したのは俺だっ!!!」
ぴくりと夏美が反応した。畳みかけるように言葉を継ぐ。これまで何度何度も
繰り返してきた台詞を、夏美の心に届くよう、力強い声で断言する。
「夏美のお父さんを殺したのは俺だ。」
夏美の両腕から力が抜ける。
「夏美のお母さんを殺したのも俺だ。」
夏美がゆっくりと首を上げる。
「夏美のお祖母さんを殺したのも俺だ。」
未だ焦点は結んでいないが、ふらふら泳ぎながらも俺の方へと視線が向いてくる。
「皆、俺が殺した。俺がこの手で殺した。」
目線の振れ幅が少しずつ狭まってくる。
「俺が、夏美の家族を、全員、一人残らず、殺した。」
一つ一つを強調するように、はっきり発音する。
だから夏美が傷つく必要はない。そう続けようとした時、
「……どうして?……」
夏美の身体の揺れが止まった。
「…どうして、殺したの? どうして私の家族を皆殺しにしたの?」
まだ半信半疑なのか、おどおどと自信なさげに尋ねてくる。頭の中で二人の
夏美が争っているようだ。知っている自分と知りたくない自分と。
お前は俺が護る。どんな事をしても護る。だから還って来い! 俺の処へ!!
「夏美を独りにするため。俺だけのものにするため。」
夏美、自分の内に逃げ込むな。俺の手を取れ!! 逃げるなら俺の内にしろ!!
「……それで、……殺したの?」
「そうだ。俺が殺した。」
そう断定した時、夏美の視点が定まった。夏美が俺を見ている。
両の眼から涙を溢れさせ、ぽろぽろと零しながらも俺をしっかりと見ていた。
ドクンッと鼓動が一つ大きく鳴る。
「……本当に?…暁くんが?……」
あと一歩、あと一押し。
「本当だ。犯人は俺だ。」
俺は、夏美に向って手を差し出している。後はお前が掴むだけだ!!
「……非道い、暁くん……」
手応えがあった。夏美の手が、俺のパジャマの袖をギュッと握る。捕まえた!
「……非道い……」
最初はトンと軽くだった。夏美の拳が俺の胸に当たる。
「非道い、非道い。」
リズムを取るように、トントンと連打する。
「非道い、非道い、非道い。」
四つ五つ六つと数を増す毎に、速度を増す。
「非道い、非道い、非道い、非道い。」
ドンドンドンドンと強くなる。覚醒の度合いが、腕に込められる力とリンクする。
勢い余って押し倒された。それでも殴ることを止めない。
「許せない、許せない、許せない、許せない。」
息が出来ない位、容赦無く殴打する。
「許さない、許さない、許さない、許さない。」
夏美の瞳に精神が宿る。
「暁くんの所為で! 暁くんの所為で!! 暁くんの所為で!!!」
夏美の両手が、俺の首に掛かる。
「暁くんが悪いんだよ。暁くんが悪いから、暁くんの所為だから!」
体重をかけるようにして、俺の首を締め上げにかかる。
「悪い暁くんは罰を受けなきゃ、いけないんだっっ!!」
夏美の両手に力が込めら、ギリギリギリと締め上げる。
「苦しい、暁くん?」
ふっと首の圧迫感が和らぐ。塞き止められていた呼吸が急に復活し、許容範囲を
超える空気が気管を通り抜けようとする。吸われる大気と吐かれる大気が相争い、
奔流となる。
「安心して、殺さないよ。」
噎せる俺の首筋を、優しく愛おしむように撫でる。
「罪を償ってからじゃないとね。」
夏美の爪が食い込む。ガリガリと皮膚を掻きむしる。ガリガリガリガリと。
「暁くんが悪いから、暁くんは罰を受ける。暁くんが悪いから、私が罪を祓って
あげる。」
歌うような夏美の声。引っ掻くのを止め、再び締めてくる。
己の顔が塞き止められた血液で、紅く膨らんでくるのを感じる。
夏美の瞳が俺を見ている。俺だけを凝視している。存在するのは二人だけ。
他には誰もいない、何も無い。俺だけの夏美。夏美の為だけの俺。
拍動が強くなり、脈拍が速くなる。窒息の所為だけでない事を自覚した。夏美が
俺を認めてくれたから、俺の存在を受け入れてくれたから……。
「暁くん、どうしたのコレ?」
パジャマの上から夏美が触れてくる。信じられない物を見る目。口元が嘲笑の形
に歪む。
「変だよね、暁くん。今、暁くんは痛いはずなのに、苦しいはずなのに、
どうしてこんなになってるの?」
怒張した形を強調するように撫で上げる。指先で輪郭線を描き、掌で面を構成する。
「痛いっ!!」
加減をせずに思い切り握り締められた。
「暁くんがいけないんだよ。真面目に反省していないから。」
クスクスクスクス。もう何年も見ていなかった夏美の笑顔。ずっと見たかった
夏美の笑顔。
「あれあれ? おかしいね、暁くん。一体どうしちゃったのかな?」
クスクスクスクス。恋い焦がれた夏美の笑顔。
「このままじゃ辛いでしょ? 私がラクにしてあげる。」
夏美の右手がパジャマを通り過ぎ、下着を潜り、直接俺に触れてくる。
「不思議だね、どうしてこんなに濡れてるのかな、暁くん?」
硬く勢いを持ったモノが剥き出しにされた。
「わぁ、べとべとしてる。私がキレイにしてあげる。」
夏美の舌が滴を掬い舐め取る。口を開け含んだ。
「うっっ!!!」
股間に激痛が走る。あまりの痛さから本能的に身体が逃げようと跳ねるが、
がっちりと押さえ込まれていた。
「痛い、暁くん?」
反射的に滲む涙越しに無邪気な夏美の微笑みが見える。パジャマのズボンと
下着を脱ぎ出す。
「可哀想な暁くん。慰めてあげなくっちゃ。」
俺の下半身を跨ぎ、腰を落とす。既に濡れそぼっていた其処は、すんなりと
俺自身を迎え入れた。
ほぅ。一つ吐息を漏らし、夏美が腰を振り出す。馬上のようにリズムを刻んで揺れる。
「可哀想な暁くん。可哀想な暁くん。可哀想な暁くん。」
単調なメロディーで歌い出す。その間も腰の動きは止まらない。
「暁くん、気持ち良い?」
俺の表情を覗き込みながら、再三首を絞めてきた。
「駄目じゃない、ちゃんと悔い改めないと。じゃないと罪は償えないよ?」
ギリギリと首を絞め、ガリガリと皮膚を掻き破り、動き続ける腰からは湿った音が
聞こえ続ける。
自分でも、痛いのか苦しいのか心地よいのかわからなくなってくる。それでも
止めて欲しいとは思わない。ずっとこのままでと願ってしまう。
甘い喘ぎと熱い吐息が夏美の口が漏れて出る。夏美の動きが加速する。それに連れて
俺も駆け上る。
首を絞める力も強くなる。ふわっと体が浮いた感覚がする。重力の束縛が解ける。
「ああっ!!」
夏美の声を耳にした瞬間、俺は意識を手放した。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
何処かで誰かが謝っている。誰に対してなのか、何に対してなのか分からない。
唯々、静かに謝罪している。声を震わすでも、泣き叫ぶわけでもなく、淡々と
謝り続けている。それでも聞く者に悲哀の情を催させる声音だった。どんな事を
しでかしたにしろ、つい許してしまいたくなる、そんな声音だった。
誰かに深淵から引っ張り上げられたかのように、ふっと意識が戻った。
夏美の顔が見える。目を赤くし、涙を堪えている夏美の泣き顔が。
「…夏美……。」
小さな嗄れた声しか出なかった。それでも夏美はビクリと大きく肩を震わせた。
夏美が傷の手当てをしてくれたのか、俺の首には包帯や絆創膏が貼られていた。
消毒をしてくれた為か、熱を持ち少しヒリヒリする。
「ごめんなさい、暁くん。私、私、こんなつもりじゃ……。」
「いいんだ、夏美。」
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
謝り続ける夏美の口を指で塞ぐ。
「夏美が謝る事はない。悪いのは全部、俺なんだから。」
「でも……でも、でも……。」
「夏美、笑ってくれ。」
「え?」
「俺は夏美の泣き顔なんか見たくない。夏美の笑顔が見たい。だから
笑っていてくれ。」
躊躇う夏美の頬を両の掌で包み込む。
「笑うんだ、夏美。」
ぎこちなく夏美の口元が笑みの形に歪む。ぽろぽろと涙を零し、緊張で頬の筋肉を
攣りながらも笑おうとする。
「そうだ、それでいい。」
始めは作り笑いでも良い。偽物でもいつかは本物になる。俺が本物にしてみせる。
だから笑い続けていてくれ、夏美。夏美が笑っていてくれるなら、なら、それでいい。
−END−
GJ!
GJ!とうどうあきらくんは確かにMっぽいww
久々に来てみればGJ! 鬼曝しの二人はひぐらしで一番好きだから嬉しい
391 :
名無しさん@ピンキー:2011/11/30(水) 07:35:38.06 ID:XCqYd8dk
そういやひぐらしスレを重複させてたやつも消えたんだな
楼座(癒し系常識人?+捨てられ直後)×黒戦人(厨二病全開中)
戦人犯人(主犯)説の動機みたいなもの。1985年の話です。
約1年後、資金難の楼座の為に事件を起こすが、
真里亞殺害を責められ逆上して楼座も殺害。
10/6に1人で島から脱出するが、ボート転覆な感じ。
始まりは偶然だった。
同居する母方の祖父母が寝静まるのを待った俺は、
家を抜け出し夜の街を彷徨っていた。
何処に行こうというのでもない。唯々、歩いて歩いて歩き廻った。
今の暮らしに不満がある訳ではない。着る物に困る訳でもなく、
食べる物に事欠くでもなく、雨露を凌げる立派な家もある。
虐待を受けてもいないし、学校で虐められているわけでもない。
それなりに充実した毎日だ。それなりの家庭に、それなりの学校、
それなりの生活。
それでも何故だかイライラする。じっとしていられない。
檻に入れられた動物の気分だ。
明るく楽しく健全で、時には馬鹿をし皆で大笑い、それでいて
薄紙の様な違和感を拭い去れない友人関係。年々頑固に、
また愚痴っぽくなる祖父母。なにより、普段は忘れているのに
ふとした拍子にちくりと痛むささくれの様な親父の存在。
「遊んで行ってよ、兄ちゃん。」
両手をポケットに突っ込み、足早に風を突っ切って歩いている俺に、
軽薄そうな若い男が近寄って来た。見向きもしない俺の前に存在を
誇示する様に立ち塞がる。
「良い娘、紹介するから。」
へらへら笑いつつ、俺の二の腕を掴んでくる。
「興味ないんで。」
こういう手合いは相手にしないに限る。さっさと通り過ぎようと
肩を振る。が、男の手は枷の様にがっちりと食い込み容易には
振り払わせない。何なんだ? このしつこさは!?
「三千円ぽっきりで良いからさ。」
堪忍袋の緒がぶち切れそうだ。いいかげんにしろ!と叫びかけた時、
「何してるの、戦人くん?」
思わぬ場所での耳慣れた声に、弾かれた様に反応した。
「勝手にウロウロしたらダメだって、言ったでしょ?」
なんだ女連れかよとか何とか口の中でぶつぶつ言いつつ、
男はあっさりと手を放し、既に次の獲物へと標的を変え、
突撃して行った。
「……こんな所で何やってんですか、楼座叔母さん?」
夜の徘徊を見つかったバツの悪さに、ついつい突慳貪な言い方に
なる。
「それはコッチの台詞よ。戦人くんこそ、何をしているのかしら?」
「何…って、散歩ですよ、散歩。」
「真夜中に、繁華街で?」
いたずらっぽく笑いながら、ぐうの音も出ない俺を横目で見てくる。
「まぁ良いわ。ヤボな事はヤメにしましょう。此処で出会ったのも
何かの縁という事で、ちょっと付き合ってくれない?」
くいっと杯を傾ける仕草をして見せる。
「戦人くんはムリに飲まなくて良いから。」
こうして俺は叔母さんに連行される事となった。
向った先は、地下に在る落ち着いた雰囲気のバー。バーテンが
一人に、カウンター席だけの鰻の寝床のような店だった。
慣れた様子で席に着くと、楼座叔母さんが注文した。彼女は
ウイスキーの水割り、俺にはコークハイ。
「ちょっと位ならいけるんでしょ?」
注文した後で確認するように訊いてくる。
「まぁ、爺さんの晩酌に付き合ったりもしますから。」
軽くグラスを合わせてから一口含む。
「それとも先刻のお兄さんに付いて行った方が良かった?」
クスクスと楽しげに笑う。
「冗談でしょう? 本当言うと、声掛けてくれて助かったんですから。」
もう一口飲んで気付いた。
「そう言えば、まだでしたね、お礼。ありがとうございました。」
カウンターに両手を着き、馬鹿丁寧に頭を下げた。感謝半分、嫌味半分。
そんな俺の様子にきょとんとし、また笑う。
「そんなに恐縮される事じゃないでしょ。それに……。」
「それに?」
続きを促す俺に何でもないと否定する。慌ててパタパタ手を振りながら。
なんか子どもみたいだ。
「何、笑ってるの?」
やばい。微笑ましくなった俺の気持ちを察した叔母さんが睨んでくる。
「何でもないです。何でもないですって。」
笑いを噛み殺せない俺を見て、腹いせに抓ってやろうと指先が伸びてくる。
難なく肘でガード。意地になった叔母さんはこれでもかと攻撃を繰り出してくる。
本当、拗ねた子どもそのもの。そう思うと余計に笑えてくる。
「それより乾杯しましょう、乾杯。」
未だ諦めず俺の隙を窺う叔母さんの両手を収めさせようと、とりあえず
提案してみる。
「乾杯? 何に?」
「そうだな、お互いの幸せに。」
「……良いわね、それ。」
「では、かんぱーい!!!」
一瞬、叔母さんの瞳が陰った気がした。気のせいか?
「お水、此処に置いとくぜ。」
手をのばせは届きそうな位置に、ミネラルウォーターの瓶を置く。
その隣にルームキー。
泥酔した女性を一人で残していくのは正直心配だが、いくら親戚とは
云え二人きりでホテルは拙いだろうと思い直す。
出口へと身体を向けた時、軽い抵抗を感じた。ジャケットが何かに
引っかかったのかと目をやる。白くて細い物が目に入った。
楼座叔母さんの指先だった。
「行かないで。」
古すぎてカビまで生えた表現だが、捨てられた仔犬そのものの瞳だった。
「独りにしないで。」
何と応えれば良いのかわからず、口籠もっている俺に彼女が縋り付いて
来た。
「え? あ! いや、その……。」
潤んだ瞳に射すくめられ、視線を逸らす事も出来ない。やけに口の内が
渇いてきやがる。
「いや、身内とは云え、一応、俺も男だし。」
両腕で俺の首根っこにぶら下がる。
「私のこと、嫌い?」
ゆっくりと楼座叔母さんの顔が近付いてくる。目尻が紅く染まっているのに
今更ながら気付く。
「私じゃ、嫌?」
ちゅっ。
唇に柔らかい何かが触れた。軽く啄むように繰り返されるキス。俺の唇を
彼女のそれが甘く噛む。
つい息苦しくなり、開いた口に熱い生き物が侵入して来た。ゆっくりねっとりと
甘い痺れを残しつつ、奥へ奥へと侵略する。
焦点が合わず暈けた叔母さんの顔が少しずつ移動していく。
「…叔母さん……。」
「楼座って、呼んで。」
耳朶を甘噛みしながら、甘え声で囁いてくる。妖魔に邪な考えを吹き込まれて
いるようだ。
「…楼座…。」
ジャケットが肩から滑り落とされ、渇いた音を立てた。
俺の右手を楼座の左手が取り上げ、自身の胸へと導く。
「柔らけぇ……。」
感触を楽しみながら、ゆっくりと揉み解す。楼座の唇から熱い吐息が漏れる。
俺のTシャツを脱がしながら、
「脱がして……。」
楼座が促す。
彼女の背中に手を回し、一番上のホックに手間取りながらも、何とか
ファスナーを下ろせた。
両腕を抜いたワンピースが腰の辺りで輪になる。おおっ!
スリップだかシュミーズだか知らないが下着は黒。流石は大人の女性!!
肌の白さが一段と映えるぜ!!!
「あんまりジロジロ見ないで。恥ずかしいから……。」
背中や胸元で両手をもぞもぞさせた後、器用にブラジャーだけ抜き取って
ワンピースと一緒に放った。
「戦人くんも…ね?」
「お? おうっ!」
俺もジーパンを脱ごうと思ったが、何だか照れくさくて後ろを向く。
あれ? 何でこんなに釦が固いんだよ。こらっ! さっさと外れないと
ぶち切るぞ、てめぇ!!
悪戦苦闘する俺の横をストッキングが飛んで行った。もしや中に透けて見える
アレは……ということは……人間やる気になれば何でも出来る、
という事で脱皮成功。いざ参らん!!
深呼吸一つ落とした俺が振り返るのと、ベッドの中の楼座が最後の一枚を
放り投げたのが同時だった。
シーツの間に身を滑り込ませる。楼座の腕が絡みつく。お互いの唇を貪り合う。
楼座の手が下へ下へと降りていき、俺の中心に留まる。
「もう、こんなに……。」
形をなぞるように指を這わせる。先走る滴を指の腹で塗り広げる。
掌全体で擦り上げる。
荒くなる呼吸を抑えられない俺の様子を満足そうに眺める楼座。
俺の腰に跨り擦り付けて来た。
彼女自身から滴る愛液が俺の下腹部を光らせ始めた頃、ゆっくりと腰を下げた。
楼座の内に呑み込まれていく感覚に、脳髄が痺れる。
「すげぇ……。」
「まだこれからよ。」
クスクス微笑む楼座が上下動を始めた。
「え?」
「……すまねぇ……。」
我ながら情けない。いくらお初とはいえ余りにも呆気なさすぎる。
「いいのよ。」
申し訳なくて彼女の方を見られない俺の髪が、優しく撫でられた。
「それだけ良かったって事でしょ?」
横目でちろりと様子を窺う。彼女の言葉に嫌味や含みは感じなかった。
「それにしてもよく引き締まっているわね。鍛えてるの?」
「あ、あぁ。自宅で出来る範囲でだけど。」
指先で軽く引っ掻くように、腹直筋を辿って行く。外腹斜筋を通り、広背筋、
僧坊筋と回って大胸筋へ。
「素敵よ。」
自然と抱き付く形になった彼女が囁く。首筋に口吻けられ、舐められ、
吸われた。自分でも反応してしまうのが分かる。
楼座が再び腰を動かし始める。上下に、前後に、左右に、そして円を描くように。
再び俺の分身が、鎌首を擡げる。
名誉挽回のチャンスとばかりに下から思い切り突き上げる。一方的に攻められて
ばかりも癪に触るというのも正直ある。
楼座の背が弓なりになる。両腕で俺の頭を抱きかかえる。自然と目の前には
二つの膨らみ。吸って舐めて軽く噛んでと、その感触を堪能する。尖った乳首を舌先で
転がすと、楼座が甘く啼いた。
二人の動きが加速する。言葉を交わすこともなく、がむしゃらに、本能の赴くままに
突き進む。
「…くっ、もう、いっちまいそうだぜ。」
快楽に浸るように閉じていた瞼をうっすらと楼座が開いた。その口元から一筋の滴が
垂れる。
「ん…はぁ……いいわ…来て、戦人くん……。」
楼座にぎゅっと締め付けられ、俺の限界を超える。爆発する俺の劣情を、彼女は
優しく受け止めてくれた。
「こうやってると、人って暖けぇんだな……。」
俺の素直な感想に、腕の中の楼座が聖母の微笑を見せた。
−END−
ローザさんんんんん!!
GJ!!
ウィル×理御
EP7後生還した二人がウィルの自宅へ戻った夜の話
「眠れないのか?」
キッチンで寝酒の用意をしていると、理御が姿を現した。
「付き合うか?」
手に持ったワイルドターキーの瓶を振って見せる。
「はい、頂きます。」
アイスペールに氷を入れ、ミネラルウォーターの瓶にグラス2個、一緒に
リビングに運ぶ。
「悪いが、水しか無い。水割りで良いか?」
理御がコクンと素直に頷く。しばし迷い、とりあえずワンフィンガーで一杯作る。
自分用には生でなみなみと。
グラスを渡すとそろそろと口元に運び、匂いを嗅ぐ。舐めるようにゆっくりと
飲んでいる様子に、特に不満は無いようだ。安心して自分のグラスに口を付ける。
「腕は…大丈夫ですか?」
視線をグラスに向けたままの理御が問う。一瞬、何を聞かれた悩んだが、
今日の戦闘での負傷の事だと思い当たる。
「ああ、もう何ともない。魔女さまのお陰とでも言うべきかな。」
黒猫の大群にもぎ取られた左腕は、何時の間にやら復元していた。
元通りくっついたというより、端から切断などされていないようだ。
「……ごめんなさい……。」
理御が深々と頭を下げる。
「……俺が勝手にやった事だ。お前は気にしなくていい。」
「私が助けて、なんて言ったから……だから……。」
身体が小刻みに震えている。
「あれは俺が言わせた。俺の意志だ。」
「それでも右代宮家の事件に赤の他人を巻き込むべきでは無かったんです。」
「……いや、俺も全くの無関係というわけでも無いし。」
「…でも…それでも……。」
「あーっ、もうっ!、いいかげんにしやがれェっっ!!」
突然爆発した俺に、目を白黒させている。
「それ以上続けると、殴るぞ!!」
『あ』の形に口を開けたまま、呆然としている。
「いいか、俺は自分の意志でお前を助けたんだ! ベルンカステルの所為でも、
お前に頼まれたからでも無い。俺が助けたいと思ったから助けた。それだけだ!
自分の身が惜しかったら、途中でさっさと放り出してらァっっ!!
分かったかっっ!!」
捲し立てた所為か、喉が渇く。グラスの酒を一気に空けた。
「まだ何か言いたい事があるか?」
叩き付けるようにグラスを置き、ぎろりと睨んでやると、ぶんぶん首を振った。
よろしい。
再びバーボンを注ぐ。理御は萎縮したのか、俯いたままだ。
「そういやァ、まだだったな。」
不思議そうに俺を見上げる。
「無事生還した祝い。」
グラスを持って掲げて見せる。意図を察して理御も手にする。
「お互いの無事を祝って、乾杯。」
「乾杯。」
唱和した後、互いにあおる。途端に理御が噎せた。
「おいおい、無理して一度に飲むこと無ェだろうが。」
空になった理御のグラスに水を注いでやる。
「べ、別に、無理なんか……。」
げほげほやりながらも反論してくる。
「ただちょっと気管に入っただけで……。」
「いいから、水飲め。」
背中をさすってやりながら渡す。
「……情けないですよね。私……。」
何も、酒に弱いくらいで卑下する事もないだろうに。
「右代宮家の次期当主だと粋がっていても、いざという時には何も出来ずに
ただ怯えているしかなかった。」
そっちか。なるほど。
「幾つだっけ?」
質問の意味を把握しかねたようで、きょとんとした表情でこちらを見ている。
「歳。」
「19になりました。」
「なら立派なもんだ。その頃の俺はもっと、ちゃらんぽらんだったぞ。」
「一緒にしないで下さい。」
俺と比較された事が気に障ったようだ。失敬なヤツだな。
「ごめんなさい。今の言い方、失礼でしたよね。」
感情が顔に出てたのか、理御が素直に謝ってくる。
「いつもはこんな事ないんですけど……。」
「とんでもない一日だったんだ。仕方ねェさ。」
なんとなく間が持てず、酒瓶に手を伸ばす。自分のグラスを満たし、
理御の方を見やるとグラスを差し出した。二杯目を作ってやりながら気付いた。
「ツマミがなかったな。」
「いえ、十分です。」
立ち上がりかけた俺を、引き留める。
「もう、この一杯で止めますから。」
既に酔いが回ったようで、理御の頬は鴇色だ。確かに、そろそろ終いにした方が
良さそうだ。
「いつも、こんなに飲むんですか、お酒?」
氷も入れずに3杯目を飲む俺を非難する目で見る。
「毎日ってわけじゃァないぜ。飲むのは時たまだ。疲れた時とか、眠れない時とか、
イライラした時とか。」
何で責められなきゃいけないんだと思いつつも、ついつい言い訳めいてくる。
「今晩もそうなんですか?」
口調から半信半疑なのがありありだ。
「今日は色々有ったからなァ、興奮冷めやらぬってヤツか。」
不思議そうに俺の顔をまじまじと凝視めてくる。
「俺に繊細な面があると、意外か?」
「いえ、そういうんじゃないんですけど…。なんて言うのか、経験豊富っていうのか、
どっしり構えているというか、物事に動じないというか……。」
大人物だと褒められているのか、無神経だと貶されているのかよく分からない。
「俺だって、そうそう今日みたいな経験をしているわけじゃないぞ。」
「そうなんですか?」
「異端審問官だからって、日常的にチャンチャンバラバラしてたら命が幾つあっても
足んねェー。」
我知らず溜め息が漏れる。
「刑事だって、実際はドラマみたいなドンパチなんかなかなか無いだろ。
地道に聞き込みしたり、痴漢とかコソドロ捕まえたり、書類作成したり、そんな感じだ。」
「はあ。」
釈然としないながらも一応は納得したようだ。
「それはそうと、そろそろ眠った方が良いんじゃないか?」
「…もう、ですか?……。」
「もうって、結構な時刻だぞ。」
AV機器のデジタル表示を顎で示して見せる。
「そうですよね……。」
「身体だけでも休めた方が良いと思うがな。」
両手で握り締めたグラスにじっと視線を注いでいる。
「客人にソファで寝かせるつもりかって寝室から放り出しといて、まさか独り寝は
寂しいとか言い出すんじゃねェだろな?」
しまった、図星だったか。俯いたままの理御の耳朶がみるみる紅く染まってくる。
「悪ィ、冗談のつもりだったんだが…。」
「そこで謝られると余計惨めです。」
「……すまん。」
それでも謝罪する俺に呆れたのか、大きく息を一つ吐いた。
「眠ろうと瞼を閉じると駄目なんです。皆の最後の姿が思い出されて……。」
その時の様子を思い浮かべたのか、身体をぶるっと大きく震わす。
「分かったよ。」
しゃーねェな。立ち上がった俺を怪訝に見上げる理御。
酒瓶やらアイスペールやらを取り上げつつ、言葉を繋げる。
「今晩だけ、抱き枕がわりになってやるよ。」
俺の台詞の意味が理御の頭に染み通っていくのが、その表情の変化から読み取れる。
「片付け、手伝います。」
酔いが脚に来たのか、勢いよく立ち上がった理御の足下がふらつく。慌てて片腕を
理御に回す。何とか間に合い、倒れずには済んだ。華奢な作りの身体が俺の胸に
凭れかかる。顎の辺りに来た理御の頭部から、甘い香りが匂い立つ。俺と同じ
シャンプーを使ったはずなのに、使用した人間によってこんなに違ってくるものなのか。
「あ、ありがとうございます。」
理御がするりと俺の腕から抜け出る。そこで我に返った。何を考えているんだ俺は。
「俺がするから、お前は座ってろ。」
手早く片付けリビングに戻ると、その場にへたり込んだままの理御がしょんぼりと
下を向いていた。
「ほら行くぞ。」
腕を掴んで立たせる。酔いが覚めないようで、まだ覚束ない足取りだ。
「ちゃんと歩かないと、お姫様だっこするぞ。」
「自分で歩けます!」
よろよろしながらも、どうにか自力でベッドまで辿り着く。そこまで嫌だったか。
「もっと詰めろ。」
シッシッと野良犬を追い払うように手を振る。素直に移動して出来た空間に潜り込む。
「おいっ!?」
「抱き枕になってくれるって言いましたよね?」
俺の肩を枕代りにして擦り寄って来る。薄手の生地を通して、飲酒によって上がった
体温が伝わってくる。
「あれは取り消す。添い寝に訂正。」
頭の下から引き抜こうとする俺の腕に、理御が絡みついて阻止する。
「約束しましたよね。」
ずずっと突き出して来た口元から、甘い吐息が俺の顔に吹きかけられる。
「そんなに面ァ突き合わさなくったって話せるだろが。」
「約束はちゃんと守って下さい!」
まずい、まずい、まずい、まずい。
そういう対象として見てはいなかったはずなのに、一旦意識し始めると駄目だった。
弱った相手を喰っちまう程、落ちぶれちゃいないつもりだが、どうにもこうにも肉体の方が
暴走を始めそうだ。
兎に角、距離を空けようと悪戦苦闘する俺の意志を、理御は頑として受け付けない。
一纏めにして払い除けた両手が、目覚め始めた俺の分身を掠めた。
「……え?」
そりゃ絶句するわな。くそっ!! こうなりゃ、恥も外聞もねェ。
「そういう事だから、くっついてくんな。手は出さねェから、安心しろ。大人しくこのまま寝る!」
いい歳して、一体何やってんだか。情けないったらありゃしない。我知らず溜め息が漏れる。
身を捻って背を向けた俺の腰の辺りを掠めて、理御の両手が腹の上で合わさる。
「……いいですよ……。」
理御の頬が肩胛骨の間に当てられる。
「ウィルなら……。」
「…酔っ払いの戯言なんぞに付き合ってられるか。」
理御の両腕に力が込められる。
「おいっ、冗談も大概にしろよ。」
自分の両眼が据わってくるのが分かる。人の気持ちも知らねェで、何適当な事言ってんだよ
コイツは。
無性にイライラしてきた。人恋しいとはいえ、年上をからかうとは不逞輩だ。
ちょっと脅かしてやるか。
腰を締める理御の両手を外し、寝返りを打つ。細い肢体を組み敷き、その顎を掴み、
口を開かせる。
「…ん、あ……はぁ、あ…ぁん…うん……。」
忍び込ませた舌を理御のそれに絡ませる。舌先が触れた途端びくりと硬直したが、
逆らう事もせず、なされるがままに蹂躙されている。歯並びを確かめるようになぞり、
歯茎を丹念に舐めていく。たっぷりと唾液にまみれた舌全体を強く吸い上げる。
ちゅっ。
音を立てて唇を放す。陶然とした表情の理御は、脱力し切った様子で柔らかく息を吐いた。
少なくとも、唇を合わせた途端には暴れ出すだろうと思っていた理御が抵抗する素振りも
見せず、従順にしていたのには驚きだった。抜ける程の白い肌を上気させ、とろんとした視線が
焦点を結んでいない様は誘うものがある。
「逃げるなら今のうちだぞ。さもないと本当に喰っちまうからな。」
自分でも逃げて欲しいのか違うのか、判然としない。それでも問うのは、人の弱みに付け込む
卑怯者になりたくなったからだろうか。それが相手に責任を押し付ける事になると分かっていた
筈なのに。
俺の問いに理御は視線を逸らしたまま、頭を左右に振った。
ここまで来たからにはもう退けない。理御のパジャマの釦を一つ一つ外していく。常夜灯の
オレンジ色の光に照らされ、白い裸体が艶めかしく浮かび上がる。
脇腹に手を当て、肋骨の一本一本を確かめるように撫でていく。肌理の細かい肌質はしっとりと
掌に吸い付いてくるようだ。鎖骨の膨らみを吸うと、理御の息が荒くなる。
「あっ、あん。」
白い肌とコントラストをなす紅い乳首に舌を這わせると、甘い声を出した。恥ずかしくなったのか、
右の拳を口に押し当て堪えようとする。反対側を爪先で弾くように引っ掻くと、耐えられないように
身を捩る。
先程までぴったりと閉じられていた両脚から力が抜ける。開いた細い隙間に手を滑り込ませる。
「あっ、ダメ!」
慌てて堅く閉じ直そうとするが時既に遅く、俺の右手はしっかりと理御の股間を捕らえていた。
押し当てたまま小刻みに振動させる。
「あっ、あっ、あっ、あっ。」
動きに合わせるように、理御が声を上げる。腰が浮いたタイミングに合わせ、パジャマのズボンと
下着を脱がせる。
「イヤっ!!」
理御の脚の付け根に口吻けた。強く吸うと身悶える。一番敏感な部分を指で刺激しつつ、ゆっくりと
舌で舐め上げる。枕を両手で抱え込んだ理御は、半ば顔を埋めるようにして強い刺激に耐えている。
「ひっ!?」
十分に潤した所で、指を一本侵入させた。無理をさせないように、慎重に埋没していく。
「あん……あぁ、はぁ……。」
ポイントを探し、擦り抉りしつつ、少しずつ広げていく。解れてきたのを確認し、指を二本に増やす。
時に二本揃えて挿入し、時に相反した動きで蠢かせる。息も絶え絶えになった理御は、もう声を発する
気力もない様子だ。
頃合いも良しと見て、理御の脚を両肩に担ぎ上げる。ぐったりと脱力したままの理御は、反応しない。
十二分に猛る自身に手を添え、理御の内へと進入し始める。
しっかりと時間を掛け、少し進んでは退き、進んでは退きを繰り返す。全てを収め終えた時、理御が
うっすらと目を開けた。
「痛むか?」
俺の問いに首を振る。
「動くぞ。」
一瞬、怯えの色を見せたがこっくりと頷いた。出来るだけ負担を掛けないように注意しながら、
腰を動かし始める。
理御は顔を背けながらも気になるのか、横目で結合部分を覗き見している。二人の荒い呼吸音と
湿った音が部屋を満たしていく。
指で探り当てたポイントを狙い、抜き差しする。眉間に皺を寄せ、苦痛に耐えていた理御の表情が
甘く変化してくる。
顎を持ち此方を向かせて唇を吸う。理御が堪えていた息を一気に吐くと伴に開いた所へ舌を入れ、
存分に堪能する。
そろそろ見えてきた限界へ向って、ラストスパートをかける。
「…はぁ、はぁ、はぁ、ウィル……もう……。」
理御がぎゅっと強い力でしがみついてくる。それにつれて、俺を呑み込んだ部分も強く締め付けてくる。
「……もう、逝くぞ。」
理御が壊れた木偶人形の様に、がくがくと首を揺らせながら頷く。
「うっ!」
気をやった理御の反応に触発され、全てを中に吐き出した。
こんなつもりじゃなかったんだがなァ。右肩に快い重みを感じながら、溜め息が漏れた。腕の中では、
理御が健やかな寝息をたてながら熟睡している。
弱みに付け込んだ気がして、どうにも罪悪感が拭い去れない。
「まさかこうなるとはなァ……。」
初めて会った時はもちろん、助け出した時でさえこんな事になるとは思ってもみなかった。
まァ、初対面時に悪い印象は持たなかったが……。
少々胸のつかえを感じながらも、満ち足りた理御の寝顔を見ていると、満更悪い気もしない。
今はこの温もりを楽しむとしようか。悩むのはまた明日だ。掛け布団の具合を直し、眠りに入る事にした。
瞼を閉じて、いつもの口癖を自分に言い聞かせる様に口にしてみる。
「理解しようとするな。頭痛にならァ。」
−END−
乙乙!
久々の投下がGJすぎる
417 :
名無しさん@ピンキー:2012/02/19(日) 00:18:03.39 ID:yYag1Ixs
一応書くには書いたんだが、ここに投下すべきモノか迷ってる。
傾向(?)をまとめたので、意見をもらえると嬉しい。
・ひぐらし 主人公沙都子 鬼隠し編その後IFストーリー
・非エロ
・一応大まかな流れは考えたが、どのくらいの長さになるかは不明(長くなる。どれくらい長くなるかわからん)
・ゲーム『アサシンクリード』より世界観・設定のみ拝借(ゲーム知らなくても大丈夫なようにはする)
・オリキャラがキーパーソンとして登場(ただしあくまで脇役)
ばっちこい
419 :
417:2012/02/22(水) 07:47:31.33 ID:McssVvFH
〉418
アウトになるから投下はやめとけって解釈で良いの?
ばっちこい!をそう解釈するのか....
421 :
417:2012/02/22(水) 20:07:07.49 ID:R8PL96vd
〉420
あ、すまん。
ばっちこいって野球用語で「打てるもんなら打ってみやがれ、絶対アウトにしてやるぜ」って意味だったはずだから、
「お前のssも間違いなくアウトになるぞ」って意味かと思ったんだ
ぐだぐだ言わずにあげちまいなぁ!
とはいえ初心者でもsageぐらいは知っといた方がいいぞ
423 :
名無しさん@ピンキー:2012/02/22(水) 23:13:16.05 ID:R8PL96vd
さっきはsage忘れてスマン
今から投下するぜ
傾向は417を参照のこと
一話一話はわりと短めになるかも
424 :
417:2012/02/22(水) 23:15:43.42 ID:R8PL96vd
ページ1
2043年6月28日(昭和118年、平成55年) 午前7時18分
北条沙都子 72歳
アサシン教団大導師
日本国 野永県 鹿骨市旧雛見沢地区
古手神社境内
圭一さん、レナさん、魅音さん、梨花。
みなさん、天国でも楽しく暮らしておりますかしら?
きっと昔のままの笑顔で、互いに笑いあっているのでしょうね。
それでいいですわ。私のことなんて構わず、どうか幸せでいてくださいまし。
今の私は、皆さんの知っていたあの子とは全くの別人。
無邪気に駆け回り、毎朝のように圭一さんにトラップを仕掛けては笑っていた女の子は、60年前に死んでしまったのだから。
・・・とすると、ひょっとして、あの頃の私はもう、皆さんのところに行っているのかしら。
あの頃の、何も知らなかった私が。
ふふ。だったら、もしいま私が皆さんの前に姿を現しても、誰も私が『北条沙都子』だということに気付けないかもしれませんわね。
・・・いえ。そもそも、皆さんの前に姿を現すなんてことがきっとないですわね。
私がここまでの人生でしたことを考えれば、閻魔様は多分私を罪人として地獄に落とすでしょうし。
たとえこの世界の法で裁かれることがなかろうと、今の私は。
手を血に染めた、醜い老婆ですものね。
425 :
417:2012/02/22(水) 23:17:26.55 ID:R8PL96vd
石の長い階段を降りる。
さすがにもう、現役の頃のように一番上から下まで一気に飛び降りるなんていう荒業をこなすことはできなくなった。
月日の流れというのは早いもので、こうしてかつての仲間たちを偲ぶのも今年で60年になる。
つまり、私もその分歳を重ねたということ。
昨日、今の私――つまり、72歳の私――の顔と、12歳の私の顔とを見比べてみた。
・・・あえて書くまでもないこととは思うが、やはり60年という月日は、人を変える。
外見も、中身も。
顔は全体的に細めになり、多くのシワが刻まれた。
変わらないものと言えば、髪の長さと、目の色と、話し方くらいか。
私は急激に背が伸びるタイプだったらしく、16歳から19歳までの3年はほとんど半年に一回のペースで服を一回り丈の大きいものに変えていた。
まあ、その後は、ほとんど背も伸びなかったのだが。
最後の一段を降り、左に曲がる。
すると、すぐそこに車が見えた。私が来たときにはなかったものだ。
どこにでもある、ありふれた白いワゴン車。
ひょっとしたら、とは思っていたので、それほど驚きはしなかった。
運転席の窓が開き、よく知っている顔が出てきた。
白い髭を蓄えた男。一見すると私よりもはるかに年上に見えるが、実際は4つしか離れていない。
まあ、私も初めて出会ったとき、私よりずっと年上だと思ったのだけど。
「乗るか?」
いつもの深い声で、男は尋ねてくる。
「いつものことながらセンスがありませんわね。真和さん。レディーを迎えるのにワゴン車なんて」
私が少し笑いながらそう言うと、男――真和さんは、少しムッとした口調で言った。
「これしか使える車がないんだ、仕方ないだろう。で、乗るのか?乗らないのか?」
「では、ありがたく乗らせていただきますわ」
そう言って、私は助手席に乗り込み、シートベルトを締めた。
キュッという小気味良い音を立ててUターンするワゴン。
「今年はどうする?また雛見沢に泊まっていくか?」
「・・・」
その問いにはすぐに答えず、私はただ前を見る。
今年は、猛暑になるそうだ。
幸い車内はほどよく冷房が効いているが、屋外はかなり暑い。
だが、私には、その暑ささえ懐かしく、心地良くもあった。
ほう、と大きく息を付き、私は日本に戻る前から胸の中でずっと考えていたことを口に出した。
「・・・私、これから最期までの人生を、この雛見沢で送ろうと思っていますの」
426 :
417:2012/02/22(水) 23:18:11.69 ID:R8PL96vd
しばらく車内を沈黙が支配した後、真和さんは言った。
「・・・そうか。なら、やることが山積みだぞ。まずお前の後継者を決めて・・・」
「あら、驚きませんの?」
「何となく、そう言うんじゃないかと思ったしな。それに・・・」
そこで、真和さんは言葉を切る。
「・・・それに?」
「いや、なんでもない。既にこの村一帯は教団の私有地だから、移住するのに問題はないだろう」
「まあ、さすがに60年も人っ子一人いなかった村の住宅を取り扱っている不動産屋さんなんてないでしょうしね」
「そうだな」
そこで、会話が途切れる。
車は、かつて雛見沢のメインストリートだった道を走っている。
かつて立ち並んでいた商店は、今は朽ち果てたただの木の寄せ集めになっていた。
「・・・フッ」
突然、真和さんが小さく笑った。
「?・・・なにがおかしいんですの?」
真和さんは、皮肉っぽく言った。
「Je me suis senti amusant pour les mots pour "rencontrer une dame" de votre il y a quelque temps.Bien que ce ne soit pas l'âge qu'une dame ne peut plus donner.
(いや、さっきの『レディーを迎えるのに』ってセリフにな。もうレディーって年でもないだろ?)」
真和さんは、そう言ってくっくっと笑う。
突然のフランス語。少しだけ負けず嫌い心に火が付き、私も返す。
「Oh, je fais face à une femme et serai rauque?Il n'y a pas vraiment délicatesse à tout.
(まあ、女性に向かってなんて無礼な。全く、本当にデリカシーがありませんわね)」
少し怒った感じで返すと、真和さんはまた小さく笑って、アクセルを大きく踏み込んだ。
最初の一歩としばらくは、狂気と無知とを糧とした。
次の一歩としばらくは、憎悪と慈愛を糧とした。
次の一歩としばらくは、誓いと使命を糧とした。
Haljatence Morogrant
427 :
417:2012/02/22(水) 23:21:27.90 ID:R8PL96vd
とりあえず今回はここまで。
こういうのはやっぱりこのスレにはふさわしくないと思った人は遠慮せずに言ってください。
もうちょっと書き溜めたら?
モチベ的には難しいかもだけど、これだけではなんとも言えない
ただひっさしぶりの投下だから期待してる
429 :
417:2012/02/24(金) 21:11:37.22 ID:57ZuJBwm
〉428
そうですな
次以降は5000字くらいずつで投下します
続きを投下します。
430 :
417:2012/02/24(金) 21:14:23.42 ID:57ZuJBwm
ページ2
1983年6月27日(昭和58年) 午前8時41分
北条沙都子 12歳
雛見沢分校第6学年児童
日本国 野永県 鹿骨市雛見沢地区
雛見沢分校
「え・・・え?」
しんとした教室に、私の声が響く。
いつも通りの月曜日となるはずだったその朝、私はなんの前触れも無く、レナさんと魅音さん、そして圭一さんの死を聞かされた。
聞かされた瞬間、私は泣きもしなかったし、「嘘だ」と先生に当たるようなこともしなかった。
ただ、あまりに突然襲ってきた事実を、理解さえせず、ただ呆然と耳に入れただけだった。
隣を見ると、梨花がうつむき加減で下唇を噛んでいる。
知恵先生が何か言っているが、私の耳には何も入ってこない。
いろいろな言葉が、グチャグチャと頭の中を駆け巡る。
――レナさんに、魅音さんに、圭一さんが・・・亡くなった?
――え、でも、金曜日は・・・
――そういえば、圭一さんはここ最近部活もせずに・・・
――魅音さんも目を真っ赤にしていた―――
――何となく険悪な雰囲気は漂っていたけど・・・
――え、でもそれでどうして・・・
ぎゅっと横から抱きしめられる感覚に、現実に引き戻される。
「沙都子・・・」
その声は、無論梨花のもの。
いつの間にか、授業は終わっていたらしい。
生徒が突然3人もまとめて亡くなったのだから、おそらく朝の会が終わったらすぐに授業が終わったのだろう。
教室の中には、もう私たち二人誰もいない。
静まり返った教室と、ひぐらしの声。
そして、梨花の小さな温もりを感じた時。
私の感情は、突然爆発した。
「り、かっ・・・うう、うわああああああん!!」
私は、梨花の胸に顔をうずめて泣き叫ぶ。
「け、圭一さんがっ・・・。レナさんと、みっ、魅音さんも・・・!!うわあああああん!!」
梨花は、とても悲しそうな。
でも、どこか諦めきった声で言った。
「大丈夫ですよ、沙都子。圭一達には、また会えますです・・・」
431 :
417:2012/02/24(金) 21:15:19.70 ID:57ZuJBwm
その後、私は泣きながら梨花と一緒に帰った。
帰り道、梨花は私に何も声をかけなかった。
ただ黙って、そっと私の手を握ってくれていた。
その手は、やっぱり温かかった。
私はその温もりに縋るような気持ちで、ギュっと手を握り返した。
家に帰りつく頃には、さすがに私も泣き止んでいた。
思えば、放課後の我が家を完全に沈黙が支配したのはこれが初めてかもしれない。
梨花はうつむいて、私の正面に座っている。
肩はずっと小刻みに震え、噛みちぎってしまうのではないかと思うほど下唇を強く噛み締めている。
「・・・全部、全部ボクのせいなのです」
突然そんなことを言い出した梨花を、私は慰めるつもりで言う。
「どうしてそんなことを言うんですの、梨花。みんなが死んでしまったのは、誰のせいでも・・・」
「違うのです!!!」
突然冷静さを失い、大声を出す梨花。
「こうなることは分かってた!分かってたのに!・・・分かってたのに、ボクは、私は、結局何もできなかった!圭一がバットを持ち歩き始めた時から、もう分かっていたのに!」
「り、・・・梨花?」
梨花の意味不明な言動に、完全に置いて行かれる。
確かにこの頃仲間達(というより、主に圭一さん)の雰囲気は険悪ではあった。
しかし、そのことと圭一さん達が死んでしまったことは関係ないはずだ。
いかに圭一さん達の雰囲気がピリピリしていようとも、まさか雰囲気のせいで『事故』が起こるなんてことありえないだろう。
――そう。
その当時、私は圭一さんとレナさんと魅音さんは不運な事故で亡くなったと聞いていた。
それは、結局嘘だったわけだが。
ただ、知恵先生はとても優しい先生だったから、圭一さん達と親友だった私たちを気遣ったのかもしれない。
まあ、知恵先生じゃなくても、親友の一人が残りの親友二人をバットで撲殺した末自分も電話ボックス内で謎の自殺を遂げるなんてことをストレートに言えるはずもなかっただろう。
「辛くても、少しでも眠らなきゃダメなのです。辛い時こそ、休まないと持たないのです」
梨花はそう言ったが、絶対に今夜は眠れないだろう。
でも、わがままを言えば梨花が困るだろう。
だから、私は横になってタオルケットにくるまった。
人間というのは便利なもので、どれだけ悲しみに浸っていようが、横になっていれば自然と体のスイッチが切れるように出来ているらしい。
私は、眠ってしまった。
今でも思う。あの時眠ってしまったのは、失敗だったのではないかと。
もし梨花の勧めを突っぱねて夜通し起きていたなら、多分あの夜に私は死んでいただろう。
そうすれば、その後の人生で多くの罪を背負うことも無く、私はただの少女としてみんなのもとに行けたかもしれないのだから。
まあ、『なら』『たら』『れば』などという言葉には何の意味もないのだが。
432 :
417:2012/02/24(金) 21:16:32.39 ID:57ZuJBwm
翌朝の目覚めは、最悪だった。
ひとつは、やはりちゃんとは眠れなかったこと。
でも、それより何よりの原因は。
私の隣で寝ているはずの、梨花がいなかったことだ。
最初、その情報を脳が受け取るまで若干の時間を必要とした。
そして、どうにかそれを理解したとき。
私は毎朝の日課だった注射も忘れ、パジャマ姿で飛び出した。
いない。いない。いない。
梨花、どこにいますの?梨花?
どこにいますの梨花どこにいますの梨花どこにいますの梨花どこにいますの梨花どこ梨花どこ梨花どこ梨花どこ梨花ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
お願いだから、梨花までいなくならないで!お願い!
にーにーはいなくなってしまった!レナさんと魅音さんと圭一さんは死んでしまった!
もう私にはあなたしかいないんですの!あなたまでいなくなってしまったら、私・・・私は!!
――だが。
私の叫びは、最初から届いていなかった。
まずはどこを探そうか。そうだ、まずは分校だ。
ひょっとしたら、学校に忘れ物を取りに行っただけかもしれない!
・・・しかし、さっきから漂ってくるこの臭いはなんだろうか。
まるで、鉄の臭いと肉の腐った臭いとが一番最悪に混ざった感じだ。
どうせ境内から出るには、賽銭箱の前を通る必要がある。
ならば、ついでに確かめておこう。
そう思い、私は賽銭箱へと足を向けた。
そして、私は、腹を割かれ、体の中身を無残にまき散らされた梨花を見つけたのである。
そこから深夜までの記憶は、全く思い出せない。
気づいたときには、空はもう真っ暗になっていた。
部屋の中にも、光は一切ない。
朝のパジャマ姿のままで、私は膝を抱えてタンスに寄りかかっている。
・・・そういえば、また注射を打つのを忘れてた。
まあ、もうどうでも良いことだが。
私はさっきからやたら痒い首筋を掻きながら、ぼんやりと部屋の中空をみつめる。
みんな、いなくなった。
もう誰も、私を支えてくれはしない。
じゃあ一人の力で生きろと?何の為に?
愛した兄も、友達も、そして・・・
圭一さんも、居なくなってしまったこの世に?
そんなのは嫌だ。絶対に。
ならどうすれば良い?
簡単だ。
死ねばいい。
何もする必要はない。ただここにぼんやりと座っていれば、そのうち飢えと乾きが私を殺してくれるだろう。
だったら、ここで思い出に浸りながら『その時』を待とう。
そうすれば――
きっとまた皆に会える。
さあ、早く。
私の命を、奪っていって。
そう思っていた時だった。
突然、一階のドアが勢いよく開かれる音がした。
433 :
417:2012/02/24(金) 21:17:37.85 ID:57ZuJBwm
すぐ後に続いて、ドスドスと階段を駆け上がってくる足音。
パァンという音とともに、勢い良く居間のふすまが開かれた。
中に入ってきたのは、2人の男。作業着姿だった。
その男たちは私の姿を見ると、手にもっていた通信機で何やらやり取りし始めた。
「鳳01、こちら朱雀05。応答願う。どうぞ」
『こちら鳳01。どうした?』
「《R》自宅内にて女児一名を発見。避難指示が行き届いていなかったものと思われる。指示を。どうぞ」
『何!?まだ生き残りがいたのか!?・・・チッ、もう作戦は実行されている。今から分校に連れてきても間に合わないな・・・三佐、どうしますか?・・・了解しました。朱雀05、発砲許可を与える』
「了解。朱雀05、以上。・・・おい」
「わかった」
男の片方が、腰から抜いた拳銃の先端に黒い円筒を取り付ける。
「はぁ・・・全く面倒な話だな。この後始末も俺たちの仕事だろ?」
「ボヤくな。さあ、やるぞ。本当に時間がないんだ」
「ああ。とっとと済ませちまおう」
その言葉が終わるとほぼ同時に、私の頭に銃口が押し当てられる。
・・・ずいぶんと間の抜けた話だが、私は頭にゴリっとした感触を感じるまで、銃を向けられていることに気づかなかった。
私は銃を、にへらぁと笑いながら見つめる。
――この方達は、ずいぶんと優しいのですわね。今すぐ、私を解き放ってくれるらしいですわ。
そんな私を男たちは気味が悪そうに見るが、気を取り直したのかまた無表情に戻って、
そして・・・
くぐもった音と共に男の額に風穴が空き、私に男が――いや、男だった肉の塊がのしかかってきた。
「!!!!!!なにごt」
もう一発。残った男も正確に頭を撃ち抜かれ、床に勢いよく倒れた。
床に、ゆっくりと血だまりが広がっていく。だんだんと、鉄のような臭いが漂い始める。
・・・誰?
私は前を見る。
そこには、黒いフード付きのパーカーを着て、ガスマスクをつけた男が立っていた。
着ているパーカーのチャック沿いには、細い赤い線が引かれている。
それはちょうど胸のあたりで外にそれ、、奇妙な図形を描いてまた直線に戻る。
フードを正面から見た感じ、と言えば伝わるだろうか。
その男は私を見下ろすと、すっと手を差しのべてきた。
「立てるか?」
さっき人を二人も殺したばかりだというのに、平然とした声で男は言った。
「・・・あなたは」
「自己紹介は後だ。まずはこの場から脱出するぞ。さ、立て」
男は私を急かしてくる。
でも、私には立つ気力も残っていない。
もう放っておいて欲しい。
私は、ただここで静かに死にたいだけなのに。
だが、男は私が立つ気がないのを見ると、強行策を取り始めた。
なんの前触れも無く、私の膝の裏と後頭部に手が差し込まれる。
何かしらと思った直後、体を浮遊感が包んだ。
・・・まあ、ここまで言えば分かるだろう。
俗に言う、お姫様抱っこというやつだ。
男は足で窓を開ける。
そして、そのまま飛び降りた。
434 :
417:2012/02/24(金) 21:17:59.85 ID:57ZuJBwm
すぐ後に続いて、ドスドスと階段を駆け上がってくる足音。
パァンという音とともに、勢い良く居間のふすまが開かれた。
中に入ってきたのは、2人の男。作業着姿だった。
その男たちは私の姿を見ると、手にもっていた通信機で何やらやり取りし始めた。
「鳳01、こちら朱雀05。応答願う。どうぞ」
『こちら鳳01。どうした?』
「《R》自宅内にて女児一名を発見。避難指示が行き届いていなかったものと思われる。指示を。どうぞ」
『何!?まだ生き残りがいたのか!?・・・チッ、もう作戦は実行されている。今から分校に連れてきても間に合わないな・・・三佐、どうしますか?・・・了解しました。朱雀05、発砲許可を与える』
「了解。朱雀05、以上。・・・おい」
「わかった」
男の片方が、腰から抜いた拳銃の先端に黒い円筒を取り付ける。
「はぁ・・・全く面倒な話だな。この後始末も俺たちの仕事だろ?」
「ボヤくな。さあ、やるぞ。本当に時間がないんだ」
「ああ。とっとと済ませちまおう」
その言葉が終わるとほぼ同時に、私の頭に銃口が押し当てられる。
・・・ずいぶんと間の抜けた話だが、私は頭にゴリっとした感触を感じるまで、銃を向けられていることに気づかなかった。
私は銃を、にへらぁと笑いながら見つめる。
――この方達は、ずいぶんと優しいのですわね。今すぐ、私を解き放ってくれるらしいですわ。
そんな私を男たちは気味が悪そうに見るが、気を取り直したのかまた無表情に戻って、
そして・・・
くぐもった音と共に男の額に風穴が空き、私に男が――いや、男だった肉の塊がのしかかってきた。
「!!!!!!なにごt」
もう一発。残った男も正確に頭を撃ち抜かれ、床に勢いよく倒れた。
床に、ゆっくりと血だまりが広がっていく。だんだんと、鉄のような臭いが漂い始める。
・・・誰?
私は前を見る。
そこには、黒いフード付きのパーカーを着て、ガスマスクをつけた男が立っていた。
着ているパーカーのチャック沿いには、細い赤い線が引かれている。
それはちょうど胸のあたりで外にそれ、、奇妙な図形を描いてまた直線に戻る。
フードを正面から見た感じ、と言えば伝わるだろうか。
その男は私を見下ろすと、すっと手を差しのべてきた。
「立てるか?」
さっき人を二人も殺したばかりだというのに、平然とした声で男は言った。
「・・・あなたは」
「自己紹介は後だ。まずはこの場から脱出するぞ。さ、立て」
男は私を急かしてくる。
でも、私には立つ気力も残っていない。
もう放っておいて欲しい。
私は、ただここで静かに死にたいだけなのに。
だが、男は私が立つ気がないのを見ると、強行策を取り始めた。
なんの前触れも無く、私の膝の裏と後頭部に手が差し込まれる。
何かしらと思った直後、体を浮遊感が包んだ。
・・・まあ、ここまで言えば分かるだろう。
俗に言う、お姫様抱っこというやつだ。
男は足で窓を開ける。
そして、そのまま飛び降りた。
435 :
417:2012/02/24(金) 21:18:30.50 ID:57ZuJBwm
一瞬体が浮き、そのまま地面に着地。
男が膝で上手く衝撃を殺したのか、落下時の衝撃はほとんど伝わらなかった。
普段の私なら、ここで大いに驚き、抗議の声の一つでもあげたかもしれない。
でも、その時の私には、男が飛ぼうが跳ねようが、どうだっていいことだった。
外は晴れ渡っており、月がその姿を露わにしている。
月光が、私の頭を、体を、・・・そして、引っかきすぎてわずかに血が出ている首筋を照らす。
目の前にはオフロードバイク。おそらくはこれで来たのだろう。
「・・・お前」
男が思わず声を漏らす。
その視線は、私の首筋に向けられていた。
「少し待ってろ」
男はそう言うと、私の前で私の方を向きながら通信機を取り出した。
「HQ(HeadQuarters、作戦本部)、こちらオスカーチーム指揮官。応答せよ。オーバー」
『こちらHQ。どうした?オーバー』
「古手神社裏手の営林署資材倉庫にて、生存者一名を保護。これより本部へ護送したい。許可を。オーバー」
『何っ!?生存者だと!?・・・わかった!直ちにHQへ護送しろ!HQ、アウトッ!』
プツリという音。どうやら終わったらしい。
ぼそりと男が呟く。
「・・・『生存者だと!?』ってことは、分校は手遅れだったんだな・・・」
その後、男はまた通信を始める。
「オスカー4-4。こちらオスカー4-1。至急、古手神社鳥居まで来い。」
『了解しました。4-4、アウト。』
それから私を振り返り、先程より強い口調で言った。
「聞こえたな。この村から脱出する。立て。行くぞ」
その言葉に対して、私は残りわずかな気力を振り絞って言う。
「・・・もう、放っておいてくださいまし」
「何を言ってる?ここにいれば・・・」
「もう、疲れたんですのよ。もう何もかも、どうでも良いことですわ。・・・さ。逃げるのなら、早くあなただけで逃げてくださいまし」
男は、じっと私を見つめる。
沈黙の後、男が口を開いた。
「・・・そうはいかない」
予想通りのセリフだ。
「安っぽい同情なんか要りませんわ。私はここに」
「お前を死なせる訳にはいかないんだよ」
また、予想通りのセリフだ。
「・・・安っぽい同情なんか要らないと言ったでsy」
「お前は、オレ達に必要だからな」
・・・え?
「お前が生きたかろうが死にたかろうが、お前には生きてもらう」
これは、予想外のセリフだった。
『必要』ってどういうこと?私が?何に?
というか、それ以前に・・・
「・・・今、『オレ達』とおっしゃいましたわね?」
「・・・ああ、やっぱりそこ突っ込むか」
男は、髪をかきむしりながら少し迷う。
「オレたちの素性は絶対にバラすなと言われてるんだが・・・」
そのまま10秒ほど迷った後、意を決したように行った。
「・・・まぁ、これくらいなら大丈夫だろう」
くるりと私に向き直る。
そして。
その名前――今の私には、もうすっかり馴染み深くなった名を告げた。
「オレの名は相原。相原真和。アサシンだ」
436 :
417:2012/02/24(金) 21:20:30.95 ID:57ZuJBwm
しまった・・・
書き込みミスった上に一部改行まで忘れてた・・・
本当に申し訳ありません。以後気をつけます。
乙。続き楽しみにしてる
438 :
417:2012/02/26(日) 09:27:47.85 ID:ECNB3gA9
続きが出来たので投下します。
かなりハイペースな投下になりましたが、今後はペースが一気に落ちると思います。
気長に生ぬるい目で見ていただけると幸いです。
439 :
417:2012/02/26(日) 09:39:14.60 ID:ECNB3gA9
ページ3
1983年6月28日(昭和58年) 午後11時46分
北条沙都子 12歳
雛見沢村村民
日本国 野永県 鹿骨市雛見沢地区
古手神社裏
「・・・アサシン?」
「『アサシンとは何だ』と聞きたいんだろうが、話すと長くなる。後で誰かに聞け。さあ、行くぞ」
別に、そんなことを知りたいわけじゃない。
ただ、聞き慣れない単語が耳に入ってきたから、ただ繰り返しただけだ。
・・・ああ、首が痒い。
あまり掻いたら余計痒くなるのはわかってはいるが、痒いものは仕方がない。
痒い。痒い。痒い。
片手では掻ききれなくて、空いていた右手も使おうとした時。
突然、両手首を強く掴まれた。
「やめろ」
真和さんの鋭い声。
「離してくださいまし・・・痒いんですのよ」
「掻いてる時間も惜しいんだ。後でいくらでも掻け。さあ、行くぞ」
真和さんに両腕をつかまれ、強引に立たされる。
そのまま半ば引きずられるようにして、私は我が家を後にした。
鳥居には、まだ誰も到着していないようだった。
梨花を見つけてから半日たった今でも、あの腐臭が嗅覚を突き刺してくる。
それは、私だけの錯覚だったのかもしれないが。
だが。
森や村のいたるところから聞こえてくる銃声と爆音は、間違いなく現実だった。
私にはほとんど聞こえないが、真和さんの無線機も騒々しくなる。
その声に対して真和さんは時々答えつつ、『オスカー4-4』――おそらくは真和さんの部下だが――の到着を待つ。
『全チーム指揮官!こちら【チャーリー】指揮官だ!入江診療所は制圧完了!繰り返す、入江診療所を制圧!』
『こちら【エコー】指揮官!電波塔を制圧!その場にいたスナイパー4名は排除!これより狙撃による支援を開始する!』
『HQより山中で山狗部隊の掃討に当たっている全アサシンへ!負傷者については、自立歩行が可能なら戦闘を続けさせろ!
現在は優勢だが、依然として数では負けてる!』
『こちら【シエナ】指揮官。山狗部隊と交戦中だが、押し負けてきている。
直ちに増援を!』
440 :
417:2012/02/26(日) 09:41:56.78 ID:ECNB3gA9
そうしてだいたい4分が経った頃。
真和さんの部下が到着した。
「隊長!」
「遅いぞ、4-4」
やってきた『4-4』も、やはりガスマスクを付けていた。
声だけからみると、おそらくかなり若い。
ひょっとしたら、圭一さんと同い年位なのかもしれない。
「すみません。それで・・・」
そして、私の方をちらりと見る。
「この子が?」
「ああ。おそらく今日この村にいた者では唯一の生存者だ。いいか、絶対に死なせるなよ」
「わかってます。隊長はどうなさるんです?」
「また前線に戻って指揮をとる。護送が終わったらお前も戻ってこい」
「わかりました。では私は」
「待て。もう一つある」
真和さんは、私をじっと見つめる。
4-4と呼ばれた男も、つられて私を見る。
そして、真和さんは言った。
「この子は例の『雛見沢症候群』の、それもかなり高いレベルの発症者である可能性が極めて高い」
「え・・・!?」
真和さんの部下は、驚いたような声を出す。
真和さん曰く、どうやら私は『雛見沢症候群』というものに感染しているらしい。
何かの病気だろうか?
真和さんの部下の驚きっぷりからしても、かなり危ないものらしい。
・・・だとしたら、それで死ねるかもしれないな。
だが真和さんは、部下の驚きっぷりとは対照的に、あくまで淡々と言った。
「だから、護送する際は注意しろ」
「・・・わ、わかりました。では、私はこれで」
「ああ。あとで会おう」
そう言って、真和さんは去っていった。
「・・・さて、と。じゃあ・・・」
真和さんの部下が、私の方を向く。
私が緊張しているものと思っているのだろう。明るい声で私に話しかけてきた。
「まずは自己紹介するね。僕の名前は谷内。谷内吾郎。隊長・・・つまり、さっき君が一緒にいた人の部下で」
「真和さんと同じ『アサシン』の方・・・なんでしょう?」
「!!!」
部下――谷内さんが、驚愕する。
ガスマスクのせいで表情は伺えないが、息を呑む声が聞こえた。
だが谷内さんはすぐに冷静さを取り戻し、私に問う。
「・・・『アサシン』という言葉は、隊長――いや、相原さんから聞いたんだね?」
「ええ」
私は、この半日黙りこくっていた反動のように言葉を重ねる。
「ほかにもお聞きしましたのよ。あなた方は、私に生きていてもらわないと困るんだそうですわね」
「・・・」
「どうしてですの?私のような子供に、なんでこだわるんですの?」
いや、私の言いたいことは、こんなことじゃない。
本音はこっちだ。
「・・・なんで、みんな、黙って私を死なせてくれませんの・・・?」
谷内さんは、黙って私の言葉を聞く。
そして、静かに言った。
「歩きながら話そう」
441 :
417:2012/02/26(日) 09:46:14.75 ID:ECNB3gA9
深夜の道を歩く。
街灯と、月明かりだけが唯一の光だ。
鼓膜に入ってくるのは、自分の足音と、銃声。
そして、谷内さんの声だけだった。
「どこから話せばいいものか・・・」
谷内さんは、歩きながら言葉を考えているようだ。
「僕たちは、『アサシン教団』というところに所属しているアサシン――と言っても、単に
〈暗殺者〉っていう意味じゃないよ――なんだ」
私は、首に巻かれた包帯の上から首筋をこする。
「僕らアサシンはずっとずっと昔から、一つの目的の下戦い続けてきたんだ。そう、人々の自由と平和のために」
私達は響きわたる銃声をBGMに、歩を進めていく。
「・・・でも、僕たちの事を快く思わない人たちも、少なからず居るんだよ」
通学路とは、こんなにも長いものだったか?私は自問する。
そして、自答した。長いのは、梨花がいないからだ――と。
「今日雛見沢を襲ったのは、そういう奴らの手下の一味なんだ。彼らはずっと前から、虎視眈々と機会をうかがっていたんだろう」
ああ、首が・・・
ガリガリ、ガリガリと掻き毟ろうとするが、がっちりと巻かれた包帯に阻まれそれもできない。
「アサシンからも敵の陣営にスパイを送り込んでいたりはしてたんだけど・・・どうやらちゃんとした情報は掴めなかったみたいだ」
それで・・・
「事態の深刻さに気づけたのは、敵が本格的に動き出した時だった。大慌てで対処にあたったけど、結局後手後手に回ってしまって・・・」
村を救えなかったという罪悪感からか、谷内さんは俯く。
私たちは、魅音さんの家へと向かっているらしい。
「唯一の救いは、『何かとんでもないことが起こりそうだ』と予感していた人が、ある程度既にアサシンを集めていたこと。
そのおかげで、敵の動きを若干鈍らせることができた。それで、君は助かったんだ」
やがて、魅音さんの家がそのシルエットを表す。
そこだけは明かりが煌々としている。おそらく、あそこが目的地なのだろう。
「・・・その予感していた人っていうのが、相原さんなんだ」
だんだんと、人のざわめきが聞こえてくる。
「相原さんは本当に凄い人なんだよ。戦闘技術は超一流、情報収集も大得意。高位のアサシン達にも一目置かれてる。
若い年代のアサシンのヒーローなんだ」
まあ、相原さんがアサシンの間でどう思われてようが、私には関係ない話だが。
「・・・じゃあ、相原さんは私の『命の恩人』ですわね」
「そうなるかな」
「・・・全く、余計なことをしてくれたものですわ」
命を助けてもらった人に向かって、こんなことを言うのはいけないとは分かっている。
・・・でも。
誰が、私を助けろと頼んだというのだ。
442 :
417:2012/02/26(日) 09:51:48.26 ID:ECNB3gA9
「お話を伺っていて、なんとなくわかりましたわ。なんで私に死んでもらっては困るのか」
一呼吸おいて、続けた。
「この村で何が起こったか、唯一正確に把握しているかもしれない人間だから。・・・ですわね?」
谷内さんは、私の横顔を見る。
「でも、おあいにく様でしたわね。私は、今日ここで何があったか、全く存じ上げませんの。
・・・ずっと、家にいたものですから」
しばらくの沈黙の後、谷内さんは言った。
「だから「・・・違う」」
声量としては変わらない。
でも明らかに、声に込められた力が違った。
え?
「君は間違ってる。僕が、いや、僕らが君に助かって欲しいのは、そんな理由じゃない」
「・・・じゃあ、じゃあどうして」
「決まってるじゃないか!」
その声は、まるで、涙を流すのをを必死にこらえているかのような声だった。
谷内さんは言葉を続ける。
「僕らの力が足りなかったせいで、大勢の人が死んでしまった。もう誰も死なせたくない。誰もだ。
・・・みんな、そう思ってるんだよ。僕もだ」
そして、谷内さんは私の前に回り込み、私の目を見て言う。
「君に死んで欲しくないのは、君がアサシンにとって必要だからじゃない。君に死んで欲しくないからだ。
・・・なんだか変な言い方かもしれないけど」
「・・・でも、相原さんは『私が必要だ』と」
そう反論すると、谷内さんは苦笑する。
「・・・あの人らしいよ。全く、本当に素直じゃない人だな」
いつの間にか、魅音さんの家が目の前まで来ていた。
立派な正門の前では、フードを被った人が二人、大きな銃を肩から下げて立っている。
暗くて分かりにくかったようだが、そのうちの一人が私たちに気づいた。
谷内さんの方が先に名乗る。
「私はアサシン教団日本支部第21支所所属、第4級アサシンの谷内吾郎です!コールサインはオスカー4-4!
生存者を護衛してきました!」
そう言うや否や、急に周囲が騒がしくなり始める。
「来たか!よし、その子を中へ!おい!生存者が到着したぞ!救護班、早くっ!」
谷内さんは、かがんで私と目線を合わせながら言う。
「僕はこれで行くから、君はこれから会う人の指示に従ってくれ。
ここは安全だから、何があってもここにいるんだ。いいね?じゃあ、また後で」
そう言うと、谷内さんは私に背を向けて去っていった。
それと入れ替わるように、中からアサシンが二人出てきた。
白地に赤い二重丸が描かれた腕章をつけている。
「君っ!大丈夫か!?ケガは!?」
「・・・大丈夫。一人で歩けますわ」
二人を押し切って歩こうとした私を、片方の男が呼び止める。
「あ・・・、待って!念の為にこれを射っておこう。ほら、腕を出して!」
私は言われるままに腕を出す。
男は、私の二の腕に注射器を突き刺す。
小さな痛み。
心なしか、少しだけ喉の痒みが収まってきた気がした。
443 :
417:2012/02/26(日) 09:52:13.14 ID:ECNB3gA9
「・・・大変だったね。さあ、こっちへ!」
私は救護班の人に誘導され、園崎本家の敷地内へと連れて行かれる。
皆出払っているのか、人気はあまりない。
だが、ここがアサシンたちの前線基地となっていることは、私から見ても一目瞭然だった。
何個も並べられた弾薬箱。
あちこちに立つ哨兵。
いくつも張られたテント。
その中でも最も小さいうちのひとつに、私は案内された。
中にあったのは寝袋。簡易式のベッドの上に乗せられている。
「そこに座って」
言うとおりにして、私はベッドに腰掛ける。
「これを」
そう言われて手渡されたのは、白い錠剤。
「これは・・・?」
「即効性、かつ強力な睡眠薬だよ」
「・・・なぜ、こんなものを?」
「君は子供だし、今日はとても大変な一日だった。
そろそろ休むべきだ。薬の力を借りてでも、眠っておいたほうが良い」
「私は、別に・・・「ダメだ」」
救護班の人は、きっぱりと言った。
「君が自覚してないだけで、君の体と心は疲れきってる。いいから眠っておきなさい。
どうせすぐに起こされることになるだろうが、寝ないよりはマシだよ」
私は考えた。
今は眠くない。というより、皆が動いているときに一人だけ眠るのは、なんだか気が引ける。
だが、肝心なときに動けないようでは余計に迷惑がかかる。
少し逡巡して、私は言った。
「ありがとう、ございますですわ。では、お言葉に甘えさせていただきますわ」
「・・・じゃあ、はい。水だ」
手渡されたペットボトルの水で、白い錠剤を喉の奥へと流し込む。
救護班の人は私が飲んだのを見届けると、「よし」と言って私に言った。
「じゃあ、もう眠りなさい。多分2〜3時間したら起こされると思うからね」
そう言って、救護班の人は出ていった。
もそもそと寝袋にくるまる。
疲労に薬の効果が重なったのか、一気に意識が遠のいてきた。
何かを考えるまもなく、すうっと意識が闇に落ちていく。
完全に眠りに落ちる寸前、思った。
目が覚めたら、全部夢だったということになっていればいいのに。
444 :
417:2012/02/26(日) 09:56:24.62 ID:ECNB3gA9
今回はここまで。
文章力皆無な僕ですが、なんとか完結までやっていこうと思います。
かなり長い道のりになりそうですが、よろしくお願いします。
445 :
417:2012/03/01(木) 21:53:09.10 ID:OW3R699g
続きができましたので投下します。
446 :
417:2012/03/01(木) 21:55:48.64 ID:OW3R699g
ページ4
1983年6月29日(昭和58年) 午前10時55分
北条沙都子 12歳
雛見沢村村民 ―死亡届受理済―
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
マンション‘ホワイトパレス’ 506号室(アサシン教団 興宮セーフハウス)
目覚めたとき、私は不思議に思った。
――あれ?うちの家の天井って、白でしたっけ?それに、うちにベッドなんてなかったはずですけれど・・・
そして、梨花の様子を見ようと頭を横に向けた。
だがそこに梨花の寝顔はなく、かわりにシンプルなデザインのライトがあった。
そこでようやく思い出す。
―――ああ。あの夜は、夢でもなんでもなかったんですのね。
昨日のことを振り返る。
まず朝起きたら、梨花がいなくて。
で、探しに行ったら、梨花が賽銭箱の前で殺されていて。
その後、何がなんだかわからないうちに、変な男たちに殺されそうになって。
そしたら、そいつらが後で現れた男に殺されて。
その男に助けられて。
そしたら、また別の男に魅音さんの家へ連れて行かれて。
そして――
あれ?
頬を、熱い液体のようなものがとめどなく流れる。
直後、それは自分の涙であることに気づいた。
――私、なんでこんなに泣いてますの?
昨日は、あんなに打ちひしがれていたのに、あんなに悲しかったのに、涙一滴こぼさなかったじゃありませんの。
じゃあ、なん――
時間をおいたせいか、それともあの時打たれた薬のせいか。
昨日まで私を埋め尽くしていた自殺願望は、ほとんど無くなっていた。
そして、その分を埋め合わせるかのように、悲しみが心を埋め尽くしていた。
「ふっ・・・うくっ・・・うぅっ・・・」
泣いたってどうにもならないなんてことは分かっているが、それでも私は泣かずにはいられなかった。
幸いにも、部屋には誰もいない。だから、好きなだけ泣けた。
思えば、人生でここまでの悲しみを味わったのは他になかったかもしれない。
・・・確かに、にーにーを失った時の私も失意の底にいた。
でも、あの時は仲間がいた。
梨花が私に手を差し伸べてくれて、レナさんが優しくしてくれて、魅音さんが楽しい時間を作ってくれた。
そして、しばらくしてからやって来た圭一さんは、私を一人の『女の子』にしてくれた。
今まで私の心を埋めてくれていたもの、いや・・・そんなものではないか。
失って初めて気づいた。
私は、まさに『他の人』から成り立っていたのだ。
にーにーからは愛をもらい。
梨花からは純真さと、・・・少しの腹黒さをもらい。
レナさんからは優しさと強さをもらい。
魅音さんからは快活さと明るさをもらい。
圭一さんからは、・・・そう、楽しさと、『恋』をもらった。
では、今の私には?
誰も、私を支えてくれはしない。
誰も、私に手を差し伸べてはくれない。
昨日までだったら、私には自ら命を絶つという選択肢もあった。
だが、今となってはそれももう無理。
昨日の谷内さんの言葉が脳裏によみがえる。
『僕らの力が足りなかったせいで、大勢の人が死んでしまった。もう誰も死なせたくない。誰もだ』
私が命を絶てば、私を救った人達はきっとまた悲しむ。
私個人の勝手な事情で、これ以上人を苦しませるわけにはいかない。
「誰か・・・教えてくださいましっ・・・私は、私は、どうすればいいんですの・・・!?」
447 :
417:2012/03/01(木) 22:24:06.10 ID:OW3R699g
その時。
悪すぎるタイミングで、部屋の扉が開かれる音がした。
「あ」
入ってきた人と目が合う。
私は慌てて毛布で涙を拭う。
部屋に入ってきたのは、昨日私を魅音さんの家まで送り届けた谷内さんだった。
谷内さんが、私の腕に注射を打つ。
谷内さんいわく、「アサシン特製の安定剤」だそうだ。
今の私は精神のバランスが少し崩れているので、ある程度薬でバランスを取りやすい状態にしたほうがいいらしい。
間違いなく私が泣いていたところを見たはずだが、谷内さんは何も言わなかった。
ただ黙って、ベッドのサイドテーブルにお盆を置いた。
お盆には、綺麗な琥珀色のスープが入った器。
香りからしてコンソメだろうか。
人間の体とは現金なもので、どんなに悲しかろうとお腹は減るようにできているらしい。
「救護班の話では、身体的には何も問題はないそうだよ。沙都子ちゃん」
谷内さんはベッドの脇に腰掛ける。
「ただ、精神的なダメージは身体機能にも響くからね。一応スープにしたけど・・・
やっぱり普通の食事のほうがよかったかな?」
「・・・いいえ。正直、普通のものをお腹に入れられるかどうか自信がありませんでしたわ。
お気遣い、ありがとうございますですわ」
「そうか、良かった。・・・じゃあ、スープ飲んで落ち着いたらこっちの部屋に来て。
いろいろと話があるんだ」
・・・ん?
いま、谷内さんは私を『沙都子ちゃん』と呼んだが・・・
「あ・・・待ってくださいまし!」
部屋を出ていこうとする谷内さんを呼び止める。
谷内さんはこちらを振り返リ、またベッドに戻ってきた。。
「どうかしたかい?」
「まだ、私は名前をお教えてなかったと思いますけれど・・・どうして、私の名前を?
それに、私は確か魅音さんの家の庭のテントに・・・」
「ああ、そんなことか」
谷内さんは少し安心したように返すと、私が眠っている間のことを話してくれた。
「君の名前は、雛見沢分校で発見された生徒名簿から分かったんだ。
顔写真付きだったのが幸いしたよ。あと、君のことは本当は雛見沢村から撤収するときに
起こすつもりだったんだけど、薬がしっかり効いてて起きなかったらしいんだ。だから
その場に居合わせたアサシンが車に乗せてここまで運んできたんだそうだよ」
「・・・ごめんなさいですわ。ご迷惑をおかけして」
すると、谷内さんは慌てたように手を振る。
「別にいいんだ。そんな事。・・・それより」
谷内さんは、そっと手を伸ばして私の頭に触れる。
「無事で・・・良かった。本当に」
その姿が、一瞬にーにーに、そして圭一さんに重なって。
理性が制御する前に、私の目からは涙がこぼれ落ちた。
そんな私を見て、谷内さんが静かに言う。
「泣きたい時は、泣けば良い。というより、泣かなきゃダメだ。・・・だってさ」
嬉しいときには笑って、悲しい時には泣くのが人間なんだからね。
もう、ダメだった。
「う・・・うわあああああああん!!わあああああああああああん!!」
私は、谷内さんの胸の中で、大声で泣き叫んだ。
448 :
417:2012/03/01(木) 22:28:12.05 ID:OW3R699g
「・・・ひっく、ご、ごめんなさい、ですわ・・・つい・・・」
「良いんだよ。・・・じゃあ、また後で」
「え、ええ・・・」
谷内さんは、そう言って出ていった。
一人残された私は、少しぬるくなったスープを啜る。
予想通り、コンソメだった。
すぐに飲み終えた私は、少しだけ感情を落ち着ける。
そして、隣の部屋へのドアを開けた。
部屋から出てすぐのところに、二人がけのソファーが向かい合わせにして置いてある。
間にはガラスのテーブル。何かの書類がたくさん置いてある。
ソファーには、二人の人間が向かい合わせになって会話をしていた。
片方は谷内さん。
もう片方――つまり、私に背を向けて話していたのは。
「お。起きたか」
私を最初に家から連れ出した、真和さんだった。
ここに戻ってから着替えたらしく、今は長袖の黒いTシャツと
「真和さん・・・」
「ちょうどお前の話をしてたところだ。沙都子、谷内の隣に」
私は谷内さんの顔を見る。
谷内さんがかすかに頷いたのを見て、私は向かいのソファに座った。
「・・・さて」
座ってまもなく、真和さんが話し始める。
「まずは、今の状況を知っておいたほうが良いだろう」
そう言って、真和さんはテレビをつけた。
やっていたのは報道特番。
男のレポーターが深刻そうな声でレポートする。
『今、私は雛見沢地区手前の自衛隊検問所に来ております。
災害発生から12時間経った今、雛見沢地区内では自衛隊による
懸命の救助活動が続けられております。ですが、未だ生存者の保護には至っていない模様です』
『被害状況の詳細はどうなっているのでしょうか?』
『未だ正確には把握しきれていないようですが、確認されただけでも死者は既に
1800名を超えているようです』
『1800名ですか・・・』
『さらに、今回の雛見沢ガス災害はその性質上風向き次第では
ほかの地域への被害拡大も十分考えられるため、周辺自治体では
現在警察による避難誘導が行われています』
『分かりました。当該地域にお住まいの方は、速やかに警察の指示に』
バツン。
真和さんがテレビの電源を切る。
「・・・どうだ?」
空いた口が塞がらない。
何を言ってますの?あのレポーターは。
ガス災害?
そんなものなかった。
犠牲者1800名以上?
なんですのそれ?
449 :
417:2012/03/01(木) 22:30:50.46 ID:OW3R699g
昨晩の記憶がフラッシュバックする。
作業員姿の銃を持った男。
全く意味のわからなかった会話。
村中で響きわたる銃声。
「ここも本来は避難区域内だ。実際、今興宮にはおそらく誰も残ってない。
・・・ガス災害なんか起こっちゃいないと知っているオレ達以外はな」
「だから心配しなくてもいいよ。人が少ないってことは、追っ手が来てもすぐ分かるってことだからね」
そんなことはどうだっていい。
私は口を開く。
「・・・全部、全部教えてくださいまし」
「え?」
「昨日、雛見沢で一体何が起こってましたの?あなたがたは?
『アサシン教団』って一体何なんですの!?」
私の叫び声が部屋の中に響く。
場を支配する沈黙。
先に口を開いたのは真和さん。
「谷内」
「あ、は・・・はい」
「お前、どこまで話した?」
決して怒った口調ではない。
だが、口調とは裏腹に、少し鋭い眼光が谷内さんに向けられている。
それを感じ取ったのだろう。
谷内さんの顔に緊張が走った。
「・・・え?」
「昨日、こいつに何をどれだけ話したのかって聞いてるんだ。話したんだろ?
でなきゃ『アサシン教団』なんてワードがこいつの口から出てくる筈がない」
「え、ええと・・・まずは『教団』のことを少しだけ。それと昨日の事も」
「間違いないか?北条」
真和さんが聞いてくる。
「・・・ええ。あの、私のことは沙都子と読んでくださいませんこと?」
「分かった。沙都子、昨日はどういう話を聞いた?」
私は、昨日谷内さんに教えられたことをそのまま話す。
真和さんはしばらく黙り込んだあと、盛大にため息をついた。
そして、割と厳しい声で言った。
「・・・谷内」
「は、はい」
「お前、甘すぎだ。どれだけ情報与えてるんだよ」
「す、すみません!でも・・・」
「いっそ『ノーコメント』で突っぱねろ。・・・まあ、お前が
優しい奴だってことはわかってるが。
それにもし沙都子が『奴ら』の回し者だったら、オレ達は昨日で終わってたんだからな?」
谷内さんはその場でうなだれて言う。
「・・・申し訳ありませんでした、相原さん」
すると、相原さんが少し声を柔らかくして言った。
「いや、謝る必要はない。ただ、気をつけろ。時には情けから悲劇が生まれることもあるんだからな」
その言葉を聞いた谷内さんは、真摯な目で言った。
「・・・はい!」
その姿を見た真和さんは、ひとつ頷いて少し姿勢を変え、私を正面から見る。
「『全部教えてくれ』。そう言ったな」
そして、一瞬間を開けたあと言った。
「・・・すまない」
「だが、何一つ教えられない」
450 :
417:2012/03/01(木) 22:34:52.44 ID:OW3R699g
冷静であろうと思っていたのだが、無理だった。
「何で・・・」
私は絶句する。
今、目の前の男が言ったことが信じられなくて。
私は勢い良く立ち上がって聞く。
「どうして、どうして教えてくれませんの!?」
助けを求めるような気持ちで、谷内さんを見る。
だが、谷内さんも黙りこくったまま、申し訳なさそうにうつむくだけだ。
真和さんは言う。
「それは、君が無関係な人間だからだ」
私は激昂する。
「何が『無関係』ですのっ!?私は、まさにあの夜、雛見沢にいた!
その前もずっと雛見沢に住んでいた!雛見沢のことなら、私にも関係があるはずですわ!!」
だが真和さんは、あくまで冷静な口調を崩さない。
「確かにそうだ。だが、それはあくまで雛見沢村村民として、一般市民としてのこと。
昨日起こったことは、全てオレ達アサシンに関することだ。・・・つまり、『昨日雛見沢にいた者』という括りでみれば
君は関係者だが、『昨日あの場で起こったこと』の関係者という括りでみれば、君は部外者だということになる。
・・・君は、オレ達の作戦行動中に『たまたま』保護された生存者に過ぎない」
「・・・だから、何も教えないと。そう言うんですの?」
「そうだ」
「ふざけるのもいい加減にしてくださいませ!!じゃあ、じゃあ私は、自分の故郷が何故滅びたのかも、
自分の親友がなぜ死んでしまった――いや、殺されたのかも知ることはできないと言うんですの!?そんなの――」
なおも言い募る私を、谷内さんが止める。
「沙都子ちゃん、お願いだから落ち着いてくれ!相原さんを責めたってどうにもならないんだよ!
仮に僕が相原さんの立場でも、多分同じことを言うと思う!これは僕たちアサシンの掟なんだ!」
「あなた方の掟がどうであろうが、そんなこと知ったことじゃありませんわ!!
つべこべ言わず、早く教えてくださいまし!!」
「何度言われても答えは変わらんし、変えられない。オレからは何一つ教えないし、教えられないんだ。
――それに」
真和さんは、私の眼球をまっすぐ直視してくる。
「仮に教えたとして、それからどうする?」
451 :
417:2012/03/01(木) 22:35:26.29 ID:OW3R699g
その目は、まるで猛禽類のような目で。
まるで氷水へ頭から突っ込まれたように全身の血が引いていく。
私の本能が、大音量で警告していた。
――この人だけは、敵に回すな。この人を怒らせるな。
皮肉なことに、私の心を支配した圧倒的な萎縮が、私の煮え立った心を一瞬で沈めた。
それでも。
乾ききった口をどうにか動かし、私は言葉を紡ぐ。
「ど、うする、って・・・」
「たとえ真実を知ったとしても、「ああそうだったんですか」と小さな自己満足に浸る以外、
君がそれを生かす方法はないだろう?そんなことのために、掟破りをする気はさらさらない。・・・谷内」
そう言うと、相原さんはソファーを立って、窓に寄る。
「は、はいっ」
「いますぐ県外の支所に連絡を取って、児童養護施設を探させろ。身元不明でも構わないところだ」
その言葉に、谷内さんが驚き、そして、初めて抗議の声を上げる。
「え、ちょ、相原さん!?」
「どうせ真相を知ることが叶わないのなら、可能な限り早く『日常』に戻したほうがいい」
「相原さん、そんな・・・!」
「何してる?早くしろ」
「相原さん!!」
「早くしろ、といったのが聞こえなかったか?」
「相原さん、いくらなんでもそれはあんまりじゃ――」
「日本語じゃどうも理解しにくかったらしいな。かわりに英語で言ってやろう」
そう言うと、相原さんはこちらを向いた。
そして、一言。
「This is NOT suggestion.(これは提案ではない)」
声を荒らげることもなく、あくまで冷静に。
人間というものは、ここまで淡々と苛立ちを表せるものなのか。
横で聞いていた私ですら、背筋が凍るような思いをしたのだ。
直接その声にさらされた谷内さんは、いかほどの恐怖に襲われたことか。
――しかし。
二人がもめている間に、私はどうにか考える時間を得た。
私は、真実を知ることで、一体何を成そうというのか。
考えたら、案外簡単に結論が出た。
私はもう一度唾液で口の中を湿らせて、お腹の底から力を出して言った。
「・・・しゅう」
あれだけ力を込めたのに、まだ萎縮しているのか。
声が思うように出ない。
しかし、相原さんは気付いた。
「・・・何だ?沙都子」
もう一度。
体中の力を放出して、とても怖かったけど相原さんの視線を真正面から受けながら、私は相原さんのすぐ前まで出る。
そして、叫んだ。
「・・・復讐しますわ!!あいつらに、私の故郷を滅ぼして、私の親友を殺して、
・・・私から全てを奪っていったあいつらに、復讐を!!」
そして。
それを成すために、最も手っ取り早い方法。
即ち、力。
「私を、アサシンにしてくださいまし!!!!」
452 :
417:2012/03/01(木) 22:38:15.83 ID:OW3R699g
今回はここまで。
・・・連投、やはり控えたほうがよかったでしょうか?
誰も投下しないしどうぞどうぞ
454 :
417:2012/03/08(木) 21:21:26.96 ID:x3zLYWxK
〉453
コメありがとうございます。
完成次第順次うpしていくことにします。
続きを投下します。
455 :
417:2012/03/08(木) 21:26:34.96 ID:x3zLYWxK
ページ5
1983年6月29日(昭和58年) 午前11時12分
北条沙都子 12歳
雛見沢村村民 ―死亡届受理済―
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
マンション‘ホワイトパレス’ 506号室(アサシン教団 興宮セーフハウス)
部屋の中を支配する沈黙。
最初に破ったのは、谷内さんだった。
真剣な顔をして、口を開く。
「・・・沙都子ちゃん」
「なんですの?」
「もし、もし君が『真実を聞きたい』という気持ちだけからアサシンになりたいと思っているなら、悪いことは言わない。
絶対にやめておくんだ」
「私の言葉を聞いていらっしゃいませんでしたの?私は真実を知るだけじゃない」
私は谷内さんを睨む。
「私の親友を、故郷を奪った者たちにも、同じ・・・いや、それ以上の苦しみを味わっていただきますわ。『全てを奪われる』ということが
どういうことか、骨の髄まで刻みつけて差し上げますわ!」
「沙都子ちゃん、だからやめておけと言ってるんだ!」
そこでは初めて谷内さんが声を荒らげる。
「君の家にあった山狗の死体は、相原さんが殺したものなんだろう?だったら、君は見ていたはずだ!相原さんの強さを!」
そして、私と同じように立ち上がって大きな声で言う。
「あれをもし相原さんが個人的な感情のために使ったらどうなる?もし、私利私欲のために使ったら!君には止められるか!?」
そこで自分自身を落ち着けるように大きく深呼吸して、荒い息ながらも冷静であろうとする声で言った。
「・・・僕らアサシンは、自分が他の者よりはるかに強い力を持っていることを知ってる。だから、自分自身に
リミッターをかけるためにも、いくつもの厳しい掟を設けてあるんだ」
谷内さんは一呼吸ついて言った。
「『汝、己が刃、己のため振るうことなかれ』
『我らが力、我らが英知、全て世の平和のためにあり』
・・・僕らの力は、この世界の平和にのみ使われないといけない。僕らは一歩間違えれば、世界最強・最悪のテロリスト集団に
なってしまうかもしれないんだから」
私は唇を噛む。
谷内さんの言うことは理に適っている。
強い力を持つものは、それを自覚していないといけない。
自分の力の大きさを。大きさゆえの危うさを。
――でも。
「・・・じゃあ、このまま泣き寝入れと。そう言うんですの・・・?」
気づいたら、私は涙声になっていた。
456 :
417:2012/03/08(木) 21:27:55.18 ID:x3zLYWxK
体中の力を放出して、とても怖かったけど相原さんの視線を真正面から受けながら、私は相原さんのすぐ前まで出る。
「谷内さんのおっしゃっていることは、多分正しいんですわよ。でも、でもっ、私はこのままでは、私の仲間たちに、
梨花に、合わせる顔が無いんでございますの。私にだって、何か出来たかもしれなかった。ひょっとしたら、梨花を
守ってあげられたかもしれなかった。守れなくても、最期に一緒にいてあげるくらいのことはできた。でも、私は何もできなかった。
だから、だからっ、せめて、梨花の仇をっ・・・ひくっ・・・」
何とか泣かずに喋り終えようと思ったが、ダメだった。
「・・・うくっ、それに、谷内さんも、さっきは相原さんに反対したじゃありませんの・・・?」
「それは・・・」
谷内さんも黙り込む。
私がかすかにしゃくり上げる声以外、何も音がしない。
1秒か、1分か。
無限とも思われる時間が流れ――
「・・・確認したいことがある」
その声の主は、相原さん。
「仮に君がアサシンになったとして、まさか復讐だけ済ませたら『ハイ、サヨナラ』・・・で済むと思ってるんじゃないだろうな」
「・・・え?」
「一人の人間をどうにかアサシンと呼べるレベルまで育てるには、長い年月と耐え難い努力が必要になる。
・・・それこそ、血吐き肉裂けるほどのな」
相原さんは続ける。
「そして、それだけの辛酸や苦渋を乗り越えても、任務・・・まあ正式には『聖務』だが、それの遂行中に
敵に殺されてしまったり、あるいは人を殺し続けることに精神が持たなくなって挫折するアサシンも少なくない。
そうなったら全てが無意味になる。本人にも、こちらにとってもな」
そして、相原さんは告げた。
「だからもし君がアサシンになることを望んでるのなら、それなりの対価は払ってもらう」
「・・・対価?」
相原さんの言う『対価』とは何なのか、私には想像もつかなかった。
分かったのは、それがありえないほど高くつく代償であるということ。
「君には、いつ終わるとも知れぬ長い長い修行の日々に耐えきる覚悟はあるか?そして、」
復讐を終えた後、50年をアサシンのために使い果たす用意はあるか?
私自身の目的を果たした後は、50年間世界の平和のために尽くすこと。
それが、相原さんの提示した『対価』だった。
「それが約束できるのなら、君にアサシンとしての門戸を開く」
その後、相原さんは黙る。
多分、私に考える時間をくれているのだろう。
でも、考える時間なんか必要ない。
――これ以外に選択肢などないのだから。
「わかりましたわ」
私は、きっぱりという。
「私は、私自身の目的を果たす。そしてその後は、50年間アサシンとしての使命に生きる。
・・・それだけで良いのでしたら安いものですわよ」
「・・・沙都子ちゃ」
谷内さんは、それでもなお私を止めようとしたが。
「谷内、もうやめておけ。お前が沙都子を気遣う気持ちは分かるが、もうこいつは道を選んだんだ」
真和さんは谷内さんに向かって言う。
「年齢の大小は関係ない。自分の意思を示した奴に、決定権は委ねられる。お前もよく知ってることだろう」
そう言われて、谷内さんはハッとした表情になる。
私にはわからないが、おそらく二人の間だけで通じる何かがあるのだろう。
「・・・わかりました」
谷内さんは、それでも私の方を心配そうに見ながらも、相原さんの言ったことに従った。
457 :
417:2012/03/08(木) 21:29:55.91 ID:x3zLYWxK
体中の力を放出して、とても怖かったけど相原さんの視線を真正面から受けながら、私は相原さんのすぐ前まで出る。
「・・・じゃあ、そろそろ正式に自己紹介しよう」
相原さんは言った。
「オレはアサシン教団日本支部第21支所責任者、第1級アサシン、【オスカー】チーム指揮官の相原真和だ。
・・・16歳。肩書きがやたら多いのは気にするな」
失礼な話だが、私は結構驚いた。
確かに10代だろうとは思ったが、まさか4つしか離れていないとは。
後に続いて谷内さんも言う。
「僕も正式な自己紹介はまだだったね。肩書きは相原さんと結構被るんだ。僕は、
・・・ええと、アサシン教団日本支部第21支所所属、第4級アサシン、【オスカー】チーム隊員の谷内吾郎。15歳。
わかってたと思うけど、相原さんよりずっと下っ端さ」
これまた、私は結構驚いた。
相原さんとは逆に、谷内さんは私とせいぜい一つか二つ離れているだけか、あるいは同い年かもしれないと思っていた。
童顔にメガネが似合いすぎているせいで、実年齢より相当若く見える。
「では、私も。私は北条沙都子と申します。ふつつかものですが、よろしくお願いいたしますわ」
「うん。よろしくね、沙都子ちゃん」
谷内さんが、私にそう言って微笑みかける。
「早速だが」
相原さんが谷内さんに指示する。
「谷内、沙都子にオレ達のこと、現在の状況、・・・そして『奴ら』のことについて教えてやれ。オレは少し外に出てる」
「了解しました。沙都子ちゃん、僕の向かいに座って」
相原さんは、部屋から出ていった。
言われたとおり、私は席を移動する。
するとすぐに、谷内さんは時折身振りを交えながら話し始めた。
「じゃあ、まずは僕たち『アサシン教団』について。『アサシン教団』っていうのは、簡単に言うと人の自由と平和のために
『暗殺』を用いて戦う秘密結社。はるか昔から世界にはびこる悪と戦い続けてきたんだ」
一度言葉を切って、谷内さんは窓の外に目をやる。
「自由と平和の為、全てを投げうって戦う。それが僕ら。歴史の闇の中で、誰にも知られず、時には石を投げられながらも」
普通ならこんな少年漫画かアニメの設定のような話は信じないところだが、既に私はこの人たちのことを間近で見ている。
そして、谷内さんは胸に手を当て、目を閉じて言葉を紡ぐ。
私の人生にまで影響を与え続けることとなった言葉だ。
「『ラーシェイア・ワキュン・ムトラクベイル・クルンムーキン』。僕らアサシンの信条。・・・意味、知ってる?」
意味どころか、何語かさえもわからない。
ふるふると首を横に振ると、谷内さんが意味を教えてくれた。
「アラビア語で、『真実はなく、許されぬことなどはない』。・・・この言葉、覚えておいて」
「わかりましたわ」
そして、私も谷内さんを真似して復唱する。
胸に手を当て、目を閉じて。
「真実はなく、許されぬことなどもない」
458 :
417:2012/03/08(木) 21:32:22.67 ID:x3zLYWxK
「うん」
谷内さんがにっこり笑う。
そして、真顔に戻って続ける。
「そして、信条以外にも覚えておかないといけないことがあるんだ。僕らアサシンの、最も重要な3つの掟。・・・すなわち」
汝、己が刃、無垢なる羊に振るうことなかれ(罪のない人は傷つけるな)
闇に生き、光に奉仕する。そが我らなり(アサシンの存在を表にさらすな)
汝、いついかなる時も、友を陥れることなかれ(仲間を裏切るな、危険にさらすな)
「とても大切なことだから、絶対頭に刻んでおいて。アサシンは掟の数はそれほど多くはないけど、その分掟破りには厳しい。
・・・特にの3つに関しては、ひとつでも破ったら『粛清』ものだから」
「『粛清』?」
「有り体にいえば、死刑ってこと」
「・・・怖いですわね」
「だから、絶対に破っちゃダメだ。いい、絶対だよ?」
「わかりましたわ。大丈夫ですわよ」
何度も何度も念押ししてくる谷内さんに返すと、谷内さんは最後にもう一度「絶対だよ」と言って、話題を変えた。
「じゃあ次に、今の状況について」
そう言ったきり、谷内さんはしばらく黙る。
沈黙に焦れた私は、谷内さんを急かした。
「何なんですの?」
「・・・沙都子ちゃん。今から、僕は君にとっては衝撃的かもしれないことを話す。・・・言い方を考えてたんだけど、直接言うしかなさそうだ」
改まった言い方に、若干の緊張が走る。
とはいえ――
多分大丈夫だ。
『衝撃』には、この2日でだいぶ慣れてしまったから。
「沙都子ちゃん、今の君は法的には『死んだ』ことになってる。つまり書類上ではこの世にいないことになってるんだ」
あまり驚きはしなかった。
こうなると予見していたからではなく、今までに比べたら大したことはないと思ったから。
でも、一応理由は聞いておく。
「・・・どういうことなんですの?」
「君の村を襲った奴らは、何もかも徹底的にやる。『村人全滅!!悲劇のガス災害』に見せかける以上、
生存者――もっと言うなら『真実を知ってる者』がいてはいけない。・・・だから、もし君がまだ生きていると
奴らが知ったら、きっと君を口封じに来る。だからその前にアサシン側で手を回して、君を死んだ事にしたんだ。
・・・アサシンになるなら、いずれは生きてるとバレてしまうだろうけど」
そして、谷内さんは私に数枚の書類を渡してきた。
「ここに書いてあることは、全部頭に入れておいて」
459 :
417:2012/03/08(木) 21:40:17.82 ID:x3zLYWxK
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
氏名:北里 優
年齢:12
経歴:(以下略)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「これは?」
「君の新しい身分だよ」
谷内さんは言う。
「この先安全が確保された場所以外では、いつどんな場所であろうと絶対に本名は名乗らないで。
相手がアサシンだろうと、あるいはどんなに君に優しくしてくれる人でも」
「・・・いつどこで誰に狙われてもおかしくない。そういうことですわね」
「うん」
「わかりましたわ」
すると、谷内さんは言った。
「じゃあ、君の名前は?」
「私ですの?私はほうじょ――あ」
「ふふっ」
谷内さんが、おかしそうに笑う。
少しムキになって返した。
「『北里』!『北里優』でございますわ!!」
谷内さんは、満足そうに笑った。
「うん。大丈夫そうだね。・・・ああ」
谷内さんは、思い出したように付け加える。
「そうだ、忘れてた。大抵のアサシンは外で活動するときは偽名を使ってる。
例えば僕は『山本』、相原さんは『佐原』だ。だから、僕らを本名で呼ぶのはこのセーフハウスとアサシンの施設だけにしてくれ。
いいかい?」
「わかりましたわ」
「・・・じゃあ、最後に。僕らが長きにわたって争い、そして昨日は、君の村を襲った『奴ら』のことだ」
『奴ら』。
この回顧録を目にしている者ならば、知っている名であろう。
かつて日本に存在していた裏組織。
『東京』だ。
当時を知らない若い年代のアサシンの間では、私が『東京』を滅ぼしたことがまるで神話か英雄伝のように語られているようだが、
ここではっきり言っておく。
あれは、『栄光ある我らが大導師の最初の偉業』でもなければ、『希代の天才アサシンの出発点』などでもない。
ただの、一人の小さな人間による復讐劇に過ぎないのだ。
既に衆目の知るところとなっている『東京』のことについて今更長々と書くことはしないが、
当時の私は『東京』こそが諸悪の根源であり、『東京』を滅ぼせばすべての決着がつくのだ――そう思っていた。
その後ろに控えていた、より大きな存在も知らずに。
460 :
417:2012/03/08(木) 21:41:35.10 ID:x3zLYWxK
またやりました すみません
456の一行目は無視してください。
461 :
417:2012/03/08(木) 21:42:47.18 ID:x3zLYWxK
追伸
457もです
wktk
ハァハァ
464 :
417:2012/03/17(土) 11:42:04.82 ID:bCqahDfk
続きを投下します。
465 :
417:2012/03/17(土) 11:43:59.39 ID:bCqahDfk
ページ6 前編
1983年7月14日(昭和58年) 午前5時
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生(訓練15日目)
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
マンション‘ホワイトパレス’ 506号室(アサシン教団 興宮セーフハウス)
朝5時。
外はまだ薄暗い。
目覚まし無しでも辛うじで自力で起きられるようになってはきたが、まだ頭は重い。
幸いなことに、昨日の訓練の疲れは睡眠でとれたらしく、眠気以外の怠さは感じない。
訓練生になって今日で15日。
一変してしまった生活にも慣れてきた。
眠い目をこすりつつ、ベッドから起きて居間へと向かう。
最初、私が目を覚ました部屋がそのまま私の部屋になっている。
もともとあった家具以外は、まだ何もない。
居間に出ると、既に二人の同居人は起きて朝食の用意を進めていた。
「おはよ、沙都子ちゃん」
「おはよう、沙都子」
「おはようございますですわ。・・・ふぁ」
思わず欠伸が出た。
「まだ早起きには慣れないかい?」
「・・・以前よりはだいぶマシですけど、まだ少し」
「そのうち体の方も生活パターンを覚え直すよ。それまで頑張ろうね」
「はいですわ」
真和さんは私たち二人の会話を聞きつつ、凄まじいスピードで朝食を作っていく。
スピードだけ見れば、梨花より断然速いだろう。
まあ、その分、盛りつけや味とかはかなり大雑把だが。
「相原さん、相変わらず豪快ですね・・・」
吾郎さんが苦笑いしながら言う。
「腹に入りゃいいんだよ、入れば。沙都子。テーブルの上の片づけ頼む」
「了解ですわ」
そう返すと、真和さんは奇妙なものを見る目で私を見る。
その視線に気づき、私は訊く。
「・・・何ですの?」
「ずっと気になってたんだが、そのエセ貴族みたいな話し方って一体何なんだ?」
「あ、嫌でございましたか?」
すると、真和さんは首を横に振る。
「いや、別に良いんだが。何となく知りたくなっただけだしな」
朝食を終えると、自分の部屋に戻ってすぐ着替える。
タンスの中には白いジャージ。
寝間着以外では、今の私の唯一の私服だ。
手早く着替えて寝間着を洗濯かごに入れ(今日の洗濯当番は吾郎さんだ)、吾郎さんと
真和さんに大きな声をかける。
「先に訓練場に行ってますわ!」
「了解!後で僕らもそっち行くから!」
466 :
417:2012/03/17(土) 11:45:24.66 ID:bCqahDfk
私はひと足早くセーフハウスを出た。
廊下を走り抜け、階段を駆け降りる。
これも訓練の一環だ。
可能な限り速く、効率よく。
なおかつ、静かに。
私は手すりを利用し、廊下の内側を高速で走り抜ける。
体が風を切る音が耳に響く。
だが、スピードを追い求めすぎると、今度は足音がうるさくなる。
少しスピードを緩め、教えられたとおりのやり方で足音を小さくする。
スピードと静かさのバランスをとりつつ走り、私は一階に着いた。
目の前には玄関口。
私はそこを素通りし、1階の通路を走る。
そして、ある部屋の前で止まった。
そこは、ボイラー室。
暖房設備等を置いておく部屋。一般人にはまず用の無い部屋。
――そこが、アサシンの訓練場の入口だった。
私は、ボイラー室の鍵を針金で開ける。
トラップ趣味に関連して、私は前から簡単な鍵ならこじ開けられる。
・・・最初、真和さんたちの目の前でピッキングをやってみせたとき、二人とも目を丸くしていたっけ。
ボイラー室の中は、真っ暗だった。
照明をつけると、黄色の光が室内を満たす。
中には6台の機械。線対象に、右列に3台。左列に3台。
そして、部屋の中心にはマンホール。
私はいつもの場所――つまり、左列後ろから2番目と3番目の機械の間にある茶色のドラム缶の裏から、
マンホールバールキー(マンホール開け)を取り出す。
そして。
思い切り力を込めて、マンホールを開けた。
マンホールが外れ、塞がれていた穴が現れる。
初日はかなり怖かったが、六回も入る頃には慣れた。
私は腰のホルダーに小型のライトを挟み、電源を入れる。
・・・おっと、忘れずに部屋の照明を消してと。
誰か入ってきたときに、電気が付きっぱなしだったら怪しまれる。
部屋を支配する闇を照らすのは、腰のライトのみ。
思わず一瞬身震いしたが、気を取り直してマンホールに体を入れる。
ライトの光を頼りにハシゴを見つけ、そこに足を乗せる。
そして、足場を一段一段確かめながら、ゆっくりと闇へと降りていった。
下水道は、腐臭と暗闇が支配していた。
訓練生になってから5日位は怖くて怖くて仕方なかったが、もうすっかり慣れたものだ。
腰からペンライトを外し、前方を照らしながら教えられた道順通りに進む。
右、右、左、直進、左、直進・・・
目印も何もない。
一つでも道を間違おうものなら、確実に迷子になるだろう。
臭いのせいで鼻が麻痺しそうだが、我慢して歩く。
そうして、20分もたっただろうか。
私は、自分の進行方向左手にはしごを見つけた。
ひとまず胸をなで下ろす。
「良かった・・・」
467 :
417:2012/03/17(土) 11:46:26.15 ID:bCqahDfk
ペンライトを口でくわえ、上を照らしながらハシゴを登る。
一番上は、当然マンホールにふさがれている。
でも、心配することはない。
ハシゴから片手を離し、マンホールの裏側をノック。
コンコンコン、コンコン、ココココココン。
ノックが終わってから約5秒後。
ガコンという音とともに、自分のいた空間に光が差し込んできた。
「ああ、君か。良いぞ。上がって」
外に居たのは、アサシン。銃を持っている。
私はマンホールから這い上がり、外に出た。
私が出てきたのは、かつては多くのトラックが停車していた駐車場。
興宮町の外れにある倉庫街。
そこが、アサシンの訓練場だった。
いつからか使われなくなり、不良の溜まり場となったここを、アサシン教団は安値で買い取って改造を施した。
第一倉庫はこれ、第二倉庫はこれ、第三倉庫はこれ。・・・といった具合に、訓練の種類ごとに分かれている。
入口の警戒にあたっているアサシンは気さくな人物で、よく私に話しかけてきた。
訓練生は自分の指導役のアサシンと一緒でなければ入れないので、待っている間は暇なのだ。
「どうだい、沙都子ちゃん。もう訓練生活には慣れたかい?」
「ええ」
たわいもない会話。今の私には、貴重な『普通』を感じさせてくれる時間の一つだ。
しかし、それも長くは続かない。
マンホールから、例のリズムが響く。
中年のアサシンはマンホールに駆け寄り、開ける。
中からは、真和さんと吾郎さんが出てきた。
先に声をかけてきたのは吾郎さん。
「ごめん、沙都子ちゃん。待った?」
「いえ、そんなことありませんわ」
そう返すと、五郎さんは少し安心したように言った。
「そう。良かった。相原さん、今日はどうします?」
「そうだな・・・」
毎日、私の訓練のスケジュールを決めるのは真和さんだ。
時計は、今が午前6時であることを示している。
「・・・よし、とりあえずいつものランニングと体力トレーニングからだ。午前中はお前が第二倉庫で沙都子の指導に当たれ。
午後からはオレがやる。第三倉庫だ」
「わかりました。・・・沙都子ちゃん、いいかい?」
「もちろんでしてよ」
私が頷いたのを見ると、相原さんは両手を打って言った。
「じゃ、まずは準備運動からだ」
準備運動を終えて、私と吾郎さんは第二倉庫へ。
毎日のトレーニングが始まる。
第二倉庫は『移動術』――つまり、フリーランニングやロッククライミングといった道なき道を高速移動する技術を学ぶためにある。
倉庫の中心には、廃材や工事用の足場などで作られた巨大なアスレチックが鎮座している。
その障害物は多種多様。・・・中には、一体これを人間がどうやって通るのだというような物まで含まれている。
しかし、始めからこれをやるわけではない、
まずは体を温める。ランニング5000m。
スニーカーを履き、第二倉庫内のアスレチックコースの外側を走る。
朝早くということもあり、中には私と吾郎さん以外は誰もいない。
最初の頃は一刻も早くアサシンになりたいという焦りから無理してスピードを出していたが、今ではちゃんと自分の本来の実力に
見合った走り方をしている。
二人いわく、体力というものは長い時間をかけて少しずつ積み上げるべきものらしい。
正直まだ焦りはあるが、やたら急いてもしょうがないと割り切ることにする。
その後少し休憩を挟み、次は筋力トレーニング。
腕立て、上体起こし、マシントレーニング等を組み合わせ、全身の筋力をバランスよく鍛える。
468 :
417:2012/03/17(土) 11:47:07.97 ID:bCqahDfk
その後、また休憩。
そして、ようやくアスレチックへ。
時々吾郎さんの指導を受けながら、指定されたルートを駆け抜ける。
最初は一から十まで手取り足取り教えてもらっていたが、自分でルート上の障害の攻略法を覚えると、吾郎さんは
苦戦した時と本当に危ない時以外はフォローしてくれなくなった。
スタート地点からダッシュ。勢いをそのままに正面の壁を蹴り上がり、何とか指を壁の縁に引っ掛ける。
「く・・・っ」
腕の筋肉をフルに使い、なんとか壁を上がる。
同じことを、左の壁でもう一回。
そして右を向き、足場と足場の間にかけられた一本橋を慎重に渡る。
平均台や角材といった四角いものならあっという間に渡れるだろうが、この一本橋は太い鉄パイプ。
バランス感覚には自信があるが、どんなに注意深く進んでも姿勢がなかなか安定しない。
始めの頃よりは良くなったとはいえ、今でもちょくちょく落ちる。
昨日と同じ要領で、昨日より速く。
――あ。
よせばいいのに、思わず下を見てしまった。
高さにして、約4m。
そんなに高くもないように聞こえるが、上から見ると――
「ひっ・・・」
心拍数が急上昇。足がかすかに震える。
「沙都子ちゃん!下見ちゃダメだ!落ちても大丈夫だから!一気に行って!」
「はっ・・・はいですわ!」
吾郎さんの指示通り、一気に渡りきろうとする。
しかし、途中から急激にスピードを上げたのがよくなかった。
一気にバランスを崩す。
そして、見えざる引力の手が私を捕らえ――
「あっ・・きゃあああああっ!」
そのまま、コンクリートの地面へと引きずり落とす。
落ちながら、私の体を襲うであろう激痛に備えた。
・・・しかし。
私の体は、コンクリートの地面にではなく、吾郎さんのお腹の上に落ちた。
「・・・ぐほっ、だ、大丈夫かい?沙都子ちゃん」
私は息絶え絶えながらも、何とかお礼を言った。
「あ・・・あ・・・ありがとう、ございましたわ・・・本当に、死ぬかと思った・・・」
吾郎さんは私をどかすと、苦笑いしながら言った。
「頭より落ちるよりはマシだけど、背中から落ちるのも危ないよ。出来るだけ足から落ちるようにね。
・・・じゃあ、とりあえず立って」
「あ、はいですわ」
足をくじくのも結構痛いものなので、吾郎さんには感謝だ。
「・・・よし、自分で立てるのなら大丈夫だね。最初の位置まで戻って。もう一回一人でやってみて」
「了解ですわ」
・・・吾郎さんは、いつも地面でぼーっとしてるだけのように見える。
だけど、私がピンチに陥っている時、下を見ると必ず吾郎さんの姿がある。
おかげで、私はそれほど怪我することを心配せずに訓練に打ち込めるのだ。
その後、危なっかしく、慎重に一本橋を渡り切り、続きのコースもこなす。
コースの難易度は、一つの大きなアスレチックをどう通るかで決まる。
今練習しているのは、コースの中でも一番易しいもの。
その最後の障害。
アスレチックでの訓練を始めてから、まだ一度もできたことがない。
2mの高さからジャンプし、3m先にある小さな赤い枠の中への着地。
今日こそは、今日こそはと思いつつも、今日もやはり――
着地したのは、赤い枠の10cm奥。つまり飛びすぎたのだ。
469 :
417:2012/03/17(土) 11:47:45.72 ID:bCqahDfk
ひたすらアスレチックを駆け続けた。
何度転んだかわからない。何度落ちて痛い思いをしたかわからない。
でも、それだけやっても、どうしても最後のジャンプが上手くいかない。
その内、他の障害物を超える動きも精細を欠き始め、そのたびに吾郎さんに指導されということを繰り返した。
そして、今日もまた時間切れ。
アスレチックから降ろされ、ロッククライミングへ。
「・・・また、今日もできませんでしたわ」
自分に対する不甲斐なさと苛立ちで少し落ち込んでいる私に、吾郎さんは言う。
「沙都子ちゃんの弱さは、ひとつダメなのが続くと釣られて他のもダメになってくるところにあると思う。・・・あと、少し頑張りすぎだよ」
私は、少しむくれて言い返す。
「だって、頑張らないとうまくなんてなれないですもの」
「もちろんそれはそうだ。でも、今の沙都子ちゃんは頑張ろう頑張ろうとする気持ちが空回っちゃってる感じがするな。
・・・そう。昔の僕みたいにね」
そう言って、吾郎さんは私に笑顔を向ける。
「でも、沙都子ちゃんはとても優秀だと思う。もしかしたらだけど、4年と言わず2年位でアサシンになれるかもしれない」
「・・・え?」
自分の不甲斐なさに消沈していた私には、意外なセリフだった。
「だって、訓練生になって15日目の僕って、確かアスレチックも走らせてもらえなかったもの」
「そうだったんですの!?私は、てっきり吾郎さんはそれこそ初日から・・・」
「アハハハッ、そんなことあるわけないよ。普通なら、みんな跳び箱とか鉄棒とかで基礎を身に付けてからコースを走るものなんだから。
僕がアスレチックに挑戦できたの、確か訓練始めてから1ヶ月くらいは経ってたと思うなあ」
――あ。
そういえば、訓練初日の私もそんなことをやった。
470 :
417:2012/03/17(土) 11:48:22.86 ID:bCqahDfk
今日はここまで。
後編は明日投下します。
471 :
417:2012/03/18(日) 11:08:14.90 ID:2oiltEpG
後編を投下します。
472 :
417:2012/03/18(日) 11:09:01.56 ID:2oiltEpG
ページ6 後編
訓練初日。
ボイラー室から暗くて臭くて怖い下水道を通らされ、自分も見たことがある廃倉庫がアサシンの
訓練場だったことを知り度肝を抜かれていた私は、唖然としたまま第二倉庫に入れられた。
吾郎さんは、笑って言う。
「まあ、気を楽にして。とりあえず、君の身体能力が知りたいんだ」
そして、色々とやった。
跳び箱に鉄棒、その他もろもろ。
20分後。
今度は、吾郎さんがびっくり仰天していた。
「・・・沙都子ちゃん?」
「はい?」
「ひょっとして、君・・・運動神経抜群?」
「・・・もちろんですわ」
「あの時は、本当にびっくりした。まさか2日目からアスレチックに入れることになるとはね」
私の体に手早く命綱をくくりつけながら、五郎さんは言う。
「沙都子ちゃん、自信持ちなよ。君ならできるって。アスレチックに行くのに一ヶ月かかった僕は、一年半で
アサシンになった。・・・てことは、乱暴な計算だけど、2日でアスレチックを走り始めた君なら、一ヶ月ちょっとで
アサシンになれる計算になるだろ?」
「はは・・・たしかにそうですわね・・・」
乾いた笑い声を上げる。
でも、声の乾きっぷりとは裏腹に、少しだけ元気が出た。
自分で言うのもなんだが、私、北条沙都子はロッククライミングが大の得意だ。
すいすいと壁を登る。
ひとつの手かがりに手をかけたら、即座に次の手がかりと足場を探す。これをひたすら繰り返す。
パズルを解いているみたいで、なんだか楽しい。
上まで行ったらボタンを押し、今度は下る。
登りより下りの方が、視界が制限される分難しい。
だが、その分やりがいも増すというもの。
もっとも、実際に登ってみるまで、ロッククライミングなんてしたこともなかったのだが。
壁を登って再び降りてきた私に、吾郎さんが興奮気味に教えてきた。
「・・・速い、速い!あとほんの少しで基準タイムに届くよ!」
「本当ですの?あとどれくらいでして?」
「あと・・・5秒だね。つまり」
谷内さんが言葉を継ぐ前に、私は言った。
「・・・昨日より、2秒も縮みましたわね」
フリーランのほうが不調なだけに、一際嬉しく感じる。
はずだったのだが。
「このままなら、もう2,3日で基準タイムに届きそうだ。頑張ったね!」
私は嬉しそうな顔をする吾郎さんの顔を見る。
どういうわけか、心には何にも感じなかった。
「・・・沙都子ちゃん?」
怪訝そうな顔で、私を見る吾郎さん。
はっとして、慌てて嬉しそうな声を返した。
「や、・・・やった!でございますわ!」
どうにかごまかせたらしく、吾郎さんは私を微笑ましそうな目でみた。
時計を見る。
「なんだか中途半端な時間だなあ。・・・よし。今日は終わりにして、相原さんの様子を見に行ってみよう」
「いいですわね。・・・ところで、相原さんはいつもどこで訓練してますの?」
「ええと、今日は確か――」
473 :
417:2012/03/18(日) 11:09:53.77 ID:2oiltEpG
倉庫内に響く乾いた銃声。
ここは第一倉庫。完全防音の射撃場だ。
入ってすぐ目に入るのは、いくつも立っている金属板。
バッティングセンターの仕切りがすべて金属板になった感じと言えば伝わるだろうか。
入口の扉がある壁沿いには、所狭しと様々な銃器が分類され、並べられている。
拳銃、サブマシンガン、軽機関銃、アサルトライフル、カービンライフル、ショットガン、スナイパーライフル。
・・・更には、グレネードランチャー、対戦車ライフルまで。
真和さんは、『06』と書かれたブースにいた。
二人で後ろに立ち、真和さんの射撃を眺める。
真和さんは私たちには気づかない様子。耳あてもしているのだから、当然だろう。
真和さんは手にもった銃の弾倉を交換し、再び構える。
使っているのは、ごく普通の拳銃に見える。・・・といっても、
どういう形のがどの拳銃かなんてまだ私にはわからない。
「・・・M1911か」
だから銃の知識は、たいてい吾郎さんの独り言から得た。
的はおよそ40m先。銃を構えた兵士の絵が書かれており、高速でカクカクゆるゆると
不規則に動き回っている。
パンパンパンパンパンパン。
唐突に響きわたる銃声。
かなりのスピードで連射。しかも片手撃ち。
アサシンとしても優れた技術。当時はまだ一般人と同じような感覚を持っていた私には、
まさに目にもとまらぬ早業だった。
やがて、スライドが手前で固定される。弾切れだ。
真和さんは無言のまま、壁に取り付けられている[RESULT]と書かれた赤いパネルを押す。
ウィーンというモーター音と共に、的が目の前までスライドしてくる。
的に書かれた人の絵には、よく見ると点数のようなものが書かれている。
M1911は7発装填。的の穴は6個。
その内、4発は頭部に命中。
基本的に、アサシンの銃撃戦というものは弾のバラマキ合いではない。
有能なアサシンに求められるのは、敵の眉間への一発を確実に決められる射撃技術。
まさに「One shot,One kill(一撃必殺)」というわけだ。
ということを考えれば、
「・・・チッ」
しかし真和さんは、悔しそうにヘッドホンを所定の位置に放り投げる。
・・・かなり意外だった。
吾郎さんからは『なんでも出来る天才アサシン』と聞かされていたので、きっと悔しさとか
不甲斐なさとは無縁な人なんだろうなと思っていたから。
その後はランチタイム。
手早く食べ終えて、第三倉庫へ。
第三倉庫では『近接格闘術』・・・つまり、飛び道具を持たない状態での敵との戦いを学ぶ。
と言っても、ついこの間までは全くの一般人だった私が、突然アサシンの格闘術を学べるはずもない。
アサシンの格闘術は、『いかに効率よく人を無力化し、いかに効率よく壊すか』に重点を置かれた作りだ。
さらに、「強そうだ」という印象を与えることで敵の戦意を奪うことも不可欠。
そのためには、アクロバティックに動くことが必要。
だが、そのために必要な柔軟性や腕力といった身体的な能力を私はまだ身に付けていない。
だからこの15日間、訓練では『最低限一対一ならどうにかなるレベル』の格闘術を教わっていた。
474 :
417:2012/03/18(日) 11:11:36.02 ID:2oiltEpG
冷たい床には、8m四方の赤い枠。
その中で、私と真和さんは背を向かい合わせて立っている。
「準備はいいか?」
私は無言で頷く。
「・・・よし、始めるぞ。スタートだ」
真和さんがそう言うと、枠の外に立っていたアサシンに声をかける。
アサシンは手元のストップウォッチを起動。
ピー、いう電子音と同時に、真和さんがすごいスピードで振り返り、私の首筋めがけて手刀打ちを仕掛けてくる。
しゃがんで躱す。髪を手刀がかする感触。
しゃがんだ勢いで前転。立ち上がると同時に一瞬ダッシュ。そこから側転、さらにバク転。
一旦距離を取り、真和さんと向かい合う。
「・・・回避、ずいぶん良くなったな。実戦でも使えるかもしれん」
「真和さんのご指導の賜物でし・・・てよっ!」
一気に間合いを詰め、全体重を乗せて右フック。
軽く体をひねられ、躱される。
この程度は想定内。フックの勢いを殺さず右足で屈み、右足を軸に半回転。
回転のエネルギーと全身のバネを使って左足を突き出す。
目指すは真和さんの腹。ここをやられると、人間はその後の動きを大きく制限される。
当たりどころが良ければ、一発で戦闘不能になることさえあるのだ。
今日の感じはかなり良い。
ひょっとしたら、今日はダウンを奪えるかもしれない――
だが私の蹴りは、真正面から止められた。
そのまま足首を掴まれた、と思う間もなく、世界がぐるりと回る。
背中から叩きつけられる。
咄嗟に受身を取ったから衝撃を軽減することはできたが、それでも結構痛い。
全身の臓器に衝撃が走り、私は咳き込む。
「がほっ、げほっ・・・!」
アサシンの模擬戦では、ダウンを奪われた時点で負け。
つまり、これでゲームセットだ。
「・・・何秒もった?」
真和さんは、ストップウォッチを持ったアサシンに尋ねる。
「18秒です」
真和さんは私に手を差し伸べる。
そして、フッと笑う。
「・・・昨日より4秒も長くもったじゃないか。沙都子。谷内から聞いてはいたが、アサシンとしての素質は十分だな」
こう書くと真和さんが凄く嫌味な人のように感じるだろうが(いや、実際結構自信家だが)、そんなことはない。
何せ訓練開始当初は、最初の手刀をモロに受けて5秒と持たずに投げられてしまったのだ。
そこから厳しい訓練を重ね、1秒、また1秒と『もつ』時間を伸ばしていった。
訓練生は、自分の師匠から一度でもダウンを奪うことが目標だ。
私の場合は、真和さんから。
道はまだまだ長く、険しい。
475 :
417:2012/03/18(日) 11:12:28.83 ID:2oiltEpG
先程の記述で分かったと思うが、ここで訓練しているアサシンは私たちだけではない。
この興宮の訓練場は日本にあるアサシンの施設のなかでもかなり大きなもので、県内のみならず西日本各地からアサシンがやってくる。
そういうアサシンのための宿泊施設もあるくらいなのだ。
となれば、必然的に訓練生も集まるという話である。
今日、この第三倉庫には総勢42名の訓練生がいる。
近接格闘術の訓練の流れをざっと説明すると、まず師範のアサシン二人が向かい合い、技の手本を見せる。
あとは訓練生同士適当にペアを組み、師範のやったことをそのままなぞる。
皆が練習している間、師範のアサシンは各ペアの間を回って指導している。
大勢の訓練生を二人のアサシンで全て面倒見るのはさすがに不可能なので、できる者ができない者に技を教えるということも普通にある。
年齢も性別もバラバラ。
ある者は黙々と、またある者は組む相手とおしゃべりしながら。
訓練に差し支えなければ、師匠たちは私語に対しては何も言わない。
みんなが話すことは、普通の子が学校で話すことと大して変わらない。
夕べのドラマが面白かったとか、ナントカという歌手が素敵だとか。
――だが訓練生の中にも、一つだけ暗黙のルールがある。
それは、他人の過去を決して聞かないこと。
普通の人生――言い換えるならば普通の幸せに満ちた人生を送ることが許される者は、基本的にアサシンにはならない。
故に、アサシンになる者というのは筆舌に尽くしがたい悲しみや傷を背負っているものである。
アサシンの訓練が過剰に過酷なのも、訓練のあまりの過酷さに少しでも浸かり、出来るだけ昔のことを思い出さないようにするため。
・・・よほどのドMでもない限り、古傷に塩を塗られて喜ぶ者などいないはずだ。
アサシン教団は奇妙なもので、団結力や互いの信頼はとても強いのに、おたがいの情報は極力共有しないようにできている。
他の支所の所在地。
知っているのは、各支所のアサシンのみ。それも距離的に近い順から5つまで。
各アサシンの詳しい経歴。
知っているのは、本人とその師匠のみ。
たまに会話に出てくる『アサシン教団日本支部』の所在地。
知っているのは支部直属のアサシンと、パドローネ(第1級アサシンの正式な役職名)のみ。
一人一人のアサシンが持っている情報が少なければ、万一誰かが捕まっても教団全体へのリスクを
軽減できるということらしい。
互いに本当に厚い信頼で結ばれているのなら、嘘や隠し事など必要ないと思うのだが・・・。
まあ、それを私が考えても仕方のないことだ。
476 :
417:2012/03/18(日) 11:13:00.44 ID:2oiltEpG
午後5時。
相手の子と私は、時折互いの改善すべき点を教え合ったりしつつ、淡々と訓練に励んだ。
ちょうど一段落ついたと同時に、けたたましいホイッスル。
「訓練終了!訓練終了!各自、自分の師匠のところへ!宿泊希望者は師匠と一緒に申し出るように!」
ああ。
今日も終わったのか。
私は相手の子に「それじゃ」と言い残して、真和さんと吾郎さんを探しに行った。
セーフハウスに着いた私は、リビングのソファに体を横たえた。
同じように、吾郎さんもぐでんと寝転ぶ。
「・・・毎日のこととはいえ、やっぱり疲れますわね・・・」
「そうだね・・・真和さん、よく動けますね」
キッチンで夕食の調理をし始めた真和さんに、吾郎さんが呆れたように声をかける。
「体力には割と自信あるしな」
毎日の食事を作るのは真和さん。
以前、真和さんに作らせてばかりでは悪いと思った私は、今日は私が作るから真和さんは休んでいてと言った。
返答は、「キッチンはオレのテリトリーだ」。
それから何度か見てみたが、調理中の真和さんはとても楽しそうな顔をしている。
意外に料理好きなのだ。
「けど、一歩も動けないってのはいい傾向だぞ。アサシンの訓練は、一日で
すべての体力を使い切るようにできてるからな。適切に訓練できてる証拠だ」
「・・・じゃ、相原さんは手抜きしてるってことですか?」
ジトッとした目で吾郎さんは真和さんを見る。
すると、相原さんは本当に暗い声で言った。
「仕方ねえだろ。・・・いくら訓練の量増やしても、体がついて来ちまうんだよ」
実に羨ましい悩みだ。
夕食を食べ終わると、私は即座に就寝。
前からわりと早寝早起きを心がけてはいたが、それにしても午後8時にはまだ起きていた。
最初は寝れるかどうか心配だったが、布団に入った瞬間にそれが杞憂だったことを知った。
訓練の疲労のせいだろう。最近の私は、布団の中で10秒以上意識をキープできたためしがない。
やわらかい綿の中、深い深い眠りにつく。
そして、翌朝は再び5時起床。
そういう毎日だった。
今客観的に見ると決して楽な生活ではなかったが、当時の私はそんなこと感じなかった。
明確な目的意識が、毎日の苦痛やストレスに盲目にさせていたのだろう。
――そう。
正直言って、アサシンの信条だの平和だの自由だのにはあまり興味がなかった。
目的はただ一つ。
『東京』の手足を生きたまま一本ずつもぎ取り、さんざん苦しめた末殺してやること。
そのためだけに生きていた。
だから、自分の足元をよく見ていなかった。
私が寝起きする、この506号室。
その目と鼻の先の501号室は、現在園崎家頭首である園崎詩音の住まいだった。
477 :
417:2012/03/18(日) 11:22:41.59 ID:2oiltEpG
今回はここまで。
wktk
479 :
417:2012/03/25(日) 17:15:16.41 ID:5TooQTht
続きを投下します。
480 :
417:2012/03/25(日) 17:16:03.59 ID:5TooQTht
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1983年7月29日(昭和58年) 午前5時18分
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生(訓練30日目)
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
マンション‘ホワイトパレス’ 506号室(アサシン教団 興宮セーフハウス)
いつもどおりの朝、私は珍しく部屋でだらけていた。
どうやら私の体内時計は、ちゃんと起床時刻を午前5時に設定してくれたらしい。
今ではもう、目覚めたときに頭が重いということも無くなっていた。
・・・じゃあ何で、身支度も整えずにダラダラしているのか。
その原因は、机の上の書き置き。
―――――――――――――――――――――――――――――――
日本支部での会合に出席するため、今日は留守にする
師匠がいないと訓練場には入れないから、訓練は休みだ
真和
その会合に僕も出ないといけないから、今日は沙都子ちゃん一人きりになるんだ
今日は自由行動だけど、身の安全には気をつけてね
吾郎より
―――――――――――――――――――――――――――――――
「・・・急に自由だ、と言われても・・・」
何にもやりたいことがない。
遊ぶ相手なんて、もちろんいないし。
トラップの点検に行くには、自衛隊の人達の超厳重な警備をかいくぐっていかないといかないし。
「・・・そうだ!」
ここの所、新しいトラップを仕掛けてない。
技術と知識はそう簡単に衰えるものではない。だが、実はトラップにはそれらはさほど重要ではない。
そんなものはやってるうちに自然と身に付く。
重要なのは、直感と想像力。
何をどこにどう仕掛けたらどういう風に引っかかるか。
こればっかりは、経験をもとに培うしかない。
何よりこの二つは、しばらくトラップから遠ざかっているとあっさり抜け落ちてしまう。
「よし!」
せっかくだから、ある程度自分で条件を縛ってみよう。
「この部屋にあるものだけで・・・とかいいですわね」
そして、1時間後。
久々に楽しい時を過ごした私は、部屋の中をご機嫌で見渡す。
――もう、この部屋の中を安心して歩けるのは私だけ。
そう思うと、何とも言えない優越感が私の身を浸すのを感じる。
私はジャージに着替え、外に出た。
481 :
417:2012/03/25(日) 17:17:00.27 ID:5TooQTht
普段通りの訓練をこなせないなら、出来る範囲でやるだけ。
まずは毎朝のランニング――『8000m』。
訓練開始から1ヶ月が経ち、私は少しは進歩していた。
最初の一時期少々足踏みしたが、あのコースの『赤枠着地』を成功させて自信がついた。
あの後は順調に難度を上げ、今は難度『C』のコースを走っている。(最初は『E』)
ロッククライミングは、既に現役のアサシンとあまり変わらないスピードで昇り降りできる。
近接格闘も、真和さんに『かする』レベルまで闘えるようになった。
訓練生相手ならもうだいたい敵なし。
最初かすったときは、見ていた他のアサシン達にも随分褒めてもらった。
真和さんに勧められて、今は時々現役のアサシンと組手をしている。
たまーに、本当にたまーにだけど、相手のアサシンからダウンを奪えることもある。
他にも、アサシンとして必要な技術もしっかり叩き込まれた。
中でも得意なのは、銃器の取り扱いとトラップ術。
まさか自分に射撃の才能があったとは思わなかった。
トラップ術に関しては、訓練一回目の時点で訓練終了。
逆に「君のノウハウを教えてくれ」と担当のアサシンに頼みこまれた。(断った)
とはいえ――
課題はまだまだ山積みだ。
『中でも』という表現から分かると思うが、出来ないこともたくさんある。
近接格闘を例に挙げれば、一対一はどうにかなっても、一対大勢だとどうにもならない。
あっという間に動きを封じられ、あっさりタコ殴り。
「一対大勢の時は、相手をうまく分散して各個撃破するんだ。一対七なら、一対一を七回繰り返す感じかな」
言うは易く、行うは難し。
目標は、一対七で敵を全員撃破。
今の私では、せいぜい一対四ならかろうじで逃げ切れるくらいが限度。
まあ、一歩一歩確実に進んでいると思おう。
などということを考えているうちに、私は全ルートの半分を消化。
私は、自分の左手に見えるファミレス――エンジェルモートを見上げる。
災害発生直後は、風評被害やら何やらで客足が激減。
一時は本当に閉店寸前まで行ったらしいが、げに凄まじきは男の色欲か。
災害発生後二週も経つと、もう客が(それでも以前の六割ほどだが)戻ってきたらしい。
かつて罰ゲームとして、ここでメイド姿にされて接客させられたことがあった。
かなり恥ずかしかったが、実は結構楽しんでいた。
メイド服、実はそれほど嫌いでもない。
「・・・あの時は、レナさんにお持ち帰りされまいと必死でしたわね」
周囲に誰もいないのを良いことに呟く。
「梨花、ずいぶんと楽しそうに、実は仮装趣味とかあったんですかしらね?」
口では『みぃ、恥ずかしいのです・・・』などと言っていたが、私の目はごまかせない。
梨花はスク水姿にされていたのだから、恥ずかしさはメイドの比ではなかったように思うのだが・・・
「意外と魅音さんは、相当恥ずかしそうでしたわね」
普段の性格からしてああいうのは豪快に笑って着こなすのだろうと思ったのだが、案外そんなことはなかった。
『たはは・・・こりゃ照れるねえ・・・』なんて言ってたっけ。
「・・・圭一さん」
圭一さんの舌なめずりする姿は、なかなか悪寒が走るものがあった。
でも――
『やっぱ、そういうのも似合うんだな。沙都子』
あの時、私が真っ赤になっていたこと、圭一さんは気づいていたのだろうか。
「・・・もう、ずいぶん昔のことのように感じますけど」
482 :
417:2012/03/25(日) 17:18:41.35 ID:5TooQTht
1ヶ月。
その時間は、私の心を少しだけ癒せたらしい。
昔のことを考えても、涙はなかなか出てこなくなった。
鼻に、独特のつうんとする痛みは走るけど。
ただ、『東京』――特に、私の全てを奪った者への憎しみの炎は、全く衰えない。
いや、時計の針が進むたびに、勢いを増しているというべきだ。
だからこそ、今こうして――
その時、私の思考は強制的に中断された。
訓練で磨きあげた、危機察知能力。
分かりやすく言うなら『殺気』を捉える感覚が、私に大音量で警告した。
ぐぅという喉の奥から絞り出された声とともに、私は前方に飛び込む。
直後。
真後ろで、バチバチという電流の音が聞こえた。
「!?・・・チッ!!」
相手の舌打ちする音を聞きながら、私はそのまま前回り受け身。相手に向き直る。
完全に、文字通り全てがフリーズした。
心臓が突然凄まじいスピードで波打ち、視界がくらむ。
体温が一気に20度下がり、直後に50度上がった。
肺が硬直し、息ができなくなる。
汗が突然滝のように吹き出して、全身を覆う。
私をスタンガンで襲おうとした――いや、現在進行型で襲っている者。
それは、事故で亡くなったはずの魅音さんだった。
「み、おん・・・さん・・・」
ガクガクと足を震わせながら、カラカラの口で言う。
「い、生きて・・・生きててくれましたの・・・?」
先程襲われたことも忘れて、私はヨロヨロと魅音さんに歩み寄る。
だが――
魅音さんが発した声は、私の知っているものとは違っていた。
いや、それまでに聞いたことのない声だった。
「・・・この、バカ妹・・・」
その声は、どう日本語にすればいいかわからない声だった。
分かったのは、その声の主が、私を心の底から憎んでいたことだ。
「・・・え?」
「悟史くんを食い潰し、お姉さえ見捨てておきながら、のうのうと生き延びただけじゃ飽き足らず・・・」
そこでようやく気付いた。
――この人、魅音さんじゃない。
もっと早く気付いても良かった。
髪型とか、服装とか。
何より、全身に漂う冷たい雰囲気で。
魅音さん――いや、魅音さんと同じ顔をした女は、手にもったスタンガンをスパークさせる。
「・・・何、のんきに息してるんです?」
「・・・は?」
そう答えるや否や、女は一気に距離を詰めてきた。
「死ねあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
そして、私にスタンガンを突き出す。
483 :
417:2012/03/25(日) 17:19:50.75 ID:5TooQTht
私は紙一重で右によけるも、すぐに第二撃。
「・・・お前さえいなければ、悟史くんはいなくならなかったっ!!」
どくん、と全身に動揺が広がる。
悟史くん?悟史くんって、にーにーの事?
この人は誰?なぜにーにーの事を?
ギリギリのところでしゃがむ。
直後、力のこもった蹴りが飛んできた。
両腕を顔のところでクロスさせる。
アサシンほどではないにしろ、凄い衝撃。
防げはしたが、受けた体勢が悪かった。
大きく後ろに尻餅をつく。
「悟史くんの生き血を散々すすったあとは、今度はお姉まで!!」
あまりによく似た風貌。
そして『お姉』。
この人、ひょっとして。
魅音さんに妹がいるという話は聞いたことがない。
だが、だからと言っていないともかぎらないだろう。
よろけながら相手を見る。
相手は、どうやら私に飛びかかっているようだ。
相手に崩された勢いを生かし、そのまま後転。
私がかわしたのがよほど意外だったのか、私がさっきまでいた場所にはいつくばる女。
その姿は、さながら雌豹のよう。
まだ私に何かわめきたてているようだが、もうそれはどうでも良い。
この人は魅音さんではない。
この人は私を襲ってきた。
私はこの人を知らない。
・・・そして、この人は魅音さんを知っていた。
ならば、取るべき行動は一つ。
私は一気に駆け寄り、勢いそのまま女の右手を蹴り飛ばす。
「くあっ!」
女の手からスタンガンが離れ、綺麗な放物線を描いて飛んでいく。
「しまっ――」
蹴り上げた右足を、全力で振り下ろす。
ボグッという鈍い感触と共に、私のかかとが女の右こめかみにねじ込まれる。
「っ!!」
ここで意識を刈り取るつもりだったのだが、如何せんパワーが足りない。
相手は地面に両腕両足を付けながらも、こちらを上目遣いに鬼のような形相で睨みつけてくる。
「・・・上等切ってくれんじゃねえか!ぶちまけられ」
「少し静かにしていてくださいまし」
だから、もう一撃。
頭を掴み一度持ち上げ、強く引くと同時に顎に思いっきりひざ蹴り。
脳震盪を起こし、女はダウンした。
私が戦っている間、表通りであるにもかかわらず、ここは誰も通らなかった。
本当にラッキーだった。
警察にでも通報されてたら、面倒なことになっていただろう。
ただそれ以上に、私は少なからずショックを受けていた。
すっかり脱力し、私の足元でのびる女を見てつぶやく。
「・・・私、ずいぶん強くなりましたのね・・・」
体格は負けてたのに、正直かなり楽勝だった。
最初こそ精神的にかなり揺さぶられたせいで少し遅れをとったものの、
一度落ち着きを取り戻せば途端に形勢逆転。
「普段相手してる人達があれだけ強ければ、自然と強くもなるってものですけど」
聞いた話では、アサシンの訓練は各国の特殊部隊を参考にカリキュラムを組んでいるらしい。
ということは、カリキュラムを終える頃には、既に最低でも特殊部隊並みの戦闘能力を得ているということ。
私は、カリキュラムの一番初めの辺りを消化し終わったところ。全体の1割5分といったところだ。
・・・それでも、素人には負けない。それくらいの自信はある。
おっと、こうしてはいられない。
私は伸びている女を半ば引きずるように担ぎ、今まで走ってきた道を戻った。
484 :
417:2012/03/25(日) 17:21:28.46 ID:5TooQTht
今回はここまで。
485 :
417:2012/03/31(土) 16:30:33.83 ID:irIFIQBo
続きを投下します。
486 :
417:2012/03/31(土) 16:32:57.87 ID:irIFIQBo
エンジェルモートからセーフハウスまでは、直線距離にして800mほど。
途中何度か隠れ、人目を避けつつ自宅へ。
全く見られなかったという保証はないが、何とか戻れた。
エレベーターを待つ間、女のことをもう一度よく観察する。
緑の長髪を、一部黄色のリボンで後ろに束ねている。
気絶している顔を見ている限りは美人。
・・・さっきのあの表情を見せた者と同一人物とは思えない。
「・・・それにしても、本当にそっくりですこと」
体格、豊満な胸、顔。
文字通り魅音さんのコピーだ。
「あなた、誰なんですの?」
呼びかけるが、返答はない。
どうやら余程いい所に入ったらしいな。昏昏と眠り続けている。
・・・お、エレベーターが来た。
ページ8
1983年7月29日(昭和58年) 午前7時42分
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生(訓練30日目)
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
マンション‘ホワイトパレス’ 506号室(アサシン教団 興宮セーフハウス)
「・・・ん、く・・・」
ベッドからくぐもった声。気がついたか。
「お加減いかがでございますの?」
「!?」
目を覚ました女は、こちらを驚いた目で見る。
「あんた・・・」
「先程は失礼あそばしましたわね。とっさのことでしたから」
そう言って、私は自分が蹴りを入れたあたりを触る。
少し腫れてはいるが、あまり問題はなさそうだ。
私は冷えピタの発明者に感謝しつつ、女に言う。
「身に付けてらっしゃったスタンガンは、その机の上にありますわよ。
電池は抜いてありますけど」
「えっ・・・あ」
女は身を横たえたまま頭を動かし、自分の武器がそこにあるのを確認。
女は起き上がろうとするが、まだ脳が正常に働いてはいないのだろう。
クラリと揺らぎ、再びベッドに横たわった。
女は怖い声で――それでもさっきに比べれば大分おとなしいが――私に言う。
「・・・何のつもり?」
「とおっしゃりますと?」
「私に恩を売ったつもりですか?」
少しカチンときて、投げやりに返す。
「・・・そうだと言ったらどうでございますの?」
487 :
417:2012/03/31(土) 16:33:48.46 ID:irIFIQBo
そう返すと、女はなぜかギョッとした顔をした。
「あんた・・・本当に沙都子?」
変なことを言う女だ。
「そうですわよ。北条沙都子。今は『北里優』って名乗ってますけれど」
そう言うと、女はしばらく黙り込む。
偽名を使えとは言われているが、既に本名を知られているなら仕方ない。
ポツリと一言。
「・・・何してたんです?」
「え?」
「この1ヶ月、何してたんだって聞いたんですよ。あなたの名前、犠牲者名簿に載ってたんですよ?」
私の呼び方が、『あんた』から『あなた』になった。
「私、それなりに場数は踏んでるんですよ。あなたのさっきの動き、あれは
どう見たってシロウトじゃなかった」
「それはそうですわよ。鍛えましたもの」
「どこで?」
「それは・・・」
そこまで話してはっとなる。
しまった、しゃべりすぎた。
「・・・ごめんなさい。教えるなと言われてますの」
「ふーん・・・てことは、少なくとも町の空手教室とかじゃないんですね?」
「・・・」
何も言えない。
しかし、この場合、沈黙が肯定だった。
私はふと思い出して言う。
「そういえば、まっ先に聞くべきことだったんでしょうけど」
「なんですか?」
「あなた、誰なんですの?」
「・・・ああ、そっか」
随分体の調子もよくなったのか、既に女はベッドから身を起こしている。
「あなたからすれば初対面なんでしたよね。うっかりしてました」
そう言って、女は名を名乗る。
「私は詩音。園崎詩音」
予想通り『園崎』。
魅音さんと同じ苗字。
「・・・やっぱり、あなたは魅音さんの妹さんでしたのね?」
そう言うと、女――詩音さんは、首を横に振る。
「いいえ。元々は、私が魅音で魅音が詩音だった。つまり、私は姉です」
「え?・・・どういうことですの?」
「・・・ちょっとしたことで、二人の立場が入れ替わっちゃいましてね」
一体何をどうしたらおたがいの立場が入れ替わるなんてことがあるのだろうか。
気にはなったが、深くは追及しないでおく。
詩音さんが言う。
「・・・他には?」
488 :
417:2012/03/31(土) 16:35:16.23 ID:irIFIQBo
一通り質問攻めにして、私は詩音さんのことを大まかに知った。
にーにーとの出会い。幼き日のこと。
『ちょっとしたこと』。その他もろもろ。
・・・そして、かつて私をボコボコにしたのは自分であるということ。
「・・・まさか、あなたにこんなこと話すことになるとはね」
詩音さんが呟く。
「あなたのこと、大っ嫌いだったんですよ。できれば顔見るのも勘弁願いたい位に」
普通なら怒るべきところなのだろう。
だが、詩音さんの話を聞いたあとでは、とてもそんな気にはなれなかった。
話からだけでも、詩音さんのにーにーへの愛情がひしひしと伝わってくる。
ならば、にーにーに負担ばかりかけていた私を快く思わない――いや、嫌うのも当然だろう。
「だから今朝、というかつい数時間前まで、あなたのこと本気で殺す気でした。あらん限り残酷な手で」
私がここに住んでいることを知ったのは、全くの偶然。
訓練から戻った時、家に入るところを見たらしい。
「・・・でしたら、何で私を殺さなかったんですの?」
「嫌味ですか?殺そうとしたらあなたに返り討ちにされたんでしょ」
「私が言ってるのはその話ではありませんわ」
実はこの会話の少し前、私は詩音さんにお茶を入れた。
詩音さんに敵意があるかどうか試すために。
お茶を入れている間、私は丸腰で詩音さんに背を向けていた。
ここの私の部屋にも、枕カバーやスタンドライトといった凶器になるものは何でもある。
詩音さんが本気で殺す気なら、そういうのを手にとって私を襲えばよかったのだ。
もっともその時は、部屋中に仕掛けられたトラップの餌食になっていただろうが。
「もしあなたが自分からは何もしないクソガキのままだったら、多分殺そうとしたと思いますよ?
でも、もうあなたはもう違う。でなければあんな強さを手に入れるはずない」
詩音さんはうつむき、目を閉じる。
「・・・それによく考えると、よしんば弱いままだったとしても、あなたを殺すわけにはいきませんし」
「どうしてですの?」
「悟史くんに頼まれたんですよ。『沙都子のこと、頼むからね』って」
また心臓が跳ねる。
にーにーが、詩音さんに?
詩音さんは自嘲するように笑う。
「・・・アハハッ、自分の愛した人の最後の頼みまで忘れてるような女が、何を勝手にキレてたんでしょうかね?
私だって、あなたに殺されても文句言えないはずなのに」
「何を訳の分からないことを。どうしてあなたが私に殺されてもいいなんてことになりますの?」
「・・・だって、私は悟史君からあなたの事を頼まれたんですよ?」
そう言って一度言葉を切り、私をじっと見る。
489 :
417:2012/03/31(土) 16:36:33.97 ID:irIFIQBo
「あなたを、私は支えてあげなきゃいけなかった。あなたが辛い時も、苦しい時も、私はただ見ていた――
いや、それ以前に、あなたが苦しんでいることを知ろうとさえしなかった。・・・自らの不遇を嘆き、
周りの人の無力を怒り、怨んでばっかりで」
「詩音さん・・・」
私は詩音さんをただ見ることしかできない。
『頑張らなかった私が一番の罪人だ』とか、『恵まれていない環境にいたなら、それを嘆いて当然だ』とか。
言いたいことは沢山あったが、どれもこれも詩音さんを癒すことはできないと思った。
考えて考えて、考えた。
で、思いついた。
ぽん。
頭に手を置き、
ぎゅっ。
抱きしめ、
なでなで。
「!・・・沙都子?」
「・・・にーにーのとは、全然違うと思いますけど」
私は、詩音さんの目の奥を見つめて言う。
「お願いですから、そんな顔しないでくださいまし。人の悲しむ顔は、もう見たくないんですのよ」
詩音さんの見開かれた目が、私の目の奥を見つめ返す。
「きっとにーにーだって、詩音さんに泣いて欲しくなんて無いはずですわ」
暫しの沈黙。
突然、詩音さんの目から大粒の涙が零れた。
「さ、とこっ・・・ひっく・・・ごめ、なさい・・・でもっ・・・うっ・・・」
静かな嗚咽が、部屋を満たしていく。
殺されそうになったとか憎まれてたとか、そういうの関係なく。
初めて、生き延びて良かったと思えた。
「今日は本当に楽しかったですわ、詩音さん。」
「また、いつでも来てくださいね」
詩音さんに見送られ部屋から出た私は、夕日に目を細める。
「こんなに時間が経つのが速かったの、ずいぶん久しぶりでしたわね」
あれから、詩音さんと楽しいひと時を過ごせた。
特に何をしていたわけでもない。
ただ普通に、ご飯食べて、雑談して、トランプして。
傍から見ればなんの変哲もない、ごく普通の一日。
だが、アサシンの訓練に明け暮れる私には、まさに心安らぐ時間だった。
もし、またこういう休日があったら。
その時は、また詩音さんの家にお邪魔しよう。
今度は何をしようかな。
訓練を休める日を心待ちにはもちろんできないが、わた――
くらり。
突然、世界が歪む。
足元がフラつき、たまらず私はしゃがみこむ。
「え・・・」
白かったはずの通路の床が、どういうわけかぼんやり暗緑がかっている。
まるでノイズがかかっているかのように、床がジラジラして見える。
とても妙な気分だ。
気分も機嫌も絶好調なのだが、不思議と体に力が入らない。
・・・ィィィィィン。
耳の奥からか、脳の奥底からか、とても高い小さな音が聞こえる。耳鳴りというやつだろうか。
一体何事ですの?そう思った時だった。
突然、私を音の洪水が襲った。
車のクラクション。人の足音。風。
人の声。四方八方、あらゆる場所から。
詩音さんの鼻歌。50m後方、それも壁を隔てているのに。
右の部屋の誰かが電話で話す声。わずかだが、話し相手の声まで。
こ、鼓膜が、破れるっ・・・!
490 :
417:2012/03/31(土) 16:38:28.72 ID:irIFIQBo
耳を必死に塞ぐが、音は一向に止まない。
視界を覆っていたノイズには、風に煽られる水面のようなゆらぎが加わってくる。
ぎゅうっと目をつぶるが、瞳の裏にもノイズとゆらぎが侵食している。
視界は真っ暗なのに、視界の狂いが分かる。
ぐらぐらと三半規管が揺さぶられ、しゃがんだ体勢も保てなくなる。
思わずしりもちをつきかけて、がしりと両腕が支えられる。
と同時に、すべての異変が霧消した。
「沙都子ちゃん?」
支えてくれたのは、吾郎さんだった。
「あ・・・吾郎さん。お戻りになられましたのね」
「たった今ね。・・・ていうか、沙都子ちゃんどうしたのさ?」
「何でもありませんわ。少し気分が悪くなっただけですの」
「なら良いんだけど。本当に大丈夫?」
「ええ」
吾郎さんは若干首をかしげながらも、私の言うことを信じたようだ。
「そっか。じゃ、とりあえず部屋に入ろうか」
「はいですわ」
私はお尻を軽く叩き、部屋のドアノブに手をかけた。
自室で、私はベッドに横たわっている。
デジタル時計は今が午後8時12分であることを示している。
・・・まずい。全く眠くない。
訓練での疲労がなかったせいか、それとも今朝の刺激のせいか、あるいは
部屋のトラップに引っかかる真和さん(6回)や吾郎さん(17回)を見て高笑いしていたからか。
私の目はギンギンに冴えている。
予期せぬ休日は無論今日のみ。明日からは普通に訓練だ。
とにかく寝ないと。目を閉じてれば、たぶん自然と眠くなるはずだ。
頭の中で羊を数えつつ、寝返りを打つ。
羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、羊が四匹・・・
何か、余計に頭が冴えてきた気が・・・って。
・・・ィィィィィィィィィィィィン。
またアレだ。しかもさっきより酷い。
視界のノイズ。荒れ狂う水面。
真っ暗なはずの室内が、また暗緑に染まってくる。
そして、音の洪水。
この時、真っ先に耳に入ってきた音。
それはまるでトンネルの中の音のように、グワングワンと変に響いていた。
しかし確かに聞き取れた。
「沙都子の訓練の進み具合はどうだ?」
!!!
真和さんの声。
扉の向こう、リビングから聞こえる。
私のことを話している・・・!?
私は耳をそばだてる。
・・キィィィィィィィィン。
う・・・
余計耳鳴りがひどくなった。暗緑に染まる視界のぶれも。
その高音にかき消され、吾郎さんの声はとぎれとぎれにしか聞こえなかった。
「じゅ・・・うです。驚異・・いっ・・いい・・・う」
491 :
417:2012/03/31(土) 16:39:22.58 ID:irIFIQBo
ダメだ、ダメだ。
耳鳴りをコントロールするやり方なんて知らないけど、可能な限り制御してみる。
ゆっくりと、耳に込めた力を抜く。
すると、耳鳴りは少しずつ収まってきた。
今度ははっきり聞こえた。反響もそれほどない。
「こっちもだ。グラフはあるな?」
「はい」
その直後、ガサガサと紙を動かす音。
だんだんと聞こえる音が小さくなっていく。
聞き取れなくなっては困るので、私はもう一度耳に力を込める。
再び高まる耳鳴りと反響。だが、私はそれを懸命に制御する。
反響はなかなか消せないが、高音は少し和らいだ。
「近接格闘術、武器戦闘術、射撃術、移動術に隠密術。これが今沙都子にやらせているもの全てのデータだ。
黒が訓練生の平均、赤がオレ、青がお前。・・・そして、黄色が沙都子だ」
しばらくの無言。
そういえば、自分の訓練ペースを気にしたことがあまりなかった。
「・・・沙都子ちゃん、大丈夫ですかね。隠密術は平均から見ても『まあまあ』に収まってますけど」
深い息を吐きながら、吾郎さんが言う。
私は心配になる。
――ひょっとして、私すごく遅れてますの?
「大丈夫、と信じたいが・・・」
真和さんの深刻そうな声。
相当ダメなんだろうか、私。
自分では割と調子が良いと思ったのだが。
「危険だな。あまりに順調すぎる。予定の20倍近いペースでカリキュラムをこなしてるぞ。
・・・来年の夏にはもうカリキュラムが終わりかねん勢いだ
「ええ。特に移動術のペースは異常です。フリーランは訓練1ヶ月でもう『C』ですからね」
パラパラと紙をめくる音。
「予定では1ヶ月半かけて基礎的な身体能力をつけてからアスレチックを走らせる予定だったんですよ。でも
元々の運動能力がかなり高くて、訓練2日目からアスレチック開始できましたから。序盤は普通に足踏みしてたから
逆に安心できたんですが・・・」
「19日目、『E』をクリアしてからの進化が目覚しいな。『D』を4日で突破して、今は『C』。それも攻略間近か」
「ロッククライミングなんか、もう現役のアサシンと同等ですからね。下手なアサシンよりはるかに速いですよ」
またバサリという音。
「相原さんの方ではどうなんですか?」
「近接格闘術・戦闘術なら、もう同性の訓練生なら手も足も出ないな。・・・だが、いかんせん筋力が足りない。
まあ、こればっかりは積み重ねだが」
「テクニックは十分、でもスタミナとパワーが足りない。・・・移動術の方でも同じような印象を受けました」
「ああ。だが、日々少しずつ確実に進歩してる。組手中にひやりとさせられることもしばしばさ。
あれでまともに筋力つけたらきっと大化けするぞ」
「射撃術担当の師範の評価も非常に高いみたいです。・・・やっぱり力がないから、重火器は
まだ長時間取り扱えないみたいですけど」
「まあ男と女とじゃ、単純なパワーの差は仕方ないが。・・・そういえば、トラップ術の教官が――」
?
話を聞いている限り、私の訓練はすこぶる(いくつか課題もあるが)順調らしい。
一体何を心配してるんだろう?
「・・・だから、ちょっとしたきっかけで一気に沈むかも。ですか?」
「ああ。杞憂だとは思うが、あれだけの逸材をスランプなんかで潰すのはもったいなさすぎるし」
ああ、成程。
調子が良すぎて心配だ、という話か。
それなら多分大丈夫だろう。
成長が早ければ早いほど、より『東京』に近づく。
ならむしろ、早すぎる成長は歓迎するべきだ。
・・・それとも、ひょっとして二人は私が慢心するのを心配しているのだろうか。
だったらそれも問題無い。
慢心しようにも、そんな余地は微塵もない。
油断とか、慢心とか。
そんな物は、あの二日間で消し飛んだ。
492 :
417:2012/03/31(土) 16:40:21.96 ID:irIFIQBo
「まあ、沙都子のことはこれからも注意深く見守っていこう」
「そうですね。『雛見沢症候群』のことも含めて」
『雛見沢症候群』。
そういえば、私はその患者なんだった。
未だにそれが何なのかは知らないけど。
ガサガサガサ。
「・・・じゃ、次の議題だ」
「『雛見沢大虐殺』ですね」
雛見沢大災害の真相を知っているアサシンには、『大災害』ではなく『大虐殺』と呼ばれていた。
「あれから1月経ちますけど、未だに詳しいことはほとんど分かってません。『東京』は、もともと情報管理厳しいですけど。
入江診療所の地下研究所を全部水没させられたのが痛すぎました。データも何もかも吹っ飛んじゃいましたから」
入江診療所の地下研究所って!?今夜は驚きの連続だ。
ガサガサガサ。また書類を見ているらしい。
「せめて入江所長だけでも生きてれば・・・さらってシメて吐かせたんだが」
「睡眠薬自殺――100%、山狗の口封じでしょうね」
とくん。
えっ・・・何?
入江先生が、・・・殺された?
これは、私にはかなりショックだった。
入江先生の家は雛見沢にないので、私は入江先生はまだ生きていると思ったのだ。
――だ、ダメですわ、落ち着いて私。
大きくなってきた耳鳴りを必死に抑えつつ、私は会話の続きを聞く。
「虐殺前に手を打たれたんじゃ、こっちにはどうしようもなかったが」
「ええ――でも」
吾郎さんが立ち上がる音。
居間のタンスを開けているらしい。
また戻る。
「かわりにと思って、雛見沢の村民のことを詳しく洗ってみたんです。・・・そしたら、すごく面白いこと
が分かりましたよ」
「何だ?」
「雛見沢分校。沙都子ちゃんが通ってた学校なんですけど」
どくん。
分校の事?
ひょっとして、圭一さん達の事ですの?
「これ、犠牲者の名簿です。た行のところを見てください」
「え?・・・・・・」
しばらくの沈黙。
そして、大きく息を呑む音。
「これは・・・!!」
「ね。・・・面白いと思いませんか?」
「こんな事・・・いや、まさか・・・!」
「僕もおかしいと思いました。・・・で、よくよくさらってみたんですよ」
ばさっという少し重い音。ファイルか何かだろうか?
「その名簿は、間違ってません。・・・法的には」
「しかし、これが正しければ・・・!」
「ええ。・・・雛見沢村の生存者は、沙都子ちゃんだけじゃありませんでした」
493 :
417:2012/03/31(土) 16:40:39.78 ID:irIFIQBo
どっくん。
え?
何、何、何!?
今、なんて・・・!
・・・キイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!!!
「ひな・・わ・ん・・・・・・、・・・・・、じ・・い・・・・・・つ・す」
肝心なところは、本当に断片的にしか聞こえなかった。
「あぐっ・・・かっ・・・!!」
耳を切り裂く轟音。
世界がぐにゃあと変形する。
横になっているのに、姿勢が安定しない。
たまらず耳と頭を抱え込む。だが、音が止む気配はない。
本当に、耳が、潰れる・・・!
視界は完全に、暗緑に染まりきる。
そんな状態が十数秒続いただろうか。
まるでテレビの電源が切れる時のように、全てが突然元に戻る。
視界は、再び暗く。
聴覚が拾うのは、とても聞き取れないほど小さなポソポソという話し声。
どうやら轟音が終わったとき、私に起こった不思議な現象も終わってしまったらしい。
「かっ・・・はぁ、ひゅう・・・」
何度も何度も深呼吸。
現在、午後8時21分。
一切体を動かしていないのに、全身を強烈な倦怠感と眠気が包んでいる。
さっきまであれほど目が冴えていたのが嘘のよう。
それでも、必死に意識を奮い立たせて考える。
――話の前半はどうでも良い。
問題は後半だ。
私以外の生存者。
話から手掛かりに出来そうなのは二つ。
かつて雛見沢分校にいた人であること。
た行の苗字を持つ人。
だとすれば、該当者は数名。
富田さんか、あるいは知恵先生か。それとも他の誰かか。
一体だ――
残念なことに、そこまでが私の忍耐の限界だった。
必死に手繰りよせる意識が、徐々に手から零れていく。
勝手に両目の瞼が閉じきり、そのまま意識を手放してしまった。
494 :
417:2012/03/31(土) 16:42:13.07 ID:irIFIQBo
少し長くなりましたが、今回はここまで。
wktkwktk
496 :
417:2012/04/07(土) 18:13:06.78 ID:GTXsztCL
続きを投下します。
497 :
417:2012/04/07(土) 18:14:38.05 ID:GTXsztCL
ページ9
1983年9月11日(昭和58年) 午後8時06分
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生(訓練75日目)
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
マンション‘ホワイトパレス’ 506号室(アサシン教団 興宮セーフハウス)
私はベッドの中で、いつも通りのことをした。
「すー・・・はー・・・すー・・・はー・・・んぐっ」
目をきつく瞑り、頭の筋肉(そんなものがあるのか謎だが)を総動員して脳をぎちぎちと押しつぶす。
・・・ィィン。
よし。
この『力』。
あの夜以降、何とかこれを引き出そうとして四苦八苦した。
アサシンの訓練はあれから順調に進んだが、こちらの方はそうもいかなかった。
経験から、心のバランスが崩れた時がチャンスらしいということは分かった。だが、そう簡単に
心のバランスが崩れるようなイベントは起こってくれない。
だから、偶然に頼るのではなく自分でこの耳鳴りを起こせるように練習した。
当然、カリキュラムには「突然五感が異常に鋭敏になる耳鳴りの起こし方」なんてものはない。
だから、完全に独学で身に付けた。
何度もいろいろなことを試して、一番良かったのがこのやり方。
見つけるのに1ヶ月強かかってしまった。
今でこそ己が手足のように使いこなしているが、当時はまだまだまともに使いこなせているとは言えなかった。
少しでも意識がぶれればすぐに耳鳴りが止み、集中しすぎると耳鳴りが大きくなりすぎる。
だが私が『東京』を知るには唯一の方法だったから、何度も何度も練習していた。
その結果、かなりお粗末なものではあるものの、一応人の会話を盗み聞くことは出来るくらい力を使える
ようになった。
「沙都子の訓練の状況は?」
「移動術は現在『B』。沙都子ちゃんも手こずってるみたいです」
「やはり『Bの壁』は簡単に超えられるものじゃないな」
「そうですね」
「近接格闘術・武器戦闘術の方は順調だ。トレーニングで筋力がついたんだろう。パワーのある
動きを見せるようになった」
「あ。同じことを射撃術の師範も言ってました。最近では重火器も少しずつ取り扱ってるそうです」
「まあまだまだだが、それでも超優秀であることには変わりない。ひょっとしたら再来年の春にはアサシンになってるかもな」
「再来年の春、というと・・・訓練開始から一年九ヶ月位ですか?」
「ああ」
「僕より少し遅いくらいじゃないですか。実技なんて、どう見ても同じ時期の僕より沙都子ちゃんの方がよっぽど優秀なんですよ?
あと半年もすればきっと」
「・・・おい、忘れてないか?あいつは確かに優秀だが、まだ覚えないといけないことは
山のようにあるんだぞ?」
「え??」
ペラペラと紙をめくる音。
「語学、着衣水泳、車両運転、航空機操縦、サバイバル、応急手当、潜入・・・全部さらっと流すのにもかなり時間かかるんだ。
特に語学なんかはな」
「ああ・・・そういえばアサシンって、英語とアラビア語必修でしたよね」
アラビア語?
英語をやる理由は分かるが、なぜアラビア語?
498 :
417:2012/04/07(土) 18:15:44.54 ID:GTXsztCL
「比較的スイスイ進んでいるとはいえ、道が長いのには変わらんな」
「そうですね・・・ま、もともと4年で計画組んでるんです。そう焦ることもないでしょう」
「そう沙都子も思ってるといいんだが・・・」
!
・・・・・・
「何か気になるんですか?」
「多分『東京』に対する復讐心からだろうが、あいつは色々なことを急ぎすぎてる気がする」
「確かに始めのうちはそうでしたけど、でも・・・」
「ペースは落ち着いたってか?違う。序盤が速すぎたから皆錯覚してるだけだ」
「え?」
「自分と比べて考えてみろ。思い当たる節があるんじゃないか?」
沈黙。
「・・・そう、ですね。確かに」
確かに、急いでいる。
あれから2ヶ月。
雛見沢大災害も雛見沢出身者の異常行動も、ほとんど報道されなくなった。
きっと、『東京』の報道管制だ。
奴らはは着々と起こったことを風化させている。
そして、いずれは誰もが忘れるのだろう。
――そんな事させない。絶対させない。
徹底的に、否応なく、刻まざるを得なくさせてやりますわ・・・!
・・・おっと。
感情的になるのは後だ。
しばらく私の話をしていたらしい。意識を戻したとき、ちょうど私の話が終わったようだ。
「まあ、沙都子のことは注意深く見守っていくことにしよう。C120の投与も順調だしな」
C・・・120?
それを、私に投与しているって・・・!?
「そうですね」
C120とは何なのか。
その話はすることなく、二人は次の話題へと入ってしまった。
・・・もっとも。
次の話題で、私の脳内からはC120という単語は吹っ飛んでしまったのだが。
「さて・・・今日の本題だな」
「コーヒー、用意できました?」
「ああ。・・・今日は長丁場になりそうだしな」
また『聖務』の話だろうか。
「雛見沢大虐殺。・・・それに、『二人目のの生存者』か」
!!!!!!!
ついに。
ついに・・・!!
あの夜――つまり、初めての耳鳴りを体験した夜以降、その話題がのぼることはなかった。
やっと、やっと真実に――
書くと長くなるから、『雛見沢大虐殺』については省く。
読み手のあなたには申し訳ないが、大虐殺のことは支部の資料でも読んでほしい。
あるいは、ウィキペディアでも使うか。
昔は政府発表をまとめたただの嘘八百の塊だったが、全てが公表された今は違う。
499 :
417:2012/04/07(土) 18:17:02.58 ID:GTXsztCL
「・・・・・・・・・」
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。
ギイイイイイイイイイイイインインインインインインインインインインインインイン!!!!!
グオングオンと激しく響く耳鳴り。
普段なら耐えられないほどの耳鳴りだが、今の私には大した問題ではない。
私の心臓を動かすのは、怒りか。驚きか。
全部聞いた。知った。
シーツが握力で裂けるかもしれない。構わないが。
私はかっと目を見開き、部屋の一点を見つめる。
普段は、目を力の限り締め付けていないと力を使えない。
だが、今は違う。
明らかに力が強くなっている。
視界が暗緑に染まっているのに、妙に『見える』。
この感じを文字にするのはなかなか難しい。
言うならば、その物が見えるのではなくそれが存在していることが分かるといった感じか。
ただ存在していることが分かるだけでなく、その輪郭まで。
そして、一番異常なのは――
私は壁を見る。厳密には、その向こうを。
壁には、二つの光。
人の形をした、ライトグリーンの輝き。
壁越しでさえ、人の存在を明確に感知しているのだ。
その身振り手振りと、聞こえている声を同期させる。
「・・・要は、これは一人のサイコ野郎(女ですけど)が起こした大量殺人ってことです」
左の光。吾郎さんだ。
吾郎さんらしからぬ乱暴な言葉遣い。
今の私なら、同じようになるだろうが。
「・・・東京による無期限の謹慎処分、つったよな?」
「ええ」
「どこで謹慎してんのかは割れてんのか?」
「もちろん。場所は――」
そこは福井県東部。直線距離ではここからそう離れていない。
私はその住所を何度も何度も反芻する。
「山狗に割と厳しく警備されてます」
「・・・ま、狂人とはいえ超有能だ。他勢力に奪われたらえらいことになるしな」
「『東京』の過激派は、鷹野を当分生かしておく気です。他に使い道を探してます」
500 :
417:2012/04/07(土) 18:19:37.15 ID:GTXsztCL
住所、警備、現在の状況。
これだけ情報があれば十分だ。
私は頭の中で計画を練る。
武器、お金、装備。
必要なものはいろいろある。
その調達について考えを巡らせていると、吾郎さんの声が聞こえた。
「・・・あの」
「ん?」
「思ったんですけど、鷹野ってこれからどうなるんです?」
「アサシンに所在が割れた以上、当然聖務執行の対象になるだろうな。なんせ多くの命を奪ったんだから。
上層部への報告は?」
「まだです。・・・それでその聖務って、誰が執行することになるんですか?」
「知るか。アサシンの誰かだろ」
しばらく黙り込み、意を決して吾郎さんが言う。
「・・・あの「『僕が執行します』って言う気なら、悪いがノーだ」」
ピシャッと真和さんが言う。
吾郎さんは語気を強めて言い返す。
「なぜですか!?真和さんは第1級アサシンで、しかも『オスカー』の指揮官!アサシンの派遣決定権なら持っているはずです!」
「ああ。・・・だが、お前には他にやるべきことがある。他の誰にもできないことだ」
真和さんが冷静に――言い換れば冷徹に言う。
「お前を『オスカー』――アサシン教団オスカー特別選抜チームへの入隊を指揮官権限で特例許可した時、オレは何て言った?」
「・・・!」
明らかに言葉に詰まる気配。
真和さんは追撃の手を緩めない。
「言ってみろ」
「・・・『硝煙の香り漂う荒野では、お前は精々「まあまあ」止まりだ。谷内吾郎は、灰色の大都会でこそ煌びやかに光る』」
「お前のフィールドは最前線にはない。『雛見沢防衛戦』にお前を連れてったのは、絶望的に人数が足りなかったからだ。
お前だってわかってただろ」
「・・・はい」
「アサシン教団オスカー特別選抜チーム専属工作員、谷内吾郎。お前は、お前のすべきことをしろ」
「はい・・・すみません」
「いや、いいんだ」
工作員。つまりスパイ。
おかしいと思ったのだ。
一介のアサシンに過ぎない吾郎さんがなぜこんなに細々したことを知っているのか、ようやく疑問が解決した。
二人が少し言い争っている間に、力も少し落ち着いてきた。
割と普通に聞こえる。
「『もう一人の生存者』は?」
!
こちらも、すごく知りたい。
誰なのか、どこにいるのか。
少しでも良いから、絶対に会いたい。
会って、痛みを共有したい。
傷の舐め合いと言いたければ言ってくれ。
見苦しいかもしれないが、舐めないよりはよほどましなのだ。
――しかし。
501 :
417:2012/04/07(土) 18:21:50.29 ID:GTXsztCL
・・・ヒュウウウウウウウ。
「!?・・・こんな時に・・・!!」
風が通り抜けていくような音。
この音は、『力』の終わりの合図。
私の神経が擦り切れる前に、脳が強制的に負荷を中断させたのだ。
いくら力をこめても、脳を締め付けてくれない。
だんだん全てが収まっていく。消えてしまう。
焦れば焦るほど遠のいていく。
「ああ・・・」
全てが元通り。
聴覚は静寂だけを、視覚は闇だけを捉える。
生存者は分からずじまい。
優秀で記憶力の良い二人のことだ。一度話題にしてしまえば、当分同じ話はしまい。
正直かなり落胆したが、それよりも満足のほうが大きい。
・・・福井、でしたわね。興宮から鹿骨まで電車で行って、乗り換えれば普通に行けますわ。あとは装備。
お金、バッグ、武器、弾薬、減音器、防具、水。・・・ジャージなんて着ていったら絶対目立ちますわね。
ダメ元で詩音さんに・・・
翌朝、私は二人におそるおそる頼み込んでみた。
「あの、お二人とも少しお願いがあるのですけれど・・・」
「ん?」「なんだい?」
「その・・・なんだか今日は調子が良くないので、訓練をお休みさせていただきたいんですの」
「え?・・・熱っぽいとかかい?」
「違うんですけれど、なんだか」
「うーん・・・どうします?相原さん」
「構わんぞ。丁度そろそろ休ませようと思ってたしな。気分転換でもしてこい」
「あ・・・ありがとうございますわ、真和さん」
ここが一番の関門だと思っていただけに、少々拍子抜けした。
「じゃ、行ってくるぞ。ここの金は使って構わんが、すっからかんになってたらさすがに怒るからな」
「分かってますわよ。行ってらっしゃいませ」
二人はいつもどおりに家を出て行った。
五分待って、私は詩音さんの部屋に。
インターホンを鳴らすと、詩音さんの声がした。
〈はい?〉
「詩音さん、沙都子ですわ」
〈沙都子!?・・・ずいぶん久しぶりですね。今開けますから〉
ガチャ。
「沙都子!元気そうで――は、ありませんね。大丈夫?」
「大丈夫ですわ、詩音さん。あの・・・」
「何です?」
「折り入って、お願いしたいことがあるのですけれど」
502 :
417:2012/04/07(土) 18:22:51.85 ID:GTXsztCL
「雛見沢にこっそり入れる抜け道、ですか」
「ええ」
テーブルには紅茶が二杯。角砂糖の壺、ミルクポット。
スプーンをくわえてくるくるさせながら、詩音さんは私の問いを反芻する。
「・・・ねえ、沙都子?」
「何ですの?」
「あなた、それ知ってどうしようって言うんです?」
「私、村に私物全部置いてきてしまったんですのよ。レディーたるもの、さすがにいつまでもジャージ一着
ではまずいでございましょう?」
うわ、自分でも呆れるくらいスラスラ嘘が出てくる。半分は本当だからだろうか――
「半分くらい、嘘じゃありません?」
そしてスラスラ出た嘘は、スラスラあっさりバレた。
「そんなことは「ありますよね?」」
ジーっと見つめられる。
思わずうつむいた私を、詩音さんはのぞき込んできた。
「本と「目を見て」」
人の目を自然に見ながら嘘を言うのは、非常に困難。
嘘つきは経験がものを言うのだ。
「・・・」
「はぁ・・・ねえ、沙都子。もう少し私を信じてくれませんか?わざわざ嘘つかなくても、
言いたくないなら追求しませんから」
「・・・ごめんなさいですわ」
「ま、良いです。ありますよ」
これもまた、思いの外あっさりと。
――少し神経質になっているのかも知れないな。私。
「少し前、知り合いに調べてもらったんです。自衛隊の警備もザル。普通に入れますよ。今から行きますか?」
「え・・・今からですの!?」
「どうします?」
準備三原則――早めに、速く、抜かりなく。
「・・・お願いしますわ」
私が使ったのは、園崎家の隠し井戸。
なんでも、詩音さんは幼少期にここを使ってよく遊んでいたらしい。
洞窟の前に立つ、私と詩音さん。
「本当に行くんですか?沙都子」
「ええ」
「あなたの話じゃ、ガスは一切出てないそうですけど・・・今からでも、防毒マスク位は用意できますよ?」
「結構ですわ。荷物になりますし」
「では、3時間後に」
私は洞窟の中を見る。
下水道よりはいくらかましとはいえ、やっぱり怖い。
私の微かな怯えを見てとったか、詩音さんが心配そうに何度目になるか分からないセリフを言う。
「・・・やっぱり私も」
「詩音さん、お願いですから一緒には来ないでくださいませ。もし何かあったら、二人まとめてやられる
ことになりますもの」
「でも・・・」
「もし3時間で戻らなかったら、その時は町外れの廃倉庫街に行ってくださいまし。
『佐原』という人が助けてくれるはずですわ」
詩音さんはまだ何か言いたそうな顔をしていたが、やがて諦めてくれた。
「そうですか・・・大丈夫だとは思いますけど、気をつけて」
「ありがとうございますですわ。詩音さん」
私はニコッと詩音さんに笑って、暗闇の中に足を踏み入れる。
詩音さんの呟きは、風に乗って耳に届いてしまった。
「沙都子、本当に気を付けて。・・・あなたも死んでしまったら、私・・・私」
503 :
417:2012/04/07(土) 18:23:34.75 ID:GTXsztCL
今回はここまで。
504 :
417:2012/04/14(土) 09:55:03.73 ID:T7GF7fxO
続きを投下します。
505 :
417:2012/04/14(土) 09:55:43.74 ID:T7GF7fxO
ページ10
1983年9月28日(昭和58年) 午後1時05分
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生(訓練92日目)
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
興宮駅 2番ホーム 列車内
〈2番ホームから、鹿骨駅行きが、発車します。ご注意ください〉
プーッという警告音と共に、列車のドアが閉まる。
ごとんと軽い衝撃が走り、列車はゆっくりと動き出した。
ゆっくりと流れ始める興宮の街並み。
私は自分の身なりを見る。
かつて私が秋にお出かけする時に着ていた長袖の服。下は伸縮性の高いズボンだ。
衣料店の特売で買ったものだが、動きやすく激しい運動にも向いている。
山奥ということも考えて、念の為カーディガンも持ってきた。
足元にはリュック。
車内には私以外誰もいない。
私はほんの少しファスナーを開け、中身を確認する。
USP.45一丁。ナイフ一本。予備の弾倉。サプレッサー。
ガンホルダーとナイフホルダー。暗視スコープ。改造済みのかんしゃく玉。
服は雛見沢に行った時に、武器・装備に関しては、アサシンの訓練場から。お金はセーフハウスから。
アサシンの訓練場にある武器はほとんどが本物。
アサシンの装備は充実している――つまり、多すぎて一つや二つ無くなっても誰も気づかない。
取るのは楽だ。難しかったのは持ち出し。
・・・まあ、どうしたかはここは書かずにおく。
移動中の車内、私は頭の中でかつての雛見沢での毎日を思い出していた。
辛いときもあったけど、それでも楽しかった。毎日が輝いていた。
特に、最後の一ヶ月は。
平穏で刺激的な日常。
貴重なものは、失うまでその貴重さに気づかないものだ。
心の中で、今はもういない親友に語りかける。
「・・・梨花。どうか見ていてくださいましね。私、絶対にあなたの仇をとってみせますから」
1時間半後、鹿骨駅に到着。
言うまでもなく興宮駅よりずっと広い。だから少し迷った。
40分後、目当てのホームを発見。発車寸前だった。
駆け込み乗車。マナー違反だが、大目に見てもらおう。
急行で可能な限り近づき、そこから鈍行に乗り換えて行く。
乗り換え駅は興宮駅に少し毛が生えた程度の大きさ。それほど迷わなかった。
506 :
417:2012/04/14(土) 09:56:57.62 ID:T7GF7fxO
午後5時ジャスト。
ついた駅は、どこか雛見沢に似た村にあった。
無人のホームを通り抜けると、そこは閑散とした駅前広場。
シャッターの降りたいくつかの商店、おばあさんが居眠りしているタバコ屋。
やたらと風が強い。周囲の山々の稜線が揺れている。
体を包むサワサワとした音。西に傾きつつある太陽。
駅前のさびた村内地図を見ながら、頭の住所と照らし合わせる。
「・・・これは・・・」
そこは、村のかなり外れ。
錆び付いた家のシルエットの上には、消えかけた『高野』の文字。
鷹野と高野。偶然だろうか?
――ひょっとしたら、『東京』が幽閉用に確保した家かもしれない。
ここは交通アクセスもかなり悪い。そう簡単には逃走できないだろう。
雰囲気以上に、地理的な意味でもこの村は雛見沢に似ていた。
どこからでも徒歩3分以内で山に入れるような地形。
だから、私は山から近づくことにした。
これだけ木々が生い茂っていればそう簡単に姿を見つけるのは無理だし、強い風が揺らす木々や葉の音が
私の足音を消してくれるだろう。
・・・暗視スコープを使うほどではないが、やはり森の中は薄暗い。
山を40分も歩くと、方角が合っているかも少し心配になってきた。
一度戻るか?そう思った時。
木々の下に、三角屋根と思しきシルエットを見つけた。
こちらの方にはこの家以外人家はない。
つまり、ここだ。
目的地が見つからないという不安が消えたからか、急に緊張が体を支配する。
深く息をして、震え始める体を沈める。
リュックから銃を取り出し、サプレッサーを装着。
ガンホルダー(弾倉も携行できるタイプ)を腰に巻きつけ、銃と弾倉を入れる。
少しスカートをたくし上げ、ナイフホルダーは太ももへ。ナイフを入れて、再び着衣を整える。
暗視スコープを頭に巻き付け、動作チェック。
ピキュイーンという電子音。視界が機械的な黄緑色に眩しくなる。
即座に切る。始める前から目が潰されてはかなわない。
・・・さて、どう行こうか。
「・・・あの『力』、今使えませんかしら・・・?」
私は一人小さくつぶやく。
やってみるか。
「すー・・・はー・・・すー・・・はー・・・んぐっ!」
いつもよりずっと強く力を込める。
・・・ィィィィィン。
間違いなく、耳鳴りは大きい。
「・・・やってらんねえよな」
!!
山狗の会話が聞こえてきた。
507 :
417:2012/04/14(土) 09:59:48.06 ID:T7GF7fxO
「何だって上はここをこんなに厳重に守るんだ?山狗5人に番犬3人だぞ?」
「閉じ込めてる奴が閉じ込めてる奴だしなあ」
「何だ、お前ここにいる奴知ってるのか?」
「ああ・・・噂でな」
「どんな奴なんだよ?」
「・・・『滅菌作戦』、ってあっただろ?」
「ああ・・・あれか。おれ今でも夢に見るんだよな」
「悪夢くらいならまだましだろ?なんせあの後、山狗の大半は精神病んじまったんだから。・・・大体は
カウンセリングで済んだけど、今も入院してる奴もいるって話だぜ。・・・で話戻すけど、あの時現場で指揮執ってた
鷹野三佐って覚えてるか?」
「ああ。今はどっかの精神病院に入院してるっていう・・・」
「それは表向き」
一瞬もったいぶってから、
「実際は・・・ここ」
「はあ!?てことは何だ?今おれ達は昔の上司を軟禁してるってことかよ!?」
「声がでけえよ!」
「あ・・・わりい。・・・でも、何で」
「知らねえよ。あの後、なんかやらかしたんじゃねえの?それにこれだって『噂』だしな」
山狗にとっては与太話だが、私にとっては値千金の情報だ。
決まりだ。鷹野は、ほぼ確実にここにいる。
木の影で考える。
――あとは、敵の位置さえわかれば・・・!
私は少し目を開ける。
・・・ヒュウウウウウウウウウ。
「!くっ・・・」
慌てて力を込め直す。だがなしのつぶてだ。
完全に『力』が終わってしまった。
もう会話も聞こえない。
「・・・もうっ。あの時はあんなに・・・!」
歯がゆさと、焦りと、怒りと、憎悪。
負の感情がブレンドされ、頭の中に溢れ出し――
キュオッ。
聞いたことのない音がした。
次の瞬間、視界が暗緑に薄く染まった。
あまりに急なことに何がなんだか分からず一瞬固まるが、すぐに気を取り直す。
――偶然のラッキーは最大限に活用すべし。
それに、使えているとは言ってもあの夜よりは大分弱い。
存在も感じるには感じるが、輪郭までは分からない。
でも、蛍の光のように弱いが、人の形をした光はちゃんと見える。
物越しには見えず、一部は部分日食のように木々と建物に隠されてしまっているが。
「・・・手前の窓の前に二つ。建物の影に一つ・・・」
先程の話では警備は8人。これで3人だ。
もう少しよく調べようと家に一歩踏み出した時、突如後ろから鋭く声をかけられた。
「おい!そこで何して・・・」
動揺するより先に体が動いた。
一瞬軽く左足を曲げて回れ左。
敵影確認。山狗と思しき男一名。短機関銃(サブマシンガン)所持。銃口は私に。
前傾姿勢をとって山狗から45度方向に(山狗を90度と見て)ダッシュ。
多分ただの地元の子供だと思ったのだろう。
フォームこそ異端だが、動きは訓練を受けた者。
油断していたところにそんな動きをされ、山狗の行動が驚きに一瞬凍る。
そこを突き、私は一気に方向転換。そのまま駆け寄り、銃口を左手で虚空に押しやる。
そして側頭部に手をやり、強く引きつけると同時に思い切りこめかみに右膝蹴り。
「ぐあっ!」
クリーンヒット。一撃で男は沈んだ。
「はぁっ、ふうっ・・・」
この息切れは、突然声をかけられた驚きと敵を倒した興奮から。体は何ともない。
今日が強風で本当に助かった。
我ながらワンパターンな倒し方だとは思うが、そんなのはどうだって良い。
教えられたことを忠実になぞるのが今の私の限界だ。
508 :
417:2012/04/14(土) 10:01:38.39 ID:T7GF7fxO
仰向けに横たわる男を見ながら、真和さんの言葉を思い出す。
『状況が許すなら敵は殺せ。半端に情けかけると後が面倒だ』
『・・・ただ、最初の一人は大変だぞ』
最初の一人は、言うまでもなく決めていた。
「・・・私の最初の一人はあなたじゃない」
私は呟き、家へと接近を開始した。
先程の『力』は、さっきの戦闘の時に止まってしまった。
一人はやったが、いずれにせよ警備が固すぎる。
まずは警備を分散させなければ。
リュックからかんしゃく玉を取り出し、足元に叩きつける。
改造して音が20倍は大きくなっている。
迫撃砲でも撃たれたかのような、とは行かないまでも凄まじい轟音だ。風の中でも聞こえるだろう。
「!?」
声は聞こえない。だが相手の様子はわかる。
私は体を屈めて、その場から移動。
これで、手前二人――うまくすれば奥にいる者たちもここに来るかもしれない。
そうすれば、警備の手も緩むだろう。
思い通り、男が四人ほどこちらに歩いてきた。
私は手早く、静かに家へと近づく。
下り坂も手伝い、15秒とかからず下まで降りられた。
目の前には裏口の扉。
周囲を確認。山狗や先程の『番犬』と呼ばれた者の姿はない。
――そういえば、『番犬』って何なんだろう。帰ったら吾郎さんに聞いてみよう。
午後6時18分。
入ったそこには、暗い西洋風の廊下があった。
どくん、どくん。
心臓の音が家中に響き、私の存在を鷹野に教えているのではなかろうか。
そう思うほど、心臓の音がうるさい。
手にわずかな汗。これではナイフが滑ってしまう。
気分を落ち着かせる意味も含めて、ゆっくりと深呼吸する。
・・・ヒュウウウウウウ。ィィィン。
――耳鳴りが弱い・・・あの風みたいな音も聞こえてきた・・・
風の音は脳からの警告。そろそろヤバイぞという合図。
この『力』は、神経に多大な負担をかける。
だから使いどきを考えずにパカパカ使っていると、勝手に脳の安全装置が強制遮断してしまう。
おまけに使っている間は、集中するために目を瞑っている。つまり視界はゼロだ。
だから、探す時はまず目で。次に耳で。
銃を構えながら、一部屋一部屋くまなく探す。
台所、トイレ、クローゼットはしっかり探した。だが居ない。
次は居間だ。
私はゆっくり居間に入る。
ここに限らず、全ての部屋の窓にはカーテンがかけられている。
もともと日が傾いていたこともあって、部屋にはほとんど光が入らない。
白い絨毯。木製のテーブル。一人がけのソファが四つ。
そして、壁際にずらりと並んだ本棚。
棚板が抜けるのではないかと思うほど本がギッチリと詰められている。
洋書、古書、辞典などなど。
人間、文字があれば読んでしまうものだ。
英語は全く読めないが、どうやらここに揃っているのは医学書――それも、感染症に関するものばかり。
――ここは、あの女の実家か何かなのですかしら?確か独身だったはずだけど・・・
本棚周辺は全てチェック完了。
ソファの裏にも、テーブルの下にもいない。
確実な焦りを感じる。
この部屋ではないならば、一体どこに?
まさか、ここにはいないとか?
家の見取り図を調べておくべきだったと少し後悔。だが今更遅い。
こうなったら、一つ一つ確実に潰すしかないか――と、思っていた矢先。
509 :
417:2012/04/14(土) 10:03:56.85 ID:T7GF7fxO
・・・コトン。
何かが落ちる音。
丁度、私の3m手前当たり。
ばっ、と振り向き、銃を向ける。
・・・?
しかし、そこには空白のみ。
おかしい。確かに、物音が――
その時、私はようやく思い出した。
真和さんに教えられたこと。
訓練ではなく、日々の雑談で。
『物音がしたら、相手の頭を想像して対処しろ。相手がバカならただのヘマだが、それ以上なら――』
そして、やっと気づいた。
首筋をチリチリと焼く感触。
「しまっ――」
慌てて振り向くが、もう遅い。
右首筋に小さな痛み。
冷たいものが、血管の中を這ってくる感触。
「よく気づいたわねぇ、沙都子ちゃん。・・・少しだけ、遅かったようだけど・・・」
間近で見る鷹野の顔は。
狂人そのものだったけど、なぜかとても澄んだ瞳をしていた。
「く・・・う・・・」
震える手から、銃を取り落としてしまう。
ブルブルとナイフに手を伸ばすが、それは優しい感触に阻まれた。
するりと鷹野の手が私の太ももを這い、ナイフを奪われる。
「あらあら、こんなもの持って・・・い・け・な・い・子♥」
ナイフの身が、私の頬を撫でる。
――だめだ、足が、もう・・・
膝をつく。もう、頭を上げることもできない。
上目遣いに鷹野を睨む。何も意味がないことを知りながら。
「さて・・・沙都子ちゃん。こんな所で寝てたら風邪を引いてしまうわ。≪ベッドルーム≫へご案内するわね?」
そして、鷹野の肩に担がれる感触を最後に、私は意識を失った。
510 :
417:2012/04/14(土) 10:04:46.20 ID:T7GF7fxO
今回はここまで。
wkwk
513 :
417:2012/04/20(金) 21:34:44.28 ID:zmLf4F3U
続きを投下します。
前編・後編で分けると何かしっくり来ないので、
今回はいつもより文字がかなり多いです。
時間のあるときにどうぞ。
514 :
417:2012/04/20(金) 21:35:20.89 ID:zmLf4F3U
ページ11
1983年9月28日(昭和58年) 午後7時
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生(訓練92日目)
日本国 福井県 笹浜郡和瀬野村
『東京』直轄 第八幽閉用住居地下 (旧高野一二三宅)
強烈な光に目蓋を灼かれ、私は目覚めた。
目に入ってきたのは手術用のライト。
「ん・・・う・・・!?」
怠さに包まれる体をどうにか起こそうと、腹筋に力をいれた時。
私は両手足、それに首と頭がベルトで手術台に固定されていることに気づいた。
「な・・・!!」
必死にもがくが、かすかにベルトがきしむ音が聞こえるだけ。
「あ〜ら、お目覚めかしらぁ?」
手術台のの横から鷹野の甘ったるい声。
「・・・鷹野!!」
「あらあら、しばらく会わない間に、随分と言葉遣いが荒くなってしまったんじゃない?目上の人には
敬称を付けるといいわよ?人間関係を良好に保つためにもねぇ・・・♥」
「誰が、誰がお前にっ・・・!!」
私は鷹野を必死に睨みつける。
もちろんそんなことで鷹野が怯むはずも無い。私の顔をしばらく見つめてにたあと笑うと、
手術台の頭側に移動して何かをガチャガチャといじり始めた。
鷹野が何をしているかは分からないが、ロクでもないことには違いない。
震える心を奮い立たせるために、私は大声を上げる。
「私を、どうするつもりなんですの!?」
鷹野の顔が私の視界の上から生えてきた。
しばらく私の表情を――必死にキャンキャンと吠え立て、心中の怯えを悟られまいとしている子犬の
表情を堪能した後、言った。
「殺してあげるわ」
小さく息を呑んだ。
薄々予想はしていたが、それでも心は怯え出す。
小さくカタカタと震え出す四肢。
「でもね、あなたの死は決して無駄にはならないのよ?私はあなたの脳を開けて、隅から隅まで丹念に
調べ上げるの。そうすることで得られたデータは、この世に生まれる神の糧となる。
あなたは史上最も偉大な殉教者として、歴史にその名を刻むの。素敵なことだと思わない・・・?」
しばし、唖然とする。
だが、頭がその言葉を一度噛むと、恐怖に吹き消されかけた怒りの感情が再び燃え上がるのを感じた。
「何が・・・」
「ん〜?」
「何が、神ですのよ!この人殺しっ!よくも梨花を、・・・梨花を!!!」
私は激情のままに言葉を紡ぐ。
「神様が、何の罪もない子供の命を奪うはずがありませんわ!!何の罪もない大勢の人を殺しておいて、
何をか「黙りなさい」」
先程までの妖艶な声とは一転、人間味を一切感じさせない冷たく乾ききった声を放つ。
「お前のような馬鹿なメスガキに、一体何が分かるというの」
そう言うと、鷹野はまた妖しい表情に戻る。
「さて・・・前置きはこれくらいにして、さっさと始めてしまいましょうか。時間もないし・・・」
ギラリ。
そんな効果音がしたような気がした。
鷹野の手にはメス。
まるで欲しくて欲しくてたまらなかったおもちゃをやっと手に入れた子供のように、鷹野の行動は素早かった。
515 :
417:2012/04/20(金) 21:36:00.70 ID:zmLf4F3U
ズブ、シュッ!
頭の皮が深く切り裂かれる。
「あがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!」
全身がびくんと跳ね、私は喉が潰れるほどの大声で叫んだ。
痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいいいいいいっ!!!!!
「可能な限り純粋なデータが欲しいの。だから無麻酔で解剖するけど・・・我慢してね?すぐに楽になると思うわ。
頭を切り開かれたことはないから、分からないけど」
「いぎっ、あぐっ、きゃああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
びくん、びくんと痙攣しているつもりだが、がっちりと私を締め付けるベルトが私の体を強制的に押さえつける。
順調に進んでいる・・・のかは分からないが、手間取ってはいないはずだ。
「うん・・・順調順調♪これなら前置きにはそう時間もかからなそうね。その分じっくり調べられるわあ・・・」
頭から血が次々と流れ出ていく。・・・だが、致死量に達するにはまだ少しかかるだろう。
しかし、死なずとも、意識は遠のいてくる。
遠のく意識が、激烈な痛みに引き戻されるという不毛な反復運動をごく短い周期で何度も何度も繰り返す。
・・・ああ。
意識が次から次へとフラッシュバックしていく。
澄んだ空気。のどかな情景。
シンとした教室。鉛筆の音。色とりどりのお弁当。
何枚ものカード。嘆声。罰ゲーム。
そして、みんなの笑顔。
・・・助けて。
誰か、たす、けて。・・・詩音さん・・・にーにー・・・梨花・・・レナさん・・・魅音さん・・・
・・・圭一さん・・・
もはや私は、差し伸べられるはずもない救いの手をただ求めることしか出来なくなっていた。
『東京』を潰すことも、真和さんとの約束も果たせず、ここで頭を割かれて死ぬ。
それが、北条沙都子の末路。
・・・・・・・・・・・・・
嫌だ。
ぜったい、いやだ。
死にたくない。死にたくない。
しにたくない。しにたくない。しにたくない。しにたくない。しにたくない。しにたくない。
しにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくない
しにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくな
516 :
417:2012/04/20(金) 21:36:37.64 ID:zmLf4F3U
・・・・・
?
あれ?
なんですかしら、これ。
「「くすくす・・・こんなに虚ろな目しちゃって・・・そろそろ楽になるわよ♥」
視界が、まるでスライドショーのように切り替わる。
白、暗緑、白、暗緑、白、暗緑・・・
だんだん切り替わるスピードが増していく。
それと共に、徐々に頭の激痛が消えていく。
かわりに、無性に喉が痒くなってくる。
しかし、そんなかゆみなど全く問題にならないほどの力が、どこからかふつふつと湧いてきた。
「!・・・脈拍130、血圧186-126、呼吸数27。極限状態に置かれていることを加味しても、あまりに高すぎる・・・
急いだほうが良さそうね」
そして、沸き上がる感情。即ち、歓喜。
なぜかは分からないが、私は確信していた。
――いまのわたくしは、きっとすごくつよい。もうだれにもとめられませんわ。
死の恐怖と激痛に覆い隠されていた怒りと憎しみが、再びよみがえってくる。
――そう、こんなべるとにも、このおんなにも。
じぶんでも、いちじはどうなることかとおもいましたわ。
でも、もうだいじょうぶでしてよ。りか、みんな。
だから――
わたくしのふくしゅうを、みていてくださいましね。
みち、ベキャ!!
く、と力を込めただけで、両手首を拘束していたベルトは金具ごと引き裂かれた。
「!?な・・・!!!!」
両足に力を込める。
びっ、バゴッ!!
鷹野が絶句している間に、両足首もベルトから解き放たれる。
自由になった両手を首のベルトへ。
ブッ!!
4つのボルトが同時に弾け飛ぶ。
黙って見ている場合ではないと気づいたのか、鷹野は私に注射器(おそらく鎮痛剤だろうが)を投与しようとする。
「このっ・・・大人しくしな、さ・・・!?」
降り下ろされる注射器。
今の私にとっては、絶好の攻撃チャンス。
私は鷹野の注射器を持った左手首をつかみ、そのまま握力で固定。
そのまま空いていた右手で、左手を180度ひねった。
どうなるかですって?自分の手で試してみなさいまし。
ベリリリリリ、グボキキキキキッ!!
「っ――・・・ァアアアアアアアアア!!!」
いくつもの軽く湿った音と共に、鷹野の手首の皮が裂け、いくつもの骨が折れ、はずれた。
あまりに唐突な激痛に、鷹野は飛び退きちぎれかけた手首を抑えて喚く。
私は両手で、頭を固定していた器具を持つ。
ググ・・・べギリッ!!
「そん、なっ・・・人の力で、どうにかなるはずっ・・・!」
これで完全に私は自由。身を起こし、手術台から降りる。
切り開かれた頭がスースーするが、この際気にすることはあるまい。
「あなた・・・一体ど」
うるさいな。
517 :
417:2012/04/20(金) 21:37:08.55 ID:zmLf4F3U
問答無用で、左脇腹を力いっぱい蹴りつけた。
ガブゴッ!
多分、今ので臓器がいくつかやられただろう。
声を上げる間も無く、鷹野の体は床とほとんど平行に吹き飛び、周りに置かれた手術器具やら機械やらごと壁に叩きつけられた。
「はっ・・・がふっ・・・えっ、ゴボァァッ!」
咳き込み、えずき、血と胃の中のモノを床に吐き散らす。
一撃で仕留めてしまうつもりは毛頭ないから、ある程度手加減はしたつもりだ。
だが、これでも強すぎたかもしれない。
気を付けないと。そう簡単に死なれては困る。
もっと、もっと苦しんでもらないと。
自分の吐いたものにまみれながらのたうつ鷹野をしばらく眺める。
視界が何度もチカチカする。
暗緑には染まらないから、『力』のせいではない。
多分、体中を満たすアドレナリンのせいで、普通に神経が高ぶっているのだろう。
果たしてアドレナリンが流れ出続ける血液をどれだけカバーしてくれるのかは分からないが、この分ならしばらく持ちそうだ。
激しく動くたび、脳がこぼれないか心配ではあるけど。
「がふっ・・・さ、とこ、ちゃん・・・あな・・・」
「痛いですかしら?それはそうですわ。だって痛いようにしましたもの。・・・そう、
お前が梨花に、皆にしたように・・・ねっ!!」
むんずと首根っこを掴み、鷹野を吐瀉物の海から引きずり出す。
そして、そのまま顔面から壁に叩きつけた。
「ぶがっ・・・げぶぐっ・・・」
「あらあら、もう叫ぶ元気もないんですの?内臓をいくつかズタズタにされているのですから、
無理もないと言えば無理もありませんけどねぇ。ヲ〜ホッホッホッホッホッホッ!」
ああ。
いま、すっごく楽しい。というか、うれしい・・・
圧倒的な力。破壊され続ける室内。何より、仇の血の海。
この感覚、どこかで・・・
・・・思い出した。これ、部活で勝った時の感情に似ている。
長い忍耐の末、ようやく自分の策が実った時の感覚。
今回はほとんどノープランで突っ込んだも同然だったけど、それでも嬉しいものだ。
鷹野の頭頂部を掴み、顔をのぞき込む。
「ずいぶんと酷いお顔ですのね。お鼻が潰れていらっしゃいますわよ?」
「・・・」
「・・・素直じゃない野良犬さんですのね」
潰れた鼻をつまみあげる。
「・・・!!」
鷹野は痛みに顔を歪ませながらこちらをキッと睨む。
まあ、骨折したところを弄られれば痛いだろうが。
ごにょっと、何か言った。
「・・・ばれ」
「え?」
「くたばれ、このメス豚!!」
そう叫ぶと同時に、鷹野がぺっと唾を吐きかけてきた。
「・・・・・・」
呆然と唾を吐きかけられた辺りを見やる。
メス豚と言われたことにではなく、唾を吐きかけられたことに。
私の意一つで軽く命など消し飛ぶ野良犬の分際で、私を汚したことに。
私は、切れた。
「・・・何してんでございますのよてめええっ!!!!!!!!」
518 :
417:2012/04/20(金) 21:37:52.64 ID:zmLf4F3U
その後の流れは、まあ予想通りだ。
激しく、しかしたっぷりと時間をかけて殴り、叩き、蹴り、潰し、にじり、折り、砕いた。
それでも、命と意識は絶対飛ばさないようにしながら。
かなり難しい匙加減だったが、どうにか上手くいった。
可能な限り長く命を保っておいたのは、苦しめるためというのもある。
でも、本当の目的はその殺し方。
ただズタボロにして殺すだけでは面白くない。
どうせだから、梨花と同じように。
生きたまま腹をかっさばいてやろうと決めていた。
ゆっくり、じっくり。
――ああ、きっとくるしかったでしょう?りか。
いたかったでしょう?こわかったでしょう?
だれかに、たすけてもらいたかったでしょう?
ごめんなさい。きづいてあげられなくて、ほんとうにごめんなさい。
だから。
せめて、あなたをころしたやつにも、あなたとおなじくるしみをあじあわせてあげますわ――
私は無残に横たわる鷹野を抱え上げ、手術台に横たえる。
固定する必要はあるまい。腕も足も、もうボッキボキのメッタメタだし。
私は鷹野に背を向け、手術用具台を漁る。
突然、鋭く息を呑む声が聞こえた。
「!!!けふ、沙都子、ちゃん、あなた・・・」
「・・・あら、まともにお口がまだ聞けたんですの?悲鳴を上げる余裕以外ははキッチリ潰したと思いましたのに」
「・・たま・・・」
何だ、うわごとか?
「あたま・・・」
頭?
頭、という単語で今即座に連想するものと言えば、私の後頭部。
剥き出しの頭蓋骨。一部は削られ、脳が露出している場所さえある。
確かに一般的な光景ではないだろうが――と、そこまで考えたところでハッと気付く。
――あたま、すーすーしてない。
後頭部を手で探る。
そこからは、髪の滑らかさと頭蓋骨の固さ、そしてぬめぬめした血の感触が伝わってきた。
この三ヶ月、今までに無かったことが次々と降りかかってきた。
未知の組織。訓練。耳鳴り。暗緑のゆらめき。研ぎ澄まされる五感。
――なんだか、なれちゃいましたわね。わたくし。
私はこの現状に、もちろん少なからず驚いている。
だが、何故か奇妙な冷静さで、今の状況を分析していた。
――ようは、なんだかしらないうちにあたまがなおってしまったということですわね。
失血死の可能性が無くなったのだから、むしろ喜ぶべきだろう。
私は目当てのモノ――鋭利なメスを手に取り、手術台の鷹野の上に跨る。
鷹野は目を見開く。
これから自分を待つ運命を悟ったのだろう。聡いのは時に損なものだ。
「――!!!!!」
手術用のライトにキラキラと反射するメスをうっとりと見つめ。
「や――や、めっ」
両手でしっかりと、鷹野の腹に突き立てた。
519 :
417:2012/04/20(金) 21:38:19.32 ID:zmLf4F3U
「・・・うぐぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」
「あらあら、まだそんな元気がありましたのねぇ・・・」
正直少しやりすぎたかと思ったが、そんな事は無かった。
みんな人間はあっさり死ぬものと思っているが、それは違う。
急所が多過ぎるだけで、耐久力はなかなかのものなのだ。
傷口を押し広げるように、鷹野の肌に突き立ったメスをくるくると回す。
鷹野の苦悶の顔を楽しみつつ、私は鷹野の腹を縦に割く。
「キャアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
ドロドロと流れ出る血液。
顔にも伝わってくる体温の熱。
そして、錆びた鉄と生肉の香り――
もう、止まらなかった。
「・・・ヲホッ」
ヲホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ
ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ
ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ
ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ
ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ
ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ
ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ
いくつもいくつも刻まれた傷。まだ腹は開かれていない。
が、もう待ちきれなかった。
メスさえ煩わしい。
私はメスを放り投げ、直接手で裂くことにした。
傷口に両手を差し込み、左右に大きく開く。
いくつもの膜や血管や神経を引き裂きつつ、鷹野の臓器が外気に晒された。
「ひがああああああああああああああああああああああっ、げ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
口裂け女のように、唇の両端がが持ち上がりきっているのが分かる。
いいですわよいいですわよ。もっと泣いて、喚いて、苦しんで!!!
梨花がお前に助けを乞うたように、お前も私に助けを乞いなさいまし!
そして、私は助けませんわっ!お前が梨花を助けなかったようにねっ!
ぐちゃぐちゃと無造作に内臓を掻き回し、引きずり出し、ちぎり、もぐ。
そのたびに、心地いい悲鳴と暖かさが耳と手に伝わってくる。
そのあまりの心地よさに、私は思わず失禁してしまった。
じょろじょろと、私の尿が鷹野の腹に吸い込まれていく。
「は、あふぁぁぁぁぁぁぁっ・・・・」
こんなの、生まれて初めてっ・・・!!
「がぐっ・・・あ・・・」
ん?もう死のうというんですの?
そんなの許しませんわっ!
鷹野の意識が遠のくたび、私は鷹野の顔をビンタしてこちらに引き戻す。
「ぐっ・・・あっ・・・」
しかし――
いつまでも痛覚だけで意識が持つものではない。
鷹野は既に最期の痙攣を始めていたし、四方八方にばらまかれた臓器と血液は、鷹野にまもなく死が訪れることを
ありありと知らしめていた。
仕方ない。残り時間もわずかのようだし、そろそろフィニッシュに――
「・・・なさい・・・」
ん?
「・・・ごめ、んなさい・・・」
今頃謝罪か?今からでも謝れば助かるとでも?
馬鹿がっ!今更――
「・・・おじい、ちゃ・・・」
・・・
え?
「・・・おじいちゃ、かみに、してあげ、れなくて、ごめ、なさ・・・」
520 :
417:2012/04/20(金) 21:39:32.70 ID:zmLf4F3U
おじいちゃん、かみにしてあげられなくて、ごめんなさい。
鷹野の心臓が最後の一拍を打つ直前、鷹野は確かにそう言った。
梨花にではなく、村のみんなにでもなく、まして私にでもない。
『おじいちゃん』に、最後に謝った。
そして、本当に死んだ。
「・・・・・・」
私は股を濡らしながら、呆然と鷹野の――いや、鷹野だった肉の塊を見る。
もはやその胴体はほとんど原型を留めていない。今更ながらに、鷹野の生命力が凄まじいものだったと気づいた。
手足は出来の悪い粘土細工のように折れ、ねじられ、砕けていた。
唯一比較的無事なのは顔。だがそれも、鼻がつぶれ、歯という歯はほとんど欠けた醜いもの。
そういう肉体破壊を、意識のある中、痛みのある中やられたのだ。
苦しまなかったはずはない。絶望に苛まれなかったはずもない。
――なのに――
「何で」
事切れた鷹野の胸ぐらを掴みながら、私は呟く。
「どうして」
右腕に力を込めながら、私は言う。
「お前は、お前はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
私の拳が、鷹野の頬に食い込み。
鷹野の顔をひしゃげさせながら、その首の中央を吹き飛ばした時。
その声は、後ろから響いてきた。
「・・・沙都子」
心臓が、文字通り一瞬止まった。
なぜなら、その声は――
私は、ばっと振り向く。
そこには制服を着て、土気色の肌をした梨花が立っていた。
521 :
417:2012/04/20(金) 21:43:34.99 ID:zmLf4F3U
私は、よろりと立ち上がる。
先程まではあれほど力がみなぎっていたのに、いまはこうして立つのがやっとだ。
全身が古いブリキ人形のようにぎしぎしと悲鳴を上げる。
喉の痒みも、また戻ってきた。
「・・・梨花」
でも、そんなことより何より、私は舞い上がっていた。
たとえその姿が無残なものであったとしても、死んだ親友が昔のままの声で名を呼んでくれたのだ。
これは、きっと神様からのご褒美。
苦しい訓練に耐え抜いて、ついに己が仇を討ち取った私への褒美。
私の努力の対価として、神様が梨花を『こちら』に返してくれた。
愚の極みだと今なら思うが、その時の私は本気でそう思った。
感無量。言葉がでてこない。
梨花の冷たそうな肌を抱きしめてあげたい、そして、私も抱きしめ返して欲しい。
梨花に話したいことが山のようにある。伝えたいことが山のようにある。
私は懸命に涙をこらえ、精一杯の笑顔で梨花に語りかけた。
「梨花、もど「汚らわしいわ」」
・・・え?
今、梨花、何て?
き、きっと聞き間違えですわよね。そう。聞き間違え。
「あのね、梨花。わた「聞こえなかったの?」」
二回目は、さすがに聞き間違えで片付けられなかった。
梨花は全てを凍りつかせるような灰色の目で、私に告げた。
「汚いから近寄るなって言ってるの。沙都子」
浮き立った心は、一瞬でその形を保ったまま凍りついた。
そんな私の心を見抜いたか、梨花はくすくすと笑いながら続ける。
「あなた、きっと今鏡見たら卒倒するわよ?レディーどころか、人間にも見えないもの」
私は、自分の体を見る。
ズボン。服。手、脚、顔、髪。
どこもかしこも乱れきり、赤く染まっていない場所などない。
強いて言うなら、尿である程度は洗い流された内ももくらいか。
「そう、例えるなら・・・『鬼』かしらね?」
梨花のものとは思えない、低い声。
でも、それは確かに梨花の声だった。
梨花は言う。
「一つ聞かせてよ。あなた、一体何がしたかったの?」
何をしたかったか?
私は震える声で、梨花に返す。
「そ、れは、もちろん、梨花やみんなの仇を「嘘よね?」」
梨花はくすっと笑って、きっぱりと言い放つ。
「あなたは、こうしないと――何かに全てを押し付けないと、正気が保てなかったんでしょう?」
私の足が、ブルブルと震え始める。
梨花は歌うように続ける。
「それはそうでしょうね。だって、あなたには自分の罪を認められるほどの強さはないもの」
違う。
「そ、そんなことありませんわ!わた「1年前」」
「北条悟史を村の闇に消し去ったのは、誰?」
にーにー。
居なくなってしまった、最愛の家族。
522 :
417:2012/04/20(金) 21:45:04.39 ID:zmLf4F3U
「・・・私ですわ」
私が、頼るばかりで支えることを知らなかったから。
「私が、にーにーを「ほおら、また押し付けた」」
・・・え??
「一体な「あなたはそうやって、心の中の『よわかったさとこちゃん』を勝手に作って、その子に全責任をかぶせてるのよ。
本気で心の底から悔いてなんかいない。・・・でなければ、今年こそは助けていたはずよ」」
「・・・そんな、ち、ちがいますわっ!私は、私はっ・・・!」
舌が震える。脳も凍える。呂律が上手く回らない。
「前原圭一、竜宮レナ、園崎魅音。この3人をこの世から退場させるのに一役買ったのは誰?」
「あれは、事故、事故だったんですのよ!私にはどうしようも「ね?また逃げた」」
梨花は妖艶な声で追い討つ。
「あの3人がどうしてまとめて一度に事故に遭ったのか、疑問に思ったことはないの?無いはずないわ。
でもあなたは、考えるのをやめた。分からないからじゃなく、分かることで自分に罪が及ぶかも知れないのが嫌だったから」
「そんなこと、そんな事・・・」
全身の体温が急激に下がってくる。
止まらない。寒気と震えが、止まらない。
かゆい。喉が、かゆい。かゆい。かゆい。かゆい。
はぁ、と梨花はため息をつく。こいつ、ようやく分かったのかと。
まるで、底なしの馬鹿生徒に手取り足取り教えてようやく理解を得られた教師のように。
「もう、分かったわよね?一番罪深いのは、あなたに負担をかけていた叔父夫婦でもなければ、あなたの故郷を滅ぼした『東京』でも、
ましてや今殺した鷹野なんかじゃない」
あなたなのよ?北条沙都子。
523 :
417:2012/04/20(金) 21:45:48.67 ID:zmLf4F3U
「・・・違う、違う違う違う違う違う違う違うっ!!」
かゆい、かゆい、かゆい、かゆい。
「私は、私は何もしていないっ!!ただ、毎日を普通に穏やかに過ごすことを臨んだだけっ!私は」
がしっ。
真後ろから、二本の手が両腕を羽交い締めにしてきた。。
・・・何も、しなかったんだろう?
「――ひっ!?」
それは、圭一さんの声。
ぐっ。
右足が、何かにつかまれる。
・・・キャハハハハ♪馬鹿だね沙都子ちゃん。それじゃ家畜と同じじゃない?
「――ひぃっ!?」
レナさんの声。
ぐいっ。
左足も。
・・・幸せをもらうばっかりで、与えようともしない。おじさん恥ずかしいよ。なんでこんなクズを部活に入れたんだろ・・・?
「――ひぃぃぃっ!?!?」
そして、魅音さん。いや、これだけではない。
いくつもの、いくつもの怨嗟の声。
・・・償え。
・・・償え。
・・・つぐなえええええええええええっ!!!!!
ズワッ、という効果音が似合うだろう。
いくつもの土気色の手が、壁から、床から、天井から。
あらゆる場所から生えてきた。
私を、捕らえるために。
「ひ・・・嫌ああああああああああああああっ!!!」
私は必死に部屋から逃げようとする。だが、四肢を抑えられている私に、逃走の術などない。
手の指揮を執るのは梨花。げてげてと笑いながら、ゆっくりと私に迫ってくる。
そして――
梨花の氷のような手が、私の両頬を包んだ。
「りか、梨花っ!!お願いでございますわっ、どうか、どうか助けてっ!!」
「・・・フッ」
鼻で笑われた。
「馬鹿ね、助けるはずないじゃない。あなたも苦しんで死ぬのよ。私と同じに・・・ねっ!!」
梨花の手がゾンビのように、ビッと伸びる。
そして、私の喉を、掻きむしり始めた。
「がっ・・・アアアアアアアアアアアッ!」
「痛い?痛い?ほら見て、皮はもうすっかり剥けたわよ?ね、どう?自分の肉は?」
梨花のなじるような声は、途中から聞こえなくなった。
ただただ痛い、かゆい、痛い、かゆい、痛い、かゆい、いたい、かゆい――――
痒みが解消される心地よさと、皮膚を割かれる激痛とがどろどろと混ざる。
ギンギンという音とともに、視界が暗緑に染まったり戻ったりを何度も繰り返す。
梨花の体は、光を発していなかった。死んでいるのだから当然だが。
喉から自分の血がだばだばと流れ出ていくのを感じる。
524 :
417:2012/04/20(金) 21:46:18.70 ID:zmLf4F3U
私は、思った。
――これは、わたくしへのばつなのですわね。
このごにおよんで、まだじぶんのつみをみとめようとしなかった、わたくしへのばつ。
・・・いま、わたくしにてをくだしているのはりか。
でも、これはわたくしじしんのつみですもの。
だから、わたくしは、じぶんでじぶんにばつをくだすべきなのですわ、そう。きっとそう――
無意識の内に、私は自分の喉をかきむしっていた。
ガリガリと、何度も何度も。
大量失血で、足から力が抜ける。
私は、自分の血だまりの中に膝をついた。
視界が徐々に暗くなっていく。
――さむい。そうか。これが、し、なのですわね・・・
このまま掻いていたらまずいなんてことは分かる。
だが、他にどうしようもなかった。
とにかく、自分で自分に罰を与え続けること。
それだけが、私にできる贖罪だったから。
その時、私は、首の皮膚がまだまともに残っているところに、小さな痛みを感じた。
流れ込む冷たさと共に、梨花が、手が、声が全て消えた。
それと同時に、私はうつぶせに倒れ伏した。
声が天から降ってくる。
「・・・・!・・・・!・・・ですか!?」
あまりよく聞こえない。まるで遥か彼方の地平線の果てから呼びかけられている気分だ。
誰かに抱き起こされる。
ふわっと、かすかなスパイスの香り。
柔らかくて、温かい腕だった。
ぼやける視界の焦点を合わせる気力もない。
だが、ぼんやりとした輪郭ならわかる。
青い髪。緑がかった青い目。
「・・・・!・・さん!?しっかりしてください!北条さん!!」
必死に私に呼びかける声。
その声をはっきりと聴神経が認識したとき、私はその声を思い出した。
フラッシュバック。
『これ、犠牲者名簿です。た行のところを見てください』
た行。
つまり、『ち』。
私は、最後の力を振り絞って、その人――もう一人の生存者の名を呼んだ。
「ち、え、先生・・・がふっ、どうして、ここに・・・?」
525 :
417:2012/04/20(金) 21:46:37.88 ID:zmLf4F3U
今回はここまで。
526 :
圭レナ1:2012/05/12(土) 11:44:11.04 ID:wL39lOfY
過疎ってるから圭レナ書いてみた
なんか流れをぶったぎってすまん、すぐ終わる
「圭一くん・・・・・、これで、いいの?」
そうだ・・・。レナ、それでいい・・・。
レナの手が、自分のスカートを捲り上げる。恥ずかしいのだろう、おずおずと捲り上げるその手つき、俄然じれったい!いっそ襲い掛かって、俺の手でひんむいてやりたくなるぞ!計算か!計算づくなのかっレナ!!
水色のプリーツスカートが開かれていくたびに、秘められし桃源郷があらわになってゆく・・・。
しなやかに引き締まったふとももが見えたあたりで、俺はストップコールをかけた・・・。
はう?とぼんやりとろけた目つきで首をかしげるレナはかわいらしすぎる!
・・・ちらりと、胸ポケットに入った錠剤を見る。
小さいから、こんな足場の不安定な『宝の山』では落としてしまいかねない。気をつけないとな。
・・・やはりこの錠剤が気になるって?お察しのとおり!今回の話にはこの錠剤が深く関わってくる。
これはイリーから受け取ったものだ。何でもつい最近作った試薬らしく、イリーいわく『媚薬』的なものだそうだ。
正直半信半疑だったが、たった今本当だということが実証された。だが、まさか本当に効くとは・・・。
思いのほかたくさん出来たからあげます、とのことだからもらったが、これは一中学生に与えていいものなのか・・・?
いや、こんなことを気にしていてはしょうがないっ!
せっかくもらったし、しかも・・・レナに服薬させることまで成功したのだ!
心行くまで遊びつくさにゃソンソン!ってな!
「圭一くぅん・・・」
うおう!そんな甘い声で呼ぶなよレナ!ドキッとしちまうぜ!
俺はぱっと目を開き、レナを見・・・ってレナ!いやまてっ!だ、だめだ!そ、それ以上はあっ!
俺の目の前で・・・っレナが!レナが、まだスカートを捲りあげようとしている!もう我慢できない、といった風な扇情的な表情で、ぎゅっとスカートのすそを握り締めるレナ・・・。
見えちまう!秘密の・・・秘密の秘密基地がっ!(多少文法崩壊)見えちまうぜレナあああっ!!!?
「レッ、レナあああ!?」
「・・・なーんて」
指を思いっきり開いたままの手で顔にあて、一応隠してますよアピールをしたところでレナはぱっとスカートを下ろしてしまった。
527 :
圭レナ2:2012/05/12(土) 11:46:32.98 ID:wL39lOfY
「ちょっとやりすぎちゃったかな・・・かな?」
首をかしげて笑顔を浮かべるレナ。少しはにかんでいるあたりが・・・・・かっ、可愛すぎる・・・!
これも『媚薬』のせいだろうか?レナの頬は少し赤みが差していて、いつも俺に見せる笑顔よりも色っぽい気がした。
「なんか今日、レナ不思議な気分ー・・・」
「え?な、何がだ、レナ」
「なんかねえ、どーんっ!って感じなの・・・はう。それに、」
ぜ、ぜんぜん分からんが、薬が効いていることだけは分かるぞ、うん。
「それに・・・?」
「うん・・・なんだろ、ちょっと暑いかな・・・かな」
「そうかあ?」
「ん・・・、レナだけかなあ・・・」
そういってレナは少し身を乗り出して、伺うように俺に尋ねる。
――――くうっ!!
は、反則だぜレナ・・・っ!その上目遣いっ!襟元からちょっと見える鎖骨っ!甘い声えええっ!
俺はいつもとは少し違ったレナの仕草にドガキュウン!!!と胸を打たれ、言いも知れぬ気持ちに酔いしれていた。
「あのね、圭一くん・・・」
「おう、なんだレナ?」
冷静を装い尋ね返すと、そっと重みを増す俺の手。手元を見ると、なんと・・・。俺の手にはレナの手が重なっているではないか!
ドキン!
なんのラブコメだああああと突っ込む暇も無く、その柔らかな手の感触に胸が高鳴る。
レナは俺のこの胸の鼓動なんて知らずに、ぐいぐいと距離を詰めてきた。
「圭一くん・・・」
おいおいおいおいさっきからその囁きはなんだ!意味があるのか意味があっ!?
ペースを崩されまくって、俺はふと気づく。
目の前に大きな青い瞳。頬を掠めたオレンジの髪。・・・普通ならありえないほどに、レナが俺の近くにいる、ということを。
レナの髪の香りが香る。体が熱くなるのを感じた。
「・・・レナ、・・・レナ、暑いよお・・・」
「レっ・・・レナッ、・・・」
「もう・・・駄目ぇ・・・。けいいちくん、レナをたすけて・・・」
「!??!」
レナが悩ましげな手つきでスカートを脱いでいく。
スカートの折れ目がぐちゃぐちゃになって、やっと両足をスカートからそっと抜き取ると、手ごろな高さにあった冷蔵庫の上に乗せられた。普段の丁寧なレナからは想像もできない。それが逆に・・・どうしようもなくエロいっ!
「ああん・・・もう・・・はあ、ぬがして・・・・・・けいいちくん」
「ぬ、ぬぬ、脱がすって・・・・・」
既に下半身は下着だけしかまとわないレナが、ずずいと俺に近寄ってくる。うおお!ついさっき見ちまったが柄は水色ストライプだった!ドストライクだこんちくしょうっ!!
レナは自分の胸元に手をやると、しゅるりとスカーフを解いた。
「はあ・・・っ、はあ・・・・・」
息遣いを荒くしながら、真っ赤な顔でレナは迫ってくる。
「ぬがしてえ・・・おねがい」
「ん、なこといっても、だな・・・」
悪い気はしないながらも後退していると、がらっ!と物が崩れ落ちる音する。ちょっと振り返ってみると、安定しているこの場所のギリギリ淵まで来ている。す、既に逃げ場は無い・・・!
想像以上だった!なんで俺が押されてるんだよっ!?
「さわ、っても・・・・いいよ」
そしてレナはうふふ、なんて言いながら俺の体に擦り寄ってきた!
ぐあああ!こ、この・・っこのやああらかい感触ってもう・・!もう!む、む、む・・・っ
ちゃっかり全身の神経をレナの胸が押し付けられている自分の胸に集中させる。
「えへへ・・・」
開いた俺の足にレナが割って入ってくる。
――ぷちっ。
「な、・・・なんの・・・」
「えへへえ」
レナがゴソゴソと自分の背中あたりから何かを引っ張ってくる。
528 :
圭レナ3:2012/05/12(土) 11:51:40.10 ID:wL39lOfY
「ブラ、取っちゃった・・・」
―――――だ、・・・だめだ!!
指先でつまんで、水色のブラジャーを俺に見せ付けるレナ。
う、ぱ、パンツとお揃いのストライプだ・・・!
「!」
――ってことはレナは今――
「・・・この制服の下に、レナの、おっぱいがあるんだよ・・だよ」
やっぱりいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!
「ねえ、お願いだよお・・・けいいちくん・・・っ、レナあついのお・・・」
顔を真っ赤にしたレナは、自分の制服の胸元をぎゅっ!とつかむ。
く、くうう・・・っ!辛抱たまらん・・・!
「けいいちくんが、さわってくんなきゃ・・・レナだめえ」
今にももにゅもにゅと自身の胸を俺に押し付けんばかりに、レナは俺に擦り寄る。
ああ――もう。
ごくり。唾を飲んで、俺は聞く。
「ど、どこを・・・さわるんだ?」
「・・・・・・お、」
ふいっと視線を逸らしながら、レナが言う。
は、反則だああああああっ!(2回目)
なんだ!?なんなんだ!?あんなに大胆に迫ってきたかと思えば、いざ行かんとするときに恥じ入り照れやがって!
「おっぱい、から・・・」
『から』となあああ!?!?ど、どこまでいいんですかレナさん!?
もう俺はだめだった。いや、俺に限らずとも。下半身を露出した可愛い異性の女の子に、顔を赤らめて自分の胸を触ってと懇願された男が、無事でいられるだろうか!否。理性なんてぶちぎれるのが当然!いや、ぶちぎるのが当然!ここでやらなくて何が男だ前原圭一いいいいっ!!
「あっ・・・」
もにゅ・・・。
俺の両手は、迷うことなくレナの膨らみに向かう。そして両手をこれでもかというくらいに広げて、手のひらで包んだ。
「・・・ん」
なんという。なんという感触だろう、俺は夢でも見ているんじゃないか?
大きすぎず、かといって小さすぎないレナの胸は、まだまだ発展途上。服越しでもわかる胸の温かさと柔らかさには脱帽するばかりだ。しかも柔らかいだけではなく、弾力があり、押せば跳ね返る。
「はっ・・・あ、・・・あん・・・はあ」
「・・・ど、どうだ?レナ」
とはいえ、俺はこういった行為は――・・・初めてだ。
うまく出来ているだろうか、いまいち力加減が分からない。少しきいてみると、
「あ・・・っもっと・・・、も、んで・・・いいよ」
529 :
圭レナ4:2012/05/12(土) 12:08:47.85 ID:wL39lOfY
「・・・っ!――そ、そうか」
「あっあ、あん・・ん、はあ・・・・・」
お許しが出たようなので、引き続き触り続ける。
それにしても――・・・ん?こりゃなんだ・・・?
やわらかい胸の真ん中・・・とがりかたいものがある。
まあ、一応とぼけてみたわけだが。なあに諸君・・・あわてるな!俺が知らないわけ無いだろう?これは、・・・これは、そうっ!
「あっ!」
乳首!!!
「へへ・・・硬いけどこりゃなんだあ・・・?」
俺はいやらしく笑って、制服の上からやさしくそれを擦った。
随分硬いぜ、レナよお・・・!
「とがってやがるぜ、レナのちくび・・・」
「あ、い、いわないでえ・・・」
「・・・なあ、あの、レナ。・・・みていいか?」
ここで確認を入れる律儀な俺。
「ん・・・・うん・・・・みてえ・・・っ」
お言葉に甘えて!俺は大胆に、勢いよく!制服をまくりあげる!
「あ・・・」
そこに広がる、楽園(パラダイス)。俺は思わず目を見開いた。
・・・う、美しい。
白い肌、そしてその胸。アクセントといわんばかりにちょこんと立っている乳首は、薄く桃色で、さながらショートケーキの苺を連想させる。
両手でこねてみれば、自由に姿を変貌させるレナの胸。これはまさに芸術といっていいだろう。ああ、そうだ。これは芸術鑑賞会だ。オプションでレナのあられのない喘ぎ声も聞こえるぞ。
我慢できずにちゅ、と口をつけてみると、レナはあんっ!とまたもかわいい声を上げる。
「す、すっちゃっ・・・すっちゃうのお」
れろれろれろれろ!
「あ、な、ああっ!」
べろべろ!ちゅっ!ちゅうう!!
口の中に含んだ小さな乳首を器用に!嘗め回す!嘗め回す!嘗め回あああす!
俺の舌は四方八方からレナの乳首を攻める!どうだレナ・・・?我慢できないだろう
「いやああっ!あん!あああ!ち、くびい」
まだまだまだあっ!俺はちゅううう!と音をたてならしながらレナの乳首を吸い上げる!
「い、あああん!な、なにこれえっ!」
甘噛み!甘噛み!
「あ、ああっああ!なんか、なんかきちゃううう!」
まあそして俺はレナをここで初めて、イかせた訳だ・・・。
530 :
圭レナ5:2012/05/12(土) 12:10:38.77 ID:wL39lOfY
――省略。
「こうか!こうかレナッ!」
「はうっ!ああうっ!あ、あ、っあぁ!」
「ええ!?なんだって!?『気持ちいい?』そうかそうか!」
「あんっ!だ、だめぇ、だめえっ!い、ああっ!あああんっ!」
「はあっ、レナ!レナあ!エロすぎるぜ!今自分がどんな姿かわかるか!?」
「わっ、わかんな、いいっ・・・!きもちよすぎてっ!ああ!あんっ!!そこ、そこだめなのっ!だめえ!」
「ヘヘッ・・・ここかよ?」
ビクウッ!!とレナは弓なりに体を反る。
「だ、だめえっ!そこだめえええ!」
「んー?」
ぐりぐりぐり!
「あはああんっ!な、いやあ、ああっ!だ、だめだよお、ほんと・・・っああ、あん、あ!あっ!ああん!」
レナは激しくあえぐ!
オレンジの空の下、ひとつになる俺たちの姿といったらもう・・・なんて淫靡なのか。
「ひああっ!けいいち、くん!け、いち、くんっ!ああんっ!あ!あっ!だめえ!」
「う、あっ!し、しめつけっ、るなよ、レナ!」
「なんか、きちゃうのお・・・!き、きもちよくてえっ・・・けいいちくんの、オットセイぃ・・・」
「い、くのか?イくんだろ、レナ・・・っ!俺も・・・そろそろ!」
「れ、レナあ!もうだめっ、ああっ!そ、そんな強く、しないでええっ!あん!」
・・・・・ということで。試薬実験は見事成功したわけだ。俺はイリーに最大のお礼をつくさねばならない。
そして今頃になってこみ上げてきた罪悪感に、ごみ山の上で眠りこけるレナに向かって謝ってみたのだった。
けれどレナは心なしかうれしそうに笑っていた。
終
531 :
圭レナ:2012/05/12(土) 12:10:59.09 ID:wL39lOfY
終わり。スレ汚し失礼。
532 :
417:2012/05/13(日) 07:38:43.39 ID:7CHaC1bv
〉531さん
GJです!
続きを投下します。
533 :
417:2012/05/13(日) 07:39:18.57 ID:7CHaC1bv
ページ12
1983年9月28日 午後7時50分
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生(訓練92日目)
日本国 福井県 笹浜郡和瀬野村
『東京』直轄 第八幽閉用住居地下
「北条さん!」
知恵先生がホッとした顔になる。
「良かった・・・意識はあるんですね?少し待ってて下さい!!」
知恵先生は私から離れ、私が滅茶苦茶にした医療器具の棚を漁る。
十数秒後、知恵先生は包帯と注射器を持って駆け戻ってきた。
知恵先生は私の腕に注射を打ち、中の液体を注入する。
それが終わると、手早く消毒し包帯で止血。
「かろうじで大血管は傷つけていませんね・・・よし、これならしっかり縛っていれば何とか・・・!!」
私は朦朧とする意識を奮い立たせ、知恵先生を呼ぶ。
「・・・せん・・・せ・・・」
「!何です、北条さん!?」
「わた・・・わたくし、あの゛っ、ガホッ、ケホッ!」
クッ・・・!
言いたいことがあるのに、声が出ない。
「北条さん、今は休んで下さい!あとでじっくり聞きますから!」
知恵先生はそう言い聞かせて、私の体をおんぶする。
「しっかり掴まってて下さいね!」
そして、小走りに走り出した。
散らばった鷹野の血や肉片を、顔色一つ変えず踏み越えて。
地下を埋め尽くしていた血と黴の臭いを抜けると、再び闇に包まれた廊下に出た。
もう日はとうに暮れた後らしい。
聞こえるのは先程よりさらに勢いを増した風と、降りしきる雨と雷鳴の音。
知恵先生は私が入ってきた方とは逆の方――玄関の方へと走る。
知恵先生は器用に私を右手で持ちつつ、左手でドアノブを回す。
ドアが開け放たれた瞬間、私は顔に冷たい風が吹き付けてくるのを感じだ。
そしてそれに乗って、雨の匂いと――かすかな硝煙と、血の臭いが。
力を抜き、頭を重力に任せてがくりと垂らす。
そのほうが楽そうな気がしたからだったのだが。
地面に向けた視線の先に、三人の男が倒れ伏していた。
無論、死んでいる。
ガクッという感触に気づいたのか、知恵先生は私を振り返る。
「北条さん!大丈夫ですか、北条さん!!」
頭はかなりぼんやりしてきているが、意識はある。
だが、声を出す気力が無かった。
ぴと、と額に手の感触。
「!!すごい熱・・・!!北条さん、しっかりして!」
ああ、道理で吹きしきる雨が妙に気持ちいいと思った。
知恵先生を少しでも安心させようと思って、私は震える肺から空気を絞り出す。
「知恵、先生・・・だい、丈夫ですわ。わたくし・・・からだは、丈夫、ですし」
「こんなに熱を出して大丈夫なはずないです!すぐに病院に連れていってあげますからね!!」
知恵先生は、前のままの優しい人であるように思えた。
だからこそ、どうしても聞きたかった。
体中の力を使って頭をまた知恵先生の肩に預けて、私は聞いた。
「・・・玄関の男たちは、先生が・・・?」
「・・・」
また前を向いてしまっていたから、先生の表情はわからない。
でも、問いの答えは明白だった。
「・・・武器なんて、二度と手に取るまいと決めてたんですけどね・・・」
534 :
417:2012/05/13(日) 07:40:45.10 ID:7CHaC1bv
玄関から50m程行くと、一台の車が止まっていた。
ありふれたデザインの、茶色のハードトップ。
私は助手席に乗せられた。
「行きますよ、北条さん。もう少しの辛抱ですからね」
タイヤが地面を少し空回りしてから、体に急激なGを感じた。
車のことはよく知らないが、多分あちこち改造してあるのだろうな。
車内はかすかにカレーの香りがした。
さすが知恵先生、と少し和む。
それなりに曲がりくねった道を、知恵先生はすごい運転技術で駆け抜けていく。
あっという間に舗装された道に出ると、知恵先生は駅の向こうに車を走らせる。
たぶん、高速道路に乗って街に出る気だろう。
私を気遣って、知恵先生が話しかけてきた。
「北条さん、大丈夫ですか?何か欲しいものは?水なら「ち、え、先生」」
病状は悪化している。
だが少し休んだことで、どうにか言葉を話せるようになった。
「どうして、ここにいると・・・?」
知恵先生は、こともなげに答えた。
「教師たるもの、教え子がどうしているかは把握していて当然ですよ」
「・・・ふふっ」
相変わらずの知恵先生に、自然と笑みがこぼれる。
さっきまでのが嘘のようだ。
「・・・生きていて、くださいましたのね」
「あの程度で殺される先生ではありませんよ」
普通に流しかけたが、はたと気づいた。
『殺される』先生ではありません。
『殺される』。
まさか。
「・・・先生、ご存知だったんですの?」
「何をです?」
「『大災害』の真実」
一瞬、しまったというような顔をして――表情が変わる。
「・・・北条さん、あなた」
「存じて、おりますわ。全部。・・・知恵先生、前を見てくださいまし」
目を見開いて私を見ていた知恵先生に注意を促す。
「あ、はい。ところで北条さ、・・・!!」
私は、座席に身を預けて目を閉じていた。
一つ終えて気が抜けたのか、それとも『力』の反動か、はたまた血が抜けすぎたのか。
今さらになって、全身をひどい倦怠感が支配していた。
頭が熱くて、ガンガンして、クラクラする。
口を開く元気も、目を開ける気力もなかった。
しかし知恵先生には、それが容体が急変したように見えたらしい。いや、実際急変していたのかもしれないが。
何度も何度も必死に私に呼びかけてくるが、私には口を開くだけの体力さえ残されていない。
――眠い。
寝たら死ぬだろうか?
だが、仮に死ぬとしても、抵抗する力は出ない。
私は睡魔にその身を委ねる。
これが、永遠の眠りになるかもしれないな。
535 :
417:2012/05/13(日) 07:41:10.30 ID:7CHaC1bv
こんな夢を見た。
私は十字の磔台に縛り付けられている。
濃霧の空間に一人置き去りにされている感じ。5cm先も見えない。
場所も時間も、磔台の柄も自分がどうして縛られているのかさえ分からない。
そこには、私以外の誰かが居た。
姿も何も見えないが、なぜか私にはその人もまた囚われの身となっていることを知っていた。
その人は私とかなり親しい間柄らしい。
声は聞こえないが、しばらく私とその人は何やら会話した。
その会話の内容は私にとって衝撃的で、・・・でも、何だかとても納得のいくものだった。
それが何かは知らないが。
そこに、誰かが来た。
その人は私ともう一人の人を捕らえた犯人で、・・・そして、私を強烈に憎んでいた。
「・・・・・!・・・・・・、・・・!!」
私は何か叫んだ。多分罵倒だろう。
「・・・・・・・・・・・、・・・?」
何か聞かれた。
私は何かから目を背けた。
「・・、・・・・?・・・・・」
「・・・・!!・・・・・・・・・・・!!!!」
犯人が何か言って、囚われている人も何か叫んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・、・・・・・!?」
私は何かを聞いた。
「・・・」
これはただの間。
そして、この言葉だけはノイズ混じりながらも聞こえた。
「殺す」
まるで変声器を通したような低い声だった。
そして、私は――
536 :
417:2012/05/13(日) 07:42:06.33 ID:7CHaC1bv
眠りと同じように、目覚めもまた突然だった。
「・・・はっ」
全身が一瞬収縮して、私は意識を取り戻した。
窓から差し込むのはぼんやりとした光。
どうやら今日は曇りらしい。
安っぽい柔らかい感触。私はどこかの病室のベッドに寝かされているようだ。
横に目をやると、そこにはあの地下室で見たような心電図。
腕には点滴。服も、病院着に着替えさせられていた。
・・・そういえば、先程『今日は』と言ったが。
あれからどのくらい眠っていたのだろう?
そう思って部屋を見渡すと、左の壁にカレンダーがかかっていた。
[10月27日(木) 昭和58年 1983年]
――え?
鷹野を殺したのは9月28日。これは間違いない。
ということは、あれからひと月近く眠っていたんですの!?
1ヵ月間寝て過ごすという経験をしたことがなかったから、私は驚くより戸惑った。
この1ヶ月、《外》では一体何が起こっていたのか。皆目見当もつかない。
ここはどこ?知恵先生はどこに?真和さんや吾郎さんは?
詩音さん、心配しているのではないだろうか?
何でも良いからとにかく情報が欲しかった。
ここは無論病院――おそらくはアサシンの息のかかった――だろう。
そして、ここは入院患者用の病室。
となればと考え視線を巡らせると、やはりあった。
ナースコールのボタンだ。
私は長らく動かしていなかったせいで、いささか筋力の衰えた腕をボタンに伸ばす。
かちり。
ブザー音でもしてくれると助かったのだが、生憎とこれは鳴らないタイプの物だったらしい。
一瞬不安に思ったが、すぐに解消された。
病室の外をパタパタと走る音が聞こえたからだ。
ガラララッ!
勢いよく開け放たれた扉。
一ヶ月の昏睡から目覚めた私を息を切らして出迎えたのは、なんと詩音さんだった。
私が驚いた顔で身を起こし詩音さんを見ると、詩音さんはくしゃっと顔を歪ませた。
そのままつかつかと歩み寄ってきて――
泣きそうな顔で思いっきり私の面を張った。
その衝撃でまたベッドに倒れ込みそうになるが、なんとかこらえる。
痛みは不思議と無かった。ただ、ジンジンとした熱とぶたれた衝撃が頭を揺らした。
ぶたれた場所を左手で押さえ、詩音さんを見上げる。
詩音さんは目にいっぱい涙をためて、大きく肩で息をしていた。
唇を震わせ、口を開く。
「・・・どれだけ」
涙声だが、激昂しているのが分かる。
「どれだけ、心配したと思ってるんですかっ!?」
そう叫ぶとベッドに身を乗り出し、私に抱きついてわんわんと泣き始めた。
537 :
417:2012/05/13(日) 07:44:36.43 ID:7CHaC1bv
ぎゅうぎゅうと締め付けられる。
体温と体のやわらかさが心地よかったが、すぐに酸素が足りなくなり始めた。
「く・・・苦しい、ですわっ・・・詩音さん、離れてっ・・・」
私の声が小さかったからか、詩音さんは一切力を緩めなかった。
両手で詩音さんの腹を押すと、ようやく詩音さんは離れてくれた。
少し落ち着きを取り戻し、詩音さんはベッドの脇のパイプ椅子に座って目の周りをハンカチで拭う。
涙が伝っていた頬も荒く拭き取る。
真っ赤な目で私を見る。
「・・・本当に、心配したんですよっ!?沙都子、ずっと目を覚まさなくてっ、私、私っ、もうどうしたら良いか分からなくてっ・・・!!
もし、もしこのまま、沙都子がずっと目を覚まさなかったら、・・・死んでしまったら、どうしようって・・・!!!」
泣きじゃくりながら、詩音さんが言葉を迸らせる。
言葉が途切れると、詩音さんは右手で次から次へと溢れ出す涙を拭う。
申し訳なさと後悔で、視線が自然と下を向く。
鷹野を殺したことにではない。
私を支え、愛してくれた詩音さんを泣かせてしまったことにだ。
一年前、にーにーがいなくなった時。
私はにーにーの安否が心配で、たまらなく怖くて、どうしようもなく寂しかった。
あの思いを、詩音さんにも味あわせてしまったのだ。
「・・・ごめ「ストップ」」
そんな罪悪感から生まれた謝罪の言葉は、しかし遮られた。
視線を上げると、詩音さんの涙に濡れた微笑が写り込んできた。
「妹のやんちゃに付き合うのも、姉の勤めですしね。・・・でも」
そこからまた少し怖い顔になり、指を一本立てて私に言う。
「今度無茶するときは、必ず言ってくださいね。・・・今回だって、何か力になれたかもしれないんですから」
その言葉を聞いて、私は聞きたくて仕方なかったが、どうしても怖くて聞けなかったことを聞く。
「詩音さん。・・・あの」
「何です?」
詩音さんはもういつもの優しい表情に戻っていた。
もう引き返せない。
思い切って。
「・・・私のこと、嫌いになりませんの?」
数秒間の沈黙。
詩音さんは呆れたようにため息をつく。
「もう一発顔張られたいですか?・・・嫌いになってたら見舞いになんて来ませんよ」
「でも「沙都子」」
突然の声の厳しさに引かれた私は、顔を上げて詩音さんを見る。
詩音さんは、怒っていた。
「私のこと、そんなにチャチな女だと思ってたんですか?」
――チャチ?
「黙って消えて人を殺してきた位で手のひら変えるような、そんな女だと?
・・・正直がっかりです。私、思ったより信じてもらえてなかったんですね」
「そ、そんな事・・・」
もちろん思っていない。
ただ、それが普通の反応だと思っていたから、詩音さんの反応が意外すぎただけだ。
詩音さんはしばらく私をじっと見つめて、言った。
538 :
417:2012/05/13(日) 07:45:57.44 ID:7CHaC1bv
世界があなたを憎んでも、私はあなたを愛します。
世界が明日滅びても、私はあなたを守ります。
たとえそのせいで、地獄の業火に焼かれることになろうとも。
だからお願いです。私を信じてください。
本当に無意識の内に、目から雫が零れた。
ぽろっ、ぽろろっ。
一滴流れば、後は早かった。
頬に刻まれた一筋の道に、後から後から押し寄せるしずく。
「わ、私をっ・・・許してくれますの?」
詩音さんは啜り泣く私の手を、優しく握ってくれた。
「さっきから、そう言ってるじゃないですか」
私は知る。
――ああ、そうか。
私は、誰かに赦して欲しかったんですわ――
「ほら、もう・・・泣かないで。こっちまでグっと来ちゃうじゃないですか」
「え、ええっ・・・ぐす・・・」
一度泣き出すとなかなか止まらないのが私だが、今日は違った。
少し耐えただけで、簡単に涙が止まった。
詩音さんにこれ以上無様な姿を見せるのはさすがに恥ずかしかったし、今は涙にくれている場合ではない。
――まずは一刻も早く回復しませんと。
一ヶ月も訓練が遅れてしまいましたわ。先程の感触では、筋力も衰えているようですし。
とりあえずは体力と勘を取り戻して、それから――
あれ?
ふと、私は気づく。
そういえば――
なぜ、詩音さんはここを知っていたのか。
詩音さんがここにいるということは、おそらくここは鹿骨市内ではあろう。
だが、ここは教団の息がかかった病院。
教団の秘密主義っぷりは前述した通り。
その教団が、部外者の詩音さんに自ら教えた?
ありえない。そもそも、私は誰にも詩音さんとのことを話してない。
詩音さんが教団に接触した?
これもない。詩音さんにも教団の事は一切教えていない。
では、なぜ?
何より・・・
先程の言葉が蘇る。
『黙って消えて人を殺してきたくらいで』。
つまり。
詩音さんは、私のしてきたことを、知っている。
今まで感情に押し流されていたが、考えると疑問はほとんど解決していない。
知恵先生の行方。真和さんと吾郎さん。
「・・・詩音さん」
「何です?」
「どうして、ここが分かりましたの?」
明らかに一瞬言葉に詰まる。
それから若干目を伏せ、苦虫を噛み潰したかのような表情になった。
まるで、思い出したくもないことを思い出しているかのような、そんな顔。
「・・・それは「オレから話そう」」
539 :
417:2012/05/13(日) 07:48:54.91 ID:7CHaC1bv
心臓が縮んだ。
詩音さんのすぐ斜め後ろ。
そこに、壁に寄りかかった真和さんがいた。
アサシンは神出鬼没。
隠密術の訓練でもよく言われたものだ。
『どこにでもいるのに、どこにもいない。そういう存在となるのだ』
そういう意味では、真和さんはやはりさすが。心臓には悪すぎるが。
私の視界にしっかり入っているのに、全く気付かなかった。
だがそれより気になったのは、詩音さんの反応だ。
明らかに様子がおかしい。
真和さんが口を挟んだ瞬間、詩音さんの体が一瞬びくんと痙攣した。
それだけだったら「驚いたんですわね」で済ませることもできたろう。だが、おかしいのはそこではない。
今、私の手を包んでいる詩音さんの手は――かすかに震えている。
そして、あの詩音さんの顔。
今は真和さんの方を見ているせいでうかがい知ることはできないが・・・
・・・絶対、怯えていた。
「相原・・・・・・さん」
心中の怯えを一切表に出さない。
呼び捨てるか迷いに迷ったような、そんな詩音さんの声。
真和さんは暗くニヤリとして言う。
「随分と嫌われたものだな」
「・・・当たり前じゃないですか」
「まあお前がオレにどんな感情を抱こうが知ったことじゃないが。・・・沙都子に話がある。
席を外してもらえるか?」
「・・・」
表情が見えなくても分かる。詩音さんは、真和さんを睨みつけているのだろう。
「・・・もし沙都子にひどい事したら、生かしちゃおきませんよ」
「誰がするか。自分の可愛い弟子を手にかける師がどこにいる?」
「あんたならやりそうですから」
もはやうすっぺらい礼儀正しささえかなぐり捨てて、詩音さんは真和さんを威嚇する。
その姿を見ていて、ふと出会った時の――私を殺そうとした、女豹のような詩音さんの姿を思い出した。
詩音さんは私に向き直って言う。
「何かあったら、すぐに飛んできますからね」
そして席を立ち、病室から出ていった――最後の最後まで、私を心配そうに、そして真和さんは憎たらしそうに見ながら。
さっきまで詩音さんが座っていた丸いすに真和さんは座る。
「まずは生還おめでとう。沙都子」
真和さんはそう言って懐から大小二つの封筒を取り出し、私の膝の上に投げる。
右は大きな茶封筒。左は小さな白封筒。
白いほうは、教団の赤い紋章――フードを正面から見たようなシンボルを刻んだ封蝋が施されている。
「好きな方から開け」
私は
A 茶色い封筒を手に取った。
B 白い封筒を手に取った。
540 :
417:2012/05/13(日) 07:56:12.54 ID:7CHaC1bv
今回はここまで。
ひぐらしのゲームでもあるような『選択肢システム』。
この先使おうかと思っていますので、今回はそのテストに使ってみました。
・・・まあどっちみち両方開けることになるので、今回はほとんど意味なしなんですけど(苦)
541 :
417:2012/05/13(日) 17:19:54.01 ID:7CHaC1bv
すいません、言い忘れてました!
(A)(B)どちらを選ぶかを書き込んでいただけると幸いです。
書き込みがなかった場合は、(A) のルートで進みます。
B
Bにもう一票
Bで
Bで
546 :
417:2012/05/24(木) 21:47:34.23 ID:4hiW7TOa
書き込んでくださった皆様、ありがとうございました。
Bのルートで進めさせていただきます。
なお、投票が偶数個だった場合は、最初に投票してくださった方の書き込みで
進めます。
続きを投下します。
547 :
417:2012/05/24(木) 21:48:35.34 ID:4hiW7TOa
ページ13
1983年10月27日(昭和58年) 午前11時10分
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生(療養中)
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
涼千会興宮病院5階 516号室
ペリ、という湿った音がして、封蝋が外れる。
はらりと手紙が開き、その文字を私の目に晒した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
通 知
北条 沙都子殿
今回の貴殿の背信行為に対し、懲罰査問会は以下の処分を下すものとする。
・涼千会興宮病院での15日間の謹慎
・アサシン教団訓練生訓練課程の再受講
・アサシン教団アサシン選抜課程の受講資格を8年間剥奪
・500字詰め原稿用紙20枚以上の反省文の提出(手書き)
1983年9月31日
アサシン教団パドローネ
懲罰査問会議長 田々峰 陽子
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
まあこうなるだろうなと思っていたので、別段驚きもしなかった。
どんな理由があれ、教団の掟を破り仲間に対して無駄なリスクを負わせたのは事実。
ならば、こういう処置も当然のことだ。
だからと言って、後悔や反省は微塵もないが。
むしろ自分が誇らしくさえあった。
ずっとずっと、梨花と故郷の敵を討つことを望んでいた。
そのためにあらゆる努力をし、いかなる辛酸や苦痛にも耐えた。
そして、それで得た全てを賭けて私は戦った。
その結果鷹野は死に、私は生き残った。
・・・まあ、途中偶然に助けられはしたが。
とはいえ、鷹野など所詮は氷山の一角。
「今回の件は鷹野が勝手に暴走して起こした事件なのだから、もう復讐は終わりだろう」?
何を言ってますの?
あれを引き起こしたのが鷹野だとしても、それに協力した者たちはいる。
そして協力こそしなくても、それに賛同した者たちも。
そして、その者たちを飼い慣らし使っている組織も。
そういうものものを、一つずつ、念入りに、じっくりと、爪の一枚さえ残さず叩き潰す。
私の戦いは、ようやく少しずつ動き出したのだ。
「・・・ククククク・・・」
唐突に耳に響いたくぐもった嗤いに、私はこちらの世界に引き戻された。
声の主は、言うまでもなく真和さん。
鼻から息を何度も短く吐き出しながら、声を出さずに笑う。
・・・つくづく陰性の形容詞が似合う人だな。そう思った。
「・・・お前、反省してないだろ?」。
548 :
417:2012/05/24(木) 21:52:21.53 ID:4hiW7TOa
!
「そ、そんな事ありませんわ。私は・・・」
「良い子ぶる必要はない。ホントのところはどうなんだ?」
「私は、本当に・・・」
「ふ〜ん・・・」
私のことを意外そうな目で見ながら、真和さんはあっさりと言った。
「オレがお前なら、反省なんてしないんだがな」
・・・え?
驚いた。
驚いたから、ボロが出た。
「・・・反省、してない。よな?」
暗く笑いかけられそう言われる。
ためらいながらも、首をわずかに縦に振った。
「・・・フッ、ハハハハハハハハハッ!」
呵呵大笑。
「え・・・いや、あの、真和さん・・・?」
「いいぞ、沙都子!掟だなんだに縛られて肝心な時に動けない閉鎖思考人間なぞ、修羅場じゃ糞の役にも立たんからな!
さすがはオレの弟子だ!!」
怒られるどころか、むしろ褒められた。
私は恐る恐る聞く。
「・・・真和さん、私を嫌いになりませんの?」
「何故だ?一人で勝手に突っ走った挙句に勝手に死にかけて、そのせいで教団に決して低くないリスクを負わせた上、
師匠までこっぴどく叱られるような事態を招いたからか?たかがその程度のやんちゃをオレが一々気にするとでも?」
嫌いにもならないし、怒ってもいないことは分かった。
でも――
真和さんはいつもより陽気だ。
無理して、ではなく本当に。
そんなに、私がしたことが愉快なのか?
そう思って聞いてみると。
「まあ、おかげでオレも危うく何かの処分を喰らうとこだったが、谷内がうまくとりなしてくれたからな。結果オーライだ」
処分!?
・・・そう。この時の私は愚かにも、『私が勝手にやることなのだから、二人に迷惑はかからないはず』と思っていたのだ。
訓練生の監督責任はその師にある。
訓練生が問題を起こしたなら、師にも責任が問われるのが当然なのだ。
しかしそのことに気づかない私は、真和さんにそのことを尋ねる。
「処分って・・・!?」
その問いには答えず、真和さんは呆れたような声で返した。
「それより沙都子、オレの心配してる暇あったら自分の心配したらどうだ?・・・一万字、かなりの拷問だぞ?」
「え?一万って・・・あ」
500×20=10000。
私に課せられた反省文だ。
「オレは6000字でさえ結構キツかったからな」
?
6000字って、ひょっとして・・・
「真和さんも、こういう罰を受けたことがあるんですの?」
真和さんは愉快そうに嗤って答えた。
「しょっちゅうさ」
――だから、私を許してくれたのだろうか。
それにしても、何なんだろう。
この、胸にこびりつく違和感は。
549 :
417:2012/05/24(木) 21:53:50.38 ID:4hiW7TOa
他にやらなきゃいけないこともあるから、オレはこれで行く。
園崎の娘はすぐ来るだろう。
その茶封筒にも、しっかり目を通しておけよ。
「・・・お前にとって実に興味深いもののはずだ。園崎の娘にとってもな。
オレが許可する。見せてやると良い」
そう言って席を立ち、真和さんは部屋を出ていった。
一人残された私は、じっと膝の上の茶封筒を見つめる。
今すぐ開けたい衝動に駆られるが、少し我慢。
それよりも、試しておきたいことがあった。
「すー、はー。すー、はー・・・んぐっ」
・・・・・・・・・・
!?
「まさか・・・!すー・・・はー・・・んく・・・うっ・・・!!!!」
・・・・・・・・・・
あの手この手で試した。
息を限界まで大きく吸ったり、力を少し緩めてみたり。
でも、聞こえるのはあの甲高い音ではなく、誰でも出るただの風が吹きつけるような音。
こうして、私はこれよりしばらくの間、『力』――後に《鷹の目》と呼ばれることになるそれ――を失うことになった。
幸運なことに、その不運を嘆く間も与えず詩音さんが入ってきてくれた。
私は顔に浮かんだ暗い表情をさっと吹き消し、笑顔を取り繕う。
「詩音さん!」
「沙都子!良かった。無事だったんですね!?何か酷いことはされませんでしたか?」
「酷いことって・・・誰にですの?」
「あのゴミム・・・こほん、相原さんにですよ!」
・・・・・・・・
真和さん、あなたは一体何をしたんですの?
まあ訊かなくとも想像はつく。
・・・失礼な話かもしれないが、真和さんの性格は、決していいとは言えまい。。
真和さんは冷静沈着過ぎるのだ。いついかなる時であろうと。
人間としてそれは美点であるように聞こえるかもしれないが、実際に周りにいたらと考えてみて欲しい。
・・・・・・ほら、嫌気がさしてきたでございましょ?
「? 沙都子、まだ体調が万全じゃないんですか?」
知らず知らずのうちにため息が出てしまった。いけないいけない。
「全然平気ですわ。詩音さん。・・・それより」
私は膝の上の茶封筒を手に取り、封を閉じている紐を解く。
「これ、詩音さんと見ると良いって言われてますの」
550 :
417:2012/05/24(木) 21:54:17.45 ID:4hiW7TOa
封を開けると、出てきたのは一枚の紙。
詩音さんは紙を手に取り、上下にさらっと目を通す。
が、すぐに表情が変わり、最初から精読し始めた。
「嘘・・・これは・・・」
驚き。
「何ですの、詩音さん?」
詩音さんは私を見て、渡そうかどうか逡巡する。
「――どうせ、いつか知ることですもんね」
それは、自分自身への言い聞かせか。
最後まで読んでから、詩音さんは意を決したように紙を裏のまま私に渡した。
まず気づいたのは、何かがクリップで止められているなということ。
一体どんなものなのかと、紙をひっくり返して表を見ると――
クリップで止められていたのは、写真。
おそらくはどこかの街――日本ではないどこかの――で隠し撮りしたのだろう。
薄めのサングラス。
黄色いリボンベルトが巻かれた赤い帽子。
白のビジネススーツ。
そして、白く整った横顔。
――これは、同じ人なんですの?
だって、この人はこんなにも冷たそうで、まるで人間味なんて――
もはや遠まわしには書くまい。
そこには、私の知らない知恵先生が写っていた。
――これは、一体どういうことなんですの!?
私は写真がついていた紙の方に目を移し、一心不乱に読み始めた。
551 :
417:2012/05/24(木) 21:58:50.74 ID:4hiW7TOa
人物情報
ID:JAP19048
氏名 ナジェーズダ・ヤロスラファ=ドラゴミーロフ
生年月日 1953/12/25 年齢 29
家族構成 父(死亡) ヤロスラフ・アーノルデヴィチ=ドラゴミーロフ
ソビエト連邦GRUスペツナズ中佐
母(死亡) 知絵瑠 優樹菜
ユキナ・ドラゴミーロフ
専業主婦
所属組織 ソビエト連邦軍参謀本部情報総局(GRU)
役職 南・東南アジア方面秘匿工作員(全権限凍結済)
階級 大尉(全権限凍結済)
経歴 1968年4月
GRU入局。
GRUスペツナズ養成コースに参加。
1968年12月
養成コースでの成績を買われ、特別コースに配属。
1970年4月
GRUスペツナズ入隊。南・東南アジア方面秘匿工作員に任命される。
以後の足取りは不明。厳しく尋問するも、黙秘。
1975年4月
雛見沢分校に「教師 知恵留美子」として赴任。
以後、同村で生活。
1983年6月28日
自宅に来た山狗・県道に配備された山狗より逃走。
交友関係について 詳細不明。現在調査中。対象者は黙秘。
状況 尋問には比較的素直に応じるも、重要な箇所に関しては黙秘。
なお、対象に対する身体的・性的拷問は禁じられている(1983年10月1日現在)
戦闘能力 GRUスペツナズ体力テスト 781点/800点 女性隊員中2位 全隊員中4位
戦闘テスト 793点/800点 女性隊員中1位 全隊員中3位
総合成績 女性隊員中1位 全隊員中3位
専門 破壊工作・諜報活動・暗殺
関与したものと思われる作戦 詳細不明。調査中。対象者は黙秘。
教団との関係 アサシン教団ソビエト連邦支部のアサシン3名の殺害容疑(動機は不明)
教団から聖務執行のため派遣されたアサシン7名の殺害
教団に対する妨害行為
現在、インドネシア方面へと逃亡したとの有力情報があるが真偽は不明。
現地のアサシンにより捜索が行われているが、未だ行方不明。
また、東西両陣営の諜報機関からも追跡されている模様。(特にGRU、CIAから)
聖務執行の際は、細心の注意を払うこと。
資料保管元
アサシン教団日本支部
552 :
417:2012/05/24(木) 21:59:40.43 ID:4hiW7TOa
知恵先生が?
あの優しくて芯の強い、それでいてどこか抜けている先生が?
みんなに愛されていた、まるで聖母のような先生が?
嘘ですわ。
こんなの嘘に決まってますわよ。
きっと、きっと真和さんのタチの悪い冗談に決まってますわ。
真和さん、本当は少し怒ってらっしゃるんですのよ。
だから、こんなイタズラを――
私は無意識のうちに手に力を込め、資料の端をくしゃくしゃにする。
嘘だ。嘘だ。嘘だ。
全部嘘に決まって――
「・・・子?沙都子!?大丈夫ですか!?」
「・・・はっ」
気づいたら、詩音さんは私の肩に手を置いて私を見ていた。
「急に具合でも悪くなったんですか!?すぐにナースコールを」
「だ、大丈夫ですわ、詩音さん!ただ・・・」
私は資料を膝の上に置き、少し深呼吸する。
「・・・少し、びっくりしてしまいましたの」
「・・・」
詩音さんは哀しい目をする。
「・・・わかります。沙都子やお姉に比べたらはるかにつきあいは短いですけど、私も一応知恵先生の事知ってますから」
それから、まだ信じがたいといった表情で資料を手に取る。
「これ・・・要は『知恵先生はソ連のスパイでした』ってことですよね?そういう荒事から一番縁遠そうな人なのに・・・」
「そうですわよね・・・いくらなんでもおかしいですわよ・・・」
実際、まだ三信七疑だ。
あの知恵先生が、暗殺や破壊工作を得意とする工作員だった?
しかも、もうアサシンを10人も殺した?
余りにも馬鹿げている。
現実的に可能かどうか云々の話ではない。
知恵先生が、人殺しなんか――
そこで、思い出した。
鷹野の幽閉先の家の玄関に倒れ伏していた、三人の男。
あれは、知恵先生の手によるもの。
それに、あの地下室で。
知恵先生は、あちこちに人の中身が散らばった部屋の中、(部屋の惨状には)顔色一つ変えずに私の手当てをした。
――つまり、ああいう場面には慣れっこということではないのか?
そう考えると、どんどん知恵先生が工作員であるという話にも真実味が出てくる――というより。
これは、教団の資料。
教団の資料=事実ではもちろんない。だが、それでも教団はかなりの情報収集能力を持っている。
実際、鷹野の居場所を突き止めた。
ならば、知恵先生は私がどう思おうと思うまいと――
ソ連の、スパイだったのだろう。
しかし、まだわからないこともある。
『権限凍結済』とあるが、知恵先生は何をしたのか。
そして、なぜ日本の雛見沢を選んだのか。
その答えを、私は詩音さんが去ったあとに部屋を訪れた知恵先生本人から聞くことになる。
553 :
417:2012/05/24(木) 22:00:03.36 ID:4hiW7TOa
今回はここまで。
wkwk
レナママこと竜宮礼子とアキヒトの不倫話見たいです。
声とか(目は写ってないけど)顔もエロそうなママンなので。
556 :
417:2012/06/17(日) 16:42:05.74 ID:dISocKVq
続きを投下します。
今回は少し短めです。
557 :
417:2012/06/17(日) 16:42:44.79 ID:dISocKVq
ページ14
1983年10月27日(昭和58年) 午後0時41分
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生(療養中)
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
涼千会興宮病院5階 516号室
「・・・それにしても、知恵先生が・・・」
詩音さんは未だに信じられないといった表情で、また書類を眺める。
「この紙っペラだけじゃとても信じないですけど、写真付きじゃ・・・
信じざるを得ませんよね」
詩音さんは持っていた書類を封筒に入れ、ベッドの横の棚の上に置く。
それからいそいそと家から持ってきたカボチャの煮付けを私の皿に盛り、代わりに病院食のキャベツの千切りを口に放った。
「ううう・・・詩音さあん・・・」
「そんな恨みがましい涙目で見たってダメですよ。偏食は体に毒なんですから」
「うううううう・・・」
味気ないキャベツの千切りでさえ、カボチャに比べると宮廷料理に見えてくるから不思議だ。
詩音さんの料理は美味しい。
詩音さんの好意を無にすることになる。
・・・分かってたって、食べられませんわ!本能的に体が拒否してますの!
ほら、ご覧くださいまし、このカボチャの周囲に漂う磁場を!
私だけでなくて、カボチャも食べられるのを拒否してますのよ!
私の箸とカボチャとは、まるで同じ極どうしの磁石を近づけた時のような感じ。
見えない何かの塊が、お互いが接触するのを拒否しているのだ。
「・・・私、少し傷ついちゃいますよ。そんなに私の料理ってマズイですかね?」
「カボチャに限っては、もはや兵器同然ですわ」
「そんな・・・ひどいですよ・・・グス、ヒック・・・」
詩音さんはうつむいてしゃくりあげる。
ひどく哀れに、悲しみに満ちて。
・・・この姿に騙されてはいけない。
詩音さんは、自分の料理がけなされたくらいでへこむほどヤワな女性ではないのだ。
しばらく冷たい目で見ていると、やがて「・・・チェッ」という小声が聞こえた。
「・・・やっぱ、もう通じませんか?」
「6回も騙されたんですのよ?もう騙されませんわ」
「ううむ、新しい手を考えなきゃですね」
人が悪そうな笑みを浮かべながら、詩音さんは頭の中で私にカボチャを食べさせる算段を始める。
止めても聞かないことは言うに及ばず。自然に諦めてくれるのを待つほかない。
・・・何であれ、残してしまうことには罪悪感を感じる。早めに諦めて欲しいところだ。
昼食を終えると、詩音さんは家へと帰っていった、
「本当は泊まり込んででも看病したいんですけど、今日はどうしても外せない用があるんですよ。
ごめんね、沙都子」との事だ。
詩音さんには詩音さんの生活がある。仕方ないことだ。
また明日と言って、私はベッドに倒れ込――もうとしたその直後、病室の扉がガラリと開いた。
詩音さんが何か忘れ物をしたに違いないと思い、キョロキョロと辺りを見回す。
――? 特に何もないようですけど・・・
私は詩音さんにそう言おうと思って、ベッドから身を起こす。
起きて暫くしたせいか、身が少し軽くなった気がする。
だからすぐに、入ってきた人物を確認できた。
一人は顔に袋をかぶせられ、手首には手錠をされている。
だから人相はわからない。でも服装でわかった。
知恵先生だ。
558 :
417:2012/06/17(日) 16:44:46.74 ID:dISocKVq
知恵先生を連行してきたのは吾郎さん。
声をかけようとした私を、吾郎さんは目で制止する。
そのまま知恵先生を押しながら、さっきまで詩音さんが座っていた椅子に誘導する。
「座れ」
知恵先生は言われるままに腰を下ろす。
吾郎さんは知恵先生の頭頂部に手をやり、一気に袋を外す。
「・・・ふう」
知恵先生が軽く息を吸う。ずっと袋を被せられていたのなら、空気も足りなかったのだろう。
吾郎さんは平坦な口調で告げる。
「30分後に迎えに来る」
今の吾郎さんの言葉遣い自体は真和さんに似ている。
だが、普段があの優しい口調なだけに、私の背中には少し冷たいものが走った。
「はい。分かりました」
対する知恵先生は、前までと――私たちの先生だった頃と変わらない感じだった。
「・・・いいね」
そんな知恵先生に苛立ったのか、吾郎さんの口調が感情を帯びる。
「何度も言ったけど、もし沙都子ちゃんに何かあったら、お前は死ぬ。
それだけじゃない。もしここから逃げようとしても、随所に設置されてるトラップがお前を殺す。
変なことは考えるな」
「ええ。分かっています」
「・・・なら良い」
そして吾郎さんは私を向き、静かな声で言う。
「沙都子ちゃんの為に、真和さんはかなり危ない橋を渡った。そのことだけは忘れないで」
「吾郎さ・・・」
吾郎さんは早足に病室を出、乱雑に扉を閉めていった。
吾郎さんはかなり怒っているようだった。
真和さんがああだったから、ひょっとしたら吾郎さんも・・・と、思っていたのだが。
現実はそう甘くない。
沈む気持ちを察してくれたのか、知恵先生が優しく話しかけてくれた。
「北条さん、体の方は大丈夫ですか?」
「ええ。・・・本当にありがとうございました。知恵先生がいなかったら、私・・・」
「そんなの良いんですよ。教え子を守るのは教師の勤めですから」
変わらない知恵先生の声に誘われるように、雛見沢での平和な日常が浮かび上がってきた。
559 :
417:2012/06/17(日) 16:45:34.12 ID:dISocKVq
4ヶ月――実際には1月寝ていたわけだから、3ヶ月。
時は、風のようにすぎていく。
夏は完全に終わり、秋。
初夏の異常な暑さから想像された程には、夏はさほど暑くもなかった。
平年よりやや暑いか、それくらい。
ひぐらしの声が絶え、つくつくぼうしの声も絶え。
残暑ももはや昔のことだ。
「・・・北条さん?大丈夫ですか?」
黙りこくってしばし思いに耽っていた私に、知恵先生は心配そうに声をかける。
「大丈夫ですわ」
無理に少し明るい声を作ったが、自分でもわかるほどに不自然だった。
「北条さん、無理は禁物ですよ。まだ完治したわけではないんですから」
「詩音さんも、そう言っていましたわ」
「詩音さん・・・ああ、園崎さんの妹さんですね?北条さんのこと、ずーっと心配していましたよ?」
体が持たないから休んだ方が良いって何度言っても、『沙都子が目を覚ますまでは』って言って・・・」
そうだったのか。
詩音さんに対する感謝の念が湧き上がってくる。
「・・・いいお姉さんを持ちましたね」
知恵先生が、穏やかで嬉しそうな声で言う。
「・・・はい」
血縁や一緒jに過ごした時間だけが、家族の条件というわけではない。
アサシンの教えでもあるし、また前述したように、私自身の考えでもある。
信念で、友情で、愛情で――人は、血以上のつながりを得る。
そう、まさに部活メンバーのように。
それを知っていたからこそ、知恵先生も詩音さんのことを『お姉さん』という呼び方をしたのだろう。
「・・・北条さん。ひとつ聞いておきたいことがあります」
「なんでございましょう?」
「園崎さんのことが、大切ですか?」
だから。
「園崎さんのことを、本当に愛していますか?」
知恵先生も、分かってくれると。
「?・・・知恵先生、急に何を「どうなんですか?」」
そう思っていた。
「・・・もちろんですわ。園崎さんは、私のねーねーですもの」
どんな犠牲を払ってでも復讐をしたい、『家族』の仇の酷い死に様が見たいという、私の気持ちを。
「・・・その言葉に、嘘はありませんね?」
「はいですわ」
そう思っていたのに。
「もし本当にそう思っているのなら、アサシンになるのはおやめなさい」
少し間を置いて、知恵先生ははっきりと言った。
560 :
417:2012/06/17(日) 16:46:09.59 ID:dISocKVq
・・・
・・・・・・え?
『ごめんなさい。私、うっかり聞き漏らしてしまいましたの。もう一度おっしゃってくださいませ?』
そう言おうと思ったが、それを封じるために知恵先生ははっきりと言ったのだと気づく。
と同時に、静かなパニックに陥った。
頭が急にかっと熱くなって、背から汗が吹き出す。
一応頭の中はある程度の冷たさを保っているが、完全に冷静な判断を下せそうにはない。
「・・・どうして」
私は、喉から感情をひねり出す。
「どうして、そんな事を言うんですの?」
理性喪失10秒前。そんな声色になった。
今のところ冷静だが、ちょっとバランスを崩せば感情が爆発しかねない。
「北条さん。あなたは・・・何の為にアサシンになろうとしているんですか?」
何の為?決まっている。
「復讐のためにですわ。当然でございましょう?」
「つまり、アサシン教団の掲げる『正義』のためにではないということですね?」
「ええ」
「だったら、なおさらお止めなさい」
知恵先生は厳しく言う。
怒っているのではない。心から私の身を案じての言葉。
それが分かるからこそ、余計に腹が立った。
「・・・暴力は、いけないからでございまして?」
「違いますよ、沙都子さん。そういう問題ではありません」
「ならなぜだと言うんですの?知恵先生、はっきりおっしゃってくださいまし」
「・・・」
知恵先生は私から視線を外し、私の心電図に目をやる。
ピ、ピ、ピ、ピ、ピ、ピという少し早めの心音が、私の心中を分かりやすく伝える。
知恵先生は、ずっとそれを見つめている。
知恵先生の言葉を待つのにも焦れた私は、知恵先生を急かそうとして・・・
気づいた。
知恵先生の、眼。
悲しみと、憐憫と、そして後悔とが入り交じった、その目に。
教師として決して雛見沢では見せなかった知恵先生の顔。
私の知らない顔。
私はその顔にしばし見とれる。
――綺麗だな。
なぜか、そんなことを思った。
そんな風にしているうちに、気づけば心電図の電子音はまた元の速さに戻っていた。
知恵先生はゆっくり目を閉じ、ぽつりと言った。
「・・・たとえ復讐を成し遂げられても、誰も幸せにはなれないからです」
561 :
417:2012/06/17(日) 16:48:18.03 ID:dISocKVq
今回はここまで。
乙ですん
あげ没ネタ
あの忌まわしい事件から30年。
鹿骨市雛見沢……かつて雛見沢村と呼ばれたところ。
過疎が進んで廃村寸前となっている。
ある日、一人の少年が村を訪れた。
名前は前原圭太。
そう、前原圭一とレナの息子だ。
やがて彼は……複雑な事件に巻き込まれる……
564 :
名無しさん@ピンキー:2012/07/21(土) 20:18:41.56 ID:/XlJJGKl
wowwowの一挙放送が楽しみでたまらん
実写もある意味楽しみです
565 :
417:2012/08/11(土) 23:29:50.53 ID:GQYGQIXz
お久しぶりです。お待たせいたしました。
続きを投下します。
566 :
417:2012/08/11(土) 23:30:29.65 ID:GQYGQIXz
ページ15
1983年10月27日(昭和58年) 午後1時10分
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生 (療養中)
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
涼千会興宮病院5階 516号室
「・・・分かったような口を聞かないでくださいませ!!!」
理性喪失。
知恵先生の諭しを、私は先生の優しさゆえの戯言だと判断した。
「知恵先生に、私の気持ちの何がわかるって言うんですの!?みんな、みんないなくなってしまって・・・
圭一さんも、梨花も、レナさんも、魅音さんも、みんな!!」
「・・・」
知恵先生は黙ってただ耳を傾けている。
「私は、私は絶対に許しませんわよ!!何年かかってだって、あいつらを、あいつらをこの手で引き裂いてやりますですわ!!!」
「・・・」
知恵先生は、うつむいてじっと何かを深く考えていた。
そして、顔を上げて私の目を見る。
「・・・北条さん、さっき『分かったような口を聞くな』って、そう言いましたよね」
言った。
言いましたとも。
「確かにほとんどの人には、あなたの辛さや悲しみを本当に理解することはできないでしょう」
そうですわ。その通りですわ。
「それは、・・・きっと、自分以外の一切を奪われるという経験をする人がまずいないから。
だから、頭で分かっても、心の底から共感できない。実感できない」
!
・・・それは・・・
そうかも知れない。というかそうだ。
「逆を言えば・・・そういう経験をした人なら、あなたを理解できる。心の底から共感できる」
そういう・・・ことになる。
でも、だからどうだと言うのか。
知恵先生は、そんな経験などしたこともないでございましょ。
だからこそ、さっきのような綺麗事が――
「わたしがスパイの道を志した理由、北条さん分かります?」
そんなの知るか。
だが、そう答えてはあまりに知恵先生に無礼なので、ぶっきらぼうに答えを返した。
「自分の国に尽くしたかったからじゃございませんの?それかお金のためとか」
その時知恵先生が私に向けた表情を、私は未だに的確に一言で言い表せない。
「違いますよ」
あんなにも哀れで、力なく、それでいて綺麗な微笑みは、その先もそうそう見なかった。
「わたしがスパイの道を進もうと思ったのはね、」
ただただ、全てが憎かったからですよ。
567 :
417:2012/08/11(土) 23:31:50.91 ID:GQYGQIXz
憎・・・かった?全てが?
そこで、ようやく私は「もしかして」と思った。
「・・・わたしの場合は、相手が誰かもわかりませんでした」
考えれば、なんで気づかなかったのか恥ずかしいくらい単純なことだった。
「分かっているのは、走り去っていく後ろ姿だけ」
知恵先生の発言をつなげれば、分かったはずだった。
「顔も名前も性別も、何もかも分からない。だから目的を果たすためには、可能な限り
多くの情報を集める必要があったんです」
さっき先生が言ったことが、先生の持論なのだとしたら。
先生が私を説得するためにここに来るはずがない。
温かく育った者の言葉など今の私には届かないと知っているからだ。
ということは――
「多くの情報に接する機会のある仕事で、なおかつ荒事にも強くなれる職業――
それが、スパイだった。それだけのことです」
先生は、私と同じなのか。
「体を鍛えて、GRUに見初められるまで2年。GRUの中でさらに訓練を重ね、実戦に出られるようになるまで2年。
・・・目的を果たすため必要な情報集めに、約5年(勿論任務の間を縫ってですが)」
先生が表情を吹き消す。
「脇目もふらず進み続けるうち、気づけば私自身の意思も目的に囚われてしまっていました」
先生の言葉は淡々とはしていない。自然な緩急や強弱がつく。
おそらく、私に口で伝えながら、自分でも思い出しているのではないだろうか。
今、自分の教え子が歩もうとしている道。
かつて自分も歩んだ道を。
「そうとも知らず、わたしは進み続け――相手を突き止めました。
だから、『行動』に出ました」
568 :
417:2012/08/11(土) 23:33:45.46 ID:GQYGQIXz
「・・・そして、わたしは人生の目的を果たしました」
知恵先生はベッドの脇の棚の上の花を見やる。
名前は知らないが、黄色い可憐な花だ。
「そうしたことでわたしは職を追われ、命さえ狙われる羽目になりました。
でもそんなのは些細なことです。殺し屋が来たってわたしなら返り討ちに出来ますし」
先生の資料を思い出す。
腕利きなんていうレベルじゃない戦闘能力。
日々訓練を積んでいる屈強なアサシンを何人も返り討ちにしているところからも、それは伺える。
「それより、何より問題だったのは・・・全てを終えたのに、何も変わらなかったこと――いや、変えられなかったこと
と言ったほうがいいでしょうね」
何を?
「全てを終えれば、何かが変わるんじゃないかとずっと信じていました。過去に決着をつけて、前に進めるんじゃないかと」
私は?
私はどう思っている?
どういう思いの下、どういう期待の下に復讐を?
「でも、何も変わらなかった。後にはただ、生きる理由をなくした『ナジェーズダ・ヤロスラファ=ドラゴミーロフ』の
抜け殻だけがあった」
知恵先生が、初めて自分の本名を口にする。
「逃亡先のバンコクの安モーテルで、わたしは自殺を図りました。首を吊ろうとしたんです。
・・・でも、失敗しました」
虚ろな目をして、小汚い粗末な部屋の中で、首に縄をかけ椅子を踏み外す先生。
少し前なら想像もできない光景だったが・・・あの冷たい知恵先生の写真を見たあとだったから、ぼんやりと脳裏に浮かべるくらいはできた。
「死ぬのを恐れて、半端な真似をしたのではありません――わたしは、十分な強度をもった縄を選び、しっかりと固定された場所に縄をかけ、
勢い良く椅子を蹴り倒したんです。・・・なのに」
知恵先生は首を自分で前から絞めるように手を当て、少し苦しそうな表情をしながら続ける。
「踏み外した瞬間、わたしの体は確かに宙に浮きました。視界が白く染まり、これが『死』というものなんだなと感じたんです。
ですがその次の瞬間には、わたしは床に無様に落ちてしまいました。縄をかけた場所が、天井の固定部ごと落ちたんです」
言うまでもなく、知恵先生は横綱体型ではない。
スレンダーで、無駄な贅肉は一切ない体だ。
――にも関わらず落ちた。
十二分に『死ねること』を確認したのに。
569 :
417:2012/08/11(土) 23:34:53.78 ID:GQYGQIXz
「部屋には落下の衝撃で舞い上がった埃が充満していました。わたしはと言えば――首を少し痛めただけ。
今頃は頚椎を破壊された私の亡骸がぶら下がっているはずだったのに、です。
わたしの魂は生きる気なんてもうなかったくせに――体の方は、首を吊る程度ではへこたれなかったんですよ」
先生は首から手を外す。
首には、うっすらと赤い跡が残っていた。
「その時、わたしはやっと気づいたんです。わたしを救ったのは――殺されてしまった両親なのではないかと」
!!!!
両親――!!
そうか。そうだったのか。
ようやく腑に落ちた。
私の復讐は、梨花と滅びた故郷のため。
知恵先生の復讐は、自分の最愛の両親のため。
「わたしが死ねば――二人の遺伝子が、思い出が。『二人が確かに存在した証』が、この世から消え去ってしまう。
何より二人が、娘が自分たちのもとに来ることを望まなかったのでは無いか、と」
都合の良い妄想だと切り捨てるのは簡単だ。実際にそうなのかもしれない。
でも・・・今の話を先生自身の声で直接聞いた私には、どうしてもそうは思えなかった。
「・・・それで、わたしは生きることに決めた。復讐のためでも国のためでもなく、自分のために。
だから、今まで住んでいた世界から逃げ出して日本に来たんです」
そして、教師に。
「名前や戸籍を手に入れるのは簡単でした。その流れの中で、偽造の教員免許も入手しました。
自分で言うのもなんですが、記憶力には割と自信があるんですよ、わたし。だから、必要最低限のことは覚えられました。
・・・とはいえ、必要最低限のことだけで都会の進学校に務めるのなんて無理ですから、田舎の小さな学校へ潜り込もうと思ったんです」
「・・・それが、雛見沢だったんですのね?」
先生の話に引き込まれていたので、口を開くのも忘れていた。
気がついたら、激情なんていう感情は私の中から消失していた。
「ええ。ちょうど当時の雛見沢はダム戦争真っ只中でしたね。国からの嫌がらせの一環として、分校は潰されかけてました。
ちょうど『誰でもいいから先生を!!』という声が湧き上がっていたところでしたから、身元調査もさほど厳重にはされませんでした。
・・・不愉快な気持ちになるかもしれませんが、わたしが雛見沢を選んだのは単に一番都合が良かったからなんです」
570 :
417:2012/08/11(土) 23:35:29.15 ID:GQYGQIXz
特に不愉快にはならない。
むしろ、この時だけは少しだけダム戦争に感謝したい気分になった。
結果的に、ダム戦争があったおかげで、私は知恵先生と出会えたのだから。
「先生は、どうして教師として生きようと思ったんですの?」
「・・・そこで、カレーライスが出てくるんですよ」
!?
まさか、この会話で『カレーライス』という単語が出てくるとは予想していなかった。
だがそれで、シリアスな空気は少し和んでくれた。
私は思わず笑ってしまう。
先生もクスクス笑う。
「カレーはインドにいた頃からずっと目にしてましたし、何度となく食べました。でもその頃は、カレーはただの食料だったんです。
・・・変わったのは、日本に来てからです」
そういえば。
前に魅音さんが部活の場で、「インドのカレーと日本のカレーは全く別物なんだってさ」と言っているのを聞いた覚えがある。
それだろうか?
そう聞いてみると。
「ふふ、確かにそれもありますね。でも違います。一番大きかったのは・・・」
店に来ていた子の、笑顔ですよ。
「笑顔?」
私は思わず聞き返す。
「ええ。カレールーとご飯粒を頬につけながら、ニコニコと幸せそうに笑って。それを見たその子のお父さんやお母さんも、みんな笑って。
・・・わたしにとってのカレーライスは、『象徴』なんですよ。子供の頃に失ってしまった、家族の幸せの」
知恵先生は一呼吸おいて続ける。
「わたしはもう失ってしまったけれど・・・他の子が持っている幸せなら守れるかもしれない。わたしと同じ運命を辿る子を、
一人でも減らせるかもしれない。そう考えて教師になったんです。
・・・そして8年間、わたしは雛見沢分校の教壇に立ち続けました」
571 :
417:2012/08/11(土) 23:36:43.03 ID:GQYGQIXz
知恵先生の、知られざる過去。
私は言葉も出ず、ただ圧倒されていた。
十数分前の自分を呪う。
知恵先生は、単なる優しさで言ったのではない。
自分の経験をもとに、教え子に忠告してくれていたのだ。
すぐにでもさっきの非礼を詫びたい気分になった――忠告を受け入れるかどうかは別として――が、その前に知恵先生が話し始めてしまった。
「教え子は絶対にわたしが守る。たとえこの身が焼かれようと。どうせ一度捨てた命、何を惜しむことがあろうか。
初任日にそう自分で決め、以来ずっとその誓いを守ってきました。
・・・去年だってそうでした」
去年。
意地悪な叔父さまと叔母さま。みんなから追い詰められ、私からも追い詰められ、擦り切れてしまったにーにー。
「北条さんの叔父と叔母があなたたち兄弟を追い詰めていると知った時、わたしはすぐ計画を立てました。
仕事柄、人の殺し方と『後始末』のやり方は熟知してましたし」
一瞬身震いする。そして、目の前の女性が恐ろしくなる。
だがすぐに、そんな気持ちも消えた。先生が私達兄妹を思いやってくれていたのが伝わったから。
「でもわたしが手を下す前に、あなたの叔母は誰かに殺されてしまった。叔父も逃げ出し、雛見沢から消えた。
・・・そしてそのすぐあと、あなたのお兄さん。わたしの大切な教え子までも、消えた」
知恵先生は、申し訳なさそうな表情をする。
「わたしが手を下すのが、あと一日早ければ。もしかしたら「やめてくださいまし、先生」」
私は遮る。
「そんなの、知恵先生が謝ることではありませんわ。それに、『殺さなかったからごめんなさい』なんて・・・
何か、おかしいような気がしますわ」
「・・・」
知恵先生は、私をどこか安心したような目で見る。
リアクションがおかしい気がして、私は訊く。
「・・・何なんですの?その表情」
「いえ・・・少し安心しまして。沙都子さんが、まだアサシンに引きずり込まされてなさそうでしたから」
?
引きずり込まれる、とは、また物騒な。
「何だか、また随分キツイおっしゃりようですわね。『引きずり込む』だなんて」
そう冗談めかして言ったら。
572 :
417:2012/08/11(土) 23:37:39.98 ID:GQYGQIXz
・・・あれ?
私、いま失言してしまいましたの?
何だか、部屋が一気に寒くなった気が・・・
「・・・沙都子さん、もう一つ忠告しておきます」
私の心臓が波打つ。
・・・この数秒の間に、知恵先生はどこに行ってしまいましたの?
そんなことを思った。
さっきまでの、温和で思いやりのある優しい声ではない。
その声色はまるで、冷たい鋼鉄の刃。
かすかに足が震えるのを感じながら、私は知恵先生――いや、ナジェーズダ・ドラゴミーロフの言葉を聞いた。
「どんなにフレンドリーな態度であなたに接してきたとしても、アサシンは、アサシンだけは、信用してはいけません」
「どう・・・してですの?」
口の中で何度も唾を作って、どうにか水分を確保して訊く。
「・・・平然と嘘をつき、ためらいなく人の心を弄び、人の命を軽々と奪い、人の幸せを易々と踏みにじり、
それでいて何の良心の呵責も感じない。それが、あのけだものたちだからです」
不覚にも安心してしまった。目の前の女性の声が、非常に厳しく冷たいものでありながらも、
私のよく知っている先生のものだったから。
先生は滅多なことでは怒らなかったが、その分怒ったときはこの世の終わりかと思うほどの迫力があった。
しかし、分校で私を震え上がらせたあの怒りすら、知恵先生にとっては第一形態に過ぎなかったのだ。
・・・それにしても。
アサシンを、『けだもの』とは。
スパイ時代に、何かアサシン絡みでよほど嫌なことがあったのだろうか。
沈黙が場を支配する。
しばらくして、唐突に先生が手を伸ばし、私の頬を包んだ。
「!・・・先生?」
くい、と力を入れられ、私の顔が先生の方に向けられる。
手の暖かさと柔らかさと、わずかに頭に伝わる圧迫感。
その全てが心地よかった。
「・・・沙都子さん」
初めて明確に意識する。
先生が、私を名前で呼んでいることを。
「あなたの癒されない辛さ、苦しさ、・・・そして、底のない憎しみは痛いほど分かります。
でも、それを消そうとしても、敵の血で癒そうとしても、・・・もう絶対にできないんですよ」
先生の必死の思いが伝わってくる。
――お願い、分かって。お願いだから、わたしと同じ道を歩まないで。
573 :
417:2012/08/11(土) 23:38:55.15 ID:GQYGQIXz
「今は全てを失ってしまった気分でしょう?でも――それは間違っています。あなたには、まだいるではありませんか。
あなたを心から愛してくれる、素晴らしいお姉さんが」
先生の顔が近付く。
「あなたの仲間が、あなたに無慈悲で冷酷な殺人気になってほしいと望むと思いますか?」
知恵先生の手がスライドし、私の体を滑る。
頬から首へ、方へ、腕へ、・・・そして、両手で止まり、私の手を包み込む。
「今なら、まだ引き返せます。・・・お願いします」
「アサシンと、縁を「それ以上言ったら、殺す」」
先生の声を、怒りに震えた声が遮った。
声のした方向を見ると――
いつの間にかドアを開けて、今にも引き金を引きそうなほど殺気の篭った目で知恵先生を見据える吾郎さんの姿があった。
574 :
417:2012/08/11(土) 23:42:24.46 ID:GQYGQIXz
今回はここまで。
いずれTipsなども追加したいと思うのですが、やはり保管庫に
入れる際に一緒に保管庫に直接入れるべきなのでしょうか?
ご意見いただけますと幸いです。
今回もgj
ここで投下してもいいんじゃないかな。ただ、容量には気をつけないとだけど
576 :
417:2012/08/15(水) 16:20:18.98 ID:dllXRChu
>575さん
コメントありがとうございます。
そうですか!それでは、ここで投下させていただきたいと思います。
絵羽〜
578 :
名無しさん@ピンキー:2012/09/17(月) 17:30:32.72 ID:3xEtdV2N
保管庫行ったらオムツssが
規制解けた
ベアトリーチェによる規制発動
傷口を朱志香に舐めさせる偽嘉音って有りか?グロエロで辻褄合わないけど
ありまくり
保守
584 :
名無しさん@ピンキー:2012/11/16(金) 02:59:23.83 ID:bt3b241H
戦人「復唱要求!黄金の魔女ベアトリーチェは目隠し鼻フック・ギャグボール・さらにはいやらしい格好で縛られてる癖に
アナルにバイブを突っ込まれ後ろから獣のように犯されながらケツぶっ叩かれて喜んでイキ狂ってる変態マゾ便器である!!オラッ!!きたねー汁体中から出してよがってね−で言えっつってんだよこの雌豚!!!!」パンパンバシバシパンパンバシバシパンパンバシバシパンパンバシバシ
ベアトリーチェ「おおおお!!おぼおおおおお!!ぼおおおお!!おおおお!!おおおおおおおおぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」ブシャッブシャシャ ブシャーーーブシャーーーーー
585 :
417:2012/12/01(土) 22:47:24.31 ID:UQ/2zM1F
大変お待たせいたしました。
続きを投下します。
586 :
417:2012/12/01(土) 22:48:13.58 ID:UQ/2zM1F
ページ16
1983年10月27日(昭和58年) 午後1時23分
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生 (療養中)
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
涼千会興宮病院5階 516号室
「まだ少し時間はあるはずですが」
知恵先生は首だけ90度回して、横目で吾郎さんを見るようにしながら言った。
「なぜもういらしたんです?」
喉の奥から舌の先まで凍てつききったような声で。
「・・・面会は終わりです」
しかし、対する吾郎さんの声も、負けず劣らず怖かった。
知恵先生と同じような調子ではあるが、温度が全く違う。
熱い。
声の隅々にこもったそれは憤怒か、それとも憎悪か。
普段から大人しくとても優しい人だから、吾郎さんが本気で怒ったところはあまり想像できなかったのだが。
「なぜです?」
だが、知恵先生の声はあくまで平坦だった。
「20分、という約束だったはずですが」
「確かに、そういう約束でした。でも、・・・もう違います」
「一方的に約束を反故にされると。そういうことですね?」
「原因を作ったのはあなたです」
一瞬驚いた。
当然『お前』と呼ぶものと思ったのだが。
「わたしが何かしましたか?」
「・・・まだ、わからないんですか?」
吾郎さんはもう爆発寸前だ。
「ええ」
「そうですか」
吾郎さんはゆっくりと知恵先生に近づく。
知恵先生は、依然として体を動かさない。近寄る吾郎さんを、ただ横目で見据える。
「あなたは、僕の家族を汚した」
吾郎さんの怒りに満ちた声。
どちらかといえば高めの、少年と青年の入り混じったような声。
「ただ殺すのみならず、兄弟を――自由のために命を賭して戦う同胞を侮辱したんだ」
右こぶしがぐっと握りしめられ、関節が鳴る。
「そして、今――あなたは沙都子ちゃんを言葉巧みに操ろうとしている」
「操る!?」
突沸。
知恵先生の大きな声が響く。
知恵先生はとうとう立ち上がり、吾郎さんを真っ向から見据えた。
「散々御託を並べた挙句、『操る』ですって!?
一体どこの世界に、自分の生徒を洗脳するような教師がいるんですか!?」
「Я знаю все, Драгомиров!」(全部知ってるんだ、ドラゴミーロフ!)
突如として言葉が変わった。
意味は分からないが、アクセントは流暢な感じだ。
「Когда вы были шпионом, я знаю, что вы были хороши」(スパイだったころのあなたが、何を得意としていたか)
知恵先生は瞠目する。
ここで祖国の言葉が出てくるとは思わなかったからだろう。
「・・・あなた、なぜ」
知恵先生の声を遮り、吾郎さんはぴしゃりと言う。
「いずれにせよ、もう面会は終わりだ」
吾郎さんは羽織っていたカーディガンの懐から布袋を取り出し、乱暴に知恵先生の頭にかぶせ――ようとした、その瞬間。
587 :
417:2012/12/01(土) 22:49:03.71 ID:UQ/2zM1F
「山本、やめろ!」
真和さんの、大きくはないが鋭い声が飛んできた。
吾郎さんはびくっとして振り返る。よっぽど驚いたのだろう。
「え、・・・佐原さん!?どうしてここに・・・」
佐原?
あ、そうか。真和さんの偽名でしたわね。
吾郎さんの質問には答えず、真和さんは吾郎さんに近づき、布袋をむしり取った。
そして、一言。
「アホ」
「え」
あ。
前にも見た目ですわ。
私がセーフハウスに匿われた初日、吾郎さんがアサシンについて話しすぎた時見せた目。
ただあの時よりは、怒りの占める割合が勝っているようですが。
「一度約束したなら、きっちり守れ。20分は、沙都子と話させてやるんだ」
「佐原さん!?」
吾郎さんの怒りは、真和さんに向かう。
「佐原さん、この女の味方をするんですか!?この人は「こいつが何であろうと」」
真和さんは言葉を遮る。
「こいつが与えられた時間をどう使おうが、それはこいつの自由だ。もともとこいつが
オレたちに悪印象を抱いてることは知ってただろう?」
吾郎さんが、怒った顔で真和さんを睨む。
だがその視線を叩き切り、真和さんは知恵先生の方を向いた。
「いや・・・悪印象、なんてものじゃないか」
知恵先生は能面のような無表情。
真和さんはしばらく視線を交錯させる。
沈黙を切ったのは真和さん。
「――何か、妙だなとは思ったんだ」
真和さんが、着ていたパーカー(緑色の無地)の内ポケットからクリアファイルを取り出す。
中に入っていたのは4枚のコピー用紙。
「アンタのことをもっと探ろうと、ソビエト支部に連絡を取った。・・・そしたら、これが渋る渋る。
資料提供から聞き込みまでな。何度となく繰り返し電話して、やっと仕入れたのがこれだ」
一番上。
「まずはアンタ。ナジェーズダ・ヤロスラファ=ドラゴミーロフ。中身は日本支部のとそう変わらなかった。
・・・だが、一か所だけより細かく書かれていた箇所があった。何だと思う?」
一枚めくる。
「アキム・フォミン」
知恵先生が、おや?という表情になる。
砂漠にスポイトでたらした水のような薄さだが。
もう一枚。
「ブラート・フィンコ」
最後。
「レフ・コブリン」
そして、私の膝に紙を放る。
反射的に手に取ったが、ほぼロシア語。すぐ読むのをあきらめる。
一番上には、でかでかと赤ハンコ。
[погиб в бою]
どういう意味なのだろう?
「・・・懐かしい名前ですね」
知恵先生が、初めてアサシン相手に小さく笑った。
「そうだろ?なんせ、アンタが殺した最初のアサシンなんだから」
588 :
417:2012/12/01(土) 22:50:05.41 ID:UQ/2zM1F
!
ということは――
知恵先生の資料を思い出す。
『アサシン教団ソビエト連邦支部のアサシン3名の殺害容疑(動機は不明)』
その3人が、それか。
真和さんは続ける。
「なんでこいつらの資料までわざわざ渡してくるのか、最初は理解できなかった。でも、すぐわかったよ」
「・・・」
「そりゃ、ソビエト支部も伏せたいだろうな。こんな事」
こんなこと、という真和さんの言い方に、知恵先生は一瞬驚いた顔をする。
「・・・あなたは、身内を――アサシンを庇わないんですか?」
「庇うさ。庇うに足る理由があればな」
「・・・驚きましたね。アサシンは、何が何でも非を認めないものと思っていましたが」
非?
「・・・正直、さ」
真和さんが知恵先生に一歩近づく。
「アンタはそんなの嫌なのかもしれないけど、同情した。アサシンを憎悪する気持ちも、よく分かった」
「・・・」
知恵先生が不可思議なものを見る目で真和さんを見る。
私は真和さんに訊く。
「真和さん、どういう・・・?」
「簡単ですよ」
質問には、知恵先生が答えた。
「私のお父さんとお母さんは、アサシンに殺されたんです」
衝撃。
吾郎さんは、驚いて口を半分開ける。
「それ、って・・・」
知恵先生の両親は、悪人だったのか?
でも、さっきの資料にはそんな事・・・
「真和さん・・・どういう事なんですの?」
私が訊くと、真和さんは逆に私に問うた。
「・・・沙都子、『三戒』覚えてるか?」
「え・・・ええ」
「言ってみろ」
「はい、・・・えっと」
589 :
417:2012/12/01(土) 22:50:45.12 ID:UQ/2zM1F
汝、己が刃、無垢なる羊に振るうことなかれ(罪のない人は傷つけるな)
闇に生き、光に奉仕する。そが我らなり(アサシンの存在を表にさらすな)
汝、いついかなる時も、友を陥れることなかれ(仲間を裏切るな、危険にさらすな)
私が『三戒』を諳んずると、真和さんは言った。
「さっき読み上げたこの3人は、そのうちの1つ・・・『罪のない人は傷つけるな』を破った」
「ということは」
『三戒』――アサシンの、最も重要な掟。
吾郎さん曰く、その罰は死。
「粛清されるはずだった奴らが、どういうわけかは分からないが生き延びた。で、この先生に殺られた」
「でも・・・それっておかしくありませんの?だって、何もしていない人は傷つけてはならないって」
破る=死という掟を、なぜ自分から破るのか。私には理解できない。
知恵先生が言う。
「沙都子さん。人間は、自分の欲望のためなら、大概のことは出来てしまうものです。
欲望、というのは、何もお金に限った話ではありません。
神の教えを広めたい――あるいは、神に敵対するものを滅したい。
自由を守りたい――つまりは、不自由を強いるものを滅したい。
そういう感情も、立派な『欲望』です」
二つ目の例は、明らかにアサシンへの皮肉だ。
吾郎さんが口を開く。
「その三人は、どうしてあなたの家族を襲ったんだ?」
「・・・」
知恵先生は答えない。
「あなたの家族に、何か恨みでも?」
「違います」
「では、なぜ?」
知恵先生はしばらく黙ってから、吐き捨てるように言った。
「・・・お金ですよ」
「え・・・!?」
アサシン寄りの立場に立っていた、吾郎さんも絶句。
「お金って・・・そんな」
「あなた方が支給する活動費を懐にしまうだけでは物足りなくなったんでしょう。あいつらは。で、物足りない分は
赤の他人の財布で補填することにした。まずは恐喝、次に空き巣。そして――強盗」
知恵先生の表情が憎悪に満ちる。
怒りに打ち震えた声で、知恵先生は言った。
「あいつらは、私たち家族の家に押し入り、まず一階の居間にいたお母さんに金のありかを聞いた。お母さんは、きっと答えなかったんでしょう。
で、騒ぎを聞きつけて二階の書斎から降りてきたお父さんも脅した。ところがお父さんは答えず――逆に反撃しようとした。冷静さを失った誰かが、
最初にお父さんを撃ち殺した。叫び声をあげたお母さんも、その直後に射殺。その後、詰められるだけ金品を詰め込んで、逃げた」
真和さんが無神経ともいえるほど直球で訊く。
「なぜアンタは生き残った?偶然出かけてたのか?」
おそらく、これが着火したのだろう。
「ええ・・・出かけてましたよ?」
知恵先生の冷静さもここまでだった。
「お父さんの誕生日プレゼントを買うために!!!」
590 :
417:2012/12/01(土) 22:51:30.28 ID:UQ/2zM1F
「人間にもいろいろいるように、アサシンにも色々といる。
無論、忠実に掟を守り、自由を守るためにのみ自らの力を使うという者が大半だが、
中にはそうじゃない奴もいる。己の技を、己の欲のためだけに使う輩もいる。
そういう奴らにとって、掟なんてのはただのお飾り。気になんてしない。
・・・そういう奴らを抑止するためのものが、掟だっていうのにな」
消灯時間はもう間近。
外はもう真っ暗だ。
知恵先生はもう帰った。
『今日は、見苦しい姿を見せてしまいましたね』
いえ、そんな・・・お気になさらないでくださいまし。
『あの、沙都子さん・・・』
はい?
『また、会いに来ても良いでしょうか?』
・・・もちろんですのことよ。知恵先生。
帰り際、吾郎さんは知恵先生に手錠もせず、袋を被せようともしなかった。
あの、吾郎さん。
『・・・何?沙都子ちゃん』
あの・・・本当に、ごめんなさい。
何が?
真和さんに、迷惑をかけてしまったこと?
そうかもしれない。でも、確信できない。
はっきりとは分からなかったが、とにかく私は、吾郎さんに謝らなければと思ったのだ。
『・・・いいよ。僕も、ごめんね』
何が?
きっと、吾郎さんも分からなかったと思う。
吾郎さんには、謝る理由なんてもともとないのだから。
でも、きっと吾郎さんも謝らなければと思ったのだ。
・・・いいですわ。
ともかく、吾郎さんも許してくれた。
それだけで十分だった。
「・・・知恵先生は、どうなってしまうんですの?」
『聖務執行』『細心の注意』『東西両陣営からの激しい追跡』
きっと、ただでは済ますまい。
訊きたいことを一通り聞いたら、殺してしまうのか。
それとも、知恵先生の身柄が欲しい組織に引き渡してしまうのか。
もし、そうなら。
・・・そうなら、私はどうするんだろう。
知恵先生には、絶対に行ってほしくない。これ以上、親しい人が消えるのはごめんだ。
でも、もし知恵先生を助けるために行動すれば、私が『東京』に復讐する機会はなくなる。
「順当にいけば、徹底的に尋問した後葬ることになる」
あまりにあっさり言うので、私は思わず抗議の声を上げようとした。
「そんな「やれるだけのことはやってみる」」
591 :
417:2012/12/01(土) 22:52:03.79 ID:UQ/2zM1F
!!
「やれることって・・・」
言って、改めて思い出す。
そうだ。真和さんは、第1級アサシンなのだ。
「真和さん」
「言っとくが、いくらオレが第1級アサシンだからって、聖務執行を止めるのは厳しいぞ」
そう言い、真和さんは壁にもたれた。
「最初の三人に関しては、原因が当人とそういう奴らを管理しきれなかったソビエト支部の責任ってことになるかもしれない。
だが、その後の七人は完全に知恵先生の責任ってことになるだろう。
仮に執行を止めたとしても、何らかのダメージは覚悟してもらわなきゃならん」
「何らかって?」
「指七本切断、とか、幽閉700年、とか」
若干伸びをしながら怠そうに言う。
「そんな!!」
「何が『そんな』だ。日本だって、三人殺せばまず死刑だろ?」
考えれば当然の話。
だが、受け入れられるわけがなかった。
「それに、谷内が協力してくれるか・・・」
「吾郎さん?吾郎さんが、どうして?」
「・・・お前の懲罰査問会の時、オレの台本作ったのは谷内なんだよ」
「えっ?」
びっくりして、素っ頓狂な声を上げてしまった。
「オレは実戦は得意だが、どうもデスクワーク系には疎くてな。あいつ、そういうの得意なんだ」
意外や意外・・・と思いかけて、思い出す。
そういえば真和さんは、支部への定例報告書を全部吾郎さんにやってもらっていた。
弟の宿題を代わりにやってあげるお兄ちゃん、みたいな光景ですわね。
そう言ったら、真和さんにちびた消しゴムを投げられた。
「査問会の連中は見事に言いくるめられた。おかげでオレとお前の首はつながったって訳だ。
ただ今回は・・・」
「・・・谷内さん、やっぱり怒ってらっしゃるんですの?」
「さっき見た感じだと、最初ほど怒っちゃいなかったようだ。でも、まだアサシンを侮辱したことは許せない
って感じだったな」
「そうですか・・・」
私は肩を落とす。
「オレがにできること――それは谷内が作った言葉を、立場を利用して上にたたきつける。
そしてそのために、何とか吾郎を説得する。それだけだ」
そういうと、真和さんは壁から離れ、私の横まで来る。
「まあ、何もすぐに行動しなきゃならないって訳じゃない。時間はある。多少な。
とにかくお前はもう休め。今日は、病人にとってはきつすぎる一日だったんじゃないか?」
「ぜんぜんですわ」
半分は本心。半分は強がり。
色々なことが分かって、《外》のことがどうのという不安はほぼ払拭された。
だが――
こんなに人の激情に一日で触れたのは、生まれて初めてだ。
かつて、雛見沢で詩音さんに滅多打ちにされた時よりずっと濃かった。
濃密な感情は心の緊張を呼び、心の緊張は心臓のだるさを導く。
そして心臓が怠くなると、体の血の巡りが悪くなる。
なんだか、急に眠くなってきた。
その様子を見てとったか、真和さんは私から離れていく。
そして。
私がまさに眠りに落ちようとしていた、その時。
「ああ、そうだ」
理解はできる。でも反応は無理。
「言っておかないといけないことがある」
狙ったか、それとも偶然か、そんな絶妙なタイミングで。
「日本支部が、興宮支所の閉鎖を決めた」
脳がその情報を記録すると同時に、私は眠りに落ちた。
592 :
417:2012/12/01(土) 22:53:03.74 ID:UQ/2zM1F
今回はここまで。
おつおつ