「神か悪魔の贈り物」第一章第九話です。
百合、今回は(も?)エロ控え目です。
クロエやシーリオを気に入ってくれた方がいらっしゃるようで、大変嬉しく思います。
擬音に関してのご忠告、ありがとうございます。気をつけます。
文章下手に関しては、書きながら練習ということでご容赦ください。
どうしても耐えられないようでしたら、タイトルがトリップでNG指定してください。
第九話
「イーシャ。イーシャ……イーシャ?」
先程と同じようにドュリエス様は彼女の頬を優しく叩きましたが、今度は完全に意識を失い
正真正銘「気をやってしまった」イーシャさんは、その呼びかけに反応せず、
すぅすぅと可愛らしい寝息をたてるばかりです。
「イーシャってば……なんて満足そうな寝顔なのかしら。うふふ……」
「ですがドュリエス様、三度失神した後も『お願ぁい、もっとぉ』とおねだりするクロエのような子もおりますし、
イーシャ様もまだまだ満足していらっしゃらないかもしれませんわ」
「ナオミっ! もうボクのことは良いでしょっ!
そっそれよりっ、イーシャ様の拘束、もう解いて差し上げたらっ!?」
ごまかし気味に言うクロエさんですが、確かにそろそろ解放してあげないと
いかに丁寧に縛ってあるとはいえ、体の節々が痛くなってしまいます。
「はいはい、クロエちゃんの言う通りだねー」
「……アキ、馬鹿にしてる?」
「やだなあ、そんなわけないじゃない。馬鹿になんかしてないよ。愛してはいるけどねっ!」
「きっキミはすぐにそういう調子の良いことを……っ! ま、まあ、ボクもアキのこと、愛してるけど、さ……」
「ああん、もう、クロエちゃん好き好きぃっ!」
叫びながらアキさんがクロエさんを正面から抱きしめると、
お下げ侍女さんの大きなお胸にクロエさんの頭が埋まりました。
長い黒髪だけが外にあふれています。
「わぶ……っ! ちょ、ちょっと……っ!」
と、最初は驚いていたクロエさんでしたが、すぐに自分もアキさんの背中に腕を廻します。
体をぴったり合わせることで、二人の大きなお胸が二段重ねになり、なかなかの迫力です。
ナオミさんはそちらを見ないようにして、黙々とイーシャさんの拘束を外しています。
この人には目の毒ですものね。
それにしてもクロエさん、アキさんにぎゅっと抱き着いたまま、全然動きませんね。
……いえ、良く見ると腰がわずかに動いています。
小さく小さく、円を描いているようです。
それに、息がだんだんと荒くなってきています。
すぐにそれに気付いたアキさんは、クロエさんだけに聞こえるくらいの小声でささやきました。
「なあに? イキそうなの? あはは、本当に手を使わずにイケるんだね」
クロエさんは、熱を帯びた瞳でアキさんを見上げると、弱々しくうなずきます。
「うおっかわいっ……へへへ、あたしに抱きしめられただけでこんなに感じちゃうんだ。
いやらしい体で素敵だよ。それに、なんだかうれしい。
良いよクロエちゃん、このままイッちゃっても。しっかり見ててあげるからね」
クロエさんの体は、その言葉を待っていたかのようにきゅっとこわばり、動きを止めました。
背中に廻した指に力が入り、アキさんの肌に食い込みます。
大きなお胸の間からは、幼くも甘い溜息が漏れ出しました。
「ふぅー、はぁー…………」
そしてゆっくりと力が抜けていき、アキさんにもたれ掛かります。
豊満な谷間に沈み込んだクロエさんの頭をそっと抱きしめながら、
アキさんは彼女の艶やかな黒髪を愛おしそうにそっと指で梳かします。
クロエさんは、しばらくされるがままに髪をいじらせていましたが、
やがてアキさんのお胸に顔を埋めたまま、ぼそっとつぶやきました。
「……違うからね」
「ん? なあにクロエちゃん?」
「い、今のは、別にボクの体がやらしいからじゃ、ないんだからね……。
アキに、愛してるとか、好きとか言われて、抱きしめられたりしたから……
嬉しくて、胸の奥とかお腹の下の方がなんだかきゅうってなって、
それですごく気持ち良くなっちゃって……。そっ、それだけなんだからね……っ!」
アキさんは無言でクロエさんを押し倒しました。
「痛っ! ちょっ、アキっ!? なっ何を……っ!?」
「くくくクロエちゃんが悪いんだからねっ! このこのっ! この天然たらしっ娘がぁ!
そんなこと言われたらっ! あたしはもう……あたしはもう……っ!!」
「はいそこまで」
「よいしょっ」
暴走しかけたアキさんでしたが、ナオミさんとシーリオさんによってクロエさんから引きはがされてしまいました。
「ダメでしょうアキ。クロエの天然誘い受けが抗い難いのは分かるけど、今はイーシャ様の歓迎会なのよ」
右腕を抱えたナオミさんにたしなめられたアキさんは、侍女頭さんの肩にもたれ掛かって言いました。
「あはは、やだなあナオミさん、あたしはイーシャ様にもめろめろだよー」
そして、仕方ないなーという顔で、
「もちろんナオミさんにもめろめろだから、安心してね」
「わ、分かってますわよ……私だって、あなたの事……。ん、もう、本当に調子の良い子ね」
「えへへ」
「アキさんアキさん、私は?」
甘い雰囲気を醸し出し始めた二人に混ざろうと、アキさんの左腕を抱えたシーリオさんが尋ねましたが。
「……シーリオは、あたしを引っ張る時『よいしょ』って言ったから嫌い」
「そっ、そんな……っ! あ、あれは、別に、普通に掛け声と言うか……」
「ふうん、掛け声が必要な程、あたし重いんだ」
「ちっ違います! そうじゃなくって……。あ、そっ、そう!
アキさん、お胸の分があるじゃないですか! それですよ!
それを嫌がったりしたら、アキさんよりむちっとしていて背も高いのに、
お胸の分でアキさんより体重の軽いナオミさんに失礼でふごっ」
別にシーリオさんが語尾に特徴を付けようとしたわけではありません。
ナオミさんが彼女の鼻をつまんだのです。
「だっ、だおびはん!?」
「あらシーリオ。私達の体重なんて、いつ計ったのかしら?」
「はのっ、ほっ、ほえは、ほのっ、ぼっ、ぼくはんえ……っ!」
「目算? そう。あなたにそんな特技があったなんて、初めて知ったわ。
ではあなたの体重は、私やアキと比べてどうなのかしら。教えて下さらない?」
「あたしも知りたいなー。あ、それじゃあたしが計ってあげるよ! でも目算は出来ないから……」
アキさんはシーリオさんの両脇に腕を差し込んで、
「よっ、こら……しょーっ!」
気合い一発、鼻息も荒く持ち上げました。
「むむむ、これはかなりの大物……ずっしりと腕が痛い」
そりゃ、いくら小柄な少女とは言え、人一人持ち上げたら重いに決まってます。
「んなっ!? ちょっ、ちょっと! 何ですか今の掛け声は!? 私そんなに重くないですよーーっ!!」
顔(特に鼻)を真っ赤にしたシーリオさんは、持ち上げられたまま
足をばたつかせて抗議しましたが、二人とも聞く耳持ちません。
「いけないわシーリオ、そんなに暴れたら」
ナオミさんはシーリオさんを押さえるふりをして、おへその斜め下辺りに手を這わせてくすぐり始めました。
アキさんも、腋の下の指をわきわきとうごめかせています。
「にゃひゃひゃひゃひゃっ!! やっやめっやめれっ! やめれーっ!」
「ほらシーリオ、暴れてはいけないと言っているでしょう?」
「そうだよー。これじゃ、正確な重さがわからないよー」
「むっ無理ーっ! 無理ーっ! んひょひょひやぁーっ! ほあーーっ!」
「こら、いいかげんにしなさい!」
救いの声は、クロエさんでした。
アキさんの後で腕を組み、全裸で仁王立ちしています。
アキさんは、シーリオさんを下ろして振り返りました。
「あらクロエちゃん、淫乱ちゃんから真面目ちゃんに戻っちゃってる。おまた丸出しだけど」
クロエさんは即座に足を閉じました。
……ま、いまさらという感じもします。
「うっ、うるさいよアキ! まったく、キミやシーリオはともかく、ナオミまで何やってるのさ」
「おほほ」
「え、わ、私、被害者なんだけど……」
シーリオさんのつぶやきは無視されました。
「ドュリエス様をお待たせしちゃダメじゃないか。早くイーシャ様を寝台までお運びしよう」
見ると、拘束を外されたイーシャさんは、気絶したまま手足をだらしなく伸ばし、
半開きの口からよだれを垂らしながら椅子にもたれ掛かっています。
一方ドュリエス様は、例の大きな寝台にしどけなく横たわって、皆を眺めて微笑んでいました。
もちろん、寝台の敷布その他は全て綺麗なものと交換済みです。
「あら、いそがなくて良いのよ。あなた達を見ているだけで笑えるもの。まるで道化ね。
令名高きドゥカーノの娘に仕える侍女とはとても思えないわ。おほほほほ!」
ドュリエス様、結構きつい事をおっしゃってますが、別に本当に怒ってらっしゃるわけではありません。
嗜虐趣味あふれる公女殿下は、こういう言葉を使うとぞくぞくするのです。
しかし侍女さん達は慣れたもので、
「まあドュリエス様、あんまりですわ」
「いやあ、申し訳ありません」
「ごめんなさい、ドュリエス様」
等と言いながら、イーシャさんの体を四人でそっと持ち上げ、寝台に運ぶのでした。
ちなみにクロエさんの反応は、ため息一つです。
ドュリエス様はちょっと物足りません。
あまり真に受けられても困りますが、少しは悔しそうな、あるいは悲しそうな顔をしてほしいのです。
そこに優しく手を差し延べて、
「ごめんなさい、あなた達があまりに可愛いので、つい意地悪なことを言ってしまったわ。
安心して。あなた達は、わたくしの……大事な子達よ」
とかなんとか言って、自分で傷付けた相手に優しくして喜ばせ、悦に入りたいのです。
この人もなかなかにダメな人ですね。
ドュリエス様は、わざとらしくうなだれてみせます。
「ふう……。わたくし、なんだかさみしいわ」
そして、ちょうど寝台に横たえられたイーシャさんに正面から抱きつくと、
「でもいいの、今のわたくしにはこの子がいるもの! 新鮮な反応を想像するだけで、この胸が高鳴るわ!
ふふふ……イーシャ、これからたくさんたくさんいじめてあげるからね」
「いやあ、さっきまでも散々いじめてると思いますけどねー」
アキさんが突っ込みますが、ドュリエス様は反論します。
「あら、アキったら分かってないのね。体をいじめてあげるのと、心をいじめてあげるのとでは、
全然違うのよ。どちらもいじめて、救って、そしてイーシャは身も心もわたくしのものになるのっ!」
「はあ……まあ、何となく分かりますけどねー」
「ドュリエス様、本当に嫌がることはなさいませんし、イーシャ様も幸せです」
と、アキさん、シーリオさん。
クロエさんは、もう一度ため息を吐きました。
「それにしても」
話をそらしたのは、寝台に上がったナオミさんです。
イーシャさんの背中にお胸をぺたっと(そこ! 擬音を気にしてはいけませんよ!)くっつけ、
「イーシャ様、ここまで中イキ無しとは驚きですわ」
「あら、そういえばそうね。初めての子を相手にするのは久しぶりだから、慎重になりすぎたかしら」
「処女を破らないように気をつけて、お大事の奥も責めて差し上げるべきだったかもしれませんわね」
「まあいいわ。今日はもう疲れてしまったし。そのうち、もっと素敵な雰囲気を演出して、
わたくしがこの子を優しく貫いてあげるわ。ふふふふふふ……」
ドュリエス様は、イーシャさんの頭を撫でながら妖しく微笑みます。
すると、イーシャさんは小さく身じろぎして、寝言をつぶやきました。
「ああん……おじ様ぁ……やめてぇ……これ以上……たら……んじゃうぅ……もうらめぇ……」
瞬間、全員に衝撃が走りました。
「おっ、おっ、おじ様!? 何!? 誰!? 男!? イーシャに、男!?」
ばっと身を起こし、信じられないという表情で叫ぶドュリエス様。
その手を、同じく身を起こしたナオミさんが握りしめます。
「おおお落ち着いて下さいドュリエス様!! 『おじ様』だからといって男とは限りませんわっ!」
「いやー普通は男だと思うなー」
「落ち着くのはナオミの方」
アキさんとクロエさんが突っ込みました。
ドュリエス様とナオミさんが先に錯乱してしまったので、他の三人は割と冷静でいられたのです。
三人は、イーシャさんの寝顔を眺めながら寝台に上がります。
「イーシャ様、その、男性経験があるのかな……?」
「いやあ、あの反応はどう見ても初めてだったけどねぇ」
「だよねぇ」
「それにイーシャ様、男を知った女の匂いじゃなかったですよ」
「わかるんかい」
クロエさん、アキさん、シーリオさんが話していると、イーシャさんが寝言の続きを口に出しました。
「ダメぇ……おじ様ぁ……生かして捕えよとの命ですぅ……殺してはだめですぅ……」
――全くもって艶っぽい話ではありませんでした。
今度は別の意味で全員固まります。
「イーシャ様……なかなか厳しい世界に生きてらっしゃいますのね……」
「あ、そうか。『おじ様』って、モーリオン卿の事だ」
アキさんがぽんと手を叩きました。
「モーリオン卿……ですか?」
「あ、シーリオは知らない? クエインス・エイン・モーリオン卿。
イーシャ様の遠縁にあたる方で、イーシャ様のお師匠様だよ。
それはそれは、めちゃくちゃお強かったらしいよ」
「へー。そんな方がいらっしゃったんですね。私、知りませんでした」
「いやあ、実を言うとあたしもそんなに詳しくは知らないんだけどね。
『シトリン様を愛でる会』にいた時に小耳にはさんだくらいでさ。事件は覚えているんだけど」
「……事件、ですか?」
「うん、それがねぇ……」
「失踪なされたんだよ」
答えたのはクロエさんでした。
「あれはもう四年も前になるかな。王都で天覧武術大会が開催されたんだ。
モーリオン卿もご出場されて、騎士団長アモティ様との注目の一戦を予定してたんだけど、
当日になって姿が見えなくなってね。結局会場に姿を現すどころか、
今に至るまでその行方は杳として知れないんだ。
捜索隊も組まれたらしいけど、未だ手掛かりも見つけられないとか」
「……そんな事があったんだ。四年前かあ。その頃、私王都にいなかったから……。
じゃあ、当時王都にいた方達には有名な話なんですね」
「うん、まあそうなんだけどさー。クロエちゃん、当時七歳でしょ? 覚えてるにしてもなんでそんな詳しいの」
「ボク、年齢詐称してるから」
「ほぉう」
「……ごめん、嘘だよ、悪かったよ……アキにそんな目で見られるとすごく傷付くからやめて」
「どういう意味よ」
「言葉どおりの意味だよ。本当は、ほら、ボク、父についていつも図書館にいたでしょう?
そこの女性司書の一人がモーリオン卿にお熱でさ、毎日仕事の合間に事件に関する話を聞かされたんだ」
実は父子家庭のクロエさん。
幼い頃は毎日、お父さんの仕事場である王立図書館で本を読んで過ごしていたのです。
ちなみに当時、
「図書館にやたら可愛い幼女がいる!」
と一部ダメな人達の間で話題になったのですが、その話はいずれまた。
「そんな訳で、噂話の範囲でならかなり覚えてるよ。
モーリオン卿が臆したとか、闇討ちにされたとか、他国の陰謀に巻き込まれたとか」
「……『臆した』と『闇討ち』は有り得ません、クロエ。あの人は、理不尽なほど圧倒的に強かったのですから」
その反論は、ドュリエス様の胸元から聞こえました。
「あら、イーシャ。目が覚めたのね」
「はい……ドュリエス様……」
目を覚ましたイーシャさんは、ドュリエス様にぎゅっと抱き着きました。
ドュリエス様も、再び抱きしめ返します。
「ああ……ドュリエス様……こうして抱き合えて、私は幸せです……」
「うふふ。もちろんわたくしもよ、イーシャ」
「……本当……ですか?」
「あら、わたくしを疑うの?」
「いえ……その……でしたら、もうさっきみたいなのはお止め下さい」
「さっき?」
「体の自由を奪って、一方的に、その……愛していただく事です。
愛されて、幸せを感じている時、その相手を抱きしめられないのは、もどかしくて、つらかったです……。
私も、ドュリエス様を腕の中に感じたかったです……」
イーシャさんはドュリエス様を抱く腕に、さらに力を加えます。
「……イーシャ、少し苦しいわ」
「あっ、もっ申し訳ありません……」
「いいのよ。イーシャに痛くされるの、わたくし、嫌いじゃないみたい。んっ……癖になりそう……」
「ドュリエス様……」
「ねえ、もっと強く抱きしめて頂戴。わたくしを、もっと強く感じて頂戴」
「はい……」
イーシャさんは言われるまま、ドュリエス様を締め上げます。
「あぐぅ……っ! ああっ、痛いわっ! もっとっ! もっとよっ!」
「はっはいっ!」
イーシャさんの腕の中で、ドュリエス様の体がみしみしと軋みをあげます。
「ひぐあぁっ!! いっ、痛いっ! 痛いっ! ぎゃうぅっ! すごいぃっ! もっとぉっ! もっと痛くしてぇっ!」
「だっ、ダメですっ! これ以上強くしたら、骨が折れてしまいますっ!」
「良いのっ! 折ってっ! 殺してっ! イーシャぁっ!」
「良い訳ないわーーっ!!」
突っ込んだのは、やはりというか何と言うか、クロエさんでした。
彼女が手にした枕でばふんばふんと叩くと、抱き合う二人は我に返ったようにそっと離れました。
「おっ、おほほっ、あ、安心してクロエ。わたくし、本気で殺されたい訳じゃないわ」
「私だって、ドュリエス様を傷付けたりするものですか。
職業柄、傷を負わす事なく痛みを与える方法は知っているんです」
クロエさんは大きくため息を吐きました。
今日何度目でしょうね?
「はーー…………まあ、ほどほどに。あまり飛ばされるとボク達、ついて行けなくなるから……。
そんなことより、お風呂に入ってしまおう、ドュリエス様。そろそろちょうど良い温度まで下がっているはず」
「そうね。皆いやらしい体液まみれで、体中から淫らな匂いを発しているものね。
特に、イーシャはこちらが恥ずかしくなる程匂うわ」
「素晴らしいです」
シーリオさんがうっとりした顔でくんくんと鼻を鳴らします。
「やっ……そ、そんな……っ! それは、皆が……」
「では、侍女たる私達が、イーシャ様のお体を隅々までお清めいたしますわ」
「へっへっへー、イーシャ様、あたし達に任せてくださいねー」
「私達、毎日ドュリエス様のお体を洗ってますから、慣れてるんです」
ナオミさん、アキさん、シーリオさんの言葉に、しかしイーシャさんは少し怯えた表情を見せました。
先程のような激しい快楽責めを、お風呂場でまた施されるのではないかと恐れたのです。
ま、そりゃ恐れますよね。
そんなイーシャさんに、クロエさんが言います。
「大丈夫、イーシャ様。ちゃんと優しく、丁寧に洗うから」
「クロエ……あなたがそう言うのなら……。わかりました。お願いしますね」
彼女の言葉で少し安心したようです。
イーシャさん、短い間に侍女さん達それぞれの人となりを把握したようですね。
「むー……何か釈然としないけど、まあいいや。
じゃ、あたし達は先にお風呂場に行って準備してますんで、ドュリエス様とイーシャ様はゆっくり来てくださいね!」
と言うアキさんを先頭に、侍女さん達は寝室から続きの間のその向こうのお風呂場へと向かって行きました。
残された二人は、寝台の上でどちらからともなく見つめ合うと、そっと抱き合いました。
「んっ……ふふ、それではしばらくこうしていちゃいちゃしてから行きましょうね」
「はい、ドュリエス様……」
続く
GJ!
クロエかわいすぎる
乙。続きマダー?
続きが楽しみだな
『見ィつけた』
広い宮廷の中の、小さな箱庭。
小さいと言えどその端は見えず、見渡す限りの草木や、僅かに聞こえる水音は自然の美しさを物語る。
そこに、数人の男と首輪をつけられた、裸の少女がやって来る。
楽しそうに談笑する男達とは対照的に、表情すら感じられない少女の整った顔。
肋の浮き出るほど痩せ細った体の至るところに男の白い欲がこびりつき、美しかった金髪は乱れ、所々固まっている。
そして、夜明けと共にその『遊び』は始まる。
少女には普通スープに浸して食べる、石のようなパンが一つ渡され、その小さな箱庭に離される。
今は男達に滅ぼされた国の王女である少女に言い渡されたのは、一つのルール。
『日が昇り、また沈むまで見つかることがなければ、お前を釈放してやる』
嘘か真かも解らない。ただ、その『かくれんぼ』に負ければ、酷いことをされる。
少しでも凌辱の時間を短くするために、少女は棒のようなその足を必死で動かし、逃げるように隠れる。
その時、走り続ける足の間から、どろりと昨夜の痕が溢れ落ち、少しだけ足を止めて、声を出さずに泣く。
一瞬でも気を抜けば、精神が折れてしまいそうなこの数日を振り返り、本しか友達の居なかった王女としての数年を思い出す。
もともと戦争が嫌いだった彼女は、父が敗けたことにも大して悲しみは無く、普通の身分として暮らせるのではないかと、喜びさえ感じていた。
もし普通に暮らせたならば、人里離れた所に家と畑を構え、友達を作り、晴耕雨読の日々を送りたい。
しかし、次の暮らしに思いを馳せていた無垢な少女に下されたのは、相手の将として戦った、貴族の慰み物としての扱い。
暗い牢の中で本を読んでいた彼女を突然押し倒し、強姦に次ぐ強姦。
本のように、いつか白馬の王子が自分を迎えに来て楽しく過ごせるのだろうか、と思える年頃の彼女には酷すぎる結末だった。
粗末な布の服すら取り上げられ、畜生の様に裸でいる。
話す人と言えば、あの男達で。
話す事と言えば、命令と服従。
する事と言えば、情事と睡眠。
それでもいつか――そこまで来て、自分が眠っていた事に気付く。
いけない、隠れなきゃ――そう思って体を起こすと、周りはあの下卑た笑いを浮かべた男達に囲まれている。
「見ィつけた」
それはゲームの終了と、凌辱の開始を告げる合図。
絶望を浮かべる間もなく首輪についた鎖を掴まれ、引き摺られるようにベッドだけがある部屋へ連れていかれる。
年の割に小さい体に、ろくな食事も与えられない彼女は簡単にベッドの上に投げられ、身を起こせば目の前には屹立した『拷問』用の道具。
逆らえば、殴られる。昨日も、一昨日も、その前も自分の体に入っていたそれにそっと舌を這わせ、くわえ込む。
巧くなったじゃないか、と嬉しくもない皮肉混じりの誉め言葉を聞きながらも、黙って舐め続ける。
直に限界が訪れ、その小さな口を犯す物から迸る白い液体。
吐き出すことは許されない。そういえば、最近一番口にしている『飲み物』はこれかもしれない。
そんなことを思いながら、いつまでも慣れないそれを数回に分けて、涙と、嗚咽と、哀しみとともに呑み込む。
傍で見ていた男達も動き出し、小さな胸にしゃぶりつき、震えるその手に余る男根を握らせ、愛など無い快楽を求めて足の間の薄い茂みの奥へ突き刺す。
少女の意向は関係ない。
いつしか感じなくなった体の痛み、どんどん強くなる心の痛み。
やがて日が沈み、再び石のようなパンを二つと、干からびた様な林檎を一つ投げるように渡され、凌辱は終わりを告げる。
余すところ無く白濁した液を体に浴び、容量を超えるまで放たれた分が秘所から溢れ落ちる。
それでも、漸く終わったという束の間の喜びが疲労の底にある彼女を動かし、箱庭にある川で、水浴びを始める。
少しでも早く、外側だけでも身を清めるために、身を切るように冷たい水に身体を投じる。
箱庭に、先程の部屋。随分広く、狭い世界。
凍える身体を唯一の毛布でくるみ、少女は眠る。
毛布は夜露に濡れて、立ち上がろうとする若草の頭を押さえつける。
静かな寝息だけが響く。
翌日、少女は隠れなかった。
両手をつき、頭を下げて男達に懇願する。
おねがいします。
今までみたいなことをされつづけても構いません。
ただ、外面だけでも友達になってください。
ただ、一瞬だけでも違う会話をしてください。
ただ、一枚だけでも服をください。
人並みに扱ってください――――
涙を流して訴える彼女に、一際立派な服を着た男が歩み寄り、肩に手を置く。
顔を上げた少女を抱き寄せ、優しく抱擁する。
少女は久々に感じる暖かさにさっきとは違う涙を流し、すがりつく。
男は耳元に口を寄せ、囁いた。
『見ィつけた』
表情が、凍る。
その言葉が意味するのは――――
どんなことがあっても日は昇り、そして沈む。
その、人の生から見れば一瞬に過ぎない時間に、あらゆる想いがある。
喜び。
悲しみ。
感動。
絶望。
安心。
不安。
重なりあった色が、また世界を彩っていく。
GJ!
おにゃのこ&お姫様陵辱は萌えるな
遅れたけどGJ!これは盛り上がる
23 :
名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 23:34:54 ID:QRMAX74V
ほ
24 :
名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 18:54:16 ID:Xuj7Njkt
アヴァロン内戦
yomitai
神か悪魔の続きはまだなんだろうか
保守
エロはファンタジ〜♪
お久しぶりです。中華風の者です。とりあえずは前置きが長くてもなんなんで、前半を投下します
夢を見ていた。
自分の帰還を待つ女の夢。生身がすぐそこにあるかのような全身を包む人肌の
温みと、自分が男なのだと自覚するような、そそられる甘い香り。夢の中で愛
で、心の動くままに交わった。
(いや…違う……)
男−梢楓は、その夢が単なる欲求不満から来たものでないことを悟ると、はっ
と目を醒ました。細い指が梢楓のモノをさすって快感を促している。
「起こしちゃったかしら?」
「お前か…」
真っ暗闇の中で聞こえた声はよく知っているものだ。名を瑤耶と言い、今回の
遠征に従軍している医者である。梢楓が何故声だけで判断出来たのかというと、
梢楓は前線で負傷をしたために、ここ数日は幕舎で常に行動を共にしていた。
くせっ毛と緩やかな物言いが特徴的な垂れ目の美人であった。ただ梢楓にはえ
らく気安く、どこにいてもはばかる梢楓のことも阿梢(シャオちゃん)とから
かった。無礼だとやきもきする者もあったが、梢楓本人は何故だか怒る気にな
れなかかった。しかし、無断で臥床に入り込むとなるとさすがにこちらの沽券
に関わるし、梢楓は家で待つ女を悲しませることはしたくなかった。
「で…何をしている」
「阿梢は初めて?」
腕にしがみついて身体を密着させながら、瑤耶はわざとらしい甘い声で囁く。
「そういうことを聞いてると思うか?」
「そう怒らないの…私はつまらない男とは寝ないのよ?」
言うなり瑤耶は梢楓の胸元に頭を乗せる。目を暝り、その脈を聞いた。
「安定してる…運び込まれた時はあんなに乱れていたけどもう心配はなさそう」
「それは良かった。じゃあ医者の仕事はもうすんだろ」
「こんな腫れ物を勃てておいて無粋じゃない?診て差し上げないと。医者です
から」
瑤耶は楽しそうに竿を扱く。少しして、布団の中でもぞもぞと動いたかと思う
と、いつの間にか梢楓の股間に移動していた。今度は口を大きく開けて先端を
舐めはじめた。
ぬかるみから脚を引き抜いたときのような粘着音が幕舎に響く。
梢楓が怪我をしたのは右膝。敵将と斬り結び、首を取る代償に石突で叩かれ動
くこともままならなくなった。
だから今、瑤耶に口淫をされていても逃げる術がない。
「ず…ちゅっ…んぅ…ぽっは!どう?シェリーちゃんはこういうのやってくれな
いの?」
「馬鹿が…」
「時にはこういうのもないとつまらないんじゃない?」
夜闇の中で瑤耶は笑っている。子供扱いするかのような笑みは何度も見た。
再開した口淫と共に、陰茎を乳房で挟み込む。ゆっくりと柔らかな実の中にし
まい込むように動いた。
「どう?これ結構大きくないと出来ないのよ。気持ちいいでしょ?」
自慢げに語る瑤耶ほど余裕のない梢楓は、答えることなく耐える声を返事とし
た。
「もう、我慢しちゃってかわいいんだから」
鳥が啄むように瑤耶が亀頭に何度も口づけをする。乳房による柔らかな快感。
それとは対照的に唇による刺激的な快感に、梢楓は声を必死で抑えた。
「っくぁ…っ!」
「かわいい声出るじゃない。素直が一番」
弾けるように亀頭から唇を離され、梢楓は堪えきれずに射精した。瑤耶はこぼ
すことなくそれを口に含み、甘露のように飲み下した。
「よく出来るな」
「これって肌にも良いの。私は好きよ、男そのものって感じがして」
「一生理解出来そうにないな…」
事を終え、眠りにつこうとした梢楓を見て、瑤耶はふぐりを指で弾く。思わず
声を出してしまいそうになるほどの痛みに、梢楓は歯を食いしばる。
「っ……!!」
「そっちだけ良くなって寝るなんて、あんまりじゃない?」
「あっは!良い…!!素敵……っ!」
瑤耶は梢楓の上で楽しそうに腰を振った。時折、身体を曲げて口づけをした。
梢楓はと言うと、ただなされるがまま寝台に仰向けになって寝たままでいた。
「シェリーちゃんに悪いと思ってるの?」
「そんなに無粋じゃない」
よく言えたものだ。梢楓は我ながら平気で嘘をついた口を褒めたかった。
今この瞬間も、考えているのは雪李妹の事ではないか。
「お固いのね…やっぱり」
「やっぱりって何だよ?」
「ふふふ、医者は他の患者のことを簡単には喋らないの」
ぎゅっと胸を押し付け、耳元で囁く。
「忘れられないなら、思い出す暇もなくしてあげる」
再び体を起こした瑤耶はにんまりと妖しく笑い梢楓を見つめた。
「こういうのどう?」
搖耶は体を上下に動かしながら、左右に腰を切った。先程以上に強く締め付け
られる。
「あっは。楽しみましょ?勿体ないわよ?」
勿体ない。確かにそうかもしれない。顔立ちも悪くない。梢楓は薄いほうが好
みだが、胸も豊かだ。房中の術も心得ていて申し分ない。
「私なりの診療だもの。後ろめたいことじゃないわ」
(診療…これは診療…?)
瑤耶の言葉が梢楓を麻痺させる。理性が溶けていく。固い掌が乳房を掴む。
「そう、それでいいのよ」
「ふん…」
溺れる。この女に。赤子のように乳にしゃぶりつき、下から手を延ばして瑤耶
の背に回して抱き寄せた。
「んんっ!!あっ、阿梢ったら…っあぁ!ふふ…良い…!」
馬鹿にしやがって。梢楓の中で芽生えた征服欲は、そのまま目の前の女を犯す
衝動へと変化し、情事をより苛烈にしていった。
「昨夜はお楽しみで?」
馬車と並走する副官が、意味深に笑った。梢楓は疲労を浮かべて窓の外を見る。
「…寝ていない」
「噂通りの姦狐でしたかな?」
「有名なのか?」
「『銀果通りの妖狐』…兵士達の間では殿が端から側女として連れて来たので
はと噂されておりました。いやなに、あやつが腕利きなのは我々も承知してお
りますが」
「…まぁ今度からもっと風評を信じるとするよ」
とにかく今は疲れでどうしようもない。窓から入るそよ風がさらに眠たくさせ
る。
「しばし寝るぞ…」
今度夢で雪李妹が出てきても、淫夢にはなるまい。体を横たえると、梢楓は静
かに寝息を立てた。
「起こしちゃいました?」
(まさか…いや…)
夢だ、と思いたい。願うほかない。目を暝ったまま動かずに祈った。
「凄い汗…そそられちゃう」
「っづはぁ!!」
耐え切れず寝たふりを辞めると視界に入って来たのは馬車の天井のみ。
「傷が痛む?」
揺耶は枕元で医者然として座っていた。今は妙なことをしでかすつもりはない
らしい。
「…今どこだ?都には着いたのか?」
「もう二刻ぐらい前に」
「何だと?」
ならばもうとっくに凱旋を終え、屋敷に着いていてもおかしくない。
「怪我がひどいって名目で、副官さんが部隊を解散させてたわ」
「…それで良い。で、何故まだ居る?」
「私は兵士じゃないもの」
「あぁ。今度の従軍感謝する。今この時を以って任を解く」
どうしたことか瑤耶はまだ動かない。馬車も止まっているのだから、降りられ
ないわけではない。
「違うわよ。貴方はまだ怪我人でしょ?」
「そうだが?」
「だから、まだ一緒に居させてもらいますよ。住み込みでね」
「!?」
家には雪李妹がいる。最も会わせてはならない人間だ。昨夜の交わりを、瑤耶
との関係を最も知られたくない女。
目眩がした。裏切ったのも、罰を受けるのも、自分だ。梢楓は深くため息をつ
いて瑤耶の言を了承した。
保管庫にあります拙作『梢家の次男坊』の続きです。ですので人の紹介は大分
省いてしまってます。合わせて読んでいただけると幸いです。
あと変更一カ所
雪李妹の略称ないし愛称がシェイリーってのはどうもしまらないので、今回から『シェリー』にしました
ではでは
GJ!
後半は修羅場!?
期待してます。
ほしゅ
36 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 07:13:40 ID:1oLiDJay
ロリっ子待ちほしゅ
保守ついでに中世ヨーロッパが舞台のエロつながりで
床子屋の『Saint Foire Festival』がとてもよかった。これは同人誌だけどね
ファンタジーじゃないけど、中世ヨーロッパ好きなら読んで損はしないんじゃ?
スゲー良かった。ありがとう
>>37 2に出てくる修道士の兄ちゃんの髪、ちゃんと剃ってあるのに感動した!
漫画でちゃんとした坊さん描いてるのって、歴史漫画でもないとほとんど見ないよね。
いろんなスレで欝に定評があったから、今日1のほうも買ってくるわwww
>>39 スレ違いだけど、修道士ファルコって少女漫画が剃ってたよ(ただし主人公を除く)
甲冑とか、剣とかで戦争が続いていた時期の、
ヨーロッパのお話です。
エロあり。
ファンタジー系です。
――空は、綺麗だったんだ。
寝転んだ体勢になってやっと気づいた。秋に近づく空は澄んで
夏のせわしい日差しは緩まっている。
草の上。旺盛に天を突こうとする草の勢いも鳴りを潜め、地面に
近いところには、かぐわしく豊かな枯れ草の香りもする。
風の音。時折厚みをもってぶつかってくる熱をはらんだ南風は忘
れ去られて、草を使って悪戯に渦を描く、中庸な大気のせせらぎに
変わっていた。
視覚から入る感覚はのどかそのものだった。
嗅覚のそれは、凄惨を極めた。
温度を伴った吐瀉物と血から立ち上る臭気、あるいは割かれた
内臓とその中身。すべてここに累々と横たわる人のものだ。すこし
青臭いものは馬のものであるが、多くはその上の騎士だけが大地に
臥せっている。鼻腔の粘膜に突き刺さるなら、まだ可愛い。何日も
放置された、誰だか判別できなくなった死体は眼をつんざき、涙の
止め方も分からないほどだ。
それにしても、空の青さときたら!
今感じること全てが、鮮やかに真新しく見える。きらびやかすぎ
て、目の端からひとしずく、落ちた。
ふた呼吸あって、私の腹を貫いて地面に刺さった槍が、こらえ
きれないかのように倒れ、その柄が、屍がつけている鎧に当たり、
カンッという小気味いい音を立てた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここ最近は季節の移ろいなど、気づきも考えもしなかった。
幼い頃から課せられた軍事訓練、作戦講義、防衛、進出、侵略、
遠征……
この国も自分も、髪の先からつま先まで戦にまみれた。戦する
ことで、生きてきた。いや、そうでなければ生きていけなかった。戦
をするまわりを見て安心し、その中に没入する自分が人の務めを
全うしているという意識に誇りさえ感じた。
しがない歩兵であったが手柄を立てれば、少しずつ栄誉も階級も得
られた。手を血に染めれば、それが収穫であり勲章だった。
『戦を終わらすために戦をする』などとほざいた部下を殴りつけた
ことがある。『何を軟弱な!』と罵り、他の部下への、あたかも“見
せしめ”であるかのように、責めを続けた。『勝つために戦うのだ、
馬鹿者め!!』
が、今となっては、あの時、戦が終わるということが怖かっただけ
だったのだ。戦=自分の足元、という図式を失いたくなかったのだ。
自分が死ぬことなど考えなかった。まわりがどんなに戦地に倒れ
ても戦あるところに私があった。
わが軍は連戦連勝で周囲の国に攻め入った。最後まで抵抗を続ける
大国の横に広がる広大な草原まで兵を進めたところで、敵軍とのにら
み合いになった。敵は総力をつぎ込んでいる。
この草原が決戦の地になる。
全ての人々が覚悟していた。
私は当然生きて帰ることを疑わなかった。敗れたことがないわが軍
が敗れるはずが無い。いつものように敵を叩きのめし、無様な死に面
を晒した兵を踏みにじり、敵国の女子供の怒りや口惜しさの眼の色に
半ば快感を感じながら意気揚々と市中を行進するものと考えていた。
戦況は一進一退。斥候から入る情報は変わることなく、2日経ち、
3日経った。
4日目に司令官から総攻撃の命令が入った。いつでも出撃できる体
勢にあった私の部隊は最前列に配備された。初めての最前列。敵陣に
飛び込み、風穴を開け、後列の騎馬隊の道を開ける。絶対の自信を持
って槍を握った。
戦いの火蓋が切られた。待たされた私の部隊の勢いは止まらない。
鎧もない、急作りの寄せ集めの歩兵どもは、簡単に後ずさりを始める。
「かかれぇーーーー!!」
それが、罠だった。敵兵を引き寄せておいて、鉄片入りの爆弾を投
下するという術中にはまった。相次ぐ悲鳴、吹き飛ぶ手足……血が混
じった黒煙がいたる所から噴きあがる。
今思えば引けばよかった。だが、前に歩を進めた。長たる自分が突
っ込むしかなかった。
そのときに、死んでいると思っていた敵の歩兵の槍が、下から突か
れた。
私はその者の喉に剣を突きたてると、その場に倒れこんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
死ぬ。
むごい傷を負ったのに、流血は思いのほか緩慢らしい。息は肺の
奥まで入っていくし、大の字の体勢から、ゆっくりと膝を立てること
ができた。もしかしたら、戦地に落ちた武具をあさる敵国の地元の
民に救いを求め、生き延びることができるかも知れない。
でも、もういい。
生き永らえたら、根っからの戦士である私は戦を求めるだろう。
必要とあれば、私の命を救った民の首をかき切ることもあるだろ
う。そのために、剣を研ぎ、槍の鋭さを高める稽古は怠らないだろ
う。
疲れた。
愛する人などいないのに、守るものもあやふやなまま闘う空しさ。
頬に肉片が張り付くのも意に介さず、短剣を振り下ろして血を払う
莫迦らしさ。昨日一緒の飯を食べた者の骸(むくろ)をまたいで攻め
入るやるせなささ。
もう、いいじゃないか。
達観。
穏やかな気分で目をつむった。
タタッタタッ タタッタタッ……
草を渡る風の音の中から、かすかに聞こえていたリズムの良い音。
今はっきり聞こえてくる。生まれて初めて聞くその連続した軽やかな
音は、直線的に近づいて遠ざかる……いや、どうやら迂回している?
……いや、周りを巡るように変わらぬ調子と音を響かせていた。
音は違うが、これは馬の歩みの音だ。土や石畳を歩いていないが
リズムは同じだ。
空を飛んでいる。それが、だんだん高度を落としてきている。
今度はこの戦場の外周を回っている。2周目、3周目……
意図していることが分からない。何者なのか。
戦場の死体から武器や金目の物を漁る者共は、我先に目当てにまっ
すぐ駆け寄る。
教会の牧師なら、きまじめに端の死体から祈りを捧げるだろう。
こう、考える間にも数周回った。
と、おもむろに止まった。
タッ、タッ、タッ……
歩みは軽やかなものから、確実なものに変わっている。
さらに、それは私に近づいてくる。
馬は私の上に浮いていた。
赤鹿毛の惚れ惚れする体躯の馬。私はその馬の前肢の蹄鉄が、私の腹の上、
手に届く高さで見えていた。
「ほう、まだ息のある者がいようとは」
女の声が降ってきた。馬の主であるその声は、しっかり太くそれでいて艶やか
だ。私は、空を背にしているその姿に目を凝らした。
「あ……だ……ゲホ、ゲホ!!」
声が出せない。喉が渇ききっている。いや、声を出す力が出ない。思うように
ならない。誰なのだ。何をしているのだ。
不意に馬が前肢を掻いて、2,3歩足踏みした。
死んでしまう! 落ちてきて、押しつぶされると思った。
きつく目を瞑る。
ーーだが、いつまでもそれは空に浮いて、大人しくしている。
「……死ぬのは怖いか?」
少し不思議そうな声。私は声を出せずにいる。
「驚かしてすまぬ。まだ、思ったほど生気があるのだな」
高貴な身分なのか、語気は毅然としている。見えるシルエットは、乗馬をする
人のそれだ。まっすぐに私を見下ろしている。
久しぶりに聞く女性の声、いや女性に、私の体は敏感に反応した。
俺も生物ではあるようだ。種を残す最後のチャンスかもしれないことを、
悟り、勝手に準備する。血が下腹部に集まる。
滑稽も滑稽だ。
「ふふ……」
「何が可笑しい?……ーーお前?」
女が馬から、音もなく草原に降りた。鳥が着地の時にいくぶん衝撃を
やわらげるが、それすらもなく私の体の横に立った。
空から降りて、やっとその姿がわかった。
栗色の髪、透き通る陶磁器のような肌、上品な輪郭。
肩からむき出しの腕は細く、それでも華奢ではない。
乳房の部分はやわらかな曲線があてがわれた、1枚の鉄板が守っている。
青銅の細い鎖を布のように織り込み、ウエストのしなやかなくびれの
ラインが直にわかる。
腰には10数枚の青銅でできた、横に深いスリットが入ったスカート。
そこから伸びる長く肉感的に露わになった白い脚。
その脚を高く上げると、無遠慮に私の腰に跨った。
その瞬間、髪の毛と同じ色の体毛が、白い肌をバックに見えた。女は
下に何も履いていない。
こんな美しい女性がいるのか。
その鼻梁、奇跡のカーブ。人はその気品に屈服し、かしずくことになる
だろう。
その唇、ピンクのマシュマロ。愛に満ちた柔らかさに、誰もがそのキス
を乞うだろう。
その瞳、スカイブルー。空のように万人を引き込み、包み込んでしまう
だろう。
現に、その奥の奥まで、私の意識が染み込んでいくようだった……
その手が、私の股間にあてがわれた。指が長さを、掌が太さを味わうよう
に、しかも何度も、それも優しくさする。
少年の頃、淫売に施された愛撫を軽く凌駕する、しびれるような快感が体
を走る。
前留めを探っている。それが容易に外せることが分かると、上からひとつ
ずつ外していく。
今までに見たことがないような勢いで、はね出す肉棒。その長さも太さも
自分の想像と経験を超えていた。
俺とまぐわう気なのか?
死ぬ男と情を交わしてどうするつもりだ?
「……何を……す……んだ」
振り絞った言葉で消耗したのがわかる。けれど訊きたかった。
私は死ぬだろう。だが、最後に私の体に触れる者と語りたかった。
私の顔を見つめていた女性は、私の陰茎に目を向けて、その笠張りを冷たい
掌で撫でた。それから、その広がった赤黒い部分を白く冷たい指でなぞった。
「……ふっ!……んっ……」
それだけで腰に甘い衝撃が走る。腹筋が痙攣し、脚が硬直する。
女性は再び私の顔を見た。それから静かに、諭すように、こう言った。
「私は、戦に倒れた者共の魂を拾い集めているのだ」
天から降りてきたのはーーワルキューレ。
この乱れきった戦の世界で、語り継がれてきた神の名を知らない者はいな
いだろう。
“戦に敗れて、ワルキューレに魂を抜かれることほど恥はないわ!”
酒をあおって、威勢のいいことを言ったこともある。
その神がここにいて、目の前で姿を現して。
私に淫らがましい行為をしている。
「死者の魂は、大体が冷え切っておる」
根元を手で支えると、そこに汚れのない唇が近づいていく。
先端を舐め、少し開けた口に当てて、舌でくすぐる。
「うあっ……」
膨らんだ部分に丁寧に唾液を擦りこむと、一気に頬張って、吸い込む。
ジュボッ、ズゾッ……とその美貌に似つかわしくない音があたりに響いて
いく。
この世の幸せを詰め込んだワインを、口移しで味わっているかのようだ。
意識がくらんでいく。
ワルキューレは、節くれだったペニスを口から出すと、上体を起こした。
「お前の魂は、面白い」
面白い、とは言いながら、ブルーの瞳は冷めている。
「お前の魂は、戦いの炎がちろちろしておる」
「……」
「おおかたの者は、皆、戦から逃れようとしている。一見勇敢でも、戦を
終わらすために剣を振っておるのだ。−−お前は、まだ、熱い」
熱い、のか? 私はまだ戦いたいのか?
ワルキューレは魂を集めて、再び戦いの地に運ぶという。
まだ息があるというだけでなく、私には尽きぬ闘争心があるというのか。
彼女の言葉にうろたえている私を冷たく見つめて、空に突き出ているもの
を手で支えて、自らの体内に迎えようとする女神。
「お前の魂は、私の中に収めることにする」
濡れて温かな部分。そこを先端で何度かなじませると、すぼまったところ
に当ててから、ゆっくりと呑みこんでいく。
「……うっ……あん……」
彼女は、威厳の声から一変、高い声を漏らす。
きつい入り口を過ぎると、体重が載せられていく。傘の部分は、肉襞に
絡まれながら、最奥を突いて全体が絞られる。
「……はああ……あん……うん……」
蠢く。中へと、また精を吐きださせようと。体を動かさないのに、その
胎内の淫らさに、私の精神がからめとられていく。
「……め……がみ、さま……」
私は、生涯で初めて、神に“様”とつけて呼んだ。
大きな幸せの中で、体中に慈悲を感じて、生きてきたことに感謝した。
涙が目尻から、大地に落ちた。
その様子を見て、私の上で腰を前後に揺する。
「あっ……ふっ……ふっ……うん……」
控えめな声を忍ばせている。なめらかな体の動きは、振幅を徐々に大きくし
ていった。防具がシャリンシャリン……と音を立て始める。
冷静だった瞳は、今や熱を帯びて、官能の色に染まっている。
右手が動かせた。私は、動いている彼女の腰を撫でてから、無我夢中で彼女
の濡れそぼっている部分に手を差し入れた。そこで固くしこったものを触った。
「あん!……ああ!……おお!……」
ついに欲望に素直な声が出始めた。
私の肉を蕩けさす刺激はすさまじく、粘液と締まりに翻弄されっぱなしだ。
「ふう……ううん……お前……いいぞ……あっ……」
私はもう動けない。女神が自分で良くなっている。
とろんとした瞳。先ほどの高貴な雰囲気はすっかりなくなり、私の精を貪っ
ている、男漁りの女の眼。
「うわあ……あんっ!……ああっ!……」
身をよじって、髪を振り乱す。動きは上下に変わり、彼女は自ら、胸を留め
ていた紐をほどいた。
色の薄い乳首。隆起した膨らみに乗って、腰の動きに合わせて魅力的に揺れ
る。私が見とれていると、その甘そうな実を私の顔に差し出した。
「しゃぶるといい……」
渇いた口で、それでも唾をためてから、私は口に含んだ。
「ああ!……それは……」
指でつまんで、蕾を蹂躙する。歯で蕾を甘噛みする。
「あんっ……あんっ……すごいの!……」
それは、女神の欲情を高めた。腰の上下から、娼婦のようなねちっこい回転
は私の肉茎全体を甘く砕けさせる。
再び腰を上下させて精を吸い上げる。
「はあっ!……ああっ!……ああんっ!!……」
きゅっと、ぎゅっと締まって離さない肉の動きとぬめりに。
何よりも切なく喘ぐ声と、快感にこらえきれない美しく淫らな表情に。
私の体を歓喜の刃が切り裂いた。
「ああああああっ!」
経験したことのない噴出感。精の塊がペニスの先を飛び出し、女神に撃ち
込まる感覚さえした。それでなくても豊富な粘液の中に、大量の白濁が注入
された。
「ああああっ!……あっ……あっ……あん……ん……」
女神は私の上に崩れ落ちた。強烈な余韻に、胎内が痙攣していた。
その瞬間。
女神と、私がつながっている部分が徐々に光を帯びて、それがだんだんに
大きくなってきた。
「……!」
女神との境、それが消えている。腰の部分は完全に一体となり、その部分
は頭の先へ、足の先へ、手の先へ広がる。
「あっ! うわあっ! あああああっ!」
先ほどの絶頂の数百倍の快楽が、私を包む。いや、私が快楽になっている。
私と女神は、一つの光になった。
カッ!!
ひときわ強い閃光。
その後、光は弱まり、そこには息絶えた戦士のかたわらにワルキューレが
立っていた。
彼女は慈悲に満ちた微笑をたたえて、そっとお腹を撫でた。
指笛で馬を呼んだ。
彼女は颯爽と跨ると、戦地を1周して、私と共に上空高く舞い上がった。
私は戦い続ける運命にある。
私は選ばれた戦士なのだ。
死んでも死んでも。
戦い続けるのだ……
お目汚しでした。
なおワーグナーの「ワルキューレの騎行」から着想を得ました。
これはエロい…!!
GJ
どなたか保管庫のURL教えて下さい
保守
神か悪魔の続きはまだなのか…!
なんか一月ほど投下なしなんで、2011年だし、どうせだから長編を投下します。
ごめん、またなんかスレたっぷり使うと思う……。
いちおう50字改行です。注意です。
以下、この物語に関する注意書きです ↓
@ ドクソ重い文体です。前に書いた奴よりも遥かに重く、くどいったらありゃしない。
A エロシーンが一応あれども、もう飾りレベルです。しかもオールレイプでグロ表現ありき。
B 長い、この話、文体のせいでマジで長いよ! 暇な時に目ぇ通さないと危いよ!
C 世界観設定とかキャラクター設定とか、色々と適当です。ファンタジーファンに殺されそうなほど適当。
D ギャグ激少。反面、グロテスクな表現、邪気眼表現、説教台詞が多々含まれています。苦手な人は注意。
E 作中での主義主張、その内容が結構乱暴かもしれない。下手すりゃ突飛な暴論に見えるかも。
あいっかわらずスーパーの惣菜ハムカツみたいに油ギトギト重い文なので、色々と注意です。
それでも「まあ仕方ねぇ、暇だから読んでやるか」と思った人はどうぞ。
ちなみにグロ祭り警報。前回の長編よりもグロ成分が遥かに多いです。マジで好みが分かれると思います。
それは、黒くて。
それは、白くて。
それは、灰色で。
それは、彼女の。
それは。
――それは。
* * *
そこにあるのは、薄水色の空。
淡い淡い、透き通るような、しかし透明ではない、わずかばかりの青を残す空。雲ひとつないその空は、ただ
たゆたうようにしてそこにある。
流れる穏やかな風は空気を切り裂くようなことはせず、流れ流れ行くままに、ゆったりと。陽光が時折そここ
この熱をはやしたてはするものの、荒いさまを見せるのはほんの一瞬のことで、すぐさま熱も流れも沈静化する。
全ての流れが、ゆるやかな方へと、ただただ。
頂に上った太陽は、下降するための準備を始めている。ゆったりと、ただゆったりと流れる時間に合わせるよ
うにして、空も空気も熱さえも、穏やかな姿のままに、そこにある。
――黒い髪が流れていた。
レンガ造りの家屋と、木造建築物と、鉄扉が設置された豪奢なつくりの屋敷とのなか、薄水色の空の下にて流
れる、黒い黒い髪。宵闇の一部分を切り取ったかのようなそれは、陽光を反射し、妖艶なるきらめきを残し、風
のいたずらにその身を任せている。
昼の中に映える夜。宵闇の一部。穏やかな空気の中に流れる、静寂たる黒がそこにある。
黒い夜の正体は、少女だった。
小柄な少女である。色あせた灰色のブラウスをまとい、雪もかくやと言わんばかりの肌を見せ、その下に見え
るは夜の色を劣化させたかのような色彩の、黒いロングスカート。
さらさらと、流れるような宵闇の色彩のなかに存在する人工色の黒は、その髪の持つ真なる黒たる美を引き出
すための引き立て役にしかならず。その黒を補うようにして見える肌の白は、ただただ、白く白く、そこに在る。
黒と白とを見せる少女、そのかんばせは整いに整っている。
藍色の両瞳に静かな光をたたえ、鉄のように表情を崩さず、その中で映える桃色の唇。目鼻の配置は絶妙であ
り、さらりと流れる長いまつ毛がはかなさを演出する。小柄も小柄といったその体躯も、硝子のような脆き繊細
さ加減に一役買っていると言って良いだろう。
触れれば壊れてしまうような、かような雰囲気があるも、そこで映えるは夜の黒。全てを吸い込まんとするか
のような重さがそのはかない肌に乗せられ、えもいわれぬ美を演出する。
細い細い四肢はぴっちりと黒の服にて守られ、雪景色は覆い隠されている。されど宵闇の髪が流れれば、そこ
で映えるは背に値する部位。そこは大きく布地が切り取られ、風が夜をもてあそぶ時に限定し、少女の雪を見せ
るかたちとなっている。
その開いた背の部分には、濃紫色の紐がいくつも交叉するように組み込まれており、しかしそれで肌を覆い隠
すことは出来ず、少女の肌理たる、雪のごとき白とのコントラストが生まれる。
かわるがわるに色を見せる、深紫と白。それを覆い隠すように、宵闇色の髪が、さらり、と。
華奢な体躯のせいだろうか、弱々しげな妖精めいた雰囲気が、その少女にはあった。
そんな少女のそばには、灰色と肌色の目立つ、レンガ造りの小さな建造物。
入口の横には、木製のテーブルと椅子がいくつか並び、カフェのオープンテラスを思わせるつくりをしている。
建造物内部には、色とりどりのパンが並んでおり、小さな小さなランプが淡い光を放ち、それらをおぼろなる色
彩にて演出、柔らかな雰囲気を醸し出す。
オープンテラスの一角にて、その妖精めいた美貌を持つ黒髪の少女は、いた。白塗りの椅子に腰かけ、木製の
テーブルに目をやっている。その視線の先には、皿。さらにその上にはパンの耳が盛られており、時折少女がそ
れつまみ、鉄面皮のままに咀嚼、嚥下している。
油で揚げられ、砂糖をまぶされたそれは、少女が小さな口を動かすたびに、さりさり、さくさく、軽やかな音
を発し、少女の腹へと消えていく。
少女は時折遠くの空を見つめ、しばしの間を置いて、テーブルの上にあるパンの耳へと目をやり、手を伸ばし、
咀嚼、嚥下。ただ機械的に、くり返しくり返し、それを行う。
どこか珍妙な反復運動を続ける少女。そんな彼女のもとに、やにわに近付く影ひとつ。
猫じみた雰囲気のある女性だった。柔らかな金髪を腰の辺りまで流し、白いブラウスに赤いスカートといった
簡素ないでたちのままに、黒髪少女のもとへと歩み、口を開く。
「またパンの耳?」
「うん。やっぱり好きだから」
申し訳程度に砂糖をまぶしたパンの耳と、それを咀嚼する黒髪少女を交互に見ながら、金髪の女性は薄く笑い
つつ、近くの椅子に腰かける。
同時、小さな風がふわりと流れる。どこか甘い匂いを孕むのは、その柔らかな雰囲気ゆえだろうか。
金髪の女性――メアリは、己の栗色の髪を中指と薬指でいじりながら、小悪魔めいた、いたずらっぽい視線を
パンの耳へとやり、薄い唇をゆっくりと動かす。
「私も好きよ」
「それは嬉しい」
ちょっとしたからかいの意を含めたいたずらの言に、黒髪の少女――レウは、鉄面皮のままに応じる。
どこかずれた問答。それでもふたりの態度には一点の曇りもない。
メアリという女性はにやにやと小悪魔めいた笑みを浮かべ、金髪を流すままに、気分を害した風もなく。
対するレウという少女は、鉄のおもてを揺るがしもせず、黒髪を流すままに、自然体で。
みずみずしさを前面に押し出したような美麗なる容姿のふたりだが、交わされる会話の内容は灰色といおうか、
極彩色のそれである。その珍妙な差異めいたもののせいだろうか、流れる空気がどこか胡散臭い気色を孕むも、
かようなことは知ったことか、とばかりに、女ふたりの動きは止まらず。
「というわけで、分けてくれないかしら?」
「やっぱり言うと思った」
話は通じている。
実際問題として、数年間友人関係を続けているこのふたりには、そういった類の言葉で事は足りた。
「また実験体になるつもりなら、いいよ」
「また新作パン?」
「うん。ローズパン。薔薇ジャム使っただけのパン。パン自体は米粉使用」
「無駄に技術力高いわね……、とはいえ興味あり、実験体、なるわよ」
やれやれ、とばかりにかぶりを振りつつ、楽しげに眉を上げるメアリ。対するレウは小首をこてんとかしげつ
つ、またひとつ、パンの耳に手を伸ばす。
「昼、食べなかったの?」
「仕事にちょっと手こずって遅くなったの。どうせだから、あなたのところで、と考えて今現在この状況」
黒髪の少女、レウはパン屋で仕事をしている。
首都からやや外れた場所にある、都会と田舎を足して二で割ったような場所、シュムシュと呼ばれる町に存在
するパン屋、『ヌダイン』にて、毎日ひとりパンを焼いて売っている。
シュムシュの町にある公園からやや外れた場所にあるせいか、日はあまり当たらないそのパン屋は、ひっそり
と経営しているわけではないものの、目立つかといえばそういうわけでもなく。
人とは思えぬほどに、それこそ絵画の世界から飛び出たかのように、幼いながらも妙な艶を感じさせる絶世の
美をまとうレウが、かような場所にいるその妙な外れ具合が、滑稽かといえば滑稽ではあった。
が、対するメアリは、金髪を揺らしつつ、そんな事情は関係ないとばかりに、楽しげに。
女性らしい膨らみの目立つ乳房と、するりと細身ながらも柔らかな曲線を描く四肢、やや鋭利なおとがいに、
切れ長の瞳が特徴的な、猫を思わせる美を惜しげもなくさらしつつ、からからと太陽のような笑みを浮かべて、
メアリはレウを見やる。
「ほれ、じゃあ食べてくれ」
「あら、意外と大きい。これならパンの耳は要らないかもね」
そんな視線に反応するように、どこかから取り出した白色のパンをメアリに投げるレウ。
危なげなく、金髪をさらさらと風に預けつつそれを受け取ったメアリは、パンを一瞥するだけで逡巡もせず、
ぱくりとかぶりついた。
しばし、咀嚼の時間。
次いで、浮かぶはメアリの渋面。
「甘ッ……。けどまあ薔薇ね。薔薇薔薇してるわ。パンもふんわり甘いし、味自体はいいんじゃない?」
「そっか。でも、目を見張るほど特徴的なわけじゃないから、もうちょっと改良の余地ありかな」
パンを片手にメアリは、呆れとも賞賛とも取れぬ溜息をひとつつき、またもパンにかぶりつく。
パンの断面からは、どろりと赤い色の粘着物が見え、真っ白いパンの断面を奇妙に彩っている。
「ま、そっちはそっちでがんばって」
「うん、がんばる」
ちろり、と行儀悪く、それでいて挑発するようにメアリが舌先でローズジャムを舐めとれば、対するレウは、
何やら妙に恰好の良い体勢を鉄面皮のままに作りつつ、それに応じるように鼻息ひとつ。
小生意気にも見えるが、どこか達観したきらいのある少女のその姿は、猫じみた容姿と気質を持つメアリに、
いたずらな心をもたらすには充分だった。
ちょっとだけからかってやろうか、そこから話を広げてみるのもいいだろう、という考えを、その金髪の奥の
奥の奥にある脳味噌にもたらす程度には。
「今日はお客さん来ないわね」
やや跳ね調子で放たれた言葉。されど、それをぶつけられた黒髪の少女は微塵も動じず。
「外来の行商隊が、むこうの町に来ているから。珍しい食べ物を買出しに、みんな行ってるよ」
「ふーん。で、常連客に浮気されたって寸法ね」
「そういうこと。まあ、一日二日、客が少ないだけで傾くような店でもあるまい。気楽にいくよ」
何を気にするでもなくそう言い、レウは遠くの空に目をやる。
薄水色の空は、透き通るように淡い美を見せており、流れる風の柔らかみがそれを彩る。されど、どことなく
気だるい雰囲気が漂うのは、パン屋の周囲に人らしき人はおらず、昼下がりの空気が、その活気のなさを助長し
ているせいであろうか。
が、気だるい雰囲気は、なにもこの天候のせいだけではなく。
原因はパンの耳を食べ続けるレウの姿にあった。
可憐な、それこそ妖精はだしの美を誇るレウではあるが、覇気という覇気は全く感じられない。ただそこに座
し、黙々と食事を続け、メアリの言葉に抑揚なき声で応じるだけだ。
対するメアリもメアリで、髪をいじったのちに垂れるようにテーブルに力を預け、もそもそと起き、また預け、
のくり返し。レウに話しかける際にはいたずらめいた瞳の光を放つも、それ以外はからきしである。
みずみずしい容姿のふたりが放つ、みずみずしさとは無縁の空気。アンニュイというのにはややもすればずれ
た感が否めない、なんとも不思議な気だるい雰囲気が、そこにあった。
「眠くなるね、この天気」
「こらこら、一応は商売中でしょうに。……まあ、分からなくはないけど」
ふわ、と小さなあくびをしつつ、指先でくるくるとその金髪をいじるメアリ。その手にパンは残っておらず、
ただ薔薇の匂いを余韻として残すのみだ。
対するレウもレウで、パンの耳を全て食べ尽くし、ただぼうっと遠くの空へ、視線を。
「レウ。おやじさんは帰ってこないの?」
「この前、手紙が来て、しばらく帰れないと書いてあってそれっきり」
「もうアンタが店主でいいんじゃない?」
「気が向いたらいつでもこの店、乗っ取っていいってさ」
軽い調子でとんでもないことを言いつつ、レウは首を振ってみせた。身じろぎするたびに流れ揺れる黒髪が、
彼女の背を刺激する。背が大きく開くように出来ていたブラウスの、その不足分を補うようにして、黒がそこに。
「店主も店主よね。どうしてレウはこの店に身を預ける気になったのかしら」
「自由人というか、そういう境界線がないその店主だからこそ、今この状態があるわけだよ」
そんなものかしら、とレウの言葉に反応しつつ、髪を再度くるくるともてあそぶメアリ。
対するレウは椅子をがたりと動かして、ぼうっとした表情のままに口を開く。
「まあ、私がここのチョコチップメロンパンに魅せられた、というのもあるんだけど」
「うげぇ、どうしてそんな甘ったるいの……」
「メアリは甘すぎなのは苦手だもんね」
「ちょっと甘い程度ならいいけどね。私はアンタの作ったコロッケパンの方が好きよ」
さらりと放たれたメアリの言を受け止め、レウは、ひと呼吸時間を置いて諸手を頬のそばへとかざし、そっと
言う。
「そんな、好きだなんて……。ゃ、恥ずかしい……」
言葉を放つと同時、頬を薄紅色に染め、流すように流すように目を細め、瞳に柔らかながらもきらめく輝きを
残しつつ、頬を緊張させると同時に唇を弛緩させ、見事も見事といったはにかみの表情を形づくるレウ。
絵画の世界から現れ出た妖精を想起させる美貌が、どこか胡散臭いながらも羞恥心という風の流れに乗り、そ
れは昇華され、超絶の美へと変化する。
その少女性特有の青さを残しつつも見せる頬の紅の凄艶なる雰囲気といえば比類がなく、レウと対面したメア
リは、思わず頬を赤く染め、一瞬だけではあるが狼狽してしまった。
が、対するレウは、そのメアリの態度が予想外だったようで、眉をひそめつつ演技をとりやめ、肩をすくめた。
「おい、頼む、ツッコミを入れてくれ。可愛い子ぶった自分がとてつもないアホに思えてしょうがない」
「……え、ええ、ごめんなさい」
「いや、そこで謝られると、なおさらこっちがアホに思えて情けなくなるんだが」
「え、ええ、まあ、うん、そうね」
紅色に染まった頬を隠し隠し、メアリはたどたどしい言葉づかいでレウに応じる。
対するレウは己のしでかした行動に今更自己嫌悪感が湧いたのか、口をブーメランよろしく曲げに曲げ、その
美貌に陰りを付けに付けて、三白眼で空を睥睨するだけだ。
わずかな変化ではあるものの、ころりと表情を変えるレウ。
そんな彼女に対し、メアリは地の底を揺らすかのような溜息をつき、ずるずるとナメクジもよろしくの動作で、
突っ伏した顔をテーブルから上げ、小さなおとがいをそこに押し付け、口を開く。
「ねえ、レウ。この質問も何度目か分からない、でも言うわ」
「なに?」
「鏡、見たことある?」
「毎日、顔を洗う時に洗面台で見るよ。なにを当たり前のことを」
まるで、鳥が空を飛ぶことに疑問を抱いた子供を見るかのような目で、レウはメアリに問う。
対するメアリは、強張らせに強張らせた表情を隠しもせず、再度、溜息。今度は大地の果てまでも響くような
盛大さ加減を見せると同時、ぐてんとテーブルに突っ伏した。出戻りである。
「……無知は罪という言葉の意味、私はあと何回認識すればいいのかしら」
「にぶちんの私には、きみの言葉の真意がわからん」
こてん、と首をかしげながら、メアリの瞳の光を見つつ、レウは言う。
無論、そんな黒髪少女の態度に対し、返すものは溜息しかないとばかりに、メアリはただひたすらに肺を動か
し音を出すばかり。
「分からなくていいのよ。そっちの方がいいと私は思うわ。……どこかで被害者が出るかもしれないけど」
「もしかして私は加害者か?」
「男を落涙させるであろう、という限定的な意味合いにおいてはね」
「こんなペチャパイガキンチョ女に泣かせられる貧弱男がいるのなら、見てみたいものだ」
どこか論点がずれた物言いをするレウに対し、もう溜息とあきれの在庫が切れたのか、メアリはレウの瞳の光
を見つめ返しつつ、頬の筋肉を緊張させて今度は鼻息。
薄水色の、どこか珍妙な空気が漂う昼下がり。
それは、少女ふたりの対話の灰色でもあり桃色でもあるような、そんな雰囲気にあてられたせいであろうか。
道行く人並みの、小規模ながらも流れ流れるうねりを見つつ、そっとメアリは目を細める。
もう少し経てば、夕焼けがそこを支配し、次第に黒が侵食し、また白によって切り裂かれるだろう。ころころ
と表情を変えるその空は、どこか楽しげな姿に見え、レウは思わず、
「いい日だな」
「まぁね」
あくびをするようにぼやき、メアリに軽く流されていた。
穏やかな昼下がり、柔らかな陽光。
シュムシュの町は、パン屋ヌダインは、今日も平和であった。
投下終了、チャプター1終了。
ちょっと容姿自覚方面で邪気眼小説主人公っぽいけど、まあ我慢してやってください。
長いので、息切れしないようにちまちま分けて落とす予定でいきます。
次回投下は、近いうちにやっちゃいます。分量と分割量が結構アホみたいになったので。
わりと期待してます。
チャプター2を投下します。というより、2+2.5? 区切り的にちょっと色々あったんで、こんなかたちに。
エロまでまだまだまだまだ。暇ならどうぞお突き合いください。
メアリという女性と、レウという女性の出会いは、それなりに唐突なものだった。
当時、13ほどであったろうか、青い青い気質を持つメアリが、シュムシュという名の町に引っ越してきたのは。
親の反対を押し切り、ほぼ勘当同然に家を出て、魔法に関する色々な道具を作る仕事で食べていこうと決意し、
とりあえず安定した場所に住まうことを目的として、適当に見付けた町がそこだった。
特にえり好みする気は彼女にはなかったし、えり好みする余裕もなかった。道具開発の許可証申請と旅費で、
金はもはや枯渇寸前だったし、胃袋の中身など言わずもがな。
とりあえず安い宿泊施設に泊まるか、とメアリが決めたところで、町をぶらぶら歩いてみれば、その中心たる
場所からやや離れた、薄暗い場所にそのパン屋はあった。
ヌダイン、という、わけの分からない不思議な名前のパン屋だった。人名なのか地名なのか、どこかずれたよ
うなセンスのない名前のそこに、気付けばメアリは近付いてしまっていた。
だが、疑問顔でいたのもしばしの間のことで、パン屋の入口付近にある小さな札を見れば、そのひそめられた
眉は新たな感情によって形を変えられることとなる。
仕方のない話なのかもしれない。
『実験体という名の生贄募集中』などという札が書いてあれば、気にしてしまうのも無理からぬことであろう。
「なんなのよ、これって?」
当時のメアリは、その気の強さと同時に、一種の横暴さをもっていた。今でこそ、その横暴さはなりをひそめ、
気の強さは健在なれど、温厚な気質を持ちながら芯を強いがままに保てている女性、というかたちに落ち着いて
はいるが、その時は狂犬じみた気質を自覚せずにいる子供だった。
そう、幼かったのだ。無理を無理のままに通し、他人の顔色をうかがわないその姿は、気丈というよりかは、
わがままなそれであった。子供も子供といった当時の性格を批判されても仕方ない、今のメアリはそう考えてい
る。過去の出来事に話を飛ばせた際、自分のことを言われると、知らず知らず頬を薄紅色に染めてしまうのが良
い証拠であろう。
強気な女の子、と称して良いのかもしれない。少なくとも、周囲から受けるメアリの評価は基本的にそういう
類のものだったし、初対面の相手であっても大抵がそういう領域の話に落ち着いた。
子供だからこそ見せる無謀さといおうか微笑ましさが、その時の彼女にはあった。だからこそ、あまり憎まれ
ずにいる。瑞々しい少女へと踏み出す直前の、つぼみもつぼみといった幼い気質における愛嬌が、彼女にはある
のだった。
そんな彼女が目を細めつつ、わずかばかりいらついた声を出した原因は、シュムシュの町にある、ちょっとし
たはずれに位置するパン屋のそんな宣伝文句。
レンガと木とで構成された、灰色と肌色の妙な建造物のそばに、くたびれたイーゼルの上に乗せられた、薄汚
れたキャンバス。その上にでかでかと描かれた文字。妙にカラフルな色彩の文句に、実験体やら生贄やら書かれ
たそれは、成程、確かに眉をひそめるに値するものだろう。
「ん? どうかしましたか?」
そんなものについつい目を留め、ついつい言葉を発してみれば、メアリの前ににゅっと現れる黒い影。
幼いながらも美しい少女の出現に、少なからず驚く暇もあらばこそ、生来の気の強さでメアリは問うた。
「あなた、店員? これはなに?」
「うん、店員。これは、新作パンが作られたので、お代の代わりに食べて感想が欲しいなあ、という次第で」
しれっと語る幼顔の店員に、メアリの心臓は苛々をうったえるかのように鼓動を早めていく。それは、店員で
ある少女の美しさに心惹かれたという要素があるのも、一応は否定しないが。
「分かったけれど、これじゃあ変なものが混入されているみたいじゃないの」
「それも含めての、だじゃれー。悪趣味かもしれないけど、変えるつもりはないなあ」
ぶええ、と変な吐息を口の端から出しながら、いかにも『私はだるいです』といった仕草所作態度で語る少女。
可憐な妖精めいた容姿の彼女には全くそぐわぬその言動と雰囲気に、メアリの心はますます苛立つ。
「なんでよ? もっとマシな言い方あるでしょうに」
「あまり美辞麗句でものを良いものとして飾るのは好きじゃないから」
ぎろり、と死んだ魚のような目を一瞬だけ狼はだしのそれに変えて、少女は言った。
が、それも一瞬のこと。次の瞬間には美しい黒髪を流しつつ、醜い吐息を垂れ流し、気だるげな姿を見せに見
せ、少女はただ自分の空気を主張するがままに、そこにいた。
美しい姿と、気品のきの字も感じられない態度と、ふざけにふざけきった宣伝文句。されどその小さなパン屋
の外装も内装も、地味ではありながらもきっちりと掃除はされているし整理整頓はされている。賞賛すべき姿で
はないが、咎めるべき姿でもない。微妙な微妙な中間線を行くその姿は、どうにももやもやとした気持ちを見る
者の心に与えるのには充分に過ぎたろう。
無論、かようなことが理解できぬほどにメアリは愚鈍ではない。美しい黒髪少女の醜い溜息を聞いた際に、思
わず何を言って良いのかも分からず、言わぬが最良と気付き、溜息ひとつで返してはいたのだから。
だが。
後になって思えば、メアリはその時から少女に興味を覚えていたのかもしれない。
気だるげな仕草を見せながら、時折見せる、猛禽類めいた所作と雰囲気が、どうにもこうにも不可思議だった
からだ。同時に、そんな姿に全く嫌悪感を抱いていない自分自身を訝ることになったから、というのもあろう。
気付けば、メアリは苦笑しつつ口を開いていた。
「……変な女」
「まあ、自覚はあるよ。それより食べてみる? 味の保障はしないけど」
きゃらきゃら笑いながら言う少女に対し、メアリは眉をひそめるのみならず、唇の端を引きつらせた。
それは少女の態度に対するものであったし、自身の退くに退けない状況に対するものでもあった。
いくら横暴さはあっても、責任感というものの片鱗ぐらいはメアリにもあった。ものごとに関わろうと噛み付
いたのに、自分からそれを遠ざける間抜けさ、そんな海に浸かっていたくなかったのだ。変に矜持を先行させる
若さも相まって、メアリは気付けば言ってしまっていた。
「いいじゃない。食べさせなさいよ、試作品」
「あいよ」
メアリが言葉を発するや否や、やにわに少女は飛び上がり、空中で体を回転させながら危なげなく着地、その
まま跳ねるようにパン屋に入っていき、しばらくして黄色と緑の目立つ色彩のパンを持ってきた。
「枝豆とチーズのしっとりパン。豆とチーズのハーモニーが、股を濡らすよ」
「……あなたの下品な言は受け流して、まあ、食べさせてもらうわ」
美しい容姿に似ず、下劣な言葉を吐いた少女の手からパンをひったくるように取り、メアリは逡巡もせず、そ
れどころかパンの全容を確かめもせず、ぱくりとかぶりついた。
果たして、その感想は。
「やば……、美味しいじゃない」
「どこの辺りが?」
ややもすればパサついたきらいのある豆を、油多めのチーズをかけることによって潤いを良くし、水分多めの
パンにてぼそぼそ感を和らげたそのパンは、刺激的ではないが落ち着いた塩味に包まれており、悪くないと思え
る代物であった。
そのことをやや粗めに説明すれば、少女は目を輝かせつつきゃらきゃらと笑い、じゃあこれは追加商品として、
などとあっさり今後の方針を決めてしまっていた。
その少女の思い切りの良さといおうか、さばさばとした態度にメアリは小さな好感を抱き、気付けば開く、己
の口。
「やるじゃない。この若さで店をやるだけはあるわね」
「ううん、違うよ。私はただの雇われ店員」
「え? どういうこと?」
自分の趣味以外にあまり興味を持たないメアリが疑問の声を上げれば、少女は薄く笑いながら店の看板を指で
さしつつ、返しの言葉を入れる。
「店主がね。結構、放蕩癖があるんだ。だからよくよく現場をまかされているの」
「それって、実質的な副店主と言わない?」
「かもね。でもまあ、私は誰かを起用するとか、そういう上に立つための気質を持っていないから、ただの店番
さんでいいんだよ。まあ、そういう中間的といおうか、したっぱといおうか、そんな立場が一番好きだというの
も、あるといえばあるんだけどさ」
あっけらかんと放たれた言葉を理解、しばしの間を置いて、メアリは気付けば苦笑していた。
それは、妙に思い切りの良い少女の言葉に影響されたせいか、それとも珍しく自分が趣味以外のものに興味を
覚えているせいか。どちらにせよ、おかしかった。だからこそ唇を曲げて笑ってしまっていた。
「変な奴」
「自覚はあるよ」
「でも……面白い奴」
「ありがとう」
鉄面皮のままに礼を言う少女に対し、とうとうメアリは声を上げてきゃらきゃらと笑い声を上げる。
物言いも、態度も、容姿も、どこかちぐはぐでありながら、その雰囲気は春の陽気じみた柔らかみのあるそれ。
そんな珍妙なギャップが変にいとおしくて、メアリは少女に対し、警戒心をとっぱらってしまっていた。
「ねえ、お知り合いになろうか?」
「な、なにいきなりわけの分からないこと言ってんのよ!?」
そんな彼女の心境を察したかどうかは知らないが、やにわに少女からの提案を聞き、警戒心を取り除いたメア
リは狼狽する。心の防壁をなくした後での直接攻撃的な言は、青い青い年齢のメアリにはやたらと響いた。
「んー、友達になろう、だとなれなれしい気もするし。初対面なので、お知り合い、が妥当だと」
「……アンタ、やっぱり変な女ね」
「うん、私もそう思う」
「けど、悪い女、ではない」
「……おおう、なんか嬉しいぞ」
「……やば、なんかすごい恥ずかしいこと言ってるわね、私」
しかしながら、口は動く、話は進む。
気付けば。本当に気付けば、いつの間にやらメアリと少女は、お知り合い、になっていた。
「んー、でも嬉しいよ、ありがとう」
「礼なんて言う問題じゃないでしょ。私が馬鹿正直にものを言っただけ、それだけ、それだけよ、うん」
照れ隠し、という言葉を体現したかのような発言をしたメアリは、自分の発言を脳味噌の中でくり返し、頬を
朱色に染めた。
恥ずかしさはあったが、妙な達成感があったのも事実だ。ちょっとしたパン屋の宣伝文句に目をつけた結果が
こうなるとは、成程、運命の神様とやらもずいぶんと酔狂なものだ、とメアリは思う。同時に、それに感謝した
くなる気持ちをも、少しだけ抱く。
「私はレウ。レウ・アディア。ただのパン屋だ。それより上でもそれ未満でもないよ」
「私はメアリよ。メアリ・ミーティス。今のところ無職だけど、まあなんとかするだろうからよろしく」
そうして、互いに自己紹介を。その際に浮かべられた、少女の――レウの、美しい微笑みを、メアリは忘れる
ことはないだろう。
あまりに綺麗でいて、あまりに妖艶でいて、あまりに黒くて白くて、どこか悲しい笑みだったから。
この時、メアリは思ったのだ。
負けちゃったかな、と。
恰好なんてつけなくても、この少女はとてもとても美しいから。ちょっとした気の強さで心を覆うような自分
とは、根底から美そのもののありようが違うと感じてしまっていたから。
敗北の気持ち、それを誇らしくも悔しくも思う気持ち。様々な思惑を乗せて、メアリも小さく微笑んだ。
「よろしくね、メアリ」
「ええ、よろしく……レウ」
それからメアリは、暇があれば、時折パン屋に寄るようになった。
その時折が、しばしば、に変わり、頻繁に、に変わるのには、さして時間もなく。原因がレウであるのも言う
までもなく。
仕事に就き、生活が安定するにつれて、日々が忙しくなり、料理の時間を奪われ、結果としてパン屋に通い続
ける日々が続いた。気付けばレウの店にとってのお得意様、となっている程度には、メアリはそのパン屋に足を
運び続けた。
それから、レウは親なし子であったということを知り、パン屋の店主から文字や政のうんぬんを教えてもらっ
ているということを知り、彼女が変人であるということを知り、彼女は変人そのものであるということを知り、
彼女はやっぱり変な奴であるということを知り。
単なる知り合いから、友人、という段階に知らず上がっていたことを心の奥底で感じた時には、もうメアリに
は、レウを抜いた日常を想像することは出来なかった。
美しい黒髪を流す、妖精めいた美貌を持つ彼女の姿を、ありようを、思い出すたびに足はパン屋へと向いてし
まう。
だからメアリは、腹が減れば、無意識内に、
「レウ。今日はピザパンの気分なんだけど、ある?」
「ん、あるよ」
ヌダイン、という名の珍妙なるパン屋に、足を運んでしまうのだろう。
* * *
「……どうしたのよ」
「きみとの出会いを思い出していた」
「ちょ、あれは黒歴史だからやめなさい……!」
「それは嫌だ。あれも大事な思い出だ」
「この野郎、恥ずかしい台詞をさらりと……!」
「私は女郎だけど。それに、今の、そんなに恥ずかしい台詞かな?」
顔を真っ赤にして、店の外に設置されているテーブルに額を打ちつけるメアリに対し、レウはただ鉄面皮のま
まに小首をかしげて小さく吐息。
そんな姿も絵になるのだからずるい、などと考えつつメアリはねめつけるようにレウの身を見、言う。
「この天然美形」
「何を言ってんの、美しさならメアリの方が七億倍も上だろ。おっぱい的にもそうだし」
攻撃は瞬時に返しの一撃を乗せられ、メアリのもとへと。その際に受けたあまりの気恥ずかしさといおうか、
そういった類のままならぬもやもやとした気持ちに撃沈させられたメアリは、金髪が乱れるのも構わず、テーブ
ルに突っ伏しつつ、一ダースぶんほどの溜息をひとつに込めて、盛大に、空へと溶け込ませた。
「アホか、アホなのか私……。こっち方面でこの話題をレウに振るなんて、学習能力ないの……?」
「勝手に落ち込むのは構わないけど、目の前で暗い顔されると友人としては困る」
くにくにと指で指をもてあそびつつ、追い打ち攻撃を加えるレウに多少のわずらわしさを感じ、メアリは先程
購入したパンをやけ気味に取り出し、レウの目の前でこれ見よがしにかじってみせた。
「あー、コロッケパン最高」
「ありがとう」
どこかすねたようなメアリの物言いにも、小さな微笑みで返すレウ。
同時につのるは敗北感。
メアリ・ミーティスが実に複雑といおうか忸怩たるといおうか、かように微妙な気分を味わう、そんな昼時。
女ふたりの思惑も知らず、空は青いままだった。
レウはいつものようにパン屋の外でだらだらと客を待ち、そのそばでだらだらとだらけるメアリ。
過去の出来事に紅と含羞の色を乗せ、妙な沈黙が続く。風はひゅうひゅうとひっきりなしに吹き、空から注ぐ
陽光は柔らかではあるが、風にいくぶんか切り裂かれ、そこに在る。
レウが遠くにゆるゆると目をやる。メアリもつられるようにゆるゆると。
そんなふたりの先に、ゆっくりとやってくる、小さな影がひとつ。
小柄な女性だった。
柔らかな陽光を浴びてきらめく黒髪を雅結いのかたちにし、ふわりとした雰囲気を内包するままに、ゆったり
と、ただゆったりと歩を進める女性。小柄でいてどこか気品のようなものが感じられるその女性は、ゆっくりと
周囲を見渡しつつ、レウが経営するパン屋、ヌダインへと足を向け、しばしの間を置いて、レウの前へと降り立
つ。
美しい、というよりかは、綺麗な女性、という方がしっくり来るだろうか。柔らかな丸みをおびた肌はしっと
りと黄色がかっており、浮かべる微笑もその陽光のように柔らかく、ただ柔らかく。まとう衣装がゆるりとして
いることも相まってか、堅苦しさや刺々しさを微塵も感じさせないたたずまい。
上は、白いゆったりとした厚手の布。下には朱色のスカートめいた布を身に着けており、長い長いその黒髪は、
レウほどの宵闇色ではないけれども、光を反射して妖艶な輝きを見せ、そこに在る。
「相変わらずの、のんべんだらり具合ですね、レウ、メアリ」
高い声。女性のなかでもとりわけ高いと思わせるほどの声音。されど小うるささのようなものを微塵も感じさ
せないその音色は、耳にとって有害なものではない。流れる風にも似た、自然と、空気の中に溶け込んでしまい
そうな、そんな声。
それを受け、オープンテラスに設置されてあるテーブルにべちゃりと体を預けていたレウとメアリは、うっそ
りと身を上げ、顔を上げ、頬をゆるませ、その声を出した女性を見やる。
「おひさ、レンカさん」
「こんにちは、レンカ」
柔らかな雰囲気を持つ女性――レンカは、黒髪の少女と金髪の女性の言を受けて、ふわりと微笑を浮かべつつ、
どこかふざけた所作を四肢であらわしつつ、返す。
「はい、レンカです。巫女巫女しています、相変わらず巫女巫女です」
いたずらめいたその仕草を見、レウは微笑を、メアリは苦笑を、それぞれ返す。
風が流れる。簡易的なブラックドレスめいた衣服に身を包んだレウ、その黒髪が、風にもてあそばれ。どこか
幻想的な雰囲気を示すその暇もあらばこそ、少女は言う。
「ご注文は?」
「ピーマンたっぷりピザパン。それと、イチゴジャムとマーガリンのコッペパンをください」
「はい、少々お待ちを。こちらで食べていく?」
「ええ、ここで腹に入れていきます」
妙な会話を交わしつつ、レウは店の奥に行き、しばしの間を置いてプラスティック製のトレイに乗せたパンを
レンカの元へ、ぐいとやる。
それに対し、レンカはふところから小銭を数枚取り出すと、ぽんと放り出すようにレウの服の胸元へと投げ入
れた。するり、と衣擦れの音と同時、苦笑の声が漏れる。
「ガキの身だからひっかからないよ」
「一回、おっぱいに金を投げてみたいと思ったんですが……人選ミスでしたね」
瞬間、柔らかな雰囲気を自ら破棄し、レンカは皮肉げな笑みを浮かべると、パンを片手に、もう片手は自分の
胸に手を当て、諦念の入り混じった溜息をひとつ。
次いで、その暗い思いを吹っ切るかのように、がぶり、と擬音がつきそうな勢いで、巫女たる女性は山なりの
噛み跡をコッペパンにつける。
その断面からは、粘着性のある赤と白がのぞき、とろりとろとろとパンの断面に染み込み、芳醇な香りを空気
に、風に乗せて、そこにたたずむ。
「おおう、相変わらず美味ですね」
「チョコチップメロンパンも食べてほしいなあ。看板なのに」
ぺろり、とどこか挑発的な仕草でジャムを舐めとりつつ言うメアリに対し、レウは鉄面皮のそれに表情を戻し、
残念だ、といった仕草で肩をすくめる。
「何度も言いますが、チョコレート自体、苦手なんですよ。あの風味がちょっと駄目で」
「まあ、無理強いはしないけど」
小さく息を吐いて、レウは髪をかきあげつつ、遠くの空を見やる。
外来の行商たちの仕事具合はどうやらいいらしい。いつもよりパン屋の席が寂しいという事実が、それを裏打
ちしている。今、こうして商売中であるのにもかかわらず、雑談が出来ている程度には。
そんなレウの思いを察知したのだろうか、レンカは独特の衣装をいじりいじりつつ、トレイをテーブルの上に
置き、今度は赤と緑と黄の目立つパンをかじりつつ、くすくすと笑う。
「閑古鳥の愛人状態ですね」
「大丈夫。一晩たったらヤり捨てられて、明日にでも繁盛だろうし」
「ならいいのですが。……ん、いつもより香辛料多めですか?」
「うん、ちょっと変えてみた。評判悪かったら変えるから大丈夫」
「いや、私はこっちの方が好きですよ。ピーマンの風味が立ちながらも、気になる臭みが弱まりましたし」
ピザパンを食べ、唇の横にケチャップの赤をまとわせつつ言う雅結いのレンカ。
風は鋭利でいて柔らかで、人の波は今現在、シュムシュの町だけひっそりと。昼時であるのにどこか暗い雰囲
気はそのせいだろうか、それを誤魔化すようにメアリがふたりの間に割って入る。
「東方の祈祷師、だったっけ?」
白と紅が目立つ独特の衣装を見つつ、あからさまな話題転換の言を放ったメアリに対し、レンカはくすくすと
笑いつつケチャップを舐めとり、その袖をひらりと。
「ええ。前にも言いましたが、まあ、擬似的な巫女っぽいもの、シャーマンさん、ですね」
「巫女さんか。お祈りとか儀礼的なものってやるんだっけ?」
「はい。いもしない神様を崇め奉り、神職という特別な職に就く者がする特別な行為だから、という理由で、く
だらんママゴトめいた儀式に対し、すげぇ割高な料金を客に要求するという、ヤクザであこぎな商売です」
聞く人が聞けば激怒しかねない罰当たりな言葉を吐くレンカであるが、その双眸に宿る光は真剣味を帯びに帯
びており、言葉尻に稚気は垣間見えども、真意そのものは揺らぎようもないことは見てとれる。
メアリは苦笑、レウは鉄面皮。明るい時間帯、客足なしのヌダインに、女性三人の呼吸が合わさる。
レンカは、東方の大陸に居を構える巫女である。ときおりシュムシュの町に観光と休暇がてらに来て、しばし
ばレウの店でパンを買い、食べていく。ただただ綺麗と思わせるような容姿と雰囲気、それに加えて、東方独特
の衣装の物珍しさも相まって、レウは気付けば彼女と深く関わるようになっていた。
毎日会う間柄ではないが、互い互いの存在を気付けば忘れるほどに薄い間柄でもない。今こうして、店が暇な
時に、雑談めいた言葉を交わす程度には。
「まあ、ほとんど外聞的要素で商売していますからね。清純なイメージが求められるわけです。神に仕えるんだ
から清純であれ、清廉であれ、処女であれ、という。姦淫済みの女は巫女になれないんです」
「それもそれでおかしな話ではあるかもね。文化とか風習といえばそれまでだけどさ」
指先で器用にくるくるとトングを回しながら言うレウ。
瞬間、レンカは何かしらのスイッチが入ったのだろうか、やにわに目を血走らせて天をねめつけ、口を開く。
「ぬぁーにが清純派だコンチクショー! 処女以外認めないってどういうことだゴルァ! 男の願望欲望丸出し
じゃねぇか、恥ずかしくねェのか!? ああ私は処女だ、処女だよ! 25にもなって未だ処女だよ! 行き遅れ
とか言わないでよ、頼むからさぁ! 近所のおばちゃんたちも、憐憫のこもった視線で見てくるし……。やっぱ
り胸か、胸がいいのか!? あの無駄な脂肪がいいのかコノヤロー!!」
怒号のように言葉を矢継ぎ早に発し、諸手を上げて怒髪を天へと向かせるは、25歳処女巫女、レンカ。
その様相は恐ろしいだの醜いだの美しいだもの云々言う前に、それこそ憐憫のともなう領域のそれであった。
発する内容の情けなさが、その姿をよりいっそう憐れなるものにさせている。
「巫女で食ってるけど、処女じゃなくなると食い扶持なくなる、ふしぎ! コノヤロォォォッ! 社会的に私を
お局様計画ですか!? 胸小さい行き遅れ巫女には、永遠のヒーメンがお似合いってかチクショーッ!!」
天に向かって咆哮するレンカを見ながら、酒も飲んでいないのに、よくもまあそこまで口と舌が回るものだ、
とレウは思う。わずかな思考の時間も見せず、矢継ぎ早に言葉をくり出せるレンカは、恐らく頭の回転が非常に
速いのだろう。だからといって、発する言葉の内容が内容であるので、技能の無駄づかいにも程があろうという
ものではあるが。
「……また始まったわね。レンカさんの愚痴」
「黙っていれば普通に美人さんなのにね」
そんな彼女の『いつもの姿』を見つつ、あきれ顔のままに平手で額を覆うメアリを尻目に、レウは微笑する。
一応は日常光景、であるのだ。この巫女の狂乱痴態は。
同時、メアリの豊かな胸の膨らみに向けて、殺人でもしそうな目をレンカが向けることも、また日常であり。
「モウヤダー! 巫女やめる! やめて充実したセクロスライフするゥゥゥッ! 私だって男の子と手ぇつない
で、一緒に散歩してアイス食べてイチャイチャした後で獣のように性器をこすり合わせたいィィィィッ!!」
そろそろ内容が苛烈を通り越して下劣になってきたレンカの愚痴。さすがにこのような内容を思い切り口に出
されては、レウの頬の筋肉も引きつる。
いくら町のなかを行く人間が少なかろうと、皆無というわけではない。しかしそれにも目をくれず、下品でい
て下劣な内容を大声で垂れ流すレンカの姿は、滑稽というよりかは憐憫しかもよおさぬほどに哀れなるそれであ
り、見れば聞けば思わず溜息のひとつふたつは出ようというものだった。
「……うん、男ができない理由がなんとなく分かるわ」
「恥じらいってのも大事だよね」
右手に巻かれた深紅の腕輪を確かめるかのようにいじるメアリを見つつ、レウは苦笑した。
そろそろ殴ってでも止めないと、という金髪の女性の意志表示である。
「まあ、私らも男っ気ゼロだけど」
「言わないでよレウ。……アンタはすぐ解消できそうだからいいけどさ」
「こんなガキペチャの氷結顔面の生意気パン屋に相方が簡単に出来たら、出会いを求める人に失礼だよ」
「そうかしら? まあ、貴女がそう言うなら何も言わないけど」
わめき続ける巫女をかたすみに、女ふたりで桃色ながらも灰色の会話。やや強めの風が流れる昼、パン屋の周
りだけは混沌の旋風が渦巻く。
しばしの間を置いて、耳が我慢の限界を迎えたと悟ったレウは、わめき続けるレンカへと身体を向けた。
「そろそろ黙ろう、わんぱくさん」
ゴロリ、と音を立てて、暴れる巫女の両こめかみにこぶしの骨を柔らかくぶつけるレウ。なだらかな、子供も
子供といったその特有の丸みと柔らかさを持つ骨と肌をそれなりの力であてられたレンカは、そこでようやっと
我にかえり、周囲の状況を見、次いで、頬をうっすらと赤く染めた。
「あ、すみません……。ついつい熱くなってしまって……」
どうやら平静を取り戻したようである。が、彼女の視線は相変わらずメアリの豊満な胸部装甲に向かっており、
まるで獲物を見つけた鷹のごとく、微動だにしない。
レンカという巫女は基本的に温厚であるが、いくつかの言葉や立場や話題にひっかかりを覚えた際、柔らかな
おもてはすぐに瓦解し、獰猛で短気な部分が見えてしまう。それはそれでひとつの魅力なのかもしれない。現に、
彼女のこの気質を欠点としてみておらず、こういう面もあるから楽しい人だ、とレウが感じているように。
とはいえども、店先で性器がどうとか言われれば、それなりに困りはするわけで。『ヌダイン』に集まる人間
が、いくら変人ばかりといえども、昼前の気持ち良い天気のなか、そんな会話が混ざるのは、さすがに色々な意
味で止めるべきことである。
とりあえずレウは店の奥から、温めた牛乳の入った瓶をレンカに渡し、鼻息ひとつ、言う。
「ほら、牛乳あげるから沈静化を希求。あったかいよ」
「わお、ありがとうございます。これだからこの店はやめられないんです」
先程までの狂乱痴態はどこへやら、ころりと表情を変えてレウから牛乳瓶を受け取り、レンカはにこにこと笑
いながら小さく吐息。
もしかしてわざと騒いでそれをダシにしたか? などとレウは思うが、まあそれはそれで構わない。見返りを
求めるようなサービスをやるほどに商売に走ってはいないのだから。
大事そうに瓶を両手で握りつつ、白い液体を流し込むレンカの姿の微笑ましさを見れば、多少の節介も、まあ
許容できようかというものだ。
「グフフゥ……、これで乳が少しでも成長すれば御の字ですね……」
「お胸、そんなに必要かなぁ? ガキな体の私にゃ分からん領域の話だな」
肩をすくめてレンカを見つつ言うレウ。当の巫女様は、なんともまあはしたない表情で、生来の綺麗な顔を台
無しにしているのに気付いていない。
「うーわ、なんというか、名画に墨汁ぶっかけてるみたいね」
「はなから飛ばしているぜ、この巫女様は」
レンカという女性は元来、柔らかな雰囲気を持つ、春の陽気にも似た存在ではあるのだが、発言が発言、態度
が態度、ありようがありよう、である。
「グフフゥ……」
「まあ、確かにもったいなくはあるな」
レウはレンカを見つつ思う。綺麗な人なのになあ、と。
胸がないだのどうだの言うが、体の起伏がさほど分からない服の上でも分かる、細身でいてしなやかな体躯は、
豹を想起させる。たれ気味の目が、鋭利な雰囲気を持つおとがいと合わされども、それでちぐはぐだという印象
はしない。危うい位置に立ちながらも真正面を向いているような、違和と規律に満ちたという珍奇な矛盾たるア
ンバランスな雰囲気が、なんとも奇妙な艶を醸し出す。
顔立ちは整っているし、柔らかでいて細いその身は、美術品を預かるかのごとく、おずおずと触れてみたくも
あるような魅力に満ち満ちていた。ややもすれば幼顔のきらいがあるかんばせが、その細き体躯によく似合う。
はかないけれども芯がある。そういった印象を持つレンカの容姿は、雰囲気美人、という方が正しいだろうか。
容姿的な美しさもかなりのものであるのに、見る者の心を揺れさせるような気品のあるその姿は、美人という言
を用いてもおつりが来るであろうほど。
が、雰囲気美人であるからこそ、言動に気を付けねばならぬのは言わずもがな。であるのに、その言動が下品
とか下劣とかを全く気にしない直球加減だから、色々と当惑して男の人が寄ってこないのではないか、レウはそ
う思うのである。
なにせ、子供から「赤ちゃんはどこから来るの?」という質問を受けた際に、真顔で「きみのお母さんのお股
からですよ」と言うような、非常に残念素直な気質を持つ女である。
多少の官能的発言など、いまさら茶飯事にもなりはしない。それがまた残念美人度を加速させる。
とはいえど、レンカに男が出来れば出来たでまた色々と面倒なことになるのは想像に難くない。だからこそ、
レウが抱く思いはそれなりに複雑であった。男の人を作って欲しいけど欲しくないなあ、という。
そんなことをつらつらと考えれば、いつの間にやら、パンも牛乳も全て胃の中におさめたレンカが、どこかす
ねたような表情でレウとメアリを見ていた。
「メアリはいいですよね。レウっていう旦那様がいますものね」
「ちょっと待てそこの巫女。私は女、レウも女。わかる?」
まるで聞き分けのない子供に説教をするかのように、頭を手のひらでおさえつつ言うメアリ。言葉を放った側
も放った側で冗談だと分かっているために、苦笑のみがそこに満ちる。
「私はメアリが奥さんだと嬉しいかな」
「え、ちょ、な、なに言ってるのよ?」
「ぬおう、百合ん百合んですか?」
だが、空気を読まぬレウの発言で、急遽、場は桃色の雰囲気に。
されどそれもわずかな間のことで。
「性別とか気にしないな。好きな人は好きなだけだし。我ながら実にガキっぽい台詞だけど」
「……あー、アンタってそういう奴だったわよね」
やれやれ、と言わんばかりにかぶりを振りつつ、手のひらで額を抑えるメアリの姿を見て、レウは首をかしげ
る。そんなふたりの様子を見て、レンカはレンカでからからと笑うだけだ。
「まあ、忘れてくれ。そっちにも選ぶ権利はあるだろうし」
「ええ、でもちょっと驚きなのよ」
「私に変なこと言われたから?」
「それほど嫌じゃないと考えている私自身が、よ」
微妙な空気が流れる。
メアリは、自分で自分の放った言葉の意味に気付き、頬を薄紅色に染めて、恥じらいの意を見せつつ後悔の吐
息をひとつふたつ、同時に体を縮めて含羞の色をそのかんばせに乗せる。対するレウは疑問顔、そばにたたずむ
レンカはとうとうおかしくてたまらぬといった風に、腹を抱えて笑い転げる。
どこかずれた空気と流れ。今、この場にいる女性三人が、尋常のそれとは違う珍妙な思考回路をしているせい
だろうか。妙な、とかく妙な空気がそこにはあった。
「そ、そんなことより、これからレンカさんはどうするのよ?」
「あと三日ぐらいここに滞在した後に、各地を適当に回りながら物資を整えて、故郷にまた戻ります」
あからさまな話題転換の言に対し、当の巫女はこともなげに答える。それは、空気を読んだ上での態度だった
のだろう。それに一も二もなく、メアリは飛びついた。
「不良巫女ね、外国に遊びに来てばかりじゃないの」
「こっちは儀礼道具を取り揃えなきゃいけないのに、出不精ばっかりで私が出ざるを得ないんですよ! だから
こういった場所で息抜きのひとつぐらいもしないと、鬱憤で巫女長を殴り倒してしまいそうで……!!」
牛乳が入っていたコップを握り、だずん、と鈍い音を立ててレンカはテーブルにこぶしを打ち付ける。力自体
はあまり入っていないが、華奢な彼女が出すそれは、その身にはそぐわない大きさをもってして周囲の空気を切
り裂いていった。
はるか東方の地は、独特の文化や技術が発展している。言語もそのひとつであり、レウたちが用いるそれとは
根本的に体系が異なるらしい。だからして、レンカのように外へと出回る職の者は、外来語習得が必須項目であ
るのだ。
しかしながら、外来語を上手に使えるのはレンカぐらいらしい。他の巫女も使えなくはないのだが、色々と勉
強経験が長いレンカと比べればつたないもの。儀礼用道具を購入する際、変なぼったくりに会わないようにする
ためには、細かな言葉の理解は必要不可欠。必然、レンカにお鉢が回るというかたちに落ち着くのである。
適材適所、と言うのかもしれないが、当人にとってみれば使い走りをやらされている気分なのだろう。彼女の
その琥珀色の瞳に浮かぶ、抑えられた憤怒の念は、視認可能なほどに明確でいてあからさまである。
「中間管理職は大変だなあ」
「パン屋もそれなりに大変そうでしょうけどね。まあ、隣の芝ならぬ職はドス黒く見える話ということで」
「まあ、パン食べろ。とりあえず新作でも食ってくか? 生贄になってみる?」
「いいんですか!? ぜひお願いします!!」
髪を乱し乱し、目を輝かせてぴょこぴょこと上半身を揺さぶるレンカ。
その姿を見て、レウは苦笑する。こういう可愛いところを見せれば婚期なんて逃しはしないのに、と。
「……なんですかこれ」
「納豆カレーパンだけど?」
「なんですかそのゲテモノは……って、うめえ! 地味にうめぇ!」
「あれれ? ネタで作ったのに、もしかして成功?」
妙な空気はあれども、今日も今日とて、シュムシュの町は平和な一時であった。
平和でいて、平和でいて、あまりに平和でいて、まるで、何かしらの嵐が起こる前の静けさのように。
ただ、ただ平和であった。
あぎゃー!? 規制喰らったッ!? やっぱ15は多かったのかなあ……。
変な時間に落として正解だったな……。今回の投下はこれで終了です。
次もなるたけとっとと落としますます。それではまた。
89 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 21:59:54 ID:QWsaibho
うむ 良いぞ良いぞ
ここって未完?というかまだ途中の作品多いよね
楽しみに待つ。あともう少し人がいればなぁ。少し寂しい
91 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/15(土) 17:12:05 ID:ltsmWOZD
お初です。
自分でファンタジー小説を趣味(?)で書いてるんですが、ちょっとえちぃ場面が必要になりまして。
何でか、書きたいからです(苦笑)
まぁその辺りは冗談半分ですけど、ここってシチュは限定なしですか?
一言で言うと「ロリ姉妹に逆レイプされる純情くん主人公(←18歳)」ですが。
まだまだ初心者で、投稿しても平気かなとかあるので、少し反応待ちです。
予め触れておけば問題なかろう
93 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/15(土) 23:56:33 ID:jH6kE3Qr
不安なら練習スレみたいなのなかったっけか?
あそこ使ってみても良いんじゃないかな?
94 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/16(日) 01:58:04 ID:8iGb5tjr
なるほど。
とはいえ、一度は別スレに投下したこともあるので、苦情覚悟で投下します。
明日……もとい今日ですが、序章を投下しますのでよければどぞ。
95 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/16(日) 22:17:45 ID:8iGb5tjr
ある森の奥深く、冷たい空気が漂う地下牢の最奥の中、二人の人影が向かい合っていた。
その部屋は地下、窓もなければあるのは小さなろうそくの頼りない光、ほぼ無明の闇の中に張り詰めた空気が広がる。
一人は少年、名はシン。
華奢な体つきに胸元に赤い十字架が刻まれた漆黒の衣を身にまとい、銀色の髪をして首には長い巻き布。
腰には一本の刀が携えられており、やや膝を曲げて上体を捻るその構えは、刀を扱う技の中でも一際有名な技の構え。
その名も“抜刀術”、普通に刀を振るうよりも鞘の中で刀身を走らせることで、通常よりも速い速度で刀を振るう必殺奥義。
しかし外せば隙だらけのために乱用は出来ない、必ず決めなければ勝機はないが、シン自身は抜刀術には絶対の自信があった。
外したことがなかったのだ。
しかしそれに相対し、微妙な間合いを置いてシンの正面に立つのは、紫色の長い髪をした漆黒のローブを着た少女。
かなり背丈は小さく、シンの胸元まであるくらいの背丈ではあるが、抜刀術の構えを取るシンの前にいるのに余裕があった。
わずかにつり上がる口許には余裕さえ感じられ、シンの抜刀術の構えに対する構えは何一つない。
その姿勢からはただならぬ威圧感、シンよりも背丈は小さいのにその威圧感はシンを遥かに上回る。
その時、少女は参ったと言わんばかりに両手を左右に広げて口を開いた。
「やめなよ、旦那。わたしらがアンタを拉致して監禁したんだ、敵わないことは分かってるだろう?」
「知らないね。ボクはこんなところで監禁されるいわれはないし、されている気もない。悪いけど行くよ!」
シンが言い放った刹那、シンは一瞬で少女の間合いに飛び込んで、少女の右脇腹に抜刀術を放った。
同時に少女の右脇腹を中心に少女の体が“く”の字に曲がり、力なく地面に横たわる。
出血はない、シンの愛刀の逆刃刀は峰と刃が逆に作られているため、本気で斬りつけたところで斬れることはない。
しかし痛いことは痛いらしく、紫色の髪をした少女は脇腹を抑えながら、横たわりつつ痙攣していた。
シンは逆刃刀を鞘に納めると、少女が背にしていた出口に向かいながら口を開く。
「……脇腹は人体急所の一つだ、死にはしないけど痛いことは痛いはずだよ。敵でも女の子に手は上げたくない、もう関わらないでね」
そしてシンは無事部屋を脱出した……はずだった。
シンが部屋から一歩出ると、突如としてシンは浮遊感を感じるのと同時に、足元に深淵の闇を見る。
左右には今まで床だと思っていた場所があり、足元が開いたのを察してからシンは吐き捨てた。
「しまった、罠か!?」
言うが早いか、シンはすぐに深淵の闇へ落下し始め、深い闇の中へ呑み込まれ始めた。
しかし不思議なことに、落下していくシンの視界には一定の感覚を置いて、壁にランプが付けられているのを捉えていた。
侵入者などをハメる落とし穴にするなら、すぐに剣山でも何でも立てておけばいいはず。
だがランプが付けられているのを見ると、まるで誰かが何かの移動にこの穴を使っているようだった。
それに深淵の闇に見えた闇に落ち始めてすぐにも関わらず、シンは目下にランプに照らされた巨大な水溜まりを見る。
水溜まりがあると分かれば生き延びる術も考える時間が出来る、そう考えたシンの中に答えは出た。
同時にシンは水溜まりの中に突っ込み、大きな水しぶきを上げながら水底まで沈んだ。
水溜まりがあることを分かっていたシンは落ち着いて対処し、そのまま水面へ上がる。
シンは髪や服、逆刃刀の刀身や鞘から出来るだけ水気を切りながら、今の水溜まりを振り返った。
水底に仕掛けもなければ水に毒が入っているわけでもない、ましてや水にも仕掛けはない。
シンの結論が出た。
「この落とし穴、侵入者を殺すための穴じゃなかったみたいだね。しかしいったい何のためだ? こんな穴、作るのも一苦労だろうに……」
「お姉様は侵入者をすぐに殺すような方ではありませんわ、この部屋は我々姉妹の部屋。あなたがここにいるのはお姉様がやられたということ、お相手します」
水溜まりを見ていたシンの背後から静かな声が響くと、シンは一も二もなく逆刃刀を鞘に納める。
先ほどの少女を姉と呼ぶならこの声の主も敵、ましてや相手をすると言ったなら確定的だった。
時間を食えば先ほどの少女が追ってきかねない、シンは時間を取らずに抜刀術で決めなければと思い立った。
そして振り向き様にシンの視界に入ったのは、長く艶やかでシンと同様の銀色の髪をした少女。
服装は先ほどの少女と同じように漆黒のローブを着ており、非常に大人しそうに伏せがちな細い目をしている。
気持ち額が広いが、シンの狙いは人間共通の人体急所の一つである、少女の右脇腹。
一瞬その大人しそうな雰囲気に刀を止めそうになったシンだったが、相手をすると言った以上は少女でも敵は敵だ。
半回転しながらのシンの抜刀術は先ほどよりも速く、ためらいも振り切るようにシンは抜刀術を放つ。
その瞬間、少女は咄嗟に膝を曲げて地面に身を伏せてシンの抜刀術を避けた。
一撃必殺の抜刀術、外せば隙だらけの諸刃の剣を外したシンは絶望を覚える。
今まで外したことがなかった抜刀術を外したこと、それも相手は大人しそうな少女。
しかしシンが体勢を立て直すよりも早く、少女は地面から弾かれるように跳び上がって、シンの腹に強烈な飛び膝を見舞った。
「がっ! く、ぁ……!」
「無作法で申し訳ありません。しかし先に刀を振るったのはあなたです、さて。オクヴィアス」
「はぁい♪お姉ちゃん」
オクヴィアスと言う名と可愛らしい返事が響くが、シンは自分の意識を保つので精一杯だった。
チカチカと視界に火花が散り、視界が揺れ、今にもシンは手放しそうだったが、倒れるわけにはいかない。
また監禁されては逃げられる可能性も薄くなる、シンは逆刃刀を杖に何とか意識を掴んでいた。
その時、シンの視界が漆黒の闇と何か酸い匂いに包まれるのと同時に、何かしらの生暖かいものがシンの首に巻かれる。
視界がないことが拍車を掛け、細々しいがふにふにとした柔らかさが心地よい、シンがそう思った瞬間。
再び何か柔らかいものがシンの首の後ろにのしかかると同時に、突然シンの首を絞め上げ始めた。
それは細々しさや生暖かさからは想像も出来ないほど生易しい力ではなく、すぐに絞め落とされると直感できるほど。
「かはっ……! なん、だって、いうんだよっ……!」
シンは慌てて首に巻き付いたそれに手を掛けようと刀を放し、腕を持ち上げようとした。
しかし刀が地面に転がる音が響くことはなく、同時にシンの腕も首に巻き付いた何かを掴むことは敵わない。
何かに固定されたように腕がまるで動かない、ところがそれもしっかりと固定されているわけではないが、わずかに上下するばかり。
首に巻き付いているものは、逆刃刀は、両腕は……シンは何が起こっているのかまるで分からずに数分後、闇の中で意識を手放した。
その手にはシンの愛刀、逆刃刀が握られているのを見ると、シンが手放した逆刃刀を掠め取ったのはこの少女に違いない。
少女は力なくだらりとシンの腕が下がったのを見ると、シンの腰元の鞘を取って逆刃刀を鞘に納める。
そしてシンの頭上に目をやると、そこで鉄棒にぶら下がってシンの肩に座る少女に口を開いた。
「オクヴィアス。ご苦労様、殿方は意識を失ったわ。もう下りて大丈夫よ」
「ほんと? わかったよ〜、でもこのひとじょうぶだよね! わたしがしめてこんなにもったひとはじめて!」
オクヴィアスと呼ばれた少女は長くウェーブのかかった、赤い髪を躍らせながらシンの肩に立った。
服装は銀色の髪を持つ少女や紫色の長い髪をした少女同様に漆黒のローブだが、かなり丈が余っている。
シンの視界を奪ったのはこのローブ、シンの視界をローブで遮り、首を足で締め上げていたのがこのオクヴィアスだった。
丸く穏やかで無垢な赤い瞳を持ち無邪気なところを見ると、オクヴィアスが姉妹の中の末っ子なのだろう。
オクヴィアスが無邪気に微笑みながらローブをたくしあげ、シンの肩から飛び降りると、シンは力なく床に倒れ込む。
しかしシンの身体はその左右に位置取っていた二人の少女に支えられ、途中で止まっていた。
右腕を掴んでいるのは肩辺りまである黄色い髪をした少女、服装は他の姉妹同様に漆黒のローブを着ている。
ややつぶらな瞳をしているが、その瞳はオクヴィアスや銀色の髪を持つ少女よりも凛としている。
恐らくこの少女はその二人よりも年上の姉と見て間違いないが、対になるシンの左腕にも支える少女がいた。
シンの左腕を掴んでいるのはメガネを掛けていて、やや短い丸い切り口をした髪をした少女だった。
服装は例に漏れず、他の姉妹同様に漆黒のローブを着ている。
やや気弱そうな瞳をしているが、その瞳はオクヴィアスや銀色の髪を持つ少女よりも凛としていた。
するとその時、水溜まりから凄まじい水しぶきがあがり、その場にいる姉妹達の視線が集まる。
水溜まりから上がってきたのは先ほど、シンが抜刀術を叩き込んで悶絶させた紫色の髪をした少女。
びしょびしょになった漆黒のローブを絞りながら、ゆっくりと少女達の前に来ると、紫色の髪の少女はシンに目をやる。
そして少しだけ口許をつり上げると、一人一人の少女と目を合わせながら口を開いていった。
「イエナ、こいつはどうだい?」
「悪くありません。オクヴィアスに締められてから、落ちるまで長かったです。私達の“兄”になることに、支障はないでしょう。アメリアお姉様」
イエナと呼ばれたのは、シンの左腕を掴んでいるのはメガネを掛けていて、やや短い丸い切り口をした髪をした少女だった。
アメリアお姉様と呼ばれた紫色の髪の少女はそれにうなずき、今度は右腕を掴んでいる黄色い髪をした少女に口を開く。
「ウィンスレットはどうだい?」
「問題ないです。むしろ腕を抑えるのが精一杯、姉妹の中で戦いに最も向かない私とはいえ振り切りそうでした。私も異議はありません、アメリアお姉様」
ウィンスレットの言葉を聞いたアスカは再びうなずき、銀色の髪を持つ少女を見た。
「エスニアはどうだい? 分析力ならアンタが一番だよ」
「異議はありません。しかしオクヴィアスに締められてからの時間の長さが数分、秒単位で絞め落とすオクヴィアスですのに。かなりのものですわ、アメリアお姉様。ただ……」
「ただ……何だい?」
「オクヴィアスのローブのせいで足と認識しなかったか、またはおしりと認識しなかったのか。陰茎が勃起していませんわ」
「へぇ、純情だね。楽しめそうだ、オクヴィアス。ちゃんとお風呂には入ってないね?」
「だいじょ〜ぶ! このひとがわたしたちのおにいちゃんになるんでしょ? わたしがんばるよ」
そう言って飛び上がるオクヴィアスに、アメリアは優しく微笑んだ。
そして今一度姉妹達を見やりながら口を開く。
「よし、いい子だ。さて、待ちに待った標的をようやく得たんだ。だが意思は固いのは調査済みだ、そのために風呂も我慢したんだ。みんなで堕とすよ!」
アメリアの声に、姉妹達は揃って拳をぶつけあった。
このときから、シンの身には監禁以上の脅威が降りかかろうとしていた。
とりあえず長いものになっちゃいましたが、冒頭終了です。
シンの愛刀が某人斬り抜刀斎の愛刀と同じなのはスルー推奨です。
悪くないなあ。…何姉妹?
何人姉妹?
一応5人の予定です。
続きが気になる
愛飢夫シスターズ乙
ハーレム天獄になるのかな?
待ってますぜ
青年将校×女将校
エロ
かつて大陸を支配した王も、元を正せば大陸南部を拠点とした小国の君主であった。
軍馬に跨り、戦場を駆ける君主に常に付き従う者が二人いた。
一人は後に君主の妻となる女騎士。
もう一人は軍師として仕える、青年。
幼い頃より共に笑い、泣き、苦楽を共に過ごした親友であった。
やがて君主は大陸を平定し、強大な帝国を築く。
女騎士を正妻として迎え、軍師として仕えた青年も妻を迎えた。
帝国は益々、栄えるはずだった。
しかし、君主は全ての頂点に立つ者として
『大陸に平穏を保たねばならない、再び戦乱の世に戻してはならない』という思いがあった。
いつの頃からか……誰かがこの座を奪うのではないか?…と君主は人の心を疑うようになった。
今、この座を奪われては、再び大陸は戦乱の世に戻ってしまう…と人の心を疑う思いが日に日に強くなっていった。
そして王の心が闇に閉ざされるきっかけを作ったのは皮肉にも、王の世継ぎが誕生した日だった。
側室を持たなかった王には待望の世継ぎであったが、生まれたのは元気な女の子であった。
さらに王妃の産後の容態が思わしくなく、そのまま帰らぬ人となってしまった。
赤ん坊を前に王は、一つの結論に辿り着く。
疑わしき者は全て消さなければならない。
そしてその日を境に謀反を疑われた者は全て処刑された。その中には無実の罪を問われた者の少なくはなかった。
あまりに度が過ぎた粛清に対して、かつて軍師は君主に諫言した。
しかし、もはや疑心暗鬼の塊と化していた君主はその軍師を筆頭にその一族郎党を全て処刑してしまった。
王は自ら親友を処刑した事で自責の念に駆られたのか、ようやく冷静さを取り戻したが既に時は遅く
王は臣下、万民から『魔王』と呼ばれ、恐怖の対象となると共に多くの怨恨を背負った。
時は流れ……剣と魔法がやや翳りを見せ始め、新たに鉄・火薬・蒸気が新しい文明を築き始めた時代
長年にわたる帝国の圧政と強引な併合政策に耐えかねた辺境の諸国や少数民族が各地で反発。
大陸には不穏な空気に包まれた。
「……有能な将校さんはこんないい部屋で寝泊まりできるのね」
朝の日差しが差しこむ部屋で若い女性がくるまったシーツから顔を出した。
「ははは、何度修理しても雨漏りする兵舎が懐かしいよ」
「贔屓だわ。とっても贔屓。同じ王に仕える身なのに」
「ルナは近衛騎兵団の副長だからね、俺とは勲章の数が違うのさ……」
既にベッドから出て、制服を身につけた青年将校が水差しと2つのグラスを持って来た。
「……気兼ねなくシャワーが浴びられる貴方が羨ましいわ」
ルナと呼ばれた女性が半身を起こしてグラスを受け取る。
群青色の髪に赤い瞳が印象的な女性だ。何気なしに水を飲んでいるだけなのに不思議と見とれてしまう。
「私なんて身体を拭くのがやっとなのに……ん?…やだ」
青年の視線に気付いたルナはシーツから覗いている乳を隠し、顔を赤らめた。
「あ、ごめん……そんなつもりじゃなかったんだけど」
「もう……」
近頃は帝国内外で兵士の行き来が激しい。
その理由は帝国に反旗を翻す部族や小国によって帝国領内の街道が寸断され、物品の流通に支障が出ているからだ。
特に貴重な真水や塩などの供給がここ数日、滞っている。先に大規模な暴動が街道で起こったためだ。
さらに国境外の強制開拓団、少数民族及び、森林地帯のエルフ、地下探鉱のドワーフ達が同盟を組み、着々と軍備を進めているという。
また帝国内でも一部の者達がその同盟組織と内通しているという噂がある。果ては王の暗殺まで画策しているとか、ないとか…
「なら前線の部隊に転属するかい?ルーナンティ=エレオノーレ君。
我が第1歩兵連隊は君を歓迎するよ。毎日、乾燥豆のスープに塩漬け肉と水割り酒のフルコースで」
水を飲み干した女性は軽く笑って
「遠慮しておくわ。キース=フィリップマン少佐…………もう行くの?」
「ああ、新兵の訓練の時間だからね。シャワーは自由に使うといい。じゃ、また後で」
「ありがとう、いってらっしゃい」
「失礼致します。お呼びでしょうか」
「………入れ」
城内に設けられている塔の中で、最も高い塔の一室
城下が一望できる部屋の主にルーナンティは低い声で入室を告げた。
「ルーナンティ=エレオノーレ近衛騎兵副団長であります」
「………近くに寄れ」
暗い室内で椅子に座す男の声にルーナンティはゆっくりと歩み寄った。
「ここ最近、お前に命じた任務の報告書に同じ文字が記されている」
「い、いえ…そのような事は――――――あっ」
男はいきなりルーナンティの尻に指を食い込ませた。
「事細かに記されているが……要は『成果なし』と言うことだ。これが何を意味するか、わかるか?」
「じ…事実を述べているだけです…わ、私は―――んっ…く」
男の指がさらに下部に伸び、ぐっと上へ突き上げた。
「フィリップマン…とか言ったか…あの男は有能すぎるのだ。それに人徳もあるとあれば計画とやらに携わっているかもしれん。
風の噂では……私を暗殺する計画というではないか。
お前をあの男へ近づけたのは、暗殺計画に関わっているであろう者共を調べ上げるためだ。
それを命じて4ヶ月も経つ…それほど時間がかかっておるのには、他にワケがあるのではないか?」
「も、申し訳ございません。計画に携わっている様子は未だ、何も……」
「男と女……床を共にする中では寝物語に何を囁いているかわからんからな?」
男がルーナンティの眼を射抜くように睨んだ。
「特にお前は」
「わ、私は……あの者にそのような感情は……んっ…は」
男の手がさらにルーナンティを弄(まさぐ)る。
「我が血を分けた娘で無ければその首をとうに刎ねているところだ。あの男の下で股を開くだけがお前の任務か?」
「……断じて…そんな…心構えでは…」
「お前の身体には母親と同じように淫らな血が流れているのだ。
男を狂わせるセイレーンの血がな。その能力(チカラ)を使ってもこの程度とは……」
男はルーナンティを突き飛ばすと報告書の束を投げつけた。
宙を舞う紙の中でルーナンティは静かに言った。
「…母は貴女を愛していたと………ち、父上」
ルーナンティは目を閉じ、震える声で答えた。
「何だ、それは?」
しかし、男は殺気を帯びた声で答えた。
「――――――し、失礼しました。陛下」
「お前の存在は、私しか知らん。この世で私の血を正統に受け継いでいるのは第一皇女のみ」
「………はい」
「あと一週間の猶予を与えてやろう……その汚れた雌犬の身体をもって、忠誠を示せ。
もし計画にたずさわっていたとしてもあの男だけは生かしてやる」
その言葉にルーナンティは顔を上げた。
「舌を抜いて生かせておけば裏切りの憎悪の矛先は全てあの男に。お前もその方が楽しめるだろう?」
「……し、承知致しました。計画の首謀者、必ずや……」
「その言葉、努々、忘れるな……」
「………」
数日後、首都の郊外の娼館がひしめき合う地区をキースは歩いていた。
「ねぇん、将校さまぁん、お願い、私を買ってくれないかい?」
一人の街娼が腕を絡ませてきた。大きく開いた胸元を見せつけるよう言った。
「ああ……そうだな」
「ふふふ…『どれくらいで買ってくれる』?」
「『それ相応で』………ハンナ、集まっているか?」
「そこの角の酒場よ。あと1時間は巡回の兵士が来ないわ」
娼婦はボソとキースに呟くようにいうとさっと路地へと入った。
酒場のドアを3回叩き、さらに3回叩く。するとドアが開いた。
「遅いぞ、キース。お前が最後だ。皆、揃っている」
ドアを開いたのはルーナンティの上司である近衛騎士団長のハリーだった。
酒場に入ると帝国の名だたる将校と同盟組織の代表が集結していた。
「遠路痛み入る、この計画の責任者、キース=フィリップマンだ」
「前置きはけっこうです。時間が惜しい、本題に入って下さい」
どこかの少数民族の族長だろうか?どこか気品がある。美しい青い髪に尖った耳、エルフの女性だ。
「決行はこれより3日後の半月の夜だ。抜け道に精通しているというのは君か?」
キースの視線が一人の男性に向けられた。
「ああ。とある縁で開拓団のラズライト公に協力している者だ。あんた達よりあの城の構造を知り尽くしている自信はある」
男がテーブルに置いた詳細な城内地図を指し、言った。
「ここに兵舎がある。奥から2番目兵舎の屋根は新築でもしていなければ今も雨漏りがしている。
そして側溝を流れる水は地下水路に流れず、逆流して兵舎の床を水浸しにする…違うかい?」
「……君の素性に興味があるな。正解だ、王を討つメンバーに君が入っている事は心強い」
「王を討つメンバーは申し分ないが…皇女を討つメンバーの編成はどうする。
聞けば、あの王の力を受け継いでいるらしいではないか、生かしておくのは危険だ」
ドワーフの男が言った。これには近衛騎兵団長のハリーが答えた。
「そうしたいのは山々だが、皇女の部屋まで距離がありすぎる。我等、近衛隊の者でさえ
ここには近づけん。皇女直属の者達がガードしている。ここは確実に王のみに的を絞りたい。
王が死ねば、この強大な帝国をまとめ上げることはいくら皇女とて容易ではないだろう?
皇女を討つのは、盟約通りに各部族の代表で議会制を敷き、帝国から自由を取り戻してからでも遅くはない」
「帝国の残党をまとめる事は容易ではない………確かに、あなた方をみていれば納得がいきます」
先のエルフの女性が皮肉まじりに言った。
「耳が痛いが、そういう事だ。あとは――――――」
そして最後の会合が終わり、メンバーは別々に散っていった。
残ったのはキースと近衛騎兵団のハリーだけだ。
「いよいよだな……」
「………ああ」
二人は酒場から出て、城下にある兵士御用達の酒場に入った。
「こうしてお前と二人で話すのは久しぶりだ。近衛騎兵団は都の警備ばかりで暇でな」
葡萄酒が入ったボトルを置き、ハリーは上機嫌に言った。
「お前が近衛騎兵団に入る前に会ったきりか……確か2年も前だな」
「中尉から少佐に昇進、それに帝国勲章に乾杯」
「ああ…ありがとう…」
「辺境の平定じゃかなり武勲を挙げたそうじゃないか、聞かせてくれよ」
ハリーはキースのカップに酒を注ぎながら言った。が、キースは一口煽るとボソッと呟いた。
「………酷いもんだ」
「ん?」
「国境の外にいる部族は皆、敵に見えてくる。帝国の圧政と無理な併合が原因だ。
彼等は我々を憎んでいる。道ですれ違う荷馬車にエルフが潜んでいて毒矢で射かけてきた事もあった。
行商の女にピストルで頭を撃ち抜かれたヤツもいたよ。我々の黒い軍服は格好の的だ。
有翼人は槍、エルフは弓に森に仕掛けた罠で対抗し、ドワーフやホビットは鉄鍛冶で鍛えた鉄製の斧に剣。
獣人は切れ味の悪い石のナイフと格闘術で我々に挑んでくるんだ。
俺達は隊列を組み、小銃の一斉射撃、大砲、騎兵の突撃…倒れても、倒れても彼等は向かってくる。
さらに最近では裸同然で強制開拓団にかり出された諸侯や民間人が敵側に加わった」
「……もともと王に逆らった諸侯に帝国内の貧困層の民間人だ……当然といえば当然だな」
「彼らはまずドワーフ達と同盟を組み、さらに獣人、ホビット、有翼人達と次々に同盟を結んだ。
今や鉄や火薬を毛嫌いするエルフまでもが銃や鉄製の武器を使い出し、戦火は広がるばかりだ………リセを覚えているか?」
「お前の副官のだった女だな……彼女は……残念だった」
キースは酒が入ったカップを一口煽った。
「花売りの子供が持っていたバスケットに爆薬が仕掛けてあってな…リセの脚ごと吹き飛んだんだ。
俺は必死で彼女の脚を探したよ。だけど見つからないんだ……俺はもう血まみれのリセを抱えることしか出来なかった。
リセが息も絶え絶えに言うんだよ……『帰りたい…故郷に帰りたい…』って…似たような兵は他にも大勢いた……
そうしてこちら側の報復が始まった。老人を殺して、女を殺して、子供を殺して……疑わしいヤツは皆、殺した。
『殺さなきゃ、殺される』って自分を納得させながら、町を焼き、村を焼き、しらみ潰しに殺したよ……」
キースは顔を覆った。リセの弔い合戦とばかりに敵の集落をいくつも焼き払い、皆殺しにした光景が、次々に浮かんでは消えて行く。
「もういい、もう終わった事だキース……お前のおかげで故郷に帰れた奴もたくさんいるんだ。お前は悪者じゃない」
「いや、俺の方こそすまん。悪い酒になってしまったな……そんなつもりで話したんじゃないんだ。
こんな戦は早く終わらせたいと思ってな…」
「だが、正直……辺境の平定からお前が戻った時、嬉しかったよ。よく生きて帰ってきてくれた」
「感謝するよ…戦友」
キースはふと言った。ハリーに耳をかすように身振りで伝えると
「ひとつ提案があるんだが」
「どうした」
「ルーナンティを………何とか逃がすことはできないか?」
「エレオノーレをか?冗談じゃない。無理だ。あいつは大した実績もなく王の命令で配属されたヤツだぞ?
王の息が掛かっているに決まっている。いくらお前とつき合っていると言っても……それは無理だ」
「……彼女を愛しているんだ。何も知らずにあんな王を守って死ぬなんて――――――
決行の前に何とか彼女だけでも」
「いいか、キース冷静になれ。あの女は俺の副官だ。監視役といってもいい。それに――――――」
失言だったのだろう。ハリーは言いかけた口を噤み、誤魔化すように酒を口に含んだ。
「それに?何かあるのか?」
不審に思ったキースが尋ねるとハリーは渋る様子を見せたが、キースの押しに根を上げ言った。
「エレオノーレのことで一つ気に掛かる情報がある……ただの噂らしいが……それでも聞きたいか?」
「構わない。話してくれないか?」
「…………どうにもならないのか」
キースは酒が回らない程度に話を切り上げ、自室へと戻った。
決行までの時間は教育隊での任務をこなすだけだ。指揮下にあった第1連隊には新たな指揮官が配属されているが
ただのお飾りにすぎない。何年もの間、戦場を共にした兵士や兵長達は自分の命令に従う。
決起の日は指揮官を消し、首都の主要な機関を制圧する手筈になっている。
「ルーナンティ……」
彼女と付き合うきっかけは些細な事だったような気がする…今思えば副官の……リセの事を忘れたかったからかもしれない。
ルーナンティの笑顔を見る内に癒されていくような感じがしたのは確かだ。
血まみれのリセの夢をもう見ることはなくなった。
だが、王を暗殺することによって再びルーナンティが死ぬような事があっては……
「くそ……」
苛立ちを隠さずにドアを開けた。頬を撫でる一陣の風……そこにいたのはルーナンティだった。
「キース、おかえりなさい」
「あ…ああ…すまない。君が来ているとは思わなくて……外で一杯やってきたんだ。どうしたんだ?こんな夜更けに」
明らかに動揺している、心臓の鼓動が何かを警戒するように脈打つ。戦場で何度か経験した事がある。
何かがおかしい、自分の身に危機が迫っている。だが、その何かがわからない。
その何かとは…まさか――――――
「キース」
その言葉に、キースは思わず声を上げた。心臓が鷲掴みにされるような声。
ルーナンティに圧倒されている?この声と優しく微笑みを浮かべた眼に見つめられただけで?
「抱いて下さい」
ルーナンティは後ろを向き、するするとスカート捲り、下着を着けていない臀部を晒した。
月の光に照らされ、色白の男を狂わせる女の肌はいつもとは違う妖艶な色気を漂わせていた。
例えて言うなら…セイレーンが持つという…魅惑の…否応なしに魅了されるという色気だ。
「ルナ……?」
「貴方が欲しくてたまらないのです」
こちらを振り向いたルーナンティの肢体。まるで神話で語り継がれるような女神がそのまま顕現したような美しさだった。
年相応に実っている乳房も、それを支える胸筋によって張り出し、その頂きでツンと慎ましくも存在を主張している桜色の突起。
大胆にくびれている腰から太腿の艶やかな曲線美、腹部にうっすらと浮かぶ腹筋は男性のような武骨なものではなく
股間部の淡い茂みへと続くなめらかな線を描いている。
「何も言わずに……キース」
それはまさに女神だった。女神には違いないが、誘う者を破滅へと導く深淵の女神、セイレーンの化身だった。
獣のようなセックスだった。
キースはルーナンティをベッドに押しつけ、むしゃぶりつくように身体を貪った。
尻に何度も何度も怒張を叩きつけ、ルナの髪、顔、口、項、胸、臍、股間、尻、脚…あらゆるところに唇をつけ、
己の欲望をぶちまけた。そのたびに上がる甘く、官能に溺れる嬌声。
その声が萎えかけた劣情を再び奮い立たせ激しく体内に吐き出す。
何を口喋ったかわからない。
ただひたすら彼女に言われるまま、なすがまま快楽に溺れていく。
再び、我を取り戻したのはルナを組み敷き、体内に精を解き放ち脱力した時だった。
ルーナンティがベッドの横で微かな動作を起こした。まどろみのような光景、こちらを振り向いた
哀しげなルナの顔と記憶の奥底に眠っていたリセの幻覚が重なった。
『……子ができた?』
『……友人の軍医に診てもらいました……確証はないのですが…たぶん』
関係をもって、1年たったある日の夜。一つのベッドの中で隣に寄り添うリセの言葉にキースは驚いた。
『すみません……面倒な事になって』
『なぜ謝るんだ?君はもうすぐ任期を終える……俺も行くよ、君の故郷へ』
『中尉……それって…!?』
『大丈夫だ。その子は俺との間にできた子だ。結婚しよう、リセ』
『あ…ぐっ…ふ…ち、中尉……無事ですか……』
『リ、リセ!?』
『あ、脚が痺れて……ぐっ…か、感覚がないの…』
『リセ…リセッ!』
『すみません……脚がこれじゃあ…もう故郷に帰っても…あ、あなたに迷惑を…ゴホッ、ゴホッ』
『何を言ってるんだ!一緒に帰ろうって約束したじゃないか…迷惑なんかじゃない
俺が君の世話をしてやる。どこへでも連れて行ってやるから!』
『あ…ありが…ありがと…キース…ああ故郷に…故郷に……帰りたい…』
「…クソッ!衛生兵!衛生兵!手の空いている奴は消火作業を急げ!』
『……キース…せめて…貴方の子を……生み…』
『リセッ!リセッ!リセェェェッ!!』
「う、うわあああああッ!リセッ!」
キースは頭を抱え、ルーナンティを突き飛ばした。
「きゃ!…キ、キース…?」
「俺に、俺に何をした!ルナッ!俺に何をしたんだ!」
キースは咄嗟にベッドの脇にあったペンを逆手に持ち、ルーナンティのその切っ先を喉元にあてがった。
「うっ……キ、キース…わ、私は何も……」
「ウソだ!何を聞いた!何を尋ねた!?言え!言うんだ!」
鬼のような剣幕のキースにルーナンティは意を決したように言った。
「キース……ごめんなさい」
「知ったんだな?………知ったからには君を生かしておくわけにはいかない!」
キースがペンに力を込めようとしたとき、どこから取りだしたのかルナの手にはピストルが握られていた。
「………大人しくしてください。私は貴方を殺したくない」
「俺を撃つ?君が?ろくな訓練もしていない君が俺を撃てるのか?」
「試してみますか?」
その瞳に恐れはない。かなりの修練を積んだ暗殺者の眼だった。
「君が刺客だったというワケか……」
「王は憂いているのです。魔王と悪魔とよばれようとも強大な力で大陸を支配しなければ、
また大小国がひしめき、大陸の覇権を巡って多くの血が流れた狂乱の時代に戻ることを憂いているのです」
ルーナンティはキースを諭すように言った。
「確かにそうかもしれない。だが、帝国の腐敗はもう手に負えないところまで来ている。腐りきっているんだ!
君は知っているか?帝国が定めた国境(くにざかい)の外でどんな事が行われているのか……
集落や村は焼かれ、略奪・暴行・虐殺の嵐だ!
女は見境なしに犯され、子供は奴隷商へ否応なく売られているんだぞ?
それでも黙ってみていろと言うのか?目の前で恋人が殺されても君は黙って見ていられるのか!?」
「………私には関係ありません。私にあるのは王への忠誠だけです」
キースはペンを離し、ルナから離れ言った。
「本気で言っているのか?君だってうすうすは気付いているんじゃないのか?帝国は間違っている
あの王が存在する限りにいつまで経っても大陸に平穏は訪れないという事を」
「違います!王がいなければこの大陸は再び混迷の時代に――――――」
キースはルーナンティの腕を掴み、激しい口調で言った。
「混迷の時代だって?そんな時代はもうとっくに通り過ぎている!今、虐げられている人々がこの時代をなんと
称しているか知っているのか?」
「そ、そんな事――――――」
「『暗黒』時代だ!どんなに光を求めても黒い闇にのまれ、決して光が見えない時代だと言っているんだ!
君は死んだ親の骸を喰らっている子供を見たことがあるのか!?その日を食う為に子供を奴隷商人に売る親を見たことはあるのか!?
この大陸は魔界そのものだ!そしてあいつは魔王!全ての元凶なんだ!今、あの魔王を倒すために大陸がまとまりつつあるんだ!
それでも君はあの魔王に味方するのか?魔王の尖兵として覇道の道を突き進むのか?ルナ!」
「わ、私は…私は……」
ルーナンティはピストルを下ろし、泣き崩れた。
「私は王から貴方の周辺を探り、計画の詳細を聞き出すように命じられました。
貴方を愛していた副官の女性との関係も何もかも知った上で貴方に近づきました
……で、でもそれは全て…この国の…この大陸の…」
「王への忠誠………それは王の血を受け継ぐもう一人の皇女としてか?」
「――――――っっ!?」
ルーナンティの動揺は明らかだった。
「本当だったんだな……君はあの王の……」
「だ、だったら…だったら何だというの!この国で王の血を受け継いでいるのは一人。
皇女様のみ。私は…私は存在してはいけない女なのです……」
「……セイレーンとの間にもうけた子…その力を使って俺を」
「私は最低の女です……でも…私は…貴方を…」
ルーナンティの手を持ち、ピストルを取り上げたキースはルナの身体にシーツを被せた。
そして身支度を済ませると、荒々しくルーナンティの腕を掴んだ。
「服を着ろ。俺はもう大事な人間を失いたくはないんだ。一緒に来てくれ!」
「で、でも…わ、私は」
「俺は………君を愛している……イエス…と言ってくれ」
ルーナンティはハッとして顔を上げた……そして俯きながら言った。
「……イエス」
不快でなければ続きます
創作界全体にある幻想だと思うんだけど、抜刀術或いは居合斬りが普通の剣術より速度的に速いなんてことはまず無いんだよ。
同じ練習時間なら抜いた状態で両手で振る方が速くなるし戦闘中に再納刀するメリットなんてまったく無い。
実際居合道なんかでも一度片手で切った後は両手で二の太刀繋ぐことのほうが多いしさ。
強みはあくまで奇襲と対奇襲じゃないかねぇ
スレチだろうけどなんか気になったので。
そんなことは皆分かってるんじゃないかな
わかった上で、「ファンタジー」として楽しめばいいと思うんだけどな
ここ、そういうスレでしょ
120 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/20(木) 21:09:19 ID:77v+BCWx
>>118 ご忠告痛み入ります。
姉妹ものを書いたものですが、失礼ながら知ってますよ。
ただ抜刀術ってカッコいいじゃん?みたいなノリですね。
ファンタジーなんだし、ある程度常識が変わっても“世界観です(キリッ”。
>>117 不快でなければ、なんて気にせずに続けてください。
面白いと思いますし、他スレで続きが気になっていたので。
応援しています。
長く間が開いてしまって申し訳ありません。
作者病気のためお休みでした。
……いや本当に。ちょっと入院してまして。二ヶ月ちょっと。
というわけで、「神か悪魔の贈り物」第一章第十話です。
いつもの通りの百合、人によっては微スカです。
第十話
大陸の交通の要所に位置し、交易によって栄えてきたトゥアール王国――。
ですが、それは同時に、常に侵略の脅威にさらされているという事でもあります。
他国との均衡を上手く計り、大体において平和を維持して来たトゥアールでしたが、
長い歴史の中、やはり何度か敵国に攻め込まれてしまっています。
直近では二百年ほど前の、クォルツ王国による「第二次トゥアール包囲」があります。
失策を重ねたトゥアール軍は国の中心部まで敵の侵攻を許し、王都までもが戦禍に巻き込まれてしまっています。
結局クォルツ軍の撃退には何とか成功したのですが、戦場になった王都は灰燼と帰してしまいました。
時の王、コムアル二世。
他国の侵略を許し国を滅ぼしかけた無能な王と呼ばれた彼は、しかし都市計画に関しては無類の才能を発揮しました。
復興工事による一時的な雇用の拡大、区画整理や人口流入の制限などの政策も知られていますが、
何と言ってもその最大の功績は上下水道の敷設でしょう。
王都の地下に網の目のように張り巡らされた上水道管・下水道管によって、王都の生活水準は著しく向上しました。
飲み水には困らず、汚物は溜まらず……。
清潔な町は健康な人々を育み、健康な人々は豊かな文化を花開かせました。
その象徴が、今や王都の住民には当たり前となっている「入浴」という習慣です。
現在でも、外の人間には「トゥアール王都に行ったらまず風呂に入れ」などと言われる程なのです。
というわけで。
「おっ、やっぱりクロエちゃん、おっぱい確実におっきくなってるねー。こりゃそのうちあたしも抜かれちゃうかも」
「んっ、あっ、やっ……ばっ、ばかっ! 胸ばかりいじってないで、他もちゃんと洗ってよ」
「二人とも、お胸大きくてうらやましいです。ナオミさんなんか膨らむ気配すらないのにうぷぷ」
「……あらシーリオ、これはこれで大きな魅力になるのよ。
あなたのように何の特徴も無い中途半端な膨らみが一番無価値だわ」
一度に二十人は入れそうな石造りの豪奢なお風呂場。
その洗い場で、侍女さん達四人がきゃっきゃうふふとお互いの体を洗いあっていました。
公女殿下と騎士様をお迎えする前に、まず自分達の体を綺麗にしておくのです。
全員一通り洗い終わったところで、アキさんがやや大きめの盥にお湯を汲みました。
それを、自分にかけるのかと思いきや。
「いくよーっ! そぉ……れぇ!」
「あらっ」
「きゃあん」
「えっ……はぷぅっ!!」
他の三人に向かってぶち撒けたのでした。
ナオミさん、シーリオさんはとっさによけて大した被害はありませんでしたが、
一瞬反応の遅れたクロエさんは、盥の水をまともに浴びてしまいました。
「ぷはぁ……」
髪をまとめていた布も流され、長い髪がべちゃりと体に張り付きます。
「おー。白く幼い柔肌に絡み付く、しとどに濡れた黒い髪……甘く危険な色香だねっ!」
「人にお湯かけておいて言うことはそれだけ? あーもー髪が傷むじゃないか。アキのばか」
ちなみに、ナオミさんはクロエさんと同じように髪を布でまとめ、
アキさんはおさげを解いて上の方で紐で結び直しています。
シーリオさんは他の人達に比べて短いので、そのままです。楽ですね。
「あらクロエ、色っぽい格好ね。また無自覚に周囲を誘っているの? 仕方のない子」
そこへドュリエス様が、イーシャさんを従えていらっしゃいました。
「ドュリエス様っ! いやっ、ちがっ、こ、これはアキが……っ!」
「お二人ともお待ちいたしておりましたわ。さ、イーシャ様、こちらへ」
クロエさんの言葉を遮り、ナオミさんがイーシャさんに椅子をすすめ、イーシャさんは周囲を見渡しながら座ります。
「すごい……とても広いですね。うちのお風呂の三倍はあります」
「まあ。ここの三分の一だって、十分広いですわ」
「イーシャ様上級騎士だから、お屋敷住まいですものね」
「イーシャ、これからはいつでもここを使って良いのよ」
先程のクロエさんの訴えは華麗に流されました。
「く……っ」
クロエさんはアキさんをジト目でにらみつけましたが、
アキさんは「まあまあ落ち着いて」という風に両手を広げてごまかします。
クロエさんはあきれたような顔でぷいっと視線を外すと、
流された布を拾って巻き直し、イーシャさんの隣に寄り添いました。
「ありゃ、すねちゃって。可愛いなあもう」
によによと笑みを浮かべながら、アキさんもイーシャさんのお側に寄り添うのでした。
背もたれのない低い椅子に腰掛けたイーシャさんに、侍女さん達は手桶でそっとお湯をかけ、
情事の跡を流していきます。
お顔も、濡らした布で丁寧にぬぐっていきます。
「おほほ、ほらイーシャ様、すぐに恥ずかしいおねだりをしてしまう淫らな体に付いたいやらしいお汁が、
お湯で綺麗に洗い流されていきますわよ」
ナオミさんは言葉責めを忘れません。
「そ、そんな言い方……これは、あ、あなた達が無理矢理そうしたのではありませんか……」
「でも、気持ち良かったでしょう?」
可愛く拗ねるイーシャさんの耳元で、そうシーリオさんがささやきます。
「それは……ん……もう、知りません……」
「『やっ、やめないれぇっ! お願いしましゅぅっ! いかしぇてぇっ!』」
アキさんが石鹸を手で泡立てながら、イーシャさんの声を真似ました。
意外と似ています。
「アキっ! おっ、怒りますよっ!」
「へへへ、イーシャ様かわいー!」
言いながら、アキさんは十分に泡立った両手で、イーシャさんの胸を掬い上げるように洗い始めました。
「んっ……もう、アキってば……んっ……ぅん……ちょ、ちょっと、アキ……
胸ばかりじゃなくて、んくっ……ほ、他の場所もお願いします……」
「ええ、もちろん。申し上げた通り、お体の隅々までしっかり清めさせていただきますわ」
答えたのはナオミさんです。
後ろからお胸をぺたっと(何度も言うようですが、擬音を気にしてはいけませんよ!)くっつけ、
そのままゆっくりと円を描いています。
ナオミさんのお胸とお腹は既に泡まみれで、彼女の艶めかしい動きに合わせて
イーシャさんの背中にそれが塗り広げられていきます。
前からは、やはり泡まみれのアキさんが、こちらはむにゅりと体を押し付け、ゆっくりと上下に動かします。
大きなお胸はぬめって外側に広がり、イーシャさんの小振りなそれを包み込みます。
「ほーら、イーシャ様ぁ、こうしてきれいきれいですよぉ」
「んっ、やっ、ふあっ……こ、こんな洗い方……っ!」
「感じすぎちゃいますか? イーシャ様のお体、とっても好き者ですものねー。
ほら、もう乳首をこんなに固くして……あん、こりこりした感触があたしの胸の内側を擦って、気持ち良いですぅ」
「あぁ、ふあぁ……お、お胸が……前から……後から……んぅっ」
一方クロエさんは膝をつき、イーシャさんの太ももや腰の辺りを両手で洗っています。
わきわきと淫らな動きを見せる彼女の指ですが、それ以上に、幼いお顔が今にも達しそうに欲情しています。
いかにクロエさんがイきやすい体質といっても、愛撫を施している側なのに少々激し過ぎますね。
どうしたというのでしょう?
答え:シーリオさんがお尻に顔を突っ込んで堪能しているのでした。
ちょうど突き出す格好になったクロエさんのお尻を見て、変態銀髪侍女さんは我慢出来なくなったのです。
ほんのり赤味を帯びた双丘に鼻を埋めてくんかくんかしながら、舌を伸ばして
まだお毛々も生えそろわない未成熟なお大事を味わっています。
あくまで匂いと味を楽しんでいるため、シーリオさんの与える快楽はもどかしく、
手で触れなくともイけちゃうクロエさんでも、その中途半端な刺激に引かれてかえって達する事が出来ません。
図らずも寸止め責めになってしまっているのです。
「んぁ……し、シーリオ……お願い、焦らさないで……あっ、んっ、くぅ……っ!」
「はぁ、はぁ、ふぅ……ふふ、やぁだクロエちゃん、お尻の匂い嗅がれてイきそうになっちゃってるの?
もう、私以上に変態」
どうやら自分が変態だという自覚はあったようです。
「し、舌も使ってるじゃない……っ! お願いっ、いじわるしないでイかせてぇっ!」
くいっくいっと、クロエさんの腰ははしたなくおねだりをしてしまいます。
「舌? そう、舌でイかせて欲しいんだ」
言うや否や、シーリオさんはゆっくりとクロエさんの中に舌を挿し入れました。
「ふひゃあぁっ! やあっ! ちっ、違っ! そっち違うぅっ!」
……もちろんお尻の穴に、です。
だってシーリオさんですもの。
クロエさんのお尻を逃げられないようにがっちり掴んで、舌をどんどん奥へと進めて行くシーリオさん。
そんなシーリオさんを、幼いながらも開発済みのクロエさんの後ろは全て迎え入れてしまいます。
最大限まで伸ばした味覚器官はくにくにと蠢き、少女の肛内を追い込んでいきます。
そして、一気に引き抜かれました。
「はひ……っ!」
ずるりと異物が排出される感覚に後押しされて、クロエさんはついに達することが出来ました。
かくんと力が抜けてイーシャさんの足から手が離れ、そのまま浴室の床に突っ伏してしまい、
発育の良いお胸がむにゅりとつぶされます。
腰も砕けてしまったのですが、こちらはシーリオさんが支えていましたので、
クロエさんはぷりんと可愛らしいお尻をさらに突き出す体勢になってしまっています。
「うふふ……クロエちゃん、今日も美味しいお尻。クロエちゃんも、お尻でイけて良かったね。
お尻って、抜く時が一番ぞくぞくしちゃうもんね」
シーリオさんはそう言って舌なめずりをして、
「でも……まだ物足りないでしょう? おかわり、頂いてあげる」
クロエさんが何か言う前に、再び同じ場所に舌を潜り込ませました。
「んくぅっ……やぁ、やめぇ……シーリオぉ……」
達したばかりで力の入らないクロエさんの弱々しい抵抗はしかし、かえって変態少女の嗜虐心に油を注ぐばかりです。
先程の愛撫で良い感じにほぐれた窄まりに、今度は口内に溜めた唾液を舌を使って流し込んでいきます。
「うぅー……ふぅー……や、シーリオ、お願い……お尻で何度もなんて、やだよ……」
クロエさんの訴えを無視して、シーリオさんは抽迭を開始します。
激しく出し入れされる舌に合わせて、流し込まれた唾液がじゅちゅじゅちゅという音と共に溢れ出してきます。
「あっ、あっ、やっ……まっ、また、お尻で、イっちゃうぅ……っ!」
再び達しようとするクロエさん。
しかしシーリオさんは、そこで舌を抜いてしまいました。
今度はイってしまわないように、ゆっくりとです。
「……あぁぁ」
クロエさんはとても十一歳とは思えない艶かしい溜息を吐いて、シーリオさんを横目でねめつけます。
しかし、何となく途中で止められるような気はしていたようで、
シーリオさんが思っていた程の反応はありませんでした。
「ぶー。クロエちゃんが期待を裏切った」
「そ、それはこっちの台詞だよ……もう良いよ、自分でするから……」
さっきから疼き続けるそこへと自らの手を伸ばそうとするクロエさんでしたが、
シーリオさんはそれをそっと制止しました。
「もう、あわてないの。そんなに何度もイきたいの? 本当、クロエちゃんてば、底無しの淫乱」
「底抜けの変態に言われたくない……」
「私、変態じゃないもーん」
さっき自分で言ってましたが。
「どっちでもいいから、イかせてくれるんなら、イかせてよ……ねぇ、早くぅ……」
「うん、分かってるって。せっかく準備したんだし」
そう言って、シーリオさんは両手でクロエさんのお尻の左右を掴み、広げます。
「あは、ひくひくする度に私の唾が垂れてきてる」
シーリオさんはそう言って溢れ出した分を中指で丁寧に拭うと、
そのまま潤滑液たっぷりのお尻の穴へと侵入させました。
「あぐうっ! あっ、やっ、ばかっ、指、ダメぇ……っ!」
「ダメ? またまた、こんなに嬉しそうに締め付けておいて。それに、こっちの方も、ほら、よだれだらだらだよ?」
中指と同じ方の手の親指で、ぷっくりとふくらみしとどに濡れつつも開ききらない、幼いスジをなぞるシーリオさん。
焦らすように這わせ、指を押し込んで入口をくすぐり、円を描いて全体を揉みほぐします。
クロエさんの腰も小刻みに揺れ動いて、シーリオさんの指を追いかけます。
「ふにゃあぁ……気持ち良い……」
「そうだねー。こっちのお口も、早くご馳走が欲しいって、ぱくばくしてるもんねー」
「んっ……そっ、そうだよ……だから、ね? 早く……」
「あれー? クロエちゃんお行儀悪いよ? ごはんの前の挨拶は?」
「くっ、もお、ばか……っ! ……い……いた、だき、ます……っ! 早くしてよぉっ!」
「はい、召し上がれ」
シーリオさんが軽く押し込んだだけで、『よだれだらだら』のそこは親指を美味しそうに飲み込みんでいきました。
「んんっふうぅー……っ!」
「あん、もう、クロエちゃんてば相変わらずきつきつ。でも中はとろとろでうねうねしてて、とってもやらしい。
今日一日何度もイってるのに、まだそんなに飢えてたの? 今だって、親指食べた途端、軽くイっちゃったよね?
まったく、恥ずかしいお子様まんこ! くふふ」
「はぁー……はぁー……お、お子様、言うな……んっ、ああ……っ!」
「うん、そうだよね。本当のお子様は……」
前後の指を出し入れして、
「んあぁっああーっ!」
「……おけつとおまんこいじられて、こんな甘い声で鳴かないもんね。じゅぷじゅぷいやらしい音も出さないもんね」
シーリオさんは、次第に抽迭の速度を上げていきます。
それに伴い、クロエさんの奏でる鳴き声も切なく逼迫し、淫らな水音も激しさを増して、
ぴちゅぴちゅとシーリオさんの手や腕に撥ね掛かります。
「またイくの? ねえクロエちゃん、またイくの? イく時は『イく』って、ちゃんと言わないとダメだよ?
オシオキしちゃうよ?」
「い、言うっ! 言うからっ! オシオキ、やだあっ! ああイくっ! もうイくよぉっ!
イくっ、イくっ、イくぅぅ……っ!」
一際高い哭き声が上がると、それまで小刻みに揺れていたクロエさんの腰にきゅっと力が入り、
シーリオさんに向かって突き出すようにして止まりました。
と同時に、透明でさらさらしたお汁がぴゅっ、ぴゅっ……とおしっこの穴から飛び出し、
シーリオさんのお顔を濡らします。
それを舌なめずりするように舐め取りながら、しかしシーリオさんは手を休めようとはしませんでした。
むしろ、さらに激しく二つの穴を責めたてます。
「ああああっやああっ! イってうのっ! 今イってうからぁっ! イってう時らめぇっ!
オシオキやあっ! はひっ!」
「そんな事言って、止めたら止めたで『やっ止めないれぇっ! もっとしてぇっ!』っておねだりするくせに。
それにちゃんとイく時『イく』って言えたじゃない。だ・か・ら、これはオシオキじゃなくて、ご褒美♪」
「はぐっ、あぐぅっ……ゆっ、ゆるし……ふあぁぁぁ……あぁぁぁ……ぁぁぁ……」
絶頂の波がおさまる前に次の波に襲われ、弱々しく呻き声を上げるクロエさん。
突き出された細い腰は、シーリオさんの指を咥え込んだまま、ぱたりと横倒しになってしまいました。
そのお顔は、涙と涎を流しながら、泣いているような笑っているような、どこか虚ろな表情を浮かべています。
シーリオさんはそこでようやく指の動きを止めると、黒髪少女の柔らかな双丘に優しく口付け、舌を這わせました。
「んー、いやらしいお尻。何度もイっちゃった、貪欲なオンナの味と匂いがするよ」
「はー……はー……ばか……シーリオが、む、むりやり、したんじゃ、ないか……」
「あれぇ? でもぉ、本気で嫌ならぁ、簡単に逃げられたと思うけどぉ? どうしてそうしなかったのぉ?」
にやにやと嗜虐の笑みを浮かべながら、聞かずもがなの質問をするシーリオさん。
「そ、それは……その……くー、ううー……もう、シーリオの、ばか……」
「うふふ、クロエちゃん、さっきから『ばか』ばーっか」
そして、表情を慈しむようなそれに変えると、クロエさんの耳元にささやきました。
「ね、満足、した?」
「……ん」
「そう、良かった」
恥ずかしげに目をそらしながらもこくんとうなずくクロエさんの頬に、シーリオさんはそっと口付けます。
「うふふ、素直なクロエちゃんも可愛いよ。でも……」
にやりと、酷薄な笑みを浮かべるシーリオさん。
「嘘だね」
シーリオさんはそう決め付けると、咥え込ませたままの二本の指で、
前後の穴を隔てている媚肉の壁をきゅーっとつまみました。
「ふひぃぃ……っ」
そのまま、くにくにくにくに……と揉みほぐします。
「はっ、あっ、やっ……しぃ、りおぉ……うそ、ちが……ほん、とに、や、なの……
おねが……やめ……きゅうぅ……って、しちゃ、や……うぅ……」
どうやら今度は本気で嫌がっているらしいクロエさん。
両手でシーリオさんの指を押し退けつつ、芋虫の様に体を蠢かせて逃げようとしましたが、
シーリオさんは空いている手でクロエさんの両手首を掴み、動きを封じてしまいました。
こうなってしまっては、何度もイかされて力の入らないクロエさんになす術はありません。
「うぅー……ぐうぅぅー……これ、きつい、の……んんっ……やめてよ……つらいよ……んふうぅ……」
歯を食いしばって必死に無駄な抵抗をする……というか抵抗したくてもできない状態のクロエさんでしたが、
なんとも辛そうなその呻き声の中に、次第にまた甘い香りが漂い始めてきました。
「ぐぅ……ふぅ……ふあっ……ああっ……あっ、あっ、あっ、あぁっ、きゃふ……っ」
「うう〜ん、良い声♪ ほうら、クロエちゃんの貪欲な体は、やっぱりまだ物足りなかったんじゃない」
「あああ……やあ……つ、つらいのに……つらいのにぃ……あぁ、もぉ……ひっ、ふひっ……ひぅぅぅぅぅ……」
か細く、糸を引くような悲鳴を上げるクロエさん。
と同時に全身が一度びくんっと小さく跳ねると、腰が弱々しげに痙攣し始めました。
「ぅぇぇ……」
漏らすような声を上げながら、たっぷり三十秒程かくかくと震え、最後にひくん……ひくん……と動くと、
完全に力の抜けたクロエさんはそのまま仰向けに転がりました。
にゅるりとシーリオさんの指が引き抜かれましたが、荒く息を吐くだけで、もはや声も出ません。
シーリオさんは、抜いた指の匂いを嗅ぎ、愛おしげに舌を這わせ、口に含み、ちゅばちゅばと音を立てて味わいます。
「ん……ちゅ……ぷはぁ。ああ、素敵。クロエちゃんの中でたっぷり熟成された味と香り」
そうしてひとしきり楽しんだ後、クロエさんにのしかかると、大きいお胸を優しく揉みながら、唇を奪いました。
間接的に自分の味を味わわされるクロエさんでしたが、もう大した反応もできず、されるがままです。
「んむっ……クロエちゃん、大好き……愛してる……んちゅ……」
口付けの合間に甘い言葉を囁くシーリオさんでしたが、それを聞いたクロエさんは
シーリオさんを一瞥すると、ぷいっと顔を背けてしまいました。
「あれぇ、クロエちゃん? もしかして怒っちゃったぁ?」
くすくすと笑うシーリオさんでしたが、クロエさんの返事はありません。
「クロエちゃん? ねークロエちゃんてばぁ」
「…………」
「おーい」
「…………」
「えーっと」
「…………」
「うう……ご、ごめんなさいぃ……謝るから無視しないでぇ……」
芝居がかった口調で謝罪する銀髪少女。
クロエさんはもう一度ちらりとシーリオさんを見遣ると、再びそっぽを向いてしまいます。
「……ばか。シーリオなんか、しばらく口聞いてあげないんだから」
その「ずっと」ではなく「しばらく」と言う拗ね方が何とも微笑ましくて、
シーリオさんはついついにやけてしまいます。
「な、何笑ってるのさっ!」
「あれー? 口聞いてくれないんじゃなかったのぉ?」
「ぐっ……し、知らな……っ! ……ふん」
「くふふ、ごめぇんクロエちゃん、機嫌直してぇ」
「…………」
「もう何でも言うこと聞いちゃうからさぁ」
「…………」
「ねえってばぁ」
「…………」
「クロエちゃんに無視されると、私、寂しくて死んじゃうかもよ?」
「……馬鹿。分かったよもう。何でも言うこと聞くって? じゃあ、まずボクを起こしてよ」
「はあい!」
シーリオさんが言われるままにクロエさんの頭と肩の下に手を回して抱き起こすと、
シーリオさんがクロエさんの膝の上に乗り、向かい合って座る形になりました。
クロエさんは、そのままシーリオさんに抱き着きます。
「それから、ね……シーリオも、ボクの事、ぎゅってして。そしたら許してあげる」
「うん」
シーリオさんもクロエさんを抱き締め、耳元に口付けました。
「可愛いクロエちゃん……えへへ、大好き。クロエちゃんは?」
「言わせたいの? まったく、君は……。ん、ボクも、シーリオの事、大好きだよ……。
そんなの決まってるじゃないか……わざわざ言わせないでよ」
「にゅふふ、だってぇ、聞きたかったんだもん」
そう言ってクロエさんにちゅっと軽く口付けるシーリオさん。
「んっ……もう、馬鹿……。…………。ど、どうしたの? ほ、ほら、早く……次はシーリオの番でしょ?」
「ふえ? 番? 何の?」
「だ、だから……っ! その、つ、次はシーリオが好きって言う番でしょ! 順番的に!」
一瞬きょとんという表情をしたシーリオさんでしたが、次の瞬間、クロエさんをさらに強く抱きしめました。
「んー、もー、クロエちゃん可愛すぎ! 本当に大好きだよぉ!」
「ふやぁ……シーリオ、大好き……」
「クロエちゃん、大好き。この好き者ー」
「なっ……し、シーリオの変態ぃ」
「……変態でも好き?」
「ん、変態でも好き、だよ」
「へっへっへー、クロエちゃんも、好き者でも愛してる」
「馬鹿……シーリオ、愛してるよ。ちゅってして……」
「んっ……クロエちゃん、大好き。ぎゅってして……」
こうして、いつまでも告白、接吻、抱擁を繰り返す二人なのでした。
さて。
そんな中ドュリエス様は何をしていたのかと言うと。
「ああんっ……クロエ、シーリオ……二人ともいやらしくて、素敵ぃ……二人とも可愛いわぁ!
んあっ、ああっ、わたくし、もうっ……んんっ、んくぅぅ……っ!」
侍女二人の絡みを見ているうちに我慢できなくなり、床にお尻を付いて膝を立て、大きく足を広げて、
皆に見せつけるように自らを慰めているのでした。
続く
135 :
淫乱姉妹のお戯れ 8:2011/01/23(日) 15:44:16 ID:vSecIoyp
「……う、ぅうん?」
シンが目を覚ますと、身体が何かに支えられるように、とてつもなく柔らかな感触に包まれたのを感じた。
目に入ったのはお姫様専用のように装飾のつけられた天井、左右の視界の端にはわずかに盛り上がる純白の布。
その純白の布が自分の頭を包み込むように柔らかな枕だと、シンが気付くのにはそれほど時間は要らなかった。
気を失っていた、シンは小さくそう呟くと自分の寝転がっている床を押そうと腕に力を込める。
少しばかり体が重いのを感じながらも、シンが体をあげるのと同時に目に飛び込んできたものに、シンは目を疑った。
自分が寝転がっていたのは尋常ではないほどの大きさのベッドで、肌触りは抜群にいいものだった。
大きさもキングサイズが霞むほどの大きさを誇り、もはや部屋一室はありかねない大きさである。
しかし体を起こして目に飛び込んできたのは紫色の長い髪をした、シンが抜刀術を叩き込んだ少女だ。
確実に右脇腹に抜刀術を叩き込んだはずなのに、そこをかばう様子もなく平然とベッドに寝転がっている。
それと同時にシンは絶望を覚えた、気を失ってから自分は再び捕らえられてしまったのだと。
当然のごとく脱走に備えてか逆刃刀は近くにない、それがないとシンの戦闘力はたかが知れている。
気を失う前、紫色の長い髪をした少女に抜刀術を叩き込んだあの時に逃げなければならなかった。
シンが頭を抱えると、ベッドの揺れを感じたのか、紫色の長い髪をした少女がシンを振り向く。
そして次の瞬間、見た目相応の無邪気で無垢な微笑みを見せると、耳の後ろに髪を通しながら口を開いた。
「目が覚めたかい? 悪かったね、妹達が手荒な真似してさ。わたしはアメリア、名前くらい聞いとこうか?」
「……ボクはシン。先に言うけど、名前以外は何も言わないよ。誰の差し金?」
「差し金? 変なことを言うね、わたし達はわたし達がしたいことをしただけ。今時珍しい純情くんらしいじゃないか、楽しませてもらうよ」
「は? 純情くん……?」
アメリアの言葉の意味がわからないといったように、シンが頭の上にいくつものクエスチョンマークを浮かべる。
もちろんアメリアの言う純情くんとは、シンがオクヴィアスに締め上げられたときに、勃起していなかっことだ。
アメリアはベッドの上で立ち上がるのと同時にローブを脱ぎ捨てると、服の中には何も着ていなかった。
ローブからはみ出すほどの紫色の長い髪が真っ白でみずみずしい肌にふわりとかかり、肌の白さと髪の美しさが際立つ。
わずかに膨らみを宿す胸は、まだ汚れを知らない淡い桃色の突起が白い肌に映えている。
また幼いのは上半身ばかりではなく、下腹部にはわずかばかりの産毛すらなく、女性器の周りは涼しげであった。
そして何を思ったのか、上着はもちろん下着も何も穿いていないのに、太ももの中腹辺りから漆黒のニーソックスを履いている。
胸の膨らみもわずかで女性器を覆う毛もまるでなく、幼さ抜群であるものの女性らしさは凄まじいものがあった。
背丈は性別の違いもあるから別としても、てっきり自分とほぼ同年代と思っていたシンに、これは予想外の攻撃だった。
ほぼ同年代と思っていたシンはそれならまだ監禁されたことに納得できるものの、相手は自分よりも遥かに年下。
それに加えて一度は自分自身の奥義とも言える抜刀術を確実に決めたにも関わらず、平気な顔をしているという事実。
しかしシンは後悔は後にすると割り切り、逆刃刀はないものの脱出を優先するために立ち上がった。
ところが誤算はもう一つ、足元のベッドの柔らかな感触のせいで全く踏ん張りが利かないということだ。
同時に気を失ってから間もないせいか身体も重く、シンは自分でも驚くほど簡単にベッドに足をとられ、バランスを崩す。
かつてこの大陸に来る前に使ったことのある上級貴族のベッドでも、その柔らかさには到底及ぶべくもなかった。
「あ〜ぁ、ダメダメ。このベッドは普通じゃないよ、わたし達姉妹用の特別な遊び道具だからね。立てただけでも凄いよ、慣れなきゃ立てもしないからね」
「特別な遊び道具? わぁっ!」
アメリアの言葉にうなずけないシンだったが、真正面からアメリアに肩からぶつかられて、そのまま仰向けにベッドに倒れた。
そしてベッドに倒れたシンは、まるでベッドが意思を持っているかのように深くベッドに包み込まれる。
同時にアメリアはその勢いのままベッドに倒れたシンの腹に股がり、自信に満ちた笑みを浮かべて見せた。
「ま、誰かから差し金をもらうようなことをしてるのは分かってるよ。二、三日尾行させてもらったから。でも別に殺そうとかは考えてないから安心しなよ、ね?」
「安心できないよ。今までも安心しなよって言って、殺しに来たやつもいるんだ。ていうかそこ下りてよ、じゃないとその、さ。色々と見えちゃうから……ふぐっ!?」
「ん〜♪エスニアの分析通りに純情くんだね、これなら見えないでしょ? ほらほら、どう?」
アメリアは自信に満ちた笑みから心底楽しそうな笑みを浮かべ、シンの顔に両足の裏を押し付けた。
気持ち湿っているようで、シンの額から頬、鼻から顎までアメリアのニーソックスを履いた足が滞りなく動き回る。
「やめっ! こら、人の顔を足で踏むな! つかちょっと、失礼だけど少し臭いし! 離せってば!」
口調はさっきよりも強く言い放つシンだったが、アメリアのニーソックスの合間から覗く顔は赤い。
それもそのはず、顔を踏まれているシンからすればアメリアの股間が丸見えだったのだ。
それに加えて湿ったアメリアのニーソックスの肌触りがどこか気持ち良く、顔を擦られるのに抵抗がなくなりそうな背徳感もある。
また若干汗臭さも混じってはいるものの、同時にシンの鼻を襲う女の子らしい甘い匂いや柔らかさが混じり、抵抗が薄れかけた。
しかしさすがにシンにもプライドと言うものがあり、面白おかしく顔を踏まれて黙っている訳にはいかなかった。
シンはアメリアの足を両腕で一本ずつ掴むと、そのままゆっくりと体を起こしながら形成を逆転させていく。
アメリアは徐々にシンの腹部からずり落ちていき、シンの体が徐々に起き上がっていった。
今度はシンがアメリアを見下ろす形になり、シンの両腕に足を握られているせいで、アメリアは仰向けで大股開きになっている。
しかしそんな形成とは裏腹に、アメリアの表情には確かな余裕があり、シンの表情には余裕がなかった。
何故ならシンからすれば体勢そのものはこれ以上ないくらいに有利だが、アメリアはニーソックス以外は何も着ていない。
顔を踏まれていても顔を赤くするし、アメリア達が認める純情くんのシンには返って、全裸のアメリアが目の前にいるのは不利だった。
ところが自分からローブを脱ぎ捨てて、なおかつ股間を見られても気にしないアメリアは余裕綽々といった表情を浮かべる。
むしろこれからシンがどのような行動を取るのかを楽しみにしているように、抵抗する気がまるで感じられなかった。
しかしシンの脱出という目的を遂げるには絶好のチャンス、シンはアメリアから目を逸らしながら口を開く。
「わ、悪いけどこのままボクは帰らせてもらうよ。その、キミにはもう何もしないから構わないで。いや、ホントに」
「そんな照れなくてもいいのに、良かったでしょ? わたしの足、でも臭いのはお互い様。わたし達、尾行してる間はお風呂入ってないし。シンもでしょ?」
「そんなところまで見てたの!? は、いやいや。何でもいいや、とにかくボクは行かせてもらうから。それと勝手に呼び捨てにしない。それじゃあね」
「行かせな〜い、エスニア! イエナ! 出番だよ!」
アメリアの言葉に従い、今まで気配の欠片も感じられなかったシンの背後に、突如として二人の気配が生まれる。
同時にシンの両腕が背後に回されながら何か柔らかいものに拘束され、また仰向けにベッドに引き倒された。
そしてそれぞれ両腕に、気持ち湿った柔らかいものがのしかかったかと思うと、シンはベッドに大の字になっている。
その時、シンの視界に飛び込んできたのは自分の両腕に股がる二人の裸の少女だった。
「アメリアお姉様に続く二女、イエナ。お相手します」
シンの左腕に股がっているのはメガネを掛けていて、やや短い丸い切り口をした髪をした少女はそう言った。
シンがオクヴィアスに絞め上げられていたときも左腕を抑え、シンの抵抗を無に等しくしていたのが彼女。
名はイエナ、アメリアを長女とする5姉妹の中の二女に生まれた、大人しい性格の持ち主だった。
イエナはシンの肘よりわずかに手首よりの位置に腰を下ろし、両手でシンの二の腕を抑えている。
イエナの股間の柔らかな感触と水気に温もりがシンの腕に伝わるが、しっかりとシンの左腕を抑えており、わずかな自由さえ許さない。
「ウィンスレット姉様に続く四女がエスニア、押さえます」
そしてシンの右腕を掴んでいるのは、長く艶やかでシンと同様の銀色の髪をした少女も言った。
先ほどシンの抜刀術を伏せて回避し、反撃まで決めるほどの優れた戦闘能力を持つのが彼女だった。
名はエスニア、アメリアを長女とする五姉妹の中の四女に生まれた、大人しくも高い戦闘能力を誇る。
エスニアもイエナと左右対称になるように、シンの右肘よりわずかに手首よりの位置に腰を下ろし、両手でシンの二の腕を抑えている。
また同様にエスニアの股間の柔らかな感触と水気に温もりがシンの腕に伝わるが、しっかりとシンの右腕を抑えており、わずかな自由さえ許さない。
その時、シンはアメリアやイエナ、そしてエスニアの三人の体格が非常に似通っていることに気が付いた。
しかしシンはそうそう長く彼女らを見ることは出来ない、何しろシンの周りの三人はアメリアのニーソックスを除き全裸なのだ。
どうすれば良いのか分からず、シンは思い切って目をつぶり暴れようと体を動かしながら声をあげる。
「は、離してくれ! 君達には何もしない、だから離してくれ! 少なくとも服くらい着てくれ、恥じらいが無さすぎるだろう!」
「ちょっとうるさいよ、シン!」
「だから呼び捨てにするなって言ってるうぶっ!?」
「アメリアお姉様の言うことが聞けないって言うの?」
わがまま気質なイエナの声がシンの耳に届くのと同時に、シンは我が感覚を疑った。
口の中に突っ込まれた柔らかで温かな感触、同時に口の中から意思とは関係なく、どんどん溢れてくる唾液。
ほのかな甘い香りに続いて口の中に広がるかすかな酸味、いわゆる汗の味だった。
シンが左側に目をやると、そこには器用にもシンの左腕を抑えながら、左足をシンの口に入れるイエナの姿がある。
間隔空いてすみません。
姉妹のやつを書きたいのは良しとしても、なかなかアイディアがまとまらず。
またよろしければどぞ。
両者GJ!
だけど、他の人の投稿からすぐに投稿されると前の人への感想とか言いにくいので、すこし気を使ってくれるとありがたいかもしれない
144 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/23(日) 21:12:42 ID:vSecIoyp
>>123 二ヶ月も入院とは…
あなたの作品は楽しみにしていますが、どうか無理はしないで書いてください
それはそうとクロエがかわいすぎてヤバい
146 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/26(水) 23:23:41 ID:fmnLc34n
姉妹ものを書いていたものですが、不手際でデータを消してしまいました。
改めて書き直すにはちょっと気が乗らないと言うか、書き直せる気がしないので完結はまたいつか。
代わりのものを用意しますので、どうかご容赦下さい。
ここでのファンタジーって単純に仮想世界って意味なのか?
それともやっぱ魔法・モンスターがなきゃファンタジーじゃないのか?
魔法モノじゃなきゃ駄目って事は無いと思うけど仮想世界ってだけだと
>>147がどんなのを考えてるか分からないから何とも言いにくい
>>147 とりあえず自分はろくに魔法もモンスターも出てきてないのを書いているから
仮想世界ってだけでも問題ないと思う。
150 :
147:2011/01/30(日) 06:48:07 ID:xBGkAPMr
上の二人ありがとう
まあとりあえず書いてみるわ
151 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 21:50:27 ID:aAbQrOfW
エルフ達に犯される人間の話を考えました
153 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 21:40:27 ID:KlJTHv1a
ショタ剣士VSエルフ100人
>>133 >告白、接吻、抱擁
文学少女向けかっ!
155 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/03(木) 21:58:17 ID:FcEiGVMZ
エルフの美少年が人間の女騎士に筆おろしされる話
156 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/05(土) 22:04:42 ID:rFHXHCYw
規制が解除されてたら投下する
>32の続きを。
10レス分
顔を掠める矢の音を聞いたときのような−
あるいは、峡谷を進軍中に奇襲を受けたときのような−
つまりは、日常では経験するとは思っていなかった緊張感であった。
「食欲がないのか?」
ない。現在、梢楓の食欲は全くと言って良いほどなかった。
「食べなければ、治る怪我も治らんぞ」
「あ、あぁ…」
対面する雪李妹は驚くほど怒りを抑えている。それゆえに、声音の張り具合や
微妙な手先の仕種に表れる度に梢楓は恐れた。
「…シェリー」
「どうした?」
「………………あの医者のことだが」
一瞬、こちらを見つめた後、雪李妹は羹を啜り目を伏せた。ろくに聞く気がな
いのかも知れなかったが、梢楓は続けた。
「隠しても何にもならん。俺はあの女と寝た。一晩だが、紛れも無い事実だ」
目を合わせられず、沈黙が続いた。しばらくして、静寂を破ったのは雪李妹だ
った。
「秋応程にもなれば、妾を囲うのも当然だ。そのくらい大したことでもあるま
い」
この言葉が嘘でないことが梢楓には分かった。というよりも雪李妹は嘘をつけ
ない。生来その手のことが頗る苦手らしく、すぐに声音が乱れるのだ。
「ただ、私はあの女が気に入らん。それだけだ。秋応は悪くない。私が狭量な
だけだ」
悔しかった。戦場から帰って真っ先に、自分を見てほしかった。
「ふふ、浅ましいな私は…」
自室に戻った雪李妹は、臥床に腰掛けて窓から外を眺めていた。雨。梢楓と出
会ったのも雨の日だった。五年も前のことだが、忘れなどしない。
(変わってしまったのか…?)
自分は梢楓を第一に想って生きてきた。そこに一切の疑いはない。ならば変わ
ったのは梢楓のほうか。
(秋応を疑うなど、変わったのは私か−)
「情けない」
寝よう。燭台に息を吹き掛けようとしたその時、扉をこつこつと打つ音がした。
「秋応か?」
「あ〜。雪李妹ちゃん、だったかしら?ちょっと今から良い?」
「なっ…」
あの医者の声だ。いま一番会いたくない人間、瑤耶のものだ。
「貴女が私に怒ってるのは分かってるわ。ただ、阿し…っとぉ、貴女の旦那か
ら頼まれてるの」
意外な事だった。自分が怒っていることは承知の上で、梢楓は瑤耶を差し向け
たと言うのか。
「で、これは私も早めに済ませておきたいから…えっと〜駄目かしら?」
ここで通さなければ雪李妹が梢楓の命すら聞かぬ不出来な女と言われるかも知
れぬ。
(考えたものだな…)
そういえばこいつは姦狐と呼ばれているらしい。なるほど抜目ない狐だ。雪李
妹は入れねばならぬと悟って苦笑した。
「分かった…」
「ごめんなさいね。でもこれも契約だから」
女は苦笑い浮かべ、わざとらしく頭を下げながら入って来た。手には何か入っ
た麻袋が握られている。
契約と言うのが気になったが、極力口をききたくなかった。こちらから話し掛
けるなど論外だ。
「でね、旦那さんから頼まれたの。ちょっと口開けて下さる?」
声の事か。大体察しはついた。しばらくの間、この家に上がり込む代価として
雪李妹の治療も入れてあったのだろう。考えてみれば、梢楓のやりそうな事だ。
恐らく瑤耶からしてみたら驚くほどすんなりと口を開いた。東の方では『良薬
口に苦し』という言葉があるとか。雪李妹はふと思い出して、よく出来たもの
だと感心した。
「火傷ね…奥が……なるほど…」
ぶつぶつと呟きながら、瑤耶は口の中を観察している。金属の棒を舌に当て、
奥まで丹念に診察した。
「うん。喉をやったのは昔の事?原因は?」
「…十五年前、灼けた空気を吸った」
「そう…。痛んだり血が出たりしたことはある?」
「血は出ない。ただ痛む事は稀に」
「な、る、ほ、ど…」
少しの間考え、瑤耶は上を向いて眉を顰めた。また何かを呟いてから、麻袋か
ら小瓶を取り出した。
「飲み薬よ。甘苦くて気持ち悪いかも知れないけど、我慢して飲んでね」
気味の悪い液体だった。瓶の中で揺れる青く濁ったそれは、薬草に造詣のある
雪李妹も見たことがない。
「怖い?」
「なに?」
「毒だったら?邪魔な妻を殺すために、姦通した女医が…って考え始めたら止
まらなくなるでしょう?」
「どういうつもりだ」
瑤耶が意味深にクツクツと笑う。異様なまでに冷めた目だ。
「見たこともないでしょ?それ。飲むかどうかは貴女が決めて」
「…」
どういった意図があるのかは分からない。だが、雪李妹の気持ちは固まってい
る。蓋を開けると、一気に全て飲み下した。
「あらあら勇敢ねぇ。完全に致死量ね。自棄かしら?」
口元を拭った雪李妹は言う。まだ何も異変はない。
「秋応が考えたことでないなら、私がいなくなってもお前を選ばんだろう。画
策していると言うなら考える余地はない。秋応の隣にない生に意味などない。
私は秋応に従う。それだけだ」
雪李妹は瑤耶を見つめた。不敵な笑みを浮かべていた瑤耶が、呆れたように両
手を振った。
「負けね…貴女には勝てそうにないわ。ごめんなさい。毒っていうのは嘘」
「何故こんな事を?」
「治療よ。貴女の感情を振れさせる必要があるの。血の巡りを良くするために
ね」
「本当にこれで良くなるのか?」
「それだけじゃ無理。まぁ、そのうち来るわ」
「『来る』?…!?」
体の異変に気づくまでにそう時間は要さなかった。熱い。体の奥が燃やされて
いるような感覚に、雪李妹は耐えられず寝台に倒れた。
「貴様…!!」
「本当に毒じゃないわ、毒ではね。ただちょっと…ふふ、媚薬でもあるの」
「は…ぅ」
瑤耶の手が雪李妹の着物の合わせ目に割って入る。明らかに異常なことをされ
ていると言うのに、熱を持った体は、脱がされる事を喜んでいた。
「本当に肌綺麗ね。ふふふ、ほんのり紅くなっちゃって…その苦しそうな表情
も…可愛い…」
「ほぉら、口開けて」
「ふ…は…」
(どうかしている…止められぬ…それどころか…)
欲している。夢中になって瑤耶の唇を求める自分を、異常だと理解するのが精
一杯だった。瑤耶の舌に、歯茎をなぞってもらうと胸が高鳴る。頬に手を当て
てもらうと恍惚としてしまう。口が離れると、辛くて泣きたくなった。
「まだ…」
「んふ…本当に可愛いのね。でもね、治療は私だけじゃ出来ないのよ。そろそ
ろ頼んだ時間だから」
足音がする。雪李妹には誰の足音か分かった。そもそも今この屋敷には雪李妹
と瑤耶の他に、一人しかいない。
「シェリー、入るぞ…!?」
「…だ…駄目…」
梢楓だ。見られてしまった。だらし無く服がはだけ、口の周りを涎まみれにし
ながら息を乱している自分の姿。それでも、布団で身を隠すことも出来ない。
「シェリー!っ瑤耶…!」
「怒らないでよね。治療よ。貴方が必要なのも本当よ…」
この時、瑤耶は初めて梢楓を恐れた。戦争中の武器を振るう時よりも、徒手の
今の方が恐ろしかった。
(やっぱり『梢』…)
瑤耶はこの怒れる猛獣をどう抑えるか、冷静を装って思案した。
「秋応…待っ…て」
全身の熱を吐き出すように息をしながら、雪李妹は梢楓に呼び掛ける。
「済まん…苦しかったろ」
苦しくなとなかった。むしろ気持ち良かった。気持ち良くて仕方がなかった。
梢楓以外を相手にして。それが何より辛かった。
「済まん…こんな痴態を…」
「気にするな」
梢楓は躊躇いなく抱きしめてくれる。雪李妹は胸が詰まりむせび泣いた。
「あ〜…良いかしら?」
「瑤耶…これから一片でも偽れば首が飛ぶぞ」
「分かってるわよ。治療と言うのは本当、シェリーちゃんに飲んでもらったの
は『妖葛根』っていう薬。体の気の循環を高めることで喉にも気を循環させら
るようにしたわ。ただこの薬、勿論全身に気を送るから、性も高ぶっちゃうの
よ」
一拍置いて瑤耶が再び口を開く。
「あと貴方を呼んだのも意味があるわ。妖葛根だけじゃ足りない物があるの」
抑えられなくなった雪李妹が、必死に梢楓のモノをくわえる。五年と二月−雪
李妹と出会ってから肌を重ねたことは何度もあったが、口淫は初めてであった。
それは偏に雪李妹の喉を労っての事だったが、精を飲むのが治療になるとは思
いもよらなかった。技術こそ瑤耶には劣るものの、雪李妹がしているという事
実が何倍も興奮させた。
「私の時より気持ちよさそうじゃない」
「…っ」
瑤耶がからかうように先日の夜の出来事を明かすが、雪李妹には届いていない。
一心不乱に愛しい人のものを奉仕する姿に、瑤耶も根負けしたように息を吐く。
「っシェリー…もう出すぞ…!!」
「気をつけなさい!一滴も零さないつもりで飲んで!」
可能な限り奥までモノを納め、雪李妹が射精に備える。見たことが無いくらい
だらしなくいやらしい顔が梢楓への決定打となった。
「ぐっ!!」
「ん!?うんぅぅ…!!んばっは!!ぶぅ…!」
幸か不幸かいつもより吐精量が多い。雪李妹は苦しそうにそれを受け止め飲み
下す。
「っはぁ…はぁ…本当にこれで治るのか?」
「医者は絶対と言わない。けれど約束するわ、この子は私が治してみせる」
「らしくないな。俺が言うのも変な話だが、そんなに思い入れが?」
いつになく真剣な表情で瑤耶が雪李妹を見つめる。悪戯っぽさが影を潜めてい
る。
「約束よ。昔のね……」
「……!?ぐぅっ」
「シェリー!?」
「来た!?」
瑤耶は予め用意していた盆を雪李妹の口許に出す。そこに雪李妹が勢いよく赤
い物を吐いた。血だ。咳込みながら雪李妹が何度も血を吐き出す。
調練や戦場でいやというほと血を見ている梢楓だったが、この時ほど血で動揺
したのは、生涯の中で他にない。
「シェリー!」
「焦らないで!ここからよ…。お願い、出して…!!」
祈るように、耐えるように瑤耶はその時を待った。咳込み続けた雪李妹が喉に
何かを詰まらせたように息を止める。苦しさに顔を歪める様を、梢楓は自分の
事のように辛そうな表情で見た。
「あご………っがふ…!!」
血に混じり、黒い塊が吐き出された。瑤耶が待っていたものはこれのようだ。
目に涙を浮かべてそれを受け止めた。
「瑤耶…」
「もう大丈夫…あとは、しばらくゆっくりと治していくから」
あれから十一日、梢楓は雪李妹と会っていない。
何でも「感情を高ぶらせる刺激は入れてはいけない」らしく、ひたすらに部屋
に篭っている。その間の雪李妹の世話は、瑤耶が驚くほど献身的に行った。梢
楓が知る限りでも朝餉の薬膳を運び、診察か何かをし、昼には前日の服を洗い、
夜に雪李妹が寝付くのを確認してから部屋を出た。
あの涙を見てから、梢楓の中の瑤耶への猜疑心はすっかり溶けてなくなってい
たから、もう何も言うこともなかった。
「三日後の夜、夕餉の後に会わせられそうよ」
廊下ですれ違ったとき瑤耶は言った。とても姦狐などと呼ぶには相応しくない
爽やかな笑顔に、思わず梢楓は頭を下げた。
「礼を言うと共に謝らねばならぬ」
「いいの。私は報酬分働いてるだけ」
嘘だ。瑤耶は明らかに雪李妹に何かを抱いている。それが何かは分からないが、
その何かによって瑤耶はよく働いている。
「一体…」
尋ねようとした梢楓の口を、瑤耶が立てた人差し指で止める。
「まだ駄目。頃合いをみて教えてあげるわよ阿梢」
少しだけ妖しさを帯びた笑みを浮かべながら、瑤耶は過ぎ去った。梢楓が振り
返った時にはもう姿はなく、ただ生薬の混じった彼女の匂いだけが残されてい
た。
「ようやく貴方に会える、って嬉しそうにしてたわ」
「この十余日で愛想尽かされなくて良かったよ」
「嬉しいくせに、もう照れちゃってぇ」
「ふん…!」
クツクツと笑いながら、瑤耶は梢楓を部屋に連れていった。当然梢楓の方が熟
知している屋敷なだけに、何やら妙な気分だ。
「シェリーちゃん、入るわよ」
ゆっくりと開いた戸の先に、彼女はいた。
「ほら、なんかないの?」
「少し…痩せたかな?まぁ、元気そうで良かった」
浅葱色の服に身を包み、寝台の上に静かに佇む雪李妹はわずかに窶れているよ
うにも見えた。口許を布で隠しているのが、厭世的な性質を持つ道術士の装束
によく似ているせいかも知れぬ。
目で柔らかな笑みを作ると、雪李妹はそっとその布の結び目を解いた。そして
ゆっくりと口を開けると息を大きく吸った。雪李妹の細かな仕種まで梢楓はじ
っと見守る。
「……随分と待たせてしまったな秋応」
初めて聞く、しかし確かに雪李妹のだと分かる。はっきりと、声が出た。
中性的なその声音は、梢楓にはどこか神秘的なものすら感じさせた。
「よく、頑張ったな……」
十五年−火傷を思い出してかうなされたこともあった。梢家の若妻は挨拶も出
来ぬとあらぬ誤解を受けたこともあった。その度に鬱屈した思いを抱え込み、泣いた。そんな日々と別れを告げられるこ
の声、梢楓はそれに思わず涙した。
「今まで、要らぬ苦労をかけてしまった」
「お前が気にすることなんて何もないさ…!シェリー…!!」
強く、ただ強く抱擁した。雪李妹の肩が濡れる。梢楓の肩にも一滴、二滴と涙
が落ちて染みを作った。
「瑤耶…お前にはいくらしても礼が足りぬな」
「言ったでしょ?気にしなくて良いわよ。私は報酬貰うのだから。そうね、ち
ょうど良いわ。二人、そのまままぐわって頂戴」
「!?お、お前はいつも…!!」
「今更恥ずかしがることもないでしょう?あんな可愛い顔見せたんだしね」
確かに雪李妹とも瑤耶とも臥床を共にした。だからといって、情交など他人に
晒すものではない。少なくとも梢楓はそう考える。
「報酬よ報酬。ちゃんと私はしたわよ。今度は貴方達の番ってこと」
「…分かりました」
「シェリー!?」
「いつも通りで良いんですね?」
「そ。ほらほら〜シェリーちゃんのほうがよっぽど物分かりが良いわよ」
どんなことをしてきたのか知らないが、雪李妹はこの十数日の間で瑤耶のこと
を完全に信用したようだ。確かに喉のことを秤にかけたなら大きく傾くだろう
が、雪李妹はそれ以上に瑤耶を慕っている節すらある。
「もう早くしてよね〜男でしょ。それともシェリーちゃんとは嫌なの?」
「そうなのか?」
(本当に懐いたな…)
「…分かったよ。シェリー」
腹を括って雪李妹の唇を奪った。美しい声音を愛でる気持ちと、自分以外に従
順になった事への独占欲から来る小さな嫉妬。その二つが混ざり合い、口づけ
を激しくさせた。
「あぅ…!!っっ〜んん!」
首筋を舐めると雪李妹が艶やかな声を出した。今までよりもなまめかしく、淫
靡な色がある。
そのまま鼻先で重ね目を割って胸を吸った。またも雪李妹が色っぽく鳴き、梢
楓を喜ばせた。
「シェリー、ほら脚こんなんだから今日は上行ってくれ」
「うん…」
「あら本番?じゃあその前にあれやってみる?」
「アレってなんだよ?」
「先生から、習ったんだ。秋応、寝てくれるか」
(先生と来たか…)
改めて会っていない間に何があったのか気になった。
「包むように…小指から……」
何かを呟きながら雪李妹は梢楓の帯を解く。漲ったモノが現れたとき、瑤耶が
小さく歓喜の声を上げた。
「じゃ、やってみましょ?」
「はい…!」
愛する人のほっそりとした手が、自分の剛直を根元から柔らかく握る。
「秋応、どうだ?初めてで下手だろうけれど…」
ゆっくりと手を動かす。型こそ自慰に酷似しているが、生じる快感は段違いだ
った。
「っは…!これ凄いな…シェリー、ありがとな。気持ち良くよ」
「そ、そうか!良かった!」
「ね、シェリーちゃんにしてもらっちゃったら阿梢はもう虜って言った通りで
しょ?」
手の動きが徐々に早くなり、快感も刺激的なものへと変質する。
「シェリー離れ…!」
「!?」
忠告を言い終える前に、勢いよく精を放ってしまった。手は勿論、雪李妹の顔
にまでかかる。
「す、すまん!!」
「こんなに出して…嬉しいな、やはり」
頬に飛んだ白濁を指で掬って舐めた雪李妹が苦々しい顔をした。
「ただこれは…好きになれそうにない…」
「ならなくていい」
「ねぇ、ちゃんとまだやれるんでしょうね?これで限界なんて言わないでよ」
どういう訳だか瑤耶は一人で脱ぎはじめる。その意図が薄々と読めてしまうだ
けに、二人は動揺した。
「あえて聞くが、何をする気だ?」
「分かってるんでしょ?ちょっと混ぜてもらうだけよ。大丈夫可愛い教え子に
良いモノは譲ってあげるから」
そういうと女狐は雪李妹に飛びついて唇を奪った。
(まったく、なんでこうなるかな…)
仰向けになった自分の上で雪李妹が乱れている。それはいい。問題はその雪李
妹の乳房に女狐−瑤耶がしゃぶりついていることだ。
「っあぁ!!ひぅ…!先生…強すぎます…うぁぁ!!」
「んちゅ…ほぉらちゃんと腰動かす」
「は、はい…いぃ!駄目…!!体…動かせ…んん!!秋応…済まない…あん!」
瑤耶の前に成す術もなく、雪李妹はただなされるがままに感じていた。女同士
の交わり。そこに子は成せるはずもなく、不貞とも取れる情事であるが、これ
程までに淫猥な光景だとは思わなかった。
「秋応…んあぁん!ああっあぅっあっあっ!!」
瑤耶に体をまさぐられ、梢楓に下から突き上げられる。逃れられない二人の責
めに、雪李妹は鳴くほかなかった。
(も〜突かれてこんなに感じちゃって、シェリーちゃん可愛すぎ!!)
「っうぁあ!!…そろそろ…来る…!」
絶頂は愛しい梢楓によって迎えるべきだ、とて瑤耶はそっと離れる。少しだけ
嫉妬に似たものを感じたが、毎日梢楓と出会ってからの日々を語っていた雪李
妹の姿を思い返せば、瑤耶の入る隙など元より無かったようにも思えてくる。
「っあぁあ!はぁあああ!!!」
確かな絶頂。梢楓は自分にぐったりと覆いかぶさる雪李妹の頭を優しく撫でた。
「お疲れ様…二人とも」
「あ、あぁ…」
「睦言まではお邪魔しないわよ。じゃあね」
瑤耶が心なしか寂しそうな顔をした気がしたが、すぐに背を向けて出ていって
しまったので梢楓は永遠に真実を知る機会を失った。
「ん…秋応…」
体を擦り寄せて雪李妹が口づけをせがむので、それもすぐに忘れた。ゆっくり
と深く舌を絡ませる。二人の境界を溶かすようにじっくりと慈しむようにまさぐ
りあった。
「なぁ、秋応…」
「うん?」
「ありがとう…それ以外に今は言葉が見つからぬ」
雪李妹がぎゅっと顔を胸に押し付けてくる。願わくばこんな関係がいつまでも
続くと良い。梢楓はそう願って優しく背をさすった。
瑤耶が姿を消したのは、三月あとの事だった。忽然と、まさに忽然と、それま
での同棲が嘘であったかのように、一切の痕跡が消えていた。ただ、使ってい
た部屋に残された手紙を除いて。梢楓が気づいた時には既に姿がなく、仕方な
く雪李妹と共に残された手紙を広げた。
梢楓の父、梢統の計らいで従軍した。その言動がよく似ていたことに驚きすら
感じた。梢統とは目の治療で知り、梢楓の母である明花とも勿論面識がある。
実は梢楓の事は前から知っていた。というのも、出産で取り上げたのは自分な
のだから。
手紙の中で瑤耶が語ったことは、大体このようなことであった。話してもいな
い両親の名を記している事を考慮すると、事実であろう。だが、それが事実だ
とするならば…
「一体いくつなんだあの女は?」
年齢の疑問が残る。二十三、四あたりか。梢楓はそう踏んでいたが、この話か
らするにどれだけ若くとも三十の後半、むしろ四十半ばと考えた方が話が通る。
「ふむ…」
もう何度も読んだ手紙を今一度開ながら梢楓は首を捻った。そのうち、ふと部
下のから聞いた言葉を思い出す。
『銀果通りの姦狐』
全て化かされていた。そんな気がしなくもない。あるいは夢でも見ていたので
はとも思える。狐が化けたというなら、一晩の間に誰にも気付かれずに消えた
のも納得がいく。
「案外、本当に狐なのかもな…」
「そう言う割に随分楽しそうじゃないか」
「それでも良いという気がしているのだ、今はな」
「あぁ、私もだ…」
たとえ狐であれなんであれ、雪李妹は声を取り戻し、笑っている。梢楓はそれ
で充分だった。
「!秋応、包み紙の裏に…」
文は続いていた。わざわざ見つけづらいところに書く悪戯が、実に瑤耶らしい。
「なんと書いてあるのだ?」
「…あぁ、いや」
読み終えると、梢楓の口許が自然と綻んだ。字が読めぬ雪李妹にはそれがひど
く気持ち悪かった。
「秋応!」
「んっ!?あ、あぁ…そうだな。うん、シェリー…大事に育てような」
それしか言葉が出てこなかった。喜びが込み上がってきて、雪李妹を強く抱き
しめた。
以上です。少しアブノーマルな所があったから冒頭で注意書き書いた方が良かったかも
曖昧な終わらせ方になってしまったけど、想像に任せるのか補完するかは…どうしようか……
決してデモンズソウルにハマったせいで、脳内保管大好きになったとかそんなのではないのです。
あれは良いっすよ。キモグロい敵ばっかりの暗い世界観だけど、良い中世ファンタジーでここの人も気に入るのではないかと思います。オススメです
大分脱線しましたがこれにて失礼
では
169 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/07(月) 17:31:03 ID:hI5gXHx/
よいぞよいぞ
保守
保守
172 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 17:25:16.93 ID:cyRoXMQe
保守
保守
オナニーの森に生い茂るティンポウッドの木。
男性器の形をした突起があり、女陰に挿入すると快感が得られる。
この森に迷い込んだ少女は快感に飲まれていく…
保守
神か悪魔の続きマダー?
神のみぞ知る
179 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/25(金) 16:21:07.39 ID:auJIwCUK
少女生贄
うむ
アステカかマヤ文明もの読みたい
182 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/13(水) 00:48:53.46 ID:gqQ8BfTU
ハイ・ファンタジーそれも
ダークファンタジーが読みたい
ハイファンタジーって何だ?
>>183 \ ハーイ / \ ハーイ / \ ハーイ / \ ハーイ / \ ハーイ / \ ハーイ /
/| /| /| /| /| /|
|/ __ . |/ __ |/ __ .|/ __ .|/ __ . |/ __
.ヽ| l l│ ヽ| l l│ ヽ| l l .| ヽ| l l│ .ヽ| l l│ .ヽ| l l│
.┷┷┷ ┷┷┷ . ┷┷┷ ┷┷┷ ┷┷┷ .┷┷┷
1号炉 2号炉 3号炉 4号炉 5号炉 6号炉
リアル ノットファンタジー
ところがどっこい現実・・・これが現実・・・・
死の灰ファンタジーってことか
保守
相変わらず遅筆ですみません。
「神か悪魔の贈り物」第一章第十一話を投下させていただきます。
毎度百合百合しいお話です。
本文が長すぎる言われる……調整してきます。
忍者って何だ。しばらく来てなかったらそんなことになってたのか。
ごめんなさいよく分からない。調べてまた後で来ます。
一方、ナオミさんとアキさんに前後から体を洗われていたイーシャさんでしたが、焦らすような手つきに
小さく喘ぎながらも、途中から生唾を飲み込む勢いでクロエさん達の痴態に目が釘付けでした。
いいえ、イーシャさんだけではありません。
前後の侍女さん達もまた、イーシャさんを責めながら、激しくも可愛らしい幼侍女達の絡みと、
それをオカズに自らを慰める姫様の様子をじっと見つめておりました。
もっとも、この二人にとっては割と良くある光景でしたので、目を見開いてと言うより
生温かく見守る様な半眼でしたけれど。
「まったく、シーリオもクロエちゃんもドュリエス様も、淫らで仕方ないなぁ。くふふふふ……」
そう笑うアキさんですが、あなたも人の事言えませんよね。
「それにしてもドュリエス様? ここにはあなたを慕うあなた好みの美少女が五人も揃っておりますのに、
勝手にお一人でおっ始めなさるなんて。まったく、どれだけ節操がないんですの?」
「はあっ、はあっ……やぁっ、ナオミっ、そんな言い方、しては、嫌よっ……あっ、あっ、んああ……っ!」
ドュリエス様を優しく蔑むナオミさん。
その台詞を受け、嫌と言いながらも、公女殿下のお顔は被虐の悦びに歪みます。
指使いは次第に早くなり、快楽を訴える声も逼迫したものになっていきます。
「あっあっ、わたくしっ、イっ、イクわっ! あっ、いっ、イクっ、イクぅっ! イクとこ、見てぇっ!
あっ、今っ! 今よっ! ああっ、きゃあああーーっ!!」
大きく足を開いたまま、悲鳴のような嬌声と共に仰向けに倒れ込み、背中をのけ反らせるドュリエス様。
腰を高々と上げ、ぐぐっと硬直します。
そのままの体勢でしばらく固まり、やがて糸が切れたように力が抜け、床に横たわりました。
手足がだらんと投げ出されますが、右手だけは物足りなげにやわやわとお股をまさぐり続けています。
「はあっ、はあっ、はあっ……はふぅ……はう……んう……ん、んぅ……」
「ふふふ、仕方のないお姫様ですこと……。イーシャ様、少々失礼致しますわね」
「あ……」
ナオミさんはイーシャさんの耳元にそっと囁くと、体を離し、ドュリエス様に近づきました。
そして傍らに腰を下ろすと、たおやかなおみ足に口付け、ゆっくりと上に向かって這わせます。
「んんっ、ナオミ……焦らさないで……」
ドュリエス様は腰を突き出し、発情してぷっくりとふくらんだそこを、
人差し指と薬指でくっと拡げて口唇愛撫を待ちわびます。
待ちきれず、剥き出しの突起を中指で擦ってしまいます。
「ふうぅ……っ! はっ早くぅ、早くぅ……っ!」
「まあ、今イッたばかりなのに、もうおねだりですの? 『令名高きドゥカーノの娘』が
聞いてあきれる浅ましさですわね」
「そうなのぉっ! 浅かったのぉっ! だから、深いの、欲しいのぉっ!」
「おほほほ。浅いって、そういう意味で言ったのではありませんわよー?」
「そんなのどっちでもいいからぁっ! ナオミぃ、はっ、早く、なさいっ!」
そのお言葉を受けて、しかしナオミさんは、這わせる方向を足元に変えてしまいました。
「ああっ!? おっお待ちなさいっ! ナオミぃっ! 待ってっ! こっ、こっちぃっ! こっちよぉっ!」
ドュリエス様は拡げたそこを小刻みに震わせて要求なさいましたが、
ナオミさんはそれを無視して唇を進め、膝、ふくらはぎを通り、指までたどり着くと、
親指をぱくっと咥え、ちゅばちゅばと音を立てて丹念に口唇愛撫を施します。
唇や舌のみならず、絶妙な加減での吸引や甘噛みも交えたお姉さん侍女さんの巧みな口技に、
ドュリエス様は気持ち良いやらもどかしいやらで、なんとも切なく追い詰められていきます。
「やあぁナオミぃっ! そこじゃないのぉっ! こっちぃっ! それこっちにしてぇっ!」
公女殿下の、おさねをひくつかせながらの懇願をよそに、
ナオミさんは他の指にも順番におしゃぶりのご奉仕をしていきます。
――人差し指。
「なっ、ナオ、ミぃ……っ! わっ、わたくしの言うことが、きっ、聞けないのっ!?」
――中指。
「んふぅ……っ! ねぇ、ナオミ、お願い、だからぁ……っ!」
――薬指。
「ふあっ……ふああっ……こ、これ以上焦らされたら……おかしくなってしまうわ……。
ああっ、ま、また、自分でイッてしまいそう……っ!」
――小指。
「はーー……はーー……も、もう、だめぇ……はひっ、はひっ……ひあああーっ!」
ナオミさんが小指に吸い付く品のない水音が響き渡る中、ドュリエス様は再びご自分の指で達してしまいました。
公女殿下のお手々の動きが止まり、体がこわばる所を見計らって、ナオミさんはちゅぽんと口を離します。
そして涎にまみれたおみ足の先を愛おしそうに胸に抱くと、自分の足を絡め、
濡れそぼったお股を高貴なるすべすべの太ももに擦り付けます。
「んっ、んっ……ふふふ、ドュリエス様、ご満足されまして?」
しかし、ナオミさんに焦らされながらの自慰は、またしても浅い絶頂しかもたらしてくれませんでした。
その上、太ももの内側をナオミさんのお大事にぬるぬると愛撫されて、くすぶった情欲に
油を注がれたドュリエス様は、すぐにまた次を求めて弱々しく空腰を使い始めてしまいます。
「ああ……ナオミぃ……お願いだからイカせてぇ……」
「ん……あん……。ふふ、あらあら。何をおっしゃるかと思えば。
たった今、イカれたばかりではっ、んっ、ありませんのっ……んふぅっ!」
「そっそんなぁっ! ナオミばっかり、気持ち良くなって、ずっ、ずるいぃ……っ!」
「おほほほほ。ずるくなんか、んっ、ありませんわ。先程申し上げたじゃ、んあぁっ、あ、ありませんの。
『後でお返しさせていただきます』って……あは、ドュリエス様の、太もも、気持ち良いですわぁ……」
「やあっ! さっきのお返しならイカせてぇっ! いっぱいイカせてぇっ! いっぱいイカせて、あげたでしょおっ!
お返ししてぇっ! あなたにイカせて欲しいのぉっ! 自分でするのはもういいのぉっ!」
身も世もなく懇願する公女殿下でしたが、ナオミさんは構わず自分の快楽を貪り続けました。
「んふっ、あっ、んんーっ! もう、いっ、イキますわっ! ドュリエス様の太ももでっ、イッちゃいますわぁっ!」
「ああっ! おっお待ちなさいっ! わたっ、わたくしもぉっ! わたくしもイカせて頂戴ぃっ!」
「ふあっ、あっ、だっダメですわぁっ! おっ、お先にっ、失礼っ、いたしますぅっ! ふぁっあああぁぁぁぁっ!」
お仕えする公女殿下を置き去りに、一人で絶頂を迎えるナオミさん。
淫らな前後運動を続けていた腰が止まると、ドュリエス様のおみ足を抱きしめたまま
首筋を大きくのけ反らせ、しばし硬直します。
押し付けられた、すでにぐちゅぐちゅに湿っている侍女頭さんの秘所から、さらにじゅわっと
温かい粘液が溢れ出すのを太ももに感じて、ドュリエス様はさらなる焦燥感にさいなまれておしまいになります。
「やあっ! ナオミぃっ! わたくしもぉっ! わたくしもぉっ!」
ドュリエス様は自分のそこへ擦り付けようと、ナオミさんの足を掴み、引っ張ろうとしましたが、
しっかりぎゅっとしがみついているので、姫君の細腕ではどうにもなりません。
「あーっ、うーっ! もおー、ばかあっ! ナオミのばかあっ!」
じたばたじたばた。
切なさのあまり、言動が幼児退行してしまうドュリエス様。
そのまま子供がするように、相手に不満をぶつけました。
ナオミさんの足を思いっ切りつねったのです。
「痛あああっ!? どっ、ドュリエス様っ! 痛いっ! 痛いですわあっ!」
せっかく快楽の余韻に浸っていたナオミさんでしたが、痛みでそれも台なしです。
「知らないもん! ナオミのばかあー……ううー……ナオミのばかあー……」
そう涙ながらに駄々をこねるドュリエス様からは、もはや日頃の楚々とした立ち居振る舞いは微塵も感じられません。
「ん……し、しかたありませんわね! 公女様とは思えない程みっともないおねだりが出来たご褒美に、
思う存分、して差し上げますわ……っ!」
口ではそんな事を言うナオミさんでしたが、そわそわと息も荒く、自分の方もしたくて堪らないのは一目瞭然です。
中途半端に快楽を散らされて、かえって欲求不満になってしまったのです。
ナオミさんはドュリエス様の足首を掴んだまま腰を進め、雫のしたたるお大事同士をくちゅりと重ね合わせました。
「ふあぁっ! ナオミっ! ナオミっ! ナオミぃーっ!」
ドュリエス様は嬉しそうに叫びながら、ナオミさんの足を引き寄せ、お股を強く押し付けると、勢いよくうねらせます。
「ふうぅ……っ!」
お預けをくらっていたそこは、それだけですぐに達してしまいました。
口付けを交わす下のお口の隙間から、ぷちゅっぷちゅっと断続的にドュリエス様のお潮が吹き出します。
しかし、ドュリエス様にとっては一区切りの絶頂でも、何度か達した後で余裕のあるナオミさんにとっては、まだまだ手始めに過ぎません。
密着から逃げられないよう公女殿下のふくらはぎとお膝を抱え込んだ青灰髪の侍女さんは、
激しく腰を振り動かしました。
にちにちにちにちにち……と浴室に恥ずかしい粘性の水音が響き渡ります。
「あっ! 待ってナオミっ! ひあっ! おっお待ち、なさいっ! ああーっ!」
「おほほほほっ! ごっ、ご無体なことをっ! この状態で、や、止めろだなんて、んっ、むっ、無理ですわぁ!」
ナオミさんの腰は、軸のズレた石臼のような複雑で卑猥な円運動を繰り返し、間断なく淫楽を味わいます。
おイキあそばされたばかりで感じすぎてしまう公女殿下は、官能的な悲鳴を上げて逃げようとなさいますが、
ナオミさんにがっちりと捕まえられてしまっては、それもかないません。
上半身を悩ましげにくねらせるのが精一杯です。
「はっ、ひぃっ! おおっ! お願いぃ、ちょっ、ちょっとで良いからぁ、あひんっ! や、休ませなさい!」
「い・や、ですわ。さっきご自分で仰っしゃってたじゃありませんの。『お返しなら、いっぱいイカせて』と」
「なっナオミぃっ! あっ、後で、ひっ、非道いわよっ! あっ! あっ! あひっ! ひああああ……っ!!」
アキさんを抱きしめながら、そんなドュリエス様達の様子をご覧になっていたイーシャさんは、
少し不満そうな顔をなさいました。
「あれ、イーシャ様、どうしました? もしかして、あんまり気持ち良くないですか……?」
ナオミさんが外れた分、背中に回した両腕でよりしっかりと抱きしめて体を擦り付けていたアキさんは、
そんなイーシャさんの表情に不安そうな声を上げました。
「あ、い、いえ、そんなことは、ない、です……。その、き、気持ち、良いです……。そうじゃなくて、その……」
イーシャさんはアキさんに向き直り、恥じらいながらそう言うと、
もう一度ドュリエス様の方に目を遣って、ぼそっとつぶやきます。
「ドュリエス様こそ、ずるいです。私の時は、あんなにあんなにおねだりさせて、あんなにあんなに焦らしたくせに……
自分はちょっとおねだりしただけで、すぐにいっぱいしてもらえるなんて……」
その台詞と、ちょっと悔しそうに尖らせた唇に、アキさんの大きなお胸はもうきゅんきゅんです。
「やあんもお! イーシャ様ってば、かーわーいーいー♪」
言いながらイーシャさんのお顔に頬擦りすると、耳元にそっと囁きます。
「そういえば、クロエちゃんがシーリオに責められてた時も、イーシャ様ガン見でしたよねー。
――もしかしてイーシャ様、またあんな風に責められたいの?」
「えっ!? ち、違っ……そ、そういう、訳では……」
「ありますよね? だって、あんなに羨ましそうにご覧になってたんですもん」
イーシャさんの目元に舌を這わせるアキさん。
「んっ、あ、アキぃ……」
「えへへ、大丈夫ですよぉ。イーシャ様がお望みの通り、あたしがお体を洗いながら、
クロエちゃんやドュリエス様以上に気持ち良く狂わせて差し上げますからねー」
「んんっ、だっ、だから、違いますってば!」
「またまたぁ。心配しないでイーシャ様。たとえ感じすぎて堪らなくなっちゃっても、泣き叫んで許しを請われても、
お体の隅々はもちろん、頭の中まで快楽で綺麗に真っ白になるまで、決して洗う手を止めたりしませんからねーふひひ」
「ふ、ふえぇ……」
アキさんの言葉に、イーシャさんは涙目です。
唇を震わせながら、いやいやと首を小さく左右に振ると、横を向いて抗議しました。
「くっ、クロエの、うそつきぃ……優しくするって、言ったのにぃ……っ!」
「あんっ、シーリオ、大好きぃ……んっ、んぅ……って、えっ、ぼっ、ボクっ?」
シーリオさんとの愛のこもった後戯に夢中ですっかり盛り上がってしまい、二人の会話が
耳に入っていなかったクロエさんは、何故いきなり嘘つき呼ばわりされたのかわかりませんでしたが、
イーシャさんの怯えた表情と、アキさんの嗜虐に歪んだ笑みを見て、なんとなく理解しました。
「ああ……もう、アキ! イーシャ様を脅かしたらダメでしょ!
イーシャ様、安心して。もうさっき程すごい責め方はしないから。
……アキ、言っておくけど、これ、振りじゃないからね? しちゃダメだからね?
ダメだよ……ああ、ダメ……シーリオ、そこはダメだよぉ……んっ、ふふふ、もおシーリオったらぁ……」
シーリオさんといちゃつきながらもアキさんに釘を刺すクロエさんでしたが。
「ふえ……? あ……そ、そう、ですか……し、しませんか……」
「あれぇ? イーシャ様、なんだか残念そうですねー?」
「い、いえ、そんなことはなひゅあっ!?」
言い終わる前に、アキさんの手が伸び、イーシャさんの少し上付きのお大事をそっとなぞりました。
「ほら、やっぱりぬるぬる! イーシャ様、はしたない期待汁をこんなにだらだら垂れ流しておいて、
今更それはないんじゃないですかぁ?」
アキさんは、そのまま指を前後に滑らせます。
「あっあっ……んぅっ! ダ、メぇ……」
「んー? 何がダメなんですかぁ? こうやって気持ち良くして差し上げるのが、ですかぁ?」
「んっ、んんっ……あっ! あっあっ! やあっ!」
「それとも……」
指を離すアキさん。
「こうして止めちゃうのが、ですかぁ?」
「ふああ……ああ、うう……」
「ちゃんと言わないと、またずっと焦らしちゃいますよ?」
「んっ、や、止めちゃうの……です……」
「止めてほしいの?」
「やぁっ! ちっ違うのぉっ! 止めちゃやなのぉっ! 止めるのがダメぇっ! してぇっ! してぇっ!」
「いーですけど、そしたら、イッても止めてあげませんよ?」
「それで良いっ! それで良いからっ!」
それを聞いたアキさんは、にいっと笑みを浮かべると、勢い良く指を動かし始めました。
「んんぅーっ!」
まるで泡を立てるような激しい、しかもツボを心得た茶髪侍女さんの指遣いに、
性感に目覚めたばかりの少女騎士は一気に高みへと昇らされてしまいます。
「あっあっいっイクっ! イクぅーっ!」
程なく、イーシャさんは背中をのけ反らせて達してしまいました。
それを片手で支えながらも、アキさんは指を休めません。
達した証の、さらさらのおつゆが流れ出しているそこを、少しの休みも挟まずに責め続けます。
「あーっ! やあーっ! だっダメぇっ!」
「分かってますよぉ〜。『止めちゃダメ』、でしょう?」
「止めて良いっ! 止めて良いからっ! お願い止めてぇ……っ!」
「止めませーん♪ もう、だから言ったじゃないですか。イッても止めてあげませんって」
「あふっ……あおぉ……っ!」
イーシャさんは、つらさを紛らわすようにアキさんにしがみつきます。
一瞬、アキさんの腕が拘束された形になりましたが、それでもアキさんは巧みに体をずらし、
イーシャさんの腕から逃れると、指の動きを続けました。
「ひいぃっひあああーっ!」
「イーシャ様、またイキますかー? イッちゃいますかー? それでも止めませんよー?」
「やあぁぁっ! そんなあっ! そんなあぁぁっ! はひぃっ! ああっ、またあっ!」
「イッちゃえイッちゃえー、ほらほらほらほらー、にゃははははぶぼっ!?」
突然、アキさんの動きが止まりました。
そして次の瞬間、頭を押さえて床を転がり回ります。
「おごごがーっ!? いったぁっ! なっ、何ぃーっ!? ぐぼぉっ!」
そんなアキさんのお腹を足で踏み付け止めたのは、仁王立ちしたクロエさんでした。
黒髪侍女さんは、たった今アキさんの脳天に叩き込んだ手刀をゆっくり下ろすと、にっこり笑って言いました。
「アーキー? ボク、ダメって言ったよねー?」
顔は笑っていても、目は笑ってません。
「あうう……ごめんクロエちゃん……。イーシャ様可愛すぎて、つい……。で、でも、一言言わせてもらえれば……」
「何? 弁解があれば聞かせてもらおうか。一言言わせてもらえれば?」
「一言言わせてもらえれば……クロエちゃんの濡れ濡れ子供まんこ丸見えですごくやらしぶべっ!」
クロエさんは、今度は無言でアキさんの顔を踏み付けました。
「ふっ、ふおえひゃんっ、いひゃい」
「ごめん、イーシャ様。許してやって。これ、馬鹿だから」
アキさんの抗議を無視して、クロエさんはイーシャさんの頭をそっと抱きしめ、アキさんの代わりに謝罪します。
「うう……くっ、クロエぇ……」
「うん」
「クロエの……クロエの……」
「うん?」
「クロエの、いじわる……っ!」
「うん…………へっ!?」
「もうすぐっ、もうすぐっ、だったのに……っ! 何であそこで邪魔するのぉっ!? クロエの、馬鹿ぁ……っ!」
「あ、あれ……? えと、ご、ごめん……」
どうやらクロエさんがアキさんを止めたのは、イーシャさんが再び絶頂を迎える寸前だったようですね。
なんとも間の悪い事です。
「ね、ねえ……せ、責任、取って……っ! く、クロエが続き、してくれなきゃ、ダメ、ですからね……っ!」
「イーシャ様……。うん、わかった……して、あげる」
クロエさんは抱えていたイーシャさんの頭を離し、床に膝を着くと、イーシャさんの足の間に顔を埋めました。
そして、唇でおさねを剥き出し、ちゅっと吸い付くと、舌先で掃くように扱きます。
寸止め状態だったイーシャさんは、それだけで達してしまいました。
「ふあぁぁぁ……っ!」
両足をぴんと伸ばし、両手でクロエさんの頭を押さえたまま、大きく背中をのけ反らせるイーシャさん。
「おっと」
そのまま倒れてしまいそうになりましたが、後ろに回ったシーリオさんがそれを支えました。
そのまま、先程までのナオミさんの様に体を密着させると、背中に残った石鹸を塗り広げていきます。
クロエさんは体を少しずり上げて、イーシャさんのお腹に頭を乗せ、肌の質感を確かめるように頬擦りをしています。
「にゅふぅ……」
イーシャさんは妙に気の抜けた、幸せそうな溜息を吐きました。
「ああ……。激しく愛された後に、こうやって優しく愛してもらうのは……はぁ……とても、良いですね……。
何と言うか……空に浮かんでいるような感覚です……」
「イーシャ様、気持ち良いですか?」
後ろから耳元で囁くシーリオさん。
「ええ……気持ち、良いです……。あんまり激し過ぎるのより、こういう穏やかな方が、私、好きみたいです……。
あ、で、でもぉ……」
イーシャさんは両手の指を合わせてもじもじとくねらせながら、
「と、時々は、激しくされたいかも……です……」
今度はシーリオさんがのけ反る番でした。
「うっはあっ! い、イーシャ様、クロエちゃん並の天然誘い受け……っ!」
「シーリオ! ぼっ、ボクは、別に、そんなんじゃっ!」
「……激しくって、あんな風に、ですかぁ?」
クロエさんの抗議を「何を今更」という目で一瞥すると、その目を、絡み合う公女殿下と貧乳侍女さんに向けます。
すると……。
「ああんっ、ナオミぃ! もっとぉ! もっとぉ!」
「ふひっ! ちょっ、どっ、ドュリエス様っ! もっ、もうっ、ダメっ! もうダメれしゅっ!
ひいっ! はひぃっ! はふおおっ! んおぉっ! ふひぃぃっ! うひいぃぃーー……っ!」
……攻守が逆転していました。
必死に逃れようとするナオミさんの足をドュリエス様が抱え込み、お大事を重ねたまま、
腰を更に押し付ける様にぐりんぐりんと激しくうねらせています。
「まったく、ドュリエス様もナオミも、二人で盛り上がっちゃって……。今日はイーシャ様の歓迎会なのに」
「あれぇ? クロエちゃんがそれを言うのぉ? 自分だって、さっきまでシーリオと二人で盛り上がっちゃってたくせにぃ」
クロエさんの呟きに、足元からアキさんの突っ込みが入ります。
「あっあれは、シーリオが勝手に……っ!」
「アキさん、許してあげましょう。クロエちゃんの体は恥ずかしい程の淫乱なんですから。きっと本人も反省してますよ」
「んなっ、なっ……ぼっ、ボクのせい!? 違うよね!? きっ、君のせいだよねっ!?」
シーリオさんのあまりの言い草に、今度はクロエさんがのけ反りました。
が、シーリオさんもアキさんもしれっと無視します。
「アキさん、年増組の二人はもう仕方がないので放っておいて、私達でイーシャ様を洗って差し上げましょう」
「だねー。さ、イーシャ様。お背中とお腹はこの位にして、次はお腕とおみ足をきれいきれいしましょうねー」
続く
以上です。
なんかばたばたしちゃってごめんなさいでした。
209 :
名無しさん@ピンキー:2011/05/01(日) 18:25:13.49 ID:5zDW9vsD
これいつまで続くんだ
GJ!待ってました
>>209 SSが続く事になんか問題でもあんの?
久々に見たら投下キテルー
乙&GJ!
うわ、直リンスマソ・・・
215 :
名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 20:27:44.60 ID:22QRDFsw
あげ
216 :
名無しさん@ピンキー:2011/05/31(火) 23:10:12.66 ID:hshPN+qQ
すいません。
以前五姉妹の小説を書いていたものです。
データ紛失のショックも癒え、ようやく書き直し始めています。
なんですがここのスレ、まだ書いたら投下しても平気ですかね?
以前よりかなり時間が過ぎているので、そのへん平気かどうか悩んでいます。
無問題
忍法帖ぇ…
保守
220 :
名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 22:44:54.71 ID:RJzVMpik
エルフスレに投下しようかファンタジースレに投下しようか悩み中・・・・ちょっとだけ見ていただいて判断してもらってもよろしいでしょうかね?
「投下する」…そんな言葉は使う必要がねーんだ。
なぜなら、オレや、オレたちの仲間は(ry
『投下した』なら、使ってもいいッ!
『投下して』
ま、まだか!?
>>220が来なさそうなので、投下します。
魔法、モンスターいっぱいのファンタジーじゃないです。ごめんなさい。
中国メインでヨーロッパその他いろいろ混ぜた感じの仮想世界です。一応春秋戦国〜三国時代くらい、いろいろな国がいがみ合っている時代です。
タイトルは「キャッチアンドリリース」です。読まねーって方はそれでおねがいします。
あと微妙に長いです。そのため、規制とか詳しくないので投稿止まったら「引っかかったな」くらいの生暖かい目でお願いします。
「隊長」
「ん?」
幕舎の外から、中にいる青年に向かって声がかけられる。
行軍に持ち運べる寝台に寝そべって書を読んでいた青年は体を起こし、後ろで束ねた髪を揺らして大きく伸びをする。
作った笑みを浮かべた端整な顔が特徴的な青年の名前は、シド=サーディス。
いざとなれば千から万の兵を繰り、現在は若くして五百からなる遊撃隊の長を任される、大陸の西、青の国の将軍だった。
シドは、呼びかけに体を起こし、入口の布を押し上げる。
眼前に現れた体格の良い男が、青年を見るやいなや敬礼をして、言った。
「この度の食糧泥棒の犯人を連れてきましたッ!」
「……暑苦しいな、副長。もう日は沈んでるんだよ?」
「申し訳ありませんッ!」
全く反省すること無く、変わらない大声でまくしたてる副長と呼ばれた男を叱責することはなく、青年は続ける。
「……で、例の子は?」
「はッ! ……おいッ!」
「痛ッ! ……ちっ」
副長が、持っていた荒縄を引っ張る。すると、暗闇の中から胴の辺りで手ごと縛られた、ボロを纏った少女が現れた。
年の瀬は十代半ば、乱れた癖っ毛につり目が特徴的な、険があるものの愛らしいその少女は、不機嫌そうな顔でシドを下から睨めつける。
だが、どれだけ可愛らしかろうと、少女は見るからに下賎の身で、対するシドは国の、それも高位に位置する官である。
心の狭い者ならそれだけで手打ちにしてしまうだろう不敬な態度に、副長は舌を鳴らしたが、青年は笑みを崩さず体につながった縄を受け取った。
「……ご苦労さま。ん? ああ、暫くかかるかもしれないけど……ま、ちゃんと皆にも声かけなよ?」
「了解ですッ!」
再び敬礼をした後、副長が悠々と帰っていくのを見守った後、青年は少女を見下ろす。
少女は変わらずシドを睨み付けていたが、青年が醸し出す謎の雰囲気に、汗が一滴、こめかみを流れた。
――楽しめそうだな。と、青年が心の中で呟く。
その謎の雰囲気の内容は、少女は後で知ることとなる。
∞
「座りなよ」
青年は幕舎の灯りに油をさしてから、縄を垂らして立ち尽くす少女に腰を下ろすよう言う。
それでも少女は動かない。本能が、命令を受け入れる事を拒否していたから。
それでも青年は貼り付いた笑みを崩さず、自分は寝台に腰を下ろした。
「……」
「黙ってないでさ、何か話そうよ? 何で食糧を盗んだのか……とかさ?」
「……持ってる奴から盗って何が悪い」
顔をそむけ、しれっと言い放つ少女に、青年は目を円くする。
沈黙の後、声を殺して笑い出す青年に、少女が怒りを露に問いただす。
「何がおかしいんだよ」
「いや……良いなあ、君。僕はシド。君の名前は?」
「……アイ」
問いに答えず、意味不明な答を返すシドに、少女、アイの不満は高まる。
その後、何度か口の中で少女の名前(なお、この世界では一般民に名字は無い)を繰り返し、満足いったところでシドは再び少女を見る。
「そうだよね。大方戦争孤児ってとこだろうけど、当然奪うのは自由だ……食糧でも、親でも、命でも」
「……だから? どうだって言うんだ」
醸し出される不気味な雰囲気に、アイがたじろぐ。
そもそも、罪がばれてしまったなら殺されても仕方がないと考えていたところで、現地の最高責任者とのんびり話しているのだ。
初めての状況、しかし、感覚で異質だと理解していた。
すると、微かに笑った後、何を思ったのかシドは手招きをして、アイを呼び寄せる。
先程は断ったその勧誘、だが、これは――生きて帰れるかもしれない。そんな希望に、少女は青年の機嫌を損ねず、子供らしく、従順に行くことを選ぶ。
癖の強い黒髪(アイはあまり好きではなかった)を揺らし、少し間を空けて隣に座り込む――
「違う違う」
のを止められる。
何が、と思ってシドを見る少女。
その指先は青年自身の膝を指差している。
いぶかしむ事数秒、気付いてから考えること数秒、思いを決めるのにまた数秒。
それだけかかった後、アイは不機嫌な顔のまま、青年の膝に腰を下ろした。
年の差は、といえば両手の指の数程、加えて性別、食事の為か体格には著しく差があり、少女の頭はシドの喉元の辺りにあった。
アイが座ったのを体で感じた後、シドは少女の体に手を回す。
「良い匂いだね……帝都の雌なんか香水だらけで鼻が曲がりそうな臭い、近くにいると吐き気がするんだ」
――こっちはお前に対して吐き気がするよ。
アイが心の中で毒づく。
対するシドは、少女の髪の毛に鼻を埋めて、大きく吸い込む。
「汗と、泥と……何だろうなぁ、ふふふ……あ、川で念入りに洗ってもらった?
副長には君くらいの娘がいるそうだよ。喜んでたなあ、娘に会った気がしたって」
何のとりとめの無い話、その最中も膝の上でアイを抱き抱えたまま、細い指を露になっているうなじや二の腕に沿わせている。
――気持ち悪い。
アイのその感情は、触られていること自体もだが、指から感じられる気味の悪い雰囲気からのものだった。
ただ撫でているだけ。しかし、張り付いてくるような黒い思いを感じ取っていた。
「力だったり、知略だったり、何かしらで優っている。そう、そんなとき、人から奪うのは自由だ……」
突然指を止め、視線を中空に泳がせて、シドが言った。
返答を求めているのか、それともただの独り言なのか。
アイがそれらに迷っていた間に、青年が耳元で呟いた。
「僕は今、君から何を奪って良いと思う?」
表面的には変わらない。だが、明らかな害意を含んだ雰囲気に、アイの第六感が警鐘を鳴らす。
反射の領域で、体を跳ね上げ、拘束が緩んだところで逃走を図った。
後ろ手に縛られ、重心も定まらない中で、必死で体勢を整え、駆ける。
あと少しで逃げられる、そんなところまで来たところで、腹に衝撃が走り、アイは倒れ込んだ。
――いったい? 自分の胴部を見てアイは原因を理解する。
――そうだ、何でこれの事を忘れてた!?
幾重にも巻かれた荒縄はアイの動きを抑制し、その先はシドの手の中に。
一人になって以来、鋭い感覚で生きてきた少女がそんな分かりやすい戒めに気付かなかったのは、やはり言い様もない恐怖のためなのだろう。
「……いいね」
「来るな!」
アイの首もとを冷や汗が流れた。
縄を手繰り寄せながら近寄るシドは、たまらない、といった表情で唇を舐めた。
この場まで来て、ようやくアイは自分を生かしていた目論見を理解した。
「はッ……何かと思えば子供好きの変態ヤローかよッ!? 良いぜ、来てみろ、噛み殺してやる!」
「それは違うな。まあ、ヤることは変わらないけどね」
凄むアイも気にとめない。虚勢だと分かっているから。
少しずつアイとの間合いを詰めながら、シドは続ける。
「僕は強く生きてる子が好きなんだ。年下趣味って訳じゃない……」
「止めろ……来るな、来るな!」
アイは脅えの宿った眼を青年に向ける。
かつて、少女が一人で生きていく理由となった戦い。
そこで少女が、慰みものにされたあげくに殺された母を陰から見ていたことなど青年は知らないのだろう。
シドは更に続ける。
「この最高に理不尽な世界で、常に淘汰される側にも関わらず、一生懸命に、汚く、誇り高く」
シドがしゃがみこみ、アイの顎に優しく手を添え、自分の方を向かせる。
「そんなのを踏みにじるのが、堪らなく、好きなんだ」
青年が、嫌がる少女に構うこと無く、強引に顔を引き寄せ、唇を交わす。
さらに舌をねじ込もうとするシド、しかしアイは足を蹴り出し、突き放す。
だが、尻餅をつき、蹴られた腹をさすりながらも笑みを絶やさず、青年は握った手綱は離さない。
「抵抗は構わないよ……どうせ、逃がさないんだから」
「う、そ……来るなッやだ――」
今度は足の上に乗って、動きを制限した上でシドは口づけをする。
先程の様に舌をねじ込み、歯並びをなぞり上げる。
蹴りを封じられたアイは、首を左右に振って拒否するが、シドはしっかりと縄を持つ手で頭を支えて逃がさない。
口で繋がったまま、青年は空いている手を首元から差し込み、強く手前に引いた。
安価で、丈夫な麻の服も現役武官の力には敵わず、無惨に引きちぎれて、成長途中の胸が露になる。
「へーえ……」
「見るなぁッ!」
騒ぎ立てるアイをよそに、青年は桃色の頂点を指で弾いて嬉々として語る。
「可愛いおっぱいしてるじゃん、ねえ? 悲観すること無いよ」
「う、うるさ、あッ!?」
手のひらサイズのそれを、優しく包み込むように撫でる。
怒りか、羞恥か、顔を紅に染めたアイの表情を一欠片も残さず眺めるために視線は顔から外さない。
シドはさらに指を沿わせ、浅く浮いたあばら骨に触れた後、悲しい顔をして言った。
「けど、こんなに痩せちゃって……別の村にでも行けば良かったのに」
「勝手、にィ……言いやがって…ェ…!」
この時代、戦で両親を亡くした孤児など、ただの奴隷として扱われる。
親に守られない子供など体の良い道具でしかなく、余程の物好きでない限り人並みの食事などは与えられない。
それならば、アイの様に、山野に出でて盗人になる方が、人の誇りを保ったまま生きていけるのだ。
当然の事ながら、それを知った上でシドは言っている。
青年は(他の部位に比べてだが)肉のついた胸の輪郭を丁寧になぞり、慣れた手つきで触っていく。
「そうだね……もし生きることだけ望んで召し使いにまで身を堕としたらこうやって逢瀬を遂げることもなかったんだ」
「お前なんかとッ……会うためじゃぁッ!?」
突然、アイが大きな声をあげる。
視界の端では、シドが膨らんできた胸の突起に歯を立てていた。
赤子の様に、小さなそこを吸い上げる。わざわざ、音を大きく立てて。
「ひぃ……」
たまらず嗚咽が漏れる。
言い様の無い辱しめ、自分の痴態を見ないようにアイが眼を閉じる。
だが、眼を閉じても――当然の事だが――胸を走るおぞましい感触が消えるわけではない。
むしろ、視覚の代わりに他の感覚はより鋭敏になり、小さな胸を這う舌の温かさ、果ては微かに荒い呼吸まで感じ取っていた。
そんな光景に、青年は笑みを深めてそっと顔を撫でる。
「うーん、堪え難い。どこまで僕の好みに合わせてくれるんだい?」
「合わせてないッ!」
――冗談じゃない、悦んでるみたいじゃないか。
シドの発言に、アイは心で叫んだ。
そんなことなどつゆ知ら、。青年は自分の満足のためだけに少女で遊び続ける。
「こなれた女の体も良いけど……こういう張りの良いのも良いじゃないか。
去年は村一番の夫婦を引き剥がして犯したんだけど、それに優るとも劣らずだね」
誇って良いよ、と楽しげに誉めるシド。当然、アイは全く嬉しくないのだが。
相手が嫌がっているのを気にも留めず、青年は嬉々として思い出を語る。
「その時はね、三人がかりで夫の方を取り押さえて、目の前でやったんだ。
何て言ったと思う? ふふ、やるなら俺をやれ、だって。僕は男には興味無いから丁重に断ったんだけどね。
そいつには喧しいから口布を当てといたんだけど、最後にはそれを飲み込んで窒息死しちゃったんだ。
そしたら、女の方も、殺してくださいって、かすれた声でさぁ……愛を感じたね。僕は」
――狂ってる、こいつは。
アイは、今更ながら、先程まで大したこともなく帰れるかも、と思った自分を恨む。
たまたま、生きるために狙った相手が悪かった。そんな言葉じゃ片付かない程の偶然。
今まで何度も言い訳に使ってきた仕方がない、という言葉も役には立たない。
何も、ここまで人を虐めて楽しいのか、と、アイは世界に問いかける。
「あー……駄目だな、僕は。ごめんよ、他の女の話なんかしちゃって……今は君だよ、君」
ぺち、と自分の頭を叩いて謝るシド。本当に申し訳ない、という顔をしてアイの体から降りる。
今すぐこの場から逃げてしまいたい、と思っても、アイは動けない。
逃げたらもっと酷いことになるかもしれない、という考えが頭の中枢に染み込んでいた。
シドがボロから儚く伸びた足を掴んで大きく左右に開くと、僅かに生えた陰毛と、その下の幼い花弁が現れる。
「食べ物が足りてないのかな? 君くらいの年ならもっと……いや、これはこれで良いか」
「あ……うあ……」
開かれた口から洩れるのは、言葉ではなく、ただのうめき声。
シドは片手を離し、自分の衣をたくしあげると、見事に怒張した男根が現れる。
「大きさには自信があるんだ。まぁ、ここには……ちょっと辛いかもしれないけどね」
息子の先端、赤黒いそこを丁寧にアイの未熟な、女性器に添える。
「何か言っておきたいことはあるかい?」
「……わ、わかった……もうやらない、もうやらないから……ごめ、ん、なさい」
「馬鹿だなぁ」
涙を堪えて、震えた声で懇願する。
青年が、繊細な指でアイの髪の毛を梳く。
「食糧を盗んだ、盗まない……そんなことはどうでもいいんだよ」
遅すぎる謝罪に静かに笑った後、シドは思いっきり腰を突き出した。
アイが感じたのは、まず熱さ。次に、何かが弾けた様な衝撃の後、激痛が脳を襲った。
「う、あ、あッ!? ……抜い、抜いて、抜いてえッ!」
「きっつぅ……間違いなく今までで一番キツイなぁ……あー、ヤバい。最高だ、これ」
シドは、天井の灯りを見上げながらよだれを一筋垂らした。
あらぬ方向を見据えたまま腰の動きは止まらず、破瓜の血を潤滑油に、更に速めていく。
対するアイは、見開かれた目から涙を溢れさせ、声にならない叫びをあげる。
すると、青年は首を伸ばしてその涙を舐めとる。
「もっと、もっと鳴けよ。その可愛い声で、全力で。痛い? 痛いの? 僕には分からないからなぁ……ねぇ!?」
「ひ、いッ……あッ!? 〜〜!? ッ!」
鳴け、と言われて唇を噛み締めたのは、アイのせめてもの抵抗か。
めちゃくちゃにされる中、いつまで、あともう少し、といった言葉にすがり、痛みに耐え抜く。
だが、そのような仕種まで目の前の鬼畜にとっては餌でしかなかった。
シドは眼を開き、乱暴になり始めた口調で、怒鳴るようにアイを誉めちぎる。
「良い、良いよお前! 最高に良い! 堪えろよ!? 堪えろよ!? ほらッ!」
「ッ! くッ……ふ、ッ! は、あぁぁ……ッ!」
その後も、上位者による、ただの蹂躙が続いた。
それでも、アイは声をあげず、噛み締めた唇からは血が流れ出し、絶え絶えな息を吐き続けた。
そして、その地獄のような責めが終わりを告げる。
「くぅッ……出る……ッ!」
「ッ! ふぁ……あ」
腹の中を生暖かい液体が広がるのと、一物から力が抜けるのを体感して、アイは倒れ込む。
唇から流れる血をからがら舐めとり、渇ききった喉が少しだけ潤った。
対するシドが、至福の時を終えてアイの頭を優しく撫でた。
だが、少女はその手を残った体力で叩き落とした。
呆気にとられて手を空中に止めたままのシドを、ありったけの恨みを込めて睨み付ける。
「……殺してやる」
「……わぁお」
「嘘じゃない!」
上半身をシドに向けて、泣き腫らした目で訴える。
「殺してやるぞッ! ……絶対、ぜったい!」
「良いね」
「馬鹿に、しやがって……殺す! 殺す! 絶対、殺す!」
「まあまあ。立て……ないね。ほら」
向けられる本気の殺意に気後れすること無く、腰の抜けたアイに肩を貸して歩き出すシド。
「覚えてろ……絶対、絶対……」
「勿論。君みたいな可愛い子なんかそうそう忘れないさ」
「馬鹿にッ……!?」
ゆっくりとだが入口に辿り着き、シドが大きく布を翻して、アイは恨み言を止める。
視界に入ったのは、暗闇の中に浮かぶ焚き火。その周りの、人、人、人。
支えられている左の肩の先、アイは既に変わらない笑顔の仮面をつけたその顔を見る。
やがて、一人の男――自分をここまで連れてきたあの男――が歩み寄ってくる。
悪夢の始まりの時と同様に、びしっ、と敬礼を決め、はきはきと言った。
「もう良いのですか?」
「ああ、副長。随分楽しんだよ。待たせて悪かったね」
ブツン、という音と共に拘束が外れ、今度は副長の体に支えられる。
次に、焚き火の周りでたむろしていた男が二人、下卑た笑みを浮かべながら近付いてきた。
ここまで来て、少女は理解する。
最後の力を振り絞って、振り向いたその先で。
青年は手を振って笑っていた。
「やだ……! やめろよ! おい! ――!?」
すぐに連れ去られ、地面に倒された後、残っていた衣服を剥ぎ取られ、その体に男達が群がった。
無惨な光景、それを見て副長がため息一つついて、青年に言った。
「よろしいのですか? 随分お気に入りの様でしたが」
「ん……あぁ、そうだね。おい!」
響き渡る青年の声に、青年より大きく、強そうな男達が動きを止める。
その下で、最後の希望にすがった少女が青年を見上げた。
静寂――そして、青年が言った。
「壊すなよ。二回目が楽しめそうなんだ」
その意味を理解し、文字通り希望が絶えた、絶望を浮かべて少女が男達に隠れ、悲痛な声だけが響いた。
「隊長」
「ん?」
「無礼を承知で申し上げますが……いつか、本当に後ろから刺されますよ」
厳しい顔でそう言った副長に、シドは苦笑いを浮かべて応える。
「僕もそう思う」
そう言って、シドは自分の幕舎へと戻る。
久しぶりに大分体を動かしたな、と一人ごち、寝台に体を横たえる。
外から聴こえる心地好い声の中、青年は眠りについた。
翌朝、同じ場所にシドの陣は無く、焚き火の後の黒い煤が残る傍の大きな木の根本に少女はいた。
白濁にまみれた体の隣には、食べ物と水が入った袋と短刀が一振り。
手を伸ばして水を一口飲んで――咳と一緒に吐き出した。
前日、腐るほど出された精液は喉の奥にも絡み付いていたから。
続いて少女は短刀を手にし、鞘から抜く。
磨かれたそれの表面に、疲れきった自分の表情が映り、涙を一筋流す。
そのまま手首に刃を当てる。当てたところからは血が緩やかに流れ出し、腕を伝って地に落ちた。
そこで少女は、何の理由もなく、手首の薄い傷に口を寄せ、舐め上げる。
その瞬間、頭の中に青年の憎い笑顔が蘇った。
押し倒され、犯され、唇を噛んで耐えたその時の記憶。
――こんなところで何してるんだ。
少女はそう自分に言い聞かせ、食物の入った袋に近付いてきた鼠を短刀で突き刺す。
胴を貫かれ、少しもがいた鼠だったが、それはすぐに動きを止めた。
「殺して……やる」
少女は袋と短刀を手に立ち上がった。
つづく(かもしれない)
おしまいです。駄文に付き合わせて申し訳ありませんでした。心よりお詫び申し上げます。
設定資料及び解説?
幕舎……モンゴルのゲルみたいなやつだと思ってください。
服装について……基本的に下着をつける事は無く、裾の長いTシャツみたいなのです。膝丈くらいまでの。
一般人も変わりませんが、やはり生地は官吏、軍人より数段劣るようです。
軍人については、仕事中は鎧に剣を佩いて槍が基本武器。何も無い時は基本的にはずしてます。
世界観について……菱形の大陸想像してください。そしたら、中に×を書いて感じが大陸の国家図です。
北に赤の国、東に白の国、西に青の国、南に黒の国となっています。シドのいる青の国は、生産力は中くらい、国境に山岳が多く、言っちゃえば野蛮な感じの国です。兵は強い感じ。
とりあえず、こんな感じです。他はまだ描くようなことがあればそのたびにやっていこうかと思ってます。必要無いですね、すみません。許してください。
堪能したわ。
シドさんってサドさんの間違いじゃないの?w
これはいい変態だ!
>>234こんなひどい話書くなんてあんた鬼か!? ちくしょうGJ!
>>234こんなひどい話書くなんてあんた鬼か!? ちくしょうGJ!
おい待てw
どんな自己批判だw
とまあ自分でやったところで、すみません。調子乗りました。
サド→シドではなく、名字の方をサディストからとってます。サディスト→ディストで。安易ですみません。
シドは……この話某国民的ゲーム『最後のファンタジー』やってるときに思いついたので。
それではこのスレがまた賑わうことを期待して……
>>234、G(自粛
ガンガン調子に乗っていいから続きもガンガン書けw
久々に良いの見た
陵辱注意の一言が欲しかった…
>>242 それもそうでしたね……申し訳ありませんでした
ただ、ほとんどらぶらぶな風には続きません。あしからず。
輪姦が見たかったが……GJだ! 読みやすい
>>243 らぶらぶにしろなんて言わない
注意書きさえしてくれればいい
お尻
ホシュ
248 :
243:2011/07/14(木) 21:23:29.28 ID:18EP3f54
plala規制解除されたので投下します。
えー、輪姦凌辱注意、NGの場合キャッチアンドリリース1.5でお願いします。
本編の幕間、小話的な感じで、アイによる一人称となっております。
「……何だよ、こんな居んのかよ。回数、少なくなっちまうな」
「皆子供好きなんだ」
「第一部隊長、それ意味違う」
服の残骸を手にしたまま、下品に笑う数人の屈強な男達。
周りはしっかりと固められ、対する私は文字通り「裸一貫」。
おまけに少し前の壮絶な処女喪失劇のおかげでお腹の奥が酷く痛む。
「さて、名前なんだっけ?」
「えーっと……」
「アイだ」
「おぉ、流石副長」
少し人の壁が空いたそこから、常にしかめっ面な知った顔の野郎が出てくる。
盗みをやって、あいつ――確かシドとか言った――の前に通される前に、川で丹念に私の体を洗った奴。
奥から出てきたそいつは、近場の石に腰かけて、懐から取り出した煙草に火をつけて一服。 部隊長と呼ばれた男が下卑た笑みを浮かべながら副長に近寄る。
「副長もお楽しみですか?」
「馬鹿言え……俺は妻一筋だ。お目付け役だよ」
その時、森までの道が僅かに一筋開け、それを見た私は反射的に最後の賭けに出た。
視線がそれたその一瞬、私はその一条の光に向かって走り出す。
「おい、逃げたぞ」
「あ」
だけど、私の最後の賭けは失敗に終わった。
脇から長い手が伸びてきて首にかかり、叫ぶ間もなく地面に押し倒される。
「……あの人にヤられた割には元気なのな」
「へー、逆に可哀想だ。隊長に気に入られたら骨までしゃぶられるぞ」
「のたくってないで、とっととヤれ。後がつかえてる」
「へいへい」
男が軽い返事を返す。
死んじまえ、全員。
強い力で腰を掴まれ、嫌な感触を感じた後、すぐにそれは来た。
「痛ぅぅッ!?」
体の中心を通って、硬い棒を頭まで貫かれる感覚が私の体を襲い、思わず声をあげてしまう。
いつだって、踏みにじられる側だ。私“たち”は。
脳裏に、こいつらみたいな下種にいいようにされた母の姿が浮かぶ。
私が、私たちが何をしたって言うんだろう。
「後ろ、いけるか?」
「無理だろ、小さすぎる」
「口いけ」
「そうするか」
痛みと情けなさに涙をこらえる私の眼前に、気味の悪い形をしたそれを突きつける男。
何をやれ、と言っているかはわかってる。断ったら酷いことになるのもわかってる。
それでも私は、歯を噛み締めて、首を振った。耐えられなかった。
「……ふぅ」
「まぁ仕方ないだろ。盗みで食ってる奴とはいえ、まだガキなんだから」
前にいた男がしゃがみ、四つん這いの私と目を合わせてくる。
絶対やらない、という思いを込めて思いっきり睨んでやる。
瞬間、頬に感じる衝撃と痛み。多分、今の私の表情は、呆然ってやつだろう。
頬を張られたことを頭で理解したすぐ後に、髪を掴んで上を向かされる。
「拒否権はねーんだよ。てめーがパクった飯の代金とでも思え」
焚き火の灯りに照らされて、浮かび上がるのは、悪魔の様なその顔。
心が痛むなんてことはないんだろう。むしろ人とすら思ってないかもしれない。
そんな思考が頭をよぎり、不意に目頭に熱いものがこみあげてきて、はじけた。
「ひ……ひくっ、うえ……ぐす……ひっく」
「……あーあ、泣いちゃった。言い方考えなよ」
「良いんだよ、強めに言ってやった方が。隊長よりマシだろ、強制って形なんだから。ほら、口開けろ」
「隊長は『やれ』とかは言わないからな……惨めだよ、やられてる側は。
それに比べれば確かに強制した方が『仕方ない』って逃げ道があるっちゃーある」
いくら身を堕としてても、痛みは、怖い。
こいつが言った通り、私を慰めるのは、『仕方ない』という一つの言葉。
これ以上反抗したらもっとやられる。だから『仕方ない』。
ここで口を開けば少しは早く終わるかもしれない。だから『仕方ない』。
ここで生き延びれば、いつか一矢報いる時が来るかもしれない。だから『仕方ない』。
頭の中では自分の反抗心を押さえつける理由を際限無く作り出す。
理由があれば、何だってできるから。
漸く自分を納得させた私は、小さく口を開く。
唇を割って入ってきたそれに舌を這わせ、息苦しさを我慢して、吐きそうになる臭いを無視する。
犬みたいな体勢で犯されて、娼婦みたいに男のものに口を寄せる。
理由が……見当たらない。考えなきゃ。すぐに、今すぐ。
思考が頭を駆け巡る中で、体の中から異物が抜かれる感触と、生暖かい何かが背中にかかった後に、また異物が侵入ってくる感触。
口に入っているものが膨らみ、喉に何かを出してから抜かれた。
気持ち悪くても、それは喉に絡まって吐くことも出来ず、ただただむせる。
やっと新鮮な空気を吸えたら、また口の中に別の奴のものが突っ込まれる。
延々と続く、いっそ笑える馬鹿みたいな悲劇。
何で、ここまでされなきゃいけないの?
それに対する答えは――見当たらなかった。
おわり
おわりです。お目汚し済みませんでした。
plala全体規制のせいで2.5まで出来上がっておりますが……気が向いたら投稿します。
幕間に関して世界観説明は無いので、ここで失礼させていただきます。
エロ描写がもっと欲しかった気もするなー
女の一人称視点で気持ちの方に焦点当ててるからじゃない?
こっちのが話として面白いから俺は好き
毎度忘れた頃にごめんなさい。
「神か悪魔の贈り物」第一章第十二話を投下させていただきます。
相変わらずずっと百合のターンです。
あと、あまりにも飛び飛びの投下なので、忘れてるor知らないって人多いと思うので、
今回簡単な登場人物紹介などを添えてみました。
遅筆でどうもすみません。
不快な人はタイトルがトリップでNG指定してくださいね。
イーシャ・ゴウト・シトリン:
十四歳。トゥアール王国正騎士団上級騎士にして王都守護隊副隊長兼一級刻印鑑定官。
別名「王都の鬼娘」。凛々しい美少女っぷりが女性に人気。
真面目な娘だったが、色々あってドュリエス様の百合時空に引きずり込まれた。
ドュリエス・テアティ・ユオリノ・リーヴァー・ドゥカーノ:
十六歳。ドゥカーノ公爵令嬢。公女殿下。国王の姪。百合ハーレムの女主人。
ナオミ・イニヤ:
十八歳。ドュリエス様の侍女。青味がかった灰色の髪を普段は結い上げている。嗜虐趣味気味。
アクアルーイー・チャイ・ルオ:
通称アキ。十五歳。ドュリエス様の侍女。明るい茶色のおさげ髪。ノリが良い。
シーリオ・トアウェー:
十四歳。ドュリエス様の侍女。肩までの銀髪。パッと見は気弱そうな美少女。その実、味と香りを嗜む変態さん。
クロエ・ノイル:
十一歳。もうすぐ十二歳。ドュリエス様の侍女。長い黒髪の、真面目なツッコミ役。でも時々暴走しちゃう。
シーリオさんとアキさんは立ち上がり、自分の体に付いた石鹸の泡を手で掬い取ると、
それをお股のお毛々に盛ってわしゃわしゃと泡立てます。
そしてアキさんはイーシャさんの右手の指に、シーリオさんは左手の指に自分の指を絡めてしっかり握ると、
二人ともそのままひょいっと腕をまたぎました。
ちょうど二人の後ろから、イーシャさんがお股に腕を通した格好です。
「えっ? えっ?」
戸惑うイーシャさんをよそに、二人は彼女の腕に自分のお股を押し付け、泡立てた石鹸を塗り広げます。
もちろん、塗り広げられるのは石鹸だけではありません。
石鹸とは異質なぬめりを帯びた生温かい液体が、侍女さん達の柔らかな媚肉によって、
しなやかな少女騎士の腕になすりつけられて行きます。
敏感な箇所を直接どうこうされている訳でもないのに、イーシャさんはこの愛撫に妙な興奮を覚えてしまうのでした。
「ああ……ぬ、ぬるぬる、します……ふあぁ……お、お尻、柔らかい……」
「にゅふふふ、ほーら、わかりますかぁ? んっ、引き締まったイーシャ様のお腕を感じて、
あんっ、あたしのここ、こんなに硬く、んうっ、勃起しちゃってますよぉ」
小刻みに腰を振りながら、いきり立ったおさねで腕をなぞる様にゆっくりと移動するアキさん。
対してシーリオさんは、二の腕から手首までの間を一気に進み、また二の腕まで戻るという動きを繰り返しています。
「私のだって、ふうぅ、興奮してぷっくり膨らんでますでしょう? どうですかぁ?
アキさんのと比べて、あぁん、どっちのおまんこたわしが気持ち良いですかぁ?」
「ふあっ、ふやぁ……」
「あたしの方ですよねー。あたしのお毛々の方が、シーリオよりさらさらで肌触り良いでしょう?」
「えー。私の方が、アキさんよりフサフサしてて、泡立ち良いですもん。ねー、イーシャ様ー?」
「ふにゃぁ……にゃあぁ……」
競い合い、さらに艶めかしさを増していく二匹のナメクジの動きに翻弄されて、
イーシャさんはまるで両腕までもが性器になってしまったかのように高ぶらされていきます。
「ほら、あたしのまんこたわし、んふっ、イーシャ様のお腕を感じて、どんどん滑りが良くなっていってますでしょう?
んっ、あっ、んうぅ……ど、どうですかぁ? あんっ、素敵でしょう?」
「私のだって、はぁ、はぁ……こ、こんなになっちゃってますよぉ……そ、それに、もう、イキそうです……っ!
イク寸前の、ぷっくり雌ちんぽの感触は、た、堪らないでしょう? ふああ……っ!」
自分が堪らないって声を出しながら、シーリオさんはどんどん腰の動きを早めていきます。
「あっ、あっ、あっ、もっ、もうっ、いっ、イキますっ! もうイっちゃうっ! もうイクですぅっ!」
「あっ、あたしだってっ! もうイクもんっ!」
アキさんも対抗するように、さらに激しく腰を使います。
「んっ、んっ、どっどうですかっ!? イーシャ様ぁっ!?」
「ふああ……っ! か、感じますぅ……二人の、がぁ……私の、腕でぇ……っ!」
「わっ、私っ、もっ、もうっ、本当にっ……ああっ、イっ、イクぅぅぅ……っ!」
「あっ、あたしもっ、イっ、イっちゃうぅ……ああっあああああっ!!」
アキさんとシーリオさんは、お大事をイーシャさんの腕にさらに強く押し付けると、
体をぐぐっと硬直させ、ほぼ同時に達してしまいました。
「うあ……ああ……あうぅ……」
二人の侍女さんの絶頂のわななきをその腕で直に感じたイーシャさんもまた、
高みに押し上げられ喘ぎ声を出してしまいましたが、それは多分に精神的なものでしたので、
満たされないままの肉体は、引き続きもどかしさに苛まれるのでした。
しかし余韻にひたる二人は、腰に押し付けたまま、まだ腕をしっかり掴んで離そうとはしてくれず、
イーシャさんは自ら慰めることもできません。
「ふー……うー……ああ……」
「はぁ、はぁ……ふふふ、イーシャ様、あたしの方が良かったでしょう?」
「いえいえ、私の方ですよね?」
二人とも、達したばかりのお大事を淫靡にひくつかせながらも、お互いに譲りません。
「あたしですよね?」
「いや私ですよね?」
「あたしだよぉっ!」
「私ですってばっ!」
「――ううん、ボク、だよね?」
「「……えっ?」」
割り込んできた声に驚いた二人が目を遣ると、イーシャさんの大きく開いたおみ足の右太ももに
イーシャさんと向かい合う格好で跨がったクロエさんが、腰を悩ましく擦りつけていました。
クロエさんのそこのお毛々は年相応と言うか、まだまだ生え揃っておらず、
泡立ちは他の二人に比べて少ないですが、その分、幼く柔らかい部分が
イーシャさんの肌にぴったりと吸い付きます。
「はぁ、はぁ……どう、イーシャ様? 二人よりボクの方が
お股の感触がいっぱい伝わって、興奮するでしょう?」
言いながら、拍子を取るように腰をぐっぐっと押し付け、
時折押し付けたままぐりぐりと回転させるクロエさん。
その度に、石鹸とは違う粘性の液がにちゃにちゃと泡立ちます。
さらに左の太ももにも手を伸ばし、五本の指を立てると、ゆっくりと焦らすように這わせます。
「ああ……く、クロエぇ……ここもぉ……ここもいじってくださいぃ……」
「『ここ』じゃ、わからないよ。どこ?」
堪らずにおねだりしてしまうイーシャさんに、クロエさんは意地悪く聞き返します。
しかしそう言われても、侍女さん二人に両手を掴まれているので指で指し示すことも出来ず、
かと言ってその部分の名前を口に出すのは、先程のような追い詰められた状態ならともかく、
今のイーシャさんにはまだ抵抗があります。
仕方なく腰を突き出して愛撫を催促しようとしますが、
足の上に乗られている状態では満足に動かすことも出来ません。
むしろ太ももがクロエさんのお大事と擦れて、ぬるぬると感じて、もどかしさが増すばかりです。
「ふぅっ、ふあぁ……っ! んもうイーシャ様、そんなにされたら、ボク、もう、イっちゃうよぉ……」
「ううぅ……クロエぇ……私もぉ……私もぉ……っ! お願い、ここ、して……っ!」
「んふっ、だからぁ、『ここ』って、どこ? ちゃんと言ってくれないと、わからないよ?」
「……っ! 馬鹿ぁっ! やっぱり、クロエは嘘つきですっ! すごい責め方、しないって、言ったのにぃ……」
「そんな事、無いよ。ちゃんと言ってくれれば、そこを優しく優しく、責めてあげるよ」
「やっ、やあぁ……っ!」
「言えない? ううん、言えるよね? だってはしたないイーシャ様は、
さっきあんなに激しく下品な言葉を叫びながら、必死におねだりしてたじゃない」
「ううー、そんなあ……お願い、クロエぇ……堪らないのぉ……っ!」
「ふふ、まったく仕方ない騎士様だね」
クロエさんは少し前屈みになると、
「もしかして、『ここ』って、ここ?」
おっぱいの先っぽをれろんと舐め上げました。
「はひっ!?」
「あはっ、良い声♪ やっぱりここだったんだね」
クロエさんはそう言うと、ぷっくりと膨らんだ桃色を咥え込み、
じゅるるるる……と音を立てて吸い付きながら、唇と舌で激しくしごきました。
「あーっ! あーっ! ひょこぉっ! ひょこっ、ひがうぅっ! ひょこひがうのぉっ!
ひがうへどっ! れもっ、きっ、きもひいいよぉっ! んおぉ……っ!」
しかし黒髪侍女さんは、乙女騎士さんの突起と悲鳴を一通り味わうと、
お胸と舌の間に糸を引きつつ、お口を離してしまいました。
「ん〜、間違ったかな?」
「ああっ! ひがうっ、けどっ! ひがわないのっ! だから止めないれぇ……っ!」
「本当? ボクはてっきり……」
クロエさんは左足を撫で回していた右手をイーシャさんの足の奥にすっと伸ばすと、
小さな勃起から割れ目までをこしこしこしこし……と擦りました。
「ふほおぉっ! ほおぉぉっっ!!」
が、
「……ここかと思ったけど、違うの? やっぱりお胸だったのかな?」
と言って直ぐに止めてしまいます。
「ああっ! しょっ、しょこぉっ! しょこでいいのぉっ! しょこもっろくちゅくちゅしれぇっ!」
「もー、イーシャ様。何か説明する時、『そこ』とか『ここ』とか、指示代名詞を多用するのは、良くないよ?
ちゃんとボクにも分かるように言わないと」
「う〜っ! う〜っ! くっ、クロエの、意地悪ぅっ!」
「さ、早く。それとも、このままずっと焦らされていたいの?」
「やぁっ! やらぁっ! お願い、弄って! わ、わらひの、お、お……ぉま……ん……ぉ……」
「なあに? 聞こえなーい」
「おまんこーっ! おまんこよぉっ! わらひのおまんこーっ! きもひよくひてぇーっ!」
それを聞いたクロエさん、目を細めてにぃっと笑います。
「良く言えました。じゃあ……」
そして、再び自分の腰をイーシャさんの太ももに擦り付け始めました。
「誰のおまんこたわしが一番気持ち良いか、答えてくれたらしてあげる。もちろん、ボクだよね?」
「そ、んなぁ……っ! 言ったのにぃっ! してぇっ! してよぉっ!」
一方、クロエさんにすっかり立場を奪われてしまったアキさんとシーリオさん。
虐める側に回った幼侍女さんの可愛らしい嗜虐っぷりを感心するようにほけっと眺めていましたが、
流石にその台詞は聞き捨てなりませんでした。
「ふぅっ、ふおえぇ……っ! ふおえーっ!」
「ちょっとぉ、クロエちゃん、それはちょっとずるいんじゃなーい?」
アキさんは手を伸ばして、答えようとしたイーシャさんのお口に人差し指と中指を突っ込み、答えを遮ります。
「そうだよぉ。そんな聞き方したら、クロエちゃんを選ぶに決まってるよぉ」
シーリオさんも、腰の動きを再開しながら抗議します。
「って言うか、あたしがさっき同じ事したら殴られたんですけどぉ?」
アキさんのその不満はもっともですね。
クロエさんはそんな二人をさらっと無視して、イーシャさんの太ももやその付け根、お毛々の縁などを
巧みな指遣いで苛みながら、先程と同じ事をもう一度尋ねます。
「ね、誰のおまんこたわしが一番気持ち良い?」
「ふっ、ふおえーっ! ふおえおぉっ! ふおえおおあんおああひあっ、いひはんひもひいいーっ!」
「それじゃあ分からないよ。ちゃんと答えて」
口を塞がれたままで上手く喋れないと知っているのにそんな事を言うクロエさん。
くつくつと笑うと、
「イーシャ様、答えてくれるまで、ずっとこのままだよ?」
「んふおーっ! んうっ、ううっ、ううー……おう、ううひえぇ……」
イーシャさんは涙とよだれを垂れ流しながら、クロエさんに懇願の眼差しを送ります。
そんなイーシャさんを見て、アキさんはお口を犯している指で舌を摘み、丁寧に扱き始めました。
「えぇ……!? あえぇ……ええええ……っ!」
「クロエちゃんってば、ずるいよねぇ。ねえ、イーシャ様?
どうです? こうして舌を指こきされるのも、気持ち良いでしょう?
舌、痺れちゃいますでしょう? 腰に、響いちゃいますでしょう?」
「あえっ! えっ、あえぇぇ……っ!」
「あたしが本気で擦ったら、舌だけでお潮噴いちゃえますよ? して欲しいですか?」
かくかくと首を縦に振るイーシャさん。
アキさんは、嬉しそうに笑みを浮かべました。
「じゃあ、誰のおまんこたわしが一番良いか、教えて下さぁい。もちろん、あ、た、し、ですよね?」
「もー、アキさんまでぇ。こうなったら私だって」
シーリオさんはイーシャさんの手を一度離し、人差し指を立てるように握り直すと、
「んぅ……っ!」
ゆっくりと自分の中に導きました。
「えぁ……えーえおぉ……」
そして、ざらざらした媚肉の壁をひくひくひくひく……とまるで痙攣しているかのように卑猥に震わせ、
かと思えば飲み込むように艶めかしく蠕動させます。
「えへっ……わ、私の中、イーシャ様に、犯されちゃいましたぁ♪
イーシャ様の指ちんぽ、あんっ、す、素敵、ですぅ……しなやかで、長くて、奥まで届きそう……っ!
ここで一本一本、ふうっ、こうやってきれいきれいして差し上げますからねー……きゃふぅっ!
んっ、んっ、んーっ! んふぅっ!」
きゅうぅぅぅ……ときつく締め上げると、握った指を上下に動かして、シーリオさんは甘い声を上げます。
「ふうっ、ど、どうですかぁ? おまんこたわしも、おまんこの中も、んっ、私が、一番でしょぉ?」
「あえーっ! ええぇーっ!」
「はあっ、はあっ……ん……っ」
名残惜しげに糸を引きながら、ちゅぽんっと人差し指が抜かれると、間髪入れずに中指が飲み込まれます。
「あえぇぇ……」
「やあん……流石、真ん中の指ちんぽ……こんなに深く入ってますぅ……っ!」
一気に根元まで咥え込まれたイーシャさん。
無意識にその指に力が入り、シーリオさんの膣内をかりかりと引っ掻いてしまいました。
「おひぃっ!? いっ、イーシャ様ぁっ! それぇ! それすごいぃっ!」
指の動きに応える様に、シーリオさんは仰け反りながら腰をふりふりと揺すり、
さらに激しくイーシャさんの指を抽迭させます。
「えっえあっ、えあえぇーっ!」
「ふああっ! 私、イっちゃいそうですぅっ! イーシャ様ぁっ! 一緒に、一緒にぃっ!
イーシャ様の、私の中にいっぱい出してぇっ!!」
出ません。
「ふぅっうぅぅぅぅ……っ!!」
シーリオさんは、再び中指を根元まで押し込むと、眉根を寄せ、俯いて、上擦った声と共に大きく息を吐きました。
膣壁が一度握り締めるように強く引き絞られますが、
直ぐに力が抜け、とろっとしたお汁が流れ出し、二人の足や腕を伝います。
もちろんその間も、クロエさんとアキさんによる、お股を押し付けながらの焦らし責め、舌責めは続けられています。
「ほら、答えてくれないと、いつまでたってもこのままだよ? 素直になろう。ボクのが一番なんでしょう?」
「えあっ、えっ、えあぁぁ……」
「うふふ。舌、大分ぷっくりしてきましたねー。あたしの指、そんなに良いですかぁ?
ううん、それだけじゃなくて、やっぱりあたしの素股洗いに感じちゃってるからですよね?
あたし、一番ですよね?」
「えぇえあぁぁ……あえっえぇぇぇぇ……」
と、そこでアキさんは口の中の指を止めてしまいました。
「ねえイーシャ様、あたしの指をあたしのおさねだと思って愛してみません?
そしたら、イーシャ様のおさねも、あとで同じ様にれろれろして差し上げますよぉ」
それを聞いたイーシャさんは、狂ったように舌を蠢かせ始めました。
「はぶっ、はふっ、ちゅば……」
「おぉっ!? すごーいイーシャ様、お上手ぅ! そっかぁ、イーシャ様、こういう風にされるのが好きなんですねー。
じゃあ、次はあたしがそっくり同じ様に、イーシャ様のおさねをたーっぷりちゅばちゅばしちゃいますからね」
「えぇっ、あえぇ……っ!」
その言葉を聞き、期待に胸と腰を震わせるイーシャさん。
アキさんはそんな彼女に優しげな眼差しを送り、微笑みます。
「うふふ、覚悟してくださいね。嬉し涙、上からも下からも垂れ流させちゃいますよー……後で、ですけれど」
「えあぁーっ! えあいえっ! えあいえぇっ!」
「『今して』? ダメだよイーシャ様。ボクのが一番って認めてくれなきゃ、ここをアキに譲ったりしないよ。
ボクが一番だって認めたら、どいてあげる」
「でもあたしが一番って言ってくれなきゃ、ぺろぺろして上げませんよー」
「おえぁーっ!? えあぁーーっ!!」
どうしろって言うんですかね?
いつもなら暴走を止める役のクロエさんが暴走する側になってしまっているので収拾がつきません。
「もう。私が一番だって、人差し指と中指にお教えしましたのに、まだわかりませんか?」
さらに、シーリオさんが絶頂から回復して再参戦です。
「じゃあ、他のお指にも教えて差し上げます」
そして薬指を飲み込むと、きゅっ、きゅっ、ぎゅうーっ、きゅっ、きゅっ、ぎゅうーっ……と、
緩急を付けて揉みしだくように締め付けます。
「ぇぇ……ぇぇ……」
にゅぷっと薬指を抜くと、続いて小指です。
「んっ……どうです? 小指一本でも、しっかり掴んで離しませんよ。やっぱり、んっ、私のが、一番でしょう?」
「ぇぁ……」
「あれぇ? ボクを選ばなくて、良いの?」
「あたしじゃないと、ぺろぺろくにくにして上げませんよー?」
「んにゃああーっ!?」
浴室に、一際甲高い嬌声が響き渡りました。
しかしそれは、イーシャさんのものではありません。
「ふあぁっ! ゆっ、指っ! 指ぃっ!」
シーリオさんです。
焦らされ続けてついにキレたイーシャさんは、シーリオさんのお大事から小指を引き抜くと、
人差し指と中指を揃えて一気に挿し入れたのです。
「ああっ!? にゃあーっ! なっ、なんでぇっ!? イーシャ様、なんでっ、
こんなにっ、指っ、お上手っ、にっ、ふにゃああああっ!!」
のけ反り、かくんっと力が抜けたシーリオさんは、跪づく様に座り込んでしまいました。
恐るべきは『王都の鬼娘』の学習能力。
壷洗いを施された際、シーリオさんの気持ち良い場所、感じる指の運び方を覚えてしまったのです。
シーリオさんからずるりと抜け自由になった左手で、今度はアキさんの腰の裏に、極々軽い掌底を打ち込みます。
「はへっ!?」
ほとんど力は入っていない様に見えましたし、アキさんは痛みも感じませんでしたが、
なぜか腰砕けになってしまい、シーリオさんと同じ様に床に膝を着いて、そのまま突っ伏してしまいました。
「あ、あれ……? 動か、な……あれ!? なに、これ……!? あ、あの、い、イーシャ様……!?
あ、あたし、から、だ、に、ち、ちか、ら、入んな、い、ん、です、け、ど……!?」
戸惑うアキさんを無視して、イーシャさんは解放された両腕でクロエさんを抱き寄せると、そのまま押し倒しました。
「うわっ!? ご、ごめん、イーシャ様……やっぱり、怒っむううーっ!?」
おずおずと聞くクロエさんでしたが、イーシャさんはそのお口にむしゃぶりついて言葉を遮ります。
そして痺れるほどに焦らされた舌を、クロエさんのそれに激しく擦り付けます。
さらにクロエさんの太ももにお大事を押し付け、犯すように腰を振りました。
「ううぅーっ! んうぅーっ! うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………っっ!!」
上も下も、ずっと焦らされていたイーシャさんですから、それであっという間に達してしまいました。
ぷしゃあっとお潮を噴いてクロエさんに匂い付けすると、荒い息を吐きながら
抱きしめる腕にもう一度きゅっと力を込めます。
「んー……んんぅー……」
「んうっ……うー……むうぅ……」
口を塞がれたまま呻きつつ、クロエさんはイーシャさんを抱きしめ返しました。
そのまましばらく舌を絡め合い、余韻を味わっていたイーシャさんでしたが。
「……えっ? あれ!? い、イーシャ様……え、ど、どうやって……っ!?」
クロエさんはかなり強く抱き着いていたのですが、イーシャさんはどうやったのか、
いつの間にかクロエさんから体を離し、立ち上がってしまっていました。
そして今度は、横たわったまま動けないでいるアキさんに近づきます。
「い、イーシャ様ぁ……助けて……体、う、動かせない、です……怖いよぉ……」
「大丈夫ですよ。アキ、あなたに打ったのは軽い当て身の一種です。しばらくすれば動けるようになりますよ」
体の異常に不安に駆られたアキさんを、イーシャさんは優しい口調で落ち着かせます。
「そ、そうなんですか……良かっ」
「ではそれまで、先程の続きをしましょう」
にっこり微笑むと、アキさんの足を掴んでごろんと仰向けにします。
「私がどういう風にして欲しいのか、指でも良いですけど、やはり直接教えてあげますね」
そう言って、イーシャさんはアキさんの足の間に体を入れると、お大事にお顔を埋めました。
「え、あの……え? ひゃっ!? ああっ!? きゃふっ! はにゅっ、くぅっんんんんんんーっ!」
今日一日、気が狂いそうな程全身を舐め回されたイーシャさんです。
舌技の習熟度は、シーリオさんへ施した指技どころではありません。
しかも、アキさんは全く力が入らず、体を強張らせて我慢することも、身をよじらせて逃がすことも出来ないまま、
腰が浮き上がる様な快楽を直に受け続ける事になります。
もちろん、実際に腰を浮き上がらせる事は出来ません。
「あひぃーっ!? いっイーシャ様ぁっ! やぁっああーっ!! あーーーっ!
いやあああああーーっ! あおっおああああ……っ!!」
びゅーっ、びゅーっ、びゅーっ……と断続的に お潮を噴き出すアキさん。
それをもろに浴びてびしょびしょになりながらも、イーシャさんは責める舌を休めません。
「おあーーーっ!! ゆぅっゆるっしっ、ひあああ……っ!! んごぉっ!! おおおお……っ!!」
休めません。
「かっ……はっ……おぉ……っ!!」
休めません。
「…………っっ!! …………っっ!!!」
アキさんの声が出なくなろうと、アキさんが白目を剥いてしまおうと、
イーシャさんは舌責めをまだまだ休めるつもりはなさそうです。
さて、シーリオさんですが――。
「ひぎあぁっ! ふっ、二人ともっ! すごいーっ! すごいのぉーっ! ふひっひぃぃっ!」
いつの間にかくんずほぐれつを終えたドュリエス様とナオミさんに、前後から責められていました。
続く
以上です。
ではまた、忘れた頃にお邪魔します。
失礼しました。
GJ!
GJ!
忘れない内に続きを待ってるぜ。
283 :
名無しさん@ピンキー:2011/07/29(金) 17:08:05.29 ID:AAw/BMM1
おつ
続きは気長に待ってるぜ
久々に来てみたらGJじゃないか
脳内でキャラに好きな声優あてて読んでる俺キモイ
いや、そういうのは俺だけではないはず……!
誤爆……でもないか
ここに投下された作品も脳内アテレコして読んでたりする
287 :
243:2011/08/08(月) 17:35:16.10 ID:bv8i1h4n
GJでーす。
規制解除……ようやく書き込める。
「キャッチアンドリリース2」投下します。
えーと、まあ似たような注意事項です。
その日、青の国の将軍、シド=サーディス率いる遊撃隊は、大陸の北方、赤の国の拠点を一つ潰し、祝杯を上げていた。
作戦会議用の帷幕の中、屈強そうな男達が談笑しながら杯を傾け、外からも、中に入れないような一般兵卒の笑い声が響いていた。
それを心地よく聞きながら、上座で優雅に酒を飲み干すシド。
「つぎましょうか?」
杯が空になったのに気付いた左の男が、瓶を片手に問いかける。
笑顔のまま、それを断ると、青年は開いた天から日輪を見やる。
――そろそろ、かな。
日は既に大分傾き、あと半時(一時間くらい)もすれば辺りは闇に包まれるだろう。
戦いで火照った体が幾分冷めたのを感じて、シドは立ち上がった。
「……どうされましたか?」
「いや、小用だよ。あぁ、これを貰っていくね……続けてていいよ」
上官の動きに一瞬訪れた静寂も、すぐに止んで、再びばか騒ぎが始まる。
それを見て微笑んだ後、副長から貰った小さな酒瓶を懐に入れ、シドは帷幕を後にした。
∞
部下達のばか騒ぎが遠く聞こえる程になって、青年は足を止める。
辺りは木々に囲まれており、柔らかな木漏れ日が差していた。
辺りに誰も居ないことを確認し、シドが草むらに向かう。
……ぱらぱら、と液体が草を打つ音が響く。
突然、背後の草むらから大きく音がして、シドは振り向く。
すると、薄汚れた白を纏った黒っぽい塊が、光るもの――短刀を手に駆け出した。
距離はおよそ三歩、対するシドは剣もなく、襲撃者に絶対的な隙を見せており、絶体絶命の危機に、貼り付いた笑顔が特徴のこの青年は――。
獲物がかかったと言わんばかりの欲にまみれた笑みを浮かべ、手にしていた何かを襲撃者に向かって投げつける。
それは、陣を離れるときに持ってきた酒瓶――中の酒を垂らすことで、小便に『見せかけていた』小物だった。
酒瓶は、ゆっくりと弧を描いて空を舞い、襲撃者の顔に当たる。
「ひゃッ!?」
可愛らしい子供の声が響き、襲撃者の動きが鈍る。
当然、そんな隙を見逃さずに青年は襲撃者に飛びかかる。
まずは危険な刃物を持った方の手を返し、そのまま極めて投げる。
「痛ッ!」
強く背中を打ち、たまらず声を上げたその時、シドは動きを止めた少女にのし掛かり、肩を手で押さえつける。
「あぁ……会いたかったよ、アイ」
「気安く名前で呼ぶなッ! 畜生、退きやがれくそッ!」
「悪い言葉遣いだ」
泥で汚れた少女の頬に、優しく口付けをするシド。
少女の名前は、アイ。僅かに一週間前、確かに青年がその手で犯し尽くした少女だった。
「本当に心配してたんだよ。しばらくぶりだったから、あいつらもつい羽目を外しちゃったかと思ってね……。
あそこを去る時になって君を見たんだけど、ぐちゃぐちゃのどろどろって感じでさぁ……!」
少女にとっては思い出したくもない過去、だが青年にとってはそんな傷口を抉ることすら楽しいらしい。
目に暗い輝きを宿し、見開いたままシドは続ける。
「あの時の目、あの時の姿、無様で、情けなくて、最高で……。
もう壊れたかと思ったのに……あー、惚れちゃいそうだなぁ、僕……」
青年は誉めるような口調でも、アイはその裏の意を汲み取っていた。
青年の性格、いや、性癖を鑑みるに――下品に言ってしまえば――「ヤりがいがある」と表現しているのだ。
――下種野郎め。アイはそんな風に言い放ってやりたかった。
「僕も反省しているんだ。せっかく僕の為にとっといてくれた初めてだったのに、あまりにも乱暴にし過ぎた」
「お前の為じゃない!」
「そうなの……ま、それは置いといて、お詫びの品をあげたいんだ」
「じゃあ死んで詫びろクズヤロー!」
圧倒的不利な状況下にも関わらず、少女は強気に毒を吐く。
だが、シドはそんなことは気にしない。手を片方肩から離し(同時に離した肩を膝で押さえた)、腰に結んだ小袋を外す。
指を突っ込んで袋を探った後、何かを握りこんでからアイに微笑みかける。
「口開けて」
「嫌だ」
「……あーん」
「嫌だ」
頑なに拒むアイに、表情は変わらず笑みのままだが、やや腹の立ったシドは、丁寧に、だが強めに、アイの鼻をつまんだ。
空気が鼻を通らないよう、確実に。
「ん〜!?」
「口開けなきゃ死んじゃうよ、ほら」
息が出来ず、体を暴れさせるアイだったが、膝を介して肩に体重をかけられている体勢ではろくに抗うこともできない。
約数十秒止めていた息も、遂に切れた。
「ぷはッ!」
そして当然、この隙を見逃さない。
僅かに開いた口の隙間に、指をねじこんで大きく開ける。
広がった隙間に、シドは袋から取り出した何かを投げ込み、最後にアイの口を手で閉じる。
「吐いちゃ駄目」
「んむぅッ!? うく、くふ、ううううッ!」
アイの口の中に入れられたのは、何かを固めた粒の様な物で、それはすぐに唾液に溶けていき、甘ったるい味が広がっていく。
その粒がすっかり溶けた唾液を飲み込んだところで、アイはたまらず口を押さえているシドの手を叩く。
青年がそっと両手を外すと、少女が大きく、咳き込みながら息を吸った。
「はッ…げほッかはッ……ひゅ、ひゅー……はぁ…ぁ…」
「大丈夫? 手荒な真似をして悪かったね。どうしても飲んでもらいたかったんだ」
シドが立ち上がり、含み笑いのまま、紳士的に手をさしのべる。
それを恨みを込めて睨み付けた後、アイは一人で立ち上がり、乱れた裾を直す。
青年は表情すら変えなかったが、当然ながら触感の残っていないさしのべた手のひらを数秒見てから、残念そうにくるり、と背を向ける。
「聞いてくれ。……僕が思う前回の反省点は、君と一緒に楽しめなかったことなんだ」
――天地がひっくり返っても、あんなことを楽しい思う訳ないだろうが。
自分勝手に自白を始めるシドに、アイが軽蔑、いや、憎悪の視線を投げ掛ける。
が、気にしない。それがシド=サーディスという男だった。
「あんなにキツいところに無理矢理押し込んだら、そりゃ君には痛い。あれは本来、お互い気持ち良い行為なんだ」
青年はグッと拳を握り、目は細いままだが、珍しく熱く、自分に酔ったまま説明を続ける。
「だから僕は今回、一緒に限界まで達することを目標にしようと思った。
すると、運良く薬屋のおじいさんと出会ってね、それは特別に調合してもらったんだ」
話に合わせて声に強弱をつけ、時には手振りも使って大袈裟に。
そして青年は話を切り、数秒勿体ぶって、ここが見せ場だと言わんばかりの勢いで一気に振り返る。
「それはなんとッ……! お……?」
シドの視界にあったのは、木、木、木。
先程までいた可愛らしい少女の姿など何処にもなく、自分は一人で演説をしていたことに気づく。
柔らかい地面にははっきりと小さな足跡が残っており、それは草の少ない方へと伸びていた。
「……速効で立てなくなるくらい、強いのを頼んだつもりだったんだが」
青年は珍しく目を見開き、口角を下げて残念そうな顔をしてから、ゆっくりと跡を追って走り出した。
∞
――あいつは、本気で気違いだッ!
少女はそう心の中で叫びながら、鬱蒼と生い茂る森の中を駆けていた。
少女は、雄弁に説明を始めた青年を余所に、静かにその場を後にし、ある程度離れたところから、走って逃げ出していた。
――二日前から見張っていた。確実な隙を探して、あの背中にあの男が置いていった短刀を突き立てるため。それなのに――!
嘲笑うかのように悠々と罠にかけられたことに、アイが唇を噛む。こんなはずじゃなかった、と。
しばらく走り、追ってきていないことを悟ってから、木の下に座り込む。
心の臓は未だ早鐘を打っており、一旦落ち着こうと深呼吸をしる。
――いったい何を飲まされたんだろう?
体が落ち着くことはなかったが、静まった心に先程のことを思い起こし、アイは自らに問う。
体が痺れることも――ない。声が出ないということも――ない。じゃあ、あれは一体なんだったんだ、と。
『疲れ』のせいか、ぼんやりしてきた頭は思考を拒否しており、アイはただただ虚空を見上げた。
「あち……ぃ……」
少女の口から無意識に漏れる言葉。実際、どうしようも無く体が火照っていた。
芯で火を焚かれている様なその熱さはますます上昇し、アイはたまらずに汗を拭おうとして――気付く。
「汗、出てない……」
こんなに暑いのに、何で……、とアイが思ったところで、今度はさらに、耳元で鳴っているのかと錯覚するほどに心臓が強く拍動する。
知らず知らずのうちに呼吸は荒くなり、少しでも楽な体勢をと、犬のように四つん這いになるアイ。
「はぁ…はぁッ…なに、こ、れ……!?」
「……さぁ? しばらく見ないうちに良い格好だね」
背後から響く声に、アイが体を震わせる。
聞き間違える訳の無いその声、そして、恐らくは自分の意味不明な状態の原因を作った者。
「シド……!」
「おや、名前を覚えててくれたのかい。嬉しいね」
青年が、(今で言うワンピースの様な)服の裾から剥き出しのアイの陰部に顔を近付けながら応える。
対してアイは、精一杯の力で振り向き、肩越しに青年の姿を確認して、思いっきり睨み付けた。
「てめ……どこ見て……!」
「凄んでも全然怖くないなぁ。自分の体勢、わかってる?」
それを軽くあしらい、シドは大きな手のひらですべすべとした、しかし肉付きの薄いアイの尻を愛でる。
力強く、形が変わるほど揉みしだいたり、左右に押し広げて小さなすぼまりを観察したり、前の穴の割れ目に沿わせる様に指を動かしたり。
一通り触り尽くした後に、指に絡み付いた透明な粘液を見て、シドは満足げに微笑み、その指をアイに見えるように目の前に持って行く。
「飲ませたのの正体、教えて欲しい?」
「……なんだ、よ」
熱とだるさに虚ろな瞳を向けて聞いてくるアイに、どうしようもない嗜虐心がシドを襲う。
手のひらを開き、天高く腕を掲げる。
次の瞬間、その手は異常なまでの速さで尻の真ん中辺りに目掛けて振り下ろされ、小気味良い音が響いた。
「ひゃあンッ!?」
痛みではなく、意味不明なぴりぴりとした感覚が赤い尻を発信源に全身に広がり、アイの嬌声が響く。
同時に、足の隙間から見える女陰から一筋、快楽の証が流れ出したのをシドは見逃さなかった。
「……効果はちゃんとしたもんじゃないか」
「らッらんだよッ!? ひゃ、あ、しゃわ、しゃわるぅあッ!?」
――あのおじいさんには後で追加の褒美を与えておこうか。
シドはそう思いながら、乱暴にアイの女性器に指を突っ込む。
幾人に犯されたそこは、それでもやっぱりきつかった。
ねじ込まれる青年の指を強烈に押し包み、ともすれば外に追い出そうともする。
ただ一つ前回と違うのは――蕩けきったアイの表情。
爪で陰核を弾かれる度に声をあげ、指で突き込まれる度に奥からは透明な粘液を溢れさせる。
「ん、ぅあ、あ、あッ、やぁ……!? や、やら、声ッ……で、ちゃうぅ……!?」
「……ちゃんとしたもん、って評価は訂正かな。想像以上に良いもんだ」
自分の下で足を震わせて感じる少女を見て、シドはますますやる気を出す。
――誰が考えるだろう、こんなやらしい娘が、一週間前まで処女だったなんて。
どこかの村で盗んだのだろうアイの服を引きちぎり、力の抜けた体を抱き起こす。
現れた細い体には所々青い痣があり、いつぞやの陵辱の痕が見てとれた。
「おや……悪いね。ほら、普段は兵士とやりあってるから、あいつらには力の加減が出来なかったみたいだ」
慈しみの思いを込めて、シドがその傷痕を舐め上げる。
平常時なら、そんなことアイは強く拒否し、それを青年が力で丸め込む流れだっただろう。
だが、少女はただ体をシドのたくましい胸に預け、あらぬ方向に虚ろな視線を投げていた。
青年は、胸に感じる心地好い重さに顔をほころばせ、可愛らしい耳に向かって小さく呟く。
「『世捨て人の秘蔵の薬』」
「よすて……?」
「通称ね。その中身は……巷の真偽疑わしいものとは比べ物にならない強力な媚薬」
もはや耳元で震える空気にすら、アイは快感を見出だしていた。
一種の麻薬の成分を多少含んだ薬により落ちた思考力が、本能に敗北し、一つの感情をアイに浮かべる。
――足りない。そんな感情に突き動かされ、無意識にアイはシドの服の袖を握った。
小さく可愛らしい手が、きゅっ、と自分の袖を握るのを見て、青年のタガが外れる。
「しょーがないなぁ、もう……」
「ひぁッ!」
シドがアイの手を掴み、片方をその小振りの胸に、もう片方を女陰に添えさせる。
「ほら、自分でやって。ゆっくりでいいから、ね?」
「うるせ……触んな……あッ!?」
始めはシドが、力の抜けたアイの指を誘い、部分部分を擦らせるだけ。
だが、次第に楽しくなってきた青年は、段々自分がやりたいようにやっていくようになる。
「好きな風にやれば良いんだよ……こんな風に乳首を摘まむのだって」
「んひゃッ!? はッ……はッ……」
「ここの、小豆みたいなとこを指で軽く押し潰すのだって良いらしい。僕は知らないが」
「ッ! ふぁ、あッ!」
楽器を奏でてるみたいだな、とシドが小さく呟く。少女には聞こえないように。
対する少女は、今までの拒絶が嘘のように青年に体を預け、与えられる快感を享受する。
それからも、青年は演奏を続ける。
「ひ、やあッ……!? ッはぁ……ふあッ!?」
「も、だ、だぁめッ! ……んああッ!」
「死んじゃう、死んじゃうよぅ……ッ〜〜ッ!?」
第二、第三と津波のように訪れる快楽の波に、アイは涙を、よだれを、愛液を、垂れ流して声を上げる。
あと一押しでこの可愛らしい少女は限界まで達する――そう見越したシドが、一旦手を止める。
突如止まる刺激に、アイが少しだけ振り向き、シドを見つめる。
何で――アイの頭の片隅にそんな思いが浮かんだ瞬間、シドが指を二本まとめて勢い良く膣口を貫いた。
「ぅ○Σ×あΩ□△!?」
もはや声にならない叫びが暗くなった森に響き渡り、アイの秘所から、透明な液体に加え、白く濁った液体が流れ落ちた。
前方に倒れ込むアイを眼下に、シドがふやけた指を舐め、静かに笑う。
――参ったな、手放すのが惜しくなってきた――
そんな風に考えながら、シドは自らの分身を露にし、何か液体をぶちまけたのかと思うほどに濡れたアイの秘所にあてがう。
――前からじゃなくて、後ろから貫く形になると、この子の細さがよくわかる――
暗闇に白く浮かぶ儚い体躯に不釣り合いに大きな自分のものを見て、シドは苦笑し、腰を突き出した。
「ッ! ……あ……あああ……ッ!」
「……あー、やっぱ勿体無いな」
相変わらずの排他的な窮屈さに、シドが思わずそう呟く。
しかし、丹念に愛撫を重ねたためか前よりも柔らかい。
かと思えば、腰を突き出す度に強烈に締め上げてくる。
シドはその感覚に、自分より幼いその少女にハマりはじめていた。
「ヤっバいなぁ……どうなの? 気持ち良い?」
「む、無、理ぃ……ひゃんッ!?」
「肯定と受けとるよ」
「ま、待って、よぉ……ひあッ!?」
――そんなに可愛く鳴くのが悪いんだ。
相変わらず独善的に、思うがままに動き続けるシド。
時に激しく、時に優しく、自分の下で小さく跳ねるその肢体を労りながら動く。
壊しはしない、とシドは決めていた。
「僕さぁッ……君にハマっちゃったかもしんないなぁッ……ねぇッ!?」
「ぇあッ! う、嬉しく、らいぃ……ひぃんッ!?」
「何で?」
「うあ゛あ゛……止めッ、ホント、だめ! い、いいいッ……!?」
「ほら、『良い』って言ってるじゃん。大人しく僕に従えば何時でも、好きな時に、めちゃくちゃにしてあげるから」
――この生意気な口から、服従を認める発言を引き出したい。
ただそれだけの思いから、シドは出したいものも我慢してひたすらに腰を振り続ける。
――盛った獣? いや、これは純粋な愛だ。畜生とは違う。
心の底からねじれた純粋な愛を謳い、汗まみれのアイの体に覆い被さり、歪んだ愛の言葉を囁く。
「ねぇ、一言でいいんだから。もっとして、とか、大好き、とか」
「言わらい、言わらい、言わらいぃッ……ひぅ!?」
「ほら、散々声あげてるのに」
「てめーが、変らもん、飲ませたからぁあぁッ!?」
「仕方ないなー」
実際のところ、アイに既に考える力は残っておらず、意思だけで拒否を示している。
それはつまり、崩れかけの意思だけでも拒否するほどに青年が少女にひどいことをした証なのだが。
対するシドは、根本からくる限界を感じていた。
次が最後になるだろう――そう考えた青年が穏やかに、はっきりとした声で、アイに問いかける。
「じゃあさ、今……僕をどうしたい?」
「へ……ッんぅ!?」
今なお蹂躙を続ける青年をどうしてやりたいか。
そんな答が出てる問いなんて――と思いながらも、少女の本能は悪魔の囁きを繰り返していた。
――言っちゃえよ。
――盗人より良い暮らしができるぞ。
――きっと大事にしてくれるって。
何度も、何度も頭の中で跳ね回るその言葉に、少女は屈しかける。
そこでアイは、強く唇を噛み、一週間前の事を思い出す。
無惨に処女を散らされ。
二回りは大きい男達に玩具扱いされ。
僅かな食料と一緒に打ち捨てられた。
――黙れよ、お前ら。
心の声を一喝し、ゆっくりと肩越しに振り向き、快楽に笑みが零れそうになるのを拳を握って耐えて――
「変わん、ねーよ」
唾を飲み、泣き腫らした目を見開き、言い切る。
「いつか……絶対に、殺してやる!」
「……わかった」
――今回は、諦めよう。
開き直った青年は激しく腰を動かし、笑みを浮かべて、最後に思いっきり腰を突き出す。
「ひあ、あ、あぁぁッ!?」
子宮の入口に狂暴なそれが当たる感触に、アイが大きく声をあげたと同時に、青年の白濁した思いの奔流がほとばしる。
深く突き入れたそれからは、一滴として漏れること無く少女の腹を満たし――アイは崩れ落ちる。
「!? おい! ……あぁ、眠ったのか」
正しく言えば漸く終わったという安堵から気が失っているのだが。
青年は、ぼんやりとした目を手で閉じさせ、地面に倒れ込んだ少女を抱き起こす。
「軽いな……」
そのまま木の下に座り込み、自分の膝に少女の頭を乗せて、軽く撫でる。
――あと、どれくらいかかるだろう、これが僕のものになるまで。
そんな事を考えながら、青年もまた目をつぶり、背中の巨大な木に体重をかけていった。
∞
翌朝、少女が目を覚ますと、辺りに青年の姿は無く、落とした短刀と、食べ物の入った袋が地面にあった。
――また、ここからか。
はぁ、と少女が小さくため息をついた瞬間、股の間から白く濁った、昨夜の残滓が流れ落ちた。
アイがその気持ち悪さに思わず股間を押さえる――
「ひゃッ!?」
と、突然また雷の様な刺激が体を走る。
驚いた少女は辺りを見渡し、誰もいないことを確認する。
右手には――いない。左手にも――いない。
誰にも見られていないことを確認すると、アイは急に腹が立ってくる。
――どれも、これも、あいつのせいだ――
少女は意識せずとはいえ自分で秘所を触り、声をあげてしまった恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、ここにいない青年のせいにする。
「こ……今度は、ちゃんと、考える! だいたい、身体能力で敵うわけないんだ! 不公平だ! ちゃんと、綿密に計画立てて、それから――」
少女は何かを誤魔化すように大きく声を張り上げてから、突然それを断ち切る。
「……不公平だ」
――あいつには余裕があり、自分には、いや、自分達には余裕が無い。
この違いは何処から来てる? めちゃくちゃにされて、打ち捨てられて、あいつらは何で普通の人間を好きにして良いんだ?――
――無駄なんじゃないのか?
暗く、重い感情が少女の中で渦を巻く。
考えても、考えても答のでないその問いを頭の片隅に置き、袋と短刀を持って走り去る。
――とにかく、あいつは……。
アイは、殺す、と言い切れない。
複雑な感情のまま、少女はその場を後にした。
つづく(かもしれ)
298 :
243:2011/08/08(月) 18:02:40.74 ID:bv8i1h4n
おしまいです。駄文、失礼しました。
他に書き手の人出てこないかなぁ……
設定・世界観説明(のようなもの)
西に青、東に白、北に赤、南に黒の国がありますが、西がアジア系、東がヨーロッパ系、北がオリジナル、南は黒の国ですが、小国家の乱立状態ということにしています。
また書く時つかうかもしれませんから。念のため。
動物はいます。全部。
戦いの基本は槍持ってドーン馬で駆けてドーン弓でバキューン。要は普通ですね。魔法は……特別な人じゃなきゃ使えないので、戦力としては数えにくい上に、チートチックなものはありません(としておきます)。
きちんと四季があり、西は米、東は小麦がメインの作物です。必要な気候が真逆? この世界ではどっちも育てられるということにします。
米「のようなもの」と小麦「のようなもの」です。
宗教については、基本宗教が万人が平等で、悪いことをすると来世で人間になれないわよ、という感じなものをベースに各国でさまざま。
場所によっては豚はダメ、みたいなところもあるかもしれません。
GJ!
一話目は、これ戦火スレの方がいいんじゃね?と思ったけど
今回も酷い目に遭わされたけど、女の子が最後まで気丈なところがよかったです。
最終的に野郎が彼女の宿願を叶えてあげるか他の誰かに適当にぬっ殺されますようにw
GJ
「神か悪魔の」が軽くて読みやすいのに対して内容があって文がしっかりしてるのが良い
折角書き手いるのに雑談でもして賑やかにしないと離れちゃうぜ
301 :
名無しさん@ピンキー:2011/08/25(木) 14:37:01.02 ID:UMiRD3jd
続きに期待
キャッチアンドリリースの人GJ
初め見た時2から読んだのでこれからラブラブになるのかと勘違いしたが
1から見るとシドの壊れっぷりにラブラブは絶対なさそうで驚いたw
殺るかヤられるかな二人の関係がどう決着つくのか楽しみだ。
面白かったです!GJ
アイちゃん可愛いなあ
これからどうなるのか楽しみです
「キャッチアンドリリース」書いてる者です。
いちいち作品で説明するのが煩わしくなって
他スレでも書いてるために自分でもどこでどれを投下したか作品がわからなくなる始末なので
トリップつけて名前入れる事にしました。
2.5、アイの一人称の番外編になります。駄文で申し訳ありません。
NGは「キャッチアンドリリース」でお願いします。
体が、熱い。
数日前と同じ体の熱さに、私はたまらず木に寄りかかる。
この熱さを感じるのはもう数えきれないくらいで、流石に最初のように動けなくまではいかなくとも、やっぱり辛い。
地面に腰を下ろし、皮袋に入った水で唇を湿らす。
途中にあった村から盗んだ作業着は目が荒く、動くと擦れるのが、一層体の疼きを促すのだ。
「……嫌なもん、飲ましてくれやがって!」
吐き捨てるのは、言葉と一緒に体の火照りが出ていくことを願うから。
そんなことは無いって、頭では解ってるのに。
ため息を一つ、ついた。
一番辛いのは、身体的なものじゃない。
この状態の時、ぼんやりした頭では、常にあの時の映像が、声付きで再生される。
『自分で――』
『好きな風に――』
『――ハマっちゃったかもしんないなあ』
『大人しく――』
「……んッ!? ……ふ、う、あ、ンんッ!?」
――いつからだろう、自分でそこを弄るようになったのは。
行為を一時中断し、目の前に持ってきた指には、ねばっこくて透明なアレが糸を引いている。
それを見ているだけで、本当に自分が情けない気分になるのに、それでも私はその行為を続ける。
「ふッ……あ……んッ!?」
どれだけ情けなくても、私はその行為を続ける指を止められない。
頭の芯がしびれるような感覚が、止めたくないという意思を捕まえて離さない。
「くぅ……あっ、あっ……んッ!? んッ、あ、あ、――!?」
一際強い感覚が体を襲い、体を震わせた後、私は地面に倒れ込んでしまう。
体を少し動かすだけで、足の間から小さな水音が響く。
そして、行為が終わった後は、いつも通り声を殺して泣いた。
――自分でも情けないのは、あの時に関しては、あいつを受け入れていたのだ。
最終的に、殺してやる、とは言ったけど、あの時はそんな考えは微塵も無かった。
それどころか、もっとして欲しい、とまで思っていた。
今ではそんなだった自分が許せないし、そんな風にしたあいつも許せない。
だからこそ、そんなだった自分を知るあいつは殺さなくてはいけない。
それでも。
「……んッ……は、あ、あぁ……ッ!?」
この自分で自分を貶める行為がやめられない。
頭がしびれている間は何も考えずに済むから。
後悔から逃げるための行為で、後悔を深める。
その矛盾した事実に気付いていながらも、どうしようも無い。
頭の中で、またあの時のあいつの言葉が再生する。
『……どうなの? 気持ちいい?』
手を止めて、後悔まみれの指を見ながら考える。
「……分かん、ないよ」
そうしてまた、沸き上がる熱が収まるまで、私は自分を慰め続ける。
おしまい
以上です。駄文失礼致しました。
>>307 GJ、すっげえそそる。
これじゃシドじゃなくても手放せなくなるだろw
>>307 待ってたGJ!!
シド罪作りな男だぜ……
310 :
名無しさん@ピンキー:2011/09/13(火) 09:31:18.36 ID:WC7PYa7r
GJ
311 :
名無しさん@ピンキー:2011/09/20(火) 05:30:57.48 ID:aI17idCR
ほし
「神か悪魔の贈り物」第一章第十三話を投下させていただきます。
>>279の続きです。
百合注意です。
ああ、なんと言うことでしょう。
シーリオさんを責めるお二人の股間には何故か、女性には無いはずのモノが鎮座ましましておりました。
そう、このお二人、実は両性具有――つまり世に言うフタナリさんだったのです!
……という訳ではもちろんなく。
股間に、所謂『張り型』と呼ばれるものを装着されていらっしゃるのです。
革紐で腰に固定された特製のそれは、真ん中から鋭角に折れ曲がった双頭で、片側を挿入すると、
反対側が丁度勃起した男性器のように上向きに突き出すのです。
しかも、折れ曲がった根元がおさねに食い込み刺激する親切設計。
ナオミさんに後から羽交い締めにされたシーリオさんを、ドュリエス様はその偽男根で前から犯しています。
「うぐっ! ふうぅっ! ぐうぅぅっ! んきゅぅぅぅぅ……っ!」
「おほほほほ。良いわシーリオ、良い声よ。んっ、くっ、ああっ……
いつも通り、美味しそうにきつく締める好き者まんこね。そんなにおちんぽが好きなのかしら?」
「ああっ、好きぃっ! 好きぃっ! ドュリエス様のおちんぽ大好きですぅっ!」
「違うでしょう? 別にわたくしのではなくとも、あなたの淫乱おまんこは、おちんぽなら何でも嬉しいのでしょう?」
「ああっ、そっ、そんなぁ……私は……っ!」
「ドュリエス様、お風呂から出た後で、この子は裸のまま城の下男達に差し下げてしまいませんこと?」
「そうね、そうしましょうか。シーリオ、あなたも嬉しいでしょう? 大好きな本物のおちんぽが選り取り見取りよ?」
「なっ!? うっうっ嬉しくないですっ! ひ、非道い……私を、す、捨てる、なんて……っ!
あまつさえ、げ、下男に、とか……っ! 言葉責めにしたって非道すぎます……っ!
なんで、そ、そんな事、仰っしゃるんですかぁ……っ!?」
今の今まで快楽で歪んでいた顔を、今度は別の理由で歪めるシーリオさん。
傷ついた瞳でドュリエス様を見上げます。
結構本気で悲しんでるっぽい彼女に、ドュリエス様は少々むっとした視線を返して言います。
「おほほ……年増組のわたくし達の思いなど、若いシーリオにはどうせ分からないのでしょうねっ!」
「若い女には、汚らわしい男共が群がってくれますわよ! 下衆な雌犬のあなたにはそれが堪らないのでしょう?
せいぜい肉棒をはしたなく咥え込んで、尻尾を振って喜んでらっしゃいな!」
ナオミさんも、背後から耳元に言葉をぶつけます。
「え……も、もしかして、き、聞こえて、ました……?」
「何を、かしら?」
「だから、その……『年増組』って」
「二つしか違わないわっ!」
「四つしか違わないわっ!」
年増ぐ……お姉様達は、息ぴったりに声を重ねて抗議しました。
「やはりあなたにはお仕置きが必要のようね……っ!」
「仕返し、ですわっ!」
ドュリエス様はぐりんぐりん、ぐいんぐいんと巧みに腰を回転させ、ナオミさんも、背後から当てた張り型で
お尻の谷間をなぞりながら、両手でシーリオさんの乳首を力一杯摘み上げ、引っ張りました。
「あっあっ、あぐっ、くうぅぅん……っ!」
しかしもちろん、そんなことをしても、シーリオさんは悦びの声を上げるばかりです。
「はあっ、ああっ、ど、ドュリエス様ぁっ! そこぉっ! そこぉっ! あっ、あっ、ああっ!
もっ、もうっ、いっ、イくっ! イきますぅっ! んああっ、ああああっいっいっイくっ!
イくっ! イっ……ひああああ……っ!」
が、正に達する! ――という寸前で、ドュリエス様は腰を止めてしまいます。
お仕置きや仕返しにするなら、やっぱりそうですよね。
「あーーーっ!? やあーーーっ! あと一回っ! あと一回なんですっ! あと一回でイけるんですっ!
お願いしますっ! あと一回だけで良いですからぁっ!!」
「まあ、あと一回動くだけでイけるのかしら?」
「はっ、はいっ! はいぃっ!」
「そう……でもダメよ」
「あーーっ!? やあーっー! お願いしますぅっ! お願いしますぅっ! うぅぅぅ……っ!」
じたばたと暴れ、自ら動いて快楽を貪ろうとするシーリオさんですが、
前後からぎゅっと挟み込まれてしまってはそれもかないません。
「うぐっ、ぐっ、うう〜〜っ!」
呻き声を上げて足掻いていたシーリオさんでしたが、しばらくすると段々と波が引いてきたのか、はあはあと
荒い息を吐きながらも声は止み、諦めたように体の力を抜い「ん゛お゛お゛っ!!」た所で、ドュリエス様は
腰を一回だけ動かしました。
間を置いてしまったので、もうそれでは達するにはぎりぎり足りませんでしたが、公女殿下は再び
シーリオさんに腰を押し付け、抱きしめて、それ以上の快楽を与えません。
「うあ゛あ゛あ゛……はぁっ、はぁっ……またぁ……っ! ひ、ど……ドュリエス様、非道い、ですぅ……っ!」
「あら、あんまりだわ。あと一回だけで良い、と言ったのはあなたでしょう。
可哀相だから望み通りにしてやったというのに、それはないんじゃないかしら」
「もっ、もう、一回だけじゃダメなんですぅっ! ごめんなさいぃっ!
謝りますからイかせてくださいぃっ! ごめんなさいイかせてぇっ!!」
「謝る? まあ、何を謝ると言うのかしら?」
「です、からっ! と、年増んお゛あ゛ーっ!?」
その言葉が出た途端、ドュリエス様は再び艶めかしく腰を使われました。
「年増じゃないわっ!」
「あ゛っあ゛っあ゛あ゛ーっ!!」
が、当然今度も寸前で止めてしまいます。
あと一回どころか、今張り型を引き抜けばその勢いで盛大にお潮を噴いてしまいそうな所まで追い込んでの
焦らし責めに、シーリオさんは全身を震わせ、首を弱々しく左右に振って赦しを請います。
「あ゛ーー……あ゛ーー……ゆ、ゆる、ひて……ゆるひてくらさいぃっ!
……ゆるひてぇ……いっ、イかへてぇっ! イかへてぇ……っ!!」
それを聞き流しながら、ドュリエス様は巧みな腰使いでシーリオさんを
絶頂に達するか達しないかの境界線の縁に縫い付けます。
「あ゛ーーっ!! あ゛ーーっ!! イ゛がぜでぇーーっ!! イ゛がぜでぇーーっ!!」
銀髪侍女さんは涙を流して懇願しますが、ドュリエス様は構わず寸止めを続けます。
「ふぎぃぃっ! んぐぅぅーーっ!! もうらめもうらめぇぇっっ!!」
「おほほほほ……んっ……シーリオ、か、可愛いわ……んふっ……もっと素敵に、あんっ、お、お鳴きなさい……っ!」
泣き叫ぶシーリオさん。
対するドュリエス様も、次第にお顔を上気させ、眉根を寄せていきます。
張り型越しに、シーリオさんの焦燥に咽ぶ柔襞のわななきをご自分のそこで感じ、
さらにおさねを張り型に刺激されて、ご自身も少しずつ絶頂に近づいているのです。
「んんっ……わ、わたくし、そ、そろそろ、イきそうだわ……っ!」
「わっ私もぉ!! 私もイかへれぇっ!! 私もイかへれぇっ!!」
シーリオさんは懇願しますが、それを叶える気は毛頭ないドュリエス様は、
シーリオさんがイってしまわない様に、ゆっくりと張り型を引き抜いてしまいました。
「いやぁっ!! 抜いちゃやぁっ!! おまんこ抜かないれぇっ!! おまんこイかへてぇっ!!」
その涙声をオカズに、ドュリエス様は引き抜いた竿を握ってぐりぐりと動かし、自らを絶頂へと導きます。
「あっあっあっいっイくわっ! イくわっ! シーリオっ! わっ、わたくしがイく所、見ていて頂戴っ!
んっ、あっ、あああああ……っ!!」
「あああっ、わっ、私もぉ! 私もぉ!」
達してのけ反る様子を見せ付けられて、さらなる焦燥感に駆られる銀髪侍女さんでしたが、
動きたくとも、青灰髪の侍女頭さんに拘束されて、手足をばたつかせる事しか出来ません。
「あ゛ーーっ! もう無理ぃっ! もう無理れすぅっ! イ゛がぜでぇっ! イ゛がぜでぇっ!」
叫びながらしばらくじたばたしていましたが、少しずつ波が引いていき、
動きが小さくなって「んほおぉぉっっ!?」きた所で、今度はナオミさんが背後から貫きました。
当然、それもまた絶頂を与えてはくれません。
意地悪に動くナオミさんの擬似男根は、シーリオさんにしつこく寸前の状態を維持させます。
「はひぃー……も、もう、らめぇ……もうらめぇ……はぐっ」
しかし、ナオミさんはドュリエス様程巧みではないのか、
シーリオさんはちょっとずつちょっとずつですが絶頂に近づいていきました。
そのように調教されたシーリオさんは「もうすぐイっちゃいますぅっ!」と口に出してしまいそうになりましたが、
そんなことを言えばまた止められてしまうのは目に見えています。
なので我慢して、瞼とお口をぎゅっと閉じ、狂おしい程待ち望んだものを
受け入れるべくお腹の奥に力を入れて腰を突き出しました。
――まあ、ナオミさんはそこで止まってしまうんですが。
「あ゛ーーっ! またぁっ! またぁっ! もうおかしくなっひゃうぅっ!」
身をよじらせて続きを求めようとするシーリオさんを、ナオミさんはがっちり抱きしめ、動かしません。
「んっ……ダメじゃない、シーリオ。今、私も達しそうだったのに……。
あなたがイきそうになるから、止めざるを得なかったじゃないの」
「ひょっ、ひょんなぁっ! いっひょにっ! いっひょにイきまひょうよぉっ!」
「あら、こんな年増と一緒じゃあ、嫌なのではなくて?」
「んもうっ! んもうーっ! ご、ごめんなひゃいって、言ってりゅじゃないれしゅかぁっ!」
ナオミさんは「おほほ」と笑って、腰振りを再開します。
「あ゛おぉっ! あ゛おぉっ! あ゛お゛ぉぉ……っ!!」
ナオミさんの抽迭に、シーリオさんもお尻を突き出して応えます。
歯を食いしばり、必死の形相で力の限り腰を振って、ようやく絶頂の扉に手が届いた――
と思った瞬間、ナオミさんは張り型をずるっと引き抜いてしまいました。
「ん゛あ゛ーーっ!! ぼうひぬ゛ーっ!! ひんじゃうーっ! イがへでぇぇっっ!!」
もどかしさと切なさが限界を迎えたシーリオさんは、下半身をぐいんぐいんと振り回してしまいます。
それは空腰と言うにはあまりに激しく、勢い余ってナオミさんを突き飛ばしてしまいました。
「きゃあっ!」
縺れ合う様に倒れ込む二人。
意外と可愛らしい悲鳴を上げたナオミさんが身を起こすよりも早く、シーリオさんは跳ね起きます。
そして仰向けのままの青灰髪の年増……もといお姉さん侍女さんに馬乗りになり、
そそり立つ擬似勃起をお大事にあてがうと、一気に腰を落としました。
「ん゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛…………っ!!」
今度こそっ! 今度こそ、イけるぅっ!
最早それしか考えられず、一心不乱に腰を動かすシーリオさん。
今度こそイくっ! 今度こそイくっ! 今度こそ……っ!
「お゛っお゛っお゛っ、お゛お゛ーっ!! イぐーーっ!! や゛っどイ゛げる゛ぅーーっ!!」
あと一回、腰を落とせば……っ!
――と言う所で、しかし、背後から両脇に手を入れたドュリエス様に引き起こされてしまいました。
「の゛あ゛お゛お゛〜〜〜〜っ!!!」
叫び声を上げ、よだれと涙と鼻水でぐちょぐちょのお顔をぶんぶんと振って、
シーリオさんは周囲に雫を振り撒きます。
ドュリエス様は振り飛ばされない様、銀髪侍女さんをしっかりと抱きしめると、そのまま張り型を深々と挿入しました。
「〜〜〜〜っっ!!!」
それが最後の一押しとなって、シーリオさんはついに達する事が出来ました。
ようやく迎えられた絶頂。
余韻を味わいたいシーリオさんでしたが、ドュリエス様は一拍も休まず、
そのまま柔肉の筒の中で模型怒張を往復させ続けます。
「あ゛ーーっ!! お゛あ゛あ゛ーーっ!!」
焦らしに焦らされてからの絶頂で驚く程敏感になっている膣壁への容赦無い責めから
シーリオさんは必死に逃れようとしましたが、ドュリエス様に後からしっかりと腰を掴まれ、
さらに体を起こし膝を着いたナオミさんに前から恥骨の辺りを押さえられて、進退窮まってしまいます。
そして駄目押しとばかりに、ナオミさんは、いやらしく咥え込んだ下のお口の
すぐ上で震えている剥き出しの小さなお豆に舌先を押し付け、高速でねぶり回しました。
「んごおぉぉぉっ!? おおっ、お゛お゛お゛ーーっ!!」
受け止めきれない快感に吠えるような悲鳴を上げながら、シーリオさんは
びゅーっ、びゅーっと射精のようなお潮を続けざまに二度、それから
ぷしゃあぁぁぁ……と撒き散らすようなお小水をナオミさんに浴びせ掛けました。
それらを全部お顔で受け止めつつも、ナオミさんは舌を蠢かし続けます。
「ねえ、どんな気持ち? 年増ちんぽと年増べろで無理矢理イかされ続けるのって、どんな気持ち?」
「お゛お゛……の゛お゛……」
嬉しそうにドュリエス様が尋ねますが、シーリオさんは聞こえているんだかいないんだか、
ひたすら呻くばかりです。
その呻き声も、次第に弱々しくなってきました。
虚ろな瞳から溢れ出す滂沱の涙は頬を伝い、形の良い顎の先からナオミさんの頭や
床のおしっこ溜まりに滴り落ちます。
ぽたぽた、ぽちゃんぽちゃん、ぽたた……。
「おほほ、あっ、あっ、んっ……わたくし、またイってしまいそう……っ!」
ドュリエス様は両腕でぎゅっとしがみつき、シーリオさんの背中にお胸を密着させましたが、
腰だけは、別の生き物の様にかくかくと前後運動を続けています。
とても高貴な姫君とは思えない、浅ましい姿です。
「んっ、んっ、ああっイっイくわっ! ふぁっ、ああっ……んふぅぅぅ……っ!!」
再び訪れた絶頂で、抱き着いた腕にきゅっと力が入り、
ぐぐっと腰をもはしたなく押し付けて、動きを止める公女殿下。
余韻を味わうようにしばらくそのままでいましたが、やがて「はあーー……」と大きく息を吐くと、
腰を引き、ずるりとおもちゃの慾棒を抜き取りました。
「んぎっ、ひゃおぉ……っ!」
太い幹と立派に張り出した雁首で小さな下の唇が捲られ、また快楽責めからの解放に安堵して、
溜息の様な悲鳴の様な、変な声が漏れてしまいます。
しかしそのお大事は、捲れが戻るより早く、立ち上がったナオミさんによってすぐにまた犯されてしまいました。
「んあおぉーっ!?」
「おほほほほほ! 私達年増と違って、シーリオは若いんだから、まだまだ物足りないでしょう!?」
「おひっ……ごっ、ごめんらはいって、いっ、いってうやないれすかぁ……
もう、ゆうひて、くらはい、よぉ……んお゛あ゛ぁぁ……」
ナオミさんにしっかり抱き着きながら抗議するシーリオさん。
さっきまで叫ぶようだった彼女の喘ぎ声も、絶頂疲れですっかり弱々しくなってきました。
ドュリエス様は、そんなシーリオさんの背後で膝を着くと、ぷりぷりのお尻を掴んで左右に開き、顔を埋めました。
「はにゃあ……っ!」
そして先程シーリオさんがクロエさんにしたように舌を伸ばし、
口の中に溜めた唾液を可愛らしい窄まりの奥へと流し込んでいきます。
「うきゅう……っ!」
ある程度流し込んだら、垂れないように舌を深く挿し入れ栓をし、中を撹拌します。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
シーリオさんの腕にさらに力が入り、抱き着かれたナオミさんの抽迭は制限されて小刻みなものになってしまいます。
すっかりイき癖をつけさせられた十四歳の少女の肉体は、それでも絶頂の連続から抜け出すことが出来ません。
四肢をふるふると震わせ、虚ろな目で涙を流しながら喘ぎ続けます。
その喘ぎ声も、もう満足に発声出来ていません。
「ぁ……ぁ……ぉぉ……ひぬぅ……ひん、ゃぅ……か……は……っ」
接合部分から愛液と共に溢れ出すお小水も止められません。
とそこで、ナオミさんは張り型を勢い良く抜いてしまいました。
「ぉぁぁ…………っ! はー……はー……はー……」
でもすぐに、入れ替わりでドュリエス様のモノが侵入してきます。
「ぅぇぇ……」
ぱんぱんぱんぱん……と音を立てて激しく突き上げていらっしゃったドュリエス様でしたが、
しばらくするとやはり抜いてしまいました。
ドュリエス様が腰を引いた途端、またもやナオミさんの偽おちんちんが捻じ込まれます。
が、今度は一突きで抜いてしまいました。
そしてまたドュリエス様が挿入しますが、こちらもやはり一突きで抜いてしまいます。
続いてナオミさんが一突きして、抜いて、ドュリエス様が一突きして、抜いて、ナオミさんが一突きして、抜いて、
ドュリエス様突いて抜いて、ナオミさん突いて抜いて、ドュリエス様突いて抜いて、
ナオミさん、ドュリエス様、ナオミさん、ドュリエス様、ナオミさん、ドュリエス様……。
「ぁぉぉぉぉ……も、もお、むりぃ……もぉむりぃ……ぅぁ……んぉぉぉ……ぉぉぉぉ……」
「ふふ、そろそろ限界かしら。仕方ない子ね……じゃあちょっと早いけれど、仕上げに入りましょうか」
ドュリエス様はそう言って一突きした後、引き抜きながらナオミさんに目配せしました。
それを受けて挿入したナオミさんは、今度は一突きではなく、再び抽迭を開始しました。
「ぁ……ゃ……ぉぁぉぉ……ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………」
しかし、ドュリエス様の言う『仕上げ』はそれだけではありませんでした。
公女殿下は、引いたと思った腰を、すぐに前へと突き出したのです。
――後でひくつく、もう一つの秘密の入口目掛けて。
入口っていうか、出口?
「〜〜〜〜っっ!!?」
先程ドュリエス様が流し込んだやんごとなき唾に加えて、竿全体に塗り広げられた
シーリオさん自身の蜜液で、潤滑油には事欠きません。
それらをじゅぶじゅぶと泡立たせながら、膣壁越しに、前を犯すナオミさんの怒張へ擦り付ける様に
激しく、かつ巧みに動かします。
シーリオさんは、もう声も出せません。
「……っ!! ……っ!! 〜〜〜〜っ!!!」
首を大きくのけ反らせながら、打ち上げられた魚の様にお口をぱくぱくさせ、
びくびくびくびく……と全身を跳ねさせます。
それを前後から押さえながら、お二人は快楽を与え続けます。
「ああ、シーリオ、いやらしい子……。どすけべな尻穴が、おちんちんをぎゅっと掴んで離さないから、
んっ、動く度に、わたくしの中までもがぐりぐりされて、んっ、ああっ、あひぃっ! ぐりぐり素敵ぃ……っ!」
「前も、美味しそうに頬張って、もぐもぐするのが伝わってきますわっ!
そっ、それに、壁越しに、ドュリエス様ので、擦られて……ふくぅっ、ううぅっ!」
「〜〜〜〜っ!! 〜〜〜〜っっ!!!」
「わっわたくしもっ! ナオミのおちんちん、感じてるわっ!
このまま、いっ、一緒にっ、ねっ? ああっ! 一緒にっ! 一緒にぃっ!」
「はいっ! はいぃっ! はっ、いっ、いっ、イきますっ! イっちゃいますわぁっ! あっ! あっ! ああ……っ!」
「わたくしもっ! わたくしもぉっ! ふあ……あああ……っ!」
「「イくぅーーっっ!!!」」
ドュリエス様とナオミさんは同時に叫ぶと、のけ反り、シーリオさんに腰を押し付けて動きを止め、
恍惚の表情で全身をわななかせました。
そのお二人に責め続けられたシーリオさんは、もう恍惚どころではありません。
完全に力が抜けてナオミさんにもたれ掛かり、焦点の合わない目で虚空を見つめています。
荒い息を「はーー……はーー……」と吐くお口は開きっぱなしで、唇や、だらんと垂れ下がった舌を伝って
さらさらの涎が床に滴り落ちています。
二本のいちもつが抜き去られると、やや太めの可愛い眉がひくんと揺れましたが、
それ以上の反応は無く、弛緩した体はそのまま床に横たえられました。
ナオミさんは微笑みながら、仰向けに転がったシーリオさんの隣に座ると、右手を取り、そっと唇を這わせます。
ドュリエス様も同じ様に腰を下ろすと、透き通る銀髪を優しく撫でてやるのでした。
続く
以上です。
お目汚し失礼しました。
もう忍法帳やだ。
GJ!
イキたいのに・・・→イカされすぎのコンボが俺得すぎる
…ふぅ
GJ!
ナオミさんじゅうはっさいGJ!
337 :
名無しさん@ピンキー:2011/09/29(木) 19:27:03.97 ID:W++bfKXD
GJ
GJ! 女性に歳のことは禁句と。
キャッチアンドリリース3になります。
すこし時系列が絡んでるので、もし解らないという人がいたら、2→1→3→……です。
「ふふ……まさか君の方からこんな申し出があるとは思ってなかったよ」
青年が、顔を伏せて跪く少女を、壊れ物を触る時のように丁寧に撫でる。
若い肌には薄く白粉が塗られ、瑞々しい張りと滑らかさを持つそれを指で堪能する。
うなじを、唇を、頬を、鼻筋を、そして、立派な簪(かんざし)で押さえられた、少し伸びた髪の毛を梳こうした瞬間――
少女の細い腕が素早く動き、青年の手首を強く掴む。
「先に、お返事が欲しいです」
甘く、媚びるような声が部屋に響く。
少女が顔を上げ、掴んだ手を自分の頬へ誘い、うっとりした表情で自らそれに擦り付ける。
幼気で、可愛らしい少女が繰り返す、商売女の様な振る舞いという外見との差に、青年の口角が思わず上がる。
加えて、ずっと欲しかった玩具が、今目の前で掌の上にある様な感覚。青年の喜びは計り知れなかった。
「……何の、返事だったかな?」
とぼける青年、しかし少女は今までの様に声を荒げることなく、柔らかい笑みで対応し、鮮やかな紅の塗られた唇を開く。
「お側に置いてくれませんか? シド……様」
シドと呼ばれた青年の体が、歓喜にうち震える。
「もちろん、喜んで……アイ」
二人は笑った。それぞれ、別の思いを抱きながら。
∞
季節は初秋、収穫期を迎えるこの時期、青の国では一年間の評定と、更に今後の方針を議論するために、命を受けて各地に飛んでいた官人達が都へ舞い戻る。
それは、国境沿いで敵国を牽制しつつ、好き放題していた将軍、シド=サーディスも例外なく、自宅で無聊を託っていた。
評定の為に戻っているとは言っても、高い地位にいるものの、まだ若いシドに強い発言権があるわけではない。
その為、青年にとってこの時期は、まさしく退屈な時間であった。
――さっさと前線に戻してくれればいいのに。
腰の剣を抜いて眺める。そこにはひどく精気の抜けた様な顔をした自分が映っていた。
ため息を一つついた後、二、三度振ってから鞘に納める。
やることも無く、横になろうとしたその時、不意に陰から声をかけられる。
「シド様」
声の主は家で雇っている小姓のもの。
上体を起こすことすらなく、青年は不機嫌そうな声を出す。
「……何」
「お客様がいらしております」
――またか。
もう一度ため息をつく。
全ての官吏が自宅にいるこの時期には、様々な者がやってくる。
それは、知り合いだったり、腕を売り込みにくる者だったり、儲け話を持ってくる者だったり。
前者はともかくとして、後者二つに関しては、対応が面倒な上に、法の上でそれなりに話を聞く義務があった。
風貌からあまり乱暴そうに見えないシドには特に数が多く、騙そうと考える者もいるために、青年が不機嫌になるのも仕方無いだろう。
「今後は何? 自称熊殺し? それとも怪しい髭の錬金術師とやら?」
「いえ、女性です」
青年が跳ね起きる。
「『女性』?」
「ええ、大変可愛らしい……」
その刹那、シドが小姓を押し退けてゆっくりと玄関へ向かう――
そして、踊り出す胸を軽い衝撃が突いた。
「うっ」
「おっと!」
互いの動きが止まる。
突如漂う優しい香りと、服越しに感じる細さと柔らかさが、青年の心に刺さる。
「……お、お久しぶり、ですね」
短い静寂の後、慌てた様な、聞き覚えのある声が青年の下の方から届く。
――何だ、随分としおらしくなっちゃって。
シドがなだらかな曲線を描く女性の腰に手を添える。
すると、青年より頭一つ分程小さなその少女は小さく息を漏らし、シドの胸に体重をかける。
「ねぇ、厨(くりや)に言ってきてよ。今夜は宴だってね」
「あ、はい」
陰から覗いていた小姓に命令し、邪魔者が居なくなったところで、二人は体を離す
――あぁ、やっぱり。
立派な服(和服的なものをご想像ください)を着込み、控え目とはいえ化粧もしており、どこからどう見ても上流階級の人間。
それでも、シドは見間違わない。恋い焦がれる存在を見間違えるなどあってはならない。
笑みを深めた青年が、彼女の名前を呼ぶ。
「よくここがわかったね、アイ」
シドは、もう一度少女を強く抱き締めた。
そうして話は冒頭へ続く。
∞
宴会を終え、酔いの回った青年に肩を貸しながら少女が廊下を歩く。
「あーあ、久々にこんな飲んじゃったよ」
「……大丈夫ですか?」
今までの敵意をむき出しにした彼女からは考えられない程優しい言葉に、いつもの張りつめた仮面の笑みとは違い、青年の頬がだらしなく緩む。
そんな様子を平然とした様で眺めつつ、アイは天使の様な笑みを零す。
二人は本当の夫婦のようで、過去に大きな確執があったことなどは微塵も感じさせない。
やがて、シドの寝室に到着すると、アイは肩の荷物をゆっくりと寝台の上に下ろす。
一息ついた後、少女は背を向けてその場を去ろうとして――
「待った」
「っと!?」
帯を掴まれ、急遽立ち止まる。
当然掴んでいるのはシド。ぼんやりとした燭台の火に照らされた、満面の笑みを浮かべながら。
それに対してひきつったような笑いを見せながら、アイは尋ねる。
「な、なんでしょう?」
「なんでしょうって……ねえ」
くくく、と乾いた笑い声が響く。
――「なんでしょう」だって? 気取っちゃって、わかっているくせに。
「しようよ」
僅かに一言。それで十分という表情だった。
アイは視線を明後日の方角へ向けてとぼけるが、青年の誘いをそんなのでかわせるわけがない。
逆に、泣くふりをして、震える声で嘆願する。
「思い合う二人が久しぶりに会ったていうのに、営みもせずに別れるなんて……悲しいなぁ」
「……ってねーよ」
小さく、重い呟きが少女の口から漏れ出た。
はたして、それは青年の耳に届いたのだろうか。
一瞬沈んだ表情が再び笑顔に変わり、少女は言端に恥じらいを含めて言う。
「い、一回だけですよ? 大分お疲れのようですし……」
「もちろん。ほら、おいで。早く」
「ひゃっ!? んむ……ふ、ぅ……」
少女の口から許可が出た途端、シドは袖を強く引き、近付いたアイに無理矢理口を寄せる。
唐突すぎたからか、青年の肩口を押して体を離そうとする少女もいとわず、青年は口内をなぶる。
閉じた唇を割いて舌をねじ込み、歯並びをなぞり、唾液を啜り、反対に送り込み――満足するまで一通り蹂躙した後、ようやくシドが口を離し、大きく息を吐く。
「はーっ……たまんないなぁ、もー」
「……い野郎が」
「ん?」
「あ、い、いえ! 何でもありません!」
漏れ出た言葉を隠すためか、あわてた様子で事無しを主張する少女に、シドは意味深な笑みをアイに向ける。
それは、慌てる少女を微笑ましく思う笑みのようで、喜劇を一歩離れて見るときの笑いのようで―
「アイ」
青年が少女に呼び掛けた。
「君の言うとおり、僕は疲れてるみたいでね。体を動かすのも億劫なんだ」
「ッじゃあ――」
「だから」
今までとは異なる、内側から弾けるような少女の笑顔を、青年が言葉で抑える。
「君がしてくれないかな?」
数秒の静寂、それは少女が意味を理解するのに要した時間。
「はぁ!? じゃない、えと、え、ええぇ」
「簡単だよ。今まで僕がしてあげたみたいにすればいいんだから」
今日一番の取り乱した様子を見せるアイを、シドは優しく諭す。
「あ、あ、そんなの」
「してくれるよね? だって君が言ったんだよ。お疲れのようです、って」
「そんなつもりで言ったわけじゃ――ッ!」
「嬉しかったなぁ。だって君が僕の事を心配してくれるなんて今までになかった事だからね」
アイが言い切る前に追い詰める青年の様子は狩りのようで、少しずつ、少しずつ追い込んでいくその薄く開かれた目はネコ科の猛獣を思わせる。
断り難い幸せな雰囲気を醸し出すシドに、少女はたじろぐ。
うろたえた少女の背にさっと手をまわし、近くに抱き寄せ、目を合わせてから、青年は言い放つ。
「返事は?」
煌々と輝く細い眼が生むその重圧に、少女が逆らうことなどできるはずがなかった。
∞
アイの力無い肯定の後、二人は体勢を変えた。
少女が仰向けになったシドの胸のあたりに跨り、青年の顔に背を向ける形。
アイのぼんやりとした視線の先には屹立した男根があり、少女が小さく唾を呑んだ。
「早くしてよ」
「はっ、はいっ!」
――どうしてこんなことになったんだろう。
心の中で自分に問うたその問いに答えは出ず、急かされるがままに頭を落とし、腰を上げ、四つん這いになる。
むせ返りそうな男の匂いに、冷や汗が流れるも、こんな状況でやめるなど青年が許さないのが分かるほどには、アイはシドをよく知っていた。
――我慢……大丈夫……何度もされたこと、大丈夫……。
唾液に光る、赤い、小さな舌が伸び、目の前の醜悪なものの僅か前で止まる。
「まだー?」
後ろからは青年の呑気な声。シドの見えない位置で、アイの拳が強く握られる。
目をつぶり、震える舌を前に突き出す――
シドが別の体温を感じる。柔らかく、濡れた、何かから。
青年が口角を上げたのを、少女の位置から見る事はできなかった。
「ん……ふぅ……」
一度舌を付けた為に開き直ったのか、少し大胆に咥えこむ。
子供だけが持つ少し高い熱が与える心地よさと、生意気だった少女が従順になるその様子に、シドの興奮は高まり、次第に抑えられなくなるのは自明の理。
うすら笑いを浮かべながら、青年がすぐそばで忙しなく動く尻に手が伸ばす。
「っはぁッ!」
「ほら、続けなよ」
視界外からの刺激に、アイが顔を上げて悶える。
肩越しに恨めしげな視線を送られていることなど気にもせず、服の裾をまくり上げ、薄い尻肉の感触を楽しむシド。
「駄目だなぁ、君くらいの年ならもっと食べて、健康的にいかなきゃ」
「いっ、いじッる、の、やめろぉっ……!」
「ん?」
「あっ、ちがっ、あの……や、やめて、くぅ、だ、さいぃっ」
シドの下腹にしがみつき、交配をねだる犬のように尻を高く上げながら叫ぶ少女の声など、もっとしてくれと言っているようにしか聞こえないだろう。
事実、シドに止める気はなく、むしろ激しく指を動かし、少しずつ秘所を掠める。
「言っとくけど、僕が出すまで舐めさせるからね」
「!? 無、理、だよぅ……ひゃッ!」
「ねぇ……陽が出るまでやったっていいんだよ」
半ば本気のその声に、少女はゆっくりと上体を起こして未だ力強いそれに舌を這わす。
同時に、シドが本格的に秘所を弄りだす。
アイは悲鳴を上げそうになるも、シドのものを奥まで咥えこんでいるために声が出ない。
指が陰部に入れられる度に体を震わせるも、感じてばかりでは終りがない為に、目に涙を浮かべながら顔を動かす。
――よくもまぁ我慢するじゃないか。
与えられる快感に耐え、一心不乱に舐め続ける少女の姿に、シドが笑う。
「そんなに僕の事が嫌い?」
「ふ、うぅ、ぺろ……はっ、はぁ……むぐっ」
「……聞いちゃいないか」
シドがつい漏らしてしまった一言は、幸い――いや、不幸にもアイの耳には届かなかった。
そして、アイの必死の口撃がついに実を結ぶ。
「んッ……出すよ、アイ」
口に頬張ったそれが一瞬膨れ上がり、次の瞬間それが震えるとともに、白く濁った体液が中へ放出される。
二、三度と続いた強い波を終え、口を離したアイは身を起こし、出されたモノを脇に吐き出す。
「けほっ! かっ……は、かはっ」
身を襲った快感に耐える為に体をよじらせたことに、シドがはだけさせたのも相まって、アイの服は既に乱れており、青年に向けられた背中は殆どが露出している。
その病的なまでに白い肌には珠のような汗が浮かび、さらには喉に絡まった精液を吐き出そうと必死に咳き込む震えが背部にもまわり微かに震える。
暗がりに浮かぶその姿は、儚さと妖艶さを掛け持ち、たとえどんな性癖の持ち主だろうと、逆らうことなどできやしない誘惑。
「ふぅ……」
大体を吐き終え、疲れ切ったアイが、口の端から垂れる子胤も拭わずに仰向けに横たわる。
呼吸を荒げ、シドの目も気にせず、酸素を取りこむことにこだわるが――
少しは気に払うべきだったのかもしれない。
事実、この場で青年が向ける視線は慈しみなどではない。
どこを見るともしれない深い黒の瞳。
薄紅色に色づいた頬。
呼吸と共に上下する、薄い胸。
衣服がずれ、地肌に巻かれた帯の隙間からのぞくへそ。
微かな陰毛が愛液によって肌に貼りつき、蝋燭の火に反射する秘所。
シドの口元が、凶暴な弧を描いた。
すっかり力の抜けた脚を持ち上げ、開かせる。アイに抵抗する力は欠片も残っていない。
熱をもった秘所に自身をあてがい、一気に腰を突きだす。
「ッ!」
少女が短く声を漏らす。ただし、それは悲鳴ではない。
もう一度、抜ける寸前まで戻り、再び突き上げる。
「ひぁあッ!」
――もう間違いない。
シドが手を伸ばし、アイの顎をそっと支え、尋ねる。
「気持ち良いの?」
返事はない。その代わり、首を、小さく――縦に振った。
――はっきり気持ち良いって意思を示したのも初めてだな。
もともと、前回薬を飲ませた時、気持ち良いという感覚は染みついていた。
それが今、はっきりと認めたのだ。変わらない表情の奥で、青年は感動していた。
――『もうそろそろ』落ちるかな。
横になっていた少女の体を抱き起こし、頬に口づけをする。
「……本当に可愛いね、君は」
それから先、言葉は無かった。
青年は動物のように腰を振り、少女は最奥を突き上げられるたびに嬌声を上げる。
いつしかアイもシドの体を抱きしめ、シドはその締め付けに応える。
そして、青年の堰が切れた。
「ッく……!」
「んんんんぅッ! ふぁ、く……」
二度目にも関わらずアイの中に大量に精を放った後、シドが倒れこむ。
少女が慌ててその体を揺すった。
「お、おい……」
「……すぴー」
「は、はあぁ……?」
返事の代わりに青年の口から漏れ出るのは静かな呼吸。
抱きつかれたまま、少女がため息をつく。
「なんだよ、それ……」
――何か、もっと……。
そんな考えがアイの頭の片隅をよぎり、すぐに掻き消す。
そして、自分よりはるかに小さい娘のお腹を抱いて寝息をたてる男の頬をつつく。
「……本当に寝てる?」
答は無い。胸は規則正しく上下し、鼓動は穏やか。どこからどう見ても――
その瞬間、少女の顔つきが変わる。今までの優しい顔つきではなく、どこか険のある、皮肉交じりの笑顔。
「お似合いの死に方だな……ばーか」
アイの鼓動が速くなる。
気取られない様、ゆっくり、ゆっくり頭の上に手を伸ばし――
ふと、動きを止める。
それは、あるべきものがなかったから。
――そ、そんな……。
慌てて抱きつかれたまま付近に目を光らすも、見当たらない。
そもそも、燭台の火だけでは寝台の端まですら見えないのだ。
仕方がなく、少女が届く範囲に手を伸ばしたところで、指先に触れる硬い物。
「あっ!」
と、叫び、すぐさま口を塞ぐ。
懐の青年は、静かに寝息を立てている。
――よかった。あって。
震える手で『それ』をゆっくり引き寄せる。
それは――簪。出会った時、触られそうになったあの。
強く鳴り響く心臓の鼓動に震える手で、ゆっくりと本体の、二股になった部分を掴み、引っ張った。
表れたのは、本物の針。
長く、鈍く光るそれは立派に人を殺傷せしめる。
「ふ、ふふふ、ふふふふふ……」
「何が面白いの?」
――それは勿論、ようやくあの腐れ外道をこの手で――
そこまで言った後、おかしさに気付く。
この場には少女と、眠っていた標的一人だけ。
アイの背中を寒気が走る。
ゆっくり、ゆっくり振り向いた先に、そいつは居た。
特別早くもない動きで、アイの持つ針を取り上げて部屋の隅に捨てる。
逆らえなかったのは、初めて会った時の笑みを青年が見せていた為。
懐かしい、獲物をなぶる獣の目。
「お、お前……寝てたんじゃ……」
「あれ、敬語は? もったいないなぁ、可愛かったのに」
後ずさる少女を這いずって追いかける。だが、空間には限界がある。
やがて壁に行きつき、互いの距離は片方が手を伸ばせば届く位置へ。
「面白い物持ってるんだね」
「あ、あはは……」
逃げようにも、既に前方は固められ、後方は壁。
乾いた笑いを浮かべる事しかできないアイにシドは言う。
「さ、夜は長いよ?」
「い……いや……」
闇夜に悲鳴が、木霊した。
∞
文字通り一晩中愛し合ったシドが、窓から入る朝陽に息を漏らす。
「……ふぅ」
――僕もまだ若いな。
自嘲の笑みを浮かべながらシドは異臭を放つ寝床を見やる。
寝台の上には未だ呼吸荒く、白濁にまみれた少女が横たわっている。
あと少しで朝廷の時間。シドが朝服を急いで身にまとう。
「おい……」
「ん?」
体勢を変えず、さらに鳴き続けた為に半分枯れた声が、丁度剣を佩いた青年を呼びとめる。
自分のした事に対して全く心を動かすことなく、呑気な声が返ってきた事に、アイが唇を噛んだ。
「いつから……いつから、気付いてたんだよ」
「何だ、そんな事?」
壁に掛けた冠を取り、ついた埃を落として浅くかぶる
最後に剣を佩き、全ての準備を終えてから、青年が振り返る。
「最初っから、ね。そうそう、召使いに言って好きなだけ金を貰っていってくれ。残念ながら、時間が無いんだ。」
怨みを込めて睨みつける少女の顔を柔らかに撫でる。
「続きがしたかったら、僕が帰るまでここにいるといい」
心底楽しそうな声、別れのあいさつも無くシドが姿を消す。
「……畜生」
――遊ばれた。
その五文字がアイの頭の中で踊っていた。
対して、宮城へ行く道すがら、シドは昨夜の行為に思いを寄せていた。
――ふふ、七日は頑張れそうだ。
その考え通り、睡眠不足にもかかわらず足取りは軽く、顔色は良かった。
「気付いてるかな、アイ」
誰に言うともなく、青年が一人ごつ。
「体を重ねよう、って言った時、君はこう言ったんだよ
一回だけなら……ってね」
それはもしかしたら、シドの隙を突く為の苦渋の決断だったかもしれない。
しかし、その一方で、シドを見るだけで拒否していた時とは違う何かが、アイの中に生まれたという事。
一時とはいえ、体を許してもいいと思うほどに。
以上です。お目汚し失礼いたしました。
あと、上でGJくれた方、ありがとうございます。GJ一個でだいたい1000〜1500字は書く気力が生まれます。私の場合。
携帯からパソコンに送ってペーストすると、段落初めのスペースが消えると知って、Wordで推敲したので前回までと少し書式が違うのはご容赦ください。
毎度不要な世界観
アイの着ている服について
文中では和服をご想像くださいと書きましたが、厳密にいえば漢服というものを想像して書いてます。まぁ、和服自体漢服が由来の所もあるんですが……
その他服装について
最初のやつでひざ丈程のTシャツと書きました。これは普段着です。
まぁ説明が面倒なのでTシャツって書きましたが、ちゃんと帯で留めます。
浴衣みたいなもんです。なんで最初にこの言葉が出てこなかったんでしょう。
また、官人の正式衣は衣冠束帯。武官は帯剣、ってイメージです。男なんかどうでも……
GJ!
GJ
シドの話し方がいい…もっと鬼畜でもすてき
353 :
名無しさん@ピンキー:2011/10/03(月) 16:49:02.19 ID:bmkdaqSo
くそ、こんな見事に引っかかったのは久しぶりだ…
「見ろ!この雪みたいに真っ白なケツ!たまらねえな!」
「さぁいつもの賭けの時間だ!この穴が初めてか否か?」
「新品に銀貨五枚!」
「いーや!こんな上玉がやられてねえわけがねえ!違うに銀貨十枚だ!」
荒くれの男たちの怒声と異様な盛り上がりに、目の前のこいつは部屋の隅でただ小動物のように小さくなっているだけしかできない
お?そういえば大抵こんななりの連中は、大体このあたりで漏らしてるが、意外と頑張るな
「…賭け?何の?」
震える小さな声。周囲の賭けで盛り上がる男共の声にかき消されそうで
けれど、それに負けまいと反応を返して見せてくる
くくっ、弱気な自分を見せたくねぇってか?
俺は吹き出しそうになり、同時に股間に血が集まり押さえつけられた布で痛くなる感覚でさらに興奮することを自覚した
「ん?おめえが中古かどうか確かめんのさ!」
「…ちゅう、こ?」
へっ、やっぱわからねぇか。教えてやったらどんな顔するかねぇ
後ろではまだ賭けのやり取りが行われている
こっちでのやり取りを見ていて、新品に賭けようとした男と賭けの親で殴り合いが始まったがまぁどうでもいい
俺はその俺たちの手首の半分もなさそうな足首を掴み
「わからねぇか?なら教えてやる!」
逆さに吊り上げる形で一気に持ち上げる
「い、痛い。降ろして」
そして、そのまま下半身を負う布をまとめて引き裂きはがす
「…!」
不安定な姿勢のまま真っ赤になって腿を合わせそれでも隠しきれない隙間を手で隠す
ひゅー、いい反応だ
露わになった穴を指し
「これからこの穴に俺たちのコレをぶち込んで、いけないものを突っ込んだことがあるかどうか確かめるのさ」
一瞬目を見開いて、暴れだした
「やだ!やだ!やめて!やめて!」
「うるせえ、黙れ」
やかましいのでつかんでいた足を離し落とす
頭を打って痛みで静かになった
暴れても結局状況が変わらないと分かったのかおとなしくなる
「さぁ!一番掛け金が高かったのは誰だ?」
振り返り問う
一斉に一人の男に視線が集まった
しかもそこらの連中より背が高い俺たちの中でもデカくごつい奴だ
うちのバカどもの中でも一番の醜い。小柄な獲物にとって与える恐怖は相当だろう
それこそ、"より忘れられない思い出"にしてやれるに違いない
「よーし、それじゃ今日はお前だ」
ソレの鼻息が荒くなる
ああ、そういやこいつ童貞だったな
「さぁぶち込んで初めて交換でもしてやりな」
そう言って俺はデカブツに少年のケツを向けた
という夢で起きた
ショタかよw
で、続きはまだかね?
初めてというから、てっきり少年にデカブツのケツを向けたかと
笑いました。なるほど、最初の「見ろ〜」はそのまんま尻の美しさですか。こういうの好きです。
続きはあるんですよね?
と、この明るい中、自分の暗めの作品を投下するのは…申し訳ないです。
キャッチアンドリリース3.5になります。
持っていけと言われた金も貰わずに、あの悪魔の家を飛び出してから、早四日。
折角盗んだ上等な服も、獣道を駆け抜けた結果、ところどころが擦り切れていた。
残っているものと言えば、あの不愉快な笑い顔に突き立て損ねた暗器の簪。
この四日、口にしたと言えば、両手ですくえる程度の量。頭がお腹を鳴らし、栄養を催促する。
おまけに、体力を奪う秋の冷雨はこれでもかと言わんばかりの追い打ちを。
堪らず、私は視界の果てに見つけた、小さな洞窟に逃げ込んだ。
びしょ濡れの服の裾を絞り、疲れきった体を横たえる。
指先を動かすことすら気だるい。
このまま冷えた体を眠りに預ければ、きっと苦しみを感じることなく死ねると思う。
じゃあ、あいつは私が死んだら悲しむのかな?
ふと、目の前の岩壁にシドの顔が浮かんだ。
『全然』
……やっぱしな。
『僕に汚されたまま、一矢も報ず終わる君の姿なんて、想像するだけでも最高だ』
うるさい。
『君は良いの? そんな惨めな敗けを選んで』
良いのかって?
「良いわけないだろうが!」
自分で思い描いてしまった奴の、頭の中で響く嫌味ったらしいあの口調。
思わず本気の声が出てしまう。
腹が立つのは、本当に目の前にいるような気がしてくるくらい、鮮やかで、そっくりな、その姿。
細部まではっきり、『自分が』思い描いた。
「おまえはッ……どこまでッ……! どこまでッ!」
言葉は続けられなかった。
この上無く鮮明なそいつが、変わらない笑みでこちらを覗いていた。
その余裕が、堪らなく腹立たしい。
気付けば、いつの間にか抜いていた簪をその岩壁に叩きつけていた。
金属と石がぶつかる鈍い音の末、ようやくその幻想は消えていた。
外では雨が、音をたてて膝を叩き、笑っている。この情けない様子を。
あいつに刺さらなかった針を握りしめたまま、私の体は崩れ落ちる。
「お腹減ったよぅ……」
草の根を食み、川の水を飲んだここ最近。まともなものは口に運んですらいない。
さすがに永久に目を閉じかけたその時。
山の方から、茂みをかき分けるような音が私の耳に入った。
「!?」
山賊か何かだろうか? それとも木こりか?
兎に角、なけなしの武器を掴んで臨戦態勢に入る。
腰ほどまである草むらが揺れる。
二度、三度と動いた末、小さな、白い塊が姿を現した。
「わんっ」
それは張りのある鳴き声を響かせた後、洞窟内に駆け込んでくる。
雨の当たらないところまで来ると、体を勢い良く震わせた。
全身に生えた毛から、水気が飛んだ。
「い……犬?」
「わんっ!」
「ひぁ、きゃッ!?」
間抜けな声を出して、針を手にしたまま座り込む私にそれは飛び付いてくる。
消耗しきった体はその犬の立派な重さに耐えきれず、私の体は下になる形に。
「ひゃッ!? あは、あはは、止め、やめて……ッ!」
随分と人に馴れた様子で、冷えきった私の体を一心不乱に舐める犬。
くすぐったさに、久しぶりに作っていない笑いが零れた。
舐められてる感覚でも、この子のは不思議と気持ち悪くはない。
ふと、私は上に乗っている彼の体を抱き寄せてみる。
「……あったかいね。お前」
濡れた毛を介しても伝わってくる確かな温もり。
体温より冷たい空気に暑さを思うことがあるのに、生き物を熱いとは感じない、いったい何でなんだろう。
それからも、ただ抱きしめる。離さないように、離れないように。
目から流れた液体が、頬を伝って犬の背に落ちた。
「ごめんね」
たった一言の謝罪が犬の耳に届いただろう瞬間、私はまだ手にしていた針を彼の首に突き立てる。
刺された衝撃に犬は体を揺らし、爪を立てて私を引っ掻く。当然だった。彼からしてみれば裏切られたも同然だから。
正確に太い血の管を貫いた針を伝い、赤い色をした命の滴は地面に落ちて、吸い込まれていった。
ほんの数瞬前にあった温度は、どんどん指の間をすりぬけて寒空へと逃げていく。
「寒いよ……ねぇ……」
口の中で、小さく、何度も謝罪を繰り返した。
おしまい
以上です。お目汚し失礼しました。
これは物語として書き手が入れたかったエピかもしれないけど
エロとは関係ないことだし、ちょっと注意書きがほしかったな。
自分にとって鬼門のネタだった・・・。
し、しまった 草稿の段階でこの話は エロ無し 流血描写注意 入れなきゃ、と解っていたはずなのに…
不快な気分にさせてしまった方々に、深くお詫び申し上げます。
駄文のくせにこんな失態、本当にごめんなさい。
あと、書きたかったエピソードと言うよりは、幕間と銘打っているものの、これらは一応話を無理なく進めるために書いています。
本編のヤられるだけの話でアイの気持ちが変わっていくのは妙だ、ということで書いてるのですが…偉そうにすみません。
あと二話(4と5)で終わらせる予定なので、どうかご容赦ください。
最後にもう一度、迷惑をかけてしまった方々、本当に申し訳ないです。
乙乙
367 :
名無しさん@ピンキー:2011/10/18(火) 22:49:42.37 ID:jf5Cmm+j
ほ
どうも。
「神か悪魔の贈り物」第一章第十四話を投下させていただきます。
>>332の続きです。
あいも変わらず百合注意です。
「はぁっ……はぁっ……あ、あらぁ、シーリオぉ? もうへばってしまったのかしらぁ?
おほほ、年増の私達より若いのに、だらしないわねぇ」
「まあナオミ、あなただって」
嬉しそうにシーリオさんを言葉責めするナオミさんに、ドュリエス様はそっと手を伸ばすと、
股間のいけないお道具をぎゅっと掴んで左右に捻りました。
「あひっ!?」
「もう限界なのではなくって?」
くいっと引き下げ、ぐっと突き上げます。
「ひあっ、いっ、いけませんわっ! ああっドュリエス様ぁっ! 今はっ、んっ、あっ、やあっ!」
「おほほほほっ! 女なのに、おちんぽ扱かれて連続イき? はしたないわね、この年増!」
麗しの公女殿下はお手々でおちんちんを扱きながら、嬉しそうに罵ります。
自分も年増言われてたのは軽く無視です。
耐え切れず、ナオミさんも仰向けに倒れてしまいましたが、
ドュリエス様は激しい指使いでさらに追い撃ちをかけます。
「あっ、やっ、いっ、いけま、せ、ふあっ、あああっやああっ!」
「さ、あなたもシーリオみたいにしてあげるわね」
「ああっ! もっ、もうっ……ううっ、うぐぅぅぅぅぅっっっ!!!」
仰向けのまま腰を突き上げて、ナオミさんは達してしまいましたが、ドュリエス様は
まだまだ終わらせるつもりは無いご様子で、そのまま手扱きをお続けになります。
「はひっ、ひぃん……っ!」
「ほらほら! 我慢しなくて良いのよ!? 好きなだけイっちゃいなひゃあああっ!?」
とそこで、責めている側のドュリエス様が、何故か悲鳴を上げ、動きを止めてしまいました。
理由は、ドュリエス様の背後から前に回された腕にあります。
「ダメだよ、ドュリエス様。お尻に入れたおちんちんは、すぐに洗わないと、汚いでしょう?」
泡立てた石鹸を両手一杯に盛ったクロエさんが、大きなお胸をむぎゅうと背中に押し付けつつ、
ドュリエス様のお楽しみ棒をごしごしと容赦無くお掃除していたのです。
「んふぅっ! ふああっ! くっ、クロエぇっ!」
「なあにドュリエス様? 言っておくけど、ちゃんと綺麗にするまで止めないからね。
これ、後でボク達にも入るんだから」
「あっ、あっ、あっ、やっ、止めなくて良いからっ! も、もっとっ! 優しくぅっ! うーーっ!
優しく、なさいっ! んひっ、ふひぃんっ!」
「そういう訳にはいかないよ。シーリオのお尻の中の汚れがほら、こんなにこびりついちゃって。
しっかり力を入れないと、落ちないんだから」
ごしごし。ごりごり。
ぎゅぎゅっ。きゅぅーっ。
「ふぐっうぅーっ! きっ、きっついぃっ! なっ、ならっ、はっ、外してからにっ、なさいっ!」
確かにそうですね。
真っ当な御意見でしたが、クロエさんはしばらく無言でドュリエス様を見つめてから言いました。
「やだ」
「なっ!?」
そして更に強く扱きます。
「あっ、きゃあんっ!」
「……だって」
お口を「ぶー」と尖らせ、拗ねるクロエさん。
「皆、ずるい。シーリオは」
足元に虚ろな瞳で横たわるシーリオさんに目を遣り
「こんなになるまでドュリエス様とナオミにいじめてもらえて。アキは」
向こうでイーシャさんにまだまだイかされ続けているアキさんを指差し
「今日の主役のイーシャ様にあんなに狂わせてもらえて……。なんか、ボクだけ仲間外れみたい。
だから、ボクもこうしてドュリエス様をいじめさせてもらうんだ」
「んっ、ああっ、そ、そんな訳、無いでしょう……? あなただって、さっきまで、あひんっ!
みっ、皆に、あっ、相手してもらっていたではない、のっ、おおっ! おぉん!」
「そんな事言ったって……」
クロエさんは掴んだモノをくいっと持ち上げます。
「やうっ!」
「ボク、とってもとってもさみしがり屋なんだもん。もう、知ってるくせに……。それに」
今度はぐぐっと押し下げます。
「うっくぅん!」
「ドュリエス様だって、こうして無理矢理されるの、実は好きじゃないか」
「そっ、そんな、こと……っ!」
「とりあえず、イくとこ、見せて。ボクの手で、可愛くイかされちゃって」
クロエさんは、竿を握る手にさらに力を入れると、膣液を練る様にドュリエス様の中を掻き混ぜました。
「ああーーっ!! これダメぇっ! これダメぇっ! ダメぇぇっ! あっ、あっ、だっ、ダメぇぇぇ……っ!!!」
身をよじらせて達するドュリエス様。
おしっこの穴から、ぴゅーっ! と勢い良く噴き出したいやらしいお汁は張り型に遮られ、四方に飛び散りました。
「あは、いっぱい出たね、ドュリエス様」
クロエさんが指を離すと、泡まみれの欲棒は勝手にひくんひくんと上下に跳ねました。
「うわあ、おちんちんこんなに喜んでる。なんてやらしいお姫様だろう」
「ああ、やあ……言わないれぇ……」
ドュリエス様は顔を覆って恥じらいますが、その声は妙に嬉しそうです。
と、はしたなく動き続ける劣情の印に、ざあーっとお湯が掛けられました。
見ると、手桶を持ったナオミさんが、ドュリエス様のおみ足の間に膝を着いて座っていました。
彼女はさらに二度、三度とお湯を掛け、塗り広げられた泡を洗い流していきます。
「クロエ、ご苦労様。さあてドュリエス様、あなたの貪欲なおちんぽは、ちゃんと綺麗になりましたかしら?」
ナオミさんは、ひくつくソレに鼻を近づけ、くんくんと匂いを嗅ぎます。
「ふふ、まだ少ぉし、シーリオの残り香がしますわねぇ」
にやにや笑いを浮かべた侍女頭さんはそう言って、開いたドュリエス様のおみ足を掴んで閉じると、
その上にまたがって座り、動きを封じます。
そして腕を伸ばして石鹸を取ると、わしゃわしゃと泡立て、
いやらしく震えるドュリエス様のおちんちんを両手でそっと握りました。
「いや……ま、待って……待ってナオミ、待って、ダメよ、今ダメ、ダメ……待っ」
にちゅにちゅにちゅにちゅにちゅにちゅ……っ!
「んっおぉーーっ! やめぇっ! しごくのやめれぇっ! あ゛ーーっ! あ゛あ゛ーーっ!!」
暴れて逃れようとするドュリエス様ですが、下半身はナオミさんに乗られ、
上半身はクロエさんに後ろから羽交い締めにされ、身動きがとれません。
すぐに全身を波打たせ、おしっこをちょろちょろと流しながら、無理矢理イかされてしまいました。
もちろん、それでもナオミさんの指は止まらず、おちんちんを磨くように擦り洗いを続けます。
「お゛あーっ!! あ゛ーっ!! あ゛ひぃーーっ!!」
「まあ、ドュリエス様。シーリオにはもっとすごい可愛がり方をしたではありませんの。
それなのにあなたがこれでは、示しが付きませんわよ?」
「ドュリエス様、頑張って」
クロエさんは背後から激励の言葉を投げ掛けると、ドュリエス様の腰に絡まる革紐をしゅるりと解いていきました。
それを見たナオミさんは、再び手桶を取り、泡をすっかり洗い流してしまうと、
張り型の先端にちゅっと口づけ、深々と咥え込みました。
「んーっ、う」
そして、唇と歯でしっかりと掴むと、器用に首を前後運動させ、抽迭を開始しました。
「ふひぃぃっ!? んっふぎぃーーっ!!」
張り型を固定していた革紐は既に外されていますので、その動きはドュリエス様の中に直に伝わります。
ナオミさんが咥えたままソレを引き抜くのと、ドュリエス様がお潮を噴くのは、ほぼ同時でした。
「んっお゛っお゛ーー……っ!!」
背中を弓なりに反り返らせておみ足をぴんっと伸ばすドュリエス様をちら見しつつ、
ナオミさんは引き抜いた張り型をゆっくり吐き出すと、クロエさんに手渡しました。
「ん……どう? シーリオの味も匂いも、すっかり落ちたでしょう」
「どれどれ」
クロエさんは手に取った、すけべ汁たっぷりの短杖を、くんくんと嗅ぎました。
「あ、本当。ナオミの唾の匂いとドュリエス様のおまんこ臭しかしない。……ん、淫猥臭い、良い匂い」
「やぁん……」
嬉しそうに恥じらうドュリエス様。
クロエさんは張り型をその目の前に見せ付けるように突き出すと、
ドュリエス様に入っていた側を艶めかしく舐り回します。
「ん……れろ……。ナオミも、ほら。こっちの、ドュリエス様のくっさいすけべ汁も、ちゃんと綺麗にしないと」
「うふふ、そうね」
そして二人して両側から、唇と舌を使ってぬらぬらした粘液を嘗め取っていきます。
「おほほほほ。ドュリエス様、本気汁たっぷりですわ」
「シーリオのお尻、しっかり堪能したんだね」
お二人は言葉責めをしながら、次第にシーリオさんの中に入っていた方にも舌を這わせていき、
全体に万遍なく唾液を塗り広げました。
「おほほ、さあ、これで消毒終了ですわ」
ナオミさんはそう言ってお口を離すと、張り型を再びクロエさんに預け、
床に横たわるドュリエス様を抱き寄せます。
「あ……ナオ、ミ……?」
「うふふ、ドュリエス様、可愛いですわ」
「ナオミ……わたくしむうぅぅぅーっ!」
何か言いかけたドュリエス様でしたが、ナオミさんは唇で塞ぎ、遮りました。
そのまま体をにじり寄らせ、おみ足の間に割り込みます。
「んー、んんっ、んっ、ん……んんっ!? んーっ! んうーーっ!!」
うっとりしたお顔でナオミさんの唇を味わっていたドュリエス様でしたが、そこでナオミさんの意図に気付きました。
身をよじりながら、塞がれたお口からくぐもった呻き声を出して逃げようとしましたが、
ナオミさんはがっちり抱きついている上、クロエさんにも肩を押さえられてしまっているので
ほとんど体を動かせません。
「んんうー! んんうんんー!! んんうー!」
必死で抵抗するドュリエス様に構わず、ナオミさんはまだ装着したままの
張り型をお大事にあてがうと、一気に奥までねじ込みました。
「んうぅぅぅーーっ!?」
しばらくは押し付けるようにぐいぐいと腰を左右に小刻みに振り、媚肉に竿をなじませます。
それから唇を離し、公女殿下の背中に腕を回すと、ゆっくりと抱き起こし、向かい合うように座りました。
所謂、対面座位です。
ナオミさんの方がドュリエス様よりやや背が高いため、お互いの肩に首を乗せる格好です。
ドュリエス様は手足をばたつかせて弱々しく抵抗しますが、
ナオミさんは挿入したままぎゅっと抱き締め、逃がしません。
「いやあぁっ! これダメぇっ! これ深いのぉっ! ああーっ! やあーっ! もおっ、もおっ、やーっ!」
逃げるのは諦めたドュリエス様は、逆にナオミさんを抱き締め返し、抽迭を最小限に抑えようとしました。
確かにこの体勢では大きな抽迭は出来ません。
が、奥まで挿入したままぐっぐっと突き上げる事で、快楽に戦慄く膣内全体を淫らに虐めて差し上げられます。
結局、さらなる快楽に苛まれ、涙を流しながら喘いでしまう公女殿下なのでした。
「あああああっ! あおおぉーっ! んの゛お゛お゛ーーっ!!
はっ、離゛じでー! ぼう゛離゛じでー! ぼう゛い゛や゛あ゛……っ!!」
そんな二人からそっと離れ、クロエさんは意識があるのかないのか分からない虚ろな表情で横たわる
シーリオさんの脇にしゃがむと、お腹の上に張り型を置き、手で握らせました。
「シーリオ、これ、お願い。動けるようになったらで良いから」
そして、イーシャさんの隣に座ります。
「すごい、イーシャ様。お指も、もうこんなにお上手になってるんだ」
アキさんを責めるイーシャさんは、舌責めから指責めへと移行していました。
動けなくなったところに執拗に舌を使われ、何度も気をやり、何度も意識を手放したアキさん。
もう硬直も解け、今は意識もあるようなのですが、やはり手足を投げ出したまま動けないようです。
そこへさらなる指での激しい愛撫。
今やアキさんは、涙と涎を垂れ流し、時々低く小さな声で「ぁ゛ーー……ぁ゛ーー……」と喘ぐだけの、
お胸の大きな美少女肉人形と化しています。
「ありがとう、クロエ。もっともっと練習して、皆にも気持ち良くなってもらいたいです。
後で、あなたにもさせて下さい。講評をお願いします」
「あ……はは……い、いやあ、イーシャ様、もう十分上手だから、それは必要ないんじゃない、かな?」
アキさんの有様を見て、さすがのクロエさんもちょっと引き気味です。
まあ、引きながらも、イーシャさんの手でこんな風に快楽で責め狂わされる所を想像して
おませなお大事がきゅぅんっと反応してしまう幼侍女さんなのでしたが。
「ところでイーシャ様。もう体も洗った事だし、そろそろ湯船に浸かって温まらない?」
イーシャさんの手に自分の手をそっと重ねて制止するクロエさん。
「それで、湯船の中で、のんびりしよう。……もう今日は、良いよね?」
親指でアキさんのおさねを弾きながら人差し指と中指で膣壁を交互に引っ掻いていたイーシャさんは、
その動きを止め、顔を上げました。
お隣では、美しい姫君が綺麗なお姉さんの肉棒で犯されて、
悲鳴を上げながら強制的に絶頂を繰り返させられています。
その傍らでは、銀髪の美少女が虚な目で横たわり、半開きのお口から涎を垂らしています。
そして手元では、赤い髪の美人さんが、同じ様な状態で倒れています。
「……そう、ですね。私、やりすぎでしたでしょうか……。
少々、調子に乗っていたかも知れません……すみません」
「ううん、そんな事ない。それを言ったら、ボクたち皆そうだし」
クロエさんは、イーシャさんのうなじにそっと口づけます。
「イーシャ様が来てくださって、嬉しくて、ボク達もいつもより盛り上がっちゃった。こちらこそ、ごめんなさい」
「クロエ……」
「だけど、激しいのも良いけど、イーシャ様とまったりのんびりお話もしたい。だから、ね? ゆっくり温まろう」
「ええ、そうですね。そうしましょう。私も、クロエや皆と穏やかな時を過ごしたいです」
イーシャさんは、アキさんの体の下に手を差し入れ、抱えながら立ち上がります。
クロエさんも立ち上がり、そろって湯船に向かいます。
「いいなあアキは。イーシャ様にお姫様抱っこしてもらえて」
冗談めかして言うクロエさんに、イーシャさんは答えます。
「クロエも、やはりこういう風にされたいのですか? でしたら」
「いや! ふ、普通に! ……普通に、抱きかかえてくれると、嬉しい。……後でで、いいから」
「はい。喜んで」
にっこり微笑んでそう言うイーシャさん。
クロエさんは感謝の言葉のかわりに、体をぴったり寄り添わせます。
その背後から
「しっ、シーリオぉっ!? いっ、いつの間にぃっ!? ああっダメぇっ!! そっちの穴ダメぇっ!!
ああっ!! 挿れちゃダメぇぇぇぇっ!! んあ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛…………っ!!!」
という公女殿下の悲鳴が聞こえましたが、とりあえず今は置いておいて、
三人はそのまま揃って、ゆっくりと湯船に浸かるのでした。
続く。
以上です。
ではまた。
GJ!!!
相変わらずエロくて良いですなぁ
376 :
名無しさん@ピンキー:2011/10/30(日) 00:48:06.60 ID:pBwIPnaD
GJ!
投下します。
「魔女とその弟子」全10レス予定(変に規制に引っかからなければ)
※注意 寝取られ要素があります。
「これキッシュね。鳥と野菜が入ってるから。
冷えちまっても、あたしのキッシュはいつ食べても旨いから大丈夫」
幅広のスカートを履いて髪を結い上げた、いかにも働き者といった
風情の女が籠を持ってそう説明をした。白い布をかけて蓋にしているが、
籠からは絶えず食欲をそそる良い匂いがしていた。
その籠を若い男が受け取る。明るい茶色の髪をした、柔和な雰囲気の男だ。
名をタランという。タランはいかにも恐縮したように頭を軽く下げた。
「いつもどうもすみません」
「何言ってんのさ。アニエスにはこっちだって世話になってる。
それに皆、アニエスには感謝してるよ……。こないだうちの宿六が
腰をやられたときだってアニエスの作った湿布がよく効いたしね」
そう言って女は屈託なく表情を崩して笑う。
それを聞いてタランもまた、薄く微笑んだ。
「良かった。……お師匠様にも伝えておきます」
アニエス・ヴェグナーは魔女だ。
それは、この村では誰もが知っている事だった。
なかなかの美人だが変わり者。村外れの小さな家に住んでおり、不思議な力を持っている。
さまざまな植物や、あるいは生物の死骸から、毒や薬を作ったり、
妖精や精霊と言葉を交わして異界の力を使うと、そう言われていた。
実際に村の人間が知るアニエスの力は、主に前者のものに限られてはいたが。
村の人間は詳しく把握してはいなかったが、どうやら別の村や町、
時には王都からも人が来て、アニエスの魔法を購っているようだった。
アニエスがやって来たばかりの頃、最初に村にあいさつに来たのはタランだった。
魔女だ、とは言わなかったが言外にそれを匂わせて「何かあれば相談して欲しい」と
控えめにそんなことを話していた。
自分はその家の下男兼アニエスの弟子なのでなにかあれば用利きに来ます、とも。
だが、村の人間としてはアニエスが何者なのか分からない以上
最初はつかず離れずの距離を保っていた。だが、ある時村の子供が
高熱を出して死にかけたときに、それを知ったアニエスが魔法で薬を
煎じて命を救ったことがきっかけとなって、親しく付き合いを
持つようになったのだった。
まぁ元々、村の若者の何人かはアニエスがやって来たばかりの頃にも
自ら付き合いを持とうとはしていたのだが。
鴉の羽のように艶やかな黒髪と菫色の瞳を持つ、謎多きアニエスは
彼らの目にたいそう魅力的に見えたのだ。
まぁ実際はアニエスにあしらわれておしまいではあったが。彼らの
感想としては「怒ったアニエスの剣幕はバアちゃんそっくり」だそうだった。
親しくなってからは話し好きの女たちは何だかんだとタランを
質問責めにした。彼女たちの聞くところによると、タランは元々は
街で暮らしていた小さな商家の次男坊だったらしい。
だが今は人好きのする風の彼も、当時は問題児だったらしく
目的もなく放埓な生活を送る彼に親が堪忍袋の緒を切らして
勘当されたということだった。そんな折、アニエスの魔法を知り、
自分もできるならばその異能の力を手に入れたい、と無理やり
押しかけるようにして弟子入りしたらしい。
だが師匠のアニエスに至ってはタランもどこの出身なのか、
どうやって魔女になったのか知らないということだった。
それが村の人間の知る魔女とその弟子の事情だ。
「タランさん」
帰路をたどろうとするタランを幼い声が呼び止める。
振り向くとそこに明るい藁色の髪をおさげにした少女がいた。
リディアという、アニエスが以前に命を助けた少女だった。
「やぁ。どうしたんですか?」
「あのね、前に頼んでたおばあちゃんの薬できたかなって」
「ああ」
リディアの祖母は関節痛に苦しんでいた。そのためアニエスは、リディアの家から頼まれて
痛みを和らげる薬を作っていたのだ。それはそろそろできあがるはずだ。
「多分もうすぐできると思うけど。できあがったら僕がリディアの家に届けにいきますよ」
「あ、そうなんだ……」
そう言いながらもリディアは手を体の後ろで組んだままもじもじとしている。
リディアにはまだ何か言いたいことがあるのだ。
「……お師匠様に会いに来ます?」
タランが聞き返すとリディアの顔がぱっと明るくなった。
リディアは命の恩人であるアニエスに大層なついていた。
「行く!!」
そう言ってリディアはタランに続いて、跳ねるような足取りでアニエスの家までの道を歩いた。
アニエスの家は村からは少し離れた所にある。元は森の入り口にあった、打ち捨てられた庵だ。
それがいつの間にやらきれいになっており、アニエスが暮らしていた。
傍には家の広さ以上の庭が作られており、そこでは様々な花が咲き乱れていた。
リディアはその庭がとても好きだ。深呼吸をすると草の匂いと甘い香りが混じったにおいがする。
うきうきと庭を渡り、アニエスの家の扉を叩こうとしたリディアだが、
「――リディアだろう、入っておいで」
中からそんな声が聞こえてきて思わず息を飲んだ。
振り向いてタランの顔を見ると、彼は苦笑してうなずいている。
リディアがそっと扉を開けると、中では魔女アニエスがテーブルに軽く腰をかけて微笑んでいた。
「こんにちは、リディア。この間頼まれた薬ならもう出来たよ。持って帰るだろう?」
アニエスの物言いは独特だ。良く響くまろやかな声で男の子のような喋り方をする。
そしてアニエスは今日も黒い髪をくくりもせず、結い上げもせず背中に自然に流していた。
それがリディアは好きで自分もそういう風にしたいのだが、祖母などは
「小さな子供でもないのに髪を上げないのは非常識。アニエスは魔女だから
仕方がないが、リディアは絶対に駄目」とこれだ。
「ねぇねぇっ、どうしてわたしが来たこと分かったの?」
リディアはアニエスのスカートにまとわりついて尋ねた。
薄紫のワンピースからはかすかにハーブの匂いがする。
ゆるやかに膨らんだ胸元にはエニシダの刺繍がしてあった。
リディアは刺繍が苦手だがあの意匠はきれいだと思い、今度母親にベストを作ってもらう時には
同じ刺繍をしてもらおうと心に決めた。
「ふふ、なんでだと思う?」
そう言ってアニエスは悪戯っぽく笑う。
「なにしろ私は魔女だから。森の鳥にでも教えてもらったか、ネズミにでも聞いたか」
「いや、窓から見てたんですよ」
横で、テーブルの上のすり鉢などを片付けていたタランがぼそりと言った。
謎かけに勝手に横やりを入れられて、アニエスがかっと怒りを口に出す。
「タラン!!」
「だって、なんでここでそんなしょうもない嘘をつく必要があるんです」
「お前なぁ、私は一応魔女で売ってるんだぞ。
魔力があると見せつけなくちゃいけないじゃないか」
「今のペテンじゃないですか」
そのやりとりに思わずリディアは吹き出した。それを見てアニエスも笑う。
怒ったり笑ったり、アニエスは子供のように表情をくるくる変える。
リディアにとってそんなアニエスはとても親近感の湧く存在でもあった。
「それじゃ、いいかいリディア。これを鍋で煮出したら、触っても大丈夫な
くらいまで冷まして布に浸してからおばあちゃんの膝にあててあげるんだよ。
火傷には気をつけて。こっちは飲むほう」
アニエスはリディアのもってきた袋にそれらを入れると、一緒に絵で説明を記した
紙を入れていく。出されたお茶を飲んで、菓子をちびちび食べていたリディアは
袋を受け取ると、そうだ、とばかりにアニエスに言った。
「あのね、お父さんとお母さんが話してたんだけど……。
なんかね……今度、また新しい司祭さまがくるんだって」
それを聞いてタランの体がぴくりと動く。
この村の近くには教会の管轄の土地があり、そこには領主の屋敷にも劣らぬ屋敷がある。
そこはこの近隣の教区主の屋敷だ。
王都にある聖教会によって教区主を任じられた聖職者がその屋敷に住まうのだ。
そして以前に屋敷の主であった司祭はこの村では正直なところ嫌われていた。
中年の男で、どうやら王都で自身の地位をあげることに腐心していたようだったが
急にこの田舎の村の監督に回されて当てが外れたとずいぶんと荒れていた。
田舎の村の人間なぞ、目に入れるのもいやだという態度をやってきた時から崩さず、
村人の歓迎に返したのは冷笑と侮蔑であった。
当然村の人間とは折り合いが悪く、村の牧師などは司祭と
村の間に挟まれて体調を崩したほどだ。
「あの人嫌いだった。すごくやな人。王都に帰ってくれてほっとしたのに、
今度また新しい人が来るってお父さんたち言ってて……。
司祭さまなんかいらないよ。牧師さまがいれば教会には行けるもん。
……多分、もっとくわしく分かったらアニエスにも話してくれると
思うけど早めに知っておいた方がいいかなって思って」
アニエスはにこっと笑うとリディアの頭をなでた。
「そうなんだ。教えてくれてありがとう」
誉められてリディアはうれしそうに頬をほころばせた。
それを微笑ましげに見ていたアニエスだが、そっとリディアを諭しはじめた。
「だけど、司祭さまがいらないなんて言っちゃいけないよ。
政(まつりごと)はご領主さま、教会のことは司祭さまが
リディアたちの村の面倒を見てくれているんだから」
「……だって前の人、アニエスにひどいことしたんでしょ…?」
リディアは具体的には知らないが、前の司祭がいた時の大人たちの反応で何となく理解していた。
「今度の方は、立派な方かもしれないだろう?」
しばらくうーんと考え込んでいたリディアだが、そうかもと呟くと小さくうなずいた。
アニエスはそっとリディアの背中に触れて言う。
「いい子だ。さぁそろそろお帰り、お母さんが心配してしまうよ」
帰り際、リディアは袋を片手に元気よく手を振っていた。
「じゃあ、また来るね! ばいばいっ」
それを見送っていたアニエスだが、隣にいたタランが不意に
くっくっと低い声で笑い始めたために、思わず眉をあげた。
「なんだ」
「魔女のくせに『さぁ人を信じましょう』みたいな言い方。
アニエス、あなた修道女の方が向いてるんじゃありません?」
男の姿は、先ほど少女の前にいた柔和な表情の若者のままだったが
身にまとう雰囲気はがらりと変わっていた。
「……なんのあてこすりだ」
「たいした愉快な目に合わされて、まだ教会関係者を信じてるなんてね。
ずいぶんおめでたいな、とそう言ってるんですよ」
またタランは笑う。だがその目は微塵も愉快さを湛えてはいなかった。
暗く、鋭い光をひそませている。
「……別に信じているわけじゃない」
「そうですか? なら、良かった。……提案なんですけどねアニエス。
今度は事が起こる前に障害を取り除いておきませんか」
そう言う男の、足元の影が歪に形を変えていった。
「村に到着する前なら事故で済みますよ、不幸な……ね」
ひょいと出された男の右腕もまた人のそれではなく、猛禽の足のような形に変わっていた。
その先には鋭い鉤爪がついている。アニエスはその変化を驚きもせず見つめていたが、
男の言葉には黙っていられず口を挟んだ。
「よせ。あえてかまうな」
「何でです」
タランはアニエスに鉤爪を伸ばすと、アニエスの背中にそれを回した。
爪を押し当てられながらアニエスはまっすぐに男の昏い瞳を見据える。
「――悪魔タラン。私との誓いを覚えているか」
アニエスの弟子を自称する男は唇をゆがめた。
タラン。彼は商家の次男坊ではない。人ですらない。
彼は魔女アニエスと契約した、彼女の悪魔なのだ。
「あなたと契約してる間は“人間をむやみに傷つけることなかれ”。そう言いたいんでしょ?」
「分かっているなら結構だ」
だがタランは納得のいかない様子で斜に構えたままアニエスに言う。
「……えらく庇うじゃないですか」
「別に庇っている訳じゃない。これから来る奴のことなんか知らないんだから。
ただ単に同じ教会関係者だからといってひとくくりにはしない、と言っているだけだ。
私を……凌辱、したのは前の司祭で、次に来るのは別の人間なんだから」
タランは思わず無意識に唇を噛み締め、不意の痛みで胸を占める不快感に気が付いた。
前の司祭は信徒を導くどころか月に一度の村の訪問も億劫がっていた。
だが、田舎の権力者として振る舞えることに気が付きはじめると生来の
ものなのだろう、好色さを現しはじめ、村に滞在するときは見目の良い少女たちを
使って酌をさせたりと聖職者としてはあるまじき振る舞いをし始めたのだ。
そして誰から聞いたのか「この村には魔女がいるらしい」などと言い始め
真実ならば由々しき自体、自分が魔女審問をする、などと言ったのだ。
魔女でないという第一の証明は生娘であるということ。
村の娘たちが生娘かどうかを確かめるという言い種に村の人間たちはいきり立った。
司祭は気に入りの娘を邸に連れて行こうとし、泣いて許しを請う娘本人とその親との間で騒ぎを起こした。
そこにアニエスが仲裁に入ったのだ。
アニエスはあまりよろしくないと思しき司祭がやって来た当初から、自衛のために
司祭が村にいる時には近寄らないようにと村の様子を鳥の目を通して見たり
ネズミの耳を通して聞いていたが、こうなるともはや見過ごしてはおけなかった。
薬師だと名乗り「徳高い司祭が来ていると聞いて村を訪れた。
ぜひともその娘ではなく、自分を連れて行って欲しい」と訴えた。
薬師はよく魔女だと言われることも多いが、疑いあらばぜひ自分のことを
お調べくださいと言い添えて。しばらく考えていた司祭だが、アニエスの
胸元や腰つきを見て連れていくことを決めた。
言葉を失っている村の人たちにアニエスは笑みを向けた。
自分は大丈夫だ、という事を示すために。
「大した事じゃない」
そう言ってアニエスは今もまたタランの前で微笑んでいた。
だがタランはそれが気に入らない。吐き捨てるような声音で言った。
「あなたは大したことなくても、こっちは大迷惑です。
あなたに頼まれた偵察から帰ってみれば村の連中には縋らんばかりに詰め寄られるし、
行ったら行ったで、あなた下手くそな魔法をあの男にかけてるし」
「下手くそで悪かったな」
アニエスは司祭に抱かれながら、魅了と暗示の魔法をかけていた。
男はアニエスを抱いた所で変わらず次もまた、村の娘に手をつけようとするだろう。
だからアニエスは男が自分の言いなりになるようにと試みていたのだ。
タランは不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「結局、あの男にお帰りいただく暗示をかけたのは僕だし。
アニエスにはああいうやり方は向いてない。面倒はごめんです。
もうあんまり手間をかけさせないでくださいよね」
「……じゃあ次はもっとうまくやるよ」
苦笑していたアニエスだがふいに息を切った。
タランが人の形に戻した手でアニエスの腕を掴んだからだ。
どことなく不穏なものを感じて、アニエスはこくりと喉を鳴らした。
「次ってなんです」
「なに……。べ、別にたいした意味はないよ。お前が手間をかけさせるな
とか言うから、じゃあ次は迷惑かけず一人でやる、と……」
タランは唇を引き上げて笑った。
「もし次も下種が来たらまた下種の相手してやるわけですか」
「必要ならそうするってだけだ。……ただそれだけなのに何だ、
なんで今日に限ってそんなに私に絡む!?」
そう言ってアニエスは腕を掴む手を振り払った。
その瞬間、タランは激しい怒りにかられた。何に対する怒りなのか自覚しないまま、
凶暴な気持ちでアニエスを強引に自分の傍まで引き寄せる。
噛み付かんばかりの勢いで唇の横に口付けると、驚いたように目を見開くアニエスの
体を抱きすくめた。だがアニエスも必死で、タランの顔を手で掴んで
引き離そうともがいていた。
「……いきなり、何……するっ」
「聖職者をたらしこむつもりなら、今のままじゃ心許ないでしょう。
仕込んであげようと思ったんですよ」
「な……っ」
タランはアニエスがひるんだ隙にそのまま力ずくでその場に押し倒す。
「ちょっと、嫌だこんな………離せっ!」
身をよじって逃れようとするアニエスを押さえつけタランは
彼女を上向かせる。そしてその唇に唇を重ねた。
「んん……んっ」
舌に舌を絡まされ、そのままねっとりと責められてアニエスは声をあげた。
どうにかのしかかる体を引き離そうと腕でタランの胸を押すのだが、男の体はびくともしなかった。
タランはアニエスを押さえつけたまま、片手で彼女のスカートをたくし上げる。
「いや……、いやだってばっ!」
抵抗も何のそので下着をずらすと入り口を探り、わずかに潤み始めたそこを
指で刺激しながら、ずぷと先端を差し入れた。
「あ……、あっ」
その場所をくにくにと巧妙に刺激してやるとアニエスが何かをこらえるように眉を寄せた。
細い手が、タランの袖を掴む。
「なかなか悪くない反応で」
微笑むとタランはアニエスのむきだしになった太腿を指先でつつ、と撫でていった。
「…………ッ!」
顔をのけぞらせ、びくんと身を震わせたアニエスはの横にタランは手をつく。
そのままゆっくりと彼女の上に覆いかぶさろうとした時。
どがっ、という音が響いた。アニエスがタランを蹴ったのだ。
「なにすんですか、ひどいな」
痛いというより驚いてタランは後ろに腰を下ろす。
「やかましい!!……もうっ、あああ、もぉ……っ」
アニエスはめくられたスカートをばっと直し、真っ赤な顔でぷるぷると震えていた。
反応が面白くてじっと見ているとその目じりがかすかに光ったことにタランは気がついた。
「……ちょっと乱暴に押し倒したくらいで、泣かなくたっていいじゃないですか」
「誰が泣いてるか!! 別に泣いてない!」
その釈明にタランはこれ見よがしにため息をつく。
頭の後ろに手をやって、やれやれと言わんばかりであった。
「なんかもう気が抜けちゃいましたよ。……なんなんですか、もう……。
それでどうやって誘惑だのするんです。それともその気になれば
妖婦みたいに振る舞えるとでも?」
アニエスは、そんな風に聞いてくるタランから少しずつ
距離をとろうとするも、スカートの裾を掴まれ阻まれた。
「……その気というか、覚悟というか」
「結局する事は同じじゃないですか」
「わ、私にだって心の準備ってものがある」
「準備しておけば、覚悟さえ決めとけばどんな事だって平気?」
そうだと返事をしようとしてアニエスはひるんだ。タランが剣呑な目でアニエスを見たからだ。
「……アニエス、言っときますけどね。あなたのやり方で解決できる事と
できない事があることは理解しておいてくださいよ。この間の奴は小者だった。
だからどうとでもできると思ったんでしょう。でも狂信者は魔女の誘惑には応じない。
強い信仰心に生半な暗示は効かない。火に油を注ぐ行為だ。絡め手の通じない
面倒な相手はさっさと殺すに限るんです。追いつめられる前にね。
結局、前のあいつも、あなたが止めるからとどめをさせなかった。
正気を戻して本物の魔女がいたとか吹聴したらまずいでしょうに」
その言葉にアニエスは反論できない。そこにも真実があるからだ。
タランは大きくため息をつく。
「……平行線みたいだから、今回はとりあえずあなたをたてて様子を見ます。
でもなにかあれば今度こそ殺しますよ。甘ちゃんな、あなたのとばっちりを食うのはごめんです」
「……わかった」
「それならいいです」
そう言うとタランはアニエスの側ににじり寄り、その肩をぐっと押した。
「なに」
アニエスは思わず怪訝そうな声を出す。
「さっきの続きですよ」
「続き、するのか!?」
「当たり前でしょ。血が上っちゃった分は鎮めてもらわないと。
……ああ、また蹴られても困るから確認しますけど、心の準備は
あとどのくらいでできそうです?」
煽られ揶揄られて、アニエスは思わず顔を赤くした。だが、不意に視線を逸らして言う。
「もう、平気……できてる……」
その返事にタランの表情が好奇の色に染まった。
「へーえ」
「けど、ここじゃいやだ。……寝室に行きたい」
タランは笑みを浮かべてやおら立ち上がると、アニエスの手をとった。
「決まりだ」
寝台の上で、二人は互いの服を脱がせあう。タランが脱がせようとしたワンピースが
引っかかると、アニエスは腕をしなやかに動かして、まとわりつく布を脱ぎ捨てた。
白い裸身が薄闇に浮かび上がる。細い首、鎖骨から乳房へと続く稜線をたどり、
タランはアニエスの胸のふくらみに触れた。大きさは手のひらに収まるよりもやや大きいくらい。
吸いつくような感触を楽しみながら五指を使ってもみしだいた。
「あ…、あ……っ…いたい、タラン……」
ぎゅっと強く握りすぎたらしく、アニエスが小さく不満の声をあげた。
そっと離した、その左の乳房。その下のあたりには三日月のような、
猫の爪のような印がついている。入れ墨のように黒い印だ。
これは昔にタランがつけた契約の印であった。
まごう事なきアニエスがタランの魔女である印。何とはなしにそれを見ていると、
ふとアニエスが目尻を赤くそめて目をそらした事に気がついた。
何かと思えば勃起したタランの男性器を直視しないようにしているのだ。
タランは悪戯心を起こしてアニエスの手を引っ張ると自身のものに当てた。
「ひああぁっ」
手のひらから伝わる熱とその感触にアニエスは悲鳴をあげた。
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか。
ほら、この形を覚えていてくださいね。あなたのなかに入れるモノの形……」
「やめろ変態!! わ、わざわざこんなことして何が楽しい!
するならさっさとすれば良いじゃないか! お前は変態だっ!」
「ははっ」
タランの前ではアニエスは時々、未だに物慣れない生娘のような反応をする。
幾度も抱いているのにだ。これが演技ならたいしたものだがタランにはアニエスの反応はわりかし愉快であった。
だが今日は間の問題か、ふと嫌な事を思い出す。
アニエスは背徳の司祭にどんな風に抱かれたのかと。
魔法をかけようと懸命だったようだが、肉体を蹂躙されて平静でいられたものか。
痴態を見せでもしたのかと。時たま生娘のような反応を見せたからといって
アニエスは処女ではない。悪魔とつがう魔女なのだから、快楽を肉体に覚え込んでいるのだから。
「タラン……?」
アニエスの声に不安そうな響きがこもり、その声で我に返ったタランは自戒した。
基本的にアニエスとの行為は彼女から魔力を受け取るのが目的だが、
今日のように単なる楽しみのために体を繋ぐこともある。
そのいずれも楽しむのがタランの信条だ。
なら、余計なことを考えるのは時間の無駄というものだ。
「来て」
タランは微笑みながらあぐらをかいて座り、アニエスを自分の方へと導いた。
肉付きの良い尻に触れ、やわやわとその感触を楽しみながら足を肩幅に開かせる。
「あ……ッ」
敏感な部分に熱く硬いものを押し当てられ、あまつさえそこをこすられて
アニエスの体にはこらえないようのない快楽のさざなみが走ったようだった。
蜜を絡ませながらやわらかなその場所を押し広げると、ぬぶぬぶと亀頭だけをそこに埋めた。
「あっ、あ……」
「これ以上は自分でいれて」
そう言って突き放すとアニエスがちらっともの言いたげにタランをみた。
「そんな顔したってダメ。ほら頑張って」
「だって、だって……ぅああっ」
ずぶ、と深く埋めようとするも快感に浸るには腰がひけ、
膝に力をいれて体を持ち上げると挿れたモノが抜けてしまいそうになる。
それを繰り返していると、アニエスはかえって酩酊の具合を見せ始めた。
「あああ……あ、あっ」
「これは、これで……気持ちいいかも…でも、アニエス…ちゃんといれてってば…」
「あ……ふ、うっ、うう…」
タランの要請にアニエスはタランの肩に手をかけて、掴まりながら腰を落としていく。
ずぶずぶとアニエスはゆっくりと身の内に、そそりたつ肉柱を納めていく。
タランは自身をしめつける、温かな感触に愉悦の笑みを浮かべた。
何とか最後まで挿れてしまうと、アニエスは息をつきながら
タランへともたれかかってきた。それを抱えゆっくりと揺すりあげる。
「入ってる入ってる」
「ゆら、さな…で……あっ!」
腰を掴まれたまま中をかき回され、アニエスは声を殺して天井を仰いだ。
快感を感じる場所に当たったのだ。そこをぐりっと刺激すると
タランを掴む手に指に力がかかり、肩に爪の感触を覚えた。
「ん……あっ、あっ、ああーー」
タランを納めているその場所がきゅうっと収縮する。
瞬間、タランは射精感に呻いたが、その場では何とかこらえ、
アニエスの中から引き抜いてそのまま彼女を横たえた。
黒髪を汗で張り付かせたアニエスは呼吸を乱しながら何とか自分を
取り戻そうとしているようだったが、まだ体は敏感なようで触れると
ぴくんと小さく震えた。その膝を軽く掴んで、タランが挿入しやすい
姿勢をとらせると、最初は咲き染める前のつぼみのようだった
その場所はアニエス自身の愛液とタランの先走りとで濡れ、花開いていた。
見つめられる羞恥からアニエスは頬を染め、目をつぶる。
身を起こしたタランはその瞼に唇をつけ、お互いの上半身が触れ合うほどに
密着して彼女の中を穿っていった。
柔らかい体は抱きすくめるとタランの体にぴったりとくっつくようだった。
ずぶっ、ぬぶっ、ぬぶっ、ぬめる液体が潤滑材となって先ほどよりも深く繋がっていく。
いやらしい水音と、肉体自体のぶつかる音が響き、お互いの興奮を高めていった。
「アニエス、…う……くっ」
「……あ、あっ、だ……だめ、だめっ! あっ、あーーっ」
眉根を寄せて押し寄せる快楽に耐えていたアニエスだが、ついに限界が来たらしい。
ぶるっと震え、反動で中のタランをもわななかせた。
それが呼び水となって欲望が白い奔流となってぶちまかれる。
その全てを受けとめたアニエスはタランの腕の中でぐったりと身を緩ませていた。
しばらく心地よい疲労に身を浸りながら、アニエスを見ると、彼女はいつのまにか
眠ってしまったようだった。目をつむり静かに呼吸している。
「……アニエース?」
名前を呼んで見たが返事はない。やはり寝ているのだ。眠っているアニエスは
起きている時よりも少し稚く見える。それが白濁で汚れているのが実に退廃的だった。
タランはふと身を起こしてアニエスの乳房に触れた。そしてあたたかく柔らかな膨らみに
刻んだ印をなぞる。魔女と悪魔とを繋ぐ印。それをタランは黙って見つめていた。
今、心の内には怒りも激情もない。薄曇りの夜の空のようにただ穏やかに凪いでいた。
そもそもなぜあんなに怒りを覚えたのかが自分でも謎だった。
(……アニエスが無謀で頑なだからだ)
悩んだ末、その考えに思い至った。
(魔力をくれるっていうから契約してるのに。馬鹿な真似して殺されたりでもしたらどうするんだよ)
アニエスが死んだら、定期的な魔力の供給源がなくなってしまう。
見境なく人間を襲うのは今ではもう億劫だった。
だからいなくなったら困る。
そう結論づけてタランは、改めてアニエスの隣に横たわった。
彼女の黒い髪の一房をつかみながら、もう一度心の中で繰り返す。
(死なれちゃ困る。だから死なせない。絶対に。
もう……アニエスは、誰にも連れていかせない……)
そして瞼を閉じ、タランもまた夜の闇の中に意識を預けていった。
だが、彼が心中で呟いたその内容がわずかに変わったことに
彼自身はまったく気がついていなかった。
(おわり)
以上です。読んでくれた人はどうもありがとう。キッシュについては
「後でスタッフがおいしく頂きました」という事にしてください。
それでは。
おおー なんかうまいなー
雰囲気が出てますよね、引き込まれちゃった
乙age
乙乙
キャッチアンドリリースの続きはまだなのか…
ほしゅ
キャッチアンドリリース読みたいです…
投下します。
「背徳の司祭」のタイトルで全12レス
>>378-387で投下した「魔女とその弟子」の続きです。
※注意※
以前に投下した分の話よりも時間軸は過去になります。
以前寝取られてどうのこうの、と話していた部分の話になります。
そのため寝取られ要素にご注意ください。
また、気にするほどではないかと思いましたが一部エロとは
関係なく流血してる人がいるのでご注意を。
NGはタイトルでお願いします。
タランは湖のほとりで湖面を見下ろすようにして立っていた。
月は中天、それだけが明るく辺りの景色を浮かび上がらせている。
周囲は黒い影のような木々だけで人里は遠く、獣の気配しかしなかった。
ざわざわと梢が鳴る。タランは湖面を見据えたまま口を開いた。
「精霊エリュドアーレ。まだここに棲んでるんだろ。
聞きたいことがある。出てきてくれないかな」
反応はない。タランはもう一度その名前を繰り返し呼び掛けた。
「さっさと出てきてよ。大したことじゃないよ。ついこの間ここで魔法か
何か儀式を行った奴がいるだろう。それが誰か知りたいだけだ」
だがやはり何も起こらず、湖面はただ風を受けてわずかに揺れただけだった。
タランは舌打ちをすると、おもむろに自分の片手の形を変えた。
鋭いかぎ爪がついた、短い羽毛に覆われた手だ。そしてもう片方の手のひらを
わずかに切り裂いて傷をつけると、その手をまっすぐに伸ばした。
じわりと滲み出た血が、湖面の側へと傾けた指をつたってポタポタと落ちていく。
だが、その赤い雫は湖面に落ちる前に止まり、弾けて霧散した。
すると急に水面に波紋が広がっていき、その波紋の中心から女性が現れた。
女性は、一目で人間でないと分かる容姿だ。青く透き通った体に虹彩のない瞳。
額には鱗のようなものが張りついており、それがやわらかな光を放っていた。
そして遅れて女性のやや後ろに、上半身は人と同じだが鱗のある長い下半身を
持った女たちが控えるようにして現れたのだった。
女性は唇を動かさず声を発した。
『穢れた血を妾の中に入れるな。醜き者よ』
その女性の言葉にタランはにぃっと唇をつりあげた。
「ようやく出てきたね、湖のヌシが。さっさと質問に答えな。もう帰りたいんだよ僕は」
『お前の問いに答えてやる必要を感じぬ』
「たかが精霊のくせにずいぶん居丈高じゃないか」
『貴様、御方さまになんという口を』
『はよう去ね、二度とその姿さらすな』
侍る女たちが尖った歯をむき出しにして吠える。それを見てタランは笑った。
「はは」
おもむろにタランが腕を振ると空を切る音と共に、湖の主の額に向かって
黒い錐のような塊が飛んだ。湖の主が眉を歪めると、その足元から
水が渦巻きながらはい上がり錐を包み込み押しつぶすようにして流していく。
タランは湖の主から向けられた威圧のようなものを受けとめると悪びれなく言った。
「ただ質問に答えてくれればいいだけなのに。こんな無粋なことさせないでくれよ」
『無礼な恥知らず者め。妾の前からその醜き姿を消すがよい』
湖の主はタランに向かってゆっくり腕を持ち上げたが、横から聞こえた
ひっ、という声にその手を止める。意識を向ければ女たちのうちの一人の腹に
黒い錐の先があてられていた。
「おっと危ない。もう少しで、お取り巻きの体に大穴が開いちゃうね」
湖の主の額に水のゆらめきのような筋が浮かぶ。
諦めたように主がかぶりを振ると、湖面の上に細かな水の粒で幕ができあがった。
タランが目をすがめて見つめているとその幕に蜃気楼のような影が映り始めた。
『湖こそ妾、妾こそがこの湖。妾が見た風景の記憶の残滓がこれだ。
これを見たら疾く去るがよい』
映っているのは男だった。頬のあたりに複雑な紋様の刺青がある。
その身にまとったローブはくすんだ灰色だが、至るところに赤黒い染みがあった。
男はふらふらと湖に近づきながら水際に膝をつく。
「女神エリュドアーレ……、我らの愚かさをお許しください」
遠いが確かに聞こえる声は男のものであろう。
「不甲斐なき我らのせいで湖の底にお隠れになったのは存じております。
信仰を捨てた者どもは私自らが誅しましてございますゆえ……」
そう言うと男は懐から短剣を出し、それを掲げる。
先が湾曲したその短剣は血に染まっていた。
「……私の血族ももはや私を残すのみ。ですがいずれ他の地に逃れた者が
戻ってまいりましょう」
男の目はらんらんと輝いている。まるで狂った獣のような目であった。
「その時まで、我ら一族に授けられた守護を失うわけには参りませぬ。
女神よ、どうか我が命を来たる日までの糧にしてくださいませ」
それだけ言うと男は短剣の刃を己の手首にあて、勢いよく滑らせた。
痛みに顔を歪めながらも男は、ぼたぼたと落ちる血で円を描く。
出来上がった円の中心に座すると男はぶつぶつと何事か低く呟いた。
すると鮮血で描かれた陣が光を発したのであった。
「おお……我が、女神よ……!」
男が、命も魂も捧げようとしている女神の徴を見たのは実に数十年ぶりの事であった。
彼の妻も子供たちでさえも女神の力や存在を疑い、新たな神の信仰へと
帰依し、女神と男を裏切った。
男は、己がしている事の正しさを証明した思いで歓喜した。
そして次の瞬間、湖の水が渦巻き立ち上ったかと思うと、
光る陣ごと男を飲み込み、その身体を水中へと引きずり込んだ。
女神と呼ばれたエリュドアーレは、男の命と魂と献身の心、
短剣が吸った幾人もの人間の血とそれにまつわる怨嗟を糧に
湖の底からもう一度その姿を現した。
そしてかつてのように湖に眷属たちを呼び込んだのであった。
「なーんだ」
タランが頭の後ろに手を組んだまま気の抜けた声をあげた。
「ご信徒さんがあんたの復活のために魔法を使ったわけね」
湖の主は水晶のような瞳を遠くに向ける。主が体を動かすと青い雫が
キラキラと舞って落ちた。
『……あれは妾に力を与えるため命を捧げ果てた。見上げた忠義よ。
あれの子がまだおれば、妾は十全の護りを授けたものを。
少なくともあれと血の繋がりしものは、妾の好意を受けるであろう』
「女神ねぇ」
タランは含みのある口調で言った。案の定、女たちの雰囲気が不穏なものになっていく。
「湖に隠れてたってのは、もうその姿を保つので精一杯だったからだろ?
力が足りなくて威厳を保てないから。……憐れだねぇ、新しい信仰に人間を
奪われたカミサマってのは。ああもう信徒もいないんじゃカミサマじゃないか」
『妾を侮辱するつもりか』
「いいや、ただ同情してるだけ。だってさっきの生贄さんのおかげで
また力を取り戻したみたいだけど、このままじゃ百年も経てばまた逆戻りだろ」
『いずれあれと血の繋がりし者の誰ぞかが戻ってくる』
タランはそれを聞いて鼻で笑った。
「戻ってくるもんか。もう新しい場所で新しい生活してるんだから。
あんたも女神だとか何とかそんな驕りは捨てて信仰の力に頼るんじゃなく
湖から離れて水精として生きるなり、なんなりすれば?」
『誇りも何も持たぬ、やくたいもない妖魔に言われる筋合いはない。
我が一族はいずれ必ず妾の元に帰ってくる! 妾の守護を求めて……』
「――あっ、そう。好きにすりゃいいさ。馬鹿馬鹿しい」
するとタランの鼻先を飛び魚のような羽根の妖精たちがヒュンと飛んで過ぎた。
驚いたタランが視線で追うと、妖精たちは湖の主の周りを旋回して飛んでいた。
すると湖の主の唇が笑みの形に変わる。主が腕を持ち上げると、妖精たちは
魚の姿に戻り、しばらく腕の周りをくるくると回っていたが、その透き通った
体の中へと入り湖へと戻っていった。
『わらわの“目”と“耳”がお前の魔力を辿って面白いものを見つけたぞ。
久しぶりに血族以外の魔女を見たが、この娘がお前の契約者か。
ずいぶんと騒ぎになっているようではないか、お前のねぐらは』
それを聞いてタランの顔色が変わった。
「詳しく話しな」
『こざかしい仕掛けがしてあったせいで、この子達にはそれ以上は見も
聞いてもいないようだ。……醜き者よ、間に合うといいな。
新しき信仰の徒はまつろわぬものにどう振る舞うかよく知っているだろう』
「…………!」
タランはすぐにでも戻りたい衝動にかられたが、今この場で湖の女たちに
向かって背を見せることに激しい抵抗があった。
湖の主はそんな彼の狼狽ぶりを嘲笑う。
『妖魔が一匹いきがって、巣を離れたすきにそれを壊されて慌てて戻るか。
なかなか滑稽な姿よの。……安心おし、妾はお前ごとき手にかけたりはせぬ。
言ったろう、穢れた血はいらぬ。妾の元から疾く去るがよい』
タランはぎりっと奥歯をかみ締めたが、急ぎ黒梟に転身すると
来た路を全速力で飛翔した。
村の近くに降り立つと、たたらを踏みながら人の姿を身にまとう。
急いで中に入ると、村に張ったアニエスの結界は破れてはいないようだった。
思わずほっと息を吐く。
(まだ、殺されてはいない……)
歩みを早めると、村の中は確かに大騒ぎだった。
松明を持った男たちが頭をつきあわせて深刻な顔で話し合っていた。
女たちもその周りで心配そうな顔をしてたたずんでいた。
「馬でご領主さまの所まで行こう。お力添えいただくのだ」
藁色の髪の男ががっしりした体にいくつかの荷物を抱えて言った。
だが、隣の男が首を振る。
「今から行ったって無駄だよ……もうアニエスは連れて行かれたんだから」
「その後の話だ…! 万が一にでも魔女は火あぶりだなんて話が出たらどうする。
知り合いがそんな目にあう所なんか誰も見たくないだろ。
それに、うちの娘はアニエスに懐いてるんだ。……一生の心の傷になるぞ。
ご領主さまはお優しい方だ、異端にも寛容だと聞く。事情を話せば
きっと力になってくださる」
どう話を振ったものか迷っていると、村の女の方が先にタランに
気がついてバタバタと駆け寄ってきた。
「ああ、タラン……あんたどこに行ってたんだよ! この大変な時に」
「お師匠様に頼まれ事をされていて……一体何があったんですか?」
複数の人間から話を聞いてタランにも大体の事情が飲み込めた。
そしてタランは心の中で毒づく。
(馬鹿じゃないのかあの女……ッ! あれだけ慎重に様子を窺ってたくせに
一番最悪のタイミングで名乗り出て。村の娘なんか見捨てりゃ良かったんだ)
「タラン……、大丈夫かい?」
声をかけられ我に返ったタランは思わずこめかみに手を当てた。
「すみません、ちょっと……驚いて」
「そうだろうね……ああでもどうしたら良いんだ。
若いのは武器をもって押しかけろとか息巻いてるし」
「……そもそもアイツが娘たちに色目を使い始めたあたりから
男たちは我慢ならなかったみたいだよ。でも、押しかけるって言ったって
相手は何たって司祭様だ……真っ向から歯向かったらどんな事になるか」
「だからって放っておくのかい! アニエスは村の娘をかばって
あの男の所に行ったんだよ! 傷ものにされるのを承知で!」
「傷ものだって!? あんたそんなはっきり言うんじゃないよ!!」
「だってそうじゃないか!」
村の人間同士で争い始め、収拾がつかなくなりそうになってきた所で
タランは強く手を打った。パン、という破裂音が大きく響く。
その場にいた全員がタランの方を向いた。
「大丈夫。アニエスは魔女です。なにか策を考えてるはずです」
力強い言葉であったが、村の人間の数人はでも……と呟いた。
またタランは手を強く打つ。次は皆、タランの目を見た。
先ほどまでの喧騒が嘘のように村の中は静まり返っていた。
(――そうだ、僕の目を見るんだよ。上手く暗示にかかってくれよ。)
タランは三度まばたきをすると目を大きく見開いた。
その瞳孔が不思議な色を放っていた。
「心配しないで。……さぁ皆さん。このまま家に戻って朝を待っていて。
大丈夫、すべて上手くいく。アニエスは、上手くやる。何もかも大丈夫」
その言葉と共に、タランの瞳を見つめていた村の人間たちの目が、
夢に落ちるようにふっと焦点を失った。
そしてそれぞれがきびすを返すとふらふらと自分の家へと戻っていった。
誰もいなくなった村の真ん中でタランは司祭の屋敷の方向に顔を向け、
強く睨み付けていた。
*
司祭の館の一室でアニエスはただ一人待たされていた。
部屋の中は薄暗く、おそらくは香がたかれていた。
大きく息を吐いてアニエスは胸元を押さえた。
(大丈夫……きっと、うまくやれる)
アニエスは司祭を暗示にかける心づもりだった。自分の言うことに従うようにだ。
そうすればあの男を村から追い出すことができる。
村の娘が毒牙にかかる前に一刻も早く出ていってもらいたいのだ。
行為の最中であれば相手は完全に無防備になる。暗示もかけやすかろう。
なるべくならあの手の輩とは関わりを持ちたくはなかった。
だが、こうなっては仕方ない。むしろ普通に暗示をかけるより、
性的な関係を持ってかける方が操りやすいかもしれない。
そう自らに言い聞かせアニエスは覚悟を決めた。
部屋を照らす燭台の炎が揺らめいている。
アニエスは口の中で小さく呪文を唱えた。ぽ、ぽっと丸い光が目に見える
ようになりその中心に火と光の精霊がいるのが分かった。
アニエスは髪を数本引き抜くと魔力を編み、光の精霊に話しかけた。
小さな身体をチカチカさせて精霊は答える。
アニエスは知っていた。ある種の精霊は人の目をごまかす業が使える。
服の布地ごしに胸の契約印に触れ、精霊に問いかけた。
これを今ひととき人の目に見えなくする事はできるかと。
精霊はチカチカッと強く光を放ち、アニエスの周りを飛んだ。
魔力をかけた髪が溶けるようにして消えていき、代わりにぱちん、と
小さな泡がはじけるような音がする。魔法がかかったのだ。
アニエスが礼をいうと、精霊ははにかむように瞬いて姿を消した。
しばらくすると、戸の向こうから複数の人間の話し声が聞こえてきた。
(来た……)
アニエスは思わず身構える。くだんの男は酒瓶を手に、部屋に入ってきた。
聖職者らしい慎ましさや清らかさも、人を導くに足るカリスマも
感じられない男だった。野心を抱くも挫折し、そのために世を
拗ねているようなそんな中年男だ。男は法服ではなく、薄い夜着の
ようなものを身につけており、飽食と怠惰による醜悪さを
露わにしていた。
「待たせたかね。身支度をしていたのでね」
「いえ……」
立ち上がったアニエスの近くに腰掛けると、男は体を揺らして
寝台をきしませた。手にした器に酒を注ぎ、それを一息に呷る。
そして口元に滲ませた赤い酒の滴をぐいとぬぐい、男はにやりと笑う。
「さて、アニエスといったかな。……聞くが、おまえは本当に魔女なのか?」
その視線を受けてアニエスは笑った。というよりも、顔を笑みの形に
作ったという方が正しいが。ひきつっていなければ良いと思ったが、
男の反応を見ると問題はないようだった。
「それは……司祭様がお調べの上で判断されることではありませんか?」
「なるほどな」
アニエスの言葉に男は、頬杖をつきながらゆったりと言葉を返す。
しばらくアニエスの体をねめつけていたが、では、と切り出して男は言った。
「確かめようではないか。魔女は体に印があると聞く。……服を脱ぎなさい」
言われるがままにアニエスは服の紐をゆるめ、それをばさりと床に落とす。
明かりに照らされた裸身を男はじっくりと見つめていた。
「ほぉ……これは、なかなか……」
形良く膨らんだ乳房に、小さな桜桃の実のような乳首。
すっきりとした腰に小さな尻。
それをじろじろと無遠慮に眺め回すその視線にさすがにアニエスも
羞恥を覚え、わずかに頬を紅潮させた。男は唇をわずかに舐めて湿す。
「こちらへ」
手招かれ、近寄ると男はアニエスの体にべたべたと触れ始めた。
「どうにも印らしいものはないようだな……」
「………っ!」
わざわざ男は乳房を執拗になで回し、その頂をなぶる。
ふるふると震えるそれを手のひらで揉みしだきさえした。
身体の線を指でたどられてアニエスはそのざわつく感触にぞっとした。
印はいくら男が眺めまわしても見つからないようだった。
男の目的は別であり、本気で見つけようともしていなかったが、
アニエスが本来あるものを隠していたのは確かだ。
男の手は下腹部を辿り、丘を下りその奥へと突き進む。
「………っ!」
男の指はアニエスの秘唇を割って強引に中に入っていった。
だが、そこが青い果実のように強く押し返す感触がなかったことに男は眉を上げる。
「お前は……処女ではないようだな。分かっているのか?
婚姻をしていない女が処女ではないということはそれだけで罪深い……。
それともお前はその若さで既に寡婦か?」
「あ……やっ、あ…」
男の太い中指に内側を乱暴にかき回され、アニエスは声をあげた。
大して濡れているわけでもないそこを弄られて感じるのは
快楽よりもむしろ痛みだった。
「寡婦ならば、若い身体をもてあましているのではないか」
「……わたし、は寡婦ではありません。夫を持った事は
ない……です、から」
「なんとまぁけしからん娘だ。魔女だと疑われても仕方がないことだぞ。
……さぁ、こちらへ来い。魔女かどうかきちんと確かめてやる」
ぐい、と手を引かれアニエスは寝台の上で男に抱えられるように
腰を下ろした。背後から抱きすくめながら男はアニエスの乳房を揉みしだく。
形が変わるほどの乱暴さで扱われてアニエスは悲鳴をあげた。
「いた……、痛い……っ」
腰のあたりに男の屹立を感じる。興奮した男は彼女の首筋に
熱く息を吐きかけながら体をまさぐっており、アニエスは胸を
占める不快さと共に肌に鳥肌が立つのを感じた。
行為の主導権を男に与えたままではいけない。
そう思うもののアニエスは焦りからか上手く捌くことができず男の
勢いに引きずられ、蹂躙されるがままにいた。
男はアニエスを寝台に押しつぶす。
「膝をたてろ」
うつ伏せにされたアニエスは唇を引き結んだまま従わなかったが、
かまわず男は彼女の腰をつかみ、後ろ側から入り口をさぐった。
「ぅ……ああ」
指でその場所を広げられアニエスは思わず声を漏らす。
男は媚肉の柔らかさをしばし楽しんでいたが、場所を定めると
組み敷いた女を一息に貫いた。
「あああああっ」
襞を肉の剣で押し広げられる痛みにアニエスは思わず叫んだ。
熱く体の内を埋めるおぞましい感触に意識が一瞬白く塗りつぶされる。
男は具合良いとばかりに息を吐いた。
「……ふ、う…っ、犬のように……つがうこの体位は魔女の体位と
言われるそうだ……! いいぞ、女……もっと力をいれて締め付けろ!」
ずぶ、ずぼっ、と出し入れされてアニエスの
その部分は己を守るために体液を滲ませていた。
「あ……ぐう……っ、うっ」
「なかなかお前も気分が出てきたようではないか……!」
後背位の経験はアニエスにもある。だが、このように
力づくで犯されると痛みと嫌悪感で気が遠くなりそうだった。
「うっ、うっ……あああ、んんっ」
「いいぞ! いい……出るッ」
ずぶっ、ずびゅびゅっ、と男は女の柔筒の中に欲望を注ぎ込む。
熱い濁流を注がれてアニエスは突っ伏しながら唇をかみ締めた。
「――――ッ!!」
「ふ……ふふ、この体位で気をやるとは、魔女のようではないか」
「は……あっ……」
放心の態のアニエスの体を男は裏返し、その唇を吸おうとした。
「いや……っ!! 嫌!」
するとアニエスは激しく拒絶をし、嗜虐趣味の気のある男は
その反応にそそられて強引に唇を重ねた。
「ん……んん…っ」
蛭だ、とアニエスは思った。蛭が唇に、首筋に、胸元に落ちて這っていく、と。
男はアニエスの中で再度力を取り戻し、張り詰めた肉棒で中をかきまわした。
アニエスの体にだんだんと、ぞわりした感触が広がっていく。
(……気持ちがわるい…)
このままでは自分が保てない。
嫌悪感と恐れだけでは術がうまくかけられるはずもない。
危機感を覚えたアニエスは、自分に触れる男の手をその唇を、
いつも自分に触れるそれと思えるよう目を固くつぶった。
それは触れ方も感触も全く違う。それでも意識して快楽の方へ気持ちが
振れるよう努力した。明滅する意識の中でアニエスは従順に
腰を動かし、必死に記憶をたどる。
(「――アニエス」)
そして自分の名を呼ぶその声を思い出す。
それだけでアニエスの心は少しずつ落ち着いていった。
次に目を開けたときアニエスは己がなすべき事を思い出した。
村の娘たち。恋のおまじないや、占いが大好きで、口うるさい
大人たちの目を盗んでやってきてはアニエスにそれらを頼み
屈託なく笑う彼女たち。アニエスは彼女たちの可愛らしさが好きだった。
罪なく汚れもない、そんな可愛らしさが。
彼女たちには幸せな恋や、愛を掴んでほしかった。
――だから。
(守らなくちゃ……)
男の手がぐっとアニエスの体にかかる。一度精を放たれた場所は
ぬるついて、最初よりずっと男の抽送を容易にしていた。
「あ……、あ」
熱を湛えながら感極まったような振りをして男の欲望を誘う。
どくんという感覚と共に二度目の精がそこに放たれた。
それを受けたアニエスはしばらくの間、くったりと横たわっていたが
弾む息が落ち着くと男の手を取って言った。
「……司祭さま」
艶のある声で相手を呼び、その手をしっとり濡れた乳房へと導く。
「わたし、こんなの初めてで……。ほら、胸がまだこんなに早く鼓動を
打っているのがお分かりになりますか?」
吸い付くような感触を楽しみながら男はやに下がった顔をする。
「おお、そうか……。だがな、快楽に酔うのは良いことではない。
罪深いことだからな。まぁしかしそれも仕方のないことだ。
お前たち女にはこれがついているのだから。誘惑の罪を犯すものがな」
そう言ってアニエスの性器に触れる男の言動に一瞬アニエスは
剣呑な目を向けそうになったが、穏やかな笑みを浮かべながら
それを隠し、男に足を絡ませた。
「司祭さまのなさることなら罪とは見なされませんわよね。
でしたら……もっと、してくださいませんか……?」
そう言いながらアニエスは男に嫣然と微笑んだ。
その紫の瞳が揺らめくように光を帯びる。
(暗示をかける時は、相手の意識を自分に集中させる)
前に教えてもらった事を思い出しながら、アニエスは司祭の目を
じっと見つめる。揺らめく光は男の精神を確かに乱し始めていた。
表情に淫らさを滲ませ、欲望に目がくらんだ男はアニエスにふらふらと手を伸ばした。
「よかろう……可愛いやつめ、今宵は楽しもうではないか」
だが、その手をアニエスは掴んで止めた。
「待って」
「何故だ、なぜ止める……!」
「気持ちいいことをしたいでしょう。ならば私の言うことを聞いて」
「なんだ、なにを聞けと……っ」
アニエスは男の逸物に触れ、撫でさすり怒気をゆるめさせると
三度瞳を瞬かせ、男をじっと見つめた。すると段々男の目がとろんと
夢うつつのようになっていく。アニエスはゆっくりと言い聞かせるように、
男の無意識のはざまに刻みこませるように言葉を紡いでいった。
「それでいい。……眠りに落ちる前に私の声を聞くがいい。
穏やかに甘い眠りを貪りたければ、私の言葉に従え」
「おまえの……言葉……したがう…」
「そう、それでいい……。私の言うことには全て従うと誓え。疑いをもたず」
「全て……従う…」
うつらうつらと男は頭を傾かせながらアニエスの方へと倒れこんだ。
寝台に伸びた体はぴくりとも動かなかったが、男のその目は見開かれたまま
何を映すでもなくただ小刻みに揺れていた。
(このままこの男が意識を失えば、その後の行動が掌握できる……)
アニエスは冷たい瞳で男を見つめていた。
こんな男はずっと術をかけていた方が世のためのような気もしたが
今自分が行っているのはどう言い繕おうと、人の心を操る魔の術だ。
ずっとかけていたら男の精神は壊れてしまうだろう。
だから首尾よく男がこの村から出ていったら従属の効果は切れるようにしなくては。
その時に上手く事がまわるよう偽の記憶も必要か……と考えていたその時だった。
突然、窓の方からガンッ、バンッと何かがぶつかるようなすさまじい音がした。
アニエスは驚いてそちらを見たが、その音に男もまた目を覚ましてしまった。
そして何が起きていたのか気付かぬまま飛び起き、目をしばたかせた。
「……何の音だ! いったい……なんだ!?」
その目には今やはっきりと色がある。男は自分を取り戻してしまったのだ。
アニエスは思わずほぞを噛んだ。何が原因か知らないがあと一歩だったのに、と。
すると、またガンッと音がして窓の留め金が外れて落ちた。
窓が開かれ、風が室内へと入ってくる。それと一緒に、逆光になって
ただ黒い影にしか見えない人物が桟を乗り越え部屋の中に入ってきた。
アニエスはあっけにとられ、男は恐怖に顔を引きつらせながら見ていると
その人物は顔をあげ、口をきいた。
「こんばんは、司祭様」
その声にアニエスは目を見開く。
「良い夜ですね」
そう言って声の主はくっくっと喉の奥で笑った。もう間違えようがなかった。
(タラン……)
まさか来るとは思わなかった。彼はほかならぬ自分が命じて魔法が
使われた箇所の捜索に行かせたのだから。今、村には自分一人しかいない。
だから、自分だけで何とかしなくてはいけないと思っていたのに。
「なんだかずいぶんお楽しみだったみたいですね」
そんな事を言いながら一歩ずつ近づいてくるタランに、司祭はおびえて
寝台の上を後退り、壁にどんと背をつけた。
「なんだ……お前は誰だ、何者なんだ……!?」
タランがちら、とこちらに視線をよこす。
アニエスはなぜか急にいたたまれない気持ちに苛まれ、うつむいた。
それを静かに見ていたタランだが、その目を壁に張り付いたままの男に向けた。
「ひっ……」
男の悲鳴を愉快げに聞き流し、タランは男の方へと手の平を向ける。
「よせっ……!」
ちらつく殺意を見とがめてアニエスはタランと男の間に割って入った。
舌打ちと共にタランは反射的に手首を返す。じゃっと空を裂く音がして
男の首のすぐ横の壁に斬り裂いたような傷がついた。
「ひいいいいっ!」
「邪魔するんじゃないよ、アニエス」
歩いて近づき、タランは割って入った彼女を突き飛ばすようにして
その場所からどかした。そして再度男に手を伸ばす。
震える男の首筋にその焦点が定まった。
「が、ぐあっ……」
タランがぐっと力をかけるように動かすと、離れている男の首元に手の形が浮き上がった。
そのままタランが腕を動かすと共に男の体が宙に浮かんだ。
「ぐ…る、し………っ!」
空中でバタバタともがく男を見てアニエスは慌ててタランの腕にすがり付いた。
「よせ……やめろ!!」
魔法を使うその手を下げさせようと必死に力をかける。
「殺すんじゃない!」
「何でさ。意外とこのオッサンの事が気に入っちゃったとか?」
だがタランの腕はびくともせず、そして邪魔をするアニエスの事など
見もせずにそんなことを言う。さすがにアニエスも腹がたち、タランの腕を
放り投げるように離すと叫ぶ。
「違う! いいか、こんな男でも殺したら教会が黙ってない。
それこそ魔女を殺せ、悪魔を殺せって話になるぞ」
その言葉にタランが初めてアニエスの顔を見た。目は笑っていないが、
話を聞く気にはなったようで剣呑さがわずかに削れている。
アニエスは息を吸ってもう一度叫んだ。
「真っ向から聖職者たちと一戦構える気か? こんな男のために
そんな危険をかぶるのはごめんだ。穏便に済ませよう、タラン……!」
しばらくじっと考え込んでいたタランだがふと表情をゆるめた。
「なるほど……一理ある」
そう言ってぱっと手を開くと苦しんでいた男の体がどさりと落ちた。
シーツを乱しながら男はゲホゴボッと男は激しく咳き込んで喉を押さえていた。
タランは寝台にのぼると、ずかずかと男の近くまで大股に歩いていく。
「…………っ!」
近くにしゃがみこむと、タランは恐怖に歪む男に向かって首を傾げて見せた。
「オッサン、良かったね。アニエスが僕を説得できて。死ななくて済んだよ」
そしてにっこりと笑う。その表情は思いの外優しく、男は一瞬だけ
恐怖を忘れて息をついた。だがタランは次の瞬間豹変し、男の頭に
手をかけるとぐしゃっと乱暴に押さえ付けた。
「だけどね覚えておきな。下手に女に手を出すとこういう目にあうんだよ」
ぐぐ、とめりこまんばかりに力をかけられた男のうめき声が響く。
そして仰向かせると、爪をたてるようして男の顔を掴んだ。
その近くに膝をつき顔を合わせると、うなるような低い声で言った。
「僕の目を見な、このクソ野郎……!」
アニエスは音もたてず、事の成り行きを見守っていた。
タランの瞳が部屋の中で、暗闇の中の獣のように光っている。
そうしてしばらくの後にタランは男を解放した。男は放心状態のまま呟きを繰り返していた。
「かえる……王都に、かえる……そうだ、こんな所にいてはいけない」
言いたいことは色々あったが、アニエスはもう口を挟まないことに決めた。
タランは男を捨て置き寝台から立ち上がるとアニエスに声をかける。
「行くよ、これ以上の長居は無用だ。早く支度して」
「わかってる。ちょっと待って」
言われた本人はようやくおおっぴらに動けると、シーツを引き寄せて
巻き付けながら自分の服を探していた。
「……ずいぶん素敵な姿にされたじゃないか」
「やかましい」
タランの言葉に構わず、アニエスは服を取ろうと身を屈めた。
だが次に立ち上がった瞬間、ぱたぱたっと生白い液体が足の間から
落ちてきて思わずひっと声をあげてしまった。
それを見て憎まれ口を叩いていたタランですら、さすがにばつの
悪い顔をして押し黙ってしまう。アニエスは恥ずかしさと情けなさで
頭に血が上ったまま無言で服を引き掴み、その場で急いで身につけた。
気詰まりな沈黙が落ちたがタランは窓に向かい、外を見た。
アニエスに背を向けたままぽつりと言う。
「帰るよ」
「……うん」
大きな鳥にでも化けて飛んで帰るかと思っていたが、タランは人の姿のままを保っていた。
背に捕まるよう促されたアニエスが体を寄せると、彼の匂いが急に懐かしく
感じられ、思わず彼女はうろたえた。急に苦しい気持ちになる。
「あれ」はなんでもないことだった。必要なことだった。
だから自分が気にすることなど何もないのだと。
それが何に対しての感情なのか自分でも良く分からないまま、ただそれだけを
心の中で繰り返す。ぎゅっと力をいれて体を寄せると掴む手がアニエスを背負いなおした。
*
家に戻ってきたアニエスはふーっ、と大きく息を吐いた。
妙な気分だった。苦しい。胸の奥がもやもやする。体もあちこちが痛いが
それよりもむしろこの不快感の方が嫌だった。
それを的確に表す言葉を探しアニエスは一言呟いた。
「疲れた」
「……そりゃそうだろうよ、疲れるようなことをしてきたんだから」
「それもそうだ。喉も渇いたし……」
アニエスは水差しを探した。わずか数刻のことが、ずいぶん家をあけていたかの
ように感じられ不意に鼻の奥がつんと痛む。アニエスはぐっと奥歯を噛み締めて
それを耐えると、手にした水差しから器に注いで一息に飲み干し、唇をぬぐった。
何気ない行動だったがそれがきっかけとなって、不意に思わずあの男が唇をぬぐう
動作を思いだしてしまった。すると次々にあの男の言葉、あの男のした行為がよみがえっていった。
蛭のような唇が首筋から胸元をたどり、足の間に熱をもったものが……。
アニエスの手から器が落ち、床にぶつかって軽い音をたてた。
気づけば自分の体が小刻みに震えているのに気がついてアニエスは言葉を失った。
「どうかしたの?」
様子がおかしいことに気がついてタランが眉をひそめた。
だが、なんでもないと言おうとして口を開いて出てきたのは言葉ではなく嗚咽だった。
「ふ………っ」
タランが驚いたような顔をした。だが、静めようとすればするほど
感情の波は大きくアニエスの心を揺さぶった。
「うっ……く」
顔を背けたものの横にいるタランの視線を痛いほどに感じていた。
いまさら取り繕うような仲でもないが情けない所を見せたと思う。
『あれ』はただの性行為だ。職業意識のある娼婦なら割り切ってできるような
程度のことだ。それなのにこんなに動揺したりして情けない。
アニエスはテーブルに手をついてぎっと爪を立てた。
タランが求めるのは彼自身を変えるほどの力を持った契約者だ。
だから強くならなくてはならないと思うのに、今この時この場の
自分はこんなにも弱かった。
「アニエス」
名を呼ばれ、アニエスは途切れ途切れながら何とか返事を返す。
「……ちょっと、待って。もう少ししたら、ちゃんとした受け答え、できると思うから………」
だがその言葉は途中でさえぎられた。
タランが手を伸ばしアニエスの目をふさいだからだ。
「なに……?」
どういうつもりかと問うアニエスにタランが返したのは直接的な答えではなかった。
「僕は、夢に干渉できる」
アニエスは口を挟まず相手の言葉を待っていた。
すると、触れられた手のひらの揺れからタランが少し笑ったのが分かった。
「……アニエスは疲れてんだよ。一晩寝れば元のアニエスに戻れるよ。
だから、余計なもの見せずに眠らせてあげる。わかった?」
アニエスがうなずくとタランの手のひらから熱を感じた。
少しずつまどろみのように柔らかな眠気がアニエスを包んでいく。
嫌なことも恐ろしいことも闇の奥に消えていく。それは彼女にとって救いだった。
タランはアニエスのまぶたに触れたまま、精神を同調させて無のイメージを
送っていた。これで彼女は夢もなくただ眠りに落ちる。
かくん、と力を失ったその体を支えると、抱き上げて寝室まで連れて行った。
寝台に横たえると、その目の端から涙が滲んでいるのに気がついた。
タランはそれを指でぬぐう。そしてそのまま手を広げて頬を包むようにして触れた。
空[から]の夢の中にいる女の寝顔を見ていたタランは上体を近づけ口付けようとして
なぜか不意にその体を止めた。
(『――醜き者よ』)
湖の主の言葉が甦る。そう呼ばれたのは久方ぶりであった。
ずっとアニエスといたからだ。
アニエスは彼のことを『タラン』だと認識しているから。
それでいいはずだ。
忘れ去られ、消え去る運命にある奴らの言葉など気にする必要はない。
なのに妙に苦い気持ちで『タラン』は自分の契約者たる娘を見つめていた。
*
次の日、背徳の司祭は突如、王都に戻ると言い出して
周囲の人間を困惑させた。だが決意は固く、彼は馬車を呼び寄せ
さっさと帰ってしまったようだった。
そしてその話を牧師から聞いた村の人間は感嘆した。さすが魔女だと。
どう話をつけてくれたものか分からないが、アニエスはすごいなと。
本当のことは村の人間は誰も知らない。司祭自身ですらもう覚えてはいない。
真実を知っているのは魔女と、彼女の悪魔だけ。
(おわり)
以上です。長いのに読んでくれた人には感謝!
あと前にレスつけてくれた人、めっちゃ嬉しかったありがとう。
来た、続き来た!これで乙る!
ファンタジーっぽくていいなあ
>>407 久しぶりにきたらなんか上手いのきてる! GJ!
このあとお清めエッチとかしとかなかったから、
無駄に引きずって1話目になるわけね。
タランの執着ぶりがいい。
411 :
◆RAN/ur62O. :2011/12/30(金) 00:31:05.54 ID:ea0MzALM
魔女アニエス話を投下します。
「冬至祭」のタイトルで全9レス
※
クリスマスに合わせようと思ったんですが盛大に間に合いませんでした。
完全にタイミングを外してますが、長いスパンでみた年末ネタだという事にして下さい。
今回は多分特に注意事項はないかと思いますが、相変らず
長いのでNGはトリップでお願いします。
「なんであたしだけダメなの? あたしだって冬至祭に行きたい!」
そう言いながら藁色の髪の少女は両目いっぱいに涙を湛えていた。
「いけません。リディア、あなたまた体を悪くしたらどうするの」
だが、少女の母親はそう言って頑として譲らなかった。
一年の終わり、その節目として村で行われる冬至祭は今夜が一番盛り上がる日であった。
村の広場の真ん中で、焚かれた火を囲んで一晩中皆で歌い騒ぐのだ。
この日のために笛やら太鼓やら楽器を練習している村人も多くいた。
そして今夜は宴を盛り上げるために冬至祭の主役たる、妖精ユールス・ヨウルが
人々と求めに応じて闇の中から現れるのだ。妖精といっても要は村の人間の扮装で
出し物の一つなのだが。ユールス・ヨウルは古い妖精の名だ。
来るべき春を迎える前に巡った季節の間の人々のふるまいがどうであったか
調べにやって来て、そして善人には祝福を、悪人には罰を与える。
その妖精を模した扮装は、山羊の頭の被り物に箕藁の服といったいでたちだった。
鈴がたくさんついた杖を持っており、現れるとそれを派手に鳴らしながら
『悪い子はいないか、それは取り替え子だ! 取り替え子は森の奥につれてくぞ!』と
威嚇して回るので、小さな子どもは本気で泣き叫ぶが、ある程度大きくなってしまえば、
それが村の大人の誰かだということは、はっきり分かっていたし、派手な見た目といい
一種の禍々しさといい祭りを盛り上げるいい出し物といえた。
村の広場をユールス・ヨウルは一周するが、子どもが良い子だと分かれば
(もちろん“悪い子”などいない)次の一年にまた幸せが訪れるよう祝福を
さずけてくれるのだ。その見た目からか、どちらかというと男児に受けがいい
扮装だったが意外とリディアもユールス・ヨウルが好きなのであった。
「だってだって行かなきゃユールの祝福、受けられないよ! 冬至祭でしか
食べれないごちそうだってあるし、音楽やダンスだってあるのに」
そう言いながらリディアはじだんだを踏む。だが母親の決意は絶対であった。
リディアが生死をさまよう高熱を出したのはついこの間のことだ。
冬の痛いほどの寒風に、また娘を死へと導かれてはたまらない。
だいぶ良くなったとはいえ、せめて太陽のあがる昼間でなければ
外に出す気はさらさらなかった。
「いけません。アニエスだってそう言うわよ。ねぇアニエス」
母親は、傍らにいる若い女に援護を求めて声をかけた。
するとそれまで静かに横に立っていた黒髪の娘がそれを受けて応える。
「そうだよリディア、お母さんの言うとおりだ。まだ咳もでてるだろう。
夜は寒いからね、出てはいけないよ」
「そうだそうだ。ほら、冬至祭は来年もやるんだからな。ケーキとかは
お父さんがとっておいてあげるからもう今年は諦めなさい」
母だけでなくアニエスに、父まで加わった三人から言われてはもうリディアの
要求が通る節はなく、あきらめざるを得ないと分かり、それでもリディアは
唇をつき出してぶすくれていた。
「だって、だって……」
ぐすぐすと涙ぐむリディアの頭をアニエスが撫でる。
そして傍にしゃがむと小さな声で耳打ちした。
「リディアがちゃんとベッドで横になって休むと約束するなら
あとで私の魔法できれいなものを見せてあげる」
「えっ、なにそれ!?」
「まだ秘密。でもちゃんとベッドにいないと見られないからね。
お母さんたちに隠れて祭りに行ったりしたら見逃してしまうよ」
するとリディアはこくこくとうなずき、もうベッドに行くと言い始めた。
変わり身の早さに苦笑しながらアニエスがリディアの家を後にしようとすると
リディアの父親であるハルトマン氏がアニエスを呼び止めて何かを差し出した。
君には本当に世話になった。……冬至祭おめでとう、よい年があなたに訪れますよう」
アニエスは驚いた様子でハルトマン氏と飾り布とを交互に見た。
そしてそれをぎゅっと胸元にあてる。
「すごく……嬉しいです、ありがとう。また何かあれば私かタランに
言ってもらえばすぐ来ますから。……冬至祭、おめでとう」
外に出ると広場からの音楽が、大きく軽妙に鳴り響いていた。
アニエスは歩きながらもらった飾り布を広げて見ていた。家に帰るまで待てなかったのだ。
端切れをつなげて大きくした布には太陽を花に見立てた刺繍がしてある。
(きれい……)
思わずうっとりと眺めてしまう。出来もすごく良かったがそれ以上に
アニエスの心を浮き立たせるのは、自分に贈り物をくれる人がいるという事だった。
「やあ、アニエスさん。こんばんは、冬至祭おめでとう!」
「おめでとう」
酒の入った器を片手に赤ら顔であいさつをする男にアニエスも会釈して返す。
同じように何人かから挨拶を受けた。少し前までこんなことは望むべくもないことだった。
アニエスがやって来たばかりの時、薬やらまじないやらを仕事として請け負うと言う話をしても
村の人間で彼女を頼るものはなかった。教会を気にして、という訳ではない。
よそ者で素性も知れず、おまけに夫でもない男と平然と同居している娘だと、そう扱われたからだ。
アニエスがあいさつをしても返事もかえってこないという事の方が多かった。
まだ青年といえるくらいの村の牧師は、村八分状態の新入りを気にして
礼拝にこないかなどと誘ってはいたが、それで村の人々に分かったのは、
“よそ者”が洗礼すら受けていないという事実だった。
牧師は人が良すぎるだとか、若い男だから美人に目がくらんで過分な親切を与えているだの
何だの言われながらも、彼はなにかと村とアニエスの仲立ちをしようとしてくれていた。
だが事の風向きが変わったのは、やはりリディアの病気がきっかけであった。
ハルトマン氏の家の娘のリディアは大きな病気をしたことのない娘だったが、
ふとしたことから風邪をこじらせて高熱を出した。その熱は下がらず、上がっていくばかり。
うわごとすら意味をなさない言葉になって、ハルトマン夫人は止める者をふりきって
魔女の家に向かい、泣きながらその家の戸を叩いた。
そしてやって来た魔女とやらは三日三晩リディアを親身に看病しつづけ、快愈させたのだ。
ハルトマン氏も夫人も、もう彼女を無視しようなどとはつゆとも思わなくなった。
むしろ彼らは近所の人々にアニエスの手際のよさを褒めて話し、その薬がどんなに効いたか
彼女がどんなに親切だったかを吹聴した。これまで無視してきた後ろめたさを払拭したいためか
ずいぶんとそれは熱心だった。リディアも命の恩人によくなついており、屈託なく
アニエスと話すので、そうして彼女は少しずつ村に受け入れられていったのだ。
冬至祭に来ないか、という村の人たちからの誘いにアニエスは喜んで応えると
森で兎を捕らえてシチューを作った。それを祭りの場に提供し、タランには
力仕事を手伝うよう言い付けていた。
そのためアニエスがリディアの家に行っている間、タランは薪運びを手伝っていたのだが、
アニエスはその場にいなかったので、タランが細身の割に驚くくらい薪を持ち上げるのを、
村の男衆が面食らって眺めていたのを知らなかった。
タラン本人もそれをおかしいと思っていなかったために、余計に男衆に面白がられ
彼は頼まれごとが終わった後も色々と話しかけられていた。
突っ込んだ話も聞かれ、タランは正直な所どうしたものかと思案していたが、
さすがに「あの美人のイロだなんてうらやましいね」と言われたのには吹きそうになった。
そんな関係ではないと言い張ってはみたものの、どうにもこうにもで、タランは正直なところ
辟易してしまい、戻ってきたアニエスの姿を見てようやく解放されるとほっと息を吐いた。
*
焚き火を囲んでの宴は賑やかだった。
音楽もそうだが、その場にいる人間の笑い声や話し声がまるで絶えない。
「おー、アニエスさん。あんたも飲んでいくかい」
「いただきます」
村の女から葡萄酒の杯を渡されたアニエスは、それに口をつけた。葡萄と香草の香りが
広がってそれを飲み込むと体の中から、かっと熱くなった。とてもいい気分だと思う。
アニエスはそのまま女たちの傍にいて――前に自分を口説いた若者たち、しかも今は
酒も入っている、の近くに独りで行きたくなかったからだ――祭りの高揚の渦を脇で
ながめていたが急に後ろからぐいと肩を引かれて驚いた。
振り向くとタランが珍しく困ったような表情をして立っている。
「お師匠様、そろそろ戻りませんか?」
「……そうだなぁ」
「なに言ってるの、まだユールス・ヨウルも出てきてないじゃないか」
すると女がタランにも杯を差し出しながらそう言った。
一瞬受け取るまいか逡巡したようだが、タランは結局それを受け取ると不意に首をかしげてみせた。
「ユールス・ヨウルって何ですか?」
その妖精を、タランが知らないわけはないのにそんな事を言い出したので
アニエスは驚いて彼の顔をまじまじと見てしまった。するとタランは続けて、
自分は王都の近くの街の出身なのだけど、そっちではそういった祭りはなかったから
知らなかった、などといい始め、ますますアニエスは混乱した。
「へーえ、都会の方じゃこういう祭りはやってないのかね」
「いや単に僕が興味なくて覚えてなかっただけかもしれないんですけど」
それからもタランは村の女性たちの質問に色々と答えていた。
家を飛び出して、不思議な力に興味をもって魔女の弟子になったこと。
そこで語られたのはアニエスも知らない、商家に生まれた青年の経歴だった。
(誰だよ……)
心中で突っ込みを入れながらアニエスはまた葡萄酒を口にした。
「魔女さん魔女さん」
すると村の子どもの一人が、たたっと走ってきてアニエスに声をかけた。
「アニエスと呼んでくれるかな」
「じゃあアニエスさん。……魔法って今ここでも使える?」
「ものによるけど、なにかな?」
少年が言うのは、どうも祭りを盛り上げる余興として魔法を
見せてくれないか、ということらしい。
「別にかまわないよ。大掛かりなことはできないけど」
「ほんと!? ねー、魔法やってくれるってーー!」
大声で魔法魔法と叫びながら親のところに走っていく少年の背中に
アニエスはあせって手を伸ばした。
「あああ待って! いや、やるのはいいんだけど……」
魔法を見せること自体は構わないのだが、この祭りはおそらく教会と村の地主とで
協力してやっているだろうに、そんな中で大っぴらにやっていいものか迷ったのだ。
ただでさえ牧師には良くしてもらっていたのに。だが、アニエスと目が合った
村の牧師は笑うと、ちょいちょいと自分の目を指差してそのまま手で覆った。
見なかったことにする、という意味だろう。それを見てアニエスは表情をゆるめた。
(本当に、いい人だよなぁ……)
広場の真ん中の焚き火に近づくと、アニエスは炎に向かって唄うように何事かつぶやいた。
すると、ぽっぽっと蛍火のように丸い炎が空中に浮かぶ。
ただ単に、火の回りに存在する精霊や妖精たちに語りかけて姿の現し方を変えてもらっただけで
大した事はしていないのだが、それでもおおーっと歓声があがった。
それらはぐるり、と松明の周りを一周回ったかと思うとぼむっと弾けて消えた。
すると、その瞬間を見はからかったのように太鼓がドコドコドコ、となり始める。
鈴の音がしゃん、しゃん、と響き炎の明かりに照らされて山羊の面をかぶった男が現れた。
「取替え子はこの村にはいないかー!!」
毎年ごとのだみ声に大人たちは、おお始まったと笑っていたが、その異様な風体に
幼児は泣き叫んでいる。ユールス・ヨウルの登場はいつも祭りの目玉だが、今年は
いつもとは違う演出で村の人間たちは湧き立っていた。盛り上がりとともに
楽器が激しく鳴らされ、皆、それを待っていたかのように輪になって踊り始める。
その混乱に乗じて、アニエスが避けていた若者の一人が彼女の手を掴んでダンスの輪に引き込んだ。
「うわっ……」
「恋人になるのは無理でも、ダンスぐらいはつきあってくれるだろ?」
青年はそう言って笑っている。彼らは強引だが屈託なく明るかった。アニエスは思わず苦笑する。
「私は踊り方を知らないよ」
「大丈夫だって!」
ダンスはそう難しくはなく、教えてもらうとアニエスにもすぐ踊れるようになった。
一、二、三でステップする足を変え、二、二、三でもう一度、次の三拍子で一回転。
最初こそ足をもつれさせたアニエスだが、すぐに踊れるようになり、青年は上手い上手いと
笑っていた。大体三回転くらいしたら、次の相手と組んで踊る。アニエスも輪の中で
次の相手の手を取った。えらい爺様に見えたがダンスは得手のようでアニエスを
上手くリードすると綺麗なターンをさせ、周りからやんやと歓声を受けていた。
祭りの宴を炎が明るく照らし、音楽が心を弾ませる拍子を刻んでいた。
*
家に帰ってくると、アニエスは靴についた雪や泥をはたいて落としていた。
「そういった事は魔法でできないのかい、魔女さん」
「できなくもないけど、手でやった方が早いんだよ。商家の次男さん」
その言葉にタランは、にやっと笑った。アニエスはさらに続けていく。
「よくもまあ、あんなぺらぺらともっともらしい嘘がつけるもんだ。
お前、結婚詐欺師とかになれるんじゃないか?」
「なんでよりによって結婚詐欺師なんだよ」
タランは指先を暖炉に向けると、ぱちんと指を弾いて火をつけた。
そしてしばらく言いよどむように言葉を詰まらせていたが、ぼそっと言い始める。
「……いやさあ、村の連中と話してたらなんか、僕はあなたの情夫なのかって言われたから」
濡らした布で手を拭いていたアニエスだが、その言葉にアニエスは目を見開いた。
「その場は否定したよ、もちろん。でもとりあえず、嘘くさかろうが、
白々しかろうが別口からも誤魔化しておいたほうがいいかなと思って」
なるほどね、と呟くアニエスを見ていたが、タランは急に悪戯を思いついたような
顔をしてアニエスの腕を掴んで引き寄せた。
「情夫だなんて、そんな疑われ方するなんて心外ですよね、お師匠さま?」
そう言ってそのままスカートをたくしあげていく。臀部に触れ、その奥をすっと軽くかすめた。
「ナニを教わってるんだって話じゃないですか」
するとアニエスはいきなり身を折って笑い声をあげた。
いつもはこの手の冗談を言ったりこういう誘い方をすると――大抵は最後には
応じるとはいえ――嫌がるのに。反応が違ってタランは拍子抜けした。
「アニエス、もしかして酔ってる?」
「酔ってるかもね。でも、酔ってるからというより、あははっ」
するとまた何がおかしいのか吹き出した。
「情夫かー、情夫ねぇ……」
タランの胸にもたれかかってアニエスはくすくすと笑う。
よく見ればずいぶんアニエスの顔は赤くなっていた。
「やっぱり酔ってるんじゃないか」
「あながち間違ってないからなぁ」
聞いているのかいないのか、アニエスは言葉を続ける。
「あれだな、そんな勘ぐられ方をするなら最初から夫婦ってことにしておいても
良かったかもな。その方がもっと早く受け入れてもらえたかも。
でもそうすると、私がお前をあごでこき使うことに対してなにか言われたかなぁ。
それに夫婦だって言いはったって教会の名簿も、持ってないしね……」
だが、タランは顔を強ばらせた。
「夫婦って……おかしいだろ、そんなの。魔物と人間が夫婦? 妖精あたりなら
聞いたことあるけど、それにしたって不幸な結末ばっかりだ。とにかく僕は嫌だ。
変だろ。君と僕とはそんな関係じゃないんだからおかしな事を言わないでよね。気持ち悪い……!」
タランの言葉は暴言に近かったが、それでもアニエスは気分を害した様子もなく笑っていた。
「……ただの冗談じゃないか。そんなツンケンするなよ。だから弟子にしておいたじゃないか。
ああ、それにしてもお祭りなんて久しぶり。楽しかったぁ……」
今まで一つの所にいられる事の方が少なかったから、こういう祭りなどアニエス達には
あまり縁がなかった。確かにアニエスは楽しそうだった。楽しそう、というか嬉しそうというか。
村の人間に囲まれて何を話すでもなく笑い合っているときや、勧められて杯を受け取る時。
火明かりを受けて人の輪の中に溶け、踊っていたアニエスは幸せそうだった。
妙に固まってしまったタランの手を取ると、アニエスは言った。
「踊ろうよ」
「はあ? いきなりなんだよ」
「いいじゃないか。ちゃんと掴んでてね」
タランの手を掴み、頭の上にあげるとアニエスはその場で一回転した。
スカートがひるがえってふわりと廻る。だが足元がおぼつかず、よろりと
体勢を崩すとどん、とタランの方へとぶつかってきた。
「おっと」
紫色の見上げる瞳がくるり、と廻った。かと思うと何か柔らかいものがタランの唇に
押し付けられた。かすかに葡萄酒の味がする。それに気がついた瞬間、タランは
アニエスから口を離すと彼女の体を持ち上げた。
*
寝台に下ろすとくにゃりとアニエスは横になった。服を脱がしながらタランは
アニエスの頬を軽く叩きながら呼びかける。
「ちょっと、煽っておいて先に寝るなよ」
「分かってるって、寝てないよ……」
気だるげな声でアニエスが返事をする。乳房をさぐり掴むと、アニエスは小さく声を漏らした。
「ああ……」
ゆっくりと揉むと、いつもより体温の高い柔肉が指になじんでいく。
親指でその先端を転がすとその背が沿った。
「んっ、う、あっ……」
背中に手をまわしてタランはアニエスを起きあがらせると、勃ちあがった男根に手を添えた。
それを見せつけながら、タランはアニエスにささやいた。
「後ろを向いて」
おとなしく従うその腰を掴み、入り口に先端をあてがうとアニエスの体が小さくふるえた。
その入り口もひくついている。体が与えられる快楽を予期しているのだ。
その反応の素直さにタランは、くっと笑った。そして硬くなった肉で入り口をこじあけていく。
「あ、あっ、んっ、ああっ」
後ろから貫かれてアニエスは悲鳴をあげた。
反射的に前に逃れようとしても、腕をまわされがっちりと掴まれてびくともしなかった。
後ろから抉られ、肉と肉が擦れ合う激しい感覚に翻弄されていく。
「いや……、そこっ、いやぁあ」
感じる場所ばかりこすられてアニエスは喉をのけぞらせて喘いだ。
ぴん、と勃ちあがった乳首を掴み、タランはなおもそこを責め立てた。
「あ、ぅああっ、あたって、る……っ、いやっ、あっ、やああ」
悲鳴じみた嬌声がタランの心に愉悦をもたらしていった。
それがタランの熱を更に煽り、その熱に浮かされるようにタランは
腰を使って、奥へもっと奥へと自身を穿とうとした。じゅぶ、じゅぷっと
淫らがましい音が響き、タランの腕の中の肢体がひくりと悶えた。
「――――あ」
力を失った体を支えて自分にもたれかからせるが、タラン自身はまだ達しておらず
繋がりはまだそのままだった。
「う……あ、」
「一人だけでイクなよ。……まだ付き合ってもらうからね」
そう言いながらタランはアニエスの口の中に指をつっこんだ。
舌を掴み、挟みこみ、ぐちゅぐちゅと動かして口内を弄ぶ。
「あぐっ、う、あっ」
「噛むんじゃないよ。ゆっくり舐めるんだ。……そう、そうやって」
アニエスは仔猫が鳴くような声を立てながら従順にタランの指の先を舐めていた。
その感触に、ぞくぞくとした感覚が這い登っていく。
蜜壼の中をかき回しながら舌を弄っていると、くぐもった喘ぎ声が響いた。
「う……、あ、ふっ、ぐぅ……!」
すると不意に痛みが指先にはしった。アニエスが噛んだのだ。故意にというよりも、
タランに追い込まれて何度もくる愉悦の波に耐えようと力が入れたからのようだった。
「あ……」
その証拠にすぐ口の力が抜かれ開かれた。その唇の端から唾液がつうっとこぼれて落ちる。
そして噛んだ場所に舌が労るように触れてきた。
――痛みは甘やかだ。快楽は苦しいほど。
自分が感じているのと同じだけのものを、この腕の中におさまっている、
やわらかい体をした生き物にあげたいとタランは強く思った。
指を口の中から引き抜くとタランはアニエスの体を前に、四つんばいにさせた。
自分を埋めていたものを引き抜かれ、アニエスは切ない声をあげたが、導かれるまま
膝を入れて下半身を高くした。だが力が入らないのか上半身はぐったりと寝台に押しつけている。
そうしてむき出しにした入り口をタランは数度あたりをつけてもう一度挿入した。
「もう……ぬるぬるだ…、奥まですぐ入っちゃうよ」
「そん、な……と……」
消え入るような声で抗議が聞こえたが、タランは無視して抜き差しを繰り返す。
「ああっ、う、あああっ!」
乱れながら感じるアニエスの媚肉が彼女の惑乱と共に熱を増し、
タランの形に開かれたそこがまとわりついてくるのを感じる。
射精感に呻き、タランはアニエスの腰を掴んで再奥までつき入れた。
「ぐ…うう……」
欲望がはじけて中に注がれていく。ずるっと抜き出すと、激しい行為に開かれた
入り口がまだ閉じず、ごぽっと飲みきれない白濁を溢れさせた。
「ふあああ……っ!」
アニエスは流れ落ちていく精液の感触にシーツを握りしめた。
*
その後しばらくの間、寒い中で体を清める布をどちらが持ってくるかで
もめていたが、結局モラと呼ばれる遊びで賭けて負けたアニエスが取りに行った。
体を清めてしまうとタランは重労働をさせられて疲れたとか何とか言って
早々に眠りについたが、横で身じろぎをしたアニエスは不意に引っ張られるような
違和感を感じて彼の方に顔を向けた。するとタランがわざとか無意識か自分の髪を
一房掴んで眠り込んでいるのを見つけ、アニエスは思わず顔がほころばせる。
(……もー、なんだよ、もうっ)
胸の中に暖かい喜びが広がっていく。だけれど、アニエスは分かっていた。
この喜びを頼りに近づこうとしてもタランの傍まで行くことができないことを。
タランが自分に対してどんな気持ちをもっているのか、それが未だにはっきりしない。
気に入っている、とは何度か言われたことがある。その言動に好意を感じることはある。
それでもアニエスが線を踏み越えて一歩近づこうとすると、彼はあわてて離れようとする。
彼にとって交情は気持ちの証とはならない。そもそもが精を糧にしている生き物だ。
実際、時折ふらっといなくなっては行きずりで女を喰ってきている節がある。
愉快ではないが、アニエス一人の精では足りないというなら、それを責めることはできなかった。
何度かはっきり自分の気持ちを告げようかと思ったこともあるが、そのたびに
アニエスは迷ったあげくにやめた。
タランはもう、さほど最初の頃ほど契約を嫌がってはいないし今ではこの生活に
慣れたようだがそれでも彼が契約の呪で縛られていることに変わりはない。
だから自分と一緒にいるだけだと、たまに彼がいうその言葉にこそ、もしも真実が
あるのだとしたら自分のこの気持ちは無用な重荷でしかない。
長い間に育った想いを今更捨てることはできないが、それでもそれを押しつけないだけの
分別はあるつもりだった。
(そうやって、これからもやっていけるさ……)
そう胸の中でつぶやいて、アニエスはかすかに微笑んだ。
*
時間は少し遡り、アニエスがリディアの家を出てから数刻後。
寝台の上で横になりながらリディアは、けほ、けほと小さく咳をした。
きれいなものって何だろう。何がでてくるんだろう、わくわくしながらリディアは
アニエスの言葉を信じて待っていた。
すると部屋の中で急に鈴がなるような音がしてリディアは異変を察した。
――、――ア。
何かが聞こえる。耳を澄ましてその音をとらえようとすると、それは囁くような呼び声であった。
『リディア、あなたがリディア……』
「そうだけど……、ねぇ、だれ……?」
すると、しゃらんという音と共に小さな美しい女の人が二人、横になっている
リディアの胸のあたりに現れた。
『私たち、貴女に会いにくるよう頼まれたの。お見舞いにダンスをみせてあげてと』
彼女たちはうんと小さかった。おそらくリディアの手のひらにも乗ってしまうくらい。
それぞれ背中に透明な羽根がついており、見たこともないくらい綺麗な顔をしている。
一人は薄紅の靄のような服をまとっており、一人は青い流れる水のような服を身につけている。
誰に頼まれたのかは聞くまでもなかった。
(アニエスだ! きれいなものって、この妖精さんたちなんだ!)
彼女たちは軽快な足取りでくるくると周ると、鈴を鳴らすような音をたてて光をはじいた。
薄紅と青色が光の帯のように広がり、周り、揺らめくように消える。
その美しさは、確かに人ならざるものの踊りであった。
「うわぁ……」
リディアは思わず感嘆のため息をついた。
「すごくきれいね! あたし、あなたたちみたいに綺麗な人――あ、人じゃないか、
妖精さんって初めて見たわ」
羽根の生えた小さな女性たちは笑ったようだった。
その笑い声までが、しゃらんしゃらんという音をたてる。
『ありがとう、『ありがとう、うれしいわ……』しいわ……』
二人が同時にしゃべるとこだまのように響いて聞こえる。
その音が小さくなっていくのと同じように、彼女たちの姿も薄れて消えていった。
「ああっ、またね妖精さん! すごくきれいだったわ――!」
次の日、リディアは村に来たアニエスの姿を見て声をかけた。
そして近づいてきたアニエスの腰にぎゅっと抱きつく。
「アニエス、アニエス! わたし見たよ!! すごくきれいだった。なんていうか、
なんていうかね、すっごーーくきれい!」
どんなに感動したか、どんなに素敵だったかを彼女なりの表現で一生懸命話す
リディアをアニエスは優しげに見つめていた。
「……リディアは、妖精のことが好き?」
「うん!」
力強い言葉に、アニエスは微笑みを深める。
「妖精のことが、怖くない?」
「うん!」
するとアニエスはリディアの前でしゃがみこんだ。同じ目線になってリディアは
陽の光が差し込んで鮮やかに見える紫の瞳をじっと見つめた。
「なら古い言葉を君に教えよう。知らぬでも良い知識だけれど、君が望むなら私は伝えるよ」
リディアは少し戸惑っていたが、それでもはっきりと言った。
教えてほしい、と。
「……≪ドゥアンゴース・アイ・ヒー≫、姿を現せって意味だよ。妖精がいそうな場所、
花が咲いてるところとか、あとは、日だまりとか、氷の上とか……そういった場所で
これを言ってごらん。妖精がその気になってくれたら姿を見せてくれる。
もちろん、その気にならないこともあるからね。ただ、荒れ地とか森の中とか沼では
タチの悪いのもいるから使っては駄目だよ。
目を合わせただけで相手を獲物と定めるやつもいるから」
そしてちょん、と彼女の鼻に指で触れる。
「あと一番大切なのは、姿を見せてくれた妖精にはちゃんとお礼を言ってね。
それから、もしも名前を教えてくれる子がいたら……忘れないであげて」
「……わかった」
リディアは神妙な顔でうなずいた。アニエスが教えてくれた秘密はリディアの
胸の中できらきらと輝くような力をもった。体を心配した母親にもう家に戻るよう
呼ばれ、そのまま帰ったがそれでもしばらく、胸がどきどきとしているのを
リディアはずっと感じていた。
アニエスは昨夜の喧噪が嘘のように今は落ち着いた村の広場で、焚き火跡の傍に立っていた。
「ドゥアンゴース・アイ・ヒー、ユールス・ヨウル」
唄うようにアニエスが呟くと、煤けた組み木の向こうから小さな妖精が姿を現した。
小鬼に似ているが、顔はもっと人の良い老爺のようだ。山羊の角に長いあごひげ
藁を編んだ服を身につけている。現れた妖精ユールス・ヨウルにアニエスは礼を取った。
この妖精はかつては古い神だったという。それが今ではこんなに小さくなってしまった。
だが、彼はそれでいいのだというように微笑みを浮かべていた。
神の中には今なお純然たる力をもって君臨するものもいる。人間をもてあそぶ力を
もったものも、運命をひっくり返すような力をもったものも。
だが、この神は自ら小さくなって人の小さな願いに応える存在になったのだ。
かつてのような力を失ったものの、語り継がれ、愛され、名前を残している。
彼は色々な場所で、祭りの篝火の下で、屋敷の炉端の近くで、降りしきる雪の中ですら
願いを受けて現れるのだろう。そして今、アニエスの前に彼は現れた。
アニエスは彼に会ってみたかった。願いはある。それはずっと心に掛かっている。
だが、それは望んでも詮無いことだ。
ユールス・ヨウルはアニエスを見た。すべてを見通すような深い瞳で。
しかしかつての神は余計なことはなにも言わず、ただこう言った。
≪娘さん、あんたにも祝福をあげようね。来る春のめぐみあれ≫
ほわ、と周りが温かくなるのをアニエスは感じた。
するとユールス・ヨウルはにこにこと笑い、また組み木の陰へと消えていく。
アニエスは妖精が消える前に、その優しい祝福に小さくありがとうと呟いた。
(おわり)
以上です。ありがとうございました。
住人の方々良いお年を。
>>410 執着っぷり気に入ってくれてありがとう…。嬉しいっす
おもしろかった、ありがとう。
よいお年を!
>>421 GJ!
今回の話が一番好きだな、優しい雰囲気がいい
>>421 年越したけどGJ!
タランはアニエスを不幸にしたくなくて深入りしないようにしてるのかな
わくわくする
入り混じる黒と白の最後の投下からもう一年も経つのか……
のんびり待とう
神か悪魔の贈り物の続きも読みたいぜ……
のんびり待つしかないのか
キャッチアンドリリース待ってるがあの人ゴッドイーターのスレにおった
みんな結構いろんなスレにいるのな…
そりゃまぁ上手い人とかって結局書くのが好きな人だからな
思いついたネタに当てはまるスレを探してうろつくんだろう
431 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/24(火) 08:38:50.37 ID:KNn1jd82
>>430 いやお前らのこと。
色んな場所で読んでるのなーと思って。
常駐スレかぶってる住人(まぁ書き手読み手兼任あるだろうけど)は、趣味が似てるんだろうな。
ごめん、ageちまった…
433 :
名無しさん@ピンキー:2012/02/11(土) 21:21:51.68 ID:nUyVG5d2
保守&復旧
再度保守
435 :
名無しさん@ピンキー:2012/02/29(水) 23:59:09.92 ID:71BDfRl5
世界一期待するスレ
436 :
名無しさん@ピンキー:2012/03/05(月) 01:42:15.21 ID:MIv8Yf9T
きたい
437 :
まえおき:2012/03/29(木) 08:50:23.98 ID:2gwib3/T
一章「過去より導かれし運命の少女」
1
ラドラクス大陸から魔物や魔法といった「混沌」が去ってちょうど五百年が経とうとしていた。
「混沌」がなぜ去ったか、正確にはいつ消えたのか、そういったことはいまや人々の間では謎に包まれていることになっている。
魔法はともかく魔物がいなくなったことで人々の生活は非常に安定したものとなった。
もちろん人間同士の小競り合いや戦争は耐えないが、少なくとも五百年以前のような、人間の存在自体が危ぶまれるような事態はなかったからだ。
ゆえに、大陸の人々は「混沌」に対しては色々な想像を巡らせるのみであった。
シア・ラマ歴1689年をむかえるまでは…………
2
トーレの草原で、壮年の男は窮地に陥っていた。
息は荒く、振りむいた顔はけわしく、足取りもあやうい。
彼は五百年前にほろびたはずの魔物に襲われていたのだ。
それも、まばゆい太陽が照りつける白昼堂々である。
背には身の丈ほどもある大剣をたずさえ、たくましい長身体躯と身なりからすると傭兵稼業をして生計をたてる旅人のように見える。
男は魔物をまこうと、今いる草原から森の中へと入ってゆく。
だがこれが誤算だった。
十歩ほど木々を分け入ってから後方を振り向いたものの、魔物の姿が見当たらない。
そして、突如として視界の隅の大木から触手が殺到してきた。
男は舌打ちをまじえながら両手大剣を抜き、魔物の硬化した触手をはじき返す。
間一髪ですべてを受けながしたが、しくじったと思わざるをえない。
魔物の姿が見えなくなって余計ピンチになってしまった。
しかも、相手はああ見えて異様に動きがすばやい魔物だ。
男は焦燥を募らせる。
「――っ?!」
ドフッ、というにぶい音とともに、男の口から声にならないうめきがもれる。
眼を下にむけて自分の腹部から突き抜けている何かを見やると、こみあげてきた鮮血がはき出され、地面を朱に染めた。
何が起きているのかわからない。
これが自分の最後だとしたら、あまりにも呆気なさ過ぎる。
自らの生きる理由を見つける前に死にたくはない。
そう思うと、総身に気力が染み渡るのを感じた。
しかし、身体を動かすことはかなわなかった。
気付けば触手に四肢を拘束されているという事実に気付く。
眼前に漂よってくる幾多の触手刃。
ゆらゆらと揺れるそれが自分のことをあざ笑っているように見え、男は微かな恐怖と大きな屈辱を感じ、わななく。
触手刃はまるで死刑執行人の振り上げる斧のように上空へと伸ばされる。
さしもの彼もこの時は一瞬死を覚悟した。
まさにそんな時である。
彼と触手の傍らで何者かがむくりと起き上がったのは。
3
ようやく目覚めたとはいえ、少女の意識は未だまどろんでいた。
彼女の寝覚めはよくないほうで、よくベッドで上半身を起こしたまましばらくぼーっとしていることがある。
いつもと違うのは妙にまぶしいという点だった。
それが太陽の光だと解り、道理でまぶしいわけだ、と思ったのもつかの間。
なんとなしに右に眼を向けてみると……見知らぬ男が魔物に磔にされていた。
魔物は背を向けていて、しかもまだ彼は生きている――そう感じとった彼女の身体に一気に活力がみなぎり、杖を手に魔物へと疾駆する。
少女の姿をみとめた男の目が大きく見開かれる。
彼女は人間離れした跳躍で魔物へと飛びかかり、その巨大な樫の木の杖を振るった。
ドグシャァアアッ――!!
もの凄い打戟音がひびきわたった。
魔物の身体が大きくゆがみ、吹っ飛ぶ。
磔から解放された男は驚愕の表情をあらわにしながらも、ふたたび両手大剣を持ち構える。
自身を救ってくれたその少女は、跳躍力・スピード・武器さばき・膂力と、すべてにおいて十代前半の少女――いや、人間のそれを上回っているといってよかった。
「助太刀、感謝する!」
男が朗々と叫ぶと、少女は無表情でかすかに頷いた……ように見えた。
その後の彼の動きはまさに水を得た魚の如しであった。
体勢を立て直した魔物は、今度は少女をねらって触手をビュゥンと放ってくる。
かなりの速度で迫ってくる、それも無数の触手を、彼女は難なく杖ですべて弾き返す。
その隙に男が魔物の横合いから襲い掛かる、が魔物も三本の触手を放って応戦した。
しかし男は二の轍を踏まず、腕や脚にかすらせるに留める。
上空に振りかぶった大剣が魔物の脳天へと振り下ろされ、魔物は見事に一刀両断――紫の鮮血が派手に噴き出した。
こうして彼は、ようやく一匹めの魔物を仕留めたのである。
4
「【治癒〜cura〜(クーラ)】……」
透明感のある綺麗な声で少女がなにかつぶやくと、ヴァッツの胸元に淡緑の光が収束してゆく。
少女は瞑目し、口と指先を世話しなく動かしてゆくその内に、男は胸のキズがふさがってゆくのを感じていた。
(すごいな…………)
それが正直な感想だろう。
これが…………これが「魔法」というモノなのか。
先刻の戦闘では行使っていなかったようだが、こうして明確な効果を見せられると魔法の凄さを実感せざるをえない。ならばなおさら何故この「魔法」という存在が世界から喪失(うし)なわれたのか気になる。どの文献にも直接的な原因は載っておらず、詳細不明なのである。
「……キミは一体、何者なんだ?」
とすっかり完治した胸元をなでながら、男は当然の疑問を口にした。
「俺はヴァッツ=レージル。旅の傭兵だ。きみは一見したところ……」
男――ヴァッツは言葉に詰まった。果たしてこれは訊いていいことなのだろうかと、少し迷ったのだ。
「…………魔女見習い」
少女の声は小さかったが、ヴァッツには十分聞き取れた。
半そでの上衣(チュニック)に短めの外套(マント)、これまた短い腰布きれ(スカート)に革の長靴(レザーブーツ)といった出で立ち。
なるほど、彼女の格好はヴァッツに大昔の魔女見習いの容貌を連想させていたが、予感は的中していたのだ。
「……ど、どうしたら信じてもらえるの、だい?」
???
……ヴァッツはいま強烈な違和感を覚えた。
見たところ十歳くらいな上、非常に可愛らしいお顔にまったく似つかわしくない口調だったからだ。
「や、別に疑ってかかってるわけじゃないんだが……」
「……あたしは過去から来たんだ。あ、あたしを妬んでる愚か者どもが未来に飛ばしやがったんだよ」
ヴァッツは噴き出しそうになった。彼女は明らかにこの口調で話すのが不得手そうな上、少し恥ずかしそうにしている。
「ま、まぁそいつらは今ごろ牢獄に入れられてるだろうが、ね。……もしかしたら死んでる可能性だってあ、あるし」
「ふむ、そうか…………実は、この大陸はここ五百年ちかく、魔物や魔法といったものと無縁の歴史を紡いできたんだ」
「な、なんで…………だって?!」
ヴァッツはついに噴き出した。
それを見た少女が少し顔を赤くした。
「な、な、な…………何がおかしいの、だい?!」
「いや、あんまり似合ってないと感じたんでな、その口調。加えて、ところどころつっかえてるじゃないか」
「くぅ…………」
少女は悔しげに呻いた。
「ま、それはともかく。未だ名前を訊いてなかったな?」
ヴァッツはごく自然に話を逸らす。
少女はハッとして、急にクールな表情になって口を開いた。
「わ、私は…………あたしの名前は…………」
彼女の一人称が異なっていようが、ヴァッツとってはすでに瑣末な事項だった。
これからいちいち反応していたらキリがないし、馬鹿らしくなるだけだと思ったからだ。
「……フェ、フェリラディ=エキドナ、だよ…………リディって呼んでよ…………」
急にしおらしくなった彼女――リディに、やはり違和感を覚えてしまう。
さっきまで姉御口調だったからだろう。
こっちの方が似合っているような気がする。
「リディ、か……可愛らしい名前だ」
男のその言葉に少女は顔を赤くしてうつむく。
「ところで、出身は何処なんだ?」
リディは「えっ……」という顔になった。
(この人、私の言うこと信じてない……失礼だな…………)
実際には信じていないのではなく、過去彼女が住んでいた地域を知りたいだけである。
「……ふ、ふん、すぐに信じろとは言わないよ。けど、あたしは本当に過去から未来へ飛ばされたんだ。ここが何年後かは解らないけど、その様子だと今のこの大陸では魔術の存在は珍奇なものなんだね」
リディは一息で言い終えた。
しかもまったくつっかえることなく。
どうやら感情が揺らいでいるとこの口調になるらしい、とヴァッツは推測する。
もちろんその限りではないとおもうが。
「……わかった、信じよう」
「えっ…………」
少女の愛らしいおもてに微かな喜色がさす。
そもそも疑ってわけではないが、「疑われたと疑われた」のをいちいち吐露したところで何か意味を為すものでもない。
「ほ、本当、かい?」
「ああ、疑ってもしょうがないからな。俺だって人を見る目を多少は持ってるつもりだ、キミが虚言を弄しているようには見えない」
「あ、ありが……さんきゅ」
面映そうに礼を述べるリディに、ヴァッツは一言付け加えざるをえない気持ちになった。
「余計なお世話かもしれないが、その口調はあまり似合ってないぞ」
「わ、分かってるよ」
少女は慌てて言い返した。
そのことには触れられたくないようだった。
「分かってるけど……あたしの憧れの人がこういう話し方だから」
リディはそれだけ言って押し黙る。
「……そうか、なら良いんだ。だが、傍から見ると無理してそういう口調にしているように見えるんでな。や、好きでやっているならこれ以上口を出さんよ」
「あ、ありがとう」
リディはまた早口で言った。
ヴァッツは素の口調のほうがこの娘らしくて良いと思ったが、前言どおりこれ以上の突っ込みを入れるのは自重した。
「ところで、さっきの戦いについて訊きたいんだが……」
ヴァッツは例によってごく自然に話題を変える。
「……なんだい?」
「さっきの魔物との戦闘時、いつ魔法を使ったのかと思ってな」
ヴァッツの言葉にリディはかわいらしく首を傾げる。
「ずっと…………」
「うん?」
「最初から最後まで、ずっと……使いっぱなしだったけど?」
リディの台詞はにわかに信じがたいものだった。
5
トーレの村は「西の辺境国」とも云われる小国ギルヴェストのさらに辺境、南端に位置する農村である。
およそ二十分もあゆめば海へたどり着くものの、ここの海は魚が取れないため夏に子供たちが遊びに来るだけの場所だったりする。
「さて、と…………」
村についたヴァッツたちは大変な事態が起こっていることなど露とも知らずのんびりしていた。
が、彼の顔を知っている男に見つけられると、
「あ、ヴァッツさん! ちょっと来てください、ヴァッツさん!」
とすぐに呼び止められる。
この村には顔見知りが多い。
「久しぶりに来たんだ、慌てることもないだろうに」
「火急の事態なんですよ! あなたならなんとかできそうだ……村長に力を貸してあげてください!」
明らかに不機嫌な態度を示してみたが、そこまで乞われては仕方がないと、ヴァッツは男に案内されるままに村長宅に赴くことにした。
「ところで…………いや」
「彼女か? 魔女見習いだ」
「いや」と言ったのに自分の疑問に対し正確な返答をよこされ、おもわず身構えてしまう。
「ん……魔法のない世界に一人、魔法をつかえる彼女がこうして未来にきたんだ。少しは親切にしろ……っておい、なに怖がってる」
ヴァッツは後ずさりしている男にあきれつつも言った。
「彼女は悪い人間じゃない。おまえどころかおそらく俺さえ敵わない相手なんだ、その気がありそうだったら行動を共にはしないさ」
それどころか俺自体いまごろあの世でくだを巻いていただろうしな、と心の中でつけ加える。
簡単に認めるのはなんとなく悔しいので「おそらく」を付け加えておいた。
男は驚愕の表情を隠しきれなかった。
「ヴァ、ヴァッツさんがこんな小娘に負けるわけないじゃないですか!」
「……俺も多少はそう思いたいところなんだが」
ヴァッツはあくまで淡々と事実を述べる。
リディは居辛そうに身体を縮こませていた。
自分がなんだか化け物扱いされているようで複雑な気分なのである。
「おっと、悪いな。別におまえが化け物だって言ってるわけじゃないぞ。たとえるなら、俺たちが微生物並みでおまえが哺乳類……つまり人間並みの力の差があると言っているだけだ」
「…………あんまりフォローになってない」
「ふっ…………」
ヴァッツは微かな笑声を洩らした
なんとなしに人を惹きつけるような魅力がある。
「気にするな。だがなリディ、たぶん確実に、いずれおまえの力が必要となる時がくる」
ヴァッツはどこか演技じみた口調でいう。
「たぶん確実にって…………どっちなんすか?」
前を歩む男がリディの疑問を代弁してくれたが、ちっとも嬉しくない。
私が訊きたかったのに。
リディの煩悶とした気持ちをよそに、一行は村長宅についた。
「じゃ、ヴァッツさん、俺はこれで」
「ああ、悪いな」
「村長にうまく合わせてやってくださいよ。有事なんですから」
「ああ、おまえこそ細君に殺されんよう気をつけろよ」
「それは言わない約束ですよ」
男は苦笑を浮かべながら立ち去った。
6
村長宅は他の農家とは明らかに一線を画した造りで、良くいえば堅固、悪くいえば贅沢な印象を受ける木造の建物だった。
「む…………レージルか」
トーレ村の長は、振り子椅子(振り子のように前へ後ろへ揺れるのでそう呼称される)にもたれかかって、壮年男性と幼い少女の二人連れを見つめた。
自分でゆるやかに椅子を揺らしているのにどこか威厳を感じさせる容貌である。
「で、大変なことってのはなんだ、村長。俺達だってそこまで暇じゃあない。用件は手短に頼む」
「……おまえも娘を持つようになったのだ、同じく孫娘を持つわしの気持ちを慮ってはくれまいかね」
「大いなる誤解だ、村長。彼女は今日会ったばかりの迷子だ」
「……おまえも嘘が下手になったものだ」
「本題からずれていくのは勘弁してくれ、村長。それに、時間が経つほどクレミアの身も危ういんじゃないか?」
「……相変わらず食えぬ男よ」
過去の‘例の事件’のせいでこのふたりは仲がよくない。
村長の話をかいつまんで要約するとこうなる。
孫娘のクレミアが一昨日の夜に消息を絶った。
ほぼ間違いなく最近出没しはじめた魔物の仕業であろう。
以上である。
話すのは簡単だが、問題を解決するのは困難といえた。
「……魔物の仕業である根拠は?」
「手品のようにいなくなってしまったからな。魔法がない今そんな事ができるのは魔物だけじゃろう」
「……つまりなんとなくか」
ヴァッツは呆れ顔になった。
「……この二日間でなにかしたのか?」
「実は魔物の仕業と解ったのが今日なのだ。……北の洞窟の入り口にこれが落ちていたんでな」
言いながら老人はひとつの首飾りを差し出す。
キラキラと煌めく銀細工の、黒水晶の首飾り。
「……あやつが……常に身につけておったものだ。孫娘をさらった輩はてっきりこれが目当てだとおもったんじゃがな…………」
突如リディが幼顔を蒼ざめさせ、小さな身体をぶるぶる震わせた。
「……どうした?」
「そ、それ…………」
リディは大きな黒水晶の珠を指差し、眼を背ける。
「歪んだ魔力…………この宝石から魔物を呼び寄せる力を感じるよ…………」
7
それが突き入れられるたび、少女はえもいわれぬ感覚におそわれていた。
十字架を模した寝台にあおむけに磔られ、精強な体つきの男と交わっている少女。
トーレの洞窟の最深部で犯されている彼女こそ、行方不明となっている村長の孫娘クリミアであった。
この地獄のような時間はいつまで続くのだろうか。
身に覚えのないことを訊かれても答えようが無いのに。
大昔の魔女狩りで捕まった女性の気持ちが、今のクレミアには痛いほどによく解る。
「ん? なんだよ、我慢してんのかよてめえ」
自分の秘処に巨茎を突き入れてくる男がなじってくる。
彼女は彼をよく知っていた。
いや、知っているつもりだったというべきか。
こんなことをしてくる男だったとは。
ずぶ、ずぷっ、ずちゅ……
「んっ……! は…………うぅ……!」
いくら催淫薬の所為とはいえど、犯されているにも関わらず性的快楽を感じ、あまつさえ甘声をもらす自分がいやになる。
「おら、どこなんだよ……吐けや!」
「ぐぁっ――!」
男に固めた拳でなぐられ、クレミアは悲鳴を上げる。
痛い。口の中を切ったらしく、血の味を感じた。
悔しい。自らが置かれている理不尽な境遇に、少女は涙する。
身動きできない自分を暴力によって辱める眼前の男――トーレ村の長の息子・ギラスに、村長の孫娘クレミアは根深い憎悪を抱いた。
ギラスはふいにクレミアから己自身を抜き、ひどく憔悴したクレミアの様子を眺め回して愉しむ。
「はぁ…………はぁ…………はぁ…………」
クレミアは荒く息を継ぐ。
屈辱と消耗によってかなり眼つきが険しくなってしまっていた。
「はっ?! あくぅっ……!」
下半身に感じた強烈な衝撃に、少女は思わず可愛い鳴き声を洩らしてしまう。
ギラスが膣内に指を滑らせてきたのだ。
くちゅくちゅくちゅ、ぬちゃぬちゃ、びちゃびちゃ――――
「ふあっ! ひゃぁああん!!」
淫靡な水音と、それを否定したくともできない少女の切なげなあえぎ声が、洞窟内に反響する。
「あっ、くぅ……や、やめっ…………――あああぁぁッ!!!」
脳天に直接ひびくような快感に、クレミアはあやうく意識を失いそうになった。
ギラスが指で膣内をさぐりながら、少女のもっとも敏感な部位に吸い付いてきたのだ。
ぴゅっ、ぴゅっ、と断続的に愛液を噴かしつつ、目からは涙が、口からは涎が垂れ流される。
「へっ、清純な女かと思ってたが、服を剥いだら淫乱なメス犬じゃねえか。失望したぜ」
「ひぐうぅ…………」
花芯に吸い付いてくるギラスに対し何の言葉も返せない。返す気力がない。
しかもこの男、ただ自らの欲望のままに淫戯に興じているだけではない。
催淫薬で理性を乱れさせたうえ、感度が高まっているのに決して絶頂(イか)せないように責め立てているのだ。
絶頂寸前で責め手をゆるめ、微かに回復してきたところをまた責める……しかも言葉による尋問も加わり、少女を精神的にも性的にも追いつめているのだ。
「いい加減に吐く気になったろ? さあ、てめえの宝石コレクションの数々はどこにあんだ、ああ?」
「知ら、な……――うあぁあっ!! やだぁぁあぁぁ……!!」
ぐちゃぐちゃぐちゃ。
はげしい水音が鳴りわたり、クレミアのそこから快楽の証液が噴き出す。
男の卑猥な指が少女の気持ちいい箇所を的確に突き上げ、気が狂いそうなほどの快感がずんずん突き上げてくるのだ。
「あはぁっ!! ひゃぅ、あんっ、あぁんっ――」
少女の悲鳴のようなあえぎは途切れることがない。
今まで性体験すら無かった彼女の理性を壊すほど、ギレスの指技は巧妙なのである。
くちゅくちゅくちゅ――
「だ……めぇ……! イ……く……イっちゃ、うぅ、んあぁっ!! いやぁッ!――――」
だが――まさに絶頂寸前というところで、ギレスは指を引き抜く。
「あぁぁ…………」
ため息にも似た稚い嬌声。
絶頂に至りたくて仕様がないのに、こうして何度となくおあずけをくらわされる。
このまま続けていると精神に異常をきたすのは明白だった。
「おら、言ってみろよ。自分は凌辱されてるにも関わらず感じてる雌豚ですってよ」
「くっ……! ――んぁああんっ!!」
ギラスをキッと睨みつけるも、秘穴を激しく責め立てられると壮絶な快感に甘いあえぎを洩らしてしまう。
「あ……あぁっ、はぁぁあっ!」
くちゅくちゅといやらしい水音がもれ、少女は眼が開けられず、口を閉じることもかなわない。
さりげなくたまに陰核を擦られるたび、電気を通されたかのようなもの凄い衝撃がクレミアの全身を震えたたせる。
(……もうこのまま気持ち良さに溺れてしまってもいい)
クリミアの心が淫欲に染まりきろうとした、その時だった。
「あー、もう飽きたわ」
ギラスの台詞は突然だった。
「え……――くあぁっ!」
もう何度目だろうか、少女のそこに男の陰茎が容赦なく突きこまれる。
挿入られた瞬間に少女は異変を感じとっていた。
ギラスのそれはすでに激しく波打っていたからだ。
どくどく、びゅくびゅく、びゅぷっ――――。
ギラスの射精はすさまじいものだった。
膣内出ししたかと思えば、引き抜いたペニスから出てくる精液は留まるところをしらず、クレミアの白い裸体、さらには顔にもぶっかけたのだ。
美しい少女はいまや全身が精液まみれだった。
「あ…………ああ………ぁ………………」
白濁に穢れきった少女は、こわれた人形のように呻き、光を失った碧い双眸を虚空に漂わせていた。
続きは後日投下します
ヴァッツがリディの子孫まで読んだ。
おお、新しいのが投下されてる!
大作っぽいね期待。
おつおつ 期待してる
2、3人いた書き手たちはどこに……廃れるのは一瞬か
はーい、いますいまーす!
ちょっと実生活が忙しいだけですー!
というわけで、「神か悪魔の贈り物」第一章第十五話を投下させていただきます。
>>373の続きです。
……待ってる人がいるかどうか、分かりませんが。
なお、
・百合注意
・微スカ注意
・この俺様が貴様らの鼻水を飲み尽くしてくれるわ注意
です。
あと、
>>256に簡単な登場人物紹介があります。
イーシャさんはアキさんを抱えたまま、ゆっくりと湯船に浸かっていきます。
まるで赤ちゃんをお風呂に入れる様です。
――まあ赤ちゃんにしては、この茶髪美少女は少々肢体が煽情的過ぎますが。
そしてアキさんは斜め横向きに首まで沈められました。
大きなお胸が、浮力でぷかりとお顔を出しています。
その体勢のまま、右手でアキさんのおまたを、左手でお胸を愛撫し続けるイーシャさん。
虚ろな目から涙を、半開きのお口から涎を垂れ流すアキさんに、
呻きとも吐息ともつかない、弱々しい音を上げさせます。
その姿は、まるで繊細な楽器を爪弾く演奏家のようでもあります。
女体楽士と化したイーシャさんは、慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら、
その楽器に優しく語りかけ、あやします。
「うふふ、アキー? 今は何も考えなくて、良いんですよー?
私に身を任せて、ただただ気持ち良くなっていれば良いんですからねー」
答える代わりに「ぇぁ......ぉ......」と小さく声を上げ、体をびくびくっと
小さく痙攣させるアキさんを見て、イーシャさんは、嬉しそうに笑っています。
隣に座ったクロエさんは、それを見て思いました。
(あ、れ……? ひょっとしてボク達、とんでもない人を覚醒めさせちゃったんじゃ……?)
しかし、
「クロエ、ちゅーしましょう」
「……うん」
イーシャさんに凛々しいお顔を寄せて囁かれ、濃厚なべろちゅーを施されたクロエさんは、
うっとりぼうっと、すっかり腰砕けにされ
(まあ、別にいっか)
と、思考を放棄してしまいました。
その間も、イーシャさんの指は休まずアキさんを奏で続けています。
……本当に、とんでもない人を覚醒めさせてしまったのかもしれませんね。
一通り幼侍女さんの唇を楽しみ、口付けだけで二度絶頂に導いてから、
イーシャさんは洗い場の方に目を向けました。
そこでは、責められ疲れた公女殿下が、責め疲れた前後の侍女さん二人と共に、
折り重なるように突っ伏していました。
しばらく見ていると、シーリオさんが気だるそうに上半身を持ち上げ、ゆっくりと腰を引いていきました。
ずるずるん……と、ドュリエス様のお尻の穴から張り型が抜けていきます。
ドュリエス様は横たわったまま
「んぉぉ……」
と小さく鳴いて、体をぶるっと震わせます。
シーリオさんはそのまま革紐を解き、自分の中からも引き抜くと、ドュリエス様の中に入っていた方に
顔を近づけ、くんかくんかと鼻を鳴らして艶かしい微笑みを浮かべました。
高貴な匂いを十分に堪能した後は、舌をぺろぺろと這わせ、そして小さなお口いっぱいに頬張って、
棒に纏わり付いた姫君の高貴な尻穴味を味わいます。
「クロエ、アキをお願いしますね」
それを見ていたイーシャさんはそう言って、まだぼうっとしたままのクロエさんにアキさんの体を
預けると、湯船から出て、絡まりあう三つの女体に近づいていきました。
「……あ、イーシャ様……ふぇっ!?」
そしてシーリオさんを、先ほどのアキさん同様にひょいっと抱え上げ、湯船に運ぶと、
クロエさんの隣に降ろし、腰掛けさせました。
お湯に浸かったシーリオさんは、温かさがじんわりと手足に染み入るのを感じて初めて、
自分の体が激しい行為で疲れていた事を実感しました。
「あ、ありがとうございます、イーシャ様……はふぅ……あー、良いお湯……」
そう溜息を吐きながら、アキさんを抱えたままのクロエさんの肩にもたれ掛かりました。
「ちょ……と、シーリオ、重い……」
「んー……重い……? それはぁ、アキさんを抱えているからだよぉ……。私は重くないもん……」
シーリオさんはアキさんが聞いたら怒りそうな事を言いましたが、そのアキさんはまだ意識が
朦朧としたままですので、事なきを得ました。
っていうか、先程の年増発言もそうですが、この銀髪少女、少々舌禍気質の様ですね。
……まあ、実はただの誘い受けなのかもしれませんけれど。
イーシャさんは続いてドュリエス様とナオミさんに近づくと、器用にお二人纏めて抱き上げました。
繋がったままで。
「きゅあ……」
「んふぅ……」
持ち上げられた勢いで張り型が中で擦れ、重なり合う公女殿下とその侍女頭さんは
弱々しくも悩ましい声を上げてしまいます。
それにしてもイーシャさん、中々の力持ちさんですね。
身じろぐお二人に、彼女はそっと囁きます。
「しっかり抱き合ってて下さいね。姿勢が安定しないと、運びづらいですから」
「ひ……ちょっと……い、イーシャ……っ」
「お、落とさないで下さいませぇ……」
力の入らない腕に必死に力を入れて、ぎゅーっとお互いを抱き締め合うお二人。
お大事にも思わず力が入り、中のモノを締め上げてしまいます。
そんな状態ですから、イーシャさんが歩く度に密着したお二人の体が揺れて擦れ合い、
締め上げられたままの張り型が膣内をぎしぎしと苛みます。
「あふっ、んっ……ひっ……ひうっ、い、イーシャぁ……っ!」
「ああ、も、もっと、ゆっくり、歩いて、ふぅぅ……くださ、い、ませ……ふああ……っ!」
「この速さでも大丈夫ですよ。愛しい愛しいお二人を落としたりなど、絶対にしませんから」
ドュリエス様とナオミさんの訴えにそう答えるイーシャさんは、真っ直ぐ湯船に向かわず、
浴室内をぐるっと巡る様に遠回りをします。
さらに、良く見ると腕を小刻みに動かし、抱えた二つの女体を意図的に揺らしているのが分かります。
その絶妙な動きによって、散々絶頂を迎えたお二人の肉体に、またもや快楽が蓄積していきます。
「あっ、あっ、あっ……だめよ……もう、もう……ううううううう……っ!!」
「いーしゃさまぁ……いーしゃさまぁ……あああああああああああ……っ!!」
ようやく湯船に到着する頃には、お二人とも強制的にイかされてしまうのでした。
抱き合いながらびくびくと痙攣するお二人を湯船の縁にそっと横たえると、イーシャさんは
お大事同士を繋ぐ男性器状の架け橋をそっと掴み、抽迭させ始めました。
「ふあおぉぉぉ……い、いーしゃぁ……ぁぁぁぁぁ……ゃぁぁぁぁ……っ!!」
「ぉぁぁ、もぉ……ゃ、ゃぁ、でしゅわぁ……ぁぁぁ……んぉぉぉ……っ!!」
イーシャさんの巧みな抽迭に、達している最中にもかかわらず無理矢理次の絶頂を押し付けられ、
お二人は抱き合ったまま白目をむいて仰け反り、全身をがくんがくんと震わせてしまいます。
ようやくイーシャさんが攻め手を休め、張り型を引き抜くと、お二人ともぷしゃっと小さく
お潮を吹き、今度こそ力を失って床に伸びてしまいました。
「ぁ……ぁ……ぉぉ……」
「はーー……はーー……」
湯船の中からその様子を見つめていたシーリオさんとクロエさんの目の前で、張り型の形を
覚えて大きくお口を開けたままだったドュリエス様のお大事が、戦慄きながら閉じていきます。
それを追う様に、やはりはしたなく開きっぱなしだったナオミさんのお大事も、
ひくひくと震えながらゆっくりゆっくりと塞がっていきました。
「ふふ、二人とも、凄くいやらしい穴だね」
「ドュリエス様、さっき私が抜いたばかりの時は、お尻の穴もこんな感じでしたよ?」
「そうなのですか? 両方が広がった所も、今度是非拝見したいですね」
シーリオさんの言葉を受け、イーシャさんはそう言って手元の張り型を、
ドュリエス様に見せ付ける様に目の前で官能的に舐めあげます。
「ねえ、ドュリエス様? うふふふ……」
「……ぁ……ぃ、ゃ……」
もう満足に声も出せないドュリエス様は、力なく首を横に振るのが精一杯です。
そんなドュリエス様をお姫様抱っこでもう一度持ち上げると、
イーシャさんはそのまま再び湯船に浸かりました。
「シーリオ、動けますか? ナオミの方をお願いしますね」
「あ、はい……ん、よい、しょ……」
言われたシーリオさんは、疲れた体を動かしてゆっくりと湯船から上がります。
その、四つん這いでのろのろと這い出るような動きが妙になまめかしく、
クロエさんは思わず彼女の濡れたお尻に目を奪われてしまいます。
「あ、シーリオ、色っぽい……」
「ふふ。クロエ、あなたも色っぽいですよ」
その呟きを聞いたイーシャさんは、ドュリエス様を抱えたまま、クロエさんの頬に口付けます。
「んぅ……」
「クロエは幼い中に妖艶さがあって、妙な背徳感を煽りますね。ぞくぞくしてしまいます」
「ん……えへへ、ありがとう、イーシャ様……」
シーリオさんはそんなやり取りを聞きながらナオミさんを持ち上げようとしたのですが、
ただでさえ疲れている上に普通の女の子の力しかない彼女では流石にイーシャさんのようにはいかず、
諦めてナオミさんを背後から羽交い絞めにすると、ずるずると湯船に引きずり込みました。
「ふぅ……まったく、貧乳のくせに重い年増ですねぇ」
――まったく、懲りない舌禍侍女さんですねぇ。
ナオミさん、今は特に反応しませんでしたが、後で体力が回復したら絶対何かされますよ?
まあそれはともかく、これでようやく全員湯船に浸かることが出来ました。
湯船の中で壁に寄りかかったイーシャさんは、ドュリエス様を自分の足の間に座らせると、
背中からそっと抱き締めました。
「ああ、お湯の中で温まりながらこうしてドュリエス様を感じられるというのは、
とても幸せで良い気分です。ドュリエス様は、私とこうしているのは、どうですか?」
耳元で囁く少女騎士に、公女殿下は荒く息を吐きながら、
自分を抱き締める腕にそっと手を重ね、答えます。
「はぁ……はぁ……ぁぁ……ええ、イーシャ……わたくしも、幸せよ……」
「ああ……ドュリエス様……愛しい方……」
「ん……イーシャ……か、可愛い子……って、ちょ、ちょっと……何を……っ!?」
イーシャさんは、ドュリエス様の前に回した右手をお大事へ、
左手をお胸へと伸ばしてまさぐり始めました。
「うあっ、も、もうっ、ね、ねえ、今は、もう、ダメよっ! お、おやめなさあひっ! ひぃぃっ!!」
「ああ、素敵です……もっとお声をお聞かせ下さい……」
「んひっあおぉ……っ!! こんなっ!! すごいぃぃっ!! んおぉぉぉぉぉっ!!」
習得したばかりの高度な性の技巧を全力で施し、ドュリエス様を
またもや快楽地獄に陥れるイーシャさん。
お仕えする麗しの姫君の鳴き声を堪能しながら、仰け反るその首筋に舌を這わせ、
高貴なお味を味わいます。
「んおぉぉぉぉぉ……っ!! おーーーーーっ!! お゛お゛お゛お゛……っ!!」
「ああ、ドュリエス様、大好き……」
「あ゛ーーーっ!! もぉやべてぇーーっ!! 今日は、も、もお……お゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
その様子を隣で見ていたクロエさんは、今は自分が抱いているアキさんを見下ろし、
同じ様に愛撫し始めました。
イーシャさん程の脅威的な飲み込みの速さこそないものの、クロエさんだって毎日の様に
この面子で愛を交し合ってきた実績があります。
たとえ幼くとも、そこらの初心な行かず後家なんかより、よっぽどこの手の技には長けているのです。
――しかし。
「……ぅぇぇ……ぇぇ……」
イーシャさんに覚えたての舌技、指技を試すようにさんざん責め抜かれ、意識が朦朧とするまで
何度も何度も絶頂を強いられ、何度も何度も失神と覚醒を繰り返させられたアキさんは、
虚ろな目を半開きにしたまま、だらしなく開いた口から小さく音を出す程度で、
もうたいした反応を示してはくれませんでした。
「はぁ……そりゃ、そうだよねぇ。ほらアキ、もういいから、こうして少しお休みしてようね」
クロエさんは諦めて、アキさんの頭を梳く様に撫で、あやす事にしました。
(こうしていると、アキも可愛いもんだなぁ)
一方シーリオさんも、抱き抱えたナオミさんに指を這わせ喘がせようとしましたが。
「あひゃああっ!? な、ナオミさんっ!、もうっ!?」
既に復活していたその絶倫侍女頭さんによって、対面座位で正面から抱きしめ返されてしまいました。
さっきまで責め疲れてぐったりしていたシーリオさん自身、ちょっと弱っていましたしね。
そして背中に回した右手を下に伸ばし、侍女頭さんは舌禍侍女さんのお尻を撫で回します。
「うふふ、ダメよシーリオ、私をどうこうしようなんて十年早いわ」
「そ、そんな……じゅ、十年もたっちゃったら、ナオミさん本当に年増になっふあおーーっ!?」
ナオミさんは撫で回していた右手の指を、まだほぐれたままのシーリオさんのお尻の穴に
二本いっぺんに奥まで突っ込みました
「あらぁ、何かしらシーリオぉ? さっきも何か言っていたみたいだけどぉ?」
ナオミさんはそう言いながら、二本の指をぐいぐい押し込み交互に動かし、激しく責め立てます。
「にゃ、うひっ! にゃんでもないれしゅぅーーっ!! ふあっ! しゅごいぃぃっ!!
ふあおぉっ!! おひりぃっ!! もっろぉ!! もっろおひりいじめれくあしゃいぃーーっ!!」
……やはりシーリオさん、ただの誘い受けだったようですね。
それからどの位経ったでしょうか。
悩ましい嬌声が鳴り止まなかったお風呂場にも、ようやく静寂が戻って参りました。
皆さんすっかり満足なされて、ゆったりとした後戯のお時間を迎えたのです。
イーシャさんは、虚ろな目でぐったり弛緩しているドュリエス様を、クロエさんは、少し回復してきて
緩慢ながらも少しずつ反応を返すようになったアキさんを、後ろから優しく抱きしめ、頭を撫でたり、
耳朶をそっと甘噛んだりしてあげています。
ナオミさんとシーリオさんは、向かい合わせで抱き合い、お互いの唇を味わう様な
緩やかかつ濃厚な口付けを交わしながら、相手の背中を撫で、お胸同士をゆっくり擦り合わせています。
公女殿下や巨乳侍女さん程ではないものの、侍女頭さんの巧みな指使いにお尻を責め抜かれて、
銀髪侍女さんはやはり少々お疲れ気味のご様子ですが、先程とは違うこの慈しむ様な愛撫を受けながら
嬉しそうに微笑んでいます。
「んん、あむ……んぅ……ナオミしゃぁん……だいしゅきぃ……」
「んむぅ……ちゅぅ……ちゅば……ふぅ……あらぁシーリオぉ……
んちゅ……こんな年増貧乳の私にも、そう言って、んむっ……くれるの?」
シーリオさんの言葉に、拗ねた口調で返すナオミさん。
もちろん、そうでなければこんな風に体を重ねて求め合ったりはしない、
という事を踏まえた上での発言です。
シーリオさんもそこは分かっていますので、ナオミさんと目を合わせてそっと微笑むだけで
そのままねっとりとした接吻を続けました。
そこへ、ドュリエス様を抱えたイーシャさんと、アキさんを抱えたクロエさんが、
左右からずりずりとにじり寄って来ました。
そしてイーシャさんはシーリオさんの頬を、クロエさんはナオミさんの首筋を
横からぺろぺろと、猫が毛繕いするかのように舌で愛撫します。
ナオミさんとシーリオさんは糸を引かせながら唇を離すと、それに応えて横を向き、
舌を差し込む濃厚な接吻を交わして、口中に溜まって混じり合った二人の唾液を
相手の口中に流し込みます。
シーリオさんはイーシャさんへ。
ナオミさんはクロエさんへ。
イーシャさんはシーリオさんから与えられたその混合媚液で口の中をくちゅくちゅと漱ぎ、
味と香りを堪能すると、こくん……と可愛らしく喉を鳴らして飲み込みました。
「ああ……」
目の焦点の合ってない恍惚とした表情で艶かしく溜息を吐き、小さく体を震わせた少女騎士さんは、
銀髪侍女さんと唇を重ねながら、腕の中の公女殿下をさらに強くぎゅっと抱きしめます。
一方クロエさんは、同じ様にナオミさんから流し込んでもらったそれを、やはり口中にしばらく溜めて
いましたが、しっかり嗜んだ後は、自分の唾液をたっぷり混ぜ込んでから、右手でアキさんの顎を掴んで
お口を開かせ、そこへ舌伝いに流し込みました。
嬉しそうな顔で受け取ったアキさんもまた、三人分のお味をクロエさんと同じ様にお口の中に溜め、
転がし、漱ぎ、たっぷりと味わいます。
そしてそのまま気だるげにゆっくりと体を起こすと、横を向いてシーリオさんに抱き着き、
唇を重ねると、アキさんの味も加わったその媚粘液を中へ送ります。
シーリオさんもやはり飲み込まずに口中で溜め、自分のお味も追加してお隣のイーシャさんへ
彼女の唇にむしゃぶりつくように受け渡しました。
シーリオさんはさらに、イーシャさんの口中へ舌を挿入し、注ぎ込んだ甘露を攪拌します。
イーシャさんも、もう既に貫禄さえ感じさせる巧みな舌使いでそれに応えました。
侵入してきた味覚器官に、自らのそれを絡め、擦る少女騎士の絶妙な責めに、銀髪侍女さんは
それだけで今日何度目になるか分からない絶頂を迎えさせられます。
かくんと、腰が抜けたように崩れ落ち、離れる二つの唇の間に糸を引きながらアキさんの方へと
倒れこんだシーリオさん。
支えきれずに一緒に倒れそうになるアキさんを、クロエさんが支えます。
イーシャさんは自分の味も加わったそれ、二本の舌でかき混ぜられて粘度が上がったそれを、
今度は飲み込まずにドュリエス様に差し上げようと思いましたが、腕の中の公女殿下は未だ
絶頂疲れから回復されておらず、弛緩させた四肢を投げ出し、呆けた様な半眼で涎を垂れ流して
らっしゃいましたので、それはもうしばらく待つ事にして、代わりにナオミさんの方へと
顔を突き出しました。
ナオミさんもそれを迎えるように首を伸ばし、イーシャさんの口唇愛撫を受け入れます。
しかし、あまり本気で責め立ててナオミさんを絶頂させてしまうと、その拍子に飲み込んで
しまいかねません。
イーシャさんはナオミさんが達してしまわない様、抑え気味に舌を使いながら口中の芳しい液を
流し込み、そっと口を離しました。
体はひどく疲れているのに、イーシャさんによって無理矢理に高ぶらされ、しかも最後まで
与えてもらえず、ひどくもどかしい気分で放り出されたナオミさんは、一周して自分に戻ってきた
淫唾液をすぐに目の前のシーリオさんへと渡すと、またイーシャさんの方へと向き直り、
舌を突き出して、続きをはしたなくおねだりしました。
「ふふふ……」
イーシャさんは、ほんの数刻前まで性的な知識どころか自慰の仕方さえ満足に知らなかった少女とは
思えない程に淫蕩な笑みを浮かべると、ナオミさんの舌を咥える様に再び口中へと迎え入れ、今度こそ
本気で絶頂へと導きました。
「んう゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛……っ!!」
絶頂寸前の状態から勢いをつけたように一気に高みへと持ち上げられたナオミさんは、
涙を流しながら、口を塞がれたままのくぐもった呻き声を上げました。
脱力し、後ろへ倒れそうになるナオミさんの頭を、イーシャさんは片手で抱え込み、引き寄せると、
そのまま本気の口唇愛撫を続けました。
「んぐぅーっ!? う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ!? う゛ーーーっ!!」
強制的に舌絶頂を繰り返させられるナオミさん。
逃れようと体を捻りましたが、武術の達人たるイーシャさんに頭をがっちりと押さえられては、
それもかないません。
全身をびくんびくんと震わせながら、何度も何度も視界を白く染め上げられてしまうのでした。
お隣では、ナオミさんから受け取った粘っこい汁を、シーリオさん、アキさん、クロエさんの
三人がナオミさんの痴態を横目で見ながら渡し合っていました。
シーリオさんからアキさんへ、アキさんからクロエさんへ、クロエさんからシーリオさんへ、
シーリオさんからクロエさんへ、クロエさんからアキさんへ、アキさんからまたクロエさんへ、
クロエさんからシーリオさんへ、シーリオさんからアキさんへ、アキさんからまたシーリオさんへ……。
イーシャさんがナオミさんを解放する頃には、五人分の唾液はすっかり嵩を増していました。
侍女頭さんの体を銀髪侍女さんに預けると、少女騎士さんは頬を膨らませてそれを含む黒髪侍女さんに
向かって口を開き、促します。
クロエさんは、飲み込まない様に気を付けながら身を乗り出すと、イーシャさんのお口の中に
こぼさない様ゆっくりと流し入れていきました。
その頃にはドュリエス様も大分回復されていて、まだ少しぼうっとしてはいらっしゃいますが
意識もお戻りになり、今は弱々しくも微笑みを浮かべながらイーシャさんを見上げ、両の御手々で
自分を支える彼女の腕をきゅっとお掴みになられておいでです。
そして、自分の可愛い騎士さんがお口の中いっぱいに含んだものが何なのかに気が付いた公女殿下は、
上目遣いで口を開け、舌を突き出して催促なさいました。
その淫らな表情を見て、イーシャさんは唇の端をにぃっと持ち上げる昏い笑みを浮かべると、
溜まりに溜まった五人分の涎を、ドュリエス様の麗しい御尊顔めがけてばしゃばしゃと垂れこぼしました。
わざとお口を外して、です。
「ん……あぷ……ぷふぁ……」
お仕えする姫君のお顔全体を汚していくこの行為に、イーシャさんは背徳的な嗜虐の喜びを覚え、
ぞくぞくと背筋を震わせます。
被虐者たるドュリエス様もまた、頬や鼻を垂れ流れる愛しい少女達の口腔愛液を、舌を伸ばして
舐め取りながら、ぬらぬらと妖しく濡れた御尊顔を倒錯的な悦楽に歪めてらっしゃいます。
そんなドュリエス様に、イーシャさんは恍惚の表情を浮かべながら侮蔑の言葉を浴びせかけます。
「はぁ、はぁ……うふふ、ドュリエス様、とっても嬉しそうですね。お顔中べとべとにされるのが
そんなに良いのですか? 虐められて喜ぶなんて、変態ではありませんか。なんて恥ずかしいお姫様でしょう」
ドュリエス様はこの言葉責めにうっとりとしながら、愉悦にまみれた声で答えます。
「ああ……イーシャぁ……そうなのぉ……。好きな娘を虐めるのも、好きな娘に虐められるのも、
どっちも大好きぃ……。だから、お願ぁい……もっと虐めてぇ……。もっと、罵ってちょうだぁい……」
「うふ、ふふふ……。良いですよ。いっぱいいっぱい、虐めて差し上げます」
イーシャさんはドュリエス様のお顔に舌を這わせて唾液を拭い取り、囁きます。
「もちろん、後で私の事も虐めさせてあげますよ。嬉しいですか? 変態公女殿下」
「……ええっ! ええっ! 嬉しいのぉ! わたくしを、いっぱいいっぱい虐めてぇ……っ!
そして、あなたをいっぱいいっぱい、虐めさせて頂戴……ああっ!!」
その様子を見て、クロエさんはシーリオさんに言いました。
「……イーシャ様、なんか一足飛びにお上手になってない? もうあんな言葉責めを覚えて……。
それにさっきだって、ボクやナオミを口付けだけで、何度も何度も……」
「え? 別に良いじゃない。ほら、ドュリエス様もイーシャ様も、あんなに嬉しそうにしているし。
私達だって、もうイーシャ様にめろめろにされちゃってるでしょう?」
「うん、それは、そうなんだけど……。でも、だからこそ、ちょっと……怖い、かな……」
「怖い? なんで?」
「だって……」
クロエさんは、自分の体を抱き締め、体を震わせます。
「……ボク、この一年でドュリエス様や君達にしっかり躾けられちゃって、もう、一日でも気持ち良い事
してもらえないと、気が狂いそうになるくらいの淫乱にされちゃったっていうのに……。なのに、これで
さらにイーシャ様にも躾けられちゃって、イーシャ様無しではいられない体にされちゃったりしたら、
ボク、もう……もう……」
「もう?」
「もう……いやらしいこと以外考えられない、ただの色情狂の変態になっちゃうよ……」
そう言って、「はぁ……っ」と伏目がちに物憂く溜息を吐く幼い黒髪少女の、あまりにも切ない
色気を孕んだその様子に、彼女より少しお姉さんの銀髪少女は頭を見えない矢で射抜かれたような
衝撃を受け、一瞬固まってしまいます。
そして次の瞬間、その可愛い妹分を抱き締めていました。
「やぁんもうクロエちゃんったらぁ!」
「ふぇっ!?」
「まったく……まったくもう! 何なの!? 毎回毎回、クロエちゃんの誘い受けは威力大きすぎるよぉ!
本当に無意識にやってるのっ!? それともわざとっ!? わざとなのっ!? ねえっ! もう、私達こそ
クロエちゃん無しにはいられなくなっちゃってるってばぁ!」
すりすりすりすり。
抱き締めながら、思いっきり頬擦ります。
「うにゃあ……シーリオぉ……」
クロエさんも、シーリオさんにしっかりと抱き着きます。
「本当にそうね。私達も、もうすっかりクロエの虜にされてしまったわ」
ものすごい回復力でもう復活したナオミさんが、シーリオさんと同じ様にクロエさんに抱き着くと、
そう耳元で囁きました。
「ん……ナオミぃ……」
「それに、こんなに可愛いらしいのに、自覚無く周囲を誘ってしまうなんて、危なっかしくって
私達の手元から離す訳にはいかないでしょう? 安心なさい、クロエ。あなたの身は今後もずっと、
ドュリエス様と私達が責任を持って預かってあげる。言っている意味、分かるかしら? ねえ、クロエ……」
「ふあぁ……っ!」
ナオミさんはクロエさんの耳をぺろりと舐めると、笑みを浮かべ、蕩ける様な声で続けます。
「……構わないから、色情狂の変態になっておしまいなさい。私達が、一生飼ってあげる」
「〜〜っ!」
クロエさんは目をぎゅっとつむると、両足をぴんっと伸ばして硬直しました。
シーリオさんを抱く腕にも力が入り、体を小さく震わせながら仰け反ります。
ナオミさんの言葉だけで、軽く絶頂してしまったのです。
「あら、今のでイったの? うふふ、色情狂になるも何も、あなたもうとっくに淫乱発情女じゃない。
まだ子供だというのに、なんていやらしい体なのかしら。生まれついての好き者ね。だから、背も低くて顔も
幼いくせに、胸ばかりこんなに育っているのね。羨ましい」
本音が出ました。
「っていうかクロエちゃん、あたし達に初めて手ほどき受けた時、既に何度も何度もおねだりする、
快楽依存少女だったじゃない。今さら何言っちゃってるのさー」
ナオミさんに後ろから抱き着き、肩口から顔をのぞかせながらそう言ったのは、イーシャさんに導かれた
忘我の境地から先程ようやく帰還したアキさんでした。
赤髪の巨乳侍女さんは、侍女頭さんの前に手を回してその貧乳をさわさわと撫でつつ、大きなお胸を
厭味ったらしく背中へ押し付けます。
「ナオミさんも、その頃にはもう、おっぱいの成長止まってたよねー」
「な……なん……っ!?」
「あ、違うか」
アキさんは悪戯っぽい笑みを浮かべ、何か言おうとするナオミさんを遮って続けます。
「生まれてこの方、成長期だった事なんかなかったもんね! クロエちゃんが生まれついての淫乱なら、
ナオミさんは生まれついての絶壁胸!」
ナオミさんは、まだドュリエス様と見つめ合っているイーシャさんに声を掛けました。
「イーシャ様、アキってばまだまだ物足りないそうですわ。もっともっと、朝まで
快楽責めをしてやって下さいませんこと?」
「っ!? ちょ、ま……っ」
イーシャさんはゆっくりとナオミさんさんに目を向け、ついでアキさんに目を向けると、
ひどく優しげな笑みを浮かべました。
「アキ、そんな水くさい……。言ってくれれば朝までと言わず、私の体力が続く限り責め続けてあげますのに」
「ひ……っ!」
アキさんは顔を青くして怯えます。
さらにイーシャさんは小さく胸を張り、ちょっとした自慢をしました。
「私、体力には自信あるんです。丸二日間休まず戦闘した事もあるんですよ」
「二日っ!? し、死んじゃう! そんなにされたらあたし死んじゃいます!!」
「何を言ってるんですか。アキは死んだりしませんよ。私がアキを死なす訳がないでしょう?
死なない様に、逝かない様に注意しますから。達する寸前の状態で、二日間だらだらと過ごしましょうね」
アキさんはナオミさんにしがみつきながら、首をぶんぶんと振ります。
「は……はは……や、やだなあイーシャ様ってば、冗談、きっついですよぉ……」
頬を引き攣らせるアキさんに、イーシャさんはきょとんとした顔をします。
「冗談? 何のことですか?」
「え?」
「え?」
「……っ!」
アキさんはナオミさんを盾にする様にイーシャさんの方へ押し出し、自分はその後ろに隠れました。
「本当、無理ですから……っ!! あたし壊れちゃいますから……っ!!」
しかしナオミさんはそんなアキさんの腕を掴むと、イーシャさんの前へと突き出しました。
そもそもアキさんを責めるようイーシャさんを焚きつけたのはこの人なんですから、まあ当然ですよね。
「なななナオミさんっ!?」
「さ、お願い致しますわ」
「はい。喜んで」
「ああっ! やぁっ! ねえイーシャ様っ! お願いですから許しんむーーっ!!」
イーシャさんは左腕でドュリエス様を抱えたまま右腕でアキさんを素早く抱き寄せると、
唇で唇を塞ぎ、無理矢理黙らせました。
「んっんんっ、んふぅ……」
散々嫌がっていたアキさんでしたが、イーシャさんの巧みな唇使い、舌使いに、
すぐに両目をとろんとさせ、脱力してしまいました。
唇が離れた頃には、もうすっかり抵抗の意志を失ってしまっていたアキさん。
涙目で手足を投げ出し、「もうどうにでもして……」といった風情です。
そんなアキさんの耳に、イーシャさんは軽く歯を立てると、息を吹き掛けるように囁きます。
「冗談ですよ」
「ん……ふ、ふえ……?」
赤髪侍女さんの面食らった顔の前で、少女騎士さんはぺろっと舌を出してはにかんだ笑みを浮かべました。
「ふふ、アキは怯えた顔も可愛いですね」
「ええ、可愛いでしょう? 虐め甲斐がありますわ」
「アキさん可愛い変態だから、虐められて嬉しいんですよね」
ナオミさん、シーリオさんもアキさんを覗き込んで言います。
どうでも良いですが、シーリオさんにだけは変態って言われたくないですよね。
アキさんは、脱力した状態からさらにずるずると体を滑らせ、顔の半ばまでお湯に浸かって
ぶくぶくと口から泡を吐き出しました。
顔は真っ赤です。
「あら、アキったら、皆に可愛いと言われて照れてるのね。本当に可愛い子」
ドュリエス様も、イーシャさんにもたれ掛かってアキさんをからかいます。
イーシャさんはドュリエス様の方に向き直ると、再びそのお顔をぺろぺろと舐め回しました。
クロエさんも、アキさんを褒め弄ぼうと思い、ゆっくり起き上がりました。
が。
「……へくちっ」
と、歳相応な、なんともあどけないクシャミをしてしまいました。
鼻水が、少し出てしまいます。
「あ、やば」
クロエさんは慌てて手を伸ばし鼻を拭おうとしましたが、それより早くシーリオさんがその腕を掴んで
押さえ込むと、クロエさんの鼻に吸い付きました。
そして、ずずずずず……と音を立てて吸い上げます。
「んご……っ!?」
鼻の中身を抜き取られる異様な感覚に、黒髪幼女の背筋が震えます。
ずずっ、ずずっ。
ぢゅるるるる……。
変態銀髪少女は一気呵成に吸引すると、愛液とも唾液とも違うその塩気のある粘液を、くちゃくちゃと
音を立てて咀嚼し、口を開けて糸を引く様子を見せつけ、そしてごっくんと飲み込みました。
「ぷふぅ……えふっ」
小さく溜息と、それから可愛らしくゲップを吐くと、シーリオさんはクロエさんに向かって
満面の笑みを浮かべました。
「えへへー、クロエちゃんの鼻水、すっごく美味しいでぶっ!」
別にシーリオさんが語尾に特徴を付けようとした訳ではありません。
クロエさんが、顔面に拳を叩き込んだのです。
……何か既視感を覚えますね。
「ふっ、ふおえひゃんっ、いひゃい」
両手で赤くなった鼻を押さえ、やはり既視感のある台詞を吐くシーリオさん。
クロエさんもやはり鼻を押さえながら、怒りを露わにします。
「もう……鼻水吸うのはやめてって、いつも言ってるじゃないか……っ!」
いつもの事のようですね。
流石、変態侍女さんです。
「えー……何でなのー? 良いじゃない別にぃ……。おしっこや唾は、一緒に楽しんでくれるのにぃ……」
「何でって……なんとなく嫌だからだよ!」
「けど、鼻はすっきりしたでしょう?」
確かに、鼻水が除去され、クロエさんの鼻はすっかり通りが良くなっています。
「う……そ、それは、まあ……。で、でも、本当にもう、やめてよね! さもないと……」
「さ……さもないと?」
ちょっと凄んでみせるクロエさんに少し怯みながら、答えを促すシーリオさん。
「さもないと……もうシーリオにちゅーしてあげない」
シーリオさんは即座に湯船のお湯を口に含み、くちゅくちゅと口内を漱ぎました。
そして、それを湯船の外に吐き出すかと思いきや、ごくんと飲み込んでしまいます。
「うふふ、皆の煮汁、美味しいですぅ……。ほらクロエちゃん、お口の中、綺麗になったよ!
これでどう? これでちゅーしてくれる?」
「……いや、な、なんか違うんだけど……。けど、もう、他人の鼻、啜ったりしない?」
「ええー。良いでしょう啜ったってぇ。ちゃんと口濯ぐからぁ」
「啜られるのが嫌なんだよ!」
話が平行線です。
すると、ナオミさんがシーリオさんに近づくと、何かをそっと耳打ちしました。
変態少女は、青灰髪お姉さんの言葉を聞きながら、ちらっちらっと黒髪幼女に目をやります。
そして、にっこりと微笑みました。
「うん、わかったよ。もうクロエちゃんの鼻を無理矢理啜ったりしないって約束する。だからちゅーして」
「ナオミ、シーリオに何を吹き込んだの」
シーリオさんを無視して、クロエさんはナオミさんに尋ねました。
「別にたいした事ではないわ。クロエがダメなら、私やアキのを吸えばいいじゃないって言っただけよ。
ドュリエス様やイーシャ様も、吸わせて下さるでしょうし」
その言葉に、ドュリエス様は肯定の笑みを浮かべました。
イーシャさんも
「え? えっと……鼻、ですか……。ええ、そうですね。シーリオがそれを望むと言うなら……」
と、流石に少々躊躇いながらも、こくんと頷き承諾します。
クロエさんはちょっと疑わしく思いましたが、とりあえず言質は取ったので一先ず納得し、
ふぅっと溜息を一つ吐くと、シーリオさんにぎゅっと抱き着き、接吻を交わしました。
そして慣れた様子でシーリオさんの舌を舌でねっとりと絡め取り、巧みに愛撫します。
シーリオさんも負けじと舌を蠢かして応えます。
やがて達しやすい体質のクロエさんが体をぷるぷると震わせ始めました。
手足にぐぐーっと力が入ります。
そしてそのまましばらく震えながら硬直した後、かくんと脱力して後ろに倒れました。
ナオミさんがその背中に手を伸ばし、支えます。
「ああ、私、まだだよう……っ!」
一方、イきかけで解放されてしまったシーリオさんは足の間に指を這わせ、最後の一押しを
自らの手で行いました。
湯船の水面が、小刻みな激しい動きに揺れ、ばしゃばしゃと波打ちます。
「ああ、ああ……っ! イくっ! イくっ! イきますぅ……っ! ふぅぅぅぅっっ!!」
びくびくびく……。
瘧の様に体を震わせながら仰け反るシーリオさんを、こちらはイーシャさんが後ろから
肩を抱くように支えました。
「ふー……ふはぁ、はぁ……ああ、イーシャ様ぁ……」
イーシャさんは、絶頂したシーリオさんの肩をゆっくりゆっくりと撫で擦り、髪に口付けし、
快楽の下降線を穏やかに辿らせてやります。
もうそんな事まで出来るようになったのです。
本当に、末恐ろしい十四歳ですね。
ナオミさんも、腕の中で荒く息をするクロエさんをきゅっと抱き締め、あやすようにお腹を撫でてやります。
「はー、はー……」
「ふふふ、こうしていると本当に子供……いいえ、まるで赤ちゃんね。おーよしよし、クロエちゃーん、
かわいーでちゅねー。だっこでちゅよー」
「な、ナオミ……はー、はー……やめてよ……。ボク、もう、十二歳になるんだからね……。そ、それに、
そういう事言ってると……はー、はー……自分に、返ってくるからね」
「? どう言う意味かしら?」
意味を図りかね首を捻るナオミさんに、クロエさんは言いました。
「はー、はー……な、ナオミお母さん、ボクお母さんのおっぱい欲しいな」
「う、ぐ……」
年齢と貧乳へ同時に攻撃を受け、思わず絶句してしまうナオミさん。
自分で振った話の流れなので、何も言えません。
「……私が悪かったわ」
素直に負けを認める青灰髪のお母さんに、黒髪赤ちゃんは得意げに微笑みます。
「えへへへへ……はー、はー……はくちゅっ」
そしてもう一度クシャミをしました。
クロエさんは慌てて手で鼻を塞ぎましたが、さっき全部吸われたばかりでしたし、
もう鼻水が垂れてしまう事はありませんでした。
それにいくらシーリオさんと言えど、流石に約束を取り付けたばかりで襲い掛かってくる事はないでしょう。
……まあ、多分。
そんなクロエさんを、ドュリエス様が心配そうに見ます。
「あら、大丈夫? 湯冷めしてしまったのかしら。そろそろお風呂を上がった方が良い様ね」
「そうですわね。もう十分に温まりましたし」
「十分楽しみましたしね!」
「ええ、そうですね」
ナオミさんとシーリオさん、イーシャさんがそう応じると、クロエさん、アキさんも
「それに、そろそろ食事の時間」
「いやあ、お腹空いちゃいましたよー」
と同意します。
と言う訳で、もう一度お顔を洗い(特にドュリエス様)、体をお湯で流し、布で拭ってから
皆さんはようやくお風呂場を後にするのでした。
続く
以上です。
なんか半年に一話ペースで本当にごめんなさい。
あと、もうタイトル関係なくなっててごめんなさい。
第二章に入れば……(入るのかこれ?)
では、また。
おおーお久しぶり!&お帰り そして乙
百合百合すなぁ
464 :
名無しさん@ピンキー:2012/04/08(日) 02:57:16.76 ID:W5qOtz7I
お久GJ!
記念にあげておこう
スレ容量480KB超えたけどそろそろ次スレたてる?
今ペース遅いし490超えてからでいいかな
ペース遅いしかなりギリになってからでもいいんでない?
今立ててもすぐ落ちちゃいそう
投下します。『騎士と水蛇(ハイドラ)の娘』のタイトルで3レス。
ですが容量オーバーしそうなため、一部キリのいい所までで投下してます。
全文はアップローダーにうpしました。読んでみて続き見てもいいなーと
思ったときに落としてもらえたら幸い。
http://www1.axfc.net/uploader/File/so/77877 pass:chusei
txtファイルなんですが、ダウンロード後に拡張子をhtmlに変えて
ブラウザで読んでください。そのままだと読みづらいと思います。
※注意※
女→男片思い。貫通未遂でエロが大変薄いです。
エドレットは街道をただひたすらに歩いていた。
前を向き大股で歩みを進める彼が腰に佩く剣は、柄に典雅な彫りがあり、
身につけた服もくたびれてはいるが上等なものだ。
それに何より、媚びぬ光を帯びたその瞳が彼が貴人か、その階級に準ずる
人間であることを示していた。そのような貴人が供も連れずに旅路を
急いでいることは奇妙といえば奇妙と言えた。
「お待ちください、お待ちくださいませ!」
愛らしい声が彼の後ろから響いてくる。供もおらずというのは正しくはなく、
彼には連れがいたのだ。遅れること数歩後ろ、小柄な姿が見えた。
その体つきから少女であることが見て取れる。
少女は立ち止まり前のめりになると、膝に手をそえてエドレットに向かって顔を上げた。
「……そんなに早く歩かれては付いていけませんわ!」
美しい少女だ。巡礼をする婦人のようなフードをかぶっており、その中にみえる瞳は
つぶらでまるで黒曜石のようだった。フードからこぼれた髪は白金の色で
陽光の下ではさらに色素が薄く見えた。
わずかに疲れの色を瞳に浮かべ、長いまつげをしばたかせながら少女は
エドレットを睨んだ。だがその訴えに構わず、彼は歩みを進め続ける。
「……付いてこられぬなら結構。姉君たちの元へお帰りなさい」
振り向きもせずにそんなことを言う。
とりつく島もない態度に少女は頬をぷうっと膨らませた。
エドレットがどんどん先に行ってしまうので仕方なく小走りで追いかけた少女だが、
少し先で彼が立ち止まっているのを見てぱっと顔を明るくさせた。
「エドレットさま……っ」
「メリルジーヌ、さがって」
そう言って彼は左手を斜めに伸ばした。彼の目はずっと前へと据えられている。
「よう兄ちゃん」
するとそれまで隠れていたのか、木と木の間から数人の男たちが姿を現した。
身に着けているものはぼろぼろで薄汚く、見るからに柄の悪い男たちだった。
にやにやと笑いながら手にした刃物をこちらへと見せ付けている。
おそらくは、賊の一味。この街道を渡る旅人を襲っては、その持ち物や金を奪っているのだ。
エドレットは剣の柄に手をかけたまま彼らを見やっていた。まだ抜く気配はない。
そして強い口調で言った。
「やめておいた方がいい。怪我をしたくないのなら」
その言葉に賊の男たちは吹き出した。わざわざ嫌な調子をつけて彼の言葉を復唱する。
「格好いいねぇ、色男」
「彼女の前で良いところ見せちゃうぞってか」
「エドレットさま!!」
「いいから君は下がっていろ」
そうメリルジーヌを背後にしながら、エドレットは男たちと間合いを取った。
短剣を構えながらじりじりと近づいてくる男とにらみ合い、一瞬の間に放たれた
刃の旋回を見切って避けた。そのまま柄からは手を離し、拳を握ると男の首の後ろに
強く落とした。
「がっ……!」
たまらずガクリと膝を落とす男。そして次の男が顔をいびつに歪めて手斧を
振りかぶったのを見て懐に飛び込み、その胴体へ当て身を食らわせる。
「エドレットさま!」
一人、一人確実にのしていたエドレットだったが、悲鳴じみた呼び声に顔をあげた。
すると禿頭の大男がメリルジーヌを羽交い締めにするようにしてとらえているのが見えた。
「メリル」
「へへ、大人しくしなお姫さま。いい子にしてりゃあんたの細っこい首を折らずにすむからよ」
男はメリルジーヌの首の前に回した腕にぐっと力を込めた。だがメリルジーヌは全くおびえた様子も
なく、ひるむこともなく男の腕を掴んでもぎ離そうと爪を立てていた。
「いてぇ! なんだこいつ、猫みたいな女だな……」
「猫、なんかじゃ、ありませんことよ!」
エドレットは大男を見据えて言った。
「彼女を離せ」
彼から殺気が消えたのを見て、男は態度を大きくして笑った。
女を人質にしたのは正解だ、と思いながら。
「それは兄ちゃん、あんたの態度次第だよ。俺らの兄弟にした暴力行為を謝罪して
同じだけの傷を負ってくれるってんならあんたを許してやるし、詫びの品を寄越すってんなら
女の事を考えてやってもいい」
「この玉子頭、びっくりするくらい馬鹿ですわね」
するとメリルジーヌが軽蔑しきった声をあげた。
つるりとした禿頭に玉子頭という表現があまりに的を射ており、
エドレットは思わず吹き出しそうになったがこらえて、あえて厳めしい顔をつくっていった。
「……メリル、刺激するんじゃない」
「玉子が割れるからですの?」
そこで賊の男たちの何人かが噴いた。
そのやり取りに大男は禿げた頭を真っ赤にして叫ぶ。
「て、てめえら、なめてんのか!! ……おい、あの男やっちまえ」
そう言いながら男は顎で仲間にエドレットを襲えと促すが、一度崩れた戦いの空気と
いうのは元には戻しづらい。にやにやと笑いながらお互いを見ている。
だが、禿頭は慣れているようで仲間に発破をかけ始めた。
「おいおい、お前らお坊っちゃんの剣の柄を見てみろよ。ずいぶん年代物って
感じじゃねぇか。きっと良家のお坊っちゃんが広い世界を見てみたい、だなんて
ぬかして旅してるんだろ? きっとたんまり金持ってるぜ。
もしかしたら身代金も取れるかもなぁ」
金、の言葉に男たちの間にまた欲望の揺らめきが見えはじめた。
そうなるとエドレットも対峙せざるを得ない。
だが、睨みつけるだけで相手はすでにのまれた様子があった。エドレットはすでに
二人も一瞬で気絶させている。それに今も複数人に囲まれても脅えた様子ひとつ見せない。
男たちはその雰囲気に飲まれ始めていた。エドレットは目を細めて言う。
「もう一度警告する。怪我をしたくなかったら彼女を離した方がいい」
「う、う、うるせえ!! お前らまとめてたたんじまえ」
「お、おう……」
エドレットは襲撃にそなえ身構えたが、大男に押さえつけられていた
メリルジーヌが暴れて叫ぶ。
「卑怯もの! 大勢で一人を襲うなど、男の風上にもおけぬ卑怯ものです」
「うるせえ、あの男が悪いんだぜ。いつもなら金目のものさえ出しゃ道を
通してやるのに、妙に逆らうから。死んだらお前はみんなで可愛がってやるからよ」
「エドレットさまぁ!」
メリルジーヌが叫ぶ。
するとその叫び声とともに彼女の足下から、ぶちぶちぶち、と綱がきれるような音がした。
「な、なんだあぁ……」
ぎょっとして男はメリルジーヌの体を離す。エドレットの元に殺到しようとしていた
男たちも後ろを振り向き、事の成り行きに息をのんだ。
その一連の流れに、エドレットは苦い表情を浮かべた。
急に解放され、反動で転びそうになったメリルジーヌだが、踏みだそうとした足は
人のものではなくなっていた。二つの足はくっついて一つになり、みるみるうちに
銀の輝きを放つ鱗もつ蛇のそれになっていった。
上半身から上は美しいメリルジーヌのままだ。だがその下半身は大蛇のもの。
ぬらぬら鱗を輝かせながら、メリルジーヌはとぐろを巻いた。
「よくも、エドレットさまにひどい事をしようとしましたわね!」
くわっと開いた口は人間のものではあったが、男たちはすっかり腰を抜かし、
大蛇ににらまれた蛙のように動けなくなっていた。
だが、そのうちの一人が身の内の恐怖に耐えかね叫ぶ。
「ば、ば、化け物ー!!」
その言葉にメリルジーヌは顔色を変えた。
「ひどい……」
わなわなと体を震わせながら蛇の下半身をのたうたせる。そして涙目で叫んだ。
胸から上だけ見ればすっかり同情して慰めてやりたくなるような憐れむべき
美少女という風情ではあったが、いかんせんその下半身は大蛇。
ずるずる、ずるずるっとメリルジーヌの感情の揺らぎとともに滑らかに動く。
「もう、失礼ですわよ!!あなたのご面相の方がよっぽど化け物じゃありませんか!!」
すると、びゅんと音をたてて蛇の尾が鞭のように飛んだ。
そして失礼な事を言った男をはじき飛ばす。木にびたんと叩きつけられ、
男はきゅうと気を失った。そして別の男は癇癪をおこしたメリルジーヌに
指をつきつけられ、突如何もない場所から発生した水球に閉じこめられ
ごぼごぼと苦しんだあげくその場にばしゃりと投げ出される。
怒ったメリルジーヌには見境というものが全くなかった。
エドレットはといえば自分も被害を受ける前に早々に脇へと避けていた。
そこで木に寄りかかったまま、大騒ぎを見て一言呟く。
「……だから警告しただろう」
* * *ここまで* * *
>>470 乙です。
ところで、もう限界のようですので、スレ立ててきますね。
以下埋めネタ。
勇者くんだってオトコノコ
1.
それは突然の出来事でした。
大国フランシア王国の辺境、北の山岳地帯に魔王が突如降臨、全世界への侵攻を宣言したのです。
この事態に激しい衝撃を受けた世界各国は、一斉に驚愕の声を上げました。
「イマドキ世界征服て!(笑)」
というわけで、ほとんどの国は華麗にスルーしました(「しっ、目を合わせちゃダメよ!」)。
フランシアとしてもできれば係わり合いたくはなかったのですが、自称魔王に国の土地を不法占拠
された挙句、「魔王城」などというひねりも何もない違法建造物を建てられてしまった上、周辺住民
にも被害が出てるときては、対処しない訳にはいきません。
「あーくそめんどくせーなぁ。地元の警察でなんとか出来ないのー?」
「それが」
ぼやく国王陛下(48)に、艶やかな黒髪をアップにした、縁無しのメガネの似合うキリッとした
極上美人の秘書官さん(23)が、手元のバインダーをめくって確認し、報告します。
「先日の賃上げ交渉が決裂、現在長期ストライキ中とのことです」
「……それってまずいんじゃね? 主に治安的な意味で」
「いえ、もともと犯罪らしい犯罪が起きない平和な土地でしたので、今までは特に問題無かったよう
です。警官も、殆どが農家や地元の商店との兼業ですし」
「ちっ、これだから地方は……」
しかしそうなると国軍を投入しなければなりません。
ですが、魔王が占拠した土地があるのは秘書さんの言葉からも判る通り、はっきり言ってド田舎で
す。特筆するような資源も無く、国境に面している訳でもないので、当然常駐軍など置かれていませ
ん。しかも、急峻な山々の連なる山岳地帯の奥。一番近い所から軍を派遣するとしても、そのために
は結構な経費が必要になってしまいます。兵站だって馬鹿にできないのです。こういう時、広大な国
土がかえって足枷になってしまいますね。
この不景気の中、軍事、しかも訳の分からない『魔王退治』なんぞに予算を割いたりしようものな
ら、普段から「財・政・難! 財・政・難!」とうるさい元老院やら経済担当大臣やらから突き上げ
を喰らうのは目に見えています。
かといって、下手に税金の臨時徴収などすれば、今度は地方貴族や民衆が反乱を起こしかねません。
どちらも、魔王なんかよりよっぽど憂慮すべき事態です。
仕方なく緊急予算会議なんぞを召集してみましたが、予算とも魔王とも全く関係ない政治家同士の
誹謗中傷合戦に終始し、結局何も決められないまま解散してしまいました。
「うがあーっ!! もう、もう本気でめんどくせぇぇっ!! 魔王も一度、こういう為政者の重圧っ
てのを経験してみろっつーの! そうすりゃ能天気に『世界征服じゃ〜♪』とか、ぜってえ言えなく
なるぜ!! ったくよぉ……」
だいたい、重要案件は他にも沢山あるのです。いつまでも魔王なんぞにかかずらわっている訳には
いかないのです。と言って、放置するわけにもいきません。
国王の苛立ちは、もう最高潮です。
勇者の血を引くと言う者が王様に謁見を求めてきたのは、そんな時でした。
次スレの終わりごろに続く
うめ
476 :
名無しさん@ピンキー:2012/04/21(土) 10:02:30.92 ID:0D48YadY
477 :
名無しさん@ピンキー:2012/04/21(土) 20:41:32.79 ID:5Ov9+2Qa
うめ
埋め用小ネタ* * *
「教授……これって、これってほんとに必要なことなんですか?」
少女がけげんな声で傍らの男にそう尋ねた。さまざまな本やら書類やらが
雑然とした部屋の中で少女は両手をロープで拘束され、天井から吊るされていた。
波打つ金髪の人形のように愛らしい少女だが、体の自由の利かない状態に
され、そのかんばせに不安の色をのぼらせていた。
「もちろんだとも、レイチェルくん」
男は少女の不安を断ち切るようにそう断言する。眼鏡をかけた男は
“教授(プロフェッサー)”の称号を持っているにしてはずいぶんと
若いように見えたが実際は年がいっているのか、見た目からは
分かりづらい男であった。
「これは実験だからね」
男はペーパーナイフを取り出すと、自分の指先をぴっと傷つけた。
みるみるうちに赤い雫が指先に盛り上がっていく。
するとそれまで不安そうに身じろぎしていたレイチェルだが、
それを見たとたんきっと男に強い視線を向けた。
「せ……っかく……がまん、してたのに……」
そう言ったレイチェルの、小さく開いた口の端に尖った牙がのぞいている。
彼女は人間ではない。吸血鬼であった。
だが、レイチェルは吸血鬼としての本能を抑えようと努力して生きてきた。
人の血を吸わないように、と。だが、本能を抑えるのは容易ではない。
今目の前にいる男が吸血鬼のことを研究していると知り、何か良い
方法を知ってはいないかと頼ってやってきたのだ。それなのに
自分の目の前で血を見せて、吸血衝動を煽るような真似をするなど
ひどいとレイチェルは男を責めたくなった。
だが、男はレイチェルの恨みがましい視線を気にもせず笑う。
「大丈夫、私にまかせなさい。平気だからこれを舐めて」
「いや……」
レイチェルはそういって顔を背けたが男はその口に指を差し入れてしまう。
「ん……、う……」
「血の味がするだろう、君たちには甘美に感じる生命の雫……」
久方ぶりの血の味にレイチェルは思わず恍惚とする。駄目だと思いつつも
男の指を舐め、さらに味わおうとしたが男はその指を抜いてしまった。
「あっ」
「これ以上は駄目だ。だが、どうだね血を吸いたいという欲求は高まったかい?」
「はい……」
レイチェルは恥じ入りながらそう呟いた。今もこの両手が自由なら目の前の
男につかみ掛かり、その首筋に牙を立てていたかもしれなかった。
ここから衝動を抑えるには強い意志の力が必要だ。レイチェルはぎゅうっと
目をつむった。
「教授……お願いですから、おさまるまでこの部屋から出て行ってもらえませんか?
あなたがいると、さっきの血の味を思い出してしまう……」
「いや、出て行くつもりはないよ」
すると男はレイチェルの服のスカートを掴み、おもむろにたくし上げた。
「なっ、何するんですか!?」
「吸血鬼は吸血衝動と共に強い性衝動を覚える。……だからそちらを
満たせばおのずと吸血衝動は収まるよ」
低くそう言って男は狼狽するレイチェルの下半身に手を伸ばした……。
* * *
やっつけでごめん。これで容量全部埋まるかな。