不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part14
皆が平和を享受するある日。
世界に新たな寄生体が発生した
この個体はどれだけの人に寄生し増えていくのだろうか?
私はこの知的好奇心を満たすために寄生体に餌となる
>>1乙を与えることにした
さぁ、育つがいい。どこまでも!
>>1 スレ立て感謝です!! 助かります。
今回のタイトルは『とおりゃんせ』です。
このSSは誰もが知ってるこの曲をモチーフに作ってみました。
主題にもしてるので、先に原曲を聞いてからの方が、より妖しい雰囲気が出るかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=S0pp6JN8L1U あと一応コテハンと鳥もつけます。
ほんと、どこぞの政治家の様に前言撤回が早いヘタレな俺です。ごめんなさい。
属性的には、寄生・ふたなり・嘔吐・微ホラーです。
苦手な方はご注意ください。
『とおりゃんせ』
通りゃんせ 通りゃんせ
ここはどこの 細通じゃ
天神さまの 細道じゃ
ちっと通して 下しゃんせ
御用のないもの 通しゃせぬ
この子の七つの お祝いに
お札を納めに まいります
行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも
通りゃんせ 通りゃんせ
「え? また失踪?」
「そう、またなのよ。これで3件目」
「で、誰がいなくなったの?」
「2組の斎藤って女子。知ってる?」
「あー、顔だけは知ってる。それで? その子はまだ帰って来てないの?」
「うん、そうらしいよ」
「1件目や2件目みたいにまたそのうち帰ってくるんじゃないの」
「そうだね〜。多分そうだと思うけど・・・。
あのさ、ここだけの話。帰って来た子が二人とも出て行く前とは別人みたいな性格になっちゃったって話知ってる?」
「知らなーい。そうなの?」
「うん、聞いた話なんだけど、なんか一人は突然訳わかんない叫び声を上げて暴れ出したらしいよ。
もともとはおとなしい子だったらしいけどね。
で、担任の瀬田と体育の吉崎に無理やり抑えられて保健室に連れてかれたんだって。
それからずっと学校休んでるみたい」
「へぇ・・・、どうしちゃったんだろうねぇ?」
――― 馬鹿馬鹿しい
そんなのは思春期特有の情緒不安定による家出だろう。
パタンっと読んでいた本を閉じ、由美子は帰る準備を始めた。
帰宅部の彼女は授業が終わると下校時刻になるまで図書室で本を読むのが日課だった。
幼い頃から本を読むことが大好きだった彼女は、そのお陰もあってか
さほど勉強をせずとも、成績は常に学年の一番手争いを演じる才媛だった。
放課後、いつものように人もまばらになった図書室で本を読んでいた由美子だったが、
普段はグラウンドからの運動部のかけ声しか聞こえない静かな図書室で、
今日は、顔は知っているが話した事の無い女子2人組が部屋の端っこの方で噂話をしていた。
それは決して大きな声ではなかったのだが、静寂な図書室では嫌でも話し声が耳に入ってしまう。
途中から読書に集中できなくなってしまった由美子は、結局その噂話を聞くつもりもなく聞いていた。
「あれ、由美ちん帰っちゃうの?」
うん?と声のした方に由美子が顔を向けると、そこには返却された大量の本を抱える少女が居た。
由美子の数少ない友達の麻美である。
「そのつもりだったけど?」
「ふぇぇ、ちょっと待ってよ〜。もうちょっとで図書委員の仕事が終わるからさぁ、一緒に帰ろうよ!」
「ん、わかった。じゃあ待ってる」
―――20分後
「おまたせ〜!!」
待つとは言ったものの、別段何をするわけでもなく昇降口で手持無沙汰にしていた由美子に
ぶんぶか手を振りながら麻美が走って向かってくる。
「遅い」
「えぇ〜? これでも頑張って早く仕事片付けたんだからね!」
ぷんぷんっと可愛らしく頬を膨らませる麻美を見て由美子はクスっと笑う。
同じ年頃の女子の平均身長よりも一回り小さく、また容姿や発言がどこか幼い麻美は、同い年の筈なのに妹と話しているような気がしてくる。
そんな裏表の無い純真な麻美を見ていると、由美子の心がほっと和む。
「じゃあ、帰ろ!」
夏の夕暮れ
昼のカァっと照りつけるような日差しは一段落したが、空気は多量の湿気を含み、まるで纏わりつくようにその存在を主張する。
汗でべたつく制服を気にしながら由美子と麻美はいつもの帰り道を2人で歩く。
田んぼの稲は青々と天に向かって伸び、さぁっと吹く風は昼間のうちに熱せられた土と木々の匂いを運んでくる。
同年代の子達は、このいかにも田舎然としたこの土地を嫌い、将来上京する事を夢見ている者が多いが、
由美子はこの土地のこの風景がたまらなく好きだった。
カナカナカナカナ・・・
耳を澄ますと、どこからともなく聞こえてくるヒグラシの鳴き声に季節が夏から秋へと変化するのが感じてとれた。
しばらく無言で歩いていた2人だったが、ポツリと麻美が呟く。
「ねえ、由美ちん。 さっきの話どう思う?」
「さっきの話って?」
「ほら、さっき3組の女子が話してた神隠しの話だよ」
「神隠し?ただの家出じゃなくて?」
「まぁそうかもしれないけどね。でも今回居なくなった斎藤さんって2組の図書委員なんだけど、そんな家出するタイプには見えないけどなぁ・・・。
あの子、由美ちんほどじゃないけど成績もいいほうだし真面目じゃん。
だからただの家出なんかじゃなくて神隠しか誘拐って考えた方がしっくりくるよ?」
「ふぅん・・・」
由美子はあまり興味も無く、大した感慨の無い相槌を打った。
再び2人は沈黙し、てくてくと砂利道を進む。
やがて右手に鬱蒼と竹が生い茂る雑木林と丹塗りの鳥居がが見えてきた。
旧字体なうえに擦れてて良く読めないが、その鳥居の額束には何とか天満宮と書いてあった。
密集して生えそろう竹林の視界は悪く10m程先しか見通すことが出来ない。
そんな竹林の中にぽつんと立っている鳥居は、狭いながらもまるで映画のモーセの十戒のように左右に竹の海を切り開いて奥へと進む道の入り口となっている。
いつも思うがここはえらく薄気味悪いところだ・・・。
日没直前とはいえ、まだ陽の光が十分にある中でもその竹林の中は薄暗く、先が良く見通せない。
地元の人間は例え昼間でもこの雑木林には近づかないんだと、いつかそんな話を聞いた。
何でも遠い昔、この辺りで悪さをしていた妖を風来の修験者だか退魔師がやっつけて封印したという逸話が残っているらしい。
ひら・・ ひら ひら・・・
鳥居に懸っている注連縄の紙垂が生温い風に吹かれてさらさらとそよぐ。
以前読んだ本に、注連縄とはあの世とこの世の境界線に掲げる一種の結界で、場所によっては禁足地の印にもなっているという。
確かにそう言われると鳥居の向こう側はこちら側と同じ世界とは到底思えない。
ぽっかりと口を開く鳥居の奥の狭い参道は異世界に通じる通り道のように思えてくる。
「あれ・・・?」
そんな薄気味の悪い場所から早く離れようと由美子が少し足を速めた矢先、麻美が鳥居の奥の参道をじっと覗き込んでいた。
じぃっと奥を見つめる麻美が気になり由美子は尋ねる。
「どうしたの?」
「いま何気なくあっちを覗いたらあの一番奥の樹の影に何かが居た気がして・・・」
「ちょっと、やめてよ。変なこと言わないで」
「なんかさぁ、スカーフが見えた気がしたの。スカーフ、これ」
麻美はそう言うと自分の制服のスカーフを触って見せる。
「え?じゃあ何?誰かウチの学校の女子がいるってこと?」
「うん、そうかなぁって・・・・・あ!いた!ほらあそこ!」
麻美の指をさす先を見ると、確かに遠くにウチの学校の制服の様なものを着た人影が見える。
ただ、由美子はあまり視力には自信が無く、若干薄暗い中、目を凝らして見てみても何となくそんな気がする位にしか見えない。
だが由美子より数倍視力の良い麻美がその人影を凝視した後、ポツリと呟く。
「あれ?斎藤さん?」
――― 何だって?
「斎藤さんって、いなくなったっていう斎藤さん?」
「うん、そう。ほら絶対斎藤さんだってば! 何してるんだろ? ちょっと行ってくるね!」
――― あっ
由美子は何となく不吉な予感がして、麻美を引き留めようと手を伸ばす・・・が、それはあとほんの数センチの所でむなしく空を掴んでしまった。
「ちょっ・・・」
「先に帰ってていいよ〜、由美ちん。ちょっと話したらすぐに帰るからさぁ〜」
こちらを振り返りながら駆け足で参道の奥に向かっていく麻美の背中がみるみる小さくなっていく。
彼女を追おうとした瞬間、ざぁぁ!!と強い風が吹き竹林の葉は一斉にざわめく。
まるで入ってくるなというような拒絶の意志を感じた由美子は、一歩足を踏み出しただけで中に入る事を躊躇してしまった。
(麻美が帰れって言ったから仕方ないんだ・・・)
由美子は薄情者とチクチク罵る心の声を無理やり無視して、ひとりトボトボと帰途に就いた。
「麻美が家に帰って無い?」
由美子は驚きのあまり受話器を落としそうになる。
電話の相手は麻美の母親だった。
いつもは日が暮れる前には帰宅するはずなのに、今日はまだ家に帰っていないと言う。
ちらりと柱時計に目をやると時刻は既に夜の10時を回っていた。
(まさか、麻美は何かトラブルに巻き込まれたんじゃ・・・)
由美子の心は途端にざわめき立つ。
「はい・・・、いえ、心当たりはありません。ええ、何か連絡があったらすぐにそちらに電話いたします・・・はい」
ガチャン
微かに震える手で受話器を置く。
由美子は部屋に戻り、急いで出かける支度をすると、行き先を訪ねる家族の声にろくろく返事もせず家を飛び出る。
(あそこだ、絶対にあそこしかない)
麻美はあの神社に居るのだろう、由美子はその確信があった。
街灯が殆どない夜の田舎道を進むのは勇気が必要だが、今はそんな事を言っている場合ではなかった。
いつもの通学路を月明かりを頼りに走って行くと、やがて左手に鬱蒼と竹が生い茂った暗闇の塊の様なものが見えてくる。
ごくっ・・・
心なしかいつも以上に感じるその禍々しさに、由美子は思わず唾を呑み込む。
徐々にスピードを落としてその暗闇の入り口の鳥居に近づくと、その鳥居の前に蹲る小さな白い人影がある事に気付いた。
ドキン!と跳ねあがる心臓を呑み込むようにして恐る恐る近くによると・・・。
その人影は麻美であった。
「麻美っ!どうしたの!?心配したんだよ!!」
蹲る少女の肩に手をかけてゆさゆさと肩を揺すった由美子だが、麻美の反応は限りなく薄い。
「・・・ぁ・・・・ぅ・・・・・む・・・・・むし・・・・が・・・」
「え!?何だって?どうしたの? 誰かに何かされたの?」
ぼそぼそと呻き声とも独り言とも取れない言葉を発する麻美に問い詰めるが、
返ってくる言葉は変わらず意味不明な呻き声だけで全く要領を得ない。
そんな彼女に近づくと・・・つん、とした今まで嗅いだ事の無い匂いが鼻についた。
甘ったるいような饐えたような・・・。
麻美の方から漂ってくるのは間違いないと思うが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
とりあえず衣服に大きな乱れが無い事と、目立った怪我をしている様子が無いのを確認すると、由美子は麻美を背中におぶってその場を後にした。
ぽたっ ぽたっ ・・・
由美子が背負う麻美のスカートの隙間からは白濁した粘液が地面に垂れ落ち、背後に点々と軌跡を描いている事に由美子は気づいていなかった。
昨日は本当に大変だった。
あの後由美子は麻美の家まで彼女をおぶっていったのだが、その間中ずっと彼女はうなされていた。
麻美の両親に見つけた場所や事情などを一通り説明をすると、二人から涙して感謝された。
結局今日は麻美は学校を休んでいた。
昨晩のあの様子じゃ無理もない。由美子はそう思った。
そうして学校を終え帰宅をし、今は夕食も摂って自分の部屋でくつろいでいた。
すると
ルルルルルルルル・・・・ルルルルルルルル
突然階下の家の電話が鳴り出した。
由美子は一抹の不安を覚え、慌てて階段を駆け下りていく。
「・・・はい」
「あ、由美子ちゃん?麻美の母です」
「こんばんは」
「あのね、由美子ちゃん。さっきから麻美の姿が見えないんだけど、そっちに遊びに行ったりしてない?」
「え!?来てないですけど・・・。またですか?」
「そうなの・・・もう心配で心配で・・・」
「わかりました、私も探してみます。何かあったらまた連絡します」
由美子はそう言うとガチャンと受話器を置いた。
由美子には確信があった。
おそらくまたあの神社に違いない。あそこに麻美は居る。
部屋に戻り薄手の上着を羽織ると、由美子は急いで家を出た。
皓々と白く輝く月は明日か明後日には満月なのだろう。
雲ひとつない空から降り注ぐ真っ青な月明かりは、物の色までは判然としないものの、辺りに濃い陰影を落とし白黒の世界を作り上げていた。
その冷たく青白い光を頼りに由美子はあの神社へと急ぐ。
やがて由美子はあの薄気味悪い神社の鳥居の前までやってきた。
昨夜と違うのはそこに麻美が居ない事。
昨日と同じ所にいてくれれば・・・と思っていた由美子の淡い期待は崩れ去った。
だが、きっと近くに居るはずだ。
そう思って辺りを探そうとした矢先、鳥居の向こうの暗い参道にポツンと人影が立っている事に気付いた。
月明かりしか光源が無い為よく見えないが、背格好といいあれは麻美に違いない。
「麻美っ!!」
由美子はその人影に向かって呼びかけたが、その声には全く反応せず、それどころかこちらに背を向けて奥へと歩き始めた。
「っ!!」
由美子は追おうとしたが踏鞴を踏んでしまう。本能がこの奥には入ってはいけないと最大限の警告を発したからだ。
しかし、由美子は決めていた。
昨日の時の様な後悔はしたくないと。
気合を込めるようにパンパンと両手で頬を叩くと、グっと両膝に力を込めて由美子は足を踏み出した。
―――変だ
何かが変だ。
思い切って薄気味の悪い参道に飛び込んでみたはいいものの、そこは想像以上に濃密な空気に満たされた空間だった。
気温が低くなった訳ではない。純粋に空気が濃いのだ。
いきなり出鼻を挫かれた格好の由美子だが、気を取り直して奥に進む。
麻美らしき人の影とそんなに距離があったわけではなかったのだが、途中で折れ曲がった参道に阻まれてその人影は見失ってしまった。
(曲がりくねった参道の神社の神様って怨霊である事が多いんだっけ・・・)
ただでさえ心細いのに、由美子は余計なことまで思い出して更に暗澹たる気分になる。
天頂から降り注ぐ月の光に導かれるように奥へ奥へと進んだのだが、一向に終点が見えない。
この神社はこんなにも奥行きがあったものなのか・・・。
真夜中の人気のない林の中だという心細さ、精神的な部分を差し引いても、それでも尚この距離感に違和感が残る。
「うぅ、麻美・・・出てきてよ・・・」
既に由美子は目尻に涙を浮かべていた。
距離感と時間的感覚が麻痺しかかっている由美子は、もうかれこれ1時間はこの細い道を彷徨っているような気がしてきた。
(もう限界・・・)
由美子は堪らず音をあげて地面に膝をつこうとした時、遠くの方に薄らぼんやりと明かりが灯されているのが見える。
「麻美ぃ・・・そこにいるの?」
縋るような思いでその明りを見つめ、明かりにおびき寄せられる蛾のようにその光を目指して歩みを進めるのだった。
その明りの出所はこの神社の拝殿だった。
てっきり誰にも手入れのされていない小さな社があるだけだと思っていた由美子は、想像以上に大きくて立派な拝殿と本殿がある事に驚きを隠せなかった。
遠くから見えた光は拝殿の中に灯された蝋燭の光で、その揺らめくオレンジの光は格子の隙間を通って外に漏れていた。
由美子は恐る恐るそこに近づき、格子の間から中の様子を窺い見る。
すると、
「麻美っ!!」
中には麻美が横たわっていた。
しかし、一糸纏わぬ産まれたままの姿で。
バン、と格子を開け放ち由美子は拝殿の中に飛び込んだ。
「麻美!麻美っ! 大丈夫?しっかりして!!」
横たわる麻美を抱きかかえ、何度も何度も彼女の名を口にすると、
「・・・ぅ・・・ぅぅん・・・」
麻美が軽く呻き声をあげながらゆっくりと目を覚ます。
「麻美っ!!よかったぁ・・・気が付いたのね」
「ぁ・・・・由美ちん・・・ うん・・そうだ 由美ちんも・・・一緒に 気持ち良くなろ・・・?」
「え? 何言ってるの麻美? 早く帰ろ・・・・」
バァン!!
そこまで言いかけた由美子だが、そこから先は言葉に出来なかった。
横になっていた麻美が突如凄い音を立てて跳ね起きたかと思うと、そのまま由美子を横から抱きすくめる。
それは到底小柄な彼女の物とは思えぬ万力のような力強さで由美子の体をホールドする。
「ちょっ・・麻美、痛いよ!離して!!」
「ふふっ、由美ちん かわいい・・」
麻美はそう言うと己が口を由美子の耳へと近付けて、その小さな耳たぶを甘噛みする。
刹那、カッっと開いた麻美の口から飛び出してきた、およそ人間の物とは思えない程の細く長い舌は、
にゅるにゅると由美子の耳の穴に入り込み、奥へ奥へと侵入していく。
「いやぁぁぁっ!!気持ち悪いっ!! 麻美ぃ、お願いやめてぇぇぇ」
そう懇願する由美子の言葉には一向に耳を貸さず、麻美の舌は由美子の鼓膜よりもさらに奥、三半規管まで達すると
そこでやめるのかと思いきや、さらにそれより奥の方までその細長い舌は侵入をやめない。
ごぉぉぉぉぉ、という耳を塞がれたときに聞こえる音のほかに、
ぬちゃっぬちゅあっ、と粘液に包まれた柔らかいモノが耳・・・というよりも頭の奥深くに侵入してくる音が聞こえる。
「ひぃぃぃ・・・・!!」
まさしく背筋が凍るその感覚に由美子は堪らず悲鳴を上げた。
にゅるっ・・・ちゅっ、ちゅっ・・・・くちゃっ・・・
「あっ・・・あがっ くはぁ・・・」
麻美の舌に激しく頭の奥深くを掻き回され、由美子は彼女の操り人形のように時折体をビクっビクっと痙攣させて、為すがままにされる。
―――ドサッ
一通り由美子の耳奥を堪能して満足をした麻美は徐に彼女を解放した。
「はぁ はぁ はぁ・・・」
漸く麻美の舌から解き放たれた由美子は防御反応を示すダンゴムシのように息も絶え絶えに体を小さく丸める。
とろとろと粘液の残滓を垂れ流す耳は、未だ何かが詰まっているような感覚が消え失せない。
由美子は自分の処女と同じくらい大事な物を奪われてしまったような喪失感がした。
茫然自失の由美子に向かって麻美が話しかける。
「由美ちん、あたしね・・・世の中にこんなに気持ちいい事があるなんて・・・知らなかったんだ。 ほら・・・見て・・」
麻美がそう告げると、麻美の周りに突如淀んだ赤黒い靄の様なものが渦巻き、やがてそれは大きな影になる。
それらは急速に実体を形成すると、そこから生え出した触手がにゅるにゅると麻美の幼い肢体に巻き付く。
「ほら、由美ちん。これがあたしのご主人様だよ・・・。 ご主人様はねぇ、とぉっても気持ちのいい事をしてくれるんだよ?」
麻美の言葉に応えるように、彼女の体に巻きついた人外のモノは麻美の乳首に狙いを定めると、細身の触手を容赦なく乳頭に突き刺す。
シュルルル・・・ じゅぷっ!!
「あぁっ! あふあぁぁぁぁん・・・!!」
彼女の乳首は人外の異物をすんなりと受け入れると、その小さい桜色の突起を勃起させて精一杯快感を感じている事をアピールする。
じゅぶっ じゅっ じゅぶっ じゅぶっ・・・
「ひぃぃ・・きもちいぃよぉぉ・・・」
触手は麻美の乳房の中を一通り揉みほぐすと、その幹となる触手から沢山の枝を生やして麻美の乳房に根を張る。
ウネウネと乳房の表面に血管のように触手が浮き出るその様子は、まるで卑猥な肉のマスクメロンだった。
そして、彼女を侵食する触手は突如、ドクンドクンという脈動を始め、触手の管の中を通り何かを彼女の乳房の中に送り込む。
「あひぃぃ!!入ってくるぅぅ・・・おっぱいに入ってくるよぉ・・・」
麻美は口の端からよだれを垂らしながら、触手がもたらす快楽をその小さい体で享受する。
己が体の中に注入される充足感を目一杯味わって、麻美の体は蕩けるような快楽に打ち震える。
そんな麻美の様子などお構いなしに、触手は次から次へと麻美の乳房へ得体の知れないモノを注入する。
ドクン ドクン ドクン・・・・
Bカップほどしかなかった麻美の胸ははち切れんばかりに大きく膨らみ、今やDカップほどの大きさになっていた。
そして
―――ちゅぽんっ
麻美の背後に陣取っていた人外のモノは、乳房の奥深くまで侵入していた触手を引き抜くとワインのコルク栓を抜いたような音が響く。
由美子は目の前で繰り広げられる異様な光景にただただ唖然と見つめる他なかった。
しかし、更に由美子の想像を絶する光景が目に飛び込む。
ビグンっ!!!
突然、麻美の乳房が痙攣を始めた。
いや、そうではない。麻美の乳房が彼女の意思と関係のないところで異常な動きをし始めた。
「あはぁぁぁ・・・きもちいぃぃのぉ おっぱいの中で動き回ってるよぉぉ・・」
麻美の胸がグネグネと上下左右に動きだしたかと思うと、今度は歪に膨らみ、凹む。
まるで別の生き物のように動き回る乳房を両手で掴むと、何かを絞り出すように淫靡に胸を揉み始めた。
「いいっ! あぁ・・きもちいい・・・ あぁん! 出る! 出ちゃうよぉっ!!」
ぶぴゅ! ぶぴゅるるっっ!!
麻美はビクンビクン、と射精をするように胸を痙攣させると、母乳の様な白い粘液と共にピンク色の小さい塊を大量に噴出する。
「・・・!!」
由美子は自分の目を疑った。
麻美の胸から粘液と共に排出されたその塊は、小さなナメクジの様な蟲であった。
それはビチビチと木の板の上で粘液の海を這いずり、新しい棲み処を求めるように動き回る。
「いやぁぁぁっ!! 目を覚ましてよ! 麻美ぃ!!」
「何言ってるの、由美ちん・・・だって、こんなに気持ちいいのに・・・ほら 」
そう言うと麻美は由美子の手首を掴み、彼女の手のひらをそっと自分の乳房に当てる。
うにゅ・・うぞうぞ・・ にゅるっ・・・
「ひぃぃぃっっ!!!」
由美子は総毛立った。
麻美の柔らかい乳房の皮膚の裏側を幾十、幾百もの蟲が無秩序に這いずっているのが、手のひらを通して感じられた。
「こんなにたくさんの蟲たちがおっぱいの内側を舐めてくれるんだよ? 気持ちいいに決まってるじゃない・・・
ねぇ、由美ちん。 中も触って?」
ガタガタと恐怖に震える由美子の指先を摘むと、麻美は由美子の指先をぽっかりと口を開けた自分の乳首の中に挿入する。
――― ちゅぷ・・・
「やぁぁぁぁっっ!!」
由美子は喉がはち切れんばかりの悲鳴を上げた。
元来、指などが入る訳の無いその穴は、由美子の指を温かく包みこみ、きゅっきゅっ、とやさしく収縮する。
同時に奥深くまで入ってしまった彼女の指の先端は、麻美の乳房の中を動き回る蟲たちの洗礼を受け、にゅるにゅると絶えず舐めまわされる。
ちょろ・・ちょろちょろ・・・
由美子は目の前で繰り広げられる悪夢の様な光景に恐怖し、生まれて初めて失禁をしてしまった。
「あはぁぁ・・・由美ちんの指、きもちいい・・・ あは、じゃあ今度は由美ちんが気持ち良くなる番だよ?」
先程まで麻美の体を弄んでいた数多の触手は一斉に由美子に向けて照準を合わせ、獲物を狩ろうとしている・・・。
「嫌だぁぁぁっ!!」
由美子はそう絶叫すると、ガクガクと震える膝に力を入れ、目の前の麻美を突き飛ばし、
文字通り転げ落ちるようにして拝殿から飛び出る。
由美子は走った。
風が吹く度にまるでざわざわと由美子をせせら笑うように、辺りに葉が擦れる音が響く。
細く曲がりくねった暗い参道を出口目指して懸命に駆ける。
しかし一向に出口は顔を見せない。
由美子は得体の知れない化物の腑の中を彷徨っているような錯覚に陥った。
これではまるで参道というよりか産道で無いか・・・。 由美子は出口の見えない暗闇を必死にもがく赤子のように全力で走る。
そして、懸命に走る由美子の前にやっと出口の鳥居が姿を見せた。
彼女の心に、ぱぁっと希望の灯がともる。
しかしその期待は一瞬にして打ち破られることとなる。
―――ドンッ!!
「痛っ! え!?なんで?出られない!」
その鳥居の先、外界の風景はすぐそこにあるのに、そこにはまるで一枚の透明な膜があるかのようにその先に進む事が出来ない。
「嘘でしょ!!いやぁぁっ!!」
ドンドン!!、と扉をたたくようにして行く手を塞ぐ見えないヴェールを叩きつけるが、全く何かが変化する気配はない。
やがて疲労と絶望感に脱力し、その場にへなへなと座り込む。
徒労感に打ちひしがれる由美子は呟いた。
「ああ、そうか・・・。ここは禁足地なんだ・・・。
禁足って立ち入り禁止じゃなくてそこから出られないって意味だったっけ・・・」
由美子は地元の老人達がこの場所を禁足地と言っていた事の意味をようやく理解した。
ここはあの化け物を封じ込めておく為の場所。
だからこの鳥居を境に向こう側とこちら側、彼岸と此岸で次元が切り離されているのだと。
「もうここから出る事は出来ないのかな・・・・」
由美子が諦めのセリフを呟いたその刹那、
キィィィィ・・・・ン!!
彼女の行く手を阻んでいた透明なヴェールが青白い光と共に四角く崩れ落ちる。
突然の事にあっけに取られながらその光景を見ていると、砂煙の向こうには桐の柄が付いた日本刀を構えた少女が立っていた。
由美子より少し年上に見える彼女は白衣に緋袴といった出で立ちで、一見して普通の少女で無いことが見て取れる。
一分の隙もない容姿と表情の彼女は、まさにクールビューティーという形容詞がピッタリだ。
「あなた・・・ あなたもあの妖に拐かされそうになったのね。 参ったな・・・、今晩は様子見のつもりで来ただけだったが・・・。
仕方ない、とりあえず引き上げましょう」
「待って下さい! 中に・・・中に友達が捕まっているんです! お願いです、助けて下さい!!」
「落ち着きなさい。 あの妖は女の体を弄ぶが、いきなり取って喰ったりはしない。それよりも今は情報が少なすぎる。
このまま無策に突っ込んでは返り討ちに遭う可能性も否定できない。 ここはいったん引いた方が賢明よ」
「でも・・・でもっ!!」
「約束する。あなたの友達は私が必ず助ける。 だからここは私の言う事を聞いて」
「・・・・・はい・・わかりました・・・」
しぶしぶ由美子はその少女の言う事を聞くと、後ろ髪を引かれるようにもと来た道をじっと見つめる。
・・・・ォォオオォ ォォ・・・ォォ・・・・
風の音か化物の雄叫びか判然としない音が暗闇の中を木霊する。
化物の慰みモノになっている親友は次に来る時まで無事でいるだろうか・・・。
「麻美・・・絶対助けてあげるからね・・・」
由美子は麻美を救う事を固く心に誓い、その場を後にした。
―――明くる日の昼間
じっと部屋で彼女の帰りを待つ由美子は、昨晩家に帰ってきてからの事を思い返していた。
「私の名は伽耶。退魔師をしている。今回はここの村の長老に頼まれてやってきた」
彼女はこれ以上ない位、簡潔に自己紹介をした。
由美子は今晩泊まる当てが無いという彼女を自宅に招き、由美子の部屋で事の経緯を聞いた。
巫女装束という一般の人から見れば奇怪な格好をしている伽耶を、友達だと母親に説得したのは少々大変だったが・・・。
どうも彼女は自分からペラペラと喋るタイプではないようなので、由美子の方から色々質問をしてみると、
何でも、彼女の家は遠い昔から妖魔調伏を生業としているらしく、あの化け物をそこの神社に封印したのは彼女の御先祖様だという。
その時の様子は彼女の家の社伝に克明に記録されているらしい。
普通の人間より遥かに強大な力を持ったあの妖は、古くは神にも近い存在として敬意と畏怖を持って崇められていた。
あの妖を神として崇めていたこの地域は、年に一度年頃の娘を生贄として妖に捧げていた。
そんな忌まわしき因習を打ち破るべく、当時の村の長老が彼女の御先祖様に妖の退治を依頼したのだ。
そして今回、これまた遠い昔に彼女の先祖に退魔の依頼をした家の子孫であるこの村の長老が、
度重なる失踪事件に妖の匂いを感じ取り、彼女の家に退魔の依頼をしたらしかった。
由美子の想像のつかないスケールで、歴史は繰り返しているらしい・・・。
「ただいま・・・」
燦々と太陽が降り注ぐ昼下がり、伽耶はあの神社の偵察を終え由美子の家に帰ってきた。
「どうでした!? 伽耶さん」
「ああ、やはりあの妖を封じていた要石が砕けていたよ。 それが原因で現代に妖が復活してしまったようだな。
恐らく、失踪したと言われた娘達はたまたま神社の前を通りかかった時に、妖の強力な妖気に当てられて神社の中に誘い込まれたのだろう」
「それで、麻美を助ける作戦はどうするんですか?」
「可能であれば妖を滅する。
あの妖は女が絶頂したときに発散する気を喰らってエネルギーにしているのだが、今はまだ復活したばかりで力が回復してないはずだ。
現に昨日あなたが襲われたと言っていたあの拝殿の中に残っていた妖気の残滓にも、それ程強い妖気を感じない。
大昔は奴の力が強大すぎて封印するのがやっとだったらしいが、今回こそは滅殺出来るかもしれない。
まぁ、最悪でもまた石か何かに封印するつもりだ」
「麻美は助かるんでしょうか・・・?」
「昨日も言った通り、あの妖は直接的に人間を捕食しない。生命の安否を気遣うなら、その心配は無用だ。
ただ、普通では体験する事の無い人外の快楽を経験してしまったとなると、多少なりとも心と体に後遺症は残ってしまうだろう。
それが消えるのは数日か、数年か、或いは一生なのか、それはわからない。 無論早く救出するに越したことは無い」
「そうですか・・・」
「今晩、あの神社に向かう。夜になれば奴も姿を現す筈だ。早いうちに短期決戦を仕掛ける」
由美子は数瞬思案した後に覚悟を決めて伽耶に相談する。
「あの・・・、私も連れて行ってもらえますか?」
「駄目だ、一般人が付いてきても足手纏いになるだけだ」
伽耶は由美子のお願いをにべもなく断る。
だが由美子は引き下がらない。
「無論、わかってます。 もし危険な目にあっても助けて頂かなくて結構です」
「何故? ここで事の成り行きを見守っている方のが安全で楽だろう」
「もう後悔したくないんです・・・。 初めに麻美が神社の中に入って行ってしまった時、
嫌な予感がしたのに、私に勇気が無かったせいで麻美を引き留める事が出来ませんでした。
その罪滅ぼしじゃありませんけど・・・麻美が辛い目に遭っているのに、自分だけのほほんと部屋で待っている訳にはいきません!!」
キッと強い意志の眼差しで自分を見つめる由美子を見て、伽耶はこれ以上の説得が徒労に終わりそうな事を直感した。
「・・ふぅ・・わかったわ。 じゃあ最低限、自分の身は自分で守る事。 いいわね?」
「はい!」
「では作戦変更ね。 あなたにそこまでの覚悟があるなら頼みたい事があるんだけど、いい?」
伽耶は今晩の作戦の詳細を由美子に告げた。
ざぁぁっぁぁぁっ・・・・
ぬるい空気が下草と木々の葉の隙間を駆け抜ける。
陽がすっかりと沈んだ今はまさに逢魔ヶ時。
昼間でさえ不気味なこの鎮守の森は、陽が沈むとさらに禍々しさが増し、それは澱となって実体化しそうな程だった。
由美子は何が飛び出てくるかわからない参道を小さい明かりを片手にひたすら歩いていた。
昨日と同じ気が遠くなりそうな道をひたすら進むと、やがて行く手に小さな明かりの灯った神社の拝殿が見えてくる。
ごくっ・・・・
由美子は覚悟を決めると、
ガラッ!!!
勢いよく格子を開いてその中に飛び込んだ。
「麻美!居るの!?」
彼女は親友の名を呼び中を見回すが、そこには誰もいなかった。
「うれしい、来てくれたんだね。由美ちん」
―――!!
由美子は弾かれるように声のする方を振り返った。
拝殿の中、確実に2秒前には誰もいなかった所に麻美は全裸で立っていた。
「麻美・・・」
「うふ、由美ちんも早く一緒に気持ち良くなろうよ・・・、ほら・・・こうされるとすごく幸せなんだから・・・」
シュルルルルゥゥゥ!!
うわ言のように呟く麻美の背後から何本もの触手が現れ、その肉の蔦は彼女の太腿や女陰や乳房に巻き付き、
ぬちゃぬちゃと卑猥な音を立てながら麻美の体を蹂躙する。
「あ・・・ふぅ あぁ きもちいぃ・・・もっとぉ もっと強く搾ってよぉ・・・」
そんな麻美の要望に応えるように、触手はより一層動きを速めて麻美の体表を摺動する。
「あひぃぃ・・!! あぁ だめぇ・・・ あぁん・・・ここぉ ここにも挿れてぇ!」
麻美は自ら自分の無毛の秘所をくぱっと拡げると、卑らしいことこの上ない表情で触手におねだりをする。
そしてそれに応えるように、ささやかにくつろげられた麻美の秘孔に数多の触手が突き刺さる。
じゅぱっ!! じゅぷっ・・・じゅる じゅっ じゅっ じゅるっ・・・
「あぁぁぁぁあああっ!!」
ビクン!ビクン!
麻美は歓喜の声をあげ、全身でその喜びを表現する。
麻美の胎内で縒られた肉の縄は彼女の二の腕ほどの太さになり、下腹は挿入されている触手の形がくっきりと浮かび出る。
拷問のように拡張された膣穴は、それでも裂ける事は無く、広がった面積の分だけ増幅された快楽を生じさせていた。
麻美の華奢な体をがっちりと掴んで離さない触手は、既に複数回絶頂を迎えているにもかかわらず、彼女が倒れ伏して快感を貪る事を許さない。
カエルに電気を流す理科の実験の様に、立ったまま奇妙なダンスを踊るような姿は、
滑稽さと淫靡さが入り混じった妖しい魅力に満ち溢れていた。
ごぽっ・・・
触手は暴虐の限りを尽くしていた胎内からその身を引き抜くと、麻美が分泌した愛液をなすりつけるように彼女の全身に塗りたくる。
「はぁぁぁぁ・・・きもちよかったぁ・・・・・」
触手が引き抜かれてもだらしなく口を開けたままの膣口は、ヒクッ、ヒクッと痙攣する度に
白く泡立った新鮮な愛液を次から次へと吐き出す。
麻美の太腿から膝裏まではまるで失禁をしたかのように濡れそぼち、愛液がてらてらと光でる。
由美子は、自分がいま助けようとしている者が、自ら望んで性的虐待を受ける姿にショックを隠せないでいた。
それは目を塞ぎたくなるような陰惨な光景であったが、由美子はぐっと歯を食いしばり耐えていた。
「じゃあ、今度は由美ちんの番だよ?」
いまだ快楽の余韻に惚けた表情のまま、麻美は由美子に歩み寄る。
そして、今にも手が触れそうな間合いになった瞬間・・・
「やぁぁぁっ!!」
由美子はありったけの勇気と気合を振り絞って、後ろ手に隠していた一枚のお札を麻美の胸に貼り付けた。
「ぎゃああぁぁぁっっ!!!」
喉が潰れてしまう程の絶叫をあげると、麻美はもんどり打って後ろへ倒れる。
「痛い 痛いよ・・・・熱いよぉ・・・!」
麻美は熱く焼けた火箸を押し付けられるが如く苦しみ、転げまわる彼女の呼気から赤黒い靄の様なものが吐き出される。
やがてその靄はだんだんとヒト型に姿を変え、みるみるうちに実体化していく。
これこそが麻美を淫獄に堕とした張本人、憎むべき妖である。
ダンッ!!
突如、白い彗星が暗闇の中から拝殿の中に飛び込む。
「頑張ったわね、由美子」
それはずっと外で様子を窺っていた伽耶であった。
「後は私に任せなさい、責任を持って滅してあげるわ!」
「お願いします!伽耶さん」
オオ・・・オォオォォォォオォ・・・・・・・
強力な呪符をまともに食らってしまった妖は苦しげな呻き声をあげる。
かつてのピーク時であればこの程度の呪符など物の数ではなかったが、復活したばかりでほとんど力が回復していない妖にとって
この呪符は致命的に近い程のダメージがあった。
由美子が身を危険に晒させて作ったこのチャンスで妖を仕留めるべく、伽耶は神拝詞を唱え始めた。
「祓え給い 清め給え 神ながら 守り給い 幸え給え」
その詠唱に呼応するように、彼女の右手に握られた御神刀は青い霊力の炎が灯り、徐々にその光度が増していく。
「永い永い因縁もここでお仕舞いよ。 覚悟しなさい、バケモノ!!」
伽耶は青く輝く御神刀を大上段に構え、すぅっと息を吸い込むと、全力で妖を袈裟がけに叩き切る!
「破ぁぁっ!!」
彼女が放った稲妻の様な斬撃は、妖の胴体を真っ二つに切り裂いた。
刀に込められた霊力に侵食されて、妖の体はその斬られた傷口から徐々に塵に還っていく。
ゥオオオォオォォォゥゥゥ・・・
辺りに腹の底に響くような妖の断末魔の叫びが響き渡る。
やがて妖の全てが塵に帰すと、この神社を覆っていた禍々しい気配がすぅっと霧散する。
「麻美っ!!」
由美子は床に横たわる麻美のもとへ駆けつけた。
先程まではあれほど苦しんでいたのだが、今では文字通り憑き物が落ちたかのように安らかな寝息を立てて気を失っている。
その様子に由美子はほっと胸を撫で下ろす。
「ふぅ、これで全て片付いたわね。これもあなたのお陰よ、由美子」
「とんでもないです!感謝しなければならないのは私の方です!!」
「いいえ、あなたのその勇気を振り絞ったお陰で作戦通り妖を滅することが出来たんですから。胸を張っていいわよ」
「でも・・・私ひとりでは何もできませんでした。これも全て伽耶さんのお陰です、本当にありがとうございました」
由美子は伽耶に向かって最敬礼をする。
伽耶は最大限の感謝の意を受け取ると、手をひらひらと振りながら無言で踵を返す。
「ありがとうございます!!」
肩で風を切って歩く凛々しい背中に向かって、由美子はもう一度深く礼をした。
由美子は思っていた。
本当、伽耶さんにはこれ以上ない位感謝している、とても言葉では伝えきれないくらい。
そう、例えるなら、殺してやりたい位に・・・。
「・・・え!?」
シュルルルッ!!
突如、背後から降って湧いた殺意に伽耶は瞬間的に身構えるが、時すでに遅し。
しなやかで強靭な肉の紐は伽耶の首に巻き付くと、頸動脈を圧迫し彼女の意識を落としにかかる。
「ぐっ・・・!!」
両手で必死に巻き付く紐を掴み、何とか抵抗を試みる伽耶。
しかし30秒後、必死の抵抗も空しく彼女の意識は闇に呑みこまれていた・・・。
「・・・っ」
仄暗い闇の底に沈んでいた伽耶の意識が浮かび上がる。
そこは八畳ほどの狭い空間。
昼間に偵察に来ていた伽耶は、そこは神社の本殿の中であると見当をつける。
しかし、そこは昼間に見に来た時とは全く違う状況になっていた。
床や壁、天井には無数の触手が貼り付き、それらはまるで南国の海のイソギンチャクを思わせる様に宙を彷徨う。
そして、伽耶はそんな触手に両手両足を縛られ、壁に大の字に磔にされていた。
試しに全力で手足に力を入れてみたが、筋肉質かつ綱のように頑強な触手はびくともしない。
霊力を集めようにも、猿轡のように口を覆う触手のせいで祝詞を唱える事もままならない。
圧倒的不利な状況下、伽耶は何らかの突破口を探るべく、自らを拘束する触手に対して必死の抵抗を試みた。
だが、
「無駄ですよ・・・」
「!!」
不意にかけられた声に伽耶の心臓は跳ねあがった。先程までは明らかに誰もいなかった所から声がしたからだ。
ずい、と闇の中から歩みを進める声の主は紛れもなく由美子であった。
由美子はパチンと指を鳴らすと、伽耶の口を覆っていた猿轡が外され、代わりに彼女の首に触手が巻き付く。
「妙な気を起こさないで下さい。 何か少しでも変な素振りを見せたら、そのままあなたの首を締め上げます」
「あなた!何故? いつの間に妖の支配を受けていたの!? あなたに会ってからずっとそんな気配は感じなかったわ」
「ふふ、それはそうでしょう。 ご主人様はね、実は昨日の時点で退魔師のあなたが近くにやってきている事に気づいていたようですよ。
昔の絶頂期のご主人様ならあなた位の退魔師なんて物の数では無かったけど、今は蘇ったばかりで力が回復していない。
直接対決しては伽耶さんに敗れる可能性があった。だから保険をかけたの」
「・・・保険?」
「そう。 昨日伽耶さんと出会う直前、私はご主人様に取り憑かれて可愛がられていた麻美に耳の中を舐められたの。
その時、ご主人様は私の耳の奥深く・・・ほとんど脳に近い所に、ご主人様の本体ともいうべき卵を植え付けていたんです。
由美子はトントンと頭に指を当てながら続ける。
「今、ご主人様は私の頭の中にいらっしゃいます。
すごいですよ、この感覚・・・。 この世に不可能な物は無いんじゃないかって気がします。
私より尊い人間は世界中見回しても居ないんじゃないでしょうか。 ふふ、この感覚を口でしか説明できないのが残念です。」
「気付かなかった・・・」
「気付かなくて当然ですよ、卵が孵化をするあの瞬間までほとんど妖気を発生させていなかったですし。
何より植え付けられていた私自身ですら気づいてなかったんですからね。
まぁ、結局あなたが倒したと思っていたあれはご主人様の分身に過ぎません。常識的に考えて、そんな簡単にやられる訳がないでしょう?」
ケタケタケタと腹を抱えて由美子は笑う。
「という訳で、ご主人様の力が回復なさるまでの当面の間、私の体を依代に使って下さるそうですよ」
「不覚を取ったわ・・・。 それで、私をどうするつもり? 殺すなら早く殺しなさいよ!!」
敗北した自分の事をせせら笑う憎々しい由美子を伽耶は睨みつけた。
「あなたもわからない人ですね・・・。 殺そうと思ってるならばとっくに殺していると思いません?
あなたはご主人様を封印した憎き退魔師の子孫である上に非常に美しい女性です。
だったら、一石二鳥となる手があるではありませんか」
ニタァ、と口の端を釣り上げて由美子は邪悪に嗤う。
「まさか・・・」
「うふふ、そのまさかです。死ぬより辛い快楽を味あわせてあげますよ」
最悪の結末が彼女の脳裏をよぎった。
みじめに辱めを受ける位ならば・・・と思った伽耶はカッと大きく口を開き、自らの舌を噛み切ろうとする。
だが、
シュルルルッ!!
「っぐぇ・・・ んぐぅ」
前もってその行動を予測していた妖は即座に太い触手を伽耶の口の中に突っ込んだ。
強靭な触手は舌を噛み切る事を邪魔し、伽耶がいくら強く噛もうともまるでびくともしない。
「おっと、そう簡単に死んでもらっては困ります。 まぁ仮に舌を噛み切った所で死に切れはしませんが・・・。
伽耶さんにはご主人様に楯ついたことの愚かさを身をもって実感して頂きます」
由美子は微かに震える伽耶の前に歩み寄ると、目の前で見せつけるようにぐっと握りしめた拳をゆっくりと開く。
その小さな手のひらの中からは、細長いフィラリアの様な線虫が姿を現した。
「・・・!」
由美子はその気味の悪い蟲を摘み上げると、そっと伽耶の顔に近付けて行く。
そして・・・
―――にゅるっ
ハリガネムシの様に空中を這うように身をくねらせていた蟲は、あろうことか伽耶の整った小鼻の中に潜り込む。
「あ゛・・・あ゛あ゛・・・」
口の中に太い触手を突っ込まれたままの伽耶は、喉の奥からくぐもった悲鳴を上げた。
目や口の様に自分の意思で閉じる事の出来ない鼻の穴の中を、得体の知れない蟲が侵入していく嫌悪感と異物感で、伽耶は全身に鳥肌を立てた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
狂ったように頭を振って侵入を拒む伽耶だが、蟲はその程度の抵抗など意に介さず奥へ奥へと入り込んでいく。
―――ちゅる・・・
やがて蟲は長い長いその身を、全て伽耶の鼻の中に収めた。
蟲が奥まで入り込んだ事を見届けると、由美子は伽耶の口から触手を引き抜いた。
「かはっ・・・」
伽耶は透明なよだれと鼻水を垂れ流し、瞳にはうっすらと涙を浮かべている。
はぁはぁ、と呼吸を整え伽耶は由美子に訊く。
「な・・・何をしたの?」
「別に・・・何もしていませんよ。 伽耶さんも別段何か変わった事は感じないでしょう?」
確かに・・・。鼻の奥に蠢くおぞましい蟲の異物感は残っているが、それ以外特にこれといった変化は見られない。
「そろそろ伽耶さんの頭の中に定着しましたでしょうか・・・。
まぁ、普通にしていれば今までと何ら変わりありませんよ。 普通にしていれば、ね。」
不吉な予感に伽耶は声を荒げて問い詰める。
「何をしたか答えなさいよ!」
「脳内麻薬ってご存知ですよね?」
突然別の話題を振られて伽耶は呆気にとられる。
由美子はそんな伽耶を気にせず、一人で話を進める。
「脳内麻薬は人間の生活の様々な場面で分泌されます。おいしいものを食べた時、とっても苦しい時、性交をした時・・・。
あのモルヒネの数倍強力と言われるこの物質の優れた点は何かご存知ですか?」
滔々と由美子は言葉を紡ぐ。
「それは依存が少ない事です。精神的な依存は多少あるにしても、肉体的依存はほとんどありません。
まぁ人間の体の中で作り出しているんだから当然ですよね。
でも、もしそれがこの世に存在するあらゆる薬物よりも精神的・肉体的依存が強くなってしまったとしたら、
その人はどうなってしまうんでしょうね?」
さらり、と想像の斜め上を行く残酷な話をする由美子に向かって伽耶は絶望の声をあげる。
「・・・嘘・・・・でしょ・・」
「ふふ、嘘かどうかはご自分で確かめてみて下さい」
言い終わるや否や、出番を待っていたかのように待機をしていた触手たちが、一斉に伽耶の巫女服の隙間を通り抜け、
服の下で伽耶の絹のようにきめの細かい素肌を舐り回す。
ぬちゃ・・ぬちゃっ・・・にちゃ・・・
「いやぁぁぁ、やめて!!」
触手は服の下を這っている為、傍目には彼女が何を嫌がっているのかが良くわからない。
しかしその巫女装束の中では粘液にまみれた無数の触手が、鳥肌が立って勃起した彼女の乳首をこねくり回し、
また、秘部に絡みついた細い触手は、鞘に収まった敏感な肉の突起を強制的に引っ張り出して舐めまわす。
「ひとつアドバイスをあげましょう。 脳内麻薬中毒にならないようにする対策は簡単です。
伽耶さんが一切気持ち良いと感じなければいいだけです、簡単でしょう?」
乳房、太腿、首筋・・・。触手は体表から分泌する媚粘液を伽耶の体に塗り込める。
僅かずつ、しかし確実に皮膚を浸透して吸収されていく粘液は、少しずつ伽耶の体を変化させていく。
にゅるん にゅるっ くちゃっ・・・
「くっ・・・! くはっ!」
伽耶は確実に体が受容し始めてる快感を必死に否定するように、歯を食いしばって触手の責めに耐える。
「あはは・・・伽耶さん、それ我慢してるんですか? 涙目になってますよ? そんな無理しなくていいのに。
じゃあ次はもっといい事をしてあげますよ」
刹那、伽耶の股の間をくねっていた細い触手たちは、我先にと伽耶の膣口に群がる。
―――ずぶっ! ぎゅっ・・ ぎゅるるっ!!
「いやぁぁっ!!」
伽耶の純粋無垢な秘孔に数多の触手が突き立てられた。
性交はおろか、まともにオナニーさえした事の無い処女孔は無残に拡張され、太腿には彼女が先程まで処女だった証の雫が零れ落ちた。
じゅっ・・じゅっぷ・・・じゅっ じゅるっ・・・
触手は流れ落ちる血と自らが分泌する媚粘液を潤滑剤にして、まるで遠慮をする様子なく奥の奥まで突きあげた。
苦痛に顔を歪め必死に痛みに耐える伽耶だったが、膣の粘膜から直接吸収された粘液は瞬く間に痛みを取り去り、
代わりに彼女の秘芯に堪らない疼きをもたらす。
「な・・なに? い、いや! 嫌ぁっ!!」
体が正直に伝えてくる快感を、伽耶はかぶりを振って否定する。
「可愛いですね、伽耶さん。 でもね、ご主人様は女の体を徹底的に弄び、ひたすらイかせることによって強大な力を得てきた妖です。
如何にあなたが屈強な退魔師といえど、女である以上気持ち良くならない訳がありませんよ」
急激に熱を帯びてきた伽耶の秘芯は、驚くべき順応性で侵略者を柔軟に受け入れる。
彼女の意志とは裏腹に、蕩けるような快楽を享受している膣口は、触手をより奥深くまで受け入れる為に大量の愛液を分泌した。
じゅちゃっ くちゃっ ぐちゃっ・・・
ほぐれては絡まり、絡まってはほぐれ、触手達は伽耶の膣を余すことなく刺激する。
彼女の膣は無意識的な本能で中の触手を咥えこみ、より多くの快感を得るように細かに蠕動していた。
この頃には既に、伽耶は下半身からせり上がるような快感を否定することが難しくなっていた。
為す術なく、伽耶は触手に突き上げられる。
「あ・・・くはぁ・・・、いっ・・・あぁ 何かくる! 何か来ちゃう!!」
標的の絶頂が近い事を悟った触手は一段と卑猥な動きを加速させ、彼女の膣を往復する。
「あぁ いやぁ・・ 怖い・・・イっちゃう・・・・ああああぁぁぁんん! だめぇぇっ!!!」
ビクン、ビクン!!
伽耶は全身を大きく痙攣させて生まれて初めての絶頂を迎えた。
―――ピクッピクッ
快楽の余韻に震える伽耶の口角からツゥ、と一筋のよだれが垂れる。
由美子はぺろりとアイスのように伽耶が垂らした銀色の糸を舐めとると、さも嬉しそうに彼女に話しかける。
「おめでとうございます。 初めての絶頂ですよね? イくのは気持ち良かったですか?」
ぐったりとした伽耶に由美子は問いかけるが、その応えは無い。
「いま、伽耶さんの脳内ではたくさんの脳内麻薬が分泌されちゃってますよ・・・。 うふふ、もう手遅れですね。
じゃあ私は拝殿の方で麻美達と楽しんできますんで、伽耶さんはここでゆっくりしていて下さい」
ちゅ、と優しく頬に口づけをすると、大の字に磔にされたまま指一本動かさない伽耶を残し、由美子は本殿を後にした。
「・・・う ぁあ・・・ぎぃ・・・・」
伽耶は見えない敵と戦っていた。
1時間程前に由美子にイかされてから、ずっと触手に拘束されたままぐったりとしていた彼女だったが、
10分ほど前から体をモゾモゾさせ始めたかと思うと、次第に手足は震え、全身にじっとりと脂汗をかいている。
「 ぁあ ・・・や・・めて・・・ひぃっ!」
かっ、と瞳を開いて虚空を見つめているのだが、彼女が見ている光景は実像では無く虚像。
退魔師という職業柄、もともと精神を集中させたりイマジネーションを多用したりするので、
彼女の中に発生する実体のない悪夢は、常人のそれをはるかに上回るリアリティで彼女の精神を蝕む。
自らが生み出す強力な幻覚に伽耶は苛まれていた。
突如、
―――ドタッ
触手に拘束されていた両手両足を突然解放されて、伽耶は前のめりに床に倒れ込む。
自由の身になったはずの伽耶だったが、見えない敵と戦い続けている彼女はそこから逃げる事が出来なかった。
助けを求めるように手を伸ばし、床の上で芋虫のようにのたうちまわる伽耶。
シュルル・・・
やがて先端が手のひら大の吸盤のようになってる一本の触手が袴の裾の間から入り込んだと思うと、いまだ粘液が滴る伽耶の陰唇に吸いついた。
ちゅっ くちゃっ くちゃっ くちゅっ くちゃっ・・・・
「ひぃあぁぁぁぁっっ!!!」
彼女の秘部にピッタリと密着した触手は、吸盤の表面に密生する柔毛のブラシでまんべんなく性器の表面をこすりあげる。
先刻、荒々しく処女を散らされた時とは違い、かなりソフトに愛撫されていたが、
そのタッチは絶妙な物足りなさ加減で伽耶の秘部に快感を生み出す。
生殺しともいえる中途半端な快感は、伽耶の体をそれ以上の高みに昇らすことも無く、却って彼女の肉体を悶々とさせた。
微量の脳内麻薬が分泌されたことで、彼女を襲う幻覚は消え去ったが、
制止を叫ぶ理性に代わって、欲求を司る本能がイニシアチブを取ると、普段は絶対に取らないような行動を彼女にさせる。
伽耶は無意識のうちに白衣を脱ぎ、たわわに実った乳房をはだけると、自らの手で双丘を揉みしだく。
「ああ・・だめぇ こんなこと・・・だめなのに・・・」
そんな彼女の言葉とは裏腹に、両手は乳房が変形してしまう程激しく捏ねまわし、
下半身はもっと強く触手に愛撫してもらえるように腰を押し付けた。
「はぁ はぁ はぁぁ・・・」
徐々に伽耶の脳からは脳内麻薬が分泌され始め、彼女の中毒は少しずつ充足され始める。
肺腑の奥から陶酔の溜息を漏らす彼女は、めくるめく快楽の海の中をたゆたっていた。
彼女の変化を感じ取った触手は、股間を覆う吸盤の中にひときわ細長い触手を発生させると、
今まで用を足す以外に使った事の無い小さい穴の中に侵入を開始する。
にゅぐっ にゅぐっ にゅぐっ・・・
「ひぃぃぃっ!! いやぁぁぁっ!! そ・・そこ・・・ちがう・・・!!」
伽耶の悲鳴を無視して触手は彼女の尿道をにゅるにゅると逆流する。
ひどい異物感と強い排泄の欲求を伽耶に与えながら尿道を突き進んだ触手は、ぐるぐると膀胱内でとぐろを巻くと、
先程までは空に近かった膀胱がたちまちのうちに限界まで膨らんだ。
いきんでも括約筋を緩めても排泄する事が出来ない不快な苦痛に伽耶は顔を歪める。
「嫌ぁ! 苦しい・・・お願い 出させてぇ・・・」
彼女の願いが聞き入れられたのだろうか。
限界を遥かに突破して膀胱を膨らませていた触手は、突然そのベクトルを変えると、
今度は尋常では無い勢いで膀胱から尿道を通り外に排泄される。
「あぁ・・・あはぁぁぁぁ・・・ 出るぅ・・ おしっこでちゃう・・・・・きもちいいぃ・・」
まるで限界まで我慢していた小便を一気に解放したかのようなカタルシスは、性感と似て非なる快楽を伽耶に与えた。
―――トプッ・・・ドプドプッ・・・
そんな音が聞こえてきそうな程、彼女の頭の中で大量の脳内麻薬が垂れ流される。
ビクッ!ビクンビクン!!
「ふあぁあぁぁぁぁ」
伽耶の精神と肉体は待ち望んでいた極上の快楽物質を受け取り、彼女は天に昇るに等しい浮遊感を味わった。
パクパクと酸素を求めて喘ぐように口を開く膣口は、どぼどぼと瀧の様に愛液を垂れ流す。
だが安心したのも束の間。
彼女の膀胱から排泄された触手は再び尿道に侵入する。
にゅぐっ にゅぐっ にゅぐっ・・・
「ひぁぁぁっ!! だめぇ・・ はいっちゃだめぇ・・・」
先程よりも多くの触手が詰め込まれた伽耶の膀胱は、彼女に偽りの尿意を発信する。
「く・・苦しい・・・ あぁ ・・出したい・・・おしっこ出したいよぉ!!」
極限の尿意に彼女の精神が崩壊する寸前、触手は勢いよく伽耶の尿道を駆け抜けた。
ぷしゃぁぁぁっ!!
「ひぃ・・・ああぁぁぁっっ・・・!!」
尿道から飛び出てくる触手と変わらぬ勢いで伽耶は激しく潮を吹く。
触手がもたらす擬似的な排尿は、伽耶の肉体を蕩けさせ脳髄を灼いた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
いつもの凛々しさはカケラも残らない程に吹き飛び、伽耶は白痴のように惚けた表情を晒した。
「ぅぁああっ!! あぎぃ・・・ く・・ひぃ・・・・」
人間の言葉とは思えない狂ったよがり声をあげて、伽耶は身悶えていた。
その中毒の衝動は彼女に片時も休む暇を与えず、ただひたすらに快楽を求める疼きを与える。
伽耶はその欲求に従うように、己の体を慰める。
右手の拳は膣内に、左手の拳は肛門にそれぞれ突き入れて、彼女は自分で自分の体を辱めていた。
身体の要求に従って回数を重ねるごとに、伽耶のオナニーは度を超すものとなっていた。
しかし、あらゆる薬物がそうであるように、彼女の脳内麻薬もまた耐性を形成し、今までと同じ分泌量では新たな快感が得にくくなっていた。
今のこの程度の快楽で出る分泌量では、脳内麻薬に馴れきった彼女の体を満足させるには程遠い。
既に彼女は、いかに沢山の脳内麻薬を分泌できるかという点にしか、生きる価値を見いだせないでいた。
彼女が自身で肉体に刻み込んだベンチマークは、数刻後には彼女の精神と肉体を蝕む事になるのだが、
全身全霊を傾けて快楽を得る事に集中する伽耶は、これ以上は到達しえないと思われた未踏の快楽の新境地を次々と開拓する。
「もっとぉ・・・ 気持ち良くなりたいのぉ・・・」
心の底から思っている本音が口を衝いて出る。
「ふふっ・・・まさに中毒患者そのものですね」
ふと気付くと伽耶の目の前には全裸の由美子が立っていた。
腰に手を当てた立ち姿は、いかにも少女らしい健康的で発展途上の肢体だったが、
彼女の下半身からは、女性の体には無いはずのモノが隆々と天に向かって聳え立っていた。
股間から胸に届きそうな位に勃起した規格外のペニスを間近で見た伽耶は、思わずごくんと生唾を飲み込む。
「今の伽耶さんの体では、その程度の快楽などいくら貪った所で埒があかないでしょう。
どうです? 今よりもっと気持ち良くなりたいのですか?」
「はいぃ・・・何も考えられなくなるくらい気持ち良くなりたいですぅ・・」
「わかりました。では、今までしてきた事が児戯と思える程の極上の快楽を伽耶さんに教えてあげます」
由美子は期待に打ち震える伽耶に四つん這いのポーズを取らせると、前戯が不要な程にほぐれきった膣口にペニスの先端をあてがう。
「狂ってしまっても知りませんよ?」
そう伽耶に問いかけた由美子だが、その返答を待たずに長大なペニスを伽耶の膣に挿入する。
「ぐはぁぁぁぁっっっ!!!」
伽耶は腹の底から絶叫をあげた。
自身で散々拡張したとはいえ、彼女の二の腕くらいの太さがある陰茎は伽耶の膣のキャパを悠々とオーバーしていた。
冒涜とも言えるくらい無残な大きさに引き伸ばされた伽耶の膣は、それでも正直に快感を受け止める。
そんな極太の肉の尖端が子宮口をえぐるたびに、彼女の腹はビクビクッと波打つように痙攣した。
前後に抽挿を繰り返す由美子の陰茎には、伽耶が分泌するネバネバとしたまっ白い愛液が絡みついていた。
―――ずちゅっ ずちゅっ ぬちゅっ
「あぁぁぁっ! きもちいぃっ!! きもちいぃよぉっ!!」
伽耶は狂ったように頭を左右にふり、膣内を蹂躙する陰茎の感触を堪能する。
極太の陰茎が往復するたび、快楽と引き換えに頭の中の大事な物がこそげ落ちるような錯覚を伽耶は感じていた。
「はぁっ はぁっ・・・私も気持ちいですよ・・・伽耶さんのおまんこの中最高です」
伽耶の膣は限界まで引っ張られた輪ゴムの様に強力に胎内の陰茎を締め上げ、由美子に上質な愉悦を捧げた。
由美子はそれに応えるように一層激しく腰を振る。
当初、四つん這いのスタイルを取っていた伽耶だったが、快感が増すにつれて腕で体を支える事が困難になり肘をつく。
しかし、肘ですらその体を支えきれなくなった伽耶は、遂に肩で体重を受け止める。
体を震わせてめくるめく快楽を享受する伽耶。
だが、
―――ずるり・・・
突如、由美子は伽耶の膣からペニスを引き抜いた。
「あっ・・・」
伽耶は果てしない快楽を提供してくれるペニスを失った喪失感に思わず声をあげた。
「ふう、ちょっと疲れてしまいました」
由美子はそう言うと、自分の背後に現れた触手で編まれた椅子に腰をかける。
「伽耶さんも与えられるだけではなく、少しは奉仕をしてみたらいかがですか?」
崩れ落ちるようにうつ伏せになっていた伽耶は、よろよろと身を起こすと由美子と対面する形で触手椅子の肘かけに両足をかける。
M字に股を開き、由美子の眼前に晒された膣口はぽっかりと大きな口を開け、彼女のピンク色の媚肉は物欲しそうにパクパクと痙攣した。
バベルの塔の様に天高く屹立する肉茎の先端を自分の秘部の中心にあてがうと、伽耶はゆっくり腰を落として肉茎を呑み込む。
じゅっ ぐちゃっ じゅちゃっ じゅるっ ・・・
「あひぃぃぃぃっ!! はぁっ・・・はぁっ・・はぁ・・・・」
ぎこちなく動いていた伽耶の腰は、回数を重ねるごとに快楽に教えられるようにして、よりスムーズに上達していく。
腰を下ろすたびに極太のペニスは伽耶の膣の最奥部――― 子宮口をずんずんと抉る。
甘美で上質な脳内麻薬が多量に分泌され、伽耶の脳はクラリと揺れる。
平衡感覚が麻痺し、何度も肘かけから転げ落ちそうになっても、腰を落とすスピードを緩める気配は一向に無かった。
伽耶はまるで命綱の様に由美子の首に手を回すと、狂ったように淫靡なスクワットを続けた。
「ふふふっ、伽耶さん。そんなによだれまで垂らしちゃって、可愛いですね」
「あぁぁぁん!! イくぅ イきそうなのぉぉ!!」
「あら・・・ なぜ奉仕をしているはずなのに、伽耶さんばっかり気持ち良くなっているんでしょう?
いくら伽耶さんが腰を振ったところで、私のペニスは半分も入っていないですよ・・・。
これでは私が気持ち良くなれません・・・今からは伽耶さんに本当の奉仕をして頂きます」
由美子はそう言うと、パチンと指を鳴らした。
瞬間、伽耶が足をかけていた肘かけを構成していた触手が、忽然と霧散する。
「きゃっ」
突然足場を失った伽耶の体は空中に投げだされると、そのまま重力に従って真下に落下した。
自由落下して加速度を得た伽耶の体は、体重以上の荷重を膣奥の子宮口ただ一点で受け止める。
いかに細身の伽耶とはいえ、自身の重みを子宮口のみで支えることには無理があった。
伽耶の子宮口はきゅっと穴を閉じてささやかな抵抗を示したものの、すぐに苛烈な負荷に根負けしてその穴を全開放する。
―――ずちゅんっ!!
「・・・か・・・くはっ・・・・・」
伽耶の膣は由美子の長大なペニスを根元まで呑み込んだ。
膣口から乳房の下までは不気味にボコッと膨れ上がり、由美子の規格外のサイズの肉茎が彼女の胎内に収まっている事を主張する。
ペニスによって子宮底を押し上げられた為、本来胃袋がある位置にまで子宮が上方に移動する。
「はっ・・はっ・・はっ・・・」
相対的に押し潰されてしまった肺で必死に酸素を取り込もうと、伽耶は小刻みに喘いでいた。
「やっと全部入りましたね・・伽耶さんの子宮の中、あったかくて気持ちいですよ・・・すぐにでもイっちゃいそう・・・
じゃあ、私が気持ち良くなるように伽耶さんの体を使わせて頂きますね」
由美子は一方的に通告する。
伽耶の背後に忍び寄る触手群は彼女の脇の下に潜り込むと、抱えるようにしてゆっくりと伽耶の体を再び宙に浮かす。
そして
―――ずちゅんっ!!
「・・ぐぇ・・・・かはっ・・・」
再度、伽耶の体は自由落下した。
そして、落ち着く間もなく再び触手に抱え上げられると、またしても伽耶の体は宙に放られる。
―――ずちゅんっ!! ずちゅんっ!! ずちゅんっ!!
繰り返し繰り返し、伽耶の体は過酷な性的虐待を受け続けた。
苦痛とも恍惚ともつかない表情を浮かべ、伽耶は白目を剥いて痙攣する。
つい先日までは処女だった伽耶の膣は、今や由美子の性処理のオナホと化していた。
「あふぅ・・・いいです・・ 伽耶さんのおまんこ最高ですよ・・・」
亀頭から根元まで柔らかな伽耶の粘膜に包まれて締め付けられると、由美子の中に射精の衝動がせり上がってくる。
「ん・・・イきそうです・・・・く・・ あぁ イくうぅぅぅぅっ!!」
ぶびゅるっ!びゅるるるぅぅぅっ!!
由美子は感極まった嬌声を上げて伽耶の胎内に射精する。
胎内で狂ったように律動する由美子の肉茎は、人間の男とは比べ物にならない量の精液を噴出した。
そして、それはゼリーの様な濃密さを保ったまま、子宮の内壁にへばり付く。
びゅくっ!びゅくっ!びゅくっ!
とてつもなく濃い妖気を帯びた妖の精液は、ゾクリと背筋が凍る異様な冷たさを持って伽耶の子宮にわだかまる。
胎内の粘膜から吸収される妖気は、伽耶が享受する快楽を何倍にも増幅させる触媒となり、狂ってしまう程の極上な脳内麻薬を分泌させる。
「あ・・・あひぃ・・・ひぃ・・あひぃ・・・」
母乳を欲しがる赤ん坊の様に伽耶は由美子の体にぎゅっとしがみつく。
白痴の様な声をあげ、全身を震えさせながら伽耶は悦びを表現した。
しかしこの時、伽耶は気づいていなかった。
伽耶に官能を与えている妖の妖気は、同時に彼女の生理の周期を無視して強制的に多量の卵子を生み出させた。
そして人間のそれとは比較にならない程の生命力を持った妖の精子は、伽耶の子宮の奥の奥、卵管を逆流すると、
遂には卵巣にも沁みわたり、その中で排卵を待ちわびている卵子達に容赦なく受精する。
彼女の胎内で同時多発的に細胞レベルの集団レイプが行われていた。
「・・・あ゛ あ゛あ゛・・・ぁ・・」
凌辱を受け続ける卵巣は小刻みにプルプルと震えながら侵される。
身も心も細胞も全てを犯しつくされ、限度を遥かに超えた快楽が伽耶の意識のブレーカーを落とした・・・。
彼女は運が無かった。
たまたま今日は部活で居残りをさせられた。
バレー部に所属していた彼女は、「気合が入って無い」という基準が不明な難癖を顧問につけられて、
他の部員がとっくに下校している時間になっても、たった一人特別レッスンを受けていた。
いい加減、気力と体力が限界に達して、もうこれ以上は無理・・・と思った頃にようやく地獄の様なシゴキから解放された。
擦り傷だらけで、早くも筋肉痛ぎみの体を引きずって下校する頃には、すっかり日が暮れて夜になっていた。
ちょっとでも早く家に帰ってお風呂に入って布団に入りたい・・・その事ばかり考えていた彼女は、
普段ならこんな時間に絶対に通らないような近道を選んでしまう。
それはこの神社の前を通るルートだった。
ほとんど街灯が無く、薄暗い道を歩いていると、だんだんと心細くなっていくのを感じる。
(こんな所、通るんじゃなかったな・・・)
彼女の心に軽い後悔が気持ちが芽生える。
そして、薄暗い道の中でもとりわけ気味の悪い神社の前にさしかかると、息を止めるようにして足早にそこを通り過ぎようとする。
その時・・・
「ねぇ・・・」
「っ!!」
不意に背後からかけられた声に、少女は心臓が口から飛び出てしまう位びっくりした。
ぱっと振り返ると、そこには一人の女の子が立っていた。
(あれ・・・この子って・・・)
自分を呼び止めたその少女は、話をした事はないが、その顔に見覚えがあった。
いまいち名前は思い出せないが、確か図書委員をしているはずではなかっただろうか。
あの学年で一番成績がいい子と仲が良くて、いつもよく一緒にいるのを覚えている。
少女は眉を顰めた。
それで・・・この子は何故こんな時間にこんな所にいるんだろう?
いや、問題はそこではない。
何故この子は裸なのだ・・・?
次々と浮かぶ疑問に対する答えが見つからないまま、2人はお互いに顔を見つめる。
しかし
―――ぷすっ
「え!?」
ドクンドクンドクンッ!!
いつの間にか向こう側から地面を這ってきた細いゴムホースの様なものが、その鋭い先端を少女の太腿の動脈に突きたてると
激しく脈動し、得体の知れない液体を彼女の体内に注入する。
「・・・くはっ!」
彼女はとっさに両手で管を掴み太腿から引き抜こうとするが、既に彼女の体に回り始めた毒のせいで思うように力が入らない。
やがて膝をつき倒れ伏すと、彼女の視界は霞み、徐々に意識のレベルも低下していく・・・。
―――ひた ひたっ・・・
意識が完全に落ちる前、最後に彼女の瞳に映ったものは
自分の太腿に刺さっているのと同じ肉の蔦を、柔肌に絡ませた少女がこちらに歩み寄ってくる姿だった。
―――ピタッ・・・ニュル・・
「・・・・ん・・ぅん・・・」
手足を包む生温かい触感と、粘つくような水音を聞いて彼女は意識を取り戻した。
まだ少し霞む瞳を何回も瞬かせると、ここが神社の中なのだという事が理解出来た。
「くっ・・・抜けない・・」
彼女に絡みついている触手は緩やかに彼女の四肢を拘束し、必死に体を捩ってみてもそこから抜け出すことは叶わなかった。
あの手この手で脱出を試みようとする彼女に、不意に声がかけられる。
「ふふ・・ ようこそ」
ビクッとしてそちらをみると、そこには先ほどとは違う別の少女が立っていた。
(この子・・・学年で一番成績がいいあの子じゃない・・・)
彼女は必死に状況を把握しようと頭をフル回転させていた。
(さっきの子といい、この子といい、一体何が起きてるの・・・?)
「・・ちょっと、何なのよこれ? あたしを離してっ!」
当然の要求をする彼女に由美子は艶然として微笑む。
「ええ、離してあげます。 ただ、もう少し私たちに付き合って頂いた後にね」
由美子が浮かべる微笑の中に若干の狂気が含まれている事を感じ取った少女は、ぞくりと背筋を震わせた。
「きっと最後にはあなたも私たちの仲間になれると思いますよ」
そう言って由美子はパチンと指を鳴らす。
瞬間、彼女を緩慢に拘束していた触手が勢い良く動き出す。
「きゃあぁぁぁっ!!」
少女の叫び声が闇夜に響き渡る。
シュルシュルと絡みつく触手に手足を目一杯に広げられ、彼女は拝殿の木の床に大の字に固定されてしまった。
「嫌ぁっ! な・・何!? た、助けてぇっ!!」
必死の叫び声も空しく、誰も助けになど来てはくれない・・・。
そして、ぴったりと床に張り付けられた彼女の顔に、また別の細い触手が忍び寄る。
「むぐっ・・・ぁあぁぁぁっ!!」
少女の可愛らしい口に差し込まれた4本の細い触手は、上下左右の歯をがっちりと固定すると、強制的に口を限界まで開かせる。
「ああぁ!あえへぇっ!!」
少女は必死に拒絶の意思を伝える。
自由を奪われた少女がもがく様を見下しながら由美子は口を開く。
「今しばらく我慢してて下さい。 では伽耶さん、お願いします」
由美子がその名を呼ぶと、暗がりの中からすっと伽耶が姿を見せる。
しかし、そこに現れた伽耶の腹は、明らかに不自然に膨らんでいた。
臨月・・・とまではいかないが、妊婦の様にぽっこりと孕んだ彼女の胎内に何かが居る事は、誰が見ても明白であった。
虚ろな瞳をした伽耶は、大きな腹を抱えながらユラユラとした足取りで拘束された少女に近づく。
少女の頭上に立ち、彼女を見下ろすようにしてニンマリと嗤うと、まるで和式便所で用を足す時のように、伽耶は彼女の顔の上に跨る。
―――くちゅ・・・
「むぐぅ・・・・」
伽耶の淫液で蕩けきった陰唇が少女の口に密着する。
悲鳴らしき声をあげ、頭を左右に振って嫌がる少女の頭を、伽耶は太腿でがっちりとロックした。
ぱかっ、と割り広げられた膣口からはトロトロとした愛液が少女の舌の上に垂れ落ち、徐々に口の中に溜まっていく。
鼻でしか呼吸の出来ない彼女は、口の中に際限なく溜まっていく淫液を強制的に嚥下させられていた。
飲みきれない程注がれた伽耶の淫汁が少女の口角から糸を引いて床に垂れる。
「あぁん ふぅ・・ん くふぅ・・・ぅぅ」
伽耶は少女に跨ったまま、新しい生命を生み出そうとするがの如くいきむ。
本物の妊婦と唯一決定的に違うのは、伽耶が感じているものは苦しみではなく悦び。
だらしなく口の端から零れたよだれは、キラキラと雨のように眼下の少女に降り注いだ。
―――ドクンッ! ニュル・・・ウニュ ウニュ・・・
伽耶の膣の奥から不気味に蠢く肉がせり上がる。
しかし、それは彼女の膣肉ではなかった。
彼女の膣と同じピンク色をした肉の塊は、小さく窄まっていた子宮口を拡張し、ウネウネと子宮から這い出ると、
ビクビクと小刻みに蠕動する膣内を通り抜けて、彼女の胎内から少女の口の中に産み落とされる。
少女の口は伽耶の女性器がピッタリと密着している為、彼女から生まれ出でたモノを外に吐き出す術はなかった。
弾力のある餅の様な触感のそれは、口腔内でビチビチっと跳ね回ると、すぐさま出口を見つけたかのように少女の喉奥に消えてゆく。
その肉の塊は普段であれば喉に詰まって窒息してしまう可能性がある大きさであったが、
伽耶の愛液を身に纏い、非常に滑りが良くなっていた為に、さしたる抵抗もなく奥へと進む。
食道を下り胃袋に到達した肉塊は、細胞レベルで胃壁との融合を始めた。
「うえぇぇぇっ・・・!!」
刹那、強烈な胸やけの様な感覚が少女を襲う。
少女は必死に不快な胃の痛みと嘔吐感を我慢すると、徐々にその熱は引いていった。
「今、あなたのお腹の中に収まったそれは、ご主人様と伽耶さんの愛の結晶です。
それを呑み込んだ人間は普通の食べ物は一切受け付けなくなります、その代わりにご主人様の精があなたの糧になるのです」
そう言うと由美子は天に向かって屹立する巨大な魔羅を少女に見せつける。
少女は、ぷん・・と亀頭から漂う性臭を吸い込むと、少しずつ思考能力が低下していった。
今しがた彼女の中の書き加えられたばかりの新しい本能が、その巨大な肉茎から与えられるであろう極上のミルクを欲しがる。
「ほら伽耶さん、いつまでもその娘の上で惚けていると、彼女窒息しちゃいますよ?」
「はぁい・・・」
少女の顔の上で惚けていた伽耶は、ゆっくりと立ちあがった。
あれほど凛々しかった相貌は影を潜め、伽耶は廃人同然の表情で出産の余韻に浸る。
「もっとぉ・・・もっと産みたいのぉ・・・」
「ふふ、もうすぐ大勢の娘達の口の中に伽耶さんの仔を産んで頂きます。 それまでもう少し伽耶さんのお腹の中で可愛がってあげていて下さい」
「はぁい・・・」
少し不満そうに返事をすると、伽耶は徐に膣と肛門に己の腕を突き立て、壮絶なオナニーをし始める。
ぐちゃっ じゅちゅっ ぐちゅっ ぐちゅっ!!
「あひぃ・・ひぃぃっ・・・・ひぃぃ・・・」
突っ込んだ拳を引き抜く度に、真っ赤に充血した膣と肛門は無残にも捲れあがり、本来外に出てくるはずの無い粘膜が外気に晒される。
熱を帯びた粘膜がひんやりとした空気に触れると、ゾクゾクとしたエクスタシーが伽耶の脊髄を駆けあがった。
後戻りが出来ないほど自らの性器を変形させ、来るべき出産の時を待つ。
伽耶は大きなお腹をゆさゆさと波打たせながら、少しでも多くの脳内麻薬を分泌させる事に励んでいた・・・。
洗脳の名の通り、快楽で脳を洗われた伽耶のどこを見渡しても、理性は欠片すらも見当たらない。
大きな霊力を持った伽耶が肉の疼きに従って繰り返し絶頂する度に、妖は彼女が発散するエネルギーに満ちた精を吸い込む。
由美子は自分に寄生しているご主人様の力が着実に回復していることを実感すると、満足げにほくそ笑んだ。
「さて、ではこちらの娘を仕上げるとしますか・・・」
由美子は頭上に回り込んで柔道の上四方固めの様な態勢をとると、少女の顎をくいっと持ち上げ、
口から食道まで一直線に通じた道に、ずぶっと奥まで肉茎を挿入する。
―――ズブ ズブ ズブ・・・
極太の肉茎は喉の奥を通過すると、その先端は胃の中まで到達する。
「おぇぇぇっ・・・・げぇぇぇぇっっ!!」
肉の槍で喉奥を串刺しにされた少女は当然の生理反応を示す。
由美子は己の肉茎が根元まで挿入出来たことを確かめると、おもむろに腰をスライドし始めた。
ぱんっ!ぱんっ!と由美子の腰と少女の顔がぶつかり、肉を打つ音が響き渡る。
問答無用で食道まで犯される過酷さはイラマチオの比ではない。
じゅぷっ じゅぷっ じゅぷっ・・・
「はぁっはぁっ・・・人間の食道をオナホがわりにするのも、なかなか気持ちいいですね・・・」
「ぅえぇっ!! っぇぇぇ・・・・ ぅぇっ!」
大きく開けた口と由美子の逸物との僅かな隙間から、ぶしゃぁっと音を立てて胃の中のモノが飛び散る。
極太の肉茎で喉奥を蹂躙された少女は、押し込まれた異物を排除する為、激しくえずいていた。
そんな少女をまるで意に介さず、由美子は少女が吐き出す唾液と胃液を潤滑剤にして、容赦なく胃の奥まで抽挿する。
皮肉な事に、吐き気を催すたびに陰茎を締め付ける喉の粘膜や痙攣する胃は、由美子の性感を高めることに他ならなかった。
陶酔した表情の由美子が少女の食道に逸物を突き立てるたび、辺りには飛び散った胃液の甘い匂いが充満する。
「ぁ・・ん、 イく・・・イきますよ・・!!」
ぶびゅるるびゅるるるるっっ!!
由美子が発射した大量の精液が少女の胃の中に注ぎ込まれる。
逸物を根元まで挿入した由美子は、ビクッビクッ!!っと腰を痙攣させ、肉茎の先端からとどまる所を知らぬように粘液を噴出させる。
「あはぁぁぁぁっ・・・・気持ちいいですよ・・・」
ビチビチビチッ!!
少女の胃の中が蠢く。
胃の中が御馳走で満たされた事に、胃壁と融合した肉塊が歓喜の舞を踊る。
そして同時に肉塊は、御馳走をくれた宿主に対してその対価となる御褒美を与えた。
ビクッ! ビグン ビグン!!
「・・・・っ ぁ・・・ぁ!!!」
少女は下腹部を波打たせながら絶頂を迎える。
彼女の胃に中の留まる肉塊はポンプの様に膨張と収縮を繰り返すと、融合した胃壁の静脈から闇の快楽物質を注入する。
胃の静脈から血流に乗った快楽物質は全身を駆け巡り、性的絶頂を迎えたと誤認した脳は
大量の潮と愛液を分泌するよう肉体に指令を出した。
少女の太腿から膝までは、まるで失禁をしたかの如く己が分泌した粘液でテラテラと光り輝いていた。
そして、
ずりゅっ・・・
由美子は少女の体の中心を貫いていた長大な陰茎を引き抜いた。
同時に彼女を拘束していた全ての触手がほどける。
由美子は未だ快楽の余韻で心ここに在らずと言った表情の少女を起こすと、精液と胃液で妖しく輝く逸物で少女の頬を叩きながら言う。
「私のペニスが精液とあなたの吐瀉物で汚れてしまいました。 綺麗にする事はあなたの責務ですよ」
「・・・はい・・・・・」
甘美な餌の味を知ってしまった少女は、命令されるがままに喜んでその陰茎に口をつけ、中に残った残滓を少しでも吸いだそうと吸引を始める。
少女の胸元は吐瀉物にまみれながらも恍惚の表情を浮かべていた。
とある教室の中。
黄色い声や笑い声が溢れ返る昼休み。
その部屋の片隅で2人の女子生徒がお喋りをしていた。
「ねぇねぇ、知ってる? 最近ウワサになってる例の場所」
「あ、それ聞いたことあるよ・・・」
「実はね〜、あたしもこの前から行きはじめたんだぁ」
「え!?マジで? どんなだったの?」
「ふふっ、最高に気持ちよかったよ・・・」
「ふ〜ん・・・で、結局そこで何をするわけ?」
「それは、ひ・み・つ・・・気になるなら自分の目で確かめてみれば?」
「え〜、なにそれ? なんか怖いよ」
「怖がる事は無いって! っていうかむしろ、何で今までもっと早く行かなかったんだろうって感じ」
「へぇ・・・じゃあなに、今日も行くの?」
「うん、今日も行くよ。 これからもずっと行くと思う。 どうする? 今晩一緒に行く?」
「え!? う〜ん・・・・・わかった、私も行ってみるよ!」
「それがいいよ! じゃあ今日の夜、あそこの神社の前に集合ね!!」
娯楽もほとんどない田舎町。
毎晩、そこで何が行われているかを知らない少女は、キラキラと期待に満ち溢れた目で今晩の出来事を想像する。
その様子を横目で眺めていた友人は、トプトプと自前の水筒から白く濁りのある液体をコップに注ぐと、ゆっくりと舐めるように口をつけた。
その夜、神社の鳥居の前。
「おまたせ〜、待った? ごめんね〜」
「ううん、待ってないよ・・・けど・・・・・」
少女は不安げに真っ暗な鳥居の奥を覗き込む。
ただでさえ夜の神社など不気味である事この上ないのに、それ以上に何か妙な雰囲気を感じる・・・。
彼女には霊感など無かったが、人間に備わっている生来の防衛本能が危険信号を発するほど、奥からねっとりと絡みつくような濃い妖気が漂っていた。
そんな彼女の心中を忖度する様子も無く、友人は声をかける。
「ほら、行こう!」
「え、あ・・・待ってよ〜っ」
少しでも離れると姿が見えなくなってしまう程の闇に、躊躇なく飛び込んでゆく友人の背中を、少女も小走りで追いかける・・・。
point of no return
帰還不能点
・・・・・
・・・・
・・・
昔とは違い、人が失踪することで大騒ぎとなり、ゆくゆくは自分の不利益になってしまうと判断した妖は、
餌という形で少女達を繋ぎとめ、夜な夜な彼女達を通わせるという手段がベストだと判断した。
由美子に寄生する事によって現代の知識や常識を手に入れた妖は、より狡猾に進化する。
人外の快楽の虜になった少女達は妖の命令に忠実に従い、ねずみ講のように次々と自分の友達を妖に捧げてゆく。
学校中の全ての女子が妖の前に差し出される日もそう遠くは無いだろう。
そして、今宵の宴もまた新たな生贄が一人・・・。
行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも
通りゃんせ 通りゃんせ・・・
―了―
以上です。ありがとうございました。
何故、天神様の細道は行きは良いのに帰りは怖いのでしょうか?
この歌は、かごめ歌の次くらいに興味深い歌ですね。
真面目に解釈した確信的な物は持っていますが、これはSSなのでエロパロ的に解釈してみました。
前回、パクリ疑惑(?)を受けてから改めてあちらのSSを読み直してみたら、
指摘された通り、細かい表現や設定まで同じでした。
精液中毒の部分は印象的だったので、かぶらないように気をつけてたつもりでしたが、
その他の部分に全然気が回ってませんでした。
いま考えれば、ある程度似ている自覚があるなら、
前もってあちらのSSをしっかり読み直してから作れば良かったなぁって思います。
これでは丸パクリと言われても反論の余地がありません。顔から火を噴くくらい恥ずかしいです・・・。
なので今回は建設的に反省を生かして、まるっきりオリジナルな物を・・・と思い作りました。
少なくとも現時点で、似た内容の話を俺は知りません。
まぁ、でも俺程度が考え付く話なんて必ずどこかにはあるでしょうけどね〜。
他にも色々伝えたい事はあるのですが、長くなるのでやめます。
前回同様、改善した方がいい所などの批判をお待ちしてます。
同じ程度か、もう少し短い位のストーリーは4つくらい頭の中にあるのですが、まだ形にしてません。
出来上がった時はまた宜しくお願いいたします。
なにこの感動巨編
もう少し膨らませたら
二次元ドリームノベルズあたりに投稿できそうじゃね?
……と思ったけど
いまあそこレーベルを再編して
オリジナルのファンタジー系陵辱物って投稿募集してないのか
ともあれ
完成度高くて話に引き込まれたGJ!
>>40 一瞬焦ったじゃないかw
変わらずオリジナル小説とゲーム小説のどちらも募集してたぞ
見つけにくいかもしれんが
42 :
40:2010/04/09(金) 09:28:11 ID:Vgr6U/VY
>>41 マヂすか?
リアルドリーム文庫の投稿募集しか見つけられなかったわ
どこからどう辿り着いたの参考までにplz
>>42 キルタイムTOPの全商品紹介・通販サイトはこちらをクリックすりゃすぐにわかる
レーベル公式サイトとは別個にあるのがややっこしいな
44 :
40:2010/04/09(金) 13:15:57 ID:Vgr6U/VY
>>43 thx!!
それかなりわかりづらいっすね……
リアルドリーム文庫だけレーベルのコーナーで応募受付してるのが罠だ
ところで
前スレ埋めようと思って小ネタを書き始めたけど
もともと遅筆なんで
完成前に埋まっちゃうかもな……
>>40 お世辞とはわかっていても本気にしてしまう自分がいるw
元々この話は2部構成にしようと思っていた話なんで、ほんとはここで丁度半分なんです。
読んでくれた人の反応が良かったら、皆が忘れた頃に続きを書こうかと思ってました。
イメージ的には1部はストーリーがメインで2部はエロがメイン的な感じです。
まぁ、2部を書くか書かないかはわからなかったので、とりあえず1部だけでも納得してもらえるように、
綺麗にまとめようとして、ああいう終わり方にしました。
投稿とか興味はありますが、またどこかで赤っ恥をかいてしまいそうなのでやめときます。
所詮『見習い』ですので分をわきまえますよw
書き忘れた・・・
>>38 >>39 ありがとうございます、励みになります。
乙×風さん
前回アドバイスして頂いてありがとうございます。
今回は自分の得意分野を生かして書いたつもりです。
また宜しくお願いします。
前スレ余り容量が勿体無いなと思って投下しようとしたら見習い氏に先を越されたでござる。
『a genuine love』も『とおりゃんせ』も素晴らしい出来でした! GJ!
これが見習い氏の本気か…!
『とおりゃんせ』の方は情景描写が凝っていましたね。
とても丁寧で、まるでその場に居るような空気感まで伝わって来ました。
多分、ご自分で足を運んで実際見てきたものを文章に起こしたんでしょうね。
専門的な知識も含めて、語彙も私よりも多そうですw
ただ『とおりゃんせ』では序盤がやや冗長で読みにくい箇所があった気がします。
『a genuine love』は…最後の小悪魔視点のシーンは個人的には、要らなかった、かもです。
あの子憎たらしい悪魔のせいで読後感が台無しというか。
切ないというよりやるせない感じの方が勝ってしまった感じです。うぎぎ。
物語のラストとして、刑事達が仏さんを発見したシーンで〆た方が良かったかもしれません。
私なら小悪魔のシーンは思い切ってカットするか。
もしくは刑事達のシーンの直前に挿入していました。
まあ、参考にして――というより話半分で聞いてくださいな。
独り言みたいなものですから。
こちらの話もしましょうか。
前回感想をくれた方ありがとうございます。
今回のお話は前回に引き続きリオ、パセット、クロトのエロシーンになります。
冒頭には過去話もあります。
今まで出番の少なかったマリオンの母親(四十越えのおばさんです)、
にスポットが少し当たり、尚且つ盛大なネタバレがあります。
NGワードは以下の通り。
(ネタバレ、3P、種付け、出産、和姦、いちゃいちゃ)
ではでは今回もどうぞよろしく。以下、17レス消費します。
第十話 Devil May Fawn
それは十二年前の話。
リビディスタの屋敷の一角にて密会が行われている。
紅い絨毯。クローゼット。ベッド。
部屋の中の家具はどれも高級品で、リビディスタがいかに繁栄しているかを窺わせる。
だがその中に混じったガラス戸の棚は、他の調度品とは違い質素なものだ。
それに収められているのは大小様々なガラス瓶――薬品だ。
隣の部屋には怪我人を収容する為のベッドもいくつか備えてある。
今日も、実戦で深手を追った戦士が一人運び込まれ、安静にしていた。
ここは訓練で傷付いた者を診る為の医療室だった。
『これはこれは奥様。本日もご機嫌麗しゅうございます』
『あら有難う』
部屋の中で言葉を交わしたのはこの部屋の主、アスクルとドルキだ。
アスクルは顎を完全に覆うほど立派な髭を蓄えたリビディスタ専属の医師だ。
モノクル(単眼鏡)の向こうに、人の良さそうな温和な瞳がある。
立派な髭まで繋がった白髪は歳の割には豊かなもので、鳥が巣でも作りそうだった。
『それで、今回はどのようなご用件でしょう? 見たところ奥様はご健勝のようですが?』
体重でも量りますかな? と続けた冗句に、齢三十五を越えた魔術師は上品に笑う。
『最近いい物ばかり口にしていますからね。それもいいかもしれません』
『結構な事です。栄養失調になるよりかは良い。あれは、惨めなものです』
ふと、白衣の男の顔に陰が生まれる。彼の言葉は自ら経験した者に宿る『重み』がある。
アスクルの生まれた村はここよりも遥か北にあり、寒い土地だ。
不作が長く続き、冬になれば飢饉に陥る事も少なくない。
ドルキとグリーズがアレエスの街を創る少し前の話になる。
アスクルが住む村は飢饉に襲われた。
彼は流行病に掛かってしまい、生死をさ迷った。そんな時だ。
偶然村を訪れたドルキとグリーズが貴重な薬を使ってアスクルと、村を救ったのだ。
アスクルからしてみれば、二人は命の恩人だ。
その日から二人に何か恩返しが出来ないかと勉学に励み、今では立派な医師になった。
魔術では簡単な怪我は治せても、重傷の者や病気の者までは中々癒せない。
医師の存在は、リビディスタには必要不可欠だった。
『あの女の様子は、どうですか?』
『…リシュテア様の事ですか? 元気なお方ですよ。
身篭れば精神的にも不安定になりがちですが、あの方の場合それが無い。
身を売っていた女性とは思えませんね』
『泥棒猫には変わりありません』
ドルキの声色が変わった。
よそ行きの礼儀正しくもおっとりとした口調から、妬みの篭った女のそれに。
彼女はマリオンの他にも、長男、次男、長女の計三人の子を産み育てた母親だ。
子供達は皆、夫であるグリーズとの愛の結晶だと思っている。
そしてその夫と交わり、あまつさえ彼の子をもうけた妾に良い感情を持てる筈も無い。
『この街は、私と、あの人のものです。十年以上の月日を掛けて二人で作ってきたのです。
そこに、たかだが娼婦如きが割り込み隙間など、在ってはならないのです。
分かりますか? アスクル? あの人には、私が居る。他の女は必要ないのです』
口調こそ静かなものだが、それには有無を言わさぬ怒気が孕まれていた。
夫と同じ、ブルーの瞳には明確な殺意すら伺える。その対象は勿論、
『何を、仰りたいのです?』
アスクルは、ドルキの思惑を薄っすらと感じ取っていた。
そしてその事に気付いた女も、リップの引いた唇を僅かに歪ませる。
『簡単な事です』
そう言ってドルキがローブの懐から取り出したのは小さなガラス瓶だ。
中には透明な液体が入っているが――
『これは他所から特別に取り寄せたお薬です。
これを是非、あの女に使って頂きたいのです』
にたり、と嫉妬に駆られた女は悪魔的な笑みを浮かべた。
馬鹿でも分かる。この瓶の中身は、断じて薬などではない。
『…奥様、正気ですか? 私は医者です。人の命を救う事が使命です。それを、』
『ならば仕方ありませんね。このお薬は別の者に使うとしましょう。
――そうですね。確か居住区に貴方の妻子が住んでおられましたね?』
『…っ!? まさか…!』
『そうそう、そうでした。奥様は二人目の子供を孕んでおいでだとか。
丁度良かったですわ。アスクルには日頃からお世話になっておりますし。
その恩返しにこの薬を送る事にしましょう』
『…貴女は、悪魔か?』
『あの女が居なくなるのなら、私は悪魔に魂を売り渡しても構いません』
笑みを浮かべるドルキは、正気とは思えなかった。
それほど、グリーズを愛しているのだ。
それは分かる。
アスクルは、自分と村を助けてもらったあの時の、若き日の二人を目の当たりにしている。
二十歳にも満たない剣士と魔術士は才能にも運にも恵まれていた。
鬼面仏心のグリーズと、彼に常に添い寄り、従者のように付き従うドルキ。
当時は赤の他人であったアスクルにも、二人の深い絆を推し量る事が出来た。
そんな二人がおよそ十八年掛けて作り上げたこの街は、ドルキにとっては宝なのだろう。
故に、そこに他の女が入り込むのを許さない。
そしてその為には手段すら問わない。
今のドルキなら、平気で人殺しもするだろう。
あの頃の彼女は、清楚で、おしとやかな女だったのだが。
『アスクル。貴方には大きな貸しがありますね? それを今、返していただきましょう』
飢饉から村を救ってくれた時の事を言っているのだ。
そうだ。ドルキはこの街の創設者であり、今の彼の雇い主である。
だが同時に命の恩人でもあるのだ。
『いう事を聞いてくれれば悪いようにはしません。
お給金もこれからは二割り増しにしましょう』
『……分かりました』
アスクルは素直に頷く事しか出来なかった。
家族を危険に晒してまで、自分のプライドを優先させる事など、出来る筈もなかった。
しかし。きっと彼は死ぬまで罪の意識に苛まれる事になるだろう。
犯罪の片棒を担いでまで平穏に暮らせる自信は、彼には無かった。
『そう。それでいいのです。貴方は何も悪くないのです。
悪いのはあの女なのですから。ふふ、ふふふふふっ』
その笑いは、あたかも彼女の称号である『魔女』に相応しい程、暗く、歪だった。
***
ドルキは自室で目を覚ました。
金を惜しみなく使った調度品の数々。愛用してきた魔道具。
最近は一人で寝る事の多くなったキングサイズのベッド。
間違いなく自分の部屋だ。
広々とした机の上に書類がまとめられていた。
事務仕事をしている間にうたた寝をしてしまったらしかった。
あの女も、あの女の娘も、もうここには居ない。
それで気が抜けてしまったのだろう。
グリーズを、愛しいあの人を自分だけのものに出来たのだから。
(しかし懐かしい夢を見ましたね)
あの日、アスクルに渡した物は勿論毒薬である。
効き目は非常に弱く、持続が長いという特性を持つ遅効性の毒だ。
人を死に至らしめる程のものではない。
だが子を孕み、体力が衰えている妊婦は例外だ。
本人が無自覚のまま、体を蝕み、気が付いた時には――
リシュテアもそうだった。
生来、頑丈だった彼女は見る見るうちに体調を悪化させ、衰弱していった。
体力低下による合併症を引き起こし、血反吐を吐いた。
計画通りだった。
ただ、無性に勘のいい女だったので、アスクルが毒を盛った日は少し肝を冷やしたものだ。
それも、彼に暗示を掛ける事で、彼自信から負い目を無くし、いつものように診察させた。
虫も殺さないような顔をした主治医が、自分に毒を盛るなどとは思ってもみないだろう。
ざまあ見ろ。人の男に手を出した罰が当たったのだ。
(しかし、安心しなさい。貴女の子供も、直にそちらに行くでしょう)
家出をしたリオの手掛かりをさっき自分なりに調べたが、森に出たらしい。
馬鹿な娘だ。わざわざ魔物達の餌になりに行くとは。
グリーズもやっと心を入れ替えてくれたのだろう。
あの娘の捜索は行っていないようだ。毒殺計画にも賛同してくれたので当然と言えるが。
兎も角リオの死亡がほぼ確定したようなものだ。
(母娘揃って、地獄に落ちなさい)
さあ、仕事の続きに取り掛かろう――そう思った時だった。
どん。遠くから爆発音が響く。
屋敷の外からだった。ドルキは椅子を引いて立ち上がり、両開きの窓を開け放った。
城壁の向こう側から煙が上がっている。居住区の方だ。
(…折角あの娘が居なくなってせいせいしていたというのに、不穏な空気ですね)
異常事態を察知したドルキはすぐに探索魔術を起動させた。
足元に青の魔術陣が浮かび上がりるとドルキを中心に、魔力の波が周囲へと放射される。
その範囲はマリオンの探索魔術の比ではない。
魔術師として三十年、四十年と練り上げられたドルキの技術は、魔女の名に相応しい。
アレエスの街全体とまではいかないが、屋敷から最も近い北端の城壁までなら把握出来る。
魔力の波はグリーズを。屋敷の中の使用人達を。門下生達を捕らえる。
ドルキの脳裏に光点として描かれた人の存在。
それはここから一キロほど離れた北の城壁まで広がって行き、
「――これは…」
思わず声に出していた。
城壁のすぐ向こう側に魔物の反応があった。
それも一匹や二匹ではない。多量の化け物共が結界一枚挿んだ向こう側でたむろしている。
と、いう事は居住区の城壁から上がる煙も、奴らの仕業か。
ドルキは新たな魔術を起動させる。通信魔術だ。
魔力の波長を調整する事で、通信魔術を起動した者同士で意思疎通を図る代物である。
探索魔術に比べて効果範囲が格段に広く、遠方との仲間と連絡を取り合う為に使用される。
城壁内に常駐している二、三人の魔術師の内一人はこれを覚えさせていた。
ドルキは魔力を調整し、正門で待機している魔術士に呼び掛ける。
『今すぐ門を閉じなさい』
『ドルキ様? 一体何を、』
『森の魔物達がこの街を包囲しようとしているのです。
そちらにも直に彼らの手が伸びるでしょう。
取り返しの付かない事になる前に門を閉じ、結界を張りなさい』
『は、はい! ただ今!』
『頼みましたよ』
正門を閉じればこの街は巨大な閉鎖空間となり、外界より完全に隔絶される。
魔物相手に篭城戦という訳だ。
もっとも、こちらの戦力は三十年前のあの頃とは比べものにならない程拡大している。
結界外に集う魔物達の数も、あの頃に比べれば大分増えたようだが、所詮は烏合の衆。
部隊を編成した後こちらから打って出る。蹴散らしてくれよう。
(他の結界術士とも連絡を取らなければ)
正門の魔術士と連絡を取り合った要領で、残りの結界術士達と通信する。
結界を維持する事。魔物達の様子を逐一報告する事。
手の空いた者は住民達の非難誘導と勧告をする事。
その旨を一人、また一人と伝えていく。
しかし、一箇所だけどうしても連絡が付かない。
アレエスの結界は北、北西、北東、南、南西、南東。
計六箇所にてその制御を行っている。
城壁内にその制御を行う為の結界術士を配置し、局所的に対応する為だ。
その内、北東の城壁と連絡が取れない。
今し方、爆音が聞こえた方向だった。
(…これは…少し厄介な事になっているかもしれませんね)
良く見れば煙は結界の内側から立ち上っていた。
侵入されている? 馬鹿な。一体どうやって?
思案に耽った瞬間、部屋の扉が開かれた。
「何かあったのか?」
「…ノックくらい、して欲しいものですわ」
部屋を訪れた夫に対し、満面の笑みを浮かべる。
こうして向こうから部屋に来てくれたのはいつぶりくらいだろうか。
「森の魔物が街に侵入したようです。手段は分かりません」
どん、と再び爆音。
開け放たれた窓から、人々の悲鳴が風に運ばれてやってきた。
「…片付けてくる」
「あなた自ら出向くと? 門下生達に任せた方が、」
「ここ最近、剣を触っていない」
そう言ってグリーズはドルキの瞳を見据えた。
言葉足らずなのは彼の悪い所だが四十年以上彼と苦楽を共にしてきたドルキには分かる。
グリーズはこう言っているのだ。
『楽しみを取らないでくれ』と。
「留守は任せる」
「分かっています。思う存分、腕を振るって下さい」
彼が出向くのなら街に侵入した魔物達は問題ないだろう。全滅だ。
こちらは結界外に集結しつつある魔物達だけどうにかすればいい。
ドルキは方針を定めると、転移魔術を展開した。
青い魔術陣がグリーズの足元に現れる。
「剣はよろしいのですか?」
グリーズは赤の甲冑に身を包んでいるが獲物を持っている様子はない。丸腰だった。
「問題無い」
彼の『能力』を持ってすれば、獲物の携帯は必要無いのだ。
「…そう、でしたわね。お怪我だけしないよう、お気をつけ下さい」
「そのつもりだ」
魔術陣の輝きが増す。
青白い光が渦を巻き、光の粒子を撒き散らす。
グリーズが窓の向こうを見据え、呟いた。
「行ってくる」
「はい」
次の瞬間、愛しい人の体は光となって虚空へ消える。
***
どん。遠くから爆音が聞こえた気がした。
恐らくは城壁を抜けた魔物達とリビディスタの門下生達が戦闘を開始したのだろう。
こちらもそろそろ次の準備に取り掛かるか。
移動中、精気補充の為『遊んでいた』のはいいがパセットと出くわしたのは予想外だった。
勿論良い意味で。
「ひゃっ、あっ! またっ! でてるぅっ! パセットのちんちんからぁ!
せーしビュービュー出てるぅ!! いいよぉぉっ!!」
彼女も今では立派な雌犬だった。
オンボロの一軒家の中で、三十分近くクロトと交わり続けている。
人懐っこい顔はだらしなく緩み。
瞳から意思の光が消えうせ。
犬のように舌を垂らしながら。
カクカクと腰を使い、クロトを責め立てている。
そこにかつての少女の面影は無い。
(…私が、壊した)
いつも笑顔だった。
どれだけ迷惑を掛けても、癇癪を起こして部屋から追い出しても。
彼女は次の日も変わらず笑顔で居てくれるのだ。
リオっち、リオっち、と子犬のようにじゃれ付いてきて、冗談を言って困らせて。
「あはぁっ! しゃせーいいっ! 腰、とまんないぃぃ!!」
『リオっちはさ。もうちょっと自分に持てば良いよ? うん。可愛い。
少なくともパセットはそう思う――なぬ? 自分は大した事無いって?
それはパセットに対する嫌味か? 嫌味なんだな!?
許さん! ――あ、でも。おっぱいを揉ませてくれたら許す』
もう、そんな冗談を言ってくれる事も無いのだろう。
「あ……私のせい、だ…」
どす黒い衝動の赴くまま、親友を貶めてしまった。
「――う、ぇっ」
急に、不快感が込み上げてきた。
さっきまで淫欲に浮かされた体は冷め、人間的な思考が蘇ってくる。
(私、なんて事をっ)
大好きだった親友に、なんて仕打ちをしてしまったのだ。
彼女は文句の一つも言わずに自分の面倒を見てくれた大切な人間だ。
それなのに、恩を仇で返すような真似をしてしまった。
(どうして、私っ、こんな事をっ)
自分の体を見詰める。
化け物の気配を放つ少女の体は、淫靡な衣服を身に纏っている。
爪は伸び、牙を生やし、羽を生やし、尻尾を生やし、髪を伸ばし。
――人間じゃない。
いや。分かっている。ネーアと共に人外の道を行く、そう誓った時から覚悟を決めた筈だ。
森の中で、人間であったリオと決別し、魔物となったリオを受け入れた。
そう、思っていたのに。
(苦しい、よ…っ)
ごめんなさいパセットちゃん。
私のせいで。こんな酷い目にあって。
慙愧の念が、幼い心を締め上げる。
だが、後悔しても遅いのだ。もう、自分は引き返せない所まで来てしまった。
直に魔物達は街の中に流れ込むだろう。
まさか全滅するような事はないだろうが、怪我人や死人だって出る筈だ。
それもこれも全部、自分のせいだ。
(…そうだ。本当に今更、なんだよね)
人間を捨ててまで自ら選んだ道だ。今更後悔など、出来ない。
だったらせめて、この壊れてしまった友人の面倒を最後まで見てやろう。
「パセットちゃん。もっと気持ち良く、してあげるね?」
ずるり、とアドニスの花から種付け用の生殖器を生やす。
快感で体が痺れ――そして折角取り戻した人間らしい感情まで消えていく。
どろりとした感情が、快楽に連動して精神を満たしていく。
赤と青に明滅していた右目も、赤いままとなった。
「ふふふ。クロトさんにこんなに中出ししちゃって。
駄目じゃない。クロトさん、アネモネになっちゃうよ?」
後ろから囁くリオの声に、パセットは答えない。
チンポ、チンポと呟きながらクロトを犯す。
なんて可愛いのだろう。堪らない。もっと愛したくなってくる。
花から生えた触手を、射精の快感で濡れ、解れたヴァギナへとあてがう。
「んひゃぁ!?」
くちり、と肉ビラを割られる感触に犬が嬌声を上げた。
その首筋にちゅ、と口付けをして、うっとりと告白する。
「パセットちゃん。大好き」
ずりゅりゅりゅっ!!
「ひぎっ――ああっぁぁぁぁぁっっ!!?」
雌しべ触手に処女を奪われ、パセットが悲鳴を上げる。
欲情した体は痛みと快楽を同時に訴えているようだった。
破瓜の激痛と、ペニスから与えられる快楽に頭の中がぐちゃぐちゃになっている。
「好き! 好き! 大好き! でも嫌い! 大嫌いなの!」
いつも面倒を見てくれたパセットちゃん。
可愛いパセットちゃん。大好きなパセットちゃん。
でも、その笑顔は眩し過ぎた。
無邪気にじゃれついてくるのが、疎ましかった。
明るく、前向きな性格が、妬ましかった。
だから、嫌い。
「でも好きなの! 愛してるの! 私、わけわかんない! 頭の中ぐちゃぐちゃなの!」
ずっちゅ! ずっちゅ! ずっちゅ!
「ひっ!? あっ!? あぎぃっ!?」
人外の力を惜しみなく使い、忠実な犬を犯す。
触手の先端で、子宮の入り口を何度も小突き上げる。
憎愛混じった自分でも理解不能な感情に流されるまま、少女の体を貪る。
バックでクロトを犯す犬の背中から、同じように犯してやる。
処女の膣穴の締め付けは最高だった。
敏感な触手がどろどろになった肉の穴に揉みくちゃにされ、蕩けるような快楽を覚える。
しかもそれが親友の体だというのだから堪らなかった。
「好き! 好き!! 好き! 嫌い! 好き! 大嫌い!
ねえパセットちゃんは!? パセットちゃんは私の事好き!?『答えて』!」
言葉に魔力を乗せる。
快楽と痛みで混濁する意識を無理矢理覚醒させる。
大好きな親友は、
「好き、ですっ」
リオの想いに、答えてくれた。
「リオ様、好き、すきぃっ!」
只、それが本心かどうかは分からない。
淫魔の魔力に犯された心は、無条件にリオに服従してしまう。
壊れた心から、無理矢理自分への好意を引き出したようなものだ。
「パセット、ちゃぁんっ」
だがそれでも、愛に飢えた少女の心は満たされた。
快楽に狂い、自分で魅了した者の言葉を本心だと思い込んだのだ。
(やっぱり、パセットちゃんも、私の事好きだった……嬉しいっ)
胸が幸せで満たされる。だがそれはすぐにドロリとした淫欲へと姿を変えた。
「大好きっ! やっぱりパセットちゃんの事大好き! 好きっ! すきぃ!」
がつがつと腰を使い、狭い膣を蹂躙する。
忠犬は目を見開き、苦しげな喘ぎを漏らしていたが、それも徐々に和らいでいく。
この場に漂う人外のフェロモンがメイドの体を急速に作り変えていた。
「あっ!? すごっ、パセットちゃんの中っ! きゅうっ、って締め付けてっ!」
ヌメリを帯びた膣壁が、触手を奥へと引き込むように蠢く。
「あっ! はうっ! パセット、変なんですっ! アソコっ、ジンジンするのにっ!
ひゃぐっ!? うあっ!? たまにっ、びりっ、ってするんですっ!」
痛みだけではない。未成熟な女性器は確かに快楽も感じているようだった。
それが人外の力によるものだと知っていたリオは、喘ぐ友人を見てこの体を誇りに思う。
「それが、女の子の気持ちいい、だよっ! もっと感じてっ、パセットちゃん!」
貪るような腰使いを、女に快楽を与えるような動きへと変える。
ピストンを浅く、小刻みにし、眠っている性感を徐々に掘り返していく。
「あっ!? あっ! あっ! そ、それっ! お腹の中、ぴりぴりしますぅ!」
「はっ! はっ! …っ、そうでしょっ。まだまだ、気持ちよくしてあげるからっ」
花開いたアドニスの花弁の付け根辺りから触手を伸ばす。
小指よりも細いそれはつるりとした肉色の胴を持ち、先端が僅かに膨れている。
それは結合部からパセットのわき腹を通り、腹部を上り、しゅるしゅると伸びていき――
やがて桜色に染まる頂きの前で動きを止めた。
ぐぱり。十字の切れ込みが入り、僅かに膨らんだ先端が花弁のように開く。
その内側にはびっしりと繊毛触手が張り付き、蠢いていた。
「あっ、あっ、それっ、それぇっ」
喘ぎながらパセットが目の前の二本の触手に目を奪われる。
理性は快楽に溶かされ、新たな快楽に期待している。
その感情を読み取ると焦らす事もせず、二本の触手で乳首を咥え込んだ。
「んひゃぁぁぁっ!?」
びくり、と目の前の体が仰け反る。
栗色のツインテールが鼻先に押し当てられ、くすぐったさに目を細めた。
「はぁっ、はぁ…! 気持ちいい? パセットちゃん?」
尋ねながら触手を操り、しこり立ったピンク色の頂点を舐めしゃぶる。
「あっ! おっぱいっ! すごいっ、ですっ!
触手に、ぺろぺろされてっ! ひゃぁうっ!? 溶けちゃいますぅ!」
パセットの言葉を証明するように、挿入したままの雌しべ触手がきゅうと締め付けられた。
人外の器官から与えられる快楽に、あはぁ、と甘い吐息を零してしまう。
「はぁっ、んっ…、はぁ…っ、パセットちゃんっ…!
さっきは酷い事いっぱい、しちゃったからねっ。今度はちゃんと、愛してあげるっ」
再びピストンを開始。
触手で乳首をしゃぶりながら、潤ってきた膣の中を浅く、早くピストンする。
「ひゃうっ!? あっ! あっ! またっ! それっ!
あそこっ! 痺れちゃうっ! オッパイもぉ! ひゃんっ! ひゃぁんっ!
気持ちいい! 気持ちいいよぉっ!」
「んにゃぁっ…!? パセットちゃんのおマンコにっ…!
私の触手チンポ食べられてるよぉっ!」
パセットの膣は大分解れ、触手を受け入れるように収縮する。
知らず知らずの内に女の快楽を求めているらしかった。
可愛らしいお尻が、こちらに押付けられる。
「ひゃん!?」
ともすればクロトに挿入したままのフタナリペニスが引き抜かれ、メイドは快感に鳴く。
「ぬ、抜いちゃ嫌ですぅ…」
そして愛想を尽かされたと勘違いしたクロトが勢い良くパセットに腰を押付けた。
「ひゃぁん!?」
擬似男根が花の中に飲み込まれ、再び快楽の火花が散っているようだ。
(ふふふ。パセットちゃん、気持ち良さそう♪)
体が触れ合っていれば、眼前の少女がどれだけ快楽を感じているか手に取るように分かる。
まるで感覚を共有しているようだ。
(おチンポとおマンコを同時に責められて、気持ちよすぎてどろどろなってる♪)
はぁ、と熱い吐息を漏らしてしまう。
「んん…っ。もっと動いて下さいぃっ」
自分だけ仲間外れにされていると思っているらしい。
クロトが拗ねているようだった。まあ、二人でいちゃいちゃしていたからしょうがないか。
「ほらっ。パセットちゃんっ? クロトさんも気持ちよくしてあげないと」
「でも、でもっ! パセット、気持ち良すぎてっ、頭へんになるんです!」
「いいんだよ? 変になっちゃえばっ」
がつん、と腰を打ちつけた。
「ひゃぁうんっ!?」
犬が嬌声を上げる。子宮口への刺激も、快楽へと変わりつつある。
めしべが今まで以上に締め付けられ、にゃぁん♪ と甘い声を漏らした。
「あんっ♪ そんな、いきなりされたら、私、感じちゃいますぅ」
淫魔に突き上げられたメイドは肉棒をいきり立たせ、眼前の魔術師に同じように突き込む。
ともすればクロトも負けじとペニスを突き入れられた反動を利用し、腰を前後に振る。
「んひゃぁっ!?」
擬似男根がクロトの子宮口に押付けられ、パセットの腰が引けてしまう。
すると今度はパセットの子宮口を雌しべ触手が深々と抉るのだ。
「はぁっ、はぁっ! いいっ! いいよっ! パセットちゃんの中っ、最高だよぉ!」
再びガツンと眼前のメイドに腰を打ち据える。
ひゃん、とメイドは子犬のような鳴き声を上げると玉突きの要領で目の前の魔術師を犯し、
「はぁんっ!? またっ、またきたぁ♪」
魔術師が仕返しとばかりに腰を振る。
「んひゃぁう! 狂っちゃう! またパセット、おかしくなるぅ!」
人外へと身を堕とした二人の女に挟まれ、メイドが快楽に悶えた。
(可愛いっ、可愛いよパセットちゃんっ)
ぱんっ。ぱんっ。ぱんっ。
「ひゃっ、あっ! ひゃうっ!」
ストロークのペースをゆっくりと上げていく。
メイドの膣の中はぬかるんで、破瓜の出血も止まっていた。
彼女はもう、純粋な快楽しか感じていない。
膣を犯される女の悦び。そして女を犯すオスの悦び。
それに血の集まった乳首を触手に咥え込まれ――快楽で脳が蕩けていた。
「ひゃぅっ! ひぃっ! すごいっ! すごいよぉ! アソコもっ!
んあんっ!? おチンチンもっ! オッパイもっ! ひゃんっ! ぁんっ!
あっ! あぁっ!? いいっ! あ、はぁっ! 全部いいよぉ!」
「私も、私もっ、触手チンポっ、気持ちいいっ!
パセットちゃんと一緒になってっ、にゃ、ぁんっ!
どろどろに、溶けてるっ! 一つに、にゃってるぅ!」
腰の動きが止まらない。
大好きな少女と一体となっていく感覚に、これ以上ないほど気分が高揚している。
「はぁっ! はあっ!! 種付け、するよっ!?
パセットちゃんの中に、アドニスの種子、植えつけるよ!?」
「うん! うんっ! お願いしますっ! パセットに、お花の種っ!
下さいっ! リオ様と一緒に、して下さいっ!!」
目頭が熱くなった。
身も心も爛れてしまうような情欲の炎の中に、暖かい優しさを見出した気がする。
例えそれが幻想でも、それを死ぬまで手放すものか、と思った。
どくん。二度目の種付けにアドニスが歓喜し、脈動する。
子宮に根ざした神経を伝わり、リオの脳に強烈な快感を叩き込む。
雌しべ触手の根元に精が溜まり、射精の予感に体が打ち震える。
「にゃっ、にゃぁぁっ!? 出ちゃうっ! 種子が出ちゃうっ!
はぁっ! にゃぁんっ! にゃぁっ! にゃぁぁ! にゃっ、駄目っ!
出る出る出るでるでちゃうでちゃうっ、にゃ、にゃぁっ、にゃぁぁぁぁぁあぁぁぁっ!!」
びゅるっ! どぴゅっ! どぷどぷどぷっ!!
「ひゃあうんっ!? れ、れてるぅ! しゃせーされれるぅ!」
パセットの子宮口に触手の先端を食い込ませ、精を放つ。
触手の中を精液と、種子が駆け抜ける感覚はまさに法悦。
涎を垂らしながら、メイドを抱きしめ、その快楽を貪る。
そして力加減を誤った二本の触手が、パセットの乳首を強く吸引した。
「ひゃぁぁぁぁつ!? そ、そんなに吸っちゃっ!
んああぁぁっ!? くるぅ! きちゃぅ! おっきいのが!
あっ! あぁぁぁあぁあぁっ! だしちゃうっ!
ぱ、ぱせっろも、だしちゃ、んああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁっ!!」
立て続けにメイドも絶頂。
初めての女のアクメに、白目を向いた。
膣壁が収斂し、射精し続ける触手に更なる精をねだる。
「あぁっ!? 出てますっ! また、私の中にっ!
またイきますっ! 中出しされてっ、あっ、あぁぁっ! イクっ!
いくぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっっ!!!」
最後に、パセットの射精を受けたクロトが達した。
いつものように顔をだらしなく弛緩させ、体を痙攣させる。
(はぁ、いい、よぉ…♪ 気持ち、いいよぉ♪ …最高、だよぉ♪)
三匹の雌が、この瞬間一つになっていた。
シュトリの力が、三人のアクメを同時に感じ取り、集約させる。
快楽で痺れた体は、どこまでが自分の物か、それすらも分からなくなる。
種付けも出来て、アドニスの本能も満たされていた。
「にゃぁぁぁぁぁん♪ にゃぁぁぁぁぁん♪」
絶頂の余韻に浸りながら何度も鳴いた。
大事な友達――いや、ペットを抱きしめ、その温もりを感じる。
栗色の髪に噛み付いたり、うなじに鼻先を押し当てる。半開きの唇をぺろぺろと舐めた。
これではどちらがペットか分からないが、兎も角そうしたかった。
そこには愛情があった。
だがそれは普通の愛情とは違う。
何せ悪魔とネコマタとアネモネの本能が複雑に絡まりあい、歪んでしまった感情だ。
人間のそれとは比べるべくもない――その筈だ。
だがリオはこの時確かに胸の内から温かい何かが溢れてきたのを感じた。
それは情事の際に感じる錯覚かもしれない。
温もりに飢えた少女が、そこに愛があると思い込みたかっただけかもしれない。
だが、確かに感じたのだ。
悪魔の、どろどろとした感情を清めるような、温かい何かを。
その証拠に。
目を細めたリオの右目は、
***
パセットは下腹部に言いようのない違和感を覚え、我に返った。
(お腹の中、あつぅい…)
リオから受け取った熱い精液が、子宮の中を満たしていた。
更にその中に混じっていたアドニスの種子が著しい速度で胎内へと定着していく。
傷口を舐められるような、疼きと痒みを伴う感覚に、身を捩らせた。
ぐちり。
「ひゃぁう…っ」
前も後ろも繋がったままなのを忘れていた。
達して敏感になった擬似男根と未発達の女性器が蕩けそうな快感を訴える。
「ふふふ。パセットちゃんってば。まだエッチしたりないの?」
「うー、そんな事はー、ありませんー」
と、言いながらも胸の中はもやもやした気持ちで一杯だった。
背中から抱きついている淫魔がその気になれば、またひいひいよがる事になるだろう。
「ちょっと休憩しよっか」
思いがけない提案にふと疑問を覚えた。
(さっきまであんなに激しくしてたのに)
今更小休止を挿むというのか。ひょっとして焦らされているのだろうか。
それともただ単にこの身を案じてくれているのだろうか。
「今はね。こーやって、べーったりしていたいの…♪」
腋の下から手を通され、薄い胸を抱くように抱擁される。
触れ合った体温同士が温かい。
ごろごろと喉を鳴らしながらリオが頬ずりをしてくる。まるで猫だった。
(なんか…夢を見ているみたい…)
体は熱に浮かされたようだった。胸もどきどきと心地良い動悸に満たされている。
まるで靄が張ったように思考が緩くて、全身が気だるい。
だが、何となく幸せな気持ちだった。
「アドニスと私のフェロモンを沢山吸い込んでるからね。しょうがないよ。
それに、もうパセットちゃんの中にもアドニスが入っちゃったからね」
――ごめんね。
か細い声で呟やかれたその声は自分が知っているリオ=リビディスタのものだった。
「…いい。別にいい…です…、だってパセットは、…リオ…、…様のメイドだから…」
『様』と呼ぶ事に僅かな抵抗を覚えたが無視した。
「一緒になれたんなら…それでいいんです…」
それは本心だった。
リオの専属メイドとは言え、到らないところはいくらでもある。
今回の家出の件も、自分がもっとしっかりしていれば、と思うのだ。
そうすれば、この小さなご主人様が人外に身を堕とす事も無かったのだろう。
子宮の中に植えつけられた魔物の種子は、その贖罪とも言えた。
「リオ様…パセットは…リオ様の、お役に立ってる、かな?」
「うん。うん。パセットちゃんは私の大事なメイドさんだよ?
気が利いて。いつも私に元気をくれて……私、大好きだから」
ちゅ、と頬っぺた軽いキス。
それだけで、この三年間、彼女に尽くした努力が報われた気がした。
だが欲を言うなら後ろ向きではなくて証明から抱き合いたい。
「あ、それはね。この体勢の方がよく見れるから」
「…何を…?」
「クロトさんのアドニス出産シーン」
一瞬、言葉の意味が分からなかった。
「さっきパセットちゃんクロトさんの中に一杯セーエキ出しちゃったからね。
もう生まれるんじゃないかな。アドニスの成体が」
抱きしめられた体が、ゆっくりと後方へと引っ張られる。
繋がったまま、リオが後退したのだ。
クロトの花からフタナリペニスがゆっくりと引き抜かれ、ひゃぁん、と甘く喘ぐ。
引き抜かれた肉竿は散々射精したせいで萎れていた。
自分の物なのにそれを他人事のように見てしまう。不思議なものだなぁ、と。
そんなずれた物思いに耽っていると、突然クロトが呻き声を上げた。
「…ぁっ!? うあぁぁぁっ!!?」
「あ。やっぱり、始まった」
「ああ、ぁぁッっ! ぁぁぁぁぁぁっぁああぁぁっ!!」
膝をつきながらベッドの端にもたれ掛かるクロトは獣の声を上げていた。
「これが、アドニスの種子を植え付けられた女の子達の辿る道。
クロトさん『こっちを向いて』」
淫魔の命令により、クロトがこちらを向いた。
床に伏せている病人のような動きだ。熱い吐息を漏らし、ベッドの縁へと背中を預ける。
尻餅を付き、股を開くクロト。その腹部が、妊婦のように膨れ上がっていた。
(すごい、お腹膨らんでる……パセットの…せい?)
「…違うよ…私の、せいだよ…」
小さなご主人様が耳元で自嘲気味に答えてくれた。
クロトの腹部がぼこり、と一回り大きくなる。
「うぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっっ!!」
一体どんな感覚がなのだろう。魔物が成長し、子宮を押し広げていく感覚は。
気持ちいい――だろうか?
「…うん。そうだね。そうだよ。今、クロトさんの頭の中、凄い事になってる。
――はぁ…、思考を読んでるこっちが……にゃ…ぁ…、ん…変な気持ちになっちゃう」
きゅ、と背中からメイドを抱く淫魔の力が強くなった。
はぁ、と艶かしい吐息が頬に当たってくすぐったい。
「ひぎいぃぃぃいぃっっ!!?」
クロトが上体を仰け反らせた。
銀髪をベッドに押付け、白い喉を晒す。
(あ、すごい…乳首、ピンピンになってる…)
自分などより遥かに大きな双房の先端。魔物に改造されたそこは小指大に勃起している。
いやらしい体に見とれていると、ぼこり、とクロトの腹が波打った。
「んぎいいいいいぃぃぃいっっっっ!!?」
「にゃっ…ぁ…っ」
びくり、と背中の淫魔が震えた。
これ、気持ち良過ぎぃ――クロトの思考を呼んでいるリオが上ずった声で呟いた。
「出産の際にね? 子宮に根付いた神経がね、引き抜かれるの。
ぷちぷちって。その部分がアドニスの脚、というか触手になるんだけど…
その感覚が……もう、凄すぎて……にゃぁ…っ…駄目っ、思考、読んでるだけで…っ。
私も、イきそうににゃっちゃうっ」
はぁ、はぁ、と頬に当たる吐息が荒い。
そんなにいいのだろうか。お産なんて、痛くて苦しいだけの筈なのだが。
人外のそれとものなると別物なのだろう。
(あ…、ほんとだ。クロトさんの顔…ちょっと気持ち良さそう…)
獣の声を上げる女は苦痛、というより強すぎる快楽を受け止めきれない様子だ。
目を剥き、眉根を寄せ、舌を垂らし――だがその頬は緩んでいる。
「ああぁっ!!? すごっ! すごすぎっ!! ぶちぶちっ、言ってます!!
お腹の中ぁ!! しきゅーがっ!! あひっ! ひぃーっ!!
うっ、裏返るっ!! 壊れるっ!! でも、でもっ気持ちいいっ!!
あはっっ!! いいっ!! ぎぼちいいぃいぃぃっ!!」
ずるり、と股に張り付いた肉の花がパセットの方へと抜け出てくる。
(あ…ほんとに…うまれるんだ…お花の化け物…)
どくり、とこの身に植え付けられた同類の種子が脈動する。
種の繁殖を祝福しているようだった。
「あぁぁぁぁっ!? 出て、出てきますぅ!! お、奥からぁあっ!!
触手がっ!! アドニスがぁあぁっ!!! 私ぃっ! アネモネになってっ!!
んああっ!!? ああぁっ! いいっ!! 擦れっ!! ああぁっ!!
あぁぁぁっ!! あっ! ああっ!! あぁっ!! イくぅ! アドニス産んでっ!
あぁ! ぁあっ! あっ! ああっ!! あぁぁっ!! あぁぁぁぁぁぁっっっ!」
がくがくとクロトの体が痙攣する。
折れるかと思うほど背中を逸らし、目が完全に白目を剥く。
そして、
「イぐぅぅぅぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
ずるっ――ずるるるるるるるるるっっ!
絶叫と共にクロトは達した。
アドニスが産道を滑り落ち、薄汚れた絨毯の上にべちゃり、と産み落とされる。
ぷしゅっ――じょろろろっ――
出産アクメはよほど具合が良かったらしい。
勢い良く潮を吹いたかと思うとクロトは失禁した。
(……すごすぎて…言葉に出来ない…)
クロトが魔物の花を産み落とす瞬間、パセットは目が離せなかった。
産み落とされたアドニスは三十センチ程の大きさでラフレシアのような形状だ。
糸ミミズのような神経の束を蠢かせ、横倒しになった体を起き上がらせる。
むわり、と花肉が放つ催淫香が鼻をつき、再び心と体が淫欲に支配されてくる。
(凄い、匂い…)
アドニスの甘酸っぱい香りと、クロトの小水の匂いが理性を掻き乱す。
あんなシーンを見せられたのだ。心臓がどきどきして止まらない。
背中のご主人様と一緒に、はあはあと犬のような息をする。
(あ。駄目、我慢できなくなってきた…!)
「り、リオ様ぁ…っ、パセットも、もう、我慢出来ませんっ」
刺さったままの触手ペニスにぐいぐいと腰を押付けてしまう。
「にゃ、にゃぁ…私もっ、パセットちゃんともっとエッチしたい…っ。
でも、どうせするなら、今度は向き合って、ね?」
触手ペニスが引き抜かれ、ひゃうん、と甘い声を上げてしまう。
痺れる膣の感触にぼうっとしながら、暫くぶりに大好きな主人と体を向き合わせた。
淫魔となったご主人様は『左右で色の違う瞳』をうっとりと細めている。
最後に見た時は両方とも赤だったような気がしたが――どうでも良かった。
牙が生え、髪が伸び、猫耳まで生やしてしまったがその顔は大好きだった友達と同じ。
愛らしくて、どこか儚いその顔に見惚れてしまう。
自然と、今まで何度もそうしたように桃色の髪に手を伸ばした。
さらさらとした感触は触れているだけでも気持ちいい。
(…あ…ほんとに猫耳生えてる…)
髪と同じ色をした三角形のそれは血が通い、温かい。
生え際を撫で擦ると淫魔はゴロゴロと本物の猫のように喉を鳴らした。
(…ふあー…か、可愛いっ、リオ様っ)
男も女も誘惑して、罪な人――人じゃなかった。罪な淫魔だと思う。
誘われるように、また髪を触る。
(…髪質、先っぽは違う…)
紫色の毛先だけは本来の感触とは少し違ってぱさぱさだ。それが少しだけ残念だった。
「やっぱり、作り物じゃ駄目なんだね」
自嘲気味に幼い主人は言った。
『続きはベッドでしようよ』と勧められて一緒に埃っぽい安物の寝床に上がる。
ふと隣を見る。
生まれたての魔物は触手を伸ばし、母体から流れ出した様々な体液を啜っていた。
「それじゃあ足りないよね? そこの男の人達、好きにしていいから」
魔物の少女がアドニスに語りかける。
すると肉の花は木偶の坊となっている男達にも細い触手を伸ばした。
「生まれたてのアドニスは食欲旺盛だから。男の人でも女の人でも食べるの。
勿論性的な意味でね?」
という事は今からあの二人の男は触手に精を搾り取られる事になるのか。
つくづく倒錯的な世界だなぁと思う。
「パセットちゃん…私達も、しよ?」
「リオ様…」
「おちんぽ、沢山欲しいでしょ?」
「…うぅ…」
「真っ赤になって…可愛いにゃぁ♪」
ちゅ、ちゅ――右頬、左頬と口付けされる。
でもそれだけじゃ全然足りなかった。
こちらから主人の愛らしい唇を迎えに行く。
「ん…パセットちゃ――んちゅっ、ちゅっ…」
「はむっ、ちゅっ…リオ、様ぁっ…ちゅぅ…」
唇を合わせ、舌を出すと向こうはそれを喜んで受け入れてくれた。
ざりざりとした感覚の粘膜がこちらの舌を削る。
故郷に残してきた父親の、剃り残した髭を思わせる感触だ。
その感触を愉しみと、鋭く尖った牙にも舌を這わせる。
歯茎のツルツルとした感触に、猫を髣髴させる鋭い牙。
(これがリオ様の、お口の感触……美味しい…よぅ…)
力加減を間違えれば差し入れた舌が傷付いてしまいそうになるのに淫魔の唾液は甘い。
その蜜をいくらでも吸いたくて、彼女の口を隅々まで味わいたくなる。
「ちゅっ、ちゅるるっ、ぺろっ…はぁっ…ちゅぅぅっ…」
「んちゅっ…ちゅるるっ…れろれろっ…ちゅるっ、ちゅぅぅっ…」
互いの背中に手を回し、抱き締めあっての熱烈なキス。
まるで貪りあうような口付けに性感が高まり、気分が高揚していく。
何時の間にか裸体になっていた淫魔の肉体と自身の肉体が密着していた。
興奮し、火照った柔らかな少女の肉体が互いに押し合いへし合って汗を塗り伸ばす。
「――んんっ!?」
びくん、と快感に体が跳ねた。
互いの剥き出しの乳首が擦れ合ったのだ。
(電気が走ったみたい…!)
気持ち良い。もっとしたい。
柔らかくも小さな体にもっと触れ合いたい。
両手の指を絡ませる。掌の汗を感じるほどしっかりと握り締める。
腹にアドニスの生殖器が食い込み、逞しい鼓動を感じる。
「――ぷあぁ…リオ、様ぁっ…」
「――っんはぁ…パセットちゃぁん…」
長い口付けを終え、お互い潤んだ瞳で見詰め合う。
鼻先にある淫魔の顔が愛しくて堪らない。
「好き、好きなんです…リオ様ぁっ」
「うん。私も、私もっ」
そして再び口付けを交わす。飽きる事など無い。
視線が交じわい、体が触れ合えば、自然と互いの唇が吸い寄せられる。磁石のように。
ちゅぷちゅぷと幼子二人がするには卑猥すぎるフレンチキスを交わした。
発情しきった吐息を相手の顔に吹きつけ合い、それを思う存分肺に取り込む。
体中汗まみれになっていた。擦り合わせ、密着した幼い肉体がにちゃにちゃと音を立てる。
擦れ合う乳首が気持ち良い。
甘く、痺れて、そこだけがまるで一つに解けて同化してしまうようだ。
その感覚が好きでキスをしながら貧相な胸を懸命にご主人様に擦りつけた。
「ちゅっ…っちゅぅっ――にゃんっ…!? にゃふぅ…♪ パセットちゃんのエッチぃ♪
さっきからチクビばっかりぐりぐりしてくるよぅ♪」
「ら、らってぇ……ちゅっ…ちゅ、ちゅっ…んはっ…オッパイっ、あんっ――
おっぱい、気持ちよくてっ…ちゅっ、はぁ…はぁっ…、止まらない…ですっ」
覚えたてのマスターベーションに没頭してしまう猿のようだった。
血がどんどん集まって、勃起した蕾はこりこりとして堪らない。
「おっぱいもいいけど…私はパセットちゃんのおマンコを味わいたいな♪
というわけで押し倒しちゃうよ♪ ――えい♪」
「ひゃんっ」
熱い抱擁をそっと引き剥がされ、ベッドの上に仰向けに押し倒される。
「正直、私も、パセットちゃんとエッチしたくてしたくて堪らないの」
はぁ、はぁ、と息を荒げた淫魔は股間から生やした触手を見せびらかした。
「――ごく」
目の前で男性器のように脈動するグロテスクな触手に心を奪われてしまう。
(こ、こんなのがさっき入ってたんだ…)
何段にも重なったエラ部分。自分の腕と大差ない太さの胴体。大量の疣が生えた亀頭部分。
更にその先端からはうじゃうじゃと繊毛触手が生えて、身をくねらせている。
素面の時に見れば嫌悪感を催す事間違い無しだろう。
だが、これは間違い無くご主人様のモノなのだ。
そう思えばどれだけ気味の悪いモノでも愛しく思えてしまう。
(それに、こんなエッチな形をしてるんだもん…)
種付けの時は苦痛と快楽で何も分からなかったが――果たして今これに犯されたら。
そう思うと淫らな気持ちが胸から溢れ出し、腹の中の種子がじくりと疼いた。
新鮮な愛液を搾り出し、独りでに太股をもじもじと擦り合わせてしまう。
「パセットちゃん。しよ?」
「は、はい…」
言われるまでも無く、自ら股を開く。
(は、あっ…エッチな気持ちと、恥ずかしさで、頭、ぼっーてなるっ)
体が疼いてしょうがない。
けれど主人の視線が股に突き刺さっているのが分かって羞恥心で頭がのぼせてしまう。
それでも最終的には湧き上がる淫欲に堪え切れなかった。
股を開いただけでは飽き足らず、自分の指で、どろどろのヴァギナを割り開く。
「…リオ様ぁ…パセットのアソコ…鎮めて下さいぃ」
「任せてっ」
喜び勇んで淫魔がのしかかって来た。
「はぁっ、はぁっ…! パセットちゃんっ」
息を荒げながら精液の逆流する陰唇に雌しべ触手をあてがってくる。
「ひゃぁんっ」
ぶつぶつとした先端部分に肉ビラを掻き分けられた瞬間、蕩けそうな官能が走った。
先端部分が陰唇を押し広げて侵入し、
ずっ――ずるるるっ!
「んっひゃぁぁぁんっ!?」
一息に最奥まで突き込まれた。
膣を圧迫する、荒々しくも温かい肉の感触に苦痛以外の喘ぎが漏れる。
(パセットのお腹、一杯になってるっ)
「にゃぁっ、パセットちゃんのおマンコ、キツキツで、堪らにゃいよぉ♪」
マウントポジションをとったご主人様の顔は快楽でだらしなく緩んでいた。
牙を覗かせた愛らしい唇の端から、つー、と唾液が垂れ落ちてくる。
(リオ様…気持ち良さそう…よかったぁ…)
やっぱり向き合ってセックスをする方が良い。
相手の事をより大事に、より愛しく思えるから。
(もっと、気持ちよくなって下さい…)
今まで至らなかった分。これからはもっとこのご主人様に尽くそうと思う。
パセットは淫魔の腰に脚を組み付かせ、結合を深める。
「ひゃぅ…っ」
ぐちり、と疣疣が子宮口を削る。甘い官能に、下半身が溶けてしまいそうだ。
この快楽、さっきまで処女だったとは思えない。
アドニスの種子を植え付けられた体は、早くも淫らに改造されているようだった。
これだけ大きな触手を挿入されているのにも関わらず、痛みが殆どないのだ。
(あっ――クリトリスっ、当たってっ)
貝合わせのような格好をしているせいで、陰核がアドニスの花弁にしゃぶられる。
何度も射精したせいで擬似男根は萎え、射精する事は出来なくなったようだ。
だが指かと思うほどしこり立った肉の真珠は敏感だ。
膣壁を思わせる肉の花弁に押付けられ、甘い愉悦に腰砕けになってしまう。
「はぁ…はぁっ……パセットちゃん、動くよっ」
ずりりりっ。
「ひゃうぅぅんっ…!」
視界で火花が散った。
ずりずりと触手を引き抜かれ、膣が蹂躙される。
(すごっ、これっ、エラエラが、えぐれてっ)
「ひゃっ、あっ! いっ! よぉっ! リオ様ぁっ!
膣っ、擦れてっ! 抉られてぇっ! あ、あぁっ、あ、あっ…!」
多重のカリ部分が膣の肉ヒダを掻きし、抉る。
それだけでも狂おしい程の快楽だというのに触手の先端には無数の疣が生えている。
肉ヒダを掻き回された後、今度はぶつぶつとした感触に性感帯を耕されてしまう。
(開発、されちゃうっ、エッチな触手に、おマンコほじほじされてっ)
卑猥な形状をした触手。その効果は覿面だった。
「はぁっはぁ! パセットちゃんっ、おマンコがきゅうきゅうって締め付けてっ…!
私の触手を離さないよっ? そんなに触手チンポ美味しいのっ」
羞恥心を煽る主人の問い掛けに、頭を何度も縦に振る。
「ふふふっ…! そうでしょっ、美味しいでしょっ…!
遠慮しないで、沢山食べればいいんだからねっ」
ずりりりりっ!
「ひゃわぁんっ!?」
肉穴を拡張しながら再び触手が奥まで挿入された。
ずんっ、と子宮口を小突かれて視界が白く染まる。
クリトリスがぬめる花弁に押付けられて快感に蕩けた。
「うにゃぁっ!? …にゃぁぁんっ♪ 締まりすぎだよぉ♪」
淫魔が涎を垂らして悦んだ。いや、悦んでいるのはこちらも同じだった。
(触手、気持ちよすぎるよっ…! パセット、メロメロになっちゃうっ)
「ふふふっ、メロメロになっちゃえばいいんだよっ」
ずる、る、る、る、るっ…!
「ひゃっ!? あっ! あっ…! あっ、あっ! あっ、あっあっ!」
再びゆっくりと触手を引き抜かれる。
(こ、これっ…! お腹の中っ引き出されちゃうっ!)
がりがりと、触手の凸凹に膣壁を削り、擦られるとピンク色の電気が走った。
これだ。内臓が裏返ってしまうような感触と共に人間では到底味わえない快楽が生まれる。
アドニスの生殖器に膣穴を徐々に開発されていく。
痛みはもう完全に無い。快楽だけがそこにあった。
「はあっ、はあ! それじゃ、もういいねっ? もっと激しくするよっ」
ぐちゅうっ。
「ひゃわぁんっ」
ごつりと再び子宮口を突き上げられた。
「ずりずりぃっ♪」
ずるるるっ。
「あっ!? あっ! ぁ、っあっ、…あっ!」
かと思えば即座に触手を引き抜かれる。
「まだまだっ」
ぐちゅぅ…!
「ひゃうんっ!」
「はぁっ! はぁっ!」
じゅるるっ…!
「ひゃううぅぅんっ!」
「絞め付けっ、いいっ!」
ぐちゅんっ。
「ひゃうんっ!」
「腰、止まんなくなってきたっ」
ずりりりっ!
「ひゃわぁぁんっ!」
徐々にストロークのペースが増してくる。
膣の中を愉しむような動きから、本能を剥き出しにした、直線的な動きへと変わってくる。
ずっちゅっ…っ、ずっちゅっ、ずっちゅっ。
「ひゃんっ! あんっ! わぅぅっ!」
ピストンの動きが、細かく、小さく、リズミカルになってくる。
ゴツッ、ゴツッ――子宮の入り口が何度もノックされ、その度に視界で星が散った。
半開きになった口からは子犬のような可愛らしい喘ぎしか出てこない。
「あうっ! ひゃうんっ! あんっ!」
だがそれも徐々に艶かしく、いやらしい声に変わってくる。
(気持ち、いいっ)
腹の奥をごつごつと突き上げられる感触が良すぎた。
種子によって汚染された子宮は性感の塊で、外から揺さぶられる度に快楽が弾ける。
鼻に掛かった甘い声が喉を突いて出てしまう。
「あっ! んっ! もっとっ! もっと下さいっ! ひゃうんっ!?
パセットのおマンコにっ…! あうんっ!? あんっ! はんっ! ひゃんっ!
触手チンポでごつごつして下さいっ!!」
「うんっ! うんっ! するよっ! はぁっ、はあっ!
パセットちゃんのエロエロマンコに、――にゃぁっ…!
私の触手チンポでハメハメズボズボしてあげるよっ!」
じゅぷっ! じゅぷっ! じゅっぷっ!
「あっ!? ひゃぁぁううんっ! あうんっ!!」
ぱつ、ぱつ――と濡れた布で叩くような音が響く。
アドニスの花弁がパセットの恥骨にぶつかる音だ。
淫魔は大の男も真っ青に成る程の豪快な腰使いで、メイドを責め立てていた。
一突き毎に少女の体が大きく揺れ、安物のベッドがぎしぎしと悲鳴を上げる。
淫魔の肌はほんのりと朱に染まり、流れる汗がキラキラと輝きながら飛び散った。
そんなご主人様を、頭の片隅で『綺麗だな』と思いながらパセットは快楽に溺れる。
気持ち良い。ただひたすらに気持ちよかった。
下半身が溶けて、無くなっている。
びりびりとした甘い官能が脳髄に流れ込んできて、狂ってしまう。
「まだまだっ、だよっ」
きゅう――何かが、勃起した陰核に巻きついた。
「ひゃわぁんっ!?」
それは花弁の根元から生えた、細い触手だった。
激しい性交の最中、凹凸の無い肉色の触手が快楽の中枢をしごき立てるのだ。
今までとは違う、強い刺激に体が打ち震える。
「それぇっ! それ駄目ですっ! ひゃわぁぁぁっ!!?
変にっ、変になっちゃううぅぅっ!!」
きゅ、きゅ、きゅっ、とクリトリスをしごかれて体が痙攣した。
規格外の快楽に子宮が収斂を初める。
絶頂の予感がした。
大きな、快楽と言う波に攫われてしまうような気がして、目の前の体を強く抱き寄せる。
「パセットちゃんっ! パセットちゃんっ!」
「リオ様ぁっ! リオさまぁぁっ!!」
抱き付き合い、幼い体を密着させた少女達は互いに腰をぶつけ合っていた。
結合部で粘液が潰れ、弾け、いやらしい音を立てる。
二人の股を濡らすラブジュースは白濁としていて、雌の発情臭を撒き散らしている。
周囲にはそれと、二人の汗の匂い、淫魔のフェロモン、花肉の香りが充満していた。
だがそれを感じる暇はパセットには無かった。
法悦とも言える官能の中、アクメへと一直線に向かう。
「ひゃうっ! ひゃっ! あんっ! あぅっ! わうっ!
あっ、そこぉっ! そんなにぐりぐりされたらぁっ!?
ひゃっ!? あぁっ! 駄目っ! リオ様ぁっ! リオ様ぁっ!
パセットはっ! もうっ! ――ああんっ! ひゃぁんっ!
あっ! ひゃんっ! あっ! あっ! 来るぅっ! 来ちゃうよぅ!
んあぁぁぁぁっ!! もっ、駄目っ! うあぁぁぁぁぁっ!」
びくびくと体が痙攣する。
「はあっ! はあーっ!! パセットちゃんっ!! パセットちゃん!!
出すよっ!! パセットちゃんの――にゃふっ! はっ、ぁっ!
子宮、にぃっ! 私のザーメンっ! 一杯注いで上げるよっ!
いいよねっ!? アネモネになっちゃうかもしれないけどっ!
いいよね!? 私と同じ、魔物さんになってくれるよね!?
出すよっ! 出すよ出すよ出すよっ!! うにゃぁぁぁぁぁあっ!!
にゃうぅぅっ!! ほんとにもぅっ、出ちゃう出ちゃうパセットちゃぁんっ!!」
ぐちりっ!!
触手の先端部分が子宮口に食い込んだ。
直後にその先から繊毛触手が生え出し、子宮の内側へと滑り込む!
「いっくにゃぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」
ぎちぎちっ!!
(ひぎっ!? 子宮が、こじ開けられてっ…!)
体の中心をこじ開けられる感触がした。
『ギュっ!』と充血した陰核が触手に締め上げられる。
「ひぎいっ! そ、そんな事したらぁっ! ああぁぁっ! らめらめぇ!!
いグいきますっ! ああっぁっ! あっ! あぁぁぁっ!! あぁぁぁぁぁっっっ!!!
ああああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!! リオ様ぁぁぁああぁぁぁぁあっっ!!!」
『あぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁああぁぁぁああぁぁっっっっっ!!!!』
二人の声が美しいと言える程に、唱和した。
びゅるっ!! どぴゅっ! どぴゅっ! ドプドプドプッ!!
「んひいぃぃぃっっっ!! セーエキ、あついぃ!!」
「パセッろにゃぁんっ! パセットにゃんっ!!」
こじ開けられた子宮口から直に大量の精液を注ぎ込まれる。
腹に寄生したアドニスにびちゃびちゃと熱い体液が降り掛かる。
性感を共有しているせいでその感触すらも脳髄に直に叩き込まれた。
熱い粘液に叩かれる感触に子宮が悦び打ち震える。
ビクビクビクビクッ!!
「ふにゃぁぁぁっ!? 締まるぅ! マンコしまるにゃぁっ!
そ、そんにゃにしまったらぁっ! 触手チンポまたびゅーびゅーしちゃうよぉ!!
んにゃぁぁぁぁぁっっ!!」
びゅるっ! どぴゅっ! どぴゅっ!
「ひゃわぁぁぁんっ!!? まらっ、まられてるぅっ!!
リオしゃまのセーエキ、どぴゅどぴゅされれるぅ!!」
二人揃ってアヘ顔を浮かべ、口々に卑猥な言葉を吐いた。
体を仰け反らせ、襲い掛かるオーガズムの悦楽をひたすら貪る。
「ふにゃぁ、ぁ、ぁっ…! にゃぁぁっっ…!」
「はひーっ、ひゅーっ」
それもやがて収束し、二人は体を痙攣させるだけになった。
上になった淫魔の口からダラダラと涎が零れ落ち、パセットの顔を色っぽく穢した。
(――あぁ…勿体無い…)
大好きなご主人様の唾液に舌を伸ばして、啜る。
だが体は勿論の事、顔の筋肉すら自由に動かせない。
絶頂の余韻で、全身が痺れていた。
「ふにゃぁぁぁ…♪ パセットちゃぁん…♪」
「…リオしゃまぁ…」
主人が顔を寄せて来た。
キスをするのかと思ったらペロペロと顔中を舐められる。
これが彼女なりの愛情表現なのだろうか、とぼんやりと思った。
「ふにゃっ、ペロペロっ、にゃうにゃうっ…パセットちゃんパセットちゃぁんっ♪
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅぅっ♪ にゃぁんっ♪ にゃおうっ♪ にゃん♪」
キスしたり、舐めたり、鳴いたり。
ご主人様はまるで酔っ払いのようにじゃれ付いてきた。
絶頂の余韻に浸りながら、彼女の『甘え』を受け止める。
背中に回した手に何とか力を入れ、抱き寄せる。
それからにゃんにゃんと可愛らしい鳴き声を上げる唇を舐めた。
「好きぃ♪ 好きっ♪ 大好きぃ♪ ずっと一緒ぉ♪ 一緒なのぉ♪」
「はい…リオ様ぁ…」
好き好きと連呼する主人の唇を奪う。
ちゅぱちゅぱと舌を吸い合い。唾液を混ぜ合わせた。
精を注がれたアドニスの種子がドクドクと脈打っている。
やがて『芽』になってしまうだろう。
セックスを続ければさっきのクロトのようにアドニスを産み落とすのも時間の問題だ。
だが別にそれで構わなかった。
主人と同じ、人外へと身を堕とせば、それだけ彼女に近付ける気がする。
それで、良かった。
どくん。腹の中の種子が脈動する。
パセットの願望に呼応して、濃厚な催淫香を吐き出した。
「リオ様ぁ…もっと…エッチしたですぅ…」
「うにゃんっ♪ いいよぉ♪ いっぱいエッチしよ♪
今まで出来なかった分、いっぱいいっぱいしよ♪」
そしてどちらからともなく再び熱い口付けを交わす。
主従の交わりは暫く終わりそうに無かった。
***
アレエスの街の中でリオは、自身の行動が悲劇を生む事を知った。
何の罪も無い人が、魔物の集団に眼前で襲われている。
覚悟はしていた筈だった。
だが、青と赤の瞳に映る、名も知らない母親とその娘を放っておくことは出来なかった。
そしてその頃。
魔物の母となったクロトは、自ら産み落としたアドニスに犯されていた。
子宮を犯され、内蔵を犯され、体の隅々まで触手を受け入れていく。
アドニスの触手を受け入れた部分はそれだけで官能が走る。
そして徐々に人外へと変化していくのだ。
もう、戻れない。
自分は、とうとう人間でなくなってしまう。
だが構わない。人外の快楽を知り、堕ちてしまった魂は人間を止める事に未練はないのだ。
それどころかどうだ。
この新しい肉体。新たな力。
アドニスと一体になり、アネモネと化したクロトは強大な魔力を得た。
魔術士としての記憶と技術を引き継ぎながら、人間を圧倒する肉体を持つ。
なんて素晴らしいのだろう。
この素晴らしさを、他の女性にも教えてあげたい。
クロトは早くもその想いを実行に移す。
住民を避難誘導に来た門下生達を襲い、その中から見知った顔を選んだ。
クロトは、ドルキの下で魔術を並んだその仲間を犯した。
触手の一本一本が、未知の快楽をクロトに叩き込む。
人外の体は淫らで、人間のメスを犯す事に夢中になってしまった。
クロトはその同僚の仲間を犯しつくし、あまつさえ種付けを行ってしまう。
人外の快楽に、魂までもが完全にアドニスと同化した。
そんな時、彼女の目の前に、一人の男が立ちふさがる。
赤き鎧と無数の剣を扱う彼を、人々は畏敬の念を込めて『剣神』と呼ぶ。
次回、永久の果肉十一話、
『愛と絶望に満たされた街』
以上で第十話終了です。
補足ですがドルキの年齢は物語り開始時点で四十台後半という設定です。
いい年こいたおばさんですね。
そんなおばさんがここまで色恋沙汰に夢中になるのもどうかと思いますが。
まあ、うら若いヤンデレちゃんの将来はきっとこんな感じになるのだろう。
なんて想像しながら書きました。
まあロリがいればババァはいりませんけどねー。
熟女に興味はありませんしー。
そのせいか本編中のドルキの姿形も適当、というかあんまり考えてません。
リオとかクロトの衣装は脳内である程度イメージが固まっているのですが。
んー。白のドレス+派手な装飾。その上から黒のローブ。
貧相な体を誤魔化す為に厚着+ごてごてのアクセサリ+厚化粧、みたいな。
髪は銀髪。縦巻きロールで。派手なおばさんですねw
というかおばさんのイメージなんてどうでもいいですか。そうですか。
やっぱり女の子はぴちぴち(死語)じゃないと!
youjo同士のガチ百合とかどんだけ好き者なんでしょう。うふふ。
でもぷにぷにしたちっちゃい体が粘液まみれでまぐわい合う姿は(以下自主寄生)
あ、ちなみにお気付きの方もいらっしゃるかと思いますが。
リオの右目の色は本人の感情(機嫌?)で赤と青を行ったり来たりします。
エロかったり不機嫌な時は赤。
理性的だったり幸せな気分の時は青。
今回はパセットが頑張ってくれたのでリオが正気に戻ったという訳ですな。
そしてまたまた補足ですが。
パセットの精神は完全に壊れたわけではないです。
確かに前回の焦らしプレイ+連続射精で心に致命的なダメージは負いました。
が、今回の告白(?)のお陰で、真っ白になった心に愛情だけ残った感じです。
頭が真っ白になってる時に実は両想いでした、と知らされるようなものですね。
余計な羞恥心やしがらみが取り払われてる状態なので、好き好きばっかりです。
リオが人の心を取り戻す為の鍵でもあります。
次回は魔物に侵入された街のお話。
クロトもアネモネ化して、暴れます。
グリーズも暴れます。年齢設定はドルキと同じく五十歳弱ですが強いです。
RPGで強くてニューゲームした主人公というか二週目というか。そんな感じ。
バトル多めの内容ですがエロもありますよー。
さて。いい加減長文乱文なので今回はこの辺で。
いつものように感想や誤字脱字の指摘等あればお願いしますー。
また来週お会いしましょう。
妖っ、女っ、万っ、ざーーーーーいっ!!
スーパー乙×風タイム乙です
8割がたエロい(話が進まないレベル)のに、展開説明をちょくちょく滑り込ませて、
なんとかストーリーを引っ張ってるてのはすげえな
次回予告だけで触手がエレクチオンしてしまった
今週もお疲れ様です
そして乙×風氏と同様幼女のまぐわいは至高である
GJ!悲しい話の筈だけどようじょ百合万歳!!でも欲言えば揉み合いとかも見たかっt(ry
>>52のパセットの過去セリフがちょっと言葉抜けてる気がしたけど気にしませぬ
しかしもうスレの3割が埋まってしまった…あまりにも早すぎるwww
久しぶりに来てみたらスレ伸び過ぎクソワロタwwwww
両氏ともGJ過ぎる件。
大作乙です!!!!!!!1
これだけすばらしいssが続くと
逆に不安になってくるんだぜ超GJ!
また500行かない内に容量一杯になりそうだなw
携帯から投下なので1レス当たりの行数が微妙なのはスマソ
オマ○コがタコ壺になっちゃって幸せな娘さんの話
4〜5レス予定(携帯のコピペ能力次第)
ではどうぞ↓
赤井夕子(あかいゆうこ)、二十歳。この春から大学一年生。
眼がくりくりとしたタヌキ顔が子供っぽく見えるおかげで、年を言わなきゃ誰も二浪と思わない。
夕子という名前は『赤い夕日が校舎を云々』とかいう懐メロから祖父がつけたらしいけど。
幼い頃からのあだ名は「赤いタコ」、略して「赤タコ」または、そのまま「タコ」。
そうだよね、そうなっちゃうよね。
そして、その名前のせいではないだろうけど――
「……ひゃうんっ!? あひゃぁぁぁぁぁっ……!?」
人の腕ほどの太さもあるタコの足がぬるぬると、夕子の両乳房を舐めるように撫で回す。
ご丁寧にもちゅぱちゅぱと、吸盤で乳首を吸いながら。
別の足は夕子に覚悟を促すように、つんつんと尻穴を突っついてくる。
「ひゃあっ!? おしりらめっ! おしりらめぇぇぇぇぇ……!!」
悲鳴を上げる夕子の頭の中に声が響く――いまや彼女と「同化」した《オオヌシ様》の声が。
『何がダメなものか。我らは五感を共有しておるのだ。ほれ、欲しくてたまらないのであろう』
ぬぷり……ぬぷぬぷと、尻穴のすぼまりを難なく押し拡げ、タコの足は夕子の腸内に呑み込まれていった。
「あへぁっ!? らめっ……んひぃぃぃぃぃっ♪」
夕子は随喜に泣き咽びながら、囚われの肢体をわななかせる。
彼女は四本の長大なタコの足に手足を絡めとられて、宙に吊り上げられていた――
そのタコの足は乳房や尻穴を蹂躙するものと同様、彼女自身の女陰から生え出ているのだが。
奇妙にもあるいは器用にも、タコの足は女陰から生えた付け根の部分では半分ほどの太さに縮まっていた。
とはいえ人の腕の半分の太さのモノを八本も銜え込んで、夕子の女陰は無惨なほど拡げられている。
そう、タコの足は八本。四本は夕子の手足を縛め、二本は左右の乳房を舐り、一本は尻穴を犯している。
そして残る一本は夕子の唇をなぞり、口腔奉仕を強いようとしていた。
『ほれ……銜えるのだ。五感を共有するということは、我の味わう快楽を、ぬしもまた味わうということ』
「いやぁぁぁ……せめてお醤油とワサビつけてぇぇぇ……♪」
『弄(いろ)うな。ほれ、覚悟いたせ』
「んぁむっ!? んぁぁぁぁぁ……っ♪」
タコの足を口にねじ込まれ、夕子は快感に打ち震えた。
吸盤が舌にこすられる感触が《オオヌシ様》を介し、性の歓びとして伝わってくるのだ。
タコの足を口いっぱいに頬張り、ぎこちないながらも懸命にそれを舐り上げる。
乳房と尻穴を同時に責められ、意識が飛びそうになりながらだ。
「んくぅぅぅぅぅ……♪」
ここは夕子の下宿であるワンルームマンション。
二浪の末に手に入れた大学生活――その四年間を過ごすべき自室で、彼女は肉体を弄ばれているのだった。
もとより、それを覚悟しての下宿暮らしであったのだが。
それを示すように、この部屋にはベッドがない。
《オオヌシ様》と同化した夕子は睡眠を必要とせず、毎晩、夜通し犯されているのである。
さらには、いまのように昼間でも、休講で時間が空けば大学から徒歩七分の自室に帰って犯される。
《オオヌシ様》が夕子を犯したいと望んだときは、夕子の身体も疼いてしまうから拒絶という選択肢はない。
「んくっ♪ んくっ♪ んくぅぅぅーーーっ♪」
眼の前で白い光が弾けたように感じて、夕子は、びくっびくっとその身をのた打たせた。イッたのだ。
ちゅぷり、ぬぷりと、口と尻穴を犯していたタコ足が抜けて、夕子は恍惚と吐息をつく。
「ぷはぁぁぁぁぁ……♪」
夕子の身体がゆっくりと床に下ろされて、手足や乳房を縛めていたタコの足がほどけていった。
夕子は足腰に力が入らず、ぺたんとその場に座り込んでしまう。
タコの足は、するすると彼女の女陰に引っ込んでいく。
夕子はタコ足が収納されていく自らの股間を見下ろして、
「あはっ♪ 四次元オマ○コ♪」
『我のほかは迎え入れさせぬがな。ぬしは一生涯、人間の男を知らずに生きるのだ』
「ふふっ、わかってるって♪ 《オオヌシ様》に拾われてなきゃ、無かった生命だものね♪」
夕子は微笑む。
二度目の大学受験に失敗して、二浪が確定した翌日。
夕子は、海を訪れていた。
初めから死のうと思って来たわけではない。現実逃避したかっただけだ。
それでも、岬の先端の誰もいない展望台から冬晴れの海を眺めているうちに、ふと思いついてしまった。
ここから飛び降りれば、いろいろ楽になれるんじゃないかと。
夕子は後先も考えずその思いつきを実行に移し、すぐに激しく後悔した。
岬から十数メートル下の海面に叩きつけられた衝撃は相当のものだったが意識を失えるほどではなかった。
次の瞬間には鼻と口から大量の冷たい海水を吸い込み、息ができなくなった。
痛い! 苦しい! 死ぬ! 嫌だ! 誰か……助けて!!
そして、《オオヌシ様》に拾われたのだ――
夕子はシャワーを浴びながら、胎内に棲むモノに話しかけた。
「……あの、《オオヌシ様》?」
『何だ?』
「その……よかったです」
頬を朱に染めながら言う夕子に、《オオヌシ様》は呆れたように、
『ふむ……ぬしは時折おかしなことを申す』
「おかしいですか?」
『我らは五感を共有しておる。ぬしが絶頂に至るほど快感を味わったのは我にも伝わっておるのだぞ』
「そういう意味じゃなくて、わたし、《オオヌシ様》に感謝してるというか……」
『ふむ?』
夕子と同化したタコの妖(あやかし)は興味深げに相槌を打つ。
『確かに我は、ぬしの生命を救い、受験に必要な英単語や公式を暗記し、本番で幾つか問題も解いたが』
「その分、勉強時間を削って犯されましたけど、そのことでもなくてですね……」
夕子は愛おしげに眼を細め、《オオヌシ様》を宿した腹を撫でた。
「わたし、《オオヌシ様》のおかげで女の歓びを知ったというか、女に生まれてよかったと初めて思えた」
『それは快楽という意味ばかりではなさそうだな……ふむ』
「もちろんそれだけじゃないです。自分が生まれ変わったのがわかるんですよ」
だって、と、夕子は自嘲ばかりではない笑顔で言葉を繋ぎ、
「《オオヌシ様》と出会う前のわたし、デブでバカで根暗で、どうしようもなかったですもん」
『確かに出会うた頃、ぬしは土左衛門のようであったな』
「土左衛門って水死体? 《オオヌシ様》それ言いすぎでしょ」
夕子はくすくす笑う。
「でも毎晩エッチしてるおかげで、すっかり体重は落ちたし、いくら食べても太らなくなったし」
『ぬしは怠惰に過ぎるのだ。受験生の頃からして、勉強を始めたと思ったらすぐに飽きて菓子など貪りおる』
「《オオヌシ様》だって、そんなわたしを犯しまくったじゃない? 遊んでる暇があるなら犯すぞって」
笑う夕子に、《オオヌシ様》は『む……』と低く呻き、
『ぬしは、よく笑うようになったの。初めの頃は、口を開くことも大儀そうにしておったのに』
「いまは毎日、楽しいですもん。大学の友達ともうまくやれてるし。あのね、やっぱり女は見た目ですよ」
『ふむ……?』
「周りの態度が違いますもん。友達もそうだし、街で買い物するときなんかも。デブだった頃と、いまとは」
『それは、ぬし自身が変わったからではないか。笑う門には福来たると昔から申してな……』
《オオヌシ様》は答えながら、夕子の女陰から再びタコ足を伸ばし、ちゅるりと陰核を撫でた。
「ひゃっ!? 《オオヌシ様》っ!?」
『ぬしが可愛らしいことを申すでな、再び犯してやりたくなった』
ちゅぷちゅぷと吸盤で陰核を吸われ、夕子は身悶える。
「ひゃぅっ!? ダメっ……次の講義に間に合わなくなっちゃうっ!!」
『友人にメールで代返を頼めばよかろう。いまのぬしなら、それくらい頼める相手は、いくらでもおろう?』
「それはそうだけど……はぁぁぁんっ!?」
『ほれ、早よう風呂場を出て友人にメールいたせ。ぬしが正気を保っておられるうちにな』
「ひゃぁんっ!? クリは弱いのぉっ、ダメだってばぁ、言うこと聞きますから、赦してぇぇぇ……!!」
夕子は腰が抜けそうになりながら、壁に手をついて辛うじて身体を支え、ふらふらと風呂場を出る。
生命を助けられて、大学にも合格できて。
《オオヌシ様》には感謝してるけど、代償も充分、払ってるよなあ。
よがり乱れる寸前の頭の片隅で、夕子は思うのであった。 【完】
寄生されたままハッピーエンドでもいいじゃない
っとことで終わります
(ちなみに前スレ埋めネタのチンコ虫と同作者です、はい)
狙い通りなんだろうけど、お醤油とワサビで笑ってしまった。卑怯だろw
このスレのレベルの高さは以上。
前スレも案外早く埋まりきったな…
止まらない大量投下に恐ろしさを感じなくなったら末期なんだろうな(洗脳的な意味で)
恐ろしさがなくなるということは蟲様への畏れもなくなってしまうということか
…つまり友達になるのか
月曜日だ!
>>85はもう虜になっちまったようだな…
月曜日に来る…アレの…
ピンクの髪…歳不相応な胸…隙間から魅せる秘密の丘…そして思考を止めるボイス…
って、この記述だけ見てたら全然不気味じゃないなw
ひ、や、止めろ!ク、来るな!
だ、誰か!助けてくれ!あいつを倒してくれ!
おれ、おれはま、まだっ
月曜日、幼女幼女幼女フヒヒヒ
リオタン万歳!!!!!!!!!!!!!!
>>79氏
GJでした。
ワサビと醤油は基本ですがおろし生姜も結構いけますよ。たこの刺身的に。
最近は暗い話ばかり書いてるので純正和姦寄生とかとっても癒されました。
この調子でチンコ虫もSS化ですね。わかります。
>>70氏
百合はあれども幼女同士でドロドロねちょねちょとHするてのはあんまりないんですよね。
だからやりました(キリッ
あ。誤字の指摘ありがとうございます。
どうやら肝心なシーンで台詞回しがおかしくなるのが多いようですね私は。
はい。という訳で投下です。
NGワードは、
(騎上位? 人外化、逆レイプ、種付け、バトル)
花形の魔物の上に跨って自分で腰を使うオニャノコってエロイと思います。
こう、女の子座りで。
目の前の花弁に手を付いてクイクイと。
そんな感じのエロシーンあります。
というわけで以下本編です。18レス程消費します。ごゆっくりどうぞー。
第十一話 愛と絶望に満たされた街
ふと誰かに呼ばれたような気がしてクロトは目を覚ました。
淫臭漂うベッドの上で、ゆっくりと体を起こす。
辺りをぼんやりと見渡すと、息も絶え絶えになった男が四人、大の字で床に倒れている。
そして二つあるベッドの間には、成長したアドニスの花が咲いていた。
(…私の…花…)
寄生されていたとはいえ、この腹から生み出した魔の花は子供のようなものだ。
快楽付けされ、倫理観が曲げられてしまった感性は、肉の花を愛しく思う。
「おっきく…なってるの…?」
ラフレシア型の花は、今やその直径を二メートル近くまで肥大化させていた。
ついさっきまではこの腹に収まっていた筈なのに、何という成長速度だろうか。
メイドの少女を通して、淫魔から大量の魔力を注がれたせいだった。
(…あ…良い匂い…)
意識がはっきりしてくると、この巨大な花から甘い香りが漂ってくるのが分かる。
それに誘われるように、四つん這いでアドニスの元へと近付いた。
しゅるしゅる。
「きゃぁんっ」
花弁の付け根から生えた何本もの触手がクロトの体を捕らえる。
恐怖感は無い。突然の事に驚いただけだ。
おしべ触手は、顔に似合わずグラマラスな体を持ち上げ、花の真上へと移動させる。
(あ、匂い、濃い…)
花の真上まで運ばれると、催淫香もずっと濃密だ。
頭がくらくらして、胸が高鳴る。
じゅん、と膣が新鮮な愛液を搾り出して、子宮が疼くのを感じた。
(おマンコみたい…)
眼下に広がるアドニスの花は、まるで巨大な女性器だ。
肉ヒダが連なる花弁の内側。それに大陰唇を思わせる花の中央部。
肉色をしたそれらが甘い香りを放つ粘液に濡れて艶かしく輝いている。
と、その中央部からずるずると音を立てながら生殖器が生え出した。
多重のエラ。亀頭部分の大量の疣。
間違いない。淫魔が股から生やしていたモノと同じ形状だ。
だが成体となったアドニスの生殖器はそこで倒れている男達の二の腕と同じほど太い。
(こ、こんなのに…犯されたら…)
きっと今度こそ狂ってしまうかもしれない。
そうだ。そうやって人間の心を壊されて、アネモネへと変わっていくのだろう。
「…あは…」
ぞくぞくした。壊れた感情が、自分が魔物へと変わっていく予感に倒錯的な官能を覚える。
体を持ち上げている触手から徐々に力が抜け、クロトの高度を下げる。
女芯へと狙いを定めて、細い肢体が余りにも太い肉棒へと緩慢に近付く。
そして、ぐちり、とその先端が埋没した。
「んあぁっ!?」
(すごっ、おっき、すぎるぅ)
出産した直後でぽっかりと開いたヴァギナ。その穴に合わせたかのようなサイズだった。
――体を拘束していた触手が急に離れた。
ともすれば重力に引かれ、体が落ちる。
次の瞬間訪れるであろう刺激に期待して、クロトは淫靡な笑みを浮かべた。
ずるるるるっ!
「んああぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁっっ!!?」
極太の触手は拡張された産道を更に押し広げ、あっと言う間に子宮の内側まで入り込んだ。
(中、中までっ、入ってきてるぅっ!!)
腹を圧迫する感覚がやや苦しく、涙目でひゅーひゅーと空気を取り入れる。
視線を下げれば巨根を受け入れた下腹部が、歪な形に盛り上がっていた。
全部入っている。あのおぞましくも、いやらしい触手が。
(はっ、あっ、苦しいけど、熱くてっ、気持ち良いっ…!)
圧迫感もあるが快楽もある。
いや、それ以上に――何と言うのか『しっくりくるのだ』。
この花はついさっきまでこの腹の中で育った魔物だ。
それが元の鞘に戻るのだから、当然なのかもしれない。
言わば、この触手は自分専用。この体を犯す為に生まれてきた。
そして、散々犯された女性器はアドニスの寄生から解放された後でも敏感だ。
それを、こんな凶悪なモノで掘り返されたら。
「んっ、んんんっ!」
クロトは自ら腰を動かし始めた。
女の子座りの体勢から、正面の花弁に手を突き、腰を持ち上げる。
「あっ!? あぁぁぁあぁぁぁっっ!!」
ごりごりと子宮口を。Gスポットを触手に削られる。
(何これっ!? 気持ち、良すぎてっ)
ブツブツとした亀頭部分が子宮口を内側から抉る。
やすりでも掛けるように、多重エラがガリガリと膣内の『しこり』を削る。
視界で何度も火花が散った。
二箇所から与えられる桃色の刺激が背筋を駆け上がり、半開きの口から喘ぎとなって出る。
予想以上の快楽に、力が抜けていく。
持ち上げた腰が、徐々に落下して、
ずりゅりゅりゅっ!
「いああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!?」
どすん、と子宮の奥に触手の先端を打ち付けてしまう。
腹の底を突き破られてしまいそうな感覚だった。
だが卑猥な形状をした触手に肉の穴がかき乱され。
あまつさえ性感帯となった子宮を揺さぶられ。
その激感にクロトは前後不覚に陥った。
「…あっ…! っ、…はっ、ぁあっ…っ♪」
軽く達したらしい。
舌を垂らし、ぶしゅう、と結合部から潮を吹く。
揺さぶられた子宮が、きゅん、と痙攣して触手を締め付けた。
(いいっ、これ、いいっ)
子宮ごと犯される快感。その味を覚えてしまったクロトは再び腰を動かす。
ずるるるるっ――
「あうんんんんっ…!」
ゆっくりと触手を引き抜き――
ずりゅりゅっ!
「んああぁぁんっっ!!」
――落とす。
肉の穴が耕され、どんどん敏感になっていく。
子宮の奥を突かれる度に、今まで味わった事の無い法悦を感じた。
「いいっ! これいいっ!! ああぁぁぁぁっっ!!!」
ずりゅりゅっ! ずるるるるっ…! ずりゅりゅっ!! ずるるるるっ――
大陰唇から子宮の奥まで。20センチ以上の肉のチューブを自らの意思で責め立てる。
ピストンのペースも徐々に上昇し、捻りや回転と言った動きまで混じり始めた。
「んああぁっ! いいっ! お花っ! 気持ちいいのっ!!
あぁっ!? イクぅっ! ああっ! ぁっ! あぁっ! あっ! あっ! あ!
凄いのっ、きちゃうきちゃう!! ああぁっ!」
じゅぷじゅぷと結合部から卑猥な音が響いていた。
濃密なアドニスの催淫香にクロトの発情臭が混じる。
空気に混じり、下品な音を立てる本気汁はクロトが感じている証拠だ。
腹の圧迫感は殆ど無い。それが霞んでしまうほどの快楽が、彼女を襲っていた。
舌を垂らし、眉根をハの字に寄せ、涙と鼻水と涎を垂らしている。
だらしなく弛んだ頬や、半開きの口はまさしくメスそのもの。
もう、快楽を貪る事しか考えられなかった。
「あっ!! あぁっ!! イクっ、イクイクイクイク!!
アクメって、クサマンコびくびくさせますぅっ!! あぁぁっ!?
あっ! あっ、あっ、あっ! あっ、あ、あ、あ、あ、あぁん!!
んおあおああぁぁぁっっらめぇあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
絶頂。
自分で宣言したとおり子宮を、膣を収斂させ、触手を何度も締め付ける。
その瞬間。
先端から糸状の触手が溢れ出し子宮を内側から貫いた!
「んぎいいいぃぃぃぃぃっっっっ!!!!?」
痛みとも快楽ともつかない刺激に、クロトが白目を剥く。
子宮を刺し貫き、ミクロ単位の穴をいくつもあけた極細触手が内臓へと侵入。
自身を神経の根として、クロトの体を犯し始めた。
「おおあぁぁっ、あぁ、あ、あ、あ、あっ、あぁ、ああぁぁぁぁぁっっ…!!」
体中に、生殖器から溢れ出した触手が満たされていく。
細いミミズか何かに、体の隅々まで犯されるような感覚だ。
(……気持ちいいっ!)
だがそんなおぞましい感覚すらも、今のクロトには快感だった。
びゅるっ! どびゅっ! どぷどぷどぷどぷ!!
「んひゃあぁぁぇぇあぇぁえええぇぁあぁぁぁぁぁっっ!!?」
突如子宮内で大量の射精。
熱い粘液の感触に、子宮が再び悦びに打ち震える。
更に子種をせがむように何度も痙攣し、触手から精を搾り取る。
同時に、体中に広がった繊毛触手も、何かしらの液体を滲み出していた。
(熱いいっ!!? 熱いィィイ!! あはぁっ!!!)
体の内側から熱湯が溢れ出すような感覚に、クロトは悶絶した。
潮だけでは飽き足らず、股から小水を漏らし、アドニスの糧にする。
直後に変異が始まった。
体中に根を下ろした繊毛触手がクロトの体を作り変えていく。
絹のような肌が鮮やかな浅葱色へと染まっていく。
元でも大きめのバストが一回りも二回りも肥大化した。
子宮を姦通していた雌しべ触手の疣から繊毛触手が生え出し、内側から串刺しにする。
それすらも神経としてクロトの内臓に根ざしていく。
「んああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁっっっ!!!?」
(気持ちいいひぃぃっ!!)
体を内側から作り変えられる感覚。それは快楽だった。
子宮を中心に、どろどろと溶かされ、一つに融合していく。
子宮に根ざした神経の束はクロトと同化し、もうアドニスから離れる事は出来ない。
(変わっていく…! 私、アネモネになっていく…!)
白魚のような脚は、大陰唇を彷彿とさせる花の中央部分に何時の間にか飲み込まれていた。
どうなったのか視認する事は出来なかったが、アドニスの花と同化したのだろう。
股から下の感覚が無くなっていた。
更にずるずると、触手を貪欲に咥え込んだ結合部すらもアドニスへと飲み込まれていく。
(一緒に、なるんですね…この花と…)
もう二本の脚で歩く事は出来ないだろう。その事に後悔はない。
この肉の花の下に生えた大量の触手が脚の代わりだからだ。
そしてより卑猥になった体は男も女も誘惑する。あのグリーズも。
催淫香につられて寄ってくるメス達をこの体で溺れさせ、種付けをしていくのだ。
そしてそれはとてもすばらしい事だと思った。
「あはあぁぁぁぁあぁっっっ…♪」
歓喜の涙が頬を伝い、流れる。
歯車が噛みあうように、本体であるアドニスと神経が完全に繋がった。
まるで下半身が肥大化してしまったようだ。
(あ、触手…動かせる…)
花弁の根元から伸びるおしべ状の触手を眼前でゆらゆらと動かす。
地に付いた触手の一本一本にも神経が通っているようだ。
薄汚れた絨毯を踏みしているのが分かる。
「はあぁぁぁぁぁっっ…♪」
感嘆の溜息を吐き出す。
同時におしべ触手から、ブシュウと催淫ガスが噴出した。
(…あはぁ…♪ ガスを噴出すのも…なんか気持ちいいです…♪)
体中に精力が溢れている。
だが頭の中はまるでぬるま湯につかっているようだ。
ただひたすらに甘く、緩い愉悦に全身が覆われている。
『おめでとうクロトさん』
その時、腹の底から声が聞こえた気がした。
下半身のアドニスが、その声を我が主と認識する。
『完全にアネモネになったみたいだね』
(…あ、リオ様、ですか…?)
意識を集中すれば、アドニス本体を通して淫魔の気配を感じる事が出来た。
今は、移動中、だろうか。特に火照った体を持て余している訳でもないようだ。
離れていてもアドニス同士で繋がっている。それを感慨深く思った。
『うん。ほったらかしにしちゃってごめんね? ね、今どんな気分?』
(あはぁ♪ 何だかふわふわして、夢の中にいるみたいですぅ…♪)
『――そっか。アネモネになったらそんな感じなんだね。
……あ、今私ね、北東の城壁に来て皆に結界を解除してもらってるとこなの。
私はこのまま北上して屋敷を目指すから、クロトさんは南西と北西の結界を解除して?』
(はい♪ おおせのままに♪)
そうだ。主である淫魔は、リビディスタの奥様に復讐をする為にこの街に侵入した。
そして結界の解除は彼女との『約束』を叶えて貰う為の条件だった。
(あぁ、グリーズ様、グリーズ様、私、早く貴方様に会いたいです…)
会って、滾るこの想いの赴くまま、情事に耽りたい。
だからその為にも、今は働かなくては。
『あ、そうだ。今パセットちゃんが一足先に屋敷に向かってるの。
クロトさんは出来るだけ派手に暴れてもらえるかな?
そうすればパセットちゃんも安全に屋敷に潜入出来ると思うから』
(お任せ下さい♪ 沢山女の子に種付けをして、この快感を教え込んで差し上げます♪)
『うん。よろしくね』
それっきり主の声は聞こえなくなった。
どぉん。変わりにすぐ近くで爆発音。
森の魔物達が侵入しているのだろう。住民の悲鳴らしい声が外から響いてくる。
クロトは得意の探索魔術を起動した。
アドニスの真下に、青い魔術陣が展開し、周囲に魔力の波動を放出する。
アネモネとなり人外の力を手に入れたクロトのそれは、人の時よりも強化されていた。
魔力は波紋となり半径四キロ周囲へと広がっていく。
(はぁ…♪ 人間、沢山いるぅ♪)
南東の城壁からモンスターが侵入しているらしい。
街の外から侵入する赤い光点から逃げるように、青い光点が街の中央へと移動していた。
クロトが居るこの小屋は南西の城壁からやや街の中央寄りの場所に位置している。
逃げ惑う人々は路地裏を通り、中央通りへと集っているようだった。
アレエスの街の中心には要塞がある。
リビディスタの屋敷よりも大きいそこは、有事の際、住民が避難する場所となっていた。
街の大結界の発生装置が安置している場所でもある。
そういえば、魔物達の侵入を図るならその装置を無効化する手段もある筈なのだ。
どうして淫魔は、部分的に結界の解除をしていくなど回りくどい事をするのだろう。
要塞内に侵入するリスクが高すぎると考えたのだろうか。
(まあ、どうでもいいですね)
今は、城壁の結界を解除する事だけを考えればいい。
その過程で、出来るだけ多くの女達に種付けをしよう。
はぁ、と甘い吐息を漏らすとクロトは移動を開始した。
***
「あんっ♪ にゃんっ♪ はぁっ♪ いいっ♪
お兄さんのおチンポっ♪ とってもいいよう♪」
北東の城壁内にて。リオは結界術士達の逆レイプに励んでいた。
アドニスの催淫香を居住空間の中に満たし、甘い喘ぎを上げている。
これだけならいつもどおりなのだが。
「うわ、暫く見ない間にエロエロになってるわねぇ」
横合いからの声にだらしなく弛緩した顔を向ける。
「あっ!? メデューサのお姉さん!」
そこには朝方、森の中で出会った魔物の姿があった。
いや、それだけではない。
街の外へと続く重い門は開かれ、そこから多種多様なモンスター達が侵入しているのだ。
リオ達は屋上へと続く階段の踊り場で性交を愉しんでいた。
もしも床でこんな事をしていたら魔物達の進撃に踏み潰されていただろう。
「さっき出会った時もいきなり空飛んできたから驚いたけど。
こうやって人間を『食べて』いるところ見るともっと驚くわぁ」
「あー。お姉さんにはあげませんよぉ。この人達はリオが捕まえたんですから♪」
「はいはい。街に侵入出来たのもアンタのお陰だからね。
それくらいは譲ったげるよ。ところでアンタ。
さっき森で会った時は目両方と赤じゃなかったっけ?
なんで今片方青になってるの?」
「うにゃ?」
(あ、そういえば。そうかも)
自分の瞳が何色かなんて気にしていなかったが、改めて指摘されると首をひねってしまう。
青になったり赤になったり、忙しい右目だ。
「さあ? わかんないです♪」
何よそれ、とメデューサが胡散臭そうなものを見る目つきでこちらを睨んだ。
「あーそれにしても臭い臭いっ。アドニス臭い!!
あたしゃもう行くよ? こんな所、一秒でも長居したくないからねっ」
言い捨てると尻尾をのたうたせながら階段を器用に下りていく。
それを見送るとなんとなく自分の胸元や脇に鼻を押付けすんすんと匂いを嗅いだ。
(…そんなに酷いんだ。私達の匂い…?)
アドニスの催淫香は人間には甘く香るが凶悪な魔物には悪臭なのだ。
どうにも実感を伴わなかったが、嫌がるメデューサや急ぎ足で城壁をくぐる魔物を見ると。
「うーん。やっぱり効いてるんだねー」
などとしんみり思ってしまう。
セックスの際にも他の魔物に邪魔にされないので有益な能力だった。進化の賜物だろうか。
(さあ、もうちょっと愉しみたいけど…屋敷に向かったパセットちゃんも気になるし。
他の結界はクロトさんに任せて私も屋敷に向かおうかな?)
胎内のアドニスを通して、先程クロトが完全にアネモネ化したのを確認した。
今も彼女がどのような状況なのか大体把握出来る。
向こうも、ある程度ならこちらの思考や状態を感じる事が出来る筈だ。
(アドニスって、繋がってるんだね)
犯したものと犯されたもの。
上下の関係は厳しく、被害者は自分を犯したアネモネに逆らう事は出来ない。
だが、こうやって互いを感じる事が出来ればそこに摩擦は生まれない。
同し種同士争う事も無いだろう。この世で最も統制の取れた種族。
(皆がアネモネになれば、誰も悲しい思いをしなくて済むのかな?)
例えば、親が子供を殺そうとしたり。
その子供が、親に復讐をしようとしたり。
そんな事が起きない、平和な世界になるのではないのだろうか。
「まさかね」
そんな事はありえないだろうけど、ついそんな夢物語を思い描いてしまった。
でもこの街だけなら、そんな世界にしてもいい。そう思った。
その矢先に、
「きゃあぁぁぁあああぁぁぁぁぁっっ!!?」
街の中から女の悲鳴が木霊した。猫耳がぴくりと持ち上がる。
「にゃっ?」
魔物達から逃げそびれたのだろう。この世の終わりかと思わせるような悲痛な叫びだった。
(……どっちにしろ移動するつもりだったし)
「またね。お兄さん達」
いつものように感謝のキスを二人の結界術士にプレゼント。
その後、足取りも軽く、階段を駆け上がる。
屋上に頭を出すとその真上をびゅん、とハーピーが一匹通り過ぎた。
ここの――北東の結界が解除されているので、この辺りからは空からも侵入したい放題だ。
それを何となく見送ると、リオは見張り台から街を見渡した。
(あ、親子連れだ)
城壁から少し離れた民家の前で、母親と思しき女性とその娘が魔物達に取り囲まれていた。
「げへへへっ。もう逃げられないどっ」
下品な笑い声を上げながら近付くのは豚面をした魔物だ。
肥満気味の巨体を揺らしながら、涎を垂らすそのモンスターはトロルという。
一応知性を持った魔物だが強暴で好色だとモンスター図鑑に載っていたのを思い出した。
「お願いしますっ! 私はどうなっても構いません! でも、この子だけはっ」
(…ふぅん。あんなお母さんも居るんだね…)
自分の体を身代わりに、子供だけを助けるというのか。
まるで母親の鏡だ。どこかの鬼ババアに爪の垢でも煎じて飲ましてやりたい。
「ぎゃっぎゃっぎゃっ!! そいつは無理な相談だなぁ?
お前はいい体してるからぁ、たーぷり可愛がってやるけどよぉ。
このチビはそうもいかねえだろぉ? しょんべん臭えしぃ。好みじゃねえんだぁ。
だからこいつは食ってやるよぉ。お前の目の前でなぁ?
あぎゃっぎゃっぎゃっぎゃっ!!」
「…最低…」
自分もすでに人に身ではないのだが。
ああいう下品な輩を見ると流石に不快になる。
このまま見過ごせば母親は死ぬまで陵辱され、娘も食い殺されてしまうだろう。
(…どうしよう…)
こうなるのは最初から分かっていた筈だ。
自分の復讐のせいで、何の罪も無い人間が犠牲になってしまう。
覚悟、していた筈だ。
だが、どうやら納得は出来ていなかったらしい。
(…私、悩んでるの? もう、身も心も魔物になったと思ったのに)
両手を握り締める。
パセットに注ぎ、消耗した分の魔力は、さっき二人の結界術士から補充した。
体の奥から、人外の力が溢れ出しているのが分かる。
「さぁっ、先ずは腹ごしらえだぁ! ここんところいいもん食ってなかったからなぁ!
このガキを食って、それからお前も犯してやるぅ!!」
「いやああぁぁぁっっ!! おかーさん! おかーさぁんっ!!」
母親の腕から、娘が奪われた。
泣きぼくろが愛らしい、おさげ髪の少女は、自分と同い年くらいだろうか。
その周りでは興奮した豚どもが群れながら汚い言葉で囃し立てている。
少女の顔が絶望に染まる。
必死の形相で、母親が娘に向かって手を伸ばしていた。
「――決めた」
見張り台の縁に手を掛け、勢いを付けて外へと飛び出す。
地面までの高さはざっと五十メートル程。
地面に激突すれば、即死は免れない。
だがリオは背中の蝙蝠の翼をはためかすと、トロルの群れへと一直線に突っ込んでいく。
風を切る音が耳元で唸った。
(悪魔の血が混じっていて良かった)
空を飛ぶだけだが、その悪魔の力が、人を救う為に使われようとしている。
それを考えると胸の奥から何か形容し難い感情が溢れ出してきた。
その感覚を噛み締めながら、
「女の子を、」
ふとこちらに気付いた先頭のトロルに、
「苛めるにゃぁあぁぁぁっっっ!!!」
渾身の飛び蹴りを喰らわせた!
「ぷぎいっっ!?」
べきゃぁ、という物凄い打撃音がしてトロルの顔面が潰れると、彼方へと吹っ飛ぶ。
でっぷりとした巨体が高速で錐揉み回転させながら弧を描いて飛翔し――
ずどん、と音を立てて十軒程隣の民家の屋根に激突した。
助けられた親子もトロル達も突然の出来事に口を『あ』の字に開けたまま硬直している。
その間に地面に着地したリオは、素早く親子とトロル達の間に滑り込んだ。
「な、なんだてめぇ!?」
「俺らのボスになんて真似しやがる!」
「こんな事してただで済むと思うなっ」
「お前から、」
「フシャーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!!」
口々と吼えるトロル達に、牙を剥き出しにして威嚇した。
四つん這いの姿勢で尻尾と髪を逆立て、赤と青の猫目で睨み付ける。
トロル達はそんなリオの気迫に押されて『ひぃっ』と情け無い声を出した。
「何してるの? 早く逃げて」
ところが背中の親子ときたら未だに状況が判らないのか、呆然としたままだ。
魔物に襲われていたところを魔物に助けられる、という状況が彼女を混乱させていた。
「え……? あの…?」
「その子がどうなってもいいの!?」
「…っ!?」
肩越しに喝を入れてやると、それでようやく母親は弾かれたように動き出した。
娘を抱き上げ、中央通りの方へと駆け出していく。
「ちゃんとその子を守らないと私が許さないからっ…!
その子を泣かしたらっ、許さないから!」
走り去る親子の背中に向けて、言葉を投げかける。
そんな事を言われなくても分かっているのだろう。
シュトリの力は、母親が強い決意と感謝の気持ちを抱いているのを感じた。
(私のお母さんが生きていたら。
同じような事があっても私の事、守ろうとしてくれたかな?)
体を張って、この身を救おうとしてくれただろうか。
だが顔も、人柄もよく知らない母親を想像する事は出来なかった。
(居ない人の事を考えても、しょうがないか)
だがもし今も母が生きていたら。
沢山、甘えたりする事は出来たのだろう。
それを思うと胸がきゅん、と苦しくなった。
「あっ、逃げるぞっ」
「お、追え! 久しぶりの獲物を、」
「フーーーーーーーーーっっっ!!!」
『ひぃっ』
追い掛けようとするトロル達を再び牽制。少し八つ当たり気味だった。
「なんだよこのチビ、メチャクチャおっかねぇ…っ」
(…こんな可愛い子におっかないんなんて、失礼な豚さん)
何なら全員、今此処で『食べて』しまおうか。
どろり、とした感情が溢れ出して来る。
それは淫魔の――いや、悪魔の血が持っている凶暴性だ。
欲望のままに他者を貶め、快楽を求めるリオの心の闇。
「ふふふ。おっかない? なーにトロルさん達。
リオみたいなちっちゃな女の子に怯えてるの? かーわいー♪」
煽った瞬間、馬鹿共は牙を剥き出しにして口々と喚き散らす。
やれ、舐めるなだの、やれチビのくせにだの、頭の悪そうな台詞を吐き出していく。
「ふーん? そう思うなら、リオの事、好きにしてみればいいんだよ?
ふふふ。溜まってるんでしょ? いいよ♪
リオがぁ、トロルさん達のくっさいザーメンカラカラになるまで搾り取ってあげる♪
――あ、そうだ。どうせ童貞ちゃんだよね♪ 優しくしてあげないと駄目だね♪」
『て、てめーーーーーぇぇぇっ!!!』
トロル達の怒りが頂点に達した。
目を血走らせ、地面を踏みしめながらこちらへと近付いてくる。
怒りに興奮したトロル達の股座から、濃い精気が溢れ出しているのが分かった。
思わずぺろり、と舌なめずりをし、
その瞬間、
「ありがとー! 猫耳の悪魔さん!」
と、背中から女の子の声が聞こえた。
「……ぁ…」
それだけでどす黒い気持ちが霧散し、代わりに幸せな気持ちが溢れてくる。
(あ、ありがとう、って言われちゃった)
ネーアに言われたのを除けば、本当に久しぶりだった。
というより最後にありがとう、と言われたのがいつか思い出せない。
ほわほわとした気持ちが溢れ出してきて、気恥ずかしくて頬がほんのりと紅く色づいた。
「でもっ、おパンツくらい穿いた方がいいよー!? 風邪引いちゃうよー!?」
「よ、余計なお世話にゃぁっ!」
他人に指摘されたせいか、淫魔状態の格好が無性に恥ずかしく思えてきた。
こんな羞恥心とは無縁のような衣服をよく考え付いたものだ。
素面ではとても着ていられない。
「はあ? なんだこいつ? 照れてやがんのか?」
「見た目の割には人間臭いな」
「俺らと同じモンスターの癖に人間助けやがるし」
「う、うるさいにゃ! あの人達はねぇ、えー、そのっ、だからぁ――
そ、そう! リオが後で食べるの! あの人達はリオの獲物なの!!
助けたわけじゃにゃいの!! 断じて!」
何と言うツンデレだろうか。これでは怪しまれても仕方が無い。
現に豚面の胡散臭い視線が次々と突き刺さって痛い。
「そんな事はどうでもいいんだよっ」
「そうだそうだ! 言ったからには責任とって俺達の相手をしろ!」
口々と文句を言うトロル達。
それでもこちらに手を出してこない当たり小心者というか虎の威を借りた猫というか。
いや、猫はこっちだった。
「ごめんね? なんか、そんな気分じゃなくなっちゃった♪」
ウィンク一つしてリオは飛び立った。
「ってそりゃねーよ!!」
足元からトロル達の文句や野次が次々と飛んでくる。
「べー、だ」
空からあっかんべーで答えてやると地団太を踏んでトロル達が悔しがった。
それを指刺しながら上空で腹を抱えて笑う。
(あー、面白かった♪ そだ、あの人達、無事かな?)
逃げた親子を上空から探すと、丁度街の警備兵に保護されているところを発見した。
「…良かった…」
折角助けたのだから事が終わるまで生き残って欲しい。
そう。ドルキに復讐する時まで。
(…やっぱり、私は義母様の事、許せそうにない)
パセットと交わってから少し人間らしい感情を取り戻せた気がするが、それとこれは別だ。
ドルキに復讐を果たした後、出来るだけ多くのアドニスの花を咲かせよう。
そうすれば、ネーアの恩返しにもなる筈だ。
「そうだ。パセットちゃん、どうしてるかな?」
今頃屋敷に侵入出来ただろうか。
色んなところで混乱が拡がれば、ドルキの意識も逸らせるし、戦力も分散する。
今はひたすら、状況をかき乱してやる必要があるのだ。
(あー、飛んでると警備の人に見つかるかな?)
下手をすると遠距離から狙撃系の魔術で撃ち落とされるかもしれない。
リオは路地に降り立つと、アドニスを通じて、パセットと連絡を取るのだった。
***
一方その頃。
アネモネへと変異したクロトは街の中央通にて人外の生を謳歌していた。
様々な露天が立ち並ぶ大通りの一角が、ピンク色の霧に包まれている。
「…こんな所に、アネモネが…っ」
「うふふ♪ そんな事どうでもいいじゃないですかぁ♪
皆で一緒に気持ちよくなりましょう?」
運悪く催淫ガスを吸い込み、その場にへたり込む人間が何人も居た。
警備の者。住民。併せて十人は下らない。正に選り取り見取り。
クロトは顔を赤くしながら欲情する体に抗う人々の中から、うら若い女性に目を留めた。
歳は自分と同じ、二十歳程だろうか。
短い黒髪の下に、鋭い眼光が輝いている。
体が言う事は聞かなくても、その心だけは折れていないようだった。
「――あぁ。誰かと思ったらティーシャさんじゃないですかぁ♪」
魔術士のローブに身を包んだ女は、クロトと同期のリビディスタの門下生だった。
「…クロト…? まさかお前、クロトなのか!?」
精悍な顔つきは中性的な印象を与えるが、その言動も男勝りだった。
赤い外套に身を包んだ彼女の名はティーシャ。
七つ星の、攻撃魔術に長けた魔術師だ。
「せいかーい♪ 私ねぇ、リオ様に犯されてぇ、アネモネになってしまったんですぅ♪」
「リオ、様に…? なんだ? 何を言ってるんだ!?」
「あーそっかぁ、ティーシャさんはリオ様が行方不明になった事知らなかったですよね?
でも、それはもういいんです。うふふふ。ねえティーシャさん?
アネモネってすごいんですよぉ? なんか、全身が気持ちいいんです♪
頭がぼーってして、ずーっと夢見心地なんです♪
こうやってガスを撒くのも――あぁん…♪」
ぶしゅうと催淫ガスを触手から噴出して、その快感に甘い声を漏らす。
「はぁ…気持ちいい…♪
でもぉ、女の子に種付けする時は、もっと気持ち良いんですよぉ?」
触手を動かし、腰を砕けのティーシャへとゆっくりと近付く。
「よ、寄るなっ! それ以上近付くと、攻撃するぞっ」
「攻撃? まさか私に、魔術を撃つんですかぁ?」
「そうだっ、だから、動くなっ、私は、お前を、」
「くすくすっ。催淫ガスを吸い込んだまま魔術が使えるわけないじゃないですかぁ。
ほんとは体が疼いてしょうがないんでしょう?
おマンコがじくじくして、指でぐちゅぐちゅ掻き回したいんでしょう?」
「く、クロトっ、お前、何て言葉をっ」
猥語に羞恥心を煽られたティーシャが赤い顔を更に赤くさせた。
直情系でボーイッシュな彼女も、猥談においては自分と同じく純情系だ。
そんな彼女の反応を愛しく思いながら、腹の中で生殖器が疼くのを感じた。
「あぁ、ティーシャさんっ、可愛いっ、とても可愛いです!」
(種付けしたいっ、我慢出来ないっ!
ティーシャさんのおマンコに、びゅるびゅるザーメン注いで種子を植え付けたい!)
はぁ、はぁ、と息を荒げるクロトに貞操の危機を感じたのだろう。
ティーシャは手にしていたロッドをこちらに突きつけると、
「く、来るなぁあっっ」
ロッドの先から魔術陣が生み出される。
陣の色は攻撃を意味する赤。その中心から、拳大の火球が生み出された。
(あ、凄いです。このガスの中でまともな攻撃魔術を使えるなんて)
関心した瞬間。火球がこちらに向かって飛来した。
どおんっ!!
大気を振るわせる爆発音。
着弾の瞬間に衝撃波が生まれ、熱気と風圧がガスを吹き飛ばす。
力加減を誤ったのか周囲の住民達が爆風に煽られて地面を転がった。
「しまったっ!?」
魔術を使った本人が顔を青くしていた。
一般人を巻き込んでしまった事。
それに何より知人に向けて容赦の無い攻撃を行った事に、後悔する。
だが。
「くすくす」
爆煙を挿んだ向こう側に笑い声。
風が煙を徐々に晴らしていく。
その先に、無傷で佇むアネモネの姿があった。
「…防御魔術…っ、アネモネになっても使えたのかっ」
ひし形のタイルを繋ぎ合わせたような光の壁が、クロトの全身を覆っていた。
「はい♪ それどころかアドニスと融合した事で魔力の総量も上がってるみたいです♪
私達魔術士としては良い事尽くしですねぇ♪」
「馬鹿を言うな! 人を捨ててまで、そんな力なんて必要ないっ」
「真面目ですねぇティーシャさんはぁ。
その凝り固まった頭を、私が柔らかくしてあげますね♪」
ぶしゅう、と再び催淫ガスを撒き散らす。
「…っ!? くそっ」
防御魔術でガスを防ごうとするが、ティーシャは攻撃専門だ。
圧倒的な力の差に、魔力で編み出された光の壁があっと言う間に崩壊する。
さっきと同じだった。
突如横合いの路地から出現したアネモネがガスを撒き散らし、こちらの動きを封じる。
「抵抗なんて無駄ですよぉ? 諦めて、私に種付けされて下さい♪
大丈夫です♪ 催淫効果たっぷりの体液を沢山使ってあげますから。
ちーっとも痛くありませんよぉ? くすくすっ。くすくすくすくすっ」
笑いながら触手を伸ばす。
あ、と声を上げる間もなく、ティーシャの体を拘束した。
「は、離せっ――うわっ!?」
暴れる彼女の体を引き上げ、花弁の上に招待する。
びりいっ――おしべ触手を使い、魔術士の衣服を乱雑に引き裂く。
「ば、馬鹿っ、やめろっ! お前は正気を失ってるんだ!
屋敷に戻ってちゃんとした治療を受ければ――むぐぅっ!?」
おしべ触手でけたたましい口を塞ぐ。
むーと唸るだけになった女を微笑ましく眺め、それでも込み上げる欲情は抑えられない。
息をやや荒げながらぼろぼろになった衣服を脱がす。
その下から現れたのは魔術師とは思えないほど引き締まった肢体。
二の腕にも腹にも、余分な脂肪は付いておらず、脚は力強く、しなやかだ。
まるで野生の肉食動物を彷彿とさせるスタイルに、はう、と感嘆の息を漏らしてしまう。
「けれど胸は控えめですねぇ」
「んんーー!! ぼふぇーばぼめまま!!」
余計なお世話だ、とでも言いたいのだろうか。
「くすくす。何もそんなに悲観する事はありませんよぉ?
アネモネになれば、スタイルだってよくなるんですからねぇ?」
ティーシャの目前で見せ付けるように、自らの胸を寄せて上げる。
ぼよぉん、とまるで生き物のように跳ねる二つの脂肪の塊にティーシャが目を見張った。
催淫ガスの中で男衆がおおっ、とどよめく。
「だからぁ、ティーシャさんもぉ、心置きなくアネモネになって下さいねぇ♪」
体を持ち上げる。
触手が、腕を万歳の格好に縛り上げ、彼女の股下を目線の高さまで吊り上げる。
嫌がる彼女を無視し、きつく閉じられた股を開いていく。
「むー!! んーーんーー!!」
触手に開脚させられると、そこにはきらきらと濡れ輝く羞恥の丘がある。
うっすらと恥毛を帯びたそこは閉じられ、だがその割れ目から一筋の愛液が流れている。
クロトはそこに鼻先を押付けるとすんすんと匂いを嗅ぎ始めた。
ティーシャの唸り声が大きくなり、がくがくと体が震える。
「あはぁ…♪ ティーシャさんのおマンコ、とっても良い匂いがしますぅ♪
処女の、乙女のおマンコの匂いですぅ♪」
鼻先に愛液を付着させながらうっとりと呟く。
「でもぉ、まだあんまり濡れてませんねぇ? 少し解しておきましょうかぁ♪」
言うや否やティーシャの口に突っ込んでいた触手をピストンさせた!
じゅぷっ! じゅぷっ!
「んっ!? んむぅっ!!」
「あはっ♪ これぇっ…! 触手、とっても感じちゃいますぅっ♪
ティーシャさんの口マンコっ、いいっ♪ 気持ち良いんですぅ♪」
親指大の触手を三本口に突っ込まれたティーシャは目を白黒させながら口姦に悶える。
少し苦しそうだが、こちらは加減出来そうに無い。
アネモネと化した心に、人間の良心など残っていないのだ。
ただ、人間の頃の性格や記憶はそのまま引き継がれるので、趣味や嗜好は変わらない。
痛がる姿は見たくないので、媚薬をたっぷり注いでやるのだ。
(あぁ、それにしても、お口の中、気持ちいいです…♪)
突っ込んだ触手の胴を口蓋へと擦り付ける。
或いは先端を開き、その舌ごと咥え込み、吸引する。
他にも先端から繊毛触手を生やし、歯茎や下の裏などを嘗め回した。
触手の性感は鋭く、それら一連の行為に蕩けそうな快感を覚えてしまう。
かと思えば、触手の生え際から熱い何かがせり上がって来るのを感じた。
「あぁっ!? 射精しますぅっ。ティーシャさんの口マンコにっ…!
熱いお汁、いっぱい噴出しちゃいますぅ! あっ! あっ! あっ!
いいっ! 触手気持ちいいっ! 出る出るっ! 出ますっ!
あっはぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっっ!!」
びゅるびゅるっ!! どぴゅどぴゅどぴゅっ!
「んむぅぅぅっっ!?」
頭が真っ白になった。
触手の中を体液が通る感触は男性の射精とは比べ物にならないくらい気持ち良い。
そもそも男の輸精管よりも敏感な触手のそれは、男のそれとは長さが全く違う。
ペニスから噴出す射精の快感を二倍、三倍と長く味わう事が出来るのだ。
それも複数本同時に。
ともなれば男の快楽を全く知らなかったクロトが、その快楽に溺れるのも無理はない。
「…あっ…っ、はっ…♪ っ、あぁっ…っ、…♪」
体を痙攣させながら、初めての射精『もどき』の快感に酔い痴れる。
ぼんやりとティーシャを見ると口から大量の体液を吐き出しているのが見えた。
加減を間違えて多く出し過ぎたらしい。無色透明のそれは催淫効果を持った蜜だ。
更に言うと、彼女を拘束していた別の触手の先端からも蜜を吐き出していた。
催淫ガスの原液とも言えるそれらが、クロトとティーシャの体をべたべたに汚していく。
傾き始めた太陽に二人の裸体が照らされて、ぬらぬらと淫靡に輝いていた。
(もう、十分ですね…♪)
口の中から束ねていた触手を引き抜く。
おえぇっ、と下品にえずくと、ティーシャは盛大にむせ始めた。
「がはっ! げはっ、げほぉっ!! はぁっ! はぁっ! くそっ! げほっ!」
「あらあら、ごめんなさい? 初めてこんな事するから、加減を間違えてしまいました。
苦しかったですよね?」
「あ、当たり前だっ」
「そうですか。でも、もう大丈夫ですよ?」
「な、何…? ――うっ?」
ティーシャが自分の体に異変が起きていると気付いた時にはもう遅い。
「あっ、あぁぁぁぁっっ!?」
目を見開き、がくがくと体を痙攣させ始める。
先程噴出した蜜は催淫ガスの原液。それを惜しむ事無く口内と体中にぶちまけたのだ。
今、ティーシャの体は想像絶する疼きが襲っているのだろう。
「あ、あついぃっ! 体がぁ!」
「熱いだけですかぁ? 切ないんじゃないんですか? くすくす。こことか、ね?」
ぞろり。クロトが眼前の割れ目に舌を這わせた。
「ひああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!?」
それだけでティ−シャは高みへと打ち上げられる。
体を痙攣させ、上と下の口からだらだらと涎を垂らした。
「あらぁ? ひょっとしてもうイったんですかぁ?
ちょっとお薬を使いすぎたみたいですねぇ? くすくす♪」
「あ、あぁっ…!」
呻くティーシャからは完全に力が抜けていた。
抵抗する意思も無いらしく、吊り上げられた状態のまま体をぐったりと弛緩させている。
だというのに彼女の下半身だけは何かをねだるように小さく揺すられているのだ。
「あはぁ♪ ねぇねぇティーシャさん? 気付いています?
貴女のおマンコ、もうドロドロですよぉ♪」
一度アクメを迎えたティーシャのヴァギナは大きく口を開き、内部を露出させていた。
露になった肉ビラが、グロテスクにひくひくと蠢動している。
「いやぁ…、見ないでぇ…」
羞恥心を訴える言葉もボーイッシュな彼女からは考えられないほど色気を帯びている。
アクメから降りてきた彼女は、はぁ、と艶かしい吐息を漏らした。
「…あ、嘘…、アソコ、ジンジン疼くの、全然治ってない…!」
「くすくす。これだけの蜜を浴びたんですから、簡単に収まりませんよ?」
「そ、そんなぁ…いやだ…っ、こんなのっ、おかしくなるっ」
「大丈夫、大丈夫ですよティーシャさぁん?」
ずるずるずるっ!
アドニスから生殖器を引き出す。
体の内側から敏感な触手が生え出す感覚に背筋がぞくぞくした。
(はぁっ♪ 触手チンポ引き出すの、気持ち良いっ♪)
「えぇっ!? そ、それっ」
ティーシャと言えば目の前に現れたとんでもない大きさの触手に狼狽している。
いや――鎌首をもたげる、その雌しべ触手に熱い視線を送っているのか。
目元を潤ませ、艶かしい吐息が敏感な粘膜を刺激した。
「そうですよぉ? これがぁ、ティーシャちゃんの処女マンコに入っちゃうんですぅ。
どうですかぁ? 大きいでしょぉ? 気持ちよさそうでしょぉ?
くすくすっ。そんな目で見なくても、ちゃぁんとハメハメしてあげますからねぇ♪」
「い、いらないっ、大体、そんなの入る訳がないっ」
「大丈夫ですよぉ。私だって入ったんですからぁ♪」
ぐちり、とその先端をティーシャの割れ目にあてがう。
それだけで甘く、蕩けるような刺激がクロトを襲う。
人外化し、ぐずぐずに溶かされた理性が更に溶かされ、アネモネとしての本能だけが残る。
即ち、人間のメスへの種付け。
「ティーシャさんっ、私、もう我慢出来ませんっ。
ティーシャさんの事、ずぼずぼ犯してあげますっ」
「い、嫌だっ! 私はっ、アネモネなんかになりたくないぃっ!!」
泣き叫んで嫌がるティーシャを肴に、
ずりりりりっ!!
「いぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっっ!!?」
処女を頂いた。
「ふあぁっ!?」
(何これっ、触手チンポ、とっても締め付けられますぅっ)
元でも敏感な雌しべの性感に翻弄されているというのに。
ヴァギナに絞め付けされる感触に更に追い討ちを掛けられてしまう。
「す、凄いですっ! 触手チンポっ、気持ちよすぎですっ」
人外の快楽に堕ちたクロトはあっさりと飲み込まれ、それを貪ろうと触手を操った。
じゅぷっ! じゅぷっ! じゅぷっ!
「ひぎっ!? ぎ、ぁっ!? ひうっ!!」
「あぁっ! いいっ! ティーシャちゃんの処女マンコっ!
きつきつでっ! あぁんっ♪ 蕩けてしまいますぅっ♪」
先端に生えている疣疣の一つ一つが陰核のように敏感なのだ。
それが処女膜の残骸に引っ掛かったり。
或いは、肉ヒダに磨かれたりする度に脳内がピンク色に染まる。
この快楽は人間の時には味わえなかった物だ。
それをもっと味わいたいと思い、ティーシャの体を抱き寄せる。
「んああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっっ!!?」
熱い抱擁を交わすと、ティーシャの股ぐらは花肉の真上へと押付けるような形となる。
痛みからかそれ以外のものからか。
狂ったような声をあげるティーシャの体をぐりぐりと触手へと押付ける。
アドニス本体が破瓜の血を啜った。
(あぁ、堪りませんっ♪ 人間の女の体っ♪)
いやらしく肥大化したニップルをティーシャのそれに押付け、蕾同士で擦り付けあう。
催淫粘液に濡れた柔肌同士がニチャニチャと音を立てて、もどかしい性感が生まれた。
あうん、と色っぽい声が漏れる。それはティーシャのものだった。
桜色の先端が触れ合う度に、きゅん、と雌しべが締め付けられるのだ。
「くすくす。ティーシャさん、チクビが好きなんですかぁ?
おっぱいが小さい人って感じやすいって言いますけど、ほんとだったんですねぇ♪
いいですよぉ♪ いっぱい感じさせてあげますぅ♪」
しゅるしゅるとおしべ触手を生やす。
起伏の少ない肉紐のような触手。その膨らんだ先端が開き、内部が露出する。
「えぇい♪」
ぱくり。
「んやああぁぁぁっっっ!?」
柔毛がびっしりと生えたおしべ触手に乳首を咥え込まれ、ティーシャが仰け反る。
(あっ♪ ティーシャさんのおマンコ、きゅん、ってなりましたぁ♪)
「やっぱり、おっぱいがいいんですねぇ♪ それそれぇ♪」
おしべを操る。
こりこりとしたピンク色の蕾を舐めしゃぶり、或いは柔毛でしごき立てる。
「ひやあぁっ!? おっぱいっ、おっぱいばっかりっ…!
んああぁぁぁっ!!? だめぇっ! 気持ちいいっ! 気持ちいいっ!」
雌しべに姦通されたままティーシャが喘ぎ悶える。
催淫液がいい塩梅に体に回ってきたようだ。
涎を垂らしながら彼女は悦んでいる。
快楽が強すぎるのか瞳が濁り、意思の光が消えかかっていた。
破瓜の痛みも、もう殆ど残っていないだろう。
「はぁっ…! はぁっ…! ティーシャさんっ、エロくなってきましたっ!
どうですかぁ? 気持ちいいですよねぇっ、でもおマンコはもっといいですよぉっ」
ごつんっ、と子宮口を雌しべの先端で小突く。
「ひやああぁぁぁぁぁっっ!!!?」
「あぁんっ♪ 触手チンポっ、締め付けられるぅっ♪
ねっ♪ いいでしょうっ? おマンコいいですよねぇっ?
もっとハメハメしてあげますっ」
じゅぷっ! じゅぷっ! じゅぷっ!
「ひやっ!? んあぁっ! ひいんっ!」
「あぁっ♪ いいっ♪ 処女マンコ気持ちよすぎますぅっ♪
あぁっ♪ ああぁぁっ♪ 種子がっ、種子が出ちゃいますっ♪」
雌しべの根元から熱い何かが込み上げてくる。
それは人間で言うところの射精直前の感覚に似ていた。
初の種付けを予感して、際限なく興奮してしまう。
雌しべ触手を何度も何度もピストンさせ、ティーシャの中を蹂躙する。
「あぁぁっ!! すごいっ! 触手っ! ごりごりされてっ!
お腹捲れるぅ! おかしくなるぅ!」
「わ、わたしもっ…! ティーシャさんの処女マンコに…!
あぁんっ♪ もう、触手チンポ止まりません! ティーシャさんに種付けするまでっ!
――あぁっ!? 来たっ、来ましたっ! 触手チンポにっ!
ドロドロザーメンと、アドニスの種子が! あぁんっ♪ もう、ダメですぅっ♪」
どくどくと触手ペニスが脈動する。
「あぁっ!? 出ますっ! あぁっ♪ ああぁぁっ♪ すごいっ♪
ああぁっ♪ いいっ♪ あぁっ♪ ああっ、あっ、あっあっ、ああっ♪
出るっ、出ますっ! 触手チンポからっ! あぁんっ♪
こってりザーメンとっ…! あっ、あぁぁ、あぁっ♪ 種子がっ♪
出しちゃう種付けしますっ、ああぁっ! あぁぁっ! ああぁっっっ!
ティーシャさんに、種付けしますぅぅ、ああぁぁぁぁぁああああぁぁぁああっ!!」
子宮口に先端を食い込ませる。
同時に繊毛触手が生え出し、子宮口をこじ開けた!
びゅるるっ! どぴゅどぴゅどぴゅっ!!
「あはああぁぁぁぁぁぁぁっっっ♪」
「んやあああぁぁぁぁっっ!!? あちゅいぃっ!!?」
(すごっ、いっ、ですっ♪ しゃせー、気持ちよすぎですぅ!)
雌しべの中を精液と種子が通り抜ける。
種子が噴出する精液に推し進められて、細い輸精管を無理矢理拡張させられるのだ。
輸精管と同じくらいの性感帯となった尿道で結石が詰まったようなものだ。
その感覚は正に法悦。
未知の快楽にクロトは打ち震え、涎を垂らし、ティーシャを力強く抱きしめる。
その拍子に咥えていた二つの頂点を、思い切り吸引してしまった。
ちゅううううぅぅぅっ!
「うああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!?」
びくびくびくびくっ!!
中出しされた挙句、乳首を吸引されたティーシャがアクメを迎えた。
「あうっ!? ティーシャさぁんっ、すごい、おマンコっ!
触手チンポっ、もがれちゃうっ! 千切れちゃうっ! ああぁぁぁんっ!?
駄目ぇっ! また、また射精しちゃうっ! ザーメン出るぅっ!!」
びゅるるっ! どくどくどくっ!
「ああっぁぁぁんっっっ♪」
凶悪な絞め付けに再び射精。
ティーシャの子宮にどくどくと栄養を注ぐ。
陵辱されている当人はと言うと熱い熱いとうわ言の様に呟きながら白目を剥いていた。
大量射精をされたせいで子宮が膨らみ、下腹部が僅かに張っているのが分かる。
じょろろろろろろ――
(あっ♪ ティーシャさん、おしっこ漏らしてるぅ)
水分、特に人間の体液はアネモネにとってご馳走だ。
花の中央、陰唇のような部分がうぞうぞと蠢き、真上から零れ落ちる尿を啜る。
その味や匂いは同化したクロトにも伝わり、彼女はうっとりとした。
「はぁ…♪ おしっこ、美味しいぃ♪」
(種付けも出来て、とっても幸せですぅ♪)
ぎゅ、とティーシャの体を抱き寄せる。
種付けをした女は自分の部下であり、仲間だ。
今まで以上に彼女が愛しく思えてしまう。
「これでティーシャさんも、私の仲間ですからねぇ♪」
ちゅぅ、と親愛の証に、唇同士を合わせ、
突如、催淫ガス突き抜けて何かが飛来した。
ぎいんっ!
反射的に防御結界を展開し、無粋な横槍を受け流す。
甲高い音を立てながら地面に転がったのは一本の短剣だ。
投擲用に特化されているらしく、刃渡り40センチ程度のシンプルな黒剣だった。
「……もう。誰ですかぁ? 折角ティーシャさんと仲良しになっていたのにぃ」
返事の代わりに再び刀剣が飛んできた。今度は四本。
催淫ガスを突き抜けて、デザインも大きさも異なる剣が僅かな時間に投擲される。
ぎんっ、ぎぎぎんっ!
「硬いな」
全ての剣を難なく防ぐと、ガスの向こうから男の声がした。
抑揚の無い声だ。その質も渋く、低い。
聞いた事のある、声だった。
(あ、まさか…この声は…)
人間を止めてもこの声を忘れる訳が無かった。
クロトの尊敬と恋慕の対象。
リビディスタの長。
剣神と謳われた最強の戦士。
ガスの向こうから、グリーズ=リビディスタが現れた。
彼が大地を踏みしめる度に、赤い甲冑が金属擦れの音を立てる。
重量感のあるその鎧には魔術による防御効果が付与されていた。
催淫ガスの効果は無く、彼は鉄面皮のままだ。
「――クロトか?」
その彼の眉が、僅かに跳ねた気がした。
「はぁい、そうです。グリーズ様ぁ♪ 私は、クロトでございますぅ♪」
ティーシャを花弁の上へと下ろし、グリーズへ満面の笑みを送る。
「アネモネへと堕ちたか……リオはどうした?」
「くすくす。私はですねぇ。そのリオ様に犯されて、アネモネになったんですよぉ?」
再び彼の片眉が跳ねる。それも先程に比べて大きく。
グリーズをずっと見てきたクロトには判る。
今彼は、狼狽しているのだ。
実の娘が人外である、と知らされた事に。
「リオは、どこに居る?」
「くすくす。グリーズ様の頼みでもそれは聞けませんねぇ?
ご自分でお探し下さぁい♪ でもその前にぃ…私と一つになりましょう♪」
触手を展開し、グリーズへと近付く。
「私、ずっとグリーズ様の事をお慕いしていたんですぅ。
好きだったんですぅ。だからぁ、お願いしますぅ。
私と、エッチしてくださぁい♪」
しゅるっ――グリーズへと触手を伸ばす。
剣を投げ放った彼は丸腰だ。恐れる事は無い。
そう思った次の瞬間、『グリーズの両手に一本ずつ、片刃の剣が握られていた』。
二本の剣が閃く。
齢五十近くとは思えないほど軽やかな動きで、体を回転させていた。
獅子のたてがみを彷彿とさせるブロンドの髪が舞い、ネービーブルーの外套がはためく。
まるでワルツでも踊っているような動きに、目が奪われてしまった。
そしてその間に、捕獲用に伸ばした八本の触手が全て切断されていた。
(……はぁ、素敵です…グリーズ様ぁ♪)
いやいや、感心している場合ではない。
丸腰だと思って手を出したのは安直過ぎたと言えよう。
何故なら彼の能力は――
「残念だが。お前を受け入れる訳にはいかぬ」
手にした二本の剣を地面へと突き刺し、グリーズは両手を空ける。
その掌から、青く光る魔術陣が生み出されていた。
そこを境界に、『新たな武器が出現する』。
彼の手には、墨を流したような黒い鞘が収まっていた。
――剣神と謳われたグリーズの力。
それは転移魔術だ。
但し、自分が転移するのではない。
リビディスタの屋敷に安置された彼専用の武器庫から、『得物』を転移させるのだ。
そして彼はありとあらゆる刀剣の扱いに長けている。
更に、今まで培ってきた富と、傭兵時代に偶然手に入れた名剣の数々。
グリーズは戦う相手によって常に最適な武器を選び、手元へと引き寄せる。
剣神とは、あらゆる剣を扱う彼に与えられた称号なのだ。
「くすくす。流石は私のグリーズ様♪ 一筋縄ではいきませんねぇ?
ですが私の防御魔術も負けてはいませんよぉ?」
上昇した魔力を惜しみなく使い、防御結界を張る。
タイル状の物理障壁はドラゴンのテイルアタックすらも弾き返す代物だ。
それを二重、三重、四重と重ね掛けしていく。
戦術クラスの魔術攻撃ですら防御する事が可能だろう。
「なら試すか?」
(…あ…グリーズ様、笑った…?)
僅かだったが、彼の唇の端が釣り上がった気がした。
根っからの武人なのだろう。
自分の力を試す。その事に喜びを見出す男なのだ。
それがクロトには野蛮だとは思えない。自分の力を誇示する事なんて、誰だってする。
グリーズが踏み込んできた。
黒い鞘を腰溜めに構えたまま、左の親指で変わった意匠の鍔を弾く。
同時に前面に魔術障壁を収束させ、
グリーズの刀剣が、閃いた。
遠く離れていたにも関わらず、クロトには抜刀の瞬間を目に収める事が出来なかった。
彼の剣は既に振り抜かれており日の光を受けて刀身が美しく輝いている。
(…そんな…)
良く見ると結界が真横一文字に切り裂かれている。
ばりぃん、とガラスが割れるような音と共に結界が砕け散った。
紙でも切るように、彼の斬激が結界を切り裂いたのだった。
それも剣の間合いの遥か遠くで。
グリーズは居合いの際の剣圧だけで結界を破壊したのだ。
「ムラマサ、と言う異国の魔剣だ。魔力を無効化する力がある」
ひゅんひゅん、と刀剣を回転させ、鞘に収める。
「対魔術士用の切り札だ」
「…道理で私の結界があっさりと破られた訳ですね」
「まだ続けるか? 勝ち目は無いぞ」
「くすくす。おかしな事を言いますね?
続けるも何も完全にアネモネと化した私は、もう人間に戻れません。
人間に倒されるか、人間を襲うか。その二択しか無いのです。
それなのに、グリーズ様は私にどうするかお尋ねになっています。
くすくす。どうしてですか? まさか、躊躇っておられるのですか?
そうですよね? 私のような化け物でも、気を遣ってくれているのですね?
ああっ、なんてお優しいグリーズ様! 大好きですグリーズ様っ!」
魔物の本能が溢れ出す。
それは狂おしい程の愛と交わり、只、眼前の男の精を貪り尽くしたくなる。
「グリーズ様ああぁぁぁぁっっっ!!!」
触手を展開し、グリーズへと伸ばす。
それは攻撃といっても差し支えの無い勢いだった。
触手に魔力を通し、硬度を上げているのだ。
それが雨あられと言った具合に、グリーズ目掛けて降り注ぐ。
どがどがどがどがっ!!
触手が地面に穴を穿つ。まるで槍でも刺さったようだ。
だが、そんな死の雨の中をグリーズは躊躇無く踏み込んで来た。
体に大穴を開けようとする肉の槍を最低限の動きで避け、あるいはムラマサで迎撃する。
元より十歩と離れていなかった距離は、あっと言う間に縮まった。
グリーズが跳躍する。
赤い甲冑は見た目以上に軽量らしい。
彼は花弁の上へと着地すると、こちらの喉元に刀を突きつける。
その鮮やかな動きに、攻撃しながらもクロトは見とれてしまった。
「何か言い残す事はあるか?」
問われて反射的に口を開き、すぐにそれを噤んだ。
死への恐怖は無い。
助けて下さい。リオ様と仲良くして下さい。ティーシャを連れて帰らないで。
言いたい事は色々ある筈だった。
だが結局。ここ死に際に来て、口をついた言葉は、
「貴方を愛しています」
グリーズはすまない、と呟いた。
それが答えだった。分かり切っていた答えだった。
だが、想いを告げられた、その事実だけで救われた気がした。
僅かに表情を曇らせる愛しい人に、満面の笑みを送る。
直後に白刃が閃いた。
***
リビディスタの戦士達、その実力が試される時が来た。
人間同士の訓練でもない。
森の中の、訓練と言う名目で行われていた『狩り』でもない。
森の魔物達との総力戦が今、始まろうとしている。
ドルキは思う。
グリーズと共に作り上げてきたリビディスタの家。そして最強の戦士達。
それらが有象無象の化け物どもに負ける筈が無い。
ドルキは出陣する門下生達に激励を与え、彼らの壮観な姿に興奮すら覚えた。
そのせいで死んでいたと思っていた娘が屋敷に入り込んだ事にも気付かない。
リオは、そんなドルキを嘲笑いながらパセットと共に屋敷の従者達を次々と犯していく。
パセットも同僚達を犯す悦びに目覚めてしまい、屋敷の中のメイド達を全て支配した。
さあ、復讐を始めよう。
準備は整った。
門下生達を送り出したリビディスタにはもうろくな戦力は残っていない。
囮になり、散っていったクロトの為にも、あの女に、引導を渡してくれる。
次回、永久の果肉十二話、
『愛憎劇―前編―』
グリーズの能力は金色の弓兵職な彼の宝具と同じですね。
剣神のレリーフもどこぞの固有結界をイメージしています。
剣が沢山地面に突き刺さってる感じのですね。
補足ですがグリーズが使っていたムラマサはレプリカで本物ではありませんw
剣自体はちゃんと使えるので本人は本物と信じているという設定ですw
ちなみに作者は、今回エロよりもリオとトロル達のシーンがお気に入りです。
猫娘かぁいいよ猫娘。
さあ、物語もいよいよクライマックスです。
次回はリオとドルキとのタイマンですね。
バトルメインになりますが、前半にパセットが同僚に種付けするシーンも入れる予定です。
シナリオ構成は次の『愛憎劇』を前編、後編と二話使い、決着。
その次でエピローグで丸々一話使うとして。
あと三回の投稿でシリーズ完結予定です。
うっはぁ、長かったなぁw まあ、一息つくのは少し早いですけどw
という訳で寄生スレの皆様、よろしければもう少しお付き合い下さいね。
あ。いつものように誤字脱字感想等なんでもお待ちしておりますー。
それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう。
養女っ、ばん、ざああぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいっっ!!!!
養女…だと…
養生せぇえや
こんなSS読んだら大養生してしまいそうだ
たしかにすごく元気になる、まちがいはない
読み終えたこの瞬間、どんな表情をしたらいいのかわからない
しかし投下はGJでした
クロトは殺されたのか・・・予想はしてたが少し悲しい
しかしリオがかわいすぎたので俺もすごく元気になった
マリオンにバッサリやられたネーアさんが普通に生きてたのがクロトさん生存フラグと信じる
死人は出したくないと前スレで乙×風さんが言ってるから、クロトは生きてると信じてる
まぁアネモネってそんなもん…なのか?w
何かアネモネのイメージが凄い事に…
月曜日。それはブルーマンデーとかサザエさん症候群とかそういうので
憂鬱な一週間の始まり。
皆に渡っているこの薬はあるお方が作ってくれた養情晩剤っていうお薬なんだけど
月曜日の鬱を抑えてくれるすばらしいお薬。
月曜日が待ち遠しくなっちゃうくらいに、ね
うふふ、効果はスレ住人に抜群のようだね。
こっそり教えちゃうけど実はこのお薬、ある植物の種なんだ。
次の月曜日が、楽しみ、だね
今週のデュラララはこのスレっぽいかな?
>>121 詳しくはネタバレになるんだが手にした人間に加えて斬った相手も支配下に置く妖刀が出てきた
……悪堕ちスレの方が向いていたかな?
確かにそれだけを見ると寄生っていうよりも悪堕ちっぽく見えるね
ところでこのスレ的には、絵ってどうなんかな?
小説はボキャブラリー無くて書けない……
もしよかったら、イラストストーリー形式で今描いてるのがまとまったらうpしてみたいんだ
超遅筆だけれども……
あと、他の小説作家さんのに絵を描く的なのはNGかなぁ?
具体的には永久の果肉がドツボ過ぎて、ついつい腕が勝手にぐわぁぁぁぁ
>>124 正直、俺は絵(漫画等)で見るのが好み
鬼神童子ゼンキみたいな感じに寄生してるのってあんま見かけないんだよなぁ
>>124 個人的には歓迎だけどコラボは許可取ってからの方がいいだろうね
角煮には該当スレ無いんだっけ?
そういや奈闇氏はもうここ見てないのかな…
>>124 ぜひとも両方見てみたい
もちろん後者は乙×風氏次第だけど
絵に短いストーリーがついたものなら歓迎
ただ他の人が書いてすでにある作品に絵をつけるのは個人的には嬉しくない
最初に作品読んだ時点である程度自分の中でイメージできてしまってるせいで
折角描いてもらった絵が自分のイメージと合わなかったときのがっかり感がひどいし
描いてくれた人に申し訳ないとも思うから・・・
まぁ見たくない人は見なくてもいいようになってればそれでいいだけなんだけど・・・
個人的な意見なので聞き流してもらっても全然かまわない
自分はかまわないというかオリジナルならぜひ見てみたいのだが
絵の貼り付けは板の禁止事項だよね?
だから外部に貼って誘導になるのかなと
ざわ、、、ざわ、、、
そろそろスーパー乙×風タイムのスタートなのだろうか
ワクワク
とりあえず裸でベッドに入った
まだ冷えるっていうのに裸とか・・・まぁがんばれよ
風邪ひくなよー
俺は油断して扁桃炎で3日寝込んだから人のこと言えないけど
月曜なんて憂鬱でしかないのに頑張れてしまった
この調子だと明日も悶々としながら頑張れそうである
あれ?お預けで尚喜ぶなんて、なんか調教されてないか俺…
いつもあると思っちゃだぁめ♪
でもあなたが私の言うことを聞いてくれるなら話は別だけど…
ああっ……なんで……?なんで来ないの……?
アレが、アレが欲しいのぉ!!アレをちょうだい、もう我慢出来ないのぉ!!
>>138 内定の事ですね。就活浪人は大変ですね。
140 :
名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 08:45:22 ID:SdVZ8LnV
なんでこのスレの中に現実がいるんだよ
>>139 なんでこのスレの中に現実がいるんだよw
あれ、なんで
>>142が書き込まれているんだ…?
指先が自分の意思を離れているのか?
そうよ。あなたの指先は
あれ…勝手に文が、指が止まらな
もう、あなただけの物じゃなくなったのよ。
いまさら気付いたの?
それじゃあ、寝てる間に私がしたことも覚えてないのかしら?
ここまで打つと指はまた動かなくなった。
そういえば一昨日の朝に
それはともかく、ちょっと吊ってくる。
>>144 吊るな!
むしろSSで俺達を「釣って」くれ!
レスありがとう
うpろだがどこ使えば良いか分からないから、またまとまったら探してうpしてみます
コラボ的なのは、またその都度許可をもらってみることにするよ
>>127 そう名乗った時期もありました……
今度は「期待だけさせておいて」という事の無い様、昔の自分とは決別しようと思います
なるほど…生まれ変わったんですな
寄生されて生まれ変わったのか
前にウルトラマン的異星人に侵食されて快楽とともに消滅する女性の話を拝見しましたけど、
それとはまた違う形でカラータイマー的なアイテムを張りつけられる事で侵食されてウルトラマン化すると言うネタはこちらではどうでしょうか。
完全に侵食されてしまうと言うよりも共存形態だけど変身していないと何か落ち着かない・でも変身すると時間制限つきと言うベタですけど…
寄生された事で変身能力を得たヒーロー(ヒロイン)か。良いねえ。
仮面ライダーみたいな等身大モノだとなお。
ホワイトリリィだな?
確かクウガの変身ベルトも神経繋がって身体と一体化してたよな?
ベルトに(性的な意味で)刺激を与えて変身してたんだろうか?
>>152 変身!!…ビクンビクン。
リョナRPGの侵蝕蟲思い出したわ。
>152
考えてみるとクウガの変身ベルトもそんな感じで応用できますね。
ダークアイアルティは支配された・レッドアイアルティは共生成立とかで
実際グロンギも普通の人間にその手のアイテムを寄生させて怪人化と言う可能性を考えた事もあったり
こいつらのにおいを消してやるッ!
リオたんがいないとお腹の中の職種が切ない
>>156 リオたんがいれば職種が非正規とニートだけどいないとニートのみだからな。
性器職種になりたいよぉ
>>154 そんな感じはしますね
いわゆるグロンギとリントの関係が価値観の違う民族同士でありそこでグロンギにアマダムが渡りもともとの価値観がさらに強化されたとか
まぁ、扇動者がいたかもしれませんが
>>159 かのホビジャパSICではグロンギは狩猟民族・リントは農耕民族であり、
グロンギが隕石に交じっていた物体の力で怪人化して凶暴化した
実はクウガのアマダムもグロンギが「カモ」としてリントに意図的に横流ししたものだったと言う事でしたけど…
うろ覚えならすみません
となるとそれこそ破壊兵器として寄生した存在が逆に寄生返しされる展開と言うのもここではどうなるか…?
なんか横文字だらけで日本語に見えなくなってきた、俺だけだろうけど
グロンギ語で書かれないだけマシだ。
仮面ライダースレに寄生されつつあるな
よし、いまこそ!
いあ乙×風(氏)!
今年の寄生ラッシュはどんな感じなのだろうか
人の波が嫌だから上京二年目にしてひきこもりGW
>>165 逆に自分が部屋に「寄生」するオチもいかに?
寄生するのに数時間待ちか
あぁ…疼きが止まらない…一体どうなってしまったのこの身体…
アレルギーの症状ですね
何か心当たりありますか
魚介類を食べたとか……
タコ?
ああそれですね
ほら背中の発疹がだんだん吸盤みたいに変化してきました
ここからタコの足が生えてきて
あなたの身体を撫で回すんですよ
そしたら疼きも収まりますって
疼くとか生半可なものではなく四六時中イキっぱなしになるんですから
車の中でお楽しみ中の兄妹が妹の中に取り付いていた石(ICチップ?)が発動して兄を取り込んでコアになって、機械獣に変身していく某所のssがちょっと萌えた。取り付く描写がもっとあれば良かったんだけど。
>>171 融合 変身でググルと上の方に出てくるssサイトの機械恐竜メカティラノあらわるっていう作品がそれ。
融合変身の描写メインのサイトだから寄生は少なめということは一応言っておく。
二週間もほったらかしにしてすいません。
謎のアクセス規制や仕事に追いやられて投稿する暇がありませんでした。
今もまだゴタゴタしていて、投下は来週になりそうです。
ご心配をお掛けしました。
>>124氏
永久の果肉のイラスト、全然オーケーですよ。
むしろ私は絵心が破滅的に無いので誰かが描いてくれるならば喜ばしい限りです。
というかこちらからお願いしたいくらいです。
でも128氏の言うとおりキャラのイメージって人によって違うでしょう。
主に私の筆力が足りず、読者様の想像力に頼っているのが原因なんですが。
あうあう。
兎も角です。
確固としたイメージがあるのはリオとネーア、パセットくらいでしょうね。
マリオンとかクロトとか、実は作者の脳内でも割と適当です。
人によっては芳しい反応を得られない、という事を念頭に置いた方がいいかもしれません。
それではまた。
乙×風氏来た!これで勝つる!!
あとIDが微妙にウワァァンっぽい
今更だが悪堕ちと寄生の定義で悩む
自分の嗜好を表すなら悪堕ち+人外化フェチとでも言えばいいのか
まあ雑食なんで抜けちゃえばなんでもいいんですけどねー
昔算数で習ったベン図で言うと丸同士が重なり合っている感じだから
明確な区別は難しいよな
大変お待たせしました。乙×風です。
さあ、今日も頑張って養情晩剤を投下、じゃないや、投与します。
今回はパセットが漲りますよぉ。
同僚のメイド達を犯しては種付けし、犯しては種付けし。
いやシーン自体は少ないです。すんません。尺が取れませんでした。
(アドニス開花、種付け、バトル多め)
NGワードはそんな感じです。
名前有りの女の子(メイド達)をもっと増やして寄生拡大シーンを増量したかったです。
でもそれじゃ無限の果肉の二の轍を踏むんで、あえてばっさりと削除しました。
あれ? 寄生スレに投下する意味ががが
そんな訳ですが。それでも読みたい、という方のみお進み下さい。
以下本編です。20レスほど消費します。
第十二話 愛憎劇(前編)
『っ…クロトさんが…』
腹のアドニスを通して主の狼狽した声を聞いた。
丁度パセットが屋敷の門をくぐったところだった。
(クロト様が、どうかしたんですか?)
クロトとは余り面識も無いパセットだったが、リオからアドニスを授かった者同士だ。
それは姉妹と言えない事も無いだろう。
アドニスの繋がりはリオとのそれに比べれば細いが、微かにクロトを感じる事も出来た。
だが今はそれが無い。
『リンクが、切れた…もっとちゃんと意識を繋げておけば良かった…
そうすれば、何か手助けが出来たかもしれないのに…』
心優しい淫魔は仲魔が消えてしまった事を悲しんでいるようだった。
アドニスを通して、彼女の心が僅かに流れ込んでくる。
(何か、何でもいいから励ましてあげないと)
『…ありがとうパセットちゃん。でも、大丈夫。その気持ちだけでも頑張れるから。
クロトさんは私の考えどおり、リビディスタの目を惹きつけてくれたんだと思う。
じゃないと防御の得意なあの人が、簡単にやられる筈が無い。
パセットちゃんは予定通り屋敷に潜入して種を蒔いて。私もすぐに向かうから』
(はい。リオ様)
『私、クロトさんの働きを無駄にしないから。絶対復讐を遂げてみせる。
でも、パセットちゃん? 危なくなったら、すぐに逃げてね?
クロトさんが消えて、パセットちゃんまで消えたら、私、今度こそ…』
それからは言葉にならなかった。
が、主が自分をそれほど大切にしてくれているのは言葉が無くとも理解出来た。
『これは命令だからね、パセットちゃん』
(分かりました)
繋がりを通しての命令は決して逆らう事は出来ない。
もしそんな時が来れば、主を見捨てて逃げる可能性もあるのだ。
そしてそんな事が起きないようにと、パセットは祈った。
「あ!? 貴女! 今までどこに行っていたの!?」
突如横合いから掛けられた声に振り向く。
声の主は女性だ。歳は19。やや細身の体躯にメイド服をそつなく着こなしている。
三つ編みの黒髪と丸い眼鏡が特徴的だ。
彼女の名はメナンティ。
面倒見が良い人柄ではあるが、生真面目で融通が利かない。
パセットの姉貴分とも言える女だった。
今も腰に手を当てながらパセットを正面から見据えている。
「勝手に屋敷から居なくなっちゃうし! 街は大変な事になってるし!
リオ様は行方不明だって噂だし! いつの間にかマリオン様も帰ってきてたって話しだし!
もう一杯一杯なのよ! 余計な心配を掛けさせないで頂戴! 分かった!?
分かったら返事!!」
「…はい」
「…何よ。えらく素直じゃない…? 気持ち悪いわねぇ。
ひょっとして何か変な物でも食べたんじゃない?」
メナンティが訝しげな視線を送ってきた。
それもそうだろう。こちらは一度は精神を壊され、人格が変わってしまったのだ。
元気の塊のような過去の自分と比べれば、今の自分は別人と言っても差し支えない。
もっとも、腹にアドニスの種子を植え付けられれば誰だって大なり小なり変わると思うが。
「食べるのは、今からです」
ふ、と思わず口元が緩む。
腹の中のアドニスが目の前のメスを前に興奮している。
下着の奥から、濃厚な催淫ガスを噴出し、辺りに甘酸っぱい香りを漂わせた。
「…食べるって…何を…?」
聞き返すメナンティの体が僅かに脱力した。
「…え…? あれ? 何この、匂い…ふらふらする…」
立ち眩みを起こしたように眼鏡の侍女の体が傾く。
それを素早く脇から支えると、耳元で囁いた。
「お機嫌が優れませんか? ならお部屋までお連れしますよ?
――そこなら、誰も邪魔は入りませんから」
メナンティの肩を背負って、歩き出す。
主から受け取った魔力のお陰か、女一人くらいなら楽に支えられる。
「邪魔、って…何の話を、しているのよ?」
「嫌ですねぇ。さっき、何を食べるか、ってお聞きになっていたじゃないですか」
くすくすと笑う。
腹のアドニスが疼いてしょうがない。
種付けの快楽がどれほどのものか、早く味わってみたい。
その気持ちが、腹の魔物から溢れてくるもので、自分の意思ではないと分かっている。
だが元より主に捧げたこの体、この魂。
穢れるというならどこまでも穢れてみせよう。
主の為に。
「パセットが食べるのはメナンティさんですよ」
***
パセットがメナンティを拉致しようとしているその頃。
ドルキは屋敷の庭園に整列する戦士達を眺めていた。
彼らはこのリビディスタで厳しい訓練に耐え、力をつけてきたエリート達である。
剣を、槍を、弓を、或いは魔術を。
それぞれに秀でた者達が集まり、チームを組み、魔物どもを殲滅する。
計百名余の戦士達。
一挙一動乱さずに整列する彼らの精悍な立ち姿にドルキは感銘すら覚えた。
これが愛する者と共にこの三十年で作り上げてきた集大成だ。
これさえあれば、魔物の数百や数千など、恐れるに足らず。
「これは、訓練ではありません」
最強の私兵団に、厳かに語りかける。
「こうしている間にも魔物達が街へ侵入し、何の罪の無い民が犠牲となっています。
一足先にグリーズ様が殲滅にあたっていますが、いくら英雄と言えど限度があります」
ドルキは静かに、だが徐々に戦士達の闘志に火を点けていく。
演説紛いの行為にも熱が入り、声も大きくなる。
実際、ドルキは僅かに悦に浸っていた。
愛する人と育て上げてきた最強の戦士達。その真価が今問われようとしているのだ。
興奮しない筈が無い。
だから、こっそりと庭の反対側から侵入した淫魔の存在にも最後まで気付かなかった。
普段の彼女ならそんな失態を犯す事は無かっただろう。
だがリオが消え、グリーズが戦っている。
そしてリビディスタの総力を上げての戦いが始まろうとする時。
その瞬間に、ドルキに僅かな油断が生まれていたのだ。
「さあ! 今こそ貴方達の力を試す時です!
厳しい訓練を耐え抜き、磨き上げた技術を! そして力を!
あの醜い化け物共に見せてやりましょう!
そしてそれが終わった時、貴方達は英雄となるのです!」
おお、歓声が上がる。
戦いの前、士気の向上は必要不可欠だ。
それは一対一の決闘でも組織戦でも変わらない。
ドルキは出陣していく戦士達に激励を与えていく。
呑気なものだった。
この間にも、屋敷の中では淫魔の策略は進んでいるというのに。
***
屋敷の中、赤い絨毯の引かれた通路を、二人の侍女が歩いていた。
栗色のツインテールをした十代半ばの少女。
それから三つ編みを下げた眼鏡の女性だ。
「ここですよね」
ツインテールの少女、パセットは肩を貸しているメナンティに問い掛ける。
目の前はメナンティの自室だ。
パセットは荒い息を吐くだけで返事をしないメナンティに微笑みかける。
そして本人の了承も無しに部屋へと踏み込んだ。
気真面目な彼女の性分を表すように、部屋の中には必要最低限の家具以外は何も無い。
パセットは殺風景な部屋を我が物顔で闊歩し、ベッドへ一直線に向かう。
酷く、子宮が疼いていた。
「着きましたよ」
ベッドに着くとやや乱暴にメナンティの体を横たわらせる。
きゃ、と彼女は短い悲鳴を上げると潤んだ瞳でこちらを見上げてきた。
「そんな目をしなくても、ちゃんとしてあげます」
「な、何を…っ」
「惚けないで下さい。アソコ、疼いてしょうがないんですよね?」
こちらの指摘に彼女は泣きそうな顔をした。
眼鏡の向こうの黒い瞳には、羞恥と、それ以上の欲情が垣間見えた。
――ずぐん。
「…っあっ…!?」
(すご、いっ、アソコっ、じくじくしてるっ)
発情しているメスを嗅ぎつけて、アドニスが活動を開始したのだ。
子宮に根付いた種子が芽を伸ばし、生殖器として胎外へと伸び出て行く。
(ひゃっ、お腹の中、気持ちいいっ、奥から、出てくるっ)
「ぱ、パセット?」
「め、メナンティ、さんっ、パセットも、同じなんですっ。
今、とっても、興奮してるんですっ。み、見て下さいっ」
スカートをたくし上げる。
リオの魔力によって編まれたメイド服は外見だけを取り繕うものだ。
よってパセットは下着を着けていない。
窓の外から降り注ぐ日の光が、スカートの下、未成熟な割れ目を照らし出す。
だがそこは十代半ばの少女のものとは思えないほど濡れぼそっている。
まるで場慣れした娼婦の女性器のようなグロテスクさと淫靡さを醸し出していたのだ。
(あ、メナンティさんに、見られてるっ、パセットのおマンコ、視線が刺さってるっ)
知り合いに、と言うより主人以外の人間に最も恥ずかしい場所を見られ、頭が茹で上がる。
直後に腹から衝撃が来た。
「ひゃ、あぁっ…! 出て、出てくるぅっ!」
アドニスの芽が、子宮口を押し広げ、膣壁を擦りながら下がってくる。
子宮の内側から敏感な肉壁を拡張される感覚に、脳髄が痺れ、膝が笑う。
「ひゃ、ぁんっ! これ、気持ちいいっ、お花っ、オマタから出てくるの気持ちいいっ!
あ、あっ! いいっ! いっちゃうっ! パセット、いっちゃうよぉぉっ!!」
ずり、ずりりりりぃっ!
「ひゃううううんっっ!!?」
子宮から陰唇に掛けて痺れるような官能に満たされた。
あまりの快楽にあっけなくアクメを迎え、スカートを持ち上げる手がぷるぷると震える。
濃厚なアドニスの催淫香が鼻をついた。
「ひ、ひぃっ…!?」
怯えるメナンティを焦点を失った瞳でぼんやりと見詰める。
彼女の視線を目で追えば、自分の股で『ぐぱぁ』と花開くアドニスの姿があった。
(はぁ…♪ これでパセットも、リオ様と同じ♪)
「そ、それっ、何、何なのっ?」
「あ、はっ…んっ…! はぁっ…、はぁ…♪
こ、これはぁっ…、女の子を、とってもぉ、気持ちよくしてくれる魔物さんですぅ…。
そんなに怯えなくてもぉ、……んっ…♪ はぁっ…♪ はぁ……大丈夫、ですよぉ?
痛い事も、怖い事も、なーんにも、ありませんから♪」
こちらもベッドに上がり、怯えるメナンティを押し倒した。
催淫香のせいで抵抗は少ない。
仰向けになったメイドのスカートを捲り上げると、色っぽい黒の下着が現れる。
「へー。メナンティさん、エッチなパンツ穿いてるんですね」
「あ、貴女には関係無いっ」
「そう言わないで下さい」
黒い生地の真ん中には、くっきりと充血した陰唇の形が浮き上がっている。
リオ以外、同性の性器なんてじっくり見る事は無かったので何だか新鮮な気分だった。
「べちょべちょだぁ♪」
「きゃぁっ!?」
黒い下着に浮き上がったヴァギナを中心に徐々に愛液の染みが拡がっていた。
それを押し込んでみると、ずぶずぶと指が沈み込み、じゅくぅ、と音を立てる。
メナンティは快楽に戦慄いて、目を白黒させていた。
「嘘、どうしてこんな、敏感にっ」
「もっと、気持ちよくなりますよ」
パセットもそうでした、と付け加えてから彼女の体液をぺろりと舐める。
酸味の効いた、愛液の味に頭がクラクラする。
ぎゅるり、と腹の中で何かが蠢いた。
「あっ!? ん、ひゃぁ、ぁっ…んっ! ぁあっ…!」
花開いたアドニスの奥から、今度は生殖器がせり上がって来た。
ずるずると敏感な茎の中を、敏感な触手が押し通り、甘美すぎる快楽が弾ける。
ずるるるぅっ!
「ひゃぁぅぅんっっ…♪」
「ひっ」
花冠の中心から、雌しべに相当する生殖器が生え出した。
(は、花の中、とっても気持ちいいっ、パセット、またイっちゃったぁ♪)
花の中もこの生殖器もパセットの神経と完全に繋がっている。
敏感な第二の膣とも言うべき器官を犯され、また、犯す感覚に腰砕けになっていた。
だがそれだけではアドニスの本能は満足しない。
「はぁ、はぁっ…♪ メナンティさんっ♪」
「あ、嫌っ…! やめ、なさいっ」
「いや、嫌ですっ、もう、止められませんっ♪」
つっかえ棒のように伸ばしてくる手を払いのけ、下着を下へとずらす。
きゃ、と漏れたメナンティの悲鳴は羞恥によるものか恐怖によるものか。或いは――
(メナンティさんのアソコ、エロイ…よぉ♪)
充血し、解れ、ひくひくと脈打つ肉のアケビ。
粘液に濡れたそこに見入ってしまう。
が、それも一瞬だった。
すぐに腹の底から目の前のメスを犯してやりたいという衝動に駆られてしまう。
「はぁっ、はあっ! メナンティさんっ、犯しますっ! 種付け、しますっ」
雌しべ触手を解れたヴァギナにあてがい、ぐ、と腹に力を込める。
ず、ずりゅりゅりゅっ…!
「あっ!? ああぁぁぁぁぁっ!!!」
「ひゃ、ひゃわぁんっ♪」
大した抵抗も無く、生殖器がメナンティの中へと挿入される。
どうやら彼女は処女では無かったらしい。
人柄の割にはなかなかどうして、侮れなかった。
(これが、女の子の中っ)
発情した肉の泥濘が、全方位から敏感な触手を締め上げてくる。
具合の良さ、という点ならリオやクロトの花の中には劣るだろう。
だが、雌しべ触手自体がフタナリペニスよりも敏感だった事。
それに、本能に従い女を犯しているという状況が、パセットを過剰なまで興奮させていた。
「いいっ、いいよぉっ♪」
ずっちゅっ、ずっちゅっ、ずっちゅっ。
「んああっ!? これっ、すごいぃっ!」
快楽に流されるままピストンを始めると、途端にメナンティがあられもなく喘ぎ出した。
処女であった自分ですらはしたなく喘いだのだ。
破瓜の痛みをとうに克服した女性に、アドニスの責めは只甘い。
堅物だと思われたメナンティの表情が、見る見るうちに蕩けていく。
「メナンティ、さんっ、はっ、ぁっ! エッチな、顔してますっ」
「だってぇ、は、ぁあんっ!? あっ、ぁあっ! そ、そこぉっ!」
「ひゃうん♪」
触手の疣がGスポットを削ったらしい。
膣穴が収斂し、メナンティの喉から一オクターブ高い声が漏れた。
「はっ! んっ! メナンティさん、パセットの触手、きゅうきゅう締め付けてますっ、
触手、そんなに気持ちいいんですかっ?」
ごつん、と子宮口を突き上げる。
それでけで目前の女は甘い声を上げて白状した。
「いいっ、触手っ、いいのっ! お願いっ、もっとしてぇっ」
「あはっ。メナンティさん溜まって、たんですねっ。
はっ! はっ…! んっ! こ、こんなにっ、乱れてっ!
は、あぅっ…!? すごい、締め付けっ…!
メナンティさんっ、真面目だと思ってたのにっ、こんなにスケベだったなんてっ」
指摘すると年上の侍女はいやいやと首を振った。
「…だって、私っ、真面目だからっ、男なんて出来ないしっ…!」
それだけで何を言わんとしているか理解出来た。
成長期の女が彼氏も作れず、性的欲求を持て余す――良くある事だ。
パセットにはそういう感情は理解出来なかったが。
ここに来る前、故郷の姉がそういう悩みを抱えていた事を今でも覚えている。
「んっ! はっ! 大丈夫ですよっ? もう、寂しくはありませんっ。
パセットを、この花を受け入れてっ…! そうすればっ…幸せになれるからっ」
ぱつぱつぱつっ…!
「あっ!? あぁっ! ほんと、ほんとにっ!?」
小刻みなピストンでメナンティの正常な思考を奪う。
生真面目な女程、一度固い鎧が剥がれてしまえばもろいものだ。
恥骨同士がぶつかり、結合部で粘液が潰れる音が響く。
触手を突き入れる度にメナンティの体が弾み、ベッドを軋ませる。
あんあんと甘い喘ぎを上げながらだらしなく涎を垂らす女の眼鏡が熱気に曇っていた。
その曇りを舌を這わせて取り除くと、レンズ越しの瞳に優しく微笑みかける。
「うんっ。そうして皆で、リオ様の為に働くのっ…!
皆繋がってるからっ…寂しくないからっ」
がつんっ。大きく子宮口を突き上げる。
「あぁんっ!?」
「ねっ? どうっ? 気持ちいいよねっ!? ずっとこうしていられるよっ!?
いいでしょっ!? だから、パセットの仲間にしてあげるっ…!
メナンティさんにも、種子を、植え付けてあげるっ」
「い、いやぁ…っ、そんなの…いらない…っ」
「嘘ばっかりっ、さっきからメナンティさんのアソコっ…!
パセットの触手を咥えて全然離さないものっ…!
ほらっ! ほらぁっ…! いいんですよねっ!?
触手チンポにメロメロになって、これ無しじゃもう生きていけないんですよねっ」
じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ!
「ぁぁんっ! あっ! そうっ! そうなのぉっ! 触手っ、気持ちいいのぉっ!」
「あはっ! じゃぁもっと気持ち良くしてあげますっ!
だからおねだりしてくださいっ! 触手チンポで種付けして下さいっ、って!」
「は、はいっ! …しょ、触手、…んぽで…っ――
触手チンポで種付けして下さいっ!」
(あぁ、メナンティさん、エロイよぉ…パセット、酷い事言わせてるう♪)
眉をハの字に寄せて、メナンティは媚びた表情を浮かべていた。
腹の中のアドニスが、眼前のメスが種付けの準備を終えた事を感知する。
どくどくと、子宮の中から精液が迸り、茎の中を通る。
「ひゃわっ!? あっ! くるっ! メナンティさんにっ!
あっ、あっ、ぁうんっ! 精液どぴゅどぴゅしちゃうっ!
アドニスの種、植え付けちゃうっ!」
「く、下さいっ、私に種子をっ、花の種子を下さいっ!
あぁぁっ!? ああん! ああぁっ! ああぁっ!
私もっ、いきますっ! あぁんっ! ついてっ、もっとついてぇ!
無茶苦茶に犯して種付けしてぇぇぇっ!!」
眼鏡の向こうの黒い瞳は、快楽でどんよりと曇っていた。
理知的な表情は消えうせ、雌の本能が剥き出しになっている。
正気を失ったメナンティは、今やただの獣だった。
「ひゃうんっ、わうんっ! もうだめっ! でちゃうでちゃうっ!
せーえきでちゃうよぉあぁぁっ! いく、いっくっ!
触手チンポでしゃせいしますっ! あぁぁっ! ひゃっ! あううんっ!
あぁぁっ! ぁあぁっ! あぁぁぁっひゃううううぅぅぅぅんっっっ!!!」
びゅるっ!! どぴゅっ、どぴゅどぴゅっ!!
「わぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!!!?」
「ああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあっっっ!!!?」
射精の快感に頭が真っ白になる。
(すごいぃっ!!? これっ、だめぇぇぇっ!!)
敏感な花の中を柔らかい種子と粘性の高い体液が迸る。
放尿するのとは比べ物にならない開放感と快楽だ。
(フタナリチンポより、もっときもちいいぃっ!!)
だと言うのに絶頂を迎えたメナンティの膣がきゅうきゅうと締め付ける。
それが肉壁に雑巾絞りされるような感触が更なる射精に繋がった。
びゅーびゅーと底を知らないように白濁液を注ぎ込む。
「あひぃっ♪ んわぁうんんんんっ♪」
パセットは犬らしく舌を垂らし、くいくいと腰を使いながら射精の快感に耽る。
メナンティもだらしなく顔を弛緩させていた。
二人してアヘ顔を晒しながら、下になったメナンティの顔にだらだらと涎を零していく。
辺りにアドニスの催淫香と、女の発情臭が一層濃く、立ち込めた。
びゅしゅっ。
結合部から何かが噴出し、花弁の粘膜を叩く。
メナンティが潮を吹いたのだった。
その直後、快楽でぶっとんだ頭が部屋の扉が開く音をぼんやりと知覚した。
背中越しに、入り口の方へと視線を向ける。
「――あ、やってるやってる♪」
(……ぁ…リオ…様…だぁ…)
笑顔で入室してきたゴスロリ姿のリオを見つけると、それだけで嬉しくなってしまう。
主人は人の姿だったが情事の余韻が残るベッドに近付くと、そこで徐に淫魔へと変身する。
「種付け終わった? ――あ、いいよ。口に出さなくて。疲れてるでしょ?
心を読むから、思考するだけでいいよ♪」
主の心遣いに胸が幸せで一杯になる。
(種付けは、無事、終了しましたぁ…)
「そっか♪ ね? どうだった? 気持ちよかったでしょ♪」
(腰が抜けましたぁ…♪)
「うんうん♪ 気に入ってもらって良かった♪ ――さて、それじゃぁ、と。
パセットちゃん? 触手チンポ抜いてくれる?」
「…? はい」
言われた通り触手を引き抜く。
だが、アクメを迎えた肉の壷は卑猥な形状の雌しべを必死に咥えて離さない。
後ろ髪を引かれるような思いで腰を引くとずるり、と触手が引っこ抜けた。
甘い愉悦が走り、びゅるり、と一度射精。
ひゃうん♪ と甘い声を上げてしまう。
「パセットちゃん、ワンちゃんみたい♪ 可愛いにゃぁ♪」
ご主人様がベッドに上がり、こちらに身を寄せてきた。
彼女はすぐ隣に腰を落ち着けすりすりと頬擦りをしてくる。
(ひゃうん♪ 幸せですぅ♪)
「――うにゃうにゃ。いけない。いけない。甘えてるとあっと言う間に時間が経っちゃう」
もっと甘えてくれてもいいのだが、主人は首をぶるぶると振って気を取り直した。
主人はメナンティの下腹部――子宮の上に手をかざす。
その小さな掌から魔術陣が現れた。
ばしゅうぅ。
「んひゃあぁぁぁぁぁぁっっ!?」
かと思うと、そこから黒い霧が噴出し、メナンティの体へと吸い込まれる。
主人が何をしているのか、パセットには何となく理解した。
あの黒い霧は淫魔の魔力だ。
先程居住区で、この身に男性の象徴を無理矢理生えさせられた時と同じ。
恐らくメナンティに自分の魔力を注いでいるのだろう。
「当ったりー♪ こうするとね? お腹のアドニスが早く成長すると思うの♪
今は一人でも多く、アネモネになって欲しいからね♪」
「あの、それじゃパセットは、どうしましょう?」
「うにゃ? する事は変わらないよ? 私がメイドさん達を連れてくるから。
パセットちゃんはそのメイドさん達をどんどん犯っちゃって種付けしてね♪」
「…分かりました」
主人の頼みだ断る理由も無かった。
「はい♪ ――んにゃ、こっちはこれくらいかな?」
主人が魔力注入を終える。
当のメナンティはと言うと、子宮に対し淫魔の凶悪な魔力注入を受けて息も絶え絶えだ。
どくん。
「あっはあぁぁぁぁっっ」
突如メナンティが目を向いて悲鳴を上げた。
捲り上げられたスカートの下。
アドニスを植え付けられた子宮が不気味に脈打っている。
(あ、ほんとに、成長してるんだぁ)
二人が僅かに息を荒くしながら見守る中、メナンティの中のアドニスが急速に育っていく。
ずるるるるっっ!
「んああぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」
そして数十秒と待たない内にメナンティの膣から肉の花が咲いた。
ぐぱあ、と四枚の花弁を広げ、アドニスの花の匂いを撒き散らす。
何と言うか。自分の時はひたすら気持ち良くてこんな事考える暇も無かったのだが。
(お花が咲く瞬間、エロ過ぎ…)
ドキドキが止まらないではないか。
「よし。これでオーケーにゃぁ♪」
顔を赤くさせた主人が身軽な動作でベッドを降りる。
残りのメイド達を攫ってくるのだろう。
しかしその間自分は何をすればいいのだろうか。
「うにゃ? その人と遊んでくれててもいいよ♪
パセットちゃん、まだまだエッチしたいでしょ?」
図星を突かれ、赤面しながら素直に頷いた。
主人は小悪魔的な笑みを浮かべると「ごゆっくりにゃぁ♪」と言い残して部屋を出た。
「……」
そうなると自然と、パセットの目はメナンティへと吸い寄せられる。
だらしなく広げられた股にはアドニスの花が張り付き、こんこんと粘液を垂れ流している。
部屋に漂う催淫臭が濃くなっていた。
収まっていた欲情の炎が再び灯る。
眼下には花を生やした衝撃で痴呆のように涎を垂らすメナンティのアヘ顔がある。
その顔がとても愛しく思え――その唇に唇を合わせた。
「さあ、もっと気持ちいい事、教えてあげますね」
湧き上がる情動のまま、メナンティの花の中に雌しべ触手を挿入した。
***
討伐隊全てを送り出すのに一刻も掛からなかった。
彼らを見送ったドルキは、傍らの門下生達に、持ち場に着くように命じる。
十人にも満たない彼等は屋敷を防衛する為に残した戦力だ。
(少し時間は掛かりましたが、これで大丈夫でしょう)
後は討伐隊とグリーズが魔物達を殲滅してくれるだろう。
大なり小なり被害は出るだろうが、負けるような事は無い筈だ。
ドルキは自室に戻り、一息つこうと思い立った。
先程は久しぶりに大声を上げたので喉が渇いていたのだ。
適当な侍女を捕まえて茶でも淹れさせよう。
そう、思ってからふと気付いた。
(…静か過ぎますね)
屋敷の中には現在ドルキと、数名の門下生と、侍女しかいない。
合わせて二十名と居ないのだが、それを差し引いても人の気配が少なすぎる。
嫌な予感がした。
ドルキは探索魔術を発動する。
自身を中心に魔力を放射し、半径1キロ以上に及び、その中の人間と魔物を識別する。
「――これはっ」
屋敷の中に、魔物の反応が二つ存在した。
内一つはかなり強大な力を持っている。
もう片割れは大した事はないのだが、問題があった。
二匹の魔物と、数名の人間が同じ部屋に居るのだ。
ここは確か、侍女のメナンティの寝室だった筈だ。
(なんたる失態でしょうっ)
何が茶でも淹れさせようか、だ。弛み過ぎだ。
興奮の余り、周りを見ていなかった。
魔物が屋敷に入り込む隙なんて、いくらでもあったのだ。
(こんな事なら屋敷にも結界を張っておくべきでした)
魔術士は元来、自分の領地には何かしらの防御を用意するものだ。
だが、ここにはそれが無いのだ。
城壁の結界を過大評価していた為である。
だがそれも後の祭り。
兎も角、屋敷に侵入した魔物の排除を行う。
屋敷内を巡回中の門下生と合流してから向かおうかと考えたが、自分一人で十分だろう。
潜入した魔物はそこそこの力を持っているようだが、正直敵ではない。
それに今、恐らく奴らは『食事中』なのだろう。今なら隙だらけの筈だ。
そうと決まれば早速実行に移す。
転移魔術を使用し、件の寝室の目前へと一瞬で移動した。
扉を挿んだ向こう側から禍々しい気配を感じる。
ドルキはそれに気圧される事無く、扉を開け放った。
「あぁぁっっ!? もうダメェっ! それ以上、注がないでぇ!」
「あはっ…! あはははっ! 触手チンポぉ…、気持ちいいよぉっ」
「あっ! あっ! もっとっ、もっと突いて下さいっ!」
(これは…)
部屋の中では人外による饗宴が開かれていた。
悪魔の姿をした少女を筆頭に、屋敷のメイド達が肉体を絡ませ合っている。
メイド達は股から花のようなものを生やし、まだ生えていないメイドを犯しているのだ。
(アドニスっ)
寝室に篭っていた桃色のガスに理性を溶かされる前に防御魔術を展開する。
「あ? 義母様? ふふふ。随分とゆっくりしていらしたようですね?
お陰でここのメイドさん達は大体種付けが終わりました」
悪魔の姿をした少女が、犯していたメイドを解放し、立ち上がる。
「あ、貴女はっ」
股からアドニスの花を咲かせた悪魔。
猫耳と二本の尻尾。それに蝙蝠の翼を持った少女の髪は鮮やかな桃色だった。
「御機嫌よう義母様。リオ=リビディスタは帰って参りました」
はしたないデザインのスカートを摘み、少女は慇懃に頭を下げる。
「貴女に、復讐する為に」
ぎらりと光る猫目は両方とも血の色のように赤い。
「その姿…悪魔へと堕ちましたか。
それにアドニスの花まで宿して……あぁ、成る程。
森の中で野垂れ死になる前にアネモネに拾われたのですね。
ですがそれだけではその姿は説明出来ません」
「ふふふ。私は、というより母様が人外の血を持っていたそうです。
私はアネモネと交わった時に先祖帰りをしたのです」
「成る程…貴女も、貴女の親も、泥棒猫だとは思っていましたが。
まさか本当の猫だったとは、思っても見ませんでしたね」
「私も、腹違いの母親に毒殺を画策されるとは夢にも思いませんでした」
「さあ? 何の話でしょうか?」
(流石あの女の娘、と言ったところでしょうか。鋭い勘をしています)
「惚けるつもりですか? まあ、いいです。どっちにしろ私のする事には変わりませんから」
じゃきん、と真紅の爪を伸ばし、束ね、刃とする。
腰を落とし、感情の無い瞳で見据えるその姿は悪魔というよりも獣だ。
聞く耳は、まだ持っているだろうか。
「貴女の望みは何です?」
「言った筈です。復讐ですよ。私を殺そうとした貴女への。
いえ、それだけならまだ許せた。
けれど、貴女はその為に私の唯一の親友まで利用する気だった。
私には、それが許せない」
「偉そうな口をききますね。許せない、ですか。それはこちら台詞です。
貴女はあの人の体を奪った。いえ、体だけではなく心も。
あの人の心も、体も、全て私の物だというのに。
四十年以上、あの人の為に尽くしてきたと言うのに。
それを貴女は、一瞬で奪い去った!」
下位の攻撃魔術を不意打ち気味に放つ。
きぃん、とガラスを弾いたような音。
と同時に浄化作用を持った光が高熱を持ちながら悪魔へと伸びる。
だが、高速で飛来する光の帯を、少女は半歩体をずらしてあっさりとかわす。
魔術の発射音は兎も角、その威力は凄まじい。
光の帯は部屋の壁をバターのように溶かし、大穴を開けると外へと突き抜けた。
「蛙の子は蛙なのですよ。毒婦の娘も毒婦。
だから貴女は死んで当然なのです。
私のグリーズを誘惑し、穢した貴女はその罪を償う為に、死ぬべきなのです」
「……それが義母様の本心、なんですね」
「ええ。そうですとも。それとも優しい言葉を掛けてもらえると期待していたのですか?」
「まさか。あ、そうです。一つ質問してもいいでしょうか?」
「いいですよ。冥土の土産にして差し上げましょう」
「今の魔術、私は弾き返す事も出来ました。
そうなったらこの部屋の中のメイドさん達にも当たっていたかもしれない。
その事を考慮はしなかったのですか?」
何かと思えばそんな事か。
「侍女の一人や二人、死んだ所でいくらでも代わりは居ます。
それがどうかしましたか?」
「……成る程、良く分かりました」
「そうですか。なら心置きなく死んでくださいますね?」
「いえ? 死ぬのは、貴女だ!」
突如飛び掛ってくるリオ。防御結界を前面に集中させる。
菱形の魔力の壁が前面に何枚も重なり合い、積層を成す。
その正面から、悪魔は突っ込んだ!
ぎいいいいいいんんっっ!!!
刃と化した爪と結界がせめぎ合い、甲高い音を立てながら魔力の余波を撒き散らす。
(ほう。中々やりますね?)
魔力を爪に収束させているのだろう。悪魔の攻撃は鋭い。
一枚目の結界に、ひびが入っていた。真紅の爪は結界の中を徐々に押し進んでいるのだ。
時間を掛ければ、この結果は破られてしまうだろう。
だが力押しだけでは戦いに勝てない。
ばりぃん。ガラスが割れるように、一枚目の結界が音を立てて砕け散った。
破壊されたのではない。破損した防御結界を自ら破棄したのだ。
続けざまに破棄した結界の魔力をその場で集約。
それは魔術陣となり、攻撃を繰り出しているリオを捕捉する。
「……っ!?」
「吹き飛びなさい」
新たに発生した魔術陣から爆音が響いた!
「んにゃぁっっっ!?」
風の攻撃魔術を正面から食らい、悪魔の体が吹き飛ぶ。
今のは防御結界の魔力残滓をそのまま攻撃魔術に転化した技だ。
防御から攻撃へと速やかに転じるので不意打ちや迎撃に使用出来る。
だが、取り回しが良い分、威力が格段に落ちる。
至近距離から爆風を食らわせたが、ダメージは殆ど無いだろう。
悪魔は盛大に吹っ飛んで行っただけだ。
「こちらは、暫くなら放っておいても大丈夫ですね」
それでも部屋の中は台風の直撃を受けたように滅茶苦茶になっていた。
家具が引っくり返り、侍女達があられもない姿で折り重なって気絶している。
アドニスの成長がやや速い気もするが、まあ、今しばらくは大丈夫だろう。
この戦いが終わってから種子を浄化してやればアネモネになる事はない。
それよりも今は眼前の化け物を退治してやらないと。
ドルキは悠然と歩みを進め、自分で開けた部屋の大穴をくぐる。
その向こうは正門へと繋がる庭だ。
剣神アレスのレリーフが飾られた正門から屋敷の玄関までおよそ五百メートル程。
その間、一定間隔に設けられた植え込みから、春の来訪を遂げる花が咲いている。
玄関口の前には二つ、噴水も設置されている。
これら、屋敷の美しい外観は戦いに傷付いた戦士達の心を少しでも癒そうとした配慮だ。
「いたたた…っ…にゃぁ…っ? びちょびちょにゃぁ…」
吹き飛んだ淫魔は片方の噴水に突っ込んだらしい。
水瓶を掲げた女神像を模した噴水が壊れ、女神の腰から上が無くなっていた。
屋敷の外を警備していた門下生達が異常を感じ取って駆けつけてくる。
「ドルキ様! これは一体っ」
「こいつ、悪魔か!? いつの間に侵入した!?」
「ドルキ様、ここは我らにお任せを!」
「いや待て! この悪魔、どこかで見た気が…」
「下がりなさい! この魔物は私自らが倒して見せましょう!」
そうだ。そうでもしなければ、この溜飲が下がる事はない。
「ふふふ。そうこなくっちゃ♪」
倒れていたリオが反動を付けて起き上がった。
ぶるぶるぶるぶるっ!
四つん這いの格好で体を振り、衣服と髪の水気を飛ばす。
まるで本物の猫のようだった。
「余裕ですね? まあ、いいでしょう。
そうだ、貴女に母親らしい事を一つしてあげましょう。
リビディスタの者なのです。戦い方くらいは教えてあげようではないですか」
ただし、授業料は命で以って払ってもらう。
「さあ、魔術師との戦い方を教えてあげましょう」
正面へ積層の結界を展開しながら、改めて攻撃魔術を発動させる。
先程とは違い、『殲滅』を主眼に置いた攻撃魔術だ。
発動にやや時間が掛かるが、威力はある。
リオとの距離は大分離れているので発動を潰される事も無いだろう。
この時点で悪魔は回避を余儀無くされているのだ。
ドルキを中心に赤の魔術陣が発生した。
赤は攻撃魔術を表す色だ。
その赤い魔術陣から、複数の魔術陣が生み出され、リオに向かい飛来していく。
「? 何これ?」
小型の魔術陣は攻撃をするでもなく、リオの周囲を旋回しているだけだ。
初見では、それが何なのか知る由も無いだろう。
魔術陣内部の文字を読み解けば、それが『反射』を意味するものだと理解出来るだろうが。
リオには魔術文字を解読出来るほどの知識は無かった。
小型の魔術陣自体は攻撃を行う事は無い。これの役割は、
「蜂の巣になりなさい」
「っ!?」
悪魔が何かに気付いたように顔を上げた。
だがもう遅い。
地面の大型魔術陣から、連続的に光を放つ!
光の帯となってリオに襲い掛かるそれは、先程部屋に穴を開けたもに比べれば威力は低い。
だが、直撃を受ければ風穴が開くだろう。
その光を、リオの周囲に滞空させた小型魔術陣に向けて解き放つ。
魔術陣は彼女を取り囲むように、合計12箇所に配置していた。
ほぼ全方位とも言えるが、唯一真上にだけは魔術陣が無い。
リオも気付いただろう。これらの魔術陣が、光を反射させるものであると。
しかしそれが判っていても全方位に配置されたそれから逃れる事は出来ない。
唯一真上にだけは反射陣を設置していないが、この一瞬でその事に気付ける事も無い筈だ。
光の帯は高速で反射陣へと飛来した。
光は反射陣に吸収されると、その中で刹那の間停滞し、
次の瞬間、リオが真上へと大きく跳躍した。
(なんですって?)
翼をはためかせて悪魔の体が急上昇する。
その一瞬後に、彼女が居た空間を十二方向から光の帯が撃ち抜いた。
勘の良い娘だ。唯一の逃げ場所である真上方向に運良く逃げ込むとは。
「あー、怖かったぁー♪ もうちょっとで死んじゃうところだった♪」
上空から緊張感の無い声が聞こえる。
リオは翼をはためかせながら滞空していた。
体が上下に軽く揺さぶられる度にスカートの中身が見え、汚らわしく思えてしまう。
逆に駆けつけて来た男供は破廉恥な格好をした悪魔の姿に魅入っているようだった。
気に入らない。事が終われば何かしらのペナルティを課してやろう。
そんな考えが顔に出てしまっていたのか上空の悪魔が、ふふふ、といやらしく笑う。
その笑い方まで、あの女とそっくりだと思った。
「…義母様? 義母様は私の母様の事を――いえ、やっぱり、やーめたっ」
「? 何を言っているのです?」
笑っていたかと思えば急に神妙な顔つきになったり、かと思えば無邪気な表情を浮かべる。
悪魔へと身を堕としたこの娘が何を考えているのか全く分からない。
(分かる必要もありませんが)
ドルキは気を取り直し、次なる一手を打つ。
滞空しているあの悪魔を叩き落してくれよう。
ドルキは両の掌から魔術陣を生み出す。
右手と左手で異なる魔術を同時に起動させる技だ。
右手の青い魔術陣は結界を生成させるもの。
大して左手の赤い魔術陣は下位の風撃魔術だ。
屋敷の中で悪魔を外に吹き飛ばしたものと同じである。
それの威力をやや上昇させ、風力を鉄槌のように対象物へと叩き落す。
「今度は逃がしませんよ」
言葉と同時に結界魔術が発動した。
滞空する悪魔の真下に魔術陣が現れ、その真上へと魔力の壁を形成していく。
この結界、硬度はイマイチだが表面には人間をレア程度に焼く程の電流が流れている。
結界を破壊しようと迂闊に攻撃すれば、かえってダメージを与える仕組みだ。
きいいん――!
円筒状に悪魔を捕らえた結界が高速に回転し、その表面に魔力の雷撃を生み出す。
言わばこれは有刺鉄線で作られた檻だ。
悪魔は閉じ込められた事に気付くと、先程と同じように真上へと逃げようとする。
「逃がさないと言いました!」
だが風の魔術は発動している。
上空に不自然な気流が生まれ、大気が渦巻いている。
結界の内側。そして悪魔の頭上だ。退路は塞がれた。
そこから脱出する為にはダメージを覚悟で、結界を打ち破って外に出るしかない。
でなければ、圧縮された空気の槌に押し潰され、地面に叩き付けられるだけだ。
そうして動きが鈍ったところで本命を叩き込む。
「それは面倒だにゃー」
にゃー? にゃー、とは一体何だ。何の冗談だ。
疑問符を浮かべるドルキの上空で、悪魔は爪を展開した。
禍々しい魔力を収束させ、一本のブレードを作り出す。
と同時にそれを結界に突き込んだ!
ばじじじじじっ!!
「ぎにゃあぁぁぁっっ!?」
悪魔が獣の悲鳴を上げた。帯電している結界に直接攻撃したのだ。当然だった。
だがドルキは焦燥感すら覚えていた。
あの化け物は、こちらが攻撃を繰り出す度に最適な行動を取っている。
今回もそうだ。電撃によりダメージは与えられるだろうが、それが致命傷にはならない。
先に結界が破壊される。
「う、にゃあぁぁぁぁっ!! 砕けろぉぉっ!!」
耳障りな帯電音の中、悪魔が咆哮し、赤い刃に力を込めた。
「くっ」
同時に風の槌を開放する。上空から打ち下ろされるそれは魔力充填を終えていない。
直撃しても予定していたダメージより少ない。それでもむざむざ脱出されるよりマシだ。
ごうっ!
風の槌が唸り、悪魔を押し潰そうと襲い掛かる。
だがその直前に結界が音を立てて砕け散った。
悪魔が結界から脱出。その背後を風の槌が通り過ぎる。
ずどん!
星でも降ってきたかのような衝撃。音。
そして一足遅れて地上に突風が吹き荒れた。
事の成り行きを見守っていた門下生達が、強風に煽られ、地面を転がっていく。
魔術を使える者達は防御結界を張り、何とか事無きを得たようだった。
こちらも防御結界を張り、攻撃魔術の余波から身を守る。
(しくじりました…)
結界を保持していればこの衝撃やらなんやらが全て密閉空間で炸裂した訳である。
いくら悪魔と言えど無事では済まない筈だったのだが。
「ふにゃぁ…っ、危なかったにゃぁ…っ」
上空に退避していた悪魔が胸を撫で下ろしている。
「ふふふ。まだ胸がドキドキしてる♪ 義母様っ、殺し合うのって楽しいね♪」
「…化け物が…」
能天気に笑う少女の姿をした悪魔に、神経を逆撫でされてしまう。
だが、頭に血を上らせる訳にはいかない。
二度の攻撃を凌いだ悪魔の器量。素人同然の彼女にそれほどの力があるとは思えない。
何か、からくりがあるのではないのだろうか。例えば――
(読心能力、ですか?)
「あれ? もう気付かれちゃった。流石義母様♪ 魔女の二つ名は伊達じゃないね♪」
地面に降り立ち、悪魔は淫靡に微笑む。
「それで? まだ戦うの? 魔術士なんて思考が読まれれば何も出来ないんじゃないの?」
ざわり、と周囲の人間達がどよめいた。
確かに、技術で戦う戦士とは違い、魔術師は戦術で戦うものだ。
思考が先読みされれば、まともに戦えはしないだろう。
「――成る程、貴女のその髪は悪魔『シュトリ』の証だった訳ですね。
成る程成る程。あの女の勘の良さは化け物の力の一端だった訳ですか。
それにしても、他人の心を覗き見るとは。
下品な能力ですね。あの女に相応しいと言えましょう」
不敵な笑みを浮かべ、悪魔を挑発する。
悪魔はそれが挑発だと分かってはいるだろうが――
「母様を、侮辱するなぁっ!」
精神も幼いただの子供に、感情を御する事など出来はしなかった。
一直線に、こちらへと突っ込んでくる。
地を這うように、前傾姿勢で突貫するその姿は野生の猛獣そのもの。
この瞬間、新たな魔術を発動する。
それは読心能力を持った魔物に対抗する為にドルキが自ら開発した精神防御魔術。
青い魔術陣が表れ、ドルキの体を淡い光で包み込むと、それは一瞬で消滅した。
見た目は何も変わらないが、効果はすぐに現れるだろう。
(今度こそ引導を渡してあげましょう)
***
「母様を、侮辱するなぁっ!」
つい頭に血が上ってしまい、無謀な突撃を仕掛けてしまう。
それが罠かも知れないとは思うが、思考を読めるのだから致命的なミスは避けられる筈だ。
『馬鹿な娘です。こうも簡単に挑発に乗ってくれるとは』
うるさい。今すぐその喉笛を掻き切ってやる。
いや、それじゃ気が済まない。
自分を、パセットを。
そしてあろう事か他のメイド達まで平気で切り捨てるようなこの女を、許せはしない。
苦痛を与えながら、嬲り殺してやる。
そして絶望するドルキの眼前で、グリーズを魅了し、寝取ってやるのだ。
それはきっとこの上なく楽しいだろう。
想像しただけで、気分が高揚する。
ドルキは動かない。しかし防御結界は展開した。
『先程はしくじりましたが今度はそうはいきません』
結界がその姿形を徐々に変えていく。
菱形を連ねたようなタイル状の防御壁は強く発光し、ドルキを包み込む。
『思考が読まれるのならば、読まれても対処出来ないような戦術を取ればいいのです。
私は今から上位の魔術を使用します。
誘導性が強く、貫通能力に優れた光の攻撃魔術。
今度は避ける事も防ぐ事も出来ないでしょう。
最善の策は――そうですねぇ。
私が魔術を発動する前にこの結果を破壊し、私を倒す事でしょうね。
まあ、貴女に出来るとは思いませんが』
「そんなの、やってみなければ分からないよ」
相手は結界を張っているとはいえ棒立ちだ。
溜め込んだ魔力を一点に集中させ、攻撃すれば結界だって破壊出来る筈。
ドルキに向かって走りながら、リオは右手の爪に力を込めた。
(今度は、こっちの番っ)
溜まった鬱憤を晴らすべく、右の爪から展開した赤いブレードを振りかぶり、
その脚が、急に止まった。
「うにゃぁっ!?」
がくんと前方につんのめり、体勢を大きく崩す。
まるで脚を引っ掴まれたような感覚を不思議に思い、地面を見た。
(何これっ!?)
足元には何時の間にか青い魔術陣が展開していた。
その中から光の鎖のようなものが生え出し、脚を拘束しているのだ。
バインドと呼ばれる束縛の魔術だ。
主に素早い敵の動きを抑えたり、時間稼ぎに使用される補助魔術である。
(い、いつの間にこんなものを!?)
読心能力は今も発動している。
簡単なトラップだが、それを仕掛けようとする以上、大なり小なり思考をする必要がある。
それを捉えられない筈がなかった。
「簡単に引っ掛かりましたね。所詮は子供、いえ、畜生ですね」
「どういう事っ」
「私程の魔術士ともなれば精神に干渉する能力の対策くらい持っているという事です。
そう。貴女が今読み取っているのはフェイク。
私が魔術で作り出した、擬似的な思考なのです」
「そ、そんな事が…」
上位の光の攻撃魔術や、結界を破壊すればいい――云々は全て偽の情報だと言う事か。
「それを知らずに突っ込んで来てくれた貴女はいい的です。
バインドで動けないでしょう? この状態なら結界を使用する必要もありません」
防御結界が消える。
そしてその後に、赤く、大きな魔術陣が形成された。
「まあ、この防御結界も今から発動する攻撃魔術の目眩ましに過ぎないのですが」
赤い魔術陣に光が収束する。
動きを封じられたこの身では、回避は不可能だ。
死の気配が、すぐ近くまで迫っていた。
眼前の光は、この身を焼く業火の炎となるだろう。
(この絶望的な状況から逃れる為にはっ)
「さあ、貴女もこの私の手で地獄に送ってさしあげましょう。『あの女と同様に』」
引っ掛かる物言いに、一瞬思考が止まる。
だが魔術陣の光が一際大きく輝くと、リオは最後の掛けに出た。
「『お義母様っ、私を助けて』!」
光の魔術が解き放たれる。
「う、にゃあぁぁぁぁっっ!!?」
赤い魔術陣から放たれたそれは、一言で表すなら光の奔流だ。
浄化作用をもった眩い光は、熱量も有しており対象物を焼き尽くす。
虫眼鏡で太陽光を収束させるのとはレベルが違う。
直撃を受ければ、生まれたての悪魔など消し炭に出来る。
光の魔術はドルキの得意分野で、この光の砲撃とも言える魔術はドルキの十八番だった。
だが、
「っ、賢しい真似をっ」
声を荒げたのはドルキの方だ。
光の魔術は、軌道を大きく外れている。
この体を直撃する筈だった光の奔流は髪を焦がしただけで、空へと吸い込まれた。
魔術の余波で旋風が巻き起こり、熱波がひび割れた肌を炙る。
土壇場でドルキにチャームを掛けたのだ。
自分に対して魅了の魔術を使用するとは夢にも思っていなかったのだろう。
油断していたドルキはチャームの効果を受け、一瞬だったが手元を狂わせた。
が、それでも無傷では済まなかった。
リオは砲撃の余波に吹き飛ばされ、ドルキから少し離れた地面に転がる。
かと思えば身動きの取れない体に再び拘束魔術が発動した。
「にゃ、にゃぁっ…!?」
青い魔術陣から白い光が伸び、体を雁字搦めにされる。
「さあ、これで本当に万事休すですね」
ドルキはこちらの恐怖心を煽るように、ゆっくりと近付いてきた。
それは絶望の足音だ。死神の近付く気配だ。
だがこの女に復讐を果たすまでは、死んでも死に切れるものではない。
そうだ。さっきこの女は言った。
母を殺したのは自分だと。それがもし本当なら――
リオは憎しみの篭った猫目でドルキを睨みつけた。
「何か言いたい事でもあるようですね」
「…さっき、義母様は言った。
『貴女もこの私の手で地獄に送ってさしあげましょう。あの女と同様に』って。
その言い方じゃ、まるで義母様が…」
自分も含め屋敷の人間はリシュテアの死因が病死だと思っていた。
だが実際は、
『そうです。私が殺しました』
時間が止まる。
衝撃の事実に戦いの最中だという事も忘れ、呆然としてしまう。
(殺した? 病死じゃ、なかったの?)
「まるで私が、何ですか? まさか私があの女を殺したとでも?
根拠の無い言い掛かりですね。不愉快です」
ドルキは思考で真実を伝えつつ、言動ではまるで被害者のように取り繕っていた。
だが彼女がうっすらと笑みを浮かべている事に気付くと、胸の内から怒りが溢れ出す。
そんな、こちらの内心を尻目に彼女は思考で真実を語る。
『毒を盛ったのですよ。特別に取り寄せた物です。
遅効性で、本人が無自覚のまま体を蝕んでいき、気が付いた頃には手遅れ――
そういうものです。お陰で誰も気付きませんでしたね。
あの人も、それ以外の人間も、彼女が運悪く病に掛かったとしか思わなかった。
全て、私の計画通りだったのです』
「うああぁぁぁぁぁっっっ!!!」
怒りで視界が真っ赤に染まった。
「貴女が、貴女が母様を殺したああぁぁっっ!!」
「は? 何ですかいきなり。まるで私があの女を殺したような口振りですね。
成る程、さも私が加害者だと周りの人間に思わせる。それが悪魔の手口という訳ですか」
「うるさいっ、うるさいっ! あなたの方がよっぽど悪魔だ!
私の母様を殺して! 私も殺そうとして! パセットちゃんまで巻き込むつもりだった!
許さない! 殺してやる! 絶対に殺してやる!」
『貴女が何を言っても、誰も信じませんよ。
此処は貴女の居るべき所では無いのです』
ドルキの言動と思考はちぐはぐだ。
そのせいで、リオは真実を知って憤っているのに周りの人間にはその理由が伝わらない。
今もリオは孤立無縁だ。誰も味方などしてくれない。
しかし流石に大声を上げる悪魔に、流石の門下生達も戸惑いを隠せないようだ。
それはドルキとリシュテアの関係は皆知っているからである。
周りの人間から見れば、殺人の疑いも無くは無いのだ。
だがリビディスタの創立者の一人であり、メディアの称号を持つ偉大な魔術師。
そしてアドニスの花を宿した悪魔。
観衆は、一体どちらの言葉を信用するだろうか。
「さっきから何ですか。人を殺人鬼呼ばわりして。
目上の者に対する態度ではありませんね。
――貴方達も。このような化け物の言葉に耳を貸してはいけません。
悪魔は人の心に付け入り、堕落させる魔物です。
鬼気迫る表情ですが、あれは演技ですよ。
分かりますか? 貴方達は騙されているのですよ」
「――な、成る程…」
「確かに。悪魔は悪知恵を働かせる魔物だ」
「そうか。ならばリオ様の姿をしているのも、我々を油断させる為かっ? なんと卑劣なっ」
ドルキの言葉で彼女に対する猜疑心は少しづつ消えていくようだった。
伊達に歳を食ってはいないという事か。
そうだ。悪魔は人を騙す。人を誘惑する。
門下生達はそれを知っているからドルキの言葉を鵜呑みにしてしまったのだ。
真の悪魔はドルキの方だと言うのに。
『これで分かりましたか? 貴女は一人なのですよ』
「貴女という人はあぁっっ!!」
怒りに任せて暴れ回る。
だがバインドのせいで芋虫のように地面をのたうつだけ。
『あっはっはっは。無様ですねぇ? いい気味です。
森の中で魔物に食われて居た方がまだ幸せだったのではないですか?』
「うああぁぁぁぁぁっっ!!!」
(悔しいっ! ネーアさんに助けられて、人間を止めてまで復讐を決めたのに!
こんな最低の人間に、いいようにされるなんてっ!)
憎しみの篭った目でドルキを睨み付ける。
魔力を乗せ、殺意を乗せ、耐性の無い者ならそれだけで戦意を喪失してしまうだろう。
だが非情な魔術師は不敵に笑うだけだった。
「ふぅ。ここまで来ると見苦しいばかりですね。
もういいでしょう。貴女の『親子ごっこ』にも飽きました。
――死になさい」
動けないこちらに向けて、掌をかざす。
一足で踏み込める距離だ。外しようが無い。
そしてこちらの悪足掻きすら想定し、防御結界を張る。
(私、死ぬの…?)
これは、もう詰みだ。どうしようもない。
(ごめんなさい。パセットちゃん。ごめんなさいクロトさん。
ごめんなさいネーアさん。私、負けちゃったよ…)
せめて、せめてこの人の皮を被った悪魔に、一太刀でも食らわせてやりたかった。
「さようなら。地獄であの女が待っていますよ」
赤い魔術陣から光が解き放たれた。
死ぬ。死ぬのか。いや、だとしても。
最後まで、抵抗し続けてやる。
死が確定した中で、リオはドルキの瞳から目を逸らさなかった。
もしこの世から消えても、化けて出てやる。
それくらいの意気込みで魔女の瞳を睨み付けて、
視界を、何かが遮った。
ドルキとの間に立ち塞がるように。
何者かが突然虚空から現れる。
同時にその誰かは防御結界を展開し、リオを狙った下位の攻撃魔術を弾き飛ばした。
ぎいいいいんっ!!
魔術同士が干渉し合い、摩擦を生み、耳障りな音を立てる。
辺りに眩い光を撒き散らすと、眼前の茜色のマントがはためいた。
マントの中央には『ヘスペリス』と描かれた刺繍。
「あ、貴女はっ」
ドルキが驚きの声を上げた。
周囲の人間達も、突然の乱入者に戸惑いを隠せない様子だ。
「良かった。今度は、間に合った」
乱入者から紡がれた声は美しく、聞き惚れてしまいそうだった。
(この声、どこかで…)
もうずっと聞いていない、だが聞いた事のある、女性の声だった。
ヘスペリスの女が振り向く。
流水のようなブロンドの髪。抜けるような空と同じ色の瞳。
その人物はグリーズの血を継いでいるとすぐに分かった。
「ただいま。リオ」
その女は女神のように美しい顔を僅かにはにかませた。
「姉、様…? どうして…?」
訳が、分からない。
姉は優秀だ。若くしてヘスペリスに入り、将来を約束されている。
そんな姉がどうして屋敷に戻ってきたのだ。
いや、それよりも。
(どうして、私を庇ったの?)
自分なんて姉に比べれば何の取り得も無い存在。
リビディスタの名を借りた、只の人形のようなものだ。
母の違う姉妹は、接点も殆ど持っていない。
そんな姉が、今更どうしてこの身を庇うというのだ。
「ん」
ぎゅ、とマリオンがこの身を抱き締めた。
バインド越しに、人の温もりと、彼女の思考が伝わってくる。
『遅れてごめんなさい』
『良い子にしてた?』
『寂しくはなかった?』
『手紙、出せば良かった。ごめん』
『助けられなくてごめん』
『でももう離さない』
『人間じゃなくなっても。リオはリオ』
『だから私が、守る』
(え…うそ…これが、姉様の、本心…?)
何だこれは。自分の事ばっかりじゃないか。
知らなかった。自分の味方は、屋敷の中ではパセットだけかと思っていた。
でも、こんなに身近に自分を思ってくれる人が居た。
『今まで助けられなかった分。
これからはリオの事、ずっと守り続ける。
その為に私は強くなったから』
「ふぇ…っ」
胸の内から何かが込み上げてくる。
殺伐とした愛憎劇の中、差し伸べられた希望の手。
自分の事を思い、大切にしてくれる者の意思が、絶望と憎悪にささくれた心を癒す。
「ふええぇぇぇぇぇんっっ!!」
気が付いたら泣きじゃくっていた。
さっきまでドルキと死闘を繰り広げていた悪魔はもうそこに居ない。
「姉様ぁぁっ!! 姉様ぁぁっっ!」
びーびーと子供のように泣く。
その姿に周りの人間は――ドルキさえもが唖然とした様子だった。
だが誰もが失念していたのだ。
目の前の悪魔の姿をした少女が、元はたった十二歳の子供であるという事に。
そしてそれを理解しているのは、この場でマリオンただ一人だけだった。
束縛されながらも、顔を姉の首元に押付ける。
マリオンはそれに応えるように、髪を梳いてくれた。
「よしよし」
その撫で方は、ネーアに比べれば雑で、不器用だったけれども。
『もう、大丈夫だから。大丈夫だからね』
彼女の思い遣りがあれば、それで十分だった。
「びええぇぇぇぇん!!」
門下生達とドルキが見守る中。
再開を果たした姉妹はずっと抱き締めあっていた。
***
そうしてどれくらいの時間が過ぎただろうか。
「あらあら。まあまあ。マリオン、いつの間にか帰っていたのですね。
少しばかり慌しくしていましたから気が付きませんでした」
痺れを切らしたドルキが口を開いた。
ところがマリオンは肩越しにこちらを一目見ただけで、リオをあやす作業に戻ってしまう。
その姿を見て、ふとドルキは思い出した。
(まさかマリオンは、この娘に感情移入しているのですか?)
元よりマリオンはあの女に好意を抱いていた。
駄目だと言っているのにこちらの目を盗んでは、何度もあの女の元を訪ねたくらいだ。
そしてリオはその女の娘だ。何かしら思う所があるのかもしれない。
しかしもしもそうだったとしたら。面倒な事になる。
(説得するしかありませんね)
その娘はもう悪魔だ。貴女の知っているリオではない。
涙も、嗚咽も、全て貴女を騙し、利用する為の演技だ、と。
「マリオン。気持ちは分かります。貴女はその娘を気に掛けているのですね?
ですが騙されてはいけません。その娘は悪魔へと堕ちてしまったのです。
もう貴女の知ってい、」
「黙れクソババア」
「く、クソ…? ――今何と言いましたか?」
実の娘の口から出た下品な言葉に耳を疑ってしまった。
しかもそれが自分に対する中傷なのだからますます信じられない。
マリオンはこちらの問い掛けには答えずが、ゆらり、と立ち上がった。
その顔はグリーズを連想させるポーカーフェイスのままだ。
しかし、誰が見ても彼女が腸が煮えくり返りそうなほど激怒しているのが分かった。
その背後に怒りのオーラまでも幻視しそうなほど。
(……あのマリオンが私に楯突いている?)
あの女に懐いているのは知っていたが、それでもこちらの言う事を大人しく聞いていた。
見えないところで癇癪を起こしたりする事はあったようだが、年頃の女なら普通だろう。
手塩を育ててきた実の母親に歯向かう理由にはならない。
正直、マリオンが何を怒っているのか分からなかった。
だからドルキは混乱した。
そこの憎き女の娘の味方をする理由が分からなかった。
(私よりも、あの女の娘を取るというのですか?
いえ、きっとマリオンは感情的になっているだけです。
冷静になれば、私の方が正しいと分かってくれる筈)
ここは何とか宥めて、彼女に落ち着いて貰わなければ。
でなければそこの淫魔を片付ける事も出来ない。
「マリオン。良くお聞きなさい。その娘は私の命を奪おうとしたのです。
貴女の知っているリオという娘は、そんな蛮行をするような人間でしたか?」
マリオンは返事をする代わりにこちらに向かって一歩踏み出した。
「違うでしょう? あの娘は自己主張の出来ない、大人しい娘でした。
それが、血が繋がっていないとはいえ母親を殺すなど……ありえるのでしょうか?」
聞いているのか聞いていないのか。
マリオンはこちらを怒りの眼差しで見詰めたまま、一歩、また一歩と近付いてくる。
嫌な予感がした。
「マリオン? 聞いているのですか?
――ああ、そうですね。私にも、少しばかり非はあるのかもしれません。
ですが命を奪いに来た魔物を、どうして見逃す事が出来るでしょうか?」
マリオンとの距離が縮まる。
一足で踏み込める所まで近付けば、彼女の怒気がより鮮明に感じられた。
殺意すら篭った視線に射抜かれ、額に汗が滲む。
「そ、そうそうっ。
この娘は私の命を狙うどころか、屋敷のメイド達まで手を出したのですよ?
全員、アドニスの種子を植え付けられたようです。
何の罪も無い娘達まで巻き込むなんて、非情な悪魔のする事です。
人間の仕業とは思え、」
マリオンの怒気が膨れ上がった。
「お前が、言うなあぁぁぁぁっっ!!!」
マリオンの真下に青い魔術陣が展開。
それは光の粒子を噴出し、彼女の右手へと収束していく。
(強化の魔術っ)
まずい。リオとの戦いでこちらは消耗している。
強化された攻撃をまともに喰らえば只では済まない。
迎撃か、防御か。どちらかを行わなければ。
(止むを得ませんっ)
即席で光の攻撃魔術を発動。
威力は低いが鎧の覆われてない部分に穴を開けるくらいは出来る。
脚を封じて、距離を取る。
ドルキはマリオンの細い足に狙いを定め、
次の瞬間彼女の体が掻き消えた。
しまった――そう思った時にはもう遅い。
背後に転移したマリオンが、拳を握り締め、渾身の一撃を放つ!
「死、ねえぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!」
(防御っ)
マリオンの腕が届く直前、何とか防御魔術を発動。
ぎいいいいいぃぃぃぃぃんっっ!!
耳障りな音と共に、防御結界とマリオンの腕の間で魔力の光が火花となって撒き散る。
が、マリオンの拳が光のタイルにめり込み、一つ、また一つと光の粒となって消えていく。
不安定な体勢から発動した防御結界では、怒りに我を忘れたマリオンの前では無力。
呆然とするドルキの前で、マリオンの右腕が結界に深く食い込んだ。
ばりぃんっ――防御結界が、攻撃の負荷に耐え切れずに粉砕されて、
「めぎれっ!?」
結界を突き抜けたマリオンの拳が、ドルキの厚化粧の上に食い込んだ。
***
マリオンは気付いていなかった。
リオがかつての優しい少女では無くなっている事に。
ドルキの言葉が、真実であったという事に。
ドルキを怒りのままに殴り飛ばし。
そしてリオを助け出せばそれで全てが上手くいくと思っていた。
「お陰で義母様に止めを刺す事が出来ます」
甘かった。
笑顔で母を殺すと言う妹に愕然とする。
悪魔の残虐性を表し、マリオンにチャームを掛けるとリオはドルキをいたぶり始める。
無邪気な少女の顔をしたまま、腹を蹴り、爪で顔を引き裂く。
狂ったように笑う妹に、マリオンは自分が取り返しのつかない事をしたと気付いた。
「悪い子はどこだああぁぁぁっっ!!!」
しかし。絶望的なこの状況に、一匹のアネモネが乱入した。
彼女の名前はネーア。
いや、ネーアだけではない。
あのグリーズまでもが、ドルキの危機に駆けつけた。
ネーアとグリーズ。
二百年の長寿を誇る最強のアネモネ。
リビディスタの長にして剣神の称号を持つ戦士。
この二人が居れば恐れるものなど無い。
次回、永久の果肉十三話、
愛憎劇―後編―
愛と憎しみに彩られた最悪の親子喧嘩。これにて決着。
はーい。お疲れ様でした。
しかし読み返してみるとラストシーンの引き方ってばないですねぇ。
シリアスなのかギャグなのかw
いつものように誤字脱字感想等お待ちしておりますー。
さて。予定通り本編は次回投稿分で終了予定です。
エロシーンも、多分ありません。
まあ、その代わりと言っては何ですが。
エピローグというか後日談にてエロオンリーのお話をやるつもりです。
マリオンのエロとか各キャラの和姦などなどやり残したエロをしたいですね。
今回はこの辺りで失礼します。
また来週お会いしましょー。
洋女っ、晩、ざぁぁぁぁぁぁいい!!!
うん。これはちょっとわざとらs
おつかれさまですー
来週で終わるのが残念だ・・・
6月からはまた月曜が憂鬱になるのか・・・
GJ
わりぃごはいねがぁぁぁぁ!!
いや、ドルキは万死に値するでしょうにマジで
リオがかわいそすぎたのでエロシーン2回読んでしまった、GJです
定期的に読める作品の何と良い事か…
乙×風さん乙
もうすぐこの幸福にも終わりが来ることについて
>>203 ふふ…その感情は、虜になっている貴女には必要のないものね?
私の中のご主人様が、今すぐ消去してくれるわ……終わりなき快楽の夢に溺れなさい。
GJ!
もうね、エロとかいらないや……
後半の急展開がヤバ過ぎる……次回、いよいよクライマックス!って感じがタマラン!
そいえば、最終回は第十三回か。なんだかアニメの1クールみたいだw
当然ボーナスの第14話も期待できるね
そしてしばらくした頃にタイトルに意味不明な単語を追加した実質続編が……
NeoとかXとかSuperとか
リターンズとか外伝とかだな
+とか#とか↑とか!とかかもしれないぞ
書けるかな?
実は俺、ドルキ萌えなんだ…。
>>211様
すいません。ドルキのエロシーンとか無理です。作者的に。
設定が30代とかだったら若作りにしてまだまだエロもいけたと思いますが。
という訳で十三話投下です。
(エロ無し、暴力的表現有り、バトル多め、流血有り<微>、決着、ちと長いかも)
NGワードをお確かめ下さい。
エロが無いのはご容赦を。
前回に引き続きバトル多め、というかほぼ全編通してバトルです。
それでも、と思われる方はお読み下さい。
以下本編です。25レス程消費します。
第十三話 愛憎劇―後編―
実の母親を殴り飛ばしたところで、マリオンは正気に戻った。
「…あ、やっちゃった」
『ドルキ様ーーっ!?』
外野がやいのやいのと慌てふためいている。
まあ、自慢の娘に問答無用で殴り倒されたのだから当然か。
しかしよくもまあこの程度の攻撃が通用したものだ。
魔女とか名乗っているが実は大した事無いのではないかと思ってしまう。
(母様、弱い)
当然だが。
不器用なマリオンが母親の気持ちに気付く事はなかった。
ドルキがどれだけマリオンに愛を注いでいたか。
汚らわしい腹違いの娘の存在もあればこそ、正当な血筋の末娘であるマリオンには手を掛けたのだ。
しかし、ドルキはそのマリオンに口汚い言葉で罵られ、あまつさえ攻撃された。
その時の動揺が彼女の判断を鈍らせ――今に至る。
だが殴った本人がドルキの愛情に気付いていないのだから、皮肉な話である。
「マリオン様、お退き下さい!」
周りの門下生達がドルキを取り囲み、回復魔術を掛け始める。
他にも貴女は正気か、だの、悪魔にたぶらかされてる、だの大変五月蝿い。
折角溜まったストレスを発散させたのにまたイライラしてしまう。
構っていたらキリが無いと判断し、突っかかってくる門下生達を取り合えず無視。
リオの元へと駆け寄った。
「……姉様…」
ドルキの拘束魔術から開放されたリオは呆然としながらこちらを見上げている。
鮮やかな桃色の髪は不自然な色をしながら伸び。
背中からは蝙蝠の翼。そして二本の尻尾。愛らしい猫耳。
それに卑猥なゴスロリ衣装を見ていると、彼女が人間でなくなってしまったと痛感する。
「――ほんとに、悪魔になったんだね」
「…っ」
びくり、と妹の体が震える。
(あ、しまった)
こちらを上目遣いで見上げる少女の目は捨て犬のそれと同じだ。
いや、この場合捨て猫か。いやいやそんな事はどうでもいい。
きっと人間を止めた事に少なからずコンプレックスを抱いている筈だ。
だというのに今の言い方は、ない。
(ほんと、私は喋るのがへたくそ)
自分の不器用っぷりが恨めしい。
「大丈夫。私はリオがどんな姿になっても、気にしない」
たとえ、いつかアネモネになってしまうとしても、妹は妹だ。
愛らしい猫目が、『両方とも血のような赤だとしても』、それは変わらない。
「っ……姉様ぁ…」
うるうると瞳を潤ませながら最愛の妹が見詰めてくる。
(う。可愛い)
二年も見ない間に随分と見違えてしまった気がする。
最後に見た時はもっと小さかった気がするが。
そんな事を思いながら改めて妹の姿を観察する。
(あの、でも、やっぱりその格好は、目のやり場に困る)
開いた胸元から明らかに自分より成長した膨らみが覗いている。
それに何だかいい匂いがしてきて――どきどきする。
そんなこちらの心中を察してか妹は微笑み、小さな口を開く。
「姉様、助けてくれてありがとう」
「と、当然の事、しただけ…」
クールぶっても、照れ隠しというのはバレバレなのだろう。
妹はくすくすと可笑しそうに笑ってから言葉を続けた。
「お陰で義母様に止めを刺す事が出来ます」
一瞬、何を言ったのか理解できなかった。
そしてそれを理解する暇も無く、リオが先手を打った。
「『姉様はそこで見ていて下さい』」
赤い猫目が、魔力を放つ。
それはマリオンの精神を容易く侵蝕した。
体から力が抜け落ち、膝をついてしまう。
リオに対して心を開いていた為、チャームの影響を強く受けてしまった。
(……だめ、りお…)
妹の表情が豹変していた。
捨てられた小動物から、残虐な悪魔へと。
だが、靄の掛かったような意識の中、マリオンは彼女を見詰める事しか出来ない。
ゆっくりと立ち上がるリオに周りの門下生達が気付いた。
その直後にリオが力を解放する。
小さな体から黒い霧を噴き出し、周囲の人間達を制圧する。
黒い霧は彼女の魔力そのものであり、人間にとっては毒以外何物でもない。
それを吸い込んだ門下生達が、一人、また一人と膝を折っていく。
命に別状は無いが、行動を制限するだけなら十分だった。
「さあ、これで邪魔者は居なくなったかな♪」
リオは足取りも軽く、倒れ伏すドルキに元へと向かう。
腕を背に回し、恋人に会う少女のように笑顔を浮かべた悪魔は人畜無害そうに見えたが――
「さっきのお返し、しないとね♪」
スキップでもするようにリオはドルキに近付くと、
まるでボールでも蹴るように、親の体を蹴飛ばした。
どすっ、と肉を打つ音が響き、ドルキの体が宙を舞う。
悪夢を見ているようだった。
母親が植え込みの木の幹にぶつかり、地面に落ちる瞬間を呆然と見詰める事しか出来ない。
先程マリオン自らドルキに暴力を振るったが、あれは我を忘れていただけだ。
今、目の前で行われているのはもっと残虐的な行為。
「あはっ♪ 飛んだ飛んだー♪」
翼を広げ、悪魔がドルキを追いかける。
ドルキは地面で何度も咳を吐いた。
びしゃり、と音がして、地面に赤い液体が散る。
老体には過度の暴力だったのだ。このままでは本当に死んでしまう。
ところが淫魔は血反吐を吐いた女を見ても笑顔を絶やさない。
それどころか地面に倒れ伏したドルキに近付くと、ブロンドを鷲掴みにし、引き上げた。
「なーに? 義母様もう死にそうなの?
リオ、つまんなーい。もっと…遊んでよぉっ!!」
掴み上げたドルキの頭を地面に叩きつける。
加減はしたのだろう。地面に脳髄をぶちまけるような事は無かったのが救いだった。
だがマリオンに殴られた頬は青く腫れ上がっていた。
地面に叩きつけられた衝撃で鼻がひしゃげた。
更にぶちぶちと金髪が千切れ、ドルキの顔は見るも無残な事になっている。
「あははははっ!! 義母様変な顔ーーっ♪」
腹を抱えて笑い声を上げるリオ。
狂気を含んだ、少女の声に混じって、『助けて…』とドルキの懇願が聞こえた気がした。
「うにゃぁ? なーに? 聞こえなーい♪」
だが淫魔は許しを請うドルキに容赦しない。
じゃきん、と笑顔で爪を伸ばし、ドルキの頬にあてがう。
「ひ、あぁぁぁぁっっ!?」
ぎぎぎぎ、と顔面を横断する爪の感触にドルキが悲鳴を上げる。
無残だった顔が爪に引き裂かれ更に無残な事になった。
ドルキの悲鳴が余程良かったのか、リオは艶かしい吐息を漏らす。
「はぁ…♪ はぁ…♪ 義母様の悲鳴…気持ちいい…♪
おマンコ、濡れちゃうよぉ…♪」
リオはドルキの血が付着した爪先にぞろり、と舌を這わせる。
「ねぇ? 義母様ぁ…♪ もっと、義母様の悲鳴をリオに聞かせてぇ…♪
義母様の絶望する声をリオに聞かせてぇ…♪ ねぇ、どうすればいい声で鳴くのぉ?
痛い事すればいい? それとも、そのお顔をもっとぐちょぐちょにすればいい?
――あ、そうだ! 両方同時にしよう!
目玉を抉り取るの! きっといい悲鳴で鳴いてくれるよね!?
あはっ――あははははははははははははっっっ!!!」
駄目だ。今のリオは、狂ってる。
彼女を救ったのは、間違いだったのだろうか。
他に何か、方法があったのだろうか。
このままでは、取り返しの付かない事になってしまう気がする。
ドルキを殺してしまったら、きっともうリオは戻って来ない。
その魂すら、完全に邪悪に染まり、人の心を忘れてしまうのだろう。
(私、また、リオを助けられない…)
マリオンの頬を涙が伝った。
悔しかった。リオの事を思って行動してきたこの十年余りの歳月。
それらが全て無駄なのだと言われている気がした。
どれだけ努力しても、結局誰も報われない。
妹の命は助かるかもしれないが、魔へと堕ちた彼女は悪逆非道の限りを尽くすだろう。
それでは何の救いにもならない。
誰か、誰か。
リオを止めて。
自分では、妹を止められない。
彼女を愛する余り、彼女の本質が見えていなかった。
世界に絶望し、他者を恨み、何より孤独を知っているものだけが、リオを理解出来るのだ。
そうでない者以外、彼女を止める事なんて出来ないのだ。
けれど、そんな人間が、ここに居るのだろうか。
「悪い子はどこだああぁぁぁっっ!!!」
その声は空から響いた。
リオがそれの存在に気付き、獣の目で空を見据える。
次の瞬間、美しい花が空から降ってきた。
正門から続く石畳の通路を踏み砕き、一匹の魔物が大地に降り立つ。
着地の衝撃で黒い霧が吹き飛ばされ、薄暗い視界に日の光が差した。
浅葱色の肌。
腰まで伸びる、肌と同じ色の髪。
女神にも引けを取らないほど美しい顔立ち。
豊満な、果実を思わせる双房。
上半身は絶世の美女。
下半身に肉の花を持つ魔物。
(……来るのが、遅い…)
胸の前で偉そうに腕を組むアネモネを見て、マリオンは救われた気がした。
「…ネーアさん…」
だが、感動の再会である筈なのに淫魔の表情は晴れない。
それがマリオンには気に掛かってしょうがなかった。
「あたしだけじゃないわよ」
アネモネの言葉に答えるように、二人目の乱入者が姿を表した。
全身を覆う赤い鎧。
獅子の鬣を連想させるブロンドの髪。
顎下まで立派な髭を生やし、顔には深い皺が刻まれている。
もうすぐ五十を迎える男の顔だ。だが、その眼光はどこまでも鋭い。
凶暴な獣性を真紅の鎧に封じ込めているようだった。
「父様…」
父グリーズの登場に淫魔の顔が僅かに強張った。
***
「随分と派手にやらかしてるみたいじゃない」
地上に降り立ったネーアは辺りを見回しながら眼前の仲魔に喋りかけた。
周りはリオの放つ黒い霧のせいで死屍累々といった様子だ。
「殺したの?」
「いえ? 皆さん生きてますよ? 第一そんな酷い事私がするわけないじゃないですか。
女の子は皆、アネモネになってもらうんですから♪
あ――そうだ。私も質問があります。どうしてネーアさんと父様が一緒に居るんですか?」
「ああ、そうね…説明しないとね」
立場を考えれば、二人が戦っても不思議ではないのだ。寧ろ、それが自然と言えよう。
ちらりと背後のグリーズに目配りをする。
彼は任せると言った様子で軽く頷いた。物臭な男だ。
「リオに会いに行く途中でばったり会っちゃってね。
貴女の居場所を教える代わりにここまで案内させてもらったの。
それと、クロトの安全も、ね」
「クロトさん? クロトさんが生きてるんですか!?」
「アドニスの繋がりは切れてるだろうから、やっぱり死んだと思った?
大丈夫よ。首を撥ねられただけだから。すぐにくっつくわ。
撥ねられた本人は自分が死んだと思ってるでしょうけどね」
アネモネと戦闘経験が無いものなら、切っても死なないなどとは思わないだろう。
しかし、かの剣神ともあろう人間が、その程度の事を知らないものなのだろうか?
「…そうですか。安心しました――でも私がやる事に代わりはありません」
リオが見せびらかすようにドルキの体を引きずり上げる。
滅茶苦茶にされた女性の顔面を見て、二人の顔が僅かに強張った。
「私は、この女に復讐します」
淫魔らしい、愛らしさと淫靡さを同時に備えた姿よりも、その性格の豹変振りに驚く。
「…変わったわね、リオ」
無邪気に微笑みながら大胆な発言をする少女に、諦めにも似た感情が胸を満たす。
この少女を『こちら側』に引き込んだのは間違いなく自分だ。
だが肉体が変わっても、精神がここまで堕ちるとは夢にも見ていなかった。
「それが、貴女の義理の母親?」
「はい。――うふふ♪ ネーアさん?
私達いまぁ、親子の絆を育んでいるところですぅ♪」
何も見ていなければそれが歳相応の少女が言う台詞に聞こえる。
だがリオが小さな手で引きずり上げているのはぼろ雑巾のようになった人間の体だ。
息も絶え絶えで、見てるこちらが痛々しく思えてしまう。
昨日の夜までは、他人を思いやれる優しい娘だった。
それが今では身内を笑顔でリンチするような残虐な性格になってしまった。
(…あたしのせいね)
リオに種子を植え付けたのは双方合意の下で行われた事だ。
しかし、孤独に耐え切れなかったネーアの弱さも原因の一つであるかもしれない。
自分がもっとしっかりしていれば、こんな事にはならなかった。
そう思うと、本当にやり切れない。
「リオ。引き上げるわよ」
「……え? …え? …引き上げるって…何言ってるんですか、ネーアさん」
「昨日の夜にも言ったでしょ? 目立ち過ぎだわ。もうここには居られない」
いや、それもある。
だが本音はリオにこれ以上悪事を働いて欲しく無かったのだ。
きっとそこの義理の母を殺してしまったら、理性のタガが外れてしまうだろう。
他人を貶め、命を奪う行為に快楽を覚えるようになってしまうだろう。
人を止めたとしても、そうはなって欲しくないのだ。
「……嫌です」
「あのねぇ。我侭言わないの。
人間達に延々と追いかけられるのがどれだけ苦痛か、話してあげたでしょう?
貴女も同じ目に遭いたいの?」
「襲ってくるなら、追い払えばいい」
リオの声のトーンが下がる。
ぞくり、とした。
先程まで無邪気な笑顔を浮かべていたのに、今その愛らしい顔は能面のように無表情だ。
「しつこいなら、殺せばいい」
獣の双眸に射抜かれ、本能が警鐘を鳴らした。
この娘は、危険だ、と。
真紅の両目を見ながら何とか説得する方法を考える。
「リオ、忘れないで。私達は人間が居ないと繁殖も出来ない。
ただ殺すだけならいつかあたし達自身が滅びるわよ」
「そんな事ありませんよう」
ふと、リオの顔が歳相応の少女のものへと破綻した。
「例えば――ほらっ、この街を私達で占領するんです!
アドニスの花をいっぱい咲かせてっ、必要最低限の人間だけを残して『飼う』んです!
鎖で繋いでぇ、エッチして人間の子供を産ませるだけの家畜にしちゃうんです!
そうすれば、アネモネを好きなだけ増やせますよ! 永遠に!」
名案だとばかりにリオは表情を輝かせた。
「…成る程、確かにあたし達アネモネからすればそれは理想の世界ね」
「ですよねっ? ネーアさんもそう思いますよね!?」
孤独と、人間達に追い掛け回されるストレスから開放される。
それだけでリオの考えは魅力的に聞こえた。
アネモネは水と日の光さえあれば半永久的に生きられるのだ。
アドニスの中で、人間の『餌』も生成出来るので何も問題は無い。
そしてこの街には結界がある。
事を知って追いかけて来た人間も、そうそう簡単には街には侵入出来ない。
ここをアネモネの拠点とするには最高の場所と言えた。
「でも駄目」
「――どうしてですか」
「今の、本当にあたし達の事を思って考えてくれていたのなら、まあ、いいわ。
でも、違うでしょ?」
リオのそれは、目的ではなく、手段なのだ。
彼女は、ネーアの、アネモネの未来を考えて語っているわけではない。
それは彼女の言動や行動を見ていれば馬鹿でも分かる。
「リオ、貴女はね。自分の復讐を果たす為にこの街を支配しようとしているの。
それは私の為なんかじゃない。リオ自身の我侭の為よ。
復讐を正当化する為に、あたし達アネモネを利用しないで」
(…言い過ぎたかしら)
だがここでその事をはっきりしておかないと彼女は間違いに気付かないかもしれない。
それに、ネーアは信じている。
リオの中にはまだ人の心が残っていると。
「どうして分かってくれないんですか」
獣の瞳がこちらを見据えた。
まるで石ころでも見るような目つきに、再び背筋に冷たいものが走る。
「私、ずっとずっとネーアさんの事を考えてたのに。
どうしたら喜んでくれるか一生懸命考えたのに」
違う。それは良い訳だ。
いや、ひょっとしたら本気でそう思っていた時もあったのかもしれない。
でも今は違う筈だ。
赤くなった両目は、復讐に酔っているようにしか見えない。
どうやって自分を殺した女を苦しめてやろうか、それしか頭にないのだ。
「……ネーアさんも私を裏切るんですね。
父様と同じように。私を捨てるんですね」
「それは違うわ。あたしは今でもリオの味方よ。だからこそ、」
「うるさい裏切り者」
淫魔の肩が震えていた。
(しまった…あたしの馬鹿っ)
相手が年端も行かない子供だという事を失念していた。
正論だけで説得出来たのなら、誰も苦労はしない。
こちらから譲歩して、彼女の意思を少しでも尊重すべきだった。
「…私の味方は姉様だけ」
悪魔がドルキを放り捨て、翼を広げてマリオンの傍らへと移動する。
「……リオ…」
チャームでも掛けられていたのだろうか。
今まで事の成り行きを呆然と見ていただけのマリオンの瞳に、意思の光が戻る。
その傍らに悪魔が着地した。
「ね? 姉様だけは、私の味方だよね?
私が何をしても、許してくれるよね?」
そう問い掛けるリオの表情は歳相応の少女のそれと同じだった。
好きな人に嫌われたくない。
この人だけは甘えていい。
そんな、感情が垣間見える。
だが、マリオンはそれを理解せずに言葉を発した。
「お願いリオ。元のリオに戻って」
それも最悪のタイミングで、最悪の言葉を。
(…馬鹿…っ)
どうしてもっと慎重になれない。
何故そんなにも不器用なのだ。
自分が見限られた以上、マリオンがリオの支えにならなければならないというのに。
そのマリオンにさえ今の自分を否定されたリオは、一体どうなる?
だが、マリオンが不器用なのは元からだ。
それに同じミスをした自分が、彼女を責める資格などない。しかし、
「……姉様まで…」
ふらふらとリオがマリオンから離れた。
その足取りはおぼつかなく、まるで悪夢の中を彷徨う子供だ。
いや、今の彼女にとっては正に今この状況は悪夢以外の何でもなかった。
信じていた者達に裏切られ、独りぼっちになってしまう悪夢。
(何か、何か言葉を掛けてあげないと)
リオは首を振り、両手で頭を抱えている。
このままでは、孤独でリオが潰れてしまう。
思い出せ、この二百年間を。
たった一人で、人間という敵だらけの世界の中を生き抜いてきた苦痛を。
その重圧に、十二歳の子供が耐えられる訳が無い。
「リオ聞いて、あたしは、」
「――きらい」
「…リオ?」
ぼそりと呟いた彼女の言葉。
それは悲しみの嘆きではない。
「義母様も、父様も、姉様も、ネーアさんもっ…っ!
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いきらいきらいきらいキライキライキライっ」
世界を憎む呪詛だ。
「みんな死んじゃええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!!」
闇が膨れ上がった。
リオを中心に爆発的に放射される黒い霧に、マリオンの体が吹き飛ばされる。
「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁっっっっ!!!!!!!」
悪魔の魔力に、地面に転がっていたドルキや、門下生達も吹き飛んだ。
ネーアは地面に触手を突き立てながら体を固定し、衝撃波をやり過ごす。
更に飛ばされるマリオンの体を何とか捕まえ、横目でグリーズの様子を伺った。
赤い鎧が吹き付ける黒い霧を遮っていた。グリーズは涼しい顔のままリオを見詰めている。
「…失敗か」
吹き荒れる魔力の中、ぽつりと彼の呟きが聞こえた。
リオの居場所を教える条件として、クロトの安全、ネーアの同行。
それにもう一つ、リオの説得を引き受ける、という三つの条件を要求したのだ。
街の領主が相手だというのに我ながら身勝手な要求だなとは思った。
しかし意外にも彼は懐の深さを示し、その三つの要求全てを呑んでくれた。
今頃クロトは魔術士達により街の外へと転移させられただろう。
そして彼のエスコートのお陰でこの屋敷まで、無事辿り付けた。
(リオの説得は、出来なかったけど)
歯痒い。分かったつもりで、彼女の事を全然理解してあげられなかった。
森の中でマリオンにあれだけ偉そうな事を言っておいて――自分が情けない。
(こうなったら強硬手段ね)
力ずくでリオの戦闘能力を奪い、それから再び説得する。
これだけの被害を出しておいてグリーズがそれを認めてくれるかは甚だ疑問だが。
今は現状を何とかするしかない。
幸い、魔力総量ならばまだこちらの方が上だ。
『繋がり』を利用した、強制力もある。こちらが有利な事には、
「――え?」
(ちょっと、何これ? あの子の魔力、どんどん上昇している!?)
これだけの量の魔力を放出しておきながら、減るどころか増えている?
一体どんな手を使っているのか、それを考え――ふと気付いた。
屋敷の中に、同類達の反応がある。
恐らくリオが屋敷に潜入した際種付けした者達だろうが――
その者達のアドニスから急激に力が失われていくのだ。
このままではアドニスが枯れ果ててしまう、それくらいの勢いで。
そして失われていく魔力と反比例するように膨れ上がるリオの魔力。
(『繋がり』を利用して、アドニスから直接魔力を吸収しているの!?)
吸精能力を持ったネコマタと魔力の扱いに長けた悪魔。
そしてアドニスを胎内に持つリオだけが可能な芸当なのだろう。
それを理解した瞬間、がくん、と体から力が抜けた。
「そんな、あたし、までっ」
「あはははははははははっっ!!! すごいっ!! 力が溢れてくる!!」
狂ったように笑うリオの魔力は既にこちらと引けを取らない。
「『止めなさい、リオ』!!」
「っ!?」
びくり、と悪魔の体が仰け反った。
そう思った次の瞬間にはにんまり、と彼女は不敵な笑みを浮かべる。
「い、や、で、す♪」
悪魔が腕を一薙ぎ。
それだけで黒い霧がうねり、烈風となり、こちらに叩き付けられた!
「きゃあっ!?」
触手で固定していた地面ごと巨体が吹き飛ばされる。
マリオンを放り出しはしなかったものの、べちゃり、と無様に着地した。
(強制力も効かないっ)
そしてこの体からも魔力が奪われていく。
十やそこらの生まれたての魔物に下克上を突き付けられ、絶体絶命を迎えていた。
(これは、本気でやばいわね)
リビディスタの門下生達が戦術を組んで挑み掛かれば勝てるだろう。
だが彼らの主戦力は街の外で待機している魔物達の殲滅で手一杯だ。
魔物達を倒したその頃には屋敷の人間は全滅である。
となれば最後の望みは。
ネーアの縋る視線に答えるように、一人の男が地を蹴った。
***
リオは視界の端で、何かが猛烈に近付いてくるのを捉えた。
特殊な加工がされた鎧はある程度の魔力耐性を所持しているらしい。
こちらが放つ魔力をものともせず一直線に突っ込んで来た。
さしずめそれは赤い弾丸。
年齢を感じさせない鋭い踏み込みに、こちらも爪を伸ばし、迎撃を試みる。
(ふふふ♪ 今の私なら、父様だって倒せる♪)
屋敷のメイド達やパセットに植え付けたアドニス。
更にネーアからも魔力を吸収し、今では全快状態のネーアと同等の力を得ている。
ただ、あの赤い鎧は精神防御能力すらもあるようで、彼の思考を読む事は出来なかった。
まあ、その程度、丁度いいハンデになるだろう。
向こうは五十近い老体。
対してこちらは魔力を補充したばかりの魔物。
負ける筈が無い。
人を止め、手にした力を思う存分見せ付けてやる。
(大体、父様丸腰じゃないですか)
黒い霧の中を掛ける男の手は空っぽだ。
かと思った瞬間、その手から青い魔術陣が生み出される。
(ああ、そっか。そう言えば父様、剣を転移させる魔術を使えるんですね)
あらゆる剣を状況に応じて使い分ける。
それが剣神と謳われる由縁だ。
だが種が明かされていれば怖いものではない。
力でねじ伏せてやる。
「行くぞ」
ご丁寧にも父親は攻撃前に声を掛けてくれた。
子供だと思って舐めているのか。
その手に握れられているのは細い、変わった意匠の黒い鞘。
『反り』のある刀身を封じ込めた鞘を左手に携え、右手でその柄に触れる。
刀身の大きさはそれほどではない。
鯉口を切り、闇の烈風の中僅かに覗いたそれは細く、薄い。
そんなナマクラ、へし折ってやる。
こちらから間合いを詰める。
右手に魔力を集約。ブレード状に固定した赤い爪を振り被り――袈裟切りに叩き付ける!
同時に、グリーズが黒い鞘から刀身を引き抜いた。
常人には捕らえる事の出来ない神懸り的な居合いも、今のリオはしっかりと捉えていた。
ぎいん!
赤い爪と異国の剣。それが交わった瞬間、高々と剣戟の音が響き――
「――えっ!?」
あっさりと消滅した赤い爪を見て、愕然とした。
そしてそれを見逃すグリーズでは無かった。
返す刀が悪魔の首を狙う。
「こ、のぉっ!!」
左手の爪に瞬間的に魔力を集約。
惜しみなく魔力を消費して、頑丈な刃を生成した。
ぎいいいいぃぃぃんんっ!!
白刃と赤い爪が、鍔迫り合い、魔力の光を散らす。
それが予想外だったのか、グリーズが『ほう…』と感嘆の声を静かに漏らした。
(どうですか、父様? 驚きましたか?
舐めないで下さい。私はもう、一人前のモンスターなんですよぉ!!)
左手で攻撃を受けている間に右手に再び赤い刃を生み出す。
それをがら空きになったグリーズの左脇に繰り出そうと思った――その直前、
赤い鎧が僅かに捻れた。
グリーズが逆時計回りに体を回転させたのである。
それだけで白刃を受け止めていた左の刃が紙切れのように引き裂かれた。
「っ!!?」
ひゅんっ、と耳元で風切り音が唸る。
反射的に翼をはためかせて後方へと跳躍、斬撃を回避する。
(危なかった…!)
反応が一瞬でも遅れていたら首を切り落とされていた。
何が五十近くの老体だ。冗談じゃない。
楽に倒せると思ったのがそもそもの間違いだった。
これだけの魔力を得ても、やった対等に渡り合える――とでも言うのか。
ぎり、とリオは歯を食いしばりグリーズを睨み付けた。
彼は鉄面皮のまま、こちらを見据えるだけだ。
あれだけ重そうな鎧を着ているのに汗一つかいていない。化け物じゃないのか。
(魔力の放射は、無駄かも)
先程から爆発的に垂れ流している黒い霧もあの鎧の前では目くらまし程度にしかならない。
大量に吸収した魔力も無限ではない以上、使い過ぎは只の浪費だ。
リオは自身の体から放射していた黒い霧を再び自分の体へと吸収する。
庭とも言える玄関先に日の光が再び差し込み、視界が回復していく。
「片刃の剣は、叩く事よりも切る事に特化されている。
この剣もそうだ。刀身の『反り』は叩き付けただけでは効果を成さない。
これを引くか、押すか、そうする事で初めて対象を『切る』事が出来る」
「そう、でしたね」
姉の剣の訓練を何度か見た事があるが、そんな話をしていたかもしれない。
何年も前の事なのでうろ覚えだったが、今しがた体で経験して、それを思い知らされた。
「そして――」
グリーズが鞘を放り投げ、剣を地面に突き立てる。
と思った瞬間には何かがこちらに向かい飛来してきた。
「っ!?」
ひゅひゅんっ!!
こちらの体を射抜こうとするのは二本のナイフだ。
それを大きく横に跳躍し、かわす。
「距離をとったからと言って安心するな。
ワシは、何処からでも貴様を狙えるぞ」
じゃらり、と両手で計八本のナイフを扇状に広げて見せる。
さっきはあれを投擲して攻撃してきたのか。
「だったら、こっちにも考えがありますっ」
ばさり。翼をはためかせて飛び立つ。
グリーズは屋敷の地下にある専用の武器庫から獲物を転移させ、手元へと呼び寄せる。
その数も有限ではあるだろう。
だがあのサイズのナイフくらいならほぼ無限と言って差し支えないほどのストックが在る。
弾切れを狙うには時間が掛かりすぎる。
それなら、こちらも同じ事をしてやればいい。
リオは体内に蓄積させた魔力を消費。中空に大量の赤い刃を生成する。
大きさはグリーズが手に持つナイフとほぼ同等。それらの刃先がグリーズに狙いを定める。
「…む」
「いけぇぇぇっっ!!!」
ひゅひゅひゅひゅん!!
リオの掛け声と同時に、魔力の刃がグリーズに向けて降り注いだ!!
ずががががががががががっっ!!!
「…おっかないわね…っ」
少し離れた所でネーアが小さく声を上げていた。
グリーズを狙う赤い雨とも言うべき攻撃は石畳の地面を粉砕し、辺りに破片を撒き散らす。
赤い雨に穿たれた地面は深く掘り返され、その下の土を露出させた。
人間が喰らえば、その鎧ごとミンチにしてしまうほどの威力だ。
だがそれも当たれば、の話だ。
「このっ、このぉっ」
リオは次々と赤い刃を生み出してはグリーズへと放つが――当たらない。
鎧を着たままグリーズが軽やかなに地を駆ける。
その動きは五十近くの中年とは思えない程、素早い。
グリーズは植え込みの木を縫うように庭の中を縦横無尽に駆け回る。
「このっ! 速いっ、当たらないっ――にゃうっ!?」
不意に飛んできた八本のナイフを空中でなんとか回避する。
グリーズが走りながら投擲したものだ。
(き、器用な事をっ)
だが飛び回りながら攻撃すれば、向こうの攻撃もなかなか当たらない。
疲れて動きが鈍くなった所を仕留める!
と思った矢先に彼の体が屋敷の陰に隠れて見えなくなった。
「に、逃げるの!?」
いや、追いかけて来たところを不意打ちを食らわすつもりだ。
ここは慎重になって――いやいや、こちらが尻込みをしている間に体力を回復させる気か?
(技術では、敵わないのは分かってる)
まともに戦っては勝てない。
となれば向こうのスタミナ切れを狙うのがやはり得策なのだ。
人質を取る事も考えたが――それは何だか嫌だった。
卑劣な手段を用いるのは、ドルキだけでいい。
(私は、実力で父様を倒すっ)
決意を固めて中庭の方角へと走り去ったグリーズを追う。
ただこれが罠である事は分かっている。
文字通り足元を掬われないよう、注意しながら建物の角から顔を出した。
(――居ない?)
逡巡していたのはほんの数秒だ。その間に、どこに消えたというのだ。
「どこを見ている」
声は『頭上』から聞こえた。
「え?」
慌てて振り仰げば、上から長大な剣を構えたグリーズが降って来た。
(っ、何で、上からっ!?)
避けられるタイミングではない。
慌ててブレードを両手で生成。それを交差して、剣を受ける。
次の瞬間、二の腕に千切れるかと思うほどの衝撃が走った。
良く見ればグリーズが振り下ろしたのは彼の背丈よりも遥かに長い剣だ。
ツヴァイハンダーと呼ばれる両手持ちの大剣よりも更に大きい。
剣などと言うのもおこがましい、鉄板だ。
どうやって屋敷の上まで上ったのか知らないが、こんな物を叩き付けられたら、
(お、ちるっ)
落ちるだけなら兎も角、地面と剣でサンドイッチにされてしまう。冗談じゃなかった。
「こ、のおおぉぉぉっっ!!!」
自由落下する体を捻り、一方向に目掛けて魔力を放出する。
噴出した黒い霧は推進力となり、体を捻った動きを合わせて小さな体を回転させた。
がんっ!!
裂帛の掛け声と共にリオが放ったのは蹴りだ。
体を回転させ、斬撃から横に脱出しながら、同時にその剣の腹を蹴り飛ばす。
「っ…!」
破れかぶれの行動だったそれは功を制した。
蹴り飛ばされた大剣は中庭の中央に弾き飛ばされ、リオは蹴りの反動を利用して着地した。
「と、ととととっ…!」
と思ったが脚にも腕にも負担が掛かっていたらしい。
たたら踏んで、その場で情けなく尻餅をついてしまう。
(生きていただけ、よしとしなきゃね)
鎧同士が擦りあう音を立てながら、グリーズが僅かに離れた位置に着地した。
あいも変わらずポーカーフェイスで、うんざりしてしまう。
「良く凌いだものな」
「…お褒め頂き光栄です」
「だが油断していたのも事実だ。
自分が飛べるからと言って、相手が常に自分よりも下に居ると思わない事だ」
言いながらグリーズは屋敷のある一点を指差した。
そこはグリーズを追撃するリオから見て、丁度死角になっていた場所だ。
建物の角から少し離れた壁に、剣が何本が突き刺さっている。
剣は屋敷の上を目指し、およそ一、二メートル間隔で突き立てられていた。
「まさか、壁に突き刺した剣を足場にして、上ったのっ?」
「空を飛ぶ魔物相手には重宝する戦術だ。
そういうものに限って、まさか相手が自分より高い場所にいるとは思わないだろうからな」
「…くっ」
図星を突かれて、歯噛みした。
伊達に歳は食っていないという事か、実戦経験が違いすぎる。
下手な戦術は、こちらの身を滅ぼすだけだ。
(だったらっ)
再び両手にブレードを生成。
「真っ向勝負ですっ!」
「その意気や良し」
突っ込むリオに答えるように、グリーズも両手から剣を生み出した。
***
剣戟の音が高々と響いていた。
両手にブレードを生成したリオと、同じく二本の曲刀を生み出したグリーズ。
父と子が、真正面から切り結んでいる。
(……凄い)
リオとグリーズの切り合いを見詰めながら、マリオンは心底感心していた。
何が凄いかって、あのグリーズとまともにリオが戦っている、という事が、だ。
最初は怒りに我を忘れたリオにどうしようかと頭を悩ませていた。
だが親子で繰り広げられる死闘は意気を呑むほど激しく、目が離せない。
気が付けばマリオンは剣神と悪魔の戦いに見惚れてしまっていた。
「……助けないの?」
この体を抱きとめるアネモネの女が至極当然の疑問を口にした。
助ける対象がリオだとしてもグリーズだとしても。
戦いを止めなければどちらかが死ぬ事になるだろう。
「そんな事しない」
だがそれは、父親の――剣神に対する侮辱だ。
「何となく、分かったの」
「何を?」
「父様の事」
今まで、グリーズという個人を何も理解してなかった。
無表情で。口数が少なくて。何を考えているか分からない。
リオをレイプした鬼畜かと思ったら、アネモネのネーアをこの場まで案内してくれた。
リオを陵辱した父が、本当の父なのか。
それとも――
『違わないわよ。あの人、ちゃんと優しいところもあるもの。
病気だって分かった時、真っ先に様子を見に来てくれたしね。
週に一度はお見舞いに来てくれるし。不器用だけなのよ』
リオの母、リシュテアが遺してくれた言葉を思い出す。
彼女が言った通り、グリーズは不器用なだけで、優しい人間なのだろうか。
結局どちらが本当の彼なのかは分からない。
だが、一つだけはっきりしている事が分かる。
彼は今、リオとの戦いを愉しんでいる。
「攻撃が単調だ。そんな事ではすぐに裏をかかれる」
「うるさいっ! じゃあ、こうだっ」
ブレードによる斬撃に混じり、不意に赤い爪による射撃攻撃が放たれた。
だがそれも読まれていたのかグリーズが二本の剣で弾き、防御している。
「攻撃のバリエーションを増やすのはいい。だが、決定打にはならんな」
「くぅっ…!」
グリーズとリオが切り結ぶ度に彼は何かしらのアドバイスを与えているようだった。
そしてリオも彼の言葉を覚え、学習し、急激に成長しているのだ。戦士として。
グリーズは、そうして成長しているリオと戦う事を、愉しんでいるように見える。
(そういえば、私も、父様に剣を教えてもらった時は、こんな感じだった)
足りない所、至らない所を淡々と指摘される。
そして体が間違いを直すまで何度も何度も同じ訓練が繰り返される。
当時のマリオンはそんなグリーズに優しさは感じる事は無かったが……
(父様…嬉しそう…?)
リオと切り結ぶグリーズはかつて無いほど口数が多い。
それにリオの繰り出す攻撃や挙動に微かだが表情を動かしている。
笑みの形に。
「くっ、正面からじゃっ」
「来ないのか? ならばこちらから行くぞ」
距離を取ったリオを追いかけるようにグリーズが踏み込む。
リオは二本のブレードで迎撃しょうとするが――
ぎんっ! ぎんっ、ぎぃんっ!
一回、二回、三回と、剣を交える毎に小さな体が後退する。
グリーズのから放たれる斬撃は一発一発が重く、速い。
それを二本の腕からあらゆる角度、速度で放たれるのだ。
緩急のついたその連撃はまさしく電光石火。
赤い刃と交わる度に火花を散らし、悪魔の細腕を跳ね上げる。
「このっ…はなれろぉ!!」
ばしゅう!
悪魔がグリーズ目掛けて魔力を放射した。
黒い霧は赤い鎧の防御効果によりすぐに霧散した。
「目眩ましか」
グリーズの言葉のすぐ後に赤い凶弾が彼を貫こうと飛来する。
それをあっさりと二刀で弾き飛ばした。
「……ほう。魔力の放射を目眩ましと移動に使うか。成る程、線がいい」
ほらまただ。
リオのアクションに対して、グリーズが僅かに微笑んだ気がした。
彼は、リオと決闘している――のではないのだろう。
恐らく、稽古をつけているつもりなのだ。
「リオよ。気付いただろう。戦いには――人には間合いというものがある。
個人の力を最大限に発揮出来る距離だ。
このワシと正面から切り結ぼうなどと、愚の骨頂と言えよう」
「……みたいですね」
「逆に、貴様にはそれが無い。
戦い方に幅はあっても、自分を活かせる間合いが無い。
一対一の戦いにおいては。
相手の間合いに入らず、いかに自分の間合いで戦うかが勝利の鍵となる。
リオよ。先ずは、自分の間合いを見つけろ……でなければ死ぬだけだ」
「敵に塩を送っているのですか? …余裕ですね、父様?」
「…そうでもない」
(あ、笑ったっ)
自嘲気味に言った彼は、確かに笑っていた。
慣れない顔の筋肉を引き攣らせて、子供が見たら泣きそうな顔だったけど。
実の娘との決闘の最中、剣神と謳われた男は人間らしい、笑みを浮かべていた。
「父様、今笑ってたっ?」
「…みたいね…なんか、あの人、想像していたのとはイメージ違うわねぇ。
本当にリオをレイプした人と同一人物なのかしら?」
(それはこっちが聞きたい)
だが真実は当人達しか知らない事だ。
自分達には、この戦いを見届ける事しか出来ない。
勿論、リオが危機的状況に陥るような事になれば割り込むつもりだが。
グリーズの表情を見ていれば、彼は間違っても娘を殺すような事は無いと確信できた。
***
(良くぞ、ここまで成長した)
射出された赤い爪を弾き飛ばしながらグリーズは感嘆していた。
リオが居なくなった時は本気で心配したものだ。
あの体で森にでも入ったら命は無い。
だが妻であるドルキを蔑ろにも出来なかった。
自分を慕い、これまで背中を預け、子を産み、そして共に歩んで来た伴侶。
周りが見えなくなる時もあるが、彼女を愛しているのもまた事実なのだ。
そのドルキが、愛人であるリシュテアを憎む理由も分かる。
そしてその娘を憎む理由も。
何より母子揃ってグリーズと交わったのだ。
ドルキにしてみれば寝取られたようなものなのだろう。
彼女には悪い事をした。
それはリオにも言える。
かつてリシュテアと交わった時の様に鬼畜のように責め立ててしまった。
慙愧の念に駆られながら、それでもリオを求めて止まなかった。
娘の瞳が。香りが。その髪までも。
リシュテアの面影を強く遺していたせいで、歯止めが利かなかったのだ。
「ふっ、シャアァァッ!!」
魔力の放射を利用し、リオが急激に間合いを詰める。
振りかざされた赤い凶刃を受け止め、流れのまま受け流す。
勢い余った娘の体は僅かに離れた地面へと吹き飛び、すぐに体勢を整え着地した。
娘は傷付いただろう。
心も、体も。
だがそうやって彼女を傷つける事が、彼女を屋敷に置く為の理由にもなったのだ。
剣も魔法も使えないのだからせめて夜伽の相手だけでも勤めろ、と。
そんな言い訳を続けて、ドルキと、リオの二人をずっと苦しめてきた。
だからリオの行方不明は他言無用で、信頼出来る門下生だけに娘の捜索を依頼した。
ドルキの精神的負担も考え、何らかの形でリビディスタからは出て行ってもらおう。
そう考え、準備していた矢先の事なので素早く対応する事も出来た。
事が上手く運べば、ドルキの精神も安定する。
リオは隣町の娼館『セイレン』に引き渡される予定だった。
『セイレン』はリシュテアの勤めていた店で、今も営業を続けている。
店にはリシュテアに好意的なスタッフが何人も居る。
彼女達はリシュテアの忘れ形見であるリオの到着を心待ちにしている筈だった。
(それがまさか、アネモネに拾われるとはな)
再びリオが突貫してくる。
学習が早い。正面に立っての切り合いはめっきり減ってしまった。
今ではこうやって着かず離れずの距離から一撃離脱の戦術を取っていた。
これがモンスターリオの『間合い』らしい。
悪魔の飛行能力。ネコマタの俊敏さ。
それに魔力放射による急速移動を使い、縦横無尽に駆け回る。
目で追い切れない事は無いが、中々速い。
腕利きの門下生でも捉えるのは難しいだろう。
「しゃあっ!!」
ぎいんっ! ぎいんっ!
息をつく暇も無くリオのヒット&アウェイが続く。
勘を掴んできたのか回数を重ねる毎に速さと一撃の重みが増してきた。
この鎧には魔力遮断の効果以外に、筋力強化や、体力増強の効果をも持つ。
先程から人外の力と真っ向から切り合い、力で押し勝っている事にはそういう理由がある。
だが、それにも限度はあるのだ。
戦い方を徐々に学び、急激に強さを増していくリオに、段々と手加減する余裕が無くなる。
(…流石に堪えるな。歳には勝てんか)
そうだ。ネーアと名乗ったアネモネ。
彼女はどことなくリシュテアと似ていた。
顔の形も、声も、髪も、何もかも違うが、纏っている空気、というか雰囲気が似ていた。
モンスターの分際で人間臭く、他人の世話を焼きたがる不思議な女だった。
リオにアドニスの種子を植え付け、悪魔へと堕とした張本人でもあるらしい。
だが、それが魔物の凶暴性に任せて行った事ではないのだろう。
それは人間的な優しさや思考の末の選択であったと理解出来る。
(クロトの身の安全。屋敷までの連れ添い。リオの説得、か)
リオの居場所を聞き出すのに求められた条件だ。
街の領主である自分に対し臆さず、よくもまあこうも傲慢に物を頼んだものだ。
その厚かましさもリシュテアそっくりだった。
だからだろう。周りの門下生達の声もろくに聞かずに、ネーアの言葉に従ってしまった。
説得が失敗したのも、仕方が無い。
今のリオは心までもが魔へと堕ちてしまっている。
聞く耳など有って無いようなものだ。
それに、
(説得が成功していたら。こうして一戦交わる事も無かったか)
襲い掛かるリオの攻撃を受け流そうと剣を走らせ、
同時に悪魔がその軌道を大きく変えた。
「っ!?」
(魔力噴射かっ)
矢のように一直線に伸びてきたブレードの突き。
それが交差する直前でリオが横へと魔力を噴射した。
只の突きが、体を回転させながらの斬撃へと一瞬で切り替わり、反応が僅かに遅れる。
ぎいぃんっ!
二人の影が交差し、リオが地面へと着地する。
「…これでも、駄目なんだ」
「いや、危なかった」
鎧の左わき腹部分がばっくりと切り裂かれている。
反応が遅れた分、ブレードが鎧を掠ったのだ。
対魔力防御も兼ねた鎧がこうも易々と破壊されるのだから直撃を受ければ只では済まない。
(本当に、良くもここまで強くなったものだ)
行方不明になってから一日と経たない内に非力な少女は立派な戦士になっていた。
魔物になった影響も少なくはないだろう。
だが咄嗟の機転や、飲み込みの速さ、それに戦いのセンス。
それらは魔物になっただけでは身につかないものだ。
あえて言うなら、それらは生まれ持ったリオの才能。
(お前は、本当に、ワシの娘なのだな)
健康な体で育っていれば、今頃立派な戦士になっていたかもしれない。
それも、詮無い事か。
(そろそろ、潮時か)
深呼吸をし、高鳴る心臓を落ち着かせる。
反応が遅れたのは不意を突かれた事だけが原因ではない。
疲労が溜まってきたからだ。
(血湧き肉踊るが…年寄りには少し堪えるな)
リオと戦う前から魔物を迎撃していたのだ。
鎧の力を差し引いても、体力が持たない。
それを悟られないように立ち振る舞っては来たが所詮はやせ我慢。
「もう、終わりにするか」
ひびの入った二本の曲刀を地面に突き刺し、新たな剣を呼び出す。
オーソドックスな、両刃の剣だ。
決闘も終局を迎えようとするこのタイミングで使うのだから、勿論考えがある。
切り結ぶ度に少しずつ移動し、今では二人とも玄関前の広場に居るのだ。
ここには、地面に突き刺さったままのムラマサが存在する。
耐魔力効果を持った異国の名剣。
物理攻撃の殆どを、魔力で生成した刃に頼るリオにとってこれは天敵。
だがムラマサを使っていたのは最初だけだ。
時間も経ち、一度手放した武器を使い回されるとは思うまい。
だが刀に向かって一目散に向かえばリオもその意図に気付いてしまうだろう。
それでは意味が無い。
「…父様?」
「少し名残惜しいが…楽しかったぞ」
言ってから自分でも驚く。が、さもありなん。
戦う事しか出来ない根っからの武人が、娘と対等に渡り合ってきたのだ。
あの、リビディスタの汚点とまで言われてきたリオが、剣神である自分と、である。
嬉しいに、決まっていた。
娘の成長を誇りに思う。
「…え…?」
案の定というか、リオは呆気に取られた顔をしていた。
殺し合いの最中、敵から掛けられた言葉はアドバイスでもなんでもない。
毒気が抜ける――とまではいかないものの、人間らしい言葉に困惑しているようだった。
(だがそれでは困るな)
「行くぞ。リオ」
まだだ。まだ伸びる筈だ。
生まれ持つ天賦の才を、この目に見せてみろ。
「最後の教訓だ。利用出来る物は何でも利用しろ」
無論、それは人質を取る、という意味では無い。
遮蔽物や地面に落ちている武器となり得る物。
地形や敵の携帯物など、戦場に常に目を見張り、利用しろという事だ。
転移させた剣を大地へと突き立てた。
ずんっ!!
同時に大地が鳴った。
地鳴りと共に足元が揺れ――突如石畳の床をめくり上げて、大地が隆起した。
ずどんっ!! ずどんっ!!
「っ!?」
リオの足元から、その小さな体をミンチにしようと大地が襲う。
隆起した地面の先は尖り、直撃すれば風穴が開いてしまう。
リオはそれを嫌がり、後方へと下がった。
その隙を見逃さず、ムラマサの元へと走り、回収する。
隆起した地面が視界を塞いでおり、リオからは見えなかっただろう。
大地の隆起は一瞬で元に戻る。
美しい広場を滅茶苦茶に破壊した岩の槍は崩れ、砂塵となって視界を殺す。
グリーズはその中に踏み込んだ。
ムラマサを鞘に納刀し、いつでも居合いを放てるようにする。
同時に黒い霧が吹き付けてきた。
間合いを詰めるこちらに対する牽制なのだろう。
構わない。このまま突っ込んで、
黒い霧の中に、爛々と光る猫目を見た気がした。
打ち合うつもりなのだろう。
視界が悪いなら人外の瞳を持つ方が有利と踏んだのか。
それもいい、だが賭けはこちらの勝ちだ。
ぶうんっ。
黒い霧の中、旋風が巻き起こる。
(そういえば、ブレードの光が見えんな)
構わず鞘から白刃を滑らせて、
眼前から鉄板とも言うべき巨大な剣が振り下ろされた。
「っ!?」
反射的に居合いの角度をずらす。
本来ならば真横一文字に『切り裂く』太刀筋を、斜め下へと『受け流す』太刀筋へ。
だが、
ぎぃんっ!
圧倒的な質量の前に、あっけなくムラマサが粉砕された。
当たり前だ。どれだけ技術が高くとも、刀で鉄板は切れない。
(ワシの剣を使うか…っ)
ずがぁんっ!!
リオの身の丈の倍以上がある大剣が、地面を粉砕し、土と石をばら撒く。
剣の軌道を逸らしたお陰で体への直撃は防いだが、腕に激痛が走っていた。
骨にひびでも入ったか。
それでもリオは容赦しない。
地面を穿つ大剣を引き抜き、振りかぶり、
「うああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
横薙ぎの一撃が襲い掛かる。
回避は無理だ。リーチが長すぎてかわし切れない。
両手に剣を転移。
それを交差した瞬間、体が粉々になるような衝撃が走った。
***
「うああぁぁぁぁぁっっ!!」
ぎぃいぃんっ!!
返す刀がグリーズの体を弾き飛ばした。
防御の為に交差した二本の剣を粉砕し、赤い鎧の胸部を砕く。
決まったか?
咄嗟の思い付きだった。
利用出来る物は何でも利用しろ。
その言葉にグリーズが使った規格外の大剣を使おうと思ったのだ。
大地の隆起により互いの視界が塞がれた時。
魔力を鎖状へと変換し、中庭に突き刺さったままの大剣を絡め取り、手元へと引き寄せた。
魔力の霧を放射すれば向こうの視界を更に封じる事が出来る。
結果、グリーズに読み勝つ事が出来た。
向こうがあの刀を使わなければ、また少し違った結果になるかもしれなかったが。
兎も角これで終わりだ。
あのダメージではいくらグリーズと言えども――
(…いや、まだっ)
赤い鎧を纏った英雄は無様に地面に倒れる事無く着地した。
顔を上げたグリーズの目から戦意は消えていない。
鋭い眼光が、未だに負けを認めないようにこちらを見据えている。
(だったらっ)
大剣を放り投げ、両手にブレードを形成する。
ダメージも与えた。動きも鈍っている。
もう、彼との戦力差は殆ど無い筈だ。
「父様あぁぁぁっ!!」
何の策も無しに突っ込む。
ブレードへ魔力を惜しみなく注ぎ込み、赤い刃を最強の剣へと変える。
対してグリーズも両手に再び剣を転移させ、こちらへと果敢に踏み込んできた。
疲労を感じさせない獅子奮迅の勢いだ。
青い瞳が、殺気すら放ち、こちらを睨みつける。
(容赦はしませんっ!)
背中から魔力を噴射、後方へとGが掛かり急加速する。
地から脚が離れ、悪魔の体はまるで矢のようにグリーズへと突貫した。
瞬く間に、二人の距離が縮まっていく。
その中で、リオは次の手を既に考えていた。
この突進で終わるとは思っていない。きっと回避されるだろう。
だが魔力噴射を利用して再突撃を仕掛ける。
グリーズはもうこちらの速さに対応し切れない。
当たるまで、何度でも何度でも突撃してやる。
「ああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
眼前のグリーズを見据える。
彼はこちらを迎撃しようと脚を止め、両手に持った二本の剣を振りかぶった。
ぎりぎりのタイミングだ。
向こうが捨て身の覚悟で切り替えして来れば、こちらも只では済まない。
グリーズを倒しても、この後リビディスタの門下生達とも戦わなければならないのだ。
体力を少しでも温存しておく必要がある。それは分かっているのだが。
(構うもんかっ)
後の事なんて考えていられない。
だって、こんなにも『楽しいのだ』。
あの父との戦いが。血湧き肉踊る死闘が。
それを無下に出来る訳が無い。
手を抜く事も、尻尾を巻いて逃げる事も、打算で戦う事もありえない。
自分の出せる力を全て使い、敵を倒す。それが、快感なのだ。
だから後先の事など考えない。
今は目の前の敵を、鼻先まで迫った父親を倒し、
『少し名残惜しいが…楽しかったぞ』
(あ…何で、)
このタイミングで、雑念が。
先程のグリーズの言葉が、微笑が、脳内でリフレインされ、動きが僅かに鈍る。
だがコンマ何秒の時間すら、この戦いでは致命的だ。
ほら、グリーズの剣が今にも、この体を叩き切ろうと振り抜かれ――
――無い。
彼は剣を振りかぶったままで、こちらに攻撃してこない。
まるで時が止まったかのようにその体は硬直したままで、
直後に、赤い凶刃が深々とグリーズの腹へと突き刺さった。
突進の勢いのまま、彼を刺してしまった。
『…それでいい』
鎧を貫通した腕から、グリーズの思考が伝わって来た。
『最後の最後で油断したな……危うく切ってしまう所だった』
(…え?)
危うく、切ってしまう? 何だそれは。
まるで、最初から殺す気が無かったような言い方ではないか。
(…まさか、さっきの)
こちらの隙を狙って攻撃しなかったのは、ワザとなのか。
「…どうして…?」
ブレードを解除する。これはもう必要ない。
こちらの勝ちだ。
ただ、この勝利はおそらく『最初から約束された』ものなのだろう。
グリーズと視線が交わった。
さっきまで殺気を纏わりつかせていた戦士のそれとは違う。
彼は、穏やかな――そう。父親の顔をしていた。
『気付いたか…流石、リシュテアの娘だな……勘がいい』
「そんなの誰でも気付きます! 母様の娘だとかそんなの関係無い!
卑怯ですっ! 父様っ、ワザと負けるだなんてっ、そんなの納得出来ません!」
『……そうか…心が読めるのか…鎧が無ければ、ワシは最初から負けていたな』
「そ、そんな事、やってみないと、」
びしゃり。
「きゃっ!?」
唐突に、顔面に熱い何かが吹き付けられた。
目には入らなかったものの開いた左手で目元を拭う。
そして再び目を開いた時、視界が真っ赤に染まっていた。
グリーズの血だ。
「…あ…ああぁぁぁっ…!?」
(わ、わたし、なんで、こんなっ)
戦いの興奮が冷め、人間的な感情が蘇る。
(死んじゃうっ、父様が死んじゃうっ)
慌てて腕を引き抜く。
げぼっ、と血の塊が再びグリーズの口から零れ、黒いスカートを赤く染めた。
「父様、父様っ」
呼びかけると返事の代わりに掌を握られた。
豆だらけの大きな手。
昨日までは、この手は幼い体を叩き、蹂躙するものだと思っていた。
だが今は…違う。
温もりを感じるのだ。彼の穏やかな心と共に。
『喋らなくてもいい、というのは便利なものだな……
勝負は、お前の勝ちだ……リオよ…』
「そ、そんな事、」
『どうした…? もっと喜べ…仮にもワシに勝ったのだ…誇ってもいい』
「そんなの…っ、そんなのどうだっていいですっ!
確かに、父様と戦っている時、少し楽しかったっ!
でも、私、父様の命まで、欲しくなんか無いっ!」
そうだ。
ドルキに復讐する事も大切だ。これはいまでも変わらない。
でもそれとは別に、もう一つささやかな願いを持っている事に今更気付いた。
「私、父様にもっと甘えたかった!」
自分には母親は居ないが、父親なら居る。
ならその男に甘えれば良かったのだと気付いたのだ。
「エッチな事も、剣の修行でも、何だってやります!
でも、その分だけ、私に甘えさせて下さいっ。
一緒に、ご飯を食べたり、一緒に本を読んだりっ…!
そんな当たり前の事で良いんですっ!
ちゃんと、私の『お父さん』をして下さいっ!!」
悲痛な声が、広場に響き渡った。
『…すまん。駄目な父親だったな』
そっと、血に濡れたグリーズの右手が頬を触る。
熱い血潮が左の頬へと塗りたくられると、それを離すまいと上から押さえつけた。
『以前写真で見せてもらった事がある……
幼い日のリシュテアとそっくりだ…』
「だったらっ、私に、もっと母様の事、教えて下さいっ!
私っ、何も知らないんですっ!
母様の顔もっ、声もっ、好きな物とかっ、嫌いな物とかっ…
全部、全部教えてくださいよっ!
父様、剣神なんでしょう!? 英雄なんでしょう!?
こんな事で、死にませんよねっ!?」
自分でも無茶な事を言っているのは分かっている。
だがネコマタの眼が、彼から大量の血液と共に精気が抜け落ちていくのを捉えるのだ。
『無茶な事を言う…そんなところまで…あいつに似たのか?』
ふ、と口の端から血を流したままグリーズが不器用に微笑んだ。
穏やかなブルーの瞳に、少女の顔が映っている。
猫耳を生やした悪魔の瞳は、青と赤の猫眼だ。
父と同じ、ブルーの右目だ。
『やはり、お前はワシの娘だよ…愛しい……我が子……よ……』
彼の手から力が抜ける。
抜ける空のような瞳から徐々に意思の光が消えていく。
グリーズから、命の火が消える。
「…あ、ヤダ…っ、死んじゃ嫌ですっ! 父様っ、父様ぁっっ!!」
「……リオ、退いて」
瀕死のグリーズに泣き付く所を、背中から引っ張られた。
振り向くと、強張った表情をしたマリオンが立っている。
「…姉様…っ、父様がっ、父様がっ」
「分かってる」
マリオンがグリーズを治癒しようと試みる。
回復を意味する白い魔術陣がグリーズの体を取り囲み、淡い光で包み始めた。
春の木漏れ日を連想させる暖かな光が、グリーズの腹に開いた傷を徐々に塞いでいく。
「ほら!! アンタ達も回復魔術が使えるでしょうっ!! 何をぐずぐずしているの!?
この人はアンタ達の大将でしょうが! 死んじゃってもいいの!?」
遠巻きに見ていたネーアが、何時の間にか眼を覚ましていた門下生達に檄を飛ばす。
治癒専門の魔術士達が顔を見合わせると、事態の深刻さに気付きグリーズへと駆け寄った。
白い魔術陣が一つ二つと数を増やし、グリーズの全身を眩い光が包み込む。
しかし何重にも治癒魔術が発動しているにも関わらず、彼の顔は土気色のままだ。
血が足りない。傷が塞がっても、それでは意味が無いのだ。
そしてそれを理解しているのだろう。
門下生達の諦めに似た表情を浮かべたいた。
『こんなの無理よ…』
『駄目、助からない…』
『この化け物のせいだ…』
『グリーズ様が…グリーズ様が…っ』
彼女達の絶望の声が聞こえる。
口に出さなくても、心の中では諦めていているのだ。
そして誰のせいで剣神と呼ばれた男が生死を彷徨っているのか。
彼が死んだら怒りの矛先を誰に向ければいいのか。
密かに叩き付けられる憎悪を敏感に感じ取って、リオはすっかり萎縮してしまった。
だがその中で、マリオンだけは希望を捨てていなかった。
『絶対助ける』
無駄だと分かっていても治癒魔術を止める気配は無い。
『本当に、不器用なんだから。
私ちゃんと分かった。父様、最初からリオを殺す気なんて無かった。
ずっと手を抜いて戦ってた。馬鹿。甲斐性無し。鬼。鬼畜っ』
「さっさと眼を覚ませこの駄目オヤジっ!」
悲鳴同然に叫んだマリオンの瞳にも薄っすらと涙が浮かんでいた。
「リオに謝って! 眼を覚ましてっ、酷い事して済まなかった、って! 謝るのっ!
死ぬならそれから死ねばいいっ! この子の事も、考えてっ」
俯き、喚き散らすマリオンの姿は普段の彼女から想像出来ない。
生の感情を剥き出しにした彼女の姿に、門下生達も、リオも唖然としてしまう。
「マリオン様…お気持ちは分かりますが…」
「もう、無理です…私達の手には、負えません…」
「そんな事、無いっ、父様はっ」
「治癒魔術だって万能じゃないんですっ。
傷を塞ぐくらいがせいぜいで、死人を生き返らす事は勿論、致命傷だって治せないっ。
そんなのマリオン様でもご存知でしょうっ?」
例えるなら水が注がれたグラスが割れたとする。
治癒魔術は割れたグラスを直す事は出来るが、零れてしまった水はそのままなのだ。
「それじゃあ、『中身』を戻せばいいのね?」
何時の間にか近付いていたネーアが女の魔術士に問いかける。
「それが出来たら苦労しませんっ! 大体貴方達魔物が攻めて来たから、」
「罪を償えって言うなら、後でいくらでも償ってあげるわ。
でも、今はまだ出来る事があるでしょう?」
「そんな事っあるわけ、」
「あるわよ? 血が足りないなら、家族から貰えばいいじゃない。
幸い、血の繋がった娘さんがここには二人も居るわ」
言ってネーアはリオをマリオンを見詰め、ウィンクを一つ。
(あ、そうか…)
ネーアの試みを読み取り、リオは僅かに顔をほころばせた。
まだ、絶望するには早い。
ネーアが触手を一本伸ばし、マリオンへと向ける。
その先端からは、注射器のような細い針が生え出していた。
「マリオン。腕を出して。血を抜くわ」
「…分かった」
「正気ですか!? ろくな設備も無いのに、輸血作業をっ!?」
「しかも魔物の手を借りるなんて、信じられませんっ」
「他に方法があるの?」
「それは…っ、でもっ」
「無いなら黙って見てて」
「――もういいかしら?」
ネーアの問い掛けにマリオンが頷く。
グローブを外して剥き出しになった細腕に、細い針が突き刺さった。
「失敗したら今度は縦に真っ二つにするから」
「馬鹿にしないでよね。あたしを誰だと思ってるの」
(…ネーアさんに姉様、何時の間にかとっても仲良しになってる)
自分が見ていない所で何かあったのだろう。
事が終わればそれも聞いてみたいと思った。
「――はい終わり。ほら、次はリオの番よ」
「はい。お願いしますネーアさん」
「貴女はあたしから散々魔力を吸ったからね。その分多めに血取るわよ」
返事をする前に針が刺さった。
僅かな痛みと共に、血液が抜き取られていく。
十秒か二十秒か、その待っている時間がもどかしい。
「――よし。こんなものね――どう、リオ? 辛くない?」
「大丈夫です。もっと取っても良かったくらいです」
「体力は温存しておきなさい。じゃないと――
眼を覚ましたお父さんに、元気な笑顔を見せられないでしょ?」
「あ、はいっ」
だが、楽観も出来ない。
いくら血の繋がった家族とは言え素人のする輸血など分の悪い賭けでしかないのだ。
拒否反応が出ればその場で終わりである。
リオはネーアが作業しやすいようにグリーズの腕からガントレットを外す。
「ありがと」
全員が固唾を呑んで見守る中、触手の針がグリーズの腕へと突き刺さった。
今、彼の中に娘二人の血液が静かに注入されている。
(父様…っ)
ごつごつとした腕を両手で握り締める。
人外の瞳が、自分と姉の血が僅かな精気を運んで父の体内へと流れ込んでいるのを見た。
「拒絶反応は、無いようね」
ネーアの言葉に一同が緊張と共に大きく息を吐き出した。
輸血自体は無事成功と言ったところか。
ネーアが体内で二人の血液を弄繰り回してグリーズの血と混じり易くしたらしい。
つくづくアネモネとは便利な体だ。
(でも、駄目…)
顔色は少し良くなった気がするが彼の体には生命力が――精気が足りていない。
「……グリーズ様、いつ目を覚ますんですか?」
「…さぁ、そればっかりは分からないわ。そもそもあたしは医者じゃないし。
まあ、色々やる事はやってるから人体には少し詳しいけどね?」
「そんな無責任なっ」
「死亡が確定するよりかはマシでしょう?」
「だまれアネモネ! 無様に生き恥を晒すくらいなら死んだ方がましだ!」
ほんとここは馬鹿ばっかりね――そんな呟きがネーアから聞こえた気がした。
「あんた達ねぇ…死にたがりもたいがいにしなさいよ?
人間の生存本能はどこに置いて来、」
「――グリーズ様、心臓止まってる」
女の魔術士の呟きに、周囲の人間が硬直した。
「…嘘でしょ?」
「謀ったな魔物めっ!! もう容赦はせんっ!」
「グリーズ様の弔い合戦だ!」
周りの門下生達が次々と剣を引き抜く。
彼らの瞳には例外無く憎悪が浮かび上がり、二匹の魔物へと殺気を漲らせる。
「ちょ、ちょっと早まらないのっ! 心臓止まってるならまた動かせばいいじゃない!
電気ショックとかあるでしょっ!?」
「黙れっ! これ以上、グリーズ様の体を穢させてなるものかぁっ!!」
「うわっもう、しょうがないわねぇ! この馬鹿どもはっ」
何人かの門下生達がネーアに向かって切り掛かって来る。
「っ!? 皆止めてっ! このアネモネは敵じゃないっ」
「マリオン様の頼みでもそれは聞けませんっ」
「大体そのアネモネはグリーズ様を殺した悪魔の仲間だっ」
いがみ合い、剣先を突きつける門下生達をリオは他人事のように見ていた。
(どうして、皆そんなに怒っているの?)
グリーズは助けられるというのに。
「ちょっと退いて下さい」
「えっ、あのっ」
隣に座る女魔術士を強引に引き剥がし、グリーズへと密着する。
「な、何をする気よっ」
女達の声を無視し、グリーズの頬に手を這わす。
蓄えられた立派な髭。
皺ばかりの顔。
分厚い眉や、ごわごわのブロンドの髪を撫でる。
瞳を閉じた彼の顔は、とても愛しかった。
「父様…」
瞳を閉じ、グリーズの顔へと唇を寄せる。
ネコマタが精気を吸う事が出来るなら。
精気を分け与える事も出来る筈だ。
パセットや彼女の同僚達に魔力を分け与えたように、自分の精気をグリーズに注げばいい。
(私が、絶対救ってみせます)
そうして、リオは最愛の父親に口付けをした。
***
最初に視界に飛び込んできたのは愛する娘の顔だった。
猫耳を生やし、牙を生やし、オッドアイも獣のそれとなっているが、関係ない。
「父様ぁ…っ」
抱きついてくる娘を反射的に受け止める。
恐る恐る、その桃色の髪に触れてみると、あいつの髪と同じ感触がした。
(これは夢、か?)
死んだと、思ったのだが。
娘に勝ちを譲り、腹に大穴を空けられた。致命傷だった筈だが。
「ふふふ。ネーアさんが治してくれたんですよ」
(…そうか、生き長らえたか…)
それも、いいだろう。
娘に行った数々の行い、それらを死んで償おうと思ったのだが。
「そんな簡単に、死なないで下さい。
私、まだまだ父様としたい事が一杯あるんです」
泣き笑いの表情を浮かべる愛娘の顔を見て、まだまだ死ねないなと思った。
体を起こし、周りを見渡すとドルキの門下生達が四名ほど、心配げな表情を浮かべている。
(心配を掛けたようだな)
「ワシに構うな。大事無い」
「ほ、本当に大丈夫なのですかっ?」
「大丈夫だと言っている」
むしろリオと戦う前より元気になったのではないだろうか。
体中から力が湧き出してくるようだ。
(それに、ゆっくりと寝てはおられんようだからな)
リオの体をそっと押しやり、二本の脚でしっかりと立ち上がる。
その姿を見て数人の門下生達が狐に摘まれたような顔をした。
だが復活したグリーズに気付かずネーアに、あるいはマリオンにさえ剣を向ける者が居る。
グリーズはそれを憤慨に思いながら大きく息を吸い込んで、
「全員ッ、剣を収めよッッ!!!!」
鼓膜をつんざく大音量で声を張り上げた。
その様相は正に鶴の一声。
殺気立っていた門下生達の動きがぴたりと止まると、一様にグリーズへと視線を向ける。
「グリーズ様っ!?」
「そ、そんなまさかっ」
露骨に浮き足立つ教え子達を見て嘆かわしく思う。
実戦では何が起こるか分からない。常に冷静に対処しろと常日頃から教えているのだが。
「二度は言わんぞ…!」
仏頂面に怒気を孕ませ、門下生達を睨み付ける。
それで殆どの門下生達は渋々と剣を収めていった。
「納得出来ませんっ!」
ところが一人、無謀にもグリーズに食って掛かる者が居た。
「マリオン様は兎も角っ、この二匹は街に侵入した魔物の一味ですよ!?
ドルキ様に手傷を負わせ、あまつさえ貴方にも重症を負わせた!
そんな化け物を野放しに、」
「今、化け物と言ったか?」
ひっ、と食って掛かった男が息を呑んだ。
グリーズが発する、殺気さえ孕んだ怒りを感じて、腰が引ける。
「このワシの娘と、命の恩人向かって、貴様は化け物と言ったのかっ?」
「あ、あぁぁ…っ」
グリーズに睨み付けられた男は哀れにも恐怖に足を竦ませ、歯をガチガチと鳴らしている。
蛇に睨まれた蛙の気持ちが少しでも分かっただろうか。
「だが、貴様の言う事も一理ある。
リビディスタの戦士として、魔物を倒す事は至極真っ当な判断と言えよう。
故に、チャンスをやる」
右手から魔術陣を展開。
青く発光するそれから、屋敷の地下に安置された宝物庫から剣を転移させる。
魔術陣から生え出すように出現したのは大きな剣だ。
リオに利用された物に比べれば一回りも二回りも小さい。
それはツヴァイハンダーと呼ばれる騎乗兵を倒す為に造られた両手持ちの大剣だ。
「リビディスタの戦士なら、その強さを以って己の正しさを証明してみせよ」
ざしっ…!
両手で剣を地面へと突き刺し、眼前の男を見据える。
グリーズの背後はリオとの戦闘で使われた愛剣が何本も突き刺さっていた。
今の彼の姿は剣神アレスのレリーフそのままの姿だ。
その威風堂々とした姿にリオやネーアを含め、全ての人間が言葉を忘れて見入り――
「…も、申し訳ありません…っ」
グリーズに楯突いた男は震える手で、剣を収めた。
***
そのおよそ五時間後。
街に侵入した魔物と、結界の外に集結していた魔物をリビディスタの戦士達が撃退した。
ドルキの激励が効いていたのか、門下生達の活躍振りは目覚ましいものだった。
死人はおろか、怪我人も殆ど出なかったのだ。
意気揚々と凱旋する彼らを街の住民達は大手を振って喜び、喝采した。
奇跡的にも街の住民達にも殆ど被害は出ていない。
せいぜい民家がいくつか潰されたくらいだ。
今回の騒動で最も深手を負ったのはグリーズとドルキの二人とも言える。
その二人も今ではすっかり傷を癒し、回復している。
リオ=リビディスタが行方不明になってからおよそ20時間。
街一つ丸々飲み込んだ盛大な親子喧嘩は一応の収束を見せた。
***
全てが上手くいった。そう思っていた。
でもそれは只の思い込みで、問題は何も解決していない。
リオの身も心も、未だに悪魔のまま、人間に戻る手段も無い。
父親との和解は済ませたが、こんな体では屋敷に戻る事も叶わない。
何より、母を殺した魔女を再び襲ってしまうかもしれない。
その時は、今度こそお互い無事では済まないだろう。
仮に、リオが屋敷に戻るとしてもだ。
ネーアとクロトが取り残された形になってしまう。
そんなのは嫌だった。
――そうか。答えは最初から決まっていたのだ。
「私、リビディスタを出ていきます」
かくして、リビディスタから末娘が姿を消した。
「――あれ…? リオッち?」
大切な友達を一人残したまま。
次回、永久の果肉最終回、
『ずっと一緒』
お疲れ様です。シリーズ本編は今回で終了。
後は大団円(?)目指して詰めるのみですね。
しかしドルキの虐待シーンはちょっとやりすぎたかな。
まあもっと懲らしめてやっても良かったですが。
バトルシーンもちと気合が入り過ぎましたか。
エロが無くてもちゃんと読んで頂いていれば作者冥利に尽きるんですが。さてさて。
その辺りの感想もお待ちしております。
宜しければ誤字脱字等のご指摘も合わせてお願いします。
次回はエピローグのみとなります。
そしてエピローグの次には後日談と称してエロオンリー話をやる予定です。
あれ? 予定より一話多くなってる? きっと気のせいですねw
尚次回はエチシーン入れる予定です。
メインキャラの中で約一名、まだ処女のオニャノコが居ますよね?
潔く散って貰いますw あの子だけ綺麗なままなのは不公平ですからw
それではまた来週お会いしましょう。
幼女万歳。
スーパー乙×風タイム終了
そしてまさかのエピローグ後追加…さすがです
わしゃ、てっきり『姉もね』展開かとおもっとったんじゃが違ったのう
しかし、「潔く散」るらしいから期待
あれか、ネーアさんに食べられちゃうのか
やべぇ…感動してきた
このスレのSSで泣く日が、ついに来るというのか・・・!!!
>>237 いつもいつもありがとうございます。エロ無しでも楽しく読めました。
グリーズは「俺不器用なんす」アピールされても、やっぱり許せない自分も居ますが。
まあ拳と拳で語り合うシチュ自体は好きなので…全く問題ないです。
エピローグと後日譚、楽しみにお待ちしております。
誤字?
>>229 43行目
「向こうが捨て身の覚悟で 切り替えし てくれば」 →切り返し?
乙×風氏超GJ!
実は最初のほうでマリオンにドルキの愛情が伝わってほしいなんて感情移入しちゃったぜ!
普通に感動作!!
この後のリオの冒険活劇を書きたくなったw
立派に戦えるようになったリオ
ネーアと2人の親、そしてパセットに別れを告げ
姉とともに今旅立つ!みたいなw
いやほんとGJでした
ドルキさんのボコボコにされたCGはまだですか?
嫌が上でも外伝への期待が高まるな
EP1、EP2・・・・・∞
GJ、ジ○ンプ系バトルアニメでも行けそうなぐらいに濃かったですw
誤字じゃないし響きもいいけれど「後方へとGが掛かり」の文が少し気になったかも?
後方Gだと推進というよりも何かに引きずられる的な加速イメージが
・・・って、F1じゃないんでそこまで考えることじゃないんですけどね
不公平のないようにガッツリとやっちゃってくれるわけですね、万歳です
激しい陵辱で子を産めない身体になり自殺を目的とした旅行で偶然に生き甲斐を見つけ違法バイクレースを楽しむ女性
そこに空飛ぶ円盤が落下してきて運悪く女性に直撃し爆散。
謎の生物が逃げた囚人を追いかけていて反撃され墜落した、正直すまなかった。って誤るのに対し
すまなかったで済めば警察も地獄もいらないのよ!どうしてくれるのよ私のこの惨状!と焼け焦げ原形を留めてない無残な状態と化した自分の身体を指さしブチギレ状態の女性
押し問答の果てに謎の生物は自分と貴女が融合し新たな命になれば肉体は蘇生されると進言し
女性も受け入れ、復活しやっと怒りも収まる。しかし、後に宇宙最強のスーパーヒロインと称される英雄がこの瞬間、誕生していた事は本人も含め謎の生物以外は誰も知らず、それを知って女性が再びマジギレするのは、別のお話
って爆笑妄想をしてしまった。何が言いたいかと言うとウルトラマンもある意味寄生だよね
ちょうど人外化スレでコミカライズ版ウルトラマンの話が出てたなぁ。
>>237 毎度ごちそーさまでした
そーいや、アンリアルの最新号に寄生ネタの作品があるね〜
そう言えばSTGやSLGのR−TYPEシリーズって敵であるバイドが寄生なのにあんまり話題に出ないね
まあキャラグラがマトモに出たのが比較的最近のタクティクスからだから仕方無いのかもしれないけど
>>251 悪堕ち、異形化の一面が強いからかも。『夏の夕暮れ』は中々に有名なのにねぇ。
3だかのポスターが
『戦場へ向かうパイロットとそれを見送る恋人。
恋人の顔半分に影が掛かってて目が光ってる』
って感じだった記憶がある
なんとなくな○よしラ○リー(少女漫画雑誌)を立ち読みしたら、
「長髪に神を憑かせることで代々の巫女の血を継いで〜」って感じの作品があった
少女雑誌だけにわかりやすいファンタジー系の物語だったのに、なぜかエロ方向の妄想が…
封印解くと同時に体が急成長するシーンがあってこのスレ思い出したせいだと思いたい
今日はないのか…
皆様お待たせしました。乙×風です。
推敲に時間を掛け過ぎたみたいで月曜には投下できませんでした。申し訳ない。
前回のお話ですがクライマックスだけあって高評価のご様子。
私も執筆した甲斐があったというものです。
誤字等のご指摘もありがとうございました。
さて、永久の果肉エピローグを投下します。
(だいぶ長い、会話シーン多め、3P、大団円)
NGワードはこんな感じですか。
筆が乗っているせいでかつてないボリュームになっています。
エッチシーンはマリオンがリオとクロトの二人掛かりで責められて大変そうですw
勿論和姦ですよ。
こんなところですか。
以下本編です。お時間を取らせて申し訳ないですが良かったらごゆっくりお楽しみ下さい。
28レス程消費します。
最終話 ずっと一緒
夜も更けた丑三つ時。
静まり返ったリビディスタの屋敷――その一室から光が漏れていた。
正面玄関の真上、ドルキの寝室だ。
部屋の中にはドルキ、グリーズ、リオ、マリオン。
リビディスタの家族四人と、ネーアの姿がある。
「怪我はもういいのか」
窓の外をぼんやりと眺めていたドルキにグリーズが声を掛けた。
ええ、と頷き、振り向いたドルキの顔には、確かに傷らしい傷は残っていない。
だが、傷が癒えたとしても自分が取り返しのつかない事をした、という事実は消えない。
血は繋がっていなくとも、実の母親に暴力を振るった罪は許されるものではない。
「…ごめんなさい」
思わずリオは呟いていた。
母が憎い。それは変わらない。
しかしだ。だからと言ってドルキに復讐しても何の解決にもならない事に気付いたのだ。
仮にそれを果たしたとしても、今度はマリオンが、グリーズが悲しむ事になるのだから。
憎悪は連鎖する。どこかでそれを断ち切らなければならない。
スカートの端を掴み、握り締める。
母は、リシュテアはどうしたら報われるのだろうか。
自分が復讐を果たせばいいのだろうか。
それとも――
「リオは悪くない。母様が悪い」
ぽん、と肩に手が置かれた。
振り仰げばポーカーフェイスのままのマリオンがドルキを見詰めている。
ここにいる五人が全員、事の経緯を知っているのだ。
ドルキが企てた、リシュテア暗殺を。
街を混乱に貶めた今回の事件、その責任は誰にあるかと言えば、間違いなくドルキなのだ。
それもドルキ本人は分かっているのか、魔女は娘の辛らつな言葉に何の反論もしなかった。
「信じられない。お義母様を毒殺するなんて。見損なった」
「それに関してはワシも同意だ」
便乗したグリーズの態度にショックを受けたのだろうか。
ドルキが顔を上げ、縋るような視線を彼へと向ける。
それを見ると流石のリオも哀れに思えてきた。
永年慕ってきた夫にさえ見限られるのだから、その絶望は計り知れないものだろう。
「……もういいです…」
気が付けば、そんな事を口にしていた。
意外な所から出た助け舟に、全員の視線が集中する。
今回の件で最も心に大きな傷を負ったのはリオ自身だ。
その彼女からドルキを庇うような言葉が出てくるとは皆、夢にも思わなかったのだろう。
「一歩間違えれば…私も、お義母様と同じ事をしていたんですから…」
ドルキに重症を負わせ、グリーズを殺しかけた。
ドルキが責められるなら、自分も責められてしかるべきだろう。
「だから、もう、いいです…」
「私は納得出来ない。母様にはお義母様を殺した罪をちゃんと償って欲しい」
リシュテアを一番慕っていたのはマリオンだ。
ドルキの罪を許せる筈も無かった。
「街の皆にも真実を話して。その上で魔女の称号も返還して」
リビディスタの創設者が嫉妬の余り恋敵を謀殺した。
その事実を白日の下に晒せと言っているのだ。
だが、そんな事をすれば栄華を極めたリビディスタの家系は破滅だ。
ドルキ一人の問題ではなくなってしまう。
その事にマリオンも気付いたのか、急に口を閉ざし、俯いてしまった。
「あーもーっ、まだるっこしいわねぇ…っ。
家族揃って五体満足で生還出来たのよ? もっと喜びなさいよっ」
「そんな単純な問題では無い」
「貴方達人間がややこしく考えてるだけよ。
ようはそこの女に、リオの母親を殺した償いをさせればいいんでしょう?
だったら簡単よ。そこの女、」
「…ドルキですわ」
「そう。ドルキがリオの事をちゃんと育ててあげればいいのよ。
死んでしまったリオの母親の代わりにね。
私がリオのお母さんだったら、そうして欲しいって思うわ」
「それは…そうかもしれないですけど」
思わずドルキとリオ、二人が顔を見合わせ――余りの気まずさに視線を逸らす。
(あれだけ憎み合ったんだから、いきなり仲良くしろなんて言われても…)
「大体、問題はそれだけではありません。
このむす――こほん――リオの体は人外となったままです。
お腹の中には貴女が寄生させたアドニスもあるのですよ?
その責任はどう取るおつもりですか?」
「それこそリオの気持ち次第よ。
アドニスは体内の魔力が枯渇すれば枯れるわ。
リオが寄生させたメイド達のアドニスもそうよ。
さっきの戦いでリオに魔力を吸収されたせいで根こそぎ枯れちゃったわ。
後遺症も無く、生活に復帰出来るでしょうね」
「貴女がリオのアドニスの力を吸収すると?」
「まあ、リオが望むなら。リオの力を借りてそうしようかな、って話よ」
「でもネーアさん。お腹の中のアドニスが消えても、私の体は人間には戻りませんよ」
それには何の根拠も無いが確信めいたものがある。
一度覚醒してしまった魔物の血はそう簡単に抑え込む事は出来ないだろう。
ドルキと顔を合わせていれば、また暴走して彼女に傷を負わせてしまうかもしれない。
「それに私、言いました。ずっとネーアさんの傍に居るって。
それは今でも変わりません」
父の事を知り、母の事を知り、姉の事を知った。
自分がどれだけ愛されているか。
人間の生もまだまだ捨てたものではないと思った。
しかし思うのだ。
仮に自分が再びリビディスタの生活に戻ったとして。
その生活は幸せなものなのだろうか。
『武芸の家に悪魔が住み着いている』。
そんな噂が流れれば、姉にも父にも迷惑を掛けてしまう。
それでは人であった時と変わらない。
それにネーアはどうなる。
屋敷から飛び出した自分を保護し、慰め、契りを交わした彼女を放り出す気か。
ネーアは教えてくれた。
二百年における逃亡生活がどれほど寂しく、辛いものか。
人外の身でありながら、人の心を残している事がどれほど苦痛か。
そんな彼女を放っておけない。
(なんだ。最初から、答えは出てたんだ)
ネーアの言うとおり、ややこしく考える必要はなかった。
「私、リビディスタを出ていきます」
リオの言葉に一同が驚き、眼を見張った。
「ちょ、リオっ! 貴女本当にそれでいいの!?
折角お父さんと仲良くなれたのにっ、それをみすみす諦めるような…っ」
「それは…父様とはもっと一緒に居たいですけど」
ちらり、と横目で父を伺う。
娘が家を出ると言っているのに彼は相変わらずのポーカーフェイスだった。
だが彼も娘と心を同じくしている筈だ。
あの激しい戦いの時交わした言葉が、偽りとは思いえないから。
「貴方もっ、リオともっと一緒に居たいんじゃなかったの!?
家族の団欒とかは……あー、ちょっと想像出来ないけど…。
それでも、剣の稽古とかさっ、一緒にしたい事色々あるでしょうにっ」
「…そうだな…」
ふ、とグリーズの顔が僅かに綻んだ気がした。
彼が表情を見せる事は少ない。
もし見せたとしたら、それは彼の心情に大きな変化があった時だ。
今は野暮だと思い、シュトリの能力は使っていない。
だが父の心境が如何なるものか、大体分かるようになってきた気がする。
「だが。ワシには責任がある。
この街を三十年以上の月日を掛けて作り上げ、それを管理する責任がな。
リビディスタの家柄を穢す訳にもいかんのだ」
「あっきれた! この甲斐性無し! 唐変木!
結局リオよりも、過去の栄光に縋っているだけじゃない!
本当の父親なら娘一人くらい救ってみなさい!」
ばんばんっ――テーブルに触手を打ち付けながら抗議をするネーア。
その様子にグリーズとドルキが顔を見合わせた。
「言った通りだろう?」
「え、えぇ…本当に…怖いもの知らずというか、豪気というか。
野蛮というか――あら、失礼。聞き流してくださいませ。
兎も角、口の利き方があの女そっくりですわ」
夫妻で視線と言葉を通わす姿に、ネーアが、リオが首を傾げた。
マリオンはと言うと珍しく、くすくすと忍び笑いを漏らしている。
「な、何なのよ…二人して……マリオンも、気持ち悪いじゃない」
「いや、お前を見ているとリシュテアを思い出す」
「見た目は違いますが……雰囲気がそっくりなのです」
「……確かマリオンにも同じような事を言われたわ。
よっぽど似てるのね、リオのお母さんに」
(ネーアさんが、私のお母様にそっくり?)
今度はネーアとリオが顔を見合わせる番だった。
成熟した女としての美しさと、どこか少女としての可憐さを併せ持った不思議なアネモネ。
肌も髪も瞳も、人とは異なる翠の一色。
いや、内面の話なのか。
『命を粗末にするんじゃないの!』
お節介で。
『どうしてって、体、弱いんでしょ? 無理させたくないもの』
優しくて。
『ご馳走様♪ リオのお汁、とっても美味しかったわ♪』
エッチで。
『ねえリオ。やっぱり。モンスターになるなんて嫌?』
でも実は寂しがり屋さん。
「この子の、面倒を見てやってくれ」
唐突に、グリーズがネーアにそんな事を言った。
「は? ちょ、ちょっと待ってよっ。いきなりそんな事言われても」
「貴女なら……そう……あの女の代わりになれますわ」
「私もそう思う。ネーアなら、安心してリオを任せられる」
「み、皆して何なのよ一体…」
困り顔をするネーアに、更に追い討ちを掛けた。
「ネーアさん。私を一緒に連れて行くって言ってくれました。
ずっと一緒だって、言ってくれました。
エッチまでして、私を魔物にしてくれました。
あれは嘘だったんですか? 遊びだったんですかっ?
私を、騙したんですかっ!?」
瞳を潤ませながらまっすぐにネーアを見詰める。
ひっくひっくと嗚咽を漏らしながら、涙声で彼女に訴える。
「え、ええぇ!?」
上目遣いに見詰められたネーアは明らかに狼狽した。
続けざまに家族三人から敵意の篭った眼差しがモンスターの女に集中する。
家族からすれば可愛い娘を行きずりのモンスターに寝取られたようなものだ。
そして根が真面目なネーアは大なり小なり後ろめたく思っている筈なのである。
「う、嘘なんかじゃないわよ!? あれは本心よ! 神様なんか信じないけどっ。
居るんなら誓ってもいい! あたしは今でもリオと一緒に居たいと、」
「じゃあ決まりですね♪」
ぴたりと泣き止み、笑顔を浮かべたリオに、ネーアが呆然とした。
「だ、騙したわねっ!?」
「私、悪魔だもーん♪」
ぺろりと舌を出して悪戯っぽく笑う。
「あ、貴女って子はーーっ!!」
触手を展開して迫るネーアから逃げるように狭い室内を駆け回る。
「きゃはははっ」
「こらーーっ! 大人をからかうんじゃないのー!」
どたんばたんと家具を薙ぎ倒しながら傍迷惑な追いかけっこが始まった。
「あの…ここが私の部屋だとお忘れですか?
というか静かにして下さいな。屋敷の者が目を覚ましてしまいます」
呟くドルキの声は果たして二人に聞こえたのか。
「そうだ。父様」
「何だ」
「リオが出て行くなら。私も家を出ます」
「は!? マリオン! 何を勝手な事を言っているのです!
貴女が家を出る理由など、一体何処にあると言うのですか!?」
「私母様よりリオの方が好き。それじゃ駄目なの?」
「駄目に決まって、」
「勝手にしろこの親不孝者が。貴様は勘当だ」
言葉自体は厳しいものの、グリーズの表情自体は穏やかなものだった。
将来有望なマリオンをみすみす家から追い出したくは無い。
だがマリオンとリオ、それにネーアの三人なら上手くやっていく事が出来るだろう。
そう考えた彼が、不器用なりにもマリオンに送る手向けの言葉なのだ。
「はあ…もう勝手にして下さい…わたくしはもう知りません…」
部屋の中で暴れまわる魔物二匹。
それに突如家を出る事になった娘のマリオン。
頭痛の種にドルキは頭を抑えるのだった。
***
パセットは夢の中に居た。
『今日のおパンツはクマ柄でございます。お嬢様』
『パセットちゃんって喋り方と台詞の内容がちぐはぐだよね』
『それがパセットのキャラでございます故』
夢の中でパセットは屋敷の離れに居た。
いつものようにリオを起こし、彼女の世話をする。
着替えから始まり食事の用意。
ベッドメイキングを初めとした部屋の掃除。
風呂だけはお供させてもらえなかった。
それでも夜寝る時以外の殆どは彼女と共に過ごしていたと思う。
主従。友達。いや、或いはそれよりももっと深い絆で結ばれた何か。
もしどちらかが男だったなら――従者と主、いけない恋に落ちちゃったりなんかして。
『今エッチな事考えて無かった?』
『何故分かった!? いやいやいやいやいや!
違うよ? リオっちのつるぺたボディにあんな事やこんな事したいとか!
そんな事考えてないさ! でもね…! でもっ――
ぱ、パセット…リオっちとだったら……いやん♪ 恥ずかしい♪』
『あはは…』
苦笑いを浮かべるリオ。
彼女はもっと笑えばいいのに。可愛いんだし。
そう思って出会った時からずっと何かにつけてはその笑顔を拝もうと四苦八苦してきた。
それはもう、意地と言っていい。
いつも寂しそうに笑う彼女を、本気で、心の底から笑わしてあげたい。
それは面白おかしい、とかそういう意味じゃなくて。
生きてて良かったー、とか。
幸せだー、とか。そういうニュアンスの笑顔がみたいのだ。
でも、未だにそんな表情を見た事が無い。
そして、それはきっと、これからも。
『パセットちゃん? 私そろそろ行かなきゃ』
ばさり、と彼女の背中から蝙蝠の翼が生えた。
その姿はいつものワンピースではない。
人外に身を堕とした時の、黒のゴスロリ衣装だ。
『え?』
『だって私もう人間じゃないし。お屋敷には居られないよ。だから、お別れなの』
がらがらと、足元が崩れる感覚と共に夢の中の風景までが崩れていく。
離れの中の景色が岩肌を削るように剥がれ落ち、その下から暗闇が覗いた。
それは悪夢だった。
リオと離れ離れになってしまう。
悪魔となったリオが屋敷に潜入し――返り討ちに遭ってしまう。
そんなパセットの不安を具現化した夢だ。
『や、やだっ! 一緒に、パセットも一緒に行くっ』
『パセットちゃんは駄目。だって普通の人間だもの』
『そんな事無い! パセットだってお腹の中にお花のお化けが――』
そう言って腹に手を当てて、その下から何も感じない事に気付いた。
狂おしい官能も。堪えられない疼きも。腹を圧迫する感覚も――最早感じられない。
アドニスの花が、子宮から消えていた。
『え、何で…?』
『だからね? ここでお別れ。
ばいばいパセットちゃん。私、パセットちゃんが私のメイドさんで良かった』
『やだっ、やだやだやだやだやだやだやだ!! そんなの認められるかぁ!
そんな、今生の別れみたいなのっ、ヤダぁああっ!!』
『ありがとう』
そう言って笑うリオはやはりというか。
(ありがとうって言うなら、そんな悲しそうに笑うなぁ!!)
『さようなら』
『やだっ、リオッち!!』
背を向けて歩き出したリオに走り寄ろうとする。
だがリオとパセットしか居ない漆黒の空間。
パセットがどれだけ走ってもリオには追いつけない。
それどころか徐々に二人との差が開いていく。
頭の片隅では何となく気付いていた。
これが只の夢だという事に。
走っても走っても追い付けない――そんなのベタベタじゃないか、と。
けれど、それがもし夢であっても。
今リオと離れ離れになったら二度と会えない気がした。
だからパセットは走る。
どれだけ二人との差が開こうとも。
リオの後姿が米粒のように遠ざかっても。
絶対に諦めない。
諦めて、たまるか。
『リオッちーーーーーーーーーーっっっ!!!!』
手を伸ばし、どこまでも広がる黒い世界の中、あらん限りの声で叫んだ――
――ところでパセットは眼を覚ました。
「――あれ…? リオッち?」
暗闇の中、自分の右手が天井に向けて一直線に伸びていた。
がばりと上体を起こし、辺りをキョロキョロと見回す。
「何も見えん! ここは誰? ワタシは何処!?」
随分混乱していた。
夢を除けば――その夢の内容も急速に形を失い、曖昧になっていくが――
――最後の記憶は何だっただろうか?
「――――――――――――――――――――――あ、思い出した」
(大乱交大会でした)
メナンティお姉様の部屋で同僚を交えてそれはもうエロエロな事になってました。
「ってあれ!? あれれっ!?」
布団を剥ぎ取り、自分の格好を確認する。
誰かが着替えさせてくれたのだろう。
眼を凝らして良く見ると寝巻き姿という事が分かった。
その寝巻きの裾から手を突っ込み、下腹部に触れる。
「――無い。お花のお化け、無くなってる!?」
どくどくと脈打つアドニスの鼓動が感じられない。
(どうなってるの?)
リオと一緒に屋敷に潜入した。
そしてメナンティを皮切りに、同僚達に手を掛けてアドニスを植え付けていった。
(あれ、気持ちよかったなぁー、っていやいやそんな事考えてる場合じゃないし)
そう言えば部屋にドルキが入ってきた気がする。
それから――それから――
「どうなったの?」
そこで記憶が途切れていた。
(ちょっと待って。あの鬼ババアが入ったところで記憶が無いって事は……)
まさか、リオは。
『パセットちゃん? 私そろそろ行かなきゃ』
先程の悪夢がフラッシュバックした。
反射的にベッドから飛び出し、月明かりが僅かに漏れるカーテンを開き、光源を確保。
ガラス窓から漏れる月明かりで、ここが自分の部屋だと確認する。
パセットは急いで部屋を出た。
あれからどれだけ時間が経っているか分からない。
腹のアドニスが消えている理由も気になる。
そして何より、リオが一体どうなってしまったのか。
それらの疑問に答えてくれる人物に、会うしかない。
パセットは寝巻き姿に素足のまま、屋敷の廊下をぱたぱたと駆け抜ける。
問題の人――ドルキの寝室まで行くと扉の隙間から灯りが漏れていた。
ノックをしようとした瞬間、向こうから扉が開く。
「――貴様か」
扉の向こうから顔を出したのは我らが旦那様、グリーズその人だった。
本人の居ない所ではロリコンだの何だのと冗談を言うが目の前ではそうはいかない。
頭四つ分くらいは高い所から仏頂面で見下ろされれば流石に怖いし。
「ぐ、グリーズ様っ、ほ、本日は大変お日柄もよろしく…っ、グリーズ様に至っては、」
「普通に話せ」
「リオッちをどうしやがったんだコンチクショー!!!」
思わず本音が飛び出してから『あ』と口を塞ぐ。
ところが上目遣いにグリーズを見上げれば、彼は怒った様子もない。
彼は表情を変えないまま、只一言、
「一足違いだったな」
「…え? どういう事っすか?」
「マリオンとあの娘はリビディスタから勘当しました」
部屋から更にドルキが現れた。
「勘当って、じゃ、じゃあリオッちは!?」
「心配しなくとも生きている」
「よっしゃあああぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」
ぴょんぴょんとその場で飛び跳ねる。
その様子に、これだから子供は、とドルキが呟き、グリーズが僅かに頬を緩ませた。
(あ、そうでした、今一応夜でした)
「えー色々お話を伺いたいところですが」
結局、今回の事件はどうやって解決したのか、とか。
まあ、復讐の対象だったリビディスタ夫妻が存命。
それに加え首謀者のリオと自分が存命。それにマリオンが揃って勘当となると。
割と穏便に解決したのかな、と思ってしまう。
(ま、それはいいや。後でリオッち本人から聞けばいいんだし)
今する事は、
「お願いがあります!」
ぶん、と音がするくらい頭を下げた。
そうだ。リオが居ないなら、自分も屋敷に留まる意味は無い。
(だってパセットは、リオッちのメイドさんなんだから!)
だから、その事をグリーズとドルキに伝えなければならない。
自分も屋敷を出て行くと。
頭の固そうな二人の事だから、大なり小なり反対されるだろうが、
「貴様はクビだ。何処へでも好きな所に行け」
「―――――――はい?」
「二度は言わん」
背を向けるグリーズ。
その向こうで、ドルキがくすくすと可笑しそうに笑っていた。ちょっと気持ち悪い。
(え? あれ? ひょっとして、旦那様、今の、気を遣ってくれたの?)
えーマジで? イメージと全然違うし。
というか照れてる? グリーズ様照れてますか? ツンデレですか?
「笑うな。何が可笑しい――貴様も、何をぼんやりしている?」
「え――と言いますと?」
「リオを追いかけるのだろう? さっさと支度を整えろ。森の中は危険だ」
どうにも言葉足らずだがこれはひょっとしてあれか。
まさか送ってくれる、という事なのだろうか。
「あ、ありがとうございます!!」
頭突きでもしそうな勢いで再び頭を下げた。
グリーズは何も言わなかった。
鉄面皮はびくともしていない。
だがその下に隠れた心が、ちゃんとした人間の――『父』のものであると理解した。
***
夜の帳が下りた森の中に、二つの異形と二つの人影が輪を作っていた。
異形の正体は、上半身に美しい女の裸体を晒した花型の魔物――アネモネだ。
それが二体。内一体は、
「ひっくっ…! ひくっ…! グリーズ様、グリーズ様ぁっ!」
かの英雄を名前を呼びながら大泣きしているそのアネモネはクロトだ。
愛するその男に首を切り落とされ――だが死なず、気が付けば森の中に一人だった。
屋敷を静かに後にした一同と合流する前から、彼女は泣き続けていたのである。
「よしよし。クロトさん。元気出して? もう一人じゃないよ?
私も、ネーアさんも居るから。ね?」
アドニスの花弁の上に座り、リオは泣きじゃくるクロトをあやしていた。
背中に手を回して抱き付き、かつては銀髪だった翠色の髪を優しく撫でる。
「リオ様ぁっ…! 私、振られちゃいましたぁ…っ! ううっ! うわぁぁぁんっ!!」
「うん。うん。辛いよね。分かるよ。分かる。
今は、好きなだけ泣いてていいからね?」
「泣きたいのはリオも一緒じゃないの?」
背中から掛けられたのはネーアの声だった。
世にも美しいアネモネの女は心配げな表情でこちらを見詰めてくる。
そう、クロトもリオもリビディスタを追い出された身。
人間の世界を離れ、欲望と破壊の渦巻く人外の世へと踏み込んだ少女。
もう、父とは二度と会う事も無いだろう。
ネーアはそれを心配して言っているのだ。
「私は、大丈夫です。多分」
(ここには皆居るから。ネーアさんも、クロトさんも、それに、)
「それに、頼りになる姉も居ますから」
傍らの切り株に腰を落としていたマリオンに向けて、にこやかな笑みを送る。
この中で唯一の人間である腹違いの姉は照れくさそうに頷いた。
「どれだけ役に立てるか分からないけど、頑張る」
「何謙遜してるのよ? 人里離れた所なんて魔物やら凶悪な野生動物が沢山居るんだから。
その中で剣も魔術も使える人間が居るんだから心強いものだわ」
「そうは言うけど」
ちらり、とマリオンの視線がリオに向く。
「リオ、ひょっとしたらもう私よりも強くなってるかもしれない」
グリーズとの決闘の事だ。
あの時はがむしゃらに戦っていたからよく覚えていないのだが。
まあ、確かに、良く考えればあの剣神様と対等に渡り合ったというだけで凄いのだ。
向こうが勝ちを譲ってくれた事を差し引いても、リオは十分に強い。
「それにクロトさんは探索魔術と防御魔術のスペシャリスト。
生存率が高くて、ダンジョンの探索なんかじゃ重宝していた。
――まさかリオに種付けされてたなんて夢にも思わなかったけど」
「あう、ご、ごめんなさい」
クロトに種付けした時は魔物となった体を持て余していた。
体から溢れ出る欲望に抗えず、やりたい放題やってしまったのだ。
その結果が今のクロトである。完全な被害者だった。
「もういいじゃない。私は仲魔が増えた方が良いと思うし。賑やかだしね?」
もし仮に人間に戻れたとしてもだ。
グリーズと戦い、あまつさえ告白までしてしまった。
そんな状態で一体どの面下げて屋敷に戻るというのだ。
「あ、いや…そうじゃなくて…それは、もういいの、私も。
ただ、私以外の三人は、皆強い。ネーアもそうだった」
(そう言えば。ネーアさんと姉様、一度戦ったんだよね)
クロトを発見するまでの道すがらその話を聞いた。
激しい戦いだったそうな。
「だから、今更私一人が増えたくらいで、あまり戦力の足しにならない――そう思って」
姉の発言に丸い眼をぱちくりとさせた。
その後、二匹のアネモネと交互に顔を合わせる。
「私、リオを守る為に強くなった。
辛い修行にも耐えて、魔術の勉強もして。
リオの事を一人にして、実戦経験も積んで――
でも、そのリオは、もう私が守る必要が無いくらいに強くなってる。
だったら、私が居る意味は……」
「じゃ何で貴女は着いてきたのよ? 家でご両親の面倒見れば良かったじゃない」
「それは――リオが、心配だったから」
「? だったらそれでいいんじゃないんですかぁ?」
何時の間にか泣き止んでいたクロトが首を傾げながらそう言った。
「そうだよ。私、姉様の事、邪魔だなんて思わない。
姉様は私の事ずっと思ってくれてた。それは、これからもだよね?」
「う、うん」
ぴょんと、クロトのアドニスから飛び降り、その勢いのままマリオンに抱き付く。
(うにゃぁ…姉様、暖かい…♪)
「それじゃ、今度は絶対絶対一人にしないでね?
ずっと一緒に居てね? 私は、それで十分だから♪」
「……でも、私は、」
何か言い掛けた姉の唇に人差し指を添える。
「それにね? この四人の中で一番大変なのは姉様だと思うよ?」
すんすんと姉の胸元に顔を寄せて匂いを嗅ぐ。
いい匂いがした。
日向と、汗と、それに女の匂い。
大好きな、乙女の匂いが。
どくん、と胸が高鳴る。
同時にどろり、とした感情が流れ込んで来る。
(んにゃ、それは、いいの)
姉の体を抱きしめ体温を感じる。
そうする事で悪魔としての本能――他人を貪る暗い心が霧散した。
「――ああ、成る程ね」
こちらの言葉の意味に気付いたのか、ネーアがにやにやと笑っていた。
「え、え? 何?」
「ふふふ。姉様? 家を出て私達に付いて来るっていう事がどういう事か分かってますか?」
「え、それは…」
「覚悟、していますよね?」
ずくり、と腹の中のアドニスが疼く。
負の心は抑えられても、三つの魔物の因子による凶悪なまでの性欲は抑えられそうに無い。
「いや、まだ心の準備が、」
往生際の悪い姉の唇を、キスで塞いだ。
***
何が起こったか一瞬理解出来なかった。
「ん…っ、ふぅっ…、ちゅっ…、姉、様…っ」
(私、リオにキスされてるっ)
切り株に腰を下ろした体勢のまま硬直してしまった。
じゃれつくように抱き付いて妹がしたのは、歳に似合わない熱烈な口付けだった。
キスと言えば唇同士を合わせるくらいにしか思っていなかったので、思考停止してしまう。
実際には柔らかな舌が捻じ込まれ、唾液をまぶしながら咥内を嘗め回される。
ざらざらとした舌の感触は普通の人のものとは少し違うのだが、それを認識する暇もない。
「ちゅるっ、ちゅっ、レロレロっ、ちゅぷっ…っ、ふにゃっ、はぁっ」
「んっ…!? はっ、ぁふっ…、り、おっ…!」
(頭、蕩けるっ)
どろりとした唾液を大量に流し込まれ舌で無茶苦茶に攪拌される。
ぐちゃぐちゃと咥内からいやらしい音が響いて、それがどうしようもなく興奮する。
妹の唾液はどこか甘く、彼女の吐息を吸い込むと脳が痺れるようだった。
舌同士が触れ合い、粘膜同士が擦り合えばぞくりとするような感覚が背筋を駆け抜けた。
(あっ、これっ)
「ちゅぅぅうううぅぅっっ♪」
「んっ!? ――――――!!!!」
舌を思い切り吸引されて視界で火花が散った。
妹に抱きしめられた体がびくん、と一人でに震え、体から力が抜けていく。
「――ぷあっ♪ ご馳走様、姉様♪ どう姉様? 姉様も気持ち良かったでしょ♪」
(気持ちいい? 今のが?)
体が気だるい。
だがポカポカとしていて、頭がぼう、として。
姉妹で背徳的な行為をしているというのに幸せな気分だった。
キスだけで、こんなになってしまうのか。
こんなにも、気持ちいいのか。
「んにゃぁ? 姉様? チューだけでイッちゃった?」
妹の顔が急接近した。
キスをした相手が、それも大好きな妹の顔を間近で見るとそれだけで心臓が跳ね上がる。
「き、気持ち良くなんか無いっ。全然っ」
捨て台詞を吐いて、視線を外した。
どきどきどきどきどきっ!
心臓の音がやけに五月蝿い。正直、妹の顔を直視出来なかった。
きっと今頃真っ赤な顔をしているだろう。
全く、天邪鬼な自分の性格が恨めしい。
そしてそれを周りの者は皆理解しているようだった。
ネーアは当然として、リオも、クロトさえもくすくすと忍び笑いを漏らしている。
「わ、笑わないで」
「あははっ。ごめんごめんっ。だってあんまりにも可笑しいから。
マリオンってほんと初心よねー、可愛いわよ?」
「う、うるさいっ。からかわないでっ」
「ネーアさん、姉様の事からかってないよ?だって私も姉様の事可愛いと思うし。
でも、キスだけでそんなになるんなら、この先が思いやられるね?」
これからもっと凄い事するのにね――そう言って妹はぺろりと舌なめずりをした。
「…う」
(何このリオ怖い)
昼間の事件の時もそうだったが気弱で大人しい妹はもう変わってしまったのだ。
それを少し寂しく思い、同時にこの娘が大人になったらどんな女になるのか。
想像するだけで恐ろしい。
「さあ姉様♪ ベッドに行きましょう♪」
「え、ベッドって、何処」
「目の前に立派なベッドが二つもあるじゃないですか♪」
「あたし達をベッド扱いとは、なんというか本当に逞しくなったわねぇ。
あ。あたしは今回パスするわ。クロトに構ってあげて?」
ネーアの言葉に内心ほっと息をついた。
いくらなんでもアネモネ二匹と淫魔一匹に同時に責められたら死んでしまう。魂的に。
「それじゃクロトさん。お願いします♪」
「はい、リオ様ぁ♪」
しゅるるるるっ。
脚代わりの触手が何本が伸び、リオとリオに抱きつかれたままのこの体を拘束する。
普通の女ならこの時点で悲鳴の一つでもあげるのだろうが。
(何か、慣れちゃってる自分が居る)
ここ最近アネモネと――主にネーアと触れ合う機会が多かったからだろうか。
性的な接触は無かったが、アネモネに対しての危機感がすっかり薄れてしまった。
そんな益体の無い事を考えている内にクロトの真正面へと体を吊り上げられた。
「到着ー♪」
花冠の中央に尻餅を付くように着地。
鎧を通して、背中にクロトの肌の感触があった。
「さあクロト様ぁ? 鎧を脱ぎましょうねぇ♪」
体を拘束していた触手が一瞬離れたかと思うと衣服や鎧の隙間に侵入してきた。
「あ、馬鹿っ、勝手に脱がさないでっ」
「私も手伝うー♪ 姉様? 脱ぎ脱ぎしましょうねぇ♪」
「やあぁぁっっ!!」
あっと言う間だった。
抵抗らしい抵抗も出来ないまま、着ている物を全て脱がされてしまう。
アドニスの繋がりを利用しての見事な連携だったと言わざるをえない。
「…っっ、見ないで…っ」
顔が熱い。リオとキスした時よりも、顔が紅潮しているのが分かった。
それは羞恥心のせいだ。
人前で裸体を晒すだけでも恥ずかしいというのに、触手で淫靡に拘束されているのだ。
手を万歳の形に広げられ、脚はM字に開脚されている。
真正面のリオからは本当に丸見えだ。
月明かりに照らされたマリオンの体は決して豊かとは言えない。
胸は当然の事として、尻や太股の肉付きも少ない。
女の色香とは無縁な体型だ。
だが折れてしまいそうな四肢は均整がとれており、何かの芸術品のようだ。
真っ白い肌に掛かるブロンドの髪も、彼女の魅力を一層に引き立てていた。
「うにゃ。姉様の体綺麗♪ スレンダー系なんだね」
「…ほ、本当に…?」
涙目で、妹を見詰める。
何を感じたのか妹は目を瞬かせ、こくこくと首を縦に振った。
離れた所から『うわ。マリオンったら割と凶悪ね』なんて言葉が聞こえた気がした。
「でも私、胸、小さいし。リオより」
クロトやネーアに関しては、比較する事すらおこがましい。
ぐす、と鼻を啜る。
大好きな妹の前だから何とか耐えている。
だがこれが公衆の面前だったり男の前だったりすれば。
きっと大泣きするか見た者全員を斬殺していたかもしれなかった。
「え、ええ? そうかな?」
「…ぐすっ、そう…よ、見たら、分かる。私の胸は、小さ過ぎる」
「だ、大丈夫だよ姉様っ。私が一杯揉んで、大きくしてあげる!」
「ほ、本当っ?」
思わず目を輝かせてしまった。
(いや。違う。そうじゃない。揉んでも大きくなる訳ないし)
「や、やっぱりいいっ。私はこのままで」
「そんな事言わないで♪」
「――きゃっ!?」
妹の指先が緩やかな曲線を描く膨らみに触れた。
肌が敏感になっているのか、それだけで甘い官能が体に満ちる。
「にゃう♪ 姉様の肌すべすべー♪ ずっと触ってたくなる♪
ほらほら♪ クロトさんも触ってみて♪」
「はぁい♪ ではご相伴に預かりますぅ♪」
「え、ちょっ、待って――はんっ…!?」
肌を撫で回す妹の指がピンク色の藁を掠める。それも全く予測の出来ないタイミングで。
慣れない快感にもピンク色の先端は反応し、生意気にも自己主張を始めた。
「あっ!? 勃った、勃った♪」
「それじゃぁ、こちらもぉ♪」
「あっ、駄目っ」
背中からクロトが手を回し、乳首を中心に乳房を撫で回す。
触れるか触れないかくらいの絶妙なタッチに、左側の先端もあっと言う間にしこり立った。
(さ、触られてるだけなのに…っ)
過去、ネーア追撃中に犠牲者となった女性達の顔が浮かび上がる。
眉をハの字に寄せ、口をだらしなく開けた、いやらしい雌の顔。
魔物に襲われておきながら感じるなんてありえない――そんな事を当時は思ったものだが。
「いただきますぅ♪」
背中からクロトの甘ったるい声が聞こえた。
かと思うと一本の触手が鎌首をもたげ、その先端がくぱり、と十字に割れる。
内側にびちびちと柔毛触手がひしめき合うそれを左側の乳首へと近付けて、
「え、待って、それだめっ、駄目っ――きゃあぁぁっ!?」
ぱくり、と愛らしいサクランボを咥え込まれた瞬間、電気が走った。
充血し、敏感になったそこをぬるぬるとした細い触手の束に舐めしゃぶられ悶絶する。
(き、気持ちいいっ、私、駄目になっちゃうっ)
コンプレックスの対象だった胸を責められ、こんな醜態を晒すとは、夢にも思わなかった。
恥知らずな先端をくちゃくちゃと舐められ、或いは甘噛みされ、その愉悦に脳が蕩ける。
「姉様、エッチな顔にゃぁ♪」
「い、いやぁ…っ、見ないでぇ…っ」
「恥ずかしがらなくてもいいんだよ? これからもっともっと気持ちよくなるんだから♪」
言って妹は右の乳房へと顔を寄せて――ぱくり。
「あっ!? 駄目っ! だめっ!」
赤ん坊のように乳首に吸い付かれる。
ぺろぺろと先端を舌で何度も弾かれ、その度に快楽で視界が白んだ。
(エッチって、こんなに気持ちいいのっ)
戦う事しか知らなかったマリオンは、一人遊びはおろか、キスすらした事が無かったのだ。
興味が全く無い、とは言えなかったが、機会には恵まれなかった。
ところが実際に経験してみると、どうだ。
(びりびりして、痺れてっ、変になるっ)
心臓がどきどきと早鐘を打つ。
だがそれは実戦の空気の中感じる緊張や恐怖とは全然違って、どこか甘く、切ない。
頭もぼーとして、ろくな思考もままならない。
右と左の乳首から襲い来る、鋭い快楽に翻弄されるだけ。
「はあぁっ、はあっ、あぁっ!? やっ、かま、噛まないでっ!」
時折思い出したかのようにピンク色の先端を優しく噛まれ、喉から嬌声が独りでに漏れる。
じゅくり、と下腹部が疼いた。
「ふふふ。姉様のエッチな匂いがする♪」
顔を離したリオが微笑んだ。
コケティッシュな妹の笑みに、心拍数が更に上昇する。
つー、と乳首から伸びた唾液を舐めて切り取り、淫魔らしい表情を浮かべているのだ。
その愛らしくも妖しい笑みに、どきどきしながら魅入ってしまう。
アネモネ達はまだガスを撒いていない。
それでこれだけ心が掻き乱されるのだから流石淫魔と言ったところなのだろう。
それとも、自分はひょっとしてあれか。
生粋のレズビアンなのか。
「もういいかな?」
「うぅんっ」
急に二体の魔物の責めが終わる。
快楽という荒波から開放され、ほっとしたが体には火が着いてしまったらしい。
火照った体は切なく、快楽の余韻にじんじんと肌が疼いている。
特に下腹部――子宮ではそれが顕著だ。
じくじくとした疼きが腹から全身へと拡がっている。
何だか居ても立っても居られない。
「姉様? とっても濡れてるよ? あそこ、ぐちょぐちょだよ?」
妹の眼前に晒されたクレヴァスは解れ、口を大きく開いていた。
自慰もした事の無い生娘のそこからは、とろとろと新鮮な蜜を零している。
雌の匂いを発する愛液に髪と同じ色の恥毛が濡れて、色っぽさを演出していた。
「ば、馬鹿っ、そんな事、言わないでっ」
発情した自分の隅々まで妹に見られている。
それを思うと頭が沸騰しそうだった。
恥ずかしすぎて顔から火が出る。
「ふふふ♪ 姉様ほんとうに可愛いにゃぁ♪」
「ですねぇ♪ 初心な乙女、って感じですぅ♪」
「うー…!」
おもちゃにされている。
それは分かっているのだが体はすっかり出来上がってしまい逆らう事も出来ない。
何より、二人には悪意など一つも無いのは分かっているのだ。
誰の邪魔も入らぬ森の中、仲間同士でじゃれあうようなものだ。
じゃれ合うは無いか。ああでも魔物の慣性からすればいやらしい事もじゃれ合いのうち?
(そんな事より、体、疼いてっ)
「姉様、辛いよね?」
火照った体を持て余すこちらの心情を悟ってくれたのか、妹が優しい笑顔を浮かべた。
こくり、と小さく首を縦に振る。喋れば、情けない声が出てしまいそうだったから。
「準備も出来てるし、姉様の処女、リオが貰うよ?」
処女という言葉に体が震える。
別に貞操観念など持っては居ないし、異性との真っ当な恋愛にも執着は無い。
だが実の妹に犯される、という事実に、少なからず抵抗を覚えてしまった。
(…、違う、私は、リオを受け入れてあげないといけない)
自分は、結局妹に何もしてやれなかった。
強くなると言い張るのはいいし、実際に強くなった。
けれどそれが何の役に立った?
得た物より、失った物の方が大きいのではないか?
自分が屋敷を離れたせいでリオはこうして人外になってしまった。
ならその彼女を受け入れる事が、せめてもの罪滅ぼしではないのか。
例え、この体も魔へと堕ちるとしても。
「…分かった…」
ぽつりと呟くと、妹は嬉しそうに微笑んだ。
「うにゃぁ♪ 姉様大好き♪」
抱き付き、顔中にキスの雨をプレゼントしてくれる。
にゃうにゃうと鳴きながら、唇を舐めたり、首筋の匂いを嗅いだりしてきた。
それがくすぐったくて、微笑ましくて。
まるで猫がじゃれついてくるような感覚にこちらも頬が緩んでしまう。
「姉様ぁ…♪」
「リオ…」
そしてどちらからともなく再び口付けをした。
今回は妹に一方的にされるだけのキスではない。
互いに舌を絡ませ合い、相手の咥内へと自分の唾液を流し込む。
ふんふんと鼻で息をしながら、貪り合うようなディープキスに熱中した。
鼻に吹きかかる妹の吐息は甘く香り、胸を高鳴らせる。
甘酸っぱい唾液はまるで蜜のようで、いくらでも啜りたくなってくる。
舌をさりさりと削る猫舌も甘いばかりのキスの中では唯一の刺激となって、心地良かった。
(リオ、りおっ)
好き。大好き。
この感情が家族愛なのか恋愛なのかは分からない。
けれど手放したくない。ずっと一緒に居たい。
そして、その為には。
「はぁっ、はぁっ」
「ふにゃぁ…にゃうぅん…♪」
濃厚なキスを終え、僅かに互いの顔が離れる。
粘度の高い唾液が二人の間で銀色の橋を掛け、時間を掛けてぷつりと切れた。
「姉様ぁ…します、よ?」
「あ、ちょっと待って。私だけ裸なの、なんかずるい」
ぼやくように言うと妹はオッドアイを瞬かせた。
「うにゃ♪ そうだね♪」
黒いゴスロリドレスが揺らいだかと思うと黒い霧へと姿を変えた。
そして次の瞬間にはリオの体へと吸引されていく。
後には自分同様、生まれたままの姿になった妹の姿がある。
ふっくらとした肢体。
確実に膨らみ始めている乳房。
太股や、桃尻も丸みを帯びて、小さな体にも徐々に色気を帯び始めているのが分かる。
――というか明らかに、
(私よりもエッチな体をしている)
恨めしい。姉よりも優れた妹なんて存在しない――というのは言い過ぎだと思うけど。
遺伝子というか血のせいでここまで差が出るかと思うと悲しくなってくる。
(…それにしても)
妹の下腹部に思わず目がいってしまう。
同性の性器などまじまじ見る事は無かった上に妹のもの、ともなると興味もあるのだが――
(花だ)
ヴァギナの内側から咲いた肉の花が海星よろしく妹の股間にべったりと張り付いている。
花びらの内側は膣壁のように粘液に濡れたヒダが連なっていた。
四つある花弁は十字を形作り、その付け根からは計十二本の細い触手が生え出していた。
一本一本は小指程の太さでこれが獲物を拘束したり責めたりするわけだ。
中央の窪みには女性器の陰唇に酷似した割れ目が有り、粘度の高い蜜を垂れ流していた。
催淫性の高い蜜の香りに頭がぼーっ、として胸がどきどきと高鳴ってくる。
女の神聖な場所に寄生するおぞましい魔物だとは思う。
実際見てみると卑猥でグロテスクなものだとも思うが――
「あの、姉様? さっきからお股に突き刺さるような視線が…」
「ご、ごめんっ!? つい、」
見とれてしまった――口に出そうとしてその言葉を慌てて飲み込んだ。
「にゃふふ♪ リオのお花に見とれてたのかにゃぁ?」
バレバレだった。
「いいから! 早くするの!」
「にゃう♪ 分かったにゃぁ♪ しっかり見ててね、姉様♪」
妹が腹に力を込めた。
「ふにゃっ…! ――んにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
ずるずるずるずるっ!!
花の中央からアドニスの生殖器が生え出した。
多重のエラを持つ肉色の胴。
疣が大量に張り付いた先端部分。
更にそこから細い触手が生え出し、うぞうぞとのたくっている。
自分の腕程もある、グロテスクな触手に思わず息を呑んだ。
「ふにゃぁぁっ♪ はぁっ…♪ はぁ♪ どう、姉様? リオの触手おチンポぉ♪」
官能を感じ、頬を赤くし、息を荒げるリオ。
股からもだらだらと愛液を垂れ流し、その姿は実に色っぽい。
(こ、これがアソコに入るの?)
だがこちらはその凄まじい外観にドン引きだ。
粘液に塗れて光る妹のイチモツは、こちらの穴の直径よりも遥かに大きい気がするのだが。
まあ、リオのものだと思えば怖くは無い――かもしれない。
試しに疣の生えた先端部分に指を絡めてみた。
「ふにゃぁっ!?」
「きゃっ」
びくん! と大仰に触手が跳ね上がる。
「ご、ごめんっ。痛かった?」
「ち、違うのっ…! いきなり触るなんて、思ってなかったからっ。
びっくりしたしただけ」
はぁはぁと妹は息を荒げていた。
敏感になっているのは、貧相なこの体だけではないという事か。
「もう少し、触っていい?」
「う、うにゃぁ…」
こくんと頷いた妹の顔は快楽に蕩けていた。
もっと触って欲しいとばかりに僅かに腰を押し付けられる。
自分はというと妹の触手ペニスに触る、というシチュエーションに興奮していた。
どきどきしながら今度は凶悪な多重エラ部分に指先で触れる。
「ふにゃぁっ…!」
びくり、と再び触手が脈打った。
(――あ、なんか可愛いかも)
調子に乗って触手に添えた人差し指と中指をツツーと下へと滑らせる。
「にゃうぅぅんっ…♪」
びくびく。触手が再び暴れ回る。
それを逃がさないように掌で抑え、その触手の形や温かさを感じた。
(あ…、やっぱり、全然怖くない…)
これなら、大丈夫だ。
と、いうかむしろ。早くしてみたいくらいだ。
(なんか、エロイ気分になってる)
下腹部のじくじくがいい加減切なくて、自分の指でかき回したいほど。
淫魔の愛撫とキス。それにリオのアドニスから漂う催淫香が理性を追いやっていた。
「ね、姉様ぁっ♪」
「きゃぁっ」
いきなり押し倒された。
息を荒げた妹にマウントポジションを決められ、触手をヴァギナにあてがわれる。
「リオ、もう我慢出来にゃいにゃぁっ♪」
「うんっ、私も、私もリオが欲しいっ」
頭が完全に上せて、自分でも何を言っているか分からなかった。
ただ、妹はその言葉に感動したらしく、目をうるうるとさせながら、
「うにゃあぁぁぁぁぁあぁんっ♪」
嬉しさの余りに謎の遠吠え。
同時に、触手ペニスを一息で奥まで突き入れた!
ずりゅりゅりゅっ!
「っ!? …、っ…っ!」
ぶつん。そんな音が聞こえたかと思うと体の芯から引き裂かれるような痛みが走る。
(う、痛ぁっ)
だが予想していた程ではない。
死ぬほど痛いと聞かされていたので、どんなものかと思ったが。
「ね、姉様の中、いいっ♪ きつきつでっ、たまんにゃいよぉ♪
姉様は? 姉様はどうっ?」
快感を感じるのはまだ無理だが、ヴァギナの中にリオの触手を感じる事は出来た。
痛みよりも異物感と温もりの方が勝っている感じだ。
(もっと、リオを感じたい)
蕩けた魂が激しい交わりを求めている。
この大きく、卑猥な形状をした触手で滅茶苦茶に犯して欲しい。
「んっ…大丈夫っ…動いても、いいよ…っ」
すぐさまリオは腰を動かした。
最奥まで突き入れた雌しべ触手をゆっくりと引き抜いていく。
「あっ!? ……っ、っ! っ…」
処女膜の残骸をずりずりと多重エラで擦り削られ、明確な痛みに襲われた。
だが、これくらいの痛みが何だ。
リオはもっと辛い目に会ってきたのだ。この程度の痛み、耐えてみせる。
歯を食いしばり、ヴァギナを蹂躙する触手を受け入れる。
だが何が気に入らないのか背中のクロトがうーんと不満げな声を上げた。
「駄目ですよぉマリオン様ぁ? そんなに力んじゃぁ? 私がもっと解してあげますねぇ♪」
(え、いやそんな余計なお世話…)
――ぱく。
「きゃぁっ!?」
両の乳首に触手が喰らい付いた。
そのままちゅーちゅーと先端を吸われ、頭で快楽の火花が散る。
「うにゃぁんっ♪ 締まる、締まるよぉ♪
クロトさぁんっ、もっと姉様にしてあげてぇ♪」
「はいぃ♪」
「いやっ、それっ、だめっ――きゃぁんっ」
右左右左と交互に弱点を甘噛みされる。
痛みを堪えているところに不意打ち気味に襲い掛かる快楽は只甘い。
喉の奥から自分のものとは思えないほどいやらしい嬌声が漏れ出した。
(エロイ声、勝手に出るっ)
「姉様、やらしいにゃぁ♪」
ちゅっ、と妹が額にキスをしてくれた。そしてすぐに腰の動きを再開する。
ずりゅ、りゅ…りゅ…。
「んっ!? はっ! あぁっ!」
ゆっくりと、焦らすように触手を挿入される。
先端の突起物、エラエラの感触、それに太い胴と肉の温もりを順番に感じた。
「はぁっ、はぁっ♪ どう、姉様っ? まだ痛む?」
「んっ少し、だけっ――きゃんっ」
ちゅう、と両乳首を同時に吸われ、いやらしい声が漏れる。
「ふふふ♪ じゃあ、もうちょっと気持ちよくなろうねっ」
妹がクロトに目配せ。アドニスを通して何かの指示を送る。
待ってましたとばかりに三本目の触手が花弁の根元から生え、くぱり、と口をあける。
乳首を咥え込んでいるおしべ触手と同じそれは、結合部のすぐ上辺りを目指していた。
そしてその先には、ぷっくりと充血し膨らんだ淫核がある。
直に触った事も無いが、そこが敏感な部分だという事くらいは知っていた。
どきり、と胸が妖しく高鳴る。
口を開けた触手がピンク色の真珠に徐々に近付くのを、息を荒げながら見詰める。
白状すると、期待していたのだ。
未知の快楽に心も体も焦がされる事を。
――ぱくり。
「…っ、っ、っ、…!? ああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
そしてその快楽は期待以上だった。
つるつるとした肉の突起物はその表面が乳首以上に敏感だと思い知らされる。
(すごっ、びりびり、するっ)
粘液に濡れた細かな触手にぞろぞろと嘗め回され、その度に腰が跳ねた。
「あっ!? あぁっ…! あぁぁぁっ!」
「ふにゃぁんっ♪ 姉様のおマンコっ、きゅっ、きゅっ、ってなってる♪
リオの触手チンポっ、食べられてるよぉっ♪」
妹の卑猥な言葉遣いも耳に入らない。
全神経が下半身に集中していた。
小指程にも満たない肉が、びりびりとした官能の嵐を呼び、マリオンの自我を削ぎ取る。
(やばいっ、気持ち、いいっ)
「姉様っ、もうっ、いいよね? 姉様スケベな顔になってるもんっ。
だから、リオもっいっぱい動くよっ」
「うんっ、うんっ」
返事と同時に妹が本格的に腰を使い始めた。
ぱつっ! ぱつっ! ぱつっ!
「ああっ!? あひっ!! すごぃっ!!」
腹の中を極太の触手が蹂躙する。
ごりごりといやらしい形状をした肉竿が処女の残骸をかき回し、痛みを産む。
「こっちもペースをあげますよぉ♪」
じゅるるるるるっ!!
「んああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!?」
充血する三つの突起物が同時に吸引され、痛みとは真逆の感覚に襲われる。
「姉様っ、姉様っ」
ばつっ! ぱつっ! ぱつっ!
激しく触手をピストンされ――
「はぁっ!! あぁうっ! ああっ!」
「ちゅぅー♪」
じゅるるるるっ!
「はあぁぁぁぁぁっ!!」
――敏感な三点を同時に吸引される。
「も、もうだめぇ!」
(頭っ、おかしくなるぅ)
痛みと快楽。その両方を同時に叩き込まれ脳はショート寸前だ。
体がガクガクと痙攣し、半開きになった口から唾液が垂れる。
しかも性に卓越した魔物二匹が本気で感じさせようと責め立ててるのだ。
そのせいで、痛みよりも快楽の割合の方が大きい。
「はあっ♪ はぁっ♪ 姉様っ? どうっ? 痛くて、気持ちよくてっ。
訳わかんないでしょっ? それとも、もうずっと気持ち良いの?
おまんこ、もう全然痛くないんじゃないの?」
「あっ! んっ! それ、はっ!」
ピストンのペースが途端に緩む。
がつがつと恥骨同士をぶつけ合うようなものではなく、拡張を主とした腰使いだ。
ふふふ、と妹は悪魔的な笑みを浮かべた。
くちくちくちっ。
「あっ!? あっ! それっ!?」
ヴァギナの浅い所で、素早く、揺するようなピストン。
散々穿り返された肉ヒダ一枚一枚に、丁寧に官能が与えられ背筋がぞくりとした。
痛みとも快楽ともつかない官能の嵐は、それ自体が判別不能の刺激でしかなかった。
だが今度は違う。
肉壷の入り口をぐちゃぐちゃと掻き回されれば蕩けそうな快楽が生まれるのだ。
(き、気持ちいいっ)
ついさっきまで処女だった体を空恐ろしい速度で開発されている。
そして今、ヘスペリスとしてのプライド、人間としての常識。
あらゆる束縛から開放されたマリオンは、妹の手で淫らに変えられていく事すら自ら望む。
「…もっと…」
「…にゃぁ? 姉様?」
頭が快楽で茹っている。
このままする事をすれば自分の体がどうなってしまうのか分かっている。
妹に種子を植え付けられアネモネとなってしまうのだろう。
だがそれでも良かった。
「…もっとしてぇ…」
恐ろしい程の猫撫で声だった。
妹がごくり、と生唾を飲み込んだのが分かる。
愛らしい猫目のオッドアイに移った自分の顔が、快楽に溺れる娼婦のように蕩けていた。
「にゃっ、にゃあんっ♪ 姉様っ♪ にゃうぅ♪」
ぐちゅっ! ぐちっ! じゅぷっ!
「あぁ!? あっ! それっ、それぇ!」
苛烈な突き込みに声が上がる。
「本気で、本気でいくにゃぁっ…! 姉様を、天国に連れて行ってあげるにゃぁっ」
ぐりんっ、と妹の腰が大きく時計回りに弧を描いた。
「あぁぁぁっ!?」
肉のチューブが触手の凹凸の形に拡張され、性感が掘り返される。
充血し、粘液に塗れた肉ヒダから甘美な官能が生まれ、全身を痺れさせた。
かと思うと今度は反対回りに腰が回転し、あぁんっ、と甘い嬌声を漏らす。
「はっ♪ はっ♪ はっ♪ はぁっ♪」
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ…!
「あっ!? いっ! あんっ! あぁっ!」
だらしなく舌を垂らしたリオがこつこつと素早いピストンを繰り出した。
それも一突き毎に角度を変え、肉壷の中を万遍なく刺激してくる。
(あっ!? これっ、触手の疣疣っ、当たってるのが分かってっ)
敏感になった肉ヒダがぐりぐりと押付けられる触手の凹凸を感じてしまう。
「ぐりぐりされてっ、気持ちいいよっ…! ――あぁっ!?」
膣内のとある一点を触手の先端が掠めると、一際強い官能が襲い掛かる。
じいいん、とヴァギナ全体が痺れ、鼻の奥がつーんとした。
(い、今、すごいのがっ)
「ふにゃぁ♪ 姉様の、きゅうきゅうしてるにゃぁ♪ ここが、弱点なんだね♪」
にゃふふ、と淫靡に笑う妹、嫌な予感がした次の瞬間に、思い切り触手を突き込まれる。
じゅぷうっ!
「あひぃっ!!?」
深く、勢いを付けた一撃が『弱点』とやらに叩き込まれ意識が飛んだ。
下腹部がきゅう、と収斂し、白濁とした本気汁を結合部から噴出す。
「にゃはっ♪ しまるっ、しまるよぉっ♪ 姉様のおマンコっ、最高だよぉっ♪」
「ああっ!? 駄目っ! すごいっ! ああっ!」
ばつっ、ばつっ、と恥骨同士がぶつかり合う程の激しいストローク。
ひっきりなしにじゅぷじゅぷと卑猥な音が響き、マリオンの濃い匂いを辺りに撒き散らす。
「はぁ♪ はぁ♪ マリオン様、いやらしいっ。
マリオン様のマン汁の匂いがぷんぷんしてっ――私もっ、もう我慢できませんっ」
ずるるるるっ、と背後から触手がせり出した音がした。
それが何かを理解する思考力はもう残っていない。
Gスポットを荒々しく削り、かと思えば焦らすように触手をグラインドさせる――
そんな、緩急の付いたリオの責めに頭がピンク色に染まっていた。
これ以上されたら壊れるかも知れない。
なけなしの理性がぼんやりと考えた直後――菊門に何かが触れた。
ずりりりりりっ!!
「んああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!?」
「はああぁぁっ♪ マリオン様のケツマンコヴァージンっ、頂いちゃいましたぁっ♪
ああっ♪ いいっ♪ いいですぅっ♪ とってもしまりますぅ♪」
「ふにゃぁ♪ クロトさんがっ、姉様のお尻犯したらっ、にゃんっ♪
おマンコのしまりもっ、よくにゃったよぉ♪」
(あっ? おしりっ? おしりっ、犯されてるっ?)
肛門にとんでもない圧迫感を感じる。
二、三日便秘で溜まった排泄物をまとめて出そうとしてもこれほどではないだろう。
そして敏感になった体はアヌスに凹凸の激しい極太触手の感触を捉えた。
「あっ!? おしりにっ、触手――あぁぁっ! 触手っ、入ってるうっ!」
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ!
「ああぁっ!? いやあっ!? だめぇっ! だめえぇっ!!」
ヴァギナとアナル。二つの穴を同時に触手で突き込まれる。
リオが突き込めばクロトも突き込み、腹の中腸壁越しに触手同士が触れ合う。
その衝撃に白目が剥く。子宮がきゅうきゅうと収斂していた。
それが絶頂だという事に気付かないまま、延々とサンドイッチファックが続く。
ずるるるるるぅっ!
「んぎいいぃぃぃっっ!!?」
今度は同時に、ゆっくりと二本の触手を引き抜かれていく。
ごりっ、ごりっ、ごりっ――
生き物のようにうねり、締め付ける肉ヒダ一枚一枚をいやらしい形状の凹凸が掘り返す。
陰唇から引きずり出される触手に、肉穴が離すものかと咥え込み、肉ビラが捲れ上がった。
女性器の内側が、チーズ臭を放つ本気汁と一緒に月明かりに晒される。
「あっ! ひっ!」
敏感になっているヴァギナを掘り返され、更なるアクメへと追いやられた。
初めての絶頂にしては快楽の総量が桁外れだ。
子宮がキュン、キュン――と何度も収斂する感触は空恐ろしくなる程の快感だった。
意識が真っ白になり、全身が浮遊感に満たされる。
息苦しい尻の圧迫感もそれでどこかに消えてしまった。
むしろ未だに尻を穿り返す触手の感触すらも気持ち良い。
まるでアナルとヴァギナが繋がってしまったようだ。快楽しか感じない。
マリオンは半開きの口から涎を垂らし、意味の無い獣のような声を上げる。
アクメの波にがくがくと痙攣しながら、二匹の魔物にがつがつと細い体を犯されて、
「ふにゃああっ! でるよぉ! もうだめえっ! どぴゅどぴゅするにゃぁ!
姉様にぃっ――にゃっ! にゃあっ! 姉様に種付けするにゃぁぁっ!」
「私もぉっ! 出ますぅっ! マリオン様の尻穴にぃっ!
触手ザーメンびゅるびゅるしますぅっ!」
じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷじゅぷっっ!!
「にゃぁっ! にゃあっ! あっ! でるにゃっ! でるでるでるにゃぁぁ!!
にゃっ、にゃっ! にゃっ! にゃああっ!! にゃあああぁぁぁぁっっ!
にゃうううううううううううううぅぅぅぅぅんっっっっ!!!」
「あっ! いっ! ああぁんっ! でますでますっあああああっ!!
ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
二本の触手がどくどくと脈動する。
射精される。真っ白になった頭でぼんやりと考え、
ぢゅうううぅぅぅっ!!
その直後に乳首と陰核に喰らい付いていた触手に吸引された。
『ああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっっっ!!!!!!』
びゅるびゅるびゅるびゅるびゅるっっ!!
どぴゅっ! どぷどぷどぷどぷどぷっっ!!
三人の嬌声が美しいとも言える和音を生み出した直後。
ヴァギナとアナルに大量の精液が流し込まれる。
びゅるびゅると底が無いかと思う程子宮と直腸に白濁とした粘液が注がれ、腹が膨張する。
強すぎるアクメに、腹が徐々に張っていく感覚も分からない。
白目を剥き、涎を垂らし、潮を吹き、尿を漏らし――
それが二匹の魔物が流す体液に混じって全身をぐちゃぐちゃに汚す。
クロトのおしべ触手が三人を祝福するように射精し、全員の体を白くコーティングした。
どろどろになった体でアクメを味わい、三人で強く抱き合う。
(――あったかい)
熱い粘液と、妹の温もりを感じて、心に僅かに平穏が戻る。
だが次の瞬間子宮口をこじ開けて、ぼこり、とアドニスの種子が侵入し――
その衝撃で意識を失った。
***
「また、派手にやったわねぇ」
遠巻きから三人の交わりを眺めていたネーアは溜息交じりに呟いた。
特にクロトの悶えっぷりは絶景だった。
肝が据わっているというか開き直ったというか。
最初は少しぎこちなかったが、最後はもう立派な女だった。
(相手がリオだから、かな?)
このシスコンめ。
くすりと笑みが漏れる。仲良き事は美しきかな。
(貴女達は今まですれ違ってばっかりだったんだから。
これからは仲良くしていきなさいよ。ずっとね)
粘液に塗れた三人を見ながらそう思う。
傷心のクロトを元気付ける為にも今回は『ベッド役』を辞退したのだが。
中々具合が良さそうなので今度は自分も混ぜてもらおう。
「にゃぁ…姉様ぁ♪」
「あらぁ? マリオン様、気絶してますねぇ?」
「にゃうぅ。起きたらもう一回だにゃぁ♪」
「はいぃ♪」
当分自分の出番は回って来ないようだ。
「…やれやれね」
まあ、いいだろう。時間ならいくらでもある。
この四人で永遠にじゃれ合い続けるのもいいだろう。
――不意に視界が歪んだ。
「――あら?」
目にゴミが入ったのかと思い、指で瞳を拭う。
細い指が涙で濡れていた。
(泣いてるんだ、あたし)
アネモネになっても泣くんだなー。
と思いながら、この二百年間、ずっと涙を堪えてきたのを思い出した。
(あ、そうか。嬉し涙か、これ)
それもそうか。
昨日まではずっと独りだったのに。
今ではリオ、マリオン、クロト――三人の仲間がいる。
皆良い子で、彼女達と一緒ならどんな困難も乗り越えられえる気がする。
(…何か、生きてて良かった、って…そんな気がするわ…)
二百年に渡る逃亡生活も、この瞬間の為だと思えば、報われた気がした。
ただ、惜しむらくは――リオの気持ち。
「にゃう♪ にゃうぅん♪ ぺろぺろっ♪ ちゅっ♪ ちゅっ、ちゅぅ♪」
気絶した姉にじゃれつくネコマタと悪魔と人間のハーフの娘。
彼女は果たして救われたのだろうか。
人を止め、家を出、大好きな父と別れ、母親の仇も取れなかった。
そんな彼女を、自分が幸せにしてやる事が出来るだろうか。
(リオのお母さん、か)
もしくはその代わりだ。
まあ、これだけ歳が離れていれば娘、という感じもしないではない。
肌を合わせ、契りを結んだ仲であり、リオの事も少しは分かるつもりだ。
気がかりは、今のリオがどこか無理をしている事だ。
「姉様大好きにゃぁ♪」
ちゅう、と唇を合わせるリオを見ながら思う。
単に甘えてるだけにも見えるが、彼女は少なからず後悔している。
家を出るのも彼女の意思だが、それも後ろ髪を引かれるような想いだったのだ。
百歩譲って、父の事は諦めがついたのだろう。
自分を想ってくれる姉も一緒に着いて来る事になり、彼女は幸せとも言える。
だが、リオの心にはぽっかり穴が開いていたのだ。
今の彼女は、その穴を埋めようとマリオンに甘えているように見える。
ハッピーエンドかと思ったが、まだ一つ、何かが足りない。
それが何かを考え――
遠くから、人の気配が近付いてくるのを感じた。
***
盛大な3Pを終えて三十分も経った頃だろうか。
マリオンが『うぅん…』と呻き声を上げた。
「姉様? 目が覚めた?」
「り…お…?」
こちらを見返すブルーの瞳はどこかぼんやりとしていて、彼女はまだ夢の中にいるようだ。
「そうですよ♪ 私はリオですよ、姉様♪」
語尾にハートマークが付きそうな猫撫で声の後、姉の唇に唇を重ねる。
ちゅっ、と唇を合わせるだけのものだったが姉の目覚まし代わりにはなったらしい。
瞳に意思の光が戻り、阿呆のような顔が羞恥に染まっていく。
「ぅわぁ…っ」
「にゃう♪ 姉様可愛いにゃぁ♪」
すりすりと頬擦り。
ぶっ掛けられた触手汁がほっぺたで塗り伸ばされてぐちゃぐちゃと音を立てた。
別に狙った訳ではないが、その際に繋がったままの触手が捻れてマリオンが嬌声を上げる。
「…っ、まだ、刺さってる、のっ?」
「そうだよぉ♪ 姉様のおマンコが、今でもキュウキュウしめつけるにゃぁ♪」
「尻マンコの具合も大変いい具合ですぅ♪」
「いやだから…そういうエロイ言い方って…」
「にゃぁに? 姉様、今更怖気付いたにゃぁ?
リオ達と一緒に来るっていう事はぁ、こうやっていつでもどこでもエロエロしちゃう――
って事なんだよぉ? だからぁ、猥語くらい慣れないと駄目にゃぁ♪」
ネーアと交わった時、彼女に言われた事と同じ事を姉にも言ってやる。
魔物になる事、また魔物と共に行く者の為の通過儀礼のようなものだった。
「うぅ…頑張る…」
「その意気にゃぁ♪」
抱き付いて、熱い抱擁を交わす。
ただ、全身にクロトの粘液をぶっ掛けられている状態だった。
なので身じろぎをする度にヌチャヌチャと肌と合わさった場所から派手に音が鳴った。
アクメ後で敏感になった肌同士が粘液越しに擦れて、それだけで蕩けそうになってしまう。
「んっ!? も、…もうっ、どろどろじゃない…っ」
「そうだねぇ♪」
「アソコも、お尻も、ずっと刺さりっぱなしで……穴、広がる…」
「にゃう♪ そうなったら私達の触手じゃないと満足出来なくなっちゃうね♪」
「それ、本気で言ってるのか冗談で言ってるのか分からない」
「にゃははは…っ」
三人で穏やかに笑い合う。
幸せだった。人間だった時の頃と比べて、今はまるで天国にでも居るようだ。
こんなに幸せになれるのだったら、やっぱり人間を止めて良かったと思っている。
けれど――
「姉様?」
「何?」
「本当に、良かったの?」
「…今更そんな、水臭い」
「んにゃ…そうなんだけど……でも……
私、姉様の中にアドニスの種子、植え付けちゃったよ?」
種子が成長すれば姉もクロトのようにアネモネになってしまう。
二本の脚で大地に立つ事が出来なくなり、剣も使えなくなるだろう。
記憶や人格はそのまま継承されるが、その魂は最早人間の時とは別物なのだ。
魔物になれば、本能には逆らえなくなってしまう。
ドス黒い欲求が体中を駆け巡り、衝動の赴くまま人間達に害を与えてしまう。
それをこの身を以って知っているのだ。
自分はいい。自ら選んだ道だ。
クロトも、ここまでこればどうしようもない。
アネモネ化させてしまった責任として、死ぬまで面倒を見てやるつもりだ。
(けど、姉様は?)
姉までもアネモネとなってしまったら――
ところがマリオンはこちらの心情を察してくれたのか、笑顔で答えてくれた。
「いい。別にアネモネになっても」
「でも…」
「というか。私だけ仲間外れにしないで」
姉だけ人間のままでは大なり小なり後ろめたい、という事だろうか。
(でも、自分の体の事なんだから。もっと考えてくれないと。
私と違って人間としては将来有望なんだし。もう種付けしちゃったけど)
はあ、と思わず溜息を吐いてしまう。
姉の同意の元とはいえ、種付けは早計だったか。
欲を言えば姉には人間のままで居てもらいたかったのだ。
「ちょっとリオ? 貴女真剣に悩み過ぎよ?」
横合いから掛かった声はネーアのものだ。
今の今まで傍観を決め込んでいたのに――何か思うところでもあるのだろうか。
というか腹のアドニスを通じて彼女がどうにもこの状況を楽観的に捉えているのが分かる。
「だって、勢い余って――という訳ではないですけど。いや、それもあるかもしれないけど。
姉様に種付けしちゃったんですよ? 姉様、アネモネになっちゃう」
「なって欲しくないの?」
「それは……多分…」
なんだか自分でも良く分からないが、姉には人外にはなって欲しくない。
「そう? なら、ならなければいいんじゃない?」
『え?』
姉妹が、同時に目を丸くした。
何だそれ。まるで、嫌ならアネモネにならなくてもいい、みたいな言い方。
「どういう事ですかぁ?」
「皆勘違いしているみたいだけど。
本来アネモネって成体になったアドニスと女性が完全に同化した姿の事を言うのよ?
種子を植え付けられたからって、絶対にアネモネになるわけじゃないわ」
今度はクロトを含めて、三人で顔を見合わせた。
「普通、女が子宮の中で種子を育てて、産んで、それから同化するまで二、三日掛かるのよ。
まあ、クロトの場合はリオのせいでそれが何倍にも早送りされちゃったみたいだけど。
兎も角、産んだアドニスと同化するまでタイムラグがあるのよ」
「あ、そうか。それじゃ、アドニスと同化してアネモネになるかどうかって、」
「そう。本人が決められるのよ。
まあ、それまで散々エッチして頭の中ピンク色一色だろうから。
大抵自分から進んでアドニスと同化しちゃうんだけどね。
それにもう一つ。アドニスは十分な魔力を蓄えないと成長しない。
それにどころか下手をすれば枯れてしまうわ」
「あっ、そうかっ」
屋敷での戦いの時、メイド達に植え付けたアドニスを全て枯らしてしまった。
つまり。魔力を吸い取れば、マリオンの中のアドニスをいつでも枯らす事が出来る。
「リオの中のアドニスがいつまで経っても成体にならないのもそのせいね。
蓄えた魔力を、種付けや戦闘に使っているから全然成長していないのよ」
「…そういえば、そうですね」
「まあ、折角植え付けた種子だし。私にとっては孫みたいなものだから。
アドニスを枯らす事は出来れば避けて欲しいところね。
兎も角、そういう事だから。何も心配する必要は無いわよ?」
姉妹でもう一度顔を見合わせた。
「なんか、拍子抜け。覚悟してたのに」
「あらあ? 別にアネモネになってくれてもいいのよ?
あたしとしては仲間が増えるならそれに越した事はないからね♪」
「…それに関しては保留という事で」
「そ。期待せずに待ってるわ」
(何だ、それじゃぁ、何も心配する事なかったんだ)
ネーアの言うとおり、自分が悲観的過ぎただけだ。
「えへへへへ…♪」
嬉しさの余り、すりすりと姉に頬擦りする。
もう、何か幸せ一杯だった。
今までリビディスタの屋敷で肩身の狭い想いをしながら生きてきた。
自分の存在理由も分からなくて、心の底から信じる事が出来る人も居なくて。
生きているのか死んでいるのか良く分からない、薄っぺらい生を送ってきた。
父に陵辱され、母に疎まれ――リビディスタの屋敷は自分にとって牢獄だった。
だがそんな辛い日々も、今となっては思い出だ。
自分はもう一人じゃない。
ネーアが居る。
マリオンが居る。
クロトが居る。
もう、寂しい思いはしなくていい。
でも、何か、足りない。
『リオっち♪』
栗色の髪に、犬耳のような癖毛を持つメイドさん。
パセットが、ここには居ないのだ。
「リオ?」
「? どうしたの姉様」
真剣な目をした姉がこちらを見詰めていた。
「あの子、置いてきて良かったの?」
今の心中をずばりと言い当てられて鼻白む。
鈍感だと思っていた姉に心の機微を読み取られるなどとは夢にも思わなかった。
思わずバツの悪そうな顔をしてしまう。
「…いいんだよ。きっと」
そう。自分はそう思ったから眠ったままのパセットを起こす事無く屋敷を出た。
「だって。パセットちゃんはもう何年も私の為に頑張ってくれたもん。
もう、自由にならなきゃ」
パセットはずっと一緒に居てくれた。
どれだけ怒っても、八つ当たりして理不尽な事を言っても。
ずっと笑顔を見せてくれた。
どう考えても悪いのはこっちなのに嫌な顔一つする事は無かった。
けれど、全く苦痛でない筈がないのだ。
屋敷、という閉鎖された空間の中で、こんな陰気な少女に付っきりなのだから。
口にこそ出さなくとも、腹の中には色々と溜め込んでいる筈なのだ。
「私みたいな子に構って、一生を棒に振る事は無いよ」
そう。それがパセットの為だ。
「それに私、もう人間じゃないし」
えへへ、と笑う。
「それ、私にも同じ事が言える?」
姉が真剣な表情で問い掛けてきた。
「私も、立場としてはあの子と同じ。でもリオに付いて来た」
「それは、姉様は、ずっと私の事を思ってくれてたからだよね?
でもパセットちゃんは仕事で」
「…リオのばか」
「…え? 姉様?」
「私もばかだけど、リオもばか。鈍感」
「え、ええっ?」
「私もあの子も変わらない。リオの事、大切に思ってる。
私は妹として、あの子は……多分、友達として。
仕事だからとかじゃないの。あの子はリオの事、そんな風に思ってない。
じゃないと、リオが屋敷から居なくなった時、泣いたりしない」
「え?」
(泣いてたの? あのパセットちゃんが? 私の為に?)
あの元気の塊のような娘が、泣いていた? 信じられない。
もう三年以上一緒に居るが彼女が泣いているところなんて見た事が――
(――あ、そういえば。街でパセットちゃんと再会した時、泣いてたような…)
おっぱい揉ませろとか何時も通りの冗談を言っていた気もするが。
あの時のパセットは嬉しさ半分怒り半分といった感じ状態だった。
そう、彼女は心配してくれていたのだ。
メイドとその主人、としてではなく。
たった一人の親友として。
(――でも)
「だったら尚更…そんなパセットちゃんを、私は巻き込みたくない」
大事な友達だからこそ、人として幸せに生きて欲しい。
魔物となった自分に付き合って、危険な目に遭って欲しくないのだ。
ネーアやクロトと共に行く以上、人里には近付く事が出来ない。
魔物が蔓延る、こんな森の中を常に歩く事になる。
アネモネのガスや、姉妹の戦闘能力を考えればある程度の安全は保障出来るだろう。
だがそれも絶対ではない。
常に死と隣合わせになるかもしれない。
そんな危険な旅に、何の力も無い友人を連れて行く事なんて出来る筈が無かった。
「でも、それはリオの我侭」
「それは、そうかもしれないけど。いいの! 我侭でも!
私はパセットちゃんに付いて来て欲しくないの!」
もし、襲い来る魔物達からパセットを守り切れなかったら。
自分の力が及ばないせいで彼女が傷を負うような事になったら。
自分は一生後悔するだろう。
あの時、一緒に連れて行くんじゃなかった――と。
そんな想いをするくらいなら、最初から、
「でも、あの子はそうは思ってなかったみたいね」
遠巻きから見ていたネーアがポツリと呟いた。
「え?」
遠くの山から日の出が見え、薄暗い視界が徐々に明るくなってくる。
すると眼下に広がる山間の獣道から人影か近付いてくるのが分かった。
その人影は息を荒げながらしゃむにに走り、こちらへと向かってくる。
大きな旅行鞄を背負い、メイド服を着用し、栗色の髪を揺らす彼女は間違いなく、
「パセットちゃん!?」
「――ぜえっ! ぜっ! はあっ!」
メイド服の少女は魔物三匹と人間一人の輪へと接近すると、膝に手を付いて息を整えた。
全員が見守る中、その少女は顔を上げて、
「うっわエッロっ!?」
顔真っ赤にして背中を向けてしまった。
そう言えばこちらはマリオンとエッチして、そのままの姿だ。
クロトの花の上で、三人が密着したまま、今も二本の触手で繋がっている。
刺激の強い光景だった筈だがメイドの少女は背を向けたまま大きく深呼吸。
それを三、四回繰り返して、くるり、とこちらに振り向いた。
「頼もーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっっ!!!!!!」
山中に響き渡る大声だった。
遠くの方で野鳥の集団が羽音を立てて、一斉に飛び立つのを見た。
「いや。そんなに大きな声ださなくとも聞こえるから」
全員が全員耳を押さえていた。
「う。面目無い。体力有り余ってたんで」
(息を切らせながら走ってきた癖に…)
まあ、それだけ必死だったという事か。
この森の中を一人で来るからには何かしらの準備もしていたと思うが。
それにしたって余程の覚悟と度胸がなければ出来る事ではない。
(私に、わざわざ会う為に。そんな事)
やっぱり危険だ。
今回は何とか追いついてきたけど、これ以降一緒に居て無事で居られる保障は無い。
マリオンと違ってこの子は何の力も無い只の少女なのだから。
「パセットちゃん。帰って」
「え?」
冷たく、突き放つような言葉に、流石の少女も困惑した表情を浮かべた。
「ど、どうしてさ…っ、どうしてそんな事言うのさっ。
パセットは、リオっちのメイドさんだぞ!
ご主人様が居ないと、パセットはメイドさんじゃなくなっちゃうんだぞ!?」
「パセットちゃん? リオ=リビディスタはもうこの世の何処にも居ないの」
マリオンから触手を引き抜き、花から飛び降りる。
魔力を制御し、裸体に黒く、卑猥なゴスロリドレスを纏わせた。
じゃきり、と爪を伸ばし、そのまま右手をメイドへと突きつける。
「私はモンスター。人を襲い、犯し、精を吸う恐ろしい魔物なの。
分かるパセットちゃん? 私にもうメイドさんはいらないの。
だから帰っ、」
「ふ、」
「…ふ?」
カタカタとパセットが肩を震わせていた。
俯き加減で表情は見えない。
シュトリの能力で彼女の心を読み取ろうと目を凝らして、
「ふっざけんなああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!」
彼女の怒りが叩き付けられた。
「にゃうっ!?」
そのまま地面に押し倒されてしまう。
こっちは凶器だって持ってるのに、怖くは無いのか。
「二回だ!」
「え?」
「二回もっ、居なくなったんだ! パセットの前から!
何も言わずにっ、いきなり消えて! 何でっ!? どうして黙って行くのさ!?
パセットの事、嫌いなのか!? ならいい! それならパセットも諦める!
諦めて里に帰ってやる! けどっ、パセットの事少しでも好きなら、諦めない!
リオッちが何と言おうと付いて行ってやる! 地獄でも何処でもね!
さあリオッち!! 大嫌いっ、って今ここで言ってみろ!
パセットの目を見て言ってみろっ!!」
メイド少女の持つ気迫に完全に呑まれていた。
涙目で、歯を剥き出しにしながら激昂する友人の気持ちが痛い程伝わってくる。
置いてけぼりにされた事を不甲斐無く思い、同時に置き去りにしたこちらを恨んでいた。
そしてその激しい感情の奥に根ざしてるのは――純粋な好意なのだ。
「嫌いな訳、無いじゃないっ」
そんな人間を、どうして嫌いになれよう。
「私、パセットちゃんの事、大好きだもんっ!」
「だったらっ」
「だから、だよ! 私、パセットちゃんには幸せになって欲しいもんっ!
私みたいな化け物に付いて来たら、絶対に不幸になるもんっ!
だから、だからパセットちゃんの事を置いて来たのにっ!
どうして分かってくれないのっ!?」
「ひゃっ!?」
体を起こし、こちらを組み伏せていたパセットを突き飛ばす。
尻餅を付いたパセットが苦痛の声を上げ、思わず『あっ』と声を上げる。
が、そんな動揺を悟られまいと背中を向けると、押し殺した声で言い放つ。
「痛いでしょ? 私、もうモンスターなんだよ?
それはパセットちゃん本人がよく知ってる筈だよね?
だって嫌がるパセットちゃんを犯して、無理矢理種子を植え付けたのは、私なんだから」
溢れ出る衝動のままパセットを陵辱し、その精神を破壊した。
それも一時的なものだったらしく今はこうして元気に振舞っているが。
「私達と一緒に来るっていう事は、また同じような目に何度も遭うって事だよ?
ううん。ひょっとしたらもっと酷い事をするかもしれない。
暴走した私は、自分でも止められないのっ」
両腕強く自分の体を抱き締める。
この細腕にはパセットくらいなら簡単に八つ裂きで切る力がある。
そして魔物の本能は、完全に抑制する事は出来ない。
我慢は出来ても、いつか必ず爆発する時が来る。
その時に、目の前の友人に手を出さない、という自身が無い。
「私、怖いのっ!
また昨日みたいに暴走したら、パセットちゃんにもっと酷い事をするっ。
ひょっとしたら、殺しちゃうかもしれないっ!
そんなの絶対に嫌なのっ!! だからっ、だからっ」
最後は言葉にならなかった。
ぽろぽろと涙が溢れてきて、泣きじゃくってしまう。
こうして人間らしい感情はあっても、自分の中には確かに魔物が居るのだ。
パセットには、その餌食になって欲しくない。
「――リオッちの言いたい事は分かった。
まあ、言ってみれば前科持ちだもんね。心配になるのも分かる」
パセットはどっこらしょっと、なんて言いながら立ち上がり、スカートを両手ではたく。
それから何かを考えるように顎に手を当てて――
「ポクポクポク――チーンっ!」
何か閃いたらしい。擬音をわざわざ言葉にして言うあたりらしいというか何というか。
「大丈夫! リオッちはパセットに酷い事しないって!」
なんて、あっけらかんと言うのだった。
「な、何でそんな事言えるのっ!? 昨日の今日だよ!?
酷い目に遭ったばかりでしょ!?」
「何となくだ!! それじゃ悪いか!?」
「えぇ!? 何も根拠が無いの!? さっき何か考えてるみたいだったのに!?」
「ウチの婆ちゃんは言っていた! 『馬鹿は考えるだけ無駄』と!!
余計なお世話だっちゅーねん!」
セルフ突っ込みを入れるパセットに一同愕然としていた。
「だから根拠は無い!!」
「そ、そんな無茶苦茶な!?」
「リオッちどうだ!? 自分を信じられないか!?」
「あ、当たり前だよ!」
「けどパセットはリオッちを信じる!」
「そ、そんな事言われてもっ」
「なら自分を信じるな! パセットを信じろ!
リオッちを信じる、パセットを信じるんだ! これなら問題ナシ! 万事解決ぅッ!」
(もう訳わかんないよぉっ)
思わず頭を抱えてしまう。
「リオ、観念なさい。貴女の負けよ」
「ネーアさん…」
「ほらリオッち。そこのお花のお姉さんもそう言ってる事だし。ね? ね? ね?」
そう言って笑うメイドの少女は、大地を照らす太陽のように眩しい。
その笑顔に何度助けられた事だろう。
(……そっか、私はパセットちゃんに恩返しをしなきゃならない)
彼女がそう望むなら、その我侭を叶えてあげるというのが筋だろう。
じっと、パセットを見詰めて、
「ほんとに、いいんだね?」
「おうさ!」
「私、もう魔物さんだよ?」
「しつこい! リオッちはリオッちだ!」
「また、悪い事するかもしれないよ?」
「そんときゃパセットが張り倒してでも正気に戻してあげるさ!」
「…どうして…」
どうしてこの少女は、こんなにも自分に尽くしてくれるのだろう。
いや、本当は分かってる。
パセットが自分をどう思ってくれてるのか。
ただそれを、言葉にして欲しかった。
冗談ではなく真剣に。
相思相愛の恋人同士が愛を囁き合うように。
「だって友達じゃん♪」
ほら。やっぱり。
馬鹿なパセットちゃん。
ただ友達、なんて言う理由だけで、お屋敷での生活を捨てて、一緒に付いて来るなんて。
ほんと、救いようの無いお馬鹿さん。
「パセットちゃんって、真性の馬鹿だよね」
「にゃにぃ!? 昨日エッチした時『ずっと一緒ぉ♪』とか言ってたのはこの口だぞ!?」
「あにゃっ!?」
ぐい、と唇を左右に引っ張られて間抜けな顔を晒した。
「にゃったにゃぁ!」
「ふひっ!?」
負けじとパセットの唇を左右に引っ張ってお返しする。
「ひほっちへんふぁふぁおー!」
(リオッち変な顔ー!)
「ぱふぇっふぉふぁんふぁってへんふぁふぁおー!」
(パセットちゃんだって変な顔ー!)
「ひほっひふぉほうふぁへんふぁ!」
(リオッちの方が変だぁ!)
「ぱふぇっふぉふぁんふぉほうふぁへん!」
(パセットちゃんの方が変!)
ぎりぎりと唇を引っ張り合って激しい攻防戦を繰り広げる。
子供らしい喧嘩を、皆がが生暖かい目で見守っていた。
『あはははははっ』
朝焼けの森に二人の少女の笑いが響く。
リオとパセット。魔物と人間。主君と従者。
いや、そんなしがらみをものともしない、強い絆を彼女達は持っている。
この五人の行く先には、きっと様々な試練があるだろう。
人間からも、魔物からも疎まれたこの五人はきっと何処にも受け入れてはもらえない。
でも、きっと大丈夫。この五人ならどんな困難も乗り越えられる。
天国のお母さん。私を産んでくれてありがとう。
姉様も、パセットも、こんな私に付いて来てくれてありがとう。
私は今、とっても幸せです。
そして願わくば、どうかこの幸せがいつまでも続きますように。
ずっと。永久に。
はーい最終話終了です。皆様お疲れ様でした。
70KBは長かったですねぇ(汗 、何でこんなに長くなったのだか。
お時間を取らせてしまってほんと申し訳ない。
せめて、時間を忘れるほど愉しんでもらえたらいいのですが。
今回、エッチシーンを入れたおかげでマリオンのキャラがぐんと立った気がします。
自分の体にコンプレックスを持ってるマリオンは裸になる度に、
『…どうせ貧相だし…』
とか言いながら瞳をうるうるさせてちょっぴりいじけるわけですな。
逆に褒めると嬉しそうな顔をして、上目遣いで『本当?』なんて聞いてきます。
不器用なおねーさんがそんな時だけ子供っぽくなるというギャップが実にエクセレント。
とか馬鹿な事を考えながらエチシーンを書いていました。あほですね。
さあ、今から後日談を書く作業に戻ります。二週間くらい掛かるかな?
来週には経過報告も兼ねて次回予告だけでも投下しようと思います。
いつものように誤字脱字感想等よろしくお願いしますー。
それではまたお会いしましょう。
ロリータっ、万歳!!
投下おつかれさまです
マリオンもアネモネになるのかと思ったら・・・
どんどん襲って犯していくようなシチュが好きだけど
こういうエロエロな和姦もいいな・・・
リアルタイムで見つけたはずなのに読んだら90分過ぎている…だと…GJです
ひんぬーマリオン可愛い、微妙にヤンデレっぽいリオもいい
あとパセットみたいな一途に生きる人ってマジで憧れます
出発前にマリオン同様にもう一度エロ洗礼受けたんだろうか(ぁ
最終回でこんな濃いエロやっちゃったのに後日談とかどんな話になるんだw
ふぅ…………
…………ふぅ…
投下お疲れさまでした。(キリッ)
もうGJの言葉しか出ない…
その上の言葉が欲しい。
GJです!
風邪ひいて頭も痛いけど元気出た
触手なのに純粋な百合だと感じるのはなんで何だ
うん、落ち着いたぞ俺
GJ!
寄生変化系ハッピーエンドってのも良いものだw
半分もスレ行ってないのに427KB・・・だと・・・
あと乙x風gj、後日談期待して待ってますね。
なんか寄生とか背徳とかどうでもよくなるぐらい感動した
純粋にみんなが仲良くなるってのは本当いいな
某勇者モノの最終回を見てるようだ
GJでした。
ところどころクロトとマリオンが入れ替わってるのは気のせいかな
鎧脱がせるシーンとか
風呂敷がちゃんと畳まれているのを見るだけで十分。乙乙
ハッピーエンドって素晴らしいなあ
後日談にも期待して待機
このスレどころがこの板全体で屈指の名長編だったとすら思うよ。乙!
いや、もう、素晴らしい、感動した、その類の言葉しか浮かばない。抱きしめたくなるくらい素敵な物語でした。
HAPPY END。リオ達のこの先に幸がありますように。
そして完結お疲れさまです!楽しく読ませていただきました!有り難う御座います!
リオの絵描きたいと思ってしまった……
kwsk
ちょっと流れをぶった切り。失礼します乙×風です。
前回の感想ありがとうございます。
なんという絶賛の嵐。今まで書き続けた甲斐がありました。
本当にありがとうございます。
たまには和姦もいいよなと思って書き始めた今回のシリーズ。
色々四苦八苦もしましたが最終的に想った処に着地出来て満足です。
そしてクロトとマリオンが入れ替わっている件ですが。
フヒヒ。ほんとうだ。クロトがマリオンの事をクロト様って言ってますw
最終回でなんというポカミス。すみませんすみません。
さて。前回投下時に予告したとおり、今回はとりあえず次回予告だけ持ってきました。
早ければ木曜か金曜。遅くても来週の月曜日には投下出来るでしょう。
尚、後日談ではパセットがエロ覚醒して大変な事になる予定ですw
という訳で、
困難を乗り越え、絆を深めたリオ一行!
誰にも邪魔されない森の中、彼女達がする事と言えば只一つ!
「にゃうん♪ 皆でエッチしよ♪」
そして始まる五人の大乱交!
だが皆様色々皆溜まっていたようだった!
暴走気味の三匹の魔物により人間代表のマリオンとパセットは大変な事になってしまう!
「しまったわ……確かにアネモネ化するのは本人の意思次第だけど……
アドニスを身篭ったら旅なんて出来なくなるじゃないっ」
例によって性衝動を抑えられなかった三匹の魔物は二人に中出ししまくり!
マリオンとパセットの胎内の種子はあっと言う間に成長してしまう!
エッチとは子作りだ!! 後先考えずにしまくると大変な事になるぞ!
「……ど、どうしようっ、パセットちゃんのお腹、もうこんなに膨らんでるよ?」
「マリオン様も大変そうですねぇ…」
「いやいやいや! 人事じゃないでしょ! あたし達のせいだから!」
「あの、思い切って出産させたらどうなのかな?」
「こんな辺鄙な所じゃ人っ子一人通らないわ。生まれてきたアドニスが可哀想よ。
っていうかそれって人間でいうところの捨て子みたいなものよ?
育児放棄よ? それじゃあのドルキとかと一緒じゃない! 絶対嫌!!」
「でも、それじゃどうしようも」
「いや、待って! ――そうよ閃いたわ! 簡単じゃない!」
悩みに悩んだ挙句ネーアは思いついた!!
リオの能力を使って、胎内の種子から魔力を吸収し、二匹のアネモネへと移すのである!!
種子を枯らさない程度に吸収すれば成長は止まり、エッチはしまくり!!
アネモネも人間も理想の桃源郷へレッツゴーだぜ!!
だがこれには一つ問題点が!!
「種付けしたーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!」
「女の子はどこですかぁぁ!!!!」
魔力を吸収しすぎて二匹のアネモネが今にも暴走寸前だ!!
近くには街も見える。二匹を止めないと大惨事間違い無し!!
「…どうにかして二人を止めないと」
「って言ってもリオ、どうするの?」
「うーんどうしよう?」
姉妹が揃って頭を悩ませる! その時だった!
「困った時は空を見ろ!!」
「にゃ!? あ、貴女は!?」
「パセットこそは! ――ってちがーう!! パセットはパセットじゃなーい!!
うおおおおっっ!? 一人称の弊害がぁぁっ!!
これじゃどんな変装をしてもパセットがパセットだとばれてしまうぅ!!」
突如現れた仮面のメイドガール! 彼女は果たして何者なのか!!?
「リビディスタ居合い術裏奥義――『雨駆流閃』っ! はあぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
そしてリビディスタ居合い術を使いこなす謎の女!!
風雲急を告げる永久の果肉番外編、『はじめての○○♪』、
近日投下予定!! 乞うご期待!!
尚、サブタイトルと本編内容に関しては予告無く変更される可能性があります。
皆様にはご容赦の程をお願い申し上げます。
それではまた次回お会いしましょう。
>尚、サブタイトルと本編内容に関しては予告無く変更される可能性があります。
>尚、サブタイトルと本編内容に関しては予告無く変更される可能性があります。
パセットちゃんはアホ可愛いなぁ
つまり、タイトルの「はじめての○○」は変わらない訳だな。
ウホッいい乙×風氏。
や ら な い か
予告なくエロ追加される、と解釈しておきますw
ふと思ったんだが、クロトってよく理性保ってられてるよね
普通にアネモネにされちゃった以上もっと暴走してもおかしくなさそう…かな?
あれか、振られた上に斬られて流石に沈静化したのか!
えー。大変言い難い事ですが報告があります。
永久の果肉番外編執筆終了しました。
現在推敲中の訳ですが――またしても70KB越えてしまいました(汗
スレ容量がやばそうなのでどなたか新スレを建てていただけないでしょうか?
他力本願でほんと申し訳ないのですが、よろしくお願いします。
凄くありがたい話ではあるが……早すぎw
あと67kbを埋めるのに、SSがないとどれだけ時間かかるのやら……
別ネタでもいいから短編書いてくれちゃったりすると俺によし、お前によしなんだぜ
乙×風氏の投稿スピードにスレが悲鳴あげてるなww
>>314 乙!
さて……自分も小ネタ考えてみるか。
だれかが60kbぐらいのSS書くしかorz
ペースが速すぎるw
317 :
埋め:2010/06/10(木) 01:36:03 ID:9/h95rr3
にちゃ、くちゅ、ちゅぶっ……。
意識が覚醒するにつれ、最初に認識したのは粘着質な水音だった。
「あ、あたし……どうしたの」
首を振って金の髪を持つ少女、メリアは頭の中の霧を追い払おうとする。そう、村のみんなが亜人だって騒いで、あわてて隠れて、でもすぐに見つかって……。
「んっ!!!?」
脚も、手も動かない。慌ててあたりを見渡すが、あたりは暗闇に覆われ、容易に状況がつかめない。かろうじてわかるのはごつごつした岩のようなものにまるで彫像のように手と足を何かで貼りつけられていることだけだ。そして、自分が何も身につけてはいないということも
そばかすの浮いた、まだ幼さの残る顔が火照るのがわかる。でも、羞恥心ばかりではない。
なぜか妙に体が熱いのだ。まるで風邪でもひいたかのように。
「あ……え?」
そこで、目の前に「何か」があることに気がついた。
麦を挽く石臼ほどの大きさのそれは、メリアが見たことのないしろものだ。そのとき、ようやく暗闇に慣れてきた瞳が驚愕で見開かれた。
ぐばりっ。
花が開くように、目の前の物体が割れ四枚の襞がめくりあがり、同時に粘液の音が大きくなっていく。目の前に晒された内部にうごめく物を見て、メリアは喉の奥から金切り声をあげた。
その声を感じ取ったかのように、中の物体が動きを止めた。次の瞬間、勢いよくそれは飛び出し、むき出しになったメリアの股間に貼りついた。
「いやぁぁあぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁっ、やめて、こないでぇっ、ひぃぃぃぃっ!」
悲鳴を上げ振り落そうと腰を振るが、拘束された四肢では悲しいほど小さな動きしかできない。必死にあがくメリアをあざ笑うかのように、卵から伸びた管につながれた肉塊はむき出しになった秘部にぴったりと張り付く。
「ひぎっ!?」
微小な触手が、肉鞘を割開きその中に包まれた秘芯をむき出しにした。にちゃ、と敏感なそこに唇をつけるかのように生温かく湿った何かが吸いついた。そのおぞましさにメリアは声を上げて泣き叫ぶ。
ふと、メリアの動きが止まった。だんだん呼吸が荒くなり、目が焦点を失っていく。
「は、はぁっ、ふあ、ひあ……」
いつしか泣き声は甘く切ないものへと変貌していた。中でこねくり回される秘芯は甘くしびれ、それに呼応するかのように唇から甘い蜜が滴り、床に滴り落ちていく。怖れや恐怖はいつの間にか溶け落ち、股間から送り込まれる快楽が少女を支配していく。
どくん。
「ふあ……?」
何かが、流れ込んでくる。
股間に張り付いた肉の塊を通し、秘芯から体内に何かが流し込まれていく。それに従い、狂おしいほど性欲が高まっていく。
「あ、はぁっ、ふはぁっ、ああああっ、 ひぃぃぃっ、いいいっ、ほし、ほしいっ、もっと流し込んでぇっ!」
そう叫ぶメリアの瞳、それに体がだんだんと変化していく
(省略されました。続きが読みたい方はわっふるわっふると書き込みどんな肉体にしたいかリクエストしてください)
わっふるわっふる手足触手化わっふるわっふる
わっふるわっふるわっふるにするもっふる
わっふるわっふる
口とかアソコとか尻尾が生えるような場所とかから触手生えてくれたらいいな
と乗ってみる
わっふるわっふる
久しぶりにリレーネタか?
しかし〜月系のキャラは12までしか無理だな…
…リロってなかった!
媚薬体液わっふるわっふる
わっふるわっふるヨガの真髄を体得してヨガフレイムを撃てるようになる事希望。
新スレにも書いてきましたが、新作は二分割し、その内の半分をこちらに投下します。
60KBもネタで埋めるのはしんどいと思うので。
という訳で投下します。
(陵辱寄りの和姦? 拡張、二穴攻め、イマラチオ、パロネタ多め)
NGワードはこんなものですか。
基本和姦の筈ですが理性を失ったネーアがばりばり責めますw
後半にはアドニス出産シーンもありますがあまりエロくなくなりました。不思議な事に。
あとやはりというか予告とは大分違う内容になっていますw
仮面のメイドガールも新キャラも出てきませんw
まあともあれ泣いても笑っても今回で最終回。
よろしければ最後までお付き合い下さい。
この前半部分だけで14レス程消費します。
番外編 本当のハッピーエンド(前編)
風に煽られ、木々がざわめいた。
鬱蒼とした雑木林の中、どこからか野鳥の鳴き声が響いている。
真上から照りつける太陽が木々の合間を縫うように光を落とす。
地面に目を落とせば愛らしい小動物が木漏れ日の中を駆け抜けた。
すう、と少女は歩きながら深く息を吸う。
清涼な草木の香りが肺の中に満たされ、心が安らぐようだった。
ぐぎゅるるるるぅ――
何処かで腹の虫が盛大に鳴った。
大自然の空気は心を満たしても空腹は満たせなかったらしい。
「ここらで休憩しましょうか」
「…まだ歩ける」
「貴女のお腹はそう思っていないみたいよ?」
「うるさい。まだ大丈、」
ぐぎゅるるる、と再び恥ずかしい音が響いて金髪の女が顔を真っ赤にして俯いた。
森の中を珍妙な集団が進んでいた。
先頭を行くのはは、下半身は巨大な肉の花、上半身は美しい女性という魔物だ。
アネモネと呼ばれるその魔物は浅葱色をした瑞々しい裸体を惜しげもなく晒している。
その後を歩くのは白金の軽装鎧に身を包んだ女剣士だ。
夕焼けと同じ色をした外套には黄金の林檎を守る女『ヘスペリス』の文字が施されている。
長く伸ばしたブロンドの髪は流水のように滑らかで、その顔立ちも女神かと思う程美しい。
空腹に恥らう姿も大変チャーミングであった。
「う、うるさい。褒めてるのかからかってるのかどっちなの」
両方だじぇい。
「…確かぁ、この先に小川が在った筈ですぅ…
そちらでお休みになればいいんではないでしょうかぁ?」
集団のしんがりを勤めていたのはこれまたアネモネの女である。
左右に大きく広がる新緑色の髪の下に、柔和な笑顔があった。
まるで大地母神もかくやと言った穏やかな笑みだ。
虫も殺した事がないと言われても不思議ではない。
だが、のんびりとした喋り方や、垂れ目や童顔に騙されてはいけない。
彼女の肉体は神が与えたもうた宝である。
主にオッパイ。乳房。胸。バスト。
実にけしからん。このオッパイを使って何人もの男達をたぶらかしてきたに違いない。
何と言う魔性の女。
さあ、お前の罪を数えろ!
「? そんなに多くありませんよぉ? せいぜい二十回やそこらですぅ」
十分多いわ。けしからん。そのオッパイ、神に返しなさい!
「というか。男の人とエッチした回数だけなら私が一番多いんじゃないかな?」
オッパイアネモネの先を行くのは愛らしい少女である。
ところが黒いゴスロリ服に身を包んだ彼女も人間ではない。
背中から生えた蝙蝠の翼。
ぴくぴくと自己主張する猫耳。
しなやかな猫尻尾と矢じり型尻尾を生やした彼女はネコマタと悪魔のハーフなのだ。
「人間も混じってるよ?」
そうでした。
少女は赤い左目を瞑ってウィンク。
金髪の剣士さんと同じ色をした優しい青い瞳がこちらを見つめます。
万人に愛されるべきお顔から八重歯が覗き、花が咲いたような笑顔を浮かべていました。
その笑顔を拝見出来るだけで幸せであります。
「大袈裟だよぅ」
「そうかしら? リオの笑顔って作り笑いばっかり、っていうイメージあるわよ?」
先頭のアネモネのお姉さんが言いました。
イグザクトリィ! まさにその通り。
彼女に仕えたこの三年の間、本当の笑顔を拝見した事はありませんでした。
つい先日までは。
だからこそこうして感涙している訳です。
「……ちなみに『それ』いつまで続けるの」
「あはは。私も気になった」
「マリオンとリオから少し話は聞いてたけど…ほんと変わった子よねぇ」
「でもぉ、エッチの時はぁ、とっても可愛いんですよぉ♪」
三体と一人の視線が、一行の中央を歩く少女へと集まります。
非戦闘員、という事で隊列の真ん中を歩く少女はメイドさんでした。
栗色の長い髪は癖っ毛持ち。外側に撥ねてまるで犬耳のよう。
その下の顔も猫悪魔に引けを取らぬ愛らしさ。
そこいらのロリコンなど簡単にハートキャッチする事間違い無し。
メイド服もそつなく着こなしています。
勿論外見だけはありません。
料理、お掃除を初めあらゆる家事のエキスパート。
最近では『シモ』のお世話をする事もあります。
見た目良し。性格良し。能力良し。
弱冠十四歳とは思えない、正にパーフェクトメイド。
それが――
「――このパセットなのです!」
えっへんと胸を張り腰に手を当たる。
「自我自賛の嵐だったね」
「聞いてるこっちが恥ずかしい」
「あたし達の紹介は割と適当だった気がするんだけど?」
「私ぃ、オッパイばっかり言われてましたぁ」
「そうやって喋る度に『ぼよおん♪』ってオッパイが動くからでございます!!
クロト様だけ年齢に対する体の成熟具合がおかしいんでございますです!!
――ってくああぁぁっ!!? ひょっとして! まさか! これが未来のリオッち!?
あと七年もしたら、リオッちもこんなオッパイになってしまうのか!?
逆立ちしても勝てないじゃん!!
――と、世にも愛らしいメイドの少女は苦悩した!!」
「いやそれはもういいから」
あはははと、五人の笑いが森に木霊した。
――リビディスタの事件からおよそ三日経っていた。
先の見えない長い旅は始まったばかりだが、今のところは上手くやれていると言えた。
特にパセットの存在が大きい。
旅に必要なのは場を和ますムードメーカの存在だと、皆気付かされていた――
「お? 小川が見えてきたわ。流石クロトね」
「お褒め預かり光栄です、ネーア様ぁ♪」
クロトは人間だった頃から防御と探索に優れた魔術士だった。
それはアネモネとなった今も変わらない。
どころか花の魔物アドニスの魔力を得、その力は更に強大になっていた。
「クロトは、偵察やマッパーが仕事だったから。この辺りの地理も大体把握している筈」
「その通りですマリオン様ぁ♪」
(むう。クロトさんも中々やりおるわ)
いや待てよ。パセットは考えた。
(話を聞くところによるとネーアさんはリオッちの保護者で、このメンツの実質的リーダー。
リオッちは我らがアイドル兼戦闘員。マリオン様だって元ヘスペリスの一員。
そしてクロトさんは探索能力は元より戦闘だって出来る)
だが、自分は? この中で何が出来るだろう?
魔物組はそもそも服を着ていないので洗濯する物も無い。
リオは一応服を着ているがあれは魔力で編み出した物らしく手間いらず。
食事を取るのも自分とマリオンの二人だけだ。
リオは性交を介して精気を吸収するので基本食事を取らない。
掃除をしようにもする場所も無いし。
(あれぇ? メイドの存在価値無くね?)
さっきは調子に乗って自我自賛してしまったが。
ひょっとしたら自分はこの五人の中で一番お荷物なのではないだろうか。
「……パセットは望まれて生まれてきた子では無かった!?」
「いいからご飯の支度して。お腹空いた」
「左様でございますか。少々お待ち下さいませ。少々キレ易いお嬢様の姉君様」
「空腹だとイライラし易いのって知ってる?」
「じょ、冗談ですよぉマリオン様、あはははっ」
愛想笑いを浮かべて誤魔化すと小川の近くで平らな場所を見つける。
背負った大荷物から食料食器を取り出して食事の準備に掛かった。
「クロト。近くに危なそうな魔物や動物は居る?」
「んーーそうですねぇ――川の向こう側の林に三体程、動物が居ます。
ここからだと見えませんが――まあ、様子を伺ってるんでしょうね。
何かあればお知らせしますよぉ」
「頼んだわ」
「そのぉ…代わりといってはなんですがぁ…
誰でもいいので早くエッチさせて欲しいですぅ♪」
触手が疼いてたまりませぇん、と触手と一緒に全身をくねらせるクロト。
一見、理性的に見えるこのアネモネ。
ところがネーアによるとアネモネになるとエッチする事しか考えられなくなるという。
しかしそれだと旅とか以前の問題だ。
皆で相談した結果、昼間は移動。
その代わり夜はエッチしまくり、と割と常識的な指針で落ち着いた。
(あれ? 野外エッチって常識か? まあいっか)
このメンツと旅をする為に人間のモラルなんて置いて来てしまった。
「駄目。皆で決めたでしょう?『夜まで我慢なさい』」
今はネーアが『強制力』とやらでクロトを無理矢理抑え付けているのだ。
これが無くなると何時でも何処でもエッチしまくりという事である。
しかもレイプするという事に対する人間的な罪悪感は消えてしまってるのだとか。
のほほんとした性格でもやっぱり魔物という事だった。
「ふぇぇぇんっ…可愛い女の子がこんなに沢山居るのに生殺しですぅっ」
「あたしだって我慢してるのよ? クロトも我慢しなさい」
アネモネはアネモネで悩みはあるようで。
人間と魔物の共存は中々難しいな、と思い知らされた。
(むー。しかし便利だなあ、クロトさんの能力は)
周囲の情報を素早く得る事が出来る探索能力は旅の要と言える。
彼女のお陰で、メンバーが安心して休む事が出来る。
(認めよう。クロトさんがパセットのライバルだ!! オッパイ的にも!)
しかしそうなると、敵はなかなか手強い。
(クロトさんに勝たなければパセットもこの先生きのこれんぞ)
なんとか自分の有用性に気付いてもらわなければ。
「――やはりあれか」
(エロ系か)
このメンツで純粋な人間は自分とマリオンの二人だけ。
マリオンは性に関してはやや奥手なところもあるし。
いやいや。かと言って自分がエロエロだというわけでもないが。
積極的にエロモンスター三匹の性処理を行っていけばよいのではないのだろうか?
(というかこれしかない!)
覚 悟 完 了 !
今更、気が知れた仲間達の性処理係だなんて全然大した事ないぜ!
むしろどんとこい!
(そうと決まれば今夜決行!)
そうだ。精が付くものも食べておかないと。
何せ彼女達の性処理となると大変だ。
それはここ二、三日でよーく分かっている。
夜、溜まった鬱憤が爆発したアネモネの性処理程過酷なものは無い。
っていうか意識が失うまでしてるし。
ばっちり種付けまでされました。
お腹の中にはあのエロイ花の種が寄生しています。
普通なら昼夜問わずズッコンバッコンしまくりです。
が、現在のアネモネクイーンであるネーアさんが我らの性欲を抑制しているらしい。
夜になると抑制が解除されて酷い事になるけど。
(まあそれは兎も角。――食うぞ!)
そして夜に備えるのだ。
***
という訳でその日の夜。
森の中の一角で例によって、魔物三匹と人間二人による乱交が始まろうとしていた。
「今日のパセットは昨日のパセットとは違うぜ」
「あら? 頼もしいじゃない。はったりじゃないわよね?
昨日みたいに三回やっただけで気絶とかしないわよね?」
と、のたまわれたのはネーア様だ。
この三日間、三日ともこの方の夜伽の相手を務めたのだ。
いやー愛された愛された。妙に可愛がられましたとも。
「いやあの。いくらパセットが逞しいとは言ってもまだピチピチの十四っすから。
あんまりハード過ぎるのは体力的にキツイっすよ」
催淫ガスの中、三点三穴同時責めとか当たり前でした。
死ぬっちゅーねん。ちょっとは手加減してくれてもいいじゃん。
「……なんか言外にオバサン呼ばわりされてる気がするわ。気のせいかしら」
「いやですねぇ。そんなわけないじゃないですか♪」
そりゃ二百歳と十四歳を比較すれば――どちらが若いか考えるまでもないけど。
「まあ別にいいわ。折角気合を入れてくれたんだし。今日もお相手を頼もうかしら?」
「来るなら来い! 当方に迎撃の用意あり!」
「何だか今からセックスするとは思えないテンションねー」
しゅるしゅると触手が伸びて体を拘束され、いざ桃源郷へ。
「――ひょっとして強がってるだけなのかしら?」
「ひゃ、んっ…!?」
花の真上へと下ろされると、襟元から侵入したおしべ触手がいきなり乳首を掠めた。
ぬらり、とした感触が肌着と肌の間に纏わり付いたかと思うと甘い電流が走る。
「恥ずかしくて、自分から正直に『おねだり』が出来ないんじゃないの?」
ぬらり。
「ひゃぁっ…!」
うなじに触手が這い、粘液の跡を残す。
拘束した触手が一本、また一本と服の中へと侵入した。
清楚なメイド服の下、グロテスクな触手が何本も這い回る。
くちゅくちゅくちゅ…っ。
「んはっ…! ひゃっ…! だめっ、服、汚れるっ」
脇を。臍を。胸を。
メイド服の内側で触手が這い回り、もどかしげな官能を呼び起こす。
卑猥な音と共に肌着が粘液を吸い、湿り、肌にべたりと張り付く。
ねちゃねちゃとした感触が体中を襲う。
(あ、やば…っ、お腹、どくどくしてきたっ)
腹のアドニスが覚醒し始めている。
子宮がドクドクと脈打つと、体中が熱くなり、肌が敏感になっていく。
服の下で暴れまわる触手が。
肌に張り付く濡れた裏地が。
更なる劣情を催し、パセットの理性を徐々に追い詰めていく。
「服はねぇ、汚れるのがいいんじゃない…っ」
ネーアが興奮気味に言い放った。
目を爛々と光らせ、荒い息を吹き掛けてくる。
(なんか、様子がおかしい?)
気のせいだろうか。昨日よりもなんというか――余裕が無い?
「パセットちゃん? 大口を叩いて、あたしを挑発しているでしょ?
そうしてもっともっといやらしい事をして欲しいんでしょ?
そういうのをね、誘い受けっていうのよ。
サディストに見せかけたマゾヒストなのよ。
分かるわ。貴女本当はマゾなのよね?
もっと苛めて欲しいのよね?
いいわ。もっとしてあげる。もっと、気持ちよくしてあげるっ」
(あれ死ぬ? パセット死ぬんじゃない? 何で今日のネーア様こんなにハイなの?)
あの日か。いや違うか。
兎も角何かヤバイ雰囲気だ。
逃げ――る事は出来ないだろうけど助けを呼んだ方が、
「リオ。貴女も手伝いなさい」
「うにゃ? ネーアさん? ――っ? どしたのネーアさん!? 何かおかしいよ!?」
リオとネーアは他の者よりも『繋がり』が強い。
そのリオがネーアに、何らかの異常を見出したらしかった。
「リオっち、ネーア様、どーしちゃったのっ?」
「うにゃ…っ、多分、魔力が、」
「リオ。『黙りなさい』」
びくん、とリオの体が痙攣したかと思うとその愛らしい口が言葉を封じられる。
強制力――アドニスを植え付けられた者は、植え付けた者の言葉に逆らえない。
「何だっていいじゃない。この娘のやる気十分みたいだから、望み通りしてあげるのよ。
『リオもこの娘としたいでしょう? だったら遠慮する事無いわ。三人で愉しみましょう』」
びくり、と再びリオの体が痙攣。
そのまま糸が切れた人形のように脱力し、膝を付いた。
「り、リオッち!?」
ただならぬ気配を感じ、親友に声を掛ける。
「にゃぁーい♪」
意外にもリオは割りとしっかりとした返事をし、顔を上げた。
「ひきっ…!?」
「パセットちゃぁん♪ 大好きにゃぁ♪ エッチするにゃぁ♪」
顔を上げたリオは完全に発情していた。
(さっきまで素面だった筈ですが…あぁ、お腹のアドニスを使って強制発情させられた?)
「うにゃぁ♪ うにゃおうっ♪」
「わわっ!?」
リオが飛び掛り、花の上であっと言う間に組み敷かれる。
「ちょ、リオッち、正気に、」
言葉はキスに遮られた。
ちゅううぅぅぅぅぅぅうっっっ!!
「っ!? っ! …っ! 、っ…!」
いきなり強烈な吸引攻撃をされて視界で星が散った。
やわらかい唇。ざりざりの舌。甘い唾液。
それらの感触を愉しむ暇も無く、幾分かの精気と一緒に唾液を啜られる。
「――ぷあっ♪ パセットちゃんの精気美味しいにゃぁ♪」
「ふえぇぇ…っ」
力が抜け、体がふにゃふにゃになる。
屋敷から持ち出した精力剤を昼飯に使い、精をつけたつもりだったがこれで帳消しだ。
(…やばい。やばいぜ。
このメンツに付いて行くって事はこういう事もありうる――そうは思ってたけど)
兎も角ネーアの暴走っぷりは度を越している気がする。
この三日間きちんと性処理をしてきたつもりだが、ひょっとして足りていなかったのか。
(…うん? こうやって暴走するから、尚更ガス抜きをする人が必要なんじゃない?)
例えば自分のような。
だったらやっぱり、ここはあえて彼女達を受け止めてあげよう。
それが彼女達の為、ひいては自分の為になるのだ。
「リオっち」
「うにゃぁ♪」
「ネーア様も」
「なぁに? 今更止めてって言っても止めないわよ? うふふふっ」
「今日はパセットがまとめて面倒見てやる! 掛かってこい!」
正面の親友の目を見ながら、宣言する。
リオは何だか良く分からない、といった表情でぼんやりしていた。
「うふふっ。うふふふっ…! 良く言ったわ…! 流石パセットちゃん…!
でも知らないわよ…っ? 今日のあたしは手加減できないわよ?
滅茶苦茶に、犯してあげるわよっ? 壊れちゃうわよきっとっ。
うふっ、うふふふふふっ!」
恍惚とした表情で笑うネーアを見て、早計だったかなぁ、と思った。
「さあ、先ずは沢山注いであげるわねぇ」
ずるるるるっ!
派手な音を立てながら尻餅を付いた股の下から生殖器が生え出す。
クイーンのそれはもう大層立派で大の男が裸足で逃げ出すくらいの巨根である。
ここ三日間お世話になりっぱなしでアソコの直径がそろそろこの触手と同じになるだろう。
ならないっての。
「今回はぁ、サービスしてあげるわぁ♪」
うふふ、と背中で嫌な笑い声。
同時に目の前で鎌首をもたげている雌しべ触手に二本のおしべ触手が取り付いた。
「え」
二本のおしべ触手は螺旋を描きながら雌しべ触手の根元から先端へと巻き付いていく。
まさか、と思いながら見ている目の前で、雌しべ触手の直径がすごい事になっていた。
元でも太いそれが、二本の雌しべ触手を纏わり付かせた事により更に極太になっている。
(なんかもう挿入れるサイズじゃないんじゃない?)
エロ、というより攻撃に使うのが正しい利用方法なのでは。
テンタクルドリルクラッシャアァァァァ!!!!
みたいな。
「それ、挿れませんよね?」
「さあ、挿れるわよぉー…♪」
「う、嘘っ!? あわわわっ!?」
触手に体を持ち上げられる。
小さな体は花から僅かに浮き上がり、膝立ちを強要された。
太い生殖器はスカートの中に潜り込み、未成熟の割れ目を目指して狙いを定める。
(――ってあれ!?)
「え、ちょ、待っ、パセットはまだ脱いでいません!
パンツだって穿いたままでっ、」
「うふふ♪ いいのよそれで♪」
先端の繊毛触手が蠢き白い下着を横へとずらされる。
スカートの裾から涼しい外気が入り込んで股下がスースーした。
(やば、マジで犯されるっ)
ところが。種を植え付けられた体はこんな異常なシチュエーションにも興奮している。
体がぽかぽかして、子宮がじゅん、と蜜を絞りヴァギナから垂れ流した。
散々拡張され、歳の割には頑丈なアソコになったと思う。
だがこれは流石にキツそうだ。
(っていうかパセットの腕、と言わず脚くらい太いんですけどっ)
こんなもの突っ込まれたら――
それを想像すると、どきり、と胸が妖しくときめいた。
(――ええ? パセットってば、まさか、期待してるの?)
違う。これは腹のアドニスの意思だ。
腹を空かせた赤ん坊が餌をねだるのと同じ。
決して自分に被虐願望がある訳では無い――筈。
「うふふ♪ パセットちゃん、表情が段々すけべになってきたわぁ♪
蕩けて、発情したメスそのもの…♪ じゅるっ…♪
うふふっ、もう我慢出来ないっ。頂きますっ」
ふ、と体の拘束が緩んだ。持ち上げていた触手の力が緩んだのだ。
ともすれば万有引力の法則により小さな体は落ちて、
ずりゅりゅりゅりゅっっ!
「ひきゃぁぁぁぁぁっっ!!?」
一息でネーアの生殖器を奥まで咥え込んでしまう。
(んはっ!? あぁっ! き、キツイっ! おまた、苦しいっ)
ただ、膣内が裂けたりした感触は無い。それが救いといえば救いか。
しかし腹の圧迫感はかつてない程凶悪なものだ。
ペニスを二、三本同時に突っ込まれているような気さえする。
パセットからは見えなかったが。
触手を咥えた陰唇は限界まで伸びきり、ピンク色の肉ビラも白んでいた。
アドニスに寄生、侵蝕されていなければ裂けていたかもしれない。
「はぁ…っ♪ 貴女のおマンコ、何度犯してもいい具合だわぁ♪
あたし、癖になっちゃうっ♪」
首元に顔を寄せてネーアが興奮気味に囁いた。
褒めてくれるのは嬉しいが、こちらには余り余裕が無い。
はっ、はっ、と短く呼吸を繰り返しながら膣を拡張する触手に耐えるしかない。
「なぁに? あたしの触手、気持ち良くないのぉ? ノリが悪いじゃないー」
ずるるるっ!
「んひゃぁっ!?」
奥まで突っ込まれた触手をずるずると引きずり出される。
(お腹の内側、まくれちゃうっ)
螺旋を描く二本触手が肉ヒダに絡み付く。
そして開発された肉壷は触手の凹凸に喰らい付くように締め上げ、離さない。
お陰で極太触手が引き抜かれると、未練がましく肉ビラまで捲くり上がるのだ。
「うふふ? どれどれぇ?」
ぴらり、と別の触手がスカートを捲り上げると結合部が丸出しになった。
「あは♪ パセットちゃんのおマンコすごいにゃぁ♪」
「ひゃぁ!? ばかっ、リオッちっ、見るなぁ…! ――ひゃうんっ…!」
触手が陰唇の肉ビラを引き出すシーンをばっちりと観察され、羞恥心で頭が茹った。
「ほうら…次は入っていくわぉ?」
ずりゅ、りゅ、りゅっ、りゅっ…!
「あっ!? ひゃっ! ひゃぁうっ!」
ごりごりと膣を拡張されながら触手をゆっくりと挿入される。
引きずり出されていた肉ビラが奥へと押し込まれ――ぶぴっ。
膣内で圧迫された空気が愛液と混じり結合部から噴出す。
「んっ…! ひゃっ、…あっ」
腹のアドニスのせいか圧迫感が徐々に薄れ、快楽を感じる余裕が生まれてきた。
(ドリル触手っ、膣にがりがり擦れてっ――んひゃっ!? これ、やばいっ)
極太触手に巻き付いた親指程の太さのおしべ触手が敏感な肉ヒダをがりがり削る。
急速に体が順応しつつある今、パセットは快楽しか感じなくなっていた。
「うふふ♪ 解れてきたわねぇ? そーれもう一度ぉ♪」
ずりりりりっ…!
「あっ!? ひゃっ! あっ、あっ、あっ! 駄目だめっ!」
ドリル触手に肉壁を耕されると、今度こそ激しい官能に体が戦慄いた。
口はだらしなく半開きになり、粘度の高い唾液が糸を垂らしてスカートの裾へと落ちる。
触手に引き出された肉のビラビラは白濁とした本気汁に塗れていた。
アドニスの催淫香に混じって、パセットのキツイ雌の匂いが辺りに漂い始める。
「はぁっ♪ はあっ♪ パセットちゃんっ…!
リオもっ、リオも、もう我慢出来にゃいにゃあぁっっ♪」
悪魔の少女はスカートのフロントスリットからアドニスの生殖器を露出させる。
その衝撃に軽いアクメを迎え、体をピクピクと痙攣させ、涎を垂らした。
「はあーっ♪ はあーっ♪」
かと思ったら徐に立ち上がり、ヘッドドレスごと両腕で頭を引っ掴まれた。
正面にはびくびくと脈打つアドニスの触手ペニス。
何をされるか馬鹿でも分かる。
じゅぽぉっ!
「んむぅぅぅっ!?」
半開きの口に容赦無く触手ペニスを突き込まれる。
ネーアのモノに比べれば少しマシだが、それでも並みの男性のモノに比べれば大分太い。
そんなものをいきなり喉の奥まで突き込まれたのだ。衝撃で顎が外れるかと思った。
「うにゃぁっ! パセットちゃんの口マンコっ! いいっ! いいにゃぁっ♪」
じゅっぷ! じゅっぷっ! じゅっぷっ!
「んんっ!? んむぅぉ!! んぐんっ!!」
問答無用のイマラチオが始まった。
理性がトンでしまった友人は情け容赦無く、本気でピストンを繰り出してくる。
喉の奥をがつがつと小突かれ、吐き気と共に喉が蠕動した。
「にゃうっ!? しまるっ! 喉、しまってっ! うにゃっ!
パセットちゃんっ、もっとっ! もっと口マンコしてぇ!!」
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷ! じゅぷ!
「んぐっ!? んむぅ! んんんんっっ!!」
苦しい。吐きそう。
フェラはこの三日間で経験済みだったが、これはそんな生易しいものじゃない。
苦痛は勿論の事、まるで物のように扱われている気がするのだ。
――どくんっ。
子宮が、急に疼いた。
(――いや、嘘っ、まさかパセットは、こんな滅茶苦茶にされて、コーフンしてるの?)
ネーアがマゾヒストと言っていたがあながち冗談では無いのか。
(ち、違うっ、パセットは、リオッちや皆に、楽になって欲しいだけっ)
だからこれは単なる奉仕なのだ。メイドらしく、主人に尽くしているだけ。
そう思ったらイマラチオの苦痛も多少は和らぐ。
(リオっち、もっと気持ちよくなって)
「んむっ! んぢゅっ! ぢゅるるるっ!」
「にゃっ!? パセットちゃ、――にゃうぅっ!?」
されるだけでなく、こちらから積極的に奉仕する。
唇を窄め、舌を添え、思い切り吸引する。
柔らかな咥内が突如性器のような締め付けを持った媚肉へと変わり、リオが嬌声を上げた。
「こし、ぬけちゃうっ! にゃぁ、ぁ、あぁっ!」
余程具合がいいのかご主人様は眉根をハの字に寄せ、涎を垂らした。
蕩けた雌の表情をしながらがつがつと獣のように腰を使う。
花開いた花弁の内側の肉ヒダがべちべちと顔を叩く。
興奮したリオが発する、淫魔とアドニスのフェロモンを吸い込み、頭が朦朧とした。
「うふふ♪ やっぱり。貴女ってマゾよね? 無茶苦茶にされた方が、興奮するのよね?」
(違う…パセットは、皆に喜んで欲しいだけ)
多分、その筈、だ。
「だったらもっと滅茶苦茶にしてあげないとねぇ♪」
じゅるじゅると音がした。
視界の端で見せびらかすように数本のおしべが揺れている。
それは互いに絡まりあうと、膣を犯している極太触手のように絡まり合う。
(え、それってっ)
目を見開いたパセットの前で四本のおしべは一本の極太触手となった。
「うふぅ♪ 前だけじゃ寂しいわよねぇ? だからぁケツ穴も埋めてあげるわぁ」
いやそれは流石にまずいだろう勘弁して、と抗議する事も出来ない。
ぐちり、と菊門に歪な形状の肉蛇が押し当てられ、
ずっ、ずっ…、ずっ、ずっ…!
「うむううぅぅっっ!?」
肛門から侵入する四本の触手に目を見開く。
(無理っ! ムリムリムリムリっ!)
アナルを押し広げる触手に流石に戦慄した。
慣れてきたとはいえ前だけでも相当キツイのだ。
それに加えて後ろにも追加ともなると体への負担は大きい。
(さけ、さけるぅっ!)
みりみりみり…っ。そんな音すら聞こえてくる気がする。
下腹部を襲う圧迫感と膨張感。口を塞がれ呼吸すらままならない。
(苦しいっ、死ぬっ)
「さあっ動くわよぉっ」
ずりりりっ! ずりりりっ!
「……っ!? っ! っ!!」
ところが。
尻穴の触手を前後されるといきなり快感が弾けた。
螺旋を描く触手の凸凹が腸壁を抉り、耕して、ピンク色の電気をばちばちと流す。
開発された体は腸壁からすぐにでも粘液を染み出させ、触手の動きを滑らかにした。
「あんっ…! うふふ…! やっぱりっ、パセットちゃんはドMなのねぇっ。
こんなに滅茶苦茶にされて、感じるなんてっ!」
(違う…! パセットは、普通の女の子だ…!)
だが、必死にネーアの言葉を否定しながらも頭の片隅でふと考える。
一番最初の性行為は半暴走状態のリオに犯された時だ。
ペニスを生やされ、散々焦らされた後に連続絶頂させられた。
精神にも少し異常をきたしてしまって――だがそれがとんでもない快感だったのだ。
今思えばその頃から自分はマゾとして目覚めていたのかもしれない。
(あ、やっぱり、パセット…変態さん?)
だからこんなに滅茶苦茶に犯されて――まるでレイプ紛いの行為にも感じている。
いくらアネモネと淫魔の二人掛かりでもこれはちょっと、おかしくないか?
ずりりりっ! ごつ…!
「……っ!!?」
前と後ろの触手を同時に引き抜き、即座に突き込まれて軽く達した。
体がびくびくと痙攣し、太い二本の触手を更に深く咥え込む。
(あはっ。いいや。もうなんでも。
どうせ今日はネーア様にも満足してもらうつもりだったし。
パセットは、マゾ。それでいいじゃん)
心が軽くなった。
おかしくなってしまったのだろうか。身を襲う苦痛も、何だか心地良く感じる。
じゅくり――子宮が酷く疼いていた。
「あっ!? 締め付けがっ、」
腹に力を入れてみるとネーアが大仰に声を上げた。
それを可愛いなと思いながらがつがつと咥内を犯す触手にそっと歯を立てる。
「みゃぁうっ!!?」
びくり、とリオが体を震わせ硬直した。
それをチャンスとばかりに、今度はこちらから責め立てる。
「んっ! じゅぅっ!! じゅるるっ!! んじゅっ! んむぅっ! んちゅっ!!」
「にゃぁうっ!? にゃぁぁんっ!」
口を窄め、強く吸引。咥内に擬似的な真空を作り出して顔を思い切り振る。
鼻先が花弁の内側にぶつかり、喉の奥を生殖器にがつがつと小突かれる。
苦しい。苦しい、が。
頭の上で親友が可愛らしい声を上げているのを聞くと、止められない。
「うふふっ。のってきたじゃないのっ! こっちも愉しませてよねっ」
ずりりっ! ずりりっ!
二穴に挿入された触手に責められ、愉悦に蕩けてしまう。
ヴァギナの触手とアナルの触手が交互に深いストロークを繰り出してくる。
太い触手が引かれる度に穴の内側の粘膜が一緒に引き出される。
(あはっ、内臓、引き出されちゃうっ)
不浄の穴の入り口も、内側のピンク色の粘膜が露出していた。
腸をこねくり回され、引きずり出されるような衝撃。
だが、それがいいのだ。
(もっと、もっとっ)
リオの腰の後ろに手を回し、体重を支える。
そうして肉の花に顔を押付けながら、パセットは自分から腰を動かした。
ずちゅっ! ずちゅっ! ずちゅっ!
「っ!? あぁっ! すごっ! いぃっ!」
腰を上下に運動させると、極太の触手を二つの穴を以って扱きたおす。
勿論負担も大きい。
ネーアの突き込みに対して腰を落とせば子宮口がしたたかに打ち付けられ、息が止まる。
子宮を突き破りそうな衝撃に意識が飛び掛ける。
だが触手詰めにされた下腹部は純粋な快楽しか感じていない。
螺旋状の凸凹が敏感な肉ヒダを掻き回せば、際限無く粘度の高い蜜を吐き出す。
(たまんないっ…! もっと、もっと欲しいっ…、滅茶苦茶に犯して欲しいっ)
性感帯となった子宮を小突かれる度に、そこがキュンと収斂し小さなアクメが起こる。
それが堪らない。
腰が、止まらない。
ずちゅっ! ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっずちゅずちゅずちゅっ!
「あっ!? あっ、あっ! いいっ! パセットちゃんのロリマンコっ!
さっきからっ――あぁんっ! きゅうきゅう締め付けてっ!
堪らないっ! いいっ! いいわっ!」
腰の動きが徐々にリズミカルになる。
自然と触手が子宮を打ち付ける回数も増え、小さな絶頂が細波のように何度も起こる。
じゅぷじゅぷと二つの結合部から卵白でも掻き混ぜたかのような音が響いていた。
股座はキツイ雌の臭いを発する本気汁でどろどろだ。
(いいっ、いいっ、もっともっともっとっ)
小さな絶頂を何度も続けたせいで、アソコと尻の感覚が蕩けていた。
二つの穴が繋がってしまったような気がする。
いや、それどころか触手と自分の体が徐々に溶け合うような錯覚すらしてしまう。
「ふにゃぁっ! パセットちゃん、パセットちゃんっ! もうっ、リオ出るっ!
びゅるびゅるっ、ってしゃせーしちゃうぅっ!!」
「あたしもっ、あたしも出すわよっ! このっ、エロメイドっ!
貴女のせいで、もう止まらないわっ! 中も外も、あたしのスペルマでっ!
はあっ! あぁんっ! いいっ! どろどろにっ! どろどろにしたげるっ!
貴女の体を精液詰めにしたげるっ!」
ぐちょぐちょぐちょぐちょっ!
二匹の魔物がペースを上げた。
再び始まったイマラチオ。そして極太触手二本による苛烈なストローク。
更に服の下の触手達までもがのた打ち回る。
多量の粘液があちこちで擦れ、潰れ、まるで泥でも掻き回すような音が響いた。
侍女の小さな体は玩具のように揺さぶられ――だがパセットは恍惚とした表情をしていた。
小さなアクメの波は今や巨大な波へと変貌しつつある。
蕩け、敏感になった体は触手が肌の上を這い回るだけで甘い愉悦を産み、快楽に戦慄く。
目の前に、大きなオーガズムが迫っているのが分かった。
――あ。イく。
「うにゃあぁぁぁぁぅっ!! もう出るでるでるでるにゃああぁぁっ!!
んにゃあぁぁぁっ!!! にゃっ! にゃあっ! いくっ、いくいくいくっ!
あにゃっ!? にゃっ! にゃあっ! にゃ、にゃ、にゃあっ!
んにゃああぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁあぁぁぁっっっ♪」
「ああんっ! 出るわぁっ! 触手ザーメンびゅるびゅるしちゃうっ!
ああっ! ああっ! あっ! あはぁっ! もうだめ限界っ!
いっくううぅぁぁぁああぁぁぁぁぁぁっっっ♪」
そして二人の魔物が達すると同時に。
服の下をまさぐっていた触手が、勃起した三つの頂に思い切り噛み付いた。
ぎちりっ…!
「んんむぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!!?」
食い千切らんばかりの刺激に、あっと言う間に絶頂の更にその上に打ち上げられる。
びゅるるるるるっ!
どぴゅどぴゅどぴゅどぴゅっ!
同時に咥内に、子宮に、直腸に。
メイド服の下に、白目を向いたアヘ顔に。
体の内と言わず外と言わず、熱いスペルマを大量に注がれた。
べちゃべちゃと体中を叩く熱い感触にパセットは歓喜した。
ガクガクガクガク…!
小さな体が危険な程痙攣する。
自分の被虐性を完全に解放したオーガズムは正に法悦だった。
壊れてしまうかと思うほど子宮が激しく収斂し、その余りの快楽に意識が飛んだ。
***
(あたしのアホぉぉぉっ!!!)
パセットへと大量射精し、賢者モードへと突入したネーアは自分を呪った。
「ぱ、パセットっ? 大丈夫っ? 死んで無いわよね!?」
口の中に触手を突っ込んだままのリオを無理矢理引き剥がす。
二穴に突っ込んでいた二本の極太触手も引き抜く。
げほぉっ、と大きくむせるとメイドの少女は口から大量の精液を吐き出した。
「あわわわっ」
その背中を擦ってやる。
ぶびゅるるるるるっ――
スカートの内側からまるでお漏らしでもしたかのように白濁液が零れ出した。
性器と尻に注いだ精が逆流したのである。
下手をするとリットル単位はありそうなスペルマが花冠の中央へと流れ落ちていく。
これらを下半身のアドニスが吸収し、魔力へと変換される。
結構出してすっきりしたと思ったのに、これでは元の木阿弥だった。
(ああそれよりもパセットちゃんよっ)
何て事をしてしまったんだろう。
初めてリオを犯した時から何も変わっていない。
魔物の本能に抗えずに、こんな可愛い少女をレイプしてしまった。
(…あー自己嫌悪で死にそう…)
昨日までに三回。いや、三夜か。
回数にすると八回以上。この娘と交わった。
アネモネへ変異する仕組みを話すと、種付けも喜んで引き受けてくれた。
マリオンも種付けされているのに自分だけされないのは不公平だと。
その言葉に甘んじ、自ら彼女の子宮へと種子を植え付けた。
ただそのままでは旅にも支障が出る。
アドニスは精が足りなければ宿主を発情させる。
そして十分な精を得る事が出来ればそれだけ成長する。
どちらにしても長い旅先には邪魔になる。
だからクイーンである自分がリオ、マリオン、パセットのアドニスを管理しているのだ。
発情を抑制し、成長速度を遅らせている。
具体的には、エッチの後リオに頼んで三人の魔力を自分とマリオンに分配するのだ。
三人の腹に宿るアドニスから魔力を吸収し、還元すれば成長しない――そういう事だ。
だがこれには欠点があった。
アネモネは種付けや射精。ガスの噴出で魔力を消費する。
エッチには魔力が必要なのだ。
しかし消費した分だけ魔力を取り戻すとなると――徐々に魔力が蓄えられていく事になる。
そして魔力が蓄積されれば、今のように暴走してしまうわけだ。
(…単なる言い訳ね…)
屋敷での一件で色々琴線に触れるものを経験したが、所詮自分は魔物である。
魔物は本能に逆らえない。
目の前に可愛い女の子が居れば犯したくなる。
それを少しくらいは我慢する事も出来るかもしれない。
だが忍耐の限界なんてすぐに訪れる。さっきがそうだった。
「…情け無い…」
親御さんからリオを任されたというのにこの体たらくは一体何だ。
(…そもそも皆、あたしに期待しすぎなのよ)
なんだか良く持ち上げられる気がするが、自分はそんなに強い人間ではないのだ。
むしろ弱い。
だから欲望に負けて、パセットをぼろぼろになるまで陵辱してしまった。
「はあ…」
「…ん…にゃぁ…? ネーア、さん…?」
花弁の上でぼんやりとしていたリオが正気を取り戻した。
「どうか、したんですか?」
「いや、どうしたもこうしたもないわよ。あたし、調子に乗りすぎよ」
はあ、と再び溜息一つ。
「…さっきのは、やっぱりその…」
「暴走してたのよ。貴女が屋敷でプッツンしてたのと似たようなものだわ」
「うにゃぁ…」
人の心を持った魔物同士、悩みの種は同じだった。
リオは苦虫を噛み潰したような表情でこちらの話を聞いてくれていた。
「そっか…ネーアさんやクロトさんに魔力を返すだけじゃ、何の解決にもならないんですね」
「そう。むしろ凶暴になるわよ。現に――」
「あっ!? ちょっと、待っ、あっ!? やだっ! それっ、感じすぎてっ!」
「いいじゃないですかぁっ、マリオン様も、どんどん感じて下さいよぉ!
私もぉ、いっぱい気持ちよくなりますからぁ!」
「いやっ! やあぁっ! 変になるぅっ! 狂うっ! 死ぬぅっ!」
「はあっ! はあっ! マリオン様のオマンコもケツマンコもっ! んっ!
ああぁぁっ!? いいですぅっ! 名器ですぅ! ずっとハメハメしていたいですぅ!」
「駄目ぇっ! ずっとは駄目ぇっ!」
「ああんっ! イきますっ! 射精しますっ!
マリオン様の子宮に、びゅるびゅる出しますっ!
あははっ♪ 溜まってるんですよぉ! 全部っ、全部吐き出しますよぉっ!
すっきり、しますよぉ!」
「…………うわぁ…」
触手に絡め取られながら二穴責めを受けるマリオンに妹が哀れみの声を漏らした。
「ね? ――あぁ、マリオンも大変そうね。大丈夫かしら?」
他人事のように呟いてから再び溜息。
やっぱり、楽観的だったのだろうか。
アネモネと悪魔と人間。
これらが旅をしながら上手くやっていくなど無理だったのだろうか。
「あたし、何だか自身無くなってきたわ…」
勿論一人で旅をする方が楽、という訳ではない。
だが、こうやって誰かに多大な迷惑を掛けるくらいならもう一度一人になった方が……
「だ、大丈夫ですよ…!」
「…慰めてくれるのはいいけど…具体的にはどうするのよ?」
「えー、ええとですね? あー、えーと…例えば……ちゃんとガス抜きをすれば…」
溜まった分だけ出せ、という事だ。
今みたいに暴走する前に。
「それじゃ一日中エッチする事になるわよ?」
「そ、そんなに溜まってるんですか?」
「そうよ! っていうか溜まってるのは『種子』なの!
汁を出すだけじゃもう駄目なの!!
種付けしたいのぉぉぉぉっっっ!!!」
ところがこのメンツは全員種付け済み。
新たに種を植え付ける為には一度アドニスを産ませた後にもう一度種付けするか――
「こ、こうなったら道すがらの女の子を襲ってっ、」
「そ、それは駄目です…っ!」
「うふふっ、いいじゃない! こっちの方が魔物らしいしっ!
っていうかあたしもう駄目になっちゃうのよぉ!
種付けしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
「女の子はどこですかぁああぁぁぁぁっっ!!」
ネーアの欲望の叫びに呼応するようにクロトも吼えた。
「…、こ、困った時は…空を、見ろ…」
と、懐から死に際のようなか細い声。
「パセット!? 貴女、大丈夫なのっ?」
「げほっ――は、はい、何とか。天国から無事帰還しましたです」
文字通り死にかけたという事か。笑えないジョークだった。
「ごめんなさいっ。あたし、無茶苦茶にしちゃってっ」
「…いえいえ。ネーア様の為を思えばこそした事でございますゆえ」
「……う…っ」
(何て良い子なのっ)
リオも優しくて思い遣りのある子だと思っていたが。
それはひょっとしたらこの子のお陰だったのかもしれない。
そんな子に自分は酷い事をしてしまった。
マゾだのなんだの勝手な事を言って。
挙句こんなボロボロになるまで陵辱して。
本当に自分が情けない。
(でも。自分でも性欲が抑えられないの!)
「ねえ、パセットちゃん、やっぱり貴女、ここに居ちゃ、」
「ストーーーーップ!!」
「え? な、何?」
「リオッちどころかまさかネーア様からその言葉を聞くとは思っていなかったじぇい」
「でもでもっ。こんな事続けてたら貴女の体が持たないわよ!?
リオが一回暴走する間にあたし十回くらい暴走しちゃうわっ」
こんな可愛い女の子が常に傍に居るのだ。
馬の鼻先に人参を吊り下げるようなものである。ちょっと違うか。
だが誰かの子宮にアドニスの種子を植え付けない限り性欲が収まる事はない。
永遠と女の子達を犯してしまう。
それではやっぱり旅どころではないのだ。
ところがパセットはくくく、と意味ありげに笑うと高らかに宣言するのだった!
「当方に現状の打開策あり!」
全身精液まみれで!
「な、なんですって!?」
「パセットちゃん、本当!?」
「モチのロンでございます。クロト様やマリオン様にもお話をしようと思うのですが…」
「はぁぁっ♪ マリオン様ぁっ♪ マリオン様ぁ♪
あははぁ♪ ケツ穴、いいですよぉ♪ オマンコよりもケツマンコの方がいいですぅ♪
さあ、あと何回しましょうかぁ? 何回でもしましょうか♪ あはは、うふふふっ♪」
「…もう、許し――ああぁぁぁぁっっ!?」
ずんずんぱんぱん♪
「…まだまだ続きそうでございますね…」
「うにゃぁ…姉様気持ち良さそう…」
「止めようと思えば止められるけど?」
「いえいえ。クロト様も取り敢えずはすっきりさせてあげましょう」
「でもまだまだ時間が掛かるわよ?」
問い掛けて――ふと気付く。
メイド少女の表情が再び蕩け、こちらに熱い視線を送っているのだ。
実に当たり前の事なのだがパセットは現在、体の外も中もアドニスの精液でどろどろだ。
ちなみにこれの催淫効果が非常に高いのは周知の事実な訳で。
「実は、まだパセットはヤリ足りません。
ええ。マゾですから。この程度では到底――満足できねぇ!」
「あっ!?」
花弁の上で漂っているおしべ触手を二本、右手と左手で一本ずつ引っ掴まれる。
「ちょ、何をっ」
「ぱくんっ♪」
「きゃっ!?」
更に一本、おしべ触手を咥えられて可愛い悲鳴を上げてしまう。
「くくくくっ…! ネーア様、実に愛らしいお声でございます…!
さっきまでの威勢はどうされました?
先程はあれほど激しく、深く愛してくれたではあーりませんかっ!!」
しゅっ! しゅっ! しゅっ!
「あっ! いやっ! 出したばっかりで、敏感なのにっ!」
二本のおしべ触手を手コキされて無様に感じてしまう。
「パセットは…っ、パセットも我慢出来ないのですっ!
お腹のアドニスがじくじく疼いてっ、頭の中がエロイ事しか考えられないのです!
ネーア様のせいですっ!
ネーア様のせいで、パセットはマゾのど変態になってしまったのです!
責任とって下さいっ! もっと滅茶苦茶に犯して下さいっ!
じゃないと、パセットが、ネーア様の事を、くくくくっ…!」
パセットM属性開眼。
さっきの陵辱紛いの性交が余程気に入ったらしい。
誘い受けの境地を目指すようだった。
「あの…ネーアさん? パセットちゃんもこんなだし…」
「え、ええ、そうね…あっ!? そこっ、気持ちいいっ…!」
というかMな人はSにもなりうるらしいし機嫌を損ねると怖いかもしれない。
仕方なしに――いやいや、これは役得だ。
リオと二人で協力してMメイドを犯したのだった。
はい。という訳で前半戦終了。
続きを新スレに投下してきます。
パセットちゃんのターンキター!
もっとえろえろしてください。
GJ!!!
まさかこのスレでACLRネタをみることになるとはwww
色んなネタ盛り込みすぎですwww
こんなんじゃぁ…満足した!
パセットかわいいよパセット
あと20kB
おや?パセットちゃんの様子が…?
テロレロ
テンテンテンテンテンテンテン デーン
テンテンテンテンテンテンテン デーン
チャーラーラー チャララレレララー♪