立場だけの交換・変化

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1名無しさん@ピンキー
いわゆる人格が入れ替わる「入れ替え」や性別が変化するTSではなく、
「肉体や人格はそのまま、突然別の立場に変化する」系統の小説や雑談などをするスレです

たとえば成人会社員と女子小学生の立場が交換されたり、
AV女優と女子高生の立場が交換されたり、
ペットと飼い主の立場が交換されたりと、
周囲は立場の交換に気づいていたりいなかったり
交換や変化の内容はさまざまです
2たとえばこんなの:2010/03/19(金) 01:02:44 ID:cRP/ErDt
「おーい、小島ー! 早く部活いこうぜー!」
「う、うん。ちょっと待って」
なんでこんなことになったのだろう。
横川由香里。23歳。短大卒業のOL3年生……だったのは先週まで。
名前も体もそのままなのに――いや、苗字は小島になったんだっけ――
とにかく、いまの私は中学校に通う男子中学生『小島由香里』ということになっている。
男子中学生なのに『由香里』というのもヘンな話だけど、
クラスメイトも両親(といっても、本当のではないけど)も
まったく違和感を覚えていないというのも不思議な話だ。
誰に聞いても、生まれたときからずっと
自分は『小島由香里』として育ってきたことになっているのだ。
そして今は着慣れない学ランを着て、
やはり数日前まで顔も名前も知らなかった「親友」の高橋くんと一緒に
部活へ向かおうとしている。
たぶん今頃、数日前まで男子中学生だった小島昭義――彼もいまや『横川昭義』と名を変えているはずだが――
も、OLとして慣れない生活を強いられているはず。
男子中学生がお化粧して、紺色のベストとタイトスカートを着て、
黒いストッキングにパンプスでコピーやお茶汲み、
郵便局へのお使いや資料整理などをしている姿を想像するとほほえましく思うけど、
きっと彼にとっても笑い事じゃないはず。
3たとえばこんなの:2010/03/19(金) 01:03:26 ID:cRP/ErDt
高橋くんと「クラスの○○がかわいい」とか「今週のジャンプがどうの」とか
男子中学生らしい他愛のない話をしながら廊下を歩き続けると、
大した時間もかからずに部室へとたどり着いてしまった。

水泳部

立派な屋内プールの横にある小さなクラブハウスのドアの横に
堂々とした文字でそう書いてある。
「さっさと着替えちまおうぜ」
「う、うん」
「なーんか最近元気ないなぁ? AVでも貸してやろうか?」
高橋くんの無駄な気遣いが逆に悲しい。
ため息ついていても躊躇していても仕方ないので、
半ば諦めながら水着へと着替え始める。
靴下を、ズボンを、そしてトランクスを脱ぎ捨て、
女性用水着の下とは異なるフィット感に戸惑いつつもサポーターと競泳パンツを履く。
ここまではいい。
ここまでは百歩譲って女性用水着と同じ。
でも、ここからは違う。
ここからは「男子の領域」なのだ。
周りは一切自分の着替えを気にすることはないにもかかわらず、
なんだか嘗め回されるように視姦されているような気がして、
学ランのボタンをはずす指先ががくがく震える。
「なにやってんだよー、部長とかもうカンカンだぞ!」
「あ、え、うん。ボーっとしてた」
せかされながら、無骨な学ランのボタンを1つずつはずしてロッカーにかける。
続いて、ゴワゴワしたワイシャツを脱いで同じくハンガーへ。
そして可愛さの欠片もないTシャツを脱ぎ捨てると、
鏡に映る私は、格好だけはどこからどうみても男子水泳部員だった。
しかし、OLのときは自慢だった形のいいDカップのバストだけが、
場違いのようにぷるんと揺れているのが、
逆になんともいえないエロチシズムをかもし出している。
4たとえばこんなの:2010/03/19(金) 01:03:56 ID:cRP/ErDt
あわててプールサイドへと駆けつけると、
すでに他の部員は柔軟体操などのウォーミングアップをはじめていた。
「すいません、遅れてしまいました」
「小島!高橋!遅いぞ! 罰として腕立て100回!」
遅刻した私たちに体育会系独特の罰を申し付ける部長と、
それを見てクスクス笑う部員たち。
どうも私たちは遅刻の常連として部内では有名らしく、
「また罰を受けている」ぐらいに受け止められているようだ。
言いつけどおりに罰の腕立てをしていると、
同じく罰を受けている高橋くんが小さな声でささやいてくる。
「見ろよ、斉藤の胸。でけーよなー」
ウォーミングアップを終えていよいよプールに入ろうとしている女子部員をあごで示す高橋くん。
確かに中学生としては大きな胸だけれども、
横で一緒に腕立てをしている私だって、
グラビアアイドル顔負けのスタイルを誇っている。
なのに私なんか目もくれず、目の前の乳だけでかいような小娘に注目するなんて。
とてもくやしいけれども、男子中学生が男子中学生のスタイルを気にするはずもない。
当然といえば当然なのかも。
「まーた小島と高橋がいやらしい目で見てるわよ」
「本当、あいつらはホントスケベなんだから」
そんなことない! と反論したいけれども、
彼女たちにとって私は「スケベな男子中学生」なのだろう。
絶望とくやしさがまぜこぜになった感情のまま、
私は高橋くんとともに、さらに100本追加された腕立て伏せをこなすのだった。
5名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 03:08:01 ID:VDC9AJrw
 
6名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 00:12:50 ID:28ZuyJPg
 
7名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 19:10:50 ID:8rWEuVKL

8名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 09:38:57 ID:uYiZw6Lr
どういう「立場の交換」が需要あるんだろうか
9名無しさん@ピンキー:2010/04/01(木) 01:32:22 ID:ftSty1hr
「今日からお前が兄になって、俺が妹になることになったから」
「え?本当!?」
小学生の妹についた、エイプリルフールの他愛のない嘘。
そのはずだった。

まさか、両親もノリノリで、本当に俺が妹にさせられるとは。
家族内での力関係だけでなく、
名前も、部屋も、洋服も、髪型も、なにもかも交換。入れ替わり。
4月から俺が通うはずだった高校も妹・・・・・・いや、今は兄が行くことに。
ぬいぐるみやらファンシーグッズに囲まれた部屋の真ん中で、
俺は妹のお気に入りだった薄いピンクのワンピースに身を包み、
軽率な「嘘」を後悔しながらため息をついた。
いまや自分のものになった赤いランドセル。
新学期からはこれを背負って小学校に行かなくてはいけないなんて。
希望に満ち溢れている季節のはずなのに、これからいったいどうなってしまうのか。
10名無しさん@ピンキー:2010/04/01(木) 18:01:15 ID:ZPg9sNdl
なかなかいい
11名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 00:00:47 ID:yfO9nk6v
エイプリルフールも終わり、「俺と妹の立場を交換」というのも終わり・・・・・・
かと思ったら、昨日限りの嘘でも冗談でもなく、本気の本当。
今後はずっと俺が妹の由希として生活しなくてはいけないらしい。
「4月1日付けの辞令が全部嘘ってわけじゃない」
とかなんとか言われても、こればっかりは納得できない。
しかし、わめいてもさけんでも、「立場の交換」は絶対。

風呂上り、洗濯籠に用意したかわいらしい女児用パジャマや
色気というには程遠い女児用下着を見て、また深くため息をつく。
最初はトランクスとTシャツ、ジャージを用意したのに、
家族に猛烈に怒られて着替えを変えられてしまった。
仕方なく、「こんなので下半身が包めるのか?」と思うような下着を身に着ける。
最初は手のひらに収まるほど小さかった布は、驚くほど伸びて俺の下半身を包みこんだ。
トランクスやブリーフと違う、独特の感触が俺のモノを撫で、
ピクピクと意に反して軽く勃ってしまった。
へそ部分に小さなリボンのついた女児用下着に浮かび上がる男のシンボル。
なんとも情けなく、かつ変態的な情景。
そんな情景を早く消し去ろうと、自分には少し小さいパジャマを急いで着込むのだった。
12名無しさん@ピンキー:2010/04/08(木) 23:36:53 ID:plDKcnnj
13名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 02:26:32 ID:arz7oHpO
とても狭い範囲だから伸びるか微妙なスレだが大好きなシチュエーションだからガンバッテ欲しい
14名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 21:13:51 ID:RkBblcZo
>>13
自分も大好きなんだけど、伸びるの難しそうだなぁ
15名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 22:39:00 ID:FB6B8nAn
俺も大好きだ
16名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 02:55:25 ID:hpm1mhPc
>>11の続き
しかし、赤い水玉の柔らかなパジャマに袖を通すと、
余計みじめさが引き立ってしまった。
7分袖とかそういうレベルではないほど足りないパジャマの丈は、
「無理やり着てみました」という感じにしか見えない。
なんか芸人がコントで子供役をしているような、そんな感じ。
5歳も離れている妹の服を着ようというのが、そもそも間違いなのだろう。

「はやく着替えて、洗い物手伝って!」
キッチンから母の叫ぶ声が聞こえる。
洗い物を手伝うのは妹の役目。
つまり、いまの俺の役目ということになる。
いくら嫌がっても、手伝わないと間違いなく叱られてしまう。
深いため息をつきながらキッチンに向かうと、
リビングからテレビを見ながら笑っている妹の声が聞こえてくる。それは、昨日までの自分の姿。
腹立たしくもあるが、ある意味自業自得でもあるのだろう。
「あら、ずいぶんパジャマも小さくなっちゃったわね。
 明日買いに行きましょうか」
洗い終わった食器を拭きながら、にこにこと母が話しかける。
それに対して、俺はうなずくしかできなかった。
17名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 02:56:12 ID:hpm1mhPc
翌日、俺は有無を言わさず妹が好きだった水色のスカートに
フリルのついた白いブラウス、そして薄手のカーディガンを着せられ
郊外にあるデパートへと連れて行かされた。
つんつるてんの洋服を着た、大柄の少女はものめずらしいのか、
みんな横目で眺めていく。
こっちを見るな。俺だって好きでやってるわけじゃない。
だけどデパートですらこれだけ好奇の目にさらされるのだから、
電車なんか乗ったらそれこそ大変だったに違いない。
そこだけは、自家用車で出かけることにした母に感謝すべきだったのかもしれない。

そしてデパートでは、次から次へと自分のために衣類が購入されていく。
ブラウス、スカート、ワンピース、パンツ・・・・・・。
どれもこれも最近の女の子にしてはちょっと「少女趣味」すぎる
かわいらしいものばかり。
それのどれもが「自分にちょうどいい大きさ」なのが、
またなんとも泣けてくる。
その中の1つ――まるで昔のヨーロッパの少女が着ているような
リボンに飾られた細かい花柄のワンピースは、
まさに妹がよそ行きに着ていく「とっておきのワンピース」そっくりで、
これに身を包むと本当に自分が妹になってしまったかのような
錯覚に陥ってしまう。
「さ、次は伸びた髪の毛を切っていきましょうね」
続いて無理やり美容室へと連れ込まれ、
母の注文どおり短いながらも小学生の女の子らしい髪型へと整えられてしまった。
「はい、できましたよ」とにこやかに笑う美容師の横には髪の毛こそ短いが、
恥ずかしそうに少しうつむいている「妹」が映っていた。
18名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 03:01:09 ID:hpm1mhPc
>>13-15
同好の人はいたんですね、よかった

この手の創作やってるのは強制女装系の年齢退行モノかFT-TYPE2ぐらいなので
もっともっと盛んにならないかなぁと思っていたりします

会社員←→小学生とかいいよなぁ、本当
19名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 04:28:16 ID:yO2xan7z
萌えるジャンルかもしれない
20名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 19:00:29 ID:o/0gJccp
続きまだかなぁ

花嫁←→花嫁の父の立場交換モノってのを思いついたけど、
普通のガチホモになりそうだ
21名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 02:59:30 ID:D/tRUwPQ
>>17の続き
髪型を整えたあとは、不思議と注目されないでデパートの中を歩くことができた。
たぶん、トータルで「女の子らしく」なったため、
違和感が少なくなったってことなんだろう。
ヘンに注目されなくなったぶんだけ気分が楽になったけど、
また一歩「妹」に近づいた気がしてなんとなく恐ろしくなってきた。
本当にこのまま一生「妹」として生きていかなきゃいけないのかな。
「美奈子、で、どれが欲しいって言ってたっけ?」
などと考え事をしながら歩いていると、
ファンシーショップの店頭で母が足を止めていた。
美奈子――妹の名前、つまり、今の俺の名前――と呼ばれるのに慣れていない俺は、
ついその呼びかけに気がつかず通り過ぎそうになっていた。
「え、ん? 別になにも欲しくないけど……」
心からの、素直な意見。遠慮でも、なんでもなく。
そもそも欲しがってたのは本当の妹のほうなのだから。
「今日は特別。遠慮しなくていいから。
 ……えーと、これだっけ?」
やけに楽しそうな母はずらりと並ぶぬいぐるみの棚を眺め、
その中でもかなり大きい部類に入る白いうさぎのぬいぐるみを指差した。
確か、妹が大好きだったキャラクター。
本当の妹ならば飛び上がって喜んだはずだけど、
無理やり「妹」にされた俺がぬいぐるみを買ってもらったところで
うれしいはずがない。
「もう、照れちゃって、この子は」
なんて言いながら、母は店員にぬいぐるみを買うことを告げ、
レジでお金を払ってしまった。
こうして、全然欲しくないぬいぐるみは、晴れて俺のモノとなった。
ラッピングもされないで渡されたそれは俺にとっても大きなもので、
しっかり抱きしめていないと落としそうなほどだった。
ふかふかで、抱き心地のいいうさぎのぬいぐるみは、
逆に自分が抱きしめられているような錯覚を起こしてしまう。
帰りの自動車ではぎゅっと抱きしめたまま、
居眠りをしてしまったのはちょっと失敗だったかもしれない。
22名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 03:00:17 ID:D/tRUwPQ
家に帰ると、ソファーでは見慣れない少年が携帯ゲームで遊んでいた。
「いい年してぬいぐるみだなんて、ミナは本当にお子様だな」
まるで俺が妹をからかうときのような、言葉遣い。
その声で、見慣れない少年が妹なんだとはじめて気がついた。
背中ぐらいまであった長い髪はバッサリ切られ、
ちょっとツンツンした感じの男子高校生っぽい髪型に。
そしてデニム地のシャツにジーパンと、
女の子っぽい服装が大好きだった妹と正反対の格好に、
俺は驚きを隠しきれなかった。
「あら、お兄ちゃんも床屋行ってきたのね」
「さっぱりしたろ?」
「うん、高校生らしくってかっこいいわよ」
そんな母と妹のやりとりを見てると、
本当にあいつが最初から「兄」だったのではないかと思えてきてしまう。
「そうそう、さっき制服が届いたよ」
「あら、じゃあちょっと着て見せてよ」
うれしそうに微笑む母親に返事をして、妹は二階に向かった。
数分後、濃紺のブレザーにスラックスを身に着けて戻ってきた妹は、
まだ制服に着られている感じのする「新高校生」そのもので、
希望と自信に満ち溢れていた。
その姿がまぶしすぎて直視できない俺は、
ぬいぐるみに顔をうずめることしかできなかった。
「そうだ、せっかくだから記念写真とりましょうか。
 さ、美奈子も一緒に並んで」
母に促されるまま、妹と2人デジカメの前に立つ。
頭ひとつぶん背の高い俺がワンピースで着飾り、
まだ顔つきに幼さの残る妹が高校の制服で身を固める。
本来ならありえない組み合わせ。
あべこべの服装。
その状況がしっかりと写真に残されてしまった。
何枚も、何枚も。
続いてファッションショーのように、
ワンピースを着た俺の撮影に移る母親。
新しい服を買ったときの母と妹の儀式で、
まさかその儀式に付き合わされることになるとは夢にも思わなかった。
繰り返し、繰り返し何度も何度も座ったり、立ったり。
笑顔でポーズをつけたりするたび、
少しずつ「妹」経験値が上がっている感じがしてしまう。
そのうちレベルアップして本当の妹になってしまうのではないか。
そんな恐ろしい考えが頭の片隅によぎってしまった。
23名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 03:01:11 ID:D/tRUwPQ
ようやくミニ撮影会から開放された俺は精根尽き果て、
今すぐベッドに倒れこみたい気持ちでいっぱいになっていた。
そして二階にある自分の部屋に戻ろうとドアを開けると、
扉の向こうは見慣れた部屋ではなかった。
「おいミナ!勝手にドア開けるなよ!」
ベッドに転がりながら、マンガを読んでた妹に怒鳴りつけられ、
そこがついこの間まで自分のものであった部屋だと気がついた。
使い慣れた机。壁にかかった制服。マンガが並んだ本棚。
グラビアアイドルのポスター。
薄い青っぽい壁紙。窓から見える景色。
部屋の中にあるものはすべて、前と同じ。
しかし、配置が違う。全然違う。
驚きのあまり、抱きかかえていたぬいぐるみを落としてしまうほど。
「あ、え? 部屋の中……」
「ああ、模様替えしたんだよ」
あわてる俺に、さらりと返事する妹。
つまり完全に「自分の部屋」化するため、
内装を大きく変えたと、そういうことなんだろう。
さっさと出てけと怒る妹から、
そしてもはや自分のテリトリーではなくなった部屋から逃げるように、
俺はぬいぐるみとともに「自分の部屋」に飛び込んだ。
まだ慣れない、妹のにおいに満ちた女の子の部屋。
しかし、ここだけが「自分の部屋」なんだと思い知らされた。
15年間の人生が一瞬にして巻き戻り、自分と妹の立場が逆転してしまう。
数日前なら「ありえない」と笑えることも、今となっては、もう。
俺は買ってもらったぬいぐるみに顔をうずめ、少し泣いた。
24名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 03:02:04 ID:D/tRUwPQ
>>20
>花嫁←→花嫁の父の立場交換モノ
それは萌えるけど、いろいろ難しそうだなぁ
25名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 03:05:00 ID:D/tRUwPQ
しかし、どんな交換モノが需要あるんだろうか
気になるところだ

兄←→妹(兄視点)で安易にはじめちゃったけど
26名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 22:33:06 ID:cSjK0hmJ
イイヨイイヨー
こういうのが読みたかった!!!
高校球児⇔女子小学生とか、肉体にギャップのある交換に萌える
>>4の続きも読みたい
27名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 23:34:08 ID:7+BgSU1w
ファンタジーになるが
お嬢様⇔女奴隷 とかね
28名無しさん@ピンキー:2010/04/16(金) 20:59:09 ID:YNYurg5K
>>23

「美奈子ー電話よー」
泣きながらいつのまにか寝てしまったらしく、母が軽く揺するようにして起こしにきた。
受話器を受け取りながら、「美奈子」と呼ばれて反応していた自分に気がつく。
こうやって少しずつ慣れていくのだろうか。怖い。
「はい、もしもし?」
「ミナちゃん? わたし、優子」
電話の向こうは、確か妹の親友の優子ちゃん。苗字はなんだったか。
「あ、うん。久しぶり……」
恐る恐る、バレないように、受け答えをしようとするけど
「久しぶりー……って、お兄さんでしょ、ホントは」
どきり! 心臓が止まりそうになる。
「ミナちゃんから……ええと、今はお兄さんだっけ?
 なんか名前とか全部交換したって聞いてるよ」
ばれてる。知れ渡ってる。
妹は友人にも俺と自分の立場交換を伝えているらしい。
どんどん逃げ場をふさがれていく、そんな恐怖感。
「あ、安心して。あたしはミナちゃんの味方だからさ」
「う、うん……」
「で、一度「新ミナちゃん」に会って遊びたいんだけど、
 明日、大丈夫かな?」
「うん……」
本当は断りたいけれども、どうにも断れない雰囲気。
胃が痛い。
「じゃあ、明日、駅前のタキオンでね」
優子ちゃんは言いたいことを言うと、一方的に電話を切ってしまった。
これで明日、タキオンに出かけなくちゃいけなくなった。
女の子の格好をして、外に出る。
考えるだけで、恥ずかしくて顔が熱くなり、
またぬいぐるみに顔をうずめてしまう。
29名無しさん@ピンキー:2010/04/16(金) 21:00:35 ID:YNYurg5K
>>26
肉体ギャップがあると萌えますよねー

>>27
描き方を注意しないと「お嬢様転落モノ」になってしまうので難しそうです
でも、そういうシチュも大好物です
30名無しさん@ピンキー:2010/04/17(土) 20:31:45 ID:NqKpcKal
>>28の続き

憂鬱な夜が明け、新しい朝がやってきた。
今日は優子ちゃんとタキオンへ行くことになっている。
またも女の子の格好で外に出かけなくちゃいけないのは、
本当に顔から火が出るほど恥ずかしい。
いったいいつまでこんなことを続けなくちゃいけないのか。
「ミナー、友達から電話だぞ」
朝起きてソファーでテレビを見ていると、同じく一緒にテレビを見ていた妹が電話の子機を投げてよこす。
電話の向こうは優子ちゃん。
待ち合わせ時間を決めてなかったのを思い出したらしい。
お昼を食べた後の1時に待ち合わせ。
本当は断ろうと思ったけれども押し切られてしまった。
しかし、自分の親友から電話がかかってきたのに、
なんの会話もせずに俺に投げてよこすとは。
もはや優子ちゃんは自分の親友ではなく俺の友達、そういう認識なのだろう。
31名無しさん@ピンキー:2010/04/17(土) 20:32:26 ID:NqKpcKal
お昼を食べて、気の重い外出。
最初はどれを着ればいいのか悩んだけれども、
母からキラキラ輝くキャラクターとロゴがプリントされたTシャツと、薄いピンク色のパーカー。
そして3段になったフリフリのスカートと、
星がたくさんちりばめられたひざ上まである靴下を押し付けられた。
服のサイズこそ違うが、妹が普段着ていたものとまったく同じ。
やはり薄いピンク色したスニーカーを履くと、
格好だけは数日前の妹と寸分違わない状態になった。
「いってきます」と玄関のノブに手をかけようとしたそのとき、
手が固まって動かなくなる。
家族と一緒じゃないのに、外に出たらどうなるのだろう。
笑われるんじゃないか。ヘンタイと指をさされるのじゃないか。
いろんな心配が胸の中に渦巻いて、次の行動ができない。
「なにやってるの、待ち合わせに遅れるわよ!」
最後は母に追い出されるようにして出かけることになった。

最近は暖かくなったり寒くなったり忙しい天気だけれども、
今日は日差しが暖かいぽかぽかした陽気。
普段ならば気持ちよく散歩できそうな気温なのに、俺の足取りはとても重い。
「あら、美奈子……ちゃん? お出かけ?」
近所のおばさんが声をかけてくる。恥ずかしい。死にたい。
「美奈子」と「ちゃん」の間にちょっとした空白があったのは、
ほぼ見た目が妹なのに大きい俺を見て本当に妹なのかどうか
判断に困ったからだろう。
「……こんにちは」
軽く会釈をして、通り過ぎる俺。
途中、何人か近所の人に挨拶されたけれども、
誰一人として俺を「俺」として認識してくれる人はいなかった。
ほとんどが「美奈子ちゃん、大きくなったわね」とか、
「かわいい格好でどこかお出かけ?」とか、
「うちの娘と同じクラスになったらよろしくね」とか、完全に妹扱い。
もし俺の格好をした妹が通りがかったら、
あの人たちは妹を「俺」扱いするのだろうか。
32名無しさん@ピンキー:2010/04/18(日) 23:43:06 ID:alnXXIvt
続きイイヨイイヨー
周りの人も気づかない交換だと思ってたら
実は皆知ってた・・・的展開ですか!
羞恥も混じった複雑な妹の今後が気になるw
33名無しさん@ピンキー:2010/04/21(水) 00:30:20 ID:mFLaBk00
>>31の続き
いつものバス停でいつものようにバスを待つ。
程なくしてバスがやってきたので、ポーチの中から財布を出して料金を払う。210円。
いつもと違うのは、取り出したのが俺が愛用している茶色い革の財布ではなく、
妹が大好きなうさぎのキャラクターがプリントされた、
ピンク色のかわいらしい小銭入れ。
財布はいつもポケットの中に入れていた身としては、
いちいちポーチから出し入れしなくちゃいけないのが面倒くさい。
料金を支払って席に座ろうとすると、運転手さんが声をかけてきた。
どきり!
心臓が止まりそうになる。
恐る恐る振り返ると
「お嬢ちゃん、小学生? だったら料金多いよ」
運転手さんがわざわざ110円を返してくれた。
最初はなんか得した気分になったけれども、すぐにあることに気がついてしまう。
つまり、今の自分は「小学生の女の子にしか見えない」ってことの裏返しだと言うことに。
確かに身長的には大きなほうじゃないけれども、
それでも小学生に間違えられるほど小さくはないはず。
やっぱり、この格好が、見た目が小学生の女の子みたいだと、
世間はそのとおりに扱うようになるのだろうか。
きっとそうなのだろう。
そんなことを考えながら、バスに揺られて駅を目指した。
34名無しさん@ピンキー:2010/04/21(水) 00:31:14 ID:mFLaBk00
待ち合わせ場所のタキオン前には、まだ優子ちゃんの姿はなかった。
と、言っても、優子ちゃん自体は何回も見たことあるわけじゃなく、
誰が優子ちゃんかどうかすぐにわからないのだけど。
独り、待ち続ける。5分、10分、15分。
時折通り過ぎる人がちらちらとこちらを見ているような気がして、
穴に入って隠れたいぐらい恥ずかしい。
とくに、妹と同じぐらいの年齢の女の子が、自分を見ていくような感じで
きっとあの子たちも内心「男がこんな格好してキモい」とか思っているのだろう。
早く立ち去りたい。帰りたい。
涙さえ浮かびそうになったそのとき、
「ミナちゃん、おまたせ!」
ショートカットが似合うボーイッシュな女の子が声をかけてきた。
その後ろには、三つ編みにメガネ、キツい目つきと、
小学生のとき委員長とかを進んでやりたがったような子が立っている。
「あ、あの」
「遅くなってゴメンね、バスが遅れちゃった」
「久しぶり、美奈子」
まるで本当の美奈子に会ったときのように挨拶してくる2人。
突然ショートカットの子がふっと顔を寄せてくる。
小学生とはいえ、妹でもない女の子の顔がこんなに近くにあるなんて、
本当にドキドキする。
「本当にお兄さん? 身長以外ミナといっしょじゃん」
電話口で聞いたあの声が、耳元でささやく。
どきり!
先ほどのドキドキとは違う鼓動が心臓を支配する。
「優子から聞いてたけど、本当とはね」
委員長ぽい女の子が、氷のような瞳を俺に向けながら微笑む。
「さ、ここにいても仕方ないし、遊びにいこ♪」
「さ、美奈子も」
優子ちゃんと委員長っぽい子――亜美ちゃんと言うらしい――に手を引かれるようにして、
俺はさらなる「女子小学生」の道を歩み始めるのだった。
35名無しさん@ピンキー:2010/04/21(水) 00:34:14 ID:mFLaBk00
他の人の書いた「交換モノ」も読んでみたいけど、
狭いジャンルだし需要も少ないから期待できないかなぁ

>>32
「妹に見られたくないけれども、どんどん妹扱いされていく」あたりがかけていければ・・・と思ってます
新学期の登校ぐらいで終わる予定ですが、
もっともっと恥ずかしいシーンを組み込めていければ!

しかし、やりすぎると単なる「女児女装」になってしまうので難しい
36名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 00:35:22 ID:7N8gzsn9
37名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 10:58:29 ID:SzjP9goZ
身体的にはそのままなのに正統に扱ってもらえない感じに萌える。
かわいいキャラがブスキャラ(ネタキャラ?)扱いされてるの見てニヨニヨするのと似てる
38名無しさん@ピンキー:2010/04/27(火) 02:32:41 ID:BoLKb77c
>>34の続き

優子ちゃん、亜美ちゃんと一緒に、タキオンの中を見て回ることに。
小学生とはいえ女の子、覗くのはもっぱら洋服の店ばかりだ。
男物にはない、カラフルで多様なデザインの洋服の洪水に目がくらむほど。
2人はかわいらしい服、ちょっと大人っぽい服を手にとっては
「これいいね」とか「ミナちゃんも着てみる?」とか話しかけてくるけど、
「うん」とか「まぁ」とか気のない言葉しか返せない。返しようがない。
無理やり「妹」にされてまだ3日程度。
さらに言えば「兄」に復帰しようと狙っている身。
女の子が好きなファッションなんてわかるはずがない。わかりたくもない。
でも。もしも。もしかしたら。
このままずっと「妹」のままだったら、こういうのも覚えていかなくちゃいけないんだろう。
嬉々としてファッション誌を眺め、お気に入りの洋服を着て、
友達と一緒にウインドウショッピングを楽しむ。
そんな自分の姿を想像して、身震いしてしまう。
「ミナちゃん、聞いてるの?」
「あ、うん、ゴメン」
優子ちゃんが顔を覗きこむようにして呼びかけてきた。
返事がないのを不思議がったのだろう。
「で、ミナちゃんはどんなのがいいの?」
「え?え?」
「こいつ、聞いてなかったな」
優子ちゃんに指でおでこをつつかれる。
身長差があるのに、懸命に手を伸ばしてつつく様はなんとなくほほえましい。
「もう水着が売り出されてるんだよ、早いね」
目の前には、カラフルな水着がずらりと並んでいる。
小学生にはまだ早いだろ、というデザインから、
いかにも小学生向けといったものまで幅広く。
まだ真冬みたいに寒い日すらあるのに、水着なんて売ってるなんて正気の沙汰とは思えないけど、
こういう先取りも商売の1つなんだろう。
「で、これなんかミナちゃんに似合うと思うんだけど、着てみる?」
優子ちゃんが1着の水着を突き出す。
腰辺りに巻く布(パレオとかいうらしい)がついた、ワンピースの水着。
「ちょっぴり大人っぽいデザインだけど、ミナちゃん大きいから似合うよね?」
「ミナちゃん、着てみてよ」
優子ちゃんが、亜美ちゃんが、まるで獲物をいたぶる猫のような
底意地の悪い笑顔を見せながら迫ってくる。
俺が「偽者の美奈子」だと知っての狼藉。
いや、偽者だと知ってるからこその行為。
逃げ出すわけにも行かず、かといって着るわけにもいかず。
何度か渋って勘弁してもらおうとしたけど叶わず、結局試着室の中に入ることに。
39名無しさん@ピンキー:2010/04/30(金) 14:23:12 ID:eaCIh6Nc
40名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 20:00:25 ID:RDyH7mwp
>>2-4 の続きが見たい
41名無しさん@ピンキー:2010/05/05(水) 00:06:45 ID:R9fGQvqN
>>40
思いつきで書いたので、続きをどうするか一切考えてなかった
>>9から続けてるヤツだけじゃなくて、こっちも続き考えてみます
42名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 10:54:44 ID:ezZ0+eM1
GW中に古いPCをあさってたらおもしろいゲームを発見。
ココ的に該当するか微妙だけど、適度にアレンジしつつ、テキスト化してみた。
--------------------
 御剣誠は、ごく平凡な二流大学に通う19歳の青年。
 背が低めで彼女がいないこと以外に、これといった不満はないが、同時にとくに熱中できるものもない、退屈な毎日を送っていた。
 ある日の午後、大学から帰る途中、突然、目の前の四つ角から、疾走するバイクが飛び出してきた!
 (あぶないッ!)
 慌てて逃げようとした誠だったが、身体がすくんで動けない。
 しかし、そのバイクは誠の寸前で車体を真横にスライドさて、鮮やかに停止した。
 「大丈夫?」
 バイクに乗っていた人が声をかけてくる。声からすると若い女性のようだ。
 「スピード出てたけど、止まれてよかったよ。でも、キミも、ボーっとしてちゃ危ないよ?」
 そう話しかけられても、当の誠はショックで声も出なかった。
 しばらくして、ようやく冷静さを取り戻した誠は、無言のまま地面に散らばった本を拾い始めた。ヘミングウェイの「キリマンジャロの雪」だった。
 「へぇ、難しそうな本、読んでんだね」
 ライダーは屈託のない笑顔で言った。
 「──そうかな?」
 地面にしゃんがんだ誠が上目使いに女の子を見上げると、彼女もじっと誠の顔を見つめていた。
43まことまこと:2010/05/06(木) 10:55:33 ID:ezZ0+eM1
 「な、何です?」
 あまり女性と縁のない誠は、やや眩しそうに彼女を見返す。
 「お……驚いた!]
 一瞬の沈黙ののち、彼女はそう叫んでメットのストラップを外した。
 怪訝な顔した誠だったが、その次の瞬間、今度は彼が叫ぶハメになった。
 「あああぁぁぁぁっ!」
 それは、奇妙な光景だった。
 鏡もないのに同じ顔がふたつ並んで、互いを見つめあっている。
 髪型こそ若干違うが、顔は瓜二つというレベルではない!
 正に「同じ」顔なのだ。
 「うっわぁー、世界によく似た顔の人が3人いるって言うけど、こりゃ、そっくりってレベルじゃないわね! 同じ顔よ、どう見ても」
 目を丸くして、彼女は誠の頬のあたりを二、三度撫でた。
 「そ、そうだね」
 慣れぬ女性との接触に、誠は赤面しながら後じざった。
 「私、桜木真子(まこ)。名前はわりと女の子っぽいけど、ご覧のとおり、わりとお転婆ね。まぁ、自分で言うのもナンだけどさ。
 キミは?」
 「えっと、御剣誠……です。」
 相次ぐショックに、小声で誠は答えた。
 「マコト君かぁ。男らしい名前だけど、キミもどっちかって言うと、ちょっぴり名前負けしてるかもね」
 初対面で、ずけずけとそんなことを口に出し、愉快そうに笑う真子に、誠は鏡の中の自分が笑っているような、奇妙な違和感を感じていた。
44まことまこと:2010/05/06(木) 10:56:02 ID:ezZ0+eM1
 これも何かの縁だろうということで、すぐ近くにあった喫茶店で、ふたりは話すことになった。
 「ふむふむ……」
 と、真子が誠を頭のてっぺんから足のつま先まで、ジロジロと眺めまわす。
 「な、なに?」
 「ふふーーん、私ね、画期的なこと考えちゃったの」
 悪戯を思いついたチェシャ猫のような笑みを浮かべる真子。
 「ね、私たち、明日一日だけ入れ替わらない?」
 「はぁっ?」
 誠はすぐにはその言葉の意味が理解できず、目を自黒させた。
 「だーかーらー、明日一日だけ、私が誠くんの格好して大学行って、誠くんが私の格好して会社に出社するの。どう、面白そうでしょ?」
 「な、何言い出すんだよ、出来るわけないよ!」
 「あら、どうしてよ?」
 キョトンとした顔で、真子は聞き返してくる。
 誠の方の生活は、適当に大学行って講義を受けるだけなので、あるいは可能かもしれない。しかし……。
 「い、いくら顔は瓜二つだからって、声は違うし、それに真子さんの仕事なんて、いきなりやれるかどうか……」
 「だーいじょうぶ、できるって! 声の違いなんて、「風邪だ」とかでごまかしゃわからないレベルだし」
 確かに誠の声は、とっくに声変わりを終えて久しいのに、いまだに電話などでは女性と間違われることもある。かと言って、やはり目の前の真子よりは若干低めだ。
 「それに仕事ったって、ただのショッピングセンターの店員よ。営業スマイルで「いらっしゃいませぇ」って愛想ふりまいてりゃいいのよ」
 真子の強引な理屈にタジタジになる誠。
45まことまこと:2010/05/06(木) 10:56:44 ID:ezZ0+eM1
 真子は自分の思いつきにワクワクし、「断固実行!」とテーブルを叩きながら宣言する。
 ついに誠は、不承不承入れ替わりを了解させられてしまった。
 (マジ?? ……でも、こんな経験滅多にできるモンじゃないよね)
 退屈な日常とは趣きの異なる世界を覗くことができると考えれば、これはこれで悪くないかもしれない。
 しかも、男子には未知の世界である「若い女性の暮らし」の一端を垣間見ることができるのだ。
 「そう考えると、女性の制服着て、女の子演じるのも悪くないかな」
 つい、そんな本音がポロリと誠の口からこぼれたのを、真子は聞き逃さなかった。
 「あら〜? なによ、誠くんも結構喜んでるじゃない」
 おそらく、ふたりとも意外なハプニングに浮かれていたのだろう。
 真子の圧倒的なテンションに流される形で、その奇妙な交代劇は始められたのだった。
 幸い二人とも一人暮らしで、家族まで煙に巻く必要はないのが救いだ。

 「いいのかなぁ……」
 もらったメモに書かれた住所のマンションにたどり着き、預かったポーチから出した鍵で躊躇いがちにドアを開く。
 真子の部屋に入るとき、いささか誠は緊張気昧だった。
 男勝りな娘とは言え年頃の女性の部屋に入るのは生まれて初めてだったからだ。
 「──なんだ、そんなに緊張するほど女々した部屋じゃないな。真子さんの部屋らしいや」
 思ったより家具が少なく、キチンと掃除されたシンプルな部屋に、ホッと溜め息をつく。
 壁紙はシンプルな白だし、ぬいぐるみだとか花だとかの女らしいアイテムが皆無なので、それほど違和感は感じずに済んだのだ。
 誠だって、決して女嫌いというわけではない。ただ、女性に対して意気地がないのは自分でも認めざるを得ないだろう。
46まことまこと:2010/05/06(木) 10:57:19 ID:ezZ0+eM1
 ともあれ、年頃の女性の部屋を無遠慮に漁るのはマナー違反だ。
 誠は、今夜は早々に寝てしまおうと思った。
 緊張の糸がゆるんでいた誠は不用意に真子のタンスを開けてしまう。
 「!!」
 飾り気のないパジャマと一緒に、女性らしく整頓された下着類が誠の目に飛び込んできた。
 「あわわわ……」
 思わず水色のパンツを手にとり、ひとり取り乱してしまう誠。
 結局、気を取り直してパジャマに手を伸ばすまで、2〜3分かかった。
 真子のパジャマに着替えると、ふと鏡を見て、そこに「若い娘の寝間着姿」を見つけてしまい、再び硬直してしまう。
 (僕って……こうして見ると結構可愛いかも?)
 一瞬妙な気持ちになりかけたが、首を振って妄想を追い払い、ベッドに横になった。
 体を折り曲げ、枕を抱えるようにして眠るのが、誠のクセだった。
 友達には「女々しい」と笑われる仕草だが、この真子の部屋で寝るには、むしろそれがシックリくるような気がした。

 翌朝、真子に言われたより早めに家を出ると、誠は真子の職場のショッピングセンターへと向かった。
 通勤時の服装は無難に紺のスラックスとハイネックのセーターにしておく。中性的な誠が着ると、男女どちらにも見える服装だ。
 とは言え、さすがに靴はスニーカーと言うわけにはいかず、ヒールが低めのパンプスを履いているので、たいていの人には女性と判断されるだろう。
 真子に教えられたとおり、従業員口を社員証を出してパスし、急いで女性従業員用の更衣室へと向かう。
 ショッピングセンターの女性店員の制服は、クリーム色のブラウスにチェックのタイトスカート、その上に同じ柄のベストを着るようになっていた。
47まことまこと:2010/05/06(木) 10:57:50 ID:ezZ0+eM1
 「はぁ……胸が落ち着かないなぁ」
 更衣室から、他の女性店員とハチ合わせにならないように早めに着替えた誠が出てくる。
 朝、出がけにブラジャーをつけ、パッドを押し込んできたのだが、どうにもその収まり具合が悪いようだ。
 もっとも、逆にそちらのおかげで、スカートの頼りなさにあまり戸惑いを感じずにすんだのは、よかったんだかどうだか……。
 「おっはよ、真子!」
 誰かが声をかけてきた。
 「お、おはよ、聡子」
 名前がわかるのは、早朝に起きて真子の社員旅行のスナップ写真を見て、あらかじめ学習しておいた成果だ。
 「ん? なんか声、変じゃない?」
 「えっ? あぁ、ちょっと風邪気味でね……ケフッケフッ」
 誠はわざとらしく咳こんだ。
 「いやぁ、私も体調最悪よ、眠いし、腰は痛いし」
 聡子は右手で腰をさすった。
 「? 慣れない運動でもしたの?」
 「バカね、今日は昭彦君のアパートから直行よ、いてて……」
 その後、聡子は誠が赤面するような際どい話をとくとくと話し始めた。
 「! あ、いけない。開店時間よ、営業スマイル、営業スマイル」
 しゃべりたいだけしゃべると、聡子は時計を見て足早に去っていった。
 (うぅ……僕、女の子に幻想を持てなくなるかも)
 頬の火照りがようやくおさまった誠も、男女のカルチャーギャップに打ちのめざれつつ、売場に向かった。

 真子は、メンズ課の担当だった。開店後もしばらくは、客足も緩やかで、さほど忙しくはない。
 おかげで、誠もひととおり教わっていた「真子」としての行動に慣れることができた。
48まことまこと:2010/05/06(木) 10:58:17 ID:ezZ0+eM1
 と、そこへ、営業途中に立ち寄った風情の、中年の男が呼んでくる。
 フィッティングルームに行くと、男はスラックスの丈直しを頼んできた。
 「出来上がりは……ええと、明日の夕方になります」
 そう言ってしやがみこんでスラックスの裾の折り返しにピンを打っていた誠だが、何となく視線を感じる。
 ふと目縁を上げてみると男はわざとらしく目を逸らした。
 どうやらブラウスの合わせ目から胸の谷間をのぞいていたらしい。
 誠のそれはパッドで作った偽乳だが、それでも何となく嫌な気分になる。
 「はき替えられましたらレジまでお持ち下さいッ!」
 憤然と誠はカーテンを閉めた。
 「まったく、スケベなオヤジめ!」
 そう言いながらも、本当は男でありながら女の制服を着て、化粧までしている今の自分では、説得力に欠けるな、と誠はクスリと笑った。
 今日は割合ヒマな日らしく、売場でボケッと商品整理をしていれば時間は過ぎていった。
 昼近くに、エスカレーターで女の子が上がってきた。さっきの聡子だ。
 「ちょっと聞いてよ、真子。この前の奴、また来たのよ」
 「こ、この前の奴って??」
 さすがにそこまでは誠には分からない。
 「サービスカウンタでタバコ買ったあと、私に『綺麗ですね。今日仕事が終わったら隣の喫茶店で待ってますから来て下さい。』って言った、大ボケの奴よ!」
 あまりのダサさに誠も言葉が出ない。
 「『今日は絶対来て下さい、社員出目の前で車止めて待ってます。』とか気味の悪いことぬかすのよぉ」
 「そ、それで、どうしたの?」
 さすがに心配になってくる。
 「掃除のおばちゃんに一喝してもらったら、やっと帰ってったわ」
 「へぇ〜、大変だったわね」
 聡子を慰めながらも、同性としては情けない限りだ。
 一通り喋って落ち着いたのか、休憩しにいった聡子を見送って、誠は嘆息した。
 誠はいささかげんなりしていた。始業から2時間足らずで男の情けなさを嫌と言うほど見せつけられた気分だ。
 (こんなコトばっかり続くと、自分が男であることまで恥ずかしくなってくるよ)
 「まったく男ってヤツは!」
 悪態をつくと、いつの間にか横でシャツを見ていた客が目を丸くして誠を見ている。
 「あっ! あの……いや、その、ごゆっくり!」
 赤面して誠はレジの方へコソコソ退散した。
49まことまこと:2010/05/06(木) 10:58:49 ID:ezZ0+eM1
 「おまたせ、桜木さん。交代よ、食事いってきて」
 程なく、先に食事休憩に行っていた先輩社員が誠の肩をたたいた。
 「はい。それじゃあ、行ってきますね」
 ようやく一息つけると、誠は通用ロの方ヘと歩き出す。
 この店には社員食堂が完備されていて、比較的安価に食事をとることができる。
 また、食堂とつづきでティールームがあり、休憩時間はお茶が飲めるようになっているのだ。誠は空いている席に腰を下ろした

 「やあ、真子ちゃん」
 胸に「主任」と書いたバッチをつけた男がやってきて、誠の隣に座った。
 レディース売場の加藤という男だ。
 4人掛けのテーブルなのだから向かいに座ればいいのに、と誠は思ったが、相手は上司なので、文句は言わなかった。
 「どう?調子は。」
 加藤がタバコに火をつけながら訊いてくる。
 「週明けですし、今日はあんまし売れませんね……ゴホゴホッ!」
 咳は声色を隠すための演出だ。
 「ふーーん。今日みたいに天気がいいと、どこか遊びに行きたいね」
 「お前なんかとは何処にもいかないよ!」と思いつつ、誠は聞こえないフリをする。。
 「それにしても、真子ちゃん、相変わらずいいスタイルだよね〜」
 加藤はにじり寄って誠の二の腕あたりを遠慮に撫でてきた。
 「おかげさまで。平均体重ですし!」
 鳥肌が立つのを堪え、誠は軽くいなそうとした。
 「あれ? いつもならすぐ手が出るのに……。そうか、やっと僕と付き合う気になってくれたの?」
 好色そのものの笑いで、加藤が小声でささやいた。
 「やだ……」
 あまりの気色悪さと、おぞましさに、誠は涙が滲んできた。
 「トイレに行ってきます!」
 耐えきれずに誠は叫んで席を立った。

 憤然とトイレに入ると、女子トイレはかなり混んでいた。
 用の済んだ者も出ていかずに、お喋りに余念がない。
 「あら、真子。あんた、また加藤の奴にやられてたでしょ? 私も今日カウンターで整理してたらいきなり横から胸触られて激怒もんだったわよ!」
 「私だって、あんなヤツに、足の指の先にだって触れて欧しくないわよ!」
 誠も聡子に同意して加藤を罵る。
 「でしょー! あのトッツアン、女子社員はホステスじゃないっつーの!」
 聡子の罵声を皮切りに、トイレの中の女子社員は一斉に加藤の糾弾を始めた。
 その勢いの凄さまじいこと。
 女だけになるとこうも凄いのかと、最初はそのパワーに圧倒されていた誠だが、加藤への怒りを思い出すと、いつしかそれに混ざって完全に同調していた。
 ようやく皆の怒りが収まったところで、誠はトイレの外へ出た。
 色々な意味で、ついため息が出てしまった。
50まことまこと:2010/05/06(木) 10:59:42 ID:ezZ0+eM1
 週明けは比較的暇とは言え、夕刻はそれなりに混雑する。
 5人連続でレジにやってきた客をなんとかさばき、誠はひと息ついていた。
 忙しくはあったが、バイトも未経験の誠にとって「初めてのお仕事」自体は何だかんだ言って新鮮で楽しい、体験だった。
 漠然と大学で講義に出ているのより、数倍は充実感を感じられる。
 (もしかして、僕って客商売に向いてる?)
 などと、ちょっぴり思ってしまう誠だった。

 閉店まであと1時間という頃、同期の宮下英里子が売場にやってきた。
 「ねえ真子、今日終わった後、ごはん食べに行かない?」
 誠は、真子との約束に遅れることを懸念し、一旦は断ったのだが、英里子は「お願い、どうしても」と食い下がった。
 (真子さんと会うのは夜11時だし……まぁ、いいかな)
 「いいよ、どこに行く?」
 「EMMAはどう?」
 EMMAは、誠も知っていた。比較的女の子受けする洒落た店だ。
 「OK、じゃ、終わったらね」
 午後7時半、誠は社員出□の前で待っていた。
 5分ほど待つと、英里子がやってきて小声で耳打ちした。
 「ゴメン、実は渡辺さんと一緒なの。協力して、ね?」
 「……え?」
 気が付くと、ガンメタのGTRがこちらに近づいてきている。
 運転席にいるのが渡辺だろう。
 察するところ、英里子は渡辺に好意を持っているが、「ふたりっきりで」とは言い出せず、「真子といっしょに」という点をダシにして誘ったものらしい。
 おそらく、真子は前々から英里子の相談を受けていたのだろう。
 「いいよ、協力するから頑張んなさい!」
 誠は真子になりきって、親友の恋を応援してやる気になっていた。
 「ごめんね、さっきはつい言いそびれちゃって……」
 「ううん、気にしないで」
 誠は気楽に応対したが、英里子は歯切れが悪い。
 「でも、真子も渡辺さんのこと気に入ってるんでしょ?」
 「えっ?」
 寝耳に水な情報に驚く誠。
 「だって、よくティールームで伸良さそうに喋ってるじゃない」
 グッと言葉に詰まった。そこまでは聞いていない。
 「それは、そのぉ……」
 「どっちなの?」
 やや苛立ちをこめて英里子が訊く。
 「や、それはないわ、うん!」
 冷や汗が出るのを隠して、陽気に断言する。
 「本当?」
 「ホントよ〜」
 お気楽にそう言いながらも、心のどこかで「どんどん深みにはまっていっているな、僕」と考えてはいるのだが、今更止めるわけにもいかない。
 「──よかった。じゃ、協力してくれるのよね」
 「ええ、もちろんよ」
 安堵の表情を見せる英里子の隣で、誠の心中は穏やかでなかった。
 とっさに「協力する」と言ったが、本物の真子の気持ちはどうなのだろう。
51まことまこと:2010/05/06(木) 11:00:23 ID:ezZ0+eM1
 その後、3人での食事は、主に英里子が話しかけて、渡辺が答え、誠が適度に相槌を打つという形で淡々と進んだ。
 英里子には悪いが、この様子だと、渡辺は脈は薄いかもしれない。もっとも、さすがにそれを口に出す気にはなれなかったが。
 食事が終わると、3人はGTRで帰途についた。
 「あ、わたし、ここでいいわ。下ろして、渡辺さん」
 途中でふたりと別れ、誠は真子との待ち合わせ場所へと向かった。

 夜11時ピッタリに真子との待ち合わせの場所に着くと、ちょうど真子も誠のミニカを路上に横付けしたところだった。
 「誠くん!」
 「真子さん!」
 誠はミニカに駆け寄り、助手席に座ると、すぐにミニカが発進する。
 「ねぇ、どうだった、「桜木真子」の一日は?」
 ステアリングホイールを巧みに操りながら、真子が、チラといたずらっぽい視線を投げかけてくる。
 「うーん、別にこれと言って物珍しいことはなかったかなぁ。あ、でも女の子でいることが少しだけ、楽しくなってきたかも?」
 少し恥ずかしかったものの、誠は正直な気持ちを伝える。
 「そうなんだ。実は、私もせっかくの機会だしもうすこし「男」としての生活を楽しんでみたい気がするんだよねー」
 路肩にクルマを止め、ふたりは顔を見合わせた。
 「じゃあ、もう1日期限を伸ばそうか?」
 ごく自然にそんな言葉が真の口から零れ出た。
 「そうだね。せっかくバレなかったんだし、もうちょっと続けたいよね」
 こちらも、当たり前のように了承する真子。
 「よーし、明日も仕事がんばろうっと!」
 「頑張るのはいいけど、ポカしないでよ、後で困るから」
 「ええ、わかってるわよ。「誠」クンも、気をつけてね」
 ちょっとだけ心配そうな真子に誠──いや、「真子」はウィンクしてみせる。
 「ふふふ…じゃ、また明日な、「真子」サン!」
 「ええ、またね」
 「誠」は「真子」をマンションの前まで送ると、誠のアパートへと帰っていった。
 「真子」も、「自分の部屋」へと向かいながら、「明日はワンピースを着てみようかな」と、ぼんやり考え始めていた。
52まことまこと:2010/05/06(木) 11:00:59 ID:ezZ0+eM1
 ──その後、ふたりは何だかんだとズルズルと元に戻るのを引き延ばし、丸一週間入れ替わったままで生活することになった。
 翌週の月曜は誠のほうに、どうしても外せないテストがあったため、いったん元に戻ったものの、どちらからともなく言いだして火曜日からは再び入れ替わり生活を始めてしまう。
 どうやら、誠は「真子」として、真子は「誠」としての生活にすっかりハマってしまったようだ。
 結局、ふたりの入れ替わり生活は、誠が大学を卒業して、真子の働く会社に就職するまで続くのだった。

 ……いや、「就職するまで」ではない。
 誠が20歳になったころから同棲生活を始めていたふたりは、就職してからも誠が「真子」、真子が「誠」として(売り場は違うが)同じ職場で働いている。
 今では、外だけでなく家の中でも、誠は「真子」として甲斐甲斐しく誠(真子)の世話を焼いているのだ。無論、それは「夜の生活」でも同じで、「真子」は「誠」に組み敷かれ、荒々しく抱かれるのが大好きだった。
 ちなみに、来年6月の結婚式で、どちらが花嫁衣装を着るか、それが目下のふたりの最大の懸案だった。
-fin-
--------------------
以上。最初から外見が似ているというのは反則かな?
53名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 19:49:05 ID:wXHLQO1D
こういうのも好きだGJ
54名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 21:08:51 ID:3PExFeXn
この手の作品があるサイトってないのかなぁ・・・
55名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 23:47:04 ID:aSJuV5Ng
>>38の続き
女性用水着を握って、更衣室の中で立ち尽くす。
たぶん更衣室の外では、着替えて出てくるのを待ち構えて2人がニヤニヤしてるはず。
1分。2分。3分……。
着替えるか着替えないか、悩みに悩んで悩み続けて、
結局着替えないで更衣室から出てしまう。
「あー、ミナちゃん着替えてないー!」
「ぶーぶー」
「……だって、恥ずかしいし……」
女の子の前で女性用水着を着るなんて、できるはずがない。
「じゃあ、私たちも着るから、ね?」
「え、ええっ!?」
突然の提案にうろたえてしまう。
「冗談よ」
「よかった……」
心から安心する俺。
「なんて言うと思った?」
まるで悪魔のようにかわいい笑顔で、亜美ちゃんが俺の手をつかむ。
「さ、着替えましょ」
2人に引きずり込まれるように、更衣室の中へと再び入る。
普通のよりも広めな更衣室だけれども、3人で入るとさすがに狭い。
よく見ると優子ちゃんも亜美ちゃんも手に水着を持っている。
どうやら彼女たちも試着するようだ。
まるで同級生と行ったプールで着替えるかのように、
自然に服を脱ぎ始める彼女たち。
「何してるのよ、さっさと着替え始めなよ」
「ここまできて恥ずかしいとか言わないよね?」
「だ、だって……」
56名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 23:48:57 ID:aSJuV5Ng
なんかGWで疲れがたまったのか、妄想力が枯渇してる(´・ω・`)
ここからどうしようか・・・・・・
単なる強制女装っぽくなっちゃってるし
57名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 05:40:36 ID:juzu7JLs
ここは性器誤認が最善かな。
58名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 22:12:31 ID:avPWKH34
5952:2010/05/17(月) 23:01:36 ID:2UgN4Dy+
再び、相似形男女物。ちょっとエロ成分もあり。
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 進藤司(しんどう・つかさ)と古河千早(こが・ちはや)は、従姉弟どうしであり、同時に家も歩いて5分ほどの近所にある幼馴染でもある少年と少女だった。
 ちなみに、つかさの方が年下──13歳の少年であり、ひとつ年上のちはやからは、長年弟のような扱いを受けてきた。
 実際、母どうしが双子姉妹のせいか、ふたりは下手な兄弟以上によく似ていた。また、進藤家の両親は共働きのうえに出張がちで、両親が留守の時はつかさは古河家に預けられることも多かったのだ。
 それはそれで嫌なわけではない。むしろ、美人で頭が良く、明るく積極的な「姉」がいることは、他人からは羨ましがられることも多かったし、つかさ自身も誇らしく思うことが多々あった。
 しかしながら、思春期を迎える頃から、多少は色気づき始めたつかさは、いつしかちはやのことをひとりの女性──恋愛対象として意識するようになっていた。
 中学に入ったちはやがモテることも、つかさを焦らせた原因かもしれない。
 ある日の帰り道、つかさはちはやを滅多に人の来ない公園へと誘って自らの想いを打ち明けた。
 驚いてはいたものの、ちはやは真剣に彼の話を聞き、翌日まで回答を保留させてほしいと答えた。
 そして翌日──ちはやは、条件つきで彼と恋人同士になることを了解してくれた。
 つかさは天にも昇るような気持ちだった。
 しかし、彼が彼女の口元に浮かぶ微笑みをもし見ていたなら、そんな無邪気に喜べなかっただろう。

 ちはやの出した条件とは、「ふたりきりの時は、ちはやの言うことを何でも素直に聞くこと」。
 人によっては生殺与奪の権利を与えたに等しいが、つかさはちはやのことを信頼していたから、それほどヒドいことはされないだろうと踏んでいたのだ。
 ……その信頼は、残念ながら破られることになるのだが。
60いとこ:2010/05/17(月) 23:02:27 ID:2UgN4Dy+
 ──それは巧妙に張られた罠だった。
 冬休みを目前にした12月の半ば、懸賞で当てた温泉旅行に両家の親たちが揃って出かけたのに対して、数日間子供ふたりで留守番することなったのだ。

 両親が不在の時は、つかさは古河家にお世話になるのが数年来の習慣であり、この時もそうすることに彼は何ら疑問を感じていなかった。
 勝手知ったるなんとやらで、お泊りセットすら持たずに、つかさは着のみきのままで、ちはやの家へと向かった。必要なもの──着替えや歯ブラシなどは、古河家にも置いてあるからだ。
 もちろん、中学生ともなれば、恋人とふたりきりということに、多少の期待感もある。

 だが、玄関で出迎えたちはやは、イイ笑顔で少年にこう告げた。
 「これから3日間、ふたりきりだね」
 と。
 それが、彼女の謀略の幕開けであった。
 
 折悪しく小雨に降られたつかさは、ちはやに命じられて、とりあえずは濡れた服を着替えることとなった。 
 だが、ちはやからなぜかリボンのかけられた紙袋を渡されたつかさは、首を傾げながら閉じられたテープを剥がし、中を覗く。
 「……ちはやちゃん、袋が違うみたいだけど」
 「そんな事無いわよ。ちゃんと確認したから」
 「でも……」
 つかさは中身をそっと掻き分け、有り得ない物を発見し、慌てて手を抜いた。
 「やっぱり違うよ。その……下着、入ってるよ、これ」
 困惑するつかさを見つめるちはやは落ち着き払った笑顔で宣言する。
 「それも含めてつかさ君が着るのよ。
 あ、嫌なら別にそれでもいいわよ? ただ……あの約束のことはわかってるわよね?」
 付き合いが長いと以心伝心で済む事が多々ある。
 つかさはひしひしと嫌な予感を感じた。
 「えっと……」
 「寂しい年末を過ごしたければ、断ってもいいわよ。それで? 着るの? 着ないの?」
 惚れた弱みと、失うかもしれないという恐怖が、羞恥心を上回った。
 「き、着る、よォ」
 つかさは消え入りそうな声で承諾した。
61いとこ:2010/05/17(月) 23:03:06 ID:2UgN4Dy+
 ――三十分後。
 つかさは、女装姿のまま、古河家の玄関先で震えていた。
 「うぅっ、さ、さむいっ、ちはやちゃぁ〜ん……まだぁ?」
 ちはやは、つかさに、その姿のままコンビニに買い物に行くよう命じたのだ。
 ちはやの普段着を着せられ、わざわざ髪型までいじられたつかさは、さすがは従姉弟同士というべきか。遠目には十分「古河千早」に見えた。
 親しい友達とかならバレるかもしれないが、少なくとも顔見知り程度なら十分騙されるだろう。
 とは言え、さすがに顔なじみの店だと正体がバレる可能性もあるので、必然的につかさは普段あまり行かない、少し遠くのコンビニまで足を延ばすこととなった。

 ちはやが用意した首回りまで包むピンクのセーターは暖かいけれど、お揃いのミニスカートが足元から体温を放出し、少し厚手のニーソックスを履いていても外気に直接晒す事に慣れていない太股では耐えられない寒さだった。
 正午を回ったばかりなのに太陽はときおりしか顔を出さず、雪でも降りそうな雲行きが気温を下げている。
 ダッフルコートを羽織ってはいるものの、冬の冷たい風が吹き抜けるたびに下腹部から冷え、片道10分足らずの普通なら何でもない時間距離が限りなく遠く感じられる。
 オマケに古河家に帰ってきたところで、このように玄関先で待たされたのだ。
 「お待たせー、もういいわよー」
 寒さに足踏みしながら、待つことおよそ5分あまりで、ようやくインターホンから、OKの言葉が聞こえた。
 ドアのオートロックが開かれると同時につかさは中へと飛び込み、外気から遮断された空気の暖かさに一息つく。
 「ふぅ〜、助かったぁ……」
 「くすくす、大袈裟ねぇ。あたしはその格好で毎朝登校してるんだけど?」
 そう言われてはグゥの音も出ない。
 「そりゃそうだけど……て、あれ?」
 謝りかけて目を丸くしたつかさの前で、ちはやは両腕を広げてクルリと回る。
 「身長が同じくらいだから着れるかなぁって。似合う?」
 「同じじゃないよ、僕のほうが1センチ大きいもん!」
 目の前のちはやは、つかさの服を着こんでいる。
 「乾いたんなら返してよー」
 「ダーメ、今日はその服を着てて貰うからね。それとも、逆らう気?」
 「で、でも……いつまでもこんなの嫌だよ」
 「あたしとつきあう条件、忘れたの? それでも嫌だって言うなら、あたしにも覚悟があるわよ」
 つまり、着替えた時点でお別れと言うことだ。
 「うぅ……」
 心底困った表情を見せるつかさ。
 「ほら、来て。お部屋を暖めておいたわ」
 優しく手を引かれた、つかさは拒否する機会を失い、流されるまま彼女に従った。

 東向きの階段を上がった短い廊下。その突き当たりがちはやの部屋だ。
「入って」
「う、うん」
 広い室内は充分に暖まっていタ。
 正面のベッドを見てドギマギしたつかさは、悟られまいと視線を勉強机や本棚、テレビなどに落ちつか無げに移す。
 とりあえず座ろうかと考えたものの、一応部屋の主の許可を得ようと、ちはやを探して振り向く。
 彼女はクローゼットを閉じる所だった。何かを取り出したようだが……。
 「あ……えと……」
 「つかさ君、コート脱ごうよ」
 背後からファスナーに手を掛けられる。
 「う、うん」
 「あ、立たなくていいわ。膝立ちで丁度いいから、手だけ真っ直ぐ下してて」
 「わかった」
 素直に膝立ちとなって腕の力を抜いた。
 ちはやがファスナーを途中まで下し――襟を掴んで開きながら背後へ引く。
 「え? あれ? ちはやちゃん、これじゃ脱げないよ」
 コートが肘の少し上で引っ掛かりつかさの腕を拘束した。
 丈夫さが売りの上着はつかさが暴れたくらいでは壊れやしない。
62いとこ:2010/05/17(月) 23:03:42 ID:2UgN4Dy+
 ちはやはコートの両袖を引き降ろして共に縛ると、つかさに告げた。
 「今日は、つかさ君に、あたしをあげるね」
 男として恋人に言われたらうれしいはずの言葉なのに、なぜかつかさは不安しか感じなかった。
 そして……その予感は正しい。
 つかさの背後でズボンのファスナーを下ろす音が響く。
 つかさのズボンを履いているちはやは、その下に、黒光りするペニスバンドを着けていた。
 もしつかさが自分の女装姿に意識を取られていなければ、男装したちはやを見て股間に不自然な膨らみがあると気付けたかもしれない。
 もっとも、寒さでそれどころじゃなかったというのもあるかもしれないが。
 ペニスバンドにアナルクリームを塗りつけたちはやは、おもむろにつかさのスカートをまくりあげる。
 「あ、ちょ、なにを」
 「だから、あたしをあげるの。ほら、横になりなさい」
 ちはやに突き飛ばされ、つかさはバランスを崩して横に倒れた。
 ちはやはつかさの足の間にしゃがみ込んでショーツをずらし、アナルクリームを入り口だけでなく中にも塗り込んだ。
 「ふぅっ、うぐっ」
 初めて体内をこねくり回されたにも関わらず、つかさはその異様な感覚に溺れ、目を閉じ、びくびくと足を痙攣させている。
 下唇を噛み締めるつかさの反応を楽しんでいたちはやは、薄く微笑んで体を起こし、ペニスバンドをショーツの横から潜り込ませる。
 目を開けたつかさに、上からちはやが微笑みかけた。
 「つかさ君は今から「ちはや」になるの。あたしの分身になるのよ」
 アナルに先端をあてがい、ちはやが笑う。
 「な、何言ってんの? 訳わかんないよ、やめてよ!」
 ぐりぐりと回しながら押し込まれ、つかさは犯される恐怖でパニックになった。
 だが。
 「ダメ。じゃあね、「ちはや」ちゃんの処女もーらいっ」
 冷たく言い放ち、ちはやは一気につかさにソレを突き刺した。
 強引に体内に侵入される感触が内臓の奥へと伝わっていく。
 「あがっ! あ、あ、あ! あ!」
 つかさは目を剥いて首を反らし、耐えるしかない。
 ちはやはつかさの背後に寄り添って腰を抱え、中をゴリッと擦った。
 一瞬、痛みにも似た強烈な感覚に襲われて、つかさは苦鳴を漏らした。
 「あぐっ……や、やめてよ、ちぃちゃぁん!」
 「チハヤは貴女でしょ? あたしの事は……そうだね、ツカサ、でいいか。ふふっ、チハヤったら初めてなのに奥までしっかり呑み込んで。元々淫乱なのかな」
63いとこ:2010/05/17(月) 23:04:14 ID:2UgN4Dy+
 「な、何を、僕はつかさ……」
 「あれぇ、まだそんな勘違いをしてるの? 仕方無いね。ボクの愛情で目を覚まさせてあげる」
 言うなり、ちはやは腰を前後に揺すり始める。
 「うぁっ! あぐっ! ま、まって、頼むからっ」
 「チハヤったらお願いくらいまともに出来ないの? ほら、ほらほら」
 クリームで滑り良くずるずると出入する擬似ペニスは柔らかい。
 表面に纏った血管のような膨らみが適度な刺激となってつかさのアナルを開発し始める。
 「あ、あぁ……やめて、やめ、だめっ、ちはやっ」
 「まだまだだね〜。ちゃんと言えたら止めてあげてもいいんだけど。このままだとイっちゃうかも。そうなったら、くすくす、『もっとぉ』ってせがむ様になるんじゃない? いいの?」
 ちはやの動きが一段と大きくなった。
 つかさは突き込まれて女の様に求めることなど望んでいない。
 けれど、擬似ペニスが時折甘美な疼きをもたらしているのも事実だった。
 そして、それが逃れられない快感になる事を、つかさは恐れた。
 「そ、そんなっ、やだよっ、お、お願い、やめて、やめてくださいっ」
 犯されている事実が懇願という手段を選ばせる。
 つかさは、既に完全に被支配者となっていた。
 ちはやが腰を大きく引く。
 「おしいねぇ〜。何を止めて欲しいのか言ってくれないと、解らないよっ!」
 言い終えると同時に激しく打ち付けた。
 直径僅か三センチの柔らかい棒が、ずしん、と響き、つかさは極太の杭を打ち込まれた様な錯覚に襲われる。
 「ああっ! やめっ」
 「あれあれ、そんなに仰け反る程よかったの? こうかな?」
 ちはやは大きく腰を引いて、また突き出す。
 「あうぅっ!」
 つかさのあごが跳ね、それを見てちはやは目を細めた。
 「気持ちいいんだ。くすくす……じゃあ、こういうのはどう?」
 今度は密着したまま細かく腰を揺さぶる。
 奥まで満たされた状態で擦られ、疼きが快感に変わり始めていた。
 恐れていた感覚を得て、つかさは激しく首を振る。
 「うああっ! ああっ! だ、だめっ、やめてっ、こんなのヘンだよォ!」
 「チハヤは女の子でしょ? エッチのときに挿れられるのは変じゃないよ」
 「違うっ、僕はっ……うぁっ! あっ!」
 「ふふ、嘘吐いても無駄だよ。すぐに認めさせてあげるんだから」
 ちはやの手が前にまわり、つかさの臍を探り当てると、そのすぐ下を押さえた。
 何度も、強く。
 その間も快感の増幅が続いている。
 「あっ、くっ、ううっ――くあっ! はふっ!」
 「強情だねぇ。さっさと女だって認めちゃいな」
 再び大きな突き上げが始まった。
 「ち、ちがっ、あっ、はぅっ」
 「くすくす、良い事を教えてあげる。正面にテレビ台があるでしょ? そのガラス戸の中にカメラがあるの見える? 記念すべき初エッチを撮ってるんだ」
 つかさは快感と戦いながら確認して顔を真っ赤に染める。
 「はぁっ、ま、まさか、今日は、最初から、ああっ、このつもりで、あうっ」
 「やっと解った? でも、ほぉら、本格的に感じてきたね、もう逃げられないよ」
 「な、なんで、こんなっ――」
 強まる快感の中で突如、下腹部に湧き上がった衝動がつかさを慌てさせた。
64いとこ:2010/05/17(月) 23:04:49 ID:2UgN4Dy+
 「――あ、あああっ、だ、だめっ、やめて、やめて、お願い! ちはやっ」
 「だから、チハヤは貴女だってば」
 「ああっ、今は、そんな事はっ」
 圧迫と突き上げが激しくなる。
 「あっ、あっ、やっ、だめっ、いや、いやだっ」
 「だったら認めなさいっ! あなたは誰? あなたの性別は? ほら、言いなさい!」
 「あ、ぼ、ぼく、は」
 「駄目! 女の子なら『あたし』でしょ!」
 「ああっ、はいっ、あ、あた……」
  高まる快感の気配がつかさを妥協させる。
 「あたしは、チハヤですっ……ね、言ったからっ」
 「まだっ! チハヤは挿れられて気持ちよくなってきたんでしょ? 正直に答えなさい」
 「え、あはっ、あうっ、あ、そんなっ」
 「じゃあ恥を選ぶんだね。あはは、いいよ、それでも」
 「あんっ、あ、い、いい、ですっ……言ったからっ、もうお願い!」
 「あはははっ、可愛いこと言うじゃないっ! お願いされたらしょうがないなぁ。イカせてあげる」
 猛然と腰を振るちはやに揺さぶられ、体内を蹂躙される異様な感覚が快感へと繋がりつつあった。
 「ち、ちがうっ、あ、あたし、そんな、つもりじゃ、ああっ、あ、ああ、だめ、えっ! あ! やめ! あ、や、やぁっ! いやだ、いっあっ」
 体が快楽の予感に震える。
 「いきなさいっ! イクのっ! チハヤっ!」
 激しい羞恥につかさは涙を浮かべて首を振る。
 「やっ! やだっ! やだっ! はふっ!」
 ちはやが激しく突き上げ、緊迫感を刺激する。
 「止めて欲しかったら『あたし』って叫んでみなさいっ、大きな声でっ、いかせてあげるからっ!」
 「ああっ、やめっ、あ、あたしっ」
 「もう一回! もっと大きな声で!」
 「あんっ、あたしっ! あたしぃっ!」
 その瞬間、すべての感覚が反転した。
 いや、それは唐突に裏返ったわけではない。その直前までに、ゆっくりじっくりと変貌しつつあったのだ。
 痛みから悦びへと。
 違和感から快感へと。
 「あっ! ああっ、あ、あ、あ、あ」
 仰向けにされて、正常位の姿勢から抽送される擬似男根は、もはやチハヤの心を支配される悦びで満たしてくれる愛しく大切なモノだった。
 ツカサはくすくすと笑い、ゆっくりと大きく腰を前後に動かした。
 「この感覚に慣れなさい。クリームを使ってるから大丈夫だと思うけど痛かったら言ってね」
 「はっ、ぁっ! はいっ、あふっ、だい、じょうぶっ」
 「そう? ならいいけど。もしかして気持ちいいのかな? どこが気持ちいいの?」
 ツカサはギリギリまで引き抜いて密着するまで押し込む。
 ゆったりとした快楽に包まれたチハヤは、ぎゅうっとシーツを握りしめる。
 「はぁっ、あっ、いっ、入り口っ、もっ、なかっ、もっ、ぅんんっ、っはぁっ!」
65いとこ:2010/05/17(月) 23:05:25 ID:2UgN4Dy+
 「あれれ、チハヤにとって――ここは入り口なのね?」
 ツカサが大きく動いて中を擦り、そして、一気に突き刺す!
 「ふあっ! あっ」
 「返事も出来ないくらいに気持ちいいんだ〜。ふふっ、これならチハヤの躾のも早く済みそうだね」
 「あっ、は、はずっ、か、」
 チハヤが答えた瞬間、ずんっ、と奥深くまで満たしてリズムが変わった。
 「しぃんっ! あっ! あっ! あぁっ! それっ! あっ! だめっ!」
 早く浅い突き込みが数回繰り返され、一度だけ深く侵入してくる。
 かと思えば体ごとチハヤの上に圧し掛かり、結合部を密着させたまま体から下りる動きで擬似男根をうねらせ、ゆっくり引き抜く。
 そして、力強く腰を打ち付け、ぴたぴたと柔らかい肉がぶつかりあう音を響かせる。
 「うああっ! ああっ! やっ! だめっ! あああっ! あああっ! あああっ!」
 チハヤは、ツカサが生み出した悦びの渦に巻き込まれていた。
 「ふふっ、どうかな? チンチン弄るよりもずっといいでしょ?」
 激しくゆさぶられながら、チハヤは答えようとした。
 しかし言葉にならない。
 「いああっ! ああっ! ふうぅっ! いっ! ぃんんっ!」
 目を閉じ、両手を固く握り締めて何度も頷く。
 チハヤは激しく突き上げられる悦びに目覚めてしまった。
 ツカサに太股をなでられて仰け反り、はだけた胸元から指先で乳首を擦られて悲鳴の様な嬌声をあげる。
 単純な射精で得られる絶頂を超えた、翻弄される悦び。
 愛情が体内を擦り上げ、チハヤを絶頂の渦に放り込む。
 言葉は要らなかった。
 抱きしめられる温もりと貫く太さが価値観の全てを壊し、今やチハヤはそれしか考えられなかった。
 いつしか腕はツカサの首に絡みつき、足を大きく開いて全身で迎え入れている。
 「いいっ! ああっ! あんっ! つかさくん! もっと! ああっ、もっとぉっ!」
 叫ぶ口からは飲み込めなくなった唾液が涎となって溢れ、快感に歪んだ顔を左右に振ってはベッドを濡らした。
66いとこ:2010/05/17(月) 23:05:57 ID:2UgN4Dy+
 「こぉんなに足開いちゃって可愛い。ねえ、ちはや。後ろだけでイクとどうなるか知ってる? 女になって二度と戻れないらしいよ。試してみよっか?」
 「ああっ! はぁっ! つかさくんっ! いいっ! いいのっ! つかさくんっ!」
 「くすくすっ、それどころじゃないって? 知らないよ?」
 ツカサはショーツの前部を引っ張ってチハヤのペニスを先端だけ出す。
 「くすっ。女になっちゃいな」
 体を起こして細かく早い突き上げを開始した。
 小さめのショーツは遊びがない。
 ピンと張ったようなゴムが、擬似男根の出入りに合わせてチハヤのペニスを刺激した。
 「ああああああっ! なにっ! なにこれ! すごい! すごいぃ!」
 「ほら、イっていいよ! 男の子よりもずっと気持ちいいから! イキなさい、チハヤ!」
 命令に対しても、チハヤは従順になっていた。
 内腿がビクビクと痙攣する。
 「ああああっ! はひっ! はひぃぃ! あああっ! あああっ! もうだめっ! もうっ! もうっ!」
 それだけ言うと、目を固く閉じて胸の前で腕を縮め、歯を食いしばった。
 「あぃっ!――! ――くっ! ――っぃいぃ! くぅ!」
 その直後。
 大きく震えたチハヤは、自らの顔にかかるほどの勢いで精液を飛ばして果てた。

 * * *

 年が開けて三日。
 少女は大きな鳥居の横で恋人を待っていた。
 何かの御利益があるらしいこの神社は、緩やかなカーブを描く広い坂道の上にあり観光バスが入ってくる事もあるけれど、いわゆる隠れ名所らしく極端に混雑することは無い。だから参拝者の殆どが地元の人間である。
 カーブの死角から現れた少年を確認して、少女は携帯を開いた。約束の時間にはまだ早い。
67いとこ:2010/05/17(月) 23:06:24 ID:2UgN4Dy+
 少女は少し悪戯がしたくなった。
 幸いにも周りは同じ様な人待ちが多く、彼方此方から聞こえてくる新年の挨拶に「探した」というフレーズが追加されている。
 随分近付いたのに彼は彼女が居る事に気付いていないようだ。
 少女も気付かないふりを決め込み、少しだけ様子を窺おうと考えた。

 少年は、少女の横を素通りして立ち止まり、鳥居を見上げて深呼吸をしていたが、一拍の後、くるっと勢い良く回って正対する。
 「早かったじゃない」
 「ちぇっ、気付いてたんだ」
 少女──チハヤは頬を膨らませる。
 ツカサはいつもの優しい笑顔を浮かべた。
 「何年幼なじみをやってると思ってんだよ。まあ、確信が持てなかったから一旦通り過ぎてみたんだけど。でも驚いた。似合ってるよ。可愛いね」
 「えへっ」
 照れて笑うチハヤは、濃紺のブレザーにエンジのタイを締め、グレーのスカートを履いた、まるでミッション系お嬢様学校の制服みたいな出で立ちだ。
 「ママがね、近所でも人が沢山来るから余所行きの格好にしなさいって」
 ――あの日以来、ツカサとチハヤのふたりは、お互いが入れ代わったまま生活を続けている。
 元々、いとこ同士であり、顔だちも背格好もよく似ているせいか、互いの家族にさえバレていない。
 もっとも、これはふたりの両親が共働きで、平日はほとんど家にいないという環境にあるおかげだろう。
 とくに、つかさの両親は、遠方で赴任中なので実は数回しか顔を合わせていないのだ。
 このまま徐々に互いの生活になじんでいけば、本来のつかさがチハヤとなり、ちはやがツカサとして周囲に認知されることも容易だろう。
 「でも、良くバレないよね。毎日顔合わせてるんでしょ?」
 「んとね……普段は朝ごはんのあとくらいかな? あ、ママには流石にバレちゃった」
 ここで言う「ママ」とは無論、本来の千早の母親のことだ。
 「え!? それで大丈夫なの? ボクに一言も連絡無しとは……って責めたい所だけど、言わなかったのは大変な状態だったからでしょ。大丈夫?」
 心配そうに見つめられ、チハヤはくすっと笑った。
 「うん、さすがに事情を聞かれた」
 「だろうね。なのにお咎めなし?」
 「うん、ママは「もしかして」と思ってたみたい。でも、翌日は一緒にお洋服を買いに行ったよ。むしろ、「今のちぃちゃんの方が素直で可愛い」って好評だったし」
 「ヲイヲイ」
 我が母親ながら何考えてんだか……と肩を落とすツカサの腕に、チハヤがしがみつく。
 「詳しい事は初詣の後に話すね。行こっ」
 「そうだね、行こっか」
 ツカサが優しく微笑んだ。
 もう一度ひだまりの様な笑顔を見つめ、チハヤは微笑みを返して鳥居を潜った。

---------------------------
以上。入れ替わり描写薄めでゴメン。
68名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 16:44:47 ID:FmRSHKI8
GJ!
この一言すら書けないほど規制がキツい
ギャップ交換もいいけど、相似形入れ替わりもいい
69名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 00:38:28 ID:4KEmNblB
>>55の続き
もし着替えなければ大声を出すと言われ、しぶしぶ着替え始める。
横では優子ちゃんと亜美ちゃんも着替え始めている。
「あー、亜美ちゃんブラしてるんだー」
「お母さんがもうしたほうがいいって」
「わたしも買ってもらおうかな……ミナちゃんは?」
2人は下着姿になった俺に視線を移す。
「ミナちゃんかわいぃぃぃぃ」
母親に無理やり着させられたブラとパンツを見て、優子ちゃんが声をあげる。
確かにかわいいのかもしれないけれども、自分が着ているとなるとちょっと恥ずかしい。
「やっぱミナちゃんは大人っぽいからなぁ……うりうり」
「や、やめてよ優子ちゃん」
後ろから胸を揉んでくる優子ちゃん。
女子のスキンシップはみんなこんな感じなんだろうか。
「胸はちょっと小ぶりだけどね」
そりゃそうだ。男なんだから、大きかったら大問題。
「さ、遊んでないで試着しましょ」
亜美ちゃんは俺と優子ちゃんのやりとりを無視し、1人でちゃっちゃか着替えていく。そして優子ちゃんも。
恥ずかしいけれども、自分も着替えの続きに取り掛かる。
ブラジャーを取り、そしてパンツに手をかけて脱ぎ捨てようとしたとき
「ミナちゃん、こういう試着ではパンツは脱がないんだよー」
「そ、そうなんだ」
いらない恥をかいてしまった。
あわててパンツを履きなおす俺。
「……み、見た?」
「ミナちゃん、もう生えてるんだね」
「おっとなー」
あまり大きくないとはいえ、しっかり自己主張できるレベルの大きさはあると自負している自分自身。
確実に目に入ったであろうそれには一切コメントせず、
毛のことについてだけはやし立てる2人。
それが逆に恥ずかしさを増大させてつらい。
顔を真っ赤にしながら、初めて女性用水着を身につける。
水泳パンツとはぜんぜん違う、独特の締め付けがなんとなく息苦しい。
更衣室内にある鏡の向こうには、鮮やかな青い布地に南国の花が描かれた水着を着た
『大きくなった妹』が立っており、俺はどこにもいなかった。
70名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 00:39:23 ID:4KEmNblB
「やっぱミナちゃん似合う〜」
「店員さんも呼んで見てもらおうよ」
「え、ちょっと待って……」
2人は勝手に話を進め、カーテンを開けて店員を呼んでしまった。
こんな『男が女子小学生と一緒に女物の水着を着ている』姿を見たら、
きっと警察を呼んだりするに違いない。
……とか思ってたら
「あなたたち小学生でしょ? 似合うわね」
と、全員女子小学生扱いされてしまった。
が、突然店員は俺をじーっと見ると、眉間にしわを寄せて全身をなめるように調べ始めた。
「……うーん、やっぱヘンね」
そうつぶやくと、店員はふとどこかへ行ってしまった。

バレてしまった!
きっと警察を呼びに行ったに違いない。
人生のエンドロールが目の前に流れ始めた……と思ったそのとき、
店員は手になにかを持って戻ってきた。
「あなたぐらいの身長なら、もうちょっと胸がないとね」
水着の隙間から手を入れられて、なんか硬くも柔らかい独特の感触を持つ物体をねじ込まれる。
「うん、やっぱりパッド入れたほうがいいわね」
ねじ込まれたのは胸パッド。
クラスの女子よりも大きなおっぱいがたわわに揺れる。
「わー、ミナちゃん大人っぽいー」
「かっこいいなー」
2人は目をキラキラさせて俺を見つめる。
さっきまであったからかい半分の感情は、今は伝わってこない。
「そ、そうかな……」
似合ってる。とか、かわいい!とか、賞賛の声を浴び続けると
本当にそうなんじゃないかと思えてきて、頭の中心がポーッとなってくる。
こんなにほめてくれるなら、ずっとミナのままでもいいか。
そんな感情すらわいてきてしまう。
「えと……これ、いくらですか?」
71名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 00:40:20 ID:4KEmNblB
夜、ご飯を食べて洗い物を手伝って、寝る前のひと時をベッドの上で過ごす。
傍らには今日買った水着。
はじめて『美奈子』として、自分の意思で買ったもの。
『美奈子』が好んでいた子供っぽいものとはちょっと違う、
なんか一気に大人の階段を上ってしまったような、そんな感覚。
あの後、優子ちゃんも亜美ちゃんも俺をからかいつつも
『ちょっと大きくなった美奈子』として扱い続けてくれた。
母も「今日はずいぶん一生懸命お手伝いしてくれるのね」とほめてくれた。
周りはみんな『美奈子』として、大事に扱ってくれる。
だったら、俺もそれに答えないといけないんじゃないか?
一度そう思ったら、急に『俺』と言っているのが恥ずかしくなってきた。
やはり妹が言っていたように、自分のことを『ミナ』って呼ぶべきなんじゃないか。
ベッドの横に置いてある小さな鏡を手に取って、自分の顔を映す。
「み、ミナは高橋美奈子といいます。ミナは春から小学五年生です」
何度も何度も、小さな声で自分のことを『ミナ』と呼ぶ練習。
恥ずかしいけれども、練習するたびに少しずつ本当の美奈子になっていく。
そんな気がしてきた。
72名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 00:43:04 ID:4KEmNblB
>>67
もうGJですよ!
やっぱ「そっくり同士で入れ替わり」ってのも王道でいいですねぇ
この2人の続き、読んでみたいです

年齢ギャップ+そっくりも面白そうだ
女子小学生と就職活動連敗中の男子大学生が出会って、お互いがそっくりなことに気づく
で、女子小学生が代わりに就職活動すると・・・てな感じに
73名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 03:20:09 ID:PMCY6/v2
>>69
楽しみに待ってました!
続き期待してますよ!
74名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 01:40:34 ID:R3ORP3x7
>>71の続き

朝。まぶしいぐらいにキラキラした朝日が窓から差し込む。
ベッドの傍らには、母……違う、ママが買ってくれた新しいぬいぐるみ。
「おはよう」
ベッドから飛び起きて、白くてふわふわなうさぎさんの頭をなでる。
この子にも名前をつけてあげないと、と思いながら、
ほかのぬいぐるみたちにもおはようの挨拶。
……でも、どのぬいぐるみがなんていう名前か『忘れて』しまった。
お兄ちゃんなら知ってるかな?
そんなことを考えながら、昨日のうちに準備しておいたお洋服に着替え始める。
黒地に赤くキラキラしたロゴがプリントされた厚手のTシャツに、
太ももの上でカットされた半ズボンみたいなジーパン。
そして黒と赤の縞々が特徴的な太ももの半ばぐらいまであるソックス。
昨日までは着るのがいやだったこのお洋服たちも、
今朝は「とってもかわいくてステキなもの」に思えてきて、
着替えもとっても楽しくできた。
最後にヘアピンを留めて、鏡に向かって最高の笑顔。
鏡の向こうの自分もとびっきりのスマイルを返してくる。
やっぱり昨日の夜にやった『ミナになるための練習』が効いたのか、
昨日までの『いやいや妹にさせられた』自分はもういない。
今日からは、胸を張ってミナとして生きていける。
そんな気がしてきた。
リビングに降りると、ママと『お兄ちゃん』がテレビを見て笑っていた。
「おはよう、ママ」
ミナらしく。かわいく。
そんなことを心がけながら、挨拶。
「おはよう、美奈子」
ママはやさしく微笑んでいる。
「おはよう……えと、お……おにいちゃん……」
ありったけの勇気を振り絞って、でも最後のほうはかすれるような声で。
そんな照れくさそうに挨拶する自分を見た『お兄ちゃん』は、
本当の兄のような顔で
「おはよう、ミナ」
と、頭をなでてくれた。
手のひらから伝わる、じんわりとした暖かさとやさしさ。
なんだかうれしくなって、自然と笑みがこぼれてくる。
75名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 01:45:15 ID:R3ORP3x7
>>73
ありがとうございます!

なんか細切れ発表で申し訳ありません
76名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 09:24:51 ID:RAsSQAdL
>>75
失礼ながら、最初は変だとおもってたけど
「自分以外誰もおかしいと思わない世界」だと考えたらいける
ぜひ続けてください。エロい方向も大歓迎です


もちろん他の職人の「他人にバレないように入れ替わり」も素晴らしい
77名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 07:31:52 ID:1MfMuNF9
なんか女同士の入れ替わりスレとかぶってね?
786:2010/05/27(木) 11:44:27 ID:6lm7HLgj
かなり昔の智沢渚優のコミック(確か「蜜色おとぎ話」の収録作品)に、こんなのがあったと記憶している↓
1)11〜2歳くらいの少女、明が正月、父親に連れられて田舎の祖父の家に遊びに行く。
2)祖父の家には周りから隠れ住むようにして暮らす母娘がいて、以前から明はその娘、杏子と友達になっていた。今回、父親についてきたのも、その友達にコッソリ会うため。
3)同年代なのに胸が大きくて綺麗な杏子にあこがれる明。今回は、互いに晴れ着での対面だが、杏子の艶やかな振袖姿を明はうらやましがる。
4)苦笑した杏子は「じゃあ、晴れ着を取り換えっこしようか?」と提案。大喜びする明だったが、振袖を脱いだ途端、杏子の様子が一変し、妖艶に迫られ、幼い身体を弄んでくる。
心では恐れる明だったが、杏子が着ていた振袖の上でその香りに包まれると頭がボーッとして、快楽に身を委ねてしまう。
5)実は、杏子の母は「囲い女」と呼ばれる村の共有妾だった。母が病気で死んだため、今年からは杏子がその役目を果たすことになったのだ。
彼女が着ていた振袖は、母や祖母から受け継いできたもので、囲い女が初めて「女」になる際の儀式用の衣装であり、代々の「囲い女たちの哀しみの念が染みついていると、杏子は語る。
6)杏子の振袖を着せられ、中途半端な快楽に身を焦がされた状態で、暗い部屋に放置される明。ほどなく「儀式」のために村人たちがやって来る。
身に宿る快楽に急かされてか、あるいは振袖に籠る代々の囲い女の念につき動かされたのか、明は「杏子を可愛がってください」と口にしてしまう。
7)「杏子」として村人達に処女を奪われ、輪姦される明。心の中で父や祖父に助けを求めながらも、幼い身体は強引に快楽を教えられ、それを受け入れてしまう。
そして、男たちの中には、ほかでもない祖父や父の姿も……。
8)三が日が終わり、明るい日差しの中、父連れられて家に帰る「明」。そして、それとは対照的に、闇の中に半裸のままぼんやりと座りこむ「杏子」の姿があった。
 (明示されないが、たぶん、ふたりの立場が入れ替わっていると思われる)
……という、誠にココ向きなストーリー。
アレンジを加えてSS化してみようかと思うけど、読みたい人います?
79名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 13:25:04 ID:lYmWvR9Z
職人が増えるのはうれしい
ぜひ投下してほしい
80名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 02:49:27 ID:Wc8MHy/Z
ずっと入れ替わり続けてたら女子中学生、女子高生になるのか・・・(゚A゚;)ゴクリ
81名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 15:47:29 ID:FeYJWsnI
同性よりも異性の入れ替わりの方が好きだな
立場の差のギャップが大きいほど良い
82名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 20:38:43 ID:Q0cv7ImC
>>74 いいね〜めちゃ好みな話だわ
この手のお話は主人公が酷い目に合うていうパターンが殆どなのだが・・・
俺的にはエッチとか無いのが好き
83名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 23:02:26 ID:Wc8MHy/Z
この手の話が掲載されてるサイトってやっぱりそんなにないかな?

ft-2のBBSとか、way2exあたりはブクマしてるのだが
84名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 04:46:56 ID:vzBhRbir
FT-type2の『女の子気分』『あの、もう一つの場所』は自分的には神

しかしその後が読めないのよ・・・更新して!!
85名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 14:11:42 ID:ohVDTB6K
>>83
あとは強制女装少年に「高校生兄と小学生妹の立場交換」とか「小学生堕ち」がちらほら
866:2010/05/29(土) 19:01:51 ID:H9DesAgK
一応書けたので、投下。
※陵辱アリ、注意!

『幼キ華ガ紡グ想イ』

 「──けど、当選できて何よりです、父さん」
 「ま、選挙制度がどう変わろうと、ワシの地盤に揺るぎはしないがな!」

 村一番の地主にして、村会議員でもある渡来家の当主の館。
 その座敷では、大人達が新年早々に生臭い話を笑顔で語り合っていた。

 「……ふぅ」
 そんな「オトナのセカイ」にはまるでそぐわない女の子が、座敷の片隅でこっそり溜め息をついた。
 12、3歳くらいだろうか。正月にふさわしくオレンジ色の振袖を着た愛らしい少女だ。
 キョロキョロとあたりを見回したのち、退屈に耐えかねたのか、立ち上がって座敷から出て行こうとする。
 「どこ行くの、陽向(ひなた)?」
 いかにも盛装という感じのドレスを着た、少女の母親らしき女性が問いかける。
 「ちょっと息が詰まるので、オモテを少し散歩してきます」
 「もうすぐ夜だからな。あまり遠くへは行くなよ」
 「はぁい、パパ」
 父親らしき男性の言葉に素直に返事しながら、少女はこっそり舌を出した。
 (はぁ、やっと抜けれた)
 少女が座敷を出たのを確認してから、彼女の父親に隣の青年が囁く。
 「義兄さん、今日は子供はなしって」
 僅かに混じった非難するような調子に、父親は肩をすくめた。
 「いや、どうしても来たいってあの子が言うんでな……まぁ、バレはしないだろ」
87『幼キ華ガ紡グ想イ』 :2010/05/29(土) 19:02:32 ID:H9DesAgK
 * * * 

 「えーっと……」
 あたしは、玄関を出たあと、そーっと裏口から離れの方へと忍び込んだ。
 パパ達には、この離れには近づくなって言われててるけど……。
 (ごめんなさい、パパ、ママ。だって、約束したの。また、会おうって)
 「月乃(つきの)ちゃーん! 琴宮月乃ちゃーん! いないのォ?」
 この村で唯一人の友達の名前を呼ぶ。

 ──月乃ちゃんと初めて会ったのは、おととしの今頃。
 夜中にトイレ行こうとして、迷って離れに入り込んじゃった時、優しそうなおばさんに声をかけられたんだよね。
 「そう、哲夫さんの娘さんね。おトイレなら、あっちの……」
 頭を撫でてくれたおばさん(月乃ちゃんのお母さん)が、道を教えてくれているところで、心配そうな表情をした女の子が部屋から顔を見せた。
 「……お母さん、そのコ、だぁれ?」
 それが、あたしと月乃ちゃんとの出会いだった。
 この村には、同じ年ごろの女の子は他にいなかったから、あたし達はすぐに仲良くなった。
 お正月とお盆にしか、おじいちゃんの家には来れないけど、ここに来る度に、あたしは月乃ちゃんとできるだけ一緒に過ごすようにしてるんだ。

 「──ひなたちゃん」
 あたしの呼びかけに応えて、月乃ちゃんが出て来てくれた。
 「あ! 月乃ちゃんだ♪」
 「お久しぶりね」
 「月乃ちゃん……キレイ……」
 誕生日も血液型も同じで、背丈もほとんど変わらないのに、月乃ちゃんはあたしなんかより、ずっと綺麗で大人っぽい。
 今も、あたしと同じく晴着の振袖を着ているんだけど、薄桃色の地に水色の雲と色とりどりの花びらを散らしたようなその着物は、月乃ちゃんをいつも以上に大人っぽく見せていた。
 いつもと違って髪の毛も大きなリボンでポニーテイルにまとめているし、薄くお化粧もしてるみたい。パッと見だと、高校生のお姉さんだって言われても信じちゃうかも。
 「ふふ、ありがと。ひなたちゃんも、可愛いわよ」
 柔らかく微笑む月乃ちゃんの表情は、どこか母親であるおばさんに似ている。
 優しそうだけど、ちょっと寂しそうな……こういうのを「切ない」って言うのかな?

 「「あけましておめでとうございます!」」
 とりあえずはふたりで新年のご挨拶。
 どこからか月乃ちゃんが調達してきてくれたお料理と甘酒を飲みながら、離れの一室でふたりでとりとめもないおしゃべりをする。
 「けど、ホント綺麗な晴着……いいなァ、月乃ちゃん」
 話が途切れた時に、あたしは再び憧れの視線を月乃ちゃんとその着物に向けた。
 「アタシのなんて、去年と同じお子様用なのに……」
 溜め息をつくあたしに苦笑する月乃ちゃん。
 「でもこれも、お母さんのお古なの。もう古いのよ?」
 ふぅん……確かに、言われてみればちょっと古めかしい感じはする。でも、やっぱりいいなぁ。月乃ちゃんはそういうのが似合うし。
 「! そう言えば、おばさんは? あっちにも見なかったけど」
 「……母さんはちょっと……」
 口を濁す月乃ちゃんの様子に、あたしもそれ以上は聞けなくなる。
 (ほかの人には話さないって約束だけど……やっぱり気になるよ。
 どうしてこんな外れにひとりでいるのか、とか)
 でも、何となくだけど、月乃ちゃん達のことは人前で口にしちゃいけない気がする。
 だから、あたしも、パパやママにも、ここで月乃ちゃんと会っていることは内緒にしていた。
 「「……」」
 ふたりとも、ちょっと気まずい感じで黙ってしまう。
88『幼キ華ガ紡グ想イ』 :2010/05/29(土) 19:03:22 ID:H9DesAgK
 「ねぇ、ひなたちゃん。そんなにこの晴着が気に行ったのなら、着てみない?」
 話題と雰囲気を変えようと思ったのか、月乃ちゃんがそんなことを聞いてきた。
 「え!! ホント? いいの?」
 もちろん、そうさせてもらえるなら嬉しいけど……。
 「あ、でも帯とか……」
 「大丈夫、私、着付けできるから」
 「すごい! じゃあ、月乃ちゃん、取り替えっこしよ!」
 「とりかえっこ?」
 「うん、月乃ちゃんの晴着を着せてもらう代わりに、あたしのも月乃ちゃんが着て見せてよ!」
 「──そう、そうね。それも……いいかもしれない」
 月乃ちゃんがコクンと首を縦に振ってくれたので、あたしはウキウキしながら着物の帯をほどき始めた。
 ──月乃ちゃんが、「取り替え……いえ、入れ替わりか。もしかしたら……」と呟いていたことに気付かずに。

 帯をほどき、振袖を脱いで、まずはふたりとも白襦袢姿になる。
 「わぁ! 月乃ちゃん、ムネ大きいね!」
 「そ、そう?」
 襦袢越しにも月乃ちゃんのオッパイが、かなり大きめなのがわかる。B……ううん、Cかな。うちのクラスで一番大きい麗華ちゃんと同じか、それを上回るかも。
 まずは、着付けのできる月乃ちゃんが、あたしの振袖を着た。
 幸い背丈は同じくらいだし、胸以外の体型もそんなに変わらないから、和服なら問題なく着れるみたい。
 せっかくだから、髪飾りとリボンも交換。
 お化粧を落とし、髪の毛を下ろして、桃の花の形をした(ちょっと子供っぽい)髪飾りを付けると、あの月乃ちゃんも結構年相応に可愛らしく見えるから不思議。
 「……それは、私がおばさんくさいってことかしら? #」
 「わぁ、そうじゃなくて、大人っぽくて素敵って意味だよ〜」
 じゃれ合いながら、今度はあたしのお着替えの番。
 髪の毛をさっきまでの月乃ちゃん同様ポニーテイルにして、リボンで結わえる。
 白粉をはたいて口紅を引くだけの簡単なものだけど、月乃ちゃんが私の顔にお化粧もしてくれた。
 (着物を着てからだとおしろいの粉が落ちるから、お化粧は先にしておくんだって)
 鏡の中には、いつものあたしとはまるで違う、大人びた女の子がびっくりしたようにこちらを見返していた。
 「あれ?」
 でも、この顔……どこかで見たことがあるような……。
 「そうだ、月乃ちゃん!」
 そう、髪を結い化粧をしたあたしは、さっきまでの月乃ちゃんに似ている気がする。
 そう思ってよく見れば、いまの月乃ちゃんも、いつものあたしっぽいかも。
 「別に不思議なことじゃないわ。私たち、親戚だもの」
 「あ、そっか。そうだよね」
 言われてみればその通りだ。
 「──じゃあ、はい!」
 月乃ちゃんが、自分の振袖を肩からかけてくれる。
89『幼キ華ガ紡グ想イ』 :2010/05/29(土) 19:04:00 ID:H9DesAgK
 (あ…れ、この香り……)
 何だろ………着物から漂ってくるこの匂いを嗅ぐと……なんだかボーッとしてくる。
 「──ねぇ、ひなたちゃん。ムネってね、大切なのは大きさや形じゃないのよ」
 帯を締めるためにあたしの後ろにいた月乃ちゃんが唐突にそんなことを言いだした。
 「え? きゃんっ!?」
 背後から月乃ちゃんの手が伸びて、あたしのムネを触ってる!
 「やわらかさ、さわり心地……そして、どれだけ感じるか」
 ──ムニムニ……
 「あ……!」
 月乃ちゃんの手つきはとても優しくて、たちまちあたしは気持ちよくなってしまい、その手の動きに逆らえない。
 「ひなたちゃん、感じやすいみたい」
 ──つつつ……ピチョ
 「やぁっ! だ、だめぇ!! 杏ちゃん!」
 月乃ちゃんの左手がわあたしのムネを揉んでるあいだに、乱れた着物の裾から右手が差し込まれて、太腿を撫でる。そしてさらにその奥も……。
 「い…いけないよぉ……こんな…こんなこと……」
 ようやく、あたしは制止の言葉をひねり出したけど、その語調はか細く弱弱しい。
 「ふふ、自分でシたこと、あるんでしょ?」
 「あ……」
 カァッと頬が熱くなる。
 そりゃ、あたしだって、次の春から中学生だし、そういうエッチなコトにも興味はある。
 お、おなにーだって、去年の夏くらいから何度もしちゃってるけど……
 「は……あ……」
 けれど、自分以外の人にアソコを触られるなんて、思ってもみなかった。
 そして、それが、こんなに気持ちいいなんて。
 「もう……こんなに♪」
 クスリと笑った月乃ちゃんは、あたしを広げた振袖の上に押し倒す。
 「あぁ、月乃ちゃぁん♪」
 (あ……あたし、なんか変だよぅ……)
 月乃ちゃんの着物の上にいると……エッチな気持ちが止まらない……もっともっとシテ欲しくなる。
 「あ、あんっ! は……あんっっ や…あ……ふぁ…………あ…ふ……ああ!」
 「──ひなたちゃん……私のお母さんね。」
 月乃ちゃんは、あたしの身体をまさぐりながら、ポツポツと自分の身の上を話し始めた。

 月乃ちゃんの家系の女は「囲い女」と呼ばれていること。
 月乃ちゃんのおばぁさんも、お母さんも、この村で「特殊なおもてなし」をすることが仕事だったこと。
 去年の11月に、お母さんが病気で亡くなったこと。
 「──それでね、今度は私の番なの」
 「はぁ、はぁ……番……なに…が……?」
 話しながらも手を休めない月乃ちゃんのおかけで、あたしはまともに考えることすらできないけど、なぜかその「私の番」という言葉は気にかかった。
 「──お母さんからからこの着物と……役目を受け継ぐこと。初めての時は、必ずこの晴着を着るのが習わしなの」
 「……はんっ……ひっ……あっ! あっっ!」
 初めて? 何を初めてするの?
 「昔から…ずっと……」
 耳元で囁いているはずの月乃ちゃんの声が、なぜか遠くから聞こえるような気がする。
 「お母さんも、おばぁちゃんも……沢山の女の人の哀しみが……
  そのひとつひとつが染み込んでいるの」
 ──いえ、違う。この声は、あたしの頭の中に直接響いてくるの!?
 「ああんんっ!」
 「この晴着は、証しなの……」
 それが何の「証し」なのか聞くことも出来ず、今まで体験したこともない気持ち良さとともに、あたしの意識は暗闇の中に閉ざされた。

 * * * 
90『幼キ華ガ紡グ想イ』 :2010/05/29(土) 19:04:28 ID:H9DesAgK
 薄暗い部屋の中で、いまだ色濃く残る快楽の燠火に体中を火照らせながら、振袖姿の少女がひとり、熱い吐息を漏らしている。
 「しかし、そんな幼い子、平気かぁ? あまり無茶はできそうにないわい」
 「大丈夫ですよ! 体はもう十分オトナです!」
 廊下の向こうから、複数の男達が、ガヤガヤと話しながら、こちらに近づいてきているようだ。
 ガラリ、とふすまが開かれた。
 「囲い女もこやつで最後か。精々大事に扱ってやろう」
 部屋に足を踏み入れた壮年の男性が僅かに感慨深げに言うが、続いて入って来た男達が、ニヤニヤと下卑た表情を浮かべる。
 「!? ほぅ……成程、これは侮れませんな」
 「ひとりで何してたんだか……
 女の子座りをした少女の着物の裾ははだけ、襟元も大きく乱れている──そう、まるでひとりで体を慰めていたかのように。
 さらに頬を赤らめ、熱い吐息を漏らしているのが決定的だった。
 ホンヤリしていた少女は、男達に気づき、漠とした視線を向けると、ノロノロと正座し、頭を下げた。
 「……お待ちしておりました。
  どうか……月乃を……可愛がってください」
 そんな言葉を呟いた瞬間、僅かに少女の心にさざ波が立つ。
 (あ…あたし、違う……月乃じゃ、ない……)
 そんな少女の心と裏腹に、体は自然に男達に媚びるような動作を見せる。
 少女の痴態に辛抱できなくなったのか、数人の男達が取り囲むようにして彼女の体を弄び始める。
 幼い肢体のあちらこちらから送り込まれる刺激に翻弄されながら、少女は唯一の希望となるはずの思考を、なんとか手繰り寄せようとする。
 (あ…あたしは……あたしは…ひなた)
 その名前を思い出すと同時に、一気に思考が明晰になるが、むしろ茫洋とした思考の霧に沈んでいた方が、彼女にとっては幸せだったかもしれない。
 なぜなら、時すでに遅く、彼女の身体は何人もの男達の唾液と精液に塗れ、また、強制的に送り込まれた快楽にからめ取られた体は、ロクに抵抗を示すことすらできなかったのだから。
 (やぁっ……怖い……)
 心の隅ではそう思いながらも、「月乃」は両掌で男根を握り、口中に突きこまれた逸物を夢中になってしゃぶり、幼い秘所を舐め上げられて、歓喜の声をあげる。
 (助けて……おじさん……おじいちゃん……パパァ!)
 少女の心の「声」は、何処にも届くことなく、ついに破瓜の時が訪れた。
 「あ゛あ゛ーーーーーッ!」
 当初こそ痛みに絶叫した少女だが、しかしその心が絶望に染め上げられるのと反比例して、身体がより敏感に、快楽に対して貪欲に覚醒していく。
 ほどなく、「月乃」と呼ばれる少女は、自分から腰を振り、男の精を舐めすすることほ望む淫らな「女」へと変貌していくのだった。

 * * * 
91『幼キ華ガ紡グ想イ』 :2010/05/29(土) 19:05:04 ID:H9DesAgK
 1月2日の午後。この屋敷に集った親族達の一部は、少し早いが自分の家へと帰り支度を始めていた。
 ひなたの両親もこの日に帰ることを決めていた。
 「世話になったな」
 「いえ、そんな……」
 「功二さん、今度遊びにいらしてね」
 「はい、義姉さん」
 義理の兄弟達との月並みながら心温まる会話からは、あの夜の狂乱の影はうかがえない。
 当然だろう。彼らにとって、アレは当たり前の出来事なのだから。
 「ひなたー、早くしなさい!」
 「はぁい!」
 母親の声に急かされて、トントンと靴のつま先を地面に打ちつけながら、玄関から少女が姿を見せる。
 フリルとレースに彩られた膝丈の真っ白なワンピースの上から、暖かそうな真紅のコートを羽織り、足元は白のハイソックスとくるぶし丈のショートブーツを履いている。
 着物姿の時と異なり、そういう格好をしていると、彼女も「年相応に」可愛らしい印象だ。
 少女は両親にじゃれつくようにして、車に乗り込み、ひなたの家のある町へと帰って行った。

……
………
…………

 薄暗い部屋の中で、少女はノロノロと身を起こす。
 「……いまの…は…」
 夢に見た光景が現実にあったことだと、直感的に彼女は悟っていた。
 「あれ……誰?」
 少女は「ひなた」と呼ばれていた。
 それはおかしい。「ひなた」とは自分の名前のはずだ。
 けれど、父も母も、叔父も祖父も、周囲の親戚の誰ひとり、彼女が「ひなた」であることを疑ってはいなかった。
 (じゃあ、あたしは……?)
 ひなたのはずだ。けれど、「ひなた」はお家に帰ってしまった。
 なのに、ここにもいる自分も「ひなた」だとすると、「渡来陽向」という人間がふたりいることになる。
 (つまり……あたしは、ひなたじゃ…ない……?)
 それなら何者だと言うのか。

 ──どうか……月乃を……可愛がってください

 「あの時」、自分が口にした言葉が少女の脳裏をよぎる。
 「そっか……あたし……ううん、私、月乃なんだ」
 それが真実か否かはもはや問題ではなかった。
 周囲がそうと判断し、少女自身がそのことを認めたいま、少女はもはや「琴宮月乃」以外の何者でもありえないのだから。

 ──さよなら、あたし。

 「月乃」の頬からひと粒だけ、涙が零れた。

-終幕-
---------------------------------------
以上。78で述べたコミックからの翻案です。ちなみに単行本は「蜜色に染めて」でした。
ある意味、黒い作品ですが、背徳的な興奮に背筋をゾクゾクさせていただければ恐悦至極。
にしても、暗い部屋で輪姦する方はともかく、日差しの中で我が子(じゃないこと)に気づかないって、どんだけ〜というツッコミは「フィクションですから」。
92名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 22:36:13 ID:B5ufYKvR
ぞくぞくするねぇ
93名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 01:52:18 ID:AWFbVUvw
いいねぇGJ!
94名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 09:37:06 ID:xpUXVfjs
とりあえずgj
95名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 02:54:28 ID:FRg+IDV/
投下待ち保守
96名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 22:58:05 ID:5ZifNx/C
どか〜ん!!と行ってちょ
97名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 08:02:50 ID:7j2eJjp6
保守って次の投下を待つぜ(`・ω・´)
98名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 22:49:20 ID:SjU5PyT/
あれ?保守が書き手に・・・
99名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 00:30:18 ID:NXJownzF
>>74の続き
春休みも最後ということで、今日は一日お家のお手伝いをすることに。
まずは掃除。
『お兄ちゃん』時代は手伝ったことがなかったけれども、
今は『美奈子』なので一生懸命お手伝い。
階段を雑巾がけしたり、リビングに掃除機をかけたり。
もちろん、自分の部屋や『お兄ちゃん』の部屋の掃除も忘れない。
『お兄ちゃん』が模様替えしたせいか、
自分の部屋だったときとはぜんぜん雰囲気が違い、なんだか居心地が悪い。
そういえば!と、兄時代に隠し持っていたエロ本がどうなったか気になって探してみる。
机の一番下の引き出し。その底に仕舞いこんだ大事なお宝。
その数3冊。
懐かしくもまばゆい貴重品の数々。
が、なにかがおかしい。
最後に見て仕舞ったときと、順番が違っている。
はっとして本をペラペラとめくると、クセがついて開きやすくなっていたページ以外にも
折り目のようなものがついていた。
1冊だけじゃなく、すべての本に。
まるで所有権を主張するかのようにつけられた折り目に怖さを感じ、あわてて本を閉じて引き出しの奥へと仕舞いなおす。
そしてバレないように祈りつつ、掃除に戻るのだった。
掃除が終わると、続いてお使いを頼まれ、近所の商店街に夕飯のお買い物へと出かける。
頼まれたものはキャベツやたまねぎ、ひき肉などなど。
お使いのお駄賃はマンガ雑誌の『はろぉ』。
本当の美奈子ならば跳んで喜んだだろうけど、
まだ『ミナ』歴が浅い自分にはいまいちピンとこない。
でもきっと、これも『ミナ』になるために必要なことと割り切って、
ありがたくお駄賃をもらうことにした。
でも、ちょっと母……ううん、ママはミナに甘すぎるかもしれない。
ここ数日で、いったいいくらミナのために使ってるのだろうか。
100名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 00:31:38 ID:NXJownzF
商店街へと続く、いつもの道。いつもの風景。
数日前と同じように、出会う人はみんなミナとして扱ってくれる。
たまに「あれ?」っという顔や、不思議そうな表情をしている人もいるけど、
すぐに普通の顔になる。
みんな大人だから「触らぬ神に祟りなし」というスタンスなのだろう。
お肉屋さんでひき肉を八百屋さんでキャベツとたまねぎ、にんじんを買い、
最後に本屋で『はろぉ』を買う。
キラキラ星が輝く大きな目を持つ女の子が元気に笑う表紙に、
心の片隅に残っている「春から高校生になる男子」が、強烈な恥ずかしさを訴えてくる。
でも、お駄賃として買ってあげると母、いやママが言っていたということは
裏を返せば「ちゃんと美奈子として買って帰ってきなさい」ということなんだと思う。
恥ずかしさと義務感の板ばさみになって数分、
ようやく踏ん切りがついて『はろぉ』を手に取った瞬間、
横から声をかけられる。
「あ、ミナちゃん!……だよね?」
優子ちゃんでも、亜美ちゃんでもない、見たことない女の子。
たぶん、いや、確実に『美奈子』の友達。
似ているけれども、顔つきや身長が大きく異なる『美奈子』を目の前にして、
大きく戸惑ってる感じだ。
「こ、こんにちは……」
無難に挨拶。
しかし、彼女は自分を不審そうな目で見つめてくる。
「……本当にミナちゃん?」
「う、うん……」
なにか言いたげな瞳で、じぃ……っと顔を覗き込んでいる女の子。
「うーん……なんか違う気がするんだけどなぁ……」
「そ、そうかな? じゃ、急いでるからまたね!」
あわてて『はろぅ』をレジに持っていき、かっさらうようにして買うと走って店から飛び出した。
バラされる。
でも、なんで逃げなきゃいけないのだろう。
いまは自分が『美奈子』なんだから、もっと胸を張って『美奈子』だと主張すればよかったのかな。
101名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 07:58:13 ID:eXz8x/an
どんどん妹に染まりつつも葛藤がみられるのがいい!
gj!続き楽しみにしてます!
102名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 20:49:53 ID:Z3xKV41I
お疲れさま。
妹化への道を駆け足で駆け抜けつつある元兄。どんどん障害を乗り越えて突き抜けちゃえ。
103名無しさん@ピンキー:2010/06/07(月) 22:19:38 ID:YhjcXRMA
やっぱり人少ないなあ(´・ω・`)
104名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 00:04:37 ID:Dpq8vJXx
ニッチすぎるからねぇ
書き手さんも少ないし

とりあえず妄想だけ書き連ねるってのもいいかもなぁ
105名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 00:58:25 ID:1LrPMTwj
俺も妹の妹になりたかった。
106名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 19:22:00 ID:gprDYqFm
ここで新しい属性に目覚めてしまったんだが
この手の読み物って本当に見つからないな(´・ω・`)
107名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 02:52:19 ID:9b70qWdE
>>100の続き
息を切らせながら玄関に飛び込み、買い物かごをママに押し付けて自分の部屋へと逃げ込む。
そしてぬいぐるみに顔をうずめるようにして、本屋での出来事を思い出す。
学校で顔を合わせるはずの女の子が見せていた不審な目つき。
明日からずっと、ああいう視線に晒されなきゃいけないのかと思うと、
胸の奥に重い空気が詰まったようなどんよりした気分に襲われてしまう。
「どうすればいいのかな……」
目の前の大きなうさぎさんに語りかけてみるけど、
ただただ優しそうな視線を返してくるだけ。
「だよね……答えてくれないよね」
ふかふかのぬいぐるみを思いっきり抱きしめる。
柔らかな抱き心地と肌触りが、悲しみに覆われていた心が少しだけ癒された。
「そうだ。『はろぅ』買ったんだっけ」
初めてだけれども『いつも読んでる』少女マンガ雑誌を手に取る。
アクセサリーとか、別冊マンガとか、いろいろついている付録をはずし、
やけに分厚い雑誌のページをめくり始める。
瞳がキラキラした女の子たちが恋にがんばるマンガが多く、
「こんなのが面白いのかな」と思ってしまうものばかり。
でもいつも読んでた週刊少年誌もバトルしてるものばかりだから、
これはこれで慣れると面白いのかもしれない。
そしてマンガに没頭していくとフシギなもので、
だんだんと作中の女の子たちの心情と自分の感情がリンクしてきて
ライバルの女の子に対して「ムカつく!」とか、
ヒロインが憧れている同級生に「かっこいい!」とか、
そんな感想が自然にわきあがってくる。
両想いなのにすれ違い、ケンカしちゃう2人にイライラしながら、
どんどんとページをめくり続ける。
こんなにハラハラしながらマンガを読むのは、もしかしたらはじめてかもしれない。
クライマックスに向けてムードが高まってくると、
胸の奥がどんどん熱くなっていくのがわかる。
『……お前のことが好きなんだ!』
『……あれ、うれしいのになんで涙が……』
桜の花が風に舞う校庭の片隅で、とうとう告白されてうれし涙を流すヒロイン。
きゅん!
胸の奥でなにかが締めつけられるような音がしたと同時に、
見開きで抱き合ってキスをする2人の上に、ぽつりぽつりとなにかが零れ落ちていった。
嬉しいわけでもない。悲しいわけでもない。
ただ心の底から感情を揺さぶられ、知らず知らずのうちに涙を流していたらしい。
恋愛マンガを読んで泣いてしまった……なんて、恥ずかしくて家族に知られたら……
「美奈子ー。そろそろ夕飯の手伝いしにきてー」
突然部屋のドアが開いて、ママが入ってきた。
マンガを読んで涙を流している自分を見てママは最初驚いていたけど、
何も言わずに優しく抱きしめてくれた。
包まれるような暖かさとかすかに聞こえる心臓の音が心地よくて安らかな気持ちになったのに、
なぜか涙はとめどもなく溢れてきて、大声を上げて泣いてしまった。
その間、ママはただ微笑んでミナのことを受け入れ続けてくれていた。
108名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 02:53:10 ID:9b70qWdE
一通り大声を上げて泣いてすっきりした後、
「泣きすぎて目が真っ赤よ。かわいい顔が台無しね」
なんてママはいいながらおでこに軽くキスをしてくれた。
そして言われるがまま顔を洗って、夕飯のお手伝い。
たまねぎのみじん切りを炒め、ひき肉と卵とパン粉とあわせて一生懸命こねる。
ひき肉の形がなくなるぐらいまでこねたら、今度は手の中でキャッチボールしながら
ハンバーグの形に仕上げていく。
家族4人分を形作ったら、今度はじっくり焼き上げていく。
肉の焼けるおいしそうなにおいが鼻をくすぐり、おなかがぐぅと鳴いた。
「あら、今度はこっちがないたのね」
「いわないでよ」
軽口をたたきながら、ママと楽しくお料理の時間。
仕上げのソースや付け合せのサラダはママの手作りだけど、
気がつくとハンバーグはほぼ1人で作ってたことに気がつく。
家庭科は成績悪くないけど、まさかこんな上手くできるなんて。
焼きあがったハンバーグをテーブルに並べていると、ちょうどのタイミングでパパが帰ってくる。
「おかえりなさいー」
「美奈子、ただいま。料理手伝ってたのか。
 ママの邪魔ばかりしてたんじゃないのか?」
「そんなことないもん」
一生懸命、ミナの口調を真似ながらパパにお返事。
「そうよー。今日は美奈子がほとんど作っちゃったんだから」
「お、それは楽しみだなぁ」
自分の部屋で明日の入学式の準備をしていた『お兄ちゃん』を交えて、楽しい夕食。
ミナの前には、かわいらしい食器と小さめのハンバーグ。
そして食べ盛りの『お兄ちゃん』の前には、大きめのお茶碗と大きなハンバーグ。
ちょっと物足りないけど、『春から小学5年生の女の子』が食べ過ぎてちゃダメだからガマンすることに。
逆に『お兄ちゃん』はまるで無理して詰め込んでいるかのように、
必死になってご飯を食べている感じだった。
この前まで私だったんだから食が細くても当然なのに、
一口一口食べるごとに本当の兄に近づく!と言わんばかりに、かきこんでいる。
「いやぁ、このハンバーグうまいなぁ」
数日前までの私のような口調で、『お兄ちゃん』がハンバーグをほめる。
「これ、美奈子が作ったのよ」
「え? ミナが!? うっそだー」
「ほんとだってー。ちゃんとミナがこねて焼いたんだもん」
「これだけ料理が上手いなら、美奈子はいいお嫁さんになれるなぁ」
「パパったら気が早いんだから」


暖かで楽しい夕食のひと時も終わり、ママと一緒に食器の片付け。
お皿を洗いながらパパや『お兄ちゃん』にハンバーグをほめてもらったことを思い出し、
ついついほほが緩んでしまう。
「そんなに笑ってたら危ないわよ」
なんてママに注意されたけれども、それでも自分が作ったものがダイレクトにほめられるのはとってもうれしい。
なんというか、兄のときには味わえなかった喜びが『ミナ』にはある。
そう考えるとミナままでもいいかな?とすら思えてきた。
109名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 02:54:42 ID:9b70qWdE
>>101
>>102
ありがとうございます
なんか駆け足すぎる気もしますが、大目に見てくださいませ

>>105
「妹の妹に俺はなる!」
妹養成機関に入って真の妹を目指す兄の物語・・・・・・なんか違うか


>>106
「FT-type2」や「way2ex」ぐらいしかないんですよねぇ、こういうの
あとは強制女装SM系になりますが「強制女装少年」にいくつかある程度
今日から販売された「取り替えっ子〜高校球児な妹と入れ替わった僕〜」
とかマジでツボだったんですが、有料ってのは痛かったです
ああいうDL販売って意外と高いし

というか、やろうとしてたことやられてしまった感じが(´・ω・`)
110名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 07:02:28 ID:Vayd69m/
そうそう。今回のはマジでツボだったわ >強制女装少年
個人的にはおもらしは必要ないけど

だけど高いんだよな・・・70ページ程度で1000円はきつい
もっと売れるようになれば値段も落ちてくるんだろうけど
111名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 00:34:00 ID:5+aA5qFc
そうSM系ばっかなのよね・・・
虐待ないじめでおむつとかおもらしとかとか・・・
もうちょいナチュラルな感じにならないものかしら?と個人的には思っております。
112名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 01:05:46 ID:6WumyWAF
>>111
SM系よりは交換後の日常を描くほうがいいよねぇ
SM系だと低年齢化させていく場合が多くて食傷気味
113名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 08:44:11 ID:BbQJIS0X
まあ、それだけ需要が薄いってことなのかな

基本このジャンルは羞恥プレイとの線引きが難しい
俺は他人の日常生活に紛れ込んでドキドキするくらいで満足するのだけど、おそらく少数派
114名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 20:34:55 ID:aye0h995
自分も「他人の日常を強いられる」のにドキドキする

年上男性←→年下女性が多い気がするけど
年上女性←→年下男性もいいなぁと思う今日この頃
「小学生の男の子」と交換させられたギャル系女子が
ピチピチの半ズボンやTシャツを着させられるとか
115名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 22:25:54 ID:YhunV5bC
羞恥要素無しで、当人以外は一切違和感を覚えてない異常な日常
みたいなのも好きだな
分類すれば自分以外がMCで集団誤認ってことになるのかな
116名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 00:19:56 ID:fHdh1Nex
>>112 ~ >>115
わかりますわかります。
ここうちと感覚同じひと多い(?)な〜
117名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 02:36:11 ID:22BUZfGY
投下待ち保守
118名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 08:27:45 ID:oV2z6g2u
このスレに限らず、TS系やOD系でも同様なんだけど
1)事故ないし誰かの意思で強制的に立場交換される。あるいは逆らえない誰か(上司、姉など)に命令され、嫌々同意でも可。
 ↓
2)その立場に不満だし違和感バリバリだが、バレるとマズいので渋々入れ替わった立場に合わせて演技する
 ↓
3)徐々に現在の立場に慣れ、なんだか楽しくなってくる
 ↓
4)ふと気付くと、ほとんど元の自分のことを忘れ、今の立場での言動が素になってくる

……というパターンが個人的には大好物。上の妹←→兄話は、わりとそれに近いので超満足デス。
119名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 08:51:03 ID:spfJ9NH8
わかりますわかります。

俺も超好物デース。(特に4)

俺べつにエロ必要ない。
120名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 12:36:29 ID:qJhL+dJo
そういえばまだ話題に挙がってないけど、INQUESTの赤の秘石とかはどうですか?

変則的な入れ替わりとも取れるけど、個人的には大好物だったり
121名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 01:07:32 ID:NG+SsPT3
わたしつるりんどうさんの作品は好きです。
『If I were in You!?』とか萌えました。
でも途中止めが多いですね・・・
122名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 02:57:12 ID:HJvC89OA
細かい投下になるけど、>>108の続き
新しい朝。今日から新学期、新学年。
いつもよりもちょっと早起きして、パンとスープで軽めの朝ごはん。
そして、普段学校に行く時間よりもずっと早い時間に身支度することに。
今日着る服は、この前買ってもらったリボンがついた細かい花柄のワンピース。
特別なおでかけのときに着ていくための洋服だけれども、
今日という日は自分にとって本当に特別なので、ママの反対を押し切ってこれをチョイス。
いったん下着姿になってからひざ上まである白い靴下を履き、ワンピースに袖を通す。
「ママー。ファスナー上げて」
「はいはい」
自力では上げられない背中のファスナーを上げてもらうと、体にフィットする感じが強くなった。
お店の人いわく「女の子でも着られる人が限られるほどに細いワンピース」らしいけど、
そんな大変な洋服が着られるなんて、自分はなんかすごいんじゃないかと思えてくる。
ファスナーを上げてもらったあとは、すそを直したり袖のしわを伸ばしたりして洋服の形を整えていく。
腰の部分が細いワンピースだけあって、見た目だけならば完璧に女の子らしいライン。
数日前までは嫌々着させられていたこの服も、今は着るだけでフワフワした楽しい気分になってくる。
「学校に行くのにゴテゴテしたリボンはおかしいから、今日はこれね」
ママが額よりもちょっと上ぐらいに、レースでできたヘアバンドをつけ、髪型を整えてくれた。
「はい、できあがり」
鏡に映る自分は、昨日よりも一昨日よりも『美奈子』だった。
着替えを終えると、ワンピースといっしょに買った白いテカテカした靴を履いて玄関の外へ。
そこにはカメラを持ってニコニコ笑うパパと、制服に身を包んだ『お兄ちゃん』が立っていた。
「よし、記念撮影だ」
頭ひとつぶん以上大きい妹と、まだあどけない少女の面影を残す兄。
背丈と格好、立場がアンバランスな兄妹の様子を、パパカメラマンは手にしたカメラに次々記録していく。
「こんなもんでいいだろ」
そう言ってパパは一仕事やり遂げたような笑顔を見せる。
「ささ、そろそろ学校行かないと遅れちゃうわよ」
気がつくと、ママが赤いランドセルを持って玄関先に立っていた。
「ママたちは、『お兄ちゃん』の入学式についていくから、鍵は持っていってね」
「うん、行ってきまーす」
初めてなんだけど初めてじゃない真っ赤なランドセルは、背負うとちょっと小さく感じた。
123名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 03:06:22 ID:HJvC89OA
数年ぶりに歩く朝の通学路は、もう小学生でいっぱいになっていた。
自分と同じぐらいの身長の男の子や女の子も多く、明らかに浮いた存在にならなくてちょっと安心する。
「ミナちゃんおはよー」
振り返ると、そこにはにんまりと訳知り顔で笑う優子ちゃん。
「今日もかわいいカッコだね」
「あ、ありがと……」
「ホント、数日前まで……」
「こ、こんなところで言わないでよ!」
「あ、ゴメンゴメン」
本当にわかってるのかどうか怪しいけど、優子ちゃんは顔の前で両手を合わせて謝ってくる。
笑ったり。ちょっと頬を膨らませたり。
そんな他愛のない話をしながら2人で仲良く学校までの道を歩く。
「おはよー優子ちゃん……と、ええと……誰?」
向こうの道からやってきた女の子が、優子ちゃんに怪訝そうな顔で聞いてくる。
「誰って、ミナちゃんじゃん」
「え、ミナちゃんってこんなに大きかったっけ?」
「とにかく、ミナちゃんって言ったらミナちゃんなの! ね、ミナちゃん?」
「う、うん……」
「まぁいいや。ところで、昨日でた『はろぅ』読んだ?」
「うん、読んだ読んだ」
「『チョコレート同盟』、面白かったねー」
思わず感動して涙まで流しちゃった、あのマンガのことだ。
読んだ感想を話し合いながら3人で登校。
教室につく頃には、途中で会った女の子――明日香ちゃんも、
自分のことをすっかり美奈子として扱ってくれるようになっていた。
124名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 08:46:08 ID:sFga1ih1

大分染まってきましたね(・∀・)ニヤニヤ

>>120
赤の秘石は俺も好物だわ
進むのは遅いけど描写が細かいのは良いな
どうせ途中で飽きて別の作品に手をつけるんだろうけど(;´Д`)

あとは首のすげ替え系も好きなんだが、もっと少数派か?
125名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 01:14:33 ID:DmUFuMuP
>>124
女同士モノだけど、ココにあったよ↓
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1267807016/85-
126名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 09:34:59 ID:eox8vFNJ
>>125
これはこれで良いな。稀に見る良作
脳内で勝手に父娘に変換してしまったw

このスレも今後に期待(`・ω・´)
127名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 22:39:27 ID:jWbPp/xx
指定されたホテルのカフェはすでに満席だったが、
ウェイターに名前を告げるとすんなり席へと案内された。
テーブルには緩やかなウェーブがかったロングヘアの女性が先に座っていて、
俺の姿を見ると静かに微笑んだ。
「横川昭義……さんですね」
「はじめまして……で、いいのかな」
目の前の女性……横川昭義さんはちょっとだけ困ったような顔をする。
「ちゃんと会うのは初めてですからね、『はじめまして』でかまわないでしょ」
俺は椅子に座りながら、横川さんを軽く観察してみた。
ウェーブがかったロングヘアに、ナチュラルなメイク。
淡いピンクに染まったくちびるがやけに色っぽい。
服装はどちらかといえばおとなしめなスーツだが、
爪は綺麗に整えられてキラキラしたネイルアートが施されていた。
そしてその左手の薬指には、一粒キラリと光る宝石があしらわれた銀色の指輪が。
「これ? 今度ね、結婚するの」
すごい幸せそうに微笑む横川さん。
「おめでとうございます」
「ありがとう」
そして急に黙り込む2人。
周囲のおしゃべりだけがやけに耳につく。
しかし、まさか横川さんが結婚するとは。
だって目の前の女性は、生物学的には完全に男性なのだから。
128名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 22:40:28 ID:jWbPp/xx
確かあれは3年前、駅で階段から落ちたとき、そばにいた中学生を巻き込んでしまった。
天地がひっくり返るほどの衝撃から目覚めたとき、
巻き込んでしまった中学生と俺、お互いの立場が入れ替わってしまったのだ。
立場を交換した相手の名は小島昭義。今は横川昭義としてOLをしているはず。
そして俺は小島由香里として高校生活を謳歌しているのだ。
事故が起きた日以来、一度として会うことなく新しい人生を生き抜き、
今では俺がOLをやっていたなんて自分でも信じられないほど「男としての人生」を楽しんでいる。
たぶん、横川さんも「女の人生」を受け入れて、その結果が婚約ということなのだろう。
その婚約を果たした幸せいっぱいの彼女は、目の前にあるティーカップを手持ち無沙汰にかき混ぜ続けている。
「お母さんは元気?」
視線をティーカップに落としながら、横川さんは唐突につぶやいた。
「ああ、おふくろは元気も元気、毎日勉強しろってガミガミうるさいぐらいだよ」
「ふふっ……相変わらずなのね」
深く、ひとつため息をついてから、ふいに視線をあげて、困ったような笑顔を作る。
「ホントはね、あなたに会ったらお母さんのこととかお父さんのこととか、
 部活は楽しい?とか、勉強は難しい?とか、会ったらいろいろ話そうと思ってたのに、
だめね……なにも出てこないなんて」
なにか遠くのものを見るかのような、懐かしいものを見るかのような、
不思議な目をする横川さん。
その目は、もう帰ってこない『小島昭義としての日々』を見つめているのだろうか。
「今でも……戻りたいんですか?」
「ううん、もういいの。3年っていう時間は、もう戻れないほど私を変えちゃったから。
 それにほら、もう、新しい幸せもつかんだわけだし」
そっと右手の指で左手の薬指に光る幸せの証をなでる。
「いまさら男子高校生をやれっていわれても、たぶん無理。
 何を話していいかわからないし、授業もついていけないし」
「そっか……。
 ま、俺もいまさら戻れって言われても、OLとか主婦とか勘弁だしなぁ」
「あら、OLも主婦もいいものよ?」
「無理無理。絶対無理。期末テストのほうが断然マシ」
顔を見合わせ、ひとしきり笑いあったあと、ふいに横川さんが立ち上がった。
「さて、とりあえず出ましょ? 会うだけが目的だったわけじゃないし」
「え、どこに行くんですか?」
「上に部屋を取ってあるの」
129名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 22:41:15 ID:jWbPp/xx
案内されたホテルの一室は見るからに高そうな部屋で、ちょっと驚いてしまった。
男女2人がホテル……って言ったら、普通、いろいろ期待してしまうものだが、
こんな豪華な部屋ではそんな気分も一瞬にして吹き飛んでしまう。
「気楽にして」
「う、うん……」
どうしていいのかわからず手近なソファーに腰をかけると、クッションが予想以上に沈んで思わず声を出してしまった。
「で、例のものはこの紙袋の中?」
俺がうなずくと、横川さんはうれしそうに紙袋の中身をベッドの上にぶちまけた。
ベッドの上に広がる黒い布の塊――俺が学校で着ている学ランだ。
「へー、こんなの着てるんだぁ」
驚きと感激とうらやましさと、いろいろ混じった声をあげる横川さん。
「じゃ、早速着替えさせてもらうわね」
するすると、着ていたスーツを脱ぎ始める。
上着を、タイトスカートを、ブラウスを、丁寧にしわにならないよう、
1つずつハンガーにかけていく。
その仕草は本当に『女性らしい』色っぽいもので、見ているだけで興奮してきてしまう。
黒いブラジャーに黒いパンティ、それに黒いガーターベルトと、
まるで昨日の夜中にオカズに使ったエロ本のAV女優のような格好が目の前にある。
その事実だけで、股間が熱くなってくる。
「ん? 女の子のハダカ見るのははじめて?」
「そ、そんなんじゃねぇよ」
肉体的には女である俺に対して、『女の裸ははじめて?』って何の冗談なのだか。
ただ、自分の体には興奮したことないのは事実で、
やっぱりある意味『女の裸』を見るのは初めてなのかもしれない。
「あ、男物ってボタンのあわせが逆なんだっけ」
ワイシャツのボタンをぎこちない手で留めながら、やけに嬉しそうに笑う彼女。
ズボンを履いて、上着を着て、襟を一番上まで止めると、
横川さんはクローゼットの裏に備え付けてある鏡に向かっていろいろポーズをつけ、
自分の学ラン姿を楽しんでいた。
ポーズをつけるたびに揺れる淡い色のロングヘアと学ランの組み合わせは、
どことなくマンガ雑誌のグラビア企画のような雰囲気を漂わせ、
それがまた俺の興奮を加速させていく。
「ん、やっぱ女の子に学ランは似合わないわね」
自嘲気味に微笑むと彼女は学ランを脱ぎ始めた。
上着を脱ぎ捨てるときの仕草が、そしてワイシャツからはらりと袖を抜くときの姿が、
あまりにも色っぽくてたまらなくなり、気がつくと俺は彼女を後ろから抱きしめてた。
「……もう、がっつかないの。もしかして、まだ経験ないの?」
無言で頷く俺。もしかしたら、耳だけじゃなくて顔まで真っ赤になっているかもしれない。
「か、彼女はいるんだよ!」
必死で取り繕おうとしても、彼女は大人の余裕で軽く聞き流す。
「続きはベッドで、ね?」
ゆっくり、優しく俺の腕を振り払い、彼女はベッドに腰掛けた。
130名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 22:42:00 ID:jWbPp/xx
「女の子はデリケートなんだから、優しくね?」
かつてはずっとつけていたはずのブラジャーの金具の構造がやけにもどかしく、
力任せに外そうとしたところをたしなめられてしまった。
緊張でかすかに震える指先で、慎重に金具をいじくっていると、
ようやくカチリと小さな音が鳴ってブラジャーが外れてくれ、
俺の目の前に生の『女性の胸』が出現した。
「小さいから、あまりじっくり見ないでね」
そういう彼女の胸は柔らかな曲線を描いていて、ピンク色の乳首が恥ずかしそうに自己主張していた。
その乳首を軽く口に含むと、横川さんの唇から吐息が漏れる。
しばらく胸を愛撫していると、彼女の顔は快楽で染まり瞳がうるんできた。
確か本で見たときは……と、続いて彼女の履くパンティに手を掛ける。
レースで彩られた黒いパンティの股間は興奮で膨らんでおり、
その頂点付近にはじわりと染みが広がっていた。
恐る恐るパンティをずり下ろすと、彼女の股間で力強く自己主張する肉棒が現れた。
血管を浮かび上がらせヒクヒクと脈打ちながら、先のほうからねっとりとした愛液がにじみ出ていた。
咥えようかどうしようか悩んでいると彼女は半身を起こし、俺の頬を引き寄せた。
「じらさないの。攻守交替ね」
ふいに唇に柔らかい感触。そして舌を口の粘膜を、じっくりと陵辱されてしまう。
「さ、今度は私の番ね」
横川さんは俺のベルトを手際よく外し、ズボンを下ろした。
そしてトランクスだけになった下半身さわりと撫でると、引っぺがすようにトランクスを奪い去った。
まるで獲物を狙う蛇のような目つきで丸裸になった下半身をまじまじと見つめた横川さんは
自分の顔にかかる髪を軽くかきあげると、そのまま俺の股間にある肉芽を口に含んだ。
同時に、股間から全身に電気が走る。
快楽にあえぐ俺に対して、上目遣いで微笑んだ。
「フェラチオ、気持ちいい?」
これがフェラチオ。エロ本とかでしか読んだことない知識が、また1つ体に刻まれていく。静かな部屋に、ピチャピチャと俺の肉芽を舐める音だけが響き渡る。
突然、俺の中でなにかがはじけるような衝撃が走り、ひざに力が入らなくなった。
ふと見ると横川さんの顔は俺の体液で濡れており、それで初めて「イッた」ということに気がついた。
「やっぱり童貞クンは早いのね。お口だけでも簡単にイッちゃうなんて」
妖艶な笑みを浮かべながら、俺を見つめる。
何度も経験している、大人の女性の貌だ。
「よ、横川さん……」
「ダメ、『昭義』って呼んで」
「昭義さん……」
「さ、来て♪」
「あ、ちょっと待って」
俺はこの日のために準備していた『俺のペニス』を、かばんの中から取り出した。
本当の男ではない俺にとって、今後分身として活躍してくれるはずの大事なもの。
それを股間に装着すると、俺は昭義さんに飛び掛るように抱きついていた。


初体験っていうのはみんなそういうものなんだろうか。
それから先は必死に腰を振り続けて、昭義さんにたしなめられたことぐらいしか覚えていない。
一通りの行為が終わると、昭義さんは俺に自分が着てきた女性物のスーツを着るように促した。
普段来ているものとは違う合わせのシャツのボタンを留め、
タイトスカートを身にまとい、ジャケットを羽織る。
3年ぶりに身に着ける女性物の服はなんだか落ち着かず、今すぐ脱ぎ捨てたい衝動に駆られた。
「ふふ、なんか女装してるみたいね」
鏡の向こうに映る俺の姿は、男が無理をして女装しているようにしか見えなかった。
その姿はあまりにも情けなく、『俺はもう男なんだな』と痛感させられた一瞬だった。
131名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 22:43:10 ID:jWbPp/xx
「由香里ー! はやくー」
「そんなに急がなくても間に合うって!」
昭義さんとの初体験から2週間。
あれで俺の人生がなにか変わったということはなく、いつもどおりの日常が流れていくだけ。
ただ1つ変わったところは、「今度のデートで恋人と絶対ヤッてやろう」という決意をしたことぐらいか。
そんな決意も知らず、かわいい彼女は話題の単館上映の恋愛映画に胸をときめかせてながら、
繁華街から少し外れた路地を楽しそうに歩いている。
「あ、結婚式だ!」
ふと足を止める彼女の視線の先には、
いまチャペルから出てきたばかりの新郎新婦が参列者に祝福されていた。
この世の幸せをすべて独り占めしているかのような笑顔を見せる花嫁は、
他でもない昭義さんだった。
そうか、今日が結婚式だったのか。
3年前までは男子中学生だったとは思えないほど綺麗な花嫁は、
白いウェディングドレスをなびかせながらキラキラと輝いていた。
ふいに花嫁は手にしたブーケを高々と掲げると、満面の笑みで天へと投げた。
それを手にした人は次の花嫁になるといわれるそれは、放物線を描き、そして……。
132名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 22:46:40 ID:jWbPp/xx
おしまい。

>>123の続きを書こうと思った瞬間、電波を受信したので
>>2の続きを書いてしまった
続きを書く予定じゃなかったのになぁ


>>124
赤の秘石、いいですね!
インクエストなんて訪問したの何年ぶりだろ

>>125-126
挿げ替えもの!
こういうのもいいなぁ

父娘の挿げ替えとか超興奮する
133名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 23:41:16 ID:uyMHkIx3
>>132
GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
いきなりの3年後という展開に驚きつつ、
2人の変化がツボすぎて悶え死にそうww
いいもの読ませてもらいました、ありがとう!
次回作に超期待してますよぉ!!
134名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 00:51:40 ID:gsm1wxR8
>>132
ええい
個人的に一番見たかった物が来たうえ
本人は続ける気がなかったとか
とにかくGJだGJ

綺麗なおねえさんな少年と童貞スケベ少年な女性と
逆転した体と行動のギャップの描写が見事で一瞬どっちがどっちだっけと思ったくらい
感服しましたよ、ええ

慣れない化粧をして将来の旦那様にどぎまぎするようになる少年とか
裸の女が頭から離れずAV女優でヌイてしまった女性とか
この三年間の相手の立場に少しづつ染まっていくシーンも読んでみたいなー
135名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 01:51:39 ID:RXNp3T8+
>>132
入れ替わり妙味につきる良い作品でした
最近こういう作品が少なくていけない
本当にありがとう



ところで、別スレの話で恐縮なんだが作者さんはひょっとして男体化スレ初期の頃に館モノを投下してた◆GW6EJiheqsさん?
136名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 11:11:54 ID:xthCnaDH
乙〜
これはいいぞ!もっとやれ!

女子中学生×サラリーマンてのも想像したらゾクゾクするな
137名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 20:03:48 ID:gIdEbZa+
いいなあこれ。
つるりんどうさんの三年経ってみたいに変わっちゃった感が強調されてて実に良い。

DarkRosesとかespritとかの時代のTS小説をおもいだしたよ。
らんおうさんのミスキャストとかフレッシュイアさんのとりかえっことか良かったなあ。
そういえば風祭さんの変心も該当作?
昔からのTS作家はこの属性持ち多そう。

それはとにかくグッジョブです。
138名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 21:01:18 ID:8P5zCZS/
アダルトTSF支援所の『記憶の中の僕』も該当

3年ていう月日の流れがそうさせるのか〜3年・・・3年て云えばリアルでも性転換できる月日だ
139名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 22:58:45 ID:D/fDo6Jy
家族も寝静まった夜中、勉強している振りをしながら高橋に借りたDVDのパッケージを眺めては
袋にしまいなおす行為を何度も繰り返す。
悩んでは袋から出し、また悩んで袋にしまう。
「……なにやってるんだか」
深く、大きくため息を吐く。
高橋から借りたDVDのパッケージには『女子校生ごっくんスペシャル Vol7 あかり裕香』とあり、
本物の女子高生にしてはちょっとだけケバい女の子が、制服に身を包んで微笑んでいる。
裏側はDVDの内容だろうか、さまざまな格好で複数の男とエッチをしている女の子が映っていた。
『ほら、これ。斎藤にすげー似てるだろ? 本人だって想像してオナると最高だぞ』
高橋の言うとおり、パッケージの女の子は、同じ水泳部の斎藤さんによく似てる。
成績優秀、スタイル抜群。さらに学校でも有数の美人で、
ファンクラブまであるという彼女がこれでもかとエロいことをしてくれる。
確かに、男だったら誰しも夢に見たシチュエーションだろう。
だけど、自分は今でこそ男子中学生をやってるけれども、数ヶ月前まではOLをしていた女性なのだ。
こんな、性欲をもてあました男向けのアダルトビデオなんて、まったく興味はない。
だが、しかし……。
あの中学生離れしたおっぱいとハートを締め付けるようなかわいらしい笑顔が、
DVDのパッケージにオーバーラップして頭から離れない。
「きょ、興味ないけど、高橋に感想言わないといけないからな……」
誰も聞いていない言い訳をしながら、DVDも見られるゲーム機にAVを入れる。
音量でばれないように、イヤホンをするのも忘れない。
一連の「親に隠れてエッチなビデオを見る男子中学生」っぷりに、
思った以上に自分が環境に馴染んできちゃってるんだな、と苦笑いしながら、再生ボタンを押す。
140名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 22:59:43 ID:D/fDo6Jy
コントのようなちゃちな教室セットの中で繰り広げられる、斎藤さんに似た女の子の痴態。
口をすぼめて凄い音を音を立てながら男性器をしゃぶったり、
後ろから胸をもまれたり、おっぱいを使って男性器をもんだり……。
その行為1つ1つが、今日、一緒にプールで練習していた斎藤さんの肢体に重なり、
脳がしびれるほど興奮してくる。
自分は女のはずなのに、なんで。どうして。
もうそんなこともわからないぐらい、目の前の『斎藤さんのエッチな姿』がたまらなく性欲を掻き立てる。
気がつくとパジャマのズボンを下ろし、下半身を触っている自分がいた。
自分の女性自身をこするように、AVを見ながらのオナニー。
でも、違う。なにかが違う。
これは女の行為で、『男のオナニー』じゃない!
どうする?と悩んでいると、ある1つの冴えたアイデアが脳裏にひらめく。
自分の女性器にあるクリトリスを皮ごとつまみ、上下にしごきはじめる。
そう! これ! これだったんだ!
AVを見ていて湧き上がった肉欲を開放する、唯一の手段。
ずっとこすっていると、何かがこみ上げるような感覚が襲ってきて、
体をのけぞらせるようにして絶頂を全身で味わう。
これが高橋が言っていた「シコる」ってことだったのか。
一度やるともうやめられない。
何度も何度も、空がうっすらと明るくなるまで、私はシコり続けるのだった。
141名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 23:00:29 ID:D/fDo6Jy
「おはよー」
明け方までオナっていたため、びっくりするほど寝不足のまま登校せざるを得なかった。
「お、小島。どうだった、あれ……って、顔を見りゃナニしてたか丸わかりだな」
教室に入るなり、高橋が意味ありげに微笑む。
「ああ、最高だったな、これ」
高橋に紙袋に入れたAVを投げ返し、親指を立ててにやりと笑う。
「手に入れるのに苦労した甲斐があったってもんだ」
「ところで、他のを貸してくれないか?」
「お、最近はおとなしかったけど、ようやくエロエンジンに火がついたか?」
「そんなとこかな?」
「じゃあ、こんなのはどうだ?」
高橋がこっそり見せるAVコレクションのジャケットコピーを眺めながら、
次に借りるのをどれにしようか考える。
もう、女子がエロ小島呼ばわりするのも気にならない。
142名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 23:01:22 ID:D/fDo6Jy
>>133
OLになった男の子のほうがやけに「女性」になりすぎたかなぁと思いましたが、
これでよかったのかも(`・ω・´)

>>134
>裸の女が頭から離れずAV女優でヌイてしまった女性とか
こんな感じですか? わかりません

>>135
◆GW6EJiheqsさんではありません
男体化スレには投下しようと思いつつ、一度も・・・・・・
最近(というほど最近じゃないけど)は「世界や常識がエロくなる話」とか、
「女装SS総合スレ」とか「女にお尻を犯される男の子」とかに投下してました

>>136
>女子中学生×サラリーマンてのも想像したら
たまりませんねー
年齢ギャップや立場ギャップがあるほどゾクゾクするのかも
相似形入れ替わりもいいですが

>>137
ミスキャストとかいいですよね!

>>138
最初は5年とかもうちょっと長いスパンを予定してました
143134 :2010/06/18(金) 20:35:09 ID:FWk14JcT
>>142

女の体で男の目覚めだと!?
なにこの大好物この上ない展開!?

ちゃんとスケベ少年化するのに段階踏んでるし
もう最高としか

ともかくGJでした!
144名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 00:08:54 ID:DAl/c3gL
電波の受信状況が悪い(´・ω・`)

なんかいいネタはないじゃろか
145名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 21:29:21 ID:W4roNWAJ
電波障害で立場が変わるんですね。分かります。
146名無しさん@ピンキー:2010/06/20(日) 00:19:52 ID:8HNEOfck
電波障害でギャル系女子高生とくたびれオッサンが入れ替わる

こうですね、わかりません
147名無しさん@ピンキー:2010/06/20(日) 12:02:35 ID:45KD74sv
ギャル好き多いなあw
148名無しさん@ピンキー:2010/06/20(日) 15:01:17 ID:7ka7xfdf
ギャル(発音平坦)からの立場変化はギャップが大きいから萌える
149名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 01:47:58 ID:HEkDvEFp
>>123の続き
5年生といえばクラス替え。
『美奈子』として扱ってくれる優子ちゃんや明日香ちゃん、
それと亜美ちゃんと同じクラスになれればいいなと思いながら、
昇降口で先生が配っているクラス分けの表をもらう。
「おはようございます!」
もちろん、配っている先生に挨拶も忘れない。
先生はちょっとだけ驚いてたけど、すぐに優しい笑顔で挨拶を返してくれた。
クラス分けは……優子ちゃん、亜美ちゃん、明日香ちゃんと一緒!
なんとか新学期からクラスで浮くということはなくなりそうでよかった。
下駄箱に靴を入れて、ピカピカの上履きに履き替える。
先っぽのゴムの色はもちろん赤。女の子色。
いよいよ小学5年生の女の子としてスタートするんだと思うと、ドキドキしてきた。
優子ちゃんと明日香ちゃんに挟まれるようにして、新しい教室の扉をくぐる。
中にはすでに数人のクラスメイトがいて、
春休みに起きたこととか昨日のテレビとかの話をして笑ってる。
その中の1人、亜美ちゃんが手を上げて挨拶してきたので、自分も挨拶を返す。
クラスメイトの何人かが「誰?」って感じで見てきたけど、
優子ちゃん、亜美ちゃん、明日香ちゃんが「何言ってんのよ、ミナちゃんじゃない」とか、
自分のことを美奈子として扱ってくれたので、回りもなんとなくそれに流されて美奈子として認識してくれた。
男子の1人が「こいつ、やけにでけーけど、本当に高橋か?」なんて言ってきたけど、
女子のみんなが「ひどーい!」とか「ミナちゃんかわいそー」とか口々に反論してくれた。
やっぱり女の子ってやさしい!
しばらくすると教室に先生がやってきた。
港先生。
やさしそうな男の先生の提案で、全校集会の前に出席確認を兼ねた自己紹介wすることになった。
出席番号の順番だから自分は41番目……かと思ったけど、女子の出席番号は31番からだったので、
実際は20番目ぐらい?
ドキドキしながら順番を待っていると、先生の声が自分の名前を告げる。
「はい!」
勢いよく席から立ち上がる。
優しそうな瞳、うさんくさいものを見るような目、ガンバレと励ますまなざし……。
いろいろな視線が自分に突き刺さる。
緊張する。
最初が肝心。
すぅ……と息を吸って、元気よく自己紹介。
「高橋美奈子です! よろしくお願いします!」
パチパチと拍手が鳴り、優子ちゃんが「よくできました」と目配せしてくる。
今、この瞬間から小学5年生、高橋美奈子がスタートしたんだ。
この先どうなるかわからないけど、がんばって女の子していこう。
150名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 01:49:01 ID:HEkDvEFp
>>9から続けていた兄←→妹モノも、とりあえずここで終わり?かな?
「着地点」は予定通り(クラスで自己紹介で終わり)なんだけど、
途中経過がなんかよくわからない方向に進んでしまった

次は小ネタでギャル←→おっさんでもやってみようかなぁ
でも他の人のも読みたい今日この頃
数行程度の妄想でもいいので
151名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 18:13:30 ID:vY7birGB
この小学生のお話、毎度楽しみにしています^^

ほす
152名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 20:09:10 ID:q5g1TnhU
>>150
終わりにしないでまだ続けて欲しい(´・ω・`)
153名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 20:17:43 ID:zvCt+Veq
>>150
止めちゃ〜嫌! 3年後希望!
154名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 22:52:04 ID:vY7birGB
高校生と小学生だとリアリティーがないとは言わないが
個人的に兄高校生と妹小学生の方がちょっと現実味があるし、個人的に萌える

中学を卒業してまた入学させられるとか... ^q^
もちろん、転校してな

今度はこういうのでお願いします ><
155名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 01:23:26 ID:Ol3OZzy1
「どっこいしょ」
電車の椅子に座るとき、思わず口をついてしまった。
ちょっと前までは「おっさん」くさいと笑っていたのに、すっかり馴染んでしまった。
残業続きで溜まった疲労を吹き飛ばすように、大きく息を吐いて首を鳴らす。
仲澤佑香。17歳。職業、女子高生……だったのは半年ぐらい前までだっけ?
今は海野商事の営業課長として、毎日残業に追われる日々。
お父さんが直属の部下だから、家に帰ったとき気まずいのが今の悩みかな。
つーか、お父さん、あんなに使えないとは思わなかった!
あれだったら、一般職の佐藤さんを変わりにスーツ着せたほうがよっぽどマシかも。
「ふふっ」
お父さんがOL制服を着て、お茶を配ったりコピーをとったりする姿を想像して、ちょっと噴きだす。
「うわー、あのオヤジ、なんかニヤけてるーキモい」
「あれ、うちらのこと絶対見てるよ!」
ドアのそばにたむろっている女子高生の一団が、私のほうを見て陰口を叩く。
ブリーチ決めてクロームアッシュに染めウルフっぽいロングにしてる子や、カエラっぽいショートにしてる子、
さらにはゴージャスにミルクティーブラウンのエクステつけてキャバ嬢っぽくロングウェーブにしてる子など。
どの子も日サロで焼いた肌に、つけまつげやアイラインでパッチリした目と
グロスが輝いてるぷっくりした唇が印象的だ。
ついこの間まで、自分もあっち側だったんだなぁ……と懐かしく思ってたら、それもそのはず。
よく見ると女子高生たちはユッコやアキ、はーちゃんとか、いつもつるんで遊んでいた子たちだった。
そして、自分がいたポジションには、どう見ても40過ぎのオッサンが無理して女子高生メイク決めて収まっていた。
どっからどうみてもヘンタイにしか見えないんだけど、
周りの人どころか一緒にいるユッコたちも「自分の仲間」として受け入れて
車内の迷惑を顧みず大声で騒いで笑ってる。
あのヘンタイオッサン、どっかで見たことあると思ったら、
こんなことになる数日前、ストレス解消にみんなで痴漢に仕立て上げたしょぼくれオヤジだ。
ワタシが痴漢されたことにして、慰謝料をふんだくろうとしたら財布の中に1000円しか入ってなかった、あのビンボーオヤジ。
ワタシたちに対して、泣いて土下座して、靴までなめた、あのヘタレ。
それが、いまや、ワタシの変わりに女子高生になって、こんな時間までみんなと遊びまわっている。
何をどうやったのか知らないけれども、これがアイツの「復讐」だったんだろう。
その証拠かわからないけど、アイツはワタシに気づいて、にやりと寒気のするような笑顔を見せた。
156名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 01:24:09 ID:Ol3OZzy1
「ただいまー」
「おかえりなさい、遅かったわね」
家に帰ると、お母さんが出迎えてくれた。
正真正銘、ワタシのお母さん。
女子高生という立場は奪われちゃったけど、家族までは奪われなかったのは不幸中の幸いか。
「今日も残業だったからね」
「お父さんは早いのにねー」
「仕事がない部下は早めに帰しちゃったから」
鞄を渡し、背広を脱ぎ捨てて、ランニングとトランクス姿でテーブルに座ると、
お母さんがすかさず冷えたコップにビールを注いでくれた。
本当は17歳だけど、課長だもんね。このぐらいは役得として許して。
ゴクゴクとビールを飲み干すと、父が見ていた時代劇のチャンネルを問答無用で変えてしまう。
父は「見てるのに!」と憤慨するけど、
「ワタシのほうが稼いでるでしょ! 悔しかったら契約取ってきなよ!」
とヘコませる。
そう、いまやこの家で一番権力持ってるのは、このワタシ。
お父さんの倍以上の給与もらってるんだから当然だよね。
ビールと枝豆で晩酌しながら、明日の予定に胸をときめかせる。
やっぱり、たまの休日には女装サロンで全力で女子高生するのがイチバン。
ロングのカツラをかぶって、あこがれの超お嬢様学校の制服に身を包んで、何枚も写真とってやるんだ!
そうだ、今度野外撮影会に参加してみよう。
やっぱり女子高生するなら屋外だよね、といろいろな妄想を膨らませながら、冷奴に箸を伸ばすのだった。
157名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 01:24:57 ID:Ol3OZzy1
ギャル←→おっさんネタおしまい。続かない

>>151-154
このまま続けると普通の「女子小学生モノ」になってしまいそうで(´・ω・`)
仕切りなおしで、別の「女子小学生になっちゃった」モノにしようかなぁ
書類手続きのミスで、女子小学校に通うことになった兄と、
大学に入学することになった妹とか

実際にやるかどうかわからんけど


ところで「主婦←→なにか」だと何と交換がいいんじゃろか
158名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 13:03:20 ID:cClGYdX9
>ところで「主婦←→なにか」だと何と交換がいいんじゃろか

ありきたりだけど姑とか娘あたりかなぁ。
個人的には複数の男飼ってるやり手女社長との交換見てみたいかも。
159名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 15:06:21 ID:+9kDIAww
近所の悪ガキ、半ズボンで生意気なイタズラ好き男子と、生真面目な純真無垢な主婦の立場交換は?

やっちゃいけないイタズラと思いつつも悪ガキ集団のリーダーとしてやってくうちに染まっていって、逆に今までやんちゃだった元小学生の主婦は、常識に目覚めて叱りだす。。
160名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 21:40:33 ID:eeA/h9jH
>>155-156
いいね
161名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 00:30:44 ID:X96FJUWo
>159
入れ替わりじゃないけど
大人の女性の男子化は風祭で確かそんな話あったね
162名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 00:35:37 ID:OLYuvnir
あたし新米ナース1年生。不器用でおっちょこちょい・・・先輩に叱られてばかり・・・。
でもでも恋に仕事にオシャレに頑張ってるの一生懸命。

そんなあたしも3年前は医学部の星だったんだ〜オトコの・・・ みたいなの希望かな。
163名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 10:16:53 ID:6tbRaplX
何か純粋な入れ替わりとごっちゃになってきたw
ここは『立場のみ』の入れ替わりがテーマだよね??
164名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 12:55:27 ID:slCot1f8
>>163
テンプレに従えば、
「肉体や人格はそのまま、突然別の立場に変化する」
だからねぇ。
肉体を変化させないのはともかく(それにしたって、現実的な手段としての豊胸や整形という手段もある)、長期にわたる入れ替わりの際、人格的にまったく変化させないのは、正直難しいと思う。
A氏の立場になり、A氏として扱われ、振る舞うことを期待されるB氏が、たとえば3年経っても元のB氏のままの人格(ペルソナ)を保持できるとは思えないし。
つーか、そもそもB氏のままであっても3年も経てばそれなりに性格とか変わるのが普通。とくに10代〜20代の人間なら環境の影響が大きいのは必然。
165名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 21:02:18 ID:UHM7LdWm
>>164

それって、あくまで入れ替わる段階での話では?
肉体交換や整形による立場のっとりはNGだとは思うけど、立場に合わせて振る舞いを変えた結果、しばらくしてそれが標準になるのはありだと思うんだがどうでしょう?
>>162 の場合であっても、立場が入れ替わった結果、ドジっ娘属性も引き継がされて、看護学校の生徒と入れ替わったって言うのであればここの主旨に収まっている気が。
まぁ、医学部の星になった看護学校の生徒がどうなったかが気になりますが。
頭の中身では変わっていないんだし。
166164:2010/06/23(水) 22:43:13 ID:slCot1f8
>>165
うん。自分も確かに「立場に合わせて振る舞いを変えた結果、しばらくしてそれ(入れ替わった立場)が標準になる」のはありだと思う。
つーか、1をよく見ると「別の立場に変化する」ことだけが必要で、その後の性格や外見の変化の有無自体は問題にしてないんだよね。
この板に投下された、「妹←→兄」の話も「OL←→男子中学生」の話も、「いとこ同士」の話も、徐々に立場にふさわしい性格と外見になってるのだし。
無論、「いつまでたっても違和感に悩まされる」というタイプの話もあっていいとは思うけど。

ところで、さっきコンビニで立ち読みしてて「漫画サンデー」って雑誌の「女神たちの二重奏」ってマンガが、このスレ該当作でワラタ。
そっくりなふたりの若い女性が出会い、かたや窮屈なセレブ、かたや貧乏な暇人で、互いの生活を取り換える……って、どこの王子と乞食だよ!?
167名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 04:22:24 ID:CdAzY6xG
【さくら保育園 連絡帳】
6月○日 ゆかりせんせいえ

たいおん 35ど6ぶ げんきです
きょおわ まなみわ あさからぷうるをたのしみにしてました
けがおしないよおに みててください


6月○日 お母さんへ

今日の愛美クンはプールがとっても楽しみだったらしく、とてもはしゃいでいました。
最近はちょっとおとなしかったのですが、
ようやく子供たちのリーダー的存在の元気な愛美クンが戻ってきて、保育士一同安心しております。
ただ、ちょっと元気すぎて、着替えのときに女の子たちの前で裸になって踊ったのにはどうしようかと思いました。
ほかの男の子も真似しはじめて、孝之ちゃんなど泣き出す女の子も出てしまいました。
お母さんのほうから、そういうことをしないよう注意をお願いします。
次のプールは来週の○日です。水着を持たせることを忘れないようにしてください。
168名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 04:23:20 ID:CdAzY6xG
30人分の連絡帳を半分ほど書き上げたところで、疲れを吹き飛ばすように大きく伸びをする。
お昼寝の時間、薄暗い保育室。子供たちのかわいらしい寝息だけが響いている。
タオルケットに包まって昼寝を楽しんでいる子供たちを見ていると、
最近の子供たちは発育がいい子が多いんだなぁ、と思い知らされる。
愛美くんや澪くん、それに孝之ちゃんや光一ちゃんなんて、
大人と間違えてしまうぐらい体が大きい。
大人と? 同じ?
なにかがひっかかる。でも、なにがおかしいのかちょっとわからない。
ちょっとした『違和感』があるけど、きっと気のせい。
だってみんなかわいい園児たちだもの。
「……せんせー、おしっこー」
タオルケットを右手に握りながら、光一ちゃんがトイレを訴えてきた。
この子はなかなかお昼寝しないでぐずったり、すぐにトイレに起きてきたりと、
なにかと手間がかかる子だ。
「はいはい、トイレ行こうねー」
光一ちゃんの手を引きながら、寝ている子を起こさないよう、そっと保育室を抜け出す。
光一ちゃんは1人で保育園のトイレに入るのが怖いのか、
ドアを開けて手を握っていないとなかなかおしっこができない。
スカートを下ろしてあげると、便器にちょこんと座り子供らしい大きな手で私の手を強く握り締めてくる。
しばらくすると光一ちゃんはぷるぷると震え、じょぼじょぼ……と水音がトイレに響く。
「せんせー、ふいてー」
「ちゃんと自分で拭かないとダメよー」
「……はーい」
本当は拭いてあげてもいいんだけど、ちゃんと1人でトイレに入れるようになってもらうため、
光一ちゃん自身でおしっこの後始末をしてもらう。
おしっこをしたばっかりでまだ先っぽが濡れている股間を、トイレットペーパーで拭う光一ちゃん。
その股間にぶら下がっているものは、とても4歳の女の子とは思えないほど立派なものだった。
股間に? ぶら下がってる?
やっぱりなにかがひっかかる。絶対になにかがおかしい。
でも、光一ちゃんは女の子だし、ペニスがあって当然だもんね。
うん、なにもおかしいところはない。
そう自分に言い聞かせて、光一ちゃんにプリキュアがプリントされたパンツを履かせ、
スカートを着せる。
丸襟のブラウスの胸にチューリップの形をした赤い名札。
チェックのスカートに淵が赤くなってイチゴのワンポイントがついたソックス。
どこからどうみても保育園に通う女の子だ。
なんで「この子、実は大人の男性なんじゃないか?」と思ってしまったんだろうか。
もしかして疲れてるのかな?
「せんせー、だっこして」
いつものように、トイレのあとは私に甘えるように抱っこをねだってくる。
「仕方ないわね……」といいながら、光一ちゃんをよいしょと抱きかかえる。
重い。
まるで70kgぐらいあるとしか思えないほど重い。
でも、数日前の健康診断では14kgだったから、きっと気のせい。
絶対疲れてるせい。
一歩一歩、光一ちゃんの重さに耐えながら、保育室へと戻ると、
抱っこされている当の光一ちゃんはまた夢の中。
そっとおろしてタオルケットをかけてあげる。
こうやって寝てる姿は他の園児とまったく変わらない、あどけない寝顔。
やっぱり子供はかわいいな、と思いながら、私は残った連絡帳書きの作業に戻るのだった。
169名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 04:24:34 ID:CdAzY6xG
「うりゃ!」
「お前もめくっちゃうぞー」
「やめてー」
帰りの会も終え、お迎えが来るまでの戦場のような午後の自由遊びの時間。
ワルガキ――本当はこんな言い方はNGなんだけど――のリーダー格の愛美くんを中心に、
なぜか女の子のスカートめくりが横行していた。
古典的だけれども、女の子にとってとっても恥ずかしいいたずらに、
泣き虫の光一ちゃんは泣き出しちゃうし、気の強い裕子ちゃんは澪くんにつかみかかるしと、
今日はいつも以上にしっちゃかめっちゃかな自由遊びの時間だった。
「向井愛美を迎えにきましたー」
子供たちの対応に追われていると、保護者が愛美くんを迎えにきた。
今日はお母さんじゃなくて、お姉ちゃんの雅弘ちゃんがやってきた。
小学校2年生になる彼女も、数年前まではこの保育園の園児で、
愛らしい笑顔で園児たちのアイドルみたいな子だったのをよく覚えている。
「あ、先生。こんにちは」
私よりも高いところにある頭がペコリと下がり、三つ編みがかわいらしくゆれる。
「あら雅弘ちゃん、学校は楽しい?」
「はい! とっても楽しいです!」
元気よく返事を返す雅弘ちゃんの笑顔は、保育園時代とまったく変わっていなかった。
当時と違うところは、いつのまにか160cmの私よりもあたま1つぶんぐらい大きくなってしまったことと、
有名私立女子高の付属小学校の制服を着ていることぐらいか。
保護者にも人気が高い紺色のセーラー服風ワンピースに身を包んでいる雅弘ちゃんはすっかり小学生っぽくなって、
もう保育園児だったころの面影はまったくない。
「もう、服がぐしゃぐしゃじゃない」
文句を言いながら、はみ出たブラウスのすそを半ズボンの中に入れてあげたり、
ゴムひもを持って振り回している通園帽をちゃんとかぶせたりと、
雅弘ちゃんは本当に『いいお姉ちゃん』っぷりが板についている。
「はい、じゃ、ちゃんと挨拶して」
「せんせーさよーなら」
「それでは先生、さようなら」
「さようなら、また明日ね」
やんちゃな愛美くんもお姉ちゃんの前では形無しなのか、
雅弘ちゃんに手を引かれて帰っていった。
迎えに来る他の保護者の身長と同じぐらいしかない小さなかわいい姉弟を見送りながら、
「子供の成長を見守る」という保育士の仕事の楽しさを、改めてかみ締めていた。
170名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 04:25:16 ID:CdAzY6xG
主婦と子供の交換モノ
だいぶ「現状に慣れちゃった感じ」を第三者視点から・・・
というのをやろうと思ったら、予想以上に難しかった(´・ω・`)

初期アイデアは>>159
>近所の悪ガキ、半ズボンで生意気なイタズラ好き男子と、生真面目な純真無垢な主婦の立場交換は?
だったけど、だいぶ変わってしまった感じ


>>158>>162のアイデアも面白そうだなぁ

>>163-166
その辺、スレ立てるときにもっとしっかりしておけばよかったと後悔
現状「交換した後、ふさわしい外見や性格に変化」した状態のモノを書いていること多いのですが、
もっと戸惑ってるやつも書いていきたいなぁ
171名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 06:13:47 ID:CdAzY6xG
ふと読み返してみると
>元気よく返事を返す雅弘ちゃんの笑顔は、保育園時代とまったく変わっていなかった。
>当時と違うところは、いつのまにか160cmの私よりもあたま1つぶんぐらい大きくなってしまったことと、
>有名私立女子高の付属小学校の制服を着ていることぐらいか。
>保護者にも人気が高い紺色のセーラー服風ワンピースに身を包んでいる雅弘ちゃんはすっかり小学生っぽくなって、
>もう保育園児だったころの面影はまったくない。

なんかつじつまが合ってない描写が(´・ω・`)
手癖で書くのよくない
172名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 08:08:01 ID:QsR1+6i0
入れ替わってから短期の間に何があったw

だが、それがいい!
173名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 09:18:39 ID:QsR1+6i0
今朝も娘のベッドから目覚める。
「やはり戻らないか・・・」
大きな溜め息をつく。今日で私の娘、歩美と立場が入れ替わってから三日目になる。
しかも今日からは歩美の通う高校に行かなければならない。
40過ぎのオッサンが、しかも女子高生として。そりゃ溜め息だって出る。
意を決してふんわりとしたネグリジェを脱ぎ、ブラウスに袖を通す。左右逆でやりにくい。
そして膝上丈のチェックのスカートを穿き、ブレザーを着る。
最後に学校指定のリボンと靴下を身に付けて完成。
娘の制服一式を身に付けた私は、鏡で見ても女装したオッサン。正直見るに堪えない。
「それにしても最近の高校生はスカートが短いな・・・」
膝上15cmもありそうなスカートをめくってみる。
水色のショーツがチラッと見えて自己嫌悪に陥った。今日は本当に大丈夫だろうか?
174名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 09:20:54 ID:QsR1+6i0
この格好でリビングまで行く。妻が私に気付き、挨拶をする。
「おはよう歩美、今日は早いのね。いつもは私が起こしに来るまで起きないのに」
「たまには早いこともある・・・わ・・・よ」
やはり回りには私が『歩美』に見えるらしい。慣れない女言葉で返事をする。
ふと見ると、スーツを着た歩美がニヤニヤしながらこちらを見ている。くそっ。

・・・朝食も終わり、いよいよ学校へ行かなければならない。
カバンを持って、ローファーを履いて、玄関を開けた。今日は長い一日になりそうだ。
175名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 09:25:27 ID:QsR1+6i0
完。
ムラムラして書いた。後悔はしていない
176名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 23:05:26 ID:CdAzY6xG
>>175
ここで終わりだなんて生殺しすぎるGJ
177名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 00:09:30 ID:31n14Jsz
レスサンクス

勢いで書いてみたものの、やっぱり難しいのな。短い文なのに変な箇所が結構あって凹む('A`)
こんな駄文しか書けないけど需要はあるのかね?あれば続きも考えてみるが・・・
178名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 00:15:10 ID:Z4ffwg3/
ありまくり
179名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 07:44:51 ID:31n14Jsz
一年後くらいの続きを書いてみた。
全然出てこないけど、父親の名前は『義男』ということでw


「これでよしっ、と」
私は鏡で今日のコーディネートを確認していた。

今着ている服は白を基調にしたカットソーに淡緑色のカーディガン、花柄のフレアスカートだ。
このスカートは最近買った服の中でも特にお気に入り。
色んな服に合うし、何より可愛い。試着したときも友達や店員さんがすごく褒めてくれたっけ。
丈が短くて風が吹いたらめくれてしまうけど、そんなのを気にしていたら女の子なんてやってられない。
体には変なのが付いてるけど。
特に今日は隆行とのデートなんだし・・・。あ、下着も清楚な白・・・だよね?よし、大丈夫。

服装チェックを済ませ、玄関に向かうと、『歩美』と鉢合わせた。
「おはよう『お父さん』、今日は随分可愛い格好して。誰かと出かけるのか?」
「そんなのいちいち私に言わせないでよー。そこはご想像に任せる、ということで♪」
「おい本当か!?お前にはまだ早いだろ!相手はどんな奴だ!!」
『歩美』が少し声を荒げる。
「秘密ー♪」
私はそれをかわす。いちいち相手にしていたら面倒だし。
「それじゃあ、行ってきまーす」
「おい、私の話はまだ・・・ 」

バタン!
180名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 07:46:23 ID:31n14Jsz
さて、待ち合わせ場所に行かないと。今日の映画、楽しみだなー♪

・・・

「遅れてごめん!もしかして待った?」
待ち合わせ時間よりも早いのに隆行が謝る。
「んーん、全然。私も今来たとこ。」

「・・・そっか。じゃあ行こうか!」
隆行は私の手を取る。彼の手は大きく、握っていると安心する。

こうして隆行と手を繋ぐのが大好きだ。ずっとこうしていたい。
男と手を繋いで町中を歩くなんて、一年前なら絶対嫌だっただろうな・・・。
ふと昔を思い出して笑みがこぼれる。

「どうした?歩美」
「別にー」
そう言って私は隆行の腕に自分の腕を絡める。こんな一時が幸せで堪らない。
今日観る映画はラブロマンスもの。前から気になってたんだよね。あ、始まった!

館内でもずっと隆行の手を握って映画を観る。
役の女の子につい感情移入してしまって涙がこぼれてしまう。

そして最後のシーン。苦難の末結ばれた二人が熱いキスを交わす。
(いいな・・・)
ふと隣を向くと、隆行と目が合った。何故か目を反らすことができない。
そして、隆行の顔が近付いてくる。私はゆっくりと目を閉じた・・・。
181名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 07:48:43 ID:31n14Jsz
隆行と私の唇が重なる。
隆行のぬくもりが唇を通して伝わってくる。
(何、この感情・・・!)
胸にとろけてしまうような熱いものがこみあげてくる。けど何か安心する、不思議な思い。

そして何より幸せだった。
男とのキス、満ちたりた気分、一秒が何分にも感じてしまうくらいに濃密な時間、
全てが私にとって初めての体験だった。隆行とずっといっしょにいたい。

・・・

「それじゃ、また明日な」
「・・・うん」
日も暮れ、帰る時間になった。
「そんな顔すんなって。明日も学校で会えるんだし」
頭では理解してるんだけど、それでも少し寂しくて、隆行に体を寄せる。

「じゃあ、最後に・・・んっ」
そして隆行に唇を突き出しキスをせがむ。

「しょうがないなー、歩美は」
彼と唇を重ねると、また背中に電撃が走る。このまま時間が止まればいいのに・・・。

「じゃあ、またな」
「うん、バイバイ。後でメールするね」
別れを惜しみつつも、家に戻る。

・・・

「ついに隆行とキスしちゃったんだ・・・!」
部屋着のワンピースに着替え、私はベッドに突っ伏して手足をバタバタさせる。
早く隆行に会いたい!そう思い、携帯でメールを打つ。返信が待ち遠しい。
けど、待っている時間も心地よい。

こんなに幸せな気持ちは男だった40数年間味わったことがない。
しかし、この幸せが大きくなるほどに、いつか戻ってしまう日が来るのだろうかという不安な気持ちも大きくなる。
複雑な気持ちが義男の中で交錯していたが、今はこの幸せを噛み締めたい、そう思ったのであった。
182名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 14:08:28 ID:npwIVDtz
GJ!
183名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 23:42:39 ID:npwIVDtz
   わたしの お父さん
            3年2組 向井雅弘

 私のお父さんは、市役所で働いています。
お父さんは毎日毎日、いろいろな書類に目を
通し、ハンコを押しているだけだと言ってい
ますが、私にはわからないような大変なお仕
事をしているはずです。
 休みの日は私や弟の愛美と遊んでくれます。
でも最近は疲れているのか、なかなか遊んで
くれません。でも、疲れているのは私たちの
ために一生懸命働いているためです。これか
らも元気でいてください。



父の日に贈るという名目で書かされた作文が先生から返却される。
作文の上には、赤ペンで大きく花丸が描かれていた。
「あー、雅弘ちゃん、花丸だーいいなー」
隣の席の杏奈ちゃんが、私の作文を覗き込んでうらやましそうな声をあげる。
「へへ……いいでしょ」
すっかりお気に入りになったワンピース風セーラー服の胸をえへんと張る。
私とパパの美咲の立場が入れ替わってから約1年、すっかり小学生をやることにも慣れてしまった。
この1年、家族で海に行ったり、学芸会の劇で主役のお姫様をやったり、
お誕生日にディズニーランドでミニーマウスと一緒に写真を撮ったり、
お正月に晴れ着を着たり、バレンタインデーにパパに手作りチョコをあげたり……。
ちょっと思い出しただけでも、本当にいろいろなことがあった。
弟となった妻の愛美も、すっかり保育園に通う児童が板について、
いたずら盛り、やんちゃ盛りの男の子としてママである翔太を困らせてばかり。
そういえば、この前1日だけママと愛美の『母と息子の立場』が入れ替わった
――この場合は元に戻ったといったほうがいいのかな?――んだけど、
愛美はまったくお母さんらしいことができずにパニックになっていた。
ママはママで、久しぶりの保育園でどう過ごせばいいのかわからず、
保育室のすみっこのほうでうずくまっているだけだったとか。
1年もママしてたら、保育園でどう遊べばいいかわからなくなっちゃうのも当然だよね。
私も今、パパと立場が入れ替わったりしたら、どう仕事していいのかわからないし。
だからこそ、毎日一生懸命働いている美咲パパには感謝してもし足りないので、
精一杯の感謝の気持ちをこめて書いた作文で花丸をもらえたことは、本当にうれしかった。
184名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 23:43:24 ID:npwIVDtz
「雅弘ちゃん、次の時間プールだよ」
国語の授業が終わって一息ついていると、杏奈ちゃんが早く着替えるように急かしてきた。
そう、今日は待ちに待ったプール開き。
あわてて机の横にかけてあったプールバッグから水着を取り出して着替え始める。
去年は素っ裸になって着替えようとして恥をかいたので、
今年はちゃんと巻きバスタオルで体を隠しながら着替えることに。
まるで照る照る坊主のように首から巻きタオルを下げてからパンツを脱いで、代わりに水着を下から履く。
続いて下着と制服の体の間を通すように水着をよいしょと引き上げ、肩紐に腕を通す。
そしてシャツを脱ぐように制服と下着を脱ぎ、あとは肩紐のねじれや、おしり周りのすそのくいこみを直して着替え完了!
杏奈ちゃんに教えてもらった「裸を見せない着替え方」がうまくできたことにうれしくなって、
どうだと笑みを浮かべてしまう。
胸元に「3-2 向井」のゼッケンが輝く水着姿。
ちょっとだけ盛り上がった股間と、身長の高さがクラスメイトと違うけど、
どこからどう見ても女子小学生の水泳スタイルだ。
「じゃ、早くプールに行こ♪」
待ちに待ったプールの時間。今年は25m泳げるようにがんばろう。
185名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 23:44:05 ID:npwIVDtz
>>167の続き的な小ネタ 終わり

需要はなさそうだったけど(´・ω・`)
186名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 23:51:34 ID:JgPFkekg
少なくともここに一人ある
187名無しさん@ピンキー:2010/06/26(土) 01:24:09 ID:T/j+cRls
ありありです
188名無しさん@ピンキー:2010/06/26(土) 16:23:37 ID:IlWl21Mr
>>179ー181,183ー185
gj!
こういうの大好きだ!
強制的に女性として生活せざるを得ない狂ったシチュが俺のジャスティス(`・ω・´)
189159:2010/06/26(土) 23:33:30 ID:8ISTqjLL
自分のリクエストが作品化されてた……!
作者様GJ!!!
夫婦と子供たちの立場交換がこれほど萌えシチュだとは!
ワルガキ愛美についても是非続きをお願いします!
女子高生と父親の交換シチュも父親の馴染みっぷりに嫉妬せざるを得ないww

これほどの良作を読めるこのスレは神認定
190名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 06:28:45 ID:R5JX/C9J
双子の兄妹がちょっとしたいたずらで入れ替わる。
みんなに気づかれて、「騙したな」と言われると思いきや、親切心でスルーしてくれた。

ここからがたちが悪い。問題は、いつ元に戻るかだ。
もはや身体以外見分ける方法が無いので、二人は、永久に入れ替わったままになった。
191名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 06:29:47 ID:R5JX/C9J
ageてしまった。
192名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 10:10:18 ID:GGLRUZkH
>>190
その昔、由紀のトランス小説のお部屋ていうのが在ってそこにあったな〜(遠い目)
そういうシチュ凄く好き好き
193名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 12:35:13 ID:3Jfpyg7o
『由紀の世界』は神だったな
双子入れ替わりの話も相当好きだったわw
194名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 04:32:58 ID:MKxFekV+
蒸し暑さで気だるくなる午後、テレビから流れてくるワイドショーがイライラを加速させる。
『カリスマ美人ギャル社長・雪谷のぞみ 成功の秘訣』
なにが美人だ。ギャルだ。カリスマだ。
かじっていたせんべいを、まだ地デジ化されていない四角いブラウン管に投げつけると、
ちょうど画面の向こうで若作りしているババアの顔に当たって砕け散った。
「はぁ……」
あまりの虚しさに、深いため息を吐く。
テレビに八つ当たりしたってどうしようもないのに。
だけど、我が物顔でギャルメイクしてテレビに出ているあのババアを見るたび、
どうしてもイライラが抑えられない。
あのテレビに出ている『カリスマ美人ギャル社長』は東大出で卒業後すぐ起業、
そして24歳の若さでネイルショップやエステ、アパレルなどを経営して年間100億稼ぐといわれている。
それだけでも凄いのだが、在学中から読者モデルとして活躍するほどの美貌の持ち主で、
正に非の打ち所のない完璧セレブとしてテレビにもひっぱりだこ。
だけど。
だけど。
タルみたいな体型なのに花柄のマキシ丈ワンピ着てBCGの痕が残るタプタプの二の腕をこれでもか晒しているあの女が、
そんな上等な人物であるはずがない。
だって、本当の『カリスマ美人ギャル社長・雪谷のぞみ』は、ここでテレビを見てるんだから。
195名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 04:36:22 ID:MKxFekV+
事の始めは数ヶ月前。
テレビで専業主婦のことを「生産性がない、つまらない職業」みたいなことを言ったのがすべてのきっかけ。
確かに今思えば、あれは言いすぎだったのかもしれない。
だからこそ、すぐに謝罪をしたんだけど、まるで昆虫のように脊髄反射でやったとしか思えないような、
専業主婦を名乗る抗議の手紙やメールが、会社や事務所に山のようにやってきた。
そんな文字通りのごみメールの山の中に、一通だけとても気味の悪い手紙が混ざっていた。
差出人の名前もなく、裏面には赤黒い血のような文字で『お前にも主婦のつらさを思い知らせてやる』とだけ。
そのときは「ずいぶん手の込んだ脅迫状だな」ぐらいに思っていたんだけど……。
次の日、起きたらなにもかもが変わり果てていた。
昨日はユウくんやヒロ、ケンちゃんたちと4Pしていたはずだったのに、
横には見たこともない『いかにもくたびれたサラリーマンのオヤジ』がイビキをかいていた。
さらに自分の格好がまたオドロキで。
センスのかけらもないガーゼ地のパジャマを着て、
寝たままパーマできるようにカーラーがいくつも頭に巻かれて型崩れしないようネットをかぶっている。
もう、いまどきバラエティのコントでもないような、これでもか!と言うぐらいのオバサンスタイル。
こんな姿を誰かに見られたら恥ずかしすぎて自殺しちゃうかもしれない。
そう思っていたら、横の布団に寝ているオッサンが
「お母さん、朝っぱらからうるさいよ」
って、まるで自分の奥さんに文句を言うかのようにつぶやいた。私のほうも見ずに。
なにが起きてるのかパニックのまま部屋を飛び出すと、まず家の中の風景がまったく違っていた。
だって私の部屋は港区にあるデザイナーズマンションで、
家具も厳選した国内外のステキな調度品やオシャレな家電で統一していたはずなのに、
目の前に広がるのは狭っ苦しい廊下もどきに手作りの布製カバーがかかった電話、
テーブルクロスのつもりなのかビニール製のシートが掛かった木製のテーブル、センスのない食器が並ぶ食器棚など、
安っぽいホームドラマに出てくる、いかにも『ウサギ小屋』と言ったような典型的日本家屋。
これはいったいどういうことか? パニックを起こしていると、
さっきのオッサンや女子高生ぐらいの女の子が眠そうに「お母さん、どうしたの?」と心配そうに声をかけてくる。
まったく知らない人たちに、次々「お母さん」と言われる恐怖。
そのとき玄関が開いて、1人の男の人が入ってきた。
なんと数いるセフレのなかでもお気に入りのユウくん!
彼にすがるように助けを求めても、返ってきた言葉は
「なにユウくんとか言ってるんだよ、オフクロキモいよ」
慌ててテーブルの上にある合皮製の女性物財布を開けて、免許証を取り出す。
そこには化粧っ気の薄い疲れた顔をした私の写真と、まったく知らない人の名前。
その日の記憶は、そこで途切れていた。
196名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 04:38:00 ID:MKxFekV+
それから心療内科にかかったりと3日ほど入院する間に、なにが起きているのか調べることにした。
そこでわかったことは、田中弘樹という中年太りでハゲかけているサラリーマンの妻で、
とくに定職につかずプラプラしている長男・雄一と進学校に通う長女・さくらの母親だということ。
料理も掃除もそれなりにこなすが決しておしゃれとは言えず、
いかにもオバサンしている47歳の田中淑子。それが今の私だというのだ。
さらに信じられないことに、今をときめく美人社長『雪谷のぞみ』は別にいるというのだ。
女性週刊誌をめくると、全身からオバサンオーラを漂わせている中年女性が
まったく似合わない今風のガーリッシュなファッションを身にまとい、
笑顔でインタビューに答えている写真が掲載されていた。
つまり、こいつが本当の『田中淑子』で、何らかの方法で私との立場を交換した、ということなのだろう。
テレビをつけても雑誌を見ても、マスコミから芸能人から世界中があのババアを『雪谷のぞみ』として扱っている。
もしここで『私が本当の雪谷のぞみだ!』と主張しても、
きっと狂人として病院に閉じ込められるだけだろう。
これからの人生のことを考えると世界が真っ暗闇に包まれたような、
そんな感覚に襲われて、また気を失ってしまった。
197名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 04:39:31 ID:MKxFekV+
退院したあとは『田中淑子』として主婦業に追われる日々が始まった。
毎日ご飯を作り、洗濯したり、掃除したり。
今までは「外食すればいいや」とか「じゃあクリーニングに」とか
「業者呼んでやってもらいましょ」で済んでた家事が、全部私に降りかかってくる。
苦労して作ったご飯は「おいしくない」とか「なんで洗濯しといてくれなかった」と文句を言われたり、
何をしても報われない日々。
やりくりしてもどうにもならないダンナの給料に頭を悩ませていることも知らずに、
おこずかい値上げを要求してくるダンナと娘に苛立ち、
毎日のように『あのクソビッチ』のところへいく息子に怒りを覚え、
そして肉体的にはヤりたい盛りの24歳なのにまったくセックスできないという欲求不満に悶え、
ストレスばかりが積もり積もっていく。
こういうとき『雪谷のぞみ』だったら、ホスト遊びしたりセフレ呼んで乱交したりと発散できるのだけど、
『田中淑子』には先立つものがない。
へそくりすらない。
隠し口座の1つでも作っておくんだったと後悔するばかり。
もちろんファッションにかけるお金なんてあるはずもなく、
先代の『田中淑子』が残していったウェストがゴムになったスカートや奇妙な柄のシャツとか、
色気のかけらもないベージュのババシャツやパンツなど、
身に着けているだけでオバサンに染まっていくようなものばかりを仕方なく着ている始末。
化粧品にお金をかけるなんてもってのほか、安っぽい婦人用ファンデやどギツい赤の口紅ぐらいしか買うことができない。
肌の手入れも最低ランクの乳液程度。
以前は月2でセットしにいっていた美容室だって3ヶ月に1度、かわいくセットするなんて望むことすらかなわない。
もっとも、かわいくセットしたらしたで家事の邪魔になるだけなので、
ボサボサでキューティクルの艶もない今の髪の毛のほうが、
遠慮なくゴムで束ねられる分だけ便利なのかも。
……負け惜しみだ。
境遇的には47歳になったとしても、そこはやっぱり身も心も24歳の女の子だもん。
かわいくなりたい。オシャレしたい。
でもお金がそれを許してくれない。
テレビに投げつけたせんべいを片付けながら、どうやってお金を作ろうか思案するばかり。
やっぱ、昔取った杵柄とばかりにFXや株で財産作るのがいいのかなぁ……と、
娘が使わなくなったパソコンの画面に映るチャートを見ながら、毎日相場と格闘していたりもする。
会社の資金をコレで稼いだ腕はいまだ衰えず、連戦連勝で預金は溜まっていくんだけど、
その溜まったお金は家計の穴埋めに消えていくだけ。
だって、毎日一生懸命働いているダンナにいいもの食べさせたいし、娘の塾の費用だって馬鹿にならないし。
いつかはまたホスト遊びをして若い男とセックスすることを夢見ながら、
でも結局出来ずに家族のために使っちゃうんだろうなと苦笑いしながら、
今日の晩御飯は何にしようかと冷蔵庫の中身を確認するのだった。
198名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 04:40:36 ID:MKxFekV+
小ネタおしまい
>>158さんのアイデアをいただきました

>>186-188
需要があったようでよかった(`・ω・´)

>>189
アイデア提供ありがとうございました
いずれ、この親子もまた書いてみたいところです

>>192-193
由紀のトランス小説、懐かしいですねぇ
もう一度読みたいなぁ
199名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 11:04:36 ID:yqOLvFIu
Waybackでほとんど拾える
200名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 15:27:18 ID:V2P1Cpbg
>>174の続きを空気読まずに投下してみる


ガチャ・・・

私は恐る恐る家のドアを開けて外に出た。

「よし、誰もいないな・・・」
近所の人に今の姿を見られるのはやはり気が引ける。

歩く度にこすれる太股が今の自分の格好を思い起こしてくれる。
裸で外を歩いているようで全く落ち着かない。似たようなものだけど。

・・・未だに自分の置かれている事態が信じられない。
この間までサラリーマンをしていた私が、今日から女子高生をするのだから。

ようやく最寄りの駅に到着した。
駅ということで、やはり人が多い。たくさんの人たちの前でこんな格好してるなんて・・・。
しかし、私の不安とは裏腹に、人々はこちらに目もくれず、ホームの方に消えていく。
心なしか、自分の足をジロジロ見ていく男もいるような気がするが・・・
女子高生の格好をしたオッサンに見られてはいないことに少し安堵する。

「歩美ー、おはようー♪」
いきなり背後から肩を叩かれビクッとする。驚きながら振り向くと、今の私と全く同じ格好をした女の子。
実物で見ると結構可愛いな・・・確か名前は真紀・・・だったか。
新しい生活のために『歩美』から情報は少しだけもらっている。
「おはよう、真紀・・・。」
「あれ?今日はどうかしたの?元気ないじゃん。」
「えっ・・・と・・・ちょっとね・・・。」
私は言葉を濁す。
「ふーん。何があったかは聞かないけど、話したくなったら気軽に相談しなよ。」
「うん、ありがと・・・」

「あ、もうすぐ電車が来るからホームに並ばないと」
そう言って真紀は歩き出す。私もそれに着いていく形に。
彼女が並んだ場所は『女性専用車両』。私に入る資格はあるのだろうか。
201名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 15:29:26 ID:V2P1Cpbg
・・・あれこれ考えているうちに電車が到着。流されるままに入ることにする。

「おはよー真紀、歩美♪」
「おはよー♪」

車内に入ると、同じ高校の女の子が3人待っていた。
どうやら彼女らも同級生らしいが、名前が分からない。
しかし、そんな心配をよそに彼女らは何気ない会話を繰り広げている。

・・・話がポンポン飛ぶせいか、私はどうも話について行けない。
その内容も彼氏がどうとか、若手アイドルグループがどうとか、興味の範疇を超えるものばかり。
ずっと話題に付いていけないのはまずいので、帰ったら予習しないといけないな。

高校に近付くにつれ、車両内が大分込み合ってきた。今の私は真紀と向かい合いながら密着する形になっていた。
真紀は密着を嫌がるどころか、手を私の腰に回してスキンシップを取ろうとする。
「ち、ちょっと真紀・・・」
「別にいいじゃん、女の子同士なんだしー♪電車の中では毎日こんな感じでしょ?」
「そ、そうだけど・・・」
「気にしない気にしない♪」
(気になるっての)
真紀の髪の香りや、制服越しに伝わる体温、互いに触れ合う生足、何ともドキドキする状況だ。
しかし、逃げようにも車内はぎゅうぎゅうで、一歩も動けない。
私は真紀にされるがままだった。役得と割り切ることにするか。

・・・

そうこうしているうちに高校の最寄り駅に到着した。
学校へ向かう高校生たち。その中にとっくの昔に卒業した私も混じっているから不思議だ。

しかも、『男子』ではなく『女子』として・・・。

男子を見ていると、自分が彼らと違う立場にいることを嫌でも意識してしまう。
制服も、靴も、下着ですらも既に彼らとは違うものを身に付けているのだから。

私の中では不安が一層増すばかりだった。
202名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 13:22:25 ID:Zr5DvK/j

俺も女子高生と立場を交換したい(*´Д`)
203名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 21:40:23 ID:Ies+hXNE
いつもと勤務時間は同じなのに何倍にも感じられた日勤も終わり、
ようやく開放感あふれる休日がやってきた。
今日は採血の針を刺し間違えたりとか、お薬を載せたトレーをひっくりかえしたりとか
いつもやっちゃう失敗もすることなく、
看護師長にも怒られないで仕事を終えることができた。
せっかくの合コンなのに、叱られてテンションダウン状態で行っても楽しくないから、
我ながら本当にがんばったと思う。
305号室の池田さんなんて「今日の伊藤さんはやけに張り切ってて逆に失敗しないか怖い」だなんて、
本当に失礼しちゃうよね。
ワタシだって、これでも看護師になって3年も経つんだから!
……3年かぁ。
早いようで短い……違う、長いようで短かった3年間。
看護の専門学校に通っていた時期を入れればもっと長い。
お医者さんを目指していたのもそんな昔だったんだなぁと思い返す。
なんでお医者さんを目指していたのに看護師を目指すことになったか。
医者に向いてないと思ったから? 違う。
看護師の仕事の重要さに気がついたから? ぜんぜん違う。
それは前代未聞の不思議なことがあったから。
誰に話しても「嘘だ」と言うような、ワタシ『伊藤大輔』を看護師を目指す女の子に変えた、
まるでマンガのようなあの日の出来事。
204名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 21:41:33 ID:Ies+hXNE
あれは確か5年ぐらい前。
その頃のワタシは医学部に通う大学生で、外科医を目指して猛勉強中。
成績はもちろん優秀で、今のようなヘマをすることもなく、
きっと将来は素晴しい外科医になると周囲から信じられていたんだよね。
ん、信じてない? 本当だから。
で、ある日、同じクラスで学ぶ友人から誘われた合コンでその事件は起きたの。
その合コンはうちの大学病院が経営している看護専門学校に通う看護師のタマゴたちのなかでも、
飛び切りの美人をそろえたというだけあって、みんなかわいい子ばっかりだった。
片や将来が約束されたエリートたち、片やタイプこそ違うけど絵に描いたような美女たち。
それはもう、あれ以上に盛り上がった合コンはないと断言できるほど、
楽しくハジケた合コンだった。
女の子たちは最初からお持ち帰りされるのを期待して、そして男たちも持ち帰る気マンマン。
当然、誰が誰に行くかというバトルが男女双方の陣営で熱く繰り広げられ、
ワタシは結局、服のすそとかにコップを引っ掛けて倒しちゃうようなドジだけれども、
ちょっと幼く見える顔立ちが当時ちょっと好きだったグラビアアイドルに似ていた女の子をお持ち帰りすることに。
で、いよいよ合コンが解散して、楽しい楽しい2次会……となるはずだったんだけど、
その女の子がお酒に酔ったのかフラフラと千鳥足になって、ワタシを巻き込んで電信柱にぶつかっちゃったの。
その時点ではなんともなかったんだけど、いざホテルに入ってヤることを済ませた翌朝、
服を着替えようとしたら何かがヘン。
何の気なしに「いつものように」着替えていた服は、彼女が合コンに着てきた勝負服。
逆に、彼女はワタシが着てきた服を自然に身に着けているところだった。
ワタシがワンピース、彼女がスーツを着ることは自然なんだけど違和感バリバリで、
何かがおかしいといろいろ探ってみると、お互いの免許証や学生証の名前や写真がそっくり入れ替わってた。
つまり、医学部の学生証には彼女の名前と写真が、看護師学校の学生証には自分の名前と写真が。
それだけならまだしも、自分の名前と写真がある看護師学校の学生証の性別は「女」となっていて、
もうお分かりのとおり彼女の性別も「男」になっていた。
名前や誕生日はそのままに、学校や性別だけがそっくりそのまま入れ替わり。
205名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 21:42:00 ID:Ies+hXNE
どうしたものかと悩んでいたらチェックアウトの時間がきてしまったので、
慌ててホテルから出たのはいいけれども、2人して途方にくれるばかり。
服装はもちろん、お互い交換したまま。
そのとき、偶然にも合コンをセッティングした加藤と、彼が持ち帰りした女の子とホテルの出口で鉢合わせ。
コレ、経験者じゃないとわからないほど気まずい空気なんだよね。
で、このときなんともいえない雰囲気を打ち破って第一声をあげたのは加藤だったかな。
当然、友達の自分に声をかけるかと思いきや、まるでずっと付き合ってきた親友のように自分と一緒に出てきた女の子にこっそり話しかけていた。
その代わりといってはなんだけど、裕子――加藤と一緒に出てきた女の子――が、
「彼、どうだった? うまくいきそう?」
とか、自分にそっと耳打ちしてきた。
ここにきてようやく気がつく。
あ、自分は彼女と立場が入れ替わっちゃったんだな、と。
206名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 21:42:28 ID:Ies+hXNE
その後、自分と立場が入れ替わった彼女とどういう会話をしたのか、どうやって家に帰ったか、まったく思い出せない。
なんせ、家に帰ったらオヤジがすごい剣幕で「女の子が朝帰りなんて!」と怒鳴りつけてきて、
オフクロが一生懸命なだめてるという状況で上書きされてしまったから……。
その後、自分の部屋を見渡すと、昨日とは打って変わってファンシーな女の子の部屋に変わっていたのはよく覚えてる。
通っていた男子校の卒業アルバムは消えうせ、代わりに名門女子高の卒業アルバムが。
サッカー部の仲間と撮った記念写真は、新体操部のものに変化。
教科書や参考書も当然のように違っていて、新臨床外科学の教科書の代わりに
リハビリテーションのそれが、机の中央にでん!と広がっていた。
オヤジに聞いてもオフクロに聞いても、自分は最初から女の子で幼い頃から看護師を目指していたというばかり。
まさかこんな形で「外科医」の夢を捨てることになるなんて思ってもみなかったけど、
それならいっそ!と一生懸命看護師を目指すことに。
でも、外科医に比べたら簡単と思っていた看護師もなかなか試験が難しく、
さらに現場に配属されてからは「目指してよかった!」と心から思えるステキな仕事だった。
こういう天職へのめぐり合わせは珍しいのかもしれないけど、
あの日、あの子と一緒に電信柱にぶつからなければ看護師になってないわけで、
そういう意味では、あの子に感謝しないといけないのかな。
あの子もワタシの代わりに外科医を目指しているのかなと気になってるけど、
名前をメモしておくのを忘れたために、どうなってるかさっぱりわからない。
思えば、あれがワタシの「ドジ初め」だったのかもしれないかな。
だって看護師を目指しはじめてからなぜか、なにもない道で転んだりコップを引っ掛けて倒しちゃったりと、
今まででは考えられないようなドジをするようになったのだから
207名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 21:43:06 ID:Ies+hXNE
看護師の制服をクリーニングに出し、色気のない肌色のストッキングとシューズを脱ぎ捨てる。
そして家から持ってきた細い金色のアンクレットを足首に巻いてから、
薄いベージュがかったピンク輝くストッキングに履き替える。
ムダ毛をしっかり手入れしているけど、よく見るとやっぱり男っぽい脚(他人にはそう見えないらしいけど)が、
一瞬にして艶を帯びた極上の美脚へと生まれ変わる。
続いてハンガーにかけておいたパニエを履き、続いて腰の辺りで生地の感じが違う明るい黒のワンピースを身に着ける。
下に履いておいたパニエのおかげでふんわりとスカートのラインが広がり、
よりフェミニンな感じを演出してくれた。
そしてあまり派手にならないような、小さいかわいらしいパールのネックレスをしてから、今度は鏡に向かう。
勤務中は可能な限り薄いメイクを心がけているけれども、
薄いメイクとナチュラルメイクは違うよね、とばかりにメイクを変える。
可能な限りナチュラルだけど、盛り過ぎない程度にマスカラでまつげをぱっちりさせて、ピンクのグロスでつやつや唇に。
今日の合コンで競り負けないよう、しっかりと自己演出も忘れない。
最後は色気なくお団子にまとめていた髪をアップにまとめなおして、ワンピースと同系色のリボンで飾りつけ。
最後に「肩から鎖骨のライン」を切り札として温存しておくためのボレロを羽織って、
下品すぎない高さのヒールを履けば合コン出撃スタイル完成!
我ながら5年前まで男の子だったとは思えない美貌にうっとりしてしまう。
ま、実際、街でモデルにスカウトされたこと、何度もあるけどね。
208名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 21:43:28 ID:Ies+hXNE
同僚がセッティングしてくれた「新進気鋭の若手医師」との合コンはワタシが一番最後の到着で、
着席と同時にスタートしてしまった。
端から自己紹介をしていく若いお医者さんたち。
その右から3番目に座っている鋭い目つきをした男性は、他の人が自己紹介しているときも
じっとワタシのほうを見つめている。
やだ、もしかして一目惚れさせちゃった? と思っていると、その人が自己紹介を始めた。
「はじめまして、外科医の大倉亜由美です」
その瞬間、なにもかも思い出した。
彼が、ワタシの運命を変えた「電信柱に激突した女の子」だ。
5年の歳月はロリータフェイスだった彼女を、眼光鋭い大人の男に変えてしまった。
自己紹介後、こっそり集まったトイレでの作戦会議。
今日来た子に、大倉さん狙いを高らかに宣言する。
口には出さないけれど、あれは5年前から運命づけられていた相手。
誰にも譲れない、最高の彼氏候補。
絶対、絶対負けられない女の戦いがここにある。
209名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 21:43:55 ID:Ies+hXNE
>>162のアイデアを元にした小ネタ終わり

>>201
続きが気になってしかたないGJ
210名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 23:35:12 ID:Zr5DvK/j
乙〜
すっかり女側での合コンに慣れてきてるのが(・∀・)

結婚式当日の朝に立場が入れ替わってドレスを着る羽目になる花婿とかいいなあ
その後も新妻として(゚д゚)ウマーな展開が期待できるし
211名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 00:05:02 ID:LcOQ/qhm
>>209
イイ!!最高だ〜!!
やっぱり可愛くきれいになってて欲しいよな。
『人は女に生まれない。女になるのだ!!』
212名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 18:45:53 ID:gM8Ny0BZ
>>200-201
GJ!
本人が違和感を持っていても周囲は全くいつも通りで
そこが立場交換の面白さだなぁと思った
女子高生に徐々に染まっていく元父親の精神変化をもっと読みたい!
続きに期待!
213名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 01:05:45 ID:fWUuFia+
そういえば、「令嬢トレーダー」ってエロゲーがあったことを今思い出した。
<あらすじ>
取引の材料に一人娘・姫尾舞奈を差し出すことにより、業績を伸ばす国内トップ企業“姫尾インヴァストメント”。
しかし実態は、娘そっくりの影武者・紫堂ミカが、男たちに弄ばれる役目を演じさせられていた……。
そんなある日、ミカは自分が偽物であることを見破った男・藤代条と出会う。
姫尾家に因縁を持つ彼は、現状の脱却を望むミカにとある提案を持ちかけた。
――それから数週間後。
人知れずミカと入れ替わってしまった舞奈は、何も知らないまま、二人の復讐と言う名の凌辱にその身を汚されていく……。

……てなお話。ゲームとしてのデキはイマイチだっだけど、シチュエーション的に興奮したなぁ。
214名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 08:58:19 ID:6XAO2lMW
やっぱ男女の入れ替わりの方が好きだなー
215名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 21:27:34 ID:5l9s4y/S
女同士が好きなんだけど少数派じゃないよね?
216名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 00:45:59 ID:U3BcmPxG
同じく男子女子交換が好き!!兄妹なら更にアップ!!
217名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 10:07:16 ID:W77CWkW/
>>201の続きです

教室に入り、私は『自分』の席に座った。
挨拶を交す相手はやはり女の子が多く、皆が私を『歩美』と思って接してくる。
話しかけてくる子も多いので、女の子の言葉遣いにももう少し慣れないといけない。
今は大分マシだが、朝の電車では緊張しすぎてほとんど言葉が出なかった。

・・・それにしても、営業マンとして鍛えた会話テクがここで役に立つとは思わなかった。
お得意様との会話でも聞上手であることが第一で、
いかに気持ちよく話をしてもらうかが契約を左右するといっても過言ではない。
女の子は話したがりが多いのか、大概は相槌と同調だけで会話が成立する。
ひとまずは話を聞くことに専念すれば問題ないと感じた。名前やデータも得られて一石二鳥かもしれない。
だが、ずっと聞きに徹していると、いずれボロが出るに決まっている。
もちろん営業でも聞いているだけでは駄目で、必要なタイミングで相手に合わせた意見を発する必要がある。
話題のトピックについてはしっかり研究しないといけないな。よし、頑張ろう。

出席確認になり、名前が次々に呼ばれていく。
まずは男子からだ。もちろん自分は呼ばれない。何だろうこの感覚。
女子の出席確認になる。私の苗字は『一瀬』だから、最初の方だろう。

「一瀬歩美さん」
「はい」

(よし、できた)
無事に済んだことに安堵する。相変わらず歩美と呼ばれて返事をするのには違和感を覚えるが。
さて、いよいよ授業だ。
218名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 10:09:15 ID:W77CWkW/
授業が始まった。
何気ない行動でさえも、自分が『女子高生』であることを意識せざるを得ないことに気付く。
まず、ペンからノートに至るまでほとんどが女の子らしいもので構成されている。
授業中くらいは自分の中の男を維持できると思っていたが大きな間違いだった。
逃げ場はどこにもない。

私はキャラクター物のペンケースの中からピンクのシャーペンを取り出す。
花をあしらった淡い黄色のノートを開き、黒板に書いてあるものを書き写す。
これまでのノートと筆跡が違いすぎたらおかしいので『歩美』の文字を真似ないといけない。
こんな感じか・・・?これも帰ったら練習する必要があるな。

と、ここで自分の足に意識を移す。スカートから伸びる足はきっちり内股をキープしている。
(よし、大丈夫だ)
授業中は話や黒板に意識が行きがちで、足が開くことがあるから
座る時は常に内股で足を閉じる習慣を身に付けろと『歩美』からもきつく言われている。
スカートを穿いているだけでも恥ずかしいのに、その中身を見られるなんてのは私にとってもこの上ない屈辱だ。
絶対にこれだけは阻止しないと。そう思い私はスカートを前に引っ張り、また少し安心感を覚えるのだった。


そういった一連の行動――男だとばれないように振舞うこと、歩美になりきろうとすること、
スカートの中を見られないように注意すること、それらには奇妙な達成感があった。
もちろん義男はそのことに全く気付いておらず、男としての意識を忘れないようにしているつもりだ。

だが、男であるにもかかわらず、女子高生として日常を過ごさないといけない、
周りも女子高生としてしか扱ってくれないこの異常すぎる状況に、義男の感覚はこの時点で既に麻痺しつつあった。
219名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 10:25:24 ID:W77CWkW/
>>209
ありがとうございます。
貴殿ほどに文章を綺麗に書けないのが残念ですが(´・ω・`)
時間ができたら少しずつ書いていこうと思います。
次の作品を楽しみにしてます!

>>212
楽しみにしてる方がいてくれて嬉しいです。
父親がその生真面目さ故に娘になりきろうとしてだんだんとドツボにはまっていく様を
書きたいんですけど、なかなか難しいですね(;・∀・)
特に今回は普通の入れ替わりとあまり変わらない展開なので、次はもう少し考えないとw
220名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 10:34:07 ID:W77CWkW/
>>202
(・∀・)人(・∀・)ナカーマ
221名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 23:08:03 ID:ECITmZes
>>219
GJ!
222名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 01:29:10 ID:eGnCIx33
結婚を決めたとき、昔はキャリア志向の強かった自ら仕事を辞めたり、
あまり上手じゃなかった料理も一生懸命練習したりと、
俺から見ても彼女なりに『かわいい奥さん』になろうとしているんだと、
そういう風に理解していた。
だからこそ結婚式前日になっての紗智子の主張は、
最初は単なるマリッジブルーかと思っていた。
だけど、違った。
彼女は今でも仕事を続けたかったけど、俺のために辞めたというのだ。
本当ならばこんなことで口論したくなかったのだけど、
俺も連日の残業と結婚式の準備で疲れていたのか、
つい溜まっていたイライラを爆発させてしまった。
「そんなにイヤなら、主婦になるの辞めればいいだろ! 働いたっていいんだ!」
「だったら働かせてもらうわよ!」
その日はお互いに背を向け合って、ホテルのベッドにもぐりこんだ。
思えば、俺が『俺』だったのはこの日が最後だったのかもしれない。
223名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 01:29:35 ID:eGnCIx33
自分の結婚式という晴れの舞台のせいか、目覚まし時計にせかされることなく目が覚めた。
紗智子はすでに起きているらしく、ベッドにその姿はなかった。
「機嫌を直しているといいんだけどな」
そんなことをつぶやきながら体を起こすと、言いようのない違和感に襲われる。
昨日は確かに綿のパジャマを着て寝ていたはずなのだが、
体にまとわりつく布地の感触がなんとも心もとないものになっている。
そういえば下半身もやけに締め付けられるような感覚。
どうなっているんだ? と慌ててベッドから抜け出すと、
「なんだこりゃ!」
予想だにしなかった自分の格好に驚いて大声を出してしまった。
上半身は胸元にリボンがあしらわれたベビードール。
下半身は豪奢なレースで飾られた白い女性用のパンティと、
セットになったガーターベルトと膝上までのストッキング。
間違いない。これは昨日の夜、紗智子が着ていたものだ。
昨日の夜の腹いせだろうか、こんないたずらをするなんて。
寝起き独特のイライラも手伝ってか、ベッドに腰掛けて怒りを爆発させていると、
部屋のドアが開いて紗智子が入ってきた。
その彼女が着ているものといえばデニムのシャツにチノパンと、
くつろぐために俺がホテルに持ち込んだもの。
とんでもないいたずらに対して文句のひとつも言ってやろうと立ち上がろうとする俺を制し、
彼女は重々しく口を開いた。
「ねぇ、健ちゃん。なんか大変なことになっちゃったみたいよ」
「なにがさ」
「口で言ってもわからないかもしれないけど……。
 えーと……そうだ! パスポート! パスポート見て!」
言いたいことはいろいろあったが、彼女にせかされるようにして仕方なくセカンドバッグの中のパスポートを開いた。
取得したときと何も違わない、普通のパスポート。
何の変哲もない、しかし何か引っかかるような違和感を覚える。
なんとももどかしい。
「よく見て!」
そこまでいうのなら、と、パスポートをよく見る。
名前。国籍。生年月日。間違いない。
ただ性別の欄が男性を示す『M』ではなく、女性を表す『F』になっていた。
「健ちゃんの性別欄、女性になってたでしょ」
無言でうなずく俺。
「朝起きたとき、健ちゃんのパジャマ着てたから、最初はイタズラかと思ったの。
 でも、イタズラなら健ちゃんが私のナイトウェア着てるはずがないし……。
 なんか嫌な予感がしたから、いろいろ調べてみたら……」
もったいつけるように話す紗智子。
その引きにつられるように、自分もごくりとつばを飲んだ。
「今日の結婚式ね、健ちゃんがお嫁さんになるらしいの」
224名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 01:29:58 ID:eGnCIx33
言ってる意味がよくわからない。
なぜ。男の。俺が。お嫁さんに?
「私にもよくわからないけど、そういうことになってるのよ。
 とりあえず着替えて、朝ごはん食べに行きましょ。
 そうすれば、私の言ってることがわかるから」
うながされるまま、カバンから着替えを取り出そうとすると、なぜか紗智子に止められた。
「着替えろって言ってみたり、止めてみたり、なんなんだよ、一体」
「そっちのカバンじゃなくて、こっちの中のを着て」
紗智子が指差す先にあるカバンは、間違いなく彼女が持ってきたもの。
見てはないけど、絶対女性的な服装が詰まっているに違いない。
それを着ろというのか。
「あのね、健ちゃんは『結婚式を今日に控えた女性』ってことになってるの。
 悪いこと言わないから、私のカバンの服を着ていって。
 ホントはメイクしてからレストランに行ったほうがいいんだけど、
 さすがにそうも言ってられないでしょ?」
渋々彼女のカバンの中に入っていた、ゆったりした花柄のワンピースを身にまとう。
俺の体格は大きくないとはいえ、それでも男。
なのに、彼女のワンピースは、まるで自分で試着して選んだ服のように
ちょうどいい着心地となっていた。
「やっぱり思ったとおり」
「なにが?」
「健ちゃんと私の持ち物も、すっかり入れ替わってるの」
そういえば、紗智子が着ているデニムのシャツやチノパンも、最初から彼女自身の服のようにジャストフィットしている。
本来なら彼女が俺のワイシャツを着ると、袖が余って太ももぐらいまですそがくるぐらいなのに、だ。
「ぴったりだけど、なんか似合わないね」
そりゃそうだ。
男なんだから、スカートが似合うほうがおかしい。
「じゃ、とりあえずご飯食べに行こ?
 少しだけでもおなかに入れておかないと、結婚式で大変だよ?
 なんてったって、花嫁さんはごちそう食べてる余裕なんてないんだから」
225名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 01:30:20 ID:eGnCIx33
たぶんガッツリ続く

>>219
続き、お待ちしておりました!
自分の文章は、そんな過大評価受けるほどのものではありませんですよ
なんか照れてしまいます
226名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 10:45:54 ID:iLli2nde
乙!
入れ替わっていきなり女の憧れを達成できるなんて、
心境の変化が楽しみでなりません(*´Д`)
227名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 09:19:05 ID:3mjFnb/Z
過疎ってるなー
投下がないとこんな感じなのか(´・ω・`)

朝起きたら家族全員の存在が入れ替わっていた、とか
男子高の存在が女子高に変わってしまって、とか
集団入れ替わりにも興味が湧いてきた今日この頃です
228名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 09:20:06 ID:3mjFnb/Z
一応保守しときますね
229名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 10:39:57 ID:o9p4KA3M
>>227
>男子高の存在が女子高に
面白そうだがどう書いていいのやら想像つかないな
神ならうまいことまとめてくれるのだろうか
230名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 00:15:14 ID:BSEGa7yH
>>224の続き

紗智子に寄り添うように、ホテルの廊下を歩く。
時折すれ違う宿泊客やホテルの従業員は、この体と服装がちぐはぐな2人を
ほほえましい新婚カップルとして暖かい視線を送ってくる。
朝食を摂るために訪れたレストランの入り口でも、
責任者クラスの従業員に「本日はおめでとうございます」と、自然に声をかけられたぐらいだ。
誰もが、男である俺がワンピースを着ていることを不思議に思わない。思いもしない。
ちぎったパンを口に入れながら、今日の予定を思い返してみる。
確か11時半から挙式で、12時半から披露宴。
披露宴が15時に終わって、二次会が18時から21時ぐらいだったか。
それらが終わってホテルに戻って、次の日から1週間ほどの新婚旅行……。
すでに新居に入って2人で暮らし始めているから引越しの心配はないけど、
やっぱりあわただしい数日間になりそうだ。
と、いろいろ考えていると、紗智子の両親がテーブルに近づいてきた。
「おはようございます」
「健一さん、うちの紗智子のような男の嫁になってくれて、本当にありがとう」
紗智子の両親も、俺が花嫁になるという風に認識しているようだ。
「ところで健一さん、どのぐらいで孫の顔を見させてもらえるのかな?」
朝からいきなり、ド直球でとんでもないことを言ってくる紗智子の父親。
婚約やらで何度か会っているのだが、そのときの紳士然とした振る舞いとは違い、
なんとなくセクハラオヤジっぽいのは気のせいだろうか。
「健一さん、うちの味はしっかり覚えたかしら?」
一方、紗智子の母は、料理の味付けのこととか、嫁としての心構えをねちねちと語り、
絵に描いたような姑っぷりを発揮する。
男として会いに行ったときはそんなことはなかったのに、
立場が変わるとこうも人の接し方が変わってしまうものなのか。
「ちょっと向こうへ行っててよ」
紗智子が露骨に嫌な顔を見せると、追いやられるように彼女の両親は退散していった。
「ゴメンね、健ちゃん。あんなこと言って」
「大丈夫、気にしてないよ」
気にしてはないけど、先が思いやられる出来事だった。
きっとこの先も、事あるごとにあの両親には頭を悩まされることになるのだろう。
そういう想像をしただけで、なぜか胃がキリキリと痛くなってきた。
231名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 00:16:12 ID:BSEGa7yH
軽めの食事を摂って部屋でくつろいでいると、ホテルの従業員がやってきた。
つまり、これから挙式の準備が始まるということだ。
「いってらっしゃい」
軽く手を振る紗智子に、苦笑いしながら手を振り返す俺。
本当に気が重い。
案内されるまま控え室に入ると、扉の向こうからふわりと甘い香りが漂ってくる。
花や果実とかのものとはまったく違う、
言うなれば女性だけが持つ独特の香気にクラクラとめまいすら覚える。
「お待ちしておりました、井上様。本日はおめでとうございます」
メイクアップとかのスタッフだろうか、数名の女性が深々と頭を下げる。
「それではさっそく支度していきましょう。
 まずは、こちらのブライダルインナーをお召しになってください」
渡されたのは、胸から腹部にかけて覆うようなデザインの下着と、
おそらく下半身に履くのであろう、ぴったりしたショートパンツみたいな下着。
それと白く輝くストッキング。
女性向けの下着はよくわからないので、ただ渡されても困ってしまう。
とりあえず、着替えに手間取っている振りをして、手伝ってもらうことにする。
上半身用の下着――ビスチェタイプとか言うらしい――は、
渡されたときの印象と違ってウェスト部がだいぶ絞られていて、
まるで肋骨を折ったときのギプスのように体を締めつけてくる。
その締め付けのせいか、男の体にはあるまじき美しい曲線が描かれることとなった。
下半身用の下着は締めつけ効果で下腹部のラインが出にくくする役目があるとか。
そして改めてすね毛を剃られてから履かされたストッキングはとんでもないもので、
どこからどうみても男の汚らしい足を、女性らしいほっそりとした綺麗な脚へと生まれ変わらせた。
たかが下着1つ取っても、これだけの機能が詰め込まれているのかと驚くとともに、
世の中の女性は美しい体形を維持するため本当に苦労しているんだな、と考えてしまう。
続いて、いよいよウェディングドレスを着ることに。
彼女が「絶対これがいい!」と惚れこんで選んだ、
体にフィットしたラインで膝元ぐらいからフリルが広がって後方に伸びる純白のドレス。
胸元はキラキラと輝くビーズと刺繍で彩られ、大きく開いた背中と露出した肩が色っぽさを演出している。
男の俺が見ても『綺麗なドレス』であることは間違いないのだが、コレを着るとなると話が違う。
背中部分のファスナーを開け、上側から体を通すようにドレスの中に滑り込むと、
脇に控えていたスタッフが下着のラインに合わせるようにドレスの胸元をせり上げた。
ぴったりと胸元に合わさったと思ったら、じじじ……と微かな音がして、
さらに締めつけが強くなる。
どうやらドレスの背中にあるファスナーが閉じられたようだ。
続いて、ロングヘアーのカツラをかぶせられ(これもショートヘアにしていた彼女の要望だった)、
どんどんと女性らしいヘアスタイルに仕上げられていく。
ヘアメイクが終わると、今度は顔のメイク。
問答無用で眉毛の形を整えられ、顔に何かを塗られ、口紅を引かれる。
そしてベールやらネックレスやらアクセサリーをつけられ、最後に白く輝くハイヒールを履かされた。
「とてもお美しいですよ」
スタッフによって大きな姿見の前へと連れ出された俺が見たものは、
安っぽいコントに出てくるような気持ち悪ささえ覚える女装野郎ではなく、
今から結婚式を控えて輝くような幸せを放つ花嫁そのもの。
ありきたりだが「コレが……俺?」と、あまりの美しさに放心状態になってしまった。
232名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 00:17:33 ID:BSEGa7yH
>>227
>朝起きたら家族全員の存在が入れ替わっていた、とか
>男子高の存在が女子高に変わってしまって、とか
前者は似たようなものをやってしまったけど
後者はいろいろ楽しそうだなぁ

バカで有名な底辺男子高と、超がつくほどのお嬢様高校が入れ替わって・・・とか
233名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 00:51:05 ID:16CffuwA
しかし、男女・夫婦間で立場が入れ替わった場合、子供産むときってどうするんでしょうね。
なにせ、肉体的には変わっていないわけで、妊娠できるのは実際の肉体的に女性の方なわけだし。
入れ替わり同士でないとなかなかないとは思いますが。
234名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 03:54:30 ID:UXhq8uQ7
>>232
単純にバカで有名な底辺高と、有名進学校を 入れかえるのも良いかも…
昨日までは憧れの眼差しで見られてたのに一気に蔑みの対象に…


235名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 17:00:24 ID:ecMInTI4
>>218の続きです

一時間目の授業が終わり、休み時間になる。
次の授業は・・・体育。
男子は校庭でサッカー、女子は体育館でバレーボールをするらしい。

男子はこの教室で着替えるらしく、既に服を脱ぎ始めている。
「歩美、さっさと行くよ」
「うん・・・」
そうだった。今の自分は『そっち側』なんだよな。
サブバックを手にとり、私は真紀と体育館へ向かった。
男子とは違い、女子は体育館の更衣室を使わせてくれるらしい。

そして私は更衣室に入った。
・・・そこには想像通りの光景と言うべきだろうか、女子たちが着替えを行っていた。
そして当然私のことなんか意に介していない。
当たり前のようにブラウスやスカートを脱ぎ、下着姿になっている。
女の子達は色とりどりの下着を付けており、素肌を晒すその姿は非常に眩しいものであった。
やはり若さってのは素晴らしい。

近くを見ると真紀も服を脱ぎ始めている。
お、こんな可愛い下着を付けているのか。・・・て、いかんいかん。私も着替えねば。
もっと周りを見回したい気持ちを抑えつつ、私もサブバックから体操服を取り出す。
まずはブラウスを脱ぐ。誰が気にしているわけでもないのは分かっているが、
男の自分がブラジャーやキャミソールを付けている姿を晒すのは非常にキツイものがある。
もしかしたら「あ、今日は水色なのか」と思われているのかもしれない。
嫌な想像を頭の中で打ち消すようにシャツを頭からかぶった。
下は・・・スカートの下から穿けばショーツを見られなくて済みそうだ。
スカートから脱ぐ子もいたが、流石に私にはできない。いえ、勘弁して下さい。
そんなわけで先に赤のショートパンツを穿いて、スカートを下ろし、着替えが完了した。
心なしか、ミニスカートよりは安心する・・・気がする。相変わらず足は露出しっぱなしだが。
窓から外をふと見ると校庭に向かって走る男子の姿が見える。男の体操服は青なのか。
男子は青で、女子は赤、そして自分が穿いているのは赤・・・。

男との距離感を感じる。
236名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 17:02:31 ID:ecMInTI4
体育館でクラス毎に集合して一列に並ぶ。
当たり前だが周囲は女子ばかり。
そして自分も女子としてこの体育館で整列している。

・・・私はまだこれが現実であると思えない。
自分はこんな所で何をやって・・・いや、もうそのことは考えまい。

今の自分は『歩美』なんだ。

私は女子高生なんだ。

いつ戻れるのか分からないが、今は『歩美』になりきるしか道はない。
震える脚を諌めるように自分に言い聞かせる。
いけない道を一歩一歩踏み出しているような気もする。
だが、そう思わないと自分のアイデンティティが崩壊しそうだった。

軽く準備運動をしてからバレーボールの試合が始まった。

ボールがこちらめがけて飛んでくる。
私は自分の気持ちを整理するのに必死で反応が遅れてしまった。

ドスンッ

ボールが体に当たり、私は尻もちをつく。イタタ・・・
「歩美っ、大丈夫!?」
チームの女子が私の周りに駆け寄ってくる。
「うん、大丈夫・・・」
「やっぱり今日の歩美何かおかしいよ?保健室行く?」
真紀が私を気遣って声をかけてくれる。

「ありがとう、真紀。でも大丈夫だから」
「本当に?辛かったら言いなよ」
「うん」
そう言って私は立ちあがる。そうだ、今は試合中なんだ。集中しないと。
相手のサーブ。またボールがこちら目がけて飛んできた。
明らかに狙われてる。そうはいくか。さっきの一発で十分目は覚めた。
(よしっ)
今度はしっかりとレシーブを返す。
そしてトス、アタック!よし、決まった。

笛の音がなり、私たちのチームに点が加算される。
点を決めた子は皆とハイタッチ。もちろん私も手を重ねる。

その後も点が入ったら一緒に喜び、入れられたら互いに声を掛け合っていた。
誰かがミスをしても励まして余計なプレッシャーをかけないようにしている。
運動神経の良くない子もこのチームにはいるけど、それを皆でカバーして補っている。
心なしか、その子の表情も明るく、のびのびとプレイしている感じだ。
それを見ていると自分も嬉しくなる。このチームのために頑張りたい。勝ちたい。
そんな気持ちにさせられる。

そういえば、男の試合はもう少しドライな感じだったなあ、とふと振り返る。
時にはミスした人を罵る奴もいた覚えがある。運動神経の悪い奴は常に悪者扱い。
罵声を浴びた人は動きもどんどん硬くなって新たなミスを招く悪循環。
そういうのは見ていて気分が悪かった。かと言って自分が励ますわけでもないが。
もちろん声を掛け合う良いチームもあったけど、少なかったなあ。

その点、女子の方は勝ち負けも大事だが、それよりもチームを第一にしている。
その方がこちらも楽しくプレイできる。そう、スポーツなんて楽しむものなんだ。
237名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 17:03:44 ID:ecMInTI4
・・・この試合は相手との実力がほぼ互角で、点を入れたら返されるようなペースだった。
そんな中、何とかこちらのチームが先にマッチポイントになる。

次のサーブは私だ。
「頑張れ歩美!」
周りの女の子が声をかけてくれる。ここは絶対に入れたい。
集中しながらサーブを打つ。
いつもよりも低い弾道。入るか!?

何とかネットを超え相手コートへ入った。よし!
しかし相手チームに綺麗なレシーブを返される。
その球はゆっくりとネット際に向かい、そこにいた子がふんわりとしたトスを放つ。
私は急いでネット前に飛び出した。

・・・来る!

意を決してジャンプする。
バシィッ!!手に衝撃が走る。
よしっ!入れっ!

トンッ・・・

ボールは静かに相手のコートへ落ちる。
向こうも反応が遅れ、今一歩のところで届かない。

ピーッ!笛の音と共に私のチームに点数が入る。・・・勝った。
わあっと自分のチームのメンバーが駆け寄り、抱き合いながら喜ぶ。

嬉しい!そして楽しい!

皆と一体になって得た(私にとって)初めての勝利は感慨深いものとなった。

あれから数試合行って、負けたりもしたけど、とにかく楽しかった。
こうやって皆で汗を流すのは何年ぶりだろうか。この爽快感はずっと忘れていた気がする。

・・・

体育の授業も終わり、再び女子制服に着替える。
やはりスカートは穿き慣れないが、さっきよりは気持ちが楽になった感じがする。
「やっといつもの歩美らしくなってきたね」
真紀が話しかけてくる。
「そうかなー?」
私は答える。
言葉も前よりは楽に出るようになった。
相変わらず言葉は詰まることがあるし、話題には付いていけないけど。
同じチームで共に戦った真紀には特に親近感を覚える。もっと仲良くなりたい。
女の子の人間関係は距離が近くて温かい感じがする。

女子高生の格好は相変わらず恥ずかしい。
実際、窓から反射する自分の姿もやはり女装した男にしか見えない。肉体だって完全な男だ。
でも、周りはそう思ってないんだ。今の私は『歩美』なんだ。

少し女子高生を楽しんでみようかな。
自分の中で男の部分を維持してさえいれば、戻った時も問題ないはずだ。

また少し、『歩美』に近付いた義男だった。
238名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 17:12:56 ID:ecMInTI4
>>230
乙です!
続きが気になって仕方ありません(*´∀`)
式の最中で女性に染まってしまいそうですねw

>>234
有名大学を目指して頑張っていた男子高校生がギャルに染まり堕落していく・・・
方や勉強の面白さを覚えてどんどん賢くなっていくギャル達・・・
最後は元ギャルに見下される元優等生か。良いなこれ(`・ω・´)b
239名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 08:45:15 ID:YPp+X5UT
>>233
さすがに妊娠は諦めるしかないな
240名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 10:40:06 ID:qA8byDJp
>>238
GJ!

>>239
立場が男になってる女性が妊娠していても、誰もそれを「認識できない」でいいんじゃね?
でもその事実は他の形で現実世界に反映されていて、周りはかなり気遣ってくれる

んで、生まれたら勝手に立場が女性の男が生んだことになってる、みたいな
241名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 18:18:33 ID:k69Z1CCM
>>238
GJ!!
父親はもう戻れそうにないな(・∀・)ニヤニヤ
242名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 18:49:38 ID:urOWIQhy
>>240

>立場が男になってる女性が妊娠していても、誰もそれを「認識できない」でいいんじゃね?

たぶん、そうなるとは思うんですが、それだと、出産をどうするか、って事になってくるんですよね。
自然分娩でも、己一人や妻の立場になっている男だけの協力じゃ難しいような。

>んで、生まれたら勝手に立場が女性の男が生んだことになってる、みたいな

だとすると、夫の女性が妊娠中は妻の男性が妊婦として認識されるって事に。
機械とかの情報も摩り替わるんでしょうねぇ。
胎の中にいない赤ん坊の発育状態を見せられる妻な夫ってどんな気持ちなのやら。
243名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 19:40:30 ID:qA8byDJp
>>242
現妻だけでなく、何故か現夫まで分娩台に寝かされて出産の準備をさせられ、
寝かされながらも現妻に声をかけてあげろと言われ、
最後は現夫が出産するも、労いの言葉をかけられるのは現妻みたいな

矛盾は強引に突破しつつも元の世界との因果関係は全く変わらない方が
異常な世界感が引き立って個人的には好きかもw
244名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 01:26:33 ID:NbrS0jmG
>>231の続き

よくマンガとかで、普段地味な女性がドレスアップした自分を見て
「これが……私?」なんて言う場面が出てくるが、
まさか自分自身が経験するとは思ってもみなかった。
馬子にも衣装なんていうけれども、たとえ男だとしてもここまで美しくなれるなんて、
本当にプロの腕前というのは恐ろしいものがある。
「では、そろそろ時間ですので、こちらへ」
顔に掛からないようスタッフによって持ち上げられていたベールが下げられると、
視界が白くかすんで前が見にくくなった。
はじめて履いたヒールの不安定さも手伝って、
スタッフに手を引かれないと1m先にすら歩いていけないほどだ。
そして案内された場所は大きな扉の前で、そこに誰かが立っているのがぼんやりとわかる。
どうやら俺の親父らしい。
「お父様、どうぞ」
シルクの手袋に包まれた俺の手を、恭しく親父へと受け渡す。
ぼんやりとした視界でもわかるほどガチガチに緊張した親父は、
俺の腕を抱きしめるように組んできた。
係員によって目の前の扉が開くと、パイプオルガンの音と拍手が洪水のように押し寄せてくる。
静かにお辞儀をして視線を上に上げると、ベールの向こうには赤いじゅうたんが伸び、
じゅうたんの終わりには1人の人物が立っていた。
その人物に向かって、親父とともに一歩一歩進んでゆく。
そして親父の足がぴたりと止まると、俺の腕をまるで貴重品を渡すかのように待っていた人物
――紗智子へと引き渡した。
するとパイプオルガンの音色が止み、続いて参列者と合唱隊による賛美歌が流れ始める。
賛美歌の終了を合図に、祭壇へと歩みを進める2人。
祭壇の向こうにいた牧師は、俺たちが祭壇へと上がったのを確認してから、
なにやら聖書の一節をとうとうと語りだした。
「……すべてをがまんし、すべてを信じ、すべてを期待し、すべてを耐え忍びます」
その一節が、強烈に俺の心へ突き刺さる。
これから、様々な「ガマン」が待っていることを考えると心が折れそうになっていたが、
それすら見越していたような、この言葉。
宗教なんて信じていなかったが、やはり2000年近く信仰されているものは持っているパワーが違うということか。
そしていよいよ、夫婦の契りを結ぶ宣誓の瞬間がやってきた。
「新郎紗智子。あなたはいまこの女性と結婚し、神の定めに従って夫婦になろうとしています。
あなたは、その健やかなときも、病めるときも、豊かなるときも、貧しきときも、
この女性を愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、
その命の限り、かたく節操を守ることを誓いますか?」
「誓います」
力強く答える紗智子。
続いて牧師は、俺に宣誓の言葉を問いかけてくる。
長い長い問いかけの言葉の対し、俺もはっきりと「誓います」と答えを返す。
2人の宣誓が済むと、牧師は聖書を閉じて一歩前に踏み出した。
気がつくと、指輪が2つ載せられた盆を持つスタッフが、横に控えている。
いわゆる結婚指輪の交換だ。
指輪を受け取る前にスタッフによって手袋がはずされると、いよいよ儀式がスタート。
いつのまにか祭壇の周りに集まっていた参列者の持つカメラのフラッシュが、
ベール越しに閃いてまぶしささえ覚える。
紗智子は俺の左手をそっと持ち上げると、薬指へ優しくリングを嵌めた。
続いて俺が彼女の左手を持ち上げ、リングを薬指へ。
お互い指輪を交換したあとは、いよいよ誓いのキス。
紗智子の手によっていままでかぶせられていたベールが持ち上げられると、
一気に視界が開けて、紗智子の顔が瞳に飛び込んでくる。
昨日までとはまったく違う凛々しい彼女の顔つきに、なぜか胸がきゅんと高鳴ってしまう。
そのかっこいい彼女の顔がゆっくりと近づき、俺もそっと目を閉じる。
くちびるに感じる、柔らかな感触。
短いような、長いような、永遠の一瞬。
星よりもまたたくフラッシュのなか、俺はしびれるような幸せに満たされていった。
245名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 01:27:01 ID:NbrS0jmG
続いて牧師様の前で、結婚証明書なるものに署名をすることに。
アメリカでは法的効力のある書類だが、日本では単なる演出上の小道具に過ぎない。
そう、本来は小道具に過ぎないのだけれども、いざ自分の名前を「妻となる人」の欄に書くとなると、
胸がドキドキがペン先に伝わって上手く書けない。
何度か息を大きく吸い込んで、呼吸を整え、なんとか名前を書き上げる。
手作りの結婚証明書に刻まれた「妻:健一」の文字。
なんだか自分という存在が、今この場で生まれ変わったような、そんなすがすがしさを感じて、
頬がほんのりと熱くなる。
ふと横を見ると、同じようにこちらを見ている紗智子と目が合うが、
なぜか照れくささから、そっと視線をはずしてしまう。
しかし、頬は幸せで自然と緩んできてしまう。
その様子を見てかどうかわからないが、紗智子は俺に
「これからもよろしくね、花嫁さん」
と耳元にささやいてきた。
「うん……」
ベールで隠れているけど、間違いなく耳まで真っ赤になっている。
火が出そうなほど顔が熱い。
俺たちが結婚証明書に署名したことを牧師様が承認したのを合図に、参列者が一斉に立ち上がる。
チャペルに朗々と響き渡る賛美歌の中、俺はスタッフに渡された手袋をはめなおし、
ブーケを持って参列者の方へ向き直る。
すっと紗智子の腕が差し出されたので、自然と寄り添うように組みついた。
そして一歩一歩、賛美歌のシャワーを浴びながらチャペルの外へと向かってゆく。
外に出ると、あらかじめ待ち構えていたスタッフの誘導にしたがって、
参列者が退場するまで隠れるスペースに身を潜めることに。
2人がゆったり立てる程度の空間しかないため、自然と紗智子にぴったりくっつく感じになる。
初めて組んだ訳ではない腕からは彼女の体温がほのかに伝わってきて、
なぜか心臓の鼓動がどんどん高まっていく。
世界中に響き渡っているんじゃないかと思うほど、いま、自分の心臓は高鳴っている。
「大丈夫、私がついてるから」
俺の緊張を見越してか、紗智子はきりりと自信に満ちた顔を向けてきた。
「なんかね、凄いドキドキしてるんだ、俺。
 こんなこと、いままでなかったのに。
 ドレスを着てからずっと、自分がなんだか本当に『女性』に、『花嫁』になった気がして、
 そしてお前を見ると、そのドキドキがさらに強くなるんだ」
ウェディングドレスに着替えてから、はじめて2人きりになったのも手伝ってか、
つい紗智子に本音をこぼしてしまう。
そんな俺の揺れている心ごと包み込むように、彼女は優しく微笑んだ。
「大丈夫、健ちゃん……ううん、健一。
 私から見ても、あなたはとってもステキな『女性』で『花嫁』だから」
彼女の顔が、またゆっくり近づいてきた。
誓いの口づけとは違う、甘くとろけるようなキス。
スタッフが声をかけるまでの時間、俺は旦那様との熱い契りを交わしていた。
246名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 01:28:20 ID:NbrS0jmG
>>238
ああもう!『歩美』化していくお父さんかわいいな!GJ!

>>233
>>240
>>242
>>243
細かいこと考えてなかったけど、どうなるんでしょうかね、実際w>妊娠
記憶改ざんとか「妊娠しません」あたりが妥当かと思ってましたが
247名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 21:21:40 ID:0mp0NP/w
『歩美』に変わっていく義男。
立場とか精神とかだけじゃなく、出来れば自分の目に映る自分の姿も可愛く『歩美』に変わっていって欲しいなぁ。
248名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 02:24:01 ID:BR150nd2
なんか趣味に合うスレなので、書いてみたくなりました。
あまり文章は書いた事がないので、その辺はご容赦下さい。
話が進まない上にフェチよりです。
249名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 02:25:07 ID:BR150nd2
とある平日の昼下がり、消化できなかった休日を突然にまとめてもらった自分はなんの予定の無いまま無為に時間を過ごしていた。
「そうだ、風俗にでも行ってみるかな」
唐突に思い立った。
暇を持て余していた自分は、このしょうもない思い付きに善は急げと街に出かけたのだった。
そう、それがこれから起きる数奇な出来事の始まりだとは思いもしなかった。
250名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 02:27:16 ID:BR150nd2
さて、街に着いたは良いが実は自分は風俗の経験がない。
かと言って知識が無い訳でもなく、どこに店があるのかも、そこが優良店である事も知っている。
そこへ向かう途中の通り、唐突に声を掛けられた。
「ねえ、ちょっと」
声をした方を向くと、そこには如何にもな感じのギャルメイクとファッションの女の子が立っていた。
その通りは風俗店がある場所だけあって、独特の雰囲気がある。
そんな場所で声を掛けられると言う事は、客引きか最悪ボッタクリの類だろう。
「今時間ある?ちょっとさ、お願いがあるんだけど」
ほら来た。これは間違いなく予想通りの展開だろう。
「いや、ごめん。行く店もう決まってるから」
ここはさっさと立ち去るのがベストだろう。
そう思い断りの言葉を述べ立ち去ろうとした所、手を掴まれてしまった。
「あ、まってそう言うのじゃないから。もちろん援交とかでもないし。話し聞いてくれない?」
やれやれだ。ここで振り切ってしまうのも簡単だがどうしたものか。
客引きは大概そう言うものだ。
まあ、流されるつもりはないが少し付き合って見ようか。
「君、客引きとかじゃないの?」
こちらが話を聞く素振りを見せると、その女の子は嬉しそうに話しかけてきた。
「ん、違う違う。そー言うんじゃなくてさ、ほんとお兄さんにお願いがあってさ。お兄さんこれからヘルスとか行くんでしょ?」
「まあ、そうだけど」
「でしょ?だったらさあたしが相手してあげるからさ。ホテル代おごってくれない?」
なるほど要するに売春な訳か。
「悪いけど、俺手持ちそんなに無いよ」
「ホテル代ぐらいはあるでしょ?ホテル代だけで良いんだ。実はさあたし家出中でずっとお風呂入ってないんだよね。だからさ、ちゃんとしたのに入りたくてさ。
お願いしたいんだけどダメかな?」
「シャワーだったらマンガ喫茶とか使えば済むんじゃないのか?」
「だからさ、ちゃんとしたのが良いわけ。シャワーじゃなくてお風呂」
道理には適っているな。
もしホテルに行ったとして、今の自分の手持ちは1万5千円ちょっと、他に貴重品は携帯ぐらいか。
風俗で使う予定の金額と照らし合わせてみて、これが罠で持ち逃げされたとしても痛い額でもないな。
携帯は保障効いてるし。
まあ、正直こう言う経験をして見たいとも思うしな。
「ま、良いけど。その話のっても」
ちょっと考え返事をしてやると、女ん子は嬉しそうに笑った。
「ほんと?やったー。じゃ行こ行こ。あ、言っとくけど本番はなしね。フェラとかでガマンしてね」
さすがにホテル代だけで犯らせてはくれないか。
それでも良い取引だとは思う。
そうして自分はギャルの女の子に案内されるままホテルに向かうのだった。
251名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 02:31:07 ID:BR150nd2
ホテルに到着後、女の子は嬉々として浴室に直行して行った。
さすがはラブホだけあってお風呂は充実した物のようだ。
かなりご満悦な様子で歌まで歌っている。
「お待たせ、お兄さんも入って来てね」
かれこれ30分近くもお風呂を楽しんだ女の子は、満足した様子で自分に風呂を勧めて来る。
ギャルメイクを落としたその顔は、正直先程までの彼女とは違う人物に見える。
しかも髪型はウィッグだった様で、黒髪のショートだ。
付まつ毛が外され、チークもグロスリップも落され、さらにウイッグを外した顔は、先程のあれだけ派手な印象とはうって変わって何所にでも居るような普通の高校生の様だ。
悪くは無いがちょっと興ざめするな。
「ああ、そうするよ。あのさ、悪いんだけど俺がシャワー使ってる間に、またメイクしておいてくれるかい?
そっちの方が良いんだよね」
「そうなんだ。いいよー盛っておくから。ゆっくりねー」
女の子は二つ返事で承諾してくれた。
自分はそのままシャワーを浴びる。
罠だとしたらこの時が持ち逃げさせる絶好の機会なんだよな。
しかし女の子は先程の言葉通りメイクに勤しんでいる。
この分だと大丈夫そうだ。
そう言えば美人局の可能性もあったよな。
でも本当にお風呂を使いたかった様だし可能性は低いか。
そんな事を考えてシャワーを終えて彼女のところへ戻ると、まだメイクの途中だった。
あれだけのメイクそんなに直ぐに出来るものでもないか。
「あ、もうちょっと待っててね。」
出来上がりまで待つよりないので、ゆっくりと待つことにする。
そう言えば、名前を聞いてなかったな。
自分も名乗ってないし。
「そう言えばまだ君の名前を聞いてなかった。俺は佐伯良輔(さえき りょうすけ)だ。そっちは?」
「そうだったっけ?あたしは、あかね。よろしくね良輔」
あかねか、家出中らしいし偽名かもしれないがそういう事でいいか。
「さてと、完成!さ、いつでも良いよ。まず口でやってあげる」
どうやら準備完了の様だ。
早速ベッドへ移って事を始める事にするか。
252名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 02:33:22 ID:BR150nd2
事が済んでホテルのベッドの上、正直良かった。
まさか4回も抜いてくれるとは思わなかった。
おかげでだらしない事に少し疲れてしまいベッドに仰向けになっている有様だ。
「どうだった?なかなかだったでしょ?」
あかねが得意気に聞いてくる。
「ああ、かなりの大満足だったよ。本当に良かった」
これでホテル代を持つだけとはかなりの得だったと言える。
「そっかそっか、ふっふっふん」
自分の返事にあかねは満足気だ。
そんなやり取りの最中、なんだか眠気が一気に差してきた。
チェックアウトの時間もあるので眠る訳にはいかないと思いつつも、睡魔に勝てず不覚にもそのまま眠りに入ってしまった。
・ ・ ・ ・
どれ位時間が過ぎたのだろうか、目が覚めた時にはそこにあかねは居なかった。
慌てて時計を見ると、時間はそれほど経ってはいなかった。せいぜい10分ほどだろうか。
次に思ったのは財布を持ち逃げされたのでは無いかと言う事だ。
自分の衣類を確認しようとした所、服が無くなっていた。
代わりにあかねが着ていたギャル系の服が置いてある。
「まさか、悪戯で俺の服を着て行ったのか?」
想定外の事に思わず独り語ちる。
良く見るとそこに1枚の手紙があり、手紙にはあまり上手とは言えないくせ字でこう書いてあった。
『良輔へ
最初は絶対信じないと思うんだけど、あたしと良輔の立場を交換させてもらっちゃいました。
訳わかんないでしょ?
でも本当の事なんだよね。ちょっと良輔の家の事思い出してみて。
ね?思い出せないでしょ?自分が住んでたところ。それだけじゃなくて良輔の身の回りの事何も思い出せないでしょ?
そう言う事なんだよね。
今から、良輔はあたしになったんだよ。家出少女の福森あかねにね。
自分では分からないかもしれないけど、周りから見たら良輔はあたしに見えてるんだよね。だから安心してあたししてね。
あたしは良輔になって良輔の部屋でゆっくり過ごさせてもらうから。
そう言うわけだからよろしくね。
                                あかねより 』
にわかには信じられなかった。
しかし手紙の通り自分が佐伯良輔の記憶を思い出そうとすると何も思い出せないのだ。
あまりの事に愕然とする。
しかしながらどう言う訳か、自分が福森あかねになってしまったと言う自覚が出来てしまっている。
いったいどう言う事なんだろうか。
253名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 02:34:38 ID:BR150nd2
途方に暮れていても仕方がない。
自分は家出少女の福森あかねなのだ。
意識や思考は元の良輔のままなのに、否応なしにそう自覚してしまう。
自分になったあかねを追いかけなくてはと思う。しかし、なぜかその行為がはばかられる。
差し当たってはまず服を着なければいけないのだが。
「これを着るのか」
手に取って見た服は、オフショルダーのボーダーTシャツに3段フリルのティアードスカート、花柄レースの7分丈レギンス、ギンガムチェックのブラとお揃いのショーツといったコーディネートだ。
周りから見れば自分はあかねに見えているのだから、これを着ても問題ないはず。
確認した訳ではないがその事は何故か自覚していた。
まずショーツをはいてみる事にする。
しばらく風呂に入っていないと言っていたが、着替えもしてなかったのだろう、ショーツのクロッチ部分が明らかに汚れている。
しかしはかない訳にもいかず、足を入れる。
ブラも同じようなものだ。女の子の体臭と汗臭さが鼻につく。
レギンスをはいてスカートをに足を通し、シャツを被る。
肩が空いているためブラのひもが見える形だ。
どれもこれも長い間着続けていたのか、着用感が強くあかねの匂いが立ち込めている。
鏡を見れば女装した自分が映っている。情けない様な感情とこれが当たり前な気持ちが混ざって感じる。
服を着た所で、今度はメイクをしなければいけない衝動に駆られた。
すぐに追いかけなくてはと思う反面、メイクをしなければ外には出れないと言う強迫観念が強く襲う。
そして結局はメイクをすることにしたのだ。
出しっぱなしになっていた、化粧ポーチから液体ファンデーションを取り出しスポンジは使わず、手で顔全体に伸ばす。
それだけで顔の色が整い女性ぽい肌色となる。
コンシーラーの要らないタイプでこれ一つで済む。
メイクの仕方は何故か知っていた。
次にチークを頬に入れる。薄いピンクが色付きギャルっぽさが出てくる。
さて次はアイメイクに移るのだが、何と言ってもギャルメイクの決め手はここにある。
まずはアイライナーでふち取りをし、3色のアイシャドウをブラシで丁寧にグラデーションを作っていく。
それが出来たら、今度は付まつ毛だ。ビューラーを使ってまつ毛をカールし付まつ毛をつける。
もうこれでギャル特有の目許の出来上がりだ。
本当なら眉の手入れもしておくべきなんだが、全部剃って描くとなると後で困るような気がしたため、それはしなかった。
幸いもともと眉は太い方ではないので問題なさそうだ。
最後の仕上げとしてパールピンクのリップグロスを塗れば完璧なギャルメイクの完成だ。
ウイッグを被りブラシで整えれば、そこには完璧なギャルがいた。
「うん、完璧」
時間をかけて完成したその出来に満足すると同時に、もう探しに出ても追いつかないと言う諦めが自分を苛む。
どうしたものか考えるが、どのみちチェックアウトはしなければいけない。
大きなサイズのエナメルトートバッグに荷物をしまい肩にかけると、入口に置いてあるブーツサンダルの元へ行く。
ちょっと気になりブーツの匂いを嗅いでみる。
「うっ、くっさ」
思わず声に出してしまった、つま先や踵が開いているブーツサンダルなので匂いは籠らないと思っていたが、脱がずに素足でずっと履き続けていたのだろう。
かと言って他に履く物もなく仕方がなしにそのブーサンを履いた。
そう言えばウイッグも汗臭い気がする。
家出少女の衣類は元の持ち主の体臭と汗臭さでいっぱいだった。
その事にげんなりすると同時に、今は自分がその「家出少女福森あかね」なんだと強く思うのだった。
254名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 02:47:39 ID:BR150nd2
とりあえず、ここまでです。
行間とか改行をきちんと合わせないと駄目ですね。
すいません。
少し解説しますと、立場を入れ替えたあかねはお互いの記憶に関しては
自分の好きなように出来てしまいます。
ですからしようと思えば良輔を全くのあかねだと思い込ませることも
可能なのですが、それだと面白くないのであえて良輔の思考を素のままに
しています。
あかねは自分の知られたくない情報は伏せて、良輔の記憶は知り放題と
言う訳です。
次の展開からは家出ギャルになってしまった良輔が、
放浪し途方に暮れるお話を考えています。
需要があれば、いつか書きたいと思います。
でも、この稚拙な書き方では駄目ですよね。
精進出来ればと思う今日この頃です。
255名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 03:40:34 ID:mgAq9cHJ
(・∀・)イイヨイイヨー
256名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 11:39:48 ID:+DWC3h6u
>>254
ギャル化いいですね。
自分は良輔だという意識を残しつつどんどん知識や記憶や行動をあかね化
させていって欲しいと思います。
また汗臭いあかねの衣類を嫌々ながらも当然のように受け入れる様も
良かったです。
私も優等生とギャルの交換・入れ替わりを考えたりしてますが…

いつかの再投稿お待ちしております。
257名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 18:19:07 ID:wtJ8BYyR
>>237の続きです。

「ただいまー」

私は誰もいないと分かっている自宅の玄関でつぶやき、ゆっくりと中に入った。
休日ならば大抵誰かいる我が家だが、平日は妻も『歩美』も仕事中だ。
休みの日や夜の顔しか知らないせいか、このがらんとした空間がやけに心細い。
太股同士が擦れる感覚を妙に気にしながら『私の部屋』へ向かう。

ガチャ・・・
おそるおそるドアを開け、音を立てずにゆっくりと部屋に入る。
いや、忍び込むという方が妥当な表現だったかもしれない。

『私の部屋』――数日前までは『歩美の部屋』だったわけだが・・・
淡いピンクを基調とした壁紙にカーテン、最近買ってあげた真っ白な化粧台に全身鏡、
貼られている男性アイドルのポスターや本棚に揃っている少女漫画、無造作に置かれたティーンズファッション雑誌、
その他各所に至るまで誰がどう見ても「女の子の部屋」だった。
この部屋で過ごすのも今日で3日目。だが、未だに慣れない。

鏡で自分の姿を確認する。やはり朝と同じ、我ながら見苦しい姿だ。
この格好で今日一日過ごしたなんて・・・。しかも学校まで行ったのか・・・。
スカートの裾をつまみながら自責の念にかられる。

思い返すと、随分大胆なことをしたものだ。
基本的に女の子は集団で行動することが多く、休み時間は常に周りに誰かがいた。
体育が終わったあたりから、女装に羞恥心を抱きつつも不思議と気持ちが落ち着いていて、
緊張したのはせいぜい階段を登り降りするときくらいだった。
初めて連れションというものも味わった。女子トイレは案外混むものなんだなとただ冷静にそう思っただけ。
何故あの時の自分が何も疑問を覚えてなかったのか不思議なくらいだ。

異常すぎる空間に色んなものが麻痺していたのだろう。
今になって悶々としてしまう。

だが、早くこの環境に順応する必要があるのも事実だ。考えすぎるのは良くない。
今の私は歩美なのだから。
258名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 18:24:34 ID:wtJ8BYyR
よしっ。気持を切り替えよう。まずは着替えないと制服がしわになってしまう。
そうして制服を脱ぎ、下着姿になる。
上から下まで全て娘のものを身に付けている父親ってのは想像すると逆に笑えてくる。
だが、今の私は女の子の服以外は着ることを許されていない。
仕方ないんだ、そう自分に言い聞かせてタンスの前に掛けてある部屋着、
ボーダー柄のワンピースを手に取り、何も考えず頭から被った。
シャツとは違い、裾が膝上まで伸びることに相変わらず違和感を覚えつつも着替えは完了。
ゆったりとしたタイプの服なので、制服よりも緊張感がないのはありがたい。
昨日は丸一日この服で過ごしていたこともあり、先程よりは大分リラックスしている。

さて・・・。
私はおもむろにティーンズファッション雑誌に手を伸ばす。
今日は周りとの会話も何とかなった(つもりだ)が、毎日聞いてるばっかりだと怪しまれるに違いない。
早めに情報を仕入れておく必要がある。

・・・

なになに・・・今年の流行ファッションか・・・。真紀も何が欲しいとか色々と言ってたなあ。

『やっぱり女の子ならワンピース!これで周りに差をつけちゃえ!』

皆が着たら差が付かないじゃないか・・・と突っ込みを入れつつ、見出し以降も読み進める。
ガーリーだの、カジュアルだの、訳分からんタイプにそれぞれ分類されてワンピースが紹介されている。

うーん、『歩美』はカジュアルに属するのかな。こんな感じの服を着ているのを見たことがある。
更にページをめくると、スカートやショートパンツ、パーカーなどに至るまで詳しく紹介されていたが、
不思議と見覚えのあるものが多かった。『歩美』は服装にかなり気を遣っていたのかもしれない。
この辺りは『歩美』が着た姿を連想できたおかげか、比較的楽しく読めた。
男と比べると随分バリエーションがあるんだなあと関心する場面もあった。

その後は町での着こなしや、アイドルや恋の相談、スイーツなどのページが続いていた。
だが、この辺りはイマイチ興味が湧かない。
まして男と恋愛なんて想像するだけでも寒気がする。
でも、覚えないと話題に付いていけないからな・・・。そう思い、もう一度戻って読み直した。

あれからティーンズファッション雑誌のバックナンバーも何冊か読み終えた。

今の女の子がどんなことに興味を持っているかは分かってきた・・・気がする。
アイドルなんかの話題についてはまだまだ勉強の余地がありそうだ。テレビもチェックしないといけない。
特にファッションについては少し詳しくなったかも?
組み合わせを考えるのはちょっと面白いかもしれない。
・・・とここで一つ気になることが出てきた。

『歩美』はどんな服を持っているのだろう?

戻れなければいずれ着ることにもなるだろうし、『歩美』が持っているものは把握しておく必要がありそうだ。
雑誌を読む限りでは、コーディネートもそう簡単にはいかない気がする。
服なんて適当でも大抵何とかなるもんだと考えていたが、その認識はちょっと甘いのではないか。
そう思わせるには十分すぎるくらいに服の種類が男ものよりも多い事実を突き付けられている。
いつも側に『歩美』がいるわけではない。自分で服を選ばないといけない日もあるだろう。

歩美のセンスが急に変になると、周りの不信感を募ることにも繋がる。
父親として、娘の生活は守らないといけない。
娘の服に興味が湧いたわけではない。これは必要なことだ。

何か自分に言い聞かせるようにつぶやきながら、ふらふらと吸い寄せられるようにして
歩美のクローゼットに向かった。
259名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 18:31:29 ID:wtJ8BYyR
クローゼットを開けると、ふんわりと甘い香りがした。
中は今時の若い女の子が着るような衣服で溢れている。

やはり種類が多く、合わせるのは難しそうだ。
その中でも目にとまった空色のキャミワンピ(と略するらしい)を手に取る。
確かこれは・・・雑誌を見ながら、キャミワンピに合いそうな服を探す。

・・・そうこうして、パフスリーブのシャツと若草色のカーディガンを引っ張り出した。
早速地面に置き、組み合わせを確認する。
春らしい組み合わせで、見事に調和している。雑誌のコーディネートとほとんど同じだが。


それを見ていると、不思議な感覚に襲われた。
・・・時計に目をやる。まだ二人が帰ってくるには時間がありそうだ。

私は静かに着ているワンピースを脱いだ。
何やってるんだ自分は。
でも、この沸き上がる衝動が抑えられない。
シャツに袖を通した。ふんわりとした感触が心地よい。
そしてキャミワンピ、カーディガンの順に身に付ける。

そして少しドキドキしながら鏡を見た。
(可愛い・・・)
もちろん自分のことではない。服装のことだ。
床に置いただけでは分からない魅力がはっきりと伝わる。
これまでと同じで女装しているだけなのに、嫌々制服を着ていた時と比べて
随分と女の子っぽい雰囲気があるのが不思議だ。
色々とポーズを取ってみる。服の雰囲気が更に伝わる。
女の子のファッションはやはり面白い。

・・・

あれから様々なコーディネートを試していた。
ワンピースからスカート、ショートパンツにサロペット・・・
どれも女の子らしさを際立たせるものばかりだ。
カットソーもバリエーションが豊富で、一つ変えるだけで雰囲気ががらりと変わる。
着替えるたびに別の人に変身したみたいですごくワクワクする。
適当に合わせているので、うまくいかないことが多かったが、
逆にバッチリ綺麗にコーディネートが決まった時はすごく充実感を覚える。

ちなみに今はデニムのミニスカートに白の長袖プリントTシャツ、黒のジャケットという組み合わせだ。
比較的ボーイッシュな雰囲気のためか、今の自分に比較的マッチしている気がする。

あまりに不自然だったため、すね毛は剃ってしまった。
ただ、それだけなのに脚の見栄えが一新したような感じがする。
これなら制服のミニも大分綺麗に見えるかな・・・?学校へ行くのが少しだけ楽しみになる。
ただ、顔の方はやはり問題だ。特に髪の毛が短いのはどうにもならない。
こっちは伸びるのを待つしかないか。

あとはメイクだな・・・。
そう思い化粧ポーチに手を伸ばす。

「あれえ?随分とおしゃれに目覚めたみたいだねえ、『お父さん』?」

びっくりして振り向くと、仕事を済ませて帰ってきた『歩美』がいた。
260名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 18:37:32 ID:wtJ8BYyR
>>246
GJ!
ああ、旦那がどんどん変わっていく・・・(0゚・∀・)ワクテカ

>>254
GJ!
こういうのもいいなあ。。
続きが楽しみです。
261名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 01:19:51 ID:GnVWh7g+
>>245の続き

キスしているところを見られ、なんとなく気恥ずかしい雰囲気の中、
隠しスペースからチャペルの前へと再び姿を現す。
同時に割れんばかりの拍手が巻き起こり、参列者たちの祝福の声が飛び交う。
人によって作られた道を旦那様と腕を組んで歩き始めると、
左右から色とりどりの花が優しい雨のように降り注いできた。
いわゆるフラワーシャワーだ。
まぶしい日差しと空を舞う花々に混じり、「抱っこ」を求める声が聞こえだす。
俺本人ならともかく、紗智子に俺を抱きかかえるなんてできるはずがない。
そう思っていたのに、まさか。
「健一、しっかりつかまっててね」
ひざの裏に腕が差し込まれたと思ったら急に体がふわりと浮き上がり、
「きゃ」と小さな叫び声とともに、紗智子に強く抱きついてしまった。
抱きついた瞬間、歓声とデジカメのシャッター音がひときわ大きくなる。
ふと気がつく。
ああ、これが『お姫様抱っこ』されている状態なのか。
体だけでなく、心まで宙に浮いているようなフワフワ感に満たされ、
なんか自然に笑みがこぼれてきてしまう。
あのまま『男』として結婚していたら味わえない、『女』だけの幸せ。
紗智子の顔が、俺なんかより、私なんかより、やけに眩しく男らしく感じて……。
「ねぇさっちゃん」
「ん?」
私の呼びかけに振り向く紗智子の唇に、不意打ちのようなキス。
さらに沸きあがる歓声ときらめくフラッシュ、そして祝福の言葉と鮮やかな花の嵐。
心から思う。花嫁になれてよかった、と。
262名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 01:20:47 ID:GnVWh7g+
挙式が終わっても、まだまだ休むことはできない。
この後には披露宴と二次会が待っている。
本音を言えば、ホテルの部屋で寝転がっていたいところだけど、そうも言っていられない。
紗智子と別れ、またもホテルの控え室へと足を向ける。
挙式で崩れたメイクを直し、そして違うドレスに着替えるためだ。
ドレスを決めに行ったときは、なんで何着もドレスを選ぶんだと思っていたが、
確かにこんなときじゃないと色々なドレスを着る機会はない。
挙式と披露宴とお色直し、合わせて3着のドレスを選んだ紗智子に感謝しつつ、
スタッフの指示に従って着替え始めた。
今度のウェディングドレスは、フリルがまるで螺旋のように足元に流れていく左右非対称のスカートが特徴で、
後方に伸びたスカートのすそが丸く広がっているのがいかにもウェディングドレスっぽくてかわいらしい。
上半身はさっきまで着ていたドレスと同じで肩を出すスタイルだけれども、
こちらは左肩がワンショルダータイプになっていて、
それをドレスの生地と同じ布で作った大きなコサージュが飾られている。
シルエットからして胸が高鳴る美しいドレス。
朝はこんな綺麗なドレスを着るのを嫌がっていたなんて、なんか不思議な気分だ。
着替えた後はもちろんメイク。
今後のことも考えて、手順をしっかりと目に焼き付けていく。
道具の名前とかテクニックはあとでまた調べるとしても、
実際にメイクしているところを覚えておけば、絶対に役に立つはず。
しかしプロのメイクアップ技術を見ていると、
化粧という言葉に『化ける』という字が入っているのがよくわかる。
ちょっと疲れが見えた花嫁のメイクを落としたときは、
どこからどうみてもくたびれた男にしか見えなかったのに、
またプロの技術で丁寧に化粧されたら、
疲れどころか内面から輝きを放つような幸せいっぱいのかわいい女性が誕生した。
朝のメイクは驚きのあまり放心状態になってしまったけど、
今度はメイクアップされた姿を心に深く刻み込むことができた。
ひじまである絹の手袋をして小さなブーケを持てば、どこに出しても恥ずかしくないほどの『お嫁さん』。
姿見で全身を確認して、小さくうなずく。
うん、私はかわいい。
ちょっと朝よりも花嫁姿に自信を深めた私は、ちょっとうきうきしながら披露宴会場の扉の前に立つ。
気がつくと、白いタキシードを着てビシッと決めてる紗智子が立っていた。
「どう? さっちゃん。かわいいでしょ」
いま、一番綺麗な瞬間を見てもらいたくて、紗智子にアピールする私。
そんな自意識過剰な新妻を見て、『彼』は意味深に微笑むばかりだった。
263名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 01:21:11 ID:GnVWh7g+
>>253
新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
これからどんどん家出ギャルっぽくなっていくかと思うと、もうワクワクですよ
続き、お待ちしておりますです

>>256
>私も優等生とギャルの交換・入れ替わりを考えたりしてますが
これも期待!

>>259
『お父さん』にファッション楽しんでいるところを見られるなんて(・∀・)イイ!
だんだんと『お父さん』にはわからない女子高生っぷりを発揮するのが楽しみです
264名無しさん@ピンキー:2010/07/13(火) 08:22:37 ID:veMn2cER
ほっしゅ
265名無しさん@ピンキー:2010/07/14(水) 05:03:15 ID:XPlVeyqd
>>262の続き
最近流行っている女性シンガーの曲と拍手に乗せて入場すると、いよいよ披露宴の始まり。
挙式と違って新郎新婦のやることがほとんどないため、進行に任せるまま式が進んでいく。
司会の人から新郎の紗智子と新婦である私の紹介がされているが、
私の経歴が紗智子のとして、逆に紗智子の経歴が私のものとして扱われているのがちょっと面白い。
紺色のブレザーに胸元の赤いリボン、チェックのスカートを身にまとった紗智子の写真がモニターに映し出されているのにもかかわらず、
「健一さんの高校入学のときの写真」なんて説明が入るのは、もはや冗談としか思えないほどだ。
その写真を見ながら、ちょっとだけ紗智子が卒業した名門女子高や女子大に通う自分の姿を想像し、
『架空の女子学生生活』を少しだけ楽しんだのは、紗智子にすら話せない自分だけの秘密としておこう。
また、2人の馴れ初めも公開されたが、もちろんこれもお互いの置かれた状況が見事に逆転していて、
同期の紗智子の失敗をフォローするよくできたキャリアウーマンの自分といった感じに紹介された。
実際によく失敗していたのはもちろん自分のほうなので、
見に覚えのない濡れ衣を着せられた紗智子はちょっと怒っていたけど、
立場が入れ替わるってことは、他人からの評価も入れ替わるってことだから仕方ないのかも。
新郎新婦の紹介が終わると、続いてケーキの入刀。
イミテーションではない大型のホールケーキを前に、2人並んで刀のような長さのケーキナイフを2人で握る。
お約束の「新郎新婦初めての共同作業」なんていう文句を受けながらケーキにナイフを入れると同時に、
拍手とデジカメのフラッシュが嵐のように巻き起こる。
お約束とはいえ、なんともうれしい瞬間だ。
続いて最近流行しているファーストバイトの儀式。
なんでも新郎が新婦に食べさせるケーキには「一生食べるものに困らせない」という決意が、
花嫁が花婿に食べさせるほうには「一生おいしいものを食べさせてあげる」という誓いがこめられているという。
まずは新郎である紗智子が、フォークに刺したケーキを私の口に。
一口大に切られたケーキをぱくりと食べて彼の頬にキスをすると、
攻守交替で今度は私がケーキを食べさせる番。
もちろん私は花嫁なので「おいしい料理を作ってあげる」という意味をこめて、
がっつり特大のフォークに刺して
「あーん」
もう紗智子は『男』なんだから、ダイエットのために甘いモノを控える必要もないから、
ショートケーキ1つぶんぐらい一気に食べても問題ないはず。
今までガマンしていた反動で食べ過ぎてメタボになられても困るけど。
266名無しさん@ピンキー:2010/07/14(水) 05:03:53 ID:XPlVeyqd
ケーキ入刀の次は乾杯と歓談タイム。
上司の音頭で乾杯が行われると、出席者のテーブルには料理が運ばれる。
この後、しばらく主役であるはずの私たちは半分蚊帳の外となって、
テーブル単位で物事が進んでいく。
ある意味、朝からいままで休みなく結婚式を行ってきた2人にとって、
唯一といっていい休息時間なのかもしれない。
たまに紗智子のところに同僚が酒を持って訪れたり、
会ったこともない大学時代の同級生と記念撮影したりするけど、
基本的にはなにもすることがない。
本当ならば挨拶に来てくれた子たちと、もっと学生時代のこととかで盛り上がりたいのに、
その記憶がないから相槌を打つぐらいしかできないのがつまらない。
どうせならば記憶ごと交換されちゃえばよかったのに、とさえ思ってしまう。
そんなつまらなくも大事な時間も、式場のスタッフによって終わりを告げられる。
いわゆる『お色直し』の時間だ。
次はどんなドレスを着られるのかとドキドキしながら支度部屋に入ると、
用意されていたのはワインのように深い赤がまぶしいカラードレス。
やはり紗智子の趣味で選ばれていたせいか、
ノースリーブどころか胸元と背中が大きく露出したもので、
コルセットみたいに背中の部分を編み上げてドレスそのものの締めつけで保持するタイプのもののようだ。
スカート部分は三段に折り重なるようになっていて、一番最後の段がウェディングドレスっぽく長くなっている。
そしてちょっとだけ寂しげな胸元はキラキラと宝石が輝くネックレスで飾られ、
髪型もロングのかつらをうなじが綺麗に見えるように纏め上げられたあとコサージュが盛りつけられた。
今まではどちらかといえば清楚なイメージだった自分のドレス姿だったけれども、
一転してゴージャス感あふれる大人の女性へと変貌を遂げてしまった。
衣装と化粧を変えるだけでここまで変身できるなんて、
女性はなんて楽しいことをナイショにしていたんだと怒りすら覚えてくる。
こうなってくると『女性的なこと』が出来なかった今までの分を埋め合わせる意味でも、
ドレスだけじゃなくてたとえば振袖やスーツなんかも着てみたくなってきた。
さっき映像で流れていた、紗智子の高校時代の制服なんかもいいな。
今度、紗智子が仕事行っているときに、こっそり着てみよう。
267名無しさん@ピンキー:2010/07/14(水) 05:13:09 ID:XPlVeyqd
お色直しはカラードレスよりも
「紗智子が母親から譲ってもらった振袖」のほうがらしかったかなぁ・・・と思いつつ

いま書いてるのが終わったら、次はどんなシチュにするかなぁ
年齢ギャップもののほうがやっぱいいのかな
268名無しさん@ピンキー:2010/07/14(水) 23:22:04 ID:+pK75D9z
乙です
私は今の話すごく好きですよ?
じわじわと染まっていく姿がたまりません。

多分人気というよりも、純粋に人がいないのが原因かと(;・∀・)
269女子高生・渡良瀬和己:2010/07/15(木) 13:55:25 ID:THwuHYEg
継父←→娘の立場変更物、書いてみました。
-----------------------------------------
 女の子らしい華やかな彩りに飾られた寝室。
 ピンクのカバーのかかったベッドでフカフカの布団に埋もれながらグッスリと眠っていた私は、ベッドサイドに置かれた目覚まし時計が7時を指し、軽やかなアラームを鳴り響かせるとともに、モゾモゾと目を覚ました。
 「ん……ふわぁ〜あ、もう起きなきゃ……」
 まだ眠たげに目を擦りつつ、ベッドの上に半身を起こす。
 5月も末で少しずつ夏が近づいている今の季節は、早朝ならでは爽やかさがあり、やや低血圧のきらいがある私も、それほど苦労なく起きることができた。
 ゆっくりと布団を跳ね上げ、スタンッとベッドから降りる。
 クリーム色のコットンのナイティを着たまま、洗面所でひとまず顔を洗ってから部屋に帰り、ドレッサーの前に腰かけて、まずは寝乱れた髪を丁寧にブラシでとかす。
 最初の頃は、朝から面倒だと思っていい加減にして家族に叱られたものだが、慣れと言うのは恐ろしいもので、この1年余りですっかり慣れ、髪の毛はもちろん、フェイスケアやメイクまで、女の子の朝の身だしなみは、ほとんど淀みなく行えるようになっていた。
 寝間着を脱いで、夜のうちに用意しておいたブラとショーツ、スリップを身につける。ほんの一瞬だけ、乏しい……と言うよりほぼ皆無に等しい胸の膨らみを恨めしく思う気持ちが心を横切るが、慌てて否定する。
 それでも、慣れた手つきで脇の方の肉を集めてカップに入れてから最後にパッドを入れると、一応それらしい隆起ができるのだから、寄せて上げるブラ恐るべし、と言ったところか。
270女子高生・渡良瀬和己:2010/07/15(木) 13:56:11 ID:THwuHYEg
 続いて学園の女子制服へと着替える。白い半袖のブラウスの男とは逆についているボタンをはめることにも、すっかり馴染んでしまった。
 ベッドに腰掛けて太ももまである白のサイハイソックスを履いてから、膝上15センチのグレーとグリーンのチェックのミニスカートに足を通す。真紅の紐タイを蝶結びにして、
左胸にエムブレムの縫いとられたクリーム色のベストを羽織れば、通学モードは完成。
 「あ……忘れてた」
 最後に、ドレッサーの引き出しを探って、いくつかある中から、今日はシンプルなオレンジ色のカチューシャを選んで髪にセットする。
 鏡の中を覗き込みながら、左右に体を傾けチェックし、ニコッと微笑んで見せる。
 そこには、ひいき目抜きにしても「可愛らしい女子高生」が爽やかな笑みを浮かべていた。
 「はぁ〜〜……」
 その姿を見るたびに、いまだに私は複雑な気持ちになってしまう。
 「かすみぃ〜! 起きてる? そろそろご飯食べないとエリちゃんが迎えに来ちゃうわよー?」
 「はーい、ママ〜、今行くー!」
 自室を出て、1階のダイニングへと急ぐ途中で、ボサボサの髪をして、青いスウェットの上下を着た「男性」と鉢合わせた。
 「──おはよう、パパ」
 「んん……おぅ、おはよう、かすみちゃん」
 咥え煙草のままポリポリとお尻を掻きながら、私の継父……ということになっている「男性」は、眠そうに目をしばたいた。
271女子高生・渡良瀬和己:2010/07/15(木) 13:58:11 ID:THwuHYEg
 「もしかして、また、徹夜?」
 「いやいや、一応、6時半過ぎには寝たんだが……」
 「もぅ、いい加減にしないと、体壊すよ?」
 「はは、連休があったから、ココんところ、締切が不規則でなぁ」
 などと気さくに会話する私達を見れば、「義理の父娘ながら比較的親子仲は良好」と傍目には見えるだろう。
 確かに、私もこの人のことは嫌いではない。尊敬もしているし、再婚から1年以上一緒に暮らしてきて、家族としての情もそれなりにあるつもりだ。
 しかし……。
 「あら、どうかした、かすみちゃん?」
 「う、ううん、なんでもない。ごちそうさま〜」
 誤魔化すようにお箸を置いた瞬間、タイミングよく玄関のチャイムが鳴った。
 「あ、多分エリだ。ママ、ちょっと歯を磨いてくるから、待っててもらって」
 「ハイハイ、わかったわ」
 急いで歯磨きを済ませ、口元のリップを塗り直し、私は通学鞄を手に玄関へと向かう。
 「あ、かすみん、おっはよー」
 「おはよ、エリ。時間はまだ大丈夫?」
 「うーーん、今8時7分だから、何とか歩いても余裕っしょ」
 「わかったわ。じゃあ、ママ、パパ、行ってきまーす」
 エリと一緒に家を出る。
272女子高生・渡良瀬和己:2010/07/15(木) 13:59:37 ID:THwuHYEg
 昨日のテレビのドラマや来月出るアイドルの新譜、今日発売予定の少女漫画誌……などなど、他愛もないことについておしゃべりしながら、学校へと向かう。
 それを、ごく当たり前の事と受け止めて今の日常に満足している自分と、どこか落ち着かない居心地の悪さを感じている自分が、心の中にいることがわかる。
 もっとも、一年前に比べると、前者と後者の比率が完全に逆転しており、自分の立場に違和感を感じることはめったになくなってはいたのだが……。
 今の私の名前は渡良瀬かすみ──だが、ほんの1年数ヵ月前までは、僕は渡良瀬和己(かずみ)として新米とは言えごく普通の会社に勤めていた、れっきとしたサラリーマンだったのだ。

#次回、シチュエーション説明の予定。
273女子高生・渡良瀬和己:2010/07/15(木) 18:45:27 ID:THwuHYEg
 大学時代のサークルに顔を出したことがキッカケで、知り合った年上の女性──天野橙子さんとの結婚も決まっており、ささやかながら幸せを満喫していたのだ。
 橙子さんは、高校進学を控えた娘さん(亡夫の忘れ形見らしい)がいるとは思えないほど、若々しく美人な女性で、しかも有名月刊誌での連載を複数持つ人気マンガ家「あまのとーこ」でもあった。
 彼女は性格も優しく家庭的で、そんな素晴らしい女性がなぜ、自分のようなうだつの上がらない三流サラリーマンを伴侶に選んでくれたのか、正直理解不能だった。
 難しい年頃のはずの娘のかすみちゃんも、出会って間もなく僕に懐いてくれた。おそらく僕と天野さん母娘は「波長があった」のだろう。
 とは言え、僕とかすみちゃんの年齢差は8歳しかなく、「父と娘」と言うよりむしろ「兄と妹」に近い関係だったが、兄弟のいない僕にはそれもまた新鮮な感覚だった。
 ところが。
 結婚直前の3月頭に、不況のあおりをくらって勤めて1年足らずの会社が倒産してしまったのだ!

 僕としては、正直婚約破棄されることも覚悟していたが、橙子さんは、そんな僕を優しく慰め、「再就職先は、じっくり決めればいい」と言って、そのまま籍を入れてくれた(式は、橙子さんの仕事が落ち着く6月に挙げることになっている)。
 実際、20代はじめのころからいっぱしの漫画家としてヒット作をいくつも生み出している橙子さんは、かなりの資産家だ。何せ、僕と結婚するにあたって横須賀市内に一戸建ての新居を買っちゃうくらいなのだから。
 なんだかヒモか若いツバメっぽくてアレだが、背に腹は代えられない。僕は妻となった橙子さんの言葉に甘えて、彼女のマンション(新居は、現在最後の内装中)に同居し、なけなしのコネやハローワークを頼りに再就職先を探し始めた。
274女子高生・渡良瀬和己:2010/07/15(木) 18:46:29 ID:THwuHYEg
 娘のかすみちゃんも、当初は僕の不運に同情してくれているようだったのだが……。
 実は彼女も春からの進学を前にひとつの問題を抱えていたのだ。

 何度も言った通り、橙子さんは売れっ子漫画家だ。定期連載を持っているような漫画家は、普通アシスタントを抱えて、背景、ベタ塗り、モブ描きなど自らの仕事の補佐をさせている。
 当然、橙子さんもベテランのアシスタントをふたり雇っていたのだが、3月いっぱいで、ひとりは結婚して北海道に行くことに、もうひとりはめでたくひとり立ちすることになり、ちょっとしたピンチに陥っていたのだ。
 ただ、橙子さんの場合、どうにも手が回らないほど忙しい時には娘のかすみちゃんが臨時で手伝ってくれていたので、まだ救いはあった。
 しかし、さすがに高校生ともなると時間的余裕が厳しくなるうえ、主戦力のアシふたりが抜けるとなると、絶望的な修羅場となるのが目に見えていた。
 現在無職の僕が手伝えれば……とも思うのだが、生憎絵心が皆無で手先が不器用な僕には、消しゴムかけとせいぜいベタ塗りくらいしか出来そうにない。
 対して、小学生のころから橙子さんの手伝いをしていたかすみちゃんは、もはやプロデビューしてもおかしくない画力・技術力を持っている。現に、橙子さんも、ストーリー展開やキャラ作りについてかすみちゃんと時々相談してたりするらしい。
275女子高生・渡良瀬和己:2010/07/15(木) 18:47:11 ID:THwuHYEg
 そんな人手不足に悩む「あまのとーこ」の仕事場の状況を打開するべく、かすみちゃんが奇想天外な奇策を僕らに提案した。
 ──もう、おわかりだろう。
 そう、僕が娘の「渡良瀬かすみ」として高校に通い、かすみちゃんは対外的には橙子さんの年下の夫の「渡良瀬和己」として家で妻の仕事を手伝う……という形になってしまったのだ!!
 橙子さんいわく、母親としては娘にせめて高校くらいは出てほしいし、できれば一時休学とかもしてほしくない。しかしプロの漫画家としては有能で気心の知れたフルタイムのアシスタントは喉から手が出るほど欲しい……というコトでの苦渋の選択だったらしい。
 無論、僕としてはまったくもって気が進まない。ただ、「絶対嫌だ」と主張するには、この家における僕の立場は脆弱すぎた。
 「大丈夫、パパならきっとうまく女子高生やれるって! 制服も似合いそうだし」
 と、脳天気にポンポンと僕の肩をたたくかすみちゃん。
 ……あまり認めたくないのだが、僕は小柄でかなりの童顔だ。
 身長は162センチのかすみちゃんとあまり変わらないし、ラフな私服で夜の街を歩いていると高校生に見られて補導されかけることはしょっちゅうだ。女の子と間違われて電車で痴漢に遭ったことさえある。
 だからこそ、「女の子のフリ」をする、それも数ヵ月から下手したら丸1年間続けるなんて心底嫌だったが、残念ながら有効な代案を考えることもできなかった。
 「何ヵ月も僕が「かすみちゃん」として通った学校に、どうやって復帰するつもりだい?」と苦し紛れの抵抗も、「そんなの転校すればいいよ」と一蹴されてしまった。
 結局僕は首を縦に振り、4月までの1週間、かすみちゃんから促成女の子講座を受けるしかなかったのだ。

#さすがに座りが悪いので経緯説明。次回は4月に新居に引っ越してからの描写になります。
276名無しさん@ピンキー:2010/07/15(木) 20:22:54 ID:8ImhqanQ
乙!!良い!!凄く良い!!めちゃくちゃ好みのパターンだ〜!!
小柄で童顔、『女の子講座』楽しみ楽しみ。
277名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 11:41:14 ID:PJdKEjsb
これは相似入れ替わりでもなければ、立場のみの入れ替わり・変化でもないし、
ジャンルは単なる女装物になるのかね。
考えるほど定義の難しいジャンルだなこれ
278名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 12:18:39 ID:QzeOIygw
生まれたときからこれまでの全てが書き換えられてしまうことが立場交換のツボだと思うんだ
これだと昔の知り合いなんかは誰も「かすみちゃん」であることに気付かないから
確かにジャンルとしては女装物に近いように思える。俺はこの手の話も好きだからいいんだけどw
広い意味で捉えれば「立場の変化」で行けるのかな・・・?

まあ、細かいことは(ry
人口も少ないので気にせず続けてください。楽しみにしてます!
279名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 21:07:36 ID:rWQVc2rL
十分「立場の変化」だと思うけどね。
楽しみにしてます!続きが気になる〜!
280名無しさん@ピンキー:2010/07/18(日) 02:05:59 ID:CuVpBuZ9
>>266の続き

お色直しを終えて再び式場に入場するときのイベントといえば、そう、キャンドルサービスだ。
披露宴の余興は歌ったり酒をイッキしたり手品をしたりと、
どちらかといえばやってる人間だけが楽しい独りよがりなものが多いけれども、
これだけは祝福を持って受け入れられる珍しいイベントだ。
確かに新郎新婦がトーチを持ってテーブル1つ1つ回ることに対してつまらないと思う人間だったら、
そもそも披露宴になんか出席していないはず。
そんな鉄板余興をやるため、1本のトーチを2人で握って寄り添い歩く私と紗智子。
ぴったりとくっつくため、私の腰に回された紗智子の手から伝わるぬくもりがなんとなくうれしい。
慣例に従って上座にいる上司のテーブルから1本1本灯して回ると、
そのたびに様々な祝福の言葉を投げかけられる。
今日みたいな日に受ける言葉は、どんなものでもうれしいのだけれども、
なかでも「今日は綺麗だよ」とか「本当に美人になって」とかドレス姿をほめられると、
そのたびに体の奥のほうからなんとも言えない喜びがじんわりと湧き出てきて、笑顔がとまらなくなる。
上司、同僚、学生時代の友人……とキャンドルサービスを進め、いよいよ残すは私たちの両親だけとなった。
まずは新郎である紗智子の両親の前にあるキャンドルに火を灯すと、
『彼』の両親は私には一瞥をくれる程度で、『息子』の晴れ姿ばかり誇らしげに眺めていた。
続いて、私の両親。
父と母の間を割って入るように近づき、目の前に飾られているキャンドルにトーチを近づける。
ボッと小さく火がつく音がして、柔らかく暖かな光が両親の姿を浮かび上がらせる。
その光の中で微笑む笑顔がやけに小さく年老いて見えてしまい、
なぜか胸が締めつけられる思いに襲われてしまった。
281名無しさん@ピンキー:2010/07/18(日) 02:06:41 ID:CuVpBuZ9
祝電の紹介やスピーチ、さらにつまらない余興も終わり食事も一段落すると、
いよいよ式もフィナーレに向けて加速していき、
ある意味クライマックスとも言える花束贈呈にステージは進んでいく。
スタッフから渡された花束を持って両親のところへ行き、
花束を渡すとともに新婦が両親への手紙を読む。
たったそれだけ。
たったそれだけなのに、式の中で一番印象に残ると言っても過言ではないイベントなのは、
ここで花嫁の両親や花嫁が涙を流してしまうことが多いからだろう。
しかし、自分は今日の朝に新郎から新婦になることが決まったにわか花嫁。
涙なんか流すはずがない。
そう高をくくってた。
両親に花束を渡し、あらかじめ紗智子が書いた手紙を読み始めた。
「お父さん、お母さん、今まで育てていただいてありがとうございます……」
読み始めると、なぜだか脳裏にいままで家族で過ごした記憶――
一緒に行った海水浴のこと
早起きしてカブトムシを捕りに行ったときのこと
赤いランドセルを背負ったまま抱きかかえられたこと
中学の入学式で詰襟を着た姿での記念撮影
女子高に合格したときの両親の涙
成人式の振袖姿
そして婚約者である紗智子を両親に引き合わせた日
――本来歩んできたはずの『俺』の人生と、摩り替わった『私』の思い出が頭の中でぐるぐると渦巻いて
「あ、あれ?」
いつのまに流したのだろう、目から溢れ出た涙がぽつりぽつりと零れて
手紙はあっという間にインクがにじんで読めなくなってしまった。
「ほら、花嫁さんがそんな顔しちゃダメよ」
私の目元をハンカチでぬぐいながら、顔を涙でいっぱいにするおふくろ。
一方の親父は、本人は堪えているつもりなのか歯を食いしばりながらボロボロと号泣している。
もう続きなんて読めるはずもない。
私は両親に両肩を抱かれるようにして、人目もはばからず思いっきり泣いた。
282名無しさん@ピンキー:2010/07/18(日) 02:09:33 ID:CuVpBuZ9
>>275
続きがすごい気になります!
最近は新作が多くていいなぁ
283名無しさん@ピンキー:2010/07/18(日) 22:41:26 ID:JYxBT/Gp
>281
すんごくGJ! オラ、ワクワクしてきたぞーー!

ところで、私も和己サンの続き、投下させていただきますね。

284女子高生・渡良瀬和己:2010/07/18(日) 22:43:07 ID:JYxBT/Gp
 3月31日の深夜。見慣れない部屋のベッドで布団に入りながら、僕はこっそり、深いため息をこぼしていた。
 3時間程前に人目をはばかるようにして、コッソリ橙子さんの運転するライトバンでこの新居に引っ越して来た僕らは、各自の部屋の片付けを終えて、明日からに備えて今日はもう寝ることにしたのだ。
 今日までの一週間、僕は「渡良瀬かすみ」として暮らすための様々な面に関する「教育」を受けさせられていた。
285女子高生・渡良瀬和己:2010/07/18(日) 22:46:55 ID:JYxBT/Gp
 1日目、まずはかすみちゃんのお古を着せられた。と言っても、レモンイエローのトレーナーと黒のスパッツという、あまり性差を感じさせない格好だったのは幸いかも。
 でも、下着については、とりあえず白のショーツとキャミソールをつけるように言われた。恥ずかしくって躊躇っていたら、橙子さんたちにふたりがかりで脱がされちゃった。
 仕方なく女物(というか、コレ、かすみちゃんのだよね? 新品じゃないみたいだし……)の下着を着けて、なるべく自分の姿を意識しないようにしてトレーナーをかぶり、スパッツを履く。
 そのあと、リビングで橙子さんが髪を整えてくれた。
 ここのところしばらく床屋に行ってなかったせいで、わりと伸び放題だった僕の髪は、器用な橙子さんのハサミさばきで、みるみるうちに女の子っぽいセミロングの、かすみちゃんとソックリな髪型に揃えられてしまった。
 反対に、かすみちゃん本人は美容室に行ってベリーショートにしたみたい。よく見れば、この髪型って、僕が初めてかすみちゃんと会った頃のモノに似ているような……。
 しかも、僕がこのマンションに持って来た僕の服──洗いざらしのダンガリーのシャツとジーパンを、さほど違和感なく着こなしている。「もしかして、下着も!?」とは、さすがに怖くて聞けなかった。
 とりあえず、その格好のままで、かすみちゃんから、橙子さんの描いたマンガ全巻読破するように言われた。
 「だって、「かすみ」はママの娘なのに、自分の母親の作品について知らないのはヘンでしょう?」
 一応、僕だって恋人の仕事には少なからず興味はあったし、多少は目を通したこともあったんだけど……。ただ、橙子さんの連載って、圧倒的に少女マンガ誌が多いんだよね。7割がたが少女マンガで2割がレディコミ、残る1割程度が少年誌。
 成人男性としては、さすがに少女マンガを書店で買うのは躊躇っていたんだけど、橙子さんの「娘」として振る舞う以上、確かに「ママのお仕事」を知らないのはヘンだ。そもそも、橙子さんさんの作品は、中学生から高校生くらいの女の子がメインターゲットなんだし。
 僕は、橙子さんのマンションの一室にこもって、壁の本棚に揃えてある橙子さんの著作をひたすら読み続けた。アニメ化されてる作品も何作かあるけど、そちらはDVDを流しっぱなしにして、時々目を向けるだけに留めた。
 最初は多少抵抗があった少女マンガも、いざその物語に入り込んでみると、意外なほど面白くて、僕は夢中になって読み続けていた。
 身内の贔屓目を抜きにしても、橙子さんが人気作家だってことが十分納得できる。むしろ、これまでたまに読んでた少年誌や青年誌のマンガより、僕の性に合っているかもしれない。
 そうやって根をつめたおかげか、日付が変わる頃には連載中のものも含めて、全巻読破することができた。もっとも、その日の夢の中には、読んだマンガのキャラたちがゴッチャになって登場してカオスなストーリーを展開してくれたけど。
286女子高生・渡良瀬和己:2010/07/18(日) 22:47:42 ID:JYxBT/Gp
 2日目の朝起きると、枕元にはシンプルな白のブラウスと、モスグリーンのキュロットが置いてあった。下着も昨日より少しだけフェミニンなデザインになっている。
 たぶん、僕の感情を考慮して、少しずつ違和感の少ないものから着せて馴らしていこうという魂胆なんだろう。
 確かに、ブラウスはボタンのつき方さえ除けば男女いずれが着てもおかしくないデザインだし、キュロットも股が割れている分、ショーツパンツだと思えば比較的抵抗感はない。
 ──トントン!
 僕が起きて着替えた頃をみはからったかのように、部屋に橙子さんが入って来た。
 「カズくん、ブラッシングとお肌の手入れの仕方を教えてあげるわね」
 そう言って僕を鏡台の前に座らせた橙子さんは、懇切丁寧に髪の梳き方と整え方、化粧水やファンデーション、洗顔フォームなどの使い方を教えてくれた。
 これまで、化粧はもちろん髪の毛さえ気を使わず、せいぜいデート時に安物の整髪料をつけて適当にクシを入れるだけだった僕にとっては、すべては未知の領域の話題だった。最初は色々失敗もしたけど、何度か繰り返すうちに、橙子さんから一応の合格をもらった。
 「あとは慣れと、自分なりのアレンジかしら」
 うぅ……精進します。
 で、ご飯を食べたあとは、今度はかすみちゃんから教科書一式を渡された。
 「とりあえず、中学3年生の学習範囲は飲み込んでないと……大丈夫だよね?」
 「もちろん!」……と言いたいけど、実は数学とか英語は結構危ういかも。英語は大学の2回生以来ほとんど目にしてないし、私大文系だったから数学なんてほとんど忘れてそうだ。
 結局、その日はかすみちゃんの部屋にカンヅメになって勉強机に向かい、教科書と参考書のページをめくることで、ほぼ一日が費やされた。
 「で、どうなの、学習成果のほどは?」
 夕飯時に橙子さんに聞かれたけど、脳みそパンク状態の僕はほとんど上の空。代わって、時々様子を見に来てくれていたかすみちゃんが答える。
 「うーーん、国語と歴史、地理は問題ないけど、理科と英語はギリギリ、数学は今後に期待、ってトコロかな」
287女子高生・渡良瀬和己:2010/07/18(日) 22:48:30 ID:JYxBT/Gp
 かすみちゃんが通う予定だった高校は、進学校ではないものの市内でもそれなりのレベルなので、新学期からは気合い入れて勉強しないと、このままだとついていけなくなりそう、とのこと。
(ちなみに、かすみちゃん本人は、すでに大検に合格できるくらいの学力があるらしい。天は二物も三物も与える人には与えまくるんだなぁ)
 「そうそう、パパ、ご飯のあとは実力テストするから」
 か、勘弁してよーー!
 その日の夜は、案の定、「授業中に先生に当てられたけど、わからなくてそのまま立たされる」なんて、イヤな夢を見てしまった。

 おかげで、3日目の寝ざめはあまり気分がよろしくない。ただ、その夢の中で、僕が女子の格好をしてたのは……。
 「これのせい、だろうなぁ」
 壁には、この春から「渡良瀬かすみ」が通う予定の高校の女子制服がかけられていた。
 「これを着て通う自分の姿をイメージするように!」とは言われてたけど、まさか夢に見るとは思わなかった。
 ちなみに、今日の下着は、薄いミントグリーンのブラとショーツ……って、ブラジャぁ!?
 「あらあら、でも、そろそろ慣れておかないと……ね?」
 うぅ……それはわかりますけど、橙子さぁん。
 「大丈夫、着け方はわたしが教えてあげます」
 と言うわけで、「正しいブラの着け方」なる緊急講座を受けさせられた。ふむふむ、先にホックを前でとめてから回転させて肩ひもつける、と。で、前かがみになって脇腹の余った肉をカップに寄せ入れる……って、ちょっとだけど膨らみができてるぅ〜!
 「うふふ、カズくんも女の子のヒミツ、少しだけ理解しちゃいましたね」
 こ、これはかるちゃーしょっくかも。
 で、その上に着るのは……え、セーラー服!?
 「うん、「渡良瀬かすみ」がこの間まで通ってた中学の制服だよ。今日はそれを着て女の子の格好に慣れてもらうから」
 いきなりハードルが高すぎると思ったものの、かすみちゃんは許してはくれず、橙子さんがおもしろがっていることもあって、僕は黒地に白いラインの入ったセーラー服とヒダスカートを無理矢理着せられてしまった。
 ──着るのは無理矢理だけど、サイズ自体はほぼピッタリなのがちょっとショック。
 で、その女子中学生の格好で、今日指導されるのは……えっと、ティーンズ向け週刊誌?
 「そ。バックナンバーもとってあるから、これを読んで、ひととおり女の子の会話についていけるようにならないと」
 それはいいけど……なんか、かすみちゃん、女の子指導って言うわりに本ばかり読まされてる気が。
288女子高生・渡良瀬和己:2010/07/18(日) 22:48:58 ID:JYxBT/Gp
 「う……し、仕方ないでしょ! アタシだってあんまり女の子らしいタイプじゃないんだし」
 自分で言う通り、かすみちゃんはどちらかと言うと元気でボーイッシュな子だ。顔立ちも十分整ってはいるんだけど、童顔で若々しい橙子さんとは逆に、大人っぽくて凛々しいタイプだし(亡くなったお父さん似らしい)。
 ん? だったら、僕もそういう路線で行けば……。
 「あらぁ、それはダメよ、カズくん。かすみ元々女の子だから、多少ボーイッシュに振る舞ってもキチンと「女の子」に見えるけど、カズくんの場合は元が男の子でしょ」
 いえ、橙子さん、さすがに二十代半ばの男性つかまえて「男の子」って表現はどうかてと思いますよ。
 でも、言われてみれば、その通りだ。むしろ僕の場合、多少女の子らしさを強調するくらいがちょうどいいのかもしれない。
 「そーゆーこと。じゃ、「15歳の女の子の常識」の自習、よろしく〜」
 ヒラヒラーっと手を振ったかすみちゃんは、ちゃっかり僕の会社員時代の背広を着こんで、これから出かける様子。「外で男らしさの実地訓練」らしいけど……大丈夫かなぁ。まぁ、確かに、その格好だと一見したところ20歳前後の若い男性に見えなくもないけど。
 「そうそう、雑誌読むのに飽きたら、こっちの本見て練習してみたら?」
 と、渡された本の題名は「女声トレーニング キミも女子の声になれる!」……って、ちょ、こんな本が出てるの? てか、なんでこんな本持ってるの!?
 「HAHAHA! もちろん、可愛い「娘」のために買って来ておいたのサ! 備えあれ憂いなしってね」
 アメリカナイズされたイイ笑顔でサムズアップすると、かすみちゃんは外へと出かけて行った。
 で、その後、10冊ほどバックナンバーがあるとは言っても、雑誌くらいはすぐに読み終えてしまうワケで……。
 昼前にして暇をもてあました僕は、橙子さんのお手伝いをしてお昼ご飯を作る。売れっ子マンガ家さんだと、こういう雑事専門のアシスタントを雇ってる人もそうだけど、橙子さんは違うみたい。
 「うふふ、あの子はあまり家事の手伝いはしてくれなかったけど、新しい「かすみ」ちゃんは頼りになりそうで、ママ嬉しいわ♪」
 セーラー服の上からピンクのフリフリのエプロンを着せられた僕を見て、嬉しそうに笑う橙子さん。そりゃ、これでもつい先月まではひとり暮らししてましたからね。簡単なおさんどんや掃除洗濯くらいは出来ますよ。
 あ! でも、そうか。マンガ自体の手助けは出来なくても、こういう家事の面でのフォローは僕にも出来るのかも。
 そして昼から本格的に暇ができた僕は、結局、かすみちゃんからもらった本を読んで、いろいろ試してみた。自分では、それなりに女らしい声が出るようになったと思うんだけど……。
 「バッチリ! そのままアタシの友達とカラオケ行っても違和感ないよ!!」
 わぁッ、かすみちゃん、いつの間に帰って来たの!?
 ともあれ、僕の練習の成果は橙子さんにもお墨付きをもらい、ひとまず成功した……のかなぁ。
 それにしても、その夜見た「オーデションを受けてアイドルデビュー」って夢はあんまりだと思う。
289女子高生・渡良瀬和己:2010/07/18(日) 22:49:52 ID:JYxBT/Gp
 いい加減、この「立場入れ替え予習」に慣れたと思っていた僕も、4日目の朝に枕元に置かれていた代物を見た時は、思わず「無理むり、ぜーーーったいムリ!」と叫んでしまった。
 丸首部分と袖の部分が赤く縁取られた白無地の半袖シャツ、いわゆる体操服については問題ない。
 でも、そこに一緒に置いてあるストレッチ素材のエンジ色の女性用体操着──ブルマーを僕が履くことは、視覚的に無理があると思う!
 「うーーん、いくらカズくんのが小振りとは言え、やっぱりこういうピッタリしたものを履くと多少は目立っちゃうでしょうね」
 ……何か、夫として絶対妻に言われたくない単語が混じってたような気がするけど、動転していた僕は、「うんうん」と首を大きく振って橙子さんの言葉に同意した。
 「だーーいじょーぶ! こんなコトもあうかと、インターネットで秘密兵器を手に入れておいたから!!」
 なぜか紺色の作務衣を着てねじり鉢巻きをしたかすみちゃんが、妙なハイテンションで部屋に入って来た。
 「まずは、これを読んでみて」
 えーと、「接着剤による股間整形」……って、何、これ?
 要するに、皮膚用の接着剤を使って、男性の股間を女性みたいに見せかける方法、らしい。
 PCからプリントアウトしたらしいその紙には具体的な方法も詳しく載ってたけど、こんな複雑なことひとりじゃ出来ないよ。
 「じゃあ、手伝ってあげますね♪」
 そう言ってジリジリとにじり寄ってくる橙子さん。な、なんでそんなに嬉しそうなんですか!?
 「ウフフフ……」
 ──アッーー!

 ……結局、裸にされて浴室まで連れて行かれた僕のアソコは、まるで子供みたいにツルツルになるまで剃られて、そのあと、紙に書かれた方法どおり、橙子さんは僕のアソコを接着剤で女の子そっくりな形にしてしまった。
 おかげで、女物のショーツを履いても、これまでと違って全然膨らみが見当たらない。なんだかスゴく恥ずかしくて、自然と内股になってモジモジしてしまう。
 「それにしても、パパ、成人男性のクセにスネ毛もほとんどないなんて……」
 言わないでよ! 髭もほとんどないし、気にしてるんだから。
 「一応、脱毛クリーム塗っておきましたけど、必要なかったかもしれませんね」
 橙子さんの言う通り、僕の脚はそれまで以上に完全に無毛のツルツルな状態になってしまった。
 「これで、ブルマーでもOKですね♪」
 エエ、ソウデスネ、ハイ。
 で、その女子体操着姿で何をさせられるかと言えば……女性用マナー講座のDVD観賞?
 「身ごなしとか、しっかり覚えるように。あとで実演してもらうから」
 それはいいけど……僕がブルマー姿になった意味ってあったの?
290女子高生・渡良瀬和己:2010/07/18(日) 22:50:36 ID:JYxBT/Gp
 ……てな感じで、それからの3日間も、効果があるんだかないんだかわからない色々な「女の子教育」をされて、ようやく今日の昼になって解放されたのだ。
 その一方で、かすみちゃんは橙子さんのアシスタントをする傍ら、頻繁に僕の服を着て外へ出かけ、日焼けサロンで肌を褐色に焼いてきたり、パチンコでボロ勝ちしてホクホク顔で帰ってきたりと、成人男性ライフをフリーダムに楽しんでるみたいで、なんかフクザツ。
 そりゃ、かすみちゃんは4月からも原則的にはウチにいて、橙子さんやせいぜい編集の人達(すでに事情は説明済み)くらいとしか顔合わさないもんね。失業中の僕の──渡良瀬和己の行動を無理にトレースする必要はないし。
 近所付き合いにしたって、引っ越してから新たな「渡良瀬家の夫」としての顔をご近所に認めさせれば、それで済む。
 それに対して、僕は「渡良瀬家のひとり娘の女子高生」として学校に通う関係上、どうしても社会的な立場や常識に従わざるを得ない。だから、僕の方が覚えることが多いのも仕方ないんだろうけど……。う〜、なんか理不尽だよぅ。
 それに……夜が明けて目が覚めたら、その瞬間から僕は、この家の中でも「娘のかすみ」として扱われるんだ。
 これまでは練習期間ってことで、橙子さんも僕を「カズくん」と呼んでくれてたんだけど、新居に引っ越した以上、心機一転、家族だけの時も新しい立場で振る舞うって、みんなで相談して決めてあった。
 だから、今僕が寝ている部屋も、年頃の女の子らしい薄いピンクの花柄の壁紙で飾られているのだ。
 室内には、白いタンスやチェストボックスのほかに、かすみちゃんが小学6年のころから愛用している勉強机と、中学入学時に買ったと言うドレッサーも置かれている。
 そもそも今の僕自身は、明るいオレンジ色の可愛らしいデザインの女性用パジャマを着ているし、その下に着けてるのだって……。
 あ〜、もう考えるのヤメヤメ。寝よッ!

 ──こうして僕は、「僕」としての最後の夜、布団に潜ってギュッと自分の身体を抱きしめるような体勢で無理矢理眠りに就いたのだった。

#うーむ、やはり板違いですかね。女装SS板のほうがいいのかな? 一応、次回からは15歳の女の子として周囲から扱われる「かすみ」ちゃんの戸惑いとかを書ければ、と思っているのですが。
291名無しさん@ピンキー:2010/07/18(日) 23:29:24 ID:c6A7uFnZ
GJ!
どんどんここで続けて欲しい
292名無しさん@ピンキー:2010/07/19(月) 01:16:46 ID:UxnnWpcP
板違いなんて言葉はヤボってもんですよ!
なんかFT-type2を思い出すなぁ〜
改めて最高です!
293名無しさん@ピンキー:2010/07/19(月) 10:04:03 ID:oBBUQFQW
板違いかどうかは微妙なラインかもしれんが
気にしてる人はいなさそうなので続けてしまえ!
294名無しさん@ピンキー:2010/07/19(月) 15:56:56 ID:mR/5bN1O
良作だと思います! <br> 戻れないくらい女子高生化しても戸惑う和己の姿が目に浮かぶなぁ…
295名無しさん@ピンキー:2010/07/21(水) 03:25:36 ID:Ua8OEkZP
>>281の続き
「ふぅ」
飲んだり騒いだりビンゴで盛り上がったりの2次会を終えてホテルに戻ったら、
時計の針は0時を回ろうとしていた。
ダブルサイズのベッドに腰掛けると、お酒の酔いだけではない疲労感が一気に押し寄せてきた。
身に纏っているカクテルドレスはウェディングドレスよりは軽いけれども、
布地をたくさん使っているせいかずっしりとした重さがあり、
これが疲れを増加させているような気がしてきた。
「健一、先にシャワー浴びてきなよ」
傍から見ても疲労が蓄積しているのがわかったのか、
普段ならば絶対に先にシャワーを浴びたがる紗智子が私にシャワーを勧めてきた。
「いいの? じゃ、ささっと入ってくるね」
さっとシャワーを浴びてこようと思ったのはいいけど、準備の段階でちょっと悩んでしまう。
バス用品はホテルのアメニティグッズを使うからいいとして、
替えのパジャマや下着はどうしようか考えてしまうところだ。
結局、何も考えずにパジャマと自分のカバンに入っていた下着
――もちろん女性物――にすることにした。
ここで気がつく。
ドレスを締めつけるコルセットの紐は背中にあるので、1人では上げ下げできない。
「ねぇさっちゃん、コルセットほどいて?」
わかったとうなずいた紗智子が背中に回って紐をほどくと、
拘束具のように体を締めつける感覚が一瞬にして薄れる。
とさり……。
支えを失ったドレスがかすかな衣擦れの音を立てて床に落ち、私は下着だけの姿になってしまう。
補正力を重視している下着を着ているせいか、ドレスのときよりも色気がない姿を紗智子に晒すのがやけに恥ずかしくて、
慌ててバスルームへと駆け込もうとしてしまう。
そんな私を、彼は背中からぎゅっと抱きしめた。
どくん。
心臓が高鳴る。
「健一……愛してるよ」
彼の柔らかな甘い声が耳元を優しく撫でていく。
本能的に『求められている』のだと理解し、体の芯が燃えるように熱くなる。
「……シャワー浴びてからにして」
「大丈夫、気にしないさ」
「ダメ、私が気にするの」
「聞き分けのない子には……こうだ!」
次の瞬間、2人は倒れこむようにベッドの上に体を弾ませた。
体をひねるようにして天井のほうを向くと、私に覆いかぶさる紗智子と目が合った。
「さっちゃん、強引だね」
「……いつの間にか、呼び方が逆になっちゃったね」
言われてみれば、私が彼を呼び捨て、彼が私のことを『ちゃん』づけで呼んでいたはずなのに、
これも気がついたら逆転していた。
「でも……このほうが『らしい』でしょ?」
「だね」
紗智子の顔がゆっくり近づいてくる。
今日、何度目かわからないキス。
「電気、消して」
「ダメ。健一の顔が見たい」
「……バカ」
この夜、私は本当の意味で紗智子の花嫁になった。
296名無しさん@ピンキー:2010/07/21(水) 03:26:02 ID:Ua8OEkZP
めくるめく夢のような結婚式から2週間、新婚旅行も終わって2人とも日常に戻りつつあった。
もちろん、まだ新婚ホヤホヤ独特の浮ついた空気は残っているものの、
それでもしっかりと日々の生活を刻み始めている。
今日から職場に復帰する彼は、まだ慣れないスーツ姿にネクタイを締めて
朝早くから出勤してしまった。
特に予定が決まっていない専業主婦の私はというと、
『かわいらしい奥さん』になれるよう朝から掃除に洗濯、買い物に料理と一生懸命がんばっている。
あの人の好きなシーフードパスタの準備を終え、ふとリビングボードの上に視線を移すと、
デジタルフォトフレームが結婚式や新婚旅行の思い出を数分ごとにパラパラと切り替えていく。
写真が変わるたび、まぶたの裏によみがえるあの日の思い出。
祭壇での誓い。
フラワーシャワーとお姫様だっこ。
披露宴での涙。
そして、まだ記憶に新しい沖縄の海。
日焼け止めだって言ってたのにサンオイルを塗られて、くっきりと水着の跡が肌に刻みこまれてしまった。
「……これ、なかなか消えないよね」
ラフなTシャツの胸元から覗き込むように肌を見ると、
白いビキニを着ているかのような日焼けた素肌が見える。
これが薄れる頃には、私ももっと主婦らしくなっているだろうか。
ぴんぽーん
玄関のチャイムが鳴る。
あの人の帰宅だ。
ぱたぱたとスリッパを鳴らしながら玄関に向かうと、
「ただいま。やっぱ久しぶりの仕事は疲れるね」
こんがりと日焼けした笑顔も、どことなしか色あせて見えるほど疲れているみたいだ。
「おかえりなさい。いま、料理の仕上げしちゃうわね」
「ああ、お願い。もうおなかぺこぺこなんだ」
スーツの上着を私に手渡し、ネクタイを緩めながら彼がおどける。
そんな横顔が愛おしくてたまらなくなり、つい頬にキスをしてしまう。
「さっちゃん、愛してる」
「健一……俺もだよ」
紗智子は私のほうに向き直ると、あごを軽く持ち上げた。
自然と伏せられるまぶた。
やがて柔らかなくちびるの感触。
その後に訪れることに期待して、私はスーツの上着を取り落とした。
297名無しさん@ピンキー:2010/07/21(水) 03:26:34 ID:Ua8OEkZP
おしまい
なんか途中から普通の女装モノになってしまったような気がする(´・ω・`)
反省

なんか小ネタがあれば、また今度
次はギャップ交換モノがいいかなぁとか思いつつ

>>290
GJ過ぎますですよ!
上手いなー上手いなー
ちゃんと「交換」の理由づけしているあたりも素晴しいなぁ

「かすみとしての最初の朝」をどう迎えるのかとても楽しみにしています!
298女子高生・渡良瀬和己:2010/07/21(水) 22:26:57 ID:CWOTT9o8
 前の晩の寝付きが遅かったせいか、その日の朝の僕の目覚めは少々遅かったようだ。
 「……み! かすみ! そろそろ起きなさい!!」
 夢うつつの中、耳元で橙子さんの声がする。誰かを呼んでいるような……。
 あ! 僕を──「かすみ」を呼んでるのか。
 目を開けた僕は、ガバッと布団の上に半身を起こした。もちろん、ベッドのそばには朝から優しい笑顔を浮かべた橙子さんが立っていた。
 「お、おはよう、と…「ママ」」
 「橙子さん」と言いかけて慌てて言い直す。
 実は、昨日の夜、橙子さんの提案で、今日から僕とかすみちゃんが言葉づかいや呼び方を間違えた場合、1回につき100円の罰金を居間の貯金箱に入れることを、約束させられたのだ。
 「かすみ」の1ヶ月のお小遣いは昼食代も含めて15000円。高校1年生の女の子として見た時、この金額が大きいのか小さいのかよくわからないけど、仮に10回呼び間違えただけで1000円取られることになるのは痛い。
 まぁ、それくらい注意しないと、この入れ替わり劇を完遂できないってことなんだろうけど。
 「はい、おはよう。そろそろ8時よ。いくら春休みだからって、あんまり寝坊しちゃダメよ」
 ニコニコと微笑んだまま、橙子さんは人差指で僕の鼻先をチョンとつつく。どうやら、さっき言い間違えかけたことは不問にしてくれるらしい。
 「ごめんなさい、「ママ」」
 ここは、しおらしく謝っておこう。
299女子高生・渡良瀬和己:2010/07/21(水) 22:28:23 ID:CWOTT9o8
 満足げに頷きながら、橙子さんは「かすみ」の部屋を出て行った。
 その姿が見えなくなったのを確認してから、僕はガックリと肩を落とす。
 (うぅ……緊張した)
 初日の朝からこれでは先が思いやられる。
 いや、ここは何とか無事にやり過ごしたことを「幸先がいい」と喜ぶべきか。
 くだらないことを考えながら、ベッドから降りてカーペットの上に立つ。
 「あ、そう言えば着替え、用意しておくのを忘れてた」
 もしかしたら、無意識に「現実」から目をそむけていたのかもしれないけど。
 いずれにしても、今日と言う日が来てしまった以上、覚悟を決めるしかない。
 僕は、寝間着姿のまま白いタンスの前に立った。
 かすみちゃんの部屋のタンスは、高さ1.8メートル、幅が1.5メートルほどで、上半分が両観音開きで下半分が4段の引き出しになっている。勉強机やドレッサーに比べて新しいのは、つい半年ほど前に買ってもらったばかりだからだとか。
 その一番下の段の引き出しを、誰も見ていないのに何となくキョロキョロと辺りを見回してから、ゆっくりと開ける。
 そこには、白や水色、ピンクといった薄くて明るい色彩を主体とした女物の衣類──誤魔化しても仕方ないな。女性用の下着類がキチンとたたんでしまってあった。
 しかも、僕が使うにあたって新品を買い揃えたとかいうワケでは決してなく、正真正銘つい先日……というか下手したら昨日まで、かすみちゃん本人が着てた代物だ。
 その、いわば「お古」(と言っても、それほど着古したものはないようだけど)を、今日から僕が身に着けないといけないのだ。
 正直、「それでいいの?」と本人に以前、聞いてみたのだが……。
 「うーん、別にそんなに気にしてないけど? それを言うなら、パパの……おっと、「元パパの」かな? ともかく「渡良瀬和己」の服を、アタシが下着も含めて全部もらっちゃうワケだし。あおいこだよ」
300女子高生・渡良瀬和己:2010/07/21(水) 22:29:26 ID:CWOTT9o8
 いや、どう考えても、23歳の成人男子(おっさん)と15歳のうら若い女子高生(おとめ)の服で、等価交換って成り立たないでしょ! しかも、僕の服の方が圧倒的に少ないし。
 「そう? パパの持ってる服って結構アタシの好みだよ。それに、アタシの服だって、実際はタンスに入ってるのの半分くらいしか袖通してないし……」
 ?? それってどういう……。
 「──かすみィ〜、お風呂空いたわよー?」
 「あ、はーーい、今行くぅ!」
 詳しい説明を聞く前に、かすみちゃんはそのままお風呂に行っちゃったんで、結局うやむやになったんだけど……。
 うぅ、いくら本人の了解は得たとは言え、やっぱり恥ずかしいなぁ。
 下着も、昨日までは夜のうちに橙子さんやかすみちゃんが出しておいてくれたんだけど、今日からは自分でキチンと選んで身に着けないといけないし。
 でも、幼稚園児や小学生じゃあるまいし、「15歳の女の子」なら、それが当たり前だということは、僕にだって理解できる。
 覚悟を決めて、僕は引き出しから、白一色でほんの少しだけレース飾りのついたお揃いのブラとショーツを選び出し、パジャマを脱いでそれに着替えた。
 上は……この水色のブラウスでいいかな。ボトムは、本当はジーパンかせめてサブリナパンツとかがいいんだけど、「女の子になれるまでズボン禁止ね!」と橙子さんに厳命されてる。仕方ないから、長めの丈のソフトデニムの巻きスカートを選んだ。
 これだけだと、まだちょっと肌寒いかもしれないから、何か羽織るものは……あ、このフリンジのついたベストいいなぁ。これを着て首元に赤いスカーフを巻くと……ちょっと、ウェスタン風でカッコいいかも。
 髪の毛にブラシを入れるのも、ようやく慣れてきたところ。でも、まだ完全にうまくセットできないから……そうだ! このカチューシャで押さえれば、それなりにキチンとして見えるよね。
 一通り服装を整え、拙いながらも髪と肌の手入れをしてから、僕は1階のダイニングへと降りて行った。
301女子高生・渡良瀬和己:2010/07/21(水) 22:30:51 ID:CWOTT9o8
 テーブルの上には綺麗に焼けたベーコンエッグとレタス主体のサラダ、そしてキツネ色のトーストが置いてあった。僕以外のふたりはすでに席についてるみたい。
 「やぁ。おはよう、「かすみちゃん」」
 何気なく声をかけられた方を見て、僕は思わず「アッ!」と叫びそうになった。
 そこには、見慣れたグレーのスウェットに身を包んだ、見慣れぬ若い男性が座っていたからだ。一瞬「誰!?」と思ったものの、次の瞬間それがかすみちゃんの男装であることに思い至り、なんとか平静を取り戻す。
 「お、おはようございます、「パパ」」
 声が多少震えたのも、僕も無事に「ひとり娘のかすみ」としての挨拶を返すことができた。
 「んふふ〜、どうやら「かすみ」もビックリしたみたいね。新しい「カズくん」ってば、すっかり役柄に馴染んじゃったみたいよ」
 ニコニコしながら、橙子さんがミルクティーを入れてくれた。朝はコーヒーが飲みたい気もするけど……でも、やっぱり女子高生なら紅茶の方が自然なのかな。別に紅茶が嫌いというわけでもないので、有り難く戴いた。うーん、美味しい!

 かすみちゃんは、あえて「朝食時の若い男」を意識しているのか、だらしなく椅子に腰かけたまま、朝刊の新聞を見ている。そのままトーストをかじろうとして、さすがに橙子さんに怒られていた。
 逆に僕は、せっかく着替えた服を汚さないよう細心の注意を払って食べてたので、家族の中で一番遅くなってしまったけど、ふたりとも特に気にしてないみたい。
 食後の食器洗い(僕も手伝った)が済んで一段落したところで、橙子さんがパンパンと両手を叩く。
 「それじゃあ、そろそろ9時だし、みんなでご近所に挨拶に行きましょうか」
 「……!」
 ついにその時がやって来てしまった。
 先週中も男装のまま外でブラブラしてたかすみちゃんと違って、僕はまだ今の格好で外出したことはない。
 この家に来る途中クルマに乗ってるときには、片づけ作業も考慮して、女物のトレーナーとタイトジーンズという格好だったけど、あれは「女装」と言えるかは微妙だし。
302女子高生・渡良瀬和己:2010/07/21(水) 22:32:25 ID:CWOTT9o8
 でも、ここまで来たら覚悟を決めるしかないだろう。
 念のため、橙子さん──「ママ」と「パパ」に再度全身をチェックしてもらい、「全然おかしくない。むしろ可愛い」というあまり嬉しくないお墨付きをもらってから、僕はふたりのあとに隠れるようにして外に出た。

 春先の朝の空気は気持ちいいし、近くに見える川の堤防には桜の木がそろそろ5分咲きになってて綺麗だったけど、そんな素敵な環境にいることも、あまり僕の慰めにはならなかった。
 まずは右隣りの樋口家から。幸いそこに住んでいたのは70歳くらいの老夫婦で、まだボケてはいないようだけど、目や耳があまりよくなさそうだったので、バレる心配は低そうだ。おかげで、僕もそれほど緊張することなく、無難に挨拶することができた。
 一方、左隣りの家、仲村からは、パッと見は橙子さんと同年代の主婦と小学生の男の子が出てきた。気さくな橙子さんが奥さんと会話して、旦那さんは出張中だと聞きだす。こちらの奥さんも、度のキツそうな眼鏡をかけていたので、少あまり目はよくなさそうだ。
 男の子も悪戯小僧というよりは人見知りするタイプのようで、チラッと僕が視線を向けただけで、顔を真っ赤にして母親の背後に隠れてしまった。
 「あらあら、ボクくん、綺麗なお姉さんに見られて恥ずかしいのかな?」
 隣の奥さんがからかうと、ますます顔を赤くしてる。ちょっと可愛いかも。
 お向かいの日高さん家には、30歳くらいの独身女性が住んでいて、僕ら──というか、「ママ」と「パパ」の仲良し夫婦を羨ましそうに見ているのが印象的だった。
(多分、「この女(ひと)、こんな若いダンナつかまえちゃって……いいなぁ」という気分だったのだろう)
 おかげで、「娘」である僕はあまり注目されずに済んだ。
 また、その右隣の鈴木さんは30代半ばくらいのタクシー運転手で、昼間はいないコトが多いと教えてもらった。
 そして、最後に訪れた岬家が一番の難関だった。
 「どうも、はじめまして。この度、斜め向かいに越して来ました渡良瀬と申します。何かとお世話になるかと思いますが、家族ともどもよろしくお願い致します」
 「パパ」──かすみちゃんが、堂々とした態度で、玄関に出てきた岬さん夫妻に挨拶している。
 ふたりは、通常は一家の大黒柱たる夫が若い(どう見ても20歳かせいぜい20代前半くらいにしか見えない)ことに、ちょっと驚いていたけれど、そのあと世間慣れした橙子さんが巧みなフォローを入れたことで納得してくれたようだ。
303女子高生・渡良瀬和己:2010/07/21(水) 22:33:54 ID:CWOTT9o8
 「まぁまぁ、こちらこそ、よろしくお願いしますね。ところで、そちらは、旦那さんの妹さんですか?」
 チラと岬さんの奥さんに視線を向けられて、硬直しそうになるのを懸命にこらえて会釈をする。
 「いえいえ、わたしの娘です」
 澄ました顔で橙子さんがそう告げると、目をパチクリさせる岬さん夫妻。
 「そ、そうなんですか……」
 気持ちはわかる。だって橙子さんはどう見たって30歳を超えてるようには見えないのだ。普通なら、どう考えても中高生の娘がいる年代ではない。
 「パパ」にツンツンと肘でつつかれ、僕も言うべきセリフを考える。
 「あの……渡良瀬、かすみと言います。よろしくお願いします!」
 手を腰の前で重ね、精一杯女の子っぽく見えるよう注意しつつ、お辞儀する。
 「まぁ、礼儀正しいのね。かすみちゃんは、おいくつなのかしら?」
 「15……もうすぐ16歳になるんだったか?」
 「パパ」の言葉に相槌をうつ。
 「う、うん。えっと、この春から、星河丘学園に通うことになってます」
 「ほぅ! じゃあ、ウチの絵梨と一緒だな。おーい、絵梨、降りて来なさい」
 ──えぇ〜、なーにぃ?
 やや遠く(たぶん2階)から返事が聞こえたかと思うと、岬家の玄関から、かすみちゃんと(つまり今の僕と)同年代くらいの女の子が顔を見せた。
 軽くパーマをかけたライトブラウンの髪とアーモンド型の目が印象的な、活発でちょっと気の強そうな子。
 それが、僕の──「渡良瀬かすみ」の高校生活を通じての親友となる岬絵梨の第一印象だった。

<つづく>

#以上。エリちゃんとの問答とかは次回。こんなんでもよろしいんですかね?
304名無しさん@ピンキー:2010/07/21(水) 22:47:56 ID:1/kHjlbh
ベリベリ非常によろしいです☆
305名無しさん@ピンキー:2010/07/26(月) 00:25:56 ID:nmvmk6qk
GJ保守
306女子高生・渡良瀬和己:2010/07/26(月) 19:45:13 ID:RmY2drI+
 エリ――絵梨ちゃんの最初の印象は、「軽そうな娘?」だった。もちろん、あとになってソレは間違いだったとわかるんだけど。
 ちなみにエリの方も、僕のことを「うわ、内気で臆病そうなコだぁ」と思ってたらしいから、おあいこと言えばおあいこだろう。
 岬家に招き入れられ、居間でお茶を御馳走になる僕達。「親同士」が世間話している横で、自然と僕はエリ(この時は、まだ「絵梨ちゃん」って呼んでたけど)と話をすることになった。
 何を話したらいいのか困ったけど、幸い絵梨ちゃんは少女マンガ好きみたいで、「ママ」の──「あまのとーこ」の作品について水を向けたら、すぐに食いついてくれた。
 僕も、橙子さんの作品が載ってる「羽とゆみ」とか「少女メイト」とかの雑誌は、先週の暇な時間に目を通してたので、ある程度話を合わせることができた。
 それなりにおしゃべりを楽しんだあと、大人組の会話も一段落したみたいなので、僕らは岬さん家をおいとまして我が家に帰った。
307女子高生・渡良瀬和己:2010/07/26(月) 19:45:44 ID:RmY2drI+
 (──ふぅ。大丈夫かなぁ。とくに怪しまれてない、よね?)
 自室のベッドにバタンと仰向けになりながら、さっきの絵梨ちゃんとの会話について思い返す。たぶん、ヘンなトコロはなかった……と思う。
 あれから、「ママ」はマンガのお仕事、「パパ」はそのお手伝いをしているはず。
 そろそろお昼だし……何か作ってあげようかな。
 ピカピカのシステムキッチンは、まだ細々したものが整理整頓されてなかったけど、それも平行して進めながら、僕は冷蔵庫や乾物の入った戸棚の中味を確認する。
 「うーーん、ちょっと時期外れだけど、にゅうめんにしようかな。去年のお中元の素麺が残ってるみたいだし」
 いちばん大きな鍋いっぱいにお湯を入れて、残っていた素麺を全部茹でる。それと並行して、具材に花麩やとろろ昆布、ワカメやかしわ、わけぎなどを用意する。
 ダシは……今日は、インスタントでいいか。あ、香りつけに鰹節を最後にかけよーっと。
 台所の壁掛け時計が12時半を指し示すころ、にゅうめんは無事完成。
 「お昼ですよーー!」
 橙子さんの仕事部屋のドアをノックすると「ふわ〜い」という気の抜けたような返事が返ってきた。
 「えっと、お昼作ったから、よかったら台所に食べに来て」
 小さめにドアを開けてそう告げると、机の上でぐったりしていた橙子さんの瞳が「キュピーーン!」と光る。
 「ふ…フフフ……愛しいマイ・ドーターの手料理を食べ逃す親がいるでしょうか、いや、いまい!(反語)」
 あれほど脱力してたのが嘘みたいに生気を取り戻した橙子さんが、瞬時にドアから飛び出してくる。
 「今日のお昼は、なっ・にっ・かっ・なっ・!?」
 スキップせんばかりの上機嫌で台所に向かう橙子さんを、僕とかすみちゃん──「パパ」は苦笑して見送るしかなかった。
308女子高生・渡良瀬和己:2010/07/26(月) 19:46:10 ID:RmY2drI+
 「はぁ……おなかいっぱい。しゃーわせぇ」
 ダシの最後の一滴まで飲み干したあと、ドンブリを置きながら橙子さんが満足げに言う。
 「ごちそーさま、ありがとね、かすみ」
 「う、ウン、お粗末さま……」
 原稿執筆中は幾分子供っぽくなるって知ってたけど、まさかこれ程とは……と、僕は目を丸くしながら、橙子さんの顔を眺める。
 それを見て何を思ったのか、「あぁっ、こんな風におさんどんが上手な娘がいてくれて、ママ、幸せだわ!」と、いきなり僕の頭を撫で撫でする橙子さん、いや「ママ」。
 どうやら本気で、徹頭徹尾僕のことを「娘」として扱うつもりらしい。
 「そ、そんな大げさだよー。にゅうめんなんて茹でるだけだし」
 「いやいや、そんなことないさ。それに色々具を用意したり細かい気配りができてる。「かすみちゃん」は、いいお嫁さんになるかもね」
 微笑いながら、「パパ」もそんな風に褒めてくれる。まぁ、悪い気はしない、かな?
 ともかく、「ママ」や「パパ」のためにできることが、やっぱりボクにもあったみたいだ。これからは、できるだけ家の中のコト、するようにしないと。

#微スランプ。ていうか、なんだか迷走中かも。
309名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 07:01:04 ID:s3kFyEbP
がんばれ!
310名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 11:22:47 ID:SnRqK6bu
GJ!
服のセンスが昔風なのも懐かしくていいねw
続きを楽しみにしてます
311名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 20:20:42 ID:R2bBWDdj
毎回楽しみにしておりますYO!!

好き好き!!
312名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 21:22:57 ID:L3i62C6K
ネタが降りてこない今日この頃

>>308
GJ!
暑いですけど、がんばってくださいー
313女子高生・渡良瀬和己:2010/07/28(水) 09:27:59 ID:E9ukv7ZU
 その日は「ママ」たちの仕事の邪魔をしないように家の中の細々したものを片付けることで一日が終わった。
 晩御飯も作ろうかと思ったんだけど、冷蔵庫にロクな材料が入ってなかったから、仕方なく店屋物の出前を取る。
 それにしても……橙子さんのチャーシューメンはともかく、かすみちゃんのラーメンライス(餃子付き)って、どうなの。運動もしてないのに太るよ?
 「ハッハッハッ、頭脳労働でもお腹は減るんだよ。それに当分ダイエットとか気にしなくていいし。それより、「かすみちゃん」こそ、チャンポン麺(小)だけで足りるの?」
 「う……わ、ワタシは小食だからいいの!」
 まぁ、この小食のせいで背が伸びなかったってのはわかってるんだけど、今更変えようもない。
 で、ご飯を食べたら、ボク、「ママ」、「パパ」の順番にお風呂に入ることに。
 とりあえず、パジャマと替えの下着を用意してからお風呂場へ向かう。
 脱衣所で、ベストを脱いでブラウスのボタンに手をかけたところで、ふと鏡を見る。
 そこには、(それが自分だということを考えなければ)どこからどう見ても「年若い少女」にしか見えない人物が恥ずかしげに鏡を見返していた。
 「!」
 なんとなく悪いことをしているような妙な気分になったボクは、慌てて目を逸らし、手早く残りの衣服も脱いで風呂場へと入った。
314女子高生・渡良瀬和己:2010/07/28(水) 09:28:30 ID:E9ukv7ZU
 もっとも、風呂場も一面が鏡張りになっているんだけど……。ただ、服を着ている時と違って裸を見れば、ボクが本当は男だと分かるから平気だと思ったんだ。けれど……。
 「──うわぁ」
 無駄毛のない生っ白い肌といい、接着剤で貼りあわされパッと見女性のアソコにしか見えない股間といい、なんだか想像以上にボクの裸身は中性的に見えた。ここのところ女物のスカートで腰の高い部分を締め付けているせいか、心なしかウェストもくびれているように見えるし。
 さすがに胸は全然ないけど、その点さえ除けばプールの授業とかも上手く切り抜けられるかもしれない。
 「いや、「かもしれない」じゃなくて、切り抜けないといけないんだけど」
 それにしても、そのハードルが幾分下がったことは喜ぶべきなのだろうけど……ひとりの成人男子としては、いささか複雑な気分だった。
 「まぁ……今更、だよね」
 この馬鹿げた事態を受け入れた時に、それは覚悟していたはず。
 ボクは風呂から上がると、コーラルピンクの下着と白の七分丈のパジャマを着る。
 このパジャマ、オーガンジーの半ば透けるような素材でできてるうえ、フリルとレースがふんだんに使用されている。新品同然だったところから見て、たぶん殆ど袖を通してなかったんじゃないかなぁ。
315女子高生・渡良瀬和己:2010/07/28(水) 09:29:38 ID:E9ukv7ZU
 今日タンスの中を自分で整理してて気づいたんだけど、「渡良瀬かすみ」のワードローブって、ボーイッシュないしマニッシュな活動的なものと、ヒラヒラ&フリフリの多いフェミニンなものに二分されるみたいなんだ。
 で、着古しているのは圧倒的に前者。つまり、後者は橙子さんが半ばシュミで買って来て娘に与えたものなんだろう。けど、かすみちゃん本人は、あまりそういうのが好きではないから、滅多に着ない、と。
 それならボクも……と思うんだけど、橙子さんからダメ出しされてるしなぁ。「少しでも女の子らしく見えるように、そういう可愛らしい服装しなさい」って。
 ま、新品っぽい服の方が、借り着してる罪悪感が幾分少ない、ってのはあるけどね。
 「とりあえず、「渡良瀬かすみ」ライフの一日目は無事終了、るかなぁ」
 そう呟きながら、ボクはベッドに入って程なく眠りに落ちたのだった。

#ボチボチと。次回は再びエリ登場。
316名無しさん@ピンキー:2010/07/29(木) 00:34:19 ID:ctJO3OVQ
いいね、オリジナルの かすみは元ボーイッシュ。おニューな かすみは現女の子ちっく。
317女子高生・渡良瀬和己:2010/07/29(木) 10:50:17 ID:KJiGltpt
 昨日は早めに寝たせいか、翌朝はひとりでいつもと同じく7時過ぎに目を覚ますことができた。
 下着は……風呂から上がって替えたばっかりだから、このままでいいか。あ、でもお揃いのブラはしておかないとね。
 とくに意識するでもなくそんな風に考えて、タンスを開けている自分に気づいて、ちょっと苦笑する。
 (まだ、こんな風に女の子の格好するようになって1週間しか経ってないのに……)
 でも、逆に言えば、1週間も前からこの入れ替わりは念入りに準備されてたとも言える。そればかりか、わざわざ「女の子講座」なるものも受けされられたのだ。
 昔、階段を転がり落ちた男女の心が入れ替わる──という映画があったけど、アレに比べたら、ボクとかすみちゃんの方が、事前の心構えができたぶん(そして元に戻る予定が立ってるぶん)多少はマシなのかもしれない。
 て言うか、かすみちゃん──「パパ」の方は、現在の立場になんらストレスや戸惑いを抱いてないように見えるのが、ちょっとズルいと思う。ボクの方はハラハラしっぱなしなのに……。
 まぁ、愚痴ってても仕方ない。昨晩「ママ」たちは仕事で遅かったせいか、まだ起きてないみたいだし、朝食の用意くらいはしておこう。って言っても、食材の関係でトーストとトマトとチーズを切るくらいしか出来ないけど。
 それでも、コーヒーを淹れ終わるころには、匂いを嗅ぎつけてきたのか、ゾンビの1歩手前みたいな顔色をした橙子さん──「ママ」と、冬眠明けのクマみたいな風情の「パパ」がダイニングにやって来た。どうやら明け方近くまで仕事してたみたいだ。
318女子高生・渡良瀬和己:2010/07/29(木) 10:51:00 ID:KJiGltpt
 「あ…ありがとー、かすみちゃん……くぁ〜、起きぬけのコーヒーは効くわぁ」
 こんな手抜きな朝食なのに「ママ」は感激してるし、「パパ」もウンウン頷きながら、夢中になってトーストをほおばっている。
 この様子からして、どうも「あまのとーこ」の仕事要員は、忙しくなるとまず食事で手を抜くタイプらしい。どうやら、ボクがこの家の雑用を引き受けるという線がいよいよ現実的になってきたみたいだ。まぁ、家事は別に嫌いじゃないけど。

 朝食のあとに食器洗いをしていると、玄関のチャイムが鳴った。
 「はーい! どなたですか?」
 「あたしあたし」
 インターフォン越しに聞き覚えがあるような無いような声が聞こえてくる。
 「? オレオレ詐欺?」
 「違うって! 向いの岬、岬絵梨だよッ!」
 「ああ! なんだ絵梨ちゃんかぁ。今開けます」
 いや確かに昨日、「良かったら遊びに来てね」とは言った記憶はあるけど、まさかすぐ翌日に来るとは思わなかった。
 ボクはパタパタとスリッパを鳴らしつつ玄関へと向かいかけて、ちょっと気になって廊下にかけられた鏡で服装をチェック。大丈夫、おかしくない、よね?
 だぼっとしたオリーブグリーンの長袖カットソーとウールのロングスカートは、貧弱なボクの体型を上手くカバーしてくれている……と思いたい。メイクってほど大層なものじゃないけど、肌の手入れも……うん、問題なし。
 ドアを開けるまで多少手間取ったにも関わらず、絵梨ちゃんは嫌な顔ひとつせずに「や!」と明るい笑顔を見せてくれた。
 「ねぇ、かすみっちは今暇かな?」
319女子高生・渡良瀬和己:2010/07/29(木) 10:51:30 ID:KJiGltpt
 い、いきなりあだ名呼びですか。どうやら、絵梨ちゃんはかなり人懐っこい子みたい。
 「う、うん。洗い物が少しだけ残ってるけど、それを片付けたら、たぶん」
 「じゃあさ、良かったら一緒に商店街の方に行かない? お店とかも色々案内してあげられると思うし」
 ! それはまさに渡りに船だ。食料品や雑貨の買い物は現在の渡良瀬家の急務だったし。
 「行く行く! ちょっと待ってね、すぐ終わらせちゃうから。あ、よかったら上がってて」
 「ホイホーイ、おっじゃましまーーす!」
 靴を脱いでついて来た絵梨ちゃんはそのままリビングに通し、冷たい麦茶を出す。
 「散らかっててゴメンね。テレビでも見ててよ」
 ボクは洗い物をキッカリ3分で終わらせてから、自分の部屋にとって返して、外出用の服に着替える。
 ミニスカートはやめといた方がいいいかな。まだ裾さばきとかがちょっと不安だし。じゃあ、こっちの水色のサージのジャンパースカートでいいか。これに丸襟の白いブラウスを合わせて……なんだか制服っぽい気もするけど、「かすみ」の年齢的にはアリなはずだよね。
 あ、そうだ。一応、橙子さんには断っておいた方がいいだろう。
 一応気を使ってトントンと弱めにノックしたんだけど、幸いまだテンパってなかったらしく、仕事場のドアを開けて「ママ」が顔を出した。
 「お仕事中に、ゴメンね。これから、お向かいの絵梨ちゃんと商店街に行くんだけど……食料品以外で必要なモノある?」
 「ん〜、ガルガリくんのコーラ味」
 「スターボックスのアイスキャラメルココア」
 「だから食べ物以外でだって!」
 そう反論しつつ、メモしちゃう自分のこまめさがニクい。
320女子高生・渡良瀬和己:2010/07/29(木) 10:51:59 ID:KJiGltpt
 「あ、そうそう、かすみ、ちょっとコッチ来なさい」
 ? なんだろ。
 「胸元に赤いリボンタイを締めて……髪型も内巻きシャギー風に整えて、っと」
 「おおっ! 色味以外、そっくり! 橙子さん、グッジョブ!!」
 ??? だから何なの?
 「あー、わからないならそれでいーの。大丈夫、ちょっと可愛くしただけだから」
 「よくわかんないけど……行ってきます」
 「「いってらっさーい♪」」
 満面の笑みをたたえた「ママ」&「パパ」の声に見送られて、ボクはリビングに戻る。
 「お待たせ、それじゃあ行こっか」
 「あ、早かったね……って、アンタ!?」
 ボクの服装を見た絵梨ちゃんの顔つきが珍妙に変化する。
 「? 何かヘン?」
 「い、いや……似合っていると言うか、ごく自然に着こなしてるけどさぁ。もしかして天然?」
 「?? 何のコト?」
 「やっぱり。ちなみに、もしかしてそのコーディネート、とーこ先生の見立て?」
 絵梨ちゃんには、うちの「ママ」がマンガ家の「あまのとーこ」であることは、昨日のうちに教えてある。
 「んー、ブラウスとスカートは自分で選んだけど、胸のリボンタイと髪型は「ママ」、かな」
 「なるほどね。ま、似合ってるからいいんじゃない?」(ヘンな意味で注目されるかもだけど)
 終始微妙な表情のままの絵梨ちゃんに首を傾げながら、ボクは彼女と一緒に家を出た。
321女子高生・渡良瀬和己:2010/07/29(木) 10:53:46 ID:KJiGltpt
 「ここがカカロットタワー。2階にこの辺りで一番大きなCD&DVD屋と本屋が入ってるわ。あと、地下の食堂街は値段の割に味はそこそこ。他は……輸入物の食料品店とかタバコ屋だから、あたし達にはあんまり関係ないかな」
 む、でもその輸入食料品にはちょっと興味あるかも。
 「で、アッチに見えるのが、西優ストア。スーパー以上デパート未満の簡易百貨店ね。いちいち商店街での買い物が面倒くさかったら、アソコなら大体何でも揃うと思うわ。
 もっとも、洋服に関しては安いぶんデザインはイマイチなんだけど……」
 と言葉を切った絵梨ちゃんはジロジロと「ワタシ」の格好を見まわす。
 「ま、アンタなら案外好みの品が見つかるかもね。センスが微妙に古そうだし」
 「うわっ、ちょっと気にしてるのに、ヒドいよ、絵梨ちゃん!」
 元20代半ばの成人男子としては、これでも結構ガンバって可愛く見える服装をしてるつもりなのですよ?
 「あー怒らない怒らない。別にいいんじゃない、ある意味個性的で。確かにちょいレトロっぼいけど、アンタに似合ってるのは確かなんだし」
 ……なんか誤魔化されたような気がする。
 「商店街のアッチの方にもブティックとかはあるけど……正直、高いかダサいかの二択だから、気合い入れてお洒落するつもりなら、横須賀駅前か思い切って横浜まで出たほうがいいわね」
 それは予算その他と応相談かなぁ。
 「あの交差点にあるビルがビックリエコー。チェーン店のカラオケ屋だから、会員になっとくと色々便利だよ。会員なら案外安いしね」
 ふぅん。あんましカラオケとか(会社の打ち上げ以外で)行ったことないけど、やっぱり女子高生としてはそのあたりも必須技能なのかなぁ。
 「そだね。流行りの曲をいくつか歌えるに越したことはないし、あとそれ以外の持ち歌が何曲かあると盛り上がるかな。ん? もしかして、かすみん、音痴?」
322女子高生・渡良瀬和己:2010/07/29(木) 10:55:53 ID:KJiGltpt
 「そ、そこまでヒドくはないと思うけど……」
 とは言え、自慢できるレベルではないのも確かだ。まして、今は女声を出さないといけないんだし。
 「あ、それなら会員登録も兼ねて、1時間ほどふたりで歌っていこーよ!」
 ……と、強引に絵梨ちゃんに引っ張って来られたんだけど、参ったなぁ。最近のヒット曲を覚えるとこまでは手が回ってないんだけど。
 仕方ないから、少し古めの(ボクが学生時代とかによく聞いた)名曲を「ママが仕事中によくかけてる」という名目で歌ってみる。
 「へぇ、なんだ。わりかし上手いじゃん」
 と歌唱評価自体は悪くなかった(自分でも高音部がよく伸びてたと思う)けど、「でもガッコの友達と行くなら、最近の曲も覚えときなよ?」と釘を刺された。
 うぅ……精進しマス。

#エリとデート?編その1。その2まで続きます。ちなみに、今の「かすみ」の格好は、黒髪黒瞳の零号機の人って感じ?
323女子高生・渡良瀬和己:2010/07/30(金) 02:53:48 ID:kdXUyU4c
 その後は、アクセサリー店やコスメショップ(どちらも入るの生まれて初めてだよ!)を何軒か冷やかしてたら、そろそろ11時半過ぎてたので、ちょっと早いけどお昼を食べられそうな店に案内してもらう。
 ──いや、そのつもりだったんだけど。
 「ああ、ここ、ここ! この三葉堂ってお店のワッフルがかなりイケてるから」
 「はぁ……確かに美味しそうな匂いだね」
 「むぅ〜ココも駄目か。かすみん、意外と舌肥えてるねー」
 いや、そんな呆れたような感心したような声出されても。
 ボクとしてはごく普通の軽食を食べたいと思ってたんだけど、連れてかれる先がことごとくケーキとか洋菓子とか甘いモノのお店ってのはどうかと思う。
 だいたい、「甘いものは別腹」でしょ。先にサンドイッチとかパスタとか普通のお昼ご飯食べようよ〜。
 「ほほぅ、それはダイエット中のあたしに対する挑戦かな?」
 手をワキワキさせながら迫ってくる絵梨ちゃん。ちょっぴりこわひ。
 「ち、違うって! そもそもダイエット中の人があんなカロリーの高そうなもの食べちゃダメでしょ!」
 「チッチッチッ、お昼御飯で補給すべきカロリーをスイーツ分に回して差し引きゼロにしようという、この切ない乙女心をわかって欲しいなぁ」
 うぅ〜そこまで甘味に拘るとは。乙女の意地、恐るべし!
 そう言えば、大学時代の友人(♂)が、朝昼抜きで彼女のケーキバイキングに付き合わされて地獄を見たって話を聞いた記憶も……。
 僕はそれほどお酒は飲まない(飲めない)し、甘いものもわりと好きな方ではあるけど、でもケーキがご飯代わりってのは、ちょっとなぁ。
 「じゃ、じゃあさ、このヘンに和菓子屋さんとか甘味処とかってないかな?」
 「ん? えーと、確かあっちの方に……」
 と絵梨ちゃんに案内されて来たのは商店街の西の外れ近くの、三笠庵という甘味屋さん。
 時代劇に出てくる「峠の茶店」を模したような作りで、店の表に3人掛けの和式ベンチ2脚と、店内に二人掛けの机が3つあるだけの小さなお店。
 「あ、いいなぁ、ここ……」
 店の構えはちょっと古いけど、決して汚くはなく、むしろいかにも「らしい」雰囲気を醸し出している。
 「そういえば、あたしも店に入るのは初めてかも。母さんがココのわらび餅が好きでたまに買ってくるんだけど」
 おお、わらび餅かぁ。
 「冬場の鯛焼きなんかも、結構美味しかったかな」
 ほほぅ、鯛焼き!
 「部活の先輩が、クリームあんみつが絶品とか言ってた気も……」
 あんみつ!!
 「──かすみん、よだれ、よだれ……」
 ハッ!
 我に返ったボクは、慌ててポーチからハンカチを出して口元を拭う……って、何もついてない!?
 「アハハハ! いやぁ、でもマジでよだれ垂れそうなウットリした顔してたよ?」
 うぅ……不覚だ。
324女子高生・渡良瀬和己:2010/07/30(金) 02:54:37 ID:kdXUyU4c
 「もしかして、かすみんって洋菓子より和菓子が好きな人?」
 「……うん、じつはそうだったり」
 なにせ、橙子さんと出会うまでは休日毎に行動範囲内の和菓子屋チェックしてたくらいだからなぁ。
 「なーんだ、かすみんもあたしのコト言えないじゃん」
 「で、でもね、クリームとか動物性脂肪を多用する洋菓子より、ほとんど植物性素材の和菓子の方が、全般的にカロリーは低いし、健康にもいいんだよ?」
 と、一応抗議はしてみたものの、絵梨ちゃんの生温い目線がイタい。
 ともあれ、絵梨ちゃんの部活の先輩オススメのクリームあんみつとお茶のセットを頼み、ふたりで分けるつもりでわらび餅を追加注文する。
 ──いやはや確かに絶品でした。
 それほど和菓子に興味のなかった絵梨ちゃんでさえ、「たまにここに寄るのもいいかもね」とご満悦。いわんや、ボクに至っては今後ここを贔屓にすることを堅く心に誓ったくらい。
 嗚呼、でも結局甘いモノだけでお腹を膨らせちゃったよ〜。女の子ってこういうのが普通なのかなぁ。

 今日のお出かけの締めは食料品の買い出し。さっき見た西優へと寄る。
 「にしても、花の女子高生(新)が、春休みの昼間っからスーパーの食料品売り場で買い物とはねぇ」
 「ゴメンね、絵梨ちゃん、こんなトコまでつきあってもらって」
 「いや、それはいいけど……もしかして、あの家の家事ってアンタがやってるの?」
 「う、うん、全部じゃないけど……ホラ、うちの家って特殊なお仕事だし」
 こう言っておけば、多少付き合いが悪くても誤魔化せるかな。実際、積極的に家のこと手伝うつもりでいるしね。
 「あ〜確かに。マンガ家とかって、家事無能力者ってイメージあるよね」
 でも、橙子さん……もとい「ママ」は家事自体は上手いんだよね。修羅場ってくると、やってる暇がないだけで。
 「それにしても、かすみんって、やっぱりちょっと変わってるよね。微妙な服のセンスと言い、和菓子好きといい、その歳でアッサリ家事(しゅふ)できちゃったり」
 ギックーーン! や、やっぱり10年近いジェネレーションギャップは隠せないのかな?
 「……そんなにヘンかなぁ。ワタシ、昔から「ママ」のお手伝いしててあんまり友達と遊ぶ機会がなかったし、その分大人の人と接する機会は多かったから、そっちに影響受けちゃってるかも、って自覚はあるんだけど」
 ……ってコトにしておこう。
 「あ! いやいや、そんなに気にしなくってもいいって。確かに普通とか平均的とは言えないかもだけど、あたしは嫌いじゃないよ? それに、あたしたちが行く星河丘って学校自体も、ちょっと普通の校風とは違うらしいしね」
 へ? それは初耳なんですけど。
 「あ、もしかして、かすみんも、家からの距離と偏差値だけで志望校決めたな?」
 「も」ってことは、もしかして絵梨ちゃんも?
 「でへへ〜」
 いや、そんな不●家のペコちゃんみたいな顔(ののワ)でスッとぼけられても。
325女子高生・渡良瀬和己:2010/07/30(金) 02:56:30 ID:kdXUyU4c
 「あ〜、あのね、星河丘学園って名門だけど、元は……っていうか、つい2年前までは男子校だったってのは知ってた?」
 「そうなの? じゃあ、もしかして凄く女子の数が少ないとか」
 だったら、むしろ好都合かも……。
 「ううん、男女比率はほぼ1:1みたい。ただ……」
 「あ、男子校の頃の気風が残ってて、乱暴だとか?」
 「むしろ逆。と言うか、「男性は紳士(ジェントルマン)、女性は淑女(レディ)たれ!」って言うのが校風らしいわよ」
 「?? 意味がよくわからないけど……要はお坊ちゃんお嬢様の学校ってこと?」
 「ある意味ね。基本的には全寮制なんだけど、あたし達みたく歩いて10分内に通える人は自宅通学が認められてるみたい。ホラ、わかるでしょ。お嬢様学校で全寮制と来たら……」
 ああ……なんとなく絵梨ちゃんの言いたいことが想像できた。
 「ごきげんよう」とか「お姉様ぁ」とか「よろしくってよ」とか、そういう非現実的な言葉遣いが飛び交う空間なのかもしれない。
 逆に男子の方は、昔の少女マンガみたくキザでカッコつけな性格なのだろうか?
 ……って、ボク、そんな学校にこれから通うの!?
 「む、無理無理! ワタシ、転校するぅ〜!」
 「ヘッヘッヘッ、逃がさないよ〜、死なば諸共だぁ!」
 しばらくキャアキャア言ってたボクらは、周囲のオバさんたちの冷たい視線に気づいてふざけるのを止めた。
 うぅ〜、恥ずかしいなぁ。
 「クスクス……おもしろい娘達ね」
 うわっ、あんな綺麗な人にまで笑われてるし。
 「ああ、ゴメンなさい。悪気はなかったの。ね、貴女達、星河丘の新入生?」
 そう言って声をかけてきたのは、流れる黒髪と涼しげな目が印象的な、いかにも大和撫子って感じの20歳前の若い女性。
 「「は、ハイ」」
 「そう……あたしもね、あの学園をこの春卒業したばかりなの。ふたりには先輩ってことになるのかな」
 へ〜、思わぬ縁にちょっとビックリ。
 「確かに外からいろいろ言われることが多いけど、中に入れば結構いいところよ。だから、そんなに身構えずに学園生活を楽しんでほしいな」
 あ、すっごく優しい目でお姉さんはボクらのことを見てる。
 こういう人の言葉だと、無条件に信用したくなるなぁ。
 「──こんな所にいましたの、若菜。あら、そちらは?」
 と、そこへ現れたのは、色鮮やかな栗毛をポニーテールにした上品そうな女性。
 「今年から星校に入る後輩らしいわ」
 「まぁ、そうでしたか。初めまして。わたくしの名前は白鳥理緒。そちらの姫川若菜と同じく、昨年まで星河丘学園で通っていましたの」
 姫川さんと白鳥さんは用事があったらしく、その場ですぐに別れたんだけど、「何か学園で困ったことがあったら、生徒副会長の羽衣さんか、校医の双葉先生を頼ってみなさい」と言う有難いアドバイスをもらってしまった。
 「うわぁ、モノホンの「お嬢様」って感じの人達だったねー」
 ああいう人間ばかりが揃ってるとしたら、何か、ボクら場違いそう……。
 「ぎゃ、逆に考えるのよ、かすみん。そういう環境で3年間揉まれれば、あたし達も「おぜうさま」な猫のひとつやふたつ、かぶれるようになるって!」
 励ましになってない励ましをヤケクソ気味に言う絵梨ちゃん。
 ──まぁ、入学した直後、この時の懸念は無用のものだと判明するんだけどね。

#エリとデート?その2終了。本人に自覚はないものの、だいぶ女の子ライフに染まって来てるような……。
#しかし、本当にここで続けてていいんでしょうか?「いくない。でてけ!」とおっしゃるなら、自ブログのほうで続けますんで。
326名無しさん@ピンキー:2010/07/31(土) 09:04:33 ID:4Ru2lAB/
どんどんここで続けて欲しい

だけど自ブログのほかの連載も気になる
どこなんでしょう?
327名無しさん@ピンキー:2010/07/31(土) 14:31:00 ID:Pbj7w7f3
続けていいと思うよ
ここは過疎だから反応が薄いだけじゃないかな

ついでにブログもよろ
328和己の人:2010/07/31(土) 17:20:03 ID:Y+aFFhmO
>326
>327
レスありがとうございます!
正直、小心者なので「いぢめる? いぢめる?」という気分で書いておりましたので、大変励みになりました。
基本的には、このまま「かすみ(偽)」視点で話が進み、ラスト直前に「和己(偽)=かすみ(真)」のモノローグが入り、エピローグで〆るという形になるかと。
ブログについては、かすみたちの通う学園名でググッていただければ、割とすぐにわかるかと。
329名無しさん@ピンキー:2010/08/01(日) 12:14:59 ID:qfJ5hToF
応援エールを贈りますです。
330女子高生・渡良瀬和己:2010/08/03(火) 07:50:32 ID:NqD6usDT
 家に帰りかけたところで、ガルガリくんとアイスキャラメルココアのことを思い出し、あわててスタボと適当なコンビニで目当てのものを購入し、お買物は無事終了。
 絵梨ちゃんに一部持ってもらっても、まだ重い荷物を抱えて、よろけるようにして、ボクは渡良瀬家へと帰って来れた。
 「はふぅ〜、やっと着いたぁ……。あ! ありがとね、絵梨ちゃん」
 「いや、こんなビニール袋ひとつくらいいいけど。でも……主婦っぽいコトやってる割に、かすみん、力ないわねぇ」
 う! 嫌なトコ突くなぁ。でも確かに、身長はボクと同じ程度でも主婦のオバちゃんとかもっとずっとパワフルだもんね。
 「じゃ、あたしはそろそろ帰るわ。もし、暇してたら声かけてよ。また一緒に遊びましょ」
 「あ、うん、本当にありがとう、絵梨ちゃ」
 「ストップ! あたしたちも、もう中学生じゃないんだし、ちゃん付けはないでしょ。エリでいいよ」
 女の子を名前で呼び捨てにするのは実は初めて(橙子さんだって未だに「さん」付けだし)だけど、確かに女子高生なら、親しい間柄では呼び捨てにするのも普通かも。
 「う、うん。じゃあ……エリ、また今度」
 「おっけ〜、じゃ、またね、かすみん!」
 ニパッと笑って絵梨ちゃん……エリは帰っていった。でも、ボクのことは「かすみん」なのかー、まぁ、いいけど。
 おっと、そうだ。
 氷が溶けないうちにと、ボクは急いで「ママ」たちの仕事場へと向かう。
 「ただいまー! ママ、パパ、頼まれてたモノ、買って来たよ」
 「あ〜、ありがとほ〜」
 あちゃあ……ボクが買って来たガルガリくんとアイスキャラメルココアを口にして、ひと息ついたみたいだけど、ふたりとも、だいぶヘロヘロっぽい。
 「もしかして……お昼食べてないの?」
 「いやぁ、筆がノってくると、わざわざ作るのが面倒になっちゃって」
 「同じく。そもそも材料もなかったし」
 ハァ〜、そう言うコトなら仕方ないか。
 「──15分ほどしたら、呼びに来るから」
 そう言って台所にとって返したボクは、まず買って来た食料品を仕分けしつつ冷蔵庫にしまう。
 「夕飯のすき焼き用にと思ってたんだけどなぁ」
 生のうどんを1パックと、キャベツとモヤシ、豚コマひと切れを使って、フライパンで手早く焼きうどんを作る。みりん&醤油ベースの薄味風なのは、ボクのオリジナルだ。
 青のりがないのが残念だけど、鰹節と紅ショウガだけでも、十分アクセントにはなるかな。
331女子高生・渡良瀬和己:2010/08/03(火) 07:51:43 ID:NqD6usDT
 「お昼、できたよーー!」
 「「はーーーい!」」
 いい歳した大人ふたり(……って、うちひとりは僕のフリしてるかすみちゃんだけど)が、食べ盛りの子供みたいな返事をして台所へとやって来る。その食べっぷりも、欠食児童さながら。もぅっ、こんなにお腹空いてるなら、カップ麺でも何でも食べたらいいのに……。
 「ありがとう、美味しかったよー」というママたちに買って来たペットボトルの麦茶を渡して食休みさせ、ボクは食器を洗う。
 「ママ、前から思ってはいたんだけど、休みの間はワタシがご飯作ろうか? あと、学校が始まっても、朝と夜なら大丈夫だけど?」
 洗い物をしながら提案してみる。
 「そ、それは凄く助かるけど……それで、いいの、かすみ?」
 ボクはひょいと肩をすくめた。
 「だって、ママたち、放っておくと餓死しちゃいそうなんだもん」
 そもそも、今回の入れ替わり自体、「マンガ家あまのとーこの仕事場を効率良く回す」ことを前提に立てられた計画なんだから、それにボクが協力するのはむしろ当たり前だろう。
 「うーーん、料理上手なアシストのヨッちゃんが辞めたのが痛かったね。でも、橙子さん、ここは当面、かすみちゃんの申し出に甘えるべきだと思うよ」
 パパの言葉に、ママ──橙子さんは真剣な顔つきで考え込んでいる。
 「……じゃあ、悪いけど、しばらくお願いできるかしら?」
 「オッケー。あ、でも料理内容まではあまり期待しないでね。レパートリーも少ないし」
 こうして、ボクは正式に「あまのスタジオ」のメシスタント(って言うそうな)に就任したのだった。

#短いですが2日目はコレで終了。本人無自覚のうちに(精神的な)少女化が進行中。妻や娘を気負わずに「ママ」「パパ」と呼ぶようになってますしね。次回からは、時間軸が跳び跳びになります。
「入学式編」「部活編」「渡良瀬和己デビュー編」で、「和己(偽)独白編」、「エピローグ」という構成になる予定です。
332名無しさん@ピンキー:2010/08/03(火) 20:01:33 ID:q7aaOcxe
GJですぞー!
馴染みすぎww
333名無しさん@ピンキー:2010/08/03(火) 21:19:33 ID:vIA8WW48
GJがぜよ!かすみやっちゅう!
そしてボクがあたしに
334女子高生・渡良瀬和己:2010/08/06(金) 01:23:13 ID:Jc5Q8LHn
 それからの数日は特に代わり映えのしない毎日が続いた。
 ボクは、朝起きて朝食を作り(って言っても、トースト&サラダかご飯&味噌汁程度だけど)、朝食の片付け後は、家の中掃除したり、学校に備えて勉強したり、ティーン向け雑誌見てファッションとか流行とかの知識を仕入れたりしてる。
 お昼になったら昼ご飯を作る。この時は、サッと簡単に作れる、パスタ・麺類が多いかな。
 午後からは、エリが遊びに来たり、エリの部屋に遊びに行ったり。
 そうそう、エリの部屋に遊びに来てた友達のハネ(三羽朱美)とリョーコ(倉石沢遼子)とも、知り合いになった。このふたりも星河丘に入るみたい。
 ハネは、背が低い(150センチあるかないか)けど、スタイルがよくて顔可愛らしい、お人形さんみたいな子。甘ロリ風の服が似合いそう……って言うか、実際着てた。うちのママと話が合いそう。ただ、多少天然かつ無意識に毒舌なところが付き合う人を選ぶらしい。
 リョーコは、対象的にスラリと背が高くて165センチは超えてると思う。眼鏡をかけてるからってワケじゃないけど、何となく頭が良さそうな感じ(後日、首席合格と判明)。でも、関西弁で陽気にしゃべる様子は何となく親しみが持てた。
 ふたりともとてもいい人たちで、友達3人の輪に割り込むような形になったボクのことも、ごく自然に受け入れてくれる。1度、4人で遊びに行ったんだけど、すごく楽しかったし。
 で、そんな風にして「女の子スキル」を磨きつつ(半分は口実だけど)、午後を過ごしたのち、6時ごろになったらお夕飯の支度(食材が足りない時は、その1時間前に買い出しに行くけど)。
 もともと、ボクのレパートリーなんて、「男の手料理」の域を超えてなかったから、さすがに最近は本を読んだりして色々試行錯誤中。とは言え、初めて挑戦する料理でもほとんど失敗したことはないから、もしかしたらボクは意外に料理の才能あるのかもしれない。
 (そう言えば、父さんたちもよく褒めてくれたっけ……)
 昔──中学に入った頃の僕も、両親が共働きで家を空けてることが多かったから、簡単な自炊は自然とできるようになってた。で、たまに夜帰って来た両親に、カレーとか野菜炒めとかを振る舞うと、「和己は偉いなぁ」と褒めてくれたんだ。
 ……もっとも、中学3年の頃に、その両親が事故で亡くなって、天涯孤独の身になっちゃったんだけどね。
 まぁ、それはともかく、そうやって考えてみると、ボクの家事歴自体はけっこう長いんだよね。エリに「主婦っぽい」と言われるのも無理ないかも。
 そして、そんな風に過ごしているうちに、アッと言う間に一週間が過ぎ、ついにボクらは入学式を迎えることとなったんだ。
335女子高生・渡良瀬和己:2010/08/06(金) 01:24:54 ID:Jc5Q8LHn
 今、ボクは久しぶりに朝、鏡の前で悩んでいた。
 「コレ……着ないといけないんだよね」
 壁にかけたままだったから、ここしばらく意識してなかったけど、いざこの制服を着る、つまり正式に「女子高生・渡良瀬かすみ」としてこれからの毎日を過ごすことになる……と思うと、やはりどこか罪悪感みたいなものを感じる。
 え、今更? うん、そうかもね。
 でも、昨日までは女の子の格好とは言え、あくまで自分で見立てた「私服」でしかない。公序良俗云々はどうか知らないけど、少なくとも「女装」は法律に触れるような行為じゃないし。
 けれど。この制服を身に着けて学校へ通うということは、自分が「渡良瀬かすみ」であると公言し、その身分に従って振る舞うことを自ら受け入れるってことを意味するんだ。
 どうしてだろう。今、ワタシ、すごくドキドキしてる。
 不安? 期待? もしくはその両方?
 なんだか、これを着たら、二度と引き返せなくなるような予感。
 ううん、そんなはずないよね? 1年か、長くても2年くらい経ったら、ワタシと「パパ」……僕とかすみちゃんは、元の立場に戻るはずなんだし。

 ──ズキッ!

 あれ? 何だか一瞬ヘンな気持ちになったような……。
 やっぱり、入学式を前に緊張してるのかなぁ。
 深呼吸してから、ボクは制服にかけられたビニールカバーを取り、ハンガーから外した制服をベッドの上に並べていった。
 ボクらが通う星河丘学園は、名門私立だけあって、普通の高校とは大幅に異なる特徴がいくつかある。
 制服ものひとつで、なんと男女とも春・夏・秋・冬の4タイプが用意されているんだ。しかも、女子は各季節毎に白に近い「ライトカラー」と暗色系の「ディープカラー」の2種類があるから合計8種類。
 ただし、ここでポイントとなるのが、「制服でありさえすればよい」ということ。
つまり、8種類の組み合わせは自由なんだ。全部購入する義務はないし、衣替えもないから、各自が好きなタイミングで適当に切り替えてるみたい。
 ちなみに、今ボクの目の前にあるのは、白の長袖ブラウスと明るい小豆色とライトグレーのチェックになったミニスカート、そしてクリーム色を基調としたブレザーという春服のライトカラー一式。
 とにかく、躊躇ってばかりもいられない。ボクはゆっくりとその制服に袖を通し始める。相変わらず、どれもこれもあつらえたようにボクにピッタリだ。
 複雑な感慨を押し殺しつつ、ブラウスのボタンを留め、スカートを引き上げる。
 女の子の服装をすることにはだいぶ抵抗が無くなったボクだけど……ちょっとこのスカートの丈は短過ぎないかなぁ。

 ここ数日でボクなりに、自分の理想とする「女の子の格好」像ができつつあるんだけど、基本的にボクは、ゆったりした上着と長めのスカートで、素肌をさらさない服装を好むみたい。
 ママ──橙子さんが好きなヒラヒラ&フリフリと似てるけど、もうちょっとシックで落ち着いた感じ。
 無論、そのほうがボクの正体がバレにくいからという理由もあるけど、純然たる「服の好み」としても、そういう大人しい服装が趣味に合うんだ。
 エリたちは、「せっかく可愛いのにもったいない」って呆れてたけど、同時に、
「でも、確かにそっちの方が、かすみんには似合ってるかもね」と言ってくれた。「森ガール」とか言うんだっけ? 一応流行にも沿ってるみたいだし。
336女子高生・渡良瀬和己:2010/08/06(金) 01:25:28 ID:Jc5Q8LHn
 ただ、高校の制服まで自分のシュミを通すわけにはいかない。
 ボクがこれまでに着た中で一番短いスカートは、一昨日のデニムのタイトっぽいミニだけど、それだって膝上5センチくらいだったし……これ絶対膝上10センチ以上あるよね?
 せめてもの抵抗にとデニール数多めの黒タイツを履いてみた。パンツが見えるかもという懸念は減ったけど、うぅ〜、それでもまだ太腿のあたりが頼りない気がするよぅ。
 あきらめて、胸元にスカートと同じ柄のリボンタイを結び、ブレザーを羽織る。ちょっと肩のあたりがほんの少し緩いように感じるのは、本物のかすみちゃんより肩幅が狭いからか。どんだけ撫で肩なんだよ、ボク。
 それでも、なんとか格好や髪型を整え、最後にドレッサーの引き出しから、この間エリたちと出かけた時に買った白い幅広なカチューシャを付け……、うん、完成。
 「かすみ〜、そろそろご飯食べたほうがいいんじゃないー?」
 「あ、はーーい!」
 階下からのママの呼び声に答えてから、ボクは部屋を出た。
 今日が入学式だからか、それとも仕事が一段落したからか、今朝の食事はママが用意してくれていた。
 「おはよう、かすみ」
 「うん、おはよう、ママ」
 挨拶して席についたところで、居間からパパもやって来た。
 「やぁ、おはよう、かすみちゃん。うん、その制服 とても似合ってるよ」
 「あ、ありがと、パパ」
 本当はコレ、貴方が着るはずなんですけどね……という言葉は口にしない。今更詮無いことではあるし、それに、褒められて正直悪い気がしなかったのも事実だから。
 朝食を食べ終わるころ、エリが迎えに来てくれた。
 「そうだ! せっかくだから、記念写真を撮っておこう。ほら、絵梨ちゃんも」
 と、パパがわざわざ一眼レフのデジカメ(本来はマンガの資料撮影用らしい)を持ち出して、我が家の前で、ボクとエリのツーショットを撮影する。
 「あとで、ケータイに送っておいてあげるよ」
 ニコニコしているパパたちに、「行ってきます」の挨拶をしてから、ボクらは学校へと歩き出した。
 「あえて聞かなかったけど……かすみん家のパパって若いよねぇ。再婚?」
 「うん、この春、ママと結婚したばかり」
 「いくつぐらいなの?」
 「えーと……」
 下手な事を言うとマズいかな。元の僕の年齢を素直に答えておくか。
 「確か24歳、だったかな」
 「ああ、やっぱりね。とーこ先生は?」
 「30……5か6だと思う」
 「ウッソー! 30歳超えてるようには見えないよ〜、わっかーーい!」
 「アハハ、よく言われる」
 そんな雑談を交わしながら、目指す場所──星河丘学園に到着。
 「うわぁ……受験の時以来だけど、やっぱスゴいわ、ここ」
 「だねぇ」
 校門と言うより豪邸の外門と言ったほうがふさわしいような作りの門をくぐり、レンガ造りの洋館っぽく(さすがに中身は鉄筋コンクリートだと思うけど、たぶん)見える校舎を見上げて、呆れたように呟くエリとボク。
 「あ! エリィ、かすみん、こっちこっち!」
 と、昇降口らしき場所の方から声がする。
 見れば、傍らの掲示板の前でハネが手を振っていた。
 「おはよう、ハネ」
 「おはよ、ハネ。リョーコは?」
 「うーん、まだ見てないなぁ。いつも通りギリギリなんじゃない?」
 そんなコトを話しつつ、掲示板に張り出されたクラス分け表を見る。
 「あたしは……A組かぁ」
 「わたしもA組だったよ。かすみんは?」
 「えーーと……あ、アレ?」
 どのクラスにも、ボクの名前が見当たらない。
 「あ、コレじゃない?」
 エリが指さすA組の表には、上から2番目に「天野かすみ」と言う名前が記されていた。
 「そっか。受験の時は、まだ今の渡良瀬姓じゃなかったから」
 理由が分かればなんてことはない。でも、コレ、あとで先生か事務局に言っておいたほうがいいのかなぁ。
 「おはようさん、なんや3人固まって何みとるん?」
 そうこうしているうちにリョーコも来たみたい。
337女子高生・渡良瀬和己:2010/08/06(金) 01:25:57 ID:Jc5Q8LHn
 その後、自分だけ違うクラス(C組)だったと愚痴るリョーコをなだめつつ、大講堂へ入って入学式に参加する。
 このテの式典では、お偉いさんのスピーチは長くて退屈というのがお約束だけど、この学園は、理事長も校長も明快簡潔に1分ぐらいに話をまとめてくれてるのは助かるなぁ。
 次に出てきたのは……なんか、ちっこいけど先輩──3年生、なのかな?
 「えっと、生徒会長の天迫星乃です。皆さんは、これから3年間、この学校で学び、遊び、様々な出会いをしていくことになると思います。一期一会という言葉もありますけど、そのどれも大切にしてくださいね。ボクからは以上です」
 と、マイクを置こうとして、何か思いついたのか、ニッと不敵な笑みを浮かべる天迫先輩。
 「──それと、新一年生から生徒会のお手伝いを募集中。部活の見学にでも来るつもりで、気軽に生徒会室に遊びに来てね♪」
 そう言い残して、今度は本当に壇上から去る。
 「はぁ……背丈はちっさいけど、態度はさすがに会長っぽい感じだね」
 「そりゃ3年生だからね、背はちっさいけど」
 いや、身長150センチそこそこのハネがそれを言うのもどーかと思うよ?
 そのあとは、教室に戻ってLHR。1−Aの担任の水ノ内先生は、今時珍しいくらいの「大和撫子」な感じの若い女性で、男子生徒たちは喜んでたみたい。
 まぁ、美人なのはともかく、優しそうなのはプラスかな。ヘンに体育会系マッチョな中年教師とかにあたったら、メもあてらんないし。
 そのあとは、出欠確認と一緒に自己紹介……って、ボク、「天野」で登録されてるから2番目なの!? ロクロク紹介内容を考えてる暇もないよ〜。
 「えっと、東京の吾妻学院中等部出身、天野かすみ、です。趣味は、マンガを読むことと…お料理、かな。家の都合で、こちらに引越して来たばかりなので、地理とかわからないことも多いですが、よろしくお願いします」
 ふぅ〜、なんとか無事に終わったよ。
 でも、つい流れで天野姓で自己紹介しちゃったな。
 「渡良瀬かすみ」でも「天野かすみ」でも、ボクにとって偽名(?)には違いないから、別にいいんだけど……でも、本来の姓である「渡良瀬」以外を自分から名乗るなんて、何だかヘンな気分。
 「? どしたの、かすみん?」
 「う、ううん、何でもない」
 隣の席から、いぶかしげに小さく声をかけてくれたエリに笑顔で答える。
 ま、苗字の件は、あとで事務室にでも届け出ればいいよね。

 今日は入学式ということで、授業はなし。その代わり、教科書や生徒手帳など学校生活で必要なモノが渡された。
 みんな──エリ、ハネ、リョーコ、それにボクの4人で帰ろうと思ったんだけど……。
 「あ、そーだ。ごめん、ワタシ、少し事務室に寄らないと」
 苗字のこと、早めに申請しておいた方がいいよね?
 「いーよ、あたしら、しばらく教室でダベってるから、行って来なよ」
 という有難いエリの言葉に甘えて、ボクは1階にある事務室へと足を運んだんだけど……。
 「うーん、困りましたねぇ。今年の名簿は既に「天野」姓で登録されちゃってますよ」
 確かに、さっきもらった教科書とか生徒手帳の名前も、みんな「天野かすみ」で名前が印字されてた。
 事務員さんいわく、この学園は生徒個人個人のデータを細かく把握して、諸々の年間行事などに役立ててるらしい。ボクの出席番号02番というのも、当然のことながら「天野」姓に基づいたものだ。
 「今すぐに変えるのは難しいですねぇ。とりあえず、1学期の間はそのままでいってください」
 「はぁ……そうですか」
 そう言われてしまっては、ボクとしても、苗字が変わったのを学校側に報告するのを忘れてたという負い目があるから、ゴリ押しはできない。
 て言うか、本来はボクじゃなくて本物の「かすみちゃん」がやっとくべきでは!?
とも思ったけど、それはこの場で言っても仕方ないし。
 「夏休み中にもう一回申請に来てくださいね〜」という事務員さんの声に見送られて、ボクは溜息をつきながら教室へ戻る。
338女子高生・渡良瀬和己:2010/08/06(金) 01:26:57 ID:Jc5Q8LHn
 それにしても……どうしたものかなぁ。
 いやでも実際、学校で呼ばれるボクの姓が「天野」でも「渡良瀬」でも、もそんなに違いはないはずなんだけどね。せいぜい、「あまの」と声をかけられた時、とっさに返事が遅れる可能性があるという程度。それだって、ボクが気をつけてれば済む話だし。
 なのに、どうして、こんなにひっかかるんだろう……。
 ──あぁ、そうか。
 「渡良瀬」という苗字は、今の(偽りの)ボクと過去の(本来の)僕とをつなぐ、たったひとつの掛け橋、残された絆みたいなものだったのかも。
 もし、このまま、学園ではずっと「天野さん」とか「天野かすみ」って呼ばれるようになったら、ボクの中から「渡良瀬和己」としての部分がなくなっちゃいそうで怖いんだ。
 たとえば、1学期だけじゃなく、このままずっと在学中、「天野かすみ」と呼ばれるとしたら?
 先生や先輩からは「あまのー」と呼びつけられ、後輩からは「天野先輩」と声をかけられる。
 もちろん、テストの答案や書類には、自ら「天野かすみ」と記入しなければならない。
 そして……月日が流れ、卒業式の時、壇上で校長先生から「あまのかすみ」と呼ばれて、「はいっ」と返事したら? もちろん、卒業証書は「天野かすみ」に対して出されたものだ。
 ボクは……ワタシは、この学園を「天野かすみ」として過ごし、卒業するの?
 そうして、かつてボクが「渡良瀬和己」であったという証は、波打ち際の砂に書かれた文字のように、少しずつ消えていくのだろうか?

 ──ゾクッ……

 それは、とても恐ろしく……けれど、どこか甘美な戦慄を含んだ妄想だった。
 わ、ワタシは……「渡良瀬和己」? それとも「天野かすみ」?
 非現実感に襲われた頭を必死でブンブンと横に振り、ボクは教室のドアを勢いよく開いた。
 「──ごめんねー、お待たせ」
 「お、かすみん、用事は済んだん?」
 「ん、バッチリ! ……と言いたいところなんだけど、書類が揃ってなくて却下されちゃった」
 「ありゃりゃ、かすみんって、実はドジっ娘?」
 「ドジっ子言うな! あれ、エリは?」
 さっきから、ハネとリョーコの姿しか見当たらない。
 ガラッ「あれ、かすみんの方が早かった?」
 背後のドアが空き、ジュースを4本抱えたエリが姿を見せる。
 「うむ、パシリごくろー」
 鷹揚にうなずくハネ。どうやらジュースじゃんけんでもしてたらしい。
 その後、ジュース(ボクの分もちゃんとあった)を飲みながら、しばらく教室で他愛もない雑談をしてから、ボクらは帰路につく。
 そのせいで、その時感じた奇妙な「予感」は、そのまま日常に埋もれてしまったのだった。
-------------------------------------------
#入学式編、終了。もはや、完全に馴染んでますね。
#本人的には時々違和感を感じてるつもりなんでしょうけど、裏を返せば、その時々以外は、とくに違和感なく過ごしているわけですし。
339名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 04:42:59 ID:fdJrcePR
流れを遮る様ですいません。
以前に良輔とあかねの家出ギャル物を投稿させて頂いた者です。
思いのほか反響を頂き嬉しく思います。
さっそく続きをと思っていたのですが、なかなか時間がとれず
書けておりおません。
そこで、ちょっと思いつきで書いた文章を投下させて頂きます。
つたない文章で、御目汚しですがよろしくお願いします。
340そこはとあるお屋敷:2010/08/07(土) 04:46:12 ID:fdJrcePR
そこはとあるお屋敷。
その一室にて、メイド服に身を包んだ人物が
その主人と思われる人物に給仕している。
一見在り得る光景だが、何かが違っていた。
「なんで俺がこんな事を・・・」
メイド服の人物が小さく呟く。
「あら、約束は守らないとだよ」
その呟きを聞き逃さず、主人らしき人物が言葉を続ける。
「今日一日は私が遥人(はると)様で、遥人様が私なんだからね」
その言葉にメイド服の人物はあからさまに嫌な顔をする。
「でも、これはなぁ」
「こら、雛子。なんだその態度は、給仕は立派なメイドの仕事だぞ、
ちゃんとするんだ」
すかさず叱咤を入れる主人らしき人物。
「(俺の事、雛子って…。名前まで交換だもんな)」
メイド服の人物は声に出すとまた指摘されそうなので、心の中で呟く。
そして意を決し、返事を返す。
「申し訳ありません。遥人様」
その態度に満足そうに頷く主人らしき人物。
「分かってくれれば良いんだ。じゃあ食事の続きをお願いするよ」
そうして食事が再開される。
何かが違っている光景。
それはこの一連のやり取りから察することが出来るであろうが、
メイド服の人物は男性であり本来はメイドの主人にあたるはずで、
主人らしき人物は男物の服に身を包んでいるが女性で本来はメイドの
はずだと言う事なのだ。
つまりは、立場が入れ替わっていると言う事の他ならない。
何故こんなことになったのか、事の起こりは一週間前の出来事だった。

341そこはとあるお屋敷:2010/08/07(土) 04:51:03 ID:fdJrcePR
お屋敷の雛子が使用している部屋に、遥人と雛子の姿があった。
その様子は主人とメイドと言う感じではなく、気心が知れた友達同士と
言った感じだ。
「雛子って来週誕生日だよな?」
「そうだけど、なんかお祝いしてくれるの?」
「そのつもりなんどけどさ、どんな感じのが良いのかなって思ってさ。
出来れば雛子の要望を叶える形でって思ってね」
「どんなのでも良いの?」
「まあ、出来る範囲でならね。莫大なお金が掛かるとか、時間が掛かり
過ぎるものとかはダメだけど」
「えーっ、世界一周旅行とか言おうと思ってたのに」
「それ、俺も行った事無いぞ。って言うか俺の小遣いじゃ無理だし、
そんな長い期間メイドの仕事を休まれると困るから」
「冗談冗談、わかってるって」
「これでも、雛子には感謝してるんだよ。幼馴染で昔から何かとお世話
してもらってるからさ」
そう、遥人と雛子は幼少の頃からの付き合いがあり、雛子のメイドとしての
勤務時間が過ぎた後は主従関係ではなくこうして幼馴染として交流を持って
いるのだ。
まあ、多少幼馴染の交流を過分する所もあったりするのだが。
「ありがと、どうしようかな〜。考えておくね」
「ああ、出来る範囲だったらするから。後で聞かせてよ」
「うん、分かった。じゃあ、明日も早いし私寝るから」
「ん、じゃあおやすみ」
遥人はそうして雛子の部屋を後にした。
この約束が後に大変な事になるとは思いもよらずに。
342そこはとあるお屋敷:2010/08/07(土) 04:54:51 ID:fdJrcePR
雛子に何をして欲しいかを聞き、その度にまだ考え中と先送りを続けられ、
とうとう当日になってしまった。
時刻はまだ5時前、夏ゆえに日は出ているがまだ朝露は晴れていない。
遥人は自室のベッドで眠りについていた。
そこへ近づく、メイド服姿の人物がひとり。
「起きて、起きて遥人」
「うーん、雛子?」
それは雛子だった。
雛子は遥人を揺すり起すと、笑顔を見せる。
「おはよう遥人。あのね、例のお願い決まったよ」
「おはよう雛子。それで何をして欲しいの?って言うか今何時だ?」
遥人は眠い目をこすりながら、時計を確認する。
「まだ5時前じゃないか。ねむ…」
「まあ、確かに早いけど私はいつも5時起きよ?6時には働いてるんだから」
「そうなんだ。いつもご苦労さん」
「でね、お願いなんだけど。今日一日私と代わって欲しいの」
「はい?それって俺が雛子の代わりにメイドの仕事をするってこと?」
「うん、そう。夏休みで学校もないし大丈夫でしょ?」
「まあ、それで雛子が休めるって言うならそれで良いよ。
でも俺に出来るかな?」
「大丈夫、私が側に付いてあげるから」
「それなら、大丈夫かな?」
「じゃあ、決まりね。じゃあ早速」
言って突然メイド服を脱ぎだす雛子。
「ちょっとまって、もしかしてメイドの仕事をするからメイド服を
俺に着ろって事!?」
その様子に慌てる遥人。
だがしかし、遥人のその考えは半分正解で残りは違っていた。
「そうなんだけど、ちょっと違うわね。私は遥人に私と代わって欲しいって
お願いしたの。つまり、遥人には私雛子になってもらって、
私は遥人になるって訳」
「え?え?それってどう言う??」
その答えに遥人は混乱してしまう。
「だから、今日一日は遥人には私として振舞ってもらって、
私は遥人として振舞うって事なのよ。立場の交換ってやつ」
「えぇぇ〜っ」
あまりの突拍子の無さに遥人は驚きの声を上げるしかない。

343そこはとあるお屋敷:2010/08/07(土) 04:59:20 ID:fdJrcePR
「さ、遥人も脱いで。私が着るものがないから」
いつの間にか全裸になった雛子が遥人の衣類を全部脱がしていく、
もちろん下着もだ。
あれよあれよと脱がさせた遥人はただされるがままだ。
「ふっふん、遥人の脱ぎたてパンツ♪」
そして、脱がせた服を着こんで行く雛子、妙に上機嫌なのがアレである。
すっかり先程までの遥人のパジャマ姿だ。
「これで私、いや俺は遥人だ。さあ、そっちの遥人は雛子になっちゃおうか?」
今度は雛子が自分で脱いだ服を、遥人に着せようと近づく。
「あのさ雛子。本当に着なきゃ駄目?」
腰が引けて後ろに下がる遥人。
しかし雛子は逃げるのを許さない。
「雛子はおまえだろ?いつまでも裸で居ないで服を着て仕事に行かないと
ダメだぞ」
そう言い、壁に追い詰めショーツを遥人に履かせる。
「あの、雛子このショーツ濡れてるんだけど、たぶんアソコの液で」
「あ、ゴメン。遥人に履かせる事思い付いたら、つい興奮しちゃって濡らしちゃった」
つい素に戻る雛子。
「雛子ってそう言う変態なとこあるよな。昔から」
「まあ、そこはね。ちなみにそのパンツ3日履き続けた
私のフェロモンたっぷりのパンツだから、このブラも同じね」
言ってショーツとお揃いの清楚な白いブラを遥人に装着する。
「このブラもなんか湿っぽいんだけど」
「それは私の汗のせいだから。さて次はスリップを着て貰ってと」
話しつつも雛子は休むことなく遥人に自分の衣類を着せて行く。
遥人は観念してさせるがままだ。
「そして、こだわりのニーソックスにワンピースにエプロンっと最後にカチューシャをつけてっと。うん完成」
そこにはすっかり雛子のメイド服を着た遥人が完成していた。
「どう?これで遥人は私になったのよ。
そのメイド服もニーソも私の匂いたっぷりでしょ?
それ着たまま部屋を閉め切って暑い中一晩布団の中に居たから
汗たっぷりしみ込んでるからね」
「なんでわざわざそんな事するんだよ?」
すっかり諦めてる遥人が聞き返す。
「だって、私の匂いが遥人からしてきたらそれだけで遥人は私なんだって思えるし、
遥人も自分が雛子だって言う風に思えるでしょ?それに匂いがあった方が喜ぶと思って」
「思わないし、喜ばないから」
どこでそう言う感性が磨かれたか知らないが、幼馴染の持論に脱力する遥人。
「ああ、あと靴だけど、こればっかりは私のじゃ入らないから別なの用意したわ」
もうどうでも良くなった遥人は差し出されたローヒールを黙って受け取り履くと、
ふと姿無を見てため息を吐くのだった。
「さあ、雛子早速仕事だ。まずは俺の着替えを手伝ってくれ」
切り替えスイッチが入った主人の雛子は早速メイドの遥人に命令を出す。
「はい、ただいま」
着換えの手伝いなんてしてもらった事無いよなと思いつつ、
それでも素直に遥人は手伝うのだった。

344そこはとあるお屋敷:2010/08/07(土) 05:00:33 ID:fdJrcePR
まあ、いろいろあって今に至る。
「遥人様、紅茶をどうぞ。今朝の紅茶はウヴァのミルクティーです」
「うん、ありがとう」
主従を入れ替えている二人、果たしてどんな一日が待っているのだろうか?
願わくば、これ以上の変な事にはなりたくないと願うメイド姿の遥人であった。
345名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 05:22:38 ID:fdJrcePR
以上です。
これだけだとただのメイド女装のお話ですよね。
ちゃんと雛子が御主人さまの立場を満喫して遥人はメイドとして苦労をするシーンを
もっと入れないと折角の立場の交換が活かされないですよね。
その辺が書けるようになればと思う今日この頃です。
御目汚しすいませんでした。


かすみちゃんのお話し毎回楽しみにしてます。頑張ってください。
他の方々の作品もとても楽しく読ませて頂いています。

おやじと立場交換された佑香ちゃんのお話に出てきた、お父さんとOLの立場を交換できたらって
言うくだりが、少し想像力をかき立てられます。
入れ替わったら家に帰ると若い女性の恰好をしたお父さんが、リビングでファッション雑誌を広げ
て爪の手入れをしていたりするんだろうなって。

何はともあれこのスレはまさにツボですので、今後ともよろしくお願いします。


346名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 22:54:04 ID:cSY9Yzuy
>>345
以上です、ってまさかこれで終わりじゃないですよね
続きを!僕らにこのSSの続きをください!
347女子高生・渡良瀬和己:2010/08/09(月) 00:49:15 ID:jd4WncNV
 入学式のあとは、拍子抜けするほど、「平穏無事」な日々が続いていた。
 ボクは、高校入学したばかりのごく普通の女子高生として、勉強には程々に、遊びにはそれなりの熱意をもって取り組んでいる。
 無論、約束したとおり、「あまのスタジオ」のメシスタントとしても、忙しく働いていて、それなりに家族に貢献してると思う。
 4月末の連休前にある身体測定が唯一の懸念事項だったんだけど、それもパパの入れ知恵であっさり乗り切ることができた。
 まさか、3週間寝てる間にゴムボールの吸引をしただけで、Aカップとはいえおっぱいができるなんて……。
 (気になる人は某有名動画サイトで「おっぱいの作り方」を調べてみてね)
 おかげでエリたちにも「うわ、かすみん、ペチャパイ」「ひんにゅ〜はステータスだ!」と笑われた(く、悔しくなんかないもん!)けど、保険医さんも含めて誰もワタシのことを女の子じゃないとは疑ってないみたい。
 うぅ、バレなくて良かったんだけど……何か、大事なものを失ったような気がするよぅ。
 と、ともかく!
 そんなこんなでボクは、至極順調に「天野かすみ」としての毎日を過ごしてるワケ。
 そうそう、苗字の件もママやパパに相談したけど、「ま、学校だけなら別にいいんじゃないの?」「ペンネームだと思えば?」と、まことにあのふたりらしいお答えを返してくれましたよ、ええ。
 で、5月の連休には、エリたちと近くのテーマパークに遊びに行ったり、何とか休みを2日間ねん出したママ達とブルーベリーヒル勝浦に家族旅行に行ったりもした。
 「自然に囲まれた環境でリフレッシュ」と言ううたい文句は伊達じゃなく、「東京近辺にこんな保養地が!?」と思うくらい優雅なリゾートで、ママとパパはゆったり羽を伸ばせたみたい。
 ──え、ワタシ? うん、ワタシも一応休めたんだけど……ママがクルマにしこたま積んで来た主にピンハ系のお洋服を次から次へと着せられて、高原を背景に写真のモデルに……正直、精神的にツカレマシタ。
 いや、だって、「マンガの資料にするから」って言われたら、頷くしかないじゃない?
 でも、旅行から帰って冷静に考えてみると、あの写真の6割くらいはママのシュミじゃないかと思ってるけどね。
348女子高生・渡良瀬和己:2010/08/09(月) 00:49:43 ID:jd4WncNV
 で、ゴールデンウィークも終わって学校が再開した頃、「あまのスタジオ」に待望の新アシスタントさんが加入! ま、まだほとんど新人なんで即戦力とは言い難いらしいけど、これでちょっとはママ達の仕事が楽になるかとて思えば大歓迎だよね。
 でも、それとは別に、ボクの方にもちょっとした悩みが。
 ウチの学校は、全員になにがしかの部活に所属することになっているんだけど……。
 「え!? かすみん、まだ部活決めてなかったの?」
 ハネが呆れるのも無理はなくて、入部届の最終提出期限は5月の第一週。つまり、今週末までにどこかのクラブに入らないといけないんだよね〜。
 「だからー、あたしと一緒にチアリーダーやろうよー」
 エリのお誘いは嬉しいんだけど……。
 「でもさぁ、チアリーディングって、下手な運動部なみに体力とかいるよね。運動音痴のワタシに務まると思う?」
 「そ、それは……き、気合いで」
 と言いつつも、さりげなく目を逸らすエリ。
 既に何回かあった体育の授業で、ワタシの運動神経の鈍さは十分エリたちも理解してるからねぇ。握力と背筋力だけがかろうじて平均を上回るけど、あとは軒並み平均(もちろん高校生女子の)かそれ以下という計測結果には、自分でも笑ってしまった。
 言っておくけど、別に手を抜いたわけじゃないんだけどなぁ。
 「せやったら、ウチと一緒に演劇界の星をめざそーや!」
 と、リョーコは演劇部に誘ってくれたけど……。
 「うーーん、小道具とかの裏方ならなんとかなるかもだけど……舞台に立つなんて無理ムリ!」
 目立ちたくないと理由もあるけど、単純にそんな度胸ないよ〜。
 「は〜、もったいないなぁ」
 「かすみん、結構可愛いのに……」
 なんて、リョーコとエリは残念がるけど、ワタシみたいな平凡なコをおだてても何もいいコトないよ?
 (なぁ、こないだクラスの男子が回してた「ミス1年」の投票用紙に、かすみん、しっかりノミネートされてたんとちゃう?)
 (うん、さすがに1位じゃなかったけど、しっかり複数票入ってた)
 (ルックスもそれになりだけど、何よりかすみんて家庭的な雰囲気あるから)
 (野郎どもの男ゴコロをくすぐるんやろなー)
 (知らぬは本人ばかりなり、だねー)

 ?? 何コソコソ話してるんだろ。
 「では、ぜひウチの部に……と言いたいところだけど、さすがに無理には薦めにくいかな」
 ハネの部活は美術部。本来、マンガ家の娘としては画力向上のためにもぜひ入るべきなのかもしれないけど……。
 「エンリョシトキマス」
 普通に描いた人物画のデッサンが前衛画になっちゃうワタシにはまったくもってむいてないんだよねー。
 はぁ〜、まったく、どうしたモノかなぁ。
349女子高生・渡良瀬和己:2010/08/09(月) 00:50:58 ID:jd4WncNV
 「で、結局、かすみちゃんは何のクラブに入ったんだい?」
 夕飯時の雑談で、お代わりをよそってあげてる時、パパが聞いてきた。
 「うん、趣味と実益を兼ねて、家庭科部に入ることにしたんだ。お料理のレパートリーが増やせそうだし、お裁縫とかも本格的に習っておくと便利でしょ」
 「あら、いいわね。和裁とか、わたしが教えてあげましょうか?」
 何事にも器用なママは、自分で浴衣も縫えるらしい。スゴいなぁ。
 「でも、かすみちゃんは、いかにも女の子らしいから、そういうの似合いそーっスね」
 と、どこかチンピラっぽい口調で話すのがウチの新しく入った新人アシの大野さん。パンクっぽい髪型や服装してるのに、なぜか妙に腰の低い20歳の女の人だ。
 ちなみに、大野さんは、ワタシ──ボクらの入れ替わりについては知らせてないから、ワタシのことを本当に16歳の女の子だと思ってるはず。
 そういう人に「女の子らしい」と言われたのを、素直に喜んでいいのかフクザツな気分。まぁ、嬉しくないわけじゃないけどね。

 その後、家庭科部の活動のおかげで、ウチで料理するためのレシピが色々増えたり、自分でクッションや小物が作れるようになったり(もちろん繕い物もOK)と、色々役に立つスキルが身に着いたのは確かなんだけど……。
 なんだか、ワタシ、ますます女の子ライフに馴染んでない?

 うーーん、でも、どうせ1年間はこのままなんだから、この際、割り切っちゃおうかな。
 正直、「渡良瀬和己」として送った高校生活より、今のほうがずっと楽しいんだよね〜。
 あの頃の「僕」は、家族はいないし、友達も少ないし、かといって勉強や部活に熱中してたわけでもなく、適当に毎日を過ごしてたからなぁ。
 でも、今は、優しいママとパパがいて、親しい友達がいて、部活だけでなく、学校生活そのものがすごく楽しいんだもん。
 ……ちょっとくらい、本来の立場を忘れて、「天野かすみ」としての日々を楽しんじゃっても、別にいいよね?
--------------------------------
#ついに、堕ちた? 「かすみちゃん」、正面から女の子としての生活を肯定してしまいました。
#次回は少し毛色を変えて、和己になったかすみが何を考えていたのかを暴露します。

>345
つ・づ・き! つ・づ・き!!
ワクテカして待ってるですよ〜
350名無しさん@ピンキー:2010/08/09(月) 02:20:43 ID:jloy3hDu
>>349
続き、おまちしております。
351女子高生・渡良瀬和己:2010/08/09(月) 17:56:30 ID:HbpqUOE1
<とある少女の日記>

9月15日
 ママから爆弾発言が飛び出した。今、お付き合いしている男性がいるらしい。
 それは、まぁ、いい。父さんが亡くなって10年経つし、ママはまだ若くて美人だ。恋人のひとりやふたりできてもおかしくはない。わたしだって、それが理解できないほど子供じゃないつもり。
 けれど、ママいわく「近々結婚することも視野に入れてのおつきあい」らしい。
 困った。10年間もママとふたりで暮らしてきたのに、いまさら新しい父親ができるなんて言われても……。


10月10日
 今日、ママの恋人……というか「婚約者」の人と会ってびっくり。事前想像してたのとはまるで違う、小柄で優しそうな若い男の人だった。
 亡くなった父さんは、ママより10歳年上の、大柄で逞しい、いかにも「硬骨漢」って感じの人だったから、てっきりそういうタイプがママの好みだと思ったのに。
 でも、今日会った渡良瀬さんは、初対面なのにとても好感の持てる人だった。
 わたしと8歳しか違わないから、父親って言うよりお兄さんって感じだけど。
 この人なら、家族になってもいいかもしれない。


1月18日
 ママと渡良瀬さんの結婚は、3月5日に決まった。偶然にもわたしの中学の卒業式の翌日。て言っても、当面結婚式とか派手なことはせず、とりあえず籍を入れるだけのつもりみたい。
 あれから何度か会って、わたしも渡良瀬さんなら家族として受け入れてもいいと思った。
 優しくて思いやり深くて、真面目だけどユーモアもあって──年上の男性に言うのも何だけど──ちょっと可愛い。ある意味、理想の「お兄ちゃん」だと言ってもいいだろう。
 ママの「放っておけない」という気持ちもわかるような気がする。
352女子高生・渡良瀬和己:2010/08/09(月) 17:56:56 ID:HbpqUOE1
3月1日
 大事件! 渡良瀬さんの会社が倒産したらしい。真面目にお仕事頑張ってたみたいなのに、渡良瀬さんは可哀そうだ。このご時世だと、再就職も難しいだろうし。
 幸いと言うべきかウチはかなり裕福な方だし、ママは渡良瀬さんと結婚して彼を養う気でいるみたい。
 でも、渡良瀬さん、妙に真面目だから、きっと一生懸命働き口を探すんだろうなぁ。


3月5日
 今日、ママが渡良瀬さんと正式に入籍して、わたしに新しいパパができた。
 「パパ」って呼んだらすっごく照れてた。可愛い。
 以前、わたしの苗字をどうするか聞かれた時、「渡良瀬にする」と答えてある。
 パパは「かすみちゃんが望むなら、天野のままでもいいよ」と言ってくれたけど、これはわたしなりのケジメ。
 だって、わたし達3人は家族になるんだから。


3月6日
 ……甘かった。
 わたしは自分のことを「多少マザコン気味」だと思ってたけど、どうやら「筋金入りのマザコン」だったらしい。
 何がどうしたかと云うと……昨晩、夜中にトイレに行った時、ついママたちの寝室から聞こえる声に耳を澄ましてしまったのだ。
 つまり……ふたりが「いたして」いる最中の声やら物音やらをバッチリ聞いちゃったわけ。
 そりゃ、ふたりとも大人だし、夫婦なんだから、そういうコトをしてるのは当たり前なんだろうけど……なんだか寂しいというか心がザワザワする。
 ママ──天野橙子という人にとって、ずっとわたしが一番近い位置にいると思ってたのに、今はそうじゃないかもしれない。
 そう考えただけど、胸がモヤモヤする。家族に嫉妬するなんて、自分でもおかしいと思うけど、この感情は理屈じゃない。
 でも、だからと言ってパパのことも決して嫌いじゃない。むしろ、大好きなのだ。できれば、これからもうまくやっていきたいと思う。
 わたしはどうしたらいいんだろう……。

3月10日
 パパの再就職活動は、あまり……と言うか、全然うまくいってないみたい。
 それを知って、わたしは、ある「計画」を実現に移す覚悟を決めた。
 その「計画」は、世間的に見れば途方もない夢物語だろうけど、わたしがうまく誘導すれば、十分勝算はあると思う。
 幸いわたしたちは4月から横須賀にある住宅街に引っ越すことになっている。
 周囲に、元のわたしたちのことを知る人がいなければ、「計画」は成功しやすくなるだろうし……。
353女子高生・渡良瀬和己:2010/08/09(月) 17:57:19 ID:HbpqUOE1
3月21日
 「計画」開始。すでに、ママや馴染みの編集さんには話を通して味方につけてある。あとは、パパの説得だけ。
 もちろん、パパは渋ってたけど、理詰めで追い込んで行ったら、最後には首を縦に振ってくれた。
 確かに、この計画──わたしとパパの立場を交換するなんて、荒唐無稽に思えるかもしれないけど、色々と検討した結果、十分実現可能だと、わたしは思っている。
 さあ、明日から忙しくなるぞ〜!


3月31日
 「計画」の第一段階は無事終了した。
 パパを「渡良瀬かすみ」としての立場におくための教育は、それなり以上の成果をあげられたと思う。
 自覚はないみたいだけど、ここ2、3日のパパの仕草とかが、とても女の子らしくなってきている。可愛らしい顔といい、華奢な体つきと言い、パパはきっと生まれてくる性別を間違えたのだと思う。
 引き続き、第二段階を開始しよう。
 それに、思わぬ副産物もあった。
 パパを「渡良瀬かすみ」にする代わりに、わたしが「渡良瀬和己」の立場になりきらないといけないのだけど、これが意外と楽しいのだ!
 元々、わりと男勝りだとは思ってたけど、どうやら、わたしも女じゃなく男に生まれるべきだったのかもしれない。


4月1日
 引っ越し第1日目、そして「僕」らの「入れ替わり劇」の初日は、極めて上出来だったと思う。
 とくに、斜め向かいの岬さん家と知り合いになれたのは収穫だった。岬家には、「かすみちゃん」と同い歳で偶然にも同じ学校に入学予定の女の子「絵梨ちゃん」がいたのだ!
 これで、「かすみちゃん」は否応なく四六時中女の子として過ごさざるを得ないだろうし、絵梨ちゃんの影響を知らず知らずに受けて、徐々に女の子化が進むに違いない。
 正直、可愛くなっていく「かすみちゃん」の姿を見るのはすごく楽しみだ。
 「娘」の成長を喜ぶのは「父」として当然、だよね?
354女子高生・渡良瀬和己:2010/08/09(月) 17:57:42 ID:HbpqUOE1
5月5日
 ついに……一線を越えてしまった。
 これまでも僕は、「渡良瀬橙子」の夫の「和己」として、同じ寝室のダブルベッドで寝てはいたし、時々「夫婦のスキンシップ」と称して触りっこなんかはしてた。
 でも、この旅先のホテルで、僕はママを──橙子(つま)を和己(おっと)として抱いたのだ。
 無論、肉体的には女性である僕が橙子さんと繋がるためには、そのテの器具の助けは必要だっだけど。近年の「大人の玩具」技術の進歩に深く感謝しよう。
 橙子さんは「これは開放的な旅先のちょっとしたアクシデントよね」と言ってたけど、僕としてはそれで済ませる気はサラサラない。
 大丈夫。今後じっくりと時間をかけて、彼女(つま)を骨抜きにする自信はある。


6月2日
 以前からの予定どおり、「渡良瀬和己&橙子」の結婚式を行った。
 と言っても、参加するのは、僕たち家族3人に加えて、仕事上のつきあいのある編集者数人と、かずみちゃんの友人の3人娘、そして新人アシストの大野くん、旧アシストのふたり。
 仕事関係者は、大野くん以外は全員「事情」を知っているはずなのに、素知らぬ顔で僕らの門出を祝福してくれた。
 ライスシャワーを浴びる中、橙子さんの投げたブーケは、見事にかすみちゃんの手の中へ。
 ビックリしてたし、友達に冷やかされて照れくさそうだったけど、どこか嬉しそうなかすみちゃんの顔が印象的だった。
 式のあと、僕と橙子さんはセンチュリーホテルのスイートルームで一泊。
 もちろん、夫婦水入らずで熱い一夜を過ごさせてもらった。最近は、橙子さんも僕に求められても拒絶しないし、むしろソレを望んでいるフシさえある。
 僕の腕の中で喘ぎ、「優しい母」ではなく「淫らな女」の顔を見せる橙子さんが、この上なく愛おしい。
 ──では、帰ったらいよいよ「計画」の第三段階を始めるとしようか。

7月7日
 世間でいわゆる七夕祭りの日。かすみちゃんは、部活で自分で縫ったという藍染の浴衣を着て、エリちゃんたちと花火見物に出かけて行った。
 髪もずいぶん伸びたし、和装にふさわしい薄化粧もしていた。もう誰が見ても、可愛らしい16歳の女の子そのものだ。
 たとえ以前の「渡良瀬和己」を知る人間が見ても、たぶん同一人物だとは気付かないだろう。
 まぁ、それは僕にも言えることだ。
 橙子さんの仕事を手伝うかたわら、暇を見つけては積極的にジョギングとウェイトトレーニングに励んでいるおかげか、以前とは段違いに筋肉質になり、身長も3ヵ月で2センチ半伸びた。
 そして……ついに、今日、待ち望んでいた電話が来たのだ!

 今の僕ら──「和己」と「かすみ」の立場は、上手くいってはいるものの、このままではしょせん一時的なものに過ぎない。
 かすみちゃんも、女の子としての暮らしにすっかり馴染んだとは言え、時が来れば──具体的には1年程が過ぎ、「あまのスタジオ」の人手不足が解消されれば、(たとえ心理的には抵抗があったとしても)元の立場に戻ろうとするだろう。
 それが、「彼女」の良心であり誠実さなのだから。

 だから……僕は、彼女に対して格好の「口実」を与えてあげようと思う。
 そう、「このまま、当分入れ替わりを維持することになっても仕方ない」という理由を、彼女につきつけてやればいいのだ。
 そうなれば、彼女は(口ではどうあれ)嬉々として現在の「渡良瀬かすみ」あるいは「天野かすみ」としての役割を受け入れ、そのまま暮らしていくことを選ぶに違いない。
 そのための布石は打ってあるし、一番重要な部分についても、先ほどの電話を聞く限りどうやらうまくいきそうだ。
 そのために少なからず苦労はしたが……フフフ、これも愛しい「妻」とかわいい「娘」のためだから、ね。
355和己の人:2010/08/09(月) 17:58:15 ID:HbpqUOE1
#え〜と……和己(偽)、割と真っ黒です、ハイ。
#最大の障害とも言える橙子さんも、既に陥落しているようですし……。
#次回は、いよいよエピローグとなります。
356名無しさん@ピンキー:2010/08/10(火) 22:36:18 ID:CRyMUJJ0
>>355
ドキドキしながら、続きをお待ちしております。
357女子高生・渡良瀬和己:2010/08/14(土) 06:49:55 ID:HGmalRAy
#エピローグ開始。ここで時間軸は冒頭部の続き(高校2年の5月末)に戻ります。
#なんか、蛇足というか、アフター的と言うか……前々回で「かすみ」ちゃん、「墜ち」ちゃってますから、違和感とかの描写は皆無に近いです。

 「おはよーさん、エリ、かすみん」
 学校に向かう途中でリョーコと合流する。
 「あ、リョーコ、おは〜」、
 「おはよう、リョーコ。今朝は珍しく早いね」
 いつもは遅刻ギリギリで教室に入ってくるのに。
 「どっちかって言うたら、アンタらが遅いんやと思うで」
 ちなみに、ハネは学園の裏手にある女子寮に入ってるから、たぶん先に教室にいるはず。
 「あ! 天野先輩、おはようございます!」「ございまーーす!」
 早足で追い抜いた下級生の子たちは、偶然にも部活の後輩の子達だったみたい。
 私に気付いたのか、揃って挨拶してくる。
 「はい、おはよう。気持ちのいい朝ね。皆さんも遅刻しちゃダメですよ?」
 「ハーーイ」と元気な返事が返ってくる。
 うん、みんな素直でいい子たちばかりだ。
 星河丘学園は、入学以前に危惧していたような、ママの描く少女マンガに出てくるみたいな「ハイソなお嬢様学校」とは流石に違ったけど(当り前か。そもそも共学だし)、でもやっぱり、名門の名前にふさわしい、上品でかつ暖かな雰囲気が校内に満ちている。
 いわゆる不良とか不登校の生徒なんて見たことないし、目立つイジメも少なくとも私は知らない。本当に、この学校に入れてよかったと思う。
358女子高生・渡良瀬和己:2010/08/14(土) 06:51:05 ID:HGmalRAy
 「はぁ〜、さすがやわ」
 ニコニコしながら歩いていると、リョーコが呆れたような感心したような声を漏らす。
 「?? あら、何が?」
 コテンと首を横に傾げると、エリとリョーコは顔を見合わせて苦笑いしてる。
 「相変わらず無自覚なんやなぁ」
 「アハハ! そりゃあ、なんてったって名高いあの「プリンセス・オブ・サウザンドパスタ」、千麺姫だもん」
 うぐぅ〜。
 「そ、その呼び方はヤメテーー!」
 ──ちょっと解説しておくと、ウチの学校では、校内の著名人にはいわゆる「ふたつ名」が付くと言う一風変わった風習がある。
 たとえば、先代の生徒会長なら「水面の君(みなもの)」、副会長は「桃の姫」、今期だと図書委員長の「白の読巫女」、弓道部主将の「今与一」あたりが有名かな。
 OGの姫川さんや白鳥さんに聞いたところ、彼女達が現役の頃に始まった……と言うか、生徒会の黄金期を築いた彼女達を称えるために始まったならわしみたい。
 そのせいもあって、本来は生徒会役員や各委員長・部長クラスで特に目立つ人にのみ付けられるものなんだけど、ごく稀にそれ以外にも命名される例があるらしい。
 ──そう、何の因果か、その例外が私にも降りかかっちゃったの!
 キッカケは、去年の学園祭の模擬店、なのかな。家庭科部にとっては、学園祭は聖誕祭と並ぶ稼ぎ時ってことで、一年生ながら私も軽食部門の調理主任のひとりに任命されたんだ。
 え? 「あまり目立ちたくないんじゃなかったのか?」
 うん、確かにそのつもりだったんだけど……。このあたりの事情は、あとで何で私が2年生になってもここにいるかの理由と一緒に話すね。
 まぁ、ともかく。継続は力なりと言うべきか、ほぼ毎日、朝晩のウチのご飯を作ってる私は意外と部の中でも調理スキルが高くて、メニューの考案も含めた調理班の責任者のひとりに推薦された。
 で、色々考えた挙句、この際物珍しさで勝負と、学祭期間の3日間毎日日替わりで創作パスタを屋台で出すことにしたんだ。余興も兼ねて調理スペースも耐熱強化ガラスで仕切って外から見えるようにして。
 よって給仕役だけじゃなく調理スタッフのコックコートも、客の目を意識して可愛らしいデザインのものを採用。その甲斐あってか、模擬店は大繁盛して、部費にだいぶ余裕ができたんだよね。
(余談になるけど、締め切りが迫ってるはずのママも、なぜか学祭に来てて、ウチの部もしっかり冷やかしていった。オマケに私も含めた給仕&調理スタッフの写真を撮りまくって。アンタって人は……)
359女子高生・渡良瀬和己:2010/08/14(土) 06:51:42 ID:HGmalRAy
 で、学園祭最終日の各種表彰式の時、アイデア部門の優秀賞に、ウチの部の模擬店も表彰された。
 しかも、代表が壇上に上がるにあたって、何を思ったのか前部長(当時は現役)が、現在の部長(当時は副部長)である2年の深山先輩をさしおいて、1年の私を行かせたの!
 いくら、私がメニューとお店のアイデアの考案者で、調理主任のひとりだからって、やり過ぎでしょ!?
 しかも、表彰式の司会を務めていた放送部員が、いい加減と言うかノリのいい人で、インタビューの時、私に「プリンセス・オブ・サウザンドパスタ」なんて、超適当な異名をつけちゃうし。
 いえ、それだけなら、長いしゴロも悪いから定着しなかったと思うんだけど……。
 よりによって当時の生徒会長が、賞状渡す時に
 「プリンセス・オブ・サウザンドパスタ……千の麺の姫君か。つまり「千麺姫(せんめんき)」だね♪」
 ……なんて言うものだから、一気に広まっちゃったの!
 「まったく……私は銭湯にあるケロリンの桶ぢゃないわよ!」
 「にゃははは! ま、有名税ってヤツだよん」
 教室に着いて愚痴ってたら、ハネにまで笑われちゃった。
 うぅ……他人事だせと思ってぇ〜。
 「よ! どーしたんだ、岬、三羽? プリンセスはエラくご機嫌斜めじゃねーか」
 と、斜め後ろの席につきながら聞いてくるのが、去年からのクラスメイトの富士見くん。髪の毛を茶金色に染めててちょっとカルそうな外見だけど、意外と律儀で義理堅いし、席も近いから、男子の中では比較的私とは仲がいい方かな。
 (──男子の中では、か)
 本来は私も男子だった……と言うか、今でも生物学的には男子のはずなんだけどね。
360女子高生・渡良瀬和己:2010/08/14(土) 06:52:11 ID:HGmalRAy
 もっとも、最後に接着剤外したのがいつだったか覚えてないくらい前だから、アソコに何にもない状態が既に自然になってる。もちろんおトイレでは便座を上げないのが常識。
 毎晩寝てる間の吸引(ボールを少し大きくしてみました♪)に加えて、お風呂でのバストマッサージ、さらに大豆とかザクロのサプリとかを毎日とるようにしてるせいか、貧乳(素でA、パッド入れてB)とはいえキチンとオッパイもある。
 外見的にはまるっきり女の子だと思うし、精神的にもこの1年間ですっかり女の子側に馴らされちゃったって自覚は、ないでもない。
 だって……。
 「かすみ〜ん、ホラ、機嫌直しなよぉ」
 なぁんて言いながら、後ろから抱きついてくるエリのオッパイが背中に当たるのを感じても、ちっとも動揺せずに「ええぃ、暑苦しいから懐かないで!」って、アッサリ振り払えちゃう。
 それなのに、「天野が機嫌悪いなんて珍しいな。ひょっとして熱でもあるのか?」って心配そうに富士見くんが顔を近づけて来ただけで、ちょっとドキドキしちゃうんだもん。
 あ! べ、別に富士見くんに特別好意を持ってるとかじゃないからね! 単に男の子と接近するのに慣れてないってだけだから。
 頬が赤くなりそうなのを懸命に自制する私。
 まったく、たった1年ちょっとでこんなに女らしくなっちゃうなんて……。
 一年間の「勉強」と「努力」のおかげで、かつては「オバさんくさい」と言う不名誉な評価をもらってた私のファッションセンスもそれなりに洗練されたと思う。もっとも、エリあたりはそれでも「かすみんの買う服って、びみょーに地味なんだよね」と不満そうだけど。
 制服以外のミニスカートを履く機会もそれなりに増えた。ただ、やっぱり個人的にはミディからロング丈のぐらいの方が好きなんだけどね。
 (こないだなんか、ママにゴスロリドレス着せられて写真撮られちゃったし……ま、アレはアレで悪くはなかったけどさ♪)
 当初危惧されてた勉強の方も、それなりに頑張ったおかげで、一応中の上程度の位置をキープできてるし、部活に関しては言わずもがな。
 あの恥ずかしい「二つ名」は別にしても、家庭科部ではそれなりに頼りにされてるんだよ? 新しく入って来た1年生たちも、先輩として慕ってくれてるみたいだし(ただし、「お姉様」と呼ばれるのだけは勘弁してもらった)。
 ハァ〜、このまま卒業まであと2年近くも女子高生してたら、私、心の奥底まで完全に女の子になっちゃうんじゃないかなぁ。
 「それはマズい」と思う自分と、「それでいいじゃない」と思う自分が、同時に心の中に存在しているのがわかる。
361女子高生・渡良瀬和己:2010/08/14(土) 06:52:40 ID:HGmalRAy
 え? 家族の方?
 うん、ちょうどいいから説明しちゃおう。
 「僕」が、当初予定していた最長期間の1年が過ぎても、いまだ「天野かすみ」として学校に通っているワケを。

 確か、去年の7月の末ごろだったと思う。
 5月から入った新アシの大野さんがそれなりに役立つようになり、私は私で「あまのスタジオ」のお世話係(メシスタント)をするのに慣れて、ママたちの仕事がようやく順調に回るようになっていた頃。
 ある日の晩餐で、パパが爆弾を落としたのだ。
 「いやぁ、来月の月刊ウルトラチャンプに、僕の描いた読み切りマンガが掲載されることになったんだ」
 実は、コレ、私や大野さんはおろか、ママにさえ知らせていなかったサプライズ。
 当然、ひとしきりの驚きと混乱ののち、私達3人(大野さんもたいていウチで夕飯食べてるし、月の半分近くはウチに泊っていってる)は、パパに祝福の言葉を述べた。
 けれど。
 この時、私はわかってなかったんだよね。
 「あまのとーこ」の夫でありアシスタントでもある「渡良瀬和己」が商業デビューするというコトの意味を。
 パパの読み切りはポッと出の新人の作品とは思えぬほどの好評を博し、あれよあれよと言う間に、11月号から続きを短期連載の形で描くことになった。
 で、全3回の連載も大好評。編集部からは、同じ世界観の別のキャラ(短編主人公達の次の世代)を使って本格的に始めたいとの要望が来ちゃったんだ。
 その申し出を受けるとすると、当然パパが「渡良瀬かすみ」に戻って高校生してる時間的余裕なんてないワケで。
 「かすみちゃん、申し訳ないけど、もうちょっとこのまま高校に通っててくれないかな?」
 「ん〜、別にいいけどね。でも、あと一年くらいで連載終われるの?」
 その頃の私も、今ほどじゃないけど女子高生ライフにすっかり慣れ、学園生活を存分にエンジョイしてたから、このまましばらく続けることに異論はなかった。
 「う……じ、実は全20回の予定だったり」
 つまり、3年生の8月までってことね。
 結局、その時の家族3人の話し合い(事情を知らない大野さんにはエンリョしてもらった)で、「もう、いっそ卒業まではこのままでいこう!」って結論になったんだよね。
362女子高生・渡良瀬和己:2010/08/14(土) 06:53:17 ID:HGmalRAy
 でも……でもさ。私、最近気付いちゃったんだ。
 もし、このまま「少年マンガ家・わたせ和己」(←パパのペンネームね)の人気が出て、世間的に認知されていったら、ますます元に戻りにくくなるんじゃないかって。
 だってさ、パパの描くマンガ、度々巻頭カラーになったり、コミックスが書店に山積みにされてたりするんだよ?
 早くもアニメ化の話が来てるらしいし、実際、女の私の目から見てさえ(おっと、元々「僕」は男だった──まぁ、マンガに関しては少女マンガの方が好きだしね)、それなりに「イケてる、おもしろーい!」と思うし。
 こないだなんか、マンガ専門誌から、「夫婦で売れっ子マンガ家!」ってことで取材受けてたりもしてたし(そう言えば、モノクロで小さくだけど、パパの写真、載ってたなぁ)。
 そんなネームバリューもできた「金のなる木」を、今の連載が終わったからって、編集部が手放すと思う? 無理だよね。
 となると、私が「渡良瀬和己」に戻れる日が、はたして来るものか……大いに疑問だと思う。

 最近は、必ずしも諦めとかネガティブな気持ちじゃなく、「もう、お互い、入れ替わったまま生きていく方が幸せなんじゃないか」って思ったりもするんだよね。
 ここだけの話、「娘」としてママ──橙子さんに一年間接してきて、「僕」が彼女に求めていたものって、かならずしも異性間の恋情ばかりではなく、家族愛的な部分の比重も決して軽くなかったんだ、ってわかっちゃったんだ。
 だって……「僕」、入れ替わってから一度も「橙子さん」を抱いてないのに特に不満はないし、むしろ「娘」として可愛がってもらって十二分に幸せだったんだもの。
 もともと、「橙子さん」には母性的な魅力を感じてたけど、まさか本当の親子になれるとは思ってもみなかったなぁ。

 だから、こないだの進路調査も割かし真剣に考えて希望を提出した。幸いウチは金銭的にはかなり余裕があるほうだし、ママのパパも「大学でも短大でも専門学校でも好きな進路を選んでいいよ」って言ってくれてるし。
 私としては、教育学部に進んで小学校の先生を目指すか、料理の道を求めて専門学校に行こうか悩ましいトコロなんだけどね。
363女子高生・渡良瀬和己:2010/08/14(土) 06:55:41 ID:HGmalRAy
 ──ハハッ! なんだ。やっぱり私、今のこの立場を手放す気なんてないんじゃない。
 そうだよね。だって、「天涯孤独で、三流大学出の失業中の貧相な元サラリーマン」なんかより、「優しい両親に見守られながら名門学園に通う、前途洋洋たる可愛い女子高生」のほうが、絶対いいに決まってるもん♪
 さ、今日も一日、勉強に部活に(そしてもちろん遊びにも)がんばるぞー!

-FIN?-

────────────────────────
#以上です。
#「かすみちゃん」が完全に目覚めちゃったため、これ以後は「普通の女子高生」と変わらぬ日常になるため、この話はここでお開きとさせていただきます。
#まぁ、元かすみ/現和己の野望は達成されちゃったワケですが、双方幸せそうなので、これはこれでアリかな、と。
#かすみちゃんのその後が気になる方もいるかもしれませんが、一応作者の「星河丘学園」と世界観を共有してるので、「皮」とか「補整下着」とか対処方法はあるかな、と思ってます(若葉たちとも知り合いですし)。
ただ、そこまで書くとスレチになりますので、やはりここらヘンが潮時でしょう。
#長期にわたり、お目汚し、失礼でした。
364名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 15:54:43 ID:0DTVnwT1
GJ! 連載お疲れ様です
またの執筆期待してます
365名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 19:37:50 ID:Askswjh9
GOD
366名無しさん@ピンキー:2010/08/18(水) 08:30:25 ID:9ti5MfsO
安西先生、「そこはとあるお屋敷」と「歩美←→義男」の話のつづきが読みたいです・・・
367名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 08:48:01 ID:UKm2JGBE
投下待ち保守
368名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 21:51:05 ID:Afkikez+
ここの「そこはとあるお屋敷」を見て、以前、某所の侵食系入れ替わり物「赤の秘石」にインスパイアされて書きかけたTSネタを思い出した。
最終的にはTSにいきつくんだけど、途中経過(前後編の前編)はまさにココの趣旨に沿った「立場入れ替わり物」なんで、その部分だけ(と言うか、そもそもそこまでしか書いてないし)過疎気味なここで投下してみる。
ダイジェスト風のヘボテキストなのは、プロットだけ書いて挫折したから。ま、枯れ木も山のにぎわいってことで。あと、時代は昭和50年頃を妄想。

「次期当主はメイドさん!?」

 桐生院家は、付近一帯の大地主であり、江戸時代には、代々この地の藩主の剣術指南役であった家柄である。
 明治維新と廃刀令の影響で、剣術家としての側面は薄れたものの、地方豪族的な立場は20世紀に至っても未だ健在で、県内で小財閥めいたものも形成しているちょっとした名家だ。
 その桐生院家の後継者候補である少年、桐生院葵(きりゅういん・あおい)は、現在、県内随一の進学校に通う高校2年生。
 柔和で人当たりはよいが、押しが弱いのが一門の総帥としてはやや不安……という評価を得ている。また、本家筋に連なる者は慣習として桐生剣術を習うのだが、その腕前もいまひとつで、親族からは侮られていた。
 現在の当主である葵の父もそれを心配し、「習うより慣れろ」と、彼に16歳の頃からグループの仕事の一部を見るよう仕向けていたが、それがまた温和でのんびりしたタチの葵には負担となっていた。
369「次期当主はメイドさん!?」:2010/08/24(火) 21:52:00 ID:Afkikez+
 とは言え、周囲の人間は彼に過大な期待をかける者ばかり、
 唯一、幼馴染同然に育った又従姉で、現在は彼の侍女(メイド)を務めているひとつ年上の少女、六道紫(りくどう・ゆかり)だけが彼の気持ちを理解していた。
 ある日、葵が心身ともにあまりに疲弊しているのを見かねた紫は、「大旦那様」──現在は隠居している葵の祖父・輝に相談する。
 紫ほどではないが孫の窮状を多少理解していた輝は、しばし考え込んだ後、紫に葵を連れて来るよう言う。
 連れだって来たふたりに、輝はある2枚の絵を渡した。
 これは桐生院家に代々伝わる秘宝「鳥魚相換の図」で、これを枕の下に敷いて眠ったふたりは、翌朝目が覚めると、他の人間には外見が入れ換わって見えるようになるのだと言う。
 それは、あたかも鳥が水中を泳ぎ、魚が空を飛んでいるように見えるが如し。
 元々は立場に奢って横柄な態度をとるドラ息子や高慢な娘を、使用人と一時的に入れ替えて懲らしめるための秘宝だったらしい。
 幸いにしてここ数代の本家の人間には、そのような不心得者は出ていないため、秘宝の真偽は輝にもわからないが、駄目元で使ってみたらどうか、と言うのだ。
 洒落好きな老人特有の酔狂だったのかもしれないが、半信半疑ながら、葵と紫は、魚と鳥が描かれた二枚の絵を枕の下に敷いて、数年ぶりに同じ布団で寝る。
 (ちなみに、ふたりの関係は幼馴染以上恋人未満の疑似姉弟といったところ。年頃になり、互いを異性として気になってはいるのだが、立場が邪魔して素直に言えない感じ)
370「次期当主はメイドさん!?」:2010/08/24(火) 21:52:28 ID:Afkikez+
 翌朝早く、葵はいつもより1時間も早く紫に起こされる。
 紫いわく「自分達の目には何も変わってるように見えないが、念のためにポラロイド写真を撮ってみたところ、写真にはふたりの容姿が逆になって映っている」とのこと。
 写真を見ると、確かに紫の言葉は事実だった。
 念のため葵のパジャマを着て紫が厨房に顔を出してみたところ、先輩のメイドに「あら、葵様、今朝はお早いですね」と挨拶されたそうだ。
 紫は、悪戯っぽい目で、葵の身体からパジャマもパンツも剥ぎ取ってしまい、代わりに自分の下着とメイド服を着せる。
 (葵が少年としては小柄で、元々の身長や体格が似ているのはお約束。ただし、靴のサイズは葵の方が1センチ大きいので、かなり窮屈)←のちの伏線
 「この三連休の間、私が葵に代わってさまざまな業務をこなします(元々、普段から秘書的に手伝っていた)から、葵様は私の代わりにメイドとして働いてくださいね♪」
 これはこれでいい気分転換になるか、と了解する葵。
 もともと「学校の教科で得意なのは技術家庭と音楽と体育」という典型的実技人間な葵(総合成績は中の中程度)は、女装姿(本人主観)に照れながらも、メイドとしての業務をこなしていく。
 また、いつものように「桐生院家の跡取りの坊ちゃん」ではなく、一族の末席に身を連ねるとは言え、現状は一介のメイドである「紫」として、他の人に接し、接されることで、これまでと違った新鮮な感慨を得る。
 一方、紫の方も、頭脳明晰で理性的かつ明快な性格(ただし、葵にだけは甘い)をしているため、グループの案件を次々と的確に片づけていく。あまりのスムーズさに、父・馨が部屋に呼びつけて褒めるほど。
 馨は「ワシの教育方針が実った」とご満悦(「葵」な紫は苦笑い)。
371「次期当主はメイドさん!?」:2010/08/24(火) 21:52:49 ID:Afkikez+
 「葵」が仕事を見事に片付けたので3日目はフリーに。そこで、「葵」な紫は、「紫」をしている葵をデートに誘う。
 男女あべこべの格好と役割のデートを、ハプニングを交えつつも、これまでより、ずっと距離が近くなれたような気がして、それなりに楽しむふたり。
 本来は、連休の3日間だけのつもりだったが、葵の懇願に負けて紫は一週間に延長することを承知する。
 翌日は火曜日。1学年違いとは言え、葵と紫は同じ高校に通っている。
 紫のセーラー服を着てはにかむ葵を見て、ニヤニヤする詰襟姿の紫。
 昨日の外出で屋敷外の人間にも、葵は「紫」、紫は「葵」に見えることは確認済だ。
 そのまま玄関から一緒に出かけようとしたふたりだが、葵は紫のスクールローファーをごく自然に履くことが出来た。紫も葵のスニーカーがピッタリ。
 (ただし、この時点では、ふたりともその事の奇妙さに気付かない)

 ……てな感じ。このあと、徐々にふたりが気付かない内に身体が変化していくので、以後はこの板の趣旨からは外れる。
(実は、「入れ替わった姿」を認識しているのが、ごく少数なら元の姿が優先されるが、二人は外に出たり学校生活を送ったりして認識する人数を増やしたため、多数の認識に体の方が合わされた……というオチ)

 SSと言うか、あくまで妄想のネタだけど、暇つぶしにでもなれば幸い。
372名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 12:05:22 ID:UiG5Ll6f
いいなぁ〜
実は徐々に身体とか性格が変わっていくて云うのスゴく好き。
この板の趣旨からは外れる とか言わずにどんどんやって欲しいです。
373名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 23:35:35 ID:8D793dtT
HOSYU
374名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 06:14:02 ID:7FHWShG4
性転換を題材にしたミステリーの次の作品は立場変換ものっぽいな
375名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 08:17:53 ID:mrxPc1wz
hoshu
376名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 08:35:22 ID:R+EhKwGQ
>>374
いつもどおり女装して戸籍と子宮を手に入れて幸せに暮らしました
っていう話以外ならいいけどな
377名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 11:56:48 ID:7FHWShG4
作者が同じでハッピーエンドで終わる以上、ある程度のパターン化は仕方ないような
あそこまで書き続けるモチベーションは凄いと思うよ

ただ、後半が大抵盛り上がりに欠けるんだよね
一定のクオリティは維持されてるので期待はしてるけど
378名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 18:33:53 ID:AO9RX8Vf
規制解除まだかなぁ
解除されたらなんか書くのに
379名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 18:36:07 ID:AO9RX8Vf
あ、規制されてるのはPCね
380名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 07:50:45 ID:d4BGPK9d
PCで文章を書く
→その文章を携帯にメールで送信
→携帯からスレに書き込み

これでいいじゃない
というかお願いします。規制なんて待ってたらこのスレがなくなる
381名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 11:56:24 ID:E9D4ghmg
書く気もないのに規制のせいにするなよ
382名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 12:13:28 ID:GMSl1tQS
#あまりに過疎ってるみたいなので、以前披露したネタ(ダイジェスト)を、本格的に書いて投下してみます。このままだと落ちそうだし……。今回は書き出しのみです。

『次期当主はメイドさん!?』

 その日、六道紫(りくどう・ゆかり)は、幼馴染の弟分であり、親戚(従弟)であり、今は勤めている家の「坊ちゃん」でもある少年、桐生院葵(きりゅういん・あおい)が、自室の机に突っ伏して意識を失っているのを発見した。
 「ちょ、ちょっと、アオイちゃん!?」
 勤務中はできるだけ「葵様」と呼ぶようにしているのだが、さすがに慌てて普段の地が出てしまう。
 幸い、駆け寄って揺さぶると、少年はゆっくりと目を開けて、体を起こした。
 「う……ゆかねぇ? あれ? 僕……」
 とりたてて葵に異常がなさそうなのを見てとって、ようやく紫は少し落ち着きを取り戻した。
 「もぅ……ゆかねぇじゃないわよ、まったく」
 とは言え、まだ完全に平常心と言うには程遠く、勤務時間中の「桐生院家子息付き侍女」ではなく、「頼りない従弟を心配する姉貴分」の顔になっている。
 「最近、疲れが溜まってるみたいだけど……ダメよ、無理しちゃ。アオイちゃんはあまり体が丈夫じゃないんだから」
 「うん、それはわかってるんだけどね……」
 決まり悪げに笑う従弟の顔を見て、紫はピンときた。
 「──また、伯父様が無理難題ふっかけてきたのね?」
 「む、無理難題ってほどじゃないけど……」
 しかし、目を逸らす葵の様子を見れば、おおよその事情は理解できた。

#──と、こんな感じの始まり。大まかな展開は前にお見せしたとおりですが、この板の趣旨に沿うよう、細かい修正を加えていくつもり。
また、ほかでも2作連載中なので、かなり投下間隔は遅くなると思いますが、保守代わりだと思って、生暖かい目で見てやってください。
383名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 18:45:48 ID:TXQA4yqu
ラテ欄に「思春期・娘・父の役割」とあって、ちょっとワクワクしてしまった
384名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 08:55:46 ID:WKQRn9vG
乙です楽しみにしてます
385次期当主はメイドさん!?:2010/09/14(火) 01:39:55 ID:ieLom1Rd
 葵たちの家──桐生院家は、この地方でも有数の大地主であり、江戸時代には、代々この地の藩主の剣術指南役であった家柄である。
 明治維新と廃刀令の影響で、剣術家としての側面は薄れたものの、地方の名家的な立場は20世紀の今に至っても未だ健在で、県内で小財閥めいたものも形成しているちょっとした富豪だ。
 幸か不幸か桐生院葵は、その桐生院家の後継者候補であった。
 現在の身分は、県内随一の進学校に通う高校2年生。勤勉で柔和、人当たりはよい反面、押しが弱い……という評価を周囲からは得ている。
 ただの高校生として見れば可もなく不可もなくといった評価だが、桐生院一族に連なる者からすれば、一門の総帥としてはやはり不安が残るようで、親族達からはあからさまに侮られていた。
 また、桐生院の本家筋に連なる者は慣習として父祖伝来の桐生剣術を習うのだが、葵はその腕前もいまひとつだ。
 身体があまり丈夫でないせいもあるのだが、ひとつ年上の紫が、女性でありながらすでに初手皆伝(剣道で言うなら初段〜二段程度の実力)なのとは対照的だった。

 現在の当主である葵の父も、何かと息子の将来を心配し、「習うより慣れろ」と、彼に16歳の頃からグループの仕事の一部を見るよう仕向けていたのだが、それがまた温和でのんびりしたタチの葵には負担となっていた。
 しかしながら、周囲の人間は彼に過大な期待をかける者ばかり、

 唯一、姉弟同然に育った従姉で、「葵の保護者」を自認する紫だけが彼の気持ちを理解していたのだ。
 だからこそ、桐生院家の血を引く身ながら、中学卒業後、紫は本家の使用人と高校生の二足の草鞋を履く覚悟を決めて実行に移し、現在はわざわざ母の旧姓を名乗ってまで、葵の侍女(メイド)を務めているのだ。
 (これは、同じ桐生院姓の者を使用人にするのは……と葵の父が渋ったため)
 すべては、大事な弟分を護るため。
 無論、ここまでしてくれた姉貴分に葵が感動しないワケもなく、現在の葵にとって紫は──厳格な父や天然気味な母以上に──もっとも信頼する相手だった。

#少しだけ時間ができたので、少しだけ。立場入れ換えは次の次になるかも。どんだけゆっくりなんだ、俺……。
386次期当主はメイドさん!?:2010/09/17(金) 15:21:59 ID:Sx6Ju8fU
 「大旦那……いえ、お爺さま、聞いてください!」

 葵の窮状を察し、彼自身の口から弱音を確認した紫は、本格的に現状への対処を考えるようになっていた。
 意外に思えるかしれないが、葵はめったなことでは泣き言は言わない。我慢強いというのもあるが、一族における自分の立場を分かっているが故に「言えない」というほうが正しいかもしれないが。
 その彼が(半ば無理矢理聞き出したとは言え)明確に、弱気と疲労を訴えているのだ。
 葵付きのメイドとして、また彼の姉代わりとして見過ごすことはできない。

 しかし、ある意味、葵以上に聡明でキレ者(学年主席でもあるのだ)な紫は、桐生院家当主であり葵の父でもある桐生院馨(かおる)に、直接掛け合うような真似はしなかった。
 よくも悪くも前時代的根性論と権威主義の塊りである馨が、姪とは言え、この家に於いては一介のメイドに過ぎない彼女の言葉を聞くとは思わなかったからだ。

 馨の弟であり自分の父でもある輝(ひかる)は、温和で良識的ではあるが、それだけに兄へ諫言することは苦手としている。
 我が親ながら不甲斐ない……とも思わないでもないが、桐生院グループの経済面を取り仕切る中心人物である輝と、当主たる馨の対立が好ましくないのも確かだ。
 馨の妻である夕桐(ゆうぎり)がいれば、この状態を緩和してくれるかもしれないのだが、生憎体の弱い彼女は数年前から病院で伏せっている。
 おっとり優しげに見えて、その実、裏では夫を尻に敷くたいした女傑なのだが、さすがに今の彼女に無用の心配はかけたくなかった。
 あるいは、愛する妻の病状に対する苛立ちが、馨から息子に目を向ける余裕を奪っているのかもしれない。
 そこで紫が頼ったのは、自分と葵の祖父であり、馨たちの父でもある老人、朱雀だった。
 一見、小柄な白髪の好々爺に見えるが、この男、現在生存する桐生剣術の使い手で最強と呼ばれているのは伊達ではない。先代の当主であったこともあり、おそらく一族で唯一、現当主の馨が頭の上がらない相手だろう。
387次期当主はメイドさん!?:2010/09/17(金) 15:22:29 ID:Sx6Ju8fU
 「ふむ。確かにワシから馨のヤツに言って聞かせるのは簡単じゃが……ことはそれほど単純でもない。外聞というものがあるからの」
 聡明な紫には、それだけで祖父が言いたいことがわかった。
 「一族への示し、ですか? 下手に投げ出すと、葵が侮られる、と?」
 「まぁ、今でも軽んじられているという意見もあるじゃろうがな。
 しかし、たとえ結果が同じでも、歯を食いしばって努力を続けた者と、途中であっさり投げ出した者に対しては、人の心証がまるで違うからの。特に桐生院の人間は、良くも悪くもそういう熱血志向なトコロがあるじゃろ?」
 なるほど、確かに……と、紫も否定はできなかった。
 では、あの子にしてあげられることはないのか……と意気消沈する紫に向かって、朱雀老人はニヤッと笑ってみせる。
 「そこで、コイツの出番ぢゃ!」

 * * * 

 「ええっと、どういうことなの、ユカねぇ?」
 あれから祖父の部屋を辞した紫は、彼から渡されたある「物」を持って、葵の部屋へとやって来ていた。
 「いえ、わたしにもよくわからないんだけど……」
 ふたりの共通の祖父である朱雀から渡された漆塗りの文箱をパカッと開ける紫。
 そこには、変色した和紙に魚と鳥がそれぞれ描かれた二枚の水墨画と、何やら書付のようなものが入っている。
 「これが説明書だと思うんだけど……うわ、本格的な草書体だわ」
 そりれでも、手習いの心得のある紫と、古典を読むのが好きな葵が協力して何とかその説明書(というより覚書?)を解読できた。
 それによれば、この絵は二枚一組で「鳥魚相換の図」と呼ばれる、桐生院家に代々伝わる秘宝で、これを枕の下に敷いて眠ったふたりは、翌朝目が覚めると、他の人間には外見が入れ換わって見えるようになるらしい。
388次期当主はメイドさん!?:2010/09/17(金) 15:23:08 ID:Sx6Ju8fU
 「う……うさん臭いわねぇ」
 紫の意見ももっともだが、葵はさらに読み進めている。
 「でもユカねぇ、一応使用例についても記されてるよ? 一番最後は慶応元年だから、けっこう最近だし」
 慶応と言えば江戸時代最後期の年号、明治のひとつ手前、いわゆる幕末だから、確かに大昔というわけではない。
 「お爺さまによれば、わたし達の玄祖父は実例を目撃したことがあるそうなんだけど……」
 祖父からは「わしの爺さんの話によれば、効果はあったそうじゃぞ」と聞いていたのだが、まさかこんな荒唐無稽な代物だとは思わなかった。
 これは、元々は立場に奢って横柄な態度をとるドラ息子や高慢な娘を、使用人と一時的に入れ替えて懲らしめるための秘宝だったらしい。
 幸いにしてここ数代の本家の人間には、そのような不心得者は出ていないため、秘宝の効果の真偽は祖父にもわからないらしいが……。
 「でも、本物だとして、どうやって使えばいいんだろう?」
 「ん? ああ、そんなの簡単よ。わたしとアオイちゃんの立場を入れ替えるの」
 紫自身も、葵付きの侍女としての立場を利用して、できる限り葵の仕事を秘書的にサポートしてはいるのだが、葵の場合、量もさることながらその「仕事」のそのものにプレッシャーを感じているのだ。
 いちばんの対処方法は、しばらく次期後継者としての仕事から遠ざけることだろう。
389次期当主はメイドさん!?:2010/09/17(金) 15:23:38 ID:Sx6Ju8fU
 「えぇぇーーっ!? そんな……ユカねえに迷惑かけるの悪いよ」
 「大丈夫よ。普段から手伝ってるし、少なくとも「仕事」に関する知識は、葵とほぼ同格だと思うわ」
 確かにその通りだ。現在、葵に回ってくる「仕事」の書類にはすべて紫が目を通したうえで、優先度の高い順に葵に決裁その他の判断を仰いでいる。
 また、決裁そのものに関しても葵は傍らの紫に意見を聞くことが多かった。
 ──と言うことは、紫自身が「仕事」するほうが、むしろはかどるのでは?
 「まぁ、その代わり、「仕事」に関わらないぶんの簡単な雑用とか、使用人としてのお仕事をアオイちゃんにしてもらうことになると思うけど……」
 「うん、それは別にいいよ。むしろ、そういうお仕事の方が、僕好きだし」
 どちらかと言うと、「言いつけられた作業を迅速かつ丁寧にやる」ことの方が、葵は得意だった。つくづく指導者に向かないタイプの子だ。
 「ま、それもこれも、すべてはこのボロっちぃ絵が本物だったらの話よね。どう、アオイちゃん、試してみる?」
 からかうように言う紫の言葉に一瞬考え込んだ葵だったが、すぐに大きく頷いた。
 「やってみようよ、ユカねぇ。何もなければただの笑い話だし、もし本物だったら、めったにない不思議な体験ができるワケだし……」
 「それはそれで面白いか。そうね!」

#というワケで、次回は翌朝ふたりが目を覚ますシーン。やっとココまで来ました。
390名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 07:42:46 ID:sX2UF2mJ
GJ!
首を長くして続き待ってます!
391名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 23:17:29 ID:/hKe2N2w
某所の支援図書館を何となく読み返していて発見。
↓これって、最後のエピローグ部分を除いたら、ここの人にも興味がある展開じゃないかな?
ttp://tsadult.s7.x-beat.com/cgi-bin/anthologys/anthology.cgi?action=html2&key=20100317030312&log=2010080701
392名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 00:27:03 ID:6ha/zpLz
>>メイドの人
楽しみに拝見してます。頑張って下さい。

私も少々(?)投下させて貰います。

393他人(ひと)の皮を被る 一話  1/16:2010/09/20(月) 00:29:31 ID:6ha/zpLz
 世界には同じ顔をした人間が3人いる。
 ドッペルゲンガーとも呼ばれる有名な都市伝説だ。
 大門晃(おおかどあきら)はその都市伝説を、ぶらりと足を伸ばした街の喫茶店で思い出した。
「いらっしゃい……あら、久しぶり」
 喫茶店の女主人は晃を見るなりそう笑いかけた。晃は訝しむ。
 その店に入ったのは間違いなく初めてだ、久しぶりとはどういう事か。
「ええと、どこかで会ったっけ?」
 晃が問うと、女主人は目を丸くした。
「何言うんだい、お前さん」
 そう言って晃の頭からつま先までを何度も見やる。
「……確かにいつもみたいにスーツじゃないけど、じゃあ何、他人の空似かい」
「おそらくは」
 晃が頷くと、女主人はふうん、と唸った。
「驚いたね、瓜二つじゃないか。まるで双子だよ」
 晃はそれに愛想笑いを返しつつ、かの都市伝説を思い浮かべる。

 ドッペルゲンガーの知り合いは女主人だけではなかった。
 公園を歩くと老婦人が会釈をし、砂場の子供が挨拶をする。
 どうもそれなりに有名で、かつ人望のある人間のようだ。
 そうなってくると晃は俄然その人物に興味が湧き、是非とも会いたいと思うようになった。
 普段はスーツ姿だというからサラリーマンだろう、そう当たりをつけて連日夕刻に街を探し回る。

 しかし5日が経ってもそれが実を結ぶ事はなかった。
 晃は歩き疲れた足を止め、ショーウィンドウに映る自身を見やる。
 中肉中背、適当に床屋で刈り上げた髪に、甘ちゃん坊やのような顔立ち。
 その実は今年で32になり、新卒で入った会社をクビになって以来、アルバイトで食っているしがない男だ。
 不況の中にあってすでに正社員への望みはなく、その日暮らしが性根にこびりついている。
 貯金ができれば仕事をやめ、生活費が底をつけばまた働くという自堕落な生活。
 さらには内向的で風俗嫌いでもあるため、32年生きて女と肌を合わせた経験すらない。
 こんな人間にそっくりなもう一人は、果たしてどんな生活を送っているのだろう。
 晃がショーウィンドウを眺めながら思ったとき、突如背後から声がかけられた。
394他人(ひと)の皮を被る 一話  2/16:2010/09/20(月) 00:30:54 ID:6ha/zpLz

「……あの、すみません!」
 店員が注意でもしに来たか、と振り向いた晃は目を疑う。
 そこには自分がいた。いや、正確には自分と見紛うほどに瓜二つな男だ。
 耳の形、瞳の輪郭、笑うような口元、顎の黒子、全てが奇跡的なまでに合致している。
 晃が言葉を失っていると、男はふっと笑みを作った。
「ああ、良かった。ちゃんとした人間だ」
 安堵した様子でそう述べ、不可解な顔の晃に頭を下げる。
「失礼しました。実は数日前にあなたの姿を見かけ、これは目にすると死ぬというあのドッペルゲンガーか、
 などと勝手な疑いを持っていたのです。
 その相手にこうしてまたお会いできたので、たまらず事実を確認したくなりお声をお掛けしました。お許しください」
 その慇懃な態度に晃はつい破顔した。
「気にすんな。俺も同じだよ」
 晃の言葉で男も嬉しそうに顔を上げる。2つの笑い声が重なった。

 2人は夕日を背に公園の噴水脇へ腰掛け、互いの身の上を語り合った。
 男は白戸康平(しらとこうへい)といった。
 晃と康平にはやはり奇妙なほど共通点が多い。背格好は勿論、日の焼け具合もそっくりで、歳も同じ32歳。
 誕生月こそ半年離れているものの、産まれた日付と時刻は一致している。
 声質も似通っており、晃は康平の話を聞きながら、時折自分が話しているような感覚に捉われた。
 肉体的な要素には当人達でさえ違いが見出せない。
 ただ内面は違っていた。康平は晃よりも気性が穏やかだ。控えめで、話すよりも聞くことを望む。
 人好きのする性格だと晃は感じた。
 その性格が幸いしてか、康平の生活は円満そのものだ。
 独立系の専門商社に入社して10年、多忙ながらも恵まれた職場環境の中で係長に昇進し、
 また現在、ある女性と恋仲にあるらしい。
395他人(ひと)の皮を被る 一話  2/16:2010/09/20(月) 00:33:16 ID:6ha/zpLz

「この娘なんだけどね」
 康平が携帯で撮った画像を翳す。晃はそれを見て息を呑んだ。
 愛らしい娘だ。
 ダークブラウンに艶めく胸元までの髪、白い肌。
 瞳は小動物のように爛々と輝き、桜色の唇はぽってりと柔らかそうだ。
 さらにブラウス越しにも胸の膨らみが窺え、脚線は細く、とスタイルも整っている。
 ファッションに疎い晃にさえその服飾のセンスの良さがわかった。
 現代風に垢抜け、かつ品の良さも窺える娘。
 都心でもそう見かけるものではない。
 童貞の身にはあまりに眩しく、晃はつい鼓動が早まった。

「由希(ゆき)っていうんだ。結構可愛いでしょ」
 康平の問いに、晃は動揺を悟られぬよう頷く。
「ああ、かなりな。いくつ?」
「24歳。学生の頃からバイトしてたブティックで副店長をしてるそうだよ」
 なるほど、と晃は得心が行った。確かにそのような感じを受ける。
「しかし、24か……若いな」
 晃はしみじみと呟いた。
 自分達より8つ下。ようやくに学生気分が抜け、社会人としての自覚が芽生え始める頃だ。
 小学生だった時分は24の担任教師を見て大人だと憧れたものだが、30を超えた今から思えば小娘に過ぎない。
 そのような新鮮な娘と交際できるなど、晃からすれば夢物語に等しかった。
 だが出来る人間には出来ているのだ。
 康平のように人柄がよく、社会的な地位もある人間になら。
 晃は密かに歯を噛み締める。劣等感で吐息が黒く染まりそうだった。

「……そろそろ暗くなってきたね。帰ろうか」
 携帯を戻した康平が空を見上げ、にこやかに言う。
「そうだな」
 晃も尻をはたいて立ち上がる。
「明日もまた、ここで待ってて貰ってもいいかな。もっと話を聞きたいんだ」
 公園の出口で康平が言うと、晃は頷いた。
「ああ。俺もだ」
 そう言って互いに笑い、手を振って別れる。
396他人(ひと)の皮を被る 一話  4/16:2010/09/20(月) 00:34:59 ID:6ha/zpLz

「…………由希、か」
 晃はネオン街を歩きながら呟いた。
 大通りには夜が更けた後も人が絶えない。
 ショーツが覗くほどの超ミニを履いたキャバクラ嬢、ブレザーからむちりとした脚を覗かせる女子高生。
 だがそのいずれもが、先ほど目にした画像に及ばない。
「……由希、由希、由希ッ!」
 アパートに帰った晃はその名を繰り返しながら激しく自慰に耽った。
 妄想の中で由希はブラウスを捲り、豊満な白いバストを晃の眼前に晒す。
 晃がそれを揉みしだくと心地良さそうに目を細め、花園に指を差し入れれば切なげに腰をうねらせる。
 柔らかな唇で行われるフェラチオは至上の快楽で、そそり立った怒張を膣へ捻じ込めば愛しげに締め上げてくる。
 その悦楽を享受するのは康平ではない、晃だ。
 妄想の中には康平はおらず、それと全く同じ顔をした晃が何も知らない由希と愛を育んでゆく。
 
 晃はそれ以来、よく康平と会うようになった。
 康平はそれなりに多忙なようではあったが、残業を早く切り上げては夕方の公園に現れる。
 晃は会うたびに康平のプライベートを聞きだした。
 由希とは偶然に知り合った事。
 康平はどちらかといえば性に淡白で、セックスは由希にリードされている事。
 由希はうなじから背筋にかけてが弱い事。
 付き合い始めてもう2年目であり、そろそろお互いに結婚を意識している事……。
 晃はそれを聞きながら、由希との妄想をよりリアルなものにしていった。

 晃の頭には、もう由希の白い太腿しかない。
 康平とはきっと無二の友になりえただろう。
 しかし由希の画像を見たあの瞬間から、目の前のにこやかな男は嫉妬の対象でしかなくなった。
 口先で親友の契りを交わしながら、心中では康平に成り代わる事ばかり夢想する。
 晃が昔読んだ小説にも、人に取って代わるドッペルゲンガーがいた。
 ならば、晃の方こそ康平のドッペルゲンガーなのか。康平は近いうちに死ぬのか。そう嘲笑う。
 しかし、それも所詮は負け犬の遠吠えだ。
 晃とて本気で人一人を殺し、その人生を演じる気などない。
397他人(ひと)の皮を被る 一話  5/16:2010/09/20(月) 00:36:08 ID:6ha/zpLz
 ただ惚れた女が人のものである事実から逃避しているに過ぎない。
 晃自身もそれは十分に理解していた。
 ……だから、よもや本当に康平に異変が訪れようなどとは、その時は思いもしなかった。

     ※

 晃が康平と知り合って3ヶ月が経った頃だ。
 晃はその日も約束通り、夕暮れの公園で康平を待っていた。
 しばらくして康平が公園前に姿を現す。
 しかし康平はそのまま、晃には目もくれずに公園を通り過ぎた。
 晃は首を傾げる。公園の先に用事があるのかとも思えるが、康平の律儀な性格から言って、
 待たせている晃に一礼ぐらいはしていくはずだ。
 何かが妙だった。
「おい、康平!」
 晃は呼びかけながら公園の外に出る。
 康平はよほど足早に歩いているのか、すでに2つ先の角を曲がるところだった。
「くそ、速ぇな!どうしたってんだ」
 晃はいよいよ不安になって走り出す。
 角を曲がり、路地に入ったところでようやく康平の後姿が見えた。
 その歩く先は山奥へ向かうトンネルだ。

 晃はぞくりと悪寒がした。
 晃にはこの辺りの土地勘がない。一月前にぶらりと足を伸ばしただけの街だからだ。
 そんな晃でも、その場所だけは知っていた。その山の頂には滝に繋がる古いダムがある。
 県内でも有名なスポットだ。ただし観光名所としてではない。
 自殺の名所だから、だ。
 転落死した者の霊が呼ぶ、絶景のあまりふらりと水面へ飛び降りたくなる。そんな噂が絶えない場所だった。
 康平が今入っていったのはそういう山だ。
「……まさか、あいつ!!」
 晃は歯をうち鳴らし、足を震えさせながら康平を追った。警察に通報する事さえ気が動転して忘れていた。
 今はただ、友人を止める事しか考えていない。
398他人(ひと)の皮を被る 一話  6/16:2010/09/20(月) 00:37:48 ID:6ha/zpLz

 トンネルを抜け、森へ入っても康平の足取りは衰えなかった。スーツ姿のまま枝葉を掻き分けて突き進む。
 同じ体格でラフな格好の晃が、何度も足止めを喰らうのにだ。
 この山道に慣れているのか、それとも何らかの執念に駆られてか。
 登り始めたのは夕暮れだったが、いつのまにか月が出ていた。
 夜の山道、すでに康平の姿は見えないものの、ガサガサと鳴る草の音で居場所は推測できる。
 それを追ううち、次第に滝の音が鼓膜を震わせ始めた。気温も心なしか低まり、火照った体に纏いつくようだ。

 晃が息を切らせて小休止を取ったとき、ふと前方の草の根が止んだ。
 はっとして晃が顔を上げた直後、水面に何かが落ちる音が響き渡る。
 小石や枝などではない、もっと大きなモノだ。例えば、人間のような。
「こ、康平えええええぇぇっ!!!!」
 晃は叫び、山道を駆け上がった。驚くほど体が早く進む、なるほど必死の力は強い。

 晃が山頂に辿り着いた時、開けたそこには誰の姿もなかった。ダムの水面に目をやる。
 月が翳っている暗さでほとんど見えない。
 だが無数の枝葉が滝壺へ向かって流れており、そしてよく目を凝らした晃は、
 断崖絶壁の岸辺にある物を見つけて脚が震えた。
 流木に絡まる康平の背広だ。
 先ほどまで追いかけていたのだから見間違える筈もない。
「う、嘘……だろ……おい」
 晃は立っていられずにその場にへたり込んだ。
 死ねば良いと空想したのは事実だ。だがまさか本当に、目の前で人が死ぬとは。

『もう一人の自分に会うと死ぬ』

 そんなものは脅かしで作られた、下らない都市伝説ではないのか。
「うっ……!」
 晃は気が昂ぶるあまり、喉元へ熱さがこみ上げるのを感じた。
 口を押さえて傍の茂みに駆け寄り、胃の内容物を吐き出す。
「はっ……はぁっ……はぁっ……!!」
 這いつくばって息を整えながら、晃は視界の端に何か光るものを見つけた。
 携帯だ。
 開いてみると待ち受けに由希の画像が表示される。間違いなく康平のものだ。
 さらにはその近くに財布も落ちていた。中には現金と免許証、会社の名刺などが入っている。
 転落する際に誤って落としたのか、あるいは自殺するにあたって発見者に身元を知って欲しかったのか。
 いずれにせよ貴重な個人情報だ。
399他人(ひと)の皮を被る 一話  7/16:2010/09/20(月) 00:39:11 ID:6ha/zpLz

 成りきれる。
 滝の音に思考を乱されながら、晃はふと思った。
 康平の家の場所は話に聞いて知っている。彼の家の鍵もある。カードもあるし携帯もある。
 そして何より、瓜二つの身体がある。
 これだけあれば康平という一人の男になりすます事も不可能ではない。
 無論死んだ康平に対する冒涜だとは思う。だがそれまで絵空事でしかなかった成りすましが、今や成立しうる状況にある。
 掴めば映画のヒーローになれる蜘蛛の糸が目の前にぶら下がっているのだ。
「はは、ははは……」
 晃は激しい動悸の中で笑った。
 そう、康平はヒーローだ。彼が死んだとあっては皆が悲しむ。親も、会社の人間も、そして恋人である由希も。
 ならば晃が死んだ康平を演じる事が、それらの人間に幸福を与えることになるのではないか。
「そうだ、相棒。俺が……お前の人生を続けるんだ」
 晃は財布と携帯を拾い上げ、ゆっくりと立ち上がる。そして康平の沈む暗いダムを見下ろし、目を細めた。

 晃は山を下り、以前康平から貰ったメモを頼りに彼の家を探し当てる。
 公園からほど近い高層マンションの7階だ。
 広い所だった。3つの部屋は洒落たインテリアで飾られ、窓からは街の夜景が広がる。
 目を引くのが58インチのプラズマテレビで、144cm×95cmの画面には子供がすっぽりと嵌りそうだ。
「……ちっ、商社の係長殿は住む世界が違うね」
 晃は毒づきながら革張りの椅子に腰掛けた。クッションが柔らかく、腰がどこまでも沈む。
 座り心地は最高だが腰を痛めそうだ。いかにも成金趣味の椅子だった。
 ふと見ると目の前のパソコンデスクに日記がある。
「死者の日記か……」
 晃は恐る恐るそれを手にした。

 マメな康平らしく毎日欠かさず記してある。
 同僚の話、上司の話、同じ顔の晃を見て驚いた事、いい親友になれそうな事などが誠実に綴られていた。
 しかし少し前の日付から様子が変わる。
 文章が破綻し始め、気持ちがどんどん不安定になっていく事、時々ふらりとベランダから飛び降りそうになる事、
 調子が悪く二ヶ月ほど休職する事などが書き連ねられ、今日の日付以降は真っ黒に塗り潰されていた。
 晃はぞっとした。だが妙に納得もした。
 いずれにせよ康平はもういない。今や彼の全ては晃の物だ。
 例え、それが恋人であっても。

 晃は拾った携帯で由希のアドレスを探し、週末のデートを提案した。
 10分後、由希から嬉しげなメールが返信される。返事は勿論OKだ。
「くくっ。せいぜい楽しもうぜ、由希ちゃんよ」
 晃は隆起した逸物を愛でて呟く。あまりに待ち遠しくて体が震えた。
 32年間絡み付いてきた童貞という垢を、愛らしい他人の女で落とせるのだ。
400他人(ひと)の皮を被る 一話  8/16:2010/09/20(月) 00:40:34 ID:6ha/zpLz

        ※

 週末、由希は初春の令嬢といった出で立ちで現れた。
 ダークブラウンの髪が風を孕み、上は袖と裾に余裕のあるフリルつきの水色シャツ、下は萌黄色のホットパンツにブーツ。
 首元にはピンクのリボンが巻かれている。
 ホットパンツから覗く生足は道行く男の目を引いていた。
「お待たせー。今日はなんだか暑いね」
 由希は首を仰ぎながら晃に歩み寄る。涼やかな香りが立ち昇った。
 身長は160cm弱といったところか。
 性的な魅力を醸しながらも、小動物のような瞳のせいか発育の良い小学生のようにさえ見える。

 晃は緊張から喉を鳴らした。
 本物の康平をよく知る由希に、成り代わりが悟られないか。このファーストコンタクトが重要だ。
「ん、どうかしたの?」
 自分をじっと見つめる晃に、由希が首を傾げる。疑ってはいないようだ。
「いや、か、可愛い格好だなと思ってね」
 晃は康平の口調を真似て声を聞かせる。
「えっ……そ、そうかな」
 由希は嬉しそうに顔を綻ばせた。
 顔を見ても、声を聞かせても疑わない。
 これで晃は確信した。晃は今、完全に康平になっている。
 とはいえいつボロが出ないとも限らない。本番である夜までは慎重に行こう、と晃は気を引き締めた。

 だが結局それも杞憂に終わる。由希は康平を疑う気配がまるでなかった。
 恋は盲目、というものだろうか。
 川原では手の込んだ自作弁当が披露された。
 和風で彩りが良い。筍や人参などの野菜は、旨味を殺さないままにしっかりと味付けされており食べやすかった。
「康ちゃん、ほら。あーん」
 由希は具を一つずつ箸で摘んで食べさせてくる。そして咀嚼する晃を眺めながら頭を撫でた。
 お姉さんか、或いはお母さんでいるつもりなのだろう。
 心から康平に惚れ込んでいる様子だ。
 晃が瞬きをすると同じく瞬きをし、指を組みながら話せば同じく指を組んで聞く、
 そんな無意識下の同化動作も見られた。
 相手に心を許していなければ起こらない現象だ。
 勿論それも晃の迫真の演技あってこそで、その裏には確実に様々な職歴が生きている、と晃は思った。

 ともかくも晃はつつがなくデートを終え、ついに目的のホテルへと辿りつく。
401他人(ひと)の皮を被る 一話  9/16:2010/09/20(月) 00:41:25 ID:6ha/zpLz

 ホテルの部屋に入るなり、晃は由希の唇を奪った。
「んっ……」
 由希が小さく声を上げる。
 柔らかい唇を割ると中から弾力のある舌が覗き、それを嬲るとじわりと唾液が溢れ出す。
 若い娘の唾液だ。そう思っただけで晃の逸物が硬さを増した。
 晃はその逸物を擦り付けるように由希の体を抱く。
 柔らかい、と晃は驚いた。細いのに、まるで骨がないような柔らかな抱き心地だ。
 その由希も晃を抱きしめ返してくる。
 2人はしばし口づけを堪能したあと、体を離した。
「服脱ぐから、あっち向いてて」
 由希がはにかみながら晃に言う。
 晃は冗談ではないと思った。気弱な康平なら大人しく従うのかもしれないが、そこは譲れない。
「いや、目の前で脱いで」
「えっ!?」
 由希が驚いたように目を丸くした。まさか着替えを見られるとは思わなかったのだろう。
「で、でも……」
 胸を手で庇いながら晃を窺う。しかし晃が折れないと知ると、渋々といった様子で手を下げた。

 まず首に巻いたリボンが解かれる。ふわりと香水が薫った。
 次にフリルのシャツが捲り上げられ、ブラジャーが外されると白い乳房が露わになる。
 Dカップといったところか。綺麗な椀型で、晃の手の平に何とか収まる大きさだ。
 ホットパンツの下では、三角地帯を薄紫のショーツが覆っていた。
 由希はショーツを恥ずかしげに摺り下ろしていく。
 半ばほどまで下ろすとなだらかな下腹に黒い茂みが覗きはじめた。
 抱かれる事を想定していたらしく、きちりと逆三角に剃りこまれて不潔さがない。
「おおっ……」
 晃が思わず声を上げると、由希はぴくりと手を止めた。腰を折り曲げ、ショーツを秘部の下に絡ませて躊躇する。
陰毛を見られることがたまらなく恥ずかしいのだろう。
「ほら、どうしたの?」
 晃が声をかけると、由希は大きく息を吸い、吐いて、一気にショーツを摺り下ろした。
402他人(ひと)の皮を被る 一話  10/16:2010/09/20(月) 00:42:22 ID:6ha/zpLz

 ショーツが足首から抜かれると、24歳の真裸が晃の視界に晒される。
 ちょうどいい大きさの乳房、締まった腰、すらりとした脚線。
 大人の豊満さと女子高生の青さの中間にあたる肉付きだ。
 肌は白い。男の身体はゴツゴツとしているが、由希は違う。
 なだらかな曲線に縁取られ、むらなく乳白色を塗りつけたような美しさだ。
 無機質でさえある白さの中、目を射止めるのは生々しい髪、陰毛、そしてせり出した胸の膨らみ。

 晃はその乳房にむしゃぶりついた。塩気がある。暑い日に出歩けば乙女とて汗を掻く。
「いやっ、シャ、シャワー浴びないと……!」
 由希の嫌がりも意に介せず、晃は湿り気のある乳房を吸い続けた。
 何しろ32年の人生で初めての女体だ。
 獣のように息を荒げ、下腹から腋から臍から、由希の体中の臭いところを舐めしゃぶった。
 白い身体が唾液にてかる。
「お、勃ってきたぞ」
 晃は乳首をしゃぶりながら歓喜した。乳房を揉みながら先の尖りを口に含めば、段々とその尖りが硬くなっていく。
 乳首が勃つということは気持ちいいのだ。
 しょっぱい乳首をねぶりながら由希を見ると、切なげに内股をすり合わせているのが分かる。
 晃は逸物に痛みを感じた。
 ジーンズから逸物を開放すると、それは興奮で反りかえり、先端から先走りさえ垂らしていた。
 ここ数年は無かった勃ち具合だ。

「由希、舐めて」
 荒々しい気分で、しかしそんな時こそ康平を真似る。
 何も知らない由希は乳房を揺らしながらカーペットに跪き、仁王立ちした晃の逸物に手を添える。
「手は使わないで」
 晃は興奮に震える声で命じた。由希は困惑した表情で晃を見上げる。
 康平とのセックスでは常にリードしてきた女性だ、命じられる事には慣れていないのだろう。
「……今日はずいぶん意地悪なんだね」
 由希はやや憮然とした声色で呟き、膝立ちのまま床に手をついて舌を出す。
 洗っていないため匂う亀頭に眉を顰め、ゆっくりと口に含んでゆく。
 晃はさらさらの髪を指で梳きながら見守った。
403他人(ひと)の皮を被る 一話  11/16:2010/09/20(月) 00:43:13 ID:6ha/zpLz

 晃の意図は、由希の素のフェラチオを知ることにある。
 指遣いに頼れず、頭を掴んで無理矢理させられるわけでもない。
 となれば由希は自ら進んで晃の逸物を口に含み、唇を窄め、舌を動かさなければならない。
 すなわち由希が普段康平にどんな音で啜り上げているか、どんな顔で吸い付いているか、
 その情報が一切誤魔化されずに晃に伝わるのだ。晃はまずそれを暴きたかった。
「んっ、んん、う、んえぁっ……」
 由希ははち切れそうな怒張の大きさに呻いていた。
 頬を染め、息を荒げ、額に汗を浮かべながら舌を遣う。その顔からは恥辱に耐える心理が見て取れる。
「き、気持ち、いい……ッ!」
 一方の晃は腰の抜けそうな快感に襲われていた。
 裏筋に添えられた舌が陰嚢からカリ首までをくすぐり回し、
 小さな口いっぱいに溜められた唾液がじゅるじゅると音を立てて怒張をくるむ。
 窄まった唇の輪が肉茎を這い上がる。
 愛らしい由希の美貌は原型を留めぬほどに崩れ、口からは唾液が零れて床に落ちる。
 その狂った美を見下ろしながら、晃はとうとう一線を越えた。
「で、出るっ!!!」
 素早く怒張を抜き、舌を出した由希の顔に精をぶちまける。
 白濁は恐ろしい勢いで飛び散り、由希の舌はおろか鼻先にまで降りかかる。
 由希は目を細めながら、自らの口に白濁が注がれるのを見つめていた。
 ようやく射精が止まった後、晃は白濁を吐き出そうとする由希を制する。
 自分の子種を由希に飲ませる気なのだ。
「ちゃんと飲んで」
 そう命じられた由希は、嫌いなピーマンを食えと言われた子供の顔になる。
 だが仕方なく白濁を唾液と混ぜて飲み込みはじめた。よほど濃いのか、何度も噎せては口端から零れさせる。
 ようやく全て飲み下した時には、由希の額には玉の汗が浮いていた。
404他人(ひと)の皮を被る 一話  12/16:2010/09/20(月) 00:44:34 ID:6ha/zpLz

「さあ、今度は由希の番だ」
 晃は由希を抱き起こしてベッドに座らせる。
 脚の間に恥じらいの部分が覗いた。毛の処理がしてあるので秘唇がくっきりと見える。
 やや縦長で挿入しやすそうだ。
 肉びらには歪みがなく、そう経験が多いわけでもないのがわかる。
 晃がその肉びらに手をかけた時、急に由希が膝を閉じた。
「いや、そこだけはやめてっ!!」
 泣き出しそうな顔で首を振る。洗っていない秘部からは、膝を閉じた状態でも汗と愛液の匂いが漂っていた。
 しかし晃はその匂いにそそられる。けして芳しくはないが、雄の本能をくすぐる臭さだ。
「開いて。由希がどんな匂いか知りたい」
 晃は由希の目を見て囁いた。由希はかなり躊躇した後、少しずつ膝を開く。

 今度こそ秘部が露わになった。
 指で割りひらくと桃色の鮮やかな襞が覗く。
 愛液にぬめったそこは最高級の霜降りのようだ、晃にはそれしか浮かばない。
 そのぐらい生々しく、艶かしく、美味そうだ。
 そしてそれが美しい由希の体内だと考えれば、もう見るだけではおれなかった。
 むしゃぶりつく。
 鼻頭にこそばゆい陰毛を感じながら舌で襞をえぐり、啜る。愛液が顎を伝う。むうっとする雌の香が肺を満たす。
「やあ、あっ……!!」
 濡れ光る内腿は啜るたびに筋張り、同時に愛らしい呻きが漏れた。
 目線を上げれば細身ゆえの腰骨の浮きが見え、スレンダーな由希を舐っているのだと晃に自覚させる。
「ああ由希、由希ッ!!」
 ずじゅ、じゅずるっと音をさせ、晃は生涯初めての女の部分を味わいつくした。
 およそ32とは思えぬ飢えぶりだ。
 晃は妄想で何度由希を抱いただろう、だが現実はその比ではなかった。
 太腿の肌触りも、性器の匂いも、愛液の生臭さも、五感にくる全てが予想以上だ。
 晃の分身はいきり立った。フェラチオで抜いていなければ弾き割れたのではと思えるほどだ。
 むせ返る雌雄の匂いの中、晃は由希の秘部に指を入れる。
 やわらかく、暖かい。かなりの具合の良さが想像できた。
405他人(ひと)の皮を被る 一話  13/16:2010/09/20(月) 00:45:39 ID:6ha/zpLz

 晃は指を抜き、代わって逸物を割れ目へ宛がう。
「由希、いくぞ」
 晃が声をかけると、由希は汗まみれで頷いた。晃はゆっくりと腰を進める。
 やはり挿入は苦ではなかった。快感に膨らんだ膣壁がぎっちりと怒張を咥え込み、圧迫感はかなり強い。
 捻じ込むように進めると、怒張の7割ほどが入った時点で何かしこりに当たった。子宮口に達したのだ。
 全て入らないかと腰をねじ入れても押し返される。
「んん、ふ、深いっ!!」
 由希が苦しげな声を上げた。
「いつもと比べて、どうだ?」
 晃はその由希に問うた。すでに康平を真似る余裕もないが、それももう些細な事だ。
「今日凄いよ、いつもよりずっと太い。興奮してくれてるんだね……康平」
 由希は陶然とした顔で男の名を呼ぶ。晃は笑いを堪えるのに必死だった。
 この瞬間まさに、晃は由希を征服したのだ。
 膣の奥まで生で繋がっている。安全日か、あるいは将来の結婚相手ゆえに孕んでも良いと考えているのか。
 いずれにせよ、実は見知らぬ男と性器を擦り合わせているとは思いもすまい。
 晃は心中で嗤い、大きく腰を振り始めた。

 初めは正常位だ。脚を開いた由希へ被さって犯す。
 愛液が怒張に絡みつき、締め付けの割に抽迭は楽だった。
 怒張からの快楽も相当なものだが、由希の感じる顔、曲げた膝に潰される乳房なども晃の目を楽しませる。
「ん、ん、ふん、んううっ……!!」
 由希は顔を見られて恥ずかしいのか、指を噛んで必死に喘ぎを押さえていた。
 だがパンパンと休みなく腰を打ち付けるうち、その指も離れて歯を覗かせながら喘ぎはじめる。
 元よりあどけない顔だ、その表情はどれほど反則的なことか。
 正常位を十分に堪能した後、由希の右足首を掴みあげて側位に移る。
 どうせなら様々な体位を試そうというのだ。
 歳のおかげか、初セックスながらに持ちはよかった。
「な、何これっ、あ、はぁああ……っ!!」
 横臥したまま深々と貫かれ、由希の喘ぎが大きくなる。
 人は未体験の快感に弱い。片脚を掴まれるこの側位は、常に濡れ場をリードする女には無縁のはずだ。
 掴んだ右足指のびんと張る様が、由希に流れる凄まじい快感を表していた。
406他人(ひと)の皮を被る 一話  14/16:2010/09/20(月) 00:46:33 ID:6ha/zpLz

 側位で互いに登りつめた後、最後はバックスタイルだ。
 由希をベッドにうつ伏せにさせ、背後から獣のように叩き込む。
 これが最高だった。正常位では7割しか入らなかった逸物が根元を残して埋没する。
 膣の締め付けは最も強く、奥まりに亀頭がごりごりと当たる。
 視界には由希の白い背中があった。
 ダークブラウンの髪が肩に艶めき、腰の括れもはっきりとわかる。
 その括れを掴んで腰を叩き込むと、尻肉がパンパンと軽快なリズムを刻む。
 前に手を回せば垂れ下がる豊かな乳房が掴める。
 バックは女を征服する体位だ。
「ああ、ああうっ、ああ、くあああぁんっ!!!!」
 由希もバックが一番感じるのか、シーツに顔を埋めたまま悲鳴のような喘ぎを繰り返す。
 彼女の足腰は快感で痙攣しており、溢れる本気汁は互いの腿に挟まれてにちゃにちゃと粘った。
 清楚な顔に似合わず分泌が多い。ベッドはもう寝小便をしたような濡れ具合だ。
 感じる由希を見下ろしながら、晃はふと康平の言葉を思い出す。

 『由希はうなじから背にかけてが弱い』。

 晃は繋がりながら由希の髪を掻き分け、うなじを舐めた。
「ああっ!」
 由希の締め付けが急に強まる。きつい。カリ首を引く際に気持ちが良すぎて頭が真っ白になる。
 晃は快感に叫びを上げた。
「どうだ由希、イヌみたいに犯されて気持ちいいか?」
 晃が尋ねると、由希はシーツの上で何度も頭を上下させる。
「へへ、もう変態だな。そろそろ逝くぜ、しっかり受け止めろよ!!」
 晃は叫びながらスパートをかけた。ベッドを軋ませ肉音を弾けさせ、深く逸物を捻りこむ。
 肛門が締まり、玉袋がせり上がる。
「くうっ!」
 晃は暖かな膣奥でたっぷりと精を吐き出した。精管を引き裂くような射精の勢いだ。
「ふあ、あ、あぁっ……!!」
 由希が喘ぐ。由希の膣奥も射精を受けながら細かく痙攣していた。
407他人(ひと)の皮を被る 一話  15/16:2010/09/20(月) 00:47:56 ID:6ha/zpLz

 射精を終えた後、晃はゆっくりと逸物を抜き去る。
 由希の中から大量の白濁が零れ落ちた。フェラチオの時の倍は出ている。
 晃は30過ぎの初セックスでそれだけの射精を成し遂げた事、
 そして本当にこの美しい由希を抱いたのだという事実に酔いしれた。

 晃はベッドに倒れ伏す由希を起こし、胡坐を掻いたまま逸物を突き出す。
「お前の愛液で汚れたんだぜ、舐って綺麗にしろよ」
「……うん」
 由希は頬を真っ赤にして逸物に舌を近づけた。
 幹の愛液をぴちゃぴちゃと舐め取り、尿道に残った精液も啜り上げる。
 何も命じていないのに口だけでの奉仕だ。
 康平のセックスをリードしていたという24歳の女は、被虐の快感に取り憑かれたらしい。
「ひもひ、いい?」
 フェラチオをする由希が晃を見上げて訊ねる。晃は満足げに由希の髪を梳いた。

     ※

 翌朝、散々キスをしながら由希と別れた晃は、康平の携帯に留守電が入っていることに気付いた。
 迷った後にメッセージを再生する。
『白戸くん、夜遅くにごめんなさい。大原です。休職の件で一度、お酒でも飲みながら話を聞かせて貰えないかしら。
 悩みが随分と深刻なようだったから。上司として……いえ、職場の仲間としても、力になれるかも知れないわ。
 では、連絡を待っています。おやすみなさい』
 メッセージはそこで途切れた。女の声だ。声質からみて30前後といったところか。
「大原、とか言ってたな……?」
 晃はその名を康平の日記で何度か見かけた。
 マンションで日記をめくるとすぐに見つかる。懇意にしているらしく、情報は多かった。
408他人(ひと)の皮を被る 一話  16/16:2010/09/20(月) 00:49:06 ID:6ha/zpLz

 大原奈津美、28歳。
 国立を卒業して商社入りし、現在は課長職、つまり4歳上の白戸の上司に当たる。
 典型的なできる女で、女性蔑視と受身の部下を嫌い、他人に弱みを見せない。
 一方で器量は良く、性格と美人すぎる事から『社内一結婚の遠い女』と噂されているらしい。
「へぇ、美人なのか」
 晃は興味が湧いてさらに奈津美関連の資料を漁る。
 本棚に商社の社内報があり、そこに奈津美の写真が載っていた。
 パリッとしたスーツを着て社の下半期の方針について語っている記事だ。

 晃は思わず目を疑った。
「お、おいおい……マジで居んのかよ、こんなの……!」
 アイシャドウで縁取られた芯の強そうな目、すっと通った鼻筋、ルージュの映える淑やかな唇。
 黒髪はうなじでショートに切り揃えられ、金のイヤリングがまた似合う。
 キャリア。一言で表すとそれだ。
 銀行員でもスチュワーデスでも、アナウンサーでさえ通用しうる凛とした美しさを放っている。
 もっとも商社でのし上がるような女、当然といえば当然なのだが。
 記事の写真ではスタイルまでは解らないが、顔だけで最高級の女である事が確信できた。

「康平の野郎……由希だけじゃなく、こんな上司までいやがったのかよ!」
 晃は力を込めて康平の日記を折り曲げる。
「……上等だ。アイツの身分を使って、今度はこの女を犯してやるか」
 晃は呟いた。
 恐ろしいことを口走っているのは気付いている。だがすでに一犯した後だ。
 そもそも仮に下手を打って捕まっても、底辺に戻るだけのこと。
 ならば極上の女をもう一人手篭めにできるこの機会は、ローリスクハイリターンというものだ。

 晃はまず奈津美に電話をかけ、3日後にバーで会う約束を取り付けた。
 その3日間に康平の預金でアダルトグッズを買い漁る。奈津美を辱める準備だ。
 そして当日、晃はある袋を懐に忍ばせて夜の街へ繰り出した。

                                         続く
409他人(ひと)の皮を被る 一話:2010/09/20(月) 00:51:04 ID:6ha/zpLz
今回の投下はここまでです。
前半部分では若干コピペミスがあって読みづらくなってしまいました。
すいましぇん。

続きはそのうちに。
410名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 03:30:38 ID:WbQ7kqTS
>>391
これ、元ネタがあるんだよね
ft-type2は更新する気もなさそうだから他の人でも書いてくれてありがたかったわ
411名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 06:04:50 ID:As8j0WVm
>>409
あのさあ…
ス レ 違 い だクソ馬鹿。
ログを見れば幼稚園児でも解るが、ここは男が女の生活を強いられる羞恥が肝なんだよ。
お前の小説にそれがあるのか?
無駄に長々と容量食いやがって…
412名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 09:16:09 ID:NqiN4rit
ニッチで過疎なスレで乱暴な発言は、更に人を減らして死を招くので慎もう。
これだってスレタイに沿ったテーマではあるしね。
ただ、内容的にはここよりも寝取り寝取られとか、そっちの方が適切だったかもしれないね。
413名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 11:38:59 ID:WbQ7kqTS
スレチではない。
それは間違いないのだが・・・ここはTS系の需要が多いのも事実

別の場所で書いた方が喜ばれるんじゃないかな?
文章力とやる気はあるようだし
414名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 12:48:32 ID:9HL8fXxE
411の書き込みを真に受ける人がいそうだから、横から訂正しておく。

1を読めば分かるけど、このスレはTS系のシチュだけじゃなく、例えばOD系なんかも含まれるよ。
「AV女優と女子高生の立場が交換されたり」って書いてある。
過去にも、>>86>>194でOD系が投下されてるしね。

1の「成人会社員と女子小学生の立場が交換」の記述から、AR/AP系なんかも含まれると思われ。
過去にも>>167にAPシチュが投下されている。

411はスレ対象を勝手に絞らないでいただきたい。
415名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 13:31:43 ID:6ha/zpLz
>>411です。勿論TS系が人気というのは知っていたんですが、
丁度書いた内容とぴったり当てはまるスレがここしかなかったのもあり、
たまには男同士の身分の入れ替えも面白いかな、と思って投下しました。
ただやっぱり少しズレている気がするので、これにて撤退します。
ご迷惑をお掛けして申し訳ない……。
416名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 14:18:26 ID:YP+QW8AV
個人的には歓迎しているので
他スレで再開するなら案内をもらえると助かる
417名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 14:41:46 ID:WbQ7kqTS
まあ、>>411は気にすんな
他スレに書くのであればURLだけ置いていってくれ
418名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 16:51:33 ID:6ha/zpLz
悩んだ結果、>>412さんのアドバイスを参考に寝取り・寝取られスレに投下することにしました。

寝取り・寝取られ総合スレ15
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1281008831/l50

ご興味がありましたら宜しくお願いします。
419次期当主はメイドさん!?:2010/09/20(月) 23:59:16 ID:dCR4imlF
#新たな板に旅立った、418さんに幸多かれと祈りつつ、投下します。

 その夜、相談の結果、葵が魚の、紫が鳥の絵を枕の下に敷いて、各自の部屋で眠りについた。
 ふたりとも、「鳥魚相換の図」の効能に関しては半信半疑──いや、三信七疑くらいのつもりではあったが、それでも何となくワクワクする気持ちは抑えられられない。
 そして……ふたりが、ほぼ同時刻に眠りについた時、その場を見ている者がいれば、アッと驚いたに違いない。
 ふたりが頭を置いている枕が、暗闇の中でボウッとほのかに光っていたのだから。

 * * * 

 ──あれ……ここ、どこ?

 少年は、自分が深い翠色をした水底にいることに気がついた。不思議なことに、水中であるにも関わらず、少しも苦しくない。また、寝る前に来ていた普段着姿なのに、水の抵抗もほとんど感じられない。

 ──え! 嘘っ? なに、ここ!?

 頭上から聞こえてくる「声」に顔を上げると、姉代わりの少女の姿が水面越しに透けて見える。紫は、いつものメイド服を着たまま、なぜか空の上に浮かんでいるようだ。

 ──ユカねえ!
 ──あ、アオイちゃん!

 ふたりが互いの姿を認識した瞬間、葵の身体が浮き上がり、紫の身体は逆に下降してくる。

 ──ちょ、ユカねえ、スカート!
 ──へ……あ! 

 距離が近づくにつれ、お互いの姿がはっきり見えるのはよいが、位置的に微妙なことになってしまう。

 ──アオイちゃん、見たわね?
 ──ふ、不可抗力だよ〜。それに遠かったし、ハッキリとは……。

 完全に近づく前に少年が注意し、少女もスカートを押さえたので、確かにハッキリ目に焼き付いたという程ではない。

 ──でも、ボンヤリとは見たんでしょ。色は?
 ──えぇと……その、白、かな。
 ──! やっぱり見たんじゃない!!
 ──はわわ、ゴメンなさいぃ。

 しかし、ほとんど手が届く距離まで来たところで接近は止まる。
 ふたりは、水面を境にして、上下に分かれて会話することとなった。

 ──それにしても……ここって夢の中、よねぇ?
 ──うん、多分。だって水の中にいても苦しくないし。
 ──あ、そう言えばそうねぇ……って、ホントに大丈夫なの?

 あたかも水面が丈夫なアクリル板であるかのように、水の下と上に分かれて会話するふたり。
420次期当主はメイドさん!?:2010/09/20(月) 23:59:50 ID:dCR4imlF
 ──いずれにしても、これってきっと、あの絵の仕業よねぇ。これからどうしたらいいのかしら。
 ──さぁ、僕に言われても。
 ──ええぃ、頼りないわねぇ。ともかく、合流しましょ。ほら、手出して。
 水面に座り込んだまま、少女は水面に手を差し伸べた。不思議なことに、その手はさしたる抵抗もなく水中に差し入れられる。

 ──あ、うん。

 少年が少女の手を取り、少女が少年を水上に引っ張りあげようとしたとき、ソレは起こった。

 ザパーーーン!!

 「「うわぁ!」」
 派手な水飛沫とともに、少年と少女の悲鳴が重なる。
 一瞬の後、少年は水上に引っ張り上げられたものの、その反動でか今度は少女が水面下に没してしまった。
 さらに、先ほどとは逆に、ふたりの身体は、片や水底に沈み、片や空中へと浮かび始める。
 「ゆかねぇーーー!」
 「あおいちゃーーーん!
 だが、ふたりはどうすることもできず、互いの身体が離れていくのを見ているしかなかった。
 やがて、その動きが止まり、最初に声をかけあった時と同じくらいの距離でふたりは対峙する。
 と……。
 「ぷっ! アオイちゃん、何それ?」
 「へ?」
 状況も忘れて噴き出す少女の言葉に、首を傾げる少年。
 「あはは……アオイちゃん、自分の首から下、見てみなさい」
 言われて反射的に視線を下に向ける少年。
 そこには、屋敷で見慣れた黒いエプロンドレスを身にまとった自らの…………

 * * * 

 「……ちゃん、起きて! アオイちゃん!」
 耳元で小さな、しかし鋭い声で囁く女性の言葉に促されて、桐生院葵は目を覚ます。目の前には、見慣れた従姉、六道紫の顔があった。
 「ふわぁ……おはよ、ユカねぇ」
 「ん、おはよ……って、呑気にしてる場合じゃないのよ」
 なぜか焦ったような口調で言う紫。
 「うーーん、何かあったの?」
 のほほんと聞きながら、眠っている間のことが何故か葵は気になった。
 (なんだろう? 何か変わった夢を見たような気がするんだけど……)
 と、昨晩見た夢の内容を思い出そうするのだが、よく思い出せない。
 「しっかりしてよ。あのね、例の絵、本物だったみたいなの」
 「え、ホント?」
 ぽやぽやしてるように見えても、そこは現代っ子。さすがに葵も、「もしかしたら本物かも?」くらいのつもりでいたのだが、幸運にも(あるいは不運にも)、どうやら「鳥魚相換の図」は正真正銘、不思議な力を持っていたらしい。
 「今朝早めに起きて、確かめてみたのよ……」
 と、紫は自分の確認してきた事実を説明し始めた。

#と、いったんココで切り。遅筆で失礼。続きは水曜の休みあたりにでも。
421名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 02:46:33 ID:HGhizmMn
GJ。水曜が待ち遠しい〜。
422次期当主はメイドさん!?:2010/09/23(木) 08:53:41 ID:8/Kl7LaZ
 紫の話を整理するとこうだ。
 今朝、1時間程前に目を覚ました彼女は、自分がなぜか葵の部屋のベッドに、彼のパジャマを着て寝ていたことを発見したのだと言う。
 「コレはもしかして!」と思った彼女は、そのままの格好で台所へと顔を出してみたところ、朝食の準備をしていたメイド長(もっとも、この日本家屋では使用人頭という方がしっくりくる)が、「あら、坊ちゃん、どうしたんですか?」と聞いてきたらしい。
 適当に話を合わせて葵のフリをしてから台所を出て、ほかにも何人かの人物と会ったが、彼の父も含めて誰もが、彼女をこの家の跡取り息子として接してきたそうだ。

 「どうやら、例の絵は本物だったみたいよ」
 「そうみたいだね。でも、僕、もし本当に効果があるとしたら、てっきりふたりの身体というか魂?が入れ替わるものだと思ってたよ」
 「まさか身体はそのままで、立場だけが入れ替わるなんてねぇ。あ、でも、あの書付けが正しいなら、他の人には外見が入れ替わって見えてるのかもしれないわ。
 ──ところで、アオイちゃん、ココまでの話を聞いて、何か気付かない?」
 それまでの真剣な顔つきからうってかわって、紫は悪戯っぽい表情になる。
 「へ? えーっと……あ! ココ、僕の部屋じゃない!!」
 付け加えると、今まで彼が寝ていたのは紫のベッドだ。
 「て言うか、この話の流れで今まで気づかなかったアオイちゃんのヘッポコさが、紫おねーちゃん、はてしなく不安だわ」
 まぁ、目が覚めるなり、枕元に紫が座って話し出し、葵自身はまだ布団に入ったままだったから、仕方ないのかもしれないが。
423次期当主はメイドさん!?:2010/09/23(木) 08:54:57 ID:8/Kl7LaZ
 「それと……ホラッ!」
 バッ! と勢いよく紫が掛け布団をめくりあげると……。
 「うわ、な、何コレ!?」
 当然とも言うべきか、その中から現れた葵の身体は紫お気に入りのネグリジェを着ていた。
 もっとも、マンガなどでよくあるピンク色したスケスケの扇情的なタイプではなく、コットン製のダボッとした長袖ワンピースみたいな代物なので、男の葵が着ていてもそれほど見苦しくはないが。
 「ププッ、結構似合ってるわよ、アオイちゃん」
 紫の言う通り、小柄で線が細く、優しい顔立ちの葵がそういう格好していると、むしろ本物の少女のようにさえ見えた。
 葵が身長164センチで体重が49キロ。一方、紫が165センチで体重は「禁則事項」キロなので、互いの衣服を取り換えても、殆ど無理がないのも幸いしたのだろう。
 「わ、笑わないでよ、ユカねぇ」
 とは言え、それは傍から客観的に見ていればの話であり、思春期真っ盛りの少年本人にとしては、目が覚めたら女装していたなんて、恥ずかしくてたまらない。
 しかも、先ほどまで気にもとめていなかったが、寝ていたベッドや着ているネグリジェには紫自身の匂い──愛用しているトワレとほのかな体臭が入り混じった香りが染みついており、それが彼の羞恥心をより刺激し、ヘンな気分になってしまう。
 「あら、本当のことよ。そ・れ・に……」
 手慣れた動作で、紫は葵から素早くネグリジェを剥ぎ取ってしまった。
 「うわっ、なになに、ユカねぇ……って、あっ!」
 いきなり裸にされた葵は抗議しようとしたが、ネグリジェの下から現れた自分の身体を見て固まる。
 寝間着なのでブラジャーこそ着けてはいないものの、下半身にはしっかりライトパープルのショーツを履いていたからだ。
 「あら可愛い。ホント、よく似合ってるわ、葵ちゃん」
 数年前から身の回りの世話をしているため、紫にとっては少年の朝の生理現象も見慣れたものだ。むしろ、体格に見合った小さめの陰茎が女物のショーツの前をピンと膨らませている様は、倒錯的な愛らしさすらあった。
 「うぅっ、ユカねぇ、ヒドいよ……」
424次期当主はメイドさん!?:2010/09/23(木) 08:55:39 ID:8/Kl7LaZ
 「それは別にわたしが着せたわけじゃないでしょ。その位でメゲてちゃ、先が思いやられるわよ」
 そう言いながら、紫はタンスから下着を一揃い取り出す。
 「ま、まさか……それを僕に着ろ、と?」
 「ンふ、せーかい。だって、傍目には今のアオイちゃんはわたしに見えるんだもん。女の子が女物の下着をつけるのは当然でしょ?」
 紫の理屈自体は至極まっとうなモノだったが……。
 「──ユカねぇ、ぜったい、楽しんでるでしょ?」
 「えへへ、それも当たりかしら。いやぁ、小さい頃のことを思い出すわねぇ」
 イトコ同士であり1歳違いの幼馴染でもあるふたりは、幼い頃からよく互いの家を行き来して遊んでいた。ふたりは本物の姉弟のように仲が良かったが、かわらしい弟を持った姉の何分の一かが持つ悪癖を、幼少時の紫も持ち合わせていたのだ。
 すなわち──弟分を着せ替え人形にして遊ぶというヤツだ。無論、着せる服は紫自身のワードローブ類。
 実際、紫の過去のアルバムには、どこからどう見ても愛らしい幼女にしか見えない葵と並んで撮った写真が、かなりの枚数収められている。
 さすがに小学校に入ったあたりから葵が嫌がり出した(逆に言うと、それまではむしろノリノリだった。お姉ちゃんと同じカッコをできるのが嬉しかったらしい)ので、それ以降は封印された黒歴史になっていたのだが……。
 (しかし、今、その封印を解き放つ!)
 ──どうやら、姉の方はずっと我慢していたらしい。
 弟分が成長するにつれて、いかつく男らしくなってたなら諦めもついたのだろうが、何せ葵は電車で男に痴漢されたこともある程の、線の細い美少年だ。「一度でいいから、今の葵に女装させてみたい」という願いもわからないではない。
 紫が放つ異様な迫力に半ば腰を抜かした葵がベッドの上をズルズルと後ずさりするが、呆気なく壁際に追い詰められ、水色と白のボーダー柄のショーツ(いわゆる縞パン)を履かされてしまう。
 「へっへっへっ、おとなしくしろ〜、きむすめじゃああるまいし」
 「言ってる事の内容は間違ってはいないけど、使う場所を激しく間違ってるよ!」
 葵の抗議も意に介さず、ショーツとお揃いの柄のブラを彼に着せる。
425次期当主はメイドさん!?:2010/09/23(木) 08:56:09 ID:8/Kl7LaZ
 「うんうん、よく似合うわよ、アオイちゃん」
 「ぜんっぜん、嬉しくないよ……」
 そう言いつつも、あきらめ顔で、スリップを受け取ってかぶる葵。
 己れの羞恥心を度外視すれば、紫の言ってること自体は現在の状況下では真っ当なものだし、それに従うのもやぶさかではない。
 ──もっとも、紫がノリノリで楽しんでいることには、いまいち納得がいかないが。
 「さて、次はアレね」
 「アレ、ですか……」
 壁にかけられたその衣装(コスチューム)をふたりの視線が捉える。
 その視線の先にあるのは、肩の部分がパフスリーブになった紺色の長袖ワンピースと、フリルでかわいらしく縁取られた白のエプロン。首元の赤いリボンタイがアクセントだ。
 俗に「メイド服」と呼ばれる代物である。
 「今日は土曜だから学校はないけど、使用人としてのお仕事は夕方5時まであるから。それ以降と明日はお休みなんだけど……」
 「うん、わかってるよ、ユカねぇ」
 学年首席の姉貴分ほどではないにせよ、彼だってそれなりに頭は良いほうだ。今の葵は傍目には紫にしか見えないのだから、ここで彼がダダをこねれば、紫の評判に影響する。その程度のことは葵だって十分理解していた。
 溜め息をつきながら、自らのメイド服を着せけてくる紫に身を任せる。
 「──で、頭にカチューシャを付けて完成、っと。あ、忘れてた。えーと……」
 再びタンスをゴソゴソ漁る紫。
 「はい、ストッキング。これくらいは自分で履けるでしょ」
 「そりゃ、まぁ……」
 前後だけ紫に確認してから、葵はベッドに腰掛け、メイド服のミディ丈のスカートをめくりあげた。
426次期当主はメイドさん!?:2010/09/23(木) 08:56:41 ID:8/Kl7LaZ
 (あ……)
 男にしては生白く、すね毛もほとんど見当たらない自分の脚が、黒いスカートの中から突き出ている様は、なんだか妙に扇情的だ。
 僅かに目を逸らしつつ、葵は紫に教わったとおり黒いパンストを履く。
 伸縮性の強いナイロン繊維が、つま先、くるぶし、ふくらはぎ、太腿と順に包んでいく感触は、不思議な心地よさがあった。
 視覚的にも、スラリとした足が黒いナイロンの細かい網目に覆われていく様子は予想以上に艶めかしいが、極力意識しないよう努める。
 それでも、パンティ部分を腰まで引き上げた時は、その優しく締めつけるような刺激に思わずショーツの中の分身が反応しそうになったため、慌てて頭の中で素数を数える。
 「は、履いたよ」
 「どれどれ……うん、よし。じゃあ、アオイちゃん、ごたいめーん!」
 頭のてっぺんから足先まで彼の姿を眺めた紫は満足げに頷き、背後から葵の両肩に手を置いて姿見の前に押しやる。
 「え、ウソ……」
 鏡に映る自分の姿を見て硬直する葵。
 見苦しかったわけではない。むしろ真逆で、あまりに自然だったのだ。
 化粧ひとつしてないにも関わらず、そこに映るのは、どこからどう見ても気弱そうなメイド少女そのものだった。
 「似合うとは思ってたけど、これ程とはねぇ。つくづくアオイちゃんは生まれて来る性別を間違えたと思うわ」
 普段そうからかわれた時は、すぐさま否定するのだが、この時の彼は自失状態だったせいもあって、つい素直に頷いてしまう。
 「うん、そうかも……」
 「へっ!?」
 かえって紫のほうが驚いてるようだ。
 おかげで、葵は自分を取り戻すことができ、クスリと笑った。
 「でも、よく考えると、今の僕って、他人にはユカねぇの姿に見えるんでしょ? 別に僕自身が似合うかどうかは関係ないんじゃないかなぁ」
 「うーん……でも、身だしなみをキチッとしてるかどうかは、わかるんじゃない?」
 成程。それも道理だ。
427次期当主はメイドさん!?:2010/09/23(木) 08:58:55 ID:8/Kl7LaZ
 ベッドに並んで腰かけ、互いに今日の予定について話し合う。
 「じゃあ、わたしもアオイちゃんの部屋に行って普段着に着替えてくるから。アオイちゃんは……そろそろ台所に行って春季さんのお手伝いしてきて」
 本来、紫の仕事は葵付きの侍女兼秘書だ。皿洗いや配膳くらいならともかく、厨房の手伝いまでする義務はないのだが、謙虚な彼女は他のメイドの仕事もできるだけ手伝うようにしていた。
 「うん、わかった」
 「あ、それとしゃべり方にも気をつけてね。アオイちゃんは、あんまり乱暴な言葉遣いするほうじゃないからいいけど、自分のことを「わたし」って呼ぶのと丁寧語を心がけて」
 「ええ、わかりましたわ、あおい様……こんな感じ?」
 「ププッ、何それ、似非お嬢様っぽい。普段はそこまでしなくていいけど……いや、そのくらい心がけてるほうが、ボロが出なくていいかな。
 じゃあ、またあとで会おう、ゆか姉!」
 ウィンクひとつ残して颯爽と部屋を出ていく紫──「あおい」を見送った後、葵も覚悟を決め、「ゆかり」として台所を手伝いにいくのだった。

#ちょびっと予告より遅れちゃいましたので、その分、いつもより長めに書いてみました。
#メイド服のくだりは、偉大なる先達340-345をパスティーシュ。
#紫のメイド服は、某雪さんが着用してる奴のスカートを膝が隠れるくらいの丈にしたものを想像していただければ、大体正解です。
428名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 01:06:18 ID:xjt+KqA0
ほっしゅ
それにしても、ここは本当に過疎ってるなあ
良作があってもこれだよ!
429名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 12:00:58 ID:l7AeFQ7L
FT-type2に新作が来てるなぁ、ここぽい話だな
430次期当主はメイドさん!?:2010/09/27(月) 21:16:41 ID:lfrGgjG5
#428さんナイス保守! ひょっとして自分以外誰もいなくて、オナニー投下してるのかと思いました。


 紫のメイド服を着た葵は、廊下を歩きながら窓に映る自分の身体をチラチラと見ていた。
 (うーーん、なんて言ったらいいか……)
 似合っている。それを着ているのが高校2年生の少年だとは思えないくらいに。
 中学生くらいまでならともかく、高校生ともなれば男性は少なからず、いかつく筋肉質になり、手足が筋ばってくるものだ。
 無論、遺伝や運動その他の諸条件で多少の個人差はあるだろう。実際、葵とて一族の中ではあまり得手ではない方だとは言え、まがりなりにも桐生剣術の基礎くらいは修め、毎日素振りなどもしているのだ。
 普段、学ランなどを着ている時は、多少小柄ではあるが普通の少年に見えるし、裸になれば、その細い身体が、バランスよく鍛えられたしなやかな筋肉で覆われていることがわかるだろう。
 ところが、今のように身体の大半を覆う衣服、それも女物を着てしまうと、優しい印象の整った小顔と、華奢な体つきのために、完全に女の子に見えてしまうのだ。
 自分でも多少自覚はあったので、中学の頃から文化祭などで女装させられそうなイベントなどは巧みに回避してきた葵だったのだが……。
 (なんでだろう。ユカねぇの服を着ることにはあんまり嫌悪感がないんだよねー)
 さすがに自分から進んで着たいとは思わないが、自室で紫が着せてくるのには殆ど抵抗しなかったし、今もそれほど違和感はない。
 ひとつには、小さい頃から慕っている姉代わりの女性の着衣だから、というのはあるかもしれない。
 こうやって紫のタンスから取り出した彼女の下着を身に着け、昨日まで彼女が着ていたはずのメイド服をまとっていると、何だか優しい彼女の腕の中に抱きしめられているような、奇妙な安心感があるのだ。
 (それに……女性の服って、肌触りとか着心地がいいんだよね)
 幼い頃の遠い記憶が甦る。当時、紫の家で彼女のお古を着せられた時は、周囲の人がみんな「可愛い可愛い」と褒めてくれた。
 「そうしてると、紫ちゃんと葵ちゃん、まるで姉妹みたいね」と言われてうれしかった。
 (たぶん、僕は……ユカねえの「弟分」じゃなく「妹」になりたかったんだ)
 あるいは、紫の分身に──紫みたいな素敵な人に。
 そして、紫の服を着ている時だけは、その願いが叶うような気がしていた。
 けれど、大きくなるにつれ、それは単なる幻想に過ぎないと知り、その時から、葵は「紫の妹」であろうすることを諦めたのだ。
431次期当主はメイドさん!?:2010/09/27(月) 21:17:31 ID:lfrGgjG5
 「その願いが……まさか、こんな形で叶うなんてね」
 元に戻るまで、葵は自分達以外のすべての人に「六道紫」として扱われるのだ。
 いや、自分と本物の紫でさえ、人目がある時は、それぞれ今の「立場」にふさわしい言動をせねばならないだろう。
 それは、必ずしも容易ではないが、今の葵にとっては、単に「次期当主」の責務から解放されたという以上にワクワクするような状況だった。
 そうこうしているうちに、台所の前まで着た。
 なんとなくカチューシャの位置やエプロンのリボンを確認してから、意を決して葵は台所の扉を開けた。
 「お、おはようございまーーす!」
 途端に朝の厨房特有の熱気と食物の匂いが鼻をくすぐる。
 「あら、紫さん、今朝は珍しく遅かったわね」
 コンロの前で味噌汁の味見をしてたと思しき30歳くらいの女性──メイド長の牧島晴香が、ちょっとだけ驚いたような声を投げかけてくる。
 「す、すみません。目覚ましを止めてしまったみたいで……」
 あらかじめ考えておいた言い訳をする。
 「あらあら……たしかに春眠暁を覚えない時季だしね。あ、でも紫さんの場合は、遅くまでお勉強してたからかな?」
 穏やかな気性のメイド長は別段怒ってはいないようだ。
 そもそも、この朝餉の支度の手伝いは、紫が自主的にやってることなのだから、2、3日サボっても差し支えはないだろう。
 それでも、律儀に代理として葵を寄越す紫も紫なら、それに従う葵も葵、似た者同士の生真面目さんなのだろう。
 もっとも、目の前のメイド長には、今の葵は「紫」に見えているワケだが。
 「ええっと、今からだと何をお手伝いしましょうか?」
 紫の格好をした葵(ややこしいので、以下「ゆかり」と表記する)は、テーブルを見渡したが、すでにほとんどの料理は出来上がっているようだ。
 「うーん、あとは焼き魚だけだけど、それも焼き上がるのを待つだけだから……あ、お漬物を切っておいてくれる?」
 「はい、わかりました」
 味付けその他の難度の高い作業を任せられなかったことに「ゆかり」はホッとした。
432次期当主はメイドさん!?:2010/09/27(月) 21:17:53 ID:lfrGgjG5
 こう見えても(いや、見かけ通りという説もあるが)家庭科の成績は優秀なのだ。
 沢庵やキュウリ、茄子の漬物を切って盛りつけるくらいならわけない。
 流しのそばの調理台にまな板を置き、鼻歌混じりに包丁を使う「ゆかり」。
 1分と立たずに、皿には色鮮やかな漬物が盛り付けられていた。
 ──が、それをビックリしたような目で見るメイド長。
 「紫さん、腕を上げたわね。いつもは、いちいち確認しながらゆっくり丁寧に切り分けてるから結構時間かかるのに」
 「! あ、あはは……練習、したんですよ、これでも」
 忘れていた。紫の数少ない欠点……と言うか不得意なジャンルが料理だったのだ。
 無論、あの優等生で努力家の紫のことなので、料理が全然出来ないとか激マズな代物が出来上がる──ということはない。正確には、この屋敷に来た当初はそれに近かったのを、根性で克服したのだが。
 とは言え、掃除や洗濯、裁縫などに比べて、不得手な分野であることには変わらず、未だなみならぬ苦労しているようだ。あるいは、朝食の支度を手伝っているのも、その練習のつもりなのかもしれない。
 対して、手先の器用な葵の方は先ほども言った通り、家庭科や図画工作は得意とするところ。
 さらに、剣士としても、標準的な打ち刀を振るう紫に比べて、葵は小太刀や懐剣などの短めの得物を使う方に適性がある。包丁程度の刃物であれば、それこそ己が手の延長のように自在に操ることが可能だ。
 その気になれば、キャベツ丸一個の千切りを30秒フラットで終えられるという、あまり意味のない特技も持っているくらいだ。
 「まぁ、紫さんは、相変わらず頑張り屋ねぇ」
 一瞬冷っとしたが、幸い普段の紫の性格から、怪しまれることはなかったようだ。
 「ん、お魚も焼けたわね。さ、お盆に並べて、旦那様達のおられる居間まで、運びましょ」
 「はい、わかりました」
 (あぶないあぶない……ユカ姉の普段の行動を詳しく思い浮かべて、それをなぞるようにしないと)
 内心、冷や汗をかきながらも、メイド長の指示に従い、配膳の準備をしていく「ゆかり」なのだった。

#ちなみに、葵の外見は、「ハルヒ」の脇役・国木田くんを思い浮かべてもらうと、大体合ってるか、と。次回は、いざ、父上とごたいめーん。
433名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 18:18:41 ID:eRHxuERI
気付いたらたくさん来てる!
続き待ってます(`・ω・´)
434名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 18:43:47 ID:JPOGyYF8
FT-type2の新作、美味しいところに入る前に終わってしまった
435次期当主はメイドさん!?:2010/10/05(火) 01:38:24 ID:RtVmTfcx
 食器を満載したお盆を両手で持ち、メイド長の晴香のあとに続く。
 ちなみに、「メイド長」という大層な肩書がついているものの、この屋敷に常勤するメイドは彼女以外にふたりしかいない。あとは、臨時アルバイトが水金と火木、土日にそれぞれひとりいる程度だ。
 紫は、まだ学生との二足の草鞋だし、葵直属ということもあって、厳密にいえば晴香の指揮系統には所属していない。
 もっとも、調理・清掃・裁縫といったメイドに必要な家事技能もさることながら、仕える相手を思いやり、快適な生活をサポートするという点において、先代メイド長である母の薫陶を受けた晴香は、非常に有能だった。
 その流れるような挙措と言い、的確に主の意を汲んで動くタイミングと言い、メイドとして見習うべき部分は多々ある。
 (……って、まじめなユカねえなら、考えるだろうな)
 実際、今まで給仕される側だったから気付かなかったが、紫の立場に立てば見えてくるものは色々あった。「ゆかり」としても、それだけでこの入れ替わりは実行してよかったと思う。
 また、前から思っていたように、やは自分は人から指示されて動くなら、それなりに器用な働きを見せられるようだ。
 (何せ、これまで見てただけのメイドさんの業務を、それなりにしっかりこなせてるもんなぁ)
 いくら常日頃「見ていた」とは言え、また、彼が家庭科方面に秀でているとは言え、ぶっつけ本番に近い紫の代役を、こうもスムーズに果たせているのだ。やはり人間、適性というものはあるのかもしれない。
 ──もっとも、実は、そればかりが理由ではないのだが、幸か不幸か「ゆかり」はそのことに気付かなかった。
 座敷に入り、晴香と手分けして料理を卓上に並べ終えたちょうどその時、「あおい」──葵の格好をした紫が、部屋に入って来た。
 「おはようございます、葵様」「……ございます、「あおい」様」
 傍らの晴香に一拍遅れて「ゆかり」も頭を下げて挨拶する。
436次期当主はメイドさん!?:2010/10/05(火) 01:38:45 ID:RtVmTfcx
 「おはようご……おはよう、晴香さん、「ゆか姉」」
 どうやら「あおい」の方も、何とか間違えなかったようだ。
 チラッと「ゆかり」が目配せすると、「あおい」も小さく頷いた。
 程なく、この家の当主である葵の父、桐生院馨が姿を見せた。
 「「おはようございます、旦那様!」」
 今度は晴香と声を揃えて挨拶することが出来た。
 それにしても、自分の父親に対して「旦那様」と呼びかけるのは、何だか奇妙な気分だった。
 もっとも、今の彼は「ゆかり」なのだからコレが自然だし、考えようによっては、あの厳格な父を悪戯(ペテン)にかけているようなモノだから、これはこれで面白いかもしれない。
 今朝は紫が給仕をする当番のようだが、その程度なら普段のみよう見真似でもなんら問題はない。
 「ゆかり」はメイド服のスカートの裾さばきに気づかいつつ、楚々とした動作で馨と「あおい」への給仕を済ませた。
 朝の食卓は、いつも通りほとんど会話らしい会話無しで進んだ。重苦しい沈黙、というわけではなかったが、当主の馨が食事中の会話をあまり好まないので、こればかりは仕方がない。
 もっとも、ここに葵の母にして馨の妻たる夕霧がいれば、まったく様相は異なったのだろうが……。
 いかにも淑やかな大和撫子風な外観に似合わず、夕霧は気さくで話好きなタチだった。彼女がそこにいて笑うだけで、この厳格な屋敷の空気も、随分と明るく華やいだものに変わったものだ。
 「──紫くん?」
 馨に呼びかけられて、一瞬追憶に入りかけていた「ゆかり」は自分を取り戻した。
 「へ!? あ……何でございましょうか、旦那様?」
 かろうじて、「メイドのゆかり」らしい態度を保持する。
 「いや、そんなに畏まらないでくれたまえ。以下の話は、「葵付きの侍女」としてではなく、「我が姪にして葵の従姉」たる君への話だと思ってくれ」
 意外な馨の言葉に、「ゆかり」のみならず「あおい」もまた、驚きに軽く目をみはる。
 しかし、それ続く彼の言葉はさらにふたりに当惑をもたらすものだった。

#なんというノロノロ進行! まぁ、保守代わりと思ってください。
437名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 21:39:36 ID:zIZX3HBT
投下継続中の「次期当主はメイドさん」も嫌いじゃない(というか、むしろ大いにアリ)なんだけど、
個人的には、女子高に通う16歳の女の子(やや腐女子・ショタ趣味アリ)と、小学6年生の男の子(スポーツ大好き元気少年)の入れ替わりとか、妄想してみると胸が熱くなる。
小学生男子になった少女は「生ショタキタ! ハアハア……」と歓喜(もちろん、入れ替わりはコチラが仕掛けた)。少年の親友を誘惑して、エロいことしてしまう。
(親友は親友で、「どうしよう、男どうしなのに、なんか最近アイツが色っぽく見えて、その……困る」状態)。
女子高生にされてしまった少年は、最初は戸惑うものの、持ち前の天真爛漫さを発揮。ほぼ幽霊部員(この高校は部活参加が義務)だった少女と異なり、運動系の部活に積極的に顔を出すようになり、先輩に気に入られる。
(部活は、少年っぽさを残すならソフトボールとか剣道とかだろうけど、あえて逆の新体操部とかフィギュアスケートで。バレー部や水泳部もアリかな)

2年後、(性器以外は)外見も精神もリッパな男子中学生(しかも厨二病気味)となった元・少女が、テレビでインターハイで活躍する(やはりアソコ以外は)どう見ても美少女な元・少年の姿を見て、オカズにする……とかね。
438名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 22:25:37 ID:mFg4X9V8
>>437
そこまで出来てるんなら、楽しみに待ってるよ
439人気モデルの堕落:2010/10/05(火) 23:35:57 ID:kPBFnld9
私はそこそこ(というよりも割と)名前の知れている大学に通う女子大生です。
多分、普通の女の子よりもかわいい部類に入ると思う。
そんなことを言ったら自意識過剰な女だって普通だったら言われるかもしれないけど、
そういうのには理由があってモデルや女子アナを
多数輩出している大学のミスコンに去年最終候補まで残って、
グランプリは逃したけど、準優勝はもらったのです。
それでミスコンに出てから読者モデルをやらせてもらえることになって、
お嬢さん系女子大生御用達の某雑誌にも毎月私の写真が載っています。
そして普段からもお化粧したり、食事にも気を使って太らないようにしたり、
ファッションにもお金をかけていかに自分の女子力を上げて、
女の子を楽しむことに毎日充実した日々を送っています。
だからまあまあカワイイ女の子っていうことを信じてもらえたら嬉しいなって思います。
それが私の自信になっているからね。
440人気モデルの堕落:2010/10/05(火) 23:36:24 ID:kPBFnld9
そんな私ですが、中学校の同窓会に行ったのです。
元々の友達もいたけど、男子だと卒業以来5年ぶりって人も多かったので懐かしかったです。
やっぱり5年経つと変わっている人は変わってて、
ガリ勉(死語?)風の男子がそれなりのイケメンになってたり、
垢抜けてると見てて楽しいなって思いました。
でもその中で人目を引いたのが太志っていうデブだったんです。
太志は中学時代にいじめられっ子で割と男子にひどい目に合わされていました。
太志は当時からものすごく太ってた上に不潔で、
そして私はよく分からないのですがアニメが大好きだったみたいです。
彼は勉強が出来れば高校に行って世界が変わったのかもしれなかったのですが、
残念なことに成績が悪かったので、いじめっ子(不良)と同じ高校に行ってしまい、
そこでもいじめられて学校を中退したらしいです。
私は全く接点がなかったし、話をしたことは多分なかったと思います。
なぜ太志のことをそんなに知っているかというと、
太志は私が中学3年間ずっと一緒のクラスで名前と顔だけは覚えていたのです。
そしてそんな体型やひどい顔だったので、目にはつくのです。
卒業後についてはたまたま、太志と同じ高校に行った友達が行ったので
人づてに中退の話を聞いたのです。

なぜここで太志の話を書いたかというと、その太志に話しかけられたからです。
彼は非道におどおどとしながら私に近づいてきて、

「あやかさんって今どうしているの?」って聞いてきたのです。

私はそいつに嫌悪感を感じながらもできるだけそれを外に出さないようにして、
近況を簡単に説明してきました。
太志は髪の毛も顔も脂ぎっているし、ヨレヨレのアニメ(萌え系?)が
大きくプリントされたTシャツを色あせたジーンズにインをしていました。
そして靴下(白のスポーツソックス!!)は黒ずんで穴も空いていました。

「あやかさんはいいな、そんなに楽しそうな生活をしてて。
ぼ、僕もそんな風に暮らしてみたいよ」

太志はニヤッとして私から離れていきました。正直ドン引きです。
なぜそいつは話したこともない私に声をかけてきたのでしょう?
441人気モデルの堕落:2010/10/05(火) 23:36:50 ID:kPBFnld9
そんな同窓会から約2週間後のことでした。
その日は自分が出ている雑誌をはじめとした同じ系統の女性誌の発売日で、
自分が出ている以外の雑誌を購入しようと学校の本屋に向かいました。
自分が出ている雑誌は毎月送られてくるので買う必要がないからです。
それ以外の雑誌を買っておしゃれの傾向をみたいので毎月複数冊を書い揃えているのです。
私はいつもどおり好きな女性誌を手にとってレジに向かっているはずでした。
しかし自分が手に持っていたのはアニメ雑誌だったのです。
それも巨乳の女の子が描かれた萌え系のです。
なぜ自分がそんなものを手に持っているのか全く理解できませんでした。
それぐらい自然な行動だったのです。
でもそれを買ってしまいました。非常に恥ずかしかったのですが、
レジが終わるとなぜか別に気にならなくなって、
それを家に持って帰って自分の部屋で封を切りました。
帰りにコンビニで買ったビックサイズのポテトチップスの袋に手を突っ込み、
コーラのペットボトルをラッパ飲みしながら、そのアニメ雑誌を読んでいました。
女子高生もののアニメに出てくる脇役のロリ顔で巨乳の女の子がすごく気に入って、
ネットでそのアニメや登場人物のことを一晩中調べてしまいました。
そしてその日中にECサイトでアニメのDVDボックスセットを注文し、
2日後にそれが到着するやいなや1日学校をサボってそのアニメを何度も見たのです。
今までアニメなんてほとんど見たことはなかったのですが、
ストーリーもそうですがその登場人物、
特に好きなロリ顔の女の子にものすごくときめきを覚えたのです。
こんなにカワイイ女の子がいるなんて。

「はあ、はあ、まみたん、すごくかわいいよ」
442人気モデルの堕落:2010/10/05(火) 23:37:25 ID:kPBFnld9
休日ですが普段は渋谷や新宿の某ファッションビルに行って服やコスメを選ぶことが多いです。
ちょうど新しい季節物が並び始めた時期で、
好きなブランドがだしているワンピースやブラウスをチェックしたいと思っていました。
しかし私が向かったのは秋葉原のアニメ関係のお店で、
そこでまみたんのフィギュアを3種類も買ったのです。
そしてさらに同人誌もまとめ買いしてしまいました。
その金額は私が新しい季節物の服を買おうと思っていた予算をすべて消化してしまうくらい。
これで私は次の季節の新作を買えなくなってしまいました。
でも私は満足していたのです。
いとしのまみたんのフィギュアを部屋においておくことができるのですから。
買った同人誌はどれも18禁というアダルトもので、まみたんが複数の男のペニスを咥えて喜んでいたり、奴隷になっている内容のものです。私はそれを読んで非常に興奮し、その日はオナニーを3回もして果ててしまいました。
443人気モデルの堕落:2010/10/05(火) 23:37:47 ID:kPBFnld9
その後1ヶ月間私は普通に学校に通って友達同士でわいわいおしゃべりを楽しんでいました。その中である友達から
「あやか、最近ちょっと太ってない?」
と言われたのです。
確かに体重はひと月で10kg近く増えていました。
毎日のポテトチップスとコーラにはまっているのが原因だと思います。
アニメやネットをしていると口が寂しくなるのでつい手元に常備したくなるのです。
おまけに顔の油分が増えてニキビが出てくるようになり、
髪質もちょっと変わってきたのです。
「ううん、そんなことないよ」
と私はその場を取り繕いましたが、確かに最近の私はちょっと変です。
今まで全く興味も関心もなかったアニメにどっぷりとはまってお金を注ぎ込み、
ここ何年も食べも飲みもしなかったものに中毒状態になってしまって。
でもそれがどうしてなのかわかりませんでした。
単なる自分の嗜好の問題かな、と一方であまり重要にも考えていなかったのです。

その後、私は今までの自分では考えつかなかったような行動にどんどん出ていきました。
まず部屋を片付けなくなりました。
それまでは汚れ一つなく、毎日家に帰ったら服を綺麗にたたんで、
部屋を掃除機をかけて、アロマを焚きながら本を読むのが日課でした。
しかし服は脱ぎっぱなし、ゴミは片付けないので、
コーラの空ペットボトルなどは異臭を漂わせていました。
足の踏み場と座るところがあれば十分なので綺麗になんてする必要はありません。

そして化粧をするのが面倒になったのです。
手間も時間も朝かけたくないし、
夜遅くまでアニメを見たりネットの掲示板に書き込みをしたりしてて眠いので寝ていたいのです。
それに化粧にお金をかけるのがもったいない。
髪だって手入れを全然していません。色がプリンになってきましたし、
まともにクシでとかさなくなったのでボサボサで、
たまに寝癖がついたままになっているほどです。

服も体のサイズに合わなくなったので買い換えることになったのですが、
スーパーの特売で500円で買えるTシャツ、スボンは中学時代のジャージで十分でした。
服だの化粧だのそんなお金があるんだったら同人誌やキャラグッズをもっと買いたいのです。
444人気モデルの堕落:2010/10/05(火) 23:41:14 ID:kPBFnld9
そんな私から友達は自然と離れいきました。
私は学校で一人ぼっちとなりましたが、どういうわけか全くそれを悲しいと思わず、
むしろおしゃれな女の子は苦手になっていました。
むしろチャラチャラとおしゃれをして、
男とのデートを繰り返す彼女たちを憎むようになっていました。
ビッチどもになんの興味もなく、二次元の女の子たちの方がなんの汚れもない、
私の理想像として君臨していました。
彼女たちのことを思い浮かべながらオナニーするのが私の至福となっていました。

そんな日常が当たり前になって2ヶ月が経過する頃、
私は学校にも全く行かなくなって一日中家にいる生活で、
外出するのはアニメ関連のグッズを買いに行くときだけとなっていました。
私はアニメ雑誌を買いに行くために半月ぶりに近くの本屋に外出しました。
体重は20kg以上増えて、顔はニキビだらけで脂ぎっていました。
格好は首周りがダルダルになったよれたTシャツにゆったりしたジーンズでした。
今までのおしゃれな服はどこかに消えてしまい、
家のクローゼットには安い服しかはいっていないのです。
そして外に出るのも着替えるのも億劫だったのです。
445人気モデルの堕落:2010/10/05(火) 23:42:40 ID:kPBFnld9
本屋で私はアニメ雑誌を手にとったあと、
別のコーナーのある雑誌の表紙を見て声を漏らしそうになるほど驚きました。
それは自称愛されお嬢様系、実施は糞ビッチ御用達の女性誌の表紙が、
あの太志だったのです。
太志はふんわりとした女性を全面に出した格好をして、髪もかるく巻いたロングヘア、
顔はきっちりとメイクをして、口角を上げて微笑んでいました。
でもどう見ても表紙は男の太志なのです。
私はお金が惜しいと思いましたが、それを購入しました。
太志は読者モデルから専属モデルに格上げして、
そのデビューということで表紙だったのです。
太志は私の目から見ればどうみても男ですが、
雑誌の中では誰も違和感を持たずに専属モデルの女の子として扱われていました。
「太志ちゃんの秋の愛され女子大生着まわし30日」なんて特集も組まれていました。
糞ビッチらしくインタビューでは恋愛観なども話していました。

そして私はすべてを思い出しました。
もともと私がその雑誌の読者モデルであり、
専属モデルとしてのデビューの話もいただいていたのです。
太志はその私の立場をすべて奪ったのです。
446人気モデルの堕落:2010/10/05(火) 23:43:03 ID:kPBFnld9
その直後でした。私の携帯電話が鳴ったのです。
「もしもし、太志です」
私は息を飲み込みました。
「ついに気づいたかな? じゃあそろそろお互いに会わない?」
太志の言葉の意味がわかりませんでしたが、会って確かめなければなりません。

翌日公園のベンチで待ち合わせをしました。
5分ほどベンチで待っていると、太志が到着しました。
太志はブランド物のバッグを腕にかけて、高そうなコートを羽織って現れました。その格好は完全にモテ系のお嬢様という服装でした。
「あらあら、あやかさん随分変わっちゃったのね」
対する私はどこからどうみてもただのデブで、しかも髪も顔もアブラギッシュ、
濃い緑のチェックのネルシャツをお腹が冷えないようにズボンに入れていましたし、
汚れたリュックにはアニメキャラのシールを張って、
その中には同人誌も詰まっていました。完全にキモオタの格好です。
「いったい、何をしたの?」
私は震える声で言いました。ひどく緊張していたのです。
「まあ、簡単にいうとあやかさんの立場と私の入れ替えたのよ。
キモオタで高校中退の私と、有名大学の準ミスキャンで人気モデルのあやかさんをね。
あやかさんはゆっくりとキモオタへの道を進んでいき、
キモオタ化が完了したのと入れ替わりで、私があやかさんの立場を手に入れたのよ。
私はもともと男だけど、みんな私をかわいい女の子としてみてくれているのよ。
あやかさんを見ていた視線をそのままにね。
あなただけよ、私が男に見えるのは」
「うう、うう、そ、そんなことが、で、できるなんて・・・」
私は緊張のあまりひどくどもってうまく声が出てきません。
447人気モデルの堕落:2010/10/05(火) 23:43:33 ID:kPBFnld9
「あなただってこの2ヶ月のキモオタライフを楽しんでいたんでしょう?
アニメにどっぶり使っているのを知ってるのよ。
引きこもってアニメキャラでオナニーばっかりしてるただのド変態。
どこからどう見たってそうにしか見えないわ」
「う、うるさい、このメスブタが!」
と震える声で叫びました。
「女の子にそんなことを言うなんてちょっとひどくない?
ファッションにも見た目にも興味をなくした代わりに、
二次元に逃避して現実に対して卑屈な態度を取るようになっていったのね。
ただのひきこもりのオタとしてあなたは一生生きていけばいいのよ」
「うるさい、このヤリマンの糞豚女が!!」
私はその場で駄々っ子のように叫ぶことしかできませんでした。
「本当に下品なキモオタね。こんなところで大声で叫んで恥ずかしくないの?
それ以上、私に何か言ったら警察を呼ぶわよ」
私はそれにビビってしまって、何も言えなくなってしまいました。
その様子を太志は勝ち誇った目で私を見下しました。
私は呆然としてそこに座り込んでしまいました。
太志は微笑んで「じゃあね」と回れ右をして去って行きました。

揺れる太志のミニスカートを眺めながら、私は憎しみと欲望を覚えてたのです。
3次元の女に興味をもつなんて驚きながらも、
家に帰ってからオナニーを3回もしました。

その後人気モデルとしてテレビCMにも引っ張りだこになった太志を
オナニーの対象としながらも、
私は彼女に対する罵詈暴言をネットの掲示板に書き込みまくっていました。
あるとき書き込んだ殺人予告が警察の目についてしまい、私は逮捕されてしまいました。
こうしてミスキャンで、人気モデルだった私は、
不潔な100kg近いアニメとアイドルヲタで前科持ちのキモデブに落ちてしまったのです。
448437:2010/10/06(水) 00:50:13 ID:xNkSUOYq
439さん乙です。
太志は、顔はともかく体型的には女性モデルっぽくなってるのかな? ヲタあやかが欲望抱いてるし。


>438
了解。他スレでの連載が終わったら書いてみます。
449名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 03:31:07 ID:GEMclSeN
>>439
とんでもなく凄いのきてたGJ!
久しぶり、読んでて脳がしびれるほど興奮した
450名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 07:03:03 ID:IWwAu42D
ヲタあやかがめっちゃ良いですね。
さらに考えると
学歴などの立場も入れ替わったのだろうかとか
あやかが昔からデブでいじめられっこで
成績の悪い高校中退者になっていて
太志が今は大学生って事になっていて
あらゆる過去も交換されてたりとか考えます。
家から消えたおしゃれな服は太志のものと
勝手に入れ替わっていて住んでる所も知らぬ間に
太志の安アパートとあやかのマンションが入れ替わってたりとか…
451名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 23:52:17 ID:b6P0c8mU
美人モデルとキモヲタの超絶立場入れ替わりキテター!!
真逆な二人がゆっくりとお互いの立場に馴染んでいくのが自然でイイ!!
太志を妬みながらもオナニーするあやか、、、自分に正直すぎるwww
素晴らしいシチュでした、ごちそうさまでしたw
452名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 19:52:52 ID:4AnCMS6b
オツオツオツ!!!11!!1
じわじわとキモヲタになっていく描写に興奮しました!11
453名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 13:25:21 ID:5AY0pD2J
#「次期当主はメイドさん」作者です。そちらの展開を練りつつ、気分転換も兼ねて、437の妄想をテキスト化してみました。

『美幸16歳、職業・男子小学生』

 「ハァ、ハァ、ハァ……」
 まだまだ残暑が厳しい8月の末だというのに、その部屋の主はドアも窓も閉め切って、ひとり部屋に籠っていた。
 ドアを入った真正面には勉強机があり、棚の上には教科書類が並べてある。
 また、机の前の椅子に黒いランドセルがかかっており、壁の一面には、ロボットアニメと特撮ヒーローのポスターが貼ってある。どうやら小学生の男の子の部屋らしい。
 さらに向かい側の壁にかかったユニホームや、部屋の片隅に転がっているサッカーボールからして、どうやらこの部屋の主はサッカー好きのスポーツ少年といったところか。
 「ハアハア……この布団の匂い……へへっ♪」
 しかし、その部屋の主は今、机の脇のベッドの上に寝そべって「ひとり遊び」の最中だった。
 無論、小学生だって早熟な子ならオナニーくらいする。ユニホームのサイズからして5、6年生くらいだろうから、覚えたて自慰行為に夢中になっていてもおかしくない。ないのだが……。
 どことなく、「彼」の様子は変だった。
 うつ伏せに布団に突っ伏して、まるで何かに酔ったように懸命に深呼吸を繰り返す。
 あるいはゴロンと仰向けになり、部屋の中を見回して「フヒヒ……」と不気味な笑いを漏らす。
 さらに、壁から外したサッカーユニホームを顔に押し付けながら、半ズボンとブリーフをズリ下げ、性器を弄ぶ。
 いや、待った! サッカー少年にしては妙に生白い肌も奇妙だが、それ以上におかしなコトがある!
 「彼」の下半身には、男なら老若問わず存在しているはずの突起物が見当たらない。代わりにそこにあるのは、薄い柔毛におおわれた割れ目──平たく言うとオマ●コだ。
 よく見れば、Tシャツを着た胸も僅かだが膨らんでいるように見える。
 それでは、この「少年」は、単なる男装趣味の少女なのだろうか?
 ──実は、それも正解ではなかった。
 「くはっ! あたしが……ショタっ子に……アイツの立場になってるかと思うと……ひはっ! そ、それだけで感じちゃう!!」
 少女は、いつものように乳首や襞をいぢろうとする手を自制し、クリトリスへの愛撫に専念する。まるで、それが自分のペニスであるかのように。
 「おほっ! ち、チンチン、あたしの……オレのちんちん、シゴくと気持ちいいよぉ!」
 ワザと卑猥な言葉を口にしつつ、慣れない小突起への愛撫に没頭していると、精神的なものもあるのか、本当に感じてきたようだ。
 程なく、「少年」のふりをした少女は、ビクンビクンと身体を震わせてイッた。その際、股間から、まるで精液のように潮を吹いた事柄も、よりいっそう彼女の歪んだ性的嗜好を満足させてくれた。
 「ククク……やった! ついにクリトリス……ううん、ペニスだけでイケるようになったゾ!」
 下半身丸出しのまま、ムクリとベッドの上に起き上がった「少年」は、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべていた。
 「ははっ、今頃、アッチの……あの子の方はどうしてるかねぇ」
 ショートヘアながらそれなりに整った容貌の少女なのに、その笑みはひどくいやらしく歪んで見えた
454美幸16歳、職業・男子小学生:2010/10/10(日) 13:26:07 ID:5AY0pD2J
 彼女──早川美幸(あさくら・みゆき)が、その奇妙なアイテムを見つけたのは、ほんの偶然だった。
 パッと見はちょっと地味な文学少女風の(そして実際、名門学園に通う高校一年生でもある)美幸だが、実はバリバリのヲタク少女である。
 いや、男性向けアニメを好んで見つつ、少年同士の関係に想いを馳せる彼女は、むしろ腐女子と言うべきか。もっとも、まだ自分で描く域までは踏み込んではいないが……。
 そんなインドア派な彼女の腐関連以外の数少ない趣味が、フリーマーケット巡りである。と言っても、遠出することはめったになく、近所で開かれる2、3のフリマを覗きにいく程度なのだが。
 その日も、冷やかしに近い気持ちで、駅前公園で開かれたフリーマーケットを覗いてみたのだが……中にひとつ、妙に気になる品が出品されていたのだ。
 「「鳥魚相換図」? 何て読むんだろ?」
 古ぼけた2枚の水墨画は、しかし妙に彼女の琴線に触れたのだ。「ティンと来た!」というヤツである。
 「あ〜、それは「ちょうぎょそうかんのず」って読むらしいよ。なんでも、さる旧家の家宝だったとか」
 黒いフード付きパーカーを着た軽薄そうな店番の青年が、見かけによらず落ち着いた口調で説明してくれる。
 「家宝って……こんな小汚い水墨画が?」
 別段、日本画に詳しいわけではないが、教科書などで見た狩野何某とかのソレと比べても、明らかにその絵の技術は稚拙で、さほど値打ち物とは思えない。
 「ははっ、確かに、ソレの美術品としての価値は大したことはない。せいぜい1万円かそこいらさ。でも……それには特別な付加価値があるんだ」
 悪戯っぽい笑みを浮かべた青年が説明してくれたその絵の「機能」は、とても信じ難いものだった。
455美幸16歳、職業・男子小学生:2010/10/10(日) 13:26:33 ID:5AY0pD2J
 この2枚の絵を枕の下に敷いて眠れば、目が覚めた時、そのふたりの「立場」が入れ替わると言うのだ。
 「正確には、「入れ替わってるように見える」と言うべきかな」
 「どういうこと?」
 「つまり、AさんとBくんが、この絵を使うと、その後、本人達以外の人には、Aさんの姿がBくんに、Bくんの姿がAさんに見るようになるらしいね」
 万が一それが本当なら、とてつもない値打ち物だ。
 美幸にだって変身願望くらいはある。ブスとは言わないまでも十人並みのルックスしか持ってない自分が、たとえば全校生徒の憧れの的の美人生徒会長と入れ替われたら……なんて考えただけで胸が熱くなる。
 小遣いをもらったばかりで懐が暖かったこともあって、美幸はついソレを5000円で買ってしまった。

 もっとも、青年いわく、このアイテムにはいくつか発動のための必要条件があるらしい。
 多少のズレがあってもよいが、同じ時間帯に寝ること。
 使用の際に両者の合意が必要とされること。
 たったこれだけだが、これでは見知らぬ他人に勝手に使うと言うのは難しいそうだ。
 それに、本当に効果があるのか、事前に実験しておく必要もあるだろう。
 しかし、実験相手については美幸には心当たりがあった。
 ちょうど今夏休みということで、県外から家に泊まりがけで遊びに来ている従弟がいるのだ。
 浅倉要(あさくら・かなめ)という、小学6年生の元気な男の子で、多少ガサツなきらいはあるものの、ショタ趣味もある美幸からすると、「すごく美味しそうなコ」だ。
 無論、リアルで年端もいかない従弟に手を出すと色々マズいので、ごく普通に「親戚のお姉ちゃん」をしているのだが、無意識に優しく接しているせいか、要は美幸のことを「お姉ちゃん」と呼んで慕っていた。
 ──あの子なら、あたしの言うことを聞いてくれるはず。
 そう確信している美幸は、実験台(イケニエ)として要を使うことを決意していた。
456453:2010/10/10(日) 13:28:37 ID:5AY0pD2J
#以上です。ネタ元の方に異論がなければ、続けます。
#ちなみに、美幸の女性視点で始まってますが、次回は女子高生として暮らす要くんに焦点を移します。タイトルは「要12歳、職業・女子高生」です。よろしければ、気長にお待ちください。
457名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 15:42:29 ID:1K7p+YeJ
また新作が来てたっ!
いいですねぇ、女子高生とショタの立場入れ替えも(*´∇`)
どちらにもメリットがあってお互いに楽しめそうw
続きが楽しみ!期待してます!
458437:2010/10/12(火) 11:39:52 ID:EU5l7/po
>>456
問題ない。続けたまえ……ってか、ぜひお願いします
459名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 13:52:53 ID:tZWKguBs
最近は人が多くていいね
楽しみにしてます
460名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 21:37:27 ID:HHjIkcvL
>>456
どうも
要くんが自分の女下着にハァハァしたり
女子更衣室で他の女の子の裸にハァハァしたりするのかな
461『要12歳、職業・女子高生』その1:2010/10/16(土) 04:42:40 ID:wrExkWWV
#「当主メイド」の人です。先に要くんの話の冒頭部が書けたので投下します。


『要12歳、職業・女子高生』その1

 「早川美幸」(はやかわ・みゆき)と呼ばれる「少女」は困っていた。あるいはフリーズしていたと言ってもいいかもしれない。
 「コレ……着ないといけないんだよね?」

 * * * 

 早川美幸が通う星河丘学園の高等部は基本的に全寮制で、彼女もまた寮暮らしだ。ただ、今年の一年の入寮生が奇数だったため、運良くひとりで寮の部屋を占有することができている。
 例年にもまして暑かった8月も終わり、今日は二学期が始まったばかりの9月2日。「美幸」も一昨日の31日の午後に女子寮に「戻り」、学校に通う準備を整えてはいた。
 「そのお陰で」、始業式のある昨日は、それほど大きな問題もなく過ごすことができた。

 星河丘には中等部も併設されており、高等部における内部進学者と外部生の割合は、おおよそ半々といったところだ。
 早川美幸は高校からの外部進学組ではあったが、それにしたってすでに一学期のおよそ3ヵ月半ほどをこの学園で過ごしている。
 夏休みをはさんだとは言え、そろそろこの学校にも慣れそうなものなのだが、新学期からの「彼女」の挙動にはどこか新鮮な驚きと戸惑いが見られた。
 まるで、「初めてこの学園に来た」かのように……。
462『要12歳、職業・女子高生』その1:2010/10/16(土) 04:43:23 ID:wrExkWWV
 ──思わせぶりな表現をしたが、もうおわかりであろう。
 本物の美幸が小学6年生の男の子として暮らしている以上、ここにいる「美幸」は偽物なのだ。
 無論、その正体は、美幸に自分の名前と立場を取られた従弟の浅倉要(あさくら・かなめ)にほかならない。
 いや、「取られた」と言うのは少し異なるか。「(強制に近い)合意の上で、入れ替わりに同意した」というのが正確な表現だろう。例の「家宝」は使用者双方の同意がない限り発動しないのだから。
 また、従姉の勢いに流された部分があるとは言え、要も多感なお年頃の男のコだ。「年上の少女の肉体」に(性的なものも含めた)好奇心や興味は大いにあった。
 と言うか、あの小汚い絵に、まさか本当にそんな能力があると信じていなかった……というのが一番大きかったが。「やれるものならやってみろ」というヤツだ。
 もっとも、そんな彼の心境をよそに、見事に鳥魚相換図はその効果を発揮し、本人同士以外の人の目には、要は「美幸」に、美幸は「要」にしか見えなくなったワケだが。
 
 もっとも、当初ふたりは、仮に成功しても2、3日で元に戻るつもりだった。
 美幸の方はあくまで「本命」の前の「実験」のつもりだったし、要だって、泊まりがけで遊びに来ている美幸の家から帰るときには、元の自分でいようと考えていたのだから。
 ところが。
 浅倉家の事情(父方の祖父が危篤?)で、要が予定を1日くり上げて帰らねばならなくなったことから、非常に困った事態になってしまったのだ。
 要の両親が早川家に迎えに来た際、当の要は「美幸」として駅前のゲームセンターに遊びに出かけていた。
 その代わりに、早川家には「要」にしか見えない美幸がいるワケで、巧い言い訳を考える前にあわただしく「美幸」は車に乗せられ、早川家から遠く離れた祖父の家へと連れて行かれてしまったのだ。
 無論、ゲーセンから帰ってきた「美幸」な要は、極力平静を装ったものの、内心は焦りまくりだ。
 幸いにして要の祖父の容体が深夜には小康状態を取り戻したため、翌朝美幸の方から電話がかかってきたのだが、ふたりとも、すぐに元に戻る方法は思いつかなかった。
 やむなく、しばらくは無難に互いのフリをする……ということを不承不納得するしかなかったのだ。
 結局、要を含めた浅倉家は、祖父の容体が完全に落ち着くまで祖父の家に留まることとなり、そうこうしているうちに8月も残すところあと少しになってしまう。
 不思議なことに、小六男子に見られている美幸はともかく、女子高生のフリをしている要の方も、周囲から特に怪しまれるようなことはなかった。
 無論、互いに家族の目を盗んで電話で連絡を取り合い、必要と思える知識を教えあうようにはしていたが、それだけではどうしても不備が出る。とくに年上の少女に扮する要の方は、なおさらだ。
 しかし、知識が足らずに戸惑うような局面であっても、なんとなく思いつきで動いたら、うまくやり過ごすことができていた。あるいは、コレもあの鳥魚相換図の力なのかもしれない。
463『要12歳、職業・女子高生』その1:2010/10/16(土) 04:44:49 ID:wrExkWWV
 ともあれ、結局、「要」な美幸が浅倉家に「戻った」のは、30日の夜になってからだった。31日の午後には美幸は学園の寮に戻る予定だから、まさにギリギリのタイミングである。
 しかし……。
 「え! 戻るのを延期する!?」
 美幸から「自宅に戻った」という電話を受けて、ホッとしていた要だが、思いがけない相手の言葉に驚く。
 「うん。そもそも、夏休みが終わる1日前にわざわざ「要」が「おじさんの家」に遊びに行く理由がないでしょ」
 「じゃ、じゃあ、ボクの方がソッチに……」
 「それこそ、説得力がないわよ!」
 確かに、美幸が浅倉家に遊びに来たことは片手で数える程しかない。
 「じゃあ、どーすんのさ!」
 「まぁ、落ち着きなさい。再来週の日曜の翌日が敬老の日で休みになるから3連休でしょ。その時、寮からウチに戻って来るのよ。あたしの方も、適当な理由つけて「遊びに行く」から、その時一緒に昼寝でもして戻ればいいわ」
 「えぇ〜、それじゃあ、ボク、これから3週間もお姉ちゃんのフリをするのー?」
 「そういうコトになるわね。でも、これはアンタにとっても悪い話じゃないはずよ。男子の憧れの秘密の花園である女子寮に堂々と入れるなんて、ラッキーじゃない」
 確かに、そう言われるとそんな気もしてきて、要の抗議の矛先も鈍る。
 「それに、アンタ、いつも「早く大人になりたい」とか言ってたじゃん。女子とは言え、高校生の立場を経験できるんだから、一時的にその夢がかなうわよ。
 ウチの学校、何気に設備は整ってるし、体験留学でもするつもりで気楽にドーンと構えてなさいな」
 「ええっと、お姉ちゃんがソコまで言うならいいけど……でも、さすがにボクじゃあ勉強とか全然わかんないよ?」
 外で遊ぶのが好きな元気少年にしては要の成績は悪くないが、しょせんは公立小学校の6年生。名門高の授業についていけるとは思えない。
 「アハハ、だいじょーぶ! あたしだってたいした威張れた成績じゃないから。そうね、授業中にノート取るのだけキッチリやってくれればいいわ」
 こうして、理論的な退路を断たれ、また少なからず好奇心も刺激された要少年は、「早川美幸」として、しばらくのあいだ学園の女子寮で暮らすことになったのである。
464『要12歳、職業・女子高生』その1:2010/10/16(土) 04:45:23 ID:wrExkWWV
 そこは、(たぶん母親の手が入っているだろう)早川家の美幸の部屋とはうって変って、何と言うか「女の子らしくない」部屋だった。
 「女の子の部屋」と聞いてミユキが連想するぬいぐるみも、レースのヒラヒラも、パステルカラーの家具類もまるで皆無。代わりに、何か(実は萌えアニメ)のキャラクターらしいフィギュアが数点、本棚に飾ってある。
 壁に男子向けアニメのポスターが数枚貼られている点は、ミユキとしても親近感が湧くが、カーペットやベッドの上に雑誌類が散乱しているのにはゲンナリする。こう見えてもミユキは綺麗好きなのだ。
 家から持ってきたボストンバッグを、ひとまず洗面所に置き、ミユキは着替えもせずに部屋の整頓にとりかかった。
 さすがに他人のものを勝手に捨てるワケにはいかないので、雑誌は紐でくくって部屋の隅へ。本は本棚に戻せるものは戻し、入りきらなかった何冊かは、机の端に大きさを揃えて積む。
 よく見ると埃がたまっているようなので、窓を開けたうえで、洗面所の隅にあった掃除機のスイッチを入れる。
 「ふぅ……こんなトコロかな」
 途中、ベッドの下から見つけた「男の人(?)がエッチなコトをしてる本」(BL同人誌)には流石に焦った。
 健全な男子小学生としてのメンタリティを持つミユキとしては気持悪かったが、おそらく男子にとっての「お宝本」と同じような代物だと推察されたので、黙って元に戻しておいた。
 武士の情けというヤツだ。よくデキた小学六年生である。
 ──実は、この時点でソレを目にしたコトが、あとあと「彼女」が送る学園生活に大きな影響をもたらすのだが……まぁ、それは別の話である。

 汗をかいたので軽くシャワーを浴びて、そのまま部屋着──長めのTシャツとショートパンツといった格好に着替える。
 「ふぅ、やっとひと心地ついたよ〜」
 コロンとベッドの上に転がるミユキ。
 服自体がマニッシュだが女物なのと、成長途中の中性的な容貌があいまって、仮に例の入れ替わりが発生していなくても、今の彼は素で「ボーイッシュな女の子」に見えた。
 むしろ、ある意味ヲタクと腐女子に半分足突っ込んでる美幸本人より、よっぽど清楚可憐に……。
 「──このベッド、お姉ちゃんの匂いがするな」
 ……訂正。匂いフェチとは、コチラも相当なモノのようだ。
 「そう言えば、ベッドだけじゃなくて、服もそのはずだよね。この数日であまり意識しなくなってたけど」
 クンクンと(決してクンカクンカではない)、小鼻をひくつかせるミユキ。
 どうやら特殊な趣味ではなく、単にバカ素直に感じたことを口に出してるだけらしい。
 「ふわぁ〜、これから一ヵ月近くも、無事に過ごせるのかなぁ……」
 当面やるべきことをやって、気が抜けたらしい少年は、どうやらおねむのようだ。
 ベッドカバーの上に突っ伏したまま、ゆっくりと眠りの世界へと引きずり込まれていく。
465『要12歳、職業・女子高生』その1:2010/10/16(土) 04:45:55 ID:wrExkWWV
 ──ターラッタ、タッタッター、ラーラー♪
 しかし、ミユキの意識が完全に睡魔の手に墜ちる直前、部屋のスピーカーから、彼にも聞き覚えのあるメロディーが流れて来たため、寝ぼけ眼を擦りながら、起き上がった。
 「これって……シューベルトの『マス』?」
 一学期の音楽の時間に習った曲のことを思い出す。
 「でも、いったい何だろ?」
 『──夕食の用意ができました。現在寮にいる生徒の皆さんは、ただいまから1時間以内に1階の食堂に降りて、夕食をとってください』
 スピーカーから流れるアナウンスがミユキの疑問に応えてくれた。
 なるほど、寮とあれば食事が出るのも道理だ。
 昼に早川家でご飯を食べてから、6時間以上経っていたため、ミユキも結構お腹が空いていたので、急いで部屋から出る。
 食堂の場所は知らないが……まぁ、他に生徒もいるのだからわかるだろう。

 そしておよそ30分後、ミユキは寮の食事とは思えぬ豪華な夕飯のメニューを堪能し、お腹をさすっていた。
 本物の美幸に釘を刺されていたので、おかわりこそしなかったものの、それでもご飯粒ひとつ残さない気持ちのいい食べっぷりだ。
 ちなみに、本日のメインディッシュはニジマスのキノコのムニエル。選曲は、これに合わせたのだろうか?
 デザートの杏仁豆腐とホット烏龍茶まで堪能したうえで、さて部屋に戻ろうかと思ったところで……。
 「あれ〜、みゆみゆが魚残さずに食べるのって珍しいね?」
 背後から声をかけられた。
 振り向くと、「彼女」よりひと回り小柄で、背中にかかる程の長さの赤茶っぽい髪をサイドポニーにした娘が、お気楽そうに笑って立っている。どうやら美幸と、そこそこ仲が良い知り合いらしい。
 「う、うん。今日はお腹が減ってたから……」
 当たり障りのない返事をするミユキだったが、相手──元気の良さそうな赤毛の少女は首を傾げる。
 「……ま、いっか。それよりさ、こないだ貸したCD返してもらっていいかな?」
 「へ!? うん、いい…わよ」
 従姉の口調を思い出しつつ、しゃべるミユキ。内心は汗ダラダラだ。
 (どうしよう……お姉ちゃん、何のCD借りたのかな?)
 こうなったら、忘れたフリをして相手に聞くしかあるまい。
 女の子を部屋に招き入れ、CDラックに歩み寄りつつ、できるだけ自然な切り出し方を考えるミユキだったが、生憎それは徒労に終わった。
 「ねぇ……キミ、誰? みゆみゆじゃないよね?」

#いったんココで切ります。冒頭の部分まで半分くらいか。いや、女子寮初日は飛ばそうかとも思ったのですが、いくつかお約束な萌えシーンを思いついたもので……次回は、ちょいエロ(つーかフェチ?)なシーンもある見込みです。
466名無しさん@ピンキー:2010/10/17(日) 15:52:46 ID:O+XCGUkK
MMO-RPG「マビノギ」のゲームガイド的存在にしてアイドルである「ナオ」と、
お色気モンスターとして人気の高い「サキュバス」の立場交換。
清純派(?)アイドルとして陽の当たる場所でチヤホヤされて、満更でもないサキュバス娘。
何より、「無理に人を襲わなくても生きていけるのって素晴らしい!」と人間的生活を堪能。
想いを寄せてくれるイケメン騎士にドキドキしたり、思い切って告白して両想いになったり。
その一方で、サキュバスの一体として薄暗いダンジョンの奥深くにさらわれた(ただし、周囲の認識では、そこが彼女の住処)ナオ。
ある時は上位の悪魔に身体を貪られ、ある時は襲ってくる冒険者を心ならずも撃退し、いずれの場合も男の精を上下の口からすすらないと生きていけない身に。
「どうして私がこんなメに」と思いつつ、知らず知らずそんな女淫魔としての生活に馴染んでいくナオなのだった……ってな明暗クッキリな立場入れ換え話。

ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=707164

↑このイラストを見てから、つい妄想しちまったい。
467名無しさん@ピンキー:2010/10/18(月) 10:08:54 ID:Fqlx/ZIK
>>466
衣装交換モノのイラストって、そういう妄想(ユメ)が広がるよね。
ぜひ、SSを!!
ただ、ひとつ言っておくと、ナオさんは現状でも十分にエロい!
……と思うのは、同人に毒され過ぎてるせいかしら。
468名無しさん@ピンキー:2010/10/19(火) 12:58:16 ID:TNsw4XRK
どこで見たのか思い出せないんだけど、昔読んだSSで
「主人公(成人男子)の元に「女の子になってみませんか?」的なダイレクトメールが来る。
 興味を持ってその広告の住所に行くと、SFやオカルト要素なし(たぶん)の
「変装」で小学六年生の女の子(プロフィールも偽造)の格好にされ、薬で声も
変えられる。
 時間制限はあるものの、小六女子の立場を満喫する主人公だったが、弾みで
おもらししてしまいベソをかいているところに、親切なお姉さん(中学生?)が
通りかがり、家につれて行かれ、パンツその他を着替えさせられる。
 タイムリミットが近づき、焦って待ち合わせの場所に急ぐ主人公。ギリギリ間に
合い、元に戻してもらったものの、後日その時の経験を懐かしく思うのだった」
って話を見た記憶がある。アレで偽装する相手が実在の小六娘で、服や下着も
その娘のモノだったり(当然、その間はその子が主人公の服を着ている)、
タイムリミットが過ぎて元に戻してもらえなかったりしたら神作品なのになぁ。
469名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 01:37:58 ID:PrZrf1uK
>>468
「IFな設定が見たいのなら、自分で書けばいいいじゃない」
by まりー・あんとわねっと
470468:2010/10/20(水) 10:54:30 ID:+l2PZ7DA
そりゃそーだけど、言われて即書ければ苦労は……(^;ω;^)
でも、まぁ、気長にがんばってみる
471次期当主はメイドさん!?:2010/10/20(水) 23:37:41 ID:PrZrf1uK
#ご無沙汰しましたが、ちょいと続きです。

 ふたりを執務室へ招き、楽にするように言うと、馨は話を続けた。
 「実は、夕霧の容体がだいぶ安定してきてな。今すぐというワケではないが、ひと月後くらいに退院して、自宅療養に切り替えて様子を見ることになる」
 桐生院家当主たる馨のその言葉は、その場にいる誰にとっても朗報であり、緊張していた「ゆかり」と「あおい」は、ホッと胸を撫で下ろした。
 「お…おばさまが!? それはおめでとうございます」
 かろうじて「お母さん」と言うのを堪えた「ゆかり」こと葵が、晴れやかな笑顔を見せる。
 「よかった。長かったね、お…父さん」
 こちらも「おじさま」と呼ぶのを間一髪言い直す「あおい」こと紫。
 「うむ。アレがいない間、おまえたちにも色々苦労をかけたな。とくに、葵」
 普段の「厳格な当主」としての顔ではなく、珍しく「我が子を慈しむ父親」の表情になって、息子(に見える紫)に馨は声をかけた。
 「? 何でしょう?」
 「昨日、その件でアイツに怒られたよ」
 「「!」」
 夕霧の体調がよいこともあって家族の近況報告などをしていた際、自分の仕事の一部を葵に「当主見習い」として代行させていると言ったところ、こっぴどく叱られたらしい。
 いわく、「子供は勉学と遊ぶことが仕事」、「そもそも、カヲルさんだって当主の仕事を始めたのは大学時代の、しかも成人後」、さらに「息子の体調不良に気づけないようでは父親失格」。
 「いちいちもっともで耳が痛かったぞ」
 苦笑しつつも嬉しそうなのは(別に罵られるのが好きなマゾだからではなく)、妻とのコミュニケーションを十分に行うことができたからだろう、たぶん。
 「そういうワケで葵、今預けている仕事はともかく、今後新しく仕事を預けることは──少なくとも高校在学中はしないでおこうと思うが、どうだ?」
 そう問われた「あおい」(=紫)は、素早く頭を回転させる。
 「そうですね。仕事を減らしていただくという点については、正直ありがたいです。
 ですが、我がままを承知で言えば、重要度の低い仕事を今の半分程度任せていただけるなら、半人前のボクでも何とかなります」
 傍らで聞いている「ゆかり」(=葵)などは「えっ!?」と思ったのだが、何か考えがあるのだろうと、この場は自分を演じる従姉に任せる。
 「ほぅ……いいのか?」
 「はい。その代わりと言ってはナンですが、正式にゆか姉──紫サンをボクの秘書兼相談役として任命してもらえませんか?」
472次期当主はメイドさん!?:2010/10/20(水) 23:38:28 ID:PrZrf1uK
 「──なるほど、独力では無理でも二人三脚ならば、と言うワケだな。ふむ。ワシとて、金勘定の面では弟の輝の助けを借りているわけだし、信頼できる腹心を持つのも、当主の度量か。
 どの道、紫くんに関しては、卒業したらそれに近い立場になってもらうつもだったのだから、少し早まるくらいはいいだろう。それと……」
 謹厳実直な馨にしては珍しく、いたずらっぽい光が目で踊っている。
 「これは、夕霧や輝夫婦とは内々に話し合っていたことなのだが……紫くん、君は葵のことをどう、思っているのかね?」
 あまりに直球な質問に、顔にちょっと困ったような表情を浮かべつつ、内心では「ちょっと」どころではないパニックに陥る「ゆかり」。
 「えぇっ!? そ、それは……そうですね。従弟であり、もっとも親しい幼馴染であり、大切な弟、というトコロでしょうか」
 立場を入れ替えていることもあり、とりあえず無難なコトしか言えない。
 当然、その程度の答えでは、当主は満足しなかった。
 「ふむ……では、葵、お前の方はどうなんだ?」
 「ゆかり」としては、「あおい」の方も、当然、それに類する無難な返事をすると思っていたのだが……。
 「──幼馴染のイトコ、というのはもちろんですけど、それ以上に、守りたい、そして共に歩んでいきたい、大事な人です」
 その言葉は、明確にそれ以上の関係──恋人、いやむしろ「伴侶」という関係を視野に入れたモノだった。
 「ほほぅ、言うではないか!」
 息子(実は、姪っ子)の漢らしい物言いに、ニヤリと笑う馨。
 「紫くん、葵はこう言ってるが、キミの気持ちはどうなのかね?」
 「あの、その……こ、光栄です」(ポッ)
 今なら、仮に例の認識変換が行われていなかったとしても頬を染めて恥じらう葵の姿は「女の子らしく」可憐に見えたことだろう。
 「はははっ! うむ、ふたりとも両想いなら、問題ないだろう。実は、盆で一族が集まる際に、紫くんを正式に葵の許婚とすることを発表しようと思っているのだ」
473次期当主はメイドさん!?:2010/10/20(水) 23:38:59 ID:PrZrf1uK
 上機嫌な馨と2、3言葉を交わしてから、ふたりは執務室を出て、葵の私室へと戻って来た。
 「ふぃ〜、やっぱり緊張したわね」
 さすがの学園一の才媛も、やはり一族当主の迫力の前では、少なからずプレッシャーを感じるらしい。無論、「今のふたりの状態」も関係しているのだろうが。
 「そりゃ、ね。でも、ユカねぇ、あんなコト言って良かったの?」
 「あら、アオイちゃんは、わたしと結婚するのは嫌なのかな?」
 「そんなワケないよ! 僕にとってはユカねぇは憧れだし……。でもユカねぇなら、桐生院家を出て行っても自由に生きられるし、僕よりもっといい男性(ひと)だって見つか……ムグッ!」
 言い募る「ゆかり」の唇を、「あおい」が自らの唇で塞ぐ。
 そのまま長い口づけを交わすふたり。
 いつの間にか、「ゆかり」が「あおい」の胸にすがるような格好になっている。着ている服もさることながら、「あおい」に「ゆかり」が抱きしめられていることもあって、まるで本当に「男」と「女」のように見えた。
 ようやく、ふたりの唇が離れた時、思いがけないキスに頬を染め、目を潤ませている「ゆかり」の瞳を、「あおい」が覗き込んだ。
 「馬鹿。そのつもりがあるなら、2年前にこの家で学生兼業メイドになろうなんて思うはずないじゃない。言ったでしょ、「守りたい、そして共に歩んでいきたい、大事な人」だって」
 「! ありがとう……すごく、うれしい……」
 よりいっそう真っ赤になりつつ、それでも素直にそう答える「ゆかり」を見つめながら、「あおい」はニヤッと人の悪い笑みを浮かべる。
 「──そう言えば、小さいころのアオイちゃんの口癖は、「ぼく、ゆかおねーちゃんのおよめさんになる」だもんね♪」
 「はぅわッ!」
 それは葵にとって、遠い日の思い出したくない記憶のひとつ、いわゆる黒歴史というヤツだ。
 当時は、「けっこんする」と言うことの意味もよくわかってはおらず、ただ、好きな人と「けっこん」するには「およめさん」になればいいのだ、程度の知識しかなかったため、そんな言葉を漏らしてしまったのだ。
 「……お、お願いだから、忘れて、ユカねぇ」
 「だ〜め。それに、今の状態なら、ソッチの方が自然でしょ、「ゆか姉」?」
 都合良く、この立場入れ替わり状態をネタに「あおい」にからかわれる「ゆかり」なのだった。

#桐生院家雪解けフラグ、そして「葵がお嫁さん」フラグ、構築です。ココのスレの王道ですし、皆さんも展開が読めているとは思いますが、このあと……。
続きは、日曜深夜あたりになるか、もしくは「美幸」の方を書くかと。
474『要12歳、職業・女子高生』その2:2010/10/25(月) 06:07:07 ID:Y/ABQZ+6
 ミユキ──「早川美幸」のフリをした従弟の少年、浅倉要は、女子寮に来て早々にピンチに陥っていた。
 「ねぇ……キミ、誰? みゆみゆじゃないよね?」
 夕飯後に、本物の美幸の友人と思しき女の子から、いきなりそう問い詰められたのだ。
 いや、実際には相手はノホホンとした口調で「問い詰め」とかいう雰囲気ではなかったが、やましいトコロがあるミユキには、そう感じられた。
 「な、何を根拠にそんな……」
 焦っているせいか、従姉の口調を真似できてるかは微妙にアヤしい。
 「んー? だってさっきの晩御飯の時、みゆみゆが魚残さなかったし〜」
 「あ、アレはたまたま……」
 「わたし、CDなんて借りた記憶ないし〜」
 どうやらカマをかけられたらしい。
 「だ、だよね。道理で思い出せなかったはずだ、わ。や〜、他の人と勘違いしちゃった」
 それでも、何とか誤魔化そうとするミユキだったが、そこに少女がトドメをさす。
 「そ・れ・に……いつもなら、美幸ちゃん、わたしが「みゆみゆ」って呼んだら怒るじゃない」
 これ以上の言い訳は無駄らしい。観念したミユキ──要は、美幸のクラスメイトにして寮のお隣りさんである少女、長谷部奈津実(はせべ・なつみ)に真相を打ち明けることにした。

 「──ってワケなんです。こんなコトになったのは、不幸な偶然が重なった事故って言うか、その……」
 自分の正体から、この入れ替わり劇を強行した経緯に至るまで、ミユキは自分の知る限りの情報を奈津実に話した。
 「なるほどね〜。偽・美幸ちゃんは、本当はイトコの人なんだ」
 「はい」
 相変わらず笑顔のままでいまいち表情の読めない奈津実の確認に、神妙に頷くミユキ。
 と、その瞬間、小さな静電気のようなモノがミユキの身体に走る。
 「ひゃっ!」
 思わず自分の身体を抱きしめ、俯くミユキ。
 「! どうかしたの?」
 「い、今、なんか、バチッと……」
 心配そうに尋ねる奈津実だが、顔を上げたミユキを見て息を飲む。
 「あ! 要ちゃん……だっけ? さっきまでと違って、確かに美幸ちゃんと違う人に見えるよ」
 「えぇっ!?」
 もしかして、例の絵の効果が切れたのだろうか?
475『要12歳、職業・女子高生』その2:2010/10/25(月) 06:08:09 ID:Y/ABQZ+6
 「ううん、そうじゃないと思うよ。あのね、パッと見は確かに美幸ちゃんとよく似てるんだけど……でも、キミが「小早川美幸」本人じゃないって、認識できるの」
 「?? えぇーっと……」
 小学六年生の少年には、奈津実の説明は少々難しかったが、どうやら「絵の効果」が完全に解けたわけではないらしい。
 「うーんと、ね。ホラ、お話とかマンガとかでも、幻覚を使う敵の術を見破ったら、効果が半減するじゃない? そんな感じ……なのかなぁ」
 どうやら奈津実にもうまく把握できてないらしい。
 要するに、奈津実がミユキの正体を見破り、それをミユキが認めたことによって、少なくとも奈津実に対するあの絵の効果が薄れたのは確かなようだ。
 「え……そんな中途半端な状態、困るよー」
 元気が取り柄の男の子とは言え、よく知らない場所で不測の事態に陥ったミユキは、泣きそうになる。
 と、その時、そっとミユキは背後から奈津実に抱きしめられた。
 「ごめんね、要ちゃん。わたしが、好奇心に負けていろいろ追求したから」
 小学生の男の子を泣かせてしまったことに、どうやら罪悪感を覚えているらしい。
 「グス……ううん、奈津実さんは悪くないよ。元はと言えば、ボクと美幸お姉ちゃんのせいなんだし……」
 「お詫びの代わりに、要ちゃんと美幸ちゃんが元に戻れるまで、わたし、色々フォローしてあげるから」
 優しく慰める奈津実は、従姉である美幸よりも「お姉さん」らしく見えて、ミユキは安堵感に包まれた。
 「うん……ありがとう、奈津実さん」
 「じゃあ……まずは、寮の談話室に行ってみようよ。その「絵」の効果が薄れたのが、わたしに対してだけなのか、それとも他の人全員なのか、確かめないと」
 奈津実に手を引かれ、恐る恐る1階の談話室へと降りるミユキ。
 その結果、美幸の顔見知り何人かと出会い挨拶などした感じでは、入れ替わりについて他の人間は誰も気づいていないようだった。
 さらに、お茶を飲みながら軽く雑談をしてみたものの、異状を指摘する人間は皆無だった。
 「ふぅ、良かった。これでちょっとだけ安心だね〜」
 美幸の部屋に戻ったふたりは、ホッとひと息ついた。
 「うん……じゃなくて、はい」
 「ああ、別にいいよ〜、敬語なんて使わなくても。て言うか、同学年の友達なんだから、普通にしゃべる方が自然だし」
 「……奈津実さん、いいの? ボク、本当は小学六年生なんだよ?」
 ミユキは遠慮がちに奈津実に尋ねる。
 「うーん、でも、要ちゃんは、これからしばらく「ミユキちゃん」になるんだから、できるだけ不自然なトコロはなくさないと。それに、わたしはミユキちゃんとお友達になりたいと思うんだけど、ダメかな?」
 ニッコリ笑う奈津実に、慌てて首を横に振るミユキ。
 「そ、そんなことない!」
 「じゃ、決まり〜。寮だけでなく学校でもできるだけフォローしてあげるから、安心しておねーさんに任せてね〜」
 災い転じて福と言うべきか、こうしてミユキは寮生活一日目にして心強い味方を得ることができたのだった。
476『要12歳、職業・女子高生』その2:2010/10/25(月) 06:09:44 ID:Y/ABQZ+6
 明日からの学校生活に関して簡単な相談を終えたところで、奈津実がふと壁にかかっている時計を見た。
 「あ〜、もぅこんな時間だ〜」
 釣られてミユキも時計を見れば、確かに10時前だ。そろそろ寝る準備……いや、その前に、明日の学校の準備をすべきなのだろうか。
 (でも、高校生なら、12時くらいまでは起きてるんじゃないのかな? ボクだってお昼にうたた寝したせいか、まだあんまり眠くないし)
 しかし、当の奈津実は、そんなミユキの思惑から大きく斜め上にズレた発言をする。
 「ミユキちゃん、そろそろお風呂に行かないと〜」
 「! い、いや、さすがにそれは……」
 ミユキ──要だって思春期の男のコなのだから、年上のお姉さんたちの裸に興味がないと言えば嘘になるが、この状態で「覗き」みたいな真似をするのはさすがに憚られた。
 ところが、奈津実の方はそんなミユキのささやかな純情をアッサリ無視してくれた。
 「気にするコトないよ〜。小学生に見られたってそんなに気にならないし。それに、今はキミがミユキちゃんなんだよ。年頃の女の子が毎日お風呂に入らない方がよっぽどヘンだよ〜」
 一応各部屋に簡易シャワーは付いているのだが、キチンとした浴槽は一階の大浴場にしかない。
 結局、「ちょっと変わり者なトコロのある本物の美幸ちゃんだって、お風呂には毎日入ってたんだから〜」と、力説する奈津実に説き伏せられ、ミユキは大浴場に一緒に向かうことになったのだが。
 「あ、そ〜だ。ミユキちゃん、今どんな下着付けてるの?」
 「ブッ! な、奈津実さぁん……」」
 スケベな中年オヤジみたいな奈津実のエロ発言に、さすがに噴き出す。
 「あ! 誤解しないでね。ホラ、脱衣場で着替えるとき、ヘンな下着着てたら怪しまれるじゃない」
 なるほど。言われてみればその通りだ。
 「え、えっと……ちゃんと、美幸お姉ちゃんのパンツを履いてるから……」
 さすがに恥ずかしいのか、僅かに頬を染め、小声になるミユキ。
 「ふーん。どんなの?」
 「その……白にピンクの水玉が入ったヤツ……」
 答えつつ、ますます赤くなるミユキを「可愛いなぁ〜」と思いつつも、奈津実は追求の手を緩めない。
 「じゃあ、上は?」
 「え?」
 「あ〜、その調子だと、ブラジャーしてないでしょ。ダメだよ〜、高校生の女の子が、いくら寮内だからってノーブラなのは」
 多少マセてるとは言え、それでもやはりミユキ──要は小六の少年だ。現役女子高生にそう説得されれば、そんなモノかと思ってしまう。
 「うぅっ……でも、ボク、ぶ…ブラジャーの付け方とか知らないし」
 「だいじょ〜ぶ! わたしが教えてあげるよ〜」
 そこまで言われてしまっては、ミユキも断れない。
 隠してミユキは、奈津実の「緊急女の子講座その1:ブラジャー編」を受けるコトになるのだった。
477『要12歳、職業・女子高生』その2:2010/10/25(月) 06:10:14 ID:Y/ABQZ+6
#とりあえず、ココでいったん切ります。うーむ、「立場入れ替え」萌えのこの板的には、バレなしの方がいいのかなぁ。でも、個人的には少数にのみ秘密を知られてるのって萌えると思うんですよ。
478名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 06:16:16 ID:AZZMPrhg
乙です
バレ禁止ではないと思いますよ
ただ誰も気づかず、当人たちも徐々に違和感を覚えなくなるその異常性も醍醐味だと思います
479名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 16:42:00 ID:s0HBLU4H
乙です
頑張ってください!
480次期当主はメイドさん!?:2010/10/31(日) 19:14:16 ID:elio+hkR
 「ところで、どうするの、コレ?」
 「ゆかり」の立場になっている葵は自らが着ているメイド服をつまんで、紫──「あおい」に改めて聞いてみた。
 「今晩、もう一回、アレを使って元に戻る?」
 「あ、今晩は無理ね。あの鳥魚相換図って、一度使ったら最低でも中一日は空けないと使えないらしいから。たぶん、魔力だか霊力だかが溜まるのに時間がかかるんじゃない?」
 「ああ、そう言えばそんな注意書きもあったね。でも、24時間なら昨日より少し遅めに寝ればいいんじゃないの?」
 「その時間の計算が、「使用者が朝目覚めた時」からの計算だったら? 溜まりかけた力を無駄に浪費するだけだったら意味ないでしょ。それに……」
 ふと真面目な顔になって「ゆかり」の肩に両手を置く「あおい」。
 「さっき、叔父様とああいう話になったけど、アオイちゃんも精神的にはまだ疲れてるんでしょ。明日までこのまま、わたしが残りのお仕事を処理してあげるから、アオイちゃんは「ゆかり」としてのんびりして頂戴。
 今朝も言ったけど、「ゆかり」の仕事の方は今日の5時までで、明日はお休みだから」
 「えーっ、そんなぁ……ユカねぇに悪いよ。明後日からは学校あるのに」
 精神的ストレスが主体の葵と異なり、メイドと女子高生を兼任している紫は身体を休める時間が必要なはずだ。
 「いいからいいから。弟分のピンチを救えないなんておねーちゃん失格でしょ。それに、実際問題として、さっき叔父様にああいうタンカ切った以上、「あおい」が真面目に仕事に励んでみせないと不自然だし」
 正論と感情論を交えて説得されては、押しの弱い葵に抗するすべはない。不承不承うなずく。
 「……わかった。今回は、ユカねぇにお願いする」
 「アハハ……もぅ、そんな顔しない。
 ──じゃあ、これからボクは部屋に籠るから、「ゆか姉」はメイドのお仕事、頑張ってね」
 部屋のドアから送り出しつつ、「ゆかり」のほっぺにチュッと軽くキスする「あおい」。
481次期当主はメイドさん!?:2010/10/31(日) 19:14:39 ID:elio+hkR
 許婚のそんな愛情表現に、つい舞い上がってしまった「ゆかり」は、ボーッとしたままフラフラと歩き出し、気が付けば紫の部屋のベッドに腰かけていた。
 「あれ、いつの間に……」
 そう思いながら立ち上がる。
 ふと傍らの姿見を覗き込むと、そこには幸せそうに顔を上気させた「メイド娘」が映っていた。
 「や、やだ……あおい様にキスされたって、わかっちゃうかな?」
 とくにキスマークなどがついてるワケでもなかったが、このまま台所に行ったら晴香さんあたりには見透かされそうな気がする。
 自分の気を落ち着ける意味も込めて、「ゆかり」は鏡に向かって髪と服装を整え、軽くリップを引く。
 「……これでよし、っと」
 時計を見ると早くも10時半を回っている。そろそろ昼食の手伝いをしに台所に行ったほうがいいだろう。
 パタパタと忙しく「自室」を出て台所に向かう「ゆかり」は、だから気づいていなかった。

 自分が、ごく自然に「あおい」のことを「あおい様」と呼んでいたことを。
 とくに気負うでもなく、ごく自然に「女の子としてのみだしなみ」を整えていたことを。
 そして──誰から教えられたワケでもなく、今日の紫の予定が頭に入っていたことに。

#「当主メイド」の方は、ちょっと間が空いてしまいました。その割にやっぱり短めですが……。ようやく「鳥魚相換図」の真の効果が発揮され始めました。これから二人がどんな風になっていくのか、よろしければご期待ください。
482名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 02:50:26 ID:DkeAZZuR
続き期待乙

と、気がついたら、もうすぐ500kbじゃん
新スレ立ててくる
483名無しさん@ピンキー
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1288547534/

向こうのスレとこちらのスレの立場を交換します