お姫様でエロなスレ12

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1名無しさん@ピンキー
やんごとないお姫様をテーマにした総合スレです。
エロな小説(オリジナルでもパロでも)投下の他、姫に関する萌え話などでマターリ楽しみましょう。

■前スレ■
お姫様でエロなスレ11
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1236072726/

■過去スレ■
囚われのお姫様って
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1073571845/
お姫様でエロなスレ2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133193721/
お姫様でエロなスレ3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148836416/
お姫様でエロなスレ4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1157393191/
お姫様でエロなスレ5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1166529179/
お姫様でエロなスレ6
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1178961024/
お姫様でエロなスレ7
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1196012780/
お姫様でエロなスレ8
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1209913078/
お姫様でエロなスレ9
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1226223611/
お姫様でエロなスレ10
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1229610737/

■関連スレ■
【従者】 主従でエロ小説 第六章 【お嬢様】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1222667087/
◆ファンタジー世界の戦う女(女兵士)総合スレ 6◆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1209042964/
古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ4
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1246868732/
【ギリシア】世界の神話でエロパロ創世3【北欧】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1238066898/

■保管庫■
http://vs8.f-t-s.com/~pinkprincess/princess/index.html
http://www14.atwiki.jp/princess-ss/

気位の高い姫への強姦・陵辱SS、囚われの姫への調教SSなど以外にも、
エロ姫が権力のまま他者を蹂躙するSS、民衆の為に剣振るう英雄姫の敗北SS、
姫と身分違いの男とが愛を貫くような和姦・純愛SSも可。基本的に何でもあり。

ただし幅広く同居する為に、ハードグロほか荒れかねない極端な属性は
SS投下時にスルー用警告よろ。スカ程度なら大丈夫っぽい。逆に住人も、
警告があり姫さえ出れば、他スレで放逐されがちな属性も受け入れヨロ。

姫のタイプも、高貴で繊細な姫、武闘派姫から、親近感ある庶民派お姫様。
中世西洋風な姫、和風な姫から、砂漠や辺境や南海の国の姫。王女、皇女、
貴族令嬢、または王妃や女王まで、姫っぽいなら何でもあり。
ライトファンタジー、重厚ファンタジー、歴史モノと、背景も職人の自由で
2名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 19:07:16 ID:XFpL4GQE
即死回避お願いします
3名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 19:17:19 ID:RRNoPbXk
スレ乙です
4名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 19:21:38 ID:YxL6L7PM
>>1スレ立て乙であります
5名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 20:00:56 ID:UsfRdmR9
6名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 20:46:15 ID:Dq1K1LIv
>>1には大義ですね。わたしも嬉しく思いますわ」
7名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 21:56:17 ID:7aWX2FrK
>>1スレたておかつされま。わらわは姫じゃぁ〜!
8名無しさん@ピンキー:2009/12/29(火) 17:18:42 ID:d7Vwv62Z
>>1
ご苦労であった。褒美にわらわの…
9名無しさん@ピンキー:2009/12/29(火) 17:50:27 ID:FIreygsA
>>1
乙ー
10名無しさん@ピンキー:2009/12/29(火) 20:50:50 ID:mkqLWFFX
さて、新作まだかなぁ
11名無しさん@ピンキー:2009/12/30(水) 18:38:34 ID:/xZhpx+1
>>1
乙彼
12名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 21:46:24 ID:i2v0Sl13
>>1 乙

&ほしゅ
13名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 23:30:58 ID:gYuA43fL
即落ち回避保守
14 【大凶】 【1639円】 :2010/01/01(金) 00:51:23 ID:IaG2gfoq
今年も姫君に幸あれ
15名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 01:35:33 ID:XTZ5ARLO
ちょ、その書き込み内容なのに、おみくじ欄がw
16名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 03:01:02 ID:IaG2gfoq
つまり、不幸な出来事に遭遇しながらも健気に頑張るお姫様を拝められるということだな
17名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 17:00:10 ID:Zel4q2NS
ボロボロに犯されながらも希望を捨てないお姫様は、実に凌辱のし甲斐がある。
18 【凶】 :2010/01/01(金) 18:52:38 ID:vySQ9WdZ
男勝りのお転婆姫が元気にしてるのがいい!
19名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 19:49:44 ID:QpJFSvQa
あけおめことよろ
20名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 16:20:15 ID:UHGRQ+0U
即死回避かな?
21名無しさん@ピンキー:2010/01/03(日) 20:18:08 ID:63s6Nq+C
前スレで>>1の文章見直しについて提案した者ですが、案を貼っておきます。
一段目と二段目を変更してみました。最終的には次スレ立てる方にお任せだと思いますが、
御意見お願いします。


>気位の高い姫への強姦・陵辱SS、囚われの姫への調教SSなど以外にも、
>エロ姫が権力のまま他者を蹂躙するSS、民衆の為に剣振るう英雄姫の敗北SS、
>姫と身分違いの男とが愛を貫くような和姦・純愛SSも可。基本的に何でもあり。

>ただし幅広く同居する為に、ハードグロほか荒れかねない極端な属性は
>SS投下時にスルー用警告よろ。スカ程度なら大丈夫っぽい。逆に住人も、
>警告があり姫さえ出れば、他スレで放逐されがちな属性も受け入れヨロ。

>姫のタイプも、高貴で繊細な姫、武闘派姫から、親近感ある庶民派お姫様。
>中世西洋風な姫、和風な姫から、砂漠や辺境や南海の国の姫。王女、皇女、
>貴族令嬢、または王妃や女王まで、姫っぽいなら何でもあり。
>ライトファンタジー、重厚ファンタジー、歴史モノと、背景も職人の自由で。

               ↓

基本的に、姫が出てくるSSなら何でもあり。

ただし幅広く同居する為に、陵辱、輪姦、グロなどの読み手を選びそうな
内容の場合は、SS投下時にスルー用警告よろ。逆に住人も、警告があり
姫さえ出れば、 他スレで放逐されがちな属性も受け入れよろ。それから
非エロの場合も警告よろ。

姫のタイプも、高貴で繊細な姫、武闘派姫から、親近感ある庶民派お姫様。
中世西洋風な姫、和風な姫から、砂漠や辺境や南海の国の姫。王女、皇女、
貴族令嬢、または王妃や女王まで、姫っぽいなら何でもあり。
ライトファンタジー、重厚ファンタジー、歴史モノと、背景も職人の自由で。



あと、関連スレには戦火も追加?

【城でも】戦火の中犯される娘達3【村でも】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1237170701/l50
22名無しさん@ピンキー:2010/01/03(日) 20:35:10 ID:XWOZzPOg
まだ言ってんのか
23名無しさん@ピンキー:2010/01/03(日) 20:52:22 ID:XUg0hmQK
戦火のどこが関連してるんだ。
あっちは戦争と凌辱あればなんでもありだろう。
姫さまスレはお姫さまの凌辱は範囲内だけど、残酷苦手もいるから関連付けまでしないで欲しい。
24名無しさん@ピンキー:2010/01/03(日) 22:47:56 ID:FuumQ42D
>21
戦火スレを関連スレに入れる必要あるの? 自分は全く感じないけどね

そもそも新スレになったばかりのこの時期に、テンプレについて話し合う必要があるのか自体疑問なん
だよ
もしテンプレの変更案を話し合うにしても、このスレが400KBか900レス超えた頃で良いんじゃない?
25名無しさん@ピンキー:2010/01/03(日) 23:28:38 ID:FR13x7yG
ということで姫さまカモン
26名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 13:24:32 ID:WdrH3fo8
>>22>>24
釣られてんじゃ無いよ。

それより、姫初めをだな?
27名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 20:59:38 ID:OQQU6nw4
>>21
おっと、新スレ立ってから旧スレ覗いてない人多かったのか
それは唐突で済まんかった
旧スレの容量が結構残ってたので、あっちで話題振ってた
現状492kB、まだ落ちてないが時間の問題

>>1になんら反してない書き手さんが「空気嫁」と叩かれてた→
要は注意書きありきだよな? →書き手さんのための注意書きである>>1がなんか変なのに、
読み手のためにはちゃんとした注意書きが当然、ってのおかしくね?
→『SSの投下先探してる書き手さんが困らない程度に』>>1 の文章直した方がよくね?

ってことだったので、あくまで新規書き手さんのためで、読み専かつ旧スレチェックしてない住人
からすれば「何故その話題を引きずる?」「次スレの時期でもないのに、嵐か?」と思われても
仕方ない書き方だったな、かさねがさねスマン

スレ傾向見てる書き手さんからすれば、>>1 以降も多少は見ることが多いので
レス番が若いうちに貼れば結構見てくれるだろう、って意図だった。

でもどんな書き手さんに対しても、理不尽な叩き方とかすると、常駐の神書き手さんも
ちゃんと見てて、創作意欲萎えたりするんだぜ
「自分の好きな書き手さんのことは叩いてないから関係ない」とか思うのは甘いと思う

姫SSを楽しむために、書き手さんがちょっとだけやりやすいようにしたかっただけなんだ
読み手としてさ
またROMるよ
28名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 21:57:30 ID:TMal8KT1
>警告があり姫さえ出れば、他スレで放逐されがちな属性も受け入れヨロ。
>警告があり姫さえ出れば、他スレで放逐されがちな属性も受け入れヨロ。

29名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 22:19:26 ID:WdrH3fo8
何でバカや荒らしに合わせたテンプレが必要なんだ?それに必要以上に長いし。戦火を関連に入れる必要無いし。

やるなら

・ここは、姫をテーマとし姫と織り成すエロチシズムを堪能するスレです。
・過度な表現やグロ過ぎる内容を投下する場合は、予め注意書きをお願いします。
・荒らしはスルーして下さい。


これだけで良いだろ?
30名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 22:22:00 ID:WdrH3fo8
二番目に不満があるなら。

・残酷表現やグロ等の過激な描写があれは予め注意書きをお願いします。

で済む話だろ?
31名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 22:36:06 ID:5Tfx8k4O
まあ程度の問題もあるとはいえ、陵辱・残酷・グロ等は、激しいものになると生理的嫌悪を抱く人が多いのは事実
とはいえ、スレの主旨的に、それを理由に追い出すようなものでもない
だから、人を選ぶ内容かもしれないと感じたら、書き手が一文注意書きを添えればいい
そうすれば、あとは読み手の責任になる

別に議論するまでもなく、こういうのは他のスレでも普通にやってることじゃん?
32名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 22:42:00 ID:ek4PjOof
まあ、でも本音言えば凌辱輪姦殺戮…みたいなのは他スレでやって欲しいんだよね。
戦火とかリョナとかあるじゃん。
倉庫みるとお姫さまが残酷に殺されるのもあるけど、
最近の数スレの流れでは犬姫や王夫妻の両思いの幸せ恋愛や
強姦でも愛があったり綺麗なのが多かったし
自分もそういうのに惹かれてここに来てるわけだし…
例え警告がついたとしても、リョナばかりになったら嫌だなと思う。
ようするに、スレの空気読んで欲しい。
33名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 22:54:23 ID:GLugsCDJ
ハードグロ等の荒れそうな属性ってとこに勝手に陵辱や輪姦なんてのまで加えて
注意書きを加えなきゃいけない範囲を勝手に広げてるのが問題だ

というか、もともとの>>1
>気位の高い姫への強姦・陵辱SS、囚われの姫への調教SSなど以外にも
と、陵辱以外でもOKですよという表現だよな

ここ数スレ程度の流れとやらでかってに趣旨を変更しようとしてんじゃないよ。
というか単にお前の好みだろ。嫌なら消えろ
34名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 22:56:43 ID:TMal8KT1
純愛じゃないと〜とかの縛りがつくと、どれも似たり寄ったりになりそうで自分は嫌だな。
例えば純愛になる前段階としてでも鬼畜残酷描写を入れにくくなったり、
書ける話の幅が狭まって、書き手が減るんじゃないの?
35名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 23:05:48 ID:q1xMdA6F
お姫様なら何でもOK
ただ鬼畜グロとかには注意書き付けてくれると嬉しい

くらいがいいと思うけどな
やはり制限すると書く人は減るよ
36名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 23:11:22 ID:FIwtymkA
後味悪い最後なら注意書き欲しいんだぜ
37名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 23:25:27 ID:T/6T+Xeo
エグい系が人を選ぶネタなのは確かだが、規制すると一本調子になってやはり面白くない。
拒否反応が出るのもワカルけど、個々の嗜好にいちいち合わせるのも無理な話。
狭いとはいえ公共の場で発表した以上、批判するな、というのも違うと思うが、
合わないからってかさにかかって排斥するのも駄目だよな。

不意打ちで合わないのを読んじゃう人が出ないよう、注意書きで明示して欲しいってくらいが妥当かと。
38名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 00:19:12 ID:4ucLjx6K
つか、この流れかつてのショタスレそっくりだ。

今は細分化されて5つ位に分断されてる。
もしかしたら同じ荒らしかも知れないが、ここもそうならないようにな?
39名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 01:32:59 ID:JYKFL3dJ
>>32
もっともらしいこと言っているようで、なんで、スレの空気とやらを、ちゃっかりお前の好みに合わせてるんだよ
40名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 03:25:10 ID:ub+c+X9m
>>32
お前がスレの空気読んで黙れば、それで全て解決
41名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 03:42:36 ID:fb7Mbcdd
嫌いな作品を排除したら、好きな作品ばかりが残るわけじゃないぞ
スレが死ぬだけだ
本当にね
42名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 11:17:52 ID:+4s0fpal
>>32
>戦火とかリョナとかあるじゃん。
純愛スレもあるぞ
43名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 11:49:39 ID:A0ZIzHUL
私がお姫様スレの代表! 私の意見こそスレの総意!
と本気で勘違いしてそうだな>>32
寧ろ、あんたに賛同しない住人の方が多いと思うよ
スレの趣旨に適う作品なら、何処に投下しようが職人の自由だろ!
44名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 11:57:17 ID:XULX3jV8
苦手な展開だと思ったら読むの中止すればいいよ
それで済む話だろうに
そのくらいの自己管理できるでしょ
45名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 11:59:05 ID:OA+d0avo
東方見聞録に出てくるアイジアルクって輝く月って意味の名前といい、
結婚したけりゃ私を打ち負かしてからってエピソードが合ったり実にツボなんだが……。
モンゴルの女性って北国のモンゴロイドだから顔がのっぺりしてそうなんだよなあ。
なおマルコポーロのいた元と対立していたハイドゥの娘なので逸話の信憑性はめっちゃ低いと思う。
46名無しさん@ピンキー:2010/01/06(水) 03:52:50 ID:ZAWXFHA4
もともとはSM板のスレだったから
>気位の高い姫への強姦・陵辱SS、囚われの姫への調教SSなど
が発端なんだけど、「お姫様」で一般的に連想されるとこから
綺麗・純愛・和姦系の投稿が多くなりそれがメインストリームになった、
そこに矛盾がある、て感じ?

このてのごたごたは過去にもあったし、テンプレ変更にも賛成。
>>29-31で異議なし。
47名無しさん@ピンキー:2010/01/06(水) 04:37:39 ID:toPMmKvX
前スレの681が、引っ込みつかなくなって、いつまでも引きずってるだけでしょ
48名無しさん@ピンキー:2010/01/06(水) 14:09:44 ID:0AKKhzUR
数日前にこのスレに偶然出会ってなんとなく保管庫を覗いてみたのだが

レベルぱねぇな…様々な世界観と人物達にのめりこんじまったよ
特にエルドとセシリア、イヴァン、ガルィアのシリーズがツボった
エロパロ板ということを忘れて笑い転げたり涙ぐんだりしてしまった…
職人さん達ありがとう。まだ読んでない作品も読んでくるよノシ
49名無しさん@ピンキー:2010/01/06(水) 14:33:23 ID:cMYDsuUe
両保管庫の管理人さんにはマジ乙です
本年も宜しくお願いします
50名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 04:33:09 ID:hr0CqNpG
>>48
その三作はものすごく良いよね
本業で書いてる人もいるんじゃないかと思うくらいのレベルだ

……と言ったら、褒めすぎと言われてしまうのだろうか
でも本当に思うだよな
51名無しさん@ピンキー:2010/01/08(金) 20:51:35 ID:uKhqplN7
>>45
亀だが、のっぺりしたモンゴロイドだって化粧すれば美人だよ!
むしろ化粧栄えするともいえる

重要なのは外見や信憑性じゃない、自分がどう萌えるかだ
52名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 21:59:15 ID:LfbeeTvV
エルドとセシリアってどんなだっけ?
探したがみつからない。
53名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 23:24:18 ID:pdTWPhWG
旧保管庫(リンク上)の一番下の方にある、「白いリボン」から始まって
新保管庫(リンク下)の、そのまんま「エルドとセシリア」に保管されているよ
54名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 00:01:41 ID:TsuTIlwH
親切なやっちゃ
55名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 00:57:55 ID:DUjS0fE0
>>53
ありがとー。なぜか今まで読まずにいたらしい。
続きが気になるなあ。
56名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 02:35:58 ID:+QT484jx
余計だったかな
最近の流れはようわからん・・・
57名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 23:24:40 ID:LBKkU7GG
その親切心に付け込んで、イヴァンシリーズ?ってどれなのか教えて欲しい…
旧保管庫でOK?
58名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 08:39:28 ID:Hhhpp4lv
男装少女じゃね
59名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 21:53:04 ID:Rglsu9Io
>>58
ありがとう。どれだかわかった。
姫スレにあるのは5作品でいいんかな。他も読むの楽しみだー。
60名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 22:14:21 ID:1/hy3Lh0
なんで5という数字になるんだ?
本保管庫と臨時保管庫合わせたら、とてもそんな数では収まらないと思うんだけど
61名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 22:15:32 ID:1/hy3Lh0
あああ、勘違い
59さん、本当に申し訳ない
馬鹿過ぎたのでスルーでお願いします!
62名無しさん@ピンキー:2010/01/13(水) 16:53:58 ID:WeeOCEUp
王家の姫じゃない、巫女姫みたいなのもこのスレ?
聖なる〜のスレのがいいんかな?
63名無しさん@ピンキー:2010/01/13(水) 23:11:51 ID:ISD015al
巫女分と姫分のどちらが多いのか
64名無しさん@ピンキー:2010/01/13(水) 23:34:22 ID:CtVsWF1K
名ばかりのお姫様になってなければいいと思う
6562:2010/01/14(木) 01:24:14 ID:7jXG3BVP
名ばかりのお姫様かー。難しい所ですな。
あっちは行かないので、覗いてみます。
66名無しさん@ピンキー:2010/01/17(日) 21:28:49 ID:oiDDCBYP
前スレまだ落ちないな
67名無しさん@ピンキー:2010/01/17(日) 23:12:35 ID:/53GBKIO
ちょこちょこ書き込まれるからね
68名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 21:22:14 ID:LP8OQIhr
規制解除ー
前スレでは拙作を読んでいただき、ありがとうございました。
続きの話が見えてきたので書いてるけど、
キャラが勝手に動いて話が長引いて収拾つきまへんorz 
69名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 22:44:24 ID:85A1oo+6
それは楽しみだ
70名無しさん@ピンキー:2010/01/19(火) 02:05:27 ID:En8RO/p7
期待
71名無しさん@ピンキー:2010/01/19(火) 15:18:29 ID:j4T6mK3A
お姫様って前提は意外に難しいな。
よくある塔の中の姫を助けに行く話だと、確かに書きやすい部分もあるけど、
それでプロットが決まってしまう部分があるし。
72名無しさん@ピンキー:2010/01/20(水) 15:32:21 ID:XGmlkEjx
べったべたの王道をいかに書くかも腕ですぜ
73名無しさん@ピンキー:2010/01/20(水) 22:59:37 ID:7Zns5nsn
むしろ不特定多数の人が見る場所だし、王道こそ望まれているヤカン
74名無しさん@ピンキー:2010/01/21(木) 23:29:23 ID:J+BP4ZpB
ちょっとおたずねしますが
一行の文字数は何個くらいがベターかなぁ?
ワードで書くと一行40字が普通だけど、そのままコピーだとスレは読みにくいですか? 
75名無しさん@ピンキー:2010/01/21(木) 23:47:36 ID:KP9ZPH2h
此処で試してごらん
練習用殴り書きスレッド6
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1257261330/
76名無しさん@ピンキー:2010/01/22(金) 01:35:01 ID:ghD2TxNh
表示される一行の文字数はそれぞれの環境によって違うのであんま気にしなくていい
77名無しさん@ピンキー:2010/01/22(金) 19:43:29 ID:EnHKlxrB
キャラの職業どうすっかなー
いやお姫様なんだけどねw
なんとなく彼女は戦場に出ていくようでもあり
城中で周囲を振り回してるような気もする

全自動で全てが決まるときもあるけどキャラがいろんな可能性持ってるようだと迷うな
こういう時ほかの職人さんはどうするかなと思い書いてみた次第
78月と太陽 1:2010/01/24(日) 14:48:32 ID:Tc4UdFi6
投下します。



「やめて、離して」
細い女の悲鳴が部屋に響いた。
明るい日差しが差し込み、柔らかな栗色の髪が金色に透ける。
「誰か、誰か来て!」
「誰もこねーよ」
「あんなの味方はここにはいないさ」
「そんな…」
「…様はあんたが目障りなんだと」
「そんな……」
力の抜けた身体を男の指がまさぐる。
「見た目よりいい身体してるじゃねーか」
「…が夢中になるだけあるな」
「こんな大人しそうな顔してな」
「いやっ!」
詰られて女が悔しそうに身をよじる。
「時間もないし、楽しもうや」
「そんなこと…うっ!」
男は強引にくちづけると、女の咥内にトロリとした甘い液体が流れ込んだ。
「何を…あ、やめっ!」
別の男が女の身体を包む柔らかな衣をはだけていく。
むきだしにされたまろやかな乳房に手がのび、別の手は脚をなでまわす。
「やめて、やめて……」
力無く女の懇願は続き、やがてそれは啜り泣きへと変わったいった。





79月と太陽 2:2010/01/24(日) 14:51:29 ID:Tc4UdFi6
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「何をするの!離しなさい!」
「随分威勢がいいなあ」
男は女…というにはまだ早い少女の腕を掴み、半ばあきれて口元を緩めた。
「痛いっ、離しなさい!聞こえないの!」
「…あなたが第二王女のアデライードだろ?」
男は少女を不躾に、頭から爪先まで見ている。
豊かに波打つ黄金の髪。東方から伝わる陶器のように滑らかで透明感のある肌は
怒りのためかばら色に輝いている。同じく怒りに燃える瞳は深いブルーだ。
気の強そうな瞳に反して、唇は優しげにふっくらとしていて頬と同じように赤く色づいていた。
男は思わず、細い腕を引き寄せ腰を抱き唇に吸い付いていた。
「っん、やめ…!」
暴れる身体を押さえ付け唇を味わい歯列をなぞる。
「痛っ!」
男は慌てて唇を離した。噛まれた唇から血の味がした。
「本当に威勢がいいな…」
男は怒りと屈辱に震えている少女…アデライードの身体を抱え上げ、豪奢だが少女らしい色調のベッドに放り投げた。

「敗戦国の物は勝者の物だ。
そして、この城と城の王女は俺が好きにしていいと言う事なんでな」
「な…」
「だから…この部屋は誰もこないぞ?人払いもして鍵もかけた。
もちろん、お前がどうしても嫌と言うなら…」
組み伏せられたまま、アデライードの青い瞳は男をじっと見据えている。
「第一王女の方にするが…」
アデライードの細い身体がピクリと反応する。
青い瞳も微かに光を弱めたように見えた。
(おや…?)
「俺としては、妻に迎えるのに第一でも第二でも関係ないからな。
もちろん美人で身体もいいのに限るが」
「無礼なっ…」
「しかし、国外にお前の噂は流れてくるが、第一王女の噂はとんとない」
「………」
アデライードが瞳を逸らす。
「第一王女は妾妃腹だそうだから、冷遇してるのか?だったら俺の妻にして優しく…」
「やめて!」
「なんだ急に」
「エリザベートはダメよ!」
「…俺はどっちでもかわまん。が、第一王女がダメというならお前が俺の妻だ」
男は再びアデライードに唇を寄せる。
「今度は噛むなよ。抵抗するなら第一王女にする。
お前は…部下たちにくれてやる」
80月と太陽 3:2010/01/24(日) 14:52:15 ID:Tc4UdFi6
アデライードは唇をぎゅっと噛み締め男を睨みつけたままだ。
しばらくの沈黙が流れる。
返事がないことを肯定と受け止め、男はアデライードの首筋に唇を這わせた。
「…っ!」
嫌悪のためだろう、アデライードの身体が震えた。
男の唇はゆっくりと下降し少女らしく膨らんだ胸元へと進んでいく。
「やっ…」
先程とは異なり、声音は震えていた。
「やめるか?」
もちろんそんな気はさらさらない。
「い、いいえ!」
案の定の答えが返って来て男はほくそ笑む。
「あなたの好きにしたらいいわ。けれど…」
「けれど?」
「エリザベートはダメよ。これだけは守って!」
胸元から顔を上げ、男は少女を見つめる。
涙で滲んだ瞳も紅潮した頬も乱れた髪も震える唇も…すべてが魅力的だった。
一国の将のに過ぎない自分が、由緒正しいこの国の
…想像よりもずっと美しい王女の夫になる…
そう思うと身体が熱くなってくる。
「承知した」
男はかすれた声でそれだけ言うと、少女に二度目のくちづけをした。


81月と太陽 4:2010/01/24(日) 14:53:48 ID:Tc4UdFi6
先程よりもさらに激しく無遠慮に男の舌はアデライードの咥内を貪り、
骨張った手が華奢な身体をまさぐる。
「ふっ…や…」
男の身体の下で身をよじり、時折苦しげにもれる声も気持ちを高まらせる媚薬だった。
次に否と言われても男は止めるつもりはなかった。
面倒な仕組みのドレスを脱がせる手間を惜しみ、開いた胸元から手を差し入れた。
「や、嫌っ…あっ」
アデライードが思わず小さな悲鳴をあげる。

その時、
「アデラ、アデラ!?」
王女の部屋の扉…男が人払いをしたのとは別の、
王女の私室を繋ぐ扉の向こうから声は聞こえ、小さく扉を叩く音がした。
途端、アデライードの身体が一層強張る。
男は構わずアデライードのドレスの胸元を無理矢理開いた。
「嫌っ、止めて!」
「アデラ!どうしたの?アデラ!」

トントンと扉を叩いていた音が止むと、カチャリと扉が開いた。


82月と太陽 5:2010/01/24(日) 14:55:40 ID:Tc4UdFi6
「だめっ、エリザ!来ないでっ!」
「アデラ…どこ?アデラ……
あ、あ…いやああああああ」
エリザベートと呼ばれたその少女は、
ベッドの上の二人を見つけると青ざめ震え、細く叫ぶとその場に崩れ落ちた。

「エリザ、エリザ!」
「あれが第一王女?」
アデライードを組み敷いたまま男は尋ねる。
「そうよ。離してっ!エリザ、大丈夫?エリザ!」
あまりの剣幕に男は腕の力を弱めた。
途端、アデライードは腕の中を摺り抜け倒れている姉姫の元へ駆け寄る。
「エリザ、大丈夫?
お前、そこの水差しを取って!」
「あ、ああ…」
男は勢いに気圧され、水差しの水をカップに注ぐとアデライードに手渡した。
「エリザ、飲んで…。お前、手伝いなさい!」
促されるまま、男はエリザベートの身体を起こすのを手伝い
アデライードは慣れた手つきでカップの水を飲ませた。

青ざめたエリザベートがゆっくりと目を開く。と、
ドン!ドン!
男が入ってきた方の扉を叩く音がした。
「エド、エドアルド!開けろ!」
「は、はい!」
男は慌てて立ち上がる。
「何を遊んでいる?仕事はまだあるぞ」
「すみません、王」
扉の向こうから黒い髪黒い瞳の…まだ少年と言っていい風情の若い王が姿を現した。
「………これは…まあ仕方ないか」
寄り添う二人の乙女とエドアルドと呼ばれた男に目をやり、少年は苦笑した。
太陽の光を集めたような第二王女と、2才程年長と聞く割には華奢ではかなげな
淡い栗色の髪と瞳の第一王女は月の光を集めたようだった。
83月と太陽 6:2010/01/24(日) 14:56:35 ID:Tc4UdFi6

「王…?お前が?」
「無礼な口をきくなよ」
エドアルドがアデライードに向き直る。と、エリザベートと目が合った。
「あ、嫌…」
再びエリザベートが震え、アデライードが慌てて視線を遮るように身体を上げた。
「お前、向こうをむいて!」
「おい、夫になる相手にそれはなんだ。あ、王…」
少年王は躊躇う事なく二人に歩みより、視線を落とした。
黒い瞳はまっすぐに姉王女に注がれていた。

「来い」
エリザベートの細い手首を掴むと引き寄せた。
「ちょっと、何をするの!」
慌てて振りほどこうとするが、少年とはいえアデライードに敵うはずもなく、
エリザベートもたよりなく引き寄せられ、奥の扉へと姿を消した。
「まって、ダメよ!」
追い縋るアデライードをエドアルドは抱き寄せた。
「どうして!エリザには何もしないって…、酷い。離してっ」
エドアルドの腕を振りほどくと、アデライードはその場で泣き崩れた。


84名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 14:57:14 ID:Tc4UdFi6
とりあえずここまで。エロ分が少なくて申し訳ない。
85名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 22:03:39 ID:A8W6ucRx
>>84
GJです。刺激になるな。
今まったく色気のないお転婆姫の冒険(需要あるかな?)
を書いてる俺からすればすごい妖艶です。
86 ◆O94IilXdKs :2010/01/24(日) 23:39:08 ID:AzVoIw8t
金髪に白い肌のお姫様を密かに教育する話を書きたいと思った。
で、姫様キャラはエロが絡むと決して幸せにはなれないなー、と思いつつ書きました。
全く、可哀想な生き物です。それが魅力なんですが。
いわゆるテンプレ的なお姫様が従者にエロを教えられるという、特にストーリーのない話ですが、折角書いたので投下っ。
騙くらかして手を出すので、多少酷い話に分類されるかと。
87 ◆O94IilXdKs :2010/01/24(日) 23:40:02 ID:AzVoIw8t

 王様と王に連なる一族は、それぞれが特技を持っている。
 国王はジャグリングが得意だし、王妃は竪琴で流行歌を弾くのが上手い。王弟はプロ顔負けの手品
の腕を持ち、王太子はバナナの叩き売りで右に出る者はいない。第一王女は踊り子としてステージに
立てるほどだし、太后のパントマイムは国内随一かもしれない。
 そして第二王女シルディーナ・フィル・クエーヌ様は現在、熱心に飴細工の修練を積んでいる。
 身内だけで集まった時に披露しあう事はあるが、臣下の前、特に貴族達に見せる事は決してない。勿体
ぶっているわけではない。他国の王族を接待する時に楽しんで貰う為でもない。通常、これらの特技が
日の目をみる事は、あってはならないのだ。
 下賎な大道芸人の技を、では何故、王族が身につけるのか?
 無論、気晴らしの為の趣味などではない。これらは最悪の場合に備えての訓練なのだ。最悪の場合
とはつまり、一時的に国を追われた時である。他国との戦争で城を落ちのびた場合を想定しているの
だ。或いは他国に赴いた際、不意の襲撃を受けて護衛の騎士たちと離れた場合にも役に立つ。
 まさか王族ともあろう者が、道端で見事な芸を披露して金を稼ぐなど――ありえまい。そんな思考の隙
を付く、王族ならではの緊急用特技なのである。
 国王との親交も厚い公爵級の大貴族にすら秘密なのは、特にそういう連中こそがイザという時に最も
脅威となるからだ。実の所、真に警戒すべきは貴族達によるクーデターなのである。秘密裏に他国と結
んで戦を起こし、城詰めの兵士が前線に赴いた隙を狙って反乱を企て、自らが王に成り代わる。現王朝
もそんな経緯をもって興されたのだ。決して歴史書には残らないが。
 だから王族たちが身につける特技は、本当に一部の者しか知らない。本人と、貴族籍を持たずに叩き
上げた宿老とも言える大臣、それに常日頃から身の回りの世話をする僅かな供回りの者。それくらいで
ある。
 教授役は、やはり貴族籍を持たず一生を王族の世話に捧げる供の者が行う。先ず自分で習得し、それ
をお教えするのだ。
 俺もまた先祖代々の王家使用人の末裔であり、小さい頃から芸を仕込まれた。仕えるべき方に秘密
の特訓を行い、イザという時には芸人一座として振舞うのだ。俺は特に露天販売系に強い。焼き鳥屋、
ジュース売り、啖呵売。そして飴細工。
 今現在も、城で下人をやりながら第二王女に先生と呼ばれる仕事をしている、のだが。実の所、教え
ているのは飴の売り方だけではない。
「んっ、あ! はぁ……ハァ。あ、あんッ。気持ち……良い、ですっ」
「姫様。大分、お慣れになられましたね」
「は……いッ。んぁぁ、そなたの、んっ。お陰で、あ、ああッ。んぁぁ」
88 ◆O94IilXdKs :2010/01/24(日) 23:41:46 ID:AzVoIw8t
 人目につかない王城の一角、かつては王族内の危険分子や表に出せない白痴の子が幽閉されてい
た事もある尖塔の最上階。そこにしつらえたベッドに着衣を乱したシルディーナ姫が横たわり、俺は彼女
の股間を下着越しに舐め上げていた。
「ああッ! んぁあ……ん、私――の体が……あ、熱く。んっ、んああ」
「姫様。今少し、堪えていただけますよう願います」
「んぁ、あっ! は、は……い。んっ、くぅ、んんっ」
 そっとベッドに乗り、切なそうに悶えている姫を抱き起こす。そして俺はワザとゆっくりと、白いドレスを
脱がせ始めた。背中の紐を解き、そうっと体を撫でながらドレスを緩めていく。そのジンワリとした刺激
に涙を浮かべる彼女だが、コルセットに包まれた胸の、特に先端を指が掠めると高らかに悲鳴を上げた。
「ん、んあぁっ。やああーッ! お、お願いです……い、一度、んっ、果てさせて。くぅっ、あ……あッ!」
「ダメですよ、姫様。もう少し頑張って下さい」
「で、でもっ。ん、あっ! 私、もう……耐え切れませ、んぁぁ」
「恐れながらシルディーナ様。それでは客に叱られますぞ」
「ん……んーっ! でもっ、でもッ。体が、言う事を……んぁっ、きかぬのですっ」
 腰や脇腹などをサワサワと指先で撫で回しながらドレスを脱がす。次いで、狂おしげに身悶えする姫を
押さえつけてコルセットを緩め始めた。下を見れば、股間を覆う布は俺の唾液とは無関係にシトシトで、
細く白いおみ足が露に濡れている。
 全く、良くもまあエッチに育った物だ。この講習を始めてまだ一ヶ月だというのに。
 スンスンと鼻を鳴らして俺を求めようとする王女の姿に、俺は内心でニヤリと口を歪めた。
 教えているのは、体の売り方だ。
 例の秘密特技の一環であるから、高級娼館などでの立ち回り方ではない。道端で男を誘い、一晩幾ら
で体を売る街娼の教育だ。詰まる所、ひたすら男の欲望に身を任せる訓練である。勿論だが、倫理的
にどうこうというのは最初から口に出してすらいない。姫様には「人には肉の快楽がある事」と「その交わ
りが一般的な商売になっている事」くらいしか知らされていないのだ。彼女は、これが子作りの方法であ
る事すら未だ教えられてないのである。
 だからシルディーナ姫は、俺のする事を素直に、何の疑いも持たずに受け入れてしまった。最初こそ
破瓜の痛みに泣きわめいたが、性感を体で覚えるや、むしろ俺の講習を心待ちにする始末である。
 来年には――輿入れが決まっているのに。
「あっ、あっ……ぐす。ねぇ、お願いだから……私を」
「分かりました。でも明日はもっと頑張るんですよ?」
「ん……っ、はぁ。え、ええ、そうします。だ、だから……んっ。早く」
「はい。姫様」
89 ◆O94IilXdKs :2010/01/24(日) 23:43:29 ID:AzVoIw8t
 コルセットを外し、程よく、そして美しく膨らんだ乳房を愛撫する。と、ついに泣きが入った。文字通り
ポロポロと涙を零し、一国の王女が城勤めの下男に哀願を始めたのだ。手引きしたのは自分だが、
実に簡単な姫様である。愛液でビッショリになった下着を脱がせながら、俺はそっと彼女の唇を吸った。
 さて。とある大国に輿入れが決まっているシルディーナ王女に、こんな『特技』を仕込むのはアリなの
かナシなのか? 答えは勿論ナシである。処女性も重要事項の一つである王族の嫁入りだ。当の本人
が処女でないのは困った事態であろう。にもかかわらず、彼女がこんな教育を受けさせられているのは、
これが陰謀だからに他ならない。
 王族には、王族同士で相争うケースを想定して、本当に誰にも――父王や実の母である王妃にも喋っ
てはいけない、秘密の秘密の特技がある。そう吹き込んで、飴細工の修練の傍ら、体の性的開発をし
ているのだ。婚姻話を潰し、嫁ぎ先の国と我が国の関係を悪化させるために。
 結婚が決まっているのに姫様が閨の作法はおろか、子作りの方法すら教えられていないのはこの辺
に関係している。無垢である事を求められているのだ。体だけでなく知識の方も。それがシルディーナ様
のイメージを保つ為なのか、嫁ぎ先のリクエストなのかは知らないが。
 因みに陰謀の仕掛け人はウチの国、随一の公爵様である。何というか、王家の秘密特技の存在は
とっくにバレバレであった。
 公爵にどんな思惑があるのかは分からない。ただ現実問題として我々使用人一族はいつの間にか
公爵家に抱き込まれ、その手先になっている。密かに王を暗殺するのも簡単に出来てしまうのだ。そし
て差し当たり、現在下っている指令が『第二王女シルディーナ様の処女性を奪い、肉欲に溺れさせる
事。何なら妊娠させちゃうとモアベター』なのである。
 そこで当初から飴細工を教え、姫様本人とも親しい俺が実行犯として白羽の矢を立てられた。ぶっ
ちゃけた話、首尾良く事が進んだ後、俺は密かに始末されてしまう可能性も高いのだが。まあ仕方ない
かな、という思いはある。因みに表向きの犯人は、公爵とライバル関係にある伯爵家の次男坊で、姫様
の護衛を勤めるエリート騎士になる予定らしい。そっちの逆アリバイ工作も俺が絡まされているから事実
だ。捨札は最小に、そして効率は最大に。流石は王族にとって最大の脅威である。えげつないったらない。
 事の背景は以上だ。要するに俺は『秘密の秘密の講習』と偽って、王女様を徹底的に可愛がってしまえ
ばいいのである。見張りと人払いに関しては他の者が担当しているから問題ない。そもそも王族しか立ち
入りを許されない塔で、仮に王や王太子がフラっと現れても「現在、姫様が例の特訓中です」と耳打ちすれ
ば不審にすら思われない。実際、並行して飴細工も教えているのだ。後は本人がうっかり口を滑らさない
かどうかだが、うっかり発言をしないような教育は洗脳同然に施されているのが王族である。ほぼ心配は
あるまい。
90 ◆O94IilXdKs :2010/01/24(日) 23:44:18 ID:AzVoIw8t
「では姫様。おみ足、開いて頂けますか」
「はぁ……んっ。こ、これで、いいですか? ん、んぁ」
「はい。じゃあ、挿れますよ。力、抜いて下さいね」
「んーッ! はぁ、は――ぁ、ああッ! あぁ、私の……中に、んああぁぁ」
 全裸になった姫様を仰向けに寝かせ、両足を大きく開かせる。そこへ俺は覆いかぶさった。そして硬く
なったペニスを彼女の性器に当て、蜜を擦り付けてからヌプと先端を埋める。堪らず歓喜の声を上げる
姫様の顔は、心底嬉しそうにほころんでいた。
 蝶よ花よと育てられてはいるが、やはり雁字搦めの生活を強いられる王女様である。対外的に友と呼
ぶ貴族の令嬢はいても本当の友達などいない。身の回りに侍り、本音を漏らせるのは極度に限られた
人物だけなのだ。その一人であり、屈託なく信頼できる男に丁寧な愛撫を受け、女性器一杯に快感を注
がれるのは至上の幸福だろう。その行為の意味を理解し、男が酷い裏切り者である事を知るまでは。
「んああッ! あ、あ……っ。くぅ、んぁ。良い、気持ち……良いです。ん、はぁ」
 無垢で純真な心はそのままに、姫様は身悶えして快感に震えている。最早、無垢でも純真でも無い膣内
は蕩けるほど熱い蜜で溢れ、恐ろしく繊細な襞がペニスに擦られてゾワゾワと蠢いていた。
 可憐な花と他国の住人にまで唄われるシルディーナ姫ではあるが、ベッドの中では一人の女である。だが
それでも流石と言うべきか、姫様は快楽に喘ぎ悶える姿さえ可憐で美しかった。真っ白な雪のようの肌が
上気して紅を纏い、金砂の髪は千々に乱れて目も眩むばかり。上品にフワリと膨らんだ乳房は最高級の
生クリームよりも見た目に甘そうだ。その先端でプクりと存在を主張する薄桃色の乳首は、本人が作る
下手な飴細工など比較にならないほど綺麗で繊細である。
「やんっ。んっ、んあぁ……あっ、奥に――私の奥にまで、んっ。そなたの、物が」
 今正に口いっぱいにペニスを咥えている性器も、やはりどこか並の女とは一線を画していた。薄めなが
ら生え揃った恥毛すら髪と同じ色で工芸品の輝きだ。男の味を知り、涎を垂らして俺の物を頬張るように
なった陰唇も、穢れなき処女の印象を未だに損なっていない。清らかなまま淫らに、欲望を楚々と、行儀
よく貪るのだ。邪気のない子供のような顔を陶然と歪ませて。
「あ、あ……あっ。奥、が――こじ開けられ、て。んぁ、あ――」
 そんな王女様の膣内を遠慮なく肉棒で味わい、細い腰を掴んで抽送。髪のように細く、だがプディング
よりも柔らかい襞がネットリした蜜と混ざってペニスに絡みつく。入れてジッとしているだけで堪らない心地
良さだ。
91 ◆O94IilXdKs :2010/01/24(日) 23:45:23 ID:AzVoIw8t
 ゆっくりと深く潜り込むと、最奥の壁が待ち焦がれていたように吸い付いてきた。ギュッと細い腰を押さえ
て僅かにペニスの角度を変えて突くと、熱くて厚い肉の壁が上下左右に少しずつ広がる。子宮に至る細い
道が開き気味になりつつあるのだ。
「あ……あっ。かはっ、んぐぅ……。ふぁああっ! だ、ダメです――抜いては、いけませ……んっ、あ。あっ!」
「姫様。客に注文をつけてはいけませんよ」
「んあぁっ。で、でもっ! でも……んっ、わ、わた……くし、やぁぁッ! もう、もうっ」
 膣の奥、子宮口付近を念入りに亀頭で擦ると、最近富にその辺りの性感が増した姫様は身を捩って強く
悶えた。白く細い指で俺の肩や鎖骨を弱々しく掻き毟り、喘ぎ声が止まらなくなる。最早、唾液を啜る事も
出来ず、口の周りから首筋にかけてまでベタベタだ。
 ペニスのカリで膣壁を擦りながら陰茎を引き抜き、一旦彼女の入り口まで戻ると、そのまま出て行かれ
ると思った姫様が涙を零して「抜くな」と哀願してくる。高貴な顔がくしゃくしゃだ。それを甚振るように、俺
は敢えて膣の浅い部分で緩い抽送を行う。
「うああっ。や、やぁッ! お、おかしく――なりそぅ、んああッ。もっと、奥に――んっ、挿れなさ……い。う、うぁぁ」
「ダメですよ姫様。街娼の訓練なんですから。何かお願いする時は、ちゃんと御教えした通りに仰って下
さらないと」
 流石に王族だけあって、柔和で心優しい姫様も咄嗟の時は上から目線で物を言う。だが人徳も手伝っ
て不快感などまるで無く、むしろ幼い子供が駄々を捏ねているようで可愛らしい。まあ、そんな事を考える
俺こそが不敬不尊甚だしいのだが。
「ん、あ、あッ。お……お願いです。どうか、この卑しい女に……んっ、お情けを――あ、あっ、下さいませ。
ん……はぁ、あっ」
「はい。良く出来ました」
 だからこそ、王女殿下の体を好き放題に抱くのもさる事ながら、そんなセリフを仕込んで言わせるのは
背筋が痺れるほど刺激的である。もっと姫様が羞恥プレイに慣れてきたら雌犬とか言わせてみよう。そも
そも夜の街角に立つ女にしては、先ず口調が丁寧過ぎるのだが。まあ、本当に街に立たせる事を想定し
ているわけでなし。
「んああっ! あ、また――奥まで、来た。んっ、んあぁ。嬉し……い。んっ」
 リクエストに答えてズブズブと肉棒を膣一杯に埋め、少しだけ引いてまた深く突く。と、狂おしげに歪んで
いた彼女の顔も花が開くようにほころんだ。そしてそのまま目が焦点を失い、急激に息が荒くなる。如何
せん限界のようだ。ここまで来ると放って置いても絶頂を迎えてしまうだろう。無論、どうせなら最高に気持
ち良く果てて欲しいものだ。
 何より、かく言う俺自身もそろそろ我慢の限界である。彼女の手前、余裕を見せてはいるが、いい加減
それもここまでだ。
92 ◆O94IilXdKs :2010/01/24(日) 23:46:09 ID:AzVoIw8t
「んぁ、あっ、ああッ! ふぁああ――っ。んっ、んぁ……あぁぁ」
 姫様の両足を抱えてそっと持ち上げ、こちらの腰に巻き付かせる。そしてやや前傾して膝を立てた俺は、
引いては突く抽送の速度を徐々に上げていった。決して広くはない尖塔最上階の一室に、ジュプジュプと
淫らな音が反響する。それ以上に甲高い王女の喘ぎ声と共に。
「ひぁあ、あッ! あ、ん――っ。わ、私……ん、んあああぁっ!」
 やがて細い体を振り絞って姫様が悲鳴を上げた。同時にウネウネと蠢いていた膣が収縮を始め、
キューッと俺のペニスを絞り上げる。こちらも密かに唇を噛んで堪えていた衝動を解放。弓なりに反り
返るシルディーナ王女の背中を抱きしめ、思い切り精液を放つ。先端を膣の最奥、子宮の入口に押し
当てて。
「う、あっ。あ……入って、来ま――す。んぁ、あっ、熱い……」
 ドプ、ドプっと音を立てんばかりの射精感に俺は打ち震えた。それは姫様も同様で、胎内に注がれた
精液を歓喜の表情で迎え入れ、絶頂の快感に体中をガクガクと揺らせていた。
 貪欲に子種を飲み込む膣は、ペニスを咥えて幾度もキュ、キューと締る。それに合わせるように彼女
はゆらりゆらりと胴体をくねらせる。心の底から幸せそうな表情で、言葉も無く俺の首に抱きつき、身悶
えしながら性の快感を堪能しているのだ。
「ん……んふ。んー、くぅ――ん」
 痙攣じみた膣の収縮が治まってくると、姫様の瞳にボンヤリと光が戻り、俺の顔が映し出される。優し
く抱きしめて頭を撫でると、彼女は地位も立場も完全に放り出して目を細め、うっとりした表情で甘えて
きた。建前上の目的である講習の事など、これっぽっちも頭に残っていまい。
 素で王女様に甘えられるのは素で嬉しいが、それはそれとして陰謀的思惑にも合致している。シル
ディーナ様の根の深い部分に、男への肉体的依存心を植えつけるのだ。
「はぁ……はぁ。んっ、そなたの手は……んっ、気持良いですね。ふぅ……んっ」
「恐れ入ります。姫様」
「ふふふ、畏まらなくて良いのです。んっ、あふ……。もっと、撫でて下さいな」
「はい。では、遠慮なく」
 言葉の上でこそ落ち着いているが、甘く鼻に掛かる声で愛撫を求める姿からは、肉の悦びにのめり込
んでいる様子がありありと伺えた。ペニスを深く挿入したまま、クタッと力を抜いて身を任せてくる姫様を
両腕で包み、背中や肩、そして髪を丁寧に撫でる。まだペニスは挿入したままだ。何が彼女の感覚を支
配しているのか、その身に刻んで貰うのである。
「あぁ、何て――心地、良いのでしょう。んっ、はぁ……ふふ、ふふふ」
93 ◆O94IilXdKs :2010/01/24(日) 23:47:10 ID:AzVoIw8t
 ジワリと股間付近に温かい粘性の水分を感じる。まだ絶頂の余韻は継続しているらしい。膣の内部が
モゾモゾと蠢いて肉棒にすがりついているのを感じた。丁度、姫様が俺にすがりついているように。余程、
感じ入っているのだろう。こみ上げるような微笑みが浮かんでいる。そこまでナチュラルに喜んで貰える
とは光栄の極みだ。
 暫くの間その体勢を維持し、シルディーナ王女が心から満足した所でペニスを抜く。そしてゆっくり上体
を起こし、俺はまだ硬度を保った肉棒を彼女の顔に突き付けた。
「さあ、姫様。最後の行程をお願いします。飴を売るのと同じで商売ですから、感謝の気持ちを忘れては
なりませんよ」
「はい。私の体を買ってくださる方に、お礼の意味を兼ねて綺麗にして差し上げるのですね」
 姫様も上半身を起こし、ペタンと女の子座りになる。そして目の前に差し出されたペニスを丁寧な手付
きで支え、そっと先端に口付けた。行為に対する抵抗感は欠片もないようで、むしろ目を潤ませて愛おし
げに肉棒を口の中に含む。
 教えた当初は戸惑っていたが、今では慣れたものだ。何を言わずともペニスを濡らす愛液と精液を舌
で舐め、唇で吸い取り、味わうように喉を鳴らして飲み込む。先ずは亀頭から、次に顔をズラして横から
陰茎をハムっと咥え、チロチロと舌先で撫でるように。
 祈りを捧げる聖女のように真摯に、穢れを知らない幼子のように無垢な顔で、夜の暗がりで客を取る
娼婦のような行いに浸る、国の宝花と讃えられる第二王女――。決して幸せにはなれない不遇の姫君。
遅くとも半年後には深い絶望に身を落とす彼女も、今だけは喩えようのない幸福感に身を委ねていた。
「んっ、ちゅ……はむ。んっ、んむ――んっ、んぁ」
「上手になられましたね、シルディーナ様」
「んく。ふふっ、そなたのお陰です。んっ、あむ……んっ」
 乱れた髪を軽く手櫛で梳きながら口淫の上達を褒めると、姫様は嬉しそうに微笑む。そしてペニスの
付け根や睾丸周辺まで綺麗に体液を舐め取ると、再び先端を口に含んだ。今日の講習を名残惜しむよ
うに、少し寂しげな表情で。
「姫様、お口に出します。吐いてはダメですよ」
「ん、んっ。ええ、心得ております。んく……んむっ」
 そんな顔をさせているのが、他の誰でもない自分だと思うと背筋が震えるほどの興奮があった。裏切り、
裏切らせている背信的愉悦とでも言うべきか。決して許されず、彼女本人を含めた多くの人を絶望に追
いやる外道の快感だ。思わずゾワゾワとした何かが体中の神経を駆け巡る。きっと今の俺は大層酷い
人相になっているだろう。
94 ◆O94IilXdKs :2010/01/24(日) 23:47:53 ID:AzVoIw8t
 それと同時に股間の快感も膨れ上がった。姫様の舌と唇で奉仕されたペニスが射精の衝動を抑えき
れなくなる。俺は彼女を促して受け入れの体勢を取らせ、それまで這い回っていた舌が動きを止めたの
を確認して姫様の頭をそっと支えた。そして腰の奥に力を込める。
 びゅぅと精液が尿道口から溢れ出した。品良く僅かに口を窄め、シルディーナ様は出された物を一滴も
漏らさないよう懸命に受け止める。そして細い首をコクリと鳴らして飲み込んだ。だがまだ口はペニスか
ら離さない。そのまま先程の続きのようにピチャピチャと亀頭を舐め、口に残った分の精液と共に喉の
奥へと送る。
「んっ、んー、んく。んぐ、あむ……んっ、んふぅ。どうです?」
「はい。ちゃんと飲めましたね。お見事で御座いました」
 俺に髪を撫でられ、うっとりと目尻を下げながら丁寧に男の物を舐め続けていた姫様は、それが磨か
れたように綺麗になって漸く顔を上げた。実に機嫌良く、そして誇らしげにこちらを見上げている。まるで
投げられた木切れを走って取ってきた子犬のようだ。
「ふふふ、違います。そなたの感想を聞いているのです。気持ち良かったですか?」
「ええ……それはもう。天にも登る心地でした。このまま命が尽きても構わないほど」
 だが俺の返答は少しばかり的を外したらしい。姫様がクスクスと可愛らしく笑う。これは最後に来て一本
取られたようだ。仄かに苦く笑って参った事を認めると、彼女はニッコリと顔をほころばせた。
「うふ。死んではなりませんよ。そなたには、まだ教わりたい事がたくさんありますからね」
「はい。姫様――仰せのままに」
 これで本日の秘密特技講習は終わりだ。俺は予め用意してあった温水に柔らかい布を浸し、王女様の
顔や体を拭う。まだ芯に残った熱が冷めやらないのか、彼女は乳房や股間部を触れられる度に悩ましげ
な溜息を漏らしている。だが一通り拭き終わると実にスッキリした表情になった。事実、スッキリしている
のだろう。はしたなくも「んーっ」と伸びをする顔は公務の疲れも抜けて晴れやかだ。
 白い普段用のドレスを着せ、自分もササッと身繕いを整えると、俺は姫様を連れて尖塔最上階の部屋
を出た。そして塔の半ば辺りで待機していた侍女に後を任せる。当然ながらその侍女も公爵の密命を受
けた陰謀仲間だ。布で拭ったとはいえ、まだ情交の匂いが抜けていないシルディーナ王女を改めて湯殿
に連れて行くのである。
 互いに軽く目配せしてから、姫様に頭を下げて別れを告げ、俺は例の部屋に戻って後始末を行った。ベト
ベトになったベッドを見ると今更ながらに自分のしている事に恐怖を覚えるが、まあ何にせよ俺は偉い人
には逆らえない。どの道、なるようにしかならないのだ。であるなら、イザその時が来るまで精一杯王女様
の体を楽しませて貰おう。
95 ◆O94IilXdKs :2010/01/24(日) 23:49:47 ID:AzVoIw8t
「あ、そうか。今日は夜会があるんだったか」
 時間を掛けて部屋を掃除した後、尖塔を出ると城の広間から賑やかな声が聞こえた。太后様主催の
親睦会のようなパーティで、大掛かりな物ではないが若い貴族や上級騎士なんかが集まる予定だった
筈。お呼びでない俺は城の一角にある使用人部屋に戻りつつ、渡り廊下の影から横目で華やかな広間
を眺めた。
「おっ、流石は姫様。注目を独り占めだな……」
 その可憐な美貌を惜しげも無く振りまくシルディーナ第二王女は、やはり参列者の視線を集めている。
柔らかい物腰に柔和な笑顔、だが清楚でありながら何処か艷めいた白い肌。音に聞こえた大貴族の子弟
や、名うての騎士たちが次々に跪いてはポーッと見惚れていた。さもありなん。だが彼らは夢にも思わない
だろう。
 可憐にして清楚を唄われる王国の姫君が、まさか今この時、胎内を満たす精液の温もりに頬を緩めて
いるなどと――。
「あの笑顔、まんまイッた後の顔じゃないか。全く、困った姫様だ」
 体の奥に残った精液が揺れて、気持ち良くなって来たのかもしれない。ほんのりと頬を赤らめ、彼女は
幸せそうにフニャと目を細めていた。本当に素直で嘘のない御方である。
 さて。そろそろ後ろの穴にも手を出してみるかねぇ。
 そんな事を内心で考えながら、俺はのんびりと使用人部屋への道を歩いた。ノッてきた姫様が夜会の
最中に果てたりしませんようにと祈りながら。



 了

 ― * ― * ― * ―

世間知らずの姫様にいらん事教えるのが俺のジャスティス。
なんで飴細工なのかは『チェルキー キャンディーストア』が元ネタだから。
でも、分かる人が一体どれくらいいるのか。アトス可愛いよアトス。

因みに、この話が仮に続き物だとしたら――

1.嫁ぎ先の某国皇太子が意外に姫様を気に入り、彼女の教育係だった自分をヘッドハンティング。メイド
さんの躾け係に。という夢を見てたら呆気なく殺されたでござるの巻

2.輿入れ直前になって嫁ぎ先の国がクーデターで潰れ、例の公爵様も暗殺されて事が白紙になったと
思ったら姫様が妊娠。王様にバレて一族郎党打ち首になったでござるの巻

3.急に戦争が始まって王都陥落。必死に逃げてホッと安心した所で街を歩いてたら、落ち延びてた姫様が
立派に体で稼いでいて、しかも大人気でビックリ。しかも王様と王弟様と王太子様が順番待ちの列に並んでて
ツッコむにツッコめず、でも王妃様の竪琴をBGMにパントマイムやってた太后様をみつけたので二人にチクっ
たら凄い争いに発展。気がついたら占領軍が消えてて姫様が戴冠。奇跡の娼婦女王とか呼ばれてたでござるの巻

この三つのどれかが最終回になるんじゃないかと。
ホントにどうでもいい事ですが。

以上、お目汚しでした。
96名無しさん@ピンキー:2010/01/25(月) 01:20:35 ID:yRYorRG8
GJでした!!

「あ〜よかったあ……」って、どの最終回でもおkだろうな
「3.」は読んだ後しばらく笑えた
97名無しさん@ピンキー:2010/01/25(月) 03:35:38 ID:WnsgvZ5J
GJ
98名無しさん@ピンキー:2010/01/25(月) 15:51:27 ID:mrlTZz99
超GJ!
99名無しさん@ピンキー:2010/01/25(月) 22:10:15 ID:JMPrpHU4
>>95
バッドエンド(教育係的に)ばっかりかよw
100名無しさん@ピンキー:2010/01/26(火) 12:45:08 ID:8dQczblI
ノリがいいな
101名無しさん@ピンキー:2010/01/26(火) 17:04:44 ID:CsycN2h7
『チェルキー キャンディーストア』わかるよー。
あれは王族貴族てんこもりだから楽しいよな。
102名無しさん@ピンキー:2010/01/26(火) 18:40:45 ID:I71f03tC
戦火スレから来ました。
皇女モノでひとつ
エロ無し


『覇王の娘と勇者の末裔』

帝国の覇王として大陸を支配していた王が勇者達によって討たれた。
覇王が恐怖と権威で大陸全土を支配していた時代が終わりを告げた瞬間だった。
その勇者の軍勢は人間、ドワーフ、エルフ、有翼人、獣人という諸国の種族で混成された
いわば、人々の象徴的な存在だった。
しかし、その勇者達を迎えたのは勝利の賛歌と祝福と感謝の言葉ではなかった。
帝国が滅ぶやいなや、傘下にあった諸国は分裂し、大陸の覇権をと血で血を洗う
群雄割拠の時代へと突入したのだ。
治安は崩壊し、無法者と化した帝国の残党や職にあぶれた兵隊崩れが群がり、
略奪や暴行が横行し、物流は完全に停止。
加えて近年の不作によって飢餓や疫病が蔓延した。
勇者達が取り戻したのは平和ではなく、騎馬のいななきと終わり無き戦いだけだった。
そして勇者達に向けられたのは憎悪と怒り、罵りという名の呪詛。
絶望した勇者達は軍を解散し、故郷へと帰った。が、そこでも彼らに突きつけられたのは
悲惨な現実だった。覇権を争う群雄割拠の戦に勇者達はかつての戦友に剣を向け、戦わなければならなかった
祖国の為に、一族の為に、恋人の為に、誇りの為に、そして――――――正義の為に。
そんな折りに、かつての栄華と支配を取り戻すべく、決起した一つの勢力があった。
覇王の忘れ形見である一人娘を君主とした新興勢力だった。その勢いは止まるところを知らず、
瞬く間に大陸の大部分を掌握した。
これはその軍勢が大陸を完全に掌握する少し前の物語である。

「何?新たな勢力だと?」
軍議の席で、君主である少女が眉を上げた。
その鋭い視線に数多の武勇を誇る猛将達も肝を冷やした。
「申し訳ありません姫様――――――」
軍師であるダークエルフが事の詳細を述べた。
「その者共は各地の民衆より物心共に援助を受けており、もはや一つの勢力
と言っても過言ではありません。少数ながら我が軍の部隊も手に余る状態です」
そして一人のダークエルフが続ける。こちらは若い女性だ。
「またその行動は的確であり、用兵の術も統べているようで、かなり手強いようです。
既にその者達によって悪しき支配者から解放された小国や街がいくつもあり、、
さらに人心を集めているようです。」
103名無しさん@ピンキー:2010/01/26(火) 18:41:49 ID:I71f03tC
「解せぬ」
少女の言葉はそれだけだった。
「は?」
意図を掴みかねたのか軍師が少女の顔を見た。
「強いだけでは民衆の心は得られまい。何か理由があるはずだ」
その言葉に二人の軍師は顔を見合わせた。何か言いたげな視線を互いに送っている。
「何だ、言ってみろ」
「姫様…これは…不確かな情報なのですが……
御無礼を承知で申し上げますと
その軍勢は先の大戦において先王様を討った憎き勇者共の末裔――――――」
少女の眼が見開いた。

「……そ、それで潜入ですか?それも皇女様自ら?」
「ああ、敵状の視察をな、場合によっては討つ。
頭数は減らせるときに減らしておかねばな」
その軍勢が解放し、駐屯しているという街へと入った皇女は
スパイであるワーキャットの娘に呟いた。この娘はシノビの心得があり、
すでに勇者軍の者との関係を持っているとのことだ。
「頭の固い軍師殿がよく許してくれましたね…」
直属のシノビであるため、言葉遣いも気軽なものだ。
「気にするな。私の独断だ」
「あ、あの〜………ばれたら私の首が飛ぶんですが……」
「ばれないように努めるのがシノビの仕事であろう?数日の間だ、頼むぞ」
悲しいかなワーキャットの言葉を君主はばっさりと切り捨てた。
104名無しさん@ピンキー:2010/01/26(火) 18:43:34 ID:I71f03tC
その娘は早速、勇者軍が仮住まいしているという屋敷へと向かった。
既にかなり信頼されているようで何の疑いもなくその娘を迎え入れる面々。
皇女もその友人として屋敷へと難なく入る事ができた。
さすがにこの勢力の中心人物と軍師は別室で軍議中との事だ。
勇者軍…その編成は人間、ドワーフ、エルフ、有翼人、獣人等々…
皇女は眼を見張った。
(……たったの20人だと…それも子供と変わらぬような輩まで…)
「驚いた?」
「え――――――?」
声を掛けてきたのは一人の若い人間だった。
精悍な顔つきをしており、腰に剣を携えている。
「皆、最初は驚くんだよ『こんな連中に何ができるんだ』って。でも僕達は気にしない
誰だって思うもの……でも僕達は勇者の末裔だ。こんな戦乱の世は早く終わらせないと
その為に頑張っているんだ……だから君の協力も得られた?ちがう?」
邪気のない笑みに皇女は一瞬、顔を赤らめた。
「あはは、な〜に、リューイったら…そのコが気に入っちゃったの?」
「バ…バカ、何言ってんだよ!アリス、そんなんじゃないって」
エルフの女神官にからかわれ、顔を赤くして抗議の声を上げた。
この剣士の名はリュイナッツ。この面子の中でも剣の腕は一番の実力らしい。
年齢は18……


「皇女様、皇女様、聞いてますか?私の話」
「あ……すまぬ、考え事をしていた。最初から頼む、それに皇女はやめろ
あらぬ誤解を招く。昔の呼び方で構わん」
「あ、そうですか…では失礼して、ティル様――――――」
街の中にあるワーキャットの拠点である酒場で皇女、ティルフィード
は話を続けさせた。
ワーキャットの情報によって敵状はかなり把握できた。
次の侵攻先、物資の補給ルート、協力関係にある国、人物。
「……しかし、何なんだこの恋仲関係というのは…」
手元のメモを見て、ティルフィードはげんなりした。
「いやですね…もう、セックス後の寝物語で情報を聞き出すんですよ。
私なんてプロポーズもされちゃって…あーあって感じですよ」
「……ご苦労」
一応、眼を通してみる……20人中、エルヴィン×アリス、グリエルド×アクス……
無意識にリュイナッツという名前を探してしまう。しかし、その名は無かった。
(……なんだ、安堵しているのか?私は…バカな…あり得ん)
しかし、その間も心のどこかにリュイナッツの顔が忘れられない自分がいた。
「で、あいつの情報によると―――――って、あの…私、何かまずい事いいました?」
皇女の形相を見て、ワーキャットは声を潜めた。
「構わん、続けろ」
(何なんだ…一体!)
皇女はイライラする気分を払拭するように舌打ちした。


仮想戦記っぽくてすいません
次回はエロ本番で
105名無しさん@ピンキー:2010/01/26(火) 19:46:39 ID:UHrxABsl
戦火スレの投稿作品が大好きでした。
続きも楽しみです。
106名無しさん@ピンキー:2010/01/26(火) 22:24:39 ID:yKQagTDo
結局これは帝国が再興するという話なのか
だとしたら勇者一行ってまったくもって誰得なことしたんだなあ…

続きには期待するけど、
個人的には「姫様」よりもきちんと「殿下」と呼んで欲しい
107名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 01:01:29 ID:oFt1LEBD
続き楽しみですな
108名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 03:24:22 ID:399P3/Fd
好評でなによりです。
今回ですが長くなりますので少し分けました。
皇女のエロ期待していた方、申し訳ないです。
代用としてワーキャットのエロ入れておきました
109名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 03:36:55 ID:399P3/Fd
『覇王の娘と勇者の末裔』
獣人×ワーキャット






ティルフィードは次の日もその屋敷に行った。
「やあ、昨日の……一人?」
「リディアは宿の仕事だ……これを渡すようにと」
リュイナッツに封をした封書を渡す。
リディアとはワーキャットの事だ。
シノビという職業柄、名前はいくつも持っている。本名はイツファというらしい。
「………了解。ボス達は、仕事でね」
(仕事……イツファが言っていたように次に攻め入る地の偵察か)
「僕は留守番さ。そういえば、君の名前は?」
「わ…私は…ティル――――――」
危うく本名を口に仕掛けたティルフィードはその言葉を飲み込み、言った。
「私はティル」
「了解、ティル。僕のことはリューイって呼んでくれ、仲間達もそう呼んでる」
「………わかった」
そうしていると昨日のエルフの神官、確かアリスが二階から姿を現した。
「あら、昨日の……ちょうどいいわ、リューイ。食糧の買い出しをしてきて」
「ちょっと待ってくれよ。もう夕方だぜ、明日ボス達が戻ってからでいいだろ?
ティルに悪いって」
「そのコ、ティルって言うの……ちょうどいいわ、リューイと一緒に行ってくれない?」
ねぇ…とアリスはティルフィードに向かってウィンクした。
「私は構わないが…」
「ほら、ティルもこう言ってるんだし、護衛も兼ねて」
「わ、わかったよ…」
リュイナッツは渋々と言った。
110名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 03:41:06 ID:399P3/Fd

「…アリスは人使いが荒いなぁ…付き合わせてごめんね」
「あ、ああ…気にするな」
この街では人々は活気に満ち溢れていた。戦時中という事を忘れるくらいに。
リュイナッツによると元々はタチの悪い貴族が仕切っていたらしいが、その連中を追い出してから
街は自治を取り戻し、かつての活気を取り戻したというのだ。
そんな事もあり、リュイナッツは買い付け先の店やすれ違う人々から声を
掛けられることもしばしばあった。
「…っと、これで最後か……持ちきれないのは後で届けて貰うから…」
「待て。アリスに頼まれた買い物がまだある」
「え?そんなのあったっけ?」
きょとんとするリュイナッツにティルフィードは堂々と言った。
「生理用品だ」

「……全く…アリスは」
女性専門の店内でリュイナッツはブツブツと言っていた。
「私が購入する…避妊具とナプキンか…あと化粧水と…」
テキパキと品を選び、店の女主人に注文する。
「本当にごめん、ティル」
心底申し訳ないというようにリュイナッツは言った。
「男と女が同居するならそういう事もある」
店の女主人が奥に品を取りに行ってから
「アリスはエルヴィンと恋人同士だしね。あ、エルヴィンは僕達のボスね。
僕や他の仲間と出会う前からそうらしいよ。二人を見ていれば一目瞭然だけど」
「勇者達も男と女というワケだ」
これは皮肉を込めて言ったティルフィード、さすがのリュイナッツも苦笑していた。
「リディアもそういった点では、な。リューイにはいないのか?」
そう質問してから、ティルフィードは胸の高鳴りを覚えた。心臓の音がヤケに
重く、胸が苦しい。顔が赤く紅潮するのが自分でもわかった。
「ええ?ぼ、僕」
「あ、ああ…そうだ。他に…誰か気になる女とか…」
緊張が最高潮に達した。次の瞬間、
「ははは、僕にはいないよ」
ふぅ…と息をつくティルフィード。
「お嬢ちゃん、お待たせ」
店の女主人が品を持って出てきた。
「ティル、僕は先に出てるから」
「ああ」
リュイナッツが出て行くと、店の女主人はニヤニヤしながら聞いてきた。
「お嬢ちゃんはリューイのコレかい?」
小指をたてながら女主人は聞いてくる。
「…いや、違う」
「またまた、赤く成っちゃって。いいよ、コレおまけに付けとくからさ。
先にデキちゃったら、このご時世、困るもんね。リューイ達、勇者様が早く世を
安泰にしてくれることを望むよ」
「…………」
避妊具を渡されたティルフィードは赤くなりながら店を出て行った。
111名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 03:43:16 ID:399P3/Fd
「ごめんね、ティル。リューイには頼めなくてさ」
「構わない」
屋敷に帰った後、アリスの個室に招かれたティルは本人から
ねぎらいの言葉をかけられた。
「リュウイナッツはかなり怒っていたようだが」
「気にしない、気にしない。女には女の事情があるのよ。このメンバーの中にだって
恋人同士なのは結構いるし…」
「エルヴィンとアリスもその中の一員か?」
ポッと赤くなるアリス。
「そ、そうよ。ま、立ち話もなんだから、座って、座って♪」
(恋人の話か…この手の話はイツファで十分だ…)
上機嫌なアリスを見て、ティルフィードはげんなりとした。

それからしばらくは長々とアリスの恋人であるエルヴィンの事を
聞かされ、そして仲間の恋人やこれからの予想。
さらに耳を覆いたくなるような深い情事の話。
しかし、アリスはふと、こんな話をした。
「私のお母さんの話になるんだけど、前の大戦でね。勇者軍の一員だったの、それで
その勇者のリーダーと恋人同士だったけど…覇王を倒してから、別れたの」
紅茶が入ったカップを持ちながらアリスは静かに言った。
「別れた?」
同じように紅茶に口にしていたティルフィードが視線を上げた。
「そう。別れようって言ったのはお母さんでね。
…そのリーダー、実は滅亡した国の王子だったって事が公になっちゃって……
勇者軍を一番、支援してくれた大国の王様が『是非、娘と結婚して国を治めてくれ』って。
その国は私のお母さん達の事を悪く言わなかったし、行き場のない勇者軍の人達を
受け入れてくれたの。お母さんも滅亡したエルフ族の王女だったけど、少数民族だったし
釣り合わないって……私がお腹にいたのも原因だったかもしれない」
「では…アリス、お前は」
「そう……私も勇者の末裔」
ティルフィードはカチャリとカップを置いた。
「別れとは辛いものだな」
「でも私はお母さんとは違う。私は私だもの、エルヴィンと絶対に幸せになるんだから。
って言うワケで、お近づきの印にはい、コレ♪」
アリスが何枚かのチケットをティルフィードに差し出した。
「何だ、これは?」
「明日のお祭りの出店の割引チケット。リューイと親睦を深めるには、
また熱い夜を過ごすにはもってこいじゃないかしら?」
「……お、お前まで…私はそんなつもりではない。リュイナッツもな」
「またまた〜……私にはわかるんだから、エルフの恋の占いは当たるのよ?」
112名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 03:44:14 ID:399P3/Fd
一方、その頃のイルファは尋ねてきた獣人と共に熱い情事を交わしていた。
「はぁ…はぁ…ん、あっ…い、いいよ。そ、そこ…あ、あはっ」
イルファは獣人によってベッドに押しつけられるようにして、
はだけたスカートの間から手を突っ込まれ、濡れそぼった股に愛撫を受けていた。
「もう濡れて…手に絡みつくみたいだな…」
「あ、ダメ…ソコばかり触らないで…おっぱい…好きなんでしょ?」
獣人はゴクリと生唾を飲み込み、娘の胸元を一気に押し開いた。
反動で、お椀方の美乳がぷるんと、零れ落ちてきた。
更に胸もとを開くと白いうなじに生肩が顕わになった。
「んちゅ…お前はほんと…いい女だ……」
「嬉しい……ちゃんと覇王の娘や他の悪い奴らをやっつけて帰ってきてね」
「ああ、任せろ。俺達の力を持ってすれば敵はいねぇ!」
獣人は今、当に抱いている娘が覇王のスパイであることなど夢にも思わないだろう。
そのごつごつした手でイルファの白い乳房を揉みし抱き、乳首に食らいついた。
手の中で淫らに歪む乳房は、つきたての餅のように柔らかくその先端の桜色の突起は
硬く、勃起し始めていた。
「あっ…あふん…はああっ」
「な…なぁ…頼み…聞いてくれるか?」
「あん…何?語尾に『ニャ』でも付けて欲しいの」
貪るように乳房を吸い、舐め、揉みしだく。服を完全に腰まで引き下ろすと、
今度は股間に頭を埋め、イルファの秘所を愛撫し出した。
両腕でがっちりと尻を掴み、腰を引く娘を固定する。
「あっあああっダメ、そこはまだ…っ」
「ち、違う……そ、その全部さ…片づいたら…」
「あんっ…ああっあっ…ダメ、ダメ…ちゃんとイカしてくれるまでダメ」  
娘の長い髪が乱れ、白い喉が仰け反った。
その獣人の頭部を両手で押さつけて娘は達した。
「はああ…ああ……んっ…」
くたぁと脱力した娘はそのまま荒い息をつき、獣人と対面座位の格好になった。
「ん…先にイっちゃったにゃ〜ん♪……ごめんね。いいよ…な〜に?」
「ぜ、全部…全部終わって帰ってきたら…俺と結婚してくれ!」
「えっ?あっ…ちょっと」
「だ、ダメか?お、俺は真剣なんだ…た、頼む」
両手を持ち、懇願する獣人に娘は営業スマイル……というのだろうか。
心にもないことを平然と言った。
「うん…いいよ……待ってる。って、前もそれ言ったよね、」
くすくすと笑うイルファ。
「あ、あれそうだっけ!?で、でも絶対、帰ってくるからな」
それから娘は対面座位、正常位、駅弁…と様々な体位で獣人に尽くした。
何度も何度も精を膣内に、口に、顔に受け止め、今は後ろから突かれていた。
「はっはあっ…あ…も、もぉ……元気すぎるよォ…」
スカートを捲り上げられ、小振りな尻を掴まれ激しい剣突を受けながら娘は弱々しく言った。
「はっ…ん…ダ、ダメ…ん、んんっ出る、出る!」
背後から抱きつかれ、うなじにしゃぶりつかれ、背後から揺れ踊る乳房を揉みくちゃにされる。
獣人同士の交尾は何ともいえないほど甘美で、淫らだった。

113名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 10:52:18 ID:wyMpMpgn
ん?
114名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 11:30:20 ID:yOiGTwwS
スレ違い談義への燃料ですね
115名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 12:10:13 ID:oFt1LEBD
「続く」とか「終わり」とか書いて欲しいんだけど
116名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 12:26:45 ID:Mfp3nOMk
アリスの異父弟or妹も出てきそうだけど誰なんだろう。
てっきりリュイナッツが勇者リーダーの息子だと思っていたけど…
続きも楽しみです。頑張ってください。
117名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 22:37:00 ID:GNHgGWw6
帝国か…

皇族が軒並み死亡or行方不明。
無事に残ったのは皇女一人とかって状況になったら、すぐ即位なんだろうかなぁ。
現皇帝の生死が確認されなきゃ保留になるんだろーか。
118名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 06:48:19 ID:LwKO0qq7
マジレスすると継承規定次第。
兄弟で帝位を争ったりする話とかよく見るけど、そういうのは東アジア的だよね。

西欧だと継承権と継承順位がきっちり決まってるから、
皇女ひとりになった場合に即位できるかははじめから決まっている。
イギリスなら即位できるが、フランスやドイツなら即位できず断絶となるんじゃないかな。
119名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 17:29:59 ID:UUW/bNi/
『覇王の娘と勇者の末裔』
リュイナッツ×ティルフィード
エロ本番





「一体、どこに行かれたというのだ!!」
本拠地である帝都の一室でダークエルフの軍師であるヘスタトールは頭を抱えた。
「確かに………書き置きには2、3日で戻るとありましたが…」
ティルフィードが残していった紙切れを見ながら、ダークエルフの妹ヘスタプリンが呟く。
「姫様はここ3日の間心労がたたって、床に伏しているという事にしているが…もう限界だぞ。
将兵の士気に関わる!プリン、もしや、姫様の行き先を知っているのではないだろうな!?」
「まさか…それならとうの昔に連れ戻していますよ」
しれっとして妹は兄の疑いから身を引いた。
「同じ女性として見当がつかんか?」
「全く見当が付きませんね」
妹からの即答にがっくりと肩を落としながら軍師は呻いた。
「姫様が幼き頃より仕えてきたこの身。
姫様の身に何かあれば亡き先王様や王妃様に申し訳がたたん!」
「……そ、そうですねぇ〜」
実際のところ、ヘスタプリンは兄の疑ったとおり、ティルフィードから
行き先も、目的も聞き、それを容認し、協力もした。
若干17歳といえども、覇王亡きあと、動揺する帝国内や将兵をまとめ上げ、
一大勢力にしたティルフィード。皇女自身の政治能力もさることながら戦闘能力は桁違いだ。
帝国の猛将達でもその剣術に太刀打ちできるものは数えるほどしかいない。
さらに万が一に備えて、ティルフィードの命に危機が迫るような事態になれば
その身を強制的に帝都へ転送させる魔術も掛けている。それはヘスタプリン自らが行った。
「ああ…こんな事が他の主将達に知れたら…考えるだけで胃が―――」
「兄様、大丈夫ですよ。皇女様は何かお考えがあってなされた事です。
きっと戻ってこられますよ」
心の中で『このロリコン野郎』とやや引きながら、兄を励ます妹であった。
120名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 17:31:37 ID:UUW/bNi/
「はい、ティル。リンゴ飴」
「これはリンゴなのか?飴なのか?一体、どちらなんだ?」
次の日の夜、アリスに強引に誘い出された二人。案の定、アリスはどこかに消え、
二人で夜の出店を回った。初めはよそよそしかったものの………
せっかくの割引チケットなのだから…小腹がすいたから骨付き肉を。
辛かったので葡萄酒を。デザートが食べたいなぁ〜とシャーベット。
食後のお茶にする?と紅茶を。そして先のリンゴ飴。
何気なしに出店を満喫している二人であった。
酒が入ってほんのりと紅がのったティルフィードの肌にリュイナッツはいつになくドキドキしていた。
(……意識してないつもりだったけど…ティルってか、可愛い。何か凛々しくて…)
自分より背が低いため、衣服から覗く白いうなじに、淡く実った胸元に引き締まった腰
そこから柔らかな曲線を描く尻のライン。
「ん、んーとリンゴに飴が塗ってあるからどちらでもあるんじゃないかな?」
「そうか…ならば、この甘い飴の部分を頂こう…ん、甘くて…んちゅ」
ペロ…ペロ…と舐める舌にリューイはさらに顔を赤くした。
「…………」
(…げ、な、何、反応してるんだよ…み、みっともない…)
ズボンの不自然な膨らみを隠すようにリューイは足早に界隈を歩いていった。
そして着いたのは街の水源にもなっている湖を一望できる丘だった。
121名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 17:34:26 ID:UUW/bNi/
「ここは?」
「僕のお気に入りの場所。夜は獣が出ることがあるから街の人はほとんど来ないんだ」
祭りの明かりに上を見上げれば満天の星空に月。それが湖に反射に映る。
まるで湖を一枚の紙に見立て、そこに星という色をちりばめた壮大な芸術品のようだ。
「……美しいな」
リンゴ飴を食べ終え、ふとぽつりと呟く。
「そう、よかった……」
丘のゆるやかな斜面に背をあずけた。ふと、リューイは呟やくように言った。
「僕の父は勇者軍の一人だった……でも、覇王を倒したからって、この世は平和にならなかった」
「混沌と破壊の調べの奏でたのは勇者達だった……」
「そう、皮肉な話だよ……覇王を倒しても誰も感謝なんてしてくれなかった。
憎まれて、恨まれて、罵られて……今までの苦労はなんだったのか…
血と汗にまみれて、ネズミを食べ、泥水をすすってまで戦った意味は何なのか?
そんな父は絶望して……」
「自らの命を断ったのか?」
「……でも父は、父さ。僕は僕だ、きっと新生帝国軍を倒して、そしたらティル――――――」
ガバッと起きあがったリュイナッツはティルフィードの手を持ち、言った。
「ぼ、僕は君が好きなんだ。だ、だから僕と――――――」
122名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 17:36:10 ID:UUW/bNi/
「倒された帝国の者はどうなるんだろうな?」
リュイナッツの言葉を遮るようにして、ティルフィードはぞっとするような声で言った。
「え、ど、どうなるって…それは……」
言葉に詰まるリューイをキッと睨みティルフィードは言った。
「お前の父は自ら命を断ったと言ったな。感謝されなかったから命を断つ……ふざけるな!
父王を討たれた私がどんな思いをして軍を立ち上げたと思う!?」
ティルフィードは激昂して叫んだ。
「……父王?ティル……?」
「父王が討たれて、逆賊のせいで帝国が分裂する寸前だった!
信頼できる臣下は数人のみ、何度も何度も死にかけたさ!
それなのに勇者共は大陸を平定するどころか望みを断って、戦で戦友に剣まで
向ける…愚かすぎる!勇者とは何だ!?正義と愛と自由の為に戦うのか?
…その敵も正義と愛と自由の為に戦っていたとしたら?」
「ティル…ティル…ま、まさか君は!?」
「私はティルフィード。貴様ら勇者共に討たれた覇王の娘だ」
「なっ――――――!?」
掴んだままの手、端から見れば愛の告白をしているようにしか見えない格好だ。
しかし、その告白は女性からの衝撃的なものだった。
「離せ!この手を離さないか!お前なんかに触られたくない!離せ!」
手を握られたまま叫び、手を振りほどこうとするティルフィードだが力が入らない。
またリューイはその手を離さない。
「で、でも…君は…僕は君を……ティル」
「わ、私は女である事を捨てた…父王が倒れたあの時から…
女であることを…捨てようと……お前のせいだ!!」
「な…えっ…!?」
「お前が私を『女』に戻した!お前が…お前といると……」
震えながら気丈に睨み付けていたティルフィードの眼に涙が浮かび上がった。
「リュイナッツ!!」
見つめ合う二人……永遠とも言える沈黙、先に動いたのはティルフィードだった。
二人の距離がゼロになった。
初めは軽いキス…そして二人の唇が離れた。そして再びキス、今度は燃え上がるような
激しいキスだった。二人は互いを貪り尽くすような濃いキスを繰り返した。
123名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 17:40:32 ID:UUW/bNi/
「ん……そ、そこ……はっ…」
細い腕でリュイナッツの頭部を押さえながら
ティルフィードは唇を噛みしめた。
「んぷ…れろ…ぷちゅ……はっ」
リュイナッツはティルフィードのスカートを剥ぎ、
両脚の間に頭を埋め、股間を愛撫している。
「ま、股…なんて…舐め…んっ…はっ」
ピクン、ピクンと背を反りながら天を仰ぐティルフィード。
「あ、あ…んっ…こ、こんな事…ん」
下着をずり降ろした格好のまま愛撫を受ける皇女は何とも淫らだ。
「…は…ん…んんんっあ、は…は」
ピクンッピクンッと皇女は尻を振るわせ、脱力した。
達した後の余韻に耽りながら、リュイナッツに視線を向けた。
「テ…ティル…お尻を上げて…」
リュイナッツはティルフィードの尻を揉みし抱きながら、少し浮かせると
脚を揃えさせ、下着を抜き取った。
「はっ……リューイ」
まだ産毛ほどしか生えていない皇女の恥部が
月明かりに照らされてテラテラと光っている。
「…ティ…ティル…」
リュイナッツがティルフィードの股を開いた。
シミひとつない白い皇族の四肢に魅入られた
勇者は本能に任せたまま、自身のベルトをゆるめ、勃起したペニスを取りだした
「そ、それ………」
初めて見た異性の男性器にティルフィードは眼を疑った。」
猛々しく勃起するソレが自分の恥部に入るとはとても思えない。
「ティル……力を抜いて」
リューイは優しくティルフィードを抱き締めた。
「あ……」
そうされるだけで不思議と強ばった身体の力が抜けた。
「…リューイ」
ティルフィードは自分の上に覆い被さってくるリューイを受け入れた。
淡く白い乳房が引き締まった筋肉に支えられて、
そのピンクの先端がツンと上を向いている。
リュイナッツはその先端をゆっくりとティルフィードの潤んだ秘部にあてがった。
124名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 17:42:31 ID:UUW/bNi/
「ティ…ティル…ん、あ…くっ…」
「ん……はっ…うっ…リューイ…が…入って…」
リュイナッツの分身が自分の中に押し入ってくる感覚にティルフィードは震えた。
「ティ…ティル…好きだ…ティル」
リュイナッツはティルフィードの小振りな乳房をむにゅむにゅと優しい手つきで
揉みほぐしながら、腰を押し進める。
「あ…や、やめ…そん…揉ま…リューイ」
ティルフィードは眉を潜め、リュイナッツの両手を掴んだ。それでもリュイナッツの両手は止まることはない。
「あ、ああ…でも…柔らかい…ん」
腰をゆっくりと推し進めながら、リュイナッツはティルフィードの胸にむしゃぶりつき、力強く吸った。
「やっ…はっ、す、吸わない―――――――んんん」
ティルフィードが喉を仰け反らせて喘ぐ、小振りな胸がぷるんと弾み、背中がピンの反り返る。
それでもリュイナッツは執拗にティルフィードの乳房を交互に吸い、舐め回した。
「はっティル、ティル…うう…はっ」
リュイナッツはティルフィードの胸を掴み、腰を激しく突き動かした。
「あっ!い、痛い…リューイ、もっと…ゆ、ゆっくり」
ズッズッ…とリューイの剣突を受けるたびにじゅぶじゅぶと結合部から
鮮血と愛液粘った音が響く。
「ご、ごめん、き、気持ち良すぎて…止まらない」
「リ、リューイ!ダ、ダメッ!そんな激しくしな…く、くうう」
リュイナッツは眉間に皺をよせ、ティルフィードの腰を掴みこんで突きまくった。
ティルフィードは歯を食いしばって、いやいやと顔を振り、その唇から嬌声を漏らした。
125名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 17:44:20 ID:UUW/bNi/
「ティルの顔、もっと、もっと見せてくれ、ティルの顔」
リュイナッツは突き入れるたびに眉を潜めるティルフィードの頬にキスを繰り返した。
「み、みるなぁ!見るな!私の顔を見るな!」
涙目でティルフィードは訴えたがその声は甘美な響きがリュイナッツの興奮をさらに高めた。
「ああッ、出る…出るテ、ティルフィード!」
リュイナッツの剣突が最高潮に達し、ティルフィードは叫ぶように言った。
「いやああッ、見るな見るなぁ!私…私の顔、見ないでえええ!!」
「ティル…あ、ああ…うっ!」
リュナッツの呻き声と共に叩きつけた腰がビクンビクンと痙攣した。
ティルフィードの最奥にリュイナッツの精が爆発するような勢いでびゅるると注ぎ込まれた。
「あっああっ!愛してる愛してるよティルフィード」
少し遅れてティルフィードが背を反らせ、甘い声をあげ、身体を痙攣させた。
「あうっ…んんん…リュ、リューイ…」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
気持ちよすぎて声を発する事ができないリュイナッツはまだ残る精を皇女の中に
吐き出していた。その度にあっ…あっ…と尻を振り、軽く悶えるティルフィードの
姿は何とも言えない妖艶さをかもしだしていた。
「あはぁ…愛してる…愛してるよ…ティルフィード……」
「ああ…私もだ…リュイナッツ」
リュイナッツは短い呻き声を漏らしながら射精し続け、ティルフィードの首筋に軽いキスを繰り返した。
126名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 17:46:07 ID:UUW/bNi/
「…辛かった?」
「なぜそのような事を聞く?」
ティルフィードが低い声で問う。
その問いに答える様にリューイはティルフィードの目尻に指を添えた。
「涙の跡……」
「っ……確かにな。あんなものを受け入れた日には
痛くて、痛くてたまらん」
「あ…その…ごめん」
つんとしたティルフィードにリューイはあわてふためき、謝罪した。
「だがな……」
「ん?」
「お前を受け入れることができた……」
ティルフィードは微笑み、リューイを抱き締めた。
そしてその表情が年相応の、そして愛くるしい表情と口調で言った。
「罪悪感……それは今もどこかに残ってるけど…
一瞬だけでも満たされた気がしたから………」
「…………」
ティルフィードの寂しげな口調にリューイは何も言えなかった。
当然だ。覇王の娘と勇者の末裔…
忠誠を誓う将に、また信頼する仲間に対して
裏切りともいえる行為を二人は行ったのだ。
「リューイは?」
再度、ティルフィードは問う。
「ああ……ちょっと乱暴な言い方かもしれないけど…す、好きになって
本当に好きになって…君を愛おしいと…この手に抱きたいと思った」
赤くなりながらもリューイはきっぱりと言った。
「私はこの身を……の、呪う…なぜ、このような形でしか出会えなかったのかと。
このような出会いでしか……うっ…うう…」
ティルフィードは消え入りそうな声で呟き、再びその瞳に涙を浮かべた。
リューイの胸に頬を寄せ、額と額を付き合わせた。
視線が先ほどの情事と同じように絡み合う。
「それは違うよ……きっとこんな形だから…出会えたんだと思う、
僕はそれでもいい…君に出会えたんだから…」
リューイの笑みにティルフィードは救われた気がした。
「……ありがとう……もう、夜が明ける……」
「さ、さよなら…なのか?」
「…………ああ。夜が明けたら、もう敵同士だ」
ティルフィードの表情がティルフィードから、本来、あるべく表情へと引き締まった。
そしてその口調も。
「……うん」
「叶わぬ願いが一つ叶った。もう一つは叶わなかったが…」
「もう一つ?」
「普通の女として、お前と添い遂げたかった…いや、しかし――――――」
ティルフィードは少し思案するように顎に手を当て、言った。
「もしやも知れぬが…もうできたかもしれんな……添い遂げた証が」
「え……えーとそうかな?」



次回はエピローグになります
127名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 18:28:46 ID:Ca9dhGsH
GJ!!!!!!!!
二人のやり取りがとてもよかったです。
キャラも沢山いるし、次で終わるのは勿体無いような気がしますが…
128名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 19:24:03 ID:lJbOaE+m
>>95
チェルキー キャンディーストアは凄く印象に残ってる。
実際冒頭の説明部分でそれを思い出してたんだけどまさにそれですかw
129名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 19:50:35 ID:Yvl+3G4z
>>126
GJ!エピローグも楽しみにしてます。


ついに前スレ過去ログ入りか、
まだ読んでないのがあったなーしまった
130名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 22:25:28 ID:S72qosls
『覇王の娘と勇者の末裔』
エピローグ
勇者バッドエンド




「姫様、一体、民達にどう説明をするおつもりですか!?」
城内の一室で長椅子に背を預ける女性に宰相である
ヘスタトールが声を上げた。
しかし、その長椅子に腰掛ける女性は何も言わない。
「宰相、ティルフィード様はもう『姫様』ではありませんよ?」
補佐官であるヘスタプリンが宰相を嗜めるように言った。
「む…、失礼しました。女王陛下、大臣達は納得しても民達に――――――」
「民達の間には私と先王との間にもうけた子という噂が流れているのだろう
ヘスタプリン補佐官?」
長椅子に腰掛けていた女王が静かな声で言った。
「はい。それはもう…」
ニコリと笑ってヘスタプリンは言った。
「で、ですが――――――」
「………つまるところ、夫は誰か?と」
ふぅ…と息をつき、女王は言った。
「は、はい……」
「私が心を許した相手……だけでは納得できぬか?」
「そんなどこの馬の骨ともわからぬ者――――――」
「どこの馬の骨ともわからぬ者に心を許すと?私をそのような女王と?」
静かな声であったがその声には有無を言わせぬ迫力があった。
「い、いえ……これは失言でした、お許し下さい」
ささっと畏まり頭を垂れた。
131名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 22:29:22 ID:S72qosls
「女王陛下、そろそろお時間です」
「うむ………」
女王がその身体を起こそうとした。ささっと侍女が駆け寄り、手を貸す。
そして城の窓に近づいた。
城下には多くの民が詰めかけ、これから処刑される者達が斬首台に
固定されている。その数は20……処刑人が声を張り上げ、民達を煽った。
『帝国の親愛なる民達よ!これにあるは先王様の代より、仇なす勇者共だ
我が帝国に最後まで刃向かった者共の末路だ!これより処刑を執行する』
ティルフィードはその者達を見た。見知った者が二人いる。
一人目はエルフの神官、アリス。牢屋番にかわるがわる犯され続けられたのだろう、
神官服はボロボロに引き裂かれておりその凄惨さを物語っている。
想い人の目の前で剥かれ、何人もの男に犯され続けられたのだ
同性として哀れすぎる。
そしてもう一人……それはこのお腹にいる子の夫だ。
胸にこみ上げてくる言葉ではあらわせないモノ……
愛した者を自らの命令をもって失わなければならない。
女王は膨らんだ腹部を撫で、誰にも聞き取れないような声で呟いた。
(…………リューイ)
処刑人がこちらを見上げた。執行の合図を待っているのだろう。
涙が一筋こぼれた。
「……………執行しろ」

END

>>127
ありがとうございます。また色々と考えてみます。
エルヴィン×アリスや板違いですが捕らえられた勇者軍集団陵辱とか。
132名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 23:03:30 ID:KOBhn9lx
投下GJ

でも、板違いじゃなくてスレ違いね
それと、こちらは個人的な要望ですが
スレ違いって認識があるものは他スレにお願いしまする
告知あれば是非覗いてみますので
133名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 01:18:31 ID:Law0bFVx
投下乙
あと素早いWiki更新も乙
スレや保管庫の充実は素直に嬉しい
134名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 09:42:14 ID:4yXaHPmQ
完結GJです。
皇女という立場ならではの話でとても良かったです。
アリス陵辱も別スレでぜひお願いします。
135名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 21:08:32 ID:1ZnkVYiw
ある民族の族長の娘とかってのは「姫」に入るかな?
136名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 21:57:04 ID:BIuDgWoL
物語の中で「姫」に仕立てあげて見せなはれ
あなたの設定だと全くの庶民じゃないようだし
137名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 22:21:43 ID:5C5ARPxO
>>132〜134
感想サンクス。書いたら告知するよ

アリスの母親の悲恋話も、人間の姫出てくるし
検討してみる
138名無しさん@ピンキー:2010/01/30(土) 02:48:38 ID:Y8zkC3X/
「犬と笛」好きだったな〜
姫らしいことしてないのにすごくお姫様だったよね耀って
139名無しさん@ピンキー:2010/01/30(土) 12:05:07 ID:JBTZu56T
いぬひめさま…
140名無しさん@ピンキー:2010/01/30(土) 12:34:12 ID:FDUZA01y
>>135
十分姫だろう
141名無しさん@ピンキー:2010/01/30(土) 17:25:35 ID:tw3Ldqiz
>>131
>それはこのお腹にいる子の夫だ
子どもの夫、になってるのではないか?
142名無しさん@ピンキー:2010/01/30(土) 19:15:05 ID:m00uJTJ6
>>141
すみません、指摘の通り間違いです
143名無しさん@ピンキー:2010/01/31(日) 02:16:40 ID:sHwEDPcx
どどんまい!
144名無しさん@ピンキー:2010/01/31(日) 10:15:42 ID:ZKwSITz2
>>136>>140
ありがとう
とりあえず書いてみるよ
145名無しさん@ピンキー:2010/02/01(月) 14:01:11 ID:UXYgR2pW
期待してる
146名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 15:13:45 ID:q1VC6e8J
愛のある政略結婚っていいよね。
子供の頃からそれと知らずに友達になっていたりしたら尚良い。
147名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 18:36:18 ID:STeQR9Pu
昨日たまたま「スワン・プリンセス 白鳥の湖」って
アニメ映画を見たんだけど、まさにそれだった
148名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 22:54:01 ID:unxBEVxY
姫さま
149名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 23:26:34 ID:knE14Z35
アリス陵辱(前編)
をあっちのスレに
投下しておきましたので告知。
キーワードは戦火
150名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 10:54:15 ID:2g/XJS3B
151名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 12:23:19 ID:0vW/2x0t
>>129
スレ移行時期なのでここのとこ滞っていた前スレの分もまとめて
全部wikiのほうに載せたつもりではありますが、抜けてたらすみません。
過去スレのログもwikiに貼ってあるので大丈夫だとは思いますが

>>149
戦火の保管庫にリンクを貼るという形でよろしいでしょうか?
それかこちらのwikiにも注意書きをつけて直接転載するか。
シリーズなので読みたいという人もいると思います。
まだあちらは保管途中のようですが
152名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 13:15:57 ID:ATgIwVrR
>>151
お手数ですが、シリーズ関連という事で
こちらのスレにもwikiに注意書きをして
転載していただけますか?
153名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 14:20:52 ID:0vW/2x0t
>>152
了解です。
154名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 21:57:17 ID:qDyuOunq
乙です
155名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 22:46:34 ID:MKWduCAj
乙であります
156名無しさん@ピンキー:2010/02/07(日) 16:11:19 ID:MpoNbpKY
いぬひめさまの実用度は異常
続きこないかなあ……
157名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 08:03:46 ID:HpGj664S
しつこいな
158名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 08:49:53 ID:YxUf2rYs
毎回同じ人なんだろうか
159名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 22:26:00 ID:/1iQFf5w
詮索は止めようぜ
160名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 09:02:34 ID:7S0dsbd2
>>156
何遍も催促するな。
目障り。
161名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 14:44:52 ID:ZCr9Si7E
アリス陵辱(後編)投下しましたので告知。
162名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 19:10:11 ID:BlAdX0ln
お疲れ様。
163名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 23:20:53 ID:uvz9XNgC
乙です
164名無しさん@ピンキー:2010/02/12(金) 17:02:35 ID:LnpxaSTm
告知乙です。
165名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 10:39:47 ID:Vkzfh9+l
陵辱編乙です

「覇王の娘と勇者の末裔」はバッドエンドで終了?
166名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 11:46:14 ID:MCE9x8hK
>>165
ハッピーエンドになると勇者軍勝利→皇女様自決で姫様が1人もいなくなるかと。
アリスは末裔というだけで姫様に該当しないと思いますし。
167名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 21:03:43 ID:1y5w4rTA
姫様死亡なら、姫スレ的には間違いなくBAD ENDだな

勇者軍と覇王軍が互いの違いを乗り越え共存・・・
ってのがHAPPY ENDかと思ってた

バッドエンドだけでも良いけどさ
168名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 22:21:24 ID:MCE9x8hK
>>167
その発想はなかった!
if設定で皇女×勇者の
婚約か…いいかも。
169名無しさん@ピンキー:2010/02/14(日) 19:10:08 ID:tz3WidAw
wktk
170名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 19:02:26 ID:AGkE7iUR
裸の女王様。内容は、まんま裸の王様。
171名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 19:58:03 ID:j+GP+bNc
>>170
カルバニアの作者の短編集にそういうのがあった。
172名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 21:24:27 ID:rGNOQigp
戦や疫病かなんかで上位者がばたばた倒れてたまたま即位した出自のいまいちな女王が、
国内の大領主たちの利害調整や根回しのため毎日会合。疲労と二日酔いでへたばってるのを
看護する幼馴染(乳兄弟だとなおよし)とか萌えるんだがどう見ても悲恋フラグ。
173名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 21:35:55 ID:XFysTEpd
>>172
幼馴染が看護して、少し元気を取り戻したのも束の間、
利害調整の為の道具として利用される事になり、
泣き叫びながら処女を散らされる事に……
そして、ボロボロになって寝所に戻ってきて、
幼馴染に介抱されながら
「……貴方に……捧げたかった……」
と涙にくれる。
その後、幼馴染とお清めエッチしようとするが、
初めての時の恐怖で抱かれる事ができず……

その後も陵辱はされまくりで、日々衰弱していく女王を
見かねた幼馴染は、城から彼女を連れて逃げ出そうとするも、
追跡者の攻撃によって重傷を負ってしまう。
彼の最後の望み「君と……結ばれたかった……」を叶える為、
女王は自ら、最早動けぬ彼を犯すのだった……。
女王の中に自らの子種を注ぎ込み、彼は息絶える。

それから一年後。
誰の種によるものとも知れぬ子を産んだ女王は、
それまでの弱々しい姿が嘘のように強くなり、
毅然とした態度で政務を司るようになり、国も繁栄し始める。

父親の知れぬ彼女の息子は、どこか彼女の幼馴染の
面影を宿していた……。

悲恋ハッピーエンドだとこんな感じに。
174名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 22:21:21 ID:gnGT4wP/
いい話じゃないか
175名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 22:23:55 ID:3F3X2Y6r
そこまでの発想がありながらなぜ書いてくださらぬのか・・・!
だがしかし発想だけでも面白かったからGJ・・・!!
176名無しさん@ピンキー:2010/02/16(火) 02:53:52 ID:TnQLR9z3
敢えて逆に恋を成就させるパターンをつくってみた

幼なじみの看病の甲斐もあり元気を取り戻し政に精を出す女王
その後、大臣たちが女王を他国の王子と結婚させると言う話をを聞いて幼なじみは女王を諦めようとする
しかし、女王が「身分なんてかまわない、女王じゃなくて一人の女として私を抱いて」と幼なじみに告白し
そのまま幼なじみと念願の初体験
しばらくして結婚話は根も葉もないデマとわかり安心するもその直後に女王が体調を崩して寝込む
これは何か深刻な病かと思ったら実はつわりで城中どころか国中大騒ぎで父親探し
その後幼なじみと女王の結婚が急遽決まるがその過程があまりにも不自然で
結婚式の様子を描いた絵が女王の腹部辺りを避けるように描かれていたのは皆様のご想像通りである

なんかエロと言うよりはギャグだなこれ
177名無しさん@ピンキー:2010/02/16(火) 03:22:51 ID:f+OyK21r
>>176
実際国王の婚儀で花嫁が(それが夫の子とはいえ)腹ボテだったら
晒し投げ…じゃなくて晒しものもいいとこだろうな…
178名無しさん@ピンキー:2010/02/16(火) 14:56:51 ID:5TlD6JhZ
それでもいい
179名無しさん@ピンキー:2010/02/18(木) 09:35:34 ID:f/xIXH1J
姫様×幼馴染は萌えるな
180名無しさん@ピンキー:2010/02/19(金) 17:30:30 ID:sg777nqs
過去ログ倉庫の中にある話で、萌えな設定・カップルってなに?
できればその理由も教えてくだされ

自分はオーギュストとマリー
美形ではない王子様って珍しいし
ほのぼのしてるのに、エロいというギャップに萌え
181名無しさん@ピンキー:2010/02/20(土) 00:00:03 ID:chq2I2rn
エルドとセシリア
なんかあの関係性が自分には斬新だった。
二人の未来が見てみたいなと思わずにはいられん


自分も書きたいんだけどさあああネタに文章がおいつかねorz
182名無しさん@ピンキー:2010/02/20(土) 21:04:01 ID:D0fHECMc
自分も書きたくなって書き始めたが、時代背景をよく把握してないことに
気づき、資料収集に時間かけまくりでなかなか進まんorz
183名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 01:47:48 ID:Os01Rzie
>>180
自分もその2人好きだな。
あとエルドセシリアとアランエレノール。クールな男にほんわかした女が好きなのかも
184名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 17:17:09 ID:Sc6Snejz
お姫様のスカートの中に入りたいなぁ
185名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 19:57:05 ID:9x/G3Ozk
>>180
自分もアランとエレノール。
表向きは完璧な王族なのに、二人の関係はバカップルで十分にエロいところがいい。
そして何より、これ以上ない程幸せそうなのに、ほのかに暗さを含んだ関係なのが切なくていい。
186名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 15:16:57 ID:8Chdp00b
あの二人いいよねぇ
作者さん元気にしてるかなぁ
187名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 21:57:42 ID:5tLTDFyw
じ、じゃあ自分はイヴァンとナタリー
このスレの保管庫の話を先に読んで=らぶらぶ状態を先に知ったので
なれそめはちょっと痛々しかったけど、客観的にみれば結構性格の悪い男を
「可愛い」と思わせるまでの描写力は伊達じゃない。
マチルダとパトリスもいいなあ、なんとも可愛い逆レイプ。
188名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 04:40:05 ID:/+cNT4yZ
>>187
自分もだw先にラブ状態を読んでからなれそめを読んじゃった…
でも面白かった。同じ世界観のあのシリーズはどれも好きだな。ベアトリスとヴィクトールにも萌えた
政略結婚だけどなんだかんだでラブラブってところがツボ
189名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 12:22:40 ID:NdkDb1CK
初代保管庫に収録されている、アレフとエレーナの話
「王家に恨みを抱いて反乱をおこし、お姫様を姦した美青年の心の内は…」
っていう紹介文がついている、タイトルなしの作品
ヤンデレはいい
190名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 17:49:02 ID:JV1JaK0B
>>188
見合いしてるベアトリスとヴィクトールの背景で、ヴィクトールがナタリーにみとれただけで
イヴァンが嫉妬しだして、結局そのまま激しい一夜に突入
                 ↓
完全に空になったナタリーの部屋でベアトリスとヴィクトールが・・・って筋立ても芸が細かくて萌えた


アレフはヤンデレ属性で読めばいいのか・・・
なんだかんだいってエレーナにベタ惚れなとこがよかったな
191名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 19:38:32 ID:A45ZKaFd
アラン&エレノール、イヴァン&ナタリー、セシリアたんも(・∀・)イイ!
だがあえてここで「テオドルとアーデルハイト」の続きも読みたしと言ってみる
作者さんまだ来てる?
192名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 21:22:22 ID:YjjQyAH4
不動の1位:アラン×エレノール
弟達の面倒見も良いアランは良い国王になると思う。
誰か書いてたがこの作者さんの作品はお金出して本買ってでも読みたい。

イヴァン×ナタリー
妹達はもちろんだがイヴァンの両親も好き。
可能であればイヴァンの子供の世代まで物語が続いて欲しい。

一応夫婦関係が円満になってる上記カップルより
続き読みたいのが結果が見えないエルド×セシリア。
193名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 02:02:39 ID:cN/1rGsW
被るがアラン×エレノール
エレノールの初恋の話があるからこそ余計ぐっとくる。
シリアスだったり笑わせてくれたりとシリーズごと好きだ。

もうひとつはローラン×アグレイア
アグレイアのしゃべり方と高潔さがツボで何度も読んだ。
作者さんがイヴァン×ナタリーの人と同じと知って
やっぱり凄いと思ったな。
194名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 12:38:55 ID:/9ycvb8N
ナタリー萌え

仮想歴史の設定が必要になってくるから
書くの難しいなぁと2次エロパロで姫を書くようになってから思った
195名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 13:49:37 ID:q8LPNSnz
上の方でしつこいリクの人が叩かれてたけどさ・・・

ロア×リュカも凄く好きだ
イチャラブ好きなもんで・・・
SM風味なのに、ほのぼのラブが好きな俺にも美味しくいただけるとは
巧いな〜と素直に思ってる

野生児にべたべたに愛される深窓の姫君とか、
お互い辛い過去を乗り越えてのかけがえのない相手とか、
甘いだけじゃなくてお互いを得て更に大きく飛躍してゆく未来が示されてるとことか

いろいろとぐっときた

割と最近来たので、もし空気読まない発言だったら心からスマン
196名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 15:47:28 ID:MSy/1Ei6
そうやって予防線を張る書き方は止めた方がいい
197名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 17:28:03 ID:yj4ZDBtf
マチルダとパトリスだなぁ
198名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 17:28:33 ID:yj4ZDBtf
違った、マチルドだ
199名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 23:40:45 ID:mbzifGxc
俺が好きなカップリング、全然人気なくて涙目w
200名無しさん@ピンキー:2010/02/28(日) 07:05:05 ID:R3CzhzyB
お姫様の椅子になりたい
201名無しさん@ピンキー:2010/02/28(日) 10:53:55 ID:4eBMHLPm
そりゃ、すごいお姫様凌辱シチュだな
202名無しさん@ピンキー:2010/03/02(火) 21:45:50 ID:jx3wVhum
>>199
どのカプ?
挙げてみたら賛同者も現れる、かも
203名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 10:26:32 ID:u1b/KLIj
そういうのは、反発する人も招くから止めとけ
204名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 21:52:00 ID:AA9xWk7y
保管庫は6までしかないんですか?
205名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 05:16:15 ID:xuFgy/d4
>>204
>>1の保管庫
206名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 13:49:18 ID:lIONprAL
>>193
>作者さんがイヴァン×ナタリーの人と同じと知って
そうなんだ。どっちも好きで何度も読んだ。

未完ものの中ではセシリアの続きが気になる。
王室繁盛記のサイドストーリー来ないかなとかも。

207名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 14:26:49 ID:ShdSBdOO
セシリアの作者さんは前スレ? で生存と続き執筆の意思が
確認できたから、いつか続きがくると信じてる
きっとこの談義も読んでるよ
208名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 21:33:04 ID:27pOBIVs
どうしてこのスレが過疎るのか分かった気がする
209名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 23:29:18 ID:b6GykCUi
どうせ暇だし、その心をどうぞ
210名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 03:59:09 ID:W5MLoMA+
これ、性分なり。
211名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 07:16:20 ID:C3Z1cY5y
ギスギスしてるよりは過去作品の語り合いで和んでる方がいいな
行きすぎはよくないだろうけど
212名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 10:50:04 ID:ow/SuCpa
位の高い巫女を兼任してるって設定の話はどんなタイトルだったっけ
敵方の王様だか王子にスパンキング → レイーポ → 妊娠な流れで
紆余曲折の後に相思相愛状態になるやつ
213名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 00:36:12 ID:4LWehboM
流れを切って申し訳ないです。
以前から言ってました覇王の娘と勇者の末裔の
ハッピーエンドの冒頭部投下します。






覇王の娘と勇者の末裔
ハッピーエンド編
エロ無し

覇王軍が大陸の大部分を掌握し、勇者軍討伐へと着々と侵攻していた。
が、帝都を激震させる事態が起こった。
『大陸の窓口』とよばれた西部の軍港を有する一大都市の『謀反』である。
覇王の遺児、ティルフィードに反発する者達が決起したのだ。
勇者軍討伐へと大陸の東部に主力部隊を配備していた覇王軍は
瞬く間に大陸西部を乗っ取られる形となった。
それだけならまだしも、謀反の主導者達が覇王軍の優秀な武将達であった事が
さらに事態を重くした。
それに伴う東部での勇者軍の行動は素早く、また的確だった。
東部の小国ごとの解放にあたって対覇王軍の戦線構築させ、
さらに東部の重要都市を解放するまでに勢力を拡大させた。
帝都では苦渋の選択を迫られる事になった。
214名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 00:37:15 ID:4LWehboM
帝都:ヴァイアブリンデ
軍師の一人であるヘスタプリンは軍議の席に設けられた大陸図を指し、声を荒げた。
「東西から挟撃される形で戦を継続させるなど無謀です。私としてはどちらかと停戦……
いえ、講和条約を結び、東部か西部に戦力を集中させる意見を主張します」
いつになく、語気の強いダークエルフに武将達は表情を曇らせた。
半数の武将が謀反へと組みしたのだ。
皇女に忠誠を誓い、西部で応戦した武将はほとんど討ち取られ、
軍議に参集できる武将は反乱前の三分の一にまで激減した。
それもほとんどが、帝都警備にあたっていた経験の浅い若い武将ばかりである。
「し、しかしそれでは覇王軍の名誉にかかわります!」
若い武将が声を上げた。
「たとえ討ち死にしても、亡き覇王様の名誉を!」
「それは重々承知の上で意見しているのです!西部で皇女様に忠誠を誓い
散っていった方々のためにも!覇王様の血筋は存続させねばなりません!」
軍議の席が収拾がつかなくなりかけた時、上座に座し、一言も発しなかった皇女が声を発した。
「黙れ」
覇王の…いや、魔王として大陸を支配した威厳がなせる技か、たった一言で
軍議の席は水を打ったかのように静まりかえった。
215名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 00:37:52 ID:4LWehboM
「ヘスタトール、貴公の意見を聞こう」
ティルフィードは激しく意見を主張していたヘスタプリンではなく、意見を述べず
じっと事態を静観していたもう一人の軍師に意見を求めた。
「は……結論から述べますと、早急に勇者軍と講和するべきかと」
その意見に反論し掛けた武将達が声を上げかけたが、それは皇女が次の言葉で制した。
「次に許可なく発言した者は反逆罪で処刑する」
再び静まりかえる武将達を前に皇女は軍師に「続けろ」と言った。
「まず第一に西部の逆臣達が我が軍と講和など結ぶはずはありません。逆臣達は皇女様の御命を
狙い、軍を起こしたのです。それに絶対的に有利な立場にあり、この帝都を落とせば後は勇者軍相手に
長期戦を構えることができます。その結果、勇者軍は圧倒的な物量に対して局地的なゲリラ戦でしか
応戦できなくなり、次第に追い詰められ、壊滅させられてしまうでしょう。
それは先の戦で分かり切った事……ならば、今、東部の民衆の支持を受け、
勢いづく勇者軍と講和し、軍備を整え、西部の逆臣共を一掃する事が唯一の策かと……」
「………ふむ」
皇女は呟き、頬をついた。
「そ、それが、それが一軍の軍師たる者がいう事ですか!逆臣は軍師殿!貴方ではありませんか!」
ついに堪えきれなくなったのか若い女武将が紅潮した顔で、ヘスタトールに指を指した。
「キエルヴァ殿、許可のない発言は!」
これにはヘスタプリンが声を上げ掛けたが、皇女はヘスタプリンを手で制した。
「貴公は……貴公は私が好き好んでこんな策を提案していると思っているのか?」
ヘスタトールの声は怜悧に満ちた殺気を帯びていた。その眼は射抜くように鋭く、刃のように鋭かった。
「………軍師殿、手を……」
少しの沈黙の後、ヘスタプリンが駆け寄りヘスタトールの手を取った。
その手の平は爪が食い込み、血にまみれていた。それを見た武将達からどよめいた声が上がった。
しかし、それを見た女武将も怯まず、声を上げた。
「……軍師殿の覚悟、また断腸の思いに対して無礼な発言を…て、撤回します。で、ですが、
い、今一度、今一度だけ問いたい…もし、勇者軍が講和し、西部の逆臣達を討ち取った後は…後はどうなさるのですか?
もし…もし、講和の条件に皇女様の御身に関わることがあれば……」
紅い髪を揺らし、涙を浮かべた女の武将は言った。皇女に対して純粋な忠誠を誓う武将なのだろう。
その涙は、自身の不甲斐なさ、武功、経験の無さに対して嘆いているのだろうか。
「……その時は我が身を顧みぬ、たとえ相手が勇者の末裔であろうとも助力を申し出たのは
我が意志。それに背く事はできぬ、終わらさねばならんのだ……このような悲劇はな」
皇女の最期の決断に異論を挟む者は誰もいなかった。

216名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 04:45:10 ID:pTs1OEe+
投下乙
期待
217名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 13:54:10 ID:zD+oql+B
待ってました!!!
キャラの魅力もさることながら、
軍事関連のこの説得力はやはりすごいな。
続きも楽しみです。頑張ってください。
218名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 20:00:13 ID:UCAK3Z4q
>>213
ハッピーエンド編、待ってました!
新たな敵が出てくるわけですね、なるほど〜。
続き期待です
談義中も、もちろん作品投下ならカモーン! ですよ!


一応質問にも答えとく
>>212
作品保管庫1-6スレの方の
「面談」から「暁光」までの5作品だよ。
上の方の話題でも何度か出てるローラン×アグレイアの話。

219名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 00:47:24 ID:5Mvm2qwg
>>216.217.218
感想ありがとうございます。
次回は勇者軍の内部の話→リューイと皇女の結婚、
甘々エッチと構想を練ってますのでお待ち下さい。
220名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 04:11:42 ID:dWlgk4Ph
>>218
thx.
221名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 23:49:39 ID:/cC4NAAt
覇王の娘と勇者の末裔
ハッピーエンド
勇者軍サイド
エロ無し






「皆さんにお知らせする重大な事があります。覇王軍の皇女が我が軍に講和を求めてきました」
「覇王軍が講和を申し出てきただって!?」
侵攻作戦を議論する席に置いて、軍師であるティファニーの言葉に皆が驚いた。
「確かなのかい?」
腕組みしたまま動じないタオが軍師に問う。
「はい。正式な使者が昨日、この東部勢力の代表であるラズライト公の元に
皇女からの書簡を持ち、訪問したそうです。
念のため私が調べましたが、魔術や呪術を掛けた形跡はなく開封しました。
簡潔に内容を言いますと、
一、大陸西部で蜂起した新興勢力に対する共同戦線の構築。
一、勇者軍に対する物資補給・情報提供は覇王軍が全面的に支援する。
一、新興勢力殲滅後、正式に勇者軍との和平条約を結び、戦争の終結を宣言する。
とありました。他にも細部にわたる事項がありますが、まさに破格の講和条約です」
ハイエルフは眼鏡を外し、皆を見回した。
「にわかには信じがたいな……」
とこれはグリエルド。
「グリエルドの言うとおりさ、ウソに決まってるじゃねぇか。どうせ俺達を誘き出させる作戦だろうよ」
獣人の戦士がふんと鼻を鳴らした。しかし、それにはタオが反論した。
「合点がいかないね……今まで優勢だった覇王軍が講和を申し出てきたのには
それなりの理由があるはずだろ?軍師さん、あんたが言ってた
『覇王軍内部の謀反』の情報、間違いないね」
「ええ…私達の情報収集能力が乏しく、詳細は掴めていませんが……そうとしか考えられません」
222名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 23:50:42 ID:/cC4NAAt
「ねぇ…アリス、それって戦わなくても、いいって事?」
翼を閉じ、暖を取っていたテュアロッテが顔を上げおずおずとアリスに問う。
「ちょっと違うわロッテ…覇王軍と力を合わせて、別の敵と戦うってことよ」
「そうなの……でも、その後は戦わないって言ってるよね?」
「うーん……そうだと良いけど…」
アリスは隣のアクスに視線を向けた。
「ティファニー、覇王軍への回答の期限はいつまでなの?」
「はい、七日以内です。必ず回答してくれと……これは皇女、直筆の文字と自身の血判が…」
さすがのティファニーもこれには眼を見開いた。
「いいじゃないか!信じようよ、覇王軍に協力すれば戦争だって早く終わるんだ!
何も悪い条件じゃない!厳しかった補給や情報だって得られるんだ、な、皆!」
リュイナッツが席から立ち上がり、声を上げた。
「わああっ!リューイ、ちょっと落ち着いて。何を焦ってるんだよ?」
突然、立ち上がったリュイナッツに隣席のヴェローニャがビクンと身を縮め、怨めしそうに呟いた。
「リューイ…いくらなんでもそれは……全面的に信じるって…貴方、本気なの?」
「そ、そうだよ、アクス。君だって『戦争は早く終わらないと…』って言ってたじゃないか!?
願ってもないチャンスだろ?」
223名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 23:51:34 ID:/cC4NAAt
「もう、リューイ……いくら恋人ができたからって、はやる気持ちはわかるけど」
「そうだな、お前も先日から大人の仲間入りだもんな?」
アリスや獣人から冷やかされ、リュイナッツはバツが悪そうに顔を背けたが、
キッと睨むと声を大にして言い放った。
「そんなんじゃない!覇王軍が、皇女が僕達相手に下手に出るというのがどれだけ覚悟が入ることか、
どれだけ切迫している状況なのか、それがわからないのか!それをわかろうともしないなんて何が勇者軍だ!
真実を知ろうともしないで、何が勇者っていうんだ!?」
「リューイ…わ、私はそんな…えっと…その…」
リュイナッツのあまりの剣幕にアリスが狼狽えた。
「おい、さっきから何をカリカリしてやがんだ?お前にそこまで言われる筋合いはねぇぞ!?」
血気盛んな獣人が立ち上がった。
「ボナ、喧嘩なんかやめ!今は会議中だよ!」
「ボナパルト、やめな。リューイ、お前も言いすぎだ!」
ヴェローニャとタオが仲裁に入った。
「どけよ、タオ!剣より俺の腕っ節の方が勝ること証明してやる!!」
「やってみろ!ボナパルト相手に剣なんて必要ない!」
「リュイナッツ!やめるんだ!」
「リューイッもやめてッ!」
グリエルド、アクスがリュイナッツを羽交い締めにした。
「静粛にして下さい!!」
ティファニーが立ち上がって皆を制した。
その言葉に掴み掛かろうとしていた二人が引き離され、しぶしぶ着席した。
そこで初めて勇者軍のリーダーであるエルヴィンが口を開いた。
「皆、動揺するのはわかる……俺としてもティファニーから事前にこの報告を受けたときは驚いた。
だが、俺もリューイと同じように覇王軍は信じたい。そこで、だ」
「私に案があります」
ティファニーがすかさず言った。
「ああ……最終的な判断は皆の意見を聞いてからだ」
「はい。私の案ですが……今、現在、東部勢力は勇者軍最大の協力者であるラズライト公によって統治、
運営され、治安が保たれています。ラズライト公も『もし覇王軍との講和と成った場合、かならず承認します』
とおっしゃっておられます。そこで、西部の新興勢力、おそらく覇王軍の反乱軍を殲滅してとしても皇女率いる
覇王軍が条約を破棄できぬよう、楔(クサビ)を打ち込む必要があります。」
「楔?」
224名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 23:53:00 ID:/cC4NAAt
「はい。皆さん、心して聞いて下さい……私は勇者軍の者が皇女と血縁関係を結ぶ事を条件として提示しようと思います」
一瞬、議会にいた誰もがティファニーの提案に言葉を失っただろう。
「そ、それって……ま、まさか……」
一番に反応したのはアリスだった。
「楔とはつまりは『夫』。皇女と結婚してもらいます。それに唯一適任なのはリュイナッツ、貴方です」
「え、ティファ――――――」
リュイナッツは顔を上げ何か言いかけたが、ティファニーは続けた。
「リュイナッツ、貴方の父は勇者でありながら、また末裔帝国皇族の分家であり、
覇王の他国への侵略・虐殺に対して諫言し処刑された一族の生き残りなのでしょう?」
「ちょ…ちょっと待って、ティファニー…な、何を言ってるの?
リューイのお父さんが勇者でありながら覇王の一族だっていうの?」
アリスが冗談でしょ?といった口調で言った。しかし、その表情は酷く困惑している。
「論より証拠…リュイナッツ、貴方の首に掛けているペンダントの中を開けて見せて下さい」
「…………さすが軍師と言うべきかな?」
多少、自嘲気味にリュイナッツは言った。
「私は貴方を仲間だと信じています。できればその事実を知りたくはありませんでしたが……
情報の出所は……貴方の想像通りだと思います」
「ああ……皆、黙っていてごめん。ティファニーの言うとおりだ。僕の父が勇者軍だったのは事実、
そして帝国の一族だったというのも事実だ。その証拠はコレさ」
首から吊り下げたペンダントを外し、蓋を開けた。
中に埋め込まれているのは覇王軍の旗印にもなっている紋章だった。
「それって…」
アリスの顔から血の気が引いた。
「は、覇王軍の旗に記されている紋章だよ!」
テュアロッテが悲鳴のように叫んだ。
225名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 23:53:45 ID:/cC4NAAt
エルヴィンはじっとそれを見つめ、黙っている。
「ま、まさかとは思うけどリュイナッツさんは帝国の人間なのですか?」
ティムがフードを上げ、リュイナッツの顔を見上げた。
「……どう言ったら信じてもらえるか……確かに僕は…僕の父は覇王の怒りを買って処刑された一族の生き残りだ。
前の大戦で勇者軍につき、覇王を討った。側近の中の一人だったからね、抜け道にも精通していたんだ……でも父は
覇王が倒れた途端、権力を欲し戦争を始めた者達に絶望した。今まで背中を預け、共に戦ってきた戦友に剣を向けて
戦うなんてできるわけない…といって自ら命を断ったよ。コレは僕が物心ついた時から持っていた……勇者と覇王の血を受け継ぐ
者としてね…よく聞かされたよ……『本当に守りたい者はお前自身が決めろ』って。今まで僕は一方的に攻めてくる覇王軍が許せなかった
でも、今は……この大陸に住む全ての者を守りたい。今がその好機なんだ、その為になら僕は何だってする。ティファニーが言った
案も喜んで受け入れる!」
リュイナッツの宣言に腰を上げ掛けた勇者軍は再び腰を下ろした。
「リューイ………でもそんな条件を覇王軍は呑むとは思えないわ、政略結婚そのものじゃないの…あのは…ティルのことは」
アリスが感情をあらわにして言った。これは女性としての心情そのものだろう
「………………」
リューイは両眼を瞑った。
「……非情なようですが……この条件を呑めば、覇王軍は確実に追い詰められている証拠にもなります。
それこそ皇女自身に関わる問題ですから。覇王軍としては皇女と覇王の血筋の存続が絶対的な条件でしょう。
それにリュイナッツの血縁を知れば、無下に断ったりはできないはずです」
226名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 23:54:40 ID:/cC4NAAt
そして2年後……

「………ん、あ…んうう」
窓から差しこむ朝の日差しから逃れるようにアリスはシーツを被った。
「んん…あ、朝……?」
ピクピクとエルフ特有の耳が動き、寝ぼけ眼を擦りながら身を起こした。
純白の白い肌に朝日が反射し、より一層輝いて見せた。身を起こした反動で
ふるんと揺れる乳房や身体には無数の口づけの後、隣に眠る愛おしい異性からの愛の印だ。
「……うふふ、いっぱいしちゃった……ほんと、エッチなんだから」
クスクス笑いながら、アリスは隣に眠るかつて勇者軍のリーダーに口づけした。
「ん……あ、アリス…あ、朝か…」
「もう……朝起きて開口一番は『おはよう、ハニー』でしょ?結婚した時、約束したじゃない」
「あ、ああ…すまない…お…おはよう…ハ、ハニー…」
「なぁに、ダーリン♪」
うふっと笑い、アリスは夫の肩に身体を預けた。
「いや……最近はあまりなかったんだが…勇者軍の頃の夢を見たんだ…」
「もう2年よ……ん…」
ちゅ…とエルヴィンの頬に唇を寄せ、アリスは静かに囁いた。
「……ああ、もう2年も立つんだな。俺達の軍が解散して、覇王軍と一緒に大陸軍になるなんて…
思ってもみなかったよ」
寝室の化粧机の上に飾ってあるモノクロの写真にはかつての戦友達が写っている。
「そうね…ティファニーはラズライト公の奥さんに、アクスは大陸軍に入ったし、
ロッテやタオ、ヴェローニャは故郷に帰ったし……あ、そう言えばアクスってグリエルドとの間に
子供ができたんだって、手紙にそう書いてあったわ」
「え、そうか…今度、手紙に添えてお祝いを送らないと…」
「そうね……リューイ、どうしているかなぁ……」
「ティファニーの提案だったとしても、反対する仲間もいたしなぁ…講和の条件…
でも…ああするしかなかったのかもね」
「うん………でも、私はリューイ、幸せだと思うわ」
「どうして?」
「やればできる!だって私達には勇者の血が流れているんだから!」
「おいおい…」
アリスはエルヴィンに抱きつき、幸せを噛みしめるように言った。
「ずっと…一緒よ。エルヴィン……愛してる」
「ああ、俺もだよアリス」


無駄に長くなってしまってすみません。
次回でラストです。
227名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 09:53:21 ID:0bedoFNn
>>221
投下あってた! GJです!
senkaも見に行きましたが、バッドエンド編がひたすら悲惨な展開
だっただけに、みんなの甘甘ぶりが感慨深いw
228名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 17:01:18 ID:oZLLibtK
投下待ってました、GJです!
戦火スレも見てるので本当に感慨深いというかなんというか、
不幸なパラレルワールドが存在することが何とも切ないような…。
完結編も楽しみです。
229名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 23:00:06 ID:c9X2VUjb
>朝起きて開口一番は『おはよう、ハニー』
何でそんな約束をしてしまったんだw
230名無しさん@ピンキー:2010/03/11(木) 01:09:53 ID:Qu/psEDM
意外と姫騎士物とかないんだな
まぁ要素がむしろファンタジー系のスレ向きになるからか
231名無しさん@ピンキー:2010/03/11(木) 06:45:16 ID:k9k4iN1+
>>230
姫騎士物は女兵士スレと競合してるんじゃないかな
232名無しさん@ピンキー:2010/03/11(木) 07:25:04 ID:1Ta/N86E
『姫騎士』と言うと
お姫様×騎士なのか、騎士として戦うお姫様なのか、どっち?
233名無しさん@ピンキー:2010/03/11(木) 08:56:25 ID:9lKVL3lN
どっちでもイケる!
234名無しさん@ピンキー:2010/03/11(木) 15:34:44 ID:LXsjMB6X
会話の流れ的に後者だろうね
235名無しさん@ピンキー:2010/03/11(木) 16:42:15 ID:NabgiT9j
騎士として戦うお姫様 だと
お姫様→かしずかれる側
騎士→かしずく側
なので、身分としてはありえるんだけど、姫っぽさと騎士っぽさ
の同居が難しい

姫っぽい→なぜわざわざ騎士の要素を?
騎士っぽい→女兵士スレへ行け
になるw

戦うお姫様、姫将軍系は結構あるし、
お姫様×騎士も保管庫にちょっとあるよな
236名無しさん@ピンキー:2010/03/12(金) 00:36:31 ID:uEGIQmST
で、何が言いたいんだ?
237名無しさん@ピンキー:2010/03/12(金) 01:30:31 ID:Ti6Omoou
投下の後でもアレなのに
投下前から定義付けかい
238名無しさん@ピンキー:2010/03/12(金) 09:13:15 ID:Bb6td9Mb
まあ、そうカリカリするなよ…。言い方悪かったよw

姫スレでは姫っぽさのない名ばかりの姫になると
冷たくあしらわれるから、共存の難しい騎士要素より
広く「たたかうお姫様」くらいを語ったほうが建設的じゃね?って
いいたかったんだ
お姫様×騎士ならそれはそれで

まあ、要は火と闇の作者さん、サイトまだかなってチラッと思っただけなんだが
もう保管庫でも見つかんね
239名無しさん@ピンキー:2010/03/12(金) 15:58:42 ID:Ti6Omoou
右上にあるものを使うといいと思うよ
240名無しさん@ピンキー:2010/03/12(金) 16:19:18 ID:uEGIQmST
言われてもなお、自分の定義を押し付けようとするんだなw
以前、「スレの空気を読んでくれ」とか言いながら、自分の好みを押し付けようとしてた奴がいたのを思い出すよ
241名無しさん@ピンキー:2010/03/12(金) 23:56:50 ID:2C1tsfDt
設定とかで色々できるだろうし、細かいことを気にすると書きにくいからなー
王族の義務で、兵役に参加しなければならなかったりしてもいいじゃない
242名無しさん@ピンキー:2010/03/13(土) 02:16:55 ID:sD549J5b
魔王の娘書いてる者だが
騎馬なし武器なしで民兵のみ。
付け加えて作物の刈り入れも自分達でしなければならない
極貧国の姫様なら戦うだろう。
昔、似たような話を書いた記憶がある。
243名無しさん@ピンキー:2010/03/13(土) 03:01:08 ID:awBxm4jY
変な制限加えようとしている人は一人だけだから、不毛な議論しなくても、スルーすればいいだけ
244名無しさん@ピンキー:2010/03/13(土) 22:49:26 ID:aauz04GD
っていうか、投下があれば何でもばっちこーい。
ただし注意書きは忘れないでね?
245名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 10:02:00 ID:EeYBBtEB
じゃあ談義と関係ないけど、書きかけの奴投下させてもらおうかな…

勝気な中華姫に萌えたくて書いてみました。
国名はベタにシン国ですが、秦でも新でも晋でも清でもない架空の国。

注意:非エロ 
ひとまず四まで? のうち一から三までが非エロの予定です。

NGはタイトルで。
「メイファと皇子様1」です。
246名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 10:03:08 ID:EeYBBtEB
ここはシン国の王都。
肌を刺すような夕刻の冷気の中、一人の少女が、二人の従者を伴って石畳の大通りを
足早に通り過ぎていた。陽は既に翳り、行商人の姿もまばらで、通りにいるのは
ほとんどが家路を急ぐ者達だった。
「──メイファ。」
ふと呼び止められて、足を止める。その声は、大通りに面した茶館の方から聞こえて
きた。深い藍色の袍(ほう)を纏った青年が、茶館の軒下に出してある卓についている。
シン国の袍は袖口も裾もゆったりと幅広で、袖口と襟、裾は飾り織りの布で彩られて
いた。茶館のほうは、夜には酒を出すのだろう、奥からは明かりが洩れている。

「またおまえか。レン。」
メイファはその青年を、強い意志を宿した瞳で睨みつける。レンと呼ばれた青年の
ほうは、優雅な微笑を浮かべて、強い視線を受け流した。
「一緒に、お茶でもどう?」
彼は上品な仕草で彼女を招いた。卓上にはメイファの分の茶器も律儀に用意してある。
もっとも、それが使われたためしはないのだが。
シュンレンはその高貴な身分にふさわしい、整った顔立ちをしていたが、全体的には
整いすぎてむしろ特徴がない、という印象を受ける青年だった。目は切れ長といえば
聞こえはいいが、いましているように微笑を浮かべるとひどく細く、彼の表情を
分かりにくくしている。少し癖のある髪は結い上げられておらず、房のついた紐を
使って肩の辺りでゆるく束ねられていた。

「いつも言っているが、わたし達は予定にない寄り道は禁じられている。
本来なら、こうした立ち話もすべきではない。
それに、こっちは卒院の試験で忙しいんだ、おまえになど構っていられるものか。」
言い捨てるような口調で話す少女を、愉しげに眺めながら彼は言葉を継いだ。
「メイファは、真面目だなあ。規則なんて、破るためにあるのに。」
少女は形の良い眉をキッと吊り上げて反駁した。

「規則は、守るためにあるに決まっているだろう?!
それよりその髪は何だ。官職についているのに結いもしないのか。だらしのない。
仕事が終わるには少し早い時間だが・・・まさか、またサボりではあるまいな?」
そう言うメイファのほうは艶やかな黒髪をきっちりと隙なく編み上げていた。
外套にも、その下から覗く紅色の立て襟の服にも糊が効いていて、彼女の几帳面な
性格を現していた。
彼女が着ているのは北方の民がよく着る服で、上衣は立て襟で踝の付近まで届く
くらいに長く、両脇に切れ込みが入って脚捌きがよくしてある。下衣は
?(ズボン)型で、袖周りも脚周りも細く仕立てられていて、寒さに耐えられる
ようになっていた。
シン国では、貴人の服は布を贅沢に使ってゆったりと仕立てられるのが常で、
この服はどちらかと言うと貧相に見える、と言われたが、メイファの故郷も
この旗袍と呼ばれる服を取り入れていたし、何より動きやすさが気に入って
いたので、メイファはシン国風のゆったりとした袍を着る気にはならなかった。

「またサボり、というより大体いつもサボり。
近頃は出勤したらあんまりみんなが驚くもので、行きにくくて。
こうして街ゆく人を観察してるのも、結構楽しいし。」
彼の言葉を聞くと、メイファはそのまなじりを更にキリキリと釣り上げ、紅く可憐な
唇をわななかせた。
「馬鹿者────ッッ!!
この給料泥棒! 罷免できないからって調子に乗るな! 働けっ!!!
何故その能力を人のために使おうとしない!?
観察されてるのはおまえだっ!この変人!!」」
彼女のそのよく通る声はかなりの迫力だったが、叱責された方の青年は愉しげな微笑を
崩さずに聞いていた。
「メイファは、いつも世のため人のため、だもんね?
二十二番目の皇子の心配までしてくれるなんて、優しいなあ。」
247メイファと皇子様1:2010/03/14(日) 10:05:20 ID:EeYBBtEB

二十二番目、というのはシン国皇位継承権であり、実質は皇子間の席次である。
シン国は徹底した実力主義で、皇帝の皇子達は武術・学問・実務の能力で序列化
されており、18歳で学院を卒院すると、その順位に応じて役職が割り振られた。
メイファがレンと呼んでいる青年は名をシュンレンといい、皇族であるチェン家の
一員である。
しかし現在の皇帝の皇子達は二十五人で、レンより順位の低い者のうち二人は年端も
行かぬ童であり、残る一人は病弱で、病床から離れられぬ皇子であった。つまり彼の
順位は事実上ほぼ末席、という扱いなのだ。
「誰が、心配なぞ、しているっ!!
苛ついているのだ、おまえの態度にっ!!
人に真面目だなあ、とか言ってる場合じゃないだろ!?  おまえが、真面目にやれっ!」
末席扱いといえど皇族であるレンにこういう言葉遣いをしている少女、メイファは、
ハリ国の姫で、シン国の王都にある学院に『留学』してきた娘であった。

  *   *   *

ハリ国は、山岳地帯の小国で、大国であるシン国に朝貢している国々のひとつ。
従って、『留学』というのは建前上のことで、実際は万が一のときのために差し出されて
いる『人質』という立場であった。
ただし、シン国は、従順な朝貢国に対しては非常に寛容で、『留学』してきている各国の
王族の子供達は、従者という名の監視役を付ければ比較的自由に王都内を見て廻ることが
出来たし、同じ学院に通うシン国の皇族や上級貴族の子供達とも、少なくとも学院内では
平等に扱われた。
朝貢国からの『留学生』は、一方で従順さの担保として命を縛られながらも、一方で
学問に関しては故郷の国とは比べ物にならないほどの自由を保障された、複雑な立場の
学生達だった。

十二歳で学院の初等部に入学すべく山奥から出てきたメイファにとって、当時はシン国の
全てが新鮮な驚きだった。豊富な物資、見たこともない多様な人種の人々、高い技術と
財力を示す圧倒的な建築物の数々。
──北に北狄、東に東夷、南に南蛮、西に西戎。この大地にあまたの民と国あれど、その
ただ中に大輪の華の如く君臨する国家あり。これを中華といふ。──
つまり周りは全部蛮族で、中央の中華の国だけが抜きん出ている、と言う論理である。
この論を書物で読んだとき、どちらかといえば蛮族の方に入れられるハリ国のメイファ
としては、何と傲慢な物言いをするものだろうと驚いたが、これほどの圧倒的な差を
見せ付けられては納得するほかない。いくたび国号が変わろうと、いくたび皇帝の
姓が変わろうと、悠久の歴史を持ち、他の追随を許さぬほどの高い文化と技術力を
持つ華のような国、それが中華の国。そしていまはこのシン国が、『中華の国』なのだ。

メイファにあてがわれた『学寮』も、元は誰かの邸宅だったらしき立派なもので、学院に
通う女子はそこに数部屋づつ自分の部屋を用意され、身の回りの世話をする侍女や食事の
世話をする料理人、護衛のための従者もすべてシン国からあてがわれた。
逆に言うと、『留学生』は、祖国から一人の侍女も伴うことを許されておらず、シン国の
用意した侍女と従者は脱走や策謀を防ぐための監視役も兼ねていた。
それも特定の人物と仲良くなりすぎないよう時折入れ替えられたが、元来人懐こく、こだわり
のないメイファにとってはさほどの苦痛ではなかった。侍女が入れ替わると、全てのことは
メイファがあらためて指示しなければならないため、最低限のことは自分ですることを
憶えた。
全ての外出には従者を伴うことが義務付けられ、ごく近いとはいえ学院への行き帰りも
例外ではなかったが、学院内に限っては一人で行動することが許されていた。
なかでも一番驚いたのは、学院のあり方そのものだった。
小国で、大国であるシン国に朝貢して守ってもらう立場の国が、人質として送り込んだ
小さな姫。それが自分だった。国を出るときには、母が涙で見送ってくれた。メイファ
自身も、どんな過酷な扱いでも覚悟していた。
248メイファと皇子様1:2010/03/14(日) 10:09:03 ID:EeYBBtEB

──まさか、学問を学ぶ学生は平等、などと言われるとは思っていなかった。高貴な国
であるシン国の、上級貴族はおろか、皇族の方々とまでお話できるとは。
圧倒的な経験の量と、皇族とのつながり。メイファはすぐに、ハリ国が『留学生』を
出した経験が浅いために、人選を誤ったのだと気づいた。
ここに来るのは、王位を継ぐ人間や、それを補佐する人間、ともかく将来国家の中枢を
担う人物が選ばれるべきだった。事実、姫を送り出した朝貢国はその年はハリ国のみ
だった。
万が一失っても国政に影響しない末姫がここに来るのは、ひどく勿体無いことだと
思った。もちろん、それはメイファにとっては、この上もない幸運であったのだが。
彼女は、少女らしい真っ直ぐさで、ともかくすべてに励もうと思った。
この『幸運』に報い、いつか自分がハリ国に貢献できる人物になろうと。

それからもうひとつ、メイファを狂喜させたのは、学院では武術の指導も行われる
ことだった。
祖国では年頃になればはしたない、と忌避される剣術も、学院内では男に混じって
思う存分打ち合うことが出来た。
メイファは幼い頃からこっそり男の子に混じって稽古をしていたし、山国育ちで足腰が
強く、身体が軽かったので、シン国や他国の王子達に混じっても、そこそこの勝負に
持ち込むことが出来た。

そんな頃にメイファは、レンと出遭った。
全体の学生数が少ない『学院』では、隣の学年と一緒に講義を受けることが多い。
最初のうちは、偶然隣の席に座ることが多いひとつ上の上級生、という認識だった。
メイファは気づいていなかった。その頃すでにレンの『変人』ぶりは知れ渡っており、
学生達は彼を遠巻きにして席を取っていただけなのだ。入学したばかりの『留学生』
たちですら廻りの様子を見てそれに合わせた。

メイファだけは、それまでの学問がほとんど1対1で行われて集団生活の経験がなかった
せいなのか、それとも元来の性質なのか、その「遠巻き」の様子を「席が空いている」
としか見ていなかった。
自然に、この『知り合い』の隣に席を取ることが多くなっていた。
彼女は、レンの様子を見ていて、学院の講義ははじめから最後まで同じ集中力で聞く
必要がないのだ、ということをはじめて知った。彼は講義中は大抵余所見をしているか、
関係のない書付をしていたが、そんな彼がふと顔を上げて講義を聴いているときは、
講師がなにか教本に書いていない重要なことや、新しい解釈、鋭い考察などを述べて
いるときだった。
メイファは教本はあらかじめ充分に予習して、彼が顔を上げているときの講義内容
だけは欠かさず書き付けるようにした。それでもメイファにとっては、講師たちの
どんな些細な雑談でさえ胸躍らせる不思議な話であることには変わりがなかったが。

またハリ国とシン国の教養の程度には当然差があり、メイファは『留学』前にも熱心
で優秀な生徒ではあったが、講義中にはしばしば全く分からない言葉が出てきた。
そんなとき、隣のレンに訊いてみると、即座に鮮やかで簡潔な説明が帰ってきた。
彼女は、彼の怜悧さは学院の中でも群を抜いている、と感じていた。さすがに、
十三歳でも大国の皇族は凄い。そんなレンと、気軽に言葉を交わせるほど親しく
なれたことが、心の底から誇らしかった。


ところが、である。
学期末に行われる試験結果を見て、メイファは愕然とした。
何故かほぼ全ての科目で、レンは下位に位置していたのである。次々に未知の
単語にぶつかっては隣のレンに教えを請うていたメイファが比較的上位なの
にも関わらず。
「何故…?」
と問うても、いつもの細い目で微笑うだけだった。

249メイファと皇子様1:2010/03/14(日) 10:10:52 ID:EeYBBtEB

そのうち、あることに気づいた。
それぞれの科目はあまりにも理解が低ければ進級できない仕組みになっていたが、
レンは器用に全ての科目でギリギリの点数で通っていた。
いくつかの科目は、本試験をあえて受けず、こっそり追試を受けたりもしている
らしかった。
わざとか…と、メイファは思った。
何故かは知らないが、レンはあえて、下位にいるらしい。
その上、最初の学期では分からなかったが、彼は講義もかなり欠席していた。
欠席しているあいだに、いかがわしいところに出入りしているとか、危ない
ことをしているとか、学院では皆が好きなように噂した。

彼の同級生には、あいつは努力しようとしないから・・・という者もいたが、
決してそういうわけではない。メイファが隣で見た限りでは、既に幅広い
知識と深い洞察力を持っているのだ。
高い身分と、高い能力を持ちながら、それを塵芥のように捨て続ける人、
それが十二歳でメイファが出遭った、レンという少年だった。
レンは、高い身分を持ちながら、あらゆる権威にも権力にも価値を
見出していないかのように振舞った。


それだけなら、メイファのレンに対する印象は、不思議だが能力は高い
ひとつ上の先輩、というほどのものだった。
だがレンは、人間関係もまた、捨て続けているようなところがあった。
レンが初等1年だったその前の年には、親しくなりかけた級友に、「御礼」
と称して、雨蛙がみっちり詰まった小箱やら、青虫がごっそりはいった
紙袋やらを贈ったのだとか。
実害はさほどでもないが、生理的嫌悪感を喚起するそのやり口に、それ以降
レンに積極的に関わるものはいなくなったらしい。
メイファは、山国育ちで、虫の類は得意だった。
雨蛙も、青虫も可愛い。毒のある虫だって、扱いにさえ注意すれば無害な
ただの虫だ──
そう思って、過去の話を聞いていたにもかかわらず、油断した。
あとで嫌と言うほど思い知ることになるのだが、レンは、少なくとも十三歳の
時には既に、人に嫌がらせをするときにその人の得意なものを使ったりする
ような愚は不思議と決して犯さない、そんな少年だった。

それは、ごく、突然のことだった。
講義の前、いつものようにレンの隣の席に座ったメイファに、丸めて紐で
括られた紙束が差し出された。
「贈り物」──そう、彼の唇が動いた。
何の疑いもなく、即座にメイファは、それを開いた。どんな素晴らしいものが
出てくるのかと、期待で胸をどきどきさせながら。

「それ」が何であるのか、理解するのに多少、間が空いた。ある意味、今でも
「理解している」とは言い難いが、もう何であるかは知っている。
そこには、裸で絡み合う男女が描かれていた。御丁寧に極彩色の──いわゆる、
「下品」な──色遣いで彩られた、春画と呼ばれる類のものであった。しかも、
一枚だけではなく、何枚も、いろんな格好のものがあった。
「それ」が何であるか分かってくるにつれ、メイファの細い眉はみるみる
釣りあがり、指先は怒りに震えた。
「こ・・・この破廉恥男ッッ!! 変態!!!! わたしを、愚弄するな───ッッッ!!!」
教室中の窓が震えるような声で、メイファは叫んだ。
250メイファと皇子様1:2010/03/14(日) 10:11:39 ID:EeYBBtEB

貞節を美徳とするハリ国の姫にとって──シン国も同じようなものではあるが
──性的な当てこすりは最大限の侮辱に当たる。まだ十二歳のメイファは当然、
こういった侮辱には命を賭してでも決然とした態度を示さねばならない、と
教え込まれていた。
それ以上に彼女が幼い頃から胸に抱いていた野望──未婚のまま、祖国で父王の、
あるいは兄君が跡を継がれれば兄君の、政(まつりごと)の補佐として仕えること
──のために、よりいっそう性的なものから遠くあらねばならなかった。
またメイファは国では末っ子として兄弟には大切にされ、このような無礼を
受けたことはまだ一度もありはしなかった。相手はシン国の皇族とはいえ、
一度は心を許しかけた相手であるがゆえに、理性は消し飛んで怒りだけが倍増した。
級友が止めに入ってくれなければ、物差しで彼を打ち据えていただろう。
学院内のこととはいえ、喧嘩でシン国の皇族に怪我でもさせてしまってはさすがに
まずいことになっただろうから、あとでその級友に感謝した。

メイファは所持品を置いたまま教室を飛び出し、学院内の庭園の片隅で、怒りと
恥辱の涙を流した。
そしてそのとき、初めて大好きな講義をさぼった。
そういえば、落ち着いてからよく思い返してみると、レンはメイファに「あれ」を
手渡すところから、怒鳴られて物差しで打たれそうになるまで全く同じ微笑を
浮かべていて、動揺したところはひとつもなかった。ハリ国の習慣もメイファの
性格も野望も、充分に踏まえたうえで、彼女が烈火のごとく怒ることを完全に
見越してやったに違いなかった。
「あの、細目め……・!!」
それ以来、メイファは、レンの細目の微笑を見るたび、やたらと苛つくようになった。
自分は、レンに比べて、何もかも未熟で、幼い。それを、嗤われているような気がした。


とはいえ、他の学生達も更に一歩引いてしまったので、依然としてレンと最も
親しいのはメイファだった。
講師たちからしても、講義にはほぼ皆勤で、放課後は剣術の稽古か図書室で貴重本の
書写をしているメイファは、便利な伝言役だった。講義にいつ来るか分からない
レンへの伝言があるときは、メイファに伝えておけば何故かすぐ伝わった。
来そうにない補講や追試に引っ張り出す役目さえ、メイファに振られることが
あった。──メイファにはひどく不本意なことだったが。
レンの「からかい」は、親しくしている以上時折あったが、メイファのほうも
傷の残りかねない武器でなく、痣の残りかねない拳でなく、平手打ちで返すくらいの
分別はついていた。
そうやって二人は、彼が十八で先に卒院するまでの五年間を共に過ごした。
251メイファと皇子様1:2010/03/14(日) 10:14:21 ID:EeYBBtEB

   *   *   *

そして、メイファも卒院試験を間近に控え、まもなく卒院して故郷に帰ることになる。
「もういい。試験は六日後に迫っているんだ。いつまでも立ち話をしている場合ではない。」
「メイファは成績いいんだから、そんなに必死にならなくても大丈夫なのに。」
「わたしは凡人だから、必死に頑張ってやっといい成績が取れるんだ。
──おまえと、違って。」
メイファは苦々しげにそう言うとくるりと踵を返そうとした──が、ふと思い出した
ように、その脚を止める。
「レン、おまえに一度聞いてみたいと思っていたが」
「メイファが僕に重要な話ー? 愛の告白ならいつでも歓迎だけど」
「黙れ」
彼女はぴしゃりと言った。こうした性的なほのめかしもまた、彼女にとっては「嫌がらせ」
以外の何者でもない。
「おまえは、そうして──自分の能力を、隠して、捨てて──どんな風に、生きたいんだ? 
何を、望んでいる?」
「ふうむ。メイファの質問は大仰だねえ。」
レンは少し考える様な仕草をして手の中の茶器を弄ぶ。
「祖国と民のために尽くすのが大好きなメイファには分かり辛いことかもしれないけど、
僕は、目立たずに生きたいだけだよ。」
「目立たず…?」
思い切り目立ってるじゃないかっっ!! ──と切り返しそうになるが、ぐっと堪える。
「話すと多分、長くなるから。本当に聞きたいなら、そうだな、卒院試験が終わって
からでも、ゆっくり話してあげるよ。
もう随分、暗くなってきた。風も冷たいし。風邪を引かないうちに帰ったほうが良いね。」
「言われずとも帰る。さっきからそう言っている。
──おまえもな。」
「え? 何?」
「おまえも、風邪を引かないうちに、帰れと、言ったんだっ!」
言うなり彼女は、踵を返して、今度は迷わず宿舎への道を歩みだした。背筋を
ぴんと伸ばして、足早に、風を切って歩いてゆく。二人の従者が、後を追った。
その後姿を見ながら、レンは決して聞こえないように、小声で呟いた。
「メイファは、優しいな。優しくて、素直で。──好きだよ、そんなところ。」

252メイファと皇子様1:2010/03/14(日) 10:15:09 ID:EeYBBtEB
   *   *   *

瀟洒なたたずまいの『学寮』に戻ったメイファを、彼女付きの侍女が出迎えた。
外出着から部屋着に着替え、部屋に運ばれた夕食を摂る。
余裕のある時期なら、同じ『宿舎』に居る令嬢たちと呼んだり呼ばれたりと
いうこともあるのだが、今は卒院する者だけでなく全員が期末試験で忙しく、
それどころではなかった。

現在、この『学寮』で暮らしている令嬢たちはメイファも含めて五人。メイファ
以外は全て、地方から勉学のために王都に出て来た貴族の娘達であった。
彼女達は全て生家からなじみの侍女を連れて来ていたし、従者も居るには居るが
必ず引き連れて歩く義務はなく、寄り道だって前もって申請する必要なしに、
好きなように歩き回ることが出来る。
しかしメイファは、その違いはつとめて意識しないようにした。
誰でも、その立場に応じて義務と制約に縛られている。自分は、小国ながらも
王族の一員でるがゆえに、『留学生』としてここでその責務を全うしている
に過ぎない。

立場は違うといっても基本的に素直で人懐こく、レン以外には礼儀正しい
メイファは、ここでも割と好かれていた。特に年下の面倒見が良いので、
下級生達からなどはかなり慕われていた。

夕食が終わると、勉強があるからとメイファは侍女達を全て下がらせた。
何しろ、卒院試験まであと六日なのだ。
けれど、やっと一人になった彼女は大きな溜息をついて卓上に突っ伏した。
ぽつり、と小さな声で独り言を呟く。
「せっかく逢えても…いつも何かと喧嘩腰になってしまうな…。
王都に居られるのも、あとわずかなのにな…」
──もうすぐ、ここで六年間過ごした成果を試される。
それが終われば、自分と入れ替わりに従兄弟の少年が祖国から来て、
自分はここを離れねばならない。
かつてはれをそひどく待ち望んでいた筈なのに、いまはただ、淋しい。
メイファは揺れる心を振り切るように、教本を開いた。




        ───続く───
253名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 10:19:38 ID:EeYBBtEB
ごめんなさいNGはタイトルで、とか書いておきながら、1レス目に
タイトル入れ忘れましたorz
254名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 10:43:06 ID:vjJcnhV6
GJ。超期待してる。
255名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 18:40:08 ID:suepaeHo
ワッフル! ワッフル!
256名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 20:19:56 ID:K4CcuhdJ
中華風で学園物ってのが新鮮でよかった
生真面目なヒロインもかわいい
257名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 10:59:07 ID:o12VBKr9
乙です!続き楽しみにしてるぜ
258名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 11:10:50 ID:79UScHcJ
姫も王子もキャラが中華風の世界観に似合っててすごくいい。
続きも楽しみです。
259名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 15:26:06 ID:O/YM8rMd
GJ!期待してます!
260名無しさん@ピンキー:2010/03/16(火) 06:35:58 ID:j3PnRyO1
期待
261名無しさん@ピンキー:2010/03/16(火) 21:53:59 ID:SmXSwY3r
『メイファと皇子様1』の続き、2の投下です。

レス下さった方々、有難うございました。
沢山レスついていてびっくりです。

注意:非エロ
少なくとも3までは非エロです。

多分6レス程度。
262メイファと皇子様2:2010/03/16(火) 21:55:56 ID:SmXSwY3r
王都の学院に通う書生、リィ ルイチェンが、学友のラン メイファに「心配
事がある」と相談を持ちかけられたのは、卒院試験の終わった次の日だった。
最終学年の学生達はの間には、昨日までの緊迫した空気と打って変わって、
ゆったりした時間が流れていた。少し春めいてきた空気のなかで、最上級生
にはもう講義はなく、学生たちは武術場で手合わせしたり、図書室で本を
読んだりと、のんびり過ごしていた。

──それにしても、あのメイファが心配事なんて珍しい。ルイチェンは、
そう思った。
彼女はこだわりのない性格で、『悩んでも仕方のないことは、悩まない。』
と言って、本当に思考から切り離してしまえる特技を持っていた。要は、
精神面が強いのだろう。十二で親元から離れて何年も異国で暮らしている
というのに、しかも自由は制限され、一時帰国さえほとんど許されないと
いうのに、涙はおろか、不安そうなそぶりさえ──少なくとも同期生の前では
──見せたことがなかった。
その「男らしい」と形容される種類の気質のために、また、何年も男ばかりの中で
育つうちに、言葉遣いも考え方も、女の子のそれより男のものに近くなっていた
ことも手伝って、ルイチェンは、メイファが同期の唯一の女生徒であるにも
かかわらず、心の中では『男友達』の括りの中に入れていた。
もっとも、そうしていなければ、彼女の友達になど、ならなかったかもしれないが。
とはいえ、その容姿は充分に美少女だ。抜けるような白い肌──ハリ国には、
色白美人が多いらしい──に、強い意志を宿した大きな瞳、すうっと通った鼻筋、
紅い花の花弁のような唇は、今はキッと引き結ばれている。

「で、何? 心配事って」
「もう、十四日にもなる」
「何が?」
メイファは僅かに言い淀んだ。
「……レンを見かけなくなってから」
「心配事って、『あの方』の事かよっっ!?」
ルイチェンはその名を聞いた途端、血相を変えて後ずさった。心の中で、危険を
告げる警鐘が激しく鳴っている。
その様子を見て、事情を知らないメイファは、少し憮然として言う。
「そんなに毛嫌いしなくても…。あいつだって、そんなに悪い奴じゃないんだぞ」
彼は脂汗を滲ませながら頭を横にふるふると振った。違う、『そんなに悪い奴
じゃない』のはメイファに対してだけだ──!! と叫びたかったが、それは一応
してはならないことになっている。
『あの方』──つまり、二十五人中二十二位の席次を持つ皇子、チェン シュン
レンは、ルイチェンたちの同期生のあいだでは恐怖と畏怖の対象だった。この、
どこか人の良い辺境国の姫を除いて。

  *   *   *

ルイチェンのように親が宮仕えの貴族の子であれば、学院に入る前から『あの方』
の奇人ぶりは聞き及んでいた。あらゆる権威にも権力にも価値を認めず、自由に
振舞う。それでいて、自身は皇族という身分のためにほとんどの者が手出し
できない。人を寄せ付けず、孤高を好む。
当然遠巻きにしたし、知らない者にはそれとなく耳打ちした。十二にもなれば
ほとんどの者が、『危うきに近寄らず』の価値を知っていた。
変人などとうっかり呼んで、聞かれでもしたら怖いので、皆単に『あの方』
と呼んだし、それで通じた。
しかし、入学したばかりの小さなメイファは、耳打ちする間もなく真っ直ぐに
講義室に入り、『あの方』の隣に座ってしまった。
あの頃から妙に正義感が強く、曲がったことが大嫌いな彼女は、耳打ちしても
関係なくそうしたのかもしれないが。
『あの方』がメイファに関心を持つのに、時間は掛からなかった。

263メイファと皇子様2:2010/03/16(火) 21:59:41 ID:SmXSwY3r

ほどなく皇族の権力を背景にして、ルイチェン達の同期生に次の三ヶ条が
課せられることになる。
ひとつ、メイファに手を出してはならない。
ひとつ、メイファに手を出させてはならない。──何も知らない不心得者が
寄ってきたら、これを阻止すること。
ひとつ。メイファに余計なことを言ってはならない。──良い噂も、悪い噂も、
過去の噂も。煽りや焚きつけも無用。ともかくそっとしておくこと。

学院内では平等に扱われるとは言っても、それは同じように席を並べ、同じ
ように講義を受けるという程度の意味で、個人同士の問題には権力が絶大な
力を持つ。何しろ、シン国の貴族にとって、学院で学ぶということは、宮仕えを
希望するのと同義なのだから、権力に服従するのは自然なことだ。。
だから、席次が低いとはいえ歴とした皇族の言葉なら、拘束力は充分なはず
だった。

しかし、それだけでは終わらないのが、『あの方』なのだった。半年も経たぬ
うちに──それは『あの方』の態度が、『関心がある』から、明らかに『気が
ある』に変わった頃だったが──メイファを除く同期生全員若干十四名分の
何らかの弱みを、知らぬ間に握られていたのだった。
弱みといっても、大半が若さゆえの些細なものだった。校則違反やら、学院の
備品を破損した(しかも黙っていた)のやら、門限を破っていかがわしい場所に
行ったのやら。しかし、学院に通う者にとって、学院の下す評価は、それ
ひとつで将来を左右される可能性がある、絶対のものだった。誰でも、評価を
下げるようなことは、例えごく些細でも絶対にばれたくない。そういった、
学院生特有の心理をついた巧みな人の操り方だった。

それ以上に、彼らを恐怖させたのは、『何故ばれたのか分からない』ことだ。
誰にも見られていなかったし、誰にも言っていない。なのに、気がついたら
『あの方』に知られていた。そう告白したものは、少なくなかった。
そういえば、『あの方』の噂には、人の心を読む術を心得ている、という
ものもあった。
ともかく、得体が知れない、逆らわないほうが良い、出来れば関わりたく
ない、怖い。
それがルイチェン達の『あの方』に対する共通認識だった。

勿論、メイファのこともひとまとめにして遠巻きにしかけた。
しかし彼女は、『あの方』の遠巻きを全く意に介しなかったときと同様、
全く気にせず誰に対しても屈託なく近しく接した。
だいいちメイファは、裏表がなく明朗にして快活、居るだけでその場を明るく
する、不思議と人を惹きつける少女だった。それは小国ながらも王族の姫
としての資質かもしれないが、結局、長くメイファを避け続けた者は居なかった。

そしてルイチェンは、下級官吏の息子ながら、そんなメイファと妙に馬が
合った。特に、メイファが怒って『あの方』に怪我させそうなところを
止めて以来、急に親しくなった。友人としてのメイファは、気持ちの良い、
尊敬できる相手だった。

264メイファと皇子様2:2010/03/16(火) 22:01:49 ID:SmXSwY3r
  *   *   *

ルイチェンは、せっかく『あの方』が卒院して顔を合わせなくて済むように
なったのでやっとほっとしていて、出来れば今更名前も聞きたくはない気分
だったが、友人のたっての頼みを無下に断るわけに行かず、とりあえず話を
合わす。
「でも、とっくに卒院したのに、『十四日も』見かけてないって・・・普通
じゃないのか」
「普通なら、二、三日に一度はその辺に出没してる。五日以上見かけなかった
ことは、今までない。
卒院試験の所為かと思ったが、試験終了日に現れなかったことも今までない」
「へ…へえ、二、三日に一度」
通いつめ過ぎだろ、とルイチェンは早速切り返しそうになった。全く、道理で
『あの方』の目撃情報が絶えないわけだ。
「それで?」
「…こんなに見かけないってことは、怪我か病気かと思って…。
でもあいつは皇子だから宮廷に住んでて、簡単には入れないし…。
その、ルイチェンの父君は、宮仕えだったろう? 何か、分からないかと」
「あのねメイファ。知ってるとは思うけど、宮仕えにも部署ってものが
あってね、シュンレン様は戸部──財政と地方行政担当で、僕の父上は
礼部──外交と教育・倫理担当。ぜんぜん違うの。
宮中の住居の管理は宮廷の女官の管轄だし。
…あ、メイファのほうがさ、ほら朝起こしに行ってたりしたじゃん、
試験の時とかさ。
また入れないの?」

「へ…部屋まで入ったような言い方をするなっ。起こしに行ってたん
じゃない、呼びに行ってただけだっ!
ああいうときは学院が通行証を発行してだな…、それを見せると待合に
案内されるから、待っていると、身支度を済ませたレンが連れてこられて、
逃げないよう学院まで連れてくるのがわたしの使命で」
「ああ。手を繋いで来てたりしてたもんなあ。」
「な…っ…、何だその誤った認識はっっ。
手など繋いでいないっ!!
あいつがあんまりふらふらして脱走しかねないから、手首を掴んで
連行していただけで!」
メイファが真っ赤になって反論する。

──鈍い。鈍すぎる。これ素で言ってるのか。
誰も寄らない、誰も寄せ付けない孤高の変人様が、学院でも数少ない女性徒と
一緒に登院する、それが傍から見てどう見えるのか。握っていたのが手
だったのか手首だったのかなんて、些細な違いだ。
照れたように怒ったように前を歩くメイファに手を引かれて、『あの方』
は悠然と周囲を睥睨していた。
自分にとって、この子は特別。この子にとって、自分は特別。
…とでも、言いたげに。
本当に『あの方』は、メイファに見せる表情とその他に見せる表情が、
違いすぎる。
『あの方』がご丁寧に弱みまで握って牽制していたのはメイファと同期の
十四人。その他の五つの学年はどうしていたのか知らないが、ああして
メイファが呼びに来なければならないように仕向けるのも、学院生達への
牽制の意味合いもあったに違いない。
まあそれも、ひどく大人気ないが。
「それはそれとして・・・安否確認が出来ればいいんだね。いま少し思い
ついたけど、メイファの名前出して聞いてみるよう、父上に頼んでみる。」
265メイファと皇子様2:2010/03/16(火) 22:04:25 ID:SmXSwY3r


翌々日、ルイチェンは父親経由の返事を友人に告げた。
「──王都にいない?」
「そうらしいよ。行先不明、目的不明、いつ帰ってくるかも不明だけど。
仕事中、とは言ってたから、極秘の任なのだろうって」
「あのサボリ魔が極秘任務・・・意外だ。死んでは、いなかったのだな。」
メイファは本当に意外そうな顔をして呟く。
「あくまではっきりと聞いたわけじゃないけど、すぐには帰ってきそうに
ないような口振りだったとか」
「遠方か、あるいは長期か。すぐに帰ってこれるようなところならむしろ、
隠す必要性も薄いしな」

眉根を寄せて少し考え込むようにした友人の表情を見て、ついルイチェン
も謝りたくなってしまう。
「なんか──ごめんね、あんまり役に立てなくて」
「とんでもない! 助かったよ。ひとまず無事そうだと分かっただけでも、
安心した。」
慌ててメイファは目を上げる。そしておもむろにルイチェンのほうへ
まっすぐ向き直って曇りの無い眼で言った。
「有難う、ルイチェン。無理を言って、すまなかった。
この借りはいつか返す──と言いたいところだが、卒院してしまえば
『いつか』はありようもない。
どうやって、返せばいいだろうか?」

本当にメイファは真面目で義理堅い、とルイチェンは思った。男だったら
大成しそうな気がする。
というか、本人は結婚もせずに祖国で政治に関わる気らしいが。
本人曰く、結婚相手は女のほうから選ぶことも出来ないし、結婚すれば
夫に仕えざるを得なくなる。
好きなように生きるには未婚を通すのが一番だ、ということらしい。
確かに、宮廷の女官のように、仕事と収入があれば、未婚のまま働くことも
可能だ。メイファの祖国で、政治に関わる仕事をすることで、地位と収入が保証
されるならそれも可能かもしれない。
未婚を通せるかどうかは、状況によると思うが。

「だったらむしろ『いつか』を捨てないで居て欲しい、ってお願いしたいな。
縁があるときで良いよ、友達なんだから。大したことでもないし。」
『あの方』の『恋人』が安否を気遣っています、試験のときに呼びに
宮中まで来ていた娘です──と言って聞いてもらったこともちょっと
気が引ける。メイファが聞いたら真っ赤になって激怒しそうだ。
もっとも、『あの方』付きの侍中も、メイファのことを思い出したら
あっさり教えてくれたらしいから、あちらでもそう認識されているのだ。
内容は『お答えできません』ばかりだったが。
「そうか。友達は、卒院しても、離れてもいつまでも友達──嬉しい、
本当に嬉しいよ。ルイチェン。
レンとは──いま王都に居ないのだったら、これきりになるかも、
知れないけど。」

ルイチェンは、この気丈な友人が僅かに涙ぐむのを少しの驚きをもって
見ていた。
多分、卒院で感傷的になっているのだ。ハリ国は辺境で、馬を使っても
ひと月は掛かる。徒歩だとどのくらいだか知らないが、普通ならそんなに
遠くに行ってしまえば確かに二度と逢うことも無いだろう。
けれどルイチェンには、何となくこれきりという気はしなかったが。

 
266メイファと皇子様2:2010/03/16(火) 22:05:21 ID:SmXSwY3r
  *   *   *

卒院試験が済んでしまえば、まもなく卒院式だ。
そこで成績が発表され、修了証書が手渡される。
そのあとは、少しの休みを挟み、新入生を迎えて次の年度が始まる
ことになる。

「──なあルイチェン、なんか朝から花もって来るやつが多いんだが、
何でわたしのとこばっかりなんだろう? なんで花なんだ?」
卒院式の日、メイファの座っている卓上は、花で埋もれていた。
切り花が主だが、花の枝や鉢物まで混じっている。持って帰るのが大変
そうだが、まあ従者が持つはずだから問題ないだろう、とルイチェンは思った。
今日は同じ学年の生徒はみんな正装だが、さすがに女性であるメイファ
の装いは、一層華やかだった。
立て襟に踝辺りまである長い丈の深紅の上衣、その左右の腿まである
切れ込みは金糸で縁取られていて、細身の身体をすらりと格好よく見せ
ていた。下衣も同じく深紅で、上衣には全体に彼女の名前の花、
梅花[メイファ]の咲き乱れる様が繊細な刺繍で表現されていた。
「去りゆくものへの餞(はなむけ)だよ。男が男に花を贈ってもつまらない
から、女の子のメイファのとこに集まるんだろ。花に罪はない、
貰っときなよ。」

──鈍い。卒院式に異性に花を贈ったら、『ずっとあなたを見てました』
って意味合いだろう。
しかしルイチェンは、この鈍い友人に説明するのもどうかと思い、適当に
誤魔化した。
『あの方』の課した『メイファに手を出させないこと』を厳密に実行する
なら、花を持ってくるのも止めさせなければならない。しかし既に、
『あの方』の王都不在は、知れ渡っている。
メイファ自身が、訊かれれば正直に答えていた所為だ。
『あの方』の牽制で萎縮していた奴等が、『あの方』不在のこの機会に、
最後くらいは、とこぞって花を持ってきているのだ。幸い、それ以上
何か言おうとか、何か求めようとか、『あの方』に知れたら大変そうな
ことまで望む無謀かつ根性のある奴は居ないようだが。
つまり、メイファはかなり、人気があったのだ。実は。

まず第一に、女である、ということ。ひとつの学年に十五人程度の学生が居り、
六つの学年があるこの学院全体に、女生徒は全部で五名しかいない。女という
だけで既に希少である。

第二に、美少女であること。
メイファは白い肌と、意志の強そうな大きな瞳が印象的な女の子で、他の
四人の女生徒──彼女達もシン国の貴族のお嬢様達だが──と比べても、
ごく公平に見て、かなりの美人だった。

第三に、気品があること。
小国とはいえ王族なのだから当然といえば当然だが、彼女の置かれた状況が、
彼女の高潔さを一層際立たせていた。
朝貢国や属国からの『留学生』と言えば、つまりは人質である。シン国は
従順な国には寛容だが、刃向かえば容赦はない。そして、母国とシン国で
いざこざが起これば真っ先に拘束され、最悪の場合首を落される可能性
さえあるのが『留学生』という存在だ。滅多にそんなことは起きないが、
過去に一度もなかったわけではない。
十そこそこの歳で親元から引き離されている不安感と、自由を制限され命を
担保に取られている焦燥感から、荒れる『留学生』は少なくなかった。
しかし、自分と同じ状況に置かれているのに泣き言ひとつ漏らしたことの
ない少女が、毅然として
『祖国のためになら、命を掛けるのが王族の務めだ』
と言い放つのを聞けば、大抵の奴は黙らざるを得なかった。
267メイファと皇子様2:2010/03/16(火) 22:07:48 ID:SmXSwY3r

第四に、剣の腕が立つこと。
『女は武芸なんかやっちゃ駄目だ、しとやかにしてないと。』と言う奴らも、
メイファの剣技には目を奪われていることを知っている。
あくまでメイファは友達としてしか見ていないルイチェンも、彼女の技は
素直に美しいと思っていた。
そもそも、メイファは素質や身軽さだけで剣を振るっているわけではない。
彼女は基本的に努力の人なのだ。
学院では、女生徒は武術の代わりに琴や詩歌や裁縫などで単位を修めることも
出来る。メイファが頑としてそれを選ばなかったのは、卒院後は政治に関わろう
としているためらしい。
確かに男なら文官であろうと武術は必須だ。出来ない者は嘗められる。だから
こそ学院でも武術を学ぶのだ。
彼女の目標は、祖国とその民のために役立つ立派な人材になること・・・だそうだ。
そしてメイファは努力ではどうにもならない自分の限界もよくわきまえていた。
同じように鍛錬しても筋力は男のそれに及ばない。体力もそうだ。
だから彼女の鍛錬は、技と速さに特化した。
自分の体力が消耗する前に、相手の力をいなし、急所を素早く正確に衝く。彼女が
剣を振るうとき、その緊張感と気迫に満ちた、それでいて流れるような優雅な
動きに、見ている者は嘆息を漏らした。
『あの方』はほぼ必ず武術の授業はサボリなこともあって、メイファをうっとりと
眺めている下級生も多かった。

──ただし、当の本人だけは、何故かそれに気づいていなかったが。
メイファの目標は、あくまで未婚のまま祖国に尽くすことらしい。
『女が学問をしたり、武術を身に付けたりすれば、結婚相手が居なくなる』という
俗説をなぜか信じ込んでいて、周囲の視線にはまるっきり気づいていなかった。
あるいは、気づきたくなくて意識から締め出していたのかもしれないが。

まあ、一言で言うと、『鈍い』。
本当に、まだるっこしい。──ルイチェンは、そう思っていた。
『あの方』だって、学院の初等部から高等部に移った頃には、ほとんど口説いてる
ようなものだったじゃないか。あれが全部『からかい』か『嫌がらせ』で認識され
てるなんて、いくらなんでもメイファはどっかおかしいんじゃないか。
しかも、『おまえ』とか『あいつ』とか言う呼称が許されているのも、どう見ても
特別扱いじゃないか。
『あの方』も、あの方だ。信じられないほど鈍いメイファには、はっきり言って
しまえばいいのに。
まるで、『好きな娘に意地悪をして喜ぶ悪餓鬼』みたいな真似をして。子供かあんたは。
口止めやら何やらで脅迫めいた事されてるこっちの身にもなってくれ。
──そんなことを、幾度学友達とぼやきあったか。

268メイファと皇子様2:2010/03/16(火) 22:09:28 ID:SmXSwY3r
  *   *   *

メイファは、成績証明書を受け取ってから、茫洋としていた。
学業首席、武術四位、総合二位。予想以上の結果だ。
もっと飛び上がって喜んでもいいくらいの。
確かに嬉しい。けれど、心が躍らない。
褒めて欲しい人が、そこに居ない。
──人と人とは、このようにして別れていくのか。
ハリ国は、王都からはるか西の辺境だ。一旦祖国に戻ってしまえば、二度と王都に
出てくることさえ無いかも知れない。
友人達とは、そのように思って接してきた。もうすぐ、最後なのだと。
だが、レンには、うまく伝えられなかった。いつでも、苛立ちが先に立った。
レンよりどうしようもなく子供で、浅はかな自分を、あの細い目が嗤っている
ような気がしていた。
本当は、あの目が何を見ているのか、知りたかった。
近づけば、必ずはぐらかされたし、拒絶され、遠ざけられたりもしたけれど。
あれほど、身分も才能も、およそ人として望みうる最高のものを持っているのに、
いつでも、自分の好きなように振舞っているはずのに、何故あんなにも、幸せそうに
していないのだろう。
なぜあんなにも『捨て続けて』生きるのだろう。
心の中にわだかまっていた問いを漸く言葉に出来たのに、今度答えてくれると言って
さえいたのに、なぜいま、この王都からいなくなってしまったのだろう。
それとも、これも、一種の拒絶なのだろうか。
何も言わないまま、消えてしまうことが。
メイファは必死にその考えを否定した。あれは仕事だと、ルイチェンも言っていた
ではないか。
けれどいま、レンが王都にいないという事実が、否応なく胸を刺した。
何日掛かる場所に行っているのか、いつまで掛かるのか、それさえも分からないけれど。
これもまた、自業自得なのだろう。
自分が王都にいる限り、いつでも逢えると思っていた。そんな保証などないのに。
『留学生』は行動が制限されているとは言っても、出来ることはあったはずだ。
ぎりぎりまで、自分の心とも、レンとも向き合うことを先延ばしにした。
相手は皇族で、安否を確認することすら、自分だけでは出来ないのに。
どんなときでも、明日には何が起こるか、わからないのに。

269メイファと皇子様2:2010/03/16(火) 22:10:06 ID:SmXSwY3r

「メイファ、宴の席に移動しないの?」
ルイチェンがぼんやりするメイファに声を掛ける。彼も、基本的に面倒見がいいのだ。
卒院式に続いて敷地内で催される餞(はなむけ)の宴のために、ほとんどの生徒が
中庭に移動している。
「ん…」
「凄いじゃん学業首席。ほとんど今日の主役だよ? あっちでみんな待ってるよ。」
「なあルイチェン、『目立たず生きる』って、なんだろうな?」
メイファは茫洋としたまま学友に問う。
「はあ?」
「あれだけ悪目立ちしておきながら『目立たず生きる』が目標だなんて、何の冗談
だろうな、あいつは。」
「『芙蓉の君』の話か…。『あの方』の話題ならもっと前振りしてくれよ
…心の準備ってものがさ」

そのまま移動しようとしたルイチェンは、袖をぐっと掴まれて後ろに引っ張られた。
「『芙蓉の君』って何だ? なにか、知ってるのか」
見れば、さっきまでぼんやりとしていた学友は、眼をぎらりとさせてルイチェンを
睨んでいる。
「まさか今まで『芙蓉の君』の話を聞いたことがなかったなんて事は…。」
「聞いたことはない。本来なら卒院試験が終わった後に聞けるはずだったと思うが」
ルイチェンのほうは、失言に冷や汗を流しながら、なんとか逃れようとしていた。
「それならなおさら、御本人から聞かなければ…。ほら他の奴から聞いたら単なる
噂を聞いたことになっちゃうし」
メイファがもし普通の女達のように噂話に興じる性格だったとしたらそもそも口止め
自体が無意味だったかもしれないが、彼女は『噂は真実を映さない』とか言って
噂話を忌避していた。それが『あの方』に関する話題なら、特に。
「本人がいないから困っているのだっ! 今聞かなければ永遠に聞けないかも知れん」
それは無い。『あの方』は多分しつこいから…とルイチェンは思ったが、友人の気迫に
気圧された。
「いやその話は『あの方』以外はメイファにしちゃいけない約束で…」
「ルイチェン、君には無理ばかり言って済まないが──頼む」

メイファは迷わずそのまま膝を折り、手を附いて床に額をつける叩頭礼をした。
およそこの学院に学ぶことが出来る身分の者なら、シン国の皇帝以外には決して
しない、またしてはならない最上級の礼。それだけに、その威力は絶大。
この友人は、いざという時の思い切りはやたらといい。本当に、女にしておく
のは勿体無いくらいだ。
「ちょ…メイファ、分かったから顔上げて! 人に見られる! 服が、
髪が汚れる──!!」
対してルイチェンのほうは人が良く、正直者で、若干小心者でもあった。

卒院式の開放感も、あったかもしれない。何しろ、握られていた『弱み』も学院内
のことで、評価が決まってしまえば時効になるくらいの些細なことなのだから。
そのとき、『あの方』が宮中にいて、ルイチェンもまた宮仕えが決まっている
ことは何故か失念していたが。



        ───続く───
270名無しさん@ピンキー:2010/03/16(火) 22:13:23 ID:SmXSwY3r
結局8レスかかりました。
投下は久しぶりなんで勝手がつかめなくてすみません。
271名無しさん@ピンキー:2010/03/17(水) 01:47:02 ID:MYH1+y0H
続きgj!
272名無しさん@ピンキー:2010/03/17(水) 04:25:05 ID:vwMVPJRC
GJ
273名無しさん@ピンキー:2010/03/17(水) 05:10:29 ID:NNvvizCI
メイファが格好いいかつ可愛い!
レンと結ばれるなら
是非、チャイナドレスでエッチに期待
274名無しさん@ピンキー:2010/03/17(水) 22:10:10 ID:kbbyR3OS
GJ!ルイチェンのキャラ好きだw
275名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 04:57:49 ID:G1FQfPbL
いいよ、すごくいい
俺の中でもうアニメ化できそうなくらい世界観とキャラの造形が仕上がった
続きを待つ!
276名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 03:07:10 ID:k/LA0t2P
続きが楽しみだな。
277名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 08:51:53 ID:WZmhlaw+
『メイファと皇子様2』の続き、3の投下です。

注意:非エロ
今回まで非エロ・・・の予定ですが4に気合入りすぎて長くなったら
分割して4と5になるかもしれません。

GJくださった方々、有難うございます。やる気出ます。
278メイファと皇子様2:2010/03/20(土) 08:59:09 ID:WZmhlaw+

その昔、『芙蓉の君』と呼ばれる女官がいた。
賓客を舞や歌でもてなす、宮廷の──正確に言うと、女官が所属
するのは後宮だが──尚儀という部署に属していた。
彼女は容姿も大層美しかったが、下級遺族の出身ながら教養深く、
詩歌にも精通し、そして何よりも抜きん出ていたのは、その歌声。
彼女が唄えば、男も女も、老いも若きも、言葉の通じぬ異国からの
来訪者さえ、高く低く、不思議と心を揺らされたという。
大輪の華のような女性、という意味を込めて、彼女は誰から
ともなく『芙蓉の君』と呼ばれるようになった。

当然のようにあまたの貴公子が彼女に求婚したが、結局彼女を
手に入れたのは、皇帝陛下だった。
『芙蓉の君』は正二品の貴妃として迎えられ、寵愛を受けることになる。
陛下はひどく彼女に夢中になり──他の貴妃達の事を次第に顧みなく
なった。
それにつれ『芙蓉の君』は陛下からの寵愛と同様に、他の貴妃たち
からの憎悪も一身に集めた。
その頃から、彼女は体調を崩し始め、徐々に床に伏せる日が増えていく。
呪詛を受けたとも、人知れず毒を盛られたとも言われたが、真相は
分からないままだ。
陛下も一流の医師と一流の祈祷師を彼女のために用意したが、
彼女の衰弱を止めることは叶わなかった。最後は静養のため実家に
戻り、そのまま帰らぬ人となった。
後に、わずか五歳の皇子を一人、遺して。


  *   *   *

「──というのが『芙蓉の君』の話の概要かな、大体。
まあ、妃同士のいざこざで悲劇が起きる、ってのは後宮ではごく
ありふれた話だけど。」
メイファは身じろぎもせず学友の語る過去の噂話を聞いていた。
「その話で母親を亡くした皇子、ってのがあのレンなのか?」
「そう。一説には『芙蓉の君』が有り余るほどの才能を持った
所為で憎まれる様になったから、残された皇子は才能を開花させる
ことを拒むようになった、とかね。
『あの方』はそんなに繊細じゃないと思うけど。」
「わたしは、何も、知らなかったのだな・・・。レンのことについて。
本当に知ろうとすれば、すぐに分かったはずなのに。」
泣きそうに顔をゆがめて唇を噛むメイファを見て、ルイチェンは
慌てて付け加える。
「それは…、『あの方』自身が、そう仕向けていたのだから、
メイファが自分を責める必要は全然ないと思うよ。同情するのも、
何か違うと思うし。」
好きな娘の関心を引くために、同情を引き出すのも、それなりに
良くある手だ。
「『あの方』の心情を推測するのも僭越だけど、普通にしてて、
欲しかったんだと思うな。」
「普通に…」
「大体『あの方』を前にして普通にしていられる事自体稀有だしね。」
「…悪い奴じゃ、ないぞ?」
「それはメイファに対してだけだって!
他の奴に対してはもっとなんか怖いし、得体が知れないの! 
『あの方』なら呪われたら呪い返すし、毒を盛られたらご自身は
無傷な上で相手に盛り返すよきっと!」
279メイファと皇子様3:2010/03/20(土) 09:01:58 ID:WZmhlaw+
「…蛙を」
「へ?」
「レンが初等1年の頃、レンと親しくなろうとして、蛙やら青虫やら
贈られた人がいたって聞いた。
あの人たちは、知ってたのかな、この話」
「さあ…王都にいる貴族の子息なら、普通知ってるとは思うけど」
「じゃあ、気持ち悪かったろうな…。親愛の情に見せかけた裏に、
同情や打算や損得勘定が見え隠れしてたら。外見だけは取り繕われた
綺麗な箱に、気味の悪い虫の類が入ってるのと、同じくらいには。」
「…ああ。」
メイファは思った。では自分はどう思われていたのだろう。
貴き身分には貴きなりの悲哀が、あることは知っていた。メイファ
だって小国とはいえ、末姫とはいえ、王族の端くれだ。でも目の前の
レンは、何もかも持っているかのように思っていた。勝手に。
何も知らない子供だ──と、思われていたような、気がする。


  *   *   *

卒院したシン国の学友達は、大抵が宮廷へ出仕することが決まっていた。
何人かは、郷里に帰って地方総督府に仕えることになる。
学友達が慌しく過ごす中、『留学生』は、人質として切れ間なくシン国
への滞在を求められるため、メイファは私物の整理をしながら、入れ替わり
に来る従兄弟の少年、コゥウェンの到着を待った。
彼は今年13歳になり、年齢的には去年から入院してメイファと一年滞在期間を
被らせることも出来たが、そうはせず今年から来ることにしたらしい。
メイファが沈んでいるのを心配したルイチェンが、レンに手紙を書くことを
薦めてくれた。
色々な事が頭の中を駆け巡ってほとんど筆が進まなかったが、なんとか封を
してルイチェンに託した。


それは、メイファの従兄弟のコゥウェンが、明日にも到着するという日だった。
階下に、久しぶりに誰か訪問者のの気配がする。
他の貴族の娘達は、郷里に帰っていて、いまこの学寮にいるのはメイファと
その侍女、従者たちだけだ。正面玄関から来るのなら、メイファの客なのだろう。
従兄弟のコゥウェンが、予定より早く到着した知らせだろうか。
メイファが階段を下りてゆくと、侍女が下から上がってきた。
「メイファ様。──お客様が」
「分かった。すぐ行こう」
この時期に、学寮に訪問があるのは祖国からの使いの類だろう、としか思って
いなかった。
だから、共用の応接室にその人が悠然と座っているのを見たときには、心臓が
止まりそうになった。
『あの方』のことなら前振りしてくれ、といった友人の気持ちが、少し分かる
気がした。

その人は、ほぼ一ヶ月の間忽然と王都から姿を消していたにもかかわらず、いつもの
ように髪を結いもせずひとつに束ね、ゆったりとした袍を纏って茶器を前に
メイファを待っていた。
「レ・・・レンっ?! いつ帰った?!」
「今朝」
280メイファと皇子様3:2010/03/20(土) 09:03:32 ID:WZmhlaw+
今朝、ということは、帰ってきてすぐにここに来たのか。そう思うと、少し胸の
奥が熱くなる。
「疲れたー。大体、仕事というより誘拐か拉致だよ。
誰に言う間もなく強制的に連れて行かれるし。
終わるまで帰して貰えないし。
凄く急いだのにメイファの卒院式には間に合わないし。
──綺麗に着飾ったところも見たかったのに。
ねえメイファ、労わって、ねぎらって?」

言いたいことが沢山、あった。
訊きたいことも沢山、あった。
それらがぐるぐると頭の中で渦を巻く。
──仕事だろう、甘えるな。
──女子学寮は男子禁制だぞ。何をのんびりこんなとこで茶を啜っている。
──今までいったいどこへ行っていた? 
──このまま二度と逢えないかと思った。
──わたしのこと、どんな風に思っていた?
──もっとたくさん、話がしたかった。もっと深く、知りたかった。

全てを飲み込んだまま、もう逢えずに王都を離れるのだ、と諦めていた。

熱く胸の内で渦巻く感情は言葉にならず、大粒の涙となって瞳から零れた。
十二歳で祖国を離れるとき、軽々しく泣いたりしない、と心に決めていたのに。
「…っく、…レンの、馬鹿ぁ…」
堪えていた分だけ、一度崩れると止まらない。激しくしゃくりあげ、ぼろぼろと
涙を落とす。
「そんなに、寂しかった?」
「寂しかった…とか、じゃないっ…。…っく、た、ただ…別れも…っ、言えずに、
離れるのが、…嫌だった、だけだ…っ……」
頬から零れた雫が、メイファの旗袍の胸元の辺りにいくつも小さな染みを作ってゆく。
「僕は、寂しかったけどな。メイファの声を聞かないと、こっちも元気が出ない。」
「勝手な…ことを…っ。どのみち、もう…わたしは、帰るのに…」
もうこれからは、逢えないのに。

「──メイファ。」
ふいに、傍で声がした。レンが、立って傍まで来ていたのだ。あまりの近さに
どきりとする。
「メイファは、泣き顔も、そそるね? あんまり泣いてると、襲うよ?」
ぞくりとするほど甘い声でそう囁かれて、思わず後ずさる。
と、ついと顎を持ち上げられ、唇のあいだから何かを押し込まれた。
「むぐ…」
突然のことに頭の中が真っ白になっているあいだにも、それは口の中でほろりと
溶けて、甘い味が広がる。──砂糖菓子だ。
「少し、甘いものでも口にして、落ち着きなさい。」
微かに香がかおり立つ手巾でそっと涙を押さえられ、そのままレンに手を
引かれて、椅子に腰掛けさせられる。卓上には、先程の砂糖菓子が、皿に盛られていた。
「これ、ね…お土産。そう変わったものでもないんだけど、形が可愛かったから、つい。」
親指の先ほどの大きさのそれは、確かにころりと丸く、可愛らしい形の
──梅の花の形をしていた。
別に自分の名が梅花[メイファ]だからといって関係ないし、たかが砂糖菓子にそこまでの
意味を込めたはずもないのだが、なにとはなしに、頬が熱くなる。
281メイファと皇子様3:2010/03/20(土) 09:04:12 ID:WZmhlaw+

「──あ、あの話。」
「ん?」
「前に、『試験が終わったら、話す』って言ってた話。
友人が、『芙蓉の君』の話だろうって言うから、友人から、聞いてしまった。
もうレンとは逢えないと思っていたし。──いけなかった、だろうか?」
「いけない、なんてことはないよ。そもそもまさか本当に卒院間際まで全く聞いてない
ようなことになるとは、思ってなかったし。
リィ君から概要を聞いた限りでは、間違った内容も含まれてない。
母親が死んだ話なんてするのは気詰まりだから、いざとなると誰かに聞いてって、
他人に振ったかも。」
「あれ…もうルイチェンと会ったのか。」
そしてルイチェンはあっさり喋ったのか。あんなに凄い勢いで、僕が喋ったって
ことは言わないでくれぇぇぇ!! と叫んでいたのに。
「会ったよ。彼はもう出仕してたから、出かける前に、ちょっとね。
ねえ、それであの話、メイファはどう思った?」
「ど、どう思った?! それをいま、答えろと?!」
近しい人の、重苦しい過去。それを聞いたときの、名状しがたい、重苦しい気持ち。
纏まらない想い。
それらを、簡潔に述べよというのか。いきなり難問を課すな。

メイファはふと、レンがじっ…とこちらを見ていることに気づいた。
──表情を、読まれている。
こんなときはいつもの細目の微笑ではなく、吸い込まれるような深い色の瞳が、
瞬きもせず、微動だにせず、こちらの眼を捉えていて、少し動悸が上がる。
レンは、人の表情から心の動きを読むのがひどく得意だ。特にメイファは、
素直で分かりやすい、とよく言われた。その特技の所為でレンは、『人の心が読める』
という噂もあるくらいだ。

メイファは諦めて、なるべく率直に答えた。
「簡単な言葉では、あらわせない…」
「成る程。メイファの表情は、見てて面白いよ。飽きない。
じゃあ、メイファなら、どうする? 子供のうちに、庇護者を亡くしてしまって、
宮中で独りぼっちになったとしたら。」
──またしてもやけに難しい質問を。
メイファは、六人兄弟の末姫だ。たとえ両親供に亡くなったとしても、庇護者が
いなくなるわけではない。それにハリ国は余程子供が出来ない場合を除いて、
王族でも妃はほぼ一人。
妃が何人もいて、それぞれに位やら後ろ盾やらあって権力争いしているシン国とでは
状況が全く違う。
ハリ国は、小さくて、貧しくて、ゆえに平和な国なのだ。
強大な力と領土と文化を誇り、常に内部とも外部とも戦わねばならない中華の国、
シン国の中で生きる母も同母兄弟もいない皇子の立場になって考えるには──
知識も、経験も、何もかもが足りない気がした。確かに自分は、レンから見れば
どうしようもなく子供に見えるだろう。

ひどく逡巡するメイファより先に、レンが口を開いた。
「そんなに難しく考えないで。
メイファだったら──きっと、周りに認めてもらう為に、一生懸命頑張るんだと
思うな。そして、君の場合はそれでそれなりに上手くいく。
僕の場合も同じ。
幼くして親を亡くす、なんて世間ではごくありふれた事象だ。誰でも自分に出来る
範囲で、何とかやっていくしかない。
目立たないよう末席に居る、というのが自分に出来る最善の処世法だっただけ。
まあ、それも死んだ母上の考えたことだけど。」
「母御が、そんなことを?」
「勝者には、妬みを。敗者には、嘲りを。それが宮廷の常なら、おまえは、
なるべく彼らにとって目立たない存在で居なさい…ってね。」
282メイファと皇子様3:2010/03/20(土) 09:06:04 ID:WZmhlaw+

──そうか。
宮廷内部の貴人達から敵と見做されなければよくて、それ以下の貴族達から
どう思われようと、末席に居ることを咎め立てされなければ良かったのか。
それが、レンの言う処世法、ということなのか。
「それも成人するまでのこと。
十八歳で成人してしまえば、結婚して宮廷の外に邸(やしき)を構えることも出来る。
その頃までに、自分の身を守る程度の力はつけておきなさいって。」
「…それも、母御が?」
「そう。」
メイファは、ようやく求めていた答が得られたことを感じた。
どうしたら、レンはあの不思議な『捨て続ける生』を生きないで済むのか。どこに
その終着点はあるのか。
何のことはない、それは既に目前、あるいは得られていたのだ。
レンは間もなく誰かと結婚して、静かに幸せに生きるのだろう。
自分がそれを見ることがないのは、少し切ないけれど。
「最後にそれが聞けて、良かった。」
メイファは心の底からの微笑を返した。しかし、次に聞いたのは、予想もしない言葉だった。

「さっきからまるで他人事だけど、約束のことは、憶えてる?」
「…は?」
話の矛先が急に自分に向いたらしきことを感じて、思い切り間抜けな声を出してしまう。
── や く そ く ?
やくそくって、約束? 何の? 
「約束どおり、間もなく、結婚の申し込みをするよ。シン国からハリ国へ。」
へ?
また気の抜けた声になりそうだったので、今度は注意して口には出さないようにした。
「結婚って…誰と、誰、の」
「シン国皇子、チェン シュンレンと、ハリ国王女、ラン メイファでしょ。他に
誰か居る?」
「待て待て待て待てっ! 約束って何だ?! 全く覚えがないが?!」
「いいよ。憶えてないなら憶えてないで。決めるのは自分じゃないってメイファも
言ってたし、必要なら証人も居るし」
そう。
王族の、特に姫にとって、自由な恋愛など存在しない。婚姻は、国と国、王族と
有力者の重要な絆であり、姫はそのための貴重な駒なのだ。決定権を持つのは
国の王であり、メイファの場合は、父王だ。
高確率で、望まぬ相手とめあわせられ、しかも逃げ場はない。
だからこそ、我儘と知りつつメイファは非婚を望んでいたのだ。

それはそれとして。
本当に、全く覚えがない。
「それはいったいいつ頃の…?」
「メイファが十二歳の頃かな。『婚姻を決めるのは自分自身じゃないから、然るべき
手順を踏んで、国の機関を通して、正式に申し込むように。』って言ってた。」
  じ ゅ う に さ い ?
まるっきり子供じゃないか。
かすかに、似たようなことを言ったことがあった…ような気がする。
あれは、いつのことだったか。十二歳の自分と、十三歳のレンが居て。
必死で記憶の糸を手繰る。

 ──そのようなからかいは、無礼でしょう!!
   王族の婚姻は当人同士で取り決めるものではありません!
   然るべき年齢になってから、然るべき手順を踏んで、
   シン国として正式に申し込むものです!!
   そうすれば、わたしではなく、お父様が判断なさいます!!

283メイファと皇子様3:2010/03/20(土) 09:08:04 ID:WZmhlaw+

…確かに言った、似たようなことを。あれは、何かでレンにひどくからかわれて、
激昂して。
しかしあれは、喧嘩の売り言葉に買い言葉で、しかも十二歳の子供が十三歳の子供に
対して言ったわけで。
おとといきやがれ、的な意味合いでは、なかったか…?
それとも、全然別の場面でなにか別の約束でもしたのか。

「あの…。何か、喧嘩の途中で。」
「まあね。」
「わたしは、凄く怒ってて。」
「そう」
「どちらかというと、やれるものならやってみろというか、やれないだろうというか、
やれないだろうからこの話はおしまいだ、的な…。」
「そう。偉いねメイファ、よく思い出せたねー。」
いいこいいこ、と頭を撫でそうな勢いのレンに、メイファがぶち切れる。
「ど・こ・が・、約束だっっ! 心配して損したっ!!
言葉尻を捉えただけじゃないかっ!!」
「…うん、でもね、一国のお姫様としてはね、言動に注意したほうがいいよ?
こうして言葉尻を捉えて悪用する、悪い人も居るからね?」
──『言わされた』。
メイファはそう思った。レンは驚くほどそういった話術が得意だ。人を怒らすのも、
畏れさすのも思いのまま。しかも、王都に来て日の浅い頃の、いまより更に幼い自分なら、
怒らせて目的通りの言葉を言わせるのも、この男にとっては容易いだろう。
「それに、その後すぐシン国とハリ国で内約を結んだから、約束ってのも嘘じゃないし」
ないやく?
「内約って…なにを」
「メイファが十八で卒院したら改めて結婚を申し込むから、それまで他から申し込みを
受けないこと。」
……事実上の婚約内定じゃないか。
「それを本人に何の相談もなく…?」
「いや、メイファは言質とられてるから、承諾扱い。」
「言質!! 言質って言ったな! やっぱり約束じゃなくて騙し討ちだろうそれは!」
「ハリ国の人達がのんびりしすぎなんだよ。全く。
メイファなんかいまだに留学生の役割は、人質役と勉学だけだと思ってるみたいだし。」
「それ以外を、求められたことなど、……ないが?」
何かやり忘れたことでもあるというのか。
「王子の場合、その役割は、すぐに分かっていたようだよね。他国の皇族、貴族、王族と
繋がりを作っておくこと。
『留学』は、王族に適齢の男児が居なければ、『出仕』によっても換えられる。
では、あえて姫を、送りこむとしたら? 君が王なら、その場合、国益のために、何を望む?」
『出仕』というのもまた、朝貢国の王族がシン国の朝廷に出仕するという制度だが、
妻と、未成人の子供を伴うことが条件で、要は妻子が人質なので、人選は『留学』のときより
更に難航するのだが。

国益。
王族の姫が、国益のために、最大の価値を持つのはどんなときか。
そんなことは、幼い頃からよく言い聞かせられてきた。──でも。
「わたしは…、父上からは、何も聞かされていないし、現状以上のことは、望まれていない!」
「その様子、少し気づいた? 
そう、姫の場合は、他国と婚姻関係を結ぶことが、最も国益になる。
シン王朝が始まってから、姫が留学生に選ばれた例は少なくて、いままでに全部で
十五名。うち八名がシン国の皇室に嫁ぎ、三名がシン国の貴族、二名が近隣の朝貢国に
嫁いでいる。」
「そんなに…?」
284メイファと皇子様3:2010/03/20(土) 09:09:30 ID:WZmhlaw+
「王朝が始まってから数えるほどしか居ないのだから、本当に稀だよ。一番近い例は十七年前。
皇族の間でこそ君が来てから『前例』の話が出たけど、多分、学院に居た貴族の子たちは、
前例のことはほとんど知らなかったんじゃないかな。
政略結婚を求めるのは普通朝貢国のほうだけど、娶る側としては、相手がそこそこ
魅力的な相手で、国交が安定して紛争の種を潰せるなら、充分に価値はある。
見たこともない異国で育った娘より、同じ学院で学んだ経験があれば娶りやすいしね。
妻に学を求めるなら尚更。
君は、そうとは知らず、見合いの席に放り込まれていたようなものだよ。」
もはや、メイファは愕然としすぎて声も出ない。
「ハリ国王は、お転婆な娘に学問をさせてやるつもりだったみたいだけど、それが
シン国側からどう見られているかまでは頭が廻ってなかった。」

「それは…でも、わたしに、求婚なんかがそうそう来るとも思えないが。」
「分かってないなあ」
レンは呆れたような声を出した。
「卒院式では随分沢山の花を貰ったそうじゃないか。
あれが君に関心のある男達の数だよ。
学院内の奴らも、その他の奴らもね、牽制するのに、結構苦労してたんだから。」
少し憮然として言い放つ。
「花…って、おまえ、卒院式のときは王都にさえ居なかったのに、どうして知って」
「鼠さんや猫さんが、時々報告してくれます。」
レンは少しいたずらっぽく笑った。何の比喩だろう。

「ともかく、君は自分で思うより魅力的な娘だよ。
たとえ僕の話を断ったとしても、求婚者はどれだけでも来る。いずれ、断りきれなくなる。
いつか誰かと結婚するのなら、僕にしておきなさい。」
285メイファと皇子様3:2010/03/20(土) 09:10:35 ID:WZmhlaw+

──なんか、変だ。息が、苦しい。
メイファは真正面からこんな風に褒められるのは、はじめてのような気がした。
こんなに長い間、見つめ続けられるのも。
「君は、女としてはまだ蕾。蕾をかたく閉じることで、人の世の悲しみも辛さも避けようと
したのだろうけど、花は遅かれ早かれ、開くときが来る。──大人になれば。」
──手が、震えて、動かない。
「わたしが、子供だと、そう言いたいのか。」
──頭が、働かない。何も、考えられない。
「どうかな? 僕としては、そろそろ咲いて欲しいところだけど。
…試してみる?」
ゆっくりと、椅子から立ったレンの手がこちらに伸びてきた。その動きがあまりに
優雅で美しくて、何故か目を離せない。彼の手が自分の顎を捉えるのを、かがんだ
その顔が近づいてくるのを、不思議な気持ちで見つめていた。

……。

「──ッッぎゃ────────ッッッ!!!」
メイファは耳まで赤くして、素っ頓狂な叫び声を発しながらレンを突き飛ばした。
「何もそんなに色気のない叫び方しなくても…く、くくく…っ…。」
突き飛ばされた方のレンは、身体を折り曲げて震わせながら、押さえ切れない
といった様子で喉の奥で笑っている。
「うるさいっっ!! ちょっとじっとしてれば調子に乗って…っ。どうして、
唇を舐めるっ?!」
「くくく…、ふふ、舌を使うのくらい、今時子供だって…もしかして、
口づけするのも、初めてだった?」
レンは少し意地悪な笑みを浮かべて、『問いかける』。
「もしかしても何も、すべて初めてに決まっているだろうっ!!」
彼は決して、聞きたいことを素直に聞いたりしない。誘導尋問のように、相手が
取り乱して自ら口を開くのを待つのだ。メイファも今『問い』の答えを『言わされた』
ことはうすうす感じたが、今はそれどころではなかった。第一、そんなはしたない
ことを自分が経験しているはずがないではないか。
「王都に来てからなら、悪い虫がつかないよう見ていたけど、その前のことは分からないし。
早い子なら、十二歳なら充分…ねえ?」
「ねえ、じゃないっ! おまえと一緒にするなっ!! 物凄い侮辱だっ!!
…あと、なんか変なとこも触ったっっ!!」
それで反射的に突き飛ばしてしまったのだ。
「ああ、胸? あっちも、ちょっと味見。
服の上から見ると平原ぽいのに、触ってみると意外と丘っぽく育って」
「失礼なっ!! なんか、失礼だ!!! 平原に謝れ! ついでに草原にも謝れっっ!!!」
だんだん支離滅裂になってくる。
レンの方は真っ赤になって怒りまくるメイファを眺めながら、愉しげに目を細めていた。

それが、メイファが『留学生』として王都で過ごした最後の日。
次の日には、彼女の5つ年下の従兄弟が到着し、彼女は祖国への帰途につくことになる。




        ────続く────
286名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 09:20:53 ID:WZmhlaw+
以上8レスでした。
1レス目、タイトル欄「メイファと皇子様3」→2にミスってました。

スレの流れでなんとなく投下を始めてしまいましたが、最初に書いた通り書きかけです。
次の4は少なくとも一週間以上間が開くかと思います。

>>273 様。
チャイナドレス、大好きです…!!
しかしあの形の服を漢人が広く着るようになったのは近代に入ってから、さらに
女性の体型にぴったりさせた上、騎乗用のスリットから脚線美を覗かせるという
 大 発 明 があったのも結構最近なので、そのままは着させられなかった。
代わりに原型になった北方騎馬民族の民族服(旗袍)を、メイファの祖国も寒冷地つながりで
取り入れているというムリヤリ設定(笑)。
チャイナカラー(襟)とかそういう単語が使えないので大変分かりにくいかと思いますが、
メイファが着ているのはアオザイみたいにチャイナ服+ズボンな服で想像していただければ幸いです。
アオザイも旗袍を取り入れて出来た服らしいので。
勿論、他の中華系の服で御自由に想像していただいても。

当初の予定(?)通り、3の最後で押し倒させておけば、>>273 様に似たシチュになったような
気がしますが、姫様が堅物すぎて失敗。惜しい。押し倒しは次で再トライさせます。


できてるとこを、しかも前置きの非エロ展開を勿体つけてもなあ、と思いぽつぽつ投下させて
いただきましたが、横入りしにくい状況だったらすみません。
特に「覇王の娘〜」の作者さま。
毎回コメつきGJで応援しております。最終話お待ちしてます。
287名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 12:45:44 ID:aZ7HnUkN
>>286
うおぉーっ!gjです!!!
レンがエロくて好みすぎるw続き楽しみにしてます!
288名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 12:49:47 ID:WGtLQyzs
GJGJGJ!
メイファ可愛いよ

次の投下が楽しみです
289名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 14:55:20 ID:4r7wUOaW
ぐっじょぶ、投下乙

登場人物が魅力的でいいね!
290名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 19:56:46 ID:assmVHuE
覇王の娘と勇者の末裔 
ハッピーエンド編
エロ本番







長きにわたった戦乱の世が終わり、大陸に平穏が訪れた。
西部の新興勢力を壊滅させた勇者軍と覇王軍が和平条約を結び、戦争の終結を宣言したのだ。
覇王軍・勇者軍及び各地の軍組織は解体され、大陸軍として統合された。
大陸には議会制が設けられ、各国の代表達が話し合いという形で問題にあたる事になった。
各地の街は春の訪れとばかりに活気に溢れ、勇者達は祝福と感謝の賛歌と共に讃えられ、
連日を通してのお祭り騒ぎが続いた。
それは元・帝国であった領地でも同じであった。
商人が各地の産物を卸し、露店には食料品に生活雑貨がずらりと並べられ、
城下は活気にあふれていた。

「城下がこのようなにぎわいを見せるのは初めて見た気がする」
夜、月夜に照らされた城の一室で椅子に腰掛けた女性がふと呟いた。
意志の強そうな眼はどことなく柔らかく、温和な表情をみせている。
絹の衣服を纏い、白く浮かび上がる肢体は少女にある初々しさではなく
成熟した女性の艶やかさを醸し出している。
「あれから……もう2年にもなるのだな」
「そうだね……だけど問題はまだまだ山積みさ、自治権やら領地権やら…」
隣に座る男性が同じように呟く。
291名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 19:57:40 ID:assmVHuE
「しかしお前があの一族の血を引く者だったとは……あの時は心底驚いたよ」
「黙っていてすまなかったと思う……」
2年前の湖畔での一夜の件(くだん)を男性は謝罪した。
「だが、そのおかげで皆を説得する事ができた……父王に諫言した一族の最期には皆、同情したのだ。
お前の一族の長は最も優秀な側近でもあったと聞いている」
昔を思い出すような口調で女性は告げた。
「…………君は僕で……僕で本当に後悔していない?」
その言葉に女性はクスッと笑みを見せ、わざと声を上げて言った。
「………お前がその台詞を言うのか?」
女性は立ち上がり、椅子に座る夫の肩に手を掛け、口づけをした。
吸い込まれるような美しい紅色の瞳が夫を見つめ、微笑み浮かべながら囁いた。
「私の純血を捧げたのだぞ?それはこちらの台詞だ」


「はああ……んんんっ!」
ティルフィードが背を仰け反らせて叫びました。
湖畔での一夜限りで別れた二人。
それが数奇な縁で再び巡り会えた。しかも今度は『夫』として。
勇者軍の使者として条件が記載された書簡を携え、現れた時には呆気に取られたものだ。
そして遅れてこみ上げてきた歓喜の声を、高鳴る胸のときめきを押さえ、ひた隠し通すのはなかなかに苦労した。
しかも講和条件に、リュイナッツとの婚約が盛り込まれていた事には運命とさえ思った。
もちろん条件に目を通したヘスタトールやキエルヴァは『政略結婚だ!』と大反対だったが、
勇者軍と協力して西部の逆臣達を討ち取るまでは……と渋々、納得した。
そして西部平定直前の軍議の場で明かされたリュイナッツの真の素性には心底驚かされた。
既に取り潰されていた帝国貴族の末裔が、その本人だと言うではないか。
『嘘だ』と罵るヘスタトールに対してリュイナッツが見せた紋章が刻まれたペンダント。
それには覇王軍の軍旗に記されている紋章。これは覇王の一族の紋章ではない。
覇王が取り潰した側近の弔いとして用いたものだ。
その確たる証拠に帝国の上層部の者しか
知らない当時の記録まで本人の口から語られたのだ。
これにはヘスタトールも面をくらった。
292名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 19:58:27 ID:assmVHuE
密かに進めていたリュイナッツ暗殺計画を断念しなければならない状況に追い込まれたからだ。
計画の協力者達がリュイナッツの前で片膝をつき『新王様に忠誠を誓います』と頭を垂れたからだ。
もはや、結婚に反対する者は誰もいない。むしろ祝福するものまで出てきた。
リュイナッツとティルフィードは正式に婚儀を済ませ、新王の座へと即位した。
そして初夜――――――
それこそ足腰が立たなくなるまで燃えに燃えた。東の空が明るくなるまで愛を確かめ合った。
生涯巡り会う事はないだろうと…かりに巡り会えたとしてもそれは、どちらかが命尽きる時だろうと諦めていた。
その切なさを自ら慰める事で堪えていた二人。その情熱は今も尽きることはない。
となれば必然的に冒頭の様な行為に発展する。

「あっあっ!き、今日は…す、んん、凄いな!ふっ、ど、どうしたんだ!?」
今のティルフィードの格好は尻をむき出しにした格好だ。
リュイナッツの手が腰を掴み、下着の脇から挿入され、達したまま後ろを振り返った。
「はぁ…ん、ティル……ん、んんうう」
ティルフィードの下着の色は黒。
美しい両脚が膝上まで黒いストッキングで覆われ、黒いガーターベルトで引き上げられていた。
話し合っていた時に意識していたのだろうか、黒い下着の股間の部分が濡れている。
「あはっ…リューイのが中で大きく…ん…そんなに私の尻が魅力的か?」
椅子の背に手をつき、ティルフィードが含んだ笑みを浮かべた。
湖畔での一夜の際に浮かべたフフンッと口元が片方、上げた余裕の笑み。
が、それは快楽に必死で耐えている表情の裏返しであった。
「はぁ…はあ…そ、そうだよ…最高だよ…くぅぅ…」
ズンッとティルフィードの最奥まで届くようにリュイナッツは大きく腰を突き出した。
293名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 19:59:13 ID:assmVHuE
ああっ…あっ…リュ、リューイ……そう…そこ突いて、胸も…」
リュイナッツは密かに胸中で呟いた。
(ティルのお尻は確かに魅力的なんだよな。でも……服の上からだけど…
キエルヴァさんは豊満な、それでいてむっちりとしたお尻で…ヘスタプリンさんの
褐色のお尻も張りの良さそうなお尻も…スカート捲れた時にティーバックだったし…
ティルのお尻は少し小振りで柔らかいパン生地みたいな……な、何を考えてるんだ僕は!?)
「女の乳は男を狂わせるのだろう?ふふ…どうだ、私の胸は?」
そう言ってティルフィードはリュイナッツに向き直り、首元から覗く胸の谷間を
強調して見せた。あの頃とは比べ物にならない程、豊かに育った胸にゴクリとリュイナッツの喉が鳴った。
「ふふふ……それとも私の口で…口淫を期待しているのか?お前達の言葉では『フェラチオ』と言うらしいな」
「ど、どこでそんなティル!?」
「それは秘密だ」
「―――す、吸ってくれるの?」
くすくすと笑うと「うん」と肯定の意味を込めてティルフィードは頷いた。
既に起立しているリュイナッツのモノに舌を這わせ、指先で鈴口を軽くノックするように指を使う。
「う……」
「んちゅ……いいぞ、リューイのその表情…ああ、私もゾクゾクする」
竿に添わせ、犬歯で軽く甘噛みしながら、唾液を擦りつけ始めた。
「……あっテ、ティル!」
リュイナッツは段々と荒くなる息を押さえ、股間に踞るにティルフィードを見た。
ティルフィードは満足気に笑み、絹の衣服の両肩に手を掛けて前をゆっくり開いた。
黒い下着に覆われた白い大きな乳房がリュイナッツの眼前にさらされる。
「ふふ…眼が獣のようだぞ、リューイ……この乳で奉仕して欲しいんだろう?」
ティルフィードは下着を着けたままリュイナッツのモノを挟み込んだ
294名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 19:59:53 ID:assmVHuE
「うっ…く…ぁ…」
圧倒的な圧迫感にリュイナッツは思わず唸った。ぐにゅぐにゅと脈動する
柔乳に挟み込まれる感覚は何とも形容しがたい。
「あはははっ、ピクピクしているな。こうやって…ん、ぺろぺろと舐めると」
ゆっくりと乳房を上下させ、先端が飛び出る瞬間を狙って、そこを口で責め、裏筋を舌を這わせる。
リューイの脳裏にあの街でのリンゴ飴を舐めるティルフィードの舌が鮮明に脳裏に映った。
「ぐう…あっ…テ、ティル!」
乳房を両手で抱えシュッシュッとリズムよく扱き上げる后の淫らな性技にリュイナッツは思わず天を仰ぐ。
「もう降参か?堪え性がないな」
リューイが拳を握りしめ、モノがビクンビクンと大きく反応する。
それを見て射精を悟ったティルフィードは扱くスピードを早めた。
口をすぼめて、先端に舌を這わせ、手で睾丸を覆う皮を優しく揉むほぐす。
「す、好き放題言ってく…くうううっ!」
「我慢するな、身体に毒だぞ?」
「うっ…ぐう!」
リュイナッツがついに限界に達した。それをティルフィードは見逃さず、モノを唇で覆った。
モノの先端がビクビクと震え、グワッと大きくなると透明な液がピュッと出され、
続いてゼリー状の白濁液がティルフィードの口内に勢いよく飛び出した。
「ん…はぁんくううっ、はむ…んぐんっんんっ」
唇を深く被せ、手でモノを扱きながらティルフィードはリュイナッツの射精を口内で受け止めた。
「ぐ…あ、ああ……テ、ティル…うっ」
腰をガクガク振るわせながら、身をかがめ后の頭部に手を回し、腰を突き出す新王。
「うっ…ううう…く…」
ようやく長い射精を終え、ティルフィードが唇を引き抜くと、その口元からとろりと白濁液が垂れ落ちた。
「んぐぐ……ケホッケホッ…濃い子種だな…喉に絡みつく…」
ゴクンと喉を鳴らして口内に溢れる白濁液を飲み込む皇女をリュイナッツは思わず抱き締めた。
「はは……私の口はよかったか?」
「ああ…最高だよ…ティルにしてもらえるなんて…」
「そう思うなら……こちらもな?」
ティルフィードは精液で汚れた下着に手を掛けた。
295名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 20:00:30 ID:assmVHuE
「うん、あ…ああ…ティルの胸…ん、柔らかくて…ん、んっはぁ…ん、んんん…ティル!はっはっはあああ…」
リュイナッツはティルフィードに折り重なり、胸に指を食い込ませ、上下左右に色んな角度で突っ込んだ。
「あはァはんっ!いい、それいい!!わ、私の中がっ!んんんっ!はっはああ!」
髪を振り乱しながら、乱れるティルフィード
「ふ、ふふ…こ、こんな姿…宰相には…見せられないな…んふっ!」
ティルフィードは己を組み敷くリュイナッツの唇に吸い付くようなディープキスをした。。
口内で絡み合う舌は何とも言えない程、甘く、ねっとりとした熱を帯びている。
「ね…ん、ティル…くっ…そ、そろそろ欲しくない?」
「ん、あふ…そ、そうだな…ん、世継ぎは欲しい……もっと…もっとして!
それで私を……孕ませ…ああっ、そ、その為に側室を廃したんだ!わ、私だけ
お前が抱いていいのは私だけだ!んんっ!」
くるりと反転し、今度はティルフィードが上になった。こぼれ落ちてくる豊満な乳房にリュイナッツは吸い付く。
「そう、吸って…ん…あ…もっと…強く…んんッ」
リュイナッツは下から両手でぐにゅぐにゅと揉みほぐしながら吸い続ける。
乳首は充血して完全に勃起し、その刺激を歓喜するように受け入れる。
そして再び、リィナッツが上になり、後背位に戻るとフィニッシュのように激しく尻に打ちつけた。
「ああっ、いい!いいぞ!リューイ!!もっと、もっと、もっとして!」
リューイは我を失ったかのように乱れるティルフィードの尻に腰を叩きつけた。
じゅぷじゅぷと先走り液と愛液とが混ざり合う粘着音が淫らな性交の終局を告げる。
「あっティルッ!し、締め…くうう…き、キツ過ぎる」
「リューイ、リューイィィッ!わ、私、私!もう、もうダメェェッ!」
我を見失うほど乱れまくり、絶叫するティルフィードの乳房を掴み込み、乳房の形が変わるほど
指を食い込ませるとリュイナッツはぐっと限界まで腰を引き、ずぶっと力一杯突き出した
グググッっと下腹部からモノの内部を精液が昇ってくる快感は最高だ。
「テ、ティル!だ、出すよ―――うっ」
「来て、来てぇぇッ!あ、あなたっ!!」
膣の収縮と共にリューイは二度目の射精をティルフィードの中に解き放った。
体内に注ぎ込まれる熱い轟きに后の身体がビクンビクンと疼き、
ベッドに突っ伏すようにして身を横たえた。
「あ…はあ…ティル…ティルフィード……」
挿入したまま、その背に覆い被さり、その白い項に軽いキスを繰り返す。
尻をうねらせ、挿入されたモノから逃れると、どぶっと膣口から白濁の糊のような体液が糸を引いた。
「は…ん…お、お前の子種は濃すぎる…この間の謁見最中に下着の脇からこぼれ落ちてきたんだぞ?」
「ははっ……そうか、それで顔を赤くしてたんだね」
「そうだ……だが世継ぎの心配は無用だな?お前には皇位継承権を争うぐらい子を孕まされそうだよ」
フンッと昔のように鼻を鳴らせ、そっぽを向く若い后は何とも愛らしい。
「拗ねた顔も可愛いよ、ティル」
296名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 20:06:39 ID:assmVHuE
その頃……
「お兄様、それくらいにしておかないとお身体に触りますよ?」
城から遠く離れた山林の館でヘスタプリンが兄のヘスタトールに自重を促した。
「……くうう…な、亡き先王様、王妃様…申し訳ありませ…ううう……」
飲み過ぎると泣き上戸になる癖をヘスタプリンは心得ていた。
キエルヴァからの報告によるとこんな状態がかなり長期間に渡っているとのことだ。
「ヘスタトール殿、致し方ない事です。女王陛下が下された御判断……帝国の領土は
失われましたが、覇王様の血は受け継がれたのです。
我々はまたティルフィード様に仕えることができ――――――」
そこで紅髪の女武将は「しまった」とばかりに手を口に当てた。
目の前にいる軍師…いや元・軍師は帝国の解体と皇女の婚姻の責任を取って職を辞し、隠居中の身なのだ。
「し…失言を…も、申し訳ありません」
キエルヴァが背中をさすりながら自重を促す。しかしもう酔いが回っているのかダークエルフは泣きに泣き続けている。
「そ…それでも…それでも…あのような者を王として…み、認め…忠誠など…ううう」
「それは構いませんよ。忠誠を誓わなくとも、お兄様はもうお仕えする身ではありませんから」
励ましているのか、はたまた、突き放しているのか、現在の宰相であるヘスタプリンはケロッとして言った。
「宰相殿……こ、この場の…その…『気』を読んで下さい!」
腹の底では『空気読めよ!この馬鹿野郎』と罵っているだろう。
キエルヴァの表情はわかりやすい。感情が露骨に顔に出るタイプだ。
もっとも、その彼女も今や『紅髪の騎士』の通り名をもつ勇猛な武将へと成長していた。
「私はリュイナッツ様を王として迎え、忠誠を誓わせていただいておりますから。
残念なのは女王陛下が側室を廃されたことですね。私(わたくし)……側室として自信ありましたのに」
ほほほっと上品に笑ってみせる妹に兄は髪を逆立てて絶叫した。
「うるさい!その名前を私の前でだすな!もう一人にしてくれ!出て行け!出て行けええ!」
わーわーぎゃーぎゃー…もはや手のつけられない状況になってきた。
「さ、宰相殿!ヘスタトール殿も落ち着いて下さい!」
机の上はひっくり返り、茶が入ったカップは割れ、酒が入ったボトルが床に転げ落ちる。
「きゃあ…では後は頼みましたよ、キエルヴァ殿。私は城に戻りますので、
くれぐれもお兄様が飲み過ぎないようによろしくお願いします」
「えっ!?ちょ…それは!」
「大陸軍に寿退社制度を設けるかどうかは検討中ですので。それまでは程ほどにしてくださいね?」
「で、ですから!私はヘスタトール殿と…そ、そのような関係では!」
紅髪の騎士の頬はその髪よりも赤く染まっていた。
キエルヴァの表情は実にわかりやすい。
館の外に出てヘスタプリンは満天の星空を見上げた。
「私も…いい相手が欲しいものです」
ダークエルフの宰相の密かな願いは星と共に夜空へと消えていった。

END

>>メイファと皇子様の作者様
御気を遣わせて申し訳ないです。
こちらもメイファと皇子様はすごく気に入ってます。
メイファはすごく良い后様になりそうだ。
レンは何か色々なプレイを教えてメイファを自分好みに染め上げそう。
297名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 21:10:20 ID:DY347U0r
投下待ってました、GJです!
女王様なのに可愛いティルフィードがすごく可愛い。
あとキエルヴァが好きです。別スレで彼女の話も読みたいです。
298名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 21:31:10 ID:RweP02x8
GJです!
バッドエンド(勇者軍敗北)
トゥルーエンド(覇王軍、勇者軍講和)
をこれだけ素晴らしい形で読ませていただくと
ノーマルエンド(覇王軍敗北?)
への期待も高まってしまいます。

作者さんの気が向いた時でいいんで、いつか読んでみたいです。
299名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 23:03:21 ID:WZmhlaw+
最終回GJです!!
バッドエンド編が満遍なく救いのないラストだったのに対比して、
ハッピーエンド編は満遍なく甘甘ですね!!
その落差が良い。
リューイ×ティルも良いが、なんかヘスタトールがうらやましい。

プリンだけはフリーのままENDか…それもイイ!!
300名無しさん@ピンキー:2010/03/21(日) 23:27:07 ID:hVTNSwrD
GJ
お疲れ様でした
301名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 05:34:32 ID:EZEQcsok
GJ!最高でした!
また他にもお話あれば読ませて頂きたいです
302名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 09:29:10 ID:RND7O25k
投下乙&GJ
完結おめでとうございます
楽しかった
303名無しさん@ピンキー:2010/03/24(水) 11:38:14 ID:zjgkrqVV
170 :名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 19:02:26 ID:AGkE7iUR
裸の女王様。内容は、まんま裸の王様。


171 :名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 19:58:03 ID:j+GP+bNc
>>170
カルバニアの作者の短編集にそういうのがあった。


 白泉社の『カレンのファスナー』(A5変形?)に収録の、
タイトルは『王女様ははだか』だったかな? 名作。
この人、乳描くの好きだよね。男向けにありがちなデカすぎでなく
ほどほどサイズでプリプリの感じ。
304名無しさん@ピンキー:2010/03/24(水) 13:21:59 ID:zNhyOl0L
TONOといえば、うかつにチキタ★GUGUを読んでしまいちょっと鬱に…
305名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 17:48:09 ID:Kj6nPqgr
覇王の娘〜はとりあえず完結。読んで下さった方々、感謝です。
バッド、ハッピーエンドどちらがトゥルーエンドなのかは想像にお任せします。覇王軍敗北エンドは皇女、プリン、キエルヴァ〜で相手が勇者軍…難しい。

次回作はキエルヴァと軍師の話を考えてますので投下したら告知しに来ます。
306名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 21:32:22 ID:SdprIu89
はじめての投下です。よろしくお願いします。
はじめてでなんですが続き物で、今回で落ちてないです。

傾向:エロ本番有り、不愉快描写はたぶんないはず、多少暗いです

総合で8レス程度になると思います。
307帝国の皇女:2010/03/26(金) 21:32:57 ID:SdprIu89

「気の利かないッ」
 部屋に激昂した叫び声が響き渡るやいなや、空気が凍りつく。
 ――白百合城と呼ばれる、美しい城の一室、姫百合の間。名前に相応しく、とりわけ美
しい部屋として知られるが、皇女の私室という性質上、入ることのできる者は限られてい
る。
 とはいえ、部屋は広く、取り扱いに注意が必要な家具やら、いつでも磨かれていなけれ
ばならない鏡や窓などがあるおかげで、昼間は侍女や従僕も多く出入りしていた。
「この――のろまめッ」
 慎重な手つきで花瓶に花を生けていたメイドの顔に、恐怖とも不安とも知れないものが
かすかによぎる。図書棟の本を回収しに来た従僕が、慌てて本を抱えると出て行った。
 部屋にいた数人の召使たちの顔には、動揺が浮かんでいた。だが、はじめてのことでは
なかったので、みな必要以上に騒ぎ立てはしない。
「……姫さま、また」
「しっ」
 若いメイドがつぶやくと、鋭く年上のメイドがさえぎる。それ以上は誰もなにも言わず、
気まずい表情を見合わせるのみだった。
 パシンッ!
 鋭い音が部屋の向こう、主の寝室から聞こえてくる。しんとしたこちらの室内のことに
気づいているのかいないのか、しばらくはそれきり叫び声も聞こえなかった。
「……ご機嫌が悪いのよ。今日は早めに仕事を切り上げましょう」
 小さな声でささやいたのは、一番長く働いているメイドだった。彼女は手に持っていた
花を、それまで以上にてきぱきと花瓶に飾り付けていく。
 彼女は背後でこそこそと交わされる会話にも気づかない振りをする――主の噂話など、
本来ならその場で割って入りやめさせるところだが、もうこのことを外で他言しないよう
に言い聞かせるのが精一杯だった。
 それほど、姫の仕打ちは理不尽だった。
「……ニーノ、かわいそうね」
「だめよ、そんなことを言ったら……」
「だって、ニーノはなにも――」
「き、きっと、姫さまだって理由があってニーノに怒っているのよ。決まってるわ……普
段はあんなにおやさしい姫さまなんだもの」
「……」
 その時、再び叫び声が聞こえた。
「なんとか言えッ。黙っていればわたしの怒りが通りすぎるとでも思っているのかっ」
 姫――主の声だった。
 ひときわ鋭い声の響きに、噂話をしていたメイドたちも打ち据えられたように口をつぐ
む。
「……さ、今日はもう終わりよ。片付けはすんでる?」
「は、はい」
 年かさのメイドがそっと促すと、それぞれ逃げるように、しかし静かに扉へと向かう。
 主の寝室の中でなにが起こっているのか、少しだけ好奇心をのぞかせた若いメイドがこ
っそりと振り返った。しかし、横にいたメイドににらまれ、慌てて前を向く。
 ぱたん、と扉が閉じ、部屋から誰もいなくなった。

「お前のようなクズに、わたしがっ……このわたしが口をきいてやっているだけでありが
たいのよ! そのわたしに逆らうの!? なんとか言えと言っているっ」
 皇女クレメンティナの右手は、さきほど目の前の男を勢いよく打ち据えたせいで、軽く
しびれていた。
308帝国の皇女2:2010/03/26(金) 21:33:31 ID:SdprIu89
 寝室は薄暗かった。
 白昼のまばゆい光もさえぎる、ダマスクのカーテンは締め切っている。ただ細く隙間か
ら漏れている陽光が、薄ぼんやりと室内を浮かび上がらせていた。
 異様というほかはなかっただろう。仮にも帝国の姫の寝室である。いわば、宮殿の奥深
くに隠された、聖域とも言うべき場所だった。
 帝国人民の倫理観は、結婚前の娘と男が締め切った部屋にふたりきり、などという状況
を許さない。無論高貴な身分の女性ほど、その倫理観に縛られる。
 だが、帝国一高貴な未婚の女性と言うべきクレメンティナの寝室で、今まさに倫理上許
されざる対峙が行われていた。
「それともクズはクズなりにわたしに遠慮でもしているというのか、小ざかしいッ」
 一方はクレメンティナ――帝国第一皇女である。
 流れ落ちる黄金の髪が、白い顔を縁取っていた。流行の髪型に結い上げることもせず、
ただ自然のまま背中に流しているだけだが、誰も彼女を野暮ったいなどとは看做さないだ
ろう。
 絶世の美女と名高かった皇后の美貌を受け継いだ彼女は、自然そのままで美しかったか
らだ。髪型をつくったり、飾り立てたりする必要はない。
 大きな緑色の瞳と、こづくりな唇。鼻の上によく見ると薄くそばかすが散っているが、
それすら彼女の美しさを損なう原因にはなっていない。
 激怒に眉を逆立て、頬を上気させている。帝国女性将校用の制服に皇女の紋章がなかっ
たら、彼女を凛々しい少女士官と勘違いする者も多いだろう。姫という名から感じる弱弱
しさはまったくなかった。
「……ふん。あくまで黙っているつもりなのか」
 クレメンティナが軽蔑を含んだ暗い目で見たのは、対峙の片割れ――姫の寝室に存在す
る異物とも言うべき男だった。
 まだ少年と言っていい年頃だった。女性にしてはやや背の高い姫より、少しだけ背が高
いだけである。南方出身者特有の浅黒い肌。黒髪はさきほど頬を殴られたせいで、やや乱
れていた。
 彼は反抗的なような、従順なような、相反する態度を取っていた。どちらとも取れるよ
うな目つきをして、黙っている。
 姫の呼吸が乱れる。
(こいつっ……)
 少年の名はニーノ――十年ほど前に帝国が植民地とした国で、かつて貴族だった少年で
ある。今でもその国は自治領として存在してはいるものの、彼の一族は帝国の侵攻の際、
激しく抵抗したというので貴族位を剥奪されていた。
 幼かった、というだけで、ニーノは命を救われた。いや、救ってやったのだ――クレメ
ンティナが。
「……もう一度殴られたいのかっ」
 いつからこんな関係になったのか、彼女はもう覚えていなかった。かつて、ずっと昔、
ふたりで秘密を持ち、隠れて遊んだころもあったのに。
(……今では、こうするしか……)
 ふと心に覚えた感傷、それは一瞬で消えた。なにが悪かったのかはもうわからない。だ
が、昔のことは昔のこと――もう取り戻せない、蜃気楼のようなものにすぎなかった。
 その時、不意にニーノが口を開いた。
「もうメイドはいなくなったのではありませんか」
「えっ……」
 クレメンティナは虚をつかれ、口ごもった。
(くそっ……)
 しかし、ニーノの言葉の意味を理解した瞬間、押し寄せてくる感情の波に眩暈を覚えそ
うになる。
 怒り、羞恥、期待――不安、焦燥。
「そ……それがなんだッ。話をそらすなっ」
309帝国の皇女3:2010/03/26(金) 21:33:58 ID:SdprIu89
 彼女は必死に叫んだ。そうすることしかできなかったからである。
 少年はまるで、目の前のクレメンティナがまったく話の通じない異国の人間であるかの
ような口ぶりだった。
「そらしてませんよ。だって、姫さまが私に怒鳴り散らすのは、メイドを追い払うためで
しょう」
「こっ……」
 怒りのあまり、言葉が出てこない。クレメンティナは再び右手を振り上げたが、それを
振り下ろせずにいた。
(わたしは第一皇女だ! こんな……こんな辱めを受けていいわけが……ッ)
「姫さまが難癖をつけて怒り出す、するとメイドが逃げて行ってしまう。私とふたりきり
になる。簡単なことでしょう」
「な、にを……この……恥知らずがっ。わ、わたしが……わたしが、お前などとふたりき
りになりたいなどと、思い上がったことをッ……」
 おかしいぐらいに息が乱れていた。ぐるぐると部屋がまわっている気さえする。
(ち、違う……わたしはそんなことのために、怒っているんじゃない……)
 少なくとも、自分ではそう思っていた。しかし、どうしてこんなに眩暈がするのだろう
か。考えてはいけない、とクレメンティナは少年から目をそらした。
「……お前のような下種の考えることね。わ、わたしは……お前のその性根が嫌いなん
だ。お前のような下等な人間、このわたし以外に誰が使ってやれると思うの? 感謝して
わたしの言う通りしていればいい……」
「もちろん、そうしています。でも、それで用が終わりなら、私は自分の部屋へ帰ります
よ」
「……」
 クレメンティナは唇をかんだ。ニーノの言葉に、混乱を覚えたからだった。
(……そうだ、なにを言われたって、構わないわ。クズの考えること……。わたしは、こ
の男に、罰を与えなければ……)
 彼女は自分がなにを考えているのか、よくわからなかった。下々の世界でなら幼馴染と
言われるだろう彼の前にいると、大抵そうなる。
(そう、部屋に返すわけにはいかない。……まだお仕置きがすんでいないのだから。わた
しに無礼な態度を取ったむくいを、思い知らせてやらなければならない……それだけだ)
「……誰が部屋へ帰っていいと言った」
 クレメンティナはようやく口を開いた。
「仮にも主に向かって、よくもそんな口をきけるものね。……そ、そこに立ちなさい」
 ベッドにことさらふわりと腰かけたのは余裕を見せるためだったが、彼女の声はかすか
に震えていた。
 ニーノは口数が多い方ではない。今回も黙って命令に従った。
 ちょうど、腰掛けた皇女の前に少年の腹が来るような、至近距離である。
「いいこと――わたしがなにをしても、我慢するのよ」
 ごくり、と喉を鳴らしたのが自分だとわかっていたが、そんなことはなかったかのよう
に彼女は居丈高に続ける。
「我慢できたら、か、返してあげるわ。もっとも、恥知らずのお前のこと、と、途中で
みっともなく、わたしに、懇願することになるでしょうけどね……っ」
 クレメンティナは我知らず声を上ずらせる。
「みじめな、恥知らずっ。わたしの許可なく、お前はなにもできないんだっ!」
「……」
 皇女はののしりながら、夢の中を歩いているような頼りない感覚をおぼえた。自分が自
分でなくなるような、目の前に薄いもやがかかって現実味が失われていくような気分だっ
た。
 彼女の両手がズボンにかかっても、ニーノは動かなかった。それから、紐とボタンをは
ずしても、その手が震えていても、なにも言わない。
310帝国の皇女4:2010/03/26(金) 21:34:33 ID:SdprIu89
 皇女にあるまじき行為だった。その上、手は震えているものの、複雑な構造の異性の服
を手早く暴いている。
 ――はじめてではなかった。
「……あさましいっ」
 最小限、ズボンの前をあけてしまうと、皇女はそう吐き捨てた。緑の瞳には興奮がある。
 下着を押しのけて、あろうことか彼女がつかみ出したのは、ペニスだった。
 完全に勃起はしていないものの、半分ほど立ち上がっている。オスの匂いが眩暈を加速
させる。
「わ、わたしに罵倒されながら、なにを期待していたの。こんな、汚らわしいモノを……
よくも恥ずかしくないな」
 彼女は魅入られたようにそれを眺めた。見ているあいだにも、手をそえているせいか、
硬さが増したようだ。熱をもって、脈打っている。
(なんてグロテスクなの……こんなものを持っているなんて、男って汚らわしいわ……。
……いえ、もしかしたら、こんなモノがあるのはニーノだけかもしれない)
 そう考えながら、目が離せない。
「ど、どうなの、期待していたんでしょう?」
「……ええ」
 ニーノの顔はよく見えなかったが、うなずいた気配があった。
 クレメンティナは勝ち誇った。
「ふ、ふん、そんなことだろうと思った。ケダモノね、お前は……浅ましいわ」
(なにが帰ります、だ! ほ、本当に、こんないやらしい男、使ってやるのはわたしだけ
よ……)
 手の中で暴れだしそうな、片手ではあまるサイズのモノをゆるやかにさすってやる。
「こ、こうされたかったんでしょう」
 言いながら、彼女はソレに顔を近づける。ますます強くなるケダモノの匂い。もう片方
の手をそえてやり、てかてかと下品なつやのある頭に息を吹きかける。
 ぴくりと反応したところを見ると、いつものアレを待ちかねているらしい。ここは素直
だ。
 赤黒い肉棒の頂点に、丸くしずくがあった。何度か息を吹きかけてやり、手でゆらゆら
と幹をこすりあげる。どんんどんと熱を増していく。
「い、いつもみたいに、してあげる……我慢しなさい」
 クレメンティナは唇のあいだから舌を出すと、そっとしずくを舐め取った。口の中に独
特の苦さと、むっとするような匂いが広がる。
(汚い、汚い、汚いっ! 汚らわしいっ!)
 荒くなる呼吸。何度も何度も、皇女は従僕のモノに舌を走らせる。舐めとっても舐めと
っても、しずくは消えてなくならず、それどころか量を増やして滴り落ちてくる。
 最早それが自らの唾液なのか、オスの出す分泌物なのかもわからなかった。控えめにつ
き出していた舌は、いつしか口をうつろに開いて、べったりと肉棒をなぞっている。
 手できつめにしごきあげながら、膨れきったペニスに舌をこすりつける。朦朧とした頭
では、もうまともなことなどなにひとつ考えられなかった。
(下品よ、こんな音たてて……! こんなモノをガチガチにして……!)
 じゅるっ、じゅるっ。
 唾液と粘膜と、それをこすり合わせるような手の動き。そこから発せられる水音は、あ
きれるほど下品だった。
「き……気持ち、いいんでしょう。クズね……本当にっ。でも、これは罰なのよ……っ、
勝手に達しないで、我慢しなさいっ」
 見上げると、わずかに顔をしかめたニーノと目が合った。きっと快感に耐えているのだ
ろう。
311帝国の皇女5:2010/03/26(金) 21:35:11 ID:SdprIu89
 舌先に感じる汚らしくて下品でたくましいモノの感触に、クレメンティナは大きく口を
開いた。く、と飲み込むと、くらくらするような気分になる。すでに口のまわりははした
なく唾液まみれになっていたものが、押し出されたようにさらに溢れてくる。
 じゅ……ぶぶぶっ。
「ふ、ぐぅ」
 精一杯飲み込もうと、喉奥までそれを押し込んだ。ビクリと反応するペニスに吸い付き、
ちろちろと舌を這わせる。
 根元の陰毛に顔をうずめるようにすると、ほとんど息をするのも困難なほどだった。剛
直がますます膨れ上がり、容赦なく奥を突いている。
「ふぅっ……ふぅっ……ふぅっ……ふぅっ……」
 荒い呼吸を必死に鼻から行いながら、皇女はゆっくりと肉棒を吐き出す。舌で肉を味わ
いながら、口内全体でしめあげながら。
 上品な仕立ての将校服に唾液やらなにやらわからない液体が垂れて落ちる。
 先端まで来たところで、くりくりと舌先で小さな穴をいじり、ぎりぎりまで出してから
また飲み込む。ぶじゅうぅぅっ、と、唾液が押し出され音を立てた。
 わずかに速さをあげながら、それを続ける。ぎりぎりまでくわえこみ、ぎりぎりまで吐
き出す。赤黒い肉棒を口で犯しながら――いや、その逆だろうか。
 じゅぶぅぅぅっ、ぐじゅうぅっ、じゅぶぶぶぶっ。
 音がどんどん大きく、下品になる。ペニスはいまにもはちきれんばかりで、皇女の高貴
な口に汁を垂れ流している。
「んぶっ、ぐぶぅっ、おぶ、うぅぅっ」
 いつしか、夢中になってそれをむさぼっていた。自分が今どんな姿をして、どんな声を
出しているかにも気づかない。両手でニーノの腰にしがみついて、顔を上下させている。
 だから、不意に彼が口を開いた時、意味を理解できなかった。
「……そろそろ」
「んぶぅっ、んっ……んぐぅぅぅっ!!」
 頭をつかまれて、思い切り腹を押し付けられた。
 喉奥の奥までペニスが突き刺さる。同時に、ソレが膨張したのがわかった。舌を押しの
け、暴れる彼女の頭を押さえつけながら――。
 ぶびゅうぅぅぅっ! びゅぅっ!
 濁流がはじける。ねっとりとしたものが喉にぶつかり、張り付きながら胃に流れ込んで
行く。
「ふぐぅぅぅっ! うぅぅっ!」
 必死にニーノの身体を押しのけようとしながら、なぜかクレメンティナの舌は血管の浮
き出た肉棒につよく押し付けられ、きゅうきゅうと吸い付くことをやめられなかった。苦
しいのに、むせかえりそうなのに。
 びゅくぅっ! びゅるびゅるっ! びゅるぅぅ……!
 ずいぶんながいこと、そうしていたような錯覚に陥り、酸素不足でか朦朧としてきたこ
ろ、クレメンティナの頭を押さえつけていた手が離される。
「……っ! げほっ……うぇっ……! はぁっ、はぁっ、はぁっ、えぐぅっ……」
 口の端から白いものを垂らしながら、彼女はきっとニーノをにらんだ。
「だ……誰が出していいと……っ」
「でも、いつものことだし、他の場所に出して汚すよりはいいでしょう」
 平然とした答えが返ってくる。クレメンティナは涙と唾液にまみれた顔をそむけ、吐き
捨てた。
「……いつになったら、お前はそ、そういう生意気な真似をやめるの? ……こ、このわ
たしに、そんな汚いモノを吐き出すなんて……」
「……でも」
(言わないで!)
 心のどこかで、自分がそう答えた気がした。だが、かすんだ思考の中ではあまりに弱々
しすぎる声だった。
312帝国の皇女6:2010/03/26(金) 21:35:40 ID:SdprIu89
「でも、そうすれば、続けられますよ……姫さま」
「あ……」
「『お仕置き』をね」
 クレメンティナの前には、いまだ硬くそそり立つモノがあった。

 いつからこんなことになったのか、忘れてしまった。
 忘れたかった、という方が正しい。皇女はどう思っているのか知らないが、彼の方では
思い出すことができた。とはいえ、それがあまり意味のあることとも思えない。
 クレメンティナは彼に命じながら、彼を罵りながら、折檻と称しながら、異常な行為を
要求するようになっていた。
 そう、『犯してくれ』と。
 心の底ではきっとわかっているだろう。汚らしいと言いつつ、熱心にペニスにしゃぶり
つき、我慢しろ勝手に出すなと言いつつ、身体を許す。こんなことをしていて、本当にな
にもわかっていないとは思えなかった。
「ほら、い、入れたいんでしょうっ」
 途切れ途切れの声音で、口調ばかりは強気に言い放つ。『入れてください』と言うこと
だ。将校服のスカートの下にはなにもつけておらず、そこを薄明かりの元にさらしていた。
 顔が上気しているのは、期待のためだろうか。恥ずかしさのためだろうか。どちらにせ
よ、緑の瞳はニーノの股間にあるものをじっと見つめていた。
「許してあげるわ、でもっ、勝手に出さないで、そ、そんなことをしたら……」
「したら?」
 尋ねると、それが意外だったのか、皇女は一瞬黙った。だが、震える声で続ける。
「そ、そんなことしたら……許さない。お前のその薄汚いモノに教育してやらなきゃ、い
けなくなるわ」
『好き勝手してください』だ。そこまで考えて、ニーノは皇女の本心を読むことに突然う
んざりした。
「ああぁぁぁぁっ!!」
 熱く濡れている中心に強引に押し入ると、嬌声が上がった。もう何度もこうして関係を
持っている。だがほぐれたそこは未だにきつく彼を締め付けた。なにもしなくても、こう
なるころには溢れて下着にしみを作っている潤滑油があるおかげで、ぴったりとしたそこ
をかきわけるようにして入っても、皇女が苦痛を覚えている素振りはない。
 いや、それどころか、肉の楔を味わうかのようになかの壁がうごめく。見ると、クレメ
ンティナは光のない目で空を見つめ、口を半開きにしてビクビクと痙攣している。
 最初のころは、痛みに身体をひきつらせていたのが嘘のようだ。と言っても、一年もた
てば、すっかり慣れて当然かもしれない。
「はぁっ、ふぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、あはぁっ……」
(やさしくしてやった方がいいのか……)
 彼はふと考えた。ニーノとて、こんなことになっているのを後悔しないわけではなかっ
たからだ。だが、最初のころに一度、やさしくした時のことを思い出せば、きっとそれは
彼女の望むところではないのだろうとも思う。
 ――恋人気取りか、この下種がッ!
 なぜああまで彼女が激昂したのか、そればかりは彼にはわからなかった。ただし、それ
が今のニーノとクレメンティナには相応しくないもののような気がするのはわかる。
 結局、一瞬去来した感情も、火のついたように熱くうねる肉壁の感触の向こうへ消えて
行った。幸い皇女はぼうっと宙を見上げているばかりで、彼がなにかを考えたのにも気づ
かなかったようだ。
「はぁっ、はぁっ、あっ、ああああっ」
 押し込んだペニスをさらに奥に押し付けると、ぷりぷりした感触の子宮口に触れるのが
わかる。クレメンティナはそこを探られると、決まって大した時をおかずに達してしまう。
「あーっ、ああっ、あーっ! あうあぁっ! おし、つけるなァッ……! ひっ!」
313帝国の皇女7:2010/03/26(金) 21:36:07 ID:SdprIu89
 先端でやや乱暴に子宮口をこねる。まるでその中にまで押し入りたいとばかりに。ただ
でさえ狭くびったりと肉棒を締め上げていた膣が、ぎゅうっぎゅうっとうごめいた。
「……っ! ああっ……、ああっ……あーっ!! あーっ!!」
 背中を硬直させ、ベッドのシーツを握り締め、皇女は涙と唾液にまみれた顔をのけぞら
せる。ぷしゃぁ、となにかをもらしたような気配からすると、早速絶頂を迎えたらしい。
おそらくもらしたのは潮だろう――小便だろうとどうだろうと、構いはしない。
 皇女はなにかを訴えるように口を開いたり閉じたりさせるものの、出てくるのは意味の
取れない叫び声だけだった。
「あっああぁっ、ぉお……っ、はあー、はぁー……」
「気持ちよさそうですね」
「は、あぁ、あぁあ……ふあぁっ……」
「動きますよ」
 開いた腿は白い。その根元の白い丘と、ぴったりとくっついた浅黒い腹が交わる場所を、
クレメンティナはぼんやりと眺めていた。きっと、なにを言われたのかよくわからなかっ
たのだろう。
「ふっぐぅっ!」
 ずるぅっ、と彼が楔を引き出すと、めくれるようにして肉がついてくる。離したくない、
という風にぴったりと吸い付き、ひくひくと震えていた。
「ひっ、あ、あぁぁっ」
 壁をこそげ取るように抜かれるモノに、悲しそうな、悲鳴のような嬌声が上がった。
 しかし。
「おああっ!」
 ずどん、と再び奥に打ち込まれた衝撃に、およそ姫らしくない絶叫がほとばしる。
「あーっ! あーっ! あーっ! お、おくぅっ! ひっ、かはぁっ」
 ずぶっ、ずぶっ、と続けて出し入れし、そのたびに奥を突き上げる。皇女は髪を振り乱
し、とろけきった顔で反応した。
「いぃぃっ、い、あーっ! おく、すご、い、すごいぃっ! ひぃぃっ! あぅぅっ、お、
おおぉっ、や、やめ、おおぉっ、おかしくぅっ!」
 ぐねぐねと精液を搾り取るための蠕動を繰り返すざらざらした肉壁は、彼女が達し続け
ていることを意味している。一度射精していなかったら、とっくにニーノも精を放ってい
ただろう。最近、ことに敏感になってきているらしい皇女の肉体――。
 ニーノは動きながら、のしかかるようにして手を伸ばし、将校服の上着のボタンを外し
て行った。ひとつ、ひとつ……ゆさぶられ、跳ねるような痙攣を繰り返す身体のおかげで、
ひどく手間取る。ボタンを外すたび、締め付けられていた丸い胸があらわれた。
 宮廷の男なら、この美しい皇女の服の下を想像したことが必ずあるはずだ。下劣な想像
をはねつける凛々しさは、かえって劣情の的になっているフシがある。
 普段は窮屈に押し込まれている豊かな丸み。うっすらと汗をかいている。突かれるたび
にゆれ、頂点はとっくにとがりきっていた。
「あ、ああっ、ひっ、あああ、なにす、ひぃっ、いあぁぁぁっ!」
 桃色の乳首に口をつけ、軽く歯をたてる。クレメンティナの嬌声は『痛み』ではなく
『快楽』の印だった。
「だめ、え、ああぁぁぁっ! いっ、しょ、に、おぉぉっ! いっしょにっ! したらぁ
っ」
「なにがです?」
 かすれた声で尋ねると、かろうじて耳に届いたのか、必死に皇女はうなずいた。
「し、した、と、あぁっ、うえ、と、だ、めだからぁっ!」
「下と上?」
「あいぃぃっ!」
 出し入れしていたモノを強く奥におしつけ、かき混ぜる。同時に乳首をひねりあげると、
目を見開いて姫は硬直する。
「はひっ、あぁっ、あっ」
314帝国の皇女8:2010/03/26(金) 21:36:42 ID:SdprIu89
「どことどこです」
「ひっ、やめっ、やめてぇっ! 言うからっ、うえっ……おぉっ……おっ……おっぱいとっ」
「と?」
「あ、あそこ、をっ……どうじは、おね、がい……ひぃっ!」
「よく言えました」
「……!」
 両方の頂点をひねってやる。突然増えた刺激に、ぱくぱくと口をあけ、皇女は声もでな
い。
(本当にやめてほしかったのかな)
 ふと考えたものの、ニーノの方もいい加減、快楽に頭がぼうっとしている。暴発しない
のが不思議なほどで、容赦なくしぼろうとする肉の動きに、そろそろ限界が近づいていた。
 なにも言わず、律動を再開する。激しくぶつかり合う肌と肌が音を立て、飛び散ったし
ぶきがそこらにしみをつくった。
「はっ、かはっ、あーっ! あーっ! あーっ! あーっ! ま、またイクぅっ。ひぃっ、
おぉっ」
「俺も、そろそろ……」
「イッ、くぅっ、い、いくぅっっ! あーっ! あああっ! ああああーーーっ!!」
 びくんっ。
 先に限界を迎えたクレメンティナがのけぞると同時に、ぎゅうっと膣が収縮する。ニー
ノは思わず腰を引いた。ぎりぎり間に合ったらしく、ぶるんと飛び出したペニスが白濁を
噴出する。
 びゅぅぅぅっ!
 二回目とは思えない濃いものがクレメンティナの腿を汚した。将校服やシーツにもかか
ってしまったが、もう細かいことを考えている余裕はなかった。
「はぁ、はぁ……」
「あ、あああっ……」
 秘所を隠すこともせず、いまだ余韻に身体を震わせている。ニーノは息を整えながら、
再びどうしてこうなったのか、また考えずにはいられなかった。
(かわいそうなお方だ)
 帝国第一皇女。病に臥せっている兄皇帝が斃れれば、帝国はこの少女のものになる――
いや、この少女にのしかかる。すでに押しつぶされかけている。皇位継承権第一位の重み
は、少女を蝕み、やがて食い尽くしてしまうかもしれない。
(俺が言うことではないか……)
 少年は目を閉じると、もう一度快楽で我を忘れるため、ぼんやりしている少女の上へ覆
いかぶさった。

 ――あの女をあげるわよ。ふふっ、ほしかったんでしょう。
 紅茶を片手に、明日のピクニックの話をしている、そんな風情の声音で、少女が言った。
 ――いいのよ。だって、わたしにはいらないから。ね?
 ――あら、遠慮しないで。ふふふ……考えたことない? あのいけ好かないいい子ちゃ
んを、めちゃくちゃにするところ。
 ――わかるわよ、だって、わたしたちは双子だもの。だから、ね。あの子だって本性は
チ○ポ大好きの、メスよ。ほぉら、ね。あは。
 そう言いながら、身動きできない彼の上で身をくねらせていた。
 ――いい子だから言うこと聞いて……ね。ああっ。そうじゃないと……。
 ――どうしてわたしが魔女って呼ばれてるのか、教えちゃう……。

 第一皇女、クレメンティナ。そして、第二皇女――コンスタンツァ。
 双子の皇女、光と影。塔に閉じ込められた魔女に会ってしまったのが、運の尽きだった
のだろうか。

続く
315名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 22:06:44 ID:kudJC2Hk
何、コレ
エロすぎ

ぜひもっとやってくれ
GJ!
316名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 02:04:37 ID:LLIBzgSP
ひさびさに純愛投下と思ったら泥沼ktkr
317名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 10:52:27 ID:JQh4qx3H
GJ

続きが楽しみだ〜
318名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 23:55:21 ID:bb2oaOAo
GJ!面白そうな設定で楽しみ!!
第二皇女が活躍してくれることを期待!
319名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 21:36:00 ID:99MfSotw
これはエロい…!

遠慮なくどんどん続いて欲しい
続き待つ!
320帝国の皇女 ◆Bm9r1Poa9oBB :2010/03/31(水) 11:07:35 ID:+ZkurkSV
前回レスくれた方、ありがとうございます。帝国の皇女二回目です。

傾向:エロ本番有り、複数♂×淫乱姫、相変わらずちょっと暗いです

総レス8程度になると思います。苦手属性の方はタイトルかトリップでNGお願いします。
321帝国の皇女 ◆Bm9r1Poa9oBB :2010/03/31(水) 11:08:12 ID:+ZkurkSV
「クレメンティナ殿下のおいでです」
 白いキャップの看護婦がそうささやくと、軽く羽毛の毛布を整え、席を立つ。
 気を利かせて、退出するらしかった。
「……」
 熱でかすむ視界では、すべてがぼやけてゆらいでいる。よって、世話になっているはず
の看護婦の容貌ですら、彼は知らなかった。知っていたかもしれないが、忘れてしまった。
 ――白百合城。
 旧宮殿は剣と槍の時代の遺産、無骨な砦と言っていい外見であった。だが、火薬の時代
には高い城壁も通用しない。大陸の国々は、次々と砦や城壁を捨てていた。
 帝国の新宮殿は、湖沿いの丘陵に広がる街を従えた、白亜の城館である。前皇帝が十数
年をかけて建築した美しく華奢な姿は、見るものにため息をつかせずにはいられないだろ
う。
 その内部、黒百合の間。ひとりの男が死に掛けていた。
 帝国皇帝――イルデブランドである。
「兄上……」
 声が聞こえてきて、彼はようやく妹が近くに来ていることに気がついた。
(ざまはない)
 そう考えるのがやっとで、自分を嘲笑する余力すらなかった。二十一歳の若者は、原因
不明の熱病に侵され、徐々に死んでいくほかはろくなこともできずにいた。
「無理をなさらないで。お身体にさわります」
 イルデブランドがなにか言おうとしているのに気づいたのか、クレメンティナが先に制
する。
「近頃は少し、暑さが戻ってきたようです。秋だというのに……」
 妹は兄の気を紛らわそうとしてか、頻繁にやってきては外の出来事を話していく。とり
とめもない話が主だが、それも余計な心配をかけまいとしてだろう。
「でも、冬が早いよりはずっといいでしょうね。今年の冬は暖かいといいのですが……兄
上?」
 イルデブランドは、毛布に置かれた妹の手を探るように手を動かした。健康でさえあっ
たら一瞬ですむものを、思い通りに動かない上に、あきれるほどのろい。
 そのおかげで、慌てた妹の方から手を握られる。
「兄上? 苦しいのですか」
(違う。私はそなたに言わねばならぬことがあるのだ)
 口にしようとしたが、かすれたようなうめき声になった。情けないことだが、こうなっ
ては皇帝もなにもないものだ。帝国元老院があり、国内情勢はまずまず安定している――
そうでなかったらと思うと恐ろしい。彼が皇帝であるばかりに、帝国が破滅していたかと
思うと。
「兄上……今医者を呼びます」
(行くな)
 立ち上がる気配に、彼はできる限りの力をこめて妹の手を握った。
 しかし、兄のあまりの力の弱さに、逆にクレメンティナは動揺したらしかった。
「あ、兄上。兄上!……医者をッ! 誰かッ! 誰かいないのか! 陛下が……!」
 ばたばたと周囲が騒がしくなる。
(クレメンティナ……)
 イルデブランドはあえいだ。
(暗い……)
 まだ死ねない。だが、命が危ういほど弱っているのは確かだ。たったこれだけのことを
しようとしただけで、もう意識を失いかけている。
 慌てたような医者と看護婦の声が聞こえた。それから先は、熱と眩暈の底に沈んでしま
う。再び目覚めた時こそ、クレメンティナに話さなければ……。
322帝国の皇女 ◆Bm9r1Poa9oBB :2010/03/31(水) 11:08:36 ID:+ZkurkSV
 何度そう決意したかも忘れてしまった。近くにいるはずの妹にすら話しかけられず、彼
の意識は再び混濁した。

「殿下はいらっしゃいませんね」
「いたらお前を呼ぶものか」
 ニーノはいつものごとく、そう答えた。
 白百合城、姫百合の間――第一皇女クレメンティナの私室は静まり返っていた。つる草
模様の繊細な格子が入った窓からは、夕日が斜めに差し込んでいる。
「殿下は陛下のお加減を見に行ったよ」
「そうですか……」
 ニーノは籠に入れた洗濯物を目の前のメイド――サーラに渡した。
 彼とメイドには共通点がある。
 黒髪、褐色の肌、平均的帝国市民よりかはいくらかすらりとした体型。つまり、南方出
身者の典型的な特徴だ。
 その南方人の中でも、サーラはやせている方だろう。
 紺色のお仕着せに包まれた薄い腰、白いエプロンをわずかに押し上げているだけの胸、
小柄な体躯。端整だが幼い顔立ち。
 黒目勝ちの瞳に漂う落ち着きがなければ、十四、五歳の少女だと言っても通る。
「……ニーノ様」
「様はつけるな」
 控えめに呼びかけられて、彼は顔をしかめる。このやりとりにはうんざりしていた。
 だが、サーラが彼の要求をのんだことはない。
「誰もおりません。今はそう呼ばせてください」
 南方の王国が健在だったころ、ニーノの一族に陪臣として仕えていた男の一人娘が、
サーラである。歳が近い関係で、幼いころから親しくしていた。ニーノにとっては姉のよ
うなものだが、彼女はあくまで主従の境界を崩さない。
 昔はそれでもよかったが、今となってはただの従僕とメイド、同格である。
「ニーノ様、申し上げたくないのですが、いつまでこんなことを続けるのです」
 サーラは洗濯籠に押し込まれたシーツに目線を落とし、とがめるような口ぶりだった。
 ごまかしようもない。そもそも、絶対にごまかせないからサーラに頼んでいるのだ――
情事で汚れたシーツや衣類の始末を。
 ニーノの方からは、誰の情事で汚れたものだと明言したことはない。
 自分は関係ないと言い張ることもできた。が、サーラは信じないだろう。なにより、
空々しすぎる。
「いつなんどき、誰に気づかれるか……。皇女の純潔を奪っただけではなく、お子をはら
ませるようなことになれば、帝国もただではすまさないでしょう」
「……」
 答えない旧主に、メイドはいらだったようだ。
「今ニーノ様を守ってくださる一族はおりません。危険です」
「わかっている」
「わかっておられるのなら、こんなこと……」
 サーラは低い声で言ったあと、決然と顔を上げた。その表情には熾火のような、静かだ
が長く長く燃え続ける憎しみがある。
「皇女に心まで許してはなりません。よもやニーノ様もお忘れではないでしょう」
 彼と彼女の祖国、湿地帯の奥の古い王国は、帝国に武力で踏みにじられた。もっとも、
その手の侵略にしてはあっさりすんだ方だろう。あまりに突然で、あまりに圧倒的だった。
抵抗するいとまもなく陥落した王都は、ほぼ無傷の軍を残していたほどである。
 だが、抵抗は小さかっただけで、なかったわけではなかった。ニーノの一族は抵抗した
数少ない勢力のひとつだ。そのおかげで一族のほとんどは殺されてしまったのだが。
323帝国の皇女 ◆Bm9r1Poa9oBB :2010/03/31(水) 11:09:03 ID:+ZkurkSV
「……ニーノ様がお忘れになったとしても、わたくしは覚えています。優しかった人たち
が、死んでいくところを……。わたくしとて、ニーノ様にかばっていただかなかったら死
んでいました」
「もう忘れろ」
 サーラはひるまなかった。
「帝国は仇です。ニーノ様、ゆめゆめお忘れにならぬように――敵なのです」
 たった六歳だったニーノは、その日のことをよく覚えていない。サーラを銃弾からかば
ったおかげで、途中で意識を失ったからだ。
 八歳の少女はすべてを見たのだろう。だからこそ、憎んでいるのだ。
 その時、不意に扉が開いた。サーラの肩がぎくりとゆれる。
「ニーノ――」
 部屋に入ってきたのは、皇女クレメンティナだった。
 だが、なにか言いかけていたにも関わらず、その語尾は消え入って、途切れる。
 てっきりニーノしかいないものと思っていたのに、部屋の中にメイドがいるのに気づい
たのだろう。部屋付きのメイドならば、とうに退出していなければならない時間だ。彼女
の目が不審げに細められる。
「……見かけないメイドだわ」
「あの、わたくしは失礼いたします」
 サーラが顔をそむけながら、頭を下げる。そして、皇女の横を通り抜けるようにして出
て行った。
 ぱたぱたと足音が遠ざかる。
 なおも眉をひそめ視線でメイドを追いかけている皇女に、ニーノは声をかけた。
「ご心配なく、汚れ物の始末を頼んでいるメイドです」
「汚れ物?」
「汚れるでしょう、衣類や、シーツが」
 それだけ言うと、皇女もようやく悟ったらしい。彼女はやはり姫であり、情事の後始末
をどうしているかなど、考えたこともなかったはずだ。その発想がないのだから仕方ない。
だが、頭が悪いわけではないので、説明されればさすがに理解する。
「それで洗濯籠をッ……」
 クレメンティナが薄く頬を上気させ、眉を上げた。彼女が常軌を逸した行動を取るのは、
ニーノの前だけである。彼以外の人間に己の暗い場所を見せたと知って、羞恥を覚えたら
しかった。
「あのメイドは同郷だから頼まれてくれているんです」
「そっ……そんなことはわかっている。わ、わたしが聞きたいのは――」
「口の堅い女ですから、大丈夫でしょう。誰かにもらすなんてことはありませんよ」
 そう、サーラが他人にこのことを話すことはないだろう。主――ニーノの不利になるこ
とを、間違っても口にすることは。

 ――夜。
 白百合城の東にある尖塔は、無骨な姿を湖畔に晒している。高い高いその塔は、旧時代
の唯一の異物だった。大半の棟は取り壊され、美しい白亜の城へと姿を変えたというのに、
かたくなに敷地の隅から動かずにいる。
 老朽化が進み、危険だと立ち入りは禁止されていた。深く考えずにそれで納得している
者も多いが、無論、疑問に思わぬ者がないではない。
 取り壊す機会はあった。旧宮殿とともに、無用の長物は片付けてしまえばよかったのだ
から。なぜそうしなかったのだろう?
 それに答えて、訳知り顔に声をひそめ、噂する者もあった。
 曰く、塔には魔女が住んでいるのだ、と。あの塔は魔女のものだから、塔を壊せばそれ
を外に放つことになる。だからあの塔はまだあそこにあるのだ。
 もっとも、これは新入りを脅かす手段として使われている話である。嬉々として語りな
がら、自分でも言っていることを信じていないたぐいのものにすぎない。
324帝国の皇女 ◆Bm9r1Poa9oBB :2010/03/31(水) 11:09:42 ID:+ZkurkSV
 とはいえ、風の吹きすさぶ夜に塔の脇を通る時になって、その話は信憑性を帯びる。塔
は高く高く、暗い空と溶け込んでいた。噂を聞いたことがあるものは、思い出して不吉な
気分になるだろう。運が悪ければ、無人のはずの塔からもれる明かりを見てしまうかもし
れなかった。
 そう、明かりだ。確かに塔には住人が存在した。隠された住人が。
「あぁっ……ふふ……まだよ、まだ……」
 最上階、吹きすさぶ風の音は、厚い壁にさえぎられて中には届かない。ひとつだけある
明り取りの小さな窓には、頑丈な鉄格子が入っていた。
 揺れるカンテラの明かりが、絨毯を引いた床に複数の男の影を落としている。
 男たちの中心にあるのは、豪華な刺繍をほどこしたソファに座る少女だった。
「あふ、そう、いいわ……っ」
 しどけないと呼ぶには、下品に過ぎた。
 大きく開いた両脚はソファに乗せられ、左右から伸びた男たちの手によって固定されて
いる。
「もっと、おおっ、そうっ、そうよ……」
 金髪の少女だった。
 うっすらと上気させた頬と、切なくひそめられた眉は、明らかな快楽の証左だ。しかし、
なにかを求めるように小さく開いた口元には、妖しげな薄い笑みを浮かべている。
 レースがふんだんに使われた黒いスカートはまくりあげられ、腰の辺りでしわくちゃに
なっていた。彼女の下半身を隠しているのは、黒絹の靴下と、もっとも秘すべき場所を慎
ましやかに覆っている小さな布切れだけである。
 それは下で激しくうごめく太い指の動きに合わせて、上下していた。
「ああ……っ、気持ちいいわ……、あはぁ……っ。だめっ、あ、ああっ、まだよっ! ゆ
っくりっ、はぁ、あ、ゆっくりするの……っ」
 くちゅ、くちゅ……。
 べったりと濡れている下着は、淫靡な動作をあますところなく伝えていた。二本の指が
ねっとりと抜き差しされる。深く沈みこみ、慎重に引き出された。
 そのたびに内部の敏感な場所を引っかかれ、入り口を広げられる。少女が望んでいるの
は快楽による拷問だった。我慢できなくなるまで、ゆっくりすぎるほどに高めていくのだ。
「ゆ、指でっ、犯すのっ! イカせてって、わたしが懇願するまでよっ、ふあぁっ。あ、
ああっ、そう、いいっ」
 広げた脚のあいだをじっと見つめ、彼女は陶酔する。
 男の手のぶんだけ持ち上がった下着からは、濡れて光る無毛の秘所がちらちらとのぞく。
この上なく官能的な眺めだ。時折、勃起して包皮から顔を出している陰核すら見えた。も
っとも、大半は男の手がうごめいているところが見えるだけだが。
 それも含め、秘所で行われているすべてが感覚を煽った。
「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ」
 じわり、じわり。送り込まれる快感はじょじょに電流のような衝撃に変わっている。
「はぁ、あ、ああっ、あ、ああ、はぁ、あ」
 じゅぶっ、じゅぶっ、じゅぶっ。
 下着の向こうで行われている淫事は、段々と熱を帯びて来る。濡れた肉が立てる音は、
いまや隠しようもなく狭い部屋に響き渡っている。
「まだ、まだ駄目よっ! あふぅっ、お、あっ! おぉっ」
 少女の声は甘さをふくんで上ずる。
 美貌の少女だった。仕立てのいい黒のドレスは、彼女の身分が高貴であることをほのめ
かしている。そのせいだろうか、浅ましい快楽にひたりきりながら、はしたなくあえぎな
がら、どこかに気品が漂っていた。
「あ、あぁっ、い、イキたいっ、だめっ、おおっ、だめだめっ、まだっ! いっ、いいっ、
我慢できな、ああっ、だめっ、もっとっ、もっと耐えさせてッ」
 淫蕩にとろけた、緑の瞳の焦点がぼやける。先ほどまで浮かべられていた薄い微笑は、
愉悦に夢中になるにつれ、消えていった。今では犬のような荒い息とともに、わずかに舌
をつきだしている。
325帝国の皇女 ◆Bm9r1Poa9oBB :2010/03/31(水) 11:10:10 ID:+ZkurkSV
「あぁっ、いいっ、きもちいいっ。あァッ、きもちいいのっ、あぁッ! イキたいっ、ひ、ぃっ、が、がまんっ、おォッ、まだぁっ、まだなのっ」
 じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ。
 少女の葛藤を感じ取ってか、うごめく指はペースを変更しない。
「ま、まだっ……あ、ア! あ、ああっ、あ、いいっ。たえられないっ、おあっ、たえ、
たえるからっ、まだァッ」
 彼女は身体をよじる。電流はそれでも彼女をとらえ、離さない。びりびりするようだっ
た。指が静かに、だがくちゃくちゃと音をさせるたびに、限界が近づく。
「あ、あーッ! お、あ、まだ、あ、だめ、はぁっ、あっ、イキたいっ、いっ……あ! 
きもち、よくなりたいッ! だめっ、たえ、たえるぅっ、たえるからぁっ」
 彼女に忠実に、達するには足りない、しかし渇望を煽るにはじゅうぶんな快楽を、指は
発生させた。
「ひっ、お、おおっ、たえっ、たえられ、あ、ああァッ! まだっ、が、まん……んっ!
あ、あ、あっ。できっ、できないっ、無理ぃっ、きもちいいっ」
 とうとう、少女の忍耐は理性を振り切った。
 うつろな瞳、閉じられることのない口。喉から搾り出される嬌声。
「い、イキたいっ! イカせてっ、あ、あ、きもちいいからっ、いいっ、いいのっ、だか
らっ」
 その瞬間、男の指が勢い良く沈み込んだ。
「ああぁぁぁぁーッ」
 ぐぶっ、ぐぶっ、ぐぶっ。
 力強さを増した動きは、直接に少女をゆさぶった。
「そうっ、えぐるのっ、おっ、おぉっ! いいわっ、ああっ、いいッ」
 周囲を取り囲んでいる男たちの視線は、彼女のあらゆる部分を這い回っていた。半ばま
で開けられた服の隙間から見える、豊かな双丘の影。押さえつけられた白い太腿。細い首。
 そして、薄い布の下で出入りを繰り返す指の動き。
 少女はそれらすべてを、当然のことのように受け入れていた。
「も、もっとよ、もっとっ。あ、おお、ああッ! もっとずぼずぼするのっ! あ、ああ、
そ、そうっ、いいっ、もっと指を増やしてッ」
 じゅぶっじゅぶっじゅぶっ。
 つうと顎を伝った唾液が、ぽたりと鎖骨に落ちる。
 下着の中の手は少女の命令に応えたようだった。
「はっ、あぁぁっ! き、ついっ、いいの、さんぼん、あっ、あァッ! あああっ」
 ゆらゆらと腰がゆれだした。男から与えられる振動に、声が震える。
「あ、はぁっ、きこえるっ? すごい音っ! おぉっ、あ、ぐちゅぐちゅいってるのっ、
ねえっ、あっ、あ、きこ、えるぅっ!?」
 返答は返ってこない。周囲にいる男たちは、誰ひとり答えようとしなかった。だが、そ
もそも少女は答えを期待していたわけではないらしい。
「いいっ、いいっ、いいの、いいのいいのっ。きもちいいところっ、こすら、れてるっ、
おォッ、んああぁっ!」
 高まる嬌声は舌足らずになっていた。少女の瞳に、もう理性は残っていない。
「あ、ああ、あ、あ、あ、あ、あ、あ!」
 ぶるぶると彼女の身体が震えだす。しめりきった肉襞を激しく摩擦され、絶頂が急速に
近づいていた。
「ああァッ、いいっ、いいわ、っああっ! きもちいいっ、もうっ、おおっ、もうイきそ
うっ、いっく、おおっ!」
 じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷっ。
 少女の言葉からは、すでに脈絡が失われていた。
 くいと曲げられた指が、さらにざらざらとした弱点を攻め立てる。
326帝国の皇女 ◆Bm9r1Poa9oBB :2010/03/31(水) 11:10:39 ID:+ZkurkSV
 ソファの上には、彼女が分泌したものがしみを作っている。男の手を、自らの尻を汚し
ながら、愛液はぼたぼたと溢れていた。
 少女が痙攣するように腰を振る――彼女の両腿を押さえつけている男たちの手に、力が
こもった。
「いくぅっ、イクイクいくっ、ずぼずぼされてっ、おま○こいくゥッ! おおっ、あっ、
ああっ、あっあっあっあっあっ! イクぅぅっ」
 ぐちゅぬちゅぐちゅぐちゅじゅぷっ!
 ためらいもなく可憐な唇から卑語をほとばしらせ、少女は全身を震わせた。
「いっくぅぅぅぅッッッ! あおおっ、あーーーーッッ!」
 びくんっ、ぷしゃああぁ……。
 透明な液体が大量に噴出する。未だに少女の肉をえぐっている手の動きと下着にさえぎ
られ、四方八方にびしゃびしゃと飛び散った。絶頂の証は、すでに淫水まみれになっていたソファのみならず、汗に濡れた白い腿やスカート、床の絨毯を汚していく。
「あっ……あァ……ッ、あっはぁ……、あぁ……っ」
 ようやく下着の向こうの律動が止まる。
 水溜りの中に腰を落としながら、少女は余韻に浸っていた。まだ内部にとどまったまま
の指が心地いいのか、時折ぴくんと震える。
「はぁ、あ……」
 ややあって、少女は億劫そうに周囲の男たちに目をやった。獣じみた息遣いが彼女を取
り巻いている。
「あふぅ……、そう……あなたたちも我慢してたんだったわね……あは」
 彼女の視線が、男たちの股間の辺りをさまよう。どの男のズボンも、ぱんぱんに張って
いた。
「ふふ……どうしようか」
 静けさは異常だった。男たちの誰ひとりとして、口を開こうとはしない。ただ、呆けた
表情で荒い息をつくだけだ。
 それだけで少女を煽るのにはじゅうぶんだった。ちらりと舌がのぞいて、桜色の唇をな
める。
「そうね。すっごく気持ちよかったから……いいわ」
 少女が言い放った。
 その瞬間、男たちがいっせいに彼女に飛びかかる。飢えた野犬の群れに、肉を放り投げ
たような勢いだった。
「あはっ、好きなところにっ、ち○ぽを入れたり射精したりしていいのよっ」
 ソファから引きずりおろされ、柔らかく肉づいた尻を鷲づかみにされながら、少女が笑
う。普通の女なら感じるだろう怯えや恐怖は、なかった。
「誰から先? ふふふ、慌てなくても時間はたくさんあるわ……あくぅっ」
 乱暴に押し下げられた服が腕に引っかかり、後ろ手に拘束された形になる。十六、七の
少女には見合わないせり出した乳房が、揺れながら暴かれた。
「全員、たっぷりしぼりとってあげるか……らァッ」
 四つんばいになった少女の下に入り込んでいた男が、未練がましく張り付いている下着
を横に押しのけ、恐ろしいほどに膨れ上がったペニスを肉襞のあいまに突き立てる。
「あっあぁ……、ふとい……っ」
 男に一気に貫かれ、少女が背筋をそりかえらせる。
 それで終わりではない。背後から伸びた腕が腰をつかんだかと思うや、ぬれそぼったも
うひとつの穴に硬い肉を突きけた。
「っ、あ、ああァァッ」
 排泄のための器官が抵抗とともに押し開かれる。熱い剛直がゆっくりと、みっちりと入
り込んでくるたびに、少女の唇から唾液がこぼれた。
「おォッ、あぁああっ、そこの穴ッ! きついっ、いいっ、イイッ! っおぉっ! ああ
あぁぁっ」
327帝国の皇女 ◆Bm9r1Poa9oBB :2010/03/31(水) 11:11:01 ID:+ZkurkSV
 胸に、顔に、次々とそそりたったペニスが押し付けられた。体内に入りこんだ男たちは、
すでに狂ったような律動を開始している。
「あーっ、あ、あぁぁーっ! ちょうだいっ、ち○ぽ、ちょうだいっ!」
 少女が叫ぶまでもなく、宴はまだはじまったばかりだった。

「あおぉっ、お、あ、あー、あアァッ、イクッ、いくぅぅっ!」
 ぶびゅるるるるるっ! びゅるるぅっ!
 少女の絶叫とともに、彼女の直腸に精液がぶちまけられる。
 陵辱と言うには、享楽的すぎた。少女の身体のあらゆる部分は、男たちが出したものに
よって白く汚されている。どろどろと流れ落ちる白濁は、人数を考えても尋常ではない。
 絹糸のような金髪にも、快楽にゆがんだ美しい顔にも、露出した胸にも、黒いドレスに
も――そして、ペニスが犯している菊座にも、先ほどまで犯されていた秘所にも。
 情欲の激しさと異常さを物語るように、白くどろりとしたものが、大量に飛び散ってい
る。
「いっ、あ、あ、あァーッ! イッてるっ、イッてるのにぃっ、あ、あ……ぁアッ」
 少女の小さなアナルは広がりきって、硬く勃起したままのペニスを受け入れている。射
精しながら、肉棒はなおも激しく出入りしていた。
 ソファに座った男に後ろから抱えられながら、少女は快楽に耽溺しきってる。その両手
にはそれぞれ違う男根をにぎり、無意識にかしごきあげていた。大きく広げられた足は、
ゆさぶられるごとにがくがくとゆれる。
「ひっ、あ、あーーーッ」
 次の男が膣に侵入した。すでに何人もの男が、淫裂に体液を注ぎ込んでいた。新たに押
し込まれた男根によって、どろどろのものが押し出され、したたる。
 何度欲望を吐き出そうと、男たちは飽きることを知らないようだった。乳首や柔らかい
双丘にも、ぐりぐりとペニスが押し付けられている。
「あーッ、あ、おおっ、あ、あああっ、おくぅっ、おくっ」
 突き上げられ、少女は喉をのけぞらせた。緑の瞳は見開かれ、虚空を見つめている。
 ペニスが内部をこすりあげるたび、彼女は達していた。
 アナルを犯すものと、子宮口をごつごつと攻撃するものとが、薄い壁を摩擦する。これ
だけ辱められても、なおきつく肉棒に食いつく襞は、否が応にも敏感だった。
「いくっ! またイクッぅ! あああーっ、あ、ああっ、いっく、イッてるのにっ、い、
ああ、イクうッ。おま○こイイッ、きもちっ、おおッ、きもちいいっ」
 獣のようにゆさぶられ、とがりきった胸のしこりがすりつけられていたペニスにすれる。
 ぶびゅぅぅぅっ!
 その拍子に暴発した欲望が、胸から顔にかけて飛び散った。開いたままの口の中にも入
るが、少女は気にした様子も、気づいた様子もない。
 体中から送り込まれている愉悦に我を忘れ、ひたすらに達し続ける。
「ああっ、お、おちんちんっ、ごりごりするっ。あ、ああ、あなっ、あなほじられ、てぇ
っ! あああっ、いくぅっ!」
 じゅぼじゅぶっぐちゅじゅぼっ。
 桜色の可憐な陰唇を押し広げ、ひしゃげさせながら、容赦なくオスの本能をぶつけられ
る。
 ――室内には彼女の絶叫と、男たちの荒い息遣い、ひどい水音のみが響いている。異様
なことに、男たちは誰ひとりとして声を上げようとしない。ただ盛りのついた犬のように
少女を犯し、腰を振るだけだ。
 萎えることのない陽根。何度もたっぷりと噴出する白濁液。
「おぶぅっ!」
 少女の唇を割り、ひときわ巨大な赤黒いものが喉に押し込まれる。そのまま容赦なく腰
を叩きつける男もまた、無言だった。
「んんぅっ、んぐ、お、おおっ、んんンッ」
328帝国の皇女 ◆Bm9r1Poa9oBB :2010/03/31(水) 11:11:16 ID:+ZkurkSV
 びゅうぅぅっ! びゅくぅっ!
 喉奥に早くもねばつくものが流し込まれるが、その最中もペニスは口内を蹂躙している。
「んふぅっ、んん……っ、んんーーーーッ!」
 もはや凄惨というより他にはなかった。いや、凄艶というべきか。
 白く汚れた姿でありながら、少女の姿はなお男たちを駆り立てている。
 ――塔には魔女が住んでいる。男たちの精をしぼりつくす魔女だ。
「おぶっ、んっぐぅっ」
 その証拠に、彼女のあらゆる場所は男を攻め立てていた。この状況にあっても、両の手
に握った肉棒をしごきあげている。膣をぐねぐねとうねらせ、アナルをしめつけ、胸のふ
くらみをこすりつけた。
 ぬるぬるの肉襞に雁まで張り付かれ、子宮口にぶちまけられる。
 処女のようなきつさで、売女のように貪欲なアナルにぶちまけられる。
 繊細に筋をくすぐり、大胆に上下する手のひらに。弾力を持ちながら、柔軟に形を変え
る乳房に。しゃぶりつく舌に。腹に、ドレスに。
 びゅっぐぅぅぅっ! びゅくびゅくびゅくっ!
「んおっ、んぐぅぅーーーっ」
 次々と押し寄せる男たちの精液。
「んはァッ! はぁっ、えあっ! いくっ、イクぅっっ、いいっ、きもちいいっ! もっ
とっ、おおっ、あーっ、あ、あああっ! もっとおかしてっ! ォあぁっ! イックぅぅ
ぅっ、い、あァッ、ああああーーーッ!!」
 少女はなおも求めていた。

 しんとした尖塔の部屋。
 うつろな瞳をした少女――第二皇女コンスタンツァが、精液まみれの身体を床に横たえ
ている。男たちはとうに去ったというのに、彼女はいまだ、脚のあいだを中心とするほて
りに震えていた。
 あれだけ犯され、汚された。にもかかわらず、飢えた欲望は彼女を自慰にかりたてる。
「はぁ、あ……」
 だが、疲労しきった肉体は思うように動かない。それでも震える指で陰核をすりあげる。
「ああ、ああっ……足りない……ほしい……」
 曙光が高い窓からほそく差し込む。
 コンスタンツァはひとりの少年を思い浮かべた。そう、どれだけ交合を重ねようと、満
足できない理由ははっきりしている。
「ニーノ……あ、あ……」
 ――彼との快楽に比べれば、どんな男でも物足りない。どんなペニスで、どんなに激し
くされようと、彼女の心はくつがえらなかった。
 コンスタンツァの脳裏に、ニーノとのまじわりが思い浮かんだ。そう、はじめての時…
…。
 塔から抜け出して、彼を誘ったのだ。姉を探している最中だった、ニーノを。

続く
329名無しさん@ピンキー:2010/04/01(木) 05:37:55 ID:I897P2Fx
おっと続編来てた!! GJです!!
第二皇女活躍キター!! そしてほのかに三角関係・・・
このドロッとした雰囲気がエロくていいです!
330名無しさん@ピンキー:2010/04/01(木) 19:07:23 ID:oKtAtLiA
非常にエロくてハァハァしたGj!
続編楽しみにしてます
331名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 00:05:53 ID:Ol0FDOG/
GJ!双子の皇女が今後どう対比されるかすごく楽しみ!
口を開こうとしない男達、幽閉された皇女とエロだけじゃなくて
色々伏線が隠れてるみたいで続きを期待してる!
332名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 18:24:55 ID:i+GCWOdf
なるほど、いい仕事してるなぁ
続編を超期待してる!
333名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 00:39:14 ID:YWIMFHLI
『メイファと皇子様3』の続き、4の投下です。
長くなったのでやっぱり分割しました。従って

注意:非エロ

になってますorz 

さすがに5は非エロじゃありません。
5も近日中に投下します。
334メイファと皇子様4:2010/04/03(土) 00:41:36 ID:YWIMFHLI
年ぶりに祖国へ足を踏み入れるメイファは、まずその道の細さに息を呑んだ。
──こんなに、細い道だっただろうか。
山岳国であるハリ国は、一方が切り立った岩場、もう一方が崖という道も
珍しくない。その地形からあまり道も広くは出来ないのだが、今通っている道も、
さほど大きくない荷馬車が一台、通れる程度の幅しかなかった。行き違いには
広くなっているところまでどちらかが道を戻らねばならないほどだ。
従者の一人が、姫様がこの道をお通りになったのは十二のときが最後ですから、
思っていたより道を細く感じるのも無理はありません、と言った。

それもあるが、それだけでもない。
シン国の王都では、この道幅よりもはるかに大きな荷台で大きな荷物を、あるいは
大量の荷物を、運んでいることも珍しくはなかった。シン国ではそれだけの大きさが、
必要であり普通なのだ。王都に通じる街道の広さと堅固さは、シン国の豊かさであり
強さであった。
国外から首都に向かって伸びるこの主要道路がこの道幅ということは、ハリ国に入れる
荷馬車はこの道を通れるものまで。それ以上は無理だし必要もなかったと言うことか。

ハリ国は、貧しい。
岩ばかりのやせた土地で、山羊をはじめとする家畜を飼い、僅かな耕作地で芋や雑穀を
育て、さほど多くもない国民が、身を寄せ合うようにして暮らしている。
朝貢の際に上納しているのは、主に毛皮類と、山野で採れる薬草、獣角だ。それは
シン国においては薬の原料などとして重宝されるのだが。
国の北側にそびえ立つ、人を寄せ付けぬ険しく高い山々を神の棲む場所として崇め、
貧しくとも神の御許で神をお守りして生きることを幸せと感じて生きる人々なのだ。

三方を山に囲まれ、残り一方も交通の便が良いとは言えない地形が幸いして、ハリ国は
他国の侵略をまぬかれてきた。加えて、苦労して手に入れてもあまり旨みのないやせた
国土である、という理由もあったのだが。
戦にさらされていない国民の気質は素朴で、のんびりして、優しかった。
王制ではあるが王族は権威を振りかざすことを良しとせず、常に国民と苦楽を共にした。
ただ、長い平和と貧しさの所為で、ハリ国の兵力は脆弱であった。
大国であるシン国に従い、朝貢することでその権威と力に守られ、ようやく国としての
形を保っている国、それがメイファの祖国、ハリ国だった。
335メイファと皇子様4:2010/04/03(土) 00:42:38 ID:YWIMFHLI
六年もの歳月をシン国の王都で過ごし、ようやく帰国を許されたメイファが、父王に
対面して言いたいことは、今はひとつしかなかった。
「わたしが十二の時分に既に、結婚の内約がしてあるそうですが?! それは本当ですか?!」
帰郷の挨拶もそこそこに、怒気を含んだ口調でそう切り出した。
「内約? …はて、どうじゃったかのう…」

──忘れるなっっ!!
思わずそう叫びそうになった。
しかしメイファは六人兄弟の末姫である。長兄との歳の差は十九もある。メイファが十八
ということは、父王だってもうかなりいい年なのだ。
たっぷりと時間を掛けて、側近の一人がなにやら書類の分厚い綴りを持ってくる。
「ああ、これじゃな…。おまえが十八で帰国する際に改めて結婚を申し込むので、それまで
他と婚約をしないこと。
先方から改めて申し入れがあるゆえ、こちらからは何もせんでよいという約束じゃな。」

──んなわけ、あるかっ!
メイファは思った。のんびりしている。ズレている。
これではレンに言われたままではないか。
「あのですね父上…。仮にも娘の一生を決める大事な事を約しておいて、わたしの方に何の
話も無いというのは、酷いのではないでしょうか。打診とまではいかずとも、せめて事後
承諾くらいは。」

……間。

「しかしあれは、先方がおまえに対して承諾を得ているという話で約したんでは、
なかったかの。」
──その辺は、憶えてるのか。

「それは先方の策略というか謀略というか言質とられたというか誤謬というか!
ともかく確認くらいはしていただいても良かったのではないでしょうか!!
さもなくば組し易しとして先方にも侮られてしまいます!!」
──そう、個人的感情も大事!! だが、本当に重要なのは国益だ。
小国だからこそ、国と国の関係において侮られるのは命取りになるのだ。

……また間。

「まあ本格的に申し込みがあるのはこれからじゃから、そこでよく考えれば、いいのでは
ないかの。」
──うう。話にならない。
どうしよう。久しぶりの祖国は間延びして感じる。
父がおそくなったのか、メイファが速くなったのか。
その後も何とか話しを続けたが、父王との温度差はどうしようもなかった。

謁見の間を退出すると、控えの間には既に母が待っていた。
336メイファと皇子様4:2010/04/03(土) 00:43:24 ID:YWIMFHLI
「メイファ…おかえりなさい…」
その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。
母もまた、もう老齢といって差し支えない年齢だが、はっきりとした瞳のたおやかな
女性で、老いてなお美しかった。目尻に刻まれた皺も、優しげな弧を描く眉も、その他の
彼女を形作る要素の全てが、年齢を重ねた女性だけが醸し出すことの出来る柔和な光を
湛えており、それが一層彼女の美しさを引き立たせていた。
「母上、帰ってまいりました。」
「可愛いメイファ。あなたがわたくしの元を離れるときは、ほんの子供だったのに、こんなに
娘らしくなって…。
いまはもう、わたくしより背が高いのね…。」
母は、はらはらと真珠のような涙を零しながら、メイファを抱き寄せた。母の身体が記憶よりも
細く、軽くなっていることに、メイファはしばし言葉を失った。
「メイファ、シン国からの縁談は、嫌ならお断りしても、良いのですよ? わたくしも父上も、
強制はしません。
先方から正式なお申し入れがあるまで他と婚約しないことを約しただけで、それ以上のこと
ではない筈ですから。
幼いあなたを遠いシン国に人身御供として差し出して、その期間がやっと終わった途端に、
政治の道具のように嫁がせるなんて、あまりにむごいわ。」
「…母上、そのような言い方は」
王都に居る間は、『留学』のことを人質とか人身御供とか呼ぶこと自体が禁忌で、シン国に
あてがわれた侍女や従者に聞かれるだけでシン国への反逆の意思ありと取られかねない
言い廻しだった。母上の言いように、メイファは無駄に気を揉んでしまう。
「良いのです。諾々と従うばかりが朝貢国ではありませんよ。
主張すべきときに主張しなければ、それこそ嘗められてしまいます。」
「否、という返事が、有りうるのですか」
「国としての交渉に、娘しか使う駒のないほどわが国の王は無能ではありません。」

交渉で断るとなれば、娘と同等か、それ以上のものを差し出すことになるのだろう。それは
財か、人か、それとも国としての地位か。──そんなことより。
「あの、母上。わたくしは、決して、その──嫁ぐのが、嫌というわけではありません。
勿論、わたくしはハリ国のために働くことが昔からの願いでしたが、シン国からの
正式な申し入れのある婚姻ならば、別にその方が、祖国の役に立つ、とも言える訳で。」
自分で言っていて、どうしようもなく顔が熱くなる。
「ただ、侮られてはいけないと、そのことを強く言っているだけで。」
何か、恥ずかしい。これでは、まるで、否、という返事をしたくない、かのような。

「まあ、まあ、まあ。メイファ、あなたは──恋を、しているのね?」
照れや恥じらいや冷やかしの一切ない、純粋な少女そのままの口調で、母が娘に問いかけた。
「こ、恋っっ?! なんということを、仰るのです、母上っ?!」
母の言葉は、純粋であるがゆえに、躊躇なく真っ直ぐだ。ますます、顔が熱くなってしまう。
「だってあなたは、恋する乙女の目をしているわ。お相手は、件(くだん)の方なの?」
「く、件の?」
「あなたとの、内約を取り付けた方。あなたが、手紙で熱心に褒めていた方よ。」
「熱心に褒めていたっ?!」
言われてみれば、確かそんなこともあったような。何しろ、レンに初めて会った頃は、本当に、
心から、尊敬していたのだ。奇行が目立つようになってからは、なんとも書きづらくて、
手紙には書かないようにしていたが。
「あなたも随分好意を持っているようだし、先方の対応も書簡も、誠実かつ丁重で、わたくしも
お父様も、問題無しとしてお話をお受けしたの。
でも、その話があってから五年あまりが経っているし、そういえば近頃は手紙にもその方の
ことは書いていなかったし、酷い仲違いでもしたのかと、思っていたわ。」
「は…っ、初めの頃は、レンも猫を被っていて、わたしも気づかなくて…っ。
でも、なんか変人だしサボリ魔だし、友人は作らないし皆に畏れられてるし、わたしのことも
すぐからかうし!
人のことは子供とか鈍いとか、のんびりとか平和ボケとか平原とか草原とか!! 言いたい放題だし!! …でも」
一旦息をつく。人に褒められことを自分で言うのは恥ずかしい。声が、震える。
337メイファと皇子様4:2010/04/03(土) 00:44:39 ID:YWIMFHLI

「……魅力的だと、言われました……っ。」
「…まあ。」
「女の子は、学問をしたり武芸を嗜んだりすれば、嫁の貰い手がなくなるとよく諭されましたが…
そんなのは、問題ではないと。むしろシン国の高貴な方たちの間では、それが好まれる場合があると。
しかもわたしは、あの人に対して、逢うたびに喧嘩腰だったり、横柄な態度だったり、したのに。」
「大切に、想われているのね。」
「分かりません。
想われているとか、そういうことはよくわかりません。
この気持ちが、恋なのかも。
ただ…もっと知りたいと、願っています。あの眼が、何を見ているのかを。
あの人が、これからどう生きるのかも。そのために」
次の言葉を喉から押し出すのは、メイファにとってはかなり勇気のいることだった。

「………………嫁げ、と言われれば、それも、悪くない、といまは思っています……。」
最後は消え入りそうな声だった。
「それだけ聞ければ、安心だわ。
わたくし達はね、メイファ、あなたのことを、とても心配していたのよ。」
母は、頬を紅潮させて俯く娘を眺めながら、ゆっくりと微笑んだ。

「あなたの前にシン国に行かされていたあなたの兄はね、人質期間が終わって帰国したとき、
酷い状態でした。ひどく痩せて不眠の症状に悩まされ、眠ったかと思えばうなされたわ。
普通の生活に戻るまで一年も要したの。
医師も、異国での暮らしの負担が心身に現れたのだ、と言っていた。
供の一人さえ伴うことを許されず、幼いうちから一人、右も左も分からぬ異国に囚われて。
あちらの国のつけた従者や侍女に常に監視され、命を縛られて。
おまけに、企てを防ぐためとはいえ、祖国との手紙まで検閲されているだなんて。
あれでは迂闊に弱音や不満を漏らすことも出来はしない。
あなたは我慢強い子だから、辛いことや嫌なことがあっても、自分の中に閉じ込めてしまう
のではないかと、思っていたの。」

メイファは、兄がそんな状態だったことさえ知らなかった。
『検閲』は、それがシン国によって行われるというだけで、色々な情報をせき止めるのだろう。
祖国にとっても、『留学生』にとっても。
確かに、『留学』が、辛い経験でしかなかった人たちも居るはずだ。それは『学院』に居た
他の『留学生』達を見ていても分かる。でも。
「『留学』は…私にとっては、素晴らしい経験でした、本心から。
友人達も優しくしてくれたし、不案内で困ることもなく。」
──わたしが新入生の頃も、分からないことを色々と教えてくれた方が居て。
メイファ自身も、下級生の世話を焼くとき、いつもそう言っていた。
親元を離れただけでも不安なのに、学院の事情や王都の生活まで分からないことだらけ
なのは、どれほど不安だろう。
メイファはその点、不安など感じたこともなかった。心の底に、安心感があった。
だって、何を訊いても大体答えてくれる人の、傍に居たから。
むしろ、なんでもないことでも訊いてみて、その答え方を聞くのが好きだった。
いつでも、喧嘩してからでも、その姿を探して。

気持ちが、溢れ出しそうだ。
「…私の知らないところで、すっかり大人の娘になって。」
母は、そのまま言葉を失った娘を、もう一度抱きしめた。

338メイファと皇子様4:2010/04/03(土) 00:46:08 ID:YWIMFHLI

  *   *   *

シン国から婚約の為の使者が到着したのは、メイファがハリ国についてから一ヶ月半後、
つまりメイファがシン国の王都を出発してからおよそ二ヶ月半が経った頃だった。
遠い。王都というのは、圧倒的に遠い。
普通ならこの距離を離れてしまえば今生の別れなのだろうが、シンという中華の国の
強大さが、その後の結びつきを可能にする。
シン国からの使者達は、国家としての正式なもので、豪奢な錦の服で身を包み、馬具にも
沢山の房や飾り紐をつけた煌びやかな一行は、貧しく素朴な山岳国ではひときわ民の目
を引いた。
そして、使者が持ってきた条件は、ハリ国にとっては破格のものだった。

──朝貢国としての地位のの格上げ。
──毎年の献上品の減免。
──『留学』制度の任意化。
──有事の際の派兵の無償化。

もし断る気だったとして、これだけの好条件をつけたということは、、断るにはそれに
見合うだけの犠牲が必要ということになる。
第一、この貧しい国が、こんな破格の条件に飛びつかずにいられるだろうか?

しかし、メイファを最も驚かせたのは、相手の名前だった。

『シン国 第三皇子、チェン シュンレン』

……ん? 数字が、変ではなかったか?
メイファが知る限りそれは、六年前から二十二だった。勿論実力主義で、功績や失態で
順位が上下することは知っているが、二十三でなく、十三でなく、……さん?
言い間違いか聞き間違いでは、無いのか?
謁見の間に同席していたメイファは、すんでのところで大声で使者を問い正すのを思い
止まった。
使者が退室するのを待って、すぐ後を追いかける。
「使者殿!」

はたして、それは言い間違いでも、聞き間違いでもなかった。
メイファが王都を離れてから皇位継承順を変更する勅令が、出されていたらしい。

幽州における大規模な不正事件の迅速な摘発と処理。
所属する戸部における、種々の改革と不正の摘発。
御前試合における優秀な戦績。
これらから皇位継承順は第三位が適当と、判断された…という話だった。

使者殿曰く、功績のなかでも、御前試合での戦いぶりは人々の印象に残り、大幅な
継承順の変更もやむなし、と納得させたとか。
それは五つの対戦を全勝したことよりも、第一皇子──皇太子殿下に三本試合のうち
二本を先取して圧勝したこと。

皇太子殿下は御年三十一歳、実力で第一位と認められているだけあって、文武の両道に
抜きん出ている。メイファも、一度だけ卒院生として殿下が学院を訪問なさったとき、
その剣技を垣間見たことがあるが、心・技・体のそろった、と誉めそやされるだけあって、
何一つ欠けたところのない、まさに完璧な剣技であった。
人柄も謙虚にして誠実、相手が弱いからといって油断や慢心などとは無縁な、隙のない
人物であると聞いているのに、レンが皇太子殿下に圧勝、と聞いたときメイファは素直に
『いったいどんな策で?』
と考えていた。
339メイファと皇子様4:2010/04/03(土) 00:47:07 ID:YWIMFHLI

しかし、第三皇子の妻を迎えるためなら、これだけの破格の条件も納得がいく。シン国と
しても、むしろ安く手に入れるわけにはいかないのだろう。
あるいはもう少し駆け引きをすれば、シン国からよりよい条件を引き出せる可能性もあったが、
ハリ国としては、身に余る待遇を望むのは自戒すべしとして、シン国の提示したままの条件で
婚約を受けることにした。


  *   *   *

婚儀までには、ハリ国とシン国の王都の間で、何度か早馬が行き来した。その早馬に託して、
メイファは事の次第を訊ねる手紙を送った。
予想通り、レンからの返事では大したことは分からなかった。返事は、おおよそ次のような
ものであった。
──不本意かつ不愉快なので、多くを語りたくありません。
まあ、あのレンがそう易々と自分のことを語るはずがない。
だから、当然のようにルイチェンにも同じことを訊ねる手紙を送っておいた。

こちらはさすがに、それなりに詳しく書いてあった。
ルイチェン本人は、また分からないことが多くて…と謙遜していたが、ルイチェンの事実を
記録する能力が高いことは友人であるメイファがよく知っている。
彼は事実と推測と噂を混同したりしないし、つまらぬ見栄を張って分からないことを分かった
ように見せかけることもしない。
彼によれば、レンがメイファの卒院前後に行方不明になっていた時期に、幽州総督府に
行っていたというのは確からしかった。そこでなにやら実績を上げたらしい?
さぼっていたはずの戸部でも、なにか色々とやっていたらしい?
まあこれは、後で本人に訊いてみよう。

御前試合のことは、使者殿から聞いたこととほとんど同じ内容だった。
ただ、宮仕えであるルイチェンは、観戦を許されていた。
皇太子殿下との一戦において、レンが使った技は、誰も見たことがないものだったという。
二本先取のうち、二本とも。
どのように技が繰り出されるのか予想できなければ、当然受けるのも難しくなる。
何が起こったのかわからぬうちに、皇太子殿下は、二度、剣を地に落されていた。
分かったのはそれだけ。
だが、動きから、どこの門派かは分からないが、レンが腕の立つ師父について、かなりの
修練を積んだらしいということは分かった、と書いてあった。
元々、レンは学院で自分の剣を披露したことはないが、多少なりとも武術の素養の
ある者なら、その身のこなしから、彼が素人ではないということは分かっていたはずだ。
あるいは、自分の技を見せずにおく方が、剣を交えるときに有利になる…とでも考えて、
レンはかたくななまでに武術の授業への参加を拒んでいたのだろうか? それは、余程
自分の技に自信がないと出来ないことだが。
御前試合は、他の参加者もかなりの腕前のはずだが、このとき対戦した相手には、レンは
すべて勝っていた。
340メイファと皇子様4:2010/04/03(土) 00:47:40 ID:YWIMFHLI

文官としての実績は、比較的人の目に分かり辛い。
だが、御前試合のように、人々の目の前で勝ち負けを競うものなら──その能力も、実績も、
宮中の人々の目に文句なく明らかにすることが出来る。
武術でも第一位と認められている皇太子殿下に圧勝したという事実は、むしろ大幅な継承
順位の変更を余儀なくしたはずだ。
その所為かどうかは分からないが、驚くほど不満や異論は出ていない、とのこと。
メイファにとっては、あるべきものが、あるべきように認められたのだ、という感覚のほうが
強かったのだが。


その後、シン国からは婚資として東西南北、様々な国や地域の珍品の数々、そして大量の
金銀宝石類が贈られて来た。ハリ国内だけに居れば、一生見ることもないほどのものだ。
──少し、怖い。強大で、欲望と陰謀の渦巻くシン国の中枢近くに、嫁ぐのは。

『誰でも自分に出来る範囲で、何とかやっていくしかない。』

けれど、不安なときにも、思い出すのはあの人の言葉で。
君なら、それなりに上手くいく、と言ってくれるだろうか。

不安で、ひどく心が揺れる。揺れるからこそ、どうしようもなく、逢いたい。あの人に。
もうすぐ、シン国に向けて発つ。




        ────続く────

341名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 00:53:13 ID:YWIMFHLI
以上10レスでした。

盛り上がりに欠けるのでまたすぐ来ます。
近頃またぽつぽつ規制があってるようなので、
規制でorz ってなってなければ。
342名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 02:54:19 ID:9SsS2Yke
wktk
343名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 03:41:09 ID:RjwaBcow
続き楽しみにしてる!
344名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 03:46:31 ID:G59jbC2k
覇王の娘〜を書いた者です。
ついに結婚ですね。
つかレンは「能ある鷹は爪隠す」の言葉がぴったり。
全てメイファと結婚するためとは…偉い!

それにしてもこのシリーズの描写は細かくて表現が良いですね
覇王の娘〜もこの作品くらい描写が細かくできれば世界観が
掘り下げることができたかも…ともあれ次回はエロ本番ですね。
レンはSっぽいのでメイファにとことん羞恥プレイに期待。
345名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 08:03:48 ID:4hC0X8H4
心の底からGJ!
346名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 10:47:32 ID:y7wRuk+L
>>341
ついにレンの本気が!!
エロ部分も楽しみにしてます!!!
347名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 01:27:20 ID:Eb3P20fQ
>>341

メイファがウブで萌える
これからレンとどんな恋をするんだろう?
続編、楽しみです
348名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 06:14:08 ID:ia87Nk23
『メイファと皇子様4』の続き、5の投下です。
349メイファと皇子様5:2010/04/04(日) 06:22:56 ID:ia87Nk23

メイファがシン国の王都に入ったのは、涼やかな風の吹き始める初秋の、ある
晴れた日だった。
途中の街で調整して、シン国の王都には婚儀の前日に到着するよう取り計らわれた。
婚儀では、吉祥色の真紅の花嫁衣裳で顔にも真紅の布で覆いをつけ、花婿が
それをはずして対面する。それまでは、お互いに顔を合わせないのがしきたりだ。
『身一つで来れば良い』という、シン国からの言葉を真に受けたわけではないが、
徒歩ではあまりに長旅になるので、侍女も従者も、馬に乗れるごく僅かな人数しか
同伴しなかった。六年もの歳月をシン国で過ごしたメイファには昔馴染みの侍女も
いないし、身の回りのものも大してなかった。
それでも花嫁として用意すべきものは揃えたはずなのだが、それはあくまでハリ国
の王族としての常識に多少の上乗せをした程度のもので、シン国から見れば吹けば
飛ぶほどのものかもしれない。
その差は、メイファも身に染みて知っている。今更、上辺だけ取り繕ったところで
どうにもなるものでもない。
事実上、身一つで嫁ぐほかないのだろう。
宮廷の賓客用の部屋に通され、花嫁のために用意された広すぎるほどの浴槽に身を
沈めながら、メイファはそう思った。


メイファにとっても、半年振りの王都であった。
ハリ国に居るあいだは、しきたりだの正式な段取りだの互いの国の正しい慣習だのを
考えることに忙殺されていた。
だから、うっかり失念していたのだ。あの人にとっては、権威も因習もしきたりに
従うことも、まるで意味を為さない事を。

夜半に、訪問者があった。
入るな、と静止する返事をしたにもかかわらず、その人はあっさりと扉を開けて
入ってきた。それだけのやり取りの中で、メイファは、その人が誰であるかとか、
そういえばそういうことをやりそうだとか、むしろ何の対策もしていなかった
自分が迂闊だったとか、そういう思考が一気に頭の中を駆け巡った。
平和でのんびりしていて礼儀正しいハリ国のぬるま湯で、半年とは言えど自分も
緩んでいたかもしれない。

「ちょっと待て! 花嫁の寝所に入ってくるなど、無礼ではないか?!」
悠々とした足取りで入ってきたレンから何とかして身を隠さねば、と慌てて全身に
すっぽりと布団を被って後ろを向く。
まだ完全に消灯こそしていないが、既に床に入っている時間なのだ。
夜着も、寝ているままの纏めてない髪も、見られるのは嫌だ。
「メイファ、久しぶり。……なんか可愛いおまんじゅうみたいになってるけど。」
「饅頭で結構!! 婚儀の前に、花嫁の顔を見てはならんことになっているっ!」
「それはお見合いとかで知らない同士が結婚するときに意味のあることで、僕と
メイファの場合はそんなの意味ないと思うけど。」
「大体花嫁の寝所に入ってくる時点でおかしい!! 何をやっているのだシン国の
護衛はっ!! 役立たずにも程がある!!」
長旅で疲れているハリ国の従者や侍女は、今はぐっすりと眠っているはずだ。
代わりにシン国の護衛が扉の外で待機しているはず…なのだが。
350メイファと皇子様5:2010/04/04(日) 06:24:49 ID:ia87Nk23

「快く通してくれたよ。」
「くっ…また、権力を悪用して…っ。
まさか、護衛は始めからおまえの懇意の『鼠さん』が仕込んであったのでは
あるまいな?」
あの時レンが口にした、不在時の情報を報告してくれる『鼠さんや猫さん』、
それはどこにでも居る衛兵や侍女のような者たちの中に、懇意にしている者
たちが居るという意味ではないのか。
「まあ、仕込んでなくともね、ちょっと美味しい餌をあげれば、割とすぐに
言うことを聞いてくれて」
「袖の下?! 賄賂?! ──汚職っ!! 腐敗の元だろうそれは!! 上に立つ者が
率先してやってどうする?!」
「メイファは、真面目だなあ。ちょっとくらいは、生活の潤滑油だよ。」
きし、と音がして寝台が小さく揺れる。
「ちょ…、乙女の寝台に、腰掛けるなっ! そっちに、椅子があるだろう?!」
微かに、レンの衣に焚き染められた香がふわりと馨る。半年振りに嗅ぐその
香りに、メイファはしばし陶然としてしまう。
同じ都の空気を吸っているというだけでも、もう歩いていける近さにまで
来たと思うだけでも、胸が甘く締め付けられてしまうというのに、何の
前触れもなく、部屋にまで入ってくるな。
──あのとき触れられた唇が、熱い。そこだけぽってりと熱を持っているようだ。

「冷たいなあ。明日には夫になる身だというのに。」
「それは明日であって今日ではない!! なぜ、一日が待てない?!」
「もう半年も待ったよ。やっと逢えたのに、もう半時だって待てない。
ちょっとでいいから、顔を見せて。」
レンは聡い。
人の表情だけで、心の奥まで見抜くこともある。
いま、きっと真っ赤に染まっている自分の顔を見られたら、まずい…気がする。

「メイファは、いつもつれないよね。手紙だって、ほとんどくれないし。
そっけない文ばかりだし。
これなんか、ほんの数行だよね。」
そういって、かさかさと何か紙包みらしきものを取り出す。
はて。手紙は、ハリ国から近況を尋ねるもの(というか、どういう状況
なのかと詰問する調子のもの)を一通送ったきりではなかったか。
「──学業は、首席をとりました。我ながら、よく頑張ったと思います。」
「ギャ────────ッッッッ!!!」
そういえば、もう一通、書いたものがあった。レンに逢えないまま王都を
離れるかもしれないと沈んでいたら、ルイチェンが手紙でも書けば、と
薦めてくれて。
反射的に、丸く引き被っていた布団を跳ね除けて手紙を奪おうと飛び出すが、
レンにはすいとかわされてしまう。
「──王都に居るあいだ、傍にいてくれて、ありがとう。」
「やめろ! やめろ! 読むなっ!!」
「──最後に、もういちど会いたかった。……これで、終わり。短いよね。」
「返せっ! それは、逢えないまま王都を離れてそれきりになる、と思ってた
から書いたもので……
わたしを、悶死させる気か!!」

そこに書き付けたのは、未自覚な恋心。
もう逢えないのが辛くて、何か最後に伝えたくて、でも書いたことを拒絶
されるのも怖くて、ほとんど書けないまま何度も書き直した。
レンと逢ったのは本当に王都を出る間際になってからだったから、託した
ルイチェンから取り返すのをすっかり忘れていた。
351メイファと皇子様5:2010/04/04(日) 06:26:45 ID:ia87Nk23

「ふふ…。そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。
でも、やっと顔を見せてくれた。」
してやられた、とメイファは思った。レンはいつだって、メイファより一枚上手だ。
手紙を取ろうと揉み合っていたから、ひどく近い。というより、ほとんど
抱きついているような。
「少し見ないうちに、綺麗になったね、メイファ。」
何だそれは。いきなり恥ずかしげもなく、そんな台詞を。
「ふん…。たった半年で、さほど容姿が変わるものか。
変わって見えるとしたら、侍女達の努力の賜物だよ。髪にも肌にも香油を塗ったり
揉み込んだり、やたらと梳(くしけず)ったり。婚儀のためとか言って、ひどく熱心に」

旅の間でさえ、夜になると侍女たちはメイファの髪や肌を熱心に手入れしてくれた。
きっとお相手の方もお喜びになりますよ、と鏡を見せられるたび、期待と不安の入り
混じったような、名状しがたい気持ちが胸を満たした。
「確かに…。なんか、触れたくなる髪だね。」
床に入っていたため少し乱れて垂らしたままの髪を、レンかひとすじ掬い取って指を
絡める。髪に感覚などあるはずもないのに、確かにその指のあたたかさを、感じた気がした。

──ああもう、駄目だ。
お父様、お母様、それから祖国の山々におわす神々よ──
ごめんなさい。メイファは悪い子です。

メイファは、ふとレンに顔を近づけると、自分の唇をレンの唇に重ねた。
ほんの短いあいだの、触れるだけの口づけだったが、メイファは唇の火照りを
鎮めるように、相手の唇を二度、三度と捉え直した。
ゆっくりと顔を離すと、メイファは僅かに目を伏せて言った。
「…こういうことが起こるから、婚儀まで新郎新婦は顔をあわせては、ならんのだ。」
レンは表情を変えずにじっとしている。
──本当に、分かりにくい。でも、予想さえつけられるなら、『訊いて』みれば
いいのだ。レンがいつもするように。
「なにを、呆けている。」
否定が返ってこないので、もう少しだけ上乗せしてみる。
「少しは嬉しそうな顔でも、したらどうだ。」
レンは少しだけ目を逸らして言った。
「嬉しい、とかそういうのを、顔に出すのは苦手で。」
確かに、メイファがすぐするように、顔が赤くなったり、瞳がふらふら動いたり、
表情が変わったりはしていない。でも、多分──照れている、と思う。

「ねえ、メイファ。僕と結婚、してくれる?」
「はあ? 何を今更。婚儀は、明日だろう?」
すでに二人の結婚は、シン国とハリ国の正式な契約だ。今更、するもしないもない。
けれどレンの眼が、意外に真剣さを帯びていることに気づく。
そういえば、『決めるのは自分ではない』ために、メイファ自身が、レンのその問いに
答えたことは無かったのだ。

メイファは少し考えてから、口を開いた。
「もしも願いが叶うなら──
おまえの目が何を見て、何を考えているのか、知りたかった。
そして、おまえのこれからを見てみたいと思っていた。遠くからでも。
しかし、あれだな。幸せになったおまえが見てみたいのに、その隣を別の女が占めて
いることを考えると──なんか、癪に障るのだ。
それからすると、わたし自身が、おまえの傍らに居るという選択肢は、悪くない。」
352メイファと皇子様5:2010/04/04(日) 06:28:38 ID:ia87Nk23

レンのことを、知りたいという心がもしも恋ならば、あの突き上げるような衝動は、
どんな犠牲をも厭わずに走り出してしまいそうなあの気持ちは、『恋に身を焦がしている』
といっても差し支えないのかもしれない。もしかすると、もうずっと前から。
そんな恥ずかしいこと、とても口には出せないけれど。

「多分わたしは、おまえのことが、好きなんだと思う。」
いまは、これが精一杯だ。

レンの瞳が、柔らかく笑んだ。
「メイファは、もう、蕾じゃないね? ずっと、待っていたよ。
今すぐ、僕の、『お嫁さん』に、なってくれる?」

──今すぐか。どうしても、今すぐか。明日じゃだめなのか。
一夜とはいえ結婚前に身体を重ねてしまうのはやはり禁忌だ。
メイファはそこまでの禁忌を、犯したことなどまだない。
それでも、いま、退いてはいけない…と、メイファは思った。
生きていれば、決して退いてはいけないときがある。
レンを知りたい自分が、ここで突きつけるのは多分、否であってはならない。
禁忌を犯すことには、暗く冷たい夜の湖に入ってゆくような、深い恐怖を感じるけれど。

「仕方ないな。どうせ明日にはおまえの妻になる身だ。
明日からの夫の我儘に、つきあってやるよ。──もちろん、皆には、内緒で。」
メイファも、笑みで返した。
突然、強い力で抱きしめられた。その腕は、ほんの始めのうちだけ、こまかく震えていた。
──本当に、分かりにくい。でも、注意深く見てさえいれば、全く分からないと
いうほどでも、なくなってきた──
「メイファ、君が好き、好き、すき。待っていた、待っていたんだ、ずっと──」
ぎこちなく動いたのは、ほんの始めのうちだけだった。
背中に廻された手は滑らかに動いて、その指が、掌が、メイファの身体の曲線を辿る。
辿られた跡が、残像のように熱を残してメイファの吐息を熱く染めた。

「はぁ…ぁ…っっ…」
メイファは、初めての感覚におびえて強くレンの身体を抱きしめ返した。
レンの身体は、細身に見えても触ってみると均整の取れた筋肉がついていて、
たしかに鍛練の跡を残していた。
──ああ、ずるいな、わたしもこんな身体が欲しかった。
レンはおよそメイファの望むものなら何でも持っていた。幅広い知識と群を抜く怜悧さ、
深い洞察力とおそらくかなりの武術の腕、そしてなにより、男の身体。
女の体は、メイファをいつも縛り付けた。
女なのだから、という因習、女だてらに、という嘲り、女なのに、という憐れみ。
鍛練を繰り返してもなかなか筋肉のつかない、軟弱な身体。
子供の頃から、何とかこの身体から自由になりたい、というのが密やかな願いだった。
けれどいま、恭しく唇にも肌にも口づけを落とされて、レンの手には、何か壊れやすい
宝物のように、大切に扱われて。
この人に恋い慕われて、こんな風に求められるなら、女の身体も、今まで女として
味わってきた苦痛も諦めも哀しみも、悪くはない。
触れられて、いま熱を持って浮かび上がるのは、紛れもなく女の身体で。
帯を解かれ、合わせ襟を開かれて、メイファの白い素肌が、宵闇の中に姿を現した。
353メイファと皇子様5:2010/04/04(日) 06:31:12 ID:ia87Nk23

レンの手が、胸のふくらみに伸びる。
「そこはっ…! 平べったいとか、言ってたくせに…!! …ひゃぁ…んっ!!」
「いや…意外と『ある』って言ったはずだけどな?
もしかして、小さいの、気にしてた? 充分愉しめる柔らかさだけど。」
レンの手が、ふにふにと感触を確かめるように動く。
「あっ…駄目、…やぁ…っ…」
触られるたびに、どうしようもなく身体がぴんと弓なりに反って、まるで感じやすい
部分をみずから差し出しているかのようだ。

「随分、敏感なんだね。
前に触ったときは、敏感なとこにいきなり触れられて、過剰に反応しちゃった?
ふふ、…いいね、ゾクゾクするよ。」
控えめなふくらみの周辺からじわり、と中心に向かって指が這い上がって来る。
じりじりと焦らすようにゆっくりと包囲を狭めて、最後は獲物に襲い掛かるように
硬くなった先端をつまみあげた。
「…あぁあぁあっ!! やっ、あぁ…っ」
甘く切ないような衝撃が全身を貫いて、メイファはいやいやをするように身を捩らせる。
「もう…やだぁっ…。あたまが、どうにかなりそうだ…!」
瞳の端に涙を滲ませて、責めを緩めてと懇願する。
メイファは侍女に身体を洗われるのには慣れていたから、他人に身体を触られるのは
普通のことだと、思っていた。
でもこれは…、こんな感覚はいままで一度も味わったことはない。
レンの指がほんの少し触れるだけで、自分の意思とは関係なく体中が反応してしまう。
どこから洩れてくるのか分からない甲高い声も、まるで自分のものではないようだ。
頭の中を掻き回すこの感覚は…強すぎてよく分からないが、『気持ちいい』なのだろうか。

「嬉しい…メイファ、どうにか、なって?」
対してそれを眺めるレンは本当にひどく嬉しそうで。
くにくにとつまんだままの先端を転がすように弄り、もうひとつのふくらみにも
舌を這わす。充分にその柔らかさと滑らかさを愉しんでから、先端に舌を絡ませて
吸い上げる。
「あぁ…んんっ、…や…っあ、あぁあぁあぁあぁ!!!! 」
懇願を却下されたメイファは、なすすべもなく泣きじゃくるような甘い声を上げ続けた。
いくら逃れようとしても、重なった体の重みに容易に組み伏せられてしまう。
レンの責めは緩むどころか、次第に強さを増して、容赦のないものになっていったが、
メイファのほうは絶え間無い快感の波にさらされて、もうどんなことをされているのか
すら分からない。
だんだんと、意識は幾重にも快感に塗りつぶされ、メイファはその果てに、白い光が
弾けるのを見た気がした。
354メイファと皇子様5:2010/04/04(日) 06:33:30 ID:ia87Nk23

「──イッた? いま、イッたね?」
レンの声がする。
「メイファみたいな生娘でも、イクんだね。身体が、びくびくって震えてたよ。」
メイファは先程までの耐え難い快感の中ではなく、心地良い弛緩の中にいた。手足も
舌も喉も、痺れて上手く動かない。
「行った、って、どこ、へ? いつ?」
レンの言うことはさっきからところどころ分からない。
「可愛い…。凄く好き…。」
レンは覆いかぶさるようにして唇を重ねた。そのまま噛みつくような、激しい口づけをする。
「んんっ…。」
柔らかく唾液を纏わせた舌が、メイファの口腔のなかを這い回り、歯茎を吸いたて、彼女の
舌を誘うように絡め取る。思考さえ奪うようなその動きに、メイファは逆らわず身を委ねた。
唇を重ねたまま、レンの手が熱く濡れる茂みへと伸びる。
「──ひぁっ…!」
唇を離したくは無かったが、初めてそこに触れられる衝撃はやはり耐え難くて、声を上げて
しまう。
「もう、随分濡れてる・・・。」
レンの指が密やかな花弁をかき分けるように開くと、熱い蜜が零れ落ちた。指に蜜を絡める
ようにして、慎重に蜜壷の入り口を探る。
「…痛っ…」
たとえ充分に濡らしていても、一度も使ったことの無いそこは、指を入れることにも抵抗
してチリチリと痛んだ。
「はじめてだから、痛いと思うけど、我慢してくれる?」
メイファは、潤んだままの眼で、ゆっくりと頷いた。
「…ん…。」
──なんだか痛いらしいが、それも花嫁の務めだ、と言い聞かせられて来た。
いや、花嫁になるのは、正しくは明日なのだが。

レンはそこを慣らすようにしばらく指を出し入れした。絡んだ蜜がくちゅくちゅと音を
立てるが、メイファは身体の中を抉られるような痛みに、歯を食いしばって耐える。
「もっとゆっくり慣らしたほうがいいのかもしれないけど、…ごめん、もうこれ以上、
待てそうに無い…」
レンは着ていた袍と下着を脱ぎ捨てると、横たわるメイファの膝を割り開いて、濡れた
その入り口に自らの分身をあてがった。
「…行くよ。」
ゆっくりと圧を掛けて、慎重に侵入してゆく。
「……っっ…!!」
メイファは必死で声を抑えた。そうしないと、みっともなく泣き叫んでしまいそう
だったから。
それは今まで経験したどの痛みとも違っていた。身体の中心を引き裂かれるような、
鮮烈な痛み。
──これが少女から大人の女へと、生まれ変わる痛みなのか。
この痛みを、わたしに刻むのがレンで、嬉しい。
耐え難い痛みさえ、なぜか無性に愛しくて。
不思議だ。
わたし達は、あんなに遠い国で生まれて、育ったのに。
いま、求め合って、こんなにも近く、繋がりあって。
ああ、この気持ちを、言葉にするなら、きっとこう言うのだろう。
「レン…。すき…。」
浅く息を吐きながら、上手く動かない喉と舌で、ただそれだけを紡いだ。
355メイファと皇子様5:2010/04/04(日) 06:35:53 ID:ia87Nk23

「…メイファ。」
レンは密やかに眉根を寄せて、溜息をつくように囁いた。
「こっちも割とぎりぎりだから…、あんまり可愛いことばかり、言わないで?」
彼女を苛む感覚は、引き裂かれるような鋭い痛みから、ずくずくと脈動する鈍い痛みに
変わっていた。多分、全部、入ったのだ。
「いた、い、の…?」
指先で、レンのしかめた眉に触れて言った。
「痛くは無い、男のほうはね。
むしろ、気持ちよすぎて、すぐに終わりそうなのが、辛い。」
レンは、メイファの伸ばした手を取って、その掌にちゅっと口づける。愛しげにそのまま
何度か口づけて、言った。
「でも、メイファの方は、長引いても痛いだけだよね?
もう、終わりにする。今回のところは。」

突然、激しく揺らされた。繋がった部分は離れるのを拒むようにぎちぎちと結びついて
いたが、僅かに摩擦されてもう一度激しい痛みと、それから微かに甘い感覚を生んだ。
「あ、あぁあぁあぁああぁっっ!!!」
メイファは、たまらず悲鳴を上げる。
身体の奥で暖かいものが弾ける感じがして、レンの身体が、ゆっくりとくずおれて来た。


  *   *   *

二人は、暫く繋がったままでいた。
それからメイファは、自分の体内から漏れ出した体液が薄桃色に染まっているのを、それを
レンが手拭布で拭ってくれるのを、ぼんやりと見ていた。
後始末が終わると、ふたたびレンはメイファを腕の中に収めて横たわったが、そのあたたかさ
が、肌の匂いが、眩暈がするほど心地良くて、メイファはむしろ自分から寄り添った。
「あ、あのね、レン」
メイファはおずおずと口を開いた。
「…わたしを、好きになってくれて、ありがとう。」
──考えても仕方の無いことは、考えない。
だからメイファは、レンのほうから手を伸ばして、望んでもらえなければ、密やかな想いは
自分ですら気づかないまま、心の奥底に押し込めたままだっただろう。
この胸の痛みが、何なのかも知らずに。
「どういたしまして。」
レンは、柔らかい声で応えた。

「…それから、なんかやる気も出してくれたみたいで、嬉しい。
レンが、認められたことも。」
「あれかな? 継承順位のこと?」
「うん。いきなり二十位も上がっててびっくりしたけど、レンほどの実力があって、剣の
腕もそれほど立つなら、おかしくはない。」
「…あれね、策略。狸二人に、してやられた。
あと、上がったのは十九位。なんか、重要らしいよ? 一位の違いも。」
「狸?」
「一人は、皇太子殿下。あの人も長兄でもないのに第一継承者を張ってるだけあって、相当な
腹黒。後ろ盾のごり押しだけじゃあ、一番で居続けられる訳ないよね。」
「こ…皇太子殿下を、狸呼ばわりっ?!」
356メイファと皇子様5:2010/04/04(日) 07:17:07 ID:ia87Nk23

レンにとっては兄のうちの一人なのかもしれないが、それでも畏れ多い。
「狸じゃむしろ可愛いほうだよ。問題児を一人、表舞台に引っ張り出すために、御前試合は
仕組むし、挑発しておいてわざと負けるし。
まあ、都合よく働かせたいだけだろうけど。」
「八百長っ?! でも、他の試合も、見事な勝ちっぷりだったとか」
「あれは相手が弱かった。」
そうだろうか? ルイチェンからの手紙によると、他の対戦相手もそうそうたる顔ぶれ
だったと思うが。あるいはそれも、自信のあらわれか。
「でもわたしも、レンにはそのくらい高い継承順がふさわしいと思うよ? 他の能力も、
高いわけだし。」

「メイファがそう言うんなら、いいか。どうせ与えられる役職は夫婦であたれば良いから、
メイファに表に出てもらえばいいし。」
「ちょ…ちょっと待て!! わたしに、押し付ける気かっっ?!」
「押し付けるわけじゃないよ。陰ながら全力で助けてあげます。」
「それを押し付けるというのだろう?! 第一、認められたのはレンで」
「それがさ、メイファも意外と気に入られてて。文武両道とか、才色兼備とか。
あのジジイに」
「じじい?」
「もう一人の狸。皇帝陛下。」
「こっ…皇帝陛下を狸とかじじいとか?! 不敬っ! 斬首モノだぞっ!!」
勿論斬首とかは一般人の場合で、息子であるレンの場合はどうだか知らないが。
そういえば、幽州での仕事の際には、『拉致されるように連れて行かれた』と言って
いなかったか。
まがりなりにも皇族の一員であるレンに、それほどの強制力を持つ人物は、さほど多くは
ない。
「まあそれはそれとして。ともかくその皇帝陛下がメイファのことをやたらと褒めてて。
だから面倒なことになったんだけどさ」
「はあ…?」
全くどういうことだか分からない。
「そもそも、メイファには向くと思うよ? シン国の宮廷も。頭はいいし、真面目だし、
頑張り屋さんだし。
それに、ハリ国出身のメイファが認められれば、当然ハリ国も認められることになる。」
「…うぅ…」
やばい。術中に嵌りそうだ。レンは話術も上手い。
「本当、いいお嫁さん貰ったよね? 可愛いし、優しいし、賢いし、あっちの方も凄くいいし」
「下品なことを言うなっ!! それに、婚儀はまだ明日だっ!!
…その話はまた後だ。とにかく、おまえは慣習やらしきたりは総無視だが、式のあいだくらいは
大人しくしていろよ?」
「はあい。新妻の言うことなら聞いとかなきゃね。ご機嫌を損ねたら困るし。」
そういってレンはちゅっとメイファの額に口づけを落とす。
それだけで、甘い感情が胸を満たして、それ以上怒れなくなってしまう。
ともかく、いまは駄目だ。何もかも、上手く丸め込まれてしまいそうだ。
357メイファと皇子様5:2010/04/04(日) 07:18:46 ID:ia87Nk23

「明日のために、わたしはもう寝る。」
「うん。」
レンは、先程からメイファを腕の中に抱いたまま動かない。
「…まさか、ここで寝る気か?」
「なんかさ、いま離れるとか無理無理。こうしているだけでも気持ちよすぎてもう
体が動かないというか。」
「ちょっと待てっ!! いくらなんでも婚儀の朝に花嫁と花婿が同じ寝所から出てきたら
まずいだろう?!」
「心配しなくても、明け方には自分の部屋に戻るよ。だからもう少し、ここに居させて。」
「明け方か…。本当に、帰るんだぞ?」
「うん、本当本当。」
聞いているんだかいないんだか、互いの体に負担が掛からないように、いそいそと枕の
位置を直したり、布団を掛け直したりしている。どちらにしろ、帰る気のない男一人を
引っ張って行けるほどの腕力がメイファにあるわけでもない。
それにまあ、触れているだけで離れがたいほど気持ちいいのはメイファも同じだ。
「仕方ないな…。」
メイファは力を抜いてレンの腕に身を委ねた。ふたつの身体は、元はひとつだったのかと
思うほどぴったりと収まりが良い。

これからに、不安はある。分からないことも、恐いことも山ほどある。
でも、この腕が傍にあるのなら、この人さえ味方についてくれるなら、どんな辛苦も、
試練も、世界中を敵に廻すことだって怖くない。
明日ではなく、今日が、二人で歩む日の始まりになるのだろう。
メイファは、傍らに横たわる人の胸に頬を寄せた。




        ────終────
358名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 07:19:49 ID:ia87Nk23
以上9レスでした。
人の少ない時間帯だと8回で連投制限されたorz

結婚式…かと思ったら油断大敵!! な感じで5が終了。
これでメイファ視点での話は一旦終わりです。
次は同じキャラの皇子様視点で続きを含めて姫萌えを追及したい…! と思っていますが、
超遅筆なので、書き溜まったらまた来ます。
別タイトルで投下になりますので、保管庫の管理人様、統一タイトルを付けておいて頂けるなら、
『中華の国の物語』でお願いします。

賢くて可愛くてちょっとお転婆で、背負う国もしがらみもあって…と自分の姫萌え100%で書いた
拙作にレス下さった皆様、有難うございました。

それから「覇王の娘〜」の作者様。
こちらこそいつも楽しく読ませていただいております。当然のことながら「覇王の娘〜」のような
汁感、軍事方面、作品幅の広さは当方にはとても真似できず、いつも指をくわえて見ております。
先日は最終回リクしたら投下キター!!! と大喜びいたしました。(投下待ちさせてたのかもしれませんが)
拙作へのコメントも素晴らしすぎです。
こちらは拙いコメントが恥ずかしいので名無しコメだったというのに…。
書き手さんのコメントは鋭すぎて、ネタバレ防止、あるいは語りすぎ防止のため、ノーコメントを
決め込ませていただくしかありません(笑)。大したネタを仕込んでいるわけではないですけど。
あとキエルヴァの話、投下告知お待ちしております。男主人になるのでしょうか。
話によってスレを分けたのも大成功だったと思います。

それでは、本当に書くの遅いので、多分忘れた頃にまた来ます。
359名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 07:34:01 ID:j6ubk01V
乙!

まだ続きの構想もあるのか、楽しみだ〜
360名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 18:49:50 ID:SA0NtJJp
GJ!
正直最初は敬遠してたんだけど、途中から引き込まれた。すごく楽しかった。
続きも楽しみだけど、取り敢えず完結お疲れ様。
次作も待ってるよー!
361名無しさん@ピンキー:2010/04/06(火) 22:51:30 ID:rrY1p6hZ
いやー、本当にいいものを読ませてもらった。
メイファもレンもすごく魅力的で生き生きしてた!
続編の方、まったり待ってます。

GJ!!
362名無しさん@ピンキー:2010/04/08(木) 23:39:36 ID:KAfX+ddA
中華風ってこのスレでは珍しくて楽しんで読めた!
続編楽しみにしてる!!
363名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 23:48:41 ID:mJY1Q5eq
覇王の娘〜の者です。
キエルヴァモノを投下してきたので告知。
キーワードは古代・中世ファンタジー

中華の国の物語の作者様
レスサンクスです。そしてお疲れ様です。
いや、初々しくて可愛いです。
レンも初めては優しくし自重したわけですね・
メイファもエロ可愛くてグッドでした。つか、これで孕んでたら
レンは安定期までお預けを食らうわけだ…それもいい。
次回の皇子視点で成長したメイファに期待。チャイナドレスにも超期待。
364名無しさん@ピンキー:2010/04/10(土) 00:44:22 ID:/NzCuDh7
素敵な作品ありがとうございます!
続きを楽しみに待っています〜
365名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 02:36:21 ID:tI/Y2KSD
素晴らしい話が立て続けにきてるのに、くだらないネタを言ってすまんが
公序良俗って言葉を聞くと、皇女凌辱と聞こえて興奮する
366名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 03:09:09 ID:KneG10uf
>>365
極普通の真面目な会議のさなか、
姫様のおつむの中はそんなネタでいっぱいなんですね、わかります。
367名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 03:10:33 ID:B5Pec9LM
臣「公の秩序と善良なる風俗と書いて、公序良俗といいます」
姫「こうじょりょうぞく……ですか?」
臣「ハイ。現代の社会では、姫様のような皇族であろうとも公序良俗に反する行いは許されないのです」
姫「そうなのですね。公序良俗、公序良俗……」
臣「…………」
姫「? どうかされましたか?」
臣「いえ。しかし大事なことですから、もう少し繰り返してみましょうか?」
姫「ハイ……公序良俗、こうじょりょうぞく、こうじょりょ、りょうじょく……ううん、連続だと言い辛いですね」
臣「いえいえ、たいへんすばらしい」
姫「は?」
臣「なんでもございません。さあ、すらすら言えるようになるまでがんばりましょう」
368名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 20:35:25 ID:Z0y1kWi9
姫様かわええww
臣下と >>367 GJ!
369名無しさん@ピンキー:2010/04/14(水) 22:58:54 ID:OUyzA1r0
女騎士モノ投下しましたので告知。
脇役が主役になるのは作者として嬉しい限りです。
370名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 08:20:39 ID:vviMryDq
乙〜
371名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 21:53:17 ID:iYc7AN0S
キエルヴァさんの話ですね。告知乙です!
372名無しさん@ピンキー:2010/04/20(火) 02:48:57 ID:QAXOo0ok
どうして中華風ファンタジーって女臭いのが多いんだろうな

あと何故か作中の文化や娯楽の類がどう見ても白人っぽいの
でも名前は現代のDQNネームっぽいのに適当な漢字くっつけてたり

元になったのはどこの作品だろうか
373名無しさん@ピンキー:2010/04/20(火) 02:56:12 ID:QAXOo0ok
ごめん
ねぼけててごばくした
374名無しさん@ピンキー:2010/04/21(水) 21:29:30 ID:9wMrANRy
スレチの気もするが。
女兵士スレが落ちたままなんだ……。
せめて保管庫収納とかやってくれるエロい人いないかね。
自分はできないんだ。
375名無しさん@ピンキー:2010/04/21(水) 22:56:16 ID:sEyYSv7S
wiki格納だったら誰でも出来るだろjk
376名無しさん@ピンキー:2010/04/21(水) 23:30:24 ID:1oWAiOUJ
そうそう、誰でもできるんだよ
消すこともね
377名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 00:41:01 ID:HEnJ88Q5
皇女って字面にそこはかとなくエロさを感じる
378名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 15:26:06 ID:/kfiX7Mq
女騎士モノ投下しましたので告知します。
エロ本番です。
379名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 07:09:58 ID:IkOzdo63
告知乙です!




こちらに投下された作品に関連する感想の部分はちょっとこちらのスレをお借りしますね。

シノビのイツファが幸せになってたのが萌えた。彼女はどうしたかなあと思っていたので。
すべてを掌の上で転がすヘスタプリンさんもGJ! ヘスタトールお兄ちゃんと
キエルヴァさんの可愛さを堪能できました。
個人的には一連の作品の中でヘスタトール×キエルヴァの話が一番好きです。
平和な所為か細部の描写がじっくりまったり書かれていて雰囲気がイイ!!

380名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 11:58:44 ID:Aub4rlx0
ここはファンタジースレの避難所じゃねーよ
381名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 13:57:41 ID:13eu4yRe
まあまあ
382名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 19:16:42 ID:kHb98+a6
王女とか姫もいいけど、それとはまた違った魅力があってよいね>皇女
気高さとか気品みたいなものを感じる
383名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 20:04:15 ID:ahjS63LV
姫は貴族でも可だけど、皇女だと血統からして高貴そう
そんな皇女さまがエロくなると考えただけでハアハア
384名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 00:51:41 ID:wMuciLjT
皇族だからな、位も高いさ。
…皇女が外交官でエロい交渉をさせられちゃえばいいんだよ
385名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 00:58:22 ID:3pmK4p7u
そもそも告知ってどこの話?
386名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 04:57:15 ID:2N0QOQhk
ファンタジースレだね
一応、このスレを「告知」で抽出すれば、>>363 辺りにキーワードが出てなくもないのだけど
このスレから、しかも最近になって新規に来た人には、さすがにちょっとわかりづらいだろうなあ

告知の時は、投下先がどこのスレかの手がかりキーワードは、毎回(とは言わぬまでも
新規の人が分かる程度の頻度で入れたほうが良い気はします
387名無しさん@ピンキー:2010/04/25(日) 02:42:19 ID:9Xbxp7Xp
>>358

>>334の冒頭部分は「六年」でよろしいでしょうか?抜けてるようなので。
一応こちらで勝手に六として載せてしまいましたが間違っているようでしたら修正しますので。
タイトルは「中華の国の物語」で保管しておきました。


またここまでの作品を女兵士スレなど含めてまとめて保管しておきました。
突貫でやっただけなので細かい部分はまだですが…
一応小説は全部載ったはずです。

>>374
遅くなってすみません
388名無しさん@ピンキー:2010/04/25(日) 03:01:04 ID:PI2d+FQl
お疲れ様でした
ありがとうございます
389名無しさん@ピンキー:2010/04/25(日) 03:29:05 ID:kfrVHyl8
ありがとうございます!
390名無しさん@ピンキー:2010/04/25(日) 06:24:08 ID:dw9gJX4k
>>387

>>334
おお!! 冒頭一文字が本当に抜けてました!!
「六年」で間違いないです。粗忽者で申し訳ない…
素晴らしい補完、かたじけないです。

保管ありがとうございます&おつかれさまです!
391名無しさん@ピンキー:2010/04/25(日) 18:32:48 ID:brA9e5s5
お疲れ様です!

女兵士スレもわざわざありがとうございます!
392名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 05:49:06 ID:r/R/7IQI
空耳シリーズ第二弾
公序良俗→空耳にて皇女凌辱てなことを書き込んだ者だが
最近のニュースで家畜の病気「口蹄疫」と聞くと「皇帝液」と変換されて皇女or皇妃が皇帝のエロい
液に浸される様を想像して(*´д`)ハアハア
393名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 05:11:08 ID:1pmS046A
hosyu
394名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 03:49:12 ID:DLGaSJxV
管理人様

遅レスで申し訳ないですが覇王の娘〜関連作品
の保管ありがとうございました。

差し出がましいお願い
なのですが戦火スレの118〜122にある部分も保管していただけないでしょうか?
内容はアリス陵辱で書かなかったヴェローニアが魔物に犯される部分です。
395名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 13:51:25 ID:4d4a4fd7
>>392
北魏の献文帝は12-3歳の時に継母の馮皇太后(25-6歳)との間に長男(後の孝文帝)を儲けたという説があるらしく、なんとなく妄想
中華風コネタですが近親陵辱ものぽいのでご注意。3レスぐらい。



「よい夢をご覧になられますように」
いつもと同じ太后の淑やかな微笑みに見守られながら、帝は目を閉じ強いて眠りに落ちようとした。
太后は亡父こと先帝の正室であるが、彼とは十歳ほどしか違わぬ二十代の半ばであり、
子どもを生まないまま寡婦になったためか二十歳前に見えることもある。
もとは良家の子女の中から選ばれて後宮に上がった身であるから、際立った美貌と気品に恵まれていることはいうまでもないが、
とりわけ肌は雪のように白く瑞々しく、夜毎芳香を放つかのようだった。
帝は皇太子時代に生母を亡くして以来このうら若い義母の手元で養育され、
二年前に父を亡くしてその位を継いでからも親密に慈しみ合う関係はつづいてきた。
夜毎の添い寝も以前から続けている習慣の一つである。
帝もさすがに十代半ばに近づいた今となっては、一人で寝付くのに何の不安もないが、
義母は相変わらず彼を幼な子同様に世話したがっていることを知っているので、あえて逆らわないで今に至っている。
だが彼には子ども扱いされるという以外にも悩みがあった。

自分の身体の変化に気づき始めたここ数ヶ月来、
亡父の妻であり己の養母である太后の寝姿が、日に日に悩ましく映って仕方がなくなってきたのである。
殊に夏が近づいた今は、皇族の夜着は薄物の絹に改められ、掛け布団も薄く短くなったため、
おぼろに差し込む月明かりでも共寝する義母の身体の線ははっきりと分かった。
帝は太后が寝入ったことを知ると決まって目を開ける習慣がついてしまったが、
小さい頃から何度も抱き寄せられてきた柔らかい胸元や薄絹に透けて見えそうな乳首の突起、
そして柳腰とは対照的に豊満な臀部を撫で回すように見ている自分に気がつくと、
不孝という枠を超えた名状しがたい罪悪感に襲われつつも、やめることができないのだった。

その晩も帝は太后に寝かしつけられたふりをしながら、隣に横たわる彼女の呼吸が規則的になったことを知ると、
少しずつまぶたを上げて首を巡らした。
太后はいつものように彼と向かい合うように横向きに臥せっていたが、
ふと寝返りを打ちかけたとき乳房が悩ましく揺れ、暑気のために寛げられた襟元から右の乳暈がわずかに覗き見えた。
たったそれだけのことだったが、その瞬間、帝の中で何かが弾け飛んだ。
彼は眠ったままの義母の襟に手をかけると力任せに左右に広げ、闇の中に白く浮かび上がる豊かな乳房にむしゃぶりついた。
義理の息子の唇に吸われながら淡い色の乳首は見る見るうちに硬くなり、指で弄ばれるもう一方の丘も同様だった。
396名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 13:56:45 ID:4d4a4fd7
「あ……」
太后は眠ったまま蛾眉をひそめ、可憐な唇をわずかに開いて苦悶のような呻きを漏らしたが、じきにそれは明らかな愉悦の声に変わった。
「ああ、陛下、もっとお優しゅう……陛下!?」
太后は瞳を大きく見開き、自分に覆いかぶさる影を見つめた。
最初の陛下は亡父のことで、最後の陛下は自分への呼びかけであると帝は分かっていたが、顔も上げずにただ乳房を吸い揉みつづける。
「なりませぬ陛下!かような、禽獣に等しい真似を」
「われらの父祖は、かつて北の故地でこのような風習を持っていたと申します」
もはや自分が何を言っているかも分からぬまま、帝は迸る欲望のままに太后の細い手首を押さえつけ、長い裾をはだけさせて両膝を無理やり開かせた。
「ここが、母上の」
女体の仕組みは宦官たちから漠然と教えられてはいたが、いざ全てを眼前にして帝は感嘆の吐息を漏らした。
濡れた花びらのような陰唇は昼間に見れば淡い桃色に違いなく、恐る恐る指でなぞってみると早くも卑猥な水音を立てた。
「お許しくださいませ陛下、これ以上は誠に……」
母親の声でそう諌めながらも、太后はもはや全身の力を緩めざるをえず、継子の指先に弄ばれるがままに秘所を濡らし火照らせる一方であった。
肉襞の中央にある突起はまもなく硬くなり、帝がその過敏さを愛でるように顔を近づけ舌先でなぞってみると、
寡婦にしておくにはあまりに惜しい豊満な美体はあられもなく反り返った。

「母上、朕はもう」
帝は耐えかねたように顔を上げると、義母の身体をうつぶせにし、腰だけをつかんで自分の下腹に近づけた。
若年の帝は人間の男女の交合についてほとんど無知だったが、
騎馬民族を出自とする皇室であるだけに、馬の交配についてはよく知るところだった。
「い、いけません、こんな恥ずかしい姿で、いやあああ!!」
太后は突如理性を取り戻したかのように懸命に抗おうとしたが、
帝は許さず、硬く反り返った陽物の先端を無理やり肉襞の間にうずめた。
容赦なく突き進むたびに閨には肌と肌の摩擦音が立ち、粘っこい水音がそれに続く。
先帝の陽物にも何度となく突き上げられ隅々まで開発されたに違いない太后の秘所は、
溢れかえる愛液を内腿にまで滴らせながら吸い付くように帝を迎え入れ、
亡夫に教え込まれた房中の技に忠実に、無意識に締めつけを繰り返しながら奥の奥まで導き入れた。
この世で最も高貴な義理の息子から獣のように犯される屈辱に、
本来が深窓の令嬢である彼女は涙を布団に染み込ませながら耐えていたが、
身体のほうは正直な反応を隠しようもなく、
もはや先帝の皇后としての誇りも垂簾の政を行う君主としての威厳も忘れたかのように、
背後から荒々しく突かれるがまま、天井まで届くほどの嬌声を上げざるをえなかった。
397名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 13:57:37 ID:4d4a4fd7
「あ、だめ、中にお出しになっては……なりませぬ、お離れくださいませ!」
義母からの必死の懇願も聞き入れず、世に孝行を謳われたはずの皇帝は本能に命じられるまま、
自身をしっかりと咥えこむ楽園のような秘所に心ゆくまで精を放った。
それでも彼の若い肉体は満足できず、その晩はあと二度同じ体勢のまま太后を犯し、
涙を流して哀願する声も聞かずに二度とも彼女のなかで果てたのだった。

東の空が白み始めたころ、帝はようやく太后を解放する気になったが、火照った秘所から陽物をゆっくり引き抜くと、
濃厚な白濁液が陰裂から少しずつ滴り落ち、すでに愛液で濡れつくしている陰唇と内腿を重ねて汚し始めた。
太后はもはや涙も枯れ果てたかのように何も言わず、尻を帝に差し出したままの従順な姿で呆然としている。
だが少なくとも肉体のほうは、数年ぶりの激しい愛撫と交わりに満足しきっていることは間違いなく、
その事実は乱れたままの熱い吐息が語っていた。
帝は改めて太后の秘所を押し広げ、後から後から滴り落ちてくる自らの精液を指先にとると、
充血した陰唇や膨らんだままの陰核に塗りたくったばかりか、さらに手を伸ばして尻肉や乳房や唇にまで塗りつけた。
こうすることで初めて、彼女が父の妃という立場から自分の愛玩物になったような気がした。
白梅のように清らかな肌が同じく白い精液で汚されていくさまは形容しがたいほど淫猥で、
自らが義母にしている仕打ちとは今でさえ信じがたい気がする。だが帝の心は決まっていた。
虚ろな目をした彼女の顎をつかんで上げさせ、見下ろすように告げる。
「太后は明晩も朕の枕席に侍るように。勅命である」
そして再び硬直を始めた陽物の先端を太后の濡れた唇に含ませ、最後の一滴まで嚥下させた。



おわり

史実の馮皇太后に献文帝との夫婦関係があったとしたら、政権掌握のために自分から食ったんだと思われる
398名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 15:11:47 ID:AUrD1tE7
>>395Gj
上品な文章なのになんとも言えずにエロい
399名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 14:36:43 ID:Ge7FnmIz
久しぶりに来たら………
ああ、とてもとても、GJです!!
来て良かった・・・
400名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 20:17:18 ID:RFN5qpGy
ふぅ
401名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 17:18:06 ID:FPO0gttz
GJ
402名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 09:09:40 ID:LXeB9F66
やっと規制解けたぜ >>395 GJ
403名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 18:33:35 ID:msFkN7hC
GJ

武則天は側室だけど、皇太后のケースもあったのな
404名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 00:23:38 ID:g5j1K/Rp
超GJ
405名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 15:34:07 ID:pKPbBIY3
保守
406名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 06:53:02 ID:eN/zARd6
よくわからんが保守
407名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 00:30:51 ID:hF4W/k+a
お姫様がいない
408名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 00:57:47 ID:AEZExUIj
王子vs騎士⇔お姫様vs女騎士
409名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 01:48:22 ID:LPTBWRG3
お姫様と女騎士でガチレズですか萌えますね
410名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 02:07:50 ID:/IS/9LwO
王子と騎士でガチホモですか萎えますね
411名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 05:32:31 ID:AEZExUIj
vsってそういう意味じゃないぞおまえら!
412名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 05:55:21 ID:StLT7SNL
>>409
FF光の四戦士、意外とお勧め
413名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 01:30:56 ID:hYmE8GdM
お姫様を王子と女騎士が取り合います。

ここは百合板じゃないのでしょうがないから王子が勝ちます。
414名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 15:52:34 ID:WKC0z92x
そこは仲良く共存エンドでお姫様が寄ってたかって責められるのが良いのです
415名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 23:10:21 ID:0KzU8Ko1
>>414
自分が間違っていました。

毎日、王子と女騎士のお姫様についての下らない争いに巻き込まれるお姫様。
双方が相手の隙を伺いつつお姫様を口説き落とそうとしたり、寝所に引っ張り込む。
訳もわからず振り回される中、
諍いが大きくなりすぎると時々二人の間で妥協策として3Pをする事が勝手に決定され、
二人に寄ってたかって攻められるお姫様。
すごく美味しいです。
416名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 15:28:04 ID:6xkQdu+1
>>415
段々行動がエスカレートする二人に堪忍袋の緒が切れたお姫様が
二人に対してお仕置き(性的な)をするってのを加えると
もっと良くならないかな?
417名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 18:12:42 ID:/bpe7F7D
そんな光景をこっそり覗いてクチュクチュしてる侍女とか、一部のマニアにはシコシコしてる男の娘な騎士とか加えるとry
418名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 00:10:55 ID:AQ5hVk8j
本当にお久しぶりです。

今から「桃色の鞠」の後編を約二年ぶりに投下します。

申し訳ないのですが、
エロいシーンは全くないので、期待しないでください。
419桃色の鞠(後編)1:2010/05/29(土) 00:14:50 ID:AQ5hVk8j
とうとう大好きな親友がフォレストから帰ってきた。
二か月ぶりの再会だ。
後宮の客間にて、二人はかたく抱きしめ合った。

『お帰りなさい。マリアンヌ。あなたがいなくて、とても寂しかったわ』
『私もよ。またあなたに会えてとても嬉しいわ』

本当に寂しいと思っていたのかしら、とセシリアは考える。
避暑地から届く手紙には、いつも友人の名前がずらりと並び、
毎日が楽しいことの連続のように書かれていた。

まあ、いいわ、とセシリアは邪心を打ち消す。
大事なのは、マリアンヌが帰って来たこと、ここにいることだ。
気を取り直して、長椅子の上に置いてあった桃色の鞠を拾い上げた。

『あら、鞠投げするつもり?』
そんなの子供っぽいわ、とマリアンヌは気取って首を振った。
『……そうかしら?』
セシリアは手中の鞠を見下ろす。
親友の言葉を聞いた途端、
あんなに鮮やかだった桃色のそれは、急に色褪せてやぼったく見えた。

『そうよ。私たちは立派な淑女なのだから、
 いつまでも幼子みたいに振る舞っていられないわ』

十を数えたばかりの王女の発言に、
そばに控えていた女官たちはこっそりと肩を震わせ、笑いをこらえていたのだが、
セシリアは口をぽかんと開けて、マリアンヌの一言一言に耳を傾けた。
八歳の少女にとって、年上の親友が語る言葉は未知の世界だった。
それは、父親がいつも読んでいる難しそうな本のページや、
母親が夜会の準備をしているときに開く宝石箱の中にひそんでいるような
知りたくて近づきたくて、でもひるんでしまう世界だった。

『ねえ、そう思うでしょう、セシリア』
『セシリア?』
聞き慣れない呼び方に、セシリアはすぐさま反応する。
マリアンヌはいつも「リア」と呼んでくれた。
ときどきは「私のかわいいリア」と。

『ええ、これからはあなたのことをそう呼ぶわ。
 だって、それがあなたの正式名なのだから』
そう言われて、
何だか一人前の大人になったような気分がして、
自分の名前の響きが特別に感じられて、
セシリアは無意識に背筋をしゃんとのばした。

『さあ、セシリア。こちらにいらして。
 あなたに見せたいお土産がたくさんあるの』

まあ、いいわ。とセシリアは頷いた。鞠遊びはまたいつでもできるもの。
鞠を客間の椅子の上に再び乗せると、セシリアは
はりきってマリアンヌのあとを付いていった。

置き去りにされた桃色の鞠は、女官の一人に拾い上げられた。
そして、他の玩具と共に、後宮の一室にしまわれることになったのだが、
玩具で遊ぶよりも、他のことに興味を持ち出したセシリアが、
その鞠を取りに来ることはついになかった。
420桃色の鞠(後編)2:2010/05/29(土) 00:17:29 ID:AQ5hVk8j
     ***

大きな鏡の中に、夜会服を纏った少女が映っていた。
深みのある緑色のドレスは、胸元から裾にかけて金糸で薔薇が縫い込まれ、
金色の髪と見事な調和を成している。
アクセントには、耳元でちらちらと光る紅玉の首飾り。

どんなに豪奢なドレスを持っている令嬢でも、感嘆のため息を漏らすようなドレスだった。
少なくとも、着付けを担当したトルテは、いくら何でもこのドレスに文句を言うまいと考えた。
ところが、鏡の中の少女は渋面をつくり、首を振った。

「似合ってないわ」
「まあ、そんなことありません!」
トルテは思わず言い返し、いったい彼女に何があったんだろうと、その顔を覗き込んだ。

すでに彼女は二枚も夜会服を変えているからにして――どれもとても似合っていたのに!――
虫の居所が悪いのは明らかだ。そして、それはとても珍しいことだった。

セシリア=フィールドは素直で聞きわけの良い、
不謹慎な言い方をすれば、とても扱いやすい主人だった。
夜会のための支度だって、いつもなら半時もかからずに終わってしまう。
「あなたが見立てた衣装と装身具に間違いないわ」と言うのがセシリアの弁であり、
自分のセンスに信頼が置かれていることは、トルテの誇りだった。
それなのに、今回に限ってセシリアはどのドレスにも満足を示さず、夜会の準備は遅々として進まない。

「セシリア様、もしかしたら疲れていらっしゃるのでしょうか?」

何しろ今夜の夜会は、正規の予定に組み込まれておらず、突発的に開催が決まったものなのだ。
それでなくても、記念祭はすでに四日目に突入し、
セシリアたち王侯貴族は連日連夜、寝る暇も惜しんで騒ぎ明かしている。

「……いいえ。そういうわけではないの」
セシリアは鏡の中をじっと見つめながら、そう返答した。
夜会服を見ているというよりは、自分の顔を睨んでいるように見えた。

「ただ、この衣装が気に入らないだけ。だって色が地味だから顔が陰気っぽく見えるんですもの」
「そうでしょうか」 トルテは戸惑いながらも、自分の本心を伝えようと決心した。
「でも、私はセシリア様にとてもお似合いだと思います。とても大人びて、理知的に見えます」
いつものセシリアだったら、その褒め言葉を素直に喜ぶに違いなかった。
「でもね、トルテ」
それなのに、今日の彼女はふてくされたような表情を浮かべたままだった。
「私は大人になんかなりたくないのよ」

まあ確かに、とトルテは考えた。
公爵令嬢という立場に身分を置くこの人ならば、
大人になる必要なんかないだろうし、またそれが許されるのだろう。
421桃色の鞠(後編)3:2010/05/29(土) 00:24:14 ID:AQ5hVk8j
トルテが音を上げそうになったとき、
タイミングよく衣裳部屋の扉が開かれて、救世主が訪れた。
「あら、セシリアだったのね」
「―――お母様」
セシリアは振り返り、抑揚のない声で呟いた。

「こんなところで何をしているの?」
フィールド公爵夫人は、積み上げられたドレスの山や散らばっている装身具に目を留めて、
不思議そうに首を傾げた。
着るもののことに無頓着なセシリアが
衣裳部屋に長時間籠るのは珍しいことなのだ。

「夜会の支度をしておりました」
トルテは膝を折り、セシリアの母親であり、この屋敷の女主人でもある女性に頭を垂れた。
「あら、どこの夜会?」
公爵夫人がたいして興味もなさそうに尋ねると、
やはりセシリアも気乗りしなさそうに答えた。
「王宮よ。マリアンヌが企画した夜会なの。
 若い人たちだけの集まりなんですって。
 でも―――」
そこでセシリアは言葉を切って、目を輝かせた。
「もちろん、お母様たちが反対なら、出席しないわ」
「あら、どうして反対なんかするの? 若い人たちの集まりなんて、結構なことじゃない。
 マリアンヌ王女が主催する会だったら、礼節のあるものに違いないでしょうし」
真偽のほどはともかく第四王女の信頼は絶大だ。
王族の娘が間違った行為をするはずがない、と元王女である公爵夫人は信じていた。

「礼節のある会になるかは疑わしいわ。なにしろ男の人もたくさん招かれているのよ
 最近の若い殿方ときたら……」
ねえ、わかるでしょう、と言いたげにセシリアは言葉を濁した。
公爵夫人は、機械的に頷き返しながら、
「なおさら結構なことじゃない。あなたは男の人に対して堅いところがあるから、
 もう少し柔軟にお喋りができるように練習した方がいいわ」
422桃色の鞠(後編)4:2010/05/29(土) 00:26:18 ID:AQ5hVk8j
セシリアは目を伏せて、しばらく経ってから口を開いた。
「お父様とは、正反対のことをおっしゃるのね」
「あの人が言いそうなことは見当がつくわ」
公爵夫人は愉快そうに目を細めた。
「おおかた箱入りの深窓の令嬢を仕立て上げたいんでしょう。
 でもね、王家の娘は、誰をも受け入れて、
 誰からも愛される存在にならなくてはいけないのよ」
その次に続く言葉は、想像するのは容易だった。公爵夫人の口癖だったからだ。
「マリアンヌ王女のようにね。あなたの身近にお手本がいて本当によかったわ」

「……私は」
さらに言い募ろうとして、公爵令嬢はたくさんの言葉を飲み込んだ。
何を言いたかったのかわからない。
俯いているので、どんな表情をしているのかもわからない。
でもトルテにはよくわかっていた。
彼女は抵抗するかわりに、「受け入れ」たのだ。
「王家の娘」は愛されるために、何もかもを受け入れなくてはならないから。
423桃色の鞠(後編)5:2010/05/29(土) 00:26:58 ID:AQ5hVk8j
再び顔を上げた、セシリアはいつもの彼女だった。
無垢で無邪気で、適度に我儘な公爵令嬢。

「私は、このドレスが気に入らないの」
セシリアはかわいらしく顔をふくらました。
「同世代の令嬢たちは、みな家名の威信をかけて、素晴らしい装いで王宮を訪れるのよ。
 それなのに公爵家の令嬢だけが、地味な装いをしていたら、さぞや目立つことでしょうね」
「あり得ないわ!」
途端に、公爵夫人は顔をしかめた。
娘が他の少女たちよりも劣る可能性があるなんて、考えたくもなかったのだろう。

「そういえば、確かに地味なドレスばかりね。まるで喪服じゃない。
 どうして、もっと明るいドレスを注文しなかったの?」
「お父様のご意向なのよ。どうしてだがわからないけれど、
 必要以上に華美な色は控えるべきだと主張されたの」
やけにセシリアは挑戦的に言ってのけた。

「あら、あら。あの人ったらやることが極端なのだから」
驚いたように、公爵夫人は口元に手を当てたが、次の決断はあっという間だった。
「まだ時間があるでしょう。すぐにケネスを呼ぶわ」
それは、リヴァー随一の仕立て屋名前だった。

「まあ、お母様。今から採寸をするっていうの?」
「まさか、そこまでの時間はないわ。でも、私の娘時代のドレスがいくらでもあるわ。
 それを当世風に仕立て直す時間くらいはあるでしょう」
「すごいわ!」
セシリアが母親に抱きつくと、彼女は目を丸くした。
「まあ、少しは落ち着きなさい。あなたはもう十六なのよ」
お小言には耳を貸さずに、セシリアは母親の頬にキスを贈った。
「とても素敵。お母様は魔法使いみたいね」
「大げさな子ね」公爵夫人は満更でもなさそうに、笑顔を作った。
「それで、何色のドレスがいいのかしら?」

少しの間セシリアは考え込むように瞳を閉じ、目を開けると厳かに宣言した。
「桃色よ」
それは、普段のセシリアが纏わない色の服だった。

「わかったわ、さっそく見繕ってきましょう」
公爵夫人はトルテの方を振り向いた。
「一緒に来てちょうだい」
はい、と返事をしながら、トルテはやれやれと思った。
どうにか夜会の準備は進みそうだ。

公爵夫人のあとに続いて部屋を出る直前、トルテはちらりと背後に視線を向けた。
深緑色のドレスを纏ったままのセシリアは自分の侍女ににっこりと笑いかけた。
あの服だってとても素敵じゃないか、とトルテは思う。
確かに、地味な色合いかもしれないが、喪服のようだなんて言い過ぎだ。
最高級の布地と最新流行のラインを取り入れて、
公爵令嬢ただ一人のために縫い上げられた衣装。
どれほどのお金と時間がかかっていることか!

しかし、セシリアと公爵夫人が、その事実を気づくことは永遠にないのだ。
424桃色の鞠(後編)5:2010/05/29(土) 00:29:54 ID:AQ5hVk8j

「あんなことではしゃぐなんて、まったくあの子も子供っぽくって困ったものね。
 もう十六になったというのに」
長い廊下を歩きながら、公爵夫人は嘆息する。
しかし、いかにも愛しそうに「あの子」と呼ぶことにトルテは気づいていた。
「やっぱり、ああいうところは、リヴァーの気質を受け継いでいるのかしらね」
公爵夫人に言わせると、陽気でお祭り好きなリヴァーの国民は、
あまりにも自分の気持ちを率直に表現し過ぎるらしい。
一方、自分の気持ちを奥ゆかしくも胸のうちに秘めるのがノイスでは美徳されていた。

同じくノイスの出身であるトルテは機械的に頷きながら、
これだけは言っておこうと口を開いた。

「“あんなこと”でありません。
 セシリア様は新しいドレスが着れることが嬉しいんではなくて、
 奥方様のドレスを着れることが嬉しいんですわ」

娘を厳しく躾けたいがため、ともすれば母娘のあいだには、情にあふれた交流が乏しい。
そのため、時たま公爵夫人が見せる優しさをセシリアは有頂天になって享受するのだ。

「セシリア様は、奥方様が大好きですから」
「あら」
そこで公爵夫人は照れたように微笑んだ。
「あなたはとても思いやり深いのね。
 やっぱり、あなたを侍女に選んで正解だったわ」
「まあ、そんなこと!」
思いがけない賛辞に、トルテは目を伏せた。
「わたしは、ノイスのことを教えることくらいしかできませんのに」

そう。公爵夫人は娘の教育のために、ノイスの習俗に通じている侍女を探していた。
だから、トルテが選ばれたのだ。
そのわかりやすい役割の方がトルテにとっては気が楽だった。
425桃色の鞠(後編)7:2010/05/29(土) 00:33:10 ID:AQ5hVk8j
「もちろんあなたを決めたときは、ノイス出身であることが、決め手になったけれど」
そこで公爵夫人は“長持の部屋”の扉を開けて中へ入った。
「それでなくてもあなたはセシリアによく仕えていてくれるわ」

通称、“長持の部屋”には、公爵夫人がノイスから嫁いで来たときの嫁入り道具が納められている。
細工の細かい家具や調度品。たくさんの長持の中にはあふれるばかりの衣装と装身具。

故郷の懐かしい品々に囲まれて、トルテの胸にはふいに熱いものが込み上げてきた。
かつてはトルテの生家もこのような家具を所有していたのだ。
トルテ自身も最新流行のドレスで着飾り、「お嬢様」とかしずかれていた。
それなのに現在のトルテは別の少女の衣装の支度をし、その少女に仕えているのだから、
運命とは本当に皮肉なものだ。
もし、あのときに歯車が狂わなかったら―――――。

「ねえ、トルテ。セシリアのことなのだけれど」
「は、はい」
トルテは我に返って、公爵夫人に向きなおった。
「もしかしたら、あの子には好ましいと思っている殿方がいるんじゃないかしら?」
「は?」
「だから、自分のことを綺麗に見せたようとして
 あんなにも身なりのことにこだわっているのかもしれないわ」
「はあ」
その話題があまりにも寝耳に水だったため、トルテは目を瞬かせた。

しかし、それは説得力のある推察なのかもしれない。
セシリアは、日中のほとんどを王宮で過ごしているのだし、
あの社交的なマリアンヌ姫と仲がいいのだから、
その気になれば、異性と知り合う機会はごまんとあるはずだ。

「あなたは、何かセシリアから聞いていない?」
「いいえ、そのようなお話は伺っていませんわ」
トルテは慎重に言葉を紡ぎながら、
最近のセシリアの様子を思い浮かべてみる。
しかし、実際のところ記念祭が始まった直後は、“別のこと”が気にかかり、
トルテの注意力は散漫になっていた。
もし、セシリアの心中に何か異変が生まれていたとしても、
うわの空でいた自分がその兆候を見逃していた可能性は大いに有り得るのだ。

「でも私の目から見ますと……何と申しますか……セシリア様は
 あまり異性を意識していないというか、関心がないように思われます」
自己保身は抜きにしても、それはトルテの正直な感想だった。
「そうよね」
トルテの言葉に納得したのか、公爵夫人は安堵したようにため息をもらした。
「確かにセシリアは成人したというのに、まだ本当に子どもっぽいわ」
先ほどまでは、娘の幼さに不満そうだったのに、
今や彼女はそれに安堵しているように見え、トルテは首を傾げた。
そのときの彼女にとって、公爵夫人の心中なんて到底知り得なかったのだ。

426名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 00:36:35 ID:8pb88o19
支援いるかな?
427桃色の鞠(後編)8:2010/05/29(土) 00:36:35 ID:AQ5hVk8j

鏡の中に、深紅のドレスを纏った少女が映っていた。
彼女の表情は、万華鏡のようにくるくると変わり、まるで期待と不安の綱引きをしているようだった。
それも片想いの相手との対面を控えている乙女ならば無理からぬことだっただろう。
ごく一般の深窓令嬢と同じく、コートニーは男性心理に長けるとは言い難かったが、
年若い男性が、女性の内面よりは外見の方に惹かれやすいということはよく理解していた。

第一印象こそが全てを決めるのだ。
だからこそ、コートニーは鏡の前に立ち尽くし、自分の魅力の発見することに余念がなかった。

いくら周囲からちやほやされようとも、自分が絶世の美女でないことはわかっている。
でも、この鮮やかな色のドレスを着ている自分はなかなか素敵だわと、コートニーは自画自賛した。
コンプレックスの一つである、暗い褐色の髪も、深紅のドレスと合わせると悪くない。

けれども、リヴァーの宮廷で見た令嬢たちの優美な装いを思い出し、ため息がこぼれた。
この国の最新流行と比べると、自分のドレスは野暮ったく見えるのではないだろうか。
なにしろ第三王子ともなれば、美しく着飾った貴婦人なんてそれこそ見慣れているだろう。
そう考えただけで、コートニーの心は絶望の底に押しやられた。

マリアンヌみたい美しくなれたら、どんな殿方の前だって気おくれする必要ないのに。
そう思いながら、コートニーは鏡越しに、背後を確認した。
第四王女は長椅子にゆったりともたれかかり、招待客のリストを見ている。
切れ長の目。長いまつげ。すっと通った鼻筋。薔薇色の口元。そして、何よりも強い自信にあふれた表情。

美しいマリアンヌが自分の味方でいてくれる。それは随分心強いことだった。
おまけに、彼女はエルドの姉で、だからこそ彼に干渉することに何のためらいもないのだ。
428桃色の鞠(後編)9:2010/05/29(土) 00:37:30 ID:AQ5hVk8j

夜会が始まる前の、控え室で待っている一時が、マリアンヌは好きだった。
もちろん、夜会そのものも最高にわくわくする時間だが、
“これから何が始まるかもしれない”という期待を募らせる瞬間はたまらなく心地よい。

マリアンヌは招待客の名前が書かれている紙の束を確認しながら、くすりと笑みをこぼした。
今回の夜会で結び付けたいと考えている男女は実に数十組にも及ぶ。
果たして何組の恋人が成立するか、不謹慎ながら、エリオット=ベイリアルと賭けまでしているのだ。
さあて、どうなることやら。

「コートニー。夜会の前に、何か軽いものでも召し上がる?」
マリアンヌは浮き浮きしながら、鏡の前にいるコートニーに呼びかけた。
「ありがとう、でも結構よ。胸がおしつぶされそうなの」
フォレスト王国の王女は神経質に髪の毛を撫でつけ、鏡の前を離れようとしなかった。
先ほどからずっとこの調子だ。二言目には、
「エルド様は、私のことをどう思うかしら?」
と呟き、自分を少しでも魅力的に見せることに余念がない。

そこまで熱く弟に想いを寄せているのね。
今更ながら、マリアンヌはすっかり感服させられていた。
そもそも、この夜会の発端は、コートニー王女の一目惚れが原因だった。
それなのに、他の紳士淑女たちの色恋沙汰に心を砕くあまり、マリアンヌはそのことをすっかり忘れかけていた。
自分に関わる全ての人を幸せにしたいと願う彼女の博愛精神は、
誠に結構なことなのだが、実のところ、欲張りすぎて手に追えなくなるのが難点だった。

もちろん友人と弟の仲がうまくいってくれたらとても嬉しいわ、とマリアンヌは考える。
しかし、コートニーに思いつく限りの誘惑の方法を教え、
最終的にはエルドを酔いつぶすという手荒い計画まで企んでいるにも関わらず、
この二人の関係がどのように転ぶか、マリアンヌは何の確信を持てなかった。
その点に関して言えば、エリオットの方が、ずっとはっきりしていた。

『僕はあの二人は上手くいかないと思うな』
そう言って、エリオットは二人の名前を、不成立の項目の下に書いた。
『エルド様は、目の前に美味しそうな果実があっても、手を伸ばそうとはしない性格だよ』
『あら、それは手を伸ばす勇気もない臆病者ということかしら?』
『ううん。そうではなくて』そこでエリオットは、意味ありげに笑った。
『何だかんだと理屈をこねて、痩せ我慢するのが好きな性質なんだよ』
自信満々に羽ペンに振り回すエリオットの弁は、なかなかに説得力が感じられ、
マリアンヌは自分が劣勢にいるのではないかという懸念に襲われた。

それというのも、相手がエルドだというのがいけないのよね。
マリアンヌは紙の束を扇のように振りながら考えた。
彼女にとって、弟の印象は、数年前から立ち止まったままだ。
彼より大きな本に顔をうずめ、床に届かない足をぶらぶらさせて椅子に座っている、こまっしゃくれたおチビさん。
たまにマリアンヌが話しかけようとすると、いかにも迷惑そうに口答えするのだが、
その様は、まるで子猫が自分を虎だと思い込んで威嚇しているような、
一種の微笑ましさがあり、なかなか可愛くもあったのだ。
429桃色の鞠(後編)10:2010/05/29(土) 00:39:52 ID:AQ5hVk8j
「コートニーったら、そんなに鏡にへばりついていてもしょうがないでしょう。あなたは十分に美しいわ」
痺れをきらして、声をかけると、コートニーはマリアンヌの方を向いた。

「ああ、どうしましょう。私はエルド様の前で、どんな風にふるまったらいいの?
 あの方は、どんな女の子が好きなのかしら」
「そうねえ」
弟について考えてみるが、彼の好みのタイプなんて、マリアンヌには想像もつかなかった。
エリオットの冗談めいた報告によれば、女性に興味があるかどうかも怪しいくらいなのだ。

「でもね、実際のところ、あいつだってわかっていないと思うわ。
 これだけは、覚えておいて。エルドは女の子という存在に慣れていないの。
 もう少し愛想が良かったら、女友達くらいできたかもしれないのにね。
 だから、最初はあなたに素っ気ない態度を取るかもしれないわ。
 でもあなたに興味がないわけではなくて、どうふるまったらいいかわからないだけなのよ」

おそらくね、とマリアンヌは心の中で付け加えた。
本音を言えば、弟のことなんて、何一つわかりはしなかった。
しかし、明るくにこやかな少女に魅かれない殿方なんているだろうか。
その子が可愛いらしい容姿をしているなら尚更だ。

「だから、その分、あなたの方が何枚も上手なのよ。
 あなたはその愛らしい魅力で、すんなりと相手の懐に入っていけるんですもの」
「そうかしら」
コートニーは頬を薔薇色に染め、満足そうに口角を上げた。
「ね? そんなふうに初々しく可憐なあなたならば、エルドも気にせずにはいわれないわ。
 だから自信を持ってちょうだい」
「そうね、ありがとう」
素直なコートニーは安堵のため息をついた。
「私ったら、お礼を言うばかり。
 あなたには、並大抵の感謝では足りないというのね」
「あら、そんなの。気になさることないわ」

「あなたの恋に私も協力できたらいいのに」
それは無邪気な乙女らしい、真心のこもった言葉であった。
「まあ」と呟いて、マリアンヌは瞬きを繰り返した。
ある意味で新鮮な提案であった。
リヴァーの令嬢たちであったなら、第四王女にそんな大胆なこと持ちかけられなかっただろう。
ありとあらゆる殿方の心を手中におさめている―――少なくともそういう定評のある―――社交界の女王の相談役に名乗りを上げるなんて!
「そうね―――何かあったら相談させてもらうわ」
にっこり笑いながら、そんな日が訪れないことをマリアンヌはわかっていた。
恋愛とは一種の能力であり、できる者とできない者がいる。
そして、残念ながら自分は後者に属するのだ。おそらく、たぶん。

『―――あなたは』
ふっと誰かの低い声が耳元で響いた。
『あなたの心を絡め取った誰かを本当は忘れたくないのでしょう?』

マリアンヌの頭の中で、ほんの一瞬、熱い火花が音を立てたような気がした。
でも、それは煌めいてあっという間にどこかに消えてしまった。
だから、マリアンヌは気付かない振りをして、再び招待客のリストに目を落とした。
430名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 00:43:59 ID:Qr8bwChv
支援ですよ
431桃色の鞠(後編)11:2010/05/29(土) 00:44:07 ID:AQ5hVk8j
「ごきげよう。遅くなってごめんなさい」
控え室の扉が開かれ、軽やかな声が舞い込んだ。
顔を上げてみると、そこには桃色のドレスを纏った金髪の令嬢が微笑んでいた。

「マリアンヌ? どうしたの?」

一瞬のあいだ、彼女を凝視し、マリアンヌはどこか懐かしい感覚にとらわれた。
ただその記憶は、あまりにも遠くてもう完全に取り戻すことはかなわなかったのだが。

「セシリアなの?」
ふと当たり前の言葉が口をつく。もちろん彼女は、間違いなくセシリア=フィールドだ。
マリアンヌの従妹で、気心の知れた親友。
この控え室に侍女の申告もなしに入れるのは、彼女ぐらいなものだろう。

「ええ、私よ」
問われた彼女は不思議そうに頷いて、マリアンヌたちに近づいた。
歩くたびに、彼女のドレスの布地はふわりと揺れ、柔らかな衣ずれの音が聞こえてきそうだった。
それは目が覚めるような桃色で、その花びらのような布地にこぼれる金色の髪は、蜂蜜のように淡く輝いていた。

「まあ、とても美しいわ。
 あなたは桃色が似合うのね」
ため息と共にマリアンヌが賛辞の言葉を述べると、セシリアは照れたように自分の衣装を見下ろした。
「本当かしら?」
「ええ、私がお世辞なんかで褒めないわ。ちょっと回って見せてよ」
マリアンヌが頼むと、セシリアは白い歯をのぞかせて笑い、くるりと一周ターンした。
花びらのようなドレスの裾は、軽やかに円を描き、その中心にいるセシリアは、
使い尽くされた言葉であるが、まるで花の精のように優美だった。

まあ素敵、とマリアンヌは歓声を上げた。
「セシリア。今夜はきっと何人もの殿方に声をかけられると思うわよ」
どうして気付かなかったんだろう。
弟が年頃なら、従妹だって同い年なのだから、
彼女にだって華やいだ話があってもおかしくない。
いいや、むしろ自分が提供してやるべきなのだ。

「あら光栄だわ」
セシリアがにっこりする。
マリアンヌの言うことなんて、爪の先ほども信じてないようだった。
「大丈夫。私がそばにいて、あなたに似合いの殿方を見極めてみせるわ」
「まあ、でも、そんな……」
セシリアは戸惑ったように目を瞬かせる。
「そのショールはないほうがいいじゃないかしら。肩を出した方が魅力的だわ。
 いいえ。待って。やっぱりショールはしていた方がいいわ。
 殿方と会話の途中で何ともなしに肩から滑らせて、ちらりとうなじを見せつけるのよ」
セシリアは、戸惑っているようだったが、マリアンヌに注目されて嬉しそうに微笑んだ。
432桃色の鞠(後編)11:2010/05/29(土) 00:45:15 ID:AQ5hVk8j
「マリアンヌ!」
コートニーが焦ったように、二人に近づいた。
「あなたは、私のそばにいてくれるはずでしょう」
真紅の令嬢は、少々不安そうに、マリアンヌの腕を取る。
「あら、もちろん。あなたにエルドを紹介するまではね。でも、どのみち、
 あなたたちを二人きりにさせるから――――」
「そうでしょう? まだ、そのお話が済んでいないわ。私は、エルド様とどんな事を喋ったらいいのかしら」

「ああ、そうね。エルドと何について話せばいいのかしら」
マリアンヌは助け船を求めるように、ちらりとセシリアの様子を伺った。
「どう思う、セシィ?」
「エルドが興味を示す話題ですって? そんなの見当もつかないわ。
 私が話しかけても、いつも面倒そうな返事しかしないんですもの」
「そうなのよね」
そこでセシリアとマリアンヌは目を合わせくすりと笑った。
共通の体験を持つ者同士だけができる目配せというやつだった。

「そうね。エルドの好きなことと言えば、読書か乗馬よ。
 その辺りのことを振ってみれば、少しは話が弾むのではないかしら」
ふうん、とコートニーは呟いた。
「やっぱり、あなたって、ずいぶんと、エルド様のことをご存知なのね」
あからさまに、うらやましそうな視線に、セシリアは目を丸くする。

「たった、これくらいのことで、ずいぶん知っている範疇に入るのかしら?」
おそらくセシリアは純粋に驚いただけで、他意はなかった。
しかし、コートニーの眉がぴくりと吊り上がる。
マリアンヌはすぐに察知した。

「ほら。セシリアは幼い頃から、私たち姉弟と共にいるから、
 好むと好まざるとお互いのことを知ってしまうのよね」
ことさら明るい声を出して、マリアンヌは場の空気を取り繕うとした。
「ええ、そうなのよ」と、セシリアは大真面目に頷いた。
「それにエルドとは友人同士ですもの」

友人ですって? その発言にマリアンヌは耳を疑った。
エルドとセシリアのあいだに友達という関係を当てはめるのは奇妙な気がする。
自分の記憶の中にある二人は顔を合わせば、言い争いをしているか、
あるいはお互いの存在など見えないように無視し合っているかのどちらかでしかなかった。

「……まあ、そうなの」
そう呟いたコートニーはどこか不満そうな色が残っていた。
「ねえ。コートニー。実践演習でもやろうじゃないの」
どことなく気まずい雰囲気を払拭させるために、
マリアンヌは卓上の杯を手に取って、コートニーに近づいた。
心の片隅では、何か不吉な予兆を感じていた。
433桃色の鞠(後編)13:2010/05/29(土) 00:46:45 ID:AQ5hVk8j
「私が、エルドの役を演じるわ」
マリアンヌはコートニーの前に立って、杯をおしつけた。
「私があなたをエルドに紹介したとするでしょう。
 さあ、あなたはどんな風に振る舞うの?」

「まあ、どうしましょう」
あたかも片恋の相手が目の前にいるかのように、コートニーはもじもじと顔を赤らめた。
セシリアは黙って、二人の様子を見守っている。

「簡単よ。まずは相手に杯を勧めればいいじゃない」
マリアンヌが助言すると、コートニーはこくりと頷いて、
優雅な仕草で、目の前のマリアンヌに杯を差し出した。
「エルド様、お飲み物は如何ですか?」

そうそう、そんな感じよ、と目で合図しながら、
マリアンヌは差し出された杯を受け取ろうとした。
そのときセシリアが小さいくしゃみをした。
その微かな音に、一瞬だけ気が削がれたのは、完全にマリアンヌの落ち度だった。
だがその一方で、いつもとは違う様子のセシリアの挙動に気を配っていたという言い訳もあったのだ。
ともかく、マリアンヌは杯を取り落としてしまい、中に入っていた水は、勢いよく床にこぼれて広がった。

「いやだわ、私のドレスが!」
コートニーが悲鳴を上げる。飛び散った水滴は、彼女の真紅のドレスにまだらに染みをつくっていた。
「まあ、コートニー。ごめんなさい」
慌てながら、マリアンヌは床に転がった杯を拾い上げた。自分のドレスはほとんど濡れていなかったため、余計に焦る。
「ごめんなさい。私がはしたない真似をしたばかりに」
セシリアが自分のショールをさっと脱いで、コートニーのドレスの水滴を拭おうとする。
「まあ、セシリア。今、人を呼ぶからあなたがそんなことをしなくていいのよ」
そう言って、マリアンヌが呼び鈴を鳴らすと、直ちに女官が飛んできて、床の後始末を始めた。

「ああ、マリアンヌ。どうしたらいいの」
コートニーは肩を震わせ、今にも泣き出しそうだった。
「落ち着いて。そんなに濡れていないじゃない」
マリアンヌは必死で慰めると、女官もにこりと笑い、「すぐに乾きますよ」と付け加えた。
「でも、『こぼれた水は、元には戻らない』というでしょう? これは不吉なことの前兆のような気がするわ」
「まあ、そんなのただの気のせいよ」
「いいえ。これじゃあ全てが台無しだったわ」
そう呟いたコートニーの瞳から、一粒の涙が上品にこぼれた。
彼女の気持ちがわからないでもなかった。
たださえ特別な夜の前。気が高ぶり神経質になっていたのだろう。
完璧なドレスに完璧な自分。万全な精神状態で臨みたいのだろう。

「それでは着物を替えたらいいわ。私の衣装を貸しましょう」
そう言って、マリアンヌは立ち上がった。
実際的で行動派の彼女にしてみれば、いつまでもメソメソしているのは性に合わない。
いっそのこと新しい衣装と共に、新しい気分で夜会を迎えた方がいいだろう。

「……あら、本当に?」
目を潤ませていた、コートニーは嬉しそうに顔を上げた。
そして、さらりと、本当に何でもないことのように、次の言葉を継いだ。
「ねえ、じゃあ、私はセシリアのドレスを貸してほしいわ」
434桃色の鞠(後編)14:2010/05/29(土) 00:47:55 ID:AQ5hVk8j
「え?」
名指しされたセシリアは、呆然としたように目を瞬かせ、マリアンヌも耳を疑った。
どうして、そんなにむちゃくちゃなことを言い出したのだろう。
マリアンヌが自分のたくさんの手持ちの中から服を貸すのと、
セシリアが今着ている服を貸すのとでは、まったく意味が違うではないか。
第一、セシリアのドレスを彼女に似合うと褒めたばかりだというのに。

「ねえ、どうしかしら」
コートニーはセシリアをじっと見つめて言った。
「一晩だけでいいのよ。私に貸してくれないかしら。
 その素晴らしいドレスを着れば、何だか上手く行くような気がするのよ」
コートニーが如才なく畳みかける。
「まあ、私は……」
セシリアは困り果てたように、マリアンヌの方を見た。

「そうね。セシィ。私からもお願いするわ」
しかし、マリアンヌはコートニーに反論できる立場にはいなかったのだ。
コートニーの提案は、あまりにも自己中心的なような気がしたが、
そもそも彼女の気分を台無しにしたのは、マリアンヌの不注意なのだ。
むしろセシリアの寛大さに甘えることで事態が解決するなら、マリアンヌとしては大助かりだ。
「もし、あなたがよかったら……」
マリアンヌが懇願すると、セシリアの縋るような瞳は惑うように揺らいだ。

自分さえ後押しすれば、聞きわけの良い彼女は了承してくれるに違いない。
マリアンヌには絶対の自信があった。

「いやよ」
それは、とても小さい声だった。
最初は聞き間違いだと思った。そう信じたかった。
しかし、次の言葉ははっきりと耳に届いた。
「どうして、私がそこまでしなくてはならないの」
435桃色の鞠(後編)15:2010/05/29(土) 00:51:49 ID:AQ5hVk8j
マリアンヌは言葉を失った。驚いて何も考えられなかった。
その口から拒絶の言葉が飛び出るなんて、
その眼差しに敵意が含まれることなんて、
マリアンヌは想像すらしたことがなかったのだ。
セシリア=フィールドはマリアンヌの親友であり、妹のような存在でもあり、そして可愛いお人形だった。
自分の言葉にいつも頷いてくれる、自分の世界を決して崩さない、可愛いらしいお人形。

「あら、そう。あなたの気持ちはようくわかったわ」
呆然として二の句が継げないマリアンヌのかわりに口を開いたのは、コートニーだった。
「私は薄々感じていたのよ。あなたは、私たちに協力してくれる気なんかなかったんだわ。最初から」
そう言って、セシリアを睨みつける。先ほどまで、涙で濡れていた瞳はあっという間に乾いていた。
「だいたい、どこか見下されているような気がしたのよ。
 私とマリアンヌが話していても、会話に入ってこないで、ただ聞いているだけだったんですもの」

「そんな、私は……ただ」
セシリアは口ごもった。
今度は彼女の方が泣き出しそうだった。

泣いてちょうだい。マリアンヌは心の底から願った。
寄る辺のない、迷い子のようにわんわんと泣いてくれたら、
自分は彼女を慰め、正しい道を示すことができるだろう。

「あなたからしてみれば、私の真剣な想いなんて、さぞかしくだらなかったことでしょうね」
セシリアは泣き出すかわりに、コートニーを真っ直ぐに見つめた。
「く、くだらないなんて思ったことないわ」
どもりながら、それでもセシリアははっきりとした口調で言った。
「ただ、どこか滑稽だな、と思っただけよ。
 あんな騙し討ちみたいな作戦をしたって上手くいくはずないじゃない。
 あなたはすっかりマリアンヌの口車に乗せられているんだわ」

「まあ聞いた?」コートニーが鬼の首でも取ったかのように、マリアンヌの方を向いた。
「あなたが私のために色々と考えてくれたというのに」
マリアンヌはどういう表情を繕っていいのかわからなくなった。
この場面だって、どこか滑稽だ。
先ほどまで、子羊のように無垢で穏やかだと思っていた二人の少女が罵り合い、
二人を御していたマリアンヌは事態を収拾できる自信がまったくない。

「ちっとも知らなかったわ」
とりあえず、マリアンヌはセシリアに言葉を投げかける。何か言わなくてはならないような気がしたのだ。
「あなたがそんなこと考えていたなんて―――」
そこでマリアンヌは言葉を切った。

セシリアの茶色の瞳は、こちらを真っ直ぐに見つめている。
何の感情も含まれていない、その視線が怖かった。
今まで彼女を怖いと思ったことは一度もなかったのに。
やがて、その視線はマリアンヌの頭上に移り、セシリアは眩しそうに目を細めた。

「あなただって、私に大事なことを―――本当の気持ちを話してくれないじゃない。
 あなたはいつも自分の心を誰の手も届かないところに隠してしまうんだわ」

マリアンヌは瞬きを繰り返した。
再び、頭の中で、熱い火花が音を立てたような気がした。
でも、前と同じようにそれは煌めいてあっという間にどこかに消えてしまった。
436桃色の鞠(後編)16:2010/05/29(土) 00:53:37 ID:AQ5hVk8j
「……何のことをおっしゃっているの?」
マリアンヌが問いかけても、セシリアは俯き、それっきり何も言わなかった。

「ねえ、マリアンヌ。もう時間がないわ。夜会が始まるわよ」
出し抜けに、コートニーがマリアンヌの腕を取り、かわいらしい声で囁いた。
いつの間にか、もとの子羊のように愛らしい少女に戻ったようだった。

「……ええ。参りましょう」
マリアンヌは頷いて立ち上がった。
もう招待客は揃っているだろう。
マリアンヌが指揮をとらなくては夜会が始まらない。
そう、今夜はまだ何も始まっていないのだ。
ああ、それなのに。どこで歯車が狂ったのだろう。どこでボタンをかけ違えたのだろう。
少し前まで、とてもわくわくしていたのに。

マリアンヌは、石造りの暖炉の上にかけてある、鏡の中を覗き込み、
その中にいる、切れ長な瞳の美しい少女に笑いかけてみた。
笑みと共に、銀のティアラがきらりと輝いた。

大丈夫だ。自分の笑顔は揺るがない。それが例え、作りものだとしても。
いつの間にか偽りは、真実に変わり、嘘をついていたことさえも忘れてしまうだろう。

セシリアの横を通り過ぎたとき、ほんの束の間、両者の視線は交錯した。
彼女の表情は、マリアンヌの記憶にさあっと焼きついた。
頬は興奮で赤く染まり、瞳は一粒の星が宿ったように爛々と輝いている。
それは親友が初めて自分に見せた反抗的な表情で、同時に、はっとするほどの美しさを秘めていた。
どうして今まで彼女の魅力に気付かなかったのだろう。
マリアンヌは後悔と共に、控え室を後にした。
437桃色の鞠(後編)17:2010/05/29(土) 00:55:30 ID:AQ5hVk8j

第四王女の堂々たる開会宣言に耳を傾けながら、エリオット=ベイリアルは大きな欠伸を漏らしていた。
何しろ睡眠時間が圧倒的に足りていない。
記念祭が始まってからのここ数日、王宮内外の主要な行事にはもれなく参加し、
マリアンヌが苦笑するところの乱痴気騒ぎを繰り返しているのだから。
ベイリアル家の陽気な次男坊はどこに行っても持て囃された。

もっとも今回の夜会では、
会場にいる令嬢たちにむやみやたらに愛想を振り撒いたりしてはいけない、とマリアンヌ姫から厳重注意を受けていた。
『だってね、あなたに言葉巧みに話しかけられると、
 女の子の大半は、ぼうっとのぼせあがってしまうのよ』
マリアンヌは両手を組み合わせると、恋に惑う乙女の演技を披露してみせた。
そのあとで、茶目っ気たっぷりにぺろりと舌を出す。

『ね? それでは、この夜会の趣旨に反してしまうわ』
『そうだね』とエリオットは淡々と受け止めた。
『さすがに一息いれたかったところだよ』
暗に、自分の男性的魅力を認められたと思えば、悪い気はしない。
しかし、その一方で、マリアンヌ姫は、
自分に「ぼうっとのぼせあがる」類の女の子ではないという事実を、痛いほど噛み締めることとなった。

というわけで。
楽師が情感あふれる音色を奏で、最初はぎこちない雰囲気だった男女が徐々に打ち解け始めた頃、
エリオット=ベイリアルはそっと会場を抜け出していた。
目的地もなく、ただ漠然と睡眠時間が確保できる場所を求めて、階段のステップに足をかける。
上の階の個室で、今夜は何組の男女が愛を囁き合うのだろうか、とエリオットは考え、
同時に、一夜限りの恋人たちの未来を呪った。
と、そのとき、桃色の何かがちらりと目に入り、エリオットはおやと立ち止まった。
438名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 00:56:56 ID:0uwJdf64
支援
439桃色の鞠(後編)18:2010/05/29(土) 00:57:22 ID:AQ5hVk8j
「何しているの?」
そう声をかけると、階段の踊り場に立ち、高欄から身を乗り出していた少女は、ぴくりと肩を揺らした。
「……エリオット」
ゆっくりと振り向いた金髪の少女の顔は蒼白で、すっかり憔悴しきっているように見えた。
セシリア=フィールド。公爵家の一人娘で、マリアンヌ姫のお気に入りの取り巻きだ。

「夜会はとっくに始まっているよ」
そう言って、セシリアの隣に並び立つと、そこからは会場の大広間が一望できることに気がついた。
この場は暗いため、あちらからは自分たちは見えないだろう。

「私は……出席しないことに決めたの」
再びうつむいたセシリアは、蚊のなくような声で答えた。
奇妙なことだ、とエリオットは訝かしむ。夜会に出席しないと言う割には、いやに着飾っている。
ただ確かに、セシリア=フィールドは、この手の、少しばかり無礼講な夜会に出席するような令嬢には見えなかった。
「じゃあ、どうして広間を見下ろしていたの?」
更なる質問を重ねてみると、長い沈黙のあとで、セシリアはぽつりと呟いた。
「―――海」
「え?」
「あそこは、まるで薄暗い海の底みたいね。人々は魚のように泳いでいるんだわ」

まるで詩の朗読を聴かされているような気分だった。
エリオットは仄かな灯りの大広間に視線を落とし、それからセシリアの横顔を見直した。
考えてみれば、こんな風に彼女と一対一で話し合うなんて珍しい。
エリオットにとってセシリアは、いつもマリアンヌの背中に隠れている深窓の令嬢でしかなかった。

「それで、セシリア。君は薄暗い海の底を泳いでみたいと思わないの?」
エリオットが冗談っぽく問いかけると、彼女は首を振ってうなだれた。
「だって私は……泳ぎ方がわからないんですもの。あの中にいたら息が続かなくて溺れてしまうわ」
エリオットはどう切り返したらいいかわからず、しばらくのあいだ黙っていた。

セシリアの意図するところは全くつかめなかったが、彼女が何かに傷ついているのは確かであり、
そして傷心の乙女を慰めるのは――さらにそこに付け込むのは――まさしくエリオットの得意分野であった。
会場にいる令嬢を誘惑してはならないと通告されたが、その他の場所にいる令嬢を誘惑するなとは言われていないはずだ。
「何があったの? 僕でよかったら話を聞くけれど」
とびきり優しい声でセシリアに微笑みかけると、彼女は探るような目つきで見返してきた。

警戒心はたっぷりだ。
それでもエリオットは、彼女が自分に打ち明けるだろうと確信していた。
彼女の瞳は、誰かに――本当に誰でも構わないから――自分の胸の内を聞いて欲しくてたまらないと語っていた。
440桃色の鞠(後編)19:2010/05/29(土) 00:59:23 ID:AQ5hVk8j
全体的にセシリア=フィールドの話は回りくどかったし、
明らかに何かをごまかしている部分もあったのだが、
枝葉を取り除き、簡潔に要約するなら、以下の通りだった。

・フォレスト王国のコートニー王女と言い争いをした。
・マリアンヌともすっかり険悪な雰囲気になってしまった。
・その結果、とても落ち込んでいる。

正直なところ、予想以上に他愛無い悩みだったのでエリオットは拍子抜けしていた。
おまけに、諍いの直接の原因が、夜会服の取り合いだと知ると、思わず吹き出しそうになってしまった。
しかしまあ、いかにも年頃の少女が抱えやすい、つまらない悩みとはいえ、当人にとっては深刻なのだろう。
この場合のエリオットの役目は、セシリアを無難な言葉で励まし、株を上げることに違いかった。

「こんな気持ちになるくらいなら、素直にこのドレスを貸してあげたらよかったんだわ。
セシリアは何十回目になるかわからないため息をついて、ドレスを軽くつまんだ。
「確かに、私にとっては数ある夜会の中の一つに過ぎないけれど、
 コートニーにとっては特別なかけがえのない夜になるはずだったのだから」

「そういえば、そもそもこの夜会は、コートニー様のために開かれたものだもんね」
エリオットは、話の矛先を変えることができそうだったので、すかさず口を開いた。
セシリアは意外そうにエリオットの顔を伺う。
「あなたは、どこまで事情をご存知なの?」
「事情も何もないだろう? コートニー様がエルド様に一目惚れして、
 彼に会ってみたいと熱望したことから、この夜会は成り立ったんだから」
その返答に、セシリアは肩透かしを食らったように、エリオットをまじまじと見た。

「それじゃあ」セシリアは目を伏せた。
「何も私たち三人だけの秘密ではなかったということね」
あまりにも彼女が悲しそうな様子なので、エリオットは頭をかいた。
「でも、おそらく僕以外は誰も知らないと思うよ。
 マリアンヌ様が僕に話したのだって、その……男性側の意見が必要だったからだと思うし」

「ええ、そうでしょうね」
セシリアは嫌味ったらしく頷いた。
「エルドに"女遊び"の楽しさを教えるためには、
経験豊富なあなたの助言がどうしても必要だったんでしょうね」
今度は、エリオットが目を見開いて、まじまじとセシリアを見る番だった。
「なあんだ。君だって事情をよく知っているんじゃないか」
エリオットが抗議の声をあげると、セシリアは笑顔を作った。
少なくとも、できそこないの笑顔らしいものを作った。
441桃色の鞠(後編)20:2010/05/29(土) 01:00:43 ID:AQ5hVk8j
「情けないくらい、何にも知らないの」
「え?」
「白状するとね、私はマリアンヌたちの話の大部分に付いていけなかったのよ。
 でも二人の仲間に入りたかったから、頑張って話を合わせていたの」
「仲間はずれが嫌だったということ?」
「当たり前でしょう」
開き直ったように肩をすくめるセシリア。
エリオットはまたもや吹き出してしまいそうになった。
「では、君は三人で仲良くお喋りができればよかっただけで、
本音のところは、コートニー様の恋路なんてどうでもよかったんだ」
「それは……」
セシリアは、罪悪感にかられたように口をつぐんだ。図星をつかれたのだろう。
「もし、君がコートニー様の恋の成就を真剣に応援していたならば、
少なくとも、彼女とのあいだに、諍いは起こらなかったかもしれないね」
そこまで言ってしまってから、エリオットは口を押さえた。

しまった、優しい言葉で慰めるはずだったのに、
どうしてこの少女を落ち込ませるようなことを言ってしまうのだろう。
エリオットは注意深くセシリアの顔を観察した。その瞳から涙が零れ落ちたら、どうしようかと懸念したのだ。

けれども面食らったことに、セシリアは子供っぽく頬をふくらましただけだった。
「まったく不公平だわ」そう言って、わざとらしくため息をつく。
「どうして誰も私の応援はしてくれないのかしら」
「君の応援だって?」
「だってね。コートニーがエルドとお近づきになりたがっていたように、
 私だってコートニーと仲良くなりたかったのよ」
「はあ?」
エリオットはセシリアの意図がつかめずに、数秒間、頭をひねった。
「だって、まさか、君もコートニー様に片想いしているというのかい?」
「似たようなものじゃない」
セシリアは、大真面目で頷いた。
「だって、これは完全に一方通行の想いですもの」
「でも、君の場合はつまり、その、友人として、だろう?」
一応、確認してみると、セシリアはしっかりと頷いて肯定した。
「わからないわ。どうして、こうも恋情ばかりが特別のことのように扱われて、
友情は軽んじられるのかしら?」
セシリアの瞳はどこまでも曇りがなく真剣だった。

とうとうエリオットは我慢の限界を感じ、大きな声で笑い出してしまった。
セシリア=フィールドが、こんなに面白い娘だったなんて思いもよらなかった!

あまりにも大きな声で笑うエリオットを、セシリアは憮然とした表情でにらみつけた。
「……どこか面白いところがあったのかしら?」
「ごめん、ごめん」
エリオットは苦労して、笑いを抑えた。
「だってさ、君の中では、友情と恋愛は同等ということなのかい?」
セシリアは何回も瞬きを繰り返した。
「……わからないわ」
もちろん、わからないだろう。この令嬢はまだ恋を知らないのだから。
442桃色の鞠(後編)21:2010/05/29(土) 01:03:14 ID:AQ5hVk8j
エリオットとセシリアが話に夢中になっているとき、こちらにやって来る誰かの足音が聞こえた。
おそらく今夜の即席カップル第一弾だろう。
ここで鉢合わせしたら、エリオットとセシリアも恋人同士だと勘違いされる可能性がある。

「ねえ、セシリア。場所を変えないか」
そう言って、目の前の少女に手を差し出す。
しかし、彼女はその手をあっさり無視して、階段のステップに足をかけた。
「私はこのまま裏の出口から帰るわ。あなたは夜会を楽しんでちょうだい」
女性からつれない態度を取られた経験の少ないエリオットは、一瞬だけぽかんとした。

「では途中まで送っていくよ。君はすっかり弱っているみたいだしね」
懲りずにそう提案すると、セシリアはぴしゃりと撥ねつけた。
「私にまで紳士ぶらなくて結構よ。もちろん、マリアンヌには何も言わないであげるから、心配しないでちょうだい」
「マリアンヌ様? どういう意味だい?」
思いかけずに飛び出した名前に、エリオットはどきりとした。

「だから、マリアンヌに義理立てして、無理して私なんかに親切にしなくたっていいって意味よ」
「無理してだって? かよわき乙女が打ちひしがれているのに、
 放っておくなんて無情なことができると思うのかい」
「そんな御託を並べても無駄よ。
 自分自身の価値くらい十分承知しているわ」
「君自身の価値だって?」
「ええ、そうよ」

セシリアは振り向いて、エリオットを見据えた。
のぼった階段の分だけ、彼女の背丈は高くなり、ちょうどエリオットと同じ目線に立っていた。

「私はいつもマリアンヌのおまけよ。
 マリアンヌがいなかったら、世の殿方は、私なんかに目もくれないでしょうね」
443桃色の鞠(後編)22:2010/05/29(土) 01:06:41 ID:AQ5hVk8j

「なるほど」と、エリオットは呟いて、ますます興味を持って、セシリアを眺めた。
「なかなか罪つくりな蕾だね。
 そうやって、何にも知らないふりをして、男の気を引いているんだから」
エリオットはセシリアに向かって、片目をつぶってみせた
「どういう意味かしら。
 気を引くなんて、そんなことしてないわ」
いかにも汚らわしいと言った風情で、セシリアは首をふった。
「じゃあ、どうして、そんなに着飾っているの? 
 男たちの目に留まりたいからじゃないの?」
セシリアは瞳を丸くする。それから自身が身につけているドレスを見下ろした。

「そうやって、君は、悩ましい胸元や、むきだしのうなじを見せつけて、
 憐れな男どもを誘っているんだ。
 なのに、君は何も知りませんという風に無邪気な顔で澄まして、心の中で舌を出している」

今夜の自分はおかしい、とエリオットは思った。
どうしてこんなにも攻撃的なのだろう、世間知らずの令嬢相手に。

「もうたくさんよ!」顔を真っ赤にさせながら、セシリアは叫んだ。
「やっぱりマリアンヌに言いつけてやるから
 あなたがどれほど下劣で無作法かをね」

セシリア=フィールドはどこまでも子どもっぽかった。
それに比べるとエリオットにはいくらかの余裕があった。

「では、その前に、まずマリアンヌ様と仲直りしないとね」
エリオットは気障ったらしい微笑みを張り付けた。
そこでセシリアは、はっとしたように押し黙る。
大切な親友と諍いがあったことを思い出し、
一瞬のあいだに、彼女の瞳からエリオットに対する怒りは消え失せたことが見て取れた。
444桃色の鞠(後編)23:2010/05/29(土) 01:07:41 ID:AQ5hVk8j
「マリアンヌは……」セシリアは自分自身に問いかけるように呟いた。
「私を許してくれるのかしら」
ああ、やっぱり、とエリオットは思った。この子は、こんなにも自分に自信がないのだ。
「君こそどうなのさ」
エリオットは尋ねた。むしゃくしゃした気分は、おさまりそうにもない。
「私?」
「君は、マリアンヌ様を許せるの?」

セシリアはわけがわからないというように瞬きをした。
返答など聞かなくとも、セシリアの表情を見れば、すぐに把握できる。
許すとか許さないとか。そういう次元の問題ではないのだ。
それは例えば、どうしてか弱き花々があの輝かしい太陽の光を拒んで生きることができようか、ということなのだ。

ほんの瞬きするくらいの短いとき、両者のあいだには何か共感めいた強い意志のやりとりが行われた。
流されるままに、エリオットは、セシリアの口元にゆっくりと近づいた。
彼にしてみれば、ちょっとした挨拶だ。それ以上の段階に進む気はない。
ただ一瞬の感傷を彼女と分かち合いたかっただけだ。
けれども彼女に触れる前に、セシリアはさっと身を翻した。

「エリオット、あなたは……」
か細い声に、エリオットは面を上げ、再びセシリアの表情を確認した。
先ほどのように、怒りにらんらんと燃えた茶色の瞳とかち合うかと思っていたのに、
あるいは考えることを放棄したうつろな瞳でもよかったのに、
その瞳は今までと違う色をまとっていた。

「あなたも一方通行なのね」

そう言い残すと、セシリアはそのまま一目散に階段を駆け上がった。
エリオットは消え去る後ろ姿をぼんやりと見つめながら、セシリアの言葉の意味を考えた。

意識的なのか無意識なのか、それは強烈な捨て台詞だった。
罵倒されるよりも侮蔑されるよりも、ずっと。
出し抜けに、遠くの方から、誰かの笑い声が響き、エリオットは大広間を見下ろした。
セシリアが深い海の底だと形容した場所を。
445桃色の鞠(後編)24:2010/05/29(土) 01:10:00 ID:AQ5hVk8j

     ***

鞠が弾んだ。石造りのベンチの方向へ。
そこには、栗色の髪の少年が座っていた。
エルドだ。
こんな庭の隅っこで何をしているのだろう。
彼の靴に、鞠が当たり、
少年は弾かれたように顔を上げた。
両者はものも言わず、ただ見つめ合った。

彼とはいつも喧嘩ばかりしている。
この前は、身長のことで言い争ったっけ。
エルドよりも自分の背丈はほんの少し高い。
それを自慢したらエルドが食って掛ったのだ。
「そんなもの、すぐに追い越してやる」
確かそう息巻いていた。
でも、そんな日が本当にくるのかしら、
とセシリアは挑戦的に考えた。

そのことを蒸し返そうとして、口を開きかけ、やっぱり止めた。
どうしてなのか水色の瞳が潤んでいるように見えたのだ。
セシリアは彼の足元に転がっている鞠を拾い上げ、
それからエルドにぎこちなく笑いかけた。

「ねえ。ロビンに会いにいかない?」
     
     ***
446名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 01:12:07 ID:Z3Ab1yu1
支援
447桃色の鞠(後編)25:2010/05/29(土) 01:12:48 ID:AQ5hVk8j

まったくなんて夜なのだろう。
セシリアは出口を求めて足早に廊下を歩いていた。
壁に等間隔で点されている蝋燭の火が床を照らし出し、彼女の背後に長い影を落とした。

今夜、起こった出来事が頭から離れず、ぐちゃぐちゃに絡まって、セシリアを苦しめた。
挑戦的なコートニーの嘲笑。
いやらしいエリオットの意地悪な言葉。
そして、大好きなマリアンヌの驚愕した顔!
さっさと自邸に戻り、柔らかい寝台の上で何もかもを忘れて寝てしまいたかった。

そのとき、どこからともなく足音が響いて、セシリアはびくりと震えあがった。
エリオットだろうか。それとも、他の誰かだろうか。どちらにしろ誰にも会いたくない。
曲がり角に人影が映るのを確認し、セシリアは手近な部屋にさっと逃げ込んだ。
まるで障害物を避けながら出口を探す迷路の中へ放り込まれたようだ。

セシリアが扉の内側で聞き耳を立てていると、廊下からは甲高い笑い声と、それに相槌を打つ低い声が聞こえた。
今ごろは、エルドとコートニーも楽しんでいるのかしら。
セシリアはぼんやりとそう思った。けれども、物思いに浸る暇はなかった。
すぐに廊下から新たな足音が聞こえたからだ。
本能的に、セシリアはこの部屋に誰かが入ってくるのを悟り、ねずみのように長椅子の下にもぐりこんだ。
令嬢らしくない行為だということは承知していのだが。

やがて扉が開き、セシリアの視界には男女二組の靴が見えた。
どうにも具合の悪いことに、二人組は、長椅子に近づいて来る。

「お加減は大丈夫ですか」
「ええ、ありがとう。大丈夫よ、エルド様。飲み過ぎたみたいね」
―――エルドですって? 
セシリアは冷や汗が流れるのを感じた。
じゃあ、女性の方は、コートニーに違いないわ。
なんという場に居合わせてしまったのだろう!
448桃色の鞠(後編)26:2010/05/29(土) 01:15:58 ID:AQ5hVk8j

「滞在している部屋に戻ったほうがいいと思いますけどね」
エルドの声はいかにも怜悧に響いたが、セシリアには彼が戸惑っているのがよくわかった。
「ええ、でもエルド様。座ったら、だいぶ酔いが覚めましたわ」
コートニーの声は普段よりも甘ったるくふわふわしている。
本当に酔っているのかもしれないわ、とセシリアは不思議に思った。
計画では、エルドを酔いつぶすはずだというのに、一方で、エルドの声は酔っているようには聞こえなかったからだ。

「ねえ、エルド様。こちらに座ってちょうだい」
ぽんぽんと長椅子の座面を叩く音がする。
エルドはぐずぐずと拒んでいたが、コートニーは強引に自分の隣に座らせた。
どちらにしろ、彼女がお酒を飲んだのは正解だったのかもしれないわ、とセシリアは感じた。
昼間の引っ込み思案な彼女では、考えられないほど大胆なふるまいだ。

「ふふ、夢みたいだわ。エルド様が隣にいるなんて」
コートニーのうわずった声が聞こえる。
これでは、ほぼ恋の告白をしたのも同然ではないだろうか。
エルドは「はあ」と呟いただけだった。なんとまあ無粋なやつなのだろう。

「マリアンヌに感謝しなくては、私たちを引き逢わせてくれて。私、マリアンヌに頼んだのよ」
「……マリアンヌが?」
エルドは考え込むように言った。
「ええ、私とエルド様がお近づきになれるように、色々と計画を練ってくれたのよ」
まあ、コートニーったら。自ら手の内をばらすなんて!
セシリアは心の底から驚愕した。

「……へえ、なるほどね。
 でも姉上のことだから、上品な計画というわけではないんだろうな」
エルドは事情が呑み込めたと言いたげに、質問する。
「ええ、それは、まあ。こんなこと恥ずかしくて言えないわ。
 あなたを酔いつぶして、既成事実を作るつもりだったなんて」

言っているわよ、コートニー! 長椅子の下でセシリアは頭を抱え込んだ。
これでは、マリアンヌの計画が水の泡だ。
彼女は果たしてどのくらい飲んだのだろうか?
449桃色の鞠(後編)27:2010/05/29(土) 01:18:11 ID:AQ5hVk8j
エルドは、一瞬絶句したようだった。
「―――で、俺はこれから誘惑されるのか?」
「いいえ。そんな回りくどいことするよりも、
 素直に想いを伝える方が簡単でしょう?」
おそらくコートニーはエルドを上目遣いで見つめているに違いない。
こんなに可愛らしい告白をされたら、世間一般の男性はひとたまりもないだろう。
けれども残念ながら、エルドは世間一般の男性の範疇には属さないようだった。

「俺は身体だけの関係の方が簡単だと思うけど」
ちゃかすようなエルドの言葉に、コートニーは夢の世界を漂うような声で答える。
「身体だけの関係なんて空虚だわ。私はあなたと本当の恋がしたいの」
「本当の恋」
と、エルドが面くらったように繰り返す。
本当の恋、とセシリアも心の中で呟く。

もしかしたら先ほどのセシリアの主張はコートニーに届いたのかもしれない。
騙すのではなく、相手にまっすぐな愛を捧げ、
相手にも同じようにまっさらな気持ちを返して欲しいと思ったのかもしれない。
結局のところ、コートニーも純粋な恋に憧れる乙女なのだ。

けれども、真摯な愛の告白に対し、エルドはくすりと笑った。
それはいかにも彼らしい乾いた笑いだった。
「まず君が、身体を捧げてくれるなら、考えるかもしれないけれどね」
挑発するような言葉だ。
コートニーの息を呑む声が聞こえた。
「……それなら、それでも構わないわ」
その声はほんの少し震えていた。
いかにもひっこみがつかずに勢いで言ってしまったという感じだ。

「冗談だ」
慌ててエルドは打ち消した。
その声音は明らかに、女性にそこまで言わせてしまったことを後悔していた。
「俺は君と、そんな関係になるつもりはないよ」
450桃色の鞠(後編)28:2010/05/29(土) 01:20:29 ID:AQ5hVk8j
一瞬のあいだ、沈黙が降りる。
「私とは、恋愛したくないのかしら?」
それは、穏やかだったが、一歩も引き下がろうとしない強さを秘めていた。
そして自分が拒絶されるはずはないだろうという自信にも満ちていた。
「俺は―――」
エルドの声は不自然なくらい感情がこもっておらず、先ほどまでとは別人のようだった。
「恋愛なんて、この世でいちばん愚かしいまやかしだと思うよ」
「……まやかしですって」
戸惑うようなコートニーの声に、エルドの声がかぶさる。
「俺は恋なんて信じない。だから君と『本当の恋』をするなんて無理だ」

セシリアはぎゅっと拳を握りしめた。
もう駄目よ、コートニー。
これ以上、言葉を尽くしても無駄。
エルドには絶対に絶対に届かない。

「でも、それは……」けれどもなおもコートニーは食い下がった。
「あなたが恋をしたことがないからよ」
「あるいは、そうかもしれないけど」エルドはそこで立ちあがった。

「その相手は君じゃない」

セシリアは目を瞑った。おしまいだ。
今、この瞬間、乙女の夢は粉々に打ち砕かれたのだ。

「――――私は帰ったほうがよさそうね」
しばらく経ってから、コートニーは立ち上がった。
「送ってくださらなくて結構よ」
コートニーがどういう表情をしているのかわからない。
けれども、その引き際は見事だった。

あっという間に、彼女のかかとの高い靴は視界から消えた。
扉が閉まると同時に、エルドは脱力したように、長椅子に再び座り込んだ。

セシリアもようやく気が緩み、
エルドもさっさと出て行ってくれないかしら、と思った。
今さらながら折り曲げた手足が痛くなってきたのだ。
おまけに長椅子の下はほこりっぽくて鼻がむずかゆくなっている。
しかしいくら待っても、エルドは動く気配さえも見せない。

とうとう我慢できずに、セシリアは小さなくしゃみを漏らした。
もちろんエルドは弾かれたように長椅子の下を覗き込み、
手足を折り曲げ縮こまっていたセシリアとしっかり目が合ったのだった。
451桃色の鞠(後編)29:2010/05/29(土) 01:21:46 ID:AQ5hVk8j
「無実だわ。冤罪だわ。不可抗力っていうものよ。
 だって、あなたとコートニーが入ってくるなんて、どうして私に想像できて」
ドレスについた埃を落としながら、セシリアは必死で弁明を試みた。

エルドはうんざりしたようにセシリアを見ながら、
「汚いところに隠れるのが好きらしいな」
と呟いた。
「なによ、その言い方。だってそれは」
再び弁明しようとしたセシリアだったが、ため息をついて口をつぐんだ。
今さら、言い訳したところで、どうにもならない。

やがて、エルドがぽつりと呟いた。
「お前も来ていたんだな」
セシリアは首を傾げ「どこに?」と尋ねようとしたが、
マリアンヌが企画した夜会のことを指しているのだと思い当たる。
「……ええ、まあ。そう、なの」
実際のところ出席できなかったのだが、わざわざ訂正する必要はないだろう。
こんなに、めかしこんだのも全て無駄だったというわけだ。

「楽しかったか?」
そう問いかけられて、セシリアは当たりさわりない言葉を紡ごうとした。
しかし、エルドが口を開くほうが早かった。
「面白がっていたんだろう」
「え?」
「マリアンヌと一緒になって、俺をからかって」
「楽しくなんかなかったわよ!」
慌てて、セシリアは言い返す。それは、本当に本当だ。
マリアンヌが計画を考え出したときからずっと、ずっと落ち着かない気持ちを抱えていた。
「私は……」
のどの奥から言い訳の言葉が押し寄せてくる。
しかし、結局のところ何も言うことができなかった。

「わかってるよ」
エルドがセシリアの言葉を遮った。
「どうせ、マリアンヌが全部考え出したことだろう。
わかってるんだ。リアがマリアンヌに逆らえるはずないもんな」

何もわかってないくせに! セシリアは心の中で叫び、エルドを睨みつけた。
今日、セシリアはマリアンヌに逆らったのだ。
長いあいだ、積み上げてきた彼女への信頼を崩してしまったのだ。
その原因はエルドにあるといっても過言ではないのに。

けれども、エルドはセシリアの恨みのこもった視線など物ともせずに、
大窓を開けると、猫の額ほどのバルコニーへ一歩進んだ。
「ここから抜け出そう」
452桃色の鞠(後編)30:2010/05/29(土) 01:23:41 ID:AQ5hVk8j
いくら何でも無茶だとセシリアは反対したのだが、エルドはまったく意に介さなかった。
「おれは廊下に戻って、正規のルートから帰るのはごめんだよ。誰に出くわすか、わかったものじゃないからな」
おそらくエルドがいちばん怖がっているのは、マリアンヌだろう。
セシリアも、できればエリオットやマリアンヌとは顔を合わせたくなかった。
「でも、ドレスが汚れないかしら?」
おずおずと自分もパルコニーから外に出ることを伝えると、
エルドは、セシリアのすっかり埃っぽくなっているドレスを見下ろし、「今さらだろ」と冷たく言い放った。
先ほどのエリオットの言葉を思い出し、
なんとなくセシリアは胸元を隠した。もちろん、エルドがそんなところ見ていないのはわかっていたのだが。

バルコニーを支える柱は、彫刻が施されて、でこぼこしている。
エルドはその凹凸に足をひっかけ、するすると地上へ降りて行った。
セシリアはその様子を感心しながら見守った。
多少、危なっかしいところもあったが、立派に降りることができたのだ。

負けていられないわ、とセシリアも柵を乗り越え、柱に飛び移ろうとした。
その瞬間、かくんと足首が揺れ、その反動でずるっと滑り落ちた。
セシリアは無我夢中で柱にしがみついた。

「リア、要領はわかっただろ? 降りて来いよ」
気づけば、柱の半分くらいのセシリアは位置にいた。
じょうごのような形に広がった柱の出っ張りのおかげで何とか足場を確保できている。

「……動けないわ」
両足は震え、心臓の鼓動が全身を駆け巡る。
「リア! 早く帰りたくないのか? もうちょっとだよ」
「帰りたいわ、でも、怖いんですもの!」

情けない声をあげる公爵令嬢に、エルドはやれやれとため息をついた。
「じゃあ、そのまま飛び降りろ」
「なんですって? 私に命を絶てとおっしゃるの?」
「ばか、違うよ」
そこでエルドは両手を大きく広げた。
「受け止めてやるから」
「……本当?」
セシリアは疑い深げにエルドの細腕を観察した。
「いくらなんでも殺人犯になるのはまっぴらだよ」
「私のスカートの中のぞかない?」
「さっさと言う通りにしないと」
エルドは苛々したように叫んだ。
「俺は一人で帰るからな。お前はそこで夜を明かしたらどうだ」
「わかったわよ!」
情け容赦のないエルドに観念し、セシリアは目を瞑ると、大きく息を吸い込んだ。

桃色のスカートがふわりと広がった。
453桃色の鞠(後編)31:2010/05/29(土) 01:26:14 ID:AQ5hVk8j

セシリアとエルドは芝生に重なり合って倒れた。
まったくなんて夜なのだろう。
ふわりとした飛翔の感覚とずっしりと重い着地の衝撃を一度に味わい、
セシリアの頭はくらくらしていた。

「……エルド、生きている?」
「ああ、なんとか」
エルドは絞り出すような声で言い、セシリアの背中に腕を回した。
「ちゃんと受け止めだろう」
「そうね、まさか支えきれなくて、倒れるとは思わなかったけど」
憎まれ口を叩くと、エルドは「仕方ないだろ」とふてくされる。

何だかたまらない気持ちが込み上げて、
セシリアはエルドの身体にぎゅっとしがみついた。
彼のにおいも、身体のくぼみもすっかり覚えてしまった。
そして、それはとても心地よかった。
でも、そのことは永遠に秘密にしておこう。
しばらくのあいだ、セシリアはエルドの胸の鼓動を感じていた。

「鞠みたいだな」
エルドがぽつりと呟いた。
「え?」
「昔、お前は桃色の鞠を持っていただろう」
「……よく覚えているのね」
「覚えているよ。お前とマリアンヌは、よく鞠で遊んでいたもんな。
 ただ鞠を取って、相手に投げるだけの繰り返し。
 よくもまあ、飽きもしないで」

セシリアはゆっくりと目を閉じる。
今の彼女にとっては、一点の曇りもなかった幸福な思い出を持ち出されることほど辛いことはなかった。
毎日、毎日、日が暮れるまでマリアンヌと共にいた日々。
彼女は、必ず、セシリアの投げる鞠を受け止めてくれたし、
セシリアが取りやすいように優しく投げ返してくれた。
それは安心で安全で、そして無駄な時間だったのかもしれない。
あの頃は、マリアンヌと自分が離れるときが来るなんて想像もしていなかった。
454桃色の鞠(後編)32:2010/05/29(土) 01:27:58 ID:AQ5hVk8j


「鞠みたいだ」
エルドは面白そうに繰り返し、ぽんぽんとセシリアの背中を叩く。
「あちこちいろんなところに、跳ねて転がっていく。どこに行くのか見当もつかない」
「なあに、それ。私は、鞠なんかじゃないわ」
セシリアは足をばたつかせ、形ばかりの抗議をしたが、
その一方で、エルドの言う通りじゃない、という感情が渦巻いていた。

いつのまにか、マリアンヌの手の中でくるくると躍らせられている鞠になっていた。
彼女の意見に絶対に逆らわない人形になっていた。
マリアンヌに嫌われたくなかった。いつでも一番の親友でいたかった。
もう自分たちの関係を繋ぎ止めるものは、子供時代に共有した思い出しか残されていないとわかっていても。
でも、マリアンヌが放り投げた鞠を受け取らなかったのは、他でもない自分自身なのだ。

「……私は玩具なんかじゃない」
―――本当は、マリアンヌの計画に参加なんてしたくなかった。
「ちゃんと感情があるのよ」
―――本当は、コートニーの恋なんて応援したくなかった。
「私は……」

「わかってるよ」
エルドはセシリアの頭をそっと撫でて、囁いた。
本当にわかっているのか怪しいものだわ、と思いながらも、
その簡潔な一言はゆっくりとセシリアの心の中に沈んでいった。
455名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 01:31:21 ID:0uwJdf64
sien
456桃色の鞠(後編)33:2010/05/29(土) 01:42:27 ID:AQ5hVk8j


鞠が弾んだ。
足元に転がりこんで来た桃色のそれに、
ベンチに座っていたエルドは驚いて顔を上げた。

「エルド!」
向こうの方からセシリア=フィールドが息を切らして駆け寄ってくる。
それは、どこか既視感を覚える光景だった。

「こんなところに隠れていたのね」
セシリアはエルドの持っている本を見ながら、咎めるように言った。
記念祭は六日目を迎え、とっくに中だるみの気配を見せていた。
エルドとしては、穏やかな日常に早く戻りたくてたまらなかった。

「何の用だ?」
どうせまた碌でもないことなんだろうと、付け加えると、
セシリアは顔をしかめて抗弁した。

「違うわ。一緒に後宮へ行きましょうと誘いに来たのよ」
「後宮へ?」
エルドは首を傾げる。
「そうなの。ロビンが鞠を庭に忘れて行ってしまったから、
 届けてあげようと思って」

この鞠は今では弟のものだったのかと思いつつ、エルドは鞠を拾い上げた。

「なんで俺まで行く必要があるんだ?」
憮然として、質問を投げかけると、セシリアはにんまりと笑った。

「ロビンと私と、三人で遊ぶためよ」
「だから、なんで俺が……」
エルドの不満げな声を、セシリアはすぐに遮った。
「だって、あなたは鞠遊びなんてしたことないでしょう」
「そうかもしれないけど」
だがそれはエルドとしてはどうでもいいことだった。
「私に言わせてみれば、
 あなたはもうちょっと無駄なことをしてみるべきなのよ」

自信満々に言い切る公爵令嬢に
エルドは、そっとため息をついた。
「……おせっかい」

その言葉は確かにセシリアの耳に届いていたはずなのだが、
彼女は言い返すこともなく、澄ました顔を作って両手を開いた。
その動作の意味をエルドは瞬時に理解した。

もし、もっと幼い頃に、セシリアと遊んでいたなら、とふと思う。
くだらない喧嘩なんかしないで、つまらない意地の張り合いなんかしないで、
もっと彼女と仲良くしていたならば、現在の二人の関係はどうなっていたのだろう?
もちろん、そんな仮定はそれこそ無駄というものなのだが。

馬鹿らしい考えを振り切るために、エルドはセシリアに向かって鞠を投げた。
言葉にできない想いを伝えるように。
戻らない時間を埋めるように。
桃色の鞠は大きな弧を描き、セシリアの手の中におさまった。
457桃色の鞠(後編)34:2010/05/29(土) 01:45:28 ID:AQ5hVk8j


これは余談になるのだが。

記念祭六日目。茶話会を終えて後宮に戻ると、
ロビンは、にこにこしながら刺繍をしているメドウィばあやに出くわした。
第四王子を認めると、彼女は待っていたとばかりに来客の存在を告げた。
「誰?」
かすかな期待を込めて、問いかけると、
「セシリア様とエルド様です。
 珍しい組み合わせですよね」
「僕が頼んだんだよ。セシリアに」
ロビンは平静を装い応接室へ進んだが、内心では飛び上がって小躍りしたい気分だった。

「なるほど」 ばあやはそれでわかったと言いたげに頷いた。
「あの二人は変わりませんね。相変わらず、口喧嘩ばかりしていますよ」
ばあやのため息を聞き流し、ロビンは軽やかな足取りで応接室へ足を踏み入れた。
ところがセシリアとエルドの姿は見当たらず、
そのかわりのようにビロード張りの椅子の上に桃色の鞠が鎮座していた。

ロビンは拍子抜けして、鞠を手に取り、ぐるりと広い四方を見回す。
すると奥の部屋から、かすかな声が漏れてきた。

扉の隙間からそっと中を覗いてみると、
果たして、そこには、王家の子供たちに代々受け継がれてきた玩具に囲まれ、絨毯の上に座っている二人の姿があった。
セシリアが夢中になって積木を積み上げている横で、エルドはいかにも面白くなさそうに、あぐらをかいていた。
やがて、エルドが何事かを口にすると、セシリアは怒ったように、彼をにらみつけ、何事かをまくしたてた。
お決まりの口喧嘩というわけだ。
ロビンは二人に声をかけることも忘れて、懐かしいその光景を見守った。
物心ついたときから当然のように見受けられた二人の舌戦は、
おかしなことに、幼い少年の心をいつも落ち着かせるのだった。
458桃色の鞠(後編)35:2010/05/29(土) 01:51:30 ID:AQ5hVk8j
けれども、その次に目撃した光景は見慣れないものだった。
まくしたてるセシリアに苛々したように反論していたエルドは、
やがて彼女の肩をぐいと引き寄せた。――――そして、二人の唇は重なったのだ。

ロビンは思わず鞠を落とした。柔らかい絨毯の上で、鞠は音を立てずに跳ねる。

何が起こったのか全くわからなかったが、それはひどく自然な光景に見えた。
やがて二人の顔が離れると、セシリアはにこりと笑った。もう怒ってはいないようだった。
エルドの方は相変わらず無表情だったが、先ほどまでの刺々しい感じは消えていた。
仲直りしたんだ、とロビンにわかったのはそれだけだった。

「あらロビンじゃない」
出し抜けに声をかけられて、ロビンは直立不動した。
「ふふ。私は約束を守ったでしょう?
 ちゃんとエルドを連れて来たわ」
セシリアはすくっと立ち上がると、自慢げにロビンのもとに歩み寄った。
あとからエルドも付いて来る。どことなく気まずそうにしているのは気のせいだろうか。

「しかも、ずいぶん早かったでしょう」
「ええと」
とにかく疑問を解消させようと、ロビンは口を開いた。
「二人は結婚するの?」
それは、八歳の少年が精一杯頭を捻って、出した結論だった。
彼が妙齢の男女の接吻を見たのは、婚礼式のときだけだったからだ。

エルドは眉間に皺を寄せた。
一方、セシリアは瞳を丸くさせると、面白いことを聞いたという風に笑い声を立てた。
「まあ、いやだ。結婚というのは、婚約している恋人同士がするものなのよ」
そう言いながら、彼女はロビンの足元で転がっている鞠を拾い上げると、大事そうに胸元に抱え込む。
その様子はまるでロビンよりも幼い少女のようだった。

「だから、私とエルドは結婚しないのよ。だって私たちは」
そこで、セシリアは思わせぶりに言葉を切り、夏の空のように爽やかな笑みを漏らした。
「友達なんですもの」
まるで、恋人よりも尊い関係だと言うように。
もちろん第四王子には、公爵令嬢がどれほど友情に重きを置いているかわかるはずもなかった。

「ふうん」
いまいち納得がいかないロビンは、兄の顔を見上げたが、
彼は片手で顔を覆い隠け、あまり品の良くない言葉を呟いていた。
どうやら彼からの説明は期待できそうにもない。

正反対の二人の様子を観察しながら、ロビンは、
変わった"お友達"を抱え込んでしまった兄に対して、少しばかり同情したのだった。


(終)
459名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 01:57:44 ID:AQ5hVk8j
支援をくださった方、ありがとうございました。
続きが読みたいと言ってくださった方々も本当にありがとうございました。

エロパロ板にふさわしくない内容になってしまいましたが、
読んで頂ければ幸いです。
460名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 02:02:17 ID:/a9e9JiZ
いやー待ってたよ…!GJ!
長かった……
セシリアとエルドには本当に幸せになってほしい!
461名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 02:06:36 ID:/a9e9JiZ
連投すまんが、保管庫のエルドシリーズって第1作目はいってないよな?
他にも抜けがあるような…
462名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 02:14:02 ID:Z3Ab1yu1
やったーずっと待ってました!
相変わらずエルドはいじっぱりだのうw
463名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 02:27:19 ID:Z3Ab1yu1
>>461
>>53見るといいことが
464名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 04:01:05 ID:RzjKPEjP
ありがとう!ありがとう!
二年も経ってたのか〜〜
もっかい一から読み返してくる!
465名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 12:07:24 ID:iYZozNo+
エルドセシリアの人乙です
自分は、このシリーズがきっかけでスレに常駐するようになったから
続きが読めて本当に嬉しい、このシリーズ大好き
466名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 20:17:53 ID:QazDKxZ0
ずっと待ってました!!
2人が幸せそうで、良かった…

本当に有難うございます!!
467名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 22:31:00 ID:OxZUQIfm
エルドとセシリア、乙です。
待ってた甲斐がありました。
セシリアの天然さがやっぱりツボです。
マリアンヌの恋もちょっと気になります。
468名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 23:20:21 ID:08m5X6mZ
天然だけど愚鈍なわけではないセシリアがとっても愛らしくて好きだ〜
2年立っても全然違和感なし!お話忘れてたけど読み直してきた
少女漫画みたいにほのぼのしてていいですね
469名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 23:37:27 ID:fGZU/wW7
待ってました!
相変わらずの良作ですな。
二人の関係が独特で本当に面白い。
一からちょっと見てきます。

作者さん、お疲れさまでした!
470名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 19:01:51 ID:KysGKsBB
GJ
待ってたよ
471名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 23:26:20 ID:45SE2mDf
全裸で二年待っておった。乙
472名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 06:04:57 ID:K4NUqagv
神武聖子は時の帝の神武集尊と中宮の泰子の五女として生まれた。帝の娘ということで何不自由なく育つ・・・はずだったが、先帝(集尊の父)の妾のせいで王宮はおろか世界中は滅茶苦茶になっていた。
月日は流れ聖子は幼稚園児になっていた。聖子の母泰子は多産体質で13年間で9人も出産しており10人目を妊娠していた。
そして四男の綱尊を出産した。その後泰子は退院したのだがこれが聖子の両親に関する唯一の記憶になるとは誰も思わなかった。
473名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 22:57:51 ID:RZYr73WD
エルドとセシリア待ってました!ありがとう
エルドのキャラがすごい好きなんだ…
474名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 18:51:21 ID:UmrRf44+
「私の最初の記憶は母上が出産から退院して車から降りるところ始まる。私は何か母上や周囲の人に何か話しかけたはずなのだがさっぱり覚えていない。
しいてあげるとすると周りの人が今度母上が妊娠するのはいつだろうという話をしていたのが記憶にあるだけである。出産したばかりなのに次の妊娠の話題になるとはと思うはずなのだが母上は13年間で10人も子供を産んでおり2年以上出産間隔が空いたことはない。
この多産体質は私たちにもしっかり受け継いでいることをのちに感じるのだが何せ両親に関する記憶が殆どなく声すらも覚えていない。帝と中宮だからテレビ局に行けば腐るほど映像は残っていたと思うが今の時代だともう諦めるしかない。」
475名無しさん@ピンキー:2010/06/07(月) 08:45:40 ID:FOLHyyCE
>>459 おつかれさま!

久しぶりにシリーズを読み直してみたけど、うーん
最終的にエルドとセシリアってどうなるんだろう?
婚約者問題さえ除けば
くっつくのにさしたる障害はなさそうに見えるのだが
476名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 07:56:33 ID:LTzl8vj5
>>459
GJ!
エルドがんばれw
477名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 10:17:28 ID:iRNT5/Ge
テスト
478名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 11:42:35 ID:CMjnaqtq
>>475
エルドは素直じゃないし、セシリアは鈍いしw
王位継承の問題もあるし
とにかく今後が楽しみ
479名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 17:40:56 ID:Mfx20c+y
うーん過疎ってるな
まぁ、板全体だけど
480名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 17:56:28 ID:Qs3KGkIg
過疎っててもこのスレはほんとレベル高い!
職人さんいつもありがとう
481名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 00:22:27 ID:W/buX/cJ
規制どうにかならんもんか・・・。これで携帯まで規制されたらどうしようかと
ハラハラしてる。
いつか規制の嵐は止むのだろうか
いや、止んでくれ。
482名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 04:06:39 ID:VlFZWSnA
もはや運営がどうしたのかよくわからんw
最終的に潰したいんだろうか?
483名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 12:23:41 ID:jA2BnzQj
●を売りたいんだろう

この過疎っぷりで●に手を出したいとも思わないけど
484名無しさん@ピンキー:2010/06/20(日) 22:46:02 ID:V3ymVc7y
金払ってまで書き込みしたくないな
485名無しさん@ピンキー:2010/06/20(日) 22:58:16 ID:7xVvMaxN
作者さんたちに払うのなら全然OKなんだけどな
486名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 04:02:14 ID:qb+DujYy
>>485
言えてる
SS投下をしづらく/出来なくしてる運営に金払うのもなんかな・・・。
487名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 23:40:21 ID:tWVu6GOX
運営「習慣性のある酒や煙草をただで配った後、
いきなり有料に値をつり上げれば儲かると企んだら、
酒や煙草そのものが消え失せたでござる」
488名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 23:29:39 ID:KVae7nsy
マジで運営氏ねよ、俺が見ているスレ30ぐらいあるのに殆ど動きないわ
489名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 02:10:26 ID:9uO0LEZb
ヒステリック
490名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 09:44:43 ID:stoUYkIA
そこへ食いつく厭味な性格
491名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 21:59:58 ID:NVbPI6sK
みんな規制に、そしてお姫様の不在に疲れているんですよ…。
というわけで、充分に書き溜まっていないのに投下します。
筆が遅い上に別の用事が入って予想外に次の投下までかかってしまいました。

「メイファと皇子様」の続き…というか、皇子様視点でさかのぼったとこから始まります。
シリーズ名は、「中華の国の物語」です。
前置きが長いのは仕様です。御了承あるいはスルーしてください。

  【注意】
>>1的にお姫様っぽい? に分類される女性キャラは出てきますが、今回の分にはお姫様は
  ほとんど出てきません。次回以降に期待。
・多分5まで? あるうち、4までが非エロです。充分に御了承下さい。
・PCはもう一ヶ月以上規制されているので、携帯経由での投下です。
 ●持たないので携帯が規制されたら、アウトです。
492レンと小さなお姫様1:2010/06/27(日) 22:03:37 ID:NVbPI6sK
幼い頃から、人の顔色ばかりを気にしていた。
一番初めに気にしたのは、母の顔色かもしれなかった。
なにしろぼくが物心ついた頃にはすでに、母は病床に伏せりがちだったのだから。
本当に母は、いつ消えて無くなるかわからないような風情だったのだ。

ぼくの父は、この中華の国、シン国の皇帝だ。
母は、歌の上手い宮女だった…らしい。そこから妃となり、男の子を一人産んだ。
それがぼく、シュンレンだ。
僕にとって、母の歌とは、子守唄だった。病床においてもなお、優しく甘く響く、
母の調べ。
子供心にも、母は他の誰より美しく、優しかった。

皇帝陛下──父も、母を愛していたようだ。いわゆる、寵愛というやつ。
けれど、帝国の一番偉い人にもなると、それは単純にはいかないもののようだった。
皇帝陛下には、何人もの妃がいるのだ。誰か一人にかまけてしまうと、当然
おろそかになる妃もいるわけで。
さらに後宮というのは、広いとはいえそれらの妃がひとつところに集められていて、
女達は自由に外出を許されているわけでもなく、籠の鳥。
それぞれが、既に鬱屈しているのだ。やることといったら、寵を争うか、気晴らしに
下らない遊びに興じるか、気に入らない者をいびり倒すか、あるいは誰かを呪うか。
それくらいしか、やることがないのだ。

母が亡くなったのは、ぼくが五歳のとき。
病で弱った末に、臨終間際に父の臣下の邸(やしき)に移って、そこで最後を遂げた。
死と病は穢れとされていて、皇后以外の妃は、死病を患えば生家に戻されるのが慣例だ。
ただ、母は生家との折り合いが悪く、ほぼ絶縁状態。生家に戻る事はどうしても拒否した
ようだ。
その代わりの役目を引き受けたのが、カオ家だった。貴妃の生家が得る特権と引き換えに、
その後もカオ家はぼくの後見も引き継ぐ事になる。
あくまで表向きは、母は生家に戻った事になっていたけれど。

母は死ぬ間際、こうなったのは誰のせいでもない、誰のことも恨まないで…と言った。
本当に、そうだろうか?
母が後宮の貴妃たちから疎まれていることは、幼い頃のぼくでも肌で感じていた。
勝者には嫉妬を、敗者には嘲りを。
皇帝の寵愛を一身に受け、その後病を得て死に近づいてゆく母には、そのどちらもが
浴びせられた。
誰が毒を盛っていても、誰が呪っていても、おかしくはなかった。たとえそうでない
としても、弱ってゆく体で、暗く澱んだ感情の渦巻く後宮の中に居続けることが、母の
健康に何の害も及ぼさなかったとは、とうてい信じられなかった。
皇帝陛下その人も、母がここまで憎まれる原因を作ったともいえる。この後宮の中で、
もう少し上手く立ち回れなかったものか。
493レンと小さなお姫様1:2010/06/27(日) 22:06:55 ID:NVbPI6sK

そんな中で、誰も恨まないで…という母に、幼いぼくは言いたかった。
かあさま、ぼくはまだ五歳なんだよ。聞き分けのいい振りをしているだけで、本当は、
わがままばかり言っていたい、子供なんだ。
言いたかったけれど、明らかに生命の輝きを失いつつある母には、何も言えなかった。
何も言えずに、ただ頷くしかなかった。
憎しみで心を一杯にした方が、悲しみに耐えるのもずっと楽なのに。
確かに、憎しみで心を真っ黒に染め上げた人たちというのは、綺麗でもないし、幸せ
そうでもない。しかし、それに気づいたからといって、心の中に開いてしまった大きな
空虚(うつろ)は、埋めようもなかったけれど。


母がいなくなってしまうと、ぼくは、澱んだ空気の後宮内で、独りぼっちになった。
私室は──六歳になれば、誰もがそうするしきたりなのだが──母の居室のそばの
房室(へや)から、内宮と呼ばれる、皇子、皇女の私室のある宮へと移った。もっとも
そこは、衣食住全てが後宮の管轄で、後宮の一部のようなものなのだが。
母の最期を看取ったカオ家がぼくの後見を務めることになったが、そのほかにも相談相手
として、母の親友だったというジンという姓の宮女のところへの出入りが許された。
折しも、後宮内の空気は、ひどく不穏だった。
皇后は子宝に恵まれず、たったひとりの皇子──当時の皇太子──は、虚弱だった。
病に伏せってばかりで、長くはないと噂される皇太子に代わって、最も有力視されて
いたのは、柳徳妃[リウ・トゥフェイ]の息子、クェンイン兄上だ。彼は年齢こそ一番上
ではないが、健康で、文武に優れていた。
ただ問題は、リウ徳妃が、権力志向の強い女性だった事だ。
彼女は降ってわいた好機に夢中になり、息子の競争相手を蹴落とす事に躍起になっていた。
元々権力の中枢は暗殺などの危険に晒されやすいが、この頃は外部の敵の仕業に見せ
かけた、内部の犯行が最も危険だった。毒殺でも、刺客でも。
だからぼくは、必然的に、強さを求めた。

  *   *   *

そんな中でも、僕はどうにか十二歳まで育つ事が出来た。
前皇太子の病没によって僕が七歳のときにクェンイン兄上が立太子してからは、後宮内も
ようやく落ち着きを取り戻した。
自分が『他人の表情を読む能力に長けている』ということに気づいたのもその頃だった
だろうか。
否、僕が普通にやっていることが誰でもできることではないということに、その頃やっと
気づいたのだ。だって、誰でも相手が笑っていれば嬉しいのだと、泣いていれば悲しいの
だと、判断しているだろう? 
ただ、人の心の動きはそれよりちょっと複雑なだけだ。
ほんのちょっとだけ気をつければ、悲しみにくれて泣いているのか、悲しんでるように
見せかけるために泣いているのか、あるいは他の感情がどのくらい混じっているのか、
すぐに分かる。
それは多分、人の顔色を窺う事を繰り返したが故の観察力に過ぎないのだろうけど。
494レンと小さなお姫様1:2010/06/27(日) 22:11:03 ID:NVbPI6sK

「ジン・ツァイレン、いる?」
母の親友だったジンという女官は、その頃には高位の女官だけに与えられる
才人[ツァイレン]の位を得ていた。その位に敬意を表して、ジン・ツァイレン、あるいは
単にツァイレンと呼ぶようにしていた。
彼女は僕の生まれる前から後宮にいて、母と同じ尚儀、つまり外交用の楽曲や舞を行う
部署に属していた。
母のことも、母と父のことも、僕のことも一番よく知る人物で、当時の僕の相談相手
といえば彼女か、血の繋がらない後見役であるカオ家当主くらいなもので、僕は割と
頻繁にジン・ツァイレンのいる尚儀の房室に出入りしていた。
彼女は今でこそ後宮で才人[ツァイレン]という高位を得ているが、出身は貧しい農村で、
その人生はどこをとっても壮絶。頭も良く、辛辣で、常に貴族出身の者達とは一風
違った見方を示してくれる、申し分のない相談相手だった。
僕が訪ねると、ジン・ツァイレンは大抵なにがしかの楽器を弾いていて、後輩の女官達に
教えているときもあった。
一音一音大切に弾いて、気に入らない節は何度でも戻って、納得いくまでやり直す。
練習中を覗いて何が面白いのかと問われたこともあったが、華やかな表舞台を支える
地味な練習が見られるのは、ある意味特別な気がして、とても好きだった。
「おや、シュンレン様、いらっしゃいませ。」
ツァイレンは背が高く、少しやせぎすな女性だった。彼女は泣きぼくろのある切れ長の
目を細めて、女官らしい上品さで微笑んだ。

「貴族の子弟の通われる『学院』とやらに入院なさったようですが、その後いかがです?」
「うん、順調にさぼってる。」
「それは重畳。」
母は、権力争いに対しては『目立たず居るように』と言い残していた。それは今でも、
正しかったと思っている。後宮に長く居るジン・ツァイレンも、同じ意見だった。
皇位継承順は、さすがに皇太子だけは血筋が考慮されるが、それ以外では徹底した
実力主義で決められており、実質的な序列を示している。それは学問・武術・実務の
能力で決められているので、好成績さえ残さなければ簡単に順位を落としておく事が
出来る、ある意味便利でわかりやすい物差しだった。
その頃シン国の皇子は二十三名で、僕は二十一位だった。
後見のカオ家もけして上級貴族とは言えないし、母の出自も下級貴族だ。だが、母が
特別の寵愛を受けていたというだけで、僕は危険視され易かった。実際、十二までの
一対一の教育も、十二で学院に入ってからの講義も、さぼれるだけさぼっていたが、
そのことで皇帝である父上から何か言われた事はなく、特別扱いを感じさせた。

「さぼった間はどこへ?」
「カオ家の離れを一室空けて貰って、そこで過ごしてる。蔵書も一通り持ち込んであるし。」
「ほう…、秘密基地ですか、それはうらやましい。」
「秘密くらい持たなければ、息が詰まるよ。」
実際、カオ家にいる時間は、貴重な息抜きの時間だった。
自分を偽る必要もなく、自由に難書を読みふけった。
武術の基礎を習得したのもここだ。カオ家当主が、僕の求めに応じて、武術指南役を
配してくれたのだ。
通常の剣術の修練も当然行ったが、何よりもまず必要だったのは、子供の僕が、大人の
刺客に対して護身できる術──隠し武器、暗器だった。
もしものとき、一対一で勝つには、まだ僕は子供過ぎた。それでも、最初の一撃をかわし、
相手の意表をつく事が出来れば、あとは護衛の出番のはずだ。
シン国は強大な帝国で、内にも外にも、いくらでも敵は居た。後宮内部も勿論危なかったが、
外の方が安全という事もなく、皇子、皇女の誰かが命を狙われるのは日常茶飯事だった。
皇位継承順位が低ければ権力争いからは遠くなるが、護衛という点では後回しにされがちで、
僕はいつも、ツブテやら、毒針を仕込んだ小箱やらを持ち歩いていた。
当然、それは最後まで取っておくべき最終手段で、実際に使うような羽目に陥ったのは、
ほんの数回だったけれど。
495レンと小さなお姫様1:2010/06/27(日) 22:15:23 ID:NVbPI6sK

「学院では、武術も教えて貰えるのでしょう?
素人の振りをして、皆に混ざっておけば宜しいのに。」
「嫌だよ! あんなぬるい奴ら。
多分、生まれてこのかた、生命の危機にさらされたことなんか、一度も無いんだよ。
隙だらけで、イライラする。あんな奴らに、手の内を見せる必要もないし。」
少し声を荒げた僕を、ツァイレンは面白げに眺めつつ、薄い唇を開いた。
「これは手厳しい。
進級のときは、どうなさるおつもりで?」
「本試験はさぼっておいて、人が少なくなってから追試を受けようと思ってる。
いい成績を取る必要はなくて、ギリギリで受かればいいしね。」
「シュンレン様は、用心深いこと…。」
ツァイレンは、どこか謎めいた笑みを浮かべながら、長い指で筝を爪弾いていた。


その後一年は、大事も無く、つつがなく過ごした。
残念な事に、非常に残念な事に、シン国の中でも特に優秀な貴族の子弟を選抜して
入れている筈の学院にも、僕が自分から、どうしても友人になりたいと思うような
人物は居なかった。
親にでも言われたのだろう、嫌そうな表情を浮かべて、友達顔をしてきた奴らは、
突き放した。
それ以来、自発的に僕に近づく奴は居なかった。
「シュンレン様は、少し人嫌いでいらっしゃるな。」
そんな僕を見て、ジン・ツァイレンはそう言った。
「違うよ。僕が人を嫌いなんじゃなくて、まわりが僕を嫌いなんだよ。」
十二にもなれば、もう判り始めていた。自分が人に好かれる性質ではないということを。
継承順位を低く保つために奇行を重ねているせいもあったが、面と向かえば、誰の目にも、
どこかしらおびえの色が浮かんでいるのが見て取れた。
496レンと小さなお姫様1:2010/06/27(日) 22:18:36 ID:NVbPI6sK

「そういうところ、イェンに似ていますね。すこしだけ。」
「…母上に?」
ツァイレンは、母のことを、女官時代の通称の芙蓉の君でも、貴妃としての名、
紅昭儀[ホン・チャオイー]でもなく、いつもごく親しげに、イェン…と下の名前で呼んだ。
「母上は、人気者じゃなかったの」
「大層な人気でしたとも。彼女の唄にも、美しさにも魅かれる者たちは多かった。
けれど同時に、才あるものの悲哀も、嫌というほど知っている人でした。」
ツァイレンは少し遠い目をして語った。
「彼女は何をしても抜きん出ていた。わたくしは彼女ほど努力する人を見たことはないけれど、
彼女をよく知らない人々は、その唄も美しさも寵愛も、何の努力もなしに得たものとして妬んだ。
彼女の周りの者たちは、彼女を信奉するか、彼女を憎むかの両極に分かれましたね。」
それからおもむろににやりと笑って、
「まあでも、わたくしがイェンの信奉者の筆頭ですがね。わたくしほど、彼女を愛した者は居ない」
と、誇らしげに付け加えた。
「ああ、わたくしのイェン! 誰よりも美しくたおやかで、この上なく優しかった…。
あの…っ、あの男さえいなければ、わたし達は今も一緒に居られたのにッ!!」
女の園歴の長いこの女官は、時々ちょっと言動が怪しい。さらにノッて来たようで、個室
だからいいものの、この国で一番偉い人もあの男呼ばわりだ。
「でも、親友は居たんだね、ツァイレンのような。」
いつまでもその死を悼んで、息子の相談役まで引き受けてしまうほどの、情の濃い親友が。
「イェンは、誰にでも優しくしてくれる人でしたから。彼女の敵にさえも。
シュンレン様も、周りに優しくなさってみれば宜しい。その中から、友人になる方も
見つけられるでしょう。」
「…そうかな」
そうは思えなかった。
「僕はずっと、こんなな気がするよ…。
誰と居ても、どこに居ても、自分が異質で、受け入れられていないのが分かるんだ、
自分でも。
時々思うんだ、もし大人になっても、結婚しても、こんな風に受け入れられないまま
生きていくのなら、そんな人生に、意味はあるのかな…?」
「シュンレン様は幸い、お相手を選ぶ方の立場であらせられます。
貴方様を好きになってくれるお相手、貴方様が好きになれるお相手をお選びになり、
うんと優しくして差し上げれば宜しい。」
「いるかな、そんな都合の良い相手が。」
「居りますとも。シュンレン様は表情を殺して地味に見せておられるが、イェンの息子で
あられるので、お顔立ちもよろしい。
陰のある雰囲気も、ひねくれた性格も、それなりに女心をくすぐりましょう。
女官出身で宜しければ、お年頃になられた頃に、家柄の良い者を見繕って御紹介
いたしますよ。」
微妙に褒めてるんだかけなしてるんだか分からない、それがいつものツァイレンの褒め方だ。
けれど、この頃の僕は、いつも周囲との間に居心地の悪さを感じていて、誰かと濃密な
関係を築くことが想像できなかった。
そう、あの時までは。
497レンと小さなお姫様1:2010/06/27(日) 22:20:59 ID:NVbPI6sK

  *   *   *

春になれば、貴族の子弟のための学院は、卒院生を送り出し、新しい生徒を迎える事になる。
昨年入ったばかりの僕は、人の入れ替わる慌しいこの時期は、初めてだった。
王都にも学院にも不慣れそうな新しい学院生性質が、きょろきょろと辺りを見廻しながら
うろついている。彼らは不案内ながらも触れてはいけない相手の噂はしっかりと仕入れて
いるようで、僕のことはやはり遠巻きにして近寄ろうとはしなかった。
ただ、一人を除いては。

新しい学期が始まってすぐはさすがにさぼれなくて、大人しく出席していたある日のこと。
背が低くてやせっぽちの子が、講義で使う書物と、大きな硯箱を抱えてよたよたと歩いてきた。
僕の隣の席にそれを重そうにどさりと置いてから、高くてよく通る声で、
「ここ、空いてますか?」と聞いてきた。
僕の隣は大抵、空いている。頷き返すと、その子はぱあっと、こぼれるように笑った。
そのときやっと、僕はその子が女の子である事に気づいた。高等な教育機関であるこの
学院は、ほとんどが男子ばかりだ。女の子にわざわざ学問をさせようなどと考える貴族は
少ないようで、全体で百名近くにものぼる学院生の中でも、女生徒はほんの数名しか居ない。
その子は長い黒髪をきっちりと結い上げ、シン国ではあまり見かけない、体にぴったりした
立て襟の服を着ていた。
大きなくりっとした目で僕のほうをじっと見つめて、初対面である事を確認すると、その子は
おもむろに口を開いた。
「おはつに、おめもじ、つかまつります。
ハリ国よりまいりました、ラン家三女第六子、メイファと申します。以後、おみしりおきを。」
そういってその子はぺこりとお辞儀をする。
おそらく何度も繰り返したのだろう、たどたどしいなりに、はきはきとした自己紹介で、
シン国の公用語の発音もはっきりと出来ていた。

──なんだろう? この可愛い生き物は。

それが第一印象。
僕が十三歳、メイファが十二歳の春だった。




        ───続く───
498レンと小さなお姫様1:2010/06/27(日) 22:26:39 ID:NVbPI6sK
以上です。多分、一週間くらい後にまた来ます。

管理人様、次作をなかなか投下しないにもかかわらず、お願い通り統一タイトルで
保管いただきましてありがとうございます。
あと、当方がうっかりコピペミスした「六」を補完していただきまして、改めてありがとう
ございます。あまりにもきめ細やかなお仕事ぶりに感激です。
499名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 22:38:53 ID:NVbPI6sK
連投スマソ
なんか変換ミスが残ってました。他にもあるんだろうけど。

>>497の6行目、
× 学院生気質
○ 学院生達
でした。
500名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 23:17:22 ID:p3LEKmC5
やっべえ面白いGJ!
一週間早く経たないかなあ
501名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 01:55:41 ID:vC07sPdd
GJ

あと7日・・・
502名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 00:50:00 ID:7OfXe0qZ
一週間て長いのう・・・

続き楽しみ
503名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 09:17:37 ID:dbnw1koU
続編、というかなれそめ編?
待ってました!

あと2、3日かな?
引き続きお待ちしてます
504名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 23:48:43 ID:dGnXNZ/5
久々に覗いたらレンとメイファきてた!
この二人好きだわ〜

作者様が規制に巻き込まれませんように
505名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 06:39:54 ID:WHATyrmx
GJ有難うございます。
週末は用事が入りそうなので、今のうちにさくっと投下。
PCの規制は全く解ける気配もありませんが、携帯はまだいけるみたいです。

「メイファと皇子様」の皇子様視点の話です。
別々に読んでも大丈夫…なように書きたい希望はありますが、
書けている自信はありません。
シン国は、秦でも新でも晋でも清でもない架空の国。

シリーズ名は、「中華の国の物語」です。

注意:非エロ 

姫様、やっと登場しましたが、まだ十二歳です。
ロリ展開注意。
前置き長くてスミマセン。
506レンと小さなお姫様2:2010/07/03(土) 06:42:46 ID:WHATyrmx
メイファは朝貢国から差し出された、人質の姫だった。
ほとんどの朝貢国は恭順の証として、王族の子を人質に差し出す事を義務付け
られていた。
万が一、戦ともなれば惨殺したその首を前線に掲げ、敵の戦意を削ぐためのもの
であるから、人質は王の血族の女子供、つまり戦に巻き込むにはむご過ぎると
相手国、及びその国民が判断するような、ごく弱い立場の者に限られた。まあ、
中華の国たるこの国の、底意地の悪さの垣間見える制度だ。
近年はひどく平和で、朝貢までしていながらわざわざ強大なシン国と事を
構えようとする国もなく、人質が命まで取られるほどの事態は起こっていないが、
小さな揉め事にも人質は有効だ。
それゆえ、『留学』という名目でシン国の王都に集められた各国の王族の子供達は、
外出は出来ても常にシン国側が居場所を把握できるようにしておかねばならなかったし、
はかりごとを防ぐために国から侍女や従者を伴う事も許されず、代わりにシン国側から
監視をかねた侍女と従者があてがわれた。また『身代わり』なしに一時帰国する事も
許されないし、全ての親書は、ごく私的な手紙まで検閲されていた。

  *   *   *

しかしメイファには、そういった暗い影は見当たらなかった。
「ここ、空いてますか。──良かったあ! 今日もシュンレン様のお隣の席を許される
なんて、光栄です!」
僕の隣は、いつでも空いている。
学年が違っても同じ講義はいくつもあって、そのたびに僕達は、隣の席に座った。
辺境国での教育では、学院の講義に必要な知識がいくつも抜け落ちていて、この
お姫様の知らない部分を補って説明してあげると、彼女は面白いくらいに吸収した。

説明と引き換えに僕は、メイファの祖国の話を聞いた。
彼女は随分と、お転婆だったみたいだ。
木から落ちたり、崖から落ちたり、沢に落ちたりは日常茶飯事、と聞いて、ハリ国
ではそもそも王族が気軽に出歩ける事に驚いた。かの国では王族は絶対的支配者
ではなく、頼りにされる調停者に過ぎないらしかった。
華美を好まず、清貧を愛し、民が飢える時には共に飢える。そのために、王都に
来たばかりのメイファは、同じ年頃のシン国の貴族の子に比べても、ひどく
痩せていた。
それでもその瞳はいきいきと輝いていて、彼女の育った国──神々が棲むと
信じられているという山々の麓の国──の暮らしの話を聞いているのは、ひどく
楽しい時間だった。

「そんなにのびのびと生きてきたのに、この王都に来て、監視…じゃなかった、
護衛にいつもついて廻られるのって、窮屈じゃない?」
「いいえ? シン国の従者も侍女も、本当によくしてくれます。
わたしがここにいることが、少しでも祖国の役に立つなら、嬉しいです!」
メイファには、陰湿な政治の駒として囚われても揺るがない、強さがあった。
祖国のために尽くそうという気概と矜持も。

それも、愛されて育ったがゆえか。
メイファは笑うときはいつでも、顔全体をほころばせて、とろける様に笑う。
その笑顔を見るだけで、彼女がどれだけ溢れるような愛情を注がれてきたか、
目に浮かぶようだ。
後宮では、こんな風に笑う娘は、滅多に見かけない。
おそらく彼女が今まで生きてきたのは、安心で、安全で、善意と愛情に溢れた
世界。世の中の暗さ、悪意、猜疑心のような、澱んだ黒いものは、きらきらと
したその瞳にはあまり映ることが出来ないようだった。だから、メイファの前では、
誰も彼もがいつもより少しいいものになったような気がしてしまう。
つま弾き者の僕と一緒に居ても、そんなメイファに悪意を向けられる者などは
居ないようだった。少なくともこの学院の中には。
507レンと小さなお姫様2:2010/07/03(土) 06:48:02 ID:WHATyrmx

──羨ましい。
ごく反射的に、そう思った。
僕はこのシン国の皇族として、ひどく恵まれた暮らしをしているはずだ。だから
安易に、立場が違う者のことを羨んではならないと、ジン・ツァイレンからいつも
言われていた。
それでも、そう思うのを止められなかった。
羨ましい。羨ましい。──ずるい。
どうして、こんなにも違うのだろう。愛されて、愛されて、誰からも好かれる
小さな姫。
僕と何と違うのだろう。幼い頃から暗がりの中に居た僕は、このまま薄闇の中に
居続けるしかないのか。
心の奥が、ちりちりと痛んだ。


「──ほほう、それで、生い立ちのあまりの違いに苛つくけれど、無視する事も、
嫌う事も出来ないと。
ベタですね。物凄く、ベタですね。
まさかシュンレン様が、ここまでベタで来るとは、思いもよりませんでした。」
休憩で熱い茶を啜りながら、ツァイレンはからかうように言った。
「ベタって、何が。」
話の見えない僕は、少し憮然として聞き返す。
「恋の、始まりがですよ。」
「こ…恋っ?!」
「何を今さら。進級してからというもの、その姫君の話しかしてないじゃ
ありませんか。」
「いきなり、何を言い出すんだ、ツァイレンっ?!」
そうは言うものの、声が異常に上擦っているのが、自分でもありありと分かった。
「いえ別に、いいんですけどね、いつ自覚しようと。
見ている分には、面白い事に変わりはないし。」
ツァイレンは、泣きぼくろのある眼を細めて微笑った。
「そんな…単にメイファは、誰からも好かれる娘で…。」
そう、あんなに可愛くて、明るくて、愛されてる娘は、誰からも好かれるはずだ。
誰からでも。僕で、なくとも。
思考は、そこだけを中心にくるくると廻った。

──メイファに手を出さないこと。
僕が彼女の同期生達を脅しつけるようになるまではそう長くはかからなかった。

「本当に、僕って、性格悪い…。」
メイファのように他人の長所や美点を見つけてやることは苦手で、他人の弱みを
握ったり、脅したりするのは得意。いつだって、他人の暗い部分、澱んだ心ばかりが
見えてしまう。
誰もが僕から、距離を置こうとするのも頷ける。
でも僕は、メイファのようには、育たなかった。あんな風に、安心と安全に守られて、
愛情に満たされた記憶なんて、無い。
僕はこのままで、何とか生きていくしかないのだろう。

それでもメイファのよく通る涼やかな声で、「レン…」と呼ばれるのは、悪くなかった。
親しい人からは、そう呼ばれている、と彼女に言ったのは、半分本当で、半分嘘。
僕の親しい人間なんか限られていて、ジン・ツァイレンやカオ家当主は臣下の身分
なので、親しげに読んだりしない。ほかの母の違う兄弟たちも、親しげに呼び交わす
仲の者は居らず、そうやって僕を呼んでいたのは、ただ母上だけだった。
508レンと小さなお姫様2:2010/07/03(土) 06:51:25 ID:WHATyrmx

  *   *   *

「レン…」
ひどく近くで、僕を呼ぶ声がする。あの辺境国から来た、小さな姫君の声だ。
彼女の声でそう呼ばれると、ひどく胸を締め付けられる感じがする。
「──メイファ。」
頭をめぐらせて彼女の姿を認めると、熱く沸騰するような感情がわき上がる。
震える指先で、彼女の柔らかな頬に触れると、彼女は恥ずかしげに目を伏せた。
桜色に染まる頬と、長い睫毛がひどく扇情的で、掌をその頬に沿わせて、もっと
よく見ようと顔を近づける。
「可愛い…。」
今はただ、そんな単純な褒め言葉しか出てこなかった。
瞳を僅かに上げたメイファと、近い距離で視線が絡み合う。いつも強い意志を宿す
その瞳は、今は少し潤んでいて、僕を誘うように瞬きしてまぶたを震わせる。
「メイファ…君が好き。」
僕はその瞳に吸い込まれそうになりながら、うっとりとして愛の言葉を囁く。
唇を彼女の頬に触れるか触れないかの軽さで幾度も落としながら、優しく華奢な
体を抱き寄せる。
メイファの身体は細くて軽くて、でも王都に来てからのこの半年のうちに、女らしい丸みも帯

び始めていた。
「レン…嬉しい。あなたの、思うままに…。」
その瞳に浮かぶのは、羞恥と期待と信頼の色。僕は眩暈がしそうなほどの幸福感に
満たされて、そのやわらかな唇に自分の唇を重ね──

──そして。

目が覚めた。

目覚めた僕を待っていたのは、いつもどおりの自分の寝台。、天蓋つきのそれは
一人には広すぎるほどで、四方に垂らされた薄布の隙間から朝日が射していた。
掻き抱いていた寝具を払いのけて起き上がると、僕は自嘲気味に呟く。
「最低…。」
先程まで胸を満たしていた幸福感は泡沫のように消え、代わりに砂を噛むような
空虚感が広がっていた。

その日はもう、学院に行く気力は無かった。
かといって、起こしに来た侍中に逆らう気力も無く、身支度を整えて外出する
…ように見せかけて宮中に戻り、ジン・ツァイレンの居室を訪ねた。
ツァイレンは、若い女官達を集めて、演奏の指導だか音合わせだかをやっている
最中だった。
「ツァイレン…、今日は一人で居るのは辛いんだ。ちょっとここに居させて
もらえないかな。」
「おや、シュンレン様。朝からサボリのときは『秘密基地』に行かれるのでは?
…でも、今日はいらっしゃると、思っておりましたよ。お待ちしておりました。」
ツァイレンが居並ぶ若い女官達に目配せすると、彼女達は楚々として楽器を片付け、
しずしずと房室を後にした。
509レンと小さなお姫様2:2010/07/03(土) 06:54:13 ID:WHATyrmx

僕は彼女の言葉尻に引っかかりを感じて、そこだけ繰り返す。
「…来ると、思っていた?」
「件(くだん)の姫君と、諍いを起こされたとか。」
ツァイレンはこともなげに答えた。
「な…っ…、何で知ってるんだよ! ほんの昨日のことなのに!」
「後宮の女官の情報網を、甘く見られないほうが宜しい。
われらは後宮からは滅多に出られませぬが、外のことを見聞きする手段は、
持っているのですよ。」
彼女は使っていた楽器の手入れを始めながら、悠然と微笑った。
「女官、侍女、下女、飯炊き女…どこにでも、使われる女というのは居るものです。
我らは弱い存在ゆえ、助け合っておるのです。」
後宮の女官の中でも屈指の権力を持つ才人[ツァイレン]であり、常に毒舌を
吐く彼女が弱い存在とは思えなかったが、彼女はときおりこういう物言いをする。
「ツァイレンの言う通り、メイファと喧嘩して──というより、僕が一方的に
嫌われるようなこと、したんだけど──そのことを考えると、顔を合わせづらくて。」
「ほう、ほう。あのお気に入りの姫君に、一方的に嫌われるようなことを。しかして
それは、いかなる理由で?」
ツァイレンは両の口角をくいと持ち上げて、目を輝かせた。明らかに面白がられて
いるが、こんなときに話し相手がいないよりましだ。
「──いつか嫌われるのが、怖かったから。」


いつから、あの小さな姫に、こんなにも捕われてしまったのだろう。
もしかすると、最初に会ったときからかもしれなかった。
逢うたびに、ひどく楽しくて、心が浮き立って。
こんな相手は初めてで、それを恋と勘違いしているのだと、自分に言い聞かせようと
したけれど。
どこに居ても、目で追って。
いつでも何をしているのか、気になって。
近づけば、触れたくて。
心に思い浮かべるその姿が、実際の年齢よりも艶めいたものになってゆくにつれ、
自分の心を認めざるを得なくなってきた。

女に触れるのは、はじめてではなかった。
母も居ない僕には、行動を細かく制限するものも居ない。
色街の方も、相手が子供でも、特殊な身分でも、いくらでも抜け道は用意していた。
だから、精通が始めればすぐに、そういう場所にも行ってみた。『愛』と呼ばれる
こともあるその行為に、なにがしかの期待をして。

結果は、惨憺たるものだった。
僕の会った遊び女の誰もが、『どこも見ていない』目をしていた。
覗き込むと、その中の大きなうつろに、飲み込まれそうだった。
互いにほとんど視線を合わせないまま、身体を重ねた。
あとでジン・ツァイレンに、たしなめられたものだ。
「そういう場所で、女の目を覗き込むものではありません。
遊び女というのは大抵、女の中でも最もひどい境遇に苛まれている者達
なのですから。」
それでも、そういう場所でもなければ、発散され得ない熱というのも、確かに自分の
中にはあって。
行った後には、ひどく暗澹とした気分になったものだった。

もし、あの女たちのかわりに、メイファとそういうことをしたらどんな気持ちだろう。
くるくると良く動く瞳で僕を見て、あの綺麗な声で僕の名を呼んで。
少し想像しただけでも、沸き立つような感じになる。
510レンと小さなお姫様2:2010/07/03(土) 06:56:49 ID:WHATyrmx

でも、現実のメイファは、ひどく純粋で、よこしまな想像を寄せ付けないほど、
清廉だった。これだけ周り中男ばかりでも、いや、それだからこそか、色恋には
全く興味がない様子で。
むしろ、未婚の男女の間での色恋など、害悪以外の何者でもないと、敵視していた。
そんなメイファの夢は、結婚せずに、祖国に帰って政治に携わること。
確かに、結婚して妻になるだけなら、こんなに厳しく学問を修める必要もない
だろうけど。
彼女がわくわくするようにそんな夢を語るとき、僕はいつもひどく疎外されている
ような気分に陥るのだった。

そして、前期の成績発表の日。
予想通り、メイファは上位の成績を取っていた。まあ、当然だ。
他人事ながらほくそ笑むのを止められない僕を、メイファが呆然とした眼で
見つめていた。
「何故…?」

あれ? 何が?
僕のほうの成績が?
というか、今まで知らなかった?
──ありえない。
僕が奇行癖の持ち主で、常に下位成績しか取らず、真面目とは無縁の性格だと
いうことを、知らない者は居ない。メイファと同じ、入ってすぐの学年でも。
確かにメイファに対しては僕の噂話をやたらと流さないように、とは同期の子達に
言っておいたが、漏れ聞こえてこないようなものでもない。
おそらくメイファは、みずから耳を閉ざしていた。
「噂は真実を映しません。だからわたしは、レンから直接聞いたことだけを信じます。」
メイファは、そうも言っていた。彼女の中では、誰しも長所は大きく、短所は
小さく映って少しいい奴になってしまう。
彼女の中の僕はいったいどんな人間になっているのだろう。そいつはきっと、心の中
までキレイ過ぎて、僕とは友達になれないような気がする。
本当の僕は、こんなにも、暗く、汚く、澱んでいるのに。

──本当の僕を、知られたら?
軽蔑されるだろうか。失望されるだろうか。もうあんなきらきらした視線を、貰えなく
なるだろうか。
そう考えると、もうどうしていいのか、分からなくなった。
どんな顔をして会えばいいのかも、何を喋っていいのかも、分からない。

そして。


「ほう…。それで、姫君の嫌いそうな、春画を贈られたか。
つまりはあなた様の汚い部分を見たらどうするか、という謎かけでもあったのですね?
──で、振られたと。」
「ツァイレンはさあ、ほんっと、人が弱ってるときも、容赦無いよね?!」
「それはまあ、あまりに、面白すぎますゆえ。
シュンレン様は、悩みは歳相応に少年らしいのに、春画などと。やることはオヤジで
ありますな。」
「うるさいなっ。どうせ僕は、薄汚いよ。」
「薄汚い部分は、最後まで隠しておくものでしょうに。全てを認めて欲しいとは、
理想主義とい申しますか、意外と潔癖症と申しますか。」
「うう…。隣に座る娘もいないのに学院に出て行くのなんかもう嫌だ…。」
511レンと小さなお姫様2:2010/07/03(土) 07:02:12 ID:WHATyrmx

「早めに謝っておかれたほうが、宜しいと思いますよ。」
「謝ったからって…。既に嫌われているし、わずか数年で、また遠くの国に帰って
しまうのに。」
「恋は盲目と申しますか…。シュンレン様はその辺の事情がお分かりにならぬ方では
ないのに。
それとも、恋した姫君の願いは何でも叶えてあげたいのですかね。
姫君は、おそらく祖国へはお帰りになれないと思いますよ。帰られても、
ほんの一時的なものになりましょうな。」
「どうして。あんなに純粋に、祖国のために尽くしたいと、願っているのに。」
「姫君の生き方というものは…御本人が、お決めになる事ではないのですよ。
大抵の、女と一緒でね。
祖国の為にというならなおさら、このシン国と縁を結ぶよすがになるか、
あるいは近隣国と、か。
姫君に嫌われたままですと、この宮廷内で、ご兄弟のどなたかに嫁がれた姫君と
将来も顔を合わせねばならず、気まずい思いをなさる事になるやも知れませぬよ。」
「政略結婚…って、何でそこで他の兄弟に嫁いでしまうことになっている? 
僕でもいいだろう?」
「ですから、嫌われたままですと、と申し上げております。」
「く…っ、もう少し、早く言ってくれれば…!」
「普通でしたらシュンレン様は、ご自身でお気づきになられておりますでしょう。
道理も見失うほど、その姫君に夢中になっておられるとは…。ふふ、面白い。」
ジン・ツァイレンは、心配しているのではなく面白がっているのだということを、
今更隠す気もないようだった。

たった十二歳で、人質としてひとりこの国に差し出されている、小さな姫君。
どんなにか不安だろうに、あまりに純粋に祖国に帰ってからの夢を語るので、
この国に無理矢理引き止めるのは、残酷に思えた。
でも──政略結婚なら、シン国にも、メイファの祖国、ハリ国にも利がある。
第一、二十一番目の皇子と、辺境国の姫君なら、釣り合うように思えた。相手が
十二歳という若さでも、婚約だけなら問題ない。
僕はすぐに、この考えに夢中になった。
一旦嫌われてしまったけれど、時間をかけて、何とかして。

ただ、怒らせたときのメイファの、傷ついたような泣きそうな顔を思い出すと、
どうやって関係を修復していいかわからず、足が動かなくなって、そのまま自室に
留まってしまう。なにしろ、自分から誰かとなにかの関係を持とうとしたことなど、
皆無なのだ。
そのままうだうだと、三日ほど学院をさぼって過ごした。

そうこうするうち、三日目の夕方、訪問客があった。
客人の名を聞くと僕は飛び起きて、着衣を整えて足早に応接の間に向かった。
そこには従者を二人、後ろに控えさせて、応接卓の椅子にメイファがちょこんと
座っていた。
放課後にここへ寄ったのだろう、いつもと同じに、立て襟のぴったりした服を着て、
髪をきっちりと結い上げて。
背筋をぴんと伸ばして、大きな瞳でまっすぐ前を見つめていた。






        ───続く───
512名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 07:04:47 ID:WHATyrmx
以上です。次も、一週間くらいで来れると思います。
その次あたりから間に合わなくなりそうですが。
513名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 13:34:01 ID:LPBG6hOA
GJ!!
あぁっ、1週間って長いなのな。
じっと正座で待ってる。
514名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 04:00:03 ID:z9Cxdqsr
GJGJ!
515名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 14:01:56 ID:LRGmjaHR
GJ
保管庫でなんどもメイファと皇子様を読み返して待っています!
516名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 06:09:12 ID:62BOa7V5
投下します。

「メイファと皇子様」の皇子様視点の話、3つめです。

注意:非エロ
517レンと小さなお姫様3:2010/07/11(日) 06:11:19 ID:62BOa7V5

メイファの姿を認めた途端、えもいわれぬ気持ちで、胸が満たされる。
──ああやっぱり、本物はいいな。自分に都合のいい想像の中のメイファより、
本物はずっと生き生きしてる。三日ぶりの実物に僕は、状況もわきまえずに
見惚れてしまう。
「メイファ。いつも寄り道は駄目だって言ってるのに、わざわざ寄ってくれたの?」
メイファは、眉をキッと釣り上げ、上目遣いに向かい側に座った僕を睨んで
見せた。いかにも、怒ってますよという表情だ。でもそこに、暗い怒りも侮蔑も
嘲りも含まれていない事に、僕は安堵する。
「違いますっ! 今日のわたしは、学院の遣いですっ!! 外出許可も通行証も、
学院側が用意してくれましたっ!!」
びしっ、と両手に朱印の押してある外出許可証と通行証を持って、高らかに言い放つ。
「ひとつ! 休んだ間の分の課題を提出すること!
ひとつ! 連絡が取れないと困るので、病欠以外で丸一日以上の欠席は控えること!
ひとつ! 病でないのなら、明日あたりから出席すること! 以上!!」
一気にそこまで言い切ってから、彼女はふぅ、と息をつく。
「それで、こちらが課題と連絡事項です。」
つっ、と卓上にあった封書をこちらに寄せてくる。

「──それから、これはついでにわたしからの伝言ですが。」
メイファが姿勢を正したのにつられて、こちらもつい、居住まいを正す。
「喧嘩したあと、学院に来ないとは、何事ですかっ!!
すぐに仲直りしておかないと、余計にこじれるでしょうがっ!!!」
そう言って、柔らかそうな頬をぷっと膨らませた。
うわあ、物凄く可愛い。あの頬を、ぷにっと押したい。
──じゃなくて。

「仲直り…?」
それは、僕にとっては、物語の中にだけ、あるものだった。
物語を読んでいて、仲直りできれば、その二人は親密な関係があったのだと、
理解できる。それだけ。
どうやっていいのかも、何と言えばいいのかも、分からない。
僕とメイファの間にも、親密な関係があったのだろうか。いや多分、彼女は誰に
対しても、差別なくそうふるまうのだろうけれど。
「どうすれば、仲直りできる?」
案の定、彼女は怪訝そうに眉を寄せた。
「メイファ、僕は君が何かを知らないことで、馬鹿にしたことなんてなかったよね?
君も僕に、知らない事は教えてくれるべきじゃないかな。」
「むぅ…。本当に知らないと、おっしゃるのか…。
高貴な身分というのは、存外に不便ですね…。
じ、じゃあ、まず…。」
「まず?」
怒ってる顔も可愛いけど、戸惑っている顔も捨てがたい。僕はつい、卓上に身を
乗り出すようにして彼女の挙動に注目する。自分の頬がつい緩んでしまうのも、
止められない。
「反省してください。」
「した。」
518レンと小さなお姫様3:2010/07/11(日) 06:13:58 ID:62BOa7V5

メイファはあまりにもあっさりと即答した僕を睨みつける。
「本当かなあ…? じゃあ次に、反省に基づいて、謝ってください。」
「ふむ…反省の気持ちを、伝えないといけないんだね? それは難しい。
あんまり謝った事ないから、上手く出来なくても、怒らないでくれる?」
皇族である限り、他人に謝らないといけない場面、というのは、極端に少ない。
それでも、今まで読んだ物語の知識とかを総動員してでも、それらしい言葉を紡が
なくてはならないようだ。
僕は身を乗り出してメイファの片手を取った。僕の手より一回り小さくて、
つくりの華奢な、細くてしなやかな手。その手にもう一方の手を載せて、
やんわりと包み込む。
「メイファ、いやな思いさせたね? もうしないから、僕ともう一度、友達に
なってくれないかな。」
「手は余計ッッ!!!」
顔を赤らめたメイファに、凄い勢いで手を振り払われてしまう。
うん、余計だろうな。ただ、触りたかっただけだから。

そのまま彼女は、ぷいとそっぽを向いてぽつりと呟く。
「貴方は…わたしのことを、疎んじておいでなのか…?
わたしはただ、貴方の静寂を、乱すだけの存在なのか?
友達になれて、嬉しいと思ったのは、私だけだったのか…?」
三日前のことを言われているのだということは、すぐに分かった。
胸の中に、熱いものがこみ上げる。
ああ、メイファは『傷ついた』のだ。嫌な事をされたからではなく、『僕に』
『嫌われた』と、思って。
なんて僕って、性格悪いんだろう。そんなことが、こんなにも嬉しいなんて。
そのまま羽交い絞めにして、めちゃくちゃに抱き締めてしまわないよう自制する
のは、かなりの理性を必要とした。
「疎ましいはずは、ないよ。君を嫌いになる奴なんか、居るはずもない。
ただ僕はちょっと人付き合いが苦手で、どうしていいか分からなくなっただけなんだ。
ねえ、君がいいというまで、どんな風にでも謝るから、僕とまだ、友達でいて欲しい。」
目尻を指でついと拭う仕草をしてから、メイファはゆっくりと振り返った。
口をツンと尖らせてはいるが、もう怒った顔はしていない。

話が終われば、『仲直り』が終われば、もう帰ってしまうのだろうか。
「ねえ、お詫びに、この内宮の庭を、案内してあげようか。
普通ではなかなか入れない庭だし、せっかく来たんだから。
君は自然の野山の方が好きだろうけど、ここにも、国土のあちこちから集めた
珍しくて美しい草花があるよ。」
「え…でも、外出許可はここに来る目的だけで取ってあるので、そう長居するわけには」
そういいながらも、メイファの顔は、期待感で輝いていた。
「大丈夫。『留学生』の外出先として、これほど安全なところはない。
──ねえ、君達も、そう思うだろう?」
僕はメイファの後ろに控えている二人の従者に話しかけた。事実、これほど安全な
ところはない。他国からの人質を、この国が監視するという点においては。
そして、彼らはシン国の朝廷に属する人間であり、皇族に逆らえるはずもない。
黙って頷く従者達に、僕は重ねて言った。
「僕の友人を、少し案内してあげるから、君達はここで待っていてくれるかな。
その間のことは、僕が責任を持つよ。」
当然、彼らは頷くしかない。
新しい玩具で遊んでもらえるのを待つ仔猫のような表情で待っていたメイファに
声をかけると、彼女は弾かれたように駆け寄ってきた。
「──行こう。」
519レンと小さなお姫様3:2010/07/11(日) 06:17:35 ID:62BOa7V5

そのときの情景は、やけに強く心に残っている。
季節は初秋のあたりで、全てが夕暮れの茜色に染まっていた。小さな蜻蛉が
飛び交う中、僕らは美しく手入れされた内宮の庭園を、歩をそろえて歩き始めた。
庭園の植物達は、秋の花をつけるもの、果実を実らせるもの、早くも葉を
色付かせるものが、思い思いの装いを見せていた。
それぞれの植物が、どの地方で見られるのか、一般的か希少か、花はいつ咲くか、
その名前の由来や似た植物との見分け方などを説明してあげながら、ゆっくりと
散策した。

「すごいすごい!! レンは植物のこともすっごく詳しいのですね!」
「すごいと言っても…この庭園に植えられている植物は全て目録があるし、
綱目ごとの詳細な図誌も整備されているのだから、本を見れば全て書いてあるよ。
葉っぱの縁の細かいギザギザの形までね。ここの庭師ですら知っている事ばかりだ。」
そう、本を読めば、全て書いてあることだ。暇にあかせて読んだものを憶えているに
過ぎない。
今までその知識がいいとも悪いとも、役に立つとも思ったことはなかった。
でも、メイファがこんな顔をして笑ってくれるなら、その知識はきっと凄くいいものだ。

──楽しい。この娘と居ると、楽しい。
誰かと一緒に居たいって、こういうことなのか。
この娘が大人になっても、傍に居てくれたら。
そうしたら、生きていることも、生まれてきたことも、逃れられない根源的な苦しみ
なんかじゃなくて、もっと何かいいものに変わるかもしれない。

「メイファ、そこ段差あるから、気をつけて。」
変則的な石段の、段差がひときわ大きくなってるとこで、危なくないように手を
取ってあげる。こういうときには、手に触れても「余計ッッ!!」とか怒られなくて
すむので、役得だ。
身体が小さめの彼女にしては大きいような段差も、軽々と飛んですとんと僕と同じ
庭石に着地する。
瞬間、寄り添って立っているような体勢になって、メイファの顔が近づく。
歩き出そうとしない僕を、不思議そうな瞳できょとんと見上げて。

──可愛いなあ。近くで見ると、さらに可愛い。
さっきから言いたくて仕方のないことを、言うなら今じゃないだろうか。
僕は軽く深呼吸して、口を開いた。

「ねえメイファ、僕の、お嫁さんになってくれない?」
彼女は一瞬、目を大きく見開き、それから目を伏せてうつむく。
「結婚は成人してからになるだろうから、今は約束だけでいいんだ。
お互いの国にとっても、決して悪い話じゃない──」
僕はうっとりと、うつむいたメイファの唇が震えるのを見ていた。
この柔らかそうな唇に、いま無理矢理にでもくちづけたら、どうなるだろう?
いまなら、届く距離にある。
と、不埒な事を考えていると、目の前の唇がキッと引き結ばれ、しゅっと風を切って
平手が飛んできた。

ぱしっ。
小気味良い音が響く。
520レンと小さなお姫様3:2010/07/11(日) 06:20:02 ID:62BOa7V5

──あれ???
な、何で?? 何か、失敗、した???
まさか平手が飛んでくるとは思っていなくて、思い切り喰らってしまう。
顔を上げたメイファは、ふたたび眉が釣り上がり、目尻にうっすらと涙さえ溜めて、
怒っていた。
「反省してないッッ!!!
そのようなからかいは、無礼でしょう!!!」
からかい???
「王族の婚姻は、当人同士できめるものではありません!
然るべき年齢になってから、然るべき手順を踏んで、
シン国として正式に申し込むものです!!
そうすれば、わたしではなく、お父様が判断なさいます!!」
あ、うん、手順ね、手順…。
「わたくしは、これにて、失礼します!!」
そういってメイファはくるりと踵を返すと、みるみるうちに元来た道を駆け戻っていった。
「ぐるりと一周していたのだから、先に進んだ方が、早いよ…?」
という言葉をやっと呟いたときには、もう姿が見えなくなっていた。

そのまま僕は、しばし呆然としていた。
かなり真面目に結婚を申し込んだつもりだったのに、どうしてからかいと判断されて、
怒られて、平手打ちまで喰らってしまったのだろう。
「──シュンレン様、もう陽も落ちてまいりました。いつまでもそんなところに立って
おられては、身体が冷えますよ。」
後ろから声をかけるものがいる。優雅な抑揚の宮女らしい喋り方。ジン・ツァイレンだ。
が、振り返ってその姿を見た途端、僅かに違和感を覚えた。
いつも美しく優美に整えられている髷が、微妙に乱れている。簪も、僅かにずれている。
全体的に、埃っぽいような…?

「──いつから聞いていた? ツァイレン」
彼女は全く悪びれずに答えた。
「ばれましたか。そうですね…貴方様が姫君のお怒りを買っていることに気づかず、
鼻の下を伸ばしているあたりでしょうかねえ。」
やっぱり立ち聞きかっ!!
ここは庭園だけに、身を隠す茂みは山ほどある。どうせいろんなものにまみれながら
その辺に潜んでいて、ひとまず目に付く葉っぱだけは取り払ってから出てきたのだろう。
簪はおそらくその際にどこかへ引っ掛けてずれたものと思われた。
「そんなに都合の良いところだけ聞けるものかな? はじめからずっと聞いていたのでは?」
僕の質問にも全く動揺を見せることなく彼女は軽やかに答えた。
521レンと小さなお姫様3:2010/07/11(日) 06:22:38 ID:62BOa7V5

「ふふ…ご想像にお任せいたします。
しかし、内宮の庭は、われらの領域。ここで隠し事など、出来ぬとお知りください。
それはそうと、あれが貴方様の御執心の姫君ですか。なんとも、愛らしい。」
ツァイレンは意味ありげに微笑った。
「なるほど、確かに、何かして差し上げたくなる風情ですな?
あの若さで、あの容姿…年頃になれば、さぞ美しくおなりでしょうに、貴方様の
お話によると、未婚のまま祖国に仕える事を夢見ておられるとは、なんと凛々しい。
わたくしも、色々と御教授申し上げたくなりますな。」
「何をだよっ?! 全然、洒落になってないから!! 手を出すのは、若い宮女だけに
してくれる?!」
「おや…、後宮の娘達のほうは、親元から離れて不安で泣いているところを、慰めて
あげているだけですよ? 一体、何を想像しておられるのやら…。
姫君には、色々と心構えなどを…。まさかわたくしが、他所の国からいらした
姫君に、狼藉など働くはずは、ございませんでしょう?
まあ、姫君ご自身は、大変わたし好みではありますがね。」
世間知らずの娘達を、どういう慰め方してるんだか。
「いいから、僕の好きな娘には触らないでおいてくれる?」
「ふっ…。振られたくせに。いい色になっておりますよ、貴方様の頬。」
簪が僅かにずれたままのこの女官は、それでも不敵な目をして痛いところをつく。
「ぐっ…、この程度の腫れ、明日には引く。」
それから、少し真面目な口調になって、奇妙な喩えを使った。

「シュンレン様、急ぎすぎて、蕾をお壊しになられませぬよう。」
「ツァイレン? それは、何の喩えだ?」
「幼い娘というのは、その身のうちに、蕾を抱いているようなものです。
その蕾がいつかほころんで、花開くときに大人の女として目覚めるのです。
貴方様は、大変に早熟でいらっしゃるのでお分かりでないでしょうが、姫君は、
まだ蕾なのですよ。
そして大変に聡くていらっしゃるから、蕾を固く閉じて、女である自分を
閉じ込めようとしていらっしゃる。
貴方様は、選ぶ立場でいらっしゃいますが、大抵の場合、姫君というのは、
選べないし、選んではならないのです。姫君も、もし先程頷かれたりすれば、
筋道を通さぬはしたない娘として、酷い謗りを受けましょうな。」
笑みの消えた顔で、彼女は続けた。

「貴方様の求婚も、からかい程度に思われたのは、むしろよかった。
蕾のままの娘にとって、艶事というのは恐怖であり、一方的にもたらされれば、
暴力でしかないのです。結婚前の浮いた噂ひとつだけで、人生を台無しにされる
事もありますしね。
姫君が未婚を夢見ておられるのも、女としての苦しみや痛み、不自由から
逃れたいという願望の顕れでしょうな。」
「メイファは、自分が女であることが、苦しみだと思っているのかな。」
僕は、嬉しかったのに。彼女が女の子で、僕と出会ってくれたことが、こんなにも。
「そのように感じる娘は多いですな。
女官になろうという娘も、半分くらいはそうです。
残り半分は、まあ、女であることを肯定的に捉えて、あわよくば貴妃に選ばれようと
目論む娘達ですがね。
それはそれで逞しくて宜しいのですが、年頃になって自分にその可能性が無いことを
悟ると、とっとと宿下がりして、嫁いでしまったり。」
「…ツァイレン、つまりは僕にどうしろと、言いたい?
それを言うために、簪も曲がったまま、わざわざいま、僕に声をかけたのだろう?」
522レンと小さなお姫様3:2010/07/11(日) 06:25:36 ID:62BOa7V5

ツァイレンの顔に、ふっといつもの微笑が戻った。
「シュンレン様は、話が早くてよろしい。
──待って、おあげなさい。」
「待つ?」
「女である事を苦しみとして、男との接点を絶つ様に後宮に入ってくる女官達も、
年頃になれば、何かと、少ない外界との接点の中で見初められてしまうものです。
そんなときと、女としての蕾が開く時期が重なることが、往々にしてあって、
そういう娘は後宮を辞して嫁いでしまいます。
だから毎年、補充せねばならぬのですよ。
ただし、蕾がみずから開こうとする前に、無理矢理開こうとすると、すべてが
駄目になってしまいます。男という存在そのものに不信を抱き、ふたたび咲く事は
無くなるかもしれない。
──わたくしの、ようにね。」
かつては貧しい農村の娘でありながら、後宮で才人[ツァイレン]の地位にまで
登りつめた彼女の人生は、どこをとっても壮絶だ。僕は彼女の人生経験と、
後宮で沢山の女官を取り仕切るための人を見る目には、絶大な信頼を置いている。

「ツァイレンは、女の子には優しくて、男には厳しいもんね?
僕の身のためにも、年上の女性の忠告は、聞いておいた方が良さそうだ。
メイファも、いつか女として花開いて、僕を見てくれるように、なるかな?」
「なりますとも。そのときには姫君は、さぞ美しくおなりでしょうな。
それまで、他の男に取られないよう、せいぜいお気をつけなされませ。
そして、うんと優しくしてあげれば宜しい。花が開くときに、自然と貴方様に
目が向くように。」
「気が長い話だね。」

「でも、貴方様のお父上も、ゆっくりとお待ちになりましたよ。」
「…父上が?」
意外な人物の名が急に出てきて驚く。後宮の女官というのは、それぞれに仕事が
割り振られているが、後宮という閉じた社会で皇帝とその身内に仕える存在だ。
皇帝さえ気に入れば、いつでも『お手つき』にできる。
まあ、全体からすれば滅多に無いことだから、ツァイレンの言うように男嫌いの
娘も多数志願してくるのだろうが。
それなのに、絶対者であるはずの皇帝陛下が、『待った』だなんて。
「当たり前です。権力をかさに着て、力づくでイェンを手に入れようとしたなら、
このわたくしが、刺し違えてでも阻止しておりますよ。
でも、あの方は、イェンの頑なな蕾が開くまで、お待ちになった。
イェンも、望んで、望まれて、幸せそうだった。あんなにも。
イェンを一番愛していたのはこのわたくしですが、貴方様の父君も、二番目くらい
だと認めて差し上げても宜しいと、思っているのですよ。」
微妙に褒めてるのかけなしているのか分からない、けれど多分、この女官に
とっては、最大限の賛辞。

「初耳…。」
そして女官から貴妃になった母上が、寵を受けるのを待っていた女ではなく、
おそらく男嫌いの方に入っていたらしいことも、初めて聞いた気がする。
「そうでしょうね。恋の話というのは、ある程度の歳になるまでは聞いても
分からないものですから、私もあえて申し上げたことはございませんでした。
では、こちらの話はいかがです? ──イェンは、貴方様の父上の事を、
畏れることなく『普通のおじさんだわ』と、話しておりました。もちろん、
貴妃になるずっと以前、ただの女官だったときから。
貴方様なら、いかがです? 貴方様がこの国の最も尊い方であったとして、三十も
年下の小娘に、刎刑さえも恐れず『普通のおじさん』だと、言い放たれたら。」
誰からも特別に扱われ、また特別であらねばならない立場で、『普通』だと
言ってくれる娘がいたら。
523レンと小さなお姫様3:2010/07/11(日) 06:27:53 ID:62BOa7V5

「…ぐっとくるね。人によっては、怒るのかもしれないけど。」
「そうですとも! あの方も、ぐっときておりましたとも! 最初っから!!
わたくしは、尊い御方にそんな口の利き方は止めて欲しいと、何度イェンに
懇願した事か!!
でもイェンは、聞き入れませんでした。あの方はいつも、ごく普通のことで
悩んでいるのだと…。それを普通だと、教えてあげる人がいないのは、きっとひどく、
寂しいことだからと。
イェンは誰にでも、優しかったのです!! 決して、あの方だけが特別というわけでは、
なかったのに…!」
「それでぐっときて、惚れられちゃったんだ、父上に。」
母が後宮の女官になったのは、確か他人より遅めの年齢で、十六の頃。僕を
産んだのが二十一だったはずだから、その間に色々とあったのかもしれない。
この暗くて澱んでいて、謀略に満ち溢れた後宮で、父と、それから母も、今まで
思っていたのより、暖かな関係を築いていたのかもしれなかった。
ならば僕も誰かと暖かい関係を築く事が、できるかもしれない。
辺りはすっかり日暮れて、天空は深い藍色を呈し、一番星が輝き始めていた。

「──それで、長い間女の園に居て、女のことを知り尽くしている貴女の意見では、
美しい花を愛でるためには、花が自ら開くのを待つのが最上、という訳だね、
ツァイレン?」
「左様で」
では、待ってみようじゃないか。あの小さなお姫様が、まだ固い蕾だというのなら、
仕方がない。いつか蕾が自然にほころんで、美しく咲くという、その時まで。

  *   *   *

翌日、僕とメイファは『仲直り』をした。
『仲直り』を知った事は、僕の人生において、大きな変化だった。
完璧である必要はなかったし、怒らせても、失望されても、もう心配は要らなかった。
メイファは基本的に、仲直りを受け入れないことはなかった。それは、誰に対しても。
僕のほうも、他でもないメイファなら、ご機嫌を取るのも、ひどく楽しかった。
あのきらきらしてよく動く瞳が何を見て、何に興味を覚えているのか観察するのが、
楽しくないはずもない。
仲直りがしたくて、わざと怒らせることさえあった。
それから、怒ってぷうっと膨れた頬をつついて、「真面目に聞けーっ!! ふざけるなっっ!!」
と、怒られたこともあった。
僕が悪いんじゃないんです。押しやすそうなところに、あんなほっぺがあるのが
悪いんです。

『仲直り』は、大抵は、彼女の抱えている問題を解決する手助けをしてあげたり、
彼女の友人の助けになってあげたりするだった。──彼女以外のために何かして
やるのも不本意だったが、メイファにとっては友人も充分に『大切なもの』
なのだから、仕方ない──
メイファは、服や宝飾品の類はあまり喜ばないので、贈り物は大抵、彼女が
そのとき気に入っている思想家の、貴重本とかになった。
おかげで卒院までには、彼女の部屋の書棚は随分充実してしまったようだ。彼女の
侍女から、メイファがその書棚のことを大変誇りにしていて、大切にしていると
聞いたときには、頬が緩むのを止められなかった。まあ、貴重本なのだから、
順当な扱いではあるのだけれど。

彼女が成人したら、必ず手に入れると決めていたから、待つのは思ったより
辛くはなかった。
自分が決めるものではない、国として申し入れるべし、という彼女の言葉を
言質として、彼女には内緒で婚約のための手続きも進めておいた。
524名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 08:30:56 ID:uy3OigcY
支援いる?
525レンと小さなお姫様:2010/07/11(日) 13:56:55 ID:CkbvUlyA
そして、ごく当たり前のように、成長するに従ってメイファはみるみるうちに
美しくなっていった。
年頃の娘というのは、そういうものです、とツァイレンは言った。
その割に、まだツァイレンの言う蕾とやらは、固いままだった。小まめに口説いて
みても、「からかい無用ッッ!!」と、怒り出すのがおちだった。
そのへんも、そういうものです、とツァイレンは、泰然として言った。

みるみる間に美しくなってゆく娘、それも、強くて優しくて、まわりを自然と
明るくしてくれる女の子が男ばかりの中にいるのだから、年頃の男共が全て
大人しくしているはずもなかった。
異国の姫君が高嶺の花でも、皇族の僕が牽制していても、何とかメイファに
近づこうとする奴は後を絶たないので、目に余る奴から潰しておいた。
まあ大したことをしなくても、体に傷をつけなくとも、相手は大体貴族の
ぬるま湯育ちの坊ちゃんなのだから、すぐに僕のことは、逆らわない方が
いい相手だと認識してくれたようだ。

そういうわけで、学院内では比較的平和に過ごせていたから、少し油断していた
かもしれない。
護身の法でも基本的なそのことを、すっかり忘れていたのだ。
本当に手ごわい敵は、音もなく静かにやってくるという事を。 






        ───続く───
526名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 13:57:28 ID:CkbvUlyA
支援ありがとうございました。
連投規制だったはずですが、「もちつけ みーらいおん」(?)が出て
「戻ってやり直せ」としか書いてなかったので待っていたのですが、どうやら駄目みたいです。
レス代行スレで代行お願いしています。

次は、一週間以上かかると思います。
4は姫度が薄くなりそうなので、4と5はなるべく続けて投下したいと思います。
527名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 22:50:28 ID:FpjNvyOD
GJ
いつも思うけど、読みやすい文章だよね
続きも楽しみにしてるよ!
528名無しさん@ピンキー:2010/07/12(月) 11:20:55 ID:ooC0HDeq
GJ
レンがここまでメイファに夢中だったとは!そんなレンがすごくかわいいです

続きの投下楽しみに待っています
529名無しさん@ピンキー:2010/07/12(月) 21:05:38 ID:mhXf2VJ1
GJ!
だが、レン視点になってから、レンに萌えてしまう。
530名無しさん@ピンキー:2010/07/18(日) 20:51:40 ID:9oSVPlN8
GJ
サクサク読めていいな
531名無しさん@ピンキー:2010/07/19(月) 13:05:57 ID:HU86p+Ws
エルドとセシリアをいま全部読んだ
本にして出してほしいくらい好きだ
続き待ってる
532名無しさん@ピンキー:2010/07/20(火) 00:36:20 ID:z5UiSLAY
自分は銀と橙の続きをいつまでも待ってる
レンと小さなお姫様の続きも全裸待機してる

数多くの素敵な姫様に会わせてくれた職人さん達には感謝してもしきれない
533名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 21:35:20 ID:WFNnUJRe
GJありがとうございました!

読みやすいという評価、意外でした。
中華風を意識して熟語も言い回しもなるべく固めなのを選んでるので、
固くて重くて黒い(字面が)文なのかと心配してました。
サラサラ読んでいただけて嬉しいです。

加えてサラサラ書ければ更にいいんですが、筆遅くてスミマセン。


注意:非エロ 

予告どおり、今回は姫度が薄いです。えーと、次に期待。
5はなるべく続けて投下したいなあ、と思っていますが、多分一週間以内に来れると思います。
534レンと小さなお姫様4:2010/07/23(金) 21:37:45 ID:WFNnUJRe
──どうして、こんなことに。
幽州行きは、とにかく最悪だった。
メイファの卒院試験が終わったら、外出許可を取ってあげて二人きりでどこかへ
遊びに行こう──そう密かに計画していたはずなのに、急に拉致同然で連行されて、
勅命ですと仕事を押し付けられた。

幽州総督府内で組織的に書類を改竄して、朝廷に上納する租税を着服していたのだから、
当然関わった部署も多岐に渡り、関わった者もかなりの人数に登っていた。
むさいおっさん達に裁定が速いとか、神懸かっているとか褒められても全然嬉しくないし、
むしろ雑音。
どのくらい汚職に関わっていたかくらい、対面して表情読んで、引っ掛ける質問の
二、三もすれば大体のところは見えるだろう?! と言ってみても無駄らしいので、
黙っておいた。逆に彼らに、何故それが出来ないのか、簡潔に説明して欲しいくらいだ。
まあ、その話はいい。終わったことだ。
色々と調査人員や手順なんかも工夫して、早く終わるよう努力してみたのだけど、
さすがに卒院式には間に合わなかった。メイファが珍しく華やかな格好をするのを
楽しみにしていたのに、まさかこんな事で邪魔されるとは。

それでも、逢えなかった時間は、メイファの気持ちにも少し変化をもたらしたみたいだ。
幽州から帰ってほぼその足で逢いにいくと、もう会えなくなるのが寂しいと言って、
しどけなく泣いたりして。随分と、色っぽい表情をするようになったものだ。
軽く口づけるだけではなくて、もっと先までしそうになったけど、反応があまりにも
初心(うぶ)なので、止めておいた。正式に婚約もしていないうちから泣かせてしまうのは、
色々と得策ではない。
結婚を申し込んだときも呆然として、顔を赤らめて、まんざらでもない様子だったし、
何より今までになく可愛かったから、まあまあ気分も直ったな、と思った矢先。
宮中では、とんでもない話になっていた事を聞かされた。

──今年の学院の首席は、異国から来た姫君だそうだな。わが国の男達も不甲斐
なくなったものだ──
今年の卒院者について皇帝陛下がそう発言されたと聞いたのは、メイファに逢いに行った
後だった。
平民については大規模な官吏採用試験が行われているが、貴族の子弟向けにはそういった
ものはない。
唯一、学ぶものを選抜して高等教育を行い、成績をつける王都の学院のみが、貴族の子弟の
能力を測る物差しだった。そして卒院者は毎年居るとはいえ、選抜者の中の学業首席とも
なれば、平民の試験における首席及第にも匹敵する扱いなのだ。
通常、朝貢国からの『留学生』には、特別な指導官はつくが選抜はなく、言葉も不自由で
特に上位成績を取る必要もない場合がほとんどであり、成績自体は低調な者が多かった。
それでも、辺境国に帰れば、間違いなく最上級の教育を受けた者となるのだが。
そんな中でも、メイファは凄く頑張っていた。好成績を取る事に、妙な使命感さえ持って
いるようだった。異国から来た彼女が最終的に主席を取ったのは、掛け値なしに凄い。
誰でも、どれだけでも、褒め称えるがいい。僕のメイファを。
そんな気分だった。陛下の、次の言葉を聞くまでは。

──このまま、祖国へ帰すには惜しいな。誰か、我が皇子のうちで、これを娶るものは
居ないか──
「は? 『誰か』?」
『誰か』って何だクソジジイ。
という言葉は、いくら私室で侍中しか居ないからといって、口に出すのは寸前で思い
止まった。ついでに、うっかり話していた侍中を締め上げてしまう事も、途中で思い止まった。
いくら歳でもうろくしているからといって、六年前には確かに自らの手でハリ国との
内約に調印しているのだ。つい最近も、間もなく正式に婚約を申し込む為の書類をいくつも
提出しているはずで。
まさかそんな大事なことを、忘れるはずが。
535レンと小さなお姫様4:2010/07/23(金) 21:40:43 ID:WFNnUJRe

「忘れるはずがないだろう? これは、仕切り直しということだよ。」
数日後、僕の私室を訪ねた十二歳も年上の兄は、鷹揚に笑った。
笑い事じゃない。
つまりあれか。その場で異議を唱えられないように、わざと僕が王都にいないときを
狙っての発言だったわけか。
「わざわざ私などの房室まで御足労頂いて、申し訳ありませんね、皇太子殿下。」
僕は思い切り嫌そうな表情でそう言った。皇太子でもあるこの兄は、御歳三十一歳。
年長ではないのに、実力で押しも押されもせぬ第一位と認められているだけあって、
一対一で対面したときの威圧感は相当なものだ。

「兄上、と呼んでくれて構わないのだよ? 弟よ。」
「いいえ、滅相も無い。殿下に対してそのような馴れ馴れしい口など。」
親しくする気なんて初めっから無いんだよ。分かれよ。
僕はこの兄が物凄く苦手だ。温厚といわれるその笑顔は何を考えているのか全く読めず、
かつて継承権争いを制したその手腕は大胆にして緻密、この宮中での権勢の様子から
言って、かなりの腹黒さを感じさせるが、他人からは清廉潔白とか人格者だとか
褒めちぎられているのも気持ち悪い。
「おまえの意中の姫君も、六年前に比べて随分魅力的になって、良い成績も残して
図らずも名を上げたことだしね。相手は、二十二番目でも誰でもいいというわけにも
いかなくなってきた。
彼女はとても努力家のようだね? 
一度剣を交えた事があるが、丁寧で集中力のある、なかなか良い太刀筋だった。
才能もあるが、並の努力ではああも見事には磨き上げられないだろう。」

「そういえば殿下は、彼女の在学中に学院にいらした事がありましたね。」
顔を合わせるのが嫌で、そのときはさぼったのだ。
というか、勝手にメイファの事を見に来るな。見られると減る。ああ減った。
どうしてくれる。
「そういうわけで、既に何人かの皇子が候補者として名を連ねているよ。
おまえの名を連ねるのは、意向を聞いてからということで、帰ってくるのを
待っていたのだが。」
「名を連ねるというか…、私のほうが先約です。当然、優先されるべきものと
考えておりますが。」
「私もその先約のことは知っているが、確か正式な婚約には至っていない、
内々のものではなかったかな?
まあ、正式な約束であったとしても、そういうものを踏み潰せるのが
権力というものだ。おまえも、知っている通りにね。」
彼は聖人君子の笑みを浮かべたままあっさりとそう言い放った。本当に嫌な奴だ。

「ちなみにその候補には私の名前も入っているからね。おまえが名を連ねなければ、
私に決まるかもしれないね。」
「畏れながら、殿下は既に三人もの妃殿下がいらっしゃるのでは? メイファとは、
歳も開いておりますし。」
「まだ三人、だよ。皇后は無理でも、私が即位した暁には最上級の正一位の貴妃の
座が用意できる。この国の貴妃の座ならば、悪くない条件だと思うがね。
年齢差については、政略結婚ではよくあることだし。
美しくて賢くて努力家の姫なら、私も好きだよ。」
何言ってんだこのオッサンがっ!! 十三歳差がよくあることか?! 近頃では、
滅多に無いぞ?!

「正一位なら、殿下の御母上と同じですね。」
あなたも皇后の息子ではない、とあてこすったつもりなのだが、とっくに言われ
慣れているのだろう、彼は腹黒さを隠した柔和な笑みで返した。
「候補者は、陛下の御前で剣を交える事になっている。
私達に見せた事はなくとも、おまえも、腕は磨いてあるのだろう?
『候補者』以外の手慣れも何人か参加するし、下々の者には、その目的まで知らせる
事はしないから、存分に闘うといい。」
「メイファを、賞品扱いするのですか。」
536レンと小さなお姫様4:2010/07/23(金) 21:43:58 ID:WFNnUJRe

「美姫を巡って争うのは、最も美しい闘い方だと思うよ。
少なくとも、戦功や名誉のために闘うよりずっと有意義だと思うがね。
陛下もそろそろ、おまえの腕がどれほどのものか、見たがっておいでだ。
優勝ほどでなくとも、それなりの闘いを見せてくれれば、姫君の件も考慮すると
仰っていたよ。
そう、…おまえの言う『先約』のことも、あるわけだしね?」
うわあ、苛つく。この人は、人を苛つかせるのの天才じゃあるまいか。
「それはどうも…結果の審査には手心を加えていただける上に、皇太子殿下自ら、
不肖の弟を挑発するためにお越しいただけるとは、恐悦至極でございます。」
精一杯の皮肉を込めてはみたが、この兄は、顔に貼りついたような完璧な笑みを
崩そうともしなかった。
「では、第二十二番目の皇子、シュンレンも名乗りを上げるということで、相違ないな?
私も、おまえと手合わせできるのを、楽しみにしているよ。」


負けるわけにはいかないし、絶対に負けたくない──そう、思った。
いつでも、切実に強さを求めてきた。宮中の者達には隠してきたとはいえ鍛練自体は
欠かしたことは無い。
身分の高い者の振るう剣というのは、基本的にただの教養だ。貴族達の試合を
見ていても、他の皇族の稽古風景を見てみても、皇太子以外なら負ける気はしない。
ただ、あの兄だけは、小さい頃から別格だった。
文武の両道に秀でているだけでなく、どんなときにも油断がなかった。何人もの
武術指南役がついて、三十を越えた今も常に精進を続けている事も知っている。
おそらくあの人は、常に一番であることを求められてきたのだ。
僕があの人より有利な点があるとすれば、手の内を知られていないことと、速さくらいか。
相手の隙を突く戦術は僕の最も得意とするところで、絶対に勝てない相手、とは限らない。
「美姫を巡って争うのは、最も美しい闘い方」と言ってしまえるほどこの国に戦乱が少なく、
互いに実戦経験が無いのも救いだ。
剣を振るうときには、いつも教えられた通りに、神経を研ぎ澄まして、ぴんと張った
弦のように、波ひとつ無い湖面のように、心を平静に保って。


──結果。

試合には勝った。

そして多分、勝負には負けた。

最も強敵と怖れていた、十二も年上の皇太子には、意外にあっさりと勝った。
というより、不自然なほど、手ごたえがなかった。
加えて試合が終わったときに見せた、あの表情の読めない、腹黒そうな笑み。
見た瞬間、背筋に冷たいものが走って、『しまった』と思った。訳もなく。

そこから先は、もう僕の口を挟める展開ではなかった。
滅多に顔を合わせることさえ無い、この国で最も尊い人である父が、勝利者を白々しく
讃えるのを、どこか遠くで起きている他人事のようにぼんやりと聞いていた。
その後、僕が配属されていた戸部で一年かかって調べ上げた数々の不正の証拠も、
組織の不備を指摘するための書付も、大小全て吐き出さされた。一番効果的なところで
使おうと、隠し持っていたのに。

かわりに受け取ったのは、僕の皇位継承権を変更するという勅令。
二十二位から三位へ。
うわあ、物凄く嫌。
小さい頃からの積み重ねが水泡に帰すという悲劇が、こんなに簡単に起こるのか。
あれほど静かに大人しく、目立たないよう過ごしてきたのに。
何だこれは。誰の策略だ。
何かが、仕組まれていた。巧妙に。
そして僕は、それにまんまと嵌ってしまったらしい。
537レンと小さなお姫様4:2010/07/23(金) 21:46:18 ID:WFNnUJRe

継承順位が上がったことで、政(まつりごと)の中枢に関わる頻度も増え、格段に
忙しくなった。それはひどく、不本意なことだったけれど。
それから、当然のことだが、シン国からハリ国へ、僕とメイファの婚約の申し入れが行われた。
もちろん、順位の高い皇子の婚姻に相応しく、儀式も盛大に行われる事だろう。面倒だけど。

そんな中、内宮の私室の方に訪問客があった。ジン・ツァイレンだ。
彼女は跪いて正式な所作で礼を行った。
「姫君と婚儀がお決まりになったこと、寿(ことほ)ぎ申し上げます。
本日は婚儀のお祝いの品を、お持ちいたしました。
近頃はお忙しくなられたようで、わたくしのところへもめっきり足が遠のかれて…」
彼女が持ってきたのは、女性用の宝飾品一式だった。
「姫君が金銀宝石の類をあまり喜ばれないからといって、用意しておくのが書物ばかりに
なられませぬよう…。こういったものも持っておかねば、女の方は困る事もあるのですよ。」
箱を開けて宝石類の説明をしようとするツァイレンに、僕は出し抜けに訊いた。

「ツァイレン…僕を、売ったかい?」
彼女はあけた木蓋をゆっくり置いて、中身の方を僕に見えるよう差し出した。
「なぜ、そう思われます?」
質問に質問で返すこの宮女に、僕は重ねて言った。
「たかが僕一人を表舞台に引っ張り出して便利に使うためにしては、巧妙に仕組まれて
いたなと思って。
僕の習性もこだわりも秘密も、色々と把握されていた気がするよ。
僕ならこういう場合、対象をよく知る人物を抱き込むようにする。
そして、僕の親しい人物なんて限られているし、貴女なら頭も良いから情報を得るには
うってつけだよね?」

彼女は泣きぼくろのある切れ長の目を細めて悠然と微笑った。
「わたくしは貴方様の幼少の頃より、貴方様の母親代わりであったと、自負しておりますよ?
そのわたくしが、貴方様を売るだなんて…とんでもない、無償ですよ。」
彼女が何の気負いもなく当然のように言うので、危うく最後の一言の意味を
取り損ねるところだった。
「…問題は有償か無償の話かな? ツァイレン」
「厳密に申しますと、後宮は陛下の持ち物でございまして、わたくしはそこで禄を頂いて
おるわけですから、そういった意味でなら金銭の受け取りもございますな。」
「で、ツァイレンは僕を陥れる策略に加担したわけ。」
「まあ、陥れるなんて、人聞きの悪い…。
継承権は、順当な位置に戻しただけかと存じます。」
「余計なことを…。結婚したら、西の端の方の土地を所領として拝領して、メイファと
一緒に引っ込むつもりだったのに。」
「姫君の祖国にほど近い田舎で、静かな領主生活ですか…。それはそれは、楽しそうですね。
シュンレン様はそう望まれるだろうと、思っておりましたよ。
私のしたことといえば、加担したと申すほどでもない、ただ、色々と黙っておりました
だけのこと。」
「ふうん、色々と?」
こういう、広い意味に取れる言葉がこの女官の口から出てくるときは、特に注意しなければ
ならない。
「まずはシュンレン様に関することは、陛下には事細かに報告しておりましたよ、最初からずっと。
父親であらせられるので、当然でしょう? 貴方様が後宮の一室であるわたくしの居室に
出入りする事を許されたのも、陛下の計らいでございますし。」
538レンと小さなお姫様4:2010/07/23(金) 21:48:51 ID:WFNnUJRe

「…はあ、最初から。」
あまりに大きな事実をさらりと告白されて、僕はやや気の抜けた返事しか返すことが出来ない。
最初からというと、僕が五歳の頃からか。
「まあ、貴方様のお小さい頃は、後宮内の空気も不穏でございましたので。陛下が特別に
気にかけているというだけで、何かと危険でありましたな。」
「特に、リウ徳妃がね…。あのひとには何度、殺されかけた事か。」
リウ徳妃は、現皇太子の生母だ。ひどく野心的な女性で、後継者争いの中心的人物だった。
そのやり口は強引で、何人かの皇子、皇女の事故死と病死が、彼女のせいではないかと
噂されていた。
「誰が犯人かも分からない事件で、特定の方を犯人と決め付けてお話しになると、貴方様の
お立場の方が危うくなりますよ。」
「犯人を特定させない巧妙なやり方そのものが、あの人の特徴だったじゃないか。」
「それももう過去のこと。現皇太子殿下が、母君であらせられるリウ徳妃をお諌めに
なられてからは、随分と落ち着きましたでしょう。」
「単に、前の皇太子が病死して、自分の息子が立太子したから、大人しくなったんじゃないの」
「いえ、前皇太子殿下がおかくれになる随分前からですよ。
そのこともあって殿下は、皇太子としての資質を認められたのです。」
「それは…、でも、当然の事じゃないかな。」

「当然の、ことでございます。
しかし、周りがすべて異常でも、当然のことをあたりまえに為すことが出来る、それが
王の資質というものです。」
「うわ…褒めるね。ツァイレンがそんなに素直に褒めるのなんか、初めて聞いた気がする。」
「おや、わたくしは、陛下の事も、名君だと思っておりますよ? …ただ大切なものを奪われた
ために、ちょっとわだかまりがあるだけで。
下々の者達にとって、政(まつりごと)の良し悪しは生き死にに直結いたしますからな。
私たちのように力ない者達は、常に、良い政治を熱望しておるのです。」
「地方政治も大切だと、貴女は常々言っていたと思うけど…。わざわざ皇太子殿下まで出て
きて、こんな大掛かりなことまでして陥れなくとも、僕一人くらい、辺境に引っ込んでも
問題ないんじゃないかな。」

「地方の事は貴方様が人をお選びになり、正しく御指導なさればすむことで御座います。」
ツァイレンはぴしゃりと言った。
「貴方様はご自身で考えておられるより、抜きん出ておられますよ。
イェンの言った通り、幼い間は少し隠しておいたほうが良いくらいには。しかし貴方様も
もう成人しておられます。
年長の兄上様方を押しのけてでも上位に座るだけの価値が、おありです。
皇帝陛下も、皇太子殿下も、貴方様のお力を必要としておいでです。
良い政治というのは、たった一人の名君によって作られるものではありません。
多くの能臣によって支えられる必要があるのです。
どうか貴方様のお力を、この国の為に、お使いくださいませ。
貴方様の眼で人を御覧になり、多くの能臣をお選びくださいませ。
このわたくしめも、伏してお願い申し上げます。」
539レンと小さなお姫様4:2010/07/23(金) 21:51:40 ID:WFNnUJRe

そのままツァイレンは膝を折り、静かに額を床につける叩頭礼を行った。
それは臣下が主に対して行う礼で、確かに身分の上下としては正しいのかもしれないが、
僕の前でツァイレンは常に年長の助言者として振る舞い、今まで一度としてそのような事を
したことはなかった。そして、ここまであけすけに人を褒める事も。
「顔を上げて、ツァイレン。貴女らしくもない。
今日はやけに褒め言葉を安売りするね?」
彼女は正式な所作で、ゆっくりと顔を上げた。
「ふふ…。貴方様はじきに御結婚なさって、この内宮をお離れになります。
その後も依然、出入りを許されているとはいえ、宮廷の外から後宮に出入りするのは、
敷居の高いものなのですよ。
本日は、これが最後になるやもしれぬと思って、参りました。」
その声には今までに無い、決然とした響きがあった。
「僕のほうでは最後にするつもりは無いけど…。
そう、貴女は後宮からはおいそれと出られない身、『選べない』のだったね?
言い残した言葉が褒め言葉だというなら、それも貴女らしいかもしれない。」
「たとえ直接はお会いできなくとも、この王都におられて、朝廷に出仕なさる以上、
噂話くらいは聞こえてまいりましょう。
遠くからでも、ずっと見ておりますよ。シュンレン様。」

「ツァイレン、あなたは、僕の弱さも苦しみも秘密も、全て知っていた。
そして自分の弱さも望みも限界も、いつも目を逸らさず見ているんだね。
僕を陥れるのが貴女なら、僕は屈するしか無いな。 
貴女は確かに力ない存在で、それがゆえに強いのだろう。
憶えておくよ、貴女の強さと弱さを。」
「過分のお褒めにございます。」
ツァイレンは両手を前で組んで、一礼した。

「僕のほうでは最後にするつもりは無いから、最後の言葉は、言わないでおく。
まだ、貴女の助けが必要になりそうな気がするから。」
「いつなりと。わたくしなどが貴方様のお役に立てることがあるのなら、
それは望外の喜びでございますよ。
では最後にもうひとつ…。貴方様がこれから妻にお迎えになる姫君は、貴方様とは
全く違った資質をお持ちです。姫君が、貴方様の欠けた部分を補ってくださり、互いに
助け合う御夫婦になられることを、願っております。」


それから婚儀までの期間は、雑事に忙殺された。
細かいことは、側近にまかせっきり…にしようとしても、決定はこちらでせねばならず、
すぐに差し戻されてしまう。
特に、念願の宮廷外に邸を構える手続きは煩雑だった。
宮廷の中では、何もかもが決められていた。囲われていた。止まっていた。
対して宮廷外では何も決まっていない…ように見せかけて、僕が皇族である以上、やはり
煩雑な決まりごとがあるらしかった。
隣で、手伝ってくれる娘が居たらいいのに。
メイファは真面目だから、仕事がどんなに煩雑でも、黙々と、或いは嬉々として、こなして
いくんだろうなあ、などと思いながら。

メイファ。今は遠い国に居る君が、僕の隣に来るのを、待っている。







        ───続く───
540名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 21:55:04 ID:RrgU3CZo
リアルタイムで読めて幸せだ

GJ!
541名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 16:06:59 ID:MhFXVUiC
ある日聖子が王宮に帰ると王宮職員がことごとく死んでいた。
聖子は恐怖に怯えその場から逃げようとした瞬間、祖父の妾、夕夏の姿を見た。
「まさかあの人が・・・」
しばらくして兄姉と女官が次々と帰宅した。
「聖子、生きていて良かった!!」
どうやら生き残った侍従は幼稚園に私を迎えに行ったのだが私は既に幼稚園を出ており殺戮に巻き込まれていないか心配だったらしい。
幼い私には衝撃的だったのかこの頃の記憶が無い。ただ両親の遺体を見ていないことは覚えているがそのせいか両親が死んだことを私はあまり受け入れていない。
父のあとは東宮である兄が帝になることが既に決まっていたがなかなか即位出来ない。全ては夕夏が自分の息子に跡を継がせたいためだった。
ある日、一番上の兄は突然結婚すると言い出した。相手は柏原藍子さんといって柏原侯爵の妹だった。しかし当時兄も義姉も14歳。何かあると思ったが何と義姉様は妊娠していたのだ。
その後義姉様は男児を出産して東尊と名付けられた。この頃義姉様の家族が家に出入りしていたのだが私は義姉様のお母様に好印象をもった。しかしお母様は実は義姉様の生母ではなく後妻だった。
後妻で継母、どれだけこの人は苦労してきたのか幼い私でも容易に想像出来た。あとで知ったのだが義姉様はお母様と仲がいいのだが義姉様の兄上の何人かはお母様を毛嫌いしていた。
実母が亡くなった上、父親がすぐ再婚して再婚相手を母親と呼ぶのはかなり苦しいものがある。きっと義姉様との間にも軋轢の一つや二つあっただろう。それを乗り越えた義姉様やお母様は素晴らしいと思った。
ところが夕夏はこの出産に大変危機感を感じた。そして何と兄達を追い出したのだった。
私は兄を帝、義姉様を中宮だと思いながら生活していたため、ショックを受けたのはもちろんこの先私達はどうなるのか心配になった。
542名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 17:45:34 ID:MhFXVUiC
その晩、一番上の姉致子の部屋から悲鳴が聞こえた。私が姉の部屋に行くと姉の上に夕夏の長男一尊(一尊は通称で戸籍名は一)が全裸で覆い被さっていた。その頃はわからなかったがあれは間違いなく強姦だった。
しばらくして一尊は二番目の姉の匡子の部屋に行き次いで三番目の姉の友子の部屋に行った。
翌日私たち姉妹は全員一尊の妃になるように言われた。私はよくわからなかったがその晩、一尊は四番目の姉の顕子の部屋に行きそして私の部屋に来た。私は必死に逃げようとするも当時私は6歳に対し一尊は25歳。一尊は知的障害だったがとても勝ち目は無かった。
そして一尊は力ずくで私の処女を奪った。私は股間を襲う激痛に失神したが彼はそんなことはお構い無しだった。一尊は私の幼い子宮に射精すると妹の毬子の部屋に向かった。
翌日私は起きると血液と精液が股間から流れ出ていてその臭いが混ざりあって再び失神した。それでも立ち上がり幼稚園に行こうとしたが何と夕夏に止められた。しかし私は抗議が出来なかった。それからというものも幼稚園はおろか王宮の外に出ることがままならなかった。
しばらくして私は小学校に入学する時期になった。しかしやはり学校に行けない兄姉同様小学校に行けなかった。そして私が本来なら二年生になる頃には学校制度自体が完全に崩壊してしまった。
話しは戻るがあれから一年もしないうちに姉たちは一尊の子供を出産した。子供たちは皆一尊にそっくりだった。さらに一年もしないうちに姉たちは再び出産した。その後も姉たちは次々と出産した。
だが姉たちが産んだ子供は全員知的障害だった。異母とはいえ叔父姪間に生まれ父が知的障害とはいえ異常である。そして私も妊娠して11歳の時息子を出産した。当時私はまだ初潮がきてなかった。
しばらくして初潮が来て出産後に初潮がきてあべこべと思ってしまった。たが次に生理がきたのは一年先のことだった。理由は再び妊娠したからだった。
543名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 18:24:39 ID:MhFXVUiC
ところがこの前年、王宮内に小学校が開校したのだった。私は突然小学五年生になったが今更なぜ?と姉に聞いたところ一尊の子供が小学生になるのに合わせて作られたらしい。
待って!お姉ちゃんの子供はまだ3歳。あと3年も先である。すると、一尊がその昔女官を強姦して産ませた息子だというのだ。私は思わず納得した。
そして私は登校した。私のクラスは殆ど華族や有力者の令嬢ばかりだった。その中には私の親戚や幼稚園のクラスメートもいたがしばらくして私はあることに気づいた。
男子はどこに?私のクラスは全員女子だったのだ。しかしそんなことなど気にする余裕も無かった。なぜならただ一人を除いて全員夕夏の息子の誰かの妃だったからだ。そして唯一夕夏の息子の妃じゃない女子は夕夏の娘夕貴だった。
しかし夕貴は夕夏の実の娘にも関わらず虐待されていた。理由は父方祖母(私にしたら曾祖母)に似ていたからだった。夕夏は祖父との間に十五男四女がいたが息子たちを溺愛する一方で娘たちを虐待していた。
姉の推測だと夕夏は息子を異性として溺愛していて娘を同性として敵対心をもっているらしいとのことだった。
私は困惑したがある日二人の女子が転校してきたのだった。
一人は一尊の新たな妃だったがもう一人は何と一尊の娘だった。
私は仰天したが一尊の娘は私に向かっていきなり、お母様会えてよかったうれしいと言い出した。私が困惑していると夕夏が現れこの子は母が元女官でその母親が事故で死んでショックを受けているのといって仲良くしてねと言った。
544名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 19:02:58 ID:MhFXVUiC
しばらくして一尊の娘は引っ越してきて私の隣の部屋に住むことになった。ところが一尊の娘は一尊にべったりである。
親子とはいえ一度も一緒に暮らしたことは無い。それなのに何故と思っているとその晩、一尊の娘は一尊を部屋に連れ込んだ。そしてセックスを始めたのだった。
夕夏とその息子のセックスを見ているから親子相姦には違和感が無かったが(その時点でかなり異常だが)娘のほうがリードしているのに仰天した。
その後一尊の娘に聞いたところ元女官である母の死後売春をしながら幼い弟を養って父親である一尊に会う機会をうかがったところ夕夏の部下が客になって何とか王宮に潜り込んだのだった。
そして一尊の娘はある紙を聖子に見せる。それはDNA鑑定の結果報告だった。
「これが認知すらされていない私があのお方の娘である唯一の証拠。」
「これがあったら認知出来るんじゃないの」
「認知されたら妃になれないよ」
「妃になるってまさか…」
「妃になるのは母の遺言。妃になれなかった母の代わりに私が妃になるの」
「なぜそんなことを…」
「これは中宮様、つまりお母様(聖子)のお母様(泰子)に仕えていた母を息子に強姦するように言って子供を産ませながら中宮様を殺すと同時に母と私たちを追い出したあの女に復讐するためです」
そして
「私は東宮様(順尊)が即位することを心から願っています。だからその間私を娘にして下さい!お願いします!」
聖子は何も言えなかった。
その後一尊の娘は妊娠して女児を出産した。そして
「この子、お母様の息子の妃にしてもいい?」
聖子は呆れたが状況が状況なだけに何も言えなかった。
月日は流れ聖子は19歳になった。聖子は19歳にして7人の子持ちになった。ある日聖子が王宮内を歩いていると倒れている若い男性(少年?)を発見した。聖子がそばに近寄ると何と末弟の綱尊だった。聖子は綱尊を介抱して自分の部屋に密かに連れて帰る。
綱尊の意識が戻り聖子は安心するももう何年も夕夏以外の女を見ていない綱尊はあろうことか聖子に欲情した。
545名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 19:49:32 ID:MhFXVUiC
話は長くなるが綱尊は姉たちが一尊の妃になったあと男ばかりのタコ部屋に押し込まれたのだった。王宮の男性は夕夏の息子と孫と曾孫以外は帝の息子である綱尊たちですら人権は無く夕夏に“ご奉仕”する以外道はなかった。またタコ部屋では男同士の乱交が日常生活だった。
その状況は夕夏以外の女性は知ることは無く当然聖子も知らなかった。
綱尊は幼少の頃から男同士のセックスをしていたがノーマルの綱尊は女のほうがよく聖子に欲情して思わず服を脱いだ。
聖子は綱尊の全裸を見て息を飲んだ。鍛え上げられた肉体に精悍な顔立ち。そして股間には立派に成長した巨根が割れた腹筋につくほどそそり立っていた。
そして聖子は綱尊を押し倒し姉弟近親相姦を行った。
そして聖子は綱尊の巨根を入れた瞬間、強く快感に支配された。
実は聖子は一尊とのセックスは全然気持ちよくなくてむしろ苦痛だったが今回は違った。
「セックスがこんなに気持ちいいなんて知らなかった!」
「姉ちゃんのマンコもスゲー!」
「なんかすごく気持ちいい!」
そして聖子は生まれて初めて絶頂を迎え綱尊も射精した。
そして二人はまた会うことを約束して別れた。
しばらくして綱尊の様子がおかしくなる。近くのトイレの個室に駆け込んだ。そして鞄から巨大なバイブを取り出した。
「これがバレなくて本当よかった…」
そしてアナルに挿入してスイッチを押した瞬間、綱尊は快楽に支配される。
「駄目、イキそう!」
綱尊は壁めがけて大量に射精した。
綱尊はタコ部屋に戻るなり兄の寛尊を誘惑した。
「あぁ〜やっぱりチンポが良い〜」
「何だ、また我慢できなくてバイブでオナッたのか?」
「だって〜」
そして二人は実の同性の兄弟にも関わらず激しいセックスをした。
「じゃあまたな」
二人はそれぞれ男たちが全裸で雑魚寝する大部屋に戻っていった。
ここのタコ部屋の住人はどういうわけか鍛えられた肉体と巨根の持ち主ばかりだった。理由はここに暮らすうちに男を魅了するような容姿に自然に変化するらしい。また半日とセックス(というかチンポ)を我慢できないのである。
546名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 20:45:49 ID:MhFXVUiC
その後も聖子と綱尊は密会するが聖子は妊娠する。
この時点では父親がどちらかわからなかったが生まれた子供をみて聖子は確信する。
「この子は綱尊の子供ね。」
そして次の年も聖子は綱尊の子供を出産した。綱尊の子供たちは知的障害の一尊の子供たちと違って正常に成長した。
ところが次の年王宮に激震が走る。姉の友子の子供たちの他殺体が見つかり友子と唯一殺されていない長女慶子が失踪したのだった。
その時、聖子はタコ部屋の男たちとセックスしていた。聖子はあれからセックス中毒になり当時妊娠中だったが父親が本当に誰だかわからなくなった。
「もっと!もっと私を犯して!」
精液まみれになった聖子は二つの穴で巨根をくわえながら叫ぶのだった。
それが終わり部屋に戻ると致子が待っていた。致子は29歳にも関わらず15回目の妊娠をしていた。15歳の初産以降一度も出産しなかった年が無く全員年子だった。
「友子がいないの!」
皆は必死に探したが見当たらずそのうち友子のことなど忘れてしまった。
その頃友子は順尊と藍子を必死に探して15年ぶりに再会した。慶子は友子を必死に探して順尊の家を見つけ再会した。その後友子は風俗嬢になり慶子は父親である一尊の娘を出産していて家族3人で暮らした。当時友子27歳、慶子12歳だった。
ある日タコ部屋に新入りが入った。しかしその少年は一切素性を明かさない。実は少年の名は神武東尊、順尊と藍子の長男だった。勘が良い人たちは順尊と藍子の息子だと思ったが夕夏の前では一切言えない。
そして夕夏にご奉仕をすることになる。東尊の超絶テクニックに夕夏は満足して夕夏は東尊の子供を自然妊娠すると宣言するのだった。周囲は驚くも夕夏にはある企みがあった。
夕夏は実は東尊の正体を気づいていて東尊の子供を出産して次の帝にするというのだった。というのは建前でただ単に今いる自分の息子に満足出来なくなって東尊とその息子の逆ハーレムに秘部を濡らすのだった。
547名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 22:06:01 ID:MhFXVUiC
そして夕夏は東尊の子供を自然妊娠する。実は夕夏は毎年のように出産していたのだがここ十年ほど自分のクローンばかり出産していたので自然妊娠したくなったのだった。また最初に生まれたクローン(四つ子)に初潮が来たため当初の目的が達成したのだった。
そして男児出産を夕夏は期待したのだが結果は女児だった。夕夏はどういうわけか自分で産んだ女児(クローン除く)が嫌いで虐待していたのだが初潮が来た途端溺愛するようになるのだった。
その一方で妊娠出産の合間に排卵誘発剤を使い大量の卵子を採取して大量の女児を産み分け代理出産させていた。その結果夕夏の遺伝上の子供は600人ほどいたのだった(うち570人ほどが12歳未満の女児)。
次の年もさらに次の年も夕夏は東尊の子供を出産するも結果は女児だった。
そして夕夏は作戦を変更する。
それは何と東尊の母親である藍子を東尊と順尊の目の前で自分の息子に強姦させて妊娠させることだった。
夕夏は東尊に隠れて藍子を捜すもなかなか見つからない。
そんな間に夕夏は東尊の娘を出産する。
その頃東尊は一尊の妃の廣田由美子と密かに交際していた。由美子は母や姉と共に一尊の妃になり一尊の子供を3人産んでいた。
そして2人は結婚を決意して逃亡しようとする。しかし由美子の母と姉は自分達は妊娠中で助けることが出来ないから出産して身軽になってからにしてと言った。そして2人の出産後に東尊と由美子は逃亡した。由美子の腹には東尊の子供がいた。
その頃夕夏は東尊の子供を妊娠していたが東尊が逃亡してショックを受ける。
東尊と由美子は由美子の実家に向かう。そこには由美子の弟と甥がいた。他の家族は?と聞くと甥の両親である由美子の兄夫婦は偽装離婚して兄嫁は娘を連れて海外に“逃亡”して兄は妻娘と“密会”しているというのだ。これも夕夏の息子の妃にされるのを防ぐためだった。
由美子には兄と弟が他にもいるがその兄弟はいわゆるタコ部屋にいると言うのだった。これに由美子はショックを受けた。これに東尊は驚きそんな奴は見ていないと言った。
548名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 22:24:58 ID:MhFXVUiC
そして由美子が父親のことを口にするが弟と甥が表情を曇らせる。由美子の父親の廣田侯爵は妻と娘が一尊の妃にされてショックの余りこの世を去ったというのだ。
そこに由美子の祖母が帰宅する。祖母は由美子がいることに仰天して卒倒する。回復した祖母は東尊の素性に気づき東尊は慌てる。
そして祖母は昔話をするのだった。
その昔由美子の祖母は当時の中宮朝子(東尊の曾祖母)に仕えていた。しかし祖母と実は同じ歳の夕夏が当時の帝恭尊に近づいてから世界がおかしくなったことを言った。
祖母は御年80歳。その場にいた人は夕夏の年齢に仰天した。さらに祖母は下手するともっと鯖を読んでいる可能性があると言った。
しかし一尊と由美子の両親が同じ年(48歳)であることを考えると夕夏が80歳なことに思わず納得した。
549名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 00:04:26 ID:KwSGp1vF
王宮なのに小学校とか幼稚園はあわない気がするw
時代もわからんしなんか読みづらいなあ
投下する時はあらすじまとまでいかなくとも一言欲しい
550名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 11:14:24 ID:xsStj7nj
う〜ん…とりあえず投下乙です

私もいろいろな意味で、最初に注意書きしていただいた方がよかったかなと思います

551名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 15:19:21 ID:XwQB7kkH
小学校の作文の時間にさ、『そして』の多用は避けるよう指導されなかった?
552名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 16:26:03 ID:ltfPVJ6d
注意書きはおろか、「続く」も「終」も、ましてタイトルも前書きも後書きも存在しない件
553名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 18:30:02 ID:GdTg3QlD
普通に荒らしの嫌がらせSSだろ
ここしばらく女性向け甘々SS続いてるから気に食わないんじゃねえの
554名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 19:39:47 ID:xsStj7nj
うわ〜そういうこともあるのですね…

趣味趣向はいろいろあるからと思って乙とか書いちゃいましたよすみません

レンと小さなお姫さまGJです

続きお待ちしています
555名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 21:55:23 ID:yUtmH+CQ
>>553みたいな、荒らしの立場や嗜好を決めつけるのも感心しないな。
女性向け甘々が気に食わない人はこういう事をする、という根拠なしのレッテル。

同じように決めつけるなら、スレ住人の嗜好にくさびを打ち込む、
分裂工作型の荒らしの自演そのものに見える
556名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 22:18:20 ID:trzXFVkr
なにげに残量やばいな
557名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 22:39:02 ID:GdTg3QlD
>>555
はいはい図星つかれたらやっぱり
同じようにとか逃げ道しっかり作った自演決め付けでゴキブリさん出てきちゃったね
せっかく長文書いたのに残念だったねー
この状態で女性向け甘々嫌いにレッテル貼ってるなんて
よほど純愛派に不当に抑圧されてるとかの被害妄想ある奴しか思わないからな

浅い思惑見抜かれて指摘されるの嫌なら嫌がらせSSなんて書くなよ
まあ俺は隠れて様子伺ってるゴキブリ引きずり出してみたいと思っただけだからそろそろ失礼するわ
558名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 23:29:54 ID:4qVp7d/M
なんかよくわからんが、みんな落ち着けw
あらしはスルー
スルーすれば、そんな奴の正体が何であろうと、関係あるまい
559名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 23:30:26 ID:goga98so
おちつけ。


以下この話題はスルーで
560名無しさん@ピンキー:2010/07/26(月) 00:23:41 ID:P3E40xyY
>>556
確かに、この書き込み前で477KB。あと23KBか。
ところでこのスレの始めの方でテンプレ議論してたけど、結局どうするのがいいのかな?
今スレは、ほとんどの職人さんが丁寧に注意書きしてくれて平和だったけど
561名無しさん@ピンキー:2010/07/26(月) 00:33:05 ID:3qm0dUoD
553でFAでしょ
その後の無駄な指摘レスこそ害悪
以下はスルーで
562名無しさん@ピンキー:2010/07/26(月) 01:46:50 ID:92mR5Qub
今、一番気違い度、イタイ度が高いのは断トツで>>557
563名無しさん@ピンキー:2010/07/26(月) 07:55:49 ID:xyWM/5qw
変更の必要なんか何もないよ
追い出された職人がいるわけでもあるまいし、馬鹿馬鹿しい限りだ
564名無しさん@ピンキー:2010/07/26(月) 08:02:12 ID:Y6KSjnqB
はいはいスルースルー
565名無しさん@ピンキー:2010/07/26(月) 08:07:30 ID:eH3herD1
ん?新スレ立てるの?
566名無しさん@ピンキー:2010/07/26(月) 12:42:16 ID:Q2j6WUfx
小さなお姫様GJ(え〜エロが無いのはさびしいですが脳内でSENKAしたりいろいろできるwきちんとお姫様書いてくれる方がウレシイ)

雑談:
「国が滅んだのに国王だけいるなんて滑稽だわ」だったか、あの一瞬でシータもお姫様なんだなと納得したっけ。
(とりあえず機嫌損ねないように黙ってるとかムスカに追従するとかパズー待って泣いてるだけって選択肢だって有るじゃん、何ももう一回殴られそうな発言する事無いのにと小市民は思うわけでw)

作品中でその子がお姫様の役である事を証明するには思いっきり舞台設定に凝り倒すか、役に見合った英明さとか資質を示してみせるしかないんじゃない?
567名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 02:47:38 ID:7C8ayLJp
こんなタイミングで戦火みたいな微妙キーワード使うなよ
女性向け甘々SSに反するものは、みなゴキブリ扱いするザマス
みたいなキレやすい更年期障害がいるんだから
568名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 06:22:40 ID:8i/nYf8A
「レンと小さなお姫様」の作者です。
5を投下しに来たんですが、23KB余りあって、スレ残量だけでも微妙に足りない。
こういう場合、
@新スレを立てる
A旧スレに投下する
B旧スレに投下出来なかった分を新スレに投下する

の手順でいいんでしょうか。
もうちょっと作業があるので、実際にやるのはもう少し後になろうかと思います。

スレ立てするなら再度宣言してからやります。
PCは先の見えない規制中。携帯から。
落ちっぱなしの女兵士スレのリンクは、単純に削っていいんですよね…?

>>566
こっそりウケました。
細部まで丁寧に読んで下さっているからこその楽しみ方ですね。
569名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 06:27:08 ID:/1EV4BeD
名指ししてないだけで、
そのGが何故Gなのか、それはぜんっぜんお姫様に見えねぇから。
っと遠まわしに書いてあるけどな。

以上のことから、>>566も最後のあれはGと思ってるんだよw多分。
570名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 08:47:45 ID:Qw1LR0Os
>>568
旧スレに投下した場合Dat落ちで見られなくなることもあるので
新スレを立ててそちらに全部投下した方が良いのではないでしょうか
571名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 09:14:47 ID:8i/nYf8A
>>570
レスありがとうございます。
第2案として

@新スレを立てる
A新スレに投下する
B旧スレは誘導のため一定期間放置後、重複御免で
投下済みの文章でも使って埋め立てる

ってのも考えてたんですが、21KBがちょっと大きい気がして…。
雑談ではなかなか埋まらないけど、重複文章で埋めてもいいもんかな。
旧スレをあまり放置するのも二重スレ状態でよくないし。

最終話が即dat落ちってのも書き手として悲しいし、1話を途中で
切ってしまうのもたしかに嫌ですね。
書き手としては新スレに前文投下させていただきたいです。
すみません、以前も書きましたが投下作業が苦手でして。

ちょっと日中は忙しいので昼か夕方にまた来ます。
572名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 12:16:53 ID:OGq9FI/u
ロウィーナとアルフレッドシリーズの続きが読みたいよ〜
ようやく幸せになりそうだったのに寂しい。
あのシリーズ大好きなんだよ。
573名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 14:05:43 ID:F52q82+j
埋め
574名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 14:06:08 ID:F52q82+j
あ、ごめん
違うスレだった
575名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 17:40:08 ID:8i/nYf8A
落ち着いて考えると、あと10KB埋まれば1週間放置でdat落ちなのですから、
そんなに無理に埋めるとか考える必要なかったですね…
もうちょっと残量あると思ってたら、投下しに来た朝、スレ立ての必要が?
ってことで、みっともなくキョドってました。
もう落ち着きました。失礼いたしました。

ではスレ立て行ってきます。
576名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 17:46:54 ID:8i/nYf8A
立ちました

お姫様でエロなスレ13
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1280220200/l50
577名無しさん@ピンキー:2010/07/28(水) 23:13:58 ID:7UCzeExY
敵めがけて(投下の仕方や姫に見えない内容に対して)銃器ぶっ放すのはありだろう。

が、敵以外の事を勝手に妄想して、手当たり次第に撃ちだした新米兵士が、
「馬鹿かテメエ、危ねえだろうが」とヘルメットぶん殴られたり、
「お子ちゃまだから慌てたのさ」と笑われただけというパターンなのに
(まあ、煽りじみているのもあるが)、未だに全く自分を客観視できない。
そんなお前自身がよっぽど薄ら汚いGだよ。
578名無しさん@ピンキー:2010/07/29(木) 21:24:37 ID:IHRc86fh
自分は基本的に凛々しく甲冑をまとった姫様萌なのだが、どう見ても鎧に着られてる
お飾り大将の姫様や、敢えて甲冑を着用しないという形で将兵への信頼を示す姫様にも萌えてしまう
から節操無しで困る。
579名無しさん@ピンキー:2010/07/29(木) 22:41:53 ID:QR4jDazx
名家の息女ものもこのスレの守備範囲だろうか
もしよければ今書いてるから
できあがったらこのスレに是非投下させて頂きたい
580名無しさん@ピンキー
>>579
お嬢様っぽい<お姫様っぽい ならこのスレです、投下お待ちしてます
お嬢様っぽい>お姫様っぽい なら別スレのようです

ところで皆様、新スレにお引っ越しですよ
こちらの旧スレは、触らずそっと落ちるのを待ちましょう。