「米軍は敵!」「集団ストーカーが私を!」
そんな頭のおかしな女の子のSS待ってます。
電波発信ゆんゆんゆん
面白そうなスレだね
5 :
こんな感じ?:2009/05/30(土) 00:24:55 ID:9RoWMVLl
最近いろいろ食い違う。
デパ地下の人気アイスを土産に持って帰れば妹も同じく買って来る、
期待の新譜をいざ聴こうとすれば途端にコンポがぶっ壊れる、
プリントの提出日を一日遅れで勘違いして迷惑をかける、エトセトラ、エトセトラ。
どうもリズムが掴めない。
そればかりか、細かな食い違いが積み重なって、自分と周囲の足並みがズレていくような感覚にさえ陥る。
自己と世界との齟齬――いけない、考えすぎだな。
でも、どうだろう?
俺は普段通りやってるはずなのに、上手くいかない。
普通はそこで己の何らかの過失を疑うけれど、もし間違っているのが自分でなくて、この世界の方なんだとしたら。
そんなのって、もうどうしようもない。
「はよっす、秋野」
マロニエの樹が申し訳程度に左右へ佇立する小道を歩いていると、後ろから声を掛けられる。
振り返るまでもなく青地なので、「うっす」と答えて足を緩めた。
「おう。秋野さ、昨日の課題もうやった?」
「いや、やってない」
「うわ相変わらず率直な、お前って」
「だって本当にやってないし、やる気もしないし」
「あーはいはい、学校ツマンネー病ね。でもさ、そのわりには遅刻とか無いよね」
と軽口を叩きながらも、俺たちは校門締め切りのチャイムへ間に合いそうなペースを保って歩く。
「青地、それは違うよ。俺は学校がつまらないんじゃなくて、学校内での形式ばった生活がつまらないの。
だから俺は敢えてその形式をぶち壊してるの。遅刻したんじゃ学校そのものからの逃走に他ならないの」
「へーへー、さいですか。俺にはよく分からんけどね。
ま、いいんじゃない」
軽く流して、昨日見つけた面白動画の話なんざ始めている。
顔だけみればやや怖い系の青地とつるんでるのは、こういう適度でちょうど良いファジーな曖昧さが何となくで心地よいからだ。
波長が合うっていうんだろうか?こういうの。
向こうは向こうで、俺の真面目かそうでないのかはっきりしない所を面白がってるのかも知れない。
で、話の中で青地も結局課題をやってなかった事が判明。
青地には青地なりの理由ってものがあるんだろう、多分。
校門には締め切りの二分前に着いた。
スライド役の風紀委員が生徒達に朝の挨拶を投げつつ待機している。
その少し脇、通行の邪魔にならない位の端っこで、でんこちゃんが電波を受信していた。
腰まで伸ばした黒髪をツインテールにして、両手の平を天へ向け、日光浴でもするみたいに空を仰いでいる。
何ぶん顔とスタイルは学校でもトップクラスなので、見ようによっては幻想的な姿にも思えるが、騙されてはいけない。
彼女はれっきとした電波系キ印なのだ。
時おり怪文書の書かれたビラを校門で配ろうとして、風紀委員に咎められたりもしている。
体育の授業中に奇声を上げて泡吹いて倒れたり、数学の時間に独り言を呟きながらケケケッと笑ったりするものだから、もうみんな気持ち悪がって彼女に近づこうとしない。
なんでそんなに詳しいか?っていうと、彼女と俺はクラスメイトだからなのだ。
せっかく素材はいいのに、あれじゃ彼氏とか作れんだろうな。
それ以前に本人に作る気なさそうだけど。
「でんこちゃん、今日も感度良さそうじゃん」
青地が面白がるような声色で俺に囁く。
電波な子だからでんこちゃん。
でもそんな彼女にも勿論本名があって、それは木村真希という名前なのだが、そもそも話しかけようとする人間が最近では皆無なので、その名前も忘れ去られつつあるかも知れない。
出欠確認で耳にする俺たちクラスメイトだけは忘れずにいてやろう。
風紀委員の挨拶を無視して校門を抜けようとすると、でんこちゃんがぎょろっと顔だけ俺達の方に向けた。
こっちはぎょっとする。
さっきの青地の小声、まさか聞かれてたのか?
けれど彼女の顔に険悪の色は無く、むしろ何かすがる物を探しているかのように弱々しく映る――のは、気のせいか?
そのままとことこ、こちらへ歩み寄りつつバッグの中を探っている。
「やべ、怪文書だ。行こうぜ秋野」
青地はそう言って返事も待たずさっさと校舎へ向かってしまう。
あまりに切り替えが早いので出遅れてしまった俺を、「あの。これ、読んで」とでんこちゃんが捕らえてしまう。
なんというか俺は押しに弱い人間なのだ。
街で怪しい絵売りに高額なバッタモンを売りつけられそうになった事など数え切れない。
なので当然怪文書も断れずに受け取ってしまう。
ここ数ヶ月では俺が初じゃないのか?受け取ったの。
やっぱり今日も何かが食い違っている。
するとでんこちゃんの顔がぱぁっと明るく輝いて普段まとっている陰鬱さが嘘のよう。
俺はついその顔に見とれてしまう。
やっぱ、素材だけはいいんだよなぁ。
くりくりした目に、均整の取れた口元。鼻も形が整って高い。
どう見ても可愛い系だ。
「ちゃんと読んでくださいね、秋野君。本当に大切な事が描いてあるんです」
そう言って満足したのか、でんこちゃんは校舎の方へ歩いていく。
今日の受信はもう完了したのだろうか?
ていうか、名前呼ばれたの初めてだ。
校門締め切りを告げるチャイムがなって、ガラガラと門が閉められる。
俺ももう教室に行かないと。
怪文書は仕方ないのでバッグに突っ込んで、足早に昇降口へと向かった。
学食でパンを買って青地とだべっていると、
「そう言えばさ、朝のでんこちゃんヤバかったろ。お前あの後大丈夫だったの?」と聞いてくる。
大丈夫だったの?と聞くからには大丈夫じゃない事態を想定しているんだろうが、それってどんなのだ?
「別に、何も。例の怪文書渡されただけだからな」
「うは、受け取ったんだアレ。
初めの内は何人か手にする奴らもいたみたいだけど、皆引いてたってよ?
ドン引き。まじもんの気違いだってさ」
「まぁ校門で勝手に私物ビラ配ってるだけで普通は引くな」
と言いつつ、でんこちゃんが教室に残って俺達の会話を聞いてたりするんじゃないかと心配になって見回すが何処にも姿は無い。
昼休みは教室を出ていく事がほとんどだと知ってはいたけれど。
「で、どうだったの?中身。また凄い事書かれてたりするの?」
「いや、まだ見てない」
そう、朝にバッグへ放り込んだまま目も通していないのだ。
近頃の食い違いの決定打がそこに待ち受けてるような気がして、なんだか読む気がしなかった。
「俺ちょっと興味あるんだけど。怪文書カイブンショ言うけど、実際この目で読んだ事ないんだよね」
「そんなの俺だってないよ」
「んじゃちょっと読んでみねえ?怖い物みたさっていうかさ、そういうの気になるっしょ」
それは確かにその通りだ。
そもそもたかが怪文書、これが俺の人生に何らかの楔を打ち込むだなんてあり得ない。
俺は考え過ぎなんだ、何事においても。
んで取り出したる怪文書の内容はこうだ。
『策動派の大陰謀!
噂のインチキ後楽園祭りで死者隠しに遁走。
もはや鬼の所行です。
工作員を雇って、消してやる、消してやる、と、毎晩のように大合唱。
はす向かいの橋野家は工作完了のようです。
盗聴と盗撮が生き甲斐の鬼の手下ですか?
世界一悪い人達が、研究員や博士をのべ数十人殺して、大変な脅しをかけるようです。
信じられない大金が動いています。
監視・観察防衛庁。
全世界の幸福を祈って。
1-A 木村真希改め水称姫』
「……想像以上だな」
「確かに」
まるで意味が分からない、というか何を言いたいのか理解できない。
書いてる本人の脳内ではちゃんと筋道が通っているんだろうか?コレ。
ともかく、ドン引きだ。
あんな可愛い顔して頭の中はこんななんだ。
でんこちゃんなどと呼ばれるにはそれなりの理由があった。
俺はこの怪文書をどうしたものか悩む。
さっさとゴミ箱にでも捨ててしまえばそれで解決、なんだろうな。
後は極力でんこちゃんとの接触を避けてりゃいい。
けれど流石に引きはしたものの、同時にこれって書いてる当人としては切実なんだろうなーというのが"手書き"のビラの字体や筆の滲みから伝わってきて、
その切実さの結晶をゴミ箱へポイ捨てするのは忍びないという気にもなってくる。
でんこちゃんはこういうビラを頻繁に手書きしては校門で配っていたのだ。
今や誰も受け取ってくれないというのに。
無駄になるに違いないはずの物を、家で一生懸命作ってる姿を想像する。
は。いやいや、なに同情的になってるんだ。
だから俺は考えすぎるというのだ。
物事に余分な解釈を付け加えるのは余計な首を突っ込むのと同じで、そうして結局無駄に流されてしまうのだ。
そういうのって良くない。
「あ、でんこちゃん」
「ええっ!」
「嘘だよ」
青地が意地の悪そうなニヤケ顔を浮かべる。
なんだ嘘か。心臓飛び出るかと思ったわボケぇ。
怪文書をガン見して考え込んでる所をでんこちゃんに目撃されでもしたら、あらぬ誤解を呼んでしまうに違いない。
それだけは勘弁だ。
「でもさ、これってちょっと凄いな」
「ん?」
何が?と言いたげな青地。
「だってさ、手書きだぞ?今時ワードソフトとか使ってからプリントアウトでしょ、普通は。
なのにこれ、白地の紙に一枚一枚手書きしてるみたい。一枚仕上げてから印刷って事すらしてないし。
シャーペンで書いてるみたいだから、消しゴムで消せるぞ」
と言って、『策動』の文字に消しゴムを掛けてみる。
やはり消えた。
「おおー」
青地も驚く。
さすがにプリンターくらいは使ってると思ってたんだろう。
「じゃあなに。彼女、ビラ配りのたんびに何枚も手書きしてた訳か」
「だろうなぁ」
途方も無い苦労を思ってか天井を仰ぐ青地。
俺はじっとビラを見つめている。
何だろう。何が彼女をそうまでさせるのか。
何かこだわりが、意味があるのだろうか。
一枚一枚手書きしなければならない訳。
でも、そんなものがあったとして、きっと常人には想像も及ばない理由なんだろう。
「あ、でんこちゃん」
と青地が馬鹿の一つ覚えみたいにさっきと同じネタをかます。
「ばーか、引っかかるかよ」
さっき引っかかった事は棚に上げてビラと睨めっこする俺。
すると視界の上隅、机の前で誰かが立ち止まる。
ん?
顔を上げると、そこには嬉しそうな顔のでんこちゃん。
は?
慌てて隣を見るが、青地の姿はもうない。
既に逃げ出した後らしい。おいおい。
>>5-8 全然OKです、GJ!
続き待ってます〜
GJ!
面白いよ
電波を大切にね! 東京電波
ゆんゆんゆん
妄想系キチガイなヒロインの出る作品って意外と少ないよな
ヤンデレの亜種っぽいのなら大量生産されたけど。
マジキチヒロインものが読みたい
そうそう、マジキチ分が不足している。
商業的にもネタにし辛いジャンルだってのは分かるが。
参った。人間不意をつかれると、とっさの対応が出来ないもんだ。
あの後嬉しそうなでんこちゃんに「ありがとう」といきなり礼を言われ、有無を言わさずメールアドレスの書かれた紙を手渡され、
「詳しくは後ほど、まずメール下さいね」とか微笑まれて「ああ、うん」なんて間抜けな返事を返して、
それで馬鹿正直にその紙を持ち帰って家のベッドでごろんと横たわっている。
青地は「よう色男、早速アドレスゲットか」などと人の気も知らないで、いや知った上でからかってるんだろうけれど、
とにかく自分だけさっさと逃げ出しといての見事な薄情ぶり。
この恨み忘れないからな。
でんこちゃんには悪いが今のとこメールを送ってあげるような気分じゃない。
これ以上関わり合うのはご免だし。
とか考えながらも、良心?の呵責がチリチリ胸をくすぐってるのもまた事実だ。
多分彼女は久々にまともに取り合ってくれる相手を見つけた訳で、だからあんな嬉しそうな顔をしていたのだし、
ルックスだけは美人そのものだからその笑顔を裏切るのは可哀想だなーなんて思いもあって、
結局こんなだから俺は押しに弱い人間のままなんだろう。
反省。
んでもう一つ、朝に受け取った怪文書を取り出して眺めてみる。
うむ。
やはり意味は分からない。
そう思っていると部屋のドアがコンコンと叩かれ、妹の由利が顔を覗かせる。
風呂上がりでセミロングの髪がしっとりと濡れている。
「兄さん、ちょっといい?」
「ん?いいよ、どしたの」
「あのさ、兄さんのコンポ壊れたって言ってたよね」
「ああ壊れたな、ものの見事に。CDセットしてもうんともスンともいいやしない」
「それじゃあさ。Telepopmusikのニューアルバム昨日買って来たんでしょ?
ちょっと貸して貰えないかな?あたしも聴いてみたい」
「いいけど、っていうかそれぐらいコピーしてやるよ。今から焼こうか?」
「あ、ホント?助かる〜、ありがとね」
と言いながら俺の手元のビラに目をやって「何読んでるの?」
「あ、これ?」どうするか。妹には目の毒な気もする。
って、こんなの誰にだって目の毒か。まあいい。
「ちょっと、学校で変わった子から手渡されてな。
変わったって言ってもちょっと変わってるとかじゃなくて、かなり……いや、完璧変わってるというか、
もうイカレてるってレベルだけど。読んでみる?」
「変わった子……って、女の子?」
「ああ、女子だけど。見た目だけは可愛いんだけどな、頭の方がちょっと可哀想な事になってて」
「見てみる」
ずんずん部屋に入ってきてビラを手にする由利。
カシスのシャンプーの香りが漂う。
それから字面を追っていって、その表情が次第に険しいものへ変わっていく。
「なにこれ。兄さんと同じ学校の人が配ってたの?」
「学校だけじゃなくてクラスも同じだよ。うかつに受け取ったせいでメルアドまで渡されて、連絡くれってさ。
おかげでいい迷惑だな」
「ふうん」
まじまじと俺の顔を見つめる由利。
風呂上がりの頬がほんのり紅潮している。
「お前さ、そのビラの意味分かる?俺としてはちんぷんかんぷんなんだけど」
適当に振ってみるが、しばしの間沈黙。
まぁこんなもん解読しろって方が無理か。
「よくは知らないけど……」
「うん?」
「もうメールは送ってみたの?」
「え?送るわけないだろ、そんな」
「取りあえず送ってみなよ」
「はぁ?」
意外な発言。
俺と違ってしっかりものの由利だから、"こんな変な人に関わらない方がいいよ"とか言ってくるもんだと思ってた。
「ええっ。お前、こういうアレな相手とこっちからコンタクトとれっていうの?」
「だってさ、気にならない?どういうつもりでこんなの学校で配ってるのかとか、色々」
まぁ、部外者からすれば面白半分な視点でいられるのかも知れないけれど。
渦中の身とあってはそう簡単に行動する訳にもいかない。
「いや、でもなぁ。正直あまり気が進まない……分かるだろ?
こういうのに付きまとわれたりしたら、ろくな事にならないって」
「でも、メールしてくれって言われたんでしょ?それで何もせず放っといたら、その人怒り出すかもよ?」
う。それも確かにまずい、というか怖い。
キ印を怒らせるのって、かなりまずくないか?
「う〜ん」
「何も積極的に関わっていこうって話じゃないんだし。ある意味もう目をつけられてるようなものなんでしょう?
相手に合わせるふりして、序々に距離を開けていくって考え方もあると思うよ?」
「……そうか?」
頭の良い由利が言うんだからそうなのかも知れない。
何しろテストじゃ常に学年TOP5に入ってる。
一度は1位を取った程だし、兄としても自慢の妹なのだ。
それに、これはまあ身内の色眼鏡なのかも知れないが、顔立ちだって結構整っている。
通いの中学校では何人かに告白された事もあるらしいが、今の所は全部断っているようだ。
って、それはいま関係ない。
「まぁ、お前がそう言うなら、そういうもんなのかもな」
「そうしなよ。じゃ、CDのコピーよろしくね」
「ああ、任せろ」
そうしてすたすたと部屋を出て行く由利。
俺はさっそくPCを立ち上げ、ドライブへCDをセットしてリッピングを始めた。
と同時にメーラも立ち上げ、さてどうしたものかとでんこちゃんへ送るメールの本文を練り始める。
『木村さんへ
こんにちは、秋野です。メールアドレスわざわざどうも。
今日のお昼の件でメールしました。何かお話しがあるのでしょうか。
先に断っておくと、あのビラに書かれている事の意味はあまりよく分かりませんでした。
独特の文体ですね。一生懸命なのは伝わってきましたが。
まぁ、そんな感じで』
『Re:木村さんへ
こんにちは。ビラは安心して下さい、今はまだその時でないようです。
身の回りの不審に気遣って下さい。
ビラを盗まれたりしませんでしたか?学内もですが、至る所に不審者がいるようです。
今日の現在で信用できるのが、秋野君だけです。鬼が紛れてたし。
家族も今信じられない。乗っ取られてるかも』
はあ、と深くため息を吐いてみると、疲れもますます深まるようだ。
でんこちゃんは朝から全開だった。
教室に登場するなり自分の席から俺に熱?視線。
HR前に教室から出て、トイレでも行ったかなと思うと廊下を無意味に何往復もしている。
何だろう?と見ていると目が合って、どきりとするような笑顔はいいのだが、そのまま目線をねっとり絡みつけてくる。
第一なんだって廊下を行き交いするんだろう。
行動の原理が全く読めない。
「おう、でんこちゃんと何かあったのか。すっげえ意識されてるみたいだけど。
まさかお前」
「おはよ青地。いや、渡されたアドレスに返事送っただけだよ。
別に変な事も書いてない。ビラが意味不明でしたって位か」
「えっ。メール本当に送ったの」
「えっ」
「いやー、普通送らないっしょそこは。
だってさ。アレ、まじもんだよ。
スルーしとくのが正解だと思うけどね」
「あ〜俺もね、最初はそう考えてたんだけど」
由利が送ってみろって言ったから……って、また俺は流されているな。
なんて事に今更気付いて愕然。
っていうか由利、あれ失敗だったみたいだぞ。
どうしてこうなるんだろな。
「お前さ、ひょっとして見た目さえ良ければ頭アレでもオーケーな口?意外と剛胆だよね」
「それはない」
「ふうん。でさ、返信はきたの」
「ああ、寝る前にチェックしたら届いてた」
「どうだった?」
どう?っていうのは、多分ビラの時みたいな怪文書ぶりだったのかという意味だろう。
「いやそれがさ、メールだとわりと会話になってるんだ。
なんか変な突っかかりとかは感じるし、所々で話が飛んだりもするけど」
「へぇ。メールでも全開だったら面白いのにな」
こっちは全然面白くない。
でもまぁ、メールも正常とは言えなかったけれど、ビラになるとどうしてああまでイカレた文章になるのだろう。
なにか思い入れ的なものが強く出過ぎるんだろうか。
このまま遠巻きに眺めてくるだけで終わればどれ程気楽だろう。
けれど、厄介事に限って思い通りにいかないのが常だ。
帰りのHRが終わって青地と軽く話してたら、ニコニコ顔のでんこちゃんが俺の席までやってくる。
「おじゃま虫は退散するとしますか」と言ってニヤケ顔の青地。
荷物をまとめながら「木村さん。こいつかなりの奥手かつ押しに弱いから」と余計な言葉を残して教室を出て行く。
分かっちゃいたが、ああいう奴なのだ。
「彼は、良くありませんね」
お。まさかの意見の一致。
「うん、ロクなもんじゃない」と思わず同意したが、すぐ後の「鬼畜生の波動ですよ。
もう取り込まれたか、あるいは鬼そのものなのかも。
秋野君、あの人とは付き合わない方がいいです」という台詞を聞いて直ぐさま後悔する。
根本的にズレているんだ。
「あの、何か用かな。ひょっとしてメールの事で?」
「盗まれませんでしたか」
「え?」
「大切な事の書かれた紙ですから。盗まれなくとも、不審者に覗き見をされたりとか」
「ああ、ビラの方ね。
いや、そんな盗まれたりとかは……妹にちょっと読ませた位?
別に不審者に狙われたとか、そういうのは無いから」
話しててなんか疲れる。
「え。妹さん?」
「うん。俺、妹居るんだけどね。
何読んでるのって聞かれたから、見せてあげた」とここまで口にして、ちょっと失言したかなと思う。
俺が自宅でまでビラに向き合っていたと知られたら、それは彼女の妄言に対する前向きな姿勢と取られかねないんじゃないか?
「妹さんに見せてしまったんですか!?」
あれ、そっち?
「えっ。見せたらまずかったの」
「……まだ、分かりません。それで妹さんはなんて」
「いや、アドレス貰ったならメール送ればって、それだけ。
別に妙な素振りとかないよ?ごく普通に……」
「工作員というのは普通を演じられてこそです!」
突然の大声でぎょっとする。
まだ教室に残っていた生徒の何人かも、こちらを伺うようにしている。
「……ごめんなさい。うかつでした。
ここだって彼らが潜んでいるかも分からないのに」
「彼ら?」
「秋野君、場所を変えましょう。着いてきて貰えませんか?」
それよりもう帰らせてくれよと思ったが、一旦話を聞く姿勢に入ってしまったし、
それならクラスメイトの見てない場所の方がまだ気楽ではある。
後ろ数歩の距離を空けながら気が進まねえなあって態度丸出しの俺を気にもせず、彼女の向かった先は理科準備室。
おや。今の時間は文化部が何か使ってるんじゃないの?と思う目の前で扉が開く。
中には誰もいない。
「どうぞ」
と自然な口調ででんこちゃん――木村さんが言うので、俺も自然と促されるまま椅子に腰を掛け、
扉が閉められ鍵の掛けられた所ではっと気付く。
おいおい、これって閉じこめられたも同然じゃないのか?
「あの、木村さん」
「はい?」
「鍵を掛ける必要はないんじゃない?ていうか、ここどこかの文化部が使ってる教室だったりしないの?」
「使ってますよ」
「じゃあ駄目じゃん、勝手に入り込んで鍵掛けたりしちゃ」
「部員はそろってますから」
「は?」
「天文クラブの割り当てになってるんですよ、ここ。部員は私だけですけれど」
「えっ。そうなんだ」
「最近は校内も物騒になってきましたから。鍵は用心のためです。
今の所は盗聴器も見つかってませんし、盗撮カメラが仕掛けられていないか念入りにチェックもしています。
秋野君は安心して座っていて下さいね」
とおもむろに準備室のあちこちをかき回し始める木村さん。
話の文脈からして盗撮カメラが隠されてないか探ってるんだろう。
というか、彼女は一体何と戦っているんだ?
「ふう……今日も異常は無しと。
良かった、これで落ち着いてお話しが出来ますね」
いや、俺には腰を据えてまで妄想談義に花を咲かせるつもりなんてないし。
ところが電波娘と部屋で二人きり。何の因果だこれ?
まぁ扉の鍵は内側から簡単に開閉できるタイプだから、いざとなればいつでも逃げ出せるけれど……などと考えていると、
木村さんも椅子に腰掛けて俺と向き合う。
「秋野君。あの紙を妹さんに見せてしまわれたそうですが、場合によってはあなたの身も無事では済まなくなるかも知れません」
ええっ。それってまさか。
自分ルールを破られた木村さんが、怒りのあまり俺を?
なんて事ではなくて、「多いんですよ、家族が知らぬ間に鬼の配下へすり替わっている事って」という話なのだが、
まずその鬼の意味が分からない。
「いや、鬼って言われても……なんか良く分からないけれど、
話からするとその鬼っていうのは木村さんに敵対している連中なんだよね?多分」
途端にパアッと嬉しそうな顔をする木村さん。
うっ。また何か失言をやらかしたか。
「まぁとにかく。
俺の妹が鬼か何かかもって話なら、それは多分に違うと言える。
だって、木村さんにメールしてみなよって言ってきたの、由利なんだよ?あ、由利ってのは妹の名前ね。
木村さんの敵側なら、むしろこういう類の交流は何が何でも邪魔しにくるもんじゃないの?」
これには彼女も少し黙り込んでしまう。我ながらまともな切り返しができたもんだ。
しかしそれも数秒の事で、「どうでしょう。ある程度泳がせてみてから、こちらの出方を窺っているのかも。
だとしたら油断なりませんね。それに私、失礼ですけど妹さん――由利さんからは、何か嫌なものを感じてならないんです。
上手く説明はできませんが」
おいおい由利、なんかお前まで巻き込まれてきたぞ。
あの作戦は大失敗だったな。
「あ、でも秋野君……裕一君は別ですよ!ビラも受け取ってくれたし」
ああ、やっぱりあれが良くなかったのか。
教室でガン見してる所も目撃されて。
てか、いつの間にか下の名前で呼ばれてるけど。
「それに私、裕一君からは特別な物を感じるんです。
プラーナが常人とは違うというか、少なくとも鬼なんて相手になりませんよ、絶対。分かるんです。
それにひょっとしたら」
そこで急に黙りこくってしまう。
それよかプラーナってなに。
「……とにかく私、一度ちゃんと確認しておかなくちゃって思って。
凄く、凄く、凄く大事な事なんです」
話の進むたび、彼女の電波ワールドへ次々引きずり込まれていく錯覚。
美少女と放課後の教室で二人きり。
本当はもっとどきどきしていいシチュエーションなのに、胸の鼓動は違う意味で早まってきた。
もうそろそろこの場を去った方がいいんじゃないか?でないと、取り返しのつかない事が起こりそうな。
「分かった。じゃあ、その確認とやらが終わったらもう帰って良いかな。
もうすぐ妹が夕飯の支度を始める頃だから、それを手伝ってやりたいんだ」
「……済みません、強引に引き留めてしまって」
あ、強引って自覚はあったんだ。
「じゃぁすぐに済みますから、ちょっと目を閉じてて下さいね」なんて軽い調子で言うから俺も軽く目を閉じる。
まてよ。この流れで何故目を閉じる必要が。
思った瞬間、唇に柔らかいものが触れる。
はぁ!?硬直する俺。
するとその唇の合間を縫って、生暖かい物が、彼女の舌が、俺の口内へ侵入してくる。
もう驚愕の域を超えて頭は真っ白だ。
正直に言うとその感触の心地よさも手伝っている。
真っ白い頭が理性を取り戻すまで数十秒、ようやく俺は目を開いて木村さんの唇を引きはがした。
強引に引いたので舌が俺の唇をにゅるんとなで回していって身震いする程気持ちが良い。
二つの唇の間で唾液の糸がきらきらと橋を渡している。
何だ。
なんでこんな事になってるんだ。
「――やっぱり、思った通りでした」
上気した顔の木村さん。
その潤んだ瞳が扇情的で、さっきからピン立ちしていたアソコが更に元気になるが、今はそれどころじゃない。
緊急事態。緊急事態。
初キスがでんこちゃんと。なんてこった。
でも超美人だし良くね?って良くねえよ、あの流れでキスはない。
本当に何をやらかすか分からないんだ、この娘は。
そう思い至って逆に背筋が寒くなる。
ヤバイ。
この娘は本当にヤバイ。
「あああ、あのおれ、もう行くから、行かないとだから。そそそそそれじゃ」と噛みまくりながら足下の鞄を手に扉へダッシュ、
鍵を開けてそのまま廊下へ駆け出した後ろで「あの、メールしますから」の声。
しなくていいよ、そんなの。
もう訳分かんないって!
続き来てたーーー!!!
こいつはやべぇ、マジモンのGJを送るしかないぜぇへへへでんこちゃんよぉ
ででんでんででん
これは期待する他ないな
でんこの電波を待っている
ほ
■全国で蔓延している創価による敵対者を追い出だす手法「ガスライティング」「集団イジメ」。
下記の犯罪行為が組織的に全国で毎日行われております。
・特定の場所で車が進路を妨害するように曲がる。同じ車を使い何度もすれ違う。 非常にゆっくり通り過ぎる。
・見知らぬ奴が特定の場所で待ち伏せ、監視。近づくと歩き去って行く。近くに寄ると体操をし始める。
・帰宅出勤を見計らい大きな物音を立てる。
・町内会の幹部を強要する(恥をかかせるのが目的)
・信者宅の郵便物、公的書類をポストに入れ意図的にトラブルを起こさせる。
・自転車、バイク等のタイヤの空気を抜く。
・ほのめかし
・郵便物を盗む。盗聴。悪い風評を流す
・自宅、知り合いに嫌がらせ電話。職場、近隣に警察を名乗り電話をする。
貴方も知らぬ間に犯罪に加担させられているかも知れません
上記の様な集団イジメ、集団ストーカー行為にあった場合は被害者の会又は公的機関までご連絡下さい
え……
32 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 17:15:33 ID:qD++sxZM
でんこは?
期待
しゅ
保守
夕飯の支度は既に出来ていた。
二階へ上がり茶色い木目の戸を二度軽く、続けて三度ノックする。
それでも部屋の主は出てこない。
「由利、おい由利!」
今度は強めに四度叩き、五度目のノックを前にようやく戸が開いて由利が顔を覗かせる。
「なになに、どうしたの?兄さん」
「どうしたもこうしたもないよお前。
ちょっと部屋入るぞ」
「え。ちょ、ちょっと待ってよ」
そのままバタンと戸を閉め、中でなにやらドタドタと物を片づけるような音。
まぁそれを待つ位の余裕はある。
「はーい、もういいよ。入って」
足を踏み入れると、そこはいかにもな少女趣味空間。
ベッドの上には猫のぬいぐるみなんて置いてある。
中学三年になってこういうの飾り付けるって、女の子としては普通なんだろうか?
女性経験の無い俺には分からない。
机の上には小型のCDプレイヤーが置かれ、ジャックにヘッドホンが挿されている。
多分俺の焼いたCDを聞いていたんだろう。
それはさておき、何としても言ってやりたい事があって、ひっさびさに由利の部屋へやってきたのだ。
その勢いに任せて口を開く。
「由利。お前の作戦、大失敗だったぞ。最悪だ」
「へ。作戦ってなんの……ああ、昨日言ってたビラ配りさんの事かな」
「そう、その娘だよ。
無視するよりは適当に相手しろって、そういう話だったけどさ。思い切り逆効果だぜ。
今まさに泥沼はまってるよ」
「あ〜、ごめんね〜……何があったか知らないけど。上手い具合には運ばなかったんだ?」
「そうだよ!……いや、悪い。
選択したのは俺だし、お前を責めるのはお門違いだけどさ。
下手すりゃトラウマもんだよ、初めての……」と言いかけた所で思い留まる。
いい年して妹に"ファーストキスを奪われた"なんて訴えるつもりはない。
「初めての?」「とにかく、散々な目にあった」「そっか、ごめんね〜」と言いながら床に敷いてくれた座布団へ腰を下ろす。
気配りの良く出来た妹なのだ。
なんだか毒気も抜けてしまった。
「あたしとしてはそれで本当に上手くいくかなって思ったの。
いい加減な気持ちで出任せ言った訳じゃないから、そこだけは誤解しないでね」
「まあ、それは分かってるけど」
申し訳なさげな表情を浮かべた由利がふるふる頭を振るので、茶色味のあるゆるい癖毛が左右にふわりと流れる。
生まれつき色素が薄いのだ。
「……ねえ。そのビラ配りさんだけどさ」
「木村って言うんだ。木村真希」
「じゃあ木村さん。何だって兄さんを選んでビラ渡したんだろうね?」
「うん?そんなのただ適当に、じゃないか?
っていうか時々校門脇で無差別に配ろうとするんだよ。俺はたまたま断り損ねただけで」
「でも、散々な目にあった。
散々って何されたか知らないし、言いたくなければそれで良いんだけど。
今まで他にビラを受け取った人はいなかったの?」
「そりゃいたらしいよ。初めの内は、結構な数で。見た目は可愛いからさ」
由利がベッドに腰掛けたまま身をよじる。
「やっぱり受け取ったのって、みんな男の人だった?」
「ん?そこまでは分からないよ。ただ、俺が噂で聞いたケースは全て男だな。
あ、でもビラを配ろうとする対象は男女隔ててないぞ」
「ふうん……でもさ、その木村さんって内心では男の人に受け取って貰いたいのかもね」
「?どうしてそう思うんだ」
「なんとなく」
そう言って口ごもる由利の顔が、少し苛立たしげに見える。
色の薄いはずの瞳はいつもより暗い。
「きっと、男の人を探してるんだよ」
「……まあ、何考えてんのか分からない人だけどさ」
本当に分からないんだ、一体何を思ってあんな事しでかすのか。
「ねえ兄さん。他にビラを貰った男の人達も、兄さんと同じ散々な目ってのに合ったのかな?」
「ん〜……」
どうだろう?俺以外の奴らにもいきなりベロチューとか、あるいはもっと過激な事とか……やらかしても、おかしくはない気がする。
あ。でもそしたら流石にそういう噂の一つも立って当然じゃないか?
けれど校内で語られるでんこちゃん伝説にそういう卑猥な文節は含まれていない。
じゃあ、あれって俺だけに?と思い至った所で、変にほっとする気持ち。
あれれ。なに安心してるんだよ俺。
「多分、それはないんじゃないかな。
ていうかビラを受け取る奴がいたのは最初の頃だけで、今じゃもうみんな見て見ぬ振りだから。
そこへ俺が久々引っかかったもんだから、変に執着してきたのかもな」
そうだ。木村さんは俺に対し、まさに藁へもすがる思いだったに違いない。
彼女なりに追いつめられた末の奇行がアレだった。
そう考えると、木村真希という奇人においては全ての辻褄が合うように思えた。
「そう」
由利はそのまま俯き加減になって、何事か考え始めている。
色々話して思考を纏められたおかげで、何となく胸のもやも薄れた気がする。
言いたいことはもう口にしたのだし、妹の部屋でだらだらと長居する気もなかった。
俺が腰を浮かそうとする気配を読んで、由利が「兄さん、気をつけてね」と言う。
「えっ?」
「メールを促したあたしの言える立場じゃないかもだけど。
木村さんはどんどん距離をつめてきそうな気がする」
確かに、彼女はメールに書いていた。
『今日の現在で信用できるのが、秋野君だけです』
それが本当なら、俺にますます縋り付こうとするのかも知れない。
「気をつけて」
その台詞に曖昧に頷いて、俺は部屋を出た。
「親愛なるメルクリウス皇へ
本日主従の儀にて確認されました通りの、やはり裕一さんがメルクリウス皇である事は、確かです。
まだ戻られないでしょうか。
詳しくをこちらから話すのが問題なので、まず記憶盗聴の危険もですが、フェディスを用いた保護を優先させたいと思うのです。
覚醒はおいおいでしょうから、安心して下さい。
明日届け出るべきです。
お気をつけて」
申請書だ。
俺の目の前に突き出された一枚の用紙を挟んで、真剣な顔のでんこちゃんこと木村さん。
隣の席では青地がいつものニヤケ顔を浮かべている。
笑ってないで助けろよ、お前。
天文クラブの入部申請書を持って現れてからというもの、彼女はただの一言も発していない。
まぁ真顔で見つめてくるその雰囲気から察するに、こいつへ記名して部員になれと迫っているのだろうが、そうなれば俺はますます木村さんから逃げ出せない。
そんなのはご免だ。
でも俺が何も書こうとしない限り、彼女もここを動こうとはしない。
昨日の放課後はさっさと姿を消した癖に、今日の青地はニヤニヤしながら俺達を見守って?くれるらしい。
もういいや、助けてくれないならさっさと帰ってくれ。
と思っていると「秋野、いいじゃん。ここは一筆ふるまってやれよ、お前帰宅部だろ。
部員が一人だけじゃ木村さんだって寂しいんだよ」などと、助け船どころか更なる泥沼へ俺を引きずり込もうとする。
もうホント帰っていいよお前。
木村さんはそんな青地をキッと睨むが、当の本人は何処吹く風だ。
「秋野さん」あ、喋った。
「お願いです、秋野さんのためでもあるんです」と沈黙を破り木村さんは言うが、入部がどう俺のためになるというのか。
むしろ逆だろ。
けれどこのままじゃ埒があかないので、じゃあ記入だけして後は幽霊部員になれば満足なんだろ、
もうそれでいいやとヤケになった俺は筆を手に持ち、申請書へと向き合う。
あーあ。書いちゃった。
木村さんは本当に嬉しそうな顔をして俺へ頭を下げ、そそくさと教室を出て行く。
早速職員室に提出へ行ったのだろう。
「お前はやる男だと思ってたよ」と青地。
いいよな、他人事でいられるって。
「お前、俺の身にもなってみろよな。
でんこちゃんと一緒にクラブ活動とか、何が起こるか分かんねーし怖えだろうが」そうだ。
本当に何が起こるか分からないのだ。
「えー、だって美人と二人で部室を占拠とか、美味しいシチュエーションじゃんよ」
「じゃあお前変わるか、今からでも」
「や、オレ電波系は流石に無理っ。やっぱお前は漢だよ、秋野」
面白ければ何でも良いんだろうな、この男は。
「わははは」本当に愉快そうに笑う。
と、その笑いがピタッと止んで「じゃ、後はごゆっくり」なんて言って青地は席を立つ。
それと入れ替わりに教室へ入ってくる木村さん。
はやっ。もう申請すんだのか。
「秋野さん、早速部室へ行きましょう。クラブ活動開始です」
「え、もう?今日からやるの?」
「ええ」
逃げ出す暇も無い。
「じゃなーお二人さん」と軽口叩いて教室を出て行く青地。
木村さんは無視を決め込んでいる。
そういえば"鬼"認定が下ってるんだっけか、あいつ。
「さあ、行きましょう」と木村さんは強引に俺の腕をつかむ。
「ちょ、ちょっと。分かったから、部室行くから。
だから、腕は離して貰えないかな」「はい」素直に言う事を聞いてくれる。
なんだよ、申請断るときもこれ位素直なら良いのに。
でももう届け出は為されてしまった。
そうして二人きりのクラブ活動が始まった訳だ。
相変わらず盗撮カメラが無いかチェックしまくる木村さん。
まずこれをやらないと落ち着かないらしい。
鍵のかかった部室内で所在なさ気に座ってる俺。
これではまな板の上の鯉だ。
それじゃいけない。
そうだ、何とかして会話の主導権を握るのだ。
思えば木村さんの意味不明な言動に振り回されすぎていた。
こちらからそれを切って捨てるつもりでいかないと、いいように巻き込まれるがままだ。
「ねえ、木村さん」
「ええ、お茶にしましょう」
お茶?表面上綺麗に言葉が繋がったので二の句が継げない。
やられた、ここでお茶か。
部屋にコンロがある訳でもないしどうするのかと思ったら、木村さんはバッグから青い水筒を取り出す。
どうやら仕込み済みだったらしい。
それから蓋兼コップにお茶を注いで、ゆっくり口に含む。
アレ、俺の分もあるんじゃないの?と思う瞬間、目の前に木村さんの顔。
そのまま口移しで茶を飲み込まされる。
わお。
口中に広がるジャスミンティーの香り。
またしても奇行極まりないがちょっと嬉しい。
いや、これで喜んでちゃ駄目だ。
怯んでもいけない。
でなければ、また木村さんの世界に引きずり込まれてしまう。
けれど心臓はバクついたまま落ち着かない。
くそ。美少女に口づけされたんだ、仕方ないじゃないか!と結局パニクった俺に「あの……お気に召しませんでしたか?」と物憂げに訪ねてくる木村さん。
部室に入ってからツインテールを解いているので、さらさらの髪がストンと腰まで落ちて、日本人形のような面影がある。
ぱっつんの前髪。
そうして陰った表情も様になっている。
俺は混乱すると、途端に無表情になるたちなので、不安にさせたのかも知れない。
「いや……何でもない」いきなり口移しなんてどう考えても何でもあるが、平常心、平常心。
敢えて不問だ。
「ところで」「はい」
「昨日のメールの事なんだけどさ」「ええ」
「メルクリウス皇ってのは何の事なのかな」「ええっ!?」
「へ?」
逆に驚かれてしまった。
どちらかというとこっちが驚いてるんだけど、いきなりメルクリウス皇とか呼ばれて。
「やっぱり……まだお記憶が戻られてはいないのですね」
「はあ。まぁ、身に覚えがないのは確かだけど」
「封じられてるんですよ」
「え?」
「いいですか。裕一さんにはメルクリウス皇としての記憶が眠っているのです。
今ここで詳しくはお話しできないので簡潔に言いますと、昨日の主従の儀で目覚めていないのは明らかにおかしく、鬼の妨害です。
あいつら脳波ジャマーで裕一さんの覚醒を邪魔してるに違いありません!」
なんだ、急に軍事用語っぽいのが出てきたぞ。
よく分からんが、木村さんの中では昨日のキスで俺がメルクリウス皇とやらに目覚める予定だったのだと、そういう事だろうか?
「ですから、下手をすると一刻を争う事態なのです。
脳波に手を入れられるのなら、いずれは記憶盗聴の危険性も考えられます。
とにかくフェディスを優先させて頂きます、失礼ですが」と言って急に俺のベルトへ手をかける木村さん。
ちょ、何やってんの!
「わわ、ちょっ待った!そもそもフェディスって……あーっ」強引にズボンを脱がされ、パンツ一丁で椅子にしがみつく俺。
木村さんは質問に答えず「失礼します!」と叫んで俺のパンツを一挙に引き下ろす。
ムスコが外気に晒されてスースーする。
うわわわわ。貞操の危機。
「な、何してんの!おかしいってこんなの!」
まさかここまでキていたとは。認識が甘かった。
「……フェディスとは」そう言って木村さんの手が俺の股間に優しく伸びる。
あふぅ。
「水神の力を人体の水穴から注ぎ込む神聖な儀式です」柔らかな細指がしこしこしこ。
あふぅぅぅ。
「これにより、思考や記憶の奪取から身を守る事ができるのです。
裕一さんが鬼に狙われていると判明した以上、一刻も早い保護が必要です……」いつの間にそんな事に。
などと考える力は股間の先から抜けていく。
しゅっしゅっしゅっ……。
「性器を勃起させねばうまく伝導しないのです。
僭越ながら木村真希改め水称姫、この身を以て、メルクリウス皇にフェディスの儀を果たさせて頂きます」と喋り終えると同時に彼女は身をよじる。
ぬるま湯みたいに温かなものが俺の性器をはいずり回った。
これは木村さんの舌か。
見ると、上目遣いの彼女が椅子の前に屈んで、俺のアソコの上で舌先を踊らせている。
背中の神経全てが股間へ連なったみたいにぞくぞくする。
昨日に続き、今日はフェラチオを初体験する事になるだなんて。
非現実的だ。
この準備室も、俺の顔を窺いながら性器をぱくりと口に含む彼女も、
そこから緩やかな熱と共に駆け上がってくる快感も、窓辺から差し込む夕日の赤も、
全てが非現実的なもので構成されていた。
ぢゅる、ぢゅる、ぐぽっ……淫靡な音が部室に響く中、俺はもう抗議の言葉も疑問も口にできず、ただ快感にその身を任せていた。
抵抗なんてできるはず無かった。
目尻のはっきりとした美少女が片手で髪を抑えながら、ゆっくりとしたストロークで俺の性器を扱いている。
顔にはうっすらと嬉しそうな?笑み。
それが夕日の照り返しで一層卑猥に映る。
これで流されない男が居るというのならお目にかかりたい。
もういいや俺、こんな気持ち良いなら流されがちな人間でも……等とぼうっと思う間に股間にこみ上げてくる物がある。
「あっ……で、出そう」
それを聞いて、より強く激しく扱き始める木村さん。
だんだん慣れてきたのか、口へ招き入れる動作と同時に舌を絡めて、そのまま一気に引き抜く動きが腰の抜けそうな程気持ち良い。
先ほどの宣言から十往復もしないのに、最早俺は果ててしまう。
「いっ……くっ!」そのまま口内へ射精してしまった。
すると「もひゃっ」と変な声を上げて、射精の止まらぬうち口から性器を離してしまった彼女の顔へと、精液がかかってしまう。
白く粘ついた物が彼女の顔をつうと垂れる。
「ああ、もったいない……」人差し指の背でそれをすくって、口へと運ぶ木村さん。
……エロすぎる。
刺激的な光景に俺のムスコは早くも復活しつつあった。
彼女は精液の大方を啜り終えると、半起ちの俺の性器の先に口づけをした。
そうして「ただいま儀式が完了致しました」の宣言。
えっ。チンポしゃぶったりするのが儀式だったんだろうか。
俺が不思議そうな顔で眺めているのを察してか、彼女は解説を始める。
「水神の力を媒介させるには、人の体液が最も適しているのです。
先ほど申し上げました通り、それを水穴――例えば性器や口を通して伝えます。
今は私が裕一さん……いえ、裕一様にプラーナの一部を分け与え、それを体内で変化させて防御壁とした訳です。
これでもう鬼どもに記憶や思考を盗聴される心配はありません、ご安心ください」と言ってニッコリ。
俺も引きつった笑顔を浮かべる。
そうか。
いきなりお茶を口移ししたり、あるいはファーストキスを奪ったりしたのは、そういう論理?の元に動いていたからなのだ。
今のフェラチオだって、彼女の中では俺を鬼から守るためにやむなく行った事なんだろう。
ん?でも俺の精液を「もったいない」とか言ってたな。
まぁ、彼女にとっての俺はメルクリウス皇とやらなんだから、その精液には何か特別なプラーナとかが宿っている……という話なのかも知れない、彼女の脳内では。
だんだん俺も奇行に対する拒否反応が薄れてきた気がする。
というか、こんな可愛い娘に色々エッチな事をして貰って悪い気がするはずないのだ。
ただ深く関わるとヤバイという思いがストッパーになっていた訳で、しかしそれもフェラチオという一線を越えた事で何かどうでも良くなってきた。
俺だってやりたい盛りのお年頃だ。
はっ。いかんいかん、肉欲に流されてしまっているではないか。
でも彼女が勝手にしてくれる分にはいいかぁ。
なんて、自分の意志の弱さを再確認。
ハンカチで顔と制服に付いた精液の残滓を拭き取ると、木村さんは俺に向かってもう一度にこりと微笑んだ。
もう夕日は沈みかけで部屋は暗がりの中、彼女の笑顔だけが明るい。
それを見たら胸がズキンと少しだけ痛んだ。
木村さん。
君はそんなに一生懸命になってくれるけど、俺はメルクリウス皇でも何でもない、ただの一生徒に過ぎないんだよ。
きっと、いや間違いなく、全ては君の思いこみに過ぎないんだ。
「木村さん。悪いけれど、俺にはそもそもメルクリウス皇が何者なのかも分からないし。
はっきり言って、人違いか何かだったりしない?それらしい記憶だとか、そういうのは一切無いんだ」言ってしまった。
そうして彼女の表情をそっと盗み見る。
泣き顔、困惑の顔、色々と脳裏を掠めたけれど、実際の彼女は笑っていた。
破顔。
ん?
「ですから、心配は要らないのです。
主従の儀やフェディスの儀が成功した今、裕一様がメルクリウス皇であるのは疑いようがありません。
不肖わたくしめと共にあれば、お記憶も直に戻られるものと思います。ゆっくりと、徐々にですが。
どうかご安心ください」ぽすっ、と俺にもたれ掛かってくる木村さん。
まるで千年の恋の相手を見つけたように潤うその目頭。
俺が無理にでも"いや違う"と力説すれば、この瞳を曇らせてしまう事になるのか。
薄いガラスの様に透明な輝き。
妄想一つでこの世界に我を通して、それはある種の強さの証のように思えるけれど、現実の彼女はこんなにもはかない。
俺の行動一つで砕けてしまいそうなイメージ。
それが引っかかって、彼女の妄想を完全に否定できない。
俺は「……そう」とだけ言って沈黙する。
静まりかえる準備室。
そろそろと暗さも本格的で、部屋の備品の輪郭はどこかおぼろげだ。
「じゃ、俺、そろそろ帰らないと。木村さんも……」ぎゅっ、と抱きついてくる。
俺を逃がしたくないといわんばかりに抱きついてくる。
――不安なのだろうか?俺がいつまで経っても彼女に肯定的ではないから、それで落ち着かないのだろうか?
あるいは鬼とやらが夜になると活動的になって、彼女を脅かすのだろうか?
勿論それは木村さんの脳内での話だけれど、それは彼女自身にとっては紛れもない真実なのだ。
きっと、本当に恐ろしい日々を送ってきたに違いないのだ。
可哀想なでんこちゃん。
俺は彼女に応じるようにその背をぎゅっと抱いた。
「木村さん、今日はもう帰ろう。何だったら家まで送ってあげるから」
「い、いえ!メルクリウス皇にそんなご迷惑をおかけする訳にはっ」そう叫んで俺から離れ、はっしとバッグを掴み取り、
中から木製の小太刀?を取り出して「てえええええっ」と宙を一閃。
ええええええええっ。
何もそこまで興奮しないでも。
と思うがどうやらそれには意味があったらしく、「危ない所でした」と木村さんは肩で息をしつつ言う。
「危ないって」「ナノ・偵察機です」「ナノ?」また軍事用語っぽいものが。
「ナノ・テクノロジーを用いた鬼ども得意の偵察なのです。
いつのまに侵入していたのか……電波発信型で無かったのは幸いです。
たった今"還水刀"で破壊しましたから、奴ら何の情報も得られずにざまあみろって感じですよぉ」うふうふうふと笑う木村さん。
最近の鬼ってのはハイテクなんだなあ。
いきなりの奇声に腰を抜かしかけたのは内緒だ。
「ま、まぁそろそろ時間も遅いし。とにかく、今日の所はもう帰ろうよ」
足がちょっとぶるぶるいってるのを気取られぬよう、声に力を込めて発した。
けれど木村さんはまだうふうふ言ってる。
鬼の陰謀を打ち砕いたのがそんなに嬉しかったのだろうか。
少し、いやかなり怖い。
暗がりで一人、不気味に笑う少女。
ぞっとしない。
俺は取りあえず自分のバッグを手探りで掴むと、「あの、じゃあ俺帰るからね」と声をかける。
「あ、はい。お気を付けて、えへへへ」エキセントリック。
木村さんはやっぱり"でんこちゃん"だった。
結局は終始彼女のペースだ。
その舞台で踊り続ける俺。
でもそれを含めてこその彼女なんだろうし、これで良いような気もしてきた。
毒されてきたんだろうか。
あるいは同情か。
絶望的な世界で一人我を張る、彼女への。
俺はくすくす笑いを背に部室を出た。
でんこちゃんまた来たーーーーーー!!!
キレ味最高!!!さらなるでんこの活躍求む!!!
GJ
でんこはいいなぁ
妹がどう絡んでくるのかwktk
GJ!
いいなあやっぱり。wktk
俺の脳内でんこは澪と梓との中間的なキャラに設定されている
面白いな
続き楽しみだ
でんこ可愛いよでんこ
50 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 11:24:32 ID:fnV/QD2/
新参なんでよく知らんがコテとか枚数とか付けないもんなのかな
書き手次第じゃない?
でんこが可愛いのでおk
続きが楽しみ
電波な姫が勇者と一緒に魔王を倒す旅みたいなのが読みたい。
暗い部屋で目が覚めた。
時刻は分からない。
頭に糊が詰まったような鈍さで物事を考えられない。
光の一切照らさない六畳の空間に自分以外の気配を感じた。
それはこのベッドに腰掛け、優しく額をさすってくる俺ではない誰か。
撫でる手の平には長年付き添った夫婦のような、慈愛に満ちた暖かみがあった。
それでも眠たくて仕方ない。
あるいは夢を見ているのかも知れない。
自分の部屋で寝ている己の夢。
そんな夢うつつの合間に、俺は再びぬるま湯のような眠りへ浸かっていった。
どうせ夢なら、目覚めた頃には忘れている。
「はよーっす」
青地の挨拶は朝から脳天気な響きで満ちている。
まるで寝不足や低血圧と己とは一切関係が無いのだと主張するかのようだ。
「んー……」曖昧に返事をかえす俺。
「お?どした秋野、なんかすげえ眠そうじゃん」
「そうなんだよなあ」
昨日は風呂入って飯食って食後にベッドでまったりと思ったら、いつの間にか眠っていた。
しかも朝まで爆睡して、由利が懸命に起こしてくれなかったら学校へも遅刻していた所だ。
とにかく眠い。
そしてその延長で筋肉が弛緩するような感覚。
足つきもどこかふらついて見えるらしく、「おいおい大丈夫かよ、あまり調子悪いなら家帰って休んだ方がいいぞ?
担任に連絡しといてやるから」と青地が心配をしてくれる。
本当に危なそうな時は真剣になってくれる奴なのだ。
「いや、ギリ大丈夫。
ただやたら眠いってだけで、体の調子がホントに悪いのとは違う感じだから」と答えてシャキシャキ歩いてみせる。
気を抜きさえしなければ問題ないのだ、多分。
「ならいいけどね」
校門の辺りまできて、「でんこちゃん、またビラ配ってたりしてな」と青地が言う。
それを聞いたら何だか変な気分になった。
あれれ。なんだろうな、これ。
なんかこう、もうビラ配ったりして欲しくはないな〜なんていう妙な思いが、頭の隅を掠めていった。
けれど校門の脇にでんこちゃんの姿はない。
「ま、こないだ配ってたばっかだしね。なぁ、秋野」と青地は揶揄するような口調だが、俺の方はそんな事より、ストンと胸の楽になるような感覚で身軽になる。
なんだ、今日はどこか変だな。
やっぱり休んだ方が良かったのか。
「……秋野、お前本当に大丈夫。
そういや昨日でんこちゃんとクラブ活動してたんだっけ?
それでマジ危ない目に遭ったとか、そういうんじゃないよな?」と半分ニヤケつつ目の笑っていない青地だが、実際は危ないどころでない事態に陥っている。
しかしそれを話す訳にもいかないので「いや、意味不明な事ばかり喋ってはいたけど、それでお終いだよ。
俺、適当なとこで帰ったし」と事実を半分ほど打ち明けると、「ふうん。ならいいけどね」と青地も納得する。
ああ、そう言えばあんな事があったから気疲れして、それでこんな眠いのかもな。
と一人合点のいった思いで教室まで行くと何やら騒がしい。
どうも女子の言い争うような声。
何だろう?
「だからさ、どうしてこんな事する訳?ひどくない?」
「理由は貴女が一番良くご存じなんじゃないですか?鬼のくせに」
「お、鬼って……」
扉を引くと、木村さんともう一人……美化委員の大川さんが、言い争いの最中にあった。
「ちょっと、鬼とか訳分かんないんですけど。
その不思議ちゃんキャラ止めて貰えない?ホント腹立つし。
ゴミ箱の中身床にぶちまけてごちゃごちゃかき混ぜるとか、あり得ないでしょ。
皆も迷惑してるんですけど」
「訳の分からない事ではないでしょう、仕掛けをしておいて素知らぬ仕草ですか?
一体何を隠したんですか?赤外線盗聴器?ナノ・偵察機?
どうやったかは知りませんが、証拠を握られる前に隠滅せしめた事こそが何よりの証明です。
メルクリウス皇もお目覚めが近いですからね、手口も大胆になってきたようで大変恐ろしいです」
「……はぁ?」
やりとりの上では木村さんが畳掛けているようにも見えるが、その実、意味不明な言動に大川さんが戸惑っているだけだ。
ポニーテールを大きく揺らして頭を振っている。
『意味が分からない』と言いたげなジェスチャー。
話題の矛先に目をやると確かにゴミ箱入れの戸が開いて、取り出されたゴミ箱は横倒しになって、中の物が一面に散乱している。
話の内容から察するに、ゴミ箱に何かが仕掛けられていると踏んだ木村さんが、ゴミ漁りをした跡らしい。
「おいおい、今日のでんこちゃんキレキレだな」と青地が囁く。
「昨日のクラブ活動が関係あったりしてな?」とからかい口調に言い残して自分の席へと向かうが、冗談ごとではない。
木村さんはさっきメルクリウス皇云々と確かに言った。
昨日の出来事は大いに関係あるのだ。
兎にも角にも、この場は収めなければならない……という気がする。
ので、掃除具入れのロッカーから箒とちり取りを出して散らかったゴミを片づけ始めると、まず
「あーあー、秋野君はいいの。掃除自体は私の仕事だしさ」と大川さんが俺に気付く。
続いて「秋野さん!そんなのは下女のすべき事です、どうかお止め下さい!」と木村さんが叫び、
「下女って……」と大川さんに睨み付けられるが、当の本人は気にもかけない。
ていうか皆の前だと"さん"づけで呼んでくれるのか。
良かった、"メルクリウス皇!"とか言われないで。
「いやまぁ、要はゴミが散らかって邪魔だから片づけないとって事でしょ?
だったらさっさとやっちゃおうぜ」と箒で掃きながら言うと、「ごめんねー」と大川さんも箒を持ち出してきてゴミを片づけ始める。
大した量でないのを二人がかりなのであっという間に終わる。
「ありがとねー」と一言残して席へ戻る彼女。
途中で木村さんを一睨みするのは忘れない。
クラスメイト達はでんこちゃん絡みの騒動に慣れているので、遠巻きにちらと窺う程度で後は普段通りの朝だ。
その中を木村さんが傍までやってきて、小声で「申し訳ありません、メルクリウス皇にあんな真似をさせてしまい……」と囁く。
「いや、いいよあれ位」と答えると「はい……」と所在なさ気に縮こまる彼女。
ここまでしおらしくされると此方が困ってしまう。
「いやホント気にしないで。
でさ、何があったの?仕掛けられたとか言ってたけれど」と囁き声で話を転換させると、
「それが聞いて下さい。
登校と同時、教室内に不審物がないかノイ・チャンネルで毎朝確認をするのですが、今日に限ってゴミ箱内から悪鬼の腐臭が漂う事態、
尋常でないと慌てて探ってみればいつの間にか痕跡は滅せられた後、いわば罠にかけられたようなものなのです」と周囲に漏れない程度の声量でまくし立てる木村さん。
目はすっかり充血して瞳孔は心なしか広く、青地の言うとおり今朝はキレキレらしい。
「罠。そうです、罠なんですよ。
もし大川さんでないとしたら、教室内の他の誰かが仕掛けたに違いないのです。
鬼が、悪鬼が今もこの中に紛れている……!」段々息も荒くなってきた。
まずい。このままだといつ爆発するか分からない。
昨日のクラブ活動で、突然木刀を振り回し始めたのを思い出す。
あそこまでいけばもう発作だ。
そういえば突然泡吹いて倒れた事もあったんだっけ、昔の話だけれど。
「木村さん、落ち着いて。まず深呼吸しよう」と優しく話しかけるが彼女の耳には届かず、
「ああどうしましょう、ひょっとしたら教室内のほとんど、いいえ全員が鬼にすり替わっていたら……それが一斉に襲いかかってきたら……?
まだこんな所で命を落とす訳には……」と今度はガクガクと震え出す。
ちょっと尋常でない怯え方だが、彼女の脳内では今まさに人の皮を被った化け物達に包囲されているのであって、年頃の少女がそれを怖れないはずはない。
本当に命の危険を感じているのだ。
なんてこった、泡だって吹くはずだ。
彼女はこんな世界を毎日生きている。
次第に不憫に思う気持ちが強くなって、「大丈夫だよ木村さん、俺がいるだろ」と言ってしまう。
「メルクリウス皇ってのは、何か知らないけど凄い力が有るんでしょ。
プラーナがどうこうで鬼なんて敵じゃないみたいに言ってたじゃない。
だから大丈夫だよ。今ここで鬼に殺されるなんて事にはならない」そう言い聞かせると、彼女の震えは序々に収まってくる。
「そ……そうですよね……。ああっ、わたしとした事が、なんて醜態っ」と木村さんはパァンと自分で己の頬をはたいて、俺に一礼すると確かな足取りで席へ戻っていく。
それを見届けて俺も自分の席へ着くと、前の椅子に腰掛けた青地が
「何を二人でヒソヒソ話してたんだ?おいおい、もしかしてクラブ活動で親睦深まっちゃったんじゃないの」とまた茶々を入れる。
「な訳ねぇだろ」とあしらうが、有る意味深まってはいるのかもな。
けど互いの認識には絶対の隔たりがある。
それって親睦と呼べるんだろうか?
俺は以前に比べ木村さんの挙動を気にかけるようになった。
こちらから話し掛けにいく事は無いし、幸い向こうもクラスメイトの前では積極的に接してはこないけれど、やはりちらちらと俺を窺ってくるのが分かる。
だから頻繁に目が合って、するとそのままじっと凝視してくるものだから、気まずくなってこちらから逸らしてばかりいる。
そういえば昼休みはいつも教室を空けるけれど、どこで食事を取っているんだろう?
ささいな事が気になった。
「わり、今日は俺ちょっと用事があるから」と青地の誘いを断って、昼休みに一早く弁当片手に教室から出て行く木村さんの後を、さり気なく追った。
出来るだけの距離を空けて気取られないようにする。
鬼が校内に紛れてどうこう言うわりには周囲への警戒が意外と薄いらしく、きょろきょろしたり後ろを振り返ったりはしない。
今は精神状態が落ち着いているという事なのだろうか?
やってきたのは校舎裏の隅、ポンプ小屋のそのまた裏手。
陽の差さない立地で雰囲気も暗く、昼休みとはいえ周囲に人気は全くない。
こんな所まで付いてきてしまったが、いまだ俺に気付く様子はない。
小屋の裏に消えた彼女。
あんな所で昼食を取っているのだろうか。
俺は物音を立てぬようゆっくりポンプ小屋へと近づいていくが、次第に声が漏れてくる。
無論木村さんの独り言という事になる。
「……ナハツ、ナハツ。聞こえますか。
ええ。今朝の事です。
分かるのですか。誰が仕掛けたか。
えっ。青地っ。
そう。あの男やはり、素知らぬ顔をしてとんだ食わせ物でしたか。
メルクリウス皇のお側にいるのも思惑あっての事でしょうか。
当然裕一様がメルクリウス皇である事に気付いていると見て、こちらも動くべきですね」
小屋の角まで来た。
そうっと顔を出して裏手を覗くと、コンクリートの段差に腰掛けた木村さんが"痙攣"していた。
全身をガクガクさせながら独り言は続く。
「ええ。私もご注意下さいませと申し上げはしたのですが、メルクリウス皇自身は無頓着の様子。
よほど上手く取り入っているのでしょう、よもや鬼とは考えもせず付き合うなど危険極まりないのですが。
はい。そうですね、もう一度。
気になる事と言えば、メルクリウス皇の人身における妹さんの存在ですが。
どうも嫌な感じですね。
金鬼龍が乗り移っているのならば、むしろその妹こそが怪し……」ジャリッ。
しまった。
慌てて身を引く。
足下の小石に気付かず、うっかり踏みにじって音を立ててしまった。
暫しの沈黙。
「裕一様?」あれ。
見えてたのか?見事言い当てられ、頭を掻きながら出て行く俺。
「ごめん、こそこそ盗み聞きするようなつもりは無かったんだけど……」木村さんはもう全身を震わせてはいなかった。
弁当の包みを膝の上に載せて、俺の顔を見つめてくる。
そこに咎めるような色は無い。
「強いプラーナを感じましたから。ナハツとの会話を聞いていたのですね。
いずれ説明しようと思っていた事ですから、気負われる事はありません」
「ナハツ?」俺は聞き返す。
「人魂のようなものでして」木村さんは右前30度ほど、誰もいない空間に目をやって
「いえ、使い魔と言った方がイメージとしては近いのでしょうか。
元は私のプラーナから分裂したもので、完全に別の人格を持ち、自律した行動をとる事ができるのです。
但し静かで人気無い場所で、精神を極めて強く集中させないと意志の疎通が図れないのですが。
今朝の違和感の出所を探らせていたところ」こちらを向く。
「どうやら根源はあの男――青地にあったようなのです。
鬼も鬼、悪鬼どころか修羅の域に達しているようです。
裕一様。どうかお願いです、あの男にはくれぐれもご注意下さい。
これ以上近寄るべきではないのです」
そういえばさっき青地がどうこう言ってたな。
とうとう修羅に認定か。ある意味哀れな男だ。
「分かったよ。あいつの言動には注意を払うようにする」と適当にあしらって、一番気になっていた事を持ち出す。
「由利にも……妹にも警戒しなくっちゃいけないのか?」
龍が乗り移っただとか、物騒な話だった。
そういえば初めて妹が話題に上った時、木村さんは何か嫌な物を感じると口にしているのだ。
それが今でも続いていたのだろうか。
「……裕一様。
大変申し上げにくいのですが、ナハツと私の考えを統合してみると、妹さんは既に乗っ取られているというのが結論なのです」それって結局木村さん一人の意見だよな。
まあいい。
「そうなの」
由利は龍に乗り移られている、と。
俺の身辺周りはどうやら大変な事になっているらしい。
修羅に龍か。ここまでくると正直笑いがこみ上げてもくるが、しかし木村さんにとっては笑い事で済まされないのだ。
「それって要は俺の身が、命が危ないって意味なのかな?」
「今すぐの危険が差し迫っているという訳ではないかも知れません。
青地修羅の存在は裕一様の覚醒を妨げるためでしょうが、金鬼龍――いえ、それに乗っ取られた妹さんの目的は、むしろ覚醒後の裕 一様の抑制ではないでしょうか。
そう考えると身近な肉親を選んだのも納得がいきます」青地修羅て。
まあそれはともかく、これで由利も木村さんの敵として完全に認定されてしまった。
「ここ最近、裕一様のご両親に不審な点などは見られませんでしたか?」
「いや、俺の両親は仕事で海外行っててね、しばらく帰ってこない。
だから家のことは妹に任せっきりなんだけど……そればっかりじゃ悪いから、俺もたまに手伝ったりしてる訳。
昨日も家事を手伝いたいからって言って帰ったでしょ?」あの後、木村さんは一人きりの部室でいつまでくすくす笑いを続けていたのだろう?
「そうでしたか……通りで、親でなく妹さんが選ばれた訳です。
裕一様、よく聞いて下さい。
妹さんは鬼ども率いる多国籍軍の差し向けたスパイです。
いえ、この言い方は正しくないですね。
要は鬼の親玉が直接由利さんを乗っ取り、今まで通り妹の振りをしているだけなのです!」段々と声を荒げていく彼女。
おうおう、いよいよ多国籍軍のおでましだ。
だから話に軍事チックな所が散見された訳だ。
「メルクリウス皇!私からのお願いです、食事や水飲みの際には自白剤や毒が盛られていないかよくチェックして下さい。
鬼どもの常習手段です。
食器に塗られている場合もあります。
私などは毎日食事前に食器を念入りに洗い、食べ物、特に食後のコーヒー等に毒を盛られていないか気を配っています。鬼が家族と 入れ替わっていたから……」
そこまで言って急速に声を萎ませる木村さん。
身内が鬼に乗っ取られた悲しみに暮れているようだ。
精気の無いその表情は本物だ。
だって彼女の家族はもうこの世に存在しない、事になっている。
自分が天涯孤独になった日を想像する。
絶望の世界。
彼女はその直中にいる。
俺は優しく木村さんの肩を抱いてあげた。
例えその全てが妄想であろうと、悲しみは本物だ。
分かち合ってあげるべきなのだろうか?
「木村さん」「今は偵察機も盗聴器もありません。是非水称姫とおよび下さい、メルクリウス皇」そういってしなだれかかってくる。
「……じゃあ、水称姫。
何か俺も君も大変な事になってるみたいだけど……そもそも君、いや俺達はなんだって、鬼とかいう連中に狙われるはめになったんだ?」
「それは話せば長くなるのですが……メルクリウス皇の覚醒もいよいよ近いようですし、お話ししましょう」といって身を離し、ツインテールを解く木村さん。
それに意味があるのかは分からないが、不意に吹いた風で髪がたなびいてさらさらと美しい。
毛の先が俺の鼻先を掠めたので思わず目をつぶり、そして開くと目の前に彼女の真剣な顔がある。
「そもそもこの地球に存在する知的生命体は、人と、そこから進化した者達との二通りに分けられるのです。
その進化した物達をテネオと呼ぶのですが、人の真実とは性悪説にあり、つまりその影響を受けたテネオ達も悪しき存在――鬼へとその身を堕としていったのです。
無論それに抗い、善の力を身に宿した者達もありました。
そして紀元前八千年頃、テネオ達の、人をも巻き込んだ激しい戦いがありました」
ずいぶんと古い話だ。
まだ人類は文明を築いていないじゃないか……イェリコやテル・アブ・フレイラの時代か?
だがそれはこの話にとってささいな事だ。
「三百年に渡る戦いの後、勝利を収めたのは鬼達の側でした。
誑かしの手腕に長けた金鬼龍に唆され、人達も鬼の側へと回ったのです。
ですがテネオの全てが悪に染まらなかったのと同じように、人にも鬼どもを拒み善へと与する者が少数おりました。
善のテネオは散る直前、そうした人々の中に種を残しました。
種は長い年月を経て、ある日テネオとしての力と共に覚醒を迎えるのです。
再び鬼どもと相まみえるために。
それがわたくしこと水称姫であり、裕一様ことメルクリウス皇なのです」木村さんはそう言ってにっこり俺に微笑む。
俺の方はちょっと腰が引けている。それでもまだ話は続く。
「鬼どもは仮初めの勝利を手にした後、人の集団を操り、社会を絶望と虚無と争いと憎しみで満たし始めました。
今日の文明はそれらの上に成り立っているのです。
無論鬼どもが現在拠点を置くのは、世界闘争の象徴である多国籍軍です。
上層部の全ては鬼で占められ、善のテネオの覚醒がいつ起こるかと日夜、睨みを聞かせているのです」ああ、何となく話が繋がった。
それでナノ偵察機とやらが校内に飛んできた事になったり、善のテネオの覚醒者とやらを探し出すためあんなビラを撒いたりしてたんだな、木村さんは。
でも。
「水称姫。あんな風に堂々とビラを配ったりしたら、自分は覚醒した善のテネオ?なんだと鬼に伝えて回るようなもんじゃないの?」俺は率直な疑問を口にする。
固まる木村さんこと水称姫。
アレ?暫しの空白。
「……そうして防衛庁は多国籍軍の軍門に下りました」今のは無かった事になったらしい。
「昨年12/24の後楽園では、善のテネオとして覚醒した成人女性が直後に事故を装って殺されました。
校内にも鬼どものスパイが散見され始めました。
はす向かいの橋野家は鬼の一家へとすり替わりました。
そしてついに私の家族は鬼に喰われ、その皮を被った偽の家族として身内ごっこを演じているに至るのです!」最後の方は怒号に近かった。
びっくりしてきょろきょろ周囲を窺ってしまうが、幸い人影はない。
「そ、そっか。よく分かった、ありがとう」とお礼を言って取りあえず宥めてみる。
「いえ……」はーはーと肩で息をする彼女。
色々あるんだなぁ。そんなにも重い物が、彼女の双肩に概念上はのし掛かっているのだ。
俺はその重みも分かち合うようにして再び肩を抱いてあげる。
いいのかなオレ。話の内容自体はどん引きもどん引きなんだけど。
でも体がこうしろと言っている。
次第に呼吸の整っていく彼女。
「メルクリウス皇……」そう言って俺に顔を向け、目をつぶり、唇を差し出してくる。
えっ。これって、アレだよな。
儀式だとかそういうんじゃなくて、本物の、キス。
どうしよう?と迷う前に体が動いた。
そっと、自分の唇を彼女へと重ね合わせる。
また風が吹いて、長い髪が俺の頬をくすぐった。
それでも唇は離れない。
暫くして、俺の方から口を離した。
そのまま見つめ合う二人。
「……あっ、そろそろそのお弁当食べないと、時間なくなっちゃうね」ヘタレな俺。
どぎまぎする胸を押さえつけながら購買にでも行くかと腰を持ち上げかけると、「あの……お弁当、ここで食べていかれませんか?
私などの作った物で申し訳ございませんが」と木村さんが誘いを掛けてくる。
なんだって。
美少女の手作りお弁当。
まるで夢のようなシチュエーションだが、「ありがたいけど、そうすると水称姫の分が足りなくなっちゃうでしょ」と正直に返す。
すると「大丈夫です、いつも作りすぎて残しちゃうから……あ、でもメルクリウス皇の満足いく分量と味にはほど遠いかも知れませんが」「いやいや」再びコンクリートに腰を下ろす俺。
「有り難くいただきます」
木村さんの料理は純粋に美味しかった。
由利も最低限の腕前は持ち合わせているのだが、これと比べればどうしても見劣りしてしまう。
旨いという言葉が素直に口をついて出てくる。
その度、照れたように縮こまる木村さん。
普通に女の子らしい所もあるんだ。
当たり前か。
夕食を終えて、風呂に入り、課題もすませて、さぁ息抜きと本棚に向かい合った所でノックの音。
「いいぞ、何?」半開きの戸から由利のふわふわした癖毛が覗く。
「あの、紅茶を入れたから兄さんもどうかなって」「おっサンキュ」丁度読書でもしようかと思っていた所だ。
本を読むと片手間に飲み物が欲しくなる。
「はい、どうぞ」由利が机のそばへ向かい、トレイからカップを一つ下ろす。
「冷めない内に飲んでね」「あいよ」自分の分のカップは載せたまま、部屋を出て行く由利。
戸がパタ……と静かに閉まった。
俺は戸棚から読みかけの小説を持ち出し、椅子に腰掛ける。
目前には由利の用意してくれた紅茶。
『特に食後のコーヒー等に毒を盛られていないか気を配っています』
はは、まさかな。
しおりを指で挟み、くるくると弄んでから、俺は紅茶をすすり始める。
《続く》
相変わらずでんこのキレ味がたまらん
この危うさから目を離せないぜ
これは恋い、それとも電波?
GJ!!
皇は姫君に理解を示し始めたようで。これからが楽しみだな。
可愛い子だなぁ
GJ
宇宙を感じた
でんこちゃん、途中から半端に読んでみただけだが
普通に読み物として面白いなw
電波系な女の子か…よくこんな内容の文が書けるもんだと感心した
ほ
67 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 11:04:52 ID:7nk642Tg
楽しみにしてます!!
68 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/09(日) 23:28:20 ID:uJJzfeGO
wktk
電波☆保守
70 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 01:28:34 ID:2yMlPxMp
わっふるわっふる
軍事系電波…
革命家の生まれ変わりと自称し、戦死した同志として主人公を追い回す。
服の中には自作の爆弾?らしき物が…
鞄の中にはボウガンと【世界陰謀機関に対する抵抗】という自作の本が…
火炎焼夷弾制作キットと言う物が家、机の中にしまわれており、
冷麺のタレのような袋に入ったガソリンとハンカチ、投擲容器がプラケースに入っている…
友人の一人を工作員認定し殺害しようとする。それを阻止しようとする主人公
細木数子「あなたと私は前世で夫婦だったの!だから結婚しましょう!」
73 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 19:14:29 ID:H++iXpsh
女の子「この世界は世界統一機構によって管理され…」
男「なら失業者がでるのは奴等の管理不十分って事じゃね?」
女の子B「旅客機墜落は米軍の新兵器HAARPによる乱気流だ!」
男「ただの乱気流か整備不良じゃね?」
女の子C「あんたも来るのよ!防護キャンプ。スカラー波攻撃でダメージ受けてるでしょ!」
男「白いキャンプなんて目立つ目標に居たらかえって狙われるわ(公安とかに)。」
A.B.C「「「私は(アタシは)貴方(アンタ)の事が好きだから言ってるんですよ(のよ)!」」」
男「三人から告白!?まともな女の子は寄ってこないのか…。」
>>73 男はまともなのに周りにはなぜだかおかしな女達がいっぱい
なんかいいなあ
書いてる私の頭が電波
朝起きて、目が覚めて、パン食べようとして、パンがない。
仕方ない。お隣の幼馴染の家までナオユキや!
「おはようございます逆早、食パン一切れと言わず一斤全部寄越せ」
「…」
何だ起きていないようだ。じゃ、遠慮なく――って台所にねーな。ん? 枕元に?
「うし、じゃあちょっくら頂いて行きまする」
「…ム?」
おっと手を出しかけたところで不運にも目が覚めたか。
「…オレ、ハラヘッタ…オマエ、マルカジリ」
「何? 腹の虫が煩くて聞こえない」
ついでにジャムとマーガリン、あ、卵とベーコンも美味しそうだしこれも持って行こう。
と、背後から生温い息が、俺を――。
「AAUGHHHH!!」
生温い自分の血溜まりに浸かるのはこれが何度目だろうか。
「ごめんね。食い殺すところだった」
「うん、既に重傷」
「ま、自宅で猟奇殺人ってのも退屈な日常にはドロップキックみたいな何か新鮮なものがあって良いかもしれないけど以下略」
「早よ助けんかいワレ」
そう言うと、目の前で指一本立てる。
「代わりに真っ当な形でオマエを食わせろ」
所謂性的な意味で、って奴だな。
仕方ない。意識が遠退いて今にも楽になれそうだが死ぬと美味しい朝ごは〜んが食べられない。
「OK」
「よし、じゃ舐め舐めして傷口塞ぐよ」
「で、話は変わるが朝食食わしてーな」
動けないし貧血でぼんやらぐりぐらするけど、まずはそれ。
一に朝食二に昼食、三、四が間食で五に夕食。ついでに夜食に無遊食。めしめしー、かんかん。
「仕方ないなぁ。急遽精力を付けてもらうべく、キャトってきた馬を絞める」
幼馴染の家は昔から屠殺場な一面があるのも頷ける。
「……!」
断末魔がこだまする。いや〜素敵な朝の光景だね。コケコッコーじゃ味気ないってか。
そしてホロリと涙を流すのだ。いただきます、と感謝して頂こうではないか。
中間は省いて、馬刺しとレタス・トマトを挟んだサンドイッチの完成です。
「…美味い。やっぱり逆早の家で食べる朝食は格別だね」
「分かったらオレの物勝手に持ってかないようにしましょう」
またまた〜、そんな当たり前のこと言っちゃって。
さて、お腹も膨れたし帰るかなっと。何かお土産でも持って帰って、ついでに――。
「ゴルァ」
あ、何か忘れてると思ったら、また野生に戻りかけてる。
「せっかく満腹で幸せ気分なのに、運動は良くない。まずは二度寝しよう。そうだ、ベッド借りて良い? あ、その前にオレンジジュースでも飲ませて――」
「クワセロ……フシュルルル」
何か人間形態を保てなくなりそうなので、ここはとりあえずキスして宥める。
「……はふ、ん」
すると通常状態通り越して、精神年齢まで一気に落ちてしまうこの不思議。
「きすだいすき〜っ!」
い〜っ。
では、さいなら。
「あれ? ねーどこいくの?」
「用事も済んだしとりあえず学校に行って、プールで釣りでもしようかと」
「うっ…う…うわ〜ん!」
と、いきなり室内型UFOにキャトられたかと思うと、逆早のベッドの上に投げ出された。
「つづき、しないと…ユルサナ…イ」
どうやら逃げ場はなさそうなので、諦めて身を捧げることにしました。
上に四つん這いになられて、既にあっちこっちそっちと舐められているんだもの。
「うん、おいし〜よっ」
朝食を求めに来る度にこうして犯されるのって、割に合わないよなあ。せめて三食保障はあっても……。
でも段々と体が、幼馴染のそれを求め始める。意識も徐々に、どうでも良くなってきた。
それどころか、近くで見ると愛らしく感じてしまう。こうして求めてくる時って、フェロモンでも出してるのか?
「わ〜い、う・い・ん・な・あーっ!!」
「あーあすっかり大きくなって……」
「はむ――む…う、ぅ」
「うっ…」
気持ちが良くて、湧き上がる熱さ。死に掛けていたとは思えないほど感じている、盛りのついたオスである。
やがて先から発せられた精液を、逆早は美味しそうに飲み干す。ああ、力が奪われていく。
そうか! 俺は家畜なんだ。何という弱肉強食の定め。俺はピラミッドの下にいる。
「はぁ…はぁ…、もう良いでしょ。少し休ませてくれい」
「だーめ。ちゃんと、あいしてくれなきゃいや」
愛とは食えるのか? そんな疑問ももはや、本能には抗えない。
ほい、キス。それも濃厚な奴をね。
女の子の味なんて特別美味しいとは思わないし、腹の足しにもならんがさ。
「ぷはっ…うれ、しい」
抱き着かれて、いよいよ変になる。こんな奴でも、俺は好きだってことだと、思って良いのか?
「さいごにもういちどね…したにちょうだい」
「あ…はん……あっ」
「逆早…ぁ」
「な…に、ぃっ…ぅんっ…!」
「とり…あえず、好きってこと、に…しとく」
「あぁ…んっ…うれ…し、ぃ」
「…くっ…いけ、そ…うっ――!」
「だいすき――ぃぃっ!!」
そして逆早は俺を美味しそうに食べて、いつも満足する。
幸せって何なんだろうね。ただ、カオスで刹那的で、ショッキングピンクかつヨコハマタイヤの顔が何重にも連なって笑っているような、そんな不思議で狂気な物語を、俺は…片手に彼女の温もりを感じた時に、少しだけ…忘れることが出来るような気がする。
だけどやっぱり食事が好き。またお腹が空いてきた。
逆早が寝ている隙に食パン拝借して、数種類の蛍光カラーなジャムを乗せて食べようかな。
ちなみに今日は学校休む。だって疲れたし。
終わりですと共に、しばらく寝ます
GJ!
なんか男も電波っぽい?
GJ そこはかとなく狂った世界がイイ。
新総理も電波の女が好き
80 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 23:14:45 ID:411Vz81u
電波age
「君が、聖くんか。いやなに、心配はいらない。私は、板橋。板橋、聖。ふふっ、同じ名前だね」
朝から変人に絡まれる。学校に登校するなり変なしゃべり方の……上級生
(紺のタイは三年生)に絡まれ……
「誰ですかあなたは迷惑です聖は私とはたはためくりに忙しいんです」
一息に言い切るもう一人の変人。御倉秀が喧嘩をふっかけた
「いきなり喧嘩を始めないでください、秀。それから…板橋先輩ですか?何か御用ですか?」
「いやいや、同じ名前なんて。珍しい、後輩君が。訳のわからない、女に嫌
がらせを。うけている、ときいてね」
「たしかに今日は訳のわからない女に嫌がらせを受けていますね邪魔だから
早く消えてください」
はたはためくりも結構迷惑です。つーかはたはためくりってなんですかね
「自覚、症状がないんだな。かわいそうに、早くアンコを詰める作業に戻れ。」
なんですかそれ。しかし周りの視線が痛い、本日は倍ですからね。秀と違う
学校になったと思っていたら彼女、転入までしましたよ
「そもそも今は授業中だと知っているか?矢原」
「なぜ私だけが非難を浴びるのか……そう考えた事もありましたよ。僉白川先生」
席をたって教室を出る。今日も電波係の仕事は沢山ありそうだった。
電波だな。
つーか電波係って何だ?
>>82 ほら、あれだよ
そう、クラスで飼ってる金魚に餌をあげる的なあれだよ
なるほどー
「先輩、結婚して下さい。」
「何だ?脈略も無く。マジか?」
「マジです。あなたとなら戦えます!」
「民法上待て…というか何と戦うんだ5文字以上簡潔に述べよ。今すぐに」
「世界の搾取者アメリカと。」
「そういう誘いは原理主義者にしてくれ。しがないいち高校生にどうしろと言うんだ。」
「先輩、式は和洋どっちにします?式中に襲撃を受けても困るから慎重に探しましょう!」
「何に襲われるのか知らんが…というか話を聞けよ!最近の流行りは“電波少女”か?」
「先輩、電話やメールは傍受されています、だから手紙で式の日付を。」
「目がヤバい、言ってる事意味不明、無視スキル持ちの嫁なんぞ要らん。」
86 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 00:34:54 ID:gJldQrle
意味不明ワールド保守
毒☆保守★デムパビビビビビビビ
でんこちゃん待ち
ポッポの奥さん、結構可愛いよね
90 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 21:44:12 ID:Gw70hUMl
あげ
お!こんなスレあったんだね、
最初からここまで一気に読んじゃったよ。
電波な女の子ってどんな子のことを言うんだろう、
何か自分自身の妄想の世界を持っている感じなのかな、スレを読んだ限りだと。
スレを読んでもっとこういうお話を読んでみたくなったんだけど、
みんなは電波な女の子の例になるようなオススメの小説とか漫画とかあるかな?
>>91 『新興宗教オモイデ教』その他大槻ケンヂ作品などは?
そしてでんこちゃん待ち
>>92 早速読んでみたよ、オモイデ教。
表紙や題名を見て複雑なものを想像してたけど、とっても読みやすかった。
おかしな人がいっぱい出てくるし暗い感じの場面もあるけどスッキリ読めたや。
そしてこのお話に出てくる女の子は確かに電波な女の子だった!
他の作品にも興味が湧いたから読んでみる、
紹介してくれてありがとう。
俺の名前は香坂 知也(こうさか ともや)21歳血液型はA型だ。
って、そんな事はどうでもいい。
1ヶ月ほど前だ。友達の紹介で女の子と付き合う事になった。
肩まである髪をヘアゴムでまとめた、おとなしめの子だった。
色が白く、胸やお尻はけっこうある。
俺の好みだ……と付き合って2ヶ月になる。
徐々に明らかになるその女の子の本性。
俺は実はとんでもない女の子と付き合ってしまったらようだ。
そいつの名前は、神谷朋子(かみや ともこ)
「おい、トモー!!入るぞ!」
ガチャッと合鍵でそいつの下宿であるアパートの部屋に入る。
中はカーテンが張られ、昼間だというのに暗い。
しかし、そこにパソコンのディスプレイに向かいカチャカチャと
クリックを繰り返している物体がいる。耳にはヘッドフォン。
「おーい、おい!トモ、聞いてんのか!」
「…………えへへ、えへへ、良いではないか、良いではないか〜」
クリック、クリック、クリック………
「…………」
俺は無言で手近にあったメガホンでそいつを殴った。
「痛っ!?つつ〜…あー何、ともにゃんじゃないの。ノックぐらいしなさいよ。」
「ヘッドフォンしてんのにノックして聞こえるのか!?昼間から部屋に閉じこもって
ネットばっかしゃがって!それから変なあだ名で呼ぶな!部屋が暗い!
カーテン開けろ!掃除しろ!ゴミ捨てろ!」
「ふ、甘いわね。ネットの海は広大よ……ってカーテン開けてはダメ!
私の身体が溶解してしまうわ!やめてお願い!」
「お前はアイスクリームか!」
「違うわ、私はヴァンパイア、永遠の刻(とき)を生きるヴァンパイアなのよ!」
「うるさいっての」
俺はバッとカーテンを開けた。
「ぎゃああっ!溶ける、溶けるから!眩しいー!」
目を隠し、じたばたじたばたする朋子。
こんな感じか?
>>94 ともやとともこ、ともともコンビだね。
うへへ、良いではないか、良いではないか〜。
合鍵を持っている位だから上手くいっているのかな、
それとも何か別の理由があるのかな、
そして彼女はどうして日光が苦手なんだろう、気になる!
96 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 22:29:23 ID:IHT1n0R4
あげ
97 :
初ですベタです下手糞です:2009/10/10(土) 14:01:43 ID:L2vFLwUq
世の中には、実際不思議な事があるものだ。
たとえば俺の幼馴染の事だ……
「おーい!!翼ー!!!」
俺は毎朝幼馴染の居る場所へ向かう。
そして学校へ行く時間だという事を伝えるのだ。
因みに彼女は木の上で読書中。まったくガキか。
「・・・・・・ぁ」
「あ、じゃない!遅刻すんぞ」
「うい」
「ジジイかよ、とっとと降りて来いよー」
俺はそのまま通学路に入る。因みにアイツは制服で準備万全。
なんだかわからんがああやって毎朝公園の樹齢100年だがなんだがの木に、
朝早く起きてきて朝飯も木の上で済ませる。そして俺が行く。
斉藤翼、それがアイツの、幼馴染……というか、妹みたいなもんだが……
まぁともかくアイツは昔っからヘンテコな奴だった。
深夜に夜空を見て泣いたり、なんか猫と会話してるっぽい感じな事してるし。
まぁ他にも数え切れないほどの珍行動があるのだが……頭が痛いのでやめておこう。
「ちゃんと朝飯食ったか?」
「うん」
「制服は乱れてないか?」
「うん」
「嘘着くな、襟がバラバラじゃねぇーか!」
「うぅ……」
まぁ、このように……俺が日々翼のお節介を焼いているわけである。
節介焼なわけではないのだが、なぜか翼を見ているとほおっておけない。
これは今も昔も変わらずだ。俺が物心着いた頃には翼の面倒を見ていた。
毎日アホな事をして良く危険に出くわしていたのでそれが定着してしまったのだろう。
「んじゃ、俺はこっちだから」
「おう」
「敬礼しなくても良い、それとちゃんと授業は受けるように」
「うい」
俺は軽く手を翳して自分の下駄箱へ向かった。
翼とは同い年だ、だがクラスは違った。まぁ委員会は同じ図書なのだが。
翼は学校の七不思議の一つとされる快挙?を成し遂げた。
『成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、なのに理解不能の行動をする謎の美少女』
まぁあれだ。ゲームとかでよくある感じに仕立て上げられたのだ。新聞部に。
うちの校風も相まって翼の事は入学前の生徒にすら耳に入る有名ぶりだった。
「あ、翼ちゃんオハヨー」
「おうふ」
まぁ……いじめを受けていないのがよかったな。
その代わり七不思議にされちまったが。
まぁそんな事もあって、翼は男女から共に人気がある。
この前も図書委員の仕事中に俺の目の前で告白されやがった。
だが……
「オマエハイッタイナニヲイッテイルンダ」
とワザとらしいカタコトで相手を振ってしまうという。
これじゃぁ相手が可愛そうだ。聞くと興味が無いらしい。
『別に結婚しない相手と曖昧な関係になっても(ry』
長いので以下省略。時々哲学染みた事を語りだすのも翼の……個性?
そういう事にしておこう。成績もよくてスポーツも出来る良い子なんだから。
お兄さん。デキの良い幼馴染で感動します。
とまぁ自分語りをしていると必ずに限って邪魔が入るわけで……
「なぁ優一、頼むからお前の幼馴染紹介してくれよぉ〜頼むッ!」
……いわゆるクラスのアホだ。必ずどっかにいるタイプのな。
コイツとはこの学校からだが悪い奴じゃない。だが女漁りがとんでもない奴だ。
顔がイケメンなだけあって日々女の子をとっかえとっかえだ。
「残念だがてめぇのような不届き者には紹介できねぇよ、それに会ってもボコされるだけだ主に精神面で」
「んなことぁ会ってみないとわかんねえよ!学校一!それもアイドルなんか目じゃないんだぜ!?」
「だからどうしたってんだ」
98 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 14:31:25 ID:L2vFLwUq
「俺はな!世界中の女の子と仲良くなるのが夢なんだZE!!」
「そんなどこぞの○ケモンマスター目指す!みたいな感じに言っても無駄」
「そんなぁ……理知的な親愛なる親友に頼んでるんだよぉ〜!」
コイツはコイツで過剰にスキンシップを取ってくる。本人に自覚はないのだろうか。
顔がグィグィと近づいてきてコイツの吐息で俺のメガネが曇る。まぁいい奴なんだろう。
「だがな、浩二」
「はい?」
「お前、もう少し女子と真面目に付き合ったらどうなんだ」
「別に手ぇ〜出してないし、ちょこっとお手手つないでるくらいだぜ?」
「ぁ〜、そうなのか、今日はじめて知ったぞ」
「あのね、こう見えて俺は硬派なの」
「……信じられん」
俺はズレていたメガネを薬指で元に戻して小説の世界をと舞い戻る。
先程から読んでいる俺の小説。実はこれは翼に進められた物だ。
『凄く面白いから優君も気に入るかと』
『……英雄物か』
『コクリ』
『わぁった、読むよ』
というわけで読んでいるわけだが。
どうやらこの物語は主人公は高校生で、謎の発光体と接触、凄い力を持つ。
まぁその後は敵を倒してハッピーエンドだ。よく分からん説明だろうがそんな感じだ。
主人公には妻と子供が居て、バケモノから地球を家族を守るために戦うという。
……俺のような小心者には到底出来ない行為だな。
「ん?何読んでんの?……へぇ、俺こういう熱い系大好きなんだぜ」
「ほぉー、以外だ」
「なんでだよ」
「お前の場合は、失恋空とかケータイ小説とか読んでそうだったんだがな」
「チッチッ、実は私、特撮物が大好きなんですよ、あの勇士!今になって分かるかっこよさ!」
とまぁ、浩二が勝手に語りだしたので俺はいつもどおりに授業を受ける準備をして、
授業を受け、自作の弁当を(無論翼には渡してある)を食べ、放課後を迎えたのである。
「……もう放課後か、図書室行かないとな」
俺が周囲の物を適当にバックに突っ込んで図書室へと向かった。
今日は無駄に雲が無くて快晴だったせいか夕日が眩しい。
「メガネやめてコンタクトにしようかな……やっぱやめるか」
俺が適当にちょっとした身の回りの事を考えてぶらぶらと図書室へと着いた……のだが。
どうやら見てはいけない物を見てしまったようだ。
「あ、あの!お、俺!先輩に助けられた時から先輩の事が好きになりました!!」
「……」
どうやら男の方は今年入学した一年坊らしい。まだ少年感あふれる容姿をしている。
一方翼は……本を読んでいた。まるで聞いていないかのような態度で。
おいおい、幾らなんでもその態度は……
「お願いします!俺と付き合ってください!!!」
「……メリット」
「は?」
「は?じゃない、貴方と曖昧な関係になったとして私にどんなメリットが生まれるの」
「え……え?」
……始まった。この哲学の時間が相手をもっとも傷つけてしまう。
過去に何度も後輩先輩達が翼の前に倒れていった。皆暗い顔して口々にこう言ったんだ。
『斉藤翼超えは……不可能だ』
……あぁ、今まで散って行った同胞に敬意を表さねばならない。
そしてあの幼い面影を残すイケメン君も同じ土の中に還る事に……?
「め、メリットはお互い愛し合える事です!!!」
「……私、貴方好きじゃない」
「こ、これから好きにしてみせます!!」
「そんな不確定な要素に大切な青春時代を費やしたくない」
「……っく、それでもとにかく好きなんです!!!」
「耳が痛いわ」
「……ぅっ」
おいおい、男の方が食い付くけどたじたじじゃねぇか……
とりあえず応援は出来ないぜイケメン君。何故かって?知るか。気に入らんだけだ。
99 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 14:56:29 ID:L2vFLwUq
そこでふと思い返す。
ファンタジー世界とは言え未成年婚で子供有りってどうなのか。
うーむ。一部には受けるだろうな。まぁ俺はどうでもいいのだが。
そんなヘンテコな理屈をふと思い返して我に返った後は、全てが終わっていた。
「俺!!絶対あきらめませんから!!!」
と、ありきなセリフを言い捨て凄い勢いで走り去って行った。
「……」
相変わらず本のページを窓際でペラペラと捲る翼さん。
あぁ、なんて変わらない表情。ダメージを変えないただ一つの表情。
夕日とゆっくりと吹くそよ風に長い髪が靡いて絵のようにも見える。
そんな美しい翼さんですが――
「ちわーっす」
「見てた」
「え?」
「そこ、そこで見てた」
「……なっ!?」
時々恐ろしいまでの洞察力を発揮します。怖いです。
本当に人なのか疑う時も小さい頃にはありました……
「……」
「……」
俺は黙りこくって今日の仕事を黙々とこなす。
俺があの現場を見ていたとなると気まずさが更に重くなる。
うぅ……どうしたもんだろうか。
「……」
ところどころチラチラと様子を伺ってみるもその視線はずっと本の連なる文を見ていて、
俺には見向きもしない。それどころか、機械のようにも思える無駄の無い動作でペラペラとページを捲る。
なんていうか……居辛い……非常に居辛い……。
俺がため息を吐こうと思った時、突然翼が口を開いた。
俺は一瞬何を言ってるのか理解出来なかった。
だって仕方ない。翼の口調は早くて、なんかの呪文を唱えた見たいな風にしか聞こえなかったんだから。
「……え?」
「……」
その日、翼はまったく喋らなかった。
というか、放課後一緒に帰ろうと誘ったのだがいつのまにか消えていた。
これも良くある事で、翼は神出鬼没なのだ。ふと突然現れる。
「……本当に変な奴だ」
実に変である。俺の前から消えている頃の話はまったくしてくれないのだ。
まぁ俺も知ろうとも思わないが……多分乙女?の悩み?なのだろうか。
俺はその日、家に帰った。俺の家には俺しかいない。まぁ所謂一人暮らしである。
父と母は突然事業に成功して、海外に飛んでいってしまった。
だが何も残していかなかったわけでなかった。有り余る金を残していた。
メモには『優ちゃんは確りしてるから頼むわね、後、翼ちゃんとも仲良くやりなさい』
なんて置手紙を残してすっ飛んで行ってしまった。まぁ、この年で夢を追いかける親も悪くない。
決して悪い父母ではないのだ。息子としては是非海外でもぶっ飛んだ事をして欲しいものだ。
こうして俺の一日はふけて行った。いつもと同じように……行くはずだった。
俺が洗濯物を畳んでいた時の事だ。電話が突然鳴った。
「んだよこんな時間に……はい、二階堂ですが……」
『あ、優ちゃん!?翼そっちに居る!?』
「あ、おばさん……え?居ませんけど……帰ってきてないんですか?」
『えぇ、あの子まだ帰ってこないのよ……もう心配で心配で』
『ほら、最近この辺りで不審者が出たって……』
「はぁ!?」
おばさん……まぁ翼のお母さんなわけだが、
いつもいつもトロ〜ンとした表情と声でまったく緊張感を覚えないのだが。
実に嫌な予感しかしない。これは家事なんてやってる場合ではない。
「俺が探しに行きますんで!!!」
『あ、優ちゃ――?』
俺は乱暴に電話を切って世界最速の○ルト顔負けのフォームで家を飛び出した。
体力には土日毎朝ジョギングしているので自信はあったんだが……
「ハァ……ハァ……どこ探してもいねーよ……」
100 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 15:18:41 ID:L2vFLwUq
この辺りは意外と田舎な方で、暗くなると途端に見えづらくなる。
幸い満天の星空が薄くだが照らしているので見えなくは無い。
「夜に大声出すのも……いやいや、そんな事言ってる場合じゃねぇ」
「翼ァー!!!どこだァー!!!そうだ警察!!!」
俺は近くの交番に行った。近かったし何より昔から世話になっている(主に翼が迷子的な意味で)
「あ、あの!!」
「ん?あぁ君か、どうしたんだい」
「翼、居なくなったんです!!!」
「おぉ、何年ぶりかな」
「んな事言ってる場合じゃないでしょ!?」
「まぁまぁ、落ち着きなさい」
「何を!!だって不審者――」
「不審者は、とっくに捕まってるんだよ」
「は……?」
警察さんのお話だと、ついこの間に捕まえて指導したそうだ。
どうやら外国人の人が道に迷っていただけらしい。
英語で町の人に只管道を聞いていて、それが色々あって不審者扱いになったらしい。
……俺は無駄に必死になっていた。いや、だからって安心は出来なかった。
「とにかく私は森の方を探すから君は川の方に行きなさい」
「はい!!」
こうしてずいぶん久しぶりの翼捜索が開始された。
中学の頃は何も起きなかったのだ。小学生の頃は頻繁だった。
理由は「エネルギーを供給しようとして」とか「呼ばれるままに」とか……
まぁ小さい頃は精神科に翼父が行かせたようだが結果は問題無し。寧ろ良い。
と言われ、色々と凄いことに。あぁあれだ。黒歴史って奴だな。
俺が過去を振り返って川の付近を捜し歩いていると声が聞こえた。
「せんぱーい!!!危ないですよぉー!!!!!」
この声は……あの告白したイケメン君か!?
俺は声のする方に息を荒げながら全力疾走する。すると人影が一人見えた。
薄い街灯にあの童顔が……
「おい!!はぁ、はぁ、翼はどこだ!?」
「え、だ、だr」
「いいから!!何処なんだよ!名前呼んでたろ!?」
するとイケメンが指差した方向……川、川!?
良く目を凝らして見ると川の勢いの強い部分に突出したデカイ石があった。
そこに……翼は居た。
「お前んな所で何してんだァー!!早く戻って来いアホーッ!!!!」
「……」
無言。それどころか見向きもしない。……ふと頬が冷たくなった。
雨だ。雨!?
「今日は快晴のはずじゃ――」
俺の記憶と忘れていた記憶が合わさりあった。そうだ。台風。
今年はデカい台風が上陸云々とかニュースでやっていた。
俺はなんだ台風か程度に考えていた……ってまてよ。
この雨が台風の予兆だとするなら不味くないか!?
「おぉぉぉいッ!!!翼ァァ!!早く戻って来い!!!!」
「……」
……いい加減頭に来たので自分で迎えに行くことにした。
うぅ……川の水が冷たい。心なしか段々と濁りを帯びているような気もしなかった。
「あのーっ!危ないですってーっ!!!」
「うっせぇ!!だまってろ!!!」
とにかく今は翼を助けないと……所々勢いが強くなり、足がすくわれそうになるが何とか到着。
「……おい翼!!」
ようやく俺の方へ、目を向けて、顔を向けて反応してくれた。
「……雨」
は?雨?と思った同時に行き成りズシャーッと雨が降ってきた。
ヤバい。なんかこれはヤバい気がする。良く考えたら岸よりずいぶん離れた気がする。
っていうかなんでこんな所に居るんだよ。とか考えるも余計な考えは棄てた。
「今はこの状況をなんとかしないと」
「?」
101 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 15:46:40 ID:L2vFLwUq
俺はズレにズレていたメガネを薬指で再び掛け直して
気合を入れる。これから翼を背負ってこの川を渡る事になるのだから。
「私泳げない」
「だからだよ、早く負ぶってやるから乗れ」
少々ドスの聞いた声を出してしまう。
翼には悪いが今はそうもしていられる状況ではない。
「……ごめんなさぃ」
「んなもんは川を上がってからにしろ、くそ、雨が強くなってきた」
雨のせいでメガネが見え辛くなる。そして急に川の勢いも強くなった。
「あぁクソッ、もうメガネいらねえッ」
俺はメガネを川に投げ捨てた。環境だとか金だとか色々後に責任感じそうだが、
今はそんな事考える場合じゃない。翼を無事に岸に送らないといけないのだ。
「確り捕まってろよ翼、少し時間がかかるかもしれない」
「うん」
か細い声で返事を返してくる。寒いのだろうか。馬鹿だな。
スポーツ万能というのに何故かこういった自然的な面で体力は続かないのが翼なのだ。
なんでかは知らんがともかく途端にひ弱になる。特に水は。
中学の時も高校の時も水泳は無かった。よって翼は水に関してはてんで駄目である。
一瞬足元に痛みを感じるが気にしない。多分流れてきた木か何かがぶつかったんだろう。
だが少ししてから足元に激痛が走り始めた。なんだろうか。いや、今は気にしてはいられない。
岸はもう少しだった。あと少し踏ん張れば良い。それだけだ。
しかし現実は辛くて……
「……く」
「どうしたの?」
「んでもない!気にすんな、確り捕まってなさい!」
「ん」
ギリギリと痛みがこみ上げてきて、頬に汗がながれるが気にしない。
気にしたら駄目だ。痛みは無い。後少しもう手が届く。
「届いた!!!」
俺が岸に着いた頃には川は濁流と化していた。さっきまで膝くらいの水かさだったのが、
今気づいてみると股が川に浸かっていた。
「翼、早く行け、ほら」
イケメン君に手を引かれ、無事翼は救出完了。
だが……俺が気を緩めたその瞬間。それがいけなかった。
藻だらけの石で足を滑らせた俺は、あっという間に流された。
「ッしまった――」
「あぁ!?メガネの人がっ!!!」
「ッ!?」
幸いにも俺は直ぐに体勢を整えて目に直ぐ入ったまだ突出している細い岩に捕まった。
捕まると同時にグィッと体が流れに引っ張られ、岩を掴んでいた右手から血が流れ出す。
「……イツッ、ふやけてりゃぁ……仕方ないな」
しかしこの痛みも足がまだ痛くて+2の痛みだ。長い間耐えられそうも無い。
だが死ぬ気も溺れる気も無かった。しばらくすれば警察さんが着てくれるだろう。
そう信じていた。そして信じたとおりにその警察さんは来た。
「やっぱり心配して救難具を持ってきて正解だった、今浮輪出すからー!!」
「わかりましたーッ!!!」
その後、翼には警察の人のとっても怖いお説教が待っていました。
どうやら警察の人も久しぶりで嬉しいのか嬉しくないのかお怒りでした。
んで俺は、足首は縫った方が良いと言われたが包帯巻いて放置。
手の方もそう対処した。正直病院に行くのはごめんだ。深い傷でも無いし。
イケメン君に俺は少々ブチッと来ていた。
『だ、だってほら、他人の俺が……それにその時はパニックしてて』
『俺だったら迷わず岸にあげてたけどな』
『っつか貴方誰ですか?』
『俺はあいつの幼馴染だよ』
まぁ、こんな事があったのである。久しぶりの翼さん失踪には驚いたが無事に確保。
おばさんやおじさんからも怒られて俺のペコリと頭を下げて一言
「ごめんなさい」
102 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 16:09:28 ID:L2vFLwUq
「いいよ、ただ流石に今回はヤバかったから次からは頼む」
「はい」
申し訳無さそうに家に帰っていった。
警察さんからは俺がしたことの無謀さと勇気を賞賛してくれた。
次からは気をつけて。と。やれやれ……とんだ一日だったよ。
俺は家に帰ってクテクテだった。
「うおおお……体中が筋肉痛になりそうだ」
その日の就寝は非常に辛いものでした……
次の日、左足首と右手の平に包帯を軽くキツくまいた俺はいつもどおりの場所へ行こうとした。
すると今日は公園のベンチで座っていた。まだ気にしているよな。やっぱり。
「ごめんなさい」
「何度も謝らんで良い、大事なのは次からしない事だぞ」
「うん」
「気になるんだが何であんな事したんだ?またなんかか?」
「ブンブン」
首を横に振る。
「教えてくれるか?理由?」
「今日、図書室で話す」
「わぁったよ、どうせ朝飯としてもうおばさんからの弁当は平らげてるんだろ?」
「コクリ」
「んじゃほれ、お前の分」
弁当を渡すもいつもより一段と物静かだ。
「……気にスンナ」
俺は翼の頭の少しグリグリと撫でてやって歩き出す。
相変わらず背が小さい。そして華奢だ。
後からトテトテと着いてくるのを見ると思わず顔の筋肉が緩む。
今日の翼は離すとまた何処かへ行きそうだったので俺は手を繋いだ。
そういえば手を繋いでやったのも久しぶりな気がした。
ふいに振り向いてみると翼が驚いたような顔をしていた。
「どした?」
「……ぇ、ううん何でも」
「こうやって手繋いで歩くの小学生以来だなぁ……ハハ年取ったなぁ」
「……」
「いや、まだ十数年しか経ってねぇか」
「コクリ」
「流石に中高と来ればもう手繋ぐような年じゃねぇと思ってな」
「……」
「右手がこんなんだからあんまし確りとは握れないけどな」
「……」
時々頭を縦に振ったり横に振ったりして反応はしてくれるが。
その顔は無表情だ。相変わらず。だが少し俯いている。
「ぁ、月」
「え?あぁ本当だ、台風去った後は快晴だからな、青いなー月」
「昼間の月、好き」
「俺も好きだけどメガネ無いからあんまり見えんなぁ」
うーんと目を凝らしてやっと見えるくらい。いやーメガネ買わないとな。
「メガネ、弁償する」
「良い、ちょうど古かったし買い換えようと思ってたんだ」
「でも」
「でもじゃない、ほら着いたぞ」
気づけば学校に着いていた。俺は足早に下駄箱へ向かった。
「んじゃな、ちゃんと飯食えよ!」
「……ん」
前の敬礼も変な返事も無い。……やりずらい。
なんていうか正直前のやりとりは恥ずかしいと感じる事もあったが、
結局は馴染んでいた。さて、またアイツがうるさいだろうな。
「お前どうしたのその怪我!?」
「うるさい耳元で騒ぐな」
103 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 16:33:17 ID:L2vFLwUq
コイツが大げさに騒ぐからクラスの連中が寄ってきた。
ったく、気分良く午前を迎えようと思ったのに……コイツ。
俺は見世物じゃねぇーっつーの。
「二階堂君大丈夫?」
「あぁ委員長、平気ですよ昨日帰りにこけましてね」
「うはーっ、優一はドジッ子だなぁ!!」
あまりに五月蝿いので軽くゲンコツを頭上にズドン。
「イテーッ何すんだよー心配してんのにー」
「大げさ過ぎるんだよ」
「んだよ、友の怪我を憂いてやってんのにこの始末かよ」
「……感謝はしてるけど大げさなんだよ」
「それ感謝されてんの?」
「知らん」
とまぁ、いつもどおりの午前が流れたわけである。
シャーペン握り辛いとか、少々足の細かい動きが厳しいってのはあるが。
今日は何やら特別日課らしく、いつもより少し早めに学校が終わった。
帰宅部の俺はちゃっちゃと準備をして図書室へ。
すると再びあのイケメン君が来ていた。今回は顔知りなので普通に介入。
「あ、あのせんp」
「チワーッ、あれ、君はいつぞやのイケメン君じゃないかー」
「だからその名前で呼ばないでください!俺には永智って名前があるんです!!」
「V-MAX発動しちゃったりするの?」
「しないです!!!てかなんですかそれ!?」
「んー?あぁ、ロボットロボット、あぁところで告白するのは十二分に結構なんだけどさ」
「は、はぁ」
「ここ、図書室。みんな本読みに来るの分かるよね」
「はい」
「なんで告白する場所は今後は出来れば変えて欲しいなーと副長としては思うわけですよ」
「……最近貸しに出していた本が期限を過ぎても戻ってこない」
突然翼が口を開いた。
「これは貴方が告白をしているのを気遣ってこない、故に迷惑」
「す、すみませんでした、んじゃ次は屋上d」
「もうこれ以上はいい、諦めて」
「む、無理です!!!!俺は!!!!!」
「私、この人が好きだから」
……と指指されたのが――俺。
俺?俺……俺?……俺。
「な、な、メガネの人が!?」
「俺はメガネじゃねぇ、優一って名前があるの、それにお前の一つ上だ」
「せ、先輩が……?」
「コクリ」
相変わらず本をジーッと読みふけながら相槌と淡々とした機械的な喋り口調だ。
「なので諦めて欲しい、以上、今から古本の整理をする」
「……ぅ、き、今日は帰りますッ」
と、捨てセリフを言い残してまたもや激しいスピードで帰って行った。
「なぁ翼」
「?」
「あ、俺の方に今日は向いてくれるのね」
「本は深入りしやすいので」
翼はそういうと読み終えたようで本を元在った場所に本を戻した。
そして突然俺の左手を引っ張って奥の書庫へ……?
「な、なぁどうしたんだ急に」
「さっきの返事、聞いてない」
「え?」
「私は好き、優君」
……なにやらとんでもない事になっている気がした。
「すまん翼、少し待ってくれ、直ぐに済む」
「コクリ」
―――え?好き?告白?ん?
確かに言われた。んで聞いた。
んで俺の気持ちを問われている。
俺は確かにコイツの事は嫌いじゃない。
ただ、好き……か、そりゃぁ素直になりゃ好きかもしれない。
ほおっておけないし、イケメン君……じゃない永智君か。
が、告白していたり、アイツの事は正直好いてはいない。
一緒に居るとほっとするし、突然居なくなったり変な事しでかすけど、
それがなんていうか、逆に愛らしいというか……好き、なのか。
「……良く分からんが、お前ほおっておけないし、一緒に居て不快と思った事はない」
「コクリ」
「それに寧ろ居る事で和むし、楽しいぞ俺は」
「それが、好き」
「そうなの?」
「そう」
淡々と言葉のキャッチボールが繰り返される。
本当はドキドキして、モダモダして、そんな初々しい感じが普通の告白なんだろうけど、
今の俺は不思議と落ち着いていた。そんで素直になれる。
なんていうか、言葉に出来ないんだけど、高揚感みたいなのはある。
だけど口は普通に動くし、思考も良く回る。なんとも言えない感覚。
「私は、優君が好き、優君も好き」
「おう」
「だから、結婚するまで一緒」
「突然だな」
「決めた」
「勝手だな」
「運命です」
「ほいほい」
そして今気づく。翼が笑っていた。それも満面の笑みだ。
ニコニコしてやがる。なんかムカツイて来た。自分ばっかり笑いやがって。
「二人で、笑ってる」
「俺笑ってるの?」
「うん」
「気づかなかった、翼に言われて初めて気づいた」
……なんというか、世の中不思議な事は小さいながらもあるもんだ。
俺がこうやって知らない間に笑ってたり、なんか告白されちゃったり。
気づいた時には傍に居て、妹くらいだろ。と思ってたら実際そうでもなくて。
今翼を見てみると本当に完成された人形じゃないかって思うくらいに輝いてて。
「どうしたの、泣いてるよ」
「え?」
「嬉泣き」
「ちげぇよ、昔を振り返ってたの、あぁ、翼がこんなに大きくなって……ってな」
首を傾けてポケーとする翼。本当に変な奴だ。昔から。
俺は泣いているのか良く分からんが泣いているらしい。
ちょっと頬に手を当てると綺麗に流れてた。
思えば色んな事があった。小学生の頃は翼はよくいじめられてたっけな。
んで、俺がヒーローで登場さ。まぁボロ負けしてたけどな。
「……お前外見は成長しても中身は成長してないのな」
「してるよ」
してるよ、耳に届いた頃には俺の目の前に翼の顔があった。
……うーん、これは…キスという奴だ。因みにある意味俺はこれがファーストキスであります。
「!?」
「……ん」
「……い、行き成りだな」
「驚いてる」
「そりゃぁ流石に……お前だってこれが人生初だぞ!?」
「私も一緒、一緒」
「あ……んー、そうか、なんか急に恥ずかしくなってきたぞ」
「顔熱い」
「俺も熱いよ」
……今日は帰ろう、寄り道して。
というわけで晴れてというか、まぁ殆ど変わっていないのだが。
翼と恋人としての関係を築きましたと。
「……んで、理由聞いてないぞ、川」
「……あの人に見せ付けておこうと思った」
「あの人って、イケメンく……永智とやらの?」
「うん、私、この人信じてるんだよーとか」
「あと、あの人来る感じしなかったから優君はあんなに辛くても来るんだーって」
「あー、そうなんですか」
「コクリ」
こいつは俺をいじめてる。間違いない。
羞恥プレイにも程がある。全部見せ付ける為?俺が助ける?
……うお、俺って案外恥ずかしい事やってのけてんのな。まぁ気にならんが。
「手、痛くない?」
「全然、こんなものタンスの角にぶつけた時の痛みの方が痛いわい」
「ぷぷ」
改めて思うと翼と会話している時は昔と何一つ変わっていない。
ある意味翼が機会を作ってくれたのかも知れない。多分俺も気づかなかっただけで。
そういう意味では世話になったのかもな。
「そういえば読み終えた?」
「あぁ、読んだよ、昔の俺とのギャップが酷かったけどな」
「でも、私には、そうだった」
「ありがとよ、負けばっかりのヒーローだったな」
「今は強い、前も強かった、宇宙からの使者、かっこいい」
もう時間的に夕時だろう、あの後図書の仕事を早めに切り上げた甲斐があったかも知れない。
「しかし、この事をおばさんとおじさんに言うのは恥ずかしいし不安だな」
「へいき、私も一緒」
「おいおい、この人を俺に下さい!なんて言いに行くわけじゃないぞ?」
「それでもいい」
「まだ仕事に就いてないです!」
「これから就けばいい」
……まぁ、この後、おじさんとおばさんに会って事の次第を伝えた所、
何故か赤飯を用意された。……うーん。
その日の夜は昨日と相反してとてつもなく寝付きが良かった。
ちょっとへんてこな奴だけど、俺にとっちゃどうでもいい事だ。
次の日、俺はいつもどおり木の上で待っていた翼と一緒に登校した。
手を繋いで、歩幅も翼に合わせてゆっくりと。
新聞部には見つからなかったものの、結局俺らの事は知れ渡った。
最初はからかわれていたが、時がたてばそれも落ち着いた。
その日、俺は図書室にいつもどおり向かった。
「おう」
「うい」
「ジジイめ」
「御年90になります」
「嘘付け」
「ぷぷ」
俺達は軽い言葉のキャッチボールをしながら書庫の整理に勤しんでいた。
すると突然、翼が口を開いた。
「今日、優君家で遊ぶ」
「別にいいけど、お前遅くならないように家に帰れよな」
「ううん、お泊り」
「は!?ちょ、ちょっと待つんだ、落ち着け翼さん」
「落ち着いていますよ」
まぁそのなんだ。色々と不純だ。実にけしからんな。うむ。
俺は何も考えていないぞ。俺は。そうだ。そうだ。翼はお泊りにくるだけである。
ほかの事は一切無い。談じてない。一緒に寝ることがあったとしてもだ!
「というわけで、連休中はお世話になります」
「おう、飯を豪華にしないとな」
まぁともかくこれを期にどんどん俺達は仲良くなっていきましたとさ。
おわりOTL
すいません・・・初めてでお見苦しい物を。
とにかく電波子になったかは微妙ですが書きたかったのでつい・・・
主人公は付き合ってからも振り回され続けるに違いない。
メガネ捨てちゃうとかツッコミどころはあったけど悪くないと思うよ!
過疎スレだから書きたいときにいつでも書いてイインダヨ!
108 :
75:2009/10/20(火) 00:34:36 ID:bNCSeK01
勢いだけで書き上げたんで投下します
高校に入ったので、部活でもしようかと視察中のこと。
『硬式テニス部』
と、書かれた野外コートは呪われた西洋館の如く、鉄柵に囲まれていた。
Dの字を上向きにしたような扉から中に入ると、女子が二人。
――これだけ?
「あのー」
呼びかけると、ラケット二刀流壁打ちなんて高度な技を繰り出している方の子が、俺に気づいた。
そして跳ね返るボールを真上に打ち上げ、もう一方のラケットでジャンピングスマッシュ――って、え!?
「腐戒流奥義、奇々…天中殺っ!!」
ぎゅいぃぃいぃんっっ!
これはテニスじゃない。格闘技か何かだ――短い走馬灯の中でそんなことを思いながら、俺は無差別攻撃の犠牲になった。
どごん!
「鹿画均志――享年16」
ああ…お経が聞こえる。
「本日凶作滅法十円時々五円又一円、邪拳本意也遇儲希覇、守転小炉利個心利個〜」
チーン、チンチロリーン。
「……」
ぐわーん!!
「うっせえええぇぇ!!」
意識回復。そりゃ飛び起きる。
目に飛び込んできたのは、上下体操服姿の女の子。
俺を一撃の下に叩き伏せた、その張本人が座っていた。
「起きたか腐れ外道。餓鬼道に落ちて永遠の渇きに苦しめ」
その上耳元で銅鑼鳴らされた挙句罵倒ですか。何でこんな目に遭うの? 俺、そんなに空気読めてなかった?
「成仏召されよ〜」
その奥で何やら新興宗教らしき怪しさ振り撒きながら、僧正な格好した女の子が大仏様に土下座している。
…どうやら存在すら許されないような異世界に迷い込んだようです。
とりあえず立ち上がろうと膝を曲げる。
「起きちゃダメです〜」
台詞はおっとりだが手は速い。僧正はやや固めのコートに差し込んであった卒塔婆を抜くなり、俺に投げつけてきた。
ぶぉんっ!
「!」
ごっ。
クリーンヒット。痛い。
「死すら生温い」
平然と言い放ってくれますが、全然嬉しくないです。
地面へと倒れこみ、さぁこれから何が始まるんでしょう。業火にでも焼かれますか?
「地底蟲の餌になれ。長きに渡る苦痛と喪失を以て、生まれ出でた罪を清算せよ」
上から眼鏡とショートカットの可愛い顔して覗き込みながら、とんでもないこと言う子だ。
「…っ!?」
突然、腹部の辺りに痛みが走る。頭痛で視界が安定しないまま、手で探る。
冷たく、生々しい感触。取り上げてみる。
「な…な、何じゃこりゃあああぁぁぁ!!」
きぃぃぃぃ。
人食いスカラベのような、明らかにヤバイ虫。
「底辺。犬畜生にも劣る。お前には磔が似合いだ」
虫を投げ捨てようとすると、彼女は突然、俺の左手を地面に押さえつけ、足蹴にする。
…何て怪力。踏みにじられる掌。痛いよ、酷いよ。
「十十、貸せ」
「は〜い」
僧正の名前は十十と言うらしい――って、そんなこと言ってる場合じゃない!
びゅん!
ぱしっ。
彼女の手に渡ったものは、先端が槍のように尖った卒塔婆。
本気で、俺の手を釘のように打ちつけるつもりだ。こいつ、迷いどころか当然って顔して覗き込んできているもの。
「…」
振り上げた。もうダメだ。今度こそ本当に死んだ。いや、死にはしないかもしれないが、弄り殺されるのは確実。
思わず目を瞑る。
「赤碑(レッド・オベリスク)!」
その言葉とともに、彼女は体勢を素早く回避に変えた。
視界から消え、代わりに入ってきた大きな影。
そして、どんっ! と轟音と共に、俺の体の僅か数センチ隣に物々しい落下物。
「!!」
突き刺さったそれは、燃えるような熱気を放ち、地面に突き刺さっている。
「青春してるか坊主」
そんな冗談染みた言葉に一瞬殺意湧きます。いや、実際敵いっこないんでしょうけど。
台詞で分かる。そしてこんな特異なシルエットの人物は、他にいない。
長い茶髪に、上はジャージ下はフリフリのレースのスカートという途轍もない井手達の教師だ。
それは俺のクラスの担任にもなった、若くて綺麗で狂った女性――浦連萬菜。
「助かりました」
の言葉をスルーし、生徒と思われる何か二つと対峙する先生。
それでも心強い救世主――って、俺の指食われてる! 痛いっ!
慌てて体を起こし、虫を遠くにリリースする。
「邪魔するな。百と四の墓標にその名を刻まれたくなくば」
眼鏡の女の子にも畏れがあるのか、距離を置いて身構えている。
「他の奴はどうだって良いが、一日二日の付き合いでもこいつは教え子なんだ。無闇に殺してくれるな」
最近の学校って何でこう、物騒な言葉や物が飛び交ってんだろう…もうやだこの界隈。
「先生が言うんなら仕方ありませんね〜」
袈裟を脱ぎ捨てる、女の子。
意外にその姿は、シャツ・スコートの本格的なテニスウェア。ツインテールの髪は割と可愛らしい。
「それにお前、見学に来ただけだろ?」
そうですよ。やっと話がまともな方向に進んだ。
「入部希望?」
途端に眼鏡の方も戦闘体勢を解いた。おいおい、何だと思われてたんだよ。
「蜘蛛糸一本届かないような奈落と無間地獄の臭いがした。紛らわしい」
ああ、言い訳はそれね……悲しい。
しかし常識が通用しないこんなとこ、基本的に居たくない。何このパンデモニウム。
「王耳、治療してやれ」
先生の指示に従い、ツインテールの彼女は俺の元へ。
そして手を引くと、隅にぽつんと佇む部室らしき所へ連れて行かれる。
力が…強い。眼鏡の子といい、細い体のどこに――って、常識で物を考えちゃいけないんだっけ。
割と綺麗で硬い病院のようなベッドの上に寝かせられ、頭と腹と掌と指に、丁寧に手当てを受ける。
「痛かったら言って下さいね〜、何も出来ませんけど」
痛かったけど、それ以上に思考回路がパンクしかけていた。
何かもう、寝たい。鎮静剤でも気付け薬でも何でも良いから処方してほしい。起きて、あれは夢だったで終わらせてくれ。
「一応こんな時にですが、自己紹介しますね〜。王耳十十、って言います〜」
殺人未遂の共犯とは思えない笑顔ですね。
「あ、俺の名前は――」
「知ってますよ〜、鹿画均志くん。生徒手帳、拝借しました〜」
何か、赤く染まってんですが…。
「とりあえず、返して下さい」
「え〜と、だったら硬式テニス部に入ってもらえますか〜? 部員が二人しかいなくて困ってるんです〜」
お願いですから、もう少しツッコミ所を減らして下さい。とりあえず、交渉の材料にすな!
と、ガラリ、と誰かが入ってきた。
「迷い込んだ溝鼠は起きたか」
ああ一発で分かります。不当に個人を貶める発言、眼鏡の子ですね。
「あ、先輩〜」
そう言うと王耳さんは彼女の方へ。そして俺の目の前に、彼女を連れて来た。
「部長の東聖零先輩です〜」
冷たい表情のまま、一礼。直視しようにも、体が拒否る。
そしてもう一人。
「改めて、私からも。顧問の浦連萬菜だ」
唯一、俺の味方になってくれそうな人。
「入部しろ、悪いようにはしないから」
放課後。
「お前、硬式テニス部に入るんだって?」
居残っていた集団がざわめく。
「度胸あんな」
「命知らずというか」
…無知とは罪である――確かに、そうなのかもしれない。
下調べもせず出向いた俺は、命を危ぶめた。そして、逃れられない蟻地獄の中に。
「あ、先生っ」
途端に湧き上がる一同。クラス担任の、例の人が現れたのだ。
皮肉にも大人気です。学校一とか言われてます。
そう、顧問として絡まない内は、多少変わった先生、ってことで済む。
「賑やかな所悪いが、鹿画を連れて行くぞ」
そう言うなり、後からくっつかれる。…スキンシップ。
その場がどよめいた。殺意を感じる。
「先生目的で入ったのかこいつ」
「死ねば良い」
酷い。俺の高校生活、入学早々無茶苦茶じゃん。
そんな後悔も空しく、テニスコートへ連行される俺。
俺の生徒手帳は、血に浸されて赤くなっている。これはもう間接的な虐めだよね。
「不浄を滅する血――輸血用の血に東先輩の血を足した物だよ〜」
そんなこと聞きたくなかった。意味不明。
「溝鼠には効果がなかったようだ」
本当はもう関わり合いになりたくなかった…けど、入らなきゃ命の保障出来ないとか、何なのこれ。何とかしろ教育委員会!
「二人ともお前の入部を歓迎してる。で、体調は」
歓迎されてる? 俺にとってはアポカリプス。
「遠慮するな。可愛い子二人が目の前で、恥ずかしいのは私も分かる」
「……悪くないです」
ああ確かに可愛いとも。普通の部活ならハーレム気分に湧きも出来るんだろうけど。
「よし、じゃあ最初は能力テストだ」
先生がそう言うと、空気が歪む。
「?」
そして、再び俺は異世界へ。
ずん、と地響きがなったかと思うと、テニスコートにアメーバみたいな巨人が現れた。
「溝鼠、奴にテニスで勝利しろ。出来なければ罰を与える」
何というスパルタ教育。不可能を可能にせよと、そう仰いますのですか?
眼鏡のあなた。そうあなた――助けてくれる気これっぽっちもないのは分かってる。
でも、手にはラケットという貧弱な武器、体には体操服という脆い装甲。精神取り込まれるよこれ。
「始め〜」
完敗です。成す術が無い。
ボールすらなくいきなり蹴飛ばされて壁に頭打ち付けるなんて、これっぽっちもテニスじゃないやい!
生きてるのが奇跡。命って素晴らしい…けど、グロッキー。
「戦闘不能により、鹿画くんの負けで〜す」
もう、好きにしてくれ…。
「死なない程度の耐久力にはなったか。十十、連れて来い」
東さんは訳の分からないことを呟き、先に部室へ。
確かに、壁に頭強打して意識失ってないなんておかしいけどさ、フォローなし?
「血の加護と、昨日の治療――ま、今日が本番だな。頑張って来い」
え? 先生来ないの、てか今日も何かされるの?
「分継の儀に顧問は立ち会えないことになってる。理由はすぐに分かる」
分継の儀、って…何? 凄い寒気するんだけど。
そもそも血の加護? 治療? 俺だけ納得出来てないのに。
「はい、行きますよ〜」
王耳さんが襟を掴むなり、引き摺る。
「そんなこと、しなくても歩けますよ!」
ぱっ、と手を離されバランスを崩す。
どてっ。
「あ、ごめんなさい〜」
……狂気で凶器だ。何もかも。
部室に入ると、東さんはベッドに座り、試験管を振っている。
変な光景だった。猛々しいこれまでの雰囲気とは、何か違う。
パッと目が合う。
「…変異の心配はない」
「はあ」
そう返すしかない。もう置いてけぼり以上の期待はしてない。
「ギンビスにも勝てないとは、呆れた。今日日溝鼠でももう少し抵抗出来る」
「!!」
言うなり、俺の首を鷲掴みにしてきた。
間違いない。絞め殺すつもりの力だ…!
抵抗するも、悪鬼のような力に成す術がない。彼女の手首を掴んでも、鉄塊のように動かない。
「…! …っ!!」
ダメだ…意識が…目の前が…白く…。
「これで良い」
何が良いのか、分からないまま、解き放たれる。
「――げほっ、げほげほ…! がはっ、はあっ…はあっ…!」
「大人しくしていて下さいね〜」
床に転がった俺の体を、ひょいと持ち上げるのは王耳さん。
ベッドの上に寝かせられ、自らも飛び乗ってきた。
「……?」
段々と正常に戻りかけている最中、四つん這いで覗き込まれる。
いや、この体勢はいろいろとおかしいって。
「成功ですね〜」
性交? いや、聞き間違え…だよね? なのに、俺の…。
「ここはとても立派ですよ〜」
命の危険時に、本能的に種を残そうとするのが牡の性。
…俺の下半身が、しっかりと起き上がっていた。
濃厚なキスに、また意識が遠退き始める。
女の子なんて真面目に意識する余裕もなかったのに、呆気なく体が魅了される。
「む…ふぅ……んぱっ…、んん…良い…」
蕩けるような表情で、俺を見下ろす。胸が、ドキドキして痛いんだけど。
しかし彼女はそんな俺の神経を根こそぎ破壊するかの如く、腹の上でテニスウェアを脱ぎ始めた。
動けないし、目を逸らすことも…出来ない。胸元のボタンを一つずつ外し、そして脱ぐ。
白いブラに、大きな胸の谷間。締まった腰周りが、目に入る。
「戯は後にして、今は儀を優先させます〜」
「あ、と…あの…」
やっと声が出たが、どう見ても情けない光景。
「心配しなくても良いですよ〜。本番は何ヶ月かぶりですが、自信はあります〜」
本番、って…あーた、本番って…。
涙が出てきそうな俺の気も知らず、彼女はブラをも外し、また俺に覆い被さる。
「…っ!」
生の胸の感触が、気持ち良い。更に俺の体操服を、捲し上げて押し付けてくるというか擦り付けてくる。
下がはちきれんばかりに盛り上がり、苦しい。
と、体を離す彼女。場所をずらし、足元に。そして、容赦なく俺のを、ずり下げる。
「十十に欲情を始めた――所詮は牡」
声の方を見ると、東さんはイスに座ったまま、足を組んでこちらを観察していた。
恥ずかしい。何これ、これが儀? どう考えても、セックスなんだけど……。
拾ったエロ本で見た光景。ヤったことなんて一度もない。
それが、こんな形で――。
「うっ…!」
じゅる、ずる…と、俺の下を口で湿らせる王耳さん。よく分からないけど、凄い…くる。
「勝手にイったらダメですよ〜。折角なんで、全部貰うんですから〜」
いや、おかしいから! ちょ、そんなこと言われても…うっ…。
「はいストップ。ふふ、ビクビクしてます〜」
い…握らないでっ! って、やっと…解放――出来てない。
しかし本当に絶妙なタイミングだった。今にも、出そうな直前で、止めてくれて…。
ただし息吐く暇は与えてもらえない。彼女はそのまま中腰になった。
「!」
短いスコートの中に手をやると、ブルマと下着が太腿から滑り落ちていく。
ただ呆然と、見惚れるしかなかった。体全体が、心臓の鼓動で震える。
「挿れさせてもらいますね〜」
そのまま、俺のの上から、尻を…。
ず…ぶっ…。
「…っ!」
温かい――いや、熱いものに、先端が包まれた。抉じ入れるように、体が落ちてくる。
「くっ…うぅぅ…んっ!」
ゆっくり中へ、ちょうど良くはまっていく。左右から圧迫される感覚に、特別に近い快感を得る。
そして、根本まで…入った…のか?
「ちょうど良いくら…い? 動かし…ます、ね?」
切ないような表情に心を擽られて、でもそれは全て性欲に変換されていく。
体が、おかしなことになりつつある。これが…セックスなのか?
繋がったまま、上下に動かれると想像を絶する刺激が下半身を襲う。
一般的な哺乳類のDNAに刻まれた行為そのままに、生殖行為……って、避妊――しなくて、も…うぅっ…!
「王、耳…さんっ!」
「良い、ですよ…全部…下さい…っ」
ず…んっ!
「あっ――あああぁぁっ!!」
俺は思わず体を起こし、爆発の瞬間に合わせて、その胴を抱き締めた。
意識混濁。ただ、下半身がどうしようもなく熱く、その中身が射出されていく。
どく…どく…どく…。
彼女の中に包まれたまま、その奥へ。肌は温かかった。そして、滑らか。
「……鹿画、くん…」
俺の体にも、その腕が回されていた。
そうしていると精子が尽き、体はやっと治まった。
「…儀は、終了…です〜」
最後に彼女から、もう一度キス。優しいのか何なのか分からない内に、解放された。
情けない格好でベッドの上に横たわったまま、俺は体を休める。そして感覚を落ち着ける。
ふと、東さんの方が気になり、顔だけ向けてみる…と、その光景に衝撃が走る。
「…んっ…」
組んでいた足はいつの間にか体操座りになっていて、ジャージと下着が、足元まで下ろしてある。
その魅惑的な素足の先を、よく見えないけど彼女は触りながら、くちゅくちゅと、音を立てている?
「次は、先輩の番ですね〜」
え? 終わりじゃないの?
「…はぁ…はぁ…、朱に交える時は、薄い色から…」
すると、上もゆっくり脱ぎ始める。
「…!」
体は、王耳さんより少し幼い。けど、凄い……。
むくむくと、今ダウンしたばかりの下が起き上がり、再びファイティングポーズを取る。
「上出来…溝鼠から、実験用のラットくらいにはしてやる」
最後にスポーツブラを取り払い、全裸になった彼女は…ベッドに乗ってきた。
体が恐怖を覚えているのか、思わず避けてしまう。
「先輩には、優しくしてあげて下さいね〜」
今童貞喪失したばかりの素人にかける言葉ですかそれは。
「退け…私が下だ。挿れやすくしたから、好きにしろ」
可愛かった。今は無力なままで、俺に接してくれると言うのか。
大丈夫。やれば出来る。上に乗って、そっとキスから――。
「お前の頭は空洞か。眼鏡を外せ」
…やっちゃった。すいません。眼鏡ですね?
俺は彼女の眼鏡をそっと外して、隣の王耳さんに手渡す。
素の顔にまた、心を掻き乱される。なんて…可愛いんだ。
「ん……」
慎重に慎重に…優しく優しく…。
積極的にいけず躊躇していると、彼女の舌が、俺を牽引するように絡まってきた。
必死についていく。体を軽く撫で解しながら。
「ちゅ…く…ん…」
心を溶かすような味がするキス。そして体が、少しずつ変化していく。
王耳さんとした時から、段々…力が湧いてくるような…。
「ぷはっ……しつこい。さっさとやれ」
手厳しい。本当はこの引き締まった体をもっと……そんな目で見ないで下さい。
下は再び、最大限の上昇。その場所を睨み、そして挿し込む。
うっとりしてる余裕なんてない。これが、リードなのか? なんて大変なんだ。
先端から、中に。王耳さんより明らかに…きつい。全部入るんだろうか。
「先輩は、胸が弱いんですよ〜」
そのメッセージを受け、胸へ。顔を見ると、東さんは俯いて顔を赤くしている。
これは、チャンスか! 初めて…強気に出られるかもしれない。
「あっ…こ、ら…っ! 戯は、必よ…な…くっ…!」
これは感度剥き出し、と言って良いのかな? 意外な弱点発見。もう少し、虐めてみよう。
「や、めぇ…っ」
彼女は体全体で悶え、よがる。しかし下は更に良い具合に湿りだし、通りやすくなっていく。
俺は挿し込みながら、愛撫を続けた。
入りきった。と同時に、彼女の潤んだ目から涙が零れた。
「東、さん…可愛い」
「…っ! …溝、鼠が調子に…っ!」
調子に乗ります。強がりを掻き消すように腰を、出し入れするように動かす。
「あっ…う、うっ…!」
捕まえて離さないとでも言うような、抜群の締まり。抜き取られそうなほど、強い力。
俺は上から、もう一度キスをした。
「先輩の方が愛してもらえてて、良いなあ〜」
ここって、こういう部活なのか? だが体は正直にも、歓迎してる。
戯だか儀だか、もうどうでも良い。とにかく、やっちゃえ。
摩擦が強まると体の方が、止まらなくなってきた。そして…。
「――出るっ!」
どばっ…と、さっき出し尽くしたとは思えない量の射出。
「く、うっ――!!」
確かに、最近は抜いてなかったが、それにしても……ああ、何かさすがにくらくらと。
すると彼女の両腕が、伸びてきた。そして、あろうことか、引き寄せられる。
「東、さん…?」
「……」
何も言わず、自分からキスをしてきた。
俺はこれ以上ないほどに感激してしまい、息が詰まりそうになった。
二人からの儀はこれで終わり。
しかしそれから”戯”を繰り返した。体を何度も何度も交え、中に出し、睦み合う。
男一人に女二人、体力は意外と持った。自分でも信じられないくらいに、力が持続する。
どちらも果てた時、やっと自分にも限界が来たことを悟った。
ベッドの上に、三人。やや狭い。
「…最初ということを考慮しても、中の下程度」
「ふふ…先輩厳しいですね〜」
喜ぶべきか悲しむべきか。
それ以前に年頃の女子二人に惜しみなく体を押し付けられ、リビドー塗れの俺。
だがさすがにもう種が無い。
「あの…俺は結局、どうなって――」
「…愚鈍め。分継の儀とは力を分配し、継承させる為の性交」
「体に力が溢れてきませんでしたか〜? それが、先輩と私の力」
……なるほど、あの人間離れした力を、こういう形で俺に分け与えると。
確かに、力が漲るようだった。激しいセックスで今は精根使い果たしたが。
「それで大抵の超能力を行使出来ます〜。具現・怪力・魔法――何でも」
「攻撃は最大の防御。配分は99:1で良い」
その理論に異論がないとは言いませんが、従いましょう。多分俺も超人類の仲間入り、ってことなんだろうから。
しかし、気になるのは――。
「ずっと、こんな感じで継承を?」
「はい〜。先輩が退部してから、相手がいなかったんですよ〜」
聞くにここでは部員相手に限り、性交が許されているそうだ。…こういう事情があり。
「男の子の鹿画くんが来てくれて助かりました〜。これで次の代に硬式テニス部を繋げることが出来そうです〜」
何という、はちゃめちゃな展開…また気が遠退きそうになる。
しかし部員が多かった頃もあったようだ。……儀は乱交パーティみたいなことになってたんだな、と想像出来る。
「あまり呆けるな溝鼠。今後はその力をテニスに注いでもらう」
とにかく! 訳が分かりませんが、分かりました。
部室にシャワーがある、てか上下水道引いてあることに驚きつつ、体を流す。
タオルを巻いて出てくると、先に浴びていた二人がせっせと後片付けをしていた。
髪を下ろしてる王耳さん、ぱたぱた動き回る東さんに、親近感が湧いてしまう。
すると眼鏡の彼女と、視線が交錯した。
「呆け、手伝え」
その一言と共に、飛んでくるボール。凄く、速い。
「…!」
けど、見える。これなら迎撃可能。
さっきまでの俺とは違う何かが、体の中から――やっぱり、間違いない。
「――?」
手に、ラケットが握られていた。
「!」
迫り来るボール。細かいこと考えるより先に、体が自然と動いた。
スローモーションの世界で、目の前に迫っていたそれを、いなす。
ぎゅん!
「…!」
勢いを完全に殺されたボールは、床にとん、と落ちた。
「鹿画くん、力をもう使えるようになったんだ〜。私なんて何日も練習してやっとですよ〜?」
あ、王耳さん。何か、嬉し――って、何この殺意。
東、さん? ちょっと、何でそこでキレるの? やっぱりこの人、訳分かんな……。
「溝鼠如き……腐戒流奥義、葬々…暗剣殺っ!!」
「ぎゃあああぁぁーっっっ!!」
部室から聞こえる悲鳴。
なるほど、さすが私の教え子。生命力も悪運も強く、冷酷な東を本気にさせるだけの才能――今後が楽しみだな。
さて、またぼちぼち止めに入るか。
これで終わりです。では
出てくる人物の無茶苦茶っぷりがいいねー
唯一の味方キタって思ったら次の瞬間「入部しろ」とか、
99:1とか言ってるだけあって攻められると可愛いとか、
おっとりだけど一番Sっぽくて本番に自信があるよとか。
人物の名前の読み方だけ迷ったけど、とても楽しかったよ!
誰かコメントしてあげて…
(;_;)
「秋子さん、僕と付き合って下さい」
屋上に彼女を呼び出して、他愛ない会話の後の告白。
清史にとっては、転校して来てからずっと、気になっていた少女だった。
クールでちょっぴり不思議な感じに、魅入られて――。
「……くあ」
その一言だけ残し、彼女は気絶した。
保健室で目を覚ます秋子。
先生に尋ねたところ、どうやら貧血らしいことが分かり、清史は心配そうにその顔を覗き込んだ。
「僕に何か出来ることある?」
すると、眠気眼でとろんとした表情のまま、彼女は呟いた。
「玉鋼が食べたい」
最初は清史も、冗談だと思っていた。
が、すぐに彼は、越えてはいけない一線を越えてしまったことを、知ることになる。
その日、彼女を家まで送っていくことにした清史。
了承され、密かにほくほくだったのは言うまでもない。
しかし辿り着いたのは、心にもやもやとしたものを残すような、奇抜な外観をした屋敷。
「ついでに、どうぞ」
そう言って、インターホンを鳴らすと、頭上から階段が下りてきた。
清史がよく見ると、目の前の玄関のドアは、単なる壁に書かれた絵だった――まるで目の錯覚を誘うような。
二人は二階から家に入り、彼女の部屋へ。
そこは重厚な箪笥やベッドに、下は畳、そしてシンメトリー的なものを色々と無視した配置と形の窓――と、不思議空間だった。
「秋子さんの家って、すごいね」
そんな言葉しか思いつかないのも、ある意味当然だろう。
そして、そんな言葉に満面の笑みを返すのが、彼女だった。
清史は目の前にある囲炉裏に困惑しながらも、座布団の上に座る。
すると彼女の携帯電話が鳴り出す。不協和な音程を適当に羅列したような、聴くに耐えない着メロ。
「はい? …うい」
そして、その可愛い顔でぼんやり空を見たかと思うと、両手を自分の首元にやった。
「!!!」
彼女の首が、取れた。
魂が抜けたような状態の清史に、彼女の体は頭を差し出した。
そしてデュラハンのまま立ち上がり、器用な動きで部屋を後にする。
「……」
ぱく、ぱくと開いた口が塞がらない清史の両手の中に、彼女の生首。
「大丈夫。用事あるから、貸しただけ」
にこりと笑う。
そのまま二人は、奇妙な状態のまま会話を続けた。
彼女の話はどこか…もとい、完全に変だった。常識が全く通用しないとは、普段学校で会うだけでは分からない。
田舎にはペーパーナイフの畑がある話。
金属ソムリエの三級資格を持っている話。
ヒトガタに息を吹き込んだところ、近所の犬に吠えられ泣きながら帰って来た話。
「……」
清史はただただ、頷いて相槌を打つしかない。
しかし、そんな電波なところも許せてしまうほど、彼女は可愛かった。
しばらくすると、彼女の体は部屋に戻って来た――蛇を模ったような、曲々しい装飾剣を片手に持って。
固まったままの清史から首を受け取ると、彼女の体はまるでアンドロイドのように、それを差し直す。
「良いもの、見せてあげる」
元の人間状態に戻った彼女は、早速そんなことを言う。清史ははあ、としか言えない。
それでも片手を差し出してくると、思わず受け止めてしまうのだった。
これまた、気味の悪くも見える箪笥。上部を開くと、中は鏡になっていた。
映る彼女の表情が、ぐにゃりと歪む。
「!!」
「…お客さん?」
鏡の中の彼女が勝手に動き、そう尋ねる。
すると、驚く清史を他所に、現実側の彼女が頷く。
不思議なことに、その中に清史は映っていない。
「そう――素敵。これから、楽しみ」
すると突然、彼女は剣を構えた。
「あ…え…?」
混乱する清史。
「…しばらく黙ってて」
「…分かった」
訳の分からないやり取り。そして、彼女はそれを鏡に突き立てた。
鏡は”向こう側”に割れ砕け、何も見えなくなった。
それを確認した彼女は、満足そうに剣を鞘に収めた。
「秋子…さん?」
「――良い旅を」
独り言のようにそう呟き、そっと箪笥を閉めた。
呆然と見つめる清史に、視線を合わせてくる彼女。
清史は抱き締められていた――訳の分からない内に。
「……付き合って、って言われて、嬉しい」
そして体から徐々に心まで、懐柔されていくような感覚に襲われる。
あくまで意思を保っているとも自覚出来るが、とりあえずされるがままに、応じる清史。
「君のこと、本当は――」
「良い…これで全部、合わせるから。でも、最後に…」
分からないことが多すぎて、清史に信じられるものは、その温もりだけだった。
そして人間離れした彼女も、この時だけは普通の少女だった。
キスと、そしてそれ以上。複雑な思考は止めて、清史は彼女と絡み合った。
自分を捨て去るように、意識を行為に埋め、薄める。
「はっ…ぁ…あっ…」
しかし今なら、彼女を理解出来そうだという、矛盾する思いもあった。
混沌としたまま、体は繋がりに向かう。制服も下着も脱ぎ散らし、ベッドで愛し合う二人。
普通に考えれば、今日告白したばかりとは思えない関係だ。
ただ、清史は微かに感じていた。時間がないというか、余裕がないというか、そんな求愛。
「もっと、強く…激しく、して…」
言われなくても、止まらない。二人は、体に刻み込むような性交を繰り返した。
「……っっっ!!」
そうして、中へと迷いなく繋がり、体は一つになっていった。
しかし、心は通ったのだろうか? くたびれ果て、答を考えるほど頭は働かない。
清史はその体をもう一度しっかりと、抱き締めてみる。
胸の中で、少し小さな体が不安定な温もりを発している。
「はぁ…はぁ…」
もう一度、しっかり顔を見せて――彼女はそう言った。
見ると、彼女は悟りを啓いたような表情で、涙を流していた。
「秋子さん…僕は――」
清史にとってその顔は、どんなものよりも美しく、可憐に見えた。
「失うのを、こんな私でも…嫌だ、って…思えた」
その言葉と共に、目を瞑る。そっと唇を近づけ、キス。
最後の感覚を焼きつけて、全ては闇に消える。
清史が目を覚ますと、そこは保健室だった。
「……?」
何故か、喪失感が心を苛む。痛みは涙となって、目から流れ落ちる。
「清史…くん?」
隣にいたのは、秋子だった。
「僕は、何で」
「告白されたと思ったら、あなたは急に気絶した。先生は、貧血だって」
気が付いたら、倒れていた。それ以上のことは、何も分からない。
清史は起き上がり、彼女を抱き締めた。
彼女は、普通の少女だった。告白前に感じていた印象通りの子で、一般人と大して剥離はなかった。
「私もあなたと、付き合いたい」
返事はこうだった。清史もそれで満足だった――僅かな心の影を除けば。
何かが、違う。その何かを思い出せないが、確かな違和感。
清史は彼女の肩を借りて、もう一度泣いた。
やっと落ち着いた清史を、じっと見つめる彼女。
何故か懐かしいその表情に、思わずまた感情が揺らぐ。しかし――。
「…ん…」
彼女からの、しっとりとしたキス。
一度の口づけが、心を少しだけ和らげた。温かな、そしてやはり懐かしい何か。
段々と心が落ち着き、その何かを冷静に失っていく――それはまるで、曖昧な夢を忘却するように。
おしまい
一応、75の者です。微妙な鬱状態の結果がこれだよ!
告白は成功してこれから楽しいことが始まる筈なのに、
ちょっとだけ寂しいというか物悲しいというか不思議なお話だね。
夢の彼女と現実の彼女は別の人格って考えていいのかな、
夢の彼女は主人公と別れるのを寂しがっている風だったよね、
そして主人公も目を覚ますと何故か喪失感を感じて涙を流してしまう。
バトンタッチ的な何かがあったって事なのかな、うーん想像が膨らむね。
甲高く軋む感じがGJ
125 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 22:52:09 ID:OK9HljFy
あげ
GOODJOB!
127 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 09:45:45 ID:XXOI6kpV
あげ
これは萌える
上へ参ります
電波な子っていいよね
でんこ待ち
電波待ち
133 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 18:17:20 ID:zyT+PBgZ
保守
134 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 09:46:10 ID:SkCaiv6c
あげ
135 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 09:40:15 ID:iOVLSFrb
あげ
ひたすらでんこを待ち続ける
137 :
名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 19:27:22 ID:LPHU4gvj
保守
138 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/07(日) 15:18:49 ID:Y+AsgRQz
彼氏に「○○(私)って電波系だよね。俺電波系好きだよ」
ってい言われたの思いだした・・・
当時は意味知らないで喜んでたな(´・ω・)
なんだ、メンヘラの構ってチャン女か
萎える
まあまあ、そう噛み付かずに。
この際だから彼女の電波的エピソードでも告白してもらおうじゃないか。
141 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 12:28:19 ID:HwMdQgU7
ごめんなさい。
私は電波少女ではなく、ヤンデレとかそういう部類みたいなので
残念ですが139さんの発言はある意味間違ってないかもです…。
そうですか
143 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 21:51:11 ID:b+47/Fd2
肝心のエピソードは何か…
電波とメンヘラは似て非なるもの
……で、あってほしいw
電波とメンヘラは違うだろ
146 :
名無しさん@ピンキー:2010/03/11(木) 06:33:07 ID:09hlco4S
保守あげ
でんこー
もっと電波をぉぉぉおおおおおお
朝月曜日。雨降ってるけど散歩だよ。
という訳で798足目のゴム長に足を通し、水溜りに遠慮なく踏み入れる。
新品の長靴にわくわくするのは小学生までさ。
皆きっと心の内ではクラスの好きな子にモテたくて、履いていくのさ下着と一緒。
「あ、長靴ぴかぴかだ。おろしたて?」
「うん、そうなの。抱いて!」
だから毎日新品なら毎日わくわく!
そうだ。その為に、毎日雨が降れば良い。
所変わって自動販売機。
あったかい・つめたい・ぬるい・ヤバい、どれでもOK。
右端の微糖コーヒーを選んで、プッシュ&リリース、バッカニアーズ!
……おっとっと、お金入れてねーやテヘッ。
百円玉を放り込んで再度選択。
ブ〜〜〜〜。
何すかこれは。
「問題が発生しました。そのまましばらくお待ち下さい……」
道を歩いていると、パトカーがサイレン鳴らしながら通り過ぎて行った。
朝早いのにご苦労さん。
仕方なく別の自販機で買ったキットカットを食べながら、ぴちぴちちゃぷちゃぷらんららん。
と、後からマークUクラスの接近速度で大音量が聞こえてきた。
特別軽車両・ママチャリのカゴに防水ラジカセ積んで、”踊るダメ人間”を再生しつつ、猛スピードでペダルを扱ぐ、女の子の姿。
レインコートの中から覗く顔は、鷹の目をしておる。
そしてその視線は、目前の赤信号の先を、ただただ凝視して。
ガシャアアーン!!
静止する暇もなく、飛び出してきた車と衝突した。
小さな体が、舞う。
灰色の空に、紺色をぶちまけたような、レインコートの花。
そして女の子は、一陣の風と共に黒い鳥の姿になって、羽ばたいた。
散った羽根が降り止まない雨を吸いながら、道路へと落ちる頃――信号は青に変わった。
凹んだ車と、交差点に叩きつけられ、飴細工のように歪んだ自転車。
投げ出されたラジカセは分解して、じじ、じじ、と唸っている。
警察は大変そうだけど、まぁ馬車馬のように働け。
帰り道、路地にうずくまる女の子がいた。
傘も差さずにだだ濡れで、服も汚れちゃってる。
良いなあ、この後先考えない大胆さが。若いって羨ましい。
人類がもう少し生暖かさを持った存在なら、例えば水着一枚で雨の街に繰り出すのも面白そうだと思う。
けど、そんな発想は中学二年までには出来なくなるかな普通は。
さよならピュアハート。大人は雨に憂鬱を閉じ込めて、詩を歌うのさ。
「う……」
そうか、ならば立ち上がれ少女よ。手をお貸しします。
ルートを外れて、ここは公園の噴水。
と言っても、出来て十年経ったら動かなくなって、今や単なる溜池と化してしまった無駄な公共物です。
「わたしはこんな雨の日でも、鳥になれるんだなって、思う」
少し嬉しそうに呟いて、寄りかかってきた。
さっきやや頭を打ったらしくて、ふらふら・くらくらするらしい。
「だいじょうぶ?」
「……この感じ、結構すきなの。このままロストしても、いいくらい」
で、とりあえずキットカット要るか訊いてみたら頷いたので、手渡し。
すると、ぱくりと一口で頬張ってしまった。
酷い天気の時はいっそ、傘も差さずカッパも着ず、びしょ濡れになりたくなる。
どうせ着替えるんだし、シャワーだって浴びるもの。
女の子は、そう言って噴水に飛び込んだ。
みるみる洋服が体に貼り付いて、着衣水泳状態だ。
雨の日だからこその、素敵な出会い。わくわく感。
一緒に戯れたい――何だか、そんな気分。
「下着は、新品?」
自分が洋服を脱いでいる途中、そんなことを言われた。
ちょっぴり嬉しくて、その気になる。
噴水に浸かって遊んで、そしてどちらからともなく見つめ合っていた。
そして彼女と、キスをする。ふわふわで、少しぬるぬる。
気持ち良いのでもう一度。更に、何回も。
噴水の、そして雨の中で裸んぼうなのは、とても解放感があって、楽しいしどきどきする。
「はぁ、はぁ」
濡れた体は急速に熱っぽくなって、抱き締めても収まらない。
判断問わずに勝手に洋服と、そして下着を脱がして、肌を直に撫で回す。
小振りなおっぱいと、まだつるつるな陰部。
ちょっと硬い端に彼女を座らせて、触れながら押し倒す。
キスしながら巧みに体を交えて、気持ちを昂らせる。
「はぁんっ……んあっ」
熱い愛液が股を滴って、止まらない。
「あっ……飛ぶっ、飛んじゃう――っ!」
そして、指を入れて解していた先から、彼女のそれが更に溢れた。
体を大きく仰け反らせて果てて、荒い息継ぎ。
「……気持ち、よかった」
「今度は、もっと気持ち良くしよう?」
そう言うと、彼女は酩酊したような表情のまま、頷いた。
野外、公園の噴水際で、裸んぼうさんが二人。
「あっ、あっ……はぁっ!」
体内に竿を突っ込んで、抜き差しを繰り返す。
凄く締まる。擦れる内部は熱く、外は濡れて水滴がぴちゃ、ぴちゃと音を出す。
「あんっ……あはぁっ……!」
「もうすぐ、出るよっ!」
勿論、中に出す。体内に熱いものを注がれる感覚は、多分鳥になるくらいの快感。
それを、覚えさせてあげるよ。
「!」
「――っっっ!!」
ああ、気持ち良かった。
「……すご、い……わたし、空、飛べた……」
薄く開いた目から、水が滴り落ちていく。
濡れた全身は少しだけ頼りないけど、自分にはちょうど良い。
「立てる?」
「うん。でも、汚しちゃった」
彼女はこちらの、濡れた下着を心配してる。
だいじょうぶだ〜。そもそも、何から何までいろんな液体でかき混ぜてしまってるもの。
「家においでよ。全部洗濯して、乾燥機かけよう」
「! ……うん」
シャワーを浴びて、温かい飲み物でも飲んで。
ああ、なんて幸せなわんでい。これだから雨の日はやめられない。
全裸で町を闊歩。早朝なので人目は、感じなかった。
「時に、自転車は?」
「空を飛べるなら、あんなものきっと――いらない」
そう言うと、繋いでいた手を一層強く、握られた。
素肌に降り注ぐ雨が、バカみたいに優しい。
きっと、バカに永久就職出来るならその方が良いよね。
うん。踊り出したくなるような、ソフトレイン。
やっとの帰宅。
煩わしい物は全部消毒するように洗濯機回す。
これって爽快! 何で世間はこれを精神安定手段として用いないのか。
砂の城を作って壊す――子どもの頃から、やってたことさ。
それから彼女と一緒に悪戯しあっこしながら、シャワーを浴びる。
「風邪ひかないと良いけど」
でも彼女は、熱が出てちょっと頭が痛くなったら、またしばらく飛び続けられるって、笑った。
そして頭痛が退いてきたから、またしばらく、可愛がってほしいとおねだりされる。
ならばと体を拭いて、サポータータオルで二人合わせてぐるぐる巻き。
じたばたとはしゃぎつつ自分の部屋に戻って、テレビなど付けて。
退屈でいつもと変わらないニュース色のBGMを聞きながら、密着した体を、もう一度熱く。
それから、ぐちゃぐちゃ。
落ち着いた呼吸が等間隔に、聞こえてくる。
腕に巻きついた彼女の体。目は優しく閉じて、口元は少しだけ笑ってる。
自分も少しだけ、休もうかな。
ちなみに外は、相変わらず暗くどんよりしているけど、雨は止んでいた。
テレビ番組は四つか五つくらい尺が進んで、経済情報をやってた。
そこでの週間天気予報に、赤い太陽のマークは無かった。
曇り、そして雨。
良いことが続きそう――なんて素敵な感情を枕に、眠っていく。
今日見たのは、そんな雨の夢。
おわり
gj
久々な投稿だな
ゆんゆん
>>149 GJ!
梅雨のシーズンに読むと味わい深いですわ
保守
電波をくれ
受信
158 :
名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 03:17:05 ID:Zklz37fA
投下します。
電波文とか狂った人のふりすりゃ書けるかも、と思ったけど無理無理マジ無理でした。
とりあえず一人称ヒロイン? 視点。ぜんぜんエロくないよ。
私、御手洗 湊には、同級生の彼氏がいる。
その彼は面倒見がとっても良くて、いつも学校に行く前に私の家に侵入してくれる。
だから嬉しくていつもいつも五指と五指をかためて彼の顔面に投げ入れちゃう。それが日常。
「おはようっ」
「おはよ゛ぶっ゛」
いつも熱い彼の鼻から出る赤い汁を飲むのが私の日課。五指についた赤を舌で舐めとる。
赤と赤は色合い的にも相性が悪いかもしれないけど、二乗は単数にも勝てるかもしれない、だから嬉しい。
彼の汁はいつも鉄の味がする。今日も鉄の味がした。
よくよく考えてもみれば、鉄の味は鉄分摂取だから健康にいいのかもしれない。
健康を考えてくれる彼氏の身体構造にどきどきしつつも、舌はとまらない。
五指と五指、関節部についた赤はなぜかとりわけおいしくて、ぺろぺろぺぺろ。
「おいしい」
「そ゛ふかい゛」
くぐもった声の彼の手を引いて、私はいつものように通学路をいく。
朝日を浴びながら、犬の声と車の走る音を聞きつつ、私と彼は学校に行き、勉強を受ける。
それが代わり映えのしない一日を構築する要素であって、私に不満点は寸毫微塵たりともない。
鼻血を流す彼の顔を見つつ、私は精一杯に媚びた仕草で上目づかいし、口を開く。
「ねえ、今日は何がたべたい?」
「なんでもいいよ」
「ふぅん、なんでもいい、が食べたいのね」
「それは困る、僕の知らない名前の料理だ」
「知らないって……、自分で言ったじゃない、なんでもいい、って」
「そんなこと言ったっけ?」
「言ったわよ。若くして痴呆症なんじゃないの?」
「困るよ!? まだ働いていないから年金もらえない!?」
陽光輝く街道を行きつつ、私の足はバレエのダンサーのように前後左右斜めに動く動く。
軽やかなステップをひとつひとつ踏むたびに、コンクリートの地面がコツコツと音を立てて恍惚の一時。
前を行く電車の風圧にスカートがめくれそうになって、あわてておさえれば転んじゃう。
私ったらドジなのね、でもそれは幼少期から変わらない癖だからもうあきらめ気味のそれ。
「今日は白だね」
「そうよ、白よ。汚れが目立つ白よ」
「僕は紫が好きだなあ」
「そう、じゃあ明日は紫色のパンツをはいていくわね」
下着の色を気にする暇もあらばこそ、私と彼はあっという間に学校にたどり着く。
そこは白い壁が目立つどっしりとした建造物なんだけれども、人の数はそこそこあって、若い男女の声音が絶えない。
いつものように下駄箱で靴を脱いで上履きをはきつつ、鉄扉を閉めて彼の方に足を運ぶ。
教室に入りつつ挨拶をし、私はふと今日見た夢のことを思い出す。
よく彼を食べる夢を見るんだけれど、今日の彼はミディアムレアで、いつもよりおいしい気がした。
だから私は教室に入るなり、彼の目を見て口を開く。
「ねえ、あなたの体、食べたくなったわ。食べさせて?」
「いいよ、でも駄目だ」
「いいのね! ありがとう! ちょっと駄目ってどういうことよ!」
「駄目なものは駄目なんだ」
「嘘つき! 食べさせてくれたっていいじゃない!」
「僕は君の栄養になりたいけどなりたくないよ」
「なによそれ! 矛盾しているじゃない、この童貞!」
「処女に言われたくないね!」
「ああ困ったわ、説得力がないわね、確かに。だったら捨てよう、捨てましょう!?」
「ああそうしよう!」
口喧嘩をする暇もあらばこそ、すぐに仲直り。私と彼はバカップルだ、うん。
彼と屋上に足を運んで天井こえて、天上天下にて性なる生をキャッキャウフフ。
濡れそぼった性器が自らの股間を貫く際の痛覚は、まさに光る雲を突き抜けてフライアウェイ。
そこまで想像した自分の股間から、妄想汁が創造、白い布に染みわたって、シミになりて早々に葬送。
妄想で色々と達してしまった私は、よだれを垂らしたままに彼の顔をねめつける。
「わあ、またあの二人、痴話喧嘩してるっ」
「なんちゅうもんを見せてくれるんや……、なんちゅうもんを……」
外野の声。それに私の頬は赤らむばかり。
やっぱりはやしたてる声を聞くと恥ずかしいったら恥ずかしい。さっきまで喧嘩をしていたから余計に。
痴話喧嘩、という言葉に照れた私は、逃げ場を模索、屋上へと決める。
「やれやれ、こんな喧嘩を痴話喧嘩と言ってるようじゃ、本当の痴話喧嘩を知ってるかどうか怪しいもんだ」
クラスの山岡くんが窓に向かってひとりしゃべり続けている。
相変わらず死んだ水墨画のような目。どこを向いているのか分かるような気がする。
「明日もう一度ここに来てください。本当の痴話喧嘩をご覧に入れますよ」
頬の熱さは羞恥の証、面の皮の厚さは英雄の証。
私と彼は山岡くんを蹴り飛ばしつつ、教室の出入り口へと向かった。
「もうっ、行きましょう、恥ずかしいわ」
「うん」
私は彼の手をぐいと引いて、一気に屋上まで向かう。
階段を上って走り走り、いつものように鍵を開け、アスファルトへとダイブ。
彼と共に学校の屋上に舞い降りる。私たち以外誰もいないそこは、さながら爆弾投下後の市街地。
「ねえ……しよっか?」
「うん……」
恥ずかしい気分のままに来たために、私と彼は目と目と口と口と股間と股間で合図し、セックスすることにした。
屋上。日光を浴びつつ互いに半裸になって十数分。
前戯もそこそこにする暇もあらばこそ、彼はいきなり股間のブツを私の膣に突き入れた。
「ん゛あぁーーーっ!? すごい、すごいぃぃっ!? 本土決戦B29ぅぅぅ!? 竹槍、竹槍に負けちゃうのぉぉぉぉっ!?」
彼の股間の竹槍に、落ちるカトンボ堕ちる汁。
汁が知る知る、知る人ぞ知る、私の欲情は最高潮! すごい絶頂、大決戦!
彼の股間の竹槍が、ひとつひとつ私の膣という国につきこまれるたびに、ひだという名の兵士が震える震えるふるふる震えるフルフルベビー。
彼の一突きはまさしくマラリアのごとく、私の兵士たちを麻痺させ、痙攣させていく。
「ぁぁぁあーーーッ!? 戦死者、戦死者がでるのォォォッ!? 救助隊きてーーーーッ!?」
何度も何度も槍を入れられ、私の国はグロッキー。そろそろ終わりも近い頃、うねりを見せるは兵士たち。
「んァぁーッ!? 落ちちゃう、国が落ちちゃう、属国になるゥゥッ!? お米の国に隷従しちゃうぅぅっ!!」
そうして、次の瞬間、新たな増援部隊が私の国に投げ入れられた。
そう、彼は精液を解き放ち、私の膣にぶちまけたのだ。
「ンほォォォォォォぉぉッ!!」
同時、私も絶頂。
のけぞらせるように背を弓なりにしならせながら、バナナのごとく身を曲げさせ、熟す股間はスイートスポット!
強烈な快楽が背と身と脳を焼く中で、私はひとつのうねりを感じた。
新たなる時代! 生と清の聖なる性を感じる! 有精チン泳化!
――その時、私は光を見た。
精液が膣にぶちこまれた際、のけぞりながら見た太陽。天に輝く強烈な光。
その太陽の奥に、白い妖精が垣間見えた。
それは実体をともなっていなかったけれども、網膜が教えてくれた。ここにいる、と。
太陽の奥の奥の奥の奥にある光のさらに奥にいる妖精の白は、とてもまばゆくて直視できるものではなかったけれども。
それでも感じたわ、神はいるって。
そう、白い妖精は神、絶頂の際に見えた妖精こそが太陽神だったの。
自分はラーの導きによって新たな生を膣に宿し、楽園に響き渡る福音が私の股間から生まれ、世界に存在を落とす前触れだとはっきり理解することが出来たわ。
だから私は大きな声で言った。
「ねえ、赤ちゃんできちゃったみたい!」
世界は、白く美しい。
新たな命に、どうかその美しき輝きの祝福を授けてくれることを、私は強く願った。
(終)
投下おしまい。なんだこれ。
電波というよりかはこれじゃあ色々と足りない子になってしまった。
やっぱり真人間である自分が狂った人のふりをして文書くのは限界があると感じた瞬間でした。
もう二度と電波なんて書かないよ。レスキュー隊のみなさんには、本当に感謝しています。
ちなみにこの痴話喧嘩はスタッフが後でおいしくいただきました。
第二次世界大戦中の日本の思想は危険だと、やっと最近気づくようになってきた自分です。
GJ!
そこまで気にしなくても良い、素敵な作品だと思うんだが…また何か書いてほしいです
そういえばこのスレもそろそろまとめ作るべきじゃないか?
166 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 10:31:05 ID:1oLiDJay
電波が見える女の子
167 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 20:07:15 ID:ELCwRCYI
誰
何
169 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 22:34:08 ID:Uga/oKYv
そ
れ
171 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/21(火) 19:11:54 ID:HRCaIkOy
理想の彼女のつくりかた読んで、ここのこと思い出した
作者が電波でかわいい
あけおめの電波をとばされた気がして来てみた
173 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/18(火) 22:40:03 ID:1r0KAzAE
age
174 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/21(金) 14:50:44 ID:AFT7kX9a
ともだち同盟 / 森田季節
登場人物がこのスレ向きだと思ったのでカキコ、
自称魔女の毒舌女子が主人公に呪いをかけるお話。
オススメ!
175 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/03(木) 02:23:41 ID:pr3IeWIN
是非、買ってみます
176 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 02:07:55.13 ID:S6cT1tQZ
age
177 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/06(水) 15:16:30.98 ID:xg0IgSXi
過疎
178 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/17(日) 23:37:21.33 ID:hxeyHTeY
でんこ期待age
179 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/29(金) 08:06:46.88 ID:aQ2Pc5Tz
電波女と青春男
それのスレ立たないかな
エリオ可愛いんだが
みーまースレが兼ねてる
ほしゅ
ほっほっほ
最近電波不足ですが、保守ついでに置いておきます
大きな石垣の家の庭に、ビニールプール。
聞こえてくる調子外れの歌。
君は昨日まで長かった髪をばっさり切って、夏に映える短さに。
スクール水着姿の肌色と紺が、水面に揺らいで混ざる。
「元気そうだね紫子さん」
声をかけると、ばしゃ、と振り返ってきた。
君の名前は剣付紫子(けんづきゆかりこ)。
「お〜ユッケくん。今日はあまりに焦げるんで水道水浴だ。えへへ」
そして幸比良縁太(ゆきひらえんた)、通称ユッケは俺のこと。
「病気の方はもう良いの? 補習休んでたね」
「心配ないのら。そだ、ちょうど良いとこにいるついでにお前も入れ」
外見はクールでも中身は……初対面なら少し壊れてる印象を第一に受けるだろう。
「水着なんて持って来てないんでね。持って来たのはお見舞いにと果物の盛り合わせ」
「よっしゃ、冷やして三時間後に食べよう。余ったらジューサーにかけてカクテル作るぞよ」
「庭がホテルのプールサイドになる訳ね」
「見ろ、水面がきらきらひかる宝石のようだ。私は今、多分世界で一番お金持ちに違いない」
「なかなかセンスの利いた発想だと思うよ、うん」
こうして話の調子を合わせるのは割と簡単だ、と言うか、勝手に繋がる。
「そうか。今私は気分が良い。苦しゅうない近う寄れ」
「この前みたいに噛みつかないよね」
「じゃ、背を向けておこう。これで噛みつけないから、ここまで来て肩に触れ」
「具体的な指示されると何だか恐い」
「愚図愚図抜かすとまた歌うぞ」
う〜み〜は〜ひろく〜て〜 おおきい〜が〜
そ〜こ〜をかえせ〜ば〜 からの〜おけ〜
「理解不能な割に歌は上手いのが不気味だよ。じゃ、分かった」
「……」
「……はい」
君の肩は水に濡れて、つるつる冷たい。
「ようこそ、私の世界へ。ここは誰にも邪魔されない、独立空間だ」
「肩に手を置かしたのはどういう意味が?」
「お前も私の一部に触れたからには、この世界に重みを加える者だ。そして、私は常にお前と共にある」
「紫子さんと、俺が?」
君の言動はナンセンスでも、害は無いと分かってる。
噛みつくのだって、じゃれたつもりなんだろうし。
「さあ、好きにしろ。肩を揉んで良いぞ」
「んー、じゃあ、肩を揉む」
「……」
俺はこういう接し方をするのが、何となく好きだ。
難しく考えないでも、適当に通じ合うことが出来る君。
「……どうっすか?」
「体が、落ち着く。わふ〜、快感なりよ」
「果物は冷蔵庫に入れて来なくて良い?」
「おっといかん、頼むぞ。三時間はここにいるな?」
「用事がない訳じゃないけど、是非にと言うならいるよ」
「よろしい。今から私たちの三時間世界としよう」
君は俺を、何した訳でもないのにただ信用してくれてる。
「勝手に上がりこませてもらって冷蔵庫に入れてきたよ、良い?」
「よろしい。お前もこのスペースに入って来い」
君は普通の女子より開放的で、でも人見知りなところもある。
俺には特に許された、慣れ合い。
「だから水着がない」
「裸で構わない。この世界の三権は私の掌中だ。何もおかしいことじゃないぞ」
「でも外は360度日本な訳で」
「む。折角お前をキンダガートン卿に任命しようと思ったのに。マァ、ならば私を満足させてみぃ」
「ほ。と言うと?」
「水が温くなってきた。だが蛇口を捻りに行くのが恐いのじゃ」
水道まで大した距離じゃないものの、
「仰せ仕りました」
「ユッケくん」
と、君が手首を掴んできて、そこだけ涼やかに湿る。
「何?」
「終わったら、しばらく私の傍にいてくれな?」
「うーん」
「辛いか? ここではお前のリクエストもお待ちしております」
「だったら、イスを貸してもらえれば足くらいなら浸けられるよ」
「なるほん、暑いのでその方が良い。準備しておく」
「水は出ていますか? このくらいで」
「ヨロシ。しばらく出しっ放しで良いぞ。イスはこれで」
「いつの間に準備したんですか」
「電波探しの為に買った、防水ラジオ置きだ。話し相手がいない時は、これでノイズを聴いたりする」
「ノイズに耳を傾ける女の子なんて、やだ可愛い」
「えへへ、照れるな」
性格と口調に、いまいち不似合いな笑い方だなと思う。
でも、こういう時に素直過ぎるくらいに喜ぶのは、嫌いじゃない。
「じゃ、足だけ失礼します」
俺は裾を膝まで捲って裸足になって、少し洗ってからビニールプールへ浸かる。
「ホースを少し、こちらに向けてほしい」
「はい」
「っ、ふは〜」
「頭から浴びるのね」
「冷たくて新鮮な水道水ようこそ」
君は目の前で、遠慮のない素顔を見せてくれる。
「紫子さん、何か雑談でもしようか」
「分かった。お前の相槌があると安心するからな」
向かい合うように体育座りした君。
君は俺が昔からそうであるように、何気なく話しかけられるのが、触れられるのが好きなタイプ。
だって自分からそうするのは、苦手だから。
「三時間、こうしてるのも暇だね?」
「何、時間は使うものじゃない。食べるもの也」
「時間は栄養、無駄なんて無いんだよってこと?」
「うむ。虚弱体質の私でもほら、今は生きてる実感がして、元気だ」
「自分で言うか虚弱体質」
「暇なら入って来い。言葉だけでは飽きる。遊ぼう」
「そんなに裸になってほしいの?」
「コトワリに従わないのも楽しい。神様だってきっと慌ててる」
気紛れに、原因と結果を経ない生き方。
隠れ家が好きな子どものような君の目はいつもきれいで、俺の中の何かを誘発する。
「やっぱり紫子さんのこと、好きだな」
好みというか、潜在的な波長が合う感じだ。
多分俺の一部と近いものを持っていることに、惹かれるんだ。
君を知れば自分が分かるのではないかという、変な哲学。
君はビニールプールから立ち上がると、俺の膝に手を突いた。
「ちょっ、何? いやん、濡れる」
「……ん」
「っ?」
唇は少し冷たかった。
前屈みになって、前触れも感じさせずに口づけされた。
薄目を開いた君は、そのまま俯いて、溜息。
「どしたの?」
「お前とこの空間にこもりたい。もっと、近くで」
何だろう、いつになく感情的になってきてる。
「私は、独りぼっちだ。慣れて、それが好きでいられるようにはなった。でも、独りは寂しい」
「分かるよ」
本当は孤独の裏で、誰かにだけ甘えたいと思う。
「お前が構ってくれると、私はどんどん歯止めが利かなくなる。嬉しくて、おかしくなる」
「うん」
「でも、やだ。本当はお前に、まともな私を見せたいと思うのに、頭の中は修飾されてぐちゃぐちゃで……」
俺は宥めようと、君の頭を撫でた。
「無理して変わろうとしなくて良いよ、紫子さん」
「……だが、みんな私を避ける……くすん」
仕方ないから、一緒に入ることにした。
君の心が不安定なのは、あまり認めたくはないことだ。
ただ、君は俺を頼ってる。
それだけは、ブレてる感じがしないんだよな。
「ちょっと待ってね、脱ぐから」
「……?」
俺は全裸になってしまうと、軽く体を流した。
こんな格好でも、別に見られて恥ずかしいとは思わない、君には。
「隣に入るよ? そしてほら、こうしたら、少しは心強い?」
正面から包むように抱く。
「……うん。えへへ……ぐすん」
と、君もすっと腕を回してきた。
「抱き着き上手だな、紫子さんは」
「うっ……お前だけは、私の味方で、いてくれるんだな?」
「そうだね。紫子さんの空気が、俺には居心地良いから。だから、泣かないで」
「……ちゅ」
「ん」
今度は自然と舌が絡む。
「ふ……あ」
「ぷは……冷たくて、気持ち良いね」
「はむ、ちゅ」
「一旦始めると夢中であちこち吸いつくんだから、可愛いな」
君はストラップを下ろして、腕を抜く。
「水着、脱ぐの?」
「不平等だから、私も裸になる、ん」
「何だかとても扇情的」
「お前と、一つになる」
「でも、近くに誰かいたら、気づかれちゃうよ?」
すると反論の代わりに、黙らせるように口づけてきた。
「……っ」
半水中で求め合いながら、俺は脱がすのを手伝おうと手を宛がう。
すると君はあっさり委ねて、されるがままになる。
「ここ、結構着痩せするね」
「あっ」
水着の締まりから弾き出された胸は、柔らかくて大きい。
心も体も、今は俺の独り占め。
「あ……あっ」
水音と、君の嬌声が結構響いてる。
辺りはプールから溢れた水で水浸しで、蛇口からも出しっ放しだ。
でも、止めに行くのさえもどかしいくらい、君と離れられずに、ただ濡れたい。
「はぁっ……もっと」
求められて大きくなって、受け止めようと締まる君の中。
最初は水の中で静かに、擦るように触れ合わせた。
それが今は物足りなくて、向きを変えながらちゃぷちゃぷ、夢中で腰を動かしてる。
「紫子、さんっ」
「ユッケ……くっ」
もっと大胆になりたい。
理性より本能が、君のきれいな体を隅々まで堪能して、取り入れようとする。
「っ……もう、我慢、無理っ」
「私も……いくっ!」
「うっ!」
びり、と下半身に熱いものが走って、君に包まれた奥に、
「……っ!」
妊娠するかもしれない所に、俺のが出ていく。
俺は体勢を固定したまま、向かい合った状態の君の顔を見ていた。
俺も、そして多分君も、体の中でいろいろ、混ざり合っていく快感に浸っていた。
落ち着いてきたので、俺は抜こうとした。
しかし君は首を横に振って、両手を広げて抱っこアピール。
「……ユッケくん」
仕方ないから、入れたままゆっくり抱き上げて、座り直す。
しがみついた君は、
「えへへ……また、キス」
と耳元で笑って、せがんできた。
「ちゅ……ぱ」
繋がったまま、君の裸をこうして抱いてると、また少しむらむらとしてくる。
「ふ……紫子さん」
「う?」
「二人だけでいられるって、良いね」
それから以下略があって、後は、裸のままで君が言う水道水浴。
「ユッケくん」
「上機嫌だね、紫子さん」
「えへへ、お前のお薬、いっぱいもらったからな」
髪もすっかり濡れて、張りついてしまってる。
「そろそろ、三時間くらいになるのでは」
「もうか。そいや、喉が渇いた。よし、果物の盛り合わせ、いざ食べん」
「上がるよ?」
「ここで食べるのも悪くないぞよ」
でもいろいろ、やりすぎてしまったからな。
「そう言わず、扇風機にでも当たりながら」
「ヨロシ。ならば手を貸せ諸君、お前とバスタオルを分け合おう」
最後に、家の中に上がりこんでデザートタイム。
「冷や甘で、おいしい〜」
「それは良かった」
半乾きの髪と、薄いフリルのワンピースが子どもらしく映る君は、ただ幸せそうだ。
「扇風機も気持ち良いし、紫子さんも可愛いし」
「そうか、えへへ……じゃあ、私のパイナップルを分けてやる。あ〜んだ」
「あーん」
君は変わってると思う。
でも、接していれば応えてくれる、柔らかな人だ。
そんな君が、俺は好き。
おしまい
言葉選びも電波に合う透明感があっていいしエロい
GJ
今更このスレを発見したんだけど、でんこちゃんが可愛すぎる
保守の電波を送信(´・ω・)