【友達≦】幼馴染み萌えスレ18章【<恋人】

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1名無しさん@ピンキー
 幼馴染スキーの幼馴染スキーによる幼馴染スキーのためのスレッドです。
■■ 注意事項 ■■
 *職人編*
エロパロ板のスレですが、エロは必須ではありません。
ラブラブオンリーな話も大歓迎。
書き込むときはトリップの使用がお勧めです。
幼馴染みものなら何でも可。
*読み手編*
 つまらないと思ったらスルーで。
わざわざ波風を立てる必要はありません。
2名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 22:59:36 ID:zq1GZIpx
          _人人人人人人人人人人人人人人人_
         >      ごらんの有様だよ!!!  <
           ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^
_______  _____  _______    ___  _____  _______
ヽ、     _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、   ノ    | _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ  、  |
  ヽ  r ´           ヽ、ノ     'r ´           ヽ、ノ
   ´/==─-      -─==ヽ   /==─-      -─==ヽ
   /   /   /! i、 iヽ、 ヽ  ヽ / / /,人|  iヽヽ、   ヽ,  、i
  ノ / /   /__,.!/ ヽ|、!__ヽ ヽヽ i ( ! / i ゝ、ヽ、! /_ルヽ、  、 ヽ
/ / /| /(ヒ_]     ヒ_ン i、 Vヽ! ヽ\i (ヒ_]     ヒ_ン ) イヽ、ヽ、_` 、
 ̄/ /iヽ,! '"   ,___,  "' i ヽ|     /ii""  ,___,   "" レ\ ヽ ヽ、
  '´i | |  !    ヽ _ン    ,' |     / 人.   ヽ _ン    | |´/ヽ! ̄
   |/| | ||ヽ、       ,イ|| |    // レヽ、       ,イ| |'V` '
    '"  ''  `ー--一 ´'"  ''   ´    ル` ー--─ ´ レ" |
3名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:01:32 ID:f460919/
前スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ17章【<恋人】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1231947127/

16代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ16章【<恋人】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1221583669/
15代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ15章【<恋人】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205778691/
14代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ14章【<恋人】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199161005/
13代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ13章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187193091/
12代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ12章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179023636/
11代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ11章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171471579/
10代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ10章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161975824/
9代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ9章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153405453/
8代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ8章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147493563/
7代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ7章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1136452377/
6代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ6章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1130169698/
5代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ5章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1117897074/
4代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ4章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1110741092/
3代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ3章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1097237524/
2代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ2章【<恋人】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1078148899/
初代スレ:幼馴染みとHする小説
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1073533206/
4名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:03:01 ID:QotSGgHU
*関連スレッド*
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第9章(派生元スレ)
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1206353662/
いもうと大好きスレッド! Part 5(ここから派生したスレ)
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1230646963/
お姉さん大好き PART6
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1216187910/

*これまでに投下されたSSの保管場所*
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/

--------
次スレはレス数950or容量480KBを超えたら立ててください。
では職人様方読者様方ともに今後の幼馴染スレの繁栄を願って。
以下↓
5名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:05:10 ID:QotSGgHU
「うっ……」
「どうしたんだよ、一子」
「……スレ立て失敗しちゃった。てへ」
 見ると、微妙に形の崩れたテンプレが。
「あー、これぐらいならまだ何とかなるだろ」
 俺は一子からマウスを奪い取って、残りのテンプレをコピペしていく。
「……ごめんね、はじめちゃん」
「なんだよ、急に」
「小さい頃から私の失敗の後始末させちゃってるもん……迷惑ばっかりかけて……」

 ビシッ!!

 気分の沈みかけた一子にデコピンを喰らわせる。
「痛っ!!な、何するのよ!?」
「俺がいつ迷惑だなんて言った」
「で、でも……」
「これまで迷惑と思ったことは一度もねぇよ」
「……ホントに?」
「ホントだ。ほら、新作投下するんだろ?」
「あ、うん」

「……好きなやつに頼られて、迷惑なんて思うわけ無いだろ」
 既にモニターに向かってあれこれと操作をしている一子には、このつぶやきは聞こえなかったみたいだ。


「……はじめちゃん」
「ん?」
「ごめん、今度は投下失敗しちゃった」
「…………」
 はぁ、とため息をついて、今日二度目のデコピンを一子に喰らわせた。

6名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:12:00 ID:QotSGgHU
というわけで>>1乙。
失敗なんて誰にでもあるさ。

ついでに即興で作ったのを投下。
以下、職人の降臨をお待ちしてます。
7名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:21:55 ID:A9rGOZZ8
>>1乙。立ててくれてありがとね
>>6
即興乙。いいスタートだ
8名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:36:27 ID:A9rGOZZ8
「ふむふむ、これが新しい家ね……ま、そこそこ過ごしやすそうじゃない」
「……えー、と。一美ちゃん?」
目の前の少女に話しかける。
彼女はいつものように、きつめの視線をこちらに向けてきて。
「なに、六郎。どうかした?」
「いや、どうかした、って。何でここにいるのさ」
「……バカねー、決まり切ってるじゃない」
呆れたように首を振ったあと、ビシッとこちらに指を突き付ける。
「あんたが新しい家に越すっていうから着いてきたんじゃない」
「え、えぇっ!?」
こちらが慌てるのもどこ吹く風、彼女は当然のように続ける。
「あんたのことだから、自活なんてできないでしょうし。
 どうせ大学は一緒なんだから、生活リズムも変わらないでしょ?」
なんて、軽々ととんでもないことを言う。
「六郎のことは任せたー、って、おばさまにも許可はもらってるんだから!」
尚も続ける一美ちゃんに、一つ確認しないとダメ、だよね……?
「で、でもさ、一美ちゃん、家は?」
「は?ここに住むに決まってるじゃない……」
「それって……ど、同棲じゃぁ」

5秒。10秒。
ポンッという音を立てて、彼女の顔が真っ赤に染まる。
「ば、バカじゃないの!?あんたと私は単なる幼なじみ!そういう関係じゃ、絶対ないんだから!」……彼女には、もう少し「他人の目線」が必要かも……


負けずに即興。だが負けた
9名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 01:59:54 ID:jZTfbusf
GJ!

さい先の良いスタートだな。 このスレにも幼馴染みがたくさん訪れますように…
10名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 20:25:19 ID:GgXmOTNp
即死回避も兼ねて、何か短編でも書くか。
秒数が、
0〜3、幼馴染みがクール。
4〜6、幼馴染みが甘えんぼう。
7〜9、幼馴染みがヤンキー

11名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 20:27:24 ID:GgXmOTNp
今度はする事。
秒数が、
0〜3、エロなし。
4〜6、キスまで。
7〜9、アナルセックス。
12名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 20:28:35 ID:GgXmOTNp
ヤンキーとキスか……
13名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 20:31:56 ID:igsIvbM5
間違えて分数を見て甘えんぼう幼馴染とアナルセックスかチャレンジャーだなと思った
俺のときめきを返せ!
・・・普通のセックスは候補に無いのな
14名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 22:31:31 ID:TPEcw/xR
どっちも読みたいww
15名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 22:56:39 ID:LqWcTTl4
「あ、あなる?」
いつものように、あまぁい時間を過ごしていた午後。
俊ちゃんが「いっぺんアナルでやってみたい」と言い出したのがきっかけだった。
俊ちゃんはいつも私を優しく扱ってくれるけど、何だか今日は様子がおかしい。
ベッドの中で、お互い裸で寄り添っている今でも、何だかハァハァと変に興奮しているし。
「あ、あなる、って……何?」
普通のセックスとは何が違うんだろうか。
俊ちゃんの様子も相まって、私はちょっとびくびくしている。
そんな私の様子に気付いて、俊ちゃんは頭を撫でてくれた。
この瞬間が、一番好きだ。
俊ちゃんに頭を撫でられると、いつだってポワポワって気分になって、ギューってしたくなる。
……だから、次の瞬間囁かれた言葉は、私をいつも以上にびっくりさせた。
「え、えぇっ!?そ、そんな場所、汚な、はぅっ!」
私が言い終わらないうちに、俊ちゃんの手がそこに伸びる。
カリカリと引っ掛かれて、何か変な感じ。
「だ、ダメっ!いくら俊ちゃんでもそれはダメ!そこは違うの、ちがっ、んっ!」
クニクニと弄る手から逃げようとするけど、じたばたと動いたところで俊ちゃんは逃がしてくれない。
私はもう混乱しちゃって、泣きそうで、実際涙で目が潤んできて。
「ふぇ……もぉ、やだぁ……」
そう言うと、俊ちゃんの手が止まった。
もう片方の、さっき頭を撫でてくれた手で、私の涙を拭ってくれた。
ごめん、と謝る俊ちゃん。
申し訳なさそうで、でも何だか残念そうで。
私は、私の言ったことを後悔した。
だって私、俊ちゃんのそんな顔、見たくない。
私のせいで、私の愛しいこの人を悲しませたくなかった。
「……ごめんね、俊ちゃん」
俊ちゃんが悲しむと、私も悲しい。私は俊ちゃんに笑っていて欲しいのだ。
俊ちゃんは首を振る。ありさが泣くのは嫌だから、と言ってくれた。
そんな俊ちゃんが愛しくて、私は、
「しゅ、俊ちゃんがどうしても、って言うなら、そ、その……」

……してもいいよ、とは言えなかったけど。
またいつか、機会があればということで。
私はそれから、痛くないようにする練習に励んだりするんだけど、それは、俊ちゃんには内緒。


残念だがワッフルワッフルって書いても続きはないぞ
……これ幼なじみモノか?
16名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 06:40:17 ID:xVvMdjnW
いいなあ可愛いなあ……。


ところで前スレ>>668
袖擦り合うのは「多少」じゃなくて「他生」の縁な。
すれ違って袖が擦り合うくらいの小さな縁でも、他生(前世)からの運命がそうするんだって意味。

…………袖が触れるだけでそれなんだから、幼馴染みなんてあらゆる前世で繋がりがあるんじゃね?
17名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 21:09:20 ID:J8a/2qWm
袖振り合うも他生の縁じゃなかったか?
会って分かれる(手を振る)事も他生からの(ry

つまり巡り合うのは運命なんだよ!
18名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 21:36:10 ID:VjFbDQrT
「命」を「運ぶ」と書いて運命!

.........とはよくぞいったものだ......フフ
1912:2009/05/22(金) 21:55:39 ID:pwu6G1Hp
投下しようとしたら、寝てしまった……
3レスで終わります。次から投下。
20名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 21:58:21 ID:pwu6G1Hp
1
 太陽は沈み、月は星に照らされて輝き、それすらも街のネオンライトで霞んでしまう。
 光は光を消し、夜を消して闇を消す。眠りを知らないココでは当たり前、歌舞伎町では当たり前の光景だ。
 しかし月に一度、その光でさえ主役を奪われる。
 満月の夜。月の満ちる夜。首都高速を駆ける幾千のヘッドライトは列を為し、龍の姿を形作って闇を殺す。
 その鱗はバイク。幾千のマシンが、幾千の光を放ち、地面を轟音を響かせて翔けているのだ。しかも搭乗者は全てが若い女性で、胸には晒しを巻き、赤い特攻服を身に付けている。
 関東を代表するレディースグループ、九龍(クーロン)。そしてトップに君臨するのは、若干18歳にして喧嘩上等、恐怖と暴力の象徴、龍頭 サヤ(りゅうがしら さや)。
 その少女は赤かった。
 髪が赤かった。腰のラインまで伸びた赤髪をなびかせ、翼の如く闇に羽ばたかせる。
 瞳が赤かった。天然のルビーよりも深く澄んで、過ぎた道程に残光の軌跡を描く。
 唇が赤かった。異性の注目を一身に集め、同性の嫉妬を憧れに変える、乾き知らずで、いつも僅かに濡れているセクシャルポイント。
 拳が赤かった。殴り飛ばした相手の返り血で何十にも塗り替えられる。
 赤く、朱く、紅く。そのアカ全てを統べる。背中に昇り龍の詩集が施された赤い特攻服、更には操るバイクですら赤い。
 スモーキーレッドに塗装され、マックススピードが240キロを超える違法カスタムのモンスターマシン。HONDA製の大型バイク隼(ハヤブサ)、デスモドゥス。

「カッ、龍神降臨ッ!!!」

 この時代と限定するなら、龍頭サヤは間違い無く最強の不良だろう。強さも、カリスマ性も、女としての美しさも。
 だが……この日。関西のトップグループ、暗黒一家を潰した日。この日を最後に、九龍は永久に解散された。同じく、龍神と言われた龍頭サヤも、この日を堺に姿を消したのだった。




    『龍頭サヤの蕾』




 はっ、なんだよそれ?
 産まれた時から決められた許婚が居て、ずっと遊ばずに勉強させられて、仕事を覚えさせられて、人里離れた場所でひたすらに扱かれて、やっと帰って来れたのに……
 そしたら、五年振りに会ったら、許婚が、幼馴染みが、ヤンキーになってましたって、どんな冗談なのっ!?
 小学生の時までは隣に住んでて、1歳年上のおねーさんで、好き……だったのにっ。だから頑張れたのにぃっ!!

 あははっ♪ 久し振りに、イジメてあげよっかな?
21名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 22:02:14 ID:pwu6G1Hp
てす
22名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 22:10:21 ID:pwu6G1Hp
反映されてねーし……

携帯から直書きでカットペーストしてたからバックアップもねーよ……

スミマセン。二時間ぐらいで急いで書き直しますわ
23名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 22:26:57 ID:A1ufDdMu
>>22
まぁなんだ、ドンマイ
冒頭だけで引き込まれた、全裸で待ってるぜ
24名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 22:36:30 ID:aBEL0xY0
因みに「隼」はHondaじゃなくてSUZUKIな?
てか、ヘッドが隼乗ってる族ってどうよ?
25名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 23:08:35 ID:GfbdU6dV
>>22
期待してるけど、急ぎすぎてクオリティ落とすことのないよう
ゆっくりでいいよ
どうせ俺まだまだ寝ないし
>>24
バイクの何たるかを知らない俺にkwsk
26名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 23:50:13 ID:wR7icS4w
>>24
赤で統一するならドゥカティ?
しかしレディースには何が一般的なのよ
27名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 01:27:28 ID:bAiQTKip
族ならVALCANとかかな?

フルカウルは似合わないなw
2812:2009/05/23(土) 01:37:52 ID:lopTQ2qv
2
 窓から差し込む月の明かりだけが唯一の薄暗い部屋で、深夜0時、部屋の扉が僅かに開く。
 ボクはキャスター付きの椅子に腰掛けて入り口を見つめ、侵入者は気配を感じて動きを止める。
「誰だテメェ?」
 声だけを部屋に響かせて、帰ってくる相手の声から距離を計ろうとしているんだ。
 勿論、侵入者を、サヤちゃんの部屋で待ってたボクを、一発で殴り倒す為に。
 悲しいなー。悲しくて、そんな悲しい事されたら、意地悪したくなるよ。

「ここは優しいサヤお姉ちゃんの部屋ですよ? テメェ……なんて、口の悪い人は出て行ってください」

 ゆっくりと、はっきりと、しっかりと。サヤちゃが間違えないように大声で台詞を紡ぐ。
 すると聞こえて来る。ウソ、ウソ、と短い単語に、急速で荒くなる呼吸音。
 それに続いてドアが全開し、
「なん、で……連絡くれっ、ないの?」
 頼りない足取りの幼馴染みが姿を表した。
 当たり前、かな? ボクはサヤお姉ちゃんをビックリさせたくて、戻る日付を黙ってて貰ったんだから。
 教えてたら、自分が不良だったって証拠、全部消しちゃうでしょ?
 そしたら……イジメられないよ♪

「ふーん、ボクは遊ばないで、サヤお姉ちゃんと結婚する為に頑張ってた、のに……サヤお姉ちゃんは、花嫁修業もしないで遊んでたんだ?」

 伝わる。暗闇の中でも良く見える。肩を抱き締めて震えてる。
 特攻服を着て、左右の耳にピアスを付けて、いつもは強がってるのに、いつもは強いのに。
 それなのに今は、視線を反らして、歯をガチガチと鳴らして、ひたすらに言い訳を考えてるだけ。
「ショックだなー。そんなに不良で居たいんならさ、結婚するの……ヤメよっか?」
 だけどボクは待たない。考える暇なんか与えてやらない。
 選択肢をどんどん狭めて、あっと言う間に追い詰めてやる。
「ヤッ……やだぁっ!! ハルカと結婚するのぉっ!!」
 するとほらっ、目に涙を浮かべて、ヨロヨロしながらボクに近付いて来た。助けを求めるように。許しを請うように。
 だけど、こんなもんじゃ済まさない。憂さは晴れてくれない!!
「そんなタバコ臭い服で、ボクに近寄らないでよ不良さん」
 ボクに縋り付こうとする不良を、残り三歩の位置で押し止める。
 つまり、触れるんなら服を脱げと言ったんだ。
「ぅうぅっ……こんなのっ、こんなのぉっ!! ハルカ、ハルカっ、ハルカぁっ!! うわあぁぁぁぁぁん!!!」
 でも、そんな嫌がらせも通用しない。サヤお姉ちゃんは邪魔くさそうに一瞬で服を脱ぎ捨てると、泣きながらボクの首に腕を回して抱き着いて来る。
 こんな恥辱よりも、ボクに触れる事を望んだ。外見は変わっても、ボクを好きでいてくれたんだ。
29名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 01:41:27 ID:lopTQ2qv
3
 クソッ!! そんなにボクが好きなら、なんで不良なんかやってんの!?
「サヤお姉ちゃんさ、ピアス……付けてるんだ? ならさ、ボクからもプレゼントしてあげよっか? 女の子の大切な所に付けるヤツ……欲しい?」
 これ以上おびえさせないよう、耳元で優しく、優しく囁く。
 口調は冷静に、中身は外道に。目を合わせて微笑みながら。

「あっ、うぐっ、ふっ、ハルカが、つけたいならっ、つけていいよ」

 逃げないでサヤお姉ちゃん。
 産まれた時から結婚するのが決まってて、しきたりだからって両親の前でキスさせられて、セックスさせられて、それでも貴女を好きになった。
 だから、だからっ!! 五年間も会いたいのを我慢して、会社を継ぐ為に勉強して、仕事を覚えて、遊びもしなかったのに。
 お姉ちゃんは、遊んでた。別にボクとの結婚なんかどーでも良かったんでしょ?
「んんっ、ボクは、欲しい? って聴いたんだよ?」
「ほし……ひぐっ!? ふあぁぁぁぁぁっ!!?」
 お姉ちゃんの背中に回していた手を下方向にスライドさせ、パンツの中に滑らせて柔らかな肉を掻き分け、お尻の穴へと一気に中指を挿入する。
 ウソじゃないって分かったから。本気の顔してたから。なんとなくどーでも良くなって、健気なフィアンセをイジメるのはヤメにした。
 これは、ボクへの愛を貫いてくれたご褒美。
「サヤお姉ちゃん、お尻でするの大好きだったもんねー♪ 喧嘩して来たからかな? お尻の中、汗でグチョグチョだよっ♪♪」
 差し挿れた指を根元から爪先まで、深いストロークで出し入れする。
 きゅっきゅと咥えて離さない、五年振りの懐かしい感触。
「ふあっ、あっ、あんっ!! すきっ、だからぁっ……ケンカもっ、ふんん、しないっ、からぁっ……もぅ、どこにも行くなよぉっ。イクなら、オレも連れてけ」
 ああっ、やっぱりそうか。なんだかんだ言ったって、どんな事をしてたって、結局ボクはサヤお姉ちゃんを許すだろう。
 だってボクも……
「ボクも好きだからっ!! ずっと、守るからぁっ!!」
 サヤお姉ちゃんが、大好きだから。
 そして二人は、恥ずかしい告白をし合って、

「「んっ……」」

 長い長いキスをした。





 後で不良になった理由を教えて貰ったけど、本当に子供な答え。
 ボクに会いたいって駄々をこねて、ワガママ言って、心配を掛けさせる事を続ければ、説得する為にボクが戻って来るかも知れないから……だって。
 ボクがさっぱり戻らないから、エスカレートしていったみたい。
 それじゃ、この話しはこれで、


  おしまい
30名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 01:44:51 ID:lopTQ2qv
同じ事を書くのはモチベーションが保てないよ。
引き延ばした割りには、スッカラカンの内容でゴメン。
31名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 01:56:37 ID:At4qI89B
>>30
……いや、充分濃いよ?GJ
32名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 14:17:38 ID:84+mz1hQ
赤好きだねー
33名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 22:23:13 ID:+EMTaq8M
不良で依存な幼馴染みも良いもんだなGJ

でも、気弱な幼馴染みも良いよな
34名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 08:52:26 ID:L/AeQyug
>>30
GJ! たまには男性上位もいいですよね
35名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 17:57:33 ID:G8CG92pG
1
 俺には二歳から一緒の幼馴染みが居る。スポーツも、勉強も、家事だって出来て、溢れるカリスマ性は人望を集めて離さない。
 そんな奴だから、高校一年にして生徒会長なった。
 そんな奴だから、俺を無理矢理に生徒会へ入れた。
「受け取れ、9万1000私ポイントだ」
 こんな奴だから、時には予想外の行動を取って俺を困らせる。

「なんだ、コレ?」

 夕暮れの生徒会室。数時間前と比較にならない程に静まり返り、二人の呼吸音だけが唯一のBGM。
 パイプ椅子に座り、長テーブルの上で纏めたプリントを鞄に詰め、帰り支度をしてたら、突然に紙切れを渡された。
「なーに、一ヶ月頑張ってくれたからな……役員報酬さ。これからは、毎月の頭に同額をくれてやろう」
 渡されたのは十一枚。お札に似た形容で、『1マン私ポイント』とマジック書きされた紙が九枚。同様にセン私ポイントが一枚。
 そして最後の一枚はルーズリーフ。そこにはポイントの使い道が、交換ラインナップが箇条書きされていた。


・頭を撫でてやろう※セン私ポイント
・扇いでやろう※ニセン私ポイント
・ギュッとしてやろう※サンゼン私ポイント

 と、軽いモノから……

・手でヌキヌキしてやるぞ※イチマン私ポイント
・口できゅぽきゅぽしてやるぞ※ニマン私ポイント
・ゴクウが敵全員を相手にするぞ!※激震フリーザ
・さぁ、セックスだ!※サンマン私ポイント

 と凄いモノまで細かく設定されている。
 だけどそれよりも、俺の視線を捕えて放さないのは……下も下、一番下の項目。

・恋人同士になる※ゴジュウマン私ポイント

 更にその下に小さく、上記の事なら何でも可と書いてある。実質のフリーパス券。
 つまり毎月使わずに貯めれば、9×6の半年で届く計算だ。
36賭博破械録オサナナジミ:2009/05/26(火) 18:27:56 ID:G8CG92pG
2
 恋人同士になるなら……
 50万ポイント………!
 確かに今は足らないが、とはいえ……
 こいつに、すべてがかかっているっ………!
 オレの未来の行く末がっ……!
 堕落も、破滅も……そして、忍耐の先にきっとある……突破口もっ……!

「どうするのだ? さっそく使うか? 24時間365日、貴様の好きな場所で、シテやるぞっ?」

 幼馴染みは会長椅子のキャスターを滑らせ、テーブルを挟んだ前まで来ると、俺の方へと向き直して妖しく微笑み、ゆっくりと腕捲りを始める。
 誰が使うかっ……!
 オレは貯めるっ……!
「ぐうっ……!」

 しかし……
 くそっ、ざわめきやがるっ……!
 使えるっ、オレは使えるっ……!
 キスも、手コキも、フェラ、パイズリ、セックス……
 今の俺は持ってるんだからっ……!
 その気になりさえすれば……くそっ……!
「それじゃあ、さぁ……」

 本当は違う、半年計画でも使えなくもないっ……!
 約4万ポイントは余分……余るってことだ……!
 オレは今、半年で4万までは使えるんだ……!
 だから、その気になれば……




 バカっ……!
 そういう考えが破滅を呼ぶんだ……

 しかし……
「手だけ……手で、シテくれ」
「んっ? それはイチマン私ポイントを支払い、ヌキヌキして欲しいと言う事か?」
 頭を縦に振る。
 考えてみれば、生徒会に入れられて一ヶ月我慢した、今日は特別な日だ……!
「ふっ、嘘をついてはいかんな」
「え……?」
「下手だなあ貴様は……へたっぴだ」
 深く吐かれる溜め息。
 幼馴染みは俺からルーズリーフを奪い取ると、テーブルの上に置いてトントンと指差す。
「欲望の解放のさせ方が壊滅的に……なっ? 本当にしたいのはコッチ……ゴム無しでセックスして、孕むかどうかのギャンブルをしたい」
 うっ……!

「だけど、それはあまりにもポイントを消費するから、コッチの……手コキで妥協しようとしてるのだ。
 よいか? ダメなのだよ……そう言うのが実にダメなのだ。せっかくスカッとしようとする時に、その妥協は痛まし過ぎる。
 そんな気持ちで射精してもスッキリしないぞ? 嘘じゃない、かえって精子が溜まるのだ。
 できなかった膣内の感触がチラついて、心の毒は残ったままだ。自分への褒美の出し方としては最低だな。
 贅沢は……小出しはダメなんだ。やる時はきっちりやった方が良い。それでこそ来月の励みになると言うものだ。なぁ、違うか?」

 言われてみれば、確かにそうかも。

「来月もまた手に入るのだ……いつまでも届かない目標に向かって、いつまでも、いつまでも……いつまでも、他の女を見ず、私だけを見ていろ」

 おしまい
37名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 19:22:20 ID:hd+rzAFv
>>・ゴクウが敵全員を相手にするぞ!※激震フリーザ
あまりの懐かしさに吹いたわwww
凄くざわざわするSSでつね
38名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 23:28:15 ID:OQTuG//M
>>36
乙。
誉めてやろう。
撫でてやろう。
ぎゅっとしてやろう。
39名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 01:32:27 ID:8Z1DitJ0
支援
40名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 01:32:48 ID:jcCH9nta
なんでカイジなんだw
41名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 04:42:53 ID:Abpg7dQk
GJ!
何故センポイントの端数があるか考えてみた。
頭撫で撫でやぎゅっ!は頼まれたいんだな?オサナナジミよ!
42名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 14:41:14 ID:66BTXbQG
またやろうかしら?
秒数が、
0〜3、幼馴染みが人外
4〜6、幼馴染みが不思議ちゃん
7〜9、幼馴染みが素直クール
43名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 14:43:17 ID:66BTXbQG
エロは、
秒数が、
0〜4、エロ無し
5〜9、エロ有り
44名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 14:47:07 ID:66BTXbQG
不思議ちゃんか……


どーせ時間が掛かると思うんで、投下する方は気にせずどーぞ。
45名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 01:40:31 ID:R1SroKFV
普通に間違えて分数を見てたんでエロ無しです……
こんな秒数を見て〜とかやるのは、今回で最後にします。
46不思議な力:2009/05/29(金) 01:41:36 ID:R1SroKFV
1
 一週間に渡る修学旅行の最終日、全ての日程を終えた夕方。
 高速道路を走る帰りのバス内で、クラスメイトはカーテンを閉めて静かに寝息を立てている。
 光を遮断された薄暗い闇の中。起きているのは、運転手と僅かに二人だけ。最後尾に座る俺と、隣で寄り添う幼馴染みの姫咲 姉百合(ひめさき しゆり)。
 二人はシートの中央位置に並んで座り、両サイドにはクラスメイトの荷物が山積みになっている。

「ねぇ、ゆー君……みんな、寝ちゃったかな?」
 しゅりは大きくクリクリとしたツリ目を輝かせ、俯いて視線を床に落とす俺の横顔を見詰めてる。
 シャギーが入ったブルーブラックのショートヘアに、産まれた時から変わらない天然で金色の瞳。
 日焼けを知らない白く柔らかな肌に、実年齢の十七には見えない典型的な幼児体型。
 それを夏用の制服と、キワどいラインまで短くしたスカートで覆っている。
「そう、だな」
 俺は下を向いたまま、そう答えるのが精一杯。
 姫咲 姉百合……俺と、綾波 勇人(あやなみ ゆうと)と同じ日に産まれ、同じ病院で産まれ、隣のベッドで泣き声を上げて、隣の家に住んでる。
 俺は姉百合を『しゅり』と呼び、クラスのみんなは『ヒメ』と呼ぶ。馬鹿なお姫様って意味で……けなしてるんだ。
 強気な態度に、ズケズケと本音を述べる言動、まさしく唯我独尊。
 いや、それだけなら良かった。俺がフォローして回れば治まってた。だけど、致命的だったのは小六の秋。しゅりが教えてくれた秘密。




 わたし、不思議な力が使えるのよ。




 強気な態度に、ズケズケと本音を述べる言動、まさしく唯我独尊……だった性格はその日まで。
 見せてくれた不思議な力。触れずに俺を転ばせたり、掌から炎を出してみせたり。
 俺は驚いて、興奮して、感動して、みんなにも教えたくて……

 みんなには、秘密だからね?

 そう言われたのに、うんって言ったのに、次の日、教室でバラしてしまった。俺は子供だったから、そんな言い訳も通用しない。
 幼馴染みを自慢したい為だけに、しゅりの気持ちを無視して、

 しゅりは魔法使いなんだぜ!!

 得意気に息巻いた。みんな俺達二人の周りに集まり、しゅりは狼狽えてキョロキョロするだけ。
 結局、不思議な力は使わなかった、見せなかった。『嘘つきヒメ!!』。みんなから罵られて泣いて、放課後まで泣いて、嘘つき……俺を罵って泣き続けた。
47不思議な力:2009/05/29(金) 01:42:08 ID:R1SroKFV
2
 その日から少しずつ、少しずつだけど、しゅりの性格は反転して行く。
 ボーっとする事が多くなり、喋り方もゆったりとゆっくりと内向的に。嘘つきヒメだって語り継がれる。
 でも、中学、高校に進学する頃には色褪せて、省略された『ヒメ』だけが残った。
 意味も成さなくなり、トロくて、何を考えてるのか分からない姫咲 姉百合に対する通称。

 だけど、俺は知ってる。俺だけが知ってる。あの日しゅりが見せてくれた不思議な力は、事実確かに存在したのだ。
 今だってそう。今だって姫咲 姉百合は不思議な力を使える。
 しかしそれは、俺にしか見えなくて、俺にしか効果が出ない不良品。自分でも理解してて、理解してたから俺に口止めした。
 それなのに、馬鹿な幼馴染みのせいで全部台無し。
 だから俺は、昔のしゅりに戻って欲しくて、責任を取りたくて、唯々、ひたすらに、されるがまま……




「こっちを見て、ゆー君? 私ね、お腹空いちゃったの……だから、ねっ? ゆび、おしゃぶりしても良いかなぁ?」
 見上げる視線が突き刺さり、顔は自然と方向を変える。天然の金色、俺だけに効果を発揮する凝視眼光。
 その目に見詰められるとジエンドで、命令されればどんなムチャでも身体は動くし、心臓を止めろと言われれば血流は働きをヤメるだろう。
 中世とかの時代、どっかの国と同じ。絶対服従。本当の意味で、しゅりは俺にとってのお姫様なのだ。
「腹が減ったのか? ポッキー、なら有るけど?」
 夕暮れのバス内。陽射しも入り込まず、クーラーも効いてて涼しく快適な空間……の筈なのに、俺の背中は冷や汗で濡れ、ワイシャツが張り付いて気持ち悪い。
 しゅりが何をしようとしているのか伝わるから。寝てるとは言え、クラスメイト全員が乗ってる場所で、何をしようとしてるのか伝わるから。
 驚きと、怯えと、ほんのちょっとの期待に、俺の身体は迷わず反応した。
「ふえっ? うーんとね、ポッキーなんて細いのじゃ物足りないの。
 しゅりはね? シイタケみたいにカサばっててぇ、バナナみたいに太いぃっ……へっへぇ〜っ♪ お肉の棒をっ、おクチいーっぱいに頬ばりたいなー♪♪」
 嬉しそうに、楽しそうに、無邪気な笑顔なのに。吐き出す台詞は、全く真逆の卑猥で娼婦。
48不思議な力:2009/05/29(金) 01:42:46 ID:R1SroKFV
3
 見下ろす視線の先、右手を開いてこちらに向け、その人差し指の根元を、左手の中指と親指で挟み持つ。
「ぐぅっ!?」
 俺は急いで目をつむり、歯を噛み締めて備えるだけ。
「ダメっ、だよ……ゆーくん。ちゃんと見て? しゅりの、この指が、おちんちんね?」
 無理矢理に目を開けさせられる。
 そして添えていた指を、カタツムリでも這うぐらいのスピードで、力加減を微妙に変化させて、ゆっくりと上下に動かし始めた。
「みんな起きちゃうんだから、バレちゃえんだからぁっ、声……出しちゃダメだよ?」
 上目使いで俺を見ながら、口元を吊り上げて微笑みながら、時折吸い付き、唾液を垂らして、まるでペニスで在るかのようにクニュクニュと扱く。
 すると本物だって負けちゃいない。ズボンの中で限界まで膨張し、ファスナーを押し上げて、痛みを感じる程に金具を食い込ませる。
 視覚的な興奮じゃなくて、俺のペニスと、しゅりの指の感覚を繋げられたからこうなった。
 授業中だって、電車の中だって、気まぐれに感覚を繋げられ、気まぐれに勃起させられる。
 俺は声を噛み殺して、突然訪れる快楽を堪えるしかない。
 どうせ無理だけど……長く堪えても、その指でオナニーされて終わり。膣内に挿れて、思いっきり締め付けて、それでフィニッシュ。
 最後は決まってパンツに射精するけど、そこまでの過程、苦しむ俺を見て、しゅりが優越感に浸ってるって分かるから、どんな時でも、ギリギリまで我慢する。
 みんなからヒメと馬鹿にされ、そんなヒメが唯一見下せる俺だから、俺はお姫様を楽しませなくちゃいけない。

「んー、そろそろかなっ?」
 指への摩擦はイク寸前で止められ、その指は盛り上がるジッパーを戸惑い無く下げおろす。
 そのまま大きく口を拡げて上体を前傾させると、真っ直ぐにペニスへ向けて近付き、愛おしそうにほお擦りをする。
「ゆーくん、今日は、しゅりが飲んであげるねっ? あ〜〜〜んっ♪♪」
 そして、ぢゅぷぢゅぷと粘着質な音を鳴らしながら深く咥え込み、幸せそうに、美味しそうに、股ぐらに顔をうずめた。
 溶けて無くなりそうなほど、熱くて柔らかな口の中。
「ん、ん、んっ、んっ♪ ゆーくん、ゆーくん、ゆーくん! ゆーくん!!」
 挿入感を与える為に顔を前後させ、ノドの奥まで使ったディープスロート。
 カリ首を執拗に攻め立てて精液を誘い出し、俺の名前を連呼して本当にセックスしてると幻惑させる。
 しゅりは声を抑えようともせず、もしかすると誰か起きて聞いてるかも知れない。
 でも、そんなの関係無いんだ。しゅりが堕ちるなら、俺も一緒に堕ちよう。
 だって、やっぱり俺は、幼馴染みが、姫咲 姉百合が好きだから……
49不思議な力:2009/05/29(金) 01:43:30 ID:R1SroKFV
4
 二日後。体調を崩し、熱が37度を越えたけど学校に来た。
 遅くなって、登校したのは昼休みになってからだけど、俺は休めない。休まない。

 教室の入口から中を眺めれば、中央の席、ポツンと一人で弁当を食べる幼馴染みの姿。

「よぉっ!」
 声を掛けると、
「あっ……おねぼーゆー君おはよー♪♪ もぅ、おそいぞぉっ」
 明るい笑顔を返してくれる。
「ははっ、ちょっとばかし調子悪くてさ」
 幼馴染みが元に戻るまで。俺を許してくれるその日まで。
 しゅりの願いは何だって叶えてやるさ。

「んー、ムリしちゃダメですよぉ? 保健室で休憩して、帰ったらゆー君?」
 この願いだけは叶えられないけどな。

 だってさ、俺が学校を休んだら、俺が学校を早退したら……

 このお姫様は、一人ぼっちだから。




 おしまい。
50名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 01:48:27 ID:R1SroKFV
おしまい。
色々とスミマセン。
秒数が〜とかやるのは今回で最後。しばらくROMってます。
オヤスミ
51名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 04:29:25 ID:iXTbOkya
面白い!
おまけにエロい!
この発想力は素敵だなあ・・・
52名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 15:59:45 ID:M2OxWDV9
GJ!!
なんか考えさせられる・・
普通に面白かったよ
ひめさきしゅり と あやなみゆう にはワラタけどなw
53名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 17:55:41 ID:zZk1Fwk/
面白い。が、この関係は痛いな……
何かしらの救済エピソードが欲しいな。これだといつか両方壊れちまうよ
54名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 21:04:33 ID:wU3DhgKq
あるひ突然主人公も特殊能力に目覚めるとかな
55ヘーポー:2009/06/01(月) 03:38:40 ID:iiJ2sbW2
【ハムスター少年の誕生日】

「き、今日も寒いね明日香……君」
学校に行く途中で葉月がボク(明日香)に話しかけて来た。
「ああ、冬だからね」
「だから…そ…その……一緒に手を…」
「手がどうかしたの?」
「うっ、ううん!な…なんでもないよ…」
「…葉月、言いたい事があるならはっきり言ってってずっと前から言っているよね?」
「ご……ごめん…」
葉月はシュンとうつむきながらボクに謝る、もうこれで何度目だろう?
葉月とは幼稚園からの長い付き合いになるけど、常にオドオドしていて臆病な所は今も昔も全く変わっていない。
唯一、変わった事といえばボクよりも葉月の方が身長が高くなった所だろうか。
葉月も小柄な方だけどボクはさらに小さい……葉月が154cmに対してボクは152cmと来た。
ボク自身の華奢な身体と童顔のせいで葉月の『妹』と間違われる事も何回かある。
全く不愉快だ、ボクは男なのに女の子と間違われるなんて実に不愉快だ。
「ど、どうかしたの明日香君……?」
「いや、なんでもないよ…気にしないで」
「あ、うん……分かった……ところで…」
「うん?」
葉月はモジモジと身体を動かしてボクの方を見つめる。
56ヘーポー:2009/06/01(月) 03:39:29 ID:iiJ2sbW2
「今日…明日香君の…誕生日…だよね?」
「…ああ、そうだっけ」
そういえば今日はボクの誕生日だという事をすっかり忘れていた。
「そ、それでね…私…」
「まぁ、誕生日だからといって特に気にする事でもないだろう。もう誕生日を嬉しがる年歳でもないし」
「えーと、私……明日香君に……」
「おっと、もうそろそろ時間だから走るよ葉月!」
「あっ、ま…待ってよ〜!明日香く〜ん!」
ボクの後を一生懸命に追いかける葉月の姿はどこか危なっかしい。
葉月が何か言おうとしていたのは気になるけど今は遅刻しないように走らないといけない。
ボクは葉月が転ばない程度に学校へと走っていった。

「やあ、ハムっち!」
放課後の教室で、大きな掛け声と共に一人の女子が帰る準備をしているボクの肩を馴々しく叩く。
「ねえ瑠奈、いい加減その呼び方はやめて欲しいんだけど…とっても腹が立つからさ?」
「まぁまぁ、そうカリカリしないの!せっかくの可愛い顔が台無しよ?」
苛立ち気味のボクをからかう様に瑠奈は笑いながらボクの頭を撫でる。
「…やめて欲しいんだけど」
ボクは頭を撫でる瑠奈の手を軽くはたく、全くこいつにはデリカシーというものがないのだろうか?
57名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 03:40:52 ID:iiJ2sbW2
瑠奈は葉月と同じく幼稚園からの付き合いだけど、はっきり言ってボクは彼女の事が苦手だ。
顔を合わせる度に頭を撫でて来るし、ボクの事を可愛い可愛いと連呼するし、子供扱いするし、とにかくボクの嫌がる事ばっかりして来る。
『ハムっち』という呼び方もボクの姿がハムスターみたいで小さくて可愛いからだと……全く腹が立つ。
「ごめんごめん、それにしてもハムっちって子供扱いされるの嫌いだよね〜、見た目は本当に可愛いのに!」
瑠奈は全く悪びれる事もなくまたボクの事を馬鹿にする、人の話を聞いていない証拠だ。
「フン、ボクは見た目だけで臆病で女々しい性格だと思われたくないだけ、ボクは人を見た目で判断する奴が嫌いなんだ。
ボクは自分の身体が小さいという理由で卑屈な人間にはなりたくない……ただそれだけだよ」
男子たる者、常に男らしくなければならない…それがボクの信条だ。
「うんうん、ハムっちは可愛いけど性格は男らしいからね!
……葉月が好きな理由も本当によく分かるよ…」
「ん?今、何か言った?」
「ううん!ただハムっちが今日も可愛いな〜って言っただけ!」
「……だから、可愛いって言うのやめてくれない?」
全く、頭が痛くなる。
58ヘーポー:2009/06/01(月) 03:41:46 ID:iiJ2sbW2
「あっ、今日ってハムっちの誕生日だったよね?葉月がハムっちにあげたいものがあるって言ってたよ」
「あげたいもの……?一体なんだろう…」
そういえば朝、葉月がボクの誕生日の事を聞いて来たな。葉月が何か言いたそうだったけどもしかしてその事を言おうとしていたのかな?
「私もハムっちにプレゼントがあるんだ、はいこれ!」
瑠奈は鞄から何かを取り出してボクの頭に付けようとしたが、ボクはそれを難無くかわす。
瑠奈が付けようとしたもの、それはネズミ耳のヘアーバンドだ。
「もう、せっかくハムっちのために持って来たのに〜!」
「あのねぇ……いい加減にしないとボクも怒るよ?」
「ごめんごめん!そんなに怖い顔しないでよ、もうしないからー!」
瑠奈は笑いながらヘアーバンドを鞄にしまう……ちょっと待て、それはボクの鞄だ。
「瑠奈、なんでそれをボクの鞄の中に入れるのかな?」
「だって、せっかく買ったんだから捨てるのも勿体ないと思って…ハムっちにあげたものだしね!」
「……もういいや、ボクはもう帰るよ、それじゃあ」
これ以上、瑠奈に怒っても意味がないだろう、ただ疲れるだけだ。ボクは大きくため息を吐くと鞄を掴む。
59ヘーポー:2009/06/01(月) 03:43:08 ID:iiJ2sbW2
「ちょっと待ってハムっち、葉月ったら忘れ物しちゃって……このノートを届けてくれない?」
「なんだ、また忘れ物をしたのか葉月は。全く…いつも帰る前に確認しろって言っているのに…」
ボクは文句を言いながらも、瑠奈からノートを受け取る。
まぁ、葉月の家はボクの家のすぐ隣りだから別に構わないか。
「それじゃあ、頑張ってね〜ハムっちー」
「頑張るって……何をさ?」
「まぁ…色々とね!」
「……変なの」
ボクは瑠奈のさびしそうな表情と彼女の言った事が気になったけど、このまま教室にいたら何をされるか分かったものではないので、取り敢えず葉月の家に向かう事にした。

葉月の家に着いたボクは呼び鈴を鳴らす。
――ピンポーン
「は、はーい!どちら様でしょうか…?」
「ボクだ明日香だよ、忘れ物を届けに来たよ葉月」
「あ、明日香君!?ちょっ、ちょっと待ってて、すぐに開けるから〜!」
ドスンドスンと大きな音がした後、玄関のドアが開く。
「ハァ……ハァ……ど、どうぞ…明日香君…」
なんだか葉月の息が上がっているけど、何かあったのかな?
「疲れているみたいだけど大丈夫か葉月?」
心配になったボクは葉月に身体の調子を聞いてみる。
60ヘーポー:2009/06/01(月) 03:43:56 ID:iiJ2sbW2
「な、なんでもないよ!ちょっと準備してただけだから……」
「準備?何の?」
「そ、それはその……と、とにかくついて来て!」
「あ、ああ……分かった」
葉月に導かれるままボクは家の中に入る…一体、葉月は何をするつもりなんだろう?

葉月に自分の部屋で待って欲しいと言われたボクは一人、彼女のベッドの上に座る。それにしても葉月の部屋に入るなんて久しぶりだ……子供の頃は毎日の様にお互いの部屋で遊んでいたのにな…。
ボクが昔の頃を思い出しているとガチャッ…とドアが開き、コソコソと葉月が何かを隠す様に両手を後ろに回しながら部屋の中に入って来た。
「どうしたんだ葉月?」
「あ、あの……明日香君……」
葉月は頬を赤く染めながらモジモジと身体を動かしていたが、何かを決めた様にボクの顔を見つめる。
「明日香君……お誕生日おめでとう!」
葉月は大きな声でそう言って、ボクに何かを差し出す。葉月が差し出したもの……それは手編みのマフラーだった。
「これは……?」
「そ、その……私……寒い日が続くから明日香君が風邪ひかない様にって思って……だから……作ったの…」
葉月は恥ずかしそうに身体を震わせながらマフラーを握りしめる。
61ヘーポー:2009/06/01(月) 03:44:53 ID:iiJ2sbW2
そうか…葉月が渡したかったのはこれだったのか。
「……ありがとう葉月、ボクのために編んでくれて……本当に嬉しいよ…ずっと大切にするね」
ボクは微笑みながら葉月の編んでくれたマフラーを受け取る。
「わ、私も…明日香君が喜んでくれて凄く嬉しい……」
葉月は顔を赤らめながらもニコッとボクに微笑む。朝、誕生日を嬉しがる必要はないと言ったけどあれは間違いだった…やっぱり誕生日を向かえる事は実に嬉しい。

「あ、あの…明日香君……実はね…もう一つもらって欲しいものがあるの……」
「えっ?葉月の渡したいものってこのマフラーだけじゃなかったの?」
「う、うん……明日香君にだけにしか……あげれないものがあるの……」
「ボクにだけしか…?」
一体なんだろう、葉月がボクにだけしかあげれないものって?
「あ、あの……その、えーとね……」
葉月は顔中を真っ赤にして、か細い声で口ごもっている…何をそんなに戸惑っているんだろう。
しばらくの間、葉月はオドオドしていたがやがて何か決めた様に大きく深呼吸すると、ボクの方に顔を向ける。
目には涙を浮かべ息を荒げている葉月の表情にボクは思わずドキッとしてしまった。
62ヘーポー:2009/06/01(月) 03:46:07 ID:iiJ2sbW2
「あ、明日香君!私の…私の初めてを……もらってください!」
「……はい?」
葉月の言葉にボクは間の抜けた返事をしてしまった。その…今、葉月は何をもらってくださいって言ったんだ?
「えーと、葉月…君は今なんて言ったのかな?」
「だからその……私とエッチしてください!」
突然の葉月のお願いにボクの視界はグニャリと歪む…葉月の言っている事が理解出来ない。
葉月の方はというと、潤んだ目でフルフルと身体を震わせながらもボクの目をジッと見つめボクの返答を待っている。
「…葉月さ、君は自分の言っている事が分かっているの?そういうのは簡単にあげるものじゃあないんだよ?」
「うん…分かってる……だからこそ…明日香君にあげたいの!私は……明日香君の事が大好きだから…」
「葉月…」
葉月の決意の言葉にボクは言葉を失った。葉月が自分の気持ちをこんなに強く伝えようとするのは初めてかもしれない。
つまり、葉月はそれほどまでに覚悟しているという事なのだろう…。
(一体どうすれば良いんだろう…)
ボクは迷った、そういう事をするのはまだ早いんじゃないのかな…?いや、でも、葉月の決意を無下にしてはいけないし…本当にどうしたら良いんだ!?
63ヘーポー:2009/06/01(月) 03:53:50 ID:iiJ2sbW2
「やっぱり…私なんかじゃ……嫌だよね?」
「いや、ボクはそういう訳じゃ……」
「ううん……良いの…明日香君の気持ちは分かっているから……」
葉月が泣いている……いや、ボクが葉月を泣かせているんだ。
あの葉月が勇気を出しているのに何をやっているんだボクは?
「ごめんね明日香君……馬鹿な事言って…いつも明日香君に迷惑をかけて……こんな私となんか…」
「葉月!」
ボクは葉月をベッドの上に押し倒す。葉月はきゃっと小さな悲鳴をあげ、ボクの顔をまじまじと眺める。
何をオドオドしているんだボクは…情けない。ボクだって葉月の事が好きなんだ…考える必要なんてない、何を迷う必要がある?
「ボクだって!葉月の事が大好きだ!」
ボクは大きな声で自分の気持ちを伝える。
「……本当?本当に…明日香君も私の事……好き…?」
ボクは葉月の問いに対して無言でうなづく。それを見た葉月は涙をポロポロと流しながらボクに抱き付いて来た。
「嬉しい……私…こんなに嬉しいの…生まれて初めて…」
「ボクもだよ……葉月…」
ボクと葉月はしばらくの間、お互いを見つめ合う。そしてボクは静かに目を閉じると、そっと葉月に口づけをする。
64ヘーポー:2009/06/01(月) 03:54:59 ID:iiJ2sbW2
「ん……」
葉月はびっくりした様にビクンと身体を震わせる。柔らかい感触がボクの唇に伝わってくる。キスって……こんなに気持ち良いものだったんだ…。
「んむっ!?」
ボクは思わず声をあげてしまった、葉月が舌を入れて来たからだ。
びっくりして唇を離そうとしたが、葉月が手をボクの頭に回しているため顔を動かす事が出来ない。
葉月の舌がボクの舌に絡み付いてくる。ぬち…ぬち…という音が頭の中に響き渡って、どうにかなってしまいそうだ。
お互いの唇が離れる、つつ――と透明な糸がボクの葉月の間に出来た。
「明日香君…おっぱい……触って…」
葉月は自分の服をまくって胸を露出させる。
ボクは葉月に導かれる様に恐る恐る触ってみる。
「んん…!」
うわぁ…柔らかい……それに大きい…。葉月は発育が良い方だとは思っていたが、まさかこれほどとは…。
ボクはゆっくりと餅をこねるみたいに胸を回す様に優しく揉む。
「ん…ああ…」
声を漏らしながら身体を震わす葉月。ボクの手で感じてくれているんだ…。
葉月をもっと気持ち良くさせたい…ボクは彼女の乳首を指の間でギュッと挟んでみる。
「はぁんっ!」
葉月はビクッと身体を震わせながら甘い声をあげる。
65ヘーポー:2009/06/01(月) 03:55:54 ID:iiJ2sbW2
ボクが乳首をコリ…コリ…と摘む度に葉月の身体がビクッ…と動く。
「ああん…!乳首…気持ちいいよぉ……もっとしてぇ…」
葉月はボクの頭を撫でながら愛撫を促す。ボクはゴクンと喉を鳴らすと彼女の勃起した乳首に口を付けた。
「あん……!」
ちゅぱ…ちゅぱ…とボクは口の中で乳首を舌で転がす。なんだか赤ん坊に戻ったみたいだ…。
ボクがもう片方の乳首を指で弾くと葉月の反応が一層、激しくなっていく。
「駄目ぇ…なんかくる…きちゃうよおおおおっ!」
ボクの頭を抱き締めながら葉月は激しく身体を震わせた。びっくりしたボクは乳首から口を離して葉月の顔を覗き込む。
「はぁ…はぁ…はぁ…!」
葉月はビクッ…ビクッ…身体を震わせて、とろんとした目で苦しそうに息をしている。
もしかして……。
「葉月……もうイッちゃったの…?」
「………!」
ボクの問いに葉月は顔を赤くしながら恥ずかしそうに顔を背ける。どうやら図星みたいだ。
「葉月は胸だけでイッちゃうんだ……エッチなんだね…」
「そ、そんな事ない!私はそんなんじゃ……」
顔を真っ赤にしながら否定する葉月……その姿も凄く可愛い。ふとボクは、彼女が内股をモジモジと動かしているのに気が付く。
66ヘーポー:2009/06/01(月) 03:56:59 ID:iiJ2sbW2
「ねぇ、葉月……ちょっと足を開いてくれない?」
「だ、駄目っ!今は駄目なの…」
葉月は首をフルフルと振りながら足を強く閉じる。
「大丈夫……優しくするから…」
ボクはそっと葉月の耳元で囁いて、太股に手をかける。葉月は抵抗する様に足を閉じていたが、やがてあきらめたのか葉月の足から力が抜ける。
ボクはゆっくりと足を開く…葉月のそこはすっかりビショビショに濡れていて、下着の上からでも割れ目がくっきりと見える。
「は…恥ずかしいよ明日香君……見ないでぇ…」
葉月は恥ずかしそうな様子で両手で顔を隠す。
「葉月のここ…こんなに濡れてるよ…?」
ボクはパンティをずらして割れ目に触れる……女の子のあそこって温かくて、ぬるぬるしてて、凄くエッチだ…。
「やっ、ダメェ!また変になっちゃうよぉ!」
葉月の膝がカクカクと震えている。グチュ…グチュ…と指を動かす度にいやらしい音が部屋の中で響く。
ボクはパンティを脱がすと、割れ目の中にそっと舌を入れる。
「ふわああっ!」
葉月は甘い声をあげて身体を大きく震わせる。ぴちゃり…ぴちゃり…とアイスを舐める様にボクは舌を動かす。
口の周りが葉月のいやらしい汁でベトベトになっていく。
67ヘーポー:2009/06/01(月) 03:58:18 ID:iiJ2sbW2
割れ目の中で舌を動かす度に葉月の太股がプルプルと震える…やがてボクは割れ目の上にある突起に気が付く。
(これって…クリトリス…?」
昔、お父さんが隠していた本でチラッと見た事あるけど本当に豆みたいになっているんだ…。
ボクは指でちょんとクリトリスをつついてみる。
「んああああああ!」
身体を激しく揺らす葉月。凄い…ちょっと触っただけでこんなに反応するんだ。
完全に正気を失っているボクは勃起しているクリトリスを口に含むと、唇ではむはむと挟む。
「そこはダメッ!ダメなのぉ!おかしくなっひゃうからああっ!」
ろれつの回らない口調でやめる様にお願いする葉月。それでもボクは口を動かすのをやめない。
ボクはさらにクリを舌で転がしたり、ちゅうちゅうと吸ってみたりして刺激を与える。
「もうやめへぇぇ!なんか出ちゃう…出ちゃうよおおお!」
葉月は身体を大きく反らしながら激しく痙攣して絶頂を迎えた。プシャアア……と葉月のあそこからいやらしい液が噴出してボクの顔を濡らす。
「やめてって…やめてって言ったのに……ひどいよぉ……ぐすん…」
「ご、ごめん葉月……」
まさかこんな事になるなんて思わなかった…ボクはなんて愚かなんだ。
68ヘーポー:2009/06/01(月) 03:59:35 ID:iiJ2sbW2
「ご、ごめん葉月……」
「もうっ…、明日香君は強引なんだから…」
葉月は頬を膨らませてボクの手を握る。
「葉月…?」
「もういいよ…もういいから……もっと一杯して……ね?」
恥ずかしそうに笑いながらも葉月は自分で足を開く…それを見てボクの股間が熱くなってしまった。
「ふふ……明日香君のあそこも大きくなってるよ…」
葉月はちょんとボクのソレをつつく、ゾクッと変な感じがボクの身体中を伝わった。
「見せて…明日香君のあそこ……」
「ち、ちょっと葉月……!」
葉月はボクのズボンに手をかけると一気にずりおろす……すっかり大きくなったボクのアレがあらわになる。
「凄い…これが男の人の……」
葉月はまじまじとボクのソレを見つめる。うう…凄く恥ずかしい……葉月もこんな気持ちだったのかなぁ。
「ねぇ…明日香君……入れて…」
「入れるって……何をさ?」
「明日香君のオチンチンを……私のあそこの中に入れてよぉ……」
葉月は自分のあそこを指で広げてボクを誘う……まずい、もう我慢の限界だ。
「じゃあ……入れるよ?」
「うん……いいよ…」
ボクは自分のソレを葉月の割れ目に添える。葉月は潤んだ目でジッとボクの顔を見つめている。
69ヘーポー:2009/06/01(月) 04:06:52 ID:iiJ2sbW2
ズブズブとボクのソレが葉月の中へと沈んでいく。もの凄い快感がボクを襲ってくる……駄目だ…意識が飛びそう…。
これ以上の快感に耐えない……ボクは突き立てる様に一気に腰を落とす。
「ふわあああああっ!?」
葉月は大きな声をあげながらボクの身体にしがみつく……葉月のあそこがぎゅうううっとボクのソレを激しく締め付け来て、頭の中が真っ白になりそうだ…。
「もしかして…またイッちゃったの…?」
返事はない、葉月ははぁ…はぁ…と苦しそうに息をしている。
「大丈夫か葉月…少し休もうか?」
心配になったボクは葉月に問い掛ける……葉月が辛そうなのに自分だけが気持ち良くなるなんて……ボクには出来ないから…。
ボクの問いに葉月は首を大きく振ると、強い力でボクの身体を抱き締めた。
「やめないで……もっとして……。 やっと……やっと大好きだった明日香君と一つになれたから…。少しでも長く……つながっていたいから…!」
葉月は大粒の涙を流しながらボクにキスをする。
葉月の鼓動がボクに伝わってくる……気が付くとボクも泣いていた。
理由は分からない……でも、ボクも少しでも長く葉月とこうしていたい…それだけは分かる。
70ヘーポー:2009/06/01(月) 04:08:07 ID:iiJ2sbW2
ボクは葉月の手を強く握り締めると、ゆっくりと腰を動かす。
ボクが動く度にグチャッ、グチャッとエッチな音が響き渡る。
「いいよおっ!明日香君のオチンチン気持ち良いよおっ!」
「ボクも…!葉月の中……絡み付いて…変になりそうだよっ…!」
「いいよ…明日香クンッ!一緒に変になろう?いっぱいいっぱい気持ち良くなろう!」
葉月はボクの背中に足を絡めて激しく腰を振る、ボクも葉月をもっと気持ちよくさせようと胸を刺激しながら腰を振り続けた。
「乳首いじっちゃだめぇっ!おっぱいでちゃうう!やめへぇぇぇ!」
乳首をコリコリと弾く度に葉月の口から甘い声が漏れる……ちょっと声が大き過ぎるかもしれない…。
でも、ボクは腰を止める事は出来ない…ここでやめたら、彼女の気持ちを裏切る事になるし……何より気持ち良過ぎてやめられない!
頭の中が真っ白になりそうな快感に耐えながら腰を動かし続けていたが、やがて強い射精感がボクを襲う。
「ごめん葉月……ボク…もう出ちゃう…!」
「出してぇ!明日香クンのせーしを奥にいっぱい射精してえぇぇぇ!」
葉月は大きな声をあげてボクの口にしゃぶりつく……葉月もイキそうなんだ…。
71ヘーポー:2009/06/01(月) 04:09:30 ID:iiJ2sbW2
ボクは激しく腰を振り続けた後、自分のソレを根元まで差し込む……もう…駄目だ!
「ボク…もう出る……出ちゃうよおぉぉ!」
ドクンッと大きな衝撃が襲った直後にボクは葉月の膣内に勢いよく射精する。
「んああ、出てる!明日香君のせーしが私の膣内に出てるぅぅ!」
葉月も叫び声をあげながら身体を大きく反らして絶頂をむかえる。
どぴゅ…どぴゅ……ああ…まだ射精てる……こんなに気持ち良いのは生まれて初めてだ…。
ボクは葉月を抱き締める……葉月もそれに答える様にボクを抱き締めた。
「明日香君……大好き…」
「……ボクもだよ…葉月」

「それにしても知らなかったなぁ……葉月がエッチな子だったなんて…」
ベッドで横になりながらボクは意地悪そうな顔で葉月に微笑む。
「わ、私だって……明日香君があんな激しいなんて知らなかったもん…」
葉月はボクのおでこをちょんとつつきながら言い返す。
「でも、まぁ…お互いに本当の姿を見る事が出来て良かったって事で良いんじゃないかな?」
「もう、明日香君たら……」
ボクと葉月は顔を見合わせて微笑むと再びキスをする。
大好きだよ葉月……この世界の誰よりも。
72ヘーポー:2009/06/01(月) 04:10:10 ID:iiJ2sbW2
「それで、誕生日会はどうだったのハムっちー!」
次の日の放課後、ボクは瑠奈と話をしていた……相変わらず瑠奈はボクをからかいに来ただけだけど。
「昨日は色々あって本当に疲れたよ……でも、今までの誕生日で一番嬉しかったよ」
「嬉しかった事って葉月の事でしょ?顔に書いてあるよハムっち〜!」
瑠奈はポンポンとボクの頭を撫でながらニッコリと笑う。相変わらずボクを馬鹿にして……本当にコイツは腹が立つ。
「まぁ、瑠奈には関係ない事だから気にしないでよ。これから、ボクは葉月と一緒に帰るから……それじゃあね」
ボクが鞄を持って帰ろうとした時、急に瑠奈がボクの手を掴んだ。
「まだ何かあるの瑠奈?ボク、急いでいるんだけど…」
「ハムっち」
瑠奈の顔がいつもと違って真剣な表情をしている……一体なんだというんだ?
「絶対に…葉月の手を放しちゃ駄目だよ?葉月の気持ちを裏切っちゃ駄目なんだからね」
ボクの腕を強く握り締めながら瑠奈はボクの顔を見つめる。
「瑠奈…?」
「隙あり〜!」
瑠奈は懐からあのネズミ耳のヘアーバンドを取り出してボクの頭に付けた。
「アハハハ!やっぱりハムっちは可愛いなぁ〜!」
瑠奈はお腹をおさえながら笑う。
73ヘーポー:2009/06/01(月) 04:11:20 ID:iiJ2sbW2
騙された……本当に悔しい。ボクは苛立ちながらヘアーバンドを頭から外して机に置く。
「ずっと葉月の側に居てあげるんだよハムっち!分かったかな〜?」
「……瑠奈に言われなくても分かってるよ…」
もうこれ以上、コイツに付き合うのは時間の無駄だ……ボクは教室から出るべく歩き出す。
「………ねぇ、ハムっち…私ね……」
「ん、何か言った瑠奈?」
「…なんでもない、気にしないでハムっち!それよりも葉月の所へ行った行った!」
「………変なの」
なんだか瑠奈の表情が寂しそうなのが気になるけど……今は葉月の所にいかなくちゃ。
ボクは瑠奈に手を振ると教室を出た。

「バイバイ…ハムっち。バイバイ……私の初恋…」

「あっ、明日香君!」
校門の前で待っていた葉月はボクに気が付くと満面の笑顔でボクに走り寄る。
「待たせてゴメン、葉月」
「ううん、そんな事ないよ……じゃあ一緒に帰ろ!」
ボクと葉月は手を繋いで帰り道を歩く。
常に男らしくあれ、これがボクの信条だ。今までも、そしてこれからも男らしく葉月を守ってみせるさ。

「……それにはまず、葉月より背を高くしないとね…」
74ヘーポー:2009/06/01(月) 04:12:06 ID:iiJ2sbW2
以上です、それではおやすみなさい……
75名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 05:00:24 ID:ytT/n78l
>>74
GJ!
寝る前にいい文章読ませて貰ったよ。おやすみなさい。
76名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 12:25:15 ID:5lPyzoWx
GJ!

ハムスターなら繁殖力強いんだからもう1人もと思ったオレはハーレムスキー
77名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 21:27:52 ID:9ijK8Q1H
瑠奈。
78名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 21:49:06 ID:NVqZce+i
中学生文
79名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 22:01:39 ID:QG66nYm0
GJ!!

普段は気の弱い葉月ちゃんがHでは積極的、いいシチュエーションです。
80てす:2009/06/04(木) 19:21:45 ID:8KdT7vlZ
2
 始まりはきっとアノ日。ボクがサキちゃんを好きだった最後の日。皹割れた日々のスタート。その夜。
 昨日は自分の家で、自分の部屋で、自分のベッドで、普通に寝た……

「んぐっ、んっ、ふえっ?」

 はずだったのに、起きたら、裸にされてた。
 咽に何かを流し込まれる感触で目覚めれば、身体を大の字に伸ばされて、手首と足首がそれぞれにベッドの脚と手錠で繋がれてる。
 カーテンの閉められた薄暗い部屋。隙間から差す月明かりが唯一の光で、それだけでも現状を把握するには充分だった。

「なに、してるのサキちゃん?」

 見上げれば、幼馴染みがボクの足の間に立ち、制服姿のまま微笑んでる。口元を吊り上げて、奇しく、怪しく、妖艶に。
 右手にはジュースを持って、左手でキャップを外し、それを部屋隅へと放り投げた。
「あっ? 今時な、中坊で童貞なんてダセェんだよ!! 童貞が幼馴染みじゃオレまで恥を掻くからな、卒業……させてやるよ」
 ジュースが逆さにされる。中身が零れてボクに掛けられる。
 でも、月明かりに照らされて輝いてるのは、冷たい液体でお腹に落とされているのは、ジュースだと勘違いしていたのは、ジュースじゃ無くてローション。
 それも一番ハードで、ドロドロなゼリー状の粘着質。
 サキちゃんはボトルを握り締め、空になるまで握り締めて、ボクの身体もドロドロにして、満足そうにボトルも部屋隅へポイ。

「ははっ、童貞卒業って、もしかしてサキちゃ……うわあああああああぁぁぁぁぁっっ!!?」

 台詞が途切れた。内臓が焼ける、焦げる。背中を退け反らせて、自分でも信じられない大声で叫び吠える。
 アルコール濃度が百を越えるウォッカを一気飲みしたように、全身の体温が急激に高まり、その熱は逃げ場所を求めて下半身に集まって行く。
 どの部位もダルくなって力が抜けてくのに、チンコだけが別の意志を持ってるみたいに固くなってる。
 見ないでサキちゃん!! そう言いたいのに、口からはヨダレが垂れて来るだけで、まともな言葉は一向に吐き出せない。
「おっ、効果はバツグンだな♪ 速効性のマカ王バイアグラってヤツは、なあっ?」
 バイ、アグ、ラ? そりゃ聞いた事は有るけど、まさかボクが使われるなんて思わなかった。
 凄い……んだね。ローションが纏わり付いてヒンヤリしてるだろうけど、それを感じないぐらい、痛くて、熱くて、大きくなってる。
 こんなの、早く治めなくちゃ、沢山イカなくちゃ、チンコ壊れちゃうっ!! 死んじゃうよぉっ。
「うぅっ、サキちゃ……オナニ、させてぇっ」
 一人エッチしたい。ヘソから太腿までヌルヌルで、オナニーすれば気持ち良いし、楽になるってわかってるのに……
 サキちゃんはニヤニヤと笑いながら自らの腰に手を当て、ボクの顔を覗くように上体を前傾させて見下すだけ。
81名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 19:22:17 ID:8KdT7vlZ
ごばーく
82名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 19:28:15 ID:vJOdEVPd
>>81
おまえ前スレにも誤爆投下してた奴だろw
83名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 20:58:59 ID:QlNwofGc
どこが誤爆よw
84名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 21:17:30 ID:WpduvDDl
>>73の続きktkr!

あ、あれ…?
85名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 22:17:39 ID:ByuVhWm1
>>81どこに投下しようとしてたの
86名無しさん@ピンキー:2009/06/05(金) 13:12:41 ID:4heCE18E
>>85練習スレじゃね?
これの1があったし
87名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 06:35:04 ID:BWRSvhEr
毎日幼馴染みに起こして貰うってシチュエーションは巷に溢れてるけど、
毎日幼馴染みを起こしに行くってシチュエーションはあんまり見ないよな。
88名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 07:06:29 ID:xIOE8hVz
ゲームだがつよきすの幼なじみは毎日主人公に起こされていたな。
89名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 13:14:48 ID:L9DGUuJd
清めの音を叩き込まれて後ろが初めてな子はちょっと・・・
90名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 13:42:26 ID:4jgWKNSh
いつもアナニーしてた幼馴染みが、何かの拍子に主人公の勃起したペニスを見てしまい、
それ以来、主人公のペニスでお知りを犯されたいと言う欲求を持つようになる……と。
91名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 21:13:20 ID:G5rL/z/V
夕華さんマダー?
92名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 22:38:54 ID:06pwH1Cu
次から投下
93名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 22:42:40 ID:06pwH1Cu
なっ、なによ!!
ちがうわよっ!!
ごばくよっ!!!
職人さん早くきなさいよ!!
94名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 22:53:02 ID:NbHvGZU6
>>91
仲間がいた・・・。
95名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 23:31:25 ID:6sLkoqVR
>>93
許さない、絶対に
96名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 00:10:36 ID:UYGFs8Iu
ハハッ!>>93は可愛いな!
97名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 14:14:45 ID:uRtHCExR
うっ、ウルサイわね
>>96のクセにナマイキよ!
98名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 13:16:05 ID:7gdhcRnJ
幼馴染みがモンスター娘の話しって、
注意書きしてればオーケーだよな?
99名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 13:38:30 ID:W/K80+AV
モンスターに限らず、注意書きさえしておけば幼馴染みなら何でも大歓迎
100名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 13:43:22 ID:Eri6OqSu
サンクス
完成したら投下するわん
101名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 16:25:31 ID:S0U/8DCB
楽しみにしてるわん
102名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 16:47:38 ID:N4ntkuYm
ワン!
103名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 18:42:12 ID:69mYMzEj
いつでもウェルカムなんだぜ!
104名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 22:52:34 ID:uFEZzxol
>>85
イカされスレ、だな。
105名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 23:09:45 ID:Pv0MhCCD
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1244386646/
スレチかもしれんが、幼馴染みの真髄をみたw
106名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 23:29:40 ID:uFEZzxol
保管庫見てみたが分からん・・・・・
金持ちの子供と、そいつと(遊び相手兼護衛として)ともに育ったやつは幼なじみと呼んでいいのかどうか。

つかそんなSSすでにあったりしないよな?
107名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 23:37:13 ID:P6vs5FGZ
>>106
どうみても幼馴染だろそれは。

ただどちらかというと主従スレ向きのような気がする。
108名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 23:37:14 ID:81/537cb
問題ない
幼なじみだ
109名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 00:19:16 ID:rjwVfTJG
幼馴染は全ての属性に対し上書きされる
110名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 00:34:00 ID:kJ1o+L8o
ほう、それが人外でもか?
たとえば子供の頃に拾って、ともに育ってきた子犬がある日、いきなり美少女として人化したとしよう。
これは第一にどのような属性なのかね? 馴染みというには難しい気もしないか?
111名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 00:52:09 ID:rjwVfTJG
「お母さんに叱られて家出したあの日、秘密基地で二人で抱き合って一晩過ごしたよね」
「隣町のお嬢さまに声を掛けるのに、いつも私をダシに使ったよね、ほんとは凄く悔しかったんだよ」

とか思い出を語り出したらOK!
112名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 01:03:00 ID:WS5R1nvI
あれ、どう見ても俺好みの幼馴染だ
113名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 01:11:00 ID:kJ1o+L8o
>>111
俺が間違っていたようだ
114名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 01:27:37 ID:qPUnkUOv
夕華さんの続きが…禁断症状が…。
115名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 22:16:32 ID:kJ1o+L8o
>>114
最近忙しくて……
書くから待ってて、すまない
116名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 23:06:03 ID:DVBUBffb
依存スレのいぬがみだかなんだかの話は幼馴染で人外でよい話だったよ。
117名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 23:23:26 ID:VSwQpCSD
>>110
犬と人間の寿命の違いを埋められるならアリだな。
118名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 01:00:34 ID:3ZUBRJ48
>>116
やまいぬ?
119名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 09:12:47 ID:nT48N5ZT
>>117
埋められないから有りだと言ってみるテスト。
短命が約束されてる幼馴染みとか。
120名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 10:30:38 ID:3ER0LgU4
幼なじみと十の約束。
121名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 10:59:49 ID:2d5Zqsgg
ひと〜つ、人世の生き血を啜り
122名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 13:38:39 ID:CnH3ZPNK
ふたーつ、二人でイチャイチャ三昧
123名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 13:48:15 ID:UP3TZvfv
みっつ、みだらな行為に溺れ
124名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 15:47:45 ID:KX+2CF6X
よ〜っつ、貴様は飢えても聖帝様は飢えぬ!!
非情の帝王、聖帝サウザー!!
125名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 15:47:45 ID:kVzjt93T
四つ、夜更けにギシギシアンアン
126名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 15:49:14 ID:kVzjt93T
orz
127名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 15:53:09 ID:KX+2CF6X
ゴメンよ。ただ続いて行くと、職人さんが投下しずらくなると思ったんだ ( ′・ω・')
128名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 16:01:58 ID:kVzjt93T
むしろ書き上がるまでのつなぎのつもりだったんだが。
129名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 16:05:03 ID:NKpr0sBC
よーし、ぬるぽ
130名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 16:35:35 ID:Y/slGp60
>>129
ガッ
131名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 18:35:57 ID:BATnbUIB
きゃ
132名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 18:43:43 ID:rzv26Q8O
駄レスはVIPでお楽しみ下さい
133名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 19:58:44 ID:eiNJQsyc
倦怠期な幼馴染みという電波を受信したんだが美味く文にできない……
134名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 23:47:57 ID:Fg9HnyvR
>>118
それそれ。エロパロ板で初めて読んだのがそれだった。
135名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 03:26:40 ID:D8zywAA/
>>124-125から強烈な幼なじみ臭を検出した。
136名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 07:23:24 ID:9VRTI+7P
幼馴染み臭……。


「おはよー……ふんふん。前から思ってたんだけどさ、アンタらって同じ匂いするんだよね。なんで?」
「え、そう……かな?」
「まあ基本的に食うもんは同じだからな。朝晩はどっちかの家に呼ばれて一緒に食ってるし、弁当も同じだしな」
「あ、あと石鹸とかシャンプーとかリンスも同じだよね。……だ、だからって一緒に入ってるわけじゃないよっ、ホントだよっ!」
「(…………つい最近まで一緒に入ってたのは言わない方が良いんだろーな……)」
「おーけーわかった。何がわかったって、あたしがお邪魔虫なのがわかったんだよド畜生」


こんなんなったw
137名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 11:50:33 ID:jSMuCCVh
あーんれまぁ!
138名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 00:29:23 ID:G4+SgmxG
最近まともなのが投稿されない。
139名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 02:03:11 ID:DmErybrD
>>138
ないなら作ればいいじゃな(ry
140名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 05:04:49 ID:Nftdss95
>>134
保管庫できたみたいだな
久しぶりに読んでくるか
141名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 06:35:19 ID:tdpyX2aP
>>136みたいな、兄妹みたいに(物理的に)距離が近い幼馴染みって良いよな。
142名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 21:14:46 ID:G39RRioD
妹系幼なじみの話は意外と少ないね
143名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 23:30:26 ID:Ud3ji349
年下幼馴染は妹と類似性が高いからなぁ
甘えてくるとかは妹で十分賄いきれる
でも妹と年下幼馴染の両方がいるってなると、途端に

「妹ちゃんはいいなぁ、毎日お兄ちゃんと一緒で」
「お兄ちゃんはやっぱり妹ちゃんのほうが大事なんだな」
「あんまりべたべたしすぎたらお兄ちゃんは嫌がるかな…」
「本当の妹だったら、もっとお兄ちゃんに可愛がってもらえたかな」

て感じにおいしく料理されると思う
144名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 00:48:13 ID:3RB8LmeV
次から投下。なんですが……
今回は、幼馴染みがモンスター娘になる過程だけです。
冒頭の文はどっかで見たことがあってもスルーでお願いします。
145『Romancing Dullahan』プロローグ:2009/06/18(木) 00:50:08 ID:3RB8LmeV
1
 アバロン暦701年。
 上に立つ者は肥え、下に敷かれる者は痩せ細る。汚れた治安と略奪に、人々はただ恐怖と暴力に犯された。
 フランス、オルレアン。血に染まるこの国は神に見放され、民は飢えと病いに倒れ、抗う術さえ失われて、終わらない戦の戦火に消え行くだけ。
 されど、影と光は表裏一体。闇が強くなればなる程、それに対する強い光が誕生する。

「神の名において……私は今、ここに誓う!!」

 風が吹き荒れる荒野に立ち、空を見上げる少女が一人。
 小さな胸に十字を切り、腰の位置まで伸びた銀髪をなびかせる。聖少女、ジャンヌダルク。
 左手に旗を、右手に大剣クロスクレイモアを、背中に何千何万の兵を携え、血で血を洗う最前線に立ち続けた勇騎。
 集いし兵達は、少女の中に女神と希望を見出だし、友の死を乗り越えてオルレアンを目指した。
 そしてついに、神の声を辿りながら、小さな胸に十字を切りながら、涙を剣で拭いながら、少女はこの国を解放に導く。
 少女は、ジハード(聖戦)により勝利と栄光をもたらしたのだ。

 救世主……彼女は奇跡とされて、争いに終止符を打つ。

 しかし、争いが終幕を迎えると、支配者はすぐに手の平を返す。
 利用価値が無くなれば消すのは現代も同じで、時のフランス王シャルルは、神のお告げが聞こえるジャンヌに魔女の烙印を押した。
 死刑囚の牢獄に繋がれるのは、かつては聖女(ラピュセル)と讃えられ、今では魔女扱いの少女。

「神よ……何を、正義とすればいいのですか?」

 神と詐称した罪に問われて処刑場に向かい、誓いを祈りに変えて神に問う。
 救世主……彼女は奇跡とされて、その身も血に染めながら、長き争いに終止符を打つ。
 果ての無い、絶望と後悔を繰り返して。




    『Romancing Dullahan』
      〜プロローグ〜




 太陽が湖を唐揚げる真夏日。街広場の中央で、再びジャンヌは視線を浴びていた。
 纏う物は白銀の鎧からボロ一枚に、握り締める物は剣から遺書一枚に、地面へと打ち込まれた杭に両手を縛り付けられて。
「神よ、私にはもう……貴方の声が聞こえない」
 足元に敷き詰められた薪が燃え、ジャンヌの身体は炎に包まれる。
 ボロも、遺書も、皮膚もさえも焼け爛れて、雨が降って鎮火した時には、美しい少女の面影は全く無くなっていた。
146『Romancing Dullahan』プロローグ:2009/06/18(木) 00:50:44 ID:3RB8LmeV
2
 更には自らの愛剣クロスクレイモアで首を切り落とされ、魔女の死、平和の象徴として晒し首に。
 だが、身体を焼かれ、首を切り落とされてなお、ジャンヌは死んでいなかった。
 死刑の日から三日後の夜、誰も居ない広場の中央、月明かりのシャワーに照らされて、一人の少女は蘇る。
 ボロボロと表面の消し炭が崩れて、中からは生前の白い肌が覗く。
 そしてゆっくり腰を起こすと、横に転がる頭部を左手で拾い上げた。その瞳は開かれ、その銀髪は夜風にサラサラと揺れている。
 右手で拾い上げるのはクロスクレイモア。刀身が黒く変色し、担い手の怨恨で凶々しくリバースした生きる大剣。
 そう。少女は間違いなく神の代行者で、神はこんな最後を遂げたジャンヌの事を不憫に思い、たった一つだけ願いを叶えたのだ。
 満足できる死を迎えるまで、何度でも生を授かると言う願いを。

 勇騎は幽鬼に、人外に。頭部を抱えるモンスターに。
 一歩……前へ出る度に衣服すらも再生し、再構築されて白銀の鎧に生まれ変わる。
 胸当て、腰当て、篭手、足具、その全てが輝きを取り戻し、月光を乱反射させて夜の闇を暴き照らす。
 屍王デュラハンの誕生した瞬間で有った。
 翌日、街は消えた死体騒動でパニックに陥ったが、それも半年すると忘れ去られ、三年後にはジャンヌダルクの名さえ語る者は居なくなる。
 民は余裕が無かったのだ。ジャンヌによりイングランドの制圧から解放されたものの、フランス王シャルル・オウガイの独裁は、イングランドと何ら変わらない。
 極星十字宮殿に仕える人間だけが肥え、その他の人間は飢えて倒れる。

「ふむっ、今日のは口に合わぬ」

 直訴に来た町民の目前で、テーブルに置かれた料理が全て床へと弾き落とされた。
 皿が割れ、肉も、魚も、スープも。貧しい町民達は決して口にできない食材を、たった一口でゴミにする。
「良いか!? 貴様等は飢えても、シャルル様は飢えぬっ!! 税の引き下げなど叶うと思ったか!!?」
 側近の台詞に、代表者で在る町長は顔を青くするばかり。
 この国は、何も変わらなかったのだ。そんな現状が身に染みて、初めて民達は自らの愚かさを呪う。
 ジャンヌが処刑される時、何故止めなかったのか?
 ジャンヌが生きていれば、こんな国にはならなかったのでは無いか?
 そうして思い出す。ジャンヌの死体が消えていた事を。
 ジャンヌは生きている。必ず助けに来てくれる。救い出してくれる。都合の良い考えで人々は心から願い、願い続けて一年が経ち、奇跡は再び舞い戻った。
 早朝、宮殿の王室で、腰の位置から上下に二分された亡きがらが横たわる。
 ベッドごと切り裂かれ、静かにシャルルは絶命した。
147『Romancing Dullahan』プロローグ:2009/06/18(木) 00:52:47 ID:3RB8LmeV
3
 死んだのは、シャルルと側近の数名で、他の兵達は気絶していただけ。
 そして目覚めた者は、口々にこう言った。

「頭部の無い騎士が王を殺した」

 ……と。屍王(しかばねおう)恐怖伝説の始まりである。
 腐敗した国々を解放へと導くのは、首無き乱世覇者、屍王デュラハン。
 独裁体制を取る国王と側近を次々に殺し、天多の弱き民達を救って行った。
 額に螺旋状の一角が生えた巨大な白馬、アハ=イシェケに跨がり、ついには僅か三年で、フランス全土を平和な国へと浄化し終える。
 そして七英雄と呼ばれた七人の勇者を返り討ちにし、その直後、屍王デュラハンは、ジャンヌダルクは、この世から完全に姿を消した。

 アバロン暦707年。
 七英雄は自らの力に溺れて暗黒面に堕ち、新たな勇者に伐たれて終わる。
 クジンシー、ボクオーン、ワグナス、ノエル、ロックブーケ、スービエ、ダンターグ。
 その七人を一年も経たぬ間に滅したのは、若干十六歳の少年で在ったと言う。
 名はソウマ、ソウマ=ダルク。ジャンヌの本名、サラ=ダルクと性を同じくする、親戚で、隣人で、六歳違いの幼馴染み。




    『Romancing Dullahan』
      〜プロローグ〜



 おしまい。
148名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 00:56:08 ID:3RB8LmeV
今回は以上。
今回のは読まなくても、次回からのは意味が通じます。
次回からは一人称で、普通の幼馴染みの話しとエロです。
後は3〜4回くらいで終わります。
149名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 01:08:36 ID:v586ZkgM
一番槍GJ
続きを楽しみにして待ってます。
150名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 02:58:38 ID:yZIHlKy9
サガだなぁ
151名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 08:45:15 ID:0nqzCRw2
一瞬、ここは人外スレかと思った
あそこも守備範囲なんで…ww
152『Romancing Dullahan』前編:2009/06/19(金) 00:44:33 ID:Aubk2CcV
1
 雪が降った。それはヒラヒラと、手で触れれば消えてしまうパウダースノー。
 灰雲から舞い落ちる白い粉は、地面を覆って一色に染め上げて行く。
 勿論、こんな山奥に在る小屋だって例外じゃない。草木にも、湖にも、冷たい白は敷き詰められる。

「はあぁぁっ……あーあ、こりゃしばらくはお客さん来ねぇなー」

 吐かれる息だって負けずに白い。オレはベッドに腰掛け、窓から外を眺めて、憂鬱に浸って何度目かの独り言。
 この時期はツライ。客単価はバリバリに高いが、秋から冬に掛けて客が来ないってんじゃー、全く話しにならないわな。
 人から隠れるように山奥へと引き篭り、娼婦として暮らし始めてしばらく経つ。
 でも、流石に限界か? どーせオレの顔なんてバレねーんだし、町に……引っ越すかなぁ?
「っと、珍しく客か?」
 窓からは見付けられなかったが、入り口の戸がトントンとノックされている。きっと違う方向から来たのだろう。
 そしてこの小屋に来るって事は、給料が一晩でブッ飛んでも良いから、オレに何年分も先の精液までヌキまくって欲しいってこった。
「はぁ〜い、いま開けますぅっ」
 声は可愛らしく、女らしく。表情は笑顔で、一発で惚れさせるスマイルで。
 ベッドから降り、纏った鎧を純白のドレスに変化させて、キッチンとテーブルと暖炉と、それに風呂とベッド。
 する為だけの最低限しか無い殺風景な部屋の中へ、
「いらっしゃ〜い♪」
 戸を開いて客を招き入れた。




     『Romancing Dullahan』




 一歩、一歩、ゆっくり、ゆっくり。
 その人物はオレを見上げながら、クリクリとした大きな瞳で見詰めながら、左手に荷物袋を、右手に鳥籠を持って現れた。
 身長はオレより断然に低くて華奢で、十歳前後の子供体型で、顔は中性的で男女のどちらにも見える。
 冬なのに半袖半ズボンで、元気一杯なガキの象徴で、どう見たってやっぱりガキだ。
「あのねボク? 五年したらまたおいで……ねっ?」
 仕方なく腰を下ろして目線を合わせ、ガキの肩に手を置いて優しく諭す。
 少年を愛でる趣味はねーし、こんな幼い内からオレとしちまったら、それこそ普通のセックスじゃ満足できなくなっちまう。
 だけど、この顔は見覚えが有る。既に役目を終えた心臓がドクンと動き出す。
 あー、ヤバイ。知ってる。コイツは知ってる。いっつもオレの後ろに着いて来て、幾らイジメても側を離れなかった奴。

「ボクだよジャンヌダルク? あはっ、昔一緒に寝てたよね? それでサラねぇがオネショして、それをボクのせいにしたの……忘れちゃった?」

 ぐっ、やっぱり。やっぱりコイツだよ!! オレに神の啓示が届く前、田舎に住んでた時の隣人。弟のような年下の幼馴染み、ソウマダルク。
153『Romancing Dullahan』前編:2009/06/19(金) 00:45:14 ID:Aubk2CcV
2
 だが待て、そーまと別れたのはオレが十六歳、そーまが十歳の頃だろ?
 それから六年ちょい経つ筈なのに、コイツの外見は全く成長してない。
 オレは十七で止まったが、それは身体が化け物になったから。そーまが変わってないのは明らかにオカシイ。
「なぁ、そーま? お前、本当にそーまか?」
 最近、七英雄が倒されたってのはオレの所にも届いてる……が、それが信じられない。
 ダンターグなら腕力、ノエルなら剣技、七人はそれぞれに秀でた得意分野を持ち、その得意分野でだけならオレを超えてただろう。
 人の身で在りながら、化け物のオレを超えていたんだ。しかし奴らは群れる事を嫌い、一人ずつ挑んで来たから返り討ちにできたが、それでもズバ抜けてる!!
 あの七人を、たった一人で倒すなんて不可能、と思いたいが、倒されたのは事実真実で、眼前のそーま……に見える人物が、オレを殺しに来たとは考えられないだろうか?
「どーして怖い顔をするのサラねぇ?」
 僅かでも、疑ってしまったら止まらない。
 どこまでも、我が眼は険しく流移する。
 標的は眼前。ドレスの分解、鎧の再構築、蒸着し終えるまでが0.05秒。剣で切り掛かるまでが0.1秒。寸止めで試してみるか?
 もしコイツが反応できたら、

「ボクは、本物のソウマだよ? 寝てる時に、サラねぇがチンチン弄ったりホッペにチューしてた相手は、ボクなんだよぅ!!」

 反応でき……はっ? なんでバレてんだ? 布団に入ったら、すぐにクークー寝てたじゃん? 朝まで起きなかったじゃん!?
 瞬時に甦る痛い過去。オレは、幼い頃から人よりサドっ気が強かった。自分より幼かったそーまをイジメる事に、性的な喜びを感じてたヘンタイ。
 泣き声を聞く度に身体は熱くなり、泣き顔を見る度に足の付け根が潤んでく。
 嫌われたかった。憎まれたかった。そしてそんな相手に、ファーストキスと童貞を、それも寝てる間に奪われてたと知ったら、どんな顔をするだろう? どんな声で泣くだろう?
 好きな人ができて、初々しいカップルになった時、彼女の前でこの事実をバラしたらどうなるのだろう?
 リピートする妄想に勝てず、結局は六歳のそーまをレイプした。小さなペニスをしゃぶり、唾液を溜めた口内でじっくりと皮を剥き、恥垢を舐め取って。
「すき、スキなのサラねぇ……結婚してよぉ、ボクのお嫁さんになってぇっ!!」
 その被害者が今、オレの首に腕を回して抱き着いてる。
 ズボンの上からでもわかるぐらいにペニスを勃起させて、本気でオレを口説こうとしてる。
154『Romancing Dullahan』前編:2009/06/19(金) 00:47:10 ID:Aubk2CcV
3
 無垢なのか、それとも無知なのか? そーまが好意を寄せるサラねぇは、とっくの昔に死んでるってのに。
「よっ、残念だけどな、オレは強い男が好きなんだ、泣き虫となんか付き合えるかよ? あきらめて……いい加減に離せよ、ほれっ」
 再び立ち上がり、それでもソウマはぶら下がったまま。
 足をぷらぷらと左右に揺らしても、必死に抱き着き踏ん張ってる。
 ったく、しゃーねーなコイツは。オレと結婚して幸せになる筈ねーだろ?
 だってオレはよぉ、

「Guillotine……」

 人外の化け物だから。
 人外の化け物が、人間のフリして、娼婦の真似事して、山奥で静かに暮らしてるだけ。
「うわぁっ!?」
 そーまが床に落ちて尻餅を付く。当然だ、オレの身体は立ったまま、オレの頭部はそーまに抱えられたまま、首から上下に別れたんだから。
 繋ぎ目はツルツルの硬い銀板。二度と同じ死に様を迎えぬ為に、神が施したくだらないギフト。
「理解したろそーま? お前が好きだと言う『私』は死んだ。これ以上、オレを追い掛けるな……なっ?」
 抱かれた腕の中、優しく微笑んで幼馴染みを諭す。
 こんな姿を見られたくないから実家に戻らなかったのに、一番見られたくない奴にカミングアウトさせられた。
 でも、これで諦めてくれる……

「あははっ♪ 知ってるよ屍王? こうなるって、ボクは知ってる!!」

 そんな願いも消えるだけ。
 そーまは矛盾した表情で泣きながら笑い、首が取れるなんて些細な事だとビビりもしない。
「はっ?」
 それどころか、一瞬の隙も見せない気付かぬ間に、オレの頭部は鳥籠の中に閉じ込められてた。
 テーブルへ置かれて、鉄格子越しに何か決意をした目でオレを見据える。
「ボク、どんな姿になってもサラねぇがスキだから……証拠、みせるからっ!!」
 ドンッと鈍い衝撃が身体を走り、容易くベッドに押し倒された。
 おい……まてまてまてまてまてっ!! 何で私を押し倒せる!? いくら油断してたって、相当な力でなきゃビクともしないんだぞっ!?
「ちっ、ヤメろそーま!! 強姦する男なんて最低だ、そんなんじゃ気持ちは動かねーよ」
 逃げ出そうと手足をバタ付かせるが、上から押さえ付けられた身体は、ベッドへ影縫われて完全に自由を失った。
 オレが覗く視線の先で、オレの身体が犯されようとしてる。
「おっ、お金を払えば、サラねぇはエッチさせてくれるんでしょ?」
 んっ? はっ……なんだよ、好きだの結婚だの言っても、結局はセックスしたいだけかよ?
 そう思ったら、手足の力は抜けて抵抗する気も失せる。
「好きにしろ……ただし、オレの値段は一晩二十万クラウンだ」
 まともな女を抱く勇気がないから、取り敢えず首無しの化け物でも抱いておこうってか? くっだらねーぜ。
 粉雪の舞い落ちる山奥、暖炉で暖められた小屋の中、テーブルの上からベッドを眺める。

「じゃあ百億クラウン払うから、残りの人生をボクにちょーだい? お嫁さんになってサラねぇ!!」

 吐息の荒いガキに押し倒されて、最初と変わらぬ告白をされて、オレの呼吸も荒くなった。
155名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 00:48:22 ID:Aubk2CcV
今回は以上です。
156名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 04:31:06 ID:8fiXq064
なにこの厨ニラノベ
157名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 13:44:12 ID:BofX/9aA
おおうGJ!!
158名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 20:39:17 ID:mdQfSO0E
うーん。
159名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 23:23:33 ID:zLac4i9U
>>156
ニラノベって何かと思った。
ニラが主人公の小説・・・話が広がらない。
160名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 23:26:34 ID:vq2wcOah
幼馴染がニラ饅頭を男の部屋で作る

ニラで元気溌剌

レディファイト
161名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 23:42:58 ID:X4XakS55
だが土壇場でニラによる口臭に気づく
162名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 00:18:40 ID:dUjreaKd
台無しだw
163名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 00:41:19 ID:aYfWGXHA
まさかコイツを貼る日がまた来ようとは…

 V/
 ‖
 人
(゚ー゚)
164名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 01:06:27 ID:G3YB/BK9
「今日はキス禁止ね」
「な、何故?」
「口が臭いのよ。さっきのニラ饅頭のせいね」
「そんな理由で!?」
「大事な理由よ。ニラ味のキスなんて冗談じゃないわ」
「仕方ねーなぁ」


「あぁっ、やぁ、おへそなんて……っ!ナメちゃ嫌ぁ……!んんっ!」
「へそが嫌なら……」
「ひゃぅぅ!脇もダメぇ……!なんで今日は変なとこばっかりぃ…ぁあっ!」
「唇へのキスが出来ないから、他の場所にしようかと」
「〜〜〜っ!耳も、やめてぇ……!はぁぁん!」
「さっきから乱れっぱなしだなぁ」
「はぁっ、だってぇっ!すごいのよぉ……!ゾクゾクしちゃうのぉ……っ!」

鳴かぬなら 鳴かせてみよう ホトトギス
165名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 01:08:33 ID:DP1s6jyC
「今日はキス禁止ね」
「な、何故?」
「口が臭いのよ。さっきのニラ饅頭のせいね」
「…おめーはおれをおこらせた」
ドグシャァァァァァ

鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス
166名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 01:31:36 ID:IvjiohzR
ちょwww
167名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 01:47:37 ID:ZDxYnhgH
「今日はキス禁止ね」
「な、何故?」
「口が臭いのよ。さっきのニラ饅頭のせいね」
「じゃあ仕方ないか」
((今日が終わるまであと4時間32分。長いなあ…))

鳴かぬなら 明日まで待とう ホトトギス
168名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 07:28:28 ID:hHdmMCt2
>>165の速筆にジョージア吹いたw
169名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 13:32:36 ID:jQXIcQZ/
「今日はキス禁止ね」
「な、何故?」
「口が臭いのよ。さっきのニラ饅頭のせいね」
「そんな理由で!?」
「大事な理由よ。ニラ味のキスなんて冗談じゃないわ」
「仕方ねーなぁ」

「で、どうしてキスするのよ?」
「さわやかミント味だったろ?」
「そういうことじゃ……うむむむ……」
「どうせ口臭消しをするんだろ?
 なら、口臭消しの飴を俺が食べさせてやるよ、口移しで」
「ば、ばかぁ!」
「はいはい、馬鹿で結構。代わりにニラ味のつばは俺が吸ってやるからな」
「だ、だめぇぇぇぇ、そんな変態みたいなキスはだめぇぇぇぇ」
「ここもニラ味だな、あ、ここも、ここもだ。
しょうがないなぁ、口の中を舌できれいにするしかないな。ほんと仕方がない」
「だめだめだめぇぇぇぇ、そんなキスしたらぁぁぁぁぁ」
「ミント味のつばをぬりつけてやるから待ってろよ」
「あああぁぁぁ、……もう我慢できないぃぃぃぃ」
「うおぉ、俺を押し倒すとは積極的だな」
「火をつけたんだから、責任とってよね! 夜は長いわよ?」
「キスで乳首を立ててるスケベな子なんか敵じゃないね」
「なっ! もう、馬鹿っ。その口塞いであげるんだからっ!」

鳴かぬなら、火を付けてしまえ、ホトトギス
170名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 20:21:38 ID:g5C/1LtP
そういやホトトギスって 不如帰 と書くんだよな。実に意味深だ
171名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 23:00:29 ID:nB4VYbqh
ホトトギス=不如帰はもともと中国での名だな。
日本では夕影鳥、夜直鳥、あやなしどり、くつてどり、五露鳥、くきら、死出のたおさなどと呼ばれたそうな。ソース西尾維新だけど……

まあ不吉な鳥にはちがいない。
172名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 01:01:19 ID:VlWBBcIY
はい
173名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 01:14:13 ID:VOXHGBde
過疎りすぎだぞお前ら

全くどいつもこいつも幼馴染みともにょもにょしやがって…
174名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 01:37:44 ID:PBOW3Mk7
キス魔な幼馴染み
175名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 00:22:52 ID:udGg2Q0T
保管庫になかったっけ?そんな話
176名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 00:15:17 ID:b3njYOkm
『You is me』かな。あれはよかった。甘々で
177名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 10:10:23 ID:HdTxE8yl
そりゃまた中学生に噛み付かれそうなタイトルだなw
178名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 20:20:17 ID:tXzYI4XT
確か意味があったはず。>『You is me』
179名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 20:46:50 ID:/Ip3TGG+
>>178
そりゃゆーくんとみーちゃんだからな
180名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 01:25:13 ID:5C7qMQH6
キス魔な幼馴染みも良いが、甘噛み幼馴染みも良いかも。
181名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 13:58:10 ID:yJxKOZRn
新参の上に初めて書いたら無駄に長い・・・
とりあえず前半投下します

「なぁ・・。」
「なによ・・・。」
俺は結局何も言えずにうつむいてしまう。
お互いの心中と同じく暗澹たる空気が場を支配していた。
学校からの帰り道、幼馴染の俺、大谷 陸と隣の小野寺 唯は二人とも下を向いて歩いていた。
「おーおー、お二人さん今日も夫婦でご帰宅ですかー?」
後ろから追い越していった自転車がそういったのを俺はぼんやりときいた。いつもなら隣の唯が
「な、なにいってんのよ、このバカー!」
などと足早に走り去っていく自転車に罵声のひとつでも浴びせるものだが、今日は事情が違った。
その事情とは、普通の奴らには理解できないものだ。――と言っても俺がクラスの女子に告白されただけなのだが。しかしそれでも俺たち二人にとっては重大案件なのであった。
俺と唯は産まれた病院も一緒、家もすぐ近くで幼稚園から今の高校までずっと一緒にいた。その中で悲しいこと、嬉しいこと、さまざまなことを二人で悩み、時には衝突しながらも分かち合ってきた仲だ。
その絆は普通の人間関係とは程遠いほど深くなっている。
「早く返事しないとな・・・。」
俺の呟きに対し唯は沈黙を守っている。
告白されてすでに三日。そろそろ返事を出さないとまずい。唯はポツリと問いた。
「何て返事するつもり・・・?」
俺はぐっと答えに詰まる。俺が告白を受け入れれば、唯との距離が遠くなる。当然、一緒にいる時間も短くなる。
今までの人生の大半をともにすごしてきた唯との時間。そのほとんどが生ぬるく、しかし決して退屈しない大切な時間。
そんな唯との当たり前の時間が壊れようとしている。俺はそれを恐れていた。もちろん隣の唯だってそう思ってるはずだ。
「とりあえずさ、今日俺の家で話し合お。待ってる相手にも悪いしケリつけよ。」
俺の提案に黙って唯は頷いた。
182名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 13:59:34 ID:yJxKOZRn
「お邪魔します。」
「あら唯ちゃん、いらっしゃい。」
俺んちの玄関、俺の母が出迎えた。そのままリビングへと消えていく。唯がこの家に来るのも日常の一部だ。母も特に構いもしない。
「トイレ借りるね。」
「おう、二階で待ってる。」
やはり唯は慣れた足取りでトイレにむかう。そんな唯を俺は寂しげな目で見やり、二階の自分の部屋に上がった。
唯が部屋に来るまでの間、机のイスに座り必死で告白のことについて考える。唯が来ても結局まただんまりな空気になるのはわかっていたからだった。だが。
ガチャ。部屋のドアが開く。唯が入ってきた。
「トイレはえーよ。もっとゆっくり出せよ。」
「バカ。」
ゲシ。唯の足が飛んでくる。俺は言った。
「お前、普通人前じゃ絶対そんなことしないよな。」
「そうゆうアンタも普通なら絶対そんな下品な冗談は言わないけどね。」
「それは俺とお前の仲だから。」
はいはい、と俺のベッドに座りながら軽い返事を返してくると思った。しかし唯はグッと詰まってしまう。
「あ・・・悪い。そのことだよな。」
俺も気持ちを察して下をむく。再び三日前から繰り返される、沈黙タイム。
「で・・・」
「ん?」
珍しく唯が沈黙を破った。昔から明るい性格の唯だが多少繊細な部分もあるのか、真剣な話し合いの時はほとんど発言できないらしくその時だけは俺がリードしてやっていた。
「陸は・・・黒田さんのこと、どう思ってるわけ?」
「そりぁ、嫌いなわけないし、可愛いとも思うがな。」
183名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 14:01:19 ID:yJxKOZRn
告白してきた黒田さんは俺、唯とも同じ中学出身でそのころから学校のマドンナ的存在だった。
成績優秀、中学では唯が所属していたテニス部の部長も務め人望もあった。
一応俺もその中学の男子テニス部の部長に祭り上げられていたが、はっきり言って実力ではなくお遊びサークルらしく、くじ引きで決めた立場だった。
とは言え同じテニス部部長同士、行事や色々なことで会話して、二人で男女テニス部混合の焼肉パーティを企画したのは楽しかった思い出の一つだ。
正直、こんなマドンナと話せて部長も悪くないと思っていたのも確かだった。
そして高校に入って一年過ぎ、会話する機会もほとんどなくなった矢先の彼女からの告白。俺の心が揺れなかったと言えば嘘になる。
「性格も楽しいし、顔もいい。何一つ欠点など見当たらんがな。」
「・・・」
唯は黙って俺の言葉をきいている。
「しかしまぁ何だかなぁ・・・。俺でいいんかな?」
黒田さんは高校でも完璧超人だ。
「俺じゃ釣り合わないんじゃねーかなぁ。」
そんな曖昧な、答えになってない俺の言葉。と言っても三日前から考えて出した答えはこんなもんだ。
われながら情けない。俺も唯みたいにしっかりしてればなぁ、なんてぼんやり思う。
「じゃ、別に付き合ってもいいんだ?」
唯の鋭い声が響いた。語尾に微かな苛立ちがきこえた。
「何、迷ってんのよ?実は調子のってんじゃないの?」
「・・・は?」
おいおいそれは言いすぎだろう。俺は口を挟もうとするが唯は早口にまくしたてる。
「何三日も延々と迷ってるわけ?黒田さん待たしといて何が楽しいのよ?バカじゃないの。」
「いやそれは・・・。」
俺はお前のことで・・・お前との関係が・・・。
184名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 14:02:32 ID:yJxKOZRn
「私、優柔不断って最悪だと思うな。」
「はぁ?」
俺の気も知らないで。
「だいたいアンタが誰と付き合おうが知ったことじゃないし。」
「・・・・・。」
言い切ったな。俺はきれた。わざとらしく大仰にため息をつく。
「わーったよ。」
こいつは俺との仲なんてそんなに考えてなかったんだな。俺は深々と唯に土下座した。
「数日の間、お世話さまでした。」
「な、何よ・・・。」
顔を上げてみると唯は戸惑った顔をしている。俺は続けた。
「めんどい相談につき合わせて悪かったな。はじめから俺が勝手に考えて決めりゃよかった、と・・・そうゆうわけだな。」
「それは」
唯は口を挟もうとする。させるかよ。
「俺、調子のってたわ。もう小学生じゃあるまいしお前の了解なんて要らないよな。」
我ながら冷たい声。でもそれとは裏腹に心は悲鳴を上げていた。それを振り払うかのように言葉を紡ぐ。
「お前、俺のことなんてそんなに重く考えてなかったんだな。実はけっこう鬱陶しかったろ。」
「ちがう!」
唯の叫びも子供っぽい否定の言葉にきこえてしまう。
「はぁ・・・。もういいって、無理しなくて。帰れよ。」
俺の突き放したような言葉に唯はうつむいてしまった。泣いてはいないようだが、手はぎゅっと握られ、白くなっていた。
さすがに感情的になって言い過ぎたかもしれないと考えたが、謝る気はしなかった。俺はしばらく経って唯に声をかけた。
「なぁ・・・マジでそろそろ帰れよ。遅くなるぞ。」
唯は黙って頷き、立ち上がって部屋を出ようとした。しかしドアのノブに手をかけたまま動かないでいる。
「おい、どうした?」
俺は思わず心配そうな声を出して気付く。こんなこと・・・初めてだ。
「ううん・・・」
唯は一瞬、逡巡して返事をし俺の方へ振り向き、言った。
「バイバイ」
彼女の口から聴き慣れた筈のその言葉は俺の心に重くのしかかり、その横顔は寂しげな笑みをたたえていた。
俺の見たことのないその唯の表情はひどく美しく見えた。
185名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 14:04:12 ID:yJxKOZRn
前半終了です。駄文失礼しました。
186名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 19:38:00 ID:I3PT8LTy
>>185
GJ。続き待ってゆ
187名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 20:06:47 ID:yJxKOZRn
>>186 d 続き投下します。これまた長いんでご容赦を。
糞と思ったらスルーでおながいします。
188名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 20:07:46 ID:yJxKOZRn
翌朝、俺は一人で登校していた。
「おーい、陸―。」
後ろから昨日の自転車で追い越していった奴がきて俺の隣に並んだ。
「お前な、昨日のあれ、もうやめろよな。」
俺は奴――中学からの親友、堀 喜一に軽く愚痴る。
こいつは決して悪い奴ではないのだが、余計に口が回る性質で高校に入学してすぐに俺と唯が夫婦だと認定されてしまった原因でもあった。
「まーだそんなこと言ってんのか。いい加減認めちまえって。」
悪びれなく言う。
「しかし何?今日は一人?」
胸が締め付けられる。俺は努めて平静を装い言う。
「あぁ、まぁな。」
「珍しくね?俺、二人一緒にいないとこ初めて見た気がするわ。唯ちゃん、風邪か?」
「さぁな。」
心なしか俺の歩調が早くなる。いつもは何でもないこいつの口調が今日はやけに鼻につく。
「お、おいおい待て。早いって。」
俺は構わず学校に歩いていった。
189名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 20:09:35 ID:yJxKOZRn
学校に来て、もうすぐ朝のホームルームが始まる。唯はまだ学校に来ない。だからと言って別にそわそわしたりしない。
しっかり者の唯が朝に弱いことを知ってるからだ。いつもの俺の迎えのインターフォンで起きることもあるようで、不真面目な俺だが朝は早く、遅刻とは無縁だ。
でも、今日は迎えに行ってない・・・行けなかった。
「はいはい席着いてー」
そして担任が教室に来て点呼を取ろうとしたとき
「すいませーん。遅れましたー」
唯が来た。
「おお珍しいな。ぎりぎりセーフだぞ。」
担任に愛想笑いをしつつ、自分の席に座る唯。眼が少し赤く見えるのは気のせいか?
「なになに、どうしたの今日。珍しいね。」
周りの女子が唯に話しかける。
「いつもの彼とは一緒じゃないの?」
からかい気味の何気ない女子の言葉がきこえた。胃に冷たいものが落ちたような感覚。唯は女子に答えた。
「今日は先に行ってもらった。」
いつもと変わらない唯の語調。俺はほっとして唯を見た。でも、唯は少しも俺の方を見なかった。
そしてさっきの唯の返答が嘘だと俺が気付いたのは授業が始まってからだった。
190名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 20:11:34 ID:yJxKOZRn
昼休み。さすがの俺と唯も昼飯まで一緒じゃない。
いつもは喜一とか男子同士で食べるのだが今日の俺にはやらなければならないことがある。
黒田さんに放課後、残ってもらうよう言わなければならない。黒田さんと俺は隣のクラスだ。
俺は一息ついて隣のクラスに入る。黒田さんは、いた。三人ぐらいの女子と弁当を食べている。
あの輪の中に入るのかと思うと緊張したが、俺が近づくと黒田さんの方が気付いてくれた。
友達に何か言って歩いてくる黒田さん。集まる教室の人の視線が痛い。
「と、とりあえず外に・・・。」
「うん・・・。」
教室の外の廊下に出て向き合う。俺は明らかに緊張しまくりだが、黒田さんの顔もほんのり赤い。あまり動揺を表に出さない黒田さんらしからぬ表情。
俺はできるだけ簡潔に言った。
「返事・・・したいから部活終わったら、屋上に来てくれるかな?」
「あ、うん・・・わかった。できるだけ早く行くね。」
「あ、いや。無理しなくていいから。」
「もう、待つのは限界だったから、私のほうがもたないよ。」
黒田さんは上目遣いに俺の顔を見上げてくる。文句なしに可愛い。
「う・・・ごめん。あの、でも、ちゃんと今の気持ち言うから。」
「うん。期待してるね。」
黒田さんは足早に教室に戻っていった。
「期待してる、か。」
自分の教室に戻りつつ俺は呟く。
黒田さんの短い言葉にこめられたあからさまな好意。中学の頃から憧れに近い存在だった黒田さんが俺のことを本気で好いてくれている。
でも――
「黒田さんと話してたの?」
「うわっ!」
後ろからの声に思わず飛び上がる。唯がそこにいた。
「返事、するんだね。」
「え!?・・・ああ、まぁな。」
「そ・・・。」
唯はそれだけ言って俺の横を通り過ぎようとした。わずかに見えたその横顔はあまりにも寂しそうで――
「ちょっと待て。」
俺は思わず唯の手を取っていた。すぐに振り払おうとするだろうと思い、握った手に力を込める。しかし唯は
「何・・・?」
と力なく呟いただけだった。唯の予想外の反応に思考が一瞬停止する。
「用がないなら、離して。」
顔を背けたままの唯の声は不自然なほど冷静だった。俺は素直に言った。
「今日のお前、変だぞ。」
「嘘。何も変じゃない。」
「いや、変だって。」
「変じゃない。」
「そっけないって言ってんだよ!」
小意地なまでの唯の態度に俺は声を荒げる。
「昨日のことだろ。あれは俺も言い過ぎたと思ってる。」
「・・・。」
唯はまだ顔を背けている。
「でもな、だからって、俺が誰と付き合おうが関係ないだろ?今までどおり、な?お前も誰かいい男見つけて・・・。」
「陸は今、幸せ?」
突然の問い。何だよいきなり。らしくないこと聴くな。
「そりゃ。」
俺は幸せだ。中学の時からの憧れの女の子に告白されて、俺という
普通の男の子は幸せでふわふわした感じで・・・あれ?
心が、重い。嬉しくなんか、ない。
「そりゃ・・・何?」
「う、うるさい!関係ないだろ!」
とっさに発した自分の言葉にはっとした。デジャヴ。これじゃ昨日と同じじゃないか。俺はまた、唯に――
「そうだね・・・。」
はーっと大きく肩で一息つく唯。はじめて見る唯の仕草。
「お幸せに。」
俺の握った手から唯が離れて行く感覚に、痛覚では感じない痛みが走る。同時に俺ははっきりとした違和感を胸に感じていた。
俺のことだけじゃない。唯のことも。何か違う。俺ははっきりとそれを感じた。
191名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 20:15:28 ID:yJxKOZRn
放課後の屋上。夕焼けに染まる町をフェンス越しに見下ろしながら俺は色々なことを考えていた。
いや、何も考えてない。ただぼーっとしてるだけだ。とてもこれから憧れの女子に告白される男の顔じゃない。
「何してるの?」
背後からの突然の呼びかけに驚いて振り向く。
「あぁ、黒田さんか・・・。びっくりした。」
「何かその反応、少し傷つくなぁ。」
軽くへこんだ表情をする黒田さん。
「あ、いや、ごめん。」
慌てて謝る俺をみて、黒田さんは微笑む。
「ふふっ、いいよいいよ。何考えてたの?」
「え、いや・・・。」
「私のこと?」
「え?」
「なんてね。」
「あ・・・。」
そうだ。考えてなきゃいけないことなのに。
俺の複雑な心中とは対象に黒田さんは可愛らしげな顔で笑っていた。
「それで・・・。」
「うん・・・。」
俺が話を切り出すと黒田さんはとたんに俯いた。その過敏な反応に後ろめたさが首をもたげる。
「俺は・・・。」
昼休みに感じた違和感。いつもと違う唯の様子。想像してた甘い告白の緊張感とは違うギリギリと胸が締め付けられる重圧に俺は耐えることしかできなかった。
何もかもが違う気がする。言葉が、出ない。
「大谷君?」
様子が変だと思ったのか、黒田さんが下から覗き込んでくる。
「黒田さん。俺・・・。」
間近で見る黒田さんの瞳に苦しげな自分の顔が映っていた。と、その瞳がそっと近づいてきて――
「え?」
俺は黒田さんにキスされた。一瞬何が起こったのか分からず、目を見開く。長い睫毛が少しくすぐったい。
192名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 20:17:41 ID:yJxKOZRn
唇はすぐに離れた。
「しちゃったね・・・。」
黒田さんはしなやかな指で唇をなぞりながら薄く微笑む。
「く、黒田さん、あの。」
俺はただ、立っていることしかできない。
「大谷君。あのね。」
「え?」
黒田さんは静かに語りだした。
「私ね、本当は嫌な女なんだよね。」
「は?」
いきなり何言ってんですか。
「嫉妬深くて、意地汚くて、腹黒くて、そのくせそれを絶対に認めようとしないの。欲しいものはどんな手を使ってもてにいれようとするし。」
俺の前からゆっくりと歩き出しながら語る黒田さん。まじめな話のようだ。俺はおとなしくきいていることにした。
「でもね、ここって時に踏み込めないのね。だからいつも中途半端、結局何も手に入らない。その内なにが欲しかったのかも忘れちゃう。きっと怖いんだね。
何でも自分の思い通りにしようとして、真正面から行かなきゃ行けない時に、いけないの。
だからいつもなにか作戦考えちゃってさ。他人を利用して傷つけて、うまくいけば万々歳、だめでも後のことは知ーらないって感じで。」
黒田さんは一息つくと
「私、いつもそう・・・。」
と上を見上げた。自嘲ぎみの言葉とは裏腹に少しだけ悲しそうな顔。
「でも人間なら誰だって多少、そんなとこあるんじゃないの?」
黒田さんが俺の方に向き直る。俺は続けた。
「世の中で黒田さんみたいな人、いっぱいいると思うよ。」
完璧だと思ってた黒田さんがそんな事いうのが、なんとなく嫌だったのか、諭すような言葉をかける。
「ちがうの。私が言いたいことはそんなんじゃない。」
「え?」
「今だから白状するけど私、中学校の時、部長なんてやりたくなった。でも大谷君が部長になったってきいて、一人急に立候補するって言い出した人がいた。」
「それって、黒田さん?」
「ちがうよ。・・・小野寺さん。」
193名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 20:18:43 ID:yJxKOZRn
投下終了です。まだまだ長くなりそうorz
194名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 21:05:33 ID:f5Ss0XKR
gj

気長に待ってます。けっこう好きなんでぜひ完結まで.......
195名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 21:40:49 ID:MTlFv5hM
セリフが自然でいいな。
GJ
196名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 23:56:25 ID:3blYLPmF
これは期待。
197名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 18:22:44 ID:Eold/Sh9
>>192の続き投下します。レスくれた人d

は?何でここであいつが出てくる?まさか、あいつ――
「でね、その後私もみんなに推される形で立候補してね。多数決になった。」
「黒田さん、それって。」
黒田さんはコクンと頷いた。
「そう。皆に推されたってのは嘘。元々勧められてはいたけどね。それで渋々って感じ。でもほんとは。」
黒田さんはここで一旦言葉をとめて、強く俺の眼を見据え、言い放った。
「小野寺 唯をこれ以上、私の好きな大谷 陸に近づかせないためだった。」
「・・・。」
彼女の告白に俺は何て返せばいいか分からない。話は理解できる。
俺だって、唯か黒田さんかどちらを部長に選ぶかといえば、黒田さんだ。黒田さんはそれを自覚していた。
「私の言いたいこと分かってくれた?」
「あ、うん。」
「じゃ、大谷君の気持ちきかせてくれる?」
「え、いや、その、俺は。」
部長にふさわしいと思ったのは黒田さんだった。でも、どっちが俺の好きな女の子なのか。
「俺は・・・。」
いや、もうすでに答えは出てる。俺は、真正面から向き合わなければならない。さっきの黒田さんはそれを俺に伝えたかったんだ。
「ごめん、黒田さん。俺、黒田さんの気持ちには応えられない。俺が好きな奴は他にいるから。」
黒田さんは精一杯の笑顔で答えてくれた。
「うん。分かってた。気持ち、ちゃんと言わなきゃだめだよ?」
「わかってる。」
「うん・・・。じゃあね。」
「あ、ちょっと待って!」
屋上のドアに向かおうとした黒田さんを呼び止める。
198名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 18:23:47 ID:Eold/Sh9
「何で・・・わざわざ、こんなこと。」
うまく言えない俺の気持ちを察してくれたのか、黒田さんは自嘲気味にこたえた。
「言ったでしょ。私、中途半端だって。そこまでひどい女にはなれないよ。」
「でも、俺がもっと早く自分に素直になれてたら・・・ごめん。」
結局、黒田さんを傷つけてしまったかもしれない。そう思うといたたまれない気持ちになって俺は頭を下げた。俺の謝罪に対し黒田さんは笑って答えた。
「別にいいよ。大谷君が今日のこと誰にも言わないって約束してくれるなら。」
当たり前だ。俺も笑って答えた。
「もちろんだよ。」
「それに――」
黒田さんはくすっとからかい気味に付け加えた。
「ファーストキスもらっちゃったしね。」
「――――」
「図星でしょ?」
「・・・はい。」
黒田さん、俺の中でイメージが変わったよ。彼女には一生かなわない気がした。
「私も、はじめてだったよ。」
「え?」
「これからもよろしくねー!。」
黒田さんは元気な声で走り去っていった。俺は屋上を降りていく黒田さんに感謝しつつ、妙にすっきりとした気分でこれからのことを考え始めていた。
199名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 18:29:09 ID:Eold/Sh9
しばらく経って。さて、と。これからどうしたものか。さらに少し時間を置いて屋上から降りながら考えに耽る。
何はともあれまずは唯に謝らなければ。昨日言い過ぎたこと、それから――
「あ・・・。」
下駄箱まで来た時に見知った顔が俺を見て、軽く声を上げる。
「唯か。何だ今日はやけに遅いな。」
「委員会の仕事やってて・・・。」
あぁ、と軽く返事しつつ、靴を履き替える俺を唯は少し寂しげ目で見ている。唯が俺にそんな視線を送ってくるなんてこの17年間で初めてかもしれない。
いつも一緒だった二人。
その時の俺がその目を、その表情を愛しく思えたのは、慣れ親しんだ幼馴染に感じた新鮮さのせいだけじゃなかった。
でも――
「唯、俺と一緒に帰ろう。」
やっぱりお前には笑っていてほしい。
「話が、あるんだ。」
唯は少しだけ、頷いた。

俺と唯は少し距離を置いて並んで歩いた後、二人の家の近くの公園のベンチに座っていた。昔、唯とよくこの公園で無邪気に遊んだものだ。
「俺らも、少しは成長したみたいだな。」
あの頃は、単純だった。毎日楽しくて、いつも隣には唯がいて。
「うん。そだね。」
唯も座ってしばらくして、顔がほぐれてきた。少し感慨深いような、切ないようなそんな目をしている唯の横顔に思わず見入ってしまう。
「黒田さんと、話してきた。」
唯の目にさっと悲しい影がよぎる。
「やっぱり、付き合えないって言ってきた。」
「え・・・。」
唯が驚いた目で俺を見る。
「どうして。」
「俺の好きな奴は他にいるから。」
200名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 18:30:54 ID:Eold/Sh9
「何、それ、誰?」
「お前なぁ・・・。」
俺はくしゃっと自分の頭を掻いた。
「私、なの?」
唯の目が迫ってくる。今にもこぼれだしそうな涙が浮かんでいた。俺は顔を背ける。
「ねぇ!ちゃんと答えて!好きな奴って誰?」
必死な唯の問いかけに俺の心が騒ぐ。ここまで言っといて、まだ逃げ道を探そうとする弱い気持ちが湧き出てくる。
「陸・・・お願い・・・。」
間近にある潤んだ唯の瞳。俺の頭が混乱する。
耐えろ。耐えるんだ。俺の理性。何に?感情に溺れるなってことだよ!自分勝手だな。唯の気持ちは?それは、その。お前自身の気持ちは?
「陸・・・。」
ああ――くそ。いや、俺は怖いだけなんだ。唯に溺れてしまうことが。こんなに誰かを好きになってしまう気持ちを認めてしまうことが難しいなんて。
でも。
「好きだ、唯。ずっと好きだった。」
「陸・・・!」
俺は唯を抱きしめた。それまで心にあった弱い気持ちは嘘のように霧散した。
ちゃんと言えたのは黒田さんとの約束があったから。全くどうかしてる。女の子に背中を押してもらうなんて、俺ってヘタレだったのか。
「陸、やっと言ってくれた。」
「すまん。ずいぶん待たせたな。えっと、いつから待ってた?」
胸に顔をうずめる唯がはにかむのがわかる。
「産まれたときからに決まってんじゃん。17年だよ。バカ。」
201名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 18:36:12 ID:Eold/Sh9
投下終了です。自分で書いてて何この三文小説って感じなんで
レスくれる人はホントにありがたい。続きは深夜に。ではまた
202名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 20:41:09 ID:4dRSvckP
やべえ
久々に胸がキュンとした
ファイトです
203名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 21:34:01 ID:k1Y7vQq+
これは萌える
乙でした
204名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 23:33:11 ID:kFdZN0VU
続きを期待しても構いませんねッ!?
205名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 23:42:12 ID:dl+sBNwx
GJ!
すまない。なぜか黒田さんを好きになってしまいそうだ
はっきりものを言える女の子ってかっこいいです

唯の最後の台詞に悶えるww
幼馴染みはやっぱりいいな

さて、続き待機
206名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 00:35:16 ID:MHS2m9NZ
>>201
続き期待wktk

ところで黒田さんを俺にく(ry
207名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 01:29:05 ID:Ka7fdYvR
>>200の続き投下します。

「長いな。ずいぶん。」
「なによー。そうゆう陸はいつから私のこと好きだったのよ?」
「あー、いやまぁ、なんと言うか。」
「おい。」
下から制服のネクタイをひっぱる唯。待て待て、マジで苦しい。
「ちゃんと答えなさい。私だけ答えさせておいてそれはないわよね?」
「わ、分かったから、ひっぱるのやめろ・・・。」
唯は力を緩めたものの、依然、ネクタイに手をかけている。
「何故にネクタイを離さない?」
唯は下からにやりと笑う。
「言いにくいことなんでしょ?」
おのれ、やはり見透かされたか。こうゆう時、幼馴染みって厄介だとしみじみ思う。
「ちゃんと言うまで離さないから。」
「はいはい。言いますよ。」
どのみちこのことを話せば一緒な気がするが。
「あー、あれは、小6のときだったか。お前が俺んちに来たときだ。いつものようにお前は漫画を読んでて、それで、だな。」
さすがに言いよどむ。男って全くどうしてバカなんだ。
208名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 01:30:38 ID:Ka7fdYvR
「それでお前さ、はじめてブラ着けたのって小6のときだろ?」
「・・・は?」
「いや、だからそれでさ。透けて見えてしまってだな。お前も女だったんだなってはじめて思って。」
見上げる唯の顔がみるみる内に赤く染まる。
「ああ、うん。まぁ、なんだ。その――ギョッ!?」
魚!?変な声出たぞ、今。いや、それより。
「お、お・・・。」
「ひ、人のこと散々待たしといて、私を意識したのがそれ!?」
真っ赤になった顔でネクタイをひっぱりあげる。痛い、息が苦しい前に首の皮が挟まってて痛い。
「あ、か、すま、ん・・・。」
俺のやっとの思いでしぼり出した謝罪にネクタイから手を離す唯。そのまま、鼻を大きく鳴らしてそっぽをむく。
「あ、あのな・・・。」
「最低。結局、そんなとこしか見てなかったなんてさ。」
「ちがうちがう。待て待て。」
俺は息を整えて
「きっかけがそれだったってだけで、本当はもっと前から好きだったのかもしれんけど、俺って色恋方面、鈍いからな。」
「だから、人の下着見て欲情しちゃったと。」
「あいや。」
「きっかけとしては人として最悪よねー。しかもこんな状況で普通言える?」
「お、男なんてみんなこうなんだよ。」
苦しい言い訳。というかやっぱり唯に口げんかでは勝てない。
「まぁこれ以上、陸をいじめるのはかわいそうだから、と。」
すくっと立ち上がる唯に
「・・・それが好きな男に対する態度かよ。」
ぼそっとぼやく。
「なっ!?」
あ、勝ったと思った瞬間、頭にゴツンとパンチが飛んできた。
「ってぇ・・・。」
「ほんっとデリカシーがないんだから!ほら、さっさと行くわよ。」
「どこいくんだよ?」
「陸の家。何かご馳走してよね。人を待たせた罰。」
にべもない。俺は一生尻にひかれんのかな、なんて思いつつスタスタと歩いていく唯の背中を追いかけた。
209名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 01:32:38 ID:Ka7fdYvR
「ホントこのプリン、おいしー!」
「あぁ、さいですか。」
部屋に二人。俺はふてくされてベッドで寝転んで雑誌を読む。唯はさきほど発見した洋菓子を食ってやがる。
まったく。親がいないと分かるやいなや人の家の冷蔵庫をあさりやがって。
しかもそれ、駅前のケーキ屋でめったに手に入らない代物だぞ。奥の隅に隠しておいたのに、こいつは
「あ、ここにあるってことはそれなりのもんよね?」
なんて納得顔で頷いていた。
「昔から変わんないわねー陸も。隠し場所も。」
こいつは・・・さっき人が告白したと思ったら図に乗りやがって。なんかもう嫌になってきた気がする。
「ごちそうさま。ちょっと陸、いつまですねてんの。起きなさい。」
俺はうるさいと言わんばかりに雑誌を顔にかぶせる。
「こら、いい加減にしろ。」
唯が近づく気配。ぎしりとベッドが軋んだ思うと雑誌が顔面から勢いよく飛んでいく。
「おま、なにしやがる――。」
と俺が上体を起こそうとしたところに唯の顔がアップで映った。とっさに体を止める。
「唯・・・お前、なぁ・・・。」
言いかけて、俺は何も言えなくなる。目の前にある唯の真っ黒な瞳。整った鼻筋、薄い眉。綺麗に切り揃った前髪はさらさらして、ガラスの繊維を思わせた。
そのまま黙って見つめあう。唯の頬がかすかに染まる。唇の隙間から吐息が漏れる。
ここで俺は自分たちがベッドの上にいるのに気付く。加えてこの体勢、唯は上で馬乗りになっていて、俺は半身を起こしかけたところで止まっている。
「・・・。」
胸が熱くなる。次第にその熱が頭に上ってきてクラクラした。俺はふと目線を下げると、ほどよい大きさの胸があり、制服の隙間からは水色の下着が見える――
210名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 01:34:13 ID:Ka7fdYvR
「陸・・・。」
「う、うん?」
やばい、視線を悟られた。あわてて目を唯にむける。
「したい?」
「な、なにを。」
反射的に聞き返す。何を言うんだ突然。いや、なにってそりゃ。
「わたしは、いいよ。」
唯の言葉に、衝撃をうける。意味が理解できたと同時に視界が一瞬ぼやけた。
「本当に、いいのか?」
意外と冷静な声が出た。いや、決して冷静なわけじゃない。理性が崩れる一歩手前。
「うん・・・。ここで、して。」
体がはじけた。俺は唯の肩を掴むとそのまま強引に押し倒し、その唇を奪う。
「ん・・・ちゅ、んん・・・。」
唇を押し付けるだけの幼稚なキス。柔らかい唇の感触を存分に味わいつつ、俺は胸のふくらみに手を伸ばし、制服の上から揉みしだく。
「むぅ・・・ぷはっ。り、陸、まっ・・・んあっ。」
今度はうなじを舌で舐めあげる。俺の頭の中には獣のような欲望しかない。
布で覆われていないところからのぞく唯のきめこまやかな肌。乱れているとは言え、驚くほど指どおりのいい髪、花のような甘い匂い。
その全てが自分を誘惑し、求めているかのように見えた。
「陸っ!だめっ!」
日常の俺の性格とはあまりにかけ離れた獣性に、唯は固く身を縮めた。
「だめ・・・そんなの、陸じゃないよ。」
怯えたような唯の悲しげな声に俺はハッとした。烈火のようにたぎった情欲の炎が、理性の氷のような自制を浴びる。
俺は唯の上から離れた。
「ご、ごめん。俺・・・。」
途端に気まずくなる。俺は俯いて胸に渦巻いている自分への恥ずかしさと、侮辱にも似た憤りをかみ殺した。
「こ、こっちこそごめん。急だったから、驚いちゃって。」
制服の乱れを直しつつ、唯が声をかけてくる。あぁ、終わったな。最悪だ。そして俺は最低だ。
211名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 01:36:42 ID:Ka7fdYvR
しばしの沈黙の後、唯が口を開いた。
「それに、するんなら、ちゃんと服脱いでからじゃないと汚れちゃうじゃない。」
「え?」
俺は顔を上げた。今なんて?
「ち、ちょっと。今から服脱ぐからむこう向いてて。陸も脱いでよね。」
「つ、続けてくれるのか?」
先ほどの醜態を目の当たりにして。
「今さら止めるなんてできないわよ。わたしも・・・陸と、その、したいし。」
目をそらしつつ、唯はそんなことを言った。今度は胸に愛おしさがわいてくる。
「唯、ありがとう。」
俺はそう言いつつ、唯を強く抱きしめた。
「ごめんな。俺、ちゃんとする。唯のこと、大事にするから。」
「ん。わかった。」
健気な唯の返事。愛おしさが溢れてくる。俺は、唯の頬に手を添え、キスしようとするが――
「待って。」
唇に唯の白魚のようなひとさし指が当てられた。
「服、脱いでから。」
「あ、はい。」
そんな間の抜けたやり取りの後、お互い背を向けた俺と唯は、裸に近づいてゆく。さっきの欲情とはうってかわって、唯の裸を見るのが何か、いけないことのように思えて、少し怖かった。
212名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 01:38:44 ID:Ka7fdYvR
俺が全裸になってしばらくしてから
「いいよ。」
唯が言った。緊張した俺が振り向いてみると、胸と股間を手で隠してベッドに座った、裸の唯がいた。
「あ、あんまり見ないで・・・って言うか、うわ・・・。」
唯が俺のを見て、目を丸くする。俺のは、呆れるほど立派に起立していた。
「こっちだって恥ずかしいんだぞ。」
「だ、大丈夫なのかな・・・。」
「まぁ、多分な。」
まずは、俺は唯を優しく横たえ、手をそっとどかして程よい大きさの二つの果実を見る。薄いピンクの頂点は既に立っていた。
「陸・・・。」
唯の声に促されるように、俺は右の乳首を口に含み下で転がしつつ、左の胸を下からゆっくりと揉んでゆく。
「んっ・・・。」
唯の体がピクリと反応する。興奮してるものの、俺はいくらか冷静だった。さっきみたいにはしない、と唯の体を丹念にほぐす。
「・・・!・・・ふくぅっ・・・。」
口の中で唯の乳首が硬くなってゆく。乳輪の形もはっきりしてきた。
「はぁっ・・・あっ、ううっ。」
俺は完全に硬くなった乳首を吸ってみた。
「んああああぁぁぁ!」
唯の喘ぎ声が高い。そろそろ、と俺は唯の下半身に手を伸ばそうとする――が、先客がいた。
唖然。唯は股間を隠していたほうの手で自らを弄っていた。
割れ目からはこんこんと愛液がわき出て、既に出来上がっているように見える。
「あっ・・・だって・・・もう、んっ・・・我慢、できなくて・・・。」
視線に気付き、羞恥とはちがう要素で目を潤ませる唯。その指先は割れ目を辿り、秘芽を撫で上げる。
長い間ずっと一緒にいた俺が初めて見る唯の姿、その表情に背筋が泡立つ。
「お前、けっこうエッチだったんだな。」
「っ!だ、だって・・・ずっと・・・ほ、欲しくて・・・。」
狂おしげに語る唯。もう大丈夫だな。
「あ・・・陸。」
俺は弄っていた唯の手をどかし、ペニスをあてがう。
「俺も、唯が欲しい。」
俺の言葉に、唯は
「うん・・・きて・・・。」
最高の笑顔で答えてくれた。
213名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 01:42:30 ID:Ka7fdYvR
まぶたの上に光が差しているのを感じ、私は静かに目を開けた。
朝いつも目覚めるときとは違う天井だが見覚えがある。
私はすぐ隣で寝息を立てている幼馴染の安らかな顔を見て
(昔はよく一緒にここで寝てたのにね。)と思った。
昨日、空が夕焼けから夜に変わる時間。私は小さい頃、何度も遊んだ思い出がたくさん詰まった部屋で陸と体を重ねた。
その事実を反芻して、少し顔が赤くなるのが分かる。
あんなに気持ちよかったのは初めてだった。陸の手、唇に触れられるだけで、あんなになってしまうなんて。
最後なんか、自分から足を絡めて、中に出してなんて言ってしまった。全くどうかしてる。安全日だったっけ?昨日。
でも、後悔はしてない。交わるとき、最初は優しくしてくれてた陸も、私が求めたら陸も私を求めてくれた。
二人で何度も何度も交わった後、帰ってきた陸の両親と一緒にご飯を食べて、私が泊まりたいと言ったら、陸と親御さんたちは
「なんか昔を思い出すなぁ。」と笑ってくれた。
そして本当に昔のように二人は寄り添って眠った。昨日ほど、満ち足りた気分で眠ったことないと思った。
しかし、何でも昔と変わらないわけじゃない。晩御飯の時、陸がいった言葉。
「最近気付いたんだけどさ。俺、唯が俺のそばで寂しそうだったり悲しそうだったりするとこ見ると、綺麗だなって思ってしまうみたい。」
そりゃあ、今まで恋で寂しいとか感じたなかったし。17年間。でもそれがなぜ綺麗と感じるのか。
「今まで唯がしたことないからな。さっきのエロい表情とか――」
陸が言いかけたところでテーブルの下から脛を蹴飛ばしてやった。
痛がる陸を尻目に、私は鼻を鳴らして、にやけそうになる口元をコップの水を飲んで隠した。
まぁ、関係の変化に伴い色々新鮮なことも出てくるということか。楽しみといえば楽しみだ。
そして今。陸の目が覚めるのでの時間をどんな風に過ごそうか、これから二人でどんなことをしようか。
私は透き通るような朝日の中で考えを巡らせた――
214名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 01:46:17 ID:Ka7fdYvR
終わりです。レスくれた人に重ね重ねd
エロは努力したんですが不満な人すいません。
また機会があれば書きたいと思います。では
215名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 01:54:03 ID:Ka7fdYvR
いい忘れたんですが、保管庫に入れていただけるなら
題は登場人物から、「陸と唯」でお願いします
216名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 01:54:31 ID:aJybABmN
乙!gj!
217名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 02:50:13 ID:34IYRuXK
オッケ ━━━━━━ (ゝ○_○) ━━━━━━ イ !!!!!
218名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 19:28:56 ID:W5hg6vkq
GJ!透けブラがきっかけって結構生々しいなw
219名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 00:19:14 ID:+nlNQJvp
唯も黒田さんも良い女だった。
220名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 20:18:37 ID:7Y1Ieysj
世話好きの年上幼馴染とかいいよな
221名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 21:32:14 ID:b1WErC5L
年下の幼馴染♂は生意気でその年上幼馴染♀を呼び捨てにしたりしてるんですね。
222名無しさん@ピンキー:2009/07/04(土) 00:16:20 ID:UivPetYw
クラスにお弁当持ってきたり
ブレザーをスーハーしたり
223名無しさん@ピンキー:2009/07/04(土) 03:53:36 ID:WJOFLqNo
>>222
二行目w
224名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 01:40:19 ID:ZsJ9gOVU
いつのまにか風呂に入ってきて背中流したり
勝手にベッドに入ったり
225名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 17:42:43 ID:dVXrdel+
いつのまにか子供が出来てたり
226名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 21:24:17 ID:xPJu6Gh1
成長した子はヤリチンでしられるf先輩に似ていたり
227名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 01:02:32 ID:WGsJd/mk
疑ってこっそりDNA鑑定したら、ただの他人の空似でけっきょく自分の子
疑った申し訳なさに、帰るなり幼なじみの妻を抱きしめる夫。
「ちょ、ちょっといきなり何なのぉ……」と、赤くなって恥じらいながらも嬉しそうな妻。
たまらず「二人目作ろうな……」と囁きながら唇を重ねる夫

まで妄想した
228名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 18:15:48 ID:Wt+UZqpB
イバちゃんを待っているんだ。
229名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 22:05:07 ID:qFSglPma
816 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2009/07/06(月) 21:58:07 ID:3s2dBSpo0 [PC]
一番でっかい笹をとってくるんだ!とかいって幼馴染の腕白少女とお出かけしてトラブルが起きて一晩人気のない朽ちた山荘で過ごすイベント
230名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 23:13:47 ID:7odPJEvT
>>228
同志…
231名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 22:57:45 ID:3bXFc9JJ
コロコロで連載してたビーダマンの漫画ブックオフ読んでたら幼馴染キャラがいた
子供の頃は気付かなかったが中々萌えるキャラだった
232名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 00:48:28 ID:b5CRTwv3
爆球連発の方?それともヘタクソな関西弁使う主人公がいる方?もしくはそのあとにはじまったやつ?
233名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 00:50:35 ID:o3aj6uee
ワイのワイルドワイバーンの奴か
234名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 02:46:50 ID:rsS/j1Y3
懐かしいな…
改造したら固くなりすぎてビーダマンの腕をへし折った事もあったな… 幼なじみとの思い出さ




男の
235名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 10:36:29 ID:XMMnw2j6
「あー!ビーダマンの腕が!」
「えぐっ、ごめんね……」
「あーあ、どうしてくれんだよ。来週には三組の奴らと勝負するのにさー」
「ぐずっ、ごめんね、ひっく、ごめんなさい……」
「どーすんだよ、これじゃ勝負できねーよ」
「なんでもするから、ゆるしてぇ……」
「……。本当になんでもするんだな?」
「うん、する……!するから……」
「それなら……」


……なんだこの電波
236名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 20:37:43 ID:b5CRTwv3
「おまえがビーダマンになれ」とかわけわからんこといいだしてアソコにビーd(ry
237名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 22:21:35 ID:2ZPEzYvE
つっこまないからな
238名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 23:09:08 ID:hBI1WkhT
春の夕べの夢醒めての続き待ってます。待ってますから。
239名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 08:52:25 ID:p2DHZTJ7
職人さんにも生活があるからな
急かさず気長に待とうぜ
240名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 14:19:49 ID:P7NIS4Iu
ヒーローごっこかおままごとかで喧嘩。ただし前者が女の子、後者が男の子。

そんな性別的趣味逆転系の幼馴染みものとか読んでみたい。
241名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 15:01:20 ID:CK1BKcJV
それなんてクロスゲーム
242名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 15:37:48 ID:mZrmp46j
>>236
女の子は男と違って、ダブルバーストなんですね。
243名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 20:39:27 ID:aG3Z7qxI
『連射』?そんなものはできて当たり前。俺たちの場合『それ以上の何が』できるかが問題だろ?
244名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 16:03:10 ID:rKFnFLEf
>>243
いや、二発同時発射。
245名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 17:15:13 ID:54qgtIUR
「なんと奇遇な!」
246名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 01:36:13 ID:aIl4K37a
>>243し、しってますよ。ただ言いたかっただけ。ところで>>231のいう押幼馴染ってだれ?どのシリーズ出た?
247名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 02:19:44 ID:c9wlx8IE
ワイのワイルドワイバーンだろ
248名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 19:36:31 ID:DMJhthDA
>幼馴染
ケーニッヒケルベロスとユンカーユニコーンだな。

スタッグスフィンクスにプライドを傷つけられたケルベロスの人が壊れてだな。
ユニコーンの人が敵討ちのためにお付き合い。
スフィンクスの人とユニコーンの人の一騎打ちはなかなかだったぜ。
「俺はお前を許さない!」
「き…君は、女の子…?」
あと、負けたケルベロスの人にユニコーンの娘がいっしょに号泣したりな。

当時のコロコロの記憶だけで書いてみた。
違っても責任は負わない。
249名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 20:05:45 ID:c9wlx8IE
ttp://uproda.2ch-library.com/148293PEg/lib148293.jpg
過去の事件で頭のいっちゃった幼馴染が心配で男装して一緒にバトルに参加。
最初は男口調で伊集院って呼んでたけど
画像の最後のバトルシーンで口調も普通の女の子に戻って
呼び方も伊集院からあっくん(圧政)に
戦いが終わった後は伊集院も元に戻っていい感じの仲になってる。
あと金髪のロンゲは男
250名無しさん@ピンキー:2009/07/16(木) 13:38:56 ID:WouI1QRs
保守
251名無しさん@ピンキー:2009/07/16(木) 20:36:26 ID:TuzDBjsh
>>248-249そういやアイツって幼馴染って設定だっけ。思い出せたよありがとう
252名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 20:07:38 ID:aKpmlaIh
愛米って幼馴染みモノのマンガを読んだ
なんか凄かった
253名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 20:52:14 ID:E2dliYMr
kwsk
254名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 20:57:06 ID:p36zygR0
最後は強姦まがいにセックスして、女の子をモノにしちゃうんだよね。
全部ぶちこわし。最初からやっとけっていう。
255名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 22:34:44 ID:aKpmlaIh
>>253
幼馴染み♀は主人公を慕っていて言いなりみたいな感じだった
けれど、あるコトを境に立場逆転

それから幼馴染みは主人公に対してドSになる
主人公は幼馴染みにフルボッコにされまくる

で、またあるコト(>>254)を境に立場逆転。幼馴染みは主人公を隷属に近いくらい慕うようになる。

最終的に結婚

こんな流れだけどいろいろ背景があって
どうしてこうなったかも説明してある

こんな感じ。説明下手でゴメン
256名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 22:47:07 ID:E2dliYMr
いや、十分理解できた。最近の作品?どこから出てるやつ?
257名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 22:58:04 ID:aKpmlaIh
>>256
結構前の作品。確かヤングサンデーのコミックスだったはず

ただ俺の知るかぎりでは、古本屋でもなかなか見かけない作品

愛米と書いてラブコメと読む

作者はコージィ城倉
258名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 23:05:54 ID:JqxSWK3y
連載中に流し読みしたことがあるだけだが
ギャグをやりたいんだか痛い話しを作りたいんだかわからん作風だった覚えが
絵柄的にも内容的にも、少なくとも「萌え」とはまったく別のベクトルだったな
259名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 23:53:34 ID:aKpmlaIh
>>258
確かにそうかも
話題にしてすまんすまん
260名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 05:23:52 ID:/eQE5c80
サンデーより病ンデーだな
261名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 07:55:32 ID:R1nMm7kL
ヤンデレか。ツンデレとかボーイッシュとかよりも幼馴染みに馴染みやすい属性だよな。
それと依存。
262名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 08:56:20 ID:TbnYVZcU
>>257
コージィw
いまマガスペで高校野球漫画描いてるぜ。
そういやキャプテンとマネージャーは幼馴染だ。
263名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 19:43:13 ID:YKLX7n3D
あの子からは寝取られの匂いがするぜ。「ニガーチンポきくぅー」とか言ってみたり。
264名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 20:47:50 ID:/0EtYdA4
>>257thx
265名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 18:59:32 ID:1N453mBv
金持ち同士のヤツはもうやらんのか?
266 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 01:59:28 ID:bw2xGgfI
あー、あー、酉のテスト中ー。

お久しぶりです、◆1Bix5YIqN6です。また馬鹿なものを書いてしまいました。

次から投下します。結構長いです。前後書き含まず33レスで60kbくらいあります。
タイトルは、『無想機神・鋼狼牙』。
保管庫に世界観同じの『覇我鬼神・雷轟衛』あるので、よければそちらもどうぞ。
267『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:01:03 ID:bw2xGgfI
――そして。

 彼女は、巨人を見上げた。
 二〇〇]年、五月二十七日。地球は、宇宙からの侵略によって壊滅状態に陥った。
 それを、人類は『イブマ』と呼び恐れた。
 恐怖が地上に蔓延し、不安が天を満たした。
 だが、巨人を見上げる彼女の顔は、誇らしげな笑みだ。
 ああ、と、彼女は思う。大丈夫、と。きっと彼は、その意志を貫き通す、と。
 ――冬に至る季節。これは、そんな時期の話だ。


 ――無想機神――
―― 鋼 狼 牙 ――


268『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:01:26 ID:bw2xGgfI
〇、『巨人(海底)』

 ……そうして、彼は眠りについた。
 己に課した役割を終えたのだ。
 もう大丈夫だ、と。力を失った彼は、海の底に沈んだ。
 だが、その眠りを覚ますものがある。
 雑音のようなそれは、平坦で、無感動で、機械的で、静かで、しかし確かに感情ある声だった。
 言葉、だった。
 彼は、その残された能力で、その解読を開始した。
『……依頼・する』
 声音には、やはり感情があった。
『我々は・過ちを・犯した』
 その感情の名は、悔恨と言う。
『君の・力を・借りたい』
 そして、言葉はループする。
 その感情を強くしながら、何度も。
『……依頼・する<プリーズ>』
 彼は眼を開く。
 手助けを求める声がある。
 ならば、この身はかつての役目を思い出す。
 彼は動き出す。
 砕けた己でも、出来ることがあるならば、と。
269『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:01:58 ID:bw2xGgfI
一、『守護者(孤軍)』

 島がある。周囲に群島を抱く大島だ。
 木々に緑はなく、海岸近くにある家の大半は破壊されている。
 島の中央には小高い山があり、その中腹を切り開くように、一つの施設がある。
 海岸沿いの町と同じく、砕かれた箇所がある。焼滅した場所がある。地殻を抉られ、崩された地がある。
 だが、その機能、核は失っていない。
 『千木島宇宙センター』――と。施設入り口、破壊されながらも再建され、朝日を浴びる門扉には、その文言が刻まれている。

/

 乾いた大地が鳴動している。
 千木島宇宙センター、門扉前。そこに、俺は立っている。
 既に周囲は破壊されているし、人はいない。気兼ねする必要は一切なく、故に戦闘においての不純物はない。
 見上げる先には銀の四足巨獣。
 全高にして二十五メートル。全長は五十メートルを超えているか。
 この地上、いかなる生物とも異なり、しかしその特徴を随所に見せるそれは、どこか幻想上の獣を思い起こさせる。
 が、と、それは吼え猛る。意志を砕きに、その足を前へと進めながら、だ。
「――悪いが、ここは守るべき場所だ」
 怯まず、退かず、銀の巨獣へと告げる。
「故に、オマエはここで果てる」
 息を吸い込み、左胸を右手で抑える。
 鼓動は機械的な正確を持つ。
 呼び出すのは、己が機構だ。
「――我が機構たる鋼を召還する」
 詔は、自動的に紡ぎ出される。
 俺が機能として持つ言葉。機構文<プログラム>が、全身を動かしている。
「応えろ。想い無く、温もり散らす鋼の機神よ」
 経路は繋がっている。動力にも問題はない。故に、それは応える。
 ばぢり、と空間が鳴動する。空間の軋みは空気の鳴動を引き起こし、金属がねじ切れるような音を発する。
 それは、『イブマ』が出現する音だ。
 それも当然。なぜならこの技術は、まさしく『イブマ』のそれであるが故、だ。
 震撼は先ほどよりも激しく、しかし先ほどとは別の理由をもって引き起こされる。
 空間に走る亀裂。そこから突き出るのは、巨大な鋼の指先だ。
『「――無想機神。」』
 詔は二重。
 一つは肉である己、春日・陽逢<かすが・ひあい>から発されたもので、もう一つは、空間の奥、鋼である己からだ。
 背後。サイズにして二十倍近い口から発されるソレは、ひび割れる空間をさらに押し広げていく。
『「鋼、」』
 上体が空間を割り砕いた。
 同時、胸部のパーツが開き、俺を飲み込む。
 半身に、操縦席なんて上等なものはない。行われるのは、肉体の咀嚼と分解だ。
 異なる肉体で活動するための構造変換。
 異なる精神で行動するための精神改造。
 異なる摂理で起動するための概念改革。
270『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:02:53 ID:bw2xGgfI
 血液は冷却水と潤滑液、筋肉は機構、皮膚は装甲、脳髄は電脳、心臓は炉心、鼓動は出力となる。
『狼、』
 目を見開く。
 いつの間にか全身が出ている。
 鋼たる満身には力があり、意が隅々まで行き渡っている。
『牙……!』
 最後の一言と同時――合一が完成する。
 眼前。銀の巨獣と戦うために、だ。

 ●

「おかえりなさいであります」
 家に帰ると、機械じみた出迎えの声が聞こえてきた。
 声の方向を見れば、家の裏手、庭側から出てくる影がある。
 制服に、少し汚れてしまったエプロンを付けた少女だ。
「……真喜<まき>か」
 彼女は小脇に洗濯籠を抱えている。
 風もあるし、天気もいい。洗濯日和ではあるだろう。
 だが、季節がいけない。手を見れば、赤くなっているのが見えた。
 まともに電気が使えない今では手洗いするしかないが、そもそも服自体が少ない。洗濯を減らし、シャワーも自粛しているのは、彼女にとっては少し辛いことだろう。
 元々手作業が好きな性質だったが、正直、真喜がいるおかげで助かっている部分は多い。
 ……まあ、絶対に言わないが。
 心中頷いていると、真喜は洗濯籠を置いて近寄ってきていた。
 目線は全身に向かう。僅かな所作の不自然さでも見逃さない、と、機械じみた正確さで、俺の動きを見ている。
「陽逢、怪我はなかったでありましょうか」
「ああ、ない。いつもどおりだ、『イブマ』はいつもどおりに弱かった」
 そうでありましたか、と頷いて、真喜――春日・真喜、俺の義姉たる彼女は、白髪を翻した。
 足取りはいつもと変わらない。ゆっくりと家に戻っていく。
 向かう家は、プレハブ小屋だ。
 自衛官が言うには、大震災の時にも使われた、由緒正しい仮設住宅なのだと言う。
 当初は何人もの人がいたのだが、今では俺たちとあと一人、怪しい外人が住んでいるのみだ。
 と、家に入る直前で彼女が振り返る。流れ出るのは、一方的な通告とも言える台詞だ。
「ところで陽逢。お昼ご飯ができております。私は陽逢の世話を自身に課したのであります。昨日のように食べないと言うのなら、口の中に押し込んででも嚥下していただくのでありますが、いかがでありましょうか」
「お前の料理は飽きた」
 一言で切って捨てて、俺は真喜とは違う家に入る。
 真喜は機械じみた正確さで料理を作る。
 失敗することはあるが、それも最初の数度だけだ。
 一度成功すれば、味は変わらない。そして今、必然的に狭くなったレパートリーでは、飽きるのも仕方ないってものだろう。
 横目で見た彼女は、無表情で、しかしなによりも胸に刺さる言葉を言ってきた。
「陽逢。私のご飯を食べたくないのなら、それでいいのであります。しかし、できれば、ご飯は必ず食べて欲しいのであります。そうでなければ、私はまた、『悲しい』と思うのでありましょうから」
「……っ」
 鍵を取り出し、鍵穴を壊す勢いで差し込んだ。
 逃げ出すのか、と、心中で声がする。
 ああ、と思う。
 俺は逃げ出すのだ、と。
271『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:03:43 ID:bw2xGgfI
 ●

 水道も冷蔵庫なんてものも使えないので、基本的に水はペットボトルなりに入れて放置しておくことになる。
 今は冬なので部屋に放置しておくだけでも冷たいが、夏には酷いことになるかもしれない。
「井戸が枯れなけりゃいいんだけどな……」
 ストーブを点火しながらため息を吐き、ふと天井を見上げる。
 そこには忍者がいた。
「……………………」
 水をもう一口含み、ゆっくりと飲み下す。
 忍者はピンク色だった。足指や手指を使って天井に出たでっぱりを掴んで、天井に張り付いていた。すさまじい身体能力だった。
 ペットボトルのキャップをしっかりと閉めて、部屋の隅に放る。
 この部屋の鍵は、真喜も持っている。俺がいない間に真喜が掃除や洗濯をするためのものだが、ついでに整理整頓をされることがある。
 それが嫌で部屋の掃除は自分できちんとしているのだが、
「よっ」
 手を伸ばして、棚の中、大き目のサバ缶を手に取る。
 整理整頓はやはり大事だなぁ、と頷きながら行うのは、腕の振りかぶりだ。
 一発叫びを入れながら、全力で投擲する。
「何をやっていやがるかぁーッ!」
 ごしゃんとひしゃげるサバ缶。そしてべたりと落ちる怪しいピンク。
「お、おォう……ジョドー、ちょっと寝ておりました」
「黙れ変態所長」
 ピンク忍者は衣装を脱ぎ、白衣を取り出して着込んで、どっこらショー、と座り込んだ。
 ――如怒・憤母流斗<ジョドー・フンボルト>。自称純正の金髪黒肌日本人。
 こんなのがこの島にある宇宙センターの現所長で、宇宙船製作やらなにやらのエキスパートだと言うのだから疲れる。
 ……そう。宇宙船。この男がこの部屋を訪ねるなんて、その用事しか在り得ないだろう。
「で。今日は何の用なんだ、ジョドー所長。また鋼狼牙の炉心を調べたいのか? それともパーツを?」
「いえ、その件に関してはもう大丈夫です。今は、日本中から電装品をかき集めて調整を行うだけの段階まで至リました」
「……ジョドー所長。だったらアンタは、なんでこの部屋に来たんだ」
「おォう。よくぞ聞いてくれました」
 ところどころ怪しい日本語が、耳朶を嫌な感じで刺激する。
 正直出て行って欲しかった。
「実はですネ、自衛隊の方に追われているのです」
「何でだ」
「ちょーっとお尻を撫でたら、殺意交じリに、こう、ケッチョー蹴りが」
 座る位置をゆっくりと窓際に変えつつ、俺は続きを促す。
 携帯は使えないので、代わりに無線機をいじくる。
 コール。そして机の上に置き、送信状態にだけしておく。
「で? その後、逃げる場所に困ってここに来たのか?」
「えェ、ニンジャ衣装を揃えていたら、危うく捕まって火刑にされかけましたが」
「そうか。それは災難だったな、ジョドー所長。ここ、春日・陽逢の家でゆっくり休んでいくといい」
「ありがとう、ヒァイさん。ところで何故無線機を?」
「ああ、もうすぐ分かるさ」
 フム、と首をひねるジョドーから耳へと集中を移す。
 ……遠くから、バイクやジープの音が聞こえてくる。
272『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:04:29 ID:bw2xGgfI
「まあ、ここに来た用は、それだけでは――ム、どうしましたか、ヒァイさん」
 さて、と立ち上がって、俺は笑顔で言い放つ。
「ジョドー所長。俺、ちょっと出てくるから。すぐには戻らないが、あまり悶えるなよ」
「悶え……? とりあえず、分かりました」
 いい笑顔で頷く野郎へ、同じくいい笑顔で頷き、右手親指を上げて言い放つ。
「グッドラック!」
「グッドラック!」
 即座に返ってくるサムズアップサイン。颯爽とそれに背を向けて、上着を羽織り、靴を突っかけ、外に出る。
 そこには自衛隊の皆様が整列していた。そして、その手前にある後ろ姿は、紛れもなく俺の義姉だった。
「ご苦労様なのであります皆様。陽逢からの無線により、フンボルト氏の居場所はこの部屋と断定されたのであります」
 アイ・マムと答える自衛官さんたち。一糸乱れぬ統率が無駄に格好いい。
 ……状況は、予想のもう少し斜め上にあった。訓示をたれる真喜は、妙にサマになっていた。
「――以上。展開であります、皆様」
 プレハブを取り囲む自衛官の皆さん<暇人>。そして突入、遅れて聞こえてくるのは哀れな悲鳴だ。
「あー……」
「陽逢。ご飯はまだ余っております」
「……要らん。お前が食っとけよ、真喜」
「分かったのであります」
 家にもいられなくなったので、とりあえず歩き回ることにする。
 『イブマ』に弱点はいくつかあるが、その一つが、隠密活動ができないことだ。出現時には、金属がねじ切れるような音と、空間を割るモーションを伴う。そして遠方で出現し海から来る場合は、全く話にならない。やつらに、ステルスと言う概念はない。
 そして、俺は鋼狼牙をどこにいようと呼び出すことができる。この島にさえいれば、どこにいてもほとんど問題はない。
 しかし、と思う。
 やつらは何故、こんな馬鹿な攻め手を繰り返すのか、と。
 これではまるで、あたまの悪いロボットアニメのようだ。
 ジョドー所長が開発している宇宙船を破壊するために来ているのではないのだろうか。
 所詮俺と鋼狼牙は単独で、しかし『イブマ』は機械、集中力とも疲れとも無縁の存在。飽和攻撃でも仕掛ければ簡単にこの島は焦土になる。
 あるいは、別の目的があるのだろうか。
 鋼狼牙と俺のデータ取りか。それとも、人類破滅の侵略方針が変化でもしたのか。
 どちらにせよ、このままでいてくれるならそれでいい。
「俺はただ、ここを守るだけだ」
 頷いて、足の向くままに歩く。
 狭い島だ。他に娯楽もない。部屋でゴロゴロしているよりは、ずっと健康的だった。
273『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:05:19 ID:bw2xGgfI
二、『守護者(憂鬱)』

 度重なる『イブマ』の襲撃で寸断された道は多いが、迂回路などいくらでも思いつく。
 島を海岸沿いに歩きながら、空を見上げた。
 青く、高い空だ。潮風が強いが、この島で十四年過ごしている。この程度で今更何かを言うこともない。
「フー……」
 息を吐くと、僅かに白かった。
 ――そも。俺と真喜は、この千木島の生まれではない。
 十四年前、この島に流れ着いた、どんな関係だったのかも分からない幼子だった。
 色々とあったのだが、結局俺達は春日家の養子となり、姉弟として育ってきた。
 出自が気になったこともあったが、今ではごく稀に思い出す程度だ。
 既に俺は春日・陽逢以外の何者でもなく、それ以外であった幼児時代など、記憶の果てにしかないのだから。
 ……などと。柄にもなく沈んで考えていたら、後ろから雄叫びが聞こえてきた。
「む」
 振り返ると、全身タイツに白衣を着込んだ変態がいた。変態は、凄まじい顔で、自転車を漕いでいた。
 ああ、あの格好は競輪選手が着ているユニフォームの真似か、と、変態ルックに関しては理解する。
「……………………」
 周囲を見回し、長くて太めな枝を捜し、拾い上げる。
「ヒッァーイさ――ン!」
 突っ込んでくる変態をひょいと避けて、スポークに枝をさっくり差し込む。
 当然、自転車は大変なことになる。
 海岸沿いであったことが幸いし、自転車はガードレールを飛び越えて海へと転げ落ちていく。
「……おっと。幸いじゃない幸いじゃない、災いだった」
 しかし、コイツを仕留め損ねた自衛隊の皆様からすれば、手間が減ってよかった、と言うところだろう。
 やっぱり幸いで良かったか、と思い、歩き出す。
 と、その瞬間、背後から怨嗟交じりの嘆願が来る。
「ヒアイさ〜ん」
 当然無視して歩き出す。すると音量が跳ね上がり、嘆願が懇願とでも言うべきモノに変わった。
「ヒアイさ〜ん! 助けてくださ〜イ! チャリンコ漕いで来たので足が! 足が! 話すコトがあるのです! どうか! どうカァ!」
「……仕方ないな」
 流石にマジ死にされては寝覚めも良くない。どうせ死なないだろうが、万が一と言うこともある。
 手を伸ばし、白衣の首根っこを掴んで引っ張りあげる。野郎の手を掴むのは、なんだか抵抗があった。
 自転車は、どうやら回収不可能だ。崖下に叩きつけられてひしゃげてしまっている。
「……で、話って何だよ、ジョドー所長」
「えェ。実はですね、鋼狼牙には、隠された機能があるようなのです」
「――へぇ。それは、知らなかったな」
 軽い驚嘆で、続きを促す。
 ジョドー所長は白衣の襟元を正しながら続ける。
「鋼狼牙の構造を調べた際のデータを、余暇時、解析にかけて、昨晩やっと分かったのですが……」
 白衣を正したジョドー所長は、研究者としての顔になっていた。白衣の下の変態タイツをものともしない格好よさは、その生き様――己の道を貫き通す強い意志から来るものだろうか。
「鋼狼牙には、もっと上等な電子頭脳が、――いえ、もしかすると、意志すらあった可能性があります」
「……何を根拠に?」
「人間で言う脳髄の箇所に、奇妙な空白が。そして、代わりとでも言うように、身体各所に神経塊が発達しています。鋼狼牙は、アナタと合一して生体的な特徴を持ちますが……」
 ……と。説明を続けようとしたジョドー所長が止まった。
274『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:06:19 ID:bw2xGgfI
 原因は胸部。白衣にクリップで留められた小型無線機から鳴り響くビーコンによって、だ。
 何が、と思う間もなく、その理由を理解する。それは、ギリギリ、と空間を渡る不快な音だ。
 発生地点は、既に破壊されつくした町、その上空。黒く、穴が、開いている。
 ……どうやら、と思う。やつらは、俺が育ったその場所を、再度穿り返そうとしているらしい、と。
「……いいだろう」
 白い息を吐いて、心臓を掴む。
「――そこは、守るべきだった場所だ」
 苛立ちがある。
 詔を起動。機構文が脳髄を駆けていく。
「故に、憂さ晴らしをさせてもらう」
「ヒァイさん!」
「大丈夫です、ジョドー所長。さっさと避難を」
 深呼吸。
 心臓は一定のリズムを刻み出す。
「――我が機構たる鋼を召還する」
 口をついて出てくる詔。
 どこかで半身と繋がった脳髄が、半身に、時空を超えろ、と命令を下す。
「応えろ。想い無く、温もり散らす鋼の機神よ」
 空間に亀裂が入る。鋼の指先が、それを広げていく。
 超特急の召還だ。光栄に思うがいい、と。視界にすら写りだす機構文に負けぬほどの強さで思う。
『「――無想機神。」』
 空間が一気に砕けた。
 突き出る上半身に、身体が解体されて吸収される。
『鋼、』
 分かたれた身体で撃つための芯鉄化。
 分かたれた心理で進むための鉄甲化。
 分かたれた法則で動くための機構化。
『狼、』
 意識と身体が一体化。人体には存在しない機構も、最早己の身体として認識できる。 
 最後の一言と同時、合一が完了する。
 踏み出すのは、討伐の歩みだ。
『牙……!』
 進む。

 ●

 ――鋼狼牙は、俺の二十五倍程度、四十五メートルほどの全高を持つ巨大人型兵器だ。
 鋼色と黒の二色で彩られた姿は、長大な剣を背負う騎士のようなシルエットを持っている。
 しかし、その武装はシルエットに反する。
 一つ。両前腕に装備された射出式ヒートアンカー。
 二つ。背部、左右に設置された二連荷電粒子砲。
 三つ。同じく背部、腋の下に挟み込むように接続された二連ライフル。
 四つ。胸部と頭部に組み込まれた機関砲。
 五つ。自衛隊の装備を流用したミサイル。
 総じて言えば、鋼狼牙は、遠距離戦用の機体と言える。
 だが、踏み出す一歩は高速だ。
 人の身のように、道に縛られることもない。
 最短経路を、丘を森を道を、鋼の足で駆けて、一気に距離を削っていく。
『コオオ――――!』
 息吹。
 背部、背の中央部にある加速器から、燐火が一瞬散り咲く。
275『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:07:15 ID:bw2xGgfI
 次の瞬間、鋼狼牙は大きく跳躍している。
 廃墟となった町の上空には、いまだ穴が開いている。
 鋼狼牙は右肩に荷電粒子砲を展開。突き出たグリップを握り締め、もう一度息吹を吐き出す。
『コオッ――!』
 鋼狼牙の電脳に、機構文が記録される。
≪右荷電粒子砲・安全装置・装弾機構・解除<アンロック>≫
 鼓動が跳ね上がり、砲身に力が蓄積されていく。
 狙うは空間に開く大穴。
 轟音は、射出と哮声、同時に響くその二つによって構成される。穴の中から、既に流れ落ち形を作ろうとする銀色へと薙ぎ払うような一砲だ。
 鋼狼牙は加速器で空中に留まらず、自由落下に入る。
 目線は、砕けた穴と、ぼたぼたと溶け落ちる航空戦艦に向く。
 『イブマ』とは、その実、ナノマシンの集合体だ。
 稲妻を受ければ焼損し、衝撃を受ければ破損し、高熱を受ければ融損し、機能を失う。
 故に、鋼狼牙は剣となることができる。
 溶け落ちきらぬ航空戦艦に向けて、全ての砲身を展開する。
≪鋼狼牙・全砲一斉射撃・準備<スタンバイ>――完了<コンプリート>≫
『コ・オ・ラアアアアアア――――!』
 容赦も仮借も、一切持ち合わせぬ動きだ。
 鋼狼牙は無想。
 ただ純然たる機械として、銀色をブチ抜いた。

 ●

 ……フ、と。
 機構と同調していた人間としての意識が、ゆっくりと浮上する。
『……やった、か』
 瞬殺、と言うべきだろう。
 全力の砲火だ。航空戦艦は、抵抗する間も与えられず砕かれた。
 だが、心にはしこりがある。それは、疑念と呼ばれるべきものだ。
『弱い』
 敵は毎回、千木島宇宙センターを目指してやってくる。
 だが、
『明らかに、本気ではない』
 展開していた砲を背に戻し、自衛隊の駐屯地に歩んでいく。
 左右の家は、重機や鋼狼牙によって砕かれ、更地にされている。
 そこにあった景色を、俺は覚えている。
 と、沈んでいた意識が別の方向に向いた。
 原因は、鋼狼牙と同調し拡大した感覚。そこに、一つの異変がある。
 意識の端にある探知機<レーダー>に感がある。
 それも、俺自身とほぼ同調する形で、だ。
『!』
 身を悶えるようにして飛び退る。
 意識をそちらに振り分けた瞬間だ。
「や、お初」
 と、気の抜けた挨拶が来た。
 男だ。
 サイズは人間と同程度。二メートル弱と大柄な方ではあるが、それでも普通の人間の範疇。
 しかし、その服や肌には破れ目があり、そこからは、銀色の内部が覗けている。
276『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:08:05 ID:bw2xGgfI
 そして、その顔には、見覚えがあった。
『貴様――!』
「や、まあ待てヨ。今回、オレっち戦いに来たんじゃないんだからさ」
 ――なぜならば。その外側は、俺の父親のものである。
「や、怒るのは分かるヨ。だけどさ、銀色で不定形だと話しにくいじゃん? だからさ、テキトーに、ふんずけちまった肉体を参考に、ネ?」
『コ。お、お、お、お――!』
 吐き出された息吹によって、男は吹き飛ばされる。
 同時に鋼狼牙が一歩下がれば、既にそこは機関砲の間合いだ。
「お、マズいマズい」
 機構へと埋没する直前。俺は、確かに殺意を持つ。
『……撃ち砕く!』
 必殺。一発でも当たれば、『イブマ』など紙のように千切れて飛ぶ威力だ。
 ナノマシンによる多重並列計算による回避運動も、物理的に回避できる限界速度を超えては意味を成さない。
 しかし弾丸は、ばぎり、と割り開かれた空間に呑まれていく。
「聞こえてるかな? 聞こえてますネ? オレ、名前を『スリール』と名乗ることにしたんだヨ。概念の再取得って難しかったヨー?」
 ならば、と、機関砲の狙いをズラし、地を穿つ。破片で傷つけるためだが、構わず『スリール』は話し続ける。
「まァ聞けヨ! 『スリール』とは『楽』の意! 分かるか? オレ達は、『イブマ』は『感情』を得た! 生身を得るための実験として――オマエらを糧に!」
 何、と思う間もない。
 機械の反応速度ですら、それの回避を許した。
 弾丸が装甲を僅かに削り、虚空へと消えていく。
「意思! 情動! そして肉体! オレ達にとって――何よりも望んだものさ!」
 『スリール』は嘯く。現世とは、こんなにも楽しいものだ、と。
 空間が再度開く。
 内から光るが如き銀色が、鋼を照らしている。
「さっき、弱いとか呟いてたヨナ」
 『スリール』は、その口元を三日月の形に変える。
「だったら、コイツを倒してみるがいいさ! 特別製の特級品、最新で作った、本気の群体だヨ……!」
 降ってくる。
 巨獣だ。
 だが、その光は強い。
 星々の光を集めたかのような煌きだ。
 く、と思う。回避は間に合うか、と。
 全力加速。
 身を投げ出すようにして、地を砕きつつも迫撃を回避した。
 質量差は著しい。
 そして、距離。近い。鋼狼牙の距離ではない。
 絶対的な不利だ。
 着地の衝撃でわずかにカタチを崩した煌く銀獣は、重量を感じさせる動きで起き上がった。
『オ、オォオオオオオオ……!!!!!』
 煌く銀獣が、咆哮を鋼狼牙に叩きつける。
 しかし退かず、全砲展開を開始する。
 ……先手は与えたが――!
≪鋼狼牙・全砲一斉射撃・準備<スタンバイ>≫
 コ、と息吹を吐き出しながら、砲を展開する。
277『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:08:49 ID:bw2xGgfI
 ――流星。
「させはしないさ!」
 『スリール』の叫びを集音機が拾ったのは、単なる偶然だ。
 右の砲が砕かれた。
『!?』
≪右荷電粒子砲・破損・機能・不全――切断<パージ>≫
 爆裂ボルトで荷電粒子砲が基部から切り離され、――爆発した。
 衝撃と熱が鋼狼牙を焼く。
≪荷電粒子砲・基部・破損≫
 よろめいた鋼狼牙の背で、ばぎり、と金属が砕ける音がした。
 背面視界には、『スリール』の笑みが大写しになっている。
「これで熱砲は使えまいヨォ……?」
 言葉と同時、弾けるように左に飛ばされた。
 頭部のフレームが歪む。
 打撃だ。
≪荷電粒子砲・応急修復・完了まで・五十秒≫
『――――!』
 踏みとどまった瞬間、前面視界が煌きに包まれた。
 迫撃が来ている。
≪胸部/頭部機関砲・安全装置・装弾機構・解除<アンロック>≫
 咄嗟に、胸部、頭部の機関砲を叩き込んだ。
 衝撃で煌く銀獣の構造が砕ける。
 しかし、そこまでだ。
 津波のような圧倒的破壊力で、防御した鋼狼牙の左手がひしゃげた。
 跳ね飛ばされる。
≪左腕フレーム・破損・応急修復・完了まで・四十五秒≫
≪胸部機関砲・破損・応急修復・完了まで・八秒≫
『ッ――――!』
 空中で、加速器を点火。
 荷電粒子砲は失ったが、脇下のライフルはまだ動く。
≪左右旋条砲・安全装置・装弾機構・解除<アンロック>≫
 故に、左右のそれを連射した。
 打ち抜く。
 特殊加工された砲弾は、衝撃を銀獣の全身へと伝播させ、その身体たるナノマシンを砕いていく。
≪胸部機関砲・応急修復・完了<コンプリート>≫
 機構文を受け、更なる連射を追加。打ち砕かれ分離した破片が、更に分割され風に散っていく。
『コォオオオオ――――!』
 連射。
 連打。
 息吹による強制排気。
 打ち砕く。
 その全てが塵に還ったころになって、俺は気づく。
 すでに、『スリール』はいなくなっていた。
278『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:09:33 ID:bw2xGgfI

 ●

 自衛隊の基地に戻り、俺は鋼狼牙との合一を解いた。
 再生される身体に震えを抱きながら、俺は地に降り立った。
 鋼狼牙は、己自身によって再生する。
 だが、それを期待していては不安すぎるほどに、鋼狼牙は破壊されていた。
 自己診断によれば、荷電粒子砲完全修復まで五日。各部装甲に二日。左腕に四日。胸部機関砲に二日。そしてその整合に一日。
 二週間だ。
 そして、二週間も、あの『スリール』が与えてくれるはずもない。
 故に、自衛隊側に修理を任せた。
 ジョドー所長が手を回してくれた結果だ。
 それでも、完全修復まで四日はかかるという。
 甘い、と思う。
 甘すぎて涙が出そうだ、と。
「……ああ。なるほど」
 頷き、思う。
 周囲は、えぐれたりなんだりで散々だ。
 そして、守りの力たる鋼狼牙もいずれ例外ではなくなる。
「――俺はもう、この島を守りきることができない」
 敗北。
 それは悲しみだ。それは涙だ。それは死だ。
 この島は、俺の全てだ。
「帰ろう」
 どこに。
 決まっている。
 真喜のいる場所へだ。
279『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:10:23 ID:bw2xGgfI
三、『癒し手(涙)』

「おかえりなさいであります、陽逢」
 家の前には、厚着をした真喜が立っていた。
 いつから待っていたのだろうか。血色の薄い頬は、赤くなってしまっていた。
「――ああ」
「ご飯はできておりますが、先にシャワーを浴びるべきかと思うのであります。それも、とびきり暖かいシャワーを」
 頷いて、仮設住宅横に設置された仮設シャワー室に入る。
 中の電球をつけようとして気づく。
 外接されたボイラーは、既に回っていた。
 優遇されていた。
 それなのに、と思った次の瞬間には、仮設シャワー室の薄い壁がひしゃげていた。
 そして拳には痛みがある。
「……く、」
 子供らしい。
 一度負けたからって何だ。
 一度勝てなかったからって何だ。
 それだけで絶望しようというのか。
 甘えている。
 甘えている。
 こんなだから、負ける。勝てない。
「……そ……!」
 服を破る勢いで脱ぎ捨て、シャワーを浴びた。
 熱く流れる湯の中、上を向いて、必死で涙をこらえた。
 涙を流しては、本当に守れなくなる、と思った。
 強く、強く、何よりも強く。
 この島を、誰かを、守るための力が欲しかった。
「畜生ッ……! 畜生ぉおおおっ……!」
 真喜に、この叫びは聞こえているだろうか。
 そんなことを思うと、叫びが止まった。
 代わりに来たのは、下唇の痛みだ。
「ぐっ、うっ、ふ、ぅううううううううッ……!!!」
 泣かない。
 泣かない。
 絶対に泣かない。
 俺の名が故に、泣かない。
 負けただなんて、絶対に認められない。
 勝ちたい、と、切に願う。
 あの『スリール』に。
 『イブマ』に。
 そして、この弱い俺自身に。
280『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:11:30 ID:bw2xGgfI

 ●

「……メシって、朝と昼に作ったものじゃないよな、これ」
「陽逢。朝と昼に作ったものを暖めなおして食べるのも、悪くないものであります。特にこちら、おでんは味が染みているのであります」
「おでんってほどのタネもないぞ、これ」
「おでんと言ったらおでんなのであります」
「……そっか」
 顔を伏せて、自称おでんと、レトルトのご飯を噛み、そして飲み下していく。
 合わせる顔がなかった。
 散々偉そうなことを言った覚えもある。
 思えば、なんて傲慢だったのか。
 俺は手加減されていた。
 手のひらの上で、笑っていた。
 これからは、そんな風にはなってくれない。
 負けられないのに、相手は強い。
「……陽逢。どうしたのでありますか」
「……なんでもない」
「聞きたいのであります、陽逢」
「だから、なんでもねぇって」
「なら私の目を見て言っていただきたいのであります、陽逢」
「っ……」
「陽逢」
 心が燃えない。
 逆恨み、八つ当たりの炎すら燃えない。
 鋼のように堅かった決意すら、今の俺には残されていない。
「……陽逢」
 真喜が、わずかに声の調子を落とした。
「……すまない」
 言って、俺は食事を再開、……そして、ペースを早めていく。
 食べなければ、これから先は辛くなるし、それに、……食べなければ、真喜と、顔をあわせ続けなければならない。
 辛かった。
 怖かった。
 重かった。
 嫌だった。
 だから、逃げようとした。
 逃げるために逃げようとした。
 だが、真喜は、俺を逃がしてなんてくれなかった。
 陽逢、と。無言で呼ぶ目線がある。
 その視線に縛られていた。
「……陽逢。私は、あなたが無事であれば、それでいいのであります」
 ふと、真喜がそんなことを言った。
「鋼狼牙なら、どこへなりとでも行けるでありましょう。この島さえ捨てれば、あなたは自由なのであります」
「……ま、」
「私たちは、……いえ、私は、あなたを縛る枷なんかではないのであります」
281『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:12:25 ID:bw2xGgfI
 ごくん、と、おでん最後のタネを飲み下す。
 目は、ただ、真喜の口元を見ている。
「……陽逢。もう、あなたは、頑張らなくてもいいのであります」
 ――その一言で、身の内にあった霧が晴れた。
 その向こうにあったのは、ただ、鋼のように鋭い決意だ。
「――何を言ってやがるッ!!!」
 叫んだ。
 腰が上がり、真喜に詰め寄っていた。
「真喜! 俺が、おまえを見捨てると、本気で思ってんのか!? 違うだろ!? 違うって言えよ! 真喜、俺は、おれは、そんなに、」
 ぐ、と、真喜を抱き寄せた。
 温かみが、腕の中に来る。
「そんなに、頼りなかったのかよ……」
 そのままきつく抱きとめた。
 ん、と、腕の中で真喜が体をよじる。
 痛いのか、と思った。
 だが、緩めて、彼女がどこかに行くのが、怖かった。
「……真喜。俺は、どこにも行かないからな」
「…………陽逢」
 ゆっくりと、背に手が回った。
 真喜は、夢見るように、言葉を放つ。
「……はい。私も、どこにも行かないのであります」
 ここから、と。そう言って、あやすように、背を叩いてきた。
 く、と、力が抜けた。
 情けないことに。
 俺はそんなしぐさひとつで、心をほぐされてしまっていた。
「真喜……!」
 ひ、と涙が出た。
 頬を、耳を摺り寄せるように、真喜を強く抱きとめる。
 やわらかかった。
 あたたかかった。
 守りたいと思った。
 けれど、守りきれないと諦めそうになってしまった。
 俺は、こんなにも弱かった。
「……陽逢」
 真喜の手は、まだ俺の背を叩いている。
 安心した。
 不安が消し飛んだ。
 だが、後から後から、怖さはやってくる。
「嫌なんだ、嫌なんだよ、真喜、俺は、おまえを、島を、守りたいんだ……!」
 真喜は何も言わない。
「父さんも、母さんも、守りたかったんだ、でも守れなかったんだ、家だって壊れたし学校だってそうだ、俺は、いつかおまえもこぼす、守れないまま、終わっちまうんだよ……!」
 ただ、俺の言葉を聞いている。
 が、ふと気づく。
 真喜の体が、薄いことに。
「っ、……す、すま、ん」
 肩をつかんで、ぐ、と引き離した。
282『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:15:14 ID:bw2xGgfI
 目をそらしながら、俺はごまかしの一語を言う。
「痛かった、だろ。悪い」
 そこまで言って、俺は肩から手を離す。
「弱音吐いてすまなかった、明日から、また、島を守り続けるから――」
 と。
 そう言ってきびすを返した俺の手を、真喜が握った。
「あ、」
 振り返った先、真喜は、感情の薄い目を揺らがせていた。
 どうして手を握ってしまったのか、と。そう思っているかのような、瞳だった。
「――――」
 ふと、思った。
 真喜の唇。
 不安げに、何か言葉を生もうとして、しかし生まれず、半開きになった唇。
 それが、妙に蟲惑的だった。
 気づけば、手を引き、真喜を抱き寄せ、口付けていた。
「んっ……!?」
 驚いて開いた口に、舌を進入させる。
 握られていない手を背に回す。
 握られた手を深く絡める。
 抱き寄せた。
 半開きになった歯の間を、舌が抜けていく。
 背に回した手を、脇に差し込むように上げて、後頭部を寄せた。
 深く行く。
 逃げるように萎縮した舌を絡める。
 舌の表面をこそぐように舐めまわした。
 舌の裏を味わうように舐めまわした。
 逃がさない。
 逃げようとする頭を抑え、引っ込もうとする舌を捕らえた。
 唇の暖かさと、その向こうにある歯の硬さを楽しむ。
 口端から吐息が漏れた。
 くすぐったい。
「ふぁ、ぁ、」
 驚きに見開かれていた真喜のまぶたが落ちた。
 俺も、それにならう。
 音が濃くなる。
 水音がした。
 真喜が、ためらいがちに、俺の背に手を回してきた。
 手が、強く握られた。
 俺も、握り返す。
 小さな手だ。
 頼りないとも言えるほど、たおやかな指。
 肉つきの薄い手のひら。
 それでもやわらかいと感じるのは、その骨が細いからか。
 それでもあたたかいと感じるのは、その心も暖かいからか。 
 足元に、隙間風の寒さが来た。
 それが嫌で、俺はさらに口付けに集中する。
 歯をなぞる。
 その昔、歯医者が嫌だと涙目で言い張って、結局銀歯になった奥歯を。
 それ以来、歯磨きに時間をかけるようになって、健康を保たれた歯を。
 笑みを見せても見えぬ歯を。
283『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:16:03 ID:bw2xGgfI
 大声もあげず、口を大きく開くこともなく、中々見えぬ歯を。
 歯茎をなぞり、頬を舐めまわし、歯列を磨くように愛撫した。
 真喜が、わずかに首を振った。
 背に回された手が、軽い握りこぶしになって、どん、と背を殴ってきた。
 それでも逃がさない。
 舌を吸い出す。
 甘く噛んでそれを逃がさぬようにし、舌を責めた。
 ふと、おでんの味がした。おろしわさびの刺激が、それに乗る。
「ん」
 真喜の吐息が荒い。
 背に回された手は、服をつかんで引っ張っている。
 それでもなお逃さない。
 舌を吸い、引き寄せ、のしかかるようにキスを続けていく。
 ……ふと、目を開く。
 真喜は眉根を寄せた必死な顔。
 窓から見える月が、大きく動いていた。
 光陰のように、時は早く過ぎ去る。
 それでもなお、まだまだ、逃さない。
 真喜の舌が動いた。
 反撃だった。
 甘噛みの歯から抜け出すと、舌を絡め、歯をなぞってくる。
 だが、ためらいがちの動きだった。
 口端に笑みを作りつつも、俺はそれに応える。
 舌をつつき、舌横を押して舌裏をなぞった。
 おでんの味など、既に分からない。
 ねぶる。
 しゃぶる。
 犯す。
「ん、ふっ、ふぅ、ぅ……!」
 真喜の背は折れそうなほど俺に押されていて、手は俺の背を肉ごと握っている。
 痛いが、気にもならなかった。
 心地よかった。
 真喜が、目を開く。
 潤んでいる。
 顔も紅潮している。
 それでもなお、まだまだ、絶対、逃さない。
 唾液を吸い上げ、真喜自身の舌と絡めてから飲み込んだ。
 甘い、と思う。
 じる、とみだらな水音がした。
 ひ、と、真喜が再度目を閉じた。
 首を振られる。
 少し力を入れて、その首を固定した。
 再度、真喜の口に進入する。
 口蓋を、俺の色に塗り替えるよう舐めまわした。
 前歯裏の硬さを楽しみ、奥の柔らかさを堪能する。
 ……ふと気づく。
 真喜の顔が、顔色が、少し、危ない。
 仕方なく唇を離すと、真喜は涙目で、大きく息を吸った。
 荒い。
 ひどく、息が乱れている。
284『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:16:52 ID:bw2xGgfI
 気づけば、俺も息が切れていた。
「ひ、ぁ、い……」
 握る手が強くなる。
 真喜の背は、ほとんど俺に支えられていた。
 足にどれだけの力が入っているのか。
 腰が抜けているんじゃないだろうか、と思いながら、手を首裏から腰へと移動させる。
「真喜」
 そう言えば、と、気づいたことがある。
 ファーストキスではないよな、と。
 小さなころ、確か、真喜とキスをした。
 子供の遊びのような、触れるだけのキスを。
 故に、そうした。
 唇が触れるたび、真喜はびくりと身を硬くした。
 あれだけやれば当然か、と視線をやった時計は、二十分ほど時を進めていた。
 おおう、と思いつつも、キスの連打は止めない。
 震えるまぶたを、そしてそこから零れ落ちそうになる涙を吸った。
 頬にも、額にも、鼻頭にも、キスをした。
 そして、唇に、何度も、キスをした。
「ひあい、ひあい……!」
 名を呼ばれたので、俺も、名を呼び返した。
 真喜、と。
 熱を持って、強く。
 真喜の膝が、とうとう落ちた。
 俺も、それに引かれ倒れる。
 ごどん、と、ひどく鈍い音が、俺の肘で発生した。
「ぬああ……!!」
「だ、大丈夫でありますか、陽逢!?」
「大丈夫だ、問題ない……!」
 涙目だった。
 超痛かった。
 男の子でも、これは泣いていいと思った。
 強く握ってしまっていた手を、意識して緩める。
 背と床に挟まれた手をずらし、落ち着く位置に置いた。
 口を開き、……謝罪を口にする。
「その、……すまない」
「……陽逢」
「つ、つい、だな」
「私とのキスは、つい、で済まされるものなのでありますか。……遊びだったのでありますね?」
「断じて違うぞ」
「ならば、つい、などと言わないでほしいのであります」
 う、と唇をへの字に曲げた。
 顔を落とし、額を冷たい床に落とした。
 耳が触れ合う。
「……なあ。真喜」
「なんでありますか」
「俺たちさ、家族に、ならないか」
「家族、でありますか」
 既に、家族としてやってきた。
 戸籍上、真喜は姉だ。
 ただ一緒にこの島に流れてきて、親父とお袋に拾われた。
285『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:17:54 ID:bw2xGgfI
 それだけの仲で、これまでやってきた。
 それでは、もう、嫌だった。
 新たなかたちに、なりたかった。
「家族の定義は、私には出来ないのであります。故に、私は、家族になる、ということを判別することは不可能。ならば、家族になるのは、不可能――そう判断するのであります」
 硬い声が来た。
 拒絶、とも言える声音が。
 だが、言葉は続く。
「――しかし、私はこうも思うのであります」
 来た言葉は、どこか暖かなそれだった。
「お父さんも、お母さんも、いなくなってしまったけれど……今この場は、きっと、暖かい、と」
 ふと、涙がこぼれた。
 先ほどの、激しい涙ではなく、ただ、こぼれただけ、と言うような涙が。
「そう……だな。暖かいな、真喜」
 だったら、これは家族でいい。
 手をもう一度、深く絡めなおした。
 肩にあごをうずめるように、胸に真喜を沈めるように、深く抱いた。
「俺は、一生、この暖かさを続けたい」
「ええ、私も、そう思うのであります」
 ……言ってから気づく。
 プロポーズじみた言葉だった。
「む」
「どうしたのでありますか、陽逢.?」
 返答に困ったのでもう一度キスをした。
 口をふさぐだけのキスだ。
「ん、」
 真喜は一瞬不満そうな顔をしたが、しぶしぶと目を閉じた。
 そうして、口の中に言葉を伝えてくる。
 卑怯であります、と。
 笑みの気配を含みながら。
「……む」
 よく回る舌を吸った。
 ずる、と吸い上げ、床に背を付け逃げられない真喜を攻め立てる。
 手を解き、白髪をかき分け、その両耳をふさいだ。
 真喜の吐息が、急速に興奮したそれへと変わっていく。
 真喜が薄く目を開き、同じように、俺の耳をふさいできた。
 淫らな水音が、頭蓋内を反射し止まらない。
「真喜、」
 唇を離し、俺は言う。
「いい、か、」
 獣のようだ、と自分でも思う。
 だが止まらない。
 いいか、と問うたのは、きっと最後の一線だった。
 しかし真喜は、その阻止限界点をあっさりと超える。
「そ、その。今日は、下着が――」
 ガバ――!
「う、うひゃぁ――!」
 擬音で表現した。
 たくし上げた制服のすそからのぞくのは、飾り気のない水色の下着だ。
286『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:18:48 ID:bw2xGgfI
 眼福。
 思いつつ、慌てる真喜の手を捕らえた。
 下着を気にする、つまり見せることを考えた、そして嫌よ嫌よも好きのうち。つまりオーケーだ。
「せ、せめて電気を消してほしいのでありますが、というか布団、いや私もシャワーを、ああ、だから、陽逢――!」
「……よし」
 じゃあそうするか、と俺は頷いた。
 んむ、と真喜が一瞬硬直した隙を突いて、俺は真喜の腰を抱えて立ち上がる。
「む、うわ、わぁ、ひ、陽逢ぃ――!」
「おまえ今日よく叫ぶなぁ」
「誰のせいでありますかぁ――!」
「叫ぶのはおまえの勝手だからおまえのせいだな」
 よし論破。
 頷き、揚々と俺は外のシャワー室へと向かう。
 シャワー室内ならば、電気はつけなければ消えたままだし立ったままなら布団は要らないし何よりシャワー室なのでシャワーがある。
 パーフェクトだ俺。
「なにを感謝の極みとかそんな恍惚の表情を浮かべているのでありますか、この馬鹿陽逢――!」
 真喜は暴れ、俺の足を止めようとしたり、腹に肘打ちをカマしたりするが、一切問題はない。
 彼女は軽い。自衛隊の皆様に鍛え上げられた俺にとっては、大した問題にもならないのであった。
 と、その抵抗が止まった。
 呟くような声が、耳に届く。
「ちゃんと、陽逢、その、ちゃんと――」
 真喜の足が地面に着き、ずり上がっていた制服のすそが落ちる。
 向かい合った。
「ちゃんと、私は、陽逢と家族になるので、――だから、待っていて欲しいのであります」
 鼻血が出そうになった。
 先ほどから正直興奮で血管が何本か切れていそうだった。
 ああそうか。千切れるって千に切れると書くのか。体内で血管が千本に分割されていてもおかしくない興奮具合。正直、青姦バッチコイ。
 だが、ステイ、と願われた。
 なら、待っていないと、ただの犬だ。
 それに、今ヤると、真喜を気遣う余裕がない。
 故に耐えた。とても耐えた。
「……その。なるべく、急ぐので、どうか、少しだけ、待っていてほしいのであります」
 真喜がそう言って家に靴下で走っていったのも、色々道具を持ってシャワー室に入ったのも、目に入らないくらいに。

 ●

 そうして、十分経った。
 天には星と月がある。
「あー……」
 夜風で、少しだけ冷静になった。
 そして先ほどのことを思い起こせば、まさに、
「やっちまったぁー……」
 なんだか弱みを見せて引き込んだというか勢いに任せて呑みこもうとしていると言うか。
 まあどちらにしろ、言ってしまったものはもう取り戻せない。
 決意を新たに島を守り通す所存である、まる。ヤった後でだが。
 そこまで考えて、ため息を吐いた。
287『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:19:41 ID:bw2xGgfI
「ってほど、簡単でもないんだよな……」
 正直なところ、『スリール』は強い。
 勝てないかも――知れない。
「畜生……」
 俺は、失うことを恐れている。
 それを、はっきりと自覚してしまった。
 参ったなぁ、と思っていたら、場違いにベルの音がした。
 振り向けば、ママチャリに乗ったジョドー所長が笑んでいた。
「ハロー少年。おゲレツですか?」
「死ね」
 テンプルにハイキック。自転車で身長が下がっていたのでやりやすかった。鍛えてくれた自衛官のお方、ありがとう。
 しかし二秒で復活してきたジョドー所長は、笑みを消しながら、ママチャリの荷台に近づき、書類を取り出した。
「昼にした話を覚えていますか?」
「……ああ、それが?」
「これは、鋼狼牙の解析結果、そして、ヒァイさんと、マキさんの診断結果です」
「…………ああ。それが?」
「この解析結果が正しければ、あの『スリール』とやらを打倒できる、……と試算が出ました」
「そりゃ凄い」
「……ヒァイさん。君は、鋼狼牙と合一する」
「するな」
「なら、コレを知らなかったはずはない」
「……そんなことはないぜ。ジョドー所長は、いちいち内臓の動きを実感できるのか?」
「鋼狼牙ならばできます」
 断言された。
 これは、ごまかしも効かないか。
「……ああそうだよ。知ってたさ」
 ふ、と息を吐く。
「ちょっとだけ、昔話をしてやるよ、ジョドー所長」
 夜風で、体が、少し冷えた。
「ある一家と、その友人一家がいたんだ」
「彼らは仲が良くて、この島のあたりで、個人所有の船に、乗ってたんだ」
「夫、妻、そしてまだ小さい子供。それが二セットさ。わりと裕福で、しかも余裕があった。夢みたいな幸せ一家だったよ」
「そこにな、『イブマ』ではない『イブマ』……ああ、俺たちを襲ってる『イブマ』ってのは、あのナノマシンじゃなくて、アレを操ってる精神体なんだ。そして、それから逃れてきた一群が、俺たちの乗った船を巻き込んで海に落ちたんだ」
「当然、二つの家族は、全滅。父母は粉々になって、庇われた子供の片方は頭以外を、そしてもう片方は頭を砕かれた」
「『イブマ』は焦ったのさ。彼らは、せめてこの二つの命だけでも、救おうとした」
「そして、偶然その海底にいた、己たちの同属らしき、けれどこの星の住人である鋼の巨人に、助けを求めた」
「……そして、彼らの血肉は、その父母たちのものを読み込んで再現された」
「けれど、片方の子供、女の子の脳だけは、どうしても再生できなかった。そして鋼の巨人は、代わりに、自分の核を、女の子に埋め込んだんだ」
 ジョドー所長は、長話にも拘らず無表情。
 話した甲斐がなかったかな、と思いながらも、俺は言葉を続けていく。
「……まあ、昔話って言ったら、こういう形式だよな。一度やってみたかったんだけどさ、話しにくい。戻す」
288『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:20:40 ID:bw2xGgfI
「片方、体を砕かれたのが俺。そして、頭を砕かれたのが、真喜さ」
「そして一年、隕石に巻き込まれた一家の悲劇の記憶も薄れたころ、俺たちはこの島に流れ着いた。……鋼狼牙の助けでな」
「鋼狼牙を空間超越して呼べるのは、そのとき『イブマ』たちを使って、鋼狼牙が再生したから。使えるようになるまで十三年ほどかかったけどな」
 さて、と思う。
 大体話し終えたな、と。
「……他に聞きたいことはあるか、ジョドー所長」
「いえ。……私が言えるのは、もしも真喜さんの脳に埋め込まれた核を取り戻せば、鋼狼牙は完全になり、真喜さんは意思を失う、ということだけです」
 そして、あなたがそれを行う気がないことも、と。
 ジョドー所長は、そう言って口をつぐんだ。
「ああ、それが分かってるなら言わなくていい」
 真喜を救うために真喜を犠牲にするなんてのは矛盾している。
 だから、世界を救う、なんて大それたことは言えない。
 けれど、なんとか、この島は、守りたい。
 もう、ぼろぼろになってしまったけれど。
 それでも、俺が育った地だ。
 もう記憶の彼方にしかない親父たちの記憶よりも確かな強さで、俺の骨子になっている地だ。
 だから、と、俺ははっきりと言葉にする。
「俺は、真喜の中にある鋼狼牙の核を、取り戻す事はしない。絶対に、だ」
「……そうですか」
 所長は、無表情を一瞬憤怒のそれに変え、そして、問うてきた。
「これを、真喜さんは?」
「知らんよ。そもそも、あいつの脳はまっさらにされたんだ。俺の記憶も、鋼狼牙に記憶されてたのを読んだだけだからな」
「……いェ。知らなかった、と表現するべきでしょうね」
「……なに?」
 ジョドー所長の顔が、に、といやらしい形になる。
 そして、左手が上がった。
 その指先は、俺の後方、シャワー室を指している。
「――まさか、てめぇっ、」
 叫びつつも振り返る。
 真喜がいた。
 シャンプーやリンスが握られたその手指には、真っ白になるくらいの力が込められていた。
 そして、その姿は、パジャマ。
 汚れたら嫌だから、と。
 この仮設住宅に移ってきてからの生活で、一度も着ようとしなかったそれを、彼女が着ていた。
 そして真喜は、走り出す。
「ジョ、ドォオオオオオオオッ!!」
 まず鳩尾につま先をめり込ませた。
 落ちた頭部に、本気のハイキックを入れる。
 ジョドーが地面に叩きつけられたのを見て、わずかに冷静さを取り戻す。
 足は、俺の方が速い。
 どこに行くかも読めるし、何よりまだ見失っていない。
 追う。
「待て、真喜ッ!!」
 叫んだ背後で、ジョドーが呻く声が、聞こえた。
289『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:22:33 ID:bw2xGgfI
 同時、ひどく耳に障る電子音も。

――ぎじりぎりぎりがりがり。

 北の空で、金属を千切る音が聞こえた。
 同時、流星のように、眼前へと何かが落ちてくる。
「く、」
 流星、と己の表現で予感が来た。
 故に叫ぶ。
「――『スリール』!!!」
「やァこんばんは、鋼狼牙の操者!」
 けたけたけたげげげげげ。
 首を三百六十度回転させながら、『スリール』は笑う。
「来ないと思った? 今日はもう来ないと思ったのか? 甘い、甘い甘いゲロ甘バリ甘サッカリン甘!
 げげげげげげげげ! 本気だと言ったろう! これからおまえに寝る時間はない、飯を食う時間はない、トイレに行く時間もないし鋼狼牙を修理する時間もない!
 ぐげげげががぎゃがぎががげげげげげ!」
「――うるせぇ!」
 その頭部に、怪鳥蹴りをカマした。
 おまえは邪魔だ、
「俺と真喜の間に立ってんじゃねぇ、この野郎ァ――!」
 スリールの体は、抵抗なく吹っ飛んだ。
 頭の回転が全天周になり地まで削りだすが気にせず踏み砕き、立ち止まる真喜へと走る。
 親父の顔をしていようが、中身は違う。
 むしろ怒りを増幅させるだけだった。
「真喜! いいか、そこで待ってろ! 今すぐ行く!」
 宣言をしたので、その通りに走る。
 一歩目から全力。二歩目は全開。三歩目で全速。
 最後の二歩は、俺と真喜が同時に踏んだ。
 捕まえる。
 北の空の銀色も見えない。
 今はただ、真喜だけを見る。
「無視するなよぉおおお!」
 が、うるさい子虫は叩き潰さないといけない。
「――鋼狼牙!」
 部分召還。
 空間を割って、腕が『スリール』を撒き散らす。
 静かになったところで、真喜が口を開いた。
「そ、その、……陽逢。何故、私を、……その、使わない、ので、ありますか」
 来ると思っていた質問で、答えが用意してあっても、いざ答えるとなると照れる。
 これは、そんな質問だった。
「あんまり根掘り葉掘り聞くなよ」
 口端に笑みが浮かぶのが分かる。
 が、今答えなくて、いつ答えるというのか。
 故に、言う。
「……わがままかもしれないが。お前にはさ、家で、笑ってる方が似合ってるし、それに、」
 部分召還した鋼狼牙の腕を、異相空間へと戻す。
「あんなヤツ。俺一人で――いや」
 ふと、感じた。
 鋼、すなわち無想であるはずの鋼狼牙から来る鼓動を。
 そう、それは俺と同調した鼓動。
290『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:23:28 ID:bw2xGgfI
 強く激しい、感情の鼓動。
 俺と同じ。ならば、鋼狼牙は、俺と無関係ではない。
 だから、言い直した。
「――俺と、俺の半身だけで、十分だ」
「……そうで、ありますか」
 言って、真喜は俺の腕の内から出た。
 その顔には、笑みがある。
「ならば、いってらっしゃいなのであります、陽逢。私は、腕によりをかけて料理をしておくのであります。実はこの前、自衛隊の方々に、色々と食料品を分けていただいたのであります」
「それは、楽しみだ――」
 向き直り、ゆっくりと息をする。
 真喜が走り去っていく気配がして、ジョドー所長が逃げて行く姿が見えた。
 心拍が、どんどん熱く跳ね上がっていく。
 それを右手で感じながら、声を張り上げた。

「――我が半身たる鋼を召還する!」

 駆け巡る機構文は、眠れる機神を呼び覚ます。
 鼓動が空間を揺らす。歪ませ、割れ砕いていく。

「迷いなく――想い揺るがぬ我に応じよ機神!」

 手始めは、空間を割る指先。そして、一気にそれは顕現する。
 開いた胸部装甲へと、身体が引き込まれる。
 分解――同化――合一。その全ては一瞬だ。
 春日・陽逢という在り方は、半身と一体化し、特化していく。

「『――無想機神――』」

 新たな五体で守護するための神威探求。
 新たな意志で貫徹するための真実究明。
 新たな理法で始動するための原理解明。
 血液は全身を巡る擬似体液に。筋肉は全身を動かす人造筋肉に。皮膚は全身を覆う外装鎧殻に。脳髄は全身を司る電子頭脳に。心臓は全身を震わす神造炉心となり、鼓動が全身を射抜く力となる。
 開眼する。
 ――絶対無敵、唯一無二の神格機人。
 謳えその名を、人類の守護機神たるその名を。
 そう、その名も――



『――――鋼・狼・牙――――!』


291『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:24:33 ID:bw2xGgfI
四、『守護者(真喜)』

 ――顕現。
 すぐさま機体チェックが入る。
 半身の傷は深い。
 背部の荷電粒子砲は使用不可能。
 全身の装甲も、周囲にあったパーツを召還途中で取り込んだだけの間に合わせだ。
 だが、負ける気はしない。
『コ』
 起動直後の熱を逃がすため、息吹を一つ。
 ォ、とそれを伸ばし吐いて、俺と半身は砕けた『スリール』を見下ろす。
「……やれやれ。酷いことをするねぇ」
 千切れた頭部が、そんなことを言った。
『おまえに手加減はしない』
 言い放って、大地ごと『スリール』を蹴り飛ばした。
 真喜は既に安全圏。ジョドー所長は知らん。
 打ち上げた『スリール』を、頭部と胸部の機関砲で消し飛ばす。
 だが、半身は、違う、と言っている。
『分かっているさ』
 まず俺の怪鳥蹴りで蹴り飛ばせたのがおかしい。
 おそらく、『イブマ』の中でも、感情を理解できるのは一握りの個体だけなのだろう。
 あれは、感情を移されただけのデッドコピーだ。
 北の空からは、まだ銀が滴り落ちている。
≪警告<アラート>:規模・過去・最大≫
 ああ、なるほど本気だ。
 だが、負けはしない。
 負けられない理由がある。
 故に、一歩を踏み出した。
 一歩目の加速。二歩目で高速。三歩目には飛行機雲を引く。
 ああそうだ、絶対ブチ殺す。
 人の恋路を邪魔する馬鹿は地獄に落ちる。イッツ世界の真理。
 故に勝てる。絶対に勝てる。超勝てる。
 勝って、
『勝って、俺は、真喜と家族になりに行く……!』
 ……背後。恥ずかしいことを叫ばないでいただきたいのであります、と、真喜の声が聞こえた気がした。

 ●

 乾いた大地が鳴動している。
 千木島宇宙センター、門扉前に到達し、俺は敵を見据えている。
 既に周囲は破壊されているし、人はいない。気兼ねする必要は一切なく、故に戦闘においての不純物はない。
 視線の先には銀の四足巨獣。
 全高にして三十五メートル。全長は八十メートルを超えているか。
 この地上、いかなる生物とも異なり、しかしその特徴を随所に見せるそれは、どこか幻想上の獣を思い起こさせる。
 が、と、それは吼え猛る。意志を砕きに、その足を前へと進めながら、だ。
『黙れ』
 怯まず、退かず、煌く銀の巨獣へと告げた。
 炉心にわずかな不調。
292『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:25:25 ID:bw2xGgfI
 左腕も、正確な狙いを付けられるほどの修復度ではない。
 と、煌く銀の巨獣の額に人の体が沸いた。
 『スリール』だ。
「さぁ、絶望しろよ人の子! 負けて死ね!」
『もう一度言う。黙れ』
 火力が少々足りないので、まずは左前足を狙う。
≪鋼狼牙・全砲一斉射撃・準備<スタンバイ>――完了<コンプリート>≫
『コォオオ――――!』
 ついで右前足、そしてバランスを崩した銀巨獣に両腕のヒートアンカーを打ち込み、
『コォオオ、』
≪鋼狼牙・出力・最大<マキシマム>≫
『オオオオオオオオオラァアアアアアアアアア――――!!!』
 投げた。
 浮く。
『いいか』
 宙を行く銀巨獣に、『スリール』に告げる。
『おまえなんかに、俺は絶望しない。――おまえ、ちっとも『楽』しそうじゃねぇしな』
 だからいいか、と、前置きした。
 絶望するのは。
 絶望しているのは。
『雰囲気的に、もう今日は真喜とヤれねぇってことだ――!』
 撃つ。
 とても撃つ。
 どかどか撃つ。
 バリバリ撃つ。
 ドバドバ撃つ。
 オラオラ撃つ。
 超撃つ。
 めっちゃ撃つ。
 非常に撃つ。
 落ちてこないくらい撃つ。
 砕けても撃つ。
 こぼれても撃つ。
 手数が足りなくても撃つ。
 後方の援護射撃に感謝しつつ撃つ。
 弾切れになっても撃つ。
 弾を作りながら撃つ。
 弾を転移させながら撃つ。
 熱を持っても撃つ。
 息吹が追いつかないくらい撃つ。
 過熱しても撃つ。
 気合で撃つ。
 とにかく撃つ。
 何が何でも撃つ。
 消し飛ばす勢いで撃つ。
 消し飛びきるまで撃つ。
 消し飛んでも撃つ。
 それでも撃つ。
 断末魔をあげても撃つ。
 撃ち、そして、砕く……!
293『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:26:25 ID:bw2xGgfI
『コ、ォ、オ、ア…………!!!』
 全砲を格納し、そして息吹。
 同時、じゃ、と、砕かれたナノマシンが鋼狼牙に降り注いだ。
 ヒートアンカーが支えを失い戻ってくる。
≪全砲・過熱・冷却・完了まで・六十秒≫
 長く続いた呼気を止め、俺は周囲を見回した。
 息吹は後半、俺のため息と合一していた。
 スカッとしない。
 それに、撃ちすぎたものだから、フレームにもガタが来ている。
 流れ弾を食ったヒートアンカーも、修復しなければならないだろう。
 怒りパワー万歳。合一した半身は、俺の怒りに応えてくれた。
 ありがとう、――と。
≪警告<アラート>:侵入――≫
 ぎち、と、体が引き絞られる感触があった。
『が』
 何だ、と思う。
 半身から、答えが来た。
≪てててて――き・個体・に・よよるるるるるる・しんにゅうにゅう・きんけけ:危険:きんけ・け・け・けけけけけけけけけけ――!≫
 ぞ、と、内側に入ってくるものがある。
 楽しさが。
 スナッフビデオを見て喜ぶ豚のような楽しさが。
≪ハロー・侵入・こんにちは・邦訳・これは・危険・『スリール』・脱出・の提供で・推奨・お送り・強制・して・脱出・おります・不可≫
『――ぎ』
 脳髄が引っ掻き回される。
 心臓が沈む。
 擬似体液の流通が停止する。
≪ははは・おまえ・こうなる・ことも・予測・して・いなかった・のか≫
≪俺と・この・機体は・相性が・いい≫
≪ほら・もう・おまえは・なにも・考え・られない≫
≪俺は・おまえと・合一・した≫
≪おまえと・合一・して・感情・全てを・手に・入れる≫
≪さぁ・全てを・見せろよ・春日・陽逢・と・鋼狼牙≫
≪そして・絶望・しろ≫
≪全てを・失え≫
≪ははは・ははは・ははは≫

 ●

 ――沈んでいく。
 暗い場所へ。
 いや、周りが、どこかに去っていく。
 喜ばしかった希望とか。
 怒ってしまった瞬間とか。
 哀しかった過去とか。
 楽しかった思い出とか。
 代わりに来るのは、楽しさだ。
 外道の楽しさ。
 外法の愉しさ。
294『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:28:25 ID:bw2xGgfI
 染められていく。
 感情が一つしかないなら、それは永遠に揺らぐことのない思考となる。
 それは、無想と同じだ。
 最適のみを求める無想と。
 植えつけられ、上書きされ、消えていく感情の中。
 それだけは、染められない。
 燦然と輝いて、負けない。
 ――そう。
 あいつが、この胸に、鋼のように強く在ってくれるなら。
 決して、俺は負けない。
 こんなまがい物に、負けるはずがない……!

 ●

『コォオオオオオ――――!!』
 ばつん、とそれが弾き飛ばされた。
≪鋼狼牙・整調<アジャスト>・完了<コンプリート>――同調・個体・整調・開始≫
 煌く銀巨獣の成れの果てが渦を巻く。
 そう、『スリール』の言ったとおり、この機体と『イブマ』は相性がいい。
≪恭順・完了<コンプリート>――修復・開始≫
 四秒待ち、天を見上げた。
 そこには、わずかに、人の形を残した『スリール』がいる。
『――おい』
 呼びかけ。
 機体冷却のための時間稼ぎなんて必要ないが、それでも、その様子が気にかかった。
「ありえないありえないげげげげげがぎぐげげげげごぎゃげげがががっがありえないありえなななひ
 ありえなすあえりなあいまさかそんなからだ不適合うそだちがうおかしい死ねそんなはずはない
 そんな可能性はなかった抵抗不許可抵抗不可避拮抗不可能げげげげげげげげげげげげげげげげげ」
 頭部機関砲で、その身を半分削り取った。
 ――この『スリール』は本物であるはずだ。
 間違いない、と、半身が言っている。
 弾いたときにイカレたのか。
「げげげげありえないあえなりい鋼狼牙同一こーろーが我ら感情ゲット肉体情報人間再構築体意思ボディヒューマン
 人間ありえななななないありりりりらああああああああありえなああああああああああ――」
 だが、それを撃ち砕く気にはなれなかった。
 嫌な予感がした。
 その情報が欲しかった。
 首どころか全間接を三百六十度回しオブジェのようになっていた『スリール』が、唐突に一言を言い放った。
「――結果は破棄。」

「破棄破棄破棄破ァ〜棄破棄破棄! 今すぐ破棄破棄煉獄に落とし破棄破棄破棄喋って今日も元気に破棄破棄ぃ!
 ぐげげっぎゃががががががぁ、――破棄!」

 流星が行く。
 北天。そこに赤く輝く、北極星へと。
≪警告<アラート>≫
 そして、警告が、来た。

/

「アレは……まさか、大気圏外からの攻撃でこの島ごと周囲を砕こうと……!?」
295『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:29:39 ID:bw2xGgfI
 ジョドーが叫ぶのを、真喜は聞いた。
 ……陽逢も酷いことをするものであります。
 だが、彼のせいで一瞬仲が壊れかけたのも事実だ。
 ……自業自得でありましょうか。
 ため息を吐きつつ、真喜も北極星を見上げる。
『――真喜。ジョドー所長。俺が、そうはさせない』
 ざ、と、通信機から声。
 鋼のように堅い、決意の声が来る。
『――『砲』を使う』
 ジョドーの眉が跳ね上がり、そして、やれやれ、とでも言いたげな顔へとシフトする。
「おォう……ヒァイさんは、いつも無茶をする」
「昔は、私の方が、無茶をする役回りだったのであります」
 苦笑し、海岸へと歩く鋼狼牙を見やる。
 大丈夫、と。彼女は、何も不安を抱かない。
 彼は隠し事はするけれど嘘は言わないし、なにより――
「けれど、陽逢がああ言うのなら、私は信頼をするだけなのであります」
 ――そう。春日・陽逢は、約束を守る。
 だから、彼女が言うのはただ一言だ。
「頑張れ、であります――陽逢」
 苦笑は、いつの間にか別の形になっている。

/

 砂浜に立ち、天を見上げる。
『――悪いが、早く帰りたい家がある』
 天空。いかなる星々とも異なる赤星<しゃくせい>へと告げる。
『故に、オマエはそこで果てる』
 これからの全てを滞りなく進めるため、機体チェックの後、装甲を開いて強制廃熱。
 炉心<しんぞう>は生命的な躍動感を持つ。
 ……赤星を落とすためには、やはり砲が必要だ。
 しかし、鋼狼牙の全砲射撃では射程、威力、共に足りない。
 だが、問題はない。
 なぜならば、この鋼狼牙には、もう一つの砲がある。無双にして空前絶後の一砲が。
≪――第一封印・解除――≫
 機構文が脳裏を駆ける。
 同時、全身の装甲や武装が一時剥離。
 その一撃を放つために、機構が最適化されていく。
 腕のヒートアンカーが腰へと飛び、ついで大地に叩き込まれて錨の役目を果たす。
≪白熱錨・確定≫
 フェイスガードが降り、余波に耐えるよう、装甲が前面へと集中する。
 先ほど取り込んだ『イブマ』のナノマシンも用いて、防護の体勢をより確固たるそれにしていく。
≪余波防御形態・移行・完了≫
 背部、砲身基部が加速器ごと腕部に接続され、砲身が展開。
 加速器先端に腰部から剥離した装甲が付き、そして動力炉から直結で力が行く。
≪出力経路・確定≫
 顕現するのは、機体を基にした巨砲だ。
 仰角にして88.62397度。方角は真北ゼロ度。狙うは成層圏に輝く赤き北極星。
 右腕を左腕で支え、観測した大気状況、地球の自転などを基に、狙いを修正していく。
296『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:30:31 ID:bw2xGgfI
≪薬室内・加圧・正常終了≫
 ロックオン。
≪第二封印・から・第四封印・解除・照準・誤差・修正・完了<コンプリート>≫
 ――十四年間の時間を想う。
 十四年間の人生で得た人々を想う。
 十四年間の人生で得た家族を想う。
 十四年間の人生で得た景色を想う。
 その全てを想う度に、あたたかい風が心を吹き抜ける。
 ――そう。きっと、大切なものを守るために、俺は力を得た。
 ならば使う。我が半身の力を使う。機械で、想いなんてないくせに、誰よりも優しく、今だって俺たちを殺したことを悔いている、半身と共に、十四年間を守ろう。
 ――最後に。十四年間共にいた、真喜を想う。
 真喜。
 俺に名をくれた彼女は、初めて笑った俺を見て喜んでくれた彼女は、あの時のように笑ってくれるだろうか。

――君はもう、悲哀を持っているのであります。だからきっと、これから君には、幸せばっかりが来てくれるのであります――

『本当。この十四年間は、幸いばかりだったさ』
 真喜がいてくれるだけで、俺の世界は、彩を持った。

 だからきっと、これからも、幸いは続く。続いていく。続けていく。
 半身は無想。しかし何よりも強い意志をもって応える。
≪最終封印・解除――鋼狼牙・最終砲撃形態<ファイナルキャノンモード>・準備<スタンバイ>――完了<コンプリート>≫
≪――コード・『銀河砲』≫
 撃ち抜く、と。守る、と。共に在る、と。俺のすべてに、等しく応える。
 故に叫ぶ。詔と言うには激しく、その一撃の名を。



『――ギャラクティカッッッ!! キャノォオオオオオオンッッッ!!』



 ―― 一撃による必滅。
 銀河すら撃ち貫く弾丸は、降る星を砕き、宇宙へと突き抜けた。
297『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:31:28 ID:bw2xGgfI
五、『厄災(守護者)』

 それからが大変だった。
 まず自衛隊基地にあるドックに鋼狼牙を戻して調査したり修理したり応急処置部分を正規部品と交換したりしているうちに夜が開け昼になり、ジョドー所長の指示による俺自身の調査(精神面メイン)が行われた末に勝ててよかったパーティーがあり、そして、
「……む」
 家に帰ったのが、なんと二日経ってからなのであった。
 気まずい。
『ならば、いってらっしゃいなのであります、陽逢。私は、腕によりをかけて料理をしておくのであります。実はこの前、自衛隊の方々に、色々と食料品を分けていただいたのであります』
 ……自衛隊のパーティーにも来なかったしなぁ、真喜。
 思いつつ、俺は真喜の家扉をノックする。
「…………」
 無言が聞こえてきた。
 殺意満点。入りたくない。
 しかし、今は秋終りの冬口。正直、外は寒い。
「……ええい」
 入らなきゃ話が始まらない。
 だったら入るしかない。イッツ世界の真理。
「入るぞ、真喜!」
 どばん、と扉を開いて踏み入った先は、真っ暗闇だった。
 濃い、コーヒーのにおいがある。
 電気もつけていないのか、と。
 そう思いながら手探りで電気を付けると、布団に包まった真喜の姿があった。
 上目遣い、と言うよりは、ただ単に顔を上げる元気がないのか。
「おかえりなさいであります、陽逢」
「あ、ああ」
 その目の下には、濃いクマがある。
 まさか、と思う。寝ていないのか、と。
「私、ずっと待っていたのであります」
 そう言って、真喜は深く、深くため息を吐いた。
「まったく……本当に、姉として情けないのであります。約束を破らないと思っていたのに、こうまであっさり破ってくれるとは」
「す、すまない。その、な? 鋼狼牙をきちんと動けるようにするのに……」
 と、言葉に何かおかしい箇所があった気がした。
「言い訳は聞きたくないのであります。食材を無駄にしてしまったのであります。ああ、私、これから家族としてやっていけるのでありましょうか。陽逢が無断外泊など、姉としてすごく心配なのであります……」
「ま、待て、真喜。……姉?」
「……はい。姉でありますが?」
「お、おい、な、なんであの状況でそうなる、いや、そうなった?」
「私、戸籍上は姉でありましたが、これからは真の姉になろうと――」
 と、そこで真喜の頭が落ちた。
 擬音で言えば、かくん。
 寝たのだろうか。
「ふ、二日、徹夜だったみたいだしなぁ……」
 まあ、いいか。
 そう思いながら、俺は布団を敷きなおし、真喜を横たえた。
 そして、言い忘れていた一言を言う。
「ただいま、」
 ――俺の家族。
 そう呟いて、俺は、電気を消した。
 ――電気が消える瞬間。真喜の微笑みが、見えた。

/

 二〇〇]年、五月二十七日。地球は、宇宙からの侵略によって壊滅状態に陥った。
 それを、人類は『イブマ』と呼び恐れた。
 恐怖が地上に蔓延し、不安が天を満たした。
 だが、彼女は、絶望を望まない。
 希望の源を抱きながら、歩んでいく。
298『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:32:39 ID:bw2xGgfI
――『蛇足』

 そんなわけで、次の日。
 シャワー室に侵入した俺は、とりあえず真喜のチチを揉んでいた。
「うひゃうわぁ――!」
 シャンプー中だ。
 昔はシャンプーのときに目を開けていられなかった真喜だが、
「う、うわ、ひ、陽逢でありますか!? 止めていただきたいのであります! いやぁっ、わぁっ、あっ、ちょっ、そこ駄目であります駄目駄目本当に駄目ぇ――!」
 あ、今も開けられないのか。
 よーしよし、と頷きつつ、薄い胸を揉む。とても揉む。
「いやぁー! やぁー! ひあいぃ――! ごーかんまがぁ――! いやぁああ――!」
 ……コレマジ泣きだろうか。
 背後から抱きしめ、湯を頭にあてた。
 あ、と真喜が一声をあげた。
「ひ……あい? で、ありますか?」
「ああ」
「……ひどいので、あります」
 抱きしめた腕を甘く噛まれた。
「……と、ところ、で、その」
「ん?」
「お、おっぱい、揉むの、やめて、いただきたいので、ありますが」
「嫌だよ、気持ちいい」
「そ、んな、うっ、ふ、私の、なんて、薄くて、」
「だから気持ちいいからいいんだよ」
 ぐ、と一度強く抱きしめ、緩めた。
 次に行うのは、白髪を掻き分けてのキスだ。
「あっ、」
 まずは首筋。うなじ。肩口。身をよじる真喜を逃がさぬよう捕らえながら、啄ばんでいく。
「ひゃっ、そ、そこ外から見えて……!」
「いいか、真喜。―ー見せなきゃ平気だ」
「なんと身勝手な……! って、あぅ、ひっ!」
 捕らえた手で、乳房の先端をなぞった。
 震えた身も逃がさない。
 もうお預けは食らった。
 だから、これ以上は我慢しない。
 膝を折り、背筋を舌でなぞって行く。
 シャワーが、ごとん、と床に落ちた。
「ああ、うぁああ、ああっ、うひぁっ」
 乳房にある手をヘソヘ。
 くりくりと軽くいじりながら、もう片方の腕で、尻を抱き寄せた。
 丸く、白い尻だ。
 頷いた。
「いい尻だなぁ……」
 身近にこんな尻があったんだなぁ、と思う。
 鋼狼牙と初合一するまで本当の姉妹として見ていたし、意識しないようにしていたのだが。
 鼻を尻たぶにうずめた。
「や――っ! そ、そこまだ洗ってにゃぁ――! うひぁ――!」
「おまえ、今日も叫んでばっかりだなぁ」
「誰のせいでありますかって喋らないでいただきたいのでありますうひゃわぁあああ――!」
299『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:33:22 ID:bw2xGgfI
 俺のせい。
 だからおまえは一切悪くない。
 鼻で尻たぶをかきわけ、奥、秘所を舐める。
 大きく舐めると、舌先に少し刺激が来た。
 そこに興奮した。
 してしまった。
 と、真喜のかかとが跳ね上がった。
 ずどむ、と、鳩尾にめり込む。
「ふぉァ」
 変な息が漏れた。
 腕から力が抜け、真喜が逃げ出していく。
 力が抜けて、シャワー室から上半身だけが出た。
 床に背が触れ、そして、
「でやっ!」
 思いっきり踏まれた。
「ぐふぉァ!」
「じじじじ自業自得であります、勝手に人のおっぱいを揉むなど! しししししかもお尻まで……!」
 真喜はバスタオルを体に巻き、そしてシャワー室から顔を出して周囲をのぞき、そして家へと駆けた。
 湯冷めしないだろうか。そもそも、頭は、シャンプーは大丈夫なのだろうか。心配だった。
 ……まあ、そんな感じで。
 俺が望むかたちになるまでは、しばらくかかりそうなのであった。



→The End.




















「……ひょっとして、俺が悪いのか」



終われ。
300『無想機神・鋼狼牙』 ◆1Bix5YIqN6 :2009/07/22(水) 02:35:14 ID:bw2xGgfI
投下終了。
うん、スレ違いって言われるのは覚悟してるんだ。
でも正直今回のエロはキスだけでよかったんじゃねぇかなぁとか思った俺。
どれもこれもジョドー所長が悪いんです。忍者だから。

コンセプトは『90年代ロボットもの』ってことで。
BGMはこんな感じで。
・『Big-O! Show Must Go On』
・『盗めない宝石』(ゼノギアス一番の名曲だと思う
・『ロボットガァルサヨウナラ』(ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm4750983

……今回、名前の元ネタは喜怒哀楽から。
陽逢→悲哀
真喜→マジ喜び
ジョドー→如『怒・憤』母流斗 憤怒
スリール→(確か仏蘭西語で)楽
真喜が「〜であります」って口調なのは、親父が自衛官で、その脳をスキャンして言語野とかを再現したから、とかそんな裏設定。

こんなネタもあったんだけど、続編が自主没になったのでお蔵入りになりましたとさ。
/
≪――第零封印・解除<アンロック>≫
≪炉心・超過駆動<フルドライブ>・開始<スタート>≫
≪鋼狼牙・無限砲撃形態<アンリミテッドキャノンモード>・準備<スタンバイ>・完了<コンプリート>≫
≪――コード『銀河夢幻砲』≫
 誤差修正は要らない。
 そんなものをしなくても、当たる。
『――受けろ。』
 そうだ、受けるがいい。
 この全身の怒号を、この総身の憤怒を、この満身の激情を―ー銀河すら夢幻のごとく消し飛ばす、天下無敵の一撃必殺砲を!!
『――ギャラクティカァアアア・ファントムッッッ!!! キャノォオオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!』
/
つまり、リンかけ読んだのが原因だったんです。
マグナムの次はキャノンだよな。
ともあれ、楽しんでいただけたら、本当に幸いです。
301名無しさん@ピンキー:2009/07/22(水) 06:07:02 ID:IA7+ObLL
GJ。ああ、世界観一緒なのか
本番ないのが残念だけど真喜がかわいいから問題ない

ファントムが元ネタなら威力は左の方が強いのだろうか
302名無しさん@ピンキー:2009/07/22(水) 09:07:34 ID:PMp9Ska6
なぜアンタはこうもw
一駅乗り過ごしたじゃねえかw

GJ!
303名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 00:53:09 ID:5CA5EUYr
長すぎるので飛ばした。
304名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 01:58:54 ID:1q1+sLkE
GJ!
「〜であります」っていう口調が、結構いいということに気付いたぜ

よし、今度は雷轟衛と鋼狼牙の夢の競演を(ry
305名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 08:58:39 ID:ZpF+jioY
>>304
二体が力を合わせてグレート合体ですね。わかります。
306名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 23:16:51 ID:WztM15Db
いやあ
さすがに読まないわ
307名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 23:49:37 ID:PrK4I6OW
長い上にクソつまんねえ
308名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 23:54:05 ID:k9HXhV/A
わざわざ言って空気悪くすることもなかろうに……
309名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 00:10:01 ID:4oa7U4v2
ボノボXさんのやつは?来た?ねぇ?ねぇ?ねぇってば?
310名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 00:28:39 ID:9yn8Jn7B
職人さんの名前が
311名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 00:32:56 ID:FOMoNYaH
普段は読む方ばかりがオナニーしてんだ。たまには書き手のオナニーくらい許してやれよ。
312名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 00:54:18 ID:etJmSEt2
>>309
あの人は今までの経験からすると貯めてダーッと出すタイプだから
313名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 04:14:04 ID:lE7JZ2YE
超長文投下した上にスレ違い暴露って…
読むわけねーべw
314名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 04:29:52 ID:8lSi1Xo5
まあスパロボものなんてスレ違いにもほどがあるよなw
315名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 10:37:53 ID:etJmSEt2
もうちょっとロボ分控えめ、幼馴染みとのやりとり増量ならもっと良かった
316名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 13:31:06 ID:j6UbCfL+
適度な長さで、幼馴染みがちゃんとメインに据えられていれば、一風変わったジャンル作品もありだとは思う。
317名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 20:40:54 ID:/cn6dnRQ
>>300gj

読んだけど、小出しにして反応見てから続き投下って流れでもよかったような。
なぜいきなり全部投下したのか...
スレ違いと多少意識してるならなおのこと
318名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 20:56:43 ID:7fF+1izQ
小出しに投稿されるよか一気にしてくれるほうがいいなおれは。
319名無しさん@ピンキー:2009/07/25(土) 00:45:43 ID:YXIRQ4ze
小出しするにも、ぶつ切りにする人と起承転結作る人といるよな
320名無しさん@ピンキー:2009/07/25(土) 13:08:52 ID:dKvWb/lf
わかった!ロボ出さなきゃいいんだ!
321てす:2009/07/25(土) 18:18:31 ID:p0q0enQu
2
 そして長い髪をツインテにして、ニヤニヤと微笑んで、胸元から取り出したのは、胸に挟んで人肌に温まってる、無色透明なローションボトル。
 キャップを外して、自分のオッパイに全部ブッかけてドロドロに塗らし、美味しそうなピンクチェリーを透けさせてる。

『なぁ、ゆーと? オメェがオレの願いを叶えてくれるんなら、オレのおっぱい……オナホにしても良いぜ?』

 ベッドの上に仰向けで横たわり、左右から両手で胸を押し潰すようにして強調し、すぐ隣で立ち尽くすボクのチンコを誘惑して。
 考える暇なんて無かった。気付けばズボンもパンツも脱いで、馬乗りになってサキちゃんのオッパイにチンコを出し入れ。
『うわあぁぁぁぁぁっ!! サキちゃあぁぁぁぁぁっ!!!』
 モッチリと吸い付いて、それなのにニュルニュル暖かくて、ダブルテイストでとっても気持ちいい。

『ふんんっ!? あっ、つぅっ……ふふっ、腰を振ったなゆーと? オレをオナホにしたな? そしたらよー、今年一杯、オレの奴隷に決定だ♪♪』

 そんな卑怯な手で、ボクは幼馴染みから奴隷に落ちた。
 今年一杯……そうは言ってても、奴隷として調教され、今の今までヤメる切っ掛けを掴めずにパシリ一直線。
 だけど、それも終わり。死ぬほど後悔したし、切っ掛けは掴んだし、もう二度と同じテツは踏まないっ!!
 だから、だからねサキちゃん? ボクね……誘惑には慣れてるんだ。




   『』後編2




 今更、本当に今更、おっぱいに触ったぐらいじゃボクはオチない。これならまだ、ニプレスを剥がさせられた時の方がクラクラ来たよ。
「イ、ヤ、だ、ってば。それにね? もし付き合ったら、これまでイジメられた分、まとめてサキちゃんをイジメるよ? そんなの耐えられないでしょ?」

「たえれ、る……もん。ゆーとが好きになってくれるなら、それぐらいオレ……んひぃっ!?」
322名無しさん@ピンキー:2009/07/25(土) 18:22:06 ID:p0q0enQu
べ、べつに、あんたの為に誤爆したんじゃないんだからね!!
華麗にスルーしなさいよ……そしたら、ゴニョゴニョしてあげるわよっ。


次レスより、何事も無かったように普通のスレ進行開始。
323名無しさん@ピンキー:2009/07/25(土) 19:14:20 ID:4ig89svj
コレ前にも見たようだけど、もしかしてカレーの人?
324名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 00:34:33 ID:Gf7tBN6f
文体が特徴的すぎて一発で作者割れるw
325名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 08:25:10 ID:9VBoTXVQ
まあ、その、なんだ。
続きうp
326名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 07:22:42 ID:pkOwN/gm
投下した後でスレ違いかもって書くの卑怯だよね。
つまんないから二度と投下しないでね。
327名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 08:00:29 ID:kWoew/of
>>326
つまんないから二度と書き込まないでね
328名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 17:41:03 ID:Ff/FX8Wb
なんで
329名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 20:34:45 ID:rP4fmW4F
>>326>>300に対して?
330名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 14:03:50 ID:aYWJ6FFZ
多分そうでしょ
あんなもんにGJなんか言ってたら同類が湧いてスレ乗っ取られかねん
その内調子こいてスペックとかダラダラ貼り付けてきそうだ
331名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 18:19:13 ID:39Q75Fnp
「つっ!? はっ、イテーだけだってばよ……そんなにっ、はげしくっ、ふんんっ!? 出し入れされてもぉっ、イタ、イッ、ひうっ! ふぐっ!!」
両手を重ねて口を塞ぐ
白目グルン
頬を軽くはたく
話しする時は白目もどして、コッチ見て
332名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 18:20:05 ID:39Q75Fnp
初めてのごばく
333名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 19:12:39 ID:HeRtDIqt
あぁ〜夏休みぃ
334 [―{}@{}@{}-] ◆EtIhtI2GAyg2 :2009/07/29(水) 21:42:52 ID:EM5tgij1
初投下。2レス使用。エロ無しどころか幼馴染成分薄め。すいません。
335 [―{}@{}@{}-] コイバナ (1/2) ◆EtIhtI2GAyg2 :2009/07/29(水) 21:44:58 ID:EM5tgij1
「そうそう!聞いてよなっちゃん!」
「ん?何?」
「こないださー、源ちゃんがさ、また女の子に告白されてたんだよ!」
「へぇー…… それで?」
「本人は『断った』って言ってるんだけど、見てると満更じゃないみたいだし…」
「その前に、さ」
「ん?なになに?」
「なずな、まだ源五郎君に告白してないの?」
「う……」
「なずなと源五郎君って、出会ってから何年経ってるのよ」
「えと……かれこれ13年ぐらい、かな?」
「ずーっと一緒に居るのに、なんで告白しないかなぁ」
「だ、だって!源ちゃんと居ると舞い上がっちゃって、なんだかそれだけで満足しちゃうって言うか、なんていうか…
 こ、この間だってね!源ちゃんが勉強頑張ったからって言って頭撫でてくれて、もう嬉しくって嬉しくって仕方なくって、でも恥ずかしくなってすぐ源ちゃんの家から飛び出しちゃって」
「すとーっぷ」
「え、え?なになに?」
「……いや、なんでもない」
「なになになになに!気になる気になるー!」
336 [―{}@{}@{}-] コイバナ (2/2) ◆EtIhtI2GAyg2 :2009/07/29(水) 21:46:14 ID:EM5tgij1
「あ、そういえばさ」
「ん?何?」
「この前、ミッキーが女の子と一緒に歩いてたの、見たよ〜」
「それどこで?いつ?その女の背格好は?証拠写真は?」
「ちょっ、こ、怖いってなっちゃん」
「はっ……ごめんごめん」
「はぁ……ビックリした〜」
「本当にごめんって。で、それはいつの話?」
「えっとね、三日前くらいかな?」
(その日は用事があるって言って先に帰った日…)
「じゃあ、次。どこで?」
「うんとね、確か駅ビルの3階だったかな」
(女性物の衣料品のフロアよね…)
「で、一緒にいた女の子はどんな子だった?」
「えっとね〜…顔はどこと無くミッキーに似てた気がするなぁ」
(深雪似?……!もしかして)
「その子って、深雪とおんなじくらいの背丈じゃない?」
「うん、そのくらいだったと思うよ〜」
「で、髪の毛はツインテールにして、腰ぐらいまであった?」
「あ!うんうん!そんな感じ!なんだ〜、なっちゃん知ってるじゃ〜ん」
(なるほど、だから昨日……)
「あれあれ?なっちゃん、嬉しそうだね?」
「え?そ、そんなこと、無いけど?」
「え〜?だって今、すっごーくニヤニヤしてたよ〜?もしかして何か良いことでもあったの〜?」
「き、気のせいだって!そう!なずなの気のせい!」
「そういやなっちゃんもミッキーと幼馴染だったよね〜?でも恋人じゃなかったよね〜?それでかなぁ〜?」
「〜〜〜〜〜〜っ!なずなぁ!」
「わ〜〜〜!なっちゃんが怒った〜〜〜!」


― 終 ―
337名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 21:55:45 ID:Bwp6i92X
ダメだ、ついていけん。会話だけでなく話者が誰なのかくらい地の文で判るようにしてくれ。
さもなくば、ト書きにしたいのなら話者を書いてくれ。
338名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 23:46:33 ID:sD8LM9mK
正直、小説やってた>>300の方が……
339名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 02:34:20 ID:M94NdjDN
登場人物がなずなとなっちゃんという似通った名前だから区別がつきづらい。
エロがないのでチンポが立たない。

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           O 。
                 , ─ヽ
________    /,/\ヾ\   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_   __((´∀`\ )< という感想だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/'''  )ヽ  \_________
||__|        | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从  | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\  /   ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/        = 完 =
340名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 10:00:45 ID:ZlfGMEPH
きりかえてく(キリッ
341名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 20:50:49 ID:4gWABElz
気持ちいい....

― 終劇 ―
342小ネタ・そんな青春:2009/08/01(土) 02:20:01 ID:Fu5FrVPM
「あー、童貞捨てたいーっ!綺麗なお姉さんがいいな。ミニスカ美脚の。
 俺の上に乗っかかって誘惑して欲しいぜ!」
「俺はかわいい後輩がいい…。身も心も捧げますと言われたい…」
「それもいいよなっ!
 おい利一、お前はどうだよ?お前も男なら、エッチなことしてみたいよな?!」
「そんなの当たり前だろ」
「お前ってあまり自分の好み語らないよな。もしかして凶暴なひんに……」
「俺の好みは顔が埋まるくらいの巨乳のお姉さんだっ!!」

男なら日課とも言える、いつも通りの何気ない馬鹿三人組の会話。
空が美しい昼時の屋上に相応しい会話ともいえる。すなわち青い春。
しかし気をつけよう。その後ろ、給水塔の影に誰かがいないかを……。

紗枝は親の仇のごとく焼売に箸を突き立てた。
そもそも屋上には自分の方が先にいたのだ。
三馬鹿どもをいつも通りに父譲りの蹴り技で撃退することも考えたが、
お弁当で腹を満たしてからと思っているうちに下ネタが始まり、出そこねたのだ。
これでも乙女、恥ずかしいものは恥ずかしい。
(ふん。来栖め、誰が凶暴貧乳よ。それに利一も。そんなに巨乳が好きなら埋もれてシネ)
利一のやつ、誰のおかげで高校まで進学できたと思ってる。
あんな脳みそ空っぽの体力バカ、あたしが家庭教師やんなきゃ小学校で中退よ中退!
ぶつぶつ呟きながら、それでも見つからないように身を縮こまらせて、
何故怒っているのか理由を考えないようにしながら、紗枝はすごい勢いで弁当をつめこみ始めた。


そんな青春。
343名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 02:21:49 ID:Fu5FrVPM
以上で終わり。
短くてすまん。
344名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 11:33:01 ID:2nuNNUTO
出来れば続きを!
紗枝が利一の延髄に蹴りをぶち込むまで正座して待ってる。
345 ◆cW8I9jdrzY :2009/08/01(土) 14:24:21 ID:/pnC3iqd
一本投下します。
ほんの少しだけ内容がイカれてますので、受けつけない方は酉でNGお願いします。
SS自体はごく普通の高校生幼馴染モノです。
346変態幼馴染(1/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/08/01(土) 14:25:17 ID:/pnC3iqd
朝の明るい日差しが降り注ぐ中、俺は静かに家を出た。
「……いい天気だ」
空を見上げれば雲一つない。文句なしの快晴だった。
重くもないカバンを手に俺が向かったのは斜向かいにある一軒の家。
呼び鈴を鳴らすとおばさんがいつものように俺を出迎えてくれた。
「おはよう祐介君、今日は早いのね」
「おはようございます。瑞希起きてますか?」
俺の問いかけにおばさんは苦笑したようだった。
「まだ寝てるわ。最近あの子、夜更かししてるみたいで困ってるの。
 祐介君からも何か言ってやってくれない?」
「わかりました、注意しときます」
俺は努めて冷静に受け答えをし、おばさんの許可をもらって瑞希の部屋へ足を踏み入れた。

「瑞希、入るぞ」
やはり返事はなく、見慣れたベッドの上には毛布をかぶった塊が転がっていた。
無言でその脇に立ち、乱暴に毛布を引っぺがしてやる。
寝床から現れたのは一糸まとわぬ姿で熟睡している小柄な少女だった。
つややかな長い黒髪はシーツの上を蛇行して流れ、
子供っぽい繊細な顔立ちはまるで童話に出てくる妖精を思わせる。
小学生かせいぜい中学生にしか見えない体格は発育が悪く、胸もささやかなものだった。
そんな色気のない裸に軽く目をやり、俺はこいつを起こしにかかる。
「また裸かよ……おい瑞希、朝だぞ起きろ」
「ん……んん、うん……」
体を揺らして頬をぺちぺち叩いたが、こいつはなかなか起きる気配がない。
どうやらおばさんの言う通り、あまり寝ていないようだった。
まだ時間には余裕があるがいつまでもこうしているのも無駄に感じられる。
やむを得ないので別の手段に出ることにしよう。
「瑞希、起きろ」
再度そう言ってベッドに上がりこみ――仰向けになっていた瑞希の唇に思い切り吸いついてやる。
「ん、んむぅっ……」
半開きになっていた口を舌でこじ開けカラカラに乾いていた口内に唾を送り込み
俺の水分をたっぷりとこいつに補給させてやった。
それだけに留まらず俺の指は少女の裸体を遠慮なく撫で回し、
小さな小さな乳房の先端、ピンクのつぼみをギュッとつねって責めたてる。
「んん――むぐぅぅっ……!」
347変態幼馴染(2/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/08/01(土) 14:25:54 ID:/pnC3iqd
そこでようやく瑞希は目を開け、驚いた顔で至近の俺の顔を見つめた。
それを確認してやっとのことで俺はこいつを解放してやる。
「――ふう、やっと起きたな。まったく」
「ゆ、祐ちゃん……?」
瑞希は顔を真っ赤に染め、落ち着きなくもじもじしていた。
「お、起こしてくれたの……? ありがと……」
朝から唇を奪われ胸をいたぶられたというのに、こいつは怒るどころか淫蕩な表情で礼を言う。
その口の端からは俺の唾液が一筋、つうっと垂れていた。
俺は軽くうなずき返し、ベッドの縁に腰かけた。
そうしていると自然と瑞希が寄ってきて俺にもたれかかってくる。
小さかったときは自分の父親に甘えていたこいつだが、今はその対象が俺になっただけで
子供の頃とやってることはまったく変わっていない。その事実につい笑ってしまう。

「何やってたんだお前は。眠そうだけど、昨日は寝なかったのか?」
「うん……その、ベッドに入ったのは早かったんだけど……」
「んで?」
「遅くまで、ず、ずっと……オナニーしてて……祐ちゃんで……」
「……はあああぁぁあぁ……」
脱力を隠す気にもなれず、俺はゆっくり時間をかけて肺の空気を残らず吐き出した。
そんな俺の様子に気後れしたのか、瑞希は目を潤ませてこちらを見つめるばかり。
「ご、ごめん……」
申し訳なさそうに言ってくる瑞希を張り倒してベッドに転ばせる。
本気でないとはいえ瑞希を叩く感触に心が痛んだが、俺の口はこいつを容赦なく嬲り続けた。
「この馬鹿、勝手に人をオカズにするな!」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「あーあ、お前がこんな変態だなんてガッカリだよ。マジでさかりのついた雌犬だな」
「ああ――許して……祐ちゃん許してぇ……」
泣きながらこちらに哀願する瑞希だったが、その顔は恍惚に満たされている。
むしろ泣きそうなのは俺の方なのだが、瑞希はそんな俺に必死で謝りつつも
じりじりこちらににじり寄り、涙で濡れた顔を俺の下半身に押しつけてきた。
「ごめんなさい……私は変態なんです。許可もなしに祐介様でオナニーして
 思いっきりお仕置きされないと満足できない変態なんです。許して下さい……」
恥ずかしいセリフを苦もなく言い終え、俺の機嫌をうかがおうと顔を上げる瑞希。
「…………」
俺は何も言わずその細い顎に手をかけ、もう一度こいつの唇を奪ってやった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

俺、中川祐介と森田瑞希のつき合いは幼稚園に入る前にまでさかのぼる。
瑞希は小さい頃から内気で怖がりだった。こいつが泣いたとき慰めてやるのはいつも俺の役目で、
いつしか俺の方もこの少女をそっと守ってやるのが当たり前になっていた。
俺は俺で昔から無口で可愛くないガキだったから、仲のいい友達は非常に少なかった。
そんな俺と瑞希がいつも一緒にいるようになったのはごく自然な成り行きだったと言える。
俺も瑞希も斜向かいの相手の家をしょっちゅう行き来していたし、
どっちの親も微笑ましげに俺たちのことを見守ってくれていた。
だがそれはあくまで兄妹や親友のような関係であって、
俺は今までこいつを女として意識したことは一度たりともなかった。
きっと瑞希の方もそうだと思い、しょっちゅう買い物や遊び、勉強を共にしながらも
俺たちはこの近すぎず遠すぎずの微妙な距離を保ったまま高校生になった。
だから、ある日突然こいつから告白されたときは非常に驚いた。
「私、祐ちゃんが好き……」
いつも気弱なこいつの、精一杯のアプローチ。
俺たちはそのまま自宅で体を重ね、お互いの初めてを捧げ合った。
こうして俺と瑞希は正式につき合い出すことになる。
348変態幼馴染(3/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/08/01(土) 14:26:26 ID:/pnC3iqd
……とまあ、ここまでなら何の問題もなかったのだが。
それからすぐ、猛烈に困るというか、どう反応していいかわからない事態に直面した。
瑞希はなんと重度の変態さん、俺が思わず引いてしまうほどのM体質だったのだ。
「祐ちゃん、お尻、お尻叩いてぇっ!」
「んはぁ……痛くて、気持ちいいのぉっ……」
「お願い祐ちゃん……ご主人様になって、私を飼って下さい……」
バックからゴムもつけず膣をかき回しながら、瑞希の臀部を叩かされる俺。
ノーマルな嗜好しか持たない俺は、日に日に乱れていく幼馴染の姿に唖然とするばかりだった。
こいつを調教しているはずが、実は調教されてるのは俺の方じゃないだろうか、とたまに思う。
両手足を縛られてバイブでイキまくる恋人を前にして、俺はふと
自分の人生はこのままでいいのかと真剣に考え込んでしまうのだった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

並んで登校する俺と瑞希を陽光が見守ってくれている。
うちの高校までの道のりは平坦で風景のメリハリも少なく、何も考えずにぼーっと歩いていると
途中から自分がどこにいるのかわからなくなる錯覚に襲われてしまう。
俺は何ともなしに隣にいるセーラー服姿の幼馴染に目をやった。
「……? どうしたの祐ちゃん?」
「いや、何でもない」
先ほどの痴態はどこへやら、瑞希はいつもの内気な幼馴染に戻っていた。
チビで小学生と間違えられることはあるが、客観的に見ても可愛い顔だと思う。
小さな鼻も口も形が整ってるし、つぶらな瞳だって綺麗に透き通っている。
黒い長髪を今はツインテールに垂らしていて、それがまたよく似合う。
本人は発育の悪いこと――特に胸――を気にしているが、俺からすればどうでもいい話だった。
“祐ちゃんが揉んで育てて”と涙目で言われたときは本当に困り果てたが。
「そう? それにしてもいい天気だね」
「……ああ」
元々俺は口数が少ないし、瑞希も内気であまり喋る方ではない。
それからも大して言葉も交わさず、俺たち二人は通学路を歩いていった。

眠気に覆われた教室の前で、眼鏡をかけた女教師が淡々と授業を進めている。
「セダンの戦いにおいてナポレオン三世はプロイセン軍に破れ、捕虜となります。
 陣頭に立っていた皇帝が捕らわれの身になることで第二帝政が崩壊、パリも陥落――」
適当に重要そうな項目だけを抜き出してノートに拾っていく俺。
学校の試験と大学受験さえ終われば忘れてしまっても構わないが、
それまではこういった興味のない分野の内容でも頭に入れておかないといけない。
「えーと、ここ赤線引いてっと……」
書くべきことを書き終え一息ついた俺は、何げない視線をすぐ前の席に向けた。
見慣れた黒のツインテールがまるで生き物のようにぷらぷらと揺れている。
「……ふ、ふあぁ、祐ちゃん……」
俺に聞かせているつもりだろうか、かすかな喘ぎ声が聞こえてくる。
後ろからなので見えないが、きっと顔を真っ赤にしているに違いない。
軽く震える瑞希の様子には教師も気づくことはなかったが、俺だけは全てを知っていた。
この少女のスカートの中、椅子に乗った肉づきの薄い尻に太いバイブが突き刺さっていることを。
「この普仏戦争の結果から、他国も国民皆兵制を採用することになります。
 これによって軍隊がより大規模になり、それが第一次大戦の総力戦へと繋がって――」
世界史の担当は厳しいことで有名な升田先生だ。もしこんなことが知られたら瑞希は破滅するだろう。
思わず背筋が寒くなるのを感じながら、俺は幼馴染の後ろ姿を観察していた。
俺の心配も虚しく、瑞希の甘い声と吐息は途切れることなく後ろに送られてくる。
「はぁ……はぁあ……」
349変態幼馴染(4/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/08/01(土) 14:26:52 ID:/pnC3iqd
そのとき、ついに升田先生が瑞希の異変に気がついた。
「そこのあなた、どうしたの !? 気分でも悪いの?」
「い……いいえ、大丈夫です……」
真っ赤な顔でハァハァと息を荒げて返事をする瑞希。先生はそれを見て風邪とでも思ったのだろう、
「誰か、森田さんを保健室に連れて行ってあげてちょうだい」
と言って教室を見回した。
それに一人の女生徒が手を上げて答える。
「はーい、中川君が行ってくれるそうでーす!」
「……なに?」
眉をひそめる俺に、周囲のクラスメートもうんうんと頷いていた。
俺と瑞希が子供の頃からいつも一緒にいることはとうに皆に知れ渡っている。
生徒たちにつられたのか、先生も俺に任せることにしたようだった。
「じゃあ中川君、悪いけど森田さんをよろしくね」
こうなってしまってはもうどうしようもない。
「はい……行くぞ瑞希」
「う、うん……」
ふらふら立ち上がる瑞希の手を取り、俺は皆に見送られて教室を後にした。

俺の昼食は基本的に購買のパンだったのだが、最近は瑞希が弁当を作ってくれるようになった。
「はい祐ちゃん、今日の分」
「ああ、ありがとな。おばさんにも礼言っといてくれ」
お手製弁当と言えば聞こえはいいが、半分くらいは瑞希んちの冷蔵庫の残り物だ。
こいつもちゃんと料理作れば美味いんだが、ここのところあんな感じで朝寝坊しまくっているので
なかなか弁当に手間暇かける余裕がないらしい。
別にパンでも構わんから無理しなくていいと告げる俺に、瑞希は顔を赤くして答えた。
「だって……私は祐ちゃんを毎晩オカズにしてるのに、祐ちゃんのオカズがないだなんて……」
「いやいや、そんな下品なギャグはいらんから」
「でも私、祐ちゃんのこと考えながらご飯三杯はいけるよ?」
「あ、そうですか。はいはい……ホントに変態だなお前は」
その誉め言葉を聞いて頭から湯気をたてる瑞希は
確かに可愛いと言えば可愛かったが、何かが間違ってるような気もする。

飯を食いながら馬鹿なやりとりを交わす俺たちのところに、一人の女生徒がやってきた。
「はーい瑞希、どう? 今日も愛しの祐ちゃんに可愛がってもらってる?」
「ま、真理奈ちゃん……」
短く切った茶髪と健康的に引き締まった長身、派手な顔立ちのこいつは加藤真理奈という。
見た目通りよくモテる女で、頻繁に付き合う男をとっかえひっかえしているやつだ。
歯に衣を着せないというか言いたいことは何でも言うというか、とにかく遠慮がなく
この世の男は全部自分の下僕だと勘違いしているような節がある。
先ほど俺を升田先生にけしかけたのもこいつだった。
俺は多少の抗議の意思をこめ、鋭い視線を加藤に向けてやった。
「……加藤、さっきはどういうつもりだったんだよ。
 あの鬼教師に名指しで呼ばれるのは、いくら俺でもあまりいい気がしなかったぞ」
「あら、可愛い彼女が体調不良だったら助けてやるのが男ってもんじゃないの?」
こいつは怪しい笑顔で俺の言葉を受け流す。
性格はまったく違うのだが、なぜかこいつは瑞希と妙に仲が良く、一緒にいることも多い。
聞いた話だと瑞希に俺への告白を決意させたのも実はこいつだったとか。
その意味では恋のキューピッドと言えなくもないが、感謝してやる気はさらさらない。
350変態幼馴染(5/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/08/01(土) 14:27:19 ID:/pnC3iqd
加藤はにやにや笑いつつ、クリームパンを片手に瑞希の隣の席に座った。
「それに、他の人にバレたら大変でしょ?」
「何がだよ」
「――あら、言わせたいの? 授業中、中川が瑞希にバイブ入れさせてるって」
「…………」
「祐ちゃん……」
全部お見通しと言わんばかりの余裕たっぷりの表情で、加藤は俺たちを眺めている。
「……別に俺がやらせてる訳じゃない。こいつが勝手に――」
「でも好きなんでしょ? この子のそういうエッチなとこも」
「馬鹿言うな、俺は常識人だ」
「そう? 男ってエッチな女の子が大好きなのかと思ってたけど。あんたひょっとしてインポ?」
「ま、真理奈ちゃん……」
教室の隅で話しているため、俺たちの会話を聞く者は誰もいない。
硬い顔で加藤をにらみつける俺と、そんな俺をからかって遊ぶ加藤。
その二人の間でおどおどして口を出せずにいる瑞希。
いつもここで飯を食う三人にとっては、これもよくある光景だ。
結局俺は散々加藤にいじられ倒してさらにストレスを増やす羽目になってしまった。

放課後、俺と瑞希は朝と同じように並んで帰る。
違いといえばそこに加藤が加わることくらいだろう。
何しろこいつはよく喋る。何が面白いのかわからない、しょーもない話題の数々に辟易しながらも
俺は横目でちらちら瑞希を見ながら適当に相づちを返していた。
「じゃ、あたしはここで。瑞希、気をつけて帰るのよ。
 ――中川は草食系だから、あんたがしっかりリードしなさいね」
「……うん、大丈夫」
本人たちは小声で話しているつもりだろうが、バッチリ全部聞こえてしまっている。
ひょっとして瑞希が変になっちまったのはこいつのせいじゃなかろうか。
ふって湧いた疑惑を確かめる暇もなく、加藤は俺たちに手を振って去っていった。
立ちすくむ俺と腕を組み、瑞希の頬が桜色に染まる。
「祐ちゃん、帰ろ……?」
「あ、ああ……」
艶然と微笑む幼馴染の顔から目を離すことができず、俺は瑞希に手を引かれて帰宅した。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

さて、家に帰ればまた幼馴染との甘くて辛いひとときの再開である。
今日はうちの親が遅くまで帰ってこないので、瑞希がこちらにやってきた。
狭い部屋の中、ベッドに腰を下ろす俺の前に私服姿の瑞希が静かに立っている。
「祐ちゃん……」
「なんだ」
「今日も私を……か、可愛がって下さい」
そう言って自分の手で黒のタックワンピースをぺらりとめくる。
下着もはかずに濡れそぼった秘所には当然のようにローターが備わっていた。
瑞希の頬は既に紅色に染まっており、事情を知らない男が見れば
この扇情的な少女の表情に悶え苦しむかもしれない。
――いっそ、このまま外に叩き出してしまおうか。
そんな思いがふと頭をかすめるが、この変態のことだから羞恥プレイも好きかもしれない。
表で通行人の視線を集め、俺の名前を連呼しながらオナニーでもされたらこっちまでヤバい。
俺にできる唯一の行動は、全てを諦めこの幼馴染の性癖を黙って受け入れてやることだった。
351変態幼馴染(6/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/08/01(土) 14:27:59 ID:/pnC3iqd
「瑞希、来い」
細く華奢な体を抱き寄せそっと手を腰に這わせる。
腹をさすり背中を撫で、愛情を込めた手つきで見えない何かを肌に塗りこんでやる。
「んん……っ」
まだ胸にも股間にも触れていないというのにこいつはもう感じているらしく、
いかにも気持ちよさそうに俺の手に身を任せていた。
肉づきの悪い幼馴染の体は小学生の頃からほとんど成長していないような気がする。
しかし記憶の中では可愛らしかった幼い少女の顔は今は愛欲に染まった女のそれになり、
甘い声と熱い息を吐いて俺を求めてやまなかった。
「もっと、もっと触ってぇ……おっぱいもお尻もアソコも、全部……!」
「エロいやつだ。まあ今さらだけどな」
ワンピースを脱がせると――というかこいつが自分で脱いだのだが――白い裸体が露になる。
呆れたことに瑞希はブラもショーツもつけず、黒のワンピース一枚でうちにやってきていた。
四つんばいにしてローターを抜いてやると、締まりのない声を上げて身を震わせる。
「あ、ふぅぅん……っ!」
その拍子にこいつの陰部から汁がだらりと漏れて俺のベッドを汚した。
そしてこちらを振り向き、何かを求めるような媚びた視線を向けてくる。
あれか。これはつまり、そうしてほしいということか。

少女の望みを理解した俺は右手を振り上げ、派手な音を立てて真っ白な臀部をひっぱたいた。
――パァァンッ!
「あひぃぃぃっ !!」
食いしばった瑞希の歯から唾液が飛んで、ますます寝床を汚す。
俺は手を止めずに何度も何度も少女の尻を痛めつけた。
――パン! パァン! パンッ !!
「あひっ! はんっ! あああぁっ !!」
薄い尻の肉を叩かれるたび、白い肌が心地よい音を鳴らすたびに
少女は嬌声をあげて腰を振り、もっともっととせがんでくる。
「ひぃぃっ !! 祐ちゃんもっとぉっ!」
「この変態がっ !!」
「ああっ♪ いいよぉ……もっとしてえぇっ !!」
救いようのないドMだ。どうしようもない変態だ。
そして俺はその変態を毎日毎日こうやって喜ばせてる訳で。
ドMの淫乱女をいたぶる快感と、幼馴染の少女を痛めつける罪悪感。
その間で心を揺らしながら、俺は瑞希の尻を叩き続けた。
「――ひぃぃぃっ! はあぁぁっ、あぁんっ !!!」
思わずドキリとするほど妖艶な表情で身をよじる。どうやらイッたらしい。
うつ伏せになって力なくベッドに横たわる瑞希の尻は右半分が真っ赤になっていた。
352変態幼馴染(7/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/08/01(土) 14:28:41 ID:/pnC3iqd
「…………」
色気のない体だと思う。正直言ってちんちくりん以外の何物でもない。
だが――だがどうして、俺はこんなにも興奮しているのだろうか。
俺の股間では激しくいきり立ったモノがズボンを押し上げ、巨大なテントを張っている。
本当はこんなことしたくないのに。こいつが乞い願うから仕方なくやっているだけなのに。
しかし確かに俺は息を荒げ、勃起した性器をかかえて燃え盛る性欲を持て余している。
「瑞希……」
半分気を失った少女の後ろから細すぎる腰を両手でがっしりとつかむ。
衣服から取り出された肉棒はヤバいほど膨張して、瑞希の濡れた陰部に張りついた。
我慢汁をすりつけるように、女性器の表面を先端でクチュクチュと撫でてやると
男と女の肉がこすれ、溢れる汁が耳障りのいい音を立てた。

だがそのときだ。突如俺の脳内で天啓が閃き、忘れていた大事なことを思い出させてくれた。
「あ、やべ――ゴムつけねーと……」
机の中からゴムを取り出して素早く装着する。すっかり慣れたものだ。
ちなみにこいつは俺がゴムなんてつけなくても全く気にしない。
むしろ生理の周期も考えず、中で出されるのが大好きという非常に危険な女だ。
そんな瑞希を間違えて孕ませてしまったらどうなるだろうか。考えただけでも恐ろしかった。
きっと俺は一生この変態女から離れられなくなるに違いない。
しかし今なら、今ならまだ引き返せる。なんか既にズブズブ深みにはまってるような気はするが、
やはり俺としては最低限これだけはというか、撤退できるラインを考えておかないといけない。
こうして俺は、今日も何とか避妊を忘れずに済んだのだった。

「じゃ、瑞希……いくぞ」
「ふあ……?」
まだ意識がはっきりしないのか、ふにゃふにゃ声をあげる少女の中をゆっくりかきわけていく。
「はあぁっ…… !?」
瑞希の膣は喜んで俺の息子を締めつけ、ゴム越しにきつい圧迫感を与えてきた。
やはり小柄なこいつの中は狭い。何度も犯したってのにまだ慣れない。
――ジュブ……ズズズッ……。
「あぁ――入って、くるぅ……!」
「やっぱきついな。瑞希の中」
「はあぁっ……私、イッたばっか、なのにぃ……!」
知ったことではない。俺は瑞希の腰を自在に動かし結合部をかき回した。
ちょっと奥に突き込めば容易に子宮口をノックできるほどの狭さでとてもきつい。
だがジューシーな膣の肉はみっちり俺のを締めつけてくるし、
どんどん分泌される熱いスープは潤滑油となって肉棒の往復をスムーズにしてくれる。
「ああ……あぁっ、ああんっ……祐、ちゃ……!」
瑞希はうつ伏せになって喘ぎ、白いシーツをかきむしった。
馬鹿みたいに俺の名前を呼びまくって際限なく声と唾とを吐き出していく。
俺のチンポに貫かれて嬌声を上げるツインテールの少女の姿は本当にエロい。
353変態幼馴染(8/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/08/01(土) 14:29:17 ID:/pnC3iqd
“ゆーちゃん、ゆーちゃん”と少年の後ろをついてきていた幼い女の子は
十数年の時をかけて念願叶い、望んで俺のペットになったという訳だ。
――やっぱりどこかで道を間違えた気がする。俺かこいつか、もしくはその両方が。
いや、俺だって瑞希のことは嫌いじゃない。それどころか今でも大好きだ。
いつも俺の隣にいるべき女と言えば瑞希以外に考えられないだろう。今までも、そしてこれからも。
しかし生憎と俺は真面目でノーマルな男子高校生、クラスメートの女を自分の所有物にするとか
幼馴染の少女を奴隷にして日夜奉仕させるとか、そういった類の妄想とは今まで縁がなかった。
だから誕生日プレゼントに首輪が欲しいとか上目遣いで要求されても困る訳で。
もはや遠慮なく俺の前で変態ぶりを発揮する幼馴染に俺はただドン引き状態だったが、
それでも俺は瑞希が好きで、大人しくて健全なこいつとつき合いたいと思っていた。
その夢が叶う日は来るのだろうか。なんか来ない気もするが、来て欲しいもんだ。本当に。
俺は幼馴染をバックで思い切り犯しながらぼんやりとそんなことを考えていた。

「ふあっ、ああっ……祐ちゃん、祐ちゃあんっ……!」
子宮の入り口をコンコンつつく、その感触がまた乙なものだ。
ただでさえ狭い瑞希の膣はぎゅうぎゅう収縮し、俺の汁を絞り取ろうと
みっちりと先端から根元まで痛いほど締めつけてくる。
あー、やばい。気持ちよすぎて先にイっちまうかもしれん。
この変態には負けたくないなあ。でもこいつまだイカないしなあ。
――パンッ !! パン、パンッ !!
腰を打ちつけ肉を鳴らし、瑞希と激しく絡み合う。
うつ伏せのため俺からはその表情が見えないが、きっと狂喜していることだろう。
白目を剥いて舌を伸ばし、俺に犯されて死にそうな声でよがり狂う狂気の女。
「あひぃっ !! 祐ちゃ、ヒィッ !! しぬ、しぬゥゥッ !!!」
「あ、俺も――やべ、出そう……」
「出して、中にィ !! 中に出して、祐ちゃあぁんっ !!」
大声で叫んで必死の中出しアピール。だが俺はちゃんとゴムをつけていた。危ないところだ。
瑞希の体がガクガクと震え、膣を絞って締めつけを一層きつくする。
男を求めてやまない女の肉が引き締まり、ついに射精にこぎつけた。
――ビュッ、ビュルルルッ……ドクドクッ……!
「ああぁあぁぁ――熱い、熱いよォ……♪」
ゴム越しでも俺の子種を受け止めて嬉しいのか、瑞希は半死半生の体でそう鳴いてみせる。
呆れるほどの幼児体型だというのに、こっちがドン引きするほどのドMだというのに、
幼馴染の満足げな声を聞いて俺の心にも温かいものが満ちていった。

「ひぃ、ひぃっ、はふうぅ……」
「はあ……はぁはぁ、はぁ……」
俺の下敷きになって熱い息を吐き続ける小柄な女。
小さい頃から手のかかるやつで、いつも俺にベタベタまとわりついてきて。
そして今は毎日のように俺の性処理を喜んでする変態女ときた。
なんでこんなやつの彼氏をやっているのか、正直言って自分でもわからない。
ただ、不思議と嫌な気はしない。こうして一緒にいるのが昔から当たり前になっているからだろうか。
「――ふぅ……」
萎えた肉棒を引き抜き、ゴムを始末して瑞希の隣に寝転がる。
こうも頻繁にヤらされたんじゃこっちがもたない。何発も出してたらマジで死ぬ。
黒髪の少女はまだ絶頂の余韻に浸っているのか、じっとしたまま荒い呼吸を続けていた。
354変態幼馴染(9/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/08/01(土) 14:29:55 ID:/pnC3iqd
ふと視線を下ろした俺の視界に小さな穴が開いた黒い靴下が目に入った。
――ああ、破れてたか。新しいのを出さないとな。
横着にも脚を曲げて両の靴下を脱ぎ、手の先に提げてみせる。
朝からずっと履いていた、俺の臭いが染みついた汚い靴下。
「…………」
無言でその布切れを見つめながら、そっと隣の少女に目をやる。
この変態のことだから、ひょっとするとこれも自慰のいい材料にするんだろうか。
きっとそうだという思いと、いやいやさすがにという擁護が半分ずつ、俺の頭に浮かんで争う。
はっきりいってどうでもいい、非常に馬鹿馬鹿しい話だったが、俺はついついつぶやいていた。
「瑞希――俺の靴下、破れてたから捨てようと思うんだが……要るか?」
「…………」
幼馴染の女はうつ伏せのまま動かない。意識がないのかもしれない。
やれやれ、俺も血迷って馬鹿なことを言ったもんだ。
俺は軽く首を振ってゴミ箱に靴下を突っ込もうとしたが、不意に瑞希の手が伸びてそれを遮った。
「はあ、はぁ……はふぅ……」
「瑞希……?」
俺のことしか目に入らない一途な瞳。愛によどんだ暗い瞳が俺を射抜いていた。
そして俺の手から靴下をむしり取りながら、息せき切らして次の一言。
「さっき捨てた祐ちゃんのせーえきも……一緒にもらっていい?」
「…………」
うなずくことも拒むこともできず、黙って見返すしかなかった。

と、こんな感じで俺と瑞希の関係は続いている。
まああれこれケチをつけはしたが、瑞希は一生懸命俺に尽くしてくれるし可愛いし、
俺にはもったいないほどの彼女だと思う。
これで変態でもドMでもなかったら最高なのだが、それは贅沢なのだろう。
夜、ベッドにもぐり込んであいつのことを考える。
あいつは今日もらって帰った俺の靴下とゴムで必死にオナっているのだろうか。
明日の朝起こしに行ったら、あのべとべとの素っ裸で俺を迎えてくれるのだろうか。
いつの間にかそんな日常を受け入れてしまっている自分に、ほんの少しだけ驚く。
――まあいい。また明日、あいつを起こしに行かないと。
そっと目を閉じ、俺は深い眠りに落ちていった。
355 ◆cW8I9jdrzY :2009/08/01(土) 14:30:57 ID:/pnC3iqd
以上となります。
では、これにて失礼します。
またいつかどこかでお会いしましょう。ありがとうございました。
356名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 14:36:48 ID:LfyYUKNh
>>355
変態さん乙
流されないようにがんばる男の子は良いよね
どうも流されてる節があるようだけど
357名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 21:09:11 ID:OtCoVgvZ
>>355俺にとっては注意書きが必要なlvではなかったっす。むしろ多いにアリっす。gj
358名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 22:01:02 ID:xO3RlGcr
GJ!実に健全な変態ですね

穴開き靴下を見て「まさか密かにゴムにも穴が……」と思ったのは俺だけじゃないはず
持ち帰ったせーえきを恍惚の表情で舐めたり膣内に垂らしたりするに違いないと思ったのは俺だけじゃ(ry
359名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 22:29:09 ID:2nuNNUTO
M女がノーマル男をS男に調教する話か。
この発想は新鮮だった。

数年後、そこには瑞希が孕んだわけでもないのに結婚している祐介の姿が。
360名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 22:44:56 ID:UuzQjAyx
瑞希のアホっぷりが冴えてるな
マジGJ
361名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 00:46:44 ID:NlA+CA9a
瑞希って名前の女の子おおいよね。
あと人妻だと美佐江、美佐子。
362名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 01:43:00 ID:2NYvW72B
言われてみると。
363名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 02:25:51 ID:Fji35qJp
このスレ的には、「瑞」はかの古典幼馴染み、
だよもん星人の名前にある字だし、影響受けてる職人さんは多いのかも。
364名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 12:40:56 ID:CHh9grBx
普段は苗字で呼ぶけど
二人の時は○○くんって呼んだり
ユウジならユーくんとか
365名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 18:06:20 ID:T6j6Xw3w
>>363
俺の嫁の高瀬瑞希もぜひ。
366名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 18:32:14 ID:DUhzhDmg
変態とヤンデレの違いがよくわからない
367名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 19:23:11 ID:+I+Efqw1

変態 神原駿河
ヤンデレ 戦場ヶ原ひたぎ
368名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 23:38:50 ID:DK0OR3Ar
>>365
彼女は幼馴染みではなく高校からの腐れ縁だけどね
要素としては幼馴染み分をかなり持ってるけど
 
しかし朝起こしに来る幼馴染みってありそうで全然無いよな…
369名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 23:46:17 ID:tJvgqZUB
早起き志向があるなら話は別だが、普通はギリギリまで寝たいと思うのが人情。
そうでなければ朝のラッシュなんて存在しない。
それに迎えに行って寝てたら先に行くよな。

逆に考えれば、わざわざ起こしに来る時点で好意があると考えるのが妥当。
370名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 03:45:15 ID:8gSP4P7V
なるほど
371名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 21:40:45 ID:Ax6RSdfn
例えばいまから隣の家のおっさんを起こしに行こうとしても様々な障害がある、
それらを10代ですべて乗り越えられる幼なじみはすごい。
372名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 23:11:22 ID:J1TX6GE4
投下します。あんまり幼馴染ぽくないかも。

「正時、勝負しよっ」
「勝負?なんで?」
部活終わりの夕暮れ、他の部員が片づけをしているなか、俺の幼馴染の早川希(はやかわ のぞむ)がそう話しかけてくる。
「私が勝ったら私が言うゲームをするの」
「俺が勝ったら?」
「ゲームしないでちゃっちゃと帰れる」
「最初から帰る選択肢は?」
「なし」
自分に都合のいい条件を言ってにへらっと笑う。ただでさえタッパがない希が、こういう子供っぽい笑いをすると、本当に小学生にしか見えなくなる。
「なんか失礼なこと考えてるでしょ」
「い、いや、別に」
こいつはエスパーか?
「で、種目は何よ」
とりあえず話題を逸らす。
「100m走。ただし私に5歩のハンデ」
「ハンデ、それだけでいいのか?」
自慢じゃないが俺は予選落ちとはいえ、一応今年の国体に出た。当然内の部活内ではダントツに速い。
対して希は県大会でなんとか入賞。当然国体には出ていない。さらにつけたすならば、男と女だ。タイム差を考えるまでもなく、5mぽっちのハンデじゃ勝負にならない。せめてその倍は必要だろう。
「いいよ〜。ただし負けた後に、やっぱなし、は絶対駄目だよ」
おいおい、勝つつもりかよ。
思わず鼻で笑いそうになる。
「いいだろう」
「おーい」
俺と希がトラックにつく。希はそばを通りかかった女子部員にスターターとジャッジを頼んでいる。
了解したのか女子部員の一人が走ってゴールのところに行く。
「部長と副部長、準備はいいですか〜?」
遠くからジャッジの子が声を張り上げる。
「おう」
「いいよ」
俺たちも大声で返す。
そして希がこちらを向き、小悪魔のように、にやりと笑う。
仕方ない。本気出すか。
「よーい」
俺と望がぐっと体を落とし、クラウチングスタートのポーズを作る。
「どんっ」
声を合図に、地面を蹴り飛ばす。低く飛ぶように3歩走り、一気に体を持ち上げる。腕を振り、足が接地した次の瞬間には蹴りだす。
周りの景色が色の線となって後方に流れ、前を走る小さな背中がぐんぐんと迫る。
だからハンデが小さいって言ったんだよ。俺はそう心の中で笑い、勝ちを確信する。
俺が勝利を確信し、希に並び、抜かそうとした瞬間、再度希の背中が視界に入る。
あれ、なんで?
373名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 23:12:32 ID:J1TX6GE4
「副部長の勝ちっ」
引き離されたことに気づいて、もう一回追いつこうとした時には後の祭り。俺は見事に敗北した。
「キャー、先輩凄いです。部長に勝っちゃうなんて」
「なんでですか?なんで勝てるんですか」
希の周りに女子部員が集まり、キャーキャーと囃し立てる。
「作戦勝ちだね。簡単に言えば、正時は油断してて、当然勝つと思ってた。だから私が最初少し力を抜いてるのにも気づかず、並んだときには、もう力を抜いたんだよ。
で、そこで本気を出した私に少し置いてかれたと。でしょ?」
わざわざ説明し、勝利宣言のように俺の確認を求め、俺に向かってVサインをする。
憎たらしいまでに勝者だなこの野郎。
「ああ、完敗だバーロー」
俺はそう答えて、トラックに寝転がった。


あのあとひとしきり部員どもに囃され、俺たちは部室に戻ってきた。
希は俺に勝ったからか超ご機嫌で、ニコニコと笑っている。全く、何を企んでいるのか。
「で、何するんだ」
椅子に腰掛け、ゲームとやらの内容を聞く。
「私と正時が3回じゃんけんするの」
「じゃんけん?」
「うん。じゃんけん。で勝った回数だけ相手に何でも命令していいの」
「何でも?」
「うん、何でも」
無邪気な顔でうなずく希。
俺は思わず唾を飲む。そりゃほら、ありきたりなエロ本じゃないけど、俺だって健康な17歳男子。当然“なんでも”とか言われたらそっちに思考が行くわけで。
「ただし。何個か制限つきね。一つ、達成するのに、長期間かかる命令はなし。一年とか二年とかね。二つ、私たちにはどうしようもない金額になっちゃう命令はなし。
三つ、血が流れるようなことはなし。誰かを怪我させろ、とかね。四つ、相手の命令を制限するようなのもなし。ルールに違反したら罰として、相手に絶対的な命令をする権利ね。制限なしの」
「それだけ?」
「これだけ。それ以外なら、正時が考えてるようなえっちぃのもなんでもあり」
希はなんとも形容し難い笑みを浮かべる。妖艶な笑み、とでも言うのだろうか。俺は思わず少し気圧される。
その隙を見取ったのか、希が声を上げる。
「いくよ。じゃんけんポンッ」
唐突に始まったこのゲーム。俺がなんとか出したのはチョキ。
希はパー。
「勝った」
「負けたー」
希は悔しそうに天を仰ぎ見る。
374名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 23:13:09 ID:J1TX6GE4
「よし、もう一回。いい?」
「おう」
「じゃんけんポン」
俺はグー。
希は再びパー。
「勝ったっ」
希が小さくガッツポーズをする。
「負けた」
思わず自分の拳を見つめる。一体何を命令されるのだろうか。
「よし、三回目いくよ」
「ちょちょっと待て」
「えー」
素晴らしいスピードで進んでいくゲームを止める。そして俺は、不満げな顔をする希をおいて深呼吸する。落ち着かなくては。
それにしてもなんで希はこんなに自然体なんだ。もうすこし、気合とかいれないのだろうか。それこそ……貞操とか掛かっているかもしれないのに。
「いいぞ」
「よーし、じゃんけんポンッ」
希はチョキ。俺はグー。
「あー、負けちゃった」
少し残念そうな顔をして、自分の手を見たあと、俺に視線を変えて、下から見上げてくる。
「で、ご命令は?エッチなのでも、えっちぃのでも、スケベなのでもいいよ」
ゲームが終わって早々ににやにやと笑ってそう宣う。こいつは、誘っているだろうか?
どうする、意地張って普通のこと命令するか。
少し考えてその案を消去する。17年一緒にいるのにそんな見栄張っても仕方ない。今更だ。素直になろう。
「服脱げ」
「わかった」
直球な俺の命令に素直にうなずいて服を脱ぐ。
脱ぐといっても部活後だから、短パンとTシャツだけだ。
「脱いだよ」
水色のスポーツブラと、パンツが露わになる。そこに現れた希の身体は俺が知っている、子供の体ではなかった。日焼けした首筋と腕周り。そことは対照的なコントラストが映える胸元とお腹。
うっすらと膨らんだ胸から、余分な肉のついてない腰周り。そこから丸くふくらんだ柔らかそうなお尻。そしてカモシカのように鍛えられた足。それは半ば芸術品みたいで、でも凄く色っぽくて、俺は釘付けになっていた。
「どうする?下着も取る?」
「ああ」
希が下着も脱ぐ。
ブラジャーの下から現れた胸は小さくて、でもしっかりと膨らんでいて、他の場所よりもひときわ白くて、まさに透け通りそうだった。そしてその真ん中について小さな桜色のそれに、思わずむしゃぶりつきたくなる。
そしてゆっくりと下に視線を移す。するとそこはしっかりと割れ目が見えていた。そこを覆い隠すべきものが存在していないのだ。
「お、おまえ、それ」
「気にしてるんだから言うな」
赤くした顔で言う。これはあれだろうか、俗に言うパイパンという奴だろうか。
生まれこのかた一緒にいた奴の新たな発見に俺はアブノーマルな驚きと興奮を得る。
正直なこと言うとこのまま押し倒したかった。もう俺のものは充分に膨らんでいたし、興奮させられていた。だがその空気を感じ取ったのだろう。希は俺の命令の時間は終わりだと言わんばかりに動きだす。
「次は私の番ね」
375名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 23:13:31 ID:J1TX6GE4
「あ、ああ」
希は裸のまま椅子に腰掛ける。そしてあろうことか大きく足を広げた。あの、インリンとかがやっているM字開脚みたいな格好をする。
「な、舐めてイかせて」
そして、希は赤い顔と、少しかすれた声でそう言った。
「い、いいのか?」
思わず聞き返してしまう。
「命令だって言ってるでしょ」
恥ずかしいのか視線をあらぬ方向にそむけ、真っ赤になった頬と耳を俺に見せつける。
「わかった」
希の足の間に膝を突き、顔をそこの前に持ってくる。
ほんのり漂う汗の匂いにぴっちりと閉じたそこ。
「な、舐めるぞ」
「うん」
舌を伸ばし、そっと割れ目なぞる。
「ひうっ」
「大丈夫か?」
「大丈夫だから……続けて」
「分かった」
最初はつるっとした肌の感触を味わいつつ、割れ目全体を撫でるように舐める。汗の、しょっぱい味がする。
「んっ……」

次に割れ目の中に舌をゆっくりと潜らせていく。塩の味に何か別の味。血を薄くしたような鉄の味が混じる。そしてそのまま、恐らく入り口であろうそこを、丁寧に、傷つけないように舐める。
「ふんっ…ん……」
希が鼻に掛かった声を上げ始めるのと同時に、奥からどろっとした液体が出て来始める。
これが愛液……だろうか。
俺は舐めやすくなったのをいいことに更に一心不乱に嘗め回す。
「ふあっ」
割れ目の周りにある柔らかいものを舐め、唇ではさむ
「うむっん」
舌を尖らせ、割れ目の中央にある、穴の中へとゆっくりと沈める。
「ひあ……うあっ」
舌を戻し、さっきから気になっていた、割れ目の上のほうにある突起に舌を這わす。
皮にくるまれた、生まれたての男の子のおちんちんみたいな小さなそれ。これがクリトリスだろうか。
とにかく皮の上から舐める。
「ふあああっ……や…そこはっ」
希の声音が変わる。思った通りの反応に嬉しくなって。そこだけを攻め続ける。舌で舐め、突く。
「や…うやぁっ……ふなっ」

376名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 23:14:33 ID:J1TX6GE4
次第にそれは膨らんでき、先端から中身を覗かせる。俺は単純な興味心でそれを剥いてみた。
「やぁっ……だめぇ……それっ、つよすぎぃ」
途端に希の反応が変わる。さっきよりも一際激しくなる。
「ひゃあぁっ…ふう……はああぁっ」
一舐めするごとに腰が動き、足がぴくぴくと震え始める。イきそうなのだろうか。
ならイかせよう。トドメとして、歯があたらないように、唇で挟む。
「ふあっ、やああああああっ」
甲高い声とともに、腰が跳ね上がり、割れ目からさっきより一層粘度を増した愛液が滲み出てきた

はあ、ふう。
息を荒げている希が落ち着くまで待つ。


「二つ目は?」
一頻り呼吸を落ち着かせた希が言ってきたのはそれだった。
さっきの命令についてなにも言わないということは、イったということでいいのだろう。
……女の子ってあんな派手にイくんだ。新たな事実を学習しつつ俺は二つ目の命令を口にする。
「抱かせろ?」
「なんでそこまで直球なのに疑問系なのよ」
ジト目で見られる。
「いや、いまさら他の事言えるほど余裕はないわけで、でもあまりに直球すぎてあれだしさ」
希の視線が俺の股間に向かう。当然そこはもう隠しようがないほど膨らんでいるわけで、希は大きくため息をつく。
「馬鹿。でどういう格好するの?」
「うーん」
周りを見回す。椅子は二脚しかないし、床に寝かせるのはさすがに気が引ける。
「そこのロッカーに手ついて」
「こう?」
ロッカーに手をつき、こっちにお尻をつきだす。
どういう格好を要求されているのかしっかり分かっているらしい。女子も結構そういう会話しているもんなあ。
俺も後ろにたち、短パンとトランクスを下ろす。
俺のそれは何もしていないのに、完全な戦闘体勢で先走りまででていた。
「うわ、大きい。それ、痛くないの?」
見ていたらしい希に質問される。
「少し痛い。いくぞ」
「うん」
希の柔らかいお尻に手を置き、先端を割れ目にあわせる。
クチュと音がし、希の体を息子で感じる。
「力抜いたほうが楽だと思うぞ」
「分かってる」
希が二三回深呼吸をし、体から力が抜けたのを見計らって、一息に突き入れた。
みちみちと何かを押しのける感触とともに、希が声にならない悲鳴を上げる。
でもここでとめるより一気に進んだほうが楽なはずだ。俺は躊躇せずにそのまま突き進める。
377名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 23:15:49 ID:J1TX6GE4
そして、先端がブニっとした感触に包まれる。力を入れるのをやめて、止まる。
「希、大丈夫?」
「う、うん。凄く、痛いけど、多分、」
「わ、わかった。すこし待つから」
希が落ち着くまで少し待つ。というのは言い訳で、本当はこのまま動いたら、すぐに出てしまいそうだからだ。ただ入れているだけなのに、希のそこはギュッ、ギュッと一定の間隔で締め付けてきて、それだけで俺はかなりの快感を得ていた。

「い、いいよ動いて。あんまり、乱暴にしないでね」
「わかった」
少しだけ前後させる。俺のものは希の一番奥深くまで入っているので、自然と、子宮口らしきものをつんつんと突くことになる。
「んっ…んうっ……」
グニグニとしたそれに先端を包まれるだけで出してしまいそうになる。
それをこらえて、何度も何度も前後させる。
「ふあ…まさときぃ……なんかへんな、かんじっ」
「変にっ、なっちゃえよ」
少しずつ前後運動の距離を長くする。
「やあ…なんか…へんなのくる……ふああっ」
「ごめ、乱暴にするっ」
我慢できなくなって、希の肩をつかみ俺の体のほうに引き寄せる。
そのまま大きく、早く腰を振る。
「や…つよいっ……はああああっ」
希も切羽詰った声を上げる。
「のぞむっ、出すぞ」

最後に限界まで引き抜き、思いっきり差し込む。
「ひゃあっ、ああああぁああぁぁっ」
希の絶頂と同時に一気に締め付けてきた刺激に抗うことなく、俺は希のもっとも深いところで射精した。
「やあ、でてるぅ」



俺たちは繋がったまま床に倒れこむ。
「しちゃったね」
目の前の希の小さくて白い背中を見つめつつ答える。
「ああ」
「ねぇルール覚えてる?」
「ルールって命令の?」
「そう。それの三つ目」
「三つ目?」
希が語っていたルールとやらを思い出す。
378名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 23:16:33 ID:J1TX6GE4
『ただし。何個か制限つきね。一つ、達成するのに、長期間かかる命令はなし。一年とか二年とかね。二つ、私たちにはどうしようもないような金額になる命令はなし。
三つ、血が流れるようなことはなし。誰かを怪我させろ、とかね。四つ、相手の命令を制限するようなのはなし。違反したら相手に絶対的な命令をする権利ね。制限なしの』

三つ目っていうと、血が云々か。
ん?血?

俺と、希の接合点に視線を向ける。
そこには一筋の赤い筋。
ハハハ、そうですよね。当然処女ですよね。
……やっちまった。
一体何を要求されるんだろうか。
思わず色々な想像をしておびえかけたところに、希が俺のものをぬいて、こっちに振り向く。
「それじゃ命令ね」
そういって、深呼吸する。
「これからも、一生私のそばに居てください」
俺は理解するのに、一瞬の時を要して、すぐにこう返した。
「喜んで。俺が死ぬまでな」
希が笑う。それは大輪の花が咲いたようで、俺は見とれてしまう。
そして俺たちは唇を合わせた。
これが俺たちのファーストキスだった。

以上です。
379名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 23:59:02 ID:TRIMHelg
GJ
380名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 07:44:47 ID:AVuE+0KA
ルール三つ目で「ん?」と思ったがそういうことか
しかし二人ともツーカーだな
381名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 07:56:39 ID:gW9zPM9O
イイハナシダナー
とってもGJ
382名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 20:51:19 ID:z84NT5vm
GしたJk
383名無しさん@ピンキー:2009/08/09(日) 07:33:12 ID:/Fud41Tu
いやあ、感無量だ
GJ
384名無しさん@ピンキー:2009/08/12(水) 09:01:46 ID:YHDWV4Rm
ここで一つオーソドックスな泣き虫幼馴染みが怖い。
385名無しさん@ピンキー:2009/08/12(水) 15:39:54 ID:MD2M7IPb
>>384は、大量の泣き虫幼馴染のSSを投下して欲しいそうです
386名無しさん@ピンキー:2009/08/12(水) 22:05:08 ID:QNjxyEDz
せみの大合唱が窓の外で普通に響いているのだがw
泣き虫ではないな
387名無しさん@ピンキー:2009/08/13(木) 01:47:11 ID:WzUUi2d7
クリトリススレから。

『夏の幼馴染』
http://red.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/o/original2786.html
388てす:2009/08/13(木) 16:53:37 ID:5C6oSL24
  
「う、そっ?」
 ドクンと一つ、ニーナの心臓が大きく高鳴る。交感神経は活発化し、視線はザクロの身体が独り占め。
 精液まみれなのは勿論。キスマークでマーキングされてるのも勿論。それよりも目を引いたのは、幼いながらもコリコリにシコリ立つショタニプル。
 どれだけ強く吸われたのか周りから赤く腫れ上がり、もう二度と元には戻らない手遅れ状態で有る事を主張していた。
「ウソよっ! こんなの反則すぎ……ふふっ、そっかぁっ、お姉ちゃんを誘ってるのねザクロ? そうなんでしょ!? 小学生のクセに……年齢一桁の子供のクセにっ! 実の姉を誘惑するなんて、なんてイケない子なのっ!!」
 そうなっては理性の糸すら堪らず切れる。後はもう、抱き締めて押し倒すしか選択肢が無い。
「やっ、にぃねぇ!! んんっっ!?」
 犯罪者は弟、被害者は姉。こうなるのは時間の問題だったのだ。どれだけ常識を持っていても、ザクロの身体がその常識を挑発する。

 『なぁに? 真正面からボクをレイプする勇気も無いんだ? こ、し、ぬ、け、さん♪』

 泣かせてみせろと、喘がせてみせろと、子供精子で着床してみせろと、外側から子宮をきゅんきゅんとツツいて挑発する。
「ふんんっ……ぢゅっ、ちゅ、ぢゅぷちゅっ! んむっ、はぁっ…ざく、ろぉっ、スキ……んっ」
 ニーナはザクロの顔を挟んで押さえ、
389名無しさん@ピンキー:2009/08/13(木) 16:54:55 ID:5C6oSL24
誤爆……
以下普通のスレ進行。
もしくは神の投下。
390名無しさん@ピンキー:2009/08/13(木) 20:38:37 ID:OQqGlAZP
どんまい>>389
超がんがれ>>389

遺灰は拾ってやるぜ…
391名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 02:14:44 ID:6BbYBASr
……誤爆、流行ってんの?
なんか前もあったよね
392名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 06:08:31 ID:S5ldtFNk
なんか毎回わざとやってんじゃないかっていう。
393名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 11:45:41 ID:I7l1HJAz
>>387
これは切なくてそんでもって暖かくエロイ幼馴染み。
394名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 11:50:01 ID:I7l1HJAz
ここの過去ログを順に読んでいってるんですが、「アリス」にマジハマりしてます。
これ、エロなしでもいいんで、続編とかはないんでしょうか?
どなたか、ご存知の方はいらっしゃいますか?
395名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 12:12:09 ID:gq99JSVu
>>394
いい話だからもっと読みたいのはわかるが、良作なだけに完成度も高いだろ?
だから何足しても何引いてもその完成度が崩れる
すなわち君のハマった「アリス」じゃなくなる
諦めろ

同じ作者の他の作品が読みたければ、とりあえずググれ
396名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 19:41:15 ID:I7l1HJAz
>>395
そうですね…最後の言葉まで計算された秀作だと思います。
出来ればあの二人でなくても、あの世界での今後を読みたかった。
贅沢でしょうか。

タイトルやトリップで散々探してみたんですが。
トリップはこのスレ関連とトリップテストスレのみのヒット。
タイトルは様々な作品で使われるモチーフのため、分かりませんでした。
作者様の他作品是非読みたいですが、よろしければヒントだけでもお教えいただくことは
できませんでしょうか。
クレクレ厨で申し訳ありません。
是非とも、よろしくお願いします。
397名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 21:19:23 ID:6nwC3rcE
私もアリスにハマりました。何度も読んでます。その後の話も読みたいですが、作者さんの他作品も知りたいです。でも調べ方が分かりません。どなたか、教えて頂けませんか。
398名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 00:52:22 ID:v76oLaZe
        ,.-─ ─-、─-、
      , イ)ィ -─ ──- 、ミヽ
      ノ /,.-‐'"´ `ヾj ii /  Λ
    ,イ// ^ヽj(二フ'"´ ̄`ヾ、ノイ{
   ノ/,/ミ三ニヲ´        ゙、ノi!
  {V /ミ三二,イ , -─        Yソ
  レ'/三二彡イ  .:ィこラ   ;:こラ  j{
  V;;;::. ;ヲヾ!V    ー '′ i ー ' ソ
   Vニミ( 入 、      r  j  ,′
   ヾミ、`ゝ  ` ー--‐'ゞニ<‐-イ
     ヽ ヽ     -''ニニ‐  /
        |  `、     ⌒  ,/
       |    > ---- r‐'´
      ヽ_         |
         ヽ _ _ 」

      ググレカス
399名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 02:48:39 ID:z8c909P4
まあググって出ないんなら諦めた方が良いのでは。
そのうちどこかのスレで巡り合うかもしれないですし
400名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 22:25:17 ID:Y3VKUv5q
>188 名前: ◆Epsd0/LvVM 投稿日:2008/10/16(木) 01:01:48 ID:1ROeoEQI
>こちらのスレには初めての投下です。
>長めでエロ率少なめ。一応、近未来ものの体裁をとっております。
>苦手な方は、タイトルの アリス か ◆Epsd0/LvVM でNG指定をお願いします。

別のスレでは投下したことがあるとも解釈できるな。

401名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 16:31:04 ID:HbMt2XNC
>>400
確かにそんな書き方だね。
とはいってもスレも膨大だし落ちたままのもあるし探すのは難しいだろうね
402名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 16:20:38 ID:wDsEp1mb
保守
403名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 21:26:35 ID:0NEOWPIJ
保守
404ボルボX  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:38:40 ID:If7jhq+Q
投下させていただきます
405桜の花の満開の下・一  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:40:29 ID:If7jhq+Q

 観桜会の夜。いまだ柿子と京介は縁側に座っていた。
 月に蒼く照らされた庭を前にして、考えに沈む姉弟は言葉をほとんど交わさない。それぞれに黙然とうつむきつづける。
 時刻はとうに、日付けが変わるころになっていた。

 車の音を耳にして柿子は顔をあげた。車庫のある方角へと視線を向け、沈黙をやぶる。

「お爺さまが帰ってきたわね。お父さまも一緒かしら」

 その一言をきっかけとして、柿子は湯呑みをかたわらに置き、弟との会話を再開した。

「それで京介。決心はついたの」

「……決心というと……」

「ひとつしかないでしょうに。
 あんた、夕華とのことをどうするつもりよ、これから」

 かれはすぐには答えなかった。弟の言葉を、柿子は待った。
 夜更けて月の位置は中天にさしかかっている。月光をひさしにさえぎられる形で、縁側はすでに陰となっている。うつむき気味の京介の表情も、明瞭な判別はできない。
 ややあって、かれは小さな声で言った。

「わからない」

 柿子は目を細めた。呆れたのである。

「……いままで考えてたのに、まだ決めかねてたの?」

「面目もない……」

 その歯切れの悪さに、苛立ちがこみあげる。
 それをどうにかおさえつけ、柿子は彼女にしてはなるべくおだやかに指摘した。

「何度も言うけど、あんた夕華を崇拝しすぎなんだってば。
 あの娘がからむことだと的確な判断や行動ができなくなってるし、いざ前に出るとなると緊張しきったあげく萎縮するじゃない。
 今もそんな感じだわ」

 京介はいよいよ身の置き所もないとばかりに体をちぢめた。それへ追い討ちとして直球をさらに投げる。

「京介、あんたは夕華が好き。そうよね」

 夜のことで、弟が赤面したかどうかはわからなかった。しかし、かれがぎこちない動きでうなずくのは見えた。
 それで十分と判断して、柿子は続けた。

「夕華もあんたを憎からず思ってきた。口に出しては言わずともね。
 そうとなれば、悩むほどの選択肢がどこにあるのよ。
 あんたがすべきことは、花でも持ってあの娘に会って、もういっぺん口説きなおすこと以外にないでしょうに」

406桜の花の満開の下・一  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:41:19 ID:If7jhq+Q

 それで〆たつもりだったが、京介は心なしかさらに肩を落としたように見えた。

「けれど……」

「けれど?」

 弟の煮え切らなさに苛々がますますつのり、柿子はつっけんどんにおうむ返しした。ためらいがちに京介は言った。

「その、ふつうの会話ですらままならないのに、うまく行くとはどうしても思えないんだ。……今日のであらためて愛想つかされたかもしれないし……
 それにあの、僕が振られるだけならいいけど。下手に行動して、夕華さんに『男に言い寄られてる』なんてうわさでも立ったら……
 そういうのって後々にさわりがないだろうか。華族の縁談ともなると風評には特に気をつかうし……今後のことも考えたら、僕はやっぱり身を引いたほうが……」

 それを耳にしたとき、柿子の短い導火線はとうとう燃えつきた。
 「あのね、京介」と表面上は穏やかに声をかけながらも、座ったままにじり寄る。
 胸ぐらをつかみこそしなかったが、鼻先がこすれるほどの至近距離でにらみつけた。

「夕華に何度、縁談があったと思ってるの。
 何度、夕華がそれをはぐらかしたと思ってるの」

「え――」

「お見合いが、あんたも聞いた去年のあのときだけだったとでも? 女学校の三年目くらいから、あの娘にその手の話はいっぱい舞いこんでたわよ。
 そりゃそうよ。まがりなりにも爵位付きの家の令嬢で、きちんと教育を受けてて適齢期で、気立てがよいということで周囲からの評判も上々。とどめに写真だけでも目をひく佳人なんだもの。
 実家が貧窮してようと、普段着の趣味が男装すれすれでちょっと変わってようと、殿方からは引く手あまたよ。ことに一度会ってからあの娘にご執心って殿方、多いみたいよ?
 縁談にさわり、ね――ご心配なくってところでしょうね、夕華にその気さえあれば夏までに結納になってるわよ」

 息をのんでいた京介がぎゅっと口を引き結んだ。
 夜闇のなかでも至近ならば見えた。少年は、身を切られているような辛そうな表情をしていた。

「なによその顔。予想してたんじゃないの? さっきまで『釣り合わない』だの『うまく話せない』だのごにょごにょ理由つけて、身を引くみたいなこと言ってたくせに。
 この腰抜け。本当の覚悟なんかできてないんでしょ。すぐにも他の男に取られるかもと聞かされたら、やっぱりそんな顔するんじゃないの!」

 京介の書生服の左胸を、どんと叩く。
 女の子のように華奢だと思っていた弟の胸は、意外なことにそれなりに鍛えてある感触を返してきた。

「あんた、なにをそんなに怯えるようになったの。
 夕華のなにが怖いのよ、ずっと手をひいてくれた相手じゃない。あの娘が綺麗になったから? 地元一の旧家の『お姫様』だから? 莫迦なままの中身だけを見てやりなさいよ!
 ほんと莫迦な娘よ。あんたみたいな意気地なしにずっとこだわって……」

 こぶしをかれの胸に押し当てたまま、柿子は唇をかみしめた。

「お見合いの話を、逃げまわるように避けてたわ。
 それでも席に出ざるをえなくなったら、話をなるべくうやむやに濁そうとして、どうあってもと返事を迫られたら、後々が厄介でも頭をさげて断って。
 今ならわかる。そうやってあの娘なりに、あんたに至誠を尽くしてるつもりだったのよ……それなのにあんたときたら、この期におよんでまでぐだぐだして」

 一時は激情をふくんで高まっていた柿子の声は、言いつのるうち徐々に小さくなっていった。
 彼女はこぶしを下げた。代わって、うなだれたひたいを弟の胸にごつんと当てた。

「……あんただけのことなら勝手にしたらいい。けど、夕華はどうなるのよ。
 ちゃんとお互い好きだったのに、このまま、あんたの勇気が出ないというだけで駄目になるの? 結婚したくもない相手と結婚するの?
 そっちのほうがよほど可哀想じゃない」
407桜の花の満開の下・一  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:42:13 ID:If7jhq+Q

 説きながら柿子は、無意識に弟の胸をひたいで押していた。「……カキ姉ちゃん?」たじろぐ京介の声が間近で聞こえる。
 顔は上げない。なぜだかまつ毛が湿ってきており、彼女はそれを京介に気づかれたくなかった。

 優しい京介。腹違いの弟。
 田舎の良家の跡継ぎらしく物腰柔らかで、とろく見えるほどおっとりした弟。
 今はその優柔さが歯がゆかった。

「昔のあんたは、そこまで頼りない奴じゃなかったじゃない。
 わたしを……守ってくれたりした。優しいだけじゃなくて、格好良かった」

 子供時代、生まれが庶子という理由で、柿子は周囲から低い扱いを受けることがたびたびあった。
 そんなとき、彼女自身は無視するようにしていたが、京介はそこに居合わせれば必ず怒った。柿子を「妾の子」呼ばわりする子供と、かれが喧嘩したことも一度ならずあった。

 自分のために本気でむきになってくれる小さな弟を、彼女が嫌いであったことは決してない。それを口に出して認めたのは、このときが最初だったが。

「……覚悟決めてよ」

 夜風にさらわれそうなかすかな声を、弟の胸に吹きこんだ。
 静止した姉弟の髪を吹き散らして、風は軒下を駆け抜けていった。

 しばらくたってから、京介は姉の肩に手をおいてそっと押しのけ、縁側に足をあげてそろそろと立ち上がった。「わかったよ。やる」そうかれは言った。

(……あら?)

 その覚悟表明を聞いたとき、満足を覚えるより先に、柿子はいぶかしんだ。
 ひび割れて裏返りそうなその声には、色濃い恐怖の気配があったからである。
 柿子はかすかに疑念を抱いた。弟がさんざん見せた気後れする態度について、自分はなにか勘違いしていたのではないかという思いが、ふと芽生えたのだった。
 けれど深く考えるより先に、京介が、柿子も立ち上がるようにとうながしてきた。

「カキ姉もついてきてほしい。いまから父さんやじいちゃんと話すことがある。
 僕はこの家の総領だから……」

 言葉をいちど切って、ためらいを飛ばすように首を振ってからかれは言った。

「……家の未来に、ある程度は責任がある。どうしても、一つ済ませておかなきゃならない」

…………………………
……………
……
408桜の花の満開の下・一  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:43:08 ID:If7jhq+Q

 その言葉から少し後の、渋沢家の書斎だった。
 柿子は、この状況をどうしたらいいものか考えあぐねていた。
 いま彼女の眼前では腹違いの弟の京介と、父の圭介がむかいあっている。家族の団らんとはほど遠い緊迫感だった。

(京介の考えていることがわからない)

 深夜、渋沢家の書斎にただよいはじめた不穏な雰囲気は、つい数瞬まえのやりとりに端を発していた。
 帰宅していた父親と祖父のまえに直行した京介は、口を開くや空気を張りつめさせたのだった――「僕ではなく、姉さんがこの家を継ぐことはできますか」と問うことによって。

 息を呑んだのは京介についてきた柿子と、椅子に身をしずめていた祖父だった。
 そして、眉をひそめて答えたのは父だった。

「なにを突然、ばかなことを」

 父親の言葉を聞いても、柿子本人は驚きも落胆もしなかった。その答えは当たり前だったからだ。
 だが京介は反応した。圭介のにべもない答えを聞くや、かれは父親にすぐさま切り返したのだった。

「もうすこし詳しく理由を述べてもらえませんか。なぜ姉さんでは駄目なのですか?」

 京介の声は大きくはなかったが、怖じてはいなかった。一方、圭介は銀縁眼鏡の奥から冷然とした光を息子になげかけた。
 圭介の背後から、トンと杖が床を叩く音がした。

「自明のことじゃろう、京介。柿子が正嫡の子ではなく、庶子だからだ」

 祖父の元介だった。
 羽織にはかまの正装のまま、書斎奥の椅子に深々と身をしずめながら、渋沢家の家長は疲れた声でつづけて指摘した。

「圭介の嫡子は、京介、おまえしかおらぬ。
 柿子はまぎれもなく圭介の娘であり、腹違いとはいえおまえの姉ではあるが……正式な結婚から産まれた子でなければ、家を継がせるのは難しい。
 こういったことは、家族としての情愛とはまた別のものでな……」

 そう言いながらも、元介は瞳に思いやりの色をこめてそっと柿子を見てきた。
 目配せされるまでもなく、柿子は祖父の意図は理解できていた。この答えを圭介自身に言わせないために、元介は先に口にしたのだ。

(もしお父様が言っていたら、京介は強く反発したかもしれない)

 柿子は昔のことを思った。
 京介が語気荒く「僕とはお母さんが違うって、そんなの姉ちゃんは何も悪くないじゃないか。悪いとしたら父さんだ」と言ったのを聞いたのは、まだ小学生低学年のころだった。
 帰り道で「愛人の子」と柿子がはやされたのを聞いた直後のことである。

 はたして、あらためて父親のほうを見つめた京介の目には、微妙に非難の色が浮き上がっていた。
 少年は口をつぐむことなく、さらに言いつのった。

「ですが、僕が相続の権利を放棄すれば、どのみちうちには姉さんしか残りません」

「この愚か者!」

 元介の怒声が響いた。
 椅子から身を浮かしかけて、思い直したように座りこむ。杖がいらだたしげに床をとんとんと叩いていた。
409桜の花の満開の下・一  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:43:59 ID:If7jhq+Q

「前にも聞いたが、まだそんなことを考えていたのか。一時の気の迷いだろうと思いたかったぞ。
 おまえという嫡男がいるにもかかわらず、庶子の、それも女である柿子に継がせるのは、けっして尋常とはいえまいが」

「前例があまりないだけです。
 僕たちは華族ではありません、したがってかれらのように厳格な法に縛られているわけではありません。
 それに、そういった時代遅れの意識を改めようという運動は、帝都のほうで盛んになっていると聞きます。これからはますます、女性や庶子の地位も向上していくはずです」

 奇妙な状況だった。庶子の姉に相続を認めることを、嫡子が力説しているのである。
 柿子は複雑な心境でおしだまっていた。
 渋沢家の家長は年齢よりずっと老けこんだ表情になって、孫になおも説いている。

「帝都の意識改革運動とやらは、この坂松市まで浸透してきておらぬ。それに、人の価値観はたやすくは変わらないぞ。
 ……この渋沢宗家は華族でこそないが、周囲の目をひきつけないでいられるほど小さな家でも、新しい家でもない。
 それでいながら、社会のしきたりや常識を平然と無視できるほど強くもない……なあ京介、わしらは京口為友ではないのだぞ」

「要するに、姉さんの相続を認めないのは、人のうわさにのぼるようなことをしたくないから――ですか?」

「そうだとも。わが家の家風はながく堅実と中庸であった。だからこそ、京口子爵家にかわって坂松第一の家にかつぎあげられたのだ。
 『圧政すれすれの強権をふるってきた京口家より、まだしも良識をわきまえた渋沢家に上につかれたほうがまし』と人々に思わせてな」

「では、どうなります?
 僕が継がず、姉さんも継げないとなれば、分家あたりから跡継ぎを迎えることになりますね。
 それにどのみち、僕が辞退するだけでもそれなりの騒ぎにはなってしまうはずですが」

 京介の、あくまで「自分が相続を拒否したとき」を前提にしている問いかけに、元介は絶望をこめたため息をもらした。
 そしてふたたび、圭介が話をひきとった。

「そんな事態になったならば、柿子に相続を認めなくもない。
 おまえが取りたいのはこの言質だろう」

 一語を口にするごとに苦虫を噛みつぶしているような話しぶりだった。

「どこからも文句が出ない大義名分さえあれば、柿子に婿をむかえて家を継がせてもいい。
 逆をいえば、まともな理由がなければ認める気はない。『自分は当主に向かない』などの言い分が、万人を納得させられる理由になるとは思うなよ。
 そしてどんな理由があろうと、相続を放棄するなら……場合によっては、お前には永久に家を出るくらいのことはしてもらう」

 息子をにらみつける圭介の瞳には押し殺された怒りがあったが、極めてあっさりと京介は了承した。

「わかりました」

 かれの顔には、廃嫡のみならず絶縁をにおわされても、ひるむ色はない。
 圭介のほうが肩透かしをくわされ、鼻白んだ様子になっている。
 横で見ていた柿子は気づいた。

(この子、そう言われることを最初から覚悟していたんだわ)

 さきほどまで夕華のことで煮え切らない態度をとりつづけていた少年とは、まったく違う姿がそこにあった。
 気がつけば京介は背を向け、書斎から出て行こうとしていた。柿子があわててついていくより先に、「待て」と圭介の声がその背に追いついた。
410桜の花の満開の下・一  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:45:14 ID:If7jhq+Q

「なにを思って言い出したのか知らないが、今夜のこの茶番は京口子爵家となにか関係があるのか。そういえば、あちらのご令嬢も坂松市に戻ってきていたな」

 柿子はぎくりとして首をすくめかけた。京介はいっさい言葉を返さなかったが、ドアノブに手をかけたまま動きを止めていた。
 圭介の表情から苛立ちは抜けて、静けさが戻ってきている。戸口で立ち止まっている京介の背に向け、かれは続けた。

「そうだとするなら同情の余地はないでもないが、それとこれとはやはり別だ。家を捨てるほど血迷われては困る。
 ……希望をもたせる言い方はしたくないから言うが、ご令嬢のことはもうあきらめろ。今の子爵様がどういう人となりの方であるか、お前も知らないではないだろう」

「もうよい、圭介」

 苦々しげに元介が制止し、それから「なあ京介」と呼んだ。

「もっときちんと話をしてもらいたい。今夜でなくともよいが、近いうちに。
 今夜のこれはあまりに唐突すぎるし、率直なところとうてい納得しがたい」

 ふりむいた京介の返答は、短かった。

「近いうちにはきっと話します」

…………………………
……………
……

「ほんとうは、何ヶ月も前から、相続を辞退するつもりになってたんだ」

 純和風の自室にもどって明かりをつけた京介は、いちどきに疲労が噴きでたような表情になっている。

「けれど……カキ姉ちゃんの言うとおりだ。僕は夕華さんともう一度、きちんと話すよ。
 ……家督を降りるかどうかは、その結果次第で考えなきゃならない」

 その意味のつかめないつぶやきに、障子をしめた柿子は我慢の緒を切らした。「ごめん、どうしてもわからないんだけど」とたずねる。

「これになんの意味があるのよ?
 ……ううん、今度は責めてるんじゃないわ。わたしはただ疑問なだけよ。どういうことなのよ、これ」

 言ってから、(もしかして)と柿子の脳裏に閃きがはしった。

「夕華のため? 渋沢家の家督を捨てれば、あんたに対する子爵様の心証が良くなると……」

 それなら理解できなくもなかった。
 先刻、柿子は夕華の苦悩の内容に気づいていた。京介もそれを悟っているのであろう。
 つまりお互いの「家」が問題なのだ。それぞれの家を継ぐ立場であることが、京介と夕華のあいだにある深刻な障壁なのである。

 京口子爵家の当主である夕華の父親は、渋沢家そのものを嫌っており、その跡継ぎに一人娘をやるはずがない。
 「ならばいっそ渋沢家を捨てることで、子爵の反対を和らげよう」という目論見だろうか――と柿子は推測したのだった。
411桜の花の満開の下・一  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:45:48 ID:If7jhq+Q

 が、その推測は的外れもいいところだったらしい。けげんな顔をして、京介はあっさり否定した。

「違うよ。このことには、子爵様がどうというわけじゃないんだ。もちろん夕華さんとも……直接は関係ない。
 それに、子爵様がうちを内心で嫌っているのは確かだけれど、だからといって僕が家を出ても、あの方が夕華さんをくれる気になるわけがないよ。
 むしろ家の相続権も財産もない、一片の利用価値もない相手になったと見さだめたら、子爵様は僕を石ころ以下に見なすと思う。
 ……ああそうか、さっき父さんもカキ姉と同じ勘違いをしたんだ。さっき僕に『知らないではないだろう』と釘をさしたのは、この家を捨ててもあの方の心は動かないぞと言いたかったんだろうね。
 でも、それは僕も心得てる。あの方とはしばしば話すから」

 柿子は意外の念に打たれて、穴が空きそうなほど弟を見つめた。

「へえ、驚いた。あんたは子爵様に心酔でもしているかと思ってたわ。
 頼まれたからとわざわざ自分で蔵の古文書整理してたりするし、華族はやはり貴いみたいなこと言ったりもするもんだから」

「華族の『身分』は敬うべきだと思ってるよ。それは意味のない敬意とは思わない。
 子爵様の人となりそのものについても……ある部分では、十分畏敬に値する人だ。いつも穏やかに笑っている顔しか見せないけれど、あの方は怖いよ。
 じいちゃんからは、『敬して遠ざけ、下手にでても害がないと思うときはそうしておけ』――と聞いてきた」

 京介は暗い声で言った。

「僕に人を見る目があるんじゃあない。僕は僕でこの六年、跡取りとして知っておくべきことをいろいろ詰めこまれてきた。
 この坂松市の有力者のなかで、うちにとって最も危険と見なされている人のことを言い含められないはずがないだろう?」

 ぐったりと疲れもあらわに、京介は床に置いた円座に座りこんだ。

「ともかく今は、僕が相続を辞退するかどうかはまだわからない。
 僕だって、積極的に辞退したいわけじゃない。父さんやじいちゃんが僕に投資した分くらいは義務を果たしたい。ただ、そうしなきゃならなくなるだけなんだ」

 京介の言うことは柿子にはやはりわけがわからなかった。だがその台詞には、鼻先で笑えない重いものがこめられていた。
 ここにいたって、柿子は確信した。

「あんた、総領息子の責任と言ってたわね。この家のために家を捨てなきゃならないんだとでもいうわけ?
 筋が通らないわ。あんた……まだなにかを隠してるんでしょう」

 その詰問に、京介は肯定も否定もせず沈黙でこたえた。それはつまり肯定したも同然の態度だった。
 さらなる追求がはばかられたのは、かたくなな京介の表情のためだった。かれの顔色は白熱電球の光の下であおざめて見え、その唇は一文字に固く引きむすばれていた。
 その唇を、かれは最後に一度だけゆるめた。

「そのことはじいちゃんに約束したとおり、きちんと話すよ」深い深いため息をかれはついた。「まず、夕華さんに話してから」

「そう。それなら早いほうがいいわね。
 ところであんた、どこで会うつもりなの? 夕華をこっち呼びつける?」

「あ、いや、とんでもない。こちらの話なんだから、こちらから行くのが筋じゃないか。使いを出してから、ちゃんとお屋敷を訪ね……あ」

 言いかけて気づいたらしく、京介はたじろいだ表情を見せた。

「子爵様の目があるからお屋敷はやめたほうがいいわよ。こちらに来るときでさえ、夕華はなるべくあの父親に知られないように気をつかってたんだから」

 指摘しながら、柿子は乗りかかった船だわと腹のうちで決意している。会う機会くらいは自分が手引き役をつとめてやるつもりだった。
412ボルボX  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:46:39 ID:If7jhq+Q
続けて第二話投下、失礼します
413桜の花の満開の下・二  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:47:43 ID:If7jhq+Q
 暖かい大気が明るく澄んでいた。

 寒々しい一夜が明けて、観桜会の次の日。
 上空は青々と澄みわたり、春の日光が肌にここちよい。
 民家の庭に植わった早咲きのチューリップが、光芒に似た鮮やかな色で往来の目を楽しませ、また芳香によって鼻腔をくすぐっている。

 坂松市の、武家屋敷が多かった一角である。
 そのうちの、今に残る一つの屋敷の垣根内だった。
 ぐるりを垣根に囲まれた庭は、広大さでは京口邸の庭園には及びもつかないが、小奇麗にととのってすみずみまで手入れされている。
 涸れ池のふち、水仙の花の植えこみのそばに、的であるわら人形が立っている。

 綾坂道場の庭で、京口夕華は打剣(手裏剣術)のためのその的に向かいあっていた。
 着ていた子牛革のジャケットを脱いで、クレリックシャツと細身のスラックスのみの姿になっている。足には革靴を履き、いつもどおりに動きやすい服装を彼女はしていた。

 横手のほうから聞こえるのは、綾坂先生の声だった。

「『顧(かえりみ)ルヤ気ヲ凝シ意ヲ発シテ利刃ヲ擲(なげう)ツ』」

 静かな口調であっても、その声は奇妙に遠くまでとどく。
 いまは夕華と柿子をくわえて三人だけの空間に、その低い声が流れていた。

「『四肢ニ雷、蔵スベシ。
 神(しん*)ハ寂水ノ万象ヲ映スガ如シ。想念多キハ水鏡濁ルト心得ベシ』」
{*心}

 流れる声の中、ゆるやかに呼吸を調え、夕華はじり、と足元の砂利を鳴らして90度体を回転させた。
 わら人形に対して、体の側面を向けたのである。的の位置をよくたしかめたのち、顔とともに視線もそむける。
 手裏剣術の実演にのぞんでいるにしては、一見して不可解な体勢だった。しかしながら誤りではない――これがこの技の型なのである。

「『ソレ順逆ヲ転ズベシ。
 即チ敵ニ向カフコト、
 意ヲシテ眼ヨリ先トナシ、
 刃ヲシテ意ヨリ先トナス。
 無想無念ニ窮マレバ、』」

 鉄貫を手のひらにひそませてだらりと下げた右手の、小指の先がぴりっとしびれる。
 丹田に陰の気が満ち、四肢へと凍みとおっていく感覚が起こる。
 瞳の光も冴えざえと、氷の色に冷えていく。

「『順逆、倒(かえ)ッテ豹顧(ひょうこ)ト為ル』」

 打った。
 「豹顧」。

 こまを回すように体の軸が半転して腕が一閃するや、鉄貫は流光となり、狙いあやまたず人形の胸部に突きたった。
 紫電を具したかというほどの勢いと鋭さで、その棒手裏剣は根元まで的にめりこんでいる。
 夕華はほうっと息を胸から抜きながら、腕をおろして師を見やった。
414桜の花の満開の下・二  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:48:28 ID:If7jhq+Q

「『飛燕ト云ヘドモ捉エザル無シ……』と。
 うん。お見事なお手並みだったわ、夕華ちゃん。
 わたしが教えた技じゃないけど、昔の教え子の腕が上がっていると嬉しくなってきちゃうわね」

 ぱちぱちと拍手している袴(はかま)姿の初老の女性は、近所からは綾坂先生と呼ばれている道場主である。
 彼女は板戸をあけはなした道場の縁にすわり、脇息にもたれて夕華の打剣(手裏剣投げ)を見ていたのだった。
 そのひざには、夕華が持ってきた「森崎流手裏剣術要訣」がある。いまのいままで声にして読み上げていたのはそれだった。

 賞賛を受けて、夕華は照れた笑みを浮かべた。

「つたない芸をお見せしました、先生。いくらかなりとお役に立てましたでしょうか」

「そうね、技の要訣を頭でなぞるだけではわかりにくいから。
 具体的な実演を見せてもらえるのは助かるわ。とくにこの豹顧は、きわめて独特の奥義だし」

 手裏剣術は「正しく的を見すえ、正しい姿勢で打つ」ことが基本中の基本だが、豹顧はそれを省く。
 もとが背後や側面からの不意討ちに、とっさに対応するための技だからである。

 修練の最後の段階ともなれば、襲われたと頭で認識するまえに刃を投げ、敵を仕留めているのが望ましいとされる。
 ゆえに稽古においても、「投げる瞬間まで的を見ない」という常識から外れた手裏剣打法になるのだった。

「豹顧は先代の子爵――あなたのおじいさまが存命のころに、一度拝見させてもらったきりだったもの。
 そのときはただ目を丸くして感じ入るだけで、冷静に分析するどころじゃなかったからね。
 ああ、立っていないで、こっちに座りなさいな」

 祖父の話をもちだされて、夕華はごくごくわずかのあいだ息を止めた。
 が、すぐに顔に笑みを戻し、すすめられるまま師の左隣の座布団に腰をかける。

「先生は祖父の演武を見たことがあったのですか。
 あ……それでは、私の技が本当に未熟もいいところだとばれていたのですね。いやだ、恥をかいてしまいました」

 今度の笑みは、いささか恥ずかしげな苦笑いである。祖父に比べれば、自分のそれはまだ児戯の域だと自覚があった。
 祖父はわら人形に完全に背を向けた状態から、ふりむきざまに四本の鉄貫を投げて、顔、首、胸、腹と一本ずつべつべつの急所に命中させていたのである。

 綾坂先生は、ひざの古文書を手で持ちあげ、「そんなことないわよ」と朗らかに笑った。

「あらためて見せてもらうと、やっぱり神技ねえとしか言葉が出てこないわよ。
 ところで、秘伝書まで見せてもらっておいて今さらなんだけれど、家伝の秘芸なんでしょう。あっさりわたしに教えちゃって本当によかったの?」

 演舞のあいだは脱いで置いていたジャケットを羽織りながら、夕華はうなずいた。

「ええ、家伝といっても別に秘匿してきたわけではありませんもの。この手裏剣術も代々、護身術のたぐいとして身につけるものでしたから」

「そうなの、じゃあ遠慮なく。この秘伝書はしばらく借りて、ありがたく写させていただくわね。
 ほかの家では絶えてしまった森崎流ですもの。確実に後世に遺しておくために、きちんと細部まで具体的に書いておかないと」
415桜の花の満開の下・二  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:49:16 ID:If7jhq+Q

 綾坂先生は「坂松市の文化研究・保存につとめる会」の会員であり、おもに古武術や武具に関する方面の専門家である。
 かつての師に頼まれて、夕華は家の秘伝書のうち「森崎流要訣」を持ち出してきたのである。父がいない間に、和館奥の納戸の櫃(ひつ)から抜き出しておいた。
 櫃中に全巻そろっていたはずの秘伝のうち、なぜか数冊が消えていることが気になったが。

 ともかく、写しておいたところで問題にはならないだろう。

「いろいろあつかましくしてごめんなさいね、夕華ちゃん」

「いいえ、そんなことは。子供のころから、先生にはお世話になりましたもの」

「あのね、もうひとつお願いなんだけど、そのかしこまった態度はやめてくれないかしら?
 あなたの神妙なところを見せられても、『あのおてんばなお姫様が?』と思っちゃって、いまひとつしっくり来ないのよね」

 なんと答えたものかわからず、夕華は微妙にうろたえ気味の半笑いでごまかそうとした。
 そこで余計な口をさしはさんできたのは、綾坂先生の右隣に正座していた柿子である。この日はピンクのリボンベルトをつけた、黒のフリル付きワンピース姿だった。

「まったく、先生の違和感は無理もありませんよ。
 小学生のときの夕華なら、えへんと胸を張っていばりそうな場面ですからね。
 まあ、外面をとりつくろえるようになっただけでも進歩というものですわ。そこは評価してやってくださいな、先生」

 しれっと茶々を入れてきた親友を、夕華は師の頭ごしに軽くにらんだが、こうべをめぐらせた綾坂先生は柿子にも声をかけた。

「そうそう、あなたは自然体ねえ。言う機会あらば友達に憎まれ口を叩こうとするところとか、ぜんぜん変わってなくてうれしいわ」

「…………」

 懐かしげに言われ、柿子は沈黙した。
 この口の悪い相方が絶句させられるというめったにない光景に、夕華はくすっと笑いを漏らした。が、すぐに矛先が戻ってくる。

「夕華ちゃん、道場にみんなして通ってきていたころのこと、忘れてませんからね。
 ある日、稽古のまえに西瓜を出したら、目を離したすきにあなたみんなを巻きこんで、西瓜の種の飛ばしっこを始めたでしょ。そう、まさにこの場所から庭に向けて。
 口から吹いて庭のあちこちにぷいぷい飛ばしてくれた種のうち、回収しそこねた一部が芽を出しちゃって。さらにむしりそこねていた芽がつるを伸ばして。
 あなた、抜かないでくださいと図々しくお願いしてきたわね。西瓜の成長観察記録を夏休みの自由研究にするからと」

 その話をもちだされ、夕華は赤面した。
 柿子はいつのまにか縁を立って履き物をつっかけ、庭に逃げだしている。

「生った実がやっと食べごろに育ったわねと思ったら、『先生、スイカ割りしていいですか』と目をきらきらさせてこっちの袖を引いてきたし。
 あの食い意地の張ったやんちゃな小娘が、数年で花も恥じらう淑女に変わったのかと思うと感無量だわ。帝都の教育は進んでるのね」

「わかりました、先生、もう遠慮はしませんから! そういう昔話はやめてください」

 とうとう夕華は音をあげた。
 教え子をからかった綾坂先生は、してやったりと破顔した。その若々しい笑みは、上品な老婦人というよりいたずら好きの少女のそれに近い。

「うふふ、ごめんなさいね。なんだか寂しくなっちゃったから。
 しばらくぶりに会った昔なじみに、あまり丁寧な態度で接されると、距離をとられてしまったように感じちゃうものよ」

「……そうですね、それは確かに」
416桜の花の満開の下・二  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:49:53 ID:If7jhq+Q

 夕華にも、師の言うその感覚はよくわかった。
 気づけば、京介のことが頭に浮かんでしまっている。

 昨日、京介にあやうく縁を断ち切られかけたのは、夕華にとって足元が崩れるような衝撃だった。
 多少打ち解けにくくなっていようとも、抱いた愛情は双方変わらない――と、無条件で信じることはもうできない。

 そこであらためて昨夜の醜態を思いかえして、夕華はほぞを噛んだ。
 人生の恥か汚点としか思えない夜だった。傷心からくる情欲の発作に流されたうえ、そのあと窓辺で泣いてしまったのである。
 日の光に照らされながら思い返せば、あのとき自分がいかに弱気になっていたかがわかる。
 暗い気分をふりはらおうとして、夕華は顔を庭の花々へと向けた。

「――きれいですね。いつうかがってもこの庭は、花の色が絶えなくてほんとうに素敵。
 あの、ところでほんとうにいいのですか? 庭のお花をいただいても」

「いいのよ。さっき言ったでしょ。適当に剪定して持ってってと」

「でも、先生が丹精なさっているのでしょう」

「こら、遠慮しないと言ったばかりじゃない。
 前子爵に供えるために花束がいるんでしょう? 豹顧の演武を見せてくれたささやかなお礼よ」

 そう言われて夕華は「ありがとうございます」と礼を述べるしかなかった。
 ひとつには、すでに柿子が花壇にしゃがみ、どこからか持ちだした剪定ばさみを手にざくざくとやりはじめているからである。辞退するには少々遅かった。

「それにしても、先生が生前の祖父とそこまで懇意にされていたとは知りませんでした。どんな……」

 なにげなく尋ねかけた声が途切れた。
 唐突に、昔に聞いた父の言葉がよみがえってきていた。“お前のお祖父様の女好きには反吐が出る” “外に、幾人も妾を囲って”
 かっと頬が焼けた。
 夕華は慙愧の念にとらわれてみずからを叱咤した。

(莫迦、下卑た勘ぐりじゃないの! 父様の言ったことを気にしすぎよ、すべて本当かどうかわからないのに)

 庭先に目をやっている綾坂先生は、急に無言になった夕華の様子に気づくことなく語りはじめた。

「そうねえ……実をいうと古い知り合いなのよ、お互いが子供のころからの。
 いつだって皮肉っぽい笑みを浮かべてて、ごく自然に傲慢なひとだったわ。どこへ行くにも刀を差しててね、あれは一種の突っ張った自己主張というやつね。
 けれど男前だったのよね、腹の立つことに。着流し姿で歩くかれに、当時、坂松の娘の大半は熱い目を向けていたんじゃないかしら。
 当人は買い食いが趣味という、食い意地はった若者だったんだけどね」

 目を閉じて、老婦人は懐かしそうにつぶやいた。声にいくばくかの淡い想いの残滓を感じ、ぎゅっと夕華は身を硬くした。内心で身がまえた自分に気づいて、さらに自己嫌悪する。
 夕華の葛藤をよそに、回顧の話は続いた。
417桜の花の満開の下・二  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:50:59 ID:If7jhq+Q

「もっとも、それはわたしが坂松市の外へ嫁ぐ前のことね。何年かして夫に死なれて、こっちに戻ってきたら、あのひとも結婚してすっかり落ち着いちゃってたわ。
 そうこうするうちにわたしの両親も立て続けに急逝しちゃってね。
 わたしはけっきょくこの道場を継いだけど、どうしていいかわからず、なにをするにも右往左往でね……困っていたときに、あなたのお祖父様とまた話すようになったわ。
 何くれとなく助けてもらったのよ。人に口利きしてもらったり、運営について助言をいただいたり……なにより、身よりもなくて門下生もまだ入らなかったあのころは、寂しかったからね。
 古馴染みがちょくちょく話をしに来て、皮肉を言いながらも世話を焼いてくれるのが嬉しかったのよねえ」

 話の終わりに、綾坂先生は目をとじたまま自然と温かい微笑をうかべた。
 その笑みを見ているうちに夕華はいたたまれなくなり、視線をひざに落とした。深く恥じ入り、また安堵もしていた。
 老婦人の笑みには後悔や後ろめたさなどの暗いものは微塵もなかったからだった。
 その透明な微笑は、やましいことは何もなかったのだろうと夕華に思わせるに十分だったのである。

 だが、それだけではない。
 仮に、本当に師と祖父のあいだになにかあったのだとしても、もうそこは気にするまいと夕華は決意していた。
 幼馴染の友としての付き合いであろうと、愛人に近い関係になっていたのであろうと、本人がこんなにも屈託なく、幸せそうに振り返れる思い出なのであれば、夕華からは何も言えない。

(そうね……どうあれ、生きている人にとって良い記憶なら、それでいいじゃない)

 自分が産まれる前に亡くなったという祖母には申し訳ないが。
 父に吹き込まれた言葉を完全に忘れることができないなら、どこかで割り切るしかない。
 そう考えて、夕華は内心の乱れを押し殺すことに成功した。むろんすぐ平静に戻れたわけではないが、相手に動揺を気づかせないだけの取りつくろいはできた。

「……故人もきっと喜びます、先生。祖父のことをそんなふうに憶えていてくれるのは嬉しいです」

「え? いやねえ、やぶから棒になんですか、いったい」

 照れたのかこほんと空咳をして、綾坂先生はまた攻勢に出てきた。

「ねえ夕華ちゃん。柿子ちゃんもだけど、あなたたち、だれかもう決まった方はいるの。
 お見合いは何度かあったと聞いたけれど、もしかしてもう婚約していたりするのかしら」

 いちばん飛びだしてほしくなかった話題が来た。
 この人に不意をつかれるのは慣れっこである。今度も、たじろぎが表に出ないうちにすぐさま心をしずめ、夕華は受け流すべくあいまいな笑みを浮かべた。

「いえ、私も柿子もそのあたりはまだ……縁遠くて、なかなか」

「ええ? 縁遠いなんて冗談でしょう、あなたたちならよりどりみどりのはずよ。
 さっきはからかったけれど、二人ともほんとに素敵なお嬢さんになって帰ってきたと思ってるんですからね」

 綾坂先生はこの話題からまったく離れてくれなかった。夕華は胸中で悲鳴をあげた。
 明るくおしゃべり好きで性格が天然な目の前の老婦人は、柿子とはまた種類の違う容赦のなさで悪名高いのである。
418桜の花の満開の下・二  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:51:50 ID:If7jhq+Q

 黒絹の繊維をおもわせる夕華のショートの髪を、伸ばした指でちょっと梳き、綾坂先生はにこにこして言った。

「歩めば蘭の花を踏み、行けば楊梅(ヤマモモ)袖に散り、というくらい綺麗になったじゃない。
 そうだわ、なんなら地元に残ってる同年代の男の子たちをここに呼んであげましょうか。
 あの子たちが、帝都の水ですっかり垢抜けたあなたたち二人に会ったらどんな反応をするか、わたしもちょっと見てみたいしね。
 そうね、いっそのことこっちでお婿さん探してみない? 幼馴染み婚だってそう悪くないわ。見知った男の子が相手なら安心なものよ」

「は、はい、そういうものかもしれませんね」

 力説され、押し切られる形でうっかり相槌を打ったのがまずかった。綾坂先生は至極大真面目にうなずいた。

「そうでしょ? 案外、そばにお似合いの縁組があったりするものよ。ちょっと待ってね、思い出してみるわ。ええっとね、いまお年頃で恋人がいないのは……」

 綾坂先生が首をひねる横で、夕華は本気で逃げだす方策を探りはじめている。
 うまい具合に柿子が、花壇のほうから助け舟を出してくれた。

「夕華ぁ、わたしあっちの井戸端で花洗っとくから、ちょっと花束の根っこをつつむ紙を持ってきて!」

 柿子は「新聞紙が、ここの母屋の階段裏に積まれてあったはずだから」と言い添えてきた。この道場は二人にとって、子供のころから勝手知ったる場所のひとつである。
 これ幸いと夕華は「わかった」と答えた。

「ごめん柿子、任せてしまって。すぐに持って行くから。
 先生、新聞をいただいてもいいでしょうか。自分でとってきますので」

「母屋まで行く必要ないわよ。紙ならこのわら半紙をお使いなさいな」

 用意のいい師だった。
 いつのまに用意したのか背後からとりだした数枚の紙を手渡される。夕華は礼を言ってそれを受け取り――

「それでね、京介くんなんかどうかしら?」

 今度の不意うちには、頭が真っ白になった。
 出されるのではないかと危惧した名前だったが、まさか一発目で出るとは思わなかったのである。

「念を押さなくてもわかるでしょうけど、柿子ちゃんの弟の京介くんね。
 むかしはあれだけあなたたち仲良かったでしょ。こっちに帰ってきてからは、もう会ってお話したのかしら?
 ふふっ、いまではあの子、ああ見えて陰じゃけっこう女の子に人気もあるらしいのよ。
 最近は草食系と言うみたいね。ぽやっとしてるけど雰囲気ががっついてない云々と言われ……て……」
419桜の花の満開の下・二  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:52:49 ID:If7jhq+Q

 たわむれ気味であった綾坂先生の陽気なおしゃべりは、途中から急に失速して、ついには消えた。
 視線を合わせられず下げてしまっていたので、夕華に師の表情はわからない。
 だが話の途切れっぷりからするに、今度こそ夕華の動揺が気づかれたのはあきらかだった。
 視線を感じる。見抜かれかけている。そう思ったとたん、ますます鼓動が速くなって頭に血が上っていく。

「………………あなた、そうなの?」

 訊かれた。

「……あは……先生、おっしゃる意味がよく……」

 受け取ったわら半紙が手とともに震えそうだった。
 もちろん夕華はそのわななきをなんとか止めているし、ごまかすための微笑もきちんと浮かべている。
 あとは「いやだ、もしかして、なにかおかしな勘違いをされていませんか」と快活に笑いとばすように続ければいい。

 けれど、訊かれて最初にしぼり出した声があまりに弱々しすぎたのである。声帯が自分のものではなくなったかのようだった。
 こんな動揺丸出しの声では何を言っても説得力が無い。夕華は口を閉じざるをえなかった。
 頬は熱くなりっぱなしでいっこうに温度が下がらない。

 とどめのように綾坂先生の、しみじみと感慨深そうな声が耳に届いた。

「そうだったの、夕華ちゃん……京介くんのことをねえ」

「ちが……」

 舌を噛んだ。
 悪気のない言葉とはいえ図星をつかれ、反射的に否定しようとした結果である。
 じんじんと痛みを伝えてくる舌を夕華は呪った。ちがいますと言い張る気力はもうなかった。
 痛覚で涙がにじんで、視界がうるむ。

 力無くよろめいて夕華は立ちあがった。
 舌の痛みをこらえて言う。

「……あの、柿子に包み紙を持っていかないと。
 先生、お花をいただき、本当にありがとうございました。今日は私たち、これで失礼します」

「ええ。夕華ちゃん、がんばってね」

 何を、となど訊きかえせるわけがない。傷口を広げるだけである。
 とうに手遅れになっているのだろうが、それでも平静を必死によそおいながら、夕華は一礼した。

…………………………
……………
……
420桜の花の満開の下・二  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:54:08 ID:If7jhq+Q
「あっさり先生にも気づかれたわね。
 このさい言うけど、態度で割とばればれよ。あんたが京介に惚れてることって、ちょっとつついたら簡単にシッポ出るのよね」

 ならんで歩く柿子が肩をすくめた。
 武家屋敷の板と塗壁と瓦の塀、もしくは竹組なり立ち木なりで作られた垣根が、道の両側にえんえんと続いている。

 柿子の言葉に、花を持った夕華は押し黙って顔をそらした。
 京介が好き云々は柿子に対してもちゃんと認めたわけではないが、もう否定しても無駄だと観念はしている。
 それにしても、あんなにも心が乱れるとは自分でも思わなかった。あの話題で京介の名を出されただけで。そして長年の恋心を見抜かれたというだけで。

 彼女たちは道場の門を出て、川に沿った通りへ出るべく進路をとっていた。
 向かう先は鴨居川東岸の山地寄りにある墓地である。夕華は、祖父の墓にこの花束を手向けるつもりだった。

「ねえ夕華、京介はやっと覚悟決めたみたい」

 思わず夕華は横の友人に顔をふりむけた。
 見上げてきた柿子は淡々と謝罪してきた。

「ゆうべは、うちに来てくれたのに、あいつに会わせず追い返したみたいになっちゃってごめん、夕華。
 でもそれも無駄じゃなかったわ。時間おいたことであれも自分なりの答えが出たみたいだから。……たぶん。
 ただ様子がおかしいんだけどね」

「おかしいって、どういうこと?」

「具体的に言えば、なにか隠してるの。秘密にしなきゃならないなにかがあるのよ。
 それ、これまであいつがヘタレてた原因じゃないかなと予想つけてるんだけど」

 苛立ち気味に、柿子はミュールを履いた足で、道の小石を行儀悪くけとばした。
 秘密という言葉に夕華はどきんとする――京介と共有している、ふたりきりの秘密に思い当たっていた。まさか六年前のあの湯殿のことだろうか。
 けれどそれならなぜ消極的になる必要があるのだろう。まして夕華に対して。

 どっちみち、「なんなのかしらね」とぼやく柿子の次の台詞で、夕華にも心当たりはなくなった。

「あんたや子爵様は直接関係ないって言ってるんだけどね。あいつ自身のことだってさ。
 それと……あんたとじっくり話しあう覚悟は決めたみたいだけど、あいつ、心のどっかで、うまくいくとは信じてないの。お互いの気持ちが向き合ってることを納得させてもよ。
 なんであそこまでためらってるのかわかんないわ。
 夕華、あんたはどうなのよ? まだ、言えそうにない?」

 柿子は民家の塀のそばで立ち止まり、訊いてきた。
 なんのことを指しているのか、夕華はすぐに理解した。

 木陰だった。塀むこうから道路側に伸びた柏の大枝が、彼女たちの頭上にかぶさるように葉を広げている。
 胸にかかえた花束から香気がたちのぼっている。移動を止めたためか、その香りがひときわ強く感じられた。
421桜の花の満開の下・二  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:55:02 ID:If7jhq+Q

 葉洩りの日光と花の芳香のなかで、記憶がよみがえる。

 幼馴染への恋情を周囲に隠し続けた六年だった。郷里から遠く離れた帝都にいてさえも。
 渋沢家の嫡男を慕っていると人に認めることが、ずっと怖かった。
 第三者に知られ、そこからさらに誰かに漏れて、そして父や渋沢家の人々の耳にまで入ってしまえば、自分たちを取り巻く状況がどうなるかわからない。
 もう会えないようにと、双方の家の警戒が厳重になるかもしれない。

 京介本人にさえ、好きとあらためて告げるのが怖い。
 いや、それがいちばん怖かった。そうすればいずれ、かれに決断を迫ることにつながる。
 だれにどんなに反対されても、さまざまなものを捨てても、正式な結婚という形はととのわなくとも、京介はそれでもいいと言ってくれるだろうか。

 やっぱり無理に叶える必要はないかもしれない、と心の一部がささやく。
 いましがた知ったばかりの、綾坂先生と祖父の縁を思う。
 あんなふうに、叶わずとも幸せに思いかえせる恋があるなら、自分たちだってそれでいいのではないだろうか。
 深く踏みこまず、幼馴染の絆だけを無傷のままに守って。

 塀の上に乗っていた葉が一枚、はらりと路上に落ちた。

 夕華は、花束をかかえる腕にぎゅっと力をこめる。
 唇を開いた。

「――言う」

 さっき心に差した弱気の影を、振り払う。

(今までためらってきたのが間違いだった。
 ゆうべ思い知ったじゃない)

 昨夜に、気づいていた。自分は決定的に傷つくのが怖かっただけだと。このままあれこれ理由をつけて踏み込まなければ、状況は悪くなっていくばかりだと。
 それだというのに今日になってまで、往生際わるく綾坂先生にごまかそうとしたりした。これでは進歩がないというものではないか。

 目にとびこむ木漏れ日をはねかえすように、強い光を瞳にやどして決然と言う。

「私、京介君が好き。昔から好き。
 あの子に会いたい。好きだとちゃんと言いたいの」
422桜の花の満開の下・二  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:56:41 ID:If7jhq+Q

 月の窓辺で泣いた後に、心は定まっていた。
 あきらめたくない。
 先が見えないからと、自分勝手な望みを京介に押しつけることになるからと、そうやってためらい続けるだけで終わらせて、本当に後年に悔いなく思いかえせるのか。
 心臓を包むように、恋の炎が燃えている。胸の奥の、妄執じみたその衝動を抑えられない。

「ごめんなさい、柿子。今まで秘密にしていて」

 夕華がそう謝ると柿子は、距離をつめてきた。
 花を抱いた腕にそっと手をかけてきて、彼女も罪を告白した。

「わたしからも、もう一つ謝ることがあるのよ、夕華。
 女学校にいたころ一ヶ月に一度は外出してたでしょ、わたし。
 あれは、あんたの身の回りに持ち込まれる話で、変わったことがないかを実家に報告してたの。
 あんたが今度はどこの誰と見合いさせられるかとか、そういう情報を集めて伝えてたのよ」

 うすうすそのことは感づいていた。
 柿子は胸襟を開いて語るつもりになっているらしく、その言うことは率直だった。

「なんでそんなこと探ったと思う? 京口子爵家の縁組が、外部資本が本格的に参入してくるきっかけにでもなれば、坂松市の諸家のパワーバランスが変わりかねないの。
 ……その、はっきり言えばね、あんたの結婚相手しだいでは、地元の顔役であるうちにとってかなり困った事態になるのよ。あんたは子爵様の持つ切り札というか、爆弾と見なされるようになっていたの。
 京口家が、そこそこうまくやってる他の土地の華族あたりと縁組して、そのつてを頼って地元を出て行くつもりならいいわ。
 でもあんたに巨大財閥の御曹司とかを射止められたうえ、子爵様に渋沢家憎しのまま坂松市に居座られちゃたまったもんじゃないの」

「父様が考えていることは、まさにそれだと思う」

 ほろ苦く夕華は笑った。それから、柿子の目を静かにのぞきこんだ。

「心配ないよ。私、もう父様の思い通りになるつもりはないの。
 京介くんとの話がどうなるにしろ、家を出て遠くへ行くつもり。柿子やこの町の人と会えなくなるのは、寂しいけれど」

 簡単なことではない。本気で逃げなければならないだろう。ひとりきりで、なるべく遠い土地に身を隠したほうが安全だった。
 死んだ祖父の知人や、帝都で交友のあった人など頼っていく伝手はあるが、それもぜったいに安全とは言いがたいし、迷惑がかかる。
 夕華は、だれかに頼りたいとは思っていなかった。たのめば出奔の手引きをしてくれるであろう、乳母の吉野にすら話さないつもりである。

 家を出ること自体には、ためらいはさほどない。
 自分がいなくとも、京口子爵家が今日明日に滅びるわけではない。父はまだ若く再婚は容易である。
 ただ家を出るならそのまえに、この恋のことだけははっきりさせておきたいのである。

 けれど柿子は語気を強めて、夕華の腕をつかむ手に力を入れてきた。

「だめよ夕華、そんなの。わたしは戦うわよ、あんたと一緒に。行くにしても一人はやめなさい。
 あんた、ちょっとは頼りなさいよ、人に」

 続いた言葉に夕華は、霹靂がとつぜん頭上の青空を裂いたより驚愕させられた。

「夕華、このまま京介のところに連れて行くわよ。あいつも、もうすぐこっちの方に来ることになってるの。
 そこからは、あんたたち次第」
423ボルボX  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/22(土) 22:59:31 ID:If7jhq+Q
京介と夕華シリーズの第二部です。
前回から待っていてくれた人、遅くなってすみません。続きもなるべく急ぎます。
424名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 23:05:38 ID:EG1hSlvQ
待ってました。乙です。
425名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 01:06:26 ID:11LL+R+L
超絶乙
426名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 01:16:30 ID:A2qw8lmh
素晴らしいです。
読み終わった後に続きを渇望するSSって少ない。
427名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 01:39:09 ID:XqTPIzpY
来た・・・!
GJです!
428名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 02:28:15 ID:pkMyPOOu
>>423
面白かったです 
ので保管庫にあるのも読んだ エロ面白かった

これ、世界大戦でそれほど負けずに済んだとか、そういう世界観なのかな
429名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 03:00:49 ID:XQToSVvc
乙です。続き待ってます。
430名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 13:16:20 ID:MVnsXeYL
ボルボX氏キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
GJ!
431名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 13:49:52 ID:Tn9xGm+9
ゼロ魔スレからきますた
432名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 15:17:02 ID:NoToBiiC
ボルボ氏乙です!
相変わらず魅せるなぁ…
433名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 23:24:42 ID:K8PsrPJu
きたこれ。GJすぐる。
434名無しさん@ピンキー:2009/08/24(月) 07:57:27 ID:szL70aY1
面白すぎる。
435名無しさん@ピンキー:2009/08/24(月) 09:55:55 ID:efcmSkQI
一気に読むのがもったいなくて、ちょびちょび読みました
よかったゆっくり読んで…引き込まれる
次回も楽しみにしてます!
436名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 11:04:29 ID:NGZKBTeF
4
「」
437名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 11:31:54 ID:NGZKBTeF
あー、SS読む度に幼馴染みが欲しくなる
438名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 20:58:32 ID:sPKwEiOF
だが幼馴染の有無って環境や親の社交性も関係してくるからな…

ってか今欲しくてもどうにもならない。その切なさもなんともいえない。
439名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 21:38:59 ID:BfNzKKna
居たところで疎遠になる
それが現実
440名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 23:44:52 ID:4dNIjMcm
居たところで自分のスペックでは遠くから眺める位が関の山
それが現実
441名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 23:45:17 ID:1kuwS7QO
現実なんてクソゲー以下のものの話はやめてくれ
442名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 01:38:46 ID:0s3zyiUn
だが時にゲームの展開すらも超えることもある
それが現実
443名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 02:27:52 ID:o8MAFCeJ
そんな確変滅多にこないのが現実
444名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 09:24:23 ID:L8sbcdbf
出来婚した初恋の幼馴染みの結婚式に出席して来ましたよっと。
445名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 18:48:52 ID:cmLxfL1V
ボルボ氏はどんな時も濃いから面白い
他スレではいったい何人を賢者にしたやら
446名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 20:44:01 ID:7jKn+41P
おれには右手さえあればそれでいいという、悟り型賢者タイム
一生続く賢者タイム
447名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 22:39:17 ID:ivQNhsRu
ボルボ氏の投下に触発されてまとめサイトの小説も一気に読んでしまった…
このスレ過去も今も神大杉
448名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 02:36:59 ID:gD6qmAp9
幼なじみいるけどお互いに同性の友達みたいな感じだな、一緒に飲みに行ったりするけど肉体関係になろうとは思わない
449名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 03:20:28 ID:Vv2SI0e9
久々に会ったとき自分好みの巨乳で美乳になってたら顔がアレでも是非お願いしたい
450名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 06:33:29 ID:tWwfKVHq
ツンデレヤンデレボーイッシュ、清楚に気弱に無口にドジっ子……。
巷にはいろんな幼馴染みが溢れてるな。新しいパターンの幼馴染みは無いものか。
451名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 10:37:14 ID:snAF53SO
忍者幼なじみ
武士幼なじみ
海兵隊幼なじみ
宮大工幼なじみ
羊飼い幼なじみ
死刑囚幼なじみ
教祖幼なじみ
マッチ売りの幼なじみ
452名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 13:15:21 ID:FXICsz+P
ジョイントフェチな幼馴染み
ヤクザな幼馴染み
チャイナな幼馴染み
合気道の達人な幼馴染み
催眠術師な幼馴染み
年を取らなくなった幼馴染み
グラップルな幼馴染み
女優、アイドル、フードルな幼馴染み
家がアダルトグッツ制作会社な幼馴染み
ホームレスな幼馴染み
453名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 16:22:20 ID:DFRhAn9m
ジャンキーな幼馴染み
ガンヲタな幼馴染み
元帥な幼馴染み
リアルメンヘルな幼馴染み
メルヘンな幼馴染み
主人公を誘ってくる幼馴染み(同性)
ヒキヲタで内弁慶トップエリートな幼馴染み(女性)
畳職人な幼馴染み
深夜トラックドライバーな幼馴染み
組長な幼馴染み
454名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 17:35:56 ID:fWcemXfv
>>451
>マッチ売りの幼馴染み

やべぇ、マッチョ売りの幼馴染みに見えて
一瞬焦ったwwwwwwww
455名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 19:07:07 ID:JKJfDHNy
>>454
よう、俺
456名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 20:16:38 ID:gD6qmAp9
ボルボさんのって保管庫の続き?それともまだ保管されてないのがある?
457名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 20:43:25 ID:Khj0Kl11
「ふふっ、そんなに良いのか?あたしの腋コキ」
「ああっ、イイ!気持ちイイよぉ!」
「次は腹筋でしてやるから、いっぱい出すんだぞ♪」

>>454
ごめん、マッチョ売りのがマッチョが売りのに見えたんだ(´・ω・`)
458名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 22:58:24 ID:i+xfXF9B
おまいらのネタはたるんだ腹筋が鍛えられて最高だ!
ただし、そんなSSオンリーになるのは断る!
459名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 23:13:07 ID:H/GFzmNY
ポルポ(P)なのかボルボ(BかV)なのか、うちのディスプレイだとわからないんですよね。
460名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 23:41:08 ID:HzU8dfYV
Volvoだろ
461名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 23:53:25 ID:c6FSouKp
ジョジョじゃあるまいし
462名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 00:12:49 ID:7Ig/EV/B
ボルボ駅長しか思い浮かばない俺はどうすれば
463 ◆NVcIiajIyg :2009/08/29(土) 00:29:29 ID:EhkzPrJM
>454「マッチョ売りの幼馴染み」


――奴隷市場。

メイドや下働きの小僧を買いにきたことはあった。
初めて足を踏み入れたのは、まだ俺が親父について勉強し始めた頃だ。
まさか内側から通りを眺めることになるとは想像もつかなかった。

そう。
こんなことになるとは思わなかった。
そんなに危険な商売ではなかったはずだ。
曽祖父も祖父も商才豊かではなく、堅実に商売をしていただけだった。
それでも経営は安全だったし仕入れも問題なく。
三年前は風が強く冷夏、疫病が瞬く間に向こうの大陸で広がり、沈静するまでに時間がかかった。
一昨年の冬は海が荒れ、その次は打って変わって猛暑。
親父は首をくくり、お袋は逃げ、残された俺が全てを手放しても、失った財産は取り戻せなかった。
それでも諦めなかったのだから偉いと思う。
あらゆる力仕事を繰り返し働き尽くめたがそれでも足りず――俺は売られた。

そして目の前には初恋の幼馴染みがいた。
相変わらず利発そうな少しきつめの顔をして、男勝りの頭のよさで下僕を従え、奴隷市場の一部を仕切っていた。
俺を意地悪そうに見つめては通りの向こうから手を振っていた彼女が、
帳簿を見ながら俺を商品として扱おうとしていた。
俺に気づかないで欲しかったのに、見た瞬間、彼女は目を見開いた。
肩の辺りでゆるく結ばれた黒い髪は相変わらずつややかで、量が多い。

あんまりだ。
毎日祈ってるが、神様ってのは、実はいないんじゃないか。

……頑張ったじゃないか。
俺は、あんなに頑張ったじゃないか何がいけなかったんだ。
報われたっていいじゃあないか。
親父が諦めても俺は諦めなかった。
母さんが逃げても俺は諦めなかったじゃないか。何がいけなかったってんだ!

後ろ手を鎖につながれたまま俯く。
俯いた頭上に、聞きたくなかったあの子の、穏やかな声がする。
464 ◆NVcIiajIyg :2009/08/29(土) 00:30:23 ID:EhkzPrJM
「……ここに来るなんてびっくり。
ひ弱で軟弱で細っこくて、揚げた骨肉食べただけで気持ち悪がってたあなたが。
肉体労働者の筋肉男専門の倉庫に送られてくるなんて、どうしちゃったの?」
「知ってるくせに」
「そうね。ごめんなさい。お店のお金を動かす権限は、まだ私にはなかったから」

聞き取れないくらいの呟きもしっかりと耳にいれ、さらりと返す。
『商品』である俺には言い返す権限もないのだから、鞭打つことも出来るのに、お優しいことだ。
店主の娘だからこそのお慈悲というやつか。
鎖につながれた状態で、身体をぺたぺたと触られる。こんなときだというのに手が柔らかい。

「身体が出来てるといっても、やっぱりにわか仕込みね。
 頭は悪くないけど正直マッチョ男にそんなの求められてないし。
 けど完全に機転が聞かないよりはいいでしょうね。顔は…まあ普通。微妙。
 これといった売りがないわ。Bマイナス」

彼女はそれからしばらく沈黙し、次の『商品』の検分に移動した。
その後俺は、他のやつらと十把一絡げに臭い部屋に放り込まれ、
あくまで売り物として、数日間、大事に保管された。
たまに窓越しに見に来る商人たちを見て、昔自分もあそこにいたのだと思うたびに心が折れていった。


そんなある日、俺は指名されて買われた。
引きずり出されて身体を拭かれ、買い主の指定した小屋に顔合わせに連れて行かれた。
扉を開けて驚いた。
目の前には彼女だけがいて、今日は帳簿を持っていなかった。
わけも分からず見つめる俺に向かって、

「私が買ったの」

と困ったように笑おうとして、笑えない顔で幼馴染みの女性は言った。

「あなたのお店を救うほどのお金はなかったけど、あなたを買えるくらいのお金なら貯めてた。
 ……これで全財産ほとんどなくなっちゃったんだけど」

今度は、ちゃんと笑った。
そして笑ったかと思うとすぐ、ごめんね。もっともっと前に助けてあげられなくてごめんね。とつぶやき、
顔をくしゃくしゃにして泣き出した。
強気そうな笑顔にも泣き顔にも、まだ少し、小さかった頃の面影が残っていて、それが変に可愛かった。

ああ、なんだ。
神様はいたじゃないか。

初恋の女の子が、真面目な彼女なりに頑張って俺を助けてくれようとしていたのなら、
男としては、こんなところで諦めるわけにはいかないというものだ。

--------
なんか違う気もするけどこんな感じで
つっこみどころも敢えて気にしない!
465名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 00:43:40 ID:QrJ4AmNE
GJ

ボルボックスがボルボXの由来
466名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 00:45:20 ID:UJpvHCj9
>>464
GJ
カオスなネタが感動話にwww
467名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 00:54:04 ID:JFNtztYz
話自体のGJさもさることながら無茶振りを昇華しやがったことにも賞賛せずにいられんww
468名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 01:24:28 ID:sGImhPlx
>>453
畳職人な幼馴染

 天翔(てんしょう)は畳職人だ。
 職人って言ってもまだまだぜーーんぜん半人前で、師匠である父親にしごかれる日々。
 高校在学中から修業を始め、この春卒業してから専念をすることになった。
 そして三年がたった今、ようやくヘリを触らせてもらえるようになったところ。
 
 私は、お店の框に堂々と腰をかけてそんな天翔の仕事ぶりを何の気なしに見つめている。
 ガラス張りの土間は表通りから丸見えだが、入ってくるお客なんてめったにいないのだから、気に病むことはない。
 これは私の、バイトのない平日の夕方の、習慣だったりする。
 今日は新しい作業を始めたので、靴を脱いで上がりこみ、手元をじぃっとのぞいているところである。
 天翔のいいところは、私がこうやって見つめていても、仕事中ならば私の存在自体を抹消してくれるところだ。
 そして作業が終わると、まっすぐに視界に入れてくれる。
 天翔が戻ってきた。私はいつもそう思うのだ。

「なあ、重祢(かさね)」
 手を止めた天翔がノンフレームの眼鏡を外して、眉間を抑えながら私を呼ぶ。
 天翔のお父さんと同じ癖だ。
 そのしぐさはとてもオヤジ臭い、といつも言う。そのたびに天翔は、露骨に嫌そうな顔をするけれど、治る気配はない。
「なに?」
「お前、暇なのか?」
「そうだねぇ、暇だね」
「学校は?」
「今日は木曜だから、午前だけなんだ」
「バイトは?」
「今日は木曜だから、ここに来る日なんだ」
「そうなのか?」
「そうなんだ」
「誰が決めた?」
「私」

 眉間のマッサージを終えた天翔は、まっすぐに私を見つめながらふぅんと呟いた。
 その声音からは、私に興味があるのかないのか、まったく計り知れない。
 
 天翔は私の、幼馴染だ。同時に、片思いの相手でもある。
 そしてややこしいことに、天翔もまた私に片思いをしてる。はずだ。
 
**
ここまで書いたけど先が思いつかなかった。
もう寝る。
469名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 03:22:31 ID:bq5oTFM2
ゆっくり休んでくれ
続きを書くための英気を養ってくれ
470名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 07:11:02 ID:+6a5cHz0
>>463
切ないな。胸がキュンとした。
471名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 07:13:04 ID:+6a5cHz0
>>468
面白そうだ。
続き待ってます。
472名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 20:37:54 ID:b4e0EEJS
すげえ活性化
473名無しさん@ピンキー:2009/08/30(日) 01:05:23 ID:lVNLGur+
マッチョ売りの幼馴染と聞いて女子プロレスラーを想像してしまったというのに。

>>463…なんというGJ…っ!
474ボルボX  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/30(日) 01:28:04 ID:wpAWKWsA
>>464
GJ,キュンキュンしました。クーデレいいなあ。
>>468
GJ,**上のラスト二行の意味が気になります。続きを待たせていただきます。

投下します
475桜の花の満開の下・三  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/30(日) 01:29:31 ID:wpAWKWsA

 渋沢京介と鈴木満は、なだらな坂となっている街路を下っている。

 よく晴れたのどかな日の正午近くだった。あちこちの屋根瓦のうえで干される何枚ものふとんが、春の陽光を吸っている。
 下駄の音を坂道にひびかせ、書生姿の少年ふたりは、坂松市の郊外方面へと徒歩で向かっていた。車に乗っていくのではなく歩こうと提案したのは満である。
 行き先は昨日に行ったばかりの、神社のある山ということだった。

「山の中腹の社から、神剣が盗まれたのは夕刻。
 ふもとのほうの大きな神社で開かれていた観桜会から、おまえらが早々に退出したあとのことだ」

 そのみずからの報告の合間に、満はふと「逢魔が刻だな」とつぶやいた。
 京介から眼鏡ごしに問う視線を受けて、彼はすぐに補足する。

「時刻がわかっているのは、たまたま目撃者がいたからだ。
 詳しい経緯は俺もまだ聞いてないが、祀ってあった太刀をつかんだ不審者が、その社の本殿からとびだしてくるところを見ていたという。それだけじゃなく刀で脅かされもしたらしい。
 ちなみにその目撃者だが、まだ七歳の女の子でね」

「その子は大丈夫だったのかい、満」

「幸い怪我はない。だがひどく怖がって寝込んでるらしい。それも無理はないさ。
 不審者は神剣の白木のさやを投げ捨てて、抜き身をひっさげていたんだと。さらに狐の面をつけて顔を隠し、衣は夜目にも白いじゅばん一枚。
 そんなあぶない姿のやつが、唐突に欄干を乗り越えてとびだしてきて、恐怖で固まっている子供をおどかした。眼前に立ちはだかって刀をふりあげたらしい。
 けれどすぐに刀は下ろされ、そいつは山林のなかへ駆けて消えていったそうだ」

 京介は顔をしかめた。

「災難だね……夕暮れの山中でそんなのに行き会ったら、大人でも夢でうなされそうだなあ」

「直後に硬直がとけたその子は、転がり落ちるように山道を下り、開かれている観桜会のただなかへ逃げてきた。
 森のなかは、明かりを手にした大人数名によってすぐに調べられている」

「けれど、不審者の姿も神剣もいまだに見つかっていないと」

「そういうことになるな。もう少しこみいっているらしいが、くわしいことは現地で聞けるだろう。
 腹立たしいのは外野の無責任さだ。怪異あって神剣が消えたとささやく奴がさっそく湧いてるようだぜ。
 持ち出されたのがどうでもいいものだったなら、そうやってオカルトっぽく片付けちまったっていいんだが、無論そうはいかない。
 不審者が子供をおどかして行方をくらましただけなら『あら怖い』ですむ。しかし祀ってあった太刀が消えたというのは……」

「たしか七百年ものの古刀だったね」

「国宝級だと聞いている。
 そんなわけで京介、解決とはいかなくても騒ぎが沈静化するまで、俺たちは春休み返上となりそうだぞ」

 そう言われて、京介は「え」と洩らした。
 夕華とのことや家の継嗣についての話で、すでに神経をじゅうぶん使っている。率直なところ、あまり今はかかずらう問題を増やしたくはない。
 けれど満は、坂道の終わりにさしかかったところでわざわざ立ち止まり、その了見ちがいをとがめてきた。
476桜の花の満開の下・三  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/30(日) 01:30:20 ID:wpAWKWsA

「え、じゃないだろ。おまえは青年会の役員だぞ、忘れてないか。なんだか今日はずっと腑抜けてんなあ。
 いいか、うちの青年会の仕事には、地域のパトロールもあるんだぞ。昨日の観桜会も、一部は警備役に駆り出されてたんだからな。
 不審者が出たとあっちゃ、まったく関係ないってわけにはいかないんだ。関係者から話を聞いて、場合によっては夜の巡邏のコースをまた変更しなきゃならない」

 かれら二人は、推薦と周囲の賛同により、百年以上の歴史がある城下町若衆組――現在では坂松市青年会に改称――の中核を占めている立場なのだった。
 考えようによっては面倒ごとを押しつけられているともいうが、ともかく選ばれた以上は義務がある。その自覚をうながす満の言葉に、京介はすなおに「ごめん」と謝った。

「悪かった、たしかに気が抜けてた。……私事でちょっと考えごとをしてたんだ。
 今からはきちんと役職に専念するよ」

「そうしてくれ。それとあまり気に病むなよ。
 夕華ちゃんがいないうちに浮気したことを、本人に莫迦正直にゲロっちゃっただけだろ。まだ脈がありそうだと確認できたんなら逆に良かったじゃん。
 じゃあ話を戻すが、消えた太刀はかなりの長さで――」

「待て! 話が戻る前にひとつ尋ねたいんだけど!」

「ん? ああ、誰から聞いたかってことなら、柿子ちゃん経由」

「あの毒柿!」

 観桜会での夕華との会話のあらましを暴露されたと知って、即座に京介は姉への悪態をついた。
 しかし満はそれをさえぎった。

「まあまあ、聞いてるのはたぶん現時点じゃ俺だけだ。
 俺なら口外しないと踏んだんだろうし、柿子ちゃんをあまり責めるなよ。
 俺にできることがあれば助力は惜しまないからなんでも言えよ」

「あ、ああ、どうも……たぶん自分でなんとかするから……」

 苦笑いをうかべてとっさに大丈夫と答えた京介だったが、その面には暗たんたる不安が浮かんでいる。
 京介は暗く視線を落とした。かれの下駄からそう離れていないところで道路を横断する、小蟻の行列を意味もなくじっと見つめる。下をむくその姿からは懊悩の雰囲気がただよう。
 じつのところ夕華に近づくことについて、京介は完全に吹っ切れたとは言いがたいのだった。

 なにしろつい先日まで、まったく逆の決心をしていた。夕華のことをなんとか思い切ろうとしていたのである。
 それが望みありかもしれないとわかったとたん、いきなり手のひらをかえしてすりよる態度をとろうというのだ。
 これからしようとしていることは、形としてはどう見てもそうである。
 自分の態度は、いくらなんでも現金にすぎるというものではないだろうか。

(浅ましい男と、夕華さんにあらためて幻滅されたらどうしよう)

 などと、ことあるごとに後ろ向きな考えが湧いてくるのである。
 そのたびにかれは、みずからを叱咤することを繰り返している。

(……もう決めたことじゃないか、ぐだぐだ考えるのはやめよう。それで傷つくのなんて僕の体面くらいじゃないか)

 もつれた情の糸は、ほどくならば早いうちであるべきだろう。
 ことここに及んでは余計な思考はさしはさまないほうがいい。かれにもそれはわかっていた。

(けっきょく駄目だとしても、最善を尽くして――)
477桜の花の満開の下・三  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/30(日) 01:31:17 ID:wpAWKWsA

「そろそろ時間のはずだがあっちは……おっ、来てた来てた。
 こっち、こっち」

 むっつり考えていた京介の横で、満が呼びかける声を出した。京介の肩ごしに、だれかに手をふっている。
 つられて振り向き、指の先まで京介は固まることになった。そして、なぜ姉が朝からいなかったのか、家に来た満が「今日は歩こう」と言い出したのかを理解した。

 ポストの陰から、二人の少女が立ちあがったところだった。
 しれっとした顔でこちらに歩いてくる柿子にすこし後れて、花束をかかえた夕華の姿も見える。

 彼女たちの姿が京介たちから見えなかったのは、郵便局前に置いてある木の長椅子に座っていたためのようだった。
 ポストの存在によって、坂道から見る者には長椅子が死角に入っているのである。
 どうやら、彼女たちは先にここに来て、座って待っていたようだった。

 やや伏せた夕華の表情は、仕組まれた急な展開にとても平静ではいられないらしく、緊張にこわばりかけているようだった。
 自分も彼女と似たような表情になっていることを、京介は確信した。いや、それに驚愕と狼狽の色が足されていることだろう。

 と、夕華が思い切ったように顔を上げた。目がまともに合った瞬間、彼女の頬がはっきり赤らんだ。
 夕華は胸元の花に顔をうずめるように再びうつむき、消え入りそうな小声で、こんにちは、と言った。

\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

 いま京介と夕華の二人は、肩をならべて話しこみながら故郷の町並みを歩いていた。
 その後ろに十歩ほど離れてついていく柿子と満の耳には、話の断片がもれ聞こえてくる。

 前方の二人の背を見ながら、後方の二人もまたささやきを交わしていた。

「……それホント? かついでんじゃないわよね」

「嘘なんかつかねえよ、本当に、京介はあれでけっこう行動力があるし、まずまず有能だという評価を得てるんだってば」

 柿子は黙って、真偽を見通そうとするかのように満をすがめ見た。
 疑いの視線に、満は若干むきになって言い立てはじめる。

「おいおい、俺はこの六年間、こっちで京介と学校から青年会まで一緒だったんだぜ。
 あいつは人一倍地道に努力するし、学業も運動も無難以上にはこなせるよ。それに性格も温厚で人当たりがいい。
 加えて町内のお偉いさんのほとんどとは顔見知りだろ。青年会の都合でそういう人たちに渡りをつけなきゃならないとき、京介に任せたら円滑にことが運ぶんだよ。
 それでいて、肝心なところでは度胸があるし駆け引きもできるから、交渉役にはうってつけとして重宝されてるぜ、今じゃ」

「嘘よね。嘘だわ。そういやあんた昔から調子のいいこと言うガキだったわね。話ふくらませてない?」

「お、俺のことは置くにしても、せめて弟は信じてやれよ、柿子ちゃん」

 満の言葉に柿子は、しばし首をひねった。
 書斎で京介が父それに祖父に相対したときの、図太いくらいに肝の据わった様子を考える。あの態度は一時きりのものではなく、満が言うようにふだんの弟の一面なのかもしれない。
 だが完全に納得しきれたわけではない。前にむけて柿子はあごをしゃくり、眉をひそめて満に言った。

「あんた、あいつらの話しっぷりをどう思う?」

「……ちょっと緊張してんのかねえ。微妙にもどかしい感じだな」
478桜の花の満開の下・三  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/30(日) 01:32:24 ID:wpAWKWsA

「ぜんぜんちょっとでも微妙でもないわよ。
 聞いてりゃさっきからトチったりどもったり、変に間が空いたり、そうかと思うととんちんかんな相槌うって慌てて謝ったり、そんなのばかりじゃない」

 柿子は苛立ちに近い焦慮をこめて前を見やった。
 酷評されている前方の会話は、ちょうどこのような様相である。

「ええと、京介君」

「えっ、はい、なんでしょう、夕華さん」

「あそこの角を曲がったところに駄菓子屋があったと思うのだけれど、どうなったかな」

「まだありますよ。ただ、店主が代がわりしました」

「そうなの……そういえば、前にやっていた人はもうおばあちゃんだったものね」

「はい、甥ごさんに代わったそうです」

 そこで、何度目かに会話がぶつ切れになった。
 困っているのか、夕華は微妙に顔を上向けて空をあおいでいる。京介もおなじように次の話題を探しているらしく、首をひねっていた。
 けっきょく少々強引に、夕華が駄菓子屋の話を続けた。

「ううんと……たまに立ち寄ったときは、どんなお菓子を買っていたかしら」

「べっこうあめ、金平糖、ソーダ水……そんなところだったと思いますよ」

「そうだ、うん、思い出した。私はいつもソーダを買って、京介君は飴がお気に入りだったね」

 どうにか話がつながったが、そこでまた次の話題を探すばかりになった。
 後ろで聞いている二人までやきもきしてならない。ことに柿子はあまりの焦れったさに、歯ぎしりしたいという欲求を感じはじめている。
 「なんとまあ不器用な奴ら」と嘆息した満に、「あれだって昨日までよりましよ。京介、うまく話そうとすることすら諦めちゃってたからね」と柿子はひとつ置いてから、続けた。

「とにかくこっち帰ってくるたび、わたしはああいう京介ばかり見てきたのよ。あいつが実は交渉役まかせられてるって、悪い冗談としか思えないわ。
 それにしてもあいつら、何あれ、どっちもがちがちじゃないの。今日はいきなり会うことになったから心構えがなかったにしても……初々しいにもほどがあるわ」

 生まれてはじめて異性と話すわけでもあるまいに、と柿子は嘆いた。
 ましてどちらも、生まれてから長い間、一番近かった異性を相手にしているはずなのである。
 実際に京介と夕華の会話の内容は、幼いころの共有する記憶をたどるものだった。

 見知った町角、班をくんで登下校した小学校の通学路、ともに遊んだ空き地や河原にさしかかるたび、このあたりで昔はああしたこうしたと語り合っている。
 昔語りというその試みは、まったくうまくいっていないわけではない。柿子の知る限り、あの二人がこの六年で、これだけ長く話せていたことはなかった。
 考えてみれば、もともとあの二人は共通の思い出にはこと欠かない。

 田の用水路で大きな魚を見つけて、どうにかして捕まえようと長時間追いかけまわしたこと。
 一個の石を代わる代わる蹴りながらの下校中に、石が鎖のついていない犬に当たって追いかけられ、みんなで塀の上によじのぼったこと。
 林のなかに子供だけの秘密基地を作ろうとしたはいいが、それがエスカレートしたあげく周辺の木を切って小さな小屋を組み立てだすにおよんで、ついに林の持ち主に大目玉をくらったこと。
479桜の花の満開の下・三  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/30(日) 01:33:01 ID:wpAWKWsA

 それらの話がぽつりぽつりと後ろにも届いてくる。
 掘りかえせる話題は、いくらでもあるはずなのだ。山に着くまでといわず、一日くらいは昔語りだけでももつだろう。

(でも、あれじゃ……)

 それでいながら柿子の胸には、やはり何かが違うという感じがつきまとっていた。二人の様子は、端から見ていてさえもどかしさを禁じえないのだ。

 雰囲気が硬い。
 話の種は尽きないはずなのに、肝心の会話自体がさほど弾んでいない。
 京介も夕華も自然体とはほど遠く、手探りでひとつひとつ言葉を選んでいる。そうしてぎくしゃくと出る言葉は、無残なほどつるつる上っつらを滑るばかりだった。

 その様子はまるで、長年放置してきた鉄の機械をいきなり動かそうとしたかのようだった。
 錆びた歯車が機械のそこかしこでがちがちと鳴り、とうていスムーズな作動とはいいがたい。
 そういうわけで柿子は会話が詰まるたび、口を出して油をさしてやりたいという衝動にかられる。

 それを思いとどまっているのは、もともとあの二人が自分たちで動かすべき機械なのだとわかっているためだった。
 だが手出ししにくければ、それはそれで焦れったい。焦るまいと思ってもなおさらに焦燥を覚えてしまう。
 自分でさえこうだ。なかなか昔のように通じ合えない当人たちは、どれだけもどかしいことだろう。

「こっちが張り詰めたってしょうがないよ、柿子ちゃん」

 ふと、満の低めた声が鼓膜にとどいた。肩に少年の手が乗せられる。

「話すことをあきらめないだけでも、ましになったんだろ? じゃあ、今はそれでよしとしようぜ。
 心配ないって。昔、あの二人はべったりだったじゃないか、意識もせずに。
 いやさ、むしろそれが、今うまく話せなくなってる一因じゃねえかとも思うけどな。
 なんていうかさ、よく知ってた昔の相手のイメージと、成長して変わった現在の姿とが微妙に一致しなくなっちゃっててさ。無意識レベルでとまどっちまってるんだよ、きっと。
 ほんのすこし待っていれば、お互い慣れてくるって。ほっとこうよ」

「……知ったような口きいちゃって」

 柿子はぶすっと言い、難しい面持ちのまま考え込んだ。

(こいつの言うとおりだったとしても……そのほんのすこしの時間が、あの二人には無いかもしれないってのに)

 時間がない。それは郵便局までの道で、ようやく腹を割った夕華本人から聞きだしたことだった。
 父親の京口子爵に、いままで会わせられた候補のなかから、婚約する相手を今月中に選べと言い渡されているという。これ以上の結婚の引き伸ばしはできそうにないとも。
 だから、この土地を離れるつもりだと夕華は言った。その前に京介に大切な言葉を告げておきたいとも。

(できればゆっくり絆を取りもどさせてやりたいけどね。
 ほんとのところ夕華、あんた、悠長に構えてられないでしょ)

 早く核心の話題に移ったらどうなのよ、と柿子は念じ、それからはたと気づいた。
480桜の花の満開の下・三  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/30(日) 01:34:10 ID:wpAWKWsA

 いまの状況は、あの二人が、周りを意識しないで話ができる状況ではない。
 自分と満がすぐ後ろにくっついている。それが、あの二人が打ち解けた会話をすることをさまたげている一因なのではないだろうか。

(聞き耳立ててなにやってるんだろう、わたし。手助けどころか、お邪魔虫になってるじゃないの)

 肩の力が抜けると同時に、柿子は自分に呆れを感じた。
 こんなこともわからなくなるとは、たしかに入れ込みすぎて煮詰まりかけていたようだった。

(放っておくしかないか……もっと離れて、二人きりにしておかないと)

 結局こいつが正しかったか、と満を一べつする。
 視線がかち合ったとたん、にっと笑みを見せられる。たぶんその満の笑みに意味はないだろう。
 その意味の無さに、このときばかりは心がわずかにくつろげられた気がした。柿子は少し表情をゆるませた。

「それにしても、あんたは変わんないわね。
 そのなれなれしい態度といい、マセガキのまんまだわ」

「そりゃそうさ、柿子ちゃんこそ、六年前から特に変わってねえじゃん。態度改めようがねえって。
 早朝いきなり家の前に呼び出されて何かと思ったよ。それでちょっと話せば『今日京介と会うの? ちょうどいいからあんた手伝いなさい』と頭ごなしに言うじゃないか。
 ほんとに帝都のお嬢様校に行ってたのかって疑問を抱いたぞ」

「それ綾坂先生にも言われてきたところよ。へん、ぜんぜんおしとやかになってなくて悪うございました。
 でも、ま、やっぱりお互いぜんぜん変わんないってわけでもないわね。あんた、ずいぶん背が高くなったわねえ。ほんと、後輩に見下ろされるのってむかつくわ」

 微笑みながら手を伸ばして、柿子は高いところにある満の頭を撫でた。目を白黒させた満は、妙におとなしくなって黙りこむ。

 手をひっこめて前を向き、「さてと」と柿子は切り替えた。
 あまりこちらが張りつめてもしかたがない、という満の提言を受けることにしたのである。
 足取りをわざとゆるやかにした。前の二人の声が徐々に遠ざかる。距離をおくつもりだった。

 京介は、夕華に話さなければならない隠しごとがあるという。自分たちが離れれば、かれはそれをすぐに話しだすかもしれない。
 あるいは夕華が腹をくくって先に動くかもしれない。そちらの可能性のほうがおおいにありそうである。
 いずれにしろ、かならずどちらからか動きはあるはずなのだ。

「柿子ちゃん。あのさ、その、俺、気持ちにも変わりは……」

 柿子のとなりで何かもごもごと満が言っていた。
 「ん、何よ?」とそちらに向き直りかけて――それどころでは、なくなった。
481桜の花の満開の下・三  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/30(日) 01:35:12 ID:wpAWKWsA

 神社へと向かう、鴨居川沿いの土手道にさしかかっていた。
 そこで前方から小走りに駆けてきた少女が、四人の近くにきたとき急に立ち止まったのである。

「――京介?」

 棒立ちになって、確かめる呼び声を京介にかけたその少女は、前垂れをかけた若草色の着物姿だった。
 小間使いのような格好だが、よく見れば決してそうではなく、上質の服である。
 年のころは京介や満と同じくらい。全体の印象としては、可憐な五分咲きの梅枝というところ。
 まだ稚気が抜けないその面立ちには、張りつめた色が浮かんでいる。くわえて彼女の状況が差し迫っていることは、すそが乱れ、白足袋がほこりに汚れていることにも表われていた。

「え……美絵……?」

 京介のほうも少女を見て息を呑んだ様子で、足を止めていた。「げ、まずい」と満が引きつった声を出した。
 夕華も柿子も状況がわからずぽかんとしている一方、男性陣の雰囲気ははっきりと動揺である。

 美絵と呼ばれた少女の目は、京介だけにそそがれている。それがきっときつくなった。
 彼女は呼吸をととのえ、すそを直すと、まっすぐ京介の前に歩みよった。

「……今日、社に来る青年会の幹部の人って、ほんとに京介だったんだ」

「あ、え、うん。美絵はなんで――」

 かれがそう言いかけたところで、ぱあん、と平手打ちの音が音高くひびいた。

「しばらくぶり」

 京介の頬を張った美絵は、剣呑なほどに眼光と語気を鋭くしてそう言い放った。
 叩かれた京介は「うん……そうだね」とぼんやり言ったきり、頬を押さえてしばらく黙っていた。ただその沈黙は穏やかなもので、もう驚きの気配とは無縁だった。まして怒りはみじんもない。
 その後ろ姿からは、叩かれてもしょうがないという諦めの空気が、ほのかにただよっていた。
 むしろ、周りの三人があぜんとしていた。

「いきなり叩かれても怒らないの? あんたって、相変わらずのいくじなし」

「ごめん」

「莫迦!」

 そう叫ぶなり、美絵は顔をくしゃっと歪ませ、京介の胸にとびこんだ。
 こんどは京介自身をふくめ、全員が目を点にした。ことに夕華は硬直している。

「助けて。妹の麻衣が、神社での盗難事件に巻きこまれたの。
 不審者が刀を盗むところを見たのはあの子なの。そのとき刀を突きつけられておどかされたことで、昨日から熱を出して寝込んじゃった。
 それなのに、刀も不審者もどこからも見つからないからって、みんなには『ほんとうに証言は確かなんだろうね』と十何回も念を押されて。
 死ぬほど怖い目にあったせいでかなり高い熱が出てるのに、帰ることもできず社務所の布団に寝かされっぱなしなの。
 麻衣は嘘なんかつく子じゃないのに。だいたい刀盗人がいたのは間違いないじゃない、直前まで祀ってあった刀がないんだから!」
482桜の花の満開の下・三  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/30(日) 01:36:36 ID:wpAWKWsA

「美絵、ちょ、ちょっと……」

 京介は頬を張られたときよりも、抱きつかれた今のほうにずっと困惑している様子だった。声が裏返っている。
 周囲が目に入らない態で、美絵は瞳をうるませ、京介のシャツを握り締めて必死に言い続けていた。

「枕元で治療してるお父さんが『休ませてやってくれ』と怒ったら、『自分の娘だからといって、非常時まで甘やかすのはよせ』と言う人がいて。
 麻衣はまだ七歳なのよ、医者のお父さんが安静にしてたほうがいいって判断してなにがおかしいのよ。
 とにかく、それでいま、喧嘩になって殴りあいまでしてる。
 みんな疲れて苛立ってたんだけど、それにしたって大の大人が余裕なさすぎだわ。言い争いを乱闘に発展させるなんて莫迦じゃないの!」

「落ち着いて、うん、わかった、喧嘩をおさめるのと、妹さんの安静確保だね。
 大丈夫、これから行ってきちんとみんなにわかってもらうから。まず美絵も落ち着こう。ね」

 若干うろたえた顔色ながらも京介は、平静を失ってすがりついてくる少女の肩を、いたわりをこめた手つきでぽんぽん叩いている。
 ちらとそれを見やりつつも、硬直が解けたらしき夕華が、川上の神社のほうに顔を向けて芯の通った声を出した。

「――それなら境内に早く行かないと。
 京介君は、美絵ちゃんを落ちつかせてあげてから来て」

 そう言い残すなり、夕華は急ぎ足でひとり神社に向かいだした。
 緊張の糸が切れたのか、美絵はいつしかしゃくりあげ出していた。
 柿子は、泣く美絵とそれをけんめいになだめる京介のそばを追いぬいて、夕華の後ろについた。

「……ねえ夕華、もしかしてあの娘って、高橋小児院の美絵ちゃん?」

 速度をゆるめず進みながら、夕華は硬い声で答えた。

「その美絵ちゃんだと思うよ。京介君や満君の同級生の」

「そっか、思い出したわ。確かに、わたしたちが小学六年生のときに転校してきたあの娘だわね。可愛い娘に育ったもんねえ」

 七年前、高橋小児院の若先生と結婚した女性が、連れ子として伴ってきたのが美絵という少女だった。
 面倒見のいい夕華は、例によっていろいろ気にかけていたはずである。

「でも、昔はかなり内気な娘だったように思うけど、今はそうでもないっぽいわね」

 つぶやいてから、柿子は追いすがってきた満をふりあおいだ。

「ああ、ところで満。ちょっと知りたいけど、あの子たちまさか……」

 満はなんの質問かを察していたようで、あきらめたようにうなずいた。

「……ああ、美絵は京介の彼女だ。いや違う、元カノだよ、元。ほら一週間で別れた例の」

 満があわてて訂正したのは、前をゆく夕華の心境をおもんばかってのことであろう。
 それについて夕華はふりかえりも、声を発しもしなかった。
 無言でただ足を速めただけである。

 疲れをもたらす新たな重みが、頭に宿ったのを柿子は感じた。脳の一部が鉛に変じたかのごとくである。
 余計な思案の種が増えたことに、げんなりしそうだった。
483ボルボX  ◆ncmKVWuKUI :2009/08/30(日) 01:38:32 ID:wpAWKWsA
続きます。おやすみなさい
484名無しさん@ピンキー:2009/08/30(日) 01:40:02 ID:E6CmSgvY
わーい、ありがとう
もう少し起きていようとおもった
485名無しさん@ピンキー:2009/08/30(日) 02:35:39 ID:vDZgXyEU
GJです。続きが楽しみすぎる
486名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 03:35:15 ID:YydkfxQZ
GJ。GJすぎる。
幼馴染がどうとかエロがどうとかいう前に、
読物としての完成度が高すぎる。
487名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 09:50:35 ID:HrU68TQy
>>463
ネタなのに、◆NVcIiajIyg氏の文章なのがすげぇっ、ていうか笑えるw

>>ボルボX氏
まだまだじらされる予感。
488名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 10:22:57 ID:onnQWXva
GJ!
やべぇw
これは修羅場フラグw
489名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 12:59:00 ID:DqviwsO5
すげぇ!
楽しみに待ってます!!
490454:2009/08/30(日) 15:22:07 ID:YiA90r+e
俺の見間違いがこんなことになるとは……GJ!
491名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 19:30:45 ID:96Xg4GRK
ドロドロ展開きてしまうのかうおおおおおおおおおおおお
492名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 10:32:37 ID:qRRLNRG+
GOODJOB!
493名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 13:21:01 ID:PQlMVK98
保管庫読んでると、未完が結構ある。
ボルボさんみたいに続編投下があると嬉しいなあ。
494名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 15:22:33 ID:dGPTPsT6
以下興津三十郎禁止
495名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 22:10:02 ID:fAYPfDgi
>>464
久々のNVcIiajIyg氏の降臨で俺大歓喜
やっぱり雰囲気がイイですわぁ・・・
496名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 01:10:01 ID:Gd0rwO5L
497名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 01:58:17 ID:oibM0zmx
・共産国家の陸軍将校の主人公と、政治将校の幼馴染
・総選挙に出馬した新人候補の主人公と、キャリア官僚を辞めて主人公の手伝いにやって来た幼馴染
 主人公が当選できれば幼馴染も政策秘書になれるけど、落ちれば2人揃ってプー太郎。
 2人の故郷から立候補したはいいものの、そこは大物現職が何十年にも渡って議席を守ってきた固い地盤で(ry

酷い電波が湧いてきたもんだ。プロットが考えられないので書き逃げ。
498 ◆NVcIiajIyg :2009/09/05(土) 04:59:49 ID:1kgkUIKf
>497
共産国家じゃないなんちゃて国家ですが政治っぽい幼馴染
設定は思いついた即興なので許容してくれるとありがたい
--------------------

小さい頃、倉多 亜倫は、背丈が低く、一人でお人形で遊ぶのが好きな少女だった。
その頃から身体の大きく二つも年上だった須田 礼人に、大声で怒鳴られてばかりいた。
反撃など思いつかず、いつもしくしく、めそめそ、泣いていた。
藪で作った秘密基地で人形遊びをしていたら、泣いて逃げ出すまで泥の塊を投げ込まれたこともある。
(それには理由があったのだけれど。)
でも、やはり理由もなく大きな声は少女の身を竦ませたし、年上の少年の大きな体は恐怖だった。

思えば小さな頃から、礼人の行動基準は明快だった。
一家が地方でも力の強い、古い軍人の家系だったからだろう。
女は守ってやるべきだから後ろにいろ。
国のためにやるべきことはやるべきだが、あくまで国家繁栄のために子を作れ。
基本的には俺の指示に従うべきだ。
危険なところにいる場合、助けてやるから理由を聞くなともかく俺に従え。
その他の場合、俺に従え。
初めて文字を覚え、庭に出るのを覚えた頃から細胞レベルでしみこんでいたとしか思えない。
常に亜倫に対して高圧的だった一方で、深刻な危険からは絶対に守ってくれもした。
(例えば泥を投げられた藪付近では、危険な毒蛇が目撃されていた。)
だから、幼女時代の亜倫は件の幼馴染を確かに恐れていたが、
さりとて嫌いにもなりきれず、びくびくと背中あたりをうろついていた。
あれはまだ、現職の議員先生が選挙戦を初めて闘った頃で、下の弟が死ぬ前の小さかった頃だった。

亜倫は以後それなりに精神面も強くなり、成長するにつれ社交性も身につけた。
幸いにして学者筋の両親の血を引いたのか明晰であり、学問も優秀で弁舌も能くした。
だがそれは礼人と離れて以後の彼女の姿だ。
義務教育は男女が別なので礼人とは当然6歳で別れ、直接話すことはなくなった。
だが、成人になっても、不思議と連絡が途絶えなかった。
実際に会うことはほとんどなかったのに、儀礼的なものだが、手紙を年に数回は交わしていた。
同じ地方から進学し、違う方面であれ国の中枢に上ろうとしていたのだから、その親近感からだろうか。
当時女性がまだまだ少なかった政治将校の道に進むときも、
強くは勧めなかったが、彼女の意思を認めてくれた。
同じ地域を愛するものとしての同士のような感情だったのだろう。

孤立無援の遠い都市で、同郷の励ましがどんなに力になっただろう。
499 ◆NVcIiajIyg :2009/09/05(土) 05:03:04 ID:1kgkUIKf

「久しぶりだなアリン。ところで私は今度出馬することにしたんだが」

雄雄しく成長した幼馴染みが軍服を着て尋ねてきて、開口一番にそう言ったときには本当に驚いた。
国家への理想の高さは手紙のやり取りの中で何度か窺い知ることができたが、
まだ早すぎるとしか思えなかった。

「分かっているだろ、お前」

礼人はそれしか言わなかった。
亜倫が彼とともに選挙を戦うと信じて疑っていなかったのだ。
その日は秋の暮れで、街外れにある下宿の外は木々も枯れ始め、隙間風は厚着をしても冷たかった。
薪をくべる頻度は日に日に増え、日が落ちるのも早く、
油の減りが今年も激しくなったなあなどと彼女がぼんやりと考えていた頃だった。
彼女は手の中の茶碗を卓に置き、馴染んだ部屋を見渡した。
応接室の後ろのドアはすぐに寝室で、2部屋しかなかった。
女性故にあまり古く狭い部屋はあてがわれなかったが、けして広いとはいえない。
暖炉の上で湯が沸いていた。
迷いは不思議なほどなかった。

「そうですね。分かっています」

そう答えた瞬間の、幼馴染の表情を見て、自分が道を認めてもらったときと同じ気持ちなのだとよく分かった。
余計に迷うことはなくなった。
新しい薪の手配も油の手配も止めさせ、一人だけいた使用人に暇を出した。

一週間とたたないうちに、汽車の乗車券を渡しにまた礼人が自らやってきた。
夕暮れ時で、既に明かりが必要となる時間だった。
日に日に重くなる曇りの空は冬支度が必要なことを教えてくる。
国の冬は長い。
軋む戸を形式だけ叩き、軍靴が古い床を踏む。
「明日だ。準備をしろ」
準備はできているかとは聞かない。
さすがだとは思いつつも言われたとおりの態勢を既に整えている自分には驚いた。
小さい頃のまま、なんだかんだと将校様の言いなりである。
「明日は何時に……?」
「私が決めて連れて行く。気にすることではない」
500 ◆NVcIiajIyg :2009/09/05(土) 05:06:51 ID:1kgkUIKf
口答えするなといわんばかりだ。
つまらなそうに腰を下ろし、深々と背を椅子に預けている。
狭い部屋には明かりが入っていた。
沈黙が長い。
「アリン」
「なんでしょうか」
「お前、男の相手はどの程度できる?」
亜倫はお茶を吹いた。
当然のようにむせる。
「それは」
ハンケチを取ってきて口元を拭いた。
お茶は温かったが、指先も濡れたので拭く。
混乱して考えがまとまらない。
「あの、帰ったら、私にその役をしろということでしょうか」
そうして地方の重鎮派をこちらに取り込めとでもいうのだろうか。
古典的だが効果的なのだろうか。
女性の自分は、あまり効果がないと思うが男性はそういうものではないのだろうか。
「ああ!?そんなことがしたいとでも言うのか!」
考えにふけるまもなく礼人が怒鳴った。
思わず身が竦む。
身に染込んだものなのか、上官に怒鳴られてもまったく平気なのに
この怒鳴り声には条件反射で身体中が怯えた。
「したいというのなら止めんが、勝手にしろ!そんなことを期待してはいない!」
「……したいとは言っていないじゃないですか」
蚊の鳴くような声で反論する。
実はこれだけでも一生分の勇気を振り絞った。
「ということはだ。お前は頭が足りないのか。頭を頼りにしていたのだがな!こら!」
「れ、…れ、れーじが何を言おうとしているのかぜんぜん分かりま…分かりません!」
「ああぁ?ええい。そこまで馬鹿なのか!」
勇気を振り絞って反論したのに一喝で封じられた。
最早、ソファに座っている生徒が教官に一方的に叱責される図だった。
怒鳴られるたびに亜倫の薄い肩がびくりとする。
そのあと、彼女にとっては一晩とも取れる恐ろしい沈黙が過ぎた。
無言が長すぎて風が窓を揺らすだけでも叱られているようで、亜倫は死にそうになった。
早く夜が明ければいいのにとそれだけを願いながら身を竦めることしかできない。
やがて、カンと音が響き、軍靴が伏せた視界に移りこんだ。
思わず息を呑む。
そして、否も応もない、彼女が逆らえるはずのない、『命令』が降ってきた。
「『上を向け』。そして、私の質問に答えろ」
501 ◆NVcIiajIyg :2009/09/05(土) 05:08:38 ID:1kgkUIKf
幼児期の肉体の記憶で逆らえない。
がくがくと震えながらゆっくりとあごの位置を上げていく。
詰めた髪から出てくる後れ毛が、頬にかかってむずがゆい。
目を開けろとは言われなかったので瞑っていた。
そしたら額を指ではじかれたので抗議するために目を開けてしまった。
「痛い、ですってば」
「そうか。それはアリンが悪いな」
もう一度弾かれた。
「いいか。私は暇だったのでお前が、床の相手をできないかと聞いたのだ」
「…………」
彼女は、今の言葉を十回ほど耳の奥で反芻した。
「『暇だったので』?」
「悪いのか?お前、私のものになったんじゃあないのか。着いてくるんだろう」

堂々としていた。
心臓が落ち着かず、亜倫は急激に首の後ろが汗ばむのを感じた。

「え、あ、あの」
眼で続きを促されたが、何もいえない。
「……わた。わたしは。不勉強といいますか。あの。れーじと違って実践はその」
あれおかしいそんなことを言うつもりでは。
「フザケテイルノカ」
「ふざけていませんよ!!」
なんだ大声も出せるんじゃないか、と幼馴染の将校様は顔を綻ばせた。
意味不明すぎて、亜倫は絶句した。
「お前、男のひとりとも付き合ったことがないのか?それでよく渡っていけたな。
 能力のみであそこまで昇っていたのなら私としては助かるが」
「余計なお世話余計なお世話、余計なお世話余計なお世話…」
一生懸命言い返すがなぜだか声が大きくならない。
事実、下宿の建物が軋む音の方が大きい。

「――それで。相手はするのか、しないのか。教練してやるぞ。実践で。
 そういうのも、そうだな。悪くはないな。どうだ」

相変わらず当然のように呟く陸軍将校様に対し、彼女の方はまだ混乱していた。
――使用人。暇を出した。荷物。はまとめた。仕事。とっくに辞職した。辞職してしまった。全てを捨てて。
――夕食は食べたしあとは何をしていないんだっけ、そうだ眠らなければ。何もない何もない。
   他にすることなんて、何もないですね。そうだね。
下を向いてなにやらぶつぶつと呟いている。
噂の切れものキャリア官僚も形無しであった。
灯りの油が尽きた。
埒が明かないという眼をして、礼人が嘆息する。
「アリン。聞け」
「……え、あ、はい」
相変わらずこういう言い方に逆らえない年下の幼馴染を眺め、礼人は命令した。
心の底からと言う重い息をはきだし、額を押さえる。
「 も う い い 。 今 日 は 寝 ろ 。」
502 ◆NVcIiajIyg :2009/09/05(土) 05:09:33 ID:1kgkUIKf
夜が明けたので力尽きました。M的な展開は時間のあるときにまた。では。
503名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 07:52:37 ID:nTqFcm5j
うわっ!GJ!!GJ!!
ネタをここまで昇華させるとは!!
素晴らしすぎる。
萌えました。続きをひたすら正座待機しております。
504名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 14:56:28 ID:os2YtNbh
>>502
チャッチャと犯れよ
505名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 17:39:46 ID:gmm2nJGz
>>502GJ
>>504
テンプレにあるとおりこのスレはエロ必須でさえないぞ。
506497:2009/09/06(日) 02:00:45 ID:HHKc2cEn
>>498-501
適当に思い浮かんだ妄想ネタをSSにしてくれて、大変乙です。
てか>>497は2つの別々なネタのつもりだったのに、それを1つにまとめた辺りなかなかの力業w
507名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 02:06:41 ID:HHKc2cEn
>>497を読み返して思ったけど、
どっちのネタも主人公が有能な怠け者で幼馴染が有能な働き者だとしっくり来るな。
佐藤大輔の読み過ぎか・・・。
508名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 17:27:30 ID:nYsPo8RR
「え!?結婚するの?良かったじゃん!
これで私も安心して旦那さん探しが…できる……よ…
…おめでとう、ありがとう、さようなら」
509名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 20:30:17 ID:Wi6ky+UV
>>508
エープリルフールは5ヶ月と5日前だぞ
510名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 22:19:20 ID:SzCH5N9m
「……>>508みたいな夢を見たのよっ!」
「俺が結婚ねぇ。
 ―でも、そのシチュエーションだと、お前とじゃないよな」
「…そ、そうよ、ね…。
 で、でもそれがどうしたって…言うの、よ」
「あり得ないな」
「えっ?」
「あり得ない。
 だって俺はさ――」
「って、……何、これ?」
「びっくり箱じゃないぜ。さぁ、開けてみ」
「えっ……。
 ――ゆ、指輪…!?」
「はっきりちゃんと言わないと、って思ってた所だったからさ。
 でも、そんな夢の話されちゃ、段取り前倒しだ」
「そ、それって……」
「俺と、結婚してくれ。
 お前と結婚するのは、俺だ。異論は、認めない」
「あっ………うん。…ぐすっ……。
 うん、うん!結婚する…私の旦那様は、昔から――ぐすっ」
「たく。もうちょっと良いシーン、考えてたんだけどな」
「…ううん。今、こうして髪撫でてくれてるだけで、私には…ありがと」
「うん、なら良かった」

気がついたら、書いてた。オチはない。続かない。
511名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 23:47:24 ID:pyGP8ibj
>>510
短いかもしれないがGJ!!!
512名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 00:52:44 ID:H1l8jI0K
>>510
ニヨニヨした。
513名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 10:33:34 ID:cykOKQcU
こんなプロポーズを受けてみたかった。
異性の幼馴染がいない時点でかなわぬ夢だが。
514名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 10:52:21 ID:8mfR4yoo
>>463
>>498
おお!今日はいい日だなあ
続きも気長にお待ちしています
515名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 21:54:05 ID:Zu8atM9z
>>507
指揮官向き+参謀向きの組み合わせだからなそれ
516名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 22:35:14 ID:C9QzNb3N
怠け者って指揮官向きなのか?
517名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 23:48:02 ID:2dRMyHB8
518名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 23:51:57 ID:Pr2QKT5N
細かく指図されると柔軟な作戦がとれません。
働き者の指揮官は命令を遵守しようとして柔軟な対応がとれません。
ワーテルローの戦いのグルーシーとか。
519名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 23:57:00 ID:Pr2QKT5N
ハンニバルは怠け者だったので、15年もイタリアに居座ってローマをイライラさせました。
520名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 00:10:20 ID:R8zhzJ5x
>>516
海堂尊の猫田看護師を思い出した。
521名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 02:03:47 ID:ou0U96AN
・小さい頃から一緒にいる相手には恋愛感情が芽生えにくい
・生物は自分から遺伝的に遠い異性を本能的に選ぶ

遺伝的に遠い幼馴染でもないとダメなんだろうか…ううむ
522名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 04:19:26 ID:fsi4LQus
本能的ねぇ・・・

なんかのニュースで
いざ結婚しようとしたカップルがkwsk調べたら生き別れの兄妹だったってあったぞ
523名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 10:08:24 ID:TaSCM6do
若い頃に精子バンクに登録した男が、年食ってから若い子と結婚しようとしたら、
その相手の両親が精子バンクを使ってて、実は親子だったので泣く泣く離婚とかあったしな
524名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 13:02:27 ID:KxJrmuBE
マジレスすると与太話。人間にそんな本能があるとは証明されていない。

近親婚・恋愛への嫌悪感は、文化的な要因によるものが大きい。
アラブのあたりではいとこ婚が極めて盛んだったし、日本でも「いとこの味は鴨の味」とか言われたが、
中韓などの儒教文化圏では血の近いいとこは恋愛対象外。
525名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 13:17:49 ID:uK/K6lLl
このあたりが分かりやすく説明してるんじゃないでしょうか。

ttp://d.hatena.ne.jp/yahara/20071209
526名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 16:33:00 ID:PavH1BbK
幼なじみがいてもすごい美人とかじゃないかぎり恋愛感情は芽生えないと思うよ、実際いるけどお互いに飲み友達としか思ってないもん。
527名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 17:16:27 ID:4iL7at11
>>526
相手はそう思ってないかも知れんぞ。
528名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 17:17:25 ID:KxJrmuBE
>>526
そりゃ完全に否定できるわ、実体験で。
俺が好きだった幼なじみは顔は並だが気っぷのいい鉄火肌で、いつのまにか好きになってた。
ちなみにその女、専門学校出てから、俺の友人(それも幼なじみ)と付き合ってもう二年になるんですけどねww

さらに、中学までさかのぼれば、馴染みカップル何組もいたし。
保育園幼稚園が一つの田舎だと、同学年はみんな幼なじみだぞ。
そん中でまったく恋愛が起こらないと本気で思うかい?
529名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 18:10:05 ID:GHKcwrUB
年頃の娘が父の匂いを嫌うのは、本能だってテレビでやってたな。
ヒトの女は、男の体臭から自分からの遺伝的距離が判って、最も近い異性である父の匂いは、最も臭い匂いだって。
530名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 18:42:38 ID:JwEDJ2YE
>>529
妊娠中は父親の臭いが安心するみたいだけどね。
531名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 18:46:56 ID:GHKcwrUB
>>530
もう妊娠の心配ないからな。
532名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 19:09:29 ID:uK/K6lLl
この記事もいちおう中立的に書かれているような。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AF%E5%8A%B9%E6%9E%9C

仮に事実だとしたら再会系幼馴染が最強ということなのか。
533名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 22:39:33 ID:Y6kCV+Vq
幼馴染談義はともかく、リアル体験談はいらないって何度書かれたら理解するんだろう
534名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 23:45:53 ID:BoIQKaur
二次元や文章の中の幼馴染が最高ってことだ、上京した幼馴染が田舎に帰ってくるとか最高に萌える
535名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 00:40:48 ID:Bcs5uXJJ
君らなら転勤族の悲しみを分かってくれるだろう?
野郎でもいいから欲しかったよ幼馴染。
536名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 15:59:40 ID:Q5aANdEF
>>534
幼なじみが田舎から追っかけて上京してくるのも良いぞ
537名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 22:34:00 ID:ZkXgvqQk
>>535
各地にフラグを立ててきたと…
538名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 22:48:58 ID:5Vn69XRm
なんともセンチメンタルなグラフィティですね
539名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 06:43:27 ID:CD0S9bZy
つまり死ぬ、と
540名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 16:52:07 ID:BYbz3Pio
>>537
各地の幼馴染みが一斉に集まって来てハーレムですね。
541名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 18:19:12 ID:6hFmsOkW
北海道弁と東北弁と下町言葉と名古屋弁と京都弁と広島弁と九州弁と沖縄弁でいっぺんに迫られるのか
542名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 18:49:24 ID:PvA+u8mA
暗黒太極拳を披露するんですね
543名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 02:26:24 ID:9K5ubJ9A
>>541
emiru語は宇宙語
544名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 03:36:46 ID:4/QxIcUU
>>540
それなんて幼なじみと甘〜くエッチに過ごす方法?
545名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 11:03:46 ID:aQbSWJ66
そろそろ狐が、タイツ履いた足で、顔とかチンコとか踏みつけるシーンが出てきても良いと思うんだ!!
546名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 11:04:20 ID:aQbSWJ66
ごばく
547名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 11:33:59 ID:LEcjS/MA
キツネ幼馴染みのタイツプレイとは何とマニアックな
548名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 11:45:22 ID:eqBYLv+k
天国に涙はいらない
にいたな、狐幼なじみ
549名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 16:52:40 ID:N18skGce
>>546
お前は羽衣狐スレも見てるだろ?
550名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 19:22:16 ID:yR+LnHYj
>>549
即神剤
551名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 22:35:04 ID:O8aopZmV
>>548
あやかしびと(エロゲ)でも狐幼馴染いたな
552名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 23:13:09 ID:IfIesKyF
>>549
エロパロにあるかとおもって探しちまった
553名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 23:28:03 ID:g9DgaUEM
>>552
ぬらりひょんの孫でエロパロ 4鬼目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1241448090/
554名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 00:50:37 ID:TBJntFi7
>>553
なにそのきつねこわい

幼馴染みと言えば、幼い頃の結婚の約束ネタは外せないよね!
555名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 01:25:31 ID:SX+hg9ME
>>554
女の子だけ律儀に覚えてる展開とか最高だな
556名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 07:19:41 ID:TBJntFi7
ロリショタスレに良い幼馴染みものが投下されてるな。
557名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 08:57:58 ID:S7KVDZZy
>>555
男はきれいさっぱり忘れていて、それが原因で泣かせてしまうってのも良い
558名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 15:11:41 ID:O5kC4N3d
まとめるとドラゴンボールは最高だと
559名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 15:52:59 ID:+kzyWpKC
ド、ドラゴンボールか……
待てよ、そういや幽々白書も北斗の拳も幼なじみものじゃね?
560名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 16:35:31 ID:1Ym56hYf
>>559
幽白は謝罪の度にプロポーズ。
561名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 23:38:09 ID:J0a4J4HL
>560
あれは、よいものだ
562名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 00:00:34 ID:6Mgt4E8Y
1巻当時と随分変わってるなあの二人は
563名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 22:43:05 ID:0SI/8iGN
幽白絡みでしっかり者の幼馴染みとしてメダロットのアリカを推したい
アニメはアレだったけどゲームじゃすごいんだよ?
564名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 23:52:10 ID:IT5Nmmzh
>>563
お前とはいい酒が飲めそうだ
565名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 00:52:21 ID:ZewZ21k7
幼なじみの乳汁で造ったお酒を呑みたい
566名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 02:26:53 ID:uZFPgwzx
>>565

――と、耳かきされながらぼそりと呟いたら、耳をつねられた。
痛いじゃないか、と抗議したが、今度は頬をつねられた。
頬を染めて怒るのは可愛いが、如何せんちょっと痛い。
腹立たしいので、耳掃除が終わる頃合いを見計らって、押し倒してやった。
組み敷かれて、豊かな胸を揺らしながら乱れる様はなんとも言えず素晴らしい。
今夜こそ孕ませてやろう。
567名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 02:40:32 ID:5dxw1l0j
>>564
わかってくれる奴がいたw
結構前にスレ荒れてなくなって悲しんだが幼馴染みだしこっちに書いても良いんかな
作品パロはアウトだっけ?

まず書けるかも謎だがorz
568名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 09:20:12 ID:NOkTA6He
幼なじみもの、ってはっきりしてれば書いていいんでない?
自己満で、わけわからん、幼なじみあんま関係ないやん!
ってのは嫌われる傾向にあるけど。
569名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 14:17:03 ID:KGaxlhDt
>>566
GJ
570名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 10:38:58 ID:qtZwUImE
幼馴染欲しいな〜
571名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 11:50:40 ID:USszHHnj
努力や才能で手に入れられるものじゃないんだよ、幼なじみという存在は。
凡人でも頑張れば東大に行けるかもしれない。才能があればビル・ゲイツになれるかもしれない。
だが、可愛くて自分にラブな幼なじみを持つことだけはできない。
それ以外の属性持ちの女性ならば、世の中にはたいていいるというのに。

だからこそ幼なじみには希少価値があり、斬られるほどに羨まれるんだ。
572名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 12:27:48 ID:Dt3yKvoi
「秘密基地てヤったことは秘密……だよね?///」
573名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 17:44:30 ID:j5ZTfg+B
どのくらいで知り合ったのを幼馴染というんだろう、幼稚園とか小学校低学年か?
574名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 22:33:31 ID:wA0qGNe2
>>571
> だからこそ幼なじみには希少価値があり、斬られるほどに羨まれるんだ。
斬るとは物騒なw
575名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 23:35:46 ID:PFdF7AMG
ねんがんのおさななじみをてにいれたぞ

ぶっころしてでもうばいとる
576名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 02:01:17 ID:2Ke99LVu
>>574
ラノベ板関係ネタと思われる。

2ちゃんラノベ板幼なじみスレは「幼馴染推奨」スレと
「幼馴染は禁止!」スレの二派に分かれており、常に幼なじみ禁止スレのほうが賑わっている。
禁止スレの者たちは「何故俺たちには幼馴染がいないのだ」という世の理不尽さに血の涙を流すがゆえに、
「羨ましくば斬れ!」を合い言葉に幼なじみラノベ撲滅委員会を結成した連中で、
馴染みの出るラノベを検閲し、それらをスレ内で細かく報告し、「最危険」〜「推奨」まで何段階かにわたる指定表を作成している。
馴染みカップルが結ばれるか、いちゃいちゃしてる作品は危険指定される。
逆に幼なじみが当て馬とか結ばれないとかの作品は「推奨作品」とされ、検閲の必要なしとされて回避される傾向にある。
(少々ややこしいが、禁止スレの推奨図書=推奨スレの地雷図書、禁止スレの危険図書=推奨スレの推奨図書である)

新たな危険図書がないか禁止スレ住民は目を光らせてチェックしており、
同志により危険図書が報告されたら、それを即座にみずから検閲するべく本屋におもむき、容赦なく撤去する。(なお、撤去時にきちんと金は払う)

綱紀は厳粛なもので、うっかり幼なじみいちゃらぶ展開を称える・望むレスを書き込んだ場合、
推奨スレの回し者とみなされて「秘剣・馴染斬り」のAAをもって斬られる。
対立している幼馴染推奨スレはじめ、よそのスレにて幼なじみ賛美を書き込んだことがばれたIDも斬られる。
綱紀は厳粛なはずなのだが、うっかり本心を漏らし……いや、迷い言をほざいて斬られる奴が毎日のように出る。

なお、推奨スレの回し者が絶えないのは、禁止スレと推奨スレの住民が完全に同じだからであると囁かれている。
577名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 05:43:11 ID:SUm4h4SM
>>571
見つけたぞ、きさまっ!!!


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──―───‐\  \ `ー'"´, -'⌒ヽ──────‐| |  /‐─‐/ | |
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「禁止!」スレで言えない本心をエロパロ板でぶちまけるなど笑止千万
幼なじみに堕ちた裏切り者め!
578名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 05:44:34 ID:4bc+QuUa
郷に入りては郷に従え
>>577よ、生きて帰れると思わぬことだな…
579名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 07:00:04 ID:7gzW9gjK
────────‐───────────−─── ─-
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──―───‐\  \ `ー'"´, -'⌒ヽ──────‐| |  /‐─‐/ | |
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─────‐ /( ノ ヽ、_/´  \―────‐──‐∪ ./──,イ ∪
────‐ 、( 'ノ(     く     `ヽ、 ―────―‐| /−─/|| |
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>>577
どこの禁止スレの禁止委員か知らないが、今のうちに一時撤退するんだ
ここは魔物の巣窟だ
580名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 12:22:22 ID:2Ke99LVu
人斬り幼なじみというジャンルがあってもいいな。
悪代官と結託した大商人に罠にはめられて両親を殺された剣術娘。
夜な夜な辻に立ち、仇を討たんと代官所の者や憎き大商人を探し求める。
しかし、初めて斬りつけた若い男が、寺子屋からの古い付き合いであった彼女を心配する代官所の新米目付で……
みたいな妄想
581名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 17:38:19 ID:4bc+QuUa
時代劇?江戸時代?ネタってあまり見ないね
専用スレあるんだろうか
582名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 18:36:55 ID:CdmXx1ej
時代劇だと同郷が江戸とかで再会して、ってあるな。
583名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 19:13:45 ID:2Ke99LVu
平岩弓枝の御宿かわせみとか、そのパターンが結構あったような。
あの作品は主人公カップルも兄夫婦も仲むつまじき幼なじみだった。
584名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 20:06:10 ID:hf+kwieB
乳兄妹なんてどうでしょう
585名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 20:47:28 ID:CdmXx1ej
兄妹同然で育ったのがある日、とか良いな。
586名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 23:12:07 ID:PdRpQI6G
家が隣同士の幼なじみっていつでも最高だよね
587名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 23:46:44 ID:Xg31PL1b
時代劇物で一つ、エロ無しって言うか、いよいよ本番と言うところで終わっちゃうようなサイズだけはでかいの一つ出来ました。

「見つけたぞ、吉良大和守!。私はお前に殺された長谷川仲蔵の娘きぬ、いざ尋常に勝負せよ」
おきぬは口上を述べると懐剣を抜いた。
それと共に長矩は塩谷家伝統の家宝であるムラサマを抜くと自身も口上を述べた。
「我は助っ人の塩谷長矩」
言うなり長矩は吉良を一刀のもとに切り捨てた。

三年前、長谷川家当主仲蔵は藩の方針を巡る口論を発端として発生した刃傷事件により死去。
下手人である吉良は直ちに藩を出奔、姿を消した。
きぬは生まれたばかりの弟に変わり仇討ちの旅に出た。
その助っ人として長谷部家の同役である塩谷家の嫡男長矩も共に旅立った。
三年にわたる追跡の結果ついに吉良の居場所を突き止めついに本懐を遂げたのである。

その夜、
「長矩様ありがとうございます、これで鉄三郎の家督相続も認められます」
いうときぬは長矩に丁寧に頭を下げた。
「なに、武士として当然のこと。礼を言われるほどのことではない」
口ではそう言いながら長矩の心はこの旅が終わってしまうことを悲しんでいた。
二人は幼馴染みであり、長矩は昔からきぬのことを好いていた。
以前には正式にきぬを嫁にもらいたいと父に願い出たことがある。
だが両家の父が共に反対し不可能となってしまった。
そして長谷川家に待望の嫡男鉄三郎が生まれてすぐきぬの縁談の噂が長矩の耳に入った。
その話が公にされる前に刃傷事件が発生、その話は凍結となった。
だが本懐を遂げたことで、凍結していた話が正式に進むであろう事は想像に難くなかった。
長矩はすこしでもきぬとともにいたいと願い助っ人を買って出た。
だが吉良を討ち、明日にでも代官所の見聞をうければきぬは大手を振って藩に帰ることが出来る。
二人がともにいられる時間はもうほとんど残っていないのである。
588名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 23:48:59 ID:Xg31PL1b
いっそ力ずくでと何度も思った。それはたやすい。なんといってもきぬは長矩に対して警戒心はまったくもっていない。むろん幼馴染み相手だからと慎みを忘れるようなきぬではないが長矩さえその気になれば話は簡単だった。
そして今ならば助っ人の謝礼としてきぬの体を要求することも可能でその時きぬは断らないであろう事は確信していた。
だがまじめなきぬである他の男に抱かれながら許嫁に見えるようなことはしないその時は自害するであろう。
ならばこの思いを胸に秘めせめてきぬが嫁ぎ先で幸せになれるように祈ること。長矩にできるのはそれだけだった。
二人は藩に帰ると殿に謁見を許され、お褒めの言葉をいただいた。そして褒美として吉良家の録を両家に分け与えられた。
そして数日、長谷川家は鉄三郎の家督継承、きぬの嫁入り両方の手続きで大変であった。
そんな時長矩は父長友に呼び出された。

「父上いかなるご用でしょうか」長矩は父に問いかけた。
「そなたの嫁の話じゃ」父の答えは単純明快であった。
だがそれは長矩にとって聞きたい話ではなかった。
「わたくしは長谷川殿の仇討ちより戻ったばかり話が急ではありませんか」
「その長谷川殿の件もあり伸びておったが、話自体はそれ以前から決まっておったのだ」
長矩にとってそれは初耳であった。
「今日は顔合わせだけだが、すでにこちらにみえておる」
「それはあまりにも急ではありませぬか」長矩は抗弁するが、
「そなたもよう知った相手、今更気取る必要もない。それ通せ」長友が言うと侍女が襖を開ける。
襖が開くとそこにはきぬがいた。

589名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 23:51:16 ID:Xg31PL1b
「きぬ・・・」
「きぬ殿じゃ、今更説明するまでもなかろう」
「しかし父上、きぬを我が嫁にと言うのは父上も長谷川殿も反対と」
「そなたいつの話をしておる、当時長谷川家に子はきぬ殿一人ならば婿を取らねばならん、そなたは我が家の嫡男、婿になど出せるはずもない、
だから無理じゃと申した。だが鉄三郎殿が生まれたとなればきぬ殿が我が家の嫁となるに障害は何もない。
よって鉄三郎殿が生まれてすぐ亡き長谷川殿と話おうた。そしてきぬ殿をそなたの嫁とすることで話は決まり、殿にもお許しを戴いておる」
「なぜそのこともっと早くわたくしに申してくださらなかったのです」長矩は抗議をした。
「はて?申しておらなんだか?まあ良いではないか、はっはっは」長友は笑ってごまかし、席を立った。
長矩ときぬは二人でその場に残された。
「まあ、ともあれそなたを嫁に迎えられるのは喜ばしい」笑ってきぬに話しかけた。
だが見ればきぬは明らかに拗ねた顔をしていた。
「どうした、何か不満があるのか?」長矩は訪ねるときぬは、
「長矩様は、わたくしの縁談は知りながら相手が長矩様とはご存じなかったのですか?」そう問いかける。
「う、うむ、存知なんだ」長矩は焦りつつ答える。
「つまり、長矩様は他の殿御に嫁ぐと思っておられた」きぬの声に怒りの色がにじんでくる。
「それは・・・鉄三郎殿の家督の話などもあってだな」
「わたくしはずっと長矩様をお慕いし続けていたというのに、長矩様は私が他の男に嫁ぐと思っておられた、悲しゅうございます」
「きぬ、それはだな」長矩は必死に言い訳を試みる。
「ふふふ、冗談ですよ。怒っても泣いてもおりません、だって長矩様からわたくしを嫁にと思っておられたのですから。でも」
「でも、なんじゃ」
「三年も一緒にいて何もしなかったことは許せません」
「その埋め合わせはこれからじっくりしてやるから安心いたせ」
そういうと二人は唇を重ねた。

590名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 23:54:33 ID:9cYCRajq
GJ
とりあえず吉良大和守で噴いた
591名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 00:34:46 ID:DFoorWH7
斬殺AAウゼェと思ったが、まさかこんな展開を呼ぶとはw
592名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 08:34:28 ID:oukILyk1
>>589
こういう爽やかなのもいいな。
593名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 09:59:34 ID:ZF9qcPFZ
>>587
GJ!!
爽やかで良かった。
594名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 00:02:36 ID:HcP7iAEZ
>>585
昔は兄妹同然だったのが身分の差が、みたいなのが好きな俺は大正あたりが好き
華族と使用人で幼なじみとかな
595名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 03:04:45 ID:jHWAFVOp
代々幼馴染を嫁にする事が家訓の旧家とかあったら面白いかもだなwww
596名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 03:19:04 ID:/iI6PdMO
幼馴染みに許される歳の差って最大でどれくらいだろう。
597名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 03:42:07 ID:dWjbzVLg
むつかしいね
598名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 03:51:23 ID:/AuMnBO8
五歳ぐらい
599名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 03:51:52 ID:7KSl/wYN
流石に5歳以上は、きびしいか…?
600名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 04:09:23 ID:9UCP52Iw
同じ学校に通わないと、それっぽさが出ないから+-2歳くらいがギリギリだと思う。
601名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 04:21:50 ID:jhZQxz+V
>>594
昔っからその妄想している。
無表情無口、天涯孤独な使用人とツンデレ華族のお嬢さんの恋。
お嬢さん、使用人が好きで好きで仕方ないのだが、プライドが邪魔して
いつも冷たくあたっている。
ある時、家が没落してお嬢さんがひひ爺様に嫁がなきゃならなくなった。
前日、お嬢さんが別れの前に抱いてくれとツンしまくりで言う。
無言で獣のように抱く青年。
青年に処女を捧げることが出来、その秘密を胸に鮮やかな笑顔で嫁いでゆくって
ラストまで決まっているんだが、書けないんだよな〜

とりあえず、萌えだけ吐いてみる。
602名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 08:43:45 ID:/pm575PI
>>601
激しく書きたくなったが、
結果としてお嬢様と使用人スレに落とすのが妥当になりそうな予感。
いや、どこに落とすかは問題じゃない。まず書くことが先だ→自分
603名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 12:13:27 ID:jhZQxz+V
>>602
任せた! スレ、チェックして待ってます。
いやー長年温めたネタだから自分で書きたいんだが、時代考証っつーか、
そこら辺の諸々が上手く書けなくて、誰か書いてくれないかな〜と言ってみた。
男は下僕状態、お嬢様に足まで舐めさせられているが、
元々は幼馴染みの仲良しさんです。
604名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 12:22:34 ID:jkeOwJsD
>>596
子どもの時から一緒というのが大事だろうから、最大でも+-10が限界かなあ。
605名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 15:33:45 ID:wDiBV61l
光源氏と紫の上も馴染みになるのか?
606:2009/09/19(土) 18:04:47 ID:coUD1xa+
  
『きゃあぁぁぁぁぁっ!!?』

『ああっ、ホワイトを放せぇぇぇぇぇっ!!!』

『ふっ、ふっ、ふぅっ〜! このザーメン超人、孕ませ大帝に戦いを挑んだのが運の尽きよ!! このペニスで串刺しにしてやるぞっ♪♪』

『ヤメろぉっ!! そんな大きくて、太くて、反り返ったチンチンで突かれたらっ……ホワイトが死んじゃう!!』

『安心しろブラック、貴様もすぐにオレのペニスが入るサイズまでガバガバにしてやる……そらっ♪♪』

『いやあぁぁああぁぁぁぁぁっっ!!! ホワイトォォォォォォッ!!?』




 眠い。俺もガキの頃は見てたと思うんだが……この歳になると、さすがに、な。面白い処か、何故か拒否反応まで出て来る始末。
 つまりは、映画だろうと、アニメは、眠くなる。
「ねぇっ、
607名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 18:05:25 ID:coUD1xa+
って映画を幼馴染みと見たい。
608名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 19:30:32 ID:jkeOwJsD
ジャンルが判らんw
本当に子ども向けなのかw
609名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 19:50:07 ID:jhZQxz+V
>>596
17歳と5歳で、昔はただの親戚のお兄ちゃん(従兄弟)だったのが、
30と18で再会っつーのも萌えないか?
610名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 19:51:25 ID:jhZQxz+V
とか書いたが、厳密に幼馴染みとは言えないか。
611名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 20:23:37 ID:qMCuWCuR
>>609-610
親戚じゃなく近所のお兄ちゃんだったら幼馴染になるんじゃないか?
で、大学進学を期にお兄ちゃんは遠方で一人暮らしすることになり、
就職を期に戻ってきて再会とか萌える。
もちろん別れるまでに
「おっきくなったらおよめさんにしてね!」「うん、大きくなったらな」みたいな
他愛のない結婚の約束はしていてほしい。
女の子のほうは覚えてるのに男のほうは忘れて大学で彼女とか作ったりしてて
すったもんだあったらいい。
612名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 23:41:56 ID:Dt76Eg5b
年の差幼馴染…
最高だな でも5,6年差が限度かなぁ。
613名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 03:43:24 ID:xlWxIHRE
保管庫にあるやつだと最大何歳差かな
記憶にあるのは4歳差だが
614名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 10:57:50 ID:Vf61MDQA
>>611
子どもの頃に遊びで婚約は大事だな。
615名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 11:44:27 ID:kRmMcbCP
>>609
女の子が押せ押せで、男の方はタジタジって関係かな。
大人びた賢いセーラー服美少女と元美少年→疲れてくたびれたオサーン。
ちょっと耽美が入るのとかがいい。
616名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 15:51:50 ID:rpEVBfdM
40近い哀愁漂うおっさんが事故死→若返り(転生)しての幼なじみとのなんやかんやを妄想

幼なじみは超ハイスペ+ツンで、世の中のすいも甘いも知り尽くしたおっさん(主人公)は
自分のちょっと残念な顔面偏差値と幼なじみのハイスペを相対的に正確に計算した結果、初見からアウトオブ眼中を決め込む
反面幼なじみはベタ惚れで若干病んでるツン子
というのを勢威執筆中!期待するな!
                 
617名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 18:38:17 ID:Vf61MDQA
>>616
ロリコン乙彼
618名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 21:15:13 ID:XR4PeENc
つまり中身40男のエセ幼児が、幼女といっしょに風呂に入ったり体洗いっこしたりしてたわけか

犯罪臭がしますです
619名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 22:54:43 ID:jPY8pkbi
「いつも仲良しでいいよね」って言われて
でもどこかブルーになってた

そんな幼なじみ
620名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 01:13:17 ID:ot4TFdkN
何か聞いたことがあると思ったらスピッツの「仲良し」か
歌詞を思い返してみれば確かに幼馴染みっぽいな
621名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 04:12:57 ID:+Ktcz+HI
自分の中での幼馴染み萌えを決定づけたものはガンダムのアムロとフラウ。
あとあだち充だな。
タッチとか。
622名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 07:18:40 ID:EK7ZAssg
遅レスで悪いが>>583
ここでかわせみのタイトルを見るとは思わなかったw
そうそう、主人公とか兄のところだけじゃなく、幼馴染みネタちょくちょく出て来るんだよなあれ。
で、幼馴染み話はバッドエンド率低い気がする。
623名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 10:21:27 ID:+Ktcz+HI
高校生幼馴染みを計画中なんですが、今模試で優秀者名簿って配られてるんですかね?
あったとして、どれくらいの情報が載っているんでしょうか。
分かる方、いらっしゃいませんか?
624名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 13:25:29 ID:LLOiPi/l
>>622
主人公の兄の初恋話はバッドエンド?というか、すごく切なかった記憶が・・・

兄の初恋相手は年上の美しい幼馴染で、子供のころ両思いだったのに二人とも相手の心を知らず、
けっきょく、女性は一度だけ主人公の兄からもらった恋文のような歌をにぎりしめて、
親の言いつけで年とった男のところに嫁いだんだっけ。主人公の兄も(別の幼馴染と)結婚する。

その後、女性が嫁に行った先で火事があって、女性は歌を守るために燃える家に駆けこみ、
顔にひどい火傷を負う。体も弱くなって余命数年の身になる。
それを理由にして白萩の咲く屋敷に一人で暮らすようになり、守った歌を見つめるようにして暮らして・・・

女性が死ぬ一ヶ月前、主人公がふとしたことで屋敷を訪れたとき、その兄のおもかげがある主人公に「歌を燃やしてください」と頼んだのち、
「一度でいいからあの人に抱かれたかった、でもこんな火傷だからもうあの人の前に出られない」とすすり泣き、
主人公に「今だけあの人でいてください」と懇願してすがりつく。抱かれながらも、主人公の兄の名を洩らしつづける。

あの話はすごくもの悲しかった。
625名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 13:27:08 ID:LLOiPi/l
あ、補足すると兄の歌は紙に書きつけられていた。
626名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 13:40:46 ID:BNd4LAZ9
>>616
同級生の幼馴染が事故死して幽霊になったところから話が始まって、紆余曲折を経て成仏
主人公がおっさんになったころに生まれ変わった(記憶残ってる)ってのあったな

エロゲだけどw
627名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 16:29:07 ID:BeeexAAW
>>626
おっさん×大人びた幼女
何それ興奮する。
628名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 21:19:06 ID:ro1eAR43
兄妹みたいに 生まれた時から
おんなじ町でホーホケキョ
口は悪いが器量はそこそこ
何でも言えよ俺でよきゃ
夢を追いかけ木の葉のように
川を流れて海に出ろ
桜花びら散る前に咲いているうちに
629名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 21:54:04 ID:uwyMjQc8
8年ぐらい前にペンギンクラブかキャンディータイムかの4コマであったな
幼馴染の恋人が死んで隣家に生まれ変わって前世の記憶を持っていたっていうのが

あれ誰だったかな……元アリスソフトの……ランス1とか2のころの会社の内情を4コマにしてた……
630名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 23:17:48 ID:cVsY7zm3
漫画の方はわからんが、作家の方は元アリスで会社ネタというとひでSANかな。
631名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 00:11:41 ID:1noJAJMr
恋人だった幼馴染が事故死したあとその幼馴染を模して作った人形に死んだ幼馴染の魂が宿るなんてゲームもあったな
確かその幼馴染と瓜二つの別人まで登場してたはず
632名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 01:18:01 ID:6XA2IsHQ
>>609-611
激しく萌える
女の子が中学生になった頃の話とか凄い萌えそうです。
633名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 01:51:47 ID:7D3QItx0
>>623
学校によっちゃ試験の校内top30くらいを合計点と併せて掲示とかはガチであるよ
バリバリの進学校ならもっと派手にやるのかなぁ
634名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 03:28:09 ID:jWRc9Ovs
>>623
数年前高校生だったときにはあったな
科目別に数百位までのランキングで高校名と名前が載っている
635名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 08:21:44 ID:QvpAHu5X
>>623
数年前まで今となっては悪名高き桐蔭生だったけど、全校テスト(実力テスト)で科目別で50位くらいまで晒されてた
636名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 15:58:47 ID:Ie06i+hT
>>633-635
ありがとうございます。
他校の生徒の予定なので、学内の発表は無関係です。
他校の人間が名簿を見て分かるシチュエーションが欲しかったんです。

実は大学受験サロンで前に訊いたんですが、スルーされました(当たり前だ)
駿台とかのサイトも見たんですが、分かりにくくて。
助かりました。

あとは書くだけだ、自分。
637名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 23:07:06 ID:/LfsZsoD
ひでSANのリトルフィアンセだな。
最終的には幼女の中の恋人の記憶が薄れて普通の子供に戻っちゃう切ないENDだったけど。
638名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 00:00:49 ID:mGmQVRlx
>>623
俺が高校生の頃はあった
模試を受けるときに「成績優秀者に載せてもいいか」という欄があって
OKにマークしたら上位百人だか○点以上だかは名前、在籍高が載る

>>633
学年の1/3〜半分が東大京大に行くバリバリの進学校に行ってたけど
定期テストの結果の掲示すらなかった
進学校といっても放任のとこも結構あるし、
多少偏差値が低くても向上心のある学校は生徒の競争を煽るのに必死なので
1.5流、二流の進学校の方がその辺は厳しそうだな
まあその辺は校風次第
639名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 01:47:26 ID:fOo1UKsM
>>623
河○塾は模試の結果に同封されてる冊子に高校名と名前どころか志望校も出た。
志望校はみんな嘘書いてたが…。
大学入って、見知らぬ人が自分の名前を知ってて驚いたよ。
ちなみに、優秀者は全科目(100番?くらいまで)と科目別(20番?くらいまで)の各部門あった。

>>638
もしやN高か。あそこは放任すぎる。
640名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 01:54:29 ID:yKovqJVH
灘で幼なじみだと?
アッー
641名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 01:54:53 ID:QNIVyjsz
>>639
いや近畿のT高。てかN高は東大ばっか行くから京大にはあんま行かないぞ
642名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 12:05:14 ID:yhOGMAmm
みんないい高校行ってるんだなー

で、幼なじみの話マダー?
643名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 12:36:05 ID:fOo1UKsM
いい高校は男女別学が多い。
近くに住む優子と秀は二人は幼なじみ。塾も秀が行くから優子も行った。
二人とも超優秀で男女それぞれのトップ中学に合格!
しかし中学は別方向で出る時間も違い、だんだん疎遠に……。

とかこういう感じか。
644名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 14:16:40 ID:lJmt4uC9
秀を禿と読んでしまっていた

若ハゲを気にする男とそれを気にしないよと慰める幼なじみ
>>643とコラボしたら変な作品になりそうだ
645名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 15:12:49 ID:froQy6ap
だんだん疎遠になる幼馴染の心を掴んでおくためにお弁当を作り、朝家の前で手渡したものの、
うっかりお弁当にヒジキを入れてしまったために男の心の傷をえぐってしまったのだった
646難関高校+禿幼なじみ=?:2009/09/27(日) 16:49:59 ID:fOo1UKsM
俺の友人に秀というやつがいる。
成績優秀・スポーツ万能・性格もよく顔も並より上。
完璧超人のようだが、神は変なところでバランスをとった。
そう、秀は背が低く……さらに前髪後退型若ハゲなのである。
高校生男子には実に辛い事実。
多少のやっかみも加わって、禿秀といじられる始末。
いじめではないぞ。このくらいの年齢の男には、こういうあだ名がつきがちだ。
俺なんて、エロ外道と呼ばれてる。……お前ら俺の無修正DVDがいらないようだな……。

閑話休題

そんな秀だが、この間俺はびっくりするものを見てしまった。
あの秀が、なんと女の子と一緒に街を歩いてたのだ!
しかもオシャレな美少女。背もすらりと高い……秀と同じくらいか?
そしてその目……どう見ても秀に惚れてた。
バカヤロウ!お前を信じてたのにっ!裏切ったな?僕の気持ちを裏切ったな?!
チビでハゲなくせに美人をはべらすって、お前はマフィアのドンか?!
カッコイイじゃねーか畜生。
俺は早速写メを撮って、仲間全員に送ったのだった。スクープ(笑)。


「あいつはタダの幼なじみだ」
やけに据わりきった目で秀はそんなことを言った。信じられるかバカヤロウ。
「違う!本当に違う!あんな性格悪い女、彼女なわけねーだろ!
 あいつは……昔から、俺のことからかってばかりなんだよっ!
 塾の時も受験する気はなかったのに、俺に勝つために塾に入って……いつも俺に勝って
 わざわざ勝利宣言して嘲っていくんだよ!
 ……なのに親や先生の前じゃいい子ちゃんで……やっと学校が違うと思ったら
 今度は家事の練習とか言って弁当を作るのは……まあちょっとは嬉しいが……
 髪が薄いからってひじきをわっさり入れたり、背が低いからって牛乳を1パックつけたり!
 必ず嫌がらせ、必ず毎日嫌がらせ!何で俺がこんな目に………
 おい、聞いてんのかお前ら?!」
「シンジマエ禿秀」
「何でだっ?!」

まあ、総合して言うと、秀はいい奴で面白くて、神様に愛されたこんちくしょーだってことだ。
ああ、俺も幼なじみ欲しいーっ!
647名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 17:52:43 ID:tKHQfLEP
>>646
ツンデレGJ
648名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 18:46:11 ID:AbZ8oSWb
>>646
仕事早杉ワロタ
GJ
649名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 18:48:04 ID:scR8izeO
>>646
GJ…だが、幼馴染の萌えがもっと欲しかった…
650名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 19:38:42 ID:froQy6ap
もしも「俺」が女の子だったら?
お弁当女よりも早く秀に出会っていたとしたら?
651名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 20:09:20 ID:lJmt4uC9
>>646
GJw
652名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 22:51:53 ID:lJmt4uC9
ふと思ったのだが、こんなふうにシチュをみんなでリレー風味にいじってつなげて〜
していけば、話が出来上がりやすいのではないだろうか。
653名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 01:58:20 ID:KkQpIAoZ
>>646
短編ながらよく書けてるw
GJ!
654難関高校×2+禿幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/09/28(月) 19:09:01 ID:RrFcLCFa
「阿川優子でしょ?知ってるけど?……彼女がどうかしたの?」
ある日、従兄弟の賢が女の子について聞いてきた。
私は思わず顔を強張らせる。
……まさか、阿川さんを見かけて一目惚れとか……そんな話だったらどうしよう。

賢は近くに住む一つ年下の母方の従兄弟。
仲良し姉妹である二人の母親の交流が頻繁なので、私たちも赤ん坊の頃から頻繁に会っていた。
同じく教育熱心な母親たちの影響で、私は全国有数のトップ女子校、賢は全国一のトップ男子校に通っている。
その……ちょっとだけ気になる男の子ってとこである。
……ちょっとだけだからね!好きとかじゃないのよ!
いやまあ、そんなことはどうでもよろし。

「いや、同じ学校だから智恵姉ぇなら知ってるかなあって」
「知ってるもなにも、茶道部の後輩だけど……」
「マジで?!」

よくよく話を聞いてみると、賢の友人の秀くんの恋人未満?な幼なじみだということ。
……よかった、賢の話じゃなくて。
しかし、ふふふふふ。あの真面目な阿川さんが、そんな面白い恋愛ネタを持ってたなんてっ!!
明日早速つついちゃろ。楽しみーっ!
655難関高校×2+禿幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/09/28(月) 19:09:55 ID:RrFcLCFa
拍子抜けしたことに、阿川さんと秀くんの話というのは、一部では有名だったらしい。
考えてみれば、彼女と秀くんは同じ濱望塾出身で、うちの学校には濱望塾出身がうじゃうじゃいるのだった。
私と賢は鹿渕塾出身だから知らなかったけど……。
まあ、気を取り直して、ここは先輩の特権!強制コイバナの時間だぜイエーイ!


「秀くんは昔から素敵だったんです。
 私は成績だけで運動音痴なのに秀くんは文武両道。
 野球ではリトルリーグの監督さんがチームに入ってくれと頭を下げるほど。
 頭もすっごく良くって、小学生なのに高校の数学やってたんですよ。
 私も数学だけは一度も勝てなかったんです。
 それでいて女の子は絶対いじめないし、私が上の学年の子にいじめられた時は
 ものすごく怒って立ち向かってくれたんです!……ボコボコにやられてましたけど」
それは怒涛のごときノロケだった。
なんだか虚しくなり、真っ赤な顔でマシンガンのごとくノロケを垂れ流す彼女を制止しようとしたとき
ふう、と彼女はため息をついて憂い顔になった。
「でも、秀くん、鈍くって……私がアプローチしても気付いてくれないんです」
「……男の子って、基本的に鈍い生き物なのよ」
反射的に答え、私は賢を思い出す。
……いやいや、何で賢なんか思い出すのよ?!
「先輩もそう思いますか?!」
阿川さんはパアッと笑顔になって私の手を握った。
切れ長で整った綺麗な目。高い鼻に形のよい唇。
女の私でさえ見とれそうなこんな美少女にアタックされて気付かないとは、秀くんはどれだけ朴念仁なのか。
「ええ。阿川さんにアタックされて気付かないなんて男はバカヤロウよ
 でも、阿川さんのことだから、慎ましすぎるんじゃない?
 もっとわかりやすくアプローチするとか……」
それは素朴な疑問だったのだが、彼女の答えを聞いた私は、とりあえず絶句することになる。
656難関高校×2+禿幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/09/28(月) 19:10:36 ID:RrFcLCFa
「私、とりあえず秀くんとはなるべく一緒にいられるように努力してます。
 塾にも、秀くんがいるから行ったんです。
 それから、いつも塾の先生は賢くて尊敬できるし、友達と競うのも楽しいって言ってたから、
 私も秀くんに尊敬されたり楽しいって言って欲しくて勉強も頑張ったんです!
 なのに秀くん、だんだんよそよそしくなって……」
それはそうだろう。
阿川優子の優秀さは他塾にも轟く程だった。
男というのはプライドが高い生き物である。
可愛い幼なじみであっても、進学塾で成績で抜かされて嬉しい小学生はいない。
「中学も別になって、駅でも反対方向の電車に乗るようになって、中々会えなくなっちゃったんです。
 だから朝起こしに行くようにしたんですけど……。
 お母さんが『優子ちゃんはしっかりしてていい子ねぇ』と自分と比較されるのがイヤだから
 やめてくれって言われて……」
多分秀母は阿川さんを褒めたつもりだったのだろうが、どうやら運悪く、
中学生男子のプライドを傷つけてしまったらしい。
「それで、家事なら男の子は比較されにくいだろうと思って、お弁当を作ってあげることにしたんです!
 共働きだからお弁当がないときが多いみたいで、秀くんすごく喜んでくれたんです!
 だから私頑張って、栄養バランスも味も完璧なのを目指してるんです!
 秀くん、背と髪を気にしてるから、毎日ひじきとかわかめとかのりを入れて、
 牛乳やカルシウムもたくさん摂取できるようにちゃーんと考えてるんですっ!」
その努力についての評価は賢から聞いていたが、気の毒で言えなかった。

「そうね。多分……秀くんの中で阿川さんは当たり前の空気みたいな存在になっちゃってるのよ。
 ほら、押してダメなら引いてみなって言うでしょ?
 ちょっぴり引いて反応みてみたらどうかな?」
とりあえずそれっぽいアドバイスをしてみると、阿川さんはものすごく真剣な顔で頷いていた。
真面目でいい子なんだけどなぁ……ちょっぴり暴走しがちなのかも。
でも、そんなところも可愛いなと思う。
「大丈夫よ。阿川さんの思い、きっと通じるわ」
「はい!」
真面目で優秀なだけではつまらない。ちょっと恋に不器用な彼女は魅力的だ。
秀くんも思春期が終わればきっと気付くだろう。彼女の魅力に。
「阿川さんも赤門大学志望なんでしょ?こんどこそ同じ学校に行ければいいわね」
「はい。秀くんは理系だから同じ学部を目指してるんです。
 そして、同じ研究室で共同実験ができたらなあって……。
 下宿も近いといいなあ。ご飯作ってあげたいし、いろんなお世話だって……」

嬉々として未来を夢見る彼女に、私は神に祈らずにはいられなかった。
どうか秀くんが彼女の魅力に気付いて、うまくまとまってくれますように。
そして、阿川さんが暴走して、ストーカーちっくになりませんように……と。
657難関高校×2+禿幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/09/28(月) 19:11:02 ID:RrFcLCFa
蛇足ですみません。
以上です。
658名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 19:35:12 ID:dpSF3Mvg
>>657
GJ
659名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 21:11:34 ID:iuBViatT
>>657
そっちも付き合いがバレたらえらいことになりそうだなァ、んーケンチャ〜ン???
660名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 03:17:45 ID:prBeClZu
面白い展開になってきたwktk
661名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 17:43:22 ID:b1trMvBz
>>656
なんて可愛いんだ。
どうかヤンデレにならずに、エロエロして欲しい。
662名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 18:16:20 ID:ma0drWCu
赤門大学が例の大学のことなら、進学振り分けがあるから余計に厳しそうだな。
663 ◆q5zSSkwO.2 :2009/09/29(火) 22:13:51 ID:gbpVR4iz
623です。高校生幼馴染みものを投下させて下さい。
まず、今回は序章。エロなし7レス。
NGワードはこちらのトリップで。
664窓越しの恋 愛美1(1/7) ◆q5zSSkwO.2 :2009/09/29(火) 22:17:20 ID:gbpVR4iz
 ゆとり教育って言われていたけど、正直どこがゆとり?と思ってた。
 小学校では普通に楽しく遊んでいたけど、中学では規則は厳しかったし、結構きっちりとやらさ
れた。
 私は将来の目標があったから、ガリ勉重ねて内申上げて、地元トップ高校に入った。
 さあ、これから私の躍進が始まるよ?
 だって、泣く子も黙る名門校。首相も都知事も国会議員も輩出している。企業のトップだって
ざっざく。
 ところが入学式の日、校長先生の話に私は唖然とした。
 ──我が校は、4年制です。
 はい? もしもし? 高校は3年間のはずですよ?
 よくよく話を聞いてみたら驚いた。
 大学へは浪人含めて考えろと。
 それってどういう意味ですか? 学校の勉強だけでは志望校に受からないとでも?
 じゃ、予備校なんてお金がなくてとても無理ってビンボー家庭は、大学諦めろってことですか?
 薔薇色の人生が一気に灰色に。
 私は今まで教科書をきちっと仕上げることでここまで来た。
 うちは悲しいぐらいのビンボーで、塾とか問題集とか、とても無理だったから、教科書を反復し
てきっちりと仕上げて勉強することで、どうにかここまで来たと言うのに。
 私の野望は?
 私の将来は?
 ううう、泣くもんか。絶対に泣くもんか。
 どうにか、きっちり野望を実現してやる!

 そう意気込んでの今回の模試だった。
 はあ。何これ。
 高校受験の時の模試、私の偏差値72だよ? なのに、53。
 正直、こんな問題見たこと無かった。こんな英文、全く読めません。数学、解説読んで驚いた。
この公式、そんな使い方するのぉ?
 戦うための軍資金集めにバイトを入れたことが悪かったの? それでも学校のテストは満点だ。
 浪人なんてお金が掛かりすぎ論外と、現役コースのお金も聞いた。驚いた。
 私のバイト代だけでは到底足りません。
 本屋でぼんやり参考書と問題集を広げる。
 どれを選べばいいんだろ。
 この時ほどゆとり教育を恨んだことはない。だって、結果に同封されていた優秀者名簿には、国
立、私立の名門校ばかりがずら〜りと。
 あの問題でどうやったらこの点を取れると言うの?
 こいつら、バケモノ??
 怒りと嫉妬と羨望を込めて見ていたら、一番上に燦然と輝く名前に驚いた。
「う、嘘ぉーーー!!」
 ヤツの名前は原口紀一郎。
 私の家のお隣さん。
 私の生まれた時からの幼馴染みだった。



 紀一郎と私は、生まれた時から──いや、正確にはお腹の中かららしくて、その事を話すとき、
母はいつもかんらからと笑う。
「いやー、冗談みたいでしょ? 母親教室で一緒になった奥さんが、よくよく聞いたら、お隣さん。
予定日も一緒だなんて!」
 この時の母の話っぷりだって容易に思い出せるぐらいだが、そういや最近この話もご無沙汰だ。
 つか。紀一郎の存在、すっかり忘れてた。
 アイツは中学から私立に行っちゃったし、時間帯も合わなくて、顔も合わせていない。
 すぐ隣に住んでるのに。
 はっきり言って、小さい頃は2階の互いの部屋から話をするし、屋根づたいで行き来したりする、
そんな関係だった。そんな近さだった。
 うーん、紀一郎、どんなヤツになってるんだろ。
665窓越しの恋 愛美1(2/7) ◆q5zSSkwO.2 :2009/09/29(火) 22:19:03 ID:gbpVR4iz
 あわよくば、ちょっとアドバイスを貰おうとセコいことを考えて、私は久しぶりにお隣のイン
ターホンを鳴らしに行った。
 ちょっと間延びした暢気な音の後、ドアフォンから男の人の声がした。
「はい」
 叔父さんかな?
 でもエリートサラリーマンの叔父さんが、平日の夕方に在宅とは珍しい。
「お久しぶりです。隣の斉木です」
「え? 愛美?」
 へ?
 違和感で疑問符を浮かべていたら、玄関が開いた。
 で、でか。
 つか、アンタ、誰?
「愛美かよ。何の用だ?」
「へ? 紀一郎?!」
 裏返った声を上げてしまった。
 し、信じられんっ。
 これが、あの、紀一郎??
 目の前の大男。私が小柄だってこともあるが、どう見積もっても190近い。しかもスポーツマンタ
イプでガタイもいい。
 眼鏡掛けてはいるけれど、私の想像する『模試で全国一位のヤツ』なんかじゃない。
 全国で一位なんてヤツはキモかったり、色白ウラナリだったり、マッドサイエンティストを思わ
せる特異な何かを持っていたり──
 ともかく、常人を逸脱した何かを持っていて、全うな人間性と引き換えに頭脳を手に入れている
──と、勝手に想像していた。
 ところが普通、なのだ。文武両道を旨とするうちの学校にいたっておかしくない。
 普通にイケメン。なんだかモテそう。
 だというのに、私と来たら。
 バイトと勉強に明け暮れ、朝ブローするのが面倒だからとお下げにして、目も悪いけどコンタク
トのお金がないから、眼鏡だし。
 私の方がよっぽどステロタイプなガリ勉だ。神様ズルいぞ。
「何の用だよ。回覧板?」
 ふるふると首を振る。
「んじゃ、おふくろ? 今留守だけど」
 ふるふるふる。
「じゃ、なんだよ」
「お願いがあるの」
「は? ま、とにかく玄関先じゃなくて、上がるか?」
 うんうん。
 紀一郎に促され、ドアをくぐる。
「お邪魔します」
 久しぶりのお隣だ。
 最近は回覧板を持って行ったりする程度だった。
 たまに朝、通学途中に叔母さんと挨拶する。
 私を見掛ける度、叔母さんは「しっかりしてるわ」「綺麗になって」「大きくなったわね」とか、
リップサービスをしてくれる。
 でも私ったら身長は152でそこらの小学生より小さいし、この通りのガリガリ眼鏡だ。
 唯一胸だけは成長したけど、この「伝統的な」セーラー服ではあまり分からないと思う。
 つか、叔母さんが私の胸をじろじろ見るとも考えにくい。
 そんなことはともかく、紀一郎はちょっと迷って自室へ案内した。
 懐かしい。小学生時代は毎日のようにお邪魔してたっけ。
 流行りのカードバトルとか、ゲームとか。いつも一緒に遊んだな。
 紀一郎の部屋は意外と片付いていた。
 さすが全国一位。問題集や参考書も揃ってる。
 私は何気なく「大学への数学」と書かれた雑誌を手に取った。
 ぐへ。難しい。
「で、何の用だよ?」
666窓越しの恋 愛美1(3/7) ◆q5zSSkwO.2 :2009/09/29(火) 22:19:47 ID:gbpVR4iz
「ああごめん」
 雑誌を元通りに戻す。
「あんた、この前のK予備校の模試、一位だったでしょ」
「なんだ、からかいに来たのかよ」
「違うよ」
「じゃあ何なんだよ」
「あのさ、私に勉強教えてくれない?」
「へ?」
 紀一郎は素っ頓狂な声をあげた。
「只で、とは言わない。今バイト代で少しならお金もある。せめて数学と英語。いや、数学だけで
もいいから成績上げたい」
「本気?」
 うん、と頷く。
「あんたも知ってる通り、うちは貧乏なの。予備校通う余裕がない。大学だって国公立じゃないと
厳しい。予備校通うのが必須だと言うなら、特待取りたい。なにがなんでも勉強して、夢を叶えた
い」
 私は紀一郎を見上げた。う。見上げすぎて首が痛いぞ。
「金はいい。だが、条件がある。取り敢えず、模試の結果見せてみ? テスト持ってる?」
「あ。テスト忘れた。結果はこれ」
 哀しい53。
「あー、公立のヤツでこれなら上出来じゃね? お。国語、いいじゃん」
 あんたよりも悪いよ。
「どれができてて、どれができないのか対策立てたい」
「判った。取ってくる」
 慌てて部屋を飛び出そうとした私を紀一郎が手を掴む。
 にやん。紀一郎が悪魔のように笑う。
 嫌な予感。
「何しちめんどくさいことしてんの。俺たちには秘密の通路があるだろ?」
「へ」
「忘れたのかよ?」
 ちょっと、不満げ。
「お前、どうせ部屋の窓の鍵、掛け忘れてるだろ?」
「まあ、お隣に来ただけだし。下は閉めたけど」
「だったら昔みたいにいけばいいだろ」
「あ、そっか。──じゃない! 私高校生なんですけど?」
「いいじゃん。俺の言うこと、聞くんだろ?」
 くそう。忘れてた。
 紀一郎は悪魔のようなヤツだった。
 昔からそうだ。
 私はこいつにいつもパシりに使わされ、命令されていた。
 典型的なガキ大将(死語)。
 私はコイツの第1の子分で手下で仲間だった。
 身に付いた習性ってやつだ。こいつには逆らえない。
「制服なんですけど」
「今どきの高校生にしてはスカート長いな」
 は? セクハラですか?
「大丈夫だよ。お前、相変わらずちっこいし、小学生と変わんねえよ」
 誰か! この人セクハラです。いやこの場合はパワハラ?
 どっちでもいいや。
 ものすっごく、失礼なんですけど?
「あ、そ。やらないの?」
「──行きます。どうかお願いします」
 にやん。また悪魔の笑み。
 ううう。高校生にもなって、スカート翻して窓づたいに出入りする羽目になるとは。
「あ、これから来るのもここからな。お前の部屋って正司と区切っただけだし、俺は行けねえから」
「え? 玄関からじゃダメ?」
667窓越しの恋 愛美1(4/7) ◆q5zSSkwO.2 :2009/09/29(火) 22:20:22 ID:gbpVR4iz
「おふくろが邪推するだろが。とにかく、俺に教わりたかったら、大人しく従え」
 相変わらずの『俺様』だ。
「解ったか?」
「はい」
 私はもしや、悪魔に魂を売り飛ばしてしまったんじゃなかろうか。



「はい」
「おう」
 テストを渡す。さっと見て、ごそごそと問題を探す。
「基本は出来てるな。ミスも少ない。だから50を越えてる」
「うん」
「はっきり言って、演習不足。参考書と問題集、何使ってる?」
「何にも」
「へ?」
「だから、何にも。うち貧乏だから、なるべくお金使いたくなくて、教科書反復して解いてる」
「はあ〜そりゃあなあ」
「何か悪いの?」
「お前、志望校は?」
「××国大」
 うちの県の、いわゆる駅弁大学。
 旧帝と言われる名門は、はなから諦めているし、それでもちょっと無謀だとは自覚してる。
「まだ2年だろ? 教科書だけでこれだし、お前、俺と同じ大学目指してみないか?」
「え。まさか……」
「うん東大」
 コイツは、コイツは、本当にこういうヤツだった。
 チェッシャーキャットみたいなニヤニヤ笑いが、目を白黒させている私を、遥か彼方から見下ろ
していた。

668窓越しの恋 紀一郎1(5/7) ◆q5zSSkwO.2 :2009/09/29(火) 22:21:01 ID:gbpVR4iz
 今日は部活なし。塾もないから、暇だ。
 暇だったから数学解いてたら、インターフォンが鳴った。
 なんだ、宅配便か?
「はい」とドアフォンに出たら、懐かしい声がした。
「お久しぶりです。隣の斉木です」
 嘘。信じられん。
「え? 愛美?」
 俺は慌てて腹を掻いてたTシャツを引っ張り、ジーパンを上げた。
 玄関ドアのレンズ越しに確認する。
 間違いない。愛美だ。
 はやる心でドアを開ける。
 斉木愛美のちっこい姿がそこにあった。
 俺の隣のうちに住み、お袋の腹の中にいる頃からの幼馴染み、誕生日も一緒で、中学で別々にな
るまでずっと一緒だった、俺の子分。
 俺の初恋の相手だ。



 愛美は昔っから面白いヤツだった。
 まず、女の癖に喧嘩っぱやい。気が強くて男前。
 なのに身体は細くて、ちっこい。むちゃくちゃちっこい。
 以前アイツをマメと呼んだことがある。無論、顔を真っ赤にして怒っていたが。
 いや、食べる豆じゃなくてマメシバのつもりだった。
 小型犬のようにキャンキャンして、俺の後に付いて回る。
 当時短くしていたふわふわした髪がまた犬っぽい。
 可愛さ余って毎日からかって、毎日引っ掻き回していた。
 でもそんな蜜月はあっという間に終わる。
 俺は親になんとなく連れて行かれた、男子校の体育祭に惚れ込んで、ここに通うと誓って、それ
を実現させた。
 東大にクラスの半分ぐらいが合格する天下の青海中学だ。
 学校は楽しかった。
 俺みたいな自分の力を持て余したヤツから、一途で真面目なヤツ。物凄く変で変なところが最高
なヤツ。
 個性の塊のような奴等が伸びやかな校風の元に6年間を積み上げる。
 次第に学校だけじゃ物足りなくて、親に頼んで塾にも行く。
 中学受験で実感したが、塾は楽しい。
 色んなヤツがいるし、勉強も面白い。
 それに俺はどうやらこういう競争に向いている。
 競争を楽しみ、楽しむことで己を研く。

 だが、ある日ふと立ち止まった。
 何かが足りない。
 小学生の頃の輝かしい冒険の日々に比べ、今のなんて侘しいことか。
 何が不足か分からず悶々としていたら、なんだか星が見たくなった。
 窓を開け、外を見る。
 すると目の前にはアイツの部屋。
 夜中の3時になろうかとしているのにまだ灯りがついていた。
 たったそれだけのことなのに、俺の心は満たされた。
 俺は、アイツの部屋の灯りが消えるのを確認してベッドに入った。
 久しぶりに夢も見ずに熟睡できた。

 それからというもの、寝る前の僅かな時間、煙草をふかしながらアイツの部屋を眺めるのが習慣
になった。
 椅子の軋む音、たまに唸る声等を聞いてから寝る。
 たまに俺の方が遅くて、アイツの部屋が暗かったりすると気が抜ける。
 ある日、いつものようにぼんやりとアイツの部屋を眺めていたら、暑いせいか薄手カーテン一枚
だった。お陰で、アイツのシルエットがよく見える。
669窓越しの恋 紀一郎1(6/7) ◆q5zSSkwO.2 :2009/09/29(火) 22:21:34 ID:gbpVR4iz
 全く、年頃の娘の行動じゃない。
 俺の部屋からしか見えないからいいが、全くもってけしからん。
 よく考えてから行動してもらいたいものだ。
 それでもしっかり見ていたら、アイツの身体のラインに気が付いた。
 アイツ、胸がでかい。
 俺の中のアイツは小学生の姿のままだから、胸だけ巨乳。
 それってなんてエロゲ?
 その晩、俺は生まれて初めてアイツで抜いた。
 だが、賢者タイムの虚しさと脱力感には物凄いものがあった。猛省した。だから一度だけだ。
 俺はアイツを、自分で思っていた以上に純粋に、真剣に想っていたのかもしれない。
 何せ小学生時代からの恋だ。性欲とは無縁で、だからこそ純粋だ。
 今の愛美に会いたいと思う。だが、会いたくはないとも思う。
 そのアンビバレンツ。
 彼女の今に興味はあるものの、大切な思い出を壊したくはない。
 だから、この窓越しが丁度いい。
 窓越しにアイツの息遣いを確認しながら眠りにつく。アイツの笑顔の記憶が心に火を点す。



 そんな日々を送っていたら、愛美がいきなり押し掛け来た。
 なんと愛美は、俺に勉強を教えてくれと言う。英語と数学の成績上げたいからと、ケチなこいつ
が金まで出すと言い切った。
 ま、マジかよ。信じられん。
 出来すぎたジョークと思ったが、どうやら本気らしい。
 俺は改めて、愛美を見つめる。
 相変わらずちっこい。が、可愛くなった。
 小学生のような小柄な体躯に細い四肢。抱き締めたら壊れてしまいそうだ。
 色白で繊細な、コケティッシュな美貌を、眼鏡とお下げが台無しにしている。
 そのアンバランス加減が絶妙だ。
 夏物らしい、白地に水色の襟、黒いリボンのセーラーを着ていた。襞のあるスカートは紺。昔の
女学生のように膝丈だ。白のハイソックスが眩しい。
 だが外見だけは変わったが、中身は昔のままだった。
 相変わらず、無駄に元気でパワフルで面白い。
 こいつ。変わっていない。そう思うと、妙に嬉しかった。
 昔のようにヘッドロックをかけて髪をぐしゃぐしゃにしてやりたい。
 あまりの嬉しさにニヤニヤする顔を引き締める。いかんいかん。
「金はいい。だが、条件がある。取り敢えず、模試の結果見せてみ? テスト持ってる?」
 と、一応言ってみた。
 本音はこのチャンスをいかに生かすか。
 また、愛美と一緒に遊びたい。今回はそれが『勉強』ってだけだ。
 俺にとって勉強は遊びの一種だから、この場合間違ってはいない。
 愛美の差し出す成績表を見る。
 よく分かんないけど、普通の公立の奴だったらこんなもんじゃね?
 つか、国語は良くできてるよ。これが一番成績上げるのが難しいんだ。
 多分、これが取れてるってことは、読解力はあると言うこと。
 ならば、対策は意外と簡単かもしれない。しかし、時間は掛かるしハードで愛美は大変かもしれ
ないが。
「どれができてて、どれができないのか対策立てたい」
 取り敢えず、解答用紙を見てみないとな。
「判った。取ってくる」と慌てて部屋を飛び出そうとした愛美の手を掴む。
 イタズラ心が沸いてきた。
 そうだよ。この感覚。
「何しちめんどくさいことしてんの。俺たちには秘密の通路があるだろ?」
「へ」
 間抜けな声をあげる愛美が可愛くって仕方ない。
「忘れたのかよ? お前、どうせ部屋の窓の鍵、掛け忘れてるだろ?」
670窓越しの恋 紀一郎1(7/7) ◆q5zSSkwO.2 :2009/09/29(火) 22:21:58 ID:gbpVR4iz
「まあ、お隣に来ただけだし。下は閉めたけど」
「だったら昔みたいに行けばいいだろ」
「あ、そっか。──じゃない! 私高校生なんですけど?」
「いいじゃん。俺の言うこと、聞くんだろ?」
 ああもう、可愛すぎ。からかいたくなる気持ちが止まらない。
 だからコイツに俺の気持ちがずっと伝わらなかったんだけどさ。
 だとしても、俺はコイツで遊ぶことはやめられない。我ながら悪趣味だ。
「制服なんですけど」
「今どきの高校生にしてはスカート長いな。大丈夫だよ。お前、相変わらずちっこいし、小学生と
変わんねえよ」
 我ながら、心にもないことを。
 最も、屋根づたいのこの通路は外からは視角になっていて、見えないことも計算済みなんだが。
 そうじゃなかったら、誰が大事な幼馴染みを行かせるか。
「あ、そ。やらないの?」
「──行きます。どうかお願いします」
 ふむ。とうとう屈伏したか。意外と早かったな。ういやつ。ういやつ。
 結局俺は何だかんだ言って、愛美にここへ通わせる約束を取りつけた。
 まあ、コイツの部屋は弟の正司もいるし、愛美が来るのが一番妥当だ。
 俺が屋根に登ったら、なんだか壊れそうな気もするし。
 愛美を見つめる。
 すっげえ可愛い。どうしてくれよう、この気持ち?
 胸が妙に沸き立ち、鼓動が速くなる。
 暴走しそうな凶暴な感情が腹の奥から込み上げる。
 コイツ抱き締めて、啼かせたい。直接的な欲望を覚えた。
 誰よりも大事でずっとその息遣いを見つめるだけの恋は、今ここに肉体的な欲望も伴ったものへ
と変化した。
 その自覚は、俺にとってこの恋を狂おしいものへと変えた。
671名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 00:22:10 ID:lmijt7eU
これは続きが楽しみ
672名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 00:35:34 ID:DpaUSoc/
>>664-670
これは続きに期待せざるを得ない。GJ!
673名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 00:39:52 ID:j/YMxM96
GJ!先が楽しみだ。
657が西の優秀幼なじみならこっちは東(学校名から推定)の優秀幼なじみだな。
674名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 05:09:44 ID:sFifhmbE
GJ
続き待ってます!
675 ◆q5zSSkwO.2 :2009/09/30(水) 06:58:15 ID:F8ybzBxB
ありがとうございます。
すみません、訂正箇所がいくつかありました。
愛美の名前にルビです。(まなみ)これを(2/7)の8行目の愛美の後ろに挿入。
(5/7)のインターフォンをインターホンに。

じっくりと、いずれエロパートまで持って行けたらと計画中です。
676名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 22:41:55 ID:cx3XeIZ8
>>675
GJ!
ちょっと時間はあったけれど、恋は続いていたんですものね。
成長した幼馴染へ募る想いも年齢が年齢ゆえに、欲望も伴う、と。
次も楽しみです。
って、原口くん。煙草は二十歳になってから、ですぞ。
677 ◆vAaRO7zj8k :2009/09/30(水) 23:16:28 ID:600souab
難関高校×禿幼なじみの続きを投下します。
NGワードはトリップで。

>>663
GJ!
こっちは模試の流れから派生した分家なので、本家の展開楽しみにしてます。
678難関高校+優秀幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/09/30(水) 23:17:18 ID:600souab

幼稚園で一緒だったその子は、とろくて泣き虫で、いつも自分の後をついてきていた。
その子は、俺にとって、他の誰とも違っていた。
既に字も読め計算もできた自分にとって、他の連中はどこかつまらなかった。
でもその子だけは自分と同じで字が読めて本が好きで、いろんなことを知っていた。
花や虫の生態。星座の由来。宇宙の誕生。歴史の話。二人で話していると、とても楽しかった。
たった一人、特別な子だった。


昔の夢は、少しほろ苦い。


起きてから家を出るまでは同じ手順。朝飯はいつも同じメニュー。
少し神経質といわれるが構わない。手順を変える方がめんどくさい。
鏡の中の自分の一部分……いやまあ髪なんだが……から目をそらし、今日も日課の自己暗示。
まあ要するに『前向きな言葉』ってやつだ。内容についてはプライバシーにつき黙秘。
忘れ物はなし。時間も完璧にいつも通り。ドアノブに手をかけて、少し重い気分になった。

今日も俺は優子と駅まで歩くのだろう。今日は部活のない日で、逃げ損ねた。
俺の家の方が駅に近いから、優子が俺の家の前で待っている。
暑いのに俺が来るまで待っている。昔と同じ、俺の後ろについてくる。
でも、優子はもう、昔のとろくてかわいい幼馴染みじゃない。
相変わらず整った顔立ちはそのまま崩れずにかわいらしく成長。
身長167センチ、モデル並みの8頭身。少し胸が寂しいが、すらりとした体つきはバランスが取れて美しい。
長い黒髪。私服高校の悩みの私服は、金はそんなにかかっていないがさりげなくセンスがいい。
家事も万能。掃除、というか片付けだけは苦手か。性格も……まあ、悪くない、と言ってやっていいだろう。
そして、その可愛い顔の上に乗っている頭脳は、全国トップレベル。
……俺より、上だ。
まさしく、完璧超人だ。……いやになるほど。

いつも俺の後ろをついてきていた幼馴染みは、いつの間にか俺の前を歩くようになっていた。
手を伸ばしても追いつかない。何一つ勝てない。そんな苦い位置に。
679難関高校+優秀幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/09/30(水) 23:18:04 ID:600souab
「あのね、秀くん……お弁当なんだけど、明日から作れないの、ごめんね」
「そうか」
珍しく口ごもりながらすまなさそうに言う優子に、俺はそっけなく答えた。
いろいろ文句もあるが、優子の弁当はそれを上回って美味であったため、実はかなり残念だったが仕方ない。
優子の好意でなされていた習慣なのだから、優子が止めると言うのなら文句を言う筋合いなどない。
しかし優子は、そのそっけなさが不安になったのか、急にそわそわし出した。
言い訳をするように言葉を繋ぐ。
「ほら、二学期に入ったし、来年は三年生だし、忙しくなるしね」
「そうだな」
「それから、ちょっと早く学校に行くことが多くなるかもしれないの」
駅まで一緒に行かなくていいのは、こちらとしても大歓迎だ。
「そうか」
「勉強もちゃんとしなきゃいけないし」
「お前十分成績いいじゃないか」
俺よりも、という言葉を飲み込む。
しかしイヤミのつもりだった俺の言葉を聴いて、何故かまるで褒められたかのように優子は笑った。
「まあね。日本の大学ならどこでも行けるよ。ちょっと頑張れば外国の大学でも大丈夫」
「……そうだろうな」
はっきり言ってくれやがる。俺ですら模試ではB判定をとる時もあるというのに、こいつには全く気負いがない。
事実だからだろう。
「秀くんさ、どこの学部に行くの?」
「……迷ってる」
ずっと数学が好きだったが、俺程度の人間はどこにでもいる。
その証拠に、俺は数学オリンピックで日本代表にはなれなかった。
今年の数学オリンピックに出たのは同じ学校の一つ下のやつで、金メダルをとった。
小さい頃は信じていたが、もう俺は知っている。自分が天才ではないことを。
数学科に行ったところで、研究者として残れるのか。不安の方が大きい。
……それならば同じ理系でも、就職に有利な工学部とかの方がいいかもしれない。
「そっか。決まったら教えてね」
とん、とん、と弾むように地面を蹴って、優子は俺の隣りに並んだ。
俺の顔を照れたような表情で覗き込む。
「一緒のところに行けたらいいなあ」
そう言うと、本当に綺麗な表情でにこりと笑った。
680難関高校+優秀幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/09/30(水) 23:19:26 ID:600souab
瞬間、俺の中で、有り得るであろう未来が像を結んだ。
何の研究をしようとも、俺は優子に負けるのだろう。
優子はきっと、周りの人間も驚くような成果をあげて、それでもそんなことには何の価値もないというように笑うのだ。
そうだろう。優子にとっては、当たり前のことで……。
それがどんなに俺にとって望んでも得られないことでも、当たり前のように、あいつは……。

「それは……やめとけよ」
「……え……?」
優子は信じられないという表情で立ち止まった。
俺も立ち止まり、優子に向き合う。はっきりと言っておかねばならない。そう思った。
「お前は別のとこいけよ。なんだったら、文系とか。
 成績いいんだから、医学部とか。理系なら昔、宇宙が好きだっただろ?天文学部とかさ。
 ……とにかく俺とは違うところへ行け。
 お前さ、なんでも俺の真似しようとするの、やめろよ。そういうの、よくないぞ」
聞き分けの悪い子に言い含めるように、ゆっくりと言う。俺の嫌悪が顔に出なければいい。無表情を装う。
優子は泣きそうな顔になった。
「真似とかじゃなくて、秀くんと一緒に何かすると楽しいの!秀くんがいると頑張れるの!だから……!」

「なんだよそれ……俺は、お前の肥やしか踏み台か、何かかよ!」

瞬間、優子は目を見開き、硬直した。カチカチと歯が震える音がして、全身が震えだした。
言い過ぎた、そう思った。思わず謝罪の言葉を口に乗せかけて……やめた。
だってそれは、きっと俺の本心だったから。
そう、いつもいつも、俺が最初に始めたことを、後ろからついてきた優子が追い越していく。
俺一人なら結構すごいと思えるのに、優子と比べるといつだって見劣りしてしまう。
優子の存在そのものが、いつだってあいつの後ろにいる自分を意識させる。
……一緒にいると、また、同じことになってしまう。
一生、優子の背中を見て生きるのは、嫌だ。

「優子、お前はすごい奴だから、一人で大丈夫だし、自分で将来のことくらい決められるだろ。
 ……お前にとってもそっちの方が絶対いい」
優子は俯いた。
俺は、優子に背を向ける。深呼吸する。目を閉じた。
「弁当、ありがとな。美味かった」
「秀くん……」
「迎えにも、もう来なくていい。いや、来ないでくれ」
「秀くん……?」
「優子、もう、俺に構うのはやめろ。俺は……俺は、お前に何もしてやれない」
「秀くん……?!」
「じゃあな」
言うと、駅に向かって足を踏み出す。
優子が声にならない声をあげて、俺の右手をつかんだ。
一瞬迷い――振り返らずにその手を振りほどいた。
そのまま歩く。
カバンか何かが落ちる音が聞こえた。
優子が俺の名前を叫んでいる。
それでも、俺は、振り返らなかった。

泣きたかったけど、泣かなかった。俺にはその資格はないと思ったから。
681難関高校+優秀幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/09/30(水) 23:21:09 ID:600souab

小学校で自分はスターだった。
足は学年で一番速かったし、野球はいつも4番。サッカーは得点王。体操も得意でバック転もお手の物。
俺の初恋の子は、いつも自分の後ろで声援をくれた。
そして成績は学年一番。
その子も頭がよかったから二人で一番だったけど、それはそれでよかったんだ。
小学校のテストは、100点をとるのが当たり前で、それより上はなかったから。
喧嘩は好きじゃなかったけど、負けるのも嫌いだったから逃げたりはしなかった。
年上の学年のやつが運動場の使用権をめぐってその子のいる女の子グループに因縁をつけたときは、
必死に立ち向かった。
俺一人じゃなくて友人と一緒だったが、ボコボコにされても立ち向かったのは。

そう――だって、好きな子にはいいところを見せたいじゃないか――

「俺って、最悪にかっこわりぃ……」

あれから8年経った今の俺は。
好きな子に、何一つかっこいいところを見せられない男になってしまった。
682 ◆vAaRO7zj8k :2009/09/30(水) 23:21:44 ID:600souab
以上です。
最初の二つ、ageてしまって申し訳ありませんでした。
683 ◆vAaRO7zj8k :2009/09/30(水) 23:30:44 ID:600souab
すみません、訂正です。680の天文学部→天文学科でお願いします。
684名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 00:52:29 ID:rqzQRFK6
>>675
>>683
GJ
最近盛況でうれしい限り
685名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 03:50:57 ID:OaWI2rXK
。・゚・(ノД`)・゚・。 禿くん……がんばれ……
686名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 06:00:34 ID:ZEr81Red
せつねぇ展開になってきた!!
687名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 17:26:20 ID:+ONSEacr
>>679
何やっても勝てないなら、セックスで勝てばいいんだよ!
688名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 21:02:18 ID:hf86omXd
>>683
GJ!
ホント切ない展開だ。
頑張れ、男の子!
そして、そんな彼をちゃんと見ていておくれ、女の子!
689名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 23:43:31 ID:W2QLE8ZE
切ない・・・
頑張ってここから萌える展開にしてくれ!
690名無しさん@ピンキー:2009/10/02(金) 00:16:41 ID:aYbFrnIK
名作の予感
691難関高校+従姉弟幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/03(土) 00:47:14 ID:kftFm6N3
俺が最初に秀と会ったのは、受験の最終日だった。
緊張していたのか、リュックのチャックを閉め忘れた俺が中身を床にバラまいてしまったとき、手伝ってくれたのが
秀だった。
次に秀と会ったのは入学式の日の教室で、あいつが『伊藤秀』で俺が『宇野賢』だったから隣りだった。
それからずっと同じクラスで4年半。俺たちの年代では、結構長い付き合いに入ると思う。


最近、秀は絶好調だ。
うちの学校は赤門大合格率全国一位という名に恥じず猛者ぞろいである。
特に理系のテストなんかは他校が目をひん剥くほどの難易度なのだが、その物理で満点をとりやがった。
もうクラス中フィーバーである。『禿秀しんじまえーっ!』『禿のくせに生意気な!』などの祝福の声をバックに、
教壇に立った秀は、寂しい前髪をファサリと……いや、ハラリとかきあげて叫んだ。
「お前ら!満点とりたきゃ禿げてみろ!」
自虐ネタは関西人の必修科目である。
『俺は満点より毛根を選ぶ!』『エロいんじゃハゲ!』という意味不明な声援が飛び交う中。
秀は右手をあげてオバマ大統領のように「Yes! We can!」と叫んだ。

最近、秀は変だ。
いきなり弁当がパンに変わったと思ったら、しばらくしてまた弁当を持ってきた。
男子高生御用達のドカ弁の中は、真っ黒だった。
俺は見た瞬間、冗談ではなく思わずうわぁっ!と叫んで椅子から落ちかけた。
正体はぎゅうぎゅうに詰められたご飯の上に敷き詰められた海苔で、
要するに、弁当の中身はご飯と梅干と海苔だけだった。
俺たちがツッコミも入れられず固まっている中、秀は一人で「結構時間がかかるもんなんだよな」と言いながら
弁当を食っていた。

蛇足ながら飲み物は牛乳だった。
俺はそんな食い合わせの昼飯食いたくない。

男の友情は暑苦しいとどこかで聞くが、世の中別にそんな友情ばかりではない。
プライドとコンプレックスがせめぎ合い。表向きと本音でかわし合い。笑顔と冗談のバリアは踏み込みを許さず。
結局秀の奇矯な行動の理由を俺は解明できないまま、しばらく時が過ぎた。
てゆーか慣れた。元々変な奴だったし。

理由を知ったのは、思いもかけない別のルートからであった。
692難関高校+従姉弟幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/03(土) 00:47:58 ID:kftFm6N3
智恵姉ぇから『すぐ来い』とメールが入ったその日は運悪く、塾も部活もなかった。
いや、ないのわかってるからメールが入ったんだろう。智恵姉ぇはそういうの抜かりない人である。
智恵姉ぇの家は俺の家から5駅向こう。駅すぐのマンションである。
勝手知ったる他人の家とばかり油断しまくって部屋の扉を開けたら、客がいた。
それがもー、びっくりするほどの美少女である。これはびびった。
何しろ俺は学校帰り。髪はボサボサ、シャツはだらしなくボタンが外れ、おまけに汗臭く靴下はもっと臭い。
美少女に紹介されるような格好ではなかったのだ。

「あの、智恵姉ぇ、こちらは……」
もしかしたら俺に一目ぼれした美少女を智恵姉ぇがご紹介、なんて心浮き立つしちゅえーしょんなんだろーか、
などと……いや、本気で思っちゃいないがちょっと期待するのが男のサガってやつ。
愛想笑いを浮かべながら、もう遅いけどボタンを留めて髪の毛を適当に撫で付ける。ファブリーズが欲しい。
挙動不審な俺に、智恵姉ぇは呆れるような視線を投げかけて、言った。

「阿川優子ちゃんよ。あんたも名前は知ってるでしょ?」
「ぃえ?!」
まずは意味なく驚いたが、こういうサプライズは嫌いではない。
男だってゴシップは大好きだ。お前らだってそうだろ?
なんだか話がわかったような気がして、うきうきあぐらをかいて座る。
特上に友好的な笑みを浮かべて手を前に差し出した。
「はじめまして。宇野賢です。秀とは5年間同じクラスで友人」
そんでもって俺は特上の地雷をいきなり踏んだらしい。
目の前の美少女は、おそらく秀の名前を聞いた途端。
その綺麗な目を開いたまま、前を向いたまま表情を変えず、涙腺が壊れたのかと思う勢いで泣き出したのだ。

自己紹介で泣かれたのははじめての経験であった。最後にしたいものである。ていうか、普通はない。
女の涙は男のハートに対する最強の武器というが、つまり俺はいきなり出会い頭にいきなり攻撃されたようなもんである。
阿川さんとのつきあいはこれ以降も続いたのだが、何度も吉本に行けと言われたコメディアン体質の俺が、
なんとなく阿川さんと二人で話すのは苦手だなあという思いがいつまでたっても抜けないのは、
絶対この出会いのせいだと思うのだ。
693難関高校+従姉弟幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/03(土) 00:48:36 ID:kftFm6N3

閑話休題。

なんでいきなり智恵姉ぇの部屋に阿川さんが出現したのかというと、こういうわけだ。
最近ぼーっとしてるなあと思ってたところ、放課後、茶道部の部室前で真っ青な顔でうずくまっている阿川さんを
見つけたらしい。
保健室に連れて行こうかとも思ったが、阿川さんはとにかく帰りたいと言う。
そのわりに家には帰りたくないと言う。
これは何か事情があるのだろうとピンときた智恵姉ぇは、自分の家に阿川さんをお持ち帰りした、ということらしい。
「とりあえず、要するに智恵姉ぇがいらんこと言ったせいで話がこじれたと」
俺の非常に的を射たまとめに対し、何故か智恵姉ぇは至近距離で枕をぶつけてきた。暴力反対。
「え、いや、その、江藤先輩のせいじゃないです。引いてみたのには……秀くんは完全に無反応でしたので……
 怒ったのは、一緒の学部に行きたいって……言ったときで……」
阿川さんはおろおろと智恵姉ぇをフォローした後、自分の言葉にダメージを受けたのか、黙ってしまった。
まあ、確かに智恵姉ぇのアドバイスは当たり前のことで、特に間違ってはいないのだろう。
それを受けての阿川さんの実践も、距離をとる、という意味で間違ってはいない。

――そう、問題はもっと根本的なことにあるのだ。

阿川さんの頑張りに対して応えないという意味では秀はひどいやつだと思う。でも、秀の気持ちだってよくわかる。
こんなこと言ったら笑われるかもしれないが、男だってナイーブで傷つきやすい繊細なココロを持っているのだ。
特に俺たち進学校の連中は、日々プライドとコンプレックスの狭間で揺れ動いている。
いや、俺たちだけじゃない。男にも限らないかもしれない。
誰だって、プライドは守りたいし、コンプレックスは刺激されたくない。そんなものだろう。
秀のかたくなさと、阿川さんの鈍感さ。これが大元の原因なのだと俺は思う。
多分、どっちも悪くないし、どっちも問題があった。
秀は被害妄想で後ろ向きな馬鹿で、阿川さんは本当の秀を理解しようとしなかったのだ。
今回のことは、阿川さんの努力の方向が、秀を傷つける結果になってしまった相性の悪さが根底にあって。
少しずつ切り傷をつけられていた秀の心から、とうとう血が噴き出してしまったということなのだろう。
694難関高校+従姉弟幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/03(土) 00:49:42 ID:kftFm6N3

それに、秀の対応はまだ誠実じゃないか?やっぱり友人だから俺が秀びいきなだけかもしれないが。
だって阿川さんの恋愛は盲目的で献身的だ。つけこもうと思えばいくらでもつけこめる。
日常的な意味でも性的な意味でも尽くさせるだけ尽くさせて、その上でいくらでも他で遊ぶ事だってできそうだ。
阿川さんならちょっと優しくするだけで耐えてしまうだろう。
もしくは、阿川さんが自分より優秀なのがイヤなら、『勉強するな、俺の三歩後ろを歩け』と言えばいい。
精神的に抑圧してしまえば、阿川さんを自分のプライドを傷つけない都合のいい女にすることだって可能だ。
もっと言えば、もうかかわりたくなかったなら、ヒドイ言葉で傷つけて、精神的に追い詰めればいい。
上手くすれば傷ついて成績が落ちて、競争相手として脱落してくれるかもしれない。
でも、あいつは真面目で頭が固くてプライドが高くて……いい奴だから、そんなことはしない。
……まあ、もしかしたら、鈍さも完備してるから、自分の存在が阿川さんにとって絶対的なものであると
気付いてないだけかもしれないが。
というか智恵姉ぇはなんで俺を呼んだんだろうね?俺まったく関係なくね?秀の話ったって、恋愛のことなんて
俺全くわかんねーよ?

「私、どうしたらいいかわからなくなっちゃったんです。とりあえず何も考えられなくて、学校に行って部活行って
 塾に行って家に帰って。朝起きたらもうお弁当作らなくていいんだなって思って悲しくなって。
 秀くんを駅で見かけても話しかけられなくて、秀くんが目も合わせてくれなくて。
 ……どうしたらまた秀くんと一緒にいられるんだろうって考えて、考えてもわからなくて。
 私……私、空っぽになっちゃったんです」
阿川さんは俯いて、膝の上でそろえた両手の拳を握り締めた。
それを見て、ばつが悪そうに智恵姉ぇは頭をバリバリと掻く。
「私の責任もあるわよね……」
「というか、智恵姉ぇがトドメをさしたな」
「うるさいっ!」
俺に向かってまたしても枕を投げつけると、何かを決意したようにため息をついた。
「ちょっときついこと、言ってもいい?」
「……なんでも、言ってください」
阿川さんは、すがるような目で智恵姉ぇを見た。
695難関高校+従姉弟幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/03(土) 00:50:35 ID:kftFm6N3

「阿川さんの話を聞いたとき、すごく可愛い恋愛だなって思ったの。報われて欲しいと思った。
 でも、もし秀くんに振られた時、ストーカーにならなきゃいいな……とも思ったのよ」
勢い込んで何か言いかけた阿川さんを、智恵姉ぇは右手をあげて制した。
「うん、私が間違ってた。阿川さんはちゃんと常識もあるしそんなことはしないわよね。
 自分が傷ついても、ひいて……相手を傷つけないように努力する。そんな優しい子だった。
 変な邪推をして、私が恥ずかしい」
智恵姉ぇは何を言いたいんだろうか、と俺は不思議に思った。別に懺悔が目的ではないだろうに。
「私ね……すごく気になったのよ。
 阿川さんの話って、秀くんがいたから頑張ったし、秀くんに褒めて欲しいから頑張ったし
 秀くんと一緒にいたいから頑張ったって話ばかり。『秀くんが』『秀くんが』って、そこに……
 阿川さんがいないのよ。
 わかる?」
阿川さんは不思議そうな顔をして、首を傾げた。
「秀くんが行くから塾に行った。秀くんに認めて欲しいから勉強を頑張った。ついでに受験して受かった。
 秀くんと一緒にいたいから迎えに行った。秀くんに喜んで欲しいからお弁当を頑張った。
 秀くんと一緒に研究したいから同じ大学に行きたい……。
 阿川さんの人生の決断の根本から、『秀くん』をとった時、阿川さんは自分がわかる?
 阿川さんが望むものは何?阿川さんがなりたい自分は何?
 さっき、言ったわね。空っぽになったって……その通りよ阿川さん」
呆然と智恵姉ぇを見つめる阿川さんを真っ向から見て、智恵姉ぇははっきりと言った。

「あなたの中身は、空っぽだわ」

いやまあ、予告したとおり、キツい一言である。
まだ脳みその回路に意味が行き渡ってないのだろうか、阿川さんは呆然としたままだ。
「阿川さん、誰かのためにって言葉は美しいわ。それの全てが間違っているとも思わない。
 でもね、自分の人生の全部の理由を『誰かのために』にしてしまうことは、自分の人生の決断も責任も
 全部その人に押し付けてしまうことでしかないわ。……相手にその手を振り払われたら生きていけなくなる。
 最後にはその人を恨むことになる。そんなの間違ってると思うでしょ」
阿川さんは、少しためらって、頷いた。
「誰だって、一人分の荷物しか持てないのよ。
 お互いに分け合って持つことはできるけど、全部押し付けちゃダメ。
 人間は、二人分の荷物を持つようにはできてないの。いつか相手を押し潰すわ。
 阿川さん、あなたはこれから、自分の人生の責任を自分でとらなきゃいけない。
 自分の人生よ。自分で理由を見つけないと……自分で立って、一人でも生きられるように。
 自分を支えられない人間は、誰のことも支えられないわ」
阿川さんの前の絨毯に、ポツ、ポツとしみが出来た。
696難関高校+従姉弟幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/03(土) 00:51:11 ID:kftFm6N3

「秀くんが……言ったんです。自分の将来のことくらい自分で決めろ、お前にとってもそっちの方が絶対いいって」
手の甲で涙を拭う。
「私、その時、目の前が真っ暗になりました。何も思いつかなかったんです。
 先輩……空っぽな私はどうしたらいいんでしょうか。どうやったら……理由が見つかるんでしょうか」
智恵姉ぇは苦笑して、頬を掻いた。
「……それは私にはわからないわ。阿川さんが探すものよ。
 とりあえずは、いつも通りに生活するのがいいんじゃないかな。
 青い鳥の例もあるけど、案外近いところに答えがあるかもよ。
 それが見つかった時にすぐ動けるように……私たちは学生だから、今のまま勉強を頑張るのが一番いいでしょうね」
俺にはわかる。智恵姉ぇは今、思いつかなかったので適当にそれっぽいことを言って誤魔化した。
半眼で智恵姉ぇに視線をやると、誤魔化し笑いを浮かべながら椅子から立ち上がり、
目の前のベッドに座っている阿川さんの横に座った。
ゆっくりと肩を抱く。
「つらかったら、いつでも話してくれていいのよ。メールだってしてもいい。電話も出るわ。
 私は、阿川さんに出来るだけのことをしたい。……だから一人で悩まないでね」
阿川さんはゆっくりと頷くと、智恵姉ぇの肩に顔を埋めた。
「秀くんがどうしてるか知りたかったら、賢に聞けばいいわ。男子校だから大丈夫だと思うけど、秀くんが
 合コンとかに行かないよう、賢に抑えてもらうし。ねえ賢、いいわよね?」
俺は頷いて、ビシッとサムズアップした。どうも俺はこのためだけに呼ばれたのらしい。
「今日は泊まっていってもいいわよ。どうする?」
土曜日なので明日は休みである。
阿川さんは頷いた。
697難関高校+従姉弟幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/03(土) 00:51:40 ID:kftFm6N3

制服で一日を過ごすのもめんどくさいだろうということで、智恵姉ぇの服を借りた阿川さんは、洗面所に行った。
美少女の生着替えである。そそるね。

「……ちょっと偉そうなこと言っちゃったな」
ぼそり、と智恵姉ぇが暗い声で言う。落ち込むくらいなら言うな、という追い討ちはやめておく。
「すっごく偉そうだった。適当もあそこまでいくと詐欺だな」
智恵姉ぇがまた枕を投げた。
ちなみに、智恵姉ぇは毎回枕を回収しているわけではない、3つ枕を持っているのだ。
テンピュールにそば殻に抱き枕。つまり4つ目の弾はない。俺はもう安全なのだ。
「まあねえ……まあ、ちょっとヒートアップしちゃった。智恵ってオ・チャ・メ」
「オチャメで他人の人生ひっかきまわすなよな」
後頭部に衝撃。俺はひっくり返って布団に沈んだ。枕がなくなったら拳にクラスチェンジするとはぬかったぜ。
しばらくの沈黙の後、ぽつりと智恵姉ぇが呟いた。
「でも、『誰かのために』って言葉、なんかあんまり好きじゃないのよね」

智恵姉ぇの母親、つまり俺の伯母さんだが、なんだかいろいろあるらしい。
あの言葉はもしかしたら、阿川さんへの忠告ではなく、伯母さんへの文句だったのかもしれない。
つまりウサ晴らしか、と言おうと思って、やめた。
阿川さんにとっては有益な言葉かもしれないし、理由もなく人を傷つけるのは好きじゃない。

そう、多少頭がよくても、現実の問題を全て無理なく解けるほど、俺たちはデキた人間ではないのだから――
698難関高校+従姉弟幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/03(土) 00:52:30 ID:kftFm6N3
以上です。
秀を応援してくれる声が多くて驚きました。
ありがとうございます。
699名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 00:57:07 ID:3HWFxmUS
>>698
リアルタイム投下ktkr
せつないなあ……せつないぜ!
続きが凄く楽しみなSSだわ。GJ!
700名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 02:29:34 ID:Vn7uw7FF
GJ!!
楽しみに正座待機してます!
701名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 02:53:43 ID:BxTFvDpU
>>698
続き待ってます
702名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 04:06:47 ID:p4okph6J
続きまってます
703名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 16:27:07 ID:dSwvN0o4
>>697
生着替えシーンはまだですか。
704難関高校+疎遠幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/04(日) 19:42:54 ID:XGI3eXqL
頭がガンガン痛む。体中から汗が噴き出す。ふわふわと足もとが浮かんでいる。
時たま、ガクンと揺らされて、顎が固いものにぶつかって痛む。お腹に固いものが当たって苦しい。
吐きたい。くらくらする。
目の前がぼやけてガクガクと揺れる。

――私、どうしたんだっけ。

ぼんやりと浮かんでは、思考が像を結ばず、泡のように消えていく。
薄れていく意識の中で、懐かしい匂いと気配が、傍にいる……ような気がした。

*********************************************


秀くんのいない秋が過ぎて、秀くんのいない冬が来た。
朝起きて学校に行って部活に行って塾に行く。秀くんのいない生活が過ぎていく。
たまに友達と遊びに行ったりすることもあるけど、基本的には家か塾で勉強する普通の毎日。
私は、一部の人のように、何かの科目が趣味的に好きだとかいうタイプではない。
もちろん、勉強が大好きで、寝ずにでも没頭したいという研究者タイプでもない。
ただ、朝起きて顔を洗ってご飯を食べるのと同じく、生活のリズムに組み込まれているだけなのだ。
歯を磨かず寝ると気持ち悪いのと同じで、勉強しないとなんとなく落ち着かないだけである。
勉強というのはとてもいい。どんなにつらいことがあっても、はじめると全てを忘れられる。
悩みを忘れるため岩を砕くように問題を解き続け、思いを振り払って参考書の海を泳ぐ。
そう……勉強がなかったら、どうなっていたかわからない。
私はひたすら、空っぽの心を勉強で埋めた。
705難関高校+疎遠幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/04(日) 19:43:20 ID:XGI3eXqL
秀くんのいない年が明けた。
数ヶ月のうちに、江藤先輩は智恵先輩になり、宇野くんは賢くんになった。
一月一日、智恵先輩と賢くんと一緒に初詣に行く。
秀くんと一緒に行っていた神社とは違って、京都の有名神社だ。二人は毎年そこらしい。
智恵先輩は今年受験だから、賢くんと二人でお守りと絵馬を買った。
しかし、賢くんは友達と約束があって初詣のはしごをするらしく、すぐに帰ってしまった。
……その友達は数人だと言っていたが……多分……。
「優ちゃん、聞いてる?」
自分の世界に入ってしまっていたらしい。慌てて返事をする。
「せっかくここまで来たんだし、一杯やってく?」
もちろん、酒ではなく、お茶とケーキである。私は笑って頷いた。
甘いものは女の子のジャスティスなのだ。

「そういえばね、賢が言ってたのよ。最近、秀くんのお弁当がすごいんだって」
時折り、先輩は思い出したように秀くんの情報をくれる。
最初のうちは、秀くんの名前を聞くだけで泣きそうだったが、最近は笑って話せるようになった。
ちなみに、賢くん情報のはずなのに、何故か賢くんが教えてくれることはない。
気を使ってくれているのだろうか?それとも智恵先輩に情報の取捨選択を任せているのだろうか?よくわからない。
「最初は日の丸……っていうか、真っ黒弁当だったんだけど、そのうちみるみる進化を遂げたらしいの。
 それで、クラスの子が冗談半分でキャラ弁を作って来い!と言ったらしいんだけど……そしたらなんと、
 ピカチュウのキャラ弁を作ってきたらしいのよ。それも、ものすごくデキがよかったらしいの!」
先輩は笑いをかみ殺しながら言うと、携帯を見せた。
たまごと海苔と梅でかたどられたピカチュウは少し歪んでいるけど、愛らしい瞳で微笑んでいた。
背景のピンクと茶色のデンブが可愛らしい。
私も思わず噴き出した。秀くんったら、どんな顔でこんな可愛い弁当を作ったんだろう。
「この画像、もらえますか?」
「もちろんよ」
私は先輩からその画像を貰い、待ち受け画面に設定した。
そういえば昔は、秀くんとおばさんと一緒にポケモンを毎年見に行っていたことがあったっけ。
秀くんはヒトカゲが好きで、私はピカチュウが好きだった。
さすがに橙色のヒトカゲはお弁当にしにくかったのだろう。それにピカチュウは一番有名なポケモンだ。
でも、なんだか昔の逆で、お弁当を秀くんに作ってもらったような気分になった。絶対違うのはわかってるけど。

――その日、私は小学校の遠足の夢を見た。
   私と秀くんは同じ班で、並んでお弁当を食べていて。
   何故か秀くんのお弁当は私の作ったお弁当で、私のお弁当は秀くんのピカチュウのお弁当だった。
706難関高校+疎遠幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/04(日) 19:44:06 ID:XGI3eXqL

秀くんのいない新学期が始まって、私は高校三年生になった。
学校も塾も、受験の色を強く帯び始めた。
元々秀くんとは塾が違う。本当は同じところに行きたかったのだけど、秀くんは友達が多いからと別の塾にしたのだ。
入ってすぐに別の塾に変わることは親の手前できず、そうならば一念発起して塾代免除の成績をとって変わる理由に
しようと考えたこともあるけど……実行に移す前に私たちは離れてしまった。
でも学校から受ける模試は同じ予備校のもので、模試のたびに秀くんの名前を見ることができるのが、嬉しかった。

「進路に迷ってる?」
この春、百万遍大学総人学部に入学した智恵先輩と大阪のケーキ屋で久しぶりに会うことになった私は、
そろそろ結論を出さなければならない事柄について相談してみた。
「はい……」
以前、智恵先輩に「自分の人生を見つけなさい」と言われたのに、未だに見つけられない自分が不甲斐ない。
私はついつい俯いてしまった。また、ちょっとキツいことを言われるかもしれないと思ったからだ。
しかし、思ったのとは違い、智恵先輩は軽い口調で言った。
「まあこの時期、皆迷うわよね」
「……そうなんですか?」
智恵先輩はジュースをちゅうっと吸い込んでから、人差し指をぴこぴこ振った。
「そうよ。私なんて決められずに結局、総人なんてどっちつかずの学部にしちゃってさ。
 まあ、そうねえ……大は小を兼ねるっていうし、理系は文系を兼ねるっていうし、理Vは全てに転じられるから
 理Vにしたらどう?」
あはははーと先輩は笑う。
私は頭を殴られたような衝撃を受けた。確かに先輩の言うとおりだ。私は何度も頷いた。
「なるほど……そうですね、そうします!」
しかし、何故か先輩は驚いた顔をして慌てだした。
「……え?理Vよ?……その、冗……談のつもりだったんだけど……」
「そうだったんですか?でも、先輩の言うことは非常に理に叶ってます。
 それに、私、多分頑張れば理V入れます」
にっこり笑って言うと、先輩はぽかんとした顔をした後、「そうね、そういえば前回全国10番以内だっけ……」と呟いた。
正確には8番ですよ。えへん。

――秀くんには絶対に負けないと誓った。
   昔と違って、褒めて欲しいからじゃない。逆に、悔しがって欲しかったのだ。
   そしたら秀くんはきっと、私を、絶対に、忘れない。
707難関高校+疎遠幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/04(日) 19:44:56 ID:XGI3eXqL

夏が過ぎて、秋が来た。
新聞に、秀くんの名前が載った。
国際数学オリンピックで日本代表として参加した秀くんは、銀メダルをもらったらしい。
惜しくも金ではなかったけど、地方新聞に写真入りで載った記事を、私は切り抜いて定期入れの中にしまった。
おめでとう、とメールを送りたいと何度も思ったけど、やめた。
駅で見かけたときに、おめでとう、と声をかけようと思ったけど、それもやめた。
もう、ずいぶん秀くんと話していない。今更、どんな顔で話しかければいいのかわからなかったから。
拒絶されるのが、怖かったから。
……生身の秀くんが私の人生からいなくなって、随分経つ。

――私はもしかしたらもう、慣れてしまったのかもしれない。
   秀くんのいない人生に。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

以上です。
優子パートは後1回続きます。
708名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 19:52:52 ID:q/bFi/Nk


どうなるのか楽しみ。
709名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 19:58:10 ID:qf48FIB9
>>707
投下乙
ええい続きはまだかっ!
710名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 20:30:35 ID:2Vnp2HnW
>>707
GJ
711名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 21:05:11 ID:sSorkmkc
GJ!楽しみだ〜
712名無しさん@ピンキー:2009/10/05(月) 09:53:50 ID:xZxjecIc
会ってない期間が長すぎる
こりゃせつねえ〜
713名無しさん@ピンキー:2009/10/05(月) 21:00:22 ID:vFADMgCH
>>707
GJ!
ただ、疎遠の期間が長すぎる…。
優子ちゃん、慣れちゃダメだよ!そんなことに。
ここまで離れると、逆に結ばれない方が自然になってしまうから、
ここで秀殿の一念発起が欲しいなぁ。でも、あの意地けっぷりだとなぁ。
切なすぎだぁ。
714名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 05:17:26 ID:3GGZGvoI
せつねぇ…
715名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 12:58:52 ID:Rj3cQpyN
エロねぇ……
716名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 23:42:47 ID:qAm8rIWa
でもこれ、一旦エロモードになったら凄い事になりそうだぜ!!
717名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 01:22:54 ID:EZSDxrOZ
>>707
百万遍大学総人学部www
京都大学総合人間学部ですね、わかります。
どっちつかずの学部で後悔してる先輩の気持ちもなんとなくわかります。
なんてったって「ヒマ総人」だもんなorz
718難関高校+疎遠幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/08(木) 01:55:51 ID:FG9YZHv5
受験の季節になった。
仕上がりは完璧。模試はA判定。入試直前期は皆が本腰入れてくるので成績上位者が崩れることもありがちだが
私に関してはそんなこともなく、行けば受かるとまで言われた。
規則正しい生活。無理をすることは慎み、体力を温存。風邪などひかぬよう……気をつけたというのに……。

入試二日前。
私はインフルエンザで熱を出した。

ワクチンをうったというのに。睡眠も栄養もたっぷりとって健康だったのに。神様は私にひどい意地悪をした。
40度になったら今年の受験は諦めろと父親に言われたが、なんとかそこまでは上がらず、動くことも出来た。
実家は関西。受験会場は東京。私とすれ違う人はごめんなさい。……本当にごめんなさい。
でも、人生がかかっているの。行かなければならないの。
だって私には、私の人生には、もうこれしか……受験勉強しかないから。だから絶対に受験したかった。
入試前日、ぼんやりとした頭と鉛のように重い体を引きずって新幹線に乗り、私はなんとかホテルについた。
夕食を半分だけ食べて、ポカリスエットを沢山飲んで、泥のように眠った。
行けば受かる……行けば受かる。ただそれだけを念じながら。

その夜、私はホテルの屋上から落ちる夢を見た。

ホテルは学校から集団で予約しているため、同じ学校の子たちがたくさんいる。
友人に助けられ、私は受験会場に行った。
はずだ。

――ならば今、私は一体どうなっているのだろう。

意識が浮上する。夢なのか現実なのかわからないあやふやな感覚の中で、ぼやけた視界ががくがくと揺れる。
頭が揺れているのだ。
温かくて固い何かに体がぶつかって、どうにも座りが悪い。
でも、それは切ないほど懐かしい匂いがする。そう、この匂いは……。
「しゅ……くん……」
「気がついたか、優子」
夢の続きだろうか。秀くんの声がする。
「喋るな、しんどいなら寝といていいぞ。
 もう少しでホームに着く。あと4時間我慢したら家に帰れるぞ」
ホーム?
ここは……どこなの?
「品川駅だ。……って、おい!いきなり動くな!落ちても知らんぞ!」
急に意識がはっきりする。私は、誰かにおんぶされていて、その誰かは……秀くんだった。
719難関高校+疎遠幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/08(木) 01:56:16 ID:FG9YZHv5

「秀くん……どうして……」

秀くんはぴたりと立ち止まった。
「答える前に、お前、立てるか?自分で歩いてくれると助かるんだが……」
私は慌てて秀くんの背中から降りた。足元がふらついた瞬間、腰をしっかりと抱きかかえられる。
熱で熱いのか、それとも他の熱さか……体の奥から熱の塊が溢れて、指先まで震えた。
頭の位置が記憶と違う。記憶よりも高い。私の知っている秀くんと少し違う。
でもそれは、確かに秀くんだった。
「秀くん、どうしてここにいるの?」
秀くんはぴくり、と眉を跳ね上げると、大きくため息をついて首を振った。
何か……怒ってる?
「お前、試験直後に倒れて救護室に運ばれたんだよ。
 そこで何故か俺に連絡がきたんだ……お前が連絡しろって言ったらしいぞ。覚えてないのか?」
私は頷いた。そもそも救護室に運ばれたということすら覚えていない。
……というか、よりにもよって秀くんに連絡?!何を考えてたんだろう、そのときの私……。
「入院した方がいいんじゃないかと思ったんだが、お前がどうしても家に帰ると言い張ったんだ。
 倒れたのは気が抜けたからだろうと医者も言ったんで、荷物を友達に任せてお前に肩を貸して電車に乗ったんだぞ。
 それなのに渋谷出てすぐ寝やがって……俺だって疲れてるってのにおんぶしてやったんだよ!
 なのに覚えてないのか?!何も覚えてないのか?!」
私は恥ずかしさに耐えかねて、目をぎゅっと瞑って頭をぶんぶんと縦に振った。
本当に何やったのよ、私……!!
秀くんは、はあーっ、と長い長いため息をついた。
「荷物は貴重品以外は他のやつに持っていってもらってる。
 財布と定期いれと携帯は抜いたけど、貴重品はそれだけでよかったよな?
 ……いや、やっぱり答えなくていいや。違ってももうどうしようもないし」
「それでいいよ」
普段几帳面なくせに、相変わらず変なところが大雑把だ。私は少しおかしくなった。
すると、秀くんは左手を私に差し出した。意味がわからずに戸惑っていると、焦れたように私の右手を掴む。
「とにかく行くぞ。新幹線が発車するまで後4分だ。次のでもいいが早く帰った方がいいだろ。
 改札まで行くぞ。ほら」
そのまま、秀くんに手を引かれて歩く。
……幼稚園の頃を思い出した。
近所の子にいじめられた時。犬に吠えられたとき。お母さんと喧嘩して家を飛び出して帰りそびれたとき。
いつも、べそべそ泣く私の手を秀くんがひいて、家まで帰った。
なんだか目の奥がツンとする。
「お前、指定とってたみたいだけど、自由席にするぞ。指定だと隣に座れないからな」
そのまま、真っ白で広い駅の中を歩き出す。改札を過ぎて、エスカレーターに乗った。
私を前に立たせて、背中に軽く右手を添える。後ろにひっくり返らないように、だろう。
「自由席に座れない場合には指定に座るが、隣の人に代わってもらえないか頼んでみよう。
 まあ……難しい気がするが、なんとかする。今のお前から目を離すのはよくないからな」
新幹線はありがたいことに空いていて、私たちは自由席で並んで座ることができた。
席についた時、エスカレーターから降りたときにまたしっかりと握ってくれた手を、秀くんが離そうとした。
それが寂しくて、秀くんの手を絶対離すまいと強く握る。
朦朧とした病人が寂しがっていると思ったのだろうか。
小さくふっと笑った秀くんは、空いている手で私の手をぽんぽん、と優しく叩いて、手を繋いだままでいてくれた。
720難関高校+疎遠幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/08(木) 01:57:55 ID:FG9YZHv5

また、体の芯から湧き出すだるさが、私の意識を薄れさせていく。
次に目を覚ましたとき、車窓は名古屋近くの地名をうつしていた。

「秀くん」
「……まだ名古屋手前だから、もう少し寝てていいぞ」
秀くんは通路側だ。空いている手で本を読んでいたらしい。私の顔を見ずに言う。
「秀くん、ごめん」
「全くだ。受験時に体調崩すなんて気合が足りんぞ。昔、濱望塾でも言われ……」
「そうじゃなくて……ずっと前に、秀くんを怒らせたの、ごめん」
怒涛の展開に、なんだか当たり前のように昔みたいに話をしてしまっていたが、私たちはずっと疎遠だったのだ。
朝一緒に行くこともなく、メールも電話もしない。駅であっても目を合わせない、そんな仲だった。
「それから、私と……一緒にいるのイヤなのに、突然倒れて呼びつけて迷惑かけて……」
「ちょっと待てよ」
ばさり、と本を膝の上に置いて、体ごと秀くんが私の方を向いた。
驚いた顔で、なんだか慌てている。
「怒ってたのはお前だろ?いつも駅で目が合ったら、声をかける前に目をそらして逃げるじゃないか。
 実際キツいこと言ったのは俺だし、てっきり……愛想つかされたんだと……」
黙ったまま、お互いに見つめあう。
えっと……つまりそれって……。
「お互いに……誤解してた……ってことか?」
「ご、誤解じゃないよっ!」
私は大声をあげ、思わず咳き込んだ。周りのビジネスマンがびくっとするのが視界に映る。
秀くんは慌てて恐縮したように周りの人たちに頭を下げ、私を睨んだ。
「……だって秀くん、迎えに来なくていいって言って、お弁当もいらないって言ったじゃない。
 私と一緒の学部イヤだって言って、もう構うなって……それって私のこといらないってことじゃない!」
「だから、大きな声は出すな……!
 ……確かにキツいことは言ったが……お前がいらないなんて言ってないぞ。
 お前が俺に構いすぎだから、必要以上に構うなって言っただけだ」
「『必要以上に』なんて言ってない!ひとっことも言ってないよ!
「文脈から読み取れよ!何年一緒にいるんだ?!」
「駅でも目を合わせてくれなかったじゃない!」
「あのなあ……言っとくけど、わかってないかもしれんが先に目をそらしてたのは絶対お前だぞ」
「じゃあメールくらいしてくれてもいいじゃない!」
「なんて書けばいいかわかんなかったんだよ!俺の筆不精は知ってるだろうが!
 お前こそあんなに毎日メールしてきてたくせに、あれ以来誕生日にも連絡なしだったじゃないか!
 いくらなんでも数学オリンピックに出たら連絡くれるかと思ったのに、全く音沙汰なしだし!」
「『元気か?』でいいじゃない!秀くんって、ほんっと昔から想像力と応用力に欠けるよね。
 そんなんだから昔っから読書感想文はズレてて滅茶苦茶だし小論文はテンプレ通りで面白みに欠けるし、
 国語の点数だって一定しないのよ!」
「いやいやいやいや、国語の点数は関係ないだろ?国語はテクニックだって濱望塾の先生も言ってただろーが!」
「そのテクニックの応用がなってないって意味よ!」
721難関高校+疎遠幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/08(木) 01:58:18 ID:FG9YZHv5


「ごほん!」

特大の咳払いと共に、周囲の冷たい視線が突き刺さる。いくばくか好奇の視線も感じるが、それはさておいておく。
私たちは慌てて口を閉じた。
「……秀くんの馬鹿」
「その言い分には納得できない。俺が馬鹿ならお前も馬鹿であるはずだ」
それでも、1年×2人分の鬱憤である。そこで話をやめられるわけがない。
私たちは顔を寄せ、お互いの耳にやっと流しこめるようなひそひそ声で言葉を続けた。
「……やっぱり秀くんは私のことなんていらないんだよ。だってこのまま疎遠になっても良かったんじゃない。
 連絡くれないんじゃない。秀くんは私のことなんて嫌いなんだ」
「そっくりそのままお前に返してやる」
「大体、秀くんはいっつも怒りっぽいんだよ。小学校のときから自分が一番じゃなかったらすぐ拗ねるんだから」
「悪かったな。男にはプライドってのがあるんだよ」
「そういうプライドやめてよね。数学以外で私に勝てるわけないじゃない」
秀くんは絶句してぷるぷると怒りに震えた。……可愛い。
「……お前、お前ってやつは……っ!ほんっと、昔っからそういう可愛くないことばっか言いやがって……っ!
 大体、昔っからああいう喧嘩なんて珍しくなかったじゃないか。
 お前だってよく『秀くんの顔なんて見たくないっ!』って言ってたし」
「そんな喧嘩、小学生のときまでだよ。それに、最初の質問に答えてないよ。
 連絡くれないってことは、私と疎遠になっても良かったんでしょ」
秀くんは、真剣な顔で私の顔をじっと見た。ふい、と目をそらす。
「少し……思ってた」
ズキンと心が痛んだ。
「でも、すぐに後悔した。それで、連絡するきっかけを探したんだが、思いつかなくて。
 ほんとはな、10月にお前の誕生日に電話したんだ。……そしたら繋がらなくって」
秀くんからのナンバーは携帯に残ってなかった。ちょうど圏外か何かだったのだろうか?
なんてタイミングが悪い……。
「……かけなおせばいいじゃない。留守録だってあるよ」
「なけなしの勇気がどっかいっちゃったんだよ!
 そうこうするうちに、なんだか時間が経てば経つほど連絡しにくくなって……。
 それで次には数学オリンピックに出られたら連絡しようと思ったんだが……なんか自慢してるみたいでどうかと」
負けると拗ねるくせに、勝ったら自慢みたいでイヤとか言われたら、どうしたらいいのかこっちの方がわからない。
秀くんってば、相変わらずメンドクサイ性格してる。
そして秀くんは絶対に、誰かに連絡するという場面の選択方法を根本から間違えている。と思う。
「でもな、大学に受かったら、今度は絶対に連絡しようと思ってた。何をしてでも許してもらおうって」
秀くんは、まっすぐ私を見て、真剣な顔で言った。
「お前にあんなことを言った自分を、何度も後悔したよ。
 自分の弱さがイヤだった。だから、変わろうと思って俺なりに努力したんだぞ。いろいろ。
 誰の前でも……お前の前でも、自信が持てる自分になるために」
秀くんは、ぎゅっと、痛いほどに私の手を握り締めて、焦点が合わないくらい近くに顔を近づけた。
キスできそうな距離に、心臓が早鐘をうつ。
「同じ学科は今でもイヤだ。そこを撤回する気はないぞ。
 ……でも俺は、優子と同じ大学に行きたかった。
 今の俺の一番の志望動機は、それだ」
722難関高校+疎遠幼なじみ=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/08(木) 01:58:46 ID:FG9YZHv5
思わず涙が零れ出た。
……嬉し涙ではない。
「秀くん、私」
「……迷惑か?」
「違うの。私……英語のリスニングを受けた記憶がない」
「は?」
秀くんが不思議そうな声を出した。
「今日の記憶が、そこからぷっつり切れてるの。試験をちゃんと最後まで受けたかどうかすら、覚えてないのよ
 多分私、今年はダメよ。一緒の大学に……行けない」
秀くんは一瞬息を飲んだ後、微笑んだ。
「救護室の人が、最後まで試験を受けてたって言ってたぞ」
「でも、書けてたかどうかわからない。書いてても、合ってるかどうか……わからない……」
涙が後から後から頬を伝う。
せっかく秀くんと仲直りできたのに。せっかく、あのプライドの高い秀くんがあそこまで言ってくれたのに。
私たちはきっと、すぐに離れ離れだ。
「お前、何馬鹿なこと言ってんだよ」
何故か、呆れたように秀くんは言った。

「あのな、お前自分が誰だと思ってんだよ。全国模試20位以内常連の阿川優子だろ。
 いいか、お前みたいなのをな『目をつむってても受かる』って言うんだよ!わかったか!」

秀くんは私の手を離し、私の頭を巻くように引き寄せて目を手のひらで覆った。
昔と同じで、その手のひらはひんやりとしていて気持ちよかった。
「病人は弱気になるからな。お前もう寝ろ。新大阪で起こしてやる」
「秀くん……」
「喋らず寝ろ。言いたいことがあるんなら明日以降にしろ。いつでも聞いてやるから」
それは、明日も明後日も明々後日も、また一緒にいるという約束。
その一言で、息が止まりそうなほど……全てを忘れられるくらいに嬉しかった。
「……うん、お休み」

秀くんのぬくもりと心地よい冷たさに包まれて。
私は再び眠りに落ちた。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

以上です。
次回が最終回となります。
ちなみに、赤門大受験当日インフルエンザでリスニングの記憶がない、は知人に本当にあった怖い話です。

>>717
就職無理学部志望の秀にエールを送ってやってくださいww
 
723 ◆vAaRO7zj8k :2009/10/08(木) 02:01:59 ID:FG9YZHv5
補足。
優子のインフルエンザは普通の季節性インフルエンザです。
豚インフルエンザではありません。
724名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 02:12:22 ID:Uf5xf46l
おつっ
イイヨイイヨー続き待ってますー
725名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 07:00:15 ID:Rm681GY4
朝からいいもの読ませて頂いた。
二人の喧嘩がほほえましくって嬉しくなった。
正座待機しています。
726名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 16:38:42 ID:LjVV6e2N
>>722
恋愛無理学部とも言われるが秀には全く関係ないなw
続き楽しみにしてます

ところで722氏の作品がいつもNGで透明になるんだが何故だ・・・
べつにNGワードに該当する語句も入ってないはずなのに毎回NG解除して読む俺涙目w
727名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 21:55:02 ID:f9Q4QNJC
隣の家の幼馴染に覗かれていることに気付いていながらオナニーして誘惑するシチュを誰か。

写真をネタに脅迫されて肉奴隷にされて、と思いきや、実は逆に掌で転がして操ってました、みたいなの。
728名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 00:43:05 ID:sODDbqpJ
世の中には言い出しっぺの法則ってものがあってだな
729名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 10:29:47 ID:VIgtCQ0V
先生、ふたなり娘は幼なじみに入りますか
730名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 10:48:17 ID:alYTLXE7
>>729
ご随意に。○たなりでも男の娘でも、やだしこの板に該当スレはない場合もあるでよ
731名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 17:31:35 ID:lbELBOKG
>>729
主人公の幼なじみなら。
732名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 22:57:34 ID:uE34X1I3
加賀美はだめだけど、ひだりのふたなりミルクなら有りなんですね。
733名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 08:32:24 ID:2aMn5WH6
むしろこのスレ的には、由紀とひだりか、ひだりと加賀美のどちらかだと思います
734名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 21:12:31 ID:F72yj8Ia
ゆびさきミルクティは一巻時点で終わってれば由紀×ひだりの理想的な馴染みエンドだったのに
だんだん妙な方向に飛んでいったなw
735名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 01:07:45 ID:vOvOre4Y
幼馴染が報われたって良いじゃないかと思う今日この頃。
736名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 18:44:59 ID:bcFz9Qb+
>>735
そういうSSを君が書けば良いのさ。
737(難関大学+幼なじみ)×2=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/12(月) 19:31:20 ID:L0/dH241
皆様、お久しぶりです。お元気ですか。俺のこと覚えてますか。……覚えてませんかそうですか。
頑張って大学デビューしたら、新歓コンパではっちゃけすぎていきなりひかれちゃった宇野賢です。
どうしてでしょうね。四月に入学してすぐなのに、もうすでに合コンの盛り上げ役&恋の相談役なポジションになっちゃってるのは。
絶対に、秀と優子ちゃんの面倒を見てたせいだと思います。そうに決まってる。
その秀は大学入学と共に優子ちゃんとのラブラブ生活に入ったというのに、俺は未だ女の子と手もつなげないという。
……なんか不公平じゃね?
くそっ!俺も可愛くてらぶらぶな幼馴染みが欲しいーっ!……優子ちゃん以外で。
そしてご存知でしょうか。北山杉のせいで、京都の花粉量はかなり多かったりします。
今は五月初め、花粉症の人間にとっては地獄です。
そんなこんなで花粉症でブルーなシングルの俺はすっかり五月病です。
しくしくしくしくしく。

え?真面目に説明しろと?みんな宇野使いが荒いんだから。全く。
はいはいはい。どーせ俺なんて何にも面白みありませんよ。俺の話なんかどうでもいいんだよな。
何にもドラマないもんな。しくしくしく。でもちょっとでいいから聞いて。お願い。

この春、俺はめでたく百万遍大学医学部に入学し、念願の下宿を始めた。
聖護院近く、9畳バストイレセパレート洗面台つき、家賃6万8千円。水道代管理費コミ。
結構いい寝ぐらで気に入っている。。
しかし、実は一人暮らしなんだが、なんとなく一人暮らしではない状況が続いている。
つまり、一人住まいのはずの俺のマンションに入り浸っている人間がいるのだ。
もちろん、可愛い彼女……なわけない。おなじみ、智恵姉ぇだ。
1年早く同じ大学に来ている智恵姉ぇは2回生。
パンキョー……つまり一般教養のうちは授業が終わるのがそんなに遅くないため、二時間かけて家まで帰っていたのだ。
クラブの飲み会なんかで遅くなるときは、高校の同級生で下宿している子の家に泊めてもらったりもしていたらしい。
しかし、やはりそんなに頻繁に友人の家に泊まるのは迷惑だとかで、俺がこっちに来てからはほぼ毎日のように入りびたりだ。
親も俺なら安心とか言って、女の子の安全のために遅くなったらなるべく俺の家に泊めるように言ってくる始末だ。
俺の迷惑はどーでもいいのかね。まあいいけどさ。どうせ年下なんてどうせこういう扱いだ。
姉のいる人間ならば、ごり押しに逆らえないこの辛さを良く知っているだろう。
まあ、智恵姉ぇは従姉弟で正確には姉ではないが、似たようなものだ。
別に一人が寂しいとかじゃないし、帰って来たら智恵姉ぇがいるとほっとする、なんてことはない!断じて!
いやほんとだって。ご飯とかあんまり作ってくれないし部屋は散らかすし俺のゲーム勝手に続きやっちゃうし!
レベル上げしてくれるのは嬉しいけどさ!
738(難関大学+幼なじみ)×2=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/12(月) 19:32:10 ID:L0/dH241
閑話休題。

この春、秀も優子ちゃんも志望校に合格し、東京に行ってしまった。寂しい。
そして、俺たちのあずかり知らぬうちにこの二人はいつの間にか仲直りして、いつの間にかラブラブになってしまったのだ。こんちくしょう。
なんでも、受験日にインフルエンザで倒れた優子ちゃんの面倒を見て、お互いの熱い思いを確かめ合った(優子談)のだそうな。
そんな面白いもんが見られるなら、俺も赤門大受けにいくんだった。……嘘嘘。理Vなんて受からないから有り得ないって。
その後、秀と優子ちゃんの間にどんな会話が交わされたか、俺は全て知っているわけではない。
ただ、問題なく上手くいってるんだろうとは思う。
前に、1年の疎遠は長かったのではないかと聞いた俺に、眩しいほどの笑顔で、優子ちゃんは言ったのだから。
「そんなことないよ。だって私たちは13年間一緒にいたんだもん。1年くらい、単なる誤差だよ」
と。

まあ、優子ちゃんとの交友を隠していたことに対し、秀に思い切り文句を言われまくったがな!
あいつ機嫌悪くなると本気で扱いにくいんだ。駅前のスペシャルジャンボパフェを泣く泣く奢らされた俺を、誰か労わってくれ。あの甘党めが!
だって、優子ちゃんが言うなって言ったんだぞ?俺はちゃんと誠実に優子ちゃんとの約束を守っただけだ!
とはいえ、聞かれたら言ったかもしれないのにと言ったら、「お前が優子と知り合いなんて知らんわっ!」と思いきり
睨まれて、
それはそうかと納得したけどな。
でも、智恵姉ぇに、
「あんたに話を通したのは、あんたが自発的に優子ちゃんと秀くんをそれとなく取り持ってくれるのを期待したのに!
 秀くんに全く話通してなかったの?!使えない子ねえ!」
とボロクソに言われたのは納得いかん。元はといえばこの騒動は智恵姉ぇのいらんおせっかいのせいじゃないか。なあ。
だからおせっかいは控えたのに。今度はそれで睨まれるとは。
世の中、中々上手くいかないものである。
739(難関大学+幼なじみ)×2=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/12(月) 19:32:37 ID:L0/dH241


世の中が人でごったがえすゴールデンウィーク初日。
実は今日は、一人では広いが二人では狭い我が家にお客さんが二人もいる。
もちろん一人は智恵姉ぇで、もう一人はなんと!優子ちゃんである。
「というか、二人ともなにやってんの。ここ、男の部屋だってわかってる?泊まるつもり?」
「じゃあ、あんたがいなきゃいいんじゃない。実家帰れば?」
「……もしもし智恵サン、アナタここが俺の部屋だって忘れてませんカ?」
くそう、そのうち絶対家賃取り立てちゃる。親にバレないように。
「決まってるじゃない、これからの二人のラブラブライフのために、頑張って知恵を絞ってるわけよ。智恵なだけに」
智恵姉ぇのギャグは関西人のくせに、いつもくそつまらん。

優子ちゃんが秀と仲直りしてからはすっかりお見限りだったのだが、一部屋に三人でぐだぐだ話すというのは、
懐かしい情景である。
去年1年、智恵姉ぇの部屋で、俺たちはこうやってよく一緒に話したものだ。
なんだかんだ言いつつ、俺も実はこういう時間は懐かしいし嬉しいし、前から楽しみにしてたりした。

……しかし、他人の部屋で延々ノロケるのはやめて欲しいと思うのは俺の心が狭いんだろうか。
いやそんなことはないよな。俺だけじゃないよな。そう思うよな!
その証拠に、智恵姉ぇもかろうじて笑顔を保っているが、口元がひくひくと引きつり始めている。

「それで、秀くんが一緒にお部屋探しをしようって言ってくれたんです。
 女の子の一人暮らしって危ないから、オートロックがいいとか、大通りから近い方がいいとか
 電灯がちゃんと明るい道か夜に行って確かめなきゃとか、いろいろ教えてくれたんです。
 それで、不動産屋さんに行ったらちょうどいい新築物件があって、隣の部屋が空いてたんです!
 隣りがいいなあって思ってたら、秀くんが隣りの部屋にするか?って……私は同棲でもいいなあってちょっと
 思ってたんですけど、秀くんはさすがに親御さんに悪いからって。やっぱり一緒に住むなら結婚してからじゃないと
 いけないと思うって。さすが秀くん、真面目に考えてくれてるんだなあって私、感動しちゃったんです!
 それで今、隣りに住んでるんですよ!ご飯をうちで食べたりして、隣りに帰っちゃうのは寂しいんですけど、
 勉強とかしたいみたいだし、秀くん真面目だから。でもほんとはべたべたしてたいなあーとか思うんですけど
 そういうのはちょっと我慢ですよね!」
「……そお、よかったわねえ」
智恵姉ぇの相槌が棒読みだ。これはかなり、キてる。というかこの話、三回目。
740(難関大学+幼なじみ)×2=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/12(月) 19:33:45 ID:L0/dH241
俺は知っている。秀は自分の時間を確保するために、敢えて隣りの部屋という選択肢を選んだのだ。
考えてみろ。同棲しようものなら、秀のプライベートはほとんどなくなってしまう。また逆に遠くに住んでも同じ、
合鍵を手に入れた優子ちゃんは自分の家に帰らなくなるだろう。
優子ちゃんと一緒にいられて、かつ夜は自分の時間を得ることができる……。隣の部屋というのは、秀にとって
ベスト……かは知らんが、ベターな選択肢だったのだ。
勘違いして欲しくないが、秀は優子ちゃんが好きだし、一緒にいたいとも思ってる。
でも秀にとっては、プライベートは必須なのである。四六時中べたべたしていたら、どんなに好きな子相手だって息が詰まる。
そう、どんな二人にだって感覚の違いがある。それは、人と人が一緒にいる上での最初の、そして最大の難関なのかもしれない。
 
「でも……その、秀くん……実は、まだ……」
優子ちゃんが真っ赤になりつつ、口ごもる。
……まさか、この展開は……。
「手を出してこない……と?」
「はい。照れてるのかなーとは思うし、ゆっくり愛し合っていきたいっていう秀くんの気持ちも嬉しいんですけど
 やっぱり早く愛の絆が欲しいかなーって」
やっぱり!恋バナの中でももっとディープなエロバナ!優子ちゃん、俺が男だって、もう完璧に忘れてないか?!
……正直、男の俺の前ではちょっとやめて欲しい。勘弁してつかぁさい!
智恵姉ぇのせいでかなり女性に対する夢は壊れまくってるけど、未だ残るささやかな夢を壊さないで欲しいというのはわがままか?
というか……もしかしてこの展開は……わざわざ俺の家にきたのはもしかして……。
「ねえ賢、あんた秀くんの性癖とか知らないの?これをやれば一発野獣化!とか」
やっぱりそうかあ!俺から秀の傾向と対策を聞き出そうってか。そんなもん言えるかあっ!
……本当は知っている。秀はメイドさんとか調教ものとか好きだ。コスプレとかすっごく好きだと思う。
でも俺は決してそれを言ってはいけないのだ。
秀に恨まれる。言ったが最後、優子ちゃんは実行する。それではダメなのだ。
だってそれってつまりもう調教済みってことじゃないか!
いやだいやだと言いながら快楽に逆らえなくなっていくというのが調教の醍醐味だろう?
……そう考えると、優子ちゃんって、ものすごく調教しがいのないキャラクターだな。
いや、そんなの全く俺には関係ないから心の底からどうでもいいけど。

「そんなもん知るか」
「嘘ね」

741(難関大学+幼なじみ)×2=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/12(月) 19:34:11 ID:L0/dH241
クールに言い放った俺の言葉を、しかし智恵姉ぇは真っ向否定した。
「あんた前に、男子校の男の会話なんて8割はエロトークだって言ってたじゃない。そういう話が出ないわけないでしょ」
出た……智恵姉ぇの無駄な記憶力の良さ。
しかしここでいらんことを言ったが最後、秀には恨まれ、俺は多大な羞恥心と引換えに男として大事な何かが失なわれる。
そう、男として、そして俺の平穏のために!ここでひくわけにはいかない。
俺は子供に言い聞かせるように、至極真面目な顔で言った。
「あのな、確かに男の会話はエロトークがほとんどだが、それは『他人に聞かせるエロトーク』だ。
 本当の自分の性癖とかは、逆に恥ずかしいから隠しておきたいものなんだよ。
 ドぎついネタをわざと振ることによってウケを狙うこともあるし、そういうネタをよく振るからと言って実際に
 そういうのが好きなわけじゃないことだって往々にしてあるんだ」
まあこれは事実である。俺なんか変態キャラで売ってるけど、実際にそういう趣味なわけじゃないし。
「確かに俺は秀がどんなエロトークをしてるかは知ってる。でも、それを実行したいと思ってるかまでは知らない。
 だから俺がその話をすることは、逆に秀を萎えさせる結果になるかもしれないんだ」
これも事実だ。
さっき調教だとかイヤだを快楽で変えるのが醍醐味とか言ったが、実際にそれを楽しめるかは別問題だ。
男ってのは結構純情だ。好きな子が『イヤだ』と言ったら、きっとそれを押してまで……とは思えない。
慣れた男ならそこら辺の見極めもできるかもしれないが、秀も俺も童貞だ。絶対見極めなんかつくか。
それに、俺が巻き込まれたくないという気持ちもあるが、また余計なことを言ってまた秀と優子ちゃんがモメたら
イヤじゃないか。
1年の冬を越えてせっかくラブラブライフを送ってるんだから、何の問題もなく幸せになって欲しいんだ。
しかし、俺の真面目で誠実な精一杯の友情の発露に対し、智恵姉ぇの答えは一言だった。

「つまり、賢はやっぱり役に立たない……と」
オイ。それだけかよ!しかもやっぱりって何だよ!最初からそう思ってんなら家来んな!
「賢くんったら、相変わらずだね」
にこにこと無邪気な笑顔で優子ちゃんまで言う。
なんだか優しげで温かい声でくすくすと好意的に笑いながら言ったが……つまり相変わらず『やっぱり役に立たない』
っていうことだよな?
優子ちゃんと付き合いの浅い人は彼女を楚々とした大人しく純粋な少女と勘違いしがちだが、これがどっこい。
彼女はさらっと毒舌でかなり気がキツく、けっこう図太い女の子なのである。
……本当のこと言うとひどいとか言って非難するしな……女ってズルいよな……。
まあ俺たちも本当のことを言われるとかなりヘコむから、非難したくなる気持ちはわかるけどな……。

というわけで、俺はすごくヘコみました。まる。
……どーせ俺は何の役にもたちませんよ。
742(難関大学+幼なじみ)×2=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/12(月) 19:35:30 ID:L0/dH241
優子ちゃんは、二日俺の家に泊まって京都を観光して行った。人がやたら多かったらしく、目を回していた。
京都の北の方というのは神戸からはちょっと時間がかかる。
同じ関西とはいえ、宿でもない限り中々行こうとは思えない微妙な距離なのだ。
驚いたことに、ゴールデンウィークの間、秀と優子ちゃんは別行動だった。
お互いに行きたいところが違ったというのもあったらしい。
しかし、秀についていくわけでも自分についてこさせるわけでもない、そのあっさりとした行動が、優子ちゃんが
1年で得た変化なのだろう、と俺は思った。

東京に行く前のこと。
「私、少し前まで一人でも生きていけるって思ってたんですけど、やっぱり秀くんを見るとダメです。
 秀くんがいない時間なんて考えられないって思ってしまうんです……」
そう言いながら、少し哀しげな笑みを浮かべた優子ちゃん。
智恵姉ぇに言われた「秀以外空っぽ」の一言がよほど大きな衝撃だったのだろう。彼女はいつもその一言を気にしていた。
でも、好きな人を手放したくないと思うのは、きっと当たり前のことだ。それだけになってしまうと自分も相手も潰してしまうというだけ。
今の彼女はきっと、秀なしでも自分を得ることができている。
何か明確な形や生きがいでなくとも、秀以外の世界を知り、秀のいない時間を一人ですごしたことで積み上げた
『経験』がきっと彼女を埋めているのだ。
今の優子ちゃんなら、秀を幸せにして、自分も幸せになれるだろう。
誰かにしがみつくのではなく、誰かと支えあう、そんな関係を築けるだろう。
そう考えると、智恵姉ぇの思いつきでいきあたりばったりでいいかげんな台詞も、実は結構、正しかったのかもしれない。
……なんて思う。

「あー疲れたーっ!」
そう言いながら智恵姉ぇが俺の膝めがけて倒れこんできた。
俺はベッドに座っていて、智恵姉ぇはそのベッドの上で倒れこんできた。そう、俗に言う膝枕だ。
智恵姉ぇは俺の膝に頭を乗せたまま、うーんと伸びをしてしばらくじっとして……がばっと起き上がった。
「硬くて全然ダメ。男の膝って最低」
「……なんだよそれは。自分で勝手にやっといて最低はないだろ最低はっ!」
俺の至極もっともな抗議を完璧に聞き流した智恵姉ぇは、ベッドのしたからちびクッションを持ってきて俺の膝に置いた。
その上にもう一度倒れこむ。
「うーん、いまいちだけど、まあいっか」
「クッションしてまで俺の膝を使う意味はあるのかよ」
「高さが丁度いいの。だまって枕になってなさい」
「……いえーすまーむ」
智恵姉ぇのわがままに対抗する術なんて俺にはない。俺は黙って智恵姉ぇの枕になった。
膝の上でふわふわ揺れる茶髪を触りたいと一瞬思ったがそんなことをしたら何をされるかわからない。
女が男に触るのは許されるが、男が女を触ったらセクハラなんである。君子危うきに近寄らず。

レースのカーテンを通して、初夏の西日が部屋に差し込む。
西日の差し込む部屋ってなんか言葉だけでも情緒あるよな。なんて思いながら、ただゆったりと、流れる時間を
感じていた。
雛鳥のように心と体を寄せ合い、全部空っぽになれる瞬間。
俺と智恵姉ぇと。子供の頃から変わらない安らぎが、そこにはある。
743(難関大学+幼なじみ)×2=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/12(月) 19:36:16 ID:L0/dH241
ぽつり、と智恵姉ぇが言う。
「優ちゃん、幸せそうでよかったわね」
「そうだな」
なんだかんだ言いながら、あの1年、智恵姉ぇは本当に心を痛めていた。
無責任といいかげんと適当がモットーの智恵姉ぇだが、実はかなりお人よしで責任感は強い。
落ち込むところは決して誰にも見せないが、自分の言葉がきっかけで二人がこじれたことを、本当に気にしていたのだ。
「秀も幸せそうだった。あいつ、文句ばっか言ってたけど、本当にイヤだったらひたすら黙ってるからな」
秀もやっぱり、1年の疎遠は堪えてたみたいだ。

幸せというのは、その最中にいる本人にとっては、あまりに当たり前すぎて、中々気付かないものなのかもしれない。
失って初めて気付く人も多いのだろう。秀は一度失った幸せを、もう一度取り戻すことができたのだ。

「うらやましいでしょ?」
いたずらっぽく聞く智恵姉ぇの頭を軽くこづく。
「うっせえ。あー、俺も可愛い幼馴染みがいたらなあ……」
すると、智恵姉ぇは横向きだった体を仰向けにして、俺の顔をまっすぐ見上げた。
「……ねえ、時々あんたそれ言うけどさ、私は違うの?」
「え?」
確かに小さい頃から智恵姉ぇとはよく会ってたが……幼馴染み……幼馴染み?
「いや、違うだろ。だって俺と智恵姉ぇは『親戚付き合い』だって。
 それを幼馴染みって言ってしまったら、世の中全部の親戚がみんな幼馴染みになっちまうだろ?」
「えー、だって1年に1回とかだったら違うけど、うちは1週間に1回とか、そんな感じだったじゃない」
「だから、それは親密な親戚付き合いってだけだろ。幼馴染みってのはつまり、他人同士だ。
 俺と智恵姉ぇは身内だ。幼馴染みなんてそんなヤワなもんじゃない。全然違うぞ」
「ふーん、そんなもんなのかな」
智恵姉ぇは、また横向きになった。
「うん。そんなもん。
 それに智恵姉ぇ、俺のこと起こしてくれないし、お弁当も作ってくれないし、俺のゲーム勝手にやるじゃないか。
 メール一本で呼び出すし、俺の下宿勝手に宿代わりにするし、俺のこと枕にするしさ。
 昔、結婚しようという話はしたけどな」
智恵姉ぇは真っ赤になって下を向いた。ごつん、と俺の膝を拳固で叩く。
「痛ぇっ!」
「……そんな昔の話持ち出すのやめなさいよ。ちょっとそういうマセたこと言ってみたかっただけなんだから!」
正直、かなり容赦ない痛さだった。俺、涙目。
ちょっとからかっただけなのに、全く智恵姉ぇってば、相変わらず大人気ない。

ああ、世の中ってなんて不公平なんだ。
友人と友人はラブラブで、俺に恋愛相談してきた好みの女の子は別の奴と上手くいってるのに、俺の部屋にいるのは横暴な従姉。
花粉症と五月病のダブルパンチは、俺の繊細なグラスハートを直撃さ。
全く、俺の幸せってどこに落ちてるのかね。どうやったら釣れるのかね。

ああ……誰か、俺に教えてくれないかな、幸せの在り処を。
744(難関大学+幼なじみ)×2=? ◆vAaRO7zj8k :2009/10/12(月) 19:39:33 ID:L0/dH241
以上です。
最初は一発ネタだったのですが、温かい声援のおかげでネタが湧き、ここまで書くことができました。
ありがとうございます。
そして、最初に禿くんネタをくれた人、ありがとうございます。

エロがないという嘆きもありましたので、秀と優子ちゃんのえろえろおまけを
書くつもりですが、ちょっと時間がかかると思います。
それでは、長い間お付き合いくださり、ありがとうございました。
745名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 19:45:16 ID:bcFz9Qb+
>>743
幸せは膝に居るよ!

エロ期待
746名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 20:15:37 ID:qG3OX7bW
747名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 21:18:30 ID:yQxBxLeq
>>743 GJ

賢くん・・・・駄目な子・・・・
748名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 21:35:01 ID:8zCvb/10
GJ!
お疲れ様でした。
エロ話待ってます。
749名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 23:37:16 ID:atnEi1kt
>>743
乙!
エロ超期待

丁度手を伸ばすと届く位置にあるお姉ちゃんのふくらみに
うっかり手を伸ばしちゃう話を期待したい
750名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 00:20:24 ID:rFylrAZF
ケンちゃん、己の中のマグマ力と向き合うだァーッッ”!!
751名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 01:32:08 ID:tc/1BtU0
俺としては賢と智恵姉ぇのえろシーンに期待せざるを得ない
752名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 02:10:01 ID:B1M9tiqC
幸せの青い鳥っていいですね
GJ
753名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 02:45:17 ID:Dd8kRT7Y
賢ぇ…

GJ!
754『窓越しの恋』愛美2 (1/11)  ◆q5zSSkwO.2 :2009/10/14(水) 21:52:48 ID:jbYjvCn/
※ 注:作中の勉強法はテキトーです

>>670続き

「うそぉ〜〜!!!」
 うぎゃー!! 信じられません。
 紀一郎先生(と呼ばないと、どつかれる)改め、神と呼ぼう!
 5月にスタートした英数強化月間。
 私は生まれて初めて定期テストを捨て、ひたすら勉強しまくった。
 紀一郎の指導は「なんだか効果あんのか?」というやり方だったが、蓋を開けたら定期テストは
あまりにも簡単で拍子抜け。
 しかも、夏休み前の先日受けた模試ではとうとう英数国は偏差値60越えと言う快挙を成し遂げた
のだ。
 万歳、ブラボー!
 念願の予備校特待にもう少しと思われたので、紀一郎先生には丁寧にお礼を言ってこの場を辞そう
と考えていた。
 どうにかなるのかもしれない。
 紀一郎が言う東大は考えられないけど、地元駅弁だったら。
 そんな希望が沸いてきた2ヶ月だった。
 うーん、小説のような展開だわ。いや、ギャグ漫画?

「おお〜すげー! ホントに上がってる」
 ってアンタ。もしもし?
 そう言う紀一郎は今回は残念、15位。
 つか、勝ち負けじゃないだろ。模試なんだぞ、模試。
「紀一郎は志望どこなの?」
「うーん、利にか離散で迷ってる」
 意味不明。

 しかし、紀一郎の話を聞くようになって、ホントに上位層は別世界なんだなとつくづく思った。
 中学のうちに高3までの数学を独学で終了させていたり、私立中高に飽きたらず銀翠会だとかいう
中高一貫向けの塾に通っていたり、数学や物理や化学等の国際オリンピックに出てみたり。
 凄い、凄すぎる。
 私なんて、同じタイトルなのに色が4色もあって種類が違う数学の参考書に、何でこんなに種類が
あるの?と目を白黒させている、そんなレベル。
 ビンボーって哀しいな。戦う前から勝負が決まっているのかな。
 ちょっと落ち込んでしまう。いかんいかん。
「そういや、お前に条件があるとは言ったが、内容を言わなかったな。後出しだがいいか?」
 ぐ。そんなこと言っていたな。
 しかし、今更撤回も不可能なので、私は渋々頷いた。
 にやーん。また悪魔のような笑み。
 メフィストフェレスってこんな顔してるんだろか?
「まず予備校。特待取れたとしても授業は要らねーよ。自習室は使ってもいいけど。あそこは情報を
得るところ」
「ふーん、そんなもん? アンタだからそれが可能なんじゃないの?」
「二つ目。夏の間、バイト入れるな。俺がこのまましごいてやる」
 願ったりかなったりだが怖すぎる。
「三つ目は秋になったら話す」
「判った」
 このまま紀一郎に礼を言ってあとは独学って道はなくなったが、まあ、紀一郎と勉強するのは嫌じゃない。現に成績も上がったし、不満はないのだ。
755『窓越しの恋』愛美2 (2/11)  ◆q5zSSkwO.2 :2009/10/14(水) 21:53:20 ID:jbYjvCn/
 紀一郎との軽口も結構楽しい。
 小学生時代の毎日が帰ってきたみたいだ。
 あの頃は毎日ひたすら遊んでいたけど、今はそれが勉強ってだけなのかな。
 もっとも、そんな楽しいもんじゃないけど。(紀一郎は嬉々として問題解いているけど。信じられ
ない)
 最近はいつも一緒にいるように思う。登校まで一緒。でかい紀一郎を見上げることが多くて、首が
痛い。
 夏休み。紀一郎と一緒って久しぶりだな。
 アイツ、夏期講習行かないのかな。
 いや、その合間に私に会うのかな?
 よく分からないけど、楽しそうかも。
756『窓越しの恋』紀一郎2 (3/11)  ◆q5zSSkwO.2 :2009/10/14(水) 21:54:01 ID:jbYjvCn/
 最近、電車の時間を変えた。
 少し早く行けば、愛美(まなみ)と一緒になると知ったからだ。
 何気ない風を装って、朝一緒に駅へ行く。
 この時間は学生も多く、色んな学校の制服で溢れている。
 うちは学ラン。(今は夏服で、Yシャツの下は黒の学生パンツだ)因みに愛美のとこも男子は同じ
で、俺たちは同じ学校の生徒と思われたりするのかもしれない。
 だが、実際は違う。
 女子と一緒の楽しい共学ではなく、俺は野郎ばかりの男子校。
 学校はとても楽しいんだが、愛美が学校で何をしているのかが気になる。
 他の男子に下駄箱に手紙を入れられ、放課後裏庭で告白なんてあったらどうしよう? などと、端
から見たら呆れるようなアホらしい想念に苛まれる。
 吊革に掴まる白い腕の柔らかそうなところも煩悩を刺激する。
 満員電車の中だというのに、暗記ペンで塗られた参考書を必死に見つめる愛美を周囲から守る。
 本人は夢中で気付いていないが、無茶苦茶混んでるんだよ。
 ちっこい身体が、電車の揺れに合わせて左右に傾く。
 吹っ飛ばされないかとハラハラするが、本人は慣れているのか意外としっかり立っている。
 本当なら、俺に掴まれと言いたい。言ってもいいはずだ。
 だが、この小さくていい匂いのする躰に触れて正気を保てる自信がない。
 女に免疫がないせいか、愛美が見せるちょっとの仕草に激しく動揺する。
 男子校生の悲しい性だ。
 こんなことなら、塾で誘われた女子と付き合っとけばよかったのだろうか?

 いつも生意気なのに、たまに見せる笑顔が可愛い。
 戯れで先生と呼ばせてみたら、当初片仮名で『センセ』と呼んでいた、そのひねくれっぷりも堪ら
ない。
 俺を見上げるその瞳も。可愛らしいピンクの唇も。
 その唇に触れてみたい──己のそれと重ね、その柔らかさを堪能したい。
 舌を絡め合ったらどんな感じなんだ?
 制服を押し上げている柔らかそうな双丘に触れてみたい──
 俺は煩悩に苛まれている。
 また、学校で盛んなエロ話が拍車を掛ける。今までは単なるネタとして笑っていられた話が、今は
全てリアルな妄想として毎夜俺を苛む。
 だから、せめて夏休みに、この『お隣さん』ポジションから脱却したい。
 まずは友達でもいい。アイツに俺を必要だと思って欲しい。
 俺のことを男と認識してもらえたらもっと嬉しい。
 恋人同士になんてなれたら──俺、生きてられるんだろうか?



 夜1時頃、愛美は部屋に戻っていく。
 同じ部屋にはパーティションに区切られて弟もいるのだが、野球部で部活漬けの正司は9時半には
寝てしまう。
 屋根づたいに戻っていく愛美を見つめるのは身が切れるような思いがする。
 自分の身が半分に千切られて去っていく気分だ。
 愛美は俺がそんな葛藤を抱えているとは夢にも思っていないだろう。
 こんなに近いのに──こんなに遠い。
 俺の気持ちを判って欲しい──だが、知られるのが怖い。
 自分が臆病だと、俺は生まれて始めて知った。

757『窓越しの恋』愛美3 (4/11)  ◆q5zSSkwO.2 :2009/10/14(水) 21:54:49 ID:jbYjvCn/
 久しぶりに正面玄関からだ。
 間延びしたチャイムの後に出た声は叔母さんのものだった。
「お久しぶりです。隣の斉木です」
 軽いデジャビュ。あ、2ヶ月前の話か。
「まあ! 愛美ちゃん?」
 嬉しそうな叔母さんの声がしたと思ったら、パタパタとスリッパの音がした。
「愛美ちゃん!」
 紀一郎んちの叔母さんが顔を出す。
「おはようございます」
 挨拶する私をニコニコ見つめる。
 うちのお母さんと年はあまり変わらないはずだが、いつも綺麗だ。マダムって言い方がよく似合う。
 この奥様からどのようにしたらあの『俺様悪魔』が生まれたのか謎。
「すみません、紀一郎くん、いらっしゃいますか?」
「あら。今日は図書館で勉強するって言っていたけど──愛美ちゃんと一緒?」
 パアッと頬を染めて、少女のようにはしゃぐ。
 え? 何か勘違いなさっていませんか?
 私と紀一郎がって発想に無理があるし。それに私なんかが相手でもええんかい?
「おふくろ、何はしゃいでるんだよ」
 リビングの扉からのそり、と紀一郎が顔を出す。
「紀一郎、あなた何も言わなかったけど、愛美ちゃんと一緒なの?」
「──どうでもいいだろ」
「もしかして、照れてる?」
 いや、叔母さん。それはないから。
 そんな私のツッコミに反して、紀一郎はなんと目を疑う反応をした。
 微かに赤くなってる?
 オイ! お前!
「どうでもいいだろ」
 そそくさ叔母さんを押し退け、下駄箱からスニーカーを取り出す。
「帰りは多分夕方」
「あまり遅くならないようにね。愛美ちゃん、お母さんの代わりに家事も頑張ってるんだから」
「判ってるよ」
 苦虫を潰したような表情で靴を履き終え、紀一郎は足を踏み出す。
「行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
 ぽかんとその表情を見つめる私を避けるように、紀一郎は先に行く。
「ちょっと、待ってよ!」
 あれは──何だったんだ?
758『窓越しの恋』紀一郎3 (5/11)  ◆q5zSSkwO.2 :2009/10/14(水) 21:57:13 ID:jbYjvCn/
 ヤバかった。愛美は気付いたのか?
 気が付かないで欲しい。いや、気付いてくれた方がいいのか──俺には判らない。
 それにしてもカッコ悪い。親にからかわれて赤くなるなんて!
 おふくろ、ホントいい加減にしてくれよ。悪ふざけが過ぎる。
 今日は、二人で図書館。外出に伴う出費を気にする愛美も気楽だし、本も借りられるし、自習室も
あるし、涼しいし。
 何と言っても楽しみなのは愛美の手作り弁当だ。
 例えファーストフードであっても外食に難色を示した愛美は、弁当を作ると言った。
 じゃ材料費は俺が持つから二人分作ってくれと頼んだら、快く了承してくれた。
 愛美の弁当。それだけで気分が浮き立つ。

 自習室でそれぞれ勉強。たまに休憩で本を見に行く。
 愛美はミステリーが好きらしく、軽めのもの中心に見る。
 俺は歴史小説とか、科学と数学に関する本を見る。
 うーん、うちの学校の方が品揃えがいい。
 仕方がないから、カウンターで予約手続きをする。
 本を借り終えた愛美を引っ張っていって、洋書のコーナーに行く。
「何冊借りた?」
「5冊」
 まだ5冊借りられる。
 愛美は今まで教科書でしか英語を読んでいない。
 だから語彙が不足しているし、前後の文脈で判らない単語も類推して読むという技術を身に付けら
れていない。
 それを打破するため、問題集に平行して多読と言う方法を用いた。
 即効性はないはずなのだが、意外と早く効果が出た。
 何だか、ゲームみたいだなと思う。若しくは、ポ●モン・ブリーダー。
 経験値を上げ、強くする。こういうのは結構面白かったりする。



「美味い!」
 普段、絶対に褒めたりしないのだが──だって、照れ臭いだろ?──愛美の手料理は素直に感嘆さ
せるだけの威力を持っていた。
 見た目はむしろ地味だった。
 飾り切りやレタス等の彩りもない。
 質実剛健。
 だが、その味は俺の胃袋をわしづかみにした。
 すげぇ美味い。
 夢中でがっついていたら、気付いた時には二人分のはずが空っぽになっていた。
「ご、ごめん!」
 愛美、ほとんど食べていないんじゃないのか?
「あーびっくりした。紀一郎、ガツガツ音を立てて食べていくんだもん。私もちゃんと食べたから心
配しないで。明日から倍作ってくるから」
「美味かったから」
 あ、ヤバい。
 普段やりつけないこと──人を褒めるなんてするから、顔が赤くなる。
「紀一郎、今日は何だか違うね。私服だから?」
「お前こそ、違うじゃん。いつも俺の部屋ではジャージだし。朝は制服だし」
「お互い様だよ。紀一郎もジャージじゃない」
「たしかにそうだ」
 俺達は笑い合った。
 何だか、柔らかいこの空気感は心地よい。
 いつものように喧嘩半分でやり合うのも楽しいが、こうして穏やかに笑うのもいい。
 ふと気付いた。
 ベンチで座る俺達の距離。
 周りには誰もいない。
 そっとキスしたら、怒るだろうか?
759『窓越しの恋』紀一郎3 (6/11)  ◆q5zSSkwO.2 :2009/10/14(水) 21:57:54 ID:jbYjvCn/
「いつも紀一郎怖いから、今日みたいに赤くなったり優しく笑ったり。そっちの方がいい」
「そうか?」
 自覚は──まあ、していたんだが、やっぱり遊びすぎていたらしい。
 好きな子相手にどうしたらいいのか、判らないんだよ。
 手も握れないのに、近くで怒ったり笑ったりしているし。
 夜、俺の妄想の中では抱かれてヒーヒーよがって、むせび啼いているというのに。
 目を細めて愛美を見つめる。
 小花柄の半袖のカットソーにデニム。
 ラフだし、愛美に似合っているが──ちょっと勿体ない。
 このひっつめお下げを解いて肩に垂らしたらどうなんだろ?
 野暮ったい眼鏡をコンタクト──せめてもう少し洒落たものに変えたらどうなんだろ?
 夏なんだし、一緒にプールに行きたい。愛美の水着姿も見たい。
 とめどもなく妄想が広がりだした頃、愛美は言った。
「そういえば、紀一郎って彼女いないの?」
「なんで?」
「アンタ、性格はともかく(おいっ!)外見はいいし、頭もいいし。もてそう」
「そういうお前は?」
 訊いてから後悔したが、愛美の応えを聞いてもっと激しく後悔した。
「うん──この前、うちの学校の男子に告白された」
 な、なんだとおーーー!!!
760『窓越しの恋』愛美4 (7/11)  ◆q5zSSkwO.2 :2009/10/14(水) 21:59:29 ID:jbYjvCn/
 目の前の紀一郎は、なんだかぎょっとしたような表情を見せた。
 まあ、意外だよね。私も意外だった。
 つか、私なんかが異性の目に止まるなんて信じらんない。
 最初、質のわるい冗談だと思ったぐらいだ。



 夏休み直前。期末も終わって、周りは長期休みへの期待にざわついている──そんなある日、帰り
支度をしていた私は、今までクラスメイトの一人としか思っていなかった男子から「明日の持ち物っ
てなんだっけ?」みたいな口調で、「斉木さん。僕と付き合わない?」と言われた。
 周りにはまだ何人か残っていた。
 誰も私達を見る人はいないとはいえ、私は慌てた。
「鈴村くん(彼の名を呼んだのも初めてだっ!)ちょっと──取りあえず、教室出ない?」
「何で」
 ああもう。紀一郎といい、私に関わる男子ってどうしてこうなの?
「恥ずかしいから!」
「あー僕は気にならないから」
「あのね。私が気にする。つか、周りも気にするよ。このクラスの雰囲気、目に入らない?」
「目には入らない。今んとこ、僕の最優先課題は君に返事貰うことだけだし」
 ぐはっ。鈴村くん、初めて話したけど、ここまで個性的な人だったとは。
「でも、私は気になるから、お願いだからちょっと屋上にでも行かない?」
 私が強引に彼の手を引っ張って連れ出すと、クラスにまだ残っていてこの成り行きを見守っていた
人たちから歓声を浴びた。
 ああもう。人のことだと思って。しかもっ!ずっと友達だと思っていた奈美!真紀!あんたらもか
いっ!
 後で覚えとけ!!

「鈴村くん。一つ確認する。付き合うって、その──彼氏、彼女の関係で?」
 屋上はちょっと風が強かった。
 ちと、肌寒い。
「もちろん」
「ドッキリとかなしで?」
「本気ってこと? もちろんだよ」
 鈴村くんをまじまじと見つめる。
 中肉中背。いや、男子としてはやや小柄なのかな?
 文武両道を旨とするうちの学校だけど、彼は典型的な文化部タイプだった。
 たしか、化学部だったか物理部だったか。
 顔立ちが可愛くて、結構ファンも多い。
 ただ、浮いた話をあまり聞かないのは──多分この性格のせいと私は勝手に予想する。
「私、鈴村くんと今まで話もしたことないんだよ。私のどこがいいの?」
「うーん、直感? 君を一目見た時からずっと気になっていたんだよね」
 一目惚れとな?
 自慢じゃないが、地味な外見、チビな身体で、そういうのは無縁で生きてきたんですが。
 この人、もしや物凄く変人?
「返事、急ぐ?」
「もうすぐ夏休みだから、その前に貰えると嬉しいな。生殺しのまま夏を過ごしたくないし」
 鈴村くんはにっこり笑った。



「で──なんて答えたんだよ?」
 気のせいか、紀一郎の声が低い。怖い。
「紀一郎には関係ないじゃん」
「ここまで話しといて、それはないだろ」
「まあそりゃそうだね」
 軽く肩をすくめ、そしてそっと紀一郎を見上げる。
「紀一郎──私って、男の人から見て、どうなの?」
761『窓越しの恋』愛美4 (8/11)  ◆q5zSSkwO.2 :2009/10/14(水) 22:00:06 ID:jbYjvCn/
 ぶっ!っと紀一郎はお茶を吹き出した。
 汚いなあ。
「もう、何やってんのよ。で、どうなの?」
「何でそんなこと聞く」
「いやさ。男子に好きだって言われたのも初めてだけど、一目惚れしたって言われて、あまりにもび
っくりしたんだよ」
「驚くことか?」
「私、チビだし、地味だし、性格ガサツだし」
「よくわかってんじゃん」
「未だに信じられないんだよね。まあ、その相手がちょっと変わってる人だってこともあるけどさ」
「お前、自覚無さすぎ」
「ええ──?」
 意外な言葉に思わず紀一郎の顔を覗き込んだ。
 言いたいことが判らない。
 しかも、紀一郎はなんだか哀しげだった。
 何か悪いことしたんだろうか、私?
 いつもはメフィストフェレスな紀一郎だが、今日はなんだか違った。
 朝から変だったけど、こんな顔するなんて──
 なんだか、本当に、怖い。
 しばらく紀一郎は私を見つめていて──それからようやく、視線を反らして言った。
「お前、男と遊んでいる暇、ない筈だろ?」
「うん──だから断った」
「そいつ、何だって?」
「諦めないって言われた」
「そうか──」
「今までさ、私そういうのって全く無かったから、まともに話した男子って紀一郎ぐらいだし。何か
よく判らないんだ」
「お前、今まで好きになった男、いないの?」
「いないよ──興味なかったし。紀一郎は?」
「お、俺?」
 紀一郎は物凄く動揺した。こんな紀一郎、初めて見る。
 また、紀一郎は私から視線を反らし、足元の草花を見つめる。
「いるよ──」
 呟くようにして言ったその意外な言葉に、何故か胸の奥が鈍く痛んだ──。
762『窓越しの恋』紀一郎4 (9/11)  ◆q5zSSkwO.2
 脳味噌が沸騰し、目の前が真っ赤に染まったかのように思った。
 ふざけんな!!
 まだ見ぬ敵──というのも妙な話なのだが──に謂われもない嫉妬を覚えた。
 俺がどんな思いをして今までコイツの傍にいたと思っている。
 そう心の中は荒れ狂っていたが、それは全くの的外れな怒りであり、相手は俺
の存在すら知らず、そして愛美にとって俺は単なる幼馴染みでしかない立場なの
であって、何の文句も言えないのだと──自覚もしていた。
 愛美のことが好きだ。自分だけのものにしたい。
 だが、今俺が愛美に自分の気持ちを明かしたとして、それを受け入れて貰える
可能性は低いと判断している。
 異性として意識されていないことに加え、昔からの関係がそれを阻んでいる。
 愛美に俺を好ましい異性として認識してもらうにはどうすればいいのだろう?
 人の心は難しい。難問テストの何倍も。
 今ここで土下座すれば手に入るならそうする。無理矢理奪えばいいなら襲う。
 しかしそれでは心は手に入らない。
 近いのに遠い俺達の距離。
 荒れ狂う気持ちを必死に抑える俺の顔を見つめる愛美を一瞬睨むように見つめ
、苦労して視線を反らした。



 その晩、愛美は部屋に来なかった。
 俺は結局何も手につかず、ただただ隣の家の灯りを見つめる。
 外に向かって叫び出したくなる衝動と葛藤し、粗い息を吐く。
 その時俺は気が付いた。
 愛美がもしも違う大学に行ったら、俺はまた今と同じ気持ちを味わうことにな
るのだと。
 何がなんでも愛美も連れていく。
 今までのような冗談半分ではなく。
 ではどうすれば?
 愛美の夢とやらの問題もあるし。
 目を閉じる。すると脳裏には愛美の笑顔。
 つい3ヶ月ほど前までは、その記憶と窓越しの息づかいだけで俺は満足してい
たんだなと思い、哀しくなった。
 好きな子には素直になれないわ、優しくできないわ、何も言えないくせに独占
欲は人一倍だわ。
 自分の情けなさが悔しい。
 会えば会うほど惹かれた。笑顔だけじゃ物足りなくて、その全てを欲しいと思
った。
 身勝手な欲望だ。
 そこまで冷静に己を分析しているくせに、やっぱり好きだと言えやしない。今
言って離れてしまうことが怖い。
 弱い──俺は。
 胸が一杯になって、苦しさのあまりに嘆息する。
 今日はもう寝ようとベッドに転がるが──眠れないのは判りきっていた。