お姫様でエロなスレ11

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1名無しさん@ピンキー
やんごとないお姫様をテーマにした総合スレです。
エロな小説(オリジナルでもパロでも)投下の他、姫に関する萌え話などでマターリ楽しみましょう。

■前スレ■
お姫様でエロなスレ10
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1229610737/

■過去スレ■
囚われのお姫様って
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1073571845/
お姫様でエロなスレ2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133193721/
お姫様でエロなスレ3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148836416/
お姫様でエロなスレ4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1157393191/
お姫様でエロなスレ5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1166529179/
お姫様でエロなスレ6
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1178961024/
お姫様でエロなスレ7
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1196012780/
お姫様でエロなスレ8
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1209913078/
お姫様でエロなスレ9
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1226223611/

■関連スレ■
【従者】 主従でエロ小説 第六章 【お嬢様】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1222667087/
◆ファンタジー世界の戦う女(女兵士)総合スレ 6◆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1209042964/
古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ3
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1218039118/
妄想的時代小説part2
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155751291/
世界の神話でエロパロ創世2
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1201135577/
逸話や童話世界でエロパロ2
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205727509/

■保管庫■
http://vs8.f-t-s.com/~pinkprincess/princess/index.html
http://www14.atwiki.jp/princess-ss/


気位の高い姫への強姦・陵辱SS、囚われの姫への調教SSなど以外にも、
エロ姫が権力のまま他者を蹂躙するSS、民衆の為に剣振るう英雄姫の敗北SS、
姫と身分違いの男とが愛を貫くような和姦・純愛SSも可。基本的に何でもあり。

ただし幅広く同居する為に、ハードグロほか荒れかねない極端な属性は
SS投下時にスルー用警告よろ。スカ程度なら大丈夫っぽい。逆に住人も、
警告があり姫さえ出れば、他スレで放逐されがちな属性も受け入れヨロ。

姫のタイプも、高貴で繊細な姫、武闘派姫から、親近感ある庶民派お姫様。
中世西洋風な姫、和風な姫から、砂漠や辺境や南海の国の姫。王女、皇女、
貴族令嬢、または王妃や女王まで、姫っぽいなら何でもあり。
ライトファンタジー、重厚ファンタジー、歴史モノと、背景も職人の自由で。
2名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 18:32:39 ID:CQwnfaBT
神話童話スレの方は落ちておりましたが、今回はそのまま貼らせて頂きました
3火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 18:59:28 ID:CQwnfaBT

 再び、出撃のラッパが王都へと響く。
 国王バラム・ウォズル・ボルド四世に、オーズロン軍掃討――実際には迎撃なのだが――命を直々に
 受けたのは、結盟戦争時代より代々将軍職を輩出してきたイグナート家の長男、アゼル・イグナート
 将軍であった。
「陛下の御前に、必ずや敵大将の首級を届けてみせましょう」
 格式張った長い礼を済ませてから、彼は出陣の支度へと入っていった。
 第一・第三緑槍騎士団1,200余名。
 重装歩兵団2,900余名。
 軽装歩兵団4,600余名。
 総兵力9,000にも迫るその軍は、急場の召集にしては中々の威容を示していた。
 だが、雷宣魔術師団を統率しきれる状態ではなく、補給部隊についても目処が立っていない。
 資源・人員共に、平民からの徴発を視野に入れての出撃であった。

「これでなんとかなるな」
 東の門を預かっていた門兵の一人が、アゼル将軍への礼を終え、息を大きく吐いた。
 隣にいた同僚も、肩を竦めて同意を現している。
「俺も騎士団にいれば、手柄を上げてやるところなのになあ」
「はは。お前がか。弟のアーウィンの方が、先に入隊しちまうんじゃねえか。いや、それどころかお前は
 俺と一緒に一生門番のままさ」
「へっ、言ってろって。田舎領主に熱上げてるガキに――」
 身内の悪口に走ろうとしていた男が、閉じかけた門の間になにかを見止め、太い眉を顰めた。

 騎影が一つ。土煙を上げて大街道の横手の小道を疾走してきていた。
「どうした?」
「いや――ちょっと待て! おいっ! 門閉じるの止めろ! 止めろって!」
「おいおい、勝手な真似したら兵長に大目玉喰らうぞ」
「いいから! さっきの奴だよっ、ほら、さっき話してた、ここから出て行った奴! 戻って来てる!」
 開閉の滑車を操る門兵たちが、その呼び掛けに思わず手を止めた。
 大人二人程度が並んで通れる程度の隙間を残し、門が動きを止めた。
「あんたら!」
 そこに葦毛の馬に跨った青年が滑り込むようにして、声を張り上げながら駆けてきた。 
「ここの兵士たちはどうした! もう出払っちまったところか!?」
「あ、ああ。ええと、確か城内に騎士団が一部隊残ってる以外は、出撃したとこ――」

 男の言葉に、サズが苦りきった表情で舌打ちを飛ばした。
 街道に残っていた行軍の足跡から大方の予想は付いてはいたが、それが的中して嬉しい筈もない。
「くそっ、本当に入れ違いになっちまったか……おいっ!」 
 呆気に取られる門兵たちの顔を見回し、彼は声を上げた。
「そこのあんた、城に走ってくれ。オーズロンの兵士たちが北の間道を進んで来てるんだ。このままだと
 ボルドの軍は完全なすれ違いだ。あと、あんたは馬で出撃した奴らの方に行ってくれっ」
「ほ、本当なのか、それ」
「無駄口叩いてないで早くしてくれっ! ぐずぐずしている間に、敵が来るぞっ!」
「――っ!」
 門兵たちが喉の奥で悲鳴を噛み殺して、びくりと身を竦めた。

 敵が来る。
 もう戦いに巻き込まれることもないと思っていたところに、その言葉は効いた。
 再び顔を見合わせて、門兵たちはそれぞれに走り出した。
 指示された命令と持ち場を放棄すれば、それは立派に厳罰の対象になる行動だ。
 だが、あやふやになっていた命令系統と職務へと使命感は、見えない敵への恐怖で見事に吹き散らされ、
 なんの権限も持たない、見ず知らずの青年一人の言葉に従ってしまうという、珍事を引き起こしていた。

「あ、あんたはどうするつもりなんだ」
「足止めに行ってくる」
 馬上の青年からの返事に、その場に残っていた男は再び唖然とした表情となった。
 先刻この青年の話題で無理矢理に場を盛り上げた結果、あれはアレだろう。春になろうとしているし、
 きっとアレだろうと空騒ぎをしていた男は、思った。
 こいつは本当に、おかしいんじゃないなかろうかと。
4火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 19:00:34 ID:CQwnfaBT

 足止め以外のことをできるとは、サズは思っていなかった。
 炎は、まだもう一度くらいなら産み出せるし、操り切れそうな感触はあった。
 体調は酷いものなのに、精神の方は奇妙な高揚感に包まれ、気力が満ちてきていた。
 しかし、オーズロンの兵士や姿を見せたところで、彼は直接それと相対する気にはなれなかったのだ。
 火を、多数の人には向けたくなかったのだ。
 魔物や少数の相手には散々に使ってきておいて、なにを今更と思う気持ちもありはしたが、それでも
 嫌なものは嫌だった。
 それをしてしまうと、もう本当に人中では暮らせなくなりそうな気がしていたからだ。
 いくら人を遠ざけて生きてはいても、それでも彼は雑踏の中くらいは歩いていたかった。
 そこでまで怯えて暮らすことなど、想像したくもなかった。

 だから、足止めをする。
 直接刃を交えるなどは有り得ない話であったが、オーズロンの軍が矢を射掛けてくる距離に入る前に、
 できるだけボルドの軍が有利に戦えるように、足止めをするのだ。
 彼らが進んでくる道の地形はまだ頭の中にあった。
 山火事が起き難そうな水源の近い場所も、何箇所か見つけてある。
「最悪、出撃した奴らが戻ってこなければ、火が上がった後に城の奴らをぶつけてくれ! 頼むぞ!」
 一体何様なのかと思うような言葉を残して、彼は再び間道へと舞い戻って行った。

「何事だ。まだ敵の姿も見えんというのに、騒々しいぞ」
 黒金の鎧を身に纏った男が、軍馬の上から叱責の声を飛ばした。
 それに近習の兵がこうべを垂れる。
「たった今、オーズロンの兵士が北の山道より、王都を目指し進撃中との報が届きました」
「なに。それは斥候からの報告か? 何故、そのような場所に」
「いえ、東の門兵からの報告であった為、将軍への連絡が遅れてしまった次第であります」
 男――アゼルは迷った。
 正式な伝令の報告ではない。もしや、敵の策か。しかし、本当であれば大事に至りかねない話だ。
(教本通りには、行かぬものだな)
 結局彼は、自身の命で放った斥候の報告を待つことに決めた。
「その門兵の男は怪しいな。捕らえておけ」
 
 若輩者と舐められぬようにと。精一杯の威厳を込めて放ったその声は、再び起きたざわめきに見事に
 掻き消されてしまっていた。
「……何事だ」
 流石に不機嫌になって口をへの字に曲げたアゼルの下へと、斥候の兵士が姿を現した。
「将軍に、ご報告です! これより先の街道に、焼き討ちの痕跡を発見いたしました! それも普通の
 火によるものではなく、恐らくは魔術によるものかとっ」
「魔術だと?」
 アゼルが身を乗り出して、斥候の兵士に馬を寄せた。
「はっ。これを」
 興奮気味になった男が、青黒い剣を差し出してきた。
 剣といっても、それは鞘付きのままのそれである。
 鞘の合皮が燃え尽きて止め具と刀身とが焼け付いた、鞘の残骸付きの剣であった。

 青黒くなったその剣を、尋常ではないとアゼルは感じた。そして恐怖した。
 敵側にこのような所業を可能とする戦力があれば、それは自軍とって恐るべき脅威となる。
「オーズロンめ。魔道の研究に勤しんでいるという噂、真であったか」
「いえ、それなのですが……」
 ぎりと歯噛みをするアゼルへと、男が恐る恐ると言った風に声を掛けてきた。
「なんだ。なにを躊躇している。お前は斥候の訓練を受けてきたのであろう。報告するべきことがあれば、
 可能な限りそれを遂行せよ」
 自らの不安を覆い隠すようにして、アゼルは言い付けた。
 功名心は人なり以上にはあると自覚はしていたが、いざ戦場に立つとなると、よもや自分がここまで
 初陣の緊張と不安に揺られてしまうとは、彼は思っていなかったのだ。
5火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 19:01:28 ID:CQwnfaBT

「……それは真のことか」
「はっ。更に、その者たちが言うには、その炎を仕掛けた男は北の山道へと姿を消したとのことです」
 斥候の報告には、アゼルはその困惑を深めた。
 獣人が武器を手に集団で民家を襲ってきた。その獣人たちを一人の男が全て斬り伏せ、更に大街道を
 進んできた無数の獣人の群れを、一瞬にして焼き尽くした――
(本当に、教本は当てにならぬな)
 口元に手を当て、アゼルは唸り声を懸命に押し殺した。
 兵の前で、気弱なところだけは見せまいと、彼なりに考えていたのだ。
 その彼の頭の中で、ある言葉が浮かび上がってきた。
「待て、今、北の山道と言ったな?」
「は。恐らくは旧街道の支道の一つかと。一応、王都への通行も可能な筈ですが」
「リベールっ! 全軍に伝令だっ。至急、王都へと戻るぞ。陣立ては多少崩しても良い。急げ!」
 幼少の頃から共に育ってきた副官へと声を掛け、彼は愛馬の腹を強く蹴った。
 一度間違えて撤退の鐘が鳴らされたが、それでもアゼルは軍を率いて馬を駆けさせ始めていた。

「将軍! アゼルさまっ! どうか後方へとお下がりくださいっ!」
「構うなっ。それよりも左翼の軽装部隊を前に出せっ。敵を確認次第、ぶつけるぞ!」
 教本のことなどはもう忘れることにして、彼は愛馬を走らせていた。
「もし、敵が本当にいて弓を射掛けてきたらどうさせるのですかっ!」
「俺なら、裏を掻いた時点でそのような準備などせん! だから敵もせぬっ!」
 ある意味での真理を口にして、尚も彼は突き進んだ。
 やがて、王都に程近い高台に差し掛かると、土煙に混じって無数の軍旗が彼の視界へと映りだした。
 黒い旗だ。風になびくその旗の中央には、前肢を振り上げた白い獅子が描かれている。

「やはり、キルヴァかっ!」
 走る勢いは緩めずに、アゼルは叫んでいた。
 キルヴァ公国。大公ブリス・ハイシュの統治の元、専制君主制を貫く軍事国家。
 豊かな穀倉地帯を領土とし、複合兵装騎馬を多く要する、オーズロン連合内最大の勢力。
 ロウジェル陥落の第一報より、現在王都へ進軍中にある敵勢力は、やはりキルヴァであろうとの見解は
 なされていたが、実際にそれが相手となると。
「面白いっ。敵将っ、前へ出ろっ! ボルド王国第一緑槍騎士団、勇戦将軍カイゼル・イグナートが一子、
 アゼル・イグナートが一騎打ちを所望するぞ!」
 彼は燃えた。

「ちょっ、アー様っ! 落ち着いてっ!」
「煩いっ! 止めるなリベールっ、一騎打ちは騎士の誉れ、戦の華よっ!」
「あんたもう将軍ですから……って止まれよっ、この銅鑼息子!」
「誰が銅鑼息子かっ! お前こそ俺が騎士団に入ると聞いて――む?」
 伝統ある緑槍騎士団の先頭に立ち、童心に帰って戯れる二人の眼前に赤い閃光が疾った。
 疾って、銅鑼息子の前髪が燃えた。

「やべ……広げ過ぎた。ってーか、なんだあの騎馬隊。隊列滅茶苦茶じゃねえか。競走馬かよ」
 可能な限り範囲を広げ、代わりに火勢を著しく減じさせた炎の河を作り出し、サズは川砂の上へと腰を
 下ろしていた。
 風は弱いので恐らく大した炎となることはなかったが、オーズロンの奇襲部隊は、突如として行く手を
 遮って来た炎の壁に立ち往生を喰らわされる形となっていた。
 一部、ボルド軍側にも往生している者たちはいるようであったが、取り合えず自分の目論見通りに事が
 運んでくれたことにサズは満足していた。
「さて、後はお国同士でよろし……く」
 満足することで緊張の糸を切らし、彼はそのまま仰向けに倒れて意識を失った。
6名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 19:56:20 ID:o9WcD7Gs
支援
7火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 20:17:37 ID:CQwnfaBT

 きつい香気で、彼は目を覚ました。
(あれ? この匂いって……)
 草花の匂いに似ているようで違う、人工的な香りに意識が少しずつ覚醒してゆく。
「お目覚めでしょうか?」
「! 誰だっ!?」
 誰何の声と共に、サズは寝台の上から跳ね起きていた。
 周囲を見回し、声の主を探す。腰に手を伸ばしたが、そこに捜し求めるものはなかった。
「うん。いい動きですね。流石に主のお目は高かった、ということですか」
 声の主は、サズが身を横たえていた寝台から四歩程離れた位置に佇んでいた。

「――起きていきなり人を品定めとは、随分と良い趣味をしてやがるな」
「品性の方はイマイチ……と。ああ、すいません。職業病みたいなものなので、気になされないで下さい。
 それと、僕はリベールと言って、この屋敷を預かっている者です。どうぞ、お見知りおきを」 
 リベールと名乗ったその人物が、サズへと向けて頭を下げてきた。
 歳は二十歳かそこらか。肩口まで自然に流された黒髪に、茶色く大きな瞳。小麦色の肌と平均的な体躯。
 若木を思わせる緑の色を基調とした礼服に身を包み、羽飾りのあしらわれた儀礼用の剣を佩いている。
 柔和な笑みを浮かべたその姿は、一見して優しげな印象を人に与えてくるであろう。

 だが、サズはその人物に対して強い警戒心を抱いた。
 彼が起き上がった瞬間に見せた足運び。それが、訓練された兵士の姿を連想させたのだ。
「剣」
「え?」
「剣と、馬。今すぐ返せ。でなけりゃ実力行使で行くぞ」
 彼は、ある種の兵士が嫌いであった。
 兵士であれば誰でもというわけではない。所謂、良く訓練された兵士という奴が嫌いだったのだ。
「わかりました。では、お預かりさせて頂いていた貴方の剣と馬をお返しします。それに当たって、一応
 身元の方を確認させて貰いますね。なにしろ貴方は、我がボルドとキルヴァが交戦していた場に倒れて
 いた方なので。武器をお返ししてから、敵方の密偵でした、では困りますので」
「……本当に良く訓練されてやがる」
 リベールのにこにことした笑顔に、サズはげんなりとした表情で感想を洩らした。

 サズ・マレフ。西方の大陸イズラッド出身。二十歳。冒険者ギルドボルド王国支部所属。前科なし。
「黒いようで、白いようですね」
「ネズミ色だとでも言いたそうだな」
「あはは。まあ、偽造でもないようですが、少し預からせて下さい。一応鑑識に掛けさせて頂きますので」
 リベールはそう言うと、提示されたギルドの証明書を、部屋の中へと呼び付けた兵士姿の男へと手渡し、 
 再びサズの方へと振り向いてきた。
「炎」
 一言、真顔になってそう口にしてから、彼はまたにこにことした笑顔を見せてきた。
「凄いですね」
「なにがだよ」
 サズが、憮然とした面持ちでその笑顔に返す。

「ですから、炎ですよ。大街道の部隊を全滅させたのといい、キルヴァの強襲部隊を攻囲したのといい。
 僕はてっきり、貴方のことをフィンレッツかムルシュの魔術師だと思い込んでいたのですが」
「なんか勘違いしてねえか、あんた。俺はあんなところで戦争が起きてたんで、腰抜かしてぶっ倒れた
 だけだぞ」
「起きませんでしたけど、戦争」
「……は?」
「ですから、起きなかったんですよ。急襲に失敗したせいか、火に巻かれるのを恐れたのかは定かでは
 ありませんけど、キルヴァの兵士たちは山道から撤退。我がボルド軍は、火に遮られて追撃不能。斥候
 部隊を他のルートから当てましたが、発見はならず。いやぁ、起きてませんねぇ。火以外は、なにも」
 にこにことした笑顔は、いつの間にか、にやにやとした笑みへと変じていた。
8火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 20:18:23 ID:CQwnfaBT

 明々とした照明に照らされた広間に、軍装に身を包んだ男たちが集っていた。
「ボルド王国軍の勝利を祝って!」
 その言葉と共に、男たちの手に握られていた杯が次々と差し挙げられる。
 熱気が場を埋め尽くし、歓声が沸き起こる。奥に控えた楽奏隊が高らかに勝利を謳い上げる。
「戦わなかったんじゃないのか」
「結果だけ見れば、こちらの勝利ですから。迎撃戦に限っては、の話ですが。……そんなに嫌そうな顔を
 なさらないで下さい。こういうのは、勢いも大事なんです。間違っても、今は「あっち」の話なんかを
 口に出したりしては、駄目ですよ」

 あっちとは、ロウジェルでの大敗に関することであろう。
 それくらいのことはサズにも察しは付いたが、それにしてもこの騒ぎようには眉を顰めたくなっていた。 
 リベールに案内される形でこの大広間へと通されたサズであったが、そこにはベルガの王宮で目にして
 いた物とはまた違う、戦勝の宴が催されていた。
「随分と、派手にやるんだな」
 負けたくせにという言葉を飲み込んで、サズは呆れ声を洩らす。
「城の方では、もっと凄いことになっている筈ですよ……恐怖を紛らわす為にも、ね」
「お前こそ、そういうことは言うなよな」
 侍女たちが料理を運びこんでくるのを眺めながら、二人は言葉を交わしていた。
 サズが控えさせられていた席は貴賓席に当たるので、周囲の兵士たちはおいそれと声を掛けられずに
 いたのだが、彼はそれを自分が蚊帳の外に居れているのだと、勘違いをしていた。

「で……俺が放火犯だってわかったのなら、こんな所に引っ張り出してないで、さっさと黒くするなり
 すれば良いだろ。こっちは、あんたらの乱痴気騒ぎに付き合うつもりはないぜ」
「あはは。貴方、気持ちが良いですね。まるでこちらの心の内を、代弁して下さっているようだ」
 サズの言うように、宴は始まったばかりだというのに、既に無礼講の様相を呈してきていた。
 互いの労をねぎらい、キルヴァへの戦意を示し合う姿は、勇猛武断な騎士の振る舞いと見て取ることも
 できたが、少なくともこの二人の目にはそう映ってはいなかった。
「仕方がないんですよ。相手が撤退したとはいえ、その原因が明確ではないので」
「……大丈夫かよ、そんな調子で」
「無理でしょうね。だから、貴方が勇気付けてやって下さい」
  
 怪訝な顔をするサズを無視して、リベールが絹の手袋に包まれた右腕を差し挙げた。
 そして息を深く吸い込んで、発言を開始する。
「今日お集まり頂いた王国兵士の烈士の方々に、私よりご紹介を致したい方がおります」
 明るく澄んだ、少年のような声。その美声を以って、リベールは言葉を紡ぎ始めた。
 波が引くようにして、広間の中からどよめきが消え去る。
 浮付いていた無数の視線が、一気に彼の手元へと引き寄せられた。
「今回の戦で、王都を強襲せんと画策したキルヴァの部隊に対して火攻を仕掛け、我が王国軍を勝利へと
 導いてくれた、サズ・マレフ殿です」
「なっ――」
 リベールのにこやかな横顔を見つめ、サズが絶句する。

 静まり返った場内に、アゼルの副官の言葉が続く。楽器の音は、いつの間にか途絶えていた。 
「名誉の負傷によりこの場には姿を見せておらぬ、アゼル・イグナート将軍に代わり、この場に御同席を
 願いました。諸兄の戦勝の語らいと共に、彼の功績を讃えて頂ければと思っております」 
 拍手を。そう促すように自らの掌を形取り、リベールは紹介の言葉を告げ終えた。
 パチパチと、手を叩く音が聞こえ始めた。広間の片隅から、中央から、そして眼前の騎士の手元から。
「てめぇ」
「お静かに。協力が得られなければ、第一級の危険人物として捕らえよとの命を受けております。私も、
 貴方を手荒に扱うような真似はしたくありません」
 刺すような視線を受け流し、リベールは微笑み続けていた。
 そうしている間にも、拍手の音が、次第にその数と勢いを増してゆく。 
9火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 20:19:32 ID:CQwnfaBT

 あの目だと。
 そう、サズは思った。
 全て同じ色合いに見える、あの瞳の群れ。
 炎に魅せられたかの如く、彼を見つめてきたあの集落の人々の物と同じ目が、そこにはあったのだ。
「サズ殿の偉業に、乾杯!」
 誰かが、そう言って杯を再び差し挙げた。
(偉業だと?)
 焼き尽くすことが偉大だと、その男は確かに口にした。
 空になった杯での乾杯が、唱和の声と共に繰り返される。
「王国の英雄に、乾杯!」
 担ぎ上げるようにして、突き上げられる。
 
 それは、彼にとって悪夢のようであった。
 騎士が、兵卒が、侍女までもが。己の立場を忘れて、皆口々にサズの所業を讃え始めていた。
 敵兵を焼き殺したことを。原野を焼き払ったことを。勝利に酔いしれた表情で、褒め讃え続けていた。
「酒は、嗜まれる方ですか」
 空の杯へと、リベールが琥珀色の液体を注いできた。一介の冒険者に。世間から厄介者として扱われ
 続けた男の酒杯へと、豪奢な館の主が酒を注いできた。

 悪だとされてきた。
 忌むべきことだと言われてきた。
 それは、彼が世の中から一方的に押し付けられてきた、単純明快な彼にとっての常識であった。
 魔術もなしに火を扱えることが、悪いことなのだ。
 魔術の理を用いても、大して変わりはしなかったのだ。
 むしろ場所によっては、以前より更に強く声高に、悪いことなのだと教えられる結果となった。 
(なんなんだ、てめえらは)
 華やかな装飾の鎧に身を包んだ騎士が、偉業だと讃えている。
 無骨な兵装を纏ったままの兵士が、英雄だと敬服してきている。
 遠巻きにしている侍女たちが、情熱に満ちた眼差しを送ってきている。

「我が主、アゼル・イグナート様は貴方のお力を高く評価されております。救国の勇士足りえる人材だと。
 そしてそれが、ボルドにとってのものであることを、切に望んでもおられます」
 素面の囁きが、彼の耳元へと届いてくる。
 その言葉は、サズにも理解できた。取引と威圧の言葉だけは、理解することができた。
 だが、その他の全てはペテンに見えた。
 こいつらは、なにがしたいのか。なにがそんなに嬉しいのか。なにがそんなに素晴らしいと言うのか。
 あれだけのことをしておいて、言っておいて、奪っておいて、なにが、なにがそんなに――

「――いいだろう。お前たちに、利用されてやる」
 その言葉と共に、崩れた。
 彼の中の、絶対の不文律が崩された。はっきりとした音を立てて崩壊していった。
「感謝致します」
「その代わりに、寄越して貰うぞ」
「勿論、可能な限り応じさせて頂きます」
 声を潜めての会話故、リベールは言葉を少なくして答えた。
「可能な限りで、結構だ。それで十分だ」
 酒杯を手に、サズはその言葉を受け取った。

 可能だろうと、彼は思った。
 踏みつけられる程度だ。背中に傷を付けられる程度だ。頭を石にぶつけられる程度だ。
 誰にだって可能なことだろう。悪いことをされるわけじゃあなし、平気なのだろう。
 自分は、返して貰うだけだ。今の今までペテンに掛け続けられていた分を、世の中から返して貰うだけ。
 ほんの少し、色を付けて。気持ち程度の利息を付けて、少しずつ、お前らから返して貰うだけだと。

 酒杯を一気に呷ると、それは意外な程に美味い代物であった。
10火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 20:21:30 ID:CQwnfaBT

 やわらかな寝台の上へと、しなやかな女性の身体が、ずぶずぶと沈みこんでゆく。
 甘い嬌声と濡れた肢体が、からみつくようにしてサズの劣情を受け止める。
 酒気に満ちた吐息は、どちらのものか判別を付けることは叶わなかった。
 ただ、なんの愛情もない乱雑な動きにも、娘の肉体はしっかりと応えてきていた。
「良いか」
「は、あっ! は、はいっ、あっ、くぅ、ひ、あぁっ!? い、いいです、サズ様の、とても、とてもっ」
「そうか」
 そんなものかと思った。
 知りもしないくせに、そんな声が出せるものかと。こんな風に抱きとめてこれるものかと。

 サズが腰の注挿を一気に速めた。喋ることもなくなったので、取り合えず、快楽の為にそうした。
 それで益々、娘はその昂ぶりを激しいものとしてゆく。
 たっぷりと舐めほぐされていた陰唇からは、しとどに雌の蜜を溢れさせ、尖りきった陰核は、直接
 弄くり回されたわけでもないのに、ひくひくと痙攣を繰り返して腫れ上がってゆく。そんな有様だ。
「娼婦顔負けだな。お前らは」
「い、いやっ、そんなこと、そんな酷いことを仰らな――ひっ、あぁ゛、いぅっ! き、ひぃ゛っ」
「事実さ」
 涼しい顔色とは正反対に、怒りに狂うように膨れ上がった肉の塊を圧し込まれ、組み伏せられた娘の
 身体が、弓なりになって寝台へと沈み込む。
 サズはそれを気にもせず、指先をぐちゃぐちゃに蕩けた結合部へと伸ばしていった。

「あっ、さずさ、まぁっ、く、ぁ……もっと、やさ、ぁ、あくっ! あ、ぁ、あ゛ーっ!?」
 ぎりっと歯噛みをして爪先を伸ばしたところに陰核を強く弾かれ、娘が女の叫び声を上げた。
「こんなので、良いって言うんだからな」
 額に浮かんだ汗が、頬を滑り落ちる。
 唇にかかったそれを、サズは舌先で舐め取り、華奢な身体つきの娘の股を大きく開かせた。
 付け根から、すらりと伸びた真っ白な足。豊満というにはやや物足りないが、張りと形の良い乳房は
 仰向けにされたままでも崩れきってはおらず、手入れの行き届いた肌は極上のさわり心地であった。

 彼女は、貴族の娘であった。
 リベールの生家と交友が深い家の次女で、凱旋を祝うつもりで館に足を運んでいたらしい。
 らしいと妙に曖昧なのは、サズが彼女の話を良くは覚えていない所為であった。
 宴が始まった時点では、彼女は大広間には姿を見せていなかった。
 無骨な兵士が席に多かった為、客室でリベールの帰りを待っていたのだ。
 そうして一人でグラスを傾けているところに、突然の拍手喝采と盛大な歓声が届いてきた。

 ――リベールが主人とするイグナート家の嫡子が、宴の席に姿の現したのだろうか。
 酒盛りに近い盛り上がりを見せる大広間には、あまり近付きたくはなかったが、リベールが心酔する
 若き将軍が、初陣を飾った記念すべき日ということを考慮し、彼女は宴の場に再び足を踏み入れた。
 娘はそこで、礼賛の渦の中にいるリベールの姿を見つけた。
 ――ああ、リベールが、戦場で手柄を上げたということなのね。
 そう思った彼女は、上官の為とはいえ良くやるものだと半ば呆れ、半ば感心しながらも、宴席に姿を
 見せた手前もあって、リベールに祝福の言葉を送ろうとそこへ近付いて行った。
 
 それは娘が初めて見る種類の、髪であった。
 髪型の方は少しばかり蓬髪気味ではあったが、市井の若者たちの間では見かける、ありふれた物。
 だが、その色が違った。違い過ぎた。
 赤かった。それも、所謂普通の赤毛などではなく、燃える火のような赤い髪であったのだ。
 それを大勢の大人たちが取り囲んでいる。囲んでいるのに、触れられずにいるように見えた。
 祝福と賛辞の言葉は、その男に向けられていやのだと、娘はその時初めて気付いた。
11火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 20:22:31 ID:CQwnfaBT

 それから彼女は、髪の色について考えた。ありふれた自分の黒髪とは違う、男の髪について考えた。
 珍しい。初めてみる。それを皆が歓喜の表情で、崇拝するかのように讃えている。
 素晴らしいものなのだと、娘は思った。
 赤い髪の男が、自分の方を向いた気がした。
 男は、その瞳までもが赤かった。赤い目が不敵な色を湛えて、こちらを見抜いてきた気がした。
 雷に撃たれたかのような衝撃を覚え、彼女は息をすることも忘れた。
 ――この人は違うのだ。自分たちとは違う、素晴らしい人なのだ。
 痺れるような想いで吐息を洩らし、薄茶色の瞳を輝かせて、彼女はそう思った。

 歳はそう自分と変わらなくみえたが、鷹揚に構えた彼の姿は立派なものに見えた。
 その彼の視線が動いて、彼女はそれを無意識の内に追いかけた。
 その先に、手に蒸留酒の瓶を持った侍女の姿があった。その侍女が、顔を赤らめながら赤い髪の男へと
 寄り添っていった。
 取る気だ。あの珍しい人を持ってゆく気なのだと思い、娘は強い感情の昂ぶりを感じた。

 サズは自分の下に組み敷かれた娘のことを、中々に気に入っていた。
 満足していたと言っても良い。
 宴を楽しんでいた彼の横にやって来た娘たちの中でも、彼女は一番の器量良しであった。
 だがそんなところに目を付けて、サズはこの娘を館の寝室へと引き込んだわけではなかった。
 気に入ったのは、彼女の我の強さであった。
 彼女は、サズに誘いをかけてきていた侍女の下へと歩み寄り、それだけのことでその場所を勝ち取った。
 無論、そこには元々覆しようもない身分の差もあったのだろう。
 気位の高そうな顔をみれば、サズにもそのことはすぐに分かった。
 それが余計に、面白かった。どこの馬の骨とも知れない男を、如何にもといった感じのお嬢様が、女の
 顔を剥き出しにして奪いにかかってきたのだ。
 ならば奪われてやろうとサズは思い、だんまりを決め込んでいた娘の手を取った。

 そして今は、その代わりを味わわせて貰っているところであったのだ。
「そんなに嬉しかったのか?」
「は、はいっ、ぁ、はっ、はひぃっ!」
 前戯もそこそこに貫かれたというのに、娘は陶然とした声を上げて身体を仰け反らせていた。
 部屋に連れ込まれた時点で、もう出来上がってしまっていたのだ。
 僅かばかりの酔いと、勝利への達成感と優越感に。
 そしてこれから奪われることへの期待感に、まだ未熟さの残る身体を火照らせ待ち受けていたのだ。

 サズの腕が、開かせた娘の足を寝台に対して垂直に持ち上げる。
「ひ、あ、はぁっ……か、はっ」
 口蓋を大きく開かせて、彼女はひゅーひゅーと喉を鳴らして空気を貪った。
 突き入れられたままで、膝の裏から脚ごと腰を抱えられた所為だ。
 それは荒々しく、野蛮な行為であった。
 経験も浅く、密かに交際する相手にもそれなり以上の品格を求められていた娘の、手付かずであった
 女性の悦びを無理矢理に呼び起こす、野蛮な欲望を叩き付けて来る為の行為。それに彼女は震えた。

「そろそろ、全部入れるぞ」
 それは問い掛けの声ではなかった。
 確認の声ですらない。征服への宣言だということを、娘は捻り込まれることで、理解した。
 ――自分も、赤くなれるのだろうか。特別になれるのだろうか。
 正常な思考ができなくなった頭で、彼女はそんなことを思った。
 思った途端に、また震えがやってきた。
「ん゛っ、あ゛っ、ぃぎ、あ、あぁあ゛……っ!」
「どうした。欲しかったのなら、もっと喜べよ。それとも、嬉しくて声も出ないって奴か?」
 ザラつく天井をゆっくりと愉しんで、肉茎が膣肉を掻き分けてゆく。
 丸見えにされた陰唇を、赤い瞳が愉悦の光を湛えてねめつけている。
12火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 20:23:52 ID:CQwnfaBT

 達した。肩を震わせ、後ろの不浄の穴をきゅっとすぼめて、脚の小指を攣りそうになる程に引きつけて。
 手入れの行き届いた指先で純白のシーツを握り締めて、生まれて初めて彼女は盛大に絶頂へと達した。
「――め。貴族の娘が、聞いて呆れる」
「……あ、ああ゛あ゛あ゛」
 高いところから意識が戻ってきたところを、男の声が彼女をまた高く突き上げた。
 目が合った。覆いかぶさられ、強引に合わされた。加虐的の光に満ちた赤い瞳が、襲い掛かってきた。
 晒した。自ら足を左右に広げて、彼女は征服の証を受け入れようと、自らの陰部を思い切り晒した。

「まるで降伏のポーズだな。白旗も付けて、抱えて歩いていってやろうか? きっとさっきの俺みたいに
 大人気になれるぞ」
「あ゛、ぅ……う? ぇ、やっ、やだっ、いやですっ! サズさまの、サズ様だけにですっ、これはっ!」
「貴方だけにしか見せませんってか。――冗談だ。泣くな。泣かれるのは苦手だ」
 ついさっきまでとは全く質の違った締め付けとぬめりを味わいながら、サズは目に涙を浮かべた娘の
 長い髪を、ほんの少しだけ撫でてやった。

「あ……」
 多幸感に満ちた笑みを浮かべ、彼女は熱い吐息を洩らす。
 与えてやるのは、それで御終いであった。彼が髪を思い切り撫でたいのは、一人だけであったからだ。 
「胸、自分で弄り回してみろ。上手に出来たら、もう一度いかせてやる。と言っても、勝手にいきそうか」
 傲慢な声が、ふわふわと浮かんでいた娘の意識に標を作ってゆく。
 自信に満ちた、遠慮の欠片もない声だ。
 彼女が一度だけ謁見を赦されていた、国の王ですら、ここまで頭ごなしな言葉は掛けてはこなかった。
 反発の気持ちは、欲望の象徴に打ち砕かれた。
 砕かれ、熔かされた。指先だけがずっと暖かく、優しかったので、掬われるようにして熔かされた。

 つんと上を向いた胸の頂が、何度も何度も転がされる。
 舌であったり、指先であったり、時には歯の間であったりして、それは行われた。
「なんて言った」
「……ぇ? あっ、はっ、あぅんっ!?」
「名前だ。名前、もう一度教えろ」
「ぱ、ぱとりぃ、し、ひあっ、あぁ!」
 硬いしこりを抓り上げられた為に、娘は正確に己の名を告げられず、いやいやをして手をばたつかせた。

 だが、サズにはそれで十分であった。
 口と胸の方はもう用無しだとばかりに、めり込ませっ放しにしていた怒張での侵攻を再開させる。
 その動きで膣内に入り込んでいた空気が、娘の桃色の襞のから微細な気泡となって押されていった。
 中に押し込まれたものは、愛液と混ざり合い、ぐちゅぐちゅとした音を腹の中に響かせて。
 外に押し出されたものは、肉茎と膣肉の合間で、ぷぴゅうっと可愛らしくも間の抜けた音を立てて。

「すげえ音。お嬢様はもう少し、お上品な音を立てるようにするべきなんじゃねえか? 知らない奴が
 聞いたら、後ろの方から洩らしてるって勘違いするぜ。これじゃあ」
「――っ!」
 顔を真っ赤にして、娘が下腹に力を込める。
 抵抗の為にではなく、嫌われない為に、男に指示に応える為に、彼女はがむしゃらに締め上げた。
「ははっ……! 良いぞっ、こんなのでも、いけそうだ。やればできる子じゃないか、パティ!」 
「あ゛っ゛!?」
「そうだっ、その綺麗にしているモノを、後ろの穴ごと締め付けておけよっ! そうしておけば、俺が
 飽きるまでは、良い思いをさせてやる! そんなものなら、幾らでもくれてやるぞっ!」
 哄笑と共に、怒張が勢いを増してゆく。みちみちと媚肉を押し退けて、熱を送り込んでゆく。
 
 ――可哀想。
 狂気ではなく、哀しみに歪んだ笑みを見て、彼女は快楽の渦から浮上した。
 だが、すぐに波が押し寄せてきた。どくんどくんと、強い波が脈打ち始めた。
 下腹部が熱い。熱いが、首筋を駆け抜けていったのは、冷たさにも似たぞわぞわとした感触であった。
 それが、再び彼女を渦の中へと引き寄せた。
「……ぁ、あくっ!? やっ、い゛、ひ、ぃ゛――ゃ、や゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ!?」
13火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 20:25:08 ID:CQwnfaBT

「くっ……!」
 ぶしゃりと、一気に肉茎を膣内から引き抜き、サズは勢い良くそれを娘のへその穴へと押し付けた。
「かはっ……」
 力任せなその動きに、娘の細い足と胴とが無理矢理に密着させられる。
 熱い。痛みよりも先に、その感覚が彼女を襲ってきた。
 ぶしゃあっと、溢れた。へその中へと、熱さの先端が溢れ出してきた。
「あっ゛」
「ぐっ、ぁ!」
 びちゅんっ、と。
 最初に鋭い音を立て、後の方はびゅるびゅると多少だらしなく、白い液体が小さな穴から零れ出た。

 厚手のキルトに包まれて寝息を立てている彼の姿は、先程までと全く印象が違って見えた。
 赤い髪の毛をそっと撫でてみると、強くかぶりを振られ、パトリシアは肩をびくんと竦めた。
 だが、男が目を覚ます気配はない。
 行為の後。ゆっくりと抱き寄せてくれてから、先に寝付いてしまうまでの間、彼は優しかった。
 どういう人なのだろうと思っている途中に、不意に彼の唇が目に入ってきた。
 炎に誘われる羽虫のように、彼女はふらふらとそこに顔を近づけていった。

「……ニア」
 ぴたりと、パトリシアの動きが止まった。
「サズ様」
 呼び掛けるが、答えは返ってこない。
 唇を頬にふれさせるに留め、彼女は目を細め小さく微笑みを浮かべた。
 浮かべつつも、こっそりと溜息を吐いていた。 

 サズは、夢を見ていた。
 大好きな少女と、広大な原っぱを並んで歩く夢であった。
 少女の愛らしい困り顔が見たくて、彼は時折、草原を進む脚を速めていた。
 調子に乗ってそれを繰り返している内に、目の前の草原が途絶えてしまった。
 慌てて振り向くと、階段が現れた。階段だけが周囲にあった。
 上から、少女の声が聞こえてきた。見れば、目の前に少女はいた。
 こんなものと、サズは駆け出した。駆け上がるごとに、少女の姿が離れていった。
 玉座があった。いつの間にか少女は玉座に腰掛けていて――

「きゃっ……!?」
「むぅ」
 聞き慣れない声に、それは掻き消された。
「誰だ……ッ」
 自分の寝起きの良さに、感謝して良いのか悪いのか。サズは一瞬判断に迷って舌打ちを飛ばした。
 部屋の入り口に、軍服を着込んだ男が立っていた。
「すまん。部屋を間違えた」
 バタン。
 ガチャリ。
「いや、やはりここであった」
「だから誰だよ……」
 珍しく半眼になって、サズは再び姿を現した男へと問い掛けた。
 その彼の肘が引っ張られる。パトリシアの腕が、遠慮がちに伸ばされてきていた。
「アゼル・イグナート将軍です」
「将軍?」
「……多分」
 自信なさげに、彼女は俯いた。
14火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 20:26:26 ID:CQwnfaBT

「多分とはなんだ。多分とは。そういえば君は、ソーン家の次女ではないか。何故君が俺の客人の部屋に
 いるのだ。こんな時間に男の部屋に入り浸るものではないぞ。君のお父上も」
「髪」
 パトリシアのその一言に、将軍と呼ばれた男の舌がその忙しない動きを止めた。
「どうして、前髪をお隠しなのですか? それで、迷ってしまったのですが」
「――君は、確か今年で十八だったな。ではもう成人を迎えた立派な大人の女性だ。我が国は少しばかり
 成人への年齢規定が緩い気もしていたが、それはともかく、もう人にとやかく言われる年齢では」
「よく喋る男だな。軍人の親玉は、全部こうなのか?」
「いえ、アゼル様はついこの間まで騎士の御身分であらせられましたので、恐らくは騎士の方々の方が」
「こら、俺を無視するな。ああと、サド、だったか? サド。サド・マレフ」
「誰がサドだっ!」

 小半時程、不毛な会話が続いた。

「で……一体、俺を使ってなにをするつもりなんだよ。バンダナ将軍」
 一度アゼルを退室させ、パトリシアに着替えを済まさせてから、サズは本題へと移っていた。
「アゼルだ。今度そう呼んだら斬るぞ。お前には私の部下として働いて貰う。断れば王都の近郊に火を
 かけた罪で立件する用意はできているぞ。迎え入れる用意は、少し待て。誠心誠意、リベールの奴に
 手配させているところだ」
 ふんと胸を反り返らせて、アゼルはサズに用件という名の命令を伝え終えてきた。
 サズが頬を指でぽりぽりと掻き、パトリシアは寝台の上で寝息を立てている。
「人は駄目だぞ」
「む」
 ややあってから口を開いていたサズに、アゼルが低く声を発した。

「人に向けて、あの火は使わねえ。それが第一の条件だ」
 他にもまだ条件があることも含ませたサズの言葉に、アゼルは暫し瞑目した。
「良かろう。それを前提に考えるだけだ。主にリベールがな」
「……あいつも苦労してんなぁ」
「しかしサズ・マレフよ。お前は中々に節義のある人物のようだな。あのような大火を操る男、野心の
 為にのみ力を振るう者かとも危ぶんだが、一安心した。やはり、馬に好かれる男には良い男が多いな。
 俺も愛馬のクラープロッホには、好きに好かれていてな」
「第二の条件。必要なこと以外、喋るな。いい加減、焼いても良い例外その二に入れるぞ」
「――」
「全部必要なのかよ」
「いや、今日はこのくらいにしておく。はっきり言って俺は眠い。ではな」
 バタンと、扉が閉められた。ずっと部屋の入り口にいたので、アゼルはすぐに外へと出て行っていた。
 
「ああ、サズ・マレフ。お前の馬はしっかりと馬丁を付けて手入れをさせているぞ。今時主人を庇い立て
 する馬など、殆どおらん。俺の愛馬にも見習わせたい程の雄姿であった」
「寝ろよ。有難いけど頼むからもう寝てくれよ」
 余韻をぶち壊しされた上に、微妙に癖をうつされて。
 サズはこれまでの人生の中で、一番深く長い溜息を吐いていた。

 静寂を取り戻した部屋の中で、彼は考え込んでいた。
 しかし、あまり考えも纏まらぬ内に、鈍い頭痛がやってきた。
「そういや、飲んでいたっけな」 
 他人事のように言って、傍らで微かに寝息を立てる娘へと目をやった。
 身体つきが小柄であるという点以外で、彼女に共通点はなかったが、それでもサズは夢の中に出てきた
 少女のことを思い出していた。
「飲みたがっていたっけ、あいつ」
 くだらないプライドにしがみ付いて、やりたいこともさせてやれなかったことを、少しだけ後悔した。
 そして、夢の内容を思い返そうとした。
 思い返そうとする度に薄れてゆくその夢を、彼は一晩中思い返そうとしていた。
15火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 20:27:41 ID:CQwnfaBT

「中隊長! キルヴァ軍の獣人部隊を発見しました。要塞の北、林の影に潜む形で潜伏中ですっ」
 若い士官が、幕舎の中へと駆け込んで来て、膝を衝いて報告を行う。
 自分の所属する小隊の挙げた成果に、興奮を隠し切れない様子だ。
「数と編成は、どうした」
「は……? あ、はっ、はい。数は、三匹が目撃されております。種別は狼、虎、熊です」
「お決まりの陽動の編成だな。それに、要塞への進撃の横合いを突いてくる場所でもない。あそこには、
 確か漁村があったか。お前ら、許可も得ずに民家に立ち寄ろうとしたな?」
 傲然とした男の声に、若い士官の顔が見る見る内に青ざめていった。
 赤い瞳が、血の気の引いた頬を一瞥する。
 瞳の主――サズが胡床から腰を上げ、剥き出しの地面へと唾を吐き捨てた。
「それで、お楽しみの前にあいつらを見つけて逃げ出してきた……そんなところか。オーランド」
「はっ」
 サズの横に直立不動で控えていた強面の男が、その呼び掛けに敬礼で返してきた。
「可愛がってやれ」
 その一言で、若い士官はへなへなと腰を砕けさせて、その場に崩れ落ちた。
 軍律の緩くなったボルドの軍では、彼のような兵士はよく見かける手合いであった。
 そして現在のサズは、王国軍軽装歩兵団の中隊長としてキルヴァ軍との戦いの日々に明け暮れていた。

「やっているな。サズ・マレフ」
 人員を減じた幕舎の中へと、新たな人影が入ってきた。
「アゼルか。見ていたな」
「聞いていただけだ。あまり厳しくやり過ぎて、ロウジェル突入の前に兵力を削ってくれるなよ」
「あんなクズを放っておけってのか。ただでさえ、ボルドの兵士は素人に毛が生えた程度だってのに」
「その素人鍛えてくれて助かっている。リベールも大喜びだ」
 喜ぶ対象が間違っている気がしないでもなかったが、サズは黙って足元の胡床を差し出した。
 アゼルが、それに無言で腰を掛ける。
 幕舎の中から、その二人以外が退出してゆく。
「前髪、伸びたな」
 瞳の色と同じ、暗灰色の髪を眺めて、サズは幕舎の支柱に背を預けた。
「煩い。リベールと同じことを言うな。ところでサズ・マレフ。カイゼル・イグナート将軍より、お前を
 俺の直属に回して良いとの許可が降りた。突入戦までに、いや、攻囲戦までには必ず配属を済まさせる。
 気に入った兵がいれば、リベールに言っておけ。他の部隊からでも構わん」
「余所の隊からもかよ。脛齧りの成果だとしても、太っ腹だな」
「父上の腹は出てなどおらん」
 その会話を皮切りに、二人は幕舎の内でお決まりになっていた情報交換を開始していた。

 ボルド王国からキルヴァへの宣戦布告が行われてから、四ヵ月の刻が過ぎていた。
 その間、サズは王国軍の軽装部隊を率いて対キルヴァ軍への前線に立ち、時折姿を現しては王国軍を
 混乱に陥れる獣人の兵士を焼き払い、帰還の命を受けてはアゼルへの報告を行っていた。
 実戦経験――特に前線での経験を圧倒的に不足させていた、アゼルやリーベルにとって、彼のもたらす
 報告は非常に有益なものであったのだ。
 小規模戦闘での死活点に対する知識は元より、行軍中の衛生面への指摘や、指揮系統などの不満点を
 遠慮なく告げてくるサズに、当初の内はアゼルたちも辟易とした反応を示していた。
 だが、突発的な戦闘を含む部隊戦を繰り返す内に、その指摘の中には正鵠を射たものが含まれていた
 のだということに、彼らは気付き始めた。
 それからというもの、前線への視察の際にはアゼル自らが、サズの下を訪れるようになっていたのだ。 

「ところで、サズ・マレフ」
 こほんと咳払いを一つしてから、アゼルは私的な会話へと突入する構えを見せてきた。
 サズは、黙ってそれを待ち受ける。
「パトリシアがな。お前の顔を見たい見たいと、俺が王城に顔を出すたびにせっついてくるのだが」
「無理だって言っとけ。女の顔見に、一々前線から戻る隊長がどこの世の中にいるんだ」
「そこだ。そこなのだ。お前、俺の下へ来てから、碌に休みをとっておらんだろう。それに、恩賞も陣の
 中に放り出して、殆ど手もつけておらん。兵としてこの戦いに加われとは言ったが、俺は自分の部下に
 そのような働き方を求めるつもりはないぞ」
 アゼルが目に憂慮の色を滲ませて、サズを問いつめてきた。
 サズが思わず、苦笑を洩らす。この男のこういうところが、彼は嫌いではなかった。
 大将とするには、中々の男だ。愛馬とやらに乗ってさえいなければ、悪いとは思っていなかった。
16火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 20:28:51 ID:CQwnfaBT

 十の鐘が鳴らされた。夜襲への備えに、陣地内の人の流れが活発になる。
「ロウジェルを奪還した暁には、骨を休めて貰うぞ。良いな」
 最近にしては珍しい、命令口調で以ってアゼルはそう告げてきた。
「考えておく」
「考えるな。絶対にそうしろ」
 彼は念押しをして、黒金の鎧を微かに鳴り合わせながら、サズの幕舎から去っていった。
 絶対的な数の有利で支配域を盛り返しているとはいえ、補給体制と兵の錬度ではボルドはキルヴァより
 数段劣る状況にあった為、主力軍の指揮を任じられている彼には、骨を休めている暇もなかった。

「ボルドも、あいつらがいるならなんとかなるかな」
 サズが再び胡床へと座して、寂しげな笑みを浮かべた。
 そうしながらも、頭の中では引き抜くべき兵士の選定にかかり始めている。
 すぐに、幾人かの顔が浮かび上がり、そこに名前がついてきた。
 それを羽のペンを使って羊皮紙へと書き記し、確認をしてゆく。
「骨休め、か。……そうさせて貰うさ」
 幕舎の中へと中隊員が戻ってくる前に、彼はつぶやいていた。
「そうしないと、あのおっさんを困らせ過ぎちまうだろうしな」
 ペンの先でインクの瓶の底をつつきながら、低く、彼はつぶやいていた。
 
 突撃の鐘が鳴らされる。
 サズは火矢に追い散らされた者には目もくれず、馬鎧に身を包んだ葦毛を敵の只中へと飛び込ませた。
 髪は、もう隠してはいなかった。
 兜もできる限り軽装の物を選んで、身に付けるようにしていた。
 赤い髪を風になびかせて、長剣をひるがえし、敵兵を一人、また一人と屠ってゆく。
 返り血を浴び、燃える瞳で獲物を捜し求める姿は、味方の兵を鼓舞し、敵の兵を戦慄させた。

 そうする内に、彼らは囁き始めた。
 ――ボルドには、妖魔の火炎を操る羅刹がいる。
 ――我が軍には、炎神の加護を得た剣士がいる。
 そんな噂が、戦渦と共に大陸を駆け抜けていった。
 竜炎と呼ばれた炎の使い手は、常にその戦渦と共に在り続けた。

 ボルド王国新歴213年。
 一旦はキルヴァの手に落ちたロウジェルの要塞を、王国軍が奪還に成功。
 獣魔戦争開戦以降、初の大規模戦闘であったその戦いにおける最大の戦功者は、アゼル・イグナート
 将軍麾下の強襲部隊の中より選出された。
 
 しかし、その者の名は、後のボルドの王国史に残されることはなかった。
 残すわけにはゆかず、さりとて偽りを記するわけにもゆかず、空白が記されることとなった。
 口にすることを禁じられた筈のその名は、やはり戦渦と共に広がっていった。
 広がり、そして残った。
 吟遊詩人の謳う英雄譚の中と、同じ時代を生き抜いた者の胸の内に、残ることとなったのである。
17火と闇の 第九幕:2009/03/03(火) 20:31:27 ID:CQwnfaBT

 夜の気に煽られ、戦の炎が燃え盛る。
 剣を手に、堅牢なる防壁と威容を誇る要塞を、彼は見つめていた。
 炎が踊る。
 彼は平穏の世に疎まれる、忌み児として産まれてきた。
 彼は戦乱の世に名を馳せる、英雄の資質を備えていた。
 赤い。
 空が赤い。
 地が赤い。
 血の赤さよりも荘厳に輝く、興亡の赤さだ。
 焦土の上へと剣を突き立て、彼は南の空を見つめた。
 そして、誓った。
 己の求めるものの為に、戦い続けることを。

 己を知り、世を知り、国を越えて戦うことを選んだその男は、自らの望みを叶えるべく、どこまでも
 走り続けると決めていた。
 
 赤い瞳が、天を睨んでいる。
 赤い髪が、風を受けている。

 サズは、夢の内容を思い出していた。
 追いかけても、追いつけない。その夢を、戦いの日々の中で思い出していた。
 そして理解した。
 置いて行かれるのは、彼女の方ではなかったのだと。
 辿り着くべきは、自分の方であったのだということを、彼は理解した。

 足元に、一輪の花が残っていた。
 彼はそれを、その掌で包む。
「フィニア。あんたに、惚れている」
 流れでた声は、きっと届くと信じていた。
「ずっと。ずっとだ――」
 信じて、手を離した。握り潰すことはせずに、彼はそっと指を離した。
 風が吹く。
 熾となった火を煌々と輝かせ、中天の月へとかかる雲を払い、吹き抜けてゆく。
 
 火と闇の中、花は咲き続けていた。


〈 完 〉 
18名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 20:32:30 ID:CQwnfaBT
もう少しだけ続くんじゃぞ。
って訳で、話の前半部分まで終了致しました。

読んで下さり、本当にありがとうございます。
19名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 22:28:18 ID:c7X9sGGb
そうね。
20名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 00:42:28 ID:bf2G1WYZ
ダラダラと長杉。
個人サイトでも作れば?
21名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 00:57:27 ID:XR2EO2a3
GJ! 急展開だけど、新キャラがいい!
22名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 01:19:43 ID:cmK+Tlsb
バンダナ将軍いいな。スピンオフ見たくなる。



>>20
長いって言えばガルィアの人とかナタリーの人だってシリーズずっと続けてて長いって言えば長いじゃん。個人サイト作ってからも投下してる人いるし。
その人らはいいわけ?
23名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 02:02:51 ID:kYvzNVmX
タイトルNGすればいいのに
24名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 02:52:45 ID:OTC1XBfe
>>18
GJ!
最後まで期待します。

>>20
嫌味を言うだけなら誤爆スレやチラ裏へどうぞ。
25名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 13:17:16 ID:uFg3+6aB
>22
別スレではな? …他作品の作者が嫌みをだな… 昔、昔の話さ。虚無の魔法スレだったな…

それと同じだと思っているオレがいる

作者様>
GJ!
睡眠時間削って読んだ甲斐があったってもんだ!
26名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 22:16:27 ID:JyCPgUIx
泣いた、とまではいかないが読み終わったら目頭が熱い
なんだろう、BadEndではないけどSadEnd?
男になったっつーか嫌な意味で一皮むけちゃったサズが悲しいな
27名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 23:35:30 ID:kYvzNVmX
wiki保管作業してくれた方に乙をしたい
28名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 02:31:29 ID:BWRA0fNc
こんな長いのよく読めるね
29名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 06:49:42 ID:1D9LePXD
>>28
ハウス!
30名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 10:14:11 ID:FUPsj1C0
ちょっと長編になると読むことができなくなるゆとりって可哀想。
自分が読めないからって茶々入れにくんなよ。
31名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 10:17:46 ID:fuWkwPeZ
>>26
俺も同意見だ・・・階段登っちゃったんだな、サズ
32名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 23:56:44 ID:eVgzc+x6
皇国の守護者を読んだ俺には
長編どんとこいだ


あれもお姫様でエロだよな?


しかしサズ・・・

かっこいいゾ
33名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 00:15:30 ID:eKDoKUXn
皇国の守護者、読んだことないけど面白そうだね
34名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 08:36:59 ID:u9jIezyZ
なんだかテオドルとアーデルハイト思い出した
35名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 09:37:07 ID:wMV3VDw9
ラストシーン読んで既視感あったけどそういうことか
36名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 04:05:53 ID:KD4N94DE
>>32
調べてみたら、滅茶苦茶俺のストライクゾーンな小説だ
今度探してみよう
37名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 05:32:03 ID:prLwTeOp
皇国を補足するなら

・完結はしていない
・9かんくらいまで
・新書
・一応一区切りしている
・第一次世界大戦な舞台観でファンタジー

が俺の感想

挿絵は
・ボトムズのひと
・ヘルシングのひと
など。

作者遅筆につき中毒症状注意

38名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 12:32:20 ID:KD4N94DE
ありがとう
でも最後の一行きっついなw
39名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 14:55:42 ID:MFWFcuCE
>>38
漫画版もあるからそっちもオススメ。
ただ…原作者のわがままで途中完結されたけど。
40名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 01:55:17 ID:ViHv7zjX
作者遅筆なんて良くある話じゃないか
41名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 02:37:07 ID:nsp28QVE
富樫ファンの俺は待つのなんて苦じゃないぜ!
42名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 02:49:34 ID:5IroLBFN
確かに、いい作品は待つのなんて苦じゃないな
43プロローグ:2009/03/09(月) 15:07:55 ID:5WPBle6Y
初めてで勝手がわかりませんが、投下させて頂きます。





プロローグ

 地震は、大地を支える世界樹ユグドラシルの根を齧る、邪龍ニーズホッグの身動ぎと言われている。
 それは、彼にとっては僅かな身動きなのかもしれない。しかし大地の上に生きる人間にとっては大惨事をもたらす。
 オータニア王国暦二五八年三月二五日。
 国の史書に、メルフェリア震災と記される大地震が、その地方一帯を襲った。
 幸い王都にはそれほどの被害はなかったものの、地震の震源地付近では甚大な被害が出ていると言う。
 ヴェリサはその知らせに、一抹の不安を覚え、窓から空を眺めた。
 一羽の鷲が天高く空を舞うのが見えた。
 終末(ラグナレク)において、死者を引き裂くという妖鳥、フレスヴェルクが連想される。
 何を考えてるの、私。
 しかしヴェリサはぶんぶんと頭を振り、不吉な考えを頭から追い払った。
 いくらメルフェリアがお祖父様の領地に近いからって、そんな事を考えるなんてどうかしている。
 しかし、ヴェリサのその予感は現実のものとなる。
 それを知るまで、後少し―――
441(1):2009/03/09(月) 15:11:09 ID:5WPBle6Y
 瓦礫の散らばる石畳の上は、慎重に歩かねば足を取られてしまいそうになる。
「ヴェリサ、足元気を付けて」
 先頭を歩くアトレーが、何度も後方を振り返り、華奢な少女に気を使うのを、セシルは苦々しく思った。
 ここは遺跡都市レト。古代王国の遺産が眠ると言われる、大陸でも有数の大遺構だ。
 魔法王国アイテア―――優れた先進文明で栄華を極めるも、大破壊と呼ばれる原因不明の大きな災厄で、一夜にしてその姿を消したと言われる先進魔法文明。
 各地に見られるその遺跡からは、時に貴重な工芸品(アーティファクト)が発見される。
 好事家や大学にて時に高値で取引されるそれを目当てに、一山当てようと考える山師は決して少なくない。
 遺跡のすぐ傍に作られた町には、冒険者を自称するそういう輩や、純粋に研究対象として遺跡を調べる学者、魔術師、そして彼らを相手に商売する者が集まってくる。セシル達もその一人だ。
 リーダーで剣士のアトレー、学者のミスティ、そして盗賊のセシル。ほんの少し前までは、それに魔術師のクライスが居た。彼は遺跡探索中の事故で帰らぬ人となってしまったが。
 不幸な事故だった。探索中に突如このメルフェリア地方を襲った大地震。それに巻き込まれ、彼は瓦礫の下敷きになったのだ。
 酷い揺れに、この地方一帯は大きな被害を出し、かなりの人数が怪我をし、また亡くなったと聞く。
 両親を早くに亡くし、町の裏通りで必死に生きてきたセシルにとって、人の死を見るのはそれが初めてではなかった。
 しかし長く一緒に過ごした仲間を喪ったのは大きな痛手だった。しかし地震はこのパーティに、それ以上に重い被害をもたらしていた事を知ったのは、町に戻ってからの事だった。
 彼らのパトロンを務めてくれていた、リジェスタ伯爵もまた、地震の被害者となって亡くなったのだ。
 遺跡の探索には先立つ物が不可欠だ。
 遺跡探索を行う者の中には、職業を別に持ち、余裕が出来たら探索の旅に出ると言う、休日冒険者と呼ばれる類の人も居れば、ぎりぎりの生活を送りながら一獲千金の夢を抱き、足を踏み入れる者もいる。
 或いは貴族や富豪の好事家に雇われたり、大学、もしくは魔術師ギルドの学術調査に参加したり―――
 セシル達は、古代王国に並々ならぬ興味を抱くリジェスタ伯爵の公募に応募した事がきっかけでパーティを組むに至った。
 遺跡の守護者と戦う為の戦闘要員である剣士、古代王国学に造詣の深い学者、遺跡に仕掛けられた侵入者防止の罠を外す能力を持つ盗賊、そして魔術師。
 探索に必要最小限の能力を持つ者ばかりを選抜し、結成されたパーティである。
 伯爵家の援助を受けて金銭的な心配をせず、またその危険に見合うだけの報酬を約束された好条件だった為、その公募にはかなりの人数が集まった。
 人格、能力などを見られる厳しい選考を潜り抜けた四人は優秀だった。最初こそぎこちなかったものの、探索の旅を続けるうちに次第にその絆は強くなって行った。
 その矢先に立て続けに起こった不幸である。
 リジェスタ伯爵の爵位と財産は、唯一の血縁である孫娘に継承される事になったと風の噂で聞いた。
 パーティ解散の危機だった。
451(2):2009/03/09(月) 15:12:41 ID:5WPBle6Y
 魔術師が居なければ、古代魔法王国の遺跡探索はできない。
 遺跡には物理的な罠だけでなく、魔法的な罠も数多く仕掛けられているからだ。魔術師なしで遺跡に挑むのは、自殺行為と言える。
 そしてパトロンまでも亡くした今、金銭的な不安も大きい。相続人である孫娘とやらが、伯爵と同じようにセシル達を遇するとは限らないのだ。
 これはまた盗賊ギルドに戻るか、傭兵稼業でもするかだなぁ、とセシルも覚悟した。
 仲間達で相談の結果、とりあえず未払いの報酬を払ってもらう為に、孫娘に会いに行く事になった。
 その孫娘が、今セシルの前を歩くヴェリサである。正式な名前は名乗って貰ったが、あまりにも長ったらしいので忘れた。
 三人が事情を話すと、彼女は快く報酬を支払ってくれた。
 そして今後の契約について話が及んだ時、彼女はなんと、自分を仲間に入れて遺跡探索を継続しろと申し出てきたのである。彼女は何と、王都の魔術師ギルドに籍を置く魔術師でもあった。
 確かに足りないのは魔術師の職のみ。しかし彼女は貴族のお姫様で、しかも若い。クライスに比べると経験不足は明らかだ。
 同じ女でも、剣を修め、古代王国学に加え医術にも造詣が深いミスティとは鍛え方が違う。
 三人は反対したが、彼女は頑なだった。
「私だって一人前の魔術師です。古代王国時代の遺跡に興味があるんです。それだけじゃいけませんか?」
「……失礼ですが、あなたのような貴族のお嬢様が行かれるような場所じゃありませんよ。第一代替わりしたばかりで領地も不安定でしょう」
「元々お祖父さまの代から、領土の経営は代官に任せてましたの。彼は優秀だから大丈夫ですよ。それよりも私は、お祖父さまが私財を投じてなさって来た事を少しでも知りたいんです」
 そういって涙ぐんだ彼女の表情に、アトレーがまず折れた。次にリーダーが承諾するのなら、とミスティが。セシルは一人最後まで反対したが、契約解除を散らつかされ、三人で協力して守れば大丈夫だとメンバーに説得され、渋々ながら首を縦に振ったのだが。
 道中セシルはその事を何度も後悔した。
 果たして最初の予想通り、ヴェリサは世間知らずなお嬢様だった。
 例えば道中。自分の足で長時間歩いた事のない彼女の足は遅かった。それだけでなく、歩き慣れていない彼女のにはすぐに肉刺が出来た。そのせいでただでさえ遅い速度が更に遅くなった。
 また野営の時には、何をすればいいのか判らず、おろおろするばかりである。
461(3):2009/03/09(月) 15:13:46 ID:5WPBle6Y
 かと言って魔術の腕が頼りになるかと言えば、そうでもない。
 何でもない時、例えば夜、明かりを灯したり、火を点けたりと言った簡単な魔法の手際は良かった。
 熟練した魔術師になればなるほど、魔法を行使する時の媒体や手順は不要になって行くと言う。その論理で行けば、詠唱を必要とせず手の一動作だけで火を起こせるヴェリサは、かなり優秀な魔術師なのかもしれない。
 しかし実戦ではその技量は全く役に立たなかった。
 王都からレトに至る道中は危険がいっぱいだ。
 夜盗が出る事もあれば、獣に襲われる事もある。その時は後者だった。
 不運な事に飢えた野犬の群に出くわしてしまったのである。
 突然の血生臭い戦闘に、ヴェリサは恐怖に動けなくなってしまった。
「呆けんな! 何か魔法使え。数が多い」
「ま、魔法って言ったって何を……」
「何でも良いから援護しろ。『足止め(タングルフット)』とか『火球(ファイアボール)』とか、何かあんだろ!」
「は、はいっ」
 頷いたはいいものの、ヴェリサは何の魔法を使おうとしたのか、随分長い魔法の詠唱を始めた。
「馬鹿かお前は!」
 隙だらけのヴェリサに、一匹の野犬が噛み付こうと襲いかかった。
「―――!」
 野犬は咄嗟に壁になったセシルの腕に噛み付いた。セシルは痛みに悶絶する。
「セシル!」
 ヴェリサの悲鳴に、別の野犬を切り捨てたアトレーが駆け付けた。
「セシル! 大丈夫か」
 遅れてミスティもやってくる。
 幸い傷はそう深くなかったが、その後しばらくヴェリサは泣き続けて使い物にならなかった。
 ヴェリサを見ていると苛々する。セシルはこの手の女が苦手だった。
 見るからに育ちが良くて、両親や周りの人間に愛されて、苦労知らずに育ったお姫様。
 整った顔立ちに、真っ直ぐな金髪(ブロンド)、深い青の瞳は零れるように大きく、等身大の人形が動いているかの様。
 騎士の家に生まれたアトレーは、そう言った女性が好みのタイプらしく、ヴェリサを甘やかす。惚れているのではないかと密かに疑いたくなるほどだ。
 アトレーはいい奴だがその女の趣味は理解できない。ちなみにセシルの好みはもっと大人で肉感的な女だ。美人である事に越したことはないが、抱き心地が良くて、性格がサバサバしていればそれで十分だ。
 アトレーの態度に、ヴェリサもまんざらではないようである。いつかこの二人は付き合う事になるのかもしれない。
 もう一人の仲間、ミスティとクライスは恋人同士だった。その彼を喪った彼女は傷心で、その痛みを紛らわせるためなのか、やはりヴェリサに甘い。
 苛立ちからついきつい事を言ってしまうセシルは、仲間二人から少し厳しすぎるのではないかと注意されたが、お前らが甘やかしすぎだと反論したら、それ以上何も言われなくなった。
 そして、今に至る。
472(1):2009/03/09(月) 15:15:06 ID:5WPBle6Y
 遺跡都市レトに辿り着いた一行は、早速探索に入ることにした。
 しかし今回は、肝心要の魔術師が初心者と言う事で、遺跡の外壁部分を少し見学して帰ろうと言う事になった。
 それでなくとも大地震のせいで遺跡の地形が変わっているかもしれない。
 深部の調査はヴェリサが慣れてからと言う事で、一行の間では話がまとまった。
 貴族のお姫様の趣味の道楽に付き合うだけ、そう考えると、支払われる報酬は破格であり、ぼろい仕事である。
 ヴェリサは傍から見ていると苛々するが、苦手なだけで嫌いと言う訳ではない。
 ほんの少し我慢して、戻ったら賭博場(カジノ)で遊んでやるんだ。セシルはそう自分の心に言い聞かせた。
「これが、レト……」
 初めて遺跡都市に足を踏み入れて、ヴェリサは感慨深げに呟いた。
 アイテアの謎に迫る事は、魔術師にとって至上の命題と言える。現在伝えられている魔術は全て、アイテア王国時代に研究され、開発されたものが殆んどだと言われている為だ。
「遺跡探索の鉄則は覚えてる?」
 ミスティの質問に、ヴェリサは即座に頷いた。
「扉を見つけたら、新しい部屋に入ったらとにかく魔力視。怪しい魔力が感じられたらすぐに引く。魔術師は一番前には出ない、ですよね」
「扉を開けるのは盗賊と魔術師の仕事。でも先頭に立つのは剣士の仕事。とにかく慎重にね」
「はい、頑張ります」
 ヴェリサ達の会話を横目に、セシルはぼんやりと周囲を見渡した。
 町に戻った時、地震による被害は深刻で、見知った建物のいくつかは倒壊し、酷い有様だった。それに比較すると多少はましとは言え、やはりその風景は以前と比べると随分様変わりしている。
「……あれ?」
「どうしたの? セシル」
「いや、何かあそこ、階段みたいなのが見えないか?」
「え?」
 セシルはその場所を指差した。
 セシルの目は常人より鋭い。仲間達は更に近付いて行って初めて同じものに気付く。
 地下に伸びる階段が確かにあった。
「相変わらず目聡いわねぇ」
「鼻が利かなきゃ盗賊はなんか務まらないって」
「ヴェリサ、何か見える?」
「ええっと……特に不審な魔力は感じませんね」
 魔術師の言葉を信頼し、ミスティは階段に近付いた。
「地震でここにあった瓦礫が崩れたのね」
「って事はここは未踏査の可能性があるって事か?」
 セシルは喜色を浮かべた。
 レトは有名な遺跡だけあって、その殆どが既に盗掘の被害に遭っている。
 深部に行けばまだ誰も手を付けていない部分があると言われているが、そこに侵入するには相当の覚悟と準備が必要だ。
「こんなわかりやすい場所じゃわかんないわよ。既に誰かが調査済かも」
「地震で町の方はかなり被害が出てるからなぁ……俺達みたいなのが他にどれだけ動けてるか」
 セシルは途中立ち寄ったレトの町並みを思い返した。
 地震から約半月、直後の事を考えると、瓦礫の類は撤去され、ちらほらと建設中の建物があちこちに見られた。
 しかし地震の爪痕は深く、仮設のテントで逞しく商売を再開する人がいる一方で、領主が派遣した衛士やら、寺院(テンプル)の炊き出しやらが見られ、家を喪った人が途方に暮れた表情で道端に座り込んでいた。
「町はあの状況だったからなぁ……」
「じゃあやっぱり未踏査の可能性もあるわね。ついてるじゃない、私たち」
 新しい発見の可能性に、仲間達は目を輝かせた。
「どうする、入ってみるか?」
「でももしホントに未踏査だったら危ないよ? リスクの分バックもでかいかもしれないけど……」
482(2):2009/03/09(月) 15:18:38 ID:5WPBle6Y
 そして六対の目がヴェリサに集中した。
 不安要素は彼女だ。
「え、えっと、私なら行けます。頑張りますから」
 三人の視線の集中攻撃を食らって、たじろぎながらもヴェリサは気丈に答えた。
「………どうする? アトレー」
 こう言うとき、決断するのはリーダーの役目だ。
「行こう。でも危なそうだったらすぐ引き返す。それでいいか?」
 仲間達はこくりと頷いた。
「ヴェリサ」
「はい」
 ヴェリサは精神を集中させる。
「大丈夫。かなり奥の方まで探ってみましたけど、何も感じません」
 一行は石造りの階段を慎重に降りてゆく。
 普通の家の階段を二階分ほど降りたところで扉に行き当たった。
 扉の上部には、古代語の看板がかかっている。
「何て書いてあるんだ?」
 一行の中で古代語が読めるのは、ミスティとヴェリサだ。
「えっと、『藍色の夢』って書いてますね」
「何かのお店かしら? 美術品でも残っていれば儲けものなんだけど」
「二重鍵になってますね。セシル、『視覚共有(サイトシェアリング)』をかけますので、指示を下さい」
「ああ、任せろ」
 混合鍵とは、形状は物理的な鍵なのだが、通常の錠前破りの七つ道具では破れず、魔法的な力でしか打ち破れない鍵の事である。古代遺跡にはしばしば見られる鍵の形状だ。最近では高位貴族の邸などにも採用されだしている。
 その鍵は普通の盗賊には破れないし、魔術師にも破れない。
 単独で破れる者がいるとすれば、それは魔術師崩れの盗賊か、元盗賊の魔術師か。つまり、両者の力を併せ持った者だけだ。
 しかしそんな特異なものはそうそういない。だから普通は魔術師と盗賊、両者が協力して鍵を開ける。
 方法は簡単で『視覚共有(サイトシェアリング)』の魔法によって、魔術師の視界を借り、盗賊が鍵を破る為の指示を出す。遺跡の探索において、魔術師と盗賊が必ず要求される大きな理由がこれである。
 ヴェリサは呪文を詠唱し、セシルの体に触れた。
 セシルの体に温かな何かが入ってくる。そして二人の視野が同調する。
 そしてセシルの目に映る景色はその姿を大きく変える。
 何度かけてもらっても不思議な光景だ。
492(3):2009/03/09(月) 15:22:22 ID:5WPBle6Y
 魔術師に見える世界と、常人に見える世界は違う。それをこの魔法は見せつけてくる。
 魔力視は魔術師になる為には絶対的に必要な力。生まれ持った才能と言い換えてもいい。
「えーっと、外郭上部にあるポチをまず抑えてくれ」
「はい」
 ヴェリサは鍵の魔法構成を、自らの魔力(マナ)を干渉させて書き換える。
「次は、その隣の針金みたいなのを右に」
「はい」
 セシルの指示に従い、するすると淀みなく構成を変容させる彼女の手際は、やはりクライスよりも手早い。
「お前さぁ、実は結構優秀なの?」
「え? えーっと、一応実践者(プラクティカス)の位階は持ってます」
「実践者(プラクティカス)!?」
 背後でミスティが驚愕の声を上げた。
「それって凄いのか?」
「魔術師ギルドの位階は、そのまま魔術師の地位と実力を現すのよ。
実践者(プラクティカス)は全部で十一ある位階の上から八番目。
十一あるって言っても、上の三つは生きてる人間には到達し得ない境地と言われていて、
聖地の最高魔術師が持つ四番目の位階、被免達人(アデプタス・イグセンプタス)が実質の最上位と言われているわ。
王都のギルドマスターで第六位階の小達人(アデプタス・マイナー)ってとこね。
実践者(プラクティカス)って言ったら、弟子とって育成する位の立場よ」
「ヴェリサって何歳だっけ」
「十九ですよ」
「その年でそれって相当優秀じゃない。よくギルドがこんな旅に出る事許したわね……」
「別に入りたくてギルドに入った訳でも、望んで賜った位階でもありませんから」
 答えるヴェリサは淡々としていた。その間にもセシルの指示を受け、鍵に取り組む手は休めない。
「よし、これで開くはず」
 ほどなくして、セシルとヴェリサの作業は終了した。『視覚共有(サイトシェアリング)』が解かれ、セシルの視野は普段通りに戻る。
「じゃあここから俺の出番だな」
 アトレーが先頭に立ち、扉を開いた。
 重厚な造りの鉄の扉だが、少し押すだけで自然と動く。
「危ない!」
 ミスティが内部の危険を察知し、アトレーを突き飛ばす。
 一本の矢がアトレーの頭があった辺りを打ち抜いた。
「自動人形(オートマタ)だわ!」
 自動人形(オートマタ)は古代人達が建物の警護の為に創り出した魔法人形(ゴーレム)の一種だ。侵入者を敵とみなし、襲いかかってくる。
しかも一旦倒しても、何時間か経てば自動的に修復される機能付きのものもあり、倒す時は粉々になるまで砕くのが鉄則だ。
502(4):2009/03/09(月) 15:23:11 ID:5WPBle6Y
 それは、弓を構えた木偶人形のような形状をしていた。
「遠距離攻撃型か……厄介だな」
 アトレーは腰に帯びた剣を抜いた。セシルとミスティもそれに倣う。
「ヴェリサ、援護を……」
 今回はセシルが言うまでもなかった。
 いつの間にやら詠唱に入っていたヴェリサが、後方から不可視の魔力を解き放つ。
「『魔法解除(ディスペルマジック)』!」
 果たして魔法が効いたのか、自動人形(オートマタ)はがらんと倒れ、動かなくなった。
「効いた……みたいですね」
 魔法を唱えた本人が一番信じられないと言う表情をしていた。
「何をやったんだ」
「自動人形(オートマタ)を動かしていた古代の魔法を、解呪しました。古い魔法だったので劣化していたみたいですね」
「やるじゃないか。前は役立たずだったのに」
「ちょっと!」
 セシルの後半の一言に、本人よりもミスティが怒った。
 言った後で余計なひと言だったかとも思ったが、口から一度出た言葉はもう戻らない。
「ミスティ、いいんです。セシルの言う事は正しいから」
 ヴェリサは少し哀しげだった。そんな様子がセシルの苛立ちを煽るというのに。
「私、ギルドでは優秀な方だったので自惚れてました。旅に出ても上手くやって行けるだろうって。でも研究室と実戦は違いますね。野犬に襲われた時は、怖くて体が竦んで動けなかった」
「皆初めはそうだよ。ヴェリサは大事な雇い主で仲間だ。だから俺達ができる範囲でカバーする。あんまり気にしないで」
 セシルはアトレーの言葉に軽く首を竦めた。
 そんなセシルを、ヴェリサは物言いたげな表情で見つめている。
「とりあえず先を急ごうぜ」
 セシルはふっとため息を吐くと、前に進み出ようとした。
「あっ、駄目……!」
 ヴェリサが慌ててそのセシルを追い、腕を掴んで引き止めようとする。
 しかしその時はもう遅かった。
「!」
 地面から魔法力の光が迸り、セシルとヴェリサを包み込む。
「ちょ……」
「セシル! ヴェリサ!」
 動揺するミスティとアトレーの声が遠くなる。
 二人の姿は収束する光の中に溶けてゆく。
 そして、後には剣士と学者だけが残された。
 二人は慌てて追いかけようとするが、そこはもう何の反応もしなかった。
「……どうしよう」
「よりによって、ヴェリサが消えるなんてな……」
「たぶん移送魔法ね……脱出するだけなら二人でなんとかできるかもしれないけど……」
 もし魔法生物にでも襲われたらどうなるんだろう。
 セシルのナイフ投げの技量は大したものだが、前に出ての立ち回りはあまり得意な方ではない。魔術師であるヴェリサは後方に居てこそその真価を発揮する。
「どうする? 助けを呼びに行くか?」
「でもここ、未踏査かもしれないじゃない。それをむざむざ捨てるの?」
「でも二人の命には代えられないだろう」
 残された二人は、途方に暮れた表情で顔を見合わせた。
51名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 15:27:52 ID:5WPBle6Y
なかなかエロまで行きつけません……
続きはまた今度|ω・`)
52名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 16:43:47 ID:3sBpZC5B
期待期待
5343:2009/03/09(月) 17:50:23 ID:5WPBle6Y
>>43です。
エロシーン(前編)が書き上がりました。

 一方、セシルとヴェリサが移送魔法によって飛ばされた先は、小さな部屋だった。
 ヴェリサは魔法の光球を作りだし、周囲を照らす。
 室内には、人三人は横になれそうな大きなベッドが中央に据え付けられており、カーテンや絨毯、
小さなテーブルと言った調度も見られる。
 布は既にボロボロになってミスティ、元の色や模様がわからない位に劣化していたが。
「どこだ、ここ……」
「あそこ、移送魔法がかかってたみたいです。だから待ってって言ったのに……」
「悪い」
 セシルは自分のミスである事は自覚していたので、素直に謝った。
「いくつか魔法のかかった品があるみたいなので、無闇に触らないで下さいね」
 ヴェリサはざっと部屋中を見渡すと忠告した。
「もしかしてお宝の予感?」
「かもしれませんね」
 ヴェリサは、テーブルの上に置かれた魔法工芸品(マジックアーティファクト)と思われる箱に近付き、
目を凝らした。
「映像記憶装置……かな? 似たようなものをギルドで見た事があります」
「それって高く売れるのか?」
「ええ、貴重な古代を知る史料ですから。確かここをこうやって……」
 ヴェリサは、それを手に取り、側面に指を滑らせた。
 するとトーイと呼ばれる古代王国時代の衣服を纏った美貌の男と女、
二人の人物の姿が等身大に映し出される。
 ヴェリサは期待に満ち溢れた目でその男女を見つめるが……
「え?」
 男が女を押し倒し、女の衣服を脱がし始めたのを見て、その表情が凍りつく。
(おいおいおいおい……)
 今にもおっぱじめそうな様子の二人に、セシルもぽかんと目と口を開いた。
 ぽとりとヴェリサは手にした箱を地面に取り落とす。
 箱はころりと転がり、テーブルの下に落ちた。
 装置に記憶された男女の姿は一瞬ぶれるが、いかなる仕組みになっているものか、
箱が地面に安定すると何事もなかったかのように動き出し、果たしてセシルの予想通り、
そう言う事を始め出した。
『うっ……あ、あん、やっ……』
 ご丁寧に音声付き。
 何事か囁き合う言葉は古代語の為理解できないが、あのときの嬌声は時代を経ても共通だ。
「な、なにこれっ!」
 ヴェリサの顔は真っ赤である。慌てて箱を拾い上げる為に四つん這いになり、
テーブルの下に手を伸ばした。
 セシルの目の前には睦み合う男女の姿と、もそもそと動くヴェリサのお尻が。
 本日のヴェリサは、チュニックをミニスカートのように着こなし、その下にはズボンを穿いている。
旅装の為その材質は麻で、色合いも地味で質素なものだ。無骨と言ってもいい。
しかしそのズボンは体の線にぴったり合った細身のもので、だから服の上からでも、
柔らかそうな尻の質感が如実に判る。
 その姿はどこか間抜けで、しかし見様によっては淫靡だった。
 箱は手を伸ばしただけでは届かない位置まで転がっていってたらしい。
ヴェリサは机の下に潜り込んで、箱を止めようと弄っている。
 羞恥と焦りでうまくいかないようだ。
 初心なヴェリサの反応に、セシルの心に悪戯心が湧き上がる。
 貴族の娘は、実情はどうか判らないが貞節を美徳とする。
気真面目なヴェリサの事だから、もしかしたら処女かもしれない。
 セシルはゆらりとヴェリサの背後に忍び寄る。
543(2):2009/03/09(月) 17:52:29 ID:5WPBle6Y
↑3(1)です。

 ヴェリサは尻に何かが触れるのを感じ、びくりと身を竦ませた。
「別に止めなくてもいいだろ。ほら、一緒に見ようぜ」
「えっ、ちょ……セシル?」
 セシルはヴェリサの細い腰に手を回すと、力任せに引き摺り出すと、背後から抱きよせ、
自身の膝の間に座らせた。
 女の、魔術師の細腕では、男の力には逆らえない。
 腕の中のヴェリサの体は思った以上に華奢で小柄で。小動物のような不安げな表情でセシルを見つめて来る。
 セシルの心に、苛立ちが込み上げてきた。
 この、縋る様な表情。いつもきつい言葉を投げかけてしまった時と同じ。
 滅茶苦茶にしてやりたくなる。被虐心。
 セシルはヴェリサの顎を掴み、無理矢理映像を見るように顔を固定する。
 映像の女はちょうど今のヴェリサとほとんど同じ、男の上に膝を広げて座ったような体勢で、
後ろから貫かれていた。
『やっ、あっ、あっ……ああっ、いい、いいっ』
 セシルには喘ぎ声と意味不明の叫びとしか取れない古代語も、
ヴェリサには意味のある言語として頭の中に入ってくる。
 衣装は胸元と下半身だけが脱がされた卑猥な姿。
剥き出しの乳房を股間と同時に男に嬲られ、女は恍惚の表情で身悶えている。
「い、いや……」
 ヴェリサは頭を固定する男の力を振り解こうともがく。しかし男はそれを許してくれない。
「ほら、ちゃんと見てやりなよ。すげー気持ちよさそうにしてる」
「お願い、セシル。離して」
 ヴェリサは両の眼をきつく閉じた。目尻には涙が浮かぶ。
 いい子ぶって、清純ぶって、この女はいつもそうだ。
 セシルは冷めた目でそんなヴェリサの様子を見つめた。
 旅に出た当初、雇い主なのでセシル達はヴェリサに対し敬語を使っていた。
『これから仲間になるんだから、普通でいいですよ。対等でいましょう』
 ヴェリサのその言葉に、三人はヴェリサに対し敬語を使うのを止めた。
しかし当のヴェリサは、三人に対して丁寧語を使うのを止めない。
『ご免なさい。私も努力しようとしてるんだけど、難しいです。だって皆さん私より年上だし、
冒険者としては先輩だし……』
 それは彼女の生来の育ちの良さを示すもので、セシルは無意識のうちに己の境遇と引き比べていた。
 セシルはレトよりずっと北にある、ブレストという比較的大きな町の、労働者階級に生まれた。
家は貧しかった。流行病に弟が倒れた時、満足な薬も買ってやれない位に。
553(3):2009/03/09(月) 17:54:53 ID:5WPBle6Y
 弟の病は、看病する母に、そして父にも移った。
 唯一無事だったセシルは必死で三人の看病をした。しかしその甲斐空しく、
三人は順番に死んでいった。
 一人残されたセシルはまだ十歳、まだまだ親の保護が必要な年齢だった。
 哀しかった。でも哀しんでいる間にもお腹は空く。心はみじめで虚ろだった。
いっそ、同じ病に罹って、自分も死んでしまいたいと思った。
 死神にも見放されたと感じた。しかし自ら死を選ぶ事は恐ろしくてできなかった。
 空腹に耐えかねて、露店の人混みに乗じて林檎を盗んだ。
そこからは生きていく事に必死だった。
とは言っても、何の身寄りもない子供を雇ってくれる所なんてない。
 スリ、万引き、食い逃げ、出来ることは何でもやった。
そんな犯罪行為を繰り返すうちに、盗賊ギルドの存在を知った。
正確には、目を付けられた。
 顔が変形するほどの報復を受けたが、幸いにもギルドの幹部に気に入られ、セシルは盗賊ギルドの一員となった。
ギルドで学んだ鍵開けや格闘の技術は、その後の生活に大いに役に立った。
 遺跡を専門とする冒険者への転向は、ギルドからの仕事がきっかけだった。
そしてリジェスタ伯爵との出会いを経て、今のセシルがある。
 くだらない嫉妬だとわかっている。人は親を選んで生まれてくる事はできないのだから。
 それは前世の業(カルマ)のせいだと聖職者は説くが、そんな言葉クソ食らえと思った。
 神など信じない。信じるのは己の力のみ。
 しかし、この女はどうだ。恵まれた境遇に生まれ、周囲に依存して生きている。
 この世の裏なんて見た事がないだろう。お綺麗で上品なお姫様。
 穢してしまえ。
 昏い欲望が、セシルの心に語りかけてくる。
 汚れきった自分の手で。
 純白の少女の体を欲望のままに暴き、思うがままに蹂躙する。
 ああ、自分はきっと、ずっとそうしたかったのだ。
「本当はお前もそうされたいんだろ?」
「セシ……ル……?」
 セシルの手が、ヴェリサの体をまさぐった。
 服の上から乳房を鷲掴みにする。
「結構胸あるんだ。尻もムチムチだし、やらしー体してるね」
「っ、やめて……」
 そんな言葉、聞こえない。
 て言うか潤んだ瞳でそんな言葉言われても、男を煽るだけだって。
 きっと無意識。わざとなら希代の悪女だ。
56名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 17:56:45 ID:5WPBle6Y
続きまする。
57名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 17:57:04 ID:0piG2xhd
これは確かに期待できそうだな、頑張ってね
58名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 18:02:26 ID:5WPBle6Y
うわー、投下してから誤字発見…
書き出した当初のミスティの名前が『オーレリア』(愛称オーリィ)だったのが原因ぽいです。
ワードの置換機能で名前変更したらガックリな事に!!!

日本語の「おり」が「ミスティ」と言う言葉になってる箇所が数か所あると思われますorz
区別してくれよ馬鹿ワードめ……

3(1)4行目
布は既にボロボロになってミスティ、
→布は既にボロボロになっており、
脳内変換よろしくお願いします。
59名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 18:08:28 ID:3sBpZC5B
多少の誤字はへっちゃらさ
60名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 22:42:19 ID:3XU5sEsY
すごい誤字っぷりに笑ったが、ストーリーおもしろいな
続きを全裸で待ってるYO!
61名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:08:30 ID:e7as9XTs
ファンタジーRPGっぽくて楽しい
62名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 10:29:27 ID:rzwv/M1L
おお、新たな職人さんが
家帰ってからじっくりと読ませて頂きます
63名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 19:11:50 ID:cv4iqXhe
好きな感じの話キタ。
複数男女が登場ってことは、三角関係とか期待できちゃうのかな?
64名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 00:14:40 ID:mG5leKPb
 投下をさせて頂きます。

 火と闇の 幕間 一
 中世ファンタジー的舞台背景でのお話。
 今回は主人公が変わっています。

・異種強姦描写有
・戦闘描写有

 以上の点にご注意をお願いします。
 タイトルはNG用兼ねて同じにしていきますので、ご利用下さい。
65火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:15:26 ID:mG5leKPb

 太陽神の名を口に、騎士の一人が私の眼前で崩れ落ちる。
 ソラ。御名と呼ぶべきその名前は、その戦場のいたる場所で、断末魔と共に叫ばれ続けていた。
 背中から真っ赤な刃を生やした騎士の身体が、天へと投げ飛ばされた。
 天に召される。そんな言葉を嘲笑うように、それは落下を始め、嫌な音を立てて地に叩き付けられた。
 最早ぴくりとも動かなくなったその物体を、青い巨大な足が踏み潰す。
 銀色の甲冑が弾け飛び、それが岩の如き筋肉へとぶつかると、魔物――オーガは咆哮を上げて、自らの
 勝利を誇るように血染めの巨剣を振り回した。
 その剣に、主である騎士を救おうと、傷だらけの身体を引きずってきた従卒の頭部が弾き飛ばされた。
「キキィッ!」
 暗紫色の小柄な体に蝙蝠の翼を生やした妖魔が、その光景に悦びの声を上げる。
 呪毒を振りまいていた仲間のインプたちも、それに唱和するように両手を打ち鳴らして飛び回る。

「ソラよ」
 祈りと共に名を唱えてみたが、かすれた声が洩れる以外は、なにも起きはしなかった。
 ずくりとした痛みが、股の付け根からやってくる。激痛の類に当たるはずのその痛みは、私の思考を
 遮ることなく、間断なく与えられ続けている。
 発狂してしまったのだろうか。私は心の中で首を傾げた。
 重苦しい胸鎧に包まれた身体を、ぬかるむ土の上で何度も何度も往復させられ、不気味な形状の器官を
 血塗れの秘部へと衝き立てられている。
 それが、今の私の姿だった。
 狂っていても、おかしくはない。
 この状況下で、そういう思考をしていられること自体が、狂っている証明なのだろうか。
 緑色の肌をした、背中に大きなこぶをもつ禿げ頭の魔物がくぐもった声を上げ始めた。
 泥と血に塗れた布切れがくくり付けられた腰が、前後への動きを速める。

 絶望などは、とっくに通り越していた。
 はっきりと言ってしまえば、私はこの戦いに望む前から、自らの置かれた状況に対して絶望していた。
 無謀だったのだ。
 一中隊にも満たぬ戦力で、魔物の跳梁跋扈する地へ赴き、それを駆逐するなど、無謀過ぎたのだ。
 宗教国家として中央大陸の東の端に勢力を持つ、ミラの聖騎士とその従者たちは、そんな考えは欠片も
 持ち合わせてはいなかったのか、ソルトブルの商人たちの皮肉混じりの警告にも耳を貸さず、ただ只管、
 邪悪討つべしと声を張り上げて、クァドルの沼地と呼ばれる場所へと足を踏み入れた。
 
 聖騎士たちを率いるボリスレズフ卿は、無能を絵に描いたような人物だった。
 沼地に潜むという、凶猛な魔物たちを相手にしようというのに、碌な下調べも行わず、取り巻きである
 司教たちの言葉に乗せられる形で、魔物の噂を耳にしたその日の内に進発を開始したのだ。
「我らには、太陽神の加護がある!」
 傷一つない大鎧を見に着けたボリスレズフ卿は、以前から信仰心と勝算というものを取り違えている
 節が少なからずあったが、私の見立てでは、ここまでの愚行を犯す人物ではない筈だった。
 取り違えていたのは、私も同じだったのだ。
 偉大な太陽神の威光を世に知らしめる為の戦いと、汚濁に塗れた神殿内での稚拙な政局争いを見分ける
 こともできずに、のこのこと国境越えまで仕出かしてそこに同席していたのだから、愚かという他ない。

 とどのつまり、私には人を見る目がなかったのだ。
 ボリスレズフ卿をはじめとする騎士たちは、神殿内での敬虔な信徒としての振る舞いを、国境を越えて
 からは一切見せなくなり、まるで自分たちがミラの国使だと言わんばかりの、尊大な態度を取り始めた。
 司教たちも、私が告げた警告の言葉に居丈高な口調で横槍を入れ、たかが神官風情がと侮蔑の眼差しで
 こちらを見下ろしてきていた。
 そこに来て漸く、私は自分が体良く利用されていただけだったのだと、気付かされた。
 ベルカーサの名と、それに従う者を取り込む為の存在。
 それが、この名ばかりの聖騎士団における、私の存在価値だったのだ。
 彼らに向けた絶望が、そのまま私の身へと跳ね返ってくるのに、それは十分な理由になっていた。

 栄光への行進は、低級な妖魔たちの撒き散らした霧に呑まれ、瞬く間の内に、地獄への滑落に変わった。
66火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:16:12 ID:mG5leKPb

 私の身体の上にのしかかっていたトロルが、乱杭歯を覗かせた唇の端から、細かな泡を噴き始めた。
 同時に、股の付け根を襲う圧迫感と痛みが増してゆく。
 どうやら私の舌の根よりも先に、この汚らしい魔物の醜悪な器官の方が、中に詰まった物を迸らせる
 体勢へと移ってしまったようだ。
 自分の愚鈍さを悔いて、私は今更ながらも己の舌を外気へと晒した。

 迸ったのは、意外な物だった。
 赤いものが、突如として私の目の前で、勢い良く噴出し始めたのだ。
 涎を垂らし始めていたトロルの、その体躯に見合わない妙に細い首の付け根から溢れ出したそれは、
 瞬く間に私の視界と上半身を染め上げていった。
「――ぎっ、あぎ、ああ゛っ、あぐぅ!?」
 叫び過ぎで、既に枯れてしまっていたと思っていた声が、激痛と共に蘇った。
 トロルの腰は、その頭部を失ってもガクガクと激しく動き続けていた。
 痛みと共に、嫌悪感と絶望までもが蘇ってきた。
「いや゛、こんなのっ、いやぁ゛っ」
「そうか」
 泣き叫んだところに、声がきた。
 低い、声。男の声だ。
 こんな場所に似つかわしくなく、それでいて、とても馴染んでいるようにも、その声は聞こえた。
 恐怖と絶望を引き剥がすようにして、醜悪な器官ごと、トロルの巨躯が後ろに引き抜かれた。
 空が広がってゆく。人の血と妖魔の呪毒で満たされた戦場の上に、空だけがあった。
 開放感と一緒くたに、強い現実感が押し寄せてきて、紅に染まっていた視界が暗転を開始する。
「カッツ、上を寄越せ」
「へい」
 主従のやり取りの声に、最後の気力を振り絞り首を巡らせると、そこには赤い人影が佇んでいた。

 次に私が目を覚ましたのは、見慣れない天幕の中だった。
「無理に動こうとするな」
 その呼び掛けは、東方語で行われてきた。
「……あなたは」
 反射的に母国語である東方語を口に仕掛けたが、それはなんとか押さえて、問い掛けを行う。
 だが、発したその声は酷くかすれてしまっており、そのことに私は酷くうろたえた。
 ここは、どこだろう。私は、なにをしていたのだろう。
「連れの連中は手遅れだった。お前くらいは、生きておけ」
「――ぁ、ああ゛あ゛あ゛あ゛ああっ!?」 
 絶叫一つで済ませられたのは、その男の声のお陰だったのかもしれない。
 思い出していた。
 自分が置かれていた状況と、その結果を、私は男の言葉の一瞬の後に、思い出していた。
「あ゛……ぁ、あ……っ! ――っ!?」
 がらがらの喉で叫び続けると、その叫びはただの空気の洩れる音へと、変わっていった。

 どれくらいの時間が経過したのかは、よくわからなかった。
「飲んでおけ」
 その声に、私はのろのろと上半身を起こして首を横へと向けた。
 そこに、銅製と思しき水差しが差し出されてきた。
 こくりと頷き口を開けると、ぬめりのある液体がそこに注ぎ込まれてきた。
 熱くもなく、冷たくもない。味は、僅かに甘みがあり、それを感じ取ることで私は自分が生きているの
 だということを、強く実感させられた。
 ぎょくぎょくと喉を鳴らして、砂漠に降りた天の気まぐれを受け入れるように、それを飲み干す。
「これくらいしておくか。飲み過ぎも良くない」
「……あなたは?」
 二度目となる問い掛けには、今度はしっかりとした意志を込めることができていた。
「お前の命を救った人間になるのかな。恩人かどうかは、そっちが決めることだが」
 赤い髪と赤い瞳をした男が、他人事のような口ぶりでそう返してきた。
「そうではなく、御名前を……」
 そこまで口にして息苦しさがこみ上げてきてしまい、私は二度三度と小さく咳き込んでしまった。
「サズ。サズ・マレフだ」
 男が名乗る。
 それは、どこかで耳にしたことのある名前だった。
67火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:17:02 ID:mG5leKPb

 呻き声と、それに続く叫び声で、私は想起の為に伏していた顔を上げた。
「あれは、うちの奴らだ」
「怪我をされているのですか」
 サズと名乗った男が、物憂げになっていた表情を、ほんの少しだけ崩した。
 良く見れば、彼は軽鎧の上に外套を羽織った姿で、腰には長剣を差していた。
 多少格好は乱れてはいたが、その身なりと話す言葉の内容から、私は彼のことを軍属に籍を置く者なの
 だろうと推察をしていた。 
「他人の心配ができるなら、まあ大丈夫だな。寝ておけ」
「私も、行きます」
 男の後に続こうとして寝台を降りると、股の付け根に嫌な痛みが走った。
 他にも、腕や肩の付け根といった体のあちこちが痛む。
 だが、なんとか自力で歩くことはできそうだった。
「寝とけ」
「嫌です」
 歩かねば屈してしまうような気がしたので、その言葉は跳ね除けた。

 天幕を出て外へと出たつもりが、また同じような布の敷居に囲まれた空間に出てしまい、私は多少の
 肩透かしを食らわされた。
 自分が寝かせられていた天幕は、軍の士官や隊長職が使用している物だろうと、勝手に見当を付けて
 いたので、まさかこんな作りになっているとは思ってもみなかったのだ。
「どうした」
「いえ……思っていたより、大所帯なのですね」

 内心の動揺を隠すように言ってみせてから周囲を見回すと、辺りには幾人もの男たちが横になっていた。
 一繋がりにされた巨大な幕舎の中に転がった男たちは、その殆どが体のどこかしらに傷を負っている。
 怪我をしていない者や、その程度が軽い者は、幕舎の中央を通路として用い、手になにかしらの物を
 持って忙しなく動き回っていた。
 布の敷かれていないスペースには、様々な種類の日用品が寄せ集められており、まだ年端もゆかない
 少年少女たちがそこに集って、一心不乱になってそれを磨き上げ、整頓していっている。

 呆然としてその光景に目を奪われているところに、長身の女性が駆け寄ってきた。
 異なる種類の鎧の部位を革のベルトで繋ぎ合わせた物を見に付け、赤毛の長い髪を後ろで一つに束ねた
 彼女は、私の姿を見止めると軽く首を傾げてきた。
「どうした、ミランダ」
「あ、はい。賊の討伐に加わっていた者が負傷し、その内一名の傷が深いです。声を掛けてやって下さい」
 その呼び掛けに、彼女はこちらへと向けていた焦げ茶の瞳を、サズの方へと向け直す。
 鎧の合間から覗く小麦色の肌には、幾つもの擦り傷が見え隠れしていたが、何故だかそれがその女性の
 凛とした美貌を際立たせて見せていた。

「わかった」
 サズが頷き、その女戦士の案内を受けて歩き出した。
 負傷した兵に、激励の言葉を掛けにゆくのだろうか。
 私は彼のその行動に、少しばかり気落ちした。
 彼は、ミランダと呼ばれた女戦士の態度から見ても、この部隊を預かる身にある者であることは確かだ。
 その彼が、一兵士の負傷に付き合って職務に当てるべき時間をすり減らしている。
 指揮官は、もう少し時間を有意義に使うべきなのだ。
 いつもであれば呆れるところを、何故だか私は、気落ちしていた。

 死の影というものを、私は初めて目にしていた。
 死体なら、既に見ていた。だが、それと、死に逝く者の表情というものは、全くの別物だった。
「ホルゾ」
 彼が膝を折り、そこへ呼び掛けた。ぶっきらぼうで、愛想の一つもない顔。
 しかしその声は、日夜欠かさずミラの神殿へと祈りを捧げに来ていた、敬虔な太陽神の信徒のものより
 強い祈りの響きを含んでいたように、私には感じられた。
「すんません、頭……またドジっちまいました」
 矢を右の脇腹に受けたままの男が、力なく微笑みを見せた。
68火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:17:49 ID:mG5leKPb

「死ぬな。ソルトブルに着けば、なんとかなる。お前はまだ、金貨百枚分、稼いでないだろうが」
「へへ……そんな馬鹿げた話、おぼえていてくれたんですね。でも、こんな調子じゃあ、稼ぐ前に、頭に
 余計な金ばかり、使わしちまいますよ」
 途切れ途切れの男の声には、力があった。最後の力。そんな言葉を思わせる強さが感じられた。
 辺りに漂い続けていた血の臭いは、刻一刻とその濃さを増している。

「私に、その方の傷を診せて下さい」
 そう言って、私は懺悔を捧げていた。
 捧げたのは、神に対してではない。目の前の二人へと向けて、捧げていたのだ。
「好きにさせろ」
 ミランダが動き掛けたのを、サズはその一声で制してくれた。
 頭を軽く下げて膝を折ると、私は包帯に包まれていた腕を、死の淵にある男の下へと伸ばしていった。
 サズが横に付く。そして私にだけ聞こえるように、告げてきた。
「頼む」と。
 
 信仰の心は、既に薄れてしまっているという自覚はあった。
 だが、失敗をするつもりもなかった。
 祈る気持ちこそが、奇跡の根源。例えそれが太陽神ソラに対してでなくとも、私の中には確かな奇跡の
 光が溢れ始めていたからだった。

「――たまわりし、癒しの力よ」
 本来それは、神への祈りの言葉を伴って発現するものだった。
 手ごたえが、指先へと伝わってくる。暖かな波動を送り込むのは、それまで行ってきた行為となんら
 変わりのない行いだった。
 ミランダが息を飲み、サズが小さく頷くのがわかった。
「ホルゾ。気をしっかり持っておけよ。ミランダ、俺が切り開いたらすぐに矢を引き抜け。いいな」
「はい」
 矢の突き刺さっていた男の脇腹の奥深くへと、サズが短刀を走らせた。恐らくは、臓腑の中にまで。
 微かに、血飛沫が上がる。ぎりりと歯噛みをする音が、耳へと届いてきた。
「この者に、聖浄の光を!」
 矢尻が引き抜かれるのと同時に、私はその波動を光にまで高めていった。

「凄い」
 ミランダは呆気に取られた風で、傷の塞がった男の腹部と私の顔とを、交互に見つめてきていた。
「確かに大したもんだ。今時、ここまでの強度で瞬間治癒をできる神官は、そうザラにはいない」
「……一体、なにがおこったんでさぁ」
「癒しの奇跡って奴だ。命拾いしたな、ホルゾ。ついでに言えば、俺に拾ったのは、いいものだった」
 優しげに、そして満足気に目を細めて、サズが腰を上げた。
「名前を聞いていなかったな」
「ディアスベル……」  
 問われ、それに反射的に声を返しておいて、私はそこで口を噤んでいた。
 家名を名乗ることに、なんとなく気後れをしてしまっていたからだ。
「長いから、ディーでいいな。ディー、もし俺に恩義を感じていたら、少し手を貸してくれ」
 その言葉に首を縦に振ってみせると、彼は私の手を取って幕舎の中を駆け回り始めた。

 肩口で切り揃えた黒い髪はともかくとして、灰色の瞳と、真珠色の肌は、その場においては少しばかり
 目立つものだったらしい。
 周囲の視線を強く感じながら、私は俗に癒しの奇跡と呼ばれる、神聖魔法を行使しての負傷者の治療に 
 専念していた。
「信じられねぇ」
 四人目の男までが、それまでの男たちと同じような反応を示してきた。
 一体、なにがそんなに不思議なのだろう。そう思っているところに、サズが軽く肩を叩いてきた。
「あっちでは当然でも、オーズロンでは珍しいんだよ」
「え」
「それよりも、あまり張り切って治しすぎるなよ」
 疑問を感じ始めた私に向けて、サズは二重におかしなことを言い出してきた。
69火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:18:42 ID:mG5leKPb

 その彼に言われるままに。
 十二名の兵士の治療を終えた頃には、周囲の人々の視線は完全に、私の方へと向けて殺到してきていた。
「良し。もう、十分だ」
「まだ、後一人くらいは平気です」
 多少のふらつきは感じていたが、既に私は、残る負傷者の中で一番傷の深そうな者を見付けていたので、
 人の垣根を越えるようにして歩を進めていた。
「わかった。だが、そいつより怪我の酷い奴がいる。ウェルフ、いいな?」
「――ああ、勿論です。確かにいますね、自分よりも酷い人が」
 額に赤茶けた布切れを巻いた青年が、苦笑を浮かべてサズの言葉に同意を示してきた。
「どこでしょうか、その方がいるのは」
 その言葉に釣られて辺りを見回したが、彼らの言う傷の酷い者を、私は見つけ出すことができなかった。
 そんな私の様子を眺めていたサズの表情が、意味深なものとなった。笑っているようにも、少し見える。
「ついて来い。――お前らは、さっさと持ち場に戻れ!」
 顎をしゃくる仕草で私を捕まえ、一声で周囲の野次馬を追い払い、彼は天幕へと戻り始めた。

「先程仰られていたことは、どういう意味だったのでしょうか」
「ああ。あれか。簡単だ。深すぎる傷を魔法であっさりと治しちまうとな、感覚が麻痺しちまう奴がいる
 んだよ。特に、新米の兵士にはそういう奴が多い」
「麻痺……手足などの、四肢がですか?」
 そんな話は今までに聞いたことがなかったので、私は目を丸くして、先をゆく彼に問い返していた。
「違う。心の方がだ」
「心……」
「恐怖心が、麻痺するんだよ。戦場で相手に気後れしないことは重要だが、自分が傷つくことに無頓着
 過ぎる奴は、いずれ死ぬ。なんでも、完全に治せばいいって訳でもない。有難いのは確かなんだがな」

 サズの言葉は、私にとっては中々に衝撃的なものだった。
 それはつまり、ミラの大神殿とここでは、癒しの奇跡の持つ意味が違うということだ。
 そういえば、彼以外の者は神聖魔法での治療そのものを、特別な目で見てきていた。
 そのこととサズの言葉には、なにか関係があるのだろうか。  
「そんなに難しい顔をするな。お前が優秀な神聖魔法の使い手であることに、変わりはないんだからな」
 そう言って、彼は再び天幕の中へと足を踏み入れていった。
 そこは、先程までは私たち以外の者はいなかった筈の場所だ。
 不信に思いながらも、私もサズの後に続いていった。

「まだ、わからないのか?」
 天幕の中をきょろきょろと見回す私に、彼は声を掛けてきた。
 酒や貨幣を零れさせた袋の山。折り畳みの椅子と机の上に整然と並べられた筆記用具。
 その足元に散らばる小さな木片。私が寝かせられていた、大き目の寝台。
 後は、細々とした物が無秩序に散らばっているだけで、やはりそこには負傷者の姿などはなかった。
「お前だ。ウェルフの奴よりは、お前の方が余程傷が酷い」
 ……恐らく私は、余程間の抜けた表情をしてしまっていたのだろう。
「く、くく……っ」
 堪えきれないといった風に、彼は笑い出した。
「――! そ、そこまで笑うこともないでしょう……っ」
 無礼者という言葉までは、喉の調子が悪かったせいで声に出すことができなかった。
 その間にも、サズは腹を抱えてゲラゲラと笑い出している。

「ああ、ひ、久しぶりに笑った。はは……くっ、ぷっ! は、腹が痛い」
 憤然として睨み付けられても、サズは一向に遠慮する気配を見せずに笑い続けていた。
 私としては、そこいらに転がっている物を手に掴んで投げつけてでも、彼の傍若無人なその振る舞いを
 止めさせてやりたかったが、そこは自分の立場を弁えていたので、なんとか堪えることができた。
「くく……いや、悪かった。むくれてないで、傷を治したら横になっておけ」
 私の様子に気付いたのか、サズはそう言って、ぼりぼりと音を立てて後頭部を掻き毟った。
 それで、肩甲骨の辺りにまで伸ばされていた、炎のように赤い髪が不規則に揺れる。
 やはり、赤い。髪と瞳が赤い。西方の人々の中には、彼のような見た目の者も多いのだろうか。
 自身への癒しを願うという、生まれて初めての行為に至りながら、私は彼の名前とその容姿から記憶の
 中に埋もれているなにかを思い起こそうとしていた。
70火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:19:31 ID:mG5leKPb

「貴方は、何者なのですか」
 結局自力ではなにも思い出せず、私はそんな言葉を口にしていた。
「通りすがりの傭兵団の頭目ってところかな。ところでお前、喉の方が治りきっていないぞ。さっきまで
 よりは随分マシだが、ぱっと見、良いところのお坊ちゃんに見えて仕方がない」
「慣れていないので、失敗しただけです。明日には治します」
「そうか。ならここで寝ておけ。治療の礼に、ソルトブルに着いたら神殿関係の場所に当てを付けてやる」
「ありがとうございます。ですが、寝床はここにいる方々と同じで構いません」
 どう見ても、この場所は彼の寝所だった。なので、申し出は有難くはあったが、あまり図々しい真似を
 するのも気が引けたので、私はそういって首を横へと振っていた。

 そんな私の言葉に、サズは苦笑いを浮かべて首を振り返してきた。
「止めとけ。坊主に見えたって、ここの連中はお前の可愛い尻の方を、遠慮なしに狙ってくるぞ。折角、
 若い女だと気付かれてないんだ。ガキ共のように一々見張りを付けるのが手間だってのもある。だから、
 大人しくここに寝転がっておけ」
 彼の言葉の意味を理解するのには、それなりの時間を必要とした。
 そうして理解度を深める内に、私の頬は急激にその表面温度を高めていった。
 赤面した私の顔を、正面から見たせいだろうか。
 サズは、また笑い転げていた。

「なるほどな。ミラの聖騎士様たちが、こんな所までなにを遊びにきてやがるのかと思ったが、そういう
 訳だったか。お前も、中々に運ってものがないな」
「私に不足していたのは、別のものです。運は、他の方々に比べればあった方でしょう」
 折り畳みの椅子に腰掛けて、サズは私の話に耳を傾けてきていた。
「いいとこ育ちですって面をしてる割には、強いな」
「強くなど……強ければ、あんな邪悪な魔物に遅れをとっていなかった筈です」
 邪悪。そう口にしてみると、何故だか妙に虚しいものを感じた。 
「まあ、感じ方は人それぞれだけどな。俺はそう感じただけの話なんだが……ディー、お前、ここで俺に
 使われてみる気はないか」
 さらりとした口調で、サズは勧誘の言葉を口にしてきた。

「戦に同行しろということですか?」
 口を衝いて出てきたのは、そんな言葉だった。
「直接出向く必要はない。野営地や輜重隊の連中に混じって、俺たちが帰ってきた後に、怪我の酷い奴の
 面倒を看てくれれば、それで十分だ」
「傭兵団の医療班、と言ったところですか」
「そうなるな」
 それきりサズは口を閉ざして、机の上に並べられた木片に、筆を走らせることに専念し始めていた。

 傭兵団。
 初め私が、ソルトブルかアイレノスの一部隊かと思い込んだそれは、サズという名の二十歳前後の男が
 率いる、ならず者の集団だった。
 一口にならずというと、かなりの御幣があったかもしれない。
 その傭兵団は、野盗上がりや騎士崩れの者を初めとして、商人から娼婦に至るまでの、様々な人種と
 多様な職業の人々で構成されていたからだ。
 その中には、先程も見かけたような小さな子供の姿もあり、皆それぞれに、傭兵団を存続させる為に
 なにかしらの役割を受け持って生活をしていた。そしてそれは、私にはとても奇妙な光景に見えた。
「生きる為に、そうしているだけのことだろうな」
 ソルトブルまでの移動の間に、私が口にした疑問に対し、サズはそう答えてきた。

 彼は、不思議な人間だった。
 万事に対して冷めているような態度を取っているのかと思えば、ひょんなことから真剣な表情をみせて
 きたり、強い怒りを見せたりもする。
 喜怒哀楽が激しいのかと思いもしたが、それにしては平時は落ち着き払っていることが多かった。
 情緒が不安定なのとも、また違う。彼の行動には、彼なりの理由があり、自分の物である筈の傭兵団に
 対しても、それ以外の物に対しても、その振る舞いは一貫して変わりがないように見受けられた。
 そういう人間を間近で目にし続けるのは、私には初めてのことだった。
71火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:20:24 ID:mG5leKPb

「街に寄った後は、戦に出るのですか」
「察しがいいな。その通り、ソルトブルで補給を済ませたら、次は南に向かってコクンヴァラドの奴らと、
 一戦交えるつもりだ」
 傭兵団に拾われてから数えて三日目の朝、私はサズに対して今後の予定を尋ねていた。
「ここの方々と話をしていれば、わかります」
「出撃の予定は、漏らさないように言い付けてあったんだがな」
「いえ、誰かが直接教えてくれたとか、そういうわけではありません」
 尋ねてきた理由を求めている風だったのでそう口にすると、サズが不機嫌そうに眉の根を寄せたので、
 私は慌てて首を横へと振った。

「お前、実戦に出るのはあの戦いが初めてだったんだよな?」
「はい。一応、模擬戦の訓練は受けてはいましたが、外に出て戦いに望むのは、あれが初めてでした」
「それにしちゃあ、人の気ってものが読めているな」
 彼は私の出自を気に掛ける風ではなかったが、大凡の見当は付けてきている様子だった。
 だが、それによってこちらを他の人々と差別することは、良い意味でも悪い意味でもしてこない。
 全ての者に対して、どうでもいいという風に構えているように見えるときもあれば、平等に扱ってきて
 いると感じる時もあった。

「できれば、出撃までにお前の返事を聞かせて欲しかったんだが」
 それによって、戦い方を変えるということなのだろうか。彼はそんなことを言ってきた。
「迷っていますので」
 そう口にしても急かされることはなかったので、私は後の言葉を続けた。
「実際に、貴方の戦うところを見てみたいと思っています。それによって、返事をさせて頂こうかと……」
「品定めが先って訳か。いいだろう。馬は扱えるな」
 頷き、私は麻の貫頭衣に身を通そうとした。今は春の半ばではあったが、明け方はやや肌寒い。

 それを、サズの腕が引き止めてくる。
「もう少し、そのままでいろ。朝は相手をしろと言ってあるだろうが」
「すみません……」
 まだ慣れぬその行為に備え、私は身を固くして寝台の上へと転がった。
 ごつごつとした指先が、薄い胸へと伸ばされてきて、中心の突起をやわやわと刺激してくる。
「――っ」
「声くらい、出してもいいぞ。そういう趣味の奴も大勢いるから、気にはさせねえよ」
 そう言われても、気になるものは気になる。
 私の喉は、まだ治していないままだったので、変な声を洩らすことなど、したくはなかったのだ。
「気になるんだったら、治せばいいだろうに」
 ぴちゃぴちゃと音を立てて腋の下を舐め上げながら、彼は呆れたように言ってきた。
「考え、っ、が……あり、ますの、で……っ」
「ここ、弱いな」
「く……ぁ!」
 
 あんなことを。
 私のことを心配するようなことを言っておいて、サズは最初からこちらの身体を求めてきていた。
「いい歳した女が男の寝床で寝転がっていれば、これくらいは当然予測済みだろ?」
 そう言って、彼は強引に私を組み伏せてきた。
「私は、あの醜い化け物に犯されていた女ですよ」
「あんなもん、犬に噛まれたと思って忘れろ。見ていたのも、俺だけだ」
「……あれで、興奮したというわけですか」
「勘がいいな。あと、それと」
 私の身体を引き寄せてくる腕の動きは、強引ではあったが、不思議と乱暴だとは思えなかった。
「――やっ」
「どっちが大きかったのかが、気になってな」
「忘れろと言っておいて、それですかっ!」
72火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:21:23 ID:mG5leKPb

 鼻先に突きつけられたそれは、私が初めて目にするものだった。
「もしかしてお前、初めてか」
「初めてじゃないのは、知っているでしょう」
 顔を背けようとするが、表面に太い血管の筋を浮き上がらせたそれから、私は目を逸らせずにいた。
「どうだ?」
「……あまり良く、わかりません。思い出したくも、ありませんし」
 当たり前のことだった。
 魔物のそれを真剣に凝視している筈もなかったし、大体その手のものを評価するという行為自体が、
 私の中の常識とはかけ離れた行いだったからだ。
「そうか」
 手馴れた手つきで、するすると私の全身の肌を撫で上げながら、彼は言ってきた。
「じゃあ、月並みだがな――忘れさせてやる」
 あてがわれても嫌な気はしなかったので、ゆっくりと首を縦に振ると、微かな痛みと大きな圧迫感が
 のろのろとやってきたのを、良く憶えている。
 まだ血が流れ出てくれたことが、少しだけ嬉しかった。

 思い返すと奇妙な感覚に襲われて、私は朝日の差し込まぬ天幕の中で、天を仰いだ。
「忘れられ、ない、っ……の、ですがっ」
「もう少しだな。まだまだ、硬い。それもそれで、味があっていいんだが」
 私の下腹部では、小さな水音が立てられている。腋の下から顔を離したサズが、今度はそこに御執心な
 様子で、やや前付きになっているらしい私の膣を、指でゆっくりとかき回していた為だ。
『スケベ』
「東方語は、わかんねえんだよ」
 行為の最中、彼の口調は妙に子供っぽく粗雑なものになったりもする。
 その癖、指先の動きは繊細だ。こんなことを言いたくはないが、慣れているのだろうと感じてしまう。
 自分を慰めることはそれなりにあったのだが、どう考えても私よりも私の身体の扱いが巧い。

「ソルトブルの商人共はな、キルヴァに恩を売っておきたいんだよ。コクンヴァラドの奴らは、連合間の
 争いには興味がありませんって面しておいて、自分んちの魔物をキルヴァ側に追い立てているからな」
「……ご自分が、ぺらぺらと喋っておいっ、てぇっ、あ、はぁっ」
「入れるぞ。で、だ。恩を売りたい商人共にしてみても、自分たちのお抱えは足が付くから使いにくい。
 流れの傭兵たちを金で雇う方が、後々の為にもいいって訳だ」
「――っ! く、ひっ、ぁ、あ゛ぁっ」
「こっちも、いいな。知りたいって顔していたから、色々と教えてやってるんだ。感謝してくれ」
 冷たい声とからかうような声を交互に使うのは、反則だと個人的には思っている。
 自分が一体なにをしているのかが、わからなくなるし、どうでもよくなってしまうからだ。
 ……ごわごわとした固い寝台の感触が、いつしか私は嫌いではなくなってしまっていた。

 息を荒げて瞳をきつく閉じていると、その内にお腹の上に熱いものが広がってゆく。
 皮肉なことに、ここではそれが一番真っ白で、一番清潔感がある色だ。
「病気になりますよ」
「なったら、奇跡とやらを頼む。それにお前を連れ込んだ直後に、掃除なら済ませてやってる。だから、
 特にお前のここが、汚いってこともない」
 うつ伏せになって忠告の言葉を口にすると、彼は平然と指を突き入れ、そう返してきた。
「ありが、とう、んっ! ご、ございます……っ」
「変わってるな、お前も」
 そうだろうか。
 ……そうかもしれない。
 ここは、私の知っているところではなく、それ故か、その全てが奇異なものに見える。
 ということは、私の方もここの人々から見れば、奇異なものなのだろう。

「ミランダにお前の馬を選ばせる。ついて来い」
 だが、この男は特別変に見える。
 見た目からして珍しいのに、言動や行動までもが、ミラの人々どころか、この傭兵団の人々の中でも
 飛び抜けて可笑しい。
 そう、可笑しいのだ。私は、サズという人を、面白いと感じてきていた。
 彼がなにをしようとしているのか。気怠さを感じつつも、私はそのことが気になって、仕方がなかった。
73火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:22:09 ID:mG5leKPb

 ソルトブルは、中央大陸の中心部にてその勢力を誇るオーズロン連合の東に領を持つ、巨大都市だ。 
 キルヴァ、アイレノス、コクンヴァラドの他連合三国とは違い、この都市は周辺での商いを行う、商人
 たちの手によって、その運営を管理されているのが最大の特徴だ。
 オーズロン地方の交通の要衝を担う街道を複数保持し、私の生国であるミラとの繋がりも深い。
 有力な商人たちによって結成された評議会が、その経済力と交易のし易さを利用して、他国にはない
 独自の統治体制を築き上げてきたという話だ。

「良いのですか、団長」
「なにがだ」
 舗道の先をゆくサズに、ミランダが馬を寄せて問い掛けていた。
「あの、ディアスベルという子のことです。評議長のお屋敷にまで、連れてゆかれるおつもりですか」
「なにか、問題でもあったか」
「無関係な子供を、契約の場に連れてゆくわけにはいきません」

 ひそひそと交わされている二人の会話は、悪いが「地獄耳のベルカーサ」と親族内では元より、神殿の
 中でも呼ばれていた私には、全て筒抜けだ。
 それにしても子供とは、彼女も酷い。これでも私はもう、十九になろうとしているのだ。
 いや、もっと酷いのは、子供に見えるような私に対して、夜な夜な破廉恥な行為に及んでくる、彼女の
 横にいる団長とやらだろう。間違いない。
「そういう訳なんだが」
 唐突に、サズがこちらを振り返ってきた。

「ディー。お前はどうしたい?」
 覚束ない手綱捌きを披露する私へと、彼は声を掛けてきた。
「戦のやり方を見せてもらうと約束されましたので、それに関わることであれば、ご一緒したいです」
「だ、そうだ」
「団長、またそんな無茶な約束を……」
 無茶かどうかなどは、実際にその目で見てから言って欲しいものだ。
 確かに、堂々たる体躯を誇る連銭葦毛に跨るサズの姿と比べれば、私の有様は酷いものかもしれない。
 しかし、戦場で求められるのはそういったことが全てではないのも、確かなのだ。
「大丈夫なのかしら」
 ミランダの声は、心配というよりも懸念の響きに満ちていた。余計なお世話である。ちなみに彼女の
 馬術の腕も見事なもので、それが私には中々に当て付けがましい。
 本日五度目の落馬の憂き目にあったところで、私は巨大な屋敷の前へと辿り着いていた。

 広大な敷地と豪華な装飾を備える屋敷には、なんというか、品というものに欠けて見えた。
「初めまして、サズ・マレフ殿。ご高名の程は兼ね兼ね承っております。私は、ここの評議会の長などと
 いうものを務めさせて頂いている、ロムニス・アデニールと申します」
 ロムニスは、見た目は老人の域に入る禿頭の男だった。
 しかしその眼光は鋭く、確かな意志を宿しており、語尾の力も強い。健康状態も悪いようには見えない。
 ソルトブルの評議会では、五年に一度行われる議会選挙で、毎回二人の評議長が選出されるのが通例と
 なっていたので、彼はこの都市における最高権力者の一人と言える人物だった。

 ロムニス自身は、サズや私たちに対して気さくな口調で話し掛けてきていたが、間取りの広く取られた
 応接間の中には、常に複数の警護の人間が配されていた。
「しかし皆様方、私が想像していた以上にお若いですな」
「歳さえ食っていれば、いいって訳じゃないからな」
「それは頼もしいお言葉。しかし、爺には少し耳の痛い話でもありますな」
 サズとロムニスの会話は、ずっとこんな調子で続いている。
 横に控えるミランダの顔が偶に青くなったり、部屋の中の警護の人間――こちらは評議長専属傭兵と
 いったところなのだろう――が凄い形相でこちらを睨んできていたりもする。
 私はと言えば、特に関心を誘われる話がされているわけでもなかったので、濃い目に淹れられた紅茶と
 焼き菓子を楽しむことに専念していただけだ。
74火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:23:14 ID:mG5leKPb

 ロムニスは、サズのことを高く評価しているようだった。
 サズの調子はいつもと変わらなく見えたが、彼は暫くの間会話を交えた後、持参していた牛革の皮袋を
 手にすると、その中身をテーブルの上へと広げ始めた。
「ほぉ、これは……」
「あんたは、美術品や骨董品の類に目がないと聞いてな」
 大理石を削り出して作られたそのテーブルの上に、見たことのない貨幣が並べられてゆく。
 サズの突然の行いにも、ロムニスは動揺を見せることはなかったが、その代わりにと言うべきか、彼の
 瞳には興味の色がありありと現れていた。

「これを、あんたに進呈したい」
「――私は、確かにこういった物に目がありません。ですが実のところ、それを見る目はあまり良くない。
 鑑定人を呼ばせて貰いますので、その間に商談の方を進めるとしましょうか」
 ロムニスが、一旦瞑目してからそう切り出してきた。
 つまりは、彼の見識が及ばなかった品だということなのだろう。
 サズの取り出した貨幣は、一見するだけでも価値のある物だと分かる。
 造詣は中央大陸で一般的に出回っている物とは明らかに異なっていたし、大きさも比較にならない程に
 大きな物ばかりだ。
 種類も多く、ざっと見ても十を下らない。その中には、白金を素材に用いている物まであった。
 彫られた画も、見事の一言に尽きた。これで食指が動かなければ、好事家を名乗る資格もないだろう。
「じゃあ、そうさせて貰うか」
「ええ。手早く、まとめてしまいましょう。まずは今回の雇用の条件についてですが――」
 まるでついでのことを話すように、二人は商談を進め始めた。

「呆れた話ですね」
「そうか?」
 葦毛の鞍の上から首を傾げてくるサズの表情は、こちらをおちょくっているようでもあった。
 呆れもする。
 彼はあの後、契約の交渉を行わなかった。
 行わず、ロムニスの提示した条件の全てに、首を縦に振り続けたのだ。
 その内容にも、また呆れてしまう。
「所属不明の」魔物の群れと蛮族の部隊を討伐するという内容も大概胡散臭いものだったが、傭兵団に
 とっては肝心要であろう、その報酬の内容に、私は呆れていたのだ。
 破格だったのだ。大量の大陸貨幣での現金報酬に加え、傭兵団への補給物資と物流経路の確保、そして
 駐屯地までが用意されることとなったのだ。
 しかも、それはロムニスからのものではない。商都ソルトブルからの雇用契約とされていた。

 まあ、そこまでなら、戦時であっても財の収集と活用に熱心な商人たちのこと。
 気に入った商売相手に対してなら、大盤振る舞いをする時もあるのだろうと、納得をすることもできた。
 しかし、そこから話は更に飛躍した。
 サズからロムニスへと譲渡されたあの貨幣。
 契約が成立した後に、あの場所に姿を現した古物鑑定人の男が、それを目にして、何事かをつぶやいた
 かと思うと、とんでもないことを口にし始めたのだ。
 曰く、最も価値の低い金貨一枚でも、小型の帆船一つが購入できる程の代物だと。
 曰く、最も価値の高い白金貨に至っては、砦一つが建てられるような貴重品だと。

 ロムニスは、躊躇なくそれを受け取り、躊躇なくサズ個人への協力を約束した。
 ソルトブルからの契約とは別に、彼個人がサズに対して出来うる限りのことをしたいと。
 商都きっての豪商が、そう言い出してきたのだ。
 しかもそれは、今回の雇用中に限った話ではなく、無期限での支援を約束するとの旨であり、サズは
 それに対して二言三言、礼の言葉を返しただけで、その場はお開きとなった。 

「計算してやったのですか?」
「いいや。勿論、打算はあったがな。俺が持ち続けていても価値はわからんし、その内に持ってたことを
 忘れて、どこかに置き忘れていくのが関の山だったからな」
「それは、なんとなくわかりますが」
 ロムニスからの屋敷への滞在の誘いを断って、サズは傭兵団の陣地へと戻ることにしていた。 
 ――既にこの時、私の中の彼への興味は、頂点に達していたのかもしれない。
75火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:23:58 ID:mG5leKPb

 陣地に帰り着くと、彼は団を一回りして全体の様子を把握し、召集を掛けた。
「十日後を予定に、南のバラク山の麓を根城にする、魔獣と軍を相手に戦いを仕掛ける。明後日までは、
 ソルトブルで自由に時間を使っていい。但し、羽目を外し過ぎることは許さん。細かなことは、今まで
 通り、ミランダに聞いておけ。聞いた奴は、隣の奴に教えろ。聞かなかった奴は、全員留守番だ」
 陣のあちこちで、歓声が上がり始める。
 それは、これから街に繰り出せる喜びのみからくるものではない。
 サズという男と共に戦えることへの喜びが、彼らに声を上げさせたのだろう。
 そこで私は、肩を落としてしまっていた。
「どうかしたの? ディアスベル」
「ディーで、結構です」
 ミランダが不思議そうな面持ちで、こちらを見つめてきている。
 この女戦士は中々に優秀な人物に思えていたが、どうもこういったことに関しては、団長であるサズと
 同様に、あまり向いていない……というより、あまり細かいことを考える人ではないらしい。

「じゃあ、ディー。どうしたのかしら。急に溜息なんか吐いて」
「いえ。私もあまり多く、戦場に赴く人々と接してきたわけではありませんが……ここの人々は、サズに
 対して、とても強い信頼を寄せているようですね」
「そうね。理由は色々だけれども、大半の人が、サズ――団長についてゆきたくて、ここにいるわ。でも、
 その話と、あなたが今、溜息をついたことには、関係があるのかしら?」
「大有りです。……居候の分際で、こんな文句を言える立場でもないのですが」
 意図的に声を潜めて喋り続ける私の口元に、彼女は頬を寄せてきた。
 これでは内緒話に花を咲かせていますと公言して回っているようではあったが、周囲の人々は、サズの
 もたらした仕事と報酬への興奮から、それに気付く様子もなかった。
「体制が、滅茶苦茶です。貴女のように協力的に動いてくれる方が多いようなので、なんとかまとまりを
 保ってはいますが。命令系統といい、団内の編成といい、粗が目立ち過ぎます」
「それは、そうかもしれないわね。でも、何故それであなたが腹を立てたりするのか。それが不思議ね」

 ……腹を立てている?
 その一言で、私はその場で全身を硬直させてしまっていた。
 だが、頭の中だけは高速で思考を回転させてしまっている。
「ディー?」
「……指摘の通りですね。ところで、ミランダ」 
 彼女は私よりも四、五歳は年長に見えたが、私はそれに構わず、彼女のことを呼び捨てにしていた。
 ミランダはそれに気分を害した風でもなく、小首を傾げたままの姿勢で、私の言葉を待ち続けている。
「料理を知らない人間が、最高の食材で調理に取りかかるのを、貴女は黙ってみていられますか」
「私、料理できないから、黙って見ていると思うけれど」
「……私もできませんが。――とにかく、できる人からしてみれば、それは大変な無駄をしているように
 見えると、私は思うのです」
「そんなものかしら」
「ものなんですっ」

 例え方が悪過ぎたことを後悔しながらも、私は天幕へと入ってゆくサズの後姿を見つめた。
「ミランダ。貴女には礼を言わせて貰います」
「それはどういたしまして。でも、そんな顔で団長のことを睨んでいちゃ駄目よ。只でさえ、あなたは
 団長のお気に入りだって、怖いお兄さんたちから目を付けられているんだから。その上、それとは逆に、
 あなたに強い感謝の念を覚えている人たちもいるし。私としては、色々と心配だわ」
「……失礼します」
 ミランダの言わんとしていることは理解できたので、私は足早にその場を去っていった。

 団の結束を乱す可能性がある者を見張るのも、彼女が見つけた役割の一つなのだろう。
 身のこなしを見ていても、熟練した戦士のそれだということは見て取れた。適任というわけだ。 
 サズも、ミランダに対しては、自然に重要な役割を回している部分があった。
 他の者たちにも、適材適所とまではいかなくとも、それなりに適した役割は与えているようではあった。
 だが、足りない。活かしきれていない。使われる者も、使う者も素材のまま、寄せ集められている。

 足は、天幕へと向かっていた。
76火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:24:44 ID:mG5leKPb

「なんだ、まだ早いぞ」
「お話があります」
「後にしろ」
「では、勝手に話します。興味が沸かなければ、私をここからつまみ出すなりして下さって、結構です」
 寝台の上に転がって本を広げていたサズに、私は食い下がった。
「――好きにしろ」
 サズが珍しく逡巡の気配をみせたが、その視線は手元の本に向けられたままだ。
 構わず、私は彼の傍へと近付いていった。
「バラク山に出立する前に、私の意志を伝えることにしました。貴方が求めるように、私はこの傭兵団に
 身を預けようと思います」
 サズは無言だった。
 無言ではあったが、ぼろぼろになった本の頁をめくる、節くれだった指の動きは止まっている。
「ですが、条件があります」
 その一言で、彼の視線がこちらへと向けられてきた。

 赤い瞳が、圧するような輝きを灯してこちらを見据えてきている。
「お前の望みを、言ってみろ」
 御伽話にある、人の願望を叶える魔人のように。彼は、声を低くして語り掛けてきた。
「貴方の傭兵団を、私に預からせて下さい」
 その御伽話の結末は、魔人の壷を手にした若者が、新たな魔人に変えられるというものだったのだが。
 私の目の前にいる男は、そんな御伽話の世界の住人よりも、ある意味で現実味のない男だった。
「断る」
 指先が、再び本の頁をめくり始める。
「負けることのない軍に、仕立て上げてみせます」
「……あいつらは、俺の大事な手足だ。他人に預けることなど、できん」
「預けるといっても、それは組み立ての上での話です。幾ら優れた手足をお持ちでも、その動かし方や、
 鍛え方が理に適っていなければ、それは貴方の望むような結果をもたらしはしないでしょう」

 寝台が、重く軋む音を立てた。 
「俺はなにも望んではいないかもしれんぞ」
「そういう人の下に、これだけの人は集まっては来ません。来たとしても、知れているでしょう」
 再び向けられてきた彼の瞳には、迷いのようなものが浮かんでいた。
「私が知る唯一の軍というものは、騎士団でした。そこには規範や軍律といったものが、それなりにでは
 あれ、整えられていました。ですが、肝心の……貴方の言うところの手足と、それを使う頭はお粗末な
 ものでした。そういう者を幾ら巧く使おうとしたところで、結果は、あんなものです」
「それで?」
「元が良ければ、そうはなりません。規律にしても、手足にしても。私は、その両方が揃ったところを
 この目で見てみたいのです。そしてそれを動かしてもみたいのです」

 敗北は、屈辱と共にやってきた。
 忘れろなどと言われても、それは汚点として確実に私の中に刻み込まれているのだ。
 負けは、負けなのだ。自身に全ての責がなくとも、現実に私は敗者の身となった。
 どう取り繕ったところで、そのことに変わりもない。
 そして、私はそれを克服するに足りるだけの、勝利を求めていた。

 この傭兵団は、サズのものだ。それを操り勝利を収めたところで、私自身の力ではないのも、事実だ。
 だが、勝ちは勝ちなのだ。
 そして元より勝ちを得たくなければ、国境越えをしてまで、こんなところに来たりもしていない。
「おかしなことを言い出す奴だな」
 口調を和らげて、彼は手にしていた本を閉じた。
「自覚は、あります」
 それは本当のことだった。
 幾らそんな願望があったとしても、それでいきなり、他人の組織を操らせろなどと言い出してしまった
 ことには、自分ながら呆れてしまっている部分もある。
77火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:25:38 ID:mG5leKPb

「なんで、そんなことを言い出したんだ」
 サズが体ごと、こちらへと向き直ってきた。
「勿体無いと思ったからです」
「勿体無い?」
 今度は、きちんと頭の中で話を練り上げてから、私は口を開いていた。
「ミラに、こんな例え話があります。今から500年ほど昔、太陽神ソラに仕えていたミラの大神官」
 サズが、再び本に手を伸ばす。
「……最高の食材を、料理の出来ない人間が調理しようとするのを見たら、貴方はどう思われますか」
「せっかくの材料の無駄だな。勿体無い」

「つまりは、そういうことです」 
「なるほどな。合点がいった」
 したり顔で彼はそう言ってきたが、何故か微妙に締まらないものを私は感じていた。
「しかし、平時のやり方はともかく、戦場でのやり方まで悪いと決め付けるのは、まだ早くないか」
「前も言いましたが、団員の方から大体の話は伺っています。皆さん、貴方の活躍を話す分には、異様に
 口が軽くなるので。情報を集めるのには、全く苦労させられませんでした」
「……あいつら、なにを言ってるんだか」
 苦々しげに言ってはいるが、口元が微妙にニヤついている。
「ですが、血気に逸り過ぎたり、無謀な突撃を繰り返しているという話も聞かれましたね」
「誰が言っているか、大体わかるな。それ」
「それは、良いことです」

 それも本当のことだ。
 サズは細かいことには気を回す性格ではないようだったが、団員一人一人に対する理解度そのものは、
 非常に高いように見受けられる。
 組織の情報を把握する上でも、把握させる上でも、そういったことは地味に重要なことなのだ。
「お前の提案を聞いていると、まるでお前が俺の望みを叶えに来たように思えてくるな」
 こちらへ腕を伸ばしてきながら、サズはこの取引を締めにきた。
 後は私がその腕を取れば、交渉は成立ということだ。
「まだ、早いのではなかったのですか」
「気にするな。可愛がってやる時間が、ほんの少し長くなるだけだ」
 
 魔人に願いを告げた時の若者の心境とは、どういったものだったのだろう。
 洋々たる自身の前途に、心を躍らせていたのか。
 それとも、疑心に駆られつつも、欲望を吐き出していただけなのか……
 空想の世界の、その住人の気持ちを類推しつつ、私はその腕に抱き寄せられていた。

 彼は、髪を撫でるのも、撫でられるのも好きではないようだった。
 ついでに言えば、接吻を交わすのにも、あまり積極的ではなかった。
「出立までに、俺を満足させてみろ」
「それは……ぁ、く、め、命令です、か」
「要望だ。それと、お前の為でもあるな。ここの連中は、俺みたいな若造に従ってはいるが、その間に
 お前みたいなガキが割って入るとなれば、大人しくはしてくれるかどうか……」
「な、なるほ、ど、ぉっ! くっ、あ、あぁっ」
「ほんと、やばいことしてる気分になってくるな。ああ、そういえば声の方は、その為だったのか?」
 意外なところで、鋭い。
「そ、です……ぅっ! お、おんなと思われるよりは、まだ、おとこ、だと、あ、あはっ、んん゛っ!」
「どうした。腕のない料理人相手に、いいように捌かれっ放しになってるぞ」
 ちろちろと舌先を脇腹から昇らせてきながら、サズはくつくつと喉の奥で笑いを洩らしていた。
 意外に、根に持つ性格だ。

 こんな面白くない女を相手にして、なにが面白いのだろう。
 行為に流されながら、私はそんなことを考えていた。
 こちらからは、特になにをするでもない。できるわけでもない。
 私はただ、細っこいだけの肉感的とは程遠い身体を弄繰り回されて、寝台の上で息を荒げているだけだ。
 そんな私の有様を見て、サズは時折、酷薄な笑みを浮かべてきた。
78火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:26:35 ID:mG5leKPb

 その表情が妙に気にかかったので、私は抱えていた疑問を口に上らせてもみた。
「気に入られる為に、なにかをしてこようって奴は、多いからな」
「それの、なにがきにいらっ、あくっ、いっ、いぎっ、な、あぁ……っ!」
「単に、飽きるか飽きないかの問題さ」
 喋り出したところを責めてくるのは、彼の癖というか、性癖なのだろう。
 真面目に会話に望んでいるこちらとしては、発言の最中に性感帯を刺激されるのは、非常に迷惑な話だ。

 その内に、明確になにかを考えることが難しくなってくる。
 自慰行為では得ることのできなかった、奇妙な心身状態だ。
 最初の内は、その状態が訪れてくるのは行為の最後の方で、時間的にも割と短いものだった。
 だが、最近は徐々にその状態に移るのが早くなってきていた。
 それに比例して、思考が乱れ飛ぶ時間も長くなってきている。
 そうなると、サズはこちらの状態を見抜いてるかのように、男性器による責めを開始するのだ。
 狙いは勿論、それの対になる器官だった。

「ぁ」
 甘い、誰かの声が、天幕の中で響いた。
 舌と指先でたっぷりと水分を塗布されたそこに、脈動する器官が押し当てられる。
 入り口に熱い器官がゆるゆると擦り付けられ、そこからくちゅりくちゅりという水音が奏でられる。
 これも、私の思考を乱す原因の一つだ。
 しかし、これくらいならまだ我慢ができる。思考も正常で、意識もはっきりとしている。

「っ、あ゛っ、ふぁっ、ひ、はぁ――っ!」
 そう思っていたところに、唐突に侵入が開始された。
「やだっ、ふ、きっ、つぅ……っ」
「お前は、奪うことも、奪わせることもできる。割と、珍しいクチだ」
 サズの声が、遠くなった。
 女性器が思い切り押し広げられ、割り開かれる。私はその圧迫感から逃れようと、彼の背中を掻き毟る。
 そこに、太い溝のようなものがあった。
 傷だ。感触からいって、随分と古い傷の跡だと分かった。
 彼は裸になると、意図的に背中を隠している節があったが、つまりはそういうことなのかと、まだ私の
 中の冷静な部分が、冷めた表情で納得をしようとしている。

 それも、うなじへと吹き掛けられた熱い吐息の前に散り散りにされた。
 繋がったままに引き寄せられ、顔はいつの間にか彼と向かい合わせにされている。
 時間がどれくらい経過したのかが、今日は良く分からない。
「嫌だったら、言え」
 嫌? なにがだろう。サズの表情は、酷く辛そうだ。本当に、こんな女を相手に、そんな辛そうな顔を
 していることの、なにが楽しいのだろうか。嫌なのは、そちらの方ではないのか。理解に、苦しむ。
 ……ああ、来た。
 なにも考えられない時間がきてしまった。真っ白になって、まっしろいのが、かけられる、じかん、だ。
 これは、ぜんぜん、きらいなんかじゃ、ない……っ!

 行為が終了したというのに、いつまでも人の身体を撫で回したりするのは、勘弁して貰いたい。
「俺には、学ってもんがない」
 そうですね。でも、そんなことより私の薄い胸を執拗に指で刺激するのを、止めて欲しい。
「まあ、それでも食っていく分には問題がないのかもしれないが、こうして自分の下に付く人間を抱えて
 みるとなると、色々と困ってくる部分も多い」
 学があれば困らないわけでもないですけど。もっと大事なものがって、お尻の方だけは許しませんよ。
「お前は、俺が知っている、学のある連中と同じ匂いがする」
 匂いですか。そういえば、ここに来てからはあまり清潔にしていなかったので、臭うかもしれません。
 白いのも、臭いだけは苦手かもです。
「……聞いてんのか、お前?」
「はへ……? なんれすか?」
「いや――明日にするか」 
「あ、はひっ!? らから、おひりはぁっ――!」
 上手く喋れなくなるから、本当に勘弁して欲しかった。
79火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:28:33 ID:mG5leKPb

 目を覚ますと、サズは既に筆を手にし、木片とのにらめっこに勤しんでいた。
 私はといえば、服を着せられた状態で寝台の上に寝転がっている。
 無意味に人の仕事を邪魔する趣味は、私にはない。だから、私は待っていた。
「起きたか」
 視線も寄越さずに、彼は声を投げ掛けてきた。
「カッツ。湯と、威厳の出そうな男物の長衣を頼む。大きさは、小さめの物でいい」
 彼が言い終えるのと同時に、何者かが立ち去ってゆく気配だけが、天幕の外から届いてきた。
 確か、あの戦場で耳にした名前だ。しかし、陣の中では耳にしない名前でもある。

「お前に要求したいことをまとめておいた。やり易い順に、やってみろ」
 サズが木片を机の上に積み上げて、肩をコキコキと鳴らした。
「わかりました。提案があれば、団長のお暇な時にお話をさせて頂きます」
「面倒だ。これはと思うこと以外、一々確認にはくるな。報告だけ、しっかりと済ませろ」
「良いのですか?」 
「一々、説き伏せられるのも敵わん。それこそ傍から見れば、俺が操られているように見られるぞ」
「それも、そうですね」
 いつの間にか天幕の入り口に置かれていた衣服に私は袖を通し、木片の山には目を通していった。

「それは……一体どういったわけなのでしょうか」
 天幕に呼びつけられたミランダは、普段は見せない不機嫌な表情を顔に浮かべていた。
 早朝だというのに、彼女は既に繋ぎの鎧を身に付け、腰には剣を帯びている。
 もしかして、眠っている間もこの格好なのだろうか。
「成り行きだ。お前がここに居付くのを決めた時に言っていたのと、同じ理由だな」
「……承服しかねます」
 彼女の反応は、当然のものだろう。新参の、しかも自分より年下の人間の下につけなどという話を突然
 言い渡されて、はいそうですかと、首を縦に振る方が珍しい。
「別に、不服でも構わん。だが、ここにいる以上は、俺の命令は絶対だ。そう、約束したよな?」
 最後の方だけ微妙に口調を変えて、サズがまた肩を鳴らした。

「あなたに、文句を言うわけではないのだけれど」
 ぶつぶつと小声で洩らしながら、ミランダは私の後ろを付いてきていた。
「あの人、なにを考えているのかしら。私がここの皆をまとめるように言われた時も、いざこざが起きて
 凄かったのよ。女の命令を聞けるか、自分より年下の奴に従えるかって」
「もっともな意見だと思います」
「余計な詮索をするつもりはないのだけど。あなた、あの人になにを言ったの?」

 恐らくは、歩幅を合わせるのが大変なのだろう。
 彼女は何回も私の横に並びかけてはその歩みを遅くして、後ろへと離れるようにしていた。
「お願いをしました。この傭兵団を、私に扱わせて下さいと」
「……呆れた。あの人、他人が望めば、なんでも叶えてあげるつもりなのね」 
「一応、断られはしましたよ。そこからは、込み入った話になるのですが」
 詮索はしないという言葉を盾に、私は言葉を返した。
 諦観を滲ませた溜息だけが、すぐ後ろから聞こえてきた。

 彼女の心配は、本当にもっともだった。
 私自身、そういった立場の人間が、他人に己の言を言い聞かせようとしても難しいのだということは、
 骨身に沁みて分からされていた。
 一応の顔見知りも存在した、騎士団の中であってさえそうだったのだから、見ず知らずの人々ばかりで
 構成された、この傭兵団の中にあっては、話は更に難しいものとなってしまうだろう。
 だから私は、恩を最大限に活用することにした。
 こちらに恩のある顔見知りを当たれば、話は随分と変わってくるのだから。
80火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:29:28 ID:mG5leKPb

 傷の具合はもう完全に良くなったのか、ホルゾの顔色には血の気が戻りきっていた。
「なるほどなぁ……そりゃあ、ここの連中に反発を受けそうな話だ」
 思ったとおりに、彼は私の話に耳を傾けてきた。
 彼は、私に矢傷を癒して貰ったことに対して恩義を感じていたので、寝起きであっても嫌な顔の一つも
 せずに、こちらの相談に応じてくれたのだ。

「はい。ですので、私からホルゾに、お願いしたいことがあるのです」
 敢えて彼の名前を呼び捨てにして、私は話を進めた。
「お願い?」
「はい。お願いです。私はこの傭兵団を、一つの軍にできないかと考えています」
 地面の上に胡坐を掻いたままで眉を顰めたホルゾに、言葉を選んで続ける。
「今のここは、とても自由です。そこに決まりごとを押し付けられては、貴方の言う通り、反発を招く
 だけに終わるでしょう。ですが、団長の為には強い軍というものは必要です。勿論、戦場に身を置く
 人にも、その帰りを待つ人にも」
「それは、そうだなぁ……俺みたいなのが、頭の足ひっぱてるようじゃ、良くはないわな」

「その、呼び方なのですが」
 賛同を得たところで、私は話を切り替えた。
「ん?」
「私は団長のことを、これからは将軍とお呼びしようかと思っています」
 膝を付き、声を潜めると、ホルゾは胡坐を崩してそこへ寄ってきた。
「軍を率いる人なら、将軍ってわけか」
「そうです。お話が早くて、助かります」
「一軍の将が、俺たちの上に立つ人ってことか……そういうのも、悪くないかもですね」
 私に倣うように声を小さくして、ホルゾは嬉しそうな笑みをみせてきた。

「それで、お願いっていうのは?」
「はい。軍に限らず、まとまりのある組織には、模範となる人物が必要不可欠です。私は、そうした人の
 協力を得る必要があります。でなければ、こんな話は若造の夢物語に終わるでしょう」
 ホルゾの口調が変わったのを見て取って、今度は下手に出てみる。
「……俺に、その協力者になるつもりはないかって話ですね」
 思った通りに、彼は私への態度を変えなかった。
「頼めますか」
 その言葉に、ホルゾは目を伏せると、思案に耽る様子をみせてきた。

「返事は急ぎません。先程も言ったように、反発を招いて貴方の立場を危うくするかもしれませんので」
 そう言って、私はその場を立ち去る構えを取ってみせる。 
「待ってくれ」
 ホルゾが、目を開いて姿勢を正してきた。
「立場もなにも、俺はあんたに命を救われた身だ。今更、危うくして困るもんなんてねえ。それに、団長、
 いや、将軍の為にその救われた命を使えるってんのなら、願ってもない話だ」
「……迷ったのですが、貴方に相談をしてよかったです」
「そんな、水臭いこと言わないで下さい。俺なんかで良ければ、いくらでも使って下さい。そうだ、他の
 奴らにも、俺みたいに怪我を治して貰った奴らにも、この話をしておきますよ」
「そうして頂けると、助かります」
 
 上手くいった。
 これで手間も時間もかなり節約できるし、他の団員に話を伝えるのには、私よりもホルゾの方が適役で
 あると言えるだろう。彼には、死線を共にした仲間というものがいるのだから。
「あ、そういえば、お名前はなんて呼べばいいんですかね」
「え?」
 ホルゾの唐突な質問に、私は戸惑いの声を洩らしてしまっていた。
「上に立つ人の名前を、あんたって呼ぶわけにもいかねえでしょう。かといって、俺は軍の呼び方なんて
 のには、詳しくもありませんし」
 ……しまった、それについては考えていなかった。
 良い答えを見つけられずに、私はその場で思い悩んでしまう。
81火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:30:06 ID:mG5leKPb

「軍師で、いいんじゃないのかしら」
 突如、今の今まで沈黙を保ち続けていたミランダが意見を出してきた。
 というか、貴女そこにいたんですね。すっかり忘れていました。
「グンシ……ああ、軍師様か。なるほど、いい響きですね。それっぽいや」
「ミランダさん……」
「いいじゃない。ちょっとくらい大袈裟な方が、箔もつくってものよ」
 最後を綺麗に締められて、私は少しだけ不貞腐れてしまっていた。

 それからバラク山へ向けての出立までの間に、私は傭兵団の抱える、問題点の改善に着手していった。
 まず、命令系統を確立させる為に、好き勝手に組まれていた複数の小隊を、一旦は解散させた。
 そうして今度は、こちらの指示に応じて動く為の専門の部隊名を作り、そこに適正を持つ人間を配した。
 これにはサズの推薦もあって、オーランドという年配の男性の協力を得た。
 彼は、この傭兵団に入団してくる者、特に戦いの経験がない人間への指導を主な役割として担ってきた
 人物で、それだけに、部隊への適正を見極める目は確かなようだった。

 オーランドの評価を元に仮の部隊長を選出し、文字をしっかりと読める者の中から伝令役を決めた後は、
 サズの意向に沿って、団の規律を制定した。
「勝手な略奪は許さん。背いたら、俺が直接斬ってもいい。というか、斬らせろ」
 そんな乱暴な彼の言葉を、なんとか文として形にすることはできた。
 これは中々に、自分の凄さを実感できる貴重な出来事だったと思っている。

「取り敢えずは、こんなものですか」
 ソルトブルから物資援助を受けられたことを利用して揃えた、上質の筆具と紙の束を前に、私は一段落
 したといった感じで、大きく伸びを打っていた。
「あなた、良く働くわねぇ」
「ミランダさんこそ、意外に協力的に動いてくれていますね」 
「私は、団があの人の物としてまとまるのなら、不満はないわよ。不心得者がいれば、即刻排除させて
 貰うつもりではいるけど」
「そのお言葉を念頭において、職務を果たさせて頂きます」

 自分で言うのも可笑しいが、ミランダとは随分と親交を深めることが出来ていたと思う。
 自分の住んでいた屋敷や神殿の人間とは、一部の者を除いて、あまり必要なこと以外で言葉を交わす
 ことがなかったので、目下彼女が私の一番の親友と言えるのだろう。
「団員の皆は、どんな様子ですか?」
「んー……流石に、ちょっとピリピリはしているみたいね。急だったから。でも、思っていた以上には
 反発を招いてはいないようよ。なにせ、団長の負担は減ったから。皆そこは喜んでいるみたい」
「アットホームなことですね。そこが崩れては元も子もないので、喜ぶべき話ではありますが」 

 ミランダは、サズの直属の副官として働くようになっていた。
 未だにサズのことを将軍と呼ばないことが密かな不満ではあったが、今までの経験と信頼を利用して
 団をまとめるのに協力してくれていることの方が、私には重要なことだったので、口には出していない。
「多少の不満の影響なら結果で補えますので、厳しくお願いします」
「ソルトブルの商人たちも、あまりいい顔はしていないわよ。いくら補給が受けられるからって、一時に
 これだけの物を持っていかれちゃね」
 まだ整頓の済んでいない資材の山をみやって、ミランダが苦笑する。
「貯め込んでいることろから譲り受ける分には、支障はきたしません。ミランダさんだって、その鎧が
 随分とお気に入りみたいじゃないですか」
「あら、気付かれちゃったわね。そうなの。これ、アイレノス製の胴鎧なの。国外には少数しか出回って
 いないから、普通のルートじゃ入手できないの。この裏打ちの部分とか、凄いのよ」

 嬉々として武装の良し悪しを語り出すミランダの笑顔は、まるで舞踏会用のドレスに身を包んだ貴族の
 娘のような輝きを放っていた。
 勿論、彼女が身に着けている鎧も、私がソルトブルの商人たちから卸させた物資の一つだ。
 流石に高価な武具までは無料で頂くわけにもいかなかったので、それなりの資金を用いて購入せざるを
 得なかったが、そのお陰で兵装面での改善も多少は成された。
 それでも足りない分は、私が同行していた騎士団の武装を改修して用いさせることにした。
 勝つ為には、使えるものはなんだって使わねばならないのだ。
82火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:31:01 ID:mG5leKPb

「将軍、そろそろ団を移動させておこうと思うのですが」
「ん……なんでだ」
 行為を終えた後のサズは、少しだけ口調が柔らかくなる。これも、彼の癖なのだろう。
「斥候……偵察の部隊を早めに派遣しておきたいからです。それと、交戦に移る前には、団員に十分な
 休息を取らせておきたいので」
「なるほどな。じゃあ、明日には陣を引き払う準備に入るか」
 彼は、細かいことに気を回す人物ではなかったが、話の分からない人間ではなかった。
 むしろ、聞き上手なのかもしれない。余計な口を挟むことが、他の者に比べて極端に少ないのだ。

 お陰で、こちらとしては色々とやり易かった。
 サズが言っていた通りに、将軍と軍師の間での言い争いが起こらないことは、私が予想していた以上に
 団にとって良い効果をもたらしてくれたのだ。
 サズと私が団員に下す命令に、食い違いというものはなかった。
 例え私が独断で決めたことに対しても、彼は自分がそのことを命じたかのように振舞う。
 自然、団員たちは私の言葉を、サズの言葉として受け取るようになってくれていた。
 
 事は順調に運んでくれている――
 そう思っていた私が悲鳴を上げたのは、バラク山に程近い街道沿いの高台へと、傭兵団の陣地を移した、
 その二日後のことだった。
「将軍! サズ将軍っ! これは一体、どういうことなのですかっ!?」
「どうした。珍しく血相を変えて」
「どうもこうも……っ!」
 指摘の通りに血相を変えて本陣(正体は新築した天幕だ)の中に飛び込んできた私を、サズは平然と
 した様子で迎え入れていた。

「敵の数が、多過ぎますっ」
「それは、ロムニスの爺さんからも聞いていただろう」
「明らかに増援を受けています。そういう話は、聞いていません!」
 危機感を持ってくれない上官に、私は必死で事の深刻さを伝えようと試みた。
 独軍を相手にするのと、明確な補給線を持つ軍を相手にするのでは、話は全く違ってくるのだ。
「で? 報告は、どうした」
「――っ、バラク山へ入る街道から西に一里の距離に、武装兵が約200。ゴブリン等の亜人種が300。
 バジリスク、オーガ、獣人兵士の姿も確認されています。現在は、陣を敷いてキルヴァへの警戒態勢を
 取っている模様です。あちら側からの偵察の兵は、今のところ確認されていません」
 
 無理矢理に感情を押さえ付けた私の報告を耳に入れても、サズは尚も平然とし続けていた。
「確かに、少しばかり数が多いな」
「こちらの三倍以上ですよ!? しかも、雑軍ではなく、混成魔獣部隊としての統率が見られています」
「勝てないか?」
「勝つ為に、最善の努力は尽くします。ですが、被害を被ることは避けようがありません。目先の報酬と
 引き換えに、自滅される気ですか、貴方は」
 真新しい机の前へと詰め寄ってきた私の鼻先へと、サズは椅子に腰掛けたままの姿勢で指を立ててきた。
「魔物の方は、まとまっていさえすれば、半分は片付けてやる」
「……は?」
「後は、俺がいつも通りにやるのを補佐しろ。その次からは、それを踏まえて作戦なりを立ててくれれば、
 それでいい」
 そう言うと、彼は話を打ち切って、またあの本を読むことに没頭し始めていた。

 ミランダにも、専用の天幕が与えられていた。
 本当は彼女にも本陣の物と同型の物が配備される手筈だったのだが、ミランダは勿体無いからと、前に
 サズが使っていた天幕を引き継いで使用していたのだ。
「なんなんですか、あの人はっ」
「そう怒らないで。団長も、悪気があってやっているわけじゃないのよ」
「貴女も、他の隊長の方々も、何故黙っているのです。幾ら将軍の命令には背かないのが規律とは言え、 
 無謀な戦いを選ぶのを放っておくなど、間違っています」
 相談事にきた筈なのに、つい語気が荒くなってしまう。
 良くない傾向だ。軍師足るもの、常に心を平静にしていなければならないというのに。
83火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:31:51 ID:mG5leKPb

「団長は、あなたを驚かせたいのよ」
「驚かせる?」
 寝台に腰を掛けて、くすくすと笑いを洩らすミランダへと、私は怪訝な表情を向けていた。
「そう。あの人、あなたには驚かされ通しだから。きっと仕返しがしたいのね」
「……意味がわからないのですが。そのことと今回の指示が、どう絡んでくるのですか」
 サズからは戦場では補佐に徹しろと言い渡されただけで、具体的な方策は一切示されていなかった為に、
 私の苛々は頂点に達しようとしていた。
「一緒に戦場に立てば、すぐにわかるわよ。でも……それで彼のことを、嫌いになったりしないでね」
「別に私は、好きとか嫌いだとか、そういった理由であの人に協力しているわけでは、ありません」
「それなら、いいのだけど」
 そう口にした時のミランダの表情は、何故だかとても悲しげなものに見えたので、私はそれ以上サズに
 対する不満を口にするのは止めにしておいた。

 斥候の持ち帰ってきた情報を元に、私は戦場を模した盤と頭の中で、何度も戦いを繰り広げていた。
「面白い物を持ち出したな」
「――本当に、魔獣部隊の方は半数に減らせるのですね」
「疑い深いな。まあ、種明かしを渋っていれば、仕方もないか」
 盤上の駒を弄ぶサズに確認を終えて、私は再び仮初めの戦場での戦いに明け暮れる。
「どこで、こういうことを学んだ?」
「兄が軍学狂いでしたので、少なからずその影響を受けました。後は、父が……」
 深く考えずに答えを返していたが、そこで自分の口にしていたことに気付き、私は口を閉ざした。
「父親が?」
「いえ、父も、そういったことに興味を持っていまして」
「英才教育って奴か。それにしては、神官としてあの部隊に参加してたようだったが?」
 再度口を閉ざし、私はそれ以上の追求を跳ね除けることに成功した。
 ……その晩は、やたらに激しく責められたことを憶えている。
 主に後ろの方を重点的に。声を出すまで、しつこく。出したら出したで、ねちっこく。
 本当に、根に持つ人だ。

 翌朝には、五つの部隊が平野に展開された。
 騎馬兵力を中心に組織され、私やミランダも加わった、本隊。
 戦い慣れた者を集めた、重装歩兵隊。若く、瞬発力に優れた者で編成された、軽装歩兵隊。
 体格や経験には劣るが、冷静な判断ができる者を後方支援に回して作られた、弩弓部隊と、輜重隊。
 それぞれの部隊には手練の兵も配してあり、特に弩弓部隊の隊長であるネイトは、私の目から見ても、
 見事な統率ぶりと、若い兵を盛り上げる器量の大きさで光って見えていた。

「オーランド教官の、人を見る目は本物ですね」
「ネイトのことか……まあ、あいつも変り種だからな」
 サズは一応の体裁が整えられた陣立てに、そこそこに満足をしている様子をみせていた。
 それで良いと、私は思う。
 この程度で調子に乗られても、困るのだ。兵の意識を高めるには、将が簡単に満足してはいけない。 
 それにどうせ、実戦になればこんなに上手くもまとまってはくれない。
 乱戦になった際にまとまりを維持するには、結局は地道な訓練を繰り返すしかないのだ。

 だから、乱戦にならないように心掛ける。これは現状では重要なことだった。
 凶悪な魔獣を擁する敵に対して、統制を失った状態で揉み合いになってしまえば、こちらの被る損害は
 計り知れないものとなりかねないし、士気の低下にも繋がる。
 逆に言えば、それを防ぎ、統率を保ち続けた状態で、前衛と後衛の部隊を活用できれば、被害を抑えて
 勝利を手中に収める可能性も、十分にあると私は見ていた。

「当てにしていますよ、将軍」
 軍馬を操ることに集中しながら、私はつぶやいていた。
 敵の部隊の動向を掴みきれる程に、密偵の精度を高めることはできなかったが、出来うる限りの情報は
 今この時にも入手し続けている。
 サズの行軍の手並みは、見事なものだった。
 このまま整然と部隊を進めることができれば、予定していた場所を戦場とすることができるだろう。
 最悪の状況を想定しつつも、私は初めての勝利を得る為に、闘志を燃やし続けていた。
84火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:32:35 ID:mG5leKPb

「報告します。敵陣営により炊煙が上がるのを確認しました。数からして、敵全軍の物と思われます」
「わかった。発見されないことを最優先して、続けろ――こういうのも、計算済みか?」
 予め出陣の刻限を定めていた私へと、斥候の報告を受けたサズが馬上から振り向いてくる。
「基本中の基本です。今まで、こうしたことを考えたことがなかったのですか?」
「あまりないな。敵が目の前をうろついていれば、その時に考えることにしていた」
「良く今まで生き延びてこられたものだと、感心します」

 皮肉などではなく、本心から、私はそう思っていた。
 サズの指揮能力が低くないことは、既に行軍の見事さが証明している。
 無能な指揮官に、兵はついてこないのだ。
 戦場で信じられるだけの結果を出すからこそ、与えられた命令を真剣に受け入れて、動く。

 そういった点では、ミラの聖騎士たちと、それを引き連れていたボリスレズフ卿との関係は、酷かった。
 魔物風情には遅れを取らぬ。自分が先陣を駆け、相対する者は全て斬って捨ててくれる。
 そう豪語していたボリスレズフ卿は、自分たちの部隊が沼地の中へと引きずり込まれた時点で言を翻し、
 取り巻きの司祭たちと共に最後尾へと下がっていった。
 そうして士気を自ら引き落としておいて、今度は下級の騎士と従卒たちにだけ、進軍を命じた。
 沼地に足を取られる者が続出し、馬に乗る者と、そうでない者の距離は大きく引き離されたが、恐怖に
 駆られた騎士たちは、進軍を停止することができなかった。

 そこに、魔物たちは襲撃を仕掛けてきた。
 いや、もしかしたら、単にこちらの方が、魔物たちの胃袋の中に踏み込んでいただけの話だったのかも
 しれない。そして、隊の最後尾までもがその牙に届いたので、単に彼らは口を閉ざしただけだと……
 ともかく、私の所属していた部隊は、物の見事に壊滅した。
 戦力では劣らぬ筈だったのに、完膚なきまでに叩きのめされ、蹂躙され――

「ディー……ちょっと、ディー! ディアスベル!」
「え――あ、は、はいっ。なんですか、ミランダ。もう、敵陣が近かったのですか?」
「そうじゃないけど。あなた、顔が真っ青になっていたわよ。大丈夫? もしかして、馬に乗っているの、
 辛かった?」
 いつの間にか、心底心配そうな表情を浮かべたミランダが、こちらに馬を寄せてきていた。
 記憶が、若干飛んでしまっている。こんなことでは、いけない。勝てない。
「平気です。戦闘になっても、ついてゆくくらいなら、問題もないと思います」
「なら、いいけど。絶対に無理は禁物よ。もしも本当に体調が悪いときは、私の後ろに乗ってね。誰にも、
 笑わせたりはしないから」
 そう言って貰えるのは、本当にありがたい。
 慈母の微笑みで支えてくれる彼女にこうべを垂れ、私はなんとか持ち直していた。

「退きなさいっ!」
 馬上から繰り出されたハルバードの一撃が、立ち塞がる敵兵を二人まとめて薙ぎ倒す。 
 ミランダの愛馬が、手綱の指示も受けずに突進を仕掛けたかと思うと、全面に構えられた彼女の得物が
 敵の隊長らしき人影を串刺しにしていた。
「討ち取ったり!」
 そのまま駆け抜けることで穂先を引き抜き、彼女は声を上げた。
 集団戦においての兵の士気を操る術を心得た、高らかな鬨の声だ。
「将軍を、あのまま行かせて良いのですかっ」
 頬に張り付いた泥を軍衣の袖で拭い、私は前方を走る彼女へと呼び掛けた。
「団長なら、オーランドたちがついているわっ! それよりも、巻き込まれないようにしていなさいっ!」
 戦神の気迫を発して敵を圧する彼女の言葉に従い、私はなんとか馬を押さえ込んでいた。

 サズは、私の予想の外にある用兵を行う人物だった。
 敵の部隊が、斥候の報告通りに人間と魔物で陣を分けているのをその目で確認するや否や、彼は数騎を
 伴って魔物側の陣へと接近を開始していた。
 残る部隊は、敵通常戦力、つまり人間の陣への強襲に当てられ、弩弓部隊の第二射が終えられると共に、
 前衛の部隊は一丸となって敵陣へと雪崩れ込んでいた。
85火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:33:41 ID:mG5leKPb

 はっきり言って、こちらの攻めは単純な力押しだった。
 相手側が迎撃体勢を整えるのに手間取ったとはいえ、中核の戦力は陣の奥深くに控えさせていた為に、
 近接攻撃の第一波は、敵を総崩れにするまでには至らなかった。
 だが、そこからが凄かった。
 力押しが、続くのだ。
 敵兵が防壁の陣を組んで矢を射掛けてくる体勢を作ろうとしても、強引に防壁となった敵兵を押し続け、
 敵に第一射を行わせる余裕を与えることがなかった。

 団員たちは、陣立てにも大きな乱れも見せず、まるで部隊が以前から組まれ続けていたように、連携を
 取り合い、部隊内での攻守休動を入れ替えている。
 当然、全体としての体力消耗は大きくなるが、そうすることで攻勢を保ち続けているのだ。
 しかも、面として敵にぶつかり続けているので、後方に無駄な兵もおらず、結果的に敵は矢を射掛ける
 べき場所も失ってしまっている。流石に、前面で味方と揉み合うところへの射撃は行えないからだ。
 それなのに、こちらの弩弓部隊の援護射撃は、散発的にではあるが続いている。異常なまでの見極めだ。
 場合によっては私は馬を止めて、負傷兵の傷を治療することに専念しようかとも考えてはいたが、この
 状況を見る限りでは、それはむしろ団の中核である本隊の動きを損ないかねない。
 大人しく、私は戦況の把握に努めることにした。

「ミランダ。一度、兵を退かせましょう」 
 敵将校を打ち倒しながらも、本隊の指揮を預かっていたミランダに、私はなんとか素早く馬を寄せる
 ことができた。
「そうね。後一度だけ、重歩兵隊をぶつけて、その間に他の隊を後退に移らせるわ」
「いえ、それでは遅すぎます。混成魔獣部隊が、もうこちらの方に向けて攻撃を開始してくる頃合です。
 将軍との合流が、多少難しくはなってしまいますが――」
 この兵の錬度と士気の高さであれば、合流に時間をかけても、十分、いや、十二分に取り返しは利く。
 そう言葉を続けようとしたところに、陽が昇ってきた。

 太陽だと、私はそれを本気で思い込んでしまった。
 魔物の陣がある方角には、雲に隠れて陽が落ちてゆく途中であり、そういう時刻を私は意図的に選び、
 部隊を進発させるよう、サズへと進言していたからだ。
 兵の士気というものは、基本的に夜に近付く程に落ちる。
 だが、魔物の多くは夜目が利き、戦意も旺盛なままでいることが多分にある。
 だから、私は無難にその合間の時刻を選んでいたのだ。

 ともかく、それは陽の光ではなかった。
 目を凝らすと、夕焼けにも似た赤い光が、西の方角から上がっている。
 その輝きに応ずるように、団員たちが大きな歓声を上げ始めた。
 それは、炎だった。
 原野を赤く染める、帯状の炎が魔物の陣を一直線に切り裂き、伸びている。
 その炎が、爆ぜた。爆散して、点の火種を辺りに振りまいている。
「団長、あなたにいいところを見せようとして、張り切り過ぎね。あれじゃ、明日は使い物にならないわ」
「団長……サズが、あれを?」
 腕を振り上げ、後退の鐘を打ち鳴らさせたミランダが、私に向けて首を縦に振って答えてきた。

 巨大な炎。まるで、幻獣たちの王――竜の産み出す、古の炎。
 竜? 竜の……炎?
「竜炎――サズ・マレフ! 竜炎の使い手の!」
「あら、気付いちゃったみたいね。さあ、一旦退くわよ、ディー。うちで一番手のかかる人を、早く迎えに
 行かなくちゃならないから」
 ミランダの声は、まるで遊びに出かけた幼子を迎えにゆこうとする、母親のような口ぶりだった。
 私は半ば呆然としながらもその声に従い、震える手で手綱を握り締めた。
 炎の威容に呑まれ、怯え竦む敵兵の追撃には、まるで力というものがなかった。

 結局、本格的な戦闘はその日だけのことで終わった。
 逆襲に出てきた敵の夜襲部隊を、予め平地に作り上げておいた囮の陣へと突入させ、高台の上に構えた
 本物の陣からの一斉射撃と、騎馬隊の追撃で蹴散らすと、次の朝には敵の部隊は撤収を開始していた。
 その間、本隊との合流を果たしていたサズは、本陣の中で一人爆睡をし続けており、明くる日の夕方に
 なるまで目を覚まさずにいた。
86火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:34:25 ID:mG5leKPb

「起きましたか」
 執務机の前に腰掛けたまま、私は視線も動かさずに彼へと声を掛けた。
「敵の部隊は夜襲に失敗した後に、撤退しました。追撃の命を受けていなかったので、山地へと退くのを
 確認させただけで、兵は動かしていません」
「ん」
 ぼりぼりと髪を掻く音が届いてきて、そこに大きなあくびの声が続く。
「兵の損耗は軽微です。治療は、仰られていた通りに傷の深い者以外には施していません。それと、敵の
 残していった物資だけは、私の独断で回収を行わせました」
「わかった。もうちょい、寝かせてくれ……」
「駄目です。将軍には、皆が勝利の興奮を失わぬ内に、やって貰うことがあります」
「なんだよ……ったく」

 サズがのろのろとした動きで、寝台から足を下ろす。
 そこに、私は一枚の半紙を突きつけた。 
「将軍には、これを団員たちに告知して頂きます」
「――ああ、なるほどな。でも、こうして字で見ると、ちょっと大袈裟な名前だな」
「お嫌でしたか」
 半紙を持った手を下げるようとしたのを、彼は片手で制してきた。
「聞きなれている言葉だし、まあいい。もっと恥ずかしい呼ばれ方もあったしな。それに……」
「それに?」
 先を促す言葉に、まずは満足気な笑みが返されてきた。  
「強そうだ」
 何故か私は、サズの発したその言葉にこそ、強く勝利の達成感を得ていた。

「竜炎団……ね」
「強そうですよねっ」
「そう? 私はちょっと安直だと思うけれども。団長の二つ名を、そのまま団名にしただけじゃない」
 いつもの天幕にて。
 賛同の声を求める私に、ミランダは辛辣な指摘を飛ばしてきた。
 どうもこの人とは、言葉の嗜好というものが、微妙に噛み合わない時がある。
「でも、下手にごちゃごちゃとした名前を掲げるよりは、いいと思うわ。ムルシュの帝国軍なんて、もう
 うんざりする程に部隊名が長ったらしくて、私なんて毎回、舌を噛みそうになっちゃっていたから」
 彼女はこの団に居付く前は、傭兵稼業と冒険者稼業の二足の草鞋でやってきていたらしい。
 私が今までの癖で東方語を口にした際に、即座に返事をしてくるところを見ても、彼女が色々な土地を
 渡り歩いて来たのだろうことは、容易に想像することができた。

「ここの皆は、あまり他人のことを詮索しないのですね」
「団長からして、そういう部分があるから。自然と、そういう不文律が出来上がってしまっているのよ」
「不文律、ですか」
 詮索したがるのは、私の癖なのだろう。
 だが、私自身はそれを悪いことだとは思っていない。
 知らないことは、怖いからだ。知っていれば、それに対策を講じることができるからだ。
「知らない方が、幸せなこともあるのよ」
 そう言って静かに微笑むミランダに、何故だか私は反感を抱けなかった。

 竜炎団は、中央大陸の戦乱が激化する程に、その勇名を高めていった。
 サズは、自らの手足である団を、オーズロン連合内で起こされた様々な戦いの場へと差し向けた。
 魔物を滅する、竜の戦士たち。
 小に付き、大には組せぬ義侠の傭兵団。
 彼の行いを、そんな言葉で表そうとする者たちもいた。
 私に言わせれば、それは明確な目的を持たない、戦乱を長引かせるだけの無益な行為だった。

 だが人の噂とは、私が思っていた以上に恐ろしいものだった。
 竜炎団に相対する者たちは、大義を持たぬ輩。私欲に突き動かされた者たちだと。
 ボルドや連合の軍がその相手であっても、オーズロンの民は、そう公言してを憚らなくなってきたのだ。
「狙ってこうなるよう、仕向けたのですか?」
 とっくにバネの弱くなってしまった寝台の上で、私は一度だけ、サズに問い掛けたことがある。
 返されてきたのは、とても弱弱しく寂しげな笑みが、一つだけだった。
87火と闇の 幕間 一:2009/03/11(水) 00:36:34 ID:mG5leKPb

 夜が過ぎれば、朝が訪れてくる。
 季節は巡り重なり、団への参加を望む者も大幅に増えてきた。
 ある者は、竜炎の将軍に憧れ、心酔して。 
 ある者は、生き延びる為の宿木として。
 ある者は、富と名声を得る場として。
 己が野心を成就する為に、入団を果たそうとする者までもが、私たちの前に姿を現していた。

 サズは、その全てを受け入れた。
 受け入れた後に、噛み砕いた。
 自身の血肉足りえる者だけを飲み下し、そうするだけに足らぬ者であれば、容赦なく吐き捨てた。
 そうして作られた鋼の手足を操り、私は血河と共に、幾つもの勝利を積み上げた。
 
 遥か地平に、陽が昇る。
 いつしか私は、奇跡を願う祈りを捧げるのに、一人の男の名前を心の内でつぶやくようになっていた。
 それでも、奇跡は起こされた。神に捧げることで発現するのだと言われ続けてきた奇跡は、傷ついた
 人々を分け隔てなく、癒し続けた。
 戦いの為の策を案じつつも、それに付き合わされた人々の傷を癒し続けた。
 そんな矛盾を孕んだ行為を繰り返す内に、私は勝利に対する執着を失っていった。

 それでも私は、戦い続けている。
 我執と入れ替わるようにして胸の内に現れ始めた、奇妙な感情の、その正体を知る為に。
 今この時にも、私は彼の傍らで走り続けている。


〈 完 〉 
88名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 00:37:14 ID:mG5leKPb
以上です。
89名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 07:08:37 ID:zDL+zV90
わかりました。
9043:2009/03/11(水) 13:46:46 ID:4xKjkmhR
盗賊×女伯爵な魔術師(仮)
第一話 古代遺跡の秘密
エロシーン後半〜エピローグまで投下させて頂きます。
ノリノリで書いたら長くなったんだぜ。

3(4)
 セシルは開いた片方の手を、チュニックの裾の中に侵入させる。
 目当てはズボンのボタンだ。セシルはそれを、器用に片手だけで外していく。
「あっ、やっ……!」
 ズボンの下、下着越しだがようやく辿り着いたヴェリサの其処は、既にじんわりと湿っていた。
「何だ、もう濡れてるんだ」
 くすりとセシルは嗤う。そうだ。どんなに綺麗な人形のような少女でも、一皮剥けば皆同じ。
賤しい雌犬の本性を隠している。
 ヴェリサは身悶えし、セシルから身を放そうと足掻く。
 そして全力を振り絞り、なんとか上半身の自由を確保すると這い蹲って逃げようと試みた。
 馬鹿なヴェリサ。それが男の罠だと気付きもしないで。
 彼女が尻を浮かせるのを男は待っていたのだ。邪魔なズボンを脱がせる為に。
 果たしてセシルは下着ごとヴェリサのズボンを膝まで引き摺り下ろし、彼女の下半身を露出させた。
肉付きの良い白い臀部が顕わになる。
 下着と彼女の其処との間に、透明な液が糸を引くのを彼は見逃さない。
「滅茶苦茶エロい。こんなにぐっしょり濡らしちゃって」
 そしてセシルは容赦なく彼女の大事なオンナの部分に手を差し入れた。
「だ、だめ!」
「大声出しても誰も来ないよ。アトレーもミスティも、あいつらだけじゃ前に進む事なんてできないんだから」
 そうだ。もし来れるものなら彼らはとっくに自分達の後を追っているはずだ。
 それがいまだに現れないと言う事は、まだあの入口に留まっているのか、それとも別の場所に飛ばされたのか。
 もしかしたら用心深い彼らの事だから、無理はせずに町に助けを呼びに行ったのかもしれない。
 どう見てもここは密室。だから安心して行為に及べる。
 セシルはヴェリサのイヤラシイ部分に指を這わせる。そこは分泌される液体で既にぬるぬるで、セシルは女が最も感じる陰核を探り当てると、優しく撫でさすった。
「やっ、ああっ!」
 ぴくんとヴェリサの体が跳ねた。
「何? 感じた?」
「そ……そんな事無いっ」
「なあ、ここ、人に触られるのって初めて?」
「っ……知らない……っ」
 目尻に涙を浮かべ、震えるヴェリサの反応は、何よりも雄弁に答えを物語っている。
 セシルは更に苛めてやりたい。そう思って言葉と指の攻めをいっそう激しくする。
「なぁ、答えろよ、処女なんだろ? 正直に言ったらやめてやるよ」
「っ……こんな事されるの、初めてよ。だからお願い、やめて……」
 消え入りそうな声の告白にセシルは微笑む。それは憐れみと、嗜虐の笑みだ。
「じゃあ何でこんなにここで感じんの? 自分で弄ってた?」
「そんな事しないっ……約束でしょ、離して!」
「ああ、そうだな、約束だもんな」
 セシルは約束通り、陰核からは指を離す。しかし代わりに、その後ろにある、穴の入口をやわやわとなぞり、指先をほんの少しだけ挿入させる。
 そこは陰核への愛撫のおかげでさらに液が分泌されており、狭いながらも案外簡単にセシルの指を受け入れた。
「やっ、な……!」
 信じられない、という表情でヴェリサは背後のセシルの顔を省みた。
 これくらいの事で、そんな反応をする少女が愛おしい、とセシルは思った。
 今までそれなりの数の女を抱いてきたが、こんな反応をする女は初めてだ。
 もっと見たい。もっと。
 自分の指で、唇で、そしてアレで。
 彼女をもっと悶えさせて、酔わせて、思う存分支配したい。
 ゆっくりとした動きでセシルはヴェリサのその部分を解していった。
 徐々にそこはセシルの指を受け入れてゆく。
「痛くない?」
「痛く……ないけど、怖い」
 涙目のヴェリサ。可愛い。
「ねぇ、お願い。抜いて。怖いよセシル」
 そんな潤んだ瞳で、上気した頬で言われても逆効果だ。
9143の人:2009/03/11(水) 13:50:41 ID:4xKjkmhR
3(5)

 下手に動いてそこが傷つくのを本能的に恐れているのか、ヴェリサは逃れるのを止めていた。
途方に暮れた表情で、ただセシルの指を、為すがままに受け入れている。
「っ……あ」
 ある一点をセシルがなぞった時だった。ぴくんとその体が動いた。
「ここ、いいの?」
「ん……や……なんか、へんっ」
「変じゃないだろ、気持ちいいんだろ。どんどん溢れてきてる」
 セシルのサディスティックな心が再び頭をもたげた。わざとイヤラシイ音を立てるように指を動かす。
 くちゅくちゅと卑猥な水音が辺りに響いた。
 これなら指を増やしても大丈夫そうだ。
セシルは中指に続き人差し指を、ヴェリサの様子を見ながらゆっくりと挿入させた。
 ヴェリサは一瞬眉根を寄せるが、十分に慣らされたそこは、しっかりとセシルの二本目の指を受け入れる。
「お前ホントに処女? もう二本も指入ってるよ。素質、あるんじゃないの」
「……っ」
 わざと彼女を貶めるような言動を取るのは、その表情(かお)が見たいから。
 だけどそろそろ自分の欲望も限界だ。ずっと前から勃起したそこは、早く解放しろと主に訴えかけてくる。
 セシルはヴェリサを攻めながら、自分のズボンの前をくつろげ素早くそれを取り出した。
 古代人の睦合いを見た時から半勃ちだったそこは、勢いよく飛び出してくる。
「入れるよ」
 セシルはヴェリサに低く囁くと、指を引き抜き代わりにソレを、彼女の入口に押し当てた。
「え、だ、だめ! それだけは駄目!」
 ヴェリサは反射的に逃げようと腰を引くが、許さない。
 欲望のままにいっきにそこを貫いた。
「や、あ、痛―――――!」
 ヴェリサは破瓜の痛みに悲鳴を上げた。さすがに未熟な彼女のそこは、セシルの欲望を受け入れるには狭かった。
 みちみちと肉棒に彼女の膣の肉が、きつく絡みつくのを感じる。
 ぬるぬるとしたそこは、締まりの良さと相俟って、彼女には悪いがかなりの快感をセシルに与えた。
「いいよ、ヴェリサ。すっげ、気持ちいい……」
 セシルは目を閉じて、彼女の中を味わった。
 思うがままに突き上げて彼女を啼かせたいと言う欲望と、優しく抱いてやりたいと言う労わりの気持ちがセシルの中でせめぎ合う。
「ごめん、俺、止まんない」
 ずるり、とセシルは己の物を引き抜くと、弛緩した彼女のそこに再び自分のものを打ち込んだ。
「っ、やだ、セシル、痛い、痛いよ」
「ごめんな」
 セシルは謝るが、肉体の欲求を抑える事はできなかった。
 だからせめて、少しでも彼女の痛みが和らぐようにと、片手を陰核に添わせ、愛撫する。
「ひゃうっ」
 すると彼女の反応が変わった。
「あ、や、セシル、それ嫌。駄目!」
「嫌とか駄目とかお前、そればっかだな。ほら、見てみろよ。あの女とお前、同じ格好してんぞ」
 ヴェリサの体に夢中で、すっかり失念していたが、記憶装置の古代人の睦合いはまだ続いていた。
 奇しくも女は四つん這いになり、男が後ろから挿入して突き上げると言う、今のセシル達と同じ格好で交わっている。
 まるで獣のような体勢を目の当たりにし、ヴェリサの表情が凍り付いた。でも与えられる快感に体は正直に反応して―――
 やがて記憶装置の映像は、男がようやく達しその再生を終了した。
 しかし現実の行為は、セシルがまだ達していないため続いている。
 苦しい、辛い、痛い、でも気持ちイイ。
 ヴェリサはもう何が何だかわからなかった。
 どうしてこういう事になったのだろう。自分の何がいけなかったのだろう。
 セシルは苦手だった。旅に出てからずっと、何かとヴェリサに目を付けて、厳しい事を言ってくる。
 伯爵家の血を持ち、魔術師ギルドにおいても優等生だったヴェリサに、そんな風に接する男は今までにいなかった。
だから怖くて苦手だと思った。
 でも彼の言う事は筋が通っていて真実で。
 自分が世間知らずなお嬢様で、何もできない愚図だと言う事は、この旅で痛いほどに自覚したから、一切反論できなかった。
 セシルはそんなに私が嫌いなのだろうか。こうやって凌辱するほどに。
9243の人:2009/03/11(水) 13:51:50 ID:4xKjkmhR
3(6)

 でも不思議と彼に触れられる事は嫌でなくて、むしろこうして自分の体で感じているらしい低い息遣いには快感すら覚えた。
 この尊大な男が、私の体で感じてる。
 支配されているのに支配している。そんな奇妙な感覚を覚える。
 もっと溺れて。服従して。
 もうやめて、これ以上私を貶めないで。
 相反する自己矛盾に心が悲鳴を上げる。既に許容量オーバーだ。このままじゃ、私、おかしくなる―――
「っ、ふっ、イク……」
 男が低く呻いた。そしてヴェリサの最奥に、男の精が放たれた。
 ビクビクとそこが痙攣し、その度に注ぎ込まれるのを感じる。
 避妊、しなくっちゃ………
 ヴェリサは霞がかった頭でそんな事を思った。
 圧し掛かる男が身を離す。硬度を失った男のものが、ずるりとヴェリサの中から引き抜かれた。
「ごめん」
 後始末をしてくれるセシルの手は、意外にも優しかった。
「謝るくらいならしないで」
 ヴェリサは冷たく返した。気を抜けば涙が零れ落ちそうだった。こんな屈辱を受けた後、更に涙を流すのは、ヴェリサの矜持が許さない。
 ヴェリサはセシルの手が離れると、のろのろと着衣を直した。
 男に晒したのは最低限の場所だけ。
でも神聖な思い出になるはずだった初花を、こんな場所でこんな形で、しかも好きでも何でもない人相手に散らす事になるなんて。
 ヴェリサは目を閉じて唇を引き結んだ。
 濡れた下着の感触が気持ち悪い。それはこれが夢でない事をヴェリサに思い知らせる。
 考えても、駄目。失ってしまったものはもう取り戻せない。だから。
「出口を探すわ」
 ヴェリサは閉じていた目を開いた。そして室内の唯一の扉に向かって歩く。
 股間が痛んで少し歩き辛いが、気力で堪え、何でもないように振る舞った。
 ただ、早くここから出たかった。これ以上セシルと二人きりは耐えられない。




9343:2009/03/11(水) 13:54:38 ID:4xKjkmhR
4(1)

 男は、良くも悪くも達してしまえば冷静になる生き物だ。
 ヴェリサに己の欲望を吐き出したセシルは、表情は平静を装っていたが、頭の中では自責の念に苛まれていた。
 最初は少し悪戯をするだけのつもりだったのだ。しかしヴェリサがあまりにも可愛らしい反応をするものだから、
目の前で流れるエロ映像の視覚効果も手伝って、止まらなくなってしまった。
 それにヴェリサもそこまで嫌そうじゃなかったし……
 本当に嫌なら、もっと滅茶苦茶に暴れてるに違いない。だからきっと俺だけが悪いんじゃない。
 そう言い聞かせても、もしヴェリサがここを無事に出られて、アトレー達にちくったら彼らはどんな反応をするだろう。
 正義感に溢れたアトレーは、女を無理矢理凌辱するような真似は許さないだろう。腕っ節ではセシルはアトレーに正面からでは勝てない。
盗賊の修める戦いの技術は、隙を掻き、相手の裏を突いてこそその真価を発揮するものだ。
 女のミスティの反応はもっと見えている。平手の二、三発は覚悟しておいた方がいいだろう。
痛さと言う点ではアトレーとは比較の対象にはならないが、パーティから追い出されるのは間違いない。
 更に悪い事にヴェリサは雇い主だ。最悪今までの報酬すら貰えず放り出されるだろう。
 はぁ、まずい事をしてしまった。
 そのヴェリサが今何を思っているのかは、本人が目を合わせてくれないので窺い知ることは出来ない。
 扉を試す眇めつし、外に出る方法を探っている。
 その彼女が不意にこちらを振り返った。セシルはびくりと姿勢を正した。
「五十オーラム、持ってない?」
 ヴェリサは無表情だった。しかしその瞳は、今にも泣き出しそうに揺れている。
 セシルはそんな危うい彼女の精神状態を察し、そこには触れなかった。
 オーラムとは古代王国時代の通貨の単位である。
 その貨幣は遺跡に潜る中で何度か目にする機会があった。
 純度の高い魔法銀(ミスリル)、もしくは魔法金(オリハルコン)製のそれは、学術的にというだけでなく、
金属としての価値も高く、高値で取引される。
 伯爵に献上すれば、普通に売るよりも高く買い取ってくれたため、手に入れる都度献上していたので手元には持っていなかった。
「悪いけどない。なんでそんなものが必要なんだ」
「ここに書いてあるから」
 ヴェリサは扉の横に打ちつけられたプレートを指差した。古代語で何かが書かれている。勿論さっぱり判らない。
「何て書いてあるんだ」
「料金はそこのベルを鳴らして、ポストにお入れ下さいって。それだけ」
 つっけんどんな口調のヴェリサだが、その顔はほんのり赤く染まっている。
 何か隠してるな。セシルは持ち前の勘で察した。
「俺、思ったんだけどさ、ここってもしかして連れ込み宿なんじゃないの」
「……何でそう思うの」
「だってあんなエロい装置にベッドだぜ? それ以外の目的が思いつかない」
「し、知らない。わかんないわよ、そんなこと」
 ヴェリサはぷいっとそっぽを向いた。どうやら図星のようだ。
「たぶんお金を入れないと開かないように仕掛けがされてる。扉は入口よりも複雑な二重鍵になってるの」
「じゃあ『視覚共有(サイトシェアリング)』の魔法をかけてくれ。開けれないかやってみる」
「わかった」
 ヴェリサは呪文を詠唱すると、入口でしたようにセシルの体に触れた。
 視界が、魔術師のそれと同調する。
 しかしセシルは、扉の鍵の構造を一目見ただけで諦めた。
「無理だわ、これ。たぶん俺の腕じゃ開けれない」
「そう……」
「無理矢理やればできん事はなさそうだけど、少しでも手順を間違えれば何かの罠が作動するような仕掛けになってるな。
かなり手が込んでる」
「犯罪対策かしら。客の魔術師が不正に逃げるのを防ぐための」
 ヴェリサは顎に手を当て、首を傾げた。
「悠長に鍵開けるよりも、魔法でぶっ壊した方が早いんじゃないか」
「でもそんなことして大丈夫かしら。それこそ扉の罠が作動するんじゃ」
「他に方法があるか? 二人で餓死するまでここにいるってんなら、付き合ってやってもいいけど」
 セシルの含み笑いに、ヴェリサは顔を歪ませた。
「わかった、ちょっと離れてて」
9443:2009/03/11(水) 13:58:04 ID:4xKjkmhR
4(2)

 ヴェリサはセシルを下がらせると、扉の正面に立ち、手で複雑な印を組んだ。
 そして呪文の詠唱を始める。
 そこで何を為されているのか、『視覚共有(サイトシェアリング)』は既に解けているため、セシルには窺い知ることは出来ない。
 聞いた話では、魔術師は大気中に存在する魔力(マナ)を、呪文や身振り、あるいは紙に描かれた魔法陣などを用いて操り、
様々な奇跡を起こすのだと言う。
 やがてヴェリサの呪文は完成したようだ。
「『衝撃波(ソニックブロウ)』!」
 ヴェリサは思い切り手を突き出した。その目の前にあった魔法構成が、形を変え、目の前を薙ぎ倒す力の奔流となって迸る。
 扉は周りの壁と共に吹き飛ばされ、瓦礫となって崩れ落ちた。
「やるじゃないか」
 部屋に開いた大穴から外に出ると、そこは長い廊下になっていた。
 薄暗いが、夜目の利くセシルには奥の方に階段があるのが見えた。
 しかし、ほっとしたのは束の間だった。廊下全体にけたたましい警報音が鳴り響いたのである。
「何?」
 ヴェリサは落着き無く辺りを見回す。
「自動人形(オートマタ)だ」
 入口にあったのと似たようなのが、今度はぞろぞろとこちらを目指してやってくるのが見えた。
しかも彼らが手にしているのは弓だけではない。確認出来るだけで剣やら斧やら、それが二十体近くいる。
 魔法の明かりを灯し、視界を確保したヴェリサは顔を引き攣らせる。
「多過ぎ……」
「さっきみたいに何とか出来ないのか」
「無理よ。『魔法解除(ディスペルマジック)』はすっごく精神力を使うの。
一体で、それも誰かが引きつけてくれて集中の時間が取れるならまだしも、この状況じゃ自殺行為だわ」
「とりあえず逃げるぞ」
 セシルはヴェリサの手を引き、階段を目指した。
 ここが一体何階なのかはわからないが、地下にある事は間違いない。ならば上に上がれば出口が見えるはずだ。
 もう少しで階段に届く、その時にヴェリサの足がもつれた。
「っ!」
 驚きと痛みに転倒しかけた少女を、セシルは何とか支えた。
 そして階段まで無理矢理引き摺ると、ヴェリサを奥に押し込める。
「どうした、大丈夫か?」
「別に、なんでもない」
 嘘だ。足がもつれたのは局部が痛みを訴えたせい。
 でもそんな事恥ずかしくて言えない。ヴェリサは平静を装った。
「歩けるか?」
 ヴェリサは頷くと、セシルと共に階段を昇る。しかし痛みの為、駆け上がる事は出来ない。
セシルは苛立ったようにヴェリサの腕を取った。
 ザッ、ザッ、と言う人形達の歩く音はその間にもどんどん迫っていた。
 一体ここは地下何階なのだろう。先が見えないため不安が募る。
 二フロアを昇り切った時、ヴェリサの耳元でヒュッ、と風切り音が耳元で聞こえた。
 音の正体は矢だった。背後を見ると、人形がすぐ傍まで迫っている。弓人形が矢を番え、こちらを狙っている。
「早く来い」
 セシルはヴェリサの腕を引っ張った。無理矢理に踊り場まで引っ張り上げると、矢が届かないよう壁の陰に押し込める。
 セシルは腰の道具袋を漁ると、小型の球形の物体と燐寸(マッチ)を取り出した。
 球形の物体から伸びる糸に素早く火をつけると、それをぽいっと階下に投げ捨てる。
「耳、塞いどけ」
 意味は判らなかったが、その言葉には有無を言わせぬ迫力があった。
 すると間髪入れず、大きな爆発音と物の焦げる匂い、そして白い煙がもうもうと上がった。
「何?」
「ミスティ特製の爆弾」
 セシルは近接戦闘があまり得意ではない為、ミスティに押し付けられたのだ。
「行くぞ」
 セシルは再びヴェリサの手を引き階段を昇る。しかし人形の足音が止まない事に気付き、青褪めた。
「何で止まらないんだ。あれ結構な威力だぞ?」
 セシルはヴェリサを背後に庇う形で立つと、腰の短剣を抜き、構えた。
「先に行け。ちょっとでも食い止める」
9543:2009/03/11(水) 13:59:56 ID:4xKjkmhR
4(3)

「何馬鹿な事言ってるの。数が多過ぎるわ。それに相手は飛び道具も持ってるのよ」
 セシルの修めた武術は投げナイフと短剣を使った格闘だ。
そのどちらも粉砕しなければ止まらない自動人形(オートマタ)を相手にするには不向きである。
「お前を巻き込んだのは俺のミスだ。その清算はしなきゃいけない」
「何かっこつけてんのよ……」
「お前が走れないのも俺のせいだろ。だからせめて壁になって時間を稼ぐ」
 馬鹿みたい。ヴェリサは心の中でセシルを罵倒した。
 足を痛めた時、そう言えば最初に気付いて歩調を合わせてくれたのは彼だった。
 野犬に襲われた時、庇ってくれたのも。
 口ではきつい事を言っても、彼が意外に義侠心に厚い事をヴェリサは知っている。
 私も護らなきゃ。私に出来る事で。
 私に出来る事、魔法。人形がこちらにやってくる前に、短い詠唱で発動するもの。
 ―――何でも良いから援護しろ。『足止め(タングルフット)』とか『火球(ファイアボール)』とか、何かあんだろ!
 天啓のように浮かんだのはセシルのその台詞。
 そうだ。足止め。『足止め(タングルフット)』の魔法は習得していないけど、別の魔法なら、ある。
 問題は、地霊系の魔法はあまり得意ではない事。でも今の私になら、出来るかもしれない。
 ヴェリサは意識を澄まし、呪文の詠唱を始めた。
 ああ、そうだ。さっきも感じたけど予想通り。今までよりも魔力が体に親和する。
「『泥沼(クァグマイヤ)』!」
 ヴェリサは階段の踊り場に向かってその力を解き放つ。
「セシル、上へ!」
「え?」
「足止めの魔法かけたから、早く!」
 今度は逆に、ヴェリサがセシルの腕を掴み、上へと誘った。
 重い。
 セシルは男性としては小柄だが、それよりも更に小さなヴェリサでは、引き上げる、という訳にはいかなかった。
 しかしヴェリサの全力の力に、セシルは察してくれたらしい。動いてくれた。
 ザッ、ザッ、と規則的に迫ってきていた足音が乱れるのを確認し、ヴェリサはほっと一息ついた。
 その階段を昇り切ったら、ようやく最上階に着いたようだ。
 廊下に飛び出すと、眩い明かりが先に見える。そこには二つの人のシルエットがある。
「セシル! ヴェリサ!」
「無事か!」
 その人影は、二人に向かって叫んだ。ミスティとアトレーだ。
「助かった!」
 セシルは歓喜の声を上げる。
 ヴェリサはセシルに手を引かれ、出口に向かって走った。
 しかし別れた仲間に後数歩の距離まで近づいた時―――
 セシルはふと嫌な予感を覚え後ろを振り返った。それは盗賊の第六感、とでも言うべきものなのかもしれない。
 その嫌な予感は当たっていた。人形達が魔法の沼地を抜け、追い付いてきている。
 その先頭に居るのは弓人形だ。奴が狙っているのは……ヴェリサ!
 認知してからの行動は早かった。セシルはヴェリサを抱き寄せ、自分の体の中に庇い込む。
 灼熱の炎に焼かれるような痛みが肩口に走った。
「……っ」
「セシル!」
 痛みに苦悶の表情を浮かべたセシルに、ヴェリサが悲鳴を上げた。
 そして彼の体ごしに、わらわらと人形達がやって来ているのを彼女も発見する。
「お、おい、何だ」
「アトレー、外に出て、早く!」
 狼狽するアトレーをヴェリサは叱咤した。
 そして意外なほど強い力でセシルを引っ張る。火事場の馬鹿力と言う奴だろうか。
 セシルは痛みで霞みそうになる意識の中で思った。
 人形から再び矢が放たれた。しかしそれは、ヴェリサの声に危機を察知したアトレーが盾で弾いた。
「何だ、あの数?」
「早く、扉閉めて」
 全員が外に出たのを確認すると、ヴェリサは仲間に指示をした。
 言われなくても、とばかりに、二人は迅速に動く。
 扉が閉まったのを確認すると、ヴェリサは意識を集中させた。
 扉越しに、人形の足音がすぐ傍で止まったのが聞こえる。次いでどん、どんと扉を叩く音が。
9643:2009/03/11(水) 14:00:49 ID:4xKjkmhR
4(4)

「ちょっと、やばくない? 凄い力」
 扉を抑えるミスティとアトレーは必死だ。
「ヴェリサ、早くしてくれ!」
 二人は歯を食いしばり、中からの圧力に耐えた。
 数秒後、二人の力が尽きる前に、何とか魔法は完成した。
「『閉錠(ロック)』」
 残った魔法力全てを注ぎ込んで、その呪文は解き放たれた。
 精神力はもう限界だ。ヴェリサはその場にへたり込んだ。
 しかし、中からのガン、ガンという音は止まず、扉が僅かに変形する。
「おいおい、マジかよ」
 アトレーが茫然と呟いた。
「ちょっとアトレー、セシルを連れてって。ヴェリサももう少し頑張って、離れて」
 ミスティは背嚢(バックパック)をごそごそとやりながら指示した。
「念の為、周りを爆破して入口を塞ぎましょう。あの数はやばいわ」
「わかった」
「出来るだけ遠くに行ってね」
 アトレーは頷くとセシルを助け起こす。ヴェリサはのろのろとその後を付いて行った。
 最後尾はミスティだ。階段に爆弾と思われる装置(デバイス)を設置すると、火薬を撒きながら後退する。
 そして階段を昇り切ると、仲間が離れたのを確認してから火のついた燐寸(マッチ)を投げ入れ、
全力でこちらに向かって走り、伏せた。
 ミスティが伏せたのと同じタイミングで、セシルが使ったものとは比べ物にならない規模の爆発が起こった。
 大地震の余震かと思えるほどに地面が揺れる。階段からはもうもうと煙が上がり、上空に立ちのぼった。
 やがて煙が収まると、階段は瓦礫に閉ざされ、そこに階段があった事すらわからない状態になっていた。
 それを確認してから、ヴェリサはようやく安堵のため息を吐いた。
「二人共、待っててくれたんですね」
「半日だけな。ミスティと相談して、それ以上待っても戻ってこなかったら助けを呼びに行こうって思ってたんだ」
「助かりました。二人がいなかったら私達どうなってたか……」
 傍らのセシルを見ると、彼は痛みの為か、いつの間にか気を失っていた。
 ミスティが傷口の具合を見るために駆け寄ってくる。
「ヴェリサ、怪我はない?」
「はい。私はちょっと擦り剥いた位です。セシルを見てあげて下さい」
 ミスティは頷くと、セシルの肩の矢傷に取り掛かった。
「下手にここで抜くより町で専門の医者に見せたほうがいいわ。アトレー」
「はいはい、っと」
 セシルはアトレーとミスティが協力して運んで行く事になった。
「ヴェリサ、歩ける?」
 ミスティの気遣いの声に、ヴェリサは頷きだけを返す。
 本当は気を抜けば倒れてしまいそうな位に疲れていた。でもセシルが怪我で昏倒している今、自分も倒れる訳にはいかない。
 ヴェリサは気力を振り絞って、三人の後に続いた。




9743:2009/03/11(水) 14:01:31 ID:4xKjkmhR
エピローグ

 こうして助かったのは本当に奇跡。
 いくつかの偶然が重なったからこそ可能だったことだと、今は思える。
 セシルは知らない。ここに来る前のヴェリサの魔力では、人形達に追いつかれかけた時、あの短時間で『泥沼(クァグマイヤ)』は発動しなかった。
 あまり知られていない事実だが、女にとって魔法力は、体の状態によって左右される不安定なものだ。例えば月経の時は、使える魔力の量が落ちる。妊娠中は魔法そのものが使えない。そして―――

 処女か否か、それによっても魔力量は変化する。

 処女でなくなると言う事は、即ち一人の女として、体が満ちるという事。
 未成熟だったカラダは、セシルの手でオンナにされた。
 しかしヴェリサはその真実をセシルに教えるつもりはなかった。
 あの状況下、妙齢の男と女が密室に閉じ込められて、ああなったのはある意味仕方のない事だったかもしれない。ヴェリサは自分の容姿が異性にどういう印象を与えるのかは自覚していた。
 でも、あの行為は一言で言うと屈辱の記憶以外の何物でもない。だから。

 ―――真実を教える事で、必然と言う名の免罪符を、あなたにあげる訳にはいかないの。

 ヴェリサは心の中で、人知れず呟いた。
9843:2009/03/11(水) 14:05:16 ID:4xKjkmhR
以上であります。
レス下さった方ありがとうございました。

続編も頑張っちゃうぞ(`・ω・´)
99名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 14:20:24 ID:zDL+zV90
頑張ってください。
100名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 14:35:24 ID:JxIUIVo1
GJ!!
続編もあるのか。楽しみにしてる!
101名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 15:59:48 ID:hxfT3E6r
>>87
GJなんだけど、女兵士スレが良いかと?
102名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 16:35:12 ID:4JoAtVm+
>>89
なんか笑った
103名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 19:23:52 ID:OjL4AlkY
>>98
面白かった!GJ
続編も期待してます
104名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 20:22:37 ID:mG5leKPb
>>101
テンプレの方で武闘派姫や貴族令嬢もOKとありましたので
ちょっと変わり者の戦う貴族令嬢、というつもりで投下させて頂きましたが
ご指摘の通りにスレ違いと受け取られても仕方がないとも思っております
申し訳ありませんでした
105名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 20:38:24 ID:zDL+zV90
気にしないで下さい。
106名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 20:47:51 ID:YDlG3m+w
>>104
スレは確かに違うかもしれんけど、炎の人の続きを楽しみにしてるぜ

>>98
( ゚∀゚)彡 おっぱ・・・続編!続編!
107名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 21:04:45 ID:hxfT3E6r
>>104
ああ、ごめん…
内容は面白かったから続きを楽しみにしてるよ。

>>98
続きを楽しみにしてます。
108名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 01:18:22 ID:XFOPTecn
二人共GJ!
凄くGJ!
続きをワクワクワッショイ!
109名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 05:00:08 ID:3dmLyINK
保管庫のオススメとかあれば教えて貰えないだろうか
110名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 08:08:06 ID:rPqfybjJ
全部読んで見たらええがな
一日一作品とかでさ
好みがあるから。
111名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 20:47:25 ID:3dmLyINK
それもそうだ
わざわざレスすまんかったです
112名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 02:33:23 ID:yjND7NdU
hosyu
113名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 01:15:15 ID:6Nw/SiQ9
巨乳のお姫様をお願いします
114名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 21:44:36 ID:FJ2aySf/
美乳で且つ艶肌のスレンダー姫様の登場をお待ちしてます
115名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 21:55:49 ID:cCDVo9+M
清楚で貞淑且つ護衛の騎士見習いのショタ少年に対してだけは淫乱な姫様の登場をお待ちしています
116名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 01:09:00 ID:RsGbfJEo
そのまま具体的にしていく作業を開始するんだ
117名無しさん@ピンキー:2009/03/20(金) 22:21:11 ID:gZfBA6BD
>>115
それいいな
読みたい
118名無しさん@ピンキー:2009/03/20(金) 23:13:08 ID:coGaT9Wd
騎士と姫の組み合わせいいね
個人的には幻想水滸伝2のカミューみたいな騎士と、おてんば姫な組み合わせが好きだw
119名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 23:37:05 ID:lv3D7ARM
幻想水滸伝いいよな
120名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 14:03:57 ID:HHYZvSpO
春は慌ただしいから
作者さん達もなかなか降臨なさらないな…
121名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 19:09:00 ID:osPOrVgo
姫様を待ちつつ保守
122名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 20:36:07 ID:c2x3XRK2
エルド王子とセシリアたんマダー?
123名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 00:40:36 ID:6ZMvRv9g
おー、自分も待ってるよ
124名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 00:47:25 ID:lmrdT4ua
犬姫もまってるよー
125名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 00:54:07 ID:fJ38ZtIv
屍姫
126名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 12:03:17 ID:9ZbygIO9
良スレ
127名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 16:46:45 ID:S4BTm0QJ
>>125
そうくるかw
12843:2009/04/01(水) 13:05:34 ID:A9ZImH+M
頑張ってセシル×ヴェリサの続き書こうと努力してみたのですが……
ヴェリサの魔術師かつ貴族の姫様と言う設定が思いの外難しく挫折してしまいました。
(それでもなんとか第二話までは書けたんですが、第三話以降が無理でした…)
姫様って立場だと、政治的な地位やら思惑とかがどうしても絡んできちゃって、
自分程度の筆力では無理があったなぁと反省しております。

大幅な改稿を加え今後はブログにて続編を書いていこうと思っていますorz
死亡者を生きてる事にしたり、ヒロイン自身の設定をお姫様→お嬢様へと変更しましたので、
以後この板に投下する事はないかと思います。

GJと仰っていただいた方もいらっしゃったのにすみません(´・ω・`)
129名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 21:24:36 ID:UkRvl16x
ムフ
130名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 00:27:57 ID:Y3czPm0b
ひゃはっ
131名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 12:47:20 ID:o2FSUERP
>>128
うむ
報告おつ。続編がんばってね。
132名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 13:07:34 ID:zORcaXoH
期待してるよ
133名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 21:13:16 ID:+GqsIP8E
ちょっとお姫様探しにいってくる
134名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 21:33:00 ID:+dwutX4Y
お姫様なら俺の隣で寝てるよ
135名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 17:33:42 ID:vRi7Yaa7
王子様乙
136名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 22:50:02 ID:kGlz5MoV
セシリアたんどこ〜
137名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 09:06:24 ID:MJkAi64V
想えば其処におり、想わねばどこにもいない
138華燭浮沈(前篇)前書き:2009/04/10(金) 00:15:17 ID:YZZaaEe7
お久しぶりです。
王室繁盛記シリーズを書いている者です。
前回の投下時にご感想をくださった方々、
またあの分量にもかかわらずまとめサイトに保管してくださった方々、
本当にありがとうございました。

今回は両親の代のゆるい結婚話です。
ただし他の話とあまりつながりはないので、単独で読んでいただいても大丈夫だと思います。
前篇は非エロなので興味のないかたはスルーしてください。
139華燭浮沈(前篇):2009/04/10(金) 00:18:49 ID:YZZaaEe7
ジュスティーヌは指折り数えながら待っていた。
これでもう五巡目になる。
あとほんの少ししたらあの扉が開かれ、それから彼女の人生は新境地へと導かれる。
それがどんな世界なのかは分からないが、
とにかく何か煌々しく清冽で、四肢がしびれるほどに胸を熱くさせてくれるもので満ち溢れているということだけは信じられる。
彼女がこれまで宮中の奥深くで読み漁ってきた恋物語の数々、
あるいは王室専属の詩人たちが優しい旋律に乗せて聞かせてくれた古よりの恋愛詩の数々は、
もれなくそれが事実だと保証してくれている。
すなわち、恋に落ちることこそ女が女として生を享けた意味を知る契機であり、
真の幸福に至る唯一無二の条件なのだと。

彼女が今迎え入れようとしているのは、正確には親がとりきめた結婚相手であって恋人ではないのだが、
そんなものは本質的な障壁にはなりえない、とジュスティーヌは自分に言い聞かせた。
なぜなら、ほんの数時間前司祭の立会いのもとで初めて顔を合わせたその青年は、
婚約時代に彼の国の使節たちから聞かされ続けた評判に違わず美しく、
若鷹のように凛とした、という形容が誇張ではないことを知ったからだ。
さらに言えば、単に姿形に優れているだけでなく、
親族や家臣たちに向ける公平で抑制の効いた挙措やことばづかいは、
十七歳のジュスティーヌよりたった五歳しか年嵩でない若者とは思えぬほどの余裕ある成熟を感じさせるものだった。

とりわけ忘れがたいのは、祭壇の前で目が合い、ごく自然にほほえみかけられたときに感じた鼓動の高鳴りだった。
それをときめきと称していいのか、彼女にはまだ判じかねたが、
そんなふうに気持ちを揺さぶられたことに意味があるのだ、とジュスティーヌは信じることにした。
そしてまた、あのかたも同じときに同じことを感じたにちがいない、と信じることにした。

(なぜなら)
豊かな髪を背中にゆったりと流した異国の王女は、寝台に腰掛けたままひとりうなずいた。
あたかも自分で自分を安心させようとするかのように。
(わたしはこんなに美しいのだもの)
そして身体の向きを変え、寝台の枕元から少し離れたところに置かれている鏡台に半身を映そうと試みた。
広大な寝室の各所に据えられた燭台はそれぞれ粛々と己が務めを果たしているが、
いかんせんそれぞれの距離が大きくひらいているため、明かり自体はあまり頼みにできるものではない。
今の位置からでも自分の姿を確認できないことはないが、
やはり運命の一刻がすぐそこに控えている以上、念には念を入れるに越したことはないと思い、
ジュスティーヌは立ち上がった。

朝から何時間も通してあの絢爛美麗な花嫁衣裳をまといつづけたあとであるだけに、
今身に着けている薄絹の寝衣は羽毛のように心地よく感じられる。
解放感に浮き立つような足取りで鏡台の前に立つと、王女はまず自分の顔を眺め、髪を眺め、それから全身を眺めた。
故国の宮廷詩人たちの誰もが翡翠のようだと褒め称えてくれた青緑色の瞳は、疲労で血走ったりなどしていないし、
腰まで伸ばした赤みがかった黒髪は、陽光の下にあるようなつややかさを保ったまましっかりと香がたきしめられているし、
侍女たちの手で丹念に磨き上げられた肌は、見えているところも見えないところも申し分なくなめらかに照り輝いている。
そのはずだ。誰から見ても、そのはずだ。

ふたたび自分自身を安心させるように鏡の前でうなずいたそのとき、遠く背後から扉の開く音が聞こえた。
彼女が振り向く決意を固める前に扉はふたたび重々しいきしみをたてて閉ざされ、
後にはこちらへ近づいてくる人間の足音だけが残った。
140華燭浮沈(前篇):2009/04/10(金) 00:20:34 ID:YZZaaEe7
「ジュスティーヌ殿」
あの声だった。
数時間前に祭壇の前で自分の手を取りながら生涯の誓いを交わしたのと同じ、
どこか無関心なようでいて深みのあるあの声だった。

「お待たせした。お疲れのところ、すまない」
「いいえ」
声を上ずらせまいとするばかりに奇妙な高音を発してしまった気がして、ジュスティーヌはひそかに顔を赤らめたが、
ついに覚悟を決めて後ろを振り返った。
王太子クロードはそこにいた。
花嫁と同様、昼間の重厚な式服はすでに脱ぎ去っているが、ちょうど今のような簡素な寝衣に包まれていると、
彼の立ち姿は却ってその端正さが引き立てられていた。

「あなたをお待ちする時間が、どうして苦痛でありえましょうか」
「それはよかった。
 ではあまり時間もないことだし、床に入ろうか。
 貴女も脱がれるがいい」
そう言って花婿は自らの帯を解き始めたので、ジュスティーヌは呆気に取られた。
怒りでも驚きでもない、この地上にこんな事態が現出していいのだろうか、という根源的な問いに包まれた思いだった。

「お待ちください」
ようやくのことで口を開くと、彼女は自ら手を伸ばして花婿の作業を中断させた。
彼は不興の色を浮かべるでもなく、おやどうしたという顔でこちらを見た。
「いけませんわ、クロード様。
 何か、何かおっしゃることがあるはずです」
「何かとは」
「寝台までの道のりはそう容易なものであってはならないはずです。
 まずは誠意を尽くしてくださらなくては」
「誠意?」
「恋心を語ってください。惜しみなく忌憚なく倦むことなく語ってください。
 思いつく限りの美しい文言で、わたしの心を揺り動かそうと努めてくださいませ」
「たとえば」

「たとえば?たとえば、そうね、
 『私こそ、貴女をこの腕に抱くという栄誉を焦がれるように待ち続けていたのだ。
  あたかも終末のときを前にして主の慈悲をこいねがう罪人のように。
  冬空の星よりもまばゆい貴女の瞳を見つめながら交わす抱擁はいかに甘美であろうかと、ただそればかりを考えていた』と。
 細部は多少変えてもいいけれど、せめてこれくらいはおっしゃって下さらなければ。
 それが緊張に震える新妻を前にした夫君の義務というものです」
「少し長すぎはしないか」
花婿は控えめに所感を呈した。

「そんなことはありません。これでも十分切り詰めましたのよ。
 本来ならあなたは、わたしの目だけでなく眉も鼻も唇も声も髪もくまなくほめたたえてくださらなければならないのに。
 そうして初めて、あなたはわたしから接吻を許されるのです。
 恋人になるための手順はきちんと踏んでくださらなければ」
「恋人か。われわれはすでに、正式な夫婦だと思うが」
「でも、夫婦として結ばれるより前に、恋人同士になっておいたほうが素敵ではありませんか」
「それも悪くはないが、恋人というのは説得されてなるものではないからな。
 周囲が膳立てしてくれる婚姻とは違って」
「まあ」
ジュスティーヌは大きな緑色の瞳をますます大きく見開いた。
141華燭浮沈(前篇):2009/04/10(金) 00:21:59 ID:YZZaaEe7
「あなたはわたしに恋をしてくださらないの?」
「どうして恋をするはずだと?」
「だって、わたしはこんなに……こんなに、美しくて貞淑で、行儀がよくて気立てもいいのに」
「おまけに謙虚だ」
「その通りですわ。
 どんな殿方だって、わたしを妻にできると知ったら天にも昇る心地になるはずだと、
 ばあやや女官たちはみんなそう言っていたのに。
 あなたは情熱の詩句を囁いてくださるどころか、私の前に跪いて手を乞うこともなさらないなんて」
「貴女はどうだ。私に会って恋に落ちたか」
「もちろんですわ。恋に落ちました。
 落ちたと思います。おそらくは、落ちているはずです」
「その点では別に、譲歩していただかずともかまわんが」
クロードは少し笑った。

「ならば問題はないだろう?
 少なくともわれわれのうち一方が恋をしているというのなら、もう一方が望むままに身体をひらけばよい。
 男女はそうして完全になる。
 夜は短い上に、明日も朝から諸儀礼が控えている。貴女も早く帯を解いて寝台に上がられよ。
 最初の晩だ、手を貸してもかまわんが」
「い、いやです」
「ひとりで脱げるか。感心だ」
「ちがいます。あなたとこんなふうに、ど、同衾するのはいやです」
「なぜだ」
「だって、これでは流れ作業みたい、昼間の儀式の延長みたいだわ」
「儀式なのだから仕方ない。そうするべきだから、われわれはそうするのだ」
「―――そんなのはいやです」
ジュスティーヌは思わず叫んでしまった。
「儀式だから、義務だからなんていや。
 何かもっと、崇高なもののために結ばれたいの」

今度はクロードのほうがいくらか目を丸くする番だった。
しかしすぐにその褐色の瞳は平常の切れ長を取り戻し、口元には微苦笑らしきものが浮かぶ。
らしきもの、といったのはジュスティーヌの視界がほんのりと滲んできていたからである。
「崇高なものか。難しいな」
「難しくなどないわ。恋に落ちれば、みんなその感情を知るのよ」
「と、どこかの四行詩に書いてあったか」
クロードがふと一歩前に踏み出した。ジュスティーヌは反射的に後ろへ下がった。
「私は貴女に恋はしていない。できない、というべきか。
 肉体の成熟に比して、貴女の言動は幼すぎるからだ。
 惜しいことだ」

ジュスティーヌの頬がいっそう赤く染まった。
(何が惜しいものですか)
一国の王子の身で何と野卑なことを口にするのだろう、と実に腹が立ってきた。
しかしそれ以上に彼女の動悸を高まらせたのは、自分は「女」を見る眼で見られている、と知ったことだった。
夫婦とは一対の男女である以上、それは当然ではあるのだが、
祖国の宮廷でならば「非礼」とそしられるはずの一線を踏み越えて、
冷静な観察の眼を畏れ憚ることなく自分に向ける男に会うのはこれが初めてだった。
クロードは花嫁の小さな顎をそっと持ち上げ、自ら顔を近づけた。
彼女がそこに己の分身をしっかりと見出せるほどに、褐色の瞳は淡く透き通っていた。
142華燭浮沈(前篇):2009/04/10(金) 00:27:36 ID:YZZaaEe7
「さらに言えば、貴女は私に恋などしていない。
 かねてより胸に抱いてきた理想の貴公子像に、私をすり寄せようと努力しておられるにすぎまい。
 それは妥協、もしくは逃避というべきものだ」
「そんなことありませんわ。
 わたしは、あなたのことを、ちゃんと」
お慕いしております、とつづけようとしてジュスティーヌは口ごもった。
それは予想しないつまずきだった。
花婿に想いを吐露する場面は、すでに何度も頭の中で演習してきたつもりである。
人に好意を表明するのにためらいなどいらない。
「好きです」と告げるのはあたりまえだと思っていた。
だが今は、それをたやすく口にしてはならないと誰かに耳元で戒められている気がする。
かねてより思い描いてきた筋書きに合わせるためだけにそれを口にしたら、
わたしの「好き」は意味をもたなくなってしまう、
そしてこのひとには意味のない「好き」を告げるわけにはいかない。
そう思ってしまったのかもしれない。
しかしこの男は実に憎たらしいのだから、意味のない「好き」で片付けてしまってもいいはずなのも事実である。
わたしはどうしたいのかしら、とジュスティーヌは自問せずにいられなかった。

彼女は花婿の顔をじっと眺めた。
切れ長の瞳は相変わらず温度らしい温度を感じさせなかったが、
口元だけは先ほどよりもほころんでいるように見えた。
「謹聴している。つづけられよ」
「―――わたしは、あなたのことを、ちゃんと」
「ちゃんと?」
「ちゃんと」

言いかけたまま、ジュスティーヌは唇を強く噛みしめた。
わたしはなんて愚かだったのだろう。
こんなひとと恋に落ちることができると信じていたなんて。
こんな、人の気持ちに踏み込むだけ踏み込んでおいて、自分は高みから笑っているようなひとと。
周囲からあてがわれただけのひとなのに。
全く知らないひとなのに。

(ちがうわ)
ジュスティーヌはとうとう、花婿から顔をそむけた。乾き始めた黒髪がさらさらと肩の上で揺れた。
全く知らないひとだからこそ、そう思い込みたかったのだ、と彼女は悟った。
ある日を境に異国の宮廷に身を置き、見知らぬそのひととの暮らしがすべてになるのだから、
どうしても希望が、あるいは幻想が必要だったのだ。
「そのひと」はわたしを好きになってくださると、せめてわたしを拒まないでくださると。
そう信じなければ、長い長い輿入れの途上で、
あるいは婚約期間のさなかに、わたしは逃げ出してしまったかもしれない。
だからただ、信じたかった。自分を勇気づけたかったのだ。
よく考えたら、それだけだった。

そしてふと、疑念が立ちのぼってきた。
このひとはわたしと違って、赤の他人を待ち続けるのに幻想など不要だったのだろうか。
それともわたしみたいなつまらない娘には、幻想を抱く余地もないということなのだろうか。
―――わたしは本当に、幼稚すぎて相手にもならない娘なのだろうか。
143華燭浮沈(前篇):2009/04/10(金) 00:29:47 ID:YZZaaEe7
「同衾を望まぬというのなら、まあかまわん」
ふいにクロードが、横顔を向けたままの彼女に語りかけた。
その口調はやはり、人を突き放すような淡白さと誰をも拒まない穏やかさを同時に保っていた。
「かまわない?」
「ああ、寝台は貴女にゆずろう」
「……だ、だけれど、今夜じゅうに同衾を果たすことが、わたしたちの何よりの責務ではありませんか」

「だが貴女は、私の態度が改善されぬことには応じたくないと言われる。
 私は私で歩み寄るつもりはない。無理強いはなおのことしたくない。
 貴女が何を期待しておられるのかは分かるし、
 心身ともに余裕がある晩ならば私とて余興の一環としてそのように振る舞うこともできなくはないが、
 あいにく今夜は昼間の儀式の繁縟さにすっかり疲れ果てている。
 貴女が素直に身を投げ出してくださるというならありがたく務めを果たさせていただくが、
 そうでないなら早く休みたい。
 貴女もたいそうお疲れだろう。私はあちらの長椅子を貸してもらう」

「でも、でも、初夜に『何もなかった』では許されないではありませんか。
 明日の朝必ず、寝台を検分されるのですから」
「こんなこともあろうかと、厨房から鶏の血を少しばかり調達させておいた。
 明日の起床時、これをシーツに注がれよ」
そう言うとクロードは、赤黒い液体がほんの少し入った小瓶を花嫁に渡した。
動物の鮮血を見ること自体がはじめてのジュスティーヌは、恐る恐るそれを掌に乗せたが、はっと気がついたようにクロードを見た。

「どうして、わたしが応じないかもしれないなどと予期なさったのですか」
「わが婚約者殿はよほどの夢想好きだと、貴女と文を交わすうちによく分かったからだ。
 貴国方の使者殿も、わが宮廷に礼物を届ける折々、何かにつけてそれを口にしていたしな」
「夢見がちだとどうして、初夜を拒むことになるのです」
「生身の男は醜悪だからだ。
 そして私は、せめて初夜だけでもその醜悪さを糊塗してやろうと努めるほど親切ではない」
「醜悪?―――でもあなたは」
美しいわ、とつづけようとして、ジュスティーヌはあわてて口をつぐんだ。
そしてしばらくこの場にふさわしい悪態を探しつづけてから、とうとうこう言った。

「たしかに、あなたはいやなひとだわ」
はは、とクロードは低く笑った。
そして彼女に背を向けると、鏡台のさらに向こうに置かれた長椅子のほうへ歩き出した。
「そうだ、ひとつ言っておきたい」
「何ですか」
人と話をするときはこちらを向いたらどうなの、と思いながら、ジュスティーヌはぶすっとした声で答えた。

「現実に耐えるために夢を見るのは結構だが、現実を見る前に夢を募らせるのはやめておかれよ。
 我欲も体臭もない白馬の貴公子を胸中に創り上げ、
 そのうえで私と対面して失望されたと仰せならば、それはむしろ貴女の落ち度だ。
 これまでの文通で、私はあなたの期待を煽り立てるようなことは一切書かなかったと思うが」
「だって」
ジュスティーヌは呟くように言った。
遠ざかりゆく背中に届かないであろうことは分かっていた。
「だって、夢が必要だったのだもの」



(続)
144名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 07:46:49 ID:RAi9RJl5
GJ一番乗り!
このよそよそしいカップルが後に子だくさんの
仲良し夫婦になると思うと感慨深いな。
145名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 09:08:04 ID:B0a1noE9
GJ。しかしこの二人のキャラを見ると、確かにみんな子供にどこかしらの性格が受け継がれているようで。
146名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 20:22:37 ID:HW/fTDIo
新作キテタ━━━(゚∀゚)━━━!!
前作の後に両親のお話が来るとは嬉しい誤算です
クロードのシビアさにはやはりアランの面影が……
ジュスティーヌの夢想家ぶりは未登場の王女に引き継がれるのか?
続きが楽しみです、GJ!
147名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 01:42:03 ID:zUOzDXK8
いつも乙です
相変わらずの美麗な文と緻密なキャラクター設定が大好きです
148名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 11:32:53 ID:m0tAxyVZ
両親!両親!楽しみ!!
いつも乙です
149名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 15:12:51 ID:w+Idqfrs
GJ
やっぱ最高だわ
150名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 17:37:21 ID:TR/q4OIa
アランたち兄弟姉妹はそろって母親譲りの美形とあったから、クロードは
冬眠明けの熊みたいな顔立ちと思いこんでいた。美形だったんだね・・・
151名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 03:04:33 ID:Z9fl6ZNP
母親譲りってのは
母親似ってことかねー
152名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 06:04:25 ID:gKxe7mPa
後半楽しみにしています!
153名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 11:40:57 ID:ZzNKgs/W
>>150
妄想フィルターによるものでは…?
154名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 12:59:11 ID:pqj8Ud47
クロードいいキャラだ。
続きも楽しみにしてます。
155名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 20:28:35 ID:VMvxHzlZ
ジュスティーヌさん面白すぎる。
156名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 20:55:19 ID:Viu8mV31
>>153
妄想フィルターを持たない読者もおらんでしょ
157名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 05:23:13 ID:iPvc6isI
GJ!新作待ってました、ありがとうございます。
ジュスティーヌの夢見がちな所は結婚前はもっとひどかったんだな。

>>156
153じゃないけど、ジュスティーヌの妄想フィルターでクロードが美化
されてるんじゃないかって事かと。
158名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 15:50:58 ID:UE0a0f+S
にやにやが止まらん
159名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 22:35:09 ID:OqpXQ7bk
>>157
153ですがその通りです。わかりやすい解説どうも。

超淡白なクロードがどう変わっていくのか楽しみだ!
160名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 12:30:53 ID:buh01D+R
圧縮回避
161名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 18:17:26 ID:Ycl5xDMu
愛されてるなあ
162名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 14:10:18 ID:2Dfvelcl
続きを期待しています!
163名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 14:23:42 ID:uDts7Bga
相変わらずたまらん!後編を一日千秋の思いで待ってます
164名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 00:50:06 ID:000VHD4F
ほっす
165名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 13:01:30 ID:4m4y8cpT
hime
166名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 22:41:21 ID:c/ArqK/0
ほす
圧縮きそうとか。

てか圧縮て何だ
167名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 12:50:49 ID:g9Rh+i+O
>>166
ggrks
168名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 09:52:14 ID:Nv2AI81J
>>166
このスレの内容にそって例えてやるぞなもし。

美しい姫君が己の居城から外を眺め、小さくため息をついた。
「もう、スレ数が800を越えてしまいましたのね」
「……ええ。ですから、もうやらなくてはいけません」
傍らに控えていた、姫君の騎士が抜き身の剣をたずさえながら固い表情で言った。
それはとても低い、乾いた声だった。
「本当に必要なことなのでしょうか。スレを削除するだなんて……。
どのスレにも住人はいるでしょうに」
その悲痛さに姫君は秀麗な顔をゆがめる。
だが、騎士は首をふって姫君にこう言い聞かせた。
「おやさしいあなたには、さぞご心痛でしょうが
この板には801以上のスレを存在させることはできないのです。
それが、容量という世界の理です」
「ああっ、ではもう避けられぬことなのですね」
姫君は残酷なその決まりを思い、さめざめと泣いた。
だがひとしきり涙を流してしまうと、その強い魂が光を取り戻し、瞳を輝かせた。
そして唇から出た言葉には力があった。
「なればこそ命じます、わたくしの騎士よ。
板を守るため、いくつかのスレを消しなさい。
ですが、せめて住人の足跡もまばらなスレを選ぶのです」
「……御意のままに」
騎士は愛しい主の前に膝をつき、剣をたてると礼をとった。
すぐに旅立たねばならない。
だがその前に、この美しい姿を脳裏にしっかりと焼き付けておきたかった。

終)

こういう事だよ。
169名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 11:40:45 ID:IX0IZ28W
>>168
うまいw
GJ!
170名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 18:24:58 ID:NhvfdSw6
>>168
d
凄く分かりやすい
171名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 22:58:14 ID:rj1yjwBs
最後の一行までまさに圧縮
GJ!
172名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 01:00:20 ID:IUMw7Bdc
ずっと犬の君を待っているんだ
173名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 04:31:57 ID:Dq+jGUdQ
俺もだよ
174華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:04:28 ID:ToQ2hs8W
※前回読んでくださった方々、ご感想を下さったかたがた、どうもありがとうございました。
 今回も長さのわりに18禁描写が薄めです。すみません。





一週間が経った。
クロードはちゃんと毎晩新妻ジュスティーヌの待つ寝室へ足を運び、酒杯を傾けがてら他愛ない話などはするが、
寝台は常に彼女ひとりに明け渡し、枕を並べることは一度もなかった。


(こんなことでいいのかしら)
昨日と同じくひとりでに目が覚めたジュスティーヌは、昨日と同じことを思った。
窓から差し込む光がぼんやりとあたりを照らし出しているが、
なにぶん部屋が広すぎるので四方の角にはとても届かない。
クロードが眠る絹張りの長椅子も、まだ薄暗がりのなかにたたずんでいる。

上体だけ起こしたジュスティーヌは、昔からのくせで膝を引き寄せその上に顎をのせた。
昔から、遊戯室や図書室でこんなふうにぼんやりしていると、昔から兄妹たちが何かとちょっかいをかけてくれたものだ。
だが今は彼らはいない。
自分の世話を焼くのが仕事である侍女たちは別として、自分に「特別な」関心を向ける者はこの宮廷にはいない。
ジュスティーヌは両膝の間に顎をもう少し深く埋めた。

たしかに結婚には多大な夢を抱いていたけれど、
自分たちの婚姻の一番の目的は継嗣となる赤子をもうけることだと、それぐらいのことは分かっている。
そして赤子をもうけるには夫婦が同衾しなければならない。
ふたりの人間が同じ布団で眠るとなぜ新しい命が授かるのかいまだによく分からないが、
そのあたりの詳細はお婿様がよくわきまえておいでです、
だから姫様は何も疑わずお婿様のおっしゃるとおりにお従いなさればよろしいのです、
とばあやたちからは何度となく懇切に言い含められてきた。
みんながそう言うからにはそういうものなのね、と彼女はこれまで納得してきたのだ。

しかし現実はといえば、花婿が自ら同衾を放棄しているのだからどうしようもない。
かと言って、ここまできた以上ジュスティーヌとて譲歩はできない。
あなたからの愛の誓いも崇拝のまなざしも恭しい接吻もこの際すべてあきらめますから、
わたしが本来の務めを果たせるようにこちらに来て共寝してくださいなどと、そんな懇願をいまさら口に出せるはずがない。
そんなことを言うぐらいなら、「役立たずのうまずめ」と夫方の親族に陰口を叩かれるほうがましである。
175華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:06:54 ID:ToQ2hs8W
それからこの一週間の出来事を思い出そうとした。
クロードがあの晩言明したとおり、彼ら若夫婦は宣誓式の翌日も、
すなわり婚礼二日目も朝から仰々しい身支度に追い立てられ、
盛大な馬車行列の先頭に戴かれてこの国の守護聖人の名を冠する城下の大聖堂に参拝したかと思うと、
宮中に戻されては王室付属礼拝堂にて長い祈祷を上げ、
次いで宝物庫から引き出されてきたガルィア王室開祖伝来の宝冠に夫婦二人で接吻するよう促され、
最後には御苑にて一対の葡萄の植樹をおこなうことになった。

それは、絡まりあう蔓のように夫婦の情愛が堅固にはぐくまれんことを、とか
両国の友誼が末永く保たれんことを、だとか
象徴的な祈念のこめられた祭事であることは間違いないのだが、
婚礼初日以来どころか国境をくぐって以来ひとつひとつの作法をまちがえないようにひたすら気を張りつめ
そのぶん如実に疲労しつづけてきたジュスティーヌにしてみれば、
もはや果樹の苗を植えるのにどんな意義があってもなくても同じようなものであった。

主だった儀式はこのようにして二日がかりで終了した。
三日目からは本格的な祝宴である。
満を持すようにして幕を開けたそれは、王宮中心部の大広間を開放して三日間つづけられ、
ある意味では宣誓式にもまさる婚礼の華であり山場であった。
殊に年若い貴族の子女にとっては、
宴席と並行しておこなわれる連夜の舞踏会が婚約者候補の品定めの場として大きな意義をもっており、
また、男女の倫理がとかく弛緩していることで有名なこの国の宮廷行事だけあって、
既婚の貴婦人にとってはひとときの戯れの相手をみつくろう社交場としても有益に機能していた。

しかしながら、婚礼の主役である王太子夫妻には心軽やかに舞踏や会話を娯しむ権利はなかった。
彼らのもとには祝辞を述べるために、そして新しい王太子妃への紹介を乞うために賓客が集り来り、
その列は途絶えることがなかったためである。
もちろん闇雲に人々が押し寄せるわけではなく、それぞれの身分に応じて伺候の順序は厳格に定められていた。
すなわち、祝宴の一夜めは花嫁の姻戚となるガルィア王室の成員たち、
二夜めは国政の中枢を担う重臣たちおよび名門貴族の当主たち、
そして三夜めにあたる昨晩は、王太子の友人や直属の家臣及び
以後夫妻の身辺にかしずくことになる女官や侍従たちからの挨拶、という具合にである。
176華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:07:59 ID:ToQ2hs8W
祝宴の最終日、婚礼初日から数えれば五日めにあたるその日の晩も、
ジュスティーヌはいつ果てるともしれない挨拶の波ににこやかに対応していた。
正直なことを言えば目元口元の筋肉はいまやひきつりそうであり、
頭部の血行は純金の装飾品ときつく結われた髪のために確実に悪化しつつあり、
さらに首から下を見れば、宣誓式のときにまとった花嫁衣裳ほどではないとはいえ、十分に重厚な盛装が肩から胸から全身を圧迫している。
とりわけ、祝祭らしい気合の入ったコルセットの締め上げぶりは腰骨に対する拷問といえた。
当初は緩慢と思えた数々の責め苦も、この時点でほぼ限界に達しようとしていた。

それに加え、祝賀の会場は次々にくりだされる酒肴と貴婦人たちの濃厚な脂粉の香り、そして人々の熱気で満ち満ちており、
吹き抜けの大広間であるにもかかわらず空気は確実に沈滞し淀みつつあった。
それは軽装かつ素面で過ごしている下働きの人間にとってさえあまり心地よい環境ではなかった。
祝宴の主役を務めるふたりにとってはなおさらである。
ジュスティーヌはそれでもなんとか気力をふりしぼり、一切の疲労と不快感に耐えようとした。
「苦行者になりきるのです」
輿入れをすぐそこに控えて母后から何度も言い聞かされたそのことばを、彼女は胸のうちに何度となく繰り返した。
それでようやく、そこから逃げ出さずにいることができるのだった。

時折隣を見やれば、初夜に自分を平然と子ども呼ばわりした花婿が、
相変わらず涼しげな顔で祝辞を受けては丁重に答礼している。
相手が初対面の人々ではない分、ジュスティーヌに比べれば心理的緊張から免れられているのはまちがいないものの、
それでも祝宴初日から一貫してたゆむことのない余裕に満ちたその応対ぶりは、たしかに賞賛に値するものであった。
そして、なればこそ、ジュスティーヌは競争心と克己心を妙に刺激されずにはいられなかった。
たとえ中座までいかなくても、ここで務めなかばにして弱音を吐いたりため息をついたりするところを見られれば、
自分を子ども扱いする彼の論拠をいっそう補強することになってしまう。そう焦らずにはいられなかったのだ。
この数日間というもの、何もかも放り出したい衝動をかろうじて抑えこみつづけることができたのは、
愛する母親からの訓戒以上に、あるいはその意地が不屈の牙城として機能しつづけたからかもしれなかった。

最後の拝謁者が彼らの足元から辞去したときには、夜はだいぶ更けていた。
祝宴自体は閉幕をすぐそこに控えて最高潮とでもいうべき盛り上がりに達していたが、
務めを終えた王太子夫妻は客人たちより一足先に寝室へ下がることになっていた。
ただし花嫁のほうが盛装を解くのに時間を要するため、
両人は一緒に寝室の扉をくぐるよう定められているわけではない。

花婿に一旦別れを告げたジュスティーヌが、祖国から連れてきた侍女たちを伴って大広間に付属する王族女子の控え室を出たころには、
廊下の採光窓の外に広がる夜はいっそう闇を濃くしていた。
ようやく重装備を脱ぎ捨てたという開放感に包まれつつ、
もの言わぬ忠実な影たちとともに新居である東宮殿へと連なる回廊に向かってしばらく歩いてゆくと、
あたりはたちまち静寂に満ちた。
広間の喧騒ももはや別世界のように思われる。
177華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:09:03 ID:ToQ2hs8W
ふと、足元が揺らぐのを感じた。
着替えたばかりの平服の裾を少し持ち上げて確かめると、同じように履き替えたばかりの左足の靴が脱げかかっている。
足首のところで留めていた靴紐が緩んでしまったのだ。
礼装用ではないただの内履きとはいえ、輿入れに際してきちんと寸法を取って作らせたはずの品である。
紐がなければ履くに履けないという仕上がりは一体どういうわけなのか。
名状しがたい疲労に追い討ちをかけるような不手際に、ジュスティーヌはつい苛立ちを発散したくなる衝動に駆られたが、
そんなことをしても何もなるまいと自らを説き伏せ、口をつぐんだ。
そして付き添いの侍女のなかから履き物の世話をする者を呼んで足元にひざまずかせると、きつく結いなおすように頼んだ。

該当の侍女はおずおずとした足取りで進み出てきた。
靴の仕上がりは職人の責任とはいえ、管理や手入れは彼女の責任であるから、叱責されることを恐れても無理はなかった。
ジュスティーヌは何も言わなかった。侍女は主人の足元に跪き、紐を解き始めた。
しかし彼女の手際は悪かった。付き添いの者としてはめったに見られないほどの不器用さだった。
足の甲あたりで絡んだ紐を解くのに異様に時間をかけていたかと思うと、またすぐに別の絡まりをこしらえる。
それを解こうとするうちに、また別のところで輪ができあがる。
そしてとうとう紐を足首にかけ直す前に、金具のところで引きちぎってしまったのである。
これはもちろん靴の粗製が第一の原因だった。
けれど忍耐が臨界点に達そうとしているジュスティーヌの眼には、もはや誰の過失だろうと同じことであった。

さらに言えば、この年若い侍女はジュスティーヌの身辺に上がって以来、同様の粗相を懲りもせず繰り返してきた。
王女はこのたびの輿入れに際しては本来別の信任厚い侍女を伴うはずだったのが、健康上の理由により実家に下がらせることになり、
彼女の従妹にあたるこの娘を急遽随員に加えることになったのだ。
良家の令嬢としてこれまで安逸に育てられてきたのであろう身の上を思えば、
宮仕えを始めた当面失敗を重ねてしまうのはやむをえぬことではあったが、
この侍女の場合はあまりにも程度が甚だしすぎ、そのうえ学習の気配というものが一向に感じられなかった。

それに加えてジュスティーヌの忍耐力を試さずにおかなかったのは、あまりにも臆しがちな彼女の物腰だった。
平素ならその仔鹿のような内気さを気の毒に思うあまり叱責を踏みとどまることも多いのだが、
今はこの侍女のどんな挙措を見るにつけてもジュスティーヌの苛立ちは募るばかりだった。
矜持というものを知らぬかのようにおどおどしきった表情も腹立たしいが、
怯えが昂じるあまり謝罪さえろくに口にできないでいるさまが何より神経を逆撫でする。
人に仕える者としての心得をそもそも弁えていないとしか思われぬほどの非礼である。

ジュスティーヌは一瞬目を閉じた。
先ほどまで後ろ髪をこの上なくきつく結い上げられていたために、頭痛の余韻がいまだにうなじやこめかみあたりに残っている。
再びぼんやり目を開けてみると、あのおどおどした顔がすぐ足元で色を失っていた。
(ああもう、―――癇に触る)
自分に付き添う侍女団を除けば、周囲にはもはや人目はない。
今はどんな振る舞いをしても、ここガルィア宮廷の人々の口の端にのぼることはあるまい。
もう限界だと思った。
―――国へお帰り、この役立たず。
178華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:10:42 ID:ToQ2hs8W
よほどそう怒鳴りつけたかった。
しかしジュスティーヌは、のどまで浮かび上がったその罵倒をすんでのところで腹に飲み込んだ。
そしてほんの少しのあいだ唇を噛んでから、床にひざまずいたままの侍女に立ち上がるようにと呼びかけた。
「どうかそんなに萎縮しないで。このままでも歩くことは歩けます。
 以後は気をつけて下さい」

あまりに高ぶった緊張の反動か、新米の侍女の顔は泣き崩れそうにくしゃくしゃになった。
それに合わせて横に細くなる目元の隈を見るにつけても、ジュスティーヌの苛立ちは静まっていかざるを得なかった。
蝶よ花よと愛されて育った親元からひき離され郷里からひき離され、この娘も不安でたまらないのだ。
まして、どれほど失敗を重ねようとも必ず誰か供の者に擁護してもらえる自分とは違い、
彼女はおそらく仲間内でさえ見くびられ孤立している。
勤めが終わるやひとり片隅で泣き過ごしているのは想像に難くなかった。

(ひとには赦しを、己には規律を)
祖国の宮廷を後にする際、母后から最後に贈られたことばを、ジュスティーヌは胸のうちに繰り返した。
片方の靴をつっかけるようにして履くのはたしかに不便だったが、それでも侍女に告げたとおり歩けないことはなかった。


数歩進んだところで、突然聞き慣れた声が後ろから彼女を引きとめた。
侍女たちとともに振り向くと、やはり彼だった。
ジュスティーヌと同様すでに盛装から平服に着替え、
いつものように落ち着き払った表情で立っている。

「クロード」
「おや、私の名をご存じか」
「あなたはお先に、ご寝所のほうへお戻りだとばかり」
「そのつもりだったが、<黒鷲の間>で友人らに引き止められて遅くなった。
 ここなるご婦人がたはいずこへお出かけか。さても華やぎのあることだ」
「―――酔っていらっしゃるのね」
先ほどの宴席ではあまり杯を重ねておられるようには見えなかったのにと思いながら、ジュスティーヌは極力無愛想な声で言った。
「どうやら、貴女がたは私と帰路を同じくされるようだが」
「わたし共は疲れておりますの。あなたの戯れにお付き合いしたい気分では―――えっ」

言い終わらぬうちに、ジュスティーヌの身体はふわりと宙に持ち上げられた。
周囲の侍女たちもはっと息を呑む。
かと思うと女主人は夫の顔がすぐそばまであることに気づき、彼の両腕で抱き上げられたことを知った。
「そしてどうやら、こちらの淑女は足元に不自由をかこっておられるようだ。
 目的地が同じようだし、 よろしければご護送申し上げる栄誉を私に」
ひとに請願するというよりは決定事項を淡々と告げるような口調で花嫁に語りかけると、
クロードはそのまま歩き始めた。

ジュスティーヌの筆頭侍女にあたるブランシュという娘が王太子の袖を引き、非礼を抗議しかけたが、
当の主人は呆然としてはいるものの抵抗はしていないと見て取り、結局は引き下がった。
そして彼女を含め侍女たちは困惑を押し隠せぬながらも、黙って主人夫妻に付き従うことにした。
いずれにしろ、王太子妃は就寝前に湯浴みや諸々の身づくろいをせねばならず、
そのためには彼女たちがそばにいなければならない。
179華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:11:36 ID:ToQ2hs8W
背中を夫の左手で、太腿の下を右手で支えられながら、ジュスティーヌの視界に入る壁の装飾は徐々に移り変わっていった。
彼女はいささか驚いていた。こんなふうに移動させられても、案外安定感というものはあるのだ。
そしてまた、夫はいかにも尚文の国の王子らしいというか、長身とはいえ全体的には脆弱な印象が先に立つにもかかわらず、
実はそれなりの筋肉を備えているのだということに、いささか驚きをおぼえてもいた。

段差にさしかかるなどして少し身体がかしぐたび、彼の吐息が間近で聞こえる。
そこには酒の匂いもいくらかは混じっているようだが、決して不快なほど濃密ではない。
というよりむしろ、何か胸の鼓動を早めるようなものを、彼女はその吐息のなかに感じていた。
しかしよくよく考えてみれば、婚礼にまつわる一切の務めをふたりで果たし終えたばかりのいま、
彼の全身を包む疲労とて相当な域に達しているはずである。
別に自分から頼んで運んでもらっているわけではないとはいえ、ジュスティーヌはなんとなく罪悪感が芽生えてきた。

「クロード」
自分たちの新居である棟につづく扉が見えてきたところで、彼女は小さな声で言った。
「あの、もう、ひとりで歩けます。
 お疲れではありませんか」
「この種の疲労なら悪くない」
「でも、―――わたし、かなり重くないかしら」
ここ数日間、正餐の卓上に相次いで供せられた豪勢な食事の数々と、
疲労とストレスをしのぐために私室で摂取しつづけた間食の内容を、彼女は今さらながら恐る恐る思い出そうとした。
「そんなことはない。
 だが、思ったより肉付きはよろしいようだ」
「な、無礼な」
「褒めたつもりだが」

クロードが短く笑ったときには彼らはすでに寝室の前へ着いていた。
そして左右に控える衛兵たちに扉を開けさせると、彼はそのまま部屋の奥の寝台へと妻を運び込み、そっと下ろした。
いつものように、そのまま背を向けて遠ざかるかに思われたが、彼はそうしなかった。
上半身だけで覆いかぶさる姿勢をとったまま、仰向けのジュスティーヌを黙って見下ろしつづけている。

「いかがなさいました」
先に口をひらいたのは彼女のほうだった。
落ち着きはらって尋ねたつもりだったのに、振り絞った吐息のような声になってしまった。
「思案している」
「何をですか」
「思ったよりは、大人と見てよいのかと」
「……」

ジュスティーヌは頬を染め唇を噛みながら、枕を胸元に引き寄せてかき抱いた。
本当に野卑な男だと思った。
「―――いや、身体だけの話ではない」
そう呟くと、クロードは思い出したように上体を起こした。
視界を覆う影が去ったことで、ジュスティーヌの淡い色の瞳は一瞬灯火の明るさにひるみそうになった。
「そういえばわれわれふたりとも、沐浴がまだだったな。
 私は軽めにすませて先に休ませていただく。貴女もよくよくご自愛なされよ。
 この数日間、誠にお疲れだった」

クロードは背を向け、扉のほうへと立ち去っていった。
それはあの晩と似たような情景だった。
寝台の上にひとり取り残されたまま、彼女は妙な空虚感にとらわれ始めていた。
180華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:12:48 ID:ToQ2hs8W
これが二日前のことだった。
そのあとは何の行事もなく新婚夫婦ふたりのための休息のときがゆったりと流れ、
今日は婚礼初日から数えて七日目になる。
ジュスティーヌはふと思い立って寝台を降り、夫が横になっている長椅子のほうへ近づいていった。
これまでの一週間はいつもクロードのほうが先に起きていたので、
彼の寝姿を見るのは今朝が初めてになる。
窓の向こうの太陽は少しだけ動いたらしく、淡く降り注ぐ光の片隅で手すり越しに長椅子を見下ろすと、
わりと大事に手入れしているらしい金髪にはいくらか寝癖がついていた。
こんな優男には実にいい気味だと思った。
けれどよく見ると面立ちの端正さ隙のなさは寝ているときも昼間とさほど変わらず保たれているので、
ジュスティーヌは改めて腹が立った。
(ほんとにいやなひと)

蝋人形のように形のよい鼻をつまみあげてやろうかと思ったが、
それはさすがに一人前の淑女として嫁いだ者のすることではないと思い直し、
彼の顔の上に手を伸ばすのは自粛した。
しかし一旦こみあげてきた衝動というのは何か他の形であれ昇華されずには収まりがつかぬものらしく、
ジュスティーヌはふと背中を押されるようにして長椅子に膝を突いて上がった。
しばらく膝立ちで夫の顔を見下ろしてみたものの、
それはそれで不自然な気もして、ついに彼のすぐ左脇にぎこちなく横になった。

ジュスティーヌの祖国からすれば東北方に位置するこのガルィア王国の人間は、
平均的体格において彼女の同胞たちより若干優れているためか、
この椅子の幅や奥行きは祖国で見慣れてきた長椅子一般よりも広々としている。
だが、さすがに成人男女ふたりの全身を積載してなおかつ余白たっぷりというわけにはいかない。
畢竟、彼女は夫の身体のすぐ脇に自分の身を寄せることになった。

(殿方と同衾するというのは、こんな感じなのかしら)
案外大したことないじゃないの、と自らに言い聞かせながら、ジュスティーヌはあえてそのままの姿勢をつづけた。
けれど本当のことを言えば、
すぐ耳元に男の呼吸が聞こえ吐息の温度さえ分かるというその一事だけで、
彼女の鼓動は遠くの空に生まれた雷鳴のように小刻みに高ぶり始めていた。

(大丈夫だわ、こんなことなら、すぐに慣れてしまえる。
 大体このかたが、『醜悪』などときつい言い回しをなさるからいけないのだわ)
そう思い至ると、当初の腹立ちがまた蘇りかけてきたが、完全に息を吹き返すところまではいかなかった。
仰向けに寝ていたクロードが突如寝返りを打ち、鼻先をこちらの首筋に触れんばかりになったからだ。
そういう位置関係になったのはただの偶然かと思われたが、
次の瞬間に彼は目を閉じたまま少し身動きし、ジュスティーヌの胸元に顔を埋めてきた。
そして片手を彼女の背中に回したかと思うと、妙に意味深な弧を描くようにして腰の辺りまで下ろしていった。

(なんと馴れ馴れしいことを)
せめて舞踏会で貴婦人を踊りに誘う殿方のように、事前に許可を乞うぐらいの礼はふまえたらどうなのです、
と彼女は唇をきつく噛みながら思ったが、そんな悔しさよりもはるかに強い恥ずかしさと恐ろしさに全身が支配されていたため、
それを口にすることなどとてもできなかった。

ふと太腿のあたりに違和感をおぼえた。
いくら男性の身体は女性よりも筋肉質だとはいえ、
人体の一部だとはとても思えないような硬直が両腿から両膝にかけての谷間に押しつけられている。
図々しく腰を抱き寄せようとしている彼の腕の筋肉の硬さも気になるといえば気になるのだが、
こちらの硬度はそれの比ではなく、少し圧迫されただけで痛みさえおぼえる。
こんなところに何を隠しているのかしら、とジュスティーヌはますます腹が立ってきた。
181華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:14:07 ID:ToQ2hs8W
そのとき、クロードがゆっくりと目を覚ました。
しばらく褐色の瞳を細めて腕の中の花嫁を見ていたが、
二三回瞬きしたかと思うと唐突に彼女を引き剥がし、自身は寝椅子の背もたれぎりぎりにまで後退した。
「おはよう」
「おはようございます」
「いかがされた」
「いかがとは」
「なぜ私の隣におられる」
「試そうと思って」
「何を?」
「あなたとの同衾に耐えられるかどうかと」
どういう言い草だ、と思いながらもクロードはそれを顔に出すことはしなかった。

「結果は?」
「まだ、分かりません。でも、順応できる気がしてまいりました」
「それはよかった」
「あの、伺いたいのですけれど」
「何か」
「足の付け根に何を入れていらっしゃるのですか。武器を常に携行していらっしゃるの?」
「―――いや。なぜ武器だと?」
「だって、こんなところに腕や足がついているはずはないでしょう」
「機密文書を入れた筒かもしれん」
「それは望ましくありませんわ」
「まあ、保管場所としてはいささか守備が甘いな」
「肌身離さず帯びるというなら、護身具のほうがずっとロマンティックですわ。
 叙事詩に出てくる古代の勇士たちみたい」
「ロマンティックか」
クロードは声にかすかな苦々しさと疲労感をにじませながらつぶやいた。
そしてしばらく思案するような目をしていたが、やがて口をひらいた。

「誠に残念ながら、これはわが儚き肉体の一部だ」
「嘘。骨が剥き出しになっているのでもなければ、こんなに硬い部分があるはずはありません」
「実は、これは私の持病なのだ」
「持病?」
「罹患部位はここだけだが、一方で呼吸が乱れたり集中力が途切れるなど、その弊は往々にして全身に及ぶ」
「まあ!どうして言ってくださらなかったの?」
「恋患いならともかく、器質的な病や傷に詩情の香りはないからな。
 貴女のお耳に入れるようなことではあるまい。
 ちなみに婦人に伝染することはない」
「まあ……!」
ジュスティーヌは突然頭を殴られたかのようにことばを見失った。
そんなふうに思われているとは知らなかった。
たしかに自分はきらきらして胸ときめかせるものが大好きだけれど、それ以外のものは目にも入れたくない娘だと、
それだけの世界に生きている娘だと、彼はそう考えているのだろうか。

「なぜそのようにおっしゃいますの。
 わたし……わたしは、ロマンティックなことでもそうでなくても、あなたのことならちゃんと知りたいのです。
 あなたの妻ですから」
知って初めて、恋に落ちる資格があるのだと、あなたはそうおっしゃるのでしょう。
ジュスティーヌはそうつづけようと思ったが、やはり口ごもってしまい、伝えることはできなかった。
182華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:15:01 ID:ToQ2hs8W
「妻、か」
クロードは口角を少し上げた。
もともと表情豊かとは言えない男であるが、
今はとりわけ感情の所在をおしはかることが困難な、肖像画の一様式のような微笑を浮かべている。
ジュスティーヌにしてみればこれほど腹立たしいこともない。
わたしが何を言おうとこのかたにとっては子どもの戯語なのだ、
と思うと目の奥が何だかまた熱くなってくるような気がしたが、それは隠しおおさねばならなかった。

「何をお笑いになるのです。わたしは真剣に案じておりますのに」
「これは申し訳ない。貴女がいつも真剣だということは存じている」
「ならばどうか、あなたも真剣にお答えくださいませ。
 ご持病というのはどのような症状なのですか。痛みは激しいのですか。
 わたしを娶って以来ずっと、押し隠していらっしゃったのですか」
「いや、まあ、落ち着かれよ。
 一般的な傷病による苦痛とは違うが、疼痛といえば疼痛がある。
 当初はさほど凌ぐに難くはないが、ひとり耐え忍ぶ期間が長引く場合、ほとんど苦行の域に達するな。
 鎮静の妙薬なしで過ごせるのは、せいぜい一週間が限度だ」
「まあ……!ではもう御身は限界に達しておられるのですか」
「そういうことになる」

「では何としても安静になされませ。寝台からお降りになってはなりません。侍医を呼んでまいります」
「いや、以前お話したろう。今朝は友人たちと狩りの約束があるのだ。すでに応接室あたりで私を待っているはずだ。
 この話は私が帰ってきてからしよう」
「いけません!何をお考えなのです。御身は予断を許さない重態だとご自分でおっしゃったではありませんか」
「そこまで言ったろうか……?いや、だが、それとこれとは別物だ。
 実は前回の狩猟も私の都合で延期させてしまったゆえ、今回は何とか決行したい。天候も恵まれていることだしな」
「仮にも王太子であらせられるあなたが、遊興の約束を果たさんがために倒れてしまわれては元も子もありませんわ。
 事情をお話すればきっと皆様は分かって下さいます。
 いくら親しいご友人でも、寝室に招じ入れるなど本来なら礼に反しておりますけれど、今は場合が場合ですものね。
 今こちらにお呼びいたしますから皆様にご説明なさいませ」
「―――ちょっと待った。何を考えている」
クロードが妻の意図を察して声を上げたときにはすでに遅く、
彼女は扉の外に控えている当直の侍女たちに向かって命を下していた。

「ご友人にもずっと隠しておいでだったのですか?」
長椅子近くに戻ってきたジュスティーヌは、起き上がりかけた夫の上体を厳然と押しとどめ、再び不安そうな声で問いただした。
「いや、伏せていたというか、語る必要もないというか、男同士なら自明というか」
「自明?それなのにご友人がたは病身のあなたを遊興へ連れ出さんと企図してらっしゃるのですか?」
「いや、それはだな」
「あら、いらしたようだわ」
183華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:17:18 ID:ToQ2hs8W
客人の来訪を告げる侍女の声につづいて、二人の若者が遠慮がちに入ってきた。
ひとりは明るい亜麻色の髪に青灰色の瞳、もうひとりは濃褐色の髪に灰色の瞳をもち、ふたりとも王太子妃とはすでに面識があった。
ここ数日間に夫方の親族や友人、直属の家臣らに休むまもなく引き合わされつづけたジュスティーヌにしてみれば、
顔と姓名、肩書きが一致する者のほうが少ないのだが、彼らに関してだけは例外的に相続予定の領地まで覚えていることができた。
それというのも、ふだんは何につけても淡白なクロードが、彼らを新妻に紹介するにあたって、
珍しくそれなりの気安さを込めて「学窓以来の悪友だ」とふたりの肩を叩いたからである。

王族の傍系でもある名門貴族の子弟らしく、両者とも気品ある容姿と身のこなしに恵まれていたが、
今朝はすでに狩猟用の軽装に身を包んでいるためか、初対面時に比べるとやや打ち解けた雰囲気を漂わせていた。
しかしながら、王太子と長年の友誼を結んできた身とはいえ、
さすがに夫婦の寝室に招かれる日が来ようとは予測していなかったのであろう、
妃に寄り添われながら寝衣のまま長椅子に横たわっているクロードの姿を、彼らは実に訝しげな顔で見つめてきた。
クロードの側はといえば、何とはなしに申し訳ない気持ちがふつふつと沸き起こりつつあった。

「畏れ多くも朝まだきよりご拝顔賜りましたこと、臣等つつしんで御礼申し上げます」
友人たちは宮中作法に則った朝の挨拶を王太子夫妻に捧げた。
彼らとてふだん私的な場所でクロードと顔を合わせるときはこんな形式ばった真似はしないのだが、
面識の浅いジュスティーヌに配慮したのだろう。
「すまない、足労をかけたな」
「クロー……殿下はご健康を崩されたと伺ったが。一体どうなされた」
「体調の都合でこたびの狩猟を延期なさるというなら、わざわざこのような場を設けてご釈明いただかずとも、我々は無理強いなど」
「いや、それはだな」
「いいえ皆様、今後の不測の事態にも備えて、ぜひ今ご周知させていただきたいのです。ほらクロード、お話しになって」
「いや、話すと言ってもだな……何と言えばいいのか」
「もう、皆様にご心配をおかけすまいとするお気持ちは分かりますけれど、ことはあなたのご寿命さえ左右する問題ですのよ。
 ご自身でそうおっしゃったではありませんか」
「いや、だがしかし」
「どういうことだクロード、何か深刻な患いを俺たちに隠していたのか?」

驚きと懸念のあまり平素の対等な口調に戻った友人たちに対して、
クロードは逃げ道を探しつつ口をひらきかけたが、こらえがたくなったようなジュスティーヌの声に先んじられてしまった。
「そうなのです。このかたは周囲を案じさせまいと、ずっとおひとりで抱え込んでいらっしゃって。
 わたしもつい今朝がた異状に気がつきましたの。
 この一週間ずっと寝所を共にしておりましたのに、お恥ずかしいことです」
「して、その異状とは」
「いや、ちょっと待った。皆待ってくれ」
「患部は主として下腹部ですの」
「下腹部?」
「今朝このかたのご起床のさまを拝見しておりましたら、当該部位に尋常ではない隆起が認められましたの。
 お医者様に倣って触診を試みましたら、およそ人体とは思われぬほどの著しい硬化の進行が感じられました」
「……はあ」
「口を堅く閉ざされるこのかたを説き伏せてようやくお話しいただいたところでは、周期的に現れる症状なのだそうです。
 その疼痛は、時の経過と共に大変やりきれないものに増長してゆくのだと」
184華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:18:06 ID:ToQ2hs8W
「―――ああ、まあ、そうかもしれませんね」
「ご存じなのですか、エドゥアール殿?」
「ええ、心あたりは」
「まあ、まさか本当に、既知の上でクロードを外出に誘っていらっしゃったなんて!」
「まあまあ、どうかお声を荒げられますな、妃殿下」
「ひどいわ。なぜあなたはそんなに落ちついていらっしゃるの?
 あなたはこのかたの病についてどこまでご存知なのですか?」
「そうですね、殿下のご説明にさらに付け加えさせていただくなら、その苦悶を暫定的に鎮める術はあっても、
 決定的な治療はないに等しく、周期はほぼ初老の頃まで繰り返されると言われています。
 人によっては不運なことに、老境に達してもなおその業深き病より免れられぬ場合もあるとか」
「まあ、なんということ……!
 ―――何がおかしいのです、エドゥアール殿」
「いや、決して、何も」
「いいえ、あなたは笑っていらっしゃるわ。親友が不幸に見舞われるのがそんなに楽しいのですか?」
「いや何も、そんな」

「ジュスティーヌ、拘泥されるな。彼に悪気はない」
「悪気はないだなんて。こんなひどい仕打ちはありませんわ。ご友人なら心配なさるのが当然ではありませんか。
 あなたに最も近しきご朋輩として、こちらの方々こそわたしと気持ちをひとつにして下さると信じておりましたのに」
「どうか妃殿下、そうご立腹なさいますな。せっかくのご麗容が台無しに」
「わたしの見た目などどうでもよろしいのです。あなたがたは昔からのご友人なのでしょう?
 クロードの健康が心配ではないのですか?このかたはあなたがたのことをとても大切に思っているのに」
「まあまあ、どうかお気を楽に。さほど深刻に捉えるようなことでは」
「そのような、わが夫を軽んじるような侮言をわたしの前でおっしゃらないでください。
 これが深刻でなければ何が深刻なのですか。
 もういいわ。あなたがたのご理解とご援助を得ようとは思いません。わたしひとりだけでもこのかたにお付き添いいたします」

「あるいはそれがおよろしいかもしれません、妃殿下」
「何ですって?」
「件の疼痛を鎮めるのに最も効能ある妙薬ならびに看護とは何か、クロードから聞いておいでではありませんか」
「いいえ、何も。クロード、どういうことなのです?」
そなたらはまた余計なことを、という目でクロードは悪友たちを交互に眺めたが、
饒舌なほう、すなわちエドゥアールと呼ばれた若者はどこ吹く風とばかりに問いかけを重ねた。
「まことに、伺っておられぬのですか?」
「ええ」
「よくないな、それはよくない」
エドゥアールは王太子の苦りきった顔も意に介さずもっともらしく首を振った。

「クロードよ、妃殿下におかれてはかくも巧まざるご真情よりおまえの身を案じてくださっているのだから、
 この際初夜以来の片意地は捨てて、ありがたく御献身を受け入れるべきだと思うがな」
「おまえに意見を求めた覚えはない」
「エドゥアール殿、看護というのは、わたしのような者にも務められますでしょうか。
 自分で包帯を替えたこともないのですけれど」
「むろんです。妃殿下でなければ十全には果たしがたい至高の任務と称せらるるべきでしょう。
 むしろわたしが看護役に指名されたとしたら、なんとしてもご辞退申し上げたきところです」
「まあ、至高の任務だなんて……!わたし、がんばります。
 一生懸命習い覚えて、今できないことも必ずできるようになります。
 このかたのご難儀を取り除くためなら、どんなご奉仕でもできるようになります」
「聞いたかクロード。おまえは何と果報者であることか」
「黙れ」
185華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:18:49 ID:ToQ2hs8W
「さようなわけですから、妃殿下、われわれはこのあたりで退出させていただきます」
寡黙なほうの男アルトゥールが初めて口を挟んだ。
「まあお二方、お待ちくださいませ。
 この種の疾病に対する看護について、初歩の作法だけでもご教示いただけませんでしょうか。
 クロードによればすでに疼痛が始まっているようですから、できるかぎりのことをしてさしあげたいのです。
 侍医が来るまで手をこまねいてお見守りしているわけにはまいりませんもの」
ふたりの若者は無言で顔を見合わせた。
アルトゥールがおずおずと答弁するのを妨げるようにして、エドゥアールが明快な声で申し出た。

「妃殿下のご所望とあらば、それはもう、喜んでこのわたくしが」
「まあ、ご親切に」
「いかほどの労でもございません。では誠に厚顔ながら、妃殿下のご居室までご案内いただけましょうか」
「あら、ここではいけませんの?」
「御身におかれまして御不都合なかりせば、もちろんこちらでもかまいません」
「ええ、不都合などありませんわ。少しでも早く、身につけたいのです」
「というわけだ、クロード。
 世の塵芥をいまだ何ひとつ知り初めぬ清浄無垢なつぼみたる妃殿下に、畏れ多くもこの俺が手取り足取りお教え申し上げるのを、
 おまえはそこでひとり侘しく指をくわえて見ているがいい」
「黙れ。おまえたち、いい加減にさっさと下がれ」

「クロード、あなたは何という口をお聞きになるのです!
 エドゥアール殿は何もかもあなたのために、これほどご親切にお申し出くださっているのに」
「いやいや、妃殿下、おかまいなく。
 王太子殿下の命とあらばもちろん退出しますとも。
 わたくしどもが果たせなかった御教導の任は、殿下御自身にお委ね申し上げましょう。
 必ずや後事を全うしてくださいましょうほどに。
 それじゃ行こうか、アルトゥール」


186華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:19:53 ID:ToQ2hs8W
そのことばを最後に、ふたりの若者は狩猟靴の音だけを残して軽やかに立ち去っていった。
「ご親切な方々でしたわね」
「いちど制裁を加えたほうがよさそうだ」
「では、クロード」
ジュスティーヌは夫に向き直って言った。
「看護の方法について、お教えくださいませ」
「教えると言ってもだな」
「お気が進まぬのですか?」
「まだ、貴女には難しいというか、衝撃が大きいのではないかと思っている」
「でも、ご教示を乞いたいのは初歩の初歩なのです。誰だってそこから始めるのではありませんか」
「それはまあ、そうだが」

「そういえば、疼痛を鎮めるための妙薬がおありだと、先ほどおっしゃっておられましたわね。
 それはどちらにしまっておられるのですか?
 せめてそのお薬の煎じかただけでもお教え願えませんでしょうか。
 今後、ご就寝中に発作が起きたときなど、侍医が駆けつけるまでに時を要することがあるやもしれませんもの」
「いや、それはいいのだ。当面は自分で何とかする」
「ご自分でって……」
「処理には慣れている」
「でも」
「言うなれば身辺の一雑事にすぎん。お気持ちだけいただく」
「でもわたしは、あなたのお役に立ちたいの!」

突然地表から湧き上がった泉のような怒声に、クロードは目を丸くした。
「あなたは大人だからご自分のことはよく分かっていらして、ご自分のことは何でもできるのでしょうけれど、
 それでよしとして完結なさるのでしたらわたしが嫁いでまいった意味がないではありませんか。
 わたしだってあなたのために何かしたい。
 痛みも喜びも、願わくばあなたとふたりで分かち合いたいのです。
 そうでなければ、神前での誓いは嘘になってしまいます。
 たしかに、ロマンティックな幻想しかもっていなかったのは本当だけれど、
 あの誓詞を唱えるとき、わたしは、……わたしは、真剣でした。あなたは、どうなのですか」
クロードは黙って新妻を見ていた。
彼女の肩は少しだけ震えている。
淡い青緑色の瞳にも、ゆらゆらと震える膜が浮かんでいる。
ふとクロードは口元を緩めた。そうせざるをえなくなった。

「そうだな。わたしも、神を畏れるのは同じだ」
そして上体を起こして寝椅子の上に座りなおすと、枕元に立っていたジュスティーヌを促して自分の隣に腰掛けさせた。
「お教えするには、ひとつ条件がある」
「条件?」
「私の指導に最初から最後まで従うと誓えるのなら」
「まあ、もちろんですわ。ではよろしくお願いいたし……っ」

突然重ねられた唇に、ジュスティーヌは文字どおりことばを失ってしまった。
腰を引き寄せられて抱きすくめられるがまま、あまりのことに身動きもできない。
彼の両腕に込められた力には有無を言わせぬものがあった。
けれど、背中に置かれた左の掌は優しく、少しだけ乾いた唇から伝わる体温はもっと優しかった。
何が何だか分からないでいるうちに、その優しさに陶然となってしまいそうだった。それがジュスティーヌには怖かった。
ふいに柔らかい舌先がこちらの唇をこじあけて侵入してくるのを感じ、彼女は反射的に顔を離した。
クロードが小さく息をつくのが聞こえた。ジュスティーヌほどではないとはいえ、彼もいくらか呼吸を乱している。
187華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:21:00 ID:ToQ2hs8W
「何をなさいますの!」
「同意なされただろう」
「でも、こんなの、どうして」
「分かった。抵抗や疑問がおありならやめる」
「……別に、一切合財お取りやめにならなくてもよろしゅうございますけれど」
「ならばどうされたいのだ」
「しかるべき手順を、ふまえていただきたいのです」
「手順?」
ジュスティーヌは目元を赤らめた。
解説を求められるような状況は本来望ましくないはずなのだが、
けれど自分の所望を大いに語れるというのは恥ずかしくもうれしいことであった。

「接吻に際して乙女が望むもの、ですわ」
「もう少し注釈を」
「つまり、跪いて懇願していただきたいのです。
 古今の恋愛小説では、まっとうな騎士や貴公子は決してそういった礼節をおろそかにいたしません」
「ならば、まっとうな連中の仲間に数えられずともかまわん」
「え?」
「私は人の下手に出るようにはできていない」

クロードの声は淡白さを取り戻していた。
これはこの国の人間がよく好む諧謔の一種かと思い、ジュスティーヌは本気で受け取っていないことを伝えるため彼に笑いかけようとしたが、
口元がこわばってできなかった。
「私は生まれ落ちたときより、人にかしずかれ畏れられ称えられることが定められた人間だ。
 神と父母以外の前に頭を下げる習慣はない」
「でも、あの……」
「ゆえにそういった夢想の実現を私に託されても無益だ。無聊を慰めるための茶番としてなら、まあかまわんが。
 初夜に明言を避けた私も悪いのだが、今後は心されよ」
「……はい」
ジュスティーヌの声は小さくなった。
視線がゆっくりと床に落ちた。
彼女とて決して、自分の理想をすべてを満たしうる完全無欠の風雅を伴侶に求めていたわけではなかった。
ただ、自分という人間に一定の理解と共感を寄せてほしかったのだと、いまならそれが分かる。
こんなふうに彼の真情を知ることになろうとは、思いもしなかった。

「その代わり」
クロードの声音が少しだけ丸みを帯びた。
ジュスティーヌは顔を上げた。
「望みの高い女、気位の高い女を私の流儀に従わせるのは好きだ」
「ひどい性格だわ」
心底そう思いながらジュスティーヌは言った。
「だが従わせるからには、それなりの対価は与える」
「―――対価」
「ご興味が?」
「べ、別にそんなもの」
「ではこの話はここまでだ。私の病を案じていただいたことには感謝申し上げる」
「あなたって本当にいやなひとだわ。
 ―――わたしが言うことを聞かなかったら、あなたの痛みは持続するのですか?」
「そうだと言ったら?」
「そうだと言ったら、それは、―――従います」
「善き花嫁だ」
「勘違いなさらないでくださいませ。
 ロマンティックでないのはいやだけれど、妻としての務めを放棄したらもっと後味が悪いからです」
クロードはまた少し笑った。そして彼女の耳元に顔を近づけて言った。
「義務だということを、忘れさせる」
188華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:22:52 ID:ToQ2hs8W
ばかみたいだわ、ほんとに、ばかみたい。
ジュスティーヌは心の中にそう繰り返した。
けれど、強く言い切ってやろうと決めたそのことばが口をつくことはなく、
唇を動かすことさえできないまま全身を石にするばかりだった。
その一方で両頬は、燃えあがる炉の口から熱風を吹き付けられているかのように、見る見るうちに赤く熱くなってゆく。
彼女はそれを自覚するのがいやだった。
その熱の高まりを、紅潮の広がりをクロードの眼から隠せないことがいやだった。

「信じるがいい」
彼女の耳元に顔を寄せたまま、クロードは短く呟いた。
ジュスティーヌは何かを必死で抗弁したかった。
けれど硬直からなんとか抜け出す前に、あっさりと唇を封じられてしまったのでそれもままならなかった。
今度はクロードも手を遊ばせることはなく、左手で彼女の腰を抱いたまま右手でその頭をしっかりと支え、
ふたりのやわらかな接点が失われぬよう退路を絶った。

ジュスティーヌは再び自分の唇がこじ開けられるのを感じた。
歯を食いしばってそれ以上の侵入を妨げようとしても、どうしても顎に力が入らない。
一方で理由は分かっていた。
それを許したとき、自分の身に何が起こるのか知りたいのだ。
生まれてこのかた頼みにしてきた理性や自尊心は、
紳士らしい礼節が微塵もないこんな強引なやり方に屈してはいけないと、先ほどから警鐘を鳴らしている。
けれど身体の中枢にある熱源のようなものは、何を措いてもその先を見届けよと命じている、そんな気がする。
ジュスティーヌの心は軸足を失ってしまいそうだった。

クロードの舌がなかに入ってきた。
それは無抵抗な粘膜を遠慮なく愛撫してまわり、最後にとうとう、
なすすべもなく身をすくめていた彼女の舌を大事に取っておいた果肉のように優しく絡めとった。
本物の体温が、ふたりの境界をゆっくりと溶かしていく。
(すべて、委ねるしかないんだわ)
ジュスティーヌの心はそのとき決まった。

ようやく顔を離したとき、クロードの呼吸は先ほどと同様荒くなっていた。
けれどそれでもまだ抑制があった。
明らかに変わったのはその眼である。
いつもの涼しげな無頓着さはどこかに消えて、明らかに熱を帯びている。
こわい、とジュスティーヌは本能的に思った。
「緊張なさるな」
まなざしとは対照的な穏やかさで囁いたかと思うと、クロードは再びジュスティーヌにくちづけを始めた。
しかし今度は唇ではなく頬やまぶた、耳たぶを優しくなぞり、その形の良い唇はじきに首筋へと下りていった。
一方で顔は離さぬまま、片手で妻の帯をほどき、寝衣と肌着をゆっくり取り去っていく。

指輪と腕輪以外に花嫁が身に着けているものがなくなったところで、クロードはようやく手を休めた。
ジュスティーヌは反射的に乳房と下腹部を隠そうとしたが、
当然それは取り押さえられて両腕の自由はきかなくなった。
彼は黙って無防備な裸を観察している。
ジュスティーヌがかつて夢想していたように、その口から恭しい感嘆の辞が発せられることはついになかった。
けれど、そのまなざしには先ほどよりいっそう激しい熱が宿っているのを彼女は感じとった。
どうしようもなく恥ずかしく、恐ろしく、いたたまれなかった。
こんな無遠慮で不躾な視線にさらされているにもかかわらず、肌は勝手に火照りつづけている。
わたしの自尊心はどこへ行ってしまったのだろう、と彼女は思った。
けれど、こうしてこのかたに「欲されること」がわたしの本当の望みなのかもしれない、とも思った。
189華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:23:42 ID:ToQ2hs8W
「あの」
「何か」
「お目に、かないましたか」
「いきなり低姿勢になられたな」
「ちがいます。
 よく考えたら、わたし、自分の理想を語ってばかりであなたのご嗜好を知らないと思って」
「それはかたじけない」
「どうなのでしょう」
「もちろん目にかなうとも。
 欲を言えばもう少しふくよかなほうが好みだが」
「痩せていると、看護に向かないのでしょうか」
「そんなことはない。男の身体と区別できる程度に女性らしければ十分だ。
 たとえば、ここのように」

「……あっ……」
大きな掌で乳房をじかに包まれて、ジュスティーヌは思わず上ずった声を漏らした。
自分でも聞いたことのないおかしな声だった。恥ずかしさに目を閉じてしまう。
けれどクロードは手を緩めてくれなかった。
乳房をしばらく揉んでいたかと思うと、そろそろと試すように親指と人差し指で桃色の頂をつまみ、擦りあげる。
突然冬の外気にさらされたような感覚だった。
つまんだり円を描いたり弾いたり、男の指先は強弱をつけて執拗にたわむれを繰り返す。
そこが如実に硬くなってくるのがジュスティーヌにも分かった。
とうとう、あのおかしな声をこらえられなくなった。
「……あ、あぁっ……だめ。やめて、ください……」
「可愛い声だ。もっと聞かせてくれ」

ジュスティーヌの懇願などまるで無視するかのように、クロードは愛撫をつづけた。
やがて耐えがたくなったように、もう一方の乳房に顔を近づけてその頂を吸いはじめた。
「い、いやぁっ」
冬の外気に触れたどころではない電流が全身を駆け巡った。
乾いた唇に挟まれた乳首は遠慮のない舌先に転がされ、やさしく圧迫され、舐めあげられ、
強く吸い上げられ、ほとんど無感覚になりそうなほどの激しい快楽にさらされつづけた。
もう一方の乳房と乳首への愛撫ももちろんつづけられている。
とろけてしまいそうな意識の中で、ジュスティーヌはなんとか自分を揺り起こそうとした。
こんな、胸をほしいままに弄ばれながら息絶え絶えに話しかけるのも恥ずかしいことだが、けれど言うべきことは言わなければと思った。

「あの、クロード」
「ん」
やや往生際が悪いながらも、クロードは顔を上げた。
解放された乳首は彼の唾液で照り光り、開花を控えたつぼみのように堂々と屹立していた。
その卑猥で恥ずかしい眺めに、ジュスティーヌはまたことばを失いそうになってしまう。けれどなんとか口をひらいた。
「あまり、このようなことをされると、わたし、あの、あなたの看護どころではなくなってしまいそうなのですが」
「胸だけで、そんなによかったか」
クロードの端正な口角が少し上がった。
笑い事ではないのよ、とジュスティーヌは叱りとばしたくなった。
「だって、お苦しみなのはあなたのほうなのに」
「自分ばかり気持ちよくなって申し訳ない、か」
「……」
「心配ない。わが持病の妙薬とは、婦人の奥深くから沸き出ずる蜜のことであり、
 こういった愛撫はそれをいざなうための儀式のようなものだ。
 まあ必須というわけでなく、嗜好の一環でやっているわけだが」
「蜜?蜜とはなんですか?」
「このあたりに、溢れ出てくるものだ」
「え……いやっ!」
190華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:25:05 ID:ToQ2hs8W
急に両脚を大きくひらかされて、ジュスティーヌはいままででいちばん大きな悲鳴を上げた。
人前でこんな姿勢をとらされる日が来るとは思ってもみなかった。
「やめてください。やめて。見ないで」
「―――たいしたものだ。処女だというのに、見事な濡れようだ」
「やめて。お願いです。本当に、見ないで……」
ジュスティーヌはことばを飲み砕いた。目の奥がたまらなく熱くなってきた。
クロードも少し驚いたようだった。けれど腕に込めた力を緩めることはなかった。
「何も、泣かれることはあるまい」
「だって、こんな、みっともなくて、恥ずかしい格好で」
「そんなことはない」
「そんなことあります。こんな格好、どんな物語の姫君でもいたしません。
 忠誠を誓うべき姫君がもしこんな扱いに甘んじたと知ったら、相手役の騎士様は絶対失望するわ」
「―――そうか」

やや脱力をおぼえつつクロードは言った。
けれど少し間をおいてから、彼はまたジュスティーヌに語りかけた。
「貴女に申し上げていなかったことがひとつある」
「何ですか?」
「世の健康な若い男は大抵私と同じ病を患っている。貴女の言われる物語中の騎士殿ももれなくそうだ」
「まあ!でもエドゥアール殿やアルトゥール殿は、さきほど何も申告なさらなかったわ」
「連中にも羞恥心はある」

言いながら、クロードは花嫁の秘所にもう少し顔を近づけた。
やわらかそうな花弁はつやつやと濡れて照り光り、よく見れば小さな芽もすでに充血してふくらみかけている。
そしてその下の秘裂は、清らかな乙女の証として淡い桃色で彩られているにもかかわらず、
男なしでは夜を過ごせない淫婦のようにしとどに蜜をにじませ、準備万端に濡れそぼっている。
今すぐにでも来てほしい、何度も激しく貫いてほしい、気が狂うほどかき乱してほしい、と無言のうちに懇願するかのようだった。
クロードは深く息を呑み込んだ。
彼には珍しいことながら、そろそろ自制心のたがが外れそうだった。

「ゆえに、騎士殿はみな、さまざまな難題を克服して姫君と結婚できた暁には、こうして夜毎慰めてもらうことになっている。
 こんないじらしい姿勢をとって自らを受け入れてくれる姫君を、彼らが嫌がるはずがない」
「でも、そんなこと、これまで読んだ物語のどこにも、どんな最終章にも書いてなかったわ」
「教会の検閲に引っかかるからだ」
「ではやはり、これはまちがったことなのではありませんか!」
「書物に書かれない真理はたくさんある」
「でも……」
「ひとつたしかなのは、貴女の騎士殿がどうあろうと、教会がどんな裁可を下そうと、
 貴女が身体をひらいて下さらぬことには私の病は癒されぬということだ。
 いかがされる」
クロードは極力平坦な声で言った。
しかしその実は、すぐにでも有無を言わさず押さえつけ挿入したいという欲望を押さえ込むのに必死だった。
われながら列聖されるべき克己心だ、と彼はつくづく感心した。
191華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:26:14 ID:ToQ2hs8W
「―――分かりました」
「いい子だ」
うなだれながら目を閉じたジュスティーヌのまぶたに、クロードは接吻した。
「もうひとつ、言い忘れていた」
「何ですか」
「貴女の今の姿は、私には大変魅力的だ」
「最低だわ」
花嫁は涙で濡れた頬をいっそう赤らめた。色づきゆく楓のような朱だった。
さすがにもう、クロードも限界だった。

「力を抜いておられよ」
言いながら、彼はそそり立った自分のものの先端を秘裂にあてがった。
少し間違えれば滑って秘芽をこすってしまいそうなほどの潤いが彼を包んだ。
ジュスティーヌは薄目を開けた。次の瞬間、翡翠色の瞳は驚愕に見開かれた。
「え……いやっ!そんなもの、入りません……!」
「すまない。最初はやはり、痛むと思う」
侘びながらも、クロードは動きを止めず、少しずつ亀頭を埋めていった。
あふれるほど濡れた襞のなかに、温かさと柔らかさと緊密さに呑み込まれてゆく感覚がたまらない。
そして今まさに、この無垢で無知な美しい娘の純潔を散らしているのだと思うと、
彼の興奮はいやがおうにも高まった。

「……っ……」
ジュスティーヌは先ほどとは別の涙をにじませながら、唇をきつく噛みしめていた。
苦痛を声に出すまいとしているのだ。
そのいじらしさにクロードは胸を突かれながらも、いまさら引き返すことはできそうになかった。
くちゅりと卑猥な音をたてて一突きするたびに、誰にも開鑿されたことのない清らかな秘肉が、四方からの圧迫が途方もない快感を与える。
彼自身はようやく半分近くまで埋まったところだったが、早くも欲望のままにすべてを解放してしまいたくなる。
ほとんど童貞に戻ったような気分だった。

「はぁ……っ!」
奥まで当たったと思ったとき、ジュスティーヌが初めて声を漏らすのが聞こえた。
容赦なく締め付けてくる感覚とあいまって、その初々しい反応はクロードの情動を煽り立てるばかりだった。
けれどさすがに、彼にもここで休息を入れるぐらいの理性は残っていた。
「ジュスティーヌ、大丈夫か」
「大丈夫、です」
「どうしても苦しかったらおっしゃってほしい」
「いいえ。
 ―――あの、わたし、ちゃんとお役に立っておりますでしょうか」
「役に?」
「あなたの患部は、少しはお楽になりましたか」
「ああ。少しはというか、とてもいい」
「よかった」
「私のために忍耐を強いてしまい、すまない」
「大丈夫です。あなたはずっと、おひとりで疼痛に耐えておられたのですもの」
「二度目以後は貴女もだいぶ楽になられるはずだ。むしろ、心地よくなる」
「まことに、ですか?」
「そうして、貴女のためにもこの行為を好きになっていただけたらと思う。私のためだけではなく」
「でも、それは、……なんだか、恥ずかしいですわ」
「恥ずかしいことはない。
 むしろ、私に夜毎すがりついて上目遣いで欲しがるくらいになっていただければ言うことはない」
「そ、そんなことには、なりません」
「運がよければ赤子も授かる。言うことはないだろう」
「―――お待ちになって。赤子は夫婦の神聖な営みを通じて授かるものでございましょう」
「ああ」
「でもこれは、あなたのご持病への看護ですわ」
「そのとおり。それらの行為は同一なのだ。
 初夜の不履行をいま履行できて互いによかったではないか」
「ひどいわ!あなたはわたしを騙していらっしゃったのね!!」
「悪かった」
192華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:31:25 ID:ToQ2hs8W
クロードはまったく悪いと思っていなさそうな声でそう言った。
ジュスティーヌは腹が煮えくり返らんばかりの思いだったが、現今の位置関係では彼に報復できるはずもない。
せめてもの抵抗で脇を向くと、唇の端に恭しい接吻が二回三回と落ちてきた。
いまさら機嫌をとろうと思っても遅いのですわ、全くもって遅いのですわ、とよほど面罵してやりたかったが、
その一方で甘い気持ちに包まれるのはどうしようもなかった。
ほとんど魔法が進行しているような気分だった。

「すまないと思っている」
「この大嘘つき」
「だが、男との同衾というのがどんなものか分かってよかっただろう。
 私の言った、生身の男は醜悪だという意味も」
「―――醜悪だとは、思いません」
「ほう」
「あなたは最初から一貫していやなひとだけれど、でも、醜悪では、ないと思います」
「かたじけない」
「あなたに触れられるのも、あなたとつながるこの行為も、
 わたしの考えていたロマンスとは違うけれど、そんなに、醜悪では、ありません」
「ならば、どうお思いになる」
「―――好きになれたらいいと、思います」

脇を向いたままのジュスティーヌの顔は、もはや頬と言わず目元と言わず耳たぶまで真っ赤だった。
濡れた瞳はいたたまれなさそうに伏せられ、長いまつげは弱々しく震えている。
この娘を失ったら、生きるのがつらくなるかもな。
クロードはふとそう思った。
出会ってからたった数日間の相手に対しそんな感情をもった自分に、静かに驚いてもいた。
「私も、それを願っている」

ジュスティーヌは口をひらきかけた。
だがまもなくクロードが漸進を再開したので、彼女はふたたび唇を噛んで次の感覚にそなえた。
彼の動きはあくまで緩やかで慎重だったが、破瓜の痛みが消失することはもちろんない。
むしろ摩擦が重ねられるたびに、それは先鋭になってゆく気がした。
けれど同時に、クロードとつながっている部位から、かつてない熱が生まれていた。
それは彼が奥へ向かって動くたび、彼が指や唇を敏感な部分に這わせるたび、ジュスティーヌの全身に波及していくようだった。
苦しい熱ではなかった。むしろ温められて溶け出した甘露にも似ていた。それに沈み込むのは幸せな感覚だった。
そしてまた、彼女のなかで動くたびにクロードの息は如実に熱くなっていった。
それを素肌で知るのがジュスティーヌにはうれしかった。
193華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:32:08 ID:ToQ2hs8W
やがて、ある一点を境に彼の動きが激しくなった。
終わりが近づいているのだ、とジュスティーヌにも分かった。
そして、他者とこんなにも近く、かつてないほど深く結びついているにもかかわらず、理由のない寂しさに襲われた。
すべてが終わってしまう前に、いちばん大事なことをたしかめなければと思った。

「クロード」
「何だ」
「わたし、あの、この行為だけではなくて、―――あなたのことも、好きになれる、かもしれません」
「光栄だ」
「あなたは、わたしのこと、好き?」
「いまさらなことを」
荒い息の合間に、彼は初夜に見せたのと同じ微苦笑を漏らした。
けれどジュスティーヌがほしいのはそんな曖昧さではなかった。
直截すぎて無粋だとしても、彼女自身を傷つけるものだとしても、彼の深奥から発せられることばがほしかった。
「どこを、好いて下さいますの?ちゃんと理由を挙げて」
「相変わらず熱心なことだな。
 ああ、―――すまない、時間切れだ」

ほぼ呻きと化しているクロードの声には、ほんのわずかに、本物の口惜しさが混じっているように感じられた。
そして褐色の瞳が苦しげに細められたかと思うと、ほぼ同時に彼女の奥で何かが弾けた。
ふたりの合一を象徴するかのような振動が長くつづいた。
そのあと、男の体が静かに崩れ落ちてきた。




194華燭浮沈(後篇):2009/05/04(月) 23:33:47 ID:ToQ2hs8W
目を開けると、寝台の傍らの窓から差し込む日の光はずいぶん角度を上げていた。
正午とはいわないが、それにだいぶ近いような気がする。
ジュスティーヌは上体を起こしてすぐ隣に眠る男の顔を見下ろした。
そういえば、このかたの寝顔を見るのは今日二度目だと思った。
一度目と違うのは、時はすでに昼近くであり、場所は寝椅子ではなく寝台の上であり、
そして彼自身は同衾者に枕を提供するため左腕を胴体に対し垂直に伸ばしているということだった。
ふと褐色の瞳がひらいた。
彼はそのまま惰性のようにまばたきを繰り返していたが、
深刻な色を浮かべた大きな青緑色の瞳に上からじっとのぞきこまれていると知っても、もはや動じることはなかった。

「どうした?」
「どこが好きですか?」
「何だって?」
「先ほどの、―――つまり、先ほどのつづきですわ。
 わたしの、どこが好き?」
「ああ」
「ねえ、どこが好き?」
「そうだな。ひとつは、面倒なところか」
「何ですって?」
「最初はなんと注文の多い娘だろうと思ったが、
 まあ、一緒に居て退屈はしないと思うようになった」
「そんなのはいやです。もっと長所らしいことをおっしゃって」
「長所か」
「ええ」

「貴女のご自賛のとおり、気立てがいいというか、人がいいのはよく分かった。
 だが、あまり屈託なく人を信じるものではない。とくにエドゥアールのような連中は」
「それだけ……ですの?」
「内面を誉められたら誇るべきだ」
「でも、足りません」
「これ以上何を望まれる」
「わたしはあなたの目に、どう映りますか。
 わたしは、―――美しいですか?」
「ふむ」

その声の無感動さに、ジュスティーヌは静かに傷ついた。
けれど、自分の欲することをこのかたにはどうしても分かって欲しいと思った。
「―――わたしがこの世に唯一無二の美女ではないということは、今ではよく分かっています。
 嫁いできてからたった数日間だけれど、こちらの宮廷でいろんなかたにお会いしました。
 肌も装いも立ち居振る舞いも何もかもが磨きぬかれて、
 わたしなどでは敵わない天女のような淑女が世の中にはたくさんいるということが、よく分かりました。
 自分で自分の美質だと思っていたことも、ばあやたちが励ましてくれていただけということがよく分かりました。
 ―――たぶん、それが本当でした。
 でも、あなたにはわたしを美しいと思ってほしいの。他のひとが何と言ってもいいから」

クロードは答えなかった。
ジュスティーヌは泣きたくなった。本当に言いたいことをうまくことばに変換できない、そんな気がした。
「これは愚かな娘の愚かな虚栄心でしょうか。でも、あなただけには言ってほしいの。
 詩人のような美辞麗句も騎士のような跪拝もいらないから、ひとことだけおっしゃって。
 わたしのことを美しいと、―――いとしいと」
クロードは小さく笑った。花嫁の視界がまた少しにじんだ。
「自明のことは、口にせぬ主義だ」

本当にいやなひとだ、とジュスティーヌは思った。
けれど、上体を引き寄せられるがままに唇を奪われていたので、それをことばにする術はなかった。



(終)
195名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 23:50:12 ID:LsNEF74X
この親父にして、あの息子ありという事ですね。ご馳走様です。
196名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 00:21:10 ID:f9d7w8fA
舌のまわりっぷりは遺伝だったんだなw
GJ!
197名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 00:38:46 ID:T4VPGva4
GJ!
萌えました!
このふたりイイ!
198名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 02:15:10 ID:Q7wRIEHD
なんというか、この夫婦にしてあの子どもたち有りと、凄く納得した。
いやー、良かったなぁ。
GJ!
199名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 13:25:16 ID:UL1BPM5H
ジュスティーヌが可愛すぎるGJ!!
この二人の今後の夫婦生活も読みたい!
200名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 16:14:09 ID:EUv8C3FJ
>足の付け根に何を入れていらっしゃるのですか。武器を常に携行していらっしゃるの?
ああなるほど末っ子の母なんだねw
201名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 21:58:09 ID:YiLACgb2
>>200
マチルドが登場したのって王太子がイヴァンのシリーズじゃなかったっけ?
202名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 23:14:11 ID:hWmZvEZP
何故か泣いた
203名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 12:12:56 ID:ILVUcy43
GJ!
ジュスティーヌ可愛すぎるw

>>201
オーギュストの話かと思った
前編の感想で書いてる人がいたけど本当二人の性格が子供たちにそれぞれ受け継がれてるな〜
204名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 15:20:14 ID:u95Dh063
嘘みたいだろ…この後30の若さでジュスティーヌが死に
クロードだけ残されるなんて…

(´;ω;`)そりゃ涙も出ますよええ
205名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 17:11:00 ID:6GKJXcw7
「この娘を失ったら、生きるのがつらくなるだろうな」
って文章で切なくなった。

子どもを産む度に弱っていく妻を見て、クロードはどんな気持ちだったんだろう?
どんな気持ちで抱いていたんだろう?

妻が亡くなった後、どんな想いだったんだろう?

あぁ切ない…
206名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 17:26:56 ID:UgmwQycj
でもって。
「時間切れだ」と言っちゃう、そんなクロードに笑ってしまったす。
そんなお笑い精神が好き。
207名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 19:11:57 ID:PM/+t2D8
うおーいいねぇ。いいもん読ませてもらいました!
さすがの美文と萌えだなぁ。

>>201
あのシリーズも良かったよねぇ。
いまでもたまに作者さんの鳥探しちゃうよ。

ここは良作が多くてたまらんね。
未完のではロウィーナたん…今でも待ってるから…
208名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 19:24:04 ID:2crwY6x0
連休最後の日にいいもん読ませて貰ったよ、GJ!

思わず前の作品群も読み返しに行った。
ジュスティーヌが衰弱しながら息子夫妻の仲を案じていたり、
クロードが懐妊した息子の嫁の身体を過剰に気遣っていたり。。
前読んだときはスルーしてたとこがいちいち切なかった。
209名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 00:11:08 ID:RRUv+uBN
>>43さん
内容もシチュも好みだったのですが、
キャラ設定が凄く類似した作品が他サイトにありますよね・・・?
誤解でしたらすみません。
文章うまいし、次作も期待しています。
がんばってください。
210名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 22:07:12 ID:yQDq9GBa
>>209
>>128で設定改変してブログで続けるとか言ってるからそのサイトなのかも……。
211名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 02:28:52 ID:woXO1D3n
見れば分かるけど、改変したというサイトはほぼまんまだからここの本人の物。
私は初めて読んで、小説家になろうの女性向けのほうの上位作品に似てるなって思った。

サイトにあるもう1つの作品のほうが私は面白かったよ〜
212名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 07:30:40 ID:blKbJRF3
>>小説家になろうの女性向けのほうの上位作品に似てる

それは自分も思った!
213名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 08:47:52 ID:fS5ZhYuY
悪玉を倒し囚われの姫を救い出した勇者にその姫を嫁がせる
ってのはよくあるパターンだけど、
あれって堕とされちゃって嫁の貰い手のつかない姫を
厄介払いするためだったりするんだろうかエロパロ的に。
214名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 19:32:43 ID:8hICKoGC
それなんてローラ姫
215名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 20:41:10 ID:h2Pzm+3u
ローラ姫はむしろ押し掛けてくる側じゃねーかw
と思ってググって出てきたサイトに吹いた
216名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 16:32:45 ID:x5pwFHCc
>>212
探してみたけどこれかな?
ttp://ncode.syosetu.com/n8980d/novel.html
スレ違いだけど楽しんでしまった。おすすめ
217名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 13:10:15 ID:LhpRYD8S
>216
それじゃなくて登場人物の名前が漢字のやつが似てると思った。
何となく文章が格調高いというか。王女さまと王太子カップルだし
スレ的にもピッタリ。
218名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 17:05:36 ID:Ue8fy+Pf
>>215
「ローラ姫」でぐぐったの?
219名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 20:42:27 ID:P6roGKUZ
>>217
見つけられないので、もう少しヒントください。
220名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 22:27:05 ID:LhpRYD8S
小説家になろうサイトのランキングの恋愛カテの上位作品だよ。
何位だったか覚えてないけどあらすじ書いてあるから探してね。
男装入れ替わりお姫様とかいろんな要素が盛りだくさんで
あんまり江六は無いけど少女漫画っぽくおもしろかったです。
221名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 23:06:12 ID:P6roGKUZ
見つかりました。ありがとうございました。
222名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 19:54:14 ID:Lby2Ci7F
あなたはいまどこでなにをしていますか
この空の続く場所にいますか。・・・セシリアを待っています
223名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 18:09:16 ID:hSqmUnQW
>>218
遅レスだけど、ググって6、7番目くらいに出てくるサイト
DQの理不尽にツッコミを入れる、みたいな内容

ローラ姫って押し掛けというかサイコというか…w
224名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 20:04:54 ID:Nhqf9diP
>>222
待っていてくれて嬉しいです。
心配かけて申し訳ない。

まずは続きを完成させないと、と思い、書き込みは控えていましたが、
このスレは定期的にチェックしています。
ときどき、話題を出してくれる方がいるので、
頑張って書かなきゃ、とやる気が出ます。
いつになるか約束できないのですが、続きは必ず投下します。

あと、保管庫収録ありがとうございます。
勝手ながら、気になっていたので
収録されている話の誤字・脱字を少しだけ直しました。
225名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 21:50:16 ID:ChXRQ74H
おお、作者さん降臨だ。
あせらず、ご自分の納得いくものを完成させてくださいね。
気長に待ってます。
226名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 22:12:26 ID:R94O592K
224氏
いつものように笑顔でいてくれますか
誠実な返答、ありがとう。いつまでも待ってるよ
227名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 22:54:27 ID:+uIquumV
火と闇のの人はどこへ…
228名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 03:36:32 ID:SxihqZFx
>>224
セシリアとエルドのシリーズは自分がこのスレに居着く元となった作品です
二人の関係性やキャラが好きだし224氏の文章がすごく好き

創作の苦しみ喜びは知ってるつもりだから、無理はしないで楽しんで書いてほしい
ゆっくり気長に待ってます
229名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 03:46:29 ID:nxx42zhK
セシリアたんの作者さま、き、キターーーーーーーーーー
早く2人に会いたいです待ってます(;´Д`)ハァハァハァ
230名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 22:27:32 ID:Y+ktbtHP
>>227
スレ違い指摘とかあったしな
どうかねえ
231名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 23:17:32 ID:9RkYNV2r
>>224
よかった、居てくれた!
それだけでとても嬉しいです。
いつか二人に再会できる日をゆっくり待っております。
ありがとうございます
232名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 03:29:39 ID:5pCl2Tff
>>224
自分も待ってますよー
でも作者さんにもそれぞれ生活や創作の波もあるだろうから
あまり負担に思ったりとかはしないでくださいな
233名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 07:40:14 ID:+MQOhRPE
皆優しいな
234名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 03:56:52 ID:GJ0Uq0Mk
そうだね
235名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 00:37:55 ID:ZzA3Ugyb
火と闇のはマジで読みたい。
スレ違いになりそうだったら、別スレかサイトでもいいから続けて欲しい。
236名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 19:44:06 ID:OoXStd9R
火と闇の人は、長文が嫌だのスレ違いだので叩かれてたからな
このまま沙汰なく未完だったらとても残念だ
237名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 21:38:45 ID:2EabemCc
男勝りで自分より強い相手じゃないと結婚するのやだ!とか言ってる(そんな余裕のある時点で大国確定)
お姫様が試合でまさかの敗北を喫したときの表情を妄想するだけでご飯三杯いける。
相手が蛮族扱いされてるような小国からの人質の王子だったりするとご飯が足りないママカリ状態。
238名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 22:05:14 ID:e5Zck5j2
正直 火と闇のはサイトでやってほしいな
239名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 01:12:36 ID:hxCaOaDv
銀と橙の続きが読みたい
お姫様好きでなおかつ覆面モノ好きな身としてはすごく好みの作品だった
240名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 02:05:22 ID:1QsT+utk
>>237
その時は父王や大臣とか姫側上層部の顔も面白そう
もっと言えば政治的バランス保守の意味でも王子側も真っ青じゃね?
とか思う俺はずれてるかもしれん
241名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 07:06:17 ID:eSpGPfsr
>>200-201
そういわれてみれば、オーギュストとマチルドって結構共通点あるんだな。
末っ子特有の何かがあるのかも。
天然ボケ度ではオーギュストが圧倒してるけど思い込み度はマチルドも
いい線いってる。
長兄も共通点が……といってはアランが気の毒か。
イヴァンは、シリーズレギュラー陣の中で一番の悪人といわれた男w

>>205
マジな話、妊娠出産の繰り返しで妻が疲弊していく姿を目の当たりにして、
それでもやっぱり行為を控えるとか(教会の教えに背かない避妊法)
そういう発想はなかったのかね。ああいう立場の人は、とにかく子供を
作り続けるのが仕事とはいえ。
それともそう考えてしまうことはジュスティーヌにとって失礼なのかな。・゚・(ノД`)・゚・。
242名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 17:45:30 ID:LbYOWRq6
ジュスティーヌ没間近の夫婦の会話も
見たいような見たくないような
と思えてくるな
243名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 19:02:25 ID:V50Uyck/
実歴史でもインドのムムターズ・マハルって14人目の出産で死んだね。
タージ・マハルを建ててもらった(?)けど。
それだけ愛されて幸せなのか、死んじゃって可哀想なのか・・・
244名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 01:28:17 ID:rvhX1m6v
ああ、その話知ってる
萌えるエピソードだよね
245名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 02:02:08 ID:DwwzPIRj
>>240
周囲と王子本人も困惑する中、『英雄、色を好む』のように、
武術もセックスも好きなお姫様が、権力を使ってその王子をつまみ食い。
丁寧なご奉仕(人質なので)&蛮族の体力に夜の方でも負かされて、
「約束は守る、夫にする」と上から目線で言いつつ、心も体もメロメロ状態になったら更に萌える。
246名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 00:50:30 ID:xpMplURB
>>243
その後王様は白大理石でできたタージ・マハルの横に
黒大理石で自分の墓を作ろうとするんだよね。
けど息子に王位簒奪されて幽閉。
死ぬまでタージ・マハルを眺めながら過ごしたという。
そしてその遺体はタージ・マハルのムムターズの棺の横に納められている。
一本話作れるな…。
247名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 01:05:28 ID:FLHrLwg3
ポルトガル王ペドロ1世もな〜、いくら愛しい人だったとはいえ
棺をほりおこして臣下に死体へ忠誠を誓うよう命じたり、
死後も「最後の審判の時、起き上がったらすぐ互いの顔を
見られるように」って向い合せに棺並べたり、
愛情が深いというより偏執的。
そんだけ意志が強くバイタリティのある奴でないと昔は
生き残れなかったのかもしれない……。
248名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 10:39:53 ID:d2z/xXuL
シャー・ジャハーンとムムターズ・マハルの話は
タージ・マハルが絡むだけに割と有名だけど、先代のジャハーンギールも凄い。
妃も子供もしこたまいるのに、三十前の子持ち未亡人に惚れて数年に渡り求婚、
結婚してからも彼女にヌール・ジャハーン(世界の光)なんて称号を与えて熱愛…
(しかも最初はヌール・マハル、宮廷の光という称号だったのを
『それでは足りん!』と改称させたんだったはず)
ちなみにこのヌール・ジャハーンはムムターズ・マハルの伯母。
そういう血筋…っていうのも変だけど、なにか共通するものがあったのかもな。
249名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 21:49:21 ID:psAlePUq
陳舜臣先生の本にシャー・ジャハーンの初恋はヌール・ジャハーンで
その面影を求めてだとかそういうタイプが好みだった
とかゴシップ的に書いてあった記憶がある
250名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 21:50:09 ID:SitnP+zt
お話中のところに申し訳ありません
火と闇のを投下させてもらっている者です

今後のSSについては、個人的な創作に切り替えてゆこうと考えておりましたが
先々サイトを作り、そこで公開する形を取る予定にいたしました

サイト作成の知識がなく、何時頃にと明言することも、必ずとお約束することもできませんが
準備が整った際に、一度だけこちらの方に告知させて頂きます
ありがとうございました
251名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 23:29:20 ID:CaLteZds
>>250
おおおーサイト完成したら日参しちゃいます。
のんびりでいいので、よろしくお願いします!
252名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 00:59:00 ID:5Csy2IrW
よかったよかった
253名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 12:25:41 ID:LxQHprTQ
楽しみにしています
254名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 13:06:46 ID:7ekW9ZiP
>>250
全裸で待ってます
255名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 17:44:55 ID:0GIpgahu
>>245
ああ、そうか他の国よりも強国なら
処女じゃなくてもあーだこーだ言われないのかw

王子の方も、日本だと人質育ちの偉人つーと徳川家康を連想するが
西洋風に、マケドニアのフィリッポス2世や東ゴートのテオドリック等に
並ぶ才覚の持ち主だったりするのかな
というか経験有りなのか、素質のある童貞なのかも気になるw
256名無しさん@ピンキー:2009/05/25(月) 00:16:23 ID:/8OPYlEa
>250
楽しみに待っています。
257名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 02:38:01 ID:qtdrtWTo
お姫様最高
258名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 20:06:41 ID:18VIJo/S
いぬ姫さまの作者様はいずこ
259名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 22:10:00 ID:8RYKNaqh
このまま丸投げなんてことは…
260名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 02:40:27 ID:iT1fGP6C
待つ
261名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 23:16:08 ID:rivbxeu0
続き書いてくれる作者さんに感謝
262名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 18:31:56 ID:R4vePHGE
もう6月か……保守
263名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 00:57:50 ID:+H+4HfuE
排他的にはならんほうがいいね
264名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 12:11:45 ID:qUQ5hxA2
現在、長期にわたって全規制の影響を受けている職人の皆様。
ただいま、こちらのスレ(したらば・エロパロ避難所)に置いて代理投下の以来が行えます。

書き込み代行スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2964/1060777955/

投下して欲しいスレの名前とアドレスを張り、その後、作品を書き込めば有志のかたがそのスレに作者の代理として投下いたします。
(数日ほど、時間が空くことがあります。できれば、こちらに書き込める方、積極的に代理投下のチェックをお願いします)


265名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 00:57:53 ID:PjAqBHiX
神は死んだ!なぜだ!
266名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 01:39:20 ID:fiD7/Vvi
規制だからさ
267名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 12:39:54 ID:O9P313Ah
規制が憎い。
268名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 15:14:27 ID:yTktl9q6
本当はエロい竜宮城
269名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 17:13:29 ID:zTFKP6+1
ギャグ漫画日和〜♪
270犬と笛:2009/06/11(木) 05:02:30 ID:1I+zTcnu
保守がてら投下します。

・なんちゃって和風ファンタジー
・一応芥川の「犬と笛」を下敷きにしています
・エロは薄め
・作中「食蜃人(しょくしんじん)」はダイダラボッチのこと

NGワードは「犬と笛」かIDで。
271犬と笛:2009/06/11(木) 05:03:01 ID:1I+zTcnu

 眼下に広がる景色が赤くちろちろと揺らいでいくのを、その持ち主はまるで他人事のように見つめていた。
 この世に生れ落ちてからの大半を過ごしてきた社が、今にも焼け落ちようとしている。行き交う怒号や悲鳴も、
この場所からは遠く、頬を染めるほむらの照り返しも、そこに潜む熱はまだ、昼のうちに夏の日差しが残した
それと区別がつかぬほどであった。
 けれどもう幾許もせぬうちに、己の命も、今しがた轟音と共に崩れ落ちた舞殿への大階段と同じ末路を辿る様子が
見えているのにもかかわらず、この社の主は不気味なほどの静謐を守っている。その周りだけは平素と変わらぬ
ぬばたまの闇が見えるようで、側使えの者たちは、避難を提案することを疑問にさえ感じるほどだった。
 夜半過ぎに何ものかの手によって火の手が上がったことに、社に住まうほとんどはすでに寝入っており、
気付くことができなかった。寝ずの番をしていた兵ですら気付けなかったのは、ことにその目をよく盗んで
放たれた火であったからであろう。警備兵が無能であったわけではない。相手が、悪かったのだ。
 社の主は従者たちの反対を無視して、何を思ったか一人だけ本殿に残った。切れ長の瞳を伏せがちにし、
じっと立ち尽くして何かを待っているようだった。

 と、びょうと吹いた強い風に、火影を受けて紫に照る黒髪がざわざわとさらわれる。顔にかかる髪を疎ましげに
払う社の主は、つと肩越しに背後の様子を窺った。
「駒の姫御子とお見受けいたします」
 どこから表れたものか、若い男の声を受け、姫はそれに背を向けたまま、くつくつと笑う。
「来ると思うておった、髪長彦よ」
「――先の皇子様の名において、御身を頂戴に上がりました」
 面識も無く名を当てられたことに一瞬虚を突かれたのか、不自然な沈黙ののちに、しかし穏やかな口調で髪長彦は
その役割を告げる。
「ぬしが必要なのは、我が身ではない」
 そうして場に不似合いな優雅さで、白い額に輝く赤い玉を取り上げながら、それを髪長彦の眼前に突きつけて見せた。
「これであろう」
 そこで初めて、姫と若武者は互いの顔を知ることになる。
 腰まで伸ばした黒い髪の映える切れ長の瞳が、髪長彦の貌を見据える。
 具足で守る厚い胸板に青黒赤三色の勾玉を飾り、精悍に頬がこけ、その目を隠す前髪に阻まれてなお分かるような
彫りの深い顔立ちではあったが、その色の薄さと名の由来であるらしい頭のてっぺんで括った長い髪が、彼の
男臭さを殺しているように姫には見えた。
「別に、くれてやって構わぬ。私など、これさえなければただの小娘、よくて政の道具に過ぎぬのだから」
「それだけでは意味がありません。駒姫様の通力がなければ」
「我が通力の源がこの玉であることなど知っておろうに」
 駒姫が自嘲気味に言ったことが気に入らなかったのか、髪長彦は飛び火を払いながら僅かにその口元を歪ませる。
「ぬしの、まことの目的を、言うてみよ」
 赤い玉をその手で弄び、髪長彦を駒姫は煽る。ごうごうと勢いをいや増していく火炎が社を焼いていく音を、
ひとつも気にしないその銀細工のように知的な顔は、実に楽しげであった。
「なぜ」
「なぜ? 私から社を奪った理由がくだらぬ命に寄るものであるというのが、気に入らぬからだ」
「…………」
「否定せぬのか」
「すべき部分が見当たりません」
「そうか、ではぬしも廃太子の命などくだらぬと思うのだな」
「…………」
「……言わぬなら、それで構わぬ」
「私は――」
 駒姫が玉を向けようと絹の裾を揺らしたそのとき、不意に髪長彦は口を開いた。
 髪長彦は泥と血で汚れた手を乱暴に着物の裾で拭うと、腰に佩いた太刀に手を触れる。
「私は、力が欲しい。天も地もすべて手に入れられる力が」
「ほう」
272犬と笛:2009/06/11(木) 05:03:29 ID:1I+zTcnu

 淡々とした口調に、駒姫はにわかに髪長彦への興味を持った。突きつけられたままの玉に気付いていないはずが
ないのに、若武者は気負いも恐れも持たず、静かに続ける。
「玉を奪えば、褒美は意のまま。ですから、是が非でもいらしていただきます」
「殺して奪えば、それでしまいだろう」
「玉を持ったあなたを殺めることが出来るほど、私に通力はありません」
「偽りを申せ」
 駒姫はこれまでになく強い口調で髪長彦を一喝した。しかし髪長彦は動ぜず、真っ直ぐに姫を見つめたまま、
次の言葉を待っている。駒姫はその態度を不遜だと感じるより先に、かえって感心した。玉の通力を知りながら
堂々たる態度を崩さないその胆力はいったいどこから来るものか見極めたくなり、少しばかり挑発してみようかと思い至る。
「その太刀、そしてその勾玉。ぬしは人ならざるものの力を持っておる」
「…………」
「我が呪が効いておらぬのが、何よりの証拠よの。あやつめ、随分物騒なけものを飼っておるわ」
「さすが、斎の姫は違う」
 その通りです、と思いのほか素直に認めたことに駒姫は密かに落胆し、見切りをつけようと呪に力をこめようと
したその時、髪長彦が一息に太刀を引き抜いた。
 その澄んだ刀身に己の顔が映ったようにみえ、この男が自分を殺すことは無いと直感してはいたが、気丈な駒姫も
さすがにひやりとした。炎の色を反射する切っ先から視線を峰に沿って落としてゆくと、前髪に遮られてこちらからは
よく見えないはずの瞳が、それを透かしてぎろりとこちらを見つめていた。
 視線は強かったが、不思議なことに恐怖は浮かばなかった。それどころかなぜだか、まるで元は同じ根から
生じたものであるような親しみを覚え、駒姫は困惑する。その意味するところを考えれば万が一にも有り得ないこと
ではあったけれど、月の光さえ通してしまいそうな冴えきった刀身に酔わされたのかもしれないと思った。
 その刀身のきらめきは、すぐに若武者の瞳と結びつく。
「共においでください」
 大きな手に握られていた太刀が、音もなく艶やかな漆を塗りこめた一本の笛に姿を変えた。その笛をひと吹き、
火の勢いを一瞬封じ込めるほどの突風が駒姫の視界を奪う。
「私は、あなたが欲しい!」
 風がやみ、駒姫が顔を庇った腕をどかすと、髪長彦の横に獅子ほどもあろうかという立派な黒い犬がそびえる山のように立っていた。
「ふふ、ふふふ」
 駒姫が、笑う。抑えた笑い声が、徐々に歯止めが利かなくなり、しまいには気が違ったかのような高笑いになる。
駒姫自身、そう長くは無いその人生の中で、こんな笑い方をしたのは初めてだった。
 ――ただ無性に、可笑しかった。
 斎王(いつきのみこ)といえば聞こえはいいが、この社に半ば幽閉されているも同然だった駒姫が、その社と
引き換えに、自由を手に入れようとしているのだ。隷属の対象が大王や祭神から目の前の若武者に変わるだけで
あることは承知の上で、それでも気分が高揚するのを押さえ切れなかった。
 この社が嫌いだったわけではない。夜明け前の清澄な気配と木々の呼吸の青い匂い、巨大な陽の沈む山の稜線の
黄金の輝き、神さびた石造りの舞殿を裸足で踏みしめたときの冷たさ、思い出すまでもなく身体に染み付いて、
駒姫をつくってきたものを今この瞬間もありありと思い描ける。社は駒姫そのものだった。
「私が欲しいか、髪長彦」
 赤い玉を握り締めたまま、駒姫は問うた。
 私が欲しいか。疑問ではない、確認だった。口に出すと、尚のこと気分が猛った。
 『駒姫』という存在の意味を知りながら、それでも欲しいと言って躊躇わない髪長彦が、心底馬鹿らしかった。
そして巧妙に隠してはいるが、その内に秘めているのであろう滾りきった欲が、駒姫を魅了した。
「先の皇子は私を殺せと言わなんだか」
「はい」
「そうせぬのは、先の皇子を欺いておるからじゃな」
「なぜそう思われるのです」
「ぬしが自分で言うたであろう、あめつちの全て欲しいと」
273犬と笛:2009/06/11(木) 05:03:52 ID:1I+zTcnu

 ふっと髪長彦が表情を緩ませたのを見て、駒姫は悦びに戦慄した。
 社が落ちてしまえば己の生も終わるものと感じていた駒姫は、今の今まで玉を奪いに来た者を死出の道連れに
してやろうと目論んでいた。社に火を放ったのがつい先だって廃嫡された日嗣の御子の手勢であると知れるなり、
駒姫の許にやってくるのはその配下でも武勇名高い髪長彦であろうということは、火を見るより明らかであった。
 別に、社を失うことに一矢報いたかったわけでも、自ら死ぬことを良しとしたわけでもない。ただ、再び天下を
取ろうということは、それなりの犠牲を払うということを先の皇子に思い知らせてやろうと、ふと、しかもきまぐれに思っただけだった。
 社があるうちは『斎王』という役目を望まれるが、それさえなくなってしまえば、あとは大して顔も知らぬような
豪族に嫁ぎ、ぼんやりと暮らすことになると知っていた駒姫は、だから別段、社に対して愛着はありながらも、
決して愛してはいなかった。所詮、斎王などといってもこの国ではお飾りで、己の意思など省みられず、生まれてから
死ぬまで政の道具に過ぎないのだ。ただ煌びやかな衣に埋もれ、歌でも詠みながら過ごす先が見えすぎる生を、
姫はすでに達観していた。生涯斎王の座についていたとして、こんな小さな社のことなど、振るう機会の無い
玉の力と共に忘れ去られ、己も干からびていくに違いない。
 駒姫が愛していたのは斎王の立場だけだった。その立場にいさえすれば、祭神と社を守るという大義名分の上に、
生の意味に納得することが出来たのだ。
 社が落ち、同時に斎王という立場を失い、もうすでに死んだも同然の自分を、目の前の若武者は欲しいという。
それを馬鹿馬鹿しいと言わずして何と言うべきか、駒姫は知らない。
「ふ、ふふふ。あはははは!!」
 大げさなほどの笑みを顔に貼り付けたまま、駒姫は髪長彦に向き直った。
「気に入った! 好きにせよ!!」
 獣が唸り声を上げ、その首を天へと突き上げる。それに呼応するように巻き起こるつむじ風が、駒姫の身体をさらう。
 身を刻まれるかと覚悟したその風は、ふわりと姫を包み、黒い大犬の背へといざなった。反射的に瞑った目を
開いてまず印象に残ったのは、武張った男の顎には不似合いなその肌の白さと、ぼんやりと裡から光る黒い勾玉だった。
「よろしゅうございますか」
「……よい。ゆけ」
 髪長彦は頷き、しっかりと駒姫をその胸に抱きとめ、またがった犬の首筋を撫でた。すると大犬は大地を蹴り上げ、
つむじ風に乗ってみるみる空へと舞い上がったではないか! 突然のことに驚いた駒姫は、咄嗟に髪長彦にしがみついた。
二人の長い髪が中空に舞い、しゃらしゃらと姫の装飾品が音を立てる。
「……あっ」
 急上昇を経て犬の動きが落ち着くと、駒姫にも眼下を見渡す余裕が出てきた。空を飛ぶなど尋常ではない状況では
あったが、思いのほか頼りがいのある大犬の背と、髪長彦の逞しい腕に支えられながら、おもむろに真下の社へ視線を落とす。
 山のたもとに、訪れる客もなくひっそりとしていた駒姫の社は、瑠璃の釉薬を流したような夜半の空に、
月を星を奪おうと赤い手を伸ばしている。
 燃え盛る炎はついに本殿まで届き、茅葺きの甍がちらちらと黄色く光を放っていた。社を好き勝手に飛び交う
火花は郎女を隠す御簾をでも気取っているのか、輪郭を淡くぼやかし、姫が直接は目にしていない、流されたであろう
多くの兵の血までも隠していた。
「――……美しいな」
 ぽつりと漏らした言葉は、本心からの言葉だった。じわじわと遠ざかる最後の炎からなんとなく目を離すことが
出来ず、駒姫は、握り締めた赤い玉を手の中で転がして気を紛らわしていた。
「姫」
「なんだ」
「寂しくお思いですか」
「さぁて、どうなのだろうな」
 二人は顔を見合わせることをせず、互いに違う方を向いたまま、気配だけで相手の表情を探った。髪長彦は駒姫に
憚ったのだろうし、駒姫はまだ、赤い社から目を逸らす気になれなかったのだ。
「……よく、分からない」
 そうですか、と最後に髪長彦が言ったきり、二人の会話は犬が地に降り立つまで途絶えた。
274犬と笛:2009/06/11(木) 05:04:33 ID:1I+zTcnu


 いつの間にか眠っていた駒姫が目を覚ましたのは、どことも知れぬ森の中のあばら家だった。どうやら若武者は
不在らしい。小屋の外で、合図でもするように小さく犬が吠えた。山犬ではなく、多分あの黒い大犬だろう。
辛うじて壁と屋根があるような小屋は、姫が見てきた風景の中でも飛びぬけて粗末であった。藁を敷き詰めた寝床は
温かかったが、身を起こすと明け方の空気はひやりと冷たく、またすぐに藁の中に沈み込む。
 頭上の箱に丁寧に髪が流され、装身具も外されていることに気付くと、駒姫は言いようのない胸騒ぎを覚えた。
ゆうべはただ夢中で何も考えずに髪長彦に従ってきたが、意識が鮮明になるにつれ、断片的だった記憶が繋がってくる。
(男に――)
 不可抗力であった犬の背での出来事とは違い、外されてきちんと並べられた装身具は、ぞっとする事実を浮き彫りにした。
いつの間にか意識を失った駒姫をこの藁の山に横たえ、髪や飾りの始末をしたのは、髪長彦以外には考えられない。
あの無骨な手が己の身を這ったかと思うと、それだけで肌がざわざわと騒ぎ立てた。けれどそれ以外に触れられた
形跡は残っておらず、それどころか泥で汚れた右手に革紐をしっかり巻きつけ、赤い石を握り締めたままだという
ことに気付き、また戸惑う。
(なぜ奪わなかったのだろう)
 社ひとつ守れない小さな掌の中の、計り知れない通力を持つちっぽけな石は、板壁の隙間から薄暗い小屋に
差し込む白い陽にかざして見ると、玻璃のように光を通し、駒姫ののど笛に紅色のあざを作り上げた。
「っ!」
 かたり、とどこかからの物音に、姫は腕を引っ込めた。あばら家の引き戸が開き、さあっと入り込む外気が駒姫の頬を撫でる。
(ん……?)
 狸寝入りを決め込もうと瞼を閉じるその一瞬の間に、駒姫は見慣れないものを見たような気がした。姿かたちは
確かに髪長彦だったけれど、どこか違う。何かの違いが姫の心に引っかかり、閉じた瞼をうっすら開かせた。
 がむしゃらで必死だったゆうべは気にしていなかった若武者の色彩が、駒姫の視界に飛び込んでくる。
 白い肌はもとより、戸口からの光に、長い髪が金色の輪郭を浮かび上がらせたことに、駒姫は目を見開いた。
後ろ手に引戸が閉められ光が失せると本来の暗めの亜麻色が分かるようになったが、それでもなお常人より遥かに
明るい髪の色は隠しようがなかった。
 そして何よりも鮮烈な印象を残したのは、顔に沿って流された前髪から今度ははっきりと見える、青い瞳だった。
(異形、か……!)
 髪長彦が駒姫の視線に気付いて、表情を強張らせた。つと顔を逸らし、その手で乱暴に前髪を散らす。
「申し訳ございません」
 駒姫は今さら知らぬ振りをするつもりにもならず、藁を払いながら髪長彦をじっと見つめた。
「なぜ謝る」
「不吉なものをお見せしました」
 姫が何も言わずにいると、髪長彦はすっと膝を突き、目の前に串焼きの魚を差し出した。
「岩魚です。沢で獲ってまいりました。串は葉を落とした枝ですし、器も箸もご用意できず申し訳ありませんが」
 ふむ、と駒姫は逡巡したが、それも僅かの間に過ぎなかった。頓着なく串を受け取ると、そのままがぶりと
魚の腹にかぶりつく。魚の油が頬にはねたのを、大雑把に手の甲で拭った。
 面食らったのは髪長彦の方で、差し出した手を下ろすこともせず唖然と目を丸くする。
「なんだ、ぬしは食べぬのか」
「い、いえ」
 言ったはいいが相変わらず固まったままの髪長彦の不意をついて、駒姫は男の前髪を払った。
「な……っ」
「食べるのか食べぬのかはっきりせい!」
 間近に見える青い瞳に駒姫は息を呑む。翡翠を思わせるやわらかな碧は『異形』の響きが内包する不吉の印象には
程遠く、薄い髪色に調和して、整った容貌を演出している。不思議だとは思ったけれど、怖いとは思わなかった。
「あ、はは、参りました」
 そこでやっと髪長彦は表情を崩し、駒姫の前にどっかりと座り込んだ。
「私は野育ちでな。ふたつのときに母宮が儚くなってからこちら、ずっとあの山の社で暮らしてきたのだが……
斎王を拝命してからも山歩きの楽しみを忘れられなかったのだよ」
「道理で。肝の据わったお方だ」
「都のお歴々が見たら卒倒するに違いないな」
 肩を竦める駒姫に対し、髪長彦はかぶりを振った。
275犬と笛:2009/06/11(木) 05:04:55 ID:1I+zTcnu

「権力に取り付かれた者の顔色など窺ったところで、何の益がありましょう」
「おや、力が欲しいと申したのはどの口かな」
「私が欲しいのは天下を治める力ではありませんから。……捨ててまいります」
 髪長彦は急に立ち上がり、骨だけになった魚の串を半ば強引に駒姫から奪い取ると引戸を開けて出て行ってしまった。
「やれやれ」
 手持ち無沙汰になった駒姫は、ぼんやりとした空虚の中にいた。
 今頃社が落ちたことが都に伝わる頃だろうか。だとすれば、駒姫は死んだことになっているのだろう。社と共に。
 己が選択を悔やむつもりは毛頭無いが、かといって考えた上での選択でもなかったため、この先待ち受ける
己の身の上について、まるで想像がつかなかった。
 ばさりと藁に身を預ける。耳の裏にちくりと刺さる藁の先の感触が妙に心地よい。無いよりましという程度の
天井という名の屋根は、ところどころ木が傷み、継ぎ目に沿って黒くなっていることを駒姫は発見した。
こうして腐食が進み、いつしか崩れ落ちてくるのだろうと想像したところで、髪長彦が戻ってくる。
 どこから調達してきたものか、太い青竹の筒に水を汲んできており、上半身を起こした駒姫の手に濡れた
手ぬぐいを握らされる。
「どうぞ御身をお清めください」
「……のう、髪長彦よ」
 煤や埃で汚れた顔に畳んだ手ぬぐいを遠慮なく押し当てたまま、駒姫は訊ねた。
「なぜ生かした?」
「――それは昨日申し上げたとおりです」
「私は答えを貰ってはおらぬ。そなたには私を殺める力がある。機会もあった。なぜだ」
 髪長彦の溜息が聞こえ、駒姫はかっと耳を赤くした。なんのことはないただの溜息だのに、じわりと目頭が熱くなる。
「姫……」
「答えよ!」
 ばっと手ぬぐいから顔を上げると、悲しげに眉をひそめる髪長彦と目があった。それを見るとさらにぐっと
胸が詰まり、駒姫は何も言えなくなってしまう。
 髪長彦は穏やかな手つきで駒姫の髪を一房絡め取ると、矢庭に口付けを落とした。
「何を――」
「数々のご無礼、お許しください。私が欲しいのは玉ではなく、あなた自身なのですよ、姫」
 泣く気もないのにぼろぼろとこぼれる涙を、髪長彦はその指で丁寧に拭っていく。
「あなたは、しばらくののちに食蜃人(しょくしんじん)の贄になると決められておりました。あなたはその玉を
使いこなす器をお持ちだ。そんなあなたを贄として差し出せば、力を蓄えた食蜃人が再び八岐大蛇を蘇らすとも
限らない。残った玉も、烏合の衆に扱える代物ではない」
「贄? 何を馬鹿な……」
「信じられずとも構いません。私はただ、先の皇子の命に乗じてあなたを救うことだけが目的でしたから」
「力が欲しいと」
「嘘も方便と申します。お許しを」
 こうべを垂れた髪長彦に、駒姫は憤りにも似た感情を抱いていた。それなのに、何も出来ない。頬を張ってやる
ことも顎を蹴り上げてやることも出来るのに、髪長彦は決して避けないだろうということを思うと、実行に移せない。
無抵抗の相手にそんなことをしても、余計に空しくなるだけだ。
「闇に紛れて私どもの里へお連れします。ここは安全ですから、夜になるまで身体をお休めください」
「ぬしはどうする」
「外に」
 引戸が閉まると、拭い去るもののいなくなった駒姫の涙は、ただいたずらに緋袴に吸い取られるばかりで
何も解決しはしなかった。
 手ぬぐいを放り投げ、右手の中の石に頼るように組んだ手を額にこすりつける。何がそんなに辛いのか、
分からない。失うものなど無かったはずなのに、心のどこかに隙間があるような気がして、落ち着けない。
「ううっ」
 誰かに縋りたいなどと思ったことは初めてだった。駒姫の周りには都の姫君に比べるとずっと少ないとはいえ、
いつでもたくさんの人がいて、不便を感じる前に人の手が伸びてくるのが当然だったのだ。本殿に座した姫が手を
伸ばせば、三つ先の部屋まで届いた。それが今は、三つ先どころか、風で吹き飛びそうな薄い壁越しの髪長彦にすら届かない。
 今しがたまで眦に感じていた若武者の親指の感触を、駒姫はひどく恋しく思った。
276犬と笛:2009/06/11(木) 05:05:22 ID:1I+zTcnu

「……?」
 ふと、駒姫の耳が何かに気付いた。
「笛、の」
 鳥のさえずりとは違い、確かに旋律がある。風に乗って聞こえてくる調べは、穴だらけの小屋にいとも簡単に
入り込み、姫の傍らで歌い始めた。
 俯いた顔を上げ、どちらから聞こえるのか耳をすませてみる。感覚には自信を持っていたつもりだったが、
遠くから聞こえるような気も近くから聞こえるような気もして、すぐに探るのをやめた。
 甘やかな旋律に、時折憂いが混じるように音の調子が変わると、慰めるように小鳥がさえずる。草木もその身を
ざわざわと揺らして、笛の音に聞き惚れているようだった。
 何とは無しに笛の歌う様を気にしているうち、不思議なほど気持ちが凪いでくるのが分かった。
 なかなか止まらなかった嗚咽も、頬をひりつかせる涙も、すうっと引いてゆく。
(ああ……きっと、これは)
 ゆっくりと瞳を閉じ視覚を断つと、昂った神経を穏やかな旋律が撫でて宥めていくように思えた。
 それはまるで――まるで。
 最後に見た悲しそうな青い瞳が浮かび、孤独とはどういうことか思い知る。駒姫はふらふらと立ち上がり、
一番近い壁に手を触れた。
 音の根拠が、この向こうにあった。所々に亀裂の走る板壁を木の筋の通りなぞって降りていくと、板と板の隙間から
僅かに亜麻色が覗いている。壁に背を預けて座り込んでいるのだろう。
 駒姫はその壁にそっと背を凭せかけた。童のように膝を抱いて座れば、その肩を誰かに労られているように感じた。
笛の音はいっそう優しく姫を癒し、慰める。
 この薄い壁の向こうで、異形の若武者はどんな顔をしているのだろうか――そんな疑問の答えを求めているうち、
笛の旋律にたゆたいながら駒姫は再び穏やかな眠りに落ちていた。



 意識を取り戻す切っ掛けは、実に些細なことだった。あばら家の外で吠えた犬の声に目が覚めてしまったのだ。
 知らず知らず緊張していたのか、身を起こすと肋骨が軋み、駒姫は顔をしかめた。壁に凭れていたはずが藁の上に
いるのは、言わずもがな髪長彦によるものだろう。差し込む陽は赤い。
「お目覚めですか」
 不安そうにも怒っているようにも見える何ともいえない表情で、いつの間にか具足を解いた髪長彦が駒姫の顔を
覗き込んでいる。
「あ……っ!」
 思わず姫は髪長彦の首筋に手を伸ばし、その頼りなさに言葉を失った。髪長彦は照れたようにぎこちなく微笑んで、
目で駒姫の手の動きを追っている。
「変でしょうか」
「変、というか」
 括りあげた元結から切ったのか、指先に触れるばらばらな毛先の違和感をどう表現したものか。顎先程度の
ところでばっさり断たれてしまった男の髪をいたずらに引っ張ると、その手を掴まれ、駒姫はどきっとした。
「もともと私の一族に髪を伸ばすならわしは無いのです」
「か、『髪長彦』では、なくなってしまったな」
 動揺を隠せなかったのは、真剣な眼差しとかち合ってしまったからだった。ぴたりと絡み合った視線はなかなか
話すことが出来ず、駒姫の当惑は増す一方だ。
 掴まれた手を取られ、口付けを落とされる。驚いて引っ込めようとした手は、更に重ねられたもう一方の男の手に阻まれた。
277犬と笛:2009/06/11(木) 05:05:45 ID:1I+zTcnu

「十年ほど前のことです。真夜中、まだ幼いあなたの寝所にひとりの曲者が紛れ込みました。賊の狙いはその
赤い玉でした。それは、元々はその賊の一族の秘宝であったからです」
 唐突に昔語りを始めた髪長彦は、愛しげに滑らかな駒姫の白磁の肌を撫でた。
「賊は少年でした。玉を取り戻す使命を与えられた彼は、忍び込むまでに毒矢を受けてしまいました」
 そこまで言うと、髪長彦は胸にかけた勾玉の飾りを取り払い、おもむろにぐっと着物の合わせ目を開いた。
 もろ肌脱ぎになった若武者はくるりと駒姫に背を向ける。予想外に傷の少ないその背中で、左肩の傷痕が特に目立っていた。
「暗闇のなか火も灯さず、あなたは恐れを知らず手探りで賊の背中に刺さった矢を抜き、玉の力で毒を吸ってやりました。
命拾いした賊は、怯えきって礼もせず謝罪も忘れほうほうの体で逃げ出しました」
 淡々と語る髪長彦が、肩越しにちらりと笑みを乗せた頬を見せた。
「それが」
 駒姫は眉をひそめ、小さく溜息をついた。気を遣ったつもりだったが、この至近距離で相手が気付かぬはずがない。
それは分かっていながら、なおつかずにはいられなかった。
 傷がある。その傷を治したという玉もある。髪長彦の言葉を信用せぬわけではないにしろ、十年も前のことを
駒姫ははっきりと思い出せない。そんなことがあったような気もするし、無かったような気もするのだ。
 そして、もし本当に髪長彦の手当てをしてやっていたとしても、駒姫の性格からして、気まぐれからの行動に
過ぎないことはまず間違いが無かった。
(なのに)
 よもやその恩を返しに来たとでも言うなら、男は正真正銘の痴れ者だ。社に火を放ったことは、廃太子の目を
誤魔化すために必要だったからなのだろう。けれど、命を救い、話によれば本来目当てであるはずの玉も奪わず、
手足の自由すらそのままに駒姫を扱っている今の状況は、愚かというよりない。
(侮られておるのか?)
 駒姫は背中の傷痕にそっと触れた。男はぴくりと反応したが、咎めなかった。
 今ここで、手の中の玉の力を解放すれば、恐らく髪長彦の源の分からない力を持ってしても耐えることは難しい
だろう。それが分からないような男には見えないのに、なぜこんなにも気を許しているのか。
「言ったでしょう。私の目的は、玉ではないと」
「分からぬ」
「先の皇子に取り入ったのは、彼が玉を狙っていると知ったからです。それだけならまだいい。問題は、玉の主
であるあなたを邪魔に思っていることでした。贄の話を持ち出されたとき、もう時間がないと感じました」
「…………」
「あなたにとっては気まぐれでも、自業自得の傷を治してもらい、私は確かに生きながらえることが出来た。
玉など、別にいつだって取り返せるのです。けれど、あなたの命はそうはいかない」
「そんな陳腐な理由で」
「構いません、陳腐で。それが私の真であると、私自身が分かっておりますから」
 本当は、恨むべき相手であるはずなのだ。
 髪長彦の放った火のせいで命を落とした者もいただろう。髪長彦の配下の者――ひいては髪長彦自身に殺された
者もいただろう。そんな彼らを守る義務が駒姫にはあったはずだ。
 それなのに、恨めない。憎めない。ちっとも負の感情が沸いてこない。それどころか、思い出すのはあの優しげな
笛の音と、孤独の涙を拭ってくれた頼りがいのある大きな手。
「あの夜、髪長彦は生まれ、そして今宵、髪長彦は死にました」
「ならそなたは何者だ」
 男は振り向いて、駒姫を真っ直ぐに見据えた。
「――利人。それが私の真の名です」
「り、ひと」
「一族の言葉で『光』という意味があります」
「光、か」
 駒姫は両手を差し出して男の――利人の頬を覆った。前髪を払うと、意志の強そうな澄んだ青い瞳のなかに、
泣きそうな顔をした黒髪の女が映っていた。
「我が名は、耀(あかる)。奇遇だな、私の名も光という意味だ」
 男が息を呑む。女は微笑んで、己の額を相手のそれにくっつけた。
278犬と笛:2009/06/11(木) 05:06:11 ID:1I+zTcnu

「姫……! 真名を差し出すなど、いったい何を考えておられるのですか!!」
「そなたに言われとうない。それに今さら言の葉を消すことも出来まい。私は、真名を差し出すことでそなたに
呪を掛けたのだ」
「それは」
「そなたが、私を生涯守り抜かなければならぬ呪だよ」
 男はふっと息を漏らすと、顔をずらしぎゅっと耀姫を抱きしめた。強い力に一瞬息が詰まったが、姫も同じように
男の背に腕を回す。短くなった髪を梳くと、男はくすぐったそうに肩を竦めた。
「そのような呪……十年前に、とっくにかけられておりますよ」
 藁山に背が押し付けられ、互いの鼻が触れた。
 出立は一晩先になりそうだ。

 耀が初めて受ける口付けは、煤と男の汗のにおいの混じる、何とも野生的なものだった。
 社の奥で香を焚き染めた耀の着物も煤けているのだから、無理もない。そのことに気付いたのは相手も同じ
だったようで、唇をもう一度強く押し付けると名残惜しげに耀から離れた。唾液が糸を引き、耀の唇の上に落ちる。
 それを舌で舐め取ると、戻ってきた若武者とはたと目が合った。
「……っ」
 不意に視線を逸らされたかと思うと、二の腕をとられてぐいっと身を起こされる。
「あ、あの、髪長彦」
「利人、とお呼びください耀さま」
「り、りひと……」
 耀が躊躇いがちに名を呼ぶと、利人はなぜか眉をしかめた。
「利人?」
 利人は真面目しくさった顔で耀の着物の合わせ目を強引に開き、上半身を露わにさせた。そして藁の上に腹ばいに
なるように身体を引き倒すと、その背に散らばる黒髪をまとめて払った。
 素肌に髪と利人の指が微妙に触れ、耀は身体の奥の方から這い出してくる吐息を必死で誤魔化した。唇を噛み締め、
その上に手を当てて口を塞ぐ。
「ふぁっ」
 ところが、それはあっけなく崩された。何か冷たい感触が背中に落ちてきたのだ。びりっと全身に痺れが走る。
 肩越しに振り向くと、手ぬぐいで耀の背を拭いている利人の手があった。
「完全には消えませんが、これで多少は気にならなくなると思います」
「そ、そうか」
 そういえば身体を清めればいいと勧められたのに結局何もしなかったことを思い出し、大人しくされるがままになる。
 肌を傷つけないように気を遣っているのか、利人は優しく優しく触れてくる。
 それが、逆にたまらない。意識的にしているのか無意識にしているのかは与り知らぬところではあったが、
耀の知らぬ感覚を、男の手は少しずつ揺り起こしていた。
「う……っ、ふ」
 手ぬぐいの冷たさはもちろんだが、腰元を抑える利人の手が微妙に位置を変えると、耀はその手を払いのけて
しまいたくなる。神経をかき乱され、平静を保ってられなくなるのだ。
「耀さま、前をお拭きします」
 そう言われても、自ら胸を曝け出すような真似は出来るはずがなかった。沐浴や更衣の際、従者に全裸を見せて
いるし触れられてもいるのに、利人にだけはどうしても見せられない。
「姫?」
「……いや」
 けれど心配そうに顔を覗き込まれてはどうしようもない。結局、利人に半ば縋るかたちで、耀は仰向けに転がされた。
 柔肌が外気に触れ、衣のないことでここまで頼りなさを感じることを耀は知らなかった。
 手ぬぐいを握り締めた利人にじっと見つめられ、いたたまれなくなる。目をぎゅっと瞑り、頬を藁に押し当てた。
 すっと利人の左手が再び腰に伸びる。しっかりと捕まえられ、耀は肌に落ちてくるはずの冷たい感触を覚悟した。
「あっ、あぁっ! りひ、と……っ」
279犬と笛:2009/06/11(木) 05:06:27 ID:1I+zTcnu

 確かに濡れた感触はあった。ところが、耀を襲ったのは手ぬぐいではなかったのだ。
 薄目を開いて飛び込んできたのは、己の乳房に吸い付く亜麻色の短い髪。右手がもう片方の乳首に伸び、きゅっと摘み上げた。
「や、やぁ!」
 耐え切れずに漏れ出る己の声が卑しくて、耀は右手の甲を押し当てた。それでも堪えきれず、その肌を噛む。
 膨らみを揉まれ、肌を舐められ、吸われるたび、鼻から甘い息が抜けた。
 ちらっと青い瞳がこちらを見た。そのまま利人は起き上がり、耀の口元から手を奪い去る。手の甲にはっきりと
刻まれた歯形を見るなり、嫌悪の色がその顔に浮かぶのを耀は見た。
「痕が残ります」
「け、けれど……んむっ」
 耀の言い訳など聞く気は無いらしく、利人は口付けることでその続きを封じた。
 忍び込んできた舌が耀の口の中を蹂躙する。舌を捉えられ吸われると、耀は奥から何かが滲み出てくる感覚に襲われた。
(溶けそう……)
 まさかそんなことを言えるはずも無く、耀は男の逞しい二の腕にしがみついた。
「ふ、っふ」
「傷つけるなら、私にしてください。潰れたって平気ですから」
 そう声の端々に怒気をじわりと漂わせて、利人は耀の口にその左手の親指を含ませた。反射的にその指を吸うと、
ちゅぱちゅぱと音がした。
 まるで童女のような扱いだと思ったが、臍に舌を突っ込まれて、すぐにその考えを撤回した。利人の右手が自身の
着物と耀の帯と袴とを器用に解いていくさなか、時折敏感な部分を掠めていく。
 不意打ちに耐えようと歯を噛み締めようとするが、利人の親指に阻まれてそれはままならない。利人は噛まれても
気にしないようだったが、耀の方が気にした。
(だって、この親指は)
 耀の涙を拭ってくれた指だ。心を慰める笛を吹いてくれた指だ。
 だから、耀は決して利人の指に傷をつけられないのだ。傷をつけるくらいなら、声を出すことくらい――
「ふあっ、あん!」
 耀は火照って赤くなった頬をさらに赤くした。
(何とも無くなんか、無い!)
 すっかり裸になった耀の内腿を撫でられて挙げた声を、激しく後悔した。今まで聞いたことの無い自分の声は、
見事に欲に濡れていて、耀の羞恥を煽る。
「姫……嬉しいです、感じてくださったんですね」
「え……っ」
 口から親指が引き抜かれ、身をかがめた利人が耀の両脚を広げる。床に落とされた緋袴に、利人の裸の膝が乗った。
「あぁぁっ、いや、ふぁっ」
 ちゅくちゅくと先まで舐めていた指で敏感な芽を撫でさすられると、もうどうしようもなかった。
太腿に口付けられ撫で回され、びくびくと腰が動く。
 開く気も無いのに勝手に開いてしまった左足が、つま先で濡れた何かを蹴った。多分手ぬぐいなのだろうが、
それを確かめる余裕が今の耀には無い。
 とろとろに溶けた秘所は、利人の呼気にすら反応した。
「痛かったら、仰ってください」
 そう前置きされて、利人の指がずぶずぶと耀のそこに沈んでゆく。
「ひぁ……っ」
 ゆっくりと抜き差しされても、幸い十分に濡れた秘所は、痛みを感じることは無かった。熱を持って駆け巡る
快感に、否が応にも耀は振り回される。
 じんじんと痺れたようなそこの疼きを、鎮めて欲しくてたまらない。
「利人、りひと……」
「はい、耀姫」
 はぁはぁと熱い吐息を漏らしているのが耀だけではないことに、ひどく興奮する。情欲の青い火を灯した利人の
潤んだ瞳から、目が離せなくなる。薄く開いた唇や、武人らしく均整の取れた身体の色気を、耀は独り占めしたくなった。
280犬と笛:2009/06/11(木) 05:06:43 ID:1I+zTcnu

 腕を伸べ、利人の髪に手を差し入れる。短くなった髪はそれだけでは物足りず、耀はじっと利人を見つめた。
 言わんとすることが分かったのか、利人は素直に身を起こした。広い背に腕を回し、ぎゅっと抱きつく。
玉を巻きつけたままの右手が、利人の肩の傷痕をなぞる。
「そなたは、私のものだ」
 上擦る声で、耀は何とか言いきって、その唇を男のそれに押し付けた。
「耀さま!」
「う、くっ」
 秘所に、熱い何かが押し付けられる。そのまま利人が腰を揺らし、粘膜を擦った。苦しげに眉間に皺を刻む男の顔。
「あっ、ああっ!!」
 花芽に利人の手が伸びたかと思うと、きゅっとつままれ、脚をびくびくと痙攣させながら耀は絶頂を迎えた。
「駒姫、耀さま、よろしいですか」
 ふわふわと浮遊感に浸りながら、訳もわからず耀は頷いた。利人があまりにも切なげな表情を浮かべるものだから、
こちらまで切なくなる。
「耀さま、痛ければ私の肩を噛んでください。背に爪を立てても結構です」
 途端、ぐっと秘所に熱いものが入り込み、耀の身体は強張った。
「いっ」
「力を抜いて」
 接吻と胸への愛撫を繰り返しながら、ゆっくりゆっくり、利人は腰を進める。
 利人がそれを完全に埋め込んでしまうまで、必死に痛みを耐える。耀は、意地で利人の身体に傷をつけなかった。
「……大丈夫ですか」
「大丈夫だろうと、そうでなかろうと、動かねば収まりがつかぬのはそなただろう」
 玉の汗を浮かべた耀の一言に、利人はそのとおりですと苦笑いを浮かべる。
「あとで、私が満足するまで笛を吹いてもらうからな」
 耀が頷くと、利人は再び腰を動かし始めた。
 ずんっと身体の奥を突き上げられ、壁を容赦なく擦られる。
 耳元に利人の乱れた熱い吐息が吹き込まれ、耀の頭はかっと一気に熱を帯びた。
「……くっ!」
 知らず知らずうねる腰に、利人の腰がぐぐっと押し付けられる。
「耀さま、耀さま」
 うわ言のように名を呼ばれる。目が合い、示し合わせたように互いの口をまさぐる。濡れた唇に反応して、
耀の中がぴくりと締まった。
「いい、きつい……」
 恍惚とした表情で、利人が呟いた。腰の動きがいっそう早くなり、耀姫を翻弄する。
「利人、りひとぉっ」
「姫、申し訳ありません!」
「うぁっ、あ、ひぁ……や――っ!!」
 はっはっと肩で息をしながら、理性を飛ばした利人は抉るように肉棒を耀に突き刺した。
 のけぞる女の背と、ひきつる男の腹筋。くらくらするほど濃厚な汗の匂いが、耀の脳髄を犯す。
「うぅ、くぅ!」
 びくりと腰を震わせて、利人が耀の中に精を吐き出すのと、再び耀が気をやったのは、ほぼ同時だった。
281犬と笛:2009/06/11(木) 05:07:11 ID:1I+zTcnu



「……そなたは冷静に見えて、存外無茶をする」
「返す言葉がありません」
 すっかり身支度を整えると、筒に汲んだ水は白く濁った。煤や泥と、二人の体液をきれいに清めた手ぬぐいは、
しっかりとその役目を果たしたらしい。
 利人の腕の中で、膨れ面の耀姫はさらに不平を漏らす。
「藁は背に刺さるし、草履は履きっぱなしだし」
 耀は口をへの字に曲げて、右手に握り締めた玉を利人の眼前にぶら下げる。
「それに、乙女を失った私は、もうこの玉を操れぬかも知れぬのだぞ」
「それは好都合。強すぎる力など害にしかなりません」
「この力でそなたを救ってやったのではないか」
「それはそうですが」
 利人は苦笑いを浮かべ、機嫌を取るように耀の美しい黒髪を梳いた。すかさず耀は追撃の一言を突きつける。
「髪もどろどろだ。湯浴みがしたい」
「仰せのままに、耀姫」
「……真剣に聞いておらぬな」
「玉ごと私どもの里においでくだされば、力など、意味はありません」
 わずかに翳った利人の微笑みを、耀は敏感に悟った。向かい合った頬に柔らかな手を添える。
「社に火を放ったことを悔いておるのか」
「…………」
「遅かれ早かれ、同じことが起きたろうよ。そなたが来ていると分かったから、私は従者たちを戦わせず逃がす
ことが出来たのだ」
 青い目が訝しげに耀を見つめる。耀はふっと微笑えんだ。
「『武勇名高い髪長彦』と戦って勝ちおおせるような武人は、我が社にはいなかった。それだけ……この玉の力に
頼っておったのだよ」
「耀さま……」
「だからな、利人。むしろ感謝しているのだ。私をしがらみから切り離してくれたことを」
 口付けはどちらから仕掛けたものだったか、この際どちらでも構わないだろう。
 小屋の外で、黒犬が大きく欠伸をした。


282犬と笛:2009/06/11(木) 05:07:44 ID:1I+zTcnu
以上です。お付き合いありがとうございました。
283名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 08:59:05 ID:HZuWeoY1
>>282
神降臨ktkr
どっぷりと世界に引き込まれました!
利人と耀すごくよかったです。
里に戻ったらいい夫婦になりそう。

利人の一族も気になるし、また利人と耀の話が読みたいです。
久しぶりに萌えた、ありがとう!
284名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 22:14:31 ID:1X9pvoNM
こういうのを待ってましたGJ!!
285名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 23:11:54 ID:VCOqPH1i
WH文庫の斎姫異聞を思い出した
すごく面白かったよ
また続きとかあるならよみたい
286名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 23:57:15 ID:zc3RFrkd
>>282
すごい萌える。
いいものを読ませていただきました!

>>285
なついw
287名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 19:51:07 ID:CJOb5ZZ2
よかった。GJです!
自分は金の海銀の大地思い出した。巫女姫様とかたまらんのう
288名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 08:37:26 ID:H0IVxVO2
作者さん、ありがとうございます。
堪能させて戴きました。

>>287
「金銀」、大好きでした。
ラストまで構想が決まってる様なことをおっしゃっていたのに・・・。
遺稿があるなら出版して欲しいですね。
289名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 10:32:52 ID:EUHR73T6
ドイツ語で光がリヒトだったか・・・
290名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 23:47:42 ID:sxzMwOOY
萌えた
291名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 18:13:31 ID:V3fN1jY8
>>289
利人=リヒトね
なるほど
292名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 22:06:13 ID:T9HN788T
武闘派血塗れお姫様のエロが読みたい。
293名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 22:15:20 ID:KQMTAhGx
うーむ、それはどちらかというと女戦士スレの範疇でないかい
姫要素が強ければこっちなのかもしれないけど
294名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 12:27:32 ID:ZXI2uGQ3
じゃあ次からはテンプレ変えとこうぜ
看板に偽りありはよくないよ
295名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 14:40:39 ID:rDKbd3Fe
うーん、「戦う女の人」と「お姫様」の成分のうち、
前者が強いなら、やっぱり女戦士スレ向きだと思うな。
そういうの喜ぶ人が向こうの方が多いという意味でも。
296名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 16:52:53 ID:yrihNzAF
>姫のタイプも、高貴で繊細な姫、武闘派姫から、親近感ある庶民派お姫様。
>中世西洋風な姫、和風な姫から、砂漠や辺境や南海の国の姫。王女、皇女、
>貴族令嬢、または王妃や女王まで、姫っぽいなら何でもあり。

姫が主人公な以上、職人に任せれば良いと思うが
297名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 17:52:58 ID:Ods9TCE8
>>292はなんとなく姫成分が高そうな気もする、というかそんな図が浮かんだ
多分服装が一番大きい、なんかドレス姿で偉そうだったから
でも俺はエロには繋がらなかった
298名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 17:55:40 ID:wQoyBl5y
姫か姫じゃないかは外見じゃないだろうがJK
299名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 18:11:45 ID:Ods9TCE8
そうか、まあそういわれると
GパンTシャツの姫とかアリだよな

でも俺のイメージの中では全く戦士ではなかったんだ…戦場にはいたけど
300名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 20:31:42 ID:lGhNwA9P
>俺のイメージの中では
こう言えるなら、イメージなんて人それぞれってわかる筈さ
301名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 23:00:18 ID:X519h+/x
意味のない会話
302名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 23:51:59 ID:R3VSYF6j
アリーナ姫とかすっごいツボだけどな
303名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 07:32:12 ID:cx1HqWc0
怪物王女・・・ふがふが
304Zephyr:2009/06/27(土) 19:03:45 ID:+WDtPm5E
投下します。初投下なので色々不手際があるかもしれませんが、何卒ご了承下さい。

※注意事項※
・勇者×姫様というある意味王道ネタ。和姦です。
・書きたいシーンだけを書いて繋いだツギハギだらけのお話。
・エロシーンは最後の五分で思い出したように怪人と戦う平成ライダー並にやっつけです。

陵辱物やしっかりした物を読みたい方、ヌキたい方は「Zephyr」でスルー推奨です。
305Zephyr:2009/06/27(土) 19:04:46 ID:+WDtPm5E
1.
 そこは、少女には見慣れない世界だった。右を見ても左を見ても、見える物は広大な草原。後ろ
には少女がこれまで通ってきた道、前にはこれから少年が行く道。空も大地も、全てが夕日に赤く
染められ、オレンジのペンキをぶちまけられたかのようだった。
 ――少女は見慣れない世界に来てしまった。
 いつもなら心が躍る道の景色も、今は彼女の不安を煽る。
 涙が止まらなかった。最後だから、もう二度と会えないから、だから、せめて最後くらいは笑顔で。
そう思えば思うほど、「最後」「2度と会えない」と言う言葉が胸に強くのしかかってきて、心の奥から
涙を引き摺り出してくる。
「姫さま、泣かないでくださいよぅ」
 すっかり困った顔をした少年が、寂しそうに言う。まだ7つになったばかりのその少年の顔には、7
歳の少年が知るには早すぎる、諦観の念が浮かんでいた。
 ごめん、なさい。少女がやっと喉の奥から絞り出せたのは、謝罪の言葉だった。
 ごめんなさい。繰り返し、呟く。
 一ヶ月前までの彼は、隣国である騎士の国バイフロストの第二王子であり、将来を嘱望された
優秀な騎士の卵であり、そして――そして、魔法王国パフリシアの第一王女である自分の、許嫁、
だった、少年。
 だが今の彼は、親に捨てられ、国を追われ、全てを失ってしまった――奪われてしまった。
 奪ったのは他でもない、自分自分の軽率な行動が、幼い彼から地位も、将来も。全てを奪って
しまったのだ。
 自分より年下の、背丈も低い許嫁。それは友人というよりはまるで弟のような存在だった。そんな
弟に、お姉さんっぽいところを見せたかった。凄い、と尊敬の目で見て欲しかった。だから一月前
の祭りの日、彼を連れてこっそり城を抜け出した。2人だけの、ちょっとした大冒険だった。
 だがその結果は悲惨なものだった。混雑する雑踏に紛れて離ればなれになってしまい、ぐずって
いるところを悪漢に攫われた。男達はまだ成人もしていない少女の服を剥ぎ、乱暴をしようとした間
一髪のところではぐれたはずの少年が護衛を連れてきて事なきを得た。
 問題はその事件の後である。何を思ったか少年の父であるバイフロストの国王は、少年を勘当、
国外へ追放すると言い出したのである。子供のしたことだから、どちらかと言えば非は娘にあるか
らと少女の父親であるパフリシア女王やバイフロストの側近達も進言したものの、騎士見習いが
守るべき主を危険にさらすなどあってはならぬとバイフロスト国王は頑として譲らず、少年は全てを
失うこととなった。
「僕は、大丈夫です」
 泣き止む様子のない少女に、少年は胸を張って言った。少女は顔を上げ、少年の顔を見た。
涙で曇った先にある少年の顔は凛々しく、強い意志を感じさせる物だった。
「僕は強くなります。強い騎士になって、きっと戻ってきます」
 だから大丈夫です、と。力強く、断言して見せた。
 根拠も何もない、子供の夢想に過ぎない言葉だ、と少女は思った。そう思った、
「……うん、待ってる」
 ――ハズなのに。どうして彼の言葉は、こんなに強く、信じることが出来るのだろう。
 気付けば涙は止まっていた。純白のドレスが皺になるのも気にせず、目尻にたまった涙を袖で拭
った。
 そうだ、彼は帰ってくると言った。帰ってこれると信じている。ならば、世界中の全ての人が彼の言
葉を笑おうとも、せめて自分だけは、彼の許嫁である自分だけは、最後まで彼を信じていよう。
「待ってるから、ずっとずっと待ってるから」
「はい、必ず迎えに来ます」

 ――そして2人は、指切りを交わした。どちらが言い出したわけでも、どちらが先に指を差しだした
わけでもない。どちらともなく、ごく自然な流れだった。
 こうして2人は約束を交わし、別々の道を歩き始めた。この時、10年後に2人がこの約束を果た
すことを予見できたのはきっと、この2人だけだっただろう。

2.
「ティア、ちょっと来て頂戴」
 隣室から掛けられた主からのお呼びに、またか、と侍女のミーティアは隣の部屋に聞こえないよ
う小さく嘆息を漏らした。
「ティア、聞いているの?」
 隣室から聞こえてくる妙に不安げな声に、はいはい今行きます、とおざなりな返事をして、ノックも
せずに部屋に入った。質素ながらに高級感あふれ独特の存在感を放つ調度と、その存在感す
ら霧散させてしまう広い部屋。白で統一された清潔感のある部屋には柔らかい陽の光が射し込
み、見る者から現実感を奪う。
306Zephyr:2009/06/27(土) 19:05:17 ID:+WDtPm5E
 そんな幻想的な世界の中心に、彼女はいた。
 腰まで伸ばした蜂蜜色の金髪が、絵画のように風にそよいでいる。部屋同様、持ち主の心情を
表すように余計な装飾のないシンプルな白いドレスは、シンプルであるが故に素材の持つ素晴ら
しさ、同性すら魅了する抜群のプロポーションを浮き彫りにする。彼女を実年齢より幼く見せる大き
くクリクリした碧眼は、普段は強い意志を宿しているのだが、今は不安に揺れている。
「はい、は一回でよろしい」
 ぷぅ、と愛らしく頬を膨らませてみせるその少女の名はラティフィア・パフリシア。ミーティアの主人
であり、魔法大国パフリシアの第一王女である。
 ミーティアは苦笑しつつ、申し訳ありませんと頭を下げた。ラティフィアとは彼女が生まれた時から
の付き合いであり、ラティフィアもミーティアを姉のように慕っている。
「ね、何かおかしいところはないかしら。ちゃんとドレス着れてる?」
 ラティフィアは怒った表情を一転させ、不安な表情でミーティアに問い掛けた。
「ええ、大丈夫。お綺麗ですよ、姫様」
 呆れつつも、型通りの返事をした。
「本当に? 背中、変な風になってない? 鏡で見ても……」
「失礼ですが姫様、つい先ほども全く同じ事を仰っていましたよ」
「もう30分も前のことじゃない。その30分の間に乱れていたらどうするの」
「……姫様、ドレスを着たまま運動でもしたんですか?」
「……してない、けど、でも」
 もごもごと歯切れの悪い返事をするラティフィアを見つめていたミーティアは、はぁ、とラティフィアに
も聞こえるように大きく溜息を吐き、ラティフィアをそっと抱き寄せた。ミーティアより頭一つ分小さいラ
ティフィアはミーティアの胸に顔を埋めた。
「ラティ、少し落ち着いて。普段の貴女ならもっと堂々として、座って挨拶の言葉でも考えているわよ」
 勇気づけるようにそう囁くと、腕に込める力を強くする。
「――堂々となんて、とてもできそうにないわ」
 しばしの沈黙の後、ラティフィアがようやく絞り出したのは、ミーティアもほとんど聞いたことがないよ
うな、弱気な言葉だった。
「今日、アッシュは帰ってくるのよね」
 ミーティアから離れたラティフィアはまるで自分を抱くように腕を組み、俯く。それは10年ぶりに幼馴
染みに会う事への緊張、あるいは恐怖にも似た何かから来る震えを抑え付けているようで。
「姫様……」
 いつもなら不安一つ感じさせず、むしろ見る者の不安を吹き飛ばすように頼もしいその後ろ姿は、
今はまるで見る影がない。それは今年20になるパフリシア王女も、まだ20歳の乙女ラティフィア・
パフリシアであるということを強く感じさせた。
 ミーティアはどう声を掛けるべきか少し思案した後、
「ええ、帰ってきます」
 突き放すように。
「10年前、貴女が起こした不祥事が原因で追放されたバイフロストの王子、アッシュ・バイフロスト
は、本日パフリシアに凱旋します。
 ――次元魔王ヘルガルデスを倒した、“勇者”として」
 凛々しくあって欲しくて、淡々と事実を告げると、ラティフィアの口元がきつく引き締まった。
「幼馴染みが10年振りに、しかも“勇者”として帰ってくるんです。ラティ、貴女がそんな弱気になっ
てどうするのですか。貴女はパフリシアの王女として」
「分かっているわ」
 ミーティアの言葉を遮るように、ラティフィアが呟いた。ミーティアに背を向け、開け放った窓に歩
み寄った。
「そんなこと、分かっているわ……」
 窓に手を掛け、消え入りそうな声で呟いた。
 ミーティアはそんな主の姿を見て、苦笑しつつ溜息を吐いた。

 ――ラティフィア・パフリシア。
 魔法王国パフリシアの第一王女にして時期王位継承者。長い蜂蜜色の髪は琥珀の如く、曇
り無き白き肌は絹の如し。凛とした碧い瞳はサファイアを思わせ、その美貌は三国に並ぶ者はな
いと謳われている。
 魔法王国の第一王女に相応しいだけの膨大な魔力と、それを自在に使いこなせる程に魔術
に対する造詣も深い。
 どんな時でも柔和な笑みを崩さず、気品あふれる佇まいは貴族から庶民に至るまで、男女問
わず人気が高い。
 ――もっとも、想い人の到着を待つ今の彼女は、王女としての仮面が少々取れかけているよう
ではあるが。
307Zephyr:2009/06/27(土) 19:06:02 ID:+WDtPm5E
3.
「というわけで、パフリシアは後回しにして先にバイフロストに向かおうと思――」
「却下だボケ」
「腑抜け」
 人差し指をピンと立てて、自分の思いついた名案を仲間に自信満々に話していた赤髪の青年
は、その言葉を言い切る前にその自分的名案を却下され、ぐっ、と一瞬口ごもった。が、その程度
で引き下がるようなヤワな精神では魔王など倒せるはずもない。ファイト、俺!と自分を必死に勇
気づけ、もう一度最初からその“名案”の説明を始める。
「だからさ、先に父上の墓参りを――」
「黙れタマナシ」
「死ね」
 今度は説明すらさせてもらえず、赤髪の青年――アッシュは今度こそがっくりと頭を垂れた。
 がたん、がたんと馬車が揺れる。
「姫様に会うのが怖くて逃げ腰になっているのが見え見えなんだよ。もっとシャンとしやがれ」
 とは、ポニーテールの女騎士・アシュレーの言。
「そもそも俺たちはパフリシアに行く分の食糧しか持っていないぜ。バイフロストに行くには5日は絶
食しなきゃならんし、全力でお断りだ」
 とは、足を組んで手持ちの針をメンテナンスしている針術士、トオリの言。
「…………諦めろ」
 とは、馬車を操縦している大柄な魔法使い、キルトの言。
 そして共に戦ったハズの戦友達から好き勝手言われ、馬車内に倒れ込む赤髪の青年――ア
ッシュ・バイフロスト。
 彼らこそ、500年ぶりに出現した大災害“魔王”を倒した勇者のパーティーである。
 の、だが。
「よ、よし、じゃあこうしよう。俺は実はパフリシアの国境を越えると死んでしまう恐怖の奇病にかかっ
ていて……」
「…………つい先ほどパフリシアの国境を越えたが」
「…………………」
 思いついた端に全てのアイデアが潰されてしまい、アッシュは軽くへこんだ。
「ったく、諦めが悪いな」
 トオリが苦笑する横で、アシュレーが心配そうにアッシュの肩をたたいた。
「よぉ大将、もう少しシャンとしてくれよ。アンタは魔王を倒した“勇者”なんだぜ。もう追放された王子
なんかじゃない。胸を張って、姫様に会えば良いんだよ」
「アシュレー……」
「そうそう。だいたい女なんて王女だろうが娼婦だろうがかわんねぇって。身も心も裸にひんむいて組
み敷いちまえば、後はほっといても尻尾振るっての。とりあえず一発ヤれって。な?」
「……最低だな」
「な?じゃねぇだろタコ! トオリてめぇ、人が折角良いこと言ったのにふいにしやがって!」
「あ、おいアシュレー! トオリも暴れるな」
 ばたんばたんと馬車が大きく揺らいだ。
「…………パフリシア城、見えてきた」
 キルトの声は、騒がしい馬車の中には届かなかった。

 ――アッシュ・バイフロスト。
 騎士の国バイフロストの第2王子として生まれ、7歳の時に起こした不祥事が切っ掛けとなり国
を追われた、捨てられた王子。そしてこの世界を平行世界と融合させようと目論んだ魔王ヘルガ
ルデスを倒し、伝説にその名を刻んだ“勇者”。
 燃えるような紅い髪が印象的な優男と言った風情であるが、その瞳に宿る炎の紅が彼の意志
の強さを象徴している。
 ――のだが、幼い頃より色恋とは縁遠い世界に生きてきた彼にとって、十年来の想い人との再
会は嬉しくもあり、同時にとってもとっっても、ハードルが高い物だった。
308Zephyr:2009/06/27(土) 19:06:29 ID:+WDtPm5E
4.
 静かだった街道を過ぎ、騒がしい城下町を抜け、パフリシア城の門をくぐる。城下町を通る時に
勇者のパーティーであることがバレて歓声を受けながら城へと向かうこととなったが、既に5カ国で
同様の待遇を受けていたメンバーは動じず、アシュレーとトオリは笑顔で手を振ったりもしていた。が、
アッシュは難しい顔をして俯き、目を瞑ってぶつぶつと呪文のような何かを呟いていた。アシュレーも
トオリも、いつもならアッシュの奇行をからかうところだが、これ以上ごねられても面倒だと好きにさせ
ていた。
 パフリシア城の城門を通ってほどなくして馬車が止まる。
「着いたのか?」
「…………お出迎えだ」
 トオリの問い掛けに、キルトは手短に答えた。
 その答えを聞いて一番に反応したのは他でもない、今まで俯いていたアッシュだった。アッシュは
ばっと顔を上げると
「よし、行くぞみんな!」
 と、勢いよく立ち上がった。
「もう良いのか?」
「十分ウジウジして、心の準備は出来た。あとは、征くだけだ」
「それでこそだぜ、大将」
 いつもの調子に戻ったアッシュを見て、アシュレーは満足そうに笑った。
 アッシュは馬車から降りて出迎えに来たという迎えの顔を見て驚き、すぐに顔を綻ばせた。
 迎えに来たという2人――実年齢より若く見える若々しい肌と、未だ白髪のない頭髪をした壮
年の夫婦こそ、アッシュの叔父叔母に当たり、現在パフリシアを治めているパフリシア女王とその
夫に他ならない。
 アッシュは逸る気持ちを賢明に抑えながら、幸せそうに微笑む二人の前まで進み、その足元に
跪いた。
「――アッシュ・バイフロスト、魔王討伐を終え、お恥ずかしながら帰って参りました」
 言いたいことは沢山あったはずなのに、色々な考えが喉元でつまり、出てきたのはそんなお決ま
りの文句だけだった。
 気付けば他の仲間もアッシュより少し後ろで跪いていた。
「……顔を上げなさい、アッシュ」
 パフリシア王女の声がして顔を上げると、彼女もまたしゃがんで、自分の目線に合わせてくれて
いた。それはまだ、自分が幼い頃に彼女が自分の目線に合わせてくれていたのと同じで――
「大きくなったわね」
 目尻に涙を溜ながら、彼女はアッシュを強く抱きしめた。
「お帰りなさい、アッシュ。長い、旅路だったわね」
「叔母上」
 困ったように笑って、叔父に視線を向けると、叔父も本当に嬉しそうに笑った。
「お帰り」
 10年振りに会った叔父叔母は、10年前より少し皺が増えてはいたけれど、10年前と変わらぬそ
の笑顔に、アッシュはようやく帰ってきたんだと痛感し、
「ただいま」
 “勇者”としてではなく“家族”として、その帰郷を告げた。
「皆様も大業お疲れ様でした。ささやかではありますが歓迎のご用意もしております。さぁ、城へどう
ぞ」
 後ろで温かい目でアッシュを見守っていた仲間にパフリシア女王が声を掛けると、皆一様に頭
を下げた。
309Zephyr:2009/06/27(土) 19:06:55 ID:+WDtPm5E
5.
「……エスパーの練習ですか?」
 突然は以後から声を掛けられたラティフィアは、ビクッと肩を跳ねさせて振り返り、
「驚かさないで頂戴、ティア」
 その声の主がミーティアであることを知ると、ほっと安堵の息を吐いた。
「いえ、アッシュ様の客室のドアノブをじっと見つめていらしたので、魔術だけでなくエスパーにまで
手を伸ばしたのかと」
「……そんなワケないじゃない」
 皮肉たっぷりに毒づくミーティアに、ラティフィアは苦虫をかみつぶしたような顔になる。が、ミーティ
アはそんなラティの表情に気付かぬふりをして、
「まさかアッシュ様が扉に何か細工を? そういうことでしたらおまかせ下さい」
 反論の隙を与えぬ早業でドアノブに手を掛け、扉を押す。
「ちょっ、まだ心の準備が……ッ!」
 ラティの制止も聞かず、ミーティアはドアを開けた。
「……ま、アッシュ様は現在トオリ様の部屋にいらっしゃるんですけどね」
 誰もいない客室とミーティアの呟きに、ラティはずっこけそうになる。
 ラティは体勢を立て直すとコホンと咳払いをして、必死にいつもの表情を取り繕う。
「謀ったわね、ティア」
「いえ、姫様が珍しくテンパっていらっしゃるようでしたので、気を紛らわせられたら、と」
 ミーティアは肩を竦めると、しれっとそんなことを言ってのける。
「あら、それはありがとう。おかげで寿命が大分縮まったわ」
「姫様、目が笑ってません。いつもの姫様でしたら非の打ち所がないくらい完璧な笑顔で、もっと
気の利いた憎まれ口をたたきますよ」
 「いつもの姫様」を出されると、ラティは途端に何も言えなくなる。ぐっ、と言葉につまったラティを見
たミーティアは、ふぅ、と呆れたように溜息を吐いた。
「分かりました」
「え?」
「アッシュ様とお話ししたいんですよね? 私の方からそれとなく……」
「だ、ダメよそんなの!」
 ミーティアが提案を全て言い終わる前に、ラティフィアはそう遮った。
「私がアッシュと話がしたいんだから、私から出向くのが礼儀という物でしょう!?」
「まぁ、そうかもしれませんが」
 恋愛に駆け引きはつきものですよ、という言葉が喉元まで出かかったが、呑み込んだ。長くラティ
に使えているミーティアだからこそ、彼女が決して折れないであろう事を知っている。
「アッシュはトオリ様の部屋にいるのですね?」
 ミーティアの返事を聞くよりも先にラティはずんずんと歩き始め、角を曲がって見えなくなってしまう。
ミーティアがやれやれと苦笑すると、
「あれ? ひょっとしてティア姉さん?」
 ――後ろから、懐かしい声がした。主とのすれ違う間の悪さを呪う気持ち半分、彼が自分のこ
とを覚えていてくれたことを喜ぶ気持ち半分で振り返ると、そこには予想通りの赤髪が。
「お久しぶりです、アッシュ様。10年振りですね」
「やっぱり姉さんだ。いやだなぁ、様だなんて。昔みたいに呼び捨てで良いのに」
「流石にそういうわけには」
 ミーティアが苦笑すると、アッシュも子供のように屈託無く笑った。その笑顔があまりにも昔と変わ
らない物だから、ミーティアもなんだか安心して、自然と笑顔になっていた。
 ミーティアにとっても、アッシュは幼馴染みに当たる。意識していなかったがやはり、10年ぶりに合
うことに少なからず緊張していたようだ。
 が。
「そういえば、こんなところで何してたの?」
「いえ、ちょっと迷える子羊のお尻を蹴飛ばしたのですが……」
「?」
 ここまですれ違いが続くと、何だか呪われているんじゃないかと勘ぐりたくなってしまう。
 ――2人が話せるのは明後日になるんじゃないかしら。
 アッシュと談笑しながらふと、そんな嫌な予感がした。
310Zephyr:2009/06/27(土) 19:07:27 ID:+WDtPm5E
6.
「はぁ」
 今日だけで、この1時間だけで、一体何回溜息を吐けばいいのだろう。ラティフィアはそんなこと
を考えながら、もう一度、大きく溜息を吐いた。
 広間から聞こえてくる軽やかな音楽と楽しそうな談笑が痛い。夜も更けてきた午後9時半。パフ
リシア城では勇者一行の凱旋を祝うパーティーの真っ最中である。国中から貴族や著名人が魔
王を倒したという勇者の勇姿を一目見ようと集まったのである。勇者一行、それぞれがその冒険
譚を求められ話をしているが、アッシュはその一行の中心人物である。パーティー開会と同時に挨
拶をさせられ、それが終われば途端にあちらこちらに引っ張りだこである。やれ人語を解する蛇との
邂逅だの、やれ機械の国での活躍だのという話を何度もさせられていた。
 ラティフィアとてパフリシアの王女である。来賓の貴族達に挨拶して回り、言い寄ってくる御曹司
を笑顔で躱すといういつもの“お仕事”をこなしている内、アッシュを中心とした輪はどんどん大きく
なってゆき、もはやゆっくり話を聞けるような状況ではなくなっており、結局パーティーでも一言もアッ
シュと話をすることが出来なかった。
「はぁ」
 そう、パーティーでも、である。アッシュがパフリシアに帰ってきてからというもの、色々と努力はして
いるものの、一言も言葉を交わせずにいる。その事実を改めて認識した瞬間、これまで必死に我
慢していた緊張から来る疲れがどっと押し寄せてきて、パーティーを抜けて自室に戻り、こうして窓
際でぐったりしているのである。
「……臆病者……」
 ぽつりと、自身を呪う言葉をはいた。
 ――自分は、臆病者だ。アッシュと話す機会を伺いながらも、すれ違いが続いていることに安
堵している。パーティーでだって、本来なら主催者の側にいる、他の客人達よりも一歩アドバンテ
ージを持っている、もっと堂々と話しかけられる立場にいるのに、“王女の務め”という言葉に逃げ
た。
 昼間ティアに言った言葉もそうだ。『自分が話したいんだから、自分から話しかけるのが礼儀』? 
大層立派な言い分である。だがその実、『気を遣われるのが恥ずかしい』とか、『話しかけられる
のが怖かった』といった気持ちが強かった。
 開け放たれた窓から、冷たい風が吹き込んだ。
「怖いなぁ……」
 肩肘張り続けてきたラティの、心の底からの本音だった。
 アッシュは10年間で変わった。自分より低かった背丈も、今では自分よりずっと高い。女の子み
たいに細かった身体も、いつも気弱そうに弱々しい光を放っていた瞳も、今はもう無い。
 自分も、変わってしまっただろう。あの頃のように無邪気でも、お転婆でもない。良い意味でも悪
い意味でも賢しくなった――素直では、なくなってしまった。
 怖い。凄く怖い。彼に話しかけるのが怖い。彼に話しかけられるのが怖い。変わってしまった彼
に話しかけるのが怖い。変わってしまった彼に話しかけられるのが怖い。変わってしまった彼に今の
自分を失望されてしまうのが怖い。変わってしまった彼に今の自分が失望してしまうのが怖い。
「……怖い、のになぁ……」
 怖い。どうしようもなく、怖い。それなのに、このまま終わることなど絶対に出来ないと思っている
自分が居た。
 ――そうだ、このままじゃ終われない。10年越しの恋だ。こんなことでめげる訳にはいかない。そ
れに、約束したのだ。

『強い騎士になって、きっと戻って来ます』
『うん、待ってる』

 彼は帰ってきた。約束通り、世界一の騎士――勇者として。
 そして自分も、約束を守ってずっと待ち続けてきた。脇目も振らず、彼だけを待っていた。
 だから。
 窓の外、月を見上げる。満ちた月と欠けた月、二つの月の淡い光で城の庭先を照らしている。
「……!」
 その庭の中心に、ラティフィアと同じように空に浮かぶ二つの月を見上げる彼がいた。碧く輝く月
に照らされてなおその存在感を強く示す赤髪。見間違うはずがない。
 ――時は満ちた。ラティもアッシュも、この約束を果たすために、果たすためだけに生きてきたの
だ。
 だから。
「アッシュ!」
 窓から身を乗り出し、10年間恋い焦がれ続けた相手の名を呼んだ。
311Zephyr:2009/06/27(土) 19:07:52 ID:+WDtPm5E
7.
「はぁ」
 今日だけで、一体何回溜息を吐いたか分からない。数えてみようか、と言う考えが少し頭を過ぎ
ったが、数えたところで憂鬱が増すだけなのは目に見えている。
「はぁ」
 何を馬鹿な現実逃避をしているんだ、と頭を振り、10年前と変わらぬ城を歩きながら、また溜息
を吐いた。
 ――結局、パーティーでもラティフィア姫と話をすることが出来なかった。開会早々、パーティー
の代表として話をして、その後も来賓諸貴侯を相手に旅の話をさせられた。こうして一国に腰を据
えて社交だ芸術だ政だに従事していると、どうしても刺激が少なくなるようで、アッシュの語る冒険
譚は大変好評であった。
 本音を言えば、何よりも真っ先にラティフィア姫のところに行きたかったのだか、叔母であるパフリ
シア女王が招待した客人達を無下に扱うことも出来ず、結局2時間拘束され、延々と旅の話を
することになった。
 そして2時間後、話に一段落付いたところでようやくラティフィアのところに向かったのだが、当の
姫様は既お休みになられた後。自分の間の悪さを呪いつつ、雉を撃ちに行くとごまかしてパーティ
ーを抜け出し、今に至る、というわけである。
「……姫様、綺麗になってたなぁ」
 10年振りに会った幼馴染みは、とても美しく成長していた。
 長いブロンドの髪、白く透き通る肌、くりくりと大きな眼、その真ん中で碧く輝く瞳。幼い頃のパー
ツの印象をそのままに大きくしたような彼女は、小さい頃の愛らしさに加えて、王女としての気品をま
とい、色々な貴族を相手に優雅に対応していた。
「……はぁ」
 溜息も出る。それに引き替え自分はどうだろう。生まれこそバイフロストという由緒正しき家系では
あるものの、野に下ってからというもの、気品だの何だのと言うものから離れた生活を送っていた身
だ。最低限、恥をかかないようにマナーに気をつけることに一杯一杯になっていた自分に、もはや
王族としての風格などあろうはずもない。
 城も、叔父も、叔母も、ミーティアも変わっていなかった。だからきっと姫様も、と考えていた自分
が浅はかだった。10代の成長の速さを計算するなど、まだ17になったばかりの自分に出来るはず
がなかったのだ。
 不釣り合いかもしれない。変わってしまったかもしれない。それでもアッシュは、ラティと会って話が
したかった。
 だが。
「いくらなんでも、お休み中にお邪魔するわけにはいかないしなぁ」
 となると、機会は明日以降と言うことになるが。
「もしかしてパフリシアにいる間に会えなかったりして」
 冗談めかして言ってみるが、今日の擦れ違いっぷりを考えると割と本気で笑えない。
 当てのない散策を続けていると、昔懐かしい中庭に出た。中央に小さな噴水のある庭で、かつ
てパフリシアに遊びに来た時は、よくここでラティフィアと遊んだものである。
 大分頭も煮詰まっているし、少し夜風に当たって頭を冷やそうと庭に足を踏み入れる。青白い月
の光が照らす噴水はとても美しく、一枚の絵画のように幻想的な光景だった。
 背の高い建物の間、紺碧の空に浮かぶ二つの月を見上げる。蒼く輝く“満ちた月”を、淡い光
を放つ“欠けた月”が抱いているその様は、10年前と何ら変わらない。
「変わってしまうものもあれば、変わらないものもある、か」
 柔らかい月の光に励まされ、アッシュにようやく笑顔が戻って来て――

「アッシュ!」

 10年間想い続けた女性の声に、アッシュは振り返った。
312Zephyr:2009/06/27(土) 19:14:43 ID:+WDtPm5E
8.
 その声はさえた月夜に、鈴、と響いた。弾かれたように振り返ると、中庭に面した2階の一室の
窓から、身を乗り出すラティフィアの姿があった。
 ――思考が凍結した。今日はもう会えないと高をくくっていたアッシュにとって、この出来事は不
意打ちだった。
 月の魔力、とでも言うのだろうか。淡い月明かりに照らされて微笑むラティフィアは何だか儚くて、
幻想的で――とても、美しかった。
「良い月夜ですね」
 呆、と見惚れるアッシュに、ラティフィアは優しく微笑んだまま、謡うように話しかけ、2つの月を見
上げた。
「……えぇ、全くです」
 我に返ったアッシュは、ラティの言葉に相づちを打ち、同じように月を見上げた。
 静かで、穏やかな時が流れた。広間では主役不在のままにパーティーが続いてるようで、時折
笑い声が聞こえてくる。
「外の世界で見える月は、ここから見える月と違いますか?」
 月を見上げながら、ラティが聞いた。
「月は、場所によって顔を変えますから」
 月を見上げながら、アッシュが答えた。
「こうして背の高い建物の間、狭い空に閉じ込められた月と、遮蔽物のない草原にぽっかりと浮
かぶ月。森の中、木々の合間から顔をのぞかせる月と、食事の後、宿に帰る途中、街中で見え
る月。全てが同じ物だなんて考えられないくらい、月には色々な顔があります」
 船の上で見た空と海との境界が曖昧な世界に浮かぶ月は、海面に映った月と相俟って、とて
も不気味でした、とアッシュが笑うと、ラティもにこりと笑った。
「貴方は色々な世界を見てきたのですね」
「……もうお休みになられたとお聞きしましたが」
 羨ましそうに目を細めるラティフィア姫を見上げながら疑問を口にすると、ラティは微笑んだまま困
ったように眉根を寄せて、
「ええ、ちょっと疲れてしまって」
「それは。お邪魔してしまいましたか?」
「私から声を掛けたのですよ」
 邪魔なわけないじゃないですか、とラティが笑うと、そういえば、とアッシュも笑った。
 そしてまた、沈黙。だがそれは決して重苦しいものではない。空気こそ冷たいものの、心が温まる
ような、緩やかに時間が流れる世界だった。
「姫さ……」
 アッシュが声を掛けようとした瞬間、ラティがくちゅんとくしゃみをした。
「大丈夫ですか?」
「ぇ、えぇ。ちょっと夜風に当たりすぎたかしら」
「今日はもうお休み下さい。風邪を引いてしまいます」
 本当はもっと話をしていたかった。まだ何も言えていないのだ。大切なことも、伝えたいことも。
 だけど、だからといってそんな理由で彼女に病気になって欲しくなかった。ずっと笑顔でいて欲し
い。10年間、そのためだけに戦ってきたのだから。
 ラティはええ、そうするわ、というと
「それじゃあ早く上がってきて。私の部屋の場所は覚えていますよね?」
 そう言ってまた、微笑んだ。
「姫様、お戯れは……」
「良いでしょう? 結局パーティーでも貴方の話を聞けなかったんだし、冒険の話を聞かせてくださ
い」
「ですが」
「それじゃあ、お待ちしていますわ」
 それだけ言うと、アッシュの言い分を聞くこともなく窓を締めて部屋の奥に戻ってしまう。
 そんなラティフィアの身勝手さに呆れつつも、アッシュは込み上げてくる笑みを抑えることが出来な
かった。
 懐かしい感覚だった。昔から彼女はこうしたいと言いだしたら頑として譲らなかった。城を抜け出
そうと言ったことだって一度や二度じゃないのだ。そんな彼女に引っ張られ、引き摺られて、沢山
苦労もした。だけど、それが嫌だとは微塵ほども思わなかったのはきっと、彼女は決して人を悲しま
せるようなことをしなかったし、何より自分が彼女の笑顔が大好きだったからだろう。
 アッシュはラティの部屋に向かうために、城の中に戻って行った。
313Zephyr:2009/06/27(土) 19:16:09 ID:+WDtPm5E
9.
 窓を閉めたラティは、そのまま部屋の奥に戻――たように見せかけて、実際はその場にへなへな
と座り込んでいた。
 私はきちんと、「いつも通りの自分」でいられただろうか、とそんな疑問が頭に浮かんできたが、す
ぐに消えた。
 そんなことを考えている暇はない。慌てて姿見の前に立つと、着衣の乱れがないことだけを確認
した。化粧を直している時間は無い。そうだ、誰かに紅茶でも淹れさせた方が良いのかしら、等と
考えている内に、部屋の戸がノックされた。
「どうぞ」
 ラティが返事をすると扉が開き、待ち焦がれていた相手が姿を現した。近づかずともはっきりと分
かる紅い瞳は、遠くから見ただけでは分からない優しい光が宿っており、ラティは胸が高鳴るのを
感じた。
「失礼します」
 アッシュは一礼して部屋に入ってくると、ゆっくりとラティフィアに歩み寄ってきた。
「長旅お疲れ様でした。パーティーはお気に召しませんでしたか?」
 彼が近付く度に高鳴る鼓動を隠すように戯けて言ってみる。きちんと表情は作れているだろうか、
声は上擦っていないだろうか。
 そんなラティフィアの不安をよそに、アッシュは困ったように笑った。
「いえ、素晴らしい歓迎で大変感激致しました。ですが、流石に2時間も話しっぱなしだと疲れてし
まいまして」
「あら、それではこのような場所にお呼びしてはご迷惑だったかしら?」
「まさか」
 会話が途切れ、沈黙が降りた。月明かり以外の光源のない部屋は2人の視界から、お互い
の姿以外の物を奪っていた。
 話したいことが沢山あった。言いたいことも、聞きたいことも、数え切れないぐらいある。沢山あり
すぎるからこそ、何から話せばいいか分からない。
 お互い相手の顔を見つめるだけの時間。重くはないが、張り詰めた空気。
「よく、帰ってきてくれましたね」
 そんな空気に耐えきれなくなったラティフィアはアッシュから目をそらし、窓際へと歩きながら言った。
「貴方にとってこの国は、、良い思い出ばかりではないでしょうに」
 自分は、一体何を言っているのだろう。アッシュの顔が、見れなかった。窓辺に立ち、再び月を
見る。
「……この国には、貴方から全てを奪った女がいるのに」
 違う。言いたかったのは、伝えたかったのは、こんな言葉じゃない。もっとシンプル、もっと簡単な4
文字を、言ってあげたいだけなのに。
 再度、静寂。黙ったままその場に立ち尽くしていたアッシュも、窓際に歩み寄り、ラティの横に立っ
て月を見上げた。
「約束、したんです」
 ラティははっと隣に立つアッシュを見た。
「きっと帰ってくるからって。強い騎士になって迎えに行くからって」
 アッシュの横顔は凛々しく、強い意志を感じさせる物だった。
「――俺にとってのこの10年間は、この約束を果たすためだけにありました」
 アッシュが振り返った。ルビーのような紅い瞳でラティを捉えると、

「ただいま」

 かつて指切りをした右手の小指を立てて、優しく微笑んだ。
「――あ」
 息が出来ない。頭の中が白く染まり、ラティから正常な思考を奪う。
「あぁ」
 口から嗚咽が漏れた。いけない、と口を塞いだ手に、温かい水滴の感触があった。
 ――彼は覚えていてくれた。10年も前に躱した幼い約束を、忘れずにいてくれた。その約束を果たすために、帰ってきてくれた。
 堪えても溢れてくる涙を止めることが出来なかった。泣いてる場合じゃないのに。彼に言わなきゃいけないことがあるのに。
 ぽろぽろと涙を流すラティを、アッシュは優しく抱き寄せた。
「ただいま、帰りました、姫さま」
 ――もう、限界だった。
 ラティはアッシュの腕の中、アッシュにしがみついて泣いた。おかえりなさい、怖かった、寂しかった
と、まるで年端もいかぬ童のように慟哭した。そんなラティを、アッシュは何も言わず、もう二度と離
れてしまわぬよう強く抱き締めた。
 ――10年前に止まってしまった2人の時間が、ようやく動き出した瞬間だった。
314Zephyr:2009/06/27(土) 19:17:11 ID:+WDtPm5E
10.
 柔らかな月の光に包まれて、2人は静かに抱き合っていた。ラティは既に泣き止んでおり、その
顔をアッシュの胸に埋めている。
 離れるのが惜しかった。ずっとこの温もりを感じていたかった。
 だがいつまでもこうしているわけにもいかない。まだまだ話し足りないこともあるし、何よりパーティー
を抜け出して抱き合っているなどと知られでもしたら、ラティフィアにとってあまりよろしくない事態を招
きかねない。
「姫さま」
 抱きしめる腕をほどき、ラティの肩を掴んで引き離そうとする。肩に触れられた瞬間ラティの肩が大
きく跳ねたが、離そうとしていることに気付くと、アッシュの背中に回した腕に力をいれ、アッシュの胸
板に一層強く鼻先を押し付けてくる。
「10年間」
 ラティがくぐもった声で呟く。
「10年間、貴方が帰ってくるのをずっと待ってたわ。晴れの日も、雨の日も。朝も、夜も。来る日も
来る日も、貴方だけを待ち続けた。もしかしたらもう帰ってこないんじゃないか。約束なんて、忘れて
しまったんじゃないか――」
「自分が姫さまとの約束を破るわけがないじゃないですか」
「それでも、怖かった。怪我はしてないかしら。病気を患ってはいないかしら。ふとした時に、そんなこ
とばかりが頭に浮かんでくるの。
 ――だから、あの日、魔王に侵略を受けていた機械皇国を救った勇者の名前を見た時、凄く
驚いて、凄く嬉しかった」
 機械皇国エルドギア。魔王の信徒によって籠絡寸前にまで陥り、アッシュのパーティーが勇者
候補として世間に知られるに至った、始まりの国。
「生きていてくれた。約束を覚えているかは分からなかったけど、約束通り立派な騎士になってくれ
た。それだけで泣きたくなるくらい嬉しかった。
 それからの毎日は、前よりもずっと楽しくて、もっと不安な日々だった。毎日のように入ってくる勇者
の武勇伝。だけどそれは、裏を返せば毎日貴方が危険な日々を送っていたということだから。だ
から」
 アッシュの背に回した手に、さらに力が籠もり、ラティはまた声を上げずに泣いた。
「心配してくれて、ありがとうございます。それと、ごめんなさい」
 手をほどきかけていたアッシュは再びラティを優しく抱き締めた。
「ねぇアッシュ。これからは、ずっと一緒にいられるのよね?」
「――はい、姫さまがそう望んで下さるなら」
「ずっとずっと、傍にいて、守ってくれるよね?」
「はい、必ずお守りします」
「約束、出来る?」
 アッシュの腕の中で顔を上げたラティはまぶたが赤く泣き腫れていて、目尻に涙が貯まっていた。
「もちろん。この場で、誓います」
 アッシュはラティの頬に手を添えると、指でその涙を拭ってやった。
 ラティの碧眼がアッシュを捉えた。あと少し、もう少しアッシュが屈めば、唇と唇が触れる距離で、
二人は見つめ合った。
「……言葉だけじゃ、足りないわ」
「もう一回、指切りでもしますか?」
「……意地悪」
 そう言って微笑み、静かに目を閉じたラティの唇に、アッシュは優しく自分の唇を重ねた。
315Zephyr:2009/06/27(土) 19:18:09 ID:+WDtPm5E
11.
 唇を重ねるだけの大人しいキスだった。だが2人は離れることなく、長く唇触れ合わせていた。
 やがてラティが苦しそうに眉を顰めたので、アッシュは唇を離した。つぅ、と2人の間を繋いだ銀の
橋が自重に耐えきれずに落ちた。
 ラティフィアがゆっくりと目を開ける。目尻がトロンと落ち、潤み、熱を帯びた瞳でアッシュを見つめ
……再度目を閉じ、唇を尖らせた。
想い人とのキスの後でただでさえ理性というストッパーが効きづらくなっていたアッシュには、この
コンボは致命的だった。先程とは打って変わってきつく抱きしめ、乱暴に口づけると、舌をラティ
の唇の隙間に滑り込ませた。突然の舌の侵入にラティは最初は驚いていたが、より入り易いよ
うにした唇の隙間を広げ、おずおずとアッシュの舌に自分の舌をからめてきた。
唇を重ね、舌を絡める。性交においては一番最初の段階であるにも関わらず、アッシュは既に
軽い射精感を覚えていた。他の男を知らない処女の柔らかい唇、その口内を舌で蹂躙するた
びに頬を赤らめて溜息を漏らし、その舌に積極的に自分の舌を絡めてくる。その絡み付いてくる
ラティの舌も、そして舌が絡み合うたびに響く唾液がピチャピチャと混じり合う音もまた、アッシュに、
そしてラティフィアにも強い快楽を与えている。
ラティの体ががくがくと揺れはじめた。アッシュが名残惜しそうに顔を離すと、ラティは最後まで舌
を絡めようと、口を開いて舌を出した。なんだか親鳥にエサをねだる小鳥みたいだ、などと考え
ていると、ラティの膝ががくんと折れ、アッシュにもたれ掛かってきた。
「姫さま!?」
驚いたアッシュは彼女を抱き寄せると、ベッドに腰を掛けさせた。そして立ち上がろうとするも、ラ
ティの手がしっかりと服を掴んで離さなかったため、ラティを抱いたままその横に腰を掛けた。
「大丈夫ですか? 姫さま」
「ご、ごめんなさい。その……ちょっと腰が抜けちゃったみたいで」
頬を赤らめ、恥ずかしそうに。

「その……お、大人のキス?……が、気持ち良過ぎて」

そんな、雄の理性を溶かしてしまうような魔性の言葉を吐いた。
「ッ姫さま!」
「え? きゃっ」
アッシュはラティの両手首を掴んでベッドに押し倒すと、また強引にラティの口内に舌をねじ込み、
その口内を思うまま凌辱し始める。歯茎をなぞり、歯を滑らせ、舌を絡ませ、唾液を交歓する。その
たびにラティは苦しそうに、だけど甘い吐息を吐いて、その動きに応えようと舌を絡ませくる。
 ラティフィアの左手首を押さえていた右手を、ラティの左腕をなぞりながらゆっくりとおろし、ラティの
胸元に持ってきた。
「ん!?」
 驚いて悲鳴を挙げそうになったラティフィアだが、唇をアッシュに塞がれている。
 アッシュの右手はゆったりとラティの胸の輪郭をなぞるように動く。同性すら羨む抜群のスタイルを
持つラティの乳房は、間違いなく『巨乳』の部類に入る。ただし決して大きすぎることはなく抜群の
バランスで形を保っている。その乳房をドレスの上からやさしくなぞると、ラティフィアが恥ずかしそうに
身を捩った。アッシュはそんなラティを逃がすまいと左手をラティの腰に回して抱き締め、右手でラテ
ィの左の乳房を掴んだ。
「んんっ、ふぅッ!」
 合間合間、口の端から漏れる嬌声が艶めかしい。ドレスの上から揉みしだくと、彼女の乳房はぐ
にゃぐにゃと形を変えた。
 右手首を押さえていた左手も下ろしてきて、両手で左右両方の乳房を揉むと、ラティはベッドのシ
ーツが擦れるほど大きく身を捩った。
 両手で乳房の感触を楽しみながら、ディープキスも継続する。ラティもキスには慣れたようで、時
折ビクンビクンと身体を痙攣させながらも、アッシュの口の中にまで侵入し、歯茎をなぞったりしてく
る。
 アッシュの両手の動きが止まる。どうしたのか、と恐る恐る目を開けたラティだったが、止まったア
ッシュの手が、ドレスの胸元に掛けられているのを見て、次に何をされるのか理解した。
 ドレスの胸元に伸びたアッシュの手がすすっと滑るようにラティの身体を伝うと、、今まで彼女の乳
房を覆っていた部分がするすると脱げ、彼女の形の良い乳房が剥き出しになった。
「――――!」
 恥ずかしさに耐え切れなくなったラティは、真っ赤になった顔を両手で隠し、イヤイヤと首を振っ
た。
316Zephyr:2009/06/27(土) 19:19:08 ID:+WDtPm5E
「お綺麗ですよ、姫さま」
 アッシュがラティの耳元で囁いて、ドレスの上からではなく、直接乳房に触れはじめる。ドレスという
拘束から開放された双丘は、丘というよりは山と言った方が正しく、そのボリュームでありながらも自
重に負けず、その頂きはツンと上を向いていた。
「興奮、しました?」
「……馬鹿っ」
 直接触る乳房は、まるで指を吸い込むように柔らかく、アッシュの指の動きに合わせて形を変え
た。
 指を滑らせ、今度はその薄紅色の頂きを、親指と人差し指で挟むと、

「―――――――ッッ!」

 身体を大きく弓なりに逸らせ、ビクビクビクッと何度も痙攣した。
「姫さま!?」
 突然の大きな反応にびっくりしたアッシュだったが、ふと、彼女の太股に目をやると、内股にてら
てらと光る粘液が伝っているのが見え、そして理解した。
 乳首に触れられた瞬間、ラティは達してしまったのだ。
 ラティはアッシュの腕の中で呼吸を整えると、申し訳なさそうにアッシュを見上げた。
「……ごめんなさい、アッシュ。私ばっかりが気持ち良くなって……」
 アッシュは首を横に振り、彼女を抱き寄せた。
「私は、姫さまさえ喜んでくれればそれで良いのです」
 それを聞いたラティはむぅ、と頬を膨らませ、
「それじゃ私が嫌なの」
 と、アッシュの唇をつんと突いた。
「だからアッシュ」

「一緒に、気持ちよくなろう?」

12.
「……恥ずかしいから、あんまり見ないで」
 月明かりに照らされて横たわる彼女の白い裸体はただただ美しく、まるで一個の美術品のようだ
った。くすみ一つない白い肌も、さらさらと流れるように広がった金色の髪も。
 全てのファクターがアッシュの劣情を駆り立て、アッシュの理性をガリガリと削り取る。上気し、赤く
なった頬も、恥ずかしさをごまかすような照れ笑いも。
「……綺麗です」
 もっと気の利いた言葉を知っていれば、と自分自身の語彙の少なさを呪った。だがラティには、
普段から世辞にはなれているラティからしてみれば、飾り立てた1000の言葉より、嘘偽りのない、
たった一つの本音の方が嬉しかった。ましてやそれが、想い人ならなおさらである。
 アッシュがベッドに身を乗り出すと、ギシリ、とベッドが軋んだ。その軋みがまた、アッシュの心臓の
拍動に拍車をかける。
ベッドの上を進み、ラティに寄り添うと、左手でラティの金の髪を優しく撫でた。ラティは嬉しそうに
目を細め、アッシュの手の動きを甘んじて 受け入れていた。
 左手で髪を撫でながら右手を滑らせてゆく。首筋、鎖骨を伝い、ふくよかな双丘へ。その頂きの
突起を指で弾くと、ラティは身をよじらせた。
 右手をさらに降ろしてゆき、臍をなぞり、局部――を通り過ぎ、太股を撫でると、そこは既に溢れ
出た愛液でぐっしょりと濡れていた。
「姫さま、濡れてますよ」
「……いやぁ」
 耳元で囁くと、顔を真っ赤にし恥ずかしそうに身をくねらせて悶えた。
太股を撫で続ける。ラティの曇りない白い肌をアッシュの指が這うたびに甘い嬌声をあげ、蜜壷
の奥から粘液が溢れ出してきて、ベッドに大きな水溜まりを作った。耳たぶを噛みながらラティの
反応を楽しんでいたアッシュだったが、その一物は既に大きく猛って臨戦体勢だった。
「っ姫さま……」
「あ……」
 苦しそうに呟くアッシュのいきり立つ一物を見たラティは、顔を赤らめ、静かに、だがしっかりと、頷
いた。

「……来て」
317Zephyr:2009/06/27(土) 19:20:24 ID:+WDtPm5E
 両手でラティの足を広げさせると、その陰部があらわになる。もはや前戯の必要もないほどにぬ
れすぼり、妖しい光を放つその蜜壷に、アッシュは釘付けになった。
 ――ここに自分自身を入れたら、いったい自分はどうなってしまうのだろう。
 そう考えただけで射精しそうになる。
 亀頭を入口に押し付けると、途端にラティフィアの身体が強張るのが分かった。嫌なのだろうか、
と少し不安になったアッシュだったが、それでも、亀頭から伝わってくる彼女の熱が、アッシュから理
性を奪って行く。
ぐっと腰を押し付け、亀頭を膣内に埋めると、ラティの顔が苦悶に歪む。痛い、と口の端から漏れ
た言葉に尻込みしそうになるが、ラティが足を腰に絡ませてくる。
 ――大丈夫だから。
 破瓜の痛みに唇を噛み締めながら、それでも気丈に微笑むラティフィアに、アッシュは引ける腰を
堪えて、ぐっと前に突き出す。
 男を受け入れたことのない狭い膣内を文字通り“突き進み”ながら、アッシュは身体を倒し、痛
みに震えるラティフィアを抱き締めた。大丈夫と笑ってくれた大切な人を、少しでも安心させたかっ
た。ラティはそんなアッシュの背中に手を回して抱きついた。
「いっ……」
 アッシュの背中にラティの爪が突き立てられる。きゅうきゅうと締め付けてくる膣が根に与えてくる痛
みと、爪を突き立てられた背中の痛み。それら2つを合わせても、きっとラティの痛みには遠く及ば
ないのだろう。だからせめてこの痛みだけは受け入れていたかった。
 やがて一物が膣の最奥部に届いた。ラティの痛みの波が引くまでの間、アッシュは動かずに、
ただその愛しい人の唇にキスを落とし続けた。
「んんっ……ふぅ」
 唇を啄み、舌を吸い、唾液を混ぜ合わせる。右手でラティを抱き寄せながら左手で乳房をいじ
ると、少しは痛みが快楽に中和されたのか、ラティの表情がやや柔らかい物になる。
「うぁぅ……アッシュ……」
 ラティが潤んだ瞳でアッシュを見つめると、アッシュは頷いて、ゆっくりと、腰を動かし始めた。
「はっ、あぅ」
 緩やかな出し入れ。動く度にラティの表情が苦しそうに歪む。
「はぁん、あ、ああ」
 しかし動く度に膣内に愛液が分泌され、次第にその動きが滑らかになる。そしてそれは、2人に
与えられる快楽もまた、次第に大きくなっていくと言うことである。
 動く度に、ペニスにラティの膣の襞が絡みついてくる。離すまいとするかのようにねっとりと絡みつ
いてくる襞がアッシュの竿を擦り、動くだけでイってしまそうな程の快感を与えてくる。
 そして、ラティも。
「あ、あ、ああぁぁあっ、ふぅ、ん、んんっ」
 膣がペニスに慣れてきた事、潤滑油による滑らかに動けるようになった事、そして何より、夢にま
で見たアッシュとの交合。
 ペニスが膣壁を擦る度に女として、否、雌としての悦びが喚び起こされて、彼女に雄を求める淫
卑な本能を呼び覚ました。
 唇を噛み、舌に吸い付き、雌の乳房を揉みしだき、雄の背中に爪を立てながら、腰を振る。そこ
にいるのは勇者と姫でも、ましてや10年想い続けた幼馴染みでもない。一匹の雄と一匹の雌が、
ただ本能の赴くままにお互いの存在を貪っているだけだった。
「んん、んんーーーーーーー」
 激しく腰を打ち付けていたアッシュが、一層深く、膣の最奥に叩き付けるように腰を打ち付けると
同時、これまでとは比べものにならないくらいの衝撃に、ついにラティが絶頂を迎えた。唇をアッシ
ュに重ねたまま身体を弓なりに反らせ、声にならない悲鳴を挙げた。それと同時に彼女の膣もアッ
シュのペニスをきつく締めつけ、アッシュもまた絶頂に至り、白濁を彼女の最奥に吐き出した。
318Zephyr:2009/06/27(土) 19:21:07 ID:+WDtPm5E
13.
「父は、自分を捨てたワケではありませんでした」
 ラティを腕枕したアッシュが、そんなことを呟いた。
「父は知ってしまったんです。近い未来、新たなる魔王が生まれることも、それを止めることが出来
るのは、バイフロストだけであることも」
「知ってしまった?」
「――父は、未来視の魔法持ちでしたから」
 バイフロストの家系は魔力をほとんど持たない。故に彼らは魔法を使うことは出来ないのだが、
代々1つずつ、禁忌魔術である時空魔術が発現するのだ、とアッシュは言う。
 アッシュの父親は未来を見通す“未来視(さきよみ)”の能力者であり、自分もまたその時空魔
術を1つだけ使うことが出来るのだ、と。アッシュはラティが今まで知らなかった事実を、穏やかに
語った。
「元々バイフロストは500年前の勇者パーティーの一員として名を挙げた家系ですからね。
 ただ500年前と違うのは、バイフロストはもう唯の騎士ではなく、王の一族になってしまったこと。甘
やかされてそだった王族では、これから先の過酷な戦いで勝つことはできないだろう。父は、そう考
えました。だから」
「だから、アッシュを捨てた?」
 ラティの質問に、アッシュは目を閉じて頷いた。
「兄はバイフロストを継がなければならない。もちろん自分はパフリシアに入婿する、という約束は
ありましたが、自分の下に弟も妹もいませんでしたから、兄か自分か、どちらが行くことになるかと
考えれば、答えは1つでした。
 父に最後にあった7つの夜、父は泣きながら強く抱き締めてくれました。お前にばかり過酷な運
命を押し付けて済まない、不甲斐ない父を恨んでくれ、って」
 父が悪いワケじゃないのに、とアッシュは笑った。
 そのアッシュの父も、アッシュが勇者一行として旅をしている最中に他界した。ラティフィアも葬儀
に参列したが、立派な騎士として育った息子の姿に満足したのだろう、その死に顔は、とても穏や
かな物だった。
「その後、父の言葉通りに野に下った父の知り合いの騎士に弟子入りしました。自分はそこで師か
ら戦い方と生き方、そしてこの世界の美しさ、ここに生きる人々のたくましさと優しさを教わりました」
 と、そこまで言って、アッシュはハッとしたような表情になって口を覆った。
「……すいません、自分のことばかり話してしまって」
 退屈ではありませんでしたか?と聞くアッシュに、馬鹿ね、とラティは笑って答えた。
「良いの。もっともっと、貴方の話を聞かせて」
 私たちには欠けてしまった10年間がある。その間を少しでも埋めたいから。ラティはそう言って、ア
ッシュをぎゅっと抱き締めた。
「良いんですか? そんなこと言ってしまって。千夜じゃ語りきれませんよ?
 それに、姫さまの話をまだ何も聞かせて頂いていないし」
「良いのよ。昔からよく言うでしょう?『人生は短い、けど夜は長い』って。まだ、夜は始まったばかり
なのよ。
 それに、これからはずっと傍にいてくれるんでしょう?」
「――ええ、ずっとずっと、お傍でお守り致します」

   ※

「まったく、散々人に心配させといて、勝手に仲直りですか」
 陽が昇り、ラティフィアを起こしに部屋に入ったミーティアは、ベッドの上で寄り添う2人の寝顔を見
て、人騒がせな、と呆れたように溜息を吐いた。
 話疲れて眠ってしまったのであろう2人の寝顔は、まるで10年前と変わらず、無邪気で、とても
幸せそうだった。
 今日は予定もないし、ゆっくり眠らせてあげようと考えたミーティアは、くるりと踵を返し、自室の扉を
開けた。

「2人とも、良い夢を」

 ミーティアは誰にも聞かれないように、2人の幸せを祈ったのだった。
319Zephyr:2009/06/27(土) 19:21:57 ID:+WDtPm5E
通読して頂き大変ありがとうございました。
書きたいシーンだけを書いてツギハギだらけになってしまったけど、これ以上長引いても面白くないし、と言い訳。
未公開シーンを収録したディレクターズカット版は例年通り通常版発売後の半年後ぐらいに発売予定です。もちろん嘘です。
それでは。
320名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 19:22:01 ID:tA0d2mQW
321名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 22:25:14 ID:EVhsFApv
純愛だなぁ
可愛いカップルで楽しかった
乙でした
322名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 23:39:10 ID:EnS2NBwf
GJ
323名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 12:22:29 ID:i97QZOvh
王道すぎてこそばゆいww
でもこういうの好きだGJ
324名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 23:09:47 ID:xzu1Qaky
「はいはい ごちそうさまごりそうさま」(脳内のティア同僚)


という虹創作を想像しt

作者様GJ。読んでてなんか胸をかきむしりたくなったw
甘い 甘いよ!! でも、ものすんごい御褒美です。ありがとう。

325名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 00:09:44 ID:O0EscTIu
GJ!
326名無しさん@ピンキー:2009/07/04(土) 09:48:14 ID:/iFSp9Me
とても良かった
GJ
327名無しさん@ピンキー:2009/07/04(土) 20:07:48 ID:wHwJXhgu
続きを希望
328名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 19:56:58 ID:MiEtb/Hm
SFC 信長の野望 天翔記をやっておったら
物凄い才能のある姫を元服の時に武将にしたら
先に元服して武将になってた少し弱い姫がいきなり暗殺覚えて
それでムラムラと妄想湧き上がった
書いていい?
329名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 20:18:28 ID:NilRDcuv
書きたくて書きたくて誰が反対しようが書いてやる!って気分になったら書いていいよ
330名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 20:24:32 ID:FWcmHSZM
元服って女にもあるの?知らんかった
331名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 20:25:02 ID:Rjh1QbUS
>>328
ぜひ書いてくれ
俺もそれはそそるは
332名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 22:35:44 ID:MiEtb/Hm
では
勿論架空の歴史です
姫はランダム出現なので勿論架空の人物です
実在の人物も史実とは違った描かれているので
東北在住のみなさんにはもうしわけないが投稿させていただきます
333名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 22:46:50 ID:MiEtb/Hm
「羽化」

 蛎崎季広と言えば、あの南部晴政を下野させていつの間にか配下に加え、
更に東北地方を南へ南へ領地を広げる勢いのある大名である。季広の最初
の勝利の裏には、南部家の勇将を裏切らせた事が大いに寄与していると言
われている。裏切りを唆した武将は蛎崎繭と言う。蛎崎季広の長女だったが、
人材不足の父親の為に志願して武将となったのであった。

 繭はその後も領地経営に外交の使者に大商人との商談にと多くの功績を
上げ、今では家老となった。実の娘と言う事で多少季広に過大評価されて
いる所もあったが、功績については誰もが認めている。蛎崎繭、未だ20
歳にも達していない。

 ただ、繭にも悩みがあった。繭の仕事ぶりはその若さと不釣合いな勢い
で完成されていったが、どうしても越えられない壁が出始めた。短い間に
よく成長したが、そこから先に更に発展すると言う事ができなかった。そ
れは領地経営や外交や商談だけでなく、戦争の腕前についてもであった。
戦場では死に繋がりかねない。季広は比較的直接敵に攻撃されにくい鉄砲
隊を率いる事を命じた。東北で鉄砲隊を率いて大きな効果を挙げた武将は
まだいない。繭は試行錯誤を繰り返しながら鉄砲隊を指揮した。繭の顔に
陰が見え始めた。

 そんな時、繭の妹の茜が髪上げを迎えた日に、思いもよらぬ事を言い出
した。
 「父上、茜も配下に加えて下さい。男にも負けぬ働きぶりをお見せしま
しょう。」
 「茜よ、家来なら足りている。それに間もなく精強で知られる伊達軍団
との戦いが始まる。お前とて無事で済むとは思えん。大人しくせよ。」
 「しかし姉上もまだ武将を続けているではありませんか。何故私はいけ
ないのです。私も姉上と助け合って戦い抜きたいです。」
 「わかった。だが、無茶はするな。」
 かくして、蛎崎茜は蛎崎家の武将として数えられるようになった。武将
、蛎崎茜が繭に顔を見せた。
 「姉上、これで私も姉上と一緒に仕事ができるようになります。」
 「茜、皆の言う事をしっかり逃さず聞いて、立派になりなさい。私も期
待していますよ。」

 茜は繭とは母が違う。季広によるアイヌとの和睦の一環として娶った女
性が母親だと言われている。茜は心優しく、また勇猛な子供であった。親
が違う二人は時に姉妹の様に、時に年の離れた親友の様に仲良く育った。
繭は目を閉じて思う。
 (茜と横に並んで働く日が待ち遠しい。)
 と。
334名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 22:50:09 ID:MiEtb/Hm
 茜は姉や父、そして蛎崎家の軍門に下ったかつての東北各地の名君達の
指導の下、めきめきと頭角をあらわしていった。街づくりに、開拓に、築
城に、兵の訓練に、遣使に、交渉に、茜は蛎崎家の中でも特に目立った功
績をあげて行った。それはあの繭の神童ぶりに勝るとも劣らない物だった

 「茜、よくできました。」
 「ありがとうございます姉上。姉上どうなさいました?悲しそうな…。」
 繭は一瞬驚いて、しかし微笑んで言った。
 「きっと、疲れていたの。」

 繭は優秀とは言えその能力の伸びが途中で若くして止まった。だが、茜
は伸びた。伸び続けた。身分もまた上がり続けた。侍大将を経て部将にな
った。25歳にもなれば家老になっているのは確実だとされている。今の
繭と同じ年頃になれば、蛎崎軍団の花形、騎馬隊を率いるだろうと言われ
ている。あの、南部晴政を師匠として。

 「まあ、茜そんな事どこで思いついたの?」
 年が経つにつれ、次第に、繭のかける褒め言葉に驚きが多く含まれるよ
うになった。茜が髪上げをした時の繭の年と同じ年に茜がなった。繭は驚
くばかりだった。繭の翳りも深さが増した。
 「姉上…。」
 「大丈夫。ありがとう。本当に茜は優しいのね。」

 「ちくしょう!!」
 或る夜、繭が机を蹴り飛ばした。
 「繭…、俺に出来る事なら何でもする。俺が助けてやる。俺がそばにいる
。俺はお前の笑顔の為なら命だって惜しまない。」
 「うるせえっ!!出来る事!?そんな物ありゃ苦労しない!!」
 繭がその若き頃、いや幼き頃に内応の誘いをして見事寝返らせた男、九
戸実親は繭と肉体関係にならない程度に密かに仲睦まじくなっていたが、
繭の酷くなる悲しみや憤激に心を痛めていた。それが今日、爆発した。
 「わたしは、わたしは、どうしてこれ以上出来ないんだ!!」
 「繭…。酒でも茶でも呑んで…。」
 「のめるかっ!!一人でのめっ!!」
 実親はそっと部屋を出た。
335名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 22:52:14 ID:MiEtb/Hm
 「繭、最近な、実親がお前の事を心配しているようだ。お前…。」
 「父上、わたしは健在です。どこにも悪い所はありません。講義を続けて
ください。」
 「繭、そうだったな。」
 繭は季広から算盤の講義を受けていた。大陸から貿易で入手したこの道具
は、単純で簡素な道具でありながら仕事の効率を飛躍的に上がらせる極めて
役立つ道具であった。

 算盤の珠を指で繭は弾いて、弾いて、弾いた。どれくらい講義を始めてか
ら時間が経ったかわからなくなった頃、ふと、繭は奇妙な光景を見た。珠と
珠の間に、人の姿があった。
 「どうした繭?」
 その時、繭の頭の中を、暗室が四方の壁と天井が一斉に取り除かれた時に
部屋を光で満たす勢いそのままに、無数の思考が駆け巡った。体重が鶯張り
の床に乗せられた時発する音の大きさ、身長と飛び上がる力と携行
した道具で飛び越えられる高さ、守衛の持ち回り間隔、毒の調合比率、刃を
振り下ろす力と速さ、灯りが作る影の方向、そして、標的の生活習慣…。
 「繭!!正気に戻れ!!」
 季広が抱きかかえていた。
 「大丈夫です父上。この講義ありがとうございました。きっととても役に
立つ事でしょう。」
 繭の目が、光っていた。見た事が無い光だった。

 それから、季広の元に信じられない手紙が届けられた。茜暗殺の予告だっ
た。季広は怒りを面に出さず、しかし強く命じた。
 「茜の警護を厳重にしろ。蟻の子一匹通すな。羽虫一匹通すな。可能な限
り厳重にしろ。」

 暗殺者はすぐには現れなかった。そもそも予告して暗殺に来る者などいな
いのではないかと言う意見も出たが、季広は警戒を続けさせた。何日も経っ
たが解かなかった。
 「敵が優秀な忍者を配下に入れ、その力を見せ付ける為にした事かも知れ
ぬ。だとすればここで警戒を解いた所を狙われる事もありえる。すぐ現れな
いと言うだけでは油断は出来ない。」

 茜は厳重な警護の中で眠っていた。厳重な警護のはずだった。その部屋に
、一つの人影が現れた。
 「姉上…。」
 寝言を言う茜の枕元に人影が立った。人影が、一気に小さくなった。
 「むぐっ!!」
 茜の口が塞がれ、体が押えつけられた。
 「蛎崎茜様、茜様のお命を頂戴に来た私は、誰でしょう。」
 「そんな、何で…。何で姉上が…。」
 部屋の外に聞こえない大きさで繭が語りかけ、繭が震えて返す。
 「わたしね、わたしの優秀さを、気づいてもらいたかったの。あれはわた
しの手紙。暗殺が出来るようになったとはいっても、慣れてないし警護が厳
重だから隙が無くて苦労したわ。今日までに何度も近づいては諦めたの。」
 「姉上…、助けて…。」
 それを聞いて、繭の目が光った。
 「勿論よ…、わたし達…、仲良しだもんね…。」
 繭の顔が茜の顔に近づけられた。そして、唇が重ねられた。
336名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 22:53:51 ID:MiEtb/Hm
 強い、密な口づけだった。少し茜が苦しんでいる。繭が口を離した。
 「静かにしてね茜…。」
 再び繭が口づけした。唇を重ねるだけでなく、茜の口の中を犯すように
繭の舌と唇が動いた。茜の頬がますます赤くなった。茜の体の震えを繭の
体が受けて喜んだ。
 「ぷはっ。茜、遊びを続けましょう…。」
 茜の口が再度塞がれた。繭の片方の手が動き、茜の胸に這わされた。茜
の胸の上をかるく掌が滑り、乳首を指先が触れた。
 「茜、大きい声出すとバレるよ…。」
 繭の顔が一瞬険しくなってまた元に戻った。茜の胸をもてあそぶ繭の手
の動きは更に巧妙に、繊細に、茜を震わせる動きに変わって言った。
 「そろそろ、わたしも思いっきり楽しもうかな。」
 繭が茜に体を重ねた。胸と胸が合った。両手を握り、茜が足を絡めてき
た。
 「茜、くれぐれも、声は出さないでね。」

 「伊達輝宗…我が第一軍団に登用しよう。期待しておるぞ。」
 伊達家は蛎崎家の猛攻の前に多くが捕虜となった。当主は野に下り、大名と
しての伊達家は滅亡した。

 「茜よ、繭を知らないか。」
 「いいえ…。」
 「そうか。頼み事があったのだがな。他の仕事をしながら探す。」
 季広は立ち去った。
 「行ったみたいね。」
 茜の首の後ろから繭の首が現れた。
 「二人羽織って、興奮しない茜?」
 繭の手が茜の胸を撫でる。
 「姉上、もっと…。」
 (完)
337名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 23:42:26 ID:NilRDcuv
そういう事か…
338名無しさん@ピンキー:2009/07/07(火) 19:56:17 ID:z//pIlWE
言に嘘はないな
339名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 17:28:52 ID:SRhAf0CP
面白かった
書いてくれてありがとう
340名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 10:23:28 ID:QFMokJM7
GJ
341名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 00:18:09 ID:eA5oMoZz
保守
342名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 20:45:01 ID:4veSL7jy
343名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 00:20:55 ID:NYPBk/ly
保守
344名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 17:58:10 ID:qHPRTqPw
保守
345名無しさん@ピンキー:2009/07/25(土) 18:41:53 ID:kgQqNAEs
信長の野望天翔記は信長の野望シリーズのゲームとしても評価が高いが
実は隠れプリンセスメーカー的ゲームでもあったりする
妄想で補完する部分が大きすぎるが
346名無しさん@ピンキー:2009/07/25(土) 20:43:58 ID:jfdVpva0
はあ?
347名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 13:01:28 ID:NhyK9eUR
そうなのか
348名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 20:57:25 ID:/9q3BqH0
めでたしめでたし
349名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 18:08:58 ID:Q8jc06JY
結局のところ、いぬひめさま作者さんは再来されないのだろうか…


孕ませアリってなことを言ってたから期待してしまったまま、この胸のささやかな焔が消えぬうぅぅぅう!!!
350名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 18:42:24 ID:Wl5drPGY
大分経ってしまったもんなぁ…
今でも待ってるけど
351名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 20:44:36 ID:7Z1zprV+
読みたいなぁ
352名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 22:53:59 ID:xUlQ74ax
自分も読みたい!
もう何度も保管庫読み返してるよ
353名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 22:57:53 ID:V12Q4ulf
孕ませ…いいよね!
読みたいなああの2人
354名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 08:03:04 ID:nRE9Cw6f
わんわん
355名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 18:13:28 ID:CqnTbBJo
おすわり!待て!
356名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 22:34:12 ID:dAhgJGA5
保管庫のいぬひめさま読んでみた。
…いーな、これ!
しばらく離れてた間にこんな良作があったとは

スレ違いになるが、
作者さんはサモンナイトスレでレシィ×ユエルの超大作投下した神だろうか
あっちの続きも待ってたのだが
357名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 00:14:37 ID:5JQAd+7g
罪作りな神よのぅ
358名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 09:13:28 ID:Z7VJ3L54
愛あるレイプスレの最新作がなんか同じ神の作品っぽい。
違ってたらごめん。
359名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 10:44:02 ID:X4lEb4ra
違う気がする
360名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 11:36:14 ID:0rTztk2L
んだんだ。
いぬひめさま作者の人のエロ描写はもっとがっつりねっちりしてる。
361名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 16:58:17 ID:+VKJaVdn
書き方の癖は同じように出てるみたいです。
景気が良くなってくる時の波に乗る感じも。
362名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 19:58:11 ID:6dLsB5sQ
職人特定行為はやめろ
363名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 20:45:31 ID:uzlpBTRl
書き手に失礼。
364名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 02:43:13 ID:Ry9fn6sn
投下が始まったのかと思ったぞ
365名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 17:13:20 ID:3wSvNZU0
エルドとセシリアの「桃色の鞠」の後編投下は無いんだろうか・・・!?
あのシリーズ好きなのになぁ
366名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 18:02:47 ID:3wSvNZU0
>>224に作者様がきてたんだね
未完成にならないことを祈って、気長に舞ってます
367名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 18:40:38 ID:J51oDkn1
舞うのか
368名無しさん@ピンキー:2009/08/03(月) 00:12:52 ID:iYT/unDx
舞うんだな
369名無しさん@ピンキー:2009/08/03(月) 06:58:40 ID:mSC2ZpXe
よし
ちょっと舞ってろ
370名無しさん@ピンキー:2009/08/03(月) 13:13:03 ID:wShPYS4y
どんな舞を見せてくれるの
371名無しさん@ピンキー:2009/08/03(月) 13:18:33 ID:2HtAT9Ke
裸踊りだろうJK
372名無しさん@ピンキー:2009/08/03(月) 22:35:26 ID:PsXSgbNE
ネクタイだけは残しておけよJK
373名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 08:32:22 ID:83D6YOhH
蹲踞(そんきょ)の姿勢を基本に飛び跳ね回るわけだな
374名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 15:27:26 ID:TBhTIC8p
>>373
うさぎ跳
375名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 22:55:00 ID:F9hA4c5L
記念に姫がダンスするようなのじゃない?
376名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 03:51:57 ID:v0tNffOJ
ストリップ!
377名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 15:37:21 ID:gAT1n+LQ
ちょいと質問なのですが、判る人いたら教えてくだせーm(_ _)m
ここの方な判る気がするので。

おそらく10年以上前の作品で商業作品。
姫様の陵辱物。
本のサイズは15.2 x 10.6の文庫サイズ、小さい本です。

姫様は挿絵では黒髪のロングで性格は普通、気が強いとか活発とかは無い。
多分スレンダー。

世界観はどっちかというと西洋系の世界観かな?
ただ騎士とか甲冑とかがたくさん出てくる作品では無い。
空想世界?スレイヤーズみたいな。

姫様は処女、旅の途中で青年と恋に落ちる。
この青年が多分主人公。
その後、敵に捕らわれて浣腸やらなんやらボロクソにされる。
でも多分、ハッピーエンド。
続編もあった様な気が。

かなり古い本なんですが挿絵が結構かわいい、今風の萌え絵。
初期大暮維人(あんなに上手くは無い)とか、後は道満晴明に似てたような。。
古い本なので記憶が・・

作品名が
「○○○姫の●●」みたいな感じだったような。。
○○○はカタカナ
●●は「休日」か「休息」か「受難」な気がするんですが検索で出ないので多分違うのでしょう。

ちなみに「エリス姫の受難」「ミューリ姫の受難」ではありません。

もし判る方いましたら教えてくださいませm(_ _)m
378名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 16:32:40 ID:gAT1n+LQ
すいません。
自己解決しますた。

15年の歳月は長すぎた。
西洋でもなんでもなかったっす(;´∀`)
姫の話だが姫もつかねー。

お騒がせしましたm(_ _)m
379名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 18:09:41 ID:SIquI2vJ
自己解決しました お騒がせしました で済むと思ってるのかな・・・
そんなもんアンタ
みんな気になって仕方なくなってるはずでしょ・・・
380名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 19:44:53 ID:OOaJCKnH
こんなスレもあるんだよ。
【教えて】エロ〜な小説・捜索願7【ください】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1233571541/
381名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 21:07:58 ID:24ss17J0
>>378
せっかくだからタイトル教えてよ
382名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 00:37:20 ID:2Z1e9bpN
>>378
このスレで聞いた以上、結果を報告する義務がある…

まじで教えてくださいorz
383名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 13:16:48 ID:n/Ms2cJr
面白そうだな
384名無しさん@ピンキー:2009/08/09(日) 00:12:33 ID:xT9MexSJ
あれ、保管庫って全部の作品が収録されてるわけじゃないんだ?
>>271-281が入ってない気がする
385名無しさん@ピンキー:2009/08/09(日) 01:12:10 ID:2bqqdS8J
そりゃあ誰かが手間と時間を割いて載せるわけですから
スレ内のSSを全部載せる義務なんてありません
386wiki”管理”人:2009/08/09(日) 22:09:55 ID:YSout9HG
あ、見落としてたのかな。
月1程度(以下の時も多いけど…)でまとめるようにはしてるんですが。
別にわざとスルーしてたわけじゃないです…
作者様すみません。
とりあえず今からやっておきます
387名無しさん@ピンキー:2009/08/09(日) 23:37:05 ID:9SasHAP4
管理人さん、いい人だ・・・
お疲れ様です。
388名無しさん@ピンキー:2009/08/10(月) 00:39:43 ID:qpeoTyai
>>386
いつもお疲れ様です!
389名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 22:21:56 ID:6OKQzLyE
>>386
過去作品を手軽にまとめて読み返せるのは管理人様のおかげです。
いつも本当にありがとうございます。
390名無しさん@ピンキー:2009/08/13(木) 13:27:39 ID:gCa1cbpN
夏のお姫様
391名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 16:36:06 ID:hVeDzcJ1
保守
392銀の思惑・橙の懊悩 前書き:2009/08/17(月) 21:54:40 ID:4NRZ1SbM
はるか昔、銀と橙のお話を投下させていただいていたものです。
新作が出来たので、数レスいただきます。
NGの方はIDかタイトルで、またはスルーしてください。

内容は相変わらずのエロなしです。
ただ、今回は陵辱未遂の未遂ぐらいの行為・若干の流血描写があります。苦手な方はご注意ください。


また、続編希望のレス、非常に励みになりました。本当に本当にありがとうございました。

では投下します。
393銀の思惑・橙の懊悩1:2009/08/17(月) 21:56:02 ID:4NRZ1SbM
夜も更け、城内は必要最低限の明かりだけが灯されている。
見回りの兵士が時折靴音を鳴らすくらいで、辺りは静寂を守っていた。
「卑怯者っ! 何をなさるつもりですか!?」
つい最近内乱の舞台となったこの城は、半年近く経った今でも所々にその傷跡が見受けられる。
南東に在った王族の居住区域は特に破壊と汚れが酷く、修復は進んだものの新しい花嫁には縁起が悪いと、
リリアはやや北東に外れた、被害が皆無のある一室を与えられていた。
「叫んでどうする? 声は外に漏れないし、見回りもしばらく来ない。
 誰も助けに来てはくれないだろうなぁ」
「ならばこの手を取りなさい! このような扱いを受ける筋合いはありませんわ!」
嫌な予感はしていたし、充分に気をつけていたはずだった。
だが、今リリアは見知らぬ男に両手首を頭上のシーツに片手で縫いとめられ、無様にベッドに転がされていた。
「ふーん……。これが噂の聖女様ですか。やっぱ、嫁き遅れの末っ子姫はじゃじゃ馬、男女の睦言にも疎いようで」
「……あなたの行為はわたくしだけでなく、ナザルとエデラール両国に対する侮辱になるわ。
 そんな覚悟が果たしてあるのかしら」
「――その威勢の良さはどこまで続くのか、ねぇ?」
ここ数日間、彼女が城内を観察した限り、今リリアを組み敷くこの男は近衛に属する兵士ではない。
下位の制服を着ているが、言葉遣いや雰囲気からして、それは身分を隠すフェイクにも思える。

一時期に比べて随分減ったものの、それでもリリアの住んでいた祖国エデラールより、兵士の数はかなり多い。
修復は進んでいるが、まだ城内侵入が平時より容易いこと、捕らえた王弟側の貴族や兵士を
未だに城内地下に抑留したままなのがその主な理由である。
そのせいか、兵士の不祥事が後を絶たない。
リリアも近衛から女性兵士を何人か借り受けていたが、この時間はちょうど彼女たちのいない空白の時間だった。
いくら末っ子で未だに処女だとして、結婚した男女の仲に何があるか、
しかもしばしば欲望の解消のために行われるその行為について知っている。
けれど「知る」のと実際「する」のにこれほどの差があったとは。
組み敷かれ、自由を奪われ、圧倒的上位から見下ろされる。
支配されてしまうことに対する恐怖に震えそうになる体を、リリアは拳を握り、唇を噛み締めて抑えていた。
394銀の思惑・橙の懊悩2:2009/08/17(月) 21:57:12 ID:4NRZ1SbM

「――ほぅ。口では威勢がよくても、体はなかなか正直らしい」
するり、と顎の形をなぞるように撫でられる。
「……震えていますねぇ、未来の王妃様。
 さすが純粋培養、やっぱり処女は大切に大切に守っていらっしゃったようだ」
「…………この手を離しなさい」
「あなたが他の男に体を許したと知ったら、あの冷血王子はどうするか。
 ああ、こんな噂はご存知かな」
兵士は身動きの取れないリリアをニヤニヤと見つめると、空いている手をゆっくりと胸元へ手を滑らせていった。
「我らが未来の陛下は大層色好みで――」
喉元を通り過ぎても、僅かに体をびくつかせただけでじっと動かないリリア。
無言の抵抗をする彼女に兵士は小さく舌打ちすると、勢い良くドレスを引き下ろした。
「――――っう!」
悲鳴を飲み込んだような呻き声が聞こえ、ふるんと乳房が露わになった。
「城内でも年増の、脂ののった女どもを数人囲っているそうですよ。そして」
小振りだがよく発達したそれは誘うように小刻みに揺れて、男は引き寄せられるように片方をゆっくりと包み込んだ。
しばらく感触を楽しむように揉みしだく。そして、そのまま。
「ぃやああぁっ」
――ギリギリと締め上げた。
「毎晩毎晩、王子の部屋からは女の悲鳴が聞こえるそうです」
こんな具合のね、と男は耳元で囁くと、そのままべろりと舐めあげた。
「ひと月もすると、女はぼろぼろになって実家に戻される。
 精神が壊れた者もいた、とか」
耳元に吹きかかる吐息にリリアが思わず身を捩らせると、男はにやりと笑った。

「リリア様のような方が初夜からそのような扱いを受けたらと思うと、この城に仕えるいち臣下として心配なのです」
露わになった肌に興奮を抑えきれなくなったのか、男の手つきが性急になる。
しかし、リリアの身につける複雑極まりない下着の前ではそれが仇となった。
「くっそ……だから貴族の女は」
リリアの手首を掴む己の手をちらりと見遣る。
最初は手や足をばたつかせていたリリアも、びくともしない体にいつからか抵抗を止めていた。
虚ろな眼差しに安心したのか、男は僅かに逡巡すると彼女の手首から手をはずす。
身を起こす男。その瞬間、男の体が、がぐっとのけぞった。

「――――え?」
最初に感じたのは、ぱたぱたと胸から腹部にかけてかかる冷たさであった。
男の陰からゆらりと隻眼の少年が現れ、リリアはひゅぅっと息を飲み込む。
395銀の思惑・橙の懊悩3:2009/08/17(月) 21:58:54 ID:4NRZ1SbM
「――ミゲル、意識は」
更に、フェルディナントが部屋の手前にある衣装棚の陰から現れ、リリアは体を隠すのも忘れて呆然としてしまう。
「もうそろそろ限界かと」
「あと少し保たせろ」
「はい」
ぱたぱたと、再び感じる液体。
その出所は、男の胸元から突き出る――
「―――――いっ!」
悲鳴になりきらない声が漏れた。
兵士の胸元から剣先が飛び出し、鮮やかな赤が滴っている。
先ほどから感じていた冷たさの正体は、それが時折リリアにかかっていたせいであった。
「かはっ!」
剣が更に差し込まれ、兵士は小さく呻いた。唇の端からこぼれる鮮血をものともせず、フェルディナントは両頬を片手で掴みあげる。
「お前の噂はかねがね私の耳にも入っていたが、まさかこの部屋にも入るとはな。
 本来殺すつもりはなかったが、ひとのものに手を出すなら話は別だ。
 苦しまずに死ねるのを大いに感謝するがいい」
銀の仮面にはなんの感情も浮かばない。ただ、その言葉だけが兵士の最期に染みていく。
「――処分は任せる。あぁ、ただこの部屋での流血は最小限に」
「わかりました」
ミゲルと呼ばれたその少年は、兵士の傷口に厚手の黒い布を押し当てると剣を引き抜きすかさず鞘に納めた。
全体にべっとりと付いた大量の血を見せまいとの配慮だろうが、そんなものは今のリリアにとっては今更であった。
露出した上半身よりも、皮膚の上で固まっていく血液が、それよりも硬直して重さを増す肢体が。
ミゲルが華奢な体に見合わない大柄の兵士を軽々と担ぎ上げたあとも、リリアは咄嗟に動くことができなかった。
フェルディナントが水で濡らした清潔な布を片手にリリアを引き起こそうと体を支える。
咄嗟にその手を振り払ったリリアをものともせず、フェルディナントは固まりかけた血液を綺麗に拭うと、更に夜着も取り出した。
「……っ、自分で、着れます」
「……布切れひとつ満足に扱えないのに、か?」
ぐっ、と言葉につまる。
フェルディナントが後ろを向いている間に更に体を拭こうと布に手を伸ばしたのだが、
震える指先は満足にそれを握り締めることすら出来なかったのだ。
「あの男がこの部屋に侵入したことも、このような暴挙に及んだことも今回は内密に処理する」
だから、黙ってこの服に袖を通せと。何事もなかったように振る舞え、と。
その考えはわかる。リリアなりにではあるが、今回のことが騒動になるのは非常にまずいということはわかるのだ。
未来の王妃が襲われた。直接的には賊に入られるほど城の警備が甘い、ということであり。
それはそのまま、フェルディナントの足下、そして国家そのものが未だに不安定であることの露呈につながる。
火種は種のうちに消さなければならない。
その大義の前では、リリアの戸惑いや羞恥心は取るに足らないのだろう。けれど。
396銀の思惑・橙の懊悩4:2009/08/17(月) 21:59:47 ID:4NRZ1SbM

沈黙を肯定と見なしたのか、はたまたうんともすんとも言わないリリアに業を煮やしたのか。
半身を起こしていたリリアの体をぐいとひねり、フェルディナントは背中の紐を解きにかかった。
「っや…………」
「動くな」
体をよじるリリアの両肩を押さえ強引に制する。
「いつまで他人の返り血を身にまとう気だ」
そう、あの男が、骸から流れた血が、己の上にたちたちと滴り落ち――――
「ひっ――――……」
思い返してはいけない。その生々しさに気づいてはいけない。羞恥に心を預けなければ。
胸元で手を握りしめる。時折背中に触れる指先に感覚を集中させる。
しゅる、しゅる、と規則正しい音だけが室内に響く。
平服とはいえ昼間の衣装は1人で着れない代物である。
息を詰めながら、フェルディナントはいつドレスの構造を知ったのだろうと疑問が過ぎった。

――毎晩毎晩、王子の部屋からは女の悲鳴が聞こえるそうです
――女はぼろぼろになって
――精神が壊れた者もいた、とか……

王族の男子には、ある一定の歳になると夜伽の相手が与えられるという。
たいていは後妻に入ったあとに夫をなくした、若き未亡人だとか。
きっと彼にもあてがわれたはずだ。だから、彼は女の裸に緊張することはないだろう。
対してリリアは。
素肌を異性に見せたのは幼少期以来のこと。直近の記憶も相俟って、体の震えが止まらない。
腕へと触れたフェルディナントの指先にも過剰に反応してしまう。
「……肩の力を抜け。これでは何もできない」
なにをするつもりなのか。他意はないとわかっていながら、邪推してしまう。
背後でくぐもった音がして、それがため息だと理解したのは数秒のちのことだった。
「私はあなたのような女性と交わるのは趣味ではない。
 そろそろ護衛の兵士が戻ってくるだろうし、私はこれにて失礼する」
思わず振り返った先の銀仮面は、気のせいか呆れた表情を浮かべている気がした。
「そのドレスは着替えた後で奥のカーテンの陰に置いておけば、使いの者が取りに来る。
 ――気をしっかり持て。この国を容易に左右できる存在だということを忘れるな」
397銀の思惑・橙の懊悩5:2009/08/17(月) 22:02:25 ID:4NRZ1SbM
引き止める間もなくフェルディナントは行ってしまった。
ただ、体の震えは嘘みたいに止まっていた。「交わる」という直接的な言葉が、ショック療法になったらしい。
握りしめていた手を開くとうっすら汗ばんでいて、関節が僅かに軋んだ。
室内を見回し誰もいないことを確認すると、リリアはようやくゆるゆると息を吐いた。
そう、暴漢の記憶もさることながら、軽々と殺してしまったフェルディナントも恐怖の対象であったのだ。
実際に手を下したのが彼でなかったとしても、それでも彼はあまりにも――慣れていた。
血の気配にも、死にゆく男への糾弾も、ちらりと覗いた冷徹さも。
隠しきれない、いや、隠すつもりもないのだろう。幽霊でも死神でも、それは寧ろ彼にとっては勲章だ。

祖国では、ただ王宮で無為に過ごすことができなくて、せめてもと外交・内政ともに努力してきたつもりだった。
でも、「つもり」だったのだ。自分なりの、自己満足の。
――力がない。結局、男の真似事しかできない。
圧倒的な力。得てして暴力になりがちだけれど、決してそれが全てではない。
力をもたない行動に重みは生まれないのだ。男の前で裸を見せて、ただ怯えるしか能がない。
そんな女の戯言に誰がついてくるのか。それに。

「女としての価値、か……」
これで女としても必要とされないとしたら。リリアがここにいる意味が本当になくなってしまうだろう。
熟れた女が好みらしいが、処女でない初婚の妃はリスクが大きすぎる。
今も、裸のリリアを見てなんの動揺も見せなかった。
いや、ここでもし迫られていたら、それはそれでリリアにはダメージだっただろうが。
にしても、だ。少し冷静に考えてみればわかる。
エデラールの王女としての価値以外、今のところリリアにはないのだ。
正体を暴こうとしているのは初日に宣言してしまったし、生硬い体で彼を誘惑することはできないし、
しかも自分の実力を勘違いした女だったのだ。
398銀の思惑・橙の懊悩6:2009/08/17(月) 22:04:06 ID:4NRZ1SbM
「………………はあぁ」
被虐趣味はないはずなのだが。エスカレートする思考に歯止めをかけると、リリアはベッドから勢いをつけて床に降りた。
――とりあえず、目の前の問題を片付けることから始めよう。
夜着に着替え、脱ぎ捨てたドレスと残された白布をなるべく小さくまとめる。
指定の場所に置くとカーテンを整えて、寝台まで戻った。
鏡で顔色をみる。多少青白いかもしれないが許容範囲だろう。紅はささないでおく。
今週から本格的に婚儀への準備が始まった。まずは御披露目のパーティー。
目前に迫り、侍女たちの動きも慌ただしい。知った顔はほとんどいないが、それなりに意志の疎通もできている。
安らかな眠りを願って、リリアはいつもより多く枕に気に入りの香水を垂らした。


******

光源のちらつきによって、影も濃淡を変える。
大きく重厚な椅子に浅く腰掛けたフェルディナントは、僅かな衣擦れに顔を上げた。
「……埋めたのか」
「いえ、暴漢の侵入を防ごうとした名誉の死として処理しました。
 敵に回すには少々うるさそうな連中が周りにいらっしゃるようだったので」
「余計なことを」
主人の憎まれ口には慣れているのか、隻眼の少年は特に表情を動かすことなく、
そのまま腰に付けていた大振りの剣を取り出し手入れを始めた。
「――――りますか」
だから、完璧に油断していたフェルディナントは不意に投げかけられた問いかけを聞き逃してしまった。
従者とはいえ己以外の存在がいる中で、いつの間にかぼぅと意識を飛ばしていたことに、内心舌打ちしたい気分になる。
問い返すのも癪なので無視すると、あからさまにため息が聞こえた。
「……まだ温もりはありますか」
かなり面倒くさそうに、それでももう一度疑問は放たれた。
「お気づきかはわかりませんが、先程からお手をじっと見ていらっしゃるので」
399銀の思惑・橙の懊悩7:2009/08/17(月) 22:05:29 ID:4NRZ1SbM
リリア様の抱き心地はそんなに良かったのかと。
皮肉る訳でもなく淡々と放たれた言葉は、だからこそフェルディナントをなぶる。
「――抱いてなどいない」
「しかし、あのドレスは脱がせないとならなかったのでしょう?
 獣性の強い『あなた』が我慢できるとは思えなかったんですが。ああ――」
「黙れ」
彼の剣幕に大人びた顔は多少引きつったかに見えたが、一瞬のちにその表情は戻った。
「……仮面を外されますか」
「……いらん」
「鍵はありますが」
「……ここでは無理だ。……気にするな」
一気にフェルディナントのまとう空気に疲労の色が濃くなった気がした。
「今日はもう下がれ。これ以上何もないだろう」
だいぶ情勢は落ち着いてきた。小さい小競り合いや不法侵入は散発するものの、
一晩に立て続けに起きることはもうない。
リリアに直接就いている女兵士も、職務遂行能力の高いものばかりを選んだ。
しかも、リリアに対する忠誠心も芽生え始めているという。
今夜はもう平和に夜明けを迎えるだけだろう。
「……リリア様はこの城に馴染み始めているようです」
「……そうか」
「あなたは……」
口ごもると少年は一度顔を伏せ、その顔にはっきりと苦渋を滲ませた。
「あなたがくる前に、リリア様はあなたの『噂』について聴かされてしまいました」
「………………」
「ショックを受けておられるようでしたが、あの方なら、きっと受け止めて下さるのでは、と」
普段なら鼻で笑われる台詞。しかし、甲冑の置物の様に銀仮面は動かない。
しばらくその場を沈黙が支配した。
「――あなたは優しすぎます。しかも、ひどく屈折している。
 あの方は強い。なぜそこまで遠ざけるのですか」
「…………青いな、やはり」
今度こそ鼻で笑ったフェルディナントに、少年はさっと紅潮した。
「確かに強い。が、外側だけだ。見ただろう、先程の様子を。
 外側だけの強さは簡単に壊れる。今の私には、その脆さを気遣うだけの余裕はないのだ」
もう下がれ。
再び促された少年は、手入れを終えた剣をしまうと一礼して退出した。
しばらくすると、黒衣に銀の仮面の男は立ち上がった。そして小さく、小さく嗤った。




400銀の思惑・橙の懊悩:2009/08/17(月) 22:09:43 ID:4NRZ1SbM
今回はここまでです。
お付き合いありがとうございました。

ちなみに次回作は、内容は決まっていますが、投稿時期は未知数です。でも完結はさせたいです。
それでは。
401名無しさん@ピンキー:2009/08/17(月) 23:14:19 ID:hoNtPc6U
またね
402名無しさん@ピンキー:2009/08/17(月) 23:27:46 ID:oh8rMkuF
乙です
続き待ってる
403名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 03:22:41 ID:DmLECiFK
続き気になる
仮面に秘密とかあるんでしょうか
404名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 04:05:26 ID:1F36pU3c
銀と橙の続き来てたー(*゚∀゚)=3
動揺してるのも気丈に振る舞おうとするのもリリア可愛いよリリア
いつまでも続き待ってる!
405名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 16:42:29 ID:W8gaBbC9
うーむ、色々と気になるな
投下GJでした!
406名無しさん@ピンキー:2009/08/20(木) 21:08:05 ID:3WYoR6+j
>>400
超GJ!!
銀と橙シリーズはキャラも設定も話もすごく好みだ
407名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 20:42:00 ID:fpJPB/Th
エレノールとセシリアと銀と橙の続きをまっとる
408名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 21:40:00 ID:swByPBB+
うん待ってる待ってる
409名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 16:10:10 ID:hUKQntXP
俺も待ってる作品があるんだ
410名無しさん@ピンキー:2009/08/24(月) 01:00:44 ID:SoMVST2c
そっか
411名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 21:18:15 ID:PxXlaCf0
俺にだって待ってる作品はあるんだ
412名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 22:40:15 ID:kWSBcuEy
いつまでも待つぜ
413名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 07:16:51 ID:+6a5cHz0
ここはいろんな姫様がいて萌えるな。
414名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 23:34:25 ID:3nQg/Xm6
姫様や〜い
415名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 00:21:45 ID:b6b6f3RP
お姫様に思い切りビンタされたい…
416名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 14:11:38 ID:/yeee/hU
ばしっ
417名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 00:54:38 ID:oqQwoZ66
あふん
418名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 10:14:35 ID:yf97T4Th
「はぃ? この役立たずが! かわいい声だせば許されるとでも思っているわけ?」

「そんなはしたない格好して、しかも床にあんたから滴ったので水溜まりができそうじゃない」

「あなたが、自分で、その口で言ったのよ。出来るって」

「今更できないなんて、泣いても許さないわよ」

「ふん。そんなにお尻つきだして。無様ね。恥を知りなさい」



「……さっさと泳ぎなさい! このわたくしが泳げないなんてバレたら殺してやるんだから!」
「ははは早く手本を見せて! そのまま飛び込めばいいんでしょ!?」


かっとなってや(ry
419名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 17:52:15 ID:jo0XkA31
いいぞ!!!!
420名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 19:03:20 ID:yf97T4Th
「この、馬鹿! こんなにおっきくしちゃって……。こんなにしていいなんて言った覚えはないわ!」

「今にも突き破りそうじゃない。しかも、よく見たら先っぽ少しピンクっぽいし……」

「先端、少し光ってないかしら。……触ったらべとべとが付きそうだわ」



「確かにもう少し悪っぽくなりなさいって言ったけど、黒髪七三分けからいきなり暴走族って何!?」
「しかもその巨大ツンツンヘアー、前時代的すぎるわよ今時どこにいるのよそんな人っ!」
「マニキュアもワックスも自費よ自費!給料からて・ん・び・きですっ」


かっとなっ(ry
いや、申し訳ない……
421名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 22:38:43 ID:uRFeIWl5
もっとやれ
422名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 09:08:48 ID:nf4RXBgv
ロリお姫様に踏まれたい
423名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 19:41:06 ID:YUUB4tpU
「ほんとに……、いいの? 大丈夫? スギタ、いたくない?」

「なら、いくね。……すごい、硬いよスギタ! もっと踏んでも大丈夫?」

「え、何回も踏むの? 力が弱いのはしょうがないよぅ、りう、スギタよりうーんと小さいんだもん」

「あ、ここを足の指でなぞればいいんだね? んふふ、この筋がきもちぃんだぁ」

「……あっ、ごめんなさい! あんまり上の方は苦しいんだよね」



「でもスギタもお父さまも、りうが背中ふみふみしてもよく苦しくないね」
「りう、いっぱい練習して、お父さまに喜んでもらうのー!」
「スギタも、いつでもりうに頼んでね」

いいネタが思いつかない。
レス消費すまん。ではこれにて。
424名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 20:48:54 ID:LKpVQysP
425名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 12:23:04 ID:0WAKg0Lc
ありがとう!
426名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 20:40:05 ID:PFuGWcqd
待ってます
427名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 02:05:07 ID:DNdE4wTm
何をだい
428名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 04:40:47 ID:bWRv1p9t
開かれるのを
429名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 15:28:08 ID:0y/pT18n
そうですか
430名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 08:53:16 ID:/orn0tSt
もう400KBなんだ
431名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 11:14:43 ID:1HfhOPfX
スレの前半で大量消費したからね
432名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 19:12:14 ID:citbo/u0
それにしても犬姫さまはいかがなされたのやら。
わんわん。
433名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 20:41:24 ID:2N79jm/M
わおーん……
434名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 02:57:56 ID:wUP6kMJE
投下します。 あまり姫じゃないのはご勘弁。一応人魚「姫」で。
物語的には続く、の一話完結です。
435名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 03:01:16 ID:wUP6kMJE
人魚姫

 「……波か」
 波の音がする。
 レイナードはすっかり夕闇に包まれた海岸近くの飯場で、遅い夕食を取っている。
 周りには食事をしている人間はおらず、顔面いっぱいに髭を生やした腕の太い男と、そ
れを取り巻く幾人の男らが、安いラム酒を呑んでいるだけである。男達は漁師のような格
好をしていた。
 質素で小さい飯場兼酒場の料理は、店と同様面白みなく旨くも不味くもない。そのため、
見るともなしに男達の酒盛りを眺め、彼らは本当に漁師なのか、そうでないのかなどと考
えながら、機械的にフォークを口に運んでいた。それにも飽きると、今度は興味を引くも
のは何もない。必然的に、絶え間なく流れてくる波の音を改めて聞いてしまう。
 そして思わず独り言を言った。
 「波がどうしたってぇ! 兄ちゃん」
 すでに真っ赤な顔をした髭男が茶々を入れてきた。応えずに、下を向いて黙々と食事を
続けた。
 「女みたいな顔した兄ちゃんだよ」
 「きっと女に振られて傷心して、海沿いの街に来たのさ」
 男達は好き勝手なことを言っている。皿を全部空にすると、レイナードは代金を置いて
店を出た。
 海から運ばれてきた風はひやりとしている。潮の匂いが辺り中に満ちていた。
 しばらく、マントを風任せになびかせたまま、海を眺めた。(正確には海の方をである)
 

 十三くらいの頃、両親の仕事の都合でこの街に少し滞在した時、人魚に会った。
 陸地育ちで海が珍しかったので、誰もいない早い時間に朝の浜辺を歩いていると、幼い
少女の人魚が、岩の上に座っていた。
 肩ぐらいの髪は亜麻色で、瞳は大きくて薄青色である。
 食い入るように見つめると、少女はこちらを向いて、しばらく視線が繋がった。人魚は
すぐ逃げなかったので、まっすぐ見つめあった。頬の線があどけない。人間のそれと変わ
らない。だが下半身は、月の光を集めてガラスで反射させたようにきらきらと銀色である。
腰の辺りから柔らかそうな鱗に覆われており、先端は二股の尾っぽだった。
 人間の少女で十歳ほどに見えた。レイナードは目を離せなかったが、少女の人魚はする
りと海に潜って消えてしまった。ぱちゃん、と波の跳ねた音が耳に余韻を残した。


 二十歳の時、すでに一人旅に出ていたが、またこの街に来た。今度は日の入りの時間帯
に、人気のない海岸を歩いていた。太陽が大きく、真っ赤で、海一面が鮮やかにオレンジ
色だった。目を凝らしても水平線が見えるだけだったので、踵(きびす)を返して帰ろう
とした。すると、ぱしゃっと水音が聞こえた。すばやく振り向くと、また少女の人魚が、
全身を露わにして跳ね上がり、すぐに水中に消えた。
 少女と言っても、十五、六ほどの娘だった。亜麻色の髪と薄い青い瞳。それだけで、何
故かあの時の人魚だと思った。

 そして五年経った。
 去年に、人魚についての噂を人から聞いた。レイナードはあれから、文献だの村の言い
伝えだので、無意識のうちに人魚に関する知識を集めるようになっていた。
 人魚は前世から魚だったものと前世が人間だったものの二種類いるという。この辺りは
真偽を確かめようがないが。
 以前が魚だった人魚は生粋の海の生き物なので絶対に人前に姿を現すようなことはない
が、元が人間の人魚は知らぬうちに海上の人の世界に執着と懐古の情があり、人が居ない
間を見計らって浜辺を覗いたりする。
 そして人の世に近いところにその身を置く人魚は、手順を踏んで人間になれるという。

 誰も試したこともなく試しようもない伝説である。
 

 
436名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 03:06:01 ID:wUP6kMJE


 レイナードはあれから眠らず、誰も起きてもいない時間に宿を出て海辺に来た。
 案の定人は一人もいない。日の出が眩しい。思わず目を細めた。
 波が、きらきら光っている。黄金色に一面さざめいている。
 不意に。水面が揺れる。ゆらゆら揺らめく。ただでさえ流動している水が割れ、人の形
をしたものが姿を現した。
 人魚だ。一目ですぐにわかった。
 亜麻色の髪に青色の瞳である。十七くらいに思える。瞳が大きく頬に幼さがまだある。
 が、肢体はずいぶん大人っぽくなってはいる。まだまだ成熟してはいないが、清潔な色
香を漂わせている。大人になりきる前の芳醇で、濃厚な匂いがする。
 腰の辺りや、貧弱な下着に隠された胸の形をしばらく眺めた後、服のままずぶ濡れに
なって浅瀬の岩陰に身を潜めていたレイナードは、ひらりと岩の上に上がった。
 ぴちん、と人魚の尾が岩を打つ音がした。すっかりその身を晒していた少女の人魚は、
長く伸びた髪を翻して振り返った。瞳がとても大きく見開かれ、何が起こったのかわから
ない表情だった。レイナードにはその動作がスローモオションに見えた。
 赤子の手をひねるより簡単に、人魚の手首を捕まえた。
 艶かしく、人魚の魚の下半身が何度も岩を叩く。何度も何度も跳ねる。
 やはりこの鱗が美しい。白銀に光っている。

「あ――」
 人魚が口を開いた。顔中に脅えがいっぱいに広がり、瞳が潤んで今にも泣き出しそうで
ある。且つ、それでも事態を何とか、自分に手の負えるように咀嚼して飲み込もうと、懸
命に努力している。
「だ、誰ですか……? 貴方は……」
 やっと俺に名前を聞いたな、とレイナードは思った。それを知りたかったのは俺だ。
「人に尋ねる時は、自分から名乗るもんだぜ――お魚のお嬢ちゃん」
 にやりと口の端を上げると、意地悪そうな表情になった。
「が、こんな慣れない事態で、不安を拡大しても可哀想だから、特別に名乗ってやろう。
我輩はレイナード・ニースだ! お前は?」
快活にレイナードは言った。
「わ、私は、マリスです……」
「マリスね」
「あの……人魚、です。人間から見て言うところの……」
「そんなことは見てわかってる。お前はまあいとも簡単に人間に捕まる人魚だな? あん
なに何度も俺の前に出てきやがって……」
 マリスは自由な方の手を心臓にあて、鼓動を落ち着かせている。レイナードはじろじろと不躾に視線を上から下へ巡らせ、見飽きると、哀れな人魚を捕まえたまま、岩の上にあぐらをかいた。
「離してくださいな」
「ふふ、長年気になってた人魚が目の前にいるんだ。ハイと言ってそうやすやすと解放するわけにはいかねぇなあ」
 おずおずと申し出た願いを即却下され、人魚は悲しげに眼を伏せた。
「人魚の世界には男は居ないのか!」
 ぶっきらぼうに尋ねられ、少女は、面食らって眼をぱちぱちさせた。鈴の音のような声
を出す。
437名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 03:09:24 ID:wUP6kMJE

「は、はい。男の人魚は居ます。数は少ないんですが」
「ほほぅ。男女のバランスが釣り合ってないわけか。じゃああぶれた奴はどうするんだ?


「いえ、その……私たち人魚の世界では、男の人はとても珍しくて、全ての人魚を統べる
国王様と、その臣下の方たち以外にはいません。あとの娘達はみんな、そのお父様と兄様
に守られて、成人まで成長すると、とてもとても遠くの海まで――固い貝の中に大事にし
まってある真珠を取りにいくんです。そしたら神殿に入ることが許されるので、その真珠
を飲み込んで二箇月間ほど経つと、そのまま神殿の部屋で真珠を口から戻します。そして
一週間ほどで、その、真珠が孵って」
「なるほど。それが人魚の産卵か。じゃあ、セックスは……必要ないよなぁ。へえ」
「え――せ、……って、人のする、あの……? ひ、ひつようありません」
 マリスは顔を真っ赤にした。

「何で男の人魚はあまり産まれないんだ?」
「は……あ、あの、国王様が直々に息を吹きかけた、女王様の特別な真珠だけ、男の人に
なるんです。私たちの孵す真珠は全部女のコだから、はぃ」
「それで、うまくいくんだよな」
「ええ、平和でとても美しい暮らしです」
「人魚ってどれぐらいいるんだ」
「そんなに多くありません」
「何を食べるんだ?」
「人と違ってあまり食べないです」
 頭の片隅に住み続けた人魚についての疑問を解消できて、レイナードは少し満足した。

「じゃあ――人魚はみんな、お前みたいに――いかにも捕まえて下さいって風情で、人間
の男の目の前に裸を晒すものなのか?」
「えっ?」
 両方の手首を、物凄い力で封じられ、マリスは慌てた。はっきりとその表情に恐怖を映
して、ただでさえ白い顔を青ざめさせる。しかし最早遅かったのである。
 次の瞬間には男の頑丈な腕に後ろから抱きすくめられ、からめとられた。枝を抱えるよ
うに、レイナードはマリスの動きを支配し、好きなようにしなやかな身体をまさぐった。それはとても容易かった。
「嫌、離して下さい! 離して!」
「お前は――人間になりたいんだろう? 前世が人間の人魚は、簡単に人間になるんだ。
ほら、こんな鱗は、邪魔だ」 
 ざらついた指が、マリスの魚の部分に触れる。マリスは激しく抵抗して嫌がった。
「嫌、いやだ、やだぁ! 触らないでえ! そこは……」
 精一杯の力で尾が跳ね、レイナードの足を打った。だがこの男を止めるに足るものでは
到底なかった。
「いや、そこは……」
 小さな肩がぶるぶると震える。かまわずに、柔らかい尾ひれを撫で回していると、脱皮するようにぽろぽろと鱗がはがれていくのであった。
 風が吹いて樹木から花弁が落ちていくように。さらさらと流れ、無くなっていく。その
後には、真っ白な脚が残った。
 すっかり鱗が剥がれ落ち、脚の付け根の周りにだけ残った。
438名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 03:18:40 ID:wUP6kMJE


「やめてぇ」
 力無く叫んだ。平らな岩場の上で、二人の体は絡み合った。生まれて初めて手にした足
を震わせて、マリスは懇願した。
「やめて、下さい。お願い……」
 だがレイナードは軽く首を振る。
「最後の数枚だけ、少し痛いぞ。我慢しろよ……」
 そう言い、右手の指をわずかに残された鱗の上に置き、ゆっくりと動かした。左手で、
愛らしい乳房を思い切り掴む。ビクンと、おもむろにマリスの全身が跳ねた。
 唇の間から舌を出して、折れそうな首筋を上から下へなぞった。そのままなだらかな丘
陵を登り、吸い付くように先端を口に含む。マリスは眼を開いたまま、すすり泣いている。

「ウロコを全部剥がして、人魚は人間になる。お前はずっと人間になりたかったんだろ、俺が手伝ってやる」
「嫌です、私は人間になんか……」
 なりたくない、と言いたかったのであろう。だが言葉は途中で掻き消された。
「嘘を吐け。お前は俺に捕まえられたかったんだ」
 小ぶりな臀部をまさぐり、後ろから指を差し込んだ。呆れるほど、瑞々しく艶やかな肌
であった。すでに数枚を残し、大事な部分を覆い隠していた鱗は剥がれて無くなっている。

 ふっくらとした山に、一筋の割れ目が現れている。残骸のように四、五枚、鱗が引っ付
いているだけであった。茂みは無い。
「あ……やだ……」
 レイナードは薄く笑うと、ぐい、と華奢な脚を左右に開かせた。すでに泣いているマリ
スは余計に泣き始めた。
 無視して、入り口を指の腹で撫でると、裂け目をこすった。茶色にほんの少し桃色を混
ぜた色をした周囲に比べ、クレバスははっきりと朱色に一筋割れている。
 恐怖とも嫌悪ともつかない思いで、マリスは声にならない叫び声を上げ続けた。快感な
どわからない。ひたすら涙が頬を伝って、それは小さな真珠になって消えていった。
 だが男はやめなかった。赤ん坊のようにマリスを転がすと、太腿を開かせ、その間に顔
を埋めた。下から上へ、猫のように舌を出して、ぴちゃぴちゃと舐めた。
「やっ……ぁう……やだ、やだ、やだお願いだからやめてぇ! やめて下さい! やだ
ぁ!」
 マリスは泣き叫ぶ。掴んだ両の足首が暴れだす。
「っ……なるべく痛くないようにしてんだ、辛抱しろ……」
 言いつつも、容赦なくざらざらした舌をぬめった肉に押し付ける。本人にもわからずに
染み出してくるものを、喉の向こうに流し込み、擦り込ませながら。
 試しに、残った鱗を指でつまんではがそうとしたが、同時にすごい叫び声を上げてマリ
スが痛がった。

「ちょっと待てよ」
 その体勢で転がしたまま、レイナードはずぶ濡れの服を鬱陶しそうに脱ぎ去った。涙で
霞んだ瞳でぼんやり見ると、いきり立った男のものがあった。マリスは、全身の血が凍り
ついたようにひきつった。
 すでに天を仰ぐように、ぱんぱんに膨張している。
「触ってご覧」

439名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 03:22:11 ID:wUP6kMJE

「やだ!!」 
 無理にマリスの手を取り、嫌がるのを押さえつけ自分のものに触れさせた。びくりと硬
直する。
「嫌ぁ……っ……」
「熱いだろ。硬いだろう」
 深く息を吐きながら、レイナードは残虐さと偏愛が混じった、複雑な色の瞳でマリスを
見下ろした。
「――ほら」
「やぁ……だ……」
 ぐい、とあどけない頬に今にも暴れそうなものを押し付け、ぴたぴたと数回叩いた。マ
リスの眼は何かを失い始めている。

「人魚の男達には無いものだ。たっぷり、味わえよ……」

 マリスの、頼りない体の真ん中に、それを突き立てると、最初はいくらか進みいれるこ
とが出来たが、途中から拒むように道が固くなって、とても容易くはいかなかった。 
 メリメリと音が聞こえてくる気がして、幾分可哀想な気にはなったが、止められるはず
もなく、汗を随分掻きながらレイナードは己の分身をマリスの中に沈めたのである。

「痛い! いたい、痛い……よぉ……っ」

 眉間に皴を寄せ、喉が破れるくらい悲痛な叫び声を絶えず上げ続ける。ぽろぽろ、ぽろ
ぽろと、辺りが真珠で埋め尽くされ、海の中に淡く消えていった。それは幻想的な光景で
あった。
 真ん中から体が裂けるような感覚が、絶え間なく貫く。処女喪失の痛みというのは、レ
イナードも察して知るものではあるが、どうしようもないので衝動のまま腰を突き動かし
続けた。

「もう少しだ」
「うっ、う、うぅっ」

 腕を地面に向けて垂直に伸ばし、その体の下で、海草のように髪をばらまき、少女は突
かれるに肢体を揺らしていた。
 ぱら、ぱらりと、わずかにくっ付いていた鱗が、剥がれて落ちる。
 数度早く、マリスの中でレイナードが動き、体が離れた感じがした。腹の上に、さっき
まで体内に収まってたものが押し当てられ、白いものがほとばしった。その雫は、真珠に
似ているような気もした。マリスの体から、ウロコは全て剥がれ落ち、一枚も無くなって
いた。レイナードは手の甲で額を拭った。
440名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 03:23:29 ID:wUP6kMJE

「……おい、聞いてるか?」

 仰向けに横たわったマリスの隣で、頬杖をついてレイナードは問いかけた。
ゆっくりと、視点の定まらない目でマリスは自分を犯した男を見て、言った。

「許してください」
「許す?」
「私を、海に帰して……」
「その足で? どうやって帰るんだ」

 日当たりの良い一枚岩で乾かしていた服を、再び身にまとって、レイナードは言う。

「俺が今日からお前を陸上で生活できるよう、面倒を見てやる。陸の食べ物にも、服を着ることも、
セックスも、全部教えてやる。から少しずつでも慣れろ」
 さっきまで人魚だった少女を軽々と抱きかかえ、その瞳を覗きこむ。レイナードの眼に
は、愛情と、肉欲がある。


「いや……」

 だいぶ間を空けて、一言だけマリスはそう答えた。レイナードは口だけでほんの少し笑
って、

「陸の上では世間知らずのお前が、やっと立ち歩きを覚えた子供みたいにふらふら歩いててどうなるんだ。
その辺のごろつきに売られて終わりだぞ。俺に拾われて、良かったじゃねぇかよ……」

 そう言い、海の向こうを見た。吹いてくる風は大きくマントをはためかし、どんな不安
も一掃するようだった。あの水平線の向こう側には何があるのか、マリスも知らない。
441名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 12:54:08 ID:Dt3yKvoi
>>438
GJ
442名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 13:31:36 ID:LNkYC4wB
人魚姫=姫が痛みを覚える

こうして考えれば物凄くエロイ話だったわけですね
GJ!
443名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 17:06:02 ID:9OAXVvCD
レイナードは気弱な優男なんだろうとよんでいたら
我輩とか言い出してチョット吹いたw閣下思い出した
がらっぱちだったのねwでもGJ
444名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 03:16:27 ID:R68OofrM
gj
素直に萌えた
台詞一つ一つが良かった
445名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 01:38:32 ID:Mf/wSNPW
火と闇のの人はいつになるのだろう
ずっと待ち続けるつもりだが
446名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 02:25:24 ID:4omt14Nn
>>250でサイトを作ると言ってたけど
447名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 16:29:36 ID:EGumSzwJ
俺は犬姫さまに会いたいぜ
448名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 19:46:24 ID:+Ktcz+HI
可愛い姫様ならウェルカム
449名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 14:08:25 ID:7qOKT9Ge
私の靴をお舐めなさい、と命令して下さる
お姫様をお待ちしております
450名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 16:06:57 ID:Ie06i+hT
ツンデレ姫もいいな
451名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 18:48:37 ID:Zpjj1p7g
セシリアたんはどうしてますか?
452名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 19:08:51 ID:f2mJ3Vl5
ぜったいに、ぜったいですッ!
453名無しさん@ピンキー:2009/09/25(金) 16:33:23 ID:7/JWXZ6A
姫たまー!
454名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 00:50:05 ID:aA0y/Agf
かにたまー!
455名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 19:43:09 ID:gfV2yfnr
>>454
どうしてくれる!
カニアーマー装備の武闘派姫、想像したじゃないか!(笑
456名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 22:48:47 ID:+N2QKZXO
イブ・セ・マスジ姫ですね
457名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 19:42:28 ID:fA8Ybkhl
>>456
・・・ごめん、それだれだっけ?
458名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 20:03:21 ID:uEE3Mm5z
井伏まs……、おっと、誰かきたようだ。
459名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 20:16:05 ID:LgsBtGTU
プロレタリア帝国か
460名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 09:45:03 ID:DPzr8NQk
和田アキ子アーマーか…?
461名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 19:24:53 ID:Al7UckLt
どんなキャラか想像しようとしたら
戦闘狂でそこそこ残酷で広島弁になったw
「ちょっきんなー!ですわ!!」が口癖w
462名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 19:28:25 ID:uahLx5f+
カニアーマー装備で不死身のスパークを持った超ロボットレリックユーザー姫か・・・
463名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 08:13:17 ID:C+NEuuXs
あれは設定とストーリーが暗いしちょっと悪趣味だったからあんまり好きじゃないなぁ…
玩具は嫌いじゃないけど
464名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 18:34:12 ID:bZ36ZV0V
お姫様、僕に飛び蹴りして下さい
465名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 20:07:19 ID:zgHL4H0E
不死身とまではいかなくとも
常人離れした頑丈さとかは
不老不死を目指した錬金術の実験台になった経験が
とか考えると重いな
466名無しさん@ピンキー:2009/10/02(金) 15:53:07 ID:EYJPMasP
コミックヴァルキリーで連載されているブランジェルのアリシアとかだな
お屋敷住まいだったっぽいが、お姫様なのかどうかは微妙だが
467名無しさん@ピンキー:2009/10/02(金) 19:09:43 ID:yY+BWRVy
ぼくにとっての永遠の姫はクラリスです

468名無しさん@ピンキー:2009/10/02(金) 21:33:21 ID:/cDLV1wO
カリオストロ?

>>465
恋人役は
エイの格好した「糸巻き巻き」と歌う戦士系か
顔色は悪いけど強力な魔法使える優しい魔法使いか
469名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 05:04:59 ID:mNZu86+a
ツーかなんでこんなところにセブンフォートレスユーザーがいるんだよw
470名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 06:29:11 ID:ClxNLrvX
ナイトウィザードユーザーでもある

属性っていいよねえ
安直だが燃えるし萌える
火とか闇とか
471名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 21:00:31 ID:eQmU8kuR
セブンフォートレスユーザーは来ちゃいけないの?
472名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 23:51:58 ID:HQs/GwRg
セブンフォートレス略してSS。そうだお姫様のお話を読みたい
数年ぶりに書こうと思ったがワードパッドを開いた時点で満足してしまった
はあ…
473名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 03:28:05 ID:PTUDxArD
ふう……
474名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 05:13:13 ID:zYYbZbak
メーテルは惑星アンドロメダのお姫様  最強姫かもw
475名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 10:35:03 ID:Pfl/l5Gg
>472
7=F とか NW とか略してるオレはそうしたら…
別スレでSS書いてるけど、ペンネームが魔法名という厨ですサーセン
476名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 11:06:00 ID:uZodzWdk
ランページ的な性格の姫様だと
男に対し攻めに回りそうな気がしてきた
ショタな美少年を襲って食いまくるお姫様・・・
あまり好みではない・・・
477名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 13:04:33 ID:qXoLgxPO
ミューちゃんの方が姫っぽいな
生まれが不幸だし、余命幾ばくもないし、イヤボーンも出来るし
実際、スパークは女性(CV池澤春菜)だし
478名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 18:58:13 ID:uZodzWdk
>ミューちゃんの方が姫っぽいな
取り合うのはカニとパタパタ犬かよw

ところでイヤボーンって?
・・・ひょっとして「喧嘩しちゃ駄目」?
479名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 19:13:33 ID:pIWR6rpl
>>478
「イヤボーン」でぐぐりなせ
480名無しさん@ピンキー:2009/10/05(月) 05:51:01 ID:GPosGlLe
>>478だが
ぐぐってきたぜ。そういう意味かw
481名無しさん@ピンキー:2009/10/05(月) 21:15:05 ID:GPosGlLe
イヤボーンでエロネタ
「ん・・・ん・・・ふっ・・・」(猿ぐつわ中)
「ああ、ミュー。そんなに不安そうな顔しないで。
 あなたのちゃんと私の中で反り返って・・・」
(猿ぐつわ外れ)「イヤー!」
ボーン
「・・・!・・・ああ、あなたのが爆発するみたいに射精して・・・」

・・・すまん
482名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 21:10:40 ID:hpeShCRl
ぱたぱた犬でどんなキャラか想像しようとしたら
蟹甲姫と張り合うキャラという条件つけたら
翼の付いた犬の聖闘士の聖衣っぽい甲冑になった
483名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 23:49:10 ID:1UKJihE4
わんわん!
484名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 20:28:38 ID:celpYUTw
ミューちゃんの大魔法を利用しようと
ミューちゃんを拉致する悪のドラゴン
チバ・トロンを想像した
485名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 01:35:39 ID:3LjIt0ao
では、この流れをまとめて、BWの設定にほぼ忠実に姫物語化してみる
ちなみに、さる国とゴリラをかけているわけではない

ミュー姫:
姫(どこの?)。
誕生時に何らかのトラブルに巻き込まれ、脆弱な肉体に生まれついてしまったため、あまり長生きできないと言われている。
そのため、生まれつき強大な魔力を秘めているものの、それを行使できるほど肉体が強くない。

蟹武者:
さる国が、過去の歴史において暗躍した強大な不死者の力について研究し、
その不死の能力を再現すべく魔術実験の結果として作り出した、忌まわしい魔人。
研究施設の人間を皆殺しにして逃亡するも、結局捕縛され、遥か彼方の世界への追放処分が下されていた。

気性は荒く好戦的だが、生まれ付いての強大な力と精神感応力を持ち、ミュー姫と心を通わせる。
邪竜に服従の呪いをかけられているが、本来は誰の束縛も受けたがらない性格。

犬騎士:
蟹武者を生み出した国家の若き騎士。
正義感が強く、優秀だが、自分の正義に妄信的で、空回りすることも多い。
ミュー姫を邪竜や蟹武者らの、悪の手から守ろうとしている。
ちなみに、想い人は姫以外の人物(悪女)。

狒々団長:
犬騎士の上司。指揮官としてはまだ若いが、実践で急速に経験を積んでいる。
邪竜の宿敵であり、また蟹武者の追放も、本来は彼の任務だった。
犬騎士の命令違反に頭を悩ませている。

邪竜:
さる国を憎み、転覆を企む悪いおじさん。
ミュー姫の魔力に目をつけて、蟹武者に命じて捕縛を命じるが、姫の力が実質使い物にならないと知ると、役立たずとして処分を命じる
ちなみに、竜といっても、この頃はまだ翼は生えていない。魔法で飛べるけど


あれ? なんか意外と王道っぽい(ゆえに厨くさいともいえるが)設定になったぞ・・・?
486名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 07:28:11 ID:SMCaKPZ3
翼がまだ生えてないって
竜としては子どもに思えるな
487名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 08:17:11 ID:5d/bR/bH
犬騎士3行目と4行目の落差がすげえ
488名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 20:24:26 ID:SMCaKPZ3
まとめ乙
489名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 20:58:53 ID:/a/hH4By
>>485
>暗躍
・・・暗・・・躍?
490名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 21:43:41 ID:PmrVQncs
>485
491名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 19:51:35 ID:mvuCwr71
狡猾な邪竜さまなら
姫の政治的価値を利用しそうな気がする
492名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 13:03:52 ID:uoUX8GB0
ぶっちゃけ一連の流れについて行けない俺でも姫様は好きだぜ
493名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 16:35:32 ID:JAVkIWA+
てか、マイナーとは言わぬまでも、(日本では)決してメジャーではない作品に対して、付いていける奴が多すぎるw
あとは、これをSSの形まで昇華できる人がいれば完璧だな
494名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 19:58:17 ID:baSySLIb
狒々団長と邪竜様は
差し違えそうで怖いんだがw
495名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 08:55:53 ID:c6/ax9uP
お姫様ってどんな匂いがするんだろう……
496名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 08:59:59 ID:c6/ax9uP
きっとイイ匂いなんだろうなぁ……
497名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 17:43:21 ID:7iciQod9
>>485
蟹武者って双子いそうだよねw
498名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 15:09:55 ID:1rVEy+r0
蛮族のお姫様
なにげに天然の草花から作った香料を身体に擦り込んでいて
いい匂いがしたり……
499名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 20:29:56 ID:rTieugvb
ファンタジーならではの
動物性香料とかあったりな
500名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 00:20:49 ID:uW+QHTD4
前に誰かのエッセイで、古代中国のお姫様は率先して戦に出て
敵将でも気に入った美男がいれば実力でさらって無理矢理婿にしちゃう
でも、夫婦になった後は夫を立てて献身的に尽くすってのを読んで
姫将軍萌えと思ったのを思い出した
501名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 08:38:54 ID:fkdx20l1
なにそれやばい萌えすぎる
502名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 18:40:49 ID:V2OTwtkN
ガイエ…違った田中芳樹だっけ
当時それ読んで姫将軍な男前お姉様×将来性溢れる年下美少年とか考えて萌えたなあ
503名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 19:10:07 ID:QiS47ynM
ガイエで姫将軍というと
マヴァールのアンジェリナとアルスラーンだと星涼公主だな

東方巡歴の続編はまだなのか…
504名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 23:29:33 ID:QtHlBDRV
>>497
恐竜の着ぐるみでも装備か?(笑
505名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 22:10:24 ID:iIsNhxJ3
ミューちゃんが姫なのは王道すぎる気も
やはり勝ち気な美女がカニアーマー着ているというギャップがだ(ryu
ミューちゃんはショタ貴公子で他女性にしようぜ
・・・ジュブナイルポルノのハーレムものみたいになったな
506名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 23:55:29 ID:Lmpkbw65
流れをぶった切って主張するからには、その設定で書いていると期待していいのカナカナ
507名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 14:39:59 ID:baMtNBol
まとめ更新乙です
508名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 05:07:40 ID:tM+QPYWN
お疲れ様です
509名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 07:50:28 ID:mtuiSXir
悪姫な蜘蛛をパタパタ犬が改心させる。
色仕掛けしてた相手に本気になっちゃう黒未亡人可愛い。
510名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 16:45:14 ID:wkcxzWdq
たのむ! そいつをかいてくれ!
511名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 20:03:44 ID:PhBwwDCr
>>509
未亡人なのかw
大好物ですw
512名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 22:06:56 ID:3tqxbmb2
>>506
ショタ公子を押さえつけた蟹甲姫がカニアーマーのはさみで
ボタンをちぎり、ズボンに切れ目をつけていき・・・

ショタ公子の腰間の灼熱は
ひんやりとした着ぐるみの両足に包まれ上下に揺さぶられ・・・

などというアホくさい描写のエロシーンしか思い付かんのだ、すまぬ
513名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 03:20:10 ID:Abjuf5B7
話書ける人ってすげーよなあ
514名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 04:59:51 ID:2fFb+OUi
>>512見て、そう思ったのか?
515名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 20:31:43 ID:qZMeCnSy
しかし狒狒騎士をビジュアル的に想像するのは難しいな、美女でw
516名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 20:48:38 ID:PK+u+ecu
>>514
どれを指していったわけでもないんじゃね
517名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 05:14:19 ID:OfOGfy4f
お姫様ってどんな下着付けてるのかな
518名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 07:27:45 ID:YUjzMriw
コルセットはデフォ。
下穿きは無しがいいなあ
519名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 18:50:05 ID:cYohrS19
個人的にベビードールが好き
520名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 01:45:48 ID:cqKmQRHX
千夜一夜的なアラビア風のお姫様とかよくね、って不意に思った
521名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 07:09:32 ID:17zAQr6y
>>520
萌えるね。
天野嘉孝の青い鳥文庫でのアラビアンナイトの挿し絵を思い出した。
522名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 21:50:20 ID:PEvke6Qm
妄想ふくらませてみたいな
なんか良い資料あるかね<アラビア風
523名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 22:45:25 ID:IgAQQYHE
まとめ人さん
「火と闇の 幕間一」UPありがとうございます。
一度削除されていたし、作家さんからの「HP作った」連絡もないので
二度と読めないのかと案じておりました。
本当に感謝です!!

作者さん、元気かなぁ???

524名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 00:50:16 ID:YWUfMFIN
>>522
やっぱアラビアンナイトじゃないかな。
適当に雰囲気だけ借りて考えるにしてもなかなか面白いと思うぜ
525名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 00:55:46 ID:YWUfMFIN
あと、個人的には十字軍が盛んだった頃とか面白いかなーとか思う。
サッラーフ・アッディーンの娘とか言って。
526名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 01:09:32 ID:Lf/FoJey
アラビア風といえば、あのアラジンの青いの、じゃない、褐色の王女さんが思い浮かぶよ
527名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 07:36:22 ID:0dw8rqlC
砂漠のお姫様は気性が荒く
武芸に秀でているイメージ
528名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 09:22:11 ID:xtudS7Gr
確かにそういうイメージなのが多い
だからこそ逆をイメージしてみた

陵辱確定だと思った
529名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 09:34:45 ID:0HbP5ErK
砂漠のお姫様凌辱ってーとミネルバの剣士を思い出す俺オサーン
530名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 11:53:27 ID:1/F08tjj
>>528
逆ってぇと、弱気で体を動かす事はからっきしか。
手も足も出ないお姫様を犯すのいいね。
531名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 19:11:34 ID:iuZ+qnTm
剣舞とか踊れちゃうお姫様が好き
532名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 21:12:25 ID:D8D7R/YN
アラビア風だとして
王女にベリーダンス踊らせるのは間違ってるだろうなあ
533名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 21:59:35 ID:vUmyu3s6
じゃぁキタキタ踊りで
534名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 23:33:14 ID:/+UNSysx
「キタ!キタ!」って憑かれたかのように喘ぐのですな
535名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 01:57:47 ID:Coq7s/hn
>>532
いや、サロメという実例?がいる
536名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 11:55:42 ID:xSpSQWIk
褐色の肌はそそられる
537名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 12:01:35 ID:o+ppHhYI
踊り子だと思って気楽に一夜の関係を持ったら、実はお忍びで旅芸人の一座に紛れ込んでいる姫さまだったとか。
538名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 17:47:09 ID:AKjkmb6f
>>537
二回目が肝だな。
539名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 19:34:49 ID:M3z78REf
朝起きたら
寝室は兵士に取り囲まれてる状態
か、兵士の具足が出す音が目覚ましなのか
540名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 21:22:08 ID:nKG75h21
アラビアならジンの姫とかもいいんじゃねーかなー、とか思った。
ジンに嫁がされる姫ともいいけど
541名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 22:06:16 ID:acdGJZDJ
アラビア風だとやっぱヘソ出し?
542名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 07:37:54 ID:Shsi12so
赤道近くの砂漠地帯で本当にヘソ出すと、そこだけ日焼けして酷い事になるぞ…
イスラムのアラビア風の婦人というと黒い頭をすべて覆うようなもの((ニカーブ)を
被ってる姿が連想されるけど、アレは「アラビア半島では」非常に合理的な代物。

直射日光が強い地域は、むしろ体の布で覆ってる部分が多くなる傾向がある
ヘソ出しは宗教的にも環境的にも論外に近いw
543名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 12:21:39 ID:60cJHWxX
砂漠みたいな乾燥高温な場所は、全身被うと日陰が出来て涼しいらしい。
多湿な日本では判りません。
544名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 13:56:52 ID:+4qsHUua
ラクダを乗り回すお姫様
545名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 17:11:10 ID:rGVCjpBU
男を乗り回すお姫様
546名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 23:48:36 ID:13CAGuJI
アラン&エレノールの作者さんはしばらく来てないね。
エルド&セシリア作者さんも。
547名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 00:37:24 ID:kMZYAJSk
俺だけのお姫様が欲しい
548名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 11:47:02 ID:cd6qrw+F
仕方ないからぼくがなってあげる
549名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 02:35:09 ID:hdCLAMmO
神殿娼婦なエジプト姫話が読みたい
550名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 01:21:52 ID:pke3dKMp
日本の昔話風に夜毎物の怪に脅かされる姫
551名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 09:09:59 ID:R0jbCTD4
そんな話昔夢想したな。
姫じゃなかったけど。
552名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 12:37:28 ID:FQybhwPc
手慰みにショタ鬼っ子をたぶらかして愛でるエロ姫様
553名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 17:19:44 ID:MkZJV2Ax
平安風に毎晩夜這いされるお姫様。
554名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 14:42:22 ID:Ah9dbaH4
平安時代いいね!
あの時代のお姫様はあまり部屋から出ないし、ほとんど座ったままらしいから
抵抗できるような力もないだろうし、
暗闇で相手の殿方が誰かもわからないままいきなり襲われちゃうとか、いいね!!
555名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 15:15:50 ID:QOrBGqNN
そうか、平安姫ってか弱かったんだな
なんか、平安姫は故氷室冴子女史の書く元気でおてんばな姫イメージが頭に染み付いてたわw
556名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 15:28:38 ID:6jz/K20T
平安のスタンダードは二の姫系なのかな、氷室冴子キャラで言えば
557名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 00:30:51 ID:Y4IM+aVa
平安いいね
相手は普通に公達でもいいし物の怪でも面白そう
558名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 17:47:30 ID:kBk+DaWK
拐われて凌辱、というのも王道で好き。
559名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 17:58:01 ID:gAHM8p/D
羅生門の下人のような手合いですね、わかります

応仁の乱あたりの状況だとどうだったんだろう
560名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 08:20:05 ID:1M02RUwl
>>559
「成る程。お前はお姫様だから、民から搾取して生きていくのは仕方のない事だ、と。
ならば、これから俺がする事も許されるな。女日照りの目の前にこれ程の女がいて、犯らんわけにはいかぬのだ」
561名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 04:06:16 ID:/6Gcfidq
>>559
公家の姫にとっては、乱世も何のその
お公家様の浮世離れはそれしきの事では微塵も揺らぎません

もっとも、位の低い家の姫なら、また違うかも知れんが
ところで日本では、姫という言葉に、かように「良家の子女」程度の意味合いがあるわけだが
木っ端役人の家の姫君でも、このスレの範疇に入るのだろうか?
562名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 04:21:19 ID:OM6+i3dL
ノーブルな姫ならあり
ただのお嬢様ならお嬢様スレ
563名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 01:16:01 ID:HyvonxoL
下級貴族の姫君程度なら、和風スレでも良いかもね
564名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 00:24:26 ID:Dh2OVF2X
王子様のエロパロはどこに行けばいいの?
565名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 01:21:45 ID:ZToLN6il
王子様が誰と何をするのかによる
姫とエロいことするならこのスレ
臣下とエロいことするなら主従スレ
野郎とエロいことするなら板違い
エロ以外も板違い
566名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 01:40:33 ID:HzZSyQK5
男同士も別に板違いではないぜ
今はショタ系スレしかないが、801ものなら新規スレ立てるか
ここであえて王子様専用スレ立てて自分で盛り上げる勇者になるか

男女同士なら、>>565の以外にも、
お尻を犯される王子、色仕掛けに嵌められる王子、サキュバスとHなことをする王子、
等々に当てはまるシチュエーションスレがあるよ
567名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 10:49:38 ID:5ai3iiuR
>>566
板違いだよ。
568名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 11:21:00 ID:ZToLN6il
>>566
こちらへどうぞ

801板
http://yomi.bbspink.com/801/
569名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 11:57:47 ID:LSdGF+TO
男の属性じゃ分類されてないからな
570名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 06:56:04 ID:ptUp9Cgl
このスレの作品は確かにいい男多いけど、ちょっとなw
571名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 07:21:53 ID:/d0TLb97
和風伝奇物の妖怪姫とか
西洋吸血鬼姫とかいろいろ変化球ネタは思いつくのだが
筆が進まない

ブルターニュの伝説のイースの姫とかも面白そうだけどなあ
(淫乱な姫君が夜な夜な男を連れ込むが、お楽しみのあとは証拠隠滅のために相手を殺してしまう
そんな彼女の前に美貌の青年が現れるが、その正体は悪魔で……という話)
572名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 04:11:36 ID:ljpu8UsD
>>571
それいいな。
悪魔に恋に落ちた姫様とかも面白そう
573名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 17:14:51 ID:nIrg8h2R
お姫様は大抵不良に惚れる。
574名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 22:16:33 ID:agm0D5O2
>>573
それはある意味幻想だとも思うが
個人的見解としては、切っ掛けとなるお姫様の不良に対する興味は
今まで自分の周囲居なかった性格、とか反社会的な言動が珍しいとかが大きいんじゃないかな
中二病はもてる、わけではないがw
575名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 22:52:30 ID:6oV9opH4
不良はイケメンで実は根はいいやつ
さらに実は貴族の出で(ry

まあ、お姫様が幸せになるんならな、いいよな!
576名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 23:51:53 ID:CNcbQQ8n
>>571
イースというとファルコムのやつしか連想できない
でもググったらその伝説って結構有名で、一応イースシリーズの名前の元ネタでもあるのね…
(そういえばロマンシアにも元ネタの文学があったな)
577名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 00:43:49 ID:wfxzwrLa
>>574
その時代の不良wの筆頭というと海賊とか義賊とかかねえ
アイパッチやマスクしてるイメージw
落ちぶれた貴族や廃嫡皇子、いいとこの子だが妾の子で不遇だったり
ベルバラ思い出した
578名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 03:31:23 ID:Vt4Hw7k9
まあぶっちゃけ家の決めた政略結婚でメタボ中年や好色ジジイに嫁がされるよりは
まだ不良や悪魔に攫われた方がエロ的にはwktkだからな
579名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 08:22:57 ID:9Aqs3oiv
>>577
マルーとバルトですね。
580名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 08:24:17 ID:9Aqs3oiv
大教母はお姫様じゃ無いか。
581名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 09:36:27 ID:qaAbN8fd
>>578
スレ的には、どちらも問題なくwktk
582名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 12:17:01 ID:DYX/UBiP
>>580
ゼノギアスはあんまり知らないけど
マルーは元は王家の出身だと思ってた
バルトが王子だから勘違いしたのかな
583名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 13:38:15 ID:x0XKxnh+
政略結婚のお姫様が皇子に一目惚れでもいいよ
584名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 16:17:57 ID:MSdwuQhU
寧ろ年下婚約者を逆光源氏だろ
585名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 17:30:30 ID:ZRMOIikh
>>582
祖父とかが王様やってたから、王家の人間と言えなくもない。
586名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 21:53:45 ID:LTXfROmF
今440 KBか…微妙だな
587名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 23:29:42 ID:KAFpt/jN
>583
大河ドラマのあつひめを思いだした
588名無しさん@ピンキー:2009/11/19(木) 07:45:41 ID:80fyOLxB
>>582
マルー…ニサン教の大聖母を排出する家系の生まれ
また、代々王家とはつながりが深く、マルーの叔母はバルトの母親である

バルト…奸計で王宮を終われた正当な血筋の王子

こんな感じだったはず。
589名無しさん@ピンキー:2009/11/19(木) 17:38:23 ID:YWsYBu3B
>>588
バルトの父(先の王)の姪がマルー。
マルーの母(先の大教母)の甥がバルト。
590名無しさん@ピンキー:2009/11/19(木) 21:23:39 ID:nGkc+hbP
おまいらよくそんな覚えてるな。ゼノギアスなんてもう10年以上前だろ
なんかシェバトにも年取らない女王様かなんかいたよな
591名無しさん@ピンキー:2009/11/19(木) 23:41:32 ID:hKf9YKZ2
>590
ゼノギアススレが最近妙に活気づいてるんだよな。嬉しいけど。
ゼファー女王は先祖勢の誰かと切ない思い出があったものと妄想したい。
ED後どうなったんだろうな、あの人。
592名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 03:04:56 ID:lEyK2pJD
>>590
10年以上前か…俺も歳をとったもんだ。
593名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 07:43:40 ID:I3B1kRKO
500年前なら、ゼファーもお姫様だ。
594名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 01:12:22 ID:hmhBYEu0
おまえら詳しいな
595名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 21:49:09 ID:wXjHYS8h
お姫様の座る椅子になりたい
596名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 17:08:06 ID:sS7QmwdX
玉座で背面座位したい。
597名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 22:33:04 ID:dgNiuOKT
ttp://www.ohimesama.org/alldress.html
これを眺めているだけで、なんかいろいろと妄想が膨らむ
598名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 22:29:42 ID:6DfxZFhp
お姫様下着一覧はないのか
599名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 22:48:15 ID:hytXOWYM
小さいティアラ可愛い。
600名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 14:06:57 ID:eObUxLq8
(・∀・)ニヤニヤ
601名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 16:25:15 ID:nCSvRCXr
>>597
サテン生地の表面テカテカ原色ドレスじゃ萌えないな
デ●ズニーじゃないんだから
602名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 01:44:26 ID:fIeQ0PHf
あたし男だけどお姫様になりたいの
603名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 17:32:33 ID:1dfNKV+f
>>602
お姫様と二人羽織すればいいんだよ。
604名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 22:34:25 ID:B0qjfM1A
幼い頃体が弱く、無事に成長するよう女の子の格好をして育った
王子さまという電波を受信してしまった

いや実際男の乳幼児に女の子の格好させるのよくあったし、
女装させ続けてそっちの方向にいっちゃう奴とかいたけど。
エロパロ的には男装の麗人な従者か男勝りなお姫様あたりと
カップリングすべきか。
605名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 23:05:20 ID:xZ1X7YE/
そういやマッカーサー元帥も幼少の頃は女装させられてたんだっけ
606名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 23:24:03 ID:36iCN0JD
とりかえばや物語の女装の「姫君」が
女東宮に手ぇ出しちゃうとかもエロパロ的だよなあ……
男装の「若君」が妊娠しちゃって、どうしたらいいかと宰相に泣きつくのもかなり萌え。
607名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 23:49:23 ID:z08a06+/
>>606
エロパロ的も何も
とりかへばやって元々エロ文学じゃないの
608名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 00:52:23 ID:5FmxdvqZ
ちなみに、先年亡くなった氷室冴子が『ざ・ちぇんじ!』というタイトルでラノベ化していて
なんて素敵にジャパネスク同様、山内直実の手でコミック化もしているぞ。>とりかえばや
609名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 03:47:03 ID:mUt9ax8S
でもラノベ版より原作のがエロい。
610名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 08:50:49 ID:PLQqueqL
>>604
俺は男装の麗人な従者に一票入れるな
611名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 09:26:25 ID:V2qSITbJ
火と闇ののアゼルの副官は、微妙にそれっぽい雰囲気
612名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 16:12:19 ID:7QFD2mbS
男勝りなお姫様。
セックスのときは受け。
613名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 23:34:46 ID:+A+ackrd
王子様になりたい女の子の話は聞くけど
その逆もあるんだね
614名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 01:01:27 ID:MxMEO3MW
男でも、きったはった流血苦手な人もいるんじゃない?
アルカサルという漫画のとあるキャラの兄が戦争で怪我して
騎士としてやっていけず修道士になるんだけど、本人いわく
正直ほっとした、という台詞があった。
615名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 03:25:46 ID:j+9ly+g/
>>613が言いたいのは、そういう話じゃないと思うがw
616名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 18:01:03 ID:dnOESaRJ
お姫様になりたい男が、どうすればお姫様になれるのだろう、とお姫様をストーキング。
617名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 19:25:21 ID:ddUi5q17
そして二人に愛が芽生える……
618名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 21:09:38 ID:j+9ly+g/
だがそれは二人の心に生まれた小さな歪みによって一変してしまう。
学園を襲う突然の異変。
俺達が目覚めたそこは見知らぬ戦乱の異世界だった。
619名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 22:36:23 ID:kOlAXe8n
???
620名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 01:00:19 ID:dc+zdqjW
コピペネタだね
621名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 00:01:34 ID:iJk6qaWL
知らなかった
622名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 18:18:34 ID:lQJW+h8r
何だかよく分からない唐突な書き込みがあったら、まず適当な文字列を抜粋してググってみるといいぜ
完全な誤爆でなければ、大抵、元ネタがひっかかる
623名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 05:24:56 ID:tro2Wn8f
お姫様の一人称はどんなのが相応しいかな。
やっぱり『わらわ』?
624名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 14:01:40 ID:PuknKbAZ
わがはい
625名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 15:38:09 ID:fqVfVxV3
わたくし
626名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 01:20:17 ID:AhurPF5i
あてくし
627名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 01:27:17 ID:5bR4q3bE
わたい
628名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 02:49:56 ID:fdyoh446
ぼく
629名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 09:20:19 ID:xGNt8GBg
おら
630名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 09:42:12 ID:TXG7ggnu
631名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 18:27:24 ID:IGJTuvLF
632名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 20:41:04 ID:zUNyJ7eu
ミー
633名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 07:43:39 ID:/NBrVnIi
もういい
634名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 22:41:39 ID:agmXHNEc
職人さん来ないかなあ
635名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 08:50:40 ID:JnvgXdPj
こないものは仕方がないけど、雑談ばかりになるのも仕方がない
保守がんばろうぜ
636名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 07:57:55 ID:0jHJ2akT
保守ならまかせとけ
過疎スレ住人でもある俺には慣れたものよ
637名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 02:00:08 ID:iJg3D1Qw
投下します。
一晩で書いたので変な所あるかもですがご容赦ください。

和物です。
638名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 02:01:25 ID:iJg3D1Qw
寝所の戸を引くと、布団の傍らに小袖姿で座る女の姿があった。
誰も見ていないというのに背筋を伸ばし、虚空をじっと見つめている。
その顔が、こちらを向いた。
切れ長の涼やかな目元に、ほっそりとした顎。
黒々とした長い髪が、肩からさらりと流れて落ちる。
隆信はその前にどっかりと腰を下ろした。
「お待たせしましたかな」
「いいえ」
なるべく優しく言ったつもりだったが、女は表情を崩さなかった。
冴姫、という。その名の通り、峻烈な気性と冷ややかな美貌をしている。
「隆信どの。お話がございます」
「何でしょう」
一度目を伏せ、それから真っ直ぐに隆信を見る。射抜かれそうな強い視線だった。
「嫁いだからには、この胎はあなたのもの。あなたの子を産むことは、務めとして
果たします。それは約束しますが、わたしを手に入れたとは思わないで頂きたい」
「どういうことですかな」
「魂までは渡さない、と言っておるのです」
冷たかったその眼に、憎しみの色が浮かんだ。怒りのためか目尻が赤く染まる。
それを見て隆信は苦笑した。
「当然ですな。おれは姫の父を殺したのだから」
639名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 02:03:37 ID:iJg3D1Qw
戦の世であった。
冴姫の父は小国の大名であった。
隆信はその家臣、といっても雑兵からのし上がった成り上がりだった。
小賢しい知恵と野心のみで腹心にまでなったが、古くからの家臣にはよく思わない
ものも多かった。
高潔ではあったが時代に乗り遅れた男は、成り上がり者の野心に敗れた。
忠臣たちは命を投げ打ってでもその仇を討とうとしていたが、それを止めたのが
冴姫だった。
父の気性を受け継いだ冴姫は、自らの身と引き換えに家臣たちの受け入れを要求したのだ。冴姫は自らの身を持って自らを守ったともいえる。
主の遺児が大人しく投降したとなれば、家臣たちも否やは言えなかった。
さらに、隆信の軍勢は今やかつての主と並びつつある。どのみち、反乱を起こせば死ぬのは目に見えていた。
戦の後の混乱は、驚くほど早く収束した。


「今にもおれの首を斬りたいだろうが、それではせっかく守った家臣の命が無駄に
なりますな。その覚悟で嫁いで来られたのでしょう?」
「もちろんです。あなたの命には従いましょう。これは、ただのわたしの意地です」
「そんなことを言って、おれの機嫌を損ねるとは思わんのですかな」
「あなたこそ、わたしを無碍には扱えぬはず。父の家臣はわたしがいるから大人しく
しておるのですから」
「そのとおり。姫は賢くていらっしゃる」
父親よりも手強いかもしれん、と言いかけてやめた。
640名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 02:06:11 ID:iJg3D1Qw
「話はそれだけです。後はどうとでもなさいませ」
そう言って目を閉じた。
好きにしろということなのだろうが、新床を迎えた娘にしては堂々とし過ぎている。
ふと、悪戯心が首をもたげた。
「姫。ご自分で脱いでいただけますかな」
はっと目を見開いてこちらを見る。隆信は思わずにやりと笑った。
「こういったことは、殿方がなさるのではないですか」
「さて。先程、おれの命には従うと仰ってましたが」
姫が唇を噛む。成り上がりごときに命令されるのは、内心屈辱なのに違いない。
しかし、姫は立ち上がった。
「わかりました」
しゅ、と衣擦れの音を立てて帯を解く。白い小袖よりなお白い、美しい裸体が現れる。
隆信はそれを眩しげに見る。本来ならば見ることはおろか、近づくこともない存在だ。
それが自分に屈している姿に、言いようもない感覚を覚える。
脱ぎ棄てた小袖を枕元に置き、冴姫がこちらを振りむいた。
「これでよろしいですか」
それには答えず、じっと裸身を見つめる。舐めるような視線に、冴姫もうろたえた。
「何をなさっているのです」
「いや、何でも。さて、今度は脱がせて貰えますかな」
冴姫は眉をひそめたが、隆信の前に膝をつくと前合わせを解き始めた。
指が動くたび、白い乳房が揺れる。
その間に覗く、固く閉じた脚の間の茂みを見るだけで、むしゃぶりつきたい衝動に
襲われたがそれをぐっとこらえる。
下帯を外そうとして脇腹に触れた指が思いのほか冷たく、背筋がぞくりとした。
冴姫はぎこちなく小袖と下帯を脱がし終えると、同じく枕元に畳んで置いた。布団の上に座り、再びこちらを向く。
641名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 02:07:48 ID:iJg3D1Qw
「これでよろしいですか」
羞恥のためか、姫の白い肌がほんのりと赤く染まっている。
見せたことも、見せられたこともないに違いない。
ようやく血の通い始めたそれに触れたかったが、隆信は再び堪える。
「では、ご自分でご自分に触って見せてくださいますかな」
冴姫の目がかっと見開かれた。
「何ですって」
「ご自分で濡れるところが見てみたいと思いましてな」
「……下劣な」
「なさったことはございませんか」
「当然です」
「ならば教えて差し上げましょう。それ、乳の先を触るのです。両手で」
唇を噛んで、冴姫は言われたまま胸を触る。最初はただ頑なに口を閉じていたのが、
段々感覚が分かってきたのか口元が緩んできた。
声にならない息が時折漏れる。
弄り方も慣れてきたようで、次第にその作業に集中しはじめたのが分かる。
「あ……」
遂に甘い声が漏れた。
同時に姫の理性が引き戻された。かっと頬が朱に染まる。
「次は、そうですな。胸を揉んでいただきましょうか。下から持ち上げるように
……そう」
嫌々というふうに眉根をひそめてはいたが、次第にその動きに取り付かれていく。
案外、この姫は好きものかもしれん、と思う。
「ふ……」
ふと、姫が身じろぎをした。
白くむっちりと張った腿が、耐え切れないように震える。

「これで……よろしいですか」
冴姫のぎりぎりの理性がそう問うたが、声は微かにかすれていた。

隆信にも限界だった。
642名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 02:10:06 ID:iJg3D1Qw
姫の肩を押し倒す。
冴姫の震えた唇を奪うと、むしゃぶるように吸った。
息をつこうと広げた口内に舌を割りいれる。姫は驚いて顔をそむけようとしたが、
隆信は姫の頭を掴んで逃さなかった。
涎でまみれた細い顎を舐め取ると、姫の身体がぴくりと震える。
そのまま喉、首筋へと舌を這わせる。あれほど白く冷たそうに見えた肌は、今や
上気して熱い位に火照っている。
姫自ら弄んだ乳首は硬く立ち、隆信の情欲を誘った。舌先でそれをつつくと、
過敏になった姫の身体は大きく仰け反った。
「あ、あっ」
舌と指先でこねくるたびに、姫の口から嬌声が漏れた。
あれほど頑なだった娘が、あられもなく身をよじっている。
隆信はそれと知られぬように笑った。
隆信は片方の乳房をまさぐりながら、もう片方の手を下へとずらしていく。
なだらかで柔らかな腹を伝い、茂みの中へと指を差し入れる。
「……っや、あっ!」
そこは既に潤っていた。生娘という割には充分な具合だった。中まで指を入れず、
ぬめりを広げるようにかきまぜると、姫の腿が再び頑なに閉じられようとする。
「姫、あなたは恐ろしい方ですな。生娘だというのにこれほど濡れていらっしゃる。
本当は自分でいたずらしておったんでしょう」
「し……てない……っ……」
反論するが、最初の気丈さはどこかへ行ってしまったように弱々しかった。
腿を撫でさすり、その感触を味わう。食らいつきたいほどの魅力がそこにあった。
「生娘というのもまことかどうか」
姫が息を呑むのが分かった。
「果たして、今後も姫を信用していいものですかな」
我ながら意地悪くそう言うと、姫はただゆるく首を振った。
その表情は真剣で、だが哀惜の色を帯びていた。

「信じて……」
ほとんど泣きそうな声で、姫が呟いた。
643名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 02:11:53 ID:iJg3D1Qw
その声に、最後の理性も吹き飛んだ。
充分潤ったそこに、既に張りつめていたそれをあてがう。ゆっくりと押し進めるが、
余りのきつさにそれだけで限界がきそうになる。
恐らく苦痛を堪えているのだろう、姫の唇が再び固く閉じられている。
時折聞こえる吐息は嬌声か、痛みのためか、ただ必死だった。
冴姫の爪が辛苦に耐えるように、恨みを込めるように隆信の肌に突きたてられる。

入れてみるまでもない。あの頑なさは生娘のそれと決まっている。
ただ、あの美しく気高い娘を貶めたかっただけだ。
しょせん成り上がりの、薄汚れた裏切り者が、この娘をねじ伏せる理由を
つけたかっただけだ。
きっと一生、この娘にかなうことはないだろう。
この娘への罪の意識も、消すことは出来ぬし、許されない。
だが、手に入れたからには手離すことはない。嫌だと言われても、手離すことも
できない。
ならばいっそ貶めたかったが、こんな淫らな姿でさえ姫は美しかった。
限界はすぐに訪れた。
隆信は遠慮なく、冴姫の奥にそれを放つ。
自分の濁った想いで姫のそこが満たされるのを感じた。

冴姫の目から、涙がひとすじ伝い落ちた。
隆信はそれを見ないふりをした。
644名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 02:12:23 ID:iJg3D1Qw
以上でした。
続きはありません。
645名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 05:02:26 ID:lfKdDTXV
GJですー。
『愛するが故に〜』のスレにも繋がるものがあるような内容に、
あのスレ住民としても非常に満足させていただきました。

気丈な和姫もええのぅ (*´Д`)=з
646名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 09:04:02 ID:81kz1h1B
gj
エロいし面白かった
良かったらまたお願いします
647名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 12:33:22 ID:DQ9QLhOb
>>642
GJ
仕方なくなのに感じちゃってるのいいね。
648名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 17:26:13 ID:xoEs88SW
気丈かつ臣下のために自ら犠牲になるのもいとわない高潔さ
お姫様の王道ですのう、堪能しましたありがとー
649名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 22:27:45 ID:nxptqGOZ
GJ、投下お疲れさま
和風好きなので嬉しい
650名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 06:22:19 ID:SiUzJ1G1
もうすぐクリスマスだね
651名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 07:53:31 ID:UvhpgCpn
サンタの国のお姫様
652名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 09:44:31 ID:vU74+Jme
クリスマス中止のお知らせ
653名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 20:47:10 ID://JX5q9P
すみません。
ここは一行最長38字くらいは許容範囲ですか?
654名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 21:34:56 ID:vIsuF2vO
>>653
分からないけどどこもそんなもんなんじゃ?
655名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 14:57:55 ID:xngCwjwp
スレごとに決まってるわけじゃないっす
656名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 13:31:16 ID:o/y+JgCm
一緒にクリスマスを過ごしてくれるお姫様
お願いします……
657名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 18:53:05 ID:2CwwA5LW
ちょっと上の過去レスでアラビア風お姫様の話題が出てましたね。
読んだらキャラが見えて話ができたのでお返しに。
初投下なので、手際が悪かったらお許しください。


第1話
16歳の誕生日の夜、僕は生まれて初めてバザールに行った。
僕が住む砂漠の王国では男は、16歳になるとバザールで遊ぶ。
それがそのまま成人式だ。酒と煙草が初めて許される。
だから僕も水ギセルと蒸留酒とコーヒーで頭をくらくらさせた。
酒場から通りに出ると満月がのぼり始めていた。夜風で頭を冷やしてると、
「おーい」
と声がした。低くて、よく通る女性の声だ。
658名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 18:55:13 ID:2CwwA5LW
第2話
すぐ近くから聞こえたのに、姿は見えない。周りを見回していると、
「上よ。こっち」
見上げると、酒場の二階、ベランダから女の子が身を乗りだしていた。
黒髪をポニーに結い上げてて、肌の見えてるところは褐色だ。
見えてる部分というのは顔と喉と腕だ。肩の出た紫の上着を着てる。
彼女は立ち上がると、ベランダの手すりに手をかけ、足を置く。
ふっくらした白布のズボンとルビーの飾りのついたサンダルが見えた。
そのまま彼女は一息に柵を越え、僕の目の前に飛び降りてきた。


女の子は地面に難なく着地すると、僕を見た。青い目だ。
「お前、名前はなんて言う?」女の子が訊く。僕と同い年くらいか。
僕は名前を言った。
女の子は「ア…発音が難しいな。でも、うん、いい名前だ」と笑った。
彼女の歯は真っ白だ。
「わたしの名前はヴェガ。ついてきてくれ」
「どこへ?」
「いいから、黙ってついてこい。シャムシールはこっちで揃える」
ヴェガは僕の腕をつかんでずんずん歩きだす。僕より頭一つ背が低い。
腰まである彼女の髪は、歩く度に腰の上で勢いよく揺れる。
近くからだとヴェガは、薔薇とジャスミンとお香のまざった匂いがした。
659名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 18:57:08 ID:2CwwA5LW
第3話
ヴェガは通りを熟知しているみたいだ。喫茶店の角を曲がり、
天井付きの市場の区画を突っ切り、路地裏に入ったかと思うと、
薄暗い階段を上り下りして、道はやがて礼拝堂前広場に出た。
「こっちだ」彼女はそのお堂の中に僕を引っ張っていく。
内陣はタイルとガラスが張られ、お香が焚かれていて煙たい。
お堂の奥の祭壇に金銀宝石で縁取った棺桶があって、蓋は開いている。
ヴェガは一直線にその棺桶へと歩いていく。棺桶の前に立つと、
彼女は真顔で僕に振り向き「わたしと一緒にこの棺に入ってほしい」


僕は、素性のわからないこの少女に街で呼び止められ、引っ張り回され、
連れてこられた礼拝堂で、強制的に心中させられる事になった。
誕生日にしては重いな。いや、これは何か成人式の余興か?
アレかな、棺の中に女の子と入ることで男として生まれ変わりを……
そりゃこの子はかわいいし、いい匂いがするし、密着したら……
「何を青くなったり、にやついてるんだ」
「え、いや、君の――」
「1個持ってくれ。中は暗いから、二人分あると助かる」
「ランプ?」
「棺の中、花束の下を見てくれ。階段があるだろ。もうすぐだから」
660名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 18:59:02 ID:2CwwA5LW
第4話
階段を下りていくと、横に通路が広がっていた。
ヴェガはランプをかざして、階段から右手の方に進んでいく。
僕もランプをかざすと、目の前に空洞の眼窩と剥き出しで笑う歯があった。
……。僕が悲鳴を上げなかったのは女の子がそばにいたから……
じゃない。驚いて声も出なかっただけだ。
そこは地下墳墓だった。髑髏やミイラがたくさん安置されている。
どれも豪華な衣装を着ている。一体だけ、ごく普通の服装の遺体があった。
ヴェガが肩と体を密着してきた。震えているし、呼吸がはやい。
そんな彼女の肩に僕はおずおずと手を回す。抱き寄せて、手を握る。
ヴェガは僕の肩にもたれて「ここは何度来ても慣れない」と言った。
廊下の突き当たりに梯子があり、見上げると針の穴みたいな点が見える。
梯子を二人で登っていく。
登るうちに、針の穴がどんどん広がって、円に見えてきた。
円の中に視界が開いてきて、真っ白な満月と尖塔が見え始めた。
噴水の音が聞こえて、気づいたら僕は巨大な宮殿の庭園に立っていた。
「ようこそ」ヴェガが言った。


「今日この庭で、王家の剣の催しがある。わたしとペアで出場してほしい。
男女ペア、王族の女性は出場が義務でな」
僕たちは庭園の芝生の上、秘密通路の井戸のそばに座って話をしていた。
彼女によると、この祭典で一番見事な剣舞を披露したペアの女性は、
後宮の最上位に君臨して、女帝として不自由のない生活ができるとか。
「わたしは、現王家の第三王女なんだ。最上位まで間近の階位にいる。」
「それで優勝を狙って、僕と」
「逆だ。優勝したくない。後宮に閉じ込められるのはまっぴらだ。わたしは、
そんなに剣舞が上手いわけじゃないが、少なくとも姉上や妹たちの中では
一番だ。父も教師も順当に必勝の太鼓判を押した。それは困る」
661名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 19:01:10 ID:2CwwA5LW
第5話
「そこで、町でそういう事にうとそうな男の子に声をかけたんだ」
彼女の言い分のあちこちに僕は憮然として、逆に問い正す。
「棄権すれば?」
「個人的にプライドが許さん。何より家族も臣も納得しない」
「わざと下手に演じて、負けるのは良いの?」
「下手を演出できるほど上手くない。しかし、王家の剣舞を知らないお前が
ペアならば、総合点で落ちるだろう」
「それでも、もし勝ったら?」
ヴェガは肩をすくめ、「その時は仕方ない。父と姉妹たちのために、後宮で
政務に専念しよう」とため息をついて「……確かに不自由はないが、自由も
ない。今日のようにこっそり町で成人式を楽しんでる男の子を見学するとか、
面白い事はなくなるだろうな」


朝の太陽の下、褐色の肢体が躍動している。
両手にシャムシールを持ったヴェガが、庭園の中央でスピンし、跳躍し、
空中で3回転の後、地面に難なく着地すると、速攻でステップを踏む。
あれから彼女は一睡もしてないのに、どうしてあんなに動けるんだろう。
僕も一睡もしていない。その僕は彼女の隣で踊っている。
バック転とか、宙に投げて回転するシャムシールの刃をキャッチとかは
絶対無理だけど。それでも、彼女と僕はこの日の最高のペアで、
ヴェガは吹っ切れたように楽しく舞い続けた。

採点結果?
彼女は権力を手にして、その分自由じゃなくなった。そのかわり、
自分のための法律を一つだけ作って、一年に一回町に出る自由は手に入れた。
その自由で僕とヴェガは今も会い続けている。
おしまい。
662名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 19:03:02 ID:2CwwA5LW
エピローグ(僕とヴェガが一睡してないわけ)
夜の庭園で僕は言った。「僕ばっかり、不公平だ。交換条件で、どう?」
「何だ?」ヴェガは眉を吊り上げる。
「今日は僕の成人式だ」
「分かってるぞ」
「だから、あー、ソ、そっちの方の……を、君と……」
ヴェガは「ああ、交合のことか」腕を組むと「いいぞ。お前となら」
「え」
「わたしも興味はある。それに、意に染まぬ許婚とするくらいなら、
お前の方が良い。今夜は一緒にいて楽しかったし」
だが、彼女の本心は多分別だ。猫のように光る目がこう言っていた。
(口にしたところで、そんな度胸はお前にはあるまい)「ふふん」
最後のは僕の妄想じゃない。絶対、今、鼻で笑った。

それで僕はカッとなった。「じゃあ」僕はヴェガの頬に触れる。
ヴェガはちょっと驚いたみたいだが、興が湧いた表情になった。
そっと口づけをする。彼女の香水の薔薇の香りが濃くなった。
ゆっくりと手を下していき、服の上から胸を触る。「……ん」
服の結び目を外し、彼女のズボンの紐も解いて、脱がせる。
ヴェガの裸は、剣舞で鍛えてるせいで、すごくしなやかだ。
褐色の肢体。小ぶりで形のいい乳房。ピンク色の乳首。締まった腰。
こんな女の子を抱いてもいいんだろうか? 第三王女とか言ってたし……。
ぼーっと見ていると、彼女は顔を赤くして、胸と股を手でおおうと、
「わたしばっかり、不公平だぞ。これでも恥ずかしいんだ。
大体、お前も脱がなければ始まらんだろうが」
663名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 19:07:01 ID:2CwwA5LW
それで僕も服を脱ぐ。彼女も手伝ってくれた。
僕の股のものはすごく膨らんでて痛いくらいで、何だかぬるぬるした。
そこをヴェガが不思議そうな顔で見てる。
彼女の肩を抱いて、芝生の上に押し倒す。艶のある黒髪が草地に広がる。
また口づけをする。乳房を鷲掴み、揉み上げて夢中でしゃぶりつく。
彼女が喘ぎながら囁く。「アル」僕の名前の最初の音。
「うん」
「アル、好きだぞ。宮殿の誰よりも…お前が好きだ。お前が欲しい」
「僕も。君が欲しい」

それで僕はヴェガに言う。「挿れるよ」彼女がこっくりうなずく。
ヴェガの中は濡れて、きつい。挿れていくたびに、彼女は痛そうに呻く。
ああ、僕と同じで、彼女も初めてなんだ。
僕はゆっくり彼女の中を進む。ヴェガが抱きついてくる。汗がすごい。
「痛くない?」
「……うん、わたしは。動いて。大丈夫だ」
僕は腰を引き、また彼女の中に入る。ヴェガは体をひねり、喘いだ。
月明かりで、汗でぬめった褐色の肌が光る。目の前で乳房が揺れる。
めまいがする。彼女は首をふり、嬌声を上げて僕にしがみついた。
この子のこんな声を聞いているのは僕だけなんだ。
この勝気なお姫様をもっとこんな風にしたい、いじめたい。
そう思って興奮した僕の中を、精が一気に噴き出した。悲鳴とともに
ヴェガは僕を締めつけた。彼女の中はすごく熱くて、べっとりしてる。
その彼女に包まれてる僕はすぐ硬くなり、動き始める。ヴェガが笑う。
「元気だなぁ」
「うん」
それで僕たちは一晩中ずっとそういう風に過ごした。
僕たちのことで話したかったことは、多分これで全部だ。

劇終
664名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 21:46:34 ID:wUpKixih
シャムシールて西洋のシミターみたいな曲刀だっけ?
665名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 17:13:26 ID:IL5b4j1y
>>662
GJ
666名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 19:53:59 ID:3q9IJqnK
大変個人的な話で申し訳ないが、
バザールと聞いて
NECを
思い出したでござーる
667名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 00:47:30 ID:Gm+0Awxh
GJ
褐色の肌のお姫様イイ!
668名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 06:57:40 ID:vO7MLJPw
男勝りなお姫様、いいね
GJ
669名無しさん@ピンキー:2009/12/26(土) 12:37:21 ID:sKkq/Cln
>>666
俺も
670名無しさん@ピンキー:2009/12/26(土) 15:43:47 ID:3ak3bogY
セザール
671名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 07:22:24 ID:CvZrgCZv
某国に観光でバザールに行ったら「バザールでござ〜る」ってマジで言われたよ!
反応すれば日本人ということだな
672名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 09:25:06 ID:wyNZ84MS
>>671
日本人観光客はカモらしいからな。
673名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 18:38:41 ID:pmCxeo9l
投下します

初めて書いたので見苦しい様はご勘弁を
戦火と迷いましたがこちらで

普通の貴族令嬢です
674名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 18:41:28 ID:pmCxeo9l
 王城にひるがえる侵略者の黒い旗は、初夏の青空に不釣り合いな禍々しさをまき散らし
て見えた。
 聖王国タウフェジット敗北。
 その現実を否応なく突きつけられ、マルガレティアは耐えきれず窓際から離れた。
 大きく息をし、落ち着きを得ようとしても、すぐに心は焦燥でいっぱいになる。
 父は、兄は怪我などしていないか。
 王妃様は、王女様はご無事であろうか。
「……ヒ様……」
 心の奥底に閉じこめた名を呟き、マルガレティアは唇を噛んだ。
 聖王と世継ぎの聖太子は戦死、国を守る聖騎士団も壊滅。地方領主が次々と離反してい
く中で、タウフェジット聖王妃は苦渋の決断を下した。
 降伏の宣言である。
 その結果をマルガレティアは知らない。館を異国の兵士が取り囲み、彼女は一人、自室
に閉じこめられたからだ。
 身の回りの世話をさせる使用人をと訴えても返ってくるのは沈黙ばかり。
 食事は石のように硬いパンと得体の知れないスープだけで、味も質も悪く、とても喉を
通らなかった。
 平穏であったなら、聖王女の婚約式があったはず。
 タウフェジット全土で祝福の声があがり、花という花が飾られただろう。夜も昼もなく
盛大な宴があちこちで開かれ……控えめなノック音に、マルガレティアは慌てて目尻の雫
をぬぐい、姿勢を正した。
「お嬢様!」
 入ってきたのは気心のよく知れた侍女であった。
「タンサ、タンサ、無事だったのね」
「お嬢様はお痩せになりました。お労しゅうございます」
 マルガレティアが駆け寄り手を取ると、タンサの眉根がきゅうとしかめられる。泣くの
を我慢しているのだとマルガレティアには分かっていた。
 乳姉妹であり、同じ年月を共に育った幼馴染みなのだから。
「心配していたのよ。他の者たちはどうしていて?」 
「館の者たちはみな、家族の元へ帰されました。私のように行き場のない者は別の所へ集
められ、しばらく不自由を強いられましたが、みなピンピンしておりますよ」
「よかった……」
 安堵のため息がこぼれ、全身から力が抜け落ちた。あやうく頽れそうになったところを、
タンサが泣き笑いで抱きとめてくれた。
 王妃様のご英断がタウフェジットを救うのだ。マルガレティアは確信した。
「あのねタンサ」
「そこの二人、ついて来い」
 喜びを踏みにじる兵士の声に、ぎくりと身がこわばる。タンサは顔色を青くて後ずさる
ようにマルガレティアから離れた。
 できてしまった距離が心細く、不安であったが、ここで狼狽えてはならない。
 敗者にも矜持はあるのだ。
 マルガレティアは意識しつつ一歩を踏み出した。
675名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 18:44:58 ID:pmCxeo9l
「ミュルダーン伯爵令嬢マルガレティアか」 
 素っ気ない口調で確認を求めてきた男には、一兵卒にない上に立つ者の気配があった。
 こめかみから目の下までの複雑な模様、あれぞ蛮族の証と嘲られてきたザナハリの文身
がいかにも不吉で、マルガレティアをおののかせる。
「ええ、わたくしはミュルダーン伯爵キーテ家第二子マルガレティアです」
 侮られぬようはっきりと肯定した彼女であったが、語尾の震えは隠せない。
 男の後ろに居並ぶ黒衣のザナハリ兵が孤独な彼女を威圧した。
 これは見せ物だ。
 敗者を蔑む勝者の優越をひしひしと感じる。
 大丈夫よ、マルガレティア。ミュルダーン伯爵キーテ家は建国時より存在する名門貴族。
 粗略に扱われるいわれはないのだから。
 マルガレティアは努めて気概を保ち、ザナハリの処断を待った。
「よろしい。あなたの父であるミュルダーン伯爵は昨夜、潜伏先の農家で発見、捕縛され
た。王都からの逃亡はザナハリへの敵対行為と見なされる。われわれの温情が伝わらなか
ったのは残念だ」
「お父様が捕縛? どういうこと?」
 淡々と告げられた言葉を、マルガレティアは理解できなかった。
 ザナハリ軍に包囲され、王妃様が決断を下されたとき、父は王城にいた。そのまま留め
られていると、自分のように監禁され館に帰れないだけだと。
「キーテ家からはミュルダーン伯爵位を剥奪、私財は没収となる。従ってこの館はザナハ
リ軍の管理下に置かれる。キーテ家は嫡子バルロッサの戦死により、第二子マルガレティ
アが継承」
「なにを言っているの、なにを……」
 王妃様の護衛隊にいた兄が戦死した?
「ザナハリはタウフェジットの民に対し、一人につき金貨五枚の解放料を課すことで自由
民としての生命と安全を保証すると約束した。それ以外は等しく奴隷として扱われる。さ
てマルガレティア、あなた自身の解放料だが、貴族には一律金貨三十枚が付加されるゆえ、
ユーブ金貨三十五枚となる」
「……」
「とはいえ身一つとなったあなたに支払いは不可能。よってユーブ金貨三十五枚に相当す
る労役で購っていただく」
 わからない。
 なにもわからない。
 だが、マルガレティアはこの瞬間、ザナハリの奴隷となった。
676名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 18:47:46 ID:pmCxeo9l
 か細い悲鳴があがり、マルガレティアは我に返った。
「お金は、お金はあったんですっ! でも盗まれてなくなって、信じてくださいっ!」
 タンサが左右から腕を取られ藻掻いている。
 文身の男と兵士たちは去り、入れ替わりに十人ほどの男が部屋に入ってきた。身に纏
う衣装こそ黒いが、どこか崩れた様子に、マルガレティアの本能が警告を発する。
「その子になにをするの! 離しなさい!」
「お静かに、マルガレティアお嬢様」
 低く艶のある声が彼女の耳朶を打った。
「彼女も残念ながら解放料を払えずじまいでしてね。どうせ同じ場所に連れて行くならば
と会わせて差し上げたのですよ」
 ぞくりと背筋が震えたことに狼狽え、それを隠すように振り返る。
「っ」
 マルガレティアのすぐ後ろに笑みをたたえた顔があった。タウフェジットで最も美しい
と賞賛された聖騎士ウルリーヒ、その彼を凌ぐ美貌に、マルガレティアは状況も忘れて見
入ってしまう。
「男一人当たり銅二枚、彼女は二百五十人、あなたは千七百五十人の相手をすれば晴れて
自由の身になれますよ。しっかり励んで解放料を収めましょうね」
 昔話から抜け出した妖精の王子は、幼子にするようにマルガレティアの頭を撫でると、
「くれぐれも壊しすぎないように」
 惚れ惚れするほど優雅な所作で扉から出て行った。
「あーあ、やっぱ若い娘はお綺麗なものに弱いか」
「隊長は別格よ。さあさ、お嬢様。お仕事でございますですよ」
 太い腕がぬうっと伸ばされ、呆然とするマルガレティアを羽交い締めにした。
「なっ、無礼者、わたくしに触るな!」
 周囲に集まってくる男たちは一様に薄笑いを浮かべ、ねっとりした視線を彼女に投げか
ける。それが値踏みの眼差しと気づき、マルガレティアは屈辱に打ち震えた。
 とはいえ高貴な身分の未婚女性として常に慇懃にもてなされてきた彼女では男たちの馴
れ馴れしさをあしらえるはずもなく、ただ夏空を映した青い瞳で睨みつける。
「お嬢様は自分の立場がわかってないな。ほれ、おめえの侍女はちゃんとお務めしてるぞ」
 顎を強く掴まれ、ぐいと横にひねられる。
 そこには恐ろしい光景があった。
 マルガレティアの乳姉妹タンサが寄せ木造りの床に倒され、その上に男たちが覆い被さっ
ているではないか。
「……っ、や……!」
 嗚咽を漏らして抗う身体は、しかし難なく押さえられ、いくつもの手が這い回っていた。
「タンサを離せ蛮人ども! タンサ!」
「あいつら柄になく気を利かしてるぜ。ここからよく見えるようにって。いい趣味してる
ぜまったく」
 野太い笑い声が頭に響く。
 渾身の力を込めて自分を縛める腕から逃れようとしたが、叩いても、爪を立ててもまる
で弛みはしない。
「タンサ!」
 非力な自分が歯がゆくてならかった。
677名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 18:49:29 ID:pmCxeo9l
「おじょうさ……たすけ……ぁあああ」
 下肢をのぞき込むようにして男の頭が埋まり、タンサは悲痛な叫びをあげた。
 あらわになった乳房を揉みしだかれ、いやいやと身をよじり、哀願の視線をマルガレティ
アに向けてくる。
 タンサはマルガレティアの兄、バルロッサにほのかな思慕を寄せていた。
 マルガレティアの乳姉妹だからと親しく接してくれる青年に、物心つく前に亡くした父親
を重ねてしまうのだと恥ずかしそうに教えてくれた。
 お嬢様の花嫁姿を見るまでは、心配で心配で恋なんてできませんよ。
 そう言いながら、いつもマルガレティアを支えてくれた優しいタンサが。
「わたくしの宝石で支払うから、タンサに酷いことをしないで!」
「パン屑の一欠片だって、あんたは持っちゃいないよ。この甘い匂いがする肉体だけさ」
「触らないで! わたくしやタンサがなにをしたというの! どうしてこのような辱めを!」
「戦に負けた。それが全てだぜ」
「伯爵様が逃げなきゃ、もちっとマシだったかもな。宝石や金貨を袋いっぱいに抱えてたっ
てよ、おめえの親父は。その一袋で自分と娘、ついでにあの侍女の解放料を払えたのになぁ」
「お父様が……嘘よ……」
 誉れあるミュルダーン伯爵が聖王国を、キーテ家を棄てたというのか。
 否、この蛮族たちは偽りを口にしている。
 こうしてマルガレティアが惑乱する姿を楽しんでいるのだ。騙されてはいけない。
 ああ、けれど。
 真実がどこにあろうと救い主は現れないことに、マルガレティアは絶望した。
678名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 18:51:43 ID:pmCxeo9l
 凄惨だった。
 マルガレティアの目の前で、タンサの無垢な身体は蹂躙された。赤黒く猛った肉塊を次々
と突き込まれ、絶叫のたび頬に平手打ちが鳴る。
「色気がねえぞ、ぴいぴい泣くんじゃなくてしっかり声だせ」
「もっと脚を広げんだよ、おら。ぐずぐずすんな」
「いいか、歯ぁ立てやがったら引っこ抜くぞ。そう、そうだ。やればできるじゃねえか、
へへ」
 血と白濁が混じり合い、タンサの裸体を彩る。誇りとしていた癖のない黒髪は鷲掴みさ
れるたびに引きちぎれ床にばらまかれた。
「もうやめて……タンサが死んでしまう……」
 下卑た罵声、肉のぶつかる音、粘ついた空気、生臭い匂い、タンサの弱々しい啜り泣き、
なにもかもが受け入れがたく、マルガレティアを打ちのめした。
「侍女の心配している場合かよ、俺だってもう限界だ!」
「ひあっ」
 布の上から荒っぽく胸元をまさぐられ、マルガレティアの恐怖が爆発した。
「いやっ! わたくしを誰だと思っているの! やめてやめてやめて!」
 なりふり構わず暴れだしたマルガレティアだが、男たちは意に介さず、むしろ楽しんで
彼女の動きを封じこめ引きずり倒す。
 薄紅色のドレスは力任せに裂かれ、両脚を大きく広げられる。無骨な指が無遠慮に股間
を探り秘部へと割入ってきた。
「おとーさまに捨てられて可哀相になあ。よしよし」
「たっぷり可愛がってやるからな」
「痛い、やだ、いたいいたいやめて、あうう、ああぁ、うぅ」
 何本もの指が慎ましく閉じていた花弁を掻き分け、突き刺し、抉り回す。そうして半狂
乱で泣きじゃくるマルガレティアを、男の猛り狂った逸物が貫いた。
「ひぎぃいいい」
 乾いた肉壁を巻き込みながら、太く硬く熱いものが侵入してくる。引きつれる痛みと苦
しみに喉が反れ、背がしなる。肌にはびっしりと汗が浮かび、マルガレティアの肌を扇情
的に濡らした。
「……くそっ、キツいなこりゃ、ふっ」
「代わってやろうか」
「うるせえ……さあて、いっぺん出すぞ。しっかり気張れよ、お嬢様」
 のしかかる身体にぐっと力が入り、マルガレティアはかすれた悲鳴を上げる。
 もう取り返しがつかない。
 清らかなままで、せめて言葉を交わしたかった。
「……さま……」
 奥を穿つ衝撃にマルガレティアの身体が跳ねた。
 全身を襲う激痛の中で最初の汚れが注がれ、マルガレティアは意識を失った。
679名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 18:55:00 ID:pmCxeo9l
 雑務を片づけたあとシーツを抱え部下たちがたむろしている部屋に入ると、すでに狂熱
は冷め、どこか間延びした空気に出迎えられた。
 人数も減っていて、残った者はのんびりくつろいでいる。
 侍女の乳首をしゃぶっていた男が顔を上げた。
「隊長ぉ、ウルリーヒって聖騎士の?」
「聖王女の婚約者候補ですね。ほぼ確定であったとか。だからでしょうか、王都守護を命
じられていましたよ」
 白濁が泡立ち溢れる陰部に剛直を押し込んでいた男も、動きを止めて貴族娘を見下ろす。
 とうに青い目は焦点を失い宙を彷徨っている。
 しかし唇はかすかに、声もなく一つの名前を繰り返していた。
「好きな男に助けを求めてんのか。くうぅ、泣かせるねえ。明日も抱いてやるな」
 調子のいいことをほざきながら腰を打ち付け精を放つ。
 これからこの娘たちは何千何百という男に嬲られ犯される。侍女はかろうじて正気のう
ちに解放される可能性はあったが、光のあたる道はもう歩けまい。貴族娘はこのまま壊れ
てしまうが幸せだろう。 
「その聖騎士さまは剣を取って国を救うために立ち上がりますかね? 強いんだろうなあ。
ぜひ殺してみてえなあ」
「聖騎士にもけっこう歯ごたえのある奴いたいた。王女さまの婚約者に選ばれたくらいだ
から、もっとできるに違いねえや」
「両手足の腱を切られ我らが副隊長の玩具として下げ渡されましたよ」
「うげっ」
「……俺、それだけは死んでもご免だわ」
 肩に矢を受け捕虜となった聖太子の末路を思い起こしたか、心底恐ろしげに首を振る。
 最後の一人が満足して立ち上がったので、ぴくりとも動かない娘二人にシーツを巻き付
けさせる。彼女たちを一般兵士用の慰安所へ運べば休息時間は終わりだ。
 陽は傾き、部屋のそこここを赤く染める。
 本物の血なら良かったのに。隊長はとても残念に思った。 
680名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 18:56:47 ID:pmCxeo9l
おわり


おまけ
「隊長はよろしいんで?」
「私はケツの青いガキには勃たないのです」
「知らないのか新入り、隊長の好みは肉の熟れた女なんだぜ」
「年が上であればあるほどいいってなぁ。若い娘っこが入れ食いのツラしてなさるのに、
もったいねえこった」
681名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 01:50:36 ID:coPGeL2Q
戦火に行けばいいのに…
号館ありきのスレじゃないのだから前置きが欲しい。
自分は見たくなかったです。
682名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 05:28:49 ID:W7gfpsQF
流れ上色々あるのはともかく、作風含めてオチまでこうなら確かにスレ違い気味
戦火と迷った、とある時点で判断してくれということなんだろうけど
683名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 05:40:58 ID:XP0/0pYg
なまじっか上手い分、毒が強いな。
確かに戦火スレ向きかも。
684名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 06:37:13 ID:/ffqotdq
gj
戦火スレでも待ってるぜ
685名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 06:58:46 ID:xhsfMMmN
そろそろ次スレの時期か
686名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 09:46:26 ID:W7gfpsQF
しかしこのスレは大抵作者さんが投下ついでに立てているという
687名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 16:00:58 ID:m04M9Jld
じゃあSS投下できない俺がたててくるのはダメ・・?
688名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 16:15:50 ID:j7Li5Z1d
>>687
お願いします
689無理だったお:2009/12/28(月) 16:36:02 ID:m04M9Jld
やんごとないお姫様をテーマにした総合スレです。
エロな小説(オリジナルでもパロでも)投下の他、姫に関する萌え話などでマターリ楽しみましょう。

■前スレ■
お姫様でエロなスレ11
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1236072726/

■過去スレ■
囚われのお姫様って
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1073571845/
お姫様でエロなスレ2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133193721/
お姫様でエロなスレ3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148836416/
お姫様でエロなスレ4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1157393191/
お姫様でエロなスレ5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1166529179/
お姫様でエロなスレ6
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1178961024/
お姫様でエロなスレ7
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1196012780/
お姫様でエロなスレ8
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1209913078/
お姫様でエロなスレ9
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1226223611/
お姫様でエロなスレ10
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1229610737/

■関連スレ■
【従者】 主従でエロ小説 第六章 【お嬢様】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1222667087/
◆ファンタジー世界の戦う女(女兵士)総合スレ 6◆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1209042964/
古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ4
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1246868732/
【ギリシア】世界の神話でエロパロ創世3【北欧】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1238066898/

■保管庫■
http://vs8.f-t-s.com/~pinkprincess/princess/index.html
http://www14.atwiki.jp/princess-ss/

気位の高い姫への強姦・陵辱SS、囚われの姫への調教SSなど以外にも、
エロ姫が権力のまま他者を蹂躙するSS、民衆の為に剣振るう英雄姫の敗北SS、
姫と身分違いの男とが愛を貫くような和姦・純愛SSも可。基本的に何でもあり。

ただし幅広く同居する為に、ハードグロほか荒れかねない極端な属性は
SS投下時にスルー用警告よろ。スカ程度なら大丈夫っぽい。逆に住人も、
警告があり姫さえ出れば、他スレで放逐されがちな属性も受け入れヨロ。

姫のタイプも、高貴で繊細な姫、武闘派姫から、親近感ある庶民派お姫様。
中世西洋風な姫、和風な姫から、砂漠や辺境や南海の国の姫。王女、皇女、
貴族令嬢、または王妃や女王まで、姫っぽいなら何でもあり。
ライトファンタジー、重厚ファンタジー、歴史モノと、背景も職人の自由で。
690無理だったお:2009/12/28(月) 16:36:52 ID:m04M9Jld
妄想的時代小説part2  と 逸話や童話世界でエロパロ2 は落ちてたから入れてない
691名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 18:42:37 ID:Ub61WK9N
規制で立てられなかったのかな?
692名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 18:56:52 ID:xhsfMMmN
携帯から建てようとしたけど駄目だった
建てられる人いる?
693名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 19:04:24 ID:XFpL4GQE
やってみるから、ちょっと待ってて
694名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 19:07:44 ID:XFpL4GQE
はい
お姫様でエロなスレ12
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1261994789/
695名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 21:41:04 ID:MWwf373R
へー、この板はスレ交代の時期が早いんですね。
696名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 22:29:03 ID:qyDHsNiv
別に他の板とも変わらんと思うけど。
697名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 23:05:53 ID:eaL9Up6q
創作物を投下する板は他の板に比べると長文連投の割合が多くなるから容量オーバーになりやすい、という傾向はあるだろうね
698名無しさん@ピンキー:2009/12/29(火) 01:33:47 ID:Dbq889AX
>>694
699名無しさん@ピンキー:2009/12/29(火) 06:26:21 ID:nBh1eNQe
>>694
スレ立て乙
700名無しさん@ピンキー:2009/12/29(火) 17:49:51 ID:FIreygsA
新スレ乙。
701名無しさん@ピンキー:2009/12/30(水) 18:38:05 ID:/xZhpx+1
>>694
乙彼
702名無しさん@ピンキー:2009/12/30(水) 21:00:49 ID:nKhOxlhY
>>673 が戦火池!と叩かれてるが、改めて>>1見直すとたしかに
ここって気になるよな

>気位の高い姫への強姦・陵辱SS、囚われの姫への調教SS

がしょっぱなに来てるから、>>673 はそんなに間違ってない気も
次スレ立ったばかりだが、スレ傾向が号館ミタクネな雰囲気になってるなら
更に次に向けて>>1見直したほうがよくないか?

>>673 は気を取り直して、次回作は戦火で待ってる
703名無しさん@ピンキー:2009/12/30(水) 21:37:02 ID:eyhzU+o5
というか、そもそもこのスレはSM板の『囚われの姫さま』スレが発祥だし
704名無しさん@ピンキー:2009/12/30(水) 21:48:58 ID:k8u33YGn
発祥にとらわれる必要はないけど、
現状お姫様総合スレなんだから幅広く受け容れるべきだろう
個人的には超強気責めモードのお姫様が読みたいです!
705名無しさん@ピンキー:2009/12/30(水) 23:24:40 ID:lKNdvYCl
>>702
だよなあ
前も似たような流れあったし、ちょっと読み手側は目瞑ってもいいと思う
少なくとも、暴力描写への断りが一言でもあるのならどうこう言われる筋合いはないような
706名無しさん@ピンキー:2009/12/30(水) 23:58:38 ID:8yv4RCSd
目を瞑るも何も、言いがかりをつけている方が、何ら正当性のないことを喚いていただけ
戦火スレ"でも"良かっただけで(強いて言うなら、戦火スレの方が喜ばれた)、
ここじゃいけなかった理由なんて何一つない
707名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 01:47:27 ID:U0rlwkAk
お姫様のエロなら何でもいい
708名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 09:21:45 ID:YSVi2DiO
だよな
709名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 11:22:36 ID:F92I57i0
最近女向けのぬるいのが続いてたからな。
710名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 11:36:10 ID:C8MjfX1A
俺はレイプとかよりそっちの方がいいわ
711名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 11:56:49 ID:gx/j/Vn9
俺はどっちでもいける

注意書きがあるにも関わらず、勝手に読んで「見たくなかった」だの、
自分の趣味に合わないってだけで「スレ違い」だの、見当違いなこと
ほざく連中さえいなきゃ、問題なし
712名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 12:32:07 ID:UaJc0dkm
否定の流れから趣味趣向を語るのは自由だが、それを目にして職人がやる気を出したり
出て行ったりするのも自由なのを、少し考えればいいと思うよ
713名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 14:12:58 ID:F92I57i0
>投下します

>初めて書いたので見苦しい様はご勘弁を
>戦火と迷いましたがこちらで

>普通の貴族令嬢です


この注意書きだと、きつめの凌辱ものだとわからない人もいそうだが。
戦火スレ見てない人は傾向わからないのでは。
714名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 15:03:40 ID:zzi6jHM5
自分は小説かかんから投下する人にはありがとうといいたいんだぜ

ここは割とハッピーエンドが多いからそうじゃない作品だと注意書きが
あったほうがいいかもしれんね
715名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 21:45:22 ID:i2v0Sl13
つまり注意書きありきってことだよな?

SSの前の注意書きは読み手のためのもので、
>>1は書き手さんのための注意書きだと思うんだ

スレ住人でSS書く人だけでなく、SS仕上げてから、
>>1読んでどこのスレが該当するか探す職人さんも
いるわけだから、>>1は職人さんに親切であるべきと思う

つまり

>ただし幅広く同居する為に、ハードグロほか荒れかねない極端な属性は
>SS投下時にスルー用警告よろ。スカ程度なら大丈夫っぽい。逆に住人も、
>警告があり姫さえ出れば、他スレで放逐されがちな属性も受け入れヨロ。
           ↓
ただし幅広く同居する為に、陵辱、輪姦、グロほか荒れかねない属性は
SS投下時にスルー用警告よろ。逆に住人も、警告があり姫さえ出れば、
他スレで放逐されがちな属性も受け入れヨロ。

みたいになるんじゃないかと。なんかもうこの雰囲気だと、「スカ程度なら
警告なしで大丈夫」とか思えないんだけど、どうかな?
逆に警告あればいいと思うが

昔よりヌルい住人が増えたんだろうし、自分もそのひとりだと思うけど、
せっかくSS投下してくれる職人さんに迷惑掛けないようにしたいな
716名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 22:26:16 ID:YSVi2DiO
480KB以上だと、放置しておけば自然に落ちるんだっけ?
717名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 01:30:07 ID:XTZ5ARLO
おおむね賛成だけど、「ほか荒れかねない属性」って書き方は、無用な刺激をしそうだから
「などの属性」とか「などの読み手を選びそうな内容の場合」みたいな書き方にしたらどうかな
718名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 15:21:54 ID:s8E0/AWP
あけましておめでとうございます

>>717 つまりこうですかね?

ただし幅広く同居する為に、陵辱、輪姦、グロなどの読み手を選びそうな
内容の場合は、SS投下時にスルー用警告よろ。逆に住人も、警告があり
姫さえ出れば、 他スレで放逐されがちな属性も受け入れよろ。

あと、
>気位の高い姫への強姦・陵辱SS、囚われの姫への調教SSなど以外にも、
>エロ姫が権力のまま他者を蹂躙するSS、民衆の為に剣振るう英雄姫の敗北SS、
>姫と身分違いの男とが愛を貫くような和姦・純愛SSも可。基本的に何でもあり。

のところも、どうみても強姦メインのスレ(以前はそうだったかも知れんけど)
にみえるので、再考すべきと思う 特に書き手さんが困らないために
自分は新参者なので、この11をチェックしてから素案を次スレで提案させて
もらおうと思ってる。

さてそろそろ490kB なので容量いっぱいで落ちるか、放置で自然に落ちるな
719名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 16:57:56 ID:Zel4q2NS
>>718
基本的に何でもあり。だけ残して、あとは消しちゃえばいんじゃね?
720名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 19:48:09 ID:QpJFSvQa
もう12スレ目か
早いもんだな
721名無しさん@ピンキー:2010/01/03(日) 15:27:08 ID:FR13x7yG
>>719
下手に例挙げておいて
>>1に書いてないから余所やサイトでやれ、っていう弾き出し出てくるのも面倒だしな
俺も姫さまさえ出てくればそれくらいアバウトでもいいと思う
722名無しさん@ピンキー:2010/01/03(日) 17:24:38 ID:OBn/uhiU
というか、12スレ目まで普通にやってこられたのに、現行のテンプレすらまともに読めない、
>>681-682の二人だけのために、無駄にテンプレを増やすべきじゃないだろうね
そういう奴らは、どうせ何を書いても、テンプレ読まずに的外れなことを口にするだろうし
723名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 08:25:21 ID:Q3CHKqmd
俺なんか和姦やヘテロは見てて苛々するのに、今までいちいち文句は言わなかった。
勝手にここを和姦限定にする頭緩い奴がいるなら、俺も行儀よくするのは止めるわ。

テンプレを整理するとかは勝手にやればいいが、
スレの方向性そのものを変更する必要はないだろうよ
724名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 08:35:33 ID:gdMvDu0H
とうとう腐女子まで召喚しちゃったな
725名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 09:02:44 ID:u+pPBY3U
腐女子キメェ……しかも俺女かよ
726名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 13:12:01 ID:HIw0QkX6
他の奴が行儀悪いから俺もとか
スレの寿命を縮めるだけだぞ

気持ちはわかるけど、落ち着くんだ
727名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 16:11:19 ID:kt+BnVSV
うん? お姫様スレの場合、少なくとも片方は女性なので、ヘテロ嫌いのホモ好きってのは、
つまりホモ好きではなくレズ好きではないのだろうか。
あれ? 俺、なんかおかしいぞ・・・?
728名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 11:12:35 ID:qFGBLT7w
自分がそのSS見て嫌な気分になったからって、スレの方向性まで
変えようってのは、あまりに自分勝手だと思うわけだ。
誰かに強制されて見に来たわけじゃないんだろ。
729名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 11:50:57 ID:XULX3jV8
テスト
730名無しさん@ピンキー:2010/01/06(水) 00:15:53 ID:6OqVtQoz
お姫様が男を陵辱するSSが読みたい
731名無しさん@ピンキー:2010/01/06(水) 00:28:09 ID:oAdKuw2j
>>728
仮に誰かに強制されたんだとしてもソイツをどうにかしろよって話しだよなw

>>730
あーいいなあ。
悪の姫様、たとえばサイバーボッツのデビロット姫(マイナーですまんw)みたいなのが
敗者をなぶり者にするとかすげえ読んでみたい。
732名無しさん@ピンキー:2010/01/06(水) 01:13:04 ID:DeUZtHll
同人ゲーで捕えた勇者(童貞)を凌辱しちゃう魔族なお姫様ってのやったことあるなー。
あれはよかった。
733こんなのがいい:2010/01/06(水) 10:15:20 ID:bmoGjjem
VIPで拾った

男騎士「くっ・・!降伏する・・・・・・・」
敵1「どうする」
敵2「いや、いらんだろ」
敵3「じゃあ俺が貰う」
女将軍「後ほど私の部屋につれて来い。厳重に縛っておくのだぞ?」

女将軍「む・・・よし、入れ。ほほう、すでに下帯一枚とは気が利くな」
兵卒「お褒めに預かり光栄にございます・・・ごゆるりと」
女将軍「ふふん。言われるまでもないわ」
男騎士「貴様!俺をどうするつもりだ!捕虜に対してこの扱いは条約違反ではないか!ふざけるな!」
女将軍「よく動く口だな・・・塞いでしまおうか」
男騎士「!?んむっ・・・」

ぢゅっ、ぷちゅ、ぢゅぢゅっ、くちゅっ

女将軍「・・・ぷはっ。ほぉら、静かになった。ふふん、舌が糸を引いておるわ」
男騎士「な、何のつもりだ・・・」
女将軍「ふふん、聞かねばわからないのかい・・・?」

女将軍「ふふん、なかなか良い肉体をしている・・・しなやかなで強靭な筋肉だ。やはり若い肉体はそそる・・・」
男騎士「さ、触るな・・・」
女将軍「しかし・・・騎士にしては傷が少ないな。お前、新兵か?」
男騎士「・・・答える筋合いは無い」
女将軍「ふふん、そういえばお前の口を塞いだのは他でもないこの私だったな・・・口が答えぬなら肉体に答えてもらおう」
男騎士「やっ!やめろ!ち、乳首を・・・な、舐めるなぁっ・・・ふはぁ」
女将軍「ふふん、良い反応だ。愉しくなってくるよ。男という生き物はな、乳首を責められているときは嘘をつけないものだ」
男騎士「な、何・・・?」
女将軍「質問。お前は新兵では・・・ない」

ちゅぱっ

男騎士「ふうっ・・・!」
女将軍「ふふん・・・質問。お前は新兵だ」

ちゅぴっ

男騎士「ふあああっ!!」
女将軍「はははっ!この反応の違い!やはり肉体は正直だな、新兵くん!」
734こんなのがいい:2010/01/06(水) 10:16:18 ID:bmoGjjem
女将軍「ふふん・・・私としたことが少々昂ぶってしまったようだ。おい、誰ぞおらぬか!」
兵卒「はっ。如何なされました」
女将軍「いささか汗をかいた。湯浴みの準備を」
兵卒「既にこちらに揃えてございます」
女将軍「全く以って気の回るやつよ」
男騎士「お、おい・・・まさかここで!?湯浴みなら浴室ですれば・・・」
女将軍「こんな急ごしらえの砦にそんなものが造れるものかね。気にするな、お前に手伝わせるようなことは無いよ」
男騎士「そ、そういう問題では・・・ぬ、脱ぐな!」

女将軍「ん?脱がねば湯浴みなど出来はしまい?見たくないなら目を瞑ればよかろう。見てくれても一向に構わんがな」
男騎士「そ、それはそうだ・・・よし、俺は目を瞑る!湯浴みを終えて服を着たら声を掛けてくれ」
女将軍「お堅いねぇ・・・まあいいさ」

スルッ、スルスルッ、パサッ。   ちゃぷ、ざあっ、ざばっ

女将軍「ふぅ・・・ん・・・んっ、んあっ!あっ、あぁん、ふああっ!あん・・・指、気持ちいい・・・」
男騎士「・・・!?・・・(よもや自慰を・・・!?)」

・・・パチッ

女将軍「やっぱり見るんじゃないか」
男騎士「あ・・・」
女将軍「ふははっ!このむっつりすけべの新兵め!」

男騎士「も、もういい加減にしてくれないか・・・こんな行為が公になったらあんたの立場が危うくなるかもしれんぞ!」
女将軍「ん?私が何かおかしなことをしたかい?やかましい捕虜を黙らせ、軽い尋問をし、あとは湯浴みをしただけじゃないか」
男騎士「それは詭弁だ!もし俺が解放されたら俺が真実を世に伝えてやる!」
女将軍「ふははっ!真実を語るとな?
『私はろくに経験もないまま戦場に出て捕虜になり、敵の女に唇を吸われ、乳首をねぶられ、目の前で裸体を見せ付けられました』
と喧伝するわけか!ふはははは!これは素晴らしい!」
男騎士「ああっ・・・あうぅ・・・くうっ・・・!」
女将軍「・・・まあそんな顔をするな。・・・この戦いが終わればお前を解放してやる。それまで条約に引っかかるようなことは絶対にしないよ、約束する」
男騎士「・・・本当ですか・・・?」
女将軍「ああ本当だ。私を信じろ」
男騎士「・・・信じます」
女将軍「そうか、うれしいよ。・・・・・・では条約に引っかからない程度にじわじわ責めるとしようかあ!」
男騎士「ひいいいっ!」
735名無しさん@ピンキー:2010/01/06(水) 10:21:28 ID:BfJpyzXw
女兵士スレ向きかもな

女将軍→姫将軍に変換すると萌えるけどw
736名無しさん@ピンキー:2010/01/06(水) 17:46:26 ID:V5zs2ldl
姫将軍でもいいし、捕虜は全員味見する人外のお姫様もいいな
「最近戦がなくてお腹が空くのよねー」みたいな
これもサキュバススレ行きだろうか?
737名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 09:44:42 ID:OVTuQ84r
政略結婚で嫁いで来た純真無垢なロリっ子姫を純愛調教
738名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 12:23:59 ID:Q2Zg4h/j
大乱交お姫様舞踏会
739名無しさん@ピンキー:2010/01/09(土) 14:20:35 ID:sxDRjNoh
お姫様はやっぱり男口調だよ
740名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 02:45:21 ID:gw0c//+z
一人称はわらわ
741名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 10:37:46 ID:30gW7UbM
>>673 お姫様陵辱 私は好みだ。
742名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 17:49:31 ID:pdC0L6/e
>>723は、百合凌辱が好きって事だろ?
743名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 01:06:46 ID:be2MtBak
凶暴なお姫様
744名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 01:41:00 ID:LjkRoCIi
745名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 23:10:19 ID:lZgzEhSl
蛮族のお姫様
746名無しさん@ピンキー:2010/01/17(日) 17:10:12 ID:/kYUzerA
うめ
747名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 23:38:23 ID:VXW7yDIp
umare
748名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 23:40:13 ID:VXW7yDIp
hime
749名無しさん@ピンキー:2010/01/19(火) 05:22:02 ID:uNs6+c24
姫様御覚悟!
がばり、ずこずこ。
ひぎぃ、らめぇ。
びゅるびゅる。
膣内射精御免!
750名無しさん@ピンキー:2010/01/20(水) 14:46:15 ID:7u90/wFJ
>>749
ワロタw


しかしなかなか埋まらんね
751名無しさん@ピンキー:2010/01/20(水) 22:58:35 ID:7Zns5nsn
埋めなくていいから落とせ
新しく来た人多いのか

まあ、500KBいくからいいんだけどさ
752名無しさん@ピンキー
1kbって意外とあるのか。
499kbの時に一行とか一言とか書いみても埋まらない〜。

しかも考えるとやたら長くなって小ネタ投下するのも大変だ。
お姫様良いよね〜素晴らしいよね〜だけど書けない〜。
お姫様にエロいこと超したい。純愛かつ縛りとかスパンキングとかしたい。
テラスでエロス、お風呂でエロス、馬車でエロス、遠乗りで青空エロス。
お忍びで城下町の安宿でエロス、道具でエロス、薬でエロス、魔法でエロス。
清楚な王女がストレスからエロに走ってピアスとか刺青とかしたりして。

……そろそろ埋まったかな?
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