【友達≦】幼馴染み萌えスレ17章【<恋人】

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1名無しさん@ピンキー
幼馴染スキーの幼馴染スキーによる幼馴染スキーのためのスレッドです。

■■ 注意事項 ■■

*職人編*
エロパロ板のスレですが、エロは必須ではありません。
ラブラブオンリーな話も大歓迎。
書き込むときはトリップの使用がお勧めです。
幼馴染みものなら何でも可。

*読み手編*
つまらないと思ったらスルーで。
わざわざ波風を立てる必要はありません。

前スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ16章【<恋人】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1221583669/

15代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ15章【<恋人】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205778691/
14代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ14章【<恋人】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199161005/
13代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ13章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187193091/
12代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ12章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179023636/
11代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ11章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171471579/
10代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ10章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161975824/
9代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ9章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153405453/
8代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ8章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147493563/
7代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ7章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1136452377/
6代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ6章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1130169698/
5代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ5章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1117897074/
4代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ4章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1110741092/
3代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ3章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1097237524/
2代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ2章【<恋人】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1078148899/
初代スレ:幼馴染みとHする小説
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1073533206/
2名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 00:32:37 ID:KKoyLuyS
*関連スレッド*
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第9章(派生元スレ)
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1206353662/
いもうと大好きスレッド! Part 5(ここから派生したスレ)
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1230646963/
お姉さん大好き PART6
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1216187910/

*これまでに投下されたSSの保管場所*
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/

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次スレはレス数950or容量480KBを超えたら立ててください。
では職人様方読者様方ともに今後の幼馴染スレの繁栄を願って。
以下↓
3名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 01:12:05 ID:MsfZfv4W
>>1
乙です! 新規の職人さんも、今頑張ってらっしゃる職人さんも、ご無沙汰な職人さんも、とにかく沢山の職人さん
が来て、沢山の作品を投下して欲しいです!
4名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 09:08:07 ID:bCkLuUJW
いちもつ
結構ギリギリだった?

前スレ>>726
職人さん仕事が早いw

翔太め幼馴染居るのにわがまま言いやがって……うらやましくなんかねーよばーかばーか!(´;ω;`)
5名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 23:45:42 ID:KstNp/bj
スレ立ちましておめでとうございます。
本スレもどうぞよろしくおねがいします。

さあ本スレの初夢はいったいどんな作品でしょう。

楽しみでさっきからずっと興奮してちんこ痛いです      
6名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 17:53:32 ID:zSveQ3VO
ほら>>5
あんたの名前と、どんな幼馴染みにどんな事をされたいか書くんだ!!


そして1乙。
7名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 18:47:45 ID:objWyhLD
ツンデレ幼馴染ものと甘甘幼馴染ものどっちが好きですか?
8名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 18:54:31 ID:zSveQ3VO
即死回避も兼ねて、即興で書くから、
偽名でも良いんで>>7の名前と、どんな幼馴染みにどんな事をされたいかプリズ!!

9名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 19:00:45 ID:objWyhLD
え、名前なんかないですよwSSも書いたことないっす。
個人的に初めて同士の幼馴染物ならなんでも好物ですが。
10名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 19:09:12 ID:SMFmlVMZ
>>1ぽにーてーる
11名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 19:11:55 ID:zSveQ3VO
それじゃ書けんがなw
まぁ、気が向いたら誰でも良いんで、
男の名前と、どんな幼馴染みにどんな事をされたいか下さいな。
即興チャレンジしてみたい。
12名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 19:28:09 ID:objWyhLD
>>11
じゃあツンデレ幼馴染にフェラチオしてもらうでどうだろうか。
名前は適当に決めて下さって結構ですから。
13名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 19:53:48 ID:Qy1eeZW/
名前はエドモンド本田で///
14名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 19:55:44 ID:objWyhLD
それはやめてくれwww萌えがないwww
15名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 20:22:47 ID:+OUTK05f
ID:objWyhLDはノリ悪すぎ。
16名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 20:24:06 ID:zSveQ3VO
オケ。
名前はテキトーに。
一時間ちょい待ってて。
17即興:2009/01/16(金) 22:54:20 ID:zSveQ3VO
前編

 太陽は空高く真上に。真夏の午後は体温を挑発して吊り上げる。
 家の中。部屋の中。壊れたクーラーを見上げて二人は佇む。
「マジかよ!? こんな時に……」
 汗を垂らし、二重の意味で汗るのは一人の少年。今年18を迎える源 紫琉(みなもと しりゅう)。
「どうするの? これじゃ、とても勉強なんてできないわ」
 その横で見上げるのは、ルビーの様に赤い瞳。日焼けを知らない白い肌。腰のラインまで長い黒色の髪。抜群のプロポーションを持つ高坂 初音(こうさか はつね)。
 紫琉は、クーラーで暑さが凌げないよりも、幼馴染みで在る初音の機嫌を損ねるのが怖かった。
 同い年で小学生に入る前からの長い縁。
 その頃から紫琉は初音が好きで、つい一週間前に告白してオーケーを貰ったばかりなのだ。
 だから、いつ呆れられて別れを告げられるかと不安でいっぱい。
「暑いし、さ……プールでも行かない?」
 とにかく初音の事を第一に考え、行動する。
「っ……はっ、行かないわ。一人で行ってきたら?」
 そんな思いも伝わらず、初音は勉強道具をまとめると、スタスタ部屋から出て逝ってしまう。
「あっ……」
 後に残された紫琉は、呆然と立ち尽くすだけ。別れを告げられなかった事だけに、安堵の溜め息を吐き出すだけ。

 初音は喜怒哀楽を殆ど表に出さず、僅かな眉の上げ下げだけで気分を示す。
 毒を含んだ言葉でも躊躇無く述べるので、クラスの空気を頻繁にギスギスさせてしまう。その度に紫琉がフォローして来た。
 クールと言うよりも刺々しさを、幼い頃からずっと守って来たのだ。
 故、一層に思いは強い。何を考えてるか分からなくても、表情を読めなくても、付き合ってる彼女を離したくない。
 紫琉の思いはそれだけ。恋焦がれてた人が隣に居る、それだけで嬉しかった。例え初音が紫琉を好きじゃ無くても、断るのが面倒だからオーケーしたとしても、紫琉は幸せで溢れてた。
「一人で、行こ……」
 結局、初音の意志を尊重して引き止めず、一人で町民プールに行ったのだった。

18即興:2009/01/16(金) 22:54:51 ID:zSveQ3VO
後編

 明るい空は黄金色に。ヒグラシの鳴く涼しくなった夕方。
 紫琉がプールから帰り、自室に入ると初音がベッドに腰掛けて足を組んでいた。
 白いタンクトップにジーンズの昼間と同じ恰好で、部屋に入って来た紫琉を、いつもの冷めた赤い瞳で見詰めている。
「お帰りなさい。どこに行ってたの?」
「えっ……と、プールに」
 その視線で、紫琉の身体は硬直した。手荷物はボトリと床に落ちる。
「私は行ってないのに?」
「だって行かないって……」
 急激な体温下降で痙攣仕出す。
「そっ、じゃあ別れましょうか?」
「や、ヤダッ! 初音と離れたくないっ!!」
 それでも、最悪の事態は回避する為に口は動いた。
 初音はその台詞を聞くと、ベッドから腰を上げ、紫琉と息が交わる程の目前で膝立ちになる。
「別れたくないなら、私が良いって言うまで動かないで。声も出しちゃ駄目よ?」
 恐らく最後のチャンス。そう感じ、紫琉は首を縦に振るだけ。
 そこからはアッという間。初音は紫琉のベルトを外すと、下着ごとジーンズを膝上までズリ降ろした。
 そして両腕を紫琉の背中に回して組むと、唾液を溜めた口を拡げ、戸惑いもせずに縮んだたペニスを咥え込む。
「えっ? んんっ!?」
 
 ぢゅぷっ、ぢゅぷぷぷっ、にゅくにゅくにゅくにゅく……

「んちゅっ、ちゅちゅっ、んぢゅんぢゅ……ぢゅちゅちゅっ」
 ヌルヌルと糸を引いて絡み付く、暖められた唾液に満たされる蜜壷。
 唇は柔らかくペニスを揉みほぐし、舌は優しく全体を撫で上げる。
「はつ、ねぇっ……」
 いきなりとは言え、好きな人が与えてくれる初めての感触に、紫琉のペニスは即座に反応して棒状に変化した。
 した所で、
「ちゅぷっ……はい、おしまい」
 初音はあっさりと口からペニスを放す。
「えっ、どうし……」
 そして立ち上がると、さっきと同じ様に紫琉を見詰めた。
「次は追い掛けて来なさい。彼氏なんでしょ? 私を一人にしないで」
 微かに頬も赤く染めて、顔を寄せ、耳元で囁く。
「それから、まいにち抱かれる覚悟してるんだから、さっさと手を出しなさいよ。その時に……続き、してあげるわ」
 ここまで言わせて、紫琉はやっと気付いた。
 普段は無表情で、クールで、ツンツンしてる……ように見えるけど、考えてる事は普通なのだと。
「まっ、たく。処女を失う前にフェラするなんて思わなかったわよ。あっ、それから紫琉?」
 初音は身体を離すと、紫琉を通り過ぎて部屋のドアノブを手に取る。
 そして振り返らず、ドアを見たまま……
「いままで言ってなかったけど、私、紫琉の事……だ、だっ、だっ……大好きだからなっ!!」
 初めての告白をして、部屋から出て階段を降りて行く。
 残された紫琉は目を見開いて驚き、その後に初めて思いを聞かされて、翌日までニヤケるのだった。
19 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/01/16(金) 22:56:49 ID:zSveQ3VO
思ったより時間掛かってスマネ。
大変だって分かったんで、もう即興で書くなんてしませんわw
20名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 22:58:25 ID:objWyhLD
>>19
いやいや、ありがとうございますwwww
とげとげした、幼馴染、大好物ですww
是非続きを所望いたします。
21名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 00:01:29 ID:mKQPpxIl
>>5ですが
お恥ずかしいことに
あなたの作品に感動しすぎて下半身が制御不能です。イタイです

おそらくこのままでは不能(雄的な意味で)は避けられないので責任をとって早急に続きを書いてください。
お願いします         
22名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 01:10:29 ID:FU907gld
>>19
相変わらずいい仕事してますねw GJです!
某シリーズ続編も期待しております!
23名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 01:42:57 ID:meRC1eNM
次から前スレの続きを投下。
24この世で最も華麗な彼氏 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/01/19(月) 01:44:23 ID:meRC1eNM
1
 まるでアリクイ。小さく狭い穴に、長く厚い舌を差し込んで、精液とローションのミックスジュースを啜り上げてる。
 一生懸命に、一滴も残さずに、恍惚とした表情で、ぢゅるぢゅると卑猥な音を立てて飲み干して行く。
 餌を貪(むさぼ)るアリクイ。
 だけどアリクイの顔は、熱い吐息は、大きな胸は、細い腰は、丸い尻は、その姿はっ!
 この世の誰よりも魅力的で、この世の誰よりもエロティック。
 そんな幾つ美辞麗句を並べても足りない幼馴染みが、たった一つ、我慢できなかったモノ……罪悪感に狩られながらも、誘惑に負けて、オナニーホールの中を舌で掻き回す。
 咥内でテイスティングして、唾液と混ぜてクチュクチュ咀嚼して、ゆっくりと咽を鳴らして胃に収める。

 ボクの好きな、ボクの大好きな美月が、ボクの目の前で。
「ふぅっ、ふぅっ、ふっ……みつきぃ、みつきぃっ、ボクっ、もぅ……イッちゃう、よぉっ」
 ボクは四角いクローゼットの中。隙間から『おかず』を眺めて、左手は声が漏れない様に口を塞ぎ、右手はドロドロにヌメるチンポを扱く。
「きもちいいよ、みつきぃっ……あっ、はあぁっ、みつきのクチのナカ、とっても、きもちっ」
 限界は早い。今までの中でも恐らく最速。だって、いつも妄想で犯してる人が、ボクの前で恥態を見せてくれてる。
 だから、だからっ、いつもよりリアルに美月のクチを思い浮かべて、幼馴染みをたんなるオナペットに格下げして、性欲の吐け口に。
 美月は全て吸い付くしたオナニーホールを強く握り、微かに滲み出る残り汁を名残惜しそうに舐め取ってる。
 ばかっ! えっちぃすぎるんだよっ! エロみつき!!
 何で階段上がる時に後ろ押さえないの!? 下から丸見えだって分かってるのに、何で短いスカート穿くの!? 何でボクに押さえさせるの!? ボクにお尻を触らせるのっ!?
 お昼はフルンクフルトばっかり食べて……ボクもう、許さないんだからねっ!!
 ボクの身長が伸びて、美月よりも力持ちになったら、絶対にイラマチオしてやるんだ!! あのクチのナカに無理矢理……あっ、イキそっ。
「ぁっ、あっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、美月、ミツキ、みつき、みつきっ……んっ、ふぎぃっ!?」
 弾ける。クローゼットの内扉に向けて、しこたま射精する。バレないように声を殺して、イッた後も扱き続けて、びゅる、びゅる、びゅびゅぅぅぅっ。
 シテたのは自分の手なのに、今までで一番の快感だった。
 さきっちょからは、さっき出したばかりとは思え無い程の精液が飛び散り、最高のけだるさが全身を包む。
「はぁっ、はぁっ、んっ……すきっ、大好きだよ美月。ボクも、我慢するからねっ」
 そして冷静になった頭で、改めて誓う。約束は絶対に守るって。
 美月を、ボクの彼女にするんだ!
 変更しない決意を固め、フラフラと立ち上がった幼馴染みを見詰める。
「ははっ、私……何やってるんだろ? へんたーい、へんたい美月っ、あははぁっ……あーあ、コレ私がやったってバレちゃうよね? はあぁっ、帰ろっ」
 美月は冷めた声で自らを卑下して笑うと、濡れて重くなった下着を左手に、オナニーホールを右手に持って部屋から出ていってしまった。

 持って帰っちゃダメぇぇぇぇぇっ!!!

25この世で最も華麗な彼氏 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/01/19(月) 01:45:26 ID:meRC1eNM
2
 にんじんさーん、じゃがいもさーん、メインディシュのおにくさん〜♪♪

 ――トントントントン。

 こんな頭悪い歌が浮かぶなんて……死にたい。でも死ぬ前に美月とエッチしたい。あーあぁっ、死にたい。
 ハーフパンツとアルバのTシャツに着替え、その上から青いストライプのエプロン。
 キッチンに立ち、包丁を持って、野菜を一口サイズに。牛肉も軽く火を通して、同じく一口サイズに切る。
「あした、なんて声かけたらいーの? よー美月、俺様のオナホ知らねーか? って、軽く言えたら苦労しないんだよなぁ……はあぁぁっ」
 オナニーして気持ち良くなった後、冷静になって、脳内がクリアになって、夕食のカレーを作りながら自己嫌悪。
 インスタント以外はカレーとチャーハンとハンバーグしか作れないし、別な料理教えてって言おうかな?
 うん……そう、だねっ。自然に、自然にっと。
「頑張ろっ、ファイトだボク!!」
 煮えたナベに切り終えた食材を放り込み、フタをして加減を中火に落とす。
 そして、待ってる間にサラダでも作ろうとキャベツをまな板に乗せた時、
「おかえり砂耶……」
 ピクリ。大好きな声がボクの名前を呼ぶ。
「みつ、き?」
 振り返ればやっぱり。やっぱり幼馴染み。繋がったリビングキッチンのリビング側。その入り口に、元気無く微笑む美月が居た。
「あのっ、あのっ……チャイム押しても反応ないし、でもっ……明かり付いてたから」
 前倒しになっちゃうけど良いかな。まっ、取り敢えずはっ、
「もうちょっとでカレーできるから、一緒に食べよ? ほらっ、ソファーに座ってテレビでも見てて」
 話しを逸らそう。視線をまな板に戻し、慌てないように深呼吸して、キャベツ玉の1/4カットを千切りに。
 タントンタントンタントントン♪ 手早く切って大皿に乗せ、水洗いしたプチトマトを回りに盛り付ける。
 後はキクラゲを上にまぶせば、サラダの完せ……
「ねぇ砂耶? 私、ね……考えたの、このままじゃ駄目だって。砂耶だって嫌でしょ? パンツを盗んでオナニーする幼馴染みなんて」
 する間際。いつの間にか美月に真後ろへ立たれ、肩に手を乗せられ、頭におっぱいを当てられていた。
 プラスされて真剣な告白。美月はボクに、何か大切な事を言おうとしてる。
 てか、オナニーして来たんだ?
 ははっ、でもね美月……そんなんじゃ軽蔑しないよ? ボクを好きなんだって、逆に嬉しいくらい。
「ううん、ボクは嬉しい。知ってると思うけど、ボクも美月の写真を見ながらシテるから……」
 だから。恥ずかしいから。頬っぺたが赤くなってるってわかるから。
 振り向かず、まな板に視線を落としたまま、ボクの『おかず』は美月だよって告白する。
「はあぁっ……そんな言い方するなんて、ズルイよ砂耶。カラダだけじゃなくて、ココロまで砂耶無しじゃ生きていけなくする気なの?」
 肩へ置かれた手に力が篭り、熱い吐息が耳に掛かり、トクン、トクン、と美月の鼓動が全身に伝う。
 ボクのだって爆発寸前。二人の鼓動は紡ぎ合い、繋がり合い、相乗効果でもっと大きく。

 キスしたい。

 心からそう思って……
「みつき、ちゅーしよっ?」
 優しく手を払い、ゆっくりと振り返る。
「えっ……う、うん。うんっ!!」
 爪先立ちして背伸びして、両手も伸ばし、美月の後頭部でぶら下がる様に組む。
 戸惑いながらも頬を染め、目尻に大粒の涙を浮かべる美月を見て、ボクもニッコリ笑顔。
 寝てる時にファーストキスを奪われて以来、軽いトラウマになってボクからキスするなんて無かった。
 唾液目的かもって、頭の端っこをいつも過ぎるから。
 でも、でもね美月? もう、それでも良いかなって思うんだ。それぐらい、美月が大好きだよっ。
「んっ」
 目を閉じて唇を突き出す。
「さやぁっ……」
 するとボクの顔がてのひらで挟まれて、

「「ちゅっ」」

 二人の唇が重なった。
 背が伸びたら、ボクがリードするからね美月。
 それまでは、情けない幼馴染みで許してね。

26 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/01/19(月) 01:50:17 ID:meRC1eNM
3
 コトコト。カレーが煮える音。
 だけど今は、そんな音も交ぜたくない。
「ちゅ……みつき、吸って」
 一旦クチを離してペロリと舌を出し、組んだ手を解いて美月の耳を塞ぐ。
「うんっ」
 美月もすぐにボクの耳を塞ぎ、今度は少し口を開いてキス。
 ちゅるちゅる、ぢゅっ、ちゅちゅぅっ……
 ボクの舌を上下の唇でしっかりと挟んで咥え、きゅきゅぅっと長い舌を巻き付けて吸い上げる。
 どこまでも卑猥に、絡み合う音だけが脳内に響く。他は何も聞こえない。
 ボクの舌をトロトロにして、裏側まで余す所無く舐めて、気持ち良く……してくれる。

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅうっ……

 あっヤバイ、朦朧として来た。こんなの久し振りだもんなー。
「んっ、はあぁぁっ……ゴメン、なさいサヤ。ふっ……んぢゅっ」
 再び唇が離されて、三度の接吻。
「んんっ!!? あっ……んぐっ」
 だけど違った。これはキスじゃない。
 まるでさっき、さっきのアリクイ、オナニーホール。
 ボクの口に舌を差し挿れ、喉の奥まで押し込んで、無理矢理に『何か』を飲ませた。小さくて、固形の何か。
「んっ、ぷはっ! いきなり何するの美月っ!?」
 慌てて口を離し、舌をズルズルと引き抜き、美月の肩を押して数歩も後ろに下がる。
 怒ってると意志表示して美月の瞳を睨み付けた。甘ったるい雰囲気は、あっと言う間にブチ壊し。
 僕は間違い無く睨んでる。美月の目を見据えて、低く唸り声を上げて。
 間違い無く、口元を吊り上げて、目を三日月の形にして笑う美月を睨んでる。
「ふふっ……ねぇ? 砂耶って、Mでしょ?」
 それなのに、反省した様子も無く、ボクの問いにも答えない。
 しかもボクをMだって……あはははははっ♪ 検討外れだよ美月? 背が低いから? ボクが美月よりちっちゃいからそう思うの?
 ちょっと頭に来たし、教えて……あげようかな?
「ボクはSだよ美月。頭の中じゃいつも……あ、あっ、ああっ……うわああぁぁああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 言葉は途切れた。吐き出せない。
 突然に、それも一瞬で、全身がもの凄い熱を持ったから。
「ゴメンね砂耶、マカ王バイアグラって言うんだけどね……飲ませちゃった♪」
 急いでエプロンを外して床に叩き付け、未だに微笑む美月を押し退けてリビングに出る。
「あっ!? うぐうぅっ……」
 足の力は抜け、もつれて転ぶ。
 それでも歩伏前進で、何とかソファーまで辿り着き、浅く腰掛けて背もたれに上体を倒す。
 ダメだ。腰から下が動かなくて、立つ事さえできない。

「はぁぁっ、はぁぁっ……はぁぁっ!!」
 息が、顔が、身体が、膨大な量の熱を蓄えてる。
 口も閉じれないから、ヨダレを垂らしっぱなしで舌も垂らしっぱなし。
 それを拭おうとしても、ダルさで手が脳からの命令を拒否してる。
「はぁっ、はぁぁっ、あつぃ……よぉっ」
 ただ、一部分だけ。
 足の間に在るチンポだけが、まるで全身の力を吸収したかの様に激しく勃起してる。
 ハーフパンツを持ち上げ、くっきりと形を示し、早く楽にしてと訴えてる。
 服を脱ぐとかそんなんじゃなくて、もう二回も出してるのに、まるで足らない。
 痛いんだ。射精して、射精して、射精しまくって、この熱を体外に放出しないと、気が狂ってしまいそう。

27この世で最も華麗な彼氏 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/01/19(月) 01:56:33 ID:meRC1eNM
4
 そんなに苦しんでるのに……
「ふふっ、随分と……大変そうね?」
 美月は目の前で、右手には鋏(はさみ)を持って、ボクを見下して笑うだけ。
 美月がやったクセに。
 美月のせいなのにっ。
 言いたい事は山程ある。でもっ、それよりも今は!
「はぁっ、帰って美月っ!! 今すぐに帰ってぇぇぇぇぇっ!!!」
 オナニーしたい! はやくっ、いっぱいシコシコして出さないとっ、オカシクなるぅっ!!
 だから本気で、できる限りの大声で、美月の目を見て叫び吠えた。
「私が、楽にしてあげるから……」
 けど、そんな訴えは通じない。
 美月はボクの足の間で膝立ちになると、一呼吸も置かずにジョキン。
 鋏をチンポの付け根ら辺に当て、左手で少しハーフパンツを引っ張ると、下着ごとハーフパンツに小さな切れ目を入れた。
「だめっ、だめぇっ! みつきダメぇぇっ!!」
 そして、鋏をキッチンまで床を滑らせて放ると、作った切れ目に両手の指を突っ込み、
「やだやだっ! 私、見たいもん……砂耶のおちんちん見たいのっ!!」
 そのままビリビリと、左右にハーフパンツを引き裂いた。
 チンポを中心に、丸く破けて穴が空く。
 あー、見られちゃった。バキバキに勃起したボクの……見られないように、して、たのにっ!
「ボクをっ、どうする、気なの、みつきぃ?」
 美月は飲んでない筈なのに、ボクと同じく肩で息をして、ボクのチンポに釘付けになって、瞳は潤み蕩けて、冷静なフリで、興奮してる。
 それはそうだろう。アリクイの好きな味のモノが、ここから出るんだから。
「ふぅぅっ、ふぅぅっ……だって砂耶、Sなんでしょ? ねっ、私が……試してあげるわ」
 美月はチンポからボクの顔に視線を移すと、上の制服を脱ぎ捨て、鋏と同じくキッチンへ。
 すると出て来たのは、美月が制服の下に来てたのは、見覚え有る布製の白い半袖。
 パツンパツンにフィットしてる、ボクの、中学生時代の、体操服。しかも大きな胸に引き伸ばされて、可愛いおヘソが丸見えになってる。
「ゴメンね砂耶。雑巾にするからって貰ったけど、実はぁっ……ふふっ、パジャマにしてたの♪」
 美月は尖った乳首の形が浮かんでるのも気にそず、自らの胸元に指を入れると、谷間に挟んでいた細いボトルを取り出した。
 これも見覚えが有る。ボクも持ってるし、いつも使ってるモノ。
「ほら砂耶っ……」
 それを、ローションを。フタを開け、逆さまに持って、ドボドボと自分の上半身にブッ掛けた。
 一瞬で美月は濡れ、服はブラも付けてない素肌に張り付き、ピンク色の乳首を透視させ、テラテラと艶めいて粘着質な水音を立てる。
「砂耶の趣味はバレてるんだから……私にたった一言、お願いするだけでいいんだよ? 着衣パイズリって、して欲しいんでしょ?」
 更に乳首の下位置までスソを捲くり、両胸を左右から押し付け合うようにして挟み持つ。
 ローションで塗れて糸を引かせ、ここに挿れて良いよって、ここに精液ビュルビュルして良いよって誘惑してるんだ。
「ああっ、ああっ、そんなぁっ」
 だけど、セックスはしないって……でも、でもっ!
 こんなの、こんなのってないよぉっ!!
 射精したいのに、オナニーしたいのに、足は動かなくて、美月は目の前。
 はっ……だったら、だったら仕方ないよね?
 これはセックスじゃないって最低の言い訳で、
「みつきぃ、みつきのオッパイで、きもちよく、してっ……」
 美月を求めたって。

28名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 01:57:31 ID:meRC1eNM
度々スマン。
本当に次で終わりますん。
29名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 05:17:44 ID:334yJe9+
過去の作品見てから、僕貴方の大ファンです。こんな時間になんたるGJ!
本番?直前なのにここまでオッキさせるとは・・・
続きが待ち遠しい〜
30 ◆POBrm2R/G2 :2009/01/19(月) 09:22:18 ID:i/oNePDU
>>28
寸止めキター!!しかしGJです!!

>>新作お待ちの方
DION規制の影響でPCからの投下ができませんので、しばらくおまちください。
31名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 11:30:05 ID:6siq9cTK
>>28
続きをフルオッキ状態で待っておりますぞ!
32 ◆POBrm2R/G2 :2009/01/20(火) 00:54:51 ID:bl/VNNkl
>>28 ◆uC4PiS7dQ6氏の華麗な彼氏の続編待ちがてら辰則×美紀の小ネタ投下。
NGワードは「◆POBrm2R/G2」「辰則×美紀」
33 ◆POBrm2R/G2 :2009/01/20(火) 00:55:39 ID:bl/VNNkl
追記:8レスお借りします。
34辰則×美紀 ある冬の雨の日(1/8) ◆POBrm2R/G2 :2009/01/20(火) 00:56:01 ID:bl/VNNkl
三学期が始まって数日、現代文の先生がなにやら語りだしたので、つまらなくなって窓の外を眺めると、雨が降り出していた。
今日は天気予報を見忘れて家から出てきたので傘を持ってない。まぁ私の彼氏さんなら持ってるだろうから、今日は・・・てか今日も一緒に帰ろうかな。
ついつい緩みそうになる頬を押さえながら、1年前のあの日のことを思い出していた―――

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

インフルエンザで期末テストを受けられなかった私は、追試を受けていた。
追試が無事終わったので帰ろうとしたら、降るはずじゃなかった雨が既に降り始めていて。
朝の天気予報では夜からってことになってたから、傘を持たないで来たのに。
「うー・・・サイアクだぁ・・・」
昇降口でひとりごちていたら、後ろから突然誰かに声をかけられた。
「美紀、どうした?」
「うひゃあ!・・・なんだたっちゃんか」
『なんだ』なんて失礼な返答をしちゃったけど、いきなりだったんだから仕方ないよね?
だってたっちゃんは帰宅部のはずで、いつもは授業が終わったらサッサと帰ってるし。
「何だとは失礼だな」
「後ろからいきなり声かけられたらビックリするもん!」
「確かにそうだな。悪かった」
「と言うかたっちゃんは何でこんな時間まで残ってるの?」
「図書室で本借りて読んでたんだ」
たっちゃんは意外と読書家で、たっちゃんの部屋の隣の部屋は本のための部屋になってるくらい。
と言ってもその在庫の半分以上はたっちゃんのご両親のものらしいけど。
「で、美紀はこんなところで何をして・・・なるほど、傘でも忘れたのか?」
たっちゃんが何故帰ってないのか不思議に思ったのか私を見て、一番痛いところをついてきた。
「うー・・・まさかこんなに早く降るとは思ってなかったからさぁ・・・」
「折り畳みくらいもってこいよ」
「だってかさばるじゃん・・・」
「確かにそうだけどさ」
たっちゃんが苦笑しながら鞄に手を入れて傘を捜し始めた。
たっちゃんはなんでか知らないけどやたらと準備がいいんだけど、多分一人暮らしって言うのもあるんだろうなぁ。
「じゃあコレ使え」
そう言いながら、たっちゃんは鞄から取り出した折り畳み傘を私に渡してきた。
でも、たっちゃんは折り畳み傘以外の傘をもってない。
「え?でもたっちゃんの傘じゃ」
「いいから使え。お前病み上がりだろうが」
「そうだけど、たっちゃんはどうす「んじゃな」ええっ!?」
たっちゃんは私の言葉を遮って『んじゃな』とだけ言って雨の中に飛び出していった。
「ちょっと待ってよ!たっちゃん!風邪引いちゃうよ!戻ってこーい!」
大声で叫んだけれどたっちゃんにその言葉は伝わらず、小さくなっていくたっちゃんの後ろ姿。
その姿はだんだん小さくなっていき、最後には見えなくなっちゃった。
不器用な優しさにときめく私、けれどその自分のことを省みない行動に怒る私。
二つの感情が入り混じって、わけが分からなくなる。
「もう・・・まったく・・・」
そんな言葉が冬の雨に溶けていった。
35辰則×美紀 ある冬の雨の日(2/8) ◆POBrm2R/G2 :2009/01/20(火) 00:56:25 ID:bl/VNNkl

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

―――たしかあの後、たっちゃんは見事に風邪を引いて、終業式直前まで休んでたんだっけ。
たしかあの時はたっちゃんをやたらと怒ったなぁ。今となってはいい思い出だけどね。
気付くと授業はもう終了間際。でも先生はアレからまったく板書してないみたいだけど、授業する気あるのかな?

SHR終了後、直ぐにたっちゃんのところに駆け寄って傘のことを聞く。
「ね、たっちゃん。傘持ってきてる?」
「ん?ああ、今日は折り畳みじゃないのを持ってきてるが・・・もしかして忘れたのか?」
「えへへ♪だから、一緒に帰ろ?」
「まったく。わかったよ」
付き合い始めてから、たっちゃんは今まで以上に優しくなった。
いままでだったら『じゃあコレ使えよ』って言いながら折り畳み傘を出すはずなんだけど、私の言いたいことが何も言わずに分かったみたい。
オーラも何だか柔らかくなったからか、女子からはすこぶる評判がいい。
・・・彼女としてはビミョーなんですけど。

さっきのやり取りを聞いていた市川君と金沢君がたっちゃんをからかっている、というか羨んでる?
『いいよね、彼女と相合傘って』とか『帰った後は部屋でしっぽりかっ!しっぽりなのかっ!?』なんて声が聞こえる。
金沢君の言葉に恥ずかしくなって俯いていると、私の後ろから聞き覚えのある声がした。
「男の子ってホントデリカシー無いよねぇ」
「瑞希は言えた義理じゃないけど、確かに女の子の前で『しっぽり』なんて使ってるようじゃね」
「と言うか『しっぽり』って古くない?」
「あははははっ!確かにっ!」
瑞希と紀子が口を揃えて男子を非難し、湊は二人に挟まれ苦笑を浮かべている。
男子二人は瑞希と紀子の『口撃』に何も言い返せないみたい。
「佐々木も木津さんも容赦ないな」
「ミキティをいじめる輩は私たちの敵だからねぇ」
「友達がいいように言われてるのを黙って見過ごせないよ」
瑞希も紀子も、後ろで頷いている湊も本当にいい友達だと思う。
「三人ともありがとな。じゃあ美紀、行くか」
「うんっ」
たっちゃんに促され、後ろについていく私。
「手間賃はいいから、今度たっつーの手料理ご馳走してねー♪」
後ろから瑞希がちゃっかり手間賃の請求をしてきたけど、たっちゃんは後ろを振り向かず手をひらひらとさせて答えている。
・・・というかさっきの『いい友達』は撤回したほうがいいのかな?
36辰則×美紀 ある冬の雨の日(3/8) ◆POBrm2R/G2 :2009/01/20(火) 00:56:51 ID:bl/VNNkl
三学期入ってからは一緒に登下校してるんだけど、やっぱり学校が近いのもあって腕にくっつくのはちょっと恥ずかしいから、せいぜい手を繋ぐことくらいしかしてない。
「寒いね」
「だな。この分なら雪になるかもな」
「そうなんだ。そういえばさ、たっちゃんが『雪になる』って言った日って、本当に雪になるんだよね」
「そうだっけ?」
「そうだよ。まるで魔法の言葉みたいに、必ず降るんだから」
小学校の頃からずっとたっちゃんのこと見てきたんだから、忘れるはずが無い。
その言葉が毎年楽しみで、聞けない年があると寂しかった記憶だって残ってるくらいだもん。
「ま、降ってくれりゃいいんだけどな。嘘つきにならないで済むし」
「あははっ♪そのくらいの嘘ならキスで許してあげるよ?」
「・・・じゃあなおさら降らないで欲しくなるんだけどな」
そんなこと言うなんて、たっちゃんは相変わらず悪い人だ。
「・・・でも、キスなら、いつでもしてほしいんだけどな・・・?」
たっちゃんの耳に届くかどうか分からないくらい小さな声でつぶやいたら、たっちゃんが顔真っ赤にして視線を逸らしちゃった。
あとちょっとで家に着く、という辺りで、たっちゃんの左肩が異常なほど濡れてるのに気付いた。
「たっちゃん!?左肩すっごく濡れちゃってるじゃん!」
「あ?ああ、そうみたいだな。気付かなかった」
多分学校出てからずっとそうだったんだろう。左手は硬く握られて、とっても寒そう。
「もう家に着くから私は着替えてからたっちゃんの家に行くね!たっちゃんは帰ったらちゃんとお風呂に入ること!」
そう言い放って私は傘から抜け出し、家に向かう。後ろから聞こえる、
「あっ!おい美紀!濡れちまうだろ!待てって!」
って言う声は聞こえない振りをして。

あの後すぐに着替えてたっちゃんの家に向かい、たっちゃんを探す。
「たっちゃーん?お風呂入ってるのー?」
返答は無し。お風呂場から水の音が聞こえるから、多分入ったんだろう。よしよし。
お風呂場に近づき、ドア越しにたっちゃんに話しかける。
「たっちゃーん!ちゃんとシャワー浴びてるのー!?」
「ああ、大丈夫だから居間で待っててくれー」
うん、声も元気だし大丈夫そうだね。それを確認した私は、素直にリビングに向かう。

37辰則×美紀 ある冬の雨の日(4/8) ◆POBrm2R/G2 :2009/01/20(火) 00:57:19 ID:bl/VNNkl
たっちゃんはあの後割とすぐに出てきた。カラス並みだよ、まったくもう。
今はソファの上でたっちゃんに寄りかかりながら話をしている。
「ねぇたっちゃん。一年前のこんな寒い雨の日のこと、覚えてる?」
「ん?・・・いや、なんかあったっけ?」
授業中に思い出したことを話すと、たっちゃんも思い出したのかバツの悪そうな顔をしだした。
「ああ・・・そんなこともあったな」
「あの時は心配したんだからねー!」
「ああ、悪かった」
「・・・もう、あんな無茶はしちゃだめだよ?」
そういって見上げると、たっちゃんは優しくキスをしてきた。まるで『もうしないよ』と言わんばかりに、優しいキス。
『初めて』の日以来、キスだけでこんなにエッチな気分にならなかったから、今日は久しぶりにしたくなっちゃった。
そんな気分になった私は、ベロをたっちゃんの口に侵入させる。たっちゃんが一瞬ピクッて反応したけど、そんなことお構い無しにどんどん進んでいく。
「んふぅ・・・ん〜・・・」
たっちゃんのベロに触れて理性が溶けていく。エッチな気分がどんどん高まっていく。
目がトロンとして、とってもエッチな顔をしてると思う。でも、それが今日の気分。
「んはぁ・・・どうしたんだ、突然?」
「・・・うん、今日はね、したくなっちゃった」
こんなエッチな子になっちゃったのはたっちゃんのせいなんだから、責任取ってよね?そう思っていると、
「・・・ダメだ。アレないし」
「持ってるよ、って言ったら?」
私の言葉が意外だったのか、顔を真っ赤にして『いや、でも』とか呟いてる。
本当にかわいいんだから♪罪作りな私の彼氏さん。
「う・そ♪でも、今度の休みまでに買っておいてね?」
そんなエッチなおねだりを、抱きつきながら耳元で呟く。今度は耳まで真っ赤になっちゃった。
「・・・スケベ」
「えへへっ♪たっちゃんがこんな気分にさせちゃうんだからね?」
「・・・ったく」
「ふふ♪たっちゃんが好きだから、だからね?」
「分かってるよ」
目を逸らしながら、つり上がる口の端が隠せてない不器用なたっちゃんが好きで好きでたまらない。
「俺も、美紀のこと、好きだよ」
「じゃ、思いっきり抱きしめて?」
たっちゃんの膝の上にまたがって、顔を胸にうずめるとたっちゃんが思いっきり抱きしめてくれる。
ちょっと苦しいけど、たっちゃんの匂いが私を落ち着かせてくれる。ちょっと浮ついてた心が落ち着く。

「ふにゅー・・・」
ちょっと隙間の空いていたココロにたっちゃんの優しさが注がれて、とっても満たされる。
もう抱きしめられて何分経ったんだろう?とっても眠たくなってきちゃった。このまま眠りたいな、なんて思っていたら、たっちゃんからナイスな提案が飛んできた。
「美紀、眠いのか?」
「うんー・・・♪」
「なら布団で寝なさいな」
「抱っこでつれてってぇ・・・♪」
「はいはい」
苦笑気味に答えたたっちゃんだけど、お姫様抱っこで部屋まで運んでくれた。
「えへへぇ・・・♪お姫様だっこされちゃったぁ・・・♪」
「ゆっくり寝てな。夕飯出来たら起こすから」
「うん・・・♪」
頭を撫でられ、ゆっくりと意識が落ちていく。
心地よいまどろみの中、暖かい何かが唇に触れたのをきっかけに、完全に夢の世界へと落ちていった。
38辰則×美紀 ある冬の雨の日(5/8) ◆POBrm2R/G2 :2009/01/20(火) 00:57:47 ID:bl/VNNkl
ちょっとしたお昼寝(たっちゃん曰く1時間半は寝てたみたい)を終えて、今日もたっちゃんのおうちで晩御飯。
ママにさっき電話でたっちゃんの家でご飯食べるって伝えたら『まるで芸能人の半同棲みたいな感じね♪』なんて茶化された。

そしてお風呂タイムは・・・
「な、なぁ美紀。本当に入るのか?」
「たっちゃんはホント、ヘタレだよね」
「うぐっ、で、でもなぁ」
「たっちゃんは私と入るの、嫌?」
「嫌じゃないんだが、恥ずかしいからなぁ」
「それは私もおんなじだよ?だから、ね?」
「・・・わかった、わかりましたよ」
何とか一緒に入ることに成功した。ちょっと拗ねくれたたっちゃんがかわいい♪
たっちゃんには先に入ってもらって、私はお風呂に入る準備を・・・

「・・・で、なぜ美紀は水着なんだ?」
「や、やっぱり裸を見せるのはちょっと恥ずかしいって言うか・・・」
私の水着はちょっと恥ずかしいけど、去年の夏に使ったビキニタイプの水着。
だから、ちょっと胸がきつくて困るんだけど・・・
「・・・最初のとき電気付けたままでいいとか言ったのはどこのどちらさんでしたっけ?」
「あ、アレとコレは別だよぉ!」
「・・・はぁ」
あの時はテンションおかしかったしなぁ・・・
「とりあえず体洗ってあげるから、座って座って!」
「・・・はぁ・・・」
さっきより深いため息。そんなにならなくてもいいじゃん。そんなたっちゃんにはお仕置きです!
最初こそ普通にボディタオルに液体石鹸をつけて洗ってたんだけど・・・
「み、美紀?な、何をやってるんだ?」
「ん?背中洗ってるだけだけど?」
「な、何でだ?」
「私の胸だけど?」
そう、私のおっぱいを当てて洗ってるの。とは言えビキニをつけてるから直接じゃあないんだけどね。
「な、何をして「気持ちよくない?」う、あ、いや、気持ちいいのは気持ちいいんだが・・・」
「じゃあ続けるね♪」
「ああ・・・じゃなくて!なんでこんなことするんだ!?」
「さっきしたいって言ったよね?あれ、冗談じゃないんだよ?そうじゃなきゃ、こんなことしないよ」
たっちゃんは私に対して優しすぎるきらいがある。それをやめて欲しいから、こんなことしちゃうんだ。
「・・・」
「だから、ね?本当の私を知って欲しいの。ダメ・・・?」
「・・・止まらなくなるが、いいのか?」
「止めないで。本当のたっちゃんを、見せて?」
「・・・じゃあ、そのまま洗い続けてくれ。ただ、ビキニのトップは外してくれよ?」
突然のたっちゃんの要求に、思わず照れてしまう。
「・・・たっちゃんのスケベ」
「美紀が要求したんだろ?俺は素肌で洗って欲しいんだけどな」
意地悪く、でも優しそうな笑みでそんなこと言われたら、断れないよ。
「・・・もう、外すけどこっち見ないでよ?」
「見ないよ」
たっちゃんは苦笑しながら、こっちを見ないと約束してくれた。その余裕がちょっと悔しい。
39辰則×美紀 ある冬の雨の日(6/8) ◆POBrm2R/G2 :2009/01/20(火) 00:58:15 ID:bl/VNNkl
「ふぅ・・・ん・・・どう・・・?」
「ん、気持ちいいよ。美紀の柔らかいのが当たってな」
「なん、か、私だけ、ずるい」
「・・・そう言われましても」
たっちゃんには私の言いたいことが分かったのだろう、苦笑と敬語で返された。
悔しくて、手を動かしてたっちゃんの乳首を触ったりつねったりしてみる。
「っ!?ちょ、美紀!」
「へへぇ♪たっちゃんも、ココ、感じるんだ?」
「あっ!?ちょ、やめ、ううっ!」
「やめたげないもん♪」
たっちゃんは背中で私の乳首を愛撫し、私は指先でたっちゃんの乳首を愛撫する。
たっちゃんを責めるのはなんだか楽しい。快感に対する反応は素直なのに、口では嫌がってる。
たっちゃんも結構天邪鬼だよね。今風に言うとツンデレ?
そんなことを考えながら、左手はそのままに、右手をたっちゃんの下腹部に移動させると、明らかに興奮している象徴がそこにはあった。
「ねぇたっちゃん。口ではイヤイヤ言ってるのに、どうしてこうなっちゃうの?」
「や、それは、その・・・好きな人がこんなにエロかったら、普通こんな風になるだろっ」
拗ねた感じでたっちゃんが答える。好きな人の困惑した顔って、なんでこんなに可愛いんだろう。
もっと困らせたくって、それ以上にエッチな顔が見たくて、右手でボディソープを泡立ててたっちゃんのおちんちんを擦る。
「うああっ!美紀!と、止めてく、あああっ!」
「やだ♪たっちゃんのエッチな顔、もっと見せて?」
「っ!〜〜〜〜〜ぁっ!」
たっちゃんが困惑の中、快楽に飲まれていくのが手に取るように分かって、ぞくぞくしちゃう。
私ってこんなにSだったっけ?冷静な部分がそう言ってくるけど、無視無視。
「はぁっ!うぅぅっ!〜〜〜〜〜!!!」
たっちゃんは私の責めに耐えながらも、口からはかわいらしいあえぎ声を上げることしか出来ないみたい。
私から与えられる刺激に、体もおちんちんもビクビクと震えてる。
「たっちゃん、気持ちいいの?」
「は、あ、う、うんっ!うんっ!」
たっちゃんが子供みたいに『うん』なんて言うから、かわいくってかわいくって仕方がない。
と言うか、やっぱりたっちゃんが欲しくて仕方がない。
「えへへぇ♪おててはこれでおしまい♪とりあえず泡は流すね?」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
たっちゃんは今の状態があんまりよく理解できてないみたい。
とろんと目尻が下がりきって、まるで10kmくらい走った位、息が荒い。
40辰則×美紀 ある冬の雨の日(7/8) ◆POBrm2R/G2 :2009/01/20(火) 00:58:40 ID:bl/VNNkl
「ねぇ、たっちゃん。もう私、我慢できないから、入れちゃうね?」
「え・・・?」
たっちゃんの上にまたがり、左手でパンツのクロッチ部分をずらしながら、右手でたっちゃんのおちんちんを入り口に導く。
私の中は何もしていないのに、既にたっちゃんを受け入れる準備が出来ていた。
多分、たっちゃんの声とか反応を見聞きしてる間に、興奮しちゃったんだろうけど。
そのまま腰を落とし、たっちゃんを私の中に迎え入れる。
「あああああっ!!!」
「うああああっ!!!」
私とたっちゃんの声が広めの浴室に響き渡る。
二回目だからまだちょっと痛いんだけど、ゴムが無い分痛みが若干少ないみたい。ほんの少しだけど、気持ちいいのもあるし。
「っ!?美紀!ゴムしてないだろっ!?」
たっちゃんがようやっと現状把握できたのか、一回目より刺激が強かったからか、焦って抜こうとする。
私はたっちゃんに思いっきりしがみついて、離れられないようにする。
「ちょ!美紀!離れろ!!」
「やだ。離れないもん」
「やだじゃない!妊娠したらどうすんだ!」
「大丈夫だもん!」
「な、何が大丈夫なんだよ!?」
私だってちゃんと考えてる。ただの獣じゃないもん。
たっちゃんはいつも先を見据えて行動とかしてるんだろうけど、その優しさが、今は逆にツライ。
「ゴムをすることだけが避妊じゃないんだよ?私だってちゃんと考えてるから・・・だから、今は、ね?」
「・・・分かった。美紀のその言葉、信じるからな?」
たっちゃんの目が、私の心を透かすように見つめてくる。
だから、私も『信じて』って気持ちを込めて、たっちゃんを見つめる。
「・・・最後は抜くからな」
「はーい♪」
たっちゃんもそこまでしか引くことが出来なかったんだろう。最大限の譲歩をしてくれた。
だから、私は最愛の人の気持ちに答えてあげないと、ね。

ぱちゅんぱちゅんと、体がぶつかり合う音が浴室に響く。そしてとってもエッチな言葉も、一緒にこだまする。
「ああっ!やぁ!いいよぉ!」
「うああっ!美紀の中、吸い付いてくるっ!」
「たっちゃんのが奥まで来てるのぉ!熱いのぉ!」
たっちゃんの大きくて硬いのが私の奥にぶつかってきて、鈍い痛みに顔をゆがめてしまう。
でも、そのさらに奥から、沸いてくるような気持ちよさが私の頭の中を滅茶苦茶にする。
「たっちゃん!奥いいよぉ!」
「美紀の中、きつくてヌルヌルで、おかしくなりそうだっ!」
たっちゃんの口からとってもエッチな言葉が出てきて、それがさらに私の頭をかき乱す。
「やぁ!そんなのやだぁ!」
「やだって、言う割には、ぎゅうぎゅう締め付けてるじゃんか!」
「あああああっ!」
吹っ切れたたっちゃんは、意外と私よりエッチかも。私のツボを確実に突いてくる。
「たっちゃん、たっちゃん!」
腰に力が入らなくなっちゃった私は、たっちゃんに抱きついてキスを求める。
「ん・・・んふっ・・・んんんっ・・・は、ぁ・・・」
上と下、両方の口から、水っぽい音が響きわたり、私の思考をどんどん奪っていく。
たっちゃんも下半身から来る欲求命令には逆らえないのか、私の中を犯してくる。
「たっちゃんっ!気持ちいいよぉ!もっと、もっとしてぇ!」
「美紀っ!美紀ぃっ!」
私はたっちゃんを、たっちゃんは私を思いっきり抱きしめて、繋がってる部分を一生懸命意識する。
たっちゃんと一つになりたくて、たっちゃんと溶け合いたくて。それでも、限界は割と近くにあって。
「美紀っ!ヤバイ!もう、イキそう、だっ!」
「私も!イっちゃいそう!もっと奥、突いてぇ!」
「わかっ、たっ!」
「んんんぁぁぁああああっ!」
今までよりも早く、でも確実に私の奥まで入ってきて、一気に限界に押し上げられる。
「だめだめっ!イク!イっちゃう〜〜〜!」
「俺もっ、イク・・・!」
飛ばされた瞬間に、本当に体がふわって浮いたせいでいつもより遠くまで飛ばされちゃう。
なんか下のほうでビクビクと震えてるのがあるんだけど、それが何なのかすら分からなくなっちゃうほど。
41辰則×美紀 ある冬の雨の日(8/8) ◆POBrm2R/G2 :2009/01/20(火) 00:59:02 ID:bl/VNNkl
「水着汚しちゃってごめんな」
「ううん。私こそ、外に出すって約束忘れててごめんね」
「あれはちょっとやばかったけど、まぁ外に出せたから大丈夫」
お風呂から出て、さっきの反省会。お互いに変なスイッチが入っちゃったしね。
「て言うか、たっちゃんも意外とエッチだったね?」
「男はそういうもんだよ。と言うか美紀があんなにスケベだと思わなかったぞ?」
「えへへ♪たっちゃんが好きだからだもん♪」
開き直ったように返答すると、どう返答していいのか分からないのか、たっちゃんが目を逸らした。
私もたっちゃんの視線を追うように、窓の外を見る。
「「あ」」
私とたっちゃんの声が重なる。視線の先にはふわふわと舞い降りる冬の使者。
「たっちゃんの予想、当たっちゃったね」
「ああ、そうだな」
「じゃあキスできないな」
帰り道のことを思い出したのか、たっちゃんがそうつぶやく。
「じゃ、予想を見事当てたたっちゃんには私からのご褒美です♪」
そういいながら、私の唇をたっちゃんの頬に当てる。
「・・・」
意外なご褒美に照れたのか、黙り込んじゃった。
でも、耳が真っ赤なのは隠せてないよ、たっちゃん?

「寒くなりそうだね」
「・・・ああ」
「だから、今日もいっぱいくっ付いて、寝てもいい?」
「・・・喜んで」
ぶっきらぼうだけど、優しい彼氏さん。ずっと離さないから、ね?
42 ◆POBrm2R/G2 :2009/01/20(火) 00:59:27 ID:bl/VNNkl
以上で終了。
お粗末さまでした。
43名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 01:11:58 ID:gN4DRC3+
くそつまんねー。
44名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 02:30:16 ID:dFih2f1v


だれか塩くれ
口ン中が甘くっていけねえや
45名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 09:40:56 ID:wKYU7Ezo
GJ
個人的に湊の逆襲にひっそり期待してたりする
46名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 21:12:43 ID:PN1eR7X6
おおっ、ぐっじょぶ!
47名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 21:15:07 ID:PN1eR7X6
スマン、あげちまった……
48名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 21:48:39 ID:aONTkQPW
GJだおおおおおおおお
49名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 02:03:57 ID:whihk+Ik
ガンガンやっちゃうエロエロな話(エロメイン)と、エロいシーンもあるよ的な話(ストーリーメイン)とどっちがこのスレに合ってるんだろうか

エロパロ板だし前者だろうか
50名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 03:56:40 ID:+EEgaEBp
そんなの個人差が有るし、どっちも需要あるから遠慮無く書いてくれ
51名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 10:48:17 ID:B5awSwwm
>>49
エロ無しSSもあるんだから気にしなくていいんじゃないの?
まぁエロ無しなら注意書きくらいは欲しいが。
52名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 14:51:04 ID:6FEbsXQp
幼馴染という属性はスレタイにもあるような距離感の表現が要諦だと思うわけで、
そこをすっ飛ばして一気にエロに行っちゃうような展開はやや不向きかもしれぬ。

これはただの私見だから、「俺はやるんだ!」と思えば遠慮なくレッツチャレンジ。
53名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 14:54:40 ID:y9EzJNr2
ツンデレ幼馴染と素直デレな幼馴染、はたまた甘々な幼馴染、どれが好き?
54名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 15:14:14 ID:B5awSwwm
>>53
個人的には素直デレが好きだな。
55名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 15:23:07 ID:XX5q8ClY
ツンデレでも素直デレでも尼尼でもいいけど、やっぱ漫才ができるくらいの関係がいい
56名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 15:42:55 ID:y9EzJNr2
>>55
そうだねえ、そっからいかに発展させるってのが幼馴染のキモだよなw
57名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 15:44:55 ID:y9EzJNr2
ということで誰か書いてくれええええええ
58名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 15:51:45 ID:+EEgaEBp
もう、アンケ取りみたいなネタフリやめろ
59名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 23:05:35 ID:djdZ3sIg
>ツンデレ幼馴染と素直デレな幼馴染

これが双子設定な話があったのう
60名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 02:03:42 ID:zYf5q6Tk
>>57
なんで自分で書かないんだ?
61名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 07:49:49 ID:4cAdZfsq
自分語りとかネタだけ振ってクレクレとか、最近いろいろとアレですな。

せっかく情熱があるんだから、自分で表現すればいいのに。
62名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 13:03:23 ID:6AeGqYwG
近づきそうで近づけない。
離れそうで離れられない。
63名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 16:03:11 ID:llFH019A
幼なじみが恋しくて、夏
64名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 21:21:46 ID:mM7e5l76
すれ違い→誘惑→流れセクース→大団円
65名無しさん@ピンキー:2009/01/23(金) 23:33:32 ID:TsqgA2z6
>>59
kwsk
66 ◆xZ2R3SX0QQ :2009/01/24(土) 06:06:16 ID:3RTBfwvj

小ネタ投下 エロなしです。
次レスだけです
67惰眠 ◆xZ2R3SX0QQ :2009/01/24(土) 06:07:35 ID:3RTBfwvj



「ねぇ、みっちゃん。何してんの?」

そう言い、上目使いで俺のことを見上げてくる幼馴染の少女、屋島沙希
今日は年初めのテストも無事終了し、自分の部屋で惰眠を貪るはずだったのにっ!
なぜ!?なぜ沙希が俺の部屋にいるんだ!

「聞いてる?」
「…あぁ聞いてるよ。それと何してるかは見ればわかるだろう。
俺は寝てる、いや寝るんだ。」

そうとも、これはテスト前から計画していたことなんだ
沙希なんか放っておけばいい
そう考えた俺は沙希に背中を向け、制服姿のままベッドに寝転がった

「みっちゃ〜ん…私暇なんだよ?」
「…それで?」
「遊んでほs「断る」えぇ〜!?なんでさー」
「俺、今日、寝る、OK?」
「…むぅ」

俺が断ると沙希は拗ねてたようで
俺に背中を向けて服を脱ぎ………



!?


「ささささ沙希!?なぜ服を脱ぐ!」
「えへへ…みっちゃん♪」
「むぉ!?」

沙希は悪戯する少女のような瞳で俺に近づくと
上半身裸のまま俺に抱きついてきた
そして俺の唇に柔らかい感触がしたと思うと沙希の顔が目の前にあって…

何秒そうしてただろうか?
どちらともなくお互い自然に唇を離すと
沙希は頬を染めて言った

「しよ?」
「ったく…しょうがねぇな…」

今日も眠れそうにないな…
そう思いながらもう一度唇を重ね
ベッドへと沙希を押し倒した



・・・・・・・・・・・



そして翌日_
俺は授業中に惰眠を貪ってしまったのは言うまでもない

68名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 12:36:28 ID:Gad6j9GN
>>67
甘アマ幼馴染物大好物だぜwww
GJ!!!!!
69名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 17:56:54 ID:wW08Fr2H
1
 気温は落ち込みを知らず、いつまでもテンションを引きずる熱帯夜。
 少年が脱衣所で服を脱ぎ、戸を開け、広いバスルームを視界に入れると、一匹の蛇が居た。
 浴槽の縁に両手を付いて腰掛け、柔らかく肉付く長い尾で、タイルが不可視になる程に埋め尽くして……

 ナーガ、ラミア、シーサーペント。

 怯えて立ちすくむ、身長が130センチにも満たず、年齢は二桁に満たない子供。
 顔だけを見れば少女にも映る中性的な少年。そんな少年の前で微笑むのは、ナーガ、ラミア、シーサーペント……どれとでも言い表せる生物だった。
 淡いブルーに艶めく長髪と、天然ルビーも道を譲る切れ長のレッドアイズ。見るもの全てに女を意識付ける抜群のプロポーション。
 腰から上だけなら、一糸纏わぬその姿は間違いなく至極。この世の誰よりも美しい。
 しかしそこから下。足の付け根、剥き出しの女性器から下は、全く真逆のグロテスク。
 表面から淫液を滲ませてヌルヌルに濡れ、青黒い全長は十メートルを楽に超える。
 半分は人並み外れた美貌で、半分は人並み外れた醜悪。半人半蛇の蛇神は、細長い舌をダラリと胸元まで垂らして少年に微笑む。
 少年の足は恐怖で動けず、
 少年の瞳は可憐な顔から離せず、
 少年のペニスは太く大きく反り返り、パンパンに膨らんで勝手に射精する準備を整えてしまう。
 鼓動は荒く、呼吸は熱く。例え人間の規格を逸脱していても、蛇は人間の女など比較にならないまでにオスの部分を刺激した。

 蛇は自らに見取れてる少年に気付き、一層に口元を吊り上げると、人差し指を折り曲げて挑発し手招きする。
 肉欲的にひしめき合い、妖しくうねり渦を巻く、蛇尾の海に優しく誘う。
 少年は慌てて逃げようとするが、蛇の先細りになってる尾先は、既に足首へと巻き付いて捕らえていた。
 そして少年が助けを求める為、悲鳴を上げる為に息を吸い込む僅かな間。
 その僅かな間に尾は身体中を這い登り、柔らかくヌメる蛇肉で一瞬にして捕獲してしまう。
 左足を、右足を、左腕を、右腕を、胸部を、腹部を。きゅきゅぅっと締め付けて、もう助からないよ? と少年を諭す。

70名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 17:57:38 ID:wW08Fr2H
ごばーく。すまん……orz
71名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 18:10:33 ID:0Y68CpiV
もう助からないよ? と>>70を罵る
72名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 18:45:42 ID:hI/GL62j
>>70
まいどん
スレチだが蛇女エロいよ蛇女

人外な幼馴染ってアリですか?
73名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 18:49:01 ID:Gad6j9GN
人外って外国人ってこと?もちろんありでしょ。
74名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 21:39:57 ID:9SCZSGA1
いや、人(間)外ってことだろ
75マサユメ:2009/01/24(土) 23:37:15 ID:hnwhjF9I
 ドアが開かれて外の光と一緒に彼女が入ってくる。一歩一歩近づいて、白いドレスがひらひら揺れた。
初めてのはずなのに記憶がたぶる。なんだろう。答えを求めて彼女を見つめる。
 長いすそに少しバランスを崩した、その瞬間閃いた。僕らがまだ同じぐらいの身長の頃、
洗いたてのシーツをみたててテレビのまねごとを、二人だけの式をしたこと。
 夢のような霞む思い出。
 どうしたの、ぼうっとして。
 隣に並んだ彼女のかすかな問いかけに、綺麗だったから、と答える。はにかむ様子に胸がいっぱいになった。


 起きて、また寝てるの。
 強く揺さぶられてまぶたをあけるといつもの彼女がいる。先ほど見た彼女は今までで一番綺麗だったよ、と伝えると、
じゃあ負けないように現実も頑張らなきゃね、と笑う。
 何度でも見たいから、大歓迎だよ、そう言おうと思ったけどこれも夢だと困るから強く抱きしめて確かめた。


fin
76名無しさん@ピンキー:2009/01/25(日) 00:46:08 ID:o70qA4d9
>>72
子供のころ遊んだ子狐が、人間に化けて押しかけ妻ってマンガは読んだ記憶がある
アリだと思うます
77名無しさん@ピンキー:2009/01/25(日) 02:00:45 ID:vhjfLFLd
うあー風邪引いた〜。
優しい幼なじみに看病されたいよう。
あわよくばちゅっちゅまでしたい。
78名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 01:47:21 ID:jMxvDuG6
>>77が不憫すぎるので誰か看病ネタのSS書いてやってくれ
79看病ロマン ◆ga4Z.ynmGk :2009/01/27(火) 03:33:20 ID:Ew3eW+tY
「……とゆー夢を見た」
「人が心配して様子を見にくれば、第一声がそれかい」
 我が幼馴染は眼を醒ますなり、そんな馬鹿なことを熱っぽく語った。実際、先程鳴った電子体温計は38度を示している。これは、いいよダメかも知れない。
「ほ、ほら、幼馴染の女の子が甲斐甲斐しく看病してくれるのは男の子のロマンですよ?」
 此方が呆れてるのに気が付いたのか、わたわたと妙な弁解にならない弁解をしだす。それを聞き流しつつ、オデコに氷嚢をぽいとのせてやる。
「ひゃぅん…!?」
「妙な声を出すな」
「うー…」
 布団からのろのろと腕を出し、位置を調整し、こちらを睨む。
「……ロマンだけじゃ治らんだろ」
「病は気からってゆーし!」
 あぁ言えばこーゆー奴だ…。仕方がない。
 氷嚢を取り上げる。
「? どうし、」
 そして、代わりのものをひとつ落としてやる。
「………!」
「………女の子じゃないからロマンにならないか?」
 口元に残った冷たさだげが妙にくっきりしている。
「………優しい幼馴染の男の子は女の子のロマンだから、許可します」
 どうやら俺も風邪をひいたのかも知れない。顔が熱いのは、きっとそのせいだ。
そーゆーことにしとけ。
80 ◆ga4Z.ynmGk :2009/01/27(火) 03:37:43 ID:Ew3eW+tY
寝付けなかった最中に>>77>>78を読んだので、発作的に書いた
反省は(ry
81名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 08:45:01 ID:qTzgkiMY
>>79
なるほど、でにゃんにゃんしちゃって>>77に続くわけですね、わかります。
82都合のいい幼なじみ:2009/01/27(火) 20:19:18 ID:80L4RW60
 俺には実に都合のいい幼なじみがいる。
 隣家に住む日向紅葉がそうだ。
 柔らかな物腰に虫も殺せないような優しい性格。容姿だっていい。あいにくファッショ
ンには疎いほうであるが、艶やかな髪とシミの無い色白の素肌はむしろ紅葉の清純さ
を表していた。
 まぁ、才色兼備といって申し分ない少女だ。
 俺……村瀬光一との付き合いは長く、多分初めてあったのは病院の新生児室だ。そ
して幼稚園小中高と腐れ縁である。
 昔から世話焼きな性格でよく手料理を作ってもらったし、両親が留守の時は掃除洗
濯もしてもらった。
 紅葉は自他ともに認める『尽くすタイプ』の女の子だった。
 そんな紅葉に、『性欲の処理』をさせるようになったのは少し前のことだった。
 あの日はちょうど俺と紅葉の両親が連れだって旅行に出かけた。あいにく俺達は翌
週定期試験を控えていたので留守番となった……、今思うと両親たちも、そして紅葉も
軽率である。
 そんな状況、普通手を出さないわけがない。
 夕食を摂った後(もちろん、紅葉の手料理だった)、一緒に勉強しようと部屋に誘い込
み、……犯した。
 まぁ、あんなものレイプだったと思う。
 避妊なんて考えなかったし、破瓜で泣く紅葉に俺は容赦なく肉棒を動かしていた。
 翌日が日曜ということで……一日中、エロ本やらAVで見た知識を実践した。調教と
言っても過言ではない。
 元々、大人しい性格であった紅葉はレイプのことを誰に言うでもなく、そのまま表面
上はいつもと変わらない生活を送っている。
 だが、その裏で俺に何度も犯され、性器だけでは飽き足らず口も、尻の穴さえも凌辱
され続けている。
 今ではすっかり俺専用の肉奴隷だ。それでいて今までと変わらないように世話を焼
いてくれるのだから……ほんとに都合の良い幼なじみなのだ。

 そして、俺と紅葉の関係は今日もまた変わらず続いている。
83都合のいい幼なじみ:2009/01/27(火) 20:19:44 ID:80L4RW60
「んちゅ、ん、あぁ、ちゅ、んっ」
 水曜日の朝だった。
 登校までのわずかな時間。俺は自室のベッドに腰掛け、ひざまずかせた紅葉に奉仕
させていた。
 朝からいきり立つ肉棒を紅葉の口に押し込む。紅葉は嫌がるそぶりも見せず懸命に
小さな口で俺のモノを含んでいく。
 どこかうっとりとした表情は紅葉がすでに発情している証だった。度重なる凌辱……
調教の結果である。
 以前は紅葉に起こされるのが朝の日課だったが、今ではそれが性欲処理に変わっ
ている。
「ちゅ、んぅん、ちゅ、どぉれふか?」
 肉棒に何度も唇をこすりつけながら、上目使いに紅葉が聞く。
 俺は答える代わりに無言で紅葉の頭を撫でてやる。そうすると紅葉は嬉しそうに目を
細めるのだ。
「こ、こうくぅん……、んちゅ」
 まるで恋人にするような甘いつぶやき。
 紅葉が俺に好意を抱いているのは知っていた。だが、たまに彼女が誤解しているの
ではないかと思うのだが……俺は彼女の恋人になった覚えはない。
 一度も彼女には好きだ、愛してるだのそんな言葉を言ったことはないのだ。そのとこ
ろを紅葉は理解しているのだろうか?
 だが紅葉は頭を撫でてやったことに気をよくしたのか一層熱をこめて肉棒に奉仕を続
ける。
「ん、んちゅ、はぁ、ああぁ……」
 声の中に切ない響きが混ざる。
 淫乱の幼なじみは舐めているうちに自分でも感じてきたようだ。
 俺の調教の成果があるとはいえ元々の素質もあるだろう。今では紅葉はすっかり一
人前の雌犬だ。
「紅葉、もういいぞ」
 頭を押しのけ口から肉棒を抜く。射精をせず、猛るままのそれを見て紅葉が少し不思
議そうな顔をする。
「紅葉の中に入れてやるよ」
84都合のいい幼なじみ:2009/01/27(火) 20:20:11 ID:80L4RW60
「あ……」
 淫欲にまみれた目で俺を見上げる。いつもの清廉とした紅葉からは考えられない表
情だった。
「後ろ向いてお尻突き出して」
 俺が後背位で紅葉を犯そうと思った理由は単純だ。既に紅葉は制服に着替えてい
る。制服にシワをつけるわけにはいかないからな。
「後ろからするんですか?」
「あぁ、イヤか?」
 俺の言葉に紅葉は首を振る。
「こうくんが、そうしたいなら」
 紅葉は健気にそういうとベッドに手をつき、大きなお尻を突き出した。
「おいおい……」
 紅葉のスカートをまくりあげ、俺は呆れたようにつぶやいた。
 スカートの奥。本来ならば俺専用の肉穴を隠すショーツがあるはずだった。だが、今
の紅葉はその布きれをまとっておらず濡れた性器を晒していた。
「これは……あのその…………朝、こうくんの舐めると濡れちゃいますから……下着
は脱いでおいたんです」
 何が濡れちゃうからだ。そんなこと当たり前のように言って……変態だな。

 バチン

「ひゃぅん!」
 俺はめくれあがったスカートから露出する生尻を叩く。まぁ、もちろんスパンキングな
んてしょっちゅうやっている。紅葉の身体も精神も、すでに俺に叩かれるだけで悦ぶよ
う調教されていた。
「変態」
「あぁ、ごめんなさい、こうくん」
 変態にしたのは俺だから謝られるのはどうかと思うけどな。
85都合のいい幼なじみ:2009/01/27(火) 20:20:48 ID:80L4RW60
「こんな変態じゃ誰とも付き合えないだろうな」
「わ、私はこうくんのモノですからこうくん以外と付き合うなんて」

 ズプッ

「あああああっ!」
 俺は紅葉の言葉を遮り、肉槍で貫いた。まったく、健気な奴だ。俺はまだ紅葉と付き
合ってないんだがな。
 肉棒を挿入すると紅葉の膣壁はまるで歓迎するかのように俺を包んできた。毎日の
ように貫くそこは俺のためにあしらえたように絶妙の快感を与えてくる。
 快感を得ているのは紅葉も同じで歓喜の声をあげ背中をのけ反らせる。軽く達したよ
うだ。
「ああ、ああん、こうくぅん」
 紅葉が腰を動かす。その動きは自らが快感を得るものではなくあくまで俺を感じさせ
るため。何度も教え込んだ調教の成果だ。
「いいぞ」
 肉棒が紅葉の熱さに包まれる。身体全身が紅葉に包まれているような錯覚。股間は
さらに力を強め紅葉の中で膨張する。どうしようも無い熱が身体の奥から沸き上がり、俺も紅葉も自然と息が荒くなっていた。
「こぅくん……」
「……紅葉っ!」
86都合のいい幼なじみ:2009/01/27(火) 20:21:15 ID:80L4RW60
 互いの名を呼ぶ。官能が高まり、俺の頭の中はもう紅葉一色だった。
「ひゃん、こうくぅん」
 動きを変えた俺に紅葉が悲鳴をあげる。気にしない。
 俺は紅葉の動きに任せるのもいいが、俺の衝動がその思いを上回っていた。
 亀頭が抜ける寸前まで腰を引き、たたき付ける。単純な前後運動だけでなく円運動
も織り交ぜ、紅葉の快楽を引き出していく。
「こ、こぅくん、おかし……あっぁ、ああぁ! おかしくな……」
「んっ、紅葉はもう、十分におかしい、だろ!」
「あっ、こうくぅん! さっきから私の弱いところばかりっ!」
 紅葉が調教によって俺の感じさせ方を覚えたように、俺も調教で彼女の感じさせ方
は習熟していた。
「まだまだ」
 俺は紅葉に覆いかぶさり、彼女をベッドの上に倒していく。制服の下から手を突っ込
み、最近大きくなったという双丘を掴む。こちらの下着はまだ健在だったが、構わずず
らし、尖った先端と柔らかな膨らみを弄る。
「ひゃぁ、ああん!」
 二つの性感帯から与えられる刺激に紅葉が悲鳴をあげる。俺の手で思うように鳴く
紅葉に歪んだ充足感に満たされる。
「いい、気持ちいいです、こうくん!」
「はは」
 まったく、こいつは……。
 俺は紅葉の首筋に唇を埋め、証をつける。
 紅葉が俺の従属物だという証だ。
87都合のいい幼なじみ:2009/01/27(火) 20:21:42 ID:80L4RW60
「あぁ、あああ!」
 俺の行為ひとつひとつに紅葉が快感を表す。
 性器をえぐり、乳房を潰し、乳首をつねる。
 どこまでも昇っていきそうな快感もやがて限界は来る。
「あぁ、こうくん、私、私もうイキそうです! こ、こうくん、は」
「あぁ、俺もだ」
 最後に絶頂に達するいつも一緒だった。こればかりは身体の相性とでも言えばいい
のだろうか、最初からそうだった。
「紅葉、膣内に出すぞ」
「は、はいぃ、こぅくんの精液いっぱいいっぱい中出ししてください!」
 普段の清純な顔からは考えられない淫らな顔。淫欲に涙溢れさせ紅葉が叫ぶ。
互いの動きを高めていく。
「こうくんっ、こうくんっ! ああああーーーっ!」
 俺が膣内に精液を吐き出した瞬間、紅葉の背筋が大きく伸びる。小さく震えながら紅
葉は絶頂の余韻に浸っていた。
 力尽きるようにベッドに倒れ込む紅葉。俺も荒い息をつきながら彼女の背中に倒れ
る。
「こぅくん……大好きです」
「あぁ、俺も……好きだよ」
「えっ?」
 失言だった。
 射精の直後で頭が煮えていたのだろう。口から出たのは絶対口にしたくない『本音』
だった。
88都合のいい幼なじみ:2009/01/27(火) 20:22:11 ID:80L4RW60
「何でもない。ただの独り言だ」
 照れ隠しのように俺は紅葉の肌に唇をうめていく。
 好きだ、なんて紅葉相手に言えるわけがない……。
「んっ」
 紅葉は肌に与えられる刺激に小さく声を上げながらも微笑む。
「いや、紅葉さっきの言葉はだな……」
 笑っている紅葉に俺は反論したかった。
 俺は紅葉をレイプしたひどい奴だぞ? 今更好きだなんて……言えるわけないじゃな
いか。だって、そんな資格ないだろ? 紅葉を犯して泣かして……罪悪感持っていた
はずなのに、紅葉が離れていくのがイヤで離れなれないよう調教してる鬼畜だぞ?
「大丈夫です……私はこうくんの気持ち、分かってますから」
「え…………」
 こいつは何を言っているんだか……。
「幼なじみですから……ずっと一緒にいましたから。こうくんが私をどう思ってくれてる
かなんて言われなくても分かります」
「あー」
「初めての時はその、痛かったですけど……やっぱり嬉しかったんですよ」
 肩越しに微笑みながら紅葉は告げる。
 あー、くそっ。つまり俺が紅葉に感じてる思いとか後ろめたさとか、全部お見通しと。
俺のことなんか全部分かると……。
 ほんと都合のいい幼なじみだな。
「ひゃん、こ、こうくん!」
 紅葉をひっくり返し今度は正面から繋がる。繋がりっぱなしだった二人の場所。一度
吐き出した後も俺のものは紅葉に刺激されてすぐに硬さを戻してきた。
「て、照れ隠しに犯すなんて……」
「うるさいっ」
 ほんとにお見通しだな。
 だったらそんなこと考えられないくらい犯してやるさ。
「ひゃん、こ、こうくん……」
「ん」
 俺に向け、差し出される手。俺は紅葉の小さな手を繋ぐ。
「あの……こうくん……」
 紅葉の目が何かを求めていた。
そ りゃ俺だって紅葉とずっと一緒にいたんだ。紅葉が俺を分かるように俺だって紅葉
のことはお見通しだった。
だから、
「ああ」
 紅葉に優しくキスをする。
 恋人同士がするような優しいキスを。
89都合のいい幼なじみ:2009/01/27(火) 20:22:49 ID:80L4RW60





以上になります。
唐突に失礼いたしました。
90名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 20:42:30 ID:jHR2KIWu
>>79
看病ものはほのぼのとしていいなー。GJ!

>>89
いやいや大変オッキさせて頂きました!
91名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 20:51:37 ID:qTzgkiMY
>>89
けしからん!実にけしからん!GJすぐる!
馴れ初めが気になる次第でございます。
92名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 21:09:57 ID:RyD7HX0B
>>79
>>77じゃないけど、おかげでインフルが良くなった気がするぜw

>>89
なんというGJ!!!
それにしても犯すなよw
そんなに好きと言うのが恥ずかしいのう。
93名無しさん@ピンキー:2009/01/28(水) 17:57:47 ID:i97kB4q+
>>89
GJ!!
鬼畜→バカップルの流れが面白かった。
94あおいよる_0:2009/01/29(木) 23:05:01 ID:ud7IqKoe
投下します。
エロなしです。
95あおいよる_1:2009/01/29(木) 23:05:38 ID:ud7IqKoe
「碧生(アオイ)」
 凛とした声音に呼ばれて顔を上げると、僕の座っている位置から三歩向こうに、ほかほかと湯気を立てる色違いのサーモマグを両手にひとつずつ持った夜子がこちらを見下ろしていた。
 黄昏色に染まった室内に浮かび上がるひとつ年下の幼馴染どのは、いくら見慣れていても見あきることがないぐらいきれいだと僕は思う。

 腰までもある長い長い濡れ羽色の髪は、くせやうねりなど一切ないわりに針金のような強固さはなく、さらさらと肩や背に落ちて柔らかく風を受け止める。
 陶器のように白い肌はいっそ無機物のようだし、斜めに落した前髪のしたから覗く大きな黒目がちの両の瞳は、ガラス球みたいだ。
 その上に引かれている整った眉の曲線は、山がくっきりと描かれすぎているせいで、愛想のない彼女を必要以上に勝ち気に見せている。
 その造形に相応しい、形よく上品に上を向いた鼻と、適度な厚さを持った真っ赤なくちびる。
 ふわりと揺れるスカートから延びた白い足。少し赤い膝。細い腰に、折れそうに頼りない二の腕と成長途中の薄い胸。
 夜子はまるで、たったいま絵画から抜け出してきた天使のような出で立ちで、俗世に穢れた僕を見下ろしている。

「コーヒー」
 端的にそれだけを言うと、身を屈めて膝を床に落とす。
 僕はああ、と頷いて、読んでいた本に栞を挟んでそれを受取ろうと手を伸ばした。
 しかし、寸前で夜子がひょい、と差し出したはずのマグを引いてゆるゆると首を左右に振る。
「だめよ、碧生。お礼をきちんと言えない人にはあげられないわ」
 まるで母さんみたいなことを言う。
 苦笑いをこらえながら僕は、神妙な顔で頷いて見せる。
「悪かった。夜子、ありがとう。いただくよ」
 その言葉を聞いた夜子は、満足したように頷いて少しだけ微笑むと、僕のマグを手渡してくれる。

 褐色の液体の表面に、数度息を吹きかけたのちに、少しだけぺろりとやけどしそうに熱いコーヒーを舐める。
 いつの間にか冷えていた身体が、ゆっくりと温もりを取り戻す。こわばった眉間がほぐれるような肉体の弛緩が心地よく、僕は両の瞼を閉じた。

 ぎゅっときつく閉じた瞳を、またゆっくりと開いたら、じっと僕を見つめる夜子の視線と正面からぶつかった。

「碧生」
「なんだ?」
「そろそろ、電気をつけた方がいいんじゃないかしら。また眼が悪くなってしまうわ」
 本の読みすぎで視力が極端に悪い僕の眼を、僕以上に気遣うのが夜子だ。
 僕は何も言わずに立ち上がると、ベッドに膝を立ててカーテンを一気に閉めると、リモコンを操作して部屋の明かりを灯す。

 蛍光灯の人工的な明かりのしたで、夜子の白い肌はますますと白く光る。

「いつの間にコーヒーなんて?」
 夜子から視線を外さないまま、僕は元の位置に戻って再び分厚いハードカバーの単行本を持ち上げる。
「それ、読み終わってしまって。少し疲れたから」
「……へぇ?」
 僕は少しだけ驚いて、片方の眉をあげた。

 読み始めてまだ一時間も経っていないはずなのに、もう読み終えてしまったという夜子の、相変わらずの文字を追うスピードと、
いつもは本を読んだってちっとも疲れるはずはないのに、ためいきとともに零したその言葉が引っかかったからだ。

96あおいよる_2:2009/01/29(木) 23:06:10 ID:ud7IqKoe
 夜子が、顎でテーブルの上の本をしゃくって見せる。
 てらりとした真っ赤なカバー。妙に安っぽい。全然夜子の趣味ではない。

「珍しい。疲れたなんて」
「……ええ、そうね。クラスメイトに借りた流行りの小説なのだけど、ページあたりの文量が少なすぎて目が滑るし、何より必要な情報が読み取れないの。
 横書きも見にくいし、左からページを捲るのってまるで教科書みたいで嫌」
「そう。読む価値はあった?」
「あると思って借りたけど、なかったわ。碧生は何を読んでいるの?」
「量子の宇宙のアリス」
 僕は本を持ち上げて、表紙を夜子に向けた。彼女はその美しい眉間に皺をよせて、怪訝そうな表情で僕を見つめる。
「なあに、それ?」
「量子学入門、かな?」
「好きね、そういうの」
「そういう夜子は、次は何を読む予定?」
「三島由紀夫」
「好きだね」
「好きよ。いけない?」

 はっきりと言いきって夜子は、自分のマグカップに口をつけて一口すすった。
 寒さにその色を失いかけていたくちびるが、すぐに赤く色づいて艶っぽく濡れる。
 とんでもなくいやらしいものを見てしまった僕は、慌てて視線を逸らして話題を探す。
 
 唐突に、三島が好きだと言っていた同級生を思い出した。
 昨日の帰り際に、突然夜子を呼びとめたあとに、すうと目を細めて僕を睨むように見ていたあの男だ。


「岩崎さん、ちょっといいかな」
 校内の狭い図書室は、閉館時刻から五分を過ぎていた。
 委員の当番の帰り支度をすっかりと終えて、ハードカバーの単行本が二冊も入ったせいでずっしりと重くなったかばんを持て余しながら、僕と夜子はゆっくりと振り返る。
 声の主は隣のクラスの図書委員だった。確か野本だったか。
「なんでしょう?」
 相変わらず愛想のない声音で夜子が聞き返す。
「話があるんだけど」
「ええ、お伺いします」
 さあどうぞ、というように居住まいを正して夜子は、野本に向き直った。
 一瞬だけ顔を引きつらせた野本は、すぐにまた爽やかと評すに申し分ない笑顔を浮かべて、口を開く。

「……いや、その、できれば二人で話したいんだ」
 野本はちらりと僕の方へ、また睨むように視線を向けた。
 遠慮をしてくれないか、と目が口ほどに物を言っている。
 別に野本には義理も借りもないけれど、仕方なく僕は空気を読むことにした。

「夜子、僕は先に帰るよ」
「悪いね」
「だめよ」
 野本と夜子が同時に言葉を発する。
 僕は少し驚いて、隣の夜子を見下ろした。
「先輩、そのお話は時間がかかりますか?」
「……いや、すぐに終わるよ」
「よかった。碧生、どこかで待っていてくれない?」
「判った……じゃあ昇降口で」
「ありがとう。すぐに行くわ」

 夜子と野本の見慣れない2ショットに見送られて、僕は図書室を後にした。
 彼女たちがどこで何の話をしたか、その後宣言通りにすぐに昇降口に現れた夜子の口からは何も語られなかった。

97あおいよる_3:2009/01/29(木) 23:06:44 ID:ud7IqKoe
 

「そういえば、野本は何の話だった?」
 お気に入りの三島の文庫を開きかけた夜子が、ああ、と表情を変えずに頷いた。
「碧生と付き合っているのか聞かれたわ」
「そう。夜子はどう返事をしたんだい?」
「付き合っていませんって。そうしたら先輩たら、毎日一緒に帰るのに、ですって」
「ふぅん」
「毎朝一緒に登校をして、毎日一緒に下校をして、帰ったらどちらかの部屋に集まって課題を済ませたら、
 ずっと一緒に違う本を読んでいるだけの、ただの隣に住む幼馴染だと伝えたわ。事実だもの」
「そうだね」

 僕らが周りからなんて呼ばれているか。
 ――本の虫、だ。
 まさしくその通り、僕らは昔から今でも、本ばかり読んでいる。
 何のためにそんなに本を読むのか、と聞かれることがある。その類の質問に対する明確な回答は、今のところ用意はできていない。
 ただ僕も夜子も、本を読むことが好きなだけなのだ。
 ずっとそんな生活をしているせいで、僕にも夜子にも友達が極端に少ない。
 お互いだけが情報を交換できる相手であるので、必然的に一緒にいる時間が長くなる。
 
「それだけ?」
 僕が聞くと、夜子はむっとしたように眉をひそめ僕を見上げた。
「どうしてそれを、今日聞くの? 昨日は何も言わなかったでしょう」
「今日の仕事の間中、野本が僕を睨んでいたからさ」

 当番でもないのに図書室に現れて、何か言いたげな視線で夜子を見つめていたかと思うとその眼で今度は僕を睨んでいた野本。
 それはまさしく逆恨みや八当たりなのだが、夜子にぺこりと会釈をされただけで後はまるで意識も向けてもらえない彼が少々哀れにもなった。

「付き合っていないのなら、そこに自分が入り込む余地があるのかと、聞かれたわ。……つまり先輩は、私のことを好きなのですって」
「夜子はなんて返事をしたの」
「何も。黙っていたら、考えておいてほしいと言われて、それで話はおしまい」
「野本に愛を告白されるほど親しかったっけ?」
「いえ……以前に当番が一緒になったときに、三島が好きだと話しただけよ」

 それだけで野本は夜子に懸想をしたのか。まさか、そんな単純なはずはない。
 夜子が気が付いていないもしくは忘れているだけで、野本が一生懸命に夜子に話しかける姿を僕は幾度か目撃をしている。
 彼女は当たり障りのない笑顔と回答でその応対をしていた。ついでに、極力会話を短く終わらせる努力も。
 つくづく、野本は哀れな男かもしれない。

「どうするつもり?」
「どうしたらいいのかしら? 付き合うってなに、何のこと? 全然判らないわ」
「夜子が野本のこと、好きなのかどうかだろ」
「まずその、好きという感情が判らないの」
「それで昨日から恋愛小説づいているわけか」
 僕は苦笑いを零した。夜子はますます不機嫌になる。

 乱読、という言葉が相応しく僕も夜子も手当たりしだい興味を引かれた本を読む。
 なのに昨日から夜子は、僕でもタイトルを知っているようなベタな恋愛小説ばかりを手にしていたのだ。
 テーブルに置かれた、赤い表紙の借り物もそうだ。

98あおいよる_4:2009/01/29(木) 23:07:16 ID:ud7IqKoe
「そうよ。でも全然だめ。心が揺さぶられる、なんてひどく曖昧な感情を、本以外に抱いたことがないもの。
 ね、碧生は人を好きになったことがある?」
「夜子の言う意味では、ないかもしれないね」
 僕のつまらない返事に、そう、と彼女もつまらなそうにつぶやいた。

 そんな夜子をみて、ちょっとした嫌がらせを僕は思いついてしまった。
 そうやって人の気持ちに鈍感なのは、彼女の短所なのだ。

「夜子、少し試してみようか」
「何を?」
「ここに座って」
 手招きをした僕の方へと膝たちですり寄ってきた夜子は、指示どおりに僕の目の前にぺたんと腰を下ろす。
 手には相変わらず、文庫本を握ったままだ。
 それをひょいと取り上げて、座卓の上に置いてしまう。
 先ほどの軽薄な赤い単行本の上だ。
 夜子は怪訝な顔をしているけれど、何も抗議はしない。
 昔から、なぜか僕の言うことだけは素直に聞くのだ。
 頑固な夜子を持て余した彼女の母親が、僕に諭すようにと頼みに来ることだってしばあしあった。

「夜子」
 すっと夜子の背後に回って、後ろから細い身体を抱きしめた。
 うすっぺらな夜子の身体は、力の加減を間違えたら折れてしまいそうだけど、確かな体温とあまい香りが、作り物ではないと主張をしている。
「な……なぁに?」
「なにか、とくべつな感情が沸きあがったりするかい?」
「そうね……距離が近すぎて、所在がないわ」
 言いながらも夜子はもぞもぞと身をよじらせて、僕の腕から逃れようとする。
「だめだ、じっとしていて」
「え?」
 素早く夜子の左手首を掴むと、残った右手でいっそう強く夜子の柔らかな身体を抱きしめる。
「夜子」
 吐息を吹きかけるように、耳元でささやく。
 夜子の身体が、ビクリと震えた。

 形のいい耳をくちびるでそっとなぞり、耳朶を甘く噛んだ。
「やっ……」
 顔を反らして僕の口から逃れそうとする夜子に、僕は低い声でまたささやく。
「おとなしくして」
 その言葉に催眠にかけられたように、夜子は抵抗をやめた。
 だけどまだ、全身にものすごく力が入っていて、細い両肩が小刻みに震えている。
「あ、碧生……なに?」
 不安げな声音を無視して、僕はくびすじに舌を這わす。
 チャイナカラーの上の柔らかな肉をぺろりと舐めたあとに、くちびるで甘く食む。
 夜子は着るものにさして興味のないから、このシノワズリな服も彼女の母親の趣味だろう。黒い髪と白い肌に、それはよく似合っている。

 細い手首を握った左手の指先が、どくどくと激しい鼓動をキャッチしている。
 拘束だけが目的ではなく、脈拍を確認するためにこの態勢になったのだ。

 舌を這いあがらせて、くちびるのすぐ横に軽くくちづける。もう少しで、キスになってしまうぎりぎりの所に。

「……あ、おい……?」
 掠れた声で、やっと夜子が僕を呼ぶ。
 僕は無言で夜子の黒目がちな瞳を覗き込んだ。
 彼女の心拍数は、どんどんと上昇をしている。

 実はこっちの動悸も洒落にならないぐらい早くなってきているのだが、悟られない無表情を保った。

99あおいよる_5:2009/01/29(木) 23:07:52 ID:ud7IqKoe
 薄く開かれた夜子のくちびるが、かすかに震えてる。
 ――たまらなく触れたい。
 僕は欲望と葛藤をする。
 だけどだめだ。まだだめだ。
 夜子にはまだ早い。恋ってなになんて、言っている彼女には早いのだ。

 やっと本能を押さえつけた僕は、ふ、と息を抜いてなんとか笑った。

「ドキドキした?」
 両目を三回またたかせた夜子の頬が、かっと赤みを増す。

「……からかったのね。――しないわ、ドキドキなんて全然していない」
「そう、じゃあ夜子にはまだ恋なんて早いな」
 むっとした表情で夜子が身を捩る。
 僕は素直に彼女を開放した。

 夜子は痛々しく赤い痕が残った左手をさすりながら、考えるそぶりを見せている。
 少し強く握りすぎてしまったかもしれない。

 何かに思い至ったようで、夜子が僕をちらりと上目づかいににらんだ。
「……うそよ、ドキドキしたわ。心臓が口から飛び出るかと思った」
「そう。僕にときめいているようじゃ、夜子は恋なんてできないよ。
 早く大人になることだね」
 僕の言葉にますますきついまなざしを向けた夜子が、ずるりと身を滑らせて僕から距離を取った。

「……そうやっていつまでも私を子ども扱いしてからかうのね。年なんて一つしか違わないのに」
 拗ねたように頬を膨らませる。そういうところが、子どもなのだ。

「野本にはできるだけ速やかに、はっきりとした回答をするべきだね。生殺しでは彼が可哀そうだから」
「ええ、そうするわ。アドバイスをどうもありがとう」
 儀礼的に感謝を述べると、座卓の上の文庫に手を伸ばしてページをめくる。

 本に向き合う一瞬前に、夜子がぽつりと零した言葉を聞きつけてしまった僕は、胸の内で苦笑をする。

「――碧生の性悪」

 そう、確かに僕は性質が悪い。
 世間一般では僕たちの関係を、付き合っているというと思う。それを夜子に教えてやらないのだから。
 夜子は僕以外の男に興味はないし、僕は彼女以外の女性に魅力を感じない。
 それはたぶん、穏やか過ぎていて判りにくいけれど恋愛感情に他ならないはずだ。
 夜子が自分でそのことに気がつくまで、僕はひたすら知らないふりをする。

「夜子、口が悪いよ」

 聞こえないふりをしているのか、ほんとうに聞こえていないのか、夜子は返事もしない。
 そんな彼女に自然と頬が緩む。こんなに愛しいものはないと、僕は思う。

 夕飯まであと一時間。夜子と過ごせる時間も、同じだけ。
 当て馬にもなってはくれなかった野本の、明日の不幸に少しだけ同情をしながら、僕も再び「量子と宇宙のアリス」に向き合ったのだった。


(おわり)
100名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 00:48:26 ID:iTKvB2Zn
いやいやこれは素晴らしいですよ!
101名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 00:50:24 ID:GDtDL3KP
面白かった。
多少読書センスがあれなのが気になるけど、続きがあるのなら読みたい。
102名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 02:57:36 ID:mQqVYh8c
これはGJ。微妙な距離感がたまらなく綺麗だ
103名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 23:21:17 ID:f9XHu4av
素晴らしいSSです。GJ。
104名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 23:24:34 ID:ZjZ7A4CE
保っ守ですよ

「幼馴染みとは関係ないかませ犬がぽっと出てきてヒロインに告白、けどヒロインはそいつには興味無くて、
結果的には幼馴染みのつがいがそのことをきっかけに仲を深めて終わり」
っていう話の流れの短編はこのスレでもしょっちゅう見かけるけど、
これは書き手さんにとって、書きやすい内容だってことなのかな?
個人的には、そんなこと関係なしにいちゃいちゃぶっこいてもらった方が面白いんだけど、書くのが難しいのかしら
SS書いたこと無いから予測で話して申し訳無い
105名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 23:32:05 ID:cOKpAhJ+
山で盛り上がらないとオチがつきにくいから難しいんじゃないの?
106名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 23:32:32 ID:A5TeIGBw
>>104
まあ人によると思うけど……

ひたすらイチャラブな話は波が起こりにくいので、物語としてはやりにくかったりするのです
でもそういう話大好きな人は多いと思うので、増えてほしいですね
107名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 23:47:42 ID:+uxMwTEF
俺は甘甘なものでも大好きだぜ!
むしろ書いてくれ!
108名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 00:27:53 ID:9v8OqGhg
シリアスも大好物だ!
アリスの人とかまた来てくれないかなぁ。何度も読んでるんだ。
甘いのもエロいのも好きだ。
カレーの人もいつもありがとう。読んでる時の顔は他人にみせらんないぐらいだ。
109名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 01:24:48 ID:a+naISkz
きまりきった形はないんだから妄想をどんどんSSにしてくれると有り難いぜ。
自分は文章力無いから無理ですが。
110名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 01:58:44 ID:8Tj31WcE
>>104
このスレじゃなくてもよく見かける。逆パターンももちろん。
普遍的な王道パターンじゃないか。
111名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 17:26:59 ID:KwuCgP+X
「これまで特に気に留めることなく親友として付き合ってきた相手を、
ふとしたきっかけで異性として意識する」という幼馴染の定番ネタを、
どうやって実現するか、と考えたときに>>104に至りやすいんだろう。

確かに安直とかワンパターンのそしりは免れないかもしれないけど、
この手の距離感の描写あってこその幼馴染だろ、と思う身としては
普通にイチャイチャするだけの話だと逆に物足りなさを覚えそうだ。

とはいえこれも勝手な感想。書き手の方はご自由に書いてください。
112名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 12:45:08 ID:AZaooAhE
まあ俺は幼馴染にあーん♪ってしてもらえればそれでいいんだけどね
113名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 13:08:32 ID:G2rU094y
甘えっこ幼馴染ってのもありだな
114名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 18:33:25 ID:YAiHD+PC
保管庫が見れないYo!
115名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 18:45:59 ID:prpFkN4l
ほらっ!
http://bbgate.froute.jp/pc2m/index.php?_ucb_u=http%3A%2F%2Fred.ribbon.to%2F%7Eeroparo%2Fcontents%2Foriginal.html
見れるじゃない! ばか! あほっ! とんま! でくのぼう! そーろー! おっぱいせいじん! うじむし! ごきぶり! みとこんどりあ!! ごみ! くず! ちんかす!
しねへんたい!!

で、でも……わたしは、あ、あっ、あんたのこと……す、す、すっ、ちゅきっだからっ!!
116名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 18:47:51 ID:G2rU094y
全然見れるぜ!
117名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 17:56:29 ID:sAV9jB8S
今週のジャンプ読んだ奴いる?
118名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 17:59:55 ID:RqnJmry0
>>117
めだかボックスか?
119名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 21:18:16 ID:r9H/z6hc
原作が十傑集の一人、眩惑の西尾維新だからなあ。
あれ、エロありで読んでみたいかも。
120名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 21:26:25 ID:yZ0JQxbK
>>119
西尾維新て十傑集だったんだ……
ジャンプのあれは確かによかった。パーフェクト幼なじみと期待に応える男とで
121名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 01:56:25 ID:DZjqJTJb
誰かあれで書いて欲しいねえ
122名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 11:58:10 ID:3OtylcnB
よし、書こうジャマイカ
123『非情の女帝』前編 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/02/05(木) 17:45:02 ID:3OtylcnB
1
 箱庭学園に入学して一年。生徒会の副会長に就任して一年が経った。
 なんやかんやで、俺の幼馴染みは生徒会長として上手くやってる。
 的確な指摘と、伴う能力に、着いて来るカリスマ性で、半ば神格化した存在感。
 そんな幼馴染みが、最近ヤバイ事に興味を持ち出した。
 発端は一週間も前、二人だけで居た夕暮れの生徒会室、前期の会計作業が終わり、帰る用意を始めた頃。

「善吉。おちん……ペニス、なるモノを見たいのだが」

 余りにも有り得ない言葉に、俺は呼吸すら忘れて体動を止めた。
 生徒会室には夕日が差し込み、一面を赤く染め、栄える彼女はそれとは違う赤で微かに……ほんの微かに、俺だけが分かる赤で頬を染める。
 幼馴染みは長テーブルの向かい側で椅子に座り、俺は鞄を持って入室戸の前。こんな場面で耳に届いた、男性器の名称。
「はっ、ははっ、何言ってんだ生徒会長さん? 早く帰ろうぜ」
 喉は急激に渇き、唾を飲み込んでやっと笑える。聞こえた単語の処理は放棄して、珍しい冗談と捉えて聞き流した。




        『非情の女帝』
 〜こんなに苦しいのならば、愛などいらん!〜




 いつまで経っても掴みきれない、黒神めだか独特のペース。当然二人の距離も縮まらない。
 二人は、いつまで経っても、変わらない、幼馴染み。そう、思ってた。でも……
「んっ、聞こえなかったか? 善吉の、ペニスを、見せてくれと言ったのだ」
 コイツは変わった。言動の意味すら理解できん。
 めだかは席を立ち、目の前まで来ると、俺の鞄を取り上げてテーブルに置く。
 そして再び有り得ない言葉を添えると、俺の頬を包むように両手で挟んだ。
 じんわりと伝わる、柔らかくて暖かな感触。けれどしっかり俺の顔を固定し、目を逸らせなくする。
 二歳の時から惚れ通した、憧れの麗顔は眼前。真っ直ぐに俺を見据えて離さない。
 微かに紅潮した肌はそのままで、真剣に、性器を見せろと言ってるんだ。

124『非情の女帝』前編 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/02/05(木) 17:47:26 ID:3OtylcnB
2
「イヤだね、ギャグだとしても笑えないぜ」
 俺が? めだかに? チンコ見せろって? アホか!
 いや、いずれはそんな関係にムニャムニャ……だけど、これは無いだろ? もうちょいムードが有りゃ、もしかしたら見せてたかも知れんが。
 視線を逸らさず、逸らせず、否定のセリフで幼馴染みの訴えを却下する。
 しかし、
「ふむっ、私を困らせるな善吉。お前の、ペニスを……見せておくれ」
 そんなに俺の言う事を聞いてくれてたら、こんなに苦労はしない訳で。
 今度はしっかりと、赤くぷっくりとした魅力的な唇で、ペ・ニ・スと三度目を紡いだ。
 さすがにイラッと来る。なんだよ、理由も教えられずに見せる訳無いだろうがっ!
「だからな、イヤだっ……」
 断ろうとして、


「 み せ ろ 」


 今度は俺の訴えが却下された。
 めだかが吐き出す命令口調。ガキの頃から身体に刷り込まれた、絶対服従の言葉。
 こう言われて断る術を、俺は未だに知らない。
「ぐっ……ちっ、今回だけだからなっ!!」
 ベルトを外してチャックを開け、手早くズボンを足首まで下げ落とす。
 こんなもんは、ゆっくりしてると逆に恥ずかしい。
「ふふっ、私は随分と好いて貰ってるのだな。何もしてないのに大きくなってるぞ?」
 めだかは俺の頬から手を離すと、その場で膝立ちになり、勃起した陰茎に目線を合わせて微笑む。
 本当、心と身体は別だよなぁ。幾ら拒否しても、好きな女に触れられただけでコレだよ……はははっ。
「うーむ、凄いな。他のペニスを見た事は無いが、善吉のはたくましいと思うぞ。血管が浮き出て、太くて、固そうで、ふうぅっ……みごとに反り返っておる」
 冷静に解説するめだかの吐息は、少し、ほんの少しだけ乱れていた。いやらしく熱を帯び、肩を上下させて呼吸する。
 俺しか気付かないだろう些細な変化。めだかは……興奮してるんだ。
 冷静なフリをして、間近で熱い吐息を吹き掛けて、呼応してビクビク震える陰茎に釘付けになってる。
「男はコレを使ってセックスをするのだろっ? だったら、私のクチを貸してやる。思い切り腰を振って良いぞ。イラマチオ……だったか? 思い切り、イラマチオしろ善吉」
 そして理由も教えられぬまま、めだかは俺の手首を取ると、躊躇(ちゅうちょ)無く自らの頭に乗せたのだった。

125名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 17:50:27 ID:3OtylcnB
※最初に書き忘れましたが、今週号のジャンプに載った『めだかボックス』の二次です。
短くてゴメンね。
次で終わります。
126名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 20:19:25 ID:/ySYaWLG
あおいよるの続きは書いてくれるのかな?
大人の話も読みたいんでコトコのほうもお願いしたいけど
127名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 20:30:22 ID:GmWhspkB
>>125
続きを全裸でまってまーす
128名無しさん@ピンキー:2009/02/07(土) 00:25:40 ID:q7ng5osc
ちょwそこで止めんのかww

全裸で待機
129『非情の女帝』後編 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/02/09(月) 00:34:26 ID:eNEbdBr+
1
「ほらっ、私のクチを女性器に見立ててセックスすれば良いんだ……簡単だろ? なぁに気にするな。私が咳込んでも、嘔吐いても、お前は気にせず動いてくれ」
 めだかは上目で見上げ、小さな口をいっぱいに広げ、手を俺の背中に回して組む。
 つまり、僅かでも腰を前に突き出せば、俺のガチガチはパックンチョされる状態。
 しかもこんな誘い方されたら、誰だって断れねーっつーの!! 断れねーよ、断れねーけど……
「無理すんなよ、めだかちゃん。好きでも無い男にこんな事すんな」
 まだコイツは幼馴染みだから。コイツの中で俺は、信頼できる幼馴染みだから。
 好きな女とできるなんて嬉しいさ。けど、その女が俺を好きじゃありませんでしたってのは、ちょっと悲し過ぎるぜ。
 ならここは、できるならしたいけど、本心はしたいけど、断腸の思いで……引き離す。
 そう決めて、乗せていた手を後ろに滑らせ、めだかの手を解こうとするが、
「おい聞いてんのか? だーかーらー、ぎっ……離せってばよ!」
 両指はガッチリと交差して組まれ、絡まり合って、一向に動かない。
 それだけ、めだかの強い意志が伝わって来る。
「イヤだっ!! 私は気付いたんだ……お前の好意を知っていながら、それを当たり前にして、良い様に使ってた自分の愚かさに」
 クチは相変わらず陰茎の前。目を細めて俯き、溜まり切った考えを漏らす。
 俺は全然気にしてないが……っつか、今までは気付いて無かったのかよっ!?
 まっ、何にせよ、
「それぐらいで愛想尽かしてたら、幼馴染みなんかやってねーよ」
 今更だわな。こっちは分かってて使われてんだから。
「ふふっ、優しいな善吉は……でもな、スキと言う感情がまだ理解できないんだ。お前の好意に、いつ応えれるかもわからんのだよ」

130後編 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/02/09(月) 00:35:31 ID:eNEbdBr+
2
 そんなもん、とっくに覚悟してるっつーの!
「もう十五年も待ってんだ、後十年ぐらいは待ってやるさ」
 だから、安心させる為の保険を。こんな行動に二度と走らせない為に。
 俺の好きな女は、自分を大切にする人で在って欲しいんだ。
 そう思えば、気分だって落ち着いて来る。深い呼吸を一つ、二つ、三つ。
 めだかを見下ろして見詰め、無理をするなと教え諭す。
 俺達はゆっくりでいい。恋をするのは、大人になってからでもいいんだよ。
 でも……
「十年で足りなかったらどうする? だがな、それでも私は、お前に隣へ居て欲しい。だからっ、ぜんきちぃっ……お前の想いを、好意をっ、受け止めさせておくれ?」
 めだかは俺の想像を超えて切羽詰まっていた。
 腕を離すどころか、更に力を篭めて腰を引き寄せる。
「他の女を見るな。私を好きにして良いから、このカラダで……満足してくれ。さぁ、挿れろ善吉っ! えんりょなきゅ、ふぇっくすしろ!!」
 ガラスの覚悟は音を立てて崩れ落ちた。
 こんなにイヤらしく誘惑されたら、雛鳥の様に口を開けセックスしようと、
「でっ、でもさ……」
 好きな女に言われたら、俺は……


「 い れ ろ 」


 ちっ、くしょぉぉぉぉぉっ!!!
 両手をめだかの頭部に置き直し、先端を唇の間にネジ込み、そこからは根元まで、
「もっ、ヤメないからなっ!!」

 ぢゅぷぢゅぷぢゅぶぢゅぶぢゅぶ……

 一息でペニスを差し挿れた。
 狭い咥内を掻き分け、柔らかな頬肉を押し広げ、粘着質な唾液の中を扁桃腺がカリ首に引っ掛かるまで、深く深く杭を打ち込む。
「あ、あ、あっ、あ゙っ……」
 めだかは小刻みに身体を震わせ、目を見開き、それでも頬を上気させたままで、声にならない声を漏らす。
 苦しそうで、けれど繋がれた手は決して離さない。
 まるでそうするのが義務かのように、咽奥まで到達してるペニスを、拙(つたな)く、優しく、一生懸命に、グチュグチュと刺激してくれる。
「うぅっ……めだ、かぁっ」
 とても、気持ち良くしてくれる。
 溶けて無くなってしまいそうな程の情熱的な熱さ。このまま動かなくても射精してしまうだろう。
 でも、めだかは、焦点の合わない虚ろな瞳で俺に訴えてる。批難を浴びせてる。
 咥えままモゴモゴと口を這わせて三字。


『 う ご け 』


 めだかは、自らを性欲の捌け口にしろと言ってるんだ。
 苦しいのに、頑張って、無理をして、小さなクチでいっぱいに頬張る。

131後編 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/02/09(月) 00:36:23 ID:eNEbdBr+
3
 容量が限界を越えて溢れ、唾液がボトボトと胸元に垂れ落ちても、美味しそうに、愛おしそうに、ペニスに吸い付いて離れない。
 こうなったら後はもう……
「動くぞ? できるだけ早く、終わらせるから」
 めだかの望みを叶えるだけ。

 ぢゅる、ぢゅる、ぢゅる……

 吸い込み、搾り取ろうとする力に反抗して、先端を唇の裏側まで引き抜き、

 ぢゅぷんっ!!

 喉の奥、食道の入口へと打ち付ける。
「ぁ、ぁっ、あっ、ぁふぁっ……」
 荒々しく。力任せに。欲望を貪って。
 奥を突く度に響く微かな吐息を聞きながら、優越の征服感に身を浸す。
 だって経緯はどうあれ、あの幼馴染みとセックスしてるんだ。しかも相手から求めて来た。これ以上、心まで高揚する事はきっと無い。
 だったら、今。この時。この瞬間。ここだけの快楽に流されたって良い筈だ!!
「ううっ……めだかぁ、めだかぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 唇から食道まで、抜け出ないギリギリの最長のストロークで、一心不乱に腰を振る。

 ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅっぷ!!

 めだかの中は、本当に気持ちいい。
 引き抜く時はキツく締め付け、押し込む時は優しく吸い付く。舌は裏スジからカリの括れまで舐め回し、俺のピストンに応えて自在に動きを変える。
 俺の為に、俺の好きだって想いを受け止める為に、まともに呼吸できないのを我慢して、ひたすらに射精へ導いてくれてるんだ。
「もっと、はげしゅく、ひろっ……」

 ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅぶっ、ぢゅぶっ、ぢゅぶっぢゅぶっぢゅぶっぢゅぶっ!!

 めだかは、まるで喉の奥が性感帯で有るかのよう。
 一突きごとに身体を震わせながら、ヨダレを口横から零しながら、恍惚とした表情のままで、好きに咥内をなぶらせてる。
 そっか、めだかは喉の奥が感じるのか……なら、もっと気持ち良くしてやるよ。
 一方的じゃなくてホッとした。俺はイキそうだし、めだかも、遠慮無く、イッてくれっ!!
「めだかっ、めだかぁっ! イク、ぞっ……」
 乗せていた両手を寄せてめだかの頭部を前傾させ、口から食道までを真っ直ぐにする。

132後編 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/02/09(月) 00:37:58 ID:eNEbdBr+
4
 そして、
「ふうっ!!」
 唇をこじ開け、頬を押し広げ、小ぶりなノドチンコを擦り上げて、口の中よりも、もっとエロいヒダ壁に包まれた穴……

 ぢゅぶぶぶぶぶぶぶっ!!

 更に狭くキツい穴を、ヌルヌルな肉の突起まで一気にえぐる。
「はへぇっ!!?」
 すると痛いくらいに咽穴は痙攣して締まり出し、尿道を拡張させて、噴き出しそうな精液を通り易くしてしまう。
「ぐっ、力を緩めてくれ! このままだとナカに出しちまうぞ!!」
 我慢なんてできない。このままだと、確実に中へ射精する。
 さすがにそれは苦しませ過ぎ……そう思い、ペニスを引き抜こうとするが、めだかは白目を向き、痙攣しながらも、一層に背中へ回した手で俺を抱き締めるだけ。
 震動するヒダ壁にヌチュヌチュと咀嚼されて、捕らえられて監禁され、射精を強要されてる。
 だけど、そんな事したら、俺はもっとお前を……
「うっ、ぐっ、頼むよっ、めだか……抜かせてくれ、本当に、限界なんだっ!!」
 こんな献身的な奴、これ以上好きになったら、十年なんて堪えられるか? そんな自信ないぞ! きっといつか間違いを起こす。
 だから、俺はっ!!


「 だ せ 」


「めだ、かっ……ぐぎいぃぃぃぃっッ!!?」
 びゅるびゅぅぅぅぅぅっ!! びゅびゅっ! びゅくびゅく!! ドクンドクンドクン……
 空になるまで射精した。
「ふんんんんんっ!!?」
 気持ち良く搾り取ってくれる穴の中に、
 好きな女の口の中に、
 二度と無いかも知れないチャンスを逃さぬ様に、
 逆流して唇の隙間から垂れ落ちるまで、大量の精液を注ぎ込む。
 そこまでしてやっと、めだかの力が抜けた。組まれていた手から、漸く解放される。
「はあぁっ、ゆっくり、引き抜くから……んっ!?」
 奥深くまで呑み込まれていたペニスをズルズル引きずり出すと、めだかは支えが無くなったかの様に、アヒル座りの姿勢に崩れ落ちた。
 ペタンとお尻を着き、口は開けたまま、閉じ切らない咽の奥まで見せ付けて、虚ろのな瞳で俺を見上げてる。
「あっ、あっ、あっ♪ だせ、とはいったが……だれがっ、こんなに、たくひゃん、しゃせーしていいって、いったんら?」
 未だ定期的にビクンと身体を揺らし、舌足らずな声で俺に不満を吐き出す。
「はぁっ、はぁっ、めだかぁっ、凄く……はぁっ、気持ち良かった」
 俺は息を整え、めだかに礼を言い、
「ふふっ、まだっ、おなかのナカで……びゅくびゅく、ゆってるぞ?」
 めだかは人の役に立った事がそんなに喜ばしいのか、今度は満足そうに、自らの腹を両手で撫でた。

133後編 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/02/09(月) 00:38:51 ID:eNEbdBr+
5
「すまんな善吉、みっともない所を見せてしまった」
 後始末を終え、二人並んで夕焼けの帰路を歩く。
「気にすんなよ、俺も似たようなもんだからさ」
 二人でゆっくり、歩幅を揃えて。同じスピードで、ゆっくり、ゆっくり。
 まっ、付き合うってのに進展は無かったけど、当分はこのままで良い。幼馴染み以上、恋人未満の微妙な距離で。
 こっちもゆっくりだ。焦らずに、ゆっくり、ゆっくり、距離を縮めて行く。今日はその自信が付いた。
「おちん……ペニスとのセックスだが、ふふっ、なかなか良かったぞ」
「ははっ、さようですか」
 もう笑い話しになってるが、めだかの顔は赤い。俺もそうだろう。夕日と全く違う紅葉色。

「だから頑張れ」
 唐突に、全文と繋がらない台詞。
 扇を開いて口を隠し、視線だけを俺に向けてる。
「頑張れ善吉っ!」
「はっ?」
 だから何を頑張れと……

「頑張って私を落とせ。頑張って……私を惚れさせておくれ」

 それはまぁ、頑張らにゃならんなー。

134名無しさん@ピンキー:2009/02/09(月) 00:40:36 ID:eNEbdBr+
ageスマンです。
以上。
135名無しさん@ピンキー:2009/02/09(月) 02:12:56 ID:YpbAVXnZ
GJ。めだか→善吉はなんか好きとかの感情を踏み越えた領域にあるよな。

善吉が2歳時点でめだかを好いてるんだが、これをめだかが知ったのはいつなのか。
めだかの目の前で善吉が喋った言葉一発目が「めだかちゃん好き」だったのか、
それとも大きくなってから自白したのかさせられたのか。
136名無しさん@ピンキー:2009/02/09(月) 10:36:36 ID:E5zkbPM/
>>134
赤玉出ちゃいそうです><

>>135
お前、古舘伊知郎だろ
137名無しさん@ピンキー:2009/02/09(月) 23:51:29 ID:E+XA/FGW
めだかが善吉に惚れたらどうなるんだ?
デレ?凄いデレ?クーデレ?
138名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 01:58:26 ID:m6BsOhZ6
素クールスレでは非・素クール認定されてた
139名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 16:30:28 ID:1dWfeJvR
         .|::::::/ ::////⌒⌒ i.:::::ノ
        .|:::::/         |::::|
         |::/.  .ヘ    ヘ.  |::|   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         .⊥|.-(=・).-.(・=)-.|⊥   .| 仮に古舘伊知郎だったとして、 なにが問題なんでしょうね?
        l .!:;  ⌒´.し.`⌒  ;:|. l   | レスの問題ですか?
         ゝ.ヘ         /ィ  _ノ
       __,. -‐ヘ  <ニ二ニ>  /─- __ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  _ -‐ ''"   / !\  ̄ /!\     ゙̄ー- 、
 ハ       /   |ヽ ̄ ̄//  ヽ        ハ
140見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:17:38 ID:wtxORm4t
※注意
厨二設定
退魔師モノ?

NGワードは「◆YSPoMcSqNo」

では投下します。
141見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:18:58 ID:wtxORm4t
ヒュンッ!

道場の石英灯の光を反射し、電光の如く振り下ろされる刀が空気を切り裂く。
打刀を使って形稽古を行っているのは一人の少女だ。
歳は16〜7、上下とも白袴の胴衣を着込み、輝く黒髪はボブカットにまとめられ、白皙の肌に二重の大きな瞳が印象的な整った顔立ちは、さながら日本人形のようにも見える。

その少女が無言で打刀を振り続ける。
静から動へ、動から静への一瞬の切り替え、小柄な体では考えられないスピードで打ち振るわれる技の数々、実戦を模擬した確実に相手の急所を掻き斬らんとする姿は、猫科の猛獣の爪を思わせる。
様々な形を繰り返すこと約十数分、打刀を竹刀へと持ち替え、少女が呼びかける。

「コウちゃん、お相手お願いします」

「応!」

道場の座場で見守っていたコウちゃんと呼ばれた少年が答える。
顔にはあどけなさが残ることから、年の頃は少女と同じくらいに見える。しかし180cmはあろうかという大柄な体躯と、鍛え上げられている体からは、ある種の迫力が醸し出されている。
少年は胴を、面を着け、籠手を嵌めて準備を進めていくのだが、少女は一切の防具を付ける気配がない。
準備を終えた少年は、なんの躊躇いもなく少女に向かい合う。
互いに礼を交わした後、そのまま地稽古という実戦のさながらの稽古が始まる。
142見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:22:06 ID:wtxORm4t
これは夜の小野寺道場では、いつもの光景である。
コウちゃんと呼ばれた少年、小野寺康平はこの小野寺道場の長男として生を受けた。以来、5歳から12年間ずっと剣道を生活の一部として育ってきたのだ。
そして向かい合っている少女、八嶺弥生は小野寺家に隣接する八嶺の屋敷に住む、康平と同い年の少女である。

幼い頃から剣道の英才教育を受け育ってきた康平だが、無防備に竹刀を構える少女、弥生に向き合ってもいささかも気を緩めるような気配を見せない。
それどころか本気で撃ちかかっていくのだった。

「せやぁっ!」
「せいっ!」
「いやあっ!」

裂帛の気合いと共に打ち込まれる剣撃は並大抵のスピードではない。
この少年の持ち合わせた資質と、それに耽溺せずに厳しい練習によって磨かれた技量は、端倪すべからざるものがある。
しかし、凡百の剣士であればあっという間に薙ぎ倒してしまうであろう剣撃も、弥生の体には掠ることもなく避けられ、その度に喉が、手首が、脇腹が弥生の竹刀に斬られていく。そう、打ち込まれるのではなく触れながら流されて、斬られるのだ。

繰り返される打ち合いの中で、足を薙ぎ払われた康平が倒れ込んで大の字にひっくり返る。
「くは〜、だめだ、これで今日は12回斬られた、昨日は9回だったのにな。集中出来なかったかなぁ?」
弥生が構えを解いて倒れ込んでいる康平に礼をする。
「終わる?コウちゃん、今日もありがとうございました」
弥生の礼に、あわてて康平は起きあがり礼を返す。
そうして面を外した顔には苦笑があった。
「しかし、今日はいつもにまして全く歯がたたねぇ」
「そんなことはないよ。踏み込みが早かったし…突きも鋭かった。でも、攻めに比重を置き過ぎだったかな」

弥生の講評に肩を竦め、康平はため息を漏らす。
「相打ち覚悟でやってみたんだ。でも掠りもしないんだもんな、自信なくするよ」
「そんなことない、私は八郎の力があるから…インチキみたいなものだよ」
弥生は自嘲気味に自分に宿る力を評する。
「それにコウちゃんは、本当に強いよ。コウちゃんとの稽古はお務めの時に本当に役立ってるし、本気の稽古出来るのは、コウちゃん相手の時だけだもん」
「あ〜フォローしなくっていいって。幼馴染みがスーパーマンで、それに併せて毎日稽古してりゃいくらかでも強くもなるさ。それでも全然お前には歯が立たないけれど」
「スーパ−マンって…私、女だよ。八郎の力を宿しているだけで、無敵でも不死身でもないんだから」
「はは、すまんすまん」
康平がこんな、軽口を言うのは弥生の前でだけである。普段の…学校での彼は厳めしく無愛想で努力を尊ぶ少年なのだ。
143見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:22:49 ID:wtxORm4t
「そういえば、今日もお務めあったんだろ、午後から帰ったようだし」
「うん…コウちゃん、なんか怒ってる?」
声の響きに厳しいところがあっただろうか。そのニュアンスを弥生は察したようだ。
「いや、別に。それより怪我はしなかったのか?」
「…うん、ちょっとだけ。でももう直るところだよ」
押さえていた康平の語気が鋭くなる。
「ばか、怪我したんなら稽古の前に言う約束だったろ」
「やっぱり、怒ってる…」
「怪我を隠していたことについてだ!お務めについては、俺らには見えなくても、そういうのがあるんだと理解することにしたからな。だけれど、怪我なんかもしてっ!」
「ごめんなさい…」
うなだれる弥生を見て康平は義憤に駆られる。憤りの矛先は、やはり弥生のお務めの方に向かってしまう。
「やっぱり、お務めについても納得は出来ない。重遠おじさんもどうかしてるよ。いくら大事な仕事だからって、弥生の貴重な学校の生活を犠牲にしてまでやらせなければならないことなのか?」
「…お父さんを悪く言わないで…それが八嶺の家のお務めだから」
目に見えて背中を丸めてしょんぼりしていく弥生の様子を見た康平は、我に返ると共にばつの悪そうな顔をして頭を掻いた。
「悪かったよ、今更いってもしょうがないことだったな」
話題を変え、弥生に向けてことさら明るい口調で言い放つ。
「ほら、今日の午後の分のノート写せよ。お前に教えながら俺も復習するから」
「あ、うん、ありがとう。いつもごめんね」
「じゃ、まずお互い着替えてこようぜ。10時に俺の部屋に集合な」
「うんっ!」
144見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:23:21 ID:wtxORm4t
小野寺の母屋にある康平の部屋では、普段着で炬燵に入りながら勉強する二人の姿があった。
「で、ここは「テストに出すぞー」って亀さんが言っていたから、類題も含めてよく覚えておいた方がいいな」
「う、うん…でも亀さん先生って何時もテストに出すって言ってない?」
「まぁそれが生徒のモチベーションをあげると思っているんだろ、でも受験に関わるところは懇切丁寧に解説してくれるし、亀さんはいい先生だと思うぞ」
「ううぅ…でも覚えることが多すぎ…」
弥生は弱音を吐きながらも、ノートを写しながらまじめに類題を解いていく。
お務めのせいで度々学校を休むため弥生の勉強は遅れ気味だが、こうした康平のフォローと努力家の性格からか成績自体は決して悪くはない。
そのおかげで、学校側も弥生の欠課を大目にみている節もあるのだ。
もちろん学校側には家庭の事情と言うことにしているのだが。

康平は弥生の進み具合を横目で見ながら区切りのついたところで一声掛けた。
「どれ、終わったか?それじゃそろそろ休憩入れるか?」
康平の言葉に、弥生は劇的に反応してガバッと身を起こす。
「うんっ!新発売のお菓子出てたの。食べてみようよ」
そういいながら早くも持ってきた紙袋から、水筒とお菓子を取り出す。
「コウちゃんはカップだけお願い」
康平は弥生の準備の良さに呆れつつ、苦笑する。
「急に元気に成りやがって、その水筒の中身はお茶か?じゃマグカップだな、と。で、なになに塩キャラメル黄粉餅…これ、美味いの?」
「新発売だから、食べたこと無いんだ。だからお楽しみなの」

数分後、炬燵に向かい合って座る二人に空間は静寂によって支配されていた。
「…微妙だったな」
「…ん、お茶にもコーヒーにもあわなそうだね」
「いい加減、新発売お菓子ハンター自重しろ」
「コウちゃんは分かってない!次から次へと発売されては消えていく幾百のお菓子、どんな趣向、どんな味なのか、そんなのに試さないままに手に入らなくなったら悔いが残るよ」
「…時々お前が大物なのか馬鹿なのか判断に迷うよ…」
深くため息をつきながら、康平は弥生に気になっていたことを尋ねる。
145見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:23:59 ID:wtxORm4t
「で?今日はどんな奴だったんだ?」
「え?」
「お務めで祓った相手」

弥生の行っているお務めとは、いわゆる破魔の業である。
マスメディアでは、今も昔もオカルトと称するバラエティ番組の延長のようなものが特集を組まれて流されたりしているが、実際のところ今の世の中、霊だ、神だ、祟りだ、と信じる人間がどれだけ居ようか?
科学は迷信を否定し、儀式は迷信と賦され、必要な理も効率化の元に省略されていく。たが、この世は否定すれば丸く収まる事柄でだけで成り立っているわけではないのだ。

ただ、残念ながらと言うべきか、康平にはそのようなものを感じられるような能力は何も持ち合わせていない。ごくごく一般的な人間である。

一瞬のためらいの後、弥生はたどたどしく話し始める。
「…妖、梅ヶ丘の建設途中のマンションを住処にして、もう…人も殺していたの」
康平の頭に、今朝の新聞の記事が浮かんできた。足場の崩落により作業員死亡。
「あ、あぁ、あのやたら事故が多かったっていうあそこか、憑いていたのか」
「ううん、建築のために壊された小さな社の主様が瘴気にあてられて悪霊化、事故を誘発していたらしいの」
「元は神様だったのか、救われない話しだな…」
ついため息が漏れてしまう。
「うん、地鎮祭もやらず、社もただ壊しただけだったみたい。それに怒って悪霊に変化しちゃってて…人を殺す前だったらまだ元に戻すことも出来たかも知れなかったけれど…」

不況のこの時代、少しでも予算を切りつめたい建設会社は、目に見えないものに予算を割くほど余裕はない。現場の人間がどんなに嫌がろうと決断を下すのは現場を知らない人間である。そんな巡る歪みが今回の事件を引き起こしてしまったらしい。

「落ち込むな。弥生のおかげでもう犠牲になる人は居ないんだろ?」
「でも、でもね。土地神様だったんだよ。それを会社は手間を惜しんで、ろくに敬いもせず壊して祟りを起こして関係ない人まで巻き込んで…やるせないよ」
「弥生、お前が気にする事じゃない」
「私、神様も殺しちゃうんだよ。なんて罰当たりな事してると怖くなるんだよ。きっともう私自身まともじゃないんだよ。これからだってこんなのどんどん増えていくとしたら…私、どんな死に方するんだろ…」
弥生は思いの外今日のお務めを引きずっているようだ。康平は何気ない興味で聞いてしまった自分の浅はかさを後悔した。
146見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:24:34 ID:wtxORm4t
康平は弥生の隣へと進んで抱きしめる。
「弥生、弥生!大丈夫だ、落ち着け…うん、お前は優しいんだ、優しすぎるんだ。それがそばで見ていて心配になるんだ」
「コウちゃん…」
抱きしめる腕に力がこもる。弥生も康平の背中に腕を這わせる。
「弥生、絶対に死ぬな。俺のために死ぬな。なに稽古なら、これからも一生つきあってやる」
「コウちゃん…」
「弥生、好きだ」
康平は言い放つと同時に、弥生の唇を自らの唇で塞いだ。ただ押しつけ合うだけの、鼻先がぶつかるような不器用なキス。唇と唇がゆっくりと離れて互いに見つめ合う。

弥生が潤んだ目をしながら掠れた声で言葉を紡ぐ。
「コウちゃん…私も…好き…大好き」
弥生の方から再び押し当てられた康平の唇を、弥生の舌がノックする。康平は急かされるかの如く唇を薄く開いて弥生の舌を迎え入れる。間髪入れずに弥生の舌が侵入し、口腔内を蹂躙する。
「ん、んん…んううん…ン、んううん…んっ」
舌を絡ませながら康平の名を呼び続ける弥生に、康平は抱きしめる腕の力強くして、弥生の舌を、唾液を、音を立てて吸い続けることで答える。
クチュル、クチャ、クチュ…互いの舌が絡み合い、互いの唾液をすする湿った音が部屋に響く。

「…んん…ン、…コウちゃんの口、黄粉の味がする…ン」
「ばか、どうせ言うならもっと甘いこと言えよ」
「んう…ん…黄粉…、甘いんだよ」
再び二人はキスに没頭する。
互いの口腔に侵入した舌は、交尾する蛇のように激しく縺れ合い濡れた舌が絡み合う。
口端からは溢れだした唾液が滴り落ち、荒い息で上下する康平と弥生の胸元を濡らしていく。
147見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:25:08 ID:wtxORm4t
「んん…んううん…ふぅ…ン」
弥生はキスの合間に悩ましげな吐息を漏らし、康平をいっそう高ぶらせていく。
やがて、互いに唇を離す。遠ざかる互いの口元に、唾液の透明な糸が橋を架ける。
「はぁ、はぁ、弥生、脱がすぞ」
康平が荒い息を吐き出しながら、弥生の上着を捲り上げ、首筋を舐めあげる。
「ひあぁっ、コウちゃんっ!」
与えられる快楽に悶えている内に、ブラも外されあっという間に弥生の上半身は裸にされる。

引き締まった弥生の裸体からは、似つかわしくないほど豊かな双乳が曝される。
「あっ…稽古のあと、汗かいたままだから、恥ずかしい…」
「いいよ、弥生の匂い、汗も含めた甘い匂い、嗅ぎたいんだ」
康平は弥生の腕を上げ、脇の下をさらけ出す。
よく手入れされている脇の下にゆっくり口を近づけて、舌を伸ばして舐めあげる。
「や、やだぁ、コウちゃん、コウちゃん、やぁぁっ、そんなところ舐めちゃ駄目ぇ、恥ずかしいっ!」
「ちょっとしょっぱい。それに弥生の匂いがする、嫌な匂いじゃないぞ」
なんの心構えも出来ていなかった所を、舐めあげられる。年頃の少女にとってはとても耐えられる行為ではない。
「駄目…あぁ、駄目ぇ…いやぁ…あ、あふぁ…」
弥生は羞恥心に頭が真っ白になりながらも、背徳的な快楽に飲み込まれていった。

康平の手が弥生の胸に触れてきた。
乳首が疼く。与えられた快楽でびんびんに尖っているのが自分でも分かる。
「ひぃ…ン」
康平の左手で、右胸の乳首を摘まれた瞬間、全身に電流のような快楽が迸った。
そんな弥生の反応に気をよくしたのか、康平は乳首を重点的に攻めてきた。左胸は右手と唇と舌で、右胸は左手で、形が崩れるほど揉まれ、乳首を摘まれ、吸い上げられて、弥生はもう声を抑えることが出来ない。
「あっ、あっ、あぁん、あぁ…やぁ…、そんなに摘まないでぇ…あン…ンあぁ、やはぁっ!」
与えられる快楽に、ショートパンツとショーツに覆われた下腹部が溶け出すように熱い。
カク…カク、カク…カク…カク。
知らず弥生の腰は康平を求めて動き出した。
「弥生、腰、動いてる…」
康平に指摘され、我に返る。恥ずかしさで逃げ出したいくらいだが、女の性が康平に媚びを売る。
「やぁぁ…コウちゃん、もう駄目ぇ…欲しい、欲しいよ…切ないの…」
康平のゴクリという唾を飲み込む音が部屋に響く。
148見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:25:45 ID:wtxORm4t

「弥生…いまいくからっ」
康平は荒々しく上着を脱ぎ捨て、ズボンを下ろし屹立した肉茎を露出させた。そのまま弥生に覆い被さり、腰を持ち上げた弥生のショートパンツとショーツを同時に引き下ろす。
秘裂から溢れる愛液は失禁しているかと思うほどに大量だった。
「コウちゃん、欲しいよ、お願い…ちょうだい」
弥生の媚肉は、内側から押し出されたように淫靡に捲れあがり、ヒクヒクと震える秘裂からは、白く濁った淫汁が溢れているのがはっきり見える。一刻も早く康平の怒張を銜えこみたくて、物欲しそうに蠕動を繰り返している。

「弥生っ!」
濡れた花弁に、康平の熱いモノがあてがわれ、くちゅりと淫らな水音が響いた。
「あ、あぁ…コウちゃ…ぅん」
康平の先端が触れてきたと同時に、弥生は腰を突き上げて康平の怒張を迎え入れた。
「あああっ…あ…あ…、コウ…ちゃん、あ、ああ…入ってる、熱い…よぅ」
弥生が背中を仰け反らせながらヒクヒクと痙攣する。どうやら秘裂が怒張をくわえ込んだ瞬間、弥生は軽く達してしまったようだ。
「弥生、弥生…」
康平が熱に浮かされたように、本能の赴くまま腰を揺すりはじめる。

「ひぅ!あぁっ、ああん、あん、あはぁ、き、気持ちイイよぉ」
潤った女陰が康平の怒張を飲み込んでは吐きだしている。それと共にぐちゅりぐちゅりとよがり汁が互いの股間を濡らし、淫らな水音が響き渡る。
「気持ちイイ、気持ちイイっ!コウちゃん、あぁっ!ひぁっ!いいっ!いいよぉっ!」
「弥生…弥生、弥生の中、天国みたいだ、気持ち良すぎる…っ」
次第に速さを増していく、康平の腰使いは、どんどん深くさらに大きく、弥生の膣壁を擦りつけ、亀頭の先端は子宮を圧迫する。

「あぅっ!ああっ!ふわぁっ!ああんっ!き、キスして、キスしてぇっ!」
弥生が、焦点の定まらない目をしながら、康平の口を求める。康平はいよいよ腰の動きを激しくしながら弥生の求めに応えて口腔を蹂躙する。
「んっ!んんっ!ぬふぅ!んんっ!ぷはっ!コウ…ちゃんっ!好き、好きぃ!」
さんざん突き、抉られた媚肉はすでに絶頂の予感に痙攣を始めながら、康平の肉茎を扱きあげている。
149見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:26:24 ID:wtxORm4t

「コウ…ちゃん、コウちゃんっ!いいっ!イクッ、イクのっ!イッちゃうのぉっ!」
弥生は嫌々をするように髪を振り乱しながら、康平の腰に足を巻き付ける。
康平の子種を一番奥で受け止められるように、グラインドする腰の動きを同調させながら内壁で肉茎を絞り上げる。
「弥生、弥生、俺っ、もう…つっ!」
「ちょうだいっ、コウちゃんをちょうだいっ!ひぃっ!やぁっ、イクッ、イクイク、イッちゃうぅっ!!あーっ、ああーっ、あああああぁー!!」
弥生の膣壁が痙攣と収縮を始めた瞬間、康平は腰を一番奥まで突き入れ射精を始めた。繰り返す快感を弥生の奥へ奥へと突き入れながら、大量の精液を弥生の子宮口へとぶちまける。
口からは涎が無意識に流れ落ち、仰け反っている弥生の体へと垂れていく。

「あ…ひ…、ひ…は…」
弓なりに張りつめていた弥生の体が、不意に崩れ落ちる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
康平は荒い息をしながら弥生の隣に転がる。
じゅるんと音を立てて精液の糸を引きながら肉棒が弥生の淫裂から抜け落ちる。
弥生は未だ絶頂の余韻に体をビクビク震えさせながら、酸素を求めて喘いでいる。
そのまま互いの呼吸がようやく落ちついてきた頃、二人はまたゆっくりと互いの唇を求め合った。
互いの存在を確認するように、互いの愛おしさを確認するように。

「このままここにいたい」
弥生がつぶやく。
「弥生、居てもいいぞ…」
康平が答える。
「あは、ごめんね。無理だよ。明日も学校はあるんだから」
弥生が起きあがる。
「弥生、俺はお前さえよければ…ン」
言いかけた言葉はキスによって塞がれる。
「…ン、コウちゃん、ありがとう。今日も元気貰っちゃった」
弥生が続ける。
「先の事なんて分からない。私は毎日を精一杯生きるだけ。でもね、コウちゃんが幼馴染みで良かった。何時も隣にいてくれて良かった。そしてコウちゃんが私の何よりも大切な人でいてくれて本当に良かった」
康平は本当に言いたい言葉を飲み込んで、弥生に笑顔を向ける。
150見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:26:56 ID:wtxORm4t

「あぁ、お前が嫌だというまでずっと隣にいるからな、それと、いつか必ず1本取ってみせる。覚悟しておけよ」
弥生は康平の言葉を反芻した後、輝くような笑顔で答えた。
「うん、コウちゃん、明日もよろしくね」

弥生の生活には、日常と非日常が渾然と混じり合っている。

康平は母から、「見えているだけの世界が、世界のすべてでは無いの、すっと弥生ちゃんを守ってあげなさいね」と、口癖のように言われ育てられてきた。

弥生は、早くに母を亡くし、そのうえお務めにより家を空けがちな八嶺重遠、つまり弥生の父から頼まれて、康平の小野寺家へ預けられることが多かった。
幼い弥生は、よく何もない方向を見て話しかけたり、制御することを知らない力で子供には為し得ないことを色々していたものだ。当然、同年代の子供たちには気味悪がられ、幼稚園に入る頃にはすっかり友達はいなくなっていたのだった。
そんな弥生を母の言いつけ通り精神的に支えて、すっと守っていたのが康平だった。

正直、弥生の世界は自分には立ち入ることのできない世界だと思っている。
しかし、この少女が持ち合わせた能力のためにもたらされる年齢にも精神にも不相応な重荷を取り除いてやりたい気持ちは膨らんでいく
そんな弥生の、何でもない退屈な、それでいて光り輝く平凡な日常の象徴として、帰ってくる場所に自分はなりたい。
康平はそう思いながら、手を振り帰っていく弥生を見送るのだった。
151見える彼女と見えない彼氏 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/11(水) 19:29:28 ID:wtxORm4t
以上でした。

退魔モノアニメ見てたら急に書きたくなって…。
失礼しました。
152名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 19:59:43 ID:ldRQAFM9
( ;∀;) イイハナシダナー
153名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 22:52:49 ID:ArTCr48R
これ連続ものの第一回なんでしょ?そうでしょ?
悪霊に辱められる弥生ちゃん希望
154名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 23:06:40 ID:FeymQbIv
凌辱とかスレ違いだから。
155名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 23:43:20 ID:rKVAmnJS
愛がある凌辱ならおkだと思う。
でも>>153のはスレ違いだと思う
156名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 23:56:13 ID:FeymQbIv
>>155
ゴメンナサイ、言い方を完全に間違えましたね。その通りです。
157名無しさん@ピンキー:2009/02/12(木) 00:00:06 ID:AVx+lLu6
>>147
良い話しでした。ぐっじょ!
158名無しさん@ピンキー:2009/02/12(木) 03:21:12 ID:4Wq8oWQy
ふあーすげー良かった!
159名無しさん@ピンキー:2009/02/12(木) 06:08:21 ID:Xyi4v4Sv
せめて未経験だったら康平に悪霊が取り憑いて云々なシーンが期待できたのに
160 ◆NVcIiajIyg :2009/02/16(月) 01:27:37 ID:iVwI/mCm
世知辛い世の波が、こんな田舎にも押し寄せてきた。

――つまるところは幼馴染の帰郷である。

夜勤明けでへとへとになり、帰宅している最中に自販機の前でばったりと出会った。
平日の、午前中である。
東京の大手会社で働く彼女がこんなところにいるなどありえなかった。
缶コーヒーを受け取り口から拾い上げ、早々にプルタブを押すと口をつけている。
薄く湯気が立つ甘さたっぷりのホットコーヒー。
道端で飲むとは相も変わらず行儀が悪い。

「……乃理歌さん?」
「和義。久しぶりじゃない」
「どうしたのこんなとこで」
「相変わらず馬鹿ね。ニュース見ていないの?」

くすりと笑うその笑顔は意地悪そうで、彼女らしくないダサいジャージを着込んでいた。
道々帰りながら聞いたところ、この不況下で会社が倒産したそうだ。
俺の会社も食品関連とはいえ町工場、このご時世で笑い事ではない。

「両親が結婚しなさいって煩いんだもの。さっさと次の仕事を見つけてしまえば親の見合いなんて
 断れるんだけれど、このご時世でしょう。もうどうしようもなくって一時帰郷よ」
「へえ」
「他人事ね。お母さん、知り合いに当たりまくって手近な独身探してるんだから、
 あんただって狙われるわよ。和義ならいいかもしれないけど、楽だし」
「俺、尻に叱れるの嫌い。あと乃理歌さん財布の紐緩そうだから結婚したくない」

殴られた。

相変わらずだった。
本当に何年ぶりのゲンコツだろうと思うとやけにおかしく少し不満だ。

同じ町内会で、俺の姉貴分でもあった春原乃理歌さんは、
大学で上京して以来、数えるほどしか帰郷しなかった。
帰郷はしていたのかもしれないがどちらでも構わない。
会っていなかったのなら、帰ってこなかったのと同じだからだ。
わざわざ恋愛関係でもなかった弟分に声をかけに来るようなひとではなかった。
昨年の夏に珍しく裏手の道路で缶コーヒーを飲んでいたのを見かけ、少し立ち話をした程度である。
それだって十年ぶりのことだった。
161 ◆NVcIiajIyg :2009/02/16(月) 01:28:59 ID:iVwI/mCm

「失っ礼ね。これでも結構倹約しているのよ貯金もあるわよ。服だってバーゲンで買ってるし」
「それ分かんねー、倹約じゃないだろ。なんで女の人って毎年服新しくするわけ?
 まだ着れるのに新しく買うこと自体無駄だよ、無駄」

言いながら言葉尻がしぼんだ。
こういうところが今まで付き合った彼女達にはうっとおしく細かい男に映ったのだろうか。
乃理歌さんは俺を見て眼を細めた。
午前中の冬風は乾いて、青空に枯葉を飛ばす。

「相変わらず、和義には呆れるわ」
「うるさいね。どうせ細かい男だと思ってるんだろ」
「頼りになるってことよ。いいじゃない。頑張ってるってことでしょ」

ただ、乃理歌さんは、俺が進学を諦めて働いている理由を知っているので。
その同年代に比べて余裕のない経済状況もきっとおじさんおばさんから聞いているので。
きっとそれで、このとき笑わなかった。
薄茶色の髪はカールがとけかけて、県道を背にふわふわと浮いていた。

当時の俺は年上の乃理歌さんを女性として好きだったわけではない。
中高生にとって近所の姉貴分なんて憧れか実の姉貴並みの扱いかどちらかにしかならない。
乃理歌さんは外面だけはよかったのだが、俺には暴君だったので後者だった。

「ああもう。こっちは寒くて嫌になるわ。マフラーを貸す気ない?」

ああ、ほら今もこうして仕事でへとへとな俺のマフラーを強奪している。
お駄賃なのか何なのか、飲みかけの缶コーヒーを押し付けて。
こんなに温くて甘たるいものが飲めるわけがないだろう。
まったくもって暴君だ。

今でもきっと彼女の本質は変わっておらず、結婚したら苦労をする。

両親のいない俺の家はぼけ始めた祖父だけが残っていて、いずれ介護だの何だのと、結婚相手は苦労が多くなるだろう。
俺自身にも学歴がなく、年収もたいして高くはない。
お買い得なのは姑がいないことくらい、見合い話なんて舞い込んでくることもない。

――だから彼女が俺に行き当たることはおそらくないのだ。

それを残念だと、心のどこかが感じたのは気のせいに違いなかった。

---------------
てな感じで。保守。
162名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 01:30:43 ID:tcE4z+Zv
GJ!
保守だけといわず、続きが読みたいです
163名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 08:59:30 ID:rH4THaMq
なんかキュンキュン来た。
164名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 20:00:46 ID:iQETiWwv
乃理歌と和義
前に投下された話の前日談ですね。

この二人は幸せになってほしいなぁ。
165名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 20:20:43 ID:U+jEF3Mt
なんか見覚えあると思ったら
半年振りなんだ
166名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 21:24:12 ID:lu79VBfQ
早く華麗な彼氏の続きが来ないかとディスプレイの前で
全裸になって待ち続けた僕でしたがとうとう風邪をひきました\(^o^)/
167見える彼氏と見えない彼女 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/17(火) 00:38:26 ID:fqHXJQr5
すいません、投下します。

※注意
厨二設定
エロ分淡泊
野郎会話多め
前作の登場人物出演

NGネームは「◆YSPoMcSqNo」
168見える彼氏と見えない彼女 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/17(火) 00:40:48 ID:fqHXJQr5
「あ〜うっとうしい連中だ」
浅利良介は今日も不景気そうな顔で家を出た。
皆戸高校2年生、人の良さそうな見る者に安心感を与える顔立ちは、黙っていれば美男子の範疇にはいるだろう。だが、今は眉間に皺を寄せ覇気などどこかに置き忘れて来てしまったような様子。標準よりは高めの身長も、がっくり肩を落とした状態ではあまり意味がない。
「肩が重い、首が痛い…」
独り言が虚空に消えていく、別に良介は寝違えたりしたわけではない。

「よーっす。リョウ、何朝っぱらから暗い顔してんの?」
門扉で待っていた少女が無邪気に声を掛ける。
染めたわけでもないのに、光の加減でわずかに茶色がかったショートカットの髪に、形の良い目鼻がバランスよく収まっている小振りの顔、何より快活そうな表情は見る人を惹き付ける。
少女の名前は戸沢絵里、良介と小中高をずっと一緒に過ごしてきたの幼馴染みだ。

「あー、気にしないでくれ、この俺の貴い犠牲でもって、ここら辺の平穏は保たれているんだ。昨日のランニング…頑張りすぎたかな」
見えるだろうか?良介の首に、肩に、纏わり付いている黒い靄が。うねうねと生き物のように蠕動しているモノが。
しかし、絵里は何も気に掛けもしない。
「なに?犠牲って?また訳わかんないこと言って…。それにしてもランニング程度が翌日まで後引いてんの?だっらしなー!」
普段通りの幼馴染みの言動に眉をひそめながら問い返す。
「ああ、なんでもない。ところでですまんが、ちょっと肩のあたり払ってくれないか」
「別にゴミなんか付いてないわよ?」
ぱぱっと、絵里は言われたとおり良介の肩を払う。
絵里には見えないが、良介に纏わり付いていた黒雲のような靄が四散する。

「おー、軽くなった、サンキュ、絵里」
肩を回しながら伸び上がる良介を見て絵里が訝しがる。
「ねー、なんかそれって意味あるわけ?リョウって昔から私に変なことさせるよね」
「気にしないでくれ、でもな、俺、お前が幼馴染みでホントっっっっに良かった」
「ば、ばーか、朝っぱらから何言ってんのよ。頭膿んでんじゃない?」
顔を赤くした絵里がつっけんどんな返答を返す。
いつも通り、これが浅利良介と戸沢絵里の光景であった。

浅利良介は、無意識に世の中の負の気「澱」を引き寄せてしまう、いわゆる霊媒体質というやつだ。「澱」は密度が濃くなれば、そこに悪意が芽生え魑魅魍魎と化してしまう。
小さい時から人には見えないモノが視え、人知れず苦労も背負い込んできた。なんで自分ばかりこんな目にと、自暴自棄になりかけたこともあった。
しかし、そのような状況であっても心が潰されることもなく、今までやってこられたのは、なんと言っても幼馴染みである戸沢絵里の力に依るところが大きい。
絵里自体には霊感は全くない。当然の事ながら良介に視えているものは見ることも感じることも出来ない。しかし、絵里は無意識のうちに発する清浄なる気をもって、「澱」が明確な形を為す前に浄化してしまうのだ。
すなわち、良介がこの町の掃きだめのように集まった「澱」を引き寄せ、それが形作られる前に絵里が浄化する。
このコンビネーションでこの街は比較定期平穏に保たれているのであった。
169見える彼氏と見えない彼女 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/17(火) 00:41:38 ID:fqHXJQr5
そうして、二人並んで学校へと歩いていく。朝練の時間には遅く、一般生徒が通うにはやや早くといったスポット的に通学生の少ない時間帯。
「さて、もうちょっと急ぐか」
良介の言葉に絵里が頷く。
「うん、実は1時間目の数学の課題、やってきてないんだよね。良介は?」
「分かってて聞いているだろう?この時間で急ぐなんて提案している俺がやってきている訳ないじゃん」
「自慢げに言うな!」
絵里のジト目を軽く受け流す。
「それじゃ互いに持つべき者は友、の諺通り親友の待つ学校へ急ぐとするかっ…て、もう駆けだしてる!?」
「リョウー、おいてくよー」
「薄情な、待て、待てって!」
二人は連れだって冬晴れの通学路を走り出した。

「はよーっ!」「はよーっす」
「あ、エリちゃん、おはよう、それと良介君もおはよう」
絵里の親友、二人よりに先に教室に来ていた八嶺弥生が挨拶を返す。
知り合ったのは、高校に入ってからではあるが、1年生の時から同じクラスで、絵里とは一番仲がいい。
「良かった、いた〜!ねえねぇ弥生、昨日の数学の課題やった…って、昨日、弥生午後から帰ったんだっけーっ!やぱい、ピンチ!」
「あ、コウちゃ…康平君に教えて貰ったからやってきたよ」
自己完結に陥りそうななる絵里の言葉を、うまい具合に引き取って弥生が答える。
「流石弥生、頼りになる幼馴染みがいるのは羨ましい!うちのコレとは大違い。お願いっ!見せてっ!今日当たるのっ!」
コレとはなんだよ、と言う良介の抗議は無論、空中に霧散した。
「いいけれど、テストにも出るところだって。きちんとやんなきゃ駄目だよ」
「あっははは〜、ま、まぁ部活でしごかれて家かえってご飯食べてお風呂入ったら寝ちゃったっていうか、その…」
しどろもどろの言い訳を続ける絵里の前に、数学のノートが差し出される。
「はい、これ」
「へへぇ、持つべき者はしっかり者の親友だねぇ」
大仰に平伏している絵里の後ろで良介が問う。
「ところで俺の心の友の康平は?」
良介の親友は小野寺康平、同じく高校に入ってからの付き合いだ。剣術道場の息子でまじめを絵に描いたような人物だが、なぜか良介と相性がいいのか、学校内では一緒に連んでいる。
「まだ朝練から戻ってきていないよ、もしかして課題、良介君も?」
「へへぇ、持つべき者はしっかり者の親友の彼女だねぇ、ってことで俺にも見せて」
「か、彼女って、朝から何言って…」
あれだけベタベタしてて、彼女じゃないなんて言い訳が通るのだろうか?良介も絵里も心の中でつっこみを入れつつ、やるべき事を優先することにした。
「八嶺、照れない照れない、わざわざ部活も無いのに康平と一緒に来てるんだろ。ほら絵里、もうちょっと詰めてくれ」
あいている隣の席のいすを拝借して絵里を押しやる。
「あんたもズーズーしいわね」
「お前にいわれたくねーよ」
一人赤くなっている弥生をよそに、絵里も良介も課題のノートを写し始める。

「ふぅ…終わった」
「おかげで助かった。ありがとうな、八嶺」
ほぼ同時にノートを写し終えた良介と絵里が一息ついていると、頭の上から声がした。
「なんだ、また課題写してたのか?」
鍛え抜かれた長身の男、小野寺康平が3人を見おろしていた。
「あ、康平君」「よー、親友」
「おはよう、良介、戸沢。さ、もうすぐホームルーム始まるぞ」
共通の友人である康平に促されて二人とも仮初めの席を立つ。

と、そこで良介は康平に向き直る。
「あぁ、ところで康平、あとで折り入って相談したいことがあるんだが」
その声にいつにない真剣な響きが含まれているのを感じ取る。
「ん?じゃ昼休みでいいか?」
「あぁ、昼飯奢るから…って、お前は弁当だっけ?」
「いや、今日は持ってきていない、ありがたく奢って貰うことにするよ」
そういったところで担任の先生が入ってきた。
170見える彼氏と見えない彼女 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/17(火) 00:42:16 ID:fqHXJQr5

―――― 昼休み。
人気の無いところがいい、ということで購買のパンを買って道場で昼食を食べる良介と康平の姿がある。
「で、なんだ?人気のないところで相談したい内容って?」
「あのな、真剣に聞きたいことがあるんだ。答えてくれないか?」
「へぇ、お前がそんな顔するのって珍しいな、いいよ、なんだよ聞きたい事って?」
小野寺康平はウーロン茶のペットボトルをグイッとあおる。

「あのな、お前八嶺とどこまで進んでる?」
ぶはぁ、と康平はウーロン茶を盛大に吹き出していた。
「ななな、何言っているんだ。おおお、お前、そんなことっ!」
普段から冷静沈着で通している男からは考えられないような態度で取り乱す。
「落ち着いてくれよ。俺にとっては死活問題に関わる情報なんだ」
「俺たちがどう付き合おうが、お前の生死には関係ないだろっ!」
この男がこれほどまでに取り乱すなんてめずらしーなーと思いながらも、表情は真面目なまま続ける。
「いや、実はそれが大ありでな。絵里の奴、前にもいったと思うけれど、俺の霊媒体質を無意識に祓ってくれるんだ」
「お前…あれ本当だったのか?」
まぁ、こんな突拍子もない話、信じろったって無理な話だったけれどな。そう思いながらも良介が続ける。
「こんな嘘つかねぇよ。でもな、八嶺もそういう体質だろ?」
康平の顔が一転して真面目な顔になる。
「分かるのか?」
「あぁ、八嶺の側に行くと、憑き物がササッといなくなるんだ。絵里よりもよっぽど強力だな」
「ふぅん…」
「でさ、この清めの体質ってやっぱ処女じゃないと効かないのかなと思ってさ」

再び、何かを吹き出す康平。横目で見ながら良介は話を続ける。
「話進まねぇから、とりあえず落ち着いて最後まで言わせろ。お前達すげー仲いいだろ。だけれどお前は真面目を絵に描いたような堅物だ。八嶺とはやっぱり清い交際のままなのか?」
「ぐ…」
こいつはアホか、と康平は思う。どこの世界に、交際相手との関係の進み具合を真顔で話せる奴がいるだろうか?
そんな康平の気持ちも知らずに、良介は続ける。
「まさかこんな事、八嶺に聞くわけにもいかないだろ。セクハラだし」
当たり前だ、と康平ががなり立てる。
「で、実際のところどうなんだ?」
「う…」
沈黙…良介は合点がいったように話を持っていく。
「答えられないって事は、それなりに進んでるって訳だな。いいんだな?」
「く…」
否定したら、弥生への想いの裏切りになるんだろうか?康平は真剣に悩む。
「いやー、そーかそーか、お前が融通の利かない堅物でなくって嬉しいよ」
「ぐぅ…」
満面笑みを浮かべた良介が友を祝福する。
「いや、目出度い目出度い。八嶺もあんなにお前に惚れてるのに、生殺し状態じゃ可哀想だとつねづね思っててな」
「な、生殺しってなんだよっ!」
良介は、真っ赤になって突っかかってくる康平を軽くあしらいながら話を続ける。
171見える彼氏と見えない彼女 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/17(火) 00:42:54 ID:fqHXJQr5

「じゃ、話題を変えて。のろけ話に聞こえるかもしれんが、この前絵里から告られたんだ」
「ほぅ、お前達付き合っていた訳じゃなかったのか?」
「はっきりとした意思表示はお互い何となく避けてきたんだ…と思う。お前も覚えがあるだろ、この関係を壊したくないって気持ちが」
「…」
康平は押し黙る。十分覚えがあるらしい。
間をおいて良介が話を続ける。
「でだ、俺ももちろん絵里のことは好きなんだ。ただな、健全な男子としてはもっと先に進みたいんだよ」
「おい…ひとつ聞いていいか?」
康平が低い声で問いかける。
「もし戸沢と関係を持ったら祓えなくなるとか、お前そんな目でしか戸沢のこと思っていないのか?」
答え次第では、こいつをぶん殴ってでもやろうという怒気を滲ませてる。
そんな気配に気がつかない良平は答える。この男もそれなりに真剣だったのだ。
「とんでもない、ただ絵里の力がなくなったら、余計な苦労を絵里に掛けることになるだろ、だとしたら進路を神主とか寺の住職とかにして修行しなければならないかなと思ってな」
「は?」
全く想定していない良介の答えに康平の目が点になる。
「そろそろ進路調査の時期だろ。俺は入れる大学に入って、サラリーマンにでもなって一生静かに暮らせればそれでいいんだ。だけれどこの霊媒体質が直らないんじゃ、絵里にも理不尽な苦労をかけることになる」
呆けた顔をしたままの康平を前に、良介は続ける。
「惚れた弱みもあるんで別れるなんて考えられない。そんなら俺が修行して自己開発するしかないだろ」
「それで、寺や神社で修行?」
「あぁ、食っていけるかどうかはわからんけれど、覚悟決めなきゃな」

「は…、ははは…」
気の抜けた康平は知らず笑い始めていた。
「ははっ、ははははっ、あーっははははははっ!」
「なに笑ってんだよ。俺は大まじめだぞ」
「はははっ、はひっ、お、お前、気遣いの方向性まちがってるぞ、絶対。は、はひーっひひ…腹痛ぇ…」
康平の笑いが収まるまで、良介は憮然としていた。何が笑われているのかが心底分からないようだった。
「くく…ふぅ、話は分かった。もしもの時は修業先紹介してやるよ」
ようやく笑いを納めた康平が、良介に向き合って言った。
「ホントか?やっぱ、家が剣術道場だとそういうところにも顔が広いのか?」
「あぁ、安心しておけ。しかし…ぷふっ、くくく…お前、本当に俺なんか足元にも及ばない大物だよ」
「馬鹿にしてるだろ」
「いや、本気の本気で褒めている、がんばれよ」
小野寺康平は、そう励ますと同時にバンッと良介の背中を叩いて道場を出ていった。

172見える彼氏と見えない彼女 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/17(火) 00:43:37 ID:fqHXJQr5

「あ、あのな、今日、親が泊まりがけで出かけけてて、い、いないんだ。め、飯でも作りに来てくれないかな」
「リョウ、噛みまくり」
事前に何度も練習したはずの台詞が上手く言えていないことを、冷静に指摘される。
「はい、かみまみた」
「まだ噛んでる」
電話口からは、絵里のふーっというため息が聞こえる。
「下心が透けてみえるお誘いね、でもいいわ、何か食べたいものある」
「じゃ、カレーライスでも。材料は一緒に買いに行こうぜ。ご飯だけは炊いておくから」
「うん、分かった。じゃまた…そうね、3時半頃に迎えに来て」
「あぁ、それじゃ」
携帯を閉じて通話を終了する。
良介はこの日、絵里に自分のすべてを話すつもりだった。

「なぁ絵里、俺って昔っから体弱かったろ」
スーパーへと向かう道すがら、良介は昔話をする。
「そーいえば、よく休んでたよね。すぐ熱出したりして」
「あれの原因ってな、信じられないかも知れないが、霊の仕業なんだ」
「はぁ?」
突拍子もない台詞に絵里は目を丸くする。
「小さい頃を思い出して見ろよ。俺、よく誰もいないところに話しかけたりしてただろ」
「ちょっとリョウ、大丈夫?熱でもあるの?それとも、なんかの宗教に填ったりしてるわけ?」
自分の額と良介の額に手を当てて、熱を計る絵里。

良介は黙って額にあてられたてを払い、交差点へと進んでいく。
「ここで2週間前に事故があった」
道脇に供えられている花束に目を落とす。
「小学生の女の子が轢かれて…死んでいる」
「リョウ、その話し笑えない」
「ああ、笑い事じゃないからな。でな、この子は自分が死んでることに気が付いていないんだ、放っておくと澱みに取り込まれて悪霊化してしまう」
そういうと良介はその場にしゃがみ込み虚空に向けて話しかけた。
「君、ここにいつまでもいると怖いお化けがやってくるよ…うん、うん、…大丈夫、このお姉ちゃんに、頭撫でて貰えれば、行くべきところが分かるから」
「ちょっとリョウ?」
「絵里、ちょっとこっちに来て、ここら辺を撫でて貰えるか」
見えない子供がいるかのように振る舞う良介に、絵里は恐る恐る近づく。
「大丈夫、ここ、そう手を伸ばして…うん、そうだ。君は行くべき道が見えたかな?そう、その光の方向に進んでいけば大丈夫だから、うん、怖くない怖くない」
良平はゆっくりと立ち上がり、夕暮れの空を見送っていた。
「ふぅ、成仏したよ」
「…リョウ、今のマジ?」
「マジ、大マジ。詳しくいうと俺は視えるけれど、祓ったり導いたりとか器用なことは出来ないんだ」
絶句している絵里を前に良介は言葉を続ける。
「でもお前は視えない替わりに、そんな悪いモノを浄化出来る力を持ってる」
「そんな…」

「思い出して見ろよ、変なところで手を振らせたり、いろんなものを撫でさせたりしてたろ」
「…」
いろいろな場面が思い起こされる。
人形を撫でられられたり、枯れ木を叩かされたり。
そのたびに分かったような分からないような理由をつけられて、煙に巻かれていた気がする。
「これが俺の秘密。お前には幾度となく助けられてきたんだ」
「ドッキリとか、じゃ…ないよね」
「残念ながら…な」
173見える彼氏と見えない彼女 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/17(火) 00:44:09 ID:fqHXJQr5
良介も絵里もその後は無言だった。
スーパーでカレーの材料を買っている時も、その帰り道も、良介の家でカレーを作っている時も。

「出来たよ…」
重苦しい空気を払おうとしてか必要以上に良介がはしゃぐ。
「お、そうか。絵里のカレー、俺好きなんだよな、辛い中に甘みとコクがあってたまらねぇ…」
そんな良介と手で制して、絵里が問いかける。
「リョウ、食べる前にひとついい?」
「おう、なんだ?」
瞬間、絵里の右ストレートが良平の左頬にヒットする。派手な音を立てて良介が吹っ飛ぶ。
「なんで今まで黙ってたんだーっ!」
良介は痛みでジンジンする左頬を押さえて目をぱちくりする。流石に殴られるとは思っていなかった。
「リョウ、もっと早く話していたら効率よくできたでしょーっ!そんなにあたしじゃ頼りにならんかぁーっ!勝手に一人で苦しんだりしてたんでしょーっ!」
「いや、別に苦しんだりは…しないこともなかったけれど、お前がいてくれたから…」
答えが気にくわなかったらしい、絵里はさらに怒りの形相で良介に詰め寄る。
「それじゃ、あたしはリョウにとって、ただの便利なお祓い道具かぁーっ!」
「ち、違うぞ、断じて違うぞ。おれはお前がいてくれたから、こんな体質でもグレたりヒネたりしなくて済んでるんだ。お前は俺にとっても救いだったんだよ」
絵里はずかずかと歩み寄り良介の胸ぐら掴みあげる。また殴られる、良介が息を飲んで目を閉じる。
…痛みも衝撃もやってこなかった。
恐る恐る目を開いてみると、絵里が胸ぐらをつかんだまま真っ赤な目をして涙を流していた。

コツンと互いの額が触れあった。
「…リョウの馬鹿、あたしが怖がると思った?離れていくと思った?10年以上付き合いがあって、あたしを信じられなかった?」
「すまん…でも、やっぱり怖かったんだ、こんな秘密…ンッ?」
絵里の唇が良介の口を塞ぐ。
「ん…ン、あたしのファーストキス、馬鹿リョウにあげる」
「絵里…」
「…馬鹿リョウ、不器用だけど、優しいところ、貧乏くじ引いても人助けするようなところ、馬鹿なところ…みんな好きよ、10年以上見てきたんだもの、離れていく訳ない…」
絵里の唇が、再び良介の唇へと押し当てられた。
良介にとっても絵里にとっても2度目のキスだった。互いの唇の柔らかさと熱が伝わってくる。
「んぅ…ん、ん、ぅぅん、ぷはぁ…」
良介も絵里も慣れていないため、舌を入れることもなく、かかった時間もさほど長くはなかった。
「絵里…いいのか?」
「確認しないでよ、おじさんもおばさんもいないこの日に呼び寄せるなんて、始めっからそのつもりだった癖に」
絵里がふふふと笑う。
「あ、あのな絵里、今日、お前を抱きたい」
「うん、いいよ…私もリョウと一つになりたい」
絵里が良介へとしなだれかかってくる。
絵里の感触にドキマギしながらも、良介は決意を話す。
174見える彼氏と見えない彼女 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/17(火) 00:44:47 ID:fqHXJQr5
「も、もし、お前が処女じゃなくなって、お祓いの力が無くなったとしても、俺ずっと何とかしてお前を守るから」
「え、私の力って、これ…処女限定なの?」
ちょっと不安そうな瞳を向ける。
「い、いや、わかんないんだけれど、ほらこういう力ってなんとなく処女限定ってイメージあるだろ?」
「そうね、なんとなく…で、どうやって守ってくれるわけ?」
絵里の肩をつかんで、引きはがすと真っ正面から向き合って熱心に話し始める。
「いや、進路を神主か住職にして修行するよ。修行中は遠距離なるかもしれないけれど、絶対浮気とかしないから!」
「は?」
やはり予期しなかった答えに目が点になる。
「康平の家、なんかそういう方面に顔が広そうだろ。きっと遠距離にならなくていいところも紹介してくれると思うんだ」
「ちょっと…」
「だから、とにかくお前を守り続けるからっ!」
唖然としていた、絵里が吹き出す。
「ぷっ!あははっ!リョウ、そんなこと考えてたの?あはははっ!あははははっ…」
何でみんな笑うんだろ?良介には心底分からない様子だった。
「あははは…はは…、ふう…、うん、いいわ、その時はあたしを守ってね。浮気も絶対だめだからね」
「あ、あぁ、もちろん…」
「ぷっ!…」
目があった途端、絵里はまた吹き出した。

「リョウ、ほっぺた痛そう…腫れてる」
「あぁ、痛いぞ、渾身のイイパンチだったぜ」
「馬鹿…ン、ごめんね」
熱くてジリジリ痛い左頬に絵里が唇を這わす。
チュー、チュ、チュ…
「あ、あ、絵里…」
良介は絵里を抱き寄せる。そのまま絵里の下敷きになる。
「きゃっ」
良介は絵里の頬に手を添えてじっと見つめながら言葉を紡いだ。
「絵里、好きだ。全部好きだ」
「リョウ…うれしい…」
今日3度目のキスが行われる。今度は互いに舌を出し合い絡め合う。最初はおずおずと、徐々に激しく互いの舌を絡ませ、唾液をすすり合う。
「んちゅ…ン、ちゅば、ちゅう…、ちゅる、ぷはぁ…ン、あふぅ…」
良介は躊躇いながら左手を外して、自分に押し当てられている絵里の右胸を触れる。
ぴくりと反応したものの、拒む気配は見せない。良介はいったん手を止めたはしたが、すぐまた動かし、自分と絵里との間に割り込ませた。
「やんっ…」
絵里の掠れた声、身体からも強張りが抜けてきた。
175見える彼氏と見えない彼女 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/17(火) 00:45:30 ID:fqHXJQr5

「絵里、服…脱いでくれないか。俺も脱ぐ…から」
「脱がせて…欲しいんだけどなぁ」
悩ましげな言葉に、良介はゴクリと喉を鳴らした。
「いいんだな?」
「だから聞き返さないでよ…いいんだってば…」
馬乗りにされていた体をずらし、起きあがる。華奢な両肩をつかんで座らせた後、セーターをたぐりあげる。桜色のブラジャーひとつになった上半身の後ろに手を回して、ホックを外す。
小振りな双乳がプルンと目の目で震える。
「絵里、綺麗だ…」
「あっ…ン、恥ずかしい、リョウも脱いで…」
いわれるまでもなく、上着に手を掛けシャツごと脱ぎ剥がす。
そのままジーンズのベルトを外し、先にトランクスひとつになる。
良介の怒張がトランクスに高々とテントを張っていた。
「リョウのこれ、熱い」
絵里が怒張に指を這わせて握りしめる。絵里にされていると思うと今にも爆発してしまいそうな感覚に陥る。振り払うように身じろぎをするとトランクスををも脱いで宣言する。
「絵里、全部…脱がすぞ」

ベルトでウエストを留められたタイトパンツを脱がしていく。ブラジャーとおそろいの桜色をしたショーツが眩しく写る。ショーツに手を掛けゆっくり引きずり下ろす。
「…っ」
良介の視線は即座に無防備になった絵里の股間へ注がれる。
あの絵里の性器が、すぐ近くで息づいている。
(これが絵里の…ここに入っていくのか…)
つい、凝視してしまう。
絵里も興奮しているらしい。
媚肉が触ってもいないのにほころんで、その合わせ目からわずかに視える襞は、赤く充血しつつ蠢いている。襞の奥からは透明な液が分泌され、明かりを受けてぬらぬらと反射している。
一方割れ目の上に生える恥毛は、濃くも薄くもなくスポンジのようにふわっとしていそうだった。

「やぁ…ん、いつまで見てるのよぉ」
羞恥心を刺激され、消え入りそうな声で絵里がなじる。
「触るぞ」
ゆっくり手を差し伸べて、秘所に触る。
「あうっ!」
絵里の悲鳴にとっさに手を引っ込めるも、良介はゴクッと唾を飲み込み改めて秘所を弄りだした。
「あんっ!」
またも絵里の声が高まるも、良介はもう止めない。淫裂は火照りぬめっていた。沿うように指を往復させる。そんな絵里の愛液でぬめる襞をもっと感じたくて、とうとう良介は奥へ指を突き入れた。
「あふっ!ふわぁぁぁっ!」
驚くほどに狭い入り口、本当に自分の陰茎は入るんだろうか?
「あはぁっ、い、痛いよ、でも変なのうっ!」
良介にしがみつきながら絵里が喘ぐ。
淫らな喘ぎは、良介の耳のすぐ脇で発せられ、嫌がおうにも良介を高ぶらせていく。
高ぶりを返すかのように、良介は絵里の襞をひっかき、指を上下させながら左右へ揺らし奥へ奥へと押し込んでいく。
176見える彼氏と見えない彼女 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/17(火) 00:46:14 ID:fqHXJQr5

「はうあっ、あぁぁぁっ、ああん、ああ、ああっ、やだっ駄目っ駄目ぇっ!」
絵里の秘裂は、もはやぱっくり口を拡げて陰液を流している。もはや良介自体指だけでは我慢出来ない。
「はぁ、はぁ、はぁ、絵里、辛かったら言ってくれ」
良介は自分の怒張をつかんで素早くゴムを付けると、口を開けている淫口に押し当てた。
「絵里、初めてを貰うぞ」
「あぁん、リョウ…あたしもリョウの初めてになる…ン…ン、んあぁぁぁぁぁっ!」
絵里の言葉を聞いている途中で、一気にペニスを突き入れた、亀頭が淫裂へとめり込んでいく。熱いうねりに翻弄されすぐにでもイッってしまいそうなる意識を懸命につなぎ止める。
「いっ、痛…、痛いっ、痛ーっ!」
絵里は眉を寄せ、唇を噛み締めて耐えている。
「大丈夫かっ?」
「大丈夫…だい…じょうぶ…だから…続けて、終わりにしないでっ!」
良介は頷いてさらにペニスを突き入れた。やがて先端へ感じていた抵抗が破れる気配と共に一気に根本まで貫通した。
「あぁぁぁぁぁっ!」
絶叫をあげた絵里が、ヒクヒク痙攣をする。
しかし、口端をひくり、ひくりと動かして微笑みかえそうとしている。
「リョウ…痛いよ、凄く痛いよ、でもうれしい…よ、リョウ…好き…」
「絵里、好きだ。俺も好きだ」
「もう、大丈夫だから…動いて、いいよ…」
「なるべく早く…終わらせるから」

良介は慎重に腰を動かす。
「んく…あくぅ!」
痛みが激しいらしい、が、もう良介の腰は止まらなかった。ペニスを包み込む快楽、熱い襞の締め付け、絵里の喘ぎ声、そのすべてが良介の意識を快感で塗りつぶしていく。
ぐちょ、ぐちょ、ぐちょ…
淫らな水音が部屋に響く。
絵里の喘ぎで頭がどうにかなりそうになる。快感がせり上がり極まってくる。
「絵里、絵里、絵里っ!気持ちいい、もう駄目だっ!イク、イクぞっ!」
「あぁぁぁ、リョウ、リョウ、リョウっ!」
びゅるっ、びゅるっ、びゅばばばばばっ!
良介の絶頂が解き放たれる。
「うぉああああああっ」
雄叫びをあげながら、腰を深いところまで差し込んで振動させる。
良介は射精の瞬間、視界が真っ白に塗り潰されるような快感に身を震わせていた。


「痛かった、すっごい痛かった、痛かった」
恨みがましい声で絵里が言う。
「ごめん、おれどうしても我慢出来なくなって…」
「男は獣になるってのは本当だったのね」
絵里がため息をつきながら服を纏っていく。良介は弁解の余地もなく、ただただ身を小さくするしかない。
「絨毯にこんなシミ残して、染み抜きして跡を消しとくこと!」
「へい、おっしゃるとおりに」
洗剤を垂らして必死に絨毯をたたいて染みを取る。それを横目で見ながら絵里が立ち上がる。
「ね、良介、お風呂場借りるね。その間、カレー暖め直しておいて。焦がしたら承知しないわよ」
「サーイエッサー!」
「馬鹿…ね。でも大好き。幸せよ」
「俺も」
身を翻した絵里に良介の言葉は届いたろうか。
とりあえず、この幸せを全力で守りたい、心からそう思う良介であった
177見える彼氏と見えない彼女 ◆YSPoMcSqNo :2009/02/17(火) 00:47:31 ID:fqHXJQr5
以上です。
失礼しました。
178名無しさん@ピンキー:2009/02/17(火) 00:55:07 ID:bcWKZbQf
なんという王道青春ラブコメ…
ストライクゾーンど真ん中なのに脚がすくんで手も足もちんこも出ないぜ
心からGJ
179名無しさん@ピンキー:2009/02/17(火) 02:27:19 ID:XYmraGqQ
いいね。王道はやはりいい。
GJです
180名無しさん@ピンキー:2009/02/17(火) 02:44:55 ID:HiNkEAMz
これは良い幼なじみ。つまりはGJ!
181名無しさん@ピンキー:2009/02/17(火) 08:00:06 ID:hZzytPFC
朝からいいもん見た。GJ!
182名無しさん@ピンキー:2009/02/18(水) 01:00:37 ID:KP8XXW4b
して結局どうなったんだろう
183名無しさん@ピンキー:2009/02/19(木) 23:23:50 ID:/obVe0k1
GJです! でも確かにこの後どうなったのかは知りたいですねぇ。
184名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 00:13:17 ID:hogwmmFi
いい作品が投下されたあとに、実験作を投下してみる

※幼なじみモノなのに幼なじみが出てこないので注意!
185幼なじみが出てこない幼なじみモノ(仮):2009/02/20(金) 00:15:32 ID:hogwmmFi
あーあ、どこかに可愛い幼なじみが落ちてないかなー。
「……お前、いきなり何言ってんだ?」
え?いや、可愛い幼なじみが欲しいなって。
「は?」
僕はね、常々思ってたんだ。
妹は両親が頑張れば作れる。姉は、まぁ義理ならできないこともない。
だけど、幼なじみってのはどーしても運に頼るしかないってね。
「……」
だからこそ幼なじみっていうのは貴重な関係で、
こんなにも人を惹き付けるん……ちょっと、聞いてる?
「誰がお前の与太話なんて聞くか」
……全く、持つものは持たざるものの気持ちをわかろうともしないんだね。
自分がどれだけ恵まれているか、その自覚がない。
「あのなぁ……、例えばだ、仮に幼なじみがいても、そいつが可愛いとは限らないだろ」
まぁそれはそうかもね。でもキミの幼なじみは可愛いじゃないか。
「アイツが?お前、目が腐ってるんじゃねーか?」
……ひどい言い様だね。そんなにダメ?
「一万歩譲ったとしても、アイツが可愛いのは顔だけだな」
んー、そんなに性格悪いとも思わないけどなぁ。
「は、それはアイツを知らないから言えるんだ。アイツの中身はまさしく悪鬼の如しだぞ」
……ふーん。例えば?

「まずアイツは、人の安眠を妨害する」
夜に騒いだりするの?
「ちげーよ、人がせっかくぐっすり寝てるのに、わざわざ叩き起こしやがるのさ」
だから、夜に?
「いや、朝だけど」
……それって、わざわざ起こしてくれてるんじゃないか。
「ぐ……、人の至福の時間を邪魔しやがるんだぞ?」
そのおかげで遅刻しないで済んでるならいいことさ。
186幼なじみが出てこない幼なじみモノ(仮):2009/02/20(金) 00:18:50 ID:hogwmmFi
「……ついでにウチ朝飯も食っていくし」
お、親公認の関係なんだ……うらやましい。
「わけあるか。母さんなんか何かあるたびにオレとアイツを比べるんだ。うっとうしい」
うわー、テンプレ。
「何だよそりゃ。いいか、これだけじゃないぞ」
はぁ、何となく聞くのが嫌になってきたよ。

「だいたい、アイツは四六時中オレについてきやがる」
うん、確かにいつも一緒にいるね。
「そうだよ。朝から人を叩き起こして、学校に行くときもずっと一緒だし」
仲いいよね、本当。
「いちいち『宿題はやったか』とか『成績悪いんだからしっかりやれ』とか言われるんだぞ?」
すごく心配されてるんじゃん。
「お節介ってのはやりすぎるとうざいんだよ。学校でもうるさいし」
まぁ彼女は委員長だし、キミって態度あんまり良くないしね。
「だからっていきなり蹴り入れるヤツがあるかよ」
いきなりじゃなくて、自分がからかってることをお忘れなく。
「う……。い、いやアイツすぐマジになるからおもしろくて」
見てるこっちは別の意味で面白いけどね。
「ほ、ほっとけ!」
まぁそれはさておき。
「おくなよ!……ったく、他にもあるんだぞ?」
まだあるの?
「あぁ、あるな。よく聞け、これはアイツの性格の悪さを表す最たるモノだ」
へー、何なのさ?
「これはひどいぞ……アイツはな、オレの嫌いなモノばかり弁当に入れる」
…………は?
「いや、だからだな。アイツが作る弁当には、必ずピーマンとかニンジンとかそういうオレの嫌いなモノが」
ちょ、ちょっと待って。
「何だよ、人の話は最後まで」
えーと、あのさ。一つ確認するけど。
「なに」
……お弁当、作ってもらってるの?
「あぁ、そうだけど。それがどーした?」
………………。
「……な、何だよ、その恨みがましい目は」
……ごめん、ちょっと彼女にこの話するわ。キミが彼女をどう思ってるか、包み隠さず。
「ちょっ、おま、バカ止めろっ……!あ、雪菜、いや、これには深いわけがぐはぁ!
 が、だからがはっ!、色々と誤解がぐふっ!あるってうぼぁっ?!」

……あー、幼なじみが欲しいなぁ。
187名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 00:19:52 ID:hogwmmFi
以上でござい。うん、なんだこれ

あぁ、幼なじみ欲しいなぁ……
188名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 00:26:12 ID:CvIvQdci
GJ!
話はいいが、「うぼぁっ」のせいで友人の声が某皇帝に脳内返還w
189名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 00:39:27 ID:pY1/e6Ma
GJ!
こういう「お前くん」からは幼馴染みを取り上げて、求める者に配分するべきだと思うんです。

…あぁ幼馴染み欲しいなぁ… ('A`)
190名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 00:52:15 ID:JVnF9is2
せめて自分の子供にはいい思いしてもらいたい
まずは友達に隣同士の一軒屋を購入しないか誘ってみよう。
191名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 02:47:49 ID:pIW2uH34
友達の息子or娘なんてヤダw
何はともあれ>>186GJ!!!!
192名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 03:51:07 ID:ZO3bhGaC
GJ!
その幼馴染を俺に譲ってくれ・・・

>>191
俺はむしろ地元で一緒に育った悪友の息子or娘と結ばせてみたい派
相手が分かってたら、お互いに親父同士で子どもを観察してニヤニヤできるだろ?
193名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 04:38:04 ID:9s007s5J
スレ違い

それは、親が決めた婚約者スレ>192
194名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 09:41:21 ID:+Td8Fzrp
どっちの要素も混じってないか?
父親同士が親友で、その都合上子供同士も仲が良いだけなら許婚でもなんでもないだろうし。
ずっと仲の良い幼馴染みだったのが、父親ズに酒に酔った勢いで
「結婚しちまえw」みたいな事を言われて、何となく相手を意識するようになったり。
195名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 12:48:49 ID:7qoP5xdo
>>193
ところでその「親が決めた婚約者スレ」ってどこにあるんでしょうか?
196名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 23:25:32 ID:JVnF9is2
>>193
探したが見つからない。
どのスレのことでしょうか?
197名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 01:08:06 ID:QoAX6Lxh
親同士が仲良くても特に何もない場合の方が多い気がする
ソースは我が家
198名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 03:33:52 ID:gxxWgsyY
リアルで昔っからずっと付き合ってる幼なじみと結婚てあるのかな。
いるなら見てみたいもんだ。
199名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 09:27:12 ID:M9oAyUuq
探せば、あるんじゃない?
あ、ここでの報告はいらないよ。
200名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 09:57:39 ID:utg7THXk
野球好きの幼馴染民が悶絶したのが、中日山井
201名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 10:40:24 ID:RXzcaBPh
>>200
どこでその話は見れる?
202名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 11:53:50 ID:dgT2vKbj
ググレ
まあ、幼なじみといっても中学じゃなかったかな?
203名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 19:49:35 ID:NjYKPKzu
中学生はなあ
204名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 21:03:42 ID:qxW8/ZjR
山井夫妻は小学生時代の馴染みだよ
中学で嫁が引っ越してるのが若干引っかかるけど
205名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 21:03:55 ID:j+Bet5qd
有名なところだと、イギリスのサッカー選手オーウェン。

リアルな話?だと、こんな感じ。
ttp://moemoe.homeip.net/view.php/14296
ttp://moemoe.homeip.net/view.php/15716
206Sunday:2009/02/21(土) 22:08:02 ID:noVi8qVb
山井が結婚した時、このスレでも記事が貼られたりして少しだけ話題になったな
207名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 01:14:55 ID:C5WBgeBe
そんな山井の大記録を無駄にやばい橋渡ろうとして台無しにした落合は解任されるべきだ。
208名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 01:43:36 ID:k0sBiZm/
今「金剛番長」かいてる鈴木央
ライジングインパクト時代、アシさんが幼馴染で〜みたいな話が単行本にかかれてて
次の漫画の単行本で結婚しました、とか書いてあってびっくりした記憶がある
209名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 05:42:59 ID:y0wX5YoR
有名どころだけど、アイルトン・セナは幼馴染と結婚してたりする。
ただし、世界に羽ばたく段階でブラジル生活を希望した妻と意見の相違で離婚・・・
210名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 16:03:38 ID:egvqvqbB
幼馴染ってシチュエーションは古今東西沢山あるけど
現実ではそんなにないよな・・・。
211名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 18:28:27 ID:6+nJFSA4
田舎では結構見るぜ
でも青春じゃなくて成人式とかで再会してそのままゴールインとか
出戻りで帰ってきて再会して結婚とかが多いな
212名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 23:15:05 ID:p7js44N7
田舎育ちの俺は幼馴染みと成人式で再会したけどほとんど話さないままそれっきり…
中学卒業の頃にケンカ別れして以降会う事もなく年賀状を出しても返って来ない…
つまり現実は甘くないといいたい
ちなみにその子はもう一人の幼馴染みの男の子を好きそうな感じがした
213名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 23:35:04 ID:Fqrx265h
田舎が田中に見えた俺は眼科に行くべきだと思う
214名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 00:35:14 ID:gvEoGywm
散々既出だが、リアル話がしたいなら別の場所でやってくれ。
215名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 01:18:37 ID:MegbEoct
じゃあこれから将来を誓った幼馴染の3姉妹と一緒の布団で寝てくる
216名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 02:27:36 ID:x2kK3e12
というSSを執筆して下さい
217名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 03:28:45 ID:fSW7iFy6
甘えん坊の幼馴染を抱きしめる妄想をしながら寝ようかな。
知らないうちに布団に入ってきて、気が付いたら横で一緒に寝ているというシチュはベタだが最高だ。
218名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 06:24:20 ID:m8cn1Nrv
幼馴染みが少し年下ならなお良し。
219名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 13:15:47 ID:jPMc8VAp
みんな天地人はちゃんと見ているか?
220名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 13:35:16 ID:9mUxqsIb
隣家の同級生は俺の口車に乗り、俺を喜ばせてくれた

小学校時代
髪をストレートにする秘訣は熱いお湯に付けた後乾かさずに寝ることだ
と教えると、次の日、獅子舞みたいな髪形の彼女が登校して来た。

中学時代
弁当のメニューではゆで卵が好きだと言うので
手軽にゆで卵を作る方法としてレンジでチンをすすめた。
次の日に真っ赤な顔をして説教された。

高校時代
何度も古文の活用変化の同じ場所でつまづく俺をみかねた彼女は
急に耳が悪くなった俺のために教室内で何度も大声で「あ、なる」を連呼した。
翌日のテストは俺のほうが点数がよかった。

自分のことのように喜ぶ彼女だったが、クラスの女子がアナルについて教えてからは
しばらく口を利いてくれなくなったが。

今日
俺と苗字を同じくすればいかに幸福になれるかについて彼女に熱弁を振るった。
彼女は今回も俺の口車に乗ってくれた。今、笑顔が直らない。
221名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 14:09:49 ID:ub9gOZFs
>>220
そんな数行で「いいなぁ……」と思える文を書けるあなたにGJを
222名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 14:25:22 ID:LGL3OLjn
>>220
これはうまい
223名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 15:35:54 ID:SX+Q3/x7
コピペだべ。
224名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 15:49:57 ID:SJZGRntU
ラノベ板の幼なじみスレにも以前貼られたコピペ。
225名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 16:16:24 ID:ZvfZq0oh
俺はVIPかアルファルファで見た。
226名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 17:04:59 ID:+jlqEGmf
なんだろう
いま春なのに
晩秋を感じたよ。
227名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 19:18:26 ID:GORxWiqI
コピペというか、まぐまぐVOWに掲載された面白体験談です
228名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 03:19:24 ID:J/xQIBdV
厨房の頃、部活仲間に包茎wと馬鹿にされかなり鬱だった
それこそこの世の終わりと思うくらい落ち込んだ
そんな俺を同級だった嫁が「なにかあったの?」と気遣ってくれて
ビビリながらも相談したら「見せてみなよ。。。///」と言うので
半ばヤケになりつつ御覧頂いたらテレながらもガン視して
最終的にはヌコの如く弄りながら「コレ、私の為にあるんでしょ?
私だけのモノだよね?」と言ってチューしてくれた

あれから25年経っても未だに仮性だけど銭湯でも晒せるし
嫁のお姫様以外味わった事も無いけど幸せだな

今夜も抱き枕にしてくれたらうれしいな
229名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 04:06:22 ID:BYem6uPQ
40近いおっさんが包茎云々ってあんまし問題にならん気も(
230名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 02:08:56 ID:GNq/eEVo
やっぱり同級生よりも、年下の幼馴染みっ娘の方が萌えね?
231名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 02:18:21 ID:ebvPKC8i
体は成熟してるのに無邪気に甘えられて「落ち着け俺ッ!コイツは妹のようなもんなんだぞ!?」ですねわかります
232名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 19:47:04 ID:VftyIg3G
その幼馴染がふざけて

「●●せんぱぁい♪」

と呼んで不覚にも胸が高鳴る。
みたいな
233名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 23:30:45 ID:ReWu0RPL
年下は、
男がバイトから帰って来てソファーでくつろいでると、
幼馴染みが、お尻にアナルパール付きの尻尾付けて、猫耳バンドと首輪も付けて、
四つん這いで近寄って来て、口に咥えてたコンドームを男の膝の上に乗せて、
「にゃあぁん♪」
って、股ぐらに頬ずりして来るんですね? 全てお見とおしです。
234名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 23:35:18 ID:K0PQ1lTf
淫乱スレ池w
235名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 00:41:46 ID:vkUJKaD7
でもまとめスレにある年下系の話ってほとんどねーよな
ほとんどが同級生もの

年下系で何かあったっけ
236名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 00:52:37 ID:HyCixekO
ないなら書けばいいと思うよ><
237名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 00:57:47 ID:82Sbg6qQ
年上の幼なじみが遠くの大学に進学すると聞いて
「私が遊ぶ場所なくなるじゃん」とか「誰が勉強見てくれるのよー」とかゴネまくるも「ごめんなー?」としか言ってくれなくて
ならば体で縛りつけようと抱きついたら「ほんとお前は甘えん坊だなーw」と妹扱いされて涙目になる年下の幼なじみ

なんてのもいいよな
238名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 10:51:29 ID:a6CYTGMb
そして、夏休みに帰省してきた年上が、
驚くほど奇麗になっていた年下の幼馴染みにどぎまぎして、恋が始まるんですね
恋よりもそのままエロに入りそうなパターンだけど
239名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 17:55:35 ID:m1d+84jT
そこで
「なんだよ恋でもしたのか?○○の癖に生意気なw」
などと言い出した挙げ句
「相談ならこの恋愛マイスターに任せとけ!」
などと言い出しやっぱり涙目なのも乙なもの
240名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 18:30:05 ID:y5pNTa7S
自衛隊に行った兄的幼なじみを待つ女の子。
会えるのは帰省してきた時のみ。
そして告白は成功するが死亡フラグが立ってしまった男。

そんな話をどっかで聞いたことがあった。そいつはF-15Jを海に落としたが無事だった。 
241名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 23:27:17 ID:REl+LM4Q
国民の血税であがなわれた高価な最新兵器を海に落としといて生き残りやがった……だと……?
242名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 00:27:57 ID:iV87uOC8
命より高いものはない。
血税を無くしたというのなら、その分お国にご奉仕すればいいのだ。
243名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 01:40:28 ID:NLbrDUb6
>>241
言い方は悪いかもしれんが、戦闘機で最も高価な部品はパイロット。
244名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 02:04:08 ID:4TbWaNgS
年下の幼なじみVS同年代の幼なじみ
なんて言葉が浮かんだが、立場的には同年代が有利すぎて難しいな

個人的には年下のが設定的に好きだが
245名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 04:27:40 ID:anPc+Zm7
>>241
実はそのF15はフライトが終わったら結婚する予定だったんだよw
246名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 04:32:07 ID:h3AZN+xK
>>242

血税≠税金

血税=兵役



字のごとく御国の為に死んで“血”で払う“税”なわけ
247名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 04:33:31 ID:h3AZN+xK
>>245


吉田戦車かよwww


子供は爆弾なんだろ
248名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 07:13:25 ID:IixqF7rw
幼馴染み分が足りん。
他スレで良い幼馴染みが有ったら紹介してくれ〜
249名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 10:03:04 ID:NU9ntuyM
>>241
F-15のパイロットが戦闘任務に就けるようになるまで13億位かかる。ちなみに普通の
会社員だと育てるのに1千万ぐらいとか聞くね。

どちらにしろ早々死なれちゃたまったもんじゃない。
250名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 10:56:20 ID:1/cDTpjf
>>240
ちょw何年か前にニュースになってた、あの事件のパイロットかw
251名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 12:19:53 ID:anPc+Zm7
まあ、生きているなら良いじゃないか町中でエンストして被害が出ないように河原に落っことしてその結果脱出が遅れたパイロットも、
そのパイロットを非難したアカヒ新聞やチュンイル新聞が実在するんだし。
252名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 12:48:25 ID:AyZevI+a
352機を撃墜した世界最高の撃墜王、エーリヒ・ハルトマンも2歳年下との幼馴染み婚だぜ。
10年にもわたる過酷なソ連抑留で「目の輝きが変わってしまった」夫を支え、再び暖かい
家庭を築いた奥さんには感動するぜ。
253名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 13:34:04 ID:iRC790AH
戦車・装甲車を2000台近く吹っ飛ばしたソ連人民最大の敵、ハンス・ルーデルは25歳の時に5歳の幼女と入籍してるしな
ドイツの始まりすぎw
まあコレは幼馴染みってレベルじゃないけど
254名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 14:14:26 ID:anPc+Zm7
何という人民の敵w
255名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 16:37:03 ID:NLbrDUb6
>>253
嫁側からみりゃ、小さい頃から知ってるってことで幼馴染の範疇なんだろうか?w
256名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 00:33:09 ID:r7cVeGkV
その発想はなかった
257名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 05:21:44 ID:XV6BbKNK
「かっこいいお兄様大好きよ!」
「(ふむ…)よし、結婚しよう」
「え!?お兄様と結婚できるの?お遊びじゃないの?」
「ああ、俺はお前が大好きだからね。そうと決まれば早速お前に似合うドレスを作らなきゃね」

数年後
そこには嫁への愛と性欲を破壊衝動に転化した男の姿が!
258名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 09:02:43 ID:BFah2YVv
つまり光源氏も紫とは幼馴染結婚だったんだな!!
259名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 09:16:32 ID:DsL+36kt
幼なじみ物語ではなく幼女育成調教プリンス物語
260名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 14:02:26 ID:ORWSlJUF
いやもうさすがにそれらを幼馴染と呼ぶには無理がありすぎるwww
261名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 16:50:02 ID:XV6BbKNK
男から見て幼馴染ならいいのか?
262名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 18:33:52 ID:MWQ7Ad6A
一方のみの幼なじみってどういう状況なんだ
263名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 18:37:23 ID:eL244iqz
相手が忘れてる、とか
264名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 18:52:51 ID:PZvV5B8O
両者共にとって幼馴染じゃないとさすがに別ジャンルだろうw
何と言うかは知らんが
ただし>>263は除外

ふと思ったが、何時ぐらいまでの期間一緒なら幼馴染なんだろう
幼稚園だけ一緒ってのは何か違う気がするし
265名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 20:03:39 ID:tM7Z8pbQ
幼いころに馴染んでいれば幼馴染ですよ
幼稚園だけといっても2〜3年間一緒で園内以外でも良く会ってた相手とかなら幼馴染といえるのではないかと

年齢上限は小学校卒業までに馴染めるかじゃないかなぁと個人的には思う
266名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 21:42:11 ID:KZDq459B
>>265
基本保育園(幼稚園)でギリギリ小3までに仲よければ幼なじみ

だと俺は考えてる
267名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 21:59:59 ID:PZvV5B8O
幼稚園も(片方は保育園とか)学校も(私立と公立とか)全部違ったけど
生まれたときからご近所さんで仲の良い人

ってのも幼馴染になるんだろうなぁ。凄く異質だけどw
268名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 00:23:32 ID:rsiMymwU
10歳くらい離れてても「あいつは幼なじみ」とか言ってた気がするけどなぁ。
その辺は書き手の力量では?
うだうだ言い合うのはいいけど、個々のこだわりで狭めるのはよくない。
紫については、自然発生じゃなくて光源氏が最初からその気満々で
攫って傍に置いたというシチュだから、別ジャンルの方が適切なんだと思う。
269名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 02:53:29 ID:n3vY1In/
ふと>>267で思いついたものを投下してみる
地の文無しの会話のみな形式です。苦手な方は  疎遠な幼馴染  でNG登録してください
270疎遠な幼馴染 (1/3):2009/03/03(火) 02:56:03 ID:n3vY1In/
「なんでりっくんはよーちえんこないのー?」
「おかーさんもおとーさんも忙しいからダメって…」
「ふーん。おとなはたいへんだねー」
「みーちゃんといっしょのとこ行きたかったなぁ…」
「ねー?」


「やだー!りっくんと一緒のがっこ行くのー!」
「こら、我侭言わないの!」
「ごめんなさいねぇ家も私立いけたら良いんだけど…夫の稼ぎも少ないしねぇ」
「陸之君賢いから受かるだろうにもったいないわねぇ…」
「りっくん一緒のとこ行こうよ。ね?」
「…行きたいけど、でもよーちゃん達もこっち来るんだし…」
「りっくんの馬鹿!よーちゃんのお嫁さんになれば良いんだ!」
「えぇ…」
「あらあら美穂ったら嫉妬?さすが私の娘ねぇ」
「もう陸之。女の子は優しく扱わないとだめでしょ?」
「ふんっ」
「ぼ、僕が悪いの…?」


「は?何でよ!あんた私より頭良いのに公立行くの!?」
「っせぇな…こっちのがダチ多いからやりやすいんだよ」
「去年同じ中学行こうって言ったじゃん。忘れたのかよ…」
「こっちにだって色々あんだよ。良いじゃんか学校ぐらい別でも…」
「…」
「どうせ今までみたくテキトーに」
「死ね!」
「ごあ!?ちょ、てめ、辞書投げんな!」
「馬鹿!アホ!鈍感!甲斐性なし!」
「ちょ、ま、やめて、たすけて!誰かー!」


「…もう一度言いなさい」
「だから吉野に告られたって」
「…もう一度」
「くどいぞ馬鹿」
「うぅ…どうすんの?」
「断る」
「マジで?めっちゃ仲良かったじゃん」
「恋愛とかよくわかんねーし。部活に集中したい」
「うわぁ」
「やっぱうわぁとか言っちゃう?」
「言っちゃう言っちゃう。いやぁほんと慌てんでよかったわ…」
「は?慌てる?」
「あ、いや、何でもない!忘れて!」
「?」
271疎遠な幼馴染 (2/3):2009/03/03(火) 02:57:42 ID:n3vY1In/
「…」
「なぁ、ほんと謝ってるじゃんか」
「…」
「俺だって、まさかこんな事になるなんて思ってなかったんだよ」
「…いつから?」
「来週には」
「…高校からはやっと同じ学校と思ったのに。一緒にいられると思ったのに」
「ごめん」
「なのに…何で入学前に引っ越すのよ」
「あそこ、あの人…親父の家だからさ。俺も母さんも、もうあの人についてけ無いし…」
「…」
「母さんが待ってる。そろそろ行かなきゃ」
「…」
「メッセとかさ。いろいろあんじゃん。また話そうぜ?」
「…」
「じゃあな美穂…」



『ミミ:告られたぜー!うへへいうへい』
『天:で、また振ったと』
『ミミ:これで10人切りよ!あぁんもう私魅力的過ぎてこまっちゃう!』
『天:駄目だコイツ…手遅れだ…』
『ミミ:おややん?そんな心にも無いこと言っちゃってー』
『天:本心に決まってんだろ馬鹿野朗』
『ミミ:どうせ一緒に居た頃手を出さなかったの後悔してるくせにー』
『ミミ:おやおや発言が止まってますよりっくん?』
『ミミ:図星かなー?図星なのかなー?』
『天:そうだよ』
『ミミ:なに?』
『天:めっちゃ後悔してる』
『天:引っ越した後になって自分の気持ちに気がついたわ』
『システムメッセージ:ミミさんがログアウトしました』

「もしもs「ちょっと待って!(ブツッツーツーツー…)」…」

「もしもし?」
「…あい」
「準備はOK?」
「…あい」
「えっとだな。俺、お前の事好きだわ」
「…」
「引っ越して、会わないまま一年過ぎた今頃何言ってんだかと思うだろうけどさ」
「…ぐす」
「会えなくなって気付いた。俺お前の事好きだ。すげぇ好きだ」
「…う…ひぐ…」
「だから、その、付き合って欲しい」
「…遅いんだよ馬鹿ぁ!」
「ごめん」
「待ちくたびれて…辛くて…」
「ごめん…」
「でも…でも…」
「うん」
「…私も…大好き」
272疎遠な幼馴染 (3/3):2009/03/03(火) 02:58:36 ID:n3vY1In/
「…美穂さんや。これはどーゆーことだい?」
「えーっと、何の事だかさっぱり」
「てめぇこの大学受かれって言ったな?同じ学校行こう言ったな?」
「い、言いました」
「俺は頑張ったよな?学費免除の特別待遇受けるほど頑張ったよな?」
「や、やぁりっくんは凄いねぇあたしには無理だわ」
「そう無理だった」
「…あい」
「何落ちてやがんだてめぇえええええええ!?」
「いや、違うんだよ。これは予定調和なんだよ」
「あ?」
「こう、大学進学やめてあなたのお嫁さんになります的な」
「別れ話始めるぞコラ」
「それは困る!?」
273名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 03:01:07 ID:x4335BqS
リアルタイムGJ!
274名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 03:16:17 ID:MoO6Aeub
オチのために落ちたんですね、わかりますw
275名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 11:41:44 ID:APQv+KXe
こういうの好きだわ、GJ
276名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 19:59:03 ID:MTk4Fu+4
そして美穂は予備校へ、りっくんはテニサーへ
277名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 21:32:23 ID:KapgirG3
面白かったw

疎遠な幼なじみgj
278名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 00:38:07 ID:m2Q8Tlfx
吉野=よーちゃんだとすると、バッドエンドを迎えた幼馴染が一人居るわけか…
279名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 11:50:39 ID:Rn/wYqLo
個人的には「…あい」がツボです。
可愛すぎるだろ畜生><
280 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/04(水) 17:01:17 ID:7viDHoiT
小ネタですが投下させてもらいます。
賑やかしにでもなれば。

281 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/04(水) 17:06:54 ID:7viDHoiT
2月末からスレ更新してなかった・・・

>270さん
すいません。

又時間を置いて投下しに来ます。
では。
282名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 17:11:54 ID:2mwWjLGn
>>272で3/3だからあれでお仕舞いじゃねえの?
283名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 18:45:07 ID:x8tXyfkG
投下しちゃいなよYOU
284名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 19:50:19 ID:nmwSHBMC
       ____
     /⌒  ⌒\
   /( ―)  (―)\
  /::⌒(__人__)⌒\   
  |              |    一回しか言わないからよく聞けよ?
  \               /

     ____
    / ⌒  ⌒  \
  ./( ―) ( ●)  \
  /::⌒(_人_)⌒:  |     ・・・投下しな
  |    ー      .|
  \          /
285名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 20:34:58 ID:x8tXyfkG
というか、さっさと投下すべき。推敲とかの理由でなければ。
一度投下宣言しといて「やっぱ待ちます」といいだすのは避けた方がいい。

経験があるけど、もしいま投下したい人が他に出てきても
「『ちょっと待ってから投下します』と先に言って控えてる人がいるのに、ぼくが投下したらまずいよな…」
と遠慮して、なんだか投下しにくくなるから。
286名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 00:20:09 ID:MmHtuJCw
結局投下はなしか……。全裸待機していたのに……。
287てす:2009/03/06(金) 12:09:31 ID:Ww3cosLP
 カラカラカラカラ、喉が渇く。こんな光景を見せられて、唾を飲むのが精一杯。
 夕焼けの陽射しが窓から差し込み、この部屋は紅トーンで綺麗に染められた。
 そんな神秘的な空間で、夕日よりも赤い長髪を羽ばたかせ、天然の赤い瞳を潤ませた幼馴染みが、ベッドの上でボクを誘ってる。
 ウサギと同じ、淋しがり屋な赤い瞳で。ボスンと音を鳴らし、ベッドに沈んだムチムチの身体で。
 サキちゃんは、自分がとっても魅力的な女の子だと理解した上で、ボクから襲われるお膳立てをしてる。レイプさせようとしてるんだ。
 神秘的な空間で、尚も幻想的な赤いウサギは、エッチしたくなるような、チンチン挿れたくなるような、そんな状況にボクを追い込んでる。
「壊しちまった分は弁償するさ……今日一日、ゆーとのオナホになってやるよ」
 ボクはクラクラ、ノックアウト。心臓バクバク、ドッキドキ。
 そうするのは、初恋の幼馴染み。言葉は気丈で強がってるのに、手は震えてシーツを掴む。
 顔は横を向いて、視線だけをボクに向けて。早く手を出せとボクを挑発してる。
「そっ、かぁっ……サキちゃんはボクのオナホなのかぁ。なら、ココ……大切な所に、チンチン挿れられても良いんだよね?」
 膝から上をベッドへ預けてる、えっちぃサキちゃんに近付く。
 ボクのドキドキが伝わらないように、あくまで笑顔で、ココ……と、スタート越しに足の付け根を撫でる。
 緊張し過ぎて、感触なんてわかんない。
「あっ、オ、オレのことなんて、き、気にすんな!! 痛がったって気にしなくていいから、ゆーとの……好きにしろよ」
 あーあ、やっぱり。やっぱりだ。
 やっぱり、サキちゃんには敵わないなぁ。
 子供の頃からずっと好きで、何が有っても好きだった。
 さっきは嫌いになって、もう顔も見たくないって思ってたのに、気付けば好きになってる。
 何度だって、ボクは彼女に恋をする。
 そしたら、
「それじゃあ瀬戸山さん、エッチしようねっ」
 ちょっとぐらいのイタズラは許されるはず。
「やっ、ぁやぁっ!! ヤダヤダヤダぁっ!! 弁償するって言ったろ? オナホになるって言ったろ!? 名前で呼べよぉっ!!」
 こんな風に、可愛らしいサキちゃんを見たって、許されるはずなんだ。
「ゴメンねサキちゃん……いじわる、しちゃったね?」
 目尻に溜まって零れそうな涙を、流れる前に指で拭ってあげる。
 初めて、ボクがサキちゃんを泣かせたんだ。貰うハジメテは、これでいい……かな。
「バカっ。やさしく、だぞ?」
 だから後は言われた通り、やさしく、やさしく、長いスカートの裾に手を掛けた。
288名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 12:09:57 ID:Ww3cosLP
ごばくった。
289名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 13:04:07 ID:eMuEl3hJ
>>288
誤爆なら仕方が無いな
しかし、急ぐ旅でなければゆっくりしていったらどうだい?
290名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 15:19:31 ID:TB2GvR/X
まぁせっかくだから最後まで投下しようか
291名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 16:23:43 ID:ZHGuPXQ8
え!誤爆じゃないですよね!?
続きが気になります!
292名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 21:34:36 ID:dXRYXvUo
>>286
「気の強い娘〜」の方に回されたんじゃないの?
293ボルボX  ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:35:10 ID:WqGR54LQ
こちらに投下させていただきます。
294春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:36:03 ID:WqGR54LQ

 シャワーの雨、檜(ヒノキ)の浴槽からたち上るもうもうたる湯気。
 桃色の灯が水煙にけぶる。そのしたで嗚咽をもらす子供ふたりが抱きあっていた。

(あの夢だな)

 おぼろながら京介には、いま見ているこれが自分の夢だとわかっている。
 また、六年前のあのときの情景だからである。何度となく見て、先の展開はよく知っている。

 子供のころはほとんど毎日訪れた、あのひとの屋敷。
 夢のこの場所は、屋敷の浴室だった。
 床天井から壁、浴槽まで香りたつ総檜の湯殿である。

 みっともなく泣きながら、自分より背の高い相手に背伸びしてすがりついているのは、裸の男の子。
 その頭を、みずみずしく育ちかけの胸にしっかり抱きしめているのは、やはり裸の女の子。なぐさめている立場ながら、こちらも声は湿っていた。

 十歳の京介と、十二歳で女学校にあがる直前のあのひとだった。

 地元ではない。帝都のほうにあるという、華族はじめとする良家の子女が集う六年制の学院である。
 免除してもらうこともできた入学試験をわざわざ受けて合格し、あした彼女は遠くへ行く。おないどしの友人である京介の姉とともに。
 京介が生まれてからいつも共にいた三人のうち、彼ひとりがこちらに残されることになるのだった。

 そのときまで恭介にとって彼女は、実の姉より姉らしい人という思いがあった。
 年の差はふたつ。子供にとっては小さくない差である。それもあってか彼女は、京介にたいしては年上ぶりたがっていたようだった。
 京介のほうは、いつまでたっても子ども扱いされることにむくれだしていた。
 最近はずっと乱暴なため口をきいたりと、わざと怒らせるような態度をとっていたのである。

 それと同時にとりとめのない甘酸っぱいものが、彼女に対してだけふくらんでいくことに狼狽もしていた。姉やほかの女子には覚えない感覚だった。
 生意気な態度もうらがえしてみれば、実際になんでもできる彼女にもうすこし認めてもらいたかったのだろう。

 近しい距離と信じていたから憎まれ口も叩けたのだ。
 離れられてしまうなど、思ってもみなかった。
 受験のことを教えられたとき、京介はとっさに言葉も出なかったのである。
 前々から彼女に抱いていたあやふやな想いは、そのときはっきりした形をとりはじめた。

 それを完全に自覚したのが、この別れのための日だった。
 夜の宴は基本としてこの二家だけで催す手はずだったが、昼間は近所の子みんながあつまって遊び騒いだ。
 昼餐のあとは、男子女子の区別も年の上下もなく、天気がぐずつき模様なのもかまわず、屋敷の広大な庭で隠れ鬼や缶けりに興じたのである。

 小ぬか雨がふっても、だれも帰らなかった。明日去っていく二人の女の子、とくにあの人と無邪気に遊ぶ機会はもうないと、うすうすみんな知っていた。
 大人への入り口がすぐそこにある。彼女たちが女学校からときには帰省してくるとしても、もう一緒には遊べないだろう。この日が身分や立場など気にしないですむ最後の日だった。

295春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:36:48 ID:WqGR54LQ

 それでも夕暮れがくると、子供たちもそれぞれの帰路に散った。

 京介の姉があるクラスメートに呼び出された(告白されていたらしい)あと、京介は彼女と二人きりになった。

 すでにして悄然とだまりこんでいた京介だったが、気をつかって話しかけてくれる彼女に「明日でお別れだね」としんみり言われたのがとどめになった。
 女の子の前で泣くなんて恥ずかしいことだ、と必死に念じても、一度こぼれた涙はとどめようがなくなった。
 どうせ小さなころから泣き顔など何度も見られている、という開きなおりもあった。

 手をひいてもらって、しゃくりあげながら一緒に玄関をくぐると、ドロまみれということで湯殿に二人まとめて放りこまれた。

 ちょっと前まで「もう女の子なんかといっしょにお風呂入らないからな」と突っ張っていた京介だったが、そういう意地は涙といっしょに流されてしまっていた。 
 裸で向きあい、幼稚園児のように頭や体を洗ってもらううち、ひどく素直な哀しい気分がまたこみあげてきて抱きついたのだった。
 それが自然であるような感じで、あのひとも抱きしめ返してきた。
 京介は背伸びし、頬と頬をくっつけるように寄せて、行ったらいやだとわがままを言って泣いた。

(あのときはほんとうに幼な子並みだったなあ……)

 夢のかたちで思い出は続く。

 そのときは宵の口であり、外の闇が浴室の窓を黒くぬりつぶしていた。
 広間のほうでは「お別れ会」の準備がすすんでいる。今回はごく内輪のみの宴席とはいえ、地元の名士の数人くらいは令嬢たちの入学祝いをのべに訪れている。
 もう早々と酔っているらしい大人たちの声が聞こえてきた。
 ドアを何枚かへだてながら届くほどの大声で笑っているようだった。

 ――ゆうかちゃん、最近ずっと生意気なこと言っててごめん、ごめんなさい。

 ――そんなのもういいから泣いたらだめだって、きょうくん。ときどき帰ってくるってば。

 対して浴室内の会話のほうは、涙まじりながらも、ほんのかすかな声で交わされている。
 空気がいままでと違うことに、子供といえど気づいていたからだろう。
 抱き合ううちに、これまでの日々にはなかった雰囲気が芽生えていたのだった。甘く妖しく、頭と体の芯がしびれていくような。

 あとから思えば、それは秘め事の空気だった。

 嗚咽が止まってしばらくしても、二人とも離れなかった。
 このまま体を離すことがひどく惜しかった。彼女の肩に頬をおしあて、シャワーに打たれながら、京介はつい言っていた。
 反抗していたちょっと前のときなら、絶対に言わなかったことを。

 ――好き。ゆうかちゃんが好き。

 ――え……

 ――ずうっと好きだったよ。好きなんだ……

 ――…………ん。うん……

296春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:37:17 ID:WqGR54LQ

 はじめての告白を口にしたとき、心だけでなく手も足も、体がすべて熱を持った。
 その熱を彼女に伝えたくて、気がつくと京介はなめらかな頬に唇を寄せていた。
 あ、と少女の声がもれる。脚が萎えたように彼女の体の力が抜け、とんと背中をすぐ後ろの壁板にあずけた。
 熱は伝わったようだった。口づけされたその頬が紅潮している。

 彼女が、京介を抱きしめる腕はそのままだった。

 京介は壁にもたれた彼女に身を寄せてまた密着し、おずおず触れるだけの口づけを、二度、三度と繰りかえす。
 初々しい肌が桜色に熱を持ちはじめている。シャワーの雨に当たりながら、わけもわからず火照っていく。
 灯の下、濡れた裸が艶やかに照り、子供ながら妖しいほどに色づいている。
 お互いの呼吸が速くなっていた。

 湯殿のどこかで、垂れたしずくがぴちゃんと鳴った。

 京介は、頬をすりつけた。
 血を透かして真っ赤になった彼女の耳朶を、そっと噛む。
 さらさらの短い髪を撫でる。
 前髪をかきあげ、爪先立ちで背伸びしてひたいの生え際に口づけする。

 顔のあちこちをやわらかく噛んだり、口づけしたり髪を撫でたり……そんなたわいもない、けんめいに愛情を示したいだけのつたない愛撫でも、受ける少女の表情は陶然としていった。

 どちらからともなく、密着した体の正面をもぞもぞとすりあわせていた。
 石けんの泡が微量にのこっており、ただでさえすべらかな肌の摩擦を助ける。
 二人ともに固くなっていた乳首が肌にこすれるたび、むずがゆさに似た何かが脊髄を走る。
 見交わす瞳がとろんと溶けて、薄くひらいた唇から、ぁ、ぁ、とあえぎがこぼれていく。

 京介の下腹では、まだ肉としては幼いはずのその器官がひくんひくんと勃ちあがっていた。
 互いに脳裏がぼやけていたのはかえってよかった。
 知識はろくに得ていなくても、どうすればいいのかを体の奥にあるものが教えてくれた。

 板壁に背をもたせかけた彼女が、こくんと喉を鳴らし、肩幅よりわずかに脚を広げた。
 それにみちびかれ、京介は少し前ににじり出、彼女のひざのあいだに立ち入る。
 いじましく反りかえったものを、下からゆっくり挿しこむ。
 互いの無毛の恥丘を密着させてこすりあげるようにして、ぐっと腰を押しあげる。そして、少女の湿った肉壁にわけ入った感触があった。

 ――あ。

 直後にわずかに高まったそれは、どちらの声かわからなかった。
 二人とも目をとじて、切なげにあえいでいた。京介は快感で、彼女は処女を破られた痛みで、そして両者とも、つながったことへの昂揚で。
 本能がみちびいてくれたとはいえ、一度で入ったのは奇跡に近かった。

297春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:38:04 ID:WqGR54LQ

 くち、くち、と腰をゆすると、ぎゅっと彼女が頭を強く強く抱きしめてきた。

 何だかこわいけれどひどく気持ちいいことをしている、と感じたのを憶えている。
 少女の未通のそこは、より幼い京介の細いものでも、ひどく狭く感じた。
 針穴に通しているのかと思ったくらいで、締めつけられてきつい痛みさえ京介はおぼえている。その痛みまでも甘美だった。

 ――ゆうかちゃん、ゆうかちゃん。

 京介は目をかたくつぶって二つ年上の少女をきつく抱擁し、名を幾度も呼んだ。生まれてはじめての官能に意識が溶けそうで、夢中になっていた。
 ぅぅ、くっ、と押し殺された声が、断続的に少女の唇からこぼれてくる。痛みをこらえているのだろう。
 密着したまま体をゆすりながら、少年は熱い息をはずませる。
 なぜかそのとき耳の奥では、遠い日に聞いた歌がひびいていた。

   ……もりのねぐらに夕鳥を ふもとのさとに旅人を……

 もっと幼いころに、座敷で京介に添い伏ししながら、彼女はよく唄った。乳母のまねをして、子守唄のつもりだったのだろう。
 昼寝なんてしたくなんてないと毎回ぐずる京介は、強引に布団のなかに抱きとめられてそれを聞かされるうちに、なんとなく二人で眠っていたのだった。 

   ……ぎおんしょうじゃのえん朽ちて くんしゅの香のみたかくとも……
   ……はなもにほひも夕月も うつつはもろき春の夜や……

 この家で教えられるという歌詞の意味はよくわからないことが多く、実際に聞いていたときは眠りのおまじない同然だったが、そんなことはどうでもよかった。
 明るく落ちついた少女の声はこころよかった。京介が生まれてから、いつでも、そばにその声はあった。

 明後日からはもう聞けない。だから鮮烈な快楽のなかでひとつひとつ思い返して、憶えておきたかった。
 歌声。京介をよぶ声。笑い声、怒った声、涙声。今はじめて聞くこの声。

 唐突に、未経験の衝動が下腹にこみあげてきた。
 みじかく鳴き、少女を抱きしめる腕にきゅっと力をこめ、京介は動きを止めた。
 どく、どく、どくと精液が、幼い肉の筒から打ち出されていく。はじめての射精であじわう肉の歓喜に、背筋がぶるぶるわななく。
 注がれる少女が、おなかが熱い、と放心した声でつぶやいた。

 少女の流した赤がひとすじ内ももを伝わり、少年の白い粘りはぽたぽた床に落ちる。
 がくがく震える互いの脚のあいだ、板敷床の木目のうえ、赤と白がまじって水に流れていった。

298春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:38:29 ID:WqGR54LQ

…………………………
……………
……

 渋沢京介は薄目をあけた。
 眼鏡のレンズの向こうに、腐りかけの小屋梁がさしわたされた天井が見えた。横をむけばぼろぼろの漆喰の壁。
 書庫として使っている実家の裏手の蔵、その二階だった。

 昼寝をしているうちに呼ばれた気がした。それも家住や庭番の「若旦那様」という呼び方ではなく、名前のほうを。
 とりあえず京介は、小柄な体を古畳の上に起こした。体はいちおう鍛えてはいるが、十六歳の男にしては細身である。

 ぼんやりと頭をおさえる。
 横になっているあいだに髪には、毛糸がこんがらかった感じの寝癖がついていた。
 ちょっと不機嫌になる。

 ただでさえふわふわの天然巻き毛は、尽きない悩みのひとつだった。
 「テンジクネズミを思わせる可愛らしい外見」と、男への評価としてはひどい言葉を言われる一因なのである。

 寝癖のことを頭の隅におしやり、この蔵での作業がどこまで進んでいたかを思いかえす。

(……分類はそこそこ進んだけど、なにも新しい発見はなかったな)

 休日を利用して、実家の膨大な過去帳簿のなかから新たな史料が出てこないか探していたのである。
 まずないだろうが、近世史にかかわる貴重文書がまぎれこんでいないともかぎらない。なにしろ渋沢家も平民とはいえ、そこそこ勢威ある歴史をほこっている。

 維新以前の店の記録はたいてい史料として丁寧に保管されているが、百年くらいの「新しい」記録の写しや使用人の日記などはここに放りこんである。
 京介はこのところ、蔵に椅子やたたみを持ち込んでいた。
 腰をすえてその黄ばんだ紙の束を、一枚ずつ丁寧にたしかめていく面倒な作業に没頭するためである。

 趣味で郷土史を調べている人からたのまれて引き受けたことだったが、めぼしいものはなかなか見つからない。
 正直なところ単調な作業に疲れ、春の陽気に眠くなっていた。一休みに横たわっているうち、寝入ってしまったのである。
 高いところにある格子窓からさしこむ光のぐあいでは、すでに陽はかたむいているようだった。

 眼鏡をかけなおし、あぐらをかいて座ってから第一にしたのは、書生袴のすそをゆるめてそっと下腹をたしかめることだった。
 幸いにも夢精はしていなかったが、彼はやるせない思いでため息をついた。

(もうさすがに克服するよ、そりゃあね)

 六年前のあの日から、夜に何度この夢をみて下穿きを白く汚したことか。いまではめったにそんなことはないので、夢にも耐性はつくらしかった。

299春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:39:10 ID:WqGR54LQ

 が、すぐに彼は落ちこんだ。
 精を漏らさなくなったというだけで、いまだ数日に一度はこの夢に悩まされているというのに、よく克服などと言えたものだ。

(この夢を見るうちは、思い切れてないってことなんだろうな……
 夕華さんのこと)

 初体験が鮮烈すぎた。そう思う。精通と童貞喪失が同時で、しかもそれを初恋の相手ですませてしまったのである。
 男としてこれ以上望めない初体験だったのかもしれないが、いろいろと後に影響がのこっている。
 幸せすぎる一瞬の記憶は呪縛にちかい。

 重くこびりつく懊悩を頭からはらうように、首をふる。喉が、からからに渇いていた。
 畳から動き、庭下駄に足をつっこんではしごを降りる。
 土蔵のすみに置いてある柄杓つきの甕(カメ)に身をかがめ、京介はくみ置きの井戸水を口にした。

 いきなり蔵の木戸が開き、日光と怒声が同時に入ってきた。

「こんなところで何時間つぶしているのよ!」

 蔵に踏みいってきたのは、小柄な女性だった。
 姉の柿子である。ことし女学校を卒業したあと、こちらに帰ってきている。
 やはり、さっき目が覚めたのは姉に名を呼ばれていたからだろう。
 「なに、カキ姉ちゃん」と寝ぼけまなこでつぶやいたとたん、また怒鳴られた。

「おじい様が主催する夜桜観賞の会があるでしょ!
 四時までに用意しなさいと言ったでしょうが! 着替えもせずなにのんびりしているのよ」

 言われてよく姉を見てみれば、自分と同じふわふわのくせ毛をきちんとセットしており、化粧もととのえている。
 なにより服装が、千鳥格子のキャミソール風白ワンピースに桃色のカーディガンをはおり、足元はバレエシューズという、可愛らしさを前面に出したいでたちだった。

 カジュアルとはいえよそ行きの服を着た姉を見て、頭が急にしゃっきりした。

「あ……ご、ごめん、そうでした。
 でも田中さんに頼めばすぐに向こうに着くよ」

 運転手も兼ねてくれる家令の名をあげたが、「おじい様のお供でとっくに出てるわよ!」と一刀両断される。
 顔立ちがよく似ていると言われる姉弟だが、気質はかなり違う。

 京介がモルモットなら、柿子の性格は猫だった。それも猫同士喧嘩させれば町内制覇しかねない種類の。
 愛らしい少女と評される外見に、服の趣味だけでなく中身も同調させてほしかったとは京介のひそかな慨嘆である。殺されるので言わないが。

300春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:39:56 ID:WqGR54LQ

「そ、それなら僕のバイクに二人で乗ればいいよ」

「それでもいいけど……あんた本気で寝ぼけてたのね?
 ったく、その髪見ればわかるわよ。どうせ疲れて寝てたんでしょ。土蔵の整理なんかに根をつめすぎなのよ」

 柿子が四方の壁を見回した。
 蔵の一階は、三間四方の広さがある。壁ぎわには古い桐のたんすが何個か置かれ、冊子や古紙が分類されて引き出しにおさめられている。
 以前は乱雑につみあげられていたそれを、ある程度まで分類・収納しなおしたのは京介だった。まめな性質なのだ。

 柿子が嘆かわしげに息を吐いた。

「子爵様でしょ。あんたにこんな雑事を押し付けたのは。
 まったく、渋沢家の嫡男が京口家のことを優先しないでよ」

「ちがうよ。子爵様に頼まれたのは資料を探すことで、蔵の整理は僕がついでにやってるんだ」

「どっちにしてもうちのイベントを忘れてまでやることじゃないわ。
 学生服でも普通の服でもいいから早く着てこい! いっそもう、その服でもいいわよ」

 京介が身につけているのは、木綿の襟なし白シャツに筒袖長着に、馬乗り袴。足に白足袋。
 いわゆる書生の格好だった。
 馬乗り袴は股が分かれているのでバイクに乗れないことはないが、和装でそんなことをするのはいまどき僧と不良くらいである。

「いや、着替えるよ。寝癖直して上着とジーパンとってくるからちょっと待ってて。五分ですませる」

「もうちょっと待つから、一応それなりの格好してきなさい。
 言っとくけど夕華も来るからね」

 目をこすっていた京介は凍った。
 がくぜんと柿子を見、呆れた顔をそこにみとめて声をおもわず高くする。

「なに、それ!」

「なにがなにそれ、よ。
 こっち帰ってきたばかり、土地の集まりになるべく顔出そうとしているのはあたしだけじゃないわよ。行こうって誘ってきたのはあっちだしね」

「だ……だって子爵様は」

 夕華の父親である京口子爵は、わが家からは出席予定はないと言っていた。
 だからこそ、京介は観桜会のことをあまり気に留めないでいられたのだが……
 口ごもる京介を前にすっと一瞬目をほそめた柿子は、「ま、とにかく」と告げた。
301春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:50:02 ID:WqGR54LQ

「そんな改まったイベントじゃないにしても、この期におよんでキャンセルしたらだめよ。ほら、急いで身支度してきなさい」

「ちょっと待って、そんないきなり、」

「その寝癖も早いとこなおさないとねえ」

 蔵の壁にかけてある時計をあおぎ、京介はうなった。
 「待ってて!」と、蔵をとびだして母屋のほうに駆けだす。
 その背中を柿子の声が追いかけてきた。

「十分あげるから」

「十五分!」

…………………………
……………
……

「だって前もって夕華が来ると言ってたら、あんた当日までにいろいろ理由さがして欠席しそうじゃない。
 だいたい、寝すごして身だしなみ整えてなかったのは自業自得でしょ」

 なんで早く教えてくれなかったとぐちぐち文句をいう京介にこたえて、それが柿子の言い草だった。
 メットをかぶりバイクを走らせている最中である。後ろを振り向いて見られるわけではないが、後部に乗った柿子がすずしげな顔をしていることは間違いない。
 京介は苦虫をかみつぶした。

 大急ぎで着替え洗顔ハミガキ髪なおしコンタクト装着をどうにか終え、免許をとっていくらもないバイクに飛び乗って急発進させたのである。
 ほんとうのところ柿子のいうとおり、夕華と顔を会わせることには気がすすまなかった。
 それでも会わざるをえないなら、せめて身だしなみは完璧にしておきたい。十五分いっぱい使ったが、それでもまだぜんぜん足りない気分だった。
 柿子に言うと「まるで禊(ミソギ)だわね」と呆れられるだろうが、シャワーも浴びて蔵のほこりを落としておきたかったくらいである。

 いまは鴨井川にそった道路を、上流の神社のほうにむけてバイクで走っている。
 対岸のほうに坂松市の旧市街が広がる。ここからも見える小高い丘のふもとには城跡があった。
 維新後に市の中心地は西岸にうつり、東岸はさびれた感がいなめない。

 市外から来る人は、坂松藩三万二千石の城下町ときいて伝統ある建造物などを期待するらしい。
 が、残念ながら旧市街の大半は維新期の大火になめつくされており、残っているものは数少ない。
 観桜会のひらかれる神社は、大火に呑まれずにすんだ古い場所のひとつだった。
302春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:50:54 ID:WqGR54LQ

「ねえ、あんたこのごろちょっとおかしいわよ、家を継ぐのは考えさせてとか言い出したり。
 なにより、なんであの娘を避けるのよ。
 わたしと夕華がこっち帰ってきてからもう数週間よ。それなのに、なんでずっと会おうとしないわけ」

 朱塗の大橋をわたって東岸を走りはじめたころ、柿子が訊いてきた。

「またその話か。
 知人が帰ってきてたら、家まで会いに押しかけないといけないの? とくに連絡がきてもないのに、わざわざ行く気にはならないよ」

「薄情ね。あーあ、夕華かわいそ。あの娘は六年間、帰省のたびあんたの顔を見にうちに来てたのにね」

「違う。姉ちゃんはなにもわかってないんだよ。
 それにあっちからだってもう来てないんだからさ」

 正直に言えば、つらいのだ。会っても、二言三言交わし、それであとは会話もつづかなくなるのがいつものことだ。
 距離が年々、遠ざかっているのが感じられてしまう。
 いや、こちらからは怖じて話しかけられないというだけだが、あちらはこっちのことをもう、ほとんど気に留めていないだけのことだろう。
 それでも、六年間も帰るたび会いに来てくれていた。忘れていないと示してくれた。十分すぎると思う。

 幼なじみとしての縁があって、何かの間違いで契りをむすべたが、もともと恋人でさえなかった。
 このまま、たまに顔を合わせれば久しぶりと挨拶する程度の「旧知の他人」になっていくだけのことだ。
 泣きたくなってくるほどの心のうずきをこらえて、京介は平静をよそおった。

「あちらがもう来る気がなくなったんだったらさ、それはそれでいいじゃん」

「ああ、ごめん。
 こっち帰ってきたてのころ、夕華うちに来ようとしたんだけど、たまにはあんたのほうから来るのを待ってみようとあたしが勧めてた」

 このクソ姉貴。

「それこそなんで黙ってるんだよ、そういうことなら挨拶ぐらいしてきたよ!
 早目に言ってよ! 僕はいいとして失礼だろ、お嬢様にっ」

 恭介はがなった。まだ縁が切れていないと知って、感じてしまった喜びをむりやり吹き飛ばすためでもある。
 メット越しの怒りの声に、「あんたが自分から行くのか確かめたかっただけよ」と柿子は答えた。
 なんでそんなこと、と京介が訊くよりまえに彼女は眉をひそめる。

「それよりお嬢様て……とうとうあんたまでそんな呼び方を。
 それはやめなさいよ、あんたが夕華をお嬢様と呼ぶのは」

「あ、つい……
 でも、姉ちゃんはずっといっしょにいたから気安く接してるんだろうけど、ここらじゃたいがいの大人は『京口のお嬢様』か、夕華様と呼んでるよ。
 タバコ屋のおやじさんみたいなお年寄りは、領主の姫様と呼んでるし」
303春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:52:04 ID:WqGR54LQ

「姫ときたか、アホかいな。
 このご時世になにが姫よ。いまだ帯刀して歩いてる連中よりお笑いぐさだわ。
 だいたいあの娘の家は元・大名じゃなくてその家老よ。地域一の名士づらしているのは、維新のどさくさで主筋の龍円寺家を攻めつぶして栄達したからでしょうが」

 もっとも軍資金を融通したのは渋沢屋のご先祖だけどね、と柿子はつぶやいた。

「もともとあっちの家とはつるんで悪事やった間柄よ。あっちがその悪事で爵位さずけられ、こっちはもらわなかっただけじゃない。
 公の場に出たら儀礼は守るけど、それでもないのにうちがへりくだる必要がどこにあるってのよ、この四民平等の世で」

 と、それが柿子の口上だった。
 そのへんの事情は、京介も知ってはいる。

 坂松藩主の龍円寺家は、維新のおり新政府に反抗した。
 対して、ときの京口家の若い当主、為友はすみやかに新政府支持をきめた。
 かれは平民やならず者の下級武士を金で雇い、武器を与えて一軍を組織し、主家および他の多くの家臣たちと戦端をひらいて、寄せあつめと言われた兵でこれを破ってしまった。
 そのまま藩主を城に追いこんで囲み、城の出入り口をことごとく外から閉ざし――……

 京介は遠くの城跡に目をやる。
 坂松城の天守閣は、いまでは焦げて黒くなった石組みしか残っていない。百五十年前、京口為友が火をかけて焼いた。

 坂松城が炎上したおり、山をふきおりる強風にあおられて火は城下町に飛び火し、鴨井川の東岸は煙火さかまく炎の海となった。
 西岸に逃げてきた人々は、対岸の燃える城と家々をながめつつ、口をきわめて為友を鬼蛇の類とののしったと伝わる。
 新政府から功をみとめられた為友は、発足したばかりの警察に志願した。維新直後に何度もおきた一揆をくりかえし鎮圧し、子爵にまで上っている。
 主君弑逆および民衆への強硬な態度もさることながら、怨嗟の声をよそに平然と地元の屋敷に帰ってきて住んだあたり、よほどにずぶとい神経の男だったようだ。

 一世紀以上昔のことだ。本気で京口家を憎むものとて今はおらず、歴史の一部になりつつある。

「とにかくお嬢様だの姫様だの、そんなふうに呼ぶのはやめなさい。
 あんたは京口の使用人じゃないのよ。
 それ以前に、あんたが夕華に面と向かって言ったらあの娘むくれるわよ。ほかの旧友のことでさえ『みんな帰省のたびどんどん堅苦しくよそよそしくなっていく』って何度愚痴られたか」

「優しい人だからね」

「……その反応、なんか違わない?」

 呆れた声を柿子が出したが、京介はメットを装着した頭を軽く横にふった。

「やっぱり身分ってものは軽くないから。
 みんな子供のうちはともかく、大人になったらわきまえるようになるのはしょうがないよ。
 優劣とかじゃないけどさ。きちんと区別はつけたほうがいいし」

「あのねえ……そんな考え不毛なだけよ。当人が区別されたいとか思ってないのに」

 柿子が何かまだ言っているが、京介はこのあたりの意見はゆずる気がない。
 かれや柿子自身、家の使用人からは「若旦那様」「お嬢様」と呼ばれる身であるが、渋沢家はしょせん商家である。
 姉は「四民平等の世」とは言うが、やはり厳然として、華族は平民より格上という意識はいまだ社会にあった。
304春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:52:50 ID:WqGR54LQ

 なにしろまず数が少ない。
 全国の爵位持ち華族の総戸数は、八百戸に満たない。この百年であらたに叙爵された家もそこそこあったが、断絶して消えた家もあるのだ。
 増減をへて、華族籍にある者は現在は九千人。人口一億をこえるこの国で、比率としては一万人に一人以下。
 しかもその大半が帝都に集中している。必然的に、華族は田舎ではそこそこ希少な存在なのだった。

 であるからには、平民から「貴種」に向けられる視線にはやはり今なおあこがれがある。
 たとえ先の大戦後の改革によってさまざまな特権をはぎとられ、華族の多くが経済的に困窮していたとしても。

 市街地を通りぬけ、田園ひろがる郊外にさしかかったころである。
 背中の柿子がまたちょっかいを出してきた。

「ねえ、京介、まえから訊きたかったけど。
 あんた隠してることあるでしょ」

 反射的に「そんなことはない」と言いかけて、京介は判断を変えた。

「そりゃあ、もうすぐ十七って歳になれば秘密くらい誰にでもあるよ」

 流したつもりだったが、柿子は容赦なかった。

「なに大人ぶってんの。言っとくけど歳相応かそれ以下にガキっぽいわよ、あんた」

「…………ははっ、そう……」

 もとからきわめて辛口の柿子だが、なんで今日はこんなにつっかかるのだろう。
 この姉のことなので、自分を怒らせて口喧嘩に持ちこみ、なにか情報をつかもうという目論見かもしれない。挑発は無視するのがよさそうだった。
 むくれながらも言い返さずこらえてハンドルをにぎりしめ、

「このまえ一週間だけ女いたでしょ、あんた」

 横転しそうになった。

「あっぶないわねえ! ちゃんと運転しなさいよ!」

「なんでそんなこと知ってるの!? だれがしゃべった!」

「田舎の城下町なめるんじゃないわよ、うちや京口家のことならたいてい老人どもの茶飲み話の種になってるわ。
 うわさ話に出る当人たちの耳には意外と届かないもんだけど、知ってる人は知ってるわよ。
 同級生に告白されて付きあって、すぐ破局したんだってね」

 精神的なよろめきが大きく、バイクを止めて道端でゆっくり落ちこみたいという欲求にかられる。
 京介はげっそりとつぶやいた。

「……最悪」

「まあ、わからないでもないわよ。時期聞いたら、夕華がとうとう見合い受けて婚約したって話が流れてたころじゃない。
 あんたヤケにでもなってたんでしょ、目に見えるわよ。
 あのね、あのお見合いは不意討ちでセットされたもんだから」

「知ってるよ。雅楽の演奏会に出席させられて、そのまま離れの小座敷で対面、だろ」
305春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:53:47 ID:WqGR54LQ

「そうよ。わたしも連れだって行ってたから、演奏終わってから夕華が耳打ちされたときのこと憶えてるわ。
 『あ、やられた』とつぶやいてドナドナよろしく曳かれていったわよ」

「あは……」 

 京介は苦く笑った。
 人のことをいちいちほじくりかえして触れ回る田舎のネットワークを嫌がりつつも、それが夕華の話なら聞かずにはいられなかった自分への嘲笑である。

「あんたに保証してあげるけど、あの娘、婚約する気なんてないから。
 けど、あたしと逆で悪意ってもんを人にほとんど抱かない娘だから、適当に相手の顔を立てて談笑もして、のんきにお菓子まで食べてきてるわけ。
 いつものペースで応対してただけなんだけど、『これは脈あり』と相手に思わせちゃったのよ。あの娘の欠点といったら、まあ欠点ね。
 ところで、夕華の婚約がデマだったと知ったから、出来たての彼女とすぐ別れたの?」

「違うよ」

 いきなり最後に来た意地のわるい質問を、京介はきっぱりと否定した。
 もっとも、別れた本当の理由も褒められたものではなかったが。

「ま、そうよね。あんたいろいろ駄目な子だけど、そういう子じゃないし」

 幸いにもそこで、姉はその会話を打ち切ってくれた。
 京介はほっとする。自身で公言しているとおりナチュラルに性格の悪い姉も、さすがに奥の奥まではあえて踏み入ってこないようだ。

 川面をわたって吹き付けてくる風を切り、土手上の道にバイクを走らせる。すぐ神社には着くだろう。
 懐古の情をさそわれたのか、柿子がしんみりとつぶやいた。

「七年前かしら、みんなで最後に行った七夕祭りの日。
 早く来すぎて退屈して、神社から離れて子供みんなこのへんで遊んだわね」

 京介はちらりと川に視線を投げた。市街地の上流のこのあたりはむかしと変わらず水が澄み、岸につらなった楊柳の枝がなびいている。
 河原の白はあまたの石、岸が切りたった淵は深い緑。
 小舟とどまる木の渡し。ゆるかに回る水ぐるま。
 視界のはしでバイクと平行して飛んだ翡翠色は、カワセミだろう。

 あの祭りの日の暑い午後はよくおぼえている。
 くれないの紗の子供ゆかた、揚羽の紋と絹の帯が、記憶にふとちらつく。

 彼女は川の浅瀬にまっさきにふみこんだ子供だった。裾をからげて帯にはさみ、脚をむきだしにして。
 水が冷たいと歓声をあげ、浅瀬でこっちを向いてほかの子供たちを呼んでいた。
 脱いだぼっくり下駄を両手にさげ、はしゃぎ笑って京介のほうに水を蹴り――
306春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:54:18 ID:WqGR54LQ

…………………………
……………
……

 夕闇せまる神社はすでににぎわっていた。
 ぼうとだいだい色の光をはなつ提灯が、大量に屋台の先に下げられている。屋台の列は境内だけにおさまらず鳥居の外まで延々とつらなっていた。
 田舎町とは信じがたいほど人が集まり、大気に満ちた祭りの熱は酔いそうなほどだった。

 観桜会の主役であるところの、染井吉野の桜の木が、黒々とした鎮守の杜を背景に数本だけ植わっている。
 とはいえ維新期の大火にも逢うことなく生きのびた大樹である。樹齢数百年を経ているからには、数本であっても花吹雪は豪勢なものだった。

 どこでやっているのか小太鼓やギターまで聞こえる。祭り騒ぎの楽の音が、五感を妖しくくるめかせる。
 京介は拝殿に背をむけて、雑踏をかきわけ石畳をあるいていた。
 いままで祖父のもとにいた。石の大鳥居をくぐってすぐ、祖父によびかけられてその元へ足をはこんでいたのだった。

(それにしてもいきなり夕華さんの名前を出されると心臓に悪い……)

 京介が拝殿周囲の人々にあいさつし終えたのを見計らって、祖父は「入れ違いだな。夕華ちゃんがさっきまでお前を探してわしらと話していたぞ」と教えてきたのだった。

 御燈に浮かびあがる拝殿のまえには、いまも京介の祖父を囲むように年配の人々がつどって、桜そっちのけで話に花を咲かせている。
 かれらは商店街の重鎮、引退した各業種の長老格などである。市議員の顔まであった。現市長からして渋沢家の後援を受けて当選しているからには、それもなんら不思議ではなかった。
 今回は正式な祭りではないが、彼らは宮座(特別な権限をもつ氏子組合)をつとめている。つまり地元に力のある古老たちが、渋沢翁を中心にそこにひかえているのだった。

 そういう人々から「渋沢の若旦那」と呼ばれることがあるのは、小心な京介にとって面はゆい。
 しかし彼もそれが渋沢家の、ここ数代にわたる涙ぐましい努力の結果であることを知っている。誇りには思う。

(でも、僕はたぶん家を継がないし)

 京介はそのことを祖父と父に告げていた。恋人と別れたすぐ後のことである。
 あのときを思いだすと胃が痛くなる。その場にいた誰も、笑みのかけらも見せなかった。

 ふだん朗らかな祖父が聞いたこともない重苦しい声で「なぜだ」と問い、父は沈黙したまま京介の真意を探る冷たい目で見つめてきていた。
 京介も小心とはいえ根は頑固である。理由は言うことなく、あとはひたすら押し黙ったままで通した。
 庭に蹴りだされて久々に折檻されるかと思ったが、そこまでには至らず、以来その話は一時棚上げという格好でだれも口にしていない。

 家督は柿子が婿をとって継ぐという手もあるのだ。
 姉にいろいろ押し付けてしまうのは気がすすまなかったが、京介には「このままなら、僕が継いだほうが問題になる」という確信があった。
307春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:55:31 ID:WqGR54LQ

 それはさておいて、来ているという夕華がなかなか見つからない。

(「そこらへんにいるだろう」といわれても、人がかなり多いよ、じいちゃん。
 正式な祭りじゃないなら、こんな大げさな会にしなくたって)

 神社そのものはさほど大きな規模ではないのだが、祭りの規模が境内におさまっておらず、田園の道にまで広がっている。

 渋沢家はいわゆる地域の顔役だった。
 もと両替商・渋沢屋であったころからさらに規模は拡大し、銀行業をはじめとして各方面に手を伸ばしている。
 急速な飛躍ではなく、二世紀以上かけて着実にきずいた富と影響力である。京口為友に投資したときなどのごくわずかな例をのぞき、冒険したことはない。
 人の恨みを極力買わないことを優先したため、富のほうは時代により増えたり減ったりしたが、長い目でみればそれも右肩あがりで伸びつづけてきた。

 渋沢家は爵位をもらうこともなく、一代で栄華をきずいた京口為友のような怪物も生まなかったが、より堅実に家運を上昇させてきたのである。

 地元と協調して繁栄することが渋沢家の心がけてきたことであり、地域奉仕はおこたっていない。
 この神社の最大の氏子は渋沢家であり、ここで行われる夏や秋の祭りでは経費の多くを負担しているのだ。
 この観桜会にしてからが、京介の祖父の肝いりである。

「いたいたキョウスケ。なあ、ノブもシンちゃんもいるんだけど一緒に回ろうぜ。そんでこのあと遊びに行かね? え、無理なの?」

「おじい様には日頃お世話になっております。わたくしはこういうものです、お見知りおきを」

「京介くん、いいところに。金貸してくれ。こんど返すから」

「ご無沙汰ですね。たまには道場に顔を出しなさいな」

「君はたしか……そうだ、渋沢翁のお孫さんじゃないか。大きくなったなあ」

 人いきれで友人や知り合いに出会い、ときに立ちどまって話す。
 そんなことを繰り返しているうちに、春の日はどんどん沈んでいった。

 何度目かに歩きはじめたときには、落日の残照しか残っておらず、社の上空に蝙蝠が舞っていた。
 本当にどこにいるのだろう、と見回す。

 じつのところ、本気で見つけようとしているのか自分でもよくわからない。ただ漫然と歩いているだけだ。
 いっそ、このまま見つからなければいいとさえ思う。
 じっさいにこのまま出会わず祭りが終われば、京介の心中は混沌とするだろうけれど。深い安堵と、虚脱感をともなう失望で。
308春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:56:03 ID:WqGR54LQ

 なんとはなしに歩みをゆるめたおりだった。
 そばから、静かな声がかけられた。

「京介君」

 どくんと心臓がはねた。何ヶ月ぶりかに鼓膜を震わすその声は、何があっても京介には忘れられないものだった。
 そのまま胸が早鐘を打つ。押さえこむようにわれ知らず左胸に手をあて、京介は呼ばれたほうに向きなおった。
 しいて笑顔をつくる。

「おひさしぶりです、夕華さん」

「うん。おひさしぶり」

 すらりとした長身。さらさらの黒髪は子供のころから変わらないショート。
 シルクウールの葡萄酒色のニットの上から、薄絹のパーカーをはおっている。下はぴったりしたジーンズに赤茶の革ベルト。足にはベルトと同じ鹿革の靴。
 夜のまぎわで視界良好ではないことをさしひいても、化粧っけはほとんどないように見える。
 装飾品は革紐で首にさげたロザリオと、あとはシンプルなデザインの腕時計をつけていた。

 京口夕華の外見は、「華族のお嬢様」という言葉で世人がまず抱く印象からはちょっとずれている。
 動物にたとえて柿子が猫なら、その相方の夕華は優美な猟犬というところだろう。

 身につけるものは上質だが男物が多く、話し方にもあまり気取ったところがない。
 武道を修めている影響か、身ごなしはというと華麗というより颯爽として切れがある。
 しかし気性にとげとげしさは全くない。昔から、夕華は春風駘蕩としたおだやかな空気をまとっていた。そのあたりに毛並みのよさと呼べるものが出ているのだろう。

 うっすらと微笑んだ彼女は、ふいと京介から視線をそらして、体二つぶんほどはなれた横にならんで立った。
 手に湯気のたつ紙コップを持って、中身をすすっている。さっきまで後方の縁台に腰かけて、それを飲んでいたらしい。
 その縁台に座っている着物姿の中年女性がにこにこして頭を下げてきた。よく知っている人で、夕華の乳母である。

「これ甘酒。ショウガが入っているの」

 乳母にあいさつの礼を返していた京介に、夕華が唐突に話しかけてくる。
 京介がぎこちなくうなずくと、彼女は淡々と訊いてきた。

「体があたたまるよ。飲む?」

「あ……い、いえ」
309春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:56:48 ID:WqGR54LQ

「そう。
 ところで桜がきれいだね」

「そ、そろそろ散りかけですけどね」

 慌てて応じたあとからすぐ、(いまのは妥当な受け答えなんだろうか)と後悔がわきおこる。もうすこし風情のある言葉を選べばよかった。
 夕華は何も言わなくなり、また甘酒をすすっている。
 なにかこちらからしゃべったほうがいいのだろうか、と京介は焦る。
 焦るほど胸がつかえて、何を話せばいいのかとっさに思いつかない。

「あ、あの」

「なに」

「卒業、おめでとうございます」

「ありがとう」

 夕華が軽く会釈してすぐ前を向く。また会話は途切れた。
 ……話すことをあきらめて、京介も黙った。ひどい緊張のなか無理に口をひらいて、くだらないことを言ってしまうよりはと思ったのである。
 子供のころはこうじゃなかったのに、と思うと悲しくなってくる。

(もう少し、うまく話すことができていたら……)

 そのとき強めの春風が場をかけぬけた。
 桜の枝がざわりと揺れ、花びらがまた散る。明星のかがやきだした空に暖雪がぱっとふぶき、社の庭を一瞬おおった。
 にぎやかにざわめいていた人々も頭上をみあげて動きを止める。
 渦まいて暮天を舞った桜の波に、ほう、とため息がそこかしこで洩れている。

 その人々のなかにあって京介はつい、横をこっそり見ていた。
 夕華は桜吹雪をまともに浴びて目をつぶり、そのあとけだるそうに髪を撫でて花びらを落としていた。

(――やっぱり、きれいだな)

 冷艶な白磁をおもわせる横顔だった。
 きりりとまっすぐに整った眉、鼻梁。どこか物憂げな色をたたえた切れ長の目。
 動きのしなやかさと背の高さ、それにショートの髪型が、紙コップに口をつける彼女に中性的な美を添えている。
 男装の麗人というべきか、美青年と見まちがえそうなたぐいの容貌かもしれない。
310春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:57:34 ID:WqGR54LQ

 もっとも実際にまちがわれることはまずないだろう。視線を夕華の顔からちょっと下ろせば、基本は細いながらも艶かしい起伏に富む肉体がある。
 彼女がぴっちりした男物の服を身に着けていることで、逆にそのみずみずしい体の女性らしさはよく見てとれる。
 あの湯殿でのときに比べれば、女学校にいた六年で、夕華の胸や腰の要所は変貌といっていいくらいに成長していた。

 つい不らちな観察と分析をしてしまい、京介はぱっと顔を赤くした。
 あわてて夕華の肢体の悩ましい曲線から視線をはずす。

 それでも彼女のほうにしぜんと視線がひきつけられ、顔だけ見るようにして、おそるおそる横にまた目をむけた。
 当たり前かもしれないが、夕華は子供のころとはまったくちがっていた。

 男の子さながらに駆け回っていた、落ちつきないほどの活発さはなりをひそめたように見える。
 そのかわり凛然とした雰囲気がそなわっていた。
 女学校の生徒のなかではそれなりの責任ある立場にいたというから、それも変化に関係あるのだろう。

(どんどん華族らしくなっていく……
 あのころのことはよく憶えてるのに、もう嘘みたいだ。この人といつも一緒だったときがあるなんて)

 子爵令嬢という夕華の身分と、由緒正しい血統に、京介は気後れを感じずにはすまない。子供のころは気にもしていなかったものだが。
 金で爵位を買った成金華族ならともかく、京口家は中興の祖である為友以前からも名流だったのだ。さらに夕華には竜円寺家の血も入っている。
 しかし、心中では別の声が聞こえる。「逆よ。あんたは夕華とまともに話せなくなった理由を、家格や血統への畏れにまですりかえただけでしょ」

 京介は顔をしかめる――この一ヶ月、帰郷したあの姉の毒舌に接しすぎたせいか、内心の自嘲まで柿子の声となって出てきていた。

(確かにそうかもしれない。けど、そんなのどちらが先でももう同じだよ。
 気後れしてしまうのは確かなんだ)

 何度もあった帰省で、たしかに夕華は京介の顔を見にきてくれていた。
 けれど、見た目からしてどんどん美しく、態度も大人びていく彼女に会うたび、京介はいつからか何も話せなくなっていった。
 彼女を眼前にすると、胸がつまってどうしようもないのだ。それが年ごとにひどくなっていった。
 そして現在ともなれば、会話はもうほとんど続かなくなっている。会ってもすぐに別れるばかりだった。

 劣等感はつぎの劣等感のもとになる。こうして並んでみると、身分のちがいにかぎらず、身長までが気を重くするもとだった。
 京介の背は五尺五寸。同年代男子の平均より低い。
 対する夕華は五尺七寸、女性としては丈があるほうだ。豊かな胸を凛と張り、伸ばした背は京介より二寸とはいえ高かった。

 京介はふだん身長をさほど気にしているわけではない。他の相手とは比べようという発想すらない。
 だが、夕華と並んだときは落ちこむばかりだった。彼女にかかとの高い靴でも履かれれば、京介は完全に見おろされてしまうだろう。

(個人として見たってさ。
 うじうじするし細かいし、背は低いし、僕みたいな雄々しさの足りない男じゃこの人とぜんぜん釣り合わないよ……)

 うつむき気味に地面に視線を落とし、何回も出した結論をもう一度確認したとき、夕華がまたこちらに向いた気配があった。
311春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:58:19 ID:WqGR54LQ

 顔をあげると、じっと見つめていた夕華と視線が合う。
 なにを考えているのかわからない深みのある瞳が、動物のようにきらめいていた。
 京介はどきりとしたが、かろうじて顔はそらさなかった。
 なんとなく予感があった。

(そろそろ訊かれる)

 ほとんど他人になっても、それでも夕華は京介に会いに来て、毎回ひとつの「問い」をしていく。

「京介君」

「はい」

「まだ、いい人はいない?」

 京介はほんのすこし返答をためらった。これまで六年間、京介は毎回それに同じ答えを返してきた。「はい」と。
 そう答えても、なにかがあるわけでもない。夕華はうなずいて沈黙し、たいていはそこで話を終わらせて帰っていくのだ。

 夕華が自分に恋人ができたかを訊き、自分が夕華にいないと答える。
 そのパターン化した問答はひそやかな儀式のようなものだった。いつか結んだ縁がまだ切れていないかどうか確認するための。
 あるいは、遠まわしに恋人をつくることをうながされてきたのかもしれない。いや、このやりとりに合理性をあえて求めれば、それしか考えつかない。

 京介は思う。やはりあの日の記憶はおたがいにとって一種の呪縛なのだろう。
 自分は夕華のことをまだ好きだ。その自分でも、こんなつかずはなれずの遠い関係を保つことは辛い。
 夕華のほうでは重荷にだけ感じていてもおかしくないはずだ。

(一度は思い切ろうとしてみたんだけどな……)

 あるとき女の子に告白され、それにうなずいたことで、恋人と呼べる関係の相手はできた。
 それも、いいかげん夕華とのあるかなきかの関係に辛くなって、なんとか諦めるべく試みたことだった。
 すぐ駄目になり、そのこと自体はひどく苦い思い出にしかならなかったが。

(でもはっきり縁を断つつもりがあるなら、いまからでもできるはずだ。
 「できた」という部分だけ伝えればいいんだ)

 おそらく惰性と、夕華の優しさと、自分の未練がここまで過去を長引かせた。
 自分が「恋人ができた」と伝えたとき、過去もきっと終わる。彼女は笑みをうかべ、祝福してくれるだろう。
 その笑顔には若干の安堵があるだろう。一方で、ほんのすこし寂しげな色も浮かべてくれるかもしれない。
 そして迷いなく未来にふみだし、子爵家のひとり娘としていずれ遠からずふさわしい相手と結婚するだろう。

 その未来を想像すると胸が痛んだが、未練をふりはらうべく首をふる。
 ここで決心しなければこれまでの六年間と同じ時間が、この先もう少し続くだろう。

 いつかこの縁を切らないわけにはいかないと薄々わかってきても、勇気がなくて自分からは切れなかった。
 距離を離したかったわけではない。昔のように自然に話して笑いあうことができたら、とずっと願っていた。
 けっきょく、ずるずるここまで来てしまった。幼いときのただ一回の秘め事を、彼女にまでひきずらせて。
312春の夕べの夢醒めて〈上〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 14:58:48 ID:WqGR54LQ

 こんなことでいいとは思えない。もう終わらせるべきであり、折りよくいまがその機会だった。
 ひそかにぎゅっと拳をにぎり、京介は勇気をふるいおこした。
 夕華から視線をそらす。

「できました」

 言えた。声を震わせることもなく言えた。あっけないほどに簡単だった。
 これで終わる。長い初恋が、ようやく終わってくれる。
 あの夢もきっと見ないですむようになる。そう信じたかった。

 ごほっと盛大にむせる音が横から聞こえた。

(――え)

 京介は横を向いて、あぜんとして見た。
 夕華は上体をやや折って口を押さえ、むせこんでいた。
 片手だけで持った甘酒が揺れて、紙コップの中で大きく波立ち――びちゃんとこぼれて夕華の手にかかる。

「あ、熱、あちちっ!」

 最前までの落ち着きが嘘のように、夕華は頓狂な声をあげてとうとう甘酒をとりおとし、コップを持っていた手を押さえた。
 「だ……大丈夫ですか」と京介は手巾をとりだした。が、後じさられて足を止める。目を見開いた夕華に呆然と見つめられ、京介は立ちすくむしかなくなった。
 なんでそんな顔を。まるで予想外の衝撃を受けたと言わんばかりの。
 足元にぶちまけられた甘酒で、彼女の革靴が濡れている。

 その夕華の表情さえはるかに超えて、京介を狼狽させることが起きた。
 いつのまにか彼らのそばに来ていた柿子が、落花生を割りながら、このタイミングで言ったのだった。

「落ちつきなさいよ夕華。いまのは嘘じゃないけどほんとのこと全部じゃないわ。
 その子たしかにちょっと前に女つくったけど、あっというまに別れたから」

 柿子が口を出したのは、見るに見かねてのフォローのつもりかもしれなかったが、あっさり暴露された京介は反応することもできない。
 それぞれ絶句している二人に目もくれず、柿子はあさってのほうを向いてにがにがしげに言った。

「どうしようもない莫迦だわよ、あんたたち。
 言っとくけど、わたしここまで首つっこむ気はなかったわよ。でも何年もほっといて見てたら、あんたたち結局このざまじゃないの」

 どっちも相手の前で格好つけすぎなのよ、と締めくくり、柿子は落花生を口にふくんでこりっと噛み砕いた。
 祭りの喧騒のなか、三人の頭上に桜がほろほろと散り落ちつづけていた。
313ボルボX  ◆ncmKVWuKUI :2009/03/07(土) 15:01:04 ID:WqGR54LQ
〈上〉の投下はここまでです。ありがとうございました。
314名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 17:22:15 ID:sW9ERgQk
いい!すごくいい!
続き楽しみです。GJ!
315名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 17:24:47 ID:3cK/tGWo
gjです
316名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 20:06:25 ID:T9xIZIqI
ドキドキ感が半端ないな……
超GJ!早く続き読みたい

しかし京介のなんとヘタレなことか
317名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 00:36:26 ID:knU/27z8
・・・このヘタレがいいんじゃないか!


ええそうです。僕はMです。
318名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 00:49:03 ID:Cw2Z/xxd
よもやのボルボXさんキタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆
この先の展開が気になりますね!楽しみに待ってます!
319名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 16:48:31 ID:nNPnKqh/
すばらしい
320名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 23:10:20 ID:qkQB7lLw
GJすぐる!

舞台設定も背景も好き(華族さまwktk)すぎてハァハァ

続きも舞っております
321名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 23:19:41 ID:dAOKk8vz
優等生で人気者な後輩幼馴染(女)と
彼女の邪気眼テイストにあふれる黒歴史の全て知る男
後輩だから敬語で話してくれる微ツン少女
黒歴史を含めて彼女のことが好きな男
さんなシチュに燃えたりする頃ごろ
322名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 19:50:25 ID:mdr3gurG
>>313
エロパロ板で久しぶりに小説らしい小説に出会った
超乙
323名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 20:01:34 ID:T5XjeDB/
>>313
まさかのボルボX氏降臨に開いたスレを間違えたかと思った。
GJです。
毎度のことながらじっくり読ませていただきます。
324名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 00:37:51 ID:YRB+zOFr
>あ、熱、あちちっ!

夕華の魅力倍増だなぁ。
325名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 19:34:01 ID:OyDHwVU2
神を待つ間に投下させていただきます。


「イーバちゃん!これあげるー」
友人の飯田がそんな事を言いながらその包みを渡してきた日は、ホワイトデーの前日だった。
「……なんだこれ」
「……ホワイトデーのお返し……」
「いやいやいやお返しじゃねえよ、なんで俺がホワイトデーに貰わなきゃならねえんだよ!」
思わず全力でつっこむ。しょっぱい、あまりにもしょっぱすぎる。
俺より頭半分もでかいごつい男になんて貰いたくない。
「俺だってこんなことやりたくねえよ!」
飯田も涙目である。本当、なんでやろうとしたオマエ。
「……駅前でさ、ホワイトデーフェアとかやっててさ……!彼女と一緒におねだりされながら選んでるヤツとかいてさ……!!」
悔しさのあまりか、ギリギリと歯を食いしばりつつ、本格的に涙声になっている。
「お、おまえって奴は……」
俺が呆れ果てていると、横からさらにデカい男が話に加わってくる。
「まあそういう事なんだわ。あ、ちなみに俺からもあるんでもらってやってくれ」
「う、植木、おまえもか……」
おー、と呑気な声で返事を返される。
「一人で売り場突入は嫌だったらしくて俺に声がかかった。まあ俺もバレンタインにイバちゃんにもらってるしなあ。
 たぶんもらった奴らはお返しもってくるんじゃないか?」
うーわー、ありがた迷惑な話だなそりゃ。
「っていうかさあイバちゃん、バレンタインの時のアレ!あのクッキーおかしくねえ!?」
「うるせえよ飯田。つか人に作らせといておかしいって何がだよこの野郎」
「味は美味かったけど、形がただのデカイ丸だったし!包みなんかただのポリ袋だったじゃん!」
「うん、マジで美味かったよあのチョコクッキー。でかい分食い応えあったし」
「おー、あんがとよ植木。ありゃ茶碗引っくり返して型抜きしたんだ」
家にゃクッキー型なんて洒落たもん無いからな。
「俺はそういうのが悲しいのー!」
もっとこう、バレンタインらしいのが良かった!ハートとか!とアホ丸出しの事を叫ぶ飯田。
「あのな、おまえバレンタインに男からハートクッキー欲しいんか。本気で言ってんのか」
正直、むしろ俺の精神ダメージがキッツイので勘弁してほしい。
2月13日の夜、なんで俺はこんな事をしているんだろうと、甘い香り漂う台所で本気で思ったからな。
「そもそもな、おまえがバレンタインに何も無いのが嫌だ!とか言い出すから作ってやったんだぞ俺ァ」
一ヶ月前、2月に入ってからのこいつの『せめて義理チョコくらい欲しいんだー!誰のでもいいからー!イバちゃん作ってー!』
という、鬱陶しい嘆きに負けて作ってやったのが間違いだったか。
そもそもこの男子校で彼女持ちでも無いくせに、あんな行事に参加しようと思うほうがおこがましい。
いつまでも付き合いきれんわ。と教室の後ろにあるロッカーに向かい、久々に使う辞書を取り出そうとしてふと気づく。

くせえ。
326名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 19:36:49 ID:OyDHwVU2

男臭いのはもうどうしようもないこの空間だが、それにしても臭い。
両隣のロッカーを開けようとした所で左右からがしっと腕をつかまれる。
「いやいやいやイバちゃん?何でも無いよ?何でも」
「イバ、悪いんだが今日はちょっと勘弁してくれ」
「飯田、植木、テメェらロッカーん中でなに醸してんだー!?」
この臭気の発生源が俺の両隣のロッカーからだというものは、以前の経験及びこいつらの態度からして間違いない。
脇を左右から挟まれたまま、あっさりと持ち上げられる。
あああああ、この無駄にでかい野郎どもがああああああ!!!
「いやー俺らがでかいっていうかイバちゃんが小っty」
「飯田アアアアアアアアアアああああああああああッ!!!!!」
「すいませんごめんなさいイバちゃん小さくないです普通です俺らが無駄にでかいんです申しわけないです」
「……下ろせ」
「え。あ、あー、えっとおー」
「いいから下ろせ。あとロッカー開けろ無駄な抵抗すんなおまえら」
「……諦めよう、飯田……」
飯田も植木も整理整頓と言うものが非常に苦手な連中だ。
こいつらのロッカーが俺の両隣だと言う時点で被った迷惑は数え切れない。
連中にしてみれば、俺のロッカーの隣になってしまった事が不幸なのだろうが、俺にとっては知った事ではない。
こいつらの汚いロッカーのせいでゴキブリが大量発生し、俺の方にまで被害が及んだ高1の夏の事は、正直言って思い出したくも無い。

「……とか言う割にはイバちゃんしょっちゅうお説教のネタにするよなー。俺たち反省してるのにさー」
「反省してるとか言うんだったら食い残しを溜めるのをやめろ飯田!」
ミイラ化したカレーパン(食いかけ)とかドロドロになった飲みかけのジュース(閉じてある口を開けたら凄まじい臭いがした)
とかをゴミ袋に入れながら飯田がぼやく。
「……まあ、あの事は伊庭だけじゃなくて先生にもがっつり怒られたしなあ」
凄まじく汗臭い半分腐りかけたジャージにファ○リーズを吹きかけながら植木。
「つか、ロッカー空けたらファ○リーズが普通に出てくるのがすげーよね、イバちゃん」
能天気な飯田の声を背後に、全てを出させた後のロッカーの拭き掃除を行う。
「……ありえねえ……、ありえねえよ……。なんなのなんでここまで腐海にできるのこいつら……」
「ちょ、イバちゃんストップ、ストップ!なにかけようとしてんの!?」
やかましい、消毒だ。次亜塩素酸ナトリウム水溶液万歳。
「らめええええええええええ!!!それ借り物なのおおおおおおお!!!」
うるせえ。持ち主にはお前から謝っとけ。
俺はもう借りたし女優がちょっと好みじゃなかったし。使ったけどさ。
「ちょ、かあちゃんごめん!ごめん反省してるからやめて!それの持ち主先輩なのー!怒らせるの俺こわい!」
「だ、れ、が、かあちゃんだ誰が!」
「……おーい、伊庭、飯田ー、先生来てるぞー」
え。
「――飯田駆君、伊庭祐助君、欠席。と……」
ああああああああ!?
しかも植木の奴、ちゃっかりすでに席に座ってやがる!?
327名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 19:39:45 ID:OyDHwVU2
「……ったく、お前のせいで俺の皆勤賞がチャラになるとこだった」
「いや俺も納得いかないんだけど!?なんで俺は遅刻扱いになってイバちゃんはセーフなの!?」
授業が終わっての休み時間。喚く飯田を黙殺する。
「イバちゃーん!ボタン取れたー!」
「あいよー。付けてやるから貸せー」
他のクラスメートが持ってきたシャツの袖ボタンをつけてやる。
あ、ボタンだけじゃなくて裾にかぎ裂き出来てんじゃねえか、直しといてやるか。

「……はぁ〜……」
「なんだ、どうした飯田」
「俺、イバちゃんが女の子だったらお嫁さんにするのになあ。と思って。
 ……って、なんで距離とるの!?そしてなんでエンガチョ切るの!?」
「飯田」
「なにイバちゃん」
「おまえキモい。本当にキモい」
「ちょっ、イバちゃんひどい!?」
「酷いのはおまえの脳味噌だボケェッ!!」
なんだーどーしたー。と寄ってくる植木他クラスの連中。
「なにというか、飯田が狂った」
「ひどっ!?ちょ、そういう意味じゃないよ!?俺は只、イバちゃんみたくボタンが取れたら付けてくれたりとか!」
お前ら放っといたらあちこち破れようがほつれようが構わんからだろうが。
「料理上手で弁当作ってくれて!からあげが美味くて!」
うんうん、おまえら人の弁当のおかず狙ってくるから、俺は掃除道具ロッカーの上に登ってメシを喰う羽目になってんだがな?
「そういう彼女が欲しいと!そう言っただけだって!おまえらだってそう思うだろ!?」
力説するバカが一匹。女がいないって、こんなに脳にくるものなんだなあオイ。

「まあ確かにスキルだけを見たら理想的だけどさ」
「俺はちょっと無理。イバちゃんみたいな女いたらおっかねえよ」
「いや逆に考えるんだ。伊庭が女になったらツンデレという奴だと考えるんだ」
「……女のイバって俺の想像力の限界を超えるなあ」
「まあどう頑張っても女の子には見えない見た目だしねえ」
「いや、僕なら眼鏡外して20メートルくらい離れたらなんとか見えないことも無いかも。
 伊庭は背が小さいし、体格もそんなにゴツくないし」
「委員長ド近眼じゃん。それって見えない事も無いっていうか、何も見えてないだけでしょ」

なんでこうウチのクラスはド阿呆ばっかりなんだろうか。
てめえら好き勝手言いやがってこのやろう。

「――あー、うん。まあ飯田の主張もわからんでもないが」
おいこら植木てめえ。
「どっちかっていうとそれは彼女っていうか、お母さんじゃねえ?」
おい。
「……おお!本当だ!」
おいこら馬鹿ども。
「―――おかーちゃーん!!!」
「ふざけてんじゃねえぞ飯田あああああああああ!!!!!!」
おもわずバカ一号をぶん殴る。
328名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 19:41:31 ID:OyDHwVU2
「ちくしょうイバちゃんのバカー!自分が女いるからってえええええ!!」
「え、なにそうなん?初耳」
俺も初耳だよ。そしてなんでそんなに食いつき良いんだよバカ2号。
「こないだ、駅前でいっしょにいたの見た!背の高い美人さんと小柄な可愛い感じの子!」
「お、どっちが本命?伊庭に限って二股は無いだろうけど」
「アホ、ありゃ妹だ、妹!」
飯田が、え。と眼をきょとんと見開く。
「そ、それって、イバちゃんの女の子バージョン!?しかもどっちも可愛かったし!」
ひゃっほう。と喜色満面とはこの事か。という笑顔になる飯田。
「イバちゃん、おれ今日からイバちゃんのこと、お義兄さんって呼ぶから!!」
「段階をすッ飛ばしすぎだろオイ!?」

飯田、おまえがウチの妹に対して抱いてる期待は間違ってるからな。
「――まずだな、さっきおまえが語ってたような女じゃないぞ、ウチの妹」
「え」
「おまえの言ってた背の高い方の女はな、見た目は兄の贔屓目を抜きにしても別嬪だとは思うがなあ。
 飯は作らん掃除はせん、休みの日は部屋で一日中寝てる。
 ガサツだわ部屋は汚いわ、洗濯物は出さないわ、俺の分までガツガツ飯は食うわ」
「えええーー……」
テンションがた落ちだな飯田。そこまで落ち込まれると兄としては何だかなあ。
「そ、それじゃあ小さい子!小柄な子のほうは!?」
「飯田」
「なにさイバちゃん」
「あの子に付いてそれ以上質問してみろ? 今後の学校生活で二度と俺の助けは受けられないと思え」
「ちょ、なにその態度の差!?」
「成る程、その小柄な女の子が伊庭の彼女って事か」
あー、クソ。それがまさに悩みの種だってのによ。
「……そんなんじゃねえよ」
植木と飯田が顔を見合わせる。二人とも、それ以上突っ込んで聞いてはこなかった。
こいつらは心の底から馬鹿だが、こういう所は良いヤツだと思う。
明日はホワイトデーだ。
ここしばらくの憂鬱の種の、期日の日だ。
329名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 19:44:30 ID:OyDHwVU2
以上で今回投下分は終わり。
すいません、続きます。

登場人物補足

主:伊庭 祐助(いば・ゆうすけ)通称:イバちゃん
  コンビニよりスーパー派。買ってくるお菓子がマザーラインナップ。
ローリーエースを「ヤクルト」と呼ぶ男。
330名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 19:59:31 ID:i+wRaFPT
おお、続きも面白そう
>>329GJ
331名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 23:39:44 ID:xkUBUAXS
幼なじみ出る前から面白いっすすー
GJ
332名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 00:56:52 ID:cBVeJR5u
俺には凄い美人の幼馴染がいて案の定
中(挨拶程度)→高(ほぼ会話なし)と疎遠になっていったのだが
上京して大学生で一人暮らししてる時突然電話してきて
「今度、東京に住むことになったの(短大出で就職したらしい)
 知り合いが居なくて心細いからあーくんの近くに住みたい」
最初冗談かと思ったんだが、本当に上京してきて、
一緒に部屋探してあげて同じマンションの空き部屋に住むことになった。

思春期の時が嘘みたいに昔みたく仲良くなって
ほとんど毎日俺の部屋に居た。
実家が隣なので里帰りも一緒。
でも、恋愛とかエロいことは一切なかった。
本当に仲のいい友達。

こないだその子の結婚式に出ました。
お酌をしに行って「おめでとう」って言ったら
不意に涙が出た。その子も泣いた。
理由はわからない。

幸せになって欲しいと心から願う。
333名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 19:48:52 ID:1W8DXCeM
ずいぶんとまた懐かしいコピペだこと
334名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 13:16:05 ID:JWMFPI4T
そういえば、別のスレでコピペっぽいのを見つけたのを思い出した。

中学の時、英語の辞書忘れたから隣の女子のを共同で使わせてもらった。
家も近所だし気さくで話しやすいやつだったもんで、
彼女が見てない隙に、ふざけてその辞書の「vagina」の項を○で囲んでやった。
…あれから10年以上が経ち、そんな事ずっと忘れてた。
盆休みで実家に帰省して仕事の整理をしてた時の事。
英語の辞書が必要になって、中学時代のを探し出して使った。
そしたら憶えの無い落書きをみつけた。
「penis」が○で囲んであって余白に「お返しだバーカ昼休みに図書室で待つ」と書いてある。
それで思い出した。
あの時あたりからだったか、彼女は昼休みになると真っ先に教室から出て行くようになった。
俺は「何委員だか知らないけど忙しいんだなぁ」なんて思ってた。
中学最後の昼休みも、彼女は教室にいなかったっけ…。
で、嫁にそれ見せたら顔真っ赤にして「今頃みつけるな!」だって。

335名無しさん@ピンキー:2009/03/15(日) 06:54:35 ID:r+F20Gpb
>>334
その女の子が嫁ってことだよな?(読解力が乏しくてすまん)
336名無しさん@ピンキー:2009/03/15(日) 17:36:51 ID:ziopoX2Y
>>335
空気嫁
337名無しさん@ピンキー:2009/03/16(月) 00:48:03 ID:S5E/jXaJ
年下幼馴染み設定のwktk感は異常。
338名無しさん@ピンキー:2009/03/16(月) 02:20:21 ID:1S7gMRjC
美術部には今年も沢山の女の子が入ってきた。先輩先輩言われてデレデレしてると
普段年下のくせに呼び捨てにしてくる幼馴染が「先輩」って呼んできた
人を馬鹿にしやがってと思って無視してやったが何回か呼んできてウザい
あまりにウザいのでイライラしてきたんで
「んだよ普段は呼び捨てにするくせに。馬鹿にしてんのか」
と言ってみたら一瞬びっくりした顔をした後に笑顔になって「何だ、ばれてたの」とか言ってきた
わかっちゃいたがムカついたので茶化してやる事にした
「お前に先輩とか言われても嬉かねーよ。可愛らしさがたりん。可愛らしさが」
「何それ…」
「それどころか色気もねぇし恥じらいも無い。そんなんに「先輩」とかいわれてもドキドキ…」
ここまで言ってアイツが俯いてるのに気付いた「どうした?」と聞くも「別に、何でも無い」とか言ってくる
挙句に「何か、うん、何かもうほら、あれだから。帰るわ」
とかわけのわからん事言って帰っちまった
部活の最中だってのにわけのわからねーやつだ。まったく…
後輩達に俺のすばらしき作品を見せてやるつもりだったが予定変更
カバンを引っつかんで適当に挨拶して美術室を飛び出し、アイツを追いかける
別に心配ってわけじゃない。ただ昔からアイツに何かあったら俺がどうにかする決まりなだけだ
義務ってわけじゃないがそうしないとなんかこう、落ち着かないだけだ
別に言い過ぎたことを気にしてるわけじゃない。ただ謝っとかないと後でめんどうだと思っただけだ
落ち込んだアイツは立ち直りが遅いからな。別に落ち込んだままでもいいんだが。別に

しかし何であいつ美術部に入ったんだ?いつも俺の絵見てるだけで描いたりしないのに
いや、そんな事より今は追いかけないと
ああ、めんどくさい。年下の幼馴染なんて持つべきじゃない



深夜のテンションで書いたから読み辛さとかは気にしない
別に気にして無いんだから!
339名無しさん@ピンキー:2009/03/16(月) 03:54:54 ID:sJ7CQF8x
あっはっは
いいじゃないか!
340名無しさん@ピンキー:2009/03/16(月) 20:12:04 ID:rOrFsgi/
よし!気にするな!
俺も気にしてない。
341名無しさん@ピンキー:2009/03/16(月) 20:49:53 ID:vKU5Tbw8
>>337
しかし年下幼なじみ設定ってまとめには少ないよな
それがちと残念
342名無しさん@ピンキー:2009/03/16(月) 23:19:29 ID:imcElEPb
紗枝がいるじゃないか。
343名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 02:18:51 ID:FllAYlhC
個人的には十分神ですが
続きはまだですか!?
344名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 02:19:59 ID:FllAYlhC
>>325あてな
いや、全部好きだけど
345名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 21:01:01 ID:xOdpNPKI
>>338
> ただ昔からアイツに何かあったら俺がどうにかする決まりなだけだ

このフレーズ好きだ。
346名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 01:11:38 ID:qy+YAb3z
とても仲の良い幼馴染み同士。家は同じアパートの隣同士。
学校でも家でも常に一緒。お互いの両親の仲もすこぶる良好。
ある日、親達だけで遊びに出掛け、二人で留守番してると、彼女に初潮が来て――



みたいなシチュって良いよね。
347名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 08:48:29 ID:GZzWGcsM
夕華さん来ないかな
348名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 23:44:26 ID:eZkB8kxd
325です。
予定ではホワイトデーにあわせて投下のつもりだったとか自分でももうね\(^o^)/
それでは続きを投下させていただきます。


「あ、にいちゃんだ」
帰り道、駅前のスーパーを出た所で声をかけられた。
「舞子。……と、凪子ちゃん」
妹とその友達だった。
「……こんにちは」
「あ、あー、うん。凪子ちゃんもひさしぶり……」
沈黙。
すげえ気まずい。
この、妹の幼馴染みの凪子ちゃんという女の子は非常に無口な性質なのである。
俺も同年代の女の子と軽口を叩ける性格ではない。
これでも昔はもう少し気安い仲だったのだが。妹とは小学校に上がるか上がらないかの頃からの仲良しだし、
その縁も合ってウチにはよく遊びにきていたし、一時はしょっちゅう泊まりに来るくらいだったから、
俺も妹が出来たみたいで楽しかったし、可愛がってもいたのだが。
……女の子は大きくなると扱いが難しいよなあ……。いや俺もうっかりデリカシーに欠ける事ばっかりやらかしたんだが。

「にいちゃん、今日晩メシなにー?」
「おまえいきなり聞くのがそれか。……んー、昨日の残りのおでんと、鯖の煮付けだな」
えー、魚ー。と不満そうな妹を軽く小突く。
「ちゃんと晩飯までに帰って来いよ。あと凪子ちゃん一人暮らしはじめたからってあんまり入り浸るなよ迷惑になるだろ」
「はーいはいはい!わかってるって!凪子、行こうっ」
妹が凪子ちゃんを引っ張ってどんどん歩いていく。
ったく、仕方がねえなあ。
妹達を見送って、家路につく。
……凪子ちゃんも夕飯に誘えばよかったかな。
最後にこっちを振り返ってぺこりと頭を下げる彼女を見ながら、そんな事を思った。
349名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 23:45:53 ID:eZkB8kxd
夕食後、後片付けを終えて自分の部屋に戻り、机の引き出しをあける。
俺の目の前には爆弾がある。
最も爆弾の中身はもうない。迷ったが喰ってしまったからだ。
なので、あるのは包み紙だけなのだが、爆弾としての威力はまだまだ充分持っている。
……ような気がする。
一ヶ月前のバレンタインに、妹の友人の女の子……、凪子ちゃんから渡されたものだ。

――女の子が、泣きそうな顔で『捨ててください』ってバレンタインに渡してくるってどういう意味なんだろう。
普通の義理チョコってわけでも無さそうだし、本命というのはもっと考えられない。
今まで義理でも貰った事なんか無かったし、凪子ちゃんにしてみりゃ俺なんか兄貴みたいなもん……、
っていうか、昔「お母さんみたい」ってはっきり言われた事あったしなそういや。
……そもそも、自分が女にもてるタイプではない事は悲しいが自覚している。
顔は丸顔だし、たまに中学生に間違えられる。童顔なのは確かだが、別に美少年というわけではない。
眼は細いし、鼻は少々上向き加減だ。背も高くないどころか平均に届かないし、体つきも逞しいわけではない。
かといって芸能人やモデルのようにスラリと細身というわけでもない。
特別運動が出来るわけでも無いし、成績だってさほど良くは無い。
何か変わった特技があるわけでも、性格が人格者というわけでもない。
俺を一言で表すならば『地味』の一語につきるだろう。

凪子ちゃんはかわいい。
一見、愛想なしでとっつきにくそうに見えるが優しい子だし、妹によると学校の成績もいいらしい。
俺の前だと滅多に笑わなくなっちゃったが、たまに笑顔になると本当に可愛いのも知っている。
そんな子が俺に特別好意を抱くわけが無い。
一応、お互いチビの頃からの顔見知りではあるが、凪子ちゃんにしてみりゃ俺は只の親友の兄貴なわけだし。
しかもここ数年は思いっきり避けられてるし。
詰まるところが俺の自意識過剰。きっと本当にただの義理以下チョコ。
350名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 23:46:53 ID:eZkB8kxd
捨てるよりは俺のほうがマシだと思ってくれたという事なのだろう。
そういう事で、こっちも軽い気持ちでお返しすればいいだけの話なのだが。
「……あーっ、もう。どうしたもんかなー……」
問題は。
俺がチョコ一個で1ヵ月以上も動揺し、無理な深読みをしたくなるくらいには凪子ちゃんの事が好きだということだ。
「……我ながら、情けないっていうかキモいっていうか……」
『女々しいという言葉は男のために作られた言葉だ』っていうのは本当だなあ。
しかも材料だけは買ってるあたり自分でも本当に煮え切らなくて嫌だなあと思う。
「……うううう」
ごろごろごろ。
しばし床の上で転がる。
「あああ、くそっ!とにかくやるしかないか!」
どういう形にせよ、バレンタインにもらっておいてお返し無しというわけにも行かないだろう。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

3月14日。今日も今日とて伊庭家の朝が来る。
午前6時30分
起床。向かいの妹の部屋からも目覚まし時計が鳴り響くのを聞く。
午前6時45分。
身支度完了。ヒゲを剃る時に少しアゴを切ったので絆創膏を貼る。
午前6時50分。
朝食の支度をしつつ、2階の妹の部屋から目覚まし時計の音が止まったのを確認。
焼きあがった玉子焼きが落ち着く時間を使い、妹の部屋の前から扉越しに声をかける。
「舞ちゃん!7時10分前!」
扉の向こうからうおおともうごおとも付かない地を這うような呻き声がきこえる。
午前7時00分。炊飯器のごはんが炊き上がる。
階段の下から大声で妹を呼ぶ。
「舞子ー!7時になったぞー!」
351名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 23:47:58 ID:eZkB8kxd
午前7時10分。味噌汁にネギを加える。味は上々。
妹の部屋の扉をガンガンとノックする。
「舞!起きろ!」
午前7時15分。
母の仏前に炊きたてのごはんを供え、手を合わせる。
そのまま軽く仏壇の掃除。
午前7時25分。
「さっさと起きろやああああああ!!!」
妹の部屋に乱入。カーテンと窓を全開放。ベッドの上の蓑虫を、布団の端を持って床に振り落とす。
「さぶ、寒っ!?なにここどこ?私はさっきまで南の島に」
「寝惚けんなあー!」
思いっきり頭をはたいてやるとそれで覚醒したらしい。
「おわー!?なになんで1時間も時間進んでんの!?タイムスリップ!?私ってば時をかける少jyおべぶ」
「……呑ッ気に現実逃避してる場合かあっ!さっさと支度しろメシできてんぞ!」
「ちょ、何もアタマ踏む事無いじゃんバカお兄いっ!!あんまり叩くとバカになるんだぞっ!?」
「どう考えても手遅れだろこのバカ愚妹。早くしろ、かーちゃんにちゃんと手は合わせろよ」
そう言い捨てて部屋を出る。
背後から悲鳴が聞こえたがもう知らん。
自分の分の朝食を食べ終わり、食器を洗う。
食べてる間にちゃんと鈴の音が聞こえたから、一応かーちゃんに朝の挨拶だけはしたらしい。
うん、舞はバカタレだがこういう所は偉いな。
「うわああああん兄ちゃあああああん、アタマやってええええええ!!」
……前言撤回。
「一人で身支度できねえような髪ならもう切っちまえよ坊主にでもしろ」
「できるよ!ちゃんとできるけど、今日はそれしてたら顔が間に合わないんだよう!」
「スッピンで行け!スッピンで!スッピンかおどろ髪かどっちかで行け!」
「無茶いうなあ!それ女の子にとってはパンツ一丁で外歩けってのと同じ意味なんだぞう!」
あーもう面倒くさい!
「あっ、なんでお団子にするのさ。今日はゴージャスめな巻き髪の気分なのに」
「毟るぞ」
「ごめんなさい」
352名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 23:48:49 ID:eZkB8kxd
サクサクとお団子に結い上げてやり、飾りの付いたヘアゴムを付けてやる。
「おー……、やっぱ兄ちゃん上手いなあ」
「煽てても何も出ないぞ、それよりとっととメシ喰え」
慌てて朝食をがっつきだす。
ああそうだ、コイツに頼みたい事を忘れる所だった。
「舞子、お使い頼む」
「ん? お使い?」
「これ、凪ちゃんに渡してくれるか」
包みをみるなりニヤリと笑みを見せるバカ愚妹。
「……ほほう?ほーほーおーう? 凪子に? 兄ちゃんから? ふふーん?」
そのニヤケ面やめろ。
「この可愛く美しく賢い妹さまならー? ヘタレ兄のお願い聞いて渡してあげてもいいけどー? それには条件がありましてよ?」
「オマエもう本当調子に乗るな?」
「痛たた痛い、いだだだだだだ。ちょ、お兄様やめてマジやめてウメボシやめていたいいたい」
額を押さえてぶーぶー文句を言ってくる舞子。……仕方が無いな。
「なあ舞ちゃん、ちゃんと兄ちゃんの言う事聞いてお使いできたらな? 今日の晩飯はコロッケとメンチカツにしてあげよう」
「引き受けました兄上様。全てこの妹にお任せくださいませ」
コロッケコロッケー♪ と嬉しそうに歌いだす。
……我が妹ながら安上がりな女だよなあ……。兄ちゃんちょっと心配になったんだが。
あ、そうだ。
「そういや舞子、お前はお返しとかしなくていいのか?バレンタインに結構な量もらってただろう」
そうなのだ。
この妹はもてる。通っている学校が女子高なせいか非常にもてるらしい。同性に。
「ああ、うん。チョコくれた子には今日ほっぺにちゅーしてあげるの」
……女子高って……。
「それだけでみんな喜ぶのよ。フフフ、私の美しさってば罪ね!」
まあなんというか。
この妹は、こういう脳の湧いた発言をしてしまうくらいには美人なのである。
俗に男は女親に、女は男親に似るというが、ウチの兄妹の場合はまさにそれ。
親父は男の俺から見ても男前だし背も高い。会社の女の人にとてもモテるらしい。
俺たちの母親は7年前に死んだのだが、記憶の中でも、写真をみても、とてもではないが美人といえる顔立ちではない。
……というか、俺、だんだん母ちゃんそっくりになってきてるんだ……。
まあそれはともかく。
「舞、言っとくけど凪子ちゃんに余計な事言うなよ」
放っておいたら何を付け足して喋るかわかったもんじゃない。
「余計って何をさ? ……っていうか、これ包みだけ? なんか無いの兄貴の思いのたけを綴ったラブレターとか」
「アホ、バレンタインにもらったからそのお返しだ。凪子ちゃんのだってただの義理チョコだよ」
「……義理? 凪子が? にいちゃんに? ……まあいいけど」
「なに口の中でボソボソ言ってんだ舞」
「なーんでもないよー」
……引っかかる態度だなあ。まあ、ちゃんと渡してくれるんなら文句は無いんだが……。
353名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 23:50:14 ID:eZkB8kxd
そしてまだ終わらない\(^o^)/
すいません、もうしばらく続きます。
今回はここまで。
354名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 00:00:45 ID:H/rgrHsE
うおお続きが気になるぜぇーーー!!

君が!完結させるまでっ!
全裸待機をやめないッ!!
355名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 01:05:24 ID:GGLjKErY
乙です
テンションあがってきた!

楽しみに待っておりますが、無理はなさらずに。
356名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 03:17:02 ID:/nByDSjI
舞子の方に萌えてしまった俺は幼馴染萌え失格ですか
しかしこれは期待せざるを得ない

>>345
幼馴染物の醍醐味だよな。慣習化した二人の決まり
弁当とか起こすとか部屋で人間座椅子とか!!

幼馴染ってどこで幾らで買えるんですか…臓器売れば買えますか…orz
357名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 19:10:39 ID:FW/rn1kI
>>356
臓器となったあなたは幼馴染の命の一部となって今も生きている(完)
ですね、わかります。
358名無しさん@ピンキー:2009/03/20(金) 23:32:30 ID:M+kocHt2
もう我慢ならん!幼稚園年中から一緒の幼馴染み(女)に告白してやる!大学まで一緒ってバカにしてんのか!……ま、そんな勇気があればもっと前にしてるんすけどねorz
359名無しさん@ピンキー:2009/03/20(金) 23:42:58 ID:yfw8Xj+O
そうですかがんばってくださいね
360名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 00:51:35 ID:nBXd71Os
>>358
今しろ 直ぐしろ とっととしろ
たとえ駄目だったとしても、うじうじ悩んで過ごすよりいいじゃナイカ
361名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 01:33:48 ID:uuobPTSN
360が良いこといった 解決終了 

>353
凪子ちゃんの性格がまだつかめないところが余計にwktk
早く本格的に出てきてほしい・・・
362名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 14:04:55 ID:xRxtVpEU
最近幼馴染みSS読んでると青春もクソもなかった学生時代思い出して泣きそうになる。スゴい空しい
363名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 19:22:03 ID:PmX5tPOZ
小学生の頃仲の良かった(そして好きだった)幼馴染みが知らん間に結婚してた。
出来婚とかwww



みたいな俺の様にならぬよう、リアルで幼馴染みが好きな奴は早めに告っとけ。マジで。
364名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 20:15:34 ID:Y04PE2uA
リアルの話はvipなり他スレでどうぞ。そこでいくらでも聞いてあげます。
365名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 20:29:32 ID:Y04PE2uA
>>345
『捨ててください』と言っていた
凪子ちゃんの受け取る時の反応が楽しみです。GJ!
366名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 23:41:52 ID:iQ/sK6Uh
昔書いた幼馴染みモノっぽいプロットを発見したので。軽く前振り投下

小学生の頃一緒に道場に通っていた年下の女の子。
真剣な表情で武術の鍛錬をする少女。
同世代の練習生を容赦なく叩きのめす姿は優雅だった。
彼女は強かった。なんの迷いもなく、一切の躊躇を捨てた攻撃。
僕はそれを美しいと感じた。
他の子では相手にならないということで道場主の甥とである俺が組み手の相手をさせられた。
勝てなかった。僕のちっぽけな自尊心は簡単に踏み潰された。
倒れる間際に垣間見たガラスの様な瞳。その瞳は何も見ていないようだった。
数週が過ぎ僕は何とか彼女と対等に戦える程度には成長した。
僕の拳が初めて彼女を捕らえた。
その瞬間、彼女はかすかに   笑った。
…用に僕には見えた。僕は恋に落ちた。
それから稽古が終わった後に彼女と遊んだり話したりするようになった。
遠距離にすむ彼女とは毎日は会えない。
だから会える日は精一杯楽しんだ。
外での彼女は明るかった。年相応に明るく、ちょっとがさつで口が悪い。
割と世間知らずで駄菓子屋で大はしゃぎする、そんな普通の女の子。
このときの僕は彼女にその「一面」しか見せてもらえなかったんだなと、気づけなかった。
367325:2009/03/22(日) 00:28:36 ID:1ezu8eRA
武道少女はよいものです。
昔は少女のほうが強かったのに成長期に入って少年に追い抜かれて焦ったり、
悔しさに涙したり、凛々しい彼女の脆い一面を見て少年は動揺したりと……。
とにかく良いものです……。激しく期待しております。


とりあえず、続きです。凪子視点の話になります。
少しですが投下させていただきます。
368325:2009/03/22(日) 00:29:30 ID:1ezu8eRA
またちゃんとできなかった。
学校帰り、舞子と歩いていたらユウさんにばったり会った。
手にエコバッグを下げていたから、近くのスーパーでお買い物をした帰りなのだろう。
先月からずっと気まずかったから、ちゃんと挨拶したかったのに。
声が引っくり返ったりしないかとか、上手く笑顔になる事が出来なくて焦ったりとか、
日暮れ前の時間の挨拶はこんにちはで良いのか、こんばんはにするべきだろうかとか、
なにか気の聞いた世間話の話題は何かないのかとか、そもそも先月の事を問いただされたらどうしようとか。
そんな事が頭の中をぐるぐる駆け回ってるうちに、酷く愛想の無い声と表情しか出てこなくなってしまう。
私はいつもこんなのばっかりだ。
自分でも本当に嫌になってしまう。
いくらユウさんが苦手だからって、こんな風にならなくてもいいのに。

私はユウさんが苦手だ。
世話焼きな所も、家事が万能な所も、私を舞ちゃんと同じように扱う所も全部苦手だ。
――先月バレンタインにチョコを持っていったときも、私が作ったものより遥かに美味しい
チョコクッキーを逆にご馳走になってしまった。
本人はクラスメートに馬鹿な事をいうヤツがいて困るんだって言ってたけど、頼られる事そのものは嬉しそうだった。
そういう所も、私は苦手だ。
私が作ったチョコなんて、ユウさんのクッキーに比べたら酷いものだったし、渡さずに捨てようと思ったのに。
……送ってもらう事になった帰り道で、つい渡してしまった。
あんまり自分がみっともなくて恥ずかしくて、つい「食べずに捨ててください!」なんて言ってしまったし。
……そんなゴミを渡すみたいな言われ方したら、怒って当然だと思うのに。実際、私のチョコなんてゴミみたいなものだったし。
びっくりしてたみたいだけど、それでも『ありがとう』なんて言ってそんな物を受け取ってしまう、そんなお人よしな所も私は苦手だ。
…………本当に、苦手なんだ。
369325:2009/03/22(日) 00:30:27 ID:1ezu8eRA
「――じゃーねー、なぎこー。また明日ー」
うん。と肯いて舞子と別れて部屋に戻る。
駅前から少し歩いた所にある、よくある一人暮らし向けの賃貸マンション。
そこが、半年ほど前からの私の帰る場所だ。
制服のセーラー服を脱いで部屋着に着替える。
まずはお風呂を洗って、夕飯の支度をしなくてはいけない。
父が仕事の為、義母を伴って海外に行く事になった為、はじめた一人暮らしだったが未だに慣れない。
「……いたた」
冷蔵庫を開けたところでくらりと軽い目眩を覚える。
そういえば、夕方から少し頭痛がしていた。
今日の小テストの勉強のため、昨日少し夜更かししたのがいけなかったのだろうか。
私は元々頭痛もちなのだが、今日はいつもよりも酷い気がする。
「……きもちわるい……」
食欲などどこかに行ってしまった。いつも飲んでいる痛み止めと胃薬だけを飲んでソファーに横になる。
少し寒いが、まだ入浴していない身体でベッドに潜り込む気分にはなれなかった。
頭痛は嫌いだ。
痛みそのものもだが、こんなふうに痛み止めを飲んで横になると昔の嫌な夢をいつも見る。


ママが家を出て行ったときのこと。
親戚や周りの大人のヒソヒソ話。
冷たい眼。
『あの女にそっくりだ』
『この子もロクなもんにならん』
『見てみろこの生意気そうな顔』
『綺麗な顔だが人形みたいに陰気だな』

ぜったいにみんな見返してやる。見ていろ絶対にゆるさない。絶対にだ。
370325:2009/03/22(日) 00:31:23 ID:1ezu8eRA

「―――――ッ!」
自分の悲鳴で目が覚めた。
寒い。
酷い寒気がする。震えが止まらない。
……風邪、だろうか。
体温計は……、ああ、そんなもの無かった。
時計を見ると朝の7時だった。あのままソファーで眠り込んでしまったらしい。
寒気に震えながら寝室のベッドに潜り込む。
携帯電話でどうにか学校に休む事だけを連絡する。
……寒い。寒い。
なにか胃に物をいれて薬を飲んで眠る。
風邪を引いた時にはそれが一番だとわかっているけれど、とてもじゃないけど出来そうに無い。
凄く眠いけど眠りたくない、またあんな夢をみるのは嫌、嫌だ……。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

夢を見る。
――ああ、ママがいなくなってすぐの頃だ。
一人で泣いている小さな私が見える。
頬を赤くして、声も出せずにしゃくりあげている小さな私。
――イライラする。泣いたってどうにもならないのに。
自分でどうにかするしかないのよ、そうするしかないの。
そう怒鳴ってやりたくなる。昔の私に聞こえるはずなんて無いのに。
泣き続ける小さな私の隣に座っているうちに、私まで子供のように泣きたくなってくる。
――もう泣かないって決めたのに、誰にも頼らない私でいたいのに。
気がつけば、夢の中の小さな私と同じようにうずくまって泣いていた。
ふ。と影が差す。
「……えっと、凪子ちゃん? どうしたんだこんなとこで」
隣にいた小さな私がくしゃくしゃの泣き顔になってしがみつきに行く。
――ちいさなわたしにとっての、誰より頼りになる割烹着姿のヒーローがそこにいた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
371325:2009/03/22(日) 00:33:24 ID:1ezu8eRA

……携帯電話の電子音で眼が覚める。
部屋の中はもうすでに薄暗い。いつのまにか、夢現のまま1日がすぎていたらしい。
まだ覚醒しきれない頭で誰からなのかも確認せずに電話を取った。
『――あ、凪子ちゃん? 伊庭です、舞子の兄の。祐助です。舞から凪子ちゃん風邪だから差し入れ持って行けって言われて。
 ごめん、自分でも非常識だと思うんだけど、いま凪子ちゃんの部屋の前にいるんだ』
夢の中の声よりも低いけど、変わらない優しい声。
ユウさんの言葉をきちんと頭の中で咀嚼する前に。勝手に身体が動いていた。
『――果物とかヨーグルトとかレトルトのおかゆとか色々持ってきたから。ドアノブにかけておくから後で――って」
玄関ドアを開けると、びっくりした顔のユウさんがそこにいた。
やっぱり私はユウさんの事が苦手だ。
頼りたくないのに、誰にも甘えない女でいたいのに。
どうしていつもこの人はこんなに私を甘やかすタイミングで登場するんだろう。
そのままの勢いでユウさんにしがみつく。
珍しく、ものすごく焦った顔をするのを見て、ざまあみろ。と思った。

372325:2009/03/22(日) 00:38:01 ID:1ezu8eRA
今回のお話は以上です。


ようやくでてきた幼馴染みについて。

津田 凪子(つだ・なぎこ)
色々ギリギリイライラタイトロープ少女。
好きな食べ物はハッピーターンの粉。
373名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 00:39:52 ID:MkOeu9Dt
リアルタイムGJ
凪子ちゃん可愛いよ
次回作wktkして待ってます
374名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 00:57:18 ID:WFACFFzt
ktkr
超GJGJGJ
次回が楽しみで仕方ない
375名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 01:29:29 ID:H8jOVv+A
素敵でござる
376名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 01:43:19 ID:9AWox83x
>>372
好きな食べ物が、あの娘と同じだ
ひさびさに電話してみるかな
377名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 15:45:11 ID:M21EpB9w
ええええ
ここまでなの?!
378名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 23:06:45 ID:X5fUkDiz
>>325さん
GJです
>>366さん
期待してます
379名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 01:13:21 ID:fuMzeqAF
夕華さんはまだかなー。
380名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 18:55:05 ID:8xhBz4r/
>>379
ボルボックス氏は時間を掛けてフルコースをダーンと出すタイプだから次回は次スレとかザラ。
ゆっくりと待つのが吉。
381名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 00:20:53 ID:6/zzLfa1
朝、登校中に走ってる幼馴染みとぶつかると言う黄金パターンに遭遇した事があるのが俺の自慢。


ただ俺は歩きで幼馴染みは自転車通学だったがな
382名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 03:07:20 ID:oAUkeQff
春休みにはリアルを語るガキが増える…

ま、荒れるのもあれだしスルーで。
383名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 03:27:44 ID:XvUIAmXQ
登校中にぶつかるのは転校生だろ。
384名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 10:20:53 ID:UT7qLX3+
>>383
だな
で、教室で紹介されて「「さっきの!!」」てな感じで
385名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 10:28:14 ID:aM0HuXxU
男「ぶつかり様に秘孔を突いた。お前の命も後三秒……」
転「ほぅ、ならば数えてやろう。ひとーつ、ふたーて、みぃーっつ!!」
386名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 10:56:13 ID:dakmbzQS
補修
387名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 21:02:43 ID:ITSLyKEt
>>385
媚びてくれないのかぁw
388名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 21:10:22 ID:P318V3N8
幼馴染みとぶつかると言えば、入れ替わりフラグだろjk
389名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 21:33:15 ID:aM0HuXxU
 幼馴染みと中身が入れ代わったけど、何故か感覚は共有。
 主人公が興奮しながらオナニーしてたら、幼馴染みが顔を真っ赤にして部屋に飛び込んで来る。

 そんで最後には、
幼「あの……私に男のオナニー教えて欲しいんだけど」
男「手で擦るんだよ」

幼「こう? 全然きもちよくならないよ?」
男「そうじゃなくて。貸してよ、一度やったげるから」

幼「ふああぁぁぁぁっ!!?」
男「ちょっと、ボクの身体で変な声を出さないでよー」
 と言いつつも、感覚を共有してるので男も気持ち良くなってくる。
 みたいなのも読んでみたいな。
390名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 22:01:28 ID:jcWKz1M2
>>385
そんなノリのいい奴がいたら、即座に親友だぜw

で、だんだんすきになるんだけど親友のいちが居心地よすぎて勇気が出なくて、
でもやっぱり気持ちは抑え切れなくて・・・
391名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 22:18:28 ID:aM0HuXxU
転「こんなに苦しいのならば、愛などいらぬっ!!」
392名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 22:58:30 ID:b1QpxiLN
>390-391

流れが滑らかすぎて吹いたぞw
393『お涙ちょーうだい』:2009/03/26(木) 17:03:09 ID:TkMSPJWa
1
 あるところに幼馴染みの若い男女がおりました。
 男は何をやらせても完璧で、容姿も誰もが羨む格好です。
 女は何をやらせても不器用で、容姿だって人並みです。
 二人は気持ちこそ伝えていませんが、互いに愛し合っていました。

 そんなある日の夜。女は窓を開けて月を見上げ、「私がもっと可愛かったら、男と釣り合うのに……」と呟きました。
 するとどうでしょう。女が翌日に目を覚まして鏡を見ると、猫っ毛だった髪はサラサラのストレートに、一重だった瞳はパッチリ二重に変わっていました。その顔は間違いなく美しいのです。
 女は嬉しくなり、男に変わった顔を店に行きました。
 男は女の喜ぶ姿を見て、「良かったね」と笑いました。
 ですがその時、男の髪から艶は失われ、メラニン色素が抜けて色褪せていたのです。

 それから数日後、女は月を見上げて、「私の胸が大きかったら、男君にもっと見て貰えるのに……」と呟きました。
 するとまたしても、翌日に女の身体が変化していました。
 申しわけ程度だったAカップはEカップの巨乳に、くびれの少ないウエストは余分を無くして引き締まっていたのです。
 女はすぐに男へ見せに行きました。男は「良かったね」と微笑みました。
 ですがこの時、男の視力は極端に低下し、眼鏡やコンタクトを付けねば物を見る事ができない程になっていました。
 ですから女のセクシーな身体も、男には見えていなかったのです。

 更にそれから数日すると、女は街でスカウトされて、人気アイドルになりました。
 写真集は売れ、テレビ番組にも引っ張りだこです。あまりの急がしさに、男への想いも僅かに薄れて行きました。
 ついにはCDデビューする事も決まったのですが、ここで致命的な事が起こります。
 女は歌が下手でした。プロデューサーから何度も駄目だしを喰らい、次にスタジオインする時まで音痴のままなら、CDデビューは白紙に戻すと言われました。
 女はショックを受け、久し振りに男と会いたくなって、男へ会いに行きました。
 ですが男は会う事を拒み、電話越しに「大丈夫だよ」と励ましました。
 すると翌日には、女の歌は見違える様に上達し、CDもミリオンヒットを記録するのでした。
 女が男へと電話で感謝を伝えると、「良かったね」と明るい声が返って来ました。
 ですが低く凛々しかった声は枯れ、ガラガラの醜い音でした。
394小ネタ『お涙ちょーだい』 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/03/26(木) 17:04:17 ID:TkMSPJWa
2
 この時期になると、流石に女も気付きます。男は、女の願いを叶える力を持っていると。
 女はそれに気付くと、つまづく度に男へと連絡し、その度に乗り越えて行きました。

 しかし数年もすると、男に会いたいと言う思いが日に日に強くなり、ついに我慢できなくなって引退してしまいました。
 そして女は男に会おうとしたのですが、男は「こんな姿では会えない」と断ります。
 それでも女は会いたいと言います。女にはもう男しか居ないからです。抑え切れなくなり、「ずっと前から好き」と告白してしまいました。
 
 男は「何もできなくなった」と言います。
 女は「それでも好きだ」と言います。
 
 男は「格好悪くなった」と言います。
 女は「それでも好きだ」と言います。

 結局男が折れて、会う事を承諾します。
 数日後、女は男にきちんと告白しようと決めて、男の家に行きました。
 男の家の玄関に鍵は掛かっていません。女は不思議に思いながらも、男の部屋へ微かな記憶を辿って向かいます。
 そしてドアを開け、男の姿を見ると、女は驚いてしまいます。
 男は最後に会った日から、別人のように変わっていたからです。

 ベッドの上に仰向けで横たわり、髪の色素は完璧に抜けて白く透明に、
 右目の視力は失われて閉じられ、残った左目も僅かに細く開かれているだけです。
 呼吸も遅く小さく、身体は痩せこけて骨張っています。

 男は、自分を犠牲にする事で願いを叶える事ができるのでした。
 女は全てを悟り、泣きながら男に抱き着きます。何度も謝り、何度も「好きだ」と伝えました。

 しかし、男は限界でした。女の「会いたい」と言う願いを叶える為に、入院していた病院から退院して来たのです。
 医師も手の施しようが無かったので、死期を早める事になると分かっていても、男の意志を尊重して退院を許可しました。

 女は「男と一緒になりたい」と言います。
 男は「明日には死ぬから無理だ」と言います。

 女は「私も一緒に死ぬ」と言います。
 男は「生きて幸せになれ」と言います。

 男は女の幸せの為に身を削って来たので、女には人生を全うして欲しかったのです。
 こんな男一人の為に、残りの長い人生を捨てて欲しく無かったのです。

 ですが、女は「それなら……」と、「男との子供が欲しい」と言いました。
 男は勿論ことわりましたが、女に「お願い」と言われて、叶える事にしました。
 この願いを叶えた瞬間、自分は死んでしまうと感じ取れます。
395小ネタ『お涙ちょーだい』 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/03/26(木) 17:05:29 ID:TkMSPJWa
3
 女の顔は美しく、女の身体は官能的でした。
 処女でしたが、必死に男の上へ跨がり、挿入して、腰を振りました。
 そして男の精が中へと注がれた瞬間、女は気絶して男の上に倒れてしまいました。

 翌日、女が目を覚ますと、男の姿は有りませんでした。
 それどころか、男の私物さえ有りません。部屋にはベッドだけでした。

 不安になり女は、学生の頃の知り合いに男の事を聞いて回ります。
 ですがみんな、「そんな男は知らない」と言います。
 女は気付きました。この世界から、男の存在そのものが消えていたのです。
 男が存在するのは、女の思い出と、日々重さを増してゆくお腹の中。

 女は静かな田舎に庭付きの一軒家を買い、そこで、産んだ三つ子を一人で育てる事に決めました。
 沢山の男からプロポーズされても全て断り、大変でも子供達の世話を一人で行います。
 そして子供達に、男の事を自慢気に語って聞かせるのでした。
 やがて子供も大きくなって子供を産み、家から出て行きます。
 たまにやって来る孫達へ会うのを楽しみに、男の自慢話しするのを楽しみに、静かに一人で暮らします。

 そして数十年後。女にも寿命が来ました。
 暖かな春の夜、庭には桜の木が綺麗に咲いています。
 女は座敷で布団に横たわり、三人の子供と、十人の孫と、二十人の曾孫に囲まれて、天命を終わらせようとしていたのでした。
 家族みんなに好かれ、みんな涙を流して泣いています。明日までもたないとみんな分かっているのです。

 女も自らの最後を感じ、最後に全員の顔を見ようと視線を周りに向けました。
 そして、開かれた障子の奥、桜の木の前を見た時、ビクリと身体は固まってしまいます。
 心臓は高鳴って熱を持ち、無意識に声を絞り出させるのです。
 庭に居たのは男でした。若い昔の姿で、微笑みながら女へと近付きます。

 女の家族達は突然現れた男に驚いて動けません。
 ただ一人、小さな男の子だけは男の前に立ちはだかり、「連れて行くな」と睨みます。
 しかし、その男の子の頭に手が置かれ、「ゴメンね」と声が掛けられました。
 男以外、みんな驚いています。
 なぜなら、歳老い死ぬのを待つばかりだった女が、立ち上がって手を置いたからです。
 女はそのまま男へと歩んで行きます。家族達は「行かないで」と叫ぶのですが、女は「ゴメンね」と言いながら歩みを止めません。
 一歩進む度に若返り、男と触れる距離まで近付いた頃には、最初の願いを叶えて貰う前、学生の時まで身体が戻っていました。

 男は「今なら、幸せに死ねるよ?」と女に言います。
 女は「一緒になりたいって願いを叶えてくれるんでしょ?」と言います。
 そして女は家族の方を向くと、「この人が私の好きな男の人なの」と頭を下げました。
 死ぬ直前まで他に男を作らなかった、操を貫き通した、それまでに愛した男。女は家族より男を選んだのです。

 家族はみんな止めましたが、なぜか追い付く事ができず、男と女は桜が舞い散る夜の闇に消えて行きました。
 そして次の日には、男と同様に、女の存在もこの世から消えていたのでした。

 男の事も、女の事も、この世で覚えている人は誰もいません。
 唯一お互いだけが、お互いを知るのです。




 おわり
396名無しさん@ピンキー:2009/03/26(木) 17:07:25 ID:TkMSPJWa
2時間ドラマにありそうな、
狙った、お涙頂戴ドラマの脚本みたいな感じで書いてみました。
397名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 00:55:32 ID:TZIa/xB/
イイハナシダナー
398名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 20:36:14 ID:5/UAqMkr
ぬーべーでこういう話あったよね
399名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 00:14:00 ID:2T0v1xp6
>>398
途中までは俺もそう思った
400名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 00:37:57 ID:6PhWC6Fm
年下の幼馴染みって良いよね。
401恋愛相談:2009/03/28(土) 22:07:33 ID:skLK7a+y
超鈍い男を好きになった控えめ幼馴染みの話、エロに発展できるかはまだわからないけど投下するよー






近所、というか裏隣に住む結希(ゆうき)が家にきた。なんでも相談したいことがあるらしい。
いったい何の相談なんだろうか?
「お邪魔します……へー、部屋片付けたんだね」
結希は部屋に入るなり失礼なことを言ってきた
「前は課題が机に乗ってたから片付いてないように見えたんだろうが。あの量は異常だっつーの」
長期休暇に出されたプリント合計4kgだ。不評だったのは言うまでもない
「あははは……ごー君真面目にやればすぐ終わらせれるのにね」
まぁ真面目に勉強すればそれなりの成績を取れるが、面倒じゃん?
「買い被りすぎだ。……で、今日は何の相談だ?前みたいにゴキブリ対策ってどうしたらいい?とか微妙な内容だったら怒るぞ?」
そーゆー相談が昨年夏にあったのだ。
「えっとね……その……す、好きな人ができたの!」
「ほー、それはよk…………」
突然の宣告で俺はどんな顔をすればいいのか分からなくなってしまった。
だって、色恋とは無縁といわれる俺が好きな相手は目の前に居る結希なのだから
「ち、ちょっと待て?ひひひっひふーと深呼吸して落ち着こうか!?」
「それじゃあ息苦しくなってかえって落ち着けないよ。ていうか真面目な相談だよ?」
結希は若干しょぼくれてしまった。俺はなんとか気を取り直して色々聞くことにした
「で、誰を好きになったんだ?」
「んー……内緒。でもごー君に似てるかも?」
なんて微妙な奴をっ……でも我慢我慢。
「なんで好きになったんだ?」
「えっとねー……結構昔からの知り合いなんだけど、いつのまにか好きになってたんだー」
あれ、結希の知り合いでそんな野郎居たっけ?まぁいいか。
「で、なんで俺なんかに相談することにしたんだ?」
「だってほら、私気が弱いじゃない。」
あぁ、つまりその野郎に似てる俺は練習台なわけか……くそっ
「大丈夫?なんだか顔色よくないけど……」
「いきなりの事で顔面筋が硬直しただけだ」
……平常心平常心、落ち着くんだ轟(ごう)、多分これはまだジャブだ
「で、何が聞きたいんだ?」
「んとね……今から質問するからなるべく全部答えてね?じゃあ001問」
「待て、1はまだしもなんで0が二つ前置きなんだ?」
「傾向練るために200問程質問表作っちゃったから?」
結希が好きになった男、貴様は一回殺す。重いじゃないか!
「じゃあ、始めるねぇ……」
俺が質問攻めの業苦から解放されたのは、それから二時間後のことだった
402恋愛相談2:2009/03/28(土) 22:21:48 ID:skLK7a+y
私は部屋に戻るとベッドに倒れこんだ
「ごー君、いくらなんでも鈍すぎだよー。そりゃ私がいつまでも言わないのがわるいんだけどさぁ……」
裏隣に住む轟君とは家族がここに引っ越してきてからかれこれ10年以上の付き合いだ。
轟君は誰とでも仲良くなれる人だったから私ともすぐに仲良くなった。
彼を友人として、ではなく好きな人として見るようになってから5年は経つ。
その間私は遠回しではあるが好意を告げてきていたのだが、
周囲が全員それに気付いているのに轟君は今だに気付かない。恐ろしい程に鈍い。
まぁ、それにはいくつか理由があるから仕方ないんだけど。
まず色恋話に興味を持たない、次に顔があまりいいとは言えない。最後にいい人過ぎる。
鈍くて当然な条件下で育ってきたからまぁ仕方ないけど、まさかここまでてこずるとは……

「まぁ、今度こそ……」
今日は私が誰かを好きになった。そう宣言できた。後は猛アタックするだけだ。
まぁ勇気が無いからそんなにあからさまな真似はできないわけだが……

とりあえず練習と称して明日から轟君にお弁当を作ることにしよう……
私はそう決意し、先程書き記した質問表からお弁当の献立を組み立てることにしたのだった…………





今回はここまでー
エロくなくてゴメン(´・ω・`)
403名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 22:35:10 ID:JwLqv968
続きまってゆ!!
404名無しさん@ピンキー:2009/03/29(日) 00:53:54 ID:Un+KoJKf
すれ違わないように祈って
続き待ってまゆ!!
405名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 22:57:09 ID:veFhyzqZ
支援ンンン
406名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 08:02:27 ID:URhJNOGz
幼馴染みというのは何歳差くらいまでが許容範囲なのだろうか……?
407名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 08:46:08 ID:zaPwZqTs
>>406
人の数だけ答えがあります。


俺的には5、6才までかなぁ
408名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 09:47:29 ID:pJigPGnZ
オレ的には2才差くらいだな。
それ以上はとなりのお姉ちゃんって感じだ。
409名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 11:25:15 ID:pbumJ25m
だが幼馴染の隣のお姉ちゃんというのもいいものではないか?
410名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 09:08:01 ID:4eQnv/Q3
隣の妹ちゃんも悪くはにぃ
411ボルボX ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 09:46:43 ID:Oet9ybQh
規制が解けないため携帯から投下させていただきます
412春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 09:50:07 ID:Oet9ybQh
 「火焔は」男は夕華に言った。「焼き尽くす」

 月のない黒い夜、風なまあたたかい戌の刻。

 七年前、夕華がまだ十一歳の夏だった。

「百五十年前の猛火は、坂松の城と城下町を灰燼に帰したのだ。
 配下の軍勢に火をつけさせたのは、おまえの先祖である京口為友卿だ」

 場所は京口邸の広い庭の一角。
 古雅なつくりだが手入れがいきとどかず荒れた、回遊式の庭園である。
 荒れてはいても、満月のときであればそれなりの眺めになる。白く照らされた松柏は蒼古としてそびえ、崩れかけた築山さえおもむき幽玄となって、寂たる晩景にとけこむのだ。

 けれど今宵は新月であった。
 無明の闇のなか、ただ虫の音のみが鈴(リン)、鈴、鈴とすずしかった。

 茶室横の露地の待合いには、ほおずき提灯が軒先に吊るされて灯っていた。
 その下にある松材の腰掛けにすわって、瀟洒な着流し姿のその男はひとりごとのように語っていた。
 内容は、京口家と渋沢家の歴史ということだった。

「だが人が住みつづけようと思う地であるかぎり、町の再建はすぐにはじまる。
 大火のあと為友卿が坂松市のためおこなったのは、鴨居川の西岸の開発と、東岸の復興……
 夕華、つぎは水月に打て」

「はい、父様」


 夕華は従順、というより慎重に返答した。Tシャツにショートパンツ、スニーカーという男の子のような活発な服装だったが、このときの夕華につねの明るさはない。
 いつもと雰囲気の違う父の目を意識しながら、夕華は二間半(約4.5m)先の的にむけて一歩ふみこんだ。
 手のひらにしのばせた鉄貫を、灯に照らされた人間大のわら人形めがけて打ちはなつ。

 鉄貫とは、棒手裏剣の一種である。
 修練のため、的用のわら人形が露地に立っており、夕華は小学校にあがる前からそれに向けて打っている。
 森崎流手裏剣術は、京口子爵家のお家芸であり、夕華の腕前は祖父仕込みだった。

 金属の鈍い光が少女のてのひらから手走り、提灯の火明かりを突っ切って飛露のようにきらめく。
 流星となって飛んだ鉄貫は狙いたがわず、わら人形の水月にあたる部分に突きたった。

 ひとつ男はうなずき、「血だな。おまえは先祖のように打剣を能くする」と褒めた。

 夜気は、川の水うわぬるむほどだった昼の酷暑をひきずっている。晩とはいえ夕華の頬には汗がつたわっていた。
 にもかかわらず、声をかけられて少女は寒気を覚えた。

 やはり今夜の父はおかしかった。「困った娘だ、女の子だというのにそんなものを好んで」――父はふだんから嘆かわしげにそう言っていたはずだ。
 夕華は、手裏剣の稽古自体は好きである。
 友人たちとじゃれあっているときのほかは、何よりもこの時間が楽しいくらいだ。習わされている生け花より舞踊より、琴棋書画のいずれよりも。

 だが今、父親にはむしろ「打剣しろ(手裏剣を投げろ)」と言われているのに、夕華ははっきりと怯えていた。
 話の内容ではない。小学生には少々むずかしいところがあるが、べつだん怖いものではなかった。
413春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 09:52:18 ID:Oet9ybQh

 怖ろしくてたまらないのは父そのものだ。あるいは父によく似た、あの何かだ。
 いつもの父には、こんな異様な圧迫感のかけらもなかった。本が山と詰まれた書斎にこもり、珈琲を夕華がはこんでいくとにっこりして礼を言ってくれる人なのだ。

 わら人形から鉄貫を抜き、汗のにじんだ手のひらににぎりしめながら、少女は祈った。

(はやく来て。柿子、きょうくん。早く来て。
 「このひと」は怖い。私の知ってる父様とはちがう)

 今夜、夕華は、地域の地蔵盆に出席することになっていた。夕華の祖父は、同年代である渋沢家の当主とともに一足先に出向いている。
 まもなく渋沢家の姉弟が、ここに夕華を迎えにくるはずだった。ひとり娘の夕華にとっては、きょうだい同然とよべるほど結びつきの深い子供たちである。
 かれらが迎えにくるまでの空いた時間を、鉄貫を打つことでつぶしていたのだった。

 そこへ、めったに書斎から出ない父が現れて、ぽつぽつと話をしはじめた――最初は、今夜の父様はなんだか鬱々としている、くらいにしか思わなかった。

 話がつづくうち徐々に、肌寒い感覚がつのっていった。黒水よどむ底なし沼をのぞきこんでいるような感覚。
 平坦な父の声音から、黒冥々とした陰の感情が伝わってくるのだ。
 それは夕華に対するものではないけれども、鋭敏な少女の神経は圧迫を受けずにはすまなかった。

 いつか逢魔ヶ刻に、おとろしなる怪が出るという山中の社を見に行ったことがある。いまの空気は、そのとき感じた怯えと後悔に似ていた。
 いや、あのときはまだしもだった。自分とおなじく震えながらではあるが、渋沢家の姉弟ふたりが終始、夕華のそばにいてくれたのだから。
 いまは、父と自分のほかには誰もいない。

 「この五濁悪世においては」と陰々たる語りがふたたび、荒れ果てた庭園に響きはじめる。

「町の再建、人の救済すらも、けっして善意のみでなされはしない。
 災厄の訪れたあとはしばしば大金が動く。とくに水火の災い(洪水、火事)なら、被害が大きなものであればあるほどに、復興のときの金のめぐりは盛んになる。
 であるからして、再建そのものを最初から望み、古きを壊そうとする者がときたま現れる」

 うつむき気味の父の顔は、暗影となって夕華からは見えない。
 彼は語る。

「町の復興に必要なものは数々あれど、当時なにをおいても重要な物資は『木』だった。
 材木が、大火のあともっとも金になる商品だったのだ」

 木造建築の基礎となる材木は、復興のときどれだけあっても足りないくらい欲される。
 したがって、町を呑むほどの大火事があれば、材木の値は天井知らずにはねあがっていくことになる。

「だから百五十年前も、町が焼けたあと即座に、近隣の商人は材木を買いつけに走った。
 ところが付近一帯の良質な材木は、ある富裕な商家によってすでに押さえられていたのだよ。
 奇妙なことにその商家は、大火が起こされるに先立って材木を買い占めていた。
 ……打て。こんどは二箇所。喉と心の臓」

 圧迫を振り切ろうとするように、言われるまま夕華は二本を同時にはなった。
 が、今度は失敗した。

 二間半先の人形に命中したのは心臓の部位を狙った一本だけで、それも浅くしか突き立たない。もう一本の鉄貫は狙いがそれ、後ろの枯れ松に当たってはねかえってしまう。
 夕華は顔をこわばらせた。
 いつもの彼女の技量ならば、三本まではこの距離でも確実に的に当てられるはずなのだ。恐怖が四肢を緊張させてしまっていた。

 外したことで機嫌をそこねはしまいかと、びくびくして父をうかがう。
414春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 09:54:20 ID:Oet9ybQh

 けれど幸いというべきか、父は夕華の鉄貫が当たるかどうかはどうでもいいらしかった。

「早く拾いなさい。そして投げつづけなさい。
 家のほうからはただの稽古に見えていなければならない」

「……はい」

 家の者に隠す必要があるほどの話なのだろうか。夕華はそんな疑問を抱いたが、有無を言わせない重圧の前で、おいそれと父に訊くことはできなかった。
 それでも、その疑問を読んだのか、父はいきなり言った。

「夕華、おまえは渋沢の家の子供たちと親しいな。
 さっき話にのぼらせた商家は、むろんあの家のことだ。当時、渋沢屋は材木問屋とも関係をもっていた。 為友卿と、かれに蜂起のための金を貸しつけた渋沢家のあいだに、なんらかの密約があったことはじゅうぶんに推測できる」

 最初から「京口家と渋沢家の話」と言われていた。それでも、幼友達とその家のことに言及されたとき、夕華の心臓はどくんと鳴った。
 渋沢家のことを語る父の声音に、好意というようなものは微塵もなかった。

「為友卿のやりようには、悪しきものもあれば善きものもあった。
 城と町を焼いたことで悪し様に言われるが、かれは新政府を一貫して支持し、国を立て直すという理想のため戦った人だ。維新成って後、この坂松市を栄えさせたのもかれの手腕だった。
 一方、渋沢家の商人どもは、焼け跡において貪欲に利をむさぼっただけだ。ほとんどの汚名を京口家におしつけて」

 ぬるい風がふくたびに闇のなかで提灯が動き、ふらりふらりと怪し火さながらに揺れる。
 さばえなす御霊のごとく周囲にむらがり飛ぶのは蛾だった。

「為友卿亡き後、この百年、わが家は渋沢家に追い落とされてきた。
 財の運用に失敗し、富をうしなった。先の大戦の後からは、国政改革と称した華族締めつけ政策がそれに拍車をかけた。
 富と権威のおとろえは加速し、地元であるここ坂松市の議会においてすら影響力は低下していった。
 それと入れ替わるように議会での立場を上昇させてきた渋沢家は、この京口子爵家を地元における最後の競争者とみなして蹴落としにかかった。
 そしてついにわが家は、地元の政界から駆逐されたのだ。
 零落に零落をかさね、いまのわれわれは、この屋敷を維持するための税すら自力で払うことはおぼつかない。
 夕華、おまえだとてわが家の内実がいかに貧を窮めているか知っているだろう。京口子爵家は没落していく一方だ」

 朱灯と、それに羽ばたき集まる蟲たちの下に、物の怪じみたあの何かが黒々とうずくまって、ぶつぶつと家の怨念をつぶやいている。

「代々の当主が実業や政略で失敗してきたのは、かならずしもかれらの無能のためばかりではない。ここぞという局面で不運な事故や当人の怪死があいついだことが大きい。
 わが一族は数が少ない……短命、少子の傾向が強いというだけではなく、この一世紀あたりは死の多い家でもあった。わが身から『発火』して焼け死ぬという信じがたい死に方をした者さえいる。
 それをさして、世人の一部は陰で、火による祟りがくだっていると言う。為友卿が火付け人で、十悪五逆の人だったからと。
 では栄えを謳歌する渋沢家はなんなのだ。あの家の躍進の基礎も、火によってもたらされた赤い財なのだぞ」

 祟りや天罰があるならひとしく落ちよ。

 もとより呪詛に近かったその声には、いまやはっきりと毒念が煮えたぎっていた。
 夕華は振り向けなくなっていた。体が、凍りついたように動かなかった。
 虫の音まで、いつのまにか止んでいた。
415春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 09:56:25 ID:Oet9ybQh

「夕華、この話をしたことは誰にも言うな。それと、これからはうちの使用人たちにも心を許すな。
 かれらは、あちらの家にこちらの事情を流すから。
 おまえのお祖父様はもっと駄目だ。かれはとうに誇りを投げ捨てている。華族らしい最低限の生活をたもつためと称し、渋沢家をたよって金を投げ与えられてきた。
 両家が必要以上に接近したのは、お祖父様の代だ。かれは渋沢家の当主に妾まで世話され、それを外に何人も囲ってきた。亡くなったおばあ様がどれだけ悲しまれていたか。
 わが父上ながら、あの好色の性質には吐き気がする」

 父が幼友達の家を嫌っていることを知ったときに、すでに胃がきゅっと縮まった気がしていた。

 続けて祖父の妾のことを知ったとき、がんと頭に石をぶつけられた気がした――
 この社会で妾をたくわえる者は珍しくない。親友の柿子も、その弟である渋沢家嫡男の京介とは母親がちがう。
 それでも、祖父がひそかにそんなことをしていたのが、十一歳の夕華には衝撃だった。

 それまでの話ですでに耐えかねるおもいだったが、父が祖父のことを嫌悪をこめて吐き捨てた瞬間、夕華の神経に限界がきた。
 感情の破裂が、皮肉なことに金縛りを解いた。

「やめて!」

 振り向いて夕華は叫んでいた。
 鼓膜をとおしていちどきに毒をそそがれることに耐え切れない。耳をふさぎ、その場に座り込んでしまいたくなる。

「そんな話、もう聞きたくない!」

 悲鳴にちかい声で拒絶する。全部、知りたくなかった。
 向こうの家にくらべ、この家が広いわりにお金がないことは夕華も知っていた。けれど、みんな仲は良いと信じていたのだ。
 親戚のように交わってきた向こうの家のひとたちも含めて。

 激した叫びをあげたが、その直後すぐ夕華の心は急速に萎えた。
 父は、夕華から幻想をはぎとって真実――すくなくとも一面の――を突きつけただけだ、と彼女にはわかっていた。
 いままで表面にある綺麗なものしか見えていなかった自分が、莫迦な子供だったのだろう。

 それでも、こんな黒くよどんだもので満たされているのが真実だというのなら、見えていないままのほうがよかったのだ。
 肩の力を虚脱させて、夕華は力なくつぶやいた。

「なんで、そんなことを私に話したの……」

「おまえがこの家のひとり娘だからだ。そしてまもなく大人になるからだ」

 父の即答は、容赦がなかった。

「あと三年もすればおまえには婚期が来る。だからいまのうちに話したのだ。
 憶えておきなさい。虎狼の家であったわれわれが、いま狐狸どもに飼われている。餌を与えられているのはなぜだと思う。
 最後にこの血を提供させられるためだ。富裕な商家の多くは、爵位をもつ名家の血を入れることを望む。中央へ進出して社交界へ出るにあたって、それが有利にはたらくからだ。
 お祖父様は、あの商人の家の求めに応じ、時がいたればおまえをあそこへ売るつもりだ。あの家の嫡男である男児とめあわせる形で」
416春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 09:58:25 ID:Oet9ybQh

 その言葉の意味を、数拍おいてから夕華は理解した。
 恐怖も虚脱感も胸の苦しさも一瞬わすれ、え、と目をまるくする。
 祖父が妾を囲っていたという話とは、まったくべつの種類の衝撃だった。

 「あの家の嫡男である男児とめあわせる」。その一言が、寝耳に水だった。

(私が、お祖父様に結婚させられる? きょうくんと?)

 きょうくん。京介君。柿子の弟。
 ちょっと前までは素直で、どこへ行くにも自分のあとを付いてきた子。最近はひねくれてきて、ずいぶんと生意気になっている子。

 まさか。考えられない。
 二つ違いのあの子は、夕華にとっても実の弟のような近さだ。
 近いくらいに、近すぎる。だから、そんな相手として意識したことはこれまでまったくない。

 なかった、けれど――

(くらくら、する……)

 鉄貫をにぎっている拳もいないほうの拳もこめかみに添えて、頭をぎゅっと押さえ、夕華はうなだれた。
 心と思考の混迷が極まって、めまいが起きかけていた。

 知ったばかりの暗い現実に少女をひきもどしたのは、聞く耳が凍るかのような父の言葉だった。

「無論、そんなことにはならない。
 おまえならいくらでも良縁に恵まれるはずだ。それをなぜあのような奴ばらになど。
 父上がどう言おうと、わたしはぜったいに認めない。あの家と縁を結ぶことは。虎狼の血と狐狸の血を混ぜることは」

 強固で揺るぎもしない、冷えた意志のこもった断言だった。

 苦しげな顔を上げはしても、父になにを言えばいいのか夕華にはもうわからない。
 いちどきに得た知識が多すぎた。
 大火、赤い財、京口渋沢両家の因縁、祖父の妾のこと、弟のような子との結婚の話、そしてその話への父の侮蔑と拒絶。

 それらの話題、ことに後半のほうは、考えても混乱と苦悩が深まるばかりで――

 いつ立ち上がっていたのか、話し終えたらしい父はすでに腰掛けから歩み去るところだった。
 提灯をのこして足音が館のほうへ消え、そして虫の音が庭に戻ってくる。
 時がたち、迎えにきた姉弟の声がその場に響くまで、少女は立ち尽くしていた。


 京口夕華が女学校へ入学する半年前、夕華の祖父が急死する三年前のことである。
417春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 10:00:39 ID:Oet9ybQh
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 七年近くたった現在、春の夜。
 瓦の屋根と木戸がついた門の上に、春の月がおぼろに浮いていた。
 渋沢柿子は、木戸をくぐって門の外に出た。

 観桜会の直後、渋沢邸のことである。
 京口邸よりずっと小さいがそれでもそこそこ広い敷地を、真竹をめぐらせた塀がかこんでいる。
 待ち合わせの時刻よりすこし早かったが、門横の竹塀のまえにはすでに友人が来ていた。
 あめ色の古い竹塀によりかかってたたずむ彼女の影が、路上に長く伸びている。
 先刻別れたばかりだから当たり前だが、服装は観桜会のときと同じだった。

 夕華が首に下げている銀のロザリオが、一瞬、綺羅星のように月を反射して光った。

「急な話でごめん、柿子。全部持ってきたから」

 彼女は、持参していた紙袋を手渡してきた。
 柿子は両手で袋を受け取り、その重みをちょっと確かめた。

 中には七、八冊の書物が入っている。
 それらの書物はろまんす本、いわゆる恋愛小説だった。女学校では教師の目をぬすんでひそかに回し読みされていた人気のあるもので、柿子も持っていた。
 故郷に連れ立って帰ってきた一月前、夕華にたのまれて渡していたのである。

 夕華は礼を言ってきた。

「貸してくれてありがとうね」

「全部読んだの。面白かった?」

「うん。興味深かった、いろいろ。食わず嫌いはよくなかったよ」

 にこやかに言う幼なじみを、柿子は月明かりの中、すがめ見る。
 芯の通った言動を見るかぎり、夕華はこの短時間で完璧に立ち直ったように見える。

 さきほど、京介が恋人をつくっていたことを聞いた直後は、魂が半分抜けたんじゃなかろうかという茫然自失の態だった。
 見かねて柿子は口をはさみ、そのうえで「二人ともいったん頭冷やして、また後日に話したらどう」とすすめたのだった。

 その場から帰る間際に、夕華は急に思い出したように、あとで本を返しに行くと柿子に伝えてきたのである。

「そう、楽しめたならよかったわ。
 用件ってこれだけ?」

「ああ、そうだけど、それだけでもなくてね、
 そのう……
 ――ほかにも本あるかな。ほかにもこういう本あったら貸してもらえない?」

 夕華は、馬脚をいきなりあらわしかけていた。つくろっていた悠揚せまらぬ態度がはがれそうである。
 いましがたまでの落ち着いた態度はどこへやら、無意識なのかそわそわとパーカーのポケットに手を入れたり出したりしている。あげくの言葉はやたら力みが入っていた。
 この娘なにか別のことを言いかけようとしていたな、と柿子は推測し、それから首をふった。

「ごめんね。わたしもこれだけなの、持ってるろまんす本は」
418春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 10:03:37 ID:Oet9ybQh

「あの、それじゃあ、やっぱりそれを何冊かもうちょっと貸して。
 少し読み返したいのがあったから」

 柿子は無言で紙袋の中から適当に三冊ばかりをとりだし、夕華に渡した。

「柿子ありがとう。また返しに行くね」

 夕華は受け取り、そそくさと小脇にかかえる。
 やはり内実は冷静を欠いているようで、読み返したい本があったなどといいながら、手渡された本の題名すら確かめていない。

 柿子はため息をついた。あの莫迦弟、と内心で罵る。
 京介の一言で、夕華は予想以上に追い込まれていたようだった。ぎりぎりでとりつくろってはいても、水面下では明らかに取り乱している。

(意外だったわ。
 夕華のほうががこれほど京介にこだわってたなんて。失いかけたと思ったとたんすっかり恐慌をきたしてるじゃない)

 本を借りて、返すことを口実にこの家に来る。つぎもそうやって来れるよう口実を確保する。打算丸出しだが、あまりに稚拙で必死なため、計算高い印象はかけらもない。
 矜持もなにも考えず、そこまでなりふりかまわなくなっている友人が気の毒で、からかう気にもなれない。
 勇気をふりしぼってか、夕華はようやくのことで本題らしきものを口にした。

「あの、京介君は何をしているかな」

 なるべく平然とした声で訊いたつもりらしい夕華に、柿子は淡々と答えた。

「なにって、帰ってからずっとなにか考えてるっぽいわ。禅僧じゃあるまいし縁側に座りっぱなしで、鬱陶しいったらありゃしない。
 会いたいの?」

「も、もうちょっと話がしたいの」

「やめときなさい。まだ京介のほうは混乱してるし、いま会ったってろくな話できないわよ。
 だいたいあんたもぜんぜん冷静に戻ってないでしょう?」

 柿子は、突き放す言葉をさらりと吐いた。

「そんな――」

 夕華は思わずといった感じで悲痛な声を出しかけ、黙った。
 暗く面をうつむかせた夕華は、うなだれていても柿子より背が高い。にもかかわらず柿子の目にはその優美な長身は、いま、幼い少女の孤影にしか見えなかった。
 つねは悠然として、弱い部分をなるべく見せようとしてこなかったこの幼なじみが、京介のことでここまで余裕がなくなっている。
 それでも、柿子はあえて冷たい態度をとった。
 夕華はおそらく動揺が極まって、何か行動せずにはいられなくなり、とりあえず渋沢邸に来たというところだろう。
 明確な覚悟ができていないのは、直接京介に接触できなかったことを見ても明らかだった。
 このまま会わせても、進歩のなかった以前の六年間と同じになりそうだった。
 京介が決意するか、……夕華が単純なひとつのことをはっきりさせられないかぎり。
419春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 10:06:09 ID:Oet9ybQh

「夕華、それじゃ一度訊くけど、あんたうちの弟が好きなの?
 そのへんきちんと認めることができるなら、京介をここに呼んできてあげるけど」

「な、」

 声をつまらせて夕華は硬直した。それを柿子は冷めた眼で観察する。
 彼女の、もはや完全に虚勢をふきとばされたその様子を。

「柿子、なにを……私は、ただ……」

 夕華は言いつくろおうとしていた。けれど唇も声も震えている。
 あんたの気持ちなんかとっくに知ってるけどね、と柿子は口の中でつぶやく。わたしに気づかれてることはあんたもうすうす知っていたでしょ、とも。
 もっとも夕華が動揺してくれるのはありがたかった――率直な反応を見たくて訊いたのだから。

(それにしてもこの娘、いちばん大切な部分を相変わらずうやむやにしたままで、どういう話ができると思っていたのかしら)

「私、」

 口ごもりながら夕華は柿子を見つめる。黒曜石のような美しい瞳が、憂悶に満ちて「お願い、そこは触れないで」と語っていた。
 柿子はその言外の懇願を無視して、見つめ続けた。

 たしかに、「二つのことには深く踏み込まない」ということは、ずっと柿子と夕華のあいだの暗黙の了解だった。
 家と、夕華の恋のこと。
 ほかのことはなんでも話し合っても、そのことについては夕華からはひとことの相談もなかったし、柿子も訊こうとはしてこなかった。

 けれど柿子は、それで必ずしも満足してきたわけではない。
 表向きは冷めた態度で通していたが、「なんでわたしに相談してくれないのだろう」と、わずかに不満を抱かないでもなかったのだ。
 できれば古い友人である自分に打ち明けてほしかった。

 どうやら親友と弟が好き合っているらしい、と柿子が気づいたのは、早いうちだった。夕華とともに女学校から最初の帰省をしたときである。
 以来、六年間はたから見ていたが、これだけ微笑ましくも莫迦莫迦しい二人はなかった。

 夕華はいちいち余裕をとりつくろい、そのくせ京介にたまに話しかけられたら凍って反応が遅れていた。
 京介のほうは、夕華がそっけない態度をとりつづけたことで、もう好かれていないと思いこんでいった。
 たまにしか会わないとはいえ、思春期一年目でふみとどまった感じである。どう見ても両思いなのに、互いを意識しすぎたあげくにぎくしゃくしていった。

 変に思われたくない、見損われたくない、だからおっかなびっくりで互いにあたりさわりのない態度しかとらない。そんなところだと思っていた。

(思っていたけど、微妙に違ったわね。夕華のほうは)

 白皙の肌が青ざめているように見えるのは、月光のためばかりではないだろう。
 私は、と言ったきり夕華はその次を続けられないでいる。

 この娘は綺麗になったぶん陰の部分ができた、と柿子はあらためて思った。そばにいた自分が見ても、六年のうちに夕華は変わっていた。
 活動的を超えて明らかにおてんば娘だった小学生のころは、性格のすみずみまで太陽の子だったのだ。
 あのころの夕華ならこの場で「好きだよ、悪い!?」と、顔を真っ赤にして言っていたかもしれない。
420春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 10:07:51 ID:Oet9ybQh

 もうじゅうぶんだ、と柿子は見極めをつけた。

「……会うなら、あんたたちのせめてどっちかが、しっかり心を決めてからにしたほうがいいわ。
 じゃあね、夕華。そのうちまた」

 いつまでも口に出せないでいる友人に、静かな声で、今度こそはっきり別れを告げる。

 柿子はさっさと竹塀のうちに入った。木戸をくぐるとき肩越しに一度だけふりかえる。
 夕華は、金紗でくるまれて声を封じられたかのように、途方にくれて立ち尽くし、月の光を浴びつづけていた。

 敷地内を母屋のほうに歩みながら、柿子はいま見た彼女の様子について判断を下した。

 この六年間ずっと、京介との恋での夕華の態度に違和感があった。
 直球の問いで反応を引き出したことで、その違和感の理由がわかった。
 京介に対する、らしくもないあの消極性の奥の奥にあるものは、照れでも意地でもない。


 夕華のあれは恐怖だ。深刻な。

…………………………
……………
……

  しづかに照らせる月のひかりの などか絶え間なくもの思はする
  さやけきそのかげこゑはなくとも みるひとの胸にしのびいるなり……

 ひさしの下から肌寒い月明かりがもぐりこんでくる、庭に面した板張りの縁側だった。

 庭に向かって腰を下ろし、さっきまで一刻以上もうつむいて沈思していた京介は、いま放心ぎみに月を見上げ、かすかに口ずさんでいた。

 いつもの書生姿にもどった京介の背中を見ながら、柿子は湯呑みを手にそっと後ろからあゆみ寄った。

「……夕華が昔よく歌ってた詩のひとつだわね、それ」

 京介の口ずさんでいる詩に、柿子も聞きおぼえがあった。
 いきなり後ろから声をかけられた弟は、びくっと振り向き、それから庭先に視線をもどして、妙な表情で口を押さえた。
 唄を聞かれたのが恥ずかしいのかとも思ったが、京介の顔はいま夢から醒めたというものに近い。

 長々と悩んだあげくふっと気が抜けた折に、意識せず口にしていたのかもしれない。これまでも弟を見ていると、そういうことが何度かあった。
 夕華の唄を子守唄のように聞かされて育っていたため、記憶の奥に焼きついているのだろうか。
421春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 10:09:47 ID:Oet9ybQh

 ばっかみたい、と柿子は今夜何度目かわからない嘆息をした。

 そこまで心に夕華を刻みつけていながら、この弟はなんで強いて他の女を見ようとしたのだろう。
 ……もっとも、理由の一端らしきある秘密を、柿子は知らないわけではない。
 こちらも面倒くさそうだった。

 ちらりといま通りぬけてきた京介の部屋をふりかえる。障子は開けっぱなしにしてあり、部屋の内部が縁側からも見えている。

「冷えてきたわね。
 しかしあんたの部屋、枯れてるわねー」

(十六歳の男の部屋とは思えないくらいに、ね)

 上は格天井、床はたたみ。廊下と隣の間とはふすまで区切られ、縁側とは障子で区切られている純和風の一室。一室というよりは、ふすまで区切られた座敷の一間だ。
 小壁ぎわの寄木細工の本棚、客をむかえたときのための円座と猫脚のちゃぶ台、勉強机と椅子が調度品のすべて。整理整頓はいきとどいて、殺風景なほどさっぱりしている。
 妙なほどに枯淡の雰囲気がただよう部屋だった。

 そのうえ京介はふだんから、家人が部屋に勝手に入ってくるのをとくに拒まない。こうやって部屋を論評されても、勝手に掃除されても怒るでもない。

 ただこの時は、いくぶん迷惑そうに声を出した。

「なにか話が?」

「夕華ね、女学校でもお姉さん役になってたわ」

 柿子は夕華のことを話題にする。
 それで京介は黙って耳をかたむける気になったようである。じつに簡単な弟だった。
 茶をすする音をまじえながら、ぽつぽつと柿子は語りはじめた。

「『ハンサムで優しいお姉様』だもの、やたらもててたわ。
 夕華のほうも親身になって後輩の世話をやいたしね」

 気さくな先輩を通りこして本当の姉妹のように可愛がるので、一時はそっちの気がある人なのではないかと噂が立っていたくらいである。

 京介が「夕華さんなら……そうだろうね」などとつぶやき、横でうなずいている。
 夕華の牧羊犬気質とでもいうべき面倒見のよさに、幼いころあれこれ世話になったのは京介である。二つしか歳が違わないのに、夕華は京介のおむつを取り替えたことまであった。
 その弟の感慨に水をさすように、柿子は目を伏せてぽつりと言った。

「あの娘もまったく、難儀だわ」

「……え?」

「あんただって夕華に手をひかれて育ったみたいなもんだから、わかるでしょ。
 あの娘、庇護欲強いというか、構いたがりなのよ」

「そりゃ、そうも言えるけど……それがなんで難儀なんだよ」
422春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 10:11:29 ID:Oet9ybQh

「そのせいで無駄に強がるようになったからよ。
 あの娘ほんとは寂しがりよ。にぎやかなのが好きだったでしょ。なのに、寂しがりやのくせして自分から甘えるとかはしないのよ……ううん、ちょっと違うか。
 お姉さんとして世話を焼く立場にいることで、自分の寂しさを埋めようとするタイプなの」

 女学校での夕華は、まさしく心の隙間を埋めようとしているように見えた。
 となりを一瞥する。夕華のあの年下好み――というと語弊があるが――には、この弟が無縁だとは思えない。
 妹のように可愛がられていた後輩たちには気の毒だが、彼女たちは京介の代替に近いだろう。

 その上からそそぐ愛情表現自体はいいのだが、年上として頼られる立場がしみつき、人格にまで影響が出てしまっている。
 夕華は、自分自身は人にほとんど頼らず、いろいろ溜めこんでしまう性質の娘となっていた。

 柿子は、すこし前に夕華が「ろまんす本を貸してくれないかな」と恥ずかしそうにおずおず頼み込んできたことを思い出す。
 やっと色恋の話でこっちに頼る気になったかと、まんざらでもなかったのだ。ちょっと違っていた。
 夕華はひとりで恋の進め方を「勉強」したかったのだ。

「……そうだ、そのへんの無知もあの娘も問題だったわ。
 それ話す前に京介、あんたのほうにも言っておくけど」

「な、何だよ」

「夕華を崇拝しすぎ。
 あんた、何時間かまえにあの娘のことを『優しいから』と言ったでしょ。それはそれで正しいけれど、美化しすぎなのよ。
 さっき話したでしょ。年下を可愛がるのは寂しいから。弱みが表面から見えないのは、意地っぱりで隠したがるから。乱暴に言えばそういうこと。
 あの娘だってわたしやあんたと同じく欠点だらけよ。ほんとうはあんたもそういうこと、よく知っていたはずでしょ」

 柿子の指摘に、京介は眉をしかめはしたものの、なにも言葉を返さないでいる。
 距離の離れた初恋相手を過度に意識したあげく、美化してしまっていることは、うすうす自分でもわかってはいたのだろう。

「京介。わたしたちの行ってた十字教系の華族女学校、どんなところかあんた知っていた?」

 問うと、京介は記憶をたぐる表情を月に向けた。

「えっと……良家の令嬢が、親元から切り離されてふさわしい教育をほどこされる教育施設だろう。
 名称に華族とついてはいるけど、いまではそれ以外の出身の娘が多いとか。
 礼式に重点が置かれるほか、外国語なども習うと聞いていたけれど」

「表向きはその答えでいいわ。あそこの教育は、いずれ生徒が結婚したのち、夫につきしたがって社交界に出ることを見越してほどこされるものよ。
 裏の理由も結婚と関係があるわ。あの学校は、お嬢様方が結婚するまで彼女たちを『無傷で』保存しておくための保管庫。
 娘や花嫁候補に悪い虫がつかず、悪い思想にも毒されず、無垢すぎるくらい綺麗なままを保つ。そういうのを殿方は好むからね」

 辛らつな言葉をごく自然に吐いて弟をまごつかせながら、柿子はひとつ茶をすすって続けた。

「あそこは基本、寮住み。外界から入ってくる情報も最低限。優雅で退屈な、外から遮断された温室よ。
 生徒は殿方と接することがほとんどないわ。
 ある日いきなり見合いをうけて婚約して中退結婚するか、卒業後にすぐ結婚するかで、恋愛のなんたるかなんて実際に知ってるのはいないも同然よ」
423春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 10:13:27 ID:Oet9ybQh

 せいぜい、ろまんす本のたぐいを、教室や寮で回し読みしてきゃあきゃあ言ってるくらいだったのだ。
 それらの小説さえ、もし教師や尼僧に見つかれば、風紀を乱す悪書として没収される対象である。

 と、京介が失敬かつ余計な疑問を呈した。

「あのさ、カキ姉ちゃんもそこの生徒だったよね? のわりには箱入り娘という感じはあまり……」

「わたしは知識欲旺盛なのよ。『外』のことについてもカリカリ勉強してたわ」

 両断するように言って、うやむやにする。
 じっさいは外界に通じる抜け道を、柿子は用意していたのだった――街中への外出許可が彼女にはたびたび下りていた。帝都の渋沢家ゆかりの人間と接触していたのである。
 実家との定期的な連絡のためともなれば、とうぜん家のほうから女学校に根回しがされているという寸法である。

 こちらのほうは、柿子が夕華に対して後ろめたい部分だった。夕華につけられた目付け役のようなものでもあったのだから。
 いずれ謝る機会もあるだろう。首をふる。

「……とにかく、夕華が、世間一般での恋愛の作法だの実例だの知るわけがないじゃない。
 箱入り娘ばかりの女学校生徒のなかでも、特にうぶなネンネだったわよ。
 なぜか知らないけど、流行の恋愛本すら読もうとしなかった」

 京介に、じろりと横目で視線を向ける。

「もう一度言うけどあの娘ね、どう恋愛すればいいかなんて、なんにも知らなかったのよ。
 そのうえ女学校にいるうちに、もれなく『女性からはしたないことは厳禁』みたいな時代遅れの徳目を叩き込まれてるし。
 気になる男の子が故郷にいたって、帰省のたび律儀に会いに出向くくらいが関の山だったんじゃないかしら。それだってただならない覚悟だったかもねえ」

 話の流れの不穏な雰囲気に、ううと京介がうめいた。
 かれはその律儀な訪問を受け続けながら、ある意味で完全にむげにしていたことになるのだった。きわめて居心地悪そうにもぞもぞと腰を動かし、座りなおしている。
 霜が降りそうな視線でちくちく刺しながら、柿子は追撃した。

「ていうかあんた、『まだ恋人はいない?』と毎回訊かれてたんでしょ。
 それ、精一杯の誘い受けのサインだろうとか考えなかったのか。夕華はできることならあんたから積極的に出てほしかったんじゃないかしらね」

「………………ううう……」

 しょげ返りながらも、京介はいまだに「本当だろうか?」とばかりに眉根を寄せていた。
 柿子は、庭内の竹林のほうを遠く見やった。じつのところ弟が納得しきれないのは、わからないでもない。
 京介が知っていたころの夕華は、そんな過度の奥ゆかしさを見せる少女ではなかったからだ。
 いや、今でもたいがいのことは積極的にこなしている。それが恋のことだけいまひとつ煮え切らない。
424春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 10:15:08 ID:Oet9ybQh

(けれど、わかった)

 さきほど竹塀のまえで接した夕華の、瞳の奥にあった恐怖を思い返す。
 あれがきっかけとなった。

(いままで気づいてやれなかったなんて。つなぎあわせて考えてみればわかったのに)

 柿子は知っていた。京口子爵家の当主が代替わりしてから、両家の関係が悪化したことを。
 華族の結婚にあたっては、家長の力がいまもって大きいことを。それこそ法の領域にすら及んで。

(子爵様の同意がないかぎり、夕華は正式な結婚ができない。そしてあの子爵様は、うちとの縁組だけは認めそうにない。
 以前からそこまで先を見てたんだ、あの娘……ううん、華族の家は商家以上に結婚を重視する。むしろあの娘には当たり前の思考だったのかしらね)

 柿子は、「家のことと個人の想いは関係ないはず」などと、自分もどこかで甘い考えを捨てきれていなかったことを恥じた。
 子爵家のひとり娘と、商家のひとりきりの嫡男なのだ。口でいくらきれいごとを言おうと、家に反対されれば、その重みは現実としてのしかかってくる。

(あの娘はおそらく、京介とは結婚できないと思ってる。そして京介だっていつかきちんと結婚して、正嫡の跡継ぎを残さずにはすまされないだろうとも。
 付き合っていつか駄目になって、苦い思い出にしてしまうより、いっそこのままでも。そんなつもりもあったのかもね)

 夕華と京介のこの六年。疎遠な、あるかあきかの、幼なじみとしての最低限の縁だけを保った関係。
 決定的に踏み込むことでそれすら壊してしまうのが、夕華には怖かったのだろう。彼女がおそらくいちばん深いところまで思いつめていた。

 両手で持った湯呑みのなかに月が揺れている。お茶の表面にさざなみが立つたびに、砕けてゆらゆら動き、徐々にもとの姿を取り戻していく。
 手にした月に哀しい視線を落としながら、柿子はつぶやいた。

「京介。夕華はたぶん、あんたが思ってるよりずっとあんたを好きよ。
 可哀想になるくらいに」
425ボルボX ◆ncmKVWuKUI :2009/04/02(木) 10:18:19 ID:Oet9ybQh
続かせていただきます。
いつまで待っても規制が解けん……
426名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 10:59:09 ID:1IsMss/V
一番乗りGJ!
続き期待してます。
427名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 11:32:12 ID:SeELQVuB
GJ、待ってました!
しかし携帯からとはなんという猛者。

夕華と京介の間に横たわる影は大きいな。
428名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 14:30:33 ID:TWl31yKA
これはいい!
二人の間には結構複雑な壁があるのね
京介のヘタレっぷりは別として
429名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 20:16:20 ID:lMkpA8nD
柿子Gjと言わざるを得ないな。
430名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 01:42:34 ID:PTNe5/WZ
重い、重いよ、ボルボさん、GJです!

でも華族というシチュエーションと、時代背景が大好き


夕華さんハァハァ
431名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 22:07:13 ID:W8rn3dZi
ちくしょう俺まで悶々としてきた
432ボルボX ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:03:42 ID:iJSNekz6
また携帯で投下します
433春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:04:58 ID:iJSNekz6

 十悪五逆と人は言う。

 炎の家だと人は言う。

 主君殺しと火付けのむくいで、黒煙を吐いてぶすぶすとくゆり、百年かけて燃え崩れていく家だと言う。

…………………………
……………
……

 はじめて「昔話」をされた夏の夜から、女学校へ入るまでの半年ほどのあいだに、父様にはいろいろなことを聞かされた。

 私を産んですぐ亡くなった母様の、遺した手記を見せられた。
 あの優しいお祖父様が、母様に手を出していたと知った。

 父様は、ぜんぶ「あっちの家」が元だと言う。  あっちの家がお祖父様に女の人をつぎつぎあてがって、じぶんたちの言うことを聞くようにしむけてきたから、お祖父様は病気じみて色を好むようになった、と。

 産後の弱った身で窓から落ちて亡くなった母様は、ほんとうは身を投げたのかもしれない、と聞かされた。
 父様は笑って言った、「夕華、ひょっとしたらおまえはわたしの娘ではなく妹かもしれないな」と。

 そのことを知った晩のうちに、はじめて月のものが来た。
 夜明けまで血がいっぱい出て止まらなかった。  お風呂場の床にぺたりとすわりこんで、夜どおしお湯で流しつづけた。赤いにおいのなかで床に手をついて何度も何度も吐いた。

 それから、お祖父様の顔を見られなくなった。

 そんなときだから、女学校へ入れと言われたことをかえって嬉しく思った。家からは離れたかった。
 地元の友達と別れるのは悲しかったけれど、幼なじみの柿子がいっしょに来てくれることになった。親友がいるのが嬉しかった。

 でも父様は「やはり、あの娘がくっついてくるのだな」と言った。予想通りだと。
 渋沢家はずっとおまえにあの姉弟を貼りつかせてきたからと。
 お祖父様と渋沢家の人たちが、おまえたちを小さいころからいっしょに遊ばせて、わざわざ仲良くなるよう仕向けたのだと。
 あの娘は女学校でもおまえのことを監視し、おまえの動向をあちらの実家に伝える役目となるだろうと。

 そのときは父様に逆らった。「仕組まれたから友達というわけじゃない」とはっきり言った。
 でも、その言葉は心にべっとりへばりついて消せなかった。父様のほかの言葉と同じように。
 そのときまで柿子には何も隠さなかったのに、いくつも隠し事をするようになった。それが彼女に対し、いまもって後ろめたい。

 もっとも、こんな家の事情は、父に言われなくても誰にも話せなかったけれど。
434春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:06:43 ID:iJSNekz6

 女学校から帰ったいまは、結婚を急かされている。

 亡くなったお祖父様のあとを継いで子爵になった父様には、「なぜ相手をまだ選ばない」と何度も問われてきた。

 ことに数日前、いくつもの家名と写真をテーブルに並べられて冷ややかに糾されたときは窮した。

 父様は言う。

「華族からは、旧帝都の冷泉侯爵家、現帝都の磐倉伯爵家。播州より脇坂男爵家。
 商家からではあるが富裕ゆえの候補としては、関東三浦家、中部の箕山家および長与家、信州の絹家、尾州の大村家。

 ――竜円寺家の末裔もなにを思ってか求婚してきているが、ろくな財もなしでは除外せざるをえんな。
 わたしが薦めたいのは磐倉伯爵家だな。次男や三男の結婚相手としてなどではなく、老齢の当主みずから、後添えとしておまえを望んでいる。それは商家の長与家も同様だ。
 老人は最初は嫌かもしれんが、そう捨てたものではない。老いた者に嫁げば、すぐに向こうがみまかることを期待できるぞ。あとは遺産が転がりこんでくるのを待てばよい。

 さて、ここに並べた求婚者たちは、先方からおまえをぜひにと望んできている者ばかりだ。幾人かは見合いで顔を合わせたろう。
 それをはぐらかして、返事を引き伸ばすにもほどがある。
 『今はまだ』『当面は考える気になれなくて』と、見合いのたびにそればかりで終始しているそうだな。何年も。

 業を煮やさせる娘だな。選びなさい。
 まだ時期がきていないなどという言い訳は聞かないぞ。女学校は卒業したろう。そしておまえはもう十八だぞ、夕華。
 可愛い娘とおもえばこそ、これだけの良縁をわたしはかき集めた。このなかからだれを選ぶかすら、おまえ自身に任せている。

 おまえに何度も話したとおり、わたしは一刻もはやくわが家を立てなおし、こちらに伸びる渋沢家の触手を根から断ってしまいたい。
 ただそのための方策は、おまえが嫁ぐ家を選んだ瞬間から、それに合わせて見さだめなければならないのだ。まずはどの家の力を後ろ盾にするかが問題だから。
 だから、選べ。もう待つ気はない、すみやかにどの候補を選ぶか決めなさい」

…………………………
……………
……

 柿子と会った直後、夕華は自邸に帰って夕餉をとっていた。
 色艶のある桜材の椅子に腰掛けて、上体をしぜんに姿勢よく保ち、漆塗りの箸を黙々と使っている。

 かたわらでは急須を運んできた乳母が、パーカーをぬいで上はニットだけになった夕華の姿を、自分のことのように寒そうに見ている。
 雨もなかったのに、観桜会のあと春の夜にしては急に冷えこんだのである。
 洋館の大食堂の暖炉にはもう長いこと火など入れられていない。代わりに石油ストーブが置かれているが、これを使えるのは冬、それもめずらしく多人数が集うときだけである。

 いまはひとりきりで長大な食卓についている。同室者は、乳母がそばにたたずんでいるだけだった。

 なお、卓は大木まるまる一本を縦に加工した巨大なもので、この洋館が建てられたときから使われている。
 この館の調度品はそういう年代物が多い。必ずしも使いやすくはないのだが。

 あらかた片づけた夕華は箸をおき、乳母のそそいでくれた茶に少し口をつけた。
 今夜の膳はカレイの煮付け、菜の花のおひたし、香の物、田楽豆腐、豆腐屋から分けてもらった新鮮な湯葉などだった。
435春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:07:59 ID:iJSNekz6

 華族の夕餉といっても、京口家ではこれが上等な部類である。
 夕華が豆腐が好きなため、その系統の料理を二皿用意させるくらいの融通はきくが、豪奢とはとても言いがたい。しかも料理はたいてい冷えていた。

 もっとも、料理が冷えたものばかりなのは屋敷の設計上、しかたがないことだった。京口邸の厨房は大食堂から半町(約55メートル)ちかく離れている。
 たいていの料理はしずしず運ばれるうちにある程度冷めてしまう。
 そこでここの厨房では、最初から冷めていてもいい料理が作られる。
 こういったことは京口邸のほかにもよくあるのか、華族は猫舌の者が多いという。

 寒いのは料理と気温のせいばかりではなかった。煉瓦づくりの大食堂は広すぎて、人のいない風景が寒々しいのだ。
 百年前なら、給仕役だけでも後方左右に数人ずつ控えているのが常だったというが、むろん現在ではそんなこともなかった。
 いまは夕華と、給仕してくれる乳母以外にだれもいない。

 先ほどから話しかけようかどうか迷う表情だった乳母が、とうとうそっと夕華のかたわらに身をかがめた。

「あの……夕華様、どうかなされたのですか」

「いきなりどうしたの、吉乃さん」

 吉乃は乳母の名前だった。

「いえ、帰ってきて突然、こちらで食べると言い出されましたから。つねは私どもとご一緒されていますのに。
 よければ今からでもあちらに行きませんか、あちらでは夕華様のお好きな湯豆腐ですよ」

 吉乃の言うとおり、夕華はふだんは厨房に近い一室で、使用人たちと和気藹々と食べている。
 そちらのほうが、寒くない。
 けれどたまには、人の温かさを避けることもあった。いまは誰とも話をしたくなかった。

 ここは丁度いい。
 しんと静まりかえった大食堂には今夜、父子爵も同席しない。かれは数日がかりで遠方へおもむいている。
 帰宅は今夜遅くだというので、顔を合わせる気づかいはなかった。

 もっとも、父と話すことになるだろう明日を思えば、憂鬱になる。渋沢家主催の観桜会に出席したことを知られたら、間違いなく怒りを抱かれるだろうから。
 父のことはひとまず置いて、夕華は乳母に返答した。

「大丈夫。たまにはこちらで食べてみようと考えただけだから」

「小鍋で湯豆腐だけでもお持ちしましょうか」

「いいや、今夜はもう結構。ありがとう、吉乃さん」

 夕華は心配顔になっている乳母に微笑んだ。なるべく柔和に干渉を拒否するためのサインである。
 吉乃は納得しがたい表情をしたが、黙ってひきさがってくれた。

 颯と切れのある身ごなしで席を立ち、夕華は食堂を出た。
 夕華がジーパンやスラックスなどのロングパンツ系を好むのは、動きやすいからでもある。
 長い美脚を伸ばしてよどみなく動かし、大またでなめらかに歩をはこぶ。
436春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:09:12 ID:iJSNekz6

 寒々しいのは大食堂にかぎらない。大理石の柱ならぶ閑寂とした柱廊にも、人の気配はほとんどない。
 夕華が幼いころから使用人は少なかったが、四年前に祖父が死んでからはさらに減った。
 新しい京口子爵となった父が、人件費削減と称して半分以上の使用人を解雇したためだった。

(人の姿が見えなくても、気を抜いたらだめ)

 夕華は自分に言い聞かせる。
 内情はすぐにも走りたいくらいだったが、二階に行くまではと必死に気を張っていた。
 少ないとはいえ、一階だとやはり使用人の目がないわけではないのだ。
 様子がおかしいことに気づかれたくはない。

 父子爵は和館で寝起きすることを好むが、夕華はそちらではあまり眠りたくない。京口邸の和館の廊下には、昔から幽霊が徘徊するという話がある。
 そのため彼女は、洋館の二階奥の一室で寝起きしていた。
 その小ぢんまりとしたやや質素な洋室は、昔は住みこみの小間づかいが使っていたという。
 いまではこの家の令嬢が寝起きのため使っているわけである。

 このようなところでも隔世の感があるが、夕華がそちらで寝ることにしているのには、節倹とは別に理由がある。
 夜、二階を使うものは誰もいない。そのことが彼女にとって好都合になるときがあるからだった。

 ホール奥にある大階段をやや早足でのぼり、明かりのない二階へと上る。

 二階にかぎらず屋敷の大部分が暗いのは、京口子爵家の台所事情が、電気代を気にせず灯をつけっぱなしでいられるような状態にはないからだった。もう何十年も前からだが。
 夜目がきく体質なのをいいことに、夕華は明かりの点け消しを省いて暗闇を足早にすすむ。

(――遠いな、部屋)

 月影がガラスの天窓からほの白くさしこむ。
 廊下に長々とどこまでも敷かれている古い毛氈は、ところどころすり切れて埃に汚れている。

 古びたドアの前をいくつも通り過ぎる。
 京口邸の建築物は、和館と洋館と離れの茶室に分かれ、撞球(ビリヤード)室や映写室を含めて六十六の部屋を持つ。
 そのほとんどは現在使われておらず、一年に一回も開けない部屋もある。

 三代目の子爵が燃え尽きて黒こげになるという奇妙な死に方をした撞球室や、その長男が殺されたというある客室などは、十年以上も開かずの間にされている。
 運悪く客室のほうは二階の廊下にあって、夜半に夕華がその前を通ると、部屋の内側からドアをかりかりひっかく音が聞こえてくることがある。
 かなり怖いが、そういうものと和館の廊下でばったり正面から出くわすよりはまだましだろう、と思えば我慢できる。

 屋敷の敷地は一万六千坪。半分以上が庭園だが、広大なことには変わりなかった。
437春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:10:44 ID:iJSNekz6

 このときの夕華には、荒廃した自邸の無駄な広さがただ恨めしかった。
 廊下が長い。

(今夜は来るという予感はしていたけど、ほんとうに夕食の途中に始まるなんて思わなかった――
 いつもは起こるとしても布団に入ってからなのに!)

 それにしても念のため大食堂で食べることにしていてよかった。
 吉乃にはなにか感づかれたかもしれないが、使用人みんなといっしょに食べているときに「あれ」が来ていたよりはましだった。

 急がなくては。
 もうべっとりと背筋に汗をかいている。
 呼吸が荒い。心音がうるさい。
 幾多の微細な蟲がぞわぞわ這いあがってくるに似た、あのおぞましい感覚が、いよいよ限界に達している。

 突きあたりの自室に入った時には、ほとんど駆け足だった。
 暗黒のなか震える手で後ろ手にまさぐり、せわしなく鍵をかける。

 密室となってようやく安心した瞬間に――瞳のなかに保っていた理知の光がどろりと崩れた。

…………………………
……………
……

 こざっぱりとした洋風の小間物部屋。

 窓には、色あい暗めの緋のカーテンが垂れさがる。
 ビロードのカーテンのすきまからは月光がひとすじ漏れて、木綿の白シーツの寝台に投げかけられていた。

 蒼ずむ闇と白い光がまじりあう寝台の上に、くちゅくちゅと水音が鳴っている。
 半裸の少女が、簡素な寝台に横たわっていた。
 雪肌からは艶なる香気がたちのぼり、呼気は情欲にまみれている。

(あつい……)

 しどけなく眉を下げ、目をうるませて夕華はあえいだ。部屋じゅうが熱い。
 違う。夜気も月光も冷たいままで、熱いのは自分の体だけだった。

 ことに股間には、妖紅色の炎が燃えさかっているようで、そこから悪寒をともなう熱が休みなく全身に伝わっていく。
 服を脱ぎかけたまま横臥している夕華の素肌は、しっとりと汗に濡れて艶美におぼろめいている。

 鍵をかけてすぐ、寝台に身を投げていたらしい。
 そこからすでに記憶があやふやだった。
438春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:12:34 ID:iJSNekz6

 革靴は無意識で床に脱ぎ捨てたようだったが、ジーンズは完全に脱いではおらず、赤いショーツごと膝のあたりまで下げただけだった。
 上半身のニットは着たままだったが、いつのまにか胸上までたくしあげており、ショーツとおそろいの真紅のブラジャーも外している。

 長身で細身だが、女の部分の肉付きは充分すぎるほどで、美女の体として均整のとれた裸である。
 触れてみれば弾みそうなほど若々しい乳房は、豊かな重さをたたえ、夕華が身をよじるたびに闇のなかでたぷ、ぷるりと揺れた。

「……ぅ……んっ……ぁぁ……」

 背をやや丸めて、夕華は太ももの間に手をさしこんでいた。
 ずっと響いている粘っこい水音は、少女自身の指で鳴らしているものだった。

 宙にふりまかれた淫気が凝結して、ぴちゃぴちゃと天井から寝台にしたたっている気がする。
 紅潮しきった美貌を上向かせ、夕華は呼吸をつむぐ。体内の熾き火にあぶられて、血肉まで情欲に溶けそうだった。

  ――好き。ゆうかちゃんが好き。好き、好き、好き……

(やめて……)

 いつもとおなじく、記憶の底からあの声がささやきかけてくる。あるいは淫気とおなじく、ぽた、ぽた、ぽたと落ちてくる。

 声にともない、まぶたの裏に浮かび上がるのは、あの夕べの情景だった。

 春まだ浅い小ぬか雨の宵の、屋敷の湯殿である。
 目を閉じて夕華に抱きつき、無心で体をゆすっている男の子。
 少年の、いつもはふわふわの髪は濡れて、柔らかな頬にはりついている。

 檜(ヒノキ)の香りと肌の温かさ。
 しっかり夕華の体に回された幼い腕。
 好きだよと告げてくる男の子の声が、頭蓋の中でこだまし続ける。

(いつにもまして、今回はひどい……)

 朦朧と考えながら、夕華は熱くふやけた秘部から指先を抜いた。
 愛液で濡れたひとさし指と中指でこわごわ陰核に触れる。
 かぶった皮ごとその尖った肉をそっとつまむ――それだけで陰核がさらに膨らみ、電流が腰に走った。

「んっ、んっ」

 ふに、ふに、くにゅ、と包皮の上から柔らかく陰核をいじる。
 ごくごく微妙な力で触れたつもりだったが、中身を固くしこらせていた陰核は、指の熱を感じただけでヒクヒクさらに勃起してしまっている。
 あげく、うっかり周囲の肉を押さえすぎて、包皮がずりおちてぷりゅんと肉豆が剥け出てしまう。腰どころか脊髄をかけのぼって頭まで電流が突き抜ける。
 夕華は短く悲鳴をあげて、繊麗なのどを反らした。
439春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:14:11 ID:iJSNekz6

(いやだ、この、感覚……)

 一瞬しびれた脳の裏側が、むずがゆくひりひりしはじめる。それとともに自分の体への諦念と厭悪があらためてわきあがる。
 いまの一連の刺激だけで、軽く達してしまったのだった。はぁはぁと荒く息を乱し、弛緩した体をぐったりとシーツに沈める。
 先ほどから秘部の浅いところに触れて女の肉が昂ぶっていたとはいえ、簡単すぎる絶頂だった。

 今夜の肉情の煮立ちようは異常だった。
 現にさっきの今でまた、夕華の指はそろそろと秘部に伸びていた。まだ全然、発情しきった体が満足してくれない。

(こっちに帰ってきても、まだこんな……
 ううん、まだもなにも症状が進行してる……)

 「症状」。
 夕華にとっては、この突発的な性衝動は、まさしく厄介な持病だった。
 自慰は楽しむようなものではなく、情欲の発作をしずめる応急処置である。

 こういう夜がたまにあるのだ。淫情に全身が熱くなり、媚毒を血管内に注ぎこまれたかのように悶える夜が。
 あの春の夕方のことを回想する。夢にも見る。
 甘い思い出のはずなのに、それは今では肉を爛れさせる。
 こんなことをするために思い返したいわけではなかった。記憶がよみがえるのはたいてい疲れているときや落ち込んでいるときだ。

 眠りに落ちる前後の気をゆるめた瞬間に、ふとしたはずみでそれが意識の表層に出てきてしまうのである。
 神経が疲れると、無意識になぐさめを求めて体が思い出してしまう感じだった。

 だから、「はやく体をなだめて寝てしまわないと」との一念で指を使うのが、彼女の自慰だった。
 ――けれどそれにもかかわらず、少女の肉はおぼえさせられた快楽に味をしめ、明らかに淫らに成長していった。最近では、理性がなかば飛んでしまうほどに悦びが大きい。
 幼い京介の告白の声を何度も思いかえして瞳をとろんとさせ、乳房や秘部を夢中でいじって絶頂を迎えるのが常になっていった。

…………………………

 最初からここまでひどかったわけではない。

 女学校に入学した初年度のころは、何週間かに一度あるくらいの頻度だった。
 欲情の程度も、悶々しながら布団のなかでもぞもぞ寝返りをうつくらいだった。
 だがそういう夜を何度か経るにつれて分泌される愛液の量が増えていき、うずきも耐え難くなっていった。寝る前に回想が湧きあがる夜は、そのまま寝た後もかならず夢に見てしまう。

 二年生に進級するころには、発作の頻度は十日に一度ほど。それもタオルを布団にもちこんで、夜通し股間をこっそり拭かなければならなくなった。そうしないと朝方には内股までべとつくのである。

 そうなっても最初は、自涜はしていなかった。
 押しあてた布の上から柔らかい秘部をくにゅくにゅ圧迫すると、切なく甘い感覚があることには以前から気づいていたが、「そういうこと」をするのは嫌だった。
 しばらくは、発作が起きると、みじめな気分で一晩中愛液をぬぐうばかりだった。
440春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:15:27 ID:iJSNekz6

 その封印が破れたのは二年生の夏、実家の祖父が突然死んだときだった。
 ――……渋沢家と縁の深かった祖父の存在とともに、心のどこかで望みをかけていた何かが、あのときぶつんと切れた。
 かれの命が消えた瞬間に、かれがすすめるはずだった京口家と渋沢家との縁談の可能性も消えたのだから。

 もっとも祖父が死んだ直後は、そのことを思う余裕はなかった。
 祖父のあまりに急な死に呆然として、通夜の席でも葬式でも京介とはほとんど話さず、そのあとは父に命じられるまますぐ帝都へ戻ったのだった。

 けれど日がたつほどに、さまざまな喪失感で心が錆びて軋った。
 最初の縁談が父を通じて持ちこまれたのはそのころだった。
 縁談相手の写真を見ながら、(京介君との結婚話があったとしても、やっぱり無くなったみたい)と、意外に乾いた認識をしたのをおぼえている。

 無感動に乾いていられたのはそこまでだった。
 あとは夜ごとに胸の苦しさが膨れ上がるばかりで、それが拍車をかけたらしく体のうずきはますますひどくなった。

 そして半年後のある夜、とうとう思い出に逃げこんだ。京介との一度きりの行為を、自分の意思で克明になぞり、股間に直接触れてはじめて指を使った。
 情欲を押し殺されて不満を溜めこんできた体は、あっけないほど簡単に灼熱した。
 達したあと枕に顔をうずめ、声を殺して泣いた。

 以来、継続的に自涜行為をしてきた。
 悶える夜にだけと心がけていても、持ち込まれた縁談を断るのに苦労しているときなどは、毎晩のようにあのことを回想してしまうのだ。
 最上級生になったころには、一度その状態になったら股間を自分で慰めてすっきりするまでもう寝付けないほどになっていた。

 欲求を処理せず無理に寝て、夢を見てしまうと悲惨である。甘い追憶にひたりながら夜着まで濡らしてしまう。
 他者に見られていれば夜尿症かと思われるほどの濡れようで、六年間誰にも気づかれずにすんだのは幸いだった。

 周囲に気づかれないまま、肉体はひたすら過敏の度を増して成熟していった。

 今夜とおなじくしつこく体を悩ませる発情の夜に、どれだけ達してもおさまらず、秘部を一晩中いじりつづけたときがある。
 いつもは一度かせいぜい二度も達すればおさまるのに、その日は触れば触るほどうずきが耐えがたくなって、止められなくなった。
 寮の隣室に気づかれぬよう、布団の端を口につめこんで必死で声を殺し、きつく閉じた目尻から涙をこぼしながら何度も達した。
 最後には愛液か尿かわからないものまで漏らし、どろどろの股間をやっとのことでぬぐって、ほとんど失神の態で眠りについた。
 幸いにも、あのときほどしつこく長引く発情はそのとき以来ない。

 自己嫌悪で泣くことも、いまではほとんどなくなった。とっくの昔に、諦めている。

 治そうとは、何度もした。
 とても人には話せなかったが、夕華なりにいろいろとやってはみたのだ。

 まず、自身が意識して「女」から遠ざっていれば、この体の反応――女性としての過剰な欲求らしきものが少しでも弱まるかと考えた。
 髪は伸ばさなかったし、洋服だんすには男物を多めにそろえている。言葉づかいまでも、男言葉というほどではないが、周囲の令嬢たちよりずっと俗っぽいもので通した。
441春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:16:42 ID:iJSNekz6

 また日ごろは極力、性に関することから意識を遠ざけて、知識を持たないようにしていた。
 級友たちが持ちこんできゃあきゃあ騒いでいた巷の恋愛小説からも目をそむけたし、まして艶本など見たことも無い。小学生のころ好きだった叙情詩からさえも遠くなった。
 授業での性教育すら、単語を覚えまいとこっそり耳に綿をつめこみ、必死で黒板や教科書からそっぽを向いていた。

 そのため夕華は、十八のこの年齢になっても性的な語彙にはうとい。そこらの男子中学生のほうが、卑猥な単語だけなら夕華よりはるかに詳しいだろう。
 もともと夕華の入った女学校は外界と断絶しているに近い。そこでさえ、彼女ほどその意味で物知らずな娘はいなかった。
 周囲の生徒からも、夕華は、色恋や性愛に極端に免疫のない娘だと思われていたくらいだった。

 けれど、それらの心がけは全部効果がなかった。
 ふだん気にしようがしなかろうが、知識があろうがなかろうが、それと関係なく夜の悩ましい発作は起こった。ひとたびそうなれば、自身の肉に触れてなだめざるを得なかった。
 そのたびに夕華の体は、性感をますます鋭敏に成熟させていったのである。

 服の趣味にしても、やはり逆に、マニッシュな魅力をかもし出すことにつながるのみだった。
 夜の悶えが女としての成長に関係あるのか、本人が望まないうちに夕華の胸や腰は肉感悩ましく実っていった。
 どんどん育っていく若い肉体は、男物の服を健康的に張りつめさせて、夕華がどこまでも女であることを強調した。

 形だけでもなるべく女らしさを否定しようという発想は、その時点で失敗していたわけである。

 夕華自身は気が付いていないが、性を禁忌としてかたくなに拒もうとするその態度さえ、逆効果となっていた。
 ふだんは晴朗な性格である夕華の、その影を帯びた部分からは、どこか背徳的で艶っぽい色香が蘭の花のように匂いたつのである。

 隠している秘密から薫りたつ、ほのかに妖しい雰囲気には、無意識ながら周囲の女生徒たちでさえも惹きつけられずにはいられなかった。
 頬を染めて夕華が顔をそむけるのを見たいため、先輩や同級生がしばしばわざと彼女の前で可愛らしい猥談をしていたとは、彼女には予想もつかないのだった。

…………………………

 夕華の発作の惨状は、女学校を卒業してこちらに帰ってきても、軽微なものになるどころではなかった。
 むしろ今しがた自分でも認めるしかなかったように、この一ヶ月で悪化に加速がついている。

 考えてみれば当たり前だ。これが起こるのはストレスがたまった末のことなのだから。
 幼いころとはまったくちがい、故郷は夕華にとって安らぐ場所ではなくなっていた。


 突然に死んだ祖父のかわりに、屋敷には父が君臨している。
 女学校にいたときから、父が用意してくる縁談の多くをどうにか断ってきたが、いまは父とおなじ屋敷にいる。
 華族の娘の結婚年齢としては、夕華はまさに今頃が適齢期である。言を左右にして結婚話を先送りするたびに、父からの圧迫は強まっていく。

 これ以上、はっきりした理由もないのに「まだ嫌」とそれだけで縁談を断りつづけることは難しいのだ。
 それに加えて、もうひとつ根本的な原因がある。
442春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:17:58 ID:iJSNekz6

(あの子のせいだ……待ってみたらけっきょく、あっちからは会いにも来てくれない。私は何度も行ったのに。
 来てくれないどころか、あんな)

 今夜、なんでこの情欲の発作が起きたのかは考えるまでもない。
 京介が恋人を作っていたと知ったからだ。
 すぐに別れたという話だが、夕華は受けた衝撃で足元がさだまらない思いだった。

 あの男の子が、本気で自分から離れていこうとしていた。
 鬱屈の材料として、これ以上のものはなかった。

「あの日はあんなに好きだと言ったくせに。薄情者……」

 そう闇に向けてつぶやきながら、夕華はシーツになめらかな右頬をすりつけた。
 初めて契りを結んだあの夕べに、最初に口づけされたのがその頬だった。
 あのとき、そこから体内に火が入った気がした。

 その情火はいつまでも消えてくれず、熾き火となって残った。ときおり赤々と燃え、六年も執拗に夕華をさいなんできたのである。
 少年への怨情をこめた言葉を、夕華は哀しげに口にした。

「あんな子はもう知るもんか」

 部屋の寂しい闇が、耐えがたかった。

 ――じゅくんと子宮がしこる。
 やるせない想いに反応して、女の肉がうずきを一層深めていた。体内の赤黒い熾き火が、ちろちろ燃えている。

(『処理』しないと……)

 魅惑的にほどよく肉のついた太ももをすりあわせるようにして、脚をもぞつかせる。
 膝下まで下げていたジーパンとショーツを、脚だけで完全に脱ぎ捨て、悩ましい脚線美をあらわにする。
 夕華は剥きあがってしまっている陰核の包皮をつまみ、細心の注意をはらってそろそろと戻した。

 それでさえも腰がはねあがりそうだったが、どうにか過敏をきわめる快楽器官は、皮のかげに隠れてくれた。
 そこはやはり避けることにしたのだった。今夜は予想外に快楽が鋭すぎる。

 指を恥丘から下にすべらせ、ふっくらした大陰唇に右手の中指をたてに食いこませた。
 ぬるぬると指を前後させて、はしたなく愛液でぬめった小陰唇および膣前庭、膣口の上を刺激していく。
 熱く濡れた陰唇のぷりぷりした肉をこすりながら、夕華はもう一方の手で乳房を触った。

 切なさをこらえるように豊かな乳肉を五指でぎゅっとつかむ。
 けれど乳肌からも甘い肉悦の波紋が伝わり、子宮まで響いていく。意図とは逆に、かえって切ない情感がじんわりこみあげる。
443春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:19:20 ID:iJSNekz6

(胸、また感じやすくなった……)

 それに、また大きくなったのかもしれない。てのひらに伝わる豊かな肉の重みがわずかに増した気がする。
 正直いって嫌だった。どんどん男好きのする体に変わっていく。

 だがいくら成長を嫌悪しようと、その扇情的な肉房が、夕華の体のなかでもとくに悦びをうみだす場所の一つなのは変わらなかった。

「ぅ――」

 まろやかな乳球をみずから揉みこねまわすたび、肉の熱と感度がますます引き上げられていく。
 豊麗な美乳がぷりぷりに張りつめ、乳首が陰核と同様にうずく。それらの小さな肉の芽は、鼓動と同調してトクトクと膨らみっぱなしだった。

 熱い血流のリズムが子宮を揺り動かし、肌にじっとり気だるい汗が噴く。
 美唇が苦しげに呼吸をむさぼり、阿片を呑まされたように瞳の焦点がぼやけていく。
 とろけた秘肉をさすり、プチュプチュ愛液を鳴らしながら、いつしか夕華は濡れた声をあげ続けていた。

「あっ……ぁっ、……ああ、……あぁぁ……」

 はっと気づいて唇を噛む。

(だめ、声――)

 といってもいまは寮ではない。広い自邸の奥にある一室である。少しくらい叫び声をあげても気づかれはしないはずだった。
 それでも声などあげていいわけがない、と夕華は固く思っていた。
 女学校での性教育の時間でも、日々受けた華族女性としての躾けでも、朝礼でよく説かれた十字教の教えでも、こういったことには「清らかな女」であれと教わった。

 結婚マデハ必ズ処女ヲ守レ。貞潔デアレ。肉欲ハ抱クナ。己ヲ律スベシ。姦淫ハ罪。
 閨ノ行ヒハ楽シムモノデハアリマセン、神聖ナ営ミデス。
 アナタガタ良キ娘サンガタハ、良キ方ニ嫁ギ、良キ妻トナリ良キ母トナリ、家ヲ守ルノガ務メデス。
 人生ハ誘惑ニ満チテイマス。デスガ、ソレラハ断固トシテ遠ザケナサイ。

 過チハ犯シテハ、ナリマセン。

 そんなことを説かれたところで夕華にはいまさらで、罪悪感を植えつけられ、ばつの悪い顔でうつむくのがいつものことだった。
 彼女が初めてを京介にあげてしまったのは、女学校に入る前だったのだから。
 教壇で説教をしていた尼僧も、まさか十二歳で入学する以前に男性経験のある生徒がいるとは思わなかっただろう。

 どうにもならないが、せめてといった感じで夕華は自慰の声だけはあげないように努めていた。

 あるいはこんな異常で淫らな衝動が起こるようになったのは、貞潔を守らなかった罰だろうか。
 それでなくても、なにかの天罰ということはあるかもしれない。
444春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:20:50 ID:iJSNekz6

(火付け人の家だもの。
 七代くらい祟られていてもおかしくないじゃない……)

 笑えないことに、いや、かえって不謹慎な笑いさえこみあげることに、京口為友から数えて、夕華はちょうど世代的に七代目だった。

 ……ばかばかしいけれど、いっそ呪いと思ってしまったほうが気が楽なのだ。
 そうでなければ、こんな――発情期の獣よりひどいこの常軌を逸した蕩けかたは、夕華自身の生来のものになってしまう。
 けれど、やはり否定する声が内部から聞こえる。

  『――祟りや天罰などがあるものか』

 今度の声は、父のものだった。心をがりっと鉄の爪にひっかかれた気がした。

 諦めろと声がする。その肉の業は真実おまえのものだと、そういう女だったのだと、持って生まれた性質からして病的な淫乱の性なのだと声がする。
 キタナラシイ、と声がする。
 最後のその声は、父のものではなく京介の声に似ている気がした。心の掻き傷がじくじく膿んでいく。

(ちがう。あの子が私にそんなことを言ったりするもんか)

 反射的に夕華は悲鳴のように念じたが、その端からすぐ(絶対にそうだろうか?)と自信がなくなる。

(言わない。言うはずがない、だってあの子は私が好きだと――)

(ううん、もう違うじゃない。私のことなんて忘れようとしていた)

(それに、あの子が好きと言ってくれたのは、六年前の私で、いまのこんな女じゃない)

 あのころは、こんな乱れ方をする女ではなかった。
 浅ましい自涜など知らず、天地になんら恥じるところなく、胸をいつでも張っている子供だった。そんな自分を、幼い京介も慕ってくれていたのだと思う。

 くらべると、今の自分はなんなのだろう。
 発作的に発情して自涜行為にふけり、寝台に這って身をくねらせている女だ。脳裏も秘部もどろどろに溶かして、みずからの指で肉の罪を掘りおこし、それに蕩けきっている。

(いまのこの姿をあの子に知られたら……)

 ぎゅっと目をつぶる。その先は考えたくない。
 合わせる顔がないというより、自分のこんな部分に、京介が少しでも嫌悪を示したらどうしようと思う。
 幻滅されるのが怖い。ただただ怖くてたまらなかった。

 心の掻き傷の膿み具合が進行して、痛がゆいほどになっていく。

「京介君……」
445春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:22:09 ID:iJSNekz6

 少年の名をつぶやいたとき、愁える想いが夕華の瞳にたゆたい、しだいに蕩けて熱くうるんだ状態に戻っていく。秘部と乳房にかかる繊美な手がそろそろとうごめき出す。
 ぐるぐる惑った末に、けっきょく夕華が選んだのは、遠い思い出に逃げこむという堂々巡りでしかなかった。でも、溺れてしまえば当面は考えないですむ。

 何度も「京介君、京介君」と、かぼそく名をささやきながら、自慰を再開したとき、唐突にぞわんと肉悦が膨れた。
 続けてどくりと凶暴に、心悸がはねた。

(――――あ)

 ぱっと火の粉が散り、心の傷が膿ごとたちまち炎上し、急速に火球がふくらんでいく感覚があった。
 熾き火が見える。赤黒い。

「あ、あ、ぁ、ぁあっ……」

 発作の程度がもう一段、いままで上ったことのない高みに押し上げられていた。
 体内が沸騰する。

 夕華の心臓は、壊れたように暴れてどくどく血液を送りだしている。血管をかけめぐって妖紅色の炎がうねり、沸血が荒れ狂う。
 長い脚がきゅっとひきつけられ、仰向けの体にガクガクと痙攣が走った。淫熱でうす赤く染まった肌から、少女の汗がぶわっと噴く。

「こ、これなに――ひぃっ!」

 せっかく戻した陰核包皮がぬるんと剥けて、可愛らしく露出した肉豆がひくひく脈動した。
 押しとどめようとした指が、赤剥けした肉粒をもろに押さえることになってしまう。夕華の腰がビクンとはねた。またも軽く達したが、肉の悩乱はわずかも弱まらない。
 胎内で、どぷりと子宮が熱い粘液を吐き出し、収縮した膣口が水気たっぷりにクチャと鳴った。

 肌が汗に輝き、淫艶にわなないた。足の指がにぎりこまれてシーツをぎゅっと巻きこむ。
 目に見えない、燃えているなにかに力ずくで押さえ込まれている。
 あるいは百千の舌で、全身の神経を内側からなめずられているようだった。

 いままでとは比べ物にならないくらい体が熱い。熱いのにひっきりなしに悪寒が走り、カチカチと奥歯が鳴っていた。
 この世の多くの宗教で、なぜ「地獄は炎に満ちている」と説かれるのか、今よくわかった気がする。

(ひ、火を、鎮めない、と)

 震える身を起こして足元のジーパンをひっつかみ、ポケットをまさぐって薄絹のハンカチを引っ張り出した。
 それを股間の秘肉に押し当てて、夕華は寝台にうつ伏せにうずくまった。乳房がシーツに柔艶にむにゅとつぶれ、美尻が持ち上がる。

 ひざをつき、上体を伏せて這ったこの格好は、獣さながらで自分でもあまりに恥ずかしいとわかっている。
 それでも、この体勢で布を押し当てるやり方が、シーツを濡らしてしまう危険がいちばん少なかった。ときおり、快楽の極まったあたりで、潮を噴くという現象が起こってしまうことがあるのだ。
 その漏らす液体は、恥悶の夜ごとに高まっていく感度にあわせるように、少しずつ噴きだす量が増えていっていた。用意した布がしずくをぽたぽた落とすほど、漏らしてしまうこともある。
 夕華にはそれがなんなのかはわからず、ただ失禁じみたその現象を起こしてしまうたびに、深い自己嫌悪に苛まれてきたのだった。
446春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:23:33 ID:iJSNekz6

 とにかく、熱くうるんだ秘部にタオルやハンカチを当て、柔熱い肉を布の上から押さえさすって終わらせればいい。液体は、布地が吸い取ってくれる。

「あんんんっ……!」

 あらためて薄絹をとおして、妖美な剥け肉豆におずおず触れたとき、最後の自制心が霧になって一瞬で飛び散った。
 さすっている膣口からこぷこぷと蜜がこぼれてくる。
 その肉穴にハンカチごと指先をもぐりこませると、媚肉が吸いつくように締まった。柔らかいとはいえ布にこすられて、呪わしい性感がじくじく放射状に広がる。

 ハンカチを広げた手のひら全体で秘部をつつむようにして、にゅるにゅるに蕩けた肉を圧迫してさすりはじめる。理性が溶岩の底なし沼に沈んでいく。
 陰核まで掌底で押さえている。あまりに敏感なその肉をぐっぐっと揉みこむように刺激しているのに、痛みはない。わき上がるのは真紅の電流のような悦びだけだった。

(溶ける、やだ、とける……んっ、)

「ひぁんんっ、んっ……んっ……!」

 赤熱の快楽が絶頂を何度も呼ぶ。血の淫熱が沸点に達してちょっと下降し、またすぐ煮立つということを繰り返す。
 こんなものは欲しくない。

(痛いほうがいい……痛いほうが、よっぽどいいっ……!)

 肉が爛れる官能のなか、夕華は血を吐くような思いを抱いた。
 京介との初めてのときは痛かったが、あの清冽な痛みは、大切な思い出の一部だった。それを汚してしまっている。
 勝手に思いかえして貪欲な快楽をむさぼる、自分自身の記憶回路と肉体に、夕華はほとんど憎悪を感じていた。

(おわって、はやくおわってよ……!
 ああ、またっ、またとける、……嫌……!)

「っくぅ……ふーっ……くぅぅんっ……!」

 震える舌をひっこめ、奥歯をくいしばって叫びをこらえ、“溶ける”。夕華は、絶頂のことをそう認識していた。

 ハンカチはの押し当てた部分はすでにぐっしょりと蜜を吸収して、湯気を立てそうなほど熱く濡れている。
 火照る双球を押しこねまわすように、しなやかな背を反らして豊麗な胸を木綿シーツに押しつけ、美少女が淫蕩に身をくねらせる。
 そのたびにむにゅむにゅと肉房の形がうつろう。乳房が押しつけられた周辺の布にも、さざ波のごとき皺ができていく。
 甘い火傷じみた、ひりつく快楽が、勃起した乳首を中心にじゅわりと乳肉に広がった。

「ふぅっ、ふっ……、ぅんんんっ」

 乳球を押しつぶす刺激がつぎの絶頂への呼び水となり、“溶け”た。膣肉が内奥から震撼して、ぴゅくと愛液をふきこぼす。
 桃色に茹だったなめらかな肌は、甘汗にすっかり濡れそぼち、しっとりととろみを帯びていた。
 手は自慰中毒さながらに夢中になって、二枚の大陰唇のあいだの肉泥をぐちゃぐちゃにかきまわしている。震えながら罪深い火に焼かれ続ける。
447春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:25:19 ID:iJSNekz6

 陰核がプクンと、濡れて肌に張りついたハンカチを押し上げていた。
 覚悟をきめて、夕華はその過敏な肉豆を布越しに指の腹でおさえた。尖りきったそれの上に小さな丸を描き続けるように、クリクリなぜまわす。
 鋭い快楽に、命じられたように艶美な尻がビクンと持ち上がった。

(あ――――来る)

 周回して堕ちるように深まっていく官能が、その描く円をせばめて、一点へ向けていよいよ収束していく。
 炎がごうごうとわめき、ひときわ熾烈な波がくる。

「あああっ、あ――――んむんんんっ!」

 もう声を抑えようという理性すら飛んでいた――が、最後の瞬間に、夕華はとっさに、顔前のシーツに落ちていた銀のロザリオを噛んだ。
 それはずっと革紐で首から下げていたのである。
 激しい燃焼に身をよじり、十字架細工にかみつく歯列の隙間から、押し殺した叫びをもらす。

  ――好きだよ、大好き……

「……んぅっ! ……んんんんっっ……! んー……っ……!」

 今夜もっとも大きい絶頂に意識を灼熱させながら、脳裏に浮かび上がっていたのはやはりあの夕べの告白だった。
 両手で押さえたハンカチの下で、ピチュと一条の熱い液が弾ける感覚があった。

「んんーっ、……っ、……!
 ……んっ、……くっ、ぅぅ……」

 烈火が渦を巻き、猛り、ごうっと流れ、……そして火勢をじょじょに鎮めていった。
 ぐっしょり濡れて貼りつくハンカチを、陰唇で噛みしめるかのように、熱い秘肉が妖しくひくついている。

 ややあって、焦げかけた脳を余韻に痺れさせられながら、ようやく体の力がほどけていった。
 夕華はロザリオを歯のあいだから落とした。わななく艶唇と銀細工のあいだに、唾液がつぅと糸をひく。

「ふ……ぇ、ぁぁ……やっ……やっと……、おわった……」

 ほつれたショートの髪が、紅艶に染まった頬にひと筋貼りついていた。
 望まない淫楽に煮崩れさせられ、光が失せた瞳が力なくとろけていた。くびれた腰が弱々しく痙攣している。
 乳房とおなじく豊麗に育ったなめらかな美尻が、なにかを求めるように、自分の意思を離れてなよやかにうねってしまっていた。

(つぎ起こったときは、叫び声、こらえられないかも……)

…………………………
……………
……
448春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:27:32 ID:iJSNekz6

 小間物部屋の窓から入る月影が、さらさらと金紗を投げかけてくる。
 ごろんと仰向けに戻り、夕華はそれを寝台から見上げた。
 腕を上げ、手のひらを月光に透かす。ひろげた五指のあいだから光が漏れ、濡れた細指が淫靡にきらめいた。

「……お風呂入らないと」

 つぶやいて、けだるげな瞳に光を受け止めるうち、頭がじょじょに冷えていく。枕辺のちり紙で手をぬぐいながら考えた。

(結婚してしまおうか)

 夕華の住むこの世にあって結婚は、個人のものではない。家と家のものだ。
 父子爵はこの家を復興させ、往古の力を地元にひろげようと画策している。そのために娘を使って、ほかの地域の有力な家と閨閥を結ぶつもりだろう。
 そのことだけ見れば、べつに非難されるほどのことではない。どこの華族もやってきたことだ。

(父様に言われるまま結婚して、もうあの子とは会わないほうが、いいのかも――)

 会わなくなれば、京介はいつまでも自分を理想の初恋相手として憶えていてくれるだろう。
 自分だって案外、そちらのほうが楽になるかもしれない。

 京介との結婚は、夕華がどれだけ強く望んでも、ない。あの父に認めてもらうことなど、考えるだけ無駄である。

 時代にとりのこされたがごとき華族の家中では、家長の立場があらゆる意味で強い。法でさえそうだ。
 ことに華族籍以外にある者との縁組では、家長が同意して判をついた用紙で届出をすることが必要である。それをしないかぎり、正式に婚姻したことにはなりえない。
 だから、父の敵意があるかぎり、渋沢家との縁組はまずありえない。
 死んだ祖父がどこまで話をすすめていたのか知らないが、京口家が父に代がわりしたとたん渋沢家があっさり両家の縁組を諦めたらしいのは、間違いなくそれが理由だろう。

 かりにその事情を無視し、京介のもとに行ったとしても、見通しは明るいとは言えない。
 まだ京介に嫌われていないなら、恋人にまではなれるだろう。しかしその先、結婚できないとわかっていても、ずっと関係が壊れずにいられるだろうか。
 ――現実的に考えれば、難しいだろう。

(京介君がもし応えてくれても……)

 渋沢家の人々にも、首をふって反対される可能性は少なくないのだ。
 京介とてあちらの家のひとりきりの嫡男で、家を継ぐ義務がある。いずれ誰かと結婚して、正式な結婚から生まれた跡継ぎを残すことを期待されているはずだ。

 だから夕華はこれまで、京介との関係をはっきりさせるのが怖かった。
 周囲の人々に恋を知られるのが怖かったし、反対されて京介の心が揺るぐところを見るのが怖かった。人生を狂わせる重みをかれに背負わせるのが怖かった。

 心中や駆け落ちなどは考えないようにしているが、要するに夕華の恋は、それに近い覚悟がないと続けられないたぐいの恋なのだ。
 そんな覚悟を、『私のためにしてほしい』などと簡単に京介に言えるものではなかった。ましてや、こんな情けないことになっている女のために。
449春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:28:59 ID:iJSNekz6

 そこを伏せて一時的に手をとりあっても、いつか恋は砕ける。そのあとには、ささやかな関係すら残らないかもしれない。
 それなら本当に、これ以上近づかず、綺麗な思い出のままでかれの心に残ったほうがましではないだろうか。

(……うぬぼれるのはやめよう。
 その前に、あっちのほうが私から離れていきそうなんだから)

 手をついて身を起こし、するりと寝台から下りて羅紗のじゅうたんを素足で踏んだ。
 窓辺に歩み寄り、荒れた京口邸の庭を見下ろす。
 かなたには坂松城の焼け跡が見える。渋沢邸もこのおなじ月に照らされている。家の栄枯は移っても天の月影だけは百五十年前と変わらない。

 窓を押し開けた。ふきこむ夜の涼気が、火照った若い肌にここちよい。
 しかし体は爽快でも、心は寒々としていた。

(莫迦だ、私。京介君に離れられることも覚悟していたはずだったのに。
 私が結婚するより先に駄目になることなんかないって、根拠もないのにどこかで思っていた)

 本当は、だれを責めようもない。幼いころに契りを取り交わしただけで、六年間恋心が変わらないままだと信じていた自分が、あまりに愚かだったのだ。
 少しくらい会話が少なくなっていても、自分たちはひっそり通じ合えていると思っていた。

(駄目になっていたのは、いつからだろう)

 父の目を盗んで帰省のたび会いに行くまではよくても、そのあと夕華がまともにやったことといえば、毎回「いい人はいるの」などとおっかなびっくり聞いていただけだ。
 「いいえ」と返事を聞いてまだ縁が切れていないことを確かめたら、とりあえず安堵していた。あわよくば向こうから踏み込んでくれることを期待していた。
 自分では、いつもそこから先へ踏み込むだけの勇気がもてず、すごすご引き返していっただけだった。

 けれど夕華には、それで精一杯だったのだ。

 父に知られることへの警戒と、
 変わってしまった自分と、
 背負わされる家の重圧と、
 仮にそれらを振り切ったとしても、正式に結ばれるのが難しいことと。

 それらが全部、土壇場であと一歩をふみだす勇気を奪っていった。
 ぐずぐずためらったあげくが今日のざまだ。

(ほんとうにあきらめどきなのかも。
 しょうがないか、自業自得だから……でも)

「すこし、さみしい」

 窓から夜天を見上げてぽつねんとつぶやく。春の月がこんなにも明るく見えたことはなかった。

 とにかく、幸せな記憶だけは双方に残るだろう。
 追憶の中の京介なら、いくらでも好きとささやいてくれる。ひたむきに夕華を求めてくれる。

 自涜だってもう何夜もしてきたのだ。完全に開き直ってしまえばいい。脳裏にひびくあの男の子の声にあわせて指を動かしていれば、その時間だけは京介から求められている気分になれる。
 すべてをあきらめて恥を忘れてしまえば、あの業火のような快楽にも、どこまでも溺れていられるようになるだろう。
 だから、いっそこの先も記憶だけあれば――

(――嫌)

 強く、不意に強く夕華の心にその思いがこみあげてきた。
 たしかに、こんな家のことに巻き込むのは嫌だった。こんな女になった自分を知られるのは嫌だった。けれどそれ以上に、このまま離れてしまうのが嫌だった。
450春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:30:48 ID:iJSNekz6

 こみあげてきた何かを抑え、月光の窓辺でうつむく。この光は人の心をもろくすると詩人は言っている。
 自分がいつになく弱気になっていると夕華にもわかっていた。

「……もどりたいな、昔に」

 それでも、ぽろと弱音をこぼしてしまった。
 とたんに今度こそ涙腺がゆるむ。きりっと奥歯をかみしめて、夕華は落涙をこらえた。

 こらえたはずの涙がすぐぼたぼたと落ちた。
 腕をあげて顔をぬぐい、泣いては駄目だと自分をいましめる。
 小さなころからお姉さん役をみずから任じてきたのだから。

  ――ゆうかちゃんはかっこいいね。

 たしか小学生低学年のころ、水遊びのとき川のふちに出た蛇を追い払って、京介に言われた言葉だった。
 ふつうは男の子に向けて言うたぐいの賞賛であったが、頼りにされたがっていた夕華にはその言葉が誇らしかったし、嬉しかった。
 それからも凛と胸をはって年上の威厳を守ってきた。

 だから泣きたくなどない。
 みっともなく泣くたびにいよいよ、あの子が好きになってくれた自分から遠ざかってしまう。
 けれど、駄目だと思っても、月の光に意地は溶かされて、窓辺ですすりあげる音はしゃくりあげる声にうつっていく。

「もどりっ……もどり、たい」

 ひざをつき、窓枠に顔を伏せてとうとうあげた泣き言は、もうはっきりと嗚咽だった。

 遠い月日に戻りたい。子供のころに戻りたい。
 父の素顔も、母の死にまつわる事情も、「むこうの家」との複雑な因縁の話も忘れ、なにも知らなかったころに戻りたい。父に吹き込まれたありとあらゆる毒を心からそそぎたい。
 こんな過剰な情欲は消えて、破廉恥な体は縮めばいい。結婚などはしたくない。

 また、あの子の手を引いて走りたい。

「……私が好きだったなら、一度くらいそっちからも会いに来てよ、京介君。
 一度でいいからそっちから来てよ!」

 涙声がかすれて響いた。
 この六年のうち、向こうからあと一押しがあれば、夕華は踏み出せていた。駆け落ちでもなんでもためらわなかったかもしれない。
 その一押しがなかったのだ。さらに今夜で、相手も自分を深く想ってくれているはずだなどと、そんな確信は持てなくなった。

 本音では、あきらめたくなどまったくない。ずっと正式に添えなくてもいい。誰に反対されてもあの子の手をとりたい。
 でも、京介のほうではもう、そこまでするほどの想いではなくなっていたのだったら、その場合どうすればいいのだろう。
 どうしようも、ないではないか。

 空より金紗がさらさらと、窓枠に頭を伏せた少女の髪を撫でて落ちていく。
451春の夕べの夢醒めて〈3〉 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:32:37 ID:iJSNekz6

…………………………

 夕華にとって、父が現実の体現ならば、京介との思い出は子供時代そのものだった。
 輝くような、思い出だった。

 彼女の記憶にある最古の情景は、神社の境内で、おくるみに入った男の赤ん坊に対面しているところだった。緋の振袖をきた幼児の夕華は、祖父に抱き上げられ、興味しんしんに赤子をのぞきこんでいる。
 京介の初宮まいり(生後32日の神もうで)でのことだと、のちに知った。

 物珍しさでおむつ替えを手伝った。

 あの子が新しい遊び仲間になる日が待ちきれなかった。立つようになったら、はやく歩かせようとして、手を引いて何度もこけさせた。

 年上風を吹かせて、自分もおぼえたてのかな文字や数字を、先生ぶってつめこんだ。喧嘩しても昼寝の時間には添い伏しして子守唄を歌った。

 地区の子ども会でも学校でも、先輩の立場で何かにつけ面倒を見た。
 学校ぐるみの山への遠足で京介が迷子になったときは、夕華が探しに行った。見つけられたが二人して山中でしばらく迷い、あとで柿子にまとめて怒られた。

 知る限りの遊びと冒険行に巻きこんだ。たいがいは柿子をまじえて三人で遊び、大勢で騒ぐことも多かったが、二人きりのこともしばしばあった。
 ほおずきの実を鳴らし、稲荷のお供えをちょろまかし、秘密基地を作り、巣から落ちた鳥のひなを世話し、網を手にして虫や魚を追った。

 ひな祭りも皐月の節句も、水無月の祇園会も中秋の十五夜も、雪神忌みもどんど焼きも、春夏秋冬の行事の場にともにいた。
 寒梅に匂う桜に盛夏の蓮に、夕陽の色の曼殊沙華に、咲きほこる花々が移り変わる野辺で、じゃれあう子狐のようにして四季を過ごした。

 別離の半年前に、いいなずけだと聞かされて、本当はこちらから意識しはじめていた。

 ――……最後に、京介は夕華との別れに純粋に泣き、背伸びして抱きしめ、好きだと言ってくれた。

 あの瞬間に夕華がどれだけ救われたか、たぶん京介のほうには想像もついていないだろう。
 そのあとに互いに初めてを契ったのは、夕華にとって決して場の雰囲気などではない。


 救われたのだ、本当に。あの日、あの子と肌を重ねながら。

 痛みの中で、これだけは嘘じゃなかったと夕華は深い安堵に包まれていたのだった。
 京口家での幸福のほとんどが見かけばかりの嘘だったとしても。渋沢家との交流がただ大人たちの都合でも。赤ん坊だったあの子との出会いからして、政略で仕組まれたことだったとしても。
 自分たちが望んで共にすごした時間と、つちかってきた互いへの情愛は本物なのだと。


 それだけが、夕華が「子供」であることを卒業させられていったあの半年間の、たった一つの幸せな確信だった。
 たとえ肉をくすぶらせる火種に変わってしまっていても、この記憶とあの子への想いを捨てることなどできなかった。

「……まだ、あきらめたくない……」

 無明濁世の闇の中、抱えつづけたこれだけは。
452ボルボX ◆ncmKVWuKUI :2009/04/04(土) 16:33:30 ID:iJSNekz6
続かせていただきます。
453名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 16:48:41 ID:242Et463
ケータイから書き込むのって大変だよねー
ありがとうごいざます!
454名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 17:25:29 ID:m53n13ga
>>452
GJ!
切なすぎてもうね。
悲恋物なのか違うのか、ドキドキしっぱなしです。
続き気になるぜええええ!!
455名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 18:08:37 ID:eAh21x+M
夕華の家かなり貧乏なんだな…
456名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 20:06:03 ID:Ug/+cOgg
なぜ俺には幼馴染がいないのか
457名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 20:41:49 ID:nhgK8tgA
リアルの話はいらない。
458名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 21:12:29 ID:sIHjZ8aD
保守
459名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 23:22:18 ID:M3Y+mQD9
ボルボさんのまさかの連続投下ktkr
460名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 23:58:18 ID:oe2GWRqg
>452
これはえろい
続きも楽しみにしています。
461名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 00:04:11 ID:yBCGnKAO
>>452
ようやく追いついた。夕華の切なさがビンビン伝わってくるよ。
エロさがその裏返しとかもうね、GJとしか言いようが無い
462名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 00:53:01 ID:zrK1TDnx
GJすぐる。

そして夕華さんの切ない情に対して欲を抱いてしまい自己嫌悪…

夢が、醒める時が。どんな方向に醒めるのか、目がはなせません
463名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 03:03:43 ID:l5/PKco8
GJ以外の言葉はいらない。

あと、京介の脱ヘタレ化が待ち遠しくてならない。
464名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 06:38:17 ID:wDTmAkH6
>>452
GJです。
夕華、雁字搦めで動けないなあ。
京介頑張れ。
465名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 21:38:13 ID:Jm+6CCKk
うーん、読んでて辛くなってくるぜ……GJ
マジで京介頑張ってくれ

さて、別の意味で辛くなる作品を投下しますよ
スルー推奨です
466幼なじみが絡まない幼なじみモノ(仮):2009/04/06(月) 21:40:17 ID:Jm+6CCKk
ところでさ、キミって好きな人いないの?
「何の話だよ」
いやさ、キミって何だかんだで顔いいし、何でも器用にこなすでしょ?
普段のやる気ない雰囲気とのギャップが、一部の女子から人気あるみたいだよ
「はぁ、それで?」
いや、人気あるけど浮いた話はとんと聞かないから、なんでかなー、と思って
「なんでも何も、与太話に過ぎないからだろ。誰がこんなダルい男を好きになるかよ」
……んー、少なくとも一人、心当たりはないこともないけど
「オレにはさっぱりわからないが」
……鈍感だよね、キミ
「あ、何か言ったか?」
別に何もないよ?
「……まぁいいけどな。で、そのよくわからない噂\と、オレが誰かを好きってのが関係あるのか?」
……内緒だよ?
「?」
実はさ、キミを好きだっていう奇特な人がいてさ。キミの好みをさりげなく聞いて欲しいんだって
「全然さりげなくないな」
まあ、嘘だからね
「帰れ」
冗談だよ。僕は回りくどいのは苦手だから、今回は直接聞くことにしたの
「何を信じろってんだよ、全く」
まぁそう言わず、後学のために教えてよ。好きな娘がいないなら、好みの羅列でもいいから
「……たく、仕方ねえな。お前だから教えてやる」
よかった。持つべき者は親友だね
467幼なじみの絡まない幼なじみモノ(仮):2009/04/06(月) 21:42:30 ID:Jm+6CCKk
「ね、ねぇ」
ん、どうしたの委員長?
「ど、どうしたの、って……聞いてくれたんでしょ?」
……あー、その件か。確かに聞いたよ、さりげなく
「本当?で、で、アイツは何て?」
……言わないとダメ?
「あ、当たり前でしょ!?何のために聞いてもらったと思ってるのよ!」
『あ、アイツに絶対好きって言わせてみせるんだから!』だっけ?……自分で告白しなよ
「それはダメ!」
なんでさ
「う、だって……」
だっても何も、彼とは付き合い長いんでしょ?別に振られたりはしないと思うけどなぁ
「……わ、私だけ好きって、何か悔しいじゃない……」
…………
「な、何よ!だからこそ、恥を忍んで頼んだのに!」
はいはい、じゃあ教えてあげるよ、彼の好み

まず彼は、長い髪の娘が好きらしいよ。キミくらいの
「な、なるほど……ほ、他は?」
背は同じか少し低いほうがいいんだって
「よ、よし。問題はないわね」
スタイルはあまり気にしないみたいだけど、どちらかというと細身の娘がいいみたい
「ほ、細身……せ、セーフよね、私?」
さぁね。彼の基準なら大丈夫じゃない?
「だ、ダイエットしようかなぁ」
顔は可愛いほうがいいらしいけど、そんなに問わないって。ただし
「た、ただし?」
猫っぽいのはポイントが高い
「……ネコっぽい?」
んー、彼のニュアンスを伝えるのは難しいんだけど、
ま、ちょっとつり目な感じだろうかね。よくわかんない
まぁ委員長なんかたぶん猫っぽいんじゃないの?彼から言えば
「ふ、ふぅん……」
んー、容姿に関してはこんな感じかな
「ね、ねぇ!」
あれ、まだ何か?
「あ、あのさ……」
ん?
「…………む、胸って大きいほうが、いいの、かな?」
……彼の好みは、どちらかというと、板だね
「い、板?」
まぁ委員長レベルがベストなんじゃないの?もうそういう質問はなし。腹立つから
「な、何でよ!?」
468幼なじみの絡まない幼なじみモノ(仮):2009/04/06(月) 21:44:38 ID:Jm+6CCKk
で、性格とかのことだけどさ
「う、うん」
まず彼は、基本的に自分から動こうとしないから、引っ張ってくれる人がいいって
「な、なるほど」
例えば朝は起こしてくれたり、お弁当作ってくれたり、勉強教えてあげたり
「ふんふん……ん?」
あんまり彼氏彼女ってふうにガチガチせずに、気楽に相手をからかったりできると、なおいいって
「あ、あの……それって」
で、そこまで聞かされて、僕は思わず言っちゃったよ
『ずいぶんと身近にいる人に似てるね』って
「…………」
容姿とかも、何だかその人のことに全部当てはまってるし
「……あ、アイツは、何て?」
彼ね、顔をそらして一言、

『長い付き合いだからな、見慣れてるんだろう』

だってさ
「……あ、う」
……全くもうね、聞いてて呆れた
キミらさ、早く付き合いなよ。見てるこっちが恥ずかしくなるし
「……えと、うん」
あーあ、顔赤くしちゃって
僕も幼なじみ欲しいなー
469名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 21:47:38 ID:Jm+6CCKk
ってな感じで一つ

幼なじみをはた目から見て羨むってシチュを目指したが、これ幼なじみモノか……?
やはり絡ませたほうが王道だよなぁ

すみませんでした、海に沈んで反省してきます
470名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 21:51:58 ID:+83ANaUg
>>469
リアルタイムGJ!
471名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 22:19:14 ID:O4RSLNZn
>>469
GJです。
傍観者の視点だと感情移入しやすいですね。
こっちも読んでて恥ずかしくなってきました。
   
472名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 23:06:39 ID:uW9I81zU
>>469
GJ
473名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 11:02:42 ID:ixqTUqJs
>>469
いやいや、これは新鮮で素晴らしい
GJ
474名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 15:45:56 ID:YOKNSIqo
あまああああああい!
475名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 17:43:13 ID:VR87MK37
>>82
GJ
476名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 08:51:15 ID:NS/yw6TI
傍観者が僕っ娘で実は男は傍観者が好きで、委員長は途中でそれに気づいた

って電波を受信した。
477名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 11:37:19 ID:63ffYB9o
>>469
すばらしい!!
ツンデレっぽい子は第三者の存在でより美味しくなるな


ところで、このSSと似た感じのものを最近どこかで見たような…
「〜が絡まない〜モノ」っての。
幼馴染スレじゃなかったかも、ってか探したけどないから違うな。
スレチごめんぬ
478名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 22:35:35 ID:BmuoF1l3
>>477
>>185-186じゃないか?
……まぁそれを書いたのも私なんですけどね。同じ人です

そして今から投下
479幼なじみが向かい合わない幼なじみモノ(仮):2009/04/08(水) 22:37:41 ID:BmuoF1l3
……ふぅ。
さて、こっちはあらかた終わったけど。そっちはどう?
「ちょっと前に、全部終わったわ」
それは何より。ごめんね、委員長ばかり頑張らせちゃって
「副委員長のあなたも十\分な働きをしてるでしょ。気にしないで」
いやいや、委員長の仕事ぶりには負けるよ
それにしても、先生も人使いが荒いよね。僕らに仕事を押し付けてさ
「私は別に。……それより、ちょっと話があるんだけど」
また彼の話?早く告白しちゃえばいいのに
「う、うるさいわね!絶対アイツに好きって言わせてやるんだから!」
はいはい、それはよーく存じております
でも最近、何か変だよね。キミたちが一緒にいるところをあんまり見ないし
「……話ってのは、そのことなのよ」

避けられてる?
「そうなの。アイツ、何か最近よそよそしくて」
へぇ、例えば?
「まず、自分で早起きしてる。今まで私が起こしてたのに」
はぁ、なるほど
「それどころか、私が家に行くより早く学校に行ってるし」
それは相当早いね。学校まだ開いてないんじゃないの?
「どこかに寄り道してるみたい。 学校に来るのは遅刻間際だし」
ふぅん……他には?
「休憩時間とか、私が話しかけようとしたら、すぐに出ていっちゃうし」
あー、そう言えば教室にいないね
「お、お弁当渡そうとしても、何かお昼持参してるし」
……ふぅん
「帰りだって、今までなら待ってくれてたのに、最近は先に帰ってるし」
…………
「夜にやってた勉強会も、一人でできるから来るなって……なに、その顔」
いや、別に。大変だなぁと
「大変を通り越して異常よ。今までのアイツとの付き合いで、こんなことなかったもの!」
どちらかというと今までが異常じゃ……
「な、何か言った!?」
……いや、別に
480幼なじみが向かい合わない幼なじみモノ(仮):2009/04/08(水) 22:39:32 ID:BmuoF1l3
「……どうして、こんなことになったのかな」
さてね。心当たりはないの?
「別に。いつも通りのはずよ」
本当に?何か些細なことでもいいからさ
「うーん……やっぱり思い当たることは何も」
全くないの?
「……あ、あなたに相談し始めてから、多少のアプローチはかけるようにした、けど」
……えーと、僕に相談し始めてから?
「そ、そうかも。あなたにアイツの好みとか聞いて、私なりに色々考えてやってみてるの」
あー、やっぱりねぇ
「わ、私、あなたのアドバイスにしたがって、
 ちょっとアイツの好きそうな服を着てみたりとか、
 お弁当にアイツの好きなもの増やしたりとか、
 帰り道で微妙にアイツの傍に寄ったりとか、
 ちょっとだけ、ちょっとだけど、頑張ってる、のに……」
……委員長
「やっぱり。私じゃ、ダメなのかな……」
…………
……帰ろうか。日もだいぶ傾いてきたし
「……うん。アイツは……やっぱりいない、か」
僕が家まで送るよ。さ、行こ

もしかして、恋人とかができたのかもね
「え、えぇっ!?」
冗談だよ。彼に限ってそれはない
「ほ、本当?」
まぁ僕の知る限りではだけど。密かにもてるからね、彼に
「……や、やっぱりそうなんだ」
あくまでもマイナーな人気ではありますが。早くしないと誰かに取られるよ?
「そ、そんなことないわよ!それに、」
はいはい、彼から告白させるんだよね
「そ、そうよ!絶対、私に惚れさせてみせるんだから!」
その意気だよ、委員長。キミは元気じゃないとね
「……ありがと、あなたにはお世話になりっぱなしね」
いやいや、乙女の恋の悩みには、やっぱり手を貸さないとね
「最近はずっと相談に乗ってもらってるし、アイツにも色々聞いてくれてるでしょ?」
……ちょっと一緒にいすぎかもね
「え?」
ううん、こっちの話
それより早く仲直りしてよ?夫婦喧嘩は犬も食わないっていうし
「わ、わかってるわよ!だ、だいたい、まだ……」
ん?まだ、何?
「ま、まだ、夫婦じゃないから!」
………………
「……あ」
……今のは聞き流してあげよう
「………うぅ」

さ、着いたよ。僕はこれで
「うん、ありがと。それじゃまた明日ね」
あぁ、またね
481幼なじみが向かい合わない幼なじみモノ(仮):2009/04/08(水) 22:41:47 ID:BmuoF1l3
で、話って何?
「いや、ちょっと、な」
ま、だいたい予想はつくけどね
いやー、しかし驚いたね
珍しくキミから話しかけてきたと思ったら、「昼休みに屋上に来てくれ」だなんて
まさに青春だよねー
「……話していいか?」
あ、ごめん。どうぞどうぞ
「あー……、話ってのは、アイツのことなんだが」
委員長のことでしょ?最近、彼女のこと避けてるらしいじゃないか
「べ、別に避けてるわけじゃ」
いや、クラスの皆がそう思ってるよ。『最近二人が揃ってないな』って
「そ、そうなのか?」
委員長だって寂しそうだしさー、かわいそうに
「……あのさ。最近、お前よくアイツと一緒にいるよな」
まぁ、先生がクラスの仕事とかを押し付けてくるし。それがどうかした?
「あ、いや、大したことじゃないんだ。ただ……」
ただ?
「……いや、何でもない」
何でもない、ねぇ
「ちょっと気になってるだけなんだけどな
 ほら、アイツって性格きついし、相手するのも大変だろ?」
そう?僕に対しては親切だよ
「そ、そうか。あー、でもほら、色々と小うるさかったりとか」
いや、彼女の忠告は正しいね
「……し、しかしお節介な部分は」
行き過ぎな気配りってのはないなぁ
「…………えーと」
僕さ。回りくどいの、嫌いなんだ
正直に言いなよ。『お前はアイツが好きなのか』って
「……っ!」
はい、図星ね
「お、オレは別に……」
全く、自分の好きな娘の近く男がいるからって、わざわざ避けたりしてさ
子供かって思うよ、普通
「そ、そんなこと」
大有りでしたけど、何か?
「……で、結局どうなんだよ」
何がさ?
「何が、って……お前がアイツを好きかってこと」
んー……、実はもう告白してたりして
「なっ!?」
冗談だよ、冗談
「……くそ」
あのさー、誰かに取られたくないんだったら、早く告白したらいいじゃん
「……わ、わかってるよ。でも……」
でも?
「……オレだけ好きなのは、なんか悔しいじゃねーか」
………………はぁ
「な、何だよ」
いや、別に。似た者同士、仲良くしてくれとしか
「は?」
はぁ、僕もそんな幼なじみが欲しいよ、本当……
482名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 22:46:22 ID:BmuoF1l3
はい、終わり

地の文を傍観者形式にした三作目。色々と読みにくいかな、やっぱり

>>476の路線も悪くないけど、失敗すると幼なじみ切ない系になるのが怖いです><
なので、ひたすら少年の恨めしい視点でやっていこうと思うので、悪しからず
483名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 23:19:29 ID:6ne2zgKe
>>482
俺は
お前を
待っていた
484名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 00:01:10 ID:c+Gl7BY4
僕っ娘じゃなかった……だと……?
485名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 01:54:29 ID:RrQs/Hvi
こんな 話を 待っていた!
GJです。
486名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 04:22:57 ID:oQ/6vnMO
ぐっじょおぶb
これは傍観者が動かないとどーにもならんなw
487名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 11:31:34 ID:y/V9wywg
GJ-

そして傍観者たる「僕」のほうは「僕」のほうで、
2つ下で子どものころから「僕」が世話をやいてあげてた従妹が、
今も出入り口の陰でどきどき盗みぎきを鋭意敢行中で、
最後の台詞でorzになってたりするわけですね、
わかります。
488名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 17:51:52 ID:kwjzcBCt
>>487
幼馴染相談の無限ループ
489名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 13:20:20 ID:jdKQsHoH
「幼なじみが〜しない馴染みモノ」シリーズの人もコテつけてみたら
490名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 13:21:47 ID:jdKQsHoH
文が途中で切れてた……

コテつけてみたらどうだろう、と思う。
491名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 21:45:54 ID:cP3REkSP
不要
492名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 18:25:23 ID:+FKD6d/F
コテ、ですか
前からいくつか投下してはいるけど、正直名乗るほどの者でもないですし
あー、でも連作の場合は、名前があったほうがわかりやすいのかな?

というわけで、投下開始
ラストパートでござい
493幼なじみが素直にならない幼なじみモノ(完):2009/04/11(土) 18:29:01 ID:+FKD6d/F
そろそろ何らかの進展があってもいいよね、意気地なしのキミたちでも。
「いきなり何を言いだすかと思えば……」
だってさ、僕があれだけ忠告したんだよ?
このまま何もしなかったら、いつか彼女が誰か取られちゃうよって。
普通ならすぐに告白して、そのままラブラブ街道一直線だろうに。
「ら、ラブラブ街道?」
それなのに、2週間経った今も、未だに彼女のこと避けっぱなしで。
本当に彼女のこと好きなのかと、小一時間問いつめたいね。
「だ、だからオレは別に」
顔に出てるんだよね、『オレのモノを取る』って。だいたいこの前認めてたし。
「う、ぐ……」
……全く、面倒な性格だね。
普段は邪険に扱ってたくせに、彼女が取られそうになると拗ねるわけだ。
で、自分が彼女を好きなことは認められない、と。
「う、うるさいな!オレだって色々複雑なんだよ。それに……」
それに?
「……自信が、ない」
…………自信、ねぇ。何の自信さ。
「朝は弱いし、面倒くさがりだし、大した才能があるわけじゃない。
 アイツに対していつも辛く当たるくせに、大事なことは何でもアイツにフォローされる。
 ……自発的な行動ができるわけでもない、何かあったら文句言うだけの、自分勝手な男だ」
……それで?
「そんなオレがアイツと恋仲になったとして、更に負担かけるのも迷惑だろ?」
……さぁね。
「……ちょうどいいのかも知れない。オレがアイツから離れたほうが。
 アイツがオレを気に掛けなくて済むからさ」
…………本当、自分勝手だよね。
「な、何だよ」
いや、別に。テンプレだなぁと。
本当、嫌になるくらい。

……よし、決めた。僕、委員長に告白する。
「……は?」
だってキミ、彼女から身を退くんだろ?
だったら彼女は今はフリーなんだし、僕が付き合ったって問題ないよね。
「な、だってお前、この前冗談だって」
告白はまだしてないけど……、好きっていうのは、別に否定してないよね?
「な……っ!?」
僕は今まで、キミの親友ポジションだった。
親友の恋路を応援するのは吝かじゃなかったから、黙ってた。
けど、キミが退くなら話は別だ。僕は僕の好きなようにやらせてもらうよ。
「ちょっと待て!何でそうなる!」
キミが彼女から離れたここ2週間、彼女は寂しそうだった。
いるはずの人間がいない。存在の欠如。まぁ、人恋しくなるだろうね。
そんな委員長の隣にいたのは……この、僕だよ。
「……!」
この半月でわかったことがある。
やっぱり、委員長は素敵な女性だ。
美人で有能、気配りができて、誰にでも親切で。笑顔も素敵だ。
そんな女性を好かない男はいないよ。それは、僕も例外じゃない。
「…………」
言っておくけど。
キミが何もしない限り、僕はもう気にしないから。
せいぜい自分の身勝手を後悔するんだね。
「……ま、まて」
あ、委員長?ちょっと話があるんだけどー
「あ、おい!……くそ、勝手にしろよ……」

……そうそう、今日の放課後。……本当?なら屋上で……
「何なんだよ、どうしろってんだよ……」
494幼なじみが素直にならない幼なじみモノ(完):2009/04/11(土) 18:34:07 ID:+FKD6d/F
「で、こんなところに呼び出して、何の話?」
いやまぁ、ちょっとみんなには秘密にしたくて。
「なに、クラスで問題でもあった?だったら今なら誰もいないでしょうし、教室で……」
いやいや、個人的に大事な話なんだよ。聞いてくれるかな?
「……まぁ、いいけど。何を話すの?」
……コホン。
単刀直入に言うね?……僕、委員長のこと、好きだよ。
「……………え?」
あれ、聞こえなかった?僕は、キミを好きだ、って言ったの。
「え、え?ぇえっ!?」
この半月、結構\長いことキミと一緒だったでしょ?
その間に、キミという存在がどれだけ素敵か、改めて理解したんだよねー。
「あ、え、ぅ……」
だから、僕は委員長とはもっと仲良くしたいんだよ。わかる?
「で、でも!あなた、私の気持ち、知ってるじゃない……」
関係ないね。僕は僕のやりたいようにやるよ。
「けど、わ、私は……」
まぁ、困るのもわかるけどね。
でもさ、あんなヘタレより、僕を選んだほうが絶対にいいよ?
「……え?」
だってさ、彼ってヘタレじゃない。
朝は弱いし、面倒くさがりだし。さして能力があるわけでもない。
キミには文句ばっかり言うくせに、失敗はキミにフォローしてもらってる。
自分の意見はないくせに、何かあれば文句をいう。
そんな、自分勝手な人間だよ。彼はね。
「…………」
それに比べれば、僕はキミの負担にはならない。
お互いがお互いを思い合う、いい関係を築けると思う。
キミもお荷物が減って、今よりずっと楽に……。
「……じゃ、ない」
ん?
「アイツは、お荷物なんかじゃない!」
……わからないなぁ。
キミだって理不尽に思うでしょ。彼は人の好意に気付かない人間だよ?
キミがいくら行動したって、返ってきたものは何かあった?
「ないわよ、そんなもの!」
でしょ?そんなの、苦しいだけじゃないか。
僕は、恋愛関係ってお互いがお互いを大事にすることで成り立つ思う。
キミがいくら彼を大事にしたって、彼はキミを大事にしてくれない。
いいの?キミばかり損だよ、それって。
「いいわよ、別に!」
……やっぱりわからないなぁ。何でそんなに好きなの?
「な、何でって……」
どうしてそこまで好きになれるか。聞かせて欲しいね。
「……理由なんて、ないわ」
あらら。それなら、僕にもチャンスはありそうだけど。
「強いて言うなら、ずっと一緒にいたから、かな」
……ずっと一緒にいたから?
「言っておくけど。私、アイツとは幼い頃からずっと一緒にいるの。
 アイツのことはあなたよりもずっと知ってる。悪い部分なんか、星の数ほどわかってるわ」
うん、確かに一理あるね。
「アイツはいつも私の傍にいてくれた。
 ……遠くの街で、迷子になったときも。可愛がってたペットが死んだときも。
 仲良くしてた子が転校しちゃったときも。怖い夢を見て、一人で泣いたときも。
 アイツは、いつも私と一緒にいてくれたの」
………。
「私の傍にはアイツがいて、あなたはアイツにはなれない。
 ……ごめんなさい、あなたの気持ちは受け取れない。
 私が好きなのは、アイツなんだから」
……いや本当、うらやましいことで。
495幼なじみが素直にならない幼なじみモノ(完):2009/04/11(土) 18:36:49 ID:+FKD6d/F
「それにしても、あなたずいぶんアイツを悪く言うのね。友達でしょ?」
親友だよ。そこは訂正しとくけど。
……まぁ、あれは彼の言葉だし。
キミには関係ないことを、ちゃんと言ってもらわないといけないね。
「え?」
さぁ、終わったよ。そろそろ出てきたらー?
「……何でわかるんだよ」
そりゃまぁ、聞こえるように言ったし。キミが来るのは予想済みさね。
「え、え?ど、どうして!?」
どうして、って。まぁ、理由は彼にでも聞いてよ。
「ちょっと、ちょっと待ってよ、え、えぇ!?」
ねぇ、これでわかったろ?
「……何がだよ」
キミの心配なんてその程度のもんだってことさ。
彼女はそんなの気にしない。彼女が嫌なのは、キミが離れてしまうこと。
他の誰でもない。キミがいるから、彼女は頑張れるんだよ。
「……そう、なのか」
負担だと思うなら、できることから始めればいい。
うらやましいよね、それを支えてくれる人が一緒なんだから。
「お、お前……」
「ちょ、ちょっと!あ、アンタどこから聞いてたの!?言いなさい!!」
ほら、キミの不安は払拭されたんだし。
さっさと気持ちを伝えること。誰かに取られないうちに、ね。
「で、でも。お前はいいのか?」あぁ、彼女が好きって話?
そりゃ好きだよ、友人としてね。
「……は?」
素敵な人だし、仲良くしたいよ。でも別に恋仲までは想定してないし。
「だ、だましたな!?」
「ちょっと、本当にどこから聞いてたのよ!?
 ぜ、全部忘れなさい、今すぐ!?」
だまされるキミが悪い。
じゃ、あとは頑張れ。お邪魔虫は撤退するからねー。
「ま、待てこら!」
「こら、無視するな!わ、私はアンタのことなんか、何とも思ってないんだからぁ!!」
「あーもう、うるさい!オレだってお前のことなんか好きじゃねーよ!」
「何ですってぇ!?」
「何だよ!」

ありゃりゃ。先は長そうだなぁ、これ。
それにしても、本当、幼なじみっていいよね。
僕もあんな幼なじみが欲しい……え?従妹?「幼なじみ優性の法則」?
……ま、それはそれ、これはこれ。
その話は、また気が向いたときにしようか。
とりあえず今は、あの二人を見守ろうよ、ね?

「好きって言え!」
「言わねーよ!バカ」
「言いなさいよ!!」
「絶対言わないからな!!」
496名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 18:40:06 ID:+FKD6d/F
と、いうお話だったのさ(AAry

あんまりダラダラ続けてもアレなんで、この話はここまで
気が向けば書くかもしれませんが、予定は未定です。ネタないし
あと>>487さん、ちょっとネタもらいました、ごめんなさい

それではまた、別の作品であいませう
……また一年空いたりして
497名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 18:46:19 ID:sl+BI8TA
リアルタイムGJ!
なんか他にも何組かくっつけてそうな手際の良さだなw
498名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 21:39:11 ID:AFqU3t2r
GJ!

そんな!やっと素直になった幼なじみものを期待してたのにCry
499名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 02:09:56 ID:zZ6JQUag
リアルにこんなカップルいたら死ぬほどウゼェだろうなw
GJでした〜
500名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 08:51:53 ID:l56NGIfg
>>496
いやぁ、ツンデレ幼馴染ごちそうさまでした

>>498
Cryって…センスあるなw
501名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 11:09:41 ID:u/c1aq6P
近未来の出生管理センターで体外受精により生まれてくる試験管ベビーたち
試験管がお隣どうしだった、受精卵時代からの幼なじみ

という電波を受信した
502名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 06:53:55 ID:9oi98s9t
新しいなオイw
503名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 20:26:18 ID:Hm+7aehw
なぜか悟空とブロリーが浮かんだぞ
504名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 21:29:23 ID:9oi98s9t
>>503
「病院のベッドがお隣な幼馴染み」って良く見るシチュじゃね?
505名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 08:40:23 ID:rqqwGZ4t
試験管ならベッドより距離は近いな
506名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 10:59:22 ID:mRd8i1af
それに出会いがもっと古いぜ
受精卵より古い馴染みがいるか?
507名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 11:49:59 ID:sUL5vzhJ
>>506
前世とかオカルトに頼らざるをえないな
508名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 12:53:41 ID:DN1ieshp
「ねえ!早く学校行こうよ!」
とある朝、窓の外から幼馴染の声が聞こえる、
「今日遅刻したら掃除の罰当番だよー!」
いや、俺たちの関係は幼馴染なんて生易しいものではない、
「いい天気だよー!」
産婦人科の隣のベッドからの付き合い、なんてありがちなものでもない、
「今日のお弁当は君の大好物の……だよー!!」
最初の出会いは中世、とある騎士団の騎士(俺)と第一皇女(あいつ)
近隣諸国にまで評判の美人だったらしい、
ただの騎士である俺は嫉妬やら何やらで謀殺された、
あいつは俺の後を追ったらしい、
「新しい朝だよー!希望の朝だよー!」
次は江戸中期わりと宮大工の俺と有力な旗本の娘なあいつ、
普通に考えて許されない恋、
二人で悩んだ末にコードレスバンジー。
「はやくはやくー!」
今度はいきなり宇宙になった、
「疾風」の通り名をもつエースパイロットの俺、
歌声で兵士たちの心身を癒す敵軍の歌姫のあいつ、
戦争は無事終結してハッピーエンド、
…かと思ったら最後にイカレちまった指揮官の超兵器で二人まとめて光に消えた、
「朝食を食え!学校の支度をしろ!今日は始まったばかりだ!
 ハリー!ハリー!ハリー!」
その次はファンタジー、勇者と魔王の世界だった、
神竜の末裔とされる女勇者のあいつ、魔界のとある村に住む村人Aの俺、
仲間を裏切り勇者に協力するも村ごと魔王に消滅させられた、
勇者はすべてが終わった後に自決したらしい。

まだまだ続きはあるがキリがないのでカット、
記憶はお互いが出会った瞬間全て蘇る、
……毎回の別れも全て、
次こそは幸せな未来を望む誓いの言葉も。

……どうでもいいけれど俺社会的な地位あいつより上だったことなくね?
「早くしなさーい!!」
いきなり部屋のドアが開かれる、
我が愛しの姫君が痺れを切らして俺の前に現れた、
やれやれと起き上がる、
今回は現代、幼稚園の時に引っ越した家の隣にこいつがいた、
いつもより早い出会い、平和な国、時代、
今度こそは望んだ最後を迎えられるかもしれない。
509名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 12:54:17 ID:DN1ieshp
>>507
こんな感じですか?
510名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 14:45:02 ID:Ah/rGL6f
凄い運命ww

まぁ現代物の学生とかである必要はないんだし、たまにはファンタジーや歴史物の幼馴染でもいいな
511名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 14:51:40 ID:klIbQRjQ
>>508
今の日本なら、幸せな日々が掴めると思う
つーか掴んでくれ。GJ
512名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 16:13:23 ID:mRd8i1af
何回悲恋くりかえしてんだよww
513名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 17:39:31 ID:3WYXu6kT
代理出産を引き受けたら既に自分の子も身ごもってて受精卵の時から幼馴染
514名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 22:30:59 ID:Vfkud4rJ
>>508
GJ! 久遠の絆思い出しちまったぜ…


で、今世での甘く幸せな日々を描いた続きは?w
515名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 22:31:31 ID:sUL5vzhJ
>>508
GJです! 何回転生繰り返したんだww
これ全部書ききったら何冊分になるんだろう
516名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 00:02:40 ID:cbCvr1Ny
>>513
子宮からか。
確かに一番近いな。
517名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 04:26:07 ID:4T/n8o1l
>>515
なんか複数の書き手による競作ネタにできそうだよなw
1世代目と基本的な設定さえ固めてしまえば、あとは最低限の縛りだけでかなり自由。
出会い→過去世の記憶覚醒→つかのまの幸せ→死別
このパターン守れば、異世界だったおkだものw
518名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 06:45:30 ID:QCXSsFBA
>>517
常に両想い。これ鉄の掟なり。
話の展開上NTRや凌辱に転がる恐れあり。
しかしそれを打ち破るは幼馴染みの堅固な絆なり。
時代を越え、記憶を失いしも想いは消せぬ。
一途な想いこそ幸せを掴む鍵なり。

……NTR、凌辱を否定しているわけではないので、誤解なきよう。
519名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 09:50:21 ID:F8gSF71H
程度によっては凌辱される前に自殺したりしそう
520名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 12:26:31 ID:lCbmtKiy
幸せに終わってもまた一からやり直しか?
あ、あれか、“100万回生きた”の線か
521名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 11:04:45 ID:JOvnGzTk
年上年下同い年
どの馴染みがいちばん好まれてるのかな
522名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 00:27:31 ID:nUL5Sh+B
同い年大好き!!

いや年下も年上も良いんだけど、やっぱり同い年になっちゃうなぁ。
523名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 00:40:24 ID:Dj1sv6gL
そりゃ幼馴染の王道にして神髄といえば同い年だろう。
しかし年上年下もまた素晴らしく、どれが欠けても人生は退屈だ。
524名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 01:11:31 ID:gfYhZiPC
同い年原理主義が参上!

が、年下や年上の幼なじみは、それはそれで趣があり……一概にどれがいい、とは言えないな
ま、自分で書く分には同い年以外はないんだけどね
525名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 04:31:15 ID:jDySnpMy
同学年なんだけど女の子の方がちょっとだけ早く生まれてて
何かにつけてお姉さんぶるのが良い
526名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 04:59:44 ID:d4njoKGg
>>525
どう見ても年下です。ありがとうございました。
な見た目だと更にツボだなぁ
527名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 12:21:41 ID:YmJsC//S
階段で常に自分の数段上をキープしてそこから見下ろしてくるとかもう最高です
528名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 20:28:01 ID:cgC+AjZD
つまりきみたちゃMなのかね
529名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 23:08:21 ID:UFwWoz+a
微Mで微S
530名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 02:37:21 ID:4ZHPHzZq
創作ではドMだが現実ではドS
531名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 07:22:26 ID:x2XfpRX2 BE:298126433-2BP(1)
同い年≧年上>>>年下
532名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 17:43:58 ID:rsGeIFCs
テンプレ
「私の方が年上なんだからね!」
「年上って……ほんの数ヵ月差じゃねぇかよ」
533名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 20:21:12 ID:rdiWf/ue
「うるさいわね、じゃあ月上よ!」
「…そんな言葉聞いたことないっての」
「どっちにしても私のほうが上だってことには変わりないでしょ!」
534名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 20:39:11 ID:cn6kj/WQ
年上なのに男の方が出来た子でなかなかお姉さんぶれないのもいい
535名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 23:00:45 ID:4XMDYqNb
完全に同月同日生まれで昔からどっちが早いかもめている仲
536名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 00:10:16 ID:ZaNr3U+j
「どう男。試験勉強頑張ってる?な、なんなら私が勉強見てあげるよ?」
「あぁ、ありがとう。でも大丈夫だよ。それに女より僕の方が頭いいしね(苦笑)」
「う…じ、じゃあ夜食でも作ろうか?」
「母さんが作ってくれるから。気持ちだけ受取っておくよ」
「うー…(じわっ)」
「…えーと…やっぱり作ってもらえるかな?」
「!うん!(ぱぁっ)あ、で、でも勘違いしないでよ!?ひ、暇だっただけなんだからね!?」
「ふふっ、わかってるよ。(女は分かりやすいなぁ)」
537名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 00:11:28 ID:ZaNr3U+j
あー・・・
あんま幼なじみっぽくないかな?
538名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 00:13:03 ID:AXgzlfdg
>>537
いやいやGJ
539名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 01:07:25 ID:bv8hoZhZ
>>532
その数ヶ月の差で学年が分かれるパターンもいいな
540名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 06:21:24 ID:TG/Glqyp
いやいや、
541名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 06:23:36 ID:TG/Glqyp
年下を侮るべからず!
小さい頃から「〜〜お兄さんと結婚するー」とか言って懐いてくれるお隣の年下っ子とか最高じゃないスか!
542名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 09:17:34 ID:cfKtiCYv
互いに泥酔している幼馴染カップル(もちろん成人ね)とかは?
543名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 12:16:54 ID:R15d0m/C
ロリは好きだが、妹属性は嫌いなんで
お兄ちゃんとか言われた瞬間にうわぁってなる、そんな俺は異端
幼馴染かわいいよ幼馴染
典型的でいけば、ショートヘアーに胸大きめってとこか…
544ボルボX ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:36:15 ID:AXgzlfdg
やっとパソコンの規制解けたと思ったら次の規制に巻き込まれました。
投下します。
 初秋の西日照りつける畑地だった。

 竹の柵でかこまれた二十坪ほどの土地で、植わった作物が三人の少年にふみつけられている。

 畑の持ち主こそ、荒らされて迷惑しごくというものだが、少年たちにとってそれは意図したいたずらではなかった。

 作物の被害は、畑で展開されている乱闘の巻きぞえである。
 中学生に小学生ふたりが立ち向かっていた。子供の争いとはいえ三人ともさんざんな暴れようで、いずれも鼻や切れた唇から血を流していた。

(この野郎、すっかり怒り狂ってるな。自分も痛い目みることになったのがそんなに意外か)

 眼前の、逆上した中学生の顔色を見て、鈴木満(みつる)はそう洞察した。
 胸ぐらをつかまれて揺さぶられたあげく眉のあたりを殴られ、思わず目をかばって押さえたところであって、じつのところ余裕の持ちようもなかったが。

 満は必死で手をのばし、相手の顔をかきむしろうとした。
 けれど、身長も腕の長さも相手のほうがずっと上だった。こちらの胸ぐらをつかむ腕をぐっと伸ばされると、満のほうからは蹴りしか攻撃がとどかなくなる。
 蹴る前に、今度は頬骨のあたりを殴られた。

 揺れる視界のなか、中学生の後方で、脾腹を殴られてうずくまっていた京介がよろめいて立ちあがるのが見えた。その幼い顔の下半分は、鼻血で鮮やかに染まっている。

 渋沢京介は、満の同級生である。
 ともに小学四年生だが、誕生日のきている満のほうがひとつ年上だった。
 喧嘩の相手である中学生はもとより、満に比べてさえ小柄な京介だが、このとき手に細竹を持っていた。

 中学生は、背後の京介には気づかず、満の鼻を力いっぱいねじりながら罵ってきた。

「このくそ野郎――他人の喧嘩に横から手出しして莫迦でしたと言え」

 もがれそうな鼻の痛みに涙をにじませながらも、敵の腕に爪をくいこませ、満はくぐもる声で罵倒しかえす。

「ばがはぞっぢだ、弱虫っ」

 それを聞くと中学生はいきりたち、満の胸ぐらは離さないまま、鼻をねじっていた手をあげてまたも握りこぶしをかかげた。
 すばやく満は手で顔をかばった。これ以上殴られるのはごめんである。

 敵の後ろでは京介が攻撃態勢に入っていた。長柄のなぎなたを構えるように細竹を持ちなおして腰を落とし、ためをつくっている。

(おい早くしろよ、キョウスケ、早くそれでこいつを叩け)

 満の急いた内心に応えるように、京介が細竹を横殴りに振った。
 しなった竹がぶうんと暮れの空気を薙ぎ、満を殴ろうとしていた中学生の首筋を襲ってしたたかに打つ。

 当たった場所は急所だが、昏倒させられるたぐいの打撃ではなかった。
 柵の補修用として畑の隅につまれていた細竹は、長柄の武器にするには細すぎ、軽すぎる。
 そのかわり、しなる一撃は鞭に似て、小学四年生の京介の手によるものでもかなりの激痛をともなっている。
 皮膚が裂ける痛みをまともに浴びた中学生は叫び、即座に満をつかんでいた手を離してとびのいた。距離をとったかれは首を押さえ、怒りで顔を朱に染めた。
546秋夜思:2009/04/25(土) 14:38:42 ID:AXgzlfdg

「汚い喧嘩しやがって! 二人がかりのうえに武器もちだして。
 だから金貸しの家の餓鬼なんてのは見下げたものだっていうんだ」

 鼻にしわをよせ、京介を見つめて吐き捨てた中学生に、かわって満が啖呵をきった。

「四つも年下のキョウスケにさんざんからんでおいて、反撃されたら『汚い喧嘩だ』か。どっちが卑怯だよ」

「そいつは道場に行ってるだろ! 俺は武道なんかやったことはない」

「だから一対一が公平だとでも言うつもりか。こいつはまだ年齢一桁なんだぞ」

 自分自身もわずか十歳ながら、満は退かずに言いかえした。
 その満の横をとおり、鼻血をぬぐいつつ京介が前に出る。
 細竹を投げ捨て、京介はぎらぎらした目で中学生をにらみつけた。かれは何度も叫んだ言葉を、また指とともに突きつけた。

「もうカキ姉ちゃんのことを悪く言うな」

 中学生はその要求を嘲笑しかけて、異様に殺気立った眼光のまえに笑いを引っこめたようだった。
 いっしゅん気圧された色を面にただよわせてから、忌々しそうにそっぽを向く。

「はん、これからも何度だって言うさ。『おまえの姉貴は遊び女の産んだ子で――』」

 言い終える前に、地面を蹴った京介がかれにむしゃぶりついた。
 相手の挑発的な言葉に同じく怒気をみなぎらせていた満までが、あぜんとする勢いだった。
 京介が目の前で武器を捨てたことで油断していたらしき中学生は、不意をつかれた形になった。組みつかれて脚と脚をからめられ、よろけて後ろに倒れる。
 土ぼこりがぱっと散った。

 あ、まずい、ととっさに満は思った。
 かれも割と喧嘩っぱやいほうであるため、経験的にわかっていた。武器もなしの取っ組み合いになれば、四つ年上で体格にまさる相手に勝てるはずがない。
 京介に助太刀しなければ、と走りだしかけて、満は止まった。

 予想外のことが起きていた。

「また言ったな」

 中学生の腹に馬乗りになった京介は、相手の右手の小指をつかんで、痛烈にねじりあげていた。
 押し倒された状態からその中学生は、自由な左手をあげて京介の髪をひっつかんだ。だが、とたんに苦痛のうめきを洩らす。
 京介がすかさず、指が折れる寸前まで力をこめたようだった。小指の関節がぎりぎりと軋むくらいに極められている。
 激痛に顔をひきつらせた相手の上に、京介の鼻血がぽたぽたと落ちていた。

「言ったんだから、折ってやる。そっちが姉ちゃんを侮辱するなら、そのたびに折る。何度負けたって最後には、かならずつけを全部払わせるからな」

 ためらいのない苛烈な敵意が満面にたぎっている。
 ふだんはややおっとりしている幼い声は、血でくぐもり、獰猛に濁っていた。
547秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:40:07 ID:AXgzlfdg

 こいつこんな奴だったっけ、と助太刀も忘れて満は呆然としている。それは小指を折られそうな中学生も同じのようだった。顔色が蒼白なのは痛みのせいだけではあるまい。
 京介のことはずっと本質的におとなしい奴だと思っていたのだが、今日かぎり認識を改める必要がありそうである。
 この相手にはこれまで我慢してきていたとはいえ、争いに臨んでのこの猛りかたは、闘鶏用の若鶏さながらだった。

 それにしても、指まで折ろうというのは明らかにやりすぎだった。
 満は京介を制止するべきか迷いはじめたが、ためらっているあいだに、中学生が「やめろ」と悲鳴をあげた。小指の付け根の関節がぐりっとねじられている。

 やむなく満は声をかけようとして、後方の騒ぎに気がついた。
 畑の入り口をふりかえる。

 こちらを指差しているほかの子供たちと、柵をとびこえて猟犬か矢のごとく一直線に駆けつけてくる少女の姿が見えた。
 それがだれかを視認してから満が次に吐いた言葉には、安堵と気まずさがかなりこもっていた。

「だれだよ、この期におよんでから夕華ちゃんを呼んだのは」

 その名前を聞いた瞬間に、京介も中学生も地面で動きをとめて凍りついている。

\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

 数日後の、「お泊り会」の夜。

 あごまで湯にしずめた京介の鼻先に、アヒルのおもちゃがぷかぷかと流れてきた。
 湯の熱にやや朦朧としながら、少年は浮いたおもちゃを両手でそっと捕らえた。

 京介は杉材の湯船につかり、風呂場に流れる憤懣の声にだまって耳をかたむけていた。

「あそこの畑の持ち主ときたら、聞きしに勝る怒りっぽさだったよ。
 職員室にどなりこんできて、俺と京介をわざわざ呼び出させたうえ、先生たちの前で『今後一切うちの土地を踏むんじゃねえ』と拳骨落としたんだぜ……いまどきそこまでするかあ?
 作物を倒したのは悪かったけど、あちこち怪我してるのにこぶを増やすことはないじゃん、そう思うでしょ!?」

 渋沢邸の風呂場だった。
 場所からして当然といえば当然だが、木製の風呂椅子にすわって愚痴りつづけている満は京介とおなじく全裸である。
 その満の話し相手は京介ではない。

「私からは何とも。暴れる場所を選ぶべきだったねとしか言えないなあ」

 おなじく風呂椅子に腰かけて、満の背中を泡立つタオルで流してやっていた京口夕華が、苦笑ぎみに応じた。
 満がすばやく反応して首をふった。

「俺や京介が、あんな雷親父の畑をわざわざ指定したわけじゃないってば!
 夕華ちゃんが前もって頭下げといてくれなかったら、ぜったい拳骨一発じゃすまなかったって」

 湿気に濡れた壁に声がはねかえって響く。
 アヒルをもてあそびながら、京介はちらと何度目かに洗い場のほうを見た。
 視線の先にある満の顔はなんだか赤い。背を伸ばして座り、いつになく口数を多くしている。
548秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:41:19 ID:AXgzlfdg

 背を流されながら、満はどう見てもがちがちになっていた。
 愚痴にしてもほんとうに畑の主に怒っているわけではなく、現在の状況に戸惑ってしゃべらずにはいられないという感じだった。

 夕華のほうは、いつもどおりに屈託なく、落ちついた声で会話している。――こちらも身につけているものは、腰に巻いた湯文字だけだった。
 満の緊張の原因が、裸の上級生女子にかいがいしく世話されているためであることは、ほぼ間違いない。

 京介はふてくされ気味に目を細めた。
 談笑する二人の姿は、なぜか見ずにはいられないがぜんぜん面白くない。

(あちこち痛いから気分が苛立つんだ、きっと……)

 数日前の喧嘩であの中学生に殴られた部位が、じくじく痛む。腫れは引きかけていたが、湯につかっているうちまた傷が熱を持ってきていた。
 振り切るように強引に目をそらし、京介はむっつりとアヒルを湯にしずめた。

(お風呂上がるまでに気分変えなきゃだめだ。友達と一緒のお泊り会なのに、不機嫌になってるわけにはいかないんだから)

 京口家と渋沢家のあいだでの「お泊り会」は、かなりひんぱんにあった。
 たいがいは祖父に連れられて、孫たちがどちらかの家にいくのである。
 年来の友人である祖父たちは夜遅くまで話しこむことが多く、子供たちは子供たちで好きなようにやるのが常だった。

 ただし今回の、渋沢家のほうで開かれたお泊り会は、いつものそれとは様子が違う。
 夕華にくわえ、満が来ている。孫を助けたお礼ということで、京介の祖父が招いたのだった。代わりにというべきか夕華の祖父は今夜は訪れていなかった。

 別に、だからどうというわけではない。
 お泊り会で三人以外の子供が混じるのは、これが初めてではない。
 それに、満は京介にとっても特に仲のいい友のひとりだ。数日前にも喧嘩に加勢してくれたほどの友人に、文句があるはずもない。

 ただ――
 最近、満がよく夕華に話しかける気がする。それもなるべく人に聞かれないようにして。
 今日もこの家に来るや、二人きりでひそひそと何かを話していた。
 もちろん京介は見て見ぬふりをした。が、いかにも秘密の話といった二人の雰囲気や、かれの話に興味をひかれているらしい夕華の様子に、どうしてだかむずむずするものを覚える。

 満とは以前、好きな女子がいるかという話をしたことがあった。
 京介は「そんなのいない」と否定したが、満はそれに返して「俺はいるけどな」と宣言してきたのである。
 照れは入っているが真剣な顔で、京介に聞かせておこうとするかのようだった。満の好きな娘は上の学年にいて、その女子のことは京介もよく知っているのだと。

(それがどうしたってのさ……ミツルくんがだれを好きでもいいことじゃないか)

 そう思った直後に、いきなりその満がぱっと立ち上がった。
 夕華に洗髪してもらうのが終わったところらしく、そそくさと腰にタオルを巻いている。

「ありがと夕華ちゃん、それじゃ俺これで出るから」

「お風呂でゆっくり温まっていけばいいのに」

「暑い日に湯につかるのはあまり好きじゃないんだよ。じゃ!」
549秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:42:24 ID:AXgzlfdg

 満は木戸を開け、逃げるように脱衣所のほうへすばやく消えた。
 夕華の「せわしないなあ、もう」というつぶやきを聞きとめ、京介はつかの間(これだからゆうかちゃんは)と内心でため息をついた。わかっちゃいない。

(女の子といっしょのお風呂は僕らにはもう恥ずかしいんだって、なんでゆうかちゃんはわかってないんだろう)

 肌をあらわにすることに無頓着なきらいが夕華にはあった。昔から知っている年下の子たちに対しては。ことに京介に対しては。
 気にしていないというより、気づいていないのではないかと思う。自分より小さな子供だって日々成長していて、異性を見る目がすこしずつ変わっているということに。

 本には、「着付けも入浴も使用人に世話されていたころの華族は、裸を見られることにおおらかであった」という記述がある。
 だが夕華のこれはそれとは違う、と京介は確信している。夕華はこういうことに今もって鈍いだけだ、と。

(僕を子供扱いするけど、そこらへんはゆうかちゃんのほうがずっとコドモじゃないか)

 ちょっと優越感をまじえながらの京介の慨嘆をよそに、「さてと」と夕華はつぶやき、湯船のほうを向いていきなり言った。

「――ほら、次」

 声をかけられて反射的に夕華に向きなおった京介は、ぐっと唇をひきむすんだ。
 言葉はそっけないが、夕華の目は「ここに来なさい」と強く命じている。

 京介は内心で(そんな簡単に言うこと聞いたりするもんか)と強がったが、思いと裏腹に、いつのまにか湯船から這い出していた。
 湯ぼてりした頭をぼうっとさせたまま、ぺたぺたと濡れた足音をたてて歩みよる。
 夕華のまえの風呂椅子にすとんと腰を落とすと、すぐに湯桶で頭からお湯をかけられた。

(……あれ、いま体が勝手に動いた)

 頭を洗われはじめてから、ようやく京介はわれにかえって憮然とした。
 簡単に逆らえなくなるあたり、子供扱いされてもしょうがないのかもしれない。

 それにしても、文句が言葉にしないうちに消えていくほど気持ちよかった。

 少女のほそやかな十指が、頭皮を指の腹で押さえ、爪を立てないようにして毛根から洗っている。
 夕華からしても慣れた頭が相手であるためか、満を洗ったときよりなめらかな手つきだった。一定の速さで、丁寧に頭皮をすみずみまでこすってくる。

 京介は大人しく洗髪されていく。
 会話はなかった。沈黙が重い。
 頭を洗う夕華の指はあいかわらず優しいが、それだけに京介は胸にうずくものを覚えた。

(……なんで、こうなるんだろ)

 あの喧嘩の最後に駆けつけた夕華は、てきぱきと場を片づけた。
 中学生をふくめ喧嘩で傷ついた三人を近所の医者のところに送ったのち、やってきた畑の地主にかわりに謝った。
 できるだけ地主の怒りをやわらげるため、ほかの子供たちにも手伝ってもらって、日が暮れるまで畑をなるべく元通りにする作業をしていたそうである。
550秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:43:44 ID:AXgzlfdg

 けれど京介は、そこまで後始末してくれた夕華と口論してしまったのだった。

 あとで満やほかの子供たちから事情を聞いたとき、夕華は京介にむかって怒ったのだった。
 「前からちょっかいを出されていたなら、なんでもっと早く私か柿子に言わなかったの! 今日だって最初から私を呼べばよかったのに」と。
 うつむいて聞いていた京介は、「言えないし、呼べるもんか」と拒絶の言葉をぶつけたのである。
 その直後に顔をあげたとき、ずきんと心が傷より痛んだ。そのときの少女の顔には怒りより、悲しげな色が濃かった。

(謝ろうかな……でも、釈然としない)

 つぶっていた目をうすく開け、風呂場の床に暗く視線を落としながら、京介は悶々とする。
 けれど、夕華がその悩みを打ち消した。
 桶の湯を京介の頭に少しずつかけて、手ぐしで髪をすいて洗髪剤を流しながら、彼女はつぶやいたのである。

「このまえは、怒鳴ったりしてごめんなさい」

「え」

 京介はぐっと胸がつまるのを感じた。少女は自分から折れてくれたのだった。
 こうなると、まだ意地をはっているほうがみっともない。いや、そんなことよりも、これ以上突っぱねあっていたくはなかった。

「あ、その、僕こそ、ごめん」

 先に謝らせたことで、京介は逆に恥ずかしくなる。いくらか男心に鈍かろうと、やはり夕華のほうが大人なのだと実感させられる。

「きょうくん、私、喧嘩になったことを怒っていたわけじゃないよ。
 発端は、柿子を悪く言われたことなんでしょう。その場にいたら私だって突っかかっていたよ。
 指を折ったのはやりすぎと思うけれど、ずっと体の大きい相手に勝つやり方なんてそんなにないし」

 あのとき夕華がいだいた怒りは、九割が中学生へ向けられたもののようだった。京介はほんの少しだけ、喧嘩した相手に同情を寄せている。
 彼女が場に駆けつけてからは、終始しょげかえっていた相手の姿を思い出す。夕華は折れた指に応急措置をして、医者へ行くよう言ったとき以外、中学生を一瞥もしなかった。

 彼女がそこまで誰かに冷たい怒りを抱くのは珍しいことだった。「年下をいじめた」ということが許せないのかもしれない。
 彼女にとって、大きな子は、自分より小さな子を庇護する義務を負うものなのだ。

 だから京介は、一割とはいえ自分がなぜ夕華に怒りを向けられたのかもよくわかっている。夕華にとってまだ「小さな子」である自分が、頼ろうとしなかったからだ。
551秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:44:56 ID:AXgzlfdg

「――相談していてほしかっただけなの。守ってあげられたのに。
 こんなに殴られて……」

 しんみりした声を出し、京介の体のあちこちに残るあざに夕華がそっと触れてきた。

 京介は首をふった。

「もう僕だって四年生だよ、低学年じゃない。女の子に守られるなんて変じゃないか」

 それに、あいつの前で夕華に頼るなど、絶対にできなかったのだ。

「変なんかじゃないよ、それに心配なものは心配……ううん、この話はもうやめる。
 ねえ、仲直りしましょう」

「うん」

 京介は、今度の提案には素直にうなずいた。
 二度目の洗髪がはじまる。夕華はいつも洗髪を二回に分けてほどこすのだった。

 また会話が消えるが、今度の沈黙は悪いものではなかった。
 丁寧すぎるくらいに長々と頭を洗われているが、いつもとおなじく時間は気にならなかった。

\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

 子供たちが浴室にいるのと同時刻、渋沢邸の書斎である。
 屋敷の一角にしつらえられたこの書斎は、和風建築のこの家にはめずらしい洋風の一間だった。

 さほど広い空間ではないが、書架の配置により、入り口の扉からは奥が見えないようにされている。
 窓のカーテンも毛氈も壁の煉瓦も、赤色を基調としているが、赤といっても古びたダークレッドで、むしろ落ちついた印象の色である。
 読書するものが心を乱さないよう、派手な彩色のものはいっさいなく、調和を壊さないように配慮が行き届いていた。

 その静謐な空間に、寒気がする光景が現出している。
 来客は書斎に通されるなり、机の前に立ったままで、謝罪をはじめていた。

「このたびは愚息が申し訳ありません、ほんとうに申し訳も……!」

 深く頭を下げているのは茶のスーツの壮年男性だった。
 身なりこそよいが、顔色は土気色に変わっており、低頭しつづけているうちに薄い髪がほつれてきている。
 床の毛氈に頭をこすりつけそうなほど、繰りかえし腰を深々と折っていた。

 重厚なマホガニー材の机から立ち上がって、その謝罪を受けているのは少壮の男である。
 中肉中背で隙なく黒スーツを着こなしたその男は、腰を低くする来客を無言で見下ろしていた。
 銀縁眼鏡の奥で、眼光がわずかに嫌悪を帯びている。
552秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:46:15 ID:AXgzlfdg

 それに気づかず、いまや土下座しかねないほど低姿勢になっている来客は、しどろもどろに脂汗を流して哀れをさそう声を出した。

「明日、あらためて愚息とともにお詫びに参ります。ほんとうに、こちらさまにはなんとお詫びすればよいか」

 受ける男は無言だったが、書斎の奥まったほう、書架の陰からなだめる声がひびいた。

「おいおい、たかが子供の喧嘩でそこまで大げさにならんでも。
 それに、こちらも謝らなければ。うちの孫のほうが大きな怪我をさせてしまったのだから」

 横目でちらと奥のほうを見てから、銀縁眼鏡の男はようやく口を開いた。

「父の言うとおり、京介のほうこそとんでもないことをしました。折れていたのでしょう、そちらの息子さんの指。
 それについては、治療費をすべてこちらでもたせていただきたい」

「そんな……いえ、ご厚意はありがたいのですが……」

「いいえ。いかに『おびえての反撃』にせよ、うちの子のやりようは過ぎた対応ですからね。
 こちらで叱っておきますので、おたくの息子はおたくで言って聞かせてください」

 慇懃な口調だが、言葉のうちにあからさまに、「そちらの息子が小さなうちの子に売った喧嘩なのだぞ」という含みをこめている。
 銀縁眼鏡も冷たい印象のその男は、京介の父親で、渋沢圭介という。
 歳は四十、渋沢家の創設した地方銀行である坂松銀行において常務の地位についていた。
 奥にある革ばりの肘掛け椅子から声をかけたのは、渋沢家当主の元介。こちらは圭介の父、京介の祖父であり、渋沢翁と呼ばれている地域の顔役だった。

「そういうことで、お気をつけてお帰りください。それと息子さんまで謝りに来るには及びませんよ、本当に」

「はい……あの、どうか、くれぐれもお見限りなく……」

「お見限り?」

 うっかり聞き返してしまってから、圭介は舌打ちしかけた。
 相手のほうは、嘆願の糸口をつかんだとばかりににわかに顔を上げ、必死にすがる目を向けてくる。

「はい、ようやく風が向いてきたと申しますか、ご存知のようにうちの会社はいまが肝心な折ですから。
 来年には市場の活性化が取りざたされていますし、ふんばりどころなのです。
 坂松銀行様のほうを通して説明させていただいたとおり、ここでてこ入れしていただければもうじき確実に持ちなおす方向に向かうはずです。
 ですから、なにとぞそこのところを重ねてお願いしたく……いまご当家に見捨てられてはわたしどもは――」

「そんなことをここで言われても困りますねえ。おたくへの融資を仕切っているのはあくまで銀行のほうですよ。
 その件については、調査の結果をふまえて会議をおこなったのち、後日にきちんと通達させていただくと言っているではありませんか。それをお待ちいただきたい。
 今回の私事と、当行があなたの事業に融資するか否かという問題とは、いかなる意味でも関係しませんからご心配なく」
553秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:47:14 ID:AXgzlfdg

 隠しもしない冷ややかな態度で、圭介は突き放した。
 うちしおれて来客が出ていった後、圭介は書斎の奥へ身をはこび、卓をはさんで元介の前のソファに腰を下ろした。
 すっかりぬるくなった珈琲のカップを持ち上げ、一気にあおってから、苦みのこもった息をふうっと吐き出す。

「やれやれ、三日ぶりに家に帰ってきたばかりだというのに。
 親の立場となるとやっかいなものですね。子供の問題がからめば、うちに援助をもとめようという魂胆がある人間とでも、直接顔を合わせざるをえないんだから」

 うんざりしている圭介の表情を見てか、かれの対面にいる渋沢元介は、舶来ものの水煙草をくゆらせる手を休めた。
 ふわふわ癖っ毛の頭をぽりぽり掻き、元介はため息まじりに圭介に話しかけてきた。

「なんともまあ、あの社長もこの数年で態度が変わったものだ……次期社長と呼ばれていたころは傲岸とした若いのだったのになあ。
 圭介、あの会社はやっぱり再建見込みなしかね」

 圭介は「まあ、ないでしょう」と冷然たる口調で答えた。

「あそこは屋台骨が白蟻に食われた態で、すっかり駄目になっています。
 貸付担当者が帳簿を洗いなおしてみたところ、先代の社長が倒れていまの社長に代わってから、急速に経営が悪化していました。経理関係の人間もつぎつぎ入れ代わっていますね。
 市場の波を読みまちがえて不良在庫を大きく抱え、赤字分をあちこちからの借入金で埋めてやりくりしていた末に、いまでは『借金して当面の借金を返す』という深みに入っていますよ。
 うちの損失は、担保をしっかりおさえたおかげでなんとか軽くすみそうですがね。頼みどおりに追加融資してやるなどはまず論外です。
 あとは会社ごと切り捨てるか、融資と引き換えに社長以下いまの経営陣を根こそぎ刈り取って、もっとましな人材をこちらから送り込むかの判断です。
 それにしても同族会社というものは、跡継ぎの育成に失敗すると悲惨なものですね。我が家も京介の教育にはよほど気をつけないと」

 冷笑こそしなかったが、圭介の声には寸分の慈悲もこもっていない。
 口ひげをひねっていた元介が顔をしかめる。

「なあ、お前、すこし冷たい態度を取りすぎてやしないか」

「これはお父さんの言葉とも思えない。冷徹でなければできない家業でしょう」

「それでも冷酷であってはならないし、侮蔑にいたっては匂わせもしてはならない。
 あの社長の息子は、京介に手を出したとき『金貸しの子』と罵っていたそうではないか。じぶんの父親がお前に頭を下げるのを知っていて、長年歯を食いしばっていたのかもしれんぞ。
 うちはあくまでも地元の支持を失うわけにはいかん。血も涙もないと恨まれるようになれば、不利益をこうむる」

「……なるほど、気をつけましょう。
 ところでその喧嘩ですが、京介のやりようが凶暴すぎるというのはわたしの本心ですよ。
 柔術で相手の指を折ったあげく、何度でも指を折ってやると恫喝したそうではありませんか」

「ふむ。子爵様などは話を聞いて『男子はそのぐらいでよい』と上機嫌で京介を褒めておられるがね。
 柿子の生まれを侮辱されたのがきっかけというしな。体を張って家門の名誉を守ろうとする意地自体は、跡継ぎの男には良いことだぞ」

 孫をかばう元介の声には、一方で息子の過去の不始末をちくりと皮肉る色がある。
 鼻白んだ様子も見せず圭介は皮肉を無視して、父の言葉の一部に反応した。

「ほう、子爵様がそう言いましたか。そういえば、あちらの家は代々、尚武の家風ですね。虎狼の家とみずから誇る向きがあったくらいの。
 京介はまだ九歳です。身近な人やものごとから甚大な影響を受ける年頃ですよ。心当たりはありませんか、京介の身近にいる子で」
554秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:48:09 ID:AXgzlfdg

「……よくよくお前は京口家との縁組の話が気にいらないのだな。
 夕華ちゃんの人柄はお前も知っているだろうが。あの娘が京介に悪影響をおよぼしているように見えるかね」

「娘はよくてもその周りがあまりよろしくない、と申し上げているのです。
 京口子爵家の人々には、注意したほうがいいですよ。名家意識に凝り固まった華族というものは取り扱いが難しい。現実に沿わなくても、みずからの価値観を押し通そうとします。
 ことにご子息は、どうやら我が家を敵視までしているようですからね――もしも子爵様に不幸があって、京口家当主が代替わりすれば、あそことの縁組は簡単にご破算になりますよ。
 向こうから婚約破棄されるという運びにでもなれば、わが家は世間の笑いものですよ」

「そんなことはわかっておる、あっちとの付き合いはおまえより長いんだ。
 だいたいまだ先のことだ、あの子たちにしろはっきり婚約させとるわけではないわ。いまは様子見しとるんだと何度言わせる気だ」

「なら、いいのですが。
 しかしお父さん、華族の血をわが家に入れておいても損はないとはいえ、なにもそうまでして京口子爵家にこだわる必要はないと思いますがね」

 それだけを言って圭介は言葉を切った。
 何度話しても、京介の将来の縁談については、議論が平行線のままである。
 もっとも、親子それぞれの意見が一致しないのは、この話ばかりにかぎらなかった。

 圭介は鋭利な眼光をきらめかせて、不機嫌に水煙草のきせるをふかす元介を見やった。
 父の方針にはじつのところ大いに異がある。それは渋沢家の根幹にかかわることだった。

(地元重視のみでやっていける時代はいずれ終わりますよ、お父さん)

 先の大戦後、この国の経済圏は地方ごとに細分化している。「新華族法」とならぶ悪名高さをもつ法案、通称「地方関税」と呼ばれる税制によってである。
 国内で一定量以上の物資を、一定の距離をこえて移動させたときに課されるというこの無茶苦茶な税によって、各地の経済圏は分断されたのである。

 とはいえ、それによって渋沢家のような中小の勢力は保護され、地元の実力者として半世紀の安逸をむさぼってこれた面があるのだが……
 その分断と安逸の時代も、終わりを迎えようとしている。

(新華族法はまだまだ続くかもしれないが、地方関税は遠からず撤廃される見込みなのだから)

 手かせ足かせをつけられた状態でもゆるやかに力をたくわえていた巨大財閥が、いまこそ時節とばかりに歩調をそろえて本格的に政界に働きかけている。
 ひとたび国会で審議にかけられれば、国の政策としては愚かきわまる地方関税は、息の根をとめられるだろう。

 地方経済圏の壁が消えたとき起こるのは、各地に大資本による激突である。大財閥の傘下企業が乗りこんできて、弱い経済圏から吸収、淘汰されていくだろう。
 銀行業界にかぎっても、比喩でなくつぶしあいとなるはずだ。
 渋沢家がそのなかで生き延びていくためには、人情ではなく徹底した合理性が求められるようになるはずだと圭介は見ていた。

 だから、駄目とわかったものはそれ以上の負債とならないうちに、固執せず切り捨てるか処断するべきなのだ。
 たとえば先ほどの社長の会社のように。

 たとえば、代替わりした場合の京口子爵家のように。

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555秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:49:20 ID:AXgzlfdg

 秋とはいえ残暑のきつい日々がつづき、夜も夜とて蒸し暑い。
 涼を感じさせるのは蒼白い月光くらいのものである。

 就寝前、京介と満は、座敷の一間でねそべって将棋を打っていた。
 それぞれ麻の浴衣を、夜着として身につけている。

「キョウスケ、連休の宿題は片づけた? そら、王手」

「もちろん。……待った」

 いまだ飛び交う蚊を遠ざけて、布団は吊られた蚊帳のなかに敷かれている。
 十二畳ほどのこの一階の座敷が、男子組の今夜の寝所である。
 夕華と柿子はべつの座敷に寝ている。今夜は男女ふたりずつ、それぞれ別の部屋に分かれたのだった。

「計算ドリル写していいか」

「じゃあ、十手さかのぼらせて」

「ふざけ……いや、お安い御用だ」

 座敷の障子はあけはなしてあり、縁側から月明かりがさしこんでくる。
 ランプをつけずとも将棋くらいはできる明るさだった。
 持ち駒を点検しながら、ふと満が口にした。

「あのさ……前にしたろ、俺の好きな女子の話だけど。最上級生なんだ」

 それを聞いて、ぴたっと京介の手が止まった。
 ややあってぎこちなく動き、ろくに考えもせず自殺的な悪手を打ってしまう。もっとも、京介は動揺しなくても元から下手な指し手だったが。
 打ったあと、かれは「それがなにさ」と声をなるべく静めて訊いた。

 即座に打ち返した満のほうからも、平静をよそおっているのが丸わかりの言葉が返ってきた。

「あっちの卒業まであと半年だから、いいかげん距離を詰めようかと思ってさ」

「そ……そうなんだ」

 京介の、駒をつまんだ手がわなないた。
 間近から、満の決意を固めた声が届く。

「今はせっかく近くにいられるし、これだけで満足するなんて嫌だからな。
 いい機会なんだから、どんどん自分から動かなきゃなって」

「……大胆なんだな。
 あの……ミツルくん、なんで僕にそういうことを言うの?」
556秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:50:19 ID:AXgzlfdg

 手につづいて声も震わせながら、おずおずと京介は訊いた。
 「おまえにだって関係あるからさ」と、それが満の答えだった。緊張してはいるが、揺れてはいない。

「協力してほしいんだ。だれのことか薄々わかってるだろ」

 将棋盤ごしに見つめられ、われしらず、京介はごくりと唾を呑んだ。

「あっちには今んとこ、俺、おまえと似たような扱いを……いや、明らかにおまえよりも優先度低い扱いをされてるけどさ。
 そうじゃなくて、俺を一番に見てほしい。できれば付き合いたいとも」

「……こ、交際とかそういうことは、早いんじゃないかな。僕たちまだ小学生だし……」

「ばっか、将来の布石だって。あっちが卒業して同じ学校じゃなくなってみろ、接点ますます少なくなるぞ。
 いまは駄目でもいいんだ。何年かあとにもう一度当たってみるとき、昔の思い出ってやつがあれば有利かもしんないだろ。
 だから、あっちが卒業するまでいろいろ印象づけて……そうだな、一回告白くらいはしときたいって思ってる。
 いろいろと、おまえに協力してもらうかもしれないから話したんだ」

「――それは」

 京介はうつむいた。

(協力は無理だ)

 満のことは、親友だと思っている。
 それに、夕華の相手が満なら納得できなくもない。この友人は、明るくて侠気があって遊びがうまく、たいてい人の輪の中心にいる。
 いわばクラスの人気者で、タイプ的には夕華と似ていなくもない――そのせいなのか京介とは相性が良かった――お調子者のところはあるが、魅力的な男子である。

 それでも、かれが夕華に近づくことの協力までは、できない。
 それを京介は、この場ではっきり言うべきか迷った。
 だが言う前に、かれの様子をうかがっていた満が照れくさそうにそっぽを向いた。

「やっぱ、とつぜんこんなこと頼むのは変だったかな。
 でもとりあえず今夜くらいはいいだろ。ちょっとあっちの部屋に行ってくる。じつはもう段取りをつけてるんだ。
 でも大人たちが万が一見回りにくることを考えたら、ひとりは部屋にいたほうがいいと思うんだ。部屋がからっぽだと、いざというとき言い訳もしてもらえず、何かとまずいし。
 だからキョウスケはただ蚊帳に入って待っててくれるだけで――」

 急展開に度肝を抜かれて、とっさに京介は手を伸ばし、満の浴衣の裾をつかんだ。

「ま、待ってよ。今夜って、そんないきなり……」
557秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:51:12 ID:AXgzlfdg
「さっき、せっかく近くにいるって言ったじゃん」

 どうやら精神的な距離だけではなく、実際の距離のことも指していたらしかった。
 たしかに夕華が今夜泊まっているのは同じ屋根の下なのだから、絶好の機会といえばこれ以上ないかもしれない。

 だいたい、すでに会う段取りをつけているなら、京介がとやかく言えるものではない。
 だが、ひきとめる手をゆるめなければならないとは思っても、すぐには満の裾を離せなかった。
 それでいて、言う言葉とて見つからず、声は出てこない。口はむなしく開いたままだった。
 満は、京介の手に手をそえて外しながら、「おい、なにを心配してんだよ」とわずかに不機嫌な口調で言った。

「変なことなんかしねえよ。今夜は話してきたいだけだってば」

「……うん……わかってる……」

「だいたい柿子ちゃんの性格はお前がよく知ってるだろ。じりじり距離を詰めるだけでも並大抵の苦労じゃないんだぞ」

「カキ!?」

「ん?」

「……カキ姉ちゃ……ん?」

「うん。柿子ちゃん」

 豆鉄砲を食らわされた鳩さながらの表情で、京介は呆然とした。
 たしかに姉はいま夕華と同じ部屋にいる。
 一気に肩の力が抜け、へたへたとたたみに突っ伏した。

「どうした、キョウスケ」

「なんでもない……姉ちゃんが好きなら協力する、喜んで協力させてもらいます。
 だから行くなら早く行っちゃってくれ……」

「行ってくる。ところでそれ、王手」

 満の指さした将棋盤上では、またしても見事に玉が詰んでいる。
 今度もやはり京介の負けだった。

…………………………
……………
……
558秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:52:15 ID:AXgzlfdg

 ――ふすまを開けて、足音を立てないようにおそるおそる満が廊下に踏み出していったあと、京介は盤と駒を片づけた。
 敗者に科されたペナルティを終えてから、蚊帳にごそごそともぐりこむ。

「疲れた……」

 二枚並べられた布団のひとつに横たわる。
 満の好きな女子がまさか柿子とは思わなかった。弟として日々あの烈しい気性に悩まされている京介からしたら、完全に予想の範囲外である。
 (いじめられるのが好きな人っているらしいけど、まさかミツルくんがそうなんだろうか)と、かなり失礼なことを友人に対して考える京介だった。

 ふと中学生との喧嘩のことに思いいたる。相手が柿子のことを侮辱したあと、激怒した京介に満が加勢してきたのだった。
 あの手助けは、友人としての義理と侠気からだけではなかったのだろう。

(カキ姉ちゃんの悪口で、ミツルくんもあいつに怒っていたのか)

 納得が深まるほどに、自分が安堵していくことに京介は気づいていた。
 満の懸想した女子が夕華ではなかったからだろう。

 姉である柿子を侮辱されたときとはまったく別の意味で、自分はやっぱり夕華のことでは平常でいられなくなるようだ。
 ふだんその意味を深く考えることは避けていたのだが、今回はなかなかそうはいかなかった。
 なにしろ、ほかの男子が夕華と距離をちぢめようとして、それを手伝うことに京介が拒否感を覚えたのは、今夜が初めてではない。 満のばあいは単なる誤解だったが…… 

(……あいつが、最初だった)

 蚊帳網をとおして格子天井を見つめながら、つぎにゆっくり考えたのは、あの中学生のことだった。

 話しかけられたのは去年だった。
 公園で遊んでいたとき、呼び出されて「京口のお嬢さんにこっそり渡してくれよ」と文をことづかったのである。

 押しつけられ、ぽかんとしてそれを受けとり、しばらく立ち尽くした。初めての種類の戸惑いが芽生えていた。
 数時間その場で円をかくようにうろうろ歩いてから、京介はその中学生を探して「ごめんね、なんだか僕、渡す気になれない」と告げ、文を返したのだった。
 険悪な目で見られ、突き飛ばされて京介はしりもちをついた。
 見下ろされ、さげすむように言われた。「前から見てたけど、おまえってまさしく甘ったれのぼんぼんってやつだよな。いつもお嬢さんにべたべたして恥ずかしくないのか」と。

 以来、町内で顔を合わせるたびに「そこの甘ったれ」「金貸しの子」と聞こえよがしに呼ばれてきた。
 たぶん、その嫌がらせも終わりだろう。終わらなくても、もうどうということはない。
 我慢してきた末に反撃に踏み切ったあと、体の大きな相手に対する恐怖はふしぎと消えていた。だから、戦ったことを悔いてはいない。

 すこし後味の悪さはつきまとっていたが。

(……ゆうかちゃんに手紙を渡すくらい、してあげればよかったんだろうか。
 ――ううん、やっぱり、僕の手で渡すのは嫌だ)
559秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:53:14 ID:AXgzlfdg

 重い気分で、京介はごろりと寝返りをうった。
 夕華だって、いつかだれかを好きになる。そんな当然のことを考えるたびに、京介の心には複雑な寂しさがわきあがってくる。
 やっぱり自分は、まだお姉さん離れしきれていない子供なのだろう。けれど、女々しい想いだと自戒していても、やはり自分の手で橋渡し役をつとめるなど嫌なのだ。
 その心の声を完全に無視することはできなかった。そんなことをすればきっと後悔することになると予感があった。

 良い悪いは別として、あの少年とのことはまぎれもなくきっかけだった。京介が、幼児期を脱して思春期を迎えたことの。
 あの少年との最初の悶着以来、なんとなく、京介はそれまでより夕華と距離を置きたがるようになったのだった。

 彼女に可愛がられ、甘やかされるのが恥ずかしい。
 二つ違いなだけで、頭を抑えつけられているのが気に入らない。
 夕華が京介を、弟のような小さな子としてしか見てくれないのが――

「きょうくん?」

 呼び声に、上体をはね起こした。
 唐突に耳にとどいたその声は、廊下のほうから聞こえた。ふすまがわずかに開いている。
 京介が絶句しているうちに、夕華が確認の声を出した。

「起きてるみたいだね」

 白絹地の寝巻きをまとった細身の少女が、影のように座敷にすべりこんでくる。
 彼女は素足でたたみを踏みしめ、後ろ手でふすまの蒔絵の引手を閉めた。一連の動作はすばやいが、音をまったくたてないあたり、狐か猫かという身ごなしである。
 混乱しつつ、とっさに京介は声を投げた。

「なんで入ってくるんだよ!」

 夕華がむっとしたように眉を寄せた。

「人の顔を見るなり、ずいぶんな言い方」

「だ、だって、なんでゆうかちゃんがここに」

 もごもご文句を言う京介に、夕華は耳を貸さなかった。

「ミツルくんが戻ってくるまで、こっちの蚊帳に入れてもらうから」

 そう言うなり、本当に京介のいる蚊帳にもぐりこみ、空になっていた隣の布団にねそべってくる。
 ぬるんだ夜気に、少女の香りがふわりと甘くただよう。京介は思わずとびのくように、夕華から距離をとって蚊帳のすみに身をひいた。
 その態度がわざと大げさにしたように見えて気に入らなかったらしく、夕華は手をのばして京介の袖をつかみ、はっきり機嫌を損じた声を出した。

「何、それは。わざとらしいことしないで、普通にしなさい。さ、こっちに来るの」
560秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:54:09 ID:AXgzlfdg

 普通に並んで添い寝するつもりらしかった。あいかわらず、幼児か同性の友人とおなじ扱いである。
 この困った人から逃れようと、京介は袖をふりはらった。

「やだよ、暑いじゃないか! ひっぱるなよ、ちょっと」

「こら、いい加減にしなさい!」

 あくまで避けようという態度をとられて、とうとう怒り心頭に発したのか、夕華が本格的に腕をつかんできた。
 京介は手をふりほどこうとしてあらがう。もみ合う形になり、すぐそれは蚊帳がきしむくらいの本格的なものになった。
 子供とはいえ双方、柔術のいろはを修めさせられている。

 もっとも、敵意などは毛頭ないため喧嘩といえるようなものではなく、幼い獣のじゃれあいに近い。たびたびあることだった。

 正面から京介におおいかぶさった夕華が、小手をとってかれの手首をくるりとひねる。
 関節を極められて布団に押さえつけられる前に、京介は手首をぱっと返して技を外し、横に転がって逃げた。
 まともに取っ組み合いになると勝てないのだった。夕華は細身だが、京介より背が高い。力でもまだ劣るのに、そのうえ武芸の技量にいたっては比べ物にならない。

 逃げた京介に、すぐさまとびついて背中から押さえこむ形で、夕華が体重をかけてくる。
 少女の柔らかい体をあわてて振り落とすべく、今度は反対側に転がろうとして、そこで京介は完全に捕まった。
 京介の背にはりつくようにして同時に転がった夕華に、腕と脚で抱きすくめられていた。

 ――つかまえた。

 薔薇の花弁のような美唇が、京介の耳朶をついばむほどの近くから、楽しげなささやきを熱い息とともに洩らした。
 夕華のしなやかな脚が、京介の腰に背中側から巻きついている。
 短い攻防だったが、全力に近かったため双方の息と心臓は弾んでいた。寝巻きの薄布を通して、体熱と鼓動が伝わる。
 強烈な困惑を覚え、京介は振りほどこうともがいた。

「はなせ、莫迦っ」

「莫迦とはなに、憎まれ口ばかり叩いて。
 観念しておとなしくしなさい」

 少年の胴に後ろからまわされた夕華の脚が、ふくらはぎで交差してしっかり京介を捉えた。いよいよ逃げようもなくなる。
 まくれた寝巻きのすそから出て、京介の腰をはさんだ少女の太ももが、夜目にも白い。子供のたわむれながら美妙な妖しさのただよう光景だった。
 背から抱きしめる形で密着したまま、ふと内緒話のごとく声をいちだんと低めて、夕華がわけを明かした。

「ミツルくんには、少しのあいだ柿子とふたりっきりになりたいと頼まれていたんだ。だから私は部屋を空けてきたの。
 度胸あるね、あの子。やっぱり柿子が好きなのかな」

「う……うん。そう言ってた」
561秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:55:12 ID:AXgzlfdg

 どうやら、昼間の夕華と満のひそひそ話は、この計画の算段をつけるためだったらしい。
 そうと気づいたとき、京介の体からふっと最後の力みが抜けた。

「柿子、もてるよね」

 そう言うと夕華も手足から力を抜き、京介の拘束をほどいた。なんとなく、少年にもう逃げる気がないことが伝わったようだった。
 少女と少年はやっとのことで、並んでおとなしく横たわった。

「暑いなあ」

 夕華は自分の襟をつかんでぱたぱたと胸元に空気を入れだした。
 目の前でひらめく襟から視線をそらし、京介はぶっきらぼうにつぶやいた。

「ゆうかちゃんが暴れたからだとおもうけど」

「また憎まれ口を。君が意味不明に逃げたからでしょう。
 一度言いたかったけれど、なんでこのごろよそよそしいの。私のどこかが気にいらないにしても、理由くらい言いなさい。
 ほら」

「え、いや……」

 じとっともの問いたげな夕華の視線が、京介にひた当てられている。
 赤子のころから知っている弟分の態度が、むかしと変わってしまったことを、夕華は思いのほか気にしていたらしい。
 (けど、いきなり理由を言えといったって)と京介は目を蒼ずむ闇のなかに泳がせた。


 「お姉さんぶられるのがなんとなく気に食わない」と言おうとしたが、それは途中でひっこめた。喧嘩になるだけならまだいいのだが、本気で傷つかれたくはない。

 では他はどうだろう。今しがたのように夕華にじゃれつかれて密着されたり、素肌が見えてしまったりすると、昔には感じなかった困惑がわきおこってくる。
 それらについては、言えない。そんなことを気にしているとは認めたくない。
 その点はふだんからなるべく考えまいとしているので、今回もさっさと意識から外す。

 もっと他には、と理由を探してみたところで、さきほどの夕華の口ぶりを思い出す。柿子のことを「もてるよね」と評して、くすりと笑んでいた。
 そこで京介はこみあげる腹立たしさを感じた。ほんとうにゆうかちゃんはわかっていない、と。

 年下年上を問わず、近隣一帯の男子のあこがれの的になりつつあるのは、むしろ夕華のほうなのだ。
 子爵令嬢という身分におそれをなしてか、告白にまでふみきってくる者がほとんどいないだけである。それも、今はまだ、だろう。
 柿子はといえば、傍目から見ているとたしかに姉には多くの男子が寄ってくる――ただし、その半分以上は、彼女を通して夕華と仲良くなりたいと思う輩なのである。
 柿子はうまくさばいているようだが、いらだたしいことに、最近では京介も取り次ぎを頼まれることが皆無ではない。あの中学生との因縁も、それが発端だったのだから。

 むろん、これも言うつもりはなかった。

 あれは言わない、これは言いたくないとなるとけっきょく、言葉につまるしかない。
 かといって何も言わないわけにはいかない。不満げな夕華の瞳が、間近から急かしてくる。
 言葉選びに逡巡したすえ、京介は苦しまぎれに言った。
562秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:56:08 ID:AXgzlfdg

「別に、そっちに深刻な問題があるわけじゃないから。ゆうかちゃんが気にしなければいいだろ」

 そう言ったとき、夕華の眉間のあたりに愁いがただようのが見えた。

「避けられるようになれば、気にしないわけがないでしょう」

「その、嫌いとかじゃないからね」

 あわててそう保証したあとで、京介はきまり悪くなって顔をしかめた。顔が熱い。
 悪いことをしている気分に追い込まれたあげくの、言い訳めいた言葉だが、考える間もなく自然に口から出てきた。それがどういうわけかいたたまれない。
 幸いにも暗がりのことである。互いの表情はなんとか読み取れても、頬の紅潮まではわからない。

 夕華は気づく様子もなくあお向けになって、「それならいいか」とつぶやいている。

 開けはなした縁側の障子から、月影が座敷に入ってくる。風はなく、ぬるんだ夜気は動かない。
 枕をならべながら、なんとはなしに話をぽつぽつと続けていく。

「こんな夜はむじなが出るというね」

「空を見れば月がふたつ昇ってたとか? あんなの子供だましじゃないか」

「昔あれだけ怖がっていたくせに」

「ゆうかちゃんがさんざん脅かしたからだろ!
 五歳児の寝入りばなに怪談を語り聞かせるとか、鬼畜の所業だよ」

「あはは。
 むじなは知らないけど、狐ならいるよ。最近鳴き声がするから。耳をすませていれば今夜も聞こえるかも」

「え……いや、その手に乗るもんか。狐もいない」

「ほんとうよ。うちの庭に住み着いたみたい。夜になると町中に出ているんだって」

「……へえ」

「今年、できちゃった結婚をした豆腐屋のおにいさんがいるでしょう。このまえ化かされたと言っているよ。
 十六夜月の明るい晩に、赤ちゃんを抱いて夜道を歩いていたら、狐があとから付いてくる。
 おにいさんがちらちら後ろをふりむきつつ歩いていたら、腕に抱いていた赤ちゃんがいきなり『おとうさん厚揚げちょうだい』って話しかけてきたんだって」

「よほど食い意地が張った赤ちゃんだったんだね」

 本当に眉に唾をつけかねないくらいに警戒していた京介は、「ふん、やっぱり怪談の方向に話を持っていくんじゃないか」という顔をして、ここぞとばかりにまぜかえした。
 が、夕華は神妙に続けた。
563秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:58:01 ID:AXgzlfdg

「そう言ったときの赤ちゃんの口は耳まで赤々と裂けていたんだって」

「……ふ、ふーん……」

「おにいさんはおもわず赤ちゃんを路上に放り出して逃げ帰ったの」

「え、だめじゃないか」

「帰ってから急に頭がはっきりして思い出せたっていうの。おにいさんの子供はまだ奥さんのおなかの中で、産まれてさえもいなかったって。
 誰のものとも知れない赤ちゃんを抱いて、真夜中に外出していたことは覚えてるんだけど、外に出た経緯はいまもさっぱり思い出せないみたい」

 少女がとつとつと抑揚なく語る怪の話に、背筋に冷たいものが差しこみ、京介はついぎゅっと布団をつかんでしまった。
 してやったりと、夕華が声にいたずらっぽい笑いを含ませた。

「こんな夜、だれも気づかないうちに狐が家の中に入りこんでいて、ふすまを開けて部屋をのぞきこんだりしてね。君の知っている人に化けて。
 ふふ、きょうくん、私が狐だったらどうする」

 しかし、つぎの言葉を続けたときに、夕華のからかいの微笑は消え、声が少し震えた。

「いきなり、どろんと消えてしまったり……するかもしれないよ」

 あいにくその声の震えには、京介は気づかなかった。
 少年は怯えをさそわれたことがただ腹立たしく、すぐさま事実とは逆の強がりを言い返した。

「幼児じゃあるまいし、そんなちゃちな怪談で怖がったりするもんか。
 だいたい不思議でもなんでもないね。夢遊病ってやつじゃあないの。豆腐屋のおにいさんは、きっと夢を見ながら寝ぼけて外にさまよい出てたんだ。
 赤ちゃんなんて最初から抱いてなかったんだよ。悪夢にかわったところで目がさめたけど、夢の印象が強すぎて現実とのあいだがあいまいになってるんだよ」

「ふうん……でも、夢だとしてもなんだかぞっとすると思わない。
 おにいさんは、夢を見ているうちは赤ちゃんのことを疑いもしなかったんだよ。まだ生まれてきていないはずだって気づくこともなかった。
 時々あるでしょう、真に迫った夢が。この世にいないはずの人がいたり、自分がいまある自分でなかったり……起きてからやっと『ああ、いまのはほんとうのことじゃなかった』って気づくような」

「そりゃ、そういう夢くらい僕だって見たことはあるよ。死んだおばあちゃんと昔どおりに話してて、おやつもらったとかね。
 けど、なんでそんなのが怖いのさ」

 今度は強がりではない。幽霊だの妖怪だのの話からそれて、京介はほっとしているのだった。
 けれど夕華はゆっくりかぶりをふった。

「怖いよ。ある瞬間まで信じていたことがいきなりひっくりかえって、目が覚めたらぜんぜんべつの世界があったなんて。
 あやふやで、確かでないのが怖いの。吊り橋をわたっていたら、とつぜん足元の板をはずされるようなものじゃない」
564秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 14:58:57 ID:AXgzlfdg

「……なんだか、やっぱりぴんとこない。それにそんなの、夢に限らず現世だってそうだというじゃないか。
 この世では確実なことも変わらないものもほとんどないって、法事のとき来るお坊さんが説いてたじゃない。色即是空諸行無常、タダ春ノ夜ノ夢ノ如シ、って」

 ただのとりとめのない話題だと思い、京介はあくびしながら気楽に話していた。
 その隣で、夕華がつぶやきをもらす。

「そっか。夢も現も同じ、なにも確かなことなんてない、か。――そうだね、そうかもね……」

 あれ、と京介はようやく気がついた。少女の様子がいつもと違うことに。
 見つめられてかすかな胸騒ぎを覚える。

(ゆうかちゃん?)

 いま夕華が浮かべているのは、消え入りそうな寂しげな微笑だった。
 ずっと共に育ってきたはずなのに、彼女のその表情は京介がはじめて見るものだった。

「それならこれまでのことだって、幻を見つづけてたのかもね。
 狐の惑わしか、邯鄲の夢みたいな幻で、あした目覚めたらまったく違った人生がそこにあるのかもしれない。君も私も……」

 網をとおして蚊帳にさしこむ秋の月が蒼い。
 彼女の微笑がどこか透きとおって、かげろうのように薄くゆらめいている気がする。

 衝動に突き動かされ、気がつけば京介は夕華の袖をぎゅっとつかんでいた。
 一瞬のことで、あわてて離す。それでもかれは言おうとした言葉のほうはとどめはしなかった。

「やめろよ、そんな話。よくわからないけど、怪談のたぐいなんかもう聞きたくない」

 怒ったふうをよそおったあと、わざとすねた声で京介は言った。

「じつはちょっと怖かったよ。
 眠れなかったらゆうかちゃんのせいだ」

「――ごめんね」

 やはり、沈んだ笑みだった。
 もうそれを見たくなくて、京介は、育つつある男としての自尊心をいっとき捨てることにした。
 もぞもぞと動き、うつぶせる。幼い柔らかさのある片頬を布団に押しつけ、恥ずかしさを押し殺して、言うための勇気をやしなう。
565秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 15:00:45 ID:AXgzlfdg

 夕華が好むのは、京介に「お願い」されることだとかれは知っていた。お姉さんぶりたがる彼女は嬉々としてそれを聞き入れ、ほとんどの要求をかなえてくれる。
 だから京介は、ここしばらく言おうとしなかった懇願を口にした。

「……あの、僕、ほんとに眠れなくなったみたい。
 だから、昔みたいに眠らせてほしいんだけど」

 最近はめずらしい少年の甘えを聞いて、夕華は軽いおどろきに目を見開いている。
 京介を見つめるその瞳が、やがて、ふっと優しくゆるんだ。
 沈んだ雰囲気が、彼女から消えていくことにほっとしながら、京介はさらに続けた。

「……――歌ってよ、久しぶりに」

 またも赤面し、口にしたそばからぎゅっと目をつぶる。
 夕華の気をまぎらわすために言い始めたことだが、たまの同衾の夜くらい素直でいようという思いも起こっていた。
 はたして無言のあと、少女が身を寄せてくる気配があった。

 ――しょうのない子。

 困ったふうをよそおって、かすかに嬉しげなささやきだった。
 それから歌が始まった。ふたりきりのときの儀式に近い、赤子のころから聞きなれていた、久方ぶりの子守歌。
 始まっても、すぐにはそうと気づかなかったほど、彼女の唇がつむぐ音色は淡いものだった。

   冷たきむろに醸されて、
   若紫の色深く、
   泡咲く酒のさかづきを、
   わがくちびるに含ませよ。

 宝林宝樹のこずえが風に鳴る音か、迦陵頻伽(かりょうびんが)の鳴く声かという雅歌だった。蜜を一滴からめた、温かく甘やかな柔音が、京介の耳に忍び入ってくる。
 一貫して低く、かそけく、清和して澄み、哀婉雅亮にみちみちて、おだやかに眠りの園へみちびく歌。

 あやされて陶然としながらも、夕華に寝かしつけてもらうのは今夜限りにしようと、京介は胸のうちにかたく誓っている。もう幼児ではないのだから。
 それでも彼女にこうしてもらうときがいちばん安らぐのは、幼児のころと変わりなかった。
 これを最後と思えばこそ、いまこのときだけは彼女に甘ったれていたい。
566秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 15:01:46 ID:AXgzlfdg

   忘れがたみよ、津の国の、
   遠里小野の白すみれ、
   人待ちなれし木のもとに、
   摘みしむかしの香ににほふ。

 耳慣れた妙なる調べにくるまれて、京介は急速にうとうとしていく。
 声の高低や音律を、どの段階でどのように変えていけば京介が睡眠に落ち込んでいくのかを、長年の経験で夕華には把握されている。
 リラックスすればつぎは眠気を甘く呼び起こすように、まどろめば眠りをさらに深みにいざなうように。

 同じ歌詞がくりかえし続くこともあれば、途中で別の歌に飛んでいるらしきこともある。それはさほど重要なことではない。
 聴きいる京介は歌詞の内容よりも、夕華の声そのもので夢のふちに近づいていくのだから。

(あ、手――)

 少女の繊美な手で、髪をそうっと撫でられている。
 はっきり目覚めているときは怒り顔で首をふって払うそれも、ほんとうは心地いい。
 まだ意識はあるが、何をされているのかわからなくなっているふりをして、京介はその手の感触に黙ってひたった。

(くやしいな……)

 甘美なまどろみにたゆたいつつ、ぼんやり考えた。夕華に子供扱いされることは嫌なのに、これ以上なくこころよいのが、悔しい。
 いや、本当に悔しいのはそんなことではなかった。
 赤ん坊のころからずっと、夕華にはこんなふうに、いつも面倒を見てもらうばかりだった。今となってはそれが歯がゆくてたまらない。こちらからはなにも返せていない。

   待つにし来ます君ならば、
   千夜(ちよ)をもかくてあらましを、
   忘れてのみは、いつのよも、
   めぐり会ふ日はなかるべし。

 京介は、夕華の胸元に顔をうずめた。
 自分から無意識にすりよったのか、彼女に引き寄せられたのか定かではなかった。
 どちらにしてもすでに、少女の白絹の袖はかれの頭を抱き、やわらかくつつんでいる。

 清浄の伎楽にも似たかれのための歌声。抱擁されて間近に感じる少女の体温。
 鼻腔を満たす白薔薇のような甘い肌の香。髪を撫でてくる優しい手。

 寝かしつけられて眠りのきわにある思考が、温かく澄んだ想いを引きだした。
 今はほとんど借りを返せていないが、いつかこの年上の美しい少女のために何かをしてあげたい。

(もっと大きくなったら……ゆうかちゃんのために、なにかを……――)

   まぼろし追うてくたびれて、
   しばし野末の仮の宿、
   結ぶや君よ何の夢……

\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\
567秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 15:04:40 ID:AXgzlfdg

 暗い部屋のなか、くうくうと穏やかな寝息がふたりぶん、夜具から聞こえてくる。
 渋沢柿子は蚊帳のかたわらにかがみこんで、身動きせず中をじっとのぞきこんでいた。

 座敷の入り口でちょっと開いたふすまから顔を出している満が、「……俺、戻れないだろ?」と同意を求めてきた。
 柿子はうなずき、いまいましげに悪態をついた。

「たしかに熟睡してるわね。この阿呆共」

 起こさないよう気遣った小さな声である。
 いましがたまでは、叩き起こしてやるつもりだった。
 よけいなことを謀ったあげく、満をこちらの部屋に送りこんだことを忘れて、のうのうと寝入っている夕華に腹を立てていた。

 そういうつもりで柿子は部屋のランプを点けたのだが、寝顔を見て、黙ってまた消したのである。
 京介の頭を抱いた夕華は、安らかな表情で眠っている。ランプに照らされたときその目元で露がきらめいたのを柿子は見たのだった。

(……この娘、なんで泣いてんのかしら)

 首をかしげる。
 心当たりはないでもない。来年、夕華が帝都の女学校へ行くという話が持ち上がっている。
 となると、京介との別れを惜しんでの涙だろうか。それだけではないのかもしれないが。
 いずれにしてもこうなると、放っておいてやったほうがよさそうだった。

(――どうせ起こしても話してはくれないだろうし。
 女学校のこと、そろそろこの娘の口から聞きたいもんだけど)

 柿子は、冷めた目で幼なじみの横顔を見おろす。
 入学のための上京うんぬんは、夕華から直接聞いた話ではない。祖父の元介が得た情報を教えられたのだ。
 祖父には、もしかしたらおまえを付いていかせることになるかもしれない、と言い含められている。それはまあ、いいのだが。

(相談もされないと微妙な気分になるのは、なにもあんただけのことじゃないわよ、夕華)

 蚊帳から離れ、柿子はふんと鼻から息を抜いた。
 満に対し、いちおう親友のために弁解しておく。

「意図してあんたを追い出すつもりはなかったでしょうけどね。この娘はいつも京介を寝かせるうち、自分も一緒に寝てるのよ。ほんと成長がないわ。
 ところであんた、今夜はどこで寝るつもりよ。そこらで雑魚寝でもすんの?」

「蚊に食われるのは嫌だな……どこで寝よう」

 考えるふりをしているが、満の声は期待に満ち、視線は柿子の顔色をうかがっている。何を考えているか簡単に読み取れた。
568秋夜思 ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 15:05:08 ID:AXgzlfdg
 このマセガキ、と呆れ、あーあとため息をついた。

「……ま、京介に加勢してくれたそうだし……
 わかったわよ。あんたはわたしの蚊帳に入れてやるから」

「え、ほんと!? やっ……」

「死人のように寝とけよ。妙な動きを見せたら誇張ぬきで泣くまで殴るわ。
 さっきみたいに顔近づけてきたりすれば、明日の朝陽がしみるほど顔面を腫らすことになるわよ」

 強烈にどすのきいた早口で、柿子は釘を刺した。
 やりかねないと思ったのか満は憮然として黙りこむ。柿子はかれをうながして、部屋に帰るべく座敷から出た。
 ふすまを閉めかけて、ふともう一度、夜具に目をむけた。
 安らかに甘寝にひたっているあの二人は、一見して仲むつまじい姉弟に見える。ほんとうの姉弟よりずっと。

(でも、この子たちは、実際のところ相手をどう思ってるのかしらね)

 柿子が幼いころ、よちよち歩きの京介が自分より夕華にべったりなことで、腹を立てたときがあった。
 「こいつはわたしの弟で、あんたのじゃない」と夕華に抗議し、それは声高な喧嘩に発展した。
 争いのすえに柿子はそばでおろおろする弟をつかまえ、首を絞めかねない剣幕で「おい、どっちがお姉ちゃんだか言ってみろ」と迫ったものだった。

 「カキちゃんがおねえちゃんで、ゆうかちゃんがゆうかちゃんです」という答えを引き出してとりあえず満足したのだが、よく考えればなんだか後半が変な答えである。
 どうもあのころから腹違いの弟は、人間関係で「父」「姉」「友人」というような基本的な分類に加えて、「ゆうかちゃん」という項目を存在させていたらしき節がある。
 そう気づいたあとは、なつかれ度合いを夕華と競うのはもう馬鹿らしくなった。

 今もむかしも、柿子へ対するときの京介の態度はあまり変わらない。
 一方で、夕華に接する態度は、あのころから大きく変化しつつある。
 それでも、あのように寄り添って眠る姿を見れば、三つ子の魂という言葉がすぐ思い浮かぶ。
 表面がどれだけ違ったものになろうと、奥底にはあのころから変わっていない何かがあるのだろう。それはたぶん、柿子との結びつきより強いのだ。

「……せいぜい今のうちに仲良くやんなさいよ」

 最後にそう声をかけて、柿子は静かにふすまを閉めた。
569ボルボX ◆ncmKVWuKUI :2009/04/25(土) 15:09:05 ID:AXgzlfdg
「春の夕べの夢醒めて」の番外編でした。子供の頃の話。
つぎの投下は本編に戻ります。
570名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 15:44:38 ID:aAZGrwAA
GJ!嫉妬するカキ姉に萌えたw
571名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 22:41:09 ID:sHlcns/u
GJ!
今のヘタレ京介からは想像もつかんなw
572名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:14:15 ID:jGKbTG+E
さて。空気読まずに投下しますか。
573名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:16:03 ID:jGKbTG+E
「ねぇ男。」

窓越しに女が話しかける。

二人の家は隣同士。昔からよく遊んだりもした、絵に描いたような『幼馴染』だ。

「ん?なんだ?俺今眠いんだけど」

あくびを噛み殺しつつ男が答える。

「その…さ…お、男って、す、好きな人とか…いる…?」

唐突な質問に男が目を丸くする。

「…は?何?いきなり何なの?」

「い、いいから!…ねぇ…好きな人、いるの?」

いつになく真剣な表情で女が男に尋ねる。よく見ると頬が少し赤い。

「……いるよ。ずっと、ずっと前から」

その様子にふざけているわけではないと感じ、男も真面目に返答する。
574名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:17:04 ID:jGKbTG+E
「…そっか。好きな人、いたんだ…」

本人は気付いていないだろうが、顔にはありありと落胆が見て取れる。

男はそれを見て何かを決心したようだ。

「…うん。そっか。ゴメンね変な事聞いちゃって。今のは忘れて!それよりさ…」

女が話を変えようとする。しかし、無理をして平静を装おうとしているのはバレバレだ。

その証拠に、微妙に目尻から涙が零れかけている。
575名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:18:21 ID:jGKbTG+E
「…なぁ女。」

男が女に話しかける。

「…何よ?」

「俺さ。そいつのことがずっと好きだったんだ。いつから好きだったのかもわからなくなるくらい」

「…」

「そいつはさ。強くて、かっこよくて、でも本当は他の子以上に女の子らしくて」

「…やめて。」

「いつも楽しそうに笑ってて、その顔がすごく好きで、でも時々寂しそうな顔をすることがあって、そんな顔見ると辛くて」

「…やだ。聞きたくない」

「だけど声もかけづらくて、遠くから見てるのが精一杯で、でもやっぱりいつも一緒にいたくて」

「やめて!」

女が男の話を遮るように叫ぶ。
576名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:19:02 ID:jGKbTG+E
「そんな話…聞きたくない…」

「…」

「自分勝手だってわかってる。でも、男からそんな話聞きたくないよ…」

「…」

「ねぇ…男…。私、ずっと男のことが好きだったんだよ…?」

「…」

「ずっと、ずっと…でも、男に好きな人がいるなら諦めなきゃいけないよね…?」

「…」

「だから…諦めないといけないのに…」

「…」

女の目から涙が流れ始める。

「…やだよぉ…やだぁ!…ひっく…大好きだよぉ…諦めたくない…ふぇ…」

「…」

「…離れたくないよぉ…うぇぇ…ずっと…ずっと一緒にいたい…ひっく…やだよぉ…男…」

ずっと。ずっと一緒だった。

いつも二人だった。

気づけば、男のことを好きになっていた。

近すぎて、いつの間にか一緒にいるのが当たり前になっていた。

でも、本当はそれは当たり前のことなんかじゃなくて。

気付いていたけれど、声に出したら、もう一緒にはいられない気がして。

必死で自分を騙していた。離れたくなかったから。

けれど、今日。好きな人がいると聞いて。

もう、話すしかなかった。
577名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:20:37 ID:jGKbTG+E
「…」

「ぐすっ…ひっく…何か喋ってよぉ…ふぇぇぇぇん…」

少しの沈黙の後、男が口を開いた。

「…そいつはさ、ちっちゃい頃からずっと一緒でさ」

「…え?」

頭が真っ白になった。

「いつも一緒にいて、バカやったり、喧嘩もしたりした」

「…男」

ちっちゃい頃。喧嘩。

どちらも記憶にある。

「年取るにつれて、段々意識するようになって、話もしづらくなって」

「…」

そういえば、小学校の半ばぐらいからあまり話をしなくなった。

「中学に入るぐらいからは、バカみたいにそいつばっかり気にしてた」

「…ねぇ」

中学の頃は、よく男と目が合った。

会うと、すぐに逸らされてしまったけど。

「高校に入って、凄く可愛くなって、俺なんか全然釣り合わなくて、ずっと我慢してた」

「…ねぇ、男」

高校に入ってから、何度か告白されたことがある。

男のことが大好きだったから、全て断ったけれど。
578名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:21:04 ID:jGKbTG+E
「でも、今日、『好きだ』って言われて、もう我慢できなくなった」

「…それって」

期待しても、いいんだろうか。

「結果なんてどうでもいい。ただ、聞いてほしい」

「…」

男が。もしかしたら。自分のことを。

「女。俺は」

「…うん」

好きでいてくれるなんていう、奇跡を。

そして、今。



「お前のことが、大好きだ。俺と、付き合ってくれ」



奇跡は、起きた。

「…っ!」
579名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:21:25 ID:jGKbTG+E
「…っ!」

声が、出てこない。

嬉しすぎて。

「どうしようもないくらい、お前のことが好きだ。」

「…いいの?私は可愛くないよ?」

夢じゃないんだろうか。

こんなことが起きるなんて。

「さっき言ったろ。お前は凄く可愛いよ」

「…ねぇ。さっきの、本当…?」

だから、確かめる。

これが、夢じゃないことを。

帰ってきたのは。

「…何度でも言ってやるよ。…大好きだ」

望んでいた答え。

「…っう…ふぇ…」

「…なんで泣くんだよ」

「だって…嬉しくて…」

「…そっか。…返事、聞いてもいいか?」

「…うん。……こちらこそ、よろしくお願いします!」

こうして二人は、やっと素直になって。

ずっと、ずっと一緒に。

二人で、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

おしまい。
580名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:22:46 ID:jGKbTG+E
製作時間1時間半ぐらい。
微妙かな?
まぁなんにせよ、読んでくれた人。
ありがとう!
581名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:41:09 ID:jXe0MJ2t
何と言う王道
何と言う直球
素直に言おう
ごちそうさま
582名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:41:19 ID:9zPmWIA1
よくやった
583名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 02:07:45 ID:MmIpPqhQ
ボルボXさん超GJ!

仲睦まじ過ぎて泣けてくる。
本編楽しみにしてます。
584名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 10:36:22 ID:Go+E9JG4
柿子「おい京介、俺の名を言ってみろぉ」
京介「カキねえちゃんさま…です」
585名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 15:46:47 ID:jGKbTG+E
幼馴染みって昔から一緒にいないといけないから今からじゃ作れねぇんだよな・・・orz
俺も可愛い幼馴染みが欲しかった・・・
586名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 18:14:17 ID:2CxHJCFf
>>585
まったくだ
妹なぞより幼馴染がほしかったッ!
587名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 18:42:57 ID:0CtAPuMU
"ゆうかちゃんがゆうかちゃんです"・・・ツボだ(w


夕華のキャラが昔某エロ漫画でちょい出てきたキャラに被るのだが、
モチーフがあったりするのだろうか・・・
588名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 02:29:32 ID:Ds5otSth
遅れながら乙
相変わらずしっかりした文章で書かれていてとても読みやすかったです
次の本編も首を長くしてお待ちしています
589名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 04:37:38 ID:x3EkwNrb
前にこのスレで話題になっためだかボックスが連載化するそうで
590名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 19:15:40 ID:DkvRmoCt
>>589
 楽しみだな。
591名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 21:51:46 ID:0H6+RxMa
うわあああ冥土超がよみがえっちゃったーーー!
お嬢様ー!妹さまー!美鈴ー!てか紅魔館の皆様逃げてー!
592名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 21:53:00 ID:0H6+RxMa
OK誤爆った。失礼
593名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 22:30:11 ID:VhvIqva2
どうにか兄と姉を生贄に捧げて可愛い双子の幼馴染みを召喚できないものか・・・
594名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 22:33:36 ID:9u+An08T
双子幼馴染の見分けがつくのは主人公だけなんて
超ド定番設定は最高だよね
595名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 06:38:47 ID:KWv4wHiZ
だよね!
双子の姉はクリが弱くて妹は乳首が弱いとか、ちゃんと主人公は昔から分かってるんだよな。
596名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 15:50:48 ID:trCRssVw
>>595

小学生の頃にたまたま見てしまったAVの内容を3人で実践したのが最初なんですね
よくわかります
597名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 17:22:22 ID:Q3p0IqCH
タイトルは、
『悶絶焦らしプレイ!!イケないM男の悲劇!!』
姉からは足コキ、妹からは手コキで扱かれ、ギリギリのすんどめ地獄。
598名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 17:47:41 ID:o1aZqZYO
M男プレイくらいならいいが、もし過激な内容のAVだったらどうする気かと
縛ってのレイプものとか
599名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 06:46:32 ID:Tfx9eKqj
縛られるのが大好きな幼馴染みになりますが何か?
600名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 16:23:26 ID:ViDPDtHN
俺が一番好きなコピペ

>小学校のとき、思い切って好きだった女子に
>「結婚してください」と言った。思いきり馬鹿に
>されて、卒業まで笑われた。
>中学も高校も一緒だったからずっと笑われた。
>
>
>
>
>今でもたまに夕食のときに笑われてる。

601名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 21:27:23 ID:ie4O27XG
>>600
急いで保管庫にある15-49の小ネタを読みに行くんだ
602名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 00:55:26 ID:dFvyCFzG
>>601
サンクス 
やっぱり幼馴染っていいな
603名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 03:48:30 ID:jz/yHFqH
red.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/o/original1859.html

これの続きってないのか?
604名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 19:24:39 ID:dFvyCFzG
>>603
探してみたけど見つからないな
605名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 20:39:21 ID:mzkeockz
>>603
続きはない
何故なら作者が書いてないからな

……はい、しばらくお待ちくださいませorz
話を膨らませるのがうまくいかず……
606名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 22:37:25 ID:Vh3+Zlz+
>>605
本人かw

いつまでも待ちます
607 ◆1Bix5YIqN6 :2009/05/04(月) 02:55:13 ID:fspLFsfj
あーあー、酉のテスト中ー。
これから投下しますよ、と。小ネタです。
608ホットケーキフレーバー ◆1Bix5YIqN6 :2009/05/04(月) 02:56:12 ID:fspLFsfj

「幼馴染みって面倒なんだよね」
 ……と、そいつは言った。
「知ってるか? おねしょしてた年齢とか、泣かされた回数とか、泣かした回数とか。そういう腐れ縁の面倒くささ」
「大変だな」
「そう、大変なんだよ。だからだな、俺を少しでいいんだ、かくまってくれ。な? 友達だろ?」
「……いや。悪いが、匿えないな」
「……なんでだよ。いけず」
「気色悪いな」
「ぶった切るな馬鹿」
「……俺は話を早くぶった切って後ろを向く事を薦めるよ」
「は? ……げぇ! 早苗ェ――!?」
「はいはいとっととこっちに来ましょうねー? とりあえずペンチでその軽い口を捻り千切ってあげるから」
「ギャ――! プリーズ! プリーズヘルプミー、吉原ぁ――!」
 笑顔で手を振って馬鹿を見送って、俺は頷く。
「分かる。分かるぞ」
 ……そう。幼馴染みなんてものは、基本的に面倒なのだ。

/

 家に帰ると、理汐<りしお>がベランダに寝転がっていた。
 人間関係が希薄になるとされているマンションで、コイツは驚くくらいに遠慮がない。
 面倒な事になる前に、ベランダ窓を開き、声をかける。
「理汐」
 呼びかけに対し、返ってきたのは寝息だ。
 ベランダも、そうきれいな場所でもない。引きずるように部屋の中に入れ、座布団を頭の下に敷き、タオルケットをかけてやる。
 起きた後のために、台所にポテチを探しに行く。
 この手の菓子は常備してあるが、……盗み食いとか、されていないだろうか。
「……ふむ」
 結論を言えば、されていた。大方、昨日の風呂の間だろう。ゴミ箱を開けば、くしゃくしゃになったポテチの袋がある。
 昼寝の後は、何かを食わせなければならない。
 そうでなければ、アイツは――
「は……」
 ため息を一つ。
 非常用に取っておいたホットケーキミックスを取り出し、フライパンを用意する。
 この前蜂蜜を直飲みされたので蜂蜜はない。よって、砂糖を多めに混ぜる事で代用する。
 ……と、背後で理汐が目覚めた気配。具体的には、匍匐前進でこちらに寄ってくる気配がした。
「理汐。あと少し待て」
 がたん、と椅子が揺れる音がした。気づかれていないとでも思っていたのだろうか。驚いた拍子にぶつけてしまったのだろう。
「何故バレた、とお前は言う」
609ホットケーキフレーバー ◆1Bix5YIqN6 :2009/05/04(月) 02:56:42 ID:fspLFsfj
「なぜバレ――はっ!」
 答え。お前がパターンすぎるから。
「理汐。おはよう」
「……おはよう」
 ふてくされたように、理汐は言う。
「ホットケーキ?」
「ああ。蜂蜜はないが、その分生地は甘いぞ」
「ならよし」
 立ち上がる気配。そして、歩み寄ってくる気配。
 そして、肩口に手がかかり、ぐ、と力が入った。肩が沈み、そこから理汐がフライパンを覗き込む。
「おおー」
「……理汐、」
「ほら、手元手元。注意してよ」
 ……お前のせいだ、と言えない面倒くささ。
 これが幼馴染みだ、と思う。分かっている。分かっているんだ、馬鹿よ。
「……せめて座って待ってろ。遅くなるぞ、ホットケーキ」
「おまえの嫌がる顔も美味しいからいいよ」
「本当にめんどくせぇ!」
「う、うぉう、ごめんっ!?」
「す、すまん本音が出た」
 ぐ、と強く握られた肩の手に左手を重ねる。強張りをほぐすように緩く、だ。
「……本音って、ひどくない?」
「ひどくないぞ。大丈夫だ。問題ない」
「そう?」
 肩にかかる力が弱くなる。代わりに、うなじ辺りに額が来る。
 ぐりぐり、と押し付ける動きは、それはそれで、邪魔だ。
「理汐」
「……邪魔? 邪魔?」
「邪魔だ」
 答えると、額のこすりつけが加速した。
「……理汐! 料理の途中で邪魔をするな!」
 振り向き怒鳴ると、そこには理汐の笑顔があった。
「やっと振り返ってくれたね、湊<みなと>」
 ああ、と思う。
「ねぇ」
「もう少しだけ、顔、近づけてもいいかな」
 ――幼馴染みと言うのは、面倒だ。
 返事は無言。理汐はそれを好き勝手に、……俺の思い通りに解釈して、肩に再度力を込めてくる。俺の膝はそれに逆らわず落ち、そして、ん、と彼女は息を漏らす。
「……ちょっと、ホットケーキの味。あとにおい」
「味見したからな」
「ずるい」
「味見がずるいとはなんだ。お前が作るか?」
「……ごめん。代わりにホラ、……私食べていいよ?」
「……夜にしろ」
 やっぱり、幼馴染みは面倒だ。
 面倒を見なくちゃならないし、NOと言えなくなってしまう。
 にひ、と笑う彼女のため、俺はホットケーキを焼いていく。
610 ◆1Bix5YIqN6 :2009/05/04(月) 02:58:14 ID:fspLFsfj
/
投下終了。
うん、勢いで書いただけに、明日になれば投下できないと思ったんだ。
ホントはエロまで行きたかったけど眠いからナシだよ!
……どうしてプロットきちんと考えてないのは書くのが早いのか。
楽しんでいただけたら、本当に幸いですよ、と。
611名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 03:46:16 ID:Xmlk7gD2
GJ!
俺もこんな幼馴染がほしかったッ!
612名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 05:46:03 ID:NupB2qC6
これはGJ
かわええなw
613名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 07:32:37 ID:9Dcy/8Kr
かわいすぎだろGJ……
614名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 10:31:40 ID:h24Ml330
ほのぼのしてていいな

しかし題材がホットケーキとは貴様まさか甘スレn(ry
615名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 14:14:02 ID:08BgGrhm
しがみついてうなじに額つける図とか想像するだけでテンション上がった。
そして「私食べていいよ」に拒否しない展開に期待した。
これは当然夜にいただくシーンも書くんだよな。
616名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 09:05:08 ID:/guMZp7H
最初は男の後ろをちょこちょこついてまわり、成長するにつれ、
男の服の裾を掴み、背中に隠れ、手を繋ぎ、腕にしがみつき、常に抱きつき離れない。

そんな依存系幼馴染み。
617名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 10:00:23 ID:/LC3Td+p
お前らが糖尿なのはよくわかったw
618名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 17:18:50 ID:oaTs6yb5
甘スレ行けお前等




あっちで待ってるからw
619名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 19:47:21 ID:YVtvdvRj
ホットケーキと聞いて甘スレからきました
620名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 00:14:51 ID:xmtgGA5M
甘スレってどこだい……?
621名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 00:18:38 ID:kXjwPvdv
板内を「甘」で検索すればすぐ出てくる
622名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 00:28:22 ID:xmtgGA5M
サンクス
623名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 00:29:09 ID:xmtgGA5M
連レスになって悪いが、作者は甘スレのことを知らなかったので、偶然の一致だと思われまする。
624名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 21:32:46 ID:5gzEqny+
幼馴染、純愛、新婚、甘えん坊の4スレをブックマークしている俺に死角はなかった
625名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 21:56:19 ID:x8kReoFG
>>624
その中だと純愛だけ未ブクマだったが今から常駐するか
626名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 21:57:51 ID:pDdrJA1G
えーと
>>603で所望された話の続きを書き始めました
とりあえず起承転結の「承」、その1ができたので、投下します
627幼なじみとなくしもの:2009/05/09(土) 22:07:10 ID:pDdrJA1G
俺と紅葉が友達になってから、数日が経った。
今日は『母』こと静子さんの他に、ちょっとした来客があった。
俺たちに縁が深い、しかし「俺たち」の知らない面々である。

「紅葉ぃ、心配したんだから〜っ!」
入ってくるなり紅葉に抱きつく女。
「え、あ、あの?」
「あぁ、頭にケガしてるし!でもお肌とかはいつもと同じだぁー」
困惑する紅葉をよそに、そのまま頬擦りを始めてしまう。何だこの女。
「ちょ、ちょっとアンタ」
よくわからないが、怪我人なんだから大事に扱え、と言おうとしたとき、
「こら、三雲。秋吉が困ってるだろう」
「ほらほら、とっとと離れる」
後から入って来た二人の男に引き剥がされた。
「あ、もう!いいじゃないスキンシップくらい!いつものことよ?」
お楽しみを邪魔されたかのように頬を膨らませる女。しかし、
「その『いつも』がわからないのがこの二人だろう。話を聞いてなかったのか?」
男の一言に、うーと唸って、黙り込んだ。
何がなんだかわからない俺。紅葉も同様、ポカンとした表情を浮かべている。
そんな様子に気付いたか、もう一人の男が苦笑しながら話しかけてくる。
「あー、ごめんな?たぶん、二人とも俺らのことわからんと思うから、軽く自己紹介するわ」

結論から言えば、彼らは俺たちの友人だった。
紅葉に頬擦りを仕掛けた女が、三雲 裕美(みくも ひろみ)。
三雲の行動を止めて黙らせた男が、神崎 博彦(かんざき ひろひこ)。
俺たち二人に自己紹介をすると言ったのが、牧野 和樹(まきの かずき)。
高校時代を共に過ごしたという彼らは、俺と紅葉が事故に会ったことを聞き、
わざわざ見舞いに来てくれたのだという。
……残念ながら、彼らのことも思い出せなかったが。
「でもさー、大変だよね。記憶がなくなっちゃうなんて」
ちっとも大変そうじゃない口調で三雲が言う。
「せっかく紅葉が目を覚ましたって聞いて走ってきたのに、私のこと忘れてるんだもの」
「ご、ごめんなさい……」
申し訳なさそうにちぢこまる紅葉。いや、別にお前が悪いわけじゃないと思うぞ。
紅葉の様子に気付いたか、三雲もちょっとばつが悪そうな顔をして、フォローに入る。
「う、ううん!紅葉が悪いわけじゃないのよ?ただね……」
「ただ?」
628幼なじみとなくしもの:2009/05/09(土) 22:09:20 ID:pDdrJA1G
顔を伏せた三雲を覗き込むように見つめる紅葉。と、三雲はニヤリと口の端を吊り上げ、
「せっかく紅葉と私が築いた色々な関係を忘れられちゃって、お姉さん少し寂しいのよー」
ずいぶんと楽しそうに、そんなことを言った。
「い、色々な関係?」
疑問を口にした紅葉に、更に楽しそうな表情を浮かべる三雲。
そのまま紅葉の耳に顔を近付け、小さな声でひそひそと話し続ける。
「そうよー、おんなじ大学で、女の子同士だったから、あんなこととか、こんなこととか……」
「……え、え?わ、私、そんなことまで……!?」
三雲の言葉に顔を赤らめる紅葉。
何だ。
女の子同士で何をするというのだ。
二人の(というか三雲の)話が気になって、つい身体がそちらに傾いてしまう。
一体何を話してるのか、耳をそばだてようとしたところで、
「三雲、勝手なことを吹き込むな」
ここまで黙っていた神崎が、再び三雲を引き剥がす。
「もう、また邪魔して!」
「お前が話すとややこしくなる。少し静かにしていろ」
またも文句を言う三雲を一蹴する神崎。
「まぁまぁお二人さん、そうカッカせず、な?」
間に入ったのは牧野だった。
牧野はニコニコとした表情をこちらに向けて、
「気ぃ悪くせんといてな?俺らと君らは、こんな感じで毎日つるんでたんよ」
と、流暢な(?)関西弁で話す。
「今日は二人の目が覚めたって亮平のオカンに聞いて来た次第。スマンなぁ、騒がしゅうて」
「い、いや。わざわざありがとな」
自分の交友関係に関西弁を操る男がいたことに驚きつつ、礼を言う。
「紅葉ちゃんも大変やったねぇ。傷とか残らんかった?」
「は、はい!大丈夫です、ありがとう」
紅葉に話を振る牧野と、なぜか慌てた風な紅葉。
……たぶん紅葉は三雲の話を反芻していたんだろうが。
そんな紅葉を笑顔で眺める牧野だったが、ふと俺を見て、
「ところで亮平。ジブン、いつ帰ってきたん?」
そんなことを聞いてきた。

それからしばらく、俺たちは他愛もない会話を続けた。
高校時代の思い出や、大学での過ごし方。友達の話など。
「何かジブンとは久しぶりに話すなぁ。3年のときには塾やなんやで話ができへんかったし」
なんて牧野は言ってたが、俺にとっては初対面の気分だ。
自分の知らない「氷川 亮平」を友人に聞かされるのは、何だか不思議な気持ちになった。
紅葉に関しては、三雲が最近の動向を妄想を交えながら話し、そのたびに牧野に突っ込まれていた。
いちいち真に受ける紅葉がずっと真っ赤な顔をしていて、それがまた三雲を煽ったわけだが。
そんな感じで楽しい時間はあっという間に過ぎ、そろそろ三人が帰る時間になった。
629幼なじみとなくしもの:2009/05/09(土) 22:17:08 ID:pDdrJA1G
「結局、春海ちゃんは来ずじまいかいな」
帰りぎわ、ふと牧野がそんなことを言った。
「ハルミちゃん?」
唐突に出てきた新たな人物の名前。誰だ、それ。
俺の顔に浮かんだ疑問符に気付いたか、説明しようとする牧野。
「ん?あぁ、春海ちゃんはな、」
「牧野」
そして、神崎がそれを止めた。睨むように牧野を見つめている。
何となく、場の雰囲気が固まる。
……俺は何か、まずいことを聞いたか?
「……あ、あぁ。スマンな」
剣呑な空気を読んでか、牧野が部屋の出口へ向かう。
「ほな、また。元気で過ごしな」
「あ、あぁ。今日はありがとう」
振り返って手を振る牧野に、俺も手を上げて返す。
「それじゃ、また来るから。紅葉、早く元気になってね!」
「うん、裕美ありがとうね」
さんざんからかわれている内に、三雲とはすっかり打ち解けたらしい。
紅葉は笑顔で三雲を見送る。
「…………」
最後に残ったのは神崎だ。
無言で、俺をじっと見ている。
思えば今日、神崎とは一言も話していない。三雲が話し続けてたのもあるが。
「……ど、どうした?」
沈黙に耐えられず、話しかける。「いや……」
何かを考え込むような、そんな雰囲気である。
……何で、そんなに苦しそうな顔をしてるんだ。
何かを後悔しているような、そんな表情を浮かべる神崎。どうしたというのだろう。
そのまま、再び沈黙が続く。
しばらく考え込むような様子だった神崎が、何かを言おうと口を開き、
「博彦、帰るんちゃうんかー?」
牧野の声に中断される。
タイミングを逸した。神崎は口を閉ざし、
「また来る。元気でな」
一言、そのまま病室を出て行った。
「……何だったんだろうな」
「……さぁ」
首を傾げる俺と紅葉。
彼らの足音が、だんだん遠くなっていた。

「でも、いい人たちばかりだったね」
三人が帰った後、俺と紅葉は彼らの話をしていた。
「まぁ、悪い奴らではなさそうだが。お前、三雲に散々いじられてたろ」
「あ、あれは確かにちょっと恥ずかしかったけど……」
あはは、と苦笑いの紅葉。
まぁ、あれは彼女なりの気づかいだったと思おう。おかげですぐに打ち解けたしな。
「あんな感じで仲良かったんだろうね、私たち」
「たぶんな。実感はないけど」
結局、彼らとの会話でわかったのは、自分たちの高校時代のこと。
残念なことに、記憶の復帰までには至らなかった。しかし、
「あぁいう友人に囲まれてて、よかったと思う」
それは本心からの言葉だ。
彼らとの学校生活は、さぞかし充実していたことだろう。
紅葉も俺の言葉に頷く。そのままポツリと、
「早く思い出したいなぁ……」
なんて、小さな声でつぶやいた。
俺も心のなかで同意する。
ま、すぐに思い出せるだろう。
仲のいい友人が大事じゃないわけないからな。
630幼なじみとなくしもの:2009/05/09(土) 22:18:16 ID:pDdrJA1G
いくつか、気付くべきだった。
彼らの話に出て来なかった「ハルミちゃん」のこと。
何かを告げようとしていた神崎のこと。
何より、仲の良いはずの彼らに、俺の帰郷を知らせてなかったこと。
……その意味に気付くのは、もう少し後のことだった。
631名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 22:21:29 ID:pDdrJA1G
……とりあえず、今日はここまで。幼なじみ成分ないじゃん!

連作短編形式で同じようなネタを回すことはあっても、長いのは初挑戦な私
とりあえず今の流れでは、起承承転結で終わる予定。予定?未定
また次回まで、しばしお待ち下さい

さて逃げるか
632名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 01:26:14 ID:xt323TR8
長編頑張ってください
俺は気長に期待しつつ待たせてもらうぜ
633名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 08:26:24 ID:J5crfrL5
酉やタイトルでググると結構HP持ってる作者さんが見つかることに驚く
634名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 14:19:40 ID:I/GhIe/p
ジャンプでめだかボックスの連載が始まったな。
ツンデレ成分も追加されてて期待。
635名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 20:52:46 ID:wtiaY2Fu
あの作者の漫画はちょっと痛くて読めない
636名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 21:20:12 ID:BrbDhikq
明稜帝梧桐勢十郎の女版みたいな感じだな
確かに痛いが割り切れば結構読めるぜ。おっぱい的な意味で

ただ、あれはツンデレじゃねえ。クーデレだ
637名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 23:11:41 ID:FInILuw9
ツン要素はなさそうだな
端から好意ありありだし
638名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 23:21:39 ID:5Mu3/aww
クーデレに見せかけたデレデレと見たが、さて
しかし小6まで風呂一緒って発想はなかったなー、いずれネタに借りようかな
639名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 23:52:19 ID:J5crfrL5
西尾も結構あざといところ狙ってくるよなぁと思いつつも読んでしまう俺が
普通の漫画になるのか、それとも西尾らしく頭おかしい方向に行くのか、楽しみだ
640名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 00:07:55 ID:YU6QyuAa
デレというか、めだかの方はそういうの意識してないんじゃない?
意識してて目の前で下着姿とかになってるならすごいなw

コンチェルトノートの莉都みたいな、相棒感覚

男の方は意識しまくってるが
641名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 03:28:26 ID:R9DwOirg
「襲っていいぞ」つうサインとかのつもりだったりとかw
642名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 20:40:16 ID:phADM7CR
「ありがとぉっ!!」は至高。
前にめだかボックスで書いてくれた人、また書いてくれないかな。
643名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 23:34:41 ID:LTWKmp2a
めだかの二次創作は勘弁願いたい
というかどうせめだかスレたつしょ
644名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 23:43:48 ID:mrYWX+Wn
めだかスレは立ちそうだが
なぜめだか二次創作が駄目なのだ?
645名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 23:58:55 ID:LUDkL9aC
>>644
ここで西尾のウンチク語られたり、
漫画キャラ板みたいなノリで騒がれるからだろ?
ちなみにもう、めだかスレ立ってるぜ?
646名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 00:01:01 ID:phADM7CR
ここか西尾維新スレで事足りるはずなんだが誰か建てちゃったみたいなんだよな。
もし投下することがあるならば是非そちらの方にお願いしたい。
647名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 06:37:20 ID:Bn8PsPDU
めだかは巨乳なんで興味無いッス。

愛でるならやっぱり貧乳&低身長の幼馴染みだな、うん。
648名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 19:50:08 ID:YtMTzH4a
>>647
電波が来たから即興を送る。

…………
千鶴は小さい。
どんくらい小さいかと言われたら一人で遊びに行くと30分に一回迷子センターにつれていかれそうになり、居酒屋では免許証と学生証を見せても酒を出してもらえない位だから相当である。
ちなみに身長135cm、体重30kgだ。
「ねぇ、大君、だーいくーん。何ぶつぶつ言ってるのー、お酒なくなっちゃったよー?」
ちなみに此処はちぃの隣家の二階にある部屋、つまりマイルームだ。
「お前な、いくら居酒屋で飲めなかったからってピッチ早すぎ、30分でチューハイ5杯は明日くるだろ」
ちぃが唯一大人に勝てるとするなら、酒飲み位だろう。ただ、こいつはその日の気分でビール一箱飲んでも平気だったり日本酒を猪口一杯口にして悪酔いしたりする。
「お酒ー、大君の口ん中のちょーだーい?」
ちぃが抱きついてきた。今日はどうやら悪酔い気味の日らしい。
「こら、そーゆーのは彼氏にやれ。」
「えー、あたしロリコン嫌いなんだけどさー」
「鏡見ろ。お前と付き合う奴はどうやってもロリコンにしかならねぇ。百万かけてもいーぞ?」
「ぐたいてきにどのへんがロリなのよー」
「お前号泣するから言わない」
「言わなきゃ犯してやる。」犯されたくないので思いつく限り言ってみる
「低身長!童顔!昼寝体質!つるぺた!お子さまランチマニア!」
「ふぇ、だいくんがいじわるだ……うわーん!!」
やっぱり泣きだした。俺は他にどう言えばいいんだよ

こんな調子で保育園からの幼馴染みと過ごす色気のない夜はどちらかが眠るまで続くのだった


いつまでこれが続くかって?
保守だから投下次第だよ。
649名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 20:49:26 ID:mMy89LcH
>>648
大長編の始まりにしかみえないwwww
650千葉の戦士:2009/05/14(木) 01:59:48 ID:NX8XcjLR
「お父さん、美紀がびーる入れてあげる」

仕事を終え野球中継をツマミにビールを飲んでいた僕に、美紀が両手でビールを取るとグラスに注いだ。
まだ程度がわからないせいか、泡が吹き出しそうになったので、僕は急いでグラスを口に近づけて泡をすすった。

「お父さん、しろいおヒゲ生えた」
美紀が満面の笑みで僕の顔を見えて微笑んだ。
本当に可愛い。

美紀は、僕と綾の子供だ。美紀が生まれて、もう5年になる。
ヨチヨチ歩きだった頃の美紀の姿を思い出すと、本当に月日が過ぎるのは早いと思う。
651名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 03:17:58 ID:Yy2Wd9CB
鷲を愛する俺は喜べないwww
652名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 16:31:20 ID:WVV2dPXZ
>>647
人間って違うもんだなあ
653名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 21:30:58 ID:xl0rrCJ+
人間だもの
654名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 00:15:26 ID:XqEJ+PRL
>>647
今宵の月でも読んどけ
655名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 06:07:57 ID:t8nN6DmE
上手く書けねーよちくしょー
とりあえず投下させてくれ
656名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 06:13:02 ID:t8nN6DmE
 ふと気が付くと、僕は空へと伸びる長い螺旋階段の途中に立っていました。
 階段は気の遠くなるような長さと高さで、頂上がぼやけていてはっきりと見えません。
 また、下も同じように途中で見えなくなっており、今いる場所がどれほどの高さなのかも、見当がつきません。
 僕は何故、こんな場所にいるのでしょうか。
 暫く考えましたが分かりません。ただ、僕は何だか、上らなくてはいけない気がしました。
 僕は一段、また一段と足を踏み出します。体は軽く、自然に上へ上へと押し上げられるようです。
 階段の幅は人が二人並んで歩けるほどしかなく、手すりなんて物もなく、踏み外せば下に真ッ逆さまに落ちてしまうことでしょう。
 しかし、不思議と落ちる気は全くしませんでした。それどころかこの光景、どこかで見たようなことがあります。
 ですが、頭が上手く回りません。思い出せません。ただ敷かれたレールを走る列車のように、僕は階段を上り続けます。

「星がきれいだね」
 懐かしい声に振り返ると、背後に小学生くらいの女の子が立っていました。
「星?」
 するとどうでしょうか。まるで霧の中のような周囲に、きらきらと光るものが見えてきたではありませんか。
 それは確かに星。五芒の形をした、絵本やアニメで見るような。
「これが星だっけ?」
 気持ちをそのまま、僕は口に出しました。雨漏りの雫を額に受けたような違和感を受けたからです。
「そうだよ。お盆のキャンプ、楽しかったな」
 目の前にひらひらと、まるで落ち葉のように何かが落ちてきました。
 星でした。クレヨンで枠は黒、中は黄色がやや雑に塗られた、まるで夏休みの絵日記に描かれるような、お星さま。
 それが画用紙から切り取られて来たかのようでした。周囲の星と同様、僅かに光っています。
「お盆のキャンプ?」
 女の子の顔を見ようとしましたが、ぼやけてよく分かりません。ただ、何か懐かしいのです。
「うん! えへへ、じゃあ先に行くよっ」
 女の子は僕の隣を抜けて、駆け上がって行ってしまいました。

 また暫く上ると、今度は紺の制服を着た女子高生が、階段に座っていました。
 二つに分かれたお下げが、またどこか懐かしく感じます。そう、確かに見覚えがあるのです。
 たださっきの女の子と同様、顔がぼやけていて、誰なのかがはっきりしません。
「待ちくたびれちゃった」
 そう言って、女子高生は憂うように溜息をつきました。
「待ちくたびれた?」
 意味が分からない僕は、尋ねてみました。
「そう。彼ね、中学校に入る前に引っ越しちゃったんだ。あの日私は、勇気を出して告白した。ずっと待っているから、って」
 誰かを待っているのでしょうか。この階段を上ってくるであろう、その人を。
「彼は四年後に戻って来た。けど、私のことなんて覚えていなかった。会った時、何て言ったら良いのか、分からなかった」
 辺りはいつの間にか暗くなり、雨が降っていました。優しくも物悲しい、五月雨のような雨です。
 雨が、女子高生の顔を濡らします。まるで泣いているかのように、頬の辺りを滴り落ちて行くのが分かります。
 ですが、不思議なことにその顔がはっきりしないのです。
「でも、好きだから。ずっとずっと、私は」
 そう言うと、雨に溶けるようにして、女子高生は消えてしまいました。

 やがて、頂上らしき開けた場所が見えてきました。
「ねぇ、待ってったら」
 後から女性が現れました。まるで僕を追いかけて、上って来たかのようです。
 そしてやはり懐かしく、やはり顔がぼやけています。
「え?」
 僕は振り返り、息を切らしている女性に尋ねました。
「本当に、行くの?」
 行く? 僕に言っているのでしょうか。
「僕が、何処に?」
 何を訊こうとしているのかが分かりません。僕はただ、あそこに行こうと思っているだけなのに。
 しかし、あそこは何処なのか僕も分かっていないのです。どうしてそんな所に行こうとしているのでしょうか。
 考えようとしても、やっぱり上手くいきません。多分理由なんて、ないのだと思います。
「私を置いて、また一人で、そうやって、ずっと、馬鹿っ!」
 女性はそう言うと、膝をついて項垂れてしまいました。訳が分かりません。
 またその訳を、必死に考えたいとも思えないのです。何故か早く、あの場所へ行きたくてなりません。
 僕は女性をそのままに、階段をまた一段ずつ、上り出します。
657名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 06:14:29 ID:t8nN6DmE
 長かった螺旋階段が漸く一段落つき、足場らしきものが目の前に広がります。
 よく見れば、まだ階段は続いていました。ただ僕が下りるべきはここだと感じたのです。
 少し歩くと、大きな扉がありました。
 見るとそれは木のような質感で、中央に鳥のような彫刻が施されてあります。
 と、突然そのくちばしの部分が動きました。そして人が通れるほどの大きさに開いたのです。
 まるで僕を待ち構えるかのようです。
 いざ進もうとすると、今度は予期せぬ大きな揺れが襲ってきました。
 ふと、さっきの女性が心配になった僕は階段まで戻り、下を覗き込みます。
 誰もいません。それどころか階段が崩れ落ちていきます。僕のいる足場まで不安定になってきました。
 僕は急いで扉の方に戻ります。見れば、くちばしがゆっくりと閉じようとしているではありませんか。
 どうして自分はその先に行こうとしているのか、考えるより先に足が動きます。
 が、すぐの距離なのに体が進みません。まるで、夢でも見ているかのように、自由が利かないのです。
 足元は沈み始め、くちばしはもはや人の通れる大きさではなくなってしまいました。
 瓦礫と共に下へ、ゆっくりと落ちていきます。

「?」
 ここはどこでしょう。
 僕は誰なのでしょう。
 暗い場所に僕はいます。
 ぼんやりと映る黒い線に白い色。
 息が、苦しい。そして、胸が張り裂けるように痛い。
 顔に、瑞々しい何かを感じます。これは、涙?
 どうして、こんなに、空しいのでしょうか。
 どうして、こんなに、切ないのでしょうか。
 目から涙が、止まりません。僕は、一体? 分かりません。分からない。
 体を動かすことも、声を出すことも、何も出来ません。出来ることは僅かに開いた目から、涙を溢すだけ。
 誰もいません。目の前に誰もいないのです。それが何故か、凄く哀しい。
 夢か幻か、今の今まで見ていた光景が、懐かしく羨ましい。
 ここは空虚でただただ、何もありません。泣きたくなるほど、何も。

 いつの間にか眠っていたようです。
 眠っていたということは、僕はずっと横になっていたのでしょう。
 頭は割とすっきりしました。そして差し込んでくる光が、いくらか不安な気持ちを和らげてくれます。
 僕は時間をかけて、現状の把握を始めることにしました。
 口元にあるのは、酸素吸入器でしょうか。ここは、病院なのかもしれません。
 体を、動かしたい。それなのに腕が、重い。
 動いて。
 動け。
「!」
 ぱたっ、と少しだけ持ち上がり、また柔らかな下へ落ちます。
 やっぱり僕はベッドに寝ているようです。そして、手に感じる僅かながらの違和感。
 体の奥に、染み透ってくる何か。
 知っています。これは、点滴。

 僕が発した僅かな音に呼応するかのように、物音が聞こえました。
「ゆ、き?」
 微かな声。女性のそれでした。
「ゆき!」
 視界に入り、じっと覗き込んでくる女性。
 目が合うと、女性はその顔をくしゃくしゃにして喜びました。
 この瞬間は、形容し難いほどに嬉しかった。人がいて、僕の存在に気づいてくれたということで、どれだけ救われるかが分かりました。
 そして僕は、すぐに思い出しました。
 幼馴染の、三橋野叶のこと。目の前で大粒の涙を溢している彼女こそ、あの顔のぼやけた女性でした。
 今ははっきりと、顔が映ります。心につかえていたものが取り払われたようで、嬉しくて僕も涙が出ました。
658名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 06:15:40 ID:t8nN6DmE
 僕は、僕のことを忘れないでくれていた叶を、忘れてしまっていました。
 子どもの頃、盆に一緒に行ったキャンプ。満天の星空を二人で見たこと。
 小学校卒業前に引っ越すことになり、告白されたこと。
 ずっと待っていると言われて、僕も忘れないと答えたこと。
 ですが、四年後に再会した時には何もかも抜け落ちていて、僕は彼女を置きっ放しにしてしまったのです。
 それなのに彼女は、ずっと付いて来ていました。気持ちを隠して、ただずっと、僕を近くで待ってくれていました。
 僕が事故に遭って意識不明になった時、彼女は居ても立ってもいられずに、ずっと通いつめて看病をしてくれていました。
 思い出さないままなら、そのままでも良いと。もし意識が戻ったとしても、すぐに僕の元から再び隠れようと。
 生死の淵を彷徨っている中で、走馬灯のように出てきた思い出。あの階段で見たのは、三人とも彼女でした。
 僅かに残っていた記憶が、そして彼女の思いがあの夢を見せたような気がします。
 そして、それが僕を呼び覚ましてくれたのかもしれません。
 今度は、僕が応える番です。

「お帰りなさい、ゆき」
「ただいま、叶。そしてもう、絶対に忘れない」
659名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 14:32:10 ID:OP47yEFk
oh!! yeah!!
660名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 14:38:55 ID:s7K/sY6K
おつー。

そして容量警告。
661名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 21:16:40 ID:V9w5Nk5T
なんだかひさしぶりに「天国への階段」を聞きたくなった
662名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 21:45:57 ID:thUQi+rc
>>661
レッド・ツェッペリンの?
663てす:2009/05/19(火) 22:36:18 ID:4X5irE4p
1

 イカサレノート所有者は、ノートを自由に使う代価として、以下の条件を支払う事になる。※条件は所有者の性別で異なる。
 以下は所有者が男の場合。

・ノート所有者の精子は生産能力を失う。※膣内射精を試みても、受精、及び着床は行われない。
 よって、レイプ等で無理矢理に既成事実を作ろうとしても無駄である。

・ノート所有者の精液を浴びた口内、膣内、腸内の器官は、クリトリスとの強制神経接続や、尿道や肛門の弛筋化、感度の数十倍化等、様々な副作用を及ぼす。
 よって、愛する二人が同時に絶頂を迎える、濃厚ラブラブセックスは不可能となる。

・ノート所有者の精液を膣内に放出された人物は、ホルモンの働きが活発となり、乳腺が極端に緩むので、僅かな刺激で母乳を撒き散らすダラシナイ身体となる。
 よって、後始末の大変な面倒臭いセックスしか不可能になってしまう。




   『イカサレノート』後編




 ハイリスクローリターン。だけどボクは、それでもボクは、ノートの所有者になった。

664名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 22:37:12 ID:4X5irE4p
ごばーく
665名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 23:02:11 ID:4X5irE4p
お詫びに次スレ立てようとして、1のコピペミスった……orz
落として貰って良いです。
666名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:07:20 ID:QotSGgHU
【友達≦】幼馴染み萌えスレ18章【<恋人】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242741528/

>>665
せっかくだし使おうぜ。
スレ立て乙だぜ。
667名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:14:55 ID:8Zls5Pfz
>>666
スレ立て乙。
過去スレリストは>>2以降に分割した方がいいんじゃないか、
と思ってたし問題ないと思う。
668名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:19:24 ID:A9rGOZZ8
>>665
スレ立て乙
ま、袖すりあうも多少の縁。またの投下をお待ちしてるよ
>>666
誘導乙。獣の数字か
次スレもいい作品に巡り合えますように
669名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 02:38:48 ID:QqRZoMnx
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670名無しさん@ピンキー
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