☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第80話☆

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1☆祝☆傘寿☆
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレです。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をしたほうが無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」…「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶことが出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけてください。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントすることが多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

リンクは>>2
【前スレ】
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第79話☆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1217344619

【クロスものはこちらに】
 リリカルなのはクロスSS倉庫
 http://www38.atwiki.jp/nanohass/
 (ここからクロススレの現行スレッドに飛べます)

【書き手さん向け:マナー】
 読みやすいSSを書くために
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5301/1126975768/

【参考資料】
 ・Nanoha Wiki
  ttp://nanoha.julynet.jp/
  (用語集・人物・魔法・時系列考察などさまざまな情報有)
 ・R&R
  ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/data_strikers.html
  (キャラの一人称・他人への呼び方がまとめられてます)

☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
 ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html  (旧)
 ttp://wiki.livedoor.jp/raisingheartexcelion/   (wiki)
3名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 02:27:18 ID:4ftdKgK9
新スレ乙!
4名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 02:29:45 ID:LA4a3U1h
乙なの
5名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 08:13:34 ID:OczTXODb
>>1さん乙や!
ところでウチのショターラ見ぃひんかったか?
6名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 09:30:41 ID:TVgcavHL
>>1
      ____      ___                            i/〈,ィぃ _,.
.     ,lフヘ. ヘゝ. . '/^^^゙ヾ、                            、」 ,(フ⌒ヾミ、
    | { {从リノ!〉 | { ,ノハ))〉)`         r       ___    /〉  .ゝ ト{ ((^ソリ)ゞ
.    ソ,|.| ゚ -゚ノ  从|.゚ ー゚ノリ       , '⌒⌒ヾ ,'_,r==ヽ.  //   .ソヘ(リュ^ヮ゚ノ!`
   (( j(`つつ  /゙〈|V|)ト、     .イ lフ,从从ゝ{ {ノノノハ))〉//.      (フ,,XI)、
    r</´: :: :l l: : l: :: :: :ヽ: :\_   ^'vlュ ゚ -ノ'゛|.(l|ュ゚ -゚ノ|う′    と(^つこ)う
    /j: : : :|: :jl ト、 l -‐ト、: :\ト-<  <巡},,\)つ {i(フ!,,Xll)'´, ヘ.     /^ヽ ̄ ヽ
  _、,.,,._ : : j-ハj ヽ>ー¬Tー―': \_,(フ、,〈}___从_うコ========   |⌒l ト・^・|
_,ゞ´   ゙ヾ:レ ―-、_{    jヘ ヽ\ :〈患´l患、 : (_ノ'┘: : : : : : : :}   |  | 〕.○.|
フ ,(レwハviゝ.    j ! ヽ、_ノlノー-- `> ___: : : : : : : : : : : : : : : : /   |_l ト・_,・|    . '⌒⌒ヽ
´ヘ(lュ゚ -゚ノ゙.ヽ、_ノr‐┐   ノ___: -/lブ `ヽ  ̄ ̄7: : : : : :/ _ _  ヽ__ノ_ノ    | i lレハリi.}
 <_].[{]つヽ__ `ー'   /,イ: : : : :_{ イ,ノノ^))〉  /: : : : /∠(7´ `ヾゝ        ,C.!|●-゚ノ|
_ノ〈―<-ニニニ-,\.__/( レ'///|l(||`ー´ノ|  /: : : : :/  イ イ ivwvv'i>       ((,ゝ.)X{ニア
.Z   ヽヽヽ  `ヽ、\ ___.7     ノi/リ,,U,)リつ三: : :/    ^'(l|ュ ゚ -ノl|  |\    〈,、jし'Jトゝ
\Z   ヽ__/`v , 'lフ  `ヘゝ      _>  ,': : : : /  〔 ̄ ̄Lつ ̄ ̄ ̄)二二二二二二二回
  / レ"フ  >、.  { レハlノハjゞ i    ゝ. ___ i : : : : {  ノ亡二二7二匸l二匸「 ̄_)_ ̄ ̄ ̄ |.ヽ
/      r‐/弋ニヘ(|ュ゚ -゚ノ|ヽ ノw、l,,;:'(フ^^^'ヘ. : : :丶 ( __ とノ `ヽ._): : : /,ヘヘ. ヘヘ.   〔| |
_      | |\ `ヽ(フとス). Y   ,;;;{ { 从リハ) 〉: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : (ヽr'l レニリノ}.〉  |,,_|
、 \   /l   \/l    .|  |   ,;;;レVュ^ヮ゚ノリ、 : : : : : : : : : : : : : : : : : :/ \ヾjュ゚ -゚ノ!|  ∧ノ
..\. \/ ノ    /     \   ;;;;フ!,,Y))つ   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ノ,ゝリ,,Z,)リこ)7 /

前スレ埋め立て完了です。
7名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 09:42:13 ID:8U9DEf1/
7なら今日はりり☆ふぇが投下される
8名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 10:00:24 ID:zA5K7xin
氏もクレクレ厨に粘着されて大変だな
9ぬるぽ ◆6W0if5Z1HY :2008/08/06(水) 14:16:42 ID:Ur258QqV
>>1 乙であります。

さて、本を読んでいてふと思いついたネタを書いてしまった。投下、逝きまーす。

・前編、後編の二回
・エロくない作品
・ほのぼのと真面目の入り交ざった作品
・時間軸はA’sのちょい後の軸と、Stsのちょい前の軸の混合

NGにしたい人はトリップかIDでよろしく。

↓以下、本編スタート
10ゲートボールと寿司と八神はやて ◆6W0if5Z1HY :2008/08/06(水) 14:18:03 ID:Ur258QqV
 ここは地球とは次元を異にする世界・ミッドチルダ。
地球では馴染みのない、いわゆる『魔法』が発達している世界である。
そのミッドチルダには、『時空管理局』なる組織が存在する。
時空管理局とは、平たく言えば警察・軍隊と裁判所が一緒になったような組織であり、
様々な世界の治安を維持することを大きな仕事としている。
正義の組織、と言えば聞こえはいい。だが、内部では権力闘争や情実人事などのドロドロした実態があった。



「お願いします!」

 管理局の建物内の一室で、八神はやてが数人の男達に向かって必死に頭を下げていた。
彼女はミッドチルダの生まれではなく、地球出身だが、類稀なる魔法の才能があった。
数年前、時空管理局にスカウトされ、現在は局で働いている。

「そう言われてもねぇ、八神君」
「本当に必要なのかね? 新設部隊は」

 はやては単に魔法の才能があるだけではなく、『レアスキル』――ま、簡単に言ってしまえば、
特殊な魔法を操る才能のことである――を持っていた。
頭も非常によく、仕事もよくできた(ついでに言うなら容姿端麗)。
そういうわけで、はやては管理局内でどんどんと出世し、今では同期の出世頭である。
今の彼女のポジションは、20歳にもいかない年齢ではなかなか辿り着けるものではない。
はやては、管理局のエリートコースを順調に進んでいるかに見えた。

 だが――はやてはそこから壁にブチ当たった。

 組織というものは複雑なもので――ある程度の役職までは仕事がよくできればほぼ間違いなく辿り着ける。
しかし、そこから上のポジションに行くためには、「仕事ができる」とは別の才能が必要になる。
それは一体何なのか。端的に言ってしまえば、「上の人間に嫌われない才能」だ。
いくら仕事ができる優秀な人物でも、上の人間に嫌われてしまったら、ある程度のところで出世は終わりである。
逆に仕事があまりできなくても、いわゆる「ヨイショ」や「ナアナア」がうまく、上にうまく取り入る人物は出世する。
時空管理局を含め、世の中の組織というのは、そういうものなのである。

 読者の諸君も、ちょっと自分の身のまわりを見渡してみてみるといい。
「なんで仕事が大してできないアイツが常務なんだ」とか、「部長より課長のほうが仕事ができる」とか、
よく探せばそういう例はゴロゴロしているはずである。
しかし、これは不思議なことではない――理不尽な話だとは思うが――。
なぜなら、彼らは最初から「そういう基準」で選ばれた人間だからだ。
仕事ができる、できないというのはあまり関係ない、と言ってしまっていい。

 そして――八神はやては「上の人間に嫌われない」という部分が決定的にダメであった。
 実のところ、上の人間に限らず、時空管理局内でははやてのことを嫌っている者が多い。
はやては別に、性格が捻じ曲がっているとか、人当たりが悪いとか、そういう人物ではない。
むしろ逆だ。穏やかで優しい性格。人への気遣いもよくできる。前述のように、仕事の成績も優秀だ。
そんな彼女がなぜ嫌われるのか。いくつかの理由がある。

 はやては現在18歳ながら、管理局ではそれなりに重要なポジションにいる。
彼女より年上なのに、役職が下という局員は腐るほどいる。
そういう局員の少なくない者たちが、はやてにいい感情を持っていない。
「まだたったの18歳の、しかも小娘が、あんな重要な役職に就いているなんて……」と。
はやての仕事の出来がいいのも、彼らの劣等感を刺激した。
要するに、「アイツは生意気だ」ということである。出世したはやてへの『妬み』と言い換えてもいい。

 だがしかし、はやてが嫌われている決定的な理由は、他にあった。

 数年前の話。『闇の書事件』という管理局全体を揺るがす事件が起こった。
事件の詳細については省略するが、かなりの人的被害が出た。
管理局員の中にも、自身や家族・知り合いが事件の被害者になったという者がたくさんいる。
その、『闇の書事件』の中心人物が、実ははやてだった。

 正確には、彼女自身は何の事情も知らず、いつの間にか事件の中心に祭り上げられていたに過ぎないのだが、
事件の被害者からしてみれば、そんなことは知ったことではない。被害者達は、はやてを憎んだ。
様々な事情から結局、はやてが裁判で無罪になってしまったことで、その憎しみはさらに強まった。

「必要な理由や根拠は資料に示したとおりです。……どうして、ダメなんでしょうか」

 はやてが今、上の人間に何のお願いをしているのかというと――部隊の新設である。
とある複雑な理由で、管理局に新しい部隊が必要なのだと、はやてや彼女に同調する局員は考えている。
だが、それには上の人間の許可が必要だ。それなりの人間が、交渉しなくてはいけない。
その交渉役が、はやてなのだ。

「私に言わせれば、その理由や根拠は不明確だねえ」
「そんな……」

 今、はやての目の前にいる人間の中にも、家族や知り合いが『闇の書事件』の被害者になった者がいる。
当然の如く、彼らははやてにいい感情を持っていない。この小娘が、生意気だ、とも思っている。
そういうわけだから、交渉が上手く運ぶはずがない。常識的に考えて。

「部隊を維持するのだって、タダじゃない。いろいろと面倒なんだよ、んん〜?」
「それに八神君。そもそも、君のような若輩者に部隊長が務まるもんかねぇ。無理じゃないかな」

 男達は口々にはやての案にケチをつけた。真面目に「この案はダメだ」と反対しているわけではない。
正直な話、男達にしてみれば、部隊が新設されようがされまいが、どっちでもいい。
ただ単に、はやてが憎くて生意気だから、彼女を困らせてやりたい、いびってやりたい。
男達が反対する理由は、ただ、それだけ。

「お願いします……」

 新設部隊はどうしても必要なのだ。それに、このままでは自分に同調してくれる仲間に申し訳も立たない。
はやては誠心誠意、頭を下げてお願いした。

「まったく……仕方ないねえ」

 一人が、やれやれという口調と表情で口を開く。

「それほどまでに自分の部隊が欲しいのだったら、管理局を辞めて自分で作ったらどうかね?」

 その言葉に、他の男達からも嘲笑の声がドッと上がる。屈辱に、はやての頬が紅潮した。
(疲れたわ……)

 結局、ダメだった。もうこれで何回目だろう、「部隊の新設は認めない」と言われたのは。
手を変え品を変え……というわけではないが、はやては何回も上の人間を説得しようと出向いていた。
だが、ダメだった。なぜなら、はやては彼らに嫌われているのだから。
このまま説得しようと頑張っても無駄だろう、ということが薄々わかってきた。

(でも、どうしても新しい部隊は必要なんや……もし、ダメやったら……)

 とある理由から、新設部隊は必要なのだ。
はやては毎日必死に頑張っていた。それこそ、自分ひとりで全部を抱え込むかと思うような勢いで。

 自室に戻ったはやては、管理局の制服姿のまま、ベッドに倒れ込んだ。
枕元の目覚まし時計は、すでに午後7時を回っている。
正直――心も身体もクタクタだった。朝から晩まで、あちこち駆け回って。
部隊を一つ新設するのが、こんなに大変だとは思ってもみなかった。
それに、部隊新設のための仕事以外にも、やらなくてはならない仕事はたくさんある。

(私が、私が頑張らな……この仕事は、私にしかできないんやから……)

 別にはやては、出世したいとか、人より偉くなりたいとか、そういう願望を持っているわけではない。
だが、自分の意見を通すためには、出世して偉くならなければならないという現実がある。
そういった現実を、いやだな、と思いつつ、それでもはやては自分に課せられた仕事をこなそうと必死なのだ。

 ベッドに張り付き、布団に吸い込まれそうになる身体を超人的な意志で引き剥がし、はやては起き上がる。
机に向かい、書きかけの書類を取り出したところで、お腹がぐーっと鳴った。

(お腹、空いたな……)

 そういえば最近、まともな食事をしていないような気がする。今日の昼も、菓子パンで済ませてしまった。
局の食堂でも行こか、と考えていると、コンコンとドアがノックされた。

「おーい、はやてぇ」

 扉を開けて入ってきたのは、管理局の制服姿のヴィータとシグナム。

「……ああ、ヴィータ、シグナム。仕事は、終わったんか?」
「おぅ」
「はい」

 こっちはまだ大量に仕事が残っているのにと、はやては暗鬱な気分になった。
もちろん、そんな気持ちを表情には出さなかったが。
しばらくの間、あれこれ話をしていると、シグナムがこう切り出した。

「ところで主、もう夕食は済まされましたか?」
「いや、まだや。これから何か食べに行こうと思ってたんやけど……」
「そうですか……」
「なーはやて。それだったら、どこか外に食べにいこーぜ」

 ヴィータにそう言われて、はやては少し考えた。
局内の食堂に行ったら、頭から仕事のことが離れないような気がする。
気分転換に、ガツンとカネを出して外で美味しいものをがっつり食べるのもいいかもしれない。
「そうやね、たまには外に食べに行くのもええかもね……」
「よっしゃ、決まり!」
「では、行きましょうか」

 財布を持ち、はやて・シグナム・ヴィータは連れ立って部屋を出て行った。
身長の全く違う三人が並んで歩くと、見事なまでに凸凹である。

 管理局の敷地を出て、少し街を歩く。
様々な店が派手にテカテカと光っている中、その店はひっそりと存在していた。
ヴィータとシグナムが足を止めてはやてに話し掛ける。

「ここにしよーぜ」
「主、よろしいですか?」
「……そういえば、ここに来るの、久しぶりやなぁ……」

 今、はやて達が目にしている看板には、『鮨の鈴木・みっどちるだ本店』と書かれている。
そう、三人は(回らない)寿司屋にやってきたのだった。
入り口の暖簾をくぐると、奥から威勢のいい声……は飛んでこなかったが、
ゆったりとした、いかにも温かみのある声が響いてきた。

「はい、いらっしゃ……おおぉ、びーたちゃんにはやてちゃんにしぐなむさん」
「おう。久しぶりだな、鈴木のじーちゃん。食べにきたぞ」
「お久しぶりです、御主人」

 よう、と手を上げるヴィータ。ペコリと丁寧に頭を下げるシグナム。

 元々、ミッドチルダには、寿司や刺し身に代表されるような生の魚介類を食べる習慣がなかった。
そのミッドチルダに、生の魚介類を食べることを持ち込んだのが、この店である。
一体、どんな経緯でこの店がミッドチルダにやってきたのかというと――
 話は8年ほど前に遡る。神奈川県海鳴市。まだ八神家がミッドチルダに移る前の話である。
『闇の書事件』のしばらくの後、はやては病気のために休学していた小学校に戻っていった。
はやてが学校に行っている間、闇の書の4人の守護騎士――シグナム・ヴィータ・シャマル・ザフィーラ――は、
自分なりのスケジュールを持つようになった。

「んー……暇だな」

 その日、ヴィータは随分と暇だった。
あまりにも暇だったので、自分の相棒のデバイス・グラーフアイゼンで素振りでもすることにした。
家の庭で素振りをして間違って何かを壊してしまったらマズイと思い、近くの公園に出掛けることにする。
昼間の時間帯。とことこ歩いてきたヴィータが見たところ、公園には誰もいない。

「よっしゃ、いくぜっ!」

 グラーフアイゼンをハンマーフォルムで起動させ、振り回す。

 ぶうぅんっ ぶぅぅぅぅぅんっっ!!

 まるでプロ野球選手がフルスイングしている時のような豪快な音がする。
数回アイゼンを素振りしているうちに、だんだんと気分がのってきた。
柔らかい陽射しの中で、気持ちよくアイゼンを振り回すヴィータ。

「ほおぉぉ、随分と立派なげーとぼーるすてっくだねぇ……」

 その声にハッとして振り返ると、そこには老人が立っていた。
大方、公園にきて散歩でもしている最中なのだろう。

「素振りかえ? 精が出るのう、お嬢ちゃん」

 カラカラと笑う老人に、ヴィータは心の中で、くそ、と毒づいた。
グラーフアイゼンがゲートボールスティックに間違えられたのは、これで何回目だろう。
初めて間違えられた夜、スポーツ大辞典なる本でゲートボールというスポーツの存在を知った。
その本に載っていたゲートボールに使うスティックは、確かにアイゼンに似ていて。
正直、ヴィータは不愉快だった。あたしの相棒が、こんなものと間違えられるなんて……、と。

 その後、アイゼンがスティックに間違えられる度、ヴィータは幼い顔に渋い表情を浮かべていた。
だから今回も、苦虫を噛み潰したような表情で老人に言ってやった。

「ちげーぞ、じーさん。これはゲートボールスティックじゃねえ。グラーフアイゼンつって――」
「ふひゃひゃひゃ、ぐらーふあいぜんというのかい。名前まで付けておるのか。熱心じゃのう」

 老人はまだ勘違いしている――どころか、ヴィータの言葉を最後まで聞こうとしていない。
ダメだ、このじーさん……。ヴィータがそう思っていると、老人はdでもないことを言い出した。
「どうかねお嬢ちゃん。今、向こうの方でげーとぼーるをやっておるんじゃ。参加してみんかえ?」
「はあ? だからこれはゲートボールスティ――っておい!」

 老人は、抗議の声を意に介さず、ヴィータの手を掴んでスタスタと歩き始める。
人の話を聞けって……と、ヴィータはついついカッとなり、思わず怒鳴ってしまった。

「おい!いい加減にしろって、じーさん!」
「はぅぅ?!」
「あ・た・し・は!ゲートボールに興味はねーんだ!第一、これはスティックなんかじゃ……って、じーさん?」

 つい先ほどまで、ふぇっふぇっふぇっと笑い声を上げていた老人が、俯いてシュンとしている。
どうやら、ヴィータがいきなり怒鳴ったために、驚いてしまったようだ。
老人は、蚊の泣くような小さな声で呟いた。

「お嬢ちゃんのようなカワエエ子が加わってくれると、嬉しいんじゃがのう……」
「うっ……」

 口は悪いが、ヴィータは心根の優しい少女だ。
落ち込んだり元気を失くしたりしている人に対しては、キツイことを言いながらもなんだかんだで慰める。
沈んだ表情の老人を目の前にすると、バツが悪くなった。
仕方ねーな、とヴィータは決めた。どうせ暇だし、ちょっとぐらいは付き合ってやるか、と。

「はー。わかったよ、じーさん。今回だk
「なら、早く行こうじゃないかい」

 今の今までシュンとしてい老人が、パッと笑顔を取り戻し、ヴィータの手を掴んで引っ張っていく。
調子のいいじーさん……と思っているうちに、重要なことをヴィータは思い出した。


「ところでよ、じーさん。あたし、ゲートボールのルールなんて知らねーぞ……」




「なんやヴィータ。今日もゲートボールに行くん?」
「おう!今日こそはじーちゃん達をボコボコにしてやるぜ」
「気を付けてな。ギガントフォルムとかやったらアカンよ」

 1ヵ月後、そこにはすっかりゲートボールにハマったヴィータの姿が!
「ほぅれ」

 コツン   コロコロ……

「ふはっはあ!ほれ、またびーたちゃんの負けじゃねぇ」
「あー!くそっ!松本のばーちゃん、少しは手加減してくれよ!」

 ボールの軌道を見届けるや否や、ヴィータは地団太を踏んだ。
たまたま偶然、ゲートボールを始めたあの日から数ヶ月。
最初に比べて格段に上達したものの、老人達の前にはまだまだ歯が立たなかった。
ちょっと挑発されるとすぐに冷静さを欠くきらいのあるヴィータは、ここ一番でミスすることが多い。
また、老人達が長年にわたって築き上げてきた『老獪』という武器もヴィータを苦しめている。

「ちぇっ。やっぱつえーな、じーちゃん・ばーちゃん達……」

 ベンチに座り、家から持ってきたジュースを飲みながら、それにしても――とヴィータは思う。
最初は、単に玉を打って転がすだけのスポーツだと思っていたが、実際にやってみると奥が深い。
いや、どんなスポーツでもそうだ。数ヶ月で底が知れるようなスポーツなど、ない。

「なー、ところで今日、鈴木のじーちゃんは?」

 鈴木のじーちゃんとは、最初にヴィータをゲートボールに誘った「あの」老人だ。
ゲートボールの集まりがある時にはたいてい顔を出すのだが、そういえば最近、ちょくちょく欠席している。

「はぁて。今日は姿が見えないねぇ」
「おとといも姿が見えなかったねぇ」
「12日前も姿が見えなかったねぇ」
「21日m
「あーもういいもういい!わかったって!」

 口々に、見えなかったねぇ、見えなかったねぇと連呼する老人達をヴィータが鎮めていると、
噂をすれば影、とはよく言ったものだ。暗い顔をした鈴木老人が、のっそりと現れた。

「あ、鈴木のじーちゃん。どーしたんだよ、暗い顔して」
「……びーたちゃんはいつも元気じゃのう」
「あたしだけじゃねえ、こっちも元気だ」

 ヴィータがハンマーフォルムのグラーフアイゼンをぶんぶん振り回すと、弾けるような電子音声が響く。
元気一杯のヴィータと対照的に、鈴木老人はしおしおと萎びてしまっている。
しばらくして、鈴木老人は深刻な顔で切り出した。

「実はのう……わし、自分の店を畳もうと思うんじゃ……今月一杯で……」
「げえっ」
「そ、それはほんとかい!」

 ざわ……
                  ざわ……

 鈴木老人の言葉を聞き、老人達の間に動揺の波が広がる。
そんな中、ヴィータは、ふーん、そういえば……、と考えた。
鈴木老人が店を経営しているなんて知らなかった。ヴィータは聞いてみる。
17名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 14:27:14 ID:i27UPyf3
ヴィータ可愛いよ支援
「店? 鈴木のじーちゃん、何のお店やってんだ?」
「寿司の店、じゃよ……」
「すし? なんだよ、『すし』って?」

 ヴィータのその言葉に、鈴木老人を初め、全員が目を丸くして驚いた。

「ぬぁに? びーたちゃんは寿司を知らんのかい!」
「なんと、不憫じゃあ……不憫じゃあぁぁ……」
「最近の子は魚離れが進んでいるとは聞いていたが、ここまでとはのう……」
「魚は切り身の状態で泳いでいると思っとる子供もおるらしいぞい」
「不憫じゃあ……不憫じゃあぁぁ……」

 ざわ……
                  ざわ……

 再び、老人達の間に波のようなざわめきが広がった。

「な、なんだよ……いけねーのかよ……」

 いきなり、老人達がどよどよし始め、自分のことを可哀想な目で見つめてくるからたまらない。
ヴィータが戸惑っていると、山口老人が問い掛けてきた。

「びーたちゃんは刺し身を知っとるか?」
「刺し身? ああ知ってるよ。お魚を薄く切ったやつだろ?」

 刺し身は時々、八神家の食卓にも上ることがある。パック済みの商品を買ってくることが多いが、
時には魚を丸々一匹買ってきて、はやての指示を受けながらシグナムが魚を掻っ捌くこともある。

「そうじゃ。その、薄く切った魚をじゃな、こう……握ったご飯の上に乗せてだな……」
「握ったご飯? おにぎりみてーなもんか」
「ああ違う違う。そうじゃなくてな……」

 横で話を聞いていた高橋老人が、そばに落ちていた木の枝で地面にガリガリと絵を描き始めた。

「こう……四角く握ったご飯の上に魚の切り身をのせて、握って……」
「あっ!」

 その形格好にヴィータは見覚えがあった。
確か、はやてとスーパーに買い物に行ったとき、魚のコーナーに陳列してあったやつだ。
買ったことは一度もないが。

「……ああ、アレのことか。スーパーとかで売ってるやつだろ? あれ、すしって言うのか」
「おお、そうじゃそうじゃ」

 ヴィータの言葉に、老人達が、要領を得たり、という顔になる。
周りがやっと可哀想な目をやめてくれたので、ヴィータは鈴木老人に至極当然の疑問をぶつけた。

「ところで鈴木のじーちゃん。なんで店、やめちまうんだ?」

 ヴィータに寿司のことをわかってもらってウンウンと頷いていた鈴木老人が、途端に沈痛な面持ちになった。

「……最近、魚の値段が高くなってのう……いいものも、なかなか手に入らなくなってきてのう……」

 年々、魚が手に入りにくくなり、値段も高騰している。このことは、読者の諸君もご存知だろう。
ではなぜ、そんな事態が起こっているのかというと……
 一つは原油高。魚を獲りに行くには船が要る。船を動かすためには燃料が要る。
その燃料の値段が最近、めちゃくちゃな勢いで高騰している。
そのため、漁に出て魚を獲っても燃料代がかさんでしまい、結局は赤字に陥る漁業者が増えた。
漁業者だって自分の生活があるわけだから、赤字の出る仕事ばかりをいつまでもやるわけにはいかない。
その結果、漁を休んだり、挙句の果てには廃業する漁業者も珍しくない。

 こうして漁業をやる人間が減ると、当然ながら漁獲量も減っていき、魚は手に入りにくくなる。
さらに、高騰した燃料代は魚の価格に転嫁されるわけだから、ますます始末に終えない。

 もう一つは、世界の需要の変化。例えば、マグロやカニ。これらは今までは日本にしか需要がなかった。
日本人しか食べないから、獲れたものは日本にガンガン入ってくる。いわば、日本の独壇場だったわけだ。

 ところが最近、この状況が大きく変わってきた。
今までは魚といえば川魚だった中国では、最近、海鮮がブームとなっている。
アメリカでは、BSEや鳥インフルエンザなどの影響で、カニの消費量が数年前と比べて倍以上になっている。
そういうわけで、海産資源を世界で取り合いするようになり、結果として魚は手に入りにくくなった。

 魚が手に入りにくくなったことで、当然ながら魚の値段は上がっていく。
鈴木老人のように、個人で細々とやっているような店は、こういった影響をモロに受けたのだろう。

「それにのう、駅前に展開している『かいてんずしちぇーん』とやらにに客足が流れてしまってのう……
うちのようなぼろい店には、みんな見向きもしてくれないのじゃ……」
「なんだよ。みんな、鈴木のじーちゃんのお店に行かねーのかよ?」

 ヴィータが老人達に問い掛けると、皆一様にバツが悪そうな顔になった。

「たまには食べに行っておるのじゃが……」
「なにせ、寿司は毎日食べられるような安いものではないからねぇ」
「最近、物価が上がってきてるしねえ。節約しないと……」

 生活に必要な食料品やその他諸々の値段が上昇しているのは、読者の諸君もご存知だろう。
年金だけで暮らしている老人達は先行きに不安を覚え、結果として財布のヒモも固くなっている。
ぶすぅー、と、どこか釈然としない表情のヴィータに、鈴木老人が話し掛けた。

「どうじゃ、びーたちゃん。うちの店が閉まってしまう前に、一度、食べに来てもらえんかのう」
「――というわけで、鈴木のじーちゃんのお店に、『すし』を食べに行くことになった」

 家に戻ったヴィータは、夜、八神家一同――はやて、シグナム、シャマル、ザフィーラ――
が揃ったところで事の次第を説明した。

「そうか……その御老人、気の毒にな……」

 シグナムは難しい顔で腕組みをしている。彼女は『自分の道』に誇りを持っている。
同じように、職人として『自分の道』を歩いている鈴木老人の気持ちが、よくわかった。
自分の志した道を途中で断念せざるを得ないのは、どんなに辛いのだろう……と。

「お寿司、ね……そういえば、見たことはあるけど、食べたことはないわね」

 はやてと一緒に買い物に行くことが多いシャマルも、未だに寿司は外から眺めたことしかない。

「シャマルの言う通りや。みんなが来てから、お寿司なんて食べたことないなぁ」
「なあ。どーせだったら、全員で食べに行こうぜ」

 当時まだ足が動かず、車椅子で生活していたはやては、ある人物から生活援助を受けている。
そのため、なるべく家で料理を作って出費を抑えているのだが、たまには外で美味しいものも食べたい。
はやてが財布と家計簿を取り出し、いろいろと計算し始めた。しばらくしてから、うん、と頷く。

「お金も大丈夫や。一回ぐらい贅沢してもバチは当たらんやろ」
「やったあ!それじゃ、決まりだな!」

 喜んで飛び上がるヴィータ、ニッコリと微笑むシャマル。
対照的に冷静なシグナムは、ソファにわんこ姿で座っているザフィーラに言った。

「ザフィーラ、その格好ではまずいぞ」
「ああ、心得ている」

 食品衛生上、わんこ姿で飲食店に入るのはまずい。もうすぐなくなる店だとしても、だ。
店に行くとき、ザフィーラはわんこ姿から人型にならなくてはいけない。

「そんなら……来週の土曜日あたりに行こか。ヴィータ、そのこと、伝えといてな」



――数日後の土曜日。そろそろ日が傾いてきた。もうすぐ夕食の時間だ。
はやて・ヴィータ・シグナム・シャマル・ザフィーラの八神家5人は『鮨の鈴木』にやってきた。
21ぬるぽ ◆6W0if5Z1HY :2008/08/06(水) 14:35:11 ID:c2qEmp20
 うは、連続投稿に引っかかったが、前編はちょうどここまで。>>17 支援サンクス

 後編は10・11・12日あたりに。うまいこと三連休になったw
美味しそうになるようにリリカルマジカル頑張ります。つーか美味しい寿司食いてえ。
22名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 14:51:30 ID:jyIPWoCZ
…おなか減ったGJ
23名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 15:18:53 ID:lmqsb0nR
ざふぃーら は 石塔返し を 覚えた
24名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 15:27:51 ID:8U9DEf1/
GJ!
変にリアルで面白いw
25名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 15:37:54 ID:QJ74Zh/B
本手返しはまだですか?
GJ
じいちゃんばあちゃんがかわいいな、オイ
26名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 16:29:11 ID:bwGG4luY
こんなところにもSJ読者がいるとは。
なら、不正を働く管理局員に鉄槌を下す死神なのはさんが出てきたり、フェイトがマニアックな行政指導行なったり、
エリオが「神のグラス」って呼ばれるバーテンダーになったり、クロノが泥棒市の片隅で仕立て屋やったり、
スカが伝説の贋作者になったりするSSが投下される日も遠くないな。
27名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 16:38:40 ID:kWrMu9OF
ユーノは小動物ですかそうですか。
28名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 17:02:51 ID:g7k3nlaE
>>26
スカリエッティがタイムスリップして、医者として人助けもいいかもしれんなw
29名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 17:33:18 ID:lmqsb0nR
ギンガ(返り血で真っ赤になりながら)「犬と…呼んで下さい…御主人様」
しかし言い出しっぺが言うのもアレだが、そろそろクロスに行った方がいいかもしれん。
30名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 18:30:56 ID:lq8JHwi7
>>29
先生。それはクロス関係なく、読みたいです。
31名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 19:45:23 ID:K2zCrizE
>>26
SJとやらについて誰かkwsk
32名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 19:52:53 ID:TVgcavHL
>>31
SuperJump

33名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 20:00:08 ID:8QYo24AI
>>29
ギンガ「犬と(ry」
ザッフィー「どちらかというと犬なのは我の方だぞ」
34名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 20:45:43 ID:K2zCrizE
>>32
SuperJumpって雑誌の?
その中に>>26みたいな内容の漫画があるってこと?
なんかよく分からないけど、ありがとう
35名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 21:05:55 ID:ZdCBcBm6
>>34
不正を働く管理局員に鉄槌を下す死神→死神監察官雷堂
マニアックな行政指導→トクボウ 朝倉草平
「神のグラス」って呼ばれるバーテンダー→バーテンダー
泥棒市の片隅で仕立て屋→王様の仕立て屋〜サルト・フィニート〜
伝説の贋作者→ゼロ THE MAN OF THE CREATION
だな多分
36名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 21:13:23 ID:Ld71pE+Q
>>21
GJ。はやてガンガレ…
まあ寿司でも食いねぇ!

>>35
よくわからんがsageようぜ
37 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/06(水) 21:54:29 ID:K0Ntejqm
ちょいとこの間の続編書かせて頂きます。
「Nの系譜」の続きは…もうちょっと待って下さい。
ってこの間も言いましたけど。

・勢い余ってギブミーストッパーの続きを書いてしまいました。
・またヘンテコな方法でスカがアプローチをかけてきます。
・なのはとスカの夫婦生活が描かれますが、全部スカの妄想なので多分無害です。
・オリキャラ登場しますが、スカ脳内における妄想の産物なので多分無害です。
・非エロ
・最後になのは×ユーノ的要素も出ます。
・基本的にギャグっぽいノリですけど、最後だけはちょっぴりシリアスです。

・最低限知っておいて欲しい予備知識
本作においては『もう更生したいけど、遺伝子レベルで刷り込まれた無限の欲望に逆らえない
スカリエッティはなのはが自分と結婚れば、流石の自分も尻に敷かれてしまい、
迂闊に悪さは出来なくなると言う無茶苦茶な理論によってなのはに求婚してくる』と言う設定になってます。
38僕の家族 1 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/06(水) 21:55:38 ID:K0Ntejqm
 『僕の家族』
                           ジェイハ=スカリエッティ

 僕の家は、僕とお父さんとお母さん、三人の弟、そして最近飼い始めたペットのフェレットの
六人と一匹家族です。

 ジェイルお父さんは科学者で、土木作業なんかで使われたりする作業機械や、
怪我や病気なんかで手足や臓器を失った人の為の義手義足や人工臓器の設計をしたり、
他にもバイオテクノロジーを使って砂漠や荒地でも育つ作物を作ったり、色々な
物を作っています。

 お父さんの作った作業機械は色んな会社で使われて、義手義足・人工臓器も多くの人を救って、
バイオテクノロジーを使って作った作物も、作物の育ち難い環境の世界等の食糧事情を良くさせたりして
大変役に立っているらしいのですが、なのはお母さんが言うには、お父さんは昔はもっと悪くて
マッドサイエンティストをやっていたらしいです。その時のお父さんは色々な危険な研究をしてて、
人や動物の遺伝子を操作してクローンを作ったり、恐ろしい怪物を作ったり、辺り一面を吹飛ばす様な
強力な爆発と共に広範囲に何十年たっても消えない猛毒をばら撒く恐ろしい爆弾を作ったり、
またナンバーズと言うサイボーグの女の子達のお腹の中にそれぞれ自分のクローンを仕込んでいたと
言う事もあったそうです。

 考えただけで怖いです。お父さんが昔そんな事をしていたなんて、今の優しいお父さんからは
とても信じられない事です。ですが、今になって考えると、今のお父さんも大差無いかもしれません。
 今のお父さんは普段は作業機械や義手などの設計等をしていますが、たまにそれぞれ別々の動物同士を
かけあわせて珍妙な動物を作っていたのを見た事がありますし、僕はまだ良く分からないのですが
この間、『しのしょうにん』って名前の変なおじさんがお父さんの所にやって来て、その人の
頼みでお父さんが全身に色んな武器を満載した、まるで漫画やアニメに出て来る様なロボットを
作ったりしていた事もありました。その事について、お父さんは

「昔からの癖だからどうにもならない。」

と言います。本当にそうなのかな? 僕は心配になります。社会の為になる物を作るお父さんと
危険な物を作るお父さん、どっちが本当のお父さんなの?

 今でもたまに危ない物を作るお父さんですが、それで大変な事にならないのはなのはお母さんのおかげです。
お父さんが社会の為になるような物を作っている時のお母さんはとっても優しく見守ってくれるのですが、
逆にお父さんが危ない物を作っているのを見ると、お母さんは人が変わった様に怒ってとっても怖いです。
この間も、こっそり危ない研究をしていたお父さんをヤンギレした表情で頭冷やしていました。
 お母さんはお父さんより十歳以上も年下ですが、お父さんはお母さんには全然敵いません。
39僕の家族 2 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/06(水) 21:56:23 ID:K0Ntejqm
 お母さんは昔、時空管理局に勤めていて、教導官をやっていた位にとっても強い魔導師だったそうです。
当時のお母さんとお父さんは追う者と追われる者の関係で、簡単に言うとル○ンと銭○みたいな関係
だったらしいです。僕は良く分かりませんが。そんな敵同士だったのにどうして、二人が結婚したのかについて、

「お父さんを放っておくとどんな危ない研究をやるか分かったものじゃないから。」

 と、お母さんは言っていました。お父さんの危ない研究を止めさせる為にお母さんは管理局を辞めてまで
お父さんと結婚したんだそうです。その事について、今でも管理局の方では惜しむ声があるらしいのですが、
僕はお母さんが管理局を辞めてお父さんと結婚して良かったと思います。だって、お父さんとお母さんは
何だかんだ言ってとっても仲が良いですし、お母さんがいなかったらお父さんは本当に危ない研究で
大変な事をしていたと思います。それに、お母さんがお父さんに悪い研究を辞めさせて、代わりに
社会の為になる研究をさせたおかげで救われた人も沢山います。何よりも、お父さんとお母さんが
結婚してなかったら僕と三人の弟は生まれていません。

 さっきも説明した通りお母さんは昔、管理局で教導官をやっていた強い魔導師でした。
だから僕もお母さんみたいに強い魔導師になりたいと思ったのですが、お母さんは
バインドなどは教えてくれましたが、バスターやシューターみたいな派手な魔法は
教えてくれませんでした。その時は、お母さんのケチと思いましたが、その後で
お父さんがこっそりその理由に教えてくれました。

 お母さんは管理局の魔導師になったばかりの頃、その当時からかなり強かったらしいのですが、
色々と無理もしてたらしくて、それで仕事中の謎の機械兵器の奇襲を受けて、生死に関わる様な
大怪我をしたらしいです。怪我を治した後も元通り飛んだり出来る様になるまで色々とリハビリを
頑張ったみたいなのですが。そう考えると派手な魔法を教えなかったのは、僕も昔のお母さんみたいに
なって欲しく無いからなんだと分かりました。やっぱりお母さんは優しいお母さんです。でも、その昔の
お母さんに大怪我を負わせた謎の機械兵器は、実は昔のまだ悪かった頃のお父さんが作った物だった
らしいのですが、そこは秘密にする様に言われました。やっぱりお父さんはお母さんが怖いみたいです。

 お母さんは昔、友達が沢山いたらしいのですが、管理局を辞めてお父さんと結婚した事が
きっかけで、仲が悪くなってしまったそうです。僕も以前、お母さんの昔の知り合いだったらしい
オッドアイのお姉ちゃんと会った事があったのですが、凄く怖い目で睨まれてしまいました。
皆はお母さんがお父さんと結婚した事を良く思ってないみたいです。とっても悲しいです。
でも、何時か仲直り出来る日が来て欲しいです。
40僕の家族 3 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/06(水) 21:57:13 ID:K0Ntejqm
 お父さんと結婚する為に友達を無くして寂しかったのか、お母さんはフェレットを飼い始めました。
お母さんは昔もフェレットを飼っていた事があったらしくて、その時のフェレットにちなんで
ユーノ君と名付けていました。フェレットはとっても人懐っこくて可愛らしいです。そのフェレットの
世話はお母さんがしているのですが、僕にもたまに抱っこさせてくれます。でもお父さんは
何時もの病気が再発してフェレットを改造しようとしてお母さんに頭冷やされたりしていました。
 今ではそのユーノと言うフェレットも立派な家族の一員です。

 次に僕の三人の弟について…

「こ…これは一体…何のつもり…?」

数枚の作文用紙を両手に持ち、気まずい顔でジェイル=スカリエッティを睨み付ける
高町なのはの姿がそこにあった。

「これは私と君の間に生まれた子供が小学生になって、そこで先生から自分の家族についての
作文を書くと言う宿題を出されて…って設定で書いてみた作文でな…。」
「私が言いたいのはそこじゃない! 何でこんな物を書いたのかって言いたいの!!」

なのはは怒り余って作文用紙を破り捨ててしまった。

「うわぁ! 何をする! パソコンを使わずに手書きでの作文は地味に大変だったんだぞ!
ただでさえ私は理系の人間であって文系は苦手なのに…。って言うか、その子供は
私と君の子だけにやっぱり理系科目は得意でも体育と文系科目は苦手と言う設定も
考えていたのに…。」
「うるさいうるさい! だから私は貴方みたいな時空犯罪者と結婚する気は無いって言ってるでしょ!?
まあ貴方が何を考えた所でそれは貴方の勝手だけど…そもそも何で子供が全員男の子なの!?
もしかしたら一人くらい女の子が生まれるかもしれないじゃない!」
「お! 何だ〜。嫌よ嫌よと言っておきながら…何だかんだで私の子供を産む気満々では無いか!」
「ああ!!」

これには流石のなのはも墓穴を掘ってしまったと自覚した。そして、顔を赤くしたなのはの肩に
スカリエッティがポンと手を置き…

「さ、君もまんざらでは無いみたいだし…人生棒に振ったと思って私の伴侶になってくれたまえ…。
以前も言った通り、君が私の妻となってくれれば私に対するストッパーにもなって
世界の平和は守られるのだよ。」

と、キザったらしく言うスカリエッティであったが…
41僕の家族 4 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/06(水) 21:58:16 ID:K0Ntejqm
「それを言うなら犬に噛まれたと思って…とかそんなんじゃないのぉ!?」
「あら〜!」

なのは怒りのディバインバスターがスカリエッティを天の彼方まで吹っ飛ばしていたとさ。

「ハァ…ハァ…ハァ…あんな男と結婚したら…それこそ人生棒に振ったも同然じゃない…。」

とりあえずスカリエッティを追い払う事は出来たが…なのはは何かに負けた様な…
そんな嫌な後味を感じていた。そして、そう思うと共に走り出す。向かった先は無限書庫であり…

「ユーノ君結婚して!! 今直ぐ結婚して!! おねがいぃぃぃぃぃ!!」
「うわぁ!? いきなりどうしたの!?」

なのはは血の涙を流しながらユーノに泣き付いて結婚を迫った。
ぶっちゃけこのままスカリエッティからのしつこい求婚を受け続ければ…今は追い払っていても
いずれ恋愛ものの漫画なんかで良くある『最初は嫌いだったのに何時の日か…』と言うパターンによって
本当に結婚してしまいかねない勢いがあった。それはなのはにとって非常に嫌な事だ。
例えなのはがスカリエッティと結婚する事によって、スカリエッティの悪事に対する
ストッパーになって世界が平和になるとしても…嫌な物は嫌。
だからこそ、そうなる前に誰かと結婚する。その相手として第一に選んだのがユーノ。
彼とは友達としての関係で、未だ恋愛に至ってはいないが…スカリエッティと
結婚してしまう位なら…ユーノと結婚してしまった方が一億倍もマシだった。
それに以前は一緒に暮らしていた事もある間柄でもある故、違和感無く共に暮らす事も
出来ると言う事も言える。

「お願いユーノ君! 結婚して! お願い! お願いぃぃぃぃ!!」
「い…いきなりそんな事を言われても…。って言うか今仕事中だし…。」

なのはは泣き叫びながらユーノの服の袖を引き千切らんばかりの勢いで引っ張っており、
ユーノはほとほと困り果てていた。

果たしてこの後…なのははどっちを選ぶのだろうか?
自らを犠牲にしスカリエッティの妻となる事で、時空犯罪者の妻と言う汚名を被る代わりに
スカリエッティの無限の欲望を抑えるストッパー役となって世界の平和を守り、なおかつ彼の
優秀な頭脳と技術を世の為人の為になるような方向へ向けさせ、人々の生活を良くさせるか…。
はたまたスカリエッティを拒絶して自身の幸せを取り、ユーノと結婚する事によって
スカリエッティの嫉妬心を煽り、悪の科学者としてさらに増長させ、そのままヤンデレ化した
事によって以前のそれを遥かに凌ぐ程の恐ろしい兵器を作れる力を持たせ、それによって
世界の平和を脅かし、破滅の危機に晒らさせてしまうか…。どちらにせよなのはを待っているのは
辛く苦しい戦いの日々である。その時の相手が『世間の自身に対する差別・迫害』か、
『スカリエッティが今後作り出すであろう以前のそれを遥かに凌ぐ程強力になった恐怖の超兵器軍団』かの
違いがあるが…どっちにしても苦しい戦いを強いられる事は間違い無い。

なのはに平穏の時が訪れる事は無いのか…静かに暮らす事は許されないのか…
この後…真の平穏を手にする事は出来るのか…その答えは神のみぞが知る事である…。

                    おしまい
42 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/06(水) 22:00:46 ID:K0Ntejqm
自分が今までやったなのは×スカの子供って全部男ですけど、その理由に付いて
本作中にあった
「女の子が生まれて来る可能性もあるじゃない」
「何だかんだで産む気満々じゃ無いか」
と言うのをやりたかったからと言うのもありますけど、これもある意味ギャプ萌えの一環だったりします。

なのはのお股から、なのはに似ないスカ顔の子供が生まれて来ると言う
ギャップを想像するだけでも個人的にかなり萌えてしまいます。
ちなみに×ユーノ版の場合も同じ理論でユーノ顔の子供の方を先に想像してしまいます。
(きっと客観的に見た場合、自分は凄いキモイ男に見えているに違いないはず…)

ってか、スカリエッティも変な顔芸とかしたりせずに黙ってればイイ男だと思うんですよ。
漫画版で一コマだけ出て来た、培養液の中で作られる途中のショタリエッティなんか
不覚にも萌えてしまうくらい可愛かったですしw

とりあえずはこの後…
『世界の平和を取ってスカの嫁兼監視役になった未来』
『自分の幸せを取ってユーノと結婚した未来』
の二つのIFをそれぞれ描いて、このシリーズの完結編としたいと思ってます。
43名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 22:10:34 ID:lq8JHwi7
スカさんは悪いことさえしなきゃあ、作品中で二番目にいい男だと思うよ。
GJ!
44名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 23:22:23 ID:sKZjjpp4
>>42
>なのはのお股から、なのはに似ないスカ顔の子供が生まれて来ると言う
>ギャップを想像するだけでも個人的にかなり萌えてしまいます。

あんた、筋金入りのHRerだったんだなww
しかしその「萌え」は非常によくわかる。もっとやってくれ。
45名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 23:48:18 ID:EE5FhClD
ヤンデレなスカの一語に噴いた
46名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 00:56:59 ID:QOQ/r9BK
もうのなのスカやめろヘドがでる次書いたらマジ殺すぞ
47名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 00:58:46 ID:QOQ/r9BK
早くなのユーの甘々+エロが読みたい
48名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 00:59:17 ID:UEMMw+ng
>>46
さて、通報してくるかな
 
あ、あと地味にIDがQBKで吹いた
49名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 01:00:04 ID:QOQ/r9BK
二度と書くなクズが
50名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 01:03:21 ID:jJGANpto
…………なのスカ書きたくなってきたじゃないか。どうしてくれる。
51名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 01:07:44 ID:qKNCaszP
>>46
通報してきた
一番やっちゃいけない時期にやっちゃったね
52名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 01:15:05 ID:8XqszMMX
>>50
何を遠慮する?
書けばいいさ、それこそ君の一つ↑のバカが発狂するぐらいになwww
53名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 01:15:14 ID:dfR3bd3/
>>50
書けば良いじゃない!
54名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 01:21:26 ID:QKMm0mSS
>>50
ノマカプだとなのレジとなのスカが一番好きな俺が通りますよ

ぜひ書いてくださいお願いします
55名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 01:23:14 ID:O/Xnea+A
>>50
書いてしまえ。

しかし記憶をたどる限り読めるなのスカを見た覚えは…

ロッカーに入れられてた子供を処分するか6課メンバーで悩むとかいうのあったか?
名前かスレ出てくる人は誰か頼む。
微妙なところもあったけどこの分野なら一番読めた覚えがあったりなかったり。
56名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 01:51:34 ID:oI9Qjykr
>>21
そういえばヴォルケンズが起動した日の夕食は豪華な刺身だったが
冷静に考えると日本が初めての外人さんにいきなり生魚を食わすのって酷くないかw
57名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 02:09:21 ID:jJGANpto
(切ってあるけど、生のままだよ、これ……)
(切ってあるだけ…いや、食事が準備されるだけ過去の主より数倍ましだ。黙って食え、ヴィータ)
(そうよ、将の言うとおり。食べ終わったら外に放り出されるかもしれないのよ)
(我にとっては、地下牢よりも外のほうがマシだがな)

 こんな念話をしていた初日の夜w
58名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 02:41:50 ID:ecfUwX5A
>>57
むしろ
(おい、主のやつ生魚をおいしそうに食ってるぞ……)
(おいたわしや…魚を焼く燃料すらないほど暮らしが困窮しているのか。かくなる上はレヴァンティンの炎で……)
(ダメよ、将の魔法じゃ火力調節ができないわ。ザフィーラ、明日外で薪を拾ってきてくれる?燃料さえあれば調理は私が何とかするわ)
(了解した。我は別に生でも美味いと思うのだがな……)
かもしれない
59名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 02:44:12 ID:09cjZPbd
>>57
(……ヴィータ、食べてみろ)
(はあ!?何であたしが!)
(先陣を切って戦うのがアタッカーの役目だ。それとも将の決定が不服か?)
(ぐぬぬ……てめえ……)
(二人とも落ち着いて。まずはそっちの茶色いのからにしましょ。一応火は通ってるみたいだし)
(頼んだぞ。ヴィータ)
(くっそー、食えばいいんだろ食えば!)

そして恐る恐る箸を伸ばして食べてみるヴィータ
ヴィータの反応を見てからこれは大丈夫そうだと安心して食べ始める他3人
うむ。こいつらには温かい家庭が必要だな
60名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 06:58:27 ID:g56uwXbH
なんとなく八神家二次創作でよく見かける間違いを突っ込んでみる

・はやての一人称が「うち」。コッテコテの大阪弁。
・ヴィータの一人称が「俺」。はやてに対しても乱暴口調&ぞんざいな態度。語尾が「〜ぜ」。
 「闇の書の主」を「主」と呼称(あまり知られてないがヴィータは「マスター」と呼ぶ。A's8話、A's漫画3話参照)
・ザフィーラの一人称が「我」(正しくは「私」と「俺」の使い分け)

シャマルやシグナムはネタで弄られる事は多いけど勘違い率は低い気がした
まあ、些細な事がいちいち気になるのは俺が狭量なだけかもしれない
61名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 07:10:27 ID:7dBwM8IE
>>56-59
他の次元世界に似た料理があった…とも考えられるんじゃないか?
62名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 07:31:51 ID:3qBz6GOP
>>61
どうも昔の主=外道という固定イメージがあるせいか、
生魚どころじゃないゲテモノを食わされてそうだと思ってしまう
63名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 07:35:22 ID:o9YwuPI3
中にはいい主もいたんじゃないのか?
シグナムとかといい仲の
64名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 07:55:54 ID:3qBz6GOP
>>63
たぶんいい主もいただろうと思うけど、肝心の本人達の記憶にはないようだし
二次作品では昔の主は外道で当然という妙な思い込みが…
65名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 08:03:25 ID:QOQ/r9BK
このスレつまんないくなってきたな
66名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 08:10:12 ID:QOQ/r9BK
>>42
◆6BmcNJgox2マジ死ねよ
67名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 08:16:11 ID:3SUQj+B7
>>66
通報しますた。
68名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 09:01:03 ID:RTQBcd1T
>>64
他の主もはやてみたいに闇の書のせいで障害を負ってたとしたらヴォルケンズに辛くあたっても仕方ないんじゃないかと思うな
69名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 09:51:53 ID:jJGANpto
はやてちゃんの場合は、魔道士として目覚めてなかったのが理由だから、
魔法文明が当たり前の世界で主になった連中は障害ないんじゃなかろうか。
70名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 10:10:08 ID:awrw9x+1
一定期間、頁の蒐集がないと持ち主自身の資質(リンカーコア)を侵食する。

だそうです。
良い主が蒐集しないとすると、その主は苦しみながら死んでいくことに。
逆に、悪い主はすぐに蒐集にかかるでしょうから、障害は起きないことに。
71名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 12:20:57 ID:QOQ/r9BK
サイヒ氏のなのは×ユーノ読みたい
72名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 13:39:03 ID:IKpvuYcu
ヴォルケン自身がはやてのように対応されたのは初めてだって戸惑ってるからなあ
初代リインによれば、守護騎士達は異形の業による者達だから人目につく場所に置いておけないのは仕方ない、というのが古代ベルカ時代での認識だったらしい

過去の経験から初対面の主にも不信感を抱いて身構えてしまい、主もそんな守護騎士に好印象を抱けず、慢性的に悪循環が積み重なっていったんじゃないかと想像してる
73名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 14:09:14 ID:oSm1OMyd
>>54
そういや

なのゼス

って見た事無いよね?
同じsts敵サイドの男キャラなのに…何故?
74名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 14:16:09 ID:jdxNjSOL
二人とも似たようなタイプで意外性がない……からかなあ。
似たタイプだからこそ、見てみたくあるが。
なのはさんの教導隊の先輩に接する姿もそれで、妄想できるかもしれん。
75名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 14:55:44 ID:oSm1OMyd
>>74
俺も意外性度外視で見てみたい

なのゼス
フェイスカ
はやレジ

で展開していく第三期のIFものとか
76名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 14:57:03 ID:jJGANpto
なのゼスで、エリルーだと、
なのはを「お義母さん」と呼ぶエリオになるのか……。
それは見てみたいような気もする。

……なのはとフェイトが嫁母と婿母の関係!?

なのゼス本編よりも周囲の人間関係が面白そうだ。
77名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 16:08:38 ID:QOQ/r9BK
>>75
マジキモイ
78名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 16:26:47 ID:H++4HgfL
レジアスがゲンヤにパワハラすればいいと思います^^
79名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 16:27:13 ID:rT53ktHx
>>75
そのカプで意外性を抜いたら何を楽しめばいいか俺もちょっとわからないな

ただ恋愛を抜きにして
なのはとゼストの肉体言語やフェイトとスカの心理戦やはやてとレジアスの和解は面白そう
80名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 17:11:07 ID:BjPqBEts
ゼストがルーのおとんって公式?
81名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 17:22:02 ID:dfR3bd3/
>>80
そんな事はない、っていうか聞く前に自分で調べような?

しかし、STS公式サイトのキャラ紹介の項目で未だにゼストのところが何も書いてないのはヒドイな・・・
ドゥーエでさえ紹介あんのに。
82名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 18:01:33 ID:QOQ/r9BK
◆6BmcNJgox2はここにはこないでください
83名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 18:03:00 ID:3SUQj+B7
>>82
通報しました
84名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 18:06:36 ID:C9XJJhcT
>>78
そして、その現場を娘に見られてマジヘコミするレジアス
オーリスが市原悦子に脳内変換されちまったw
85名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 18:07:07 ID:C9XJJhcT
下げわすれたorz
86名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 18:13:04 ID:SEM3cvs3
>>84
娘は娘同士でイチャラブしてればいいんじゃないかw
87名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 18:28:31 ID:C9XJJhcT
>>86
ギンガ・スバルに攻められるオーリス・・・いいじゃないかw
88名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 20:02:49 ID:dRrRW0N5
>>79
はやてとレジアスの和解ってイメージしにくい。

レジアス
地上の戦力不足のため、裏でこっそり戦闘機人計画に手を貸す。

はやて
戦闘機人(スバル)を実戦投入。

逆に最初から裏で手を組んでるんだったら納得いくけど。
89名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 20:04:49 ID:dX3p/zK+
ヴィヴィオとクラスメートの誰かってのも面白そうなだよね。

なのはを筆頭とした六課メンバーと仲が良いのに嫉妬して、ついには嫉妬や妬みなど歪んだ感情がヴィヴィオをレイプと言う形で爆発したって感じで
90名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 20:18:43 ID:uCi4oKdr
なぜか恋愛原子核レジアスという電波ががが
レジアスならきっとオッサン臭い英雄になってくれるはず
91名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 20:42:21 ID:BjPqBEts
レジアスはもうすでに英雄さ
92名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 21:30:44 ID:KfY3n3fN
恋愛原子核ゼストなら妄想したさ
12人姉妹+(ルー母娘)で両手に華ってレベルじゃねえぜ?


模擬戦を挑んでみた
 ↓
強い!負けた。
 ↓
渋い、マッチョ、長身、しかも顔も良い!!

とりあえずトーレにノーヴェとセインは堕ちるなw
(チンクはデフォで)
93名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 21:46:02 ID:k17w85NR
ゼスト兄貴、オッスオッス!!

そんな冗談はともかくナカジマ姉妹丼とかナンバーズ姉妹丼をだなry
94名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 21:55:07 ID:jJGANpto
>>ナンバーズ姉妹丼

食い過ぎで死ねるw
95名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 22:02:24 ID:k17w85NR
巧妙な罠につかまったクロノ・ユーノ・エリオが4人ずつに無理矢理
ナンバーズ姉妹丼とか・・・

セイン・チンク・オットー・ノーヴェの慎ましやか組
ウーノ・ドゥーエ・クアットロ・ウエンディの技組
トーレ・セッテ・ディエチ・ディードの巨大組
96名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 22:05:04 ID:G/KGYSmU
>>95
ウェンディ肩身狭そうだなwww
97名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 22:36:00 ID:o9YwuPI3
どう見てもギャクにしか…書ける人いんのか?
98名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 22:45:38 ID:G/KGYSmU
>>95
って言うか良く見たらその設定クロノ抜かしたらナン☆パラじゃないか?
99名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 22:47:05 ID:qQzbbnnh
>>95
どう考えてもディエチとセインが逆な件に付いて
100名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 22:55:28 ID:k17w85NR
>>98
そうなんすか?
101名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 22:57:42 ID:G/KGYSmU
>>100
まぁエリオとユーノが逆襲しちゃってるんだけどなそんな感じ

それと間違ってもノーヴェは慎ましやかではないと思う
102名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 23:02:20 ID:BjPqBEts
>>101
ちょっとカッカしたすいだけ
いつもは貞淑で行儀正しく穏やかで淫乱で淫靡
きっとギンガよりもウェディングドレスが似合う
103名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 23:06:05 ID:GP1UpvQ2
おっぱいの話じゃないのか?
104名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 23:06:55 ID:Urmrnunb
ゲンヤが娘6人を、ロッサが教会組を、ドクターが因子持ちを食えば(ry
あとはセッテをどうしよう?
>>102
体型がってことだろう。
あれはロリ巨乳に当たりそうだ。
105名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 23:07:47 ID:jJGANpto
>>104
ちょ、ギンスバも食われるのか。
106名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 23:25:52 ID:VylM9bz0
使い魔って子供産めないの?
107名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 00:01:23 ID:/91kv8iF
ナン☆パラ ってなんだ?
ググってもわからんかった……
108名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 00:32:38 ID:cmPVShEN
>>108ならはやてが天魁星として腐敗した管理局を正そうと英雄好姦を集って戦う
109名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 00:55:43 ID:XStJRPvA
そういや八神家総出で枕営業にいそしむ鬱黒いエロSSってありそうでないな
入局初期に陰湿なセクハラで苛めにあう八神家とか、そういう鬱で嫌らしいの読んでみたい
110名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 01:17:26 ID:Xcn6MBq+
投下よろしいか。
111名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 01:20:36 ID:jx1cMChk
どうぞ!!
112野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/08(金) 01:22:54 ID:Xcn6MBq+
 なんか色々あってw なのスカ書いてみた。
 何故か、なのユーにもなった。
 三角関係だ、どうしよう。

 レス数七。非エロ。
 あぼんは鳥かコテで。
 タイトル「右手にフェレット、左手にマッドサイエンティスト」
113野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/08(金) 01:23:32 ID:Xcn6MBq+
      1


「絶対に駄目です」
 
 スバルの言葉に嘘はなかった。なのはもそれは認めるしかない。
 ギンガも同じ気持ちだ、とスバルは言う。
 マリエルが、シャーリーが、皆が一睡の時間すら惜しんで研究を重ねている。必ず、治療法は見つかる。たとえ見つからないとしても、そのときはそのときだ。

「スカリエッティと取引するなんて、賛成できません。……たとえ、私の命と引き替えでも」
「私に、返事はできないよ」

 スバルの言葉にうなずくのは、今のスバルに死ねと命ずるに等しい。
 なのはにそんなことが出来るわけがなかった。
 しかし、この選択を他人にゆだねることもまた、できない相談だった。

 

 戦闘機人の寿命。それに気づいたのはナンバーズのメンテナンスをしていたマリエルだった。
 設計思想の違いがあれど、ナンバーズとスバル、ギンガには共通点も多い。それはナンバーズも知っている。
 ある日、一人が尋ねた。スバルとギンガの生命維持はどうなっているのかと。
 聞き返すマリエルにチンクが答える。
 タイプゼロ、成長する戦闘機人の制作をスカリエッティが断念したのは、生命維持に不可欠なメンテナンスがあまりにも手間を食うためだったと。
 確かに、執拗なメンテナンスは兵器としては欠点だろう。しかしスパルとギンガは兵器ではない。
 マリエルの言葉にチンクは感銘を受けたようだったが、それでも疑問は消えなかった。
 正確なメンテナンスを受けなければ兵器以前に生命維持が困難になる、と。そして、正確なメンテナンスがドクター以外に可能なのかと。
 ドクター自身が手間を嫌って開発を中止したのに、ドクター以外の人間にメンテナンスができるのか、と。

 スバルは別として、ギンガはすでにドクターに手を加えられている。
 それを念頭に置いて、マリエルはもう一度ギンガを検査してみた。
 すると、違いがあった。これまで累積されたギンガのデータからは考えられないほどの整ったデータが出力されたのだ。
 捕らえられたときに、ドクターにメンテナンスをされたのだろう、とチンクは言う。
 整っていないデータは生体パーツの多さ故、とマリエルは考えていた。それが間違いだったのだ。
 スバルはドクターのメンテナンスを受けていない。そして、出力されるデータは相変わらず整っていない。

「……保って一年だな」

 スバルのデータを眺めたスカリエッティは、映話先のフェイトに無表情に答える。

「いや、私の手を煩わせずにここまで稼働させた手腕は見事だ。しかし、この辺りが限界だろう」
「もし、助けていただけるなら減刑も考慮に入れます」
「いや、結構だ。どうせこんな事が続けば、なし崩しに管理局監視下という名目で自由の身になるだろう。君や八神はやてのように。急ぐ必要はない」
「スバルを助けないのなら、そんなことにはなりませんよ。いえ、させません」
「私を説得する時間はまだたっぷりある。せいぜいがんばりたまえ、フェイト嬢。
…………おっと、一つ忠告しておこう。私と交渉を続けるつもりなら、君は力不足だ。人員の交代をお勧めする」
「残念ですね、貴方と直接の会話が許される人員は非常に限られているんです」
「エースofエースが除外されているとは思えないが」

 フェイトは即座になのはに連絡を取った。
 そして、冒頭のやりとりである。
114野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/08(金) 01:24:08 ID:Xcn6MBq+
        2

「スバル・ナカジマの治療をお願いします」
「…単刀直入だな。管理局のエースは雑談を好まないのかな?」
「貴方と雑談をする気はありません。したいと思ったこともありません」
「私はしたいんだ。できるなら、お茶でも飲みながらね」
「何が望みなんですか」
「美しい女性とひとときの逢瀬を楽しむ。それが不思議かね?」

 なのはは何も答えない。スカリエッティの目的がわからないのだ。
 フェイトやはやてが相手ではスカリエッティは話そのものを聞こうとしない。少なくとも、自分なら何らかの形で話はしようとする。
 しかし、身のある話は全くないのだ。
 スバルは今のところ身体の異常はない。しかし、それがいつまでも続くわけではない。治療は早いに越したことはないだろう。

 何度目かの話し合いで、ついになのはが切れてしまった。

「いい加減にしてっ! 何がしたいかはっきり言って! スバルを助けるつもりがないのなら、そう言って! その代わり、スバルが死んだら絶対に貴方を許さないから!」

 スカリエッティが目を見開いている。
 驚いているのだ。なのはの剣幕に。
 逆に、なのはから見ればスカリエッティの驚く理由がわからない。

「待ってくれ。高町なのは。私は何か誤解をしているのか?」

 ますます意味がわからない。何が誤解なのか。何をどう誤解するというのか。

「君の世界では、男性が女性を何度も呼び出すというのは、好意を示すことではないのか?」

 腹立ち紛れにレイジングハートを振り回していたなのはの動きが止まった。
 好意? 呼び出す? 男性が女性を?
 まさか……

「まさか、これ、デートのつもりだったの?」
「そ、そうだ、デートだ。そうだよ」
「恐喝相手を呼び出す極悪人にしか見えないわよっ!」
「それが誤解だと言っているのだ!」

 モニターしている六課本部では、はやてが笑いを堪え、フェイトが愕然とし、ついでバルディッシュを握りしめて震え出す。

「フェイトちゃん、怒ったらあかんよ?」
「大丈夫だよ、はやて」

 モニターの向こうではスカリエッティが…
 
「高町なのは。こうなったからには正直に言わせてもらうが。次は直接会えないか?」

「はやて、あれ斬ってもいい?」
「スバル治すまでの我慢や」
115野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/08(金) 01:24:45 ID:Xcn6MBq+
         3

「スバル・ナカジマの治療は引き受けよう」

 スカリエッティは引き替え条件を持ち出さなかった。ただ、治療するとだけ宣言する。
 なのはの問いにも、治療するとだけ答える。
 はやて、フェイトともになのはは協議するが、スカリエッティの狙いが何であれ、治療者がスカリエッティしかいないというのは間違いのない事実だった。

「術式の課程はすべてモニターして記録する。モニターの方は私とリィンとフェイトちゃん。その場にはギンガとなのはちゃん、ティアナが立ち会う。
ヴォルケンリッター四人は隣室で待機。それでええな?」
「そうだね、それでいいと思う。でも、スカリエッティが何かやるつもりなら、本当に気をつけてね、なのは」
「うん。わかってる。でも……」

 正直、スカリエッティが何かしでかすとは、なのはにはどうしても思えなかった。
 だから、なのははもう一度スカリエッティに面会した。

「本当に、任せられるの?」
「もちろんだ。君も私の技術を疑っているわけではあるまい? これは、君と対等に話すために私が払う代償と思ってくれていい。
しかも、見返りなしかもしれないという可能性も考えているつもりだ。スバル・ナカジマを治療したから、私のことを考えてくれ、
などと言うつもりはない。そんなことをするくらいなら素直に脱獄して、未だに私を慕ってくれるナンバーズとともに反旗を翻し、君を奪う」
「それだけは絶対にさせない」
「もちろんだ。私にもそのつもりはない。暴力をもって君をものにするつもりなどない。そんなのは無意味だ」
「一つ聞きたいの」
「なんなりと」
「何故、私を?」
「まず、強いからだ。我が娘たち…ナンバーズを退けた君だからだ」
「ナンバーズを撃退したというなら、フェイトちゃん、はやてちゃん、ティアナ、スバル、シャッハさん、シグナムさん、シャマルさん、ヴィータちゃん。私以外にもたくさんいるはずよ」
「もちろん、それだけではないよ」
「どういう意味?」
「確かに強さもある。だがそれだけではない。今あげたすべての女性の中で、私の心を動かしたのは君しかいない。単純だが重要な事実だ」
「私には好きな人がいるんだよ」
「横恋慕か。面白い。私がその男以上の男だと証明すればいいのだな」
「いい加減に…」
「惚れた女に惚れたと告げて何が悪いっ! 私は確かに犯罪者だ。しかし、人を愛することはできる、違うか!?」

 六課本部では、なのはによって名前を出された六課隊員のほとんどがモニターを見つめていた。

「……これは…随分ストレートな告白ですね」
「相手がスカリエッティでさえなかったら…これは揺れ動きますよ…」
「あの男がこれほど男らしかったとは…」
「大丈夫だよね、なのは」
「た、多分。なんぼなんでも、ユーノ君もおるんやし、ほだされはせんと思うけど…」
「ユーノがあれくらい熱く告白してたらね…」
「とっくにゴールインしてるだろな…」
116野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/08(金) 01:25:19 ID:Xcn6MBq+
       4

 スバルの手術が始まった。
 スカリエッティは麻酔は使わないと宣言する。
 局部麻酔で充分であり、そもそも自分が疑われているのは百も承知なので、スバルも意識をはっきりとさせておきたいだろうとの配慮だ。
 てきぱきと処置を勧めるスカリエッティを挟むようになのはとギンガが。そしてスバルに寄り添うようにティアナが付き添っている。

「そんなに心配なの? 大丈夫だよ、ティア」
「うっさいっ! 私は貴方なんか心配してないんだから。スカリエッティを見張っているだけなの! ほら、馬鹿言ってないで処置に集中して。おかしいと思ったら我慢せずにすぐに言うのよ」
「すまないな、ミス・ランスター。デリケートな処置が必要なので、静かにしてもらえると助かる」

 スカリエッティにそう言われ、ティアナは苦虫を飲み込んだような表情で口を閉じる。

「ふむ。少々予想とは違っているな」
「どういう事です?」
「タイプゼロファーストとは微妙な違いがある。これは…元来のものではないな」

 スバルに直接繋がれた端末から数値を読みとるギンガ。ギンガは自分がスカリエッティに改造されたときのデータを一通り見せられている。
 確かに、そこに記されていた自分のデータとスバルのデータの違いはわかる。

「…これは八神はやてにもモニターされているはずだな。八神はやて! 君には局内にも敵が多いと聞くが、この処置を台無しにしてまで君を陥れる理由はあるのか?」
「“こちら八神。そちらの予想通りモニターはしてる。それは、どういう意味や”」
「スバルナカジマを亡き者にしてまでも、君に嫌がらせをするような人物に心当たりは?」
「“ありすぎて特定できんよ”」
「面白い。何者かがタイプゼロセカンドに仕込んでいるようだ」

 ティアナのとっさの制止は間に合わず、スバルの腕が持ち上がった。驚いたのはスバル自身も同じだ。彼女自身、自分の動きに全く気づかなかったのだから。
 渾身の力で振り回される左腕。ティアナがとっさに飛びつこうとして、ギンガに引き倒される。生身でスバルの拳を止めるのは自殺行為だ。
 しかしなのはがレイジングハートをかざした瞬間、スカリエッティがスバルの左腕を受け止める。
 モニターを見ていたフェイトは、ザンバーを受け止めたスカリエッティを思い出していた。
 見ているうちに、スカリエッティの額に血が流れ始めた。さすがに、片腕でスバルの手を止めるのは無理があったのだろう。
止めきれずに、頭部に一撃を与えられてしまっている。

「今のなら、よけられたでしょう」
「よければ、高町なのは、君に当たっていたかもしれん、そう思った。……処置を続けよう」

 言いながらスカリエッティは、無造作にタオルを巻いた。まるで汗を止める鉢巻きのように。
 なのはは、そのタオル越しに傷口に触れた。

「何の真似かね?」
「じっとして。いずれ必要かもしれないと思って、ユーノ君に治癒魔法を習っていたの。下手だけど、血止めくらいはできるはず。
……まさか、貴方に最初に使うとは思わなかった」
「光栄の極みだね」
117野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/08(金) 01:26:01 ID:Xcn6MBq+
        5

 土下座どころか、自害しかねない勢いのマリエルをはやてとフェイトはなんとか食い止めた。
 スバルの処置が始まったと同時にラボから姿を消した課員がいるというのだ。まず間違いなく、それが犯人だろう。
 確かに、このタイミングでスバルが暴走してスカリエッティが死亡すれば、はやてのクビ一つでは追いつかない大失態だっただろう。
 もっとも、スカリエッティの言を信じるなら、スバルに仕込まれていたのは昔彼自身が開発したウイルスの変異だったらしい。故に自業自得とも言える、とスカリエッティは結論していた。
 逆にそんなものを持っているということは、かつてスカリエッティとつながっていた裏管理局の残党が犯人なのだろう。
 
 処置を終えて、スカリエッティは尋問室に通されていた。
 はやてがシグナムとヴィータをつれて出向く。はやて自身は一人で行くと言ったのだが、シグナムとヴィータが無理矢理についてきているのだ。

「借りができたな」
「借りなどとは思わなくて結構だ。私が好きでやったことだからね。ただ、高町なのはを喜ばせたかっただけだ」
「それを信じてええんか?」
「……ちょうどいいメンバーが揃ったようだから、逆に聞きたい。八神はやて、君は何故闇の書の騎士を信じる?」

 シグナムとヴィータがはやてを守るように身構えた。

「過去において悪鬼羅刹とまで並び称されたヴォルケンリッターを、何故信じる?」

 スカリエッティはシグナムに目を向けた。

「烈火の将よ。どうして君は今世においては悪鬼とならない? 今までと何が違うと言うんだ?」
「我らは主の名に従い動く者だ。我らを知っているのなら、それもまた知っているだろう」
「八神はやてに出会うことによって君たちは変わった。それでいいのか?」
「当たり前だろっ!」
「失礼、鉄槌の騎士。しかし、それならこう考えてはくれまいか? 君たちが八神はやてに出会ったように、私は高町なのはに出会ったのだと」

 フェイト・テスタロッサが高町なのはに出会ったように。
 エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエが、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンに出会ったように。
 スバルとギンガが、クイント・ナカジマに出会ったように。

 当然、これらの出来事は機密である。
 だが、無限書庫の長と提督には機密など、あってなきがごとしなのだ。

「なるほどね。そこを否定すると、自分たちまで否定することになる、か」
「よく考えたものだ。後付の理屈としては最高だな。真実かどうかは別として」
「それに関しては僕も同感だ」
「しかし、嘘とは言い切れない」
「それも同感だ」
「自分の意見はないのか、密猟者におびえる獣」
「えらーーーーーい提督様のご意見だから、僕には逆らえないよ」
「だったらその偉い提督から命令しようか。僕の目の前から永遠に消えてくれないか?」
「職権乱用か。管理局も堕ちたものだ。ああそうか、君がスピード出世できる組織だものね」
「なのははさっさとスカリエッティを選ぶべきかもしれないな」
「スカリエッティは嘘はついてないと思う。本当になのはに惚れたんだと思うよ」
「何故言い切れる?」
「なのはには、それだけの魅力があるから」

 さすがにクロノは絶句した。
118野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/08(金) 01:26:51 ID:Xcn6MBq+
     6

 プロポーズは論外。
 このタイミングのプロポーズは、「スカリエッティが嫌だから結婚する」と言っているようなものだ。
 それは嫌だ。
 やっぱり、「好きだから、一緒にいたいから、結ばれたいから」プロポーズ。それに憧れるのだ。

 ユーノにとっても事情は似たようなもの。
「スカリエッティよりはマシだよ」と言われて結婚したくない。
 やっぱり、「ユーノ君にそう言ってもらえるなんて」と感激されたいのだ。

 結構見栄っ張りなカップルは、そうやってチャンスを逃し続ける。


 それに……正直に言うと、なのはも少し心が揺れた。
 ユーノにはあれだけの激しい台詞はないだろう。
 無限書庫の仕事を捨ててまでなのはと一緒になるか、と言われると疑問符が付きそうな気がする。
 スカリエッティの場合は野望をあっさりと捨てている。
 だからといってスカリエッティを好きになったと言うことはない。それは断言できる。しかし…………
 情熱的な求愛というものには、女である限りは流されてしまうのだ。

 考えていると、ユーノからの連絡が来た。
 このタイミング。なのはは機密について一瞬考えたが、相手は無限書庫の長である。そのうえ、はやて、フェイトの友人なのだ。
この件に関しては機密など完全に忘れられてそうな気がする。


「僕は、スカリエッティには負けないよ」

 結婚はまだできないけれど。と続ける。
 それで充分だ、となのはは思った。
 何故知っているのか、もどうでもよかった。

「私、待ってるよ、ユーノ君」
119野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/08(金) 01:27:24 ID:Xcn6MBq+
     7

 某所にて。

「……高町なのはとユーノ・スクライア? 私は彼女がバツイチでもいっこうに構わないよ。釈放されたら、奪ってみせるとも」
 
120野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/08/08(金) 01:28:00 ID:Xcn6MBq+
 以上、お粗末様でした。


 スカさんほとんど別人かもしれん。すまんかった。
121名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 01:40:13 ID:cmPVShEN
なんちゅうもん書きよるんじゃコラ
はぁ? なのスカでしかもなのユーじゃとコラ?
面白いやないけ、コラ
デート間違えたり豪速直球のスカリエッティとか熱いやんけ、コラ
ムショ入りの以前の敵が助けに来るとかのシチュエーション好きにはたまらんやろうがコラ!
前進あるのみのアツきエリート的爆炎が如きスカリエッティええもんやんけコラ!
122名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 01:47:49 ID:ZyfnODsD
>>120
GJ!このスカリエッティは応援したくなるw
123名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 01:51:15 ID:cq2Fcff1
>>119
フェイトさん自重
>>120
GJだな。なのスカって書くとウンコ食うSSみたいだけれどもさ。
124名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 01:57:01 ID:6Qs2sqSy
これは続編に期待せざるを得ない
フェイトそんが相変わらず…
125名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 03:56:57 ID:gKDaFkp6
>>120GJ
悪くないな。ユーノサイドもあったら見てみたい
126名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 04:27:50 ID:+qH8+UkH
>>42
GJ!
スカ博士のヤンデレっぷりが実にすばらしい!
これからも厨房に負けず頑張れ

>>120
これまたいいスカなの!なのはの愛を奪い取ってしまえ。
この情熱的なスカ博士なら十分ユーノから寝取れるはず
127名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 04:33:29 ID:6Qs2sqSy
最近ヤンデレの意味履き違えたレスを各所で見受けるんだが
何の弊害だ?ニコか?
128名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 05:59:07 ID:gNvtSXxJ
>>120
GJ
スカがいいキャラしてますな。

>>127
ニコかその類のヤンデレCDやらかと思う。
つか、このスカはあえて言えばクーデレ位で(わりと熱血してるから違うが)別にヤンじゃ無いよな。

続くならスカに対してなのはがツンデレになりそうな気はするがw
129名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 07:14:47 ID:EzA2SMVx
なのスカは生理的には少し受け付けないが、スカとユーノがライバルというのは面白いかも。
実際そういうSSは結構あるし、

スカ「以外だね…君はこの組織にいる割りには少々甘すぎないかね?
   第一、管理局が必ずしも正義とは言い切れまい。集めたロストロギアを使い、明日にでも次元世界支配乗り出すかもしれんのだよ?」
ユ「……そうかもしれないね…可能性は否定できない。でも……
  でもその時は、僕自身の手で管理局を叩き潰す」
スカ「……正気かね?」
ユ「ああ……大真面目さ」

どこかで似たようなの見たけどこんなかな
130名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 07:31:08 ID:I6ji64rb
エロパロ的には淫獣vs変態だろ
131名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 07:36:51 ID:fDrhnleo
淫獣×変態だろ…常識的に考えて…
132名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 07:44:37 ID:jr24PzZN
>>131
簡単に想像できてしまうから困るw
133名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 08:42:50 ID:TuBFZRMw
>>129
それどこの民間古代遺跡封印工作員?
134名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 08:51:34 ID:UWnOo7ub
第一期のちっちゃいユーノだったら
アナル舐める自信ある
135名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 09:12:12 ID:lXFG/fLQ
やっぱユーなのが一番だな
なのスカ好きはマジキモイと思う
136名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 09:14:27 ID:lXFG/fLQ
なのスカ好きな奴マジキモイ
137名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 09:24:47 ID:GbzZmBjF
真性(本物)なのかと思っていたが、ここまで懲りないと仮性(かたり)なのではないかと思い始めた。
138名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 09:31:49 ID:Fj5gok93
工作員乙。

でも、通報したならそろそろ隔離されてもよさそうなものだが。
139名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 10:30:10 ID:w589thdc
>>138
PINKちゃんねるについて勉強して来い


この程度なら反応しなければスレは十分機能する。
レスつけるのは論外。おかしな人自体を話題にするのもなるべく避けるべきなんだぜ
140名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 11:13:50 ID:cuhVCuBH
>>134
ディープキスなら余裕
141名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 13:53:16 ID:YvDP+pR+
>>131
バカ、そこは変態×淫獣だろう
142名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 13:59:02 ID:u6fr6/if
情熱的に愛を語るスカに惚れた。このスカになら尻を掘られてもいい。
というか最近なのスカ多いね。
143名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 15:54:18 ID:+upRDNWH
ふとメガミマガジンの表紙が目に入った瞬間、高町なのはに膣内射精したくなった。
ああ、オレは骨のズイまでアレなんだな・・・と思った瞬間だった。ハァハァ。
144名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 16:01:34 ID:FAmEL1FJ

 三           三三
      /;:"ゝ  三三  f;:二iュ  三三三
三   _ゞ::.ニ!    ,..'´ ̄`ヽノン
    /.;: .:}^(     <;:::::i:::::::.::: :}:}  三三
  〈::::.´ .:;.へに)二/.::i :::::::,.イ ト ヽ__
  ,へ;:ヾ-、ll__/.:::::、:::::f=ー'==、`ー-="⌒ヽ←>>143
. 〈::ミ/;;;iー゙ii====|:::::::.` Y ̄ ̄ ̄,.シ'=llー一'";;;ド'
  };;;};;;;;! ̄ll ̄ ̄|:::::::::.ヽ\-‐'"´ ̄ ̄ll
何故こんなになるまで放って置いたんだ
145名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 16:04:36 ID:UWnOo7ub
>>143
お前の感じている感情は精神的疾患の一種だ。
しずめる方法は俺が知っている。俺に任せろ
146鬼火 ◆RAM/mCfEUE :2008/08/08(金) 16:39:09 ID:/9pJH+QV
過去ログ漁ってたら、自分の嗜好に割と近いSS見つけて、読んでたんだがな…多分あれは酒の勢いだったんだろう…
司書さんや。またまたすまんが…36スレ168も自分です……oez
そりゃあ好みに近いはずだ
147名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 16:58:00 ID:Iy1Z458f
>>143
ほほう、オレキャラ×なのはとはまた斬s

(書き込みはここで途絶えている。
 部屋の大量の血痕等から警察当局は事件性があるとみて捜査している)
148名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 16:59:15 ID:lXFG/fLQ
マジ引くわ
149名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 17:38:38 ID:UWnOo7ub
魔法■女ふたなりフェイト

●月×日 ☆
おかしい、最近エリオを見てると動悸が収まらない。
とくにあのプリプリした小さいお尻をみてるともう…ハァハァ。
あぁ、またチンポが大きく。

●月▲日 ☆
今日も朝から、なのはを犯す。
最近少し締まりが悪い。
そう伝えると、捨てないでと泣きながら言われる。
そんなコトしないのに。大好きだよ、なのは。

●月●日 ☆☆
ユーノに呼び出される。
最初なのはの事で口論になるが、原因が分かるとすぐに仲直りできた。
私のチンポが大きすぎて、なのはのマンコが緩くなってるらしい。
話し合いの結果、私がマンコ、ユーノがアナルを使用するということで落ち着く。
最後にセルフフェラの極意を教わった。
今日部屋に帰ったら試そう。

150名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 17:50:00 ID:ock7TWm0
そしてセルフフェラ現場をエリオに見つかるんですね、分かります
151名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 18:00:08 ID:fDrhnleo
>>141
変態の紐にはロマンがない
やはり淫獣の鎖で無ければ背徳感が足りない

実用性云々は変態に分があるが浪漫補正で
152ザ・シガー:2008/08/08(金) 18:14:53 ID:LYbldOux
さて投下するぜ。

お待たせしましたレジなのです。
無論非エロでレジアスとなのはが甘酸っぱいデートするお話です。
レジィがなのはとストロベリーな展開が理解できない人は頑張ってスルーしてくださいね?
153ある中将と教導官の日々:2008/08/08(金) 18:15:42 ID:LYbldOux
ある中将と教導官の日々5


大勢の人でごった返した大型ショッピングモール、休日という事もあり見ているだけで思わず熱気を感じそうな程の人だかりが形成されている。
そんな中をひどく不釣合いな二人の男女、なのはとレジアスが連れ立って歩いていた。
ヒゲを蓄えた恰幅の良い中年の男と美しい年頃の少女、あまりに対照的かつ似つかわしくない二人が並んでいる姿はある意味シュールな光景である。
自然と周囲の人間の目を僅かに引くが、当の二人はあまり気にかけていない様子だ。

どうやら、既に何度も二人きりで外出しているなのはとレジアスはこういう好奇の視線に慣れてしまったようだった。
振り返って視線をこちらに向ける人々など構わず、二人はモールの様々な店を見て回る。
その姿は普通に考えれば親子にしか見えないが、二人の距離感はもっと近しい何かを感じさせた。
あえて言うなら年の離れた恋人か……本人達が聞けばそれこそ顔を真っ赤にして否定するだろう。

多くの店で溢れるモール内を散策する中、なのはが一つの店舗の前で足を止める。
乙女を魅了する甘い香りが漂う、そこは美味しそうなクレープの店だった。


「あ! ゲイズ中将、あれ美味しそうですよ♪」


鼻腔を蕩かす甘い香りになのはが目を輝かせながらレジアスの手を引っ張ってそう言う。
その姿は普段の凛々しい教導官でも、優秀な管理局員でも、ヴィヴィオの母親でもなく、どこにでもいるただの一人の女の子だった。
エースと呼ばれたSランク魔道師のその可愛らしい姿にレジアスは思わず苦笑する。


「ああ、そうだな。では一つ買ってみるか」


なのはの言葉にレジアスは自分から進み出てなのはの好きそうなものを注文、程なくして美味しそうなクレープを一つ手にする。
そして、そっとなのはに差し出した。


「えっと……悪いですよ、自分の分は自分で買いますから」
「まあそう言わないでくれ、私は年上なんだから」
「うう…分かりました」


レジアスの言葉になのはは渋々と頷いて了承する。
頑固な彼女は本来ならば自分の分を自分で買いたいと思っているのだろう、いくら年上の男性が相手でもそういう面はしっかりしたいようだ。
幾らか不満を感じるなのはだったが、一度口の中に甘いクレープを頬張ればたちどころにその不満も霧散する。
舌の上に溶ける甘味と鼻腔を駆け抜ける香ばしい香りになのはの顔が思わず緩む。


「とっても美味しいです♪」
「そうか、それは良かった」


なのはの満面の笑みにレジアスもつい表情を綻ばせる。爛漫と咲き誇る花のような彼女の明るさは厳格な中将の心をいとも簡単に和ませてしまうようだ。

二人はとりあえず手頃なベンチに腰掛け、なのははクレープを美味しそうに頬張りレジアスは近くの自販機で買った缶コーヒーを傾ける。
心底嬉しそうにクレープを食べるなのはの様子をレジアスはただ静かに見つめていた。
彼のその視線に気付いたなのははふと手にした甘いお菓子から口を離して顔を上げる。


「えっと…私の顔に何か?」
「いや、本当に美味しそうに食べるのだと思ってね」
154ある中将と教導官の日々:2008/08/08(金) 18:16:15 ID:LYbldOux
「本当に美味しいですよ。中将もどうです?」


なのははそう言いながら食べかけのクレープをレジアスの前に差し出す。
彼女のその提案にコワモテで知られる中将は面白いくらい動揺した。


「な、な、な、何を言っているんだ君は!?」
「だって…中将に買ってもらった物ですし、私だけ食べるのは少し悪いです」
「私の事など気にしないで良い! というか、いくらなんでも恥ずかしいだろう!?」


なのはの提案にレジアスは顔を赤くして、普段なら絶対に見せない姿で狼狽する。
まあ、目の前に差し出された食べかけのクレープに口をつけるなんて、普通なら気恥ずかしくって出来ることではない。
だが、なのははそんなレジアスの羞恥心など気にもせず引き下がろうとはしなかった。


「そんな事ないですよ? 気にせずどうぞ」
「いや…その、だな……」
「どうぞ」


言い淀むレジアスの前に突き出される食べかけのクレープ。なのはの目からは後退の二文字が消えていた。
どうやら何が何でもレジアスにコレを食べさせたいらしい。
彼女のその静かな迫力にさしもの厳格な中将もとうとう観念した。


「ああ、分かったよ……では一口だけ」


レジアスは不承不承にそう言うと、周囲にチラリと視線を巡らせる。
周りの目を少しばかり気にすると、なのはの手にしたクレープをほんの少しだけかじった。
今までブラックコーヒーの苦味に支配されていた口の中に、ソレを覆す甘味が溶けていく。
味覚を支配する甘さに思わず手ジアスの口から言葉が漏れる。


「甘いな」
「それはクレープですから。どうです? 美味しいですか?」


正直レジアスは甘いものをそれほど好む男ではない、だが目の前の少女にそう尋ねられて“不味い”などと言える訳がない。
口の中に残る甘い残留をコーヒーで飲み込むとレジアスはポツリと答えた。


「その…悪くはないよ」
「本当ですか?」
「ああ」
「良かった♪」


レジアスの言葉になのはは心の底から嬉しそうに微笑んだ。
一点の曇りも無い笑顔、彼女のその屈託の無さに壮年の中将の胸はまた一つ高鳴る。
仕事に明け暮れ、何年も枯れた生活を送ってきた彼になのはの見せる華やかさはあまりに眩しい。
彼は思わず顔を僅かに逸らして缶コーヒーを傾けると、その苦味で味覚以外の甘さも紛らわせた。
そんなレジアスの様子になのはが不思議そうに首を傾げるがそんな仕草もまた彼の心を波立たせる。
とにかくこの形容し難い甘酸っぱい空気を脱したくて、レジアスは早々にコーヒーを飲み干すと空になった缶をゴミ箱に放りながら立ち上がった。


「そ、そろそろ行こうか」
155ある中将と教導官の日々:2008/08/08(金) 18:17:06 ID:LYbldOux
「はい」


クレープを食べ終わったなのはは元気良く返事をすると、彼の隣に寄り添って歩き出した。
親子のような年の差の二人はモールの人ごみの中に消えて行く。





そしてそんな彼らを人ごみに紛れて監視する者達がいた。


「こちらコードネーム“キョン”、チームリーダーチビ狸どうぞ」
『こちらチームリーダー、どうしたんやクロノ君?』
「いや……なんか、もうユーノが死にそうな顔してるんだが…」


キョンことクロノはそう言いながら隣にいる青年に目をやる。
そこにはまるでミイラのようにげっそりとしたメガネの青年、ユーノ・スクライアがいた。
彼の目はまるで死後数時間は経過した絶賛腐敗中の魚のように濁りきっており、まるで生気というものを感じない。
まあ、初恋の相手が目の前で中年のオッサンと甘酸っぱいデートを繰り広げていたらこうなっても仕方がないだろう。
ユーノは上手く聞き取れないような小さな声で気が触れたように何かブツブツと呟いていた。


「んせつ…ス……かん…ィス」
「おい…どうした?」


彼のただらぬ様子にクロノが心配そうな顔になるが、ユーノは彼の言葉などまるで聞こえていないようだ。
クロノはそっと耳を近づけて彼の言葉を拾ってみる。


「間接キス間接キス間接キスなのはがレジアス中将と間接キス間接キス間接キス僕とはまだ手も繋いでないのにあのオッサンと間接キス」


無限書庫司書長ユーノ・スクライア、なんかもう廃人寸前だった。
もはや口からは呪詛の如く同じような言葉を繰り返し、意思疎通は完全に不可能な状態である。
十年来の友人のあまりに無残な姿に、流石のクロノも哀れみを感じずにはいれない。


「はやて……僕はユーノを送っていくよ。流石にこれ以上見せると本格的に発狂しかねない」
『え…ああ…うん……よろしく』


力なく立つ事すら叶わないユーノに肩を貸しクロノはその場を後にした。
“今夜はとことん酒に付き合おう”恋に破れた哀れな友を思い、クロノはそう決めた。
その日、ミッドチルダのとある居酒屋で二人は壮絶なまでに酒に溺れたとかそうでないとか。


『しゃあない、ではクロノ君とユーノ君は抜けたから、後はロッサ頼むで〜』
『了解、任せてくれ』
『他のみんなもよろしゅうなぁ〜♪』


はやては陽気にそう言って、今回のバカ騒ぎに駆り出された機動六課や局や教会の面々に念話を飛ばした。

156ある中将と教導官の日々:2008/08/08(金) 18:17:59 ID:LYbldOux



モール内の店を散策しながら雑踏の中を歩くなのはとレジアス、活気ある様々な店を眺めているとふとレジアスが立ち止まる。
彼は軽く振り返り、僅かに警戒するような視線を背後に向けた。


「むぅ」
「どうしました中将?」
「いや、どうも妙な気配を感じてね。まるで誰かに見られているような…」


レジアスの言葉になのはも周囲に視線を向けるが、多くの人の行き交うこの中で誰もこちらを見ている者など見当たらない。
視線をレジアスの顔に戻したなのはは、はにかむように苦笑する。


「そんなまさか、気のせいですよ」
「そうなら良いのだが、まあ私はこれでもそれなりに顔が知られているからな」
「確かに、中将テレビで演説とかしてましたからね」


彼女のその言葉に、レジアスは少しばかり眉を寄せた。
そして豊かな顎ヒゲを軽く手で撫でながら、歯切れの悪い言葉を漏らす。


「その、だな……あまり、そういう風に呼ばないでくれないか? どうも仕事の時のようで…」
「そうですね、確かに今日は休日ですから。えっと……それじゃあ何て呼べば良いですか?」
「そうだな、まあ君の好きなように呼んでくれ」
「はい、分かりました…きゃ!」


そう言いかけたところで、人ごみの中で肩を押されたなのはがよろめく。とっさにレジアスが彼女の手を掴み自分の方に引き寄せて助ける。
そうすれば、自然となのはは逞しいレジアスの胸板に吸い込まれた。


「大丈夫かね?」
「は、はい…」
「しかし、今日は本当に人が多いな」
「ちゅ、中将……あの…」
「ん? どうした?」
「…近いです」


なのはは彼の間近、手を掴まれ屈強な胸板の中、それこそ吐息がかかるような距離で上目遣いに見上げながらそう言った。
絡み合う二人の視線、刹那の時、二人は互いの瞳に魅入られる。
雑踏の中でしばしの沈黙、それを先に破ったのはレジアスだった。


「いや! すまない!! 軽率だった」


レジアスは慌ててなのはから二・三歩下がって距離を取ろうとする。
だが、それはできなかった。
なのはがそのしなやかな指を絡め、彼の手をギュッと握り返していたから。


「た、高町空尉?」
157ある中将と教導官の日々:2008/08/08(金) 18:18:23 ID:LYbldOux
「えっと…人が多いですし……はぐれたら大変ですから…その……手、つなぎませんか?」


あろう事か“手をつないで歩く”等という提案、さしものレジアスもこれには目を丸くした。
その行為は中年の中将の羞恥心を崩壊寸前までさせかねない、いくらなんでも恥ずかしすぎる。
レジアスは思わず口ごもりながら慌てた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! そ、それは、その…流石に恥ずかしくないかね!?」


一緒に食事をするとか買い物をするならまだしも、手をつないで歩くなんてまるで恋人同士だ。
しかしそんなレジアスの様子になのはに僅かに影が落ちる。
彼のその言葉になのははシュンと元気をなくしたように俯いて、寂しそうに答えた。


「恥ずかしいなんて、そんな事ないです。でも……中将が嫌なら別に…」
「い、嫌なんて事はない」
「それじゃあ、良いですか?」
「ああ……その…分かったよ」


レジアスはなのはの要望にやっと折れて、首を縦に振った。
その途端に彼女の瞳は嬉しそうに輝き、顔には満面の笑みが零れる。
なのははしっかりと指を絡めてレジアスの手を握り歩き出す。


「それじゃ早く行きましょう、まだまだ見たいお店がたくさんあるんです♪」
「おいおい、そんなに引っ張らないでくれ」


自分の手を引く少女の爛漫さに、彼は困ったようなだけど嬉しそうな顔で苦笑した。


続く。
158ザ・シガー:2008/08/08(金) 18:21:27 ID:LYbldOux
はい、投下終了です。

コンセプトは初々しい中年、書いててレジアスが可愛く見えた俺は確実に重症www
159名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 18:22:15 ID:Xcn6MBq+
…………これがNTRか…(違)

GJ。ユーノが悲惨すぎて笑った
160名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 18:33:11 ID:yR1lJtlM
>>158
うは、ああああんめえぇぇぇな、おい!
GJ!本当にレジアスは既婚とは思えん初々しさ
161名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 18:34:08 ID:FAmEL1FJ
何と言う何と言う初々しさこれはまさしくレジなの
GJっすしかしレジなのって書くとなのはさんが「レジ」だよと言ってるように思えてくるから不思議


……しかし廃人寸前のユーノも良いなと思った俺マジ外道
162名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 18:56:48 ID:lXFG/fLQ
レジなの好きもキモイなー
163名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 18:57:41 ID:lXFG/fLQ
早くユノなの読みたい
164名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 19:02:30 ID:u6fr6/if
キキキキ、キター!
なんというカップル。あの中将がなんとも初々しい。待ってた甲斐があったってもんですよ

それとユーノには合掌
165名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 19:03:12 ID:lXFG/fLQ
なのスカとかレジなの好きがマジありえねー
正直キモチワルイしマジ引くわー
166名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 19:12:24 ID:ZOgLWWuR
             -―-
           '´         ヽ
        , ', '           .
.       / ,'/, / /i l  l i      !
        ' l| i,'l !イ||l ! l トl| |li ト、ヽゝ
        !リ!{ |l|l 'l゙!  '´「jヾ F|、、\     / ̄ ̄ ̄ ̄
       ,!| ! l ! !j ,  l / |_l、"`゙、゙ヽ   | ……
       `''" /ヽ. `   ` ,E!ノ"リ!゙ ゙゛   < ID:lXFG/fLQ……かわいそう……
         《 ((` ,ー┐ / リl ,. <      | (脳が)
          Yノリ'´l/!//  ゙     \____
            /!ヲi !/ /,F!  /  i
.          / i l l /! l  /    !
          ∧ l | |' .l l  i    /l
.        くゝゝl | ト、! l  !  /》ヘ
167名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 19:13:04 ID:myjJWJ8S
NGIDはlXFG/fLQと。

ここの作者のレベルが高いからなのスカとかレジなのも良いなと思うこの頃。
168名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 19:21:23 ID:DfNNuxGz
だぁかぁらぁ〜〜〜〜。こういう輩は相手にするなっての ・ ・ ・ ・
掲示板に出没する荒らしは、徹底無視&放置ってのが鉄則だろうが
169名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 19:33:52 ID:23T4pli+
荒らしにしても単純すぎるだろう。
辞めさせたいならもっといい書き方はあるだろうに。
170名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 19:55:09 ID:jgBzpFGj
本編で接点無くても地上本部所属のレジアスや少々無茶しても『まあスカだしな』で
許される雰囲気があるスカリエッティと比べるとゼストは新カプを開拓し難いな
死んじゃったのが悔やまれる
171名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 19:56:41 ID:gNvtSXxJ
どう見てもただの低脳っつか厨。
でも、毎日変わるIDをNG追加してくのが地味に面倒な件。
日の最初に見ちゃうと耳元で蚊にまとわりつかれてる気になるんだよな。
『ユーなの以外認めないスレ』でも立ててひきこもればいいのに。

>>167
同意。
会話に違和感無さすぎて俺の脳内劇場で普通に声付きで上映されてるw
172名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 19:58:37 ID:+MqA8RM4
嫌なら読まなきゃいいのに
俺だってここさいきん、246氏以外
エロパロに投下されるssの殆どは読まずに飛ばしてるのに
173名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 19:58:52 ID:PVWfhR1n
>>170
ゼストは新カプ開拓する前にアギトとのものをもう少し充実させて(ry
174名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:01:29 ID:FAmEL1FJ
>>172
そこで名前を挙げちゃうあたりお前さんもどうかと思うが
175名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:07:13 ID:yR1lJtlM
246氏も困るだろうに…つか新手の嵐か
176名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:09:50 ID:23T4pli+
以外なんだから問題ないでしょ、別に低レベルだからっていってる訳でなし。
むしろわざわざ読まれずに済むんだから他の作者達にとってはいいんじゃ?
177名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:22:08 ID:cmPVShEN
>>175
単純に好奇心なんだけど、246氏がどう困るかな?
178名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:22:11 ID:U6ZbllFQ
ザ・シガー氏実にGJ!
なのはもレジアスも初々しくてどういうわけかすごくニヤニヤしてしまいます。
手を繋ぐのも、戸惑う二人…最高です。
荒らしが何名かいるようですが是非とも続きを書いて欲しいです!
179名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:26:44 ID:ock7TWm0
びっくりするほど甘酸っぱいなw
シガー氏GJです
180名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:28:13 ID:Xcn6MBq+
>>177
たとえば即売会で突然、「貴方の同人誌以外はいっさい買いません!」と、他サークルにも聞こえるように言われたら、困らない?
181名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:29:10 ID:yR1lJtlM
>>177
自分も昔、別所で似たことあったんで。
でも感情的なレスはいかんね、なのはさんに頭冷やされてくる。
氏も同じように感じるとは限らんし。でもあの時は複雑な心境だった……つか嬉しくない。
182名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:39:21 ID:FAmEL1FJ
>>180
待て勘違いしてるぞ>>172
「貴方の作品だけは絶対に買いません」って言う事を言ってるんだ

まぁどっちにしろモチベが下がるとは思うが
183名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:40:52 ID:trMmaW6V
>>158
読んでてレジアスが可愛く見えた俺も確実に重症www
GJです!
184名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:43:52 ID:fYNZf2nL
>>182
え?
「氏以外」の後に「の」が入るんじゃないの?
じゃなきゃ「ほとんど読まずに」に続かないよ?
185名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:44:53 ID:IewlVn+I
>>158
GJGJ! 終始(・∀・)ニヤニヤしながら読んでいました。
186名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:46:51 ID:5q/z/W1x
>>182
とりあえず勘違いしてるのは君だと思う

ってかこういう話題を続ける事こそ迷惑になるからもうやめとけ
187名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:49:19 ID:bf8nClYY
新手の荒らしなんじゃね?
つうかもうさわんな。

書いてくれる職人さんは皆同等に尊い
それでいいだろ
188名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 20:52:38 ID:FAmEL1FJ
>>184>>186
あっホントだ本気で勘違いしてた

>>187
申し訳無い以後気を付けます
189名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 22:18:06 ID:lXFG/fLQ
このスレ読みたいSSがないから消えてほしい
190名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 22:19:02 ID:lXFG/fLQ
リクエストしても誰も書かないしなー
191名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 22:20:56 ID:IYMo9is2
>>158
相変わらず甘酸っぱいレジなのGJです。ユーノはご愁傷様ですが・・・まあ、ユーノだし(マテ

とりあえず・・・このまま逝っちゃって、オーリスに“お義母さん”と呼ばせようと四苦八苦するなのはを無双しちまったww
192名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 22:39:01 ID:7syniEjY
>>191
思わず噴いちまったw
まぁアリじゃないか……
ってかあのなのはさんだぜ?
むしろ狙ってやりそ(ry
193名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 22:44:03 ID:lXFG/fLQ
◆6BmcNJgox2はレイプばっか書くから嫌い
194名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 22:49:01 ID:7kRav5Za
>>158
GJ!!
かつてここまで悲惨なユーノはあったでしょうかw
まあユーノ。平行世界では結ばれているのもあるから大丈夫ですぞ。
でも、レジィの胸に顔をうずめるなのはさんがこれがまた良いです。
それにしても氏の書くなのはさんは、なぜこうまで俺のツボをつくのでしょうか。
このストロベリーパニックの顛末が楽しみです。

>>191
これだけでも何篇か書けそうだ。
自分より年下の義母親というのはなんだが良いな。
195名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 23:01:45 ID:cmPVShEN
>>194
ザフィーラ「ヴィヴィオをお嫁に下さい、お義母さん」
196名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 23:06:21 ID:IYMo9is2
>>192>>194
なんだか、最近オーリスが気になってしょうがないんだw

普段は福官としてレジアスをしっかりと補佐しつつも、家では生活能力0のダメ親父になってしまうレジアスを叱りつけるオーリスとか・・・
レジアスに再婚はして欲しいけど、なんだか分らないジレンマに悩むオーリスとか・・・


ちょっと頭冷やされてくるww
197名無しさん@ピンキー :2008/08/08(金) 23:13:07 ID:8OMTJpll
>その日、ミッドチルダのとある居酒屋で二人は壮絶なまでに酒に溺れたとかそうでないとか。

まさかとはおもうが、『中将』じゃないよな……
198名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 23:14:09 ID:cuhVCuBH
なのはの目の前でユーノをレイプする話を書きたいわぁ
199名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 23:23:42 ID:IYMo9is2
>>198
エロノ乙
200名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 23:24:42 ID:7kRav5Za
>>196
なんだかオーリスはスバルみたいな良い相棒がいれば
良いツンデレになっていたような感じがする。
201名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 23:43:52 ID:Xcn6MBq+
>>200
そりゃお前さん、8years after シリーズでないか?
202名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 00:46:14 ID:cAgvm6Rh
>>198
書きたいなら書いていいのよ
203名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 01:04:58 ID:+BOf6G4C
義理の兄であるクロノと仲良くなるために、ネットで方法を検索するが
「義兄 悦ばせ方」と誤字で検索したため、そういう知識にうといフェイトは間違ったやり方で実践してしまう…
といった妄想を誰か実現してくれ
204名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 01:24:12 ID:SdXsqls2
そして、間違いに気づいたフェイトは「ネットは駄目だ」と、
リーゼ姉妹に聞くんですね?
「クロすけの悦ばせ方? うん、たっーぷり教えてあげるよ」
205名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 02:13:34 ID:7g4JXwQK
リーゼ姉妹に散々(体に)教えられた後に、何か違うと兄の居るなのはさんにも相談しちゃうんだな?
「クロノ君と仲良くなりたい? うん、協力するよっ」
……さて、「私をクロノ君だと思って」な百合レッスンか、ユーノで練習か、恭也と忍に頼んで4ぴーなんてのも。
206B・A:2008/08/09(土) 03:17:59 ID:m/NQfrfP
誰もいないようなので投下いきます。


注意事項
・B・A版エリルー時空のお話
・主人公はヴィヴィオ(ですが、諸般の事情でまだハブられます。だって主人公はトリでなきゃ)
・オリキャラが出ます
・非エロでバトルです
・sts本編から11年後の物語
・フェイトが天寿を全うしております
・その他かなりの捏造多し。
・タイトルは「Das Erbe zur Zukunft」 意味:未来への遺産
・オリキャラTUEEEEEEE
・5対1の異種魔法戦前編
・ヘイト的発言は演出です。気に障る人がいたのならごめんなさい
207Das Erbe zur Zukunft@:2008/08/09(土) 03:22:48 ID:m/NQfrfP
第24話 「Brave Phoenix(前編)」



錆色の街に蒼い閃光が駆け抜け、橙色の魔力弾と竜の炎が空を焦がす。
錆びた空で戦っているのは白髪の老騎士とローラーブーツを履いた蒼い髪の格闘家。そして白い竜に跨った召喚師と、
ビルの屋上から拳銃型デバイスを構える射手だ。本来ならば空戦騎士である老騎士の独壇場であるはずの空中にいながら、
彼はどういう訳か三人の女性を相手に攻めあぐねいていた。

「・・・・・!」

「行かせない!」

地上に降りようとするシエンの前に回り込み、スバルは捻りの利いた一撃をその顔面にお見舞いする。
最初にその威力の程を自らの剣で以て体験したシエンは、不利な打ち合いは選ばずに大きな軌道を描いて渾身の突きを回避する。
だが、スバルは即座にウィングロードを伸ばして食い下がり、立て続けに突きと蹴りのコンビネーションを見舞ってその機動を妨害する。

「私を地上に降ろさぬつもりか!」

忌々しげにシエンは呟き、片手を伸ばして眼下の地面に突き刺さった剣に環状魔法陣を巻きつかせる。
直後、剣は弾かれた様に地面から抜け、スバル目がけて空中を駆け上った。しかし、それは直撃する寸前で
飛来したティアナの魔力弾で破壊されてしまい、スバルを傷つけることはなかった。

「くっ・・・・やはり・・・・・」

地上に突き刺さったままの無数の剣を一瞥した後、シエンは繰り出される打撃の雨へと集中する。
その傍らのビルの屋上では、クロスミラージュを構えたティアナがいつでも援護射撃ができる態勢を取っていた。
普段なら、厄介なセンターガードを剣の一斉発射で仕留めるところなのだが、生憎、シエンはエリオに止めを差すために手持ちの剣を全て撃ち出してしまっていた。
一応、三人と戦闘を始めるドサクサに紛れて何本か回収しておいたが、精緻なティアナの射撃を以てすれば、たかだか数本の剣を投擲したところで
先程のように撃ち落とされてしまうだろう。 だが、そうなってしまうとシエンに残された手段はこうして手にした最後の剣で三人と切り結ぶことなのだが、
キャロの支援を受けたスバルは思いの外手強く、 思うような戦いを展開することができなかった。

(奥の手はもう少し伏せておいた方が良いな)

タービン音を奏でる拳の一撃を回避し、そのままシエンは空中でバックステップを踏んで大きく後退する。
そして、スバルが追撃してきた瞬間を見計らい、自身の真横に建つビルの壁にグレートソードを叩きつけた。
轟音を立ててコンクリートの壁が砕け、吹き飛んだ瓦礫がスバルの前に立ち塞がる。咄嗟にスバルはその軌道を見切ってウィングロードを捻じ曲げ、
瓦礫を搔い潜るように下側から飛び込んだ。下手をすれば瓦礫の下敷きになりかねない危険な行為ではあったが、スバルの人並み外れた身体能力と魔力がそれを可能とし、
下降しようとしていたシエンの前に回り込む。
その瞬間、シエンは唇の端を釣り上げた。

「弾丸は剣だけではないぞ」

先程打ち砕かれた瓦礫の一つ一つに環状魔法陣が巻きつき、その悉くが重力に逆らってスバルへと殺到する。
至近距離からのそれを回避することはできず、また防御も間に合わない。

「我が乞うは、城壁の守り。鋼の走者に、清銀の盾を」

《Enchant Defence Gain》

直撃の瞬間、キャロがスバルのバリアジャケットの防御出力を強化したことで、ダメージは相殺される。
だが、勢いまでは殺すことができず、バランスを崩したところに強烈な蹴りを打ち込まれ、スバルはウィングロードの上から転落してしまう。
208名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 03:24:49 ID:0qCNbyCL
支援するまで寝れない
209Das Erbe zur ZukunftA:2008/08/09(土) 03:26:14 ID:m/NQfrfP
「しまった!?」

新たに展開したウィングロードの上に着地し、すぐにシエンを追いかけるが、彼の方が早かった。
空中を蹴って滑空したシエンは凄まじい速度でティアナへと迫り、手にした剣を一閃させる。
すかさず、飛翔するフリードの上で戦況を見守っていたキャロが防御魔法を遠隔発動させ、振り降ろされた刃からティアナを守る。
かつての恩師であるなのは・T・スクライアから直々に教わったプロテクションだ。ただの鋼の塊ではどれほど魔力を込めたとしても叩き割るのにかなりの時間を有するはず。

「ふんぬっ!!」

衝撃がビルの屋上を震わせた。
たった一撃を打ち込まれただけで、堅牢な桃色のバリアに亀裂が走る。何の魔導技術も施されていない前時代の鋼の塊が、
最先端の魔法の盾を打ち砕こうとしている光景に、ティアナの背中にうすら寒い感覚が走る。
保たないと肌で感じ取った。
叩きつけられる質量が半端でない。鍛え抜かれた肉体から繰り出されるその一撃は、恐らくエリオの紫電一閃に匹敵する破壊力を秘めているだろう。
そんなものをぶつけられれば、どんなバリアも木の板と変わらない。あっという間に瓦解し、粉々に砕かれてしまう。

「最後に残ったのがこいつで良かった・・・・・・この剣に銘はないが、幾多の戦いを共に潜り抜けてきた我が最優の友だ。故に、私の魔力もよく通る」

返す刀で更に一撃を入れられ、足下の地面までもがひび割れ始める。
焦るティアナではあったが、プロテクションの壁が邪魔で逃げることはできなかった。身を守るための盾が、一転して身を縛る拘束となってしまったのである。
かと言って、解除してしまえばシエンの一刀をその身で受けることになる。近接戦の心得もあるとはいえ、ティアナの基本戦術は射撃だ。
ベルカの騎士と切り結ぶことは無謀以外のなにものでもない。キャロもそれを知っているので、プロテクションを解除せずに強度の維持に努めるしかなかった。

「どうした、いつまでもジッとしていたら死ぬぞ!」

「その言葉、そっくり返してやる!」

モーター音を響かせ、屋上に飛び降りたスバルが激昂しながらシエンに殴りかかる。
その一撃を、シエンは剣の刀身で弾くだけで受け流し、そのまま一歩踏み込んで相手の間合いを殺す。
如何に徒手空拳といえど、密着された状態では打撃を打つことができない。

「かなり鍛えているようだが、反応が少しばかり遅い。長らく戦いから離れていたな」

「くっ、こいつ・・・・・」

「悪いが高ランク魔導師を三人も相手にするのは骨でね、少し卑怯な手段を取らせてもらう」

言うなり、シエンは密着したスバルの体に環状魔法陣を巻きつかせる。
直後、スバルの体は弾かれたように吹き飛び、上空のフリード目がけて飛んでいく。スバルの体を弾頭代わりにして発射したのだ。
慌ててキャロがフローターを発動するも、勢いを殺しきれずにスバルの体はフリードに激突。スバルの体が地面目がけて真っ逆さまに落下する。

「スバルさん!?」

「あなた・・・・・正気?」

「非人道的だと? ここが戦場だということを忘れるな、執務官!」

遠心力の込められた一撃がバリアを叩き割り、そのままティアナの体を両断せんと唸りを上げる。

《Dagger Mode》

大気を引き裂く鋼の剣をティアナは両手で構えたクロスミラージュの魔力刃で受け止める。
案の定、片手で受け止めていたらそのまま両断されかねない程の強力だった。
210名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 03:28:46 ID:0qCNbyCL
ティアナよ、戦場では生き残ったものが正義です。支援
211Das Erbe zur ZukunftB:2008/08/09(土) 03:29:18 ID:m/NQfrfP
「やるな・・・・では、これならどうだ!?」

続けて二撃、三撃と打ち込まれる斬撃を、ティアナは必死に捌き続ける。
だが、六合目まで捌いたところで腕を弾かれ、がら空きの胴体に強烈な回し蹴りが叩き込まれる。
激しい痛みに視界が明滅し、胃の中の物が出口を求めて逆流してくる。グラリと傾く体が倒れぬよう、
嗚咽しながらもティアナは踏み止まるが、それは最後の一撃を打ち込むには十分な隙だった。
その時、今まで援護に徹していたキャロがフリードを突撃させ、今にも剣を振り下ろそうとしていたシエンの体をその太い足で鷲掴みにさせ、
そのまま一気に上空高く飛び上がった。

「ぬぅ・・・・・この、放せ!」

「フリード!」

キャロのかけ声にフリードは咆哮で大気を震わせ、さっきのスバルのお返しだと言わんばかりにシエンの体をビルの壁へと叩きつけた。
砕けたコンクリートが地上に落下し、舞い上がった煙がシエンの体を覆い尽くす。
すかさず反転したフリードはそこに目がけてブラストレイを放射し、キャロも残る魔力を総動員してウィングシューターを乱射する。
日頃の温厚な彼女から想像もつかない情け容赦ない攻撃は、大事な家族を傷つけられた怒りと、シエン・ボルギーニから発せられている
禍々しくも圧倒的な負の波動への恐怖の裏返しでもあった。

「小賢しいわぁっ!!」

火炎を剣で振り払い、ほとんど無傷なままのシエンが斬りかかってくる。
ケガらしいものをしている様子がないところを見ると、ウィングシューターの連射は全て弾き飛ばされてしまったようだ。

「フリード、上に!」

「逃がさん!」

「行かせない!」

シエンの行く手を遮るようにウィングロードが伸び、疾走してきたスバルが飛び跳ね様に回し蹴りを放つ。
瞬間、シエンの体が空気に溶けるように消滅した。

「幻術!?」

「スバル、上!」

ティアナの声が届くのと、上空から巨大な影が落下してきたのはほぼ同時だった。
咄嗟に掲げたリボルバーナックルで振り下ろされた刀身を受け止め、重なり合った視線が火花を散らす。
剣自体の重さに加えてシエンの全体重が乗せられた一撃はとてつもなく重く、受け止めたリボルバーナックルの鋼が軋みを上げた。
気を抜けば圧倒されてしまいそうな力に抗うため、スバルは反撃を諦めて両足を踏ん張り、鍔迫り合うことを選択する。

「ティアァァァァッ!!!」

「ファントム・・・・・」

「させんわぁぁっ!!」

怒号が炸裂し、拮抗は呆気なく崩された。
シエンは傾くスバルの体を力任せに叩き落とし、砲撃を放とうとしていたティアナ目がけて手持ちの剣を全て発射、
同時に二人のフォローに入ろうとしていたキャロへと肉薄し、手にしたグレートソードを振りかぶる。
212名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 03:31:26 ID:0qCNbyCL
一人で頑張るエンに支援
213Das Erbe zur ZukunftC:2008/08/09(土) 03:31:32 ID:m/NQfrfP
「さあ、友と自分、どちらを守る?」

ティアナは砲撃のチャージを行っていて身動きが取れず、墜落したスバルは間に合いそうにない。
今ここでティアナをシエンの剣から守ることができるのは自分だけだ。
だが、ここでティアナを守るために防御魔法を唱えれば、その隙に自分が斬り伏せられる。
自分を守ればティアナが、ティアナを守れば自分が傷つく。
自分と仲間、どちらを守るべきか。
その一瞬の迷いは、シエンが踏み込むのに十分な隙となった。

「迷いは隙を生む! お前は実戦経験が足りん!」

振り下ろされた剣がフリードの翼を切り裂き、鮮血が迸る。同時に、ティアナに迫っていた刃の弾丸が空気に溶けるように消失した。
撃ち出されたと思われた剣はキャロに隙を作るためにシエンが生みだした幻術であり、彼は最初か後方支援の要であるキャロを狙っていたのだ。

「フリード!?」

キャロの悲痛な叫びがクラナガンに木霊する。
飛び散った血は周辺の建物を汚し、瓦礫の街に鮮血の雨を降らす。
全身に返り血を浴びたシエンは赤く染まった剣を振りかぶり、震えるキャロの小さな頭に照準を定める。
だが、フリードとてアルザスでその名を畏怖された白き飛竜である。逞しく成長した彼の肉体は翼を傷つけられた痛みにも耐え、
己の主を守るためにその巨体を揺らしてしがみついたシエンの体を振り払った。

「ぬぅっ!?」

「ティアさん!」

宙へと躍り出るシエンの体。ティアナの射線上に、遮るものは何一つなかった。

「ファントムブレイザァァァァァッ!!!」

極大の砲撃が大気を引き裂き、無防備なシエン目がけて突き進む。
位置的にも回避は不可能であり、防御する間も与えずにシエンの体は砲撃の渦に飲み込まれる。
直後、橙色の閃光を突き破るように飛び出してきた剣の弾丸がティアナとキャロの眼前でバリアに阻まれ、粉々に砕け散る。
今度は正真正銘、本物の剣のようだ。砲撃を受けながらも相手を打倒することを止めようとしないその執念は、正に圧巻の一言であった。
砲撃発射後故に防御できないティアナに代わってプロテクションを発動したスバルが、傷ついた体を庇いながらティアナの横に降り立つ。
反対側では、キャロがフリードをビルの上に着陸させ、治癒魔法を施していた。
これで倒れてくれと、誰もが思っていた。
こちらも連戦のダメージが徐々に堪えてきている。エリオの奮闘のおかげでシエンも多少は消耗しているとはいえ、疲弊の度合いには明らかな差があった。
これ以上の戦いは、最悪の場合絶望的な消耗戦へと発展する恐れもある。
やがて、橙色の閃光が虚空に消え、傷ついたシエンの体が露になった。
214Das Erbe zur ZukunftD:2008/08/09(土) 03:33:25 ID:m/NQfrfP
「私に、一撃入れたか」

左腕から僅かに出血しているのが見てとれた。だが、それ以外に目立った外傷はない。
見ると、彼の全身を覆い尽くすように錆色の魔力光が渦巻いている。

「パンツァーガイスト・・・・・・・」

「ベルカの魂の鎧だ。そう易々と撃ち抜けんよ」

ベルカの騎士が纏うフィールド型防御魔法。最大出力で放出すれば砲撃クラスの攻撃にも耐えられる堅牢の鎧だ。
もしもファントムブレイザーの直撃を受けた時、シエンが攻撃を考えずに防御のみに専念していた場合、腕に傷を負うこともなかったかもしれない。

「スバル・・・・まだやれるわね?」

「当然」

力強く頷く相棒の言葉に、ティアナは萎えていく闘志を奮い立たせる。
反対側のキャロもまた、動けぬフリードから降りて自分の足で戦う覚悟を決めていた。
まだ負けていない。
どんなに絶望的な状況だろうと、エース・オブ・エースの教え子の名に賭けて引っくり返してみせる。





エリオの負傷は酷かったが、幸いにも骨や内臓は無事だった。あちこちに打撲の跡と切り傷や擦過傷はあったが、
治癒魔法を施せばそれらはすぐに治すことができる。だが、すぐに戦いに復帰できるのかと聞かれれば、ノーと答えるしかなかった。
言うならば、エリオの体は大破寸前の自動車と同じなのだ。
いつ壊れてもおかしくない、ボロボロの体。
動けば関節が軋みを上げ、筋肉が弾け、骨が砕ける。
致命的に壊れているにも関わらず、まだ動かすことができる。だが、動かせば確実にその身は砕け、修復不可能な傷を残す。
それでも、エリオはまだ諦めていなかった。

「ルー・・・・治療は・・・・まだ?」

「もう少し待って」

「早く・・・・・スバルさん達だけじゃ・・・・・あの三人じゃ、彼には勝てない・・・・・・・」

今は撃ち出すものがない空中にシエンを縛り付けることで辛うじて拮抗を保っているが、彼の技量を考えればそれも長くは保たないだろう。
何より、彼には厄介な幻術と身の毛もよだつ恐ろしい奥の手が存在する。

「僕が・・・・・僕がみんなを守らないと・・・・・僕だけなんだ、彼の攻撃を無力化できるのは・・・・・・」

ルーテシアの制止も聞かずに軋みを上げる肉体を動かし、転がっているバルディッシュの柄を握り締める。
魔力回路はまだ生きている。意思の疎通が不可能になっただけで、魔法は問題なく行使できる。
武器として使う分には支障はない。問題はカートリッジだ。ここまでの戦いで予備は全て使い切ってしまった。
規格が違うため、ストラーダの分のカートリッジを併用することもできない。

「はい」

そっと、ルーテシアがエリオの手に何かを握らせる。
それは、黄金色の輝きを放つ六発のカートリッジだった。
215名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 03:35:11 ID:0qCNbyCL
エリオの復活に支援
216Das Erbe zur ZukunftE:2008/08/09(土) 03:36:41 ID:m/NQfrfP
「どうせすぐに無駄遣いするだろうと思って、持って来たの」

「ルー・・・・・」

「止めたって無駄だってわかっている。だから、私も戦わせて。私がエリオの盾になるから」

ルーテシアは傍らに転がっているストラーダを手に取り、軽く一閃する。

「私だって、いつまでも守られてばかりじゃないんだよ」

「・・・・・・・・・・」

ポカンと口を開けて呆けた表情を浮かべる。
俄かに笑いが込み上げ、エリオは苦しげに呻きながらも唇の端を釣り上げる。
そうだった。この子はそういう女だった。
誰よりも守られるポジションが似合う癖に、ここぞという時は誰よりも無茶をやらかしてしまう危なっかしい女性なのだ。
そして、だからこそ心の底から彼女のことを守りたいと思った。
彼女を守るために鳥籠に押し込め、自分だけが傷つくのではない。それでは、最愛の人が傷つくことへの悲しみで彼女は笑ってくれない。
傷ついたって良い、苦しくても良い。最後まで一緒に戦って、勝利を勝ち取って、そして笑いたい。自分が願ったのは、そういう幸せだった。

「うん・・・・・・ルー、僕を守って欲しい。その代わり、僕がルーを守るから」

そっと彼女の手に触れ、囁くようにエリオは言った。





戦いが長引くに連れて、三人の敗色はどんどん濃くなっていった。
三人の連携はほぼ完ぺきである。スバルがシエンを押さえつけ、ティアナが援護、そしてキャロが二人の補助に回る。
長い間離れ離れであったとは思えない息のあったチームワークである。だが、理想的な三位一体を形作りながらも、
気の遠くなるような時間を戦いに費やしてきた老練の騎士の前にはまるで歯が立たない。ただ無意味に体力と魔力を消耗していくだけであった。

「こんのぉぉぉっ!!」

「ふん・・・ぬおぉっ!!」

スバルのナックルダスターをシエンは手甲で受け止め、そのまま力点をズラして背後の壁に叩きつける。
更に飛来した橙色の魔力弾を剣で切り捨て、援護に回ろうとしているキャロにはスバルがぶつかって剝がれたコンクリートの欠片を発射して動きを牽制、
その隙に乱射される魔力弾を悉く切り捨てながら、チームの司令塔であるティアナへと迫る。
ティアナからすれば、悪い夢を見せられているような気分だっただろう。
弾幕とは本来、点でしかない射撃を広い範囲に連射することで相手の動きを押さえるために行われるものである。
もちろん、それで相手を撃ち抜ければ御の字だが、本来の目的は蜂の巣にされることを恐れた相手の動きを封じるために使用される。
だが、シエンはそんな弾幕の嵐の中を剣一本で身を守りながら迫ってくるのだ。射手にとっては正に悪夢と呼べた。

「終わりだ、執務官!」

「いいえ、終わるのはあなたよ」

凛としたティアナの声が背後から聞こえた瞬間、振り降ろされた刃がティアナの幻影を切り捨てる。
シューティングシルエット。
設置型ショートバレットの上に幻影を被せることで、幻影が本物であるかのように思わせる幻術だ。
先程までの魔力弾の乱射は、全てこれが行っており、ティアナはオプティックハイドで姿を消してジッと息を殺していたのである。
217名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 03:39:28 ID:0qCNbyCL
支援、3人でシエンに勝てるのか? 
218Das Erbe zur ZukunftF:2008/08/09(土) 03:40:25 ID:m/NQfrfP
「ぬぅ・・・・・」

いつの間にか、シエンの周りには無数の魔力弾が浮遊していた。
橙色と桃色の誘導操作弾。ただの直射弾ならば剣で捌き切れる自信があるシエンも、
全方向から不規則な軌道を描いて飛んでくるシューターが相手では打つ手がない。
迂闊に動けば一斉射撃で蜂の巣にされ、パンツァーガイストで防御すれば魔力切れが起きるまで彼女達は攻撃し続けるだろう。
完全に追い込まれた形である。

「なるほど、幻影の射手か。私としたことが、失念していた」

「これで詰みです。大人しく武装を解除し、こちらの指示に従ってください」

最後通牒を告げるティアナの横に、キャロを担いだスバルが静かに降り立った。
最早、どのような策を講じたとしても逃げ場のない詰みの状態である。そして、同時にシエンにとってはこの上なく最大のチャンスでもあった。

「イケルスよ、その力を見せつけろ」

《Jawohl》

不穏な動きに気づいたティアナとキャロが浮遊させていた魔力弾を撃ち出すが、それよりもシエンが幻術を発動させる方が早かった。
イケルスの宝玉から放たれた錆色の光が三人の視界を焼き、それぞれの深層意識の中で眠る潜在的な恐怖を具現化させる。
同時に、思念制御から離れた魔力弾の軌道が乱れ、明後日の方向に飛び去っていく。
静寂を取り戻した戦場で、最後まで立っていたのはシエン・ボルギーニただ一人であった。





奥行きの見えぬ暗闇の底で、三人はそれぞれの悪夢と対峙していた。
スバルは人が死ぬ瞬間を見せつけられていた。
助けられたかもしれない人。
救えたかもしれない人。
ほんの些細な手違いで死んでいく人。
その行き着く果ては、自分自身が尊敬する魔導師に助けてもらえず、倒れてきた石像に下敷きにされる光景であった。

「止めて・・・・そんな、そんな光景・・・・・・嫌だ、見たくない・・・・・・あたしは・・・・あたしは・・・・・・・」

ティアナは人から見捨てられる光景を見せつけられていた。
凡人と罵られ、能無しを蔑まれ、役立たずと見捨てられる。
執務官としての華々しい実績は全て、かつての上司達の栄光のお零れに過ぎないと、自分は何の価値もない凡骨であると見捨てられる。
その行き着く果ては、十二年前に恩師によって撃墜され、そのまま再起できずに管理局を去る自分自身の後ろ姿だった。

「違う、私は凡人だけど、誇れるものを持っている・・・・・こんな、こんなのは私じゃ・・・・・・私なんかじゃ・・・・・・・」

キャロは孤独に戦い続ける自分自身を見せつけられていた。
誰にも助けてもらえず、縋ることもできず、ただ命ぜられるままに敵を殲滅する日々。
心休まる時間もなく、帰還してもその強すぎる力故に周りから疎まれる日々。いつしか戦い疲れた召喚獣は傷つき、倒れ、それでも戦うことから解放してくれない。
その行き着く果ては、尊敬する女性から救いの手を差し伸べられずに捨て駒として管理局に使い潰される自分の姿だった。

「わたしは・・・・・わたしは、一人ぼっち・・・・・ずっと・・・・一人・・・・・・・」

三人とも、これが悪夢であることには気づいていた。だが、抗うことができない。
目の前で繰り広げられている光景は、自分自身が心の中で一番恐れている出来事である。
抗いたくても、竦み上がった体が動いてくれない。
このまま、覚めることのない悪夢を見せつけられながら死んでいくのだろうか?
そんな想像が三人の脳裏に飛来した時、一筋の閃光が闇を切り裂いた。


219Das Erbe zur ZukunftG:2008/08/09(土) 03:42:30 ID:m/NQfrfP



ストラーダで重力に逆らい、屋上へと駆けつけたエリオは、三人が倒れている光景を見て即座にバルディッシュを振りかぶり、
イケルスと三人を結ぶ魔力の流れを切り裂いた。それによって幻術が断たれ、朦朧としていた三人の意識が現実へと帰還していく。

「ぬぅ・・・・・またしても・・・・・」

「僕がいる限り、彼女達に悪夢は見させない。あんな地獄を味わうのは、僕だけで十分だ」

「よく言えたものだな、そのような恰好で」

シエンが笑うのも当然だった。今のエリオは、右手の義手でルーテシアを抱え、左手一本でバルディッシュを構えるという、
非常に不格好な姿なのだ。彼の半身ともいえる鋼の相棒はルーテシアが握っており、その制御は彼女が担当しているようである。

「なるほど、傷ついた体を彼女の治癒魔法で騙し騙し動かしているわけか。だが、そのような無様な姿で我と戦えるのか?」

「侮らないでください。僕とルーのコンビは無敵なんです」

強がりの笑みを浮かべ、エリオは三人を庇うようにバルディッシュを構える。
痛々しいまでのその姿に、他の三人もかけるべき言葉が見つからず、無言のままそれぞれの配置に着く。
防御出力に長けるスバルが最前衛であるフロントアタッカー。素早いスピードで攻撃とサポートを行うエリオが前衛であるガードウィング。
広い視野を持ち、射撃魔法と的確な指示で中・遠距離を制するティアナが中衛であるセンターガード。
そして、補助魔法で味方を支援するキャロが後衛であるフルバック。
かつて、旧機動六課時代になのは・T・スクライアから叩き込まれたチームとしてのポジションに、それぞれが着く。

「弾を失い、幻術も破られたか・・・・・・やれやれ、またもこれを使わねばならんとは」

含みのあるその言葉に、エリオの本能が警鐘を鳴らす。
いけない。
彼はあれを起動させるつもりだ。それだけは、何としてでも避けねばならない。

「ルー!」

「ストラーダ、フォルム・ドライ!」

《Unwetterform》

エリオの体から紫電が迸る。
半ば暴発にも近いその行動に他の三人は目を丸くした。

「エリオ!?」

「話は後です、とにかく攻撃を!」

ルーテシアを介して体内の魔力変換資質が活性化し、発生した電流がバルディッシュへと伝達される。
そして、間髪入れずに手加減なしのサンダーレイジを放射する。そのただならぬ気配に、他の三人も一拍遅れてそれぞれの攻撃魔法を発動させた。
220名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 03:43:43 ID:0qCNbyCL
復活したスーパーエリオ&ルーテシアに支援
221Das Erbe zur ZukunftH:2008/08/09(土) 03:45:49 ID:m/NQfrfP
「サンダァァァァッ、レイジ!!」

「リボルバァァァッ、シュートっ!!」

「クロスファイヤー・・・・・・シュート!!」

「シューティング・レイッ!」

雷と疾風が大気を引き裂き、二色の光弾が老練の騎士へと殺到する。だが、それが届くよりもシエンが自身のデバイスに命じる方が僅かに早かった。

「イケルス、フォルム・レッツテ」

《Ja, Letzteform》

直後、四人の攻撃がシエンの体を直撃し、爆発と共に黒煙が舞い上がる。
どう贔屓目に見たとしても、ブラックアウトを免れないダメージが彼を襲ったはずだ。
だが、エリオは油断のない顔つきでバルディッシュを構え、黒煙の向こうを凝視している。
やがて、視界を遮る煙の向こうから、ゆっくりとシエンが姿を現した。
最初、エリオ以外の四人はそれが何かの冗談かと思った。
180を超えるシエンの巨体が、一回り大きくなっているのである。背丈ほど合ったグレートソードが今ではごく普通の剣と同じくらいの大きさに見え、
ダラリと垂れていた白髪も若々しさを取り戻したかのように逆立っており、その瞳からは黒目が消えて三白眼と化していた。

「へ、変身した?」

「レッツテフォルム。兵士としてではなく、騎士として正々堂々と戦うためだけに調整された、あの人の奥の手です。僕はあれに負けた」

「それって、どういう意味?」

「言葉通りの意味です。あの状態の彼は、幻術も物質加速も使ってこない。その代わり、ヴィータさんのギガント級のパワーと
なのはさんのエクシードモードと同等の防御出力を発揮します」

搦め手や奇襲で戦う男が真の武人として認めた者にのみ見せる修羅の姿。それがイケルスのフルドライブ、レッツテフォルムである。
その恐ろしさを誰よりも知っているエリオは、最後にこう付け加えた。

「気を抜くと・・・・・本気で殺されます」





先陣を切ったエリオとルーテシアが巨人と化したシエンに迫り、手にしたバルディッシュを一閃する。
フェイトから継承して以来、明けても暮れてもひたすら反復練習を繰り返し続けてきたエリオの斬撃は、
疲弊した状態でありながらも未だ神速の速さを保っていた。
次の瞬間、エリオとルーテシアは抱き合ったまま、ボールが壁に弾かれるように後方へと吹っ飛ばされていた。
一拍遅れて壁が砕ける音が聞こえ、二人の姿が白煙に覆い隠される。

「エリオくん、ルーちゃん!」

「構わないで、とにかく攻撃を!」

突然、自分の真横を吹っ飛んでいった二人を心配するキャロをエリオは一喝し、右手一本でルーテシアの体を支えながら再び疾走する。
体が鉛のように重い。
消耗した体は継ぎ接ぎで無理やりくっつけているようなものだった。ルーテシアが常に治癒魔法を施し続けてくれなければ、
五分と立たぬ内に動けなくなってしまう。そんな状態で、ルーテシアを庇いつつ左腕一本でシエンと切り結ぶのは自殺行為にも等しかった。
だが、ここで休んでいるわけにはいかない。まだ魔力にも僅かに余裕がある。その余力分を他の三人の力と合わせたとしても、
シエンに届くかどうかはわからないのだ。
222Das Erbe zur ZukunftI:2008/08/09(土) 03:48:21 ID:m/NQfrfP
「キャロ、支援お願い!」

「はい。ケリュケイオン!」

《Boost Up》

《Boosted Illusion》

ケリュケイオンから注がれた桃色の光がクロスミラージュに吸い込まれ、ティアナが生みだした幻影が瞬く間に増殖していく。
空間を埋め尽くす無数の幻影は空中を疾走するスバルとエリオ達の姿を隠し、中心に立つシエンの五感をかく乱する。

「幻影・・・・・そんなもの、全て潰せば良いだけだぁっ!!」

二人がシエンに飛びかかった瞬間、シエンの体から強烈な衝撃波が放たれる。
体内で圧縮した魔力を全方位に放射し、幻影ごとスバル達を吹き飛ばしたのだ。
何ら攻性の力を持たないエネルギーの放射であったのでダメージはなかったが、その一撃で全ての幻影達が消滅してしまった。

《Shoot Barret》

《Wing Shooter》

獣のような雄叫びを上げながら疾走するシエンに向けて、ティアナとキャロは直射弾を乱射しながら距離を取ろうとする。
だが、ここは逃げ場のないビルの屋上。身を隠すものなどなく、また動きを阻害するような障害物もない。
敵との距離は僅か数十メートル。シエン・ボルギーニが相手では気休めにもならない距離だ。

「ストラーダ、デューゼン!」

《Düsenform》

「うおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

魔力噴射ですれ違い様に、背後から袈裟切りにせんとバルディッシュを振るう。
ぶつかり合う鋼と魔力刃。場違いにも思える火花が飛び散り、シエンの踏み締める地面が陥没する。
瞬間、目にも止まらぬ打ち合いが始まった。
ルーテシアを庇いながら着地したエリオは一拍も置かずにバルディッシュを振るい、必殺の斬撃を何十回とお見舞いする。
刃がぶつかり合う度に腕の筋肉が千切れそうになるまで伸びきり、間を置かずに治癒魔法が損傷を修復する。
視界を焦がす激しい激痛にエリオの意識は何度も断絶しかけ、傍らに守るべき人がいると己を奮い立たせねばとっくの昔に競り負けていたかもしれない。

「リボルバァァァァァッ、キャノンッ!」

エリオとの打ち合いで動きを止められたシエンの背後に回り込んだスバルが、右手のナックルスピナーを回転させて拳の中で魔力を圧縮する。
鋭い角度から弾丸のように打ち出された拳は並の魔導師ならば防御関係なしに吹っ飛ばし、そのまま昏倒させてしまう程の威力を秘めている。
だが、持てる潜在能力の全てを引き出したシエンはその驚異的な身体能力で以てスバルの打撃を素手で受け止め、
あろうことかエリオと打ち合ったままスバルの体を高々と持ち上げた。
咄嗟にエリオはルーテシアの体を引き、スバルとの間に割って入る。直後、鈍器のように振り下ろされたスバルの体がエリオに激突、
三人はそのまま地面を転がって壁に激突する。

「錬練鉄召喚、アルケミックチェーン!!」

振り返ったシエンの体を足下から出現した鎖が戒め、その動きを封じる。
キャロの無機物召喚、アルケミックチェーンだ。巨大な地雷王をも拘束する鋼鉄の鎖を、
キャロは限界まで魔力を流し込んで強度を高め、化け物じみたシエンの怪力を封じようとする。
223名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 03:49:45 ID:0qCNbyCL
本気になったシエンに挑むエリオ達に支援!
224Das Erbe zur ZukunftJ:2008/08/09(土) 03:51:10 ID:m/NQfrfP
「ティアさん!」

「うあぁぁぁぁっ、ファントムブレイザァァァァァッ!!」

渾身の魔力が込められた砲撃が拘束されたシエンへと迫る。
至近距離からの一撃を避けることなどできず、防御しようにも体に鎖が密着していてパンツァーガイストは使用できない。
このままティアナの砲撃が通れば、シエンの残存魔力を根こそぎ奪うことができる。
刹那、金属が軋む音がキャロの耳に届いた。
その在り得ない光景に、一部始終を見つめていたキャロは我が目を疑った。だが、そこで起きているのは紛れもない事実である。
こちらの魔力を総動員し、巨大召喚獣ですらその動きを拘束するアルケミックチェーンが、デバイスによって強化されたシエンの筋肉に引き千切られようとしているのだ。

「ふん・・・・・ふんぬっ!」

決定的な亀裂が走り、赤い鎖がバラバラに千切れる。そして、ギリギリのところでティアナの砲撃を回避し、手にしたグレートソードを振りかぶって迫ってくる。

「一撃ッ、必倒! ディバイィィィィンッ・・・・・」

「サンダァァァァァッ・・・・・」

振り上げられたグレートソードがティアナ達を捉える寸前、息を吹き返したスバルとエリオがルーテシアの補助を受けてそれぞれの攻撃魔法を発動させる。

「バスタァァァァァッ!!」

「レイジィィッ!!」

通常では考えられない速度でチャージを終えた蒼い砲撃と金色の雷が折り重なるようにしてシエンの巨体に迫る。
強化されたとはいえ肉体の強度自体が変わったわけではないで、シエンは防御魔法の展開を余儀なくされる。
その隙にティアナはキャロを伴って反対側へと回り込み、駄目押しとばかりに攻撃の体勢に移った。

「こいつは応用系よ、クロスファイヤァァァっ、シュートっ!!」

重なり合ったスフィアがまるで砲撃のように膨れ上がり、橙色の閃光と化す。
目も眩む輝きが視界を満たし、衝撃が戦場となった屋上を粉々に打ち砕いていく。
余波を受けて損壊した給水塔からは貯められていた水が漏れ出て地面を水浸しにし、激しい温度差によって水蒸気が舞い上がる。

「力を合わせても・・・・・・」

光の向こうで、擦れた呟きが漏れる。

「この程度かあぁぁぁぁぁっ!!!」

白い蒸気を振り払い、シエンがティアナの矮躯を蹴り飛ばす。
更に傍らにいたキャロの腕を掴み、ハンマー投げの要領で回転。そのまま勢いをつけて水蒸気の向こうにいるであろうエリオへと投げつける。
鈍い音が響き、何かが倒れる音がした。数は複数、恐らくエリオ達だ。
そして、残る一人となったスバルと対峙したシエンは裂帛の気合いと共にグレートソードを肩に担ぎ、必殺の態勢に入る。
迎え撃つスバルは右拳を引き、残る魔力をナックルスピナーで圧縮。真っ向勝負で鋼の剣を打ち砕かんと身構える。
225Das Erbe zur ZukunftK:2008/08/09(土) 03:54:14 ID:m/NQfrfP
「ギン姉、力を貸して・・・・・」

高速回転するスピナーが火花を散らし、吹き荒ぶ風が水蒸気を吹き飛ばす。
直後、シエンが神速の抜き足で疾走し、無造作な一撃をスバルへと叩き込む。

「ふぅぅぬうぅっ!!」

《Knuckle Bunker》

「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」

刃と拳がぶつかり合い、スバルが形成したフィールドを通じて衝撃波がシエンの肉体を襲う。
スバルの姉であるギンガが得意とするカウンター、ナックルバンカー。攻防一対のこの魔法はこと近接武器を用いる相手に対して非常に高い威力を発揮する。

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「ふうぅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!」

互いに一歩も退かず、踏み締めた大地が砕けて破片が飛び散る。
技量でも魔力でも勝る相手を前にして、スバルは意地だけで圧倒的な力に抗っていた。

「よく耐えるな」

「当り前だ、あたし達はストライカーなんだ!」

「それは認めよう。確かに、君達は強い。だが、押し寄せる津波に小舟が飲まれるように、弱者は強者に倒されるのが必定。
例え何人のストライカーが束になろうと、たった一人のエースの前には無力。蟻風情が山を動かそうなどと・・・・・・・・」

スバルの右腕に鋭い痛みが走る。腕が過負荷に耐え切れず、剝がれた皮膚の下から無機質な基盤が顔を覗かせていた。

「片腹痛いわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

怒号と共に、桁外れの魔力がスバルの体に襲いかかる。攻撃に集中していたスバルは受け身すら取れず、地面を抉りながら屋上の縁へと吹き飛ばされた。
全員が死体に成り下がっていた。
エリオは言うに及ばず、寄り添うように倒れているルーテシアも疲労困憊としている。その横にはキャロが虚ろな瞳で錆色の空を見上げており、
対角にはシエンに蹴り飛ばされたティアナがぐったりと頭を落としていた。最後まで食いついていたスバルも右腕は機械が剥き出しとなり、
左目は裂けて造り物の眼球が潰れていた。誰も彼もが傷つき、苦しんでいる中、シエン・ボルギーニだけが唯一健在であった。
226名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 03:54:37 ID:0qCNbyCL
シエン、ラスボスはこれくらい強くないと支援のしがいが無い! 
227Das Erbe zur ZukunftL:2008/08/09(土) 03:55:23 ID:m/NQfrfP
「閉じた世界にお前達は残しておけぬ。永劫に続くミッドの平穏、その目で見れぬことを悔いながら死ぬが良い。
その憎しみを背負うのが、我にできるせめてもの手向けだ」

死を背負いし老騎士は、打ち破れたストライカー達の命を刈り取らんと鋼の剣を振りかぶる。
後はこのまま、身動きの取れぬ生きた死体達にその刃を振り下ろすだけで、彼女達を黄泉へと旅立たせることができる。
誰にも止められない。
妄執とも言える信念。
死者の願いに取り憑かれた騎士の歩みは止まらない。
その時、激しい向かい風がシエンの歩みを妨げるように吹き荒んだ。

「む・・・・!?」

まるで風に背中を支えられているかのように、傷ついたスバルの体がゆっくりと起き上がった。
額からは血を流し、剥き出しの機械から紫電を迸らせ、醜く歪んだリボルバーナックルは最早デバイスとしての機能をほとんど成していない。
鋼の相棒であるマッハキャリバーからも煙が漏れていた。全身から滲み出ているのは死者が纏う気配と何ら変わりない。
だが、その佇まいは力強く、その目からは未だ闘志が消えていなかった。

「風は空に・・・・・・・」

擦れそうになる小さな声で、しかしハッキリと、スバルは胸の内から込み上げてくる一節を読み上げた。

                                                                   to be continued
228B・A:2008/08/09(土) 03:56:18 ID:m/NQfrfP
以上です。
終わりは見えているのになかなかそこまで辿り着けない。
アニメなら一瞬で済む映像を文章化するのって大変だ。とりあえず、26話じゃ収まり切らない。
次回からは満身創痍のスバル達の反撃が始まります。支援ありがとうございました。
229名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 04:00:06 ID:0qCNbyCL
B・A氏投下乙です。
とうとう次回から反撃開始ですか、ぶっちゃけズタボロのエリオ達が支援に勝てる気がしません。
このSSは熱血バトル成分が多いので汗と涙で経験の差を埋めるのでしょうか?
次回も頑張ってください。
230名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 04:05:26 ID:0qCNbyCL
>>229
× 支援 
○ シエン
orz
231B・A:2008/08/09(土) 04:41:17 ID:m/NQfrfP
>>222に間違いがありましたorz

>「錬練鉄召喚、アルケミックチェーン!!」  ×
>「錬鉄召喚、アルケミックチェーン!!」   ○

司書の方、お手数ですが保管時に修正をお願いします。
232名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 09:39:43 ID:dDVc/0k6
>>228
とうとうラスボス戦1!!!
シエンTUEEEEEEEEEE!
目指す理想があってエリオと同じように壮絶な経験をしてきたんだもんなあ…
そりゃここまで負けられないという感じにもなるか。
シエンも生き残って欲しいけど、彼もおそらく…
233名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 11:52:49 ID:Ly4X7udn
でも娘死んだからやるってのがなんかなぁ・・・
234名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 12:16:51 ID:K1R0DoE/
GJ!
うわあ…5人がかりなのに大ピンチ
反撃の手段もほとんどないように思える
どう逆転していくのか…根性ぐらいしか思いつかん
235名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 12:18:25 ID:rO9d0ejU
その辺はスバルとエリオとルーの反論があるだろうな
この話ではもう人の親になってるわけだし
此処までその辺に触れてないのは溜めてるんだろう
若夫婦と若肝っ玉母さんの活躍が楽しみだ
236名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 15:29:31 ID:+BOf6G4C
投下します
クロノとフェイトのほのぼのとした少しだけHな話
237フェイト、おまたが気になる1:2008/08/09(土) 15:31:21 ID:+BOf6G4C
それは、フェイトが義妹になってからしばらくたったある日のこと。

最近ではお互いに完全に気兼ねが無くとまではいえないが、大分、普通の兄妹らしくなってきていたと思う。

しかし、この日。僕の中にある何かが完全に音を立てて崩れていったんだ。


その日は久しぶりに兄妹の休暇が重なり、午前から午後まで普通の兄妹のように仲良くのんびりと一日を過ごしていた。

僕は晩食後のコーヒーを飲みながら、リビングでくつろいでいた。アルフははやての家に出かけており、母さんは夜勤の仕事。

フェイトと二人だけの時間。少し前までなら窮屈に感じていたかもしれないが、今は違う。二人で同じ空間に居ても自然のままに過ごせていた。

その言葉がフェイトから発せられるまでは。

「あのね、…クロノ。少し相談したいことがあるんだけど」

フェイトは少し申し訳無さそうな顔をしていた。フェイトは出来る限り、兄である僕の手を煩わせないようにしているが、どうしても困った時はいつも相談に乗っていた。

仕事や学業。様々な面で僕はフェイトに教えていた。兄として妹に頼りにされるのは悪い気分がするものではない。

むしろ、自分が頼りにされていると思うと少し誇らしい気持ちにさえなる。

「どうしたんだ?」

「うん、実はね……」

彼女はどう切り出していいか迷っているようだ。落ち着かないように目をきょろきょろさせたりしていたが、ようやく決心がついたのか、少し恥ずかしそうな顔で彼女は言った。


「クロノにね、私のおまたを見て欲しいの…」

「ぶっうううううう!」


コーヒーを噴出してしまった。予想もしていなかった言葉にコーヒーが器官に入ってげほげほと咽てしまう。

「だっ、大丈夫!?」

フェイトが差し出してくれたタオルで口の周りを吹いて気持ちを落ち着ける。とりあえず、おちけつ、落ち着くんだクロノ:ハーヴェイ…じゃなかった。ハラウオン!

「き、君は自分で何を言ってるのか分かっているのか?」

「う、うん。でも、こんなことクロノにしか頼めないし」

「そ、そんなこと出切る筈が。いや、待て! そもそも、どうしてそういう経緯に至ったんだ。説明してくれ、A4レポート用紙2枚くらいで!」

完全に混乱しながらも、なんとかフェイトに問いただす。僕の剣幕に押されながらも彼女はぽつりぽつりとことの経緯を話し始めた。
238フェイト、おまたが気になる2:2008/08/09(土) 15:32:21 ID:+BOf6G4C
それはつい先日のことだ。いつものようにフェイトがアースラ艦内を移動している時だった。


「これは興味深い!」
「素晴らしい、最高のショーだとは思わんかね!」
「はぁはぁっ…フェイトたん」
「うへへへへっ」


普段は会議で使われる部屋から、男の人達の声が聞こえてきたのだ。

今日は特に会議も無いはずなので、おかしいと思った彼女は部屋を覗き込んだ。

室内は暗く、10数名の男の人達が異様な熱気に包まれながら食い入るようにモニターに流れる映像を見ていた。


「…その映像は何だったんだ」

なんとなく嫌な予感がする。まさか、更衣室の盗撮とかじゃないだろうな…、なんてうらやま…、いいや卑劣なことをするのだ!

「うん、それがね…」

その映像は二人の人物の模擬戦の映像だった。すさまじい高レベルで魔法の模擬戦を行っていたのはクロノとフェイトの二人だった。

それは、つい先日フェイトがクロノ相手にトレーニングを挑んだものでその映像が録画され記録化されていることを二人とも知らなかった。

男達は後ろで見ているフェイトにも気づかずにその映像を見て熱狂した声を挙げているのだった。


「なんだ、そんなことか…」

僕は少し拍子抜けした。勝手に模擬戦の様子を録画することは良くないが、二人の戦う姿をこっそりと見て盛り上がる程度ならば問題ない。

プロレスやボクシングの試合を観て盛り上がるのと同じ感覚なのだろう。まあ、処罰するほどのことでもない。少し、注意すれば済むだけの話だ。

「でもね、その映像が少し変で…」

しかし、フェイトの話は終わっていなかった。むしろここからが本番だったといってもいい。


模擬戦の映像、俯瞰的に移したものではなく明らかにカメラはフェイトを中心に写していた。ときおり、ズームされ顔や胸、お尻などが大きく映し出されるたびに男達のどよめきは強くなっていく。

そして、特に一番多くズームされた場所が問題だった。


「私のね、おまただったの」


僕は再びコーヒーを噴出していた。

当然のことながら、フェイトは模擬戦の最中にはソニックフォームで挑んでいる。あの少女には露出度の激しい格好を局員の誰かが録画して、編集を加えてこっそりと観ていたのだ。

その後男達はフェイトには気づかず、観終わると妙にすっきりとした表情で仕事に戻っていったという。
239フェイト、おまたが気になる3:2008/08/09(土) 15:33:44 ID:+BOf6G4C
「…その男達の顔は見たのか?」

「うん、知ってる人ばかりだったから。あっ、ユーノもいたよ。次も任しておいてくださいって言ってたから、録画してたのはユーノかも…」

あの淫獣め! とりあえず、その場に居た男達は全員突き止めて別の世界に強制転移してやらなければならない。いや、アースラの主砲で細胞単位まで破壊してやらなければ!

「それでね、クロノ」

話がここまでで終わっていれば、アースラ内に居る不穏分子の一斉検挙ということだけで話は済んでいただろう。

しかし、そうは問屋がおろさないのがエロパロというスレである。

「やっぱり、私のおまたってどこか変なのかな?」

とても不安そうな顔でフェイトは呟いた。

「…えっ?」

「だって、ユーノや他の人達があんなに集まって、私のおまたを見ていたってことは何か私のおまたに変なところがあるからなんだよね…」

自分のおまたは他の人のおまたと違うのかもしれない。不安に思った彼女は親友であるなのはやすずか、アリサ、はやてにも相談したが、一様にいい返事は返ってこなかったという。

なのははちんぷんかんぷんといった様子だったし、アリサなんかは顔を真っ赤にして俯いたままだったという。はやては話を聞いて笑っていたが、真剣なフェイトの顔を見ると自分も真剣な顔になって言った。

「女の子には分からへん話やから、男の子に相談した方がええで。ただし! そこらへんの男に聞いたらあかん。フェイトちゃんやったら、頼りになるお兄さんが居るからな。クロノくんにでも聞いてみ」
240フェイト、おまたが気になる4:2008/08/09(土) 15:34:50 ID:+BOf6G4C
と、いうのがここまでに至った経緯というわけである。

「だからね、クロノ。お願いだから、私のおまたを見て、どこか変な所が無いか確認して」

「い、いいや! ダメだダメだ! そんなことは!」

フェイトはその過去から同年代の女の子と比べて、性的な知識が皆無なのだろう。自分がとんでもないことを言ってることにすら気づいていない。

ここで、フェイトよりは詳しいとはいえ、性教育を行えるような男では決して無い。というか、そんなの無理に決まっている。

そういうことは学校の教育や歳をとるとともに理解していくものだ。今はまだ、早すぎる!

「と、とにかく、君の、その…おまたに異常なんか無いから、安心して。このことは忘れて早く寝るんだ!」

兄として人として毅然たる態度をとったつもりだ。こんな出来事は僕の手には余る。

しかし、フェイトは見放されたと判断したらしい。その綺麗な目に大粒の涙を浮かべていた。

「やっぱり、私って他の人とは…出生が違うから、…変なんだよね。だから、クロノも…」

僕は涙を浮かべる彼女を見て衝撃を受けていた。どうやら、僕が思っていた以上に彼女は今回のことを深刻に受け止めていたらしい。

彼女は普通の人間とは違う生まれ方をしている。そのことを彼女が完全に吹っ切れているはずが無い。

もしかしたら、いつだって彼女は自分がどこか他の人とは違うんではないかと恐れていたのかもしれない。今回のことが積もり積もったものの引き金になってしまったのか。

「いつも迷惑かけっぱなしだし、本当はクロノは私なんかが妹なんて嫌なんだよね…。でも、私が今頼りに出来るのはお義兄ちゃんだけなの」

目元に涙を浮かべて、必死な表情をフェイトはしていた。お義兄ちゃん…か、フェイトにそう呼ばれたのは初めてのことだった。

それで、覚悟が決まった。妹に頼りにされて兄が突き放すなんてことはしてはいけないに決まっている!

「分かった。何かおかしな所がないか見てあげる。…その、僕の部屋に行こうか」

万が一の来客や、母さん、アルフの帰りを恐れて僕は泣きじゃくるフェイトを手をとって僕の部屋へと連れて行った。

大丈夫。フェイトを安心させるだけだ。ぱっと見て、どこもおかしくないよと言ってあげればいい。それで万事解決だ。

うん、五分もかからないだろう。…そのときは本当にそう思っていたんだ。
241フェイト、おまたが気になる5:2008/08/09(土) 15:35:45 ID:+BOf6G4C
フェイトの目元はまだ少し赤かった。表情は不安そうなままだ。少しでも安心させてあげるために僕は笑顔を浮かべて安心させるような声を出す。

「ほら、大丈夫だからみせてごらん」

フェイトはコクリと頷くとベッドの上に腰を降ろした。そして、緊張した面持ちでゆっくりと両脚を広げていく。

ごきゅり。僕も緊張してしまい唾を必要以上に大きな音を立てて飲み込んでしまっていた。

大きく広がった両脚の間に何か青と白のストライプ模様の布切れが見える。言うまでも無くフェイトの下着だろう。

しかし、スカートに邪魔されてあまりよく見えない。いや、別に見えなくてもいいんだってばよっ!

そのことに気づいたのかフェイトは両手でスカートの裾を握り、ゆっくりと上に捲り上げた。そうすれば、当然のことながら見えてしまう。

くっきりはっきりとフェイトの股間の部分を覆い隠す布が見える。思わず、息を呑んでその光景を見つめてしまった。

「ど、どうかな?」

未だに不安が残った声で彼女は、何かおかしな所が無いか問うが正直、そのとき僕の耳には届いていなかった。

目の前の光景に目を完全に奪われていて、その他のものに構っている余裕がなくなっている。

「や、やっぱり、どこか変かな?」

凝視したまま、声も出さない自分にフェイトは不安になったのだろう。だが、僕はそれに対する返事すらも忘れていた。

フェイトの細い足の末端部分にある三角地帯。そこを覆い隠すただの布切れ。そんなものに僕はどうしようもなく引き付けられ目を放せないでいる。

また、唾を大きな音を立てて飲み込みながら、気がつけば僕はその部分によりよく見るために座り込んで、顔を近づけていた。

「んっ…」

少し荒くなってしまった鼻息がフェイトの足の付け根をくすぐってしまい、彼女はわずかに声を出した。その声があまりにも扇情的に聞こえる。

「んっ、なんか変…。クロノが見ていると思うと…おまたの部分がなんか、…むずむずする」

少しだけ恥ずかしそうに腰をくねらせる彼女に、気がつけば僕はとんでもない提案をしてしまっていたのだった。

「フェイト、見ただけじゃ分からない。少し触ってもいいかな?」
242名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 15:37:04 ID:+BOf6G4C
とりあえず、ここまで
ほのぼので少しだけHな話を目指しています
243名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 15:39:25 ID:SdXsqls2
ちょ……………生殺し!?
うああああ……続きを待ってます
244名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 15:48:36 ID:0qCNbyCL
生殺しヒドス、クロノがエロノ化してるw
245名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 16:13:20 ID:wdmGKjco
クロフェ期待w
246ておあー:2008/08/09(土) 16:58:19 ID:hDRV3zoc
>>241
ここで切るとかw悪魔め……

ヒトイナイ、イマノウチ。
前回レス下さった方、ありがとうございました。
せっかくの80スレなのにエロ分薄すぎと思ったけど何故か頭から
出てくるのはこんな小ネタでしたorz

・小ネタ
・非エロ
・本編24話の裏話的な話
・捏造あり
・StS七不思議の一つ『クアットロは何故眼鏡をかけているのか』について考えてみた

タイトルは『銀幕芝居の裏で』です。
247銀幕芝居の裏で 1/2:2008/08/09(土) 16:59:06 ID:hDRV3zoc
 起動ポイントへと着々と上昇を続ける"ゆりかご"。
 その最奥に潜みながら"ナンバーズ"4番・クアットロは冷静に戦況を考察していた。

 彼女の前に浮かぶモニターには、喉下に橙色の魔力刃が突きつけられた赤毛の少女が映し出されている。
 おそらく少女が少しでも妙な動きをすれば、刃は即座に少女の喉笛を切り裂くだろう。それはたとえ戦闘機人である
少女といえど致命傷を免れないダメージになる筈だ。

 どうやら少女――9番・ノーヴェはここまでのようだ。

 13人いた戦闘機人・ナンバーズも、これで残るは自分一人。さらに指導者であるジェイル・スカリエッティも
確保された。
 現存するこちらの戦力は、自分と聖王、そしてゆりかごのみ。状況は圧倒的不利。
 しかしそれでもまだ、敗北が決定した訳ではない。
 クアットロはモニターを消す。しばらく無言でボードを操作した後、眼鏡を外しながら誰にともなく呟いた。

「……まあ、どの子も使えないこと」

 手にした眼鏡を投げ捨てようとした瞬間、不意にクアットロの脳裏にある記憶が過ぎった。


 ――随分遅くまで頑張っているね、クアットロ。
 ――ド、ドクター!?
 ――ハハッ、そんなに驚かなくてもいいじゃないか。
 ――す、すいません。今日は朝から姿を見ていなかったので、てっきり外出してらっしゃるのかと……そういえば、
いつもかけている眼鏡はどうされたんですか?
 ――ああ、あれはもう必要ないよ。実は最近、少々眼球の機能が低下していたのでね。君達に使っている人工の"眼"と
同じものに取り替えたのさ。
 ――へえ〜……って、そんな事をして大丈夫なのですか!?
 ――問題は無いよ。そもそも戦闘機人のルーツの一つは、失われた身体機能を取り戻す為の人工の代替器官だからね。
むしろこういった使い方の方が正しいのだよ。勿論私がやる以上、拒絶反応など絶対に起こらないように対策もしている。
 ――そうですか……あ、ドクター。
 ――なんだい?
 ――でしたら、一つお願いがあるのですが……


 ――想いを寄せる者の持ち物を身につける。

 それはまるで思春期の少女が好むような幼稚な行為だ。きっと自分の教育を担当した姉が見れば、鼻で笑うかネタにして
徹底的にからかうだろう、と彼女も思った。
 だが、それでも構わなかった。
 彼女の中にあるこの想いは本物で。


 ――ほう、よく似合っているよクアットロ。
 ――ほ……本当ですか?
 ――ああ本当だとも。なあ、君もそう思うだろう……ウーノ。
 

 彼女にこれ以上は望めないという事もまた、どうしようもなく本当の事だったから。
248銀幕芝居の裏で 2/2:2008/08/09(土) 16:59:34 ID:hDRV3zoc
 ほんの、一瞬。クアットロは自分が戦場にいる事を忘れ回想の世界に浸る。

 自分が唯一本当に欲しかったもの。それはきっと自分がこの世界に生を受ける前から既に彼女ではない者のもので
ある事が決まっていて。
 自分には幾ら手を伸ばしても決して届かなくて、手に入れられなくて。
 それでも自分の中にある彼の"無限の欲望"の欠片は自分に諦める事も絶望する事も許さなくて。
 だから放っておけば外に流れ出そうになる想いを抑えておくストッパーが、どうしても必要だった。

 
 だが――それももういらない。

 回想から背を向けたクアットロは、今度こそ躊躇無く手の中の眼鏡を放り捨てる。
 カラン、と乾いた音を立てて彼女のストッパーは床に転がった。
 同時に二つの髪留めも外す。

 絶望的な戦況でありながら、彼女の顔には僅かな恐れすら浮かんでいなかった。それよりも体の内から沸き上がる
歓びが彼女の中を駆け巡っていた。
 自分を偽る必要は、もう無くなったのだ。
 確かに現状は不利だが、ゆりかごが軌道ポイントに到達するまでの時間さえ稼げれば"自分達"の勝利は揺ぎ無いものになる。
 そして不可侵の防壁の中で彼女が"産む"新しい彼の隣に立つのは、あの女ではなく自分。  
 願って止まなかった物、焦がれて堪らなかった物が、あとほんの少し指先を伸ばせば掴めるところまで来ている。
 彼女に恐れる理由など何一つなかった。


 クアットロは愛しい人に言葉を紡ぐ。
 それは遠く離れた拠点ではなく、自分の中にいる彼へと向けられる言葉だ。
 拠点の彼――もう用済みになった男は、あの女への餞にくれてやればいい。愛し合う者同士、同じ場所で死ぬ事が
出来てきっと幸せだろう。



「まあ、私がいればなんとかなります。そうですよね……ドクター」

249ておあー:2008/08/09(土) 17:00:37 ID:hDRV3zoc
以上です。お付き合いくださった方、ありがとうございました。

しかし残念ながらこの後リリカルステップ(床割り)→壁抜きバスターのコンボで撃沈し、彼女の願いは夢と
消えたのであった……不憫なメガ姉に合唱。
ところでクア→スカってあまり聞かないですがマイナージャンルですか? もしかしてなのスカ以下ですか?
250名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 19:01:13 ID:SdXsqls2
GJ!!

クア→スカは自分の中では決定事項だけど、それだけでSSを書けと言われるとつらいw
こねたとしてはちょくちょく入れてるつもりだけど。

251名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 20:47:35 ID:bAoYEPmC
>>236-241
ここまで来て生殺しだなんて…この悪魔め!でもGJです!

で、モノは相談ですが、そのフェイトちゃんのビデオを売って下さい、ユーノ大先生!!
20…いや30万出します!
それで足りなければ、ローンを組んでも構いません!是非ともお宝を私にお恵み下さい!
ついでにエロノには、良いタイミングてリンディさん辺りが帰って来たりして、重い天罰を!
252サイヒ:2008/08/09(土) 21:01:41 ID:6PRlHhFU
>>242
久しぶりに自分が書いた以外のクロフェをこのスレで見た気がする。
続き超期待しとります。

>>249
こちらもGJ!
クアスカはアルカディア氏のリトルランサーがそんな感じだったような。
たしかになのスカの方が多いですね。



次世代話第二話、行きます。
以下注意書き。今回は少なめ。

・「8 years after」の続編となります。そちらを読んでいないとさっぱり分かりません。
・クロフェ、ユーなの、ゲンはや、カルタスとギンガが結婚。それぞれに子供がいます。
・レジアスの孫でオーリスの娘も出てます。
・本編終了十三年後。原作キャラの年齢はキニシナイ!!
・オリキャラの登場率が余裕で原作キャラを超えてます。
・全六話。全編通して非エロ。


ではどうぞ。
253あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:03:29 ID:6PRlHhFU
「あら、レジアス・ゲイズの孫じゃない」

 本屋へと向かう小道、嘲笑うような声でレヴィアの足は止まった。振り向けば、久しぶりだが懐かしく
もなんともない顔がにたにた笑っていた。
 ハラオウン家に預かられるより前に通っていた学校で、レヴィアをいじめていた少女だった。隣に取り
巻きらしい同年代の少女を二人引き連れている。記憶を引っくり返せば名前も思い出せそうだったが、必
要があるとも思えなかったのでしなかった。
 ビルとビルの間の狭い道。少女は周囲に人影がいないのを確かめてから、あからさまに見下した笑みを
浮かべていた口が開いた。

「ねえねえ、スカリエッティって知ってる?」
「知ってる。近代史で習ったわ」
「大悪党のテロリストなんでしょ」
「こいつのお爺さんね、管理局の中将のくせしてそのスカリエッティに協力してたんだって」
「うわー。うっそー。ひどーい」
「じゃあこの子、犯罪者の孫なのね」
「そのうちこの子も悪いことしたりしてぇ」

 けたけた笑いながらありきたりな言葉を並べ立てる少女達に、レヴィアは心底うんざりした。

(……ボキャブラリー無いわね。なんでこんなのに昔の私はいじめられてたのかしら? 五年前と言うこ
とが変わってないって、ほんと人間としてどうなのよ)

 これならまだ友人に貧乳と連呼されてる方がこたえる。いくつになっても大平原状態の胸を、レヴィア
は密かに気にしているのだ。同居人の子狼の発育が眼に見えてよろしくなってきてからは特に。

(あのおっぱい至上主義者だって、牛乳飲んでも背がちっとも大きくならないくせに)

 罵倒よりも友人のことを思い出してレヴィアは顔をしかめたが、それが少女には気に食わなかったらし
い。

「何よその顔。レヴィアのくせに生意気よ」

 服を引っ張り寄せられて、醜悪に歪んだ顔が間近に迫る。
 見たら本気で眼が汚れそうだったので視線を逸らしつつ、そろそろ本気でうざく感じてきたレヴィアは
対抗策を練り始める。こいつらとは一生関わりたくないから、ある程度強めに叩いておいた方がいいだろ
う。
 とりあえず恐喝を思わせる台詞を引き出した後、言質を取って裁判沙汰に持ち込むと脅す方向で行こう
かと、常にポケットに忍ばせている小型録音機のスイッチに手を伸ばした時だった。
 胸倉掴んでいた少女が、びくりと弾かれたように後ずさった。
 何が起こったのかと思うより早く、アスファルトを踏む音がして隣に人影が立つ。
 十数分前に別れたばかりの友人が、静かに怒気を湛えた顔をしていた。
 瞳がひどく細められ、その奥から赤い視線が三人を射抜いて怯えさせていた。レヴィアが直接受けてい
るわけではないのでよく分からないが、たぶん殺気というやつだろう。右端の少女など、がくがくと膝を
震わせて今にもへたりこみそうになっている。
254あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:04:36 ID:6PRlHhFU
「何か、レヴィアに用なのか?」

 クロードの低い声が合図であったかのように、少女達は悲鳴も上げず一目散に逃げ出した。
 角を曲がって三人の姿が完全に消えると、クロードの気配がきれいに収まる。はあと大きく息を吐いた
レヴィアは、乱れた胸元を直しつつ言った。

「あなたねえ、相手をにらみ倒すなんて不良なことやってるんじゃないわよ。フェイトおば様が見たら泣
くわよ」
「シグナム先生に言われてるんだ。お前が同年代と喧嘩をすればただの弱い者いじめになりかねないから、
本気でにらんでも立ち向かってくる奴とだけ殴り合えって」
「…………あっそ」

 教える師匠も実践する弟子もどっこいどっこいだった。クロノを教えた猫姉妹といい、どうもこの家系
は微妙に師匠運が悪い。

「ていうか、なんであなたこんな所にいるのよ?」

 ハラオウン家と受験会場を結ぶ線とは正反対の方角である。

「父さんに本局まで呼び出されてて。最近身体が鈍ってたから、テレポーターまでバスは使わないで走っ
ていくことにしたんだよ」

 クロードが走らねばならない距離を漠然と計算し、レヴィアは内心でこの体力馬鹿と呟いた。自分なら
その三分の一の距離を走っただけで死ねる自信がある。

「しかしまだああいう奴がいるんだな。JS事件なんて、もう十数年前のことじゃないか」
「難癖つけたがる奴は、百年経っても言うわよ。…………けどね、ああいう大馬鹿は論外だけど、お爺様
のやったことについて文句言われても仕方ないって思うこともあるのよ」
「……どうして?」
「JS事件で家や家族を失った人にしてみれば、レジアス・ゲイズはスカリエッティの一味も同然よ。資
金を渡したり、違法行為だと知っていながら見過ごしたのは事実なんだから。孫を見かけたら殴りたくなっ
ても不思議じゃないわ」
「けど祖父に罪があったからって、孫に八つ当たりするのは理不尽だろ?」
「理屈では、ね。……恨みつらみって、本人が死んだとか、時間が経ったからとかで簡単に片づくもんじゃ
ないから」

 そのことを、レヴィア自身が一番知っている。
 少し目元を緩め、表情は逆に真剣になりながらレヴィアは言った。

「あなたも気づいているかもしれないけどね、私は未だにチンクさん達としゃべるの、苦手なのよ」

 彼女達元ナンバーズと顔を合わせる度に、心の中から突き上がってくる言葉がある。
 レジアスお爺様を返してください、と。

「どうしても忘れられないのよ。あの人達のお姉さんが、お爺様を殺したっていうことが」

 ハラオウン家に預かられて以来の生活が不幸せだなどとは、口が裂けても言わない。
 それでも、時々思ってしまうのだ。戦闘機人ドゥーエが、ナンバーズが、スカリエッティがいなければ、
もっと違う今もありえたのではないかと。
 元々持っていた理想に立ち返り、再び管理局で平和のために身を粉にして働く祖父と、それを助ける母。
自分は二人の姿を直に見ながら育つ家族三人の温かい家庭の想像が、目の前をちらつくことがあった。
 そうなるかもしれなかった未来を奪った人の姉妹が、僅かな期間の服役だけで何一つ不自由なく暮らし
ているのを見れば、胸に黒い靄が湧き上がり口調は微妙に他人行儀なものとなってしまうのだった。
255あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:07:23 ID:6PRlHhFU
「だから私が他人に罵られても仕方ないかなと思っているのよ。私は、レジアス・ゲイズの孫娘なんだか
ら」
「……それで君はいいのか?」
「いいのよ。お爺様がそういうことをしたと分かった上で、私はお爺様を尊敬してるんだから。他人が私
やお爺様を恨むのは自由だけど、だからって私の憧れを変えなきゃいけないわけはないし」

 レヴィアの言葉に、クロードはただ戸惑った顔をして黙っている。
 当然だろう。肉親を理不尽に奪われたことのない者にとっては、この感情を頭では分かっても完全に理
解することは出来はしない。それを悪いことだと思いはしないが。
 ちょっと深刻に言い過ぎたかと、レヴィアは語調と表情を普段のものへと改めた。

「つまり、そういうことがあった場合は自分の尻は自分で拭くって言いたかったのよ。あなただって私や
トウヤに介入されたくないことの一つや二つはあるでしょ」
「それはそうだけど……」
「ていうか、あなた達が関わると間違いなく大事になるから」

 こいつといい八神家の息子といい、過剰なまでに友情に厚い部分があるのは困り者だった。
 ハラオウン家に来て間もない頃、新しい学校でも即行でいじめられていたレヴィアをたまたま通りかかっ
たクロードとトウヤが見つけ、いじめていた上級生六人と口論の果てに乱闘となった事件など、五年経っ
ても校内で知らぬ者はいない伝説である。
 もっとも暴力を用いたことなどの是非を抜きにすれば、レヴィアにとっては人生で屈指の嬉しかった出
来事の一つだが。誰かがいじめられている自分のために本気で怒ってくれるなど、生まれて初めてのこと
だったのだ。
 たぶんあれからだろう。頑なに押さえつけていた素の自分を表に出せるようになったのは。

「あなたもうちょっと自制心ってものを身につけないと、管理局入ってからえらいことになるわよ。今の
ままだと、犯罪者のアジト見つけたらそのまま殴りこみかねないわ」
「……そこまで無謀で暴力的な性格はしてないさ」
「いーや、たぶんするわね。翠屋のシュークリーム十個賭けてもいいわ。……ところでクロード、クロノ
おじ様との待ち合わせ時間いいの?」
「あっ!?」

 時計を見たクロードが、慌てて駆け出した。その背中に向かって、レヴィアは大声で呼びかけた。

「けどねクロード、もし私一人じゃどうにもならないぐらい理不尽なことされた時は、遠慮なくあなたた
ち頼らせてもらうわ! お礼は翠屋のケーキ三個で!」
「……一個でいいよ!」

 振り向いたクロードは片手を上げて応えると、今度こそ走り去っていった。
 友人に手を振ったレヴィアも、目当ての本屋に向けて歩き出す。
 久しぶりに参考書以外の本を購入し、バスの中で読みながらハラオウン家へ帰り着いた時には二時を回っ
ていた。
 玄関先には、リンディの靴の他にレヴィアの見知らぬヴァンプスが一足脱がれていた。
 リビングからはずいぶんと弾んだ会話が聞こえている。レティあたりが来たかと想像しつつ、レヴィア
はドアを開けた。

「ただいま帰り……!?」
「お帰りなさい、レヴィア」

 テーブルについてコーヒーを飲みながら歓談していたのは、二年ぶりに顔を合わせる遠く離れた次元世
界にいるはずの母だった。
 一瞬で、レヴィアの喉が詰まる。能弁だと自負している舌は、無駄に空回り口から出たり入ったりする
だけ。それがまた頭に血を上らせる。
 何度も唾を飲み込み直してから、ようやく言葉が出てくれた。

「お、お母さんも……お帰りなさい」
「ええ、ただいま」
256あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:08:46 ID:6PRlHhFU
 恥ずかしさで俯きつつもちらちらとオーリスの顔をうかがえば、非常に元気そうだった。
 五年前は半分白髪だった頭は、染めたのかレヴィアと同じ色になっている。頬も血色が良くなっている
し、笑顔は何かを諦めたが故の空しいものではなく、娘の顔が見れた嬉しさで笑っていた。
 会う度に、オーリスの顔からは老いや気苦労といった暗い要素が消えている。赴任地は本当に何もない
管理外世界だというが、母もきちんと幸せに過ごせているようだとほっとした。

「…………どうしてお母さんはいつも、こっちに来るのを秘密にするのよ」
「それはね、レヴィアさんのそういう顔がこんな時しか見れないからよ」

 小声で言ったつもりだったが、リンディの耳にしっかりと捉えられていた。
 楽しそうに笑うリンディとオーリスに、レヴィアはなおさら顔を赤らめてうつむくしかなかった。

(……この人にだけはかなわないなぁ)




          ※




「ただいま」
「おかえりおじきー!」

 玄関に上がってすぐ、トウヤにとって姉よりも年の近い甥っ子のタイガが駆け寄ってきた。その勢いの
まま飛びついてきたのを、危うく受け止める。四歳児の体重と突進力をもろに受けて思わず転びかけたが、
タイガは全く気にした素振りもなく訊ねてきた。

「おじき、テストどうだった?」
「お前までそれ聞くのかよ。たぶん受かってるだろ。たぶん、な」
「だったら久しぶりに公園行ってゲートボールの練習しようぜ」

 ある日ゲンヤが「あいつはお前の兄ちゃんじゃなくて叔父貴なんだぞ」と言って以来、タイガがトウヤ
を呼ぶ時は「おじき」である。
 面白いのでトウヤもそのままにしていた。おじちゃん、と呼ばれていたらたぶん全力で嫌がっただろう
が。

「だ、だめだよタイガお兄ちゃん、トウヤお兄ちゃんはテスト終わったばっかりで疲れてるんだから……」

 後からタイガの双子の妹、ルカが出てきてズボンを引っ張って止めようとするが、声が小さいのと力が
弱いので兄貴は完全に無視している。
 タイガが離れたのは、車を車庫入れしていたはやてが戻ってたしなめてからだった。

「駄目やでタイガ。トウヤはまだお昼ご飯も食べてないし、ちょっと私と話あるから遊ぶのはそれから」
「はーい、分かったよはやてさん」

 家の中で一番偉い人の言葉はあっさりと聞き入れ、タイガは自分の部屋の方へと走っていく。
 慌てて後を追うルカが、ちょっとだけトウヤの顔を見上げてからとてとてと廊下の向こうに消えていっ
た。
 こいつもなんだかんだ言いつつ抱っこしてもらいたかったのかと、今更気づくトウヤ。

(控えめっつうか気が弱いっつうか、いまいちはっきりしない子供だよな、あいつ。レヴィアあたりと足
して二で割りゃちょうどいいのに)

 そのあたりは父親の血なのかと思いながら、はやての後についてトウヤは二階に上がる。はやての部屋
へ入り、受験勉強中預かってもらっていたデバイスを返してもらった。
 キャリバーシリーズの新型なので、スバルとギンガが持っているマッハ、ブリッツと待機状態の形は同
じである。違いといえば、姉達は自分の髪の色と同色だったが、トウヤに渡された物は白色に黒い十字マー
クが入っていること。
257あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:10:19 ID:6PRlHhFU
「預かってた間にいじってもらって、こないだトウヤが頼んでたシステム入ってるで」
「マジで? たぶん無理だって諦めてたんだけど」
「マリーとシャーリーはほんま苦労したみたいやで。後でお礼言うときや」

 姉達と違ってウイングロードの機能が無い分、何か別の要素が欲しいと思い半分洒落で頼んだのだが。

(……考えてみりゃ、威力はでかいけど使える局面が限定されてるよなぁ。普通の蹴りと同じじゃたぶん
無理だし。後でギン姉とヴィー姉に相談してみないと)

 搭載された以上は有効活用せねばと頭を捻るトウヤに、腰掛けたはやてが声をかける。、

「ところで入学前に訊くのもなんやけど、トウヤは卒業して管理局入ったらどんな道進むか考えてる?」
「特に考えたことないかな」

 陸士隊に入るという以外には、何も決めていない。陸を志望したのも、ゲンヤやギンガが陸士隊だった
からというなんとも曖昧な理由である。一応飛行魔法は並程度に習得しているから、もうちょっと別な理
由があれば海か空にしていただろう。

「この辺ぐらいまで偉くなりたいとかは?」
「無いなぁ」
「クロード君みたいに、私とかゲンヤさんに憧れて部隊指揮しようと思ったりせえへん?」
「……あー、ごめん。思ったこともない」

 実際にやってみたらまた別なのかもしれないが、今のトウヤとしては後方で右だ左だと指示を出すより
も、先陣切って突っ込み暴れ回るのが好きだった。
 憧れはむしろ、一騎当千ヴォルケンリッターやストライカーの姉達に抱いている。それも具体的なもの
ではなく、漠然とあれぐらい強くなりたいという程度のものだが。

「ま、ええんちゃうかな。ゆっくり考え。……お母さんな、自分の人生でちょっと後悔してることがある
んよ。夢を早く見すぎたなぁって」

 深く椅子に腰掛けたはやてが、過去を思い出す遠い眼をした。

「……どういうこと? 夢を早く見すぎたって」
「トウヤよりもうちょっと上の年ぐらいからな、ずっと思っててん。精鋭を集めて、迅速に事件を解決出
来る部隊作ろうって」
「それが機動六課?」

 はやてが初めて部隊指揮を取り、JS事件を解決に導いた伝説の部隊。十年以上経った今も、管理局で
その名を知らない者はいないと聞いている。

「人手不足の中、そういうことが出来る人材かき集めて部隊一つ作ろうと思うんは大変やったわ。何時間
も分からず屋の説得したり、根回しの接待やったりしてばっかりで。それが十九まで続いてん。ほんま潤
いのない青春時代やったわ」
「けど、父さんと恋人同士になったのもそれぐらいじゃなかったっけ?」
「そうやけどろくにデートも食事も行けへんかったな。ほんまよう我慢してくれたでゲンヤさん。……な
んで昔の私、あんな生き急いでたんかな」

 今年で十二のトウヤには、生きるのを急ぐということがよく分からない。それでもはやての青春があま
り面白くないものだったことは知れた。たぶん、今の受験勉強状態が何年も続くようなものだろう。
 トウヤに聞かせるというより、独り言のようにはやては言葉を並べていく。
258あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:12:00 ID:6PRlHhFU
「たぶん、管理局入りが早すぎたからやな。遊びの約束してても仕事が入ればキャンセルして、せっかく
通えるようになった学校も休みがち。テスト期間と長期任務がかぶった時とか地獄やったな」
「そんなしんどいことしてたのかよ、母さん」
「あれで夢の幅が狭くなってしまったのかもしれへん。……なのはちゃんやクロノ君達と働くのもけっこ
う楽しかったけど、この年になるとちょっと損したなて思うわ」

 そういえば管理局には年齢一桁の頃から働いている職員も珍しくないが、はやてからも姉達からもそろ
そろ入局したらどうかと言われたことは一度も無かった。思えば戦闘訓練も士官学校の受験も、トウヤが
自分からやりたいと言い出したことだった。

「だからな、トウヤ」

 はやての視線が過去から戻ってきてトウヤを見つめる。トウヤも背筋を伸ばした。

「トウヤは友達作ったり遊んだりしながら、ゆっくり時間をかけて夢見つけ。トウヤがほんまにやりたい
ことがあるって言うなら、別に管理局入りしなくても私もシグナム達も何も言わへんから」

 伸ばされた腕が、トウヤの頭を抱きしめる。

「家族がみんな管理局で働いてたり士官学校出たからいうて、絶対に局員にならなあかんなんていうきま
りはあらへん。……入学前にな、これだけは言いたかってん」

 十二にもなって母親に抱擁されるのは恥ずかしいものがあったが、トウヤは嫌がらず胸に抱かれるがま
まにした。
 明日から、はやては半年の長期航海に出かける。帰ってきてからも、士官学校の休日とはやての休暇が
合うことは少ないだろう。
 しばしの別れとなる前の時間を、親子はゆっくりと噛み締めた。




          ※




 切っていた携帯電話の電源を入れると、着信歴にクロードの名前が二つあった。いきなり帰った自分を
心配してかけてきてくれたのだろう。
 返信しなければと思ったが指は動かず、携帯を閉じてユーナはまたベッドの上で膝を抱え込んだ。

『マスター、昼食の時間はとっくに過ぎておりますが。食べなくていいのですか』

 机の上にある緑色の宝玉が控えめに声をかけてくるが、ユーナは黙って首を振った。
 なおも数分間じっとして考えていたユーナだったが、やがて決心するとベッドからのろのろと立ち上が
り部屋を出た。
 向かう先は、母親の部屋。声もかけずにドアを開けると、部屋の中で雑誌を読んでいたなのはに向かっ
て地面に打ちつける勢いで頭を下げた。

「ママごめんなさい!!」
「ど、どうしたのいきなり!?」

 レモンティーを飲んでいたなのはが、危うく零しかけながら慌ててカップを置いた。

「ひょっとして、今日の試験出来なかったとかそういうの?」
「……違う。私、ママ達に嘘ついてたの」

 ほんの少し涙ぐみながら、ユーナは告白した。

「あそこの士官学校受けたの、ママと同じ教導官になりたかったからって言ったけど本当は違う。……ク
ロード君と、同じ学校に行きたかったからなの」
259あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:14:12 ID:6PRlHhFU
 士官学校にいる数年間は原則寮生活となる。
 それこそ生まれた時から家族ぐるみの付き合いをしており、兄妹のように育った大好きな相手。顔を合
わさなかった日などこれまでほとんど無かったのが、いきなり離れ離れの生活になるのはユーナには耐え
られなかった。だからクロードが受験先を決めた時、即座に自分も同じ士官学校にした。
 ただ理由は、恥ずかしかったので周囲には完全に伏せていた。そのことが、日が経つにつれ心の重荷と
なっており、ついに今日耐え切れず言ってしまおうと決心したのだ。

「本当にごめんなさい!」

 もう一度頭を下げ、なのはのお叱りの言葉を待つユーナだったが、降って来たのは優しい言葉だった。

「……いいんじゃないかな、そういうのも」
「えっ?」
「ユーナ、今年でいくつになった?」

 てっきり嘘をついていたことを凄く怒られるかと思っていたのになのはは穏やかな顔のままで、ユーナ
はきょとんとしたがすぐに答えた。

「…………十二歳」
「その年で管理局に入って働いている子もいるけど、普通に暮らしていたらまだ小学生だよね。それぐら
いの年なら好きな男の子と同じ学校に入りたかったから進学先を選んだっていうことぐらい、それなりに
ある話だよ」
「でも私、ママやパパに嘘ついて……」
「教導官になりたいっていうの、全部嘘なの?」
「…………ううん。士官学校に入りたかった一番の理由はクロード君だけど、二番目はママみたいになり
たかったから」

 幼い頃から眼にしてきた空を飛び回り自由自在に砲撃魔法を操る母の姿に憧れがあることは、けっして
嘘ではない。

「だったら何も怒ったりしないよ。……ユーナは、本当にクロード君が好きなんだね」
「……うん」
「ママだってね、パパがどこか遠くへ何年も単身赴任するようなことになっちゃったら、きっとすごく迷
うよ。もしかしたら、教導官辞めてついて言っちゃおうって決心するかもしれない。本当に好きな人って
そういうものだよ」

 優しく笑って自分を許してくれたなのはに、膝から力が抜けてユーナはベッドに座り込んでしまった。

「そんなに緊張してたの?」
「だって……周りのみんなに嘘ついたのってこれが初めてだからすごく気になってて……夜もよく眠れな
かったんだよ」
「ふふふ、ユーナは私に似て真面目だね。……でも一つだけママと約束しようか。昔ね、プレシアさんっ
ていう人がいたんだ」
「クロード君のおばあちゃん?」

 クロードから名前を聞いたことはあった。なのはとフェイトが出会うきっかけとなったPT事件を起こ
した人。

「その人はアリシアさんっていう子供がいたんだけど、その子を愛しすぎてね。事故で亡くなった時に悲
しんで悲しんで……すごく悲しんで間違った方向に愛が行っちゃったの。そのせいでフェイトちゃんやア
ルフ、管理局の人とかが身体も心もいっぱい傷ついたんだ」

 そんなことは知らなかった。そういえばプレシアについて語った時、クロードは微妙に曖昧な表現しか
していなかった気がする。あれは祖母を写真でしか知らないということだけでなく、そのあたりの事情も
あったのかもしれない。
260あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:15:16 ID:6PRlHhFU
「だから約束しようね。クロード君がユーナにとって大切な人なのはいいけれど、だからといってクロー
ド君さえいれば他に何もいらないとか、クロード君さえ傷つかなかったら他の人がどれだけ傷ついても構
わないとか、そういう考えだけは持っちゃいけないよ? はい、約束の指きり」

 なのはが小指を出してきて、ユーナの小指に絡める。

「「ゆーびきーりげんまん。うそついたらはりせんぼんのーます」」

 日本に伝わる約束する時の歌を歌って、母子は指を離した。

「ちょっとだけ心配だったんだ。ユーナはクロード君のこと想ってる時は、周りが全然見えてないみたい
だから、間違った愛し方をしちゃうんじゃないかって」

 母の言葉に心当たりはあった。クロードと二人っきりで出かけている時など、彼の顔や言葉ばかりに気
が行って街の景色も何もほとんど眼に入っていない時間がある。
 レヴィアからもそれとなく「もっとクロード以外の男の子にも眼を向けなさい」と言われたことがあっ
た。

「うん、約束するよママ。クロード君にも周りの人にも迷惑かけないように好きになるから」

 ユーナが頷くのと同時に、お腹がくぅと鳴った。そういえば朝ご飯からずっと何も食べておらず、その
昼食もテストの緊張であまり満足に食べていなかったのを思い出す。

「元気が出たらお腹も空いちゃったね。冷蔵庫にお昼ご飯のオムライスあるから食べてきて。ご飯食べた
ら、出かける場所があるから」
「どこに?」
「本局だよ。……ユーナ達のお祝いをしにね」




          ※




「駆けろ隼! シュツルムファルケン!!」

 掛け声と共に放たれた矢が着弾し、地面が爆砕する。
 余波は相当離れていたクロードにまで及んで、思わず腕で眼を守った。突風が収まり眼を開けると、地
面に巨大な大穴が開いていた。訓練室なのでシミュレーションマシンが作り出したホログラムだが、実際
の地面だったとしても同じぐらいの穴が開いたはずだ。

「これで三割の威力といったところだ」

 射の構えを解いたシグナムが、振り向いて言った。

「見ての通り、破壊力は大きいが隙も大きい。使いどころを間違えれば一瞬で窮地に陥ることもありえる」
「そこで逆をついてディレイドバインドの罠を仕掛けるという手もあるけれど」

 クロードの後ろで見ていたクロノが、自分の戦闘スタイルに照らし合わせた意見を言う。
261あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:16:36 ID:6PRlHhFU
「これでお前に見せていない技はもう無い。免許皆伝とはいかないが、目録伝授といったところか」
「はい」
「単純な戦闘の腕前ならお前はかなりのものになっている。これから入る士官学校の教師の中には、ひょっ
としたらお前より弱い者もいるかもしれない。だが絶対に慢心するな。そういう者達も、お前には絶対的
に不足している経験を持っている。学べる部分は多いはずだ。……これが、師匠としてお前に教えてやれ
る最後のことだ」

 シグナムの手が、かき混ぜるようにクロードの頭を撫でた。力が入りすぎているため乱れた髪の毛が眼
に入りかけたが、クロードは何も言わず下を向いていた。

「明日から私は、主はやてについて長期航海だ。戻ってくる頃にはお前の入学式は済んでいるだろう。士
官学校を出て管理局入りすれば、もう私とお前は師匠と弟子ではなく、同僚になる。つきっきりで教えて
やるのは、他の局員の手前もう無理だ」
「……分かっています」

 はやての戦艦に配属となればそういう機会もまだあるかもしれなかったが、可能性はきっと低い。
 教え方は父や母に比べれば乱暴なところがあったし、容赦なく打ち据えられて泣きかけたこともあった。
 それでもクロードにとってシグナムは、家族や友人の次にかけがえのない師であった。手取り足取り指
導してもらうことはもうないのかと思えば、思わず視界がぼやけた。

「なんでもかんでも正面から受け止めすぎて深刻ぶるのはお前の悪い癖だ。何もこれが今生の別れという
わけではないのだから、泣いたりするな」
「……はい」
「腕を上げたお前と模擬戦を出来る日、楽しみにしているぞ」

 シグナムが手を離す。涙が零れないよう、クロードはしばらく下を向いて瞼を閉じる。
 涙が完全に引っ込んでから顔を上げると、離れていたクロノもシグナムの隣に並んでいた。

「さて、餞別代わりに渡す物がある」
「一つが、これだ」

 クロノが懐から出した物を見て、クロードは驚きに思わずぽかんと口を開けた。
 待機状態であるタロットカード型をしたデバイス。それが何なのか、クロードに分からないわけがなかっ
た。

「S2Uを……僕に?」
「少将になってからはメンテナンス以外はしていないから、威力は最新型に比べたらかなり劣る。本格的
に使いたいなら徹底的にチューンナップを……」
「ちょ、ちょっと待ってよ父さん!?」

 差し出されたS2Uから、思わずクロードは一歩退った。

「父さんのデバイスくれるなんて……」
「デバイスはデュランダル一つで十分だ。そもそも最近戦闘なんて全くやっていないしな」
「けど、これはずっと父さんが使ってきた思い出のある大切な物だから……」
「……今、私が言ったばかりのことを忘れたのか?」

 親子の会話に、シグナムが呆れた声で口を挟む。

「そう深刻に受け止めるな。大事な物だからこそ渡したいこともある。クロノ少将はな、ただお前が心配
なだけだ」
「何を言うんだシグナム!?」

 いきなり焦った顔をするクロノを軽く無視して、シグナムは続ける。
262あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:18:00 ID:6PRlHhFU
「何しろお前が五日以上親元を離れるなどということはこれまで無かったからな。大切な息子が何年も寮
暮らしで離れるというなら、自分の大事な物の一つも渡してお守り代わりにしてもらいたい、と思うのが
親心というものだ」
「それじゃまるで僕が親馬鹿みたいじゃないか」
「親馬鹿ではないつもりだったのか?」
「断じて違う」
「だったら、このままS2Uをクロードが受け取らなくてもいいな」
「…………」

 憮然として反論を探しているようだったが、やがてクロノは諦めた表情となり言った。

「……まあ、概ねはシグナムが言っていたとおりの理由だ。たいそうなことは考えず、お守りにでもすれ
ばいい」

 照れているのか、ややぶっきらぼうな口調でクロノが再びカードを差し出してくる。まだ少し躊躇した
ものの、クロードはそっと受け取った。
 銀のカードの表面を撫でると、眼には見えない無数の傷が指先に感じられた。クロノの愛杖として戦場
を潜り抜けていく間に出来た傷。
 父が歩んできた道を全て知っているデバイスを、クロードは大切に胸ポケットへと収めた。それだけで、
ずしりと服が重くなる。頼もしさを伴った重みだった。

「そしてもう一つが、こっちだ」

 今度はシグナムが、いつの間にか左手にぶら下げていた長い物を手渡してくる。
 鈍く光る鋼色をした一本の片刃剣。

「……レヴァンティン!?」

 束の間、師の愛剣が渡されたのかと思ったが、すぐにクロードは気づく。
 レヴァンティンとは何度も稽古で打ち合ったことがあるし、手に取ったこともあるので細かい部分まで
覚えている。
 目の前のデバイスは、レヴァンティンと比べて刀身と柄が若干長い。通常の剣なら鍔の部分に当たる場
所にある円型の部分も、青ではなくクロードの眼と同じ赤色である。
 そこから機械の声がした。

『あなたが、私の主となられるクロード・T・ハラオウンですね?』
「主? っていうことは……」
「ああ、お前専用のデバイスだ。私とクロノ少将、そしてテスタロッサからの早めの入学祝になる」
「入学式の日に渡そうかと思ったが、士官学校に入る前に慣らしをやっておいた方がいいだろうからな」
「……ありがとうございます。シグナム先生。父さん」

 それに母さんも、と心の中で呟き、クロードは剣を受け取った。
 S2Uを手にした時とはまた違うずっしりとした重み。悪いものでは、なかった。
263あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:19:04 ID:6PRlHhFU
「見ての通りレヴァンティンの後継機だ。さっき見せたシュツルムファルケンも撃てる。ただ、内部はお
前が使う氷結魔法に対応するように出来ているが」
「その部分はデュランダルのシステムに近いな」
「それだけじゃない。待機状態にしてみろ」

 クロードが命ずるより早く、デバイスは一瞬で片手に収まるサイズへと変形した。
 その姿は、銀色の二等辺三角形。色以外は、母のデバイスそのままの格好である。そういえば、声もバ
ルディッシュとまったく同じ声だったと、クロードは今更気づく。

「母さんのリクエストだ。基本がレヴァンティンで中身がデュランダルになるなら、バルディッシュの部
分も入れて欲しいとごねてね」
「まったく……テスタロッサは子供達が関わるといつまで経っても小娘のところがあるから困る」

 ため息をつく父と師。クロードにも思い当たる点があったので曖昧に苦笑しつつ、自分の物となったデ
バイスへ顔を向ける。

「君の名前は?」
『まだ登録されておりません。これまではずっと型番で呼ばれておりました。主が望まれるならそのまま
でいいですが、新しい名前をつけて頂けるなら嬉しいです』
「そうか、だったら」

 ずっと、自分のデバイスを手に入れたら名づけようと思っていた名前がある。
 かつて父のデバイスの名前の由来を聞いた時に教えてもらった、地球の神話。
 騎士達の英雄譚で、主人公が持っていた宝剣がデュランダル。そしてその騎士が仕えた王が持っていた
とされる、デュランダルと同じ製法で作られたという剣の名前。
 その銘を今、己が剣にクロードは与える。

「君の名前は……」

 クロードが名前を呼ぶと、天にかざした白銀のデバイスは光を反射して喜ぶように煌いた。




          続く
264あの日見上げた空へ:2008/08/09(土) 21:20:13 ID:6PRlHhFU
          おまけ



・エリー・モンディアル
電気変換資質を継承し、祖母・父に続いて閃光の二つ名も受け継ぐ。
両親も親戚も礼儀正しい人ばかりなため、周囲にいないちょっと乱暴で生意気な男の子がタイプ。
具体的にはナカジマ家の長男。

・キリュー、ヒリュー、シリュー
両親と主人共々、モンディアル家居候継続中の三兄弟。
母が仕事で不在時は、エリーに紫髪の弟か妹を作ろうと画策するルーテシアを止めるのに労力を費やす苦労蟲。

・タイガ・K・ナカジマ
管理局入り後は叔父貴以上の問題児としてエリオ、ひいてはクロードに頭痛と胃潰瘍をもたらす。
ヴィータと仲が良いせいか若干ロリの気があり、背は低めでツルペタ童顔な女が好み。
具体的にはモンディアル家の一人娘。

・ルカ・K・ナカジマ
双子の兄の暴走を止めようと頑張るが絶対に巻き込まれる非力な女の子。
ワンコ大好きで、バニングスさん家には毎年遊びに行く。

・フレイヤ・グラシア
魔力・体力・権力・財力・智謀・美貌、なんでも持ってるチート女。
笑えないレベルで真面目に「この世は私のためにある」と思っている。
クロードが世界で唯一お前呼ばわりする女であり、宿命の仇敵。



          これまた次回に続く
265サイヒ:2008/08/09(土) 21:22:09 ID:6PRlHhFU
以上です。
そういう展開の仕方をするアニメでは無いと分かってるんですが、
エリキャロあたりには年相応にしょうもないことで悩むシーンがほしかった。


ママによってヤンデレの芽を摘まれたユーナは、
恋人に尽くしまくって駄目人間にしてしまう逆の意味で悪い女に育つのでした。
しかし未来の旦那は甘やかすのも甘えるのもエキスパートクラスの男なので全く問題無し。


次回からそろそろ「作者自重」の四文字が消えます。
266名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 21:34:18 ID:p9tRxWrz
>>265GJ!
サイヒさんキター
267名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 21:38:15 ID:OiWNlVkR
>>265
GJ!!
次も楽しみにしています。大家族というのも良いですね。

8歳の時に引きはなさるとは流石に早いですね
トウヤの乳への欲求も満たされるといいですねw
268名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 21:43:14 ID:SdXsqls2
GJ!

しかし、クロノとシグナムに死亡フラグが立ったような気がして冷や汗が……。
違うよね?

そして、ルーテシアがんばれ。
269名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 21:55:23 ID:0qCNbyCL
>>265
サイヒ氏GJ!
みんないい家族になっていますね。幸せであることはいいことです。
けれどもフレイヤによる修羅場も期待しますw
270 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/09(土) 22:50:41 ID:OHHwjy4q
皆様GJです。と言う事で…そろそろ書かせていただきます。

・『世界の平和を取ってスカの嫁兼監視役になった未来』『自分の幸せを取ってユーノと結婚した未来』
の二つのIFをそれぞれ描きます。
・スカがヤンデレになるのはなのは×ユーノルートのみです。
・エロあり(ただしドラマメインなので簡略的になってます)
・タイトルは『二つの未来』
・鬱注意です。(×ユーノルートでは、ヤンデレ化したスカの手によって様々な鬱展開がありますし、
×スカルートもなのは×スカ要素嫌いな人にとっては鬱ですから)
・一つ一つを事細かに描写する事もあれば、ダイジェスト風のあっさりした物になったりと、
その時々によって描写に差があります
・×スカルートのスカがちょっとマゾっぽい
・×スカルートのなのははちょっとツンデレっぽい
・時期的に色々不謹慎なネタもありますが…ご了承下さい。
・オリキャラも出るでおじゃるよ。
271二つの未来 1 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/09(土) 22:51:30 ID:OHHwjy4q
        一つ目の未来 『世界の平和を取ってスカの嫁兼監視役になった未来』

ユーノは結局なのはの求婚に応じる事は無かった。ユーノはなのはを友達以上の感情で見る事は
出来なかったし、何より『スカリエッティと結婚する位ならユーノ君と…』と言う不純な動機が
ユーノには受け入れられなかった。それどころか、この事が原因で二人の仲が悪くなってしまったのだ。

ムシャクシャしたなのはは、またもなのはに求婚して来たスカリエッティを捕え、軌道拘置所に放り込んだ。
これでもうスカリエッティの悪夢に苛まれる事は無くなるし、悪くなってしまったユーノとの仲も
これからゆっくり元に戻して行けば良いと考えていたが…

「おはよう高町なのは君! 今日も綺麗だね!」
「え…。」

翌日、何事も無かったかのようになのはの前に現れたスカリエッティの姿があった。
これにはなのはも困惑せざるを得ない。

「え!? え!? 確かに貴方は私がこの手でフェイトちゃんに代わって軌道拘置所に
ぶち込んだはずなのに…ええ!? まさか…私が捕まえたのは影武者!?」
「ハッハッハッ! 違う違う。立派に本物だよ。」
「じゃあ何故ここにいるの!?」
「何故って…脱獄したからに決まってるじゃないか。あの程度の警備網は私にとっては無いも同然だよ。」
「…………。」

さわやかな笑顔に答えるスカリエッティに対し、なのはは呆れる他は無かった。

「で、今日は何しにやって来たの?」
「何しにって…今日も君にアプローチかけに来たに決まってるじゃないか!」
「堂々とアプローチって言わないの!」

なのはは思わず叫んでしまうが、そこでスカリエッティはそっとなのはの耳元に顔を近づけ…囁いた。

「実はね、今日ここに来る途中…クラナガン中心部の地下に爆弾を仕掛けて置いたんだ。」
「!?」
「100ミッド円ショップで買える材料で作った簡単な物で、直接どの程度の爆発力か試しては
いないのだが…仮に私が作成時に計算した通りの性能を発揮してくれるとするならば…
君の出身世界で言う所のゲンバクと言うのに相当する威力となるはずだ…。」
「げ…原爆!?」

なのはは硬直した。スカリエッティは広島・長崎原爆に相当する爆弾をクラナガンに
セットしていたと言うのである。
272二つの未来 2 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/09(土) 22:52:11 ID:OHHwjy4q
「貴方…何て事を…。」
「何て事を…って…。これは君が悪いんだよ。この私というフィアンセがいながら
他の男と浮気するから…。」
「誰が何時フィアンセになったのよ!! ってか浮気じゃない!!」

なのはは怒りを露にして怒鳴るが、スカリエッティは表情一つ変えない。良く見ると脚は震えていたが。

「しかしなのは君…私は以前にも言ったはずだ。君が私の妻となって、私を尻に敷かない限り
私の無限の欲望…それに伴う違法研究は止められないと…。」
「つまり…貴方がクラナガンに原爆級の爆弾を仕掛けたのは…私のせいだと…?」
「その通りだよ。君が私の方をふり向いてくれないから…私は勢い余ってクラナガンに
爆弾を仕掛けてしまった。その爆弾が爆発すれば間違い無くクラナガンに住む何万という人が
死傷するだろうね〜。ハッハッハッハッ!」
「くっ!」

余裕ある笑みを浮かべ言うスカリエッティに対し、怒りの込み上げたなのはは彼の襟首掴んでいた。

「街に原爆級の爆弾を仕掛けて笑ってられるなんて…貴方は悪魔だよ!!」
「そうさ! 私は悪魔さ! しかし…君はその悪魔を色恋に狂わせた魔性の女…
悪魔を遥かに凌ぐ…ド外道なんだよ!!」
「………!?」

なのはは硬直した。悪魔の科学者ジェイル=スカリエッティにド外道呼ばわりされてしまった
なのはの受けた心の傷は余りにも大きい。

「確かに最初の頃は、私に遺伝子レベルで刷り込まれた無限の欲望を抑えてくれる強き者として
君の存在を欲しただけだった。しかし…君の事を調べれば調べる程…君と言う存在が恋しく思えて来たのだ。
最高評議会メンバーの手によって科学者となるべくして作られたこの私には…色恋等不要と
されていたはずなのに…そんな私を色恋に狂わせたのが君だ! その強さと美しさを兼ね備えた
色香で私を惑わせた魔性の女なんだよ!!」
「………………………。」

なのはは何も言えなかった。以前にも悪魔と呼ばれた事は何度もあったが…それさえどうでも
良くなる程…なのはのショックは大きかった。

「だが…私は君と違ってまだかすかに良心が残っているのでね…。ある条件さえ満たしてくれれば…
直ぐにでも爆弾は解除しよう。」
「そ…その条件とは…?」

悪党に悪党呼ばわりされた怒りに耐え、平静を装い問うなのはだが…スカリエッティはかすかに頬を赤くした。
273二つの未来 3 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/09(土) 22:54:08 ID:OHHwjy4q
「決まっているじゃないか。前々から言っている通り、君が私と結婚して、これ以上私が
危ない研究をやったりしないように見張ってくれれば良いんだよ。さあどうするかね?
自分自身の保身の為にクラナガンに住む何万と言う人の命を犠牲とし、さらに今後も
私が次々作って行くであろう恐るべき研究によって人々の平和を脅かさせるか…
自分自身を犠牲にして、残りの人生全てを私に捧げる代わりに平和を守るか…。」

今までにあったスカリエッティのなのはに対する求婚は、確かになのはにとって腹が立つものの
何処かコミカルで愛嬌があった。しかし今は違う。クラナガンに住む何万と言う人の命を人質に取った
この上無い程にまでえげつない物だったのである。だが…スカリエッティをこうまでさせたのは
なのは本人に他ならないとも言える。

「爆弾が爆発したら…私や貴方も死ぬんだよ…。」
「構わない。君と一緒に死ねるなら本望だよ。」
「…。」

スカリエッティに恐れの色は無かった。なのはに怒鳴られた時は、平静としながらも脚は震えていたが…
今は全然震えてもおらず、むしろ喜びを感じていた。

「さあどうするかね? グズグズしていると本当に爆弾が爆発してしまうぞ。ゲンバクの恐ろしさは
質量兵器がむしろ当たり前な世界出身の君が良く知っているはずだが!?」

なのはは直接原爆を体験した世代では無いが…それでも学生時代に平和授業と称して
原爆で広島・長崎の人々が受けた被害等についての勉強をした事があった。
図書館には原爆体験を基にした漫画もあり、それにおける原爆投下後の描写のグロさは
トラウマになる程であった。そして…スカリエッティのし掛けた爆弾が破裂すれば…
それと同様の悲劇がクラナガンを襲うのである。

「あ…あ…あ…あ…。」
「ほらほら、どうするかね? どうするかね?」

なのはは恐怖のあまり身体を振るわせるしか無かった。爆弾が爆発すれば、なのはの親友である
フェイト達や大切な教え子達にもその被害は間違い無く降りかかる。なのはの大切な人達が
原爆漫画の様な事になってしまうのは…自分自身の死以上に恐ろしい事だった。

「どうするかね? どうするかね? 早くしないと爆弾が爆発してしまうかもしれないよ〜。」
「く…。」

苦悩するなのはをあざ笑うかの様に笑むスカリエッティに対し、なのはは睨み付ける事しか出来なかった。
仮にここでスカリエッティを再度逮捕し、爆弾の解除をさせた所でその場しのぎにしかならない。
彼はまたあっさりと脱獄し、さらに恐ろしい手を使って来るかもしれない。それによって
自分以外の他の多くの人にまで被害を受け、取り返しの付かない事になるかもしれない。
これ程なのはにとって嫌な事は無かった。
274二つの未来 4 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/09(土) 22:55:24 ID:OHHwjy4q
「………ったよ…。」
「ん? 何だい? 良く聞こえないが…。」

小声で口ずさんだなのはに対し、スカリエッティは彼女をあざ笑う様に耳を近付けて見せる。

「わ…分かったよ…。」
「んー? 聞こんなー!! もっと大きい声で言ってくれないかなー!?」
「……〜!!」

なのはの目には涙が浮かんでおり、怒りに満ち溢れた目でスカリエッティを睨み付け…

「分かったよ!! 結婚すれば良いんでしょ!? 貴方と結婚すればぁぁ!!」
「もっと大きな声で!! 誠意を込めて!!」
「け…結婚します!! 高町なのはは…ジェイル=スカリエッティと結婚します!!
妻として貴方に一生を捧げますぅぅぅぅ!!」
「おお! やっとその気になってくれたか! 嬉しいぞ!」

言ってしまった。ついに言ってしまった。なのははもう…逃げられない!
なのはは今程自分が善良で思いやりのある人間(?)である事を恨んだ事は無かった。
もし自分が自己中心的な悪女であれば、こんなにまで苦悩する事は無かったはずである。
だが、他の多くの人を犠牲にしてまで自分だけ幸せになろうとする程の度胸はなのはには無かった。
だからこそ、なのはは自分の残りの人生を…彼の妻となって監視する事に捧げる事を決めた。

「く…くぅ…うぅぅ…。何で私が…こんな事に…。」

なのはは悔しくて…悔しくて…泣くしかなかった。

間も無くしてなのはは管理局に辞表を提出し、局を去った。
スカリエッティと共に生きる道を選んだ以上、もう管理局にいる事は出来ないからだ。
その際、ヴィヴィオはフェイトに預けた。流石に彼女を連れて行く事は出来ない。
ヴィヴィオはスカリエッティを恐れている。ヴィヴィオにまで悲しい思いをさせたくは無い。
確かにこうしてヴィヴィオを置いて行く事も彼女にとって悲しい事だが、
スカリエッティと共に暮らさなければならないと言う苦痛だけは味わせたくは無い。
だからこそ、なのははあえて心を鬼にして…ヴィヴィオを置いて行った。

退職手続きを終えなのははスカリエッティと合流し、二人でクラナガン地下道に向かった。

「これが私のセットした爆弾だ。」
「こ…こんな小さな物が…?」

スカリエッティがクラナガン地下にセットした爆弾は、それに関して素人であるなのはが見ても
チープで手作り感の漂っているのが分かる簡素な物だった。しかし、見かけに騙されてはいけない。
作ったのはスカリエッティなのだ。恐らく本当に広島・長崎原爆級の爆発力を持つに違いない。
そして、スカリエッティはその爆弾の起爆装置を外した。
275二つの未来 5 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/09(土) 22:56:21 ID:OHHwjy4q
「これで良し。起爆装置は外したぞ。これでこの爆弾はただのガラクタだ。」
「そう…ならもう行きましょう…? 管理局の追手が来ない内にね…。」
「え…?」

淡々と答えたなのはにスカリエッティはかすかに驚いた様な顔をしていた。

「どうしたの? 私の顔に何か付いてる?」
「いや…私が爆弾の起爆装置を解除した途端に掌を返すのでは無いかと思っていたのだがな…。」
「そんな事をしたって無駄だって分かってるからね。仮に本当に掌を返しても…貴方は
また脱獄して、次はもっととんでもない事をしているはずだよ。だから…これからは
私が妻として貴方を監視させてもらう。もう二度と悪さはさせないよ。」

なのはは本気だった。本気でスカリエッティの妻となって、彼を監視するつもりらしかった。

「そうか…ならば行こう。なのは=スカリエッティ…。それとも私が高町ジェイルを名乗るべきかな?」
「なのは=スカリエッティで良いよ…。」

なのははかすかにスカリエッティを睨み付けながらも、彼の差し出した手に優しく手を添えた。

「さあ行こう我が妻よ! 我等の新たな人生の門出だ!」
「………………………。」

なのはは不本意な顔をしながらも、スカリエッティと共に手に手をとって歩き始めた。

間も無くしてなのはとスカリエッティの二人はミッドチルダを去った。
スカリエッティ自身脱獄囚であるし、なのはも彼と共に生きる道を選んだ時点でお尋ね者となった。
だからこそ、二人はもうこれ以上ミッドにいる事は出来ないのだ。

そして逃避行の最中、とある田舎世界でたまたま見付けた小さな教会で二人は
ひっそりと結婚式を挙げ、正式に夫婦となった。新郎新婦と式を執り行う神父の三人のみで
行われる静かで寂しい結婚式。当然ウェディングドレスは無く、なのはの純白のバリアジャケットに
軽くデコレーションするだけで何となくそれっぽくした程度のささやかな服装。
しかし二人にとってはどうでも良かった。そもそも結婚式とは
男女が夫婦として愛を誓い合う儀式であり、皆に祝われるのはオマケに過ぎない。

「さあなのは君、この指輪を左手の薬指にはめたまえ…。」
「この指輪は?」

突然スカリエッティが何処からか出した指輪になのはは疑問に思う。
その指輪はなのはが見ても相当高価そうな感じの代物で、どう考えてもスカリエッティが
買える様な物では無い様に思えたのだが…

「これは私の手作りの特別製の指輪でな。ロストロギアである特殊鉱石を、これまたロストロギアである
特殊金属製のリングに埋め込んだ物だ。」
「え…。」

彼が言った事は決してハッタリでは無かった。宝石部分であるロストロギア鉱石は
通常の他の宝石には無い不思議な輝きを放っていたし、ロストロギア金属で構成された
リング部はなのはの薬指の大きさに合わせ、自分でサイズを変えると言う不思議な力を発揮していたのだ。
しかも、これはスカリエッティ自身が作った世界に二つしか無い代物であり、もはや
値段を付ける事さえ出来ないだろう。どっちにしてもなのはにはどうでも良い事であるが。
276二つの未来 6 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/09(土) 22:57:31 ID:OHHwjy4q
正式に夫婦となった二人に、間も無くして管理局の追っ手が襲い掛かる。
しかし、なのはは自分の持てる力の限りを尽くしてスカリエッティを守った。
スカリエッティを逮捕して刑務所にぶち込んでも事件の解決にならない事はなのはが
一番良く分かっている。どうせ直ぐに脱獄され、むしろ事態を悪化させかねない。だからこそなのはには
スカリエッティがこれ以上悪事を働かない様に監視すると共に、彼を守り支えると言う義務があったのだ。

元エース・オブ・エースがスカリエッティと行動を共にしていた事実は管理局を震撼させた。
この事態に管理局は元機動六課メンバー達を集め、差し向けた。

「なのはどうして!? どうしてスカリエッティなんかと!?」
「フェ…フェイトちゃん…。」

親友であるフェイトに直接面と向かって問い掛けられれば、流石のなのはも心が揺れ動かざるを得ない。
しかし、自分の左手の薬指にはめられた指輪を見て大切な事を思い出す。自分には親友との友情を
捨てても守らねばならない物がある事を…。そして、なのはは意を決して言い放った。

「それがどうしたの? 私は彼の事が好きになったの。私は女なんだよ。男の人を
好きになって…その人と一緒に行く事を選んで何か悪い事でもあるの!?」
「え…な…なのは…?」
「そもそも皆は私を買いかぶりすぎなんだよ。私は一度好きになれば…
例え凶悪時空犯罪者相手でもホイホイ付いて行っちゃう下衆な女なんだよ…。」

不本意ながら、なのははあえて悪女を演じた。スカリエッティを捕えても何の解決にもならない事を
説明しても恐らく誰も信じはしないだろう。なのはが彼の妻として監視し、悪事を
働かせない様にすると言う行為も、管理局としては許されない事であるはず。
だからこそ、なのはが取った手段がこれだった。あえて悪となってスカリエッティと
共に行く事を選んだと言う事を…フェイト達にアピールした。

かつての仲間達との辛く悲しい決別。二人は何とかフェイト達の追撃を振り切る事に成功したが…
なのはの表情は暗かった。

「なのは君…大丈夫かい?」
「大丈夫だよ…。それに…これで良い。これで良いんだよ。私一人が悪者になって…
皆が救われるならそれで良いんだよ…。」

一見強がって見せるなのはだが…その目には涙が浮かんでいた。

「でも…やっぱり悲しい…悲しいよ…。」
「すまない…本当にすまない…。なのは君には辛い目にあわせて…本当にすまない。」

なのははスカリエッティに抱かれ、彼の胸の中で泣いた。管理局のエース・オブ・エースとして
君臨していた頃には見せなかった弱々しい…本当のなのはの姿…。

皮肉な事に、元機動六課メンバー達との決別がなのはとスカリエッティの距離を縮めるきっかけとなった。
今まではスカリエッティの方が一方的になのはを妻としていた印象が強いし、なのはの方は
結婚式を挙げたとは言え、あくまでもスカリエッティの監視役になる為の儀礼的な物でしか無く
まだ心の中には不本意さが残っていた。しかし…今は違う。かすかではあるが…なのはの中に
スカリエッティに対する想いが芽生えつつあった。

                        つづく
277 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/09(土) 22:59:34 ID:OHHwjy4q
とりあえず今回はここまで。少し長くなりそうですが、次回もお付き合い下さい。
注意書きにも書きましたが、かなり鬱っぽくてスマソですorz
278名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:09:55 ID:p9tRxWrz
二度と書くなクソが
279名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:10:38 ID:p9tRxWrz
なのスカキモイからやめて
280名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:11:28 ID:p9tRxWrz
書くなっていってんだろこのカス野郎
281名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:11:59 ID:KhjWZhIY
GJ!!
何かものすごい似合っててびっくりした。
正義の味方とラスボス的存在だからあわないと思ってたら意外とお似合いのカップルになりそう!
次回も楽しみにしてるぞ〜!スカなの!スカなの!!
282名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:12:50 ID:p9tRxWrz
キモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイ
283名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:13:25 ID:T6zZdxXj
不意に紛れ込む「ホイホイついていく」とかでどうしても吹いてしまうw
284名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:14:38 ID:p9tRxWrz
◆6BmcNJgox2はサイヒ氏を見習えカス
285名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:15:18 ID:p9tRxWrz
なのスカばっか書いてんじゃねーよクソ
286名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:27:33 ID:A/vgb1Wd
スカなの・・・・凄く良いです!

っていうかスカ可愛いよスカ、この茶目っ気がたまらない。
287名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:29:58 ID:lv/O8DUb
>>277
GJ!!。
ユーノ辺りがどんな反応をするのかが個人的に気になります。
それとアンチなんか気にせず頑張って下さい。
応援してます。
288名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:37:01 ID:qfptkM8H
>>277
GJです。嫌よ嫌よも好きの内展開キタコレ!
>図書館には原爆体験を基にした漫画もあり
低学年が読むと鬱になるギギギな漫画ですかwwww

今夜はとても投下が多いので、私も次辺り便乗させて頂いても良いでしょうか?
289名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:46:29 ID:9HFj+d1/
>>288
全裸で待ってます。
290アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/08/09(土) 23:48:30 ID:qfptkM8H
 大変長らくお待たせを致しました、ゼストの槍(後編)です。
 
 前作Little Lancerの続編的読み切りです。
 リハビリも兼ねて、前作をご存知無い方でもストーリーを理解して頂けるようなノリで書いてみました。
 NGワードは「L.L.外伝」です。
 
 なんだか大容量になってしまったので、もし投下が途中で止まった場合は連投で引っかかってるかも知れませんので 万一止まってしまった時は、お暇な方は私怨などして頂けば助かります。
 
291名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:50:27 ID:m/NQfrfP
了解です、支援待機してます
 彼女の部屋の片隅には、幼い子供向けの絵本が平積みにされて置かれている。
 娘が産まれた喜びに逸って、心の向くままに買い集めてしまった絵本の山だ。
 うっすらと被った埃を払いのけ、彼女は一冊一冊、ゆっくりと項を捲る。―――ある一冊の絵本を手にし、彼女は動きを停めた。
 同僚で親友で相棒だった、クイント・ナカジマから譲り受けた絵本の中の一冊だ。
 いつも姐御肌で皆に頼りにされていた彼女は、既に亡い。
 その絵本は、彼女の夫に所縁のある世界のものらしい。
 『うらしまたろう』と題されている。
 彼女は静かにその絵本の項を捲る。その最終項で彼女の手が止まった。

 『うらしまたろうが りゅうぐうじょうで すごしたのは たったみっかかんのことでしたが
  むらでは なんと 300ねんも たっていたのです―――』

 点々と、絵本に涙が滴り落ちた。
 積み上げられた絵本の山は、一度も娘に読み聞かせられることもなく、ただ埃を被っている。
 自分が眠っていた八年間の間に、世界は大きく変わっていた。信ずる上司、頼れる仲間達、唯一人の相棒、誰一人残ってはいなかった。
 残されたのは、屍のように重たい己の体一つ。
 不安げに自分を見つめる見知らぬ少女が、その日の朝にはベビーベッドで眠っていた我が子であることを受け入れるのには、相応の覚悟を要した。
 娘の成長を見守りながら在るべきだった8年間。
 朝には目覚めを見つめ、昼にはその笑顔を愛で、夜には絵本を読み聞かせ、寝顔にキスして眠りに就く……
 自分が夢見た幸福の8年間は、娘にとっては戦いの道具として使役されるだけの8年間だったのだ―――
  
 あの日の事を、決して彼女は忘れない。許さない。
 覚えている、仲間達の断末魔を。血に彩られた暗い回廊と、人の形をした死神の姿を。
 自分は、ただ老いてしまっただけの「うらしまたろう」ではない。
 今も尚、あの日の惨劇の夢は彼女を苦しめる。
 8年間の眠りの中にあった彼女にとって、11年前のあの事件は、僅か3年前の出来事に過ぎないのだから―――
 
 L.L.外伝 ゼストの槍(後編)

 海辺には、海鳴りの音と鳥の声だけが響いていた。
 寄せては返す波の音と漫ろに喚く鳥の声が奏でる和音は、やがて広大すぎる海と空に吸い込まれるように消えていった。
 浜辺に立つのは二人の女性。
 一人は、美しい紫髪の妙齢の女性。彼女の細腕には、余りに似つかわしく無い無骨な槍が握られている。
 一人は、輝く銀髪の少女かと見紛うような矮躯の女性。その右目は黒い眼帯に覆われている。
 紫髪の女性、メガーヌ・アルピーノはその端整な顔立ちの笑顔の下に、猛り狂う炎を隠して問うた。

「あれから―――幸せでしたか?」

 銀髪の女性―――チンクは、全てを受け入れた表情で、静かに頷いた。
「ええ、幸せでした」

 それだけで、メガーヌがチンクを殺す理由には事足りた。
 11年前のあの日、あれだけ数多くの人々の幸福を、未来を、全て足蹴にして砕いておきながら、のうのうと幸せを享受している。
 メガーヌにとって、それはどうしようもなく許し難い事だった。
 永い眠りから目覚めたあの日から―――自分も、幸せと呼ぶに値する生活を営めてはいる。
 愛娘と離れていた時を埋めながら過ごし、機動六課の寮母の職に就き、英雄達と共に暮らす。
 戦いの日々から離れ、日に干した布団の香りとささやかなティータイムを楽しむ。―――そんな日々を送ることが出来ている。
 だが、自分が幸せな日々を営む程、そんな幸せを営むことが永遠に出来なくなった仲間達の事を思い出す。
 ―――どうあって許せないことが、この世には、ある。
 
 メガーヌは刺し貫くような視線で、チンクに尚も問いかける。

「貴女達戦闘機人の扱いは上も随分手を焼いたそうね。
『スカリエッティの指示に従っていただけ?』『判断力を持たない唯の戦いの道具だった?』『ある意味では同じ被害者?』
 色々面白い議論が交わされているようだけど、貴女の罪は一体どれほどのものになるのかしら?
 二割かしら? 一割かしら? それとも百分の一? もしかして千分の一?」

 チンクは、残された左目でメガーヌを見据えて、はっきりと答えた。
「それが、譬え貴女が思う万分の一の咎であっても、私が貴女に命を捧げるには十分です」
 『任務の中に死に場所を求めるな』とは、ゼストの言である。
 ゼストは隊員達一同を集め、一人一人の顔を見つめ、重い声でそう伝えた。
 何時もは寡黙なゼストは、その日は饒舌に、熱の籠もった口調で隊員達にそう語った。
 ―――美しく死のうなどと思うな。喩え語り草に残るような死に様を見せたとて、死んだ時点でお前の任務は失敗なのだ。
 ―――戦斗に挑む以上、死地に身を投げる勇は決して忘れてはならん。
 ―――だが、それは命を軽視しても良いという事では断じてない。
 ―――命を賭ける価値のある任務は有るが、命と引き換えにする価値のある武勲など無い。
 ―――皆、その事をゆめ忘れるな。

 そして、ゼスト隊はその日当に死地に在った。
 敵地での奇襲、不馴れなAMF内での戦闘。魔力は思うように巡らず、体は鉛のように重い。
 毒蜘蛛のような外見をした多脚兵器は、倒せど倒せど地虫のように涌いてくる。
 暗い回廊の中で一息の余裕すら無い緊張が続き、じわじわと隊員達の精神を蝕んでいく。
 正気を失いかねない環境にあって、尚ゼスト隊は最強部隊の意地を貫いていた。
 隊員達の瞳に宿るのは、闘志と理知の光だ。
 誰一人絶望に心を蝕まれることなく、希望を持って未だ全容の掴めない敵に立ち向かっていく。
 彼等を導くのは、騎士ゼスト・グランガイツだ。
 部隊の最前線に立ち、その大槍の一薙ぎで敵の機械兵器を鉄屑へと変えていく。
 闇に煌くゼストの槍の輝きこそが、この隊の旗印だ。
 ゼストの槍の旗印の下、ゼスト隊はただ進撃する。……生きる希望へと向かって。

「う〜ん、ちょっと一寸戴けないわね、『アレ』は」

 くすくすと、クアットロは愉快そうに微笑んだ。

「悠長に構えている場合ではないぞ、クアットロ。騎士ゼスト、トーレを一撃で戦闘不能にするとは予想以上だ。
 機械兵器では足止めにしかならない。このままでは突破されてしまう!」
「ええ。各個の隊員達も厄介そうね。弱いなりに気合を入れちゃって。
 自棄を起こして特攻でもしてくれたら楽なんだけど、ああいう手合いは生き足掻くわよん。
 地を這って、骨に齧りついてでも。ふふ。本当に、鬱陶しいったりゃありゃしないわね」
「どうする、クアットロ」
「チンクちゃん、ちょっと観察力が足りないわね。あの隊員達は騎士ゼストを心の支えに戦っている。
 なら、騎士ゼストは何を支えに戦っているのかしら? 今のゼストの戦い方は、背後をまるで省みない猪突猛進型。
 それは、自分の背中を任せることが出来る仲間がいることを示しているわ。
 あの殿の二人の副隊長―――アレこそ、ゼストの背中を守るもう一つの要。
 ―――これをゼストから切り離なさなければ、攻略は成らないわねん。
 ゼスト隊は互いを助けあい、あくまで全員でこの場を抜けようとしているわ。
 ……んふふ、そうはさせないけどね。このゼスト隊の性質は利用できるわ。
 ―――私はポンコツの機械兵器達を誘導するわ。
 チンクちゃん、あなたは隊の分断をヨロシクね」

 いつしか、チンクは何か恐ろしいもののようにクアットロを見ている自分に気付いた。
 首を振り、その妄念を振り払う。自分は、己を遥かに超える戦略眼を持った姉妹機に嫉妬しているだけなのだと。
 クアットロは、その後も作戦の仔細を朗々と語る。
 非の打ち所も無い作戦だ。確かにこれならば―――あのゼスト隊を打倒出来るかもしれない。
 しかし。
 チンクの胸中で、一つの疑問が首を擡げる。
 あのゼスト隊を、こんな方法で倒してしまって良いのだろうか、と。
 戦いの合間に、あの騎士ゼストに、そして隊員達の戦い振りに目を奪われている自分がいることに、チンクは気付いていた。
 あの騎士は、あの隊員達は、自分の持っていない何かを持っている。
 彼等の瞳には、自分の眼には無い輝きがある。
 それを、こんな手段で掻き消してしまっていいのかと、小さな躊躇いを覚えた。
 だが、それも束の間。
 チンクは首を振り、再び妄念を払う。……いけない、初めての大きな戦いとはいえ、雑念が混じり過ぎている。
 これで、いいのだ。
 果すべき任務は、あくまでゼスト隊の壊滅。その手段は問う所ではない。
 全ては、造物主である父スカリエッティの為に。
 
 チンクは、慈悲無く容赦無く、ゼスト隊の壊滅に取り掛かった。
 ゼスト隊の行く手を阻み、背後から追い縋る機械兵器の群れ。
 目前の相手を攻撃するという単純な戦闘ルーチンしか組み込まれていないように思われたそれらは、少しずつその陣形を変えていた。
 無論ゼストもその変化には気付いていたが、足を留めることが即部隊の壊滅に直結するこの状況では、殿を信じて前進するしかなかった。
 退却を阻んでいた機械兵器は、徐々に正面から側面へと攻撃方向を変えつつあった。
 必然として、ゼスト隊の隊形は廊下の中で長く伸びていく。
 このままでは良くない、と誰も思い隊列の維持に意識が向かった瞬間、再びチンクのランブルデトネイターが隊を襲った。
 今度はボールベアリングなどではなく、高い殺傷能力を持つ固有武装のスローイングナイフ・スティンガーによる絨毯爆撃だ。
 暗い回廊は、ゼスト隊が破壊した機械兵器の破片で埋め尽くされている。
 たとえ命中せずとも、その破片を爆散させるだけで十分な殺傷能力を持つ。
 遂に、ゼスト隊の退却の足が止まる。
 チンクはその瞬間を狙った。無作為と思われた爆撃は、その実ゼスト隊の前方から三分の一の地点を中心を行われている。
 予め、回廊の天井や壁面に仕込まれたスティンガーが爆発を起こした。
 地響きと共に、回廊が崩落を起こす。
 メガーヌは、必死にゼストに向かって叫んだ。

「隊長―――」
「ナカジマ、アルピーノ―――」

 ゼストも、メガーヌ達に何かを叫び返した。だが、回廊が崩壊する轟音に巻き込まれ、その声は終にメガーヌ達には届かなかった。
 メガーヌは周囲を見渡す。崩壊した回廊の中には、呻き声を上げる負傷者と、毒虫のような機械兵器が溢れている。
 そして、静かに二体の機人が立っていた。一人の機人が口の端を吊り上げて笑う。

「……ありがとうチンク、完璧な仕上げよ。
 あの強い隊長さんは壁の向こう側、さあ、貴方達はどうするのかしら?
 ゼスト隊長は強くて優しい隊長さんだから、きっと貴方達を助けに来てくれるでしょうね。
 1:1の割合なら、あるいは貴方達を見捨てて退却したかもしれない。
 でも、2:1の割合で隊を分断した今なら、ゼスト隊長は必ず貴方達を助けに来てくれるわよ。
 そう、自分の身も省みずね」

 彼女達は、自分達が悪辣な罠に嵌められた事に気付いていた。―――だが、罠に嵌められたというなら最初からだ。
 クイントのリボルバーナックルが再び唸りを上げて回転を始める。

「ふうん、確かに小細工は上手なようだけど、相手が自分の足で立てているうちから勝ち誇るなんてまだまだ子供ね。
 生憎、隊長にそんな手間をお掛させる訳にはいかないの。
 御託はいいからさっさと始めましょうよ。私達は、貴方達を倒してそこの壁をぶち抜いて、直に隊長に追いつかなきゃいけないんだから―――」

 確かに、ここには隊の精神的支柱たるゼストは居ない。
 だが、あの戦闘機人は気付いているのか。ここには、ゼストの志を受け継いでいないものもまた居ない事に。
 そして、二人の戦乙女と呼ばれたクイントとアルピーノが居る事に。
 
「にしし、何処までも御供もしますよ」

 アリーナが白い歯を見せながら己がデバイスを構える。
 先のスティンガーによる爆撃で、程度の差はあれ誰もがその身に浅くない傷を負っていた。
 それでも、一人、一人とデバイスを構えて機人達に突きつける。もう立つ事も、デバイスを握ることすら出来ない重症者の右手が緩々と持ち上がった。
 その右手に、握り拳に中指一本立てて、クアットロに突きつけた。

「―――――――――」

 クアットロは絶対不利の状況にありながら、健気に立ち上がり闘志を示すゼスト隊の隊員達を見ながら、己の裡に湧き上がる今までに無い感情に戸惑っていた。
 それは、彼等のような闘志ではない。戦う相手に向けるべき敵意や悪意ではない。
 敢えて言うならば、それは愉悦だった。
 あの曇り無き瞳を黒く濁らせ、真っ直ぐな意志を叩き折った時、一体彼等がどんな表情を見せるのか―――
 想像するだけで背筋がざわめき、唇が歪む。
 クアットロは今、彼等が愛しくて堪らなかった。そう、抱きしめたい程に。
 
「さあ、いらっしゃい」

 彼女は極上の笑みを浮かべて彼等を迎え入れた。
 呼応するように、魔力光の輝きと爆音が回廊を満たした。
 視界が射撃魔法のマズルフラッシュで明滅する。耳の奥では爆発音が割れ鐘を叩いたような不協和音を伴って反響する。
 窮地は幾度も潜ってきた筈だった。苦境は幾度も凌いできた筈だった。
 それでも、こんな戦いは初めてだった。
 こんな激闘激斗、一瞬ごとに生死を分ける岐路が続く、こんな死闘は初めてだった。
 その中で、緩慢にだが確実に、ゼスト隊は確実に撤退を続けていた。
 大多数の隊員は、重傷者を引き連れ瓦礫で塞がった退路を切り開くのに必死である。
 クイント、メガーヌらは彼等を守るべく、軽症の者や戦闘に長けた者を引き連れ殿を守る。
 あの機械兵器の群れを、戦闘機人達を退路の確保に必死の仲間達に近づけまいと、決死の防衛線を形成しているのだ。

「幾らでも来いっっ! 絶対に、絶対に此処は通さない―――っ!」

 獅子奮迅の働きを見せていたクイントとの拳は、今当に鬼神の域へと入っていた。
 速く、更に迅く。ナックルスピナーの回転数はリボルバーナックルの限界速度を超え、果てしなく上昇していく。
 クイントの一挙手一足動ごとに、機械兵器が水風船でも殴り飛ばしたかのように弾き飛ぶ。
 ベルカ式カートリッジがリロードされる。
 ヒトの可聴域を超えようとするかのように、鉄拳の回転音は天井知らずに高らかに響いた。
 クイントの拳から一筋の煙が立ち昇る。
 限界を超えて回転するリボルバーナックルの排熱が間に合わず、赤熱した彼女の鉄拳は己の拳を焦がしているのである。
 
「クイント、頼むわよ―――貴女なら出来るわ、クイント―――」

 クイントのシューティングアーツは今当に入神の域にあったが、無論彼女独りで辿り着ける領域では無い。
 メガーヌの強化と共融によって、本来ならとうにブラックアウトしてしまう筈の域を乗り超えて戦っているのである。
 無論、魔力をクイントに吸い上げられるメガーヌも無事では済まない。
 立っているのもやっとの程に消耗しながら、クイントの強化を続ける。
 クイントの脚が我が脚、クイントの拳が我が拳。
 フルバックのメガーヌは、今クイントと共に敵を討つ。
 そして、副隊長たる彼女は殿達の指揮も怠らない。
 隊列を組んで射撃を行う仲間たちを振り返り、余りに場違いな一人の女の姿を目にした。

「ステラ!? 貴女は一体何をしているのっ―――!?」
「ごめんなさい、メガーヌ副隊長、ごめんなさいっ―――」

 この死闘が、ゼスト隊に配属されて初めての任務だった新米魔導師。
 責任感の強い優等生、フルバックの魔導師でいつも自分の後ろを歩いていた可愛い後輩。
 その彼女は、涙ながらに謝罪を繰り返しながら、もはや豆鉄砲程の威力しかない不馴れな射撃魔法を只管に繰り返していた。
 腹に大穴を開けながら。
「ステラ、何をしているの!? 早く手当てを受けないと―――」
「そんな余裕は無いはずです、一刻も早く退路を作らないと、隊は全滅です!」

 ステラの言葉には一理ある。このAMF環境下では魔力は一切無駄には出来ない。
 重傷者への治療も『即死はしない程度に』するのが精一杯だった。
 それでも、フルバックの彼女が前線に出る道理は無い筈だ。

「ごめんなさい、わたし、デバイスが壊れて、もう、隊の為に出来ることは何一つ無くって―――
 ごめんなさい、あの時、言っちゃって、異状無しだなんて言っちゃって、わたし、任されてたのに、索敵、任されてたのに、
 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」

 その時、既に彼女は正気を失っていたのだろう。
 ―――アルピーヌ分隊長、前方の索敵終了致しました! 矢張り異状はありません!
 その報告を、彼女は何処までも気に病んでいたのだ。
 メガーヌやゼストですらギリギリまで気づけなかった敵襲に、新人のステラが気付けた訳が無い。
 彼女は常に、ベストの選択を行っていたのだ。謝る道理など、……泣きながら死を待つ道理など有る筈が無い。
 その時、メガーヌは彼女に何を言うべきだったのだろうか?
 慰めだろうか? 叱責だろうか? 何を言うべきだったにせよ、死と隣合わせのあの日のあの回廊で、メガーヌが出来たのはただ正気を失ったステラを黙殺する事だけだった。
 ステラの泣訴も長くは続かなかった。雨霰と降り注ぐチンクの爆撃が、棒立ちのステラを弾き飛ばしたのだ。
 メガーヌの視界の端で、それでも彼女はまだ生きていた。それでもまだ彼女は謝罪の言葉を繰り返していた。
 メガーヌはステラがどのように命を落としたのかは知らない。
 だが、どんな死に方だったにせよ、それは後悔と苦痛に苛まれながらの緩慢な死だったに違いない。
 『ごめんなさい』というステラの呟きは、今もメガーヌの耳に残っている。
 メガーヌ達の戦いは、既に戦闘の様相を呈してはいなかった。
 戦闘機人達にとっては実戦テストを兼ねた殲滅戦だったが、彼女達にとっては命からがら逃げ延びる為の撤退戦である。
 戦いの形が噛み合う筈もない。
 加えて、ゼスト隊が相手にしているのは物言わぬ機械兵器と、何処からともなく降り注ぐチンクの爆撃だ。
 どこまでも、戦う相手の人格が見えない。
 戦闘ではなく、火山の噴火の如き巨大な自然災害を相手どっているかのようだった。
 『隊員一同、欠けることなくこの死地を抜けるぞ!』
 ……ついさっき聞いたばかりの筈のゼストの激が、どこまでも遠く感じる。
 時の流れが遅い。油が滴るような緩慢な時間の中で、共に戦う仲間達は確実に数を減らしていた。
 メガーヌは、未だ誰一人の死も確認してはいなかった。
 今彼女の為すべきことは、斃れた仲間を数える事ではなく、一人でも多くの仲間を生かす為の戦列を崩さない事だった。
 それでも、嫌が応にも感じてしまう。
 ―――その、背中にべったりと張り付く死の気配を。
 ゼスト隊には、自分がどんなに苦しかろうと、仮令死の淵にあろうと、仲間に助けを求めて足を引っ張るような真似をするような隊員はいない。
 正気を失って斃れたステラでさえ、助けを請うことはしなかった。
 誰もが傷の痛みも死への恐怖も殺し、泣き叫んで助けを請いたい筈の感情をも、独り自分の胸に秘めて静かに口を噤んで逝った。
 それでも、メガーヌは涙一筋零さなかった。
 髪を振り乱して子供のように泣き叫び、仲間達の亡骸に縋り付く事ができれば、どれ程楽だろう。
 だが、今自分がこの場を離れれば忽ち全滅だ。
 クイントにとってもその気持ちは同様だった。彼女の心中を代弁するように、リボルバーナックルが金切り声を上げて哭き叫ぶ。

「畜生、畜生、畜生ッ―――」

 クイントに続かんとばかりに、アリーナは我武者羅に愛剣を振るう。
 『いつか一花咲かせてやる』というのが口癖の彼女であったが、此処がその場では無いのは重々承知している。
 自分の功などより仲間の安全を優先するのは、彼女にとっても至極当然の事だった。
 どこかクイントにも似た姐御肌で面倒見が良く、竹を割ったような性格で隊の皆から好かれていたアリーナ。
 いつもあっけらかんと笑っていた彼女は、血が流れる程歯を食い縛りながら刃を振るう。
 彼女もまた、ベルカの騎士として、ゼスト隊隊員としてその本懐を遂げる―――
 ―――筈、だった、のだ。

298名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 23:56:34 ID:m/NQfrfP
支援
「アリーナ、危ない、右っっ!」

 メガーヌの言葉に反応して振り向いた時には、アリーナは迷彩解除した多脚兵器に弾き飛ばされていた。
 多脚兵器はギチギチと音を立てて、ゆっくりと節足を前に進める。
 その昆虫の鉤爪じみた足に蹂躙され、殺意に逸っていたアリーナの表情が戦意を失っていく。
 陵辱されるかのように多脚兵器に組み敷かれた彼女の顔が、忽ちのうちに青褪めていく。
 
「……助けて下さい」

 アリーナは唇を震わせながら、そんな言葉を搾り出した。
 勇猛なベルカの騎士が助けを請う弱弱しい女に堕ちるまで、10秒すら掛からなかった。
 彼女の両膝から下は、多脚兵器に踏みにじられて爆ぜたように砕けている。
 今すぐ救命処置を施さなければ、程無くして彼女の命の灯火は出血多量で吹き消えるだろう。
 常人ならば、泣き叫んで助けを請うには十分な理由。
 それでも、ゼスト隊の女傑、誇り高きベルカの騎士であるアリーナに、惨めに助けを請う姿は似つかわしく無かった。
 ゼスト隊の誰もに親しまれていた彼女だったが、勿論その心の奥底の全てを知っていた筈は無い。
 だが、アリーナが仲間の足を引っ張るのを承知で泣いて助けを請う光景は、隊の誰もが嘘であって欲しいと願った。
 そんな願いも虚しく、更に過酷な現実が晒される。

「お願いです、アルピーノ副隊長、助けて、助けて、助けて―――
 嫌だ、いや嫌嫌! 死にたくないっ!
 死にたく、あたしはまだ、死にたくない……シニタクナイタスケテ―――」

 メガーヌに手を伸ばし、地虫のようにもがくアリーナの姿はどこか滑稽でもあった。
 唇を噛み、メガーヌは彼女から顔を逸らしてただ一言、「ごめんなさい」呟いた。
 もう、見ていられなかった。―――アリーナが、その言葉を口にするまでは。

「助けて下さい―――あたしのお腹には、クルーズの赤ちゃんがいるんです……
 お願いです、助けて下さい―――」

 その言葉に、メガーヌの足が止まる。反射的にアリーナを振り向く。そこに―――

「ふふ。冷たい副隊長さん達の代わりに、貴女は私が助けてあげるわ」

 甘言を人を惑わす知謀の魔女、クアットロの姿があった。
 クアットロは、初期から稼動しているナンバーズの中では最も感情豊かで、『人間らしい』機体だった。
 情緒に富み、機知に溢れ、優れた理知的思考力を有しながらも、その中に温かみのある『人間らしさ』を秘めている。
 ドクターへの忠を守りながらも、少々対人関係の未熟な姉妹達の間を取り持つ柔軟性のある、有能な機体だった。
 ほぼ同時期に稼動したチンクは、そんなクアットロの事を少しだけ羨ましく思っていた。
 彼女が持つ自分には無い『人間らしさ』を。

「……死にたぐない、クルーズの赤ちゃん産みたい、死にたぐないよう……」

 ―――クアットロ自身も、どうして自分がそんな行動を採ったのかが理解出来なかった。
 遊び心多き彼女だったが、スカリエッティから下された任務は冷徹に最高効率で最短距離な手段を持って実行する。
 そこに、こんな無駄の入る余地など無かった筈だった。
 だが、クアットロは脚を捥がれた虫のようにもがき、涙ながらに助けを請うアリーナを姿を目にした時、指揮する多脚兵器に進軍の停止を命じていた。それは、クアットロ自身理解の出来ない衝動だった。
 こんな不合理な行動を行う理由は、唯一つとして無い。
 戦闘力を失い既に敵ですらない虫一匹、本来なら進路に転がる塵芥と共に踏み潰して一顧だにしなかった筈だ。
 だが、誇り高きベルカの騎士が、助けを請うしか出来ない乞食へと成り下がるを見て、クアットロはこれまでに感じた事の無い興奮を覚えたのだ。
 ―――もっと、もっとこの無様を楽しみたい―――
 聖母のように慈悲深く、悪魔のように残酷な笑みを浮かべて、彼女はアリーナへと語りかける。

「ねえ、そこの貴女。死にたくないんでしょう? なら私が助けてあげるわ。
 隊長のゼストさんと副隊長さん二人、この三人の能力を教えてくれないからしら? 
 もしそれが有益な情報をだったら、貴女を助けてあげる。どう? 悪くない条件でしょう?」

 アリーナは絶句した。死に怯えて泣き叫ぶ無様を晒しながらも、彼女の心の奥底にある、ゼスト隊の一員であるという誇りは失われてはいなかった。それは、彼女にとって、決して穢しては行けない生きるための道標だった。
 煩悶するアリーナを嫣然と微笑みながら見下し、クアットロは指を揮う。多脚兵器が小さく一歩だけ前進した。アリーナの太腿が熟れ過ぎたトマトのように爆ぜる。
 くぐもったアリーナを悲鳴を聞きながら、クアットロは憐憫交じりの微笑を浮かべて語りかけた。

「どうするの? もう時間は無いわよ。―――それとも、貴女は助かるよりも隊への操を守ってお腹の赤ちゃんと天国に行きたいのかしら?」

 アリーナは唇を噛み、子供のようにボロボロと涙を零しながら、悔しそうな顔をして、ゆっくりと口を開いた。

「……ゼスト隊長は空戦Sランクのベルカの騎士で、はっ、極めて、極めて高い近接戦闘能力を持っています。
 ナカジマ副隊長は、シューティングアーツの達人で、……ごほっ、近代ベルカ式のAAランク、固有魔法のウイングロードで擬似空戦も可能です。
 ア、アルピーノ副隊長も同じくAAランク、万能のフルバック型で、特にナカジマ副隊長とは相性が、抜群、で―――す」

 アリーナは仲間達から顔を背けて滔々と語り、蜘蛛の糸にでも手を伸ばさんと、クアットロを見上げる。

「お、お願いで、です、助けてくだ―――」
 ザクリ、と地を刺す音が響いた。

「う〜ん、ゴメンナサイね、あんまり有益な情報じゃないわ、それ。
 だって、見れば誰だって解る事でしょう?」

 多脚兵器の鎌状の攻撃肢が、アリーナの背中から脊椎を砕き、子宮を貫いて地に縫い止めていた。
 バイバイ、とすっきりした笑顔でクアットロが手を振る。
 アリーナの腹部から、血溜まりが広がっていく。―――恐らくは、彼女の羊水と胎児の混じった血溜まりが。
 
「あ、あああ、ああああっ―――」

 彼女はそれを掻き集めるようとするように腕をばたつかせてもがいたが、大量の出血はすぐに彼女の動く力をも奪った。
 もう、彼女には何もない。夢見た未来も、ゼスト隊としての誇りも、胎に抱いていた愛しい我が子も。
 彼女は空虚な瞳で頭を上げ、遥か彼方のメガーヌを見つめ、懺悔するように。

「……副隊長、ごめ゛んな゛ざっ―――」

 多脚兵器は彼女の謝罪など待たず、その喉を潰し、腸を散らして頭蓋を踏み砕き、あるべきように進軍を再開した。
 『いつか一花咲かせたい』そう願っていたゼスト隊の烈女は、命乞いをして敵に仲間を売る無様を晒し、ただ己の血花だけを咲かせて散った。
 アリーナの死に様は、一丸として戦ってゼスト隊の心に小さな罅を入れた。
 この極限の状況下でゼスト隊がここまでの奮戦を見せていたのは、同じ誇りを抱いて前に進む仲間達との絆があったからだ。
 誰もが同じ思いで戦っている、誰一人心を折ることなく戦っている、その事実が、ゼスト隊を支えていた。 
 だが、アリーナは心を折った―――確かに極限の状況ではあったが、彼女は―――心を折ってしまった。
 彼女の断末魔が、生への執着が、死への恐怖が、毒のようにじわじわと隊に伝染していく。
 
「―――アリーナ」

 メガーヌは悲しげに、彼女の名を呼んだ。
 裏切ったアリーナへの怒りも、卑劣極まりない手段で彼女を貶めたクアットロへの怒りもなかった。
 ただ、最後の最後でゼスト隊の戦士ではなく、「母」であることを選んだ彼女の哀しみを思った。
 クイントもメガーヌも、娘を持つ身だ。アリーナの気持ちは痛い程に理解できる。
 もし自分もアリーナと同じ選択肢を突きつけられたなら―――
 いけない、これ以上は考えてはいけない。副隊長達はそこで思考を停めた。
 クアットロの戯れから生まれた負の感情の伝播は、副隊長達の足をも鈍らせ始めていた。
 それでも、隊員達は懸命に立ち上がった。負の感情に負けまいと、恐怖を必死に振り払って。
 だが、一度意識してしまった恐怖は消し去れない。
 クイントの後方支援をしていた砲撃の火力が緩む。そこに畳み掛けるように再度チンクのランブルデトネイターが降り注いだ。
 数知れぬ悲鳴。ぼとぼとと血や肉片がメガーヌの顔に降り注いだ。
 目を開けると、そこには銀髪の冷たい目をした死神の姿が―――

「ひいっ―――」

 ……アリーナの叫びが耳に蘇る。過ぎったのは、ベビーベッドで眠っている娘の姿だった。
 メガーヌは、初めて、本当に、死にたくないと思った。
 生きて娘に会いたいと思った。思ってしまった。
 彼女は、全身全霊を掛けて、クイントの強化に使用していた魔力まで使って攻撃を防御した。
 
 壁に全身を叩きつけられる。即死だけは免れたようだが、肋骨が肺に刺さって息ができない。
 ひゅうひゅうと浅い呼吸を繰り返しながら、霞む視界に唯独り立つ己が親友を見止めた。

「メガーヌ? メガーヌ? みんな―――?」

 竜巻の如き猛威をふるっていたクイントの舞踏がついに止まる。
 ただ前を向き、防衛線へと襲い来る敵を粉砕して彼女が、ついに後ろを振り返る。
 守ろうとしていた仲間達は、皆地に倒れ伏せていた。
 あの一瞬、チンクのランブルデトネイターの大量投下で全ては終わっていた。
 息のある者もまだ居たかも知れない。だが、ギチギチと音を立てて進行する多脚兵器はそれを生死に頓着せず踏みしだいて行った。
 クイントは相棒を想った。 
 最高の親友、最高の相棒、組めば誰にも負けないと錯覚させてくれる程の、縁の下の力持ち。
 その、彼女からの魔力の供給ラインが、断絶していた。

「……隊長、申し訳ございません、任務は、……失敗です。
 メガーヌ、みんな、待っててね、すぐ、行くから」

 戦意に高揚していた時は全く自覚していなかったが、クイントは満身創痍の有様だった。
 足のローラーデバイスはほぼ全損、腕はリボルバーナックルの規格を超えた回転で焼け焦げ、痛覚すらない。
 
「それでも、それでもあんたの首は―――貰っていく」

 クイントは、幽鬼のように音も無く立つチンクに向かって、死の疾走を開始した
 形の上では絶対的優勢に見えたチンクだったが、彼女もまた疲弊しきっていた。
 この時まだ調整が完了していなかったランブルデトネイターで絨毯爆撃を繰り返したのだ。至極、当然の話である。
 ひとをころした。
 たくさんのひとをころした。
 チンクもまた、クアットロとは違う形で死から目が離せないでいた。
 死に至るまでの僅かな時間、懸命に生きようと足掻くゼスト隊の隊員達の瞳の中には、自分達に無い光があった。
 どんなに無様に見えても、どんなに滑稽に見えても、生きようと、生きて自分の本懐を果そうとする人の姿は美しかった。
 それを、不条理に焼き尽くす自分の行為は、まるで美しい花を無碍に毟り取っているようにも思えて―――
 だが、それら全てを余計な感傷と断じ、意識しないようにしながらチンクは殺戮を続けた。
 全ては、自分と、姉妹達と、父スカリエッティの為に。
 それでも、胸に閊える小さな違和感は拭い去れない。命の灯火を消していく度に感じる、「これでいいのか?」という思いは。
 今、眼前にはこれまでに無い強敵が立ち塞がっている。
 クイント・ナカジマ。ゼスト隊の副隊長。
 彼女の視線だけで射殺すような瞳に、チンクは慄然とした。―――やはり、彼等は何かが違う。

「―――行くわよ」

 クイントは、軽く地を蹴った。空中にウイングロードが展開される。その軌跡は、チンクを中心に半円を描いている。
 チンクのランブルデトネイターの直撃を防ぐためだ。紙一重でチンクの攻撃はクイントに届かず、後方へと流れていく。
 それでも、戦闘機人として備え付けられた高速思考がクイントの移動速度と進行ベクトルを計算し、驚くほどの速度で誤差修正を行っていく。
 4発目にして早くも直撃―――するかと思われた絶好のタイミングのランブルデトネイターを。

「返すわ、これ」

 クイントは、リボルバーナックルでチンクへと打ち返した。 
 爆発で、チンクの感覚器官はパニックに陥った。まさか己の身で喰らうことになろうとは思ってもみなかったランブルデトネイターの直撃。
 肩口近くで炸裂したそれは、チンクに大きなダメージを与えていた。
 
「ごほっ……!」

 余りの痛みに膝をつく。無論、クイントはその隙を見逃さなかった。
 チンクを中心に等距離の半円を描いていたウイングロードが、チンク目掛けて一直線に伸びる。
 一匹の鬼が、チンク目掛けて掛けてくる。
 
「うわあああっ!」

 照準も無く、恐怖に駆られて発射した数発のスティンガーがクイントの遥か後方に流れていく。
 これだけの恐慌状態に陥りながら、なんとかチンクは己を建て直し、冷静にクイントを迎撃することに成功した。
 一撃で仕留められるとは考えない。ランブルデトネイターで狙うはその攻撃力。即ち―――リボルバーナックルの唸るその両拳。
 最小限に威力を抑え、クイントの右肘で爆発させる―――彼女の鉄の右腕が、肘と肩の関節から反対側に折れ曲がった。
 それでもクイントは止まらない。ならば左腕――――――
 両腕を破壊され、無双を誇ったシューティングアーツも、愛用の鉄拳リボルバーナックルも使用不可能。
 それでもクイントは止まらない。シューティングアーツの真髄はそんな浅い場所には無い。
 ―――相手の急所に正確な一撃、狙うのはただそれだけ。それこそが、シューティングアーツの真髄!!!
 ウイングロードを飛び出したクイントは、そのままチンクの喉笛へと食いついた。

「ひっ……」

 チンクの表情が恐怖に歪む。彼女の喉元を、クイントは食いちぎらんとばかりに締め付ける。
 野獣そのもの粗暴な攻撃でありながら、クイントの瞳は人間としての理知的な光を湛えていた。
 その瞳がチンクに告げる。「お前を殺す」と。
 喉が圧迫されて呼吸が出来ない。クイントの瞳が恐ろしくて直視できない。
 彼女は薄れていく意識の中で、初めて死を覚悟した。
 不意に、クイントの顎の拘束が緩んだ。そのまま、ずるりと彼女は地に斃れ伏せた。
 光の刃の先端が胸元から突き出ている。その背後から、トーレのインパルスブレードが心臓を串刺しにしていた。
 トーレが会心の笑みを浮かべる。ゼストの攻撃で機動力を失ったトーレは機会を伺っていたのだ。瓦礫と屍の下にその身を埋めて。
 クイントは、もう、動かない。遺す言葉の一つもなく、彼女はあっさりと逝ってしまった。
 鉄の両拳を揮うその雄姿を、開けっ広げの笑顔を見ることは、もう、出来ない。
 メガーヌは、冷たい回廊の壁に背中を預けながら、親友の最期を見つめていた。
303名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 00:04:11 ID:m/NQfrfP
sien
 分断されたゼスト達も、メガーヌ達と同様に苦境にあった。
 クアットロが機械兵器群に与えた命令はごく単純である。
 『騎士ゼストには攻撃せず、回避のみを行え。騎士ゼストから遠くに居る者から攻撃せよ、倒せそうな者から攻撃せよ』
 機械兵器はゼストを相手にしようともせず、瀕死の負傷者ばかりを狙って攻撃を行った。ゼストそこに迅速に駆けつけ、身を挺して仲間を守り、勇猛に敵を打倒した。
 だが、如何に騎士ゼストでも、犇く機械兵器の群れから仲間達の全てを打倒することは可能だったろうか?
 どれだけ強力だろうと、そのデバイスが表しているようにゼストの本質は敵を貫く矛。―――仲間を守る盾ではなかった。
 盾のしての役目を果たしていたメガーヌとクイントはここには居なかった。
 仲間を守らんとするゼストは、正しく獅子奮迅の戦い振りを見せていた。
 槍の一撃で機械兵器を鬼灯のように吹き飛ばし、仁王のようにその残骸を踏みつけるゼストの姿は隊の誰もが憧れた騎士の姿だ。
 それでも―――それでも、この高AMFの環境下で、仲間を庇いながらの戦いの中で、ゼストは確実に傷つき、疲弊していった。
 負傷者を数多く抱えた隊の動きは緩慢だ。このまま脱出する道ではなく―――後方の部隊と合流し、盾たる仲間と共に脱出する道をゼストは選んだ。
 そう、全てはクアットロの計算通りに。
 敵の術中にあることはゼストも理解していたが、それ以外の選択肢は矢張りなかっただろう。
 ゼストが騎士ゼストである限り。
 ぐらり、と回廊の足元が揺れた。一度崩落を起こしている回廊は、今にも崩れ落ち兼ねない酷く脆い状態になっていた。
 ―――いつしか、援護をしていた筈の仲間達は全て地に倒れ、戦っているのはゼストただ独りになっていた。

「お願いです、隊長―――先に行って下さい」
「俺達の事は構いません、隊長、どうか隊長だけでも」

 地に伏せた隊員達は、ゼストに涙ながらに懇願した。
 この気高き騎士を、こんな暗い場所で、何の役にも立たなくなった自分などの為にその手を煩わせてはならない。
 自分達が無様に生き足掻く所為で、騎士ゼストの足枷になるようなことがあってはならない。
 彼等の気持ちは一つだった。
 
「気を強く持て! 心挫けたらそこで終わりだ! いつものように着いてこい!」
 
 それをゼストは一蹴した。倒れ付した隊員達の顔に笑みが浮かぶ。
 ―――そうだった。隊長がこんな騎士ゼストだったからこそ。こんな騎士ゼストと一緒に戦いたくて、自分達は―――
 だが、ゼストの願いは叶わなかった。重圧に軋みを上げていた回廊が遂に崩落を起こしたのだ。
 回廊の下は、更なる闇だ。その底にある戦闘機人製造の狂気を解き明かす為に訪れたのが、この戦いの全ての発端。
 仲間達が、機械兵器の残骸が、奈落の底に落下していく。
 
「おおおおおっ!」

 ゼストは手を伸ばした。だが届かなかった。
 更なる瓦礫の山へと変化した回廊で、ゼストは吼えた。

「誰か生きてる者は居ないか! レクサス! ソリオ! 誰かいないのか!」

 小さく、応えるような気配が瓦礫の下にあった。ゼストは、そこにだらりと投げ出された男の腕を発見した。
 即座に槍の一振りで瓦礫を吹き飛ばし、埋もれていた男を引っ張りだした。

「クルーズ! 無事だったか!」

 余り無事って有様じゃありませんがね、とクルーズは浅く笑った。
「隊長、見ての通りです。此処にはもう誰も居やしません、早くあちらを、助けに行ってやって下さい……」
「……まだ、お前が居る。共に行くぞ。クルーズ」

 ゼストは彼の体をその巨きな背中に背負い、幾重にもバインドで自らに縛りつけた。
 
「―――隊長、この仕事が終わったら皆にも話そうと思ってたんですがね……
 アリーナの腹にゃ、俺の子供が居るんですよ。危ないから止めとけっていったのに。
 腹の子供に武勇伝聞かせてやりたい、ってあいつ、聞かなくって―――」
「……喋るな。舌を噛むぞ。今から―――ブチ抜く」

 ゼストの大槍に魔力が集中する。此方と彼方を隔てる瓦礫を、一撃で吹き飛ばさんとする大技だ。
 仲間達を守っていた間は使う暇が無かったが―――今は一刻も早く向こう側の仲間達の元へ辿り着かねばならない。
 ゼストが重々しい仕草で槍を振り上げる。
 クルーズは、ゼストの背中で一瞬の幻影を見た。それは、古代ベルカで城壁砕きに使われたという巨大な破壊鎚だ。
 ―――轟音と共に、此方と彼方を隔てた瓦礫の山は見事に抉り取られていた。
 何者も、この騎士ゼストを阻むことは出来ないと告げるように。
 ゼストは僅かに残った機械屑を乗り越えて、ひた走った。
 そして、見た。
 チンクの喉元に喰らいついていたクイントが力を失って倒れる瞬間を。
 屍があった。そこも、彼処も、救わんとした仲間達の屍が無残の姿を晒していた。
 クイントが、最後の一人だったのだ。
 
「お、お、お、――――――」

 余りの惨状に絶句したゼストは、屍が散らばる中で、己の足で立つ最後の一人―――チンクを見据えた。
 チンクも首から下を朱に染め、息も絶え絶えの状態だった。
 ―――クイント達が、最後まで勇敢に戦った証だった。
 ゼストは瞳に青い炎を宿して問うた。

「……どうだった? ―――俺の部下達は、どうだった!!!」

 チンクは答えない。いや、答えられなかった。
 クイントの文字通り命を懸けた最後の一撃は、チンクの命は奪えないまでも、確実にチンクの心を折っていた。
 チンクの足が下がる。羅刹の如き眼光で威を放つゼストから、目を離すことすら出来ない。
 確実に、ゼストは彼女を殺すだろう。
 ―――死など、失敗の当然の代償だと思っていたのに。クイントに喉を食い破られそうになった瞬間、クイントが己の命で自分の命を奪おうとした瞬間。
 本当に、死ぬのが、怖くなった。
 
「―――もう、しょうがないわね、チンクちゃんは。これで最後の一人なのに」

 闇に、クアットロの声だけが響いた。
 同時に、残存する全ての機械兵器群がゼストへ畳み掛けるように攻撃を開始した。
 無論、鈍重な多脚兵器など何体で掛かろうとゼストの前ではものの数ではない。
 だが、上空では球状兵器がAMFを展開し、じわじわとゼストの体力を奪っていく。
 勿論、クアットロはゼストが背負っているクルーズの存在を見逃したりはしなかった。二者一択を迫られたならば、ゼストは必ず己より仲間を採る。
 そう確信して、ゼストの急所ではクルーズに目掛けてレーザー兵器で撃ちかかる。
 幾本ものレーザーが、ゼストの鋼の肉体を貫通する。それでもゼストは止まらない。巨大な猛虎を相手にしているようだった。
 なんとか戦闘に対応できるだけの精神を再建したチンクが、今一度攻撃に参加する。
 数体の球状兵器が塊となって、ゼストをとり囲む。共振するAMFが、更に強度を増す。
 そしてゼストが弱りきった瞬間を狙ったランブルデトネイターの爆撃。
 ゼストは槍に魔力を集中し、その全てを精密細緻な剣刺にて迎撃した。
 既に、戦闘時間と使用魔力から換算しても、フルドライブを続けるだけの魔力は残っていない筈だった。
 槍に魔力を集中した直後の間隙、そこに焦点を定めたAMFの最大出力!
 クアットロの作戦は順調だった。騎士ゼストですら詰め将棋の要領で窮地に追い込む頭脳は当に天才のそれだ。
 ―――事実、ゼストはAMFの最高出力で、ゼストはほぼ全ての魔力を失った。残った魔力は一握り。
 その一握りの魔力を、ゼストはクルーズを己の体に縛るバインドへと費やした。
 今、騎士ゼストは何の魔力も無い只の人間も同然だった。
 無双を誇った彼の槍も、魔力の通らない今、只の刃物も同然だ。

「―――ふふ、よく頑張ったけど、騎士ゼストもここまでね」

 詰んだ、とクアットロも思った。
 間違いではない。魔法使い、騎士、須らく魔力を使用する者達の戦いならば、これで決着の筈だった。
 決して、クアットロの読みが浅かったのではない。
 ―――想像の限界を遥かに超える怪物が存在する事を、知らなかっただけなのだ。
 ゼストと密着する程の近くにあった球状兵器が照準を開始する。光学兵器の発射孔が開く。
 それをゼストは、何の魔力も通らない只の刃物同然の槍で―――両断した。
 水面を静かに裂くような滑らな動き。
 百万回繰り替えされてその身に宿った武の力のみを用いて―――両断した。

「ふん、こんな玩具一体片付けるのに魔力など要らぬ。己の体と―――この槍だけで十分だ」

 騎士ゼストは、本当に―――巨きな男だった。
 ゼストは油断無く槍を構え、周囲の敵を見渡す。
 無尽蔵であるかのように見えた機械兵器群も、残り数体。ゼストと、彼の部下達の残した小さな成果だった。
 高濃度AMFの包囲は脱した。ゼストなら、難なく片付けられる数である。
 残るは、三体の戦闘機人。
 
「行くぞ、クルーズ。しっかりしがみ付いていろ……クルーズ?」

 ゼストの巨きな背中の上で―――クルーズの体は既に冷たくなり始めていた。
 ゆっくりと、ゼストはバインドを解き、クルーズの体を壁に横たえた。
 ぐらりと、その首が余りものように揺れた。飛礫が、完全に頚骨を砕いて貫通していた。
 首の取れかけた人形のように、クルーズの頭が頼りなく傾ぐ。
 ゼストは酷く悲しげな表情をして、彼の頭を首の上にしっかりと据えた。
 ―――死して尚、真っ直ぐ前を向いて進めるように。

「―――――――――っ」

 無事では無かったのはゼストも同じだった。
 刻まれた傷は数えるだに意味は無く、フルドライブの過剰使用で破裂した肺腑からは淤血が込み上げてくる。
 だが肉体が壊れる痛みなど、ゼストは欠片程も関知していなかった。
 ただ、問いたかった。こんな益体の戦いに、部下達が若き命を散らす意味はあったのだろうかと。
 ゼストが見つめるのは、少女のような姿の戦闘機人。クイントを斃した5番のチンク。
 ―――それでも、決着はつけなければならない。
 ゼスト隊の長として、この戦いに命を散らした部下達の為にも。

「っ、はぁ、クアットロ、私は一体どうすればいい? クアットロ?」

 チンクは常に冷静な瞳で戦況を眺めていた姉妹に尋ねるも、答えは無い。
 ―――ただ、シニタクナイと思った。シニタクナイという妄念でスティンガーを手にした。
 どうして、あのアリーナという女性はあれ程死を怖れたのか、今なら解る気がする。それはきっと錯覚だけど。
 巨大な獣に見据えられているようで、指一本動かせない。山が動くような重みを伴って、ゼストが大槍を振り上げる。
 途轍もなく重い何かに圧されるように、チンクはふらふらと後ろに退がった。―――怖い。
 ただ、この時間が終わって欲しくて、耐えられなくて、両目を瞑ってゼストへと飛びかかった。
 照準も何もなしに、サイコロでも投げるようにスティンガーを放つ。
 交錯までの時間は僅か一瞬の筈、その一瞬がどうしてこんなに長い―――?
 望んで逃げ込んだ筈の暗闇にも耐えられず、目を開いた。
 ゼストは、すぐ眼前だった。その焔を放つような視線が、チンクと瞳と交差した。
 顎を開く虎のように槍を降り上げ、今チンク目掛けて振り下ろさんとする所だった。
 本気で―――本当の本当に、これで死ぬのだと思った。
 
「死ぬのは―――嫌だああぁぁぁぁっ!!!」

 祈るように両手で握り締めていたスティンガーの最後の一本。
 無駄な足掻きと思いながらも、ゼストの心臓向けて両手で力任せに突き出し、間合いなど無視して至近距離で炸裂させた。
 炸裂と同時、右目は冷たい刃の切っ先が迫り来るのを見つめていた。
 剛直な槍の切っ先が右目の視界一杯に広がり、―――暗転。右目から側頭部にかけて熱い感触が走り抜ける。
 これで死んだ、と確信した。
 その瞬間、不思議な事に死への恐怖は無く。
 チンクはただ、槍を打ち下ろすゼストの姿は美しかったな、などという事を考えていた。

「?」

 右目から側頭部にかけて鈍い痛みがある。だがそれは、―――死の感触ではなかった。
 チンクはゆっくりと背後へと振り返る。そこには、互いに交錯したゼストが自分にとどめを刺そうと大槍を振り上げた姿で立っている筈だ。
 果たして、ゼストは其処に居た。槍を振りぬいた姿で、そこに立っていた。だが―――動かない。
 チンクのスティンガーの最後の一本はゼストの肋骨を砕き、彼の心臓を止めていた。

 ……勝敗を決めた原因があるとするなら、ゼストが余りに騎士でありすぎたという事だろう。
 最後の一撃を放つ刹那、ゼストは僅かに逡巡した。一秒にも満たぬ間隙に、彼は戸惑った。
 交錯の瞬間、ゼストの視線がチンクの視線と交わった瞬間、彼は気付いてしまったのだ。
 眼前の敵が、戦士でも無ければ機械でも無い、迷っているだけの唯の子供に過ぎないことに―――
 メガーヌは、その光景を見ていた。冷たい壁に背中を預け、死にかけた魚の呼吸を繰り返しながら。
 最強のコンビだと自負していた相棒に続いて、無双と信じた隊長のゼストまでもが、幼い少女に破れ去る光景を。
 隊長のゼストは、隊員達にとってゼスト隊そのものだと言っても過言ではない。
 ゼスト隊に集ったもの達は、誰もが騎士ゼストに憧れ、その背中に続かんと集った者達ばかりなのだから。
 メガーヌもまた同様。だからこそ―――許せなかった。
 ゼスト隊の最後の矜持まで砕いたあの少女が許せなかった。
 
「―――許さない」

 ずるずると床を這うようにして進む。一歩進むごとに目が霞む。
 それでも、メガーヌは歩みを止めない。最早何の脅威でも無い速度だったが、彼女は確実にチンクへと詰め寄っていく。
 狂わんばかりの執念が、動かない筈の彼女の体を動かしていた。
 狂わんばかりの執念を以ってしても―――彼女とチンクの距離は遠すぎた。
 意志とは無関係に、血を流しすぎたという生理的な限界によってメガーヌの歩みが止まる。
 彼女はそれでも緩々と腕を上げ、チンクへと伸ばした。
 伸ばした腕の先で、……チンクは泣いていた。
 仲間達を鏖殺した悪魔は、ペタリと床に腰をつけ、迷子の子供のようにわんわんと泣き喚いていた。

「……―――勝ち鬨を上げるならまだいい、私達を、騎士ゼストを、殺して、泣き喚くのか―――?
 ―――――――――ゆるさ、ゆ、るさ、ない―――」

 意志に反して、彼女の瞼が閉じていく。墨に沈むように、彼女の意識が黒く塗りつぶされていく。
 ゆるさない。その思いを最後に、メガーヌ・アルピーノは長い眠りへと堕ちていった。


 ……―――全てが終わった闇の奥底に、クアットロは一人立ち尽くしていた。
 噎せかえるような血と臓物と機械油の臭いの立ち込める漆黒に、彼女は一人多湯たっていた。
 クスリ、と彼女の唇から堪えきれない笑みが漏れ出した。
 彼女はこの暗闇に、繰り返し繰り返しゼスト隊の隊員達の死に様を幻視していた。
 伸ばそうとした手が届かなかった時の表情を、真っ直ぐな瞳が昏く濁っていく瞬間を。
 骨の砕ける音を、血の吹き出す音を、断末魔の絶叫を。
 中でも、あれは素晴らしかった。アリーナという女の死に様。
 無様に生き足掻き、生にしがみ付き、矜持も誇りも全て投げ捨てて生き足掻き、それでも助からない事を悟った時のあの絶望の表情が。
 仲間を裏切り、それで助かったと錯覚し、その瞬間に足元が抜けた時のあの間抜けな顔を。全てを失った人間の瞳を。
 クアットロの足元には、アリーナの成れの果てである血肉だまりがある。
 彼女は獣のように両手両足をつき、それを舐め上げた。口元が真紅に染まる。
 アリーナの血肉は―――蕩けるように甘かった。
 ドクターは、この世界に楽園を作って下さると約束してくれた。
 クアットロは、楽園とは一体どういう場所かとスカリエッティに質問した。
 スカリエッティは、それは機人達が望むように生きられる世界だと答えた。
 彼女には、望むように生きられる世界というのがどのようなものか、よくイメージが掴めなかったが、それでも敬愛する父の為に励んで働いた。
 それが今、漸く理解出来た。
 私の望んでいたものは、これだ。これが永遠に続く世界こそ、楽園だ―――
 彼女は散らばる臓物を掻き混ぜる。その芳醇な香りにうっとりとする。

「あは、あははは、あはははは、あはははははははははっ」

 クアットロは、この世の地獄とも呼べる闇の底で、歓喜の声を上げた。
 確かに、虫の足を笑いながら捥ぐような嗜虐性、残虐性も人間性の一部分なのだろう。
 だが、クアットロのそれは人間性と呼べる範疇を明らかに逸脱して余りあるものだった。

 ―――ここに、一匹の悪鬼が産まれた。その魔性が大輪の毒花を咲かせるのはこの8年後、ジェイル・スカリエッティ事件の最中である。
 それから語るべきことは余り無い。
 チンクは一対一でSランクの騎士を打倒したという功績を認められ、その結果は最高評議会へと報告された。
 ゼスト隊の壊滅は事故として処理され、戦闘機人達の存在は明るみに出ることなく―――歴史は正史へと戻る。
 チンクは闇の底から回収され、スカリエッティによって修復処置を為された。
 彼女は、Sランク騎士を打倒した報酬を問われた際に、右目を修復しないことを望んだ。
 重要な戦力である彼女が右目を修復しないという事は、ナンバーズそのものの戦力低下と同義だ。
 確かに、Sランク騎士を打倒した報酬でも無い限り通らない横車だったのだろう。
 だが、姉妹達は首を傾げた。彼女達は日々己の能力上昇の調整を行っているのに、そこまでの横車を押してまで己の戦力を下げる必要があるのだろうかと。
 チンクは、答えなかった。
 彼女は、自分の存在に虚しさとも呼べるものを感じていた。
 壊れた腕も、潰れた目も、全ては代替可能な代物。―――時間さえあれば、自分という存在さえ代替可能だろう。
 自分の殺したあの者達は、そうではなかった。
 騎士ゼストの槍の腕は、決して機人には到達できない領域の業だった。
 あの日戦った者達の持っていた鉄の意志は、燃え盛るような瞳は、その命は、絶対に代替できない、たった一つのものだった。
 彼等を羨ましく感じた。美しく感じた。
 この目は代替可能なものだけれども。わざと修理しないことで、代替不可能だったあの者達の在り方を真似ようと思ったのだ。
 あの日、沢山の代替不可能な命を奪った。
 それは自分の任務であり、使命だった。その事自体は決して悔いてはいない。我が父、スカリエッティは正しい筈なのだから。
 ―――本当に、スカリエッティは正しいのか?
 機人として、絶対に考えてはいけない疑問がチンクの胸に去来した。
 ちくりと胸を刺す痛みを、彼女は黙殺した。それは、考えてはいけないことだ。
 彼女は、胸の奥に矛盾を仕舞ったまま、これまで通りの戦闘機人としての日々に戻る。
 8年後に訪れる、ジェイル・スカリエッティ事件の日まで。
 ―――そしてチンクは今、再びゼストの槍の前に立っている。
 かつてチンクを心底から畏怖させしめたその槍を握るのは、メガーヌ・アルピーノだ。
 許しを乞おうなどとは微塵も思わなかった。これは正当な結末だ。
 本当ならば、11年前のあの日、自分はこの槍に首を刎ねられた筈だったのだ。
 それが少しばかり、遅れてきただけの話である。
 
『あれから―――幸せでしたか?』

 メガーヌは、チンクにそう問うた。
 幸せだった。本当に幸せな日々だった。眼帯に封印された右目がじくじくと痛む。己が罪科を訴えかける。
 だが、そんな苦痛の全てを帳消しにしてしまえる程に―――幸せだった。
 右目は痛む。耐え難い苦痛で毎夜チンクを苛む。だが、チンクは決してその痛みから逃れようとしなかった。毎晩鏡を前にし、己が罪と語らった。
 チンクは、喜んでメガーヌに命を差し出す決意がある。だが、それは己の罪から逃れんとしての事ではない。
 己の罪に対する罰が軽すぎる事に苦しみ、有る筈の無い痛みを自ら生み出しているチンクである。どんな艱難辛苦だとうと、喜んで受け入れるだろう。
 そのチンクが死を選ぶ理由はただ一つ、あの事件の最後の生き残りであるメガーヌがそれを望んでいるという単純な理由によるものだった。
 チンクは無言で浜辺に座り、首を項垂れた。土壇場で首を落とされるのを待つ咎人のような―――いや、咎人そのものの格好である。

「―――気に食わないわね」

 メガーヌは冷たい眼牟で彼女を睥睨する。

「貴女、そのまま死んでそれで終わりにするつもり?」
「お望みなら、この五体を千切って差し上げます。惨めに無様に、苦しみながらもがいて死ねと仰るなら、お望みの通りに致します。
 どんな形であれ、私は―――私の罪を、私の体と命で返すことしか出来ません」
「ふざけないでっ!」

 メガーヌは激昂した。

「やっぱり貴女は11年前から変わっていない、人を殺すことしか出来ない機械人形よ!
 あの日、私の仲間達は死にたくないと生き足掻いた、それでも助からなかった! 貴女達に殺された!
 貴女に、その苦しみが解るの!? 言うに事欠いて命で返す!? 殺す相手が居なければ自分を殺してそれで満足するの!?」

 チンクは悔しげに地を見つめ、遺された左目で涙を流す。
 彼女はどこまでも、不器用だった。不器用なりに考えた償い、己が死。
 だが、己の罪は自分の命一つ程度では到底償いきれない程深く、思い。
 ……一体、どうすればいいのだろう。チンクは、あの日を再現するかのように、小さな子供のような涙を流した。
「そこまでです、ミセス・アルピーノ。武装を解除して下さい」

 11年前の二人の因縁に、第三者の声が割り込んだ。
 この隔離施設の保護司、ギンガ・ナカジマが海岸の岩場からバリアジャケット姿で二人を見下ろしていた。
 
「御存知でしょうが―――この施設内での武装行為は、一切禁止となっています。
 これ以上示威行為を続けるなら、貴女を罪に問わなければなりません」

 無論、現時点でもメガーヌは十分逮捕に足る状況である。
 それをしなかったのは、ギンガが二人の心情を酌量してのことである。

「メガーヌさん、どうしてこんな事を―――」

 ギンガの後ろからは、スバルとティアナ、そして出掛けていた筈の姉妹達が現れた。
 チンクは困ったように薄く笑う。

「……お前達、今日はショッピングじゃあ無かったのか?」
「だって、今朝のチンク姉の様子、変だったから、留守番じゃあなくて、まるで戦いに行くような顔してたから―――
 みんな、みんな気付いたよ。チンク姉、変だったから……」

 しどろもどろに語るセインの困惑しきった表情が、姉妹達全員の心中を代弁していた。
 その中で、ノーヴェだけが眼を見開いてその姿を見つめていた。―――敬愛する姉に向けて、大槍を突きつける見知らぬ女性の姿を。
 制止する暇さえなく、ノーヴェは駆け出していた。
 チンクは己が失策に気付く。この状況下、真っ先にノーヴェが激昂することなど明白ではないか―――
 ノーヴェは姉妹達の中でも最高ランクの肉体増強が施されている。固有武装無しでも、その拳は必殺の域だ。

「やめろ、ノーヴェ、止まれ―――」

 チンクの叫びにも、ノーヴェはその疾走を緩めない。
 瞬く間にメガーヌの目前に辿り着き、膝を折って頭を垂れた。

「ごめんなさっ! 謝って許される事じゃないのは解ってます、チンク姉やクア姉達があなたにした事が、絶対に許してもらえない事だってのは解ってます。
 それでも―――お願いします、チンク姉のことを許してあげて下さい―――お願いします。
 最近やっと、あたしにも何が良いことで何が悪いことか解るようになってきました。チンク姉の、お陰です!
 あたしは、チンク姉に会えたから、あたしになれたんです。チンク姉の代わりに、あたしを殺して下さい。
 どうか、チンク姉を殺さないで下さい―――お願いします……」
「ノーヴェ、何を―――」
 
 馬鹿なことを言うんじゃない、というチンクの科白は言葉にならなった。
 人は、何処まで変わることができるのだろう。
 直情的で、前に出る事しか知らなかったチンクが今、膝をついて誠意を尽くして謝意を述べている。……それも、こんな自分の為に。
 妹は、いつしか自分の遥かな先に行っていた。
 自分が過去に留まっている間に見違えるほどに成長し、立派に人として生きている。
 それが嬉しくて、チンクは場違いな歓喜の涙を流す。

「ここは、隔離施設の一部です。貴女方の会話は、全て聞かせて頂きました」

 ギンガが静かに付け加えた。
 チンクはゆっくりと首を振る。

「ありがとう、ノーヴェ。その気持ちだけで、十分だ。
 だが、これは、私の問題だ。私が決着をつけないといけない問題なんだ。
 本当にありがとう、ノーヴェ。お前のその言葉だけで、私は十分に救われた」
「でもチンク姉……」

 ノーヴェの言葉をチンクが手で制す。
 その二人の姿を、じっとメガーヌは見つめていた。今時笑い話にもならない三文芝居のようなやり取り。それを行う二人の表情は真剣そのものだ。
 ナンバーズの9、ノーヴェ。彼女のクローン元となった遺伝子は、クイント・ナカジマのものである。
 その真摯な瞳に、今は亡き戦友の面影があった。
 メガーヌは逆上した。

「やっぱり、貴女には解らない。
 貴女に、解る筈が無い! こんな静かな場所で、家族に言い遺したいことを存分に言って、思い残すことも無さそうに逝こうとする貴女には!
 愛するものを助けようと手を伸ばし、それでも届かなかった瞬間が!
 自分に助けるだけの力がありながら、より多くの命を助けるために大切な部下を見殺さなければならなかった瞬間が!
 大切な全てが喪なわれていくのを、ただ自分の無力に歯噛みしながら見つめるしかなかったあの絶望が、―――貴女には解る!?」

 六課の寮では見たこともないメガーヌの姿に、スバルとティアナは絶句するしかなかった。
 メガーヌは怒っているというより、泣き叫んでいるように見えた。
 それでも、スバルはメガーヌを制止しようとした。

「―――やりすぎです、メガーヌさん!」
「いや、いいんだ、スバル……。ギンガ、スバル、貴女達にも伝えなければならない。
 貴女達の母、クイント・ナカジマを殺したのは―――私たちだ。
 ギンガ、貴女には本当に世話になった。それなのに、今まで黙っていて、……本当に済まなかった」
「……え?」

 スバルは、その言葉に完全に意表を突かれた。
 
「母さんを殺したの、チンクさんだったの? そんな、そんな事、今さら言われたって困る!
 だってチンクさん、もう、友達じゃん……」
「私には許しを請う資格も無い。未来あるその拳を私などの血で汚すのは忍びない。
 貴女が望むなら、私はこの首を刎ねて自害して果てよう……」
「そんな、こと、言われたって困るよ、ねえ、ギン姉!」
「―――ごめんなさいね、スバル。そんなこと、とっくに知ってたわ。私は」

 ギンガは地面を見つめながら訥々と語った。

「あの作戦で稼動していた戦闘機人は貴女と3番と4番。
 中でも、あの時点で母さんを倒せる可能性が濃厚だったのは、貴女だった。
 貴女とは3年前に戦ったけど―――貴女の戦法は、抜群にシューティングアーツへの相性がよく、すぐに圧倒されてしまった。
 だから、母さんの死には、貴女が深く関わって確信していたわ。
 でも、そんなこと、最早掘り返すべきでは無いと思ってた。
 貴女はここで立派に罪を償っているし、スバルとも良い友達で居てくれている。
 今さら、明るみに出して追求すべきことじゃないと思ってた」
「……ギン姉の、言う通りだね。やっぱり、チンクさんはチンクさんだもん。
 今さら、恨むなんて、出来ないよ」

 スバルは悄然とそう告げた。
 チンクは悲しげに項垂れる。彼女今、罰が欲しかった。自分の罪に似合うだけの罰を、誰かに与えて欲しかった。
 慚愧の念は、いつまでも彼女を苛み続ける。
 
「罰して欲しい、そんな顔をしてるわね?
 どう罰してあげれば貴女は満足するの? このまま首を刎ねれば満足? それとも死なない程度に痛めつけ続ければそれで満足なのかしら?
 何にせよ、貴女は自分の心の重みから楽になりたいだけじゃない。浅ましい考えだわ」

 チンクは、言葉も無い。
 メガーヌは、一つの提案をした。メガーヌへの罪に相当する唯一のチンクへの罰を。
 彼女は、チンクへゼストの大槍を差し出した。

「その槍で、妹を殺しなさい。その首を刎ねてみせなさい。
 そうすれば―――貴女にも、あの日の私達の気持ちの万分の一程度は理解できるかもしれないわ」

 できる、はずが、ない。
 無論、メガーヌの言葉が本意からのものでは無い事は誰も解っている。これは只の八つ当たりの意地悪に過ぎない。
 だが、チンクにとっては余りに現実的過ぎる問いかけで、同時に、解答だった。
 自分には、妹を殺すことは出来ない。口では罰が欲しい、償いたい、何でもする、と言っていながら。
 それが、絶対に償えないものである事を、はっきりと理解してしまっていた。
「あたしは……いいよ。チンク姉がそれで許されるなら、あたしは、チンク姉に殺されても、悔いは無い」

 ノーヴェは迷いなくそう言い切った。真っ直ぐな瞳。その言葉にも、その表情にも、翳りの欠片も無い。
 余りに無垢なその願いに、チンクは静かに頭を振る。

「済まない、ノーヴェ。それだけは出来ない。それだけは、何が有っても、出来ない、んだ。
 ミセス・アルピーノ、貴女の言う通りです。
 私は貴女から多くのものを奪いました……もう返すことも出来ません。それなのに、私は、貴女が喪ったものを手放す事さえ、出来ない。
 あれだけの人の命を奪いながら、私のような詰まらない者の命で勘弁してもらおうなんて、本当に、私は―――甘すぎました。
 ―――それでも、私は、妹達を失うことは出来ません。どうか、どうか私の命一つで勘弁して下さい。お願いします……」

 チンクは涙を流しながら、地に頭を擦りつけて懇願した。何度も頭を下げて、ただメガーヌに詫び続けた。
 メガーヌは、何かが欠け落ちたような無表情で、そんなチンクの姿を見下ろした。
 彼女は無表情のまま、ゼストの槍の石突を浜に突き立て、拳を握り締めた。
 氷のようだった彼女の表情が、一気に沸騰した。メガーヌは湧き上がる怒気を隠そうともせず、渾身の力を籠めてチンクを殴り飛ばした。
 堪らず仰向けに転がったチンクに馬乗りのようになり、子供の喧嘩のように拳を打ち下ろす。

「ずるい……貴女はずるい! 泣いて、逃げて、安全な場所に隠れて……
 あの日なら、11年前のあの日の貴女なら、殺せたのに、殺すことが出来たのに!
 右も左も解らない、出来損ないの作り物の貴女なら、そのまま首を刎ねて終わりにすることが出来たのに!
 天災にでも遭ったと思って諦めることが出来たのに! どうして、どうして!?
 ずっと貴女が憎かった! 今日貴女に会って、もっと貴女が憎くなったわ! 
 どうして貴女はあの日のままで在れなかったの! どうして貴女は人間なんかになってしまったの!
 あの日の貴女なら、殺すことが出来たのに―――」

 そのまま―――メガーヌはチンクに馬乗りになったまま、わんわんと泣き出した。
 何時かのチンクのような、子供のような泣き方だった。
 チンクの頬に、メガーヌの涙が滴り落ちる。
 視界の端に、浜辺に突き立てられたゼストの槍が見えた。槍は、まるで二人の遣り取りを見守っているようだった。
  
 チンクは、ずっとあの槍に憧れていた。あの槍と、それを操る騎士ゼストに。
 ずっと、あの槍のように、何物にも換えられないたった一つのものが欲しいと思っていた。
 代替可能な機人でしかない自分にも、あの日のゼスト隊が見せたような人間の輝きが欲しいと思っていた。

『どうして貴女は人間なんかになってしまったの!』

 メガーヌの叫びが蘇る。
 自分は、人間に、成れたのだろうか―――? ギンガに更正プログラムを進言したのは、誰より自分が人間に成りたかったからだ。
 姉妹で一番人間に憧れながらも、自分が一番人間には程遠い存在だと思っていた。
 そんな自分を―――ノーヴェは、自分の命に代えてでも助けてくれようとした。
 ずっと憧れていたゼストの槍、あんなたった一つの存在に、自分の成れたのだろうか?
 チンクはただ、滂沱の涙を流す。
 幸せだった。どうしようもなく幸せでありながら、幸せであることが目の前のメガーヌに申し訳なくて、幸せなのが悲しくて。
 彼女はどうしようもなく、ただ泣くしかなかった。

「―――貴女の幸せを奪っても、奪われたものは戻らない。貴女の命を奪っても、貴女の幸福は奪えない。
 やっぱり、私は、どうしようも無い位、貴女の事が、憎い―――」
 
 あの日、メガーヌが報仇を誓った機人は、自分の意志も無く仲間の命を奪った死神は、もう居なかった。
 それでも、彼女はチンクが許せない。許せないのは、生存ではなく、その幸福だった。
 チンクの幸福は、メガーヌには壊せない。もう、チンクにメガーヌが出来ることは何も無い。 
 メガーヌは立ち上がり、ゼストの槍を手に踵を返した。
 チンクは、その槍をじっと見つめる。―――メガーヌは気付いていた。気付かない筈が無かった。ただ、認めたくなかった。

「……貴女も、愛していたのね」

 チンクがその槍を見つめる瞳は、かつて自分達が騎士ゼストを見つめていたのと同じ瞳であることに。
 メガーヌは、一度だけチンクを振り返った。チンクは、ただ呆とメガーヌを見上げる。
 メガーヌは、嘆息をして肩を竦め、言葉一つ無くその場を立ち去った。
 チンクはただはらはらと涙を流し、深く頭を下げた。

                          ―――L.L.外伝 ゼストの槍 END    
314―――プロローグ ◆vyCuygcBYc :2008/08/10(日) 00:14:33 ID:1Nkb4dvn
 ―――ルーテシアは、不安げに母の部屋を見つめていた。
 夜も随分遅いというのに、未だ母の部屋には灯りが燈らない。
 何処に行っているのだろう?
 ……暗い部屋の中で、小さな人の気配を感じた。
 
「母さん、居るの―――?」

 メガーヌは、暗い自室の机で、独りグラスを傾けていた。

「母さん、お酒、飲んでるの……?」

 ルーテシアの知る限り、メガーヌがアルコールを口にするのを見るのは、これが初めてだった。
 メガーヌは―――ひどく、悔しげな表情をしているように見えた。
 不意に不安になって、メガーヌは部屋の灯りをつけた。

「あら、ルーテシア。御免なさいね、遅くなっちゃって」

 光の下で、メガーヌはにっこりと微笑む。それは、ルーテシアの知る何時も通りの母の笑顔だった。
 机の上には一枚の写真があった。ゼストと母とスバルによく似た女性と、沢山の男達の写った集合写真だった。
 何を言うべきかも解らず、困惑した表情のルーテシアの頭を、メガーヌは優しく撫でた。

「母さん、おかえりなさい」

 ルーテシアは何も尋ねず、そう言って小さく微笑んだ。
 メガーヌはただいま、と微笑み返して、静かに杯を唇に運ぶ。
 ―――結局、何一つ変える事は出来なかった。
 快刀乱麻絶つ如き決着は無く、何も変わらないままいつもと同じ日々に戻る。
 あの日の恨みを消すことは出来ないし、チンクを許す事も出来ない。
 チンクもまた、自分を許す事が出来ずに苦しみ続けるのだろう。
 ……自分は、六課の隊長達のような高潔な英雄ではない。私怨で動くだけのちっぽけな人間だ。出来ることは、これが精々だろう。
 でも、これでようやく終わったのだ。一人だけ行き残ってしまった自分にとっての、あの日の戦いが。

 ―――あの日から、騎士ゼストはレリックウエポンとしての蘇生させられ、スカリエッティの駒として使役されたと聞く。
 メガーヌは思う。それは、あの誇り高い騎士にとってどれだけの屈辱だったのだろうか。
 体の世話を担当していたのは、あのチンクだったという。
 己を、仲間を殺した機人の世話を受けるゼストの心中は、如何ばかりだったろうか。
 犯罪者としての誹りを受けることも構わず、隊の仲間達の死の意味を問う為に奔走してくれた。
 あの寡黙な騎士は、過ぎた事は黙して語らず、ただ静かにこの娘を見守ってくれていた。
 自分と、ルーテシアの―――未来を生きるもののために。
 強くて、激しくて、優しくて、―――とても巨きな、騎士だった。

「ルーテシア」

 その名を呼ぶ。この娘にとっても、ゼストは大切な人だったに違い無い。
 彼女がアスクレピオスに組み込んだ新たな形が、その想いの深さを語っている。
 愛娘と過ごせる掛け替えのない時間―――こんな時間を守るために、ゼストは命を懸けて戦ってくれた。
 ならば、感謝と共にそれを享受しよう。
 ゼスト隊の副隊長としての戦いは、これでお仕舞いだ。
 これからは、機動六課の寮母としての戦いの日々が待っている。
 ルーテシアにアスクレピオスを手渡す。
 この子やあのクイントの娘達も、これからそれぞれの戦場に向かうのだろう。
 自分が果せずとも、想いを受け継ぐ者たちがいる限り、きっといつかは辿り着く日が来る。
 これからは―――若者達の時代だ。

「アスクレピオス、今日はありがとう。あなたもこれから―――頑張ってね」

 ルーテシアは何の事か解らず、きょとんとした表情で首を傾げた。
 メガーヌは口許を綻ばせて、くしゅりとその髪を撫でた。
 
          ―――GO TO NEXT :Little Lance Curtain Call 
315アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/08/10(日) 00:15:28 ID:1Nkb4dvn
 遅く遅く遅くなってしまって、お詫びの言葉も御座いません。
 大した内容でも無いのに月間ペース、猛反省致します。
 後編は肥大してしまった部分も多く、未熟さを改めて実感しました。
 
 さて、次の連載はL.L.から離れて、前々から書きたったソープものを書いてみようと思います。
 ソープナンバーズ・スピンアウト 長編微エロSM純愛ネトラレSS「伊達眼鏡と狙撃銃」
 今度は欲張らず小出しに投下して行きますので、また応援頂ければ幸いです。
 (と、しなくてもいい予告をして自分の尻を叩いて書きます)
316アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/08/10(日) 00:21:18 ID:1Nkb4dvn
ついでに、ちょっとお尋ねしたいのですが、宜しいでしょうか?
現在メモ帳直打ちで60行ごとに区切って書いているのですが、時々全角2048文字を超えてしまって、半分に分けて投下しています。
皆様はどのようにして一回の投下範囲を定めて書かれていますか? 素人丸出しの質問で申し訳御座いません。
317名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 00:40:25 ID:RDsQTYMX
>>315
リアルタイム超GJ!
貴方の書くSSは大好きです。
ゼスト隊の顛末をしっかりと書いた話は始めてだったので非常に楽しかった。

あんまり上手い感想書けなくてすいません。
次回も楽しみにしています。
318名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 00:43:35 ID:pYVa634Y
職人のかなり端くれです。参考までに、私のやり方。
メモ帳を全画面で開きます。
ブラウザでこのスレを見たときと、同じサイズになるように文字の大きさを調整します。
一画面分書きます。
一画面が一投下分。それが大まかな目安です。

そしてGJ! 
LLもそうだけど、もう公式になってしまえと言いたいくらいにGJ!
面白すぎて、こっちが書くときにそれぞれのキャラが引きずられてしまいそうなくらいGJ!
319名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 00:46:48 ID:D4dfOX+Q
ひゃっほーい! 悪女誕生秘話楽しませてもらいました。俺の愛した下衆女はこうして生まれたっ、みたいな
あとチンクを許すことも罰することもできないメガーヌさんがどこまでも人間でいいなあ

なんか本筋の感想の方がおまけみたいになっちゃったが気にしない気にしない
320名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 01:12:11 ID:yTLCTpG3
>>315
GJ
上手いと思った
隊で書く時、絶対に部下の名前を決めなければならないからどうしてもオリジナルになるのが俺は気に食わないが、これは美味い
アリーナで勃った
という品のない事は置いておいても、Fate ZEROと同列に面白いと思いました
死にたくないと思ったチンクが死んで良いと思うようになるのは素敵な事です
密度のある話、楽しましてもらいました
321名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 01:25:59 ID:2aXXwTgy
>>315
アルカディア氏、投下&完結超乙!
文句なしの名作でした。登場人物がみな生き生きして、ホントこれが本編だったとしても文句なしの出来です。
たいていのSSでは最後は和解しますがけしてチンクを許さないメガーヌの心情はスジが通っていて好感が持てました。
次回の長編微エロSM純愛ネトラレSS「伊達眼鏡と狙撃銃」、シリアスの後にこんなSSを書く貴殿に最高の敬意をw

322名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 01:38:36 ID:Ali+7n7K
>>315
面白過ぎて言葉がない・・・この胸に去来する想い、あなたにどう伝えれば良いのか?

ゼスト隊全滅の顛末の色濃い絶望、クアットロの胸に宿る最悪の嗜虐性、チンクの中に生まれた人間性。
そのどれもが素晴らしいドラマを生み出している。
言葉にできないほどの深い感銘を受けました、面白いSSを読ませて頂きありがとうございます。
そしてこの万感の想いを伝えるただ一つの言葉をあなたに。

GJ!!
323名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 01:41:23 ID:Ali+7n7K
ああ、あと誤字を発見いたしました。

>>310
 直情的で、前に出る事しか知らなかったチンクが今、膝をついて誠意を尽くして謝意を述べている。……それも、こんな自分の為に。

ここはチンクではなくノーヴェですね?
324名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 01:42:56 ID:dXk/CZxx
大切な仲間達を殺した奴がのうのうと幸せに生きている。メガーヌの憎しみは察して余りありますね。
しかも例え殺して復讐を遂げたとしても溜飲が下がることは決してない。救われなくて悲しくなりました。
あまりナンバーズの「罪」に対して深く掘り下げた作品はないので良かったです。もっと掘り下げてくれてもいいくらい。

そういえばゲンヤさんはそこの所どう思ってるんでしょう。少し気になりました
325名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 01:56:18 ID:ePzzOD+m
深夜なのでだれも居ないうちに投下しておきます
フェイト、おまたが気になるの続きです
326フェイト、おまたが気になる6:2008/08/10(日) 01:58:08 ID:ePzzOD+m
言ってしまった後に血の気が引いていく。まるで何かに操られたかのように僕はそんなことを口にしてしまっていたのだ。

血迷ってしまったというほか無い。これもフェイトの青と白のストライプパンツがあまりに眩しくて魅力的過ぎたからだ。

朦朧と仕掛けていた頭は冷や水を浴びたかのように正気に戻る。危なくとんでもないことをしでかしてしまいそうであった。

すぐに謝って、こんなことは終わらせなくてはならない。大丈夫だ。僕は正気に戻った!

だというのに、フェイトは少し驚いたような顔をしたあと。


「…うん。いいよ。触って確かめて…」


と少し恥ずかしそうにはにかみながら頷いていた。

「っーーーーー!」

脳内が一気に沸騰しそうになる。それだけでなく下半身の一部に血が集まり始めた。それまでは緊張と驚きで縮こまっていたものが自己主張をし始めていた。

これは非常に不味い! このまま流れに乗るわけには兄としても人としてもだめだ! 絶対にそんなことをしてはならない。

ダイジョウブダ。ボクハショウキニモドッタ!

気持ちとは裏腹に僕の手は勝手に動いていた。おそらくその部分があるだろうと思われるあたりを人差し指で軽く触れる。

「んっ…」

色っぽい声を挙げる彼女に堪らず、僕は指を上下に女性のすじの部分と平行に静かに動かす。

パンツの感触の裏側にある部分のぬくもりが指の腹にまで伝わってくるような感じだ。だが、思っていたよりもその感触は柔らかくない。

彼女の大切な部分は貝のようにぴたりと閉じられて、その奥までの進入を許さないからだ。

それでも、指の動きが上下するたびにその守りは崩されていく。少しずつ少しずつ、指に伝わってくる感触はさらに温かく柔らかいものになっていく。

さらなる感触を求めて、左手の人差し指と中指ですじの部分をパンツの上から左右に開かせる。がら空きになった中央部を右手の指で狙う。

パンツの上からとはいえ、経験したことの無い感触に僕の情欲はさらに掻き立てられていき、指の動きがさらに強く早いものへと変わっていく。

「あっ! んんっ…! や、やっぱり私おかしいのかな? クロノにおまた触られて…変なの。おっ、おまた気持ちいいの」

情欲を掻き立てられたのは僕だけではなかったらしい。フェイトの潤んだ瞳と熱い吐息。それはどう考えても彼女の年齢にはふさわしくないものだ。

327フェイト、おまたが気になる7:2008/08/10(日) 01:59:20 ID:ePzzOD+m
それが僕の嗜虐心に触れた。真面目なのがとりえのはずの僕だったのだが、このときはどうもタカが外れてしまっていた。

「フェイト。僕が今触っているのはどこだ?」

「んんっ! おまた」

「違う。僕が今触っているのは君の女性器…。いわゆる、「おまんこ」と呼ばれる部分なんだ」

「おま…ん…こ?」

ニッコリと笑う。いつも勉強を教えるように、業務内容の教える時のように優しい顔とやさしい声でフェイトからその言葉を引きずり出す。

「さあ、もう一度言ってごらん」

「おまん…こ…」

「そうだ。それでどこが気持ちいいんだ?」

「んっあんっ! …おっ、おまんこが気持ちいい!」

遂にその言葉を引きずり出せた悦びに、僕の指の動きはさらに早まっていく。

そして、はっきりと下着越しにぬちゃぬちゃとした水気を感じ始めていた。指を下着から離すとぬるりとした液体が指についている。

フェイトの身体は準備完了で普通ならば更なるステップに進むことになる。そして、さらなる情欲の炎が燃え上がるはずなのだが僕は逆に醒め始めていた。

次にする行為を考えた時に、再び冷静になった頭が僕がしてしまったことに気づいたのだ。

こんな幼い子に…、ましてや僕の妹となった子に騙し討ちのようなことをしてしまった。

彼女は僕のことを信頼してくれていたのに、僕はそれを裏切ってしまったのだ。
328名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:00:24 ID:2aXXwTgy
人として暴走中のエロノに支援
329フェイト、おまたが気になる8:2008/08/10(日) 02:00:57 ID:ePzzOD+m
今更、謝って済まされるような問題ではない。だが、それでも自分の犯してしまった罪は裁かれなければならない。

「ごめん。フェイト、僕は…」

彼女の顔をまともに見ることが出来ない。俯き唇を噛み締める。もう、これで兄妹としての仲は完全に終わってしまうのだろう。

自分が欲望に負けてしまったがばかりに! 自分の愚かさが本当に嫌になる。

そのとき、何かが自分の顔に飛んできた。考え事をしていたため自分の顔にふわりと飛んできた物体を避けそこなう。

顔に当たった感触から布キレのようなものであり、当ったところで問題は無かったようだ。

なんだろうと思いながら、何気なく顔に当った物体を手に取る。それは先ほどまで穴が空くほど見つめていたものであった。

白と青のストライプの柄をした女性用下着。中央の部分が女性器の形をなぞるように楕円に湿っている。

「なっ!?」

驚きながら、正面を見る。そこには先ほどまであったはずのものが無く、代わりに綺麗な薄ピンク色のフェイトの秘部が晒されていた。

小さなフェイトの身体に見合うようにその部分は小さかったが、男を誘うかのように既に十分に潤っていた。

「フェ、フェイト…」

初めて目にする女性のそこから目を離せない。冷静になったはずの頭がまたぼんやりとピンク色の靄がかかっていく。

「下着が汚れちゃうから…」

舌なめずりするようにぺろりと悪戯っぽく舌を出した彼女はどうみても年端も行かぬ少女とは思えない。男を毒牙にかける魔性の女のようだった。

両脚を大きく開き、僕に見せ付けるように自らの手でその部分を広げる。どうしても目はその部分にいってしまう。

「クロノ…、続きしよっ」

切ないような声でフェイトは兄におねだりする。

すでに、僕の頭の中には先ほど浮かんだ罪悪感など消し飛び、目の前のものをどうするかしか考えられなくなっていた。


「お義兄ちゃん。フェイトのおまんこを見て。触って。もっと気持ちよくして!」
330名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:02:09 ID:2aXXwTgy
クロノ以上に暴走中のフェイトに支援
331名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:02:27 ID:ePzzOD+m
ここまで、次で終わりだと思う。
あくまで仲のいい兄妹のほのぼのとした少しHな話を目指しています
332名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:04:59 ID:N7v/FoQn
>>315
GJ!!!
リトランの時もそうだったが、本当に心理描写を描くのがうまいなあと改めて感心。
メガーヌさんの結局罰することのできなかった心境もよく納得できます。
しかし本当に眼鏡の残虐っぷりがきわだってるな。
それだけに未来でのくたばり方がよりみじめさを醸し出していてよりGOOD!
いつかまたリトランの後日談、素敵な三角関係編も楽しみにしております。

>>277
GJ!!
スカとしょうがなく付き合うなのはの気持ちの変化がすごく楽しみです。
これだけ優しく(?)情熱的なら、魔王様でも口説けるかも?
うるさい厨房がいますが、気にせず続けてくださると嬉しいです。

>>264
GJ!!
どの家族もほのぼのしてていいなあと思います。
親がすごい魔道師だと強要とか幼いころからされない限り目指そうとしてしまうのは仕方がないことだと
キリュー、ヒリュー、シリューの苦労にワロタw
もういっそのこと、紫髪の弟か妹がいてもいいんじゃないかと思うんだ
別にキャロさんだと親友ルーちゃんと旦那エロオなら離婚話を持ち出さないかと…多分…
333名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:05:57 ID:2aXXwTgy
投下乙です!
魔性の女へまっしぐらのフェイトと冷静さを取り戻したクロノがこのまま
ほのぼのHですむとは思えません。次で最後というのは寂しいですが楽しみにしてます。
334名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 03:07:06 ID:B14+bLfp
>>315
ありがとう。
もうこれだけしか言えない。
ゼスト隊の死は、部下の個人個人まで突き詰めると、
メガーヌさんの行動も仕方が無いと思ってしまう。
あとアリーナに興奮してしまった俺は間違いなくクアットロの下僕候補になれそうだ。
つか無惨、ここに極まりし。
母性に対する、あまりにも惨すぎる仕打ち!!
さらに「ようくかき混ぜてやるゆえ」まともな御遺体が残らぬ有馬様。
でもそんなクアットロが好きだああ。

>チンクは無言で浜辺に座り、首を項垂れた。土壇場で首を落とされるのを待つ咎人のような―――いや、咎人そのものの格好である。
土壇場の光景!!!

かつて恩師が残した言葉はこうあった!
『恨み憎しみは、忘れることではじめて許される』
が、忘れられないがゆえ人は争いあうのだと……。

>>329
なんというエロノwww
335名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 09:03:10 ID:yf2CXX6h
>>316
超GJ!
良い意味で原作超えたんじゃね?みたいな部分も含めて、圧巻
虐殺シーンが地上波はおろかリリカル世界では不可能な鮮血表現なので
おおー、こういうのもアリなんだ、って感じで、いやクアットロいいですね、ダイスキですよこういうの
短い中でオリキャラも出来もキャラが立っていて素晴らしい
お約束シーンの連続なのにまったくそれを感じさせない丁寧な描写に脱帽です
次回作のエロいのも期待してます
336名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 11:06:31 ID:8yTX3Xz0
>>315
途中メガさんとチンク姉との絡みで号泣しました。
相変わらずのクアットロ氏ねといい
アルカディアさんの作品には感情が激しく揺さぶられます。
惜しみないGJを!
>>329
行き場を見失った俺のリビドーをどうしてくれるw
337名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 11:07:28 ID:/0o0Klm3
>>316
面白かった。が、それだけに誤字脱字がかなり散見できたのが残念。
中でも気になったのは、以下の文。

>だが、如何に騎士ゼストでも、犇く機械兵器の群れから仲間達の全てを打倒することは可能だったろうか?

仲間を打倒しちゃダメだろ、ゼストさん。
338名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 11:14:00 ID:Ali+7n7K
>>331
ここで寸止めか!! なんという外道www

GJです、とくに義妹に淫語言わせるクロノが。
339名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 13:47:57 ID:al6c4i0M
B・A氏
遅レスですがGJ!
さすが首領と言うだけあってでたらめに強い…
ベテラン魔道師5人相手に互角以上とは。
これはもうガチンコでぶつかっていくしかないな。
激しくエリオ達を応援!
34069スレ264:2008/08/10(日) 14:31:36 ID:nLgXvtaY
業務報告です。
79スレ保管完了しました。
職人の方々は確認お願いします。
341名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:02:04 ID:ePzzOD+m
>>340
お疲れ様です。
それではフェイト、おまたが気になるのラストの投下です。
342フェイト、おまたが気になる9:2008/08/10(日) 15:03:39 ID:ePzzOD+m


フェイトは痛みを耐えることには強かったが、快楽を耐えることは出来なかったらしい。

ましてや、そういった知識は皆無だから耐性が無いのだろう。与えられる快楽の波に戸惑い完全に酔ってしまっている。

もちろん、本人にも元々そちらの資質があるのだろう。誘うような表情、未成熟な女性器も男を完全に虜にしてしまうようだった。

もしも、彼女が娼婦であったならば一晩に莫大な金額を支払ってでも買おうとする男達は尽きないだろう。

抑えきれない気持ちで唾を飲み込みながら、まずはじっくりと始めてみる女性の部分を確認する。

綺麗なサーモンピンク色を下その部分がとろとろの蜜で溢れている。こんな綺麗でいやらしいものなど見たことが無い。

「見てるだけじゃいや! 早く触って」

フェイトは堪らないといった表情でおねだりするように腰をくねらせる。僕だって早く触りたいが、何とか我慢して顔を近づける。

これは極上のワインと同じだ。ワインを楽しむ方法は飲むだけじゃない。色を見て楽しんだ後は香りを楽しむのだ。

鼻を近づけてその香りを鼻腔一杯に吸い込む。その瞬間、全身にクラクラするような甘い香りが広がっていく。

どんな極上の香水でも敵わない、男を虜にするメスの香り。そんなものが今、彼女の秘部から漂ってきているのだ。

「クロノ…、少し恥ずかしいよ…」

その部分のにおいを嗅がれる。性の知識がうとい彼女であっても、それはさすがに恥ずかしかったらしい。

先程までの女の顔から一転して、恥ずかしそうな表情で指をもじもじとさせている。

そんな表情も今の僕には誘っているようにしか思えない。興奮した僕はさらなる感触を味わうために人差し指をゆっくりとフェイトの中に沈めていった。

指は第二関節まで、ぬるぬるとした潤滑液のおかげですんなりと入っていった。

「んんっ! あああっ!」

今までよりも一際フェイトは大きな声を挙げる。それと同時に指をぎゅっと締め付ける感覚。

指に絡みつく蜜と伝わってくる温かさ、締め付けは、もしも僕の熱くなったシャフトが入ればどうなるのかを否応無く想像させる。

「んんっ! あふんん! くろのぉ〜!」

決して傷つけないようにゆっくりと指を出し入れする。入れるたびに出すたびにフェイトの腰がびくびくと動いている。

既に潤いきっていたフェイトの秘部からは、さらなる快楽を受けて蜜がトロリと漏れ始めていた。
343フェイト、おまたが気になる10:2008/08/10(日) 15:04:57 ID:ePzzOD+m
それを僕はもったいないと思う。気がつけば僕は口を近づけ舌を伸ばし蜜を舐めとっていた。

「はああっ! ク、クロノ!?」

まずは溢れかえった周りから丁寧に舐めて綺麗にしていく。そして、遂に中央部へと舌を伸ばしていく。

フェイトの蜜が製造される場所はとろとろに溢れている。舐めるのには困らない。ぴちゃぴちゃと音を立てながら、樹液を吸う蝶のようにフェイトの蜜を舐めとっていく。

「だ、ダメだよぉ! ああああぅ! きっ、汚いよぉ」

フェイトの体から出てくるものが汚いはずが無い。下を丸めて筒状にしてずずっと音を立ててさらに吸い取っていく。

味は正直よく分からない。しょっぱいような甘いような…。しかし、今の僕にはこの味が何よりもご馳走だった。

舐めても舐めてもフェイトの蜜は尽きることが無い。むしろ、次から次へと出る量は、僕がいくら吸い取っても追いつかないほどだった。

蜜の中央部から少しはなれて、上の部分を舌で舐めながらその部分を探す。経験のない僕は話などでしか聞いたことのない女性が最も感じる部分を懸命に探す。

遂には下の先端に今までに無い、小さな豆のような固い感触を探り当てた。大よその場所を掴んだ僕は、その部分を集中的にやさしく舐め始めた。

「ふああっ!? あああっふん!?」

今までよりもさらに上回る快楽の衝撃にフェイトの腰がびくんと跳ね上がる。僕は出来る限り動かないように両手でフェイトの脚を固定しながらさらにその部分を舐め続ける。

「はあああああっん! ダメっ! おまんこ、きもちいいいのぉおお! そこは何か…出ちゃう」

肥大したクリトリスにはもはやそれを守っていた皮は何の効力も持たない。直接、僕はフェイトのクリトリスを舐め続ける。

びくんびくんと何度も腰を動かし、僕から、強すぎる快楽から逃れようとするフェイトを押さえつけて股間に顔を埋めて、クリトリスを執拗なほど舐め続ける。

そして、限界が近づいたことを悟った僕は止めとばかりにクリトリスをやさしく甘噛みした。

「だめぇええぇ! でちゃうのぉおおぉお!!!!」

腰が大きく跳ねると同時に大量の蜜がほとばしり、黄金の液体がアーチを描くようにフェイトのおまんこから流れ出ていった。

びくんびくんと痙攣のように身体をひきつかせながらも、おしっこは勢いが止まることが無くちょろちょろとクロノのベッドを汚していった。

おしっこを出し切った後も頬を上気させて、荒い息をつきながらフェイトは完全に気を失ったように倒れこんでいる。初めての絶頂はまだフェイトの身体には早すぎたのだろう。

僕は顔にかかったフェイトの蜜とおしっこを手で軽くふき取ってから、まじまじと倒れこんだフェイトを見つめた。
344フェイト、おまたが気になる11:2008/08/10(日) 15:07:45 ID:ePzzOD+m
さすがに、完全に疲れきってしまっていてこれ以上の行為は無理だろう。…残念だが、とりあえずこの惨状をなんとかしなくては。

両脚を開ききったまま気絶しており、蜜で濡れそぼったそこを丸出しにしている。そこに僕のそそり立った肉棒をねじ込みたい気持ちを何とか我慢する。

とりあえず、僕も出すものを出してしまわないと気がすまないようだ。このままではまた襲ってしまうかもしれない。

幸いにも充分すぎるほどのおかずが目の前にある。僕はズボンを脱いではちきれそうなほどパンパンになった肉棒を取り出す。

「せっかくだから」

とわけの分からないことを自分に言い訳しながら、フェイトの洋服を押し上げて発展途上の胸とピンク色の可愛い乳首を拝んでおく。

それから、フェイトのおまんこから蜜を手で掬い取り、自分の肉棒に塗りこみながら自慰を開始する。

フェイトの白い肌のわずかに膨らんだ目根の中央部のピンク色の突起や蜜であふれたおまんこを見ながら肉棒をしごく。

「んっ! フェイト!」

おかずが良すぎたのか、すでに限界が来ていたのか。三分と持たずに真っ白い欲望がフェイトのおなかの辺りを汚していった。

すっきりすると同時に、自分のしでかしてしまったことの大変さに今更ながらに気づく。

これで僕は犯罪者の仲間入りだ。いくら自分が未成年で同意の上での行為だったとしても、これからは鬼畜クロノだとかエロノだとかロリコン野郎と蔑まれて生きていかなければならない。

いや、まだ手はある! フェイトは口が堅いから頼めば誰にも喋らないだろう。ここの後片付けを完璧にして、口裏さえ合わせれば!

そうだ若い僕には夢がある! こんなところでつまづいてはいられない! まずはフェイトを起こして、下着やシーツを洗濯に入れる。それから言い訳のパターンを瞬時に13個考える。

明瞭な頭が戻ってきていた。大丈夫だ僕ならやれる! このことを完全に闇に葬り去るのだ!

…まあ、それはそれとして一回出しただけでは、今日の僕の熱いリピドーは鎮められそうにも無い。

もう一回ゆっくり楽しもう♪ まだ、触っていなかった小さな胸に左手を伸ばし、右手で肉棒を握りながらエンジョイタイムだ。

今、思えばここでやめておけば何とか間に合っていたのかもしれない。自慰に夢中になっていた僕は玄関のドアが開く音に気づかなかったのだ。


「ただいま♪ 仕事が思ったより早く終わっちゃっ…」

「ただいま。フェイト、ここにいたの…」

奇しくもクロノの部屋のドアが二人によって開けられたのは、クロノの肉棒から三発目の白い弾丸が発射された瞬間であった。

白い弾丸は眠っているフェイトの顔に降り注がれ、クロノは己の肉棒を右手で握ったまま完全に硬直していた。

「「…………」」

二人はあまりの出来事に言葉を失っていた。

その間もクロノの頭はフル回転する。何とかこの危機から逃れるための言い訳を考える。そして、


「いやっ、ヨーグルトなんだ」

どうみても精子です本当にありがとうございました。
345フェイト、おまたが気になるlast:2008/08/10(日) 15:08:48 ID:ePzzOD+m

その後の顛末について少し語ると、フェイトを盗撮していた映像関連は全て回収され焼却処分となった。

事に関わった男達は未成年を除いて、全員ロンダルギアの洞窟への調査に送られてしまったそうである。

そして、クロノはみなから鬼畜、外道、ロリコンと蔑まれ、一部の特殊な趣味を持つ男性たちからは英雄と呼ばれることになった。

「その記憶を魔法で映像化したものを僕に売ってくれ! 金に糸目はつけない。なんならローンでもいい!」

などとクロノに詰め寄った淫獣もいたが、「少し、頭冷やそうか…」と非非殺傷設定のSLBをぶち込まれてしまったそうである。

クロノは色々と人として大切なものを失ってしまったが、

「おかえり。どうする? 食事? お風呂? それともHする?」

と義理の妹と同時に幼な妻を手にいれたので、結果的には勝者だったのかもしれない。

めでたいめでたし?
346名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:11:15 ID:ePzzOD+m
以上でした。
ほぼコンセプトどおりに書けたと思います。
次に書くとしたら年齢を5つほど上げて、ユーのとなのはも加えるとしよう
347名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:30:27 ID:2aXXwTgy
投下乙です。
フェイト、なんたる天然!
ぜひとも次は本番をお願いします。
ところでエロノ君、言い訳を13も瞬時に考えるなんてどこのギアス能力者?
348名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:40:25 ID:Ali+7n7K
GJ!!
なんという未挿入エロ!! これは良い寸止めでした。
こんな変態的なのに本番なしってありえねえwww

そして

>非非殺傷設定

つまり殺傷設定じゃん! ユーノ死ぬぞwww
349名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:40:40 ID:lQDPIB0W
>>339
チンコでぶつかっていくしかない

に見えた、俺はもうだめだ。
350名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 16:20:29 ID:wBrAFQgo
とりあえず一言。
クロノ、俺と変わってくれ。
351名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 16:54:34 ID:hDdpEC2d
>>349
チンコ持ちはエリオしかいないじゃないかw

>>315
GJでしたっ! 何度貴方のケツを叩きたくなるのを我慢したか……
でも待った甲斐がありました。次作も楽しみに待ってます。

>>346
エロGJ、というかロンダルギアの洞窟ってw
352562:2008/08/10(日) 17:24:36 ID:xoNu3Ld1
おお! 皆様方GJです。
自分も頑張ろう。随分と間が空いてしまいましたが……

注意事項
・一応は1期の再構成になります
・高町家がアニメより、原作に近い設定になってます
・非エロ
・タイトルは『魔法少女リリカルふぇいと』
353魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:25:41 ID:xoNu3Ld1
こんにちは高町フェイトです。
え〜と、冒頭ではお久しぶりですが、その、最近は辛い事が多かったので現実逃避していました。
でも、これからは平気です。何があったかって聞かれると恥ずかしいのですが……その、先日から
お姫様ポジションになりました♪
まあ、簡単に言うとですね。私のことが好みと言う頼れるお兄さんと、今まで一緒に居たパートナーの
男の子がいがみ合って、その……いや、私のためにケンカはしないで欲しいですね♪

べ、別に喜んでませんよ。
でもね、これって魔法少女として正しい姿なんじゃないでしょうか? こう、主人公の女の子に
2人の男の子が好意を抱くって?
うん。やっぱり、女の子にプロポーズされるのは、魔法少女としてどうかと思いますよ。

特にクロノは最初は何でユーノを嫌うのか分からなかったけど、謎が解けると逆に分かりやすい人で、
結構、独占欲が強いというか、私とユーノが一緒にいると機嫌が悪くなるんです。
例えば、私がユーノとお話してたら、クロノが来て訓練に誘うんですよ。
まあ、お陰で、今では幾つか使える魔法も増えましたし、砲撃魔法も仕えるようになりましたけど。

でも、最近のクロノは、あの子と戦ったり、私の訓練に付き合ったりして時間をとられる所為か、
何だか疲れてるみたいです。体調を崩し気味で……凄く心配です。

いや、これって何だか、クロノの奥さんみたいな発言ですね♪
でも、リンディさんも、フェイトさんみたいな子が……とか言ってくれて、クロノも良い人だし、
何と言っても、あの子を退けてくれるし、一緒に居れば安心かな……って、
もう! まだ私には早いですって! 恥ずかしいな♪

いや、何かテンション上がって自分でも何言ってるか分かんなくなってきました!

と、とにかく、魔法少女リリカルふぇいと、始ります!

第9話

抹殺は海の上でやろう

354魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:26:42 ID:xoNu3Ld1
淡い光の乱舞。それは夜に見られる蛍のダンスを早送りすれば、そうなるだろうか。
おそらくは誰が聞かれてもNOと答えるだろう。何故なら淡い光は単色では無く、桜色と水色の2色
であり、光そのものが大きすぎて、明らかに蛍と違うと気付く。
そして、何より華麗でありながら、そこには蛍の持つ儚さとは無縁な気に満ち溢れていた。

「ディバインシューター!」
「スティンガースナイプ!」

それは、相手を傷つけるための咆哮。
この光は敵を傷つける魔法の光。
桜色の光弾を操る白い少女と、水色の光弾を操る黒い少年との戦い。

「チッ!……また強くなってる」

黒い少年、クロノが舌打ちする。これまでも幾度か戦ってきた。最初は魔力の大きさや破壊力の強さに
驚きはしたが、雑さが目立ち、隙を突きやすかった。しかし、最近は隙を見つけるにも一苦労で、
白い少女、なのはは明らかに戦闘慣れし始めている。
今も、桜色の光球、ディバインシューターを自分の周囲に配置し、攻防どちらでも対応できるように
待機させているのだ。最初の何も考えずに、ただ打ち出すだけだった頃が懐かしくすらある。

「ディバインバスター!」

そして、この砲撃。呆れるほどの高い威力と射程を持ちながら、発射準備にロスが無い。
いや、正確には起動に時間はかかっているのだが、その間もディバインシューターが襲ってくるので
その隙を突くことが出来ないのだ。
膨大な魔力に加え、マルチタスク能力も高い。まさに魔導師として理想的な才能の持ち主だ。
クロノは何とか回避すると、なのはにS2Uを向ける。使うのは速度とバリア貫通能力に優れた
スティンガーレイ。

「ショット!」

光の弾丸が高速で発射される。だが、苦し紛れに撃った魔法では、今のなのはに通じはしない。
得意のシールドを出すまでも無く、展開していたディバインシューターを1つ操作してぶつけると
相殺してしまった。
355魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:27:46 ID:xoNu3Ld1
「そんな攻撃で!」

なのはは、先ほど相殺で潰したディバインシューターの分を生み出しながら、攻撃用に展開させた
光弾をクロノに送り込む。クロノは距離を取り、なのはを誘い込もうと試みる。
移動しながら、バインドを設置し、罠をしかける。
だが、なのはは動かなかった。笑みを浮かべ、クロノの行動を嘲笑う。離れて有利なのは自分の
方なのだと。
クロノは舌打ちをして、移動を止めると、今度は如何に接近戦に持ち込むかに作戦を変える。
スティンガーブレイド・エクスキューションシフトを使えば、倒せる自信もあるが、切り札を簡単に
切るのは拙い。シールドで止めてくれたら良いのだが、回避されたら困る。
もし使うとすれば、確実に受け止めなければならない状況、ここでなら周囲にバインドを設置する、
もしくは、バインドそのもので絡め取る必要がある。
だが、なのはの方が動かなければ、バインドの設置も出来ないのだ。
ならば、それを使うことなく接近せねばならないが、隙が見当たらない。
そして、追ってくるディバインシューターを回避しながら、次の手を構築していると、なのはが
顔を引き締め、ディバインシューターを生み出し追加する。

「絶望を味わえなの!」

なのはは、クロノが自分を動かそうとしている事を予想していた。
だが、あえて移動する。その先に罠があると知りながら。

「なに!?」

なのはは、ディバインシューターを先行さる。そして桜色の光弾は途中で、ほんの少し輝く水色の光と
相殺し合いながら、次の光弾が突き進んでいく。
そして、なのはは先行させたディバインシューターの軌道に沿って動いていた。

「まさかトラップの破壊機能を!?」
「その嫌がらせみたいなバインド! 何度も見たからね!」

なのはは、ディバインシューターに新たな付加効果を追加していた。
それが、ディレイドバインドのように特定空間に進入した対象を捕縛する魔法に誤認させる機能。
クロノが設置したバインドは、ディバインシューターに反応して発動すると、攻撃用の光弾の威力に
潰され消えていったのだ。
356魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:28:47 ID:xoNu3Ld1
「何て奴……」

クロノの背に冷たい汗が滲む。なのはの能力を表現するのは容易い。天才だと。
だが、クロノは否定する。才能だけが全てでは無い。そう信じて、今まで来たのだから。

「スナイプショット!」

展開していたスティンガースナイプを動かす。より鋭利に、より複雑に。魔力の才があろうが、
未熟な少女では対応できない動き。

「………………」

なのはが回避のために、今までと違う動きをする。先ほどディバインシューターで作った道から
外れる。その先の、まだ生きているバインドに向って。
そして、なのはの身体に水色の光の鎖が絡まり、拘束された。

「にゃあ―!」
「掛かった!」

クロノの顔に喜色が浮かぶ。ようやく訪れた好機、ここで決めると術の詠唱に入る。
だが、大掛かりな攻撃ほど分かりやすい隙があろうか。

「……なーんてね♪」

なのはが凶悪な笑みを浮かべる。そもそも最初から機動に頼らない戦闘をする、なのはが、拘束されて
何が困ると言うのか? せいぜい驚かせる程度だ。
そして、最初からバインドに囚われるつもりで動けば、驚くことはない。
なのははバインドを解こうともしない。ただ、拘束されたまま、今まで通りディバインシューターを
操作する。詠唱に入ったクロノ目指して。

「しまっ―!」

クロノは、驚愕の言葉さえ、最後まで発す事は出来なかった。むしろ、ディバインシューターの直撃を
喰らったのだ。悲鳴を上げなかっただけでも大したものだろう。
357魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:29:50 ID:xoNu3Ld1
「まだまだ行くよ!」

1発とは言え、直撃を喰らって朦朧とした意識の中で、その死刑宣告にも等しい言葉がクロノの耳に
届いた。
身体を動かそうと試みるが、自分の身体がどう動いてるかが分からない。ならばシールドをとも
思うが、方向感覚が麻痺している。これではどちらに張れば良いかすら分からなかった。
成す術は無く、それでも、抵抗しようという気力だけは抱いていたクロノの耳に、別の声が届いた。

「サンダースマッシャー!」

金色の光に、クロノを襲おうとしていた光弾が消されていった。
その声と行為に、なのはの顔と声が驚愕に変わる。

「フェイトちゃん!?」
「……クロノ!」

なのはの驚愕の声を無視して、フェイトはクロノに駆け寄る。
そして、クロノを気遣いながら身体を支えた。半分、ワザとやっているのだが、フェイトは殊更
なのはの前では、クロノにくっ付くようにしていた。

「フェイトか、ジュエルシードは?」
「確保したよ」

元より、ジュエルシード回収中に襲ってきた、なのはへの対応策で、クロノが、なのはと戦闘して
引き付けている間にフェイトがジュエルシードを回収する作戦だったのだ。

「フェ、フェ、フェ、フェイトちゃん……」

一方、なのはは無視された上に、親しげにクロノに寄り添うフェイトの姿を見て、ショックを受ける。
顔を真っ青にして、身体が小刻みに震え始めた。

『マスター、潮時です。撤退を』
「で、でも……」
『2対1の状況では不利です』
358魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:31:08 ID:xoNu3Ld1
レイジングハートは、なのはと違い冷静だった。現状での不利を悟る。
当初の計画通り、なのはのパワーアップは順調だった。
だが、計算外の事が起きている事も事実だ。
1つは、クロノの不調。何故か戦うたびに弱ってきている気がする。レイジングハートとしては、
彼には、なのはの糧として、もっと頑張って欲しいところなのだが、どうも体調がよくないようだ。
もう1つはフェイトの成長。先ほども砲撃魔法を使って見せた。以前の素人では無い。おそらく
クロノに訓練を受けていると見られる。この様子だと他の魔法を使う可能性もある。
結論として、倒すときは確実に1人ずつ倒す必要があると考えていた。

「分かった……」

なのはは、フェイトを悲しそうに見ると、撤退を開始する。
操られている(と思っている)フェイトを救えないのは心残りだが、今はレイジングハートの言葉が
正しいと理解できる冷静さも持っていた。
そして、フェイトは、なのはが下がったところで、改めてクロノを心配した。

「ねえ、クロノ大丈夫? やっぱり私との訓練が原因で疲れてるんじゃ?」
「これくらいは平気だ。君が気にする事じゃない」

最近、フェイトはクロノから魔法を学び訓練にも付き合ってもらっている。
クロノはユーノと違い、オールラウンダーの魔術師であるため、教わる側としては理想的な教官だが、
そもそもクロノは執務官であり、教官では無い。つまり、執務官として働きながらフェイトの面倒を
見ているのだ。
クロノは、忙しいときはもっと大変で、これくらい平気だと言うが、それでもフェイトは自分のために
無理をしていると思い、胸を痛めていた。

「ところでユーノは? 一緒に回収してたはずだが?」
「先にアースラに戻ってもらった。ユーノがここに来ても危ないだけだし」
「そうか……じゃあ、僕達もアースラに戻ろう」
「うん」


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

359魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:32:33 ID:xoNu3Ld1
「ユーノ君とジュエルシード回収終了。クロノ君とフェイトちゃんも戻ります」
「そう……それにしても、また強くなってるわね」

エイミィの報告に頷いた後、リンディは画面に映る、なのはの映像を見つめた。
最初の交戦から、今回で5度目の戦闘になるが、明らかに戦闘慣れし始めている。

「このままだと、手をつけられない存在になる可能性があるわね」
「まあ、ジュエルシードの残りは、後6つ。単純に考えるとクロノ君を凌駕しそうですけど、
 それより気になるのが、勘が鋭いと思うんですよ」
「勘?」
「これ見てください」

リンディがエイミィの言うことに首を傾げながら、モニターに映るなのはの映像を見つめた。
そこには、最初にクロノと交戦した時の、なのはが映っていた。

「これって……」
「少し黙って聞いてください……彼女の台詞を」

真剣なエイミィの表情に、リンディも黙ってモニターを見つめながら、なのはの台詞とやらを待つ。

『この変態!』

「ほら! これです! 凄いですよ! こんなに早くクロノ君が変態だって気付いた人はいません!
 もう、お姉さんビックリ」
「た、確かに、クロノは外面は良いから気付きにくい……って、待ちなさい! そもそも、この子は
 フェイトさんとの関係を誤解しての発言のはずです!」
「いや、でも、新記録ですよ? 変態って見抜くスピードの」
「ですから、誤解からです」

リンディとしては、それが事実であろうと、息子が変態と連呼されるのは不本意だった。

「じゃあ、それは置いておくとして、こっちの変態と気付かず、派手に勘違いしてる方は?」

そう言って、フェイトの映像を映し出す。それはクロノを支えながら、アースラに帰還した所だった。
クロノの肩を支え、頬を染めている。実に献身的な姿だった。
360魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:33:35 ID:xoNu3Ld1
「現状維持です」
「ヒドッ! それ詐欺ですよ? いたいけな女の子を騙してますよ?」
「事実になれば問題ありません」
「でも、フェイトちゃんだと、どっちにしてもロリコンですけど?」
「ショタコンからロリコン、素晴らしいじゃない。真人間への道への第一歩です」

ロリコンが真人間という話しは初めて聞いた。何しろ変態の代名詞である。
エイミィも納得できずに首を傾げる。

「そ、そうですか?」
「そうですとも、少年が成長すれば男であり、ホモになります。ですが、少女は成長すれば女。
 つまり、ノーマルです」

リンディの価値観では、ホモ⇔ショタ⇔ロリ⇔ノーマルである。
このまま、クロノには右に成長して欲しいというのが母としての願いだった。逆に左は困る。

「そもそも、ロリコンとショタコンの違いなんて、タテスジが好きか象さんが好きかの違いです」
「う〜ん、でも、私としてはフェイトちゃんみたいな前途ある子に黒歴史を刻み込みたくない良心が
 あってですね……いっそ、こっちにしたらどうです?」

そう言って、なのはを映し出して指をさす。

「こっちだったら、変態同士を掛け合わせて隔離できる訳ですし。何か似てますよ、クロノ君と」
「混ぜるな危険。って言葉を知ってますか? それとエイミィ、先ほど良心と言いましたね?」

リンディの目に冷たいものが宿り、エイミィの肩に手を置く。

「な、何でしょう?」
「クロノが不調の原因……貴女、知ってるんじゃないかしら?」


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

361魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:34:47 ID:xoNu3Ld1
「本当に平気?」
「ああ、済まなかった。少し休めば回復する」

クロノは、フェイトの肩を借りて、自分の部屋に辿り着いた。
顔色が悪く、今にも倒れそうだ。

「ね、眠るまで付き添おうか?」
「気にしないでいいよ。それより、この後は?」
「うん。訓練するよ」

クロノの表情に陰が差す。本人は隠してるのだろうが不機嫌そうだ。

「だったら、僕も……」
「良いよ。少し1人でやりたい訓練があるんだ」
「1人?」
「うん。1人。ユーノに協力してもらう事もないよ」

フェイトは、こう言わないと、クロノが無理をする事を察していた。
クロノは嫉妬深いのだ。フェイトがユーノと2人きりになるのを嫌がる。
そう。その辺はフェイトは良くクロノを理解している。間違っているのはクロノの好きな相手が誰か
だけなのだ。

「だから、クロノは休んで」
「わ、分かった」

クロノは、フェイトの言葉を信じ、自室へと入った。
そして、ベッドに横になるとデバイスを使い、映像を映し出す。
そこには、エイミィから大金を払って買った、アースラで生活するユーノの姿が映し出された。
特に今のお気に入りは眠っている姿だ。安らかな寝顔に癒される。

「ユーノ、僕に力を与えてくれ」

明日への活力をユーノの映像から貰おうと食い入るように見つめる。
だが、それは活力には決してならない。何故ならおもいっきり鼻血を噴出しているから。
クロノ・ハラオウン。彼は現在、貧血により体調不良に陥っていた。
362魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:36:00 ID:xoNu3Ld1


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


フェイトは、1人で訓練室に入るとバルディッシュをデバイスモードにする。
なのはとクロノの戦闘を見て以来、フェイトは魔法戦というものをイメージ出来るようになっていた。
それまでは、御神流の亜流でしかない。歪な形の戦法だったのだ。
そもそも、最初の師のユーノは、結界と防御、バインドは得意だが、攻撃が全く駄目とういう偏った
魔術師である。そこでフェイトが、それらに才があれば良かったのだが、フェイトは結界も防御も
才能が無く、バインドの才もそこそこでしか無かった。
ユーノとフェイトの2人は、互いの欠点を補い合える最高のコンビになり得るが、師弟としては最悪と
言えた。
正確に言えば、フェイトはユーノにとって扱いにくい弟子だったのである。ユーノにしてみれば
例えるなら、陶芸家に絵を習いたいと言って、弟子入りされたようなものだった。
これでは本当に教えづらい。結局、本当に基礎的なものしか教えることが無く、フェイトの素質を
伸ばせなかった。
それどころか、フェイトは電気変換以外の自分の素質すら知らなかったのだ。
だが、クロノに師事したことで、フェイトは素質のある攻撃系の魔法を伸ばす事が出来た。
今では、砲撃魔法のサンダースマッシャーに広域攻撃魔法のサンダーレイジ。フォトンランサーの
バリエーションのマルチショットやファランクスシフトを使うことが出来る。
そして、斬撃を有効に進めるための瞬間移動魔法のブリッツラッシュ。
今のフェイトは、誰が見ても一人前の魔導師となっていた。
しかし、フェイトは現状に満足していなかった。

「バルディッシュ、サイズモード」
『Yes sir』

そもそも、どう満足しろというのか。
自分の素質が分かった事は、なのはには太刀打ち出来ない事を確認したようなものだった。
フェイトは“速く動くこと、動かすこと”に関しては、非常に才能があったが、誘導制御の才に
欠けていた。
そして、なのはの最も恐ろしいのがディバインシューターという、高い性能の誘導魔法弾だ。
クロノは同性能のスティンガースナイプで対抗しているが、誘導制御の才のないフェイトに同じ方法は
取れないことを意味していた。
363魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:37:13 ID:xoNu3Ld1
フェイトが、それに対抗するには速く、しかも飛んでくる光弾よりも速く動かなければならなかった。
だが、そんな事は瞬間だけならともかく、長時間は不可能。よって、クロノのように互いの隙を
見つけあう戦闘は出来なかった。
結局、フェイトは試行錯誤の末に原点に立ち戻る。
回避し続けるのが無理なら、回避は一瞬で構わない。そして、回避して懐に入り一撃で決める。
つまり、あの強固なシールドを一撃で貫く斬撃、魔法用の“貫”を習得すること。
通常のバリア貫通能力は、実際は貫通するわけでは無い。バリアを“削る”だけだ。なのはの
ディバインバスタークラスになると“削る”どころか“抉る”といった表現が相応しいが、それでも
貫通するわけでは無い。
そして、御神流の“貫”も防御を“つらぬく”わけでは無い。防御の隙を“ぬく”のだ。

「バルディッシュ、シールドを」
『Round Shield』

フェイトは自らラウンドシールドを作り、その構成を読み取る。
ラウンドシールドは、ユーノから教わり、バルディッシュにもインストールされている優れた防御魔法
だが、ユーノのオリジナルではない。それどころか、クロノとなのはも同じ魔法を使う。
それは、この魔法が基本的な魔法でありながら完成度か非常に高く、1面だけの限定とは言え、
最強と称しても良いほどの強固さを誇っているからだった。
これを砕くには、相手を上回る魔力、瞬間放出でも全体量でも構わない、そのどちらかを凌駕させ、
相手の魔力を無くす事で消し去るにか無いのだが、フェイトは新しい試みを目指していた。

「もっと細く……もっと鋭く……もっと速く……」

フェイトは、シールドの構成に干渉し、その防御システムをすりぬけながら斬撃を打ち込むという、
全く新しい魔法を作成しようとしていた。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

364魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:38:21 ID:xoNu3Ld1
「かんりきょく、動かないね」
「そだね」

なのはは、アルフと一緒にアイスクリームを食べながら、暇を持て余していた。
これまでは、管理局側が発見したところを強襲して、クロノとの勝負に持ち込んでいたのだが、
ここ数日は管理局に動きが見られなかった。

「見つからないのかな?」
「多分」
『おそらく海でしょう』

なのはとアルフの会話にレイジングハートが割って入る。残されたジュエルシードは6個。おそらく
地上には無く、全てが海中に潜っていると予測された。

「海の中か……」
「つーか、そんな場所で発動するとなると、魚か海草かな?」
「おっきなワカメとかが襲ってくるんだ? フェイトちゃんも大変だね」
『いえ、こちらから取りに行きましょう』
「「へ?」」
『作戦の変更を提案します』
「変更って、なのはの訓練は?」
『現状で一騎打ちならマスターの勝率は五分以上あると思います。一騎打ちならば』

レイジングハートの懸念はフェイトの存在だった。以前の彼女なら戦力としては計算外であったが、
現在の戦闘力は予測がつかない。
さすがに、なのはやクロノに勝てるとは思わないが、クロノとフェイトを同時に相手すれば、なのはと
言えど、勝率は低いと考えざるを得なかった。

『残り6つを手に入れれば、こちらは10個で、向うは11個。それを賭けて一騎打ちを申し込めば
 拒否はしないでしょう』
「でも、こっちが勝ったとして、素直に渡すかな?」
「そうだね。逆に、こっちが負けても素直に渡すのは嫌だし」
『それに関しては考えがあります。どちらにせよ、今までの方法で例の執務官に挑んだとしても、
 そろそろ高町フェイトも参戦します。そうなれば不利。まずは残り6個の回収をしましょう』
365魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:39:33 ID:xoNu3Ld1


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


「う〜ん」

ユーノは悩んでいた。フェレット姿なので頭を抱える事は出来ないが、人間形体なら間違いなく
頭を抱えていただろう。
そして、未だに彼がフェレット姿なのと、彼が今、悩んでいる理由は根本的に同じものだった。

――クロノは自分を見てハアハアする変態である――

最近になってユーノは、現在の状況を正確に悟ってしまった。そのためクロノがハアハアしないよう
フェレットの姿になっているのだ。
そして、現状をまとめてみようと考える。

@クロノは変態でユーノのことを見て興奮している。なのはに対する敵対心もユーノを渡さないためで
 正義感やフェイトのためでは無い。
Aフェイトはクロノが自分に好意があると勘違いし、クロノのなのはに対する敵意やユーノと自分を
 引き離す行為もそのためだと思っている。そしてクロノに好意を抱きかけている。
Bリンディは当然、息子の嗜好を快く思っておらず、現在はフェイトをプッシュ中である。
Cエイミィは今の状況を面白がっている。ただ、フェイトに関しては同情的な思いがある。
Dなのはは、フェイトがクロノに洗脳されたと思い込んでいる。そのため、フェイトを救おうと
 思っているようだが、それ以上にクロノに対する怒りが強いのか、クロノに突っ掛かる。

当面の問題は、Aのフェイトの勘違いである。ここでユーノが真実を伝えて、フェイトが納得すれば
リンディには悪いが丸く収まるのだが、おそらくフェイトは納得しないだろう。
と、言うより、もし言ったとしたら……

「クロノが好きなのは僕なんだ!」
「ユーノ正気? 槙原先生(動物病院の医師)のとこに連れて行こうか?」

こうなるだろう。まあ、自分でも信じない。つーか、信じたくなかった。
366魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:40:53 ID:xoNu3Ld1
「でも、放置するのもな……」

ユーノはフェイトに対して恋愛感情を抱いているわけでは無い。正確に言えば、まだ9歳のユーノには
恋愛感情自体が理解出来ないでいた。
だが、フェイトが今の勘違いを引きずって不幸になるのは、見るに忍びない気持があるのは事実で
早く気付いて欲しい気持はあった。
逆にクロノさえ、マトモだったら文句は言わないと思うが、これが1番難しい。
なのはに何を言っても無駄だったのと同じで、変態に言葉は通じないだろう。

「そう言えば、あの子も何を考えてんだか……」

今までは、あれほどフェイトに夢中だったのに、最近はフェイトをスルーして、クロノに向って
一直線だ。これが趣旨代えしたのだったら面白いのだが、そうでは無いらしい。
やってる事といえば、ひたすらクロノと戦い、頃合を見計らってアルフの援護を受けて撤退するのが
最近のパターンだった。
ユーノは不自然な行動に首を傾げるが、さすがに実戦訓練をしているとは気付かなかった。
そして、ユーノが首を傾げていると、アラートが鳴り響く。

「なに!?」

ユーノを思考の海から現実に引き戻す大音量に反応すると、ブリッジに通信を開く。

「何があったんですか!?」
『あの子が現れたの! 海よ!』

あの子が、なのはを意味してる事は分かった。
だが、何故、海にいるというのか?

「バカンスを楽しんでるとか?」
『んな訳ないでしょ! とにかく、ブリッジに集合』
「ハイ!」


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

367魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:42:04 ID:xoNu3Ld1
「遅れました!」

フェイトがブリッジに入ると、すでにクロノもユーノもいた。ちなみにユーノはフェレット形体で
リンディの側で待機してクロノとは距離を置いている。

「これは?」
「向うも残りのジュエルシードが海中にあると踏んだんだろう。それで、強制発動させようと
 している」

この前の戦闘以降、クロノの顔色が良くなってきている。今日も大丈夫そうだと、安心しながら
フェイトがモニターを見ると、そこには荒れ狂う嵐の中、魔法を行使している、なのはの姿があった。
その表情は険しく、普段の余裕の笑みを浮かべる少女とは思えない。

「出撃ですか?」
「必要ない。このまま向こうが自滅するのを待つ。もし最後まで持ったとしても弱ったところを
 叩けば良い」

フェイトの問いにクロノが冷たく答える。それは非情にも似た決断だった。

「うん。名案だね」

だが、フェイトはその提案をあっさりと受け入れる。何気に外道な性格にユーノがこけるが、
それに気付かず、フェイトは、のんびりとモニターを眺めた。

「ん?」
「どうしたの?」
「いや……なんだか……」

クロノは、なのはの放った魔法が、奇妙な消え方をしている事に違和感を覚えたが、その理由が
分からず、声を濁した。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

368魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:43:03 ID:xoNu3Ld1
「なのは! 大丈夫かい!?」
「はあ、はあ……さ、さすがに、キツイかな」

アルフの呼びかけに、なのはが息も絶え絶えに答える。
ジュエルシードの残り6つは捕捉した。後は発動させる魔力を送り込むだけだ。

「でも、後少し……行くよ! ディバインバスター、フルパワー!」
『Divine Buster』

なのはが海に向ってレイジングハートを振り下ろす。
先端から放たれた光は6つに別れて海中へと突き刺さった。

「つ、捕まえたぁ!」

ディバインバスターの閃光が突き刺さった部分から、竜巻のように海水が立ち上り、水の柱へと
変貌を遂げる。

「はあ……はあ……アルフ、少しだけ抑えていて」
「分かった!」

アルフがバインドを飛ばして、水の柱を拘束する。
だが、それは、あまりにも非力で、長くは持ちそうに無かった。

「レイジングハート」
『All right, my master.Starlight Breaker』

レイジングハートの宝玉が輝き、星を吸い込むように、周囲の魔力を集め始めた。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

369魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:44:10 ID:xoNu3Ld1
「限界かな?」
「ああ。終わりだな」

モニターに映るなのはの姿は、明らかに限界を超えており、飛行もフラフラとしながら高度を
下げている。それは、魔力が尽きたことを証明していた。

「え? な、何これ?」
「どうした?」

エイミィが驚いた表情で計器を確認する。クロノが問いかけるが、それを無視して、懸命に計器を
操作していた。
やがて、驚いたようにリンディに報告する。

「周囲の魔力、なのはちゃんに集まっていってます!」
「え?」
「まさか、集束魔法!?」

モニターに向き直ると、今度はハッキリと桜色の光がレイジングハートに吸い込まれていくのが
確認できた。
その姿は場違いなほどに美しく、同時に、この少女と敵対している者にとっては恐ろしい光景だった。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


「行くよ! スターライトブレイカー!」

なのはの放った閃光は、水の柱をまとめて飲み込んだ。
そして、閃光が去った後は、水の柱が消え、中に収まっていたジュエルシードが淡く輝きながら、
封印されるのを待つだけの状態になっていた。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

370魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:45:37 ID:xoNu3Ld1
「な、何て出鱈目な奴……」
「ど、どうしよう? ジュエルシード、回収されちゃった」

唖然とするクロノに、事態に付いていけないフェイトが次の行動を聞く。

「出撃する! 今なら弱ってるのは間違いない! 艦長!」
「分かりました。フェイトさんとユーノ君はクロノを補佐してください。ここで終らせます」
「はい!」
「分かりました!」

こうして、チャンスを逃さずに……見も蓋も無い言い方をすれば、弱ってる女の子を倒すために、
クロノたちはトランスポーターに向かい、なのはの元へと転移した。
一瞬で艦内から海上へと移動したクロノは、なのはに向かい宣言する。

「時空管理局だ! 今日こそ逮捕する!」
「あ! フェイトちゃんと可愛い動物さんだ」
「僕を無視するな!」
「うっさい! この変態!」

早速、なのはとクロノがいがみ合うが、なのはは疲労からか、表情に覇気が無い。
さらに足首のフライアーフィンの輝きも薄まっていた。

「ふん。その様子では満足に戦えないだろ? 大人しく投降すれば残念だが攻撃はしない」

まるで悪役のような台詞を吐きつつ、なのはにS2Uを突きつける。

「それとも、その使い魔が相手か?」
「―!」

後ろから、こっそりと襲撃しようとしていたアルフが、クロノに睨まれ動きを止める。

「どうした? 早くかかってきたらどうだ?」

実はクロノ、リンディにユーノの映像記録を没収されたため、体調が戻ると同時に不機嫌だった。
身体は健康だがユーノはフェレットのままだし、ストレスだけは溜まって、かなり危険な状態である。
371魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:46:43 ID:xoNu3Ld1
「大人しくしないと言うのなら……」
『Set on』
「う……レイジングハート」
『Ready』

クロノがスティンガースナイプを展開させる。
対する、なのはもディバインシューターを出すが、わずか2つ。何時もの彼女とは思えない姿だった。
だが、ここで同情するほどクロノは甘い人間では無い。

「スナイプショ……おおおおぉぉぉっ!」
「え?」

しかし、トリガーヴォイスを言おうとしたクロノを巨大な紫電が直撃する。

「どこから!?」
「お母さん♪」

事態を把握できないユーノが周囲を窺うと、なのはが喜色を浮かべる。
そして、雷の直撃を受けて、ふらつくクロノが体勢を立て直すと……

「リニスキック!」
「ぐはっ!」
「ク、クロノ!」

法衣のような衣装を纏った女性がクロノに蹴りを放ち、吹き飛ばす。
穏やかそうな容姿とは異なり、その立ち姿は猫科の猛獣のように、しなやかな力強さを感じられる。

「新手?」
「なのは、予定通り手伝いに来ました」
「遅い!」

なのはが悪態を吐くが、その表情は晴れやかで、先ほどの悲壮感など、もう見られなかった。
元より、ジュエルシードの回収で力尽きた所を狙われるのは計算の内。そのため、レイジングハートの
提案でプレシアに援護を依頼していたのだ。
これで、数の上では3対3。だが、何処から飛んでくるか分からない謎の雷撃がある分、なのは達が
有利にも見える。だが……
372魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:47:45 ID:xoNu3Ld1
「エイミィ! 先ほどの雷撃は!?」

クロノは、傷付いてはいるが、冷静さを失わずに状況の確認を取る。
彼は目の前のリニス以上に、どこから飛んできたか分からない雷撃の方が関心があった。

『次元跳躍攻撃! アースラもやられた!』
「捕捉は!?」
『今やってるけど……』
「じゃあ、もう1発撃てば分かるな?」

クロノが、そう良いながら、なのはを睨みつける。
彼女のファミリーネームのテスタロッサから、すでに重要参考人として、プレシア・テスタロッサの
名前は出てきているが、現在、プレシア・テスタロッサは行方不明だった。
しかし、クロノは、先ほどの次元跳躍攻撃が、プレシアの仕業だと見当をつけていた。ならば、
もう1度撃たせれば、敵の黒幕の所在が分かり、一気に事件が片付けられる。
そして、気になる謎が1つあった。情報を少しでも引き出すため、上手く行けば動揺を誘えると思い、質問をぶつけてみる。

「なのは・テスタロッサ」
「な、なに?」
「君は、なぜ生きてる? それに生きてるなら君の年齢は僕と同じじゃなかったか?」
「「「え?」」」

ユーノとフェイトは、目の前の少女が死んでいるという事実に、そしてなのはは、そこまで知られた
という現実に驚きの声を上げる。同時にプレシアにこれ以上援護させてはならないと。

「ど、どういうこと?」
「君達が気にする事じゃない。さあ、答えろ!」

フェイトの問いかけを無視して、なのはを問い詰める。
だが、なのはは表情を変える事も無く、母の使い魔に命じる。

「………リニス!」
「はい。フォトンバースト!」
373魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:48:55 ID:xoNu3Ld1
リニスの周囲の空間が爆発したように振動し、煙が現れる。
爆煙を利用した目暗ましで、撤退を狙ったが、

「逃がすか!」
「つぅっ!」

クロノのスティンガーレイが、なのはの肩を撃つ。
魔力の低下した今のなのはには、この程度の魔法でもダメージを受けるのだった。

「なのは!」

アルフが、なのはに駆け寄り、その身を支える。
クロノは、2人まとめて落そうと、ブレイズキャノンを撃とうとした瞬間、横からリニスの
打撃が飛んできた。拳ではなく、猫のように指先で叩きつけるような攻撃。

「くっ!」
「ボロボロじゃないですか? やっぱり、プレシアの魔法を受けてダメージを負ってますね」
「クロノ!」

慌ててフェイトがバルディッシュをリニスに叩きつける。
間一髪で避けたリニスに追撃をかけようとするのを、アルフの射撃魔法が遮り、フェイトは
ラウンドシールドで防御する。

「そんなもん!」

そのシールドに、アルフの拳が叩きつけられる。何度か攻撃を受け、その行動の意味を知るユーノが、
フェイトに向って叫ぶ。

「駄目だフェイト! 避けて!」
「え?」
「バリアァァッブレイク!」

ユーノなら長時間耐えられるであろう、バリアへの侵食だが、フェイトのシールドはユーノに比べ
あまりにも脆弱すぎた。瞬く間にフェイトのシールド生成プログラムはアルフの割り込みを受け、
崩壊していく。
374魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:49:53 ID:xoNu3Ld1
「なぁに、笑ってんだっ!?」

シールドが崩壊する瞬間、確かにフェイトは笑っていた。
アルフは、その笑いを愚弄されてるととり、怒りの叫びと共にフェイトに拳を打ち込んだ。

「フェイト!」

ユーノが、海に落下するフェイトに向って叫ぶが、直撃を受けたフェイトの意識は飛んでおり、
真っ直ぐに落ちていった。
バルディッシュが自動防衛プログラムを起動させるから怪我はしないだろうし、海中でもすぐには
死ぬようなことにはならないが、不安からユーノは助けに行こうとする。
だが、その進路をアルフが遮った。

「さて、アンタは付いてきてもらおうか」
「え゛?」

彼はすっかり忘れていた事を思い出す。
自分が、なのは・テスタロッサのペット候補だという事を。

「―!」
「余所見ですか!?」

クロノが、フェイトが落ちた事と、ユーノのピンチに気付くが、リニスの猛攻に自由を奪われる。
戦闘能力は、それほどでもないが、先に受けたプレシアの攻撃のダメージが酷く、離れての魔法戦なら
まだ戦いようもあるが、リニスは執拗に接近戦を仕掛けてくるので、体術での戦闘にならざるをえず、
苦戦を強いられていた。

「ちっ!」

クロノが舌打ちして、ユーノに向う。だが、それはリニスに背中を向ける事になるのだ。
リニスは、遠慮せずに背後から攻撃しようと攻め込む。

「呆れた! それで…もおぉぉぉぉっ!」
「掛った」
375魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:50:47 ID:xoNu3Ld1
バインドに拘束されたリニスが足掻くが、それに向けてブレイズキャノンの詠唱に入る。
クロノの目的は、最初から設置したバインドに拘束する事だった。

「え? ちょっと、抵抗できない相手に!?」
「避けられなくて済むから僕は楽だ。さっさと死ね」
「ちょっと!? 貴方、執務官ですよね? ま、待って…」
「うわあぁぁぁぁ!」

クロノの耳に、目の前のリニスより大きな悲鳴が届いた。

「ゲット♪」
「ユーノ!」

クロノの目の色が変わる。そこには……動物姿のため、大好きな半ズボンでは無いが……アルフに
捕まった愛しい少年の姿が。

「クソッ!」

リニスを無視して、ユーノの救出に向う。
射撃魔法は万が一でもユーノに当たっては拙いので、接近するしかない。

「アイツか……」

一方のアルフもクロノの接近に気付く。
そして、彼が警戒すべき敵手であることは理解していた。
むしろ、マトモにやりあって相手になるのは、なのはだけだ。
どうするか、悩んでいるとリニスが拘束を抜け出すのが確認された。

「リニス、パス!」
「うわあぁぁぁぁ!」

アルフはユーノを全力で放り投げる。小動物は、もの凄い勢いで飛んでいき……

「何です? これ?」
「ふにぃぃ〜」
376魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:51:55 ID:xoNu3Ld1
手の中に収まった目を回すフェレットを、リニスは見つめる。

「ユーノを返してもらおう!」
「リニス、そいつを渡すな!」
「え?………アルフ!」

今度はリニスがアルフに向って投げる。風が全身を叩き、ユーノは悲鳴を上げる。
リニスとアルフの間をボールの様に行き来するユーノ。それが何度も繰り返された。
ユーノは、何故こんな事になってるのかと自問するが答えなど出るはずも無い。
と、言うより、キャッチボールのボール代わりにされて、脳が良い具合にシェイクされてるので、
頭が働かなかった。

「くっ!」

だが、ユーノは気合を入れて、変身を解く。そうすれば好き放題投げられはしないだろうと考えた。
そう。回らない頭でも、その考えは正しかった。空気抵抗もあり、途中で止まったのだ。
ただ、運が悪かった。

「えへへ〜♪」

何とか止まった時、目の前には微笑む悪魔、なのは・テスタロッサがいた。

「ヒッ!」

後ずさりをした時、今度は後ろから声が。

「ユぅぅぅノぉぉぉぉぉ!」

目を血走らせ、自分の名を絶叫する変態、クロノ・ハラオウン。
まさに、前門の虎に後門の狼。

「生足ぃぃぃぃぃっ!」

訂正。前門の虎と肛門を狙う狼だ。
久しぶりの半ズボン姿に我を忘れた変態の姿は、なのはの恐怖を上回った。迷わず虎に飛び込む。
377魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:52:49 ID:xoNu3Ld1
「ふえ?」

ユーノが自分に抱きついてきて、なのはは驚きの声を洩らす。
だが、クロノのショックは、それ以上だ。

「な、な、な……ユーノに何をした!?」
「へ?」

愛しのユーノが、なのはに抱きついてる姿は悪夢だった。
そもそも、ユーノが自分から逃げて、なのはに抱きつくなど有り得ないと、クロノは考えてる。
その頃、ブリッジではエイミィが「やっぱり、似てる」と笑っているが、それは置いといて、
クロノはショックのあまり、背中が隙だらけだった。

「「だぶるぱぁんち!!」」
「ぐほっ!」

背後からのアルフとリニスの同時攻撃にクロノは海に落下していく。

「なのは!」
「止めを刺しますか?」
「え〜と……それより、コレ……どうしよう?」

自分にしがみ付いたまま震えるユーノを指差す。

「怯えてますね」
「持って帰るには、ちょうど良いんじゃない?」
「それもそっか♪」

そしてクロノは、傷付き、海へと落下する最中、愛するものが連れ去られる光景を、成す術もなく
見ているしかなかった。



続く
378魔法少女リリカルふぇいと:2008/08/10(日) 17:53:51 ID:xoNu3Ld1
投下終了です。お姫様ポジションはユーノがゲットしました。
つーか、主人公、海の中です。

ところで、この作品ではオリジナルなのはをクロノと同じ歳ってことにしたけど、
アニメのアリシアって、生きてたら何歳なんだろ?
379名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 17:55:02 ID:n2tonhbd
GJ
380名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 17:55:02 ID:HweHq+IV
>>378
クwwwロwwwノwww
そしてフェイトの立場がどこにもなくなってるwwwww

真にGJであります。
381名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 18:18:17 ID:X24RAzT3
アリシアが亡くなったのは無印の26年ほど前だそうです
享年6歳くらいですかね?
生きてればリンデイさんと同年代かな
382名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 18:23:40 ID:+L7GB1qp
それでいいのかリンディ、そして何見てるクロノ
383名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 19:05:34 ID:bwZRLy8k
なんつーか、初っ端の説明文の時点で涙が出てくるんですけどwww
フェイト頑張れ、超ガンバレwww
384名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 19:16:58 ID:1/92Usq1
>>378
GJ!
フェイトかわいいよフェイト

>>381
それって小説の方の設定じゃないの?
本編は多分違うと思う
385名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 19:29:04 ID:nLgXvtaY
>>384
本編10話で26年前って言ってる。
386名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 19:41:39 ID:1/92Usq1
>>385
そうなのか……
でも一期の時点でプレシアママンは40歳くらいとSS02で出てたらしいけど……
一体何歳のとき産んだんだ?w
387名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 19:51:44 ID:KC9sWwcS
アリシアの年齢は、メディアによってバラバラじゃなかったっけ?
388名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 20:16:42 ID:RM2KOzzd
NanohaWikiの時系列考察だとアリシア死亡は一期の5〜7年前辺りではないかってなってるな
389名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 20:32:25 ID:d4ZOt80p
ユーノ・・・・・何たる苦労人・・・
なんか今後あらゆる意味で苦労しそうなのがありありと浮かぶな・・・・
これでプレシアさんにまで気に入られたら・・・・・なんかありそうで嫌だな・・・・
ヒロインのはずなのに存在を忘れられたフェイトそんに合掌・・・
390名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 20:40:36 ID:hvM2ERud
メインブースターがイカれて水没少女になる時のフェイトが
笑ってた、ってのはバリアブレイク見て何か掴んだからだと思ってる俺
391名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 21:06:44 ID:WQZdS1Tc
>>378
GJです!!やっぱり最高っすわぁ〜〜
氏が書かれるドタマがイカれきった連中(一部まとも?)の織り成すおバカ劇はwww
お姫様ポジションはユーノとなると、救いの王子様はクロノなのか、フェイトなのか、それとも ・ ・ ・ ・ ・
続きも楽しみにしておりまっす。
392名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 21:08:34 ID:WSFJxvHZ
>>390
いや、きっとこれでヒロインっぽく助けて貰えるから、とか、邪魔者(ユーノ)が居なくなってクロノと
二人っきりだ、とか思ってるからじゃないだろうか?

・・・・・まぁ、きっと現実を前に理想を抱いて溺死するわけだが・・・・・
で、クロノの所に戻りたくないユーノがなのは側について・・・・・・
「裏切ったか、ユーノ・・・・・!本より貴様らの始めたことだろうが!!」
393アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/08/10(日) 21:15:23 ID:1Nkb4dvn
>>司書様

L.L.外伝 ゼストの槍(前編)(後編)の保管庫用に修正したものをうpしておきますので、差し替えをお願い致します。
ttp://shabernack.orz.hm/lyrical/index.php
のgebo8272.zipです。大変お手数をお掛け致して、誠に申し訳御座いません。

誤字を報告して下さった皆様、ありがとうございました。次こそは誤字無しを目指して頑張ります。

394名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 21:22:57 ID:Em/zl+c+
>>390
超電三段キックですね、判ります。


・・・・・・歳がバレるな。
395名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 21:26:59 ID:ZBmqp28x
>>378
出てくる全員、突っ込みどころが多すぎてどうしたらいいんだかw
今回も笑わせてもらいました、GJです!
396名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 21:27:58 ID:E47t5i6d
>>340
   ∧_∧ 旦
    (・ω・)丿 ッパ お茶ドゾー
.  ノ/  /
  ノ ̄ゝ
397名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 21:29:35 ID:FyDcgQD4
>>378
毎回GJです。てーか、エロノ落ち着け&ユーノ哀れw

とりあえず、拉致られたユーノが苦労しているプレシアママンと共感しそうだなwww
398 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/10(日) 21:30:26 ID:xRcArlw5
それではそろそろ先日の続きを書かせていただきます。

・『世界の平和を取ってスカの嫁兼監視役になった未来』『自分の幸せを取ってユーノと結婚した未来』
の二つのIFをそれぞれ描きます。
・スカがヤンデレになるのはなのは×ユーノルートのみです。
・エロあり(ただしドラマメインなので簡略的になってます)
・タイトルは『二つの未来』
・鬱注意です。(×ユーノルートでは、ヤンデレ化したスカの手によって様々な鬱展開がありますし、
×スカルートもなのは×スカ要素嫌いな人にとっては鬱ですから)
・一つ一つを事細かに描写する事もあれば、ダイジェスト風のあっさりした物になったりと、
その時々によって描写に差があります
・×スカルートのスカがちょっとマゾっぽい
・×スカルートのなのははちょっとツンデレっぽい
・時期的に色々不謹慎なネタもありますが…ご了承下さい。
・オリキャラも出るでおじゃるよ。
399二つの未来 7 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/10(日) 21:32:00 ID:xRcArlw5
それから様々な世界を回る中、二人は時空航行中に時空の乱れに飲み込まれると言う
半ば事故に近い形でとある管理外世界へ流れ着いた。

「こんな世界がまだ存在したとは…驚きだな。それにしても実に静かで平和な世界だ。
住んでいる人々も何処かおおらかな印象であるし……こんな所でいきなり爆弾でドカーンって
やったらさぞかし壮観だろうな〜。」
「だからそういう事はさせないって言ってるでしょ!?」

早速魔が差し、平和な世界に対する破壊欲を出していたスカリエッティがなのはに頭冷やされると言う
ほほえましい事もあったが、この世界ならば管理局の追手も来る事は無いだろうと考え…
ここで落ち着く事を決めた。

あらかじめ逃亡する際にそれまで持っていたミッド通過を全て全世界共通で通用する金に
交換していたのだが、この世界においても金は貴重な物質であったらしく、普通に通用した。
それで空き家となっていた一つの家を買い取り、そこに住む事に決めた。

「さて、私達の愛の巣も出来た事だし…これからどうするかね?」
「愛の巣かどうかは別として…何かしら働かないと…お金も直ぐに無くなっちゃうよ。」

なのははもう管理局員では無い。故に新たな仕事を見付けなければならない。
だがそこでスカリエッティがポンを胸を叩き言った。

「よし。ならば私に任せてもらおうか。ガジェット技術を応用した土木作業機械の類を作って
それを何処かの企業に売り込んで生活資金を工面しよう。」
「そんなに上手く行くの?」
「上手く行くさ。いや、行かせて見せる! まあガジェットをそのまま兵器として軍隊や
警備会社なんかに売り込んだ方が手っ取り早いのだがな…。」
「いや…それは辞めて…。そういう事は私がさせないから…。」

妙に自信満々なスカリエッティになのはは心配せざるを得ないが…彼は腐っても天才だった。
元々犯罪に手を染めずに真っ当な研究にその頭脳を注いでいれば、幾多の偉業を成し遂げていたと
名高い彼である。ガジェットと言う既に彼にとって技術が確立した存在を少々改造した程度の
代物であるとは言え、あっさりと土木作業機械を作り上げ、この世界の企業に売り込んだ。

管理局の管理下にある世界においては広域指名手配されている彼であるが、
管理外世界であり…なおかつ管理局の感知する範囲外であるこの世界においては全くの無名。
それ故に門前払いされるのではとなのはも心配になったが、スカリエッティの作った
土木作業機械の優秀さは瞬く間に認められ、この世界における特許を取りつつ企業に
買い取ってもらい、それなりの資金を手にする事が出来た。
400二つの未来 8 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/10(日) 21:33:53 ID:xRcArlw5
「本当にお金手に入れて帰って来たよこの人…。」
「私がその気になれば簡単な事だ。」

なのはは驚きの余りむしろ呆れていたが、スカリエッティはただの科学者では無い。
長年指名手配されながら、つい最近まで捕まる事は無かった男である。それは彼が管理局の目を
くらませる事が上手いと言う事もあるのだが…それ以上に巧みな交渉術で世界各地の
時空犯罪組織等とのパイプを作り、彼らの協力を得ていた事もあげられる。そして今、
その交渉術が真っ当な企業に対しても生かされていたのだ。

ある程度の資金を得た後、スカリエッティはそれを元手に新たな研究を始める。
無論時空犯罪者時代にやっていた様な危険な違法研究では無く、世の為人の為になるような
平和的な研究である。そしてなのはは専業主婦として彼を支えつつ、また例の無限の欲望と言う名の
病気を再発させて違法研究に手を出したりしないか監視する役目を務めた。

スカリエッティが次に始めた研究は、戦闘機人の技術を応用した義手義足や人工臓器等の開発。
これが実用化されれば、事故で手足を失ったり、病気などで臓器が機能しなくなった人を
救う事が出来る。この他にもスカリエッティが今まで犯罪の為に行って来た様々な研究を
平和利用へ転用する為の研究を続けて行くのである。ただ…

「どさくさに紛れて義手の指の部分をミサイルにしたりとか、義眼にレーザー砲とか
付けちゃダメだよ!! 少し…頭冷やそうか…?」
「うわぁ! すまないなのは君! つい出来心で…うぎゃぁぁぁぁぁ!! もっと撃ってぇぇぇ!!
もっと私を叱ってぇぇぇぇ!! お前は悪魔以下のド外道だと罵ってぇぇぇぇ!!」

と、なのはの目を盗んで危険な違法研究を始めるけど、結局なのはに見付かって頭冷やされると
言った事が度々あった。無論なのはのおかげで未然に防がれるのだが、その時のスカリエッティは
何処か嬉しそうであり…まるでなのはに頭冷やしてもらう為にわざと違法研究やってるんじゃないか?
と思える様な所があった。

「もしかしてジェイルって…マゾ?」

なのはは彼に対しかすかにその様な認識を持つ様になっていた。確かに彼がなのはを欲しがった理由は
自分の言いなりになる者では無く、尻に敷いて無限の欲望を押え付けてくれる強い女性を求めたが故である。
あえて自分を不利な状況に持って行くき、しかもそれに快感を感じているのだから、悪く見ればマゾと
表現する事も出来るだろう。まあ管理局員としての立場や、それまで得て来た物全てを捨ててまで
スカリエッティと一緒になる道を選んだなのはもある意味マゾ的な部分があったのだろうが…
401二つの未来 9 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/10(日) 21:34:55 ID:xRcArlw5
たまに違法研究を行う事もあるが、スカリエッティは基本的に技術の平和利用に務めた。
やはり何者であっても一つの事に撃ち込む姿は美しいのか、夜遅くまで真剣な表情かつ
無言で何かの設計開発を続ける夫の姿をなのはは不覚にも格好良いと思える様になった。
やはり慣れとは恐ろしい物なのか、最初はあんなに憎らしかったスカリエッティにも
なのはは知らず知らずの内に慣れ、情が移る様になってさえいたのである。

スカリエッティは確かに天才だが、決して神様では無い。それ故に研究に行き詰まりストレスを
溜める事もあった。しかし…そこで思わぬ助け舟が現れるのである。

「ジェイル…たまには気分転換したらどうかな?」
「なのは君…?」

彼の前に現れたのは、妻であるなのは。そして彼女は微笑みながら言うのである。

「私は貴方が危険な研究をする事は許さないけど、世の為人の為になる様な平和的な研究を
やっているのならば…全力全開で協力してあげたいと思ってる。」
「しかしなのは君…君は私と違って大した科学知識は無いでは無いか?」

スカリエッティは自身の抱えているストレスを思わず妻にぶつけてしまわない様に
内心必死に抑え付けながら反論するが、妻の微笑みは絶えなかった。

「確かに私は貴方と違って頭良く無いし…中卒だし…。そういう技術開発面での協力は出来ないけど…
でも、妻として貴方を支えられる事はあるんだよ。例えば…ジェイル…貴方も男なんだから…
随分溜まってるんでしょ?」
「うわ! 何をする!?」

突然恥かしげも無くスカリエッティの股間の一物をズボンの上から優しく掴んだなのはに
流石の彼も戸惑い思わず勃起してしまうが、なのはの顔は優しかった。

「ほら、やっぱり溜まってるんじゃない。なら…ここで一度研究は中断して一休みしましょう?
貴方の溜まったストレス発散の為に私が一肌脱いであげる。」
「え…それってどういう…?」

今まで何時もツンツンした態度でスカリエッティを見張っていたはずのなのはが
突然デレてしまった事に彼も驚き、戸惑わざるを得ないが…

「だからSEXしてあげるって言ってるの!!」
「ええ!? いきなり何故!? 今まで散々そういうのは許してくれなかったでは無いか!!」

二人は結婚したとは言え、まだSEXをした事は無かった。元々なのは自身彼を監視する為に
あえて妻となっただけであり、子供を作る事は愚か抱き合う事も許さなかったはずなのだが…
なのはの中で何かが変わりつつあった。
402二つの未来 10 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/10(日) 21:35:48 ID:xRcArlw5
「途中で気が変わったの!! 貴方の事が少しだけ好きになって来たのよ!!
それにもう私達は夫婦じゃない! 正当な夫婦がSEXして何か悪い事でもあるの!?
それとも何!? 危険で非人道的な違法研究を次々やって、管理局に喧嘩売る度胸はあっても
自分の好きな女を抱く度胸は無いと言うの!?」
「…………!!」

なのはから発せられる気迫に…スカリエッティも気圧されざるを得なかった。
そして、なのはに引っ張られる形でベッドへ連れて行かれ、二人は身を重ねあった。
確かに自分からスカリエッティとのSEXを望んだなのはであったが、それでも心の片隅に葛藤があった。

「(私がまさか彼とSEXする事になるなんて…以前からはとても考えられない。
まさにこの世はこんなはずじゃない事ばかりだね。今の私をフェイトちゃん達が見たら…怒るだろうな?
心の底から私を憎むだろうな…。でもそんな事はもう関係無い。私はもう高町なのはじゃない。
ジェイル=スカリエッティの妻、なのは=スカリエッティなんだ…。)」

葛藤を自己完結させ、フェイト達に対する想い吹っ切った。なのはは意を決して
スカリエッティの一物を受け入れた。

「痛!!」

スカリエッティの一物がなのはの膣へ沈み込むと共に…なのはの表情は歪み、全身が震えた。
スカリエッティの一物によって処女膜は貫かれ、この瞬間、なのはは正真正銘に
少女…乙女では無くなり…女となった。

「だ…大丈夫かね?」
「大丈夫。だから…構わず続けなさい!?」

なのはは破瓜の痛みに涙を流しながらも、スカリエッティの前では強気に振舞った。

「(処女を失う事がこんなに痛かったなんて…でも…今更逃げられない!)」

こうして二人のSEXが始まった。

「はっはっはっはっはっはっ!」
「んぁ! んぁ! はぁ!」

二人は汗だくになるまで獣の様に身体を突き動かし、お互い初めてとは思えない程の
野性的な激しいSEXを繰り広げた。例え科学者であろうが魔導師であろうが関係無い。
二人ともに人間と言う名の一年中常に発情している生命体なのだ。それが一度SEXになれば…
理性と言う名の箍は外れ、野性を取り戻してしまうのも無理は無かった。

「そろそろ…出てしまいそうだ…。」
「出しても良いよ…私の中に…。」
「え!? だって君は…。」
「うるさいうるさい! 気が変わったの!! それとも何!? ナンバーズ全員に自分の
クローンを仕込む度胸はあっても…私を孕ませる度胸は無いって言うの!?
散々私に自分の子供産んでくれとか迫ってたくせに…それはただの冗談だったの!?」
「そ…そんな事は無い!!」

こうまで言われれて黙っているスカリエッティでは無い。ついに彼は意を決し…

             どびゅっ! びゅっ! びゅっ! びゅぅっ…………

夫はそれまで溜まっていた濃い精子の全てを妻の膣内へぶちまけた。

「(ああ…ジェイルの精子が…私の膣内に…。)」
403二つの未来 11 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/10(日) 21:36:59 ID:xRcArlw5
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…。」
「ゼェ…ゼェ…ゼェ…ゼェ…。」

スカリエッティの射精が終わってもなお…なのはの膣肉はスカリエッティの一物をキュッと
締め付けている。そして…二人は繋がったまま静かに見詰め合っていた。

「私が貴方の子供を産むと言う行為は、私自身が貴方を監視すると言う務めを途中で放棄しない様に
する為のリスクだと思ってる。自分で言うのもなんだけど…多分自分はどんなに悪女になりきろうと
心から務めても…自分の子供を見捨てる事は出来ない。例え貴方の汚れた血を受け継いだ子供でもね。
これは貴方との絆は切っても切れない物になると言う事。でもこれは貴方に対するリスクでもあるんだよ。
私が貴方の子供を産めば、貴方も父親となるの。父親として子供達を導いていかなければならない。
つまり、科学者として子供達が笑って暮らせるような明るい未来を作る為に貢献していかなければ
ならないのよ。もっとも…貴方に自分の子供を大切にする様な人間らしい優しさが少しでも残って
いればの話だけどね?」

スカリエッティを戒めんかの様に彼を睨み付けるなのはだが、彼もまた真剣な表情で答えた。

「以前の私ならば…そんな事を言われても気にもしなかったであろうな。何しろナンバーズ達に
それぞれ自身のクローンを植え付けていた程の男だ。しかし…君との出会いが私を変えてしまったのだろうな?
心の中で…ほんの少しだけいずれ生まれるであろう子供達の為に頑張ってみようと思える様になった。
ましてや君が我が身を痛めてまで産んでくれる子供だ。出来る限りの事をしてみたいと思う。」
「そう…なら…貴方…明日から…また頑張ってね?」
「ん…。」

二人は優しく口付けをし、二人一緒に寝た。

初めてのSEXがきっかけとなり、二人の距離はますます縮まった。
そして結婚したばかりの様に、ただただスカリエッティが悪事を働かない様に
なのはが監視するだけと言う事だけでは無く、二人で良く会話をする事になった。
なのはは幼き日からの思い出や、魔法との出会い等をスカリエッティに話し、
スカリエッティも最高評議会に製造されて以降に経験した武勇伝(?)等を語った。

休日には二人で旅行に行ったりもする様にもなり、名実共に二人は夫婦となっていた。

なのは自身も、確かに夫が危険な違法研究に手を出す事は相変わらず許さなかったが、
世の為人の為になる様な平和的な研究を行っている時は心から応援したし…

「キャァ!」
「隙アリだよなのは君! 管理局辞めたせいで勘が鈍ったのかな!? 今回は相手が私だから
良かったが、これからは気を付けないとダメだぞ。君が他の男にまで身体を触られる様な事は
私としても嫌なのだからな!」
「もう! ジェイルのエッチ〜!」

と、突然胸や尻を触る程度の軽いセクハラなら笑って許せたし、夜になれば
身体を重ねてSEXをする事も珍しくは無くなった。そして間も無くして…
404二つの未来 12 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/10(日) 21:38:10 ID:xRcArlw5
「おめでたです。」
「ほっ本当ですか!?」

なのははスカリエッティの子供を身篭っていた。既に何度もSEXしていたのだから
子供が出来ても可笑しい話では無いのだが、実際に医者から妊娠を伝えられた時の
なのははこの上ない程嬉しかった。

「私が…ジェイルの子供を…。ついにこの時が来たんだね…。」

病院から帰る途中、なのはは優しく自分の下腹に手を当てた。お腹の子供はまだミリメートル以下の
胎児に過ぎないはずなのに…リンカーコアの温かな波動を感じる。元時空管理局のエース・オブ・エースが
管理局が長年指名手配していた凶悪時空犯罪者の子供を産む。これは管理局の歴史の中でも前代未聞な事だろう。
だが、そんな事はなのはにとって関係無い。今のなのはは管理局員では無く、一人の専業主婦に過ぎないのだから。

なのおはは帰宅後、自身がスカリエッティの子を妊娠した事を明かした。

「今日病院に行って来たんだけどね、やっぱり妊娠してたよ。」
「そうか! 良かったじゃないか!」

やはりスカリエッティもまたなのはのお腹の中で息付いた新たな命に喜ぶが…なのはには
一つ不安な所があった。

「でもこれでしばらくの間…ジェイルとSEX出来ないね。この子が生まれるまで
どうやって貴方のストレスを解消してあげよっか…。」

そこがなのはの不安だった。なのはにとってスカリエッティとのSEXは、子供を作る為と
夫との愛と絆を深める為と言う目的があるのだが、同時に研究に行き詰った夫のストレスを
発散させてあげる為と言う目的もあった。しかし、妊娠してしまった以上しばらくはSEX出来ない。
これからはどうしようかと悩むが…

「大丈夫だ。膣がダメならお尻でやれば良いじゃないか!」
「だっダメだよ! お尻なんて…汚いよ!」

堂々と言い放つスカリエッティに対し、なのはは顔を真っ赤になり、お尻を両手で押さえて退いた。
要するにこれからはアナルSEXで行こうと言いたいのであろうが…なのはには抵抗があった。
なのはだって人間だから、人並みに排泄行為はするのであって、そこが汚いのは本人が一番分かっているが…

「私は別に構わないが? それに…なのは君の肢体に汚い所など存在するはずが無いじゃないか!!」
「ええ!?」

怪しい笑みを向けるスカリエッティに…流石のなのはも引いた。そしてその日の晩…

「はっはっはっはっ! こっちも中々悪くは無かろう!? なのは君!」
「あ! んぁ! んはぁぁぁぁ!!」

四つん這いになった状態でバックから夫に突かれるなのはの姿がそこにあった。
しかし一つ違う点がある。それはスカリエッティの一物がなのはの膣では無く、
尻の菊を大きく広げてねじ込まれていた点であった。

「ダメェ…そんな…お尻なんて…汚いよぉ…。」
「そんな事は無い! なのは君の肢体に汚い所などあるはずがない!」

普通のSEXならいざ知らず、アナルSEXには抵抗のあったなのはは涙せざるを得ない。しかし…

「んぁ…でも…何か…変なキモチ…。」

なのはは嫌々ながらも…何かに目覚めて行った。
405二つの未来 13 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/10(日) 21:39:22 ID:xRcArlw5
まあアナルに付いての話はここまでにして、なのはのお腹の中にいるスカリエッティの子供は
徐々に育ち、なのはの細く括れていたウェストもポッコリと膨らんで来ていた。

「ほら貴方…この子最近私のお腹の中で動くようになったんだよ。あ、また動いた。」
「そうか…私もそろそろ父親か…。」

ベッドの上に腰掛けた妻のお腹をスカリエッティは優しく摩ると、確かにピクピクと
かすかに動いているのが感じられた。

「あ、そういえば貴方…最近何時もの病気の再発が無いみたいだけど…どうしたの?」

なのはが妊娠して以降、スカリエッティがこっそり危険な違法研究に手を出す事は無くなった。
それに関してなのはも違和感を感じていたのだが…

「今の君に無理はさせられないからね。お腹の子供の命には代えられない。だから我慢してるのだよ。」
「そっか…。ジェイルパパ偉い偉い!」
「まだ子供は生まれてないのだからパパは無いだろう?」

優しく頭を撫でるなのはにスカリエッティは呆れ顔になるが、悪い気はしなかった。

間も無くしてなのはは産気付き、産婦人科の一室でお産が始まった。

「ハァ…ハァ…ハァ…お産がこんなに苦しい事だったなんて…ハァ…ハァ…。」
「頑張って! あと少し…あと少しですよ!」

お産に立ち会った看護士の協力と応援の中、なのははお産の苦しみに耐えて行くか…
管理局時代に色々無理して来たツケが回って来たのか、はたまた悪魔の科学者と
悪魔の魔導師の間に誕生した命をこの世に送り出す事を神が阻止せんとしているかの様に…
お産はかなりの難産となった。かつて空では無敵と言われた彼女も…ベッドの上では弱々しい。
このままでは母子ともに命の危険がある。しかし、なのはは負けない。夫スカリエッティとの間に
芽生えた愛情とこれから生まれる二人の子供と言う名の新たな命。そして自身に課せられた使命が
心の支えとなっていたからだ。

「(負けない…負けないよ…。私がここで負けて…私とこの子が…死んじゃったら…
あの人はショックでまた悪の科学者に逆戻りになっちゃう…数え切れない数多くの人が
犠牲になっちゃう…そんな事は私がさせない…絶対にさせないんだから…。)」

自分が無事に出産をするか、難産に負けてしまうかで今後の世界の運命は大きく変わる。
故になのはは負けない。負けられなかった。そして…お腹の子供は母親の膣道を少しずつ通って…

「オギャー!! オギャー!!」
「生まれましたよー!! 元気な男の子ですよー!!」

ついに生まれた。父ジェイルに似て紫の頭髪と金色の瞳を持った男の子。そして元気な
産声を上げる息子の姿を見届けたなのはは…気を失った。
406二つの未来 14 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/10(日) 21:41:09 ID:xRcArlw5
確かに気を失ったなのはだが、単に体力を消耗しただけで命に別状は無かった。
それから一時して、一児の母親となったなのはが息子と共に退院した時、病院の前に
夫であるスカリエッティが自動車を停めて待っていた。この自動車は彼がとある自動車
メーカーの依頼で製作した無公害クリーンエンジンを搭載した最初のタイプであるが、
別に今はそんな事はどうでも良いだろう。

「なのは君。退院おめでとう。さあ帰ろうか?」
「ハイ…。」

家に帰ると、そこにはやはりスカリエッティが作ったと思われる妙にハイテクな揺り篭が
あり、息子を寝かし付けた後でなのははゆっくりと夫に寄り添っていた。

「もっと体力が回復した後で良いんだけど…次は女の子が欲しいな〜。」
「そうかい? 私としては余り君に無理して欲しくは無いのだが…。」
「あら? ナンバーズ12人にそれぞれ仕込んだ自分のクローンを全部ダメにされた
仕返しに、その分を私に産んで返させようとするのかと思えば…優しいのね?」
「お、それも悪くないな〜?」

それから時は流れ、なのはは二人目…三人目…四人目…とスカリエッティの子供を産んでいった。
そのどれもが物凄い難産となったが…なのはは何とか無事に産んで見せた。
勿論子供達も大した病気をせず、スクスクと育っている。まあスカリエッティの子供なだけあって
どの子も一癖もニ癖もあり、特に一番上の子なんか小学校の夏休みの宿題の自由工作でプロの造型師顔負けの
完全自作美少女フィギュアを製作し、学校中をドン引きさせると言う実に将来が心配な子に育っている。

しかし…なのはには一つだけ心残りがあった。それはここまで産んだ四人全員が
父親似の男の子であった事である。確かにこれはこれでなのはは子供達を母親として愛し、
大切にしているが…それでもやはり自分の方に似た子や女の子なんかも欲しくなる。

「私って…男腹なのかな? しかも劣性遺伝子って事? ちょっと…悔しいかな…。」

なのはは男の子しか産めない自分の体を少し疎ましいと思い、さらに子供が自分の面影を受け継がない点に
ついて、自分自身に自信が持てなくなりそうになった。確かに家庭内での主導権は基本的になのはが
握っている。既にこの世界における英雄的大科学者となり、沢山の人に指示したり色々な会社や
政府等に意見したり出来る様な立場になったスカリエッティもなのはの命令には逆らえない。
しかし…同時に思うのだ。これはまだスカリエッティがなのはに執拗なアプローチをかけていた頃に
勝手に妄想していたシナリオ通りでは無いかと。そう、なのはがスカリエッティを尻に敷きいたり
している事を初めとし、生まれる子供が全員男の子である事までスカリエッティはピタリと当てている。
これは単なる偶然なのか…はたまた必然だったのかは分からないが…結局自分はスカリエッティの掌で
踊らされていたと気付き…少しだけ負けた気分になった。

「結局私は…ジェイルに負けちゃったって事か…。いや…彼に付いていく事を決めた時点で
負けてたのかもね。今となってはどうでも良い事だけど。」

確かになのはは色々な意味でスカリエッティに負けたのかもしれない。しかし、そんな事は
どうでも良い事だった。普段は基本的に彼女が主導権を握って勝敗は五分五分と言えるし、
何より今のなのははスカリエッティの妻なのだ。勝敗などむしろどうでも良い。

だが…ここで一つだけスカリエッティの思い通りにならなかった事が起こるのである。
407二つの未来 15 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/10(日) 21:43:52 ID:xRcArlw5
「オギャー!! オギャー!!」
「おめでとう! 元気な女の子ですよー!!」
「え…? 女の子?」

そう。五人目にしてやっと念願の女の子の誕生。しかも、頭髪や瞳の色、顔の面影等
母親であるなのはの血の方を色濃く受け継いだ子供だったのである。

「ほら見て貴方! 女の子! 女の子! やっと女の子が生まれたよー!!」
「落ち着きたまえなのは君!」
「やめてよお母さん! そんな子供みたいにはしゃがないで!? 恥かしいよー!」

女の子が生まれた事が余程嬉しかったのか、夫はおろか四人の息子達さえドン引きしてしまう程
なのははまるで子供のようにはしゃぎ喜んだ。

今回お見せ出来るなのはとスカリエッティの物語はここまで。これからも二人は子供達と共に
生きていく事だろう。この後もスカリエッティは無限の欲望を再発させ、こっそり危険な
違法研究に手を出す事もあるだろう。しかし大丈夫。彼には妻であるなのはが付いている。
彼女の目の黒い内は、全て未然に防がれ大事には至らないはずである。

確かにスカリエッティはなのはに監視される中で、世の為人の為になる様な平和的な研究を続け、
多くの人々を救い、世界の発展に大きく貢献した。それと共に数多くのパテントを持ち、
毎月何もしなくても莫大な金が入って来る様になっていたが、その莫大な資金の大半は新たな研究
の為の資金へと消えて行く故、家計は決して裕福とは言い難いが…なのはにとってはそれで良かった。
あまり裕福過ぎても人間ダメになる。自分の五人の子供達の為を考えた場合、中流程度の
家庭レベルが一番良いと考えていた。

「お父さんは若い頃は今より凄い物をバンバン作って皆をあっと言わせたものさ!」
「わー! お父さん凄いなー! 僕もお父さんみたいな人になりたい!」
「それなら女の子のお人形ばっかり作ってないで学校の勉強くらい最低限出来ないとねー。」
「お兄ちゃんこそ女の子のエッチなイラストばっかり描いてるじゃないかー!」
「アハハハハハ!」
「ウフフフ…。」

食卓を囲み、若き日の父の武勇伝で盛り上がる四人の息子達の傍らで微笑みながら
末っ子である娘に母乳をあげているなのはの姿がそこにあった。

時空犯罪者と共に生きる道を選び、一時は転落したかに見えたなのはの人生。
しかし、これはこれで別の幸せを彼女は手に入れていた。

     『世界の平和を取ってスカの嫁兼監視役になった未来』 おわり
408 ◆6BmcNJgox2 :2008/08/10(日) 21:45:35 ID:xRcArlw5
×スカ編はここで終了。あえて幸福な家庭を築いてハッピーエンド的な終わり方にしてみましたが、
もし万が一スカリエッティが相手の人生を棒に振らせてまで手に入れた妻をないがしろにする様な事が
あった場合、それが転落フラグになると思います。逆に妻を大切にし続ければ、この幸福は一生涯続くはず。

例えば、豊臣秀吉が異例の大出世劇を成し遂げた事について、確かに秀吉本人の頑張りとかもあるんですけど、
妻のねねが影の実力者として秀吉を支えたという話も聞いた事があります。そして、淀殿になびいて
ねねをないがしろにした事がある意味豊臣家滅亡フラグになったのだと個人的に思いますし。

多分他にも現実・フィクション問わず、「成功した男の背後には影の実力者として暗躍した女性」
「その女性をないがしろにしたせいで転落した男」ってのは多分沢山あると思うのですが、
スカリエッティに対するなのはもそんな感じで描きました。

次回はユーノと結婚した場合の未来を描きます。
409名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 21:51:14 ID:Ali+7n7K
展開のメチャクチャな速度に吹いたwww  GJです!
410名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 22:00:29 ID:+GNZdKyB
一番槍GJ!
411名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 22:08:19 ID:GYKNv2YY
途中で旧6課メンバーに捕捉されるかと思ってドキドキしたが、
これはこれでいい。GJ!
412名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 22:13:09 ID:uFDgHL0M
>>378氏も◆6BmcNJgox2氏もGJ!!
>>378 
だめだこのクロノ何とかしないとwww笑いがとまらねぇwww
このクロノだとなのはにフェイトとユーノの交換を持ちかけそうだから困るwww

>>408

なのスカでハッピーエンドとは珍しい気がしますなぁ。
しかし、スカの子供だけあってどの子も変態っぽいですがw
なのはの血が色濃く出た末娘さんが家庭内でどういうポジなのか気になりますなw
413名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 22:58:49 ID:JTxgya+j
>>412
「もぅ、お兄ちゃんったら…」
的なポジションなのは間違いない。
414名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:12:11 ID:pYVa634Y
一歩進んで
「お兄ちゃん、頭冷やそうか…」
415名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:15:54 ID:wBrAFQgo
更に進んで
「私の気も知らないで、お兄ちゃんの馬鹿!」
416名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:19:26 ID:FyDcgQD4
>>408
ラストの語り調なイメージもほんわかして楽しめました、GJ
このスカは間違いなく、なのはさんの尻に敷かれているだろうなw
尻に敷かれている・・・おk、俺と代わr(略

>>414
とりあえず、普通に会話するのも一苦労な娘だな。一歩間違えれば、ピンクの砲撃にさらされそうでw
417名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:31:42 ID:d1/U/DrN
なにこのSSマジ寒気がするんだけどあーやだやだ
もうなのスカ書くなよマジで腹立つから
418名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:34:16 ID:d1/U/DrN
早くなのは×ユーノ書けよクソが
なのは×ユーノ以外興味ねんだよボケ
つまんねえギャップつけてんじゃねーよバーカ
419名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:38:44 ID:f+nhwioG
>>393
おいおい、りりろだは他所のなのはスレ保管庫だから2chの作品を上げるのに利用するのは不味くないか
420名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:40:28 ID:57NTDLGU
>>417
>>418
前から見てたがお前もっと言葉選べよっ!
荒らしらしい言葉が他にあるだろっ!!
棒読みっぽくて、見ていると涙が……
421名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:45:27 ID:yf2CXX6h
例えばなのユーの人にユーなのはOKなのだろうか
だってクロエリとエリクロじゃすごい違いだろ?
422名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:51:58 ID:pYVa634Y
>>421
あ、ここのカップリング表記って、少し前に話題にしていた保管場基準
(A×BとB×Aは保管の都合上区別しない)
と同じだと思ってたから、その辺りどっちでもいいと思ってた。
423名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:54:04 ID:JmGPvH3I
それって腐女子用語だからね。前者が攻めで後者が受け、ってのは。
別に普通の同人界にそれが通用しないわけじゃないけど、少なくともリリなのの同人界ではあまり重視されていないみたい。
424名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:54:33 ID:1/92Usq1
>>421
なのユーとか言っといて結果的にユーなのだったりするのも結構あるしいいんでない
俺はなのフェイが好きだけど、フェイなのも大好きだし
425名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:55:26 ID:yf2CXX6h
なるほど…うーん
しかしエリルーなら純愛ぽいけど逆だとルー女王様SMコースぽいしな
まぁどっちも好きなんだけど
426名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:56:16 ID:4g+dcls3
最近よく湧いてるなのユーの人のSSを読んでみたい俺。



…………まあ今一番読んでみたいのは、ユーノとクロノ(とヴァイスとグリフィス)が、年頃になっても無垢なエリオに性について教えるSSだけどw
427名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 23:59:21 ID:lx4zVk7q
>>426
なのユーはしつこすぎていらん
428名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 00:00:03 ID:RM2KOzzd
>>420 >>426
だからなぜ荒らしをスルー出来ない……
429名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 00:07:58 ID:9pRfT+Hs
ルー×キャロ……
430名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 00:14:28 ID:6zws9UTg
俺一応ユーなのだから、元々なのフェには苦手意識あったけど、
>>417>>418にはそれ以上だよ…
>>428氏にスルーの上手くなるコツとか、もしあるなら訪ねたい真剣に……
431名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 00:17:49 ID:QqJSg0ht
>>430
日本語でおk
432554:2008/08/11(月) 00:20:26 ID:RSH9rVQo
さあ、殺伐とした雰囲気ではあるが、空気を変える意味でもクリニック・Fよろしいでしょうか?
433名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 00:21:23 ID:01Yhe2IX
>>430
簡単なことさ、お前は地面をうろつき回る蟻の子1匹に気を取られたりするのか?
いや、失言だったな…蟻に失礼だ

>>421
ぶっちゃけノマカプの場合ジャンル分けするほどのものじゃないからね
ありゃ同性愛だからこそ受けと攻めが明確にされている必要があるわけで
434名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 00:22:16 ID:N742oXG+
>>430
>俺一応ユーなのだから、元々なのフェには苦手意識あったけど、
まるでユーなの好きはみんななのフェに苦手意識持ってるとでも言いたげな書き方だね
第一なのフェが苦手とかわざわざ入れる必要もないだろうに

>>432
カモン!
435名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 00:22:40 ID:01Yhe2IX
>>432
Don't worry. (いいんじゃないでしょうか)
436名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 00:23:52 ID:9pRfT+Hs
おいらはカップリング自体に好き嫌いはない。
あとは職人さまがたの力量だべ。

>>432
おねげーしますだ。
437名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 00:24:24 ID:OQWAbaao
ばっちこーい
438554:2008/08/11(月) 00:24:39 ID:RSH9rVQo
それじゃ、いつものように注意書きを。

・カップリングはジェイル(あえてこう表記)×ウーノ
・スカの性格がかなり変化してます。それについては後に触れますが、気になる人はNGしてください。
・なのはキャラはスカとウーノ以外はフェイトくらいしか出ません。しかもかなり後半。よってほぼオリジナルストーリー。
・オリキャラTSUEEEEEEEEE!!!!ではないですが、オリキャラ中心回です。スルーはして欲しくないですが、苦手ならばスルーでお願いします。
・NGワードは「小さな町の小さな診療所 クリニック・F」です。

それでは原案の73-381氏に多大なGJを送りつつ、投下したいと思います。
439小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/11(月) 00:26:17 ID:RSH9rVQo
 走る。走る走る。
 足に引っかかる草の根をかき分けて、頭に当たるツタや枝を払いながら。
 ジェイルの視線の先には常に護の背中があって、体力的にはジェイルの方が格段上なのだが、山の中の獣道ということもあって小さい体が有利に働く。
 今、ジェイルはどこに向かっているかも分からないままひたすら獣道を上っていた。そして、向こうに見える護の背中にはまるで付いてこいと言っているような気がした。
 護の走る勢いからして明確な意志を持ってどこかへ行こうとしているのは確かであり、その先に藤花が居るのではないかという奇妙な確信がジェイルにはあった。
 だから、何も言わずに付いていく。護もそれを分かっているのか、ジェイルが後ろから付いてきていることを知っているはずなのに、後ろを振り返ることもなく一目散に獣道を駆け上っていく。
 この先に何が待ち受けているのか。その答えは一つだ。
 この先には藤花がいる。それを確信しているからこそ二人はこんな獣道でさえも突き進んでいけるのだ。



     □     □     □     □     □



 ジェイルがそこにたどり着いたのは診療所から走って十分ほどの所、先を走っていた護の到着から数秒ほど遅れた時だった。
 彼が底にたどり着いたときには護は既に肩で息をしており、ジェイルも護ほどではないが、頬が若干赤く染まり、呼吸の間隔は普段よりも少しばかり早い。
 そこは先程まで鬱蒼と茂っていた森の中を突き進んでいたとは思えないほどに開けた場所で、ジェイル達が居る数メートル先には切り立った崖が存在していた。
 そして、山を登り始めたときにはまだ沈みかけているだけであった太陽が、崖になっている向こう岸では夕陽が反対側の山に沈まんとその球の内半分ほどが山に食べられるように沈んでいる。
 周囲は開けていて木々の影すらも無く、露出した岩盤の鈍色と踝ほどもない草が絨毯のように生い茂っているだけである。
 そんな中、ジェイルの視線は岩以外に存在するはずのない影を見つける。そのシルエットは丸みを帯びており、そこから生物だと分かる。
 夕陽に照らされてその姿がよく見えないため、ジェイルはその影を確認しようと目を凝らして見つめる。
 そこには崖のすぐ側にいる一匹の猫がジェイル達に助けを求めるかのようにニャー、ニャーと彼女なりの精一杯の声量で、ジェイル達の方を向いたまましきりに鳴き叫んでいた。

440小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/11(月) 00:27:08 ID:RSH9rVQo
「やっぱり鞍馬さんとこの猫だ!!」

 そう叫んで確認した護はこの小さい体のどこにそんな力が残っているのかと言わんばかりに、猫が居る方向へと一目散に駆けていく。そしてジェイルもそれに続く。
 走っている最中に護に聞かされたのはこの先に開けた場所があって、伊吹の家の猫がよく日向ぼっこをしに出て行くと言うことだった。滅多に家を出ないが、そこだけは何故か気に入っているらしく、護もそこで寝そべっているのを何度も見かけているらしい。
 やがて猫にほど近い崖の全体像がジェイル達の視界に入ってくる。ゴツゴツした岩肌とともに所々に崖と直角に生えている木がその崖の険しさをよりいっそう引き立てているようだ。
 崖の高さはジェイル達の立っている場所からちょうど三階建てほどで、下には今まで通ってきたのと同じような森がずっと遠くまで広がっていた。
 その崖の中程に、一つ何か丸い何かがふるふると震えるようにして動いていた。そこは今にも崩れるのではないかと思うほど不安定そうな岩盤の上。
 護もジェイルもそれが何なのかを一秒経たずして理解した。それは、切り立った崖に恐怖して座り込んでしまった藤花その人だったのだ。

「藤花ちゃん!!」

 叫ぶ護に反応した藤花がゆっくりと顔をがけの上へ向ける。本来はまだ幼いにも関わらず氷るような美しさを持つその顔は恐怖故の涙でぐしゃぐしゃになっている。
 足を滑らせたとき転がったのだろう。服は所々が裂けて肌が露出し、綺麗な顔にも傷が付いて血が滲み出ている。
 どうしてあんな所にいるのかはジェイルと護にはわかり得ないことだ。しかし推測なら簡単だ。おそらく何かを取ろうとして崖に近づき、足を滑らせてしまったのだろう。
 やがて、いくら話しかけても見向きもされなかった護の方を向き直った藤花が自らの右手を護の方へと震えながら必死に伸ばす。

「助けて……護くん……」
「っ……!!」

 護くん。そんな風に呼ばれたことは一度もなかった。それどころか、話しかけても相手にされず、ただ無視されるだけ。
 そんな彼女が自分に助けを求めている。その科白を聞いた護の目つきが一変した。
 その顔は、まるで山の頂で吼える虎のように鋭く、これが小学生の成せる顔つきなのかと思うほどに凛々しいものへと変わっていた。
 護は一目散に崖に駆け寄り、しゃがみ込んでスライディングをするような形で山の岩盤に足をかける。

441小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/11(月) 00:27:46 ID:RSH9rVQo
「護くん危ない!!」

 制止するジェイルの声も聞かず、傾斜のきつい崖を靴でブレーキを掛けながら確実に藤花の近くへと降りていき、そして近づいていく。
 少しでも気を抜いて転んだりしたらならそのまま勢いを増したまま崖を転がり落ち、最後には突出している岩盤に頭をぶつけて、下手をすれば命さえも危うい。
 普通の小学六年生なら尻込みするのが当然だが、護はそんな様子は微塵も見せずに危険へと飛び込んでいく。

「くうっ……!」

 崖の傾斜がだんだんときつくなり、スピードが増していく。それと共にバランスを取るために着いていた両の手のひらが飛び出ている岩や木にぶつかり悲鳴を上げる。
 だが、そんな状況になっても護の目は輝きを失わず、視線は藤花の方へとしっかり固定されている。
 これも一種の才能なのだろう。自分の身を省みずに他人を助けるため命さえも投げ打って突っ込んでいく。いや、この場合は護が単に周りの状況が見えていないだけであろう。
 おそらく、命だ何だという感情は生まれていない。今彼を突き動かしているのは藤花を何が何でも助けたいという心。ただそれだけだ。
 後数メートル、後数センチ。護は自分の視界がスローモーションのように動きを遅くなる。こちらに向かって伸ばす藤花の両手もまたしかり。
 護はそれをじれったく感じていた。自分は早く藤花のところへ辿り着き、彼女を助けなければいけないのだ。
 理屈だとかそんなことではなく、ただ単純に彼女を助けたいと思った。護はもはや周りの岩や木などは欠片も目に入ってはいなかった。
 やがて、伸ばされた腕と腕が触れあう瞬間が来る。片方は既に目尻に涙を浮かべて必死に左腕を伸ばし、片方は目をギラギラと燃やしながら歯を食いしばって右腕を伸ばす。

「藤花ちゃん!!」
「護くんっ!!」

 その瞬間、藤花の目尻に溜まっていた水滴が一粒だけ地面を濡らした。

「護くん!! 私も今そっちに行く!!」
「ダメだジェイル先生! もう岩がグラついててこれ以上人が乗ったら崩れちゃうよ!!」

 そんな鬼気迫る怒鳴るような会話が交わされているというのに、護の背中におぶさっている藤花の顔には僅かながら笑顔が浮かんでいた。



442小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/11(月) 00:28:18 ID:RSH9rVQo
     □     □     □     □     □



「全く。後先考えないで突っ込むんじゃないよ……。見ているだけのこっちの事も考えて欲しいな」
「ごめんなさい……」

 別の場所から崖を降りて先に待ちかまえていたジェイルの助けも借り、何とか崖を降りてきた護と藤花だが、顔にはありありと疲労困憊の様子が浮かんでいる。
 護は単純に体力的なものが先程の崖スライディングで全て持って行かれてしまい、既に肩で息をしている。
 落ちたときの衝撃で足をくじいて崖の下まで護におぶられていた藤花だったが、岩場に居る際に誰かが助けに来るという可能性が僅かしかなかったために精神的な疲労がかなり溜まっており、麓に着いた途端にお尻をぺたんとついてしまっていた。

「全く、無事だったからいいものの……」
「ごめんなさい……」

 人を助けた、だから褒めてやる。ジェイルはそんな軽率な行為はしない。
 人を助けると言うことは自分も助けると言うことだ。
 何故ならば人を助け、そして助けた人が傷ついたとき、または逝ってしまったとき。その助けられた人がどれだけ悲しむか、その痛みを知っているからだ。
 間接的ではある。だがその哀しみを察するには充分すぎるほどにジェイルの周囲には傷つくことも厭わずに人を助けよう、人に報おう。そう思っている、もしくは思っていた輩が多くいた。
 かつての彼ならばそんなことは微塵も思わなかったはずだと、自分自身でも心境の変化に驚いていた。
 だがしかし、自分の深層心理としてそんな感情が生まれているのだから理屈では分からなくとも認めざるを得ないことを、彼は一人の科学者の端くれとして理解していた。
 彼は変わったのだ。全てが、あの頃と。

「ごめんなさい……」

443小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/11(月) 00:28:45 ID:RSH9rVQo
 護の方も普通の小学六年生であれば”人を助けたんだから”と開き直ってもいいはずであるが、彼はそうではなかった。
 彼も彼なりにジェイルがどうして怒っているのかを理解しているのだ。もちろん、言葉の真意全てを理解するにはまだ年が若すぎるが。
 泥だらけの白衣を着たジェイルの前でしゅん、となっていた護だが、その隣にちょこんと立つ影があった。藤花である。

「ご、ごめんなさい……。その、護くんは悪くないの、悪いのは全部、私……」

 その様子にジェイルは感嘆した。

「……分かった。もう怒らないから。今回のことは私が充分に怒ったってお母さんにも言っておくから。護くんにもこれでお終い」
「……え?」

 自分にも護ほどの、もしくはそれ以上の叱責の言葉が浴びせられると思っていた藤花はジェイルの方を向いて目を丸くする。
 その目尻には、先程止まったはずの雫がまた溜まり始めていた。

「反省しているんならそれでいいんだ。さあ、お母さんの所へ帰ろう」
「……ぅ……ぁ……」

 途端に藤花の力が抜けて護の方へと寄りかかるような体勢になって、気を失ったように膝を突いたかと思うと、突然護の背中に藤花の両腕が回された。
 突然の行動に当の護は慌てふためいている。

「ちょっ、藤花ちゃん?!」
「……ゎかった」

 蚊の鳴くような小さな声で喋り出す藤花。
 困惑した護は助けを求めてジェイルの方を向くと、ただ優しく微笑を浮かべて両手を円に回してぎゅっ、とする。抱きしめろ、と言っているらしい。
 女の子に抱きつかれるなどという状況は全くの未経験であった護はジェイルの言われるがままに藤花の背中に手を回して抱きしめる。
 抱きしめ、その身長差から護の顔に髪の毛が当たる。とても良い匂いがした。

「怖かったっ……!! 誰も助けてくれないと思って、怖かった……!!」
「うん……」
「誰も来ないのに、岩だけはミシミシ言って……怖かった……怖かった……っ!!」
「うん……」

 護の胸は徐々に湿り気を帯び、それが湿り気からびしょびしょに濡れるまでさほど時間は掛からなかった。



444小さな町の小さな診療所 クリニック・F:2008/08/11(月) 00:29:12 ID:RSH9rVQo
     □     □     □     □     □



「それじゃあ、私は護くんの家へ行ってくるから」
「ご苦労様です。お風呂湧かして待ってますね」
「ああ、頼む」

 そう言ってすっかり陽が落ちた暗闇の中を護の手を引いて丘を降りていく。その場にはウーノと、そして剣家の母娘が残されていた。
 ジェイルは帰りが遅くなってしまったことを護の両親に説明するため、もしくは謝るために、丘の下にある護の家へと向かった。
 聞けば、藤花が心を閉ざした理由はやはり血縁によるものだった。具体的に言えば、離婚。そして離婚した夫の方に二歳年下の弟が居るらしい。
 その弟を藤花は愛していたのだ。そして藤花の弟また、彼女を愛していた。恋人としてではもちろんなく、姉弟という関係に置いて。
 休みの日には二人で公園に出かけ、雨の日も二人でテレビやテレビゲームをして過ごす。そんな絵に描いたような姉弟愛を営んでいた二人。
 だが、そんな絆でさえも、離婚という楔はいとも簡単にそれを打ち抜いていく。
 彼女は想った。いっそ悲しむなら、そんな親しい関係を持たなければいい。そう想い、彼女は友達を持とうとすることを止めた。そう母親は言っていた。
 それをジェイルとウーノ、それに護に話したとき、ずっと藤花は黙っていた。ただ、これが自分の全てだと罪を告白しているかのように。手は震え、恐れを抱くように顔には恐怖の色が張り付いて止まない。
 だが、そんな心配は無用だった。護が彼女の手を握ったのだった。そして、彼は彼女の方を向いてにっこりと笑う。
 それと同時に、藤花から恐怖の色が消え、口元には僅かながらだが笑みを浮かべる。
 母親は、その様子にただ涙していた。

「……いい人ですね、ジェイルさんって」
「……ええ、本当に」

 ウーノと藤花はもはや見えなくなりつつあるジェイルの泥だらけの白衣を着た白い背中を見て囁きあう。
 その顔には、藤花が居なくなったときとはうって変わって、双方共に微笑みが浮かんでいた。

「私も、ジェイルさんのような人と出会えれば良かったのかしら」
「それは言ってはダメですよ」

 藤花の母親が目を見開いてウーノの方を向く。
 対するウーノは笑顔で彼女の視線に応える。

「藤花ちゃん、いい娘さんじゃないですか」
「……そうですね。ええ、自慢の娘です」

 彼女たちは笑い会った。
 母親と手を繋いで隣に立っている藤花が、それを聞いてよく分からなそうな顔をした。


445554:2008/08/11(月) 00:31:38 ID:RSH9rVQo
投下終了です。予告通りオリキャラが目立ってしまいましたorz
護くん、実に良い子です。藤花ちゃん、実に良い子です。
あれ? これ書いてるやつはd(ry

さて、次回はエロなんだ。兄妹よ、とりあえずこの予告だけで勘弁してくれないか。
446554:2008/08/11(月) 01:49:23 ID:RSH9rVQo
さて、オリキャラ前回な結果雑談も生まれないわけで…(^^;

↓これより下雑談ドゾー
447名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 02:30:42 ID:J6CAhhg4
投下を促すならわかるが、職人が自ら雑談を勧めるなんて・・・
448名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 02:47:50 ID:WdrwvYri
言葉の綾みたいなものだろう
449名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 02:53:10 ID:OQWAbaao
>>445
GJです。
俺は護くんに男を見た。
ジェイルのモノローグも何だかジンと来て思わず目頭が熱く。
次回はエロですか。また無限の欲望モードになるのか、ならずにやるのか。うぅむどっちだ?
450名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 03:54:23 ID:+MON62+7
>>378

亀レス気味だがGJでした。

勘違いしたままのフェイトの不幸ぶりに合掌w この分だとこの世界では、クロノがユーノの尻を掘っているところを目撃してしまったフェイトが男性不振に陥り、開き直ってなのはさんの愛を受け入れてしまう結末になりそう気がするw
451名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 12:35:04 ID:XB8/oJul
>>378GJ
ユーノがヒロインポジで吹いた。
なんかユーノがなのはを落とせば丸くおさまりそうな気が……
落とせるわけないけどね!
452名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 13:10:18 ID:p0u/iT4a
>>445
うん、GJ!

なんかもう、スカもウーノもこのまま永住しちゃえ。 地域への馴染みっぷりと、順応っぷりが半端ねえぞ。
しかも次回はエロス、こりゃ今から楽しみじゃわい。
453名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 13:13:24 ID:5qxNWoig
>>315
GJ!!!!
まさしくGOD JOB!でした。
11年前のゼスト隊壊滅事件…本当に鳥肌がたつほど引き込まれました。
アリーナの誇りを捨ててでも子を守ろうとした気持ち、クイントの勇猛果敢な姿と怒り
クルーズのあまりにも報われなかった無念、ゼストの最後の一瞬の戸惑いと常に前を見据える強さ
そしてメガーヌの一生続くであろう憎しみと同じく一生続くチンクの罪悪感、良心の呵責。
その全てがリアルに伝わってきました。
ソープナンバーズ・スピンアウトも楽しみですが、
「Little Lance Curtain Call」も正直待ちきれません…。
母の幸せに育ってほしいという気持ちが含まれているアスクレピオスを持ったルーテシア
過去への依存をやめ、今のエリオを理解し、前へ進もうとするキャロ
自分の存在意義も居場所も二つあることに気づいて、大切な人達を守るために強くなろうとするエリオ
またこのLittle Lance達の活躍が見れる日を心待ちにしております。
454名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 13:30:14 ID:NhFNBGJO
そして股間のLanceもひとまわり強くなる、と
めでたしめでたし
45569スレ264:2008/08/11(月) 14:45:59 ID:O2pQJqhG
>>393
保管済みの前編を差し替えました。
456名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 15:24:45 ID:ZVvarFx4
一番読みたいのがなのは×ユーノしかない
457名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 15:42:48 ID:xM9npSme
別にカップリングじゃなくても、あり得ない組み合わせが話してる所を見たいよ
ザフィーラとゼストとかルーとクロノとかシャマルとスカリエッティとか
接点なんざないけども、だから接した時にどんな話をするのかが見てみたい
458名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 15:51:47 ID:LkuGnk02
>>457
それ分かるわ
ありえない組み合わせだからこそ映える会話もありそう

リンディさん、レティさん、メガーヌさん、アイナさん、桃子さんの人妻会議とか見てみたい俺が居る
459名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 16:19:18 ID:OQWAbaao
>>458
熟女百合のネタだったら考えたことがある。
夏の間に書ければ良いけれど。
460名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 17:07:15 ID:SkT5/vuc
>>457
ルーとクロノの絡みでルー子のお尻を犯す提督しか浮かばない俺はもうだめかもわからんね
接点ないキャラでもソープ時空や居酒屋中将を駆使すれば書けそうだ
461名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 17:31:37 ID:4NarHPTG
>>455
ありがとうございます、確認致しました!
>>419
ご指摘ありがとう御座いました。他所の事情は全然知らなかったので勉強になりました。
以後注意致します。
462名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 17:54:53 ID:SkT5/vuc
もしかして>>461はアルカディア氏?
もし氏なら少しお願いしたい事があるのですが
463B・A:2008/08/11(月) 18:14:10 ID:OQWAbaao
よし、エロいの書けた。
投下したいのですが、↑の氏の要件を待ってからの方が良いですか?
464461:2008/08/11(月) 18:19:40 ID:SkT5/vuc
>>463
ああいや、そういう事であればどうぞどうぞ。
というかこれから出かけねばならんのでまた日を改めます
465462:2008/08/11(月) 18:20:15 ID:SkT5/vuc
名前間違えたw
461じゃなくて462だorz
466名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 18:21:11 ID:byIUW/n0
6BmcNJgox2氏GJ!
最初はなのはも思いっきりスカ博士のことを嫌っていたと思います。
だからこそ、嫌よ嫌よも好きの内で一緒に過ごすうちに、いつの間にか好きになったんじゃないかと思います。
しかし、なのはとスカ博士の子供か…あらゆる意味で最強だな。
しかしスカなのも悪くない…というか凄く良かったです。改めてGJ!
467名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 18:23:36 ID:/a3Jgbju
よかった、ようやくドコモの規制解除された…

>>378
同い年ということで、オリジナルなのはが蘇ったらクロノに
どう向かってくのか興味ありますなーこれw
この作品のノリだとプレシアが記憶を美化させてるだけで実は
なのはさんと行動原理あんまり変わらなかったりするんだろうか…
468B・A:2008/08/11(月) 18:27:10 ID:OQWAbaao
>>465
すみません、ご迷惑おかけします。
では、久しぶりにエロいきます。折角の夏なんだから、時事ネタを一本。
このシリーズを知らない人のためにあらすじ付きで。


注意事項
・エリオ×セッテ
・本編から5年後
・セッテには病みの傾向あり
・エロです
・エリオは基本的に受けです(稀に反撃します)
・夏だ海だ青姦だ


〜簡単なあらすじ〜
エリオに惚れたセッテは更生施設組に入り、すったもんだの末にエリオと肉体言語で愛を語り合った。
そして5年後、更生プログラムを終えたセッテは初めての人としての生活に戸惑いながらも愛するエリオを
あの手この手で苛めて過ごし、エリオもまた彼女の愛を受け入れてどんどんセッテ好みの色に染められていく。
これは、そんな2人が織り成す愛と肉欲とちょっぴりシリアスで大分悲惨(主にエリオが)な純愛同棲SSである。
469セッテの同棲日記 海水浴編@:2008/08/11(月) 18:31:08 ID:OQWAbaao
夏も盛りの8月中旬。久し振りに休暇を貰ったエリオが帰宅すると、同棲中の恋人であるセッテが旅行会社のチラシを机の上に広げていた。
聞くところによると、街頭で無料配布しているものを断り切れずに(というか、ほとんど無意識に)受け取ってきたものなのだそうだ。
ゴミとして処分しても良かったが、そこに写っている海水浴の写真がセッテの探求欲に火を点けてしまったようで、
夕食の支度もそこそこにずっと読み耽っていたらしい。
そして、いつものように彼女の一言から彼らの次の休日の行き先が決定した。

『エリオ、海水浴とはなんだ?』

かくして、2人はクラナガンから少し離れたところにある海水浴場にやって来ていた。
折りしも世間は夏休みで人が多く、砂浜は玩具箱を引っくり返したかのように人の群れで埋め尽くされていた。

「それにしても、凄い人だな」

砂浜を埋め尽くす人の群れを見回し、エリオは呆れたように呟いた。心なしか声に覇気がないのは疲れているからだ。
荷物が多くてバイクが使えず、交通手段は電車を使用したのだが、その間荷物は全部彼が持っていたためである。
それはセッテが荷物を持つことを拒否したわけではなく、エリオ自身が自分で申し出たことだった。
自分より力持ちのセッテに持たせた方が楽だっただろうが、それは彼の男としてのプライドが許さなかったのである。

「それにしても、遅いなぁ・・・・」

更衣室が混んでいるのか、セッテが着替えに行ってから既に15分は経過していた。
待つ分には一向に構わないが、日差しが強くて何だか意識が朦朧としてくる。
麦藁帽子とサングラスを持って来なかったことを後悔しつつ、エリオはビーチパラソルの角度を調節して日差しを遮ろうとした。
その時、スラリと伸びた白い足がエリオの視界に入った。

「待たせたな」

見上げると、水着の上に薄いTシャツを纏ったセッテが、いつもの無表情を浮かべて立っていた。

「あ・・・・・」

その彫刻めいた美しさに、エリオは思わず見惚れてしまう。
贔屓目を抜きにしても、セッテは美人である。余分な脂肪のない引き締まった体、細くしなやかな四肢、
白い肌には染み一つなく、一挙一動の度に周りの人間が彼女に注視する。さながらそれは、絵画から抜け出た神話の女神のようであった。

「き・・・・」

「ん?」

「綺麗だ」

エリオは素直に自分の感想を口にしていた。
その一言に対し、セッテは頬を少しだけ赤く染め、視線を俯かせながらエリオの手を取った。
470セッテの同棲日記 海水浴編A:2008/08/11(月) 18:34:04 ID:OQWAbaao
「行くぞ」

「照れているの?」

「あんまり調子に乗るとこの場で殺すぞ」

などといういつものやり取りを繰り返しながら、2人は手を取り合って打ち寄せる波に向かって歩いていった。





当然と言うべきか、セッテにとって海水浴はこれが初体験であった。一応、海水浴がどういうものかは事前にエリオが説明しておいたのだが、
プールで泳ぐのと何が違うのかわからず、ごく自然にクロールで人の波をかき分けようとしてエリオに窘められる光景が何度か繰り広げられた。
そうして、2時間ほどセッテと海水浴を楽しんだエリオは、砂の上に広げたレジャーシートの上に深々と腰を下ろしていた。
仕事がら体力には自信があったが、休む間もなく遊泳やビーチバレーに興じていたので疲労がピークに達してしまったようだ。

(ま、楽しい疲労ではあるけどね)

彼の視線の先には、額に汗を流しながら熱心に砂の山を盛り上げているセッテの姿があった。
どうも彼女はこういった黙々と作業を進めることが性に合っているようで、さっきから一言も喋らずに砂を固めて形を整え、
意味不明なアートを制作している。大の大人が恥ずかしいから止めなさいと窘めることもできたが、
何となく彼女が楽しそうに砂遊びに興じているのが面白くて、エリオは黙って恋人の作業を見守っていた。

「どうした?」

「いや、なんでも」

「そうか・・・・・・ところで、あれはなんだ?」

セッテが指さした先には、耐震や耐風なんてまるで考えていない藁葺き屋根の家々が軒を連ねていた。
暖簾には「かき氷始めました」や「貸ボートあります」などという文字が書かれており、風に揺れる旗にはビールがなみなみと注がれたジョッキの絵が描かれている。
脇には浮き輪やビーチパラソルが所狭しと並べられており、家の中からは香ばしい香りが漂ってきている。

「ああ、海の家だね」

「そのまんまだな。誰が住んでいるんだ?」

「住居じゃなくて出店みたいなものだよ。食べ物や海水浴で必要なものを売ったり貸したりしてくれるお店・・・・・そういえばお腹空いたね」

到着したのが9時過ぎだったので、今は丁度お昼時である。
自覚すると急激に空腹感が膨れ上がり、空きっ腹が形容し辛い痛みを訴えかけてくる。

「何か買ってこようか」

「いや、私が行く。お前は休んでいろ」

「いいよ、そこまで気を使ってくれなくても」

「これも社会経験だ。任せろ、ミッションは必ず成功させる」

妙な意気込みを残し、セッテはズカズカと砂を踏みしめながら海の家へと歩いていった。
1人取り残されたエリオは、これといってすることがないので何となく寄せては帰る白い波をボーっと眺めていた。
471セッテの同棲日記 海水浴編B:2008/08/11(月) 18:36:36 ID:OQWAbaao
「君、1人?」

不意に、面識のない女性がエリオの隣に立っていた。
ウェーブのかかった金髪に健康的に焼けた肌。少し小柄で年齢は読み取れないが、高く見積もっても精々二十歳そこそこだろう。
その後ろに更に数人の女性が取り巻いているところを見ると、学校か職場のグループか何かだと思われる。

「どこから来たの?」

「え・・・・えっと、クラナガンから」

「へぇ、首都に住んでいるんだ」

「嘘、クラナガンに!?」

「良いなぁ、都会に住んでいる子は」

口々に呟く彼女達がエリオを取り囲むように寄ってくる。どうやら、気に入られてしまったようだ。
何だか勢いも強くて自分に連れがいるということも言い出せなかった。

「君、名前は?」

「エリオです」

「可愛い名前。今日はどうしたの、家族旅行?」

「ああ、それは・・・・・」

「あぁっ、これデバイスだよね! 魔導師なの!?」

「いえ、僕はベルカの騎士で・・・・・・」

「え、じゃあ教会の?」

「管理局です」

「その年で局員なんだ。偉いねぇ・・・・・・・」

相手のペースに飲まれながらも、エリオは状況を打開せんと視線を巡らせる。
何だか後頭部辺りに嫌な気が渦巻いている。これをこのまま放置しておくと、色々な意味で危ない気がするのだ。
そして、それはすぐに現実のものとなった。

「何をしている」

某提督の氷結魔法ですらマシに思えるほど、ゾッとする寒気を纏った言葉が刃となって叩きつけられる。
同時に、エリオと女性達を遮るように銀色の刃がニョキッと背後から頭を見せた。
振りかえれば、左手に2本のフランクフルトを持ち、右手で愛用のブーメランブレードを手にしたセッテが引きつった表情を浮かべていた。

「私のモノに触れるな・・・・・・・斬るぞ」

「ひぃぃっ!!?」

半狂乱に陥った女性達が、釈明もせずに脱兎のごとく散っていく。
刃物を持った女性が憎悪を剥き出しにして脅しをかけたのだから、当然と言えば当然と言えた。

「って、不味いって! セッテ、早くそれ隠して!」

こんな公共の場で刃物を振り回していることがバレたら、管理局の責任問題になる。
最悪の場合、セッテは再び更生施設に逆戻りということもあり得るのだ。
472セッテの同棲日記 海水浴編C:2008/08/11(月) 18:39:36 ID:OQWAbaao
「ほら、早く」

「無理だ」

「え?」

「こいつは呼び出すことはできるが、送り返すことはできない。何、包丁だとでも偽ればどうにか切り抜け・・・・・・・・」

「ストラァァァっダっ!」

《Sonic Move》

雷光と化したエリオがセッテを抱きかかえ、騒ぎが大きくなる前に人目のつかないところへと疾走する。
後に残されたのは、無人のレジャーシートと砂の上に落ちた2本のフランクフルトだけだった。





不意に唇を奪われ、エリオはどさりと背後に岩にもたれかかった。
何とか人気のない岩陰を見つけ、セッテの軽率な行動を注意しようとしたエリオではあったが、
それは突然の彼女のキスによって阻まれてしまった。
頭の中ではただ疑問だけが渦巻いている。
抗わなければならないと理性が警鐘を鳴らす。
だが、本能はそんな薄っぺらい感情を容易に引き剝がし、彼自身の欲望がむくむくと頭をもたげてくる。

「うぅん・・・・くちゅ・・・ちゅ・・ん・・・・ちゅんん・・・・」

「・・・ん・・んんん・・・うぅ・・・くぅ・・ちゅう・・・・・」

強引に舌を突き入れられ、口の中をかき回される。まるで内壁を舐め取ろうとしているかのような行為に加え、
とめどなく流し込まれる唾液がエリオから冷静さを奪い取り、胸の内でジンとする熱い感覚が走る。
いつしか、エリオは執拗に伸ばされるセッテの舌に自分のそれを絡ませ、互いの唾液を交換していた。

「お前は・・・・・いつもそうだ」

「セッテ?」

「いつも・・・・・いつも私の心をかき乱す。私の許しもないままに勝手に心の中に入ってくる」

固く勃起した肉棒に手を添え、水着越しにセッテはそれを扱く。加減も何も考えていない強烈な刺激は快楽よりも先に痛みを訴えるが、
エリオはそれを従順に受け入れていた。何故なら、彼女が何を言いたいのかわかってしまったからだ。

「お前は私のモノだ。私のことだけ考えて、私のためだけに生きれば良いんだ。あんな、あんな女達よりも・・・・・私の方がずっと・・・・・ずっと・・・・・・」

怒気の孕んだ声は、いつしか嗚咽に変わっていた。
普段のクールで感情が欠落したかのような彼女はそこにはいない。まるで子犬が飼い主に捨てられることを恐れ、必死で尻尾を振って懐いてくる、
そんな弱々しい姿に、エリオの胸は堪らなく熱くなった。

「心配しなくて良いよ。あの人達は何でもないんだ。ただ、彼女達を拒めずに君を傷つけてしまったのは僕の責任だ・・・・・・・ごめんね」

「良いんだぞ・・・・・別に、ああいう背の低い娘が好みなら・・・・・その時は・・・・・・・」

そっとエリオから離れたセッテは、手にしたブーメランブレードの刃を自分の足へと宛がい、一呼吸も置くことなく握った手に力を込める。
だが、彼女がその刃を引き抜くよりも早く、エリオは彼女の大きな体を抱きしめていた。
473セッテの同棲日記 海水浴編D:2008/08/11(月) 18:42:47 ID:OQWAbaao
「君以上に魅力的な人はいない。だから、今のままの君でいて欲しい」

手にしていたブーメランブレードが零れ落ち、乾いた音を上げて地面に転がる。
やがて、セッテはおずおずと恋人の背に手を回すと、その体躯をそっと抱き締めた。
胸板を隔てて聞こえる彼の鼓動で、その言葉が本心であることを感じ取る。

「誰にも渡さん・・・・・・お前は、私のモノだ」

「そうだね、僕は君のモノだ」





盛る劣情を抑えられず、セッテはエリオを押し倒していた。
水着の下では既に彼の肉棒が臨戦態勢を整えており、早くその欲望を雌の奥深くに叩きつけたいと盛んに上下運動を繰り返している。
そっと水着を降ろせば、固く勃起した肉棒が天を仰ぎ、形容し難い生臭さが漂ってくる。
そんな男の欲望を、セッテはまるで好物にありついた獣のようにパックリと咥えこんだ。
そのまま首を振りながら口内の亀頭に舌を擦りつけ、唇で肉銅を締め上げる。眼下の玉袋に詰まった精を絞り出さんとするかのような手加減抜きのフェラチオに、
セッテの秘唇を舌で弄っていたエリオは耐え切れずに悲鳴のような呻きを漏らした。

「うぅ・・アア・あ・・・セ、セッテ・・・・・それは・・・あぁぁっ・・・・」

「黙って続けろ・・・・・それとも、こっちも刺激しようか?」

セッテが伸ばしたのは、きつく窄まったエリオの菊門であった。ベッドの上ではいつもエリオをいたぶる側に回るセッテの最近のお気に入りは、
エリオの前立腺を刺激することであった。種を撃ち尽くして起たなくなってきても、そこを刺激すればたちまちの内に元の固さを取り戻し、
互いの体力が続く限り交わることができるからだ。もちろん、される側としては堪ったものではないが、エリオの泣き喚く声は彼女にとって何よりも劣情を誘うスパイスとなるのか、
一向に耳を貸さずに彼の直腸を指で抉ってくるのである。

「セッテ、そっちは・・・・・・」

反論しようと叫ぶが、遅かった。セッテの指が深々と直腸に突きこまれ、腸壁越しに前立腺をグイグイと擦り上げる。
本来ならば排泄のためだけに存在する器官を弄ばれるという背徳的な行為が及ぼす異常な興奮と、痛みと快楽がない交ぜになった感覚に、
エリオの肉棒は一回り膨れるように大きさを増し、海老のようにきつく反り返ってく。
直後、エリオの下半身が痙攣し、セッテの口の中で巨大な肉棒が白い精を迸らせた。

「うぅぅっ!!」

自身の口の中で暴れ回る肉棒を、セッテは懸命に咥えこむ。そうして、吐き出された全ての精液を余すことなく飲み干し、
尿道の中に残っている分も吸い出して嚥下する。

「相変わらず、濃いな」

唇を伝う白い筋を手の甲で拭い、セッテは立ち上がって岩に手をついた。
突きだされた臀部に滴る汗が日光を反射し、愛液で濡れそぼった秘唇がヒクヒクと震えながら男を誘っている。
その誘惑に抗う術などなく、エリオは朦朧とした意識のままで自身の肉棒を数度扱いて硬度を維持し、熱く煮え滾った媚肉目がけて黒ずんだ肉の槍を思いっきり突き入れた。

「ああぁん・・・・・・・」

普段の冷徹なイメージからは想像もできない艶めかしい声に、エリオは荒い息を立てて腰を前後させる。
すると、まるで膣だけが別の生物であるかのようにうねうねと媚肉を変化させ、エリオの肉棒へと絡み付いてくる。
深く突けば柔らかい膣壁が拒むことなく彼を受け入れ、引き抜けば逃がすまいと貪欲に締め上げてくる。
捲れあがる赤い秘唇は愛液と汗で汚れ、むせ返る様な雌の匂いを発している。
ここが青空の下であるということも忘れ、2人は獣のように交わり合った。
474セッテの同棲日記 海水浴編E:2008/08/11(月) 18:45:20 ID:OQWAbaao
「ああん・・・・ああぁ・・・・・んん・・・うぅ・・・・・くぅ・・・きつ・・・い・・・・・」

いつにも増して固くそそり立ったエリオの肉棒に抉られ、セッテは早くも限界を迎えつつあった。
激しい過呼吸で意識は何度も寸断し、少しでも酸素を供給しようと血管が膨れ上がる。
理性から解き放たれた体は言うことを聞いてくれず、ただ貪欲に快楽を貪るだけであった。

「かぁ・・・あは・・あ・・・・・まっ・・・これ・・・」

肺の空気を出し切ってしまい、言葉が声にならない。
今更ながら、セッテはまじわう体位に後背位を選んでしまったことを後悔した。
この態勢では、自分はほぼ何もできずにエリオに犯されているだけである。反撃しようにも腕は体を支えるために使用せねばならないため、
まるで身動きが取れない。対してエリオは両腕の自由を最大限に活かし、日頃のお返しだと言わんばかりに豊満なバストや引き締まった臀部を刺激してくる。
セッテにできるのは、彼のされるがままに快楽を貪るだけであった。

「だぁ・・・・だめ・・・・これ・・・これじゃ・・・・・あああ・・・・・頭が・・・おかしく・・・・・・・わから・・・
うぅ・・・んんんんっ・・・・あああ・・・・あぁっ・・・・うぅあ・・・あああ・・・・・・」

性感帯である胸を刺激されながら子宮口を亀頭でぐいぐいと押し広げられ、高まった劣情が断続的にセッテを軽い絶頂へと突き上げていく。
完全にこちらの意思を無視し、ただ与えられるだけの悦楽にセッテの思考はまとまらず、瞼の裏が何度も桃色にスパークする。

「んん・・・あああぁっ・・・・エ・・・・エリ・・・・エリ・・・オ・・・・・だぁ、あぁぁっ・・・ううん・・・うぅぅ・・・・んんんんんっ!!! 
あぁぁっっ・・・・く、くる・・・・・・くるぅぅぅぅっ!!!!」

「くあああ・・・・ぼ、僕も・・・・いっ・・・・」

「ああっ、あぁぁっん・・・・・だめ、頭の中・・・・だめになっ・・ああぁ、あぁぁっん・・・・うぁ・・・ぁ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

一際深く肉棒が膣を抉り、子宮口を無理やりこじ開けてその中へと欲望を解き放つ。同時に、電流にも似た快感が背筋を駆け抜け、セッテは絶頂の頂へと登り詰めた。

(イ・・・・・イかされた・・・・・)

肉棒が引き抜かれ、セッテは腰砕けになってその場に座り込む。同時に、背後で何かが海に落ちる音が聞こえたが、今のセッテにはそれに反応する余裕はなかった。
やるせない倦怠感と心地よい満足感、そして僅かに情けなさが胸を満たし、言葉が出なかった。
肉体的には何の問題もないが、精神的な疲労がかなり酷かった。だが、恋人の精液で満たされた子宮は熱く収縮し、未だ雄の欲望を求めてセッテの劣情を掻き立ててくる。
自分でもいったいどうすれば良いのかわからず、火照る体を持て余しながら背後にいるであろうエリオに助けを求めた。

「エリオ・・・・・」

振り返り、目が点になる。
誰もいない。
いつもなら行為の後はどんなに疲れていても必ず愛の言葉を囁きかけてくるあのロマンチストの姿がないのだ。
代わりに、誰かが足を滑らせたかのような跡が地面に残っている。
475セッテの同棲日記 海水浴編F:2008/08/11(月) 18:49:49 ID:OQWAbaao
「・・・・・・・・」

次の瞬間、セッテは躊躇なく地を蹴って海の中に飛び込んでいた。





込み上げる嘔吐感に引きずられるように、エリオは闇の中から覚醒した。
同時に、肺に溜まっていた海水が喉を逆流して口から漏れ、激しい咳が彼を襲う。

「ごほっ・・・・ごほっごふぅっ!?」

「気がついたか」

瞼を開けるとセッテの顔がすぐそこにあった。いつもの造り物めいた表情のままだが、その顔には僅かに不安そうな色が浮かんでいる。

「ああ、そうか。足を滑らせて海に・・・・・・・」

「潮の流れが速くて、気付いたら砂浜まで流れていた」

「助けてくれたんだ」

「お前は私のモノだ。私以外の手で死んだら承知せん」

非難めいた口調に隠れているが、エリオには彼女が自分のことを心配してくれていたということがありありと伝わってきた。
でなければ、こんな風に助けてはくれないはずだ。

「ありがとう、セッテ」

「気にするな。お前は死ぬまで私が面倒を見てやる」

「できれば、手間のかからない男になりたいけどね」

とはいえまだ15歳。色々と他人に迷惑をかけてしまうのは致し方ないのかもしれない。
それでも、せめて隣にいるこの女性だけは守れるような男になりたいと思うのは、決して間違いではないはずだ。
476名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 18:50:19 ID:BFfTs5Lr
siensien
477セッテの同棲日記 海水浴編G:2008/08/11(月) 18:51:19 ID:OQWAbaao
「ところで、そろそろ隠したらどうだ」

「へ、何を?」

そういえば、何だか周りの遊泳客達がこちらを見てひそひそと話しあっている。
特に女の子達は顔を手で覆い、こっちと視線を合わせまいと避けて通っていた。

「ナニをだ」

意味深な言葉を紡ぎ、セッテはそっとエリオの下半身を指差す。
そこにはあるべき布地が存在せず、海水と外気に冷やされて力なくうな垂れている男性器が衆人の目に晒されていた。

「どうやら、岸に上がるまでに脱げてしまったようだ。安心しろ、調べてみたが外傷はなし、クラゲなどにも刺され・・・・・・・」

「じゃなーい! せめてタオルで隠すとか何かして・・・・・・」

跳ねるようにエリオが起き上がると、男性器が重力に引かれてプランと揺れる。
たちまち、周囲の女の子達が奇声を発して逃げ惑い、ショックの余り気絶する娘まで現れる。
加えて、人混みの向こうからライフセーバーらしき屈強な男がこちらに向かってもの凄い速度で走ってきており、
遊泳客の中には近くに陸士隊に電話をかけている者までいた。

「まずい、完全に誤解されている」

「安心しろ」

「へ?」

自信満々なセッテの言葉に、エリオは一抹の不安を覚える。
案の定、彼女の次の言葉はエリオの予想通りのものだった。

「何が来ようと、私が全て叩き斬る」

「ストラアァァァッダッ!!」

                                                      おわり
478B・A:2008/08/11(月) 18:53:23 ID:OQWAbaao
以上です。
久しぶりにこっちを書いたら、何だか妙に楽しくてw
うん、平和だなぁ、こっちは(遠い目)。
支援ありがとうございました。
479名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 18:57:08 ID:urMdWIsc
意味わかんね
480名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 18:59:45 ID:JMtfaKh2
???????
どういう経緯で収容所のセッテと自然保護のエリオが接点持ったんだ?
481名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 19:02:04 ID:z/RdbZi5
>>478


>>461
虹裏のユーザーさん達のロダだからね…
まだ残ってるみたいだけど、とりあえず削除しておいたほうがよくないか?
482名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 19:06:40 ID:p0u/iT4a
>>478
相変わらず絞られてるエリオGJ、そしてエロい七番GJ!!
うん、なんていうか水着姿のセッテを一瞬で幻視できた俺はきっと重症。

>>479 >>480
とりあえず、前書き10000回読みなさい、あと保管庫のBA氏のSS見なさい。
483名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 19:18:45 ID:JMtfaKh2
>>482
だからほれた経緯がわからないんだって
BA氏のどれを見ればいいんだ?全部見てる暇はないんだがさ
484名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 19:21:36 ID:5qxNWoig
>>478
GJ!!!
相も変わらずこちらの時空では受けエリオと攻めセッテ万歳!
エリルー時空のSエリオとの差が著しく目立ってそこがまたたまりません。
いつもセッテから搾りとられ、たまに反撃しようとすれば更にひどい目にあう…実にお疲れ様です。
そして今回もエロエロながらもラブラブでハードなこのプレイ堪能させていただきました。
水着エチーの青姦…たまらなく興奮してしまいました。
こちらの世界でもこれだけ様々なプレイに挑戦していれば、そろそろお子さんができるころだと期待。
そしてパパンになれば、エリルー時空と同じようにセッテの母乳を搾乳するエリオの姿が…いや、でもまたひどい目にあいそうな(ry

>>479>>480
前書き嫁。保管庫池。意味分かんないくらいなら書きこまない方がずっといい
485名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 19:23:11 ID:p0u/iT4a
>>483
そんくらい自分で探せ、なんの為のタグ検索だ?

でも教えます、「セッテ −その心の在り処−」 ってSSだ。
分かったらさあ、早く全話読んで保管庫の方に感想入れてきなさい。
486名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 19:25:25 ID:aaf6PKeQ
本当に自分で探すことをしない奴が増えたよな

>>479>>480>>485に五体投地して感謝するように
487名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 19:25:55 ID:5qxNWoig
>>483
つ「セッテ −その心の在り処−」
488名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 19:35:57 ID:pCORZFgu
>>481
向こうも見てるクチだけど、全くリリなのに関係ないもの以外なら特に問題ないと思うぜ
489名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 20:08:20 ID:84kfEwdH
>>488
ふたば関係のポータルサイトのロダだし止めておいた方が無難だと思うよ
向こうも見てるなら知ってると思うけど、こことは空気が完全に違うし
490名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 20:11:49 ID:JMtfaKh2
というか前提作品があるなら、タイトル書いて読んでおくのを推奨とかぐらい書いておきべきだと思うんだがね
あらすじよか必要だと思う。住民の全員が全員、自分の作品を全てチェックしてるって思ってるのかね
491名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 20:15:30 ID:+7Xxq21/
流石にそこまで傲慢ではないだろうが、前提作品を書いておいた方がいいというのは同意かな
492名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 20:16:59 ID:/a3Jgbju
まあ「〇〇シリーズの続きです」くらいはあった方がいいとは思う。
493名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 20:27:05 ID:aaf6PKeQ
商業作品じゃあるまいし、なんでそこまで作者に要求するのかさっぱりわからん
494名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 20:29:04 ID:byIUW/n0
GJ!
セッテの水着姿…想像するだけでもう…
そんなセッテに襲われるエリオは…うらやま、いやご愁傷様です。何だかんだ言ってエリルー時空と同じようにラブラブな生活をしてるのだからきっと長生きできるさ!(棒読み)
495詞ツツリ ◆p7qjkM04QU :2008/08/11(月) 20:41:16 ID:gWfoGrYg
GJ!
エロイ、エロイけれど寿命が確実に減っているっ、このエリオっっ!!
末永く幸せになってもらいたいものです。

さて、詞ツツリ氏が規制で投下不可能とのことですので、代理投下させていただきます。
ジャンルは、私見ですが
・STSアフターもの
・ヴァイス主役
かと。
496代理 ◆265XGj4R92 :2008/08/11(月) 20:45:48 ID:gWfoGrYg
失礼、代理が抜けてました。
次から投下します。
497空へと響く銃弾 ◆265XGj4R92 :2008/08/11(月) 20:50:08 ID:gWfoGrYg
 想いを乗せる。
 殺意を引き金に、息を止めて、スコープの中の現実を切り取り、指先で砕く。
 嗚呼、嗚呼。
 因果な商売。
 古めかしい映画、質量兵器以前の文化、拳銃使いたちの言葉。

 俺たちは鉛玉で商売をするのさ。

 引き金一つ、血をぶちまけて、死にながら殺す。
 魔法にはそれがない。
 魔法には重みが足りない。
 煙草の煙にも似た苦味が、殺意の重量が、痺れるような反動が足りない。
 網膜には血をぶちまける死体がこびり付き。
 耳には鼓膜を震わせる轟音が刻まれて。
 鼻には苦々しい硝煙の香りを染み込ませて。
 舌はしょっぱい唾液に塗れて、渇いた唇を舐める。
 重量が足りない。
 重みが足りない。
 だから、魂はふわふわと地面から浮かび上がって、俺は地面に立っていることなんて出来やしない。
 だから、今日も私は引き金を引く。
 命の重みで、大地にしがみ付くために。
498空へと響く銃弾 ◆265XGj4R92 :2008/08/11(月) 20:53:14 ID:gWfoGrYg
 久々のオフ。
 クラナガンのホテル、そのレストラン、手元に握られた写真――それは赤ワインを飲む前に見るのは控えるべき血袋の光景。

「――暗殺者?」

 渋い顔を浮かべるのは写真を持った男。
 茶髪、それなりに整った顔、どこか不真面目な顔つき、されど長身の鍛え上げられた肉体を武装隊の制服で包んだ青年、首元にはドックタブ。
 ヴァイス・グランセニック。
 武装隊に所属する狙撃手にして、ヘリパイロット。

「そうです。近日クラナガンで出没している暗殺事件、その捜査協力をお願いします」

 彼に告げるのは小柄な少女。
 オレンジのかかったブロンド、決意を秘めた目つき、中に誇る野生の魅力を漂わせる子猫のような体躯、まだ二十歳にも満たない少女が纏うのは白い制服、執務官補佐の制服。
 ティアナ・ランスター執務官補佐。
 かつてはツインテールにまとめていた髪を肩下まで伸ばした少女。

「やれやれ、せっかくのデートのお誘いだと思って期待してたんだけどな」

 クルクルと写真を回転させて、ヴァイスは息を吐いた。
 大体二年ほどか。
 六課が解散し、顔を合わせなくなったスターズフォワードの少女、その成長した顔つきにヴァイスは薄く笑みを浮かべる。

「からかわないで下さい」

 そう反論するティアナの顔は少しだけ赤く染まっていた。
 クピリと赤ワインに口を付けて、慣れない濃厚な香りに目をしかめていた。

「ん? てっきり出世街道驀進中のランスター補佐官殿は、本局でもモテモテで、お誘いの言葉が多数あると思っていたんだけどな?」

 ヴァイスは告げる。
 それは彼の予想だったけれど、あながち間違っているとは思わなかった。
 知り合いという贔屓目を抜いても、ティアナ・ランスターは美少女に値する。
 通常の局員を大幅に上回る魔力量と、彼女の上司であるフェイト・T・ハラオウンや他の二者のような例外を除けば、異例とも言える速度でエリートの道を歩んでいるのだ。
 目をつけないほうがおかしい。

「え? いや、そんなこと……ありますけど、興味ないですから……」

 多少酔いが回っているのか、紅い顔のまましぼむ様な声でティアナが言う。
 その態度にヴァイスはやれやれと肩を竦めた。どうやら初心なフォワードリーダーは顕在だったようだ。

「まあいいけどよ、ほら、ティアナ。サラダでも食え」

「あ、はい」

 モクモクとティアナがサラダのレタスを口に運んで、咀嚼する。
 うぅ、なんで私質問されているんだろう? とティアナが言っているような気がするが、気のせいだ。
 ヴァイスはティアナが食べている間に、再び写真を見つめなおした。
 それはどれも胴体を撃ち抜かれた魔導師たちの写真。
 吐き気を催すような惨状だったが、同じような光景を見慣れているヴァイスは顔色一つ変えずにサラダの中のトマトを口に放り込み。

499空へと響く銃弾 ◆265XGj4R92 :2008/08/11(月) 20:54:55 ID:gWfoGrYg
「んで、これは本当に“狙撃”なんだな?」

 くしゃりと口内でトマトを噛み潰し、酸味のある味を咀嚼しながらヴァイスは問う。

「はい。それも魔力弾ではなく――質量兵器だと鑑識から報告が出てます」

 そういってティアナが書類をテーブルに差し出した。
 一応ヴァイスは読んでいいのかと訊ね、ティアナが頷く。

「……世も末だな、テロ時代の再来か」

 ペラペラとファイルを捲りながら、ヴァイスは苦々しい顔を浮かべた。
 同時にファイルを捲っていたヴァイスは不意に眉を歪めた。

「なあ、これはどこの部署の鑑識だ?」

「え? それは本局の――」

「だろうな。“海から派遣された地上本部監査官が”射殺されたんだからな」

 次々と殺されたのは二年前起こったJS事件。
 さらに権威を落とし、海からの介入と隷属された地上本部、その派遣組である監査官。
 本局のプライドが傷つけられた、そう判断されたのだろう。
 今は海に所属するティアナが、本局所属執務官であるフェイト・T・ハラオウンの指示に従って動いているかのように。

「これは持ち出し可能書類、だよな?」

「はい、そうです」

 ヴァイスの突然の質問に、ティアナが少しだけ首を傾げながら答える。

「了解。明後日には返すから、借りるぞ」

 そう告げてヴァイスはテーブルの下に置いたカバンに書類を入れた。

「何に使うんですか?」

「ちょっとした伝手、だな? 地上本部に知り合いの観察がいる、そいつに見せるだけだ」

「え?」

「ちょっとな。足りないんだ、情報が」

 そういってヴァイスがウインクした。
 誤魔化すように、からかうように、どこか笑って――鋭い目つきを浮かべる。
 ゾクリとティアナは肌を震わせた。
 制服の下の皮膚が、撫でられたかのように粟立つ。
 二年前、強風に揺れるヘリの中で笑みを浮かべてガジェットを撃ち抜いていた時のような顔だ。

「なあ、ティアナ。教えてくれ」

 そして、ヴァイスは笑みを浮かべる。
 どこか獣じみて、口の中に残った最後のトマトの種を噛み潰し――唇を震わせた。



「何故俺に協力を仰いだ?」
500空へと響く銃弾 ◆265XGj4R92 :2008/08/11(月) 20:56:14 ID:gWfoGrYg
 空へと響く銃弾

  1.打ち抜く、射ち抜く、撃ち抜く動作を繰り返す



 手に残るグリップの感触を思い出す。
 肘骨を支えに、砂袋で角度を調整し、座り込む硬い感触、冷たい床、体温が流れて、同化しそうな感覚。
 かち、かち、かち。
 意識の中で時計の秒針、時間の経過を意識する。
 心臓が動く、うるさい、黙れと思いつつ呼吸を合わせる。
 伏射体勢、凍えそうな冷たさを感じながら、スコープを覗き込んだ。
 拡大された画像、切り取られた現実。
 移るのは標的だ。人間ではないと意識を切り替える、ただの画像。
 人間は同じ人間を撃てる精神構造を基本的には持っていない。野菜でも叩き割るように殺せるのは一部の人間、英雄と呼ばれる狂人のみ。
 彼は凡人だ。
 訓練を繰り返し、人を撃てるようになっただけの凡人。
 最初は殺意が足りず、引き金を引けず。
 最初は狂気が足りず、嘔吐を繰り返し。
 最初は技術が足りず、即死に至らない。
 その右手は機械のように、絡繰仕掛けの義手のように、淀みなく精密に動くことを要求される。
 神経を走る電子信号は機械を制御するパルスとなって、指を動かし、骨を動かさず、皮膚を極限まで歪めずに、筋繊維の動作を制御する。
 息を止める。
 すうっと乳房に吸い付くように息を吸い込んで、不意に止めた。
 ブレス・コントロール。
 あらゆる銃器は呼吸をしたまま撃つことを許容していない。息をすれば肺が動き、肉が動き、骨が震えて、手元がブレる。
 風に揺れる草木のように震えるのだ
 だから、息を止める。少しだけ苦しく、止まる時間。
 完全に静止した身体で最後の照準を合わせる。
 流れる血液、動く鼓動、体の内で蠢く振動、外部にまで届かない動き。
 息は止められる、けれど鼓動は動き続ける、煩い。
 体を流れる血流は神経を震わせる流れ、それを指先で操り、制御する。
 覚悟は完璧でなければならない。
 制御は完璧でなければならない。
 狙撃は完璧でなければなりたたないのだから。
 スコープの中の光景を切り抜いて、頭蓋にまで潜り込むように投射し、風も、熱も、大気の乱れすらも感じながら――

 引き金を

 ――引き絞る。

 ――――頭蓋に響くような幻聴が響いて

 ――――――紅い華が真っ赤に乱れ咲いた。
501空へと響く銃弾 ◆265XGj4R92 :2008/08/11(月) 20:59:17 ID:gWfoGrYg




 まず息を吐いた。

「っ――ぁああ?」

 喉に詰まる感覚、肺に残らない酸素を慌てて吸った。
 げほりっと唾を吐きながら、喉を押さえて咳き込む。

「くそ、最悪の朝だ」

 がりがりと頭を掻きながら、彼――ヴァイス・グランセニックは周りを見渡した。
 いつもと変わらない陸士部隊の隊舎。
 適当に片付いて、適当に汚れた男やもめの部屋。
 カーテンから差し込む光に思わずヴァイスは顔の前に手を掲げて、ため息を吐いた。

「そろそろ遮光カーテンでも買うべきか?」

 しかし、そうなると今度こそ目が覚めなくなるだろう。
 目覚ましに続いて、彼を起こすもっとも有効な手段こそが日光なのだから。
 ぼりぼりと頭を掻いて、彼はシーツを剥いだベッドから起き上がると、部屋に備え付けた小型冷蔵庫から紙パックのミルクを取り出して、飲みだした。
 ごくりと喉が鳴り、500mlのミルクが喉を通って胃に納まる。軽く息を吐いて、手の平で白く汚れた口元を拭う。
 時間を確認、あまり余裕は無い。

「シャワーを浴びる暇もねえな」

 履きっぱなしのズボンを脱いで、ドッグタグだけを付けた上半身にシャツを羽織る。
 忙しい日々の中でも適度に鍛えられた肉体、バリアジャケットすらも纏えない魔法適正故に無数の傷が浮かぶ肌、うっすらと汗が浮かぶ身体に新しいシャツを着る感覚は気持ちがいいものだ。
 五分とかからずに武装隊の制服を身に付けると、ベッドの横に置いておいたデバイス――ストームレイダーを手に取り、軽くキス。

「今日も頼むぜ、相棒」

『OK。Friend』

 カード型に待機した相棒をポケットに入れて、彼は部屋から出た。

 JS事件と呼ばれた地上本部襲撃事件、それから二年の時が流れていた。



 機動六課と呼ばれた部隊は既に存在しない。
502詞ツツリ 代理の人 ◆265XGj4R92 :2008/08/11(月) 21:02:43 ID:gWfoGrYg
以上だそうです。
最初の予告のトリが違うのはうっかりトリップのところに「代理」と入れてしまったからでして、
当方のミスです。では、失礼します。
503B・A:2008/08/11(月) 21:19:34 ID:OQWAbaao
>>479>>480>>491>>492

こちらの不手際で不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。
今回の一件は、件のシリーズに連なるSSが最後に投下されたのが役3ヶ月前であり、
それくらいならば注釈はいらないかと考えてしまった私の慢心によるものです。
私の浅はかな考えによって不快な思いをしてしまった方々には重ね重ねお詫び申し上げます。
今後はこのようなことにならないよう、前書き等にも注意しつつ、シリーズ物は「○○シリーズ」という具合に
その立ち位置をハッキリと明言してから投下させて頂こうと思います。初心に還ったつもりで執筆を続けていきたいと考えております故、
何とぞ寛大なお心でこのスレの末席に置かせてくださるのなら幸いです。
ご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
重ねて、本文が未熟故に拙い文章であることをお許しください。

                                                          B・A
504名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:27:33 ID:/axH5otv
>>501
投下乙!
ヴァイスかっけー、血と硝煙の香りがミステリアスな風にのって漂って来る。
しんじるものはだれですか?もいいがこちらも同じくらい続きが気になる。
次の投下お待ちしています。
505名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:33:05 ID:J0ZkPH8B
この流れでこれを聞くのは悲しいですが、答えてください。>>502、君は誰ですか?本当にそれはツツリ氏の小説ですか?本当に君は代理なのですか?
506名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:36:44 ID:yapU5fCz
各人落ち着け
507名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:38:18 ID:ZolOut3Q
>>503
そんな畏まらないでいいと思いますよ
注釈はあるに越したことはないですが、
ID:JMtfaKh2のワガママっぷりのがよっぽど不愉快ですから

>>502
GJ!
しかしヴァイス主役っていうのも珍しいですね
508名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:39:59 ID:f2SVNgJd
>>505
何を根拠に疑念を持ったのかね?
509名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:50:28 ID:N742oXG+
>>489
ろだにはなのは関連のろだですとしか書いてないし、別に構わないんじゃないかな

>>505
なんのためのトリップだと思ってるんだ
510名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:51:00 ID:J0ZkPH8B
>>508
つい先ほど、自分のいた他のスレで、他人の名前を騙って作品を書いた痛い人がいたのでつい疑心に駆られて…。気を悪くしたならごめんなさい。
511名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:51:25 ID:R8nzEkic
名無しで書いても誰が書いたか解る人とかいんのかな
ある意味すごい熱心な人じゃね
512名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:52:14 ID:O2xhawVW
>>510
携帯からじゃなければ適度に改行を入れてください
見にくいです
513名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:56:19 ID:rdJCR58I
>>511
名無しで書いても、文体に特徴があるからすぐバレる方が・・・
514名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:59:40 ID:JMtfaKh2
>>507
つまり三ヶ月前にはいなかったのは完全に置いてけぼりで、いないのが悪い言いたいわけか?
そして予習として保管庫の作品は全部読めと?
515名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:03:16 ID:WdrwvYri
長文でもないレスに改行しろだなんていちいち目くじら立てなさんな
516名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:07:20 ID:+daSKIAU
前置きしたからって、過去作品からわざわざ読み始める人がどれだけいることか。
興味を持ったなら、前置きがあろうと無かろうと自分で探すよ。
読みたい、って気持ちはそういうものだろう?
517名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:09:01 ID:9pRfT+Hs
>>514
このスレの作品を読むことは義務でもなんでもないんだよ?
518名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:10:26 ID:qB+BULjM
夏だなぁ……
519名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:11:29 ID:R8nzEkic
>>503
シリーズものはその旨明記するって言ってるのに何で外野が争うかな
その程度は書き手の責任範囲だと思う
520名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:14:41 ID:UPGsTdzb
PINKに入り浸るのもいいけど
おまえらちゃんと墓参り行けよ!


クイントママンとランスター家の墓が近い事を
なんとかネタにできないかと考えて早数週間
521名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:17:30 ID:JMtfaKh2
>>517
義務じゃないのはわかってる
で、その上でシリーズなら明記しないと、初見は完全に置いてけぼりだって言ってるだ
タグのCPとかで探しても、シリーズとして繋がってないけどCPは同じ作品だってあるわけだし、作品数の多い書き手なら手間が掛かるって言ってるんだよ
522名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:18:37 ID:BhM5QDAz
作品に興味をもったら保管庫で調べて見ればいい
別に明記する責任なんて存在しない
むしろ明記してくれるのはすごい親切

レス見てればシリーズ物だってのは想像つくんだから、あとは自分で調べればいいだけ
なんのために保管庫があんだよ
523名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:22:25 ID:xM9npSme
>>520
お盆で帰ってきてるティーダ「クイントさん…俺、もう我慢ができません!」
お盆で帰ってきてるクイント「あぁ…駄目よティーダ君。私には夫が…」
お盆で帰ってきてるティーダ「あなたがいけないんだ。幽霊なのにこんな健康的な体で…!」
お盆で帰ってきてるクイント「許してあなた…!」
524名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:27:59 ID:WdrwvYri
>>523
それをみんながお参りに来ているときにヤッてたらすごい状況だな
525名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:31:08 ID:Ge/LCS0L
死人が絡むなら、ドゥーエやゼストも絡ませられるなw謎の三角関係勃発とかwww
526名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:31:55 ID:R8nzEkic
喪服のフェイトさんなんてすごいソソルと思うんだけど
あの世からスターライトブレイカーですっ飛ばされる淫獣の映像が浮かんだ
527名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:32:00 ID:LkuGnk02
>>524
ティアナ「兄さん向こうで元気にやっていますか?」
ティーダ「あぁ元気にヤっているよ」

こうですね分かりません
528名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:34:53 ID:N742oXG+
>>521
シリーズ物ってのは最初に言ってるし、そもそもエリオ×セッテのタグ検索って5件しか出ないぞ
全く調べずにそんな事言われてもなぁ……

>>526
なのはさんが死んでで悲しんでるフェイトそんが見たくなった
たまにはなのはさんの死ネタが見たいぜ
529名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:36:31 ID:JMtfaKh2
>>528
それはたまたま今回のCPはってだけだろ
530名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:38:02 ID:ouRJK9wV
いい加減にお客様(笑)と夏厨はスルーで行こうぜ。
何様のつもりかは知らんけど、調べもしないうちに訳分からんいちゃもん付ける輩の相手しててもどうしようも無いだろう。
531名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:41:52 ID:+daSKIAU
まず自分で調べろ。人に聞くのはそれからだ。
そうガキの頃に教わったが……最近はそうじゃないのかねぇ?
532名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:44:31 ID:z/RdbZi5
おまいらモチツケ
喫茶翠屋謹製のなのはさん羊羹が届いたから、またみんなで食おうぜ

  ⌒*__*⌒
  ヽ|・∀・|ノ  わたぢを一杯食べて なの!
   |__|
    | |
533名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:46:56 ID:ouRJK9wV
>>532
これはどうも
ごちそうさま
534名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:48:16 ID:+daSKIAU
>>532
洋風喫茶で何故和菓子?w
ナイフとフォークで頂きます。
535名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:48:42 ID:xM9npSme
桃子はん和菓子もイケるんでっか
なぜか洋菓子しかできんイメージでした
536名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:53:27 ID:N742oXG+
>>532
頂きま……テイクアウトお願いします
537名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:54:45 ID:9pRfT+Hs
なのはさん幼姦!?
ヴィヴィオに手ぇだしたんか……
538名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:59:03 ID:84kfEwdH
>>509
とはいえ今まで棲み分けてたのに急に使われるとなあ
あの作家さんがろだに投下してOKな空気だったから俺も俺もって感じで
規制で2chに書き込めない時の避難所代わりに使う人が増えて
向こうとの軋轢が生まれそうな悪寒、ただでさえこの季節だし
539名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:02:33 ID:BhM5QDAz
>>532
いただきました
なんか胃の中で動いてるんだけど……
大丈夫かなこれ?
540名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:29:14 ID:l8TEP8GV
>>514
置いてけぼり?だからなんだコラ?
わからなかったら調べるのは基本だろヴォケが!
口の利き方を勉強して出直して来い!!
541名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:34:03 ID:RSH9rVQo
>>540
とりあえず落ち着け
542名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:35:06 ID:baXaHkZb
>>540
内容は概ね同意だがその言い方はどうかと思うぞ。
543名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:35:11 ID:LkuGnk02
>>540
まずは深呼吸だ俺に続いて呼吸するんだヒッヒッフ〜ヒッヒッフ〜
544名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:39:49 ID:UPGsTdzb
>>544
そしてスバル・ティアナ・キャロの妊婦姿を想像してハァハァするんだ!
はい、ハァハァハァハァ…
545名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:40:23 ID:NJegT+UF
>>540
なにを言いたいのかわかろうとする頭がないんだな
可哀相に、同情するよ
546名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:41:08 ID:z/RdbZi5
あんまり他所様の話題を引っ張るのイクナイってわかってるのだが……
実はりりろだについて質問したことがあるのを思い出した。
>リリなの関係ならあそこは誰でも使って良いのかね?(詳細5550)
って聞いたら、「ある意味正解だよ」と返した方もいたが、他の回答もあわせてみるに、
やっぱりあそこは「虹裏なのは系総合ろだ」って認識でFinじゃないかな、と。
寛容なひとも多いかもしれないが>>489の言うとおり自重しといたほうが無難じゃまいか。

>>544
自己暗示ですかいwww
547名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:41:14 ID:4DJ9/TvH
まあ読んで欲しいと作者が思うのなら、何の続きかぐらいは明記すべきだと思うがな
面倒だと思われてしまったらそのまま読まれないのだから
別に便所の落書きだから他人が読みたいかどうかなんてどうでもいいってんならご自由に
548名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:51:35 ID:82sgAi8F
>>544
妊婦…妊婦…つまりは母乳…
ハァハァハァハァハァハァハァ…
549名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:52:39 ID:FP0kuJej
キャロがパンニーする話ができたので、10分位したら投下したいと思います。
よろしいでしょうか?
550名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:55:11 ID:ZolOut3Q
>>545
むしろ>>514の方が見事なまでに勘違い君な訳だが

>>547
あった方がいいっちゃいいだろうけど、シリーズ物は読んでる人は最初から読んでるし、
途中から気になった場合はまず自分で調べるのがやっぱ基本だよ
大した労力じゃないんだから

>>549
ぜひ
551名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 23:59:36 ID:9q0wGlm1
>>544
戦闘機人って妊娠(ry
552超硬合金:2008/08/12(火) 00:05:08 ID:ixK1EFH2
それでは投下します。

注意事項
・一応エロです。
・登場人物の下着について、オリジナル設定がいくつか存在します。
・「キャロたんはトイレにだって行かないんだぞ〜!」と信じている方はご遠慮ください。
・逆に排泄系の濃厚な描写を期待される方もご遠慮ください、一切ありません。
・そもそも、実用性は期待しないでください。
・機動六課が割とダメな組織っぽいです。
・なにげに、ヴァイティア、なのユーです。
・タイトルは「パンデミック」です。
553パンデミック 1:2008/08/12(火) 00:05:53 ID:ixK1EFH2
 キャロ・ル・ルシエは官舎の自室で正座をしていた。
 ひどく、緊張した面持ちである。そして彼女の目の前には、一枚の下着がおかれていた。
 勿論、下着泥棒をして怒られている真っ最中という訳ではない。その為に必要な叱る人間がこの部屋にはいないことからも、それは容易に判断できるだろう。
第一、時空管理局から選りすぐりのエリートを集めた機動六課である。そんなことをする人間は一人しかいないし、彼女はそれに該当しない。
 それでは何故、JS事件で死地を潜り抜けた猛者である彼女が下着一枚を相手に緊張しているのか?
 フェイトの私物と同じ、黒いレースの下着を思わず買ってしまったからなのか?
 否。そんな大人の魅力たっぷりの下着にも、まぁ憧れないではないが、彼女のお気に入りはリボンがついていたり、苺柄だったりするカワイイ系だ。
そも、幼いキャロの体型に合うアダルティな下着を揃えている店を彼女は知らない。
 それとも今週の洗濯当番であるスバルが間違えてキャロの洗濯物に下着を一枚間違えて混ぜ込んでしまったのか?
 おそらく、それが正解であろう。前にもティアナがキャロのところに、こっちに一枚混ざっていたと言って、制服のジャケットを持ってきたことがある。
何故そこで混ぜ込んでしまうのか不思議ではあるが、あの天然吶喊娘を相手に合理的な理由を見いだすことなど不可能であるから、キャロはその辺について考えないことにしている。
 だがこれだけでは、キャロが紛れ込んだ他人の下着ごときを相手に緊張している理由の説明とはなっていない。
 さすがにシャマルの死蔵コレクションであるパピヨン(もっと愛を込めて!)なパンツとかなら気後れもしよう。
しかし、周り番で行っている洗濯は、スターズ・ライトニングのフォワード陣の分だけを対象にしている。
うっかりシャマルのコレクションが混じることなどまずあり得ないし、仮にそんなことが起きたのなら、スバル→アルト→バックヤードのみんなのルートを辿り、持ち主不明のエロ下着として三時間以内に六課中に知れ渡る。
 それが起きていないことからも、取り立てて際どい下着が混ざっていたわけではないと知れよう。
 そもそも、彼女の目の前にあるのは色気などとはほど遠い、木綿製の官給品だった。
 だが、キャロの心をとらえて放さないだけの理由がそこにあった。油性ペンで所有者の名前が書かれていたのだ、エリオ・モンディアルと。
554パンデミック 1:2008/08/12(火) 00:07:09 ID:ixK1EFH2
 □

 キャロにとってエリオは、ほんの数ヶ月前までは同い年でたった一人のお友達だった。
 それが友達ではなくなったのは、ルーテシア・アルピーノと拳で語り合った後のことだった。
 大切なお友達のエリオは、その決闘の場で、自分と一緒に戦ってくれた。
 そして三人は、敬愛するフェイトやなのは、はやて達みたいに親友になれた。
 それはとても嬉しいことで、初出動の時にエリオが手を差し延べてくれたのにも負けない、この一年でもっとも大切な思い出だ。
 だのに、ルーテシアがエリオに微笑むと胸がチクリと痛む。
 エリオが、人造魔導師計画とかの話でルーテシアと盛り上がっていると、何も知らない癖してつい、二人の会話に割り込んでしまう。
 そんな自分の気持ちが解らなくて、エリオがルーテシアと喧嘩してくれたらいいのに、なんて思ってしまう自分が嫌いになったりもした。
 それが恋なのだとキャロが気付かされたのは、ルーテシアと喧嘩をした日の事だった。
 喧嘩の切っ掛けは覚えていない。だがそれがエリオに纏わる事だったのはきっと確かなのだろう。
 今でも覚えている、普段は寡黙なあのルーテシアから投げつけられた罵詈雑言を。

「弱虫」と、

「卑怯者」と、

「私たちの友情が、たった一つの恋で砕けるほど脆いものなの!」と。

 今思い返せば、ルーテシアはとても優しい子なのだと解る。
 自分だってあんなにエリオの事が好きな癖をして、自分の方がキャロよりもずっと不利なスタートラインとコースを走らなければならない癖して、
ライバルの背中を、友達だからという、たったそれだけの理由で押してくれたのだ。
 その時から、エリオはキャロにとってお友達ではなくなった。朴念仁という名の俊敏で、強力な獲物となったのだ。
 だが、キャロにも矜持がある。友情がある。
 天衣無縫なあの頃のふりをして一緒に入浴しようと迫ったり、シャーリーの企画立案したデートプランを実行したりするわけにはいかなかった。
 だけれども、偶然紛れ込んだ下着を相手に、一時の至福を味わうくらいの事はあってもいいのではないだろうか?
 その結論に達したのは、もう、三〇分も前の事だった。
 何度か目の勇気を振り絞って、キャロは木綿の下着に手を伸ばす。
 しかし、その手は白い下着に触れる前に止まった。

「フリード、エリオ君が部屋に来ないように、外で見張っててもらえないかな?」

 自身の痴態を見られたくなかったからではない。万が一、有耶無耶のうちに自分の想いが知られるのは避けたかったからだ。
 ルーテシアがキャロの背中を押してくれたように、キャロもまた、ルーテシアとの友情を裏切りたくはない。
555パンデミック 3:2008/08/12(火) 00:08:13 ID:FP0kuJej
 □

 フリードに部屋の外で見張ってもらってから二度、キャロはその下着に触れる事を挫け、三度目になってようやくそれを両手で摘み上げた。
 官給品なのだから当たり前ではあるが、その手触りは、キャロの下着とさして変わらない。
 目を皿にして、まじまじと見詰める。
 膨らみを持った不等辺五角形は、動きやすいという理由で近頃ではトランクスを愛用するスバルは別として、キャロやティアナのショーツと大きく変わらないシルエットだ。
 しかし、変わらないのはシルエットだけ。
 キャロの下着の小さな、それこそ前後の区別をつけるためにしか役立たない、なおざりなリボンがあしらわれているのに対して、エリオのそれにはリボンがなく、代わりに前だけ一部が二枚の布を重ね合わせた形になっている。
 ルーテシアと出会う前は気にもしていなかったし、無自覚の嫉妬をしていた時期は自己嫌悪でそんな事にまで気が回らなかった。
そして、恋だと気づいた後は、恥ずかしくて直視などできずにいた。
 だから、こんなにも真剣に男物のパンツを観察するだなんて、キャロの人生において初めてだ。だからこそ、違いに気付いた。
 試しに、重なり合った場所を両手でまさぐると、そこが縫い合わされておらず、内側へと指が入る事を確認できた。
 ならば。と、前後を返すと、後ろの生地は自分のと同じで、一枚きりの作りになっていて、穴など開いていない。
 つまりエリオのパンツに開いている前方の穴は、排泄用ではないという事だ。
もし前方の穴が小用の為の物だとしたら、後ろにも排便用の穴を設けない道理がない。全くに、この穴の用途が想像できない。
 しかし、知りたいとキャロは思う。大好きなエリオの事なのだ、どんな些細な事だって知りたいと思うのが乙女心という物だ。
 ならば、試してみればいい。出身世界が違うとはいえ同じ人間なのだ。
 立ち上がり、フックを外すと、タイトスカートがストンと床に落ちた。
 制服の下に手を潜らせ、親指をショーツの中に通して膝まで一気におろす。それから、まず右足を、そして左足を抜いた。
 見聞を終えたならまた穿くからと、スカートはハンガーに吊し、ショーツは折りたたむ。
 それから、逆の手順でエリオのパンツを穿いた。
 姿見の前に立って、エリオのパンツが見えるようにと制服の上着をたくし上げる。
 くるりと一八〇度回転して鏡に背を向けて、上半身を捻って、後ろ姿の確認。パンツが見えにくいからとおしりを突き出す。
キャロには少しだけ緩いエリオのパンツは、その動きの製でずり下がり、尾てい骨が鏡に映る。

「エリオ君。て、やっぱり私よりも大きいんだ」

 そんなささやかな事にキャロはエリオの背中の大きさを思い出す。
 そして、ふと零れたその呟きはキャロに、自分が今何をしているのか自覚させた。
 羞恥でカァッと顔が赤くなるのを感じた。
 本当にフリードを見張りに出してよかったと、目的外の理由で二〇分前の自分を褒めてやる。
 「早く脱ぐべきだ」と、心の中のヴォルテールが語りかけるが、心の中のフリードは「きゅくるぅ?」と、可愛く小首をかしげてスルーした。
 故にアルザスの巫女は、パンツを脱がずにクッションに腰を下ろす。
 普段なら両足を揃えて横に倒すが、今日はパンツがよく見えるようにと膝を立て、その上不作法に踵も膝も開き加減。自身の股間をのぞき込む。
 パンツを見るには制服が邪魔になると気づき、ボタンを外し、リボンもほどく。黒いインナーシャツはたくし上げて、ずり落ちないようにとその裾をくわえる。
 それからパンツに開いた謎を探るため、キャロは右手を穴の中に差し入れた。
 そこには「女の子の大切な場所」があった。
 それで、趣味で作ったクッキーをお裾分けするために、スバル達の部屋を訪れたときの事を思い出した。

556名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 00:09:17 ID:s7Kax1pv
>>550
シリーズとは言えタイトルが違うし、番号とか付いてるわけでもないからシリーズとは気が付かない人もいると思うぞ
あらすじは前提条件で、この設定で本編書いてます。経緯は脳内補間でって見れなくもない。極端過ぎだけど
557パンデミック 4:2008/08/12(火) 00:09:33 ID:ixK1EFH2
 □

 エリオに渡す前に、公正なる第三者の意見としてティアナ感想を聞きたかったのだが、その時は部屋にスバルしかいなかった。

「ティアなら直ぐに戻ってくるよ」

 キャロのクッキーだけでは不足だったのか、大量のスナックの袋を開きながら、女の子二人だけのちょっとしたお茶会が始まった。

「そうそう、ティアったら、ヴァイス陸曹との来るべき決戦の日のために、すっごいもの買ったんだよ」

 その言葉と共に、スバルは相棒のタンスの底を漁り、キャロはマッドティーパーティーだと気がついた。
 危険な匂いがしたが止めなかったのは、世間一般の恋愛に関する知識を得られる貴重な機会だと思ったからだろう。

「ジャ・ジャーン!」

 という掛け声と共に、スバルが掘り当てたのは真っ赤なショーツ。

「しかも、エロ仕様・・・ほら」

 脚を通すにはあまりにも小さな穴が開いている事を、スバルは広げて見せてくれた。

「まだ告白もしていないのに、気が早いよねぇ〜〜」

 ケラケラと笑っていたスバルはその後、涎をしとどに垂らしながら、ティアナの堅くて大きなクロスミラージュを喉の奥までくわえ込んだのだが、それは今のキャロにとってどうでもいい記憶だ。
 重要なのは勝負下着にはHな目的で小さな穴が開いているという点であり、エリオのブリーフにも穴が開いているという事だ。
 齢一〇歳にて時空管理局の精鋭戦闘部隊に配属されるほどの才児であるキャロが、この二つの事実を単なる偶然と片付けるはずがなかった。

558パンデミック 5:2008/08/12(火) 00:11:04 ID:ixK1EFH2
 □

「エリオ君、だれの為にこのパンツを穿いたんだろう」

 あの優しいルーテシアの為であろうか?
 それとも、母であり、姉でもあるフェイトの為か。
 もし自分の為であったなら、これほど嬉しい事はない。だが、それを確認する事はできない。
ルーテシアとの友情を反故にして抜け駆けしたくなかった。それ以上に自分以外の誰かの名前が出てきたならば耐えられそうになくて、そんな勇気はでなかった。

「・・・エリオ君・・・」

 もしかしたら、この一枚の布を挟んで既に、エリオは誰かいい人と繋がっているのかも知れない。
 そんな不安を紛らわそうと、指を秘所に埋める。

「・・・ん、ンン・・・」

 くすぐったいような刺激が、背中を遡る。
 エリオのブリーフを穿いたときから湿り気を帯びていた秘所が、その快楽に溺れる。
 親指でブリーフの上から秘豆を押しつぶす。
 頭に浮かんだ不安を欲情が塗り潰していく。
 起こしていられなくなった上半身を横倒しにして、それでも右手は半ば自動的に動く。
 体を支える必要のなくなった左手で胸の突起を摘んで捻る。

「エリオ君、エリオ君エリオ君・・・・・」

 もはや体が止められない、止めようとする意志すら浮かばない。
 思い浮かぶのはエリオの笑顔・笑顔・笑顔。
 それ以外のあらゆる物がキャロの意識からこぼれ落ちていく。
 快楽の霧が彼女の意識を覆い、声も吐息も、秘所から響く水音も、只々部屋の隅々まで広がって消えていく。

「ン、ア・・アァ・・・・」

 右手の動きがどんどんと加速していく。
 口から紡ぎ出される物は言葉ではなく喘ぎ。

「キャロ、ちょっといいかな?」

 不意に、小さなモータ音と共に扉が開く。

「・・・・・」

 言葉の意味も、状況に置ける意味もわからずに、キャロは首を小さく曲げて視野の片隅に扉と来訪者を写し込む。
 手の動きは未だ止まっていない。
 その代わりではないが、来訪者は扉を潜ろうとした姿勢で動きを止める。

「・・・・フェ・・・見ないで! 見ないでくださ・・・ン、アア!」

 置かれている状況、来訪者の姿。この二つを理解した瞬間に、キャロは背を仰け反らせた。
 真っ白いブリーフに大きくシミが広がっていく。
 驚愕する赤い瞳に見守られ、キャロは達した。
559パンデミック 6:2008/08/12(火) 00:12:03 ID:ixK1EFH2

 □

 フェイトはあまりオシャレに気を遣う質ではないが、下着にはポリシーがある。
 素材は断然シルク、色は黒だ。
 故に、つい今し方洗濯機に放り込んだ白い木綿のブリーフはフェイトの持ち物ではない。
 キャロの部屋の前でぽつねんと佇むフリードを見かけ、何かあったのかと様子を伺った結果、キャロに代わって洗濯する事になった代物だ。決して、フェイトが盗んだ物ではない。
 それにしても、あれは非常に居たたまれなかった。
 と、フェイトは溜息をついた。
 それはそうだろう。子供だとばかり思っていた我が子の自慰、しかも好きな男の子のパンツを穿いて、を目撃してしまったのだから。
 あの後、羞恥心を主な理由として自殺しかねないほどに思い詰めたキャロを宥め賺し、そこに至る経緯や理由を聞き出すのにも骨が折れた。
 そして、恋愛相談に変化していったのもつらかった。
 フェイトとて、恋愛という意味で人を好きになった事がないではない。
しかし、ユーノは友達になった頃には既になのはと断ち切れない絆を築いていた。クロノも、告白しようと決心が付いたときには過去形でなければならない相手となっていた。
 要するに、フェイトは彼氏居ない歴=年齢なのだ。

「それにしてもキャロ、エリオの事が本当に好きなんだなぁ」

 誰もいない洗濯場で、フェイトは小さくつぶやき、溜息をつく。
 初めて見たキャロの恍惚に満ちた表情。
 親離れしてしまった我が子に対する寂しさがフェイトの胸に去来する。

「パンツでするの、そんなに気持ちいいのかな?」

 幼なじみの中で唯一恋人居ない歴を更新中の身として、何やら思うところもあるらしい。

「誰も、来ないよね」

 出入り口から見えないように、洗濯機の陰にしゃがみ込む。
 懐から一枚の布を取り出すと、彼女はそれを顔にあてがい、大きく息を吸い込んだ。石鹸と太陽の匂いがフェイトの胸を満たす。

「これが、エリオのおちんちんの匂い」

 パンニーは感染する、持ち主のあずかり知らないところでも。

                              完
560超硬合金:2008/08/12(火) 00:14:40 ID:ixK1EFH2
 以上です。
 このジャンルの草分けであるMr.P様に習って、パンニーは感染症であるという設定になりました。
尚、作中での感染者は一人だけですが、パンツだからパンデミックでいいのです!

・・・ナンバリング入力ミス! 皆様すみません。以後気をつけます。
561名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 00:15:22 ID:s7Kax1pv
>>560
投下前に確認しなかった
ほんとに申し訳ないことをしました
562名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 00:21:55 ID:BKOXvRwj
>>560
GJ!それにしても機動六課は変態の巣窟かw
563名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 00:27:01 ID:eGqy6pfX
>>556
よく見ろ
最初にシリーズ物って書いてある
タイトルもほとんど一緒だし

>>560
GJ!
564名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 00:33:31 ID:cEqRoa6d
>>560
GJ!

エリオの下着使用者三人目ルーを待ってます。
565名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 01:01:20 ID:e61kNJbc
GJでした
エリオのパンツが六課でたらい回しに使用されていきそうだw

最終的には某5歳氏の真似をして頭に被ったヴィヴィオをエリオが目撃するんですね
566名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 01:14:22 ID:LpGX5SFh
唐突な質問だが、各キャラの瞳の色ってどんなだっけ?
567名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 01:41:32 ID:6iEbKflx
なのは=青灰(紫?)、ヴィータ=青(キレると鮮やかな青)、スバル=緑(機人モードで黄)、ティアナ=水色
フェイト=赤、シグナム=暗い水色、エリオ=紫、キャロ=紫
はやて=青(ユニゾン時水色)、シャマル=赤茶、ザフィーラ=赤(狼、人間いずれも)、リイン1=赤、リイン2=明るい青
ギンガ=水色(洗脳時は黄色)
クロノ=青灰、ヴェロッサ=明るい青、ユーノ=緑、マリエル=黄
ルーテシア=赤、スカリエッティ=黄、ゼスト=青(ユニゾン時黄)、アギト=明るい紫
ウーノ、トーレ、クアットロ、チンク、ノーヴェ=黄
ドゥーエ、セッテ、ディエチ=茶
セイン、オットー=緑
ウェンディ、ディード=赤

大体、こんな感じ。表現に関しては主観が混ざるので公式ページでも参考にするのが良いよ
568名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 01:48:03 ID:6iEbKflx
書き忘れ
ヴィータ=ユニゾン時明るい水色
569名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 02:37:11 ID:1i98k9mL
おお、>>566じゃないけどGJ
わざわざこんな時間に調べるなんてご苦労様です
570名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 02:58:28 ID:TD/SckBf
赤=フェイト・シャマル・ザフィーラ・リインI・ルーテシア・ウェンディ・ディード・シャッハ・(ゼスト)
青=ヴィータ・はやて・リインII・クロノ・ロッサ・ゼスト・ヴァイス・カリム・(リインIIユニゾンシグナム)
黄=マリエル・スカ・ウーノ・トーレ・クアットロ・チンク・ノーヴェ・(ギンガ・スバル)
緑=スバル・ギンガ・ユーノ・オットー・クイント
紫=なのは・キャロ・アギト・アルト・メガーヌ・ティーダ・(アギトユニゾンシグナム)
水=ティアナ・シグナム・セイン・シャーリー・グリフィス・(はやて)
茶=ドゥーエ・セッテ・ディエチ・ゲンヤ・オーリス・ルキノ

修正&追加ついでに色別にソート
571名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 03:07:12 ID:hKwWjLIt
こう見てみるとなのはもはやても日本人離れした目をしてるよね。
カラコンでもしてるのか?www
572名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 03:28:18 ID:juphlNBD
髪の色から既に日本人らしくないじゃんw
あんな真っ茶っ茶の地毛はねーよ
573名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 03:44:48 ID:dE+ytt97
というか、なのはの瞳の色が割と中途半端・・・文字にする時結構悩む
574名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 04:14:58 ID:ip/NYAFt
一応北日本の方では異様に色素が薄い子が時々生まれるという(アルビノではない)
どうも極僅かにロシアの方の白人系遊牧民の血が混ざっていて、先祖帰りでこういうことが起こるんだそうだ
575名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 06:59:19 ID:MKqQ+w94
まぁ赤でもクリムゾンでもスカーレットでも作者のイメージ通りに書けばいいんじゃね?
576( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/08/12(火) 08:49:22 ID:aK2JUwXV
(゚д゚; 三 ゚д゚)キョロキョロ
577( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/08/12(火) 08:49:45 ID:aK2JUwXV
しまったageた……or2
578名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 09:17:29 ID:TD/SckBf
何がしたいんだよw
579名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 09:36:11 ID:6ufU479e
ageたくなかったんだよ、きっと。

つ 柊力
580名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 09:44:56 ID:RxqCYJKe
>>572
それがいるんだな。高校のときの友人が見事な茶色で、
毎回、髪型服装検査で本当に地毛なのに、
嘘つくな染めてるだろって叱られて可哀想だった。
581名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 10:08:01 ID:s7Kax1pv
まぁ、レンとか晶の髪の色よりかはまともだよ
582名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 10:47:51 ID:ylhmJKAC
でも、黒髪っていないよな。
ギンガは青だし。
583名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 10:54:15 ID:/r9vqI1q
560
なんという機動六課w
ああ、エリオのパンツはいったいどこへ行くというのだ
多分次はルーちゃんが使うのですね。わかります
GJ!
584名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 10:54:58 ID:1i98k9mL
>>582
たしかアニメでは黒色は表現しづらいらしいよ?
585246:2008/08/12(火) 11:26:28 ID:dE+ytt97
前回感想レスありがとうでした。
突然ですがすいません。今からユノフェイ、高町母娘の長編二話投下したいと思います。
何か待ってたとか色々書いてあって、申し訳ない限りです。
ついでに、今作で鬱じゃないのは一話だけです。なので今回は急展開。
以下注意書きです。
・メインはユノフェイと高町母娘。ユーノ君×フェイトさん←なのはさん→←ヴィヴィオ みたいな感じ。
・鬱展開鬱エンド。誰も救われません。誰も助かりません。
・ユーノ君、フェイトさん、なのはさん、ヴィヴィオ、八神家、ナカジマ家、テスタロッサ家、ハラオウン家
好きな方はご注意を。
では。
586Cursed Lily:2008/08/12(火) 11:28:22 ID:dE+ytt97
 ミッドチルダの首都、クラナガン――時空管理局地上本部が位置する首都の外れ。そこに、なのはが起動六課
出向前から住まうマンションは存在していた。

「お疲れ様です! 高町教導官!」
「はい、そちらも毎日お疲れ様です」

 敬礼をする警備担当の武装局員になのはは内心苦笑しながらも一礼し、オートロックの扉を開きエレベータへ
と乗り込んだ。
 上へ上へと上るエレベータは丁度真ん中辺り、今いる階の表示が二桁になった辺りで停止し、なのはは指で
キーを遊ばせながら自宅の扉へ向かっていく。
 その足取りは心なしか軽いもの。起動六課解散からまだ一日しか経っておらず、仕事も書類整理だけと言う簡
単な物だったからだろう。だが、彼女の足取りがスキップをしそうな程に軽いのは全く以って別の理由だ。
 無論それは、

「ヴィヴィオー、ただいまー!」
「ママお帰りなさい! お仕事お疲れ様!」

 この新しい家族がいるからに他ならない。
 扉を開けて帰りを報せるや否や、ヴィヴィオが子供用スリッパをパタパタと鳴らし、なのはに抱きついた。
 突然の出迎えになのはは若干バランスを崩しながらも何とか踏みとどまり、まずは愛娘に頬擦りをして、朝以
来の娘の暖かさを目一杯堪能だ。
 遅れて、アイナがエプロンを身に着けたままなのはを出迎えた。
 きっと先ほどまで夕食を作ってくれていたのだろう。キッチンからは、アイナの作ったであろう夕食のいい匂
いがなのはの空腹を刺激した。

「アイナさん、すいません。夕食ありがとうございます」
「いいえお気になさらずに。それよりも、ご飯にしますか? それとも先にお風呂に?」
「えっと、ご飯で。お腹空いちゃいました」
「はい、では早速」

 ヴィヴィオを片手に抱きながら、なのはがアイナが料理を並べるテーブルの席につく。匂いだけで空腹を刺激
したのだ、それが目の前にあるとなれば空腹も手伝い早く食べたいと言う衝動に駆られるのは仕方が無い事。
 エプロンを脱いだアイナが席に着き、ヴィヴィオが元気良くいただきますと口にして、なのはが早速とアイナ
の作った料理を口に運べば、瞬間本当に頬が零れ落ちるような美味しさが口の中に広がった。
 隣ではヴィヴィオも目を輝かせ、アイナの作る料理を片っ端から平らげようと忙しくフォークを動かしている。
自然、なのはもヴィヴィオに負けじとアイナの料理を口に運び、気付けば皿の上の料理は綺麗さっぱり腹の中。
 その後ヴィヴィオと一緒に風呂に入り、ヴィヴィオと隣り合って座り今日あった事を報告するのは起動六課か
らの恒例だ。
 どれくらいそんな事をしていただろうか。ふとヴィヴィオを見れば眠いのだろう、しきりに目を擦りながら時
折なのはの方へと頭を倒し始めていた。

「ヴィヴィオ、そろそろお休みしよっか?」
「じゃあ、お皿洗い終わったら私もあがらせて頂きますね」
「はい、アイナさんありがとうございます」
587Cursed Lily:2008/08/12(火) 11:29:57 ID:dE+ytt97
 ヴィヴィオを抱き上げ、頭を撫でてやれば安心したかのようにヴィヴィオが母にしがみ付き、小さな寝息を立
て始めている。
 帰り自宅をしたアイナを玄関先まで見送りふと時計を見れば――約束の時間まであと少しと言うところ。

「ヴィヴィオ、ママちょっとお出かけするから。すぐ帰ってくるからちゃんといい子で眠っててね?」
「うん……いってらっしゃい……」

 ヴィヴィオを寝かしつけ、額にキスをしてなのはが寝室を後にする。
 エレベーターで一階まで下り、なのはがやや早足で彼女との約束の場所まで歩いていけば、予想通り彼女は車
に乗ったままなのはを待ってくれていた。

「もう、ヴィヴィオは眠ったの?」
「うん。待たせちゃってごめんね」
「私はいいけど。でもなのは、あんまりヴィヴィオを一人にしちゃ可哀想だよ?」

 勿論、そんな事は分かっている。なのは自身、用件を済ませたら直ぐにでもヴィヴィオの元へ戻ろうと思って
いるのだ。
 だが、何故か言うべきと思っていた言葉が見つからない。
 言おうと思っていた言葉が、彼女を隣にして頭の中から綺麗さっぱり消えてしまっている。

「ねぇ、なのは。話したいことって何なのかな?」

 隣からは、一向に口を開かないなのはに焦れたような、急かすような声。
 それになのはが頷いて。ゆっくりと、伝えたい言葉を捜すかのように目を瞑った。

「あのね、フェイトちゃん――」

 ――好きな人がいた。今までずっと一緒にいて、これからもだと願い続けていた人。
 誰よりも傍にいて欲しくて、けれど本当は誰よりも傍にいてはいけない人。
 彼女がいると、何も考えられないくらい顔が熱くなる。胸が高鳴ってしまう。笑顔になれる。
 彼女が笑ってくれると、彼女の事以外頭の中から消えてしまう。痛みも辛さも何もかも。本当に大切にしなけ
ればいけないあの子の事も。
 きっとそれじゃ駄目だから。ちゃんと始めてあげる為に、終わらせてしまおうと思ったんだ――。


魔法少女リリカルなのはStrikerS
―Cursed Lily―
(2)
588Cursed Lily:2008/08/12(火) 11:31:53 ID:dE+ytt97
 ザンクト・ヒルデ魔法学院は、次元世界屈指の教育制度を持つこのミッドチルダの中でも上位を争える程の名
門校だ。
 地球の日本で言う小学校と等しく初等教育を行う初等部が5年制、中学校と等しい位置に存在するのが中等部、
そして更に上を目指す者達には二年置きに進学が可能な高等部等も存在し、最終的には学士資格まで取得可能と
なっているそこは、他世界からの通学者も多く存在する。
 やや高めな授業料もあり在学する生徒たちはその殆どが裕福な層が殆どだが、貧しい家庭の為の奨学金制度も
確りと存在し、子供に教育を受けさせると言う面で言えばこれ程までに良質な環境は滅多に無いと言う事が出来た。

「――こぉらぁっ! 授業中なんだから静かにしなさい!」

 だが所詮、そんな者は大人たちの思想であり、実際に教育を受ける子供達には何ら関係の無い事だったりする
訳で、とりわけ活発な子供達が多いここ初等部の教室に響き渡るのは、元気な子供達のざわめきと疲れ果てた様
子の教師のお叱りだ。
 注意され一度は静かになる教室だが、調子を取り戻すのにさほど時間はかからない。
 そして今日も無事に午前中の授業を隣に学友達と談笑して過ごした活発な少年達は、チャイムがなると同時に
それぞれの鞄から弁当を取り出し、愛情込めて作られた昼食をそれほど味わいもせず胃に収め運動場へと飛び出
していく。
 一方の少女達といえば、遊び盛りの悪餓鬼共よりはそれなりに静かなお昼を過ごしている。この学院に通う高
町ヴィヴィオも、漏れなくその一人であったりした。

「ねぇねぇ、ヴィヴィオちゃん。これ、ヴィヴィオちゃんのママなんだよね?」

 そんな今日の昼食時の話題は、たまたまクラスメイトが持っていた雑誌の中で営業スマイル全力全開中の――、
娘から見れば引き攣っているとしか思えない母の写真だ。

「ヴィヴィオちゃんのママ、時空管理局の凄い人なんでしょ? この前ね、パパが言ってたの」
「う、うん……そうなの、かな……」

 そんなとても微妙な事を言われてもどう反応して良いのか分からないが、純粋に少女が母の事を褒めているの
だと理解し、ヴィヴィオが僅かに頬を染める。
 一方のヴィヴィオに雑誌を持って話しかけていた少女と言えば、ヴィヴィオが頷くや否や笑みを満開にし雑誌
を高らかに掲げ、ヴィヴィオの名と先程知った事実に声を張り上げている。無論、クラス中に知れ渡るほどの大
きさで。
 クラスメイトの視線が、一気にヴィヴィオへと集まっていた。逃げられない。そう悟った本人は、母の愛情が
大量に込められた弁当の蓋を閉め、本日の昼が自分の休息の時間で無い事に溜息を吐いていた。
 ややあって、クラスメイトがヴィヴィオの元へとなだれ込んでいく。ついでに、何故か運動場に駆けていった
筈の男子までもがそこにいた。だがヴィヴィオは苦笑しつつも動揺せず、何でも来いと言う風に待ち構える事に
して。
 瞬間襲い掛かってきた嵐の様な質問攻めに、耳に入ってきた質問から順番に片っ端から答え始めたのだ。

「――ヴィヴィオちゃんのママって何やってる人なの!?」
「――この隣で映ってる金髪の人も知ってるの!?」
「――この前ヴィヴィオちゃんのお母さんが、テレビに出てヴィヴィオちゃんの事喋ってたよ!」
「――ナノハさんのサインってヴィヴィオちゃんに頼めば貰えるのっ!?」
589Cursed Lily:2008/08/12(火) 11:33:41 ID:dE+ytt97
 質問は続く。なのはの簡単な身の回りの事から、なのはのスリーサイズまで質問は色々と。その中には相変わ
らずフェイトの事もいくつかあったが、全て答える事なんて出来るはずが無く。
 ヴィヴィオの表情に若干疲れが見え始めた頃、ヴィヴィオの様子に気付いた女子が今更ながらこの質問攻めの
終了を促した。それで質問をやめたのが殆どだが、困った事に何人かは相変わらず興奮した様子でヴィヴィオに
質問を続けている。
 と、その質問の中で一つだけ、

「――ヴィヴィオちゃんのママ、わたしのママより凄い若くて美人さんでいいなぁ。でも、ヴィヴィオちゃんの
ママって、なんだかお姉さんみたいだよね?」

 そんな質問が、ヴィヴィオの表情を僅かに強張ったものに変えていた。

「えっと、なのはママはねヴィヴィオを産んだママじゃないんだ……ヴィヴィオを助けてくれてそれで――」
「じゃあ、ヴィヴィオちゃんの本当のママってどこにいるの? その目の色もヴィヴィオちゃんの本当のママと
一緒なんだよね? 凄い綺麗で、宝石みたいだよね」

 子供は無垢で純粋で、だからこそ残酷だ。
 だから今ヴィヴィオが感じているのはきっと、誰も悪くないどうしようもなかった事だった。

「ヴィヴィオのママは、今のママだよ。なのはママが、ヴィヴィオの本当のママだよ?」
「じゃあ、ヴィヴィオちゃんを産んでくれたママってどこにいるの?」

 固く繋いだ筈の絆は今も確かにある筈なのに、周りを取り囲む悪意の無い視線にはそれが嘘だと言われている
ような気がした。
 辛くは無い。胸の痛みも我慢できる程度のもの。ただ、この程度の事で動揺してしまう自分が嫌だと、ヴィヴィオ
が固く拳を握りしめる。
 だってこんな事では、自分を抱きしめてくれたあの人に合わせる顔が無いではないか――。

「――ヴィヴィオを産んでくれたママなんて知らない。ヴィヴィオのママはなのはママだけだよ」

 だから拳を握り締めたままヴィヴィオが言う。その真剣で真っ直ぐな表情は、精一杯の虚勢に塗れてしまって
いる。
 ヴィヴィオを取り囲んでいたクラスメイト達は、突然のヴィヴィオの変化に気落とされ動けないでいた。
 ややあってから先ほどまでヴィヴィオに質問をしていた少女が後ずさり、涙を溜めると同時にざわめきが教室
中を埋め尽くす。
 それは、今まで輪の中に入っていたなったクラスメイト達の視線をも集め、その中心、ヴィヴィオは目の前の
少女がが突然泣いてしまった事に、他の皆と同じように何も出来ずにいた。
 ただこうやって虚勢を張る事をしていないと、何かが崩れてしまいそうでそんな余裕は無かったのだ。

「何やってるのっ、高町さん! みんなもっ!」

 その声がした方向を見れば、教師が慌てて生徒達の輪を掻き分けているのが確認できた。
 泣いている子がいる事情を聞こうとしたのだろう。咄嗟に教師が伸ばした手は教師が思った以上にヴィヴィオ
の腕を強く握っていて。
 ――それは、本当に唐突に起こってしまった。


* * *

590Cursed Lily:2008/08/12(火) 11:35:11 ID:dE+ytt97
 戦艦クラウディアで、シャーリーがなのはから預かったレイジングハートを修理を始める事早数時間。じんわ
りと額に浮いた汗を拭いもせず、シャーリーはコンソールを忙しく叩き続けていた。

「レイジングハートさん、あと少しですから辛抱してくださいねー」

 眠っているレイジングハートは答えないが、シャーリーはしきりにレイジングハートに言葉を投げながら彼女
に何か異常は無いかと注意深くモニターを凝視する。
 普段の彼女には余り見られないその様子は、それだけこのデバイスを扱う事に注意を配っているのだと言う事
が容易に伺えた。
 それは、上司の親友のデバイスだからではなく、お世話になった人のデバイスだからでもなく、デバイスマス
ターとして責任でもない違うもの。
 医者が患者を診るかのように、自分がデバイスの命を奪ってしまうかもと言う感情からなのかもしれない。
 レイジングハートはそう言う患者の中で言えば、飛びぬけて繊細だ。繊細すぎると言っても問題ない程。
 インテリジェントデバイスとして備わっている人工知能と、主の性質によって自らを調整する機能。それがレ
イジングハートは他のデバイスと一線を画しているのである。
 その根底にある祈願型と言われるプログラムや、術者の――なのはの望みと共に魔法を作り上げていくと言う
機能はこれまでの経験やデバイスと主の信頼関係が全て。自分のミスでそれら全てを壊す事など、どうやったっ
て出来る筈が無かった。
 と、

「シャーリーさん、お疲れ様です。少し休憩にしませんか?」

 不意の声が背後から。ティアナだ。
 ティアナがコーヒーを載せたトレイに手に、シャーリーに入室の許可を求めていた。
 シャーリーが快く入室を許可し椅子を差し出せば、ティアナはデスクにコーヒーカップを置き一礼して
椅子に座る。
 その緊張している様子と言えば、思わずうむと頷いてしまう程の、文句の言い様が無い新人執務官補佐ぶり
だった。

「ティアナ、もう手続きは終わったんだ」
「あ、はい! というか、その……フェイトさんに全部やってもらってしまいまして」
「そ、でもこれからは面倒な雑務は出来る限り執務官にやらせない事。
 執務官はあくまで、事件捜査と直接的な法の執行、後現場での指揮とかそう言うのをやってもらうの。で、執
務官補佐は執務官の手が回らないところのサポートと、時間がかかって面倒くさいの……書類整理とか手続きね、
それを率先してやる。
 まぁ、フェイトさんは結構そういうのやりたがるけど、全力で阻止しなきゃ駄目だよ?」

 ティアナがまじまじとシャーリーの顔を見つめたまま、口をぽかんと開けていた。続いたのは、シャーリーさ
んが先輩みたいと言う突っ込みどころ満載の呟きだ。
 我を取り戻したティアナが慌てて敬礼して返事をしているが、もう遅い。しっかりと今のティアナの言葉を脳
内に刻み込み、今後の接し方を変える必要があるとシャーリーが一人再確認をした。

「え、えーと、シャーリーさん? レイジングハートさん、そのままでいいのでしょうか?」

 そんなシャーリーの視線に危険なものを感じたのだろう。ティアナが取り繕う様に言う。
 誤魔化されるつもりは全く無かったが、さすがレイジングハートは無視できない。シャーリーが背を向けた瞬
間脱兎の如くティアナが逃げ出すが、まぁきっとその場しのぎで意味は無い。
 ティアナは後で叱るとして、とにかく今はレイジングハートの整備が先決だ。破損した外部フレームと、焼き
きれていた回路は既に修復済み。残るは、レイジングハートのメモリのバックアップで終了という段階。
 もう、レイジングハートは起動させてしまっても問題は無かった。

『おはようございます、シャーリー』
「はい、おはようございますレイジングハートさん。後は、記憶メモリのバックアップで終了です。もうすぐ、
なのはさんの所に帰れますからね」
『はい、よろしくお願いします』
591Cursed Lily:2008/08/12(火) 11:36:24 ID:dE+ytt97
 鮮やかな紅色をコアに取り戻したレイジングハートに頷き、シャーリーが記録用メディアをセットする。
 時間にしておよそ一時間と言ったところだろう。レイジングハートとマスターであるなのはの大切な十年間が、
それだけの時間で消えぬものとして薄っぺらいメディアへと保存されていく。
 ――何となくではあったけれど、それが少し羨ましかった。

『シャーリー、どうかしましたか?』
「いいえ、何でも。ただ、こうやって大切な思い出を忘れないでいられるって言うのは、それが出来ない人間か
ら見ると、羨ましいなぁと……って、いきなりすみません、こんな事……」

 表情の無いレイジングハートが、僅かに不思議そうに瞬いた気がした。

『――確かにそうなのかもしれませんが、それが出来ないからこそあなた達は思い出と言う物を大切な物として
いるのではないですか?』

 ややあってから紡がれたその言葉はまるで問いかけるような言葉で、けれども違うもっと別のもの。
 言うなればそれは、彼女がなのはと出会ってからの十一年余りの経験による、レイジングハートと言う名の人
格が紡ぎだした彼女自身の想いの様なものだったのかも知れない。

『いつまでも失くしたくないからこそ、あなた達は色々な物を作り出した。私がこの様に存在しているのも、そ
のおかげです。忘れると言う事が悲しい事を知っているからこそ、忘れたくないと思ったのでしょう?』

 本当に消えてしまった思い出は、二度と甦る事は無くて。だからこそ、色々な物を人間達は作り出した。忘れ
ないため。記憶させておく為に。魔道師の使うデバイスは、元はその為の物だったのだとレイジングハートが言
う。
 その言葉を確りと頭の中で繰り返し、シャーリーが頷いた。
 自身の伝えたい事がきちんと伝わったのだとレイジングハートもシャーリーに応えるように瞬き、それから
バックアップが済むまでの間と言う事で始まったのは、二人の共通の話題――つまりは、なのはに関わる話だ。
 本人が聞けば苦笑することしか出来ない会話を、本人の知る由も無い所で交えつつ、シャーリーがコンソール
を操作する。
 シャーリーの操作によって別ウインドウで表示されたのだ九歳の頃の高町なのはだ。
 話しの流れと言うよりも、シャーリーの一方的な申し出にレイジングハートは快く了承の意を伝え、始まった
のは”子供の頃のまだ可愛かったなのはさん”の上映会だった。

『まだこの頃は魔力が高いだけでしたけど、どうですか? 中々可愛いものでしょう?』
「えぇ、本当に……みんなにも見せてあげたいですね」

 シャーリーもシャーリーの言う皆も勿論初見ではないが、素晴らしいものは何度見ても素晴らしい。
 映像の中のなのはは、リリカルマジカルなどとまるでアニメの魔法少女の様な台詞を口走り、レイジングハー
トは高く掲げていた。その可愛らしさと来たら、筆舌には尽くし難いものがある。
 そして、なのはが睨む先は町を飲み込むかのように巨大化した樹木。その中心にあるは、淡く光るロストロギ
ア、ジュエルシードだ。
 その光りの中心目掛けてなのはが砲撃を放つ。ロストロギアを封印する程の高出力の砲撃は、まるでなのはの
想いを具現化したように巨大で、真っ直ぐなものだった。
 映像は次々と変わっていく。なのはとレイジングハートが歩んだ記憶を辿るその映像をシャーリーは興味で目
を輝かせて、レイジングハートは懐かしむかのように見つめていた。

「――あ、バックアップ終わりましたね。レイジングハートさんお疲れ様です。後、いい物見させていただきま
した」
『また見たいのでしたらいつでも』
「はい」
592Cursed Lily:2008/08/12(火) 11:38:01 ID:dE+ytt97
 丁度九歳の頃のなのはの映像が終わりを見せ始めた頃だ。
 バックアップが終わり、レイジングハートが取り出される。これで後はなのはにレイジングハートを届けるだ
けで任務完了と、ようやく安堵の息を吐き出したシャーリーがすっかり冷えてしまっていたコーヒーを一口だけ
飲み立ち上がる。
 クラウディアからなのはのいる教導隊の部署までは、転送ポートを使えばさほど時間がかかる事は無い。なの
はの元へ行く前に連絡して空いている時間を聞けば直ぐにでもなのはの元へ送り届けるくらいの余裕もあった。
 とそこへ、

「シャーリーお疲れ様。今からちょっと出るけど問題ないよね?」

 資料を小脇に抱えたフェイトが、普段と変わりない笑みでシャーリーに声をかけたのだ。


* * *


「おめぇ、何か顔色わりぃな。ちゃんと寝てんのか?」

 起動六課解散後教導官として職場を共にする事になったヴィータがそんな事を言い出したのは、昼食を食べ終
わり、定時まで後もう一頑張りと丁度意気込んでいた頃合だった。
 なのはに確認してもらう筈だった教導スケジュールを手にしたまま、ヴィータはその蒼く大きな瞳を鋭いもの
に変え、なのはをこれでもかと睨みつけていた。

「えーと、ヴィータちゃん。少し、怖いかな……」
「うるせーよ、傷つくぞてめぇ。で、どうなんだよ」
「だ、大丈夫だよ。心配しさせてごめんね」

 無論、ヴィータがそんな言葉を信じないのは分かっている。いつかの大怪我の時からそうだったが、何かとな
のはの様子に気を使っているのは、こう言う場合十中八九なのはが嘘を吐くのを知っているから。こればかりは、
日ごろの行いの所為なわけだから仕方ないと言えるだろう。
 故にそのままヴィータに睨みつけられる事数分。折れたなのはが笑顔を張り付かせたまま、ヴィヴィオの寝顔
を見てたら眠るの忘れちゃったと、言い訳になっているのかなっていないのか分からない事を口走り、ヴィータ
の手にしていた教導スケジュールを掠め取る。

「ヴィヴィオの寝顔見てただぁ? ふざけんのもいい加減にしろよ」
「だってほんとに可愛いんだよ? ヴィータちゃんだって、あんなの近くで見てたら絶対眠れないって」

 さすがにこれでヴィータが納得しないのは分かっているが、本当なのだから仕方が無い。
 夜にお手洗い行く為にちょっとベッドを離れた後、戻ってきて見たヴィヴィオが自分を探して寝言で名前を呼
ぶ姿など、もう可愛すぎて寝ていられる訳が無い。というか寝るのが勿体無い。出来れば、ヴィータにも見せて
上げたい程だった。

「あぁ、でも見せるのも勿体無いよね」
「……おい」
「あっ、ごめん! スケジュール確認だったよね」
593Cursed Lily:2008/08/12(火) 11:39:01 ID:dE+ytt97
 気を取り直しと言うよりも、睨んでくる彼女を半ば無視する形でヴィータの作った教導スケジュールを確認し
たが、やはり一年間起動六課で一緒にフォワード陣達を教導しただけの事はある。
 教導官として働き始め、まだ研修の段階ではあるがヴィータはここら辺の基本は問題ないくらいに出来ている
のだ。
 ヴィータの先輩、研修期間中の教育係としては、これ以上無いくらいに優秀な新人なのは間違いなかった。

「後は、この教導スケジュールで実際に軽く教導するんだけど……ヴィータちゃんは教導よりも、一度装備とか
のテストを体験してみた方がいいのかなぁ。やっぱり聞いただけより、色々やってみないと分からない事もある
でしょ?」
「知らねぇよ。てめぇが決めろ」
「もぅ、怒らないでよぉ。私はほんとに大丈夫なんだから」

 ヴィータが一度なのはをきつく睨みつけ、教導スケジュールを手に自席へ戻る。ほんとに大丈夫なのにと呟く
なのはの声にやや乱暴に席に着くヴィータの様子では、何を話してもきっと無駄なのだろう。
 仕方なくヴィータの相手をする事を諦め、午後に入ってから確認を怠っていたメールを確認する事にしたが、
どうやら今日は予想以上にメールが飛び交っていたようだ。

「うわ、ヴィータちゃんのも結構溜まっちゃってる……これであんなに怒ってたのかなぁ――ん?」

 その中で一通だけ。良く見知った人物の名前に目を奪われた。
 メールを開いて確認すれば、レイジングハートさんお届けですとの件名。クラウディアでレイジングハートを
修理中だったシャーリーからだ。
 メールが来た時間を見れば、今からおよそ数十分前。慌ててシャーリーに確認の連絡を入れればもうそちらへ
向かっている筈との事。
 続くシャーリーの言葉を確認せずにオフィスを飛び出して、やはり予想通り彼女――フェイトは資料を小脇に
抱えたままぼんやりと教導隊オフィスの前に立っていた。

「フェイトちゃんごめんね、もしかして気付くの待ってたりしたかな?」
「大丈夫。まだ時間あるから」

 言うや否や、フェイトはなのはにレイジングハートを手渡しその横を通り過ぎていく。その腕をなのはが取り、
口にしたのはティアナの事だ。
 やはり彼女の教導をした者として、彼女の夢の第一歩をどう踏み出したのかは気になるところだったから。

「別に。意外にシャーリーがちゃんと見てくれるから」
「そっかぁ、って意外なんて言ったらシャーリー可哀想だよ、フェイトちゃん」
「……ごめん。これから用事あるんだ。もう行くね」

 なのはの腕を払い、フェイトが足早に去っていく。それを見るなのはは笑顔のまま、じっとフェイトの背中を
見つめている。

『――マスター……?』

 ややあってから、小さく一言。
 二人のやりとりを見ていたレイジングハートが、なのはの顔色を伺うように彼女を呼ぶ。
 レイジングハートを首にかけながらそれに応えたなのはは、いつまでも。
 いつまでも、変わらない笑顔を張り付かせたまま――。


* * *

594Cursed Lily:2008/08/12(火) 11:40:14 ID:dE+ytt97
 教室を、虹色の魔力が埋め尽くそうとしていた。

「……」

 教室に、クラスメイト達の悲鳴の様な声が響いていた。
 視界の奥。教室の端まで吹き飛ばされた教師が、痛みを堪えるかのように呻いている。それを駆け寄るクラス
メイトの数人が、涙を溜めながら何事かを叫んでいた。

「……」

 その魔力の中心でヴィヴィオは立っていた。吹き飛ばされた教師の元へ駆け寄ろうと一歩足を踏み出し、瞬間
後ずさり逃げ出そうとするクラスメイト達の姿に、思考すらまともに働くことが出来なくなっていて。
 ただ、頭の中で繰り返す。
 一体何故こんな事になったのか。何故、こんなものがここで姿を現してしまうのか。
 ただ自分は、いきなり腕を掴まれた事に驚いただけ。
 突然泣き出してしまったクラスメイトに驚いただけ。
 ただ、高町なのはは自分の母親だと訴えていただけなのに――と何度も何度も。
 だがヴィヴィオの意思に反し溢れる魔力は、離れた位置で周囲を囲んでいるクラスメイトを威嚇するように膨
れ上がり、ヴィヴィオを護るかのように纏わり付いて消えはしない。
 どうしていいか分からず、どうする事も出来ずヴィヴィオが聞くのは、クラスメイトの啜り泣く声とヴィヴィ
オを見て怯える見知った声達だ。
 そこには、ついさっきまでの笑い声なんてどこにも無く、自身を中心にして輪を作り質問攻めにしていた時の
笑顔もどこにも無い。
 だから逃げ出してしまった。ヴィヴィオが突然動いた事に慌てて飛びのくクラスメイトを何人か突き飛ばし、
ただ一目散に教室を飛び出し、学院を飛び出した。
 息が続かなくなろうとも走り続けて、いつの間にか自身の囲んでいた魔力が消えようとも走り続けて、ようや
く立ち止まったのは周囲に人の姿が見えなくなってから。

「くぅっ……!」

 乱れた息も整えようともせず、ズキンと痛むわき腹を押さえヴィヴィオが呻く。遠くからは、騒ぎを聞きつけ
た他の教師達がヴィヴィオの名を叫びながらこちらへと走っている姿がいくつかあった。
 ヴィヴィオが思う。これから、どうなってしまうのかと。
 教師に怪我をさせてしまった。だからきっと、怒られてしまう。
 クラスメイトを怖がらせてしまった。だからきっと、もう話しかけてくれないかもしれない。
 きっと、なのはにも叱られる。叱りながら、きっと自分を責めるのだろう。何も悪く無いのに自分の所為だと
決め付けて、悲しんでしまうのだろう――それが一番、どんな事よりも嫌だった。
 そしてそれを現実にするかのように、教師達はヴィヴィオのすぐ近くまで迫っている。
 ヴィヴィオを捕まえようとする何本もの無骨な腕は、それだけで最早ヴィヴィオの恐怖の対象だ。耐え切れず
ヴィヴィオは再び走り始め、それと同時、ヴィヴィオの背中にまるで怒号のような教師達の呼び声がいくつも突
き刺さった。

 ――始まりはそんな、何でもない日常に亀裂が走った瞬間から。
595246:2008/08/12(火) 11:45:01 ID:dE+ytt97 BE:122827722-2BP(0)
以上です。ありがとうございました。
レイハさんの台詞は脳内で英語に翻訳してあげてください。246に英語力は皆無です。
ついでに、レイハさんがおっしゃっていましたが今作のテーマは、「思い出」と「忘却」。
後、ほんと突然な聖王の鎧辺りのお話しはきっかけだけでメインではありません。大事なのは、なのはさんの
ヴィヴィオ愛とフェイトさん。
次回は、なのはさんとヴィヴィオ。ユーノ君とフェイトさん。フェイトさんとなのはさん辺りのお話しです。
しっかし、タイトルに突込みが無くて涙目w ゆかりん万歳!

ついでにスレ立て
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第81話☆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1218508975/l50

596名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 11:53:08 ID:3kRudqyC
GJだが、全部、「起動」六課になってますぜw
597246:2008/08/12(火) 11:59:29 ID:dE+ytt97
……へ? うあ、何と言う基本的なミスを……申し訳ありません。起動六課など思いきっていました。
えーと、保管庫司書の方。面倒でなければ直してやってください……すいませんorz
八神と夜神は気をつけてたけど機動六課かぁ……スたらいとブレイカー以降それなりに気を使ってたのにorz
申し訳ありません。


598名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 12:35:18 ID:Dk7pLB/W
>>584白髪も動かし辛いらしい。他作品だが、
漫画だと白髪だったのが、作画の都合上アニメ版は薄い茶髪になったキャラもいる。
>>557喉の奥までくわえ込むスバルにハアハア。
599名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 12:45:00 ID:tMixH8aX
>>579
カリム「これからする私のお願いに、ハイかイエスでお答え・・・・あら?」
シャッハ「みんな、あっちで誰を演じるかで揉めていますよ」

シグナム「魔剣使いといえばリリなの世界で私しかいないだろう!」
恭也「剣士なら俺の出番でしょう、この場合」
シグナム「君はどちらかというと忍者か侍じゃないのか!?」

ティアナ「銃が武器なら私でしょう?」
ルー「性格は私の方が近い」
ディエチ「武器の形は私が似ている」
シャマル「料理の腕なら私よね」
淫獣「あ、じゃあ僕はペットのフェレット役で」

仮面の男「どりーむ」

カリム「阿鼻叫喚ですね」
チンク「ちなみに見た目的にはあなたよりも私の方が適任ですよ」
600名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 14:00:53 ID:juphlNBD
>>599
シャマル、お前は魔王側だろw
601名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 15:24:27 ID:GWf9C6W7
>>599
こら淫獣、どんぺりは漢だ。絶対に似合わない。(アンソロジーノベル参照)

はやても魔王側(中の人参照)で、フェイトはどうなるんだろう・・・・?
え?なのは?当の昔から魔王に決まってるじゃ(ry
602名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 15:54:17 ID:YOgqknNw
>>595
GJ&スレ立て乙です!
なのフェとなのユーが鉄板な自分としては、
先の展開を怖れつつ読んでるんですが
何だかんだで鬱展開好きなのでニヤニヤしてしまうw
誰も救われないエンドで、
最終的にこの微笑ましいなのヴィヴィの関係がどうなるのか気になるなあ
次回も楽しみにしてます

ところで、
>「うるせーよ、傷つくぞてめぇ。
ヴィータかわいいよヴィータ
603名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 17:18:45 ID:NDyPZmz5
>>595
GJ、このままどんどん鬱方向に向かって突き進むんですね? 今から半裸で待機しておきます!
604名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 17:47:48 ID:0+1sxHbH
はやて「せっかく機動六課させてもらえるんやったら斬新な事したい」
レジアス「と言うと?」
はやて「スカリエッティのヒット(直訳:暗殺)祈願をこめてひとつ考えが」
レジアス「うん?」
はやて「レジアス中将が滝に打たれてる写真を載せるとか」
レジアス「なんで俺が1月に滝行なんかやるんだ死ぬだろうがバカ!!」
はやて「それぐらいのハプニングがあった方が面白くなりますよ」
レジアス「いのちをだいじに!!」
はやて「ガンガンいこうぜ!!」

はやて「イエス・セット…イエスと答える質問を続けてこちらの要求を通す話術だと? アホな…」
はやて「機動六課は管理局内でそこそこ支持されていますね?」
レジアス「はい」
はやて「機動六課はもうすぐ1周年を迎えますね?」
レジアス「はい」
はやて「すると私の給料は1000円上がりますね?」
レジアス「上がりません」
終了

10月は体長不良が続きました
はやて「変な熱が引かへん…」
はやて「喉も痛くないし咳も出ないから風邪じゃないやろなぁ」
はやて「微熱でシャマルのところ行くのもとまどうし…」
はやて「水泳始めようと思って水着買ったばっかりやのに。これじゃ水着着れへん」
スカリエッティ「ブタが見苦しいボディライン晒そうとしてるんじゃねぇ」
スカリエッティ「…という神様の意思だろうね」
はやて「しゃらくせぇ意地でも着たる!」
605名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 18:11:13 ID:keJj94ny
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   ∠(7´ `ヾゝ                  ;;'''         ::::::::::::::::::::::::..........
   イ イ ivwvv'i>                .';;''               ',::::::::::::::::::::::............
    ^'(l|ュ ゚ -ノl|               ; +                   ::::::::::::::::::::::::::::
 〔 ̄ ̄Lつ ̄ ̄ ̄)二二二二二二二二回ヽ           lz゚ Д゚ノ  :::::::::::::::::::::::::
 ノ亡二二7二匸l二匸「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´  ;,,           7|..)⊃ :::::::::::::::::''''''''''
(     とノ `ヽ._)                 ;,,.           }:::::::::::::::::''''''''''
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606名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 18:13:02 ID:keJj94ny
      _ -―――、r─ =三三三`丶- .,
      |: : : : : : : : : : : ‐'"__ ̄ ̄\: : : : :\
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    |  |:./: : :.{//∂¨|ヽ   .|: :. : :. / :|: : : : : : : :  | : :}
    |. . | |: : : :.}   })7:ソ   |: : : :./: :.:|ヽ: : : : : : : : | : :|
      |.|: : :ノ  '-‐´   /: : :./| : :.:| .》: : :.:.|: : :. .| : .|
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      |: : :ヽ ,-‐-、   /: : :/: : | .: :.:|: : : : :::.|: : : :..|: :..!
      |: : :| ヽ V_ノ  ./: ::./: : : | : ..::|: : : :.:.::.|: : : : :| : :|
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もう次スレの季節なんだって、早いねアギト。
607名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 18:15:17 ID:keJj94ny
        , ' ´ ̄ `ヽ    _     _
       /       )i'´     `ヽ/∠´__
.       /  /    /::l_/  /     `ヽ、--ヽ
      / / /     〃::l l  // /   \ ヽ
.     / / /     //::/ l  l/l // ,ィ  } l l lヽl
    / /     /::/ーl l l l/トl、l|/ } l l l } l リ
.   / /     /,イ::/l {l !代iュlヾ ノlノ/l l l
   l  !   /(:/l/ lヽl |  `   fラ{,.イ ハ l
.  l l l  / / l l l lr=ミl l  ー / /'´  ヽ
  l l l / / l l l. /:::::: ヽ ト-イl l
.  l l l l /  l l ./::::::,. ─ ミ、 l l
  l l l l l   l /::::::: /      i}、l l
. l l l l l    l l::::::::: |l       il::.ヽ、
 l l l l l     l l:::::::: l    l  l }::::::::ヽ、
 l l l ll     l l:::::: レTニiミl  /ノ::::::::::::::l
. l l l ll     l l::::〈〈l_lニll} / ::::::::::::::/
  l ll l       l l:: l´ ̄`リミ_ :::::::: _/
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  l ll l       ヽl   ┌`‐- 、::::::::l
.  l l l        \ /l  r─ 、__:l
   l l|         〉-く〉  l   ヽ\ 、
.   l ト、         r'ミ::::::::\/ヽ、 _l_ 〉/
   l l|ヽ     /ヽ、__ ノ ヽ、  〃'⌒`>.、
.    l lヽ\    /::\::::::::::::/::::::::`弋i  / /}、
    l l ヽ    ハ:::::: ` ¨ ´:::::::::::::/  ヽ〈 /}r'
    l l ヽ  l   \:::::::::::::::::::/      `i´
     l l  \ l    `ー─<        l、
     l l    l         lヽl        l l、
       l   l         l  l         トi}、
       ヽ  l       l   l         l リ }
        ヽ l      l   l       l ノ l
         l, - ─ - 、l   l  _   l
         l ´  ̄ `ヽl    〉´-─-`〈

次スレはこっちだよ、なのは
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1218508975/
608名無しさん@ピンキー
\もう、このスレは終わりよ・・・/
    ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ノ´ ̄ ヘ ヾ.                 ,,-'  _,,-''"      "''- ,,_   ̄"''-,,__  ''--,,__
 リノl ノノリ) ))                  ,,-''"  ,, --''"ニ_―- _  ''-,,_    ゞ    "-
 (( (リ゚ ∀|lリ.((                て   / ,,-",-''i|   ̄|i''-、  ヾ   {
 )))ノ({i{x}i})つ))               ("  ./   i {;;;;;;;i|    .|i;;;;;;) ,ノ    ii
 (( /||■||  ヽ           ,,       (    l, `'-i|    |i;;-'     ,,-'"   _,,-"
 (⌒ |  | ⌒)           "'-,,     `-,,,,-'--''::: ̄:::::::''ニ;;-==,_____ '"  _,,--''"
   ~~~~~~                ._,,-'ニ-''ニ--''" ̄.i| ̄   |i-----,, ̄`"''-;;::''-`-,,
                     ,,-''::::二-''"     .--i|     .|i          "- ;;:::`、
                   ._,-"::::/    ̄"''---  i|     |i            ヽ::::i
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                                .i|          .|i
                               .i|         ..|i
                               .i|           |i
                              .i|      ,,-、 、  |i
                               i|      ノ::::i:::トiヽ、_.|i
                          _,,  i|/"ヽ/:iヽ!::::::::ノ:::::Λ::::ヽ|i__n、ト、
                    ,,/^ヽ,-''":::i/::::::::/:::::|i/;;;;;;/::::;;;;ノ⌒ヽノ::::::::::::ヽ,_Λ
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