気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第9章

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1名無しさん@ピンキー
勝気だったり、高飛車だったり、男勝りだったり、
そんな幼馴染みが、委員長が、お嬢様が、お姫様が、女上司が、
ふとした瞬間に垣間見せる弱々しさ、しおらしさ、素直さ、
そんなギャップに萌えるスレです。

あるいは、レイプされ、屈服させられて従順になってしまう鬼畜展開もOKです。

SSの投下は、オリジナル・二次創作を問わずに大歓迎。

(過去スレ)
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に…
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1065173323/
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第2章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1090474137/
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第3章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1119542810/
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第4章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133794297/
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第5章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147086214/
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第6章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155817189/
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第7章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1173661311/
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第8章
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1188575544/
(これまでに投下されたSSの保管場所)
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.arings2.com/
2名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 19:18:16 ID:UUG/ItWd
女騎士や軍人が味方の裏切りに心折れるシチュエーションはこのスレの趣旨にあいますか?
3名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 19:23:54 ID:U2/nkMi4
>>1スレ立て乙
>>2その女性の気が強いのならあり
「気の強い娘がしおらしくなる瞬間」に萌えるスレだからねぇ
4名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 19:51:45 ID:wVILEcRZ
>>2
こちらでエンジョイ&エキサイティングしてください
【!!】戦火のなか犯される娘達35【……】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1205770396/
5名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 20:11:47 ID:ifO6jHSH
>>2
心が折れるのとしおらしくなるのとは違うような気がする。
6名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 21:46:32 ID:vXDjV8Y5
しおらし・い
(1)控えめでいじらしい。遠慮深くて奥ゆかしい。
(2)かわいらしい。かれんである。
(3)けなげである。殊勝である。
(4)上品で優雅である。

こんな感じになってくれるのであればなんでも。
7名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 21:56:28 ID:bpv8rN+j
>>1乙だわ!たまにはやればできるじゃない!
も、もっと褒めてあげるから、家にいらっしゃいよ……
82:2008/03/24(月) 22:03:39 ID:Zl3cji/K
無理に気を張って男勝りを演じていた女騎士や軍人が味方の裏切りに心折れたところに
たった一人味方になってくれた男に泣いて心許すとかそういう最後にデレる感じか。

>>4
さんくす。
そっちいってくる。
9名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 08:00:53 ID:9p0ZGeny
>>5.>>6
なるほど……強気っ娘としおらしさは奥が深いな…
研究の必要性をヒシヒシと感じたぜ
10名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 21:15:17 ID:TSkfURDK
実は>>9が強気な女の子で、片想いの少年を射止める為、このスレを研究している……

そう妄想した俺はもはや手遅れの様だ……
11名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 21:30:56 ID:9p0ZGeny
>>10
そして相手の少年も少女を射止めるため、日夜強気っ娘をこのスレで(ry

両思いなのにお互い気づかないのって萌えるっていうかもどかしいよね
12名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 21:43:09 ID:v9wudEf1
そういって、>>11は遠まわしに>>10への思いを告げた。
13名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 07:35:39 ID:4uevTg+d
その場面を興味のない表情で見る一人の少女。
しかし、少女―>>12は内心では激しく動揺していた。
>>10の馬鹿…なんで>>11の告白なんか受けてるのよ……!!』
14名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 09:11:13 ID:d9Ruf5mh
>>12は落ち込んでいた。
しかし、少女に思いを寄せる>>13は好機とばかりに>>12へアピールを仕掛ける
次第に少女の心は>>13へと傾いていき………
15名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 16:09:13 ID:hxHMffDW
お前ら自重www




べ、別にネタが思い付かなかったわけじゃないんだからね!
16名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 16:53:21 ID:X2X7kXIS
いつもはストッパーとなる>>15だったが、笑みの裏には悲しみがある。
もしも、己が>>14にその思いを告げたなら、グループは瓦解するだろう、と。確信と言うべき直感を感じるためだ。
故に、彼女は今日も調停に回る……。

さあネタにしたぞネタにするぞハハハ。
17名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 19:50:14 ID:d9Ruf5mh
>>9から>>16をそれぞれキャラクター化したらそれだけでひとネタかけそうだ
その場合七人の思惑が絡み合う超難解な恋愛になるな



……だれかが死亡エンドむかえるかもよ
18名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 21:14:13 ID:X2X7kXIS
>>17
こんなか

>>9
一人称はオレ、〜だぜが口癖の強気少女。
>>10
妙なところで勘がいい妄想野郎。
>>11
10の友人。まわりくどい。
オーケーはもらったようだ。
>>12
ちょっと嫉妬深いツンデレ猫かぶりお嬢さま。
しおらしくなるのが遅かった…が、13のアタックに……。
>>13
軽そうでいて、好いた相手が落ち込んでる時にでもないとアピールできない臆病な男。
12ラブ。
>>14
影が薄い。
>>15
朗らかにツンデレ。
調停役なので自分は当事者になってはいけないと思っている。
>>16
たきつけたりけしかけたり。
トラブルメーカー。
19名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 21:45:55 ID:d9Ruf5mh
>>9「………よしこれならいける!明日こそあいつのハートをゲットだぜ!!スレさまさまだな」
>>10「もしかしてあいつも俺のことを……?いや、でも俺妄想癖あるし……。思いこみかな?」
>>11「ホンっトにあいつ鈍感ね!あたしのどころか自分の気持ちにすら気づいてなかったなんて!……まあ、これからじっくりと自覚させてあげるわ……ふふ……」
>>12「どうしよう……あたしはあいつが好きなのに……もしかしてあの人のことも………」
>>13「今しかない…!今落とせなければ次はない……!」
>>14「みんな恋愛熱心だねぇ〜。ま、俺には関係ないけどね」
>>15「わたしが動いたらこの空気が乱れちゃう……我慢しなきゃ……でも…やっぱり…」
>>16「にゃはは〜〜。今日は誰と誰をくっつけよっかな〜〜」


これでどう?
20名無しさん@ピンキー:2008/03/27(木) 00:26:22 ID:kbH38FEn
盛り上がってるとこ悪いんだけど、前スレ埋めたほうがよくね?
21名無しさん@ピンキー:2008/03/28(金) 01:12:31 ID:RD6qoFpr
なんだこの流れw
22名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 00:18:44 ID:YxmTc7Rb
>>20
一気にストップかけたな
23名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 11:30:39 ID:Rq/5Ueqf
「おっす、今日も良い天気だな!!」
朝の教室に元気な声が響く。声を掛けた生徒へクラスメートからも挨拶が帰ってくる。
「おはよっ」
「おーす」
「おはよう、九条」

クラスメートへ笑顔を見せる生徒―九条 智香(くじょうともか)は、クラスの人気者だ。
快活でスポーツ万能、旧家のお嬢様らしからぬ口調で話し掛ける気さくさから、
男女問わず友達も多い。
「さあ、今日も張り切って行こうぜ!!」

彼女、智香が現れるだけで自然と人の輪が出来る。友人達に囲まれて楽しそうな
智香を教室の端から見つめる一人の少年。

「九条さん…」
小さく呟いたその声は誰にも聞かれる事はなく、宙をさまよう。
だが声は優しく、見つめる視線は暖かな色を浮かべていた。

少年、十和田 要(とわだかなめ)は智香に恋をしていた。
24名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 11:33:33 ID:Rq/5Ueqf
取りあえず流れを駄文ながらSS化してみた。
>>9>>10の所でパワーを使いきった様だ。
後を頼む……
25名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 18:57:47 ID:X0/89qRO
>>24
引き受けた。
名前は、一意一→11ってことで。
携帯だから見にくいかも。
/
>>24
引き受けた。
名前は、一意一→11ってことで。
携帯だから見にくいかも。
/
 民家の二階、明かりない部屋の中――ベッドの上で、一意はじめ<ひとつい>は悩んでいる。
「……うぁー……」
 闊達――普段であればそう印象づけるだろう顔立ちは、寄った眉根と僅かにもれるうめきで台なしだ。
 原因は、一人の少年。――十和田要。彼からの相談だ。
『九条さんは何が好きかな』
 実際にはひどく回りくどい台詞だったのだが、要約してしまえばその一言だった。
「……むぅうー……」
 九条智香。クラスメートで、十和田要の想い人。
 九条智香の好きなものは知っている。十和田要の真意も分かる。
 しかしその場で教えなかったのは――
「アイツらなら、うまくやるんだろうなあ……」 あの纏め役とか、あのけしかけ屋とか。あの軽いヤツでも、うまく立ち回るだろう。
 ……一意はじめは悩んでいる。
「なんでオーケー出したかな、あたしはもうぅ……!」
 誰も見ていないので、じたばたする。
 枕を叩いて額を埋めて、布団を蹴り飛ばしてベッドの下に。
「ってかなんでアイツよりによってあたしに言うの……!? もしかして知らないとか言わないよねもうぅうう……っ!」
26名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 18:58:52 ID:X0/89qRO
 ……その答はイエスなのだがさておく。
 彼女なりに、努力はしている。
 宿題を見せたり、たまに昼食を奢ったり、相合い傘のチャンスは逃さなかったり、九条と会わないようタイムスケジュールを調整したり。
 涙ぐましい、としか言えない(一意的には)地道な努力を続けてきたのだ。
 だからこそ、今回はどうすればいいのかと迷う。
 嘘をついてもバレないかも、なんて甘い誘惑が聞こえてくる。
 リスクは大きい。それが彼女の善性を繋ぎとめている。
 ……盛大にため息を吐きながら、彼の事を思う。
「……一途なんだよなあ、本当にもう……」 ふと。だから好きだ、と呟いた――瞬間。彼女は顔を真っ赤にする。
「ひやあああ無理無理何考えてんのあたしぃいいっ」
 連想は瞬時だった。十和田要も想像力豊かなことでしられるが、彼女も彼についてなら勝るとも劣らない。
 ――もしも彼の前で言ったらどうなるか。
 ……確かに、これ以上ないくらいの甘い誘惑ではあるが。同時に、最高に難易度キツめの誘惑なのであった。
 じたばた暴れつつ、彼女はいつもの結論を下す。
「直接なんて無理、絶対無理、間違いない無理ぃいい……っ!」
 ……唯一、彼女にできることは。朴念仁に、期待をかけることのみなのであった。
/
おそまつ。
さあ逃げよう。
27名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 19:21:17 ID:X0/89qRO
>>25
うわあああコピペミスってるううう
28名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 22:44:38 ID:Rq/5Ueqf
>>24
乙であります


とりあえずまとめ

九条(♀・>>9)←十和田(♂・>>10)

十和田←一意(♀・>>11)と>>12(♀)

>>12>>13(♂)

>>14(♂)←>>15(♀)

>>16(♀)がキューピッド役と。


いまいち分かりにくい?
29名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 22:46:15 ID:Rq/5Ueqf
アンカミス…

>>24じゃなく>>25ね。
30名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 00:51:30 ID:V4J1oYlR
「やあ、おはよう」
彼―…如月樹良(きさらぎ じゅよ)が優しく微笑む
自覚したのは何時だっただろうか
私―…天宮苺(あまみや いちご) は彼を、どうしようもないくらいに愛してしまっていた
彼は決してグループ内で目立つ方では無かったのだけど
気がつくといつも目線は彼を追ってしまっていた
「天宮さん―…どうかした?」
私が物思いに耽っていたからだろう、彼が心配そうにこちらを見ている
「え?何でもないよ、今日も頑張ろうね」
「うん、頑張ろう」
その彼の微笑みに日の光が重なって…綺麗な天使様が舞い降りたみたいだった
「如月君、私―…」
「……早く教室に行かなきゃ、九条さん達が待ってるよ」
そうだ、私のこの思いは伝えてはいけないのだった…
私のともだち達は一癖も二癖もある人達で
ましてや、今その中で恋愛感情の縺れが大きくなってる
そんな中、纏め役の私が彼に思いを伝えてしまったら―…
今までも沢山揉めて、その度に私が止めてきたけど
私自身がもし揉める原因になってしまったら………
きっと、ともだち達はバラバラになってしまう
もし……そうなってしまったら私はきっと耐えられない
「………天宮さん?ホントに顔色悪いよ、大丈夫?」
「うん、ちょっと…疲れて?
31名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 00:54:46 ID:V4J1oYlR
コピーミスった(汗)
続き↓


「………天宮さん?ホントに顔色悪いよ、大丈夫?」
「うん、ちょっと…疲れてるのかな?体がダルくて……」
「え!?大丈夫?」
彼は優しい
その優しさが辛いの
「大丈夫、教室でちょっと休むから―…」
何時まで自分に嘘をつき続ければいいんだろう…
もう疲れたよ…




苺→いちご→15
樹良→じゅよ→じゅうよん→14

無理矢理すぎるだろ、常考
32名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 01:40:19 ID:ZUJohJKN
>>31
乙なのぜ。

適当に考えてみた。
>>16→名字に十六夜(いざよい)
>>14→名字に十姉妹(じゅうしまつ)
>>13→名前に瞳とか一美とか
>>12→豆腐w
33名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 01:59:31 ID:eqdfR2hl
>>31
乙なのです。

>>32

豆腐はねーよw
それに>>13は男だから…
『人見』(姓)や『仁己』(名)がいいんじゃ?

>>12は……
安藤(アンドゥ←1・2)、東江流 扶美(トゥエルブ)とか…

豆腐にゃ勝てねぇw
34名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 02:49:51 ID:+irKmQBC
DQNネームは可能な限り避けて考えてみた。

>>12(♀)は純(ジュン→ジュニ→ジュウニ)で。
>>13(♂)はストレートに十三(じゅうぞう)。名字は所。
>>14(♂)は等(ひとし)とか。仁でも良いけど混乱しそう。
>>15(♀)は苺で問題無いな。
>>16(♀)も十六夜で良いな。幻想大陸思い出すからちょっとツライが。
35名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 02:55:54 ID:LTETQcle
>>12 … ドイツ系の (ドイツ系の女性名)・ツヴェルフ(12の意) とかどうでしょ?
例えば、 ヘルガ・ツヴェルフ とか。ツンデレお嬢様っぽくない?
当然、生まれたときから日本住まいなので日本語ペラペラでw

だが正直、豆腐にゃ(ry
36名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 10:48:03 ID:eqdfR2hl
>>35
その案頂いていく!!
>>10>>12


「この文章を……9日だから、九条。訳してくれ」
「分かりません!!」
九条智香―ワタシはトモカと呼ぶ―が元気よく答える。
「…ったく…分からない事を自慢げに言うなよ」
もっとも注意した先生も苦笑いだ。トモカのキャラは先生の間にも浸透している。
…ワタシにとって羨ましい限りだ。
「じゃ、十和田。九条を助けてやれ」
「は、はい!!…彼女は言った。『私だって素直になりたい。もっと彼と話したい』」

十和田要―カナメがやや低めの声で丁寧に訳していく。カナメの声…好きだな…

!!カナメが座り際に此方を向いた。ワタシは慌てて首を窓の方へ振る。
余りに強く降ったせいか金髪が頬を撫でる。…ワタシの金髪は地毛であり、染めている訳じゃない。

「おい、ヘルガ。ヘルガ・ツヴェルフ。どうした?」
「ナンでもないです!!」
…先生。ワタシの名前をフルネームで呼ばないでよ…

授業が終わり、ワタシは友人のトモカやイチゴ―天宮苺―とお喋りをする。
「でもさ、ヘルガの髪って本当に綺麗だね」
「羨ましいよなー。俺なんてばぁちゃんから……
『髪染めたら追い出す』なんて言われた。ヘルガみたいな髪憧れるぜ」
ワタシにとっては、トモカの様な艶やかな黒髪の方が良かったかな?
……世の中無いものねだりね。


!!またカナメと視線が合った!!つい視線を横に向けてしまう。
「どうしたの、ヘルガ?」
「ナンでもない…」
駄目だ。カナメを見るとドキドキして仕様がない…


『カナメはトモカの事好きなんだよね』
分かってはいるけど、このワタシの気持はどうしたら良いのだろう…
イチゴに言わせると
「恋は実らない内が花」らしい。…でも、ワタシ限界だよ…


ワタシはこの時気付かなかった。ワタシの他にカナメを見るもう一人の少女に。
そして、ワタシを見ていた少年に。


【続くのか?】
37名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 17:28:49 ID:N5HkyC6u
埋め用のSS書き込もうと思ったら既に512kb超えてるでやんのww


orz
38名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 17:45:15 ID:+irKmQBC
>>36
gj
どうでも良いが民族性ジョークにおいてドイツ人は権威主義者で技術力が抜きん出ている民族ってことになってる

>>37
ならば今すぐ投下だ
3912:2008/03/30(日) 20:29:40 ID:ZUJohJKN
いつの間にかドイツ人になってるww
40名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 01:50:49 ID:rnx9Yh99
>>36
採用ありがとう

>>39
ヘルガちゃん登場w Guten Abend!!
って>>12>>32の「豆腐」案出した人かよwww
4112:2008/03/31(月) 06:32:19 ID:x95fcm3y
>>40
Ja, natuerlich!
他人の名前で遊ぶなんて失礼だからね。
4216・25:2008/03/31(月) 08:12:57 ID:zRmWmBh8
>>41
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
43名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 16:20:45 ID:Nq3bSJ01
あちこちから名前借ります


やあやあみなさんこんにちわ。わたしの名前は十六夜 凛華(りんか)
またの名を愛のキューピッドと申しまするっ!
恋に悩めるクラスメイトの背中を押してあげるのが生き甲斐だっ。相手が拒否った場合は強引に引っ張って行っちゃうけど問題ナッシングーなの!
だってだってー、恋で悩んでる人ってー面白いんだもん!
そんなわけで今日も元気にキューピッドっ!やっちゃうよ〜〜


本日の調査対象はクラスメイトの如月樹良君だっ。彼、見た目は普通の男の子。影がやや薄いんだけど悪い人じゃない。
うーん。やっぱり情報が少ないなー。よし、早速…
「ねえねえ樹良くん」
情報収集開始だっ。ちなみにわたしは誰であろうと人を名前で呼ぶ。先生たちもねっ。
「ん?どうかしたの、十六夜さん?」
ノートをしまいこちらに顔を向けてくる。うん、やっぱり普通だっ。
「今好きな人っている?」
「……十六夜さんって、ホントにその手の話題好きだよね」
むむぅ、みんなと同じこと言うなぁ。まあ否定しないけどね
「そうだよ。で、どうなの?いるの?いないの?」
「いないよ。今後できたりするかもしれないけど今はいない」
「ふーん……」
44名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 12:44:34 ID:5ANHlX09
この顔から判断するにホントにいないらしい。でもでも、もったいないなぁ。限りある青春なのに恋をしないなんて!
わたしは別だけどね。
ところで、さっきからこっちを物凄く見ている人がいるんだけど、樹良くん気づいてるのかなぁ。
「じゃあじゃあ、告白されたらどうする?」
ガタン!という音が後ろからしたようだっ。
「うーん……相手にもよるけどたぶん断らないと思うよ。僕って基本的に受け身だから」
お、これはいい情報だね。でもさ、それでいいのか男の子。攻めないのかね君は。
「ふんふん、なるほどー。いいこと聞けたよ!あんがとね!!」
「はは、どういたしまして」
邪気のない綺麗な笑顔。これがあの子に向けられたら気絶しちゃうかもね。って今もしてるか。
ほら、起きて苺。お姉さんが耳寄りな情報持ってきてやったからさ。



わたしは恋のキューピッド!恋に悩めるクラスメイトの背中を押すのが生き甲斐だっ。
今日も明日もがんばるぞ!オー!




さっきの情報話したらまた気絶しちった。純情だねぇ苺は。
45名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 11:29:59 ID:LNS+2u82
サンデーで喜多さんっぽい女の子の漫画が連載開始になったな!
46名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 15:08:42 ID:e5Th5ZYV
>>45
だいぶ前にこのスレでも話題になった読み切りだな。
読み切りのネタとしてならともかく、連載に耐えられるかなあ。
47名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 03:42:10 ID:VMJKh918
>>9−44
何だこの流れ、面白すぎw
48名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 07:39:26 ID:5XQ7+FLz
なんかすさまじいことになってるよな
49名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 09:50:25 ID:fbNGCRCZ
リレーは好きじゃないがこういうネタの連続は大好きだ。
で、投下しそこねたって埋めネタ投下マダー?
50名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 18:31:24 ID:5XQ7+FLz
俺も小ネタあるんで勝手に落としとくわ




「ねえ」
「ん?なんだ?」
「あんたって今好きな子いる?」
「いるけど、それがなにか?」
「……そうなんだ…。誰が好きなの…?」
「お前」
「そう………ってわたし?どういうことそれ!?」
「……文字通りだよ」
「………!まさか、これって告白な




しばしお待ちを





「もっとちゃんとムード作ってから言いなさいよね、バカ………ありがと…」




おそまつ
51名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 20:43:26 ID:bwuh+T8h
>>9->>44の流れネタってまだ投下しても良い?
52名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 21:12:37 ID:NjNw8vPi
むしろ全裸で待ってる
53名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 22:16:04 ID:bwuh+T8h
>>12>>13
男視線なんでスマソ…


彼女の様子を見る度に、俺は思い知らされる。
俺の恋が前途多難な茨の道であることが。

ヘルガ・ツヴェルフ。俺の片想いの相手には既に好きな男がいた…
「おい、トミ!!何を見てんだよ!?…ははーん…」
悪友を拳ひとつで黙らせて俺、十三岡 藍(とみおかあい)は再び物思いに耽る。

俺の名前「藍」から、初対面の人間は大抵怪訝な顔をする。
恐らくは女性っぽい名前だからだろう。九条なんかは笑いやがったし。
(もっともその後「いい名前だな!!」と笑いながら誉めてくれたが)

だがヘルガは違った。
『アイ?素敵な名前ね。…名前で呼んでいい?』

あの瞬間俺は彼女へ心を奪われてしまった。
彼女の輝く様な金髪、青空を連想させる瞳、綺麗な声が俺の頭を離れた日は
一日とてない。


そんなある日。
俺は気付いた。俺がヘルガを見るのと同じ位の頻度で、彼女もまた見ていた。
俺の親友、十和田要を。

これが他の奴なら、俺は気にしなかっただろう。全力で彼女にアタックしたに違いない。
(結果の成否はともかく)
だが、要が相手と分かり正直落胆した。
「要の方がヘルガにふさわしい」と。


そんな訳で今の俺には黙って見るしかできない。
だが彼女、ヘルガが悲しむ様なことがあれば……
俺は……………
54名無しさん@ピンキー:2008/04/05(土) 02:34:39 ID:H1g8Boo6
なんという連携w すげー

そしてヘルガが採用されてて嬉しいw
55名無しさん@ピンキー:2008/04/06(日) 21:20:21 ID:VYLDGyO+
レスから人物相関ができてキャラクターが生まれリレー小説になるなんて珍しい光景が見られるとは
俺、この板の人間でよかったぜ
56名無しさん@ピンキー:2008/04/07(月) 11:59:51 ID:G/KTaOb2
みんな素晴らしい妄s…もとい、創造力の持ち主ですね
57名無しさん@ピンキー:2008/04/12(土) 00:06:32 ID:tzNW/jM6
ふと気付くと日が開いてた。
ぬああ。
58名無しさん@ピンキー:2008/04/12(土) 17:27:11 ID:WLHPGYl1
作品の投下がないからねぇ
59名無しさん@ピンキー:2008/04/13(日) 23:16:54 ID:FLpbiG6W
なんとなく思い付いた。

ヒロインは帰国子女。
海外で育ったため、外国語はペラペラだが日本語には少し不自由。
クラスメートの主人公は見かねて、ヒロインの世話を焼くが、逆にヒロインは鬱陶しがる。

ある日主人公は後輩の女の子と知り合う。
明るく素直な後輩と主人公はすぐに仲良くなっていく。


同時にヒロインは、主人公が自分にとって大切な存在になっていた事に気付くが……



あったよな、こんなSS…
60名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 11:16:26 ID:ufw6geZT
激しいジェラシーストームが吹き荒れた結果、ヒロインは素直モードで特攻するんですね
わかります
61名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 22:34:29 ID:H0GHukay
強気な娘の切札的なセリフとはなんだろう?

⊃「あんたは私がいないとダメなのよっ!!」
62名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 22:47:32 ID:KhPmV3R1
「あんたをきっと、わたしのトリコにしてあげるんだから!!
  ジッチャンの名にかけて!!」
63名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 23:00:12 ID:VRZssxL/
「オーノー!!
 なぜ エレクチオンしないのッ」
64名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 23:52:31 ID:KhPmV3R1
「俺は、愛のないセックスではイジャキレーションしないッ!!」
65名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 23:59:01 ID:ypJp0L1g
激しく亀だが
静馬とますみマジ死ね。
勇一さんは俺がもらってく。
勇一は彩とくっつけば良かったんだ。

作者GJ
今まで買った小説より何倍も面白かった!
66名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 00:14:35 ID:bWuc+r6X
それって前スレの話?
67名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 00:51:19 ID:+ke3pgzE
>>61
「私なしで生きられるの?私はアンタなしじゃ生きられないのに」
水上悟志「げこげこ」より
個人的にこの人の作品の中で一番好きな台詞。

>>65
18才未満は立ち入り禁止なんだぜ?
68名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 12:28:46 ID:+nmh2hOF
無敵の敗残兵共!
最古参の新兵共!
喜多さんの更新がキタぞ!
69名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 22:45:31 ID:MPHJK+Fh
嘘つけ!もう騙されないぞ……ってホントにキター!
70名無しさん@ピンキー:2008/04/20(日) 03:03:11 ID:UdG0+c2C
まじかー
飛んで来るー
71名無しさん@ピンキー:2008/04/21(月) 10:21:29 ID:9QCJsm/6
喜多さんがキタのはとても嬉しい!!
しかし、ツクバさんの更新が止まってるのはとても悲しい…
72名無しさん@ピンキー:2008/04/23(水) 03:57:54 ID:R3o88Adn
復活age
73名無しさん@ピンキー:2008/04/25(金) 22:47:22 ID:2Ib+9meG
ツクバさんのサイトが消えた…
74名無しさん@ピンキー:2008/04/26(土) 02:45:08 ID:ud49ndbq
久しぶりすぎて喜多さんのいるサイト名忘れてしばらく難儀した
頑張って思い出した甲斐があった
75名無しさん@ピンキー:2008/04/26(土) 17:16:09 ID:v685a1Dv
ツクバさんのサイトが消えたのはまさか>65のせいなのだろうか……
76名無しさん@ピンキー:2008/04/26(土) 18:50:02 ID:6R4U3BXO
>>75
 『FREE100.TVのサービスは終了いたしました』からジャマイカ
77名無しさん@ピンキー:2008/04/26(土) 22:05:47 ID:45i5Y1Ru
喜多さんのサイトがどこだかわからない…
78名無しさん@ピンキー:2008/04/26(土) 22:44:50 ID:J3EsBX//
>>77
足軽堂でググればおk
79ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/04/26(土) 23:51:05 ID:TxAlt/53
宣伝で申し訳ありませんが、個人サイトを引っ越しましたのでご報告します。

http://red.ribbon.to/~tukuba/
80名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 00:47:40 ID:YVRyhx09
>79
良かった消えてなくてー

不器用彼女が大好きです。続きをクビを長くして待ってますよ!
81名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 18:10:33 ID:nnFaqQSC
気が付いたら最初の盛り上がりは完全に忘れられてるなw
82名無しさん@ピンキー:2008/04/30(水) 03:43:04 ID:Ro2nAgcS
保守
83名無しさん@ピンキー:2008/05/01(木) 23:48:41 ID:47UtleBR
五月初保守
84名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 04:04:27 ID:igIYx4AL
ツクバさん更新キター
85名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 07:15:15 ID:8UOz8jo9
おお!!さっそく見てくる
86名無しさん@ピンキー:2008/05/06(火) 00:47:55 ID:+/NAX4F1
あー、みんなでツクバさんの家に行っちゃったのかよ…
俺も行こっ!!


グイッ

…なんだお前かよ。
袖を引っ張るなよ、伸びるだろーが…
ちょっと出かけてくるからさ、あと頼む。

グイグイッ

だから離せよ。
大体、いつも口煩いお前がなんで黙ってるんだよ?

…行くな?いや、ちょっと行かなきゃならない……

チュッ

わっ!!ば、馬鹿野郎!!
いきなり何を……!!
ってその据わった目とわきわき動く手が果てしなく気になる!!


アッー
(以下略)


という意味のない保守。
87ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/07(水) 23:50:22 ID:Q992kRt6
「き、緊張した〜」
「まったく、これくらいのことでそんなへばんなよな」
元々ヤクザの娘であるあたいと付き合うという時点で、ある程度のことは覚悟しとくだろ普通。
ん?なんのことか分からないって?なら今からあたいが説明しておこうか。

ここはあたいの家のあたいの部屋。とある用事で呼んだのだが、用事を済ませたこいつはこの有り様だ。
その用事とは、親父への顔見せ、である。
緑の将来の婿を一度きちんと見ておきたいから家に呼んでおいてくれ、というのは親父の話だ。
将来の婿?ハア?何言ってんだ?あいつがあたいの婿になるんじゃなくて、あたいがあいつの嫁になん………なっ、なに聞いてんだ!?
ま、まあそんなわけで顔見せが今日実現したわけだ。分かったか!?
ちなみにあたいの親父はサングラスが標準装備。理由は「父親の威厳を保つため」だそうで。
あたいも素顔は一度しか見てない。その一回も寝込みを襲撃してやっと見られたのだ。
素顔が案外可愛かったことと素顔を見られた親父が三日間不貞寝したことは、ここだけの話ってことで。

「疲れた………、緑さんのお父さんって、なんか、すごいね……。威厳があるっていうか、なんていうか」
88ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/07(水) 23:51:18 ID:Q992kRt6
その威厳の八割はグラサンでできています。合掌。
「まあ、仮にも組を指揮してるからな。ちったぁ威厳ねぇと面目たたねぇだろ」
「…ホントすごいや。僕の父親とは大違いだ」
「…おい、聞いてんのか?」
無視されんのは案外腹が立つものだ。特にこいつに無視されんのは我慢ならねぇ。
「でも怖いだけじゃなかったなぁ。山みたく揺るぎ無いものも感じたりしたし…」
「おいこら!あたいを無視するなんて良い度胸してんじゃねえか!!」
おもいっきり耳元で叫んでやった。
「うわっ!?え、え?緑さんなにか喋ってた?」
……まじで聞こえてなかったらしい。緊張で鼓膜でも破れたのか?それとも……
「ちょっと見せてみろ」
ぐいっと耳を引っ張り中をのぞき込む。抗議の声は無視。あたいを無視した罰だ。
「あ〜あ、やっぱりか」
案の定、中はかなり汚れていた。きちんと手入れしとけよな。だらしねぇ。
「仕方ねえな。耳掃除してやるから、少し待ってろ。道具取ってくる」
「え、してくれるの?」
「今のままじゃまともに会話できねぇだろうが。それとさっさと着替えとけよ。いつまで袴でいる気だ」
そう捨て台詞を残し、部屋をあとにする。
えっと、耳かきと綿棒はっと……
89ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/07(水) 23:52:28 ID:Q992kRt6
再びあたいの部屋。部屋にいるのは寝巻き姿のこいつとあたい、それに耳かきと綿棒と水の入ったカップ。
「始めんぞ。こっちこい」
「じゃあ遠慮なく」
言うと同時にあたいの膝に頭を下ろす。
む…、
早めに終わらせた方がいいかもな。長時間の正座はキツイ。
とにもかくにも耳掃除。スタートである。


まずは耳かきから。特に大きなゴミを掻きだし、奥まで見やすいするようにする。
サッサッサッ
あー、まじで汚れてんなこれ。
「………」
黙って掃除されてるこいつは、なんだか眠そうだ。そんなに気持ち良いのか?
「うん…なんだか…眠くなってきた……」
…ま、まあ、今日は疲れただろうし、別に寝てもいいぞ。
その…あれだ…。別に寝顔があれだからずっと見ていたいわけじゃないぞ!?
「それじゃあ……おやすみー……」
……ホントに寝ちまったよ。始めてから一分たってねーぞ。
っと、余計なことしてる場合じゃねーな。早いとこ終わらないと、足がやばいことになりそうだ。


奥の方はあまり汚れてなかった。結構早いが仕上げに入る。
綿棒の先を水に浸し、ティッシュで軽く拭き取る。濡れすぎてると耳の中がえらいことになるからな。




すまん、続きは後日
90名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 00:41:26 ID:Jwjj3xBG
ヤクザ娘キターーーーーー!!!
お待ちしておりましたwww
91名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 09:13:20 ID:Xb1Uv09e
待ってました!!
超wktk!!
92名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 16:52:30 ID:qXjakm3j
ヤクザ娘キター! 

しかしヤクザ娘には何人の作者さんがいるんだろうか?
93名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 17:53:35 ID:f1yjlRa1
基本的には一人だろう。
94名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 19:16:13 ID:c7ROvtqR
ヤクザ娘シリーズ好きっすw
GJ!!
だが縁(ゆかり)さんではなかったっけ?
95ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/08(木) 19:25:12 ID:art2J6S8
細かいゴミを取るため濡れ綿棒を耳に突っ込む。と、
「わきゃあっ!?」
うおっ、びっくりした!
「な、何だ急に」
「…い、いや、濡れた物がいきなり耳に入ってきたから。びっくりしちゃって」
むう、文字どおり寝耳に水というやつか。それにしても「わきゃあっ!?」って…。昔の漫画かっ。
「いいから横になれ。続きやんぞ」
「う、うん……」
やや警戒しているようだ。これしきのことで、情けない。




その後乾いた方で水気を取り、反対の耳も同じように掃除した。濡れ綿棒を突っ込んだとき、今度は「ひでばぁっ!?」と叫んだのは本人も自覚がない模様。こっちが驚いちまったぜ。



「ほい、おつかれさん」
これでばっちり聞こえるようになったはずだぞ。
「……うん、さっぱりした。ありがとね、緑さん」
…べっ、別に礼を言われるためにやったわけじゃないっつーの。
「……そうだ。お礼に僕も耳掃除してあげようか?」
へっ?お前がか?
んー……ま、まあ、どうしてもって言うんなら、されてやるぞ。
……こいつのあのときの顔……。きっとすげぇ気持ちいいんだろうなぁ……
……なに聞いてんだ!!
96ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/08(木) 19:28:17 ID:art2J6S8
「それじゃ、行きまーす」
そんな気の抜けた声で始まった耳掃除。あたいの時と同じように、まずは耳かきから。
サッサッサッ、と耳を探られる。
……なんか、くすぐったいような…こそばゆいけど気持ちいいような……



あー、なんか眠くなってきたぞ……
「眠い?」
んー、眠いし気持ちいいぞー。憎たらしいくらいうまいなーこんちくしょー。
「寝ててもいいよ。というか、たぶん起きてられないと思うけど」
むー、そんならー…いじでもおき……て……て…




辺りは一面、白。あたいはその中の一つ。まるで雲にでも包まれているようだ。
やわらかくて、あったかくて。ふわっふわのもっふもふで。あー、いい夢見てんなー、あたい。
……なんか、夢だとわかってんのに眠くなってきたぞ。
ま、細かいことはどうでもいっかー。もう一眠り…


「わきゃあっ!?」
耳の中に異物が侵入したことを察知した脳は、あたいを夢から強引に覚ました。
「な、ななな、なにを!?」
何だ今の!?眠気が一瞬で消えたぞ!
「あ、やっぱり起きちゃった?」
声の出所を探そうとして、ほどなくそれが真上であることが判明した。
そして、さっきの異物は濡れ綿棒だったようだ。
97ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/08(木) 19:29:33 ID:art2J6S8
「さっきのお返しだよ」
と、こいつはぬけぬけと言いやがった。くそっ、どうして寝ちまった!さっきのあたい!
…まあ、同じ失敗はするまい。反対の耳の時は絶対起きててやろう。
「じゃあ続けるよ」
と言って再び同じ耳に綿棒が差し込まれる。


ん?……な…なんだ、これ?
冷えた感触。耳の中を撫で回される、奇妙な感じ。
背筋が…ぞくぞくする……!
「や……ぁ…」
やばい…!声が……!
「どうかした?」
「いや、なんでもない!続けてくれ!」
「?」
不審がりながらも、それ以上の追求はしなかった。それはいいのだが……。
(こ……これ…)
気持ちいい、なんてなまやさしいもんじゃない。快感に近い。
それも普段感じているものとはまるでちがう。うまく言えないが、とにかくちがう……!
(…は……んぁ…!)
早く、終わって……くれ…!




「はい、終わったよ。反対向いて」
や……やっとか……。これはやばかった…。あとちょっとで……とにかくやばかった。
ん?反対?なんで……




この時、あたいは初めて耳が二つあることに怒りを感じた。
98ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/08(木) 19:34:11 ID:art2J6S8
すんません。また切ります
ついでに言うと自分は正式な作者ではありません。ただのヤクザ娘スキーです
あと名前。確かに緑さんではなく縁さんでした……。すんませんまじすんません




こんな自分に続きを書く資格があるでしょうか
99名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 22:23:36 ID:Jwjj3xBG
アリじゃないの?
前も複数の人で廻してて、縁さんと緑さんが混じったりもしてなかったっけ?
100名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 10:37:24 ID:kByS/Bpg
うん、過去にも混じってたw
リレー状態が楽しいんだよな。


>>98
ばっかやろう、書く資格があるでしょうか、だとぉ?
思わず、まとめサイトで最初っから読み直しちまったじゃねーか!
続けないと……続けないと、ぶん投げて静かの海に沈めっぞ!


じゃなくて、続けてください。お願いします。
101ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/09(金) 21:55:26 ID:qaQ32yka
(……は……んぅ…)
その後耳かきによる反対の耳の掃除を終え、再び綿棒による攻撃が始まった。耳の中を優しく、撫でるように擦られる。
(…く…うっ……んぁ……)
くそっ!なんであたいがこんな棒っきれなんかに…!
(……や…ぁ……声…でちゃう……!)
なん…でこれしきの……ことで…
(…んぁ…っ……ぁ!)
もう…我慢……できない…!
「……はい、終わったよ縁さん」
……終わり?これで、終わり?
あ、危なかった……。危うく本能全開になるとこだった……。
とにかく気持ちを落ち着けるため、目を閉じて二、三度浅く呼吸をする。
「縁さん、縁さん?……寝ちゃってるのかな?」
すまんが今のあたいには会話するだけの体力が残ってない。もうちっと待ってくれ。
「……」
と、頭を軽く持ち上げられ、優しく膝まくらを解かれる。そっとベッドに頭を下ろされ、
「いい夢見てね、縁」
耳元で、
「おやすみ」
そんな言葉を囁かれて、




ちゅっ




頬に……きすされた。



「……!?!?」
ようやく落ち着いた鼓動が、さっきの数倍の速度で鳴り響き、脳が沸騰する。

そして。

あたいの中の檻が、ぶちやぶられた。
102ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/09(金) 22:08:55 ID:qaQ32yka
内に秘められたもう一人のあたいは、本能の赴くままに行動する。
狙いはもちろん、隣で寝ようとしているこいつ。横向きでいたのを強引に引っ張って仰向けにし、その上に馬乗りになる。
「……え、ちょ、縁さん?」
慌てている。当然だろう。
今までこいつは押し倒された経験がないはずだ。こいつが求め、あたいがそれに答える。それが基本になっているから。
「…お前が、悪いんだぞ」
「え?」
人に火をつけておいて、ようやく静まりかけたところに今度は油をぶちまけやがった。
もう、止まれない。
「このまま、するぞ」
「な、なにを…」
とぼける前に口を口で塞ぐ。それだけではなく、舌を差し出して口の中をなめまわし、互いの舌を絡ませる。
ペースなんて考えない、全力のきす。息が切れるまで、続ける。
「…は…ぁっ……ん…」
「ぷはっ……縁…さん?」
相変わらず状況が飲み込めないようだ。ちゃんと言葉で言ってやったのに。
「だから……するって言ってんだろ……」
「…えっと……これを?」
言うと同時に、あたいの胸と股間に触れる。
「きゃうっ!…はぁ……そう、だよ。他に、なにがあんだよ……んぁ…」
両手の指が蠢き、敏感な二カ所をいじられる。
103ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/09(金) 22:23:20 ID:qaQ32yka
「いや……縁さんの方から誘ってくるなんて今までなかったから、ちょっと驚いちゃってさ」
言いながらも指の動きは止めない。右手の指は先端を探るように動き、左手は早くも下着の中に入れられている。
「仕方…ん……ないだろ…。なんか……興奮…しちゃって……!」
絶え間なく与えられる刺激。頭の中を白く染めあげる、幸せな感覚。
「だから……」
「うん、わかった」
あたいの思考を読んだかのように、自分とあたいの下の服を素早く取り去る。
そして、あたい自身に自分のモノをあてがう。
「きて……」
「いくよ、縁」
言うが早いか、腰を落として挿入を始める。
「ぅ……んぁ……やあっ…!」
思考が、さらに白く染まる。圧倒的な心地よさが、あたいを満たしていく。


「全部、入ったよ」
耳に響くのは、最も愛しい人の声。この人の肌のぬくもりを知っているのは、世界であたいだけ。
一緒に居たい。ずっと、一生、いや、あの世に逝ってからも。
ずっと、二人で。
「……なあ、お前の、十八歳の誕生日にさ……」
「え、なに?」
これは、普段のあたいには絶対言えない、すごく恥ずかしいこと。だけど…今のあたいなら…





「二人だけで、結婚式挙げないか?」
104ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/09(金) 22:58:32 ID:qaQ32yka
「………………え?」
たっぷり十秒停止し、ようやくでたのはそんな言葉。
「それって……つまり…?」
そ、そうだよ。あれだよ!
「え、えっと、なんか突然で、驚いちゃったけど…」
突然、か………。まあ、こんなことしてるときに言うことじゃないよな。………断られちまうかな。
「そんなこと言われたら……もう…我慢できないよ……!!」
瞬間、腰を打ちつけられた。荒々しく情熱的に、体をぶつけられる。
「ふあ……あぁっ!?」
「縁っ!好きだ!!大好きだ!!!」
加速する行為。互いが互いを最も感じられる瞬間。
それがもうすぐ、くる。
「あたいも……あっ……も…もう……くるっ……!」
「僕も…もう…!」
頭の中は真っ白に染まり、ただひたすらに愛しい人を貪欲にむさぼる。
ただ、愛をむさぼる。
「ふぁ……や……やああぁぁっ!!」
全身がびくびく痙攣し、絶頂の快楽が電流のようにかけめぐる。視界が薄れ、瞼が閉じられ始める。
意識が消える前、あたいは心にある素直な気持ちを、言葉にした。






「大好き……」
105ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/09(金) 23:00:36 ID:qaQ32yka
目を覚ましたとき、視界いっぱいの顔があった。
「おはよう、縁さん。と言ってもまだ夜だけどね」
あー、うん、おはよ……
…なんだかよくわからんが、まともに顔が見れねぇ。なんだこりゃ?
「えっと……さっきの返事だけど…」
……ホントはわかってたよ。勢いの力も借りて言った、結婚のこと。素に戻ったら今さら恥ずかしくなってきた。
大体話早すぎねぇか?結婚って何年後の話だよ?

「結婚式、どこで挙げよっか?」



は?
「二人っきりだから、どこか静かな所がいいよね。誰も居ない浜辺とか、夕日の綺麗な湖とか」
ちょ、ちょっと待て。
「いいのか?あたいなんかと結婚して…」
「あたりまえだよ。今じゃもう縁さん無しの生活なんて考えられないからね」
………やれやれ。気が早いのはお互い様、か。
「ねえ、縁さんはどこがいい?」
ん、色々あるけど、まずはするべきことがある。いや、言うべきことか。

結婚。それはすなわち、あたいがこいつの嫁になるということ。今のあたいじゃ、それにふさわしくない。だから少しずつ変わっていこうと思う。
まずは……









「どこがいいかしらね、あなた」

小さなことからコツコツとね



おわり
106ヤクザな娘の耳掃除:2008/05/09(金) 23:05:09 ID:qaQ32yka
はい。終わりです。ブツ切りですいませんでした
エロシーン難しいorz。お気に召さなかったらすみません
107名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 23:53:02 ID:kByS/Bpg
うおー。
数スレに渡ったヤクザ娘ペアも、ついにウェディンブベルを鳴らすのか。
GJっす!

あれ? おかしいな、目から汗が……。
108名無しさん@ピンキー:2008/05/11(日) 03:49:16 ID:rR0i6J8f
G(´;ω;`)J
109ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/12(月) 21:09:32 ID:FJUnJLm6
前スレで書いていた不器用な彼女の続きが書けましたので投下します。
110不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/12(月) 21:10:10 ID:FJUnJLm6
「お茶、ここに置いておいておくからね?じゃあ修太、しっかりと勉強するんだよ?
島津さんに迷惑かけるんじゃないよ、分かったね?島津さん、バカ息子ですがよろしくお願いしますね」
「島津さん、このバカをよろしくお願いします!言うこと聞かないようだったらぶん殴っていいですから。
変なことしてくるようだったら、遠慮せずおじさんに言っておくれ。ぶち殺すから」

 お茶とお菓子をお盆に乗せて私達に差し入れを持ってきてくれた、おじさんにおばさん。
結城に勉強を教える時は、わざわざお菓子まで用意してくれている。
私の愛する人のためだ。私が好んで教えているのだから、そんなにも気を使わなくてもいいのに……
そう思いつつも、これが密かな楽しみなのも事実だ。
どうも私は自分で思っているよりも、食べ物に関しては卑しい性格らしい。
結城やクラスメートの皆にも、よく言われてしまう。
『美味しいものを前にしたキラキラおめめの島津っちって、カワイイねぇ』と。
結城に褒めてもらえるのは嬉しいのだが……何かが違うような気がする。いったい何が違うのだろう?

 さて、と。せっかくおばさん達が用意してくれたのだから、美味しく頂かなくてはもったいない。
今日のお菓子は……河童印のえびせんか。これは私の大好物の一品じゃないか!
エビ風味の程よい味付けに、サクサクとたまらない食感。
一本を口に運ぶと、あっという間に『サクサクサク!』と一気に食べ進み、
えびさえんを口に運ぶ手が止まらなくなってしまうという、スナック菓子界の王様だ。
小学生の頃、パパがママに内緒で時々買ってきてくれて、よく弟達と取り合いになったものだ。
結局はママに隠れて食べていたのがバレてしまって、パパや弟達と一緒に正座でお説教をされた。
懐かしいな……河童印のえびせんは、島津家の思い出の味なんだ。
……ダメだ!これは食べると止まらなくなってしまう!それでは結城が集中出来ないではないか?
仕方がない、結城に集中してもらう為、このえびせんは私が全ていただこう。
とりあえずは……おじさん達には早く出て行ってもらおう。でないと食べることが出来ない。

「おじさんにおばさん、私に任せてください。ビシバシと鍛えて、次こそは平均点を越える成績にします」

 胸をドンと叩き、おじさん達にやる気を見せる。
今から勉強をするのだから、早く出て行ってくれないだろうか?
早くサクサクのえびせんを口いっぱいに頬張りたいものだ。あぁ、おなか空いた。

「ありがとうね、島津さん。貴女みたいないい子が、このバカ息子の彼女だなんて……
人間まじめに働いてたらいい事があるもんだねぇ」
「ホントだなぁ。このバカが、こんないい子と恋人同士だもんな。こりゃますます頑張って働かなきゃな!」

 私の言葉に涙ぐむ2人。そこまで喜んでくれるのは嬉しいのだが、これ以上頑張って働いたら身体に悪い。
働きすぎて倒れる人もいることだし、注意を促さなければいけないな。

「おじさんにおばさん。仕事を頑張るのはいい事ですが、体にも気を遣ってください。
特に自営業の人は健康管理を怠ることが多いそうですから、一度キチンと健康診断を受けることをお勧めします」

 そう、自営業の人は健康診断をあまり受けないそうだ。
魚屋さんの大将も、去年の年末の忙しい時期に倒れ、新年を病室で迎えていた。
私の大好きなおじさん達にはそうなってほしくはない。……好きな人を生んでくれた2人だ。
この2人がいなければ、私は結城と出合うこともなかった。いわば2人は私の恩人なんだ。

「あぁ……ホントにいい子だよぉ。グスッ、こんないい子が修太の恋人だなんて、夢のようだよぉ」
「グスッ、ホント、優しくて素直で頭もよくて、おまけに美人で料理まで上手い!
こんな完璧な子が修太を好きになってくれるなんて……奇跡ってのは起こるもんだな」
「もういいよ!いい加減出て行ってくれよ!これじゃいつまで経っても勉強できやしねぇよ!」

 なかなか部屋を出て行かないおじさん達に、辛抱を出来なかったのか、結城が大声を上げた。
確かに早く出て行ってもらいたいが、大声を上げるまではないだろう?

「はいはい、2人のところ邪魔して悪かったね。じゃあ母さん達は出て行くからしっかりと勉強頑張るんだよ?」
「島津さん。バカ息子をよろしくお願いします。修太!失礼なことをしやがったら承知しねぇぞ!」

 渋々といった顔をして、部屋を出て行く2人。ふぅ、これでやっとえびせんを食べられるな。
111不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/12(月) 21:10:37 ID:FJUnJLm6
 金曜日の放課後、結城米穀店でのアルバイトを終えた私は、
結城の為に手作りをした問題集のプリントを片手に、結城の部屋にお邪魔した。
相変わらずゲームやマンガの多い部屋だ。……今日はどのマンガを読もうかな?

「なんでオレの親は息子が勉強するのを信じないんだろうな?
お前はマンガ読んでるだけで、勉強してるのはオレなのにな」
「ん〜?それは今までの行いが悪いからだろう?
結城の場合は成績まで悪いからな、信じてもらえないのは仕方がないことだと思う」

 結城の言葉に適当に答え、本棚から一冊のマンガを取り出す。
うん、今日はこの戦国時代物のマンガを読むとしよう。
主人公が長宗我部元親ならよかったのだが、どうやら彼はマイナーな武将らしい。
結城との接点を作ってくれた武将だ、私は彼が大好きなのだがな。
読む本も決まったところで、次は食べる物を用意しなければ。
結城が勉強に集中できるよう、私1人で食べてあげないといけない。
これも結城の為だ、心を鬼にして食さねばいけないな。……決して独り占めしたいのではない!
おばさんが持ってきてくれたえびせんを開け、パクリと一本を食す。
サクサクサク……うん、このサクサクの食感がたまらない!
あまりの美味しさに、次々と口の中に放り込み、サクサクと食す。ダメだ、もう止まない!
あぁ……こんなにも食べるのに夢中になってしまう食べ物が、この世の中にあっていいのだろうか?

「……なぁ島津。お前、お菓子食いに来てるだけだろ?」
「ふぉんふぁふぉふぉふぁふぁい!」
「お前、口の中にどんだけ詰め込んでるんだよ!オレにもよこせよ!」

 袋を奪おうとする勇気の手を叩き、えびせんを死守する。
いくら結城でもえびせんは渡さない!これは私の物だ!

「ダメだ!このえびせんという物は、美味しさのあまり食べると止まらなくなるんだ。
一本でも食べると美味しさのあまりにもっと食べたくなり、集中力が切れてしまう。
そうなるともう勉強どころではなくなってしまう。そうなってしまっては困るだろう?
結城には勉強をしてもらわなければいけない。おじさんとおばさんにもしっかりと勉強させると誓ったしな。
だから、このような危険な食べ物を君に食べさせるわけにはいかないんだ。
分かってほしい。私も君と同じ食べ物を分け合いたいんだ。でも、このえびせんだけはダメなんだ」

 私の言葉に、真剣な表情で見つめてくれた結城。
そうか、私の心が伝わったのだな?……そ、そんなに見つめないでくれないか?
嬉しいのだが、少し恥ずかしいんだ。
そんな真剣な眼差しの結城が、私に向かい、口を開いた。

「島津、お前……この間のシュークリームの時もそう言ってたよな?」

 …ぐぅ!

「その前のイチゴ大福の時もそうだったな?」

 ……ふぐぅ!

「そのまた前の、もみじ饅頭の時もそうじゃなかったっけ?」

 ………はぐぅ!

「お前……食いしん坊だな」

 …………や、やはりそうだったのか。私は……食いしん坊だったのか。
ぐすっ……なにが結城のため、だ。自分がえびせんを食べたいためじゃないか。
こんなにも美味しいえびせんを独り占めして……私は最低な女だ。
こんな最低な女だと、結城に嫌われてしまう。……もう、嫌われてしまったのかもしれない。
ぐすっ、私は、馬鹿だ。救い様のない、大馬鹿だ!
このようなことで、愛する、大切な人から嫌われてしまうなんて……どうしようもない大馬鹿なんだ!
112不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/12(月) 21:11:01 ID:FJUnJLm6
 嫌われてしまった……そう考えただけで全身から力が抜け、ガックリと膝をつき両手をついてしまう。
もう二度と、手を繋いで歩いてもらえないのだろうか?
もう二度と、お弁当が美味しいと満面の笑みで褒めてもらえないのだろうか?
もう二度と……好きだと囁いてもらえないのだろうか?
結城と恋人でいられなくなるかもしれない……そんな絶望的な考えを巡らせている私に、結城が言葉をかけてきた。

「島津……お前ってやっぱり面白いな!」
「……ぐすっ、面白い?」
「あぁ、すっげぇ面白い!やっぱりオレ、お前のこと好きだわ」

 落ち込んでいる私を、ギュッと抱きしめてくれる結城。
か、顔が!結城の顔がすぐ側に!……す、すすす好き?今、好きと言ってくれたのか?

「す、好き?ま、まだ私のことを好きでいてくれているのか?」
「ははは、当たり前だろ?お前のそんなヘンなとこに惚れるのは、オレ位なもんだぞ?」
「ひっく、ぐすっ……やはり結城は馬鹿だな。こんな馬鹿な私を好きになってくれるのだから」

 結城の優しい言葉に涙が溢れてくる。その涙をそっと拭いてくれる優しい結城。
あぁ……結城が触れると身体が熱くなってしまう。これはいったいなんなのだろう?

「はははは、バカ同士で丁度いいじゃないか。けどえびせん独り占めは止めてくれよな。
オレにも少しは食べさせてくれよ」

 自分にもえびせんを食べさせてほしい。当たり前の意見を述べる結城。
確かにその通りだ。私達は恋人同士なんだ、大切なものは分け合わないといけない。
……いや、それでは勉強にならなくなるのではないか?
えびせんは食べてしまうと止まらなくなる、魔力にも似た力を持っている。
そんな危険なものを食べさせたら、集中力がなくなってしまうではないか!
……仕方ないな、味だけでも味わってもらうとしよう。

「……ダメだ。結城は勉強に集中しなければならない。だからえびせんは食べさせることはできないな」
「なんだよ、それ!ちょっとくらい食べさせてくれてもいいじゃんか」
「絶対にダメだ!……と言いたい所だが、せめてもの情けだ。味だけでも味あわせてあげよう」

 言葉の意味が分からずに、キョトンとした表情の結城の顔に手を添えて唇を合わせる。
抱きしめてくれた君が悪いんだ。君の顔をこんなに近くで見て、我慢できるわけがない。
結城の首に腕を回して抱きつき、もっと深く唇を合わせる。
そして、突然のキスに驚く結城の口の中に私の舌をねじ込んだ。
舌を入れると同時に唾液も送り込み、結城に私の口の中に残っているえびせんの味を堪能してもらう。
すると結城もえびせんの味を味わおうと私の舌に絡み付いてきた。
お互いに舌を絡めあい、いつしかえびせんの味はなくなり、お互いの味しか味わえなくなってしまった。
私は……クラスメートに教えてもらった、このキスが大好きだ。
舌を絡めあっていると結城と一つになれたような気がして、とても幸せな気分になるんだ。
……結城もそうだといいな。私と一つになっている感触を、楽しんでくれていると嬉しいな。
113不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/12(月) 21:11:23 ID:FJUnJLm6
 5分ほどお互いの味を堪能した私達は、名残惜しむかのような唾液の橋を架けながら唇を外す。
結城の目は虚ろになっていて、おそらく私もそうなっているのだろう。
その証拠に、結城のこと以外を考えられなくなっている。
結城も私のことだけしか考えられなくなっていたら、嬉しいな。
……ダ、ダメだ!今日、何の為に私はここにいるんだ!
結城に勉強をさせるためではないか!こんなことをしている場合ではない!

「さぁ、十分にえびせんの味も堪能しただろう?早速勉強を開始する!」
「へ?勉強?今日はもういいじゃんか。それよりオレ、もっと島津とキスしたいぞ」

 キ、キスをしたい?わ、私とか?……ゆ、結城ぃ、私も君をもっと感じたい!
だが……断腸の思いだが、君には勉強をしてもらわなければいけない!

「結城もキスをしたいと思ってくれているなんて、とても嬉しいよ。
でも……ダメだ。おじさん達に勉強をさせると誓ったんだ。あの2人に嘘はつけない」
「チェッ、もっとしたかったのに……もうちょっとくらいいいだろ?」

 唇を突き出し、迫ってくる結城。だから言っているだろう?君は勉強をしなければいけないんだ! 

「いい加減にしないか!次の試験でいい成績を修めたら好きなだけしていいから。だから今は勉強を頑張るんだ」
「え?ホントか?試験で点数よかったら、いくらでもしていいのか?」
「あ、あぁ、頑張った君へのご褒美だ、そのくらい別に構わないよ」

 キスは頑張った君へのご褒美であり、私へのご褒美でもあるんだ。
だから是が非でも成績を上げてもらわなければいけない。
結城、私の為にも頑張るんだ!……正直、君とはもっとキスをしていたいんだ。

「ご褒美?じゃあさ、成績上がったらご褒美の代わりにオレのお願い聞いてくれないか?」

 キスがご褒美だと言ったところなんだがな、いきなり話がすり変わっていないか?
ご褒美の代わりに、だと?私とのキスよりも欲しい物があるというのか!

「なにが『じゃあさ』だ!……ま、まぁ、頑張って成績を上げたのなら考えてあげなくもない。
ただし!私に出来る範囲でのことだぞ?」

 キスの変わりにと言われていい気はしないが、結城の喜ぶ顔も見て見たい。
好きな人の願いだ、どうせなら頑張ったご褒美でなくても叶えてあげたい。
だが勉強も頑張らせなければいけないし、ご褒美というニンジンをぶら下げた方が成績もよくなるだろう。
……キスは私へのご褒美としてするとしよう。

「おおっしゃ!じゃあオレ、頑張る!頑張って勉強してご褒美ゲットするぜ〜!」
「す、凄いやる気だな。ちなみにそのご褒美とはいったいなんなのだ?」

 結城をここまでやる気にさせるご褒美が気になる。いったいなんなのだろう?

「んっふっふっふ……それは秘密だ!だって言ったらお前、断わりそうだもん」
「わ、私が断るかもしれないことを要求するつもりか?」
「ご褒美なんだからいいだろ?おし!早速勉強するぜ!今日の分のプリント、貸してくれよ」

 ご褒美目当てで張り切りだした結城に問題プリントを渡し、勉強を開始する。
私に何をさせる気なのか気になるところだが……やる気になってくれたのは嬉しい。
どのようなご褒美なのかは気になるところだが、このやる気に水を差すわけにはいかない。
成績が上がったら、約束どおりにご褒美をあげなくてはいけないな。
……どんなことを要求してくるのだろう?
少し不安であり、ちょっと期待もしてしまう。いったいどんなご褒美なのだろう?
114不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/12(月) 21:11:45 ID:FJUnJLm6
「島津っち〜、聞いたよ?最近結城の部屋に入り浸ってるらしいねぇ」
「あの結城の成績が上がってきてるって、先生達驚いてたよ?島津っちはいい彼女してるねぇ」

 学校での休み時間、いつものように友人達に囲まれる。
結城と出会う前には、とても考えられなかった光景だ。
結城と出会ったことで、私の周りが劇的に変化している。……いや、変わったのは私自身なのだろうか?
その証拠に、友人達に結城とのことをからかわれても、怒りの感情は沸いてこない。
むしろ、結城の話をもっと聞いて欲しいと思ってしまう。
これが『惚気る』ということなのだろうか?

「い、入り浸ってはいない……と思う。
確かに最近は勉強を教える為に毎日部屋に行ってはいるが、目的はあくまで勉強なんだ。
だから入り浸っているという表現は違うと思う」
「成績が上がってきたのは結城の努力があってこそだ。
それに結城に勉強を教えることにより、私が学ぶことも多いんだ」

 そう、私が教えられることも多い。
自分では認識していなかったのだが、私は人に物を教えたりすることが、とてもヘタだったようだ。
今思うと、結城に初めて勉強を教えた時、とてもヒドイ教え方をしていた。

『教科書の50ページから、75ページまでを全て暗記して欲しい。この範囲を覚えれば成績も上がると思う』

 いくら私が教科書を全て暗記しているからといって、それを結城に押し付けるのはダメだ。
当時の私はそのことを理解しておらず、結城にダメだしされるまで、それに気がつかなかった。

『覚えれるわけないじゃん、もっと解りやすく教えてくれよ。お前、教えるのがヘタだな』

 こう言われて、私は落ち込んでしまった。
しかし愛する人の成績を上げるためだ、私はどう教えればわかり易く理解してもらえるのかを研究した。
その研究のかいあって、結城の成績は格段に上昇した。
……といっても、赤点がなくなっただけで、平均点以下なのは変わらなかったが。
次こそは平均点。その次は、平均80点を越えてもらおう。
出来れば私と同じく全ての教科で100点を取ってもらいたいものだ。
……そういえば成績が上がったら、ご褒美をあげることになっていたな。
どんなご褒美を要求されるのだろうか?
どうせ結城のことだ、お弁当のおかずにお肉をもっと入れて欲しいとか、そういうことなんだろうな。
まったく……君の健康を考えてのお弁当なんだから、ワガママを言わずしっかりと野菜をとってほしいな。
しかし、頑張ったご褒美として、少しはお肉の量を増やしてあげてもいいかな?
美味しそうにお弁当を食べてくれる結城の顔を想像し、頬が緩む。
……結城の分のお肉を増やすために、パパの分のお肉を減らすとしよう。
115不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/12(月) 21:12:27 ID:FJUnJLm6
「島津っち、なにニヤニヤしてるの?どうせ結城のことを考えてるんでしょ?ホント、大好きなんだねぇ」

 結城の喜ぶ顔を想像し、頬を緩めている私の頬を突く友人。
何故私が結城の事を考えていると分かったのだろう?

「んん?いや、結城へのご褒美について考えていたんだ。
どうせお弁当のお肉をもっと増やして欲しい、と言ってくるのだろうなと思ってね」
「へ?ご褒美?ご褒美って何?」
「あぁ、説明不足だったな。次のテストで結城の成績が上がったら、結城の求めるご褒美をあげると約束をしたんだ」

 牛肉は止めて豚肉にしよう。牛よりも豚の方が身体にはいい。
まったく、結城め……私へのご褒美のキスは、たくさんしてもらうとしよう。

「いやいやいや!島津っち、それ多分違うよ?」
「そうそうそう、健全な男子高校生が、島津っちのような綺麗な女の子にそんなご褒美求めてる訳ないじゃん」
「……は?お肉ではないのか?ではデザートだろうか?」

 デザートか。果物でいいのだろうか?りんごをウサギさんにしてあげたら喜んでくれるのだろうか?

「いやいやいやいや!それも違うって!……あれ?ある意味デザートになるのかな?」
「そういえば2人が付き合いだして、半年くらい経つんだねぇ。そろそろ頃合だよね?」
「頃合というか、少し遅いと思うけどね。あ〜あ、これで島津っちも大人の仲間入りかぁ」
「……は?皆はいったい何を言っているのだろうか?私が大人の仲間入りとはどういう意味なのだろう?」

 皆の言葉の意味が解らずに、不思議がっている私に説明をしてくれた。
友人達曰く『結城が求めてくるご褒美は間違いなく島津っちの身体。つまり、えっちしたいんだよ』だそうだ。
……そ、そうなのか?結城がついに私を求めてくるのか?
た、確かにいつかはそういう時が来るとは思ってはいたが……その時がついに来るのか?
……し、下着を買いに行かねば!大人雰囲気をかもし出している、セクシーな下着を!
結城に喜んでもらう為、少しでもセクシーな下着を!

 その日の放課後、結城との勉強会をキャンセルした私は、友人達と下着を買いに行くことになった。
何も知らない私にいろいろなアドバイスをくれた、優しい友人達。
皆、ありがとう。いきなり求められていたら、どうすればいいのか戸惑うところだった。
皆のアドバイスで購入した、この黒い下着を身に着けて、結城と一つになろうと思う。
バイト代のほとんどが消えてしまったが、後悔はしない。結城に喜んでもらう為だからな。
ママに購入した下着について色々聞かれてしまったが、気にしない。
……パパが下着を見て号泣したけど、無視してしまった。パパ、ゴメンなさい。
116不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/12(月) 21:12:50 ID:FJUnJLm6
 下着を購入した日から2ヵ月後、ついにその日が来てしまった。
友人達にいろんな知識を教えてもらい、ママからも避妊の大切さを再度教えてもらった。
私はこの2ヶ月間で、いつでも結城の要求に答えることが出来る、知識を手に入れた、と思う。
その結城は、猛勉強のかいあって、全ての教科で平均点どころか、平均を上回るという予想外の高成績を収めた。
テストに向けて猛勉強をする結城の横顔は、なかなか凛々しくてカッコイイものだった。
そ、そんなにご褒美がほしかったのか?……そこまで私が欲しかったのだろうか?

「島津っち、スゴイねぇ。結城、平均点以上の成績だったみたいじゃん」
「島津っちって勉強を教えるのが上手なんだね。学校の先生とか似合いそうだね?」
「あ、それいいね、美人の天才女教師!男子生徒の人気を集めるよ」

 いつだろうか?いつご褒美を求めてくるのだろうか?不安と緊張と、少しの期待でドキドキしている私。
いつだろう?いつ求められるのだろう?どこで求められてしまうのだろうか?
結城の部屋か?しかしあの部屋ではおじさんやおばさんが、いつ様子を見に来るかわからない。
今思えば、時々勉強の様子を見に来ていたのは、私達がSEXをしていないかをチェックするために来ていたのだろう。
もし、私達がSEXしている現場を見られてしまったら……結城はおじさんに殺されてしまうのではないか?
きっと私もタダではすまないだろう。……拳骨を落とされてしまうのではないだろうか?
ダメだ!結城の部屋でのSEXは危険すぎる!では私の家でするのがいいのだろうか?

「でも島津っちは天才だからねぇ。先生とかじゃなく、何かの研究者になるんじゃないのかな?」
「それも似合う気がするねぇ。島津っちは将来何になりたいの?意外と結城のお嫁さんとかかな?」
「あははは!それ、ありえそうだね!島津っちって、ちょっと変わってるから、それもいいかもしれないね」

 しかし私の家でSEXをしても、弟達に見つかってしまったらマズイのではないか?
それよりもパパが結城と会ってしまったら……何をするか分からない。
私を大切に想ってくれているのは嬉しいのだが、結城を敵視しているみたいなんだ。
だから二人を合わせるのはまだ時期尚早で、危険のような気がする。……いつかはパパにも紹介したいな。

「でもこれでご褒美あげなきゃいけなくなったね。島津っち、緊張してる?」
「あははは、もうガッチガチだねぇ。ほっぺはプニプニだけどね。緊張してたら、濡れるものも濡れなくなるよ?」
「そそ、濡れてなきゃ痛いからね。初めては濡れててもすっごく痛いんだから、濡れてなきゃもっと痛いよ?」
「……は!す、すまない!皆の話を聞いていなかった、申し訳ない」

 私の緊張を解す為か、頬を抓ってくる友人達。
今からこんなに緊張していたら、結城と肌を合わせる時にはどうなってしまうのだろう?
……やはりSEXというものは、キスよりも一体感があって気持ちいいものなのだろうか?
友人達やママの話では、SEXは慣れるまでは痛いだけだという話だが……初めてはやはり痛いのだろうか?

「いったい何を話していたのだろう?その、緊張して、話が耳に入っていなかったんだ。申し訳ない」
「あははは!島津っちは初めてだからねぇ。アタシも初めては緊張しちゃったもんね」
「島津っちは将来何になるのかなって話してたの。学校の先生とか似合うんじゃないかって言ってたんだよ」
「もしくは結城のお嫁さんとかね。結城のおじさん達とも仲いいんだよね?嫁姑問題も起こりそうにないじゃん」
「いや、私は高校を卒業したら就職をするつもりだ。公務員になりたいなと考えている。
我が島津家は家を買ったおかげで家計が火の車なんだ。すこしでも家計を助けたいと思っているんだ。
大学へはお金に余裕がなくて、行けそうにないというのも理由の一つだ。
私が大学に行けなくても、私が働いてお金を稼ぎ、弟達を大学に行かせてあげたいとも考えているんだ。
……ゆ、結城のお嫁さん?」
117不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/12(月) 21:13:29 ID:FJUnJLm6
 お、お嫁さんというと、私が結城と夫婦になるということか?
パパやママみたいに時々口げんかはするけど、お互いを大切に想い、共に力を合わせて暮らすということなのだろうか?
おじさんやおばさんのように力を合わせ、仲良く働くということなのだろうか?
私が結城と……そうなれるのだろうか?
パパやママのように、おじさんやおばさんのように……結城と、そういう風になれるといいな。

「そ、それは、その……まだ私達は若い。人生経験も少ないんだ。
だから、私と結城が、その……け、けけけ、結婚なんてまだ早いと思っている」
「ああ!島津っち、結城が来たよ!赤い顔してる場合じゃないってば!」
「あ、あれだ、確かに結城とはこれからもずっと一緒に、死ぬまで歩いて行きたいと考えている。
しかしだな、だからといって結婚なんて……結城が嫌がるかもしれないじゃない……ゆ、結城が来た?
ま、まだお昼じゃないぞ?いったいなにをしに来たんだ?」
「何をしにって……ご褒美のお願いじゃないのかな?」

 突然の結城の登場に頭の中が軽くパニックになる。そんな私に聞こえた友人の一言。

『ご褒美のお願いじゃないのかな?』

 や、やはりそうなのか?
確かに成績が上がったらご褒美をあげると約束をした。
でも、学校でご褒美の事を言い出さなくてもいいのではないか?
その、せめて二人きりの時にだな、私の肩を優しく抱きしめてくれながら迫るとかにしてくれればよかったのに。

「なんだ?島津、お前なんか様子がヘンだぞ?何かあったのか?」
「んな!な、なな、なんでもない!」
「あははは、島津っち、なんでもないって感じはしないねぇ」
「ん、んん!コホン!私はなんでもない、それよりも急に訪ねてくるとは、どうしたのだろうか?」

 余計なことを言いそうになる友人を咳で牽制し、結城に用件を聞く。
いくら結城でも、まさか皆の前で、その……く、口に出して言うことはしないだろう。
……い、いや、そのまさかが有り得てしまうのが、結城だ。
裏表がなく素直でいい人なところが、私は大好きなのだが……今は素直さを出さないで欲しいな。

「オレには様子がヘンに見えるけど……ま、いいや。オレ、テストで頑張っただろ?」
「あ、ああ、平均点以上を取ったみたいだな、おじさんやおばさんも大喜びすると思うよ」
「なぁなぁ、約束覚えてるか?成績が上がったら、ご褒美としてオレのお願いを聞いてくれるって」
「お、おおお覚えてはいる!覚えてはいるが……な、なにもこんな大勢の前で言うことはないのではないか?」

 ま、まさかがきた!どうしよう?もしかして学校の帰り道で求められたりするのか?
……はっ!そ、そうか!帰りに誰にも邪魔をされない場所で迫ってくるつもりなのか!
ママや友人達に聞いた、そういうことをするための施設……ラ、ラブホテルという場所で。
しまったぁ!まさかこんな展開になるとは想像してなかった!
せっかく準備していたセクシー下着を身に着けていない!
何の為にバイト代をつぎ込んで買ったんだ!……白い下着じゃやはりダメなのだろうか?
ど、どうしよう?何か理由をつけて家に帰らせてもらえれないだろうか?
118不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/12(月) 21:14:14 ID:FJUnJLm6
「オレが島津にお願いしたい、ご褒美はだな……」

 そ、そうだ!今日は確かパパが休みだった!
今から電話してパパに下着を持って来てもらえば……な、何を考えている!
パパにそんな事をお願いしたら、どんなことになるか分かったものじゃない!
落ち着け!落ち着くんだ、私!よく考えれば解決策は必ずある!
なにか……何かいいアイディアがあるはずなんだ!落ち着いて考えるんだ!

「弁当のおかずにさ、肉をもっと増やしてくれよ。オレ、もっと肉を食いたいんだよ」

 どうする……どうすればいい?そ、そうだ!急病だと言って早退すれば……ダメだ!家にはパパがいるではないか!
それにウソをついて学校を早退するなんて、ママに説教されてしまう!
しかしこのままだとせっかくのセクシー下着が役に立たなく……に、肉?
今、結城は肉を増やしてくれと言わなかったか? 

「島津が作ってくれる弁当って美味いんだけどさ、野菜が多くて肉少ないじゃん?」

 まさかのご褒美のお願いに唖然とする私。
まさかが有り得てしまうのが結城だとは思ってはいたが……こんなまさかだとは思いもしなかった。

「オレさ、成長期だろ?だからさ、肉いっぱい食って力つけたいんだよ」

 な、なんだったんだ?ご褒美の約束をしてからの2ヶ月間。
知識を得るために友人やママにSEXについて聞いて回った努力の日々。
この2ヶ月間の努力は……私の苦労はいったいなんだったのだ?

「オレさ、肉食いたくて勉強頑張ったんだから、約束守ってくれよな?ご褒美なんだから肉大盛りで頼むぞ?」

 ……友人達の視線が痛い。哀れんでいるかのようなその視線が、私の心にグサリと突き刺さるようだ。

「お・に・く!お・に・く!……あれ?島津、どうしたんだ?お前、ヘンな顔してるぞ?何かあったのか?」
「……るな」
「なんだ?『るな』ってなんなんだ?」
「……覚悟を決めていたのに、お肉だと?……ふざけるなぁぁぁ〜!」
「へ?……何故にぃ!」

 ヒュン!グチャ!……ドサッ。

「はぁ〜はぁ〜はぁ〜……ゆ、結城?す、すまない!つい我慢できずにやってしまった!大丈夫か結城!」

 や、やってしまった!久しぶりに蹴り飛ばしてしまった!

「はぁぁぁ〜……やっぱり結城はバカなんだねぇ。気合入れて準備してた島津っちが哀れでならないねぇ」
「いやぁ、今日の下着は白だったね。用意してた黒色セクシー下着ははいて来てなかったんだね」
「ゆ、結城?しっかりするんだ、大丈夫か?何故動かない?」

 ゆ、結城が!結城がグッタリとして動かない!ど、どうすればいいのだ?いったいどうすればいいんだ!
こ、このままでは死んでしまうのではないのか?……死んでしまう?結城が死ぬ?そ、そんな馬鹿な!

「イ、イヤだ!結城、死んではダメだ!私を一人にしないでくれぇ!」

 結城ダメだ、死ぬな!私を残して死なないでくれぇ〜! 
119ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/12(月) 21:14:38 ID:FJUnJLm6
今回は以上です。
120名無しさん@ピンキー:2008/05/12(月) 21:50:27 ID:LPnOt1Gh
そう来たか!?
天然同士のアホさにワロス

島津っち、大学ぐらいは行かせてやれよ
121名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 04:01:48 ID:P0arsZtQ
天然アホなバカップルwwww

ある意味お似合いと言えよう

GJ!
122名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 10:05:30 ID:+C9GFgyD
GJ!
なんか、横で見てるだけですげー楽しいだろうなwww
123名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 11:33:08 ID:YghIJQEG
バカップルww
ほのぼのするなぁ
GJ!!
124名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 15:53:43 ID:CRyCTqyD
クラスに一組は欲しい、バカップル。……観賞用に。


とりあえず肉を減らされるパパ涙目w>>114
125名無しさん@ピンキー:2008/05/15(木) 13:43:50 ID:3+bNxJwS
だんだん島津っちがダメな子に見えてきたw
126名無しさん@ピンキー:2008/05/15(木) 17:56:15 ID:RyrlnKTf
アホップルGJ!
127名無しさん@ピンキー:2008/05/16(金) 02:29:23 ID:JT5h+PiT
>>125
元から勉強以外はダメっ娘だった気がするが
128ニーソVSハイソ:2008/05/17(土) 08:51:29 ID:hx9xsxIS
「絶・対・領・域。ニーソックスっていいね。あの少し覗く素足がたまらないね」
「太股との段差がいいんだよな。こう、ぷにっとして柔らかそうな感じ、つい触りたくなる」
「いかにも女の子で可愛いんだよね。内股気味に歩くところなんて、幼く見えてちょっとドジしても見逃せるよね」
「そりゃ、オマエ、ロリ趣味入ってるだろ。走るなよー」
「君だって触りたいなんて言って危ないと思うよ」
 昼休みに腹ごなしの与太話。
「あんた達週番でしょ。早くプリント貰ってきなさいよ」
「まだ時間あるだろ。関係ないくせに口出すな」
「クラス全員が迷惑するんだから。委員長としては当然の指導。ほらっ」
「行って来よう。ね、すぐ済むからね」
「あー、分かったよ。行きゃあいいんだろ」
「自分の義務はちゃんと果たすのよ。犯罪者予備軍」
「んだとぉ」
「ロリコンと痴漢。人の道は踏み外さないようにね。こっちが恥ずかしいわ」
「はは、きついですね委員長」
「オマエに痴漢しようなんて思う奴がいるかよ。バーカ」
 罵声と手が飛んでくるのを避けてそそくさと逃げた。

 放課後になってもずっと委員長は機嫌が悪い。
 昨晩のメールに返事をしなかったのが良くなかったのか?
 ……少しは彼女らしく扱いなさい、だと? こっちの台詞だ。
 毎日送り迎えもしてやってるのに手も出させないのはどこのどいつだ。
 
 委員会の後片付けをするのを横で待ちながら、会話も続かないんで、
要求するならその気にさせろ、と返事をした。
 奴はディスプレイを睨み付けながら椅子にもたれて、ふう、とわざとらしく大きなため息を吐く。
「男に媚びてる格好なんて、私はしないわ。お生憎」
 は?
「よく見てみなさいよ、ニーソックスなんてX脚とかO脚とか膝が出てたりふくらはぎ太かったり、
単に脚の形が悪いのを誤魔化してるだけなのにデレデレして、みっともないったら」
「偏見だろ。……それとも、オマエ妬いてるのか?」
「バカねっ、ち、違うわよ! 歪んだ意識を正してあげてるのよっ」
 図星か、そんなん気にして馬鹿だな。こいつの脚は無駄な肉もなくすらりとして見事なものだ。
黒のハイソックスが良く似合う。颯爽と歩く後ろ姿に惚れた。
「オマエの脚は綺麗だよな」
「今頃言ったって……、ちょ、何触ってるのよ、やっぱり痴漢ねっ!」
「触りたいから触ってるんだよ。俺の彼女に何してもいいだろ」
 彼女、と言ったら、さあっと顔が真っ赤になった。ぐいっと脚を持ち上げてふくらはぎに頬ずりする。
「や、やや、やめ、て……っ、そんなとこに、……あ、」
「引き締まってカッコイイこの脚にはハイソが一番だ。ニーソなんか履くなよ」
「言われなくったって、絶対履かないわよ」
 反抗する割には泣きそうな表情になってるのが意外でどきりとする。こんなに可愛い顔出来るじゃないか。
もっと見せろ。
「……ぁ、そんなに撫でないで……っ、ん……、……バカっ、キスなんて反則っ!」
「オマエの脚すげー好きなんだよ。キスくらいさせろ」
「――――っ!! そ、そんないきなり、……って……だから、反則だって!」
「俺にキスされんの嫌ってことか」
「バカ。嫌な訳ないじゃないっ、…………する所が、違うでしょう……」
「この丸見えのパンツに?」
「!! エッチ! バカ! チカン! 何見てるの、スケベ!」
 散々俺を蹴って叩いて怒鳴りまくった後、目を伏せて真っ赤っかな顔に消え入りそうな声で言った。
「そっちは後から、……でしょ?」

 ハイソックスを履かせたままヤッてしまったら、またえらく痴漢呼ばわりをされた。
 俺って脚フェチ、つーかハイソフェチだったのか? あーすっきり。
129名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 08:52:35 ID:hx9xsxIS
個人的に強気娘には黒か紺のハイソックスだと思う
ニーソ派の人すみません
130名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 10:47:51 ID:jCWztRgo
>>129
お前とはいい酒が飲めそうだ


個人的には続きが読みたいな
131名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 11:04:53 ID:dzpvTpzV
・ガーターあり / なし
・タイツの是非
・生足派をみとめるかどうか
・スカート丈の分類基準
・異教パンツの侵攻への備え

語り合うべき内容には事欠かない

ともあれ GJ!! >>129
132名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 16:36:50 ID:qn5e4VS/
その勢いで最初のほうのやつの続き書いてくれる人いないかなぁ…

てっきりもっと続くもんだと思ってたんだが
133名無しさん@ピンキー:2008/05/19(月) 18:11:18 ID:9jrQ4CSh
>>132

リレーssは続きを書くのが難しいからなぁ。
何スレか前にもあったけど、結局終わらなかったからね。 
今回のも無理なんじゃないかな?
134名無しさん@ピンキー:2008/05/19(月) 21:44:01 ID:HwZs1/ts
途中で失速してうやむやになるか、終わりどころを見失って暴走するかしか無いからな
前のリレーはとりあえずキリの良いところで終わったけど、ああいうのは希有な例
ほとんどは何人かの書き手が延々続けるか、キリの悪いところで途切れて放置で終わる
135名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 00:55:38 ID:EeOpnymQ
>>134
そう考えたらヤクザ娘は奇跡だな。
完結までいったのは、題材がよかったからかな?
136名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 10:36:25 ID:JAqEubxt
島津さんかわいいよ島津さん。

あぁ、こんな恋愛がしたかったと目から汗を流してしまう、
藻男が此処に…orz
137名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 21:14:21 ID:Ap4t0TOH
>>135
題材もそうだが、基本的に一話完結形式で「続く」とかやらなかったからな
だからグダグダ続くことも無く、続きが投下されなくても「あれで終わりか」で納得できた
138名無しさん@ピンキー:2008/05/21(水) 15:29:04 ID:Bt0C9zZ/
>>137
リレーの注意点はこのくらい?長くてスマソ

・まず最初に男と女(もしくは少年と少女)のキャラを確立させる。特徴のある個性的な性格なら比較的書きやすいかも
・一話完結でスッパリ終わらせる。最後に『続く』とかはNG
・登場人物はなるだけ少なくする。誰が誰だか分からなくなるのを防ぐため。ヤクザ娘みたく二人だけっていうのもあり
・長文を書く場合はキャラがずれたりしないように注意。話によって性格が激変してしまうとその後に影響が出る


こんなもんかな。他に追加はありますか?
139名無しさん@ピンキー:2008/05/21(水) 20:29:14 ID:QlQHl8KC
>>138
だいたいそれくらいじゃないかな?

さて、最近気付けばカープの勝敗に一喜一憂している自分がいる
多分あの人の影響
140名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 00:06:33 ID:h0kHekSW
な…700番代…ageるぞ
141名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 00:41:49 ID:wi61V2wH
どこの誤爆だよ
142名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 00:50:35 ID:dnf9oHYH
>>141

スレがかなり下の方にあったってことじゃないの?
143名無しさん@ピンキー:2008/05/24(土) 00:02:07 ID:AaTvXFw2
>>142
そ。
下杉だったからageたって訳
144名無しさん@ピンキー:2008/05/28(水) 22:15:34 ID:676+IgUr
保守
145ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:03:18 ID:zz0rDqgG
不器用な彼女の続きがかけましたので、投下します。
146ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:03:48 ID:NgbQR/a7
「ひっく、グス……ひぐっ」
「なぁ、もう泣くなよ?そもそもなんでお前が泣いてるんだ?蹴られて泣きたいのはオレの方だぞ?」
「だって、ぐす、結城が動かなくなって、ぐす、死んだのではないかと……嫌われたのではないかと、ひぐっ」

 放課後、結城に手を繋いでもらい、帰宅する。
結局あの後すぐに結城が目を覚ますことはなかった。
動揺して取り乱す私を落ち着かせてくれ、結城を一緒に保健室まで運んでくれた友人達には感謝をしなければ。
保健室で一時間ほどして目が覚めた結城。私はその知らせを聞き、泣きそうなほど嬉しかった。
だが、すぐには会いに行けなかった。
結城を失神させてしまった私が、どのような顔をして会えばいいのか、分からなかったからだ。
もし『暴力女は嫌いだ!』とでも言われてしまったら……私はショックで気を失ってしまうだろう。
嫌いだと言われてしまったらどうしよう?そんな事を考えたら、会いたくても会いに行けなくなってしまったんだ。
そして放課後、結城はいつもの様に、何事もなかったかのような顔で一緒に帰ろうと誘ってくれた。
そんな結城の優しさに涙が止まらなくなり……今に至るというわけだ。

「もう泣くなって!オレ、べつに怒ってなんかないからさ」
「でも、でも、わたじはぁ……ひっく」

 泣きじゃくる私の頭を優しく撫でてくれる結城。
その優しさが嬉しくて、涙が止まらなくなってしまう。

「ところでさ、なんで蹴ってきたんだ?やっぱり弁当に肉を増やすのがイヤだからか?」
「ひっぐ、違う、私の馬鹿な勘違いのせいだ。君が……違うものを求めてくると思っていたんだ」
「違うもの?それって何だ?何だと思ってたんだ?」

 本当に私は馬鹿だ。
結城が私を求めてくると勝手に思い込み、色々と準備をするなんて。
馬鹿な私が勝手に勘違いをしていたのに、それを結城のせいにしてしまうなんて。
……自分でもこんなに馬鹿だとは思っていなかった。私は本当に馬鹿だ。

「……結城が私を求めてくると、勝手に勘違いをして……期待をしていたんだ」
「は?島津を求める?それってどういう意味だ?」
「……ぐす。君とSEXが出来ると思い込み、それを期待して準備をしていたんだ」
「へ?……うええええ!セ、セックスぅ?お、お前自分が何を言ってるのか分かってんのか?」
「……うん、分かっている。
分かっていたからこそ、友人達に色々な知識を教えてもらったり、ママに避妊について聞いたりもした。
でもそれは全部私の独りよがりだったんだな。
ぐす、私の独りよがりのせいで、ひぐ、結城を蹴り飛ばしてしまうなんて……私は本当に大馬鹿だ」

 自分がした行為を考えれば考えるほど嫌になる。
勝手に求めてくれると思い込み、その思い込みが外れると結城に八つ当たりをする。
私は本当に救いようのない馬鹿で、どうしようもなく嫌な人間なのではないのか?
こんな人間が、素直で優しく、裏表のない真っ直ぐな結城の隣を歩いていてもいいのだろうか?
私がいると、結城まで嫌な人間になってしまうのではないか?
こんな私といたら結城もダメになるのではないか?……嫌だ。結城と別れるなんて絶対に嫌だ!死んでも嫌だ!
私は……本当に大馬鹿で、嫌な人間なんだ。
私が結城の側にいては悪影響を与えてしまうと分かっていながら離れることが出来ない。
……自分勝手なダメな人間だったんだ。
147ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:04:12 ID:zz0rDqgG
「……結城、ゴメン。私はどうしようもない大馬鹿で嫌な人間みたい……イタッ!
ゆ、結城?手を強く握りすぎだ、痛い!」
「……ゴメンな。オレ、いくら勉強してもやっぱりバカだよな。お前がそんな事考えてるなんて全然気がつかなかった」

 急に強く手を握ってきた結城。
お店の手伝いで米袋を担いでいる為か、結城は力が強い。
そんな結城に、繋いでいる手を強く握られてしまい、痛さのあまりに思わず呻いてしまう。

「い、痛い!結城、強く握りすぎだ!お、折れてしまう!」
「……島津、オレ、バカだからそんな事聞いたら我慢出来ないぞ」

 手を強く握られ痛がっている私を、強引に引っ張り歩いていく。
痛い!これはお仕置きなのか?馬鹿な私へのお仕置きなのだろうか?
痛がる私を無視して、どこかへと向かっているのか、私を引っ張り強引に歩いていく。
どのくらいの距離を歩いたのだろうか?
強く握られた手の感触がなくなろうとした時、結城が歩くのを止めた。

「島津……オレな、バカだからいっつもお前とエロイことをすることばかり考えてたんだよ。
でもな、付き合えば付き合うほどオレとお前とじゃ違うんだって解ってな、オレからは誘えなかったんだよ」
「……ゆ、結城?」
「だからオレからはキスを一度もしなかったんだ。
オレなんかがキスしていい相手じゃないんじゃないかって思ってな」
「ゆ、結城ぃ……そんなこと、そんなことない!私は君以外の男とはキスしたいと考えた事なんか一度もない!」
「島津……ありがとな。オレもそうだと言いたいけど……オレってバカじゃん?
だから色んな女とエロイことをする妄想はしてたんだよ」
「な、なんだと?ゆ、結城は私というものがありながら、そんな事を考えていたのか!」
「でもそれも昨日までだな。今日からは……お前とエロイことしてもいいんだろ?」
「え?えろいこと?えろいこととはいったい何のことなんだろ……ゴクリ」

 今、気がついた。
結城に手を引かれて連れてこられたここが何処なのかに、今、気がついてしまった。
駅の裏手のかなり歩いたところにある、綺麗で派手な外装の建物。
学校ではこの施設を利用することも、近づくことも禁止している。
もしこんなところに来たことが先生に知られてしまったら、停学になってしまうことだろう。
だから私の頭の中には、この施設を利用するという選択肢はなかった。
そうか、これを利用すればおじさん達にも知られなくて済むし、ママやパパにも知られることはない。
でも、ここに入ってしまったら私は結城と……ゴクリ。
緊張と、少しの期待からか、喉がカラカラに渇いてしまう。

「……島津、いいよな?言っておくけど、ダメだって言っても、もう無理だぞ?」
「……な、なら何も言わず連れて入ればいい。そ、その、お金はあるのか?私はあまり手持ちがないんだ」
「大丈夫だ、金なら持っている。なんなら泊まる事も出来るぞ?」
「と、泊まるって……馬鹿!おじさん達にバレてしまうではないか!」
「ははは!バレたらオレ、殴り殺されるかな?……じゃ、入るぞ?」
「……う、うん」

 今度は私がギュッと強く手を握り返す。
心臓がドキドキと脈を打ち、喉がカラカラで、背筋にしっとりと汗も掻いてきた。
ま、まさか結城とこんな場所へ……ラブホテルに来ることになるなんて。
液晶パネルで部屋を選んでいる結城の手をギュッと強く握り締める。
……ど、どうしよう?覚悟は決めていたつもりだったが、いざこうなると……どうすればいいんだ?
148ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:04:42 ID:NgbQR/a7
 小さなエレベーターで、借りた部屋のある3階へと上がっていく。
結城も緊張しているのか、一言も話そうとしない。……私も緊張の為、口を開けることすら出来ない状態だ。
こ、このような状態でうまく出来るのだろうか?少し怖くなって、結城の手をギュッと握ってしまう。
……怖がっている私のことを心配してくれているのか、ギュッと握り返してくれた。
結城……うん、大丈夫。君となら……君になら、どんなことをされても大丈夫。
だから君も遠慮などせずに、私を好きに抱いてくれていいよ。私たちは無言のまま、手を握り締め合う。
借りた部屋は大きなベッドとソファー、そして液晶テレビが置いてある程度の狭い部屋だった。
こ、ここで今から私は結城と……ゴクリ。

「こ、これがラブホテルというものなのか。意外と狭いものなんだ…ふわあ!
ゆ、結城?いきなり抱きついてくるなんて……もう、するのか?」

 部屋に入るなり急に抱きついてきた結城は、私の抗議を無視し、後ろから抱きしめたまま後ろ髪にキスをしてくる。
その瞬間、背筋をゾクリとした電気のような感覚が走る。
そのキスが徐々に耳へと進んできて、その唇が触れる度、ゾクゾクと背筋を電流が走る。
に、人間という生き物は好きな人にキスをしてもらうだけで、発電できるものなのか?
結城の唇が軽く耳に触れた瞬間、最大の電流が体中を駆け巡り、膝が揺れだしてしまった。
こ、これはいったい何なのだ?何故唇が触れるだけで電流が流れる?

「はぁはぁはぁ……ゴメン島津。オレ、もう我慢できねぇよ。多分メチャクチャすると思うから先に謝っとくな?」

 耳に軽いキスを数回してくれた結城が、今度は囁きだした。
ゆ、結城ぃ……私はもうおかしくなってきた。何故こんなにも簡単におかしくなってしまったんだ?

「メ、メチャクチャって……その、言っても無駄だとは思うが、私は初めてなんだ。
だから……優しくしてほしい」
「オレも初めてだ。だからどうすればいいか、よくわかんねぇんだよ。だからDVDで見た通りにするな?」

 耳元で囁きながら、私を抱きしめていたその大きな手が胸へと移動してきた。

「そのDVDがどんなものなのか、よく分からないが……君の、んん!好きに、ふぅ、んん……すればいい。
あともう一つ、んん、お願いなんだが、んぁ!……聞いて、もらえるだろうか?」
「なんだ?理性があるうちに言ってくれ。お前を抱きしめてると段々理性がなくなって、暴走しちまいそうだ」

 制服の上から私の胸を揉み解し、首筋へとキスの雨を降らしだした結城に最後のお願いをする。
お互いに理性があるうちにお願いをしておかなければ……正直、私はもう限界だ。
これ以上触れられたら、自分でもどうなるのか、分からない。

「その、お願いというのは……SEXしてる時くらいは名前を呼んで欲しいんだ」
「名前?オレ、いつも島津って呼んでるぞ?」

 私のお願いで結城の手が止まる。ホッとした様な、残念なような。少しヘンな気分だ。

「それは苗字だ。私が呼んで欲しいのは下の名前。『彩』と呼んでほしいんだ」
「……分かった。その変わりオレのことも『修太』って呼んでくれよな」
「わ、分かった。し、修太と呼べばいいのだな?……な、何故か少し恥ずかしいな」

 お互いに向かい合い、見つめ合う。修太は真っ赤な顔で私を見つめてくれる。
きっと私も負けないくらいな赤い顔で、見つめているのだろう。

「そうか?オレは彩に名前で呼んでもらえてすげぇ嬉しいぞ」

 赤い顔をした修太に『彩』と呼んでもらえて、泣きそうになる。これは……マズイ!物凄く嬉しい!

「あ……私も嬉しい。名前で呼んでもらえるのが、こんなに嬉しいなんて……気がつかなかった」
「彩……好きだ、愛してるぞ」
「修太ぁ……ん、私も君が好きぃ、愛してる」

 お互いの名前を呼び、唇を求め合う。
そして私は興奮した修太に、唇を奪われたままベッドへと押し倒された。
149ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:05:10 ID:zz0rDqgG
「ん、んん、しゅうたぁ、制服がシワになるから、んん!……ぬ、脱がせてほしい」

 私をベッドに押し倒し馬乗りになった結城は、私の胸を好き勝手に揉み解している。
胸を握りつぶすような力で揉まれているのだが……修太の嬉しそうな顔を見ていると文句を言えなくなる。
私のお願いにコクリと頷き、私の制服のボタンを一つずつ外し始めた。

「おお……白いブラジャーか」

 制服のブラウスのボタンを外し終えた所で手が止まる修太。
私が身につけているいつものブラを見て、感嘆の声をあげた。
……恥ずかしい!何故今日のような大事な日に、セクシーなものを身につけてこなかったんだ!

「ゴ、ゴメン、色気のないブラで。
急にこんなことになるなんて考えもしなかったから、色気のあるものを用意できなかったんだ」 
「なに言ってるんだよ、この白いブラジャーはお前によく似合ってるぞ?」
「に、似合ってる?」
「おう、よく似合っててめちゃくちゃ興奮するぞ。……なぁ、取ってもいいか?」

 揉むというよりも、まるで握りつぶすといった力で胸を握り締めてくる修太。
お願いだ、もう少し優しくしてくれないか?

「ん、いいよ。ただ、もう少し優しく触って欲しい。強すぎて……少し痛いんだ」
「マジでか?ゴメンな、オレ、初めてだから力加減が分かんなくてさ。こうか?これは気持ちいいか?」

 先ほどとは違い、優しく持ち上げるかのような触り方に変わる。
胸全体をやさしく持ち上げるかのような、修太の手の動き。
その優しい手の動きが、再び私の体全体に電流を走らせる。

「ふぅ、んん!しゅ、たぁ……スゴ、これ、おかしい……胸が、頭がおかしくなる!」
「はぁ〜はぁ〜はぁ〜……ダメだ、もう我慢できん!島津ゴメン!」

 『ブチッ!』

 何かを引き千切るような音がしたかと思うと、突然胸に今までとは比べ物にならな電流が走った。

「ふあああ?な、なに、これ?これなに?しゅうた、おかしい!胸がおかしい!」
「じゅ、じゅる、ちゅ、じゅじゅ……お前の味ってちょっとしょっぱいんだな。汗を掻いているからか?」

 しょ、しょっぱい?私の何がしょっぱいというの……ひゃう!

「あ、あああ!しゅうた……やめ、そこはダメだ……ヒィ!んあああ!」
「おおおお〜、まるでAVみたいな音出してるな。これが濡れてるってやつか。なぁ、気持ちいいのか?」

 くちゅ……くちゅくちゅくちゅ……

 修太が指で私を犯す。
胸を唇で犯しながら、ショーツの中に入り込んだ修太の指が、クチュクチュと私を犯し続ける。
その指が動く度に、胸を吸われ噛まれる度に、体中を電流よりももっとスゴイ何かが走り回り、私を狂わせる。
足の指先から髪の毛の先端まで。そのなにかが私の身体全てを走りまわり、身体が勝手に動き声を出してしまう。

「しゅ、たぁ……それ、すご……でんき、でんきくる!くるのぉ!ヒィ、きゃあああ〜!」
「おおおお〜……お前、もしかしてイッたのか?オレの指でイッちゃったのか?」
「う、うぁ……あ、うぁぁぁ……しゅ……たぁ……たしぃ……ひっく、わたじぃ」

 何故だか理由は分からないが、涙が零れてきた。
私にいったい何が起こった?私の身体はどうなってしまったのだ?
何故涙が止まらないのか、自分でも意味が分からずに泣きじゃくる私。
修太はそんな私を優しく、そして強く抱きしめてくれた。
150ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:05:39 ID:NgbQR/a7
「ひっ、ひっく……しゅうたぁ、わたし、わたしぃ……ひぐっ」
「ゴメンな、オレ、好き勝手にしちゃったな。お前初めてだって言ってたのにな。ホントにゴメン」
「しゅうたぁ〜……ひっく、しゅうたぁ〜!」

 涙が止まらない。自分が何故泣いているのかが全く分からない。
けどそんな私を抱きしめてくれる優しい修太。その優しさが、抱きしめられた温かさが私を落ち着かせてくれた。

「ひっく、ぐす……ゴメン、取り乱してたみたい。もう落ち着いたから、大丈夫だから」

 しばらくの間、修太の胸に顔を埋めて泣きじゃくり、涙で修太の制服を濡らしてしまった。
そんな私の頭を撫でてくれた優しい修太。あぁ……私は君のこんな優しい所も大好きなんだ。

「オレこそゴメンな?オレ、お前の綺麗な胸を見たらテンション上がっちゃってさ、つい触るのに夢中になっちまった。
身体は大丈夫か?無理させちゃったな。……今日はもう帰ろうか?」
「き、綺麗?私の胸がか?あ、ありがとう。君に褒めてもらえてとても嬉しい。
……え?か、帰る?何故帰ろうとする?なぜそんな事を言い出す?
もしかして私がおかしくなったからなのか?パニックに陥ってしまったからか?」

 思いも寄らぬ修太からの提案に、動揺してしまう私。帰るもなにも……まだ私と君は一つになっていない! 

「ダメだ!せっかくホテルを借りたんだ!今帰ったら、何の為にここに来たのか分からない!」
「そう焦って経験するとこないだろ?
無理やり連れてきた俺が言うのもヘンだけどさ、オレ達のペースでゆっくりとやろうぜ」

 私を心配して言ってくれているのだろう。
少し触られたくらいで、無様にもパニックに陥ってしまった私を心配して……君は本当に優しいな。
でも……今はその優しさはいらない。私は君と本当の意味で一つになりたいんだ!

「……イヤだ。私は帰らない。絶対に帰らない!」
「なんでだよ?お前、少し触っただけで、おかしくなってたじゃないか。ホントは怖いんじゃないのか?」
「……怖いよ。でも、このチャンスを逃すことの方がもっと怖い。
君がご褒美がほしいと言い出してからの2ヶ月間、私がどれほど緊張してたか分かるか?
どれほどこの日を待ち望んでいたか分かるか?……それなのにお前は、お肉とか言い出して……この馬鹿!」

 何故か悔しくなってきて、一度止まった涙がまた溢れ出す。

「お前に分かるのか!私がお前とSEXする日の為にどれだけ必死に勉強をしたか!
お前に喜んでもらおうとどれだけ用意をしてきたかを!それも全部お前の為なんだ!なんで分からないんだ、この馬鹿!」

 もうダメだ!感情が高ぶってしまい、自分でもいったい何を言っているのか分からない!
こんな状態になってしまっては、余計に抱いてもらえない!……馬鹿。私の大馬鹿!何故もっと落ち着けなかったんだ!
けど修太はそんな私をギュッと強く抱きしめてくれた。

「……ホントにゴメンな?オレ、お前の気持ちを全然分かってなくて、辛い思いばかりさせてたんだな」
「……馬鹿」
「あぁ、オレはホントにバカだな。……オレ、バカだからもう止まらないぞ?いいんだよな?」
「…………馬鹿。いいに決まっている。でなければ私はここにはいない」
「はははは……じゃ、全部脱がすぞ?いいよな?」
「い、いや、それは自分で脱がせて欲しい。君も制服を脱がなければいけないし……んな?
な、何故ブラが千切れている?ゆ、ゆうきぃ〜……キサマ引き千切ったな!」
「え?い、いや、それは、その、なんだ……ゴメンなさい」
「謝って済む問題じゃない!この大馬鹿め!罰として今日は私が上に乗ってする!」
「へ?島津が上に乗る?それってどういうことだ?」
「……今日の為に私はSEXについて色々勉強したんだ。
初めては女の子が上に乗って入れたほうが上手くいくと教えてもらった。
だから、今日は私が上で動きたい。私に入ることに成功したら君も動いていいから」

 ボタンを外したままのブラウスを脱ぎ、無残にも引き千切られたブラを外す。
そしてスカートを脱ぎ、先ほどの修太に指で犯されたため、濡れて汚してしまったショーツも脱ぐ。
これで一糸纏わぬ姿になってしまった。……好きな人の目の前で、裸になってしまったんだ。
151ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:06:04 ID:NgbQR/a7
 顔から火が出るほど恥ずかしいとはこういうことを言うのだろう。
好きな人の目の前で、裸になったんだ。恥ずかしいのは当たり前だ。
恥ずかしさのあまりに、顔が火傷をしそうなくらいに熱くなっている気がする。
そんな私を口をポカンと開けたままじっと見つめる修太。

「ば、馬鹿!いつまで見ているんだ!君も全部脱ぐんだ!私だけに脱がすなんて卑怯だぞ、早く脱げ!」
「あ、ああ、ゴメン、綺麗だから見惚れてた。す、すぐ脱ぐから」

 き、綺麗だから見惚れてた?そ、そんなお世辞で私が喜ぶとでも……わ、わわわわ!ア、アレが修太のなのか?

「全部脱いだぞ?で、島津、どうやってするつもりなんだ?今日はお前がしてくれるんだろ?」

 あ、あんなに大きいのか?何故天井を向いている?あれが勃起という状態なのか?
あ、あんなのが私に入るのか?……入れなきゃダメなのか?

「おい、島津。お前もオレのに見惚れてるじゃんか」
「ふぇ?な、んななななんでもない!ぬ、脱いだんだな?じゃあさっそくSEXをするぞ!」
「はははは!やっぱりお前、面白いな!」
「うるさい!さっさと君は仰向けになれ!」
「はいはい、仰向けになればいいんだな?……ははは、なんかこういう初体験ってオレ等らしくていいな」
「……ぷっ、言われてみればそうだな。私達みたいな馬鹿同士には、こういうドタバタがちょうどいい」

 修太の勃起した下半身に戸惑っていた私は、修太が発した言葉で落ち着きを取り戻した。
ふふふふ、もしかして私を落ち着かせるために、ワザと言ってくれたのかい?
ありがとう、おかげで大分落ち着いたよ。
落ち着いたところで、ママからもらった避妊具を財布から取り出し、袋を開ける。
そして、丸まっているゴムを修太の下半身に取り付ける作業に移る。
……ゴクリ。い、意外と熱いものなんだな。先はまるでゴムのような感触なんだ。
皮は剥けているのか……包茎とかではないのだな。
長さ的には……13から15センチ程かな?平均サイズというヤツか。
初めて見る男性性器に興味が沸き、触って感触を確かめる。
意外と硬いな。この棒状の物が私の中に入ってくるのか……入るのかな?
……なんだ?先端から透明な液体が出てきた。これは確か……そうだ、我慢汁と言っていた。
友人達によると、この汁が出てきたら、我慢の限界が近づいているという話だった。
……そんな液体が何故出てきたんだ?
不思議に思い、我慢汁を触ってみた。……ネバネバしてて少し不快に感じてしまう。こんな物が分泌されるのか。
何故男はこのような液体を出すのだろう?不思議なものだな。

 不思議に思っている私に、弱々しい、情けない声で修太が話しかけてきた。

「あ、うあ、し、島津、ちょっと待て!そんな触るな!オレ、マジヤバイ。もう耐えれないかもしれん」
「へ?ヤバイ?何がヤバイのだろう?……あ、ああ、ゴメン。すぐ取り付けるから」

 泣きそうな顔で私を見ている修太。その表情を見て理解した。
なるほど、もう出てしまいそうなんだな?ここで射精されては元も子もない。
初体験が避妊具の装着前に出してしまったなんて、修太のトラウマになってしまいそうだ。
152ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:06:28 ID:NgbQR/a7
「では、取り付けるぞ。……んっと、意外と難しいものなんだな」

 被せやすいように、修太の下半身を左手でギュッと握り締め、右手で被せようと試みる。
くっ……なかなかスムーズにはいかないものだ。
このゴムのような弾力の先っぽに上手く被せることができれば……よし!どうにか被せたぞ!
あとは丸く収められているゴムを、全体に伸ばすように被せていけば……あれ?何故伸びないんだ?
おかしいな?使用方法はこれであっているはずなのだが……しまった!裏表逆につけているではないか!
これでは上手く伸ばすことが出来ない!これは……失敗だな。
目を瞑り、歯を食いしばって耐えている修太には悪いが、新しいコンドームでやり直しだ。
これを使っても大丈夫だとは思うが、万が一の事があってはならない。
将来的には子供は欲しいが、今は無理だ。
今の私たちに授かってしまっても、社会的にも経済的にも育てることは出来ない。
……しょ、将来的には欲しいだと?んな、何を考えている!確かに修太とは……そうなれる日が来るのだろうか?
いつかはこのような避妊具などをつけずに、修太と……SEXが出来るのだろうか?
修太を握り締め、私たちのこれからを考えてしまう。
私たちのこれからを、修太はどう考えているのだろう?ふとそう思い、修太の顔を覗いてみる。
……泣きそうな顔で歯を食いしばっていた。ゴメン、素早く取り付けるよ。 

 取り付けるのに少々苦戦はしたが、どうにか上手く取り付けることができた。
取り付けているときの修太の顔といったら……とてもカワイイものだった。
目をギュッと瞑り、手を握り締め、足の指までギュッと丸めて必死に耐えていた。
手で触られるのがそんなにも気持ちのいいものだったのか?
……次する時は、いっぱい触って気持ちよくしてあげるとしよう。

「つ、着け終わったのかぁ?」
「ふふ、終わったよ。……これで、射精しても私が妊娠することはない。
だから……その、修太が私に入ってきても大丈夫だということだ」
「そ、そっか……なぁ彩。ホントにオレなんかが相手でいいのか?今ならまだ間に合う、止めてもいいんだぞ?」

 緊張で少し震えている私を心配してか、そっと握り優しく囁いてくれた。
修太……だから君は馬鹿なんだ!

「……馬鹿。だから君は馬鹿なんだ。私がどんなに君を欲しているか考えたこともないだろう?
最近は毎日君に抱かれる想像をしている。相手が君じゃなきゃこんなことは考えない。
分かるか?私は君だからこそ、抱かれたいんだ。君だからこそ、抱いて欲しいんだ!
君だからこそ……私を奪って欲しいんだ!」

 腰を少し浮かせ、修太の性器に手を添える。

「あ、彩……お前、やっぱりバカだな。オレなんかをそこまで好きになってくれるなんて……ホントのバカだな」
「ふふ……そう、君と同じく馬鹿だよ。馬鹿同士で釣り合いが取れていると思わないかい?」

 ゆっくりと腰を下ろしていく。
すでに十分に滑っている私に修太の性器が当る。その瞬間背筋ゾクリと電流が流る。

「うお……ははは、バカ同士か。確かにオレのような男に惚れるお前はバカだよな」
「ふふ、ん……しゅうたぁ」

 修太が私の中に入ってくることが分かる。
ゆっくりと腰を下ろすたびに、私を引き裂くかのように、突き進んでくる。
今度は私が歯を食いしばってその痛みに耐えて、腰を下ろす。
ミチミチと、私の中で肉を引き裂くかのような音がしていたかと思うと、
『ブツン』と何か、輪ゴムのようなものを引き千切るような音がした。
その瞬間、さっきまでの痛みとは別次元の痛さが身体を駆け巡る。
身体を駆け巡る激痛に唇をかみ締めながら耐えて、ゆっくりと腰を下ろしていく。
そんな私を心配そうな表情で見つめてくれる。
ふふふ、そんな顔をして心配しているのかい?相変わらず君は優しいんだな。
そんな優しい修太に喜んでもらいたくて、一気に腰を沈めた。
その瞬間体中を激痛が駆け巡り、修太が私の一番奥にコツンとぶつかった。 
153ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:06:51 ID:zz0rDqgG
「い、たい……うっくぅ、しゅうたぁ、ど、どうだ?気持ちいいか?わ、私の中は気持ちいいだろうか?」
「ああ、すっげぇあったかくて、柔からくてきつくて、めちゃくちゃ気持ちいいぞ」

 ふやけたような顔で私を見つめる修太。
そ、そうか、気持ちがいいのか。私で気持ちよくなってくれて、とても嬉しいよ。
……私はこんなにも痛いのに、何故男は痛くないのだろう?これは不公平ではないのか?
 
「そ、そうか、それはよかったよ。で、では、いっ、痛ぅ……う、動くぞ」

 やっとの思いで、修太を全て受け入れることが出来た。
ズキズキと、鋭い痛みが全身を駆け巡ってはいるが、心の充実感の方が勝っている。
やっと……やっと修太とSEXができた。やっと一つになることが出来た。
そう思うだけで、痛さなど気にならなくなってしまう……とよかったのだが。
現実問題、この痛さではこれ以上動くこともままならないと思う。
……ダメだ!こんな痛みに負けているようではいけない!
最後まで修太には気持ちよくなってもらわねば、何の為にラブホテルで部屋を借りてまでSEXをしているんだ!
意を決して腰を浮かせ、動き出そうとしたのだが……修太に下から抱きしめられた。

「……彩、もう動かなくていいぞ。オレ、このままでも十分気持ちいいぞ」
「し、しかしだな、SEXというものは、女性の膣に男性のペニスを入れてピストン運動をすることにより、
お互いの粘膜を刺激し、快楽を得るものだ。入れただけでは気持ちいいはずはない。
私に気を使ってくれるのは嬉しいが……君が気持ちよくならなければ、私は嬉しくないんだ」
「彩……ははは、お前、やっぱりバカだな」

 私を抱きしめながら、耳元で囁く修太。
バ、バカだと?こんなにも痛い思いをしている私に対して……何故バカなんて酷い事を言うのだ!

「んな?き、君の為にこんなにも痛い思いをしているのに、バカだと?」
「だからバカなんだよ。オレ、気持ちいいのは好きだけどさ、お前の痛がる顔を見たいわけじゃないぞ?
オレ、お前が痛がってるのに気持ちいいからって喜ぶようなバカじゃない。オレはそこまでバカじゃない」

 私を気遣ってくれる修太の優しさに、涙が溢れてくる。
君は……本当にバカだな!私の事なんか気にせず、気持ちよくなってくれればいいのに。

「し、しゅうたぁ……グスッ、それでも私は君に気持ちよくなって欲しいんだ」
「だったらさ、このままでキスしてくれよ。
今のままでも十分に気持ちいいんだからさ、キスしながらだともっと気持ちいいと思うんだ。
お前もキス、大好きだろ?」
「そ、それは……確かに私は君とのキスは大好きだ。
しかしだな、そんな事で君が気持ちよくなるとは思えな……んん!」

 強く抱きしめられてのキス。修太の舌が私を激しく犯す。
舌を絡め取り、唾液を送り込んでくるだけではなく、口腔内を好き勝手に暴れ周り、歯や歯茎までもが舌で犯される。
唾液を飲む度に下半身が頭がおかしくなり、舌が私を犯す度に繋がった下半身が熱くなる。
上半身、下半身共に修太に犯されている。その事実が、私を狂わせた。

「ん、んん!しゅ、たぁ。ん、ちゅ、ちゅちゅ、すきぃ、しゅうたぁすきぃ」
「ん、んぷ、ちょ、ま、待て彩、ちょっと……んぷ」
「しゅうたぁ、しゅうたぁ!スキ、しゅうたぁ〜!」
「う、うあ……あ、彩、オレ、もうイク、出る……う、おおおお〜!」

 激しい修太のキスのせいで、私の何かに火が付いたようだ。
勝手に上下に動き出す下半身。まるで別の生き物のように止まらなくなった、修太を絡め取る舌。
痛さなど既に感じなくなってしまい、一心不乱に腰を振り、深いキスを続ける。
狂ってしまった私は、満足するまでキスを続け、腰を振り続ける。
途中、射精して使えなくなったコンドームを何回も取り替えて、修太を貪ってしまった私。
……ゴメン、その、なんだ……き、君がいきなりキスをしてくるからいけないんだ。
私を狂わせた修太が悪い。……延長料金まで払わせてしまったのは、本当に申し訳なかった。 
154ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:07:13 ID:zz0rDqgG
「島津っち、おっはよ〜!ついに結城とえっちしたんだ?」
「いやぁ〜めでたいねぇ。今日の放課後さ、島津っちのおめでとう記念で何か食べに行かない?」
「お?いいねぇ、お祝いだからさ、美味しいもの食べに行こうよ!」

 結城との初めてのSEXを無事に終えた次の日の朝、何故か私達がSEXをしたと知っている友人達に囲まれた。
……無事に終えたと言えるのだろうか?
結城はヘロヘロになって帰って行ったし、私はママにブラジャーが千切れてしまっていたことを突っ込まれ、
結城とのSEXがばれてしまった。
ブラジャーが千切れてしまったことには、正座をさせられ、お説教をされてしまった。
いくら消耗品とはいえ、物は大事にしなきゃいけない、と。
……正論だ。次にSEXする時は、キチンと外してからすることにしよう。
しかしSEXについては、よく避妊をしたねと褒めてくれた。
私がSEXをしたと知ってしまったパパは、バットを持って結城の家に殴りこもうとしていた。
……パパ、私のことを心配してくれるのは嬉しいのだが、
結城を『殺す』だとか、『死んでしまえ!』などとは言わないでほしいな。
そんな物騒なことを言うからママに叱られてしまうんだ。
それにしても何故友人達は私と結城がSEXしたと知っているのだ?

「ちょ、ちょっと待ってほしい。何故結城とSEXしたことを知っているのだ?
まだママとパパにしか知られていないというのに……もしかして結城に聞いたのか?」

 私よりも先に結城が教えたのか?
まぁいい、いろいろな事を教えてくれた友人達には、結果報告をしなければと考えていたからな。
でも教えたのなら、一言言ってほしかったな。……どうせなら2人で一緒に報告をしたかったな。

「違うよ。結城、まだ来てないじゃん。島津っちを見てて、えっちしちゃったんだって思ったの」
「そうそう。だって島津っち、歩き方すっごくヘンなんだよ?」
「がに股っぽい歩きかたしてるしね〜。まだ中に入ってるみたいな感じなのかな?」 

 ヘンな歩き方?そ、そうなのか?私はヘンな歩き方をしていたのか?
確かにまだアソコには結城が入っているような違和感を感じている。
あれだけ求め合ってしまったんだ、まだ入っているように感じているのも、仕方がないことだと思う。
だ、だからなのか?だからヘンな歩き方をしているのか?

「そうか〜。島津っちも大人になっちゃったんだねぇ〜」
「結城に喰われちゃったのかぁ〜。おめでたいような、残念なような。う〜ん、微妙な気がするねぇ」
「く、喰わられた?喰われたとはいったいどういう意味なのだろうか?」
「ん?それはね、島津っちが結城にパクリと食べられちゃったって意味だよ」
「結城に食べられた?何を言っているのか、意味がよく分からな……」
「おはよ〜っす。なぁお前ら、朝からなに騒いでるんだ?」
「あ、おはよー。昨日ね、島津っちがあんたに食べられちゃったって話をしてたの。
こんな綺麗な彼女とえっちできるなんて、この幸せ者!」
「ねぇねぇ、どうだった?島津っちの味は堪能した?天国だった?」

 友人達との会話に割り込んできた男の声。どうやら結城が来たみたいだ。
友人達は標的を私から結城に変えたのか、SEXの事を話しかけている。
そんな友人達の勢いに戸惑っている結城。
私は結城とSEXした事を隠すつもりはない。むしろ大好きな人と初めてのSEXが出来たんだ、誇らしいくらいだ。
結城もきっとそう考えているだろう。しかし詳しく話すのは勘弁してほしい。
あれは私たち2人の大事な秘密なんだ。結城もそう思うだろう?
……何故戸惑っているような、ヘンな顔をしている?
155ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:07:34 ID:NgbQR/a7
「食べた?いや、昨日のアレは、どちらかというと、オレが食べられたぞ?」
「へ?結城が食べられたってどういうこと?」
「それがさ、オレ、島津に何度も無理やり立たされてさ、あれは天国というか、地獄……」
「余計なことは喋るな!フン!」
「へ?……へぶん!」

 フゥ〜フゥ〜フゥ〜……だからお前はバカなんだ!
何故二人だけの大事なことを人に話そうとする!そんなバカは蹴り飛ばされて当たり前だ!

「お?今日の下着はセクシーな黒色なんだ?」
「ということは〜……今日もするつもりかな?」
「んな?な、なな、何を言っているんだ?べ、べべべつにホテルに行こうなんてこれっぽっちも考えていない!」
「おおお〜!島津っちが盛ってるよ!結城に餓えちゃってるよ!」
「島津っちって結構大胆だよね?人は見た目じゃ分かんないねぇ」
「こ、この下着はアレだ、結城が私の下着を引き千切ったから仕方なく着てきたんだ!」
「うおお〜!引き千切られたんだ?で、その後で結城を食べちゃったんだよね?
う〜ん、島津っちのえっちって、野生的なえっちなんだねぇ〜」
「ますます人は見た目じゃ分かんないねぇ〜」

 ぐ、ぐぅぅ……朝から教室の真ん中で何故このようにからかわれなければいけない?
これも全部、結城のせいだ!…………ゆ、結城?どうした?何故泡を吹いている?

「ゆ、結城?結城どうしたんだ?何故痙攣している?冗談はよせ、起きるんだ!
……ダ、ダメだ!死ぬな結城!私を一人にしないでくれ〜!」
「う〜ん、この漫才もちょっとマンネリだねぇ。新しいオチが欲しいところだね」
「そうだねぇ〜。でもさ、本人達はいたって真剣だってのが面白いよね?」  

 結城、起きろ!起きるんだ!私を置いてイカないでくれ〜!
156ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/05/29(木) 00:08:26 ID:NgbQR/a7
今回は以上です。

今気がついたのですが、タイトルを入れ忘れたことをお詫びします。
157名無しさん@ピンキー:2008/05/29(木) 00:27:44 ID:EzKtTL61
たっぷりと堪能させていただきました。
GJ!!
158名無しさん@ピンキー:2008/05/29(木) 02:12:31 ID:DntC5XG0
GJ!!!!
159名無しさん@ピンキー:2008/05/29(木) 04:45:54 ID:yIrfHWOO
島津っちは実はアホの子だったんだなw

可愛い可愛い。二人とも愛しいよー!GJ!
160名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 13:11:31 ID:vg/VK9cC
全く、このバカップルめw
未来永劫幸せになりやがれっ!!

てことでGJをさらに進呈♪
161名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 14:13:26 ID:5UU8/Pdd
GJ!
へぶんワロタwww
162名無しさん@ピンキー:2008/06/03(火) 22:03:40 ID:ttHAL73Q
163名無しさん@ピンキー:2008/06/07(土) 10:08:39 ID:IpSFONQL
違和感を感じてしまう島津さんは確かにアホの子だww
アホの子GJ!
164名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 22:47:22 ID:3Uo4laR4
そういえば最初のほうは一発殴っただけで先生に呼び出されてたわけだが
最近はどうなんだろう
165名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 22:52:26 ID:h+fkBjFT
>>164
もう見慣れてしまったんだろww
166名無しさん@ピンキー:2008/06/14(土) 13:15:04 ID:h3MJHhxI
ho
167名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 10:15:24 ID:hexBuOIe
保守
168名無しさん@ピンキー:2008/06/20(金) 19:18:12 ID:mJAAnmoj
保守
169名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 12:52:12 ID:UeCkQHlf
170名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 15:19:05 ID:1T5L8kGs
新作の投稿がないと過疎るとはなんと分かりやすいスレだ

ここは1つ強気っ娘のよさについて語りあって新作がくるまでをしのごうではないか
俺は新参だからあまり語れるようなことないんだけども
171ブギーマン ◆kBKsYEB7q. :2008/06/30(月) 20:21:28 ID:dQvTDuR3
見知らぬ女を抱いた。抱きたかったから抱いた。侘しいから抱いた。人肌恋しかったから抱いた。
女の裸体を抱き寄せ、互いの唇を重ねる。毛穴から汗がにじみ出た。
大量のアルコールがもたらす酩酊感が意識を遷移させる。女の乳房に顔を埋めた。女の体臭に男根が反応する。
むせ返るような匂いだ。汗と愛液とザーメンが熱で溶けて混じりあう。生酸っぱい臭気を鼻腔いっぱいに嗅いだ。
臭気が濃密さを増していく。そこから先のことは良く覚えていない。

今朝早く、お前がドアを叩いたときに
今朝早く、お前がドアを叩いたときに
おれは言った、「やあ、悪魔。出かける時間だな」

おれと悪魔は並んで歩いた
おれと悪魔は並んで歩いた
おれの女を気のすむまでぶちのめしたい
 
あいつはおれをつけまわす理由が自分でわかっちゃいない
(語り)ベイビー、お前の態度は不実でそっけないな
あいつはおれをつけまわす理由が自分でわかっちゃいない
きっと地面の奥深くに潜んでいるあの悪霊のせいだろうさ

おれの身体をハイウェイのそばに埋めてもいいぜ
(語り)ベイビー、死んだあとどこに埋められるかなんておれにはどうでもいいんだよ
おれの身体をハイウェイのそばに埋めてもいいぜ
そうすりゃおれの悪霊がグレイハウンドバスに乗れるからな

          ──ロバート・ジョンソン『俺と悪魔と』──
172ブギーマン ◆kBKsYEB7q. :2008/06/30(月) 20:26:32 ID:dQvTDuR3
フィルターだけになったキャメルを地面に落とし、踏みつける。
夜風にうだるような熱気が孕んだ。蒸し暑い──生温い風が高津英二の首筋を撫でた。
こめかみから浮き出たぬるい汗が頬を伝う。額から吹き出す汗の雫が熱気で蒸発した。
鈍色に光るマンホール、剥きだしのコールタールに唾を吐いた。
地面にべっとりと付着した乾いたガムと潰れたタバコの吸殻が視界に飛び込む。

携帯画面を見た。時刻は午前二時八分。ギターの弦を垂らしたような三日月を黙って睨む。
高津はA&Gのシルバーリングを舌でなぞった。苦い。純粋な銀の味だ。
今夜の戦利品だ。髑髏を象った銀モノの指輪──ドレッドヘアの餓鬼からぶん取ってやった。
こんなものでも売れば酒代くらいにはなる。
あるいはガンジャの二グラムでも拝めるかもしれない。
寂れた深夜の渋谷センター街の路上をうろつきながら、高津はジョニ赤のスキットルボトルを呷った。
 
酒がざらつく咽喉を潤す。勢い良く流れるアルコールが食道を灼いた。
胃袋がアルコールを吸収する。筋や健が強張った。
ギャングもヤクの売人も渋谷から少なくなって久しい。うざったいSCGPのせいだ。
今ではほとんどが六本木に溜まっている。額から流れる一筋の汗を高津は手の甲で拭った。
道玄坂を横切り、わざとアスファルトを踏みつけ、踵を鳴らしながら歩く。

退屈だった。退屈は罪だ。退屈はそれ自体が罪だ。退屈なのに何もする気が起きない。
星一つない夜空を見上げた。今夜は星空も自分の寝ぐらで休んでいるのだろう。
173悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. :2008/06/30(月) 20:32:22 ID:dQvTDuR3
今日は家に帰って静かに酒でも飲むかと一人ごち、高津は自宅のアパートに足を向けた。
人影の途絶えた路地。静寂な空間に軋む己の骨音をブルースハープの代わりに聴きながら。
*      *     *      *     *      *     *      *
苗字は母方のもので高津は今でもそれを名乗っている。時代おくれのブルースを聴き、高津がジンを口に含む。

時折、高津は自分の人生に嫌気が差してたまらなくなる事があった。
人生に嫌気が差すとジンを浴びるように飲む。
すると気分は更に憂鬱になり、やりきれなくなる。
憂鬱な気分に落ち込むと死にたくなる。死にたくなると見境がつかなくなった。
ブルースがついて回る状態になるのだ。
誰彼かまわず噛み付き、高津は喧嘩を吹っかけて回った。
いつしかヤクザも与太公も高津を避けるようになり、陰で『気狂いピエロ』と呼んでは蛇蝎のごとく嫌悪した。

十七年間という人生の記憶をたぐり寄せても良い思い出という奴は何一つ浮かんではこない。
高津の人生はやりきれなさの連続だった。だからこそ高津は酒とブルースをこよなく愛する。
大久保にある安普請のアパートで物心つく前から高津は母親と二人きりで生活していた。
赤錆に覆われたトタン板作りの吹けば飛ぶような安アパートだ。
父親はいなかった。母親に聞いてみようとも思わなかった。
母親の売春行為がばれて生活保護を打ち切られてしまい、ボロの服を着て腹を空かせていたのだけは覚えている。

湿り気のせいでぶよぶよに腐って黒く変色した古畳の上で高津はいつも震えていた。
母親と客とのセックスの様子と喘ぎ声を聴きながら、幼い頃の高津は肩を潜めて震えていた。
破れた障子の向こう側で母と客のシルエットが映る。生臭い匂いが鼻をついた。
愛液と精液の入り交ざった臭気だ。吐き気がした。生唾を飲み込んだ。朝日が訪れるまで、高津は耳を塞いだ。
174悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. :2008/06/30(月) 21:48:11 ID:dQvTDuR3
台所から漂う生ゴミの異臭、腐汁をしたたらせた鶏肉を旨そうについばむ太ったチャバネゴキブリ、
茶色い触覚を震わせて生ゴミを漁るチャバネゴキブリの群れ。眼球が白濁したネズミの死骸。
高津はいつも怯えていた。痛みに雑言に苦痛に怯えていた。石ころになれればどれだけ幸せだったろうか。
秋代は鬱憤晴らしに実の我が子をいたぶった。
お前を見ているとイライラしてくるッ、汚い子だね、あっちへおいきッ、

罵声を浴びせられた。灰皿代わりにタバコの火を押し付けられた。顔が気に入らないと怒鳴られ、横面を拳で打たれた。
ペニスを針で突き刺され、小指をへし折られた。来る日も来る日も、苛め抜かれ続け、高津の精神は限界だった。
だから殺した。誰を。母親を。どうやって。金属バッドで。
寝込みを襲い、今までの怒りをぶつけるかのように、高津は何度も秋代の身体目掛けてバッドを振り下ろした。
激痛で涙と鼻水まみれになった秋代の顔面──額にバッドを叩き込んだ。

額がひっしゃげ、バッドが頭蓋骨にめり込む感触。生まれて始めて体感した衝撃に血管が凝固した。
赤い網膜を張り付かせた眼球が、視神経ごと飛び出したあの光景は今でもはっきりと記憶している。

高津の最初の殺人だ。この時、十一歳だった高津は児童自立支援施設に送られた。
親殺しのレッテルを貼られて。
二度目の殺人は忘れもしない十四歳の七夕祭り──施設を抜け出した高津は喧嘩になった相手のひとりを刺殺した。
使用した凶器は砕けたビール瓶。
喧嘩の最中に割れたビール瓶の尖端が、誤って相手に突き刺さってしまった。

殺す気は無かったという高津の言い分が家庭裁判所で通り、
初等少年院に送致後、一年ほどで出所した。
175悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. :2008/06/30(月) 21:53:08 ID:dQvTDuR3
十五歳で娑婆に舞い戻った高津を引き取ったのは自分の父親だと名乗る秋城英一という男だった。
己に流れる血──高津は男が自分の本当の父親であることを本能で悟った。
英二という自分の名前も恐らくこの男から取ったものなのだろう。
感慨などは全く湧かなかった。ただ、悟ったというだけの話だ。

英一の息子だから英二。安直な名前の付け方だ。
松涛にある自宅内の敷地は四百坪ほどの広さがあり、かなりの金を持っている事だけはわかった。
三階建ての奢侈な住宅に通されたとき、高津は腹の底から憎悪が沸々と煮えたぎるのも感じた。
この家と比べてみれば、自分と秋代の住んでいたアパートはブタ小屋か公衆便所よりひどい。
男の妻は二年前に他界し、今では娘とふたり暮らしだとのことだ。だからどうしたというのだろうか。

そもそも何故、こいつは俺を引き取ったのだろうか。それが一番の疑問だった。
高津にとって、親子の愛情だとか血の絆という奴は何の意味も持たない。
実の母から虐げられ、実の母を殺した少年には何もかも虚しいだけだ。
『お父さん、お帰り。そいつ誰よ?』
階段から降りてきた少女が高津を指差す。そいつ誰よとはご挨拶だ。

この女は俺にぶちのめされたいのか。それとも殺して欲しいのか。
高津のガラス球のように光る冷たく鋭利な瞳が少女を突き刺した。
少女の相貌が青白く退色していく。その視線に英一は気づかず、少女に高津を紹介した。
間抜けな男だ。隙だらけの間が抜けた男だ。
『未優、弟に向かってそいつという言葉があるか。今日から私達は英二と三人で暮らすんだぞ』
『あたし、そんな奴と一緒に暮らすなんて真っ平ごめんよッ、絶対にいやだからねッッ!』
未優が下がってきた階段を駆け上り、自室へ引きこもる。
176悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. :2008/06/30(月) 21:58:29 ID:dQvTDuR3
別にこちらから住まわせてくれだとか引き取ってくれと言った覚えはない。
最初からひとりで生きていくつもりだった。
盗みでもタタキ(強盗)でも何でもやって暮らしていくつもりだった。
『あんたの娘は俺の事がお気に召さないようだよ。余計ないざこざは俺もごめんこうむるんでね。
俺を大久保まで送っていってくれよ。あとはひとりでなんとかするさ』
英一が少し慌てながら振り返った。高津に愛想笑いを浮かべる。

『まあ、そういわないでくれ。未優もいきなりの事で少し動転しているんだよ』
『まさか、話してなかったのか』
『いや……前々から少し話してはいたんだが……』
『どっちにしてもこうも毛嫌いされちゃ話し合う余地はないだろうさ。
誰が好き好んで人殺しなんかと暮らしたいと思うんだ。あんたの娘の言い分ももっともだろうよ。
それからな、俺の事は高津と呼べ。英二なんぞと名前で呼ばれるのは妙に馴れ馴れしくて頂けないからな』
なんとか英一が食い下がって高津を引き止め、一晩だけでもと部屋に案内した。

高津は文字通り、一晩だけ泊まり、その日の内に自分の居所を探してきた。
高級住宅など高津の肌にはどうしても合わなかったからだ。
あれからもう二年が経つ。なんとか塀の中に放り込まれるのをやり過ごしてきた。
あれほど自分を毛嫌いしていた未優は今ではなんだかんだと、つきまとって離れようとしない。
ブルースのようにつきまとって、いくらはなれようとしても纏わりついてくる。
高津はひっしゃげたキャメルのパッケージから、タバコを一本取り出して、口にくわえた。
ギターを手に取る。ピックの代わりに十円玉を使って無造作に鳴らした。

気が狂いそうな気持ちだぜ、自殺でもしなきゃおさまりがつきそうにない気分だぜ
お前を見るたびに、俺の心の奥がどうにかなっちまいそうなんだよ

*      *     *      *     *      *     *      *
未優は窓辺から差し込む光を頬に感じ取り、目を覚ました。時計を見遣る。

ベッドの上で間延びすると部屋着を脱いで軽いストレッチを行った。
オリーブグリーンのTシャツにリーバイスのジーンズに着替える。。ラフな服装だ。
今日は休校日だった。
英二はまだ眠っているのだろうか。テレビをつけてリモコンを操作する。
ブラウン管から流れるニュース──軽薄そうなコメンテーターやら、
我が物顔の太った女評論家やらが大声でごちゃごちゃと何かをまくしてていた。
177悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. :2008/06/30(月) 22:14:42 ID:dQvTDuR3
チンピラに追い討ちをかける英二。顔面を殴った。殴った。殴った。殴った。殴った。
両腕を交差させ、何度もフルスイングでチンピラを殴り飛ばす弟は、唇を引きつらせて微かに笑っていた。
顔皮が鮫にでも食いちぎられたかのように歪に裂けた。飛沫あげた血が英二の襟元に付着する。
生まれて初めて見る光景だった。暴力。子供同士の喧嘩ではない。本物の暴力だ。
鮮血が飛び散る圧倒的な暴力に未優は茫然自失した。

英二が懐からアイスピックを取り出した刹那、未優は我に返った。
『お願いだから止めてよッ、殺す気なのッ!』
英二の後ろ首を羽交い絞めにして、懸命に取り押さえる。肘で未優を押しのけると馬乗りになった英二が立ち上がった。
血を滴らせた拳を舌で舐める。英二は未優に尋ねた。
『酒もってないか?』
未優は震えたまま、首を横に振るだけだった。
*      *     *      *     *      *     *      *
重く疲れた頭をもたげ、高津がバーボンのボトルに口をつける。十三センチのジャックナイフを掌で弄んだ。
ジッポーのヤスリを親指でこする。キャメルに火をつけた。濃厚な紫煙がゆるやかに立ち昇る。

玄関ドアを叩く音──こんな朝っぱらから誰だ。また、未優が尋ねてきたのだろう。
「入りたきゃ勝手に入りなよ。鍵はかけてないからな」
玄関ドアが赤く錆びついた音を立てて開いた。未優が顔を覗かせる。
相変わらずいつ来ても薄暗い部屋だ。日当たりが悪いせいもあるのだろう。
陰鬱で湿っぽく狭い部屋だった。この部屋の掃除など一度もしたことがないのだろう。

「何にもない部屋ね。狭いし不潔だし、よくこんなとこで暮らせるわよね」
「嫌なら来るんじゃねえよ。一体俺に何のようだ」
空気が淀んでいる。アルコールの匂いが未優の鼻腔粘膜を刺激した。高津がわざとらしく下品にゲップを漏らす。
「こんな朝からお酒飲んで身体悪くするわよ」
「朝飯を飲んで何が悪いんだ」

「馬鹿英二、朝ごはんは飲んじゃなくて食べなさいよ」
「口の減らねえ女だな。そんなんだからいつまで経っても男ができねえんだよ」
「そ、そんな事あんたに言われる筋合いなんてないわよ!」
未優が玄関の電気をつけて、部屋の奥へあがった。酒瓶が所かしこに転がっている。
「何か食べにつれていってあげるわ」
「悪いがそんな気分じゃねえんだ。夕べの酒がまだ残っててな」

「とにかく、お酒飲むのやめなさいよ」
「てめえとシラフでなんざ喋れるか。いいから俺の事はかまうんじゃねえよ。
親父殿から言われたとおり、学校にゃ真面目に通ってるんだからな。金蔓は大事にしねえとな」
178悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. :2008/06/30(月) 22:17:25 ID:dQvTDuR3
間違えた。修正。

気になるようなニュースはない。未優はすぐさまテレビのスイッチを切った。
英二に会いたい。弟に会いたい。会いたいが何を話せばいいのだろう。
本心ではない。傷つけたくもない。英二が好きだ。
だが、顔を合わせればいつもこの口から出る心ない言葉は辛辣で無神経で、英二のハートを打ち砕く。
英二は私に苛立つ。今にも殴り倒しそうな剣幕で怒鳴る。
ウイスキーボトルを壁に叩きつけ、失せろと怒鳴る。それでもかまわない。
私は英二に命と心を救われた。一度ではない。二度も救われた。
私は英二が好きだ。愛しているのだ。だから、殺されてもかまわない。

おれと悪魔は並んで歩いた
おれと悪魔は並んで歩いた
おれの女を気のすむまでぶちのめしたい
あいつはおれをつけまわす理由が自分でわかっちゃいない

 
未優は無意識に口ずさんでいた。いつも英二が歌うブルースの歌詞を、口ずさんでいた。
アルコールとニコチンで爛れた咽喉仏を搾り出し、中古の古ぼけたギターを弾いている英二の姿が胸裏に浮かぶ。
不機嫌そうに顔を歪め、あらゆる感情をブルースにぶつける英二。
それは怒りであり、哀しみであり、絶望であり、諦観だ。そっけない英二の態度。
それでも会いたくてたまらなかった。あの悪魔に。

会いたい理由ならわかっているはずだ。それともわかったと思い込んでいるだけなのか。
英二は酒とブルースに依存し、中毒している。それは一歩ずつ、確実に死へと近づいている証拠だ。
高津は間違いなくアルコール中毒者で気が狂っている。あの時、英二が垣間見せた狂気と暴力への衝動。
未優に絡んだチンピラの哀れな末路。突発的であまりにも鮮烈だった。

ヴェルサーチのサングラスをかけたオールバックのチンピラ──英二が脇腹に拳をめり込ませた。
蹲るチンピラの顎目掛けて爪先を放つ。低く鈍い音が立った。
衝撃を受けたチンピラの顎が横に奇妙にねじくれる。
倒れるチンピラ──馬乗りになった。男は地元の人間ではなかったのだろう。
出なければ英二に対してあんな無謀な真似はしなかったはずだ。

チンピラに追い討ちをかける英二。顔面を殴った。殴った。殴った。殴った。殴った。
両腕を交差させ、何度もフルスイングでチンピラを殴り飛ばす弟は、唇を引きつらせて微かに笑っていた。
顔皮が鮫にでも食いちぎられたかのように歪に裂けた。飛沫あげた血が英二の襟元に付着する。
生まれて初めて見る光景だった。暴力。子供同士の喧嘩ではない。本物の暴力だ。
鮮血が飛び散る圧倒的な暴力に未優は茫然自失した。

英二が懐からアイスピックを取り出した刹那、未優は我に返った。
『お願いだから止めてよッ、殺す気なのッ!』
英二の後ろ首を羽交い絞めにして、懸命に取り押さえる。肘で未優を押しのけると馬乗りになった英二が立ち上がった。
血を滴らせた拳を舌で舐める。英二は未優に尋ねた。
『酒もってないか?』
未優は震えたまま、首を横に振るだけだった。
179悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. :2008/06/30(月) 22:25:20 ID:dQvTDuR3
*      *     *      *     *      *     *      *
重く疲れた頭をもたげ、高津がバーボンのボトルに口をつける。十三センチのジャックナイフを掌で弄んだ。
ジッポーのヤスリを親指でこする。キャメルに火をつけた。濃厚な紫煙がゆるやかに立ち昇る。

玄関ドアを叩く音──こんな朝っぱらから誰だ。また、未優が尋ねてきたのだろう。
「入りたきゃ勝手に入りなよ。鍵はかけてないからな」
玄関ドアが赤く錆びついた音を立てて開いた。未優が顔を覗かせる。
相変わらずいつ来ても薄暗い部屋だ。日当たりが悪いせいもあるのだろう。
陰鬱で湿っぽく狭い部屋だった。この部屋の掃除など一度もしたことがないのだろう。

「何にもない部屋ね。狭いし不潔だし、よくこんなとこで暮らせるわよね」
「嫌なら来るんじゃねえよ。一体俺に何のようだ」
空気が淀んでいる。アルコールの匂いが未優の鼻腔粘膜を刺激した。高津がわざとらしく下品にゲップを漏らす。
「こんな朝からお酒飲んで身体悪くするわよ」
「朝飯を飲んで何が悪いんだ」

「馬鹿英二、朝ごはんは飲んじゃなくて食べなさいよ」
「口の減らねえ女だな。そんなんだからいつまで経っても男ができねえんだよ」
「そ、そんな事あんたに言われる筋合いなんてないわよ!」
未優が玄関の電気をつけて、部屋の奥へあがった。酒瓶が所かしこに転がっている。
「何か食べにつれていってあげるわ」
「悪いがそんな気分じゃねえんだ。夕べの酒がまだ残っててな」

「とにかく、お酒飲むのやめなさいよ」
「てめえとシラフでなんざ喋れるか。いいから俺の事はかまうんじゃねえよ。
親父殿から言われたとおり、学校にゃ真面目に通ってるんだからな。金蔓は大事にしねえとな」1
バーボンを飲み干すと空になったボトルを無造作に放った。
ボトルが別のボトルとぶつかり、がつんという鈍い音を鳴らした。高津が新しいジンのボトルを取り出す。
「用が無いなら出て行ってくれ。俺はひとりになりたいんだ」

「それよりもどこかに出かけましょうよ。休みの日くらいこんな所にいるのは勿体無いじゃない」
「てめえはちゃんと人の話を聞いたことがあるのか」
高津の言葉を無視して、未優が高津の脇を掴んだ。
*      *     *      *     *      *     *      *
井の頭公園をふたりで散歩し、通りの喫茶店で紅茶の飲み比べをして歩いた。
とはいっても飲むのは未優だけで英二は紅茶に口をつけようとしない。英二は紅茶より酒のほうがいいのだ。
始終無言の英二はどこか遠くを見つめていた。

私のことを嫌いにならないでよ、英二、お願いだから嫌いにならないでよ。
そっと未優が英二の身体に肩を寄せ付けた。うざったそうに英二が未優の身体を押しのける。
「暑苦しいぞ、ベタベタ触るんじゃねえよ」
「別にいいじゃない。姉弟なんだし」
180悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. :2008/06/30(月) 22:33:59 ID:dQvTDuR3
「お前の頭はめでてえな」
渋谷区神南にある「たばこと塩の博物館」にも足を運ぶ。休日だというのに人影はまばらだ。百円の入場料を払う。

タバコの葉とパイプと興味を引かれたのか、真剣な顔つきで英二は熱心に眺めていた。特にタバコの歴史が気に入ったようだ。
「タバコってのはマヤ文化の頃からあったんだな。文字のない時代から吸われ続けていたのか。タバコの神のレリーフは気に入った」
「色んなパイプもあって面白かったわ。ねえ、火打ち石セット買ってみる?」
「そんなもん一体どうする気だよ」
「英二がいらないならお父さんにでもプレゼントするわ」
「そいつはいい考えだ」
*      *     *      *     *      *     *      *
背の高いスツールに腰を下ろし、高津がカウンターに置かれたハイネケンの小瓶を掴む。
ロフトを改造しただけのシンプルな店だ。心地よい。しかめ面した未優が隣の席でぶつぶつと文句を垂れている。
「この店が嫌なら帰れよ」
「べ、別に嫌ってわけじゃないわよッ」
「それならなんでさっきから文句を言うんだ」
ノンアルコールカクテルを美味くも無さそうに飲む未優を横目で観察しながら、高津がビールに口をつけた。
「少し待ってろ。今から面白いもんが見られるからよ。ここはただのバーじゃない。ショー・バーなんだ。
客の飛び入り参加OKのな。お、どうやら始まるみてえだぞ」
小さなステージを指差して、高津が未優を促す。誘われるように未優の顔が真後ろにあるステージへと振り返った。
マイクを握った二十代前半の端麗な容貌をした女がステージに立っている。
黒いベルベッドのように艶やかな、女のセミロングの髪が揺れた。
ドライアイスのスモッグと、客達の吐き出すタバコの煙に反射するライトの光。女は爪先で軽くリズムを取った。
女が唇をマイクに近づけ、歌いだす。女の持ち歌はキャブ・キャロウェイの『Minnie The Moocher』だ。

宿無しで尻軽女だったミニーの話をしよう ベリーダンサーの下っ端で、 
がさつで酷い女だったが、心はクジラみたいにでかかった
ハイディ ハイディ ホー ハイディ ハイディ ホー ヒディ ヒディ ヒディ ヒー 

くねる腰に合わせて蛇行しながら女がスキャットを巧みに発する。客の視線は女の腰と尻に釘付けだった。
ハイディ ハイディ ホー ハイディ ハイディ ホー ヒディ ヒディ ヒディ ヒー 
何人かの客達が女につられてスキャットする。

ミニーはスモーキーってジャンキーの世話をしてやっていた 
ミニーはそいつを愛してたが、男はヘロインにイカレてた。
野郎はミニーをチャイナ・タウンに連れてって、ヘロインをミニーにキック(ヤクを打つ)しやがったのさ
ハイディ ハイディ ホー ハイディ ハイディ ホー ヒディ ヒディ ヒディ ヒー 
ハイディ ハイディ ホー ハイディ ハイディ ホー ヒディ ヒディ ヒディ ヒー
ハイディ ハイディ ホー ハイディ ハイディ ホー
ミニーはスウェーデンの王様を夢見てたよ 王様はミニーの欲しいものをなんだってくれるから
純金と鉄で建てた家も、ダイヤモンドの車輪をつけたプラチナの車も
だけど死んじまった哀れなミン、もう死んじまったミン、ああ、ミニー・ミン!

高津は女に見覚えがあった。ああ、そうだ。二週間前に円山町のラブホテルで抱いた女だ。
ほくそえみながら、高津はビール瓶を掌でまわした。
181名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 23:03:42 ID:mktAg7O3
支援要る?
182名無しさん@ピンキー:2008/07/03(木) 10:24:41 ID:SjrTJAkj
なんかハードボイルドな感じですね。続きに期待です。 
ただお願いなんですが、投下終了時になにか投下が終わったことが分かるレスをしていただけるとありがたいです。
183名無しさん@ピンキー:2008/07/03(木) 11:40:04 ID:s2VrPZKP
この人は続き書かないから、待つだけ無駄だよ。

そして半年くらい放置した自作のことは、きれいに忘れる。
184名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 17:28:08 ID:qP8g4al3
まあまあ、そういうこと言ってちゃ余計続き創り難くなるだろうから黙っていようぜ
185名無しさん@ピンキー:2008/07/06(日) 01:10:55 ID:mN0T37sb
「ミニー・ザ・ムーチャー」はジャズ板でもわかる奴が少数、
ミステリ板のハードボイルドスレで知ったかする奴が若干という類の曲だから、小道具としてはちと……
キャブ・キャロウェイってエロパロ板で通じるか?
186名無しさん@ピンキー:2008/07/06(日) 06:30:26 ID:CUz7PR1q
>>185

ブルースブラザース!
187悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. :2008/07/06(日) 11:21:34 ID:6LkQQOC4
>>185

マイナーだからこそいいんだ。
188名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 16:09:08 ID:0N99fv8i
ほしゅ
189 ◆qVkH7XR8gk :2008/07/11(金) 01:58:18 ID:uNUMrK8w
2次で投下さして下さい。
元ネタはFF6。
とりあえず陵辱ものです。
190 ◆qVkH7XR8gk :2008/07/11(金) 01:59:57 ID:uNUMrK8w
 皇帝の寝所の扉の前には、一人の少女が立っていた。
プラチナブロンドの髪は背中の半ばで揃えられ、
冷たさすら感じさせる整った美貌によく似合っている。
 一見すると人形のような顔立ちだが、
深いブルーの瞳に宿る強い意志の光がその印象をかき消している。
 また、身に着けているものも普通の女性とは少し違っていた。
帯刀こそしていないものの、淡い若草色のチュニックにブーツという
男性のようないでたちをしている。
 それもそのはず、彼女はこの国で小隊を率いている軍人なのだ。
 魔法を使いこなし、冷徹なやり方で完全な勝利を収める彼女は、
いつしかこう呼ばれるようになっていた。常勝将軍、と。

 だが彼女にも秘密がある。今まで隠し続けている秘密だった。
彼女はドアノブに手をかけ、ため息をつく。 
数秒躊躇した後、重い鉄製の扉をゆっくりと押した。


 室内は、無機質な扉の外からは想像もつかないほどの豪奢な装飾が施されていた。
各地の一級品ばかりを寄せ集めた、成金趣味の塊のような部屋だ。
床には虎の毛皮が敷かれ、中央に据えられたベッドは黄金の細工が施された
天蓋付という念の入れようだ。
 血の色のような深い赤の布団にくるまった、初老の男がゆっくりと顔をあげた。
冠こそかぶっていないが、見事なあごひげでその男が誰なのか
明らかにしていた。
世界を征服するとさえ噂されている軍事大国の皇帝、ガストラだ。

「セリス、確か30分前に呼んだはずだが?」
ガストラはベッドサイドにおかれた琥珀色のテーブルを指先でトントンと叩いた。
セリスはきっ、と睨みつける。
「今更何の用?」
「軍隊は随分と楽しいようだな?呼んでもすぐに来ないとは。
まぁ良い。今日は久々に楽しませてもらおう」
 反抗的な態度を意に介した様子もなく上機嫌でそう言うと、
ガストラは見るからに高価そうなワインを口に運んだ。
赤い液体がしわがれた男の喉に吸い込まれていく。
 セリスの顔色が目に見えて変わった。
青ざめたように顔から色味が引いていく。
「私はもう、そんな事をするつもりはない。他にいくらでも女がいるだろう」
きっぱりとセリスは口に出した。
191 ◆qVkH7XR8gk :2008/07/11(金) 02:00:46 ID:uNUMrK8w

 ガストラは悠然とベッドにかけると、
身に着けていたローブの前をはだけ、再び不敵な笑みを浮かべた。
「まずは…じっくりしゃぶってもらおうか」
 セリスにむかってあごをしゃくる。
「なっ…な、誰が…そんな、事を…」
 セリスは言い淀んだ。
ガストラの目が細められ、凄みを帯びる。
「それとも、お前の部下が血に染まるのを見たいのか?
処刑するのに理由など要らんことなどお前が一番よく知っているのだろう?」
「卑怯者…!脅迫とは反吐が出る」
「お前が断るかどうかは好きにすれば良い。寛大な皇帝だろう?」
 そう言うと、ガストラは低い声で笑った。

 セリスは険しい表情のままごくりと唾を飲み込む。
おずおずとガストラの前に跪いた。
 膝をついたセリスの頭上からは嘲笑う低い笑い声が更に浴びせられる。
我慢すればいい、昔みたいに心を閉ざせばいいだけの事、
そう呪文のように自分に言い聞かせると、
セリスは唇をきつく噛みしめ、ガストラの股間に顔をうずめた。
 
 既にガストラのペニスは透明な粘液が先端を濡らしている。
セリスは舌先でその液体を舐め取るように這わせながら、
中心から外周へ円を描くように滑らせる。
唇で先端をすっぽりと覆い、吸いあげるようにして上下にゆっくりと動き始める。
指先で根本をさすりながら、唾液を塗りこむかのように、
強く吸い付いたまま唇の上下運動を加速させる。
 にちゃにちゃと音を立てながら肉棒を咥え続けるセリスの頭を撫でながら、
ガストラは満足そうにささやく。
「行儀が悪いな、お前は。そんなにペニスが美味いのか?
音を立ててむしゃぶりつきおって…」
192 ◆qVkH7XR8gk :2008/07/11(金) 02:01:34 ID:uNUMrK8w
 すると、それまで穏やかだったガストラの表情が曇る。
「ずいぶんと偉くなったものだな?
儂の前で泣きながら絶頂に達した可愛いお前はどこに行った?
何度もねだっただろう?
あの時のお前の顔は最高だった。まるで娼婦そのものの顔を…」
 やめて、とセリスは半ば悲鳴のような声で遮ると、頭を振った。
脳裏に今まで記憶に刻み込まれてきた忌まわしい痴態の数々が蘇る。
「それになんだその格好は?男のような格好をしおって。
ささやかな反抗のつもりか。
まぁ所詮お前にできる反抗などその程度だ。可愛いものよ」

 唇と指先とで擦られ、熱く固くなったそれを、
更に口の奥に捩じ込むようにしてガストラはセリスの頭に手を添え、
動かし始める。
 くぐもった悲鳴をあげたセリスにも構わず、
ガストラは己の肉棒をセリスの柔らかな薄桃色の口中へと捩じ込む。
間を置かずして、先端から白濁液が迸った。
 口を離すことも許されず、口中に吐き出された液体を、
セリスはごくりと喉を鳴らし、ペニスを咥えたままの体勢でゆっくりと嚥下した。
口の中に広がる味、喉を通る感触にセリスは顔を歪める。
 やっと口を自由にする事を許されると、セリスはよろよろと立ちあがった。

「どうした、まだ退がって良いとは言っておらんぞ」
いつのまに背後に来たのか、ガストラはセリスの腕を掴むと、
恐ろしい力で引き寄せた。思わずセリスは小さく悲鳴をあげ、
勢い余ってベッドに倒れこむ。
 ガストラはセリスの上に馬乗りになると、
着衣を脱がしにかかった。チュニックを引きちぎり、ブラジャーをはずすと、
ツンと勃ったピンク色の突起が現れる。
 それを口に含んで舌で転がした。甘噛みをしてやると、
セリスは身をよじった。

 ガストラはセリスを組み敷いたまま顔を覗き込んだ。
顔を背けているが、少し開けられた唇からちらちらと覗く舌が誘っているようだ。
「儂の寵愛を受けるだけでお前は満足できぬのか?
軍属になるなどと抜かしおって…素直なのは身体だけだな?」
ガストラの指はセリスの太ももをゆっくりと焦らすように
円を描いてなぞり始める。
軽く爪を立てるようにしてセリスの敏感な部分を掻くと、
すぐに下着に染みが広がり、指先に薄布と共に、透明な粘液が纏わりつく。
ガストラは鼻を鳴らした。
「ふふ、メスの匂いをぷんぷんさせおって。
なんだこのいやらしい臭いは、セリス"将軍"?
お前がこんな卑猥な女だと知ったら部下達はどう思うだろうな?
それとも、下級兵士に犯される事を想像してオナニーでもしていたか?
犯されるのが何より感じるんだろう?淫乱め」

「ふざけるな…!私は、その、ような事……っ」
 反論しかけて、セリスは言葉を飲んだ。
ガストラの指先が肉粒を探り当て、弄び始めたからだ。
「そのような…何だ?言ってみろ」
 セリスは口を固く閉じる。
「言え、セリス。反抗は許さんぞ」
 セリスの頭の中ではガストラに対する罵声が渦巻いていた。
だが、口をつくのは喘ぎ声だけだった。
「あ、ぁっんっ…っ」
鼻にかかった声をあげながら、身を捩る。
ガストラはセリスの反応に、くっくっと満足そうに笑う。
193 ◆qVkH7XR8gk :2008/07/11(金) 02:02:36 ID:uNUMrK8w
とりあえずここまで。
長くてすみません…
194名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 20:33:04 ID:j9IYhzdR

FF6はやったことないけど期待
195 ◆qVkH7XR8gk :2008/07/11(金) 23:43:21 ID:sbrSGE4v
「お前は本当にいやらしい声を出す。
そんなに男に媚びる声を出して恥ずかしくないのか?
なぁセリス将軍。これでもお前は感じていないという気か?」
 いじられた肉芽は痺れるような快感をセリスの下半身に広げている。
「い、ゃぁ、あっ…将、軍と呼ぶ、な…」
「そう、お前は儂の愛玩人形でいればよい。
昔のようにまた身体に覚えこませてやろう。お前の主人は儂だということをな」

 ガストラはやっと大人しくなったセリス抱き起こすと、
ベッドサイドに置かれた巨大な鏡の前に座らせた。
羽交い絞めのような体勢で背後に陣取ると、
大きくM字に開脚する屈辱的な体勢を取らせる。
 ベッドサイドに置かれた巨大な鏡に卑猥な姿が映り、
セリスは思わず目を背けた。
 ガストラはセリスの顎に手をかけ、鏡のほうへ無理矢理向き直らせる。
「よく見ろ。くく…涎を垂らしすぎたせいで、
下着の上からヒダの色が透けておるわ」
「嫌っ…見たくない、こんな、の」

 既にセリスの愛液はショーツを透明にするまで溢れていた。
うっすらとピンク色の粘膜が透けて見えるのが余計にいやらしい。
力任せにガストラがそれをはぎとると、
ぐちゅ、という音と共に透明な糸が伸びる。
 ぬらぬらと光るそこをガストラは2本の指で開いた。
うっすらと赤みを帯びた突起が現れる。
親指でその皮をむき、すり潰すように突起を刺激する。
セリスの身体が喘ぎ声と共にびくっとはねた。
「太ももまで蜜が零れ落ちておる。乳首だけでなく、
クリトリスも勃起させおって。こうされるのが何より好きなんだろう?お前は」

 セリスは子供がするように、いやいやと首を左右に振る。
 鏡の中ではガストラの指が上下するたびに、
蕩けそうになったピンク色の肉ヒダから、蜜がどろどろと吐き出されて来る。
ガストラの指は膣口をゆっくりとつついた。
指に吸い付くようにヒダがまとわり付く。
ガストラは己の太い指を一本中に沈めた。
ちゅぷ、という音と共に奥へ沈められていく。
 セリスの表情が変わり、頬が上気し始めた。
根本まで指が沈むと、あぁ、と満足とも快感とも取れる声をあげた。
196 ◆qVkH7XR8gk :2008/07/11(金) 23:44:02 ID:sbrSGE4v
「どうした、またいやらしい声を出して。そんなに中までかき回して欲しいのか?」
「そ、そんなこと、誰がっ…、っくぅ」
 ガストラの指は内側の粘膜の一番敏感な場所に絞ってピストン運動を始める。
「お前はここが弱かったな。そら、擦られて嬉しいだろう」
身体の中心がかっと熱くなり、蜜の海のなか出し入れされる指の感触に、
セリスは堪らず腰を浮かせる。
「そこは、や、やめ、てっ、あっ、それ以上はっ、ぅぁうっ…」
ガストラの指は奥へとヒダを擦りあげながら、親指で執拗に淫核を撫で回している。
 同時に攻められるのが余程感じるのか、
すすり泣きのような声をあげ、セリスはぴくぴくと身体を仰け反らせる。
 くっくっと笑いながら、ガストラ空いている方の手で
セリスの乳首を指で軽くつまむようにして捻る。

「どうした、さっきから喘ぐばかりで能が無いな。
乳首も勃ちっぱなしではないか。おまけにケツまで涎でドロドロにしおって…
見てみろ、お前の淫らな汁が水溜りをつくっておるぞ」
 ガストラの言葉と、鏡で自分の乱れる姿を強制的に見せられることが、
セリスの精神を追い込んでいく。
 いくらガストラの言葉を否定してみても、
膣口は、中へ早く侵入してほしいとばかりに開いている。
荒く息をつきながら、拒否するように首を左右に振るだけで精一杯だった。
「そろそろぶち込んで欲しいんだろう?そうねだってみろ。ん?」
 ガストラはセリスの耳にささやく。
悪魔の囁きに、無意識のうちにセリスはごくりと唾を飲み込んだ。

「淫乱な私をバックで犯して下さい、そう哀願しろ」
 セリスにとって決して口にしたくない言葉だった。
残された精一杯の力で鏡の中のガストラを睨みつける。
「そんな事、言うと思う、の…か」
 ガストラはセリスの首筋をねっとりと舌で舐め上げると、
セリスの耳たぶを口に含んだ。
「お前が従順なら、儂も処刑などする気はない。
それとも、全員が殺されていくところを見たいのか?いい趣味だな」
 セリスは無言のまま、俯いている。
「残念だ。お前が可愛がっていた下級兵士がいたろう。
13かそこらの子供だったか。まずはあの子供からだ。
処刑人はお前にさせてやる。せいぜい苦しませずに殺してやるんだな」
 ガストラは興味がなくなったかのように冷たく言い放つと、
立ち上がった。弾かれたようにセリスも立ち上がる。
 抱きつくようにしてガストラに縋り付いた。
「お願い、許して…下さい。ちゃんと、言います。だから…」
 セリスは白くなるほど自分の唇を強く噛んだ。
観念したように、目を閉じる。
197 ◆qVkH7XR8gk :2008/07/11(金) 23:45:01 ID:sbrSGE4v
「お、犯して……下さ、い、」
 激しい屈辱でセリスの声は震えている。
「聞こえんな。なんだ?」
 かすれた声でセリスは再び哀願した。
「私、を…犯して。バックで…突き上げて欲しい、です」
「突き上げて欲しいだと?牝犬め。初めからそう言えばいいものを」
 ガストラは満足したのか、セリスを鏡の前に立たせ、
四つんばいの格好をさせた。セリスに恥ずかしい体勢をさせたまま、
ガストラは何もせず低く笑っている。

 愛液まみれの割れ目から、我慢し切れなかった涎のように、
透明な粘り気をもった液体がぽたぽたと垂れる。
「お願い…早く、下さ…い」
 セリスは泣き出しそうな声で小さく言った。
「よしよし。また涎を垂らしおって。やっと素直になったな。
今捩じ込んでやるからな…くっく…随分締め上げてくる…
ヒダが吸い付いてくるわ。どうだ、満足か?淫売が」
 ガストラの歪に曲がった楔が体内に打ち込まれると、
セリスは快感から身体を仰け反らせた。胎内をかき回される感覚が蘇る。
と同時に昔から教え込まれてきた快楽の感覚が全身を巡り、
ぞくっと鳥肌が立つ。思わず唇から吐息を漏らした。
 いままでガストラにされる時は、嫌悪しか感じたことは無かった。
なのに今こうしてガストラに貫かれていると、
快感と共に安堵すらセリスは覚えていた。
 肉体と感情の亀裂の狭間で混乱しながらも、
少しずつ快楽に押し流されていた。

 ガストラは肉棒を最深部まで捩じ込むと、
両手でセリスの乳房を揉みしだき、セリスの耳元に口を寄せた。
重さを持った柔らかな双丘がガストラの手に吸い付く。
「お前は儂のものだ。
こうしてやるとお前はいつも可愛い声で鳴いたものよ…。
そう、その声だ。くく、気持ちがいいのか?
鏡でよく自分の顔を見てみるがいい」
 鏡に映る女は口端から涎を垂らし、
淫蕩な表情で突き上げられるのを待っている。
四つん這いの格好を恥じるでもなく、
ただ打ち付けられる楔に悦びの吐息を漏らしていた。
昔も今も、私は皇帝のメス犬でしかない、セリスがそう自覚した時、
薄い氷の上でなんとか保っていた理性が割れた。
 規則的に打ち込まれる律動に合わせ、
喘ぎながら奥に導くように尻を突き出し、自分からも動かし始める。
 砕けた理性をかきあつめようとしても、身体の動きは止まらなかった。
ガストラのペニスを貪るように下の口で飲み込む。
肉のぶつかり合う音と、粘り気のある水音が部屋に満ちる。
次々に溢れてくる愛液は、セリスが既に限界にきている事を示していた。
198 ◆qVkH7XR8gk :2008/07/11(金) 23:45:54 ID:sbrSGE4v
 体中の血液が膣に集中して脈打っているのをセリスは感じていた。
固い肉棒が最深部まで出入りし、膣の中を擦られるだけで何度も達しそうになる。
それでも、最後まで達する事だけはプライドで必死に押さえ込んでいた。
 両の拳を握り締め、感情を切り離そうとセリスは必死になる。
「太ももの裏に、鳥肌が立っているぞ。絶頂に達しそうなのだろう?」
 セリスの太ももはびっしりと鳥肌が立っている。
必死で快感を堪えていた。ガストラは指でその凹凸をすぅと撫でる。
ぞくぞくと更なる快感がセリスの背中を走った。
もはや堪えきれない快感だった。
だめ、と小さく唱えセリスはガストラの手を振り払おうと身体を小刻みに揺らす。
だが抵抗にすらならず、ガストラの快感を煽るだけだ。

ガストラはうすら笑いを浮かべ、かまわず腰を打ち付ける速度を上げた。
「やっ…ぁ、熱い、…ぁんっ、や、だめっ…ぁぁっ」
 全身が熱くなり何も考えられなくなる。
セリスはスイッチが入ったように絶頂へ一気に上り詰めた。
頬を紅潮させ、艶声を切れ切れに上げながら身体をびくびくと震わせた。
足の力が抜け、その場にへたりこむ。
 栓が抜かれた数秒後、セリスの頬に生暖かい液体が伝った。
セリスは鏡越しに髪の毛に絡みついた汚辱の証を放心したまま、眺めていた。
小さく、呟く。
「この国にいる限り、私は…皇帝に奉仕する淫売でしかないのね…」
199 ◆qVkH7XR8gk :2008/07/11(金) 23:48:38 ID:sbrSGE4v
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「セリス、どうした?」
 名を呼ばれ、セリスはぎくりとして顔を上げた。
「あ、ロック」
 気づくと、すぐ横に男が立っていた。
あの男の下から逃げるきっかけをくれたのはこの男だった。
悪夢から現実に引き戻してくれたようで、セリスはほっと息を吐く。
「ずっとここにいたのか?」
「ええ…。いざあそこに戻ると思うと、なんだか緊張してるみたい。
情けない話ね」
 飛空挺の甲板からは、遥か彼方の水平線にサーチライトの光がうっすらと見える。
あと数時間で帝国城に到着する筈だ。
嫌な予感が澱のように脳裏から離れない。
 忌まわしい過去を思い出したせいだろうか、セリスは少し震えていた。
ロックの温かい手が肩に置かれる。
「大丈夫、俺が守るよ」
 力強い言葉に、セリスは小さく頷くともう一歩ロックの側に近寄った。

 嫌な予感が現実のものになろうとは、まだ二人とも気づいてはいなかった…。



200 ◆qVkH7XR8gk :2008/07/11(金) 23:50:13 ID:sbrSGE4v
よく考えるとスレ違いな気がせんでもないが…
以上です。
ありがとうございました。
201名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 14:04:03 ID:l7CzLoEQ
おお!FF6完結してたー!GJでした!
202ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:24:10 ID:FsOEuYoY
お久しぶりです。不器用な彼女の続きが書けましたので投下します。 
ただ、現在アク禁に巻き込まれてますので携帯で投下します。 
馴れない投下方法ですので失敗があるかもしれないことをご了承ください。
203不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:24:44 ID:FsOEuYoY
『ピピピピッ!ピピピピッ!』

 タイマーをセットしていた時計のアラームが鳴り、夢のような一時が終わりを告げる。
週末の土曜日、いつものホテルでのデート。
3回も愛し合った私達は、お互いを抱きしめるようにベッドに寝転び、まどろんでいた。
愛する修太に抱きしめられるように寝転がり、腕を枕にして横顔を眺める。
……私はこの一時が大好きだ。お互いを激しく愛し合い、その激しさを冷ますようなこの一時が大好きなんだ。
私の頭の下にある修太の逞しい腕。幼い頃から家の手伝いで米袋を担いでいたせいだろうか?
同年代の男よりも男らしい硬い筋肉が付いている。私はこの逞しい腕に強く抱きしめられるのが大好きなんだ。
タイマーの音に急かされるように私は修太の腕から頭を上げ、タイマーを止める。
ふふふふ、この腕を枕に寝るというのは何度してもいい気分だ。
修太の汗の匂いを嗅ぎながら、腕の逞しさを感じることが出来る。……これほど幸せを感じる時はそうはないだろう。
腕枕から身体を起こし、タイマーを止めた瞬間、お尻に感じる違和感。
先ほどまで散々触っていたにもかかわらず、まだ触り足りないのか?
お尻を下から上へと撫でるように優しく、時折お尻の谷間に滑り込ますようにいやらしく触ってくる。
手がお尻を撫でる度、背筋をゾクゾクと電気に似たような感覚が走り、
お尻の谷間に滑り込んでくる度に、子宮がズキズキと疼いてくる。
こら、そんなイヤらしい触り方をするヤツがあるか。……疼いて我慢できなくなってしまうではないか。

「ん……こら、もう時間だ。そろそろシャワーを浴びて着替えないと、延長料金を取られてしまうぞ」
「ん〜?彩のお尻って柔らかくて、スベスベしてて最高だなぁ」
 
 最高だと褒めてくれたのは嬉しい。君に褒めてもらえるならどんなことでも嬉しいよ。
でも早く着替えないと延長料金を請求されてしまう。だから名残惜しいが早くシャワーを浴びて着替えなければ。

「……んん!だ、だからもう時間だと言っている!」

 お尻を触ってくる修太の手を抓る。
まったく……君は3回も出したというのに、まだ求めてくるのか。
……私も全然足りないのを我慢をしているんだ、君も我慢をしなさい。

「ちぇ!もう一回くらいはしたかったのにな。なぁ、ラストくらい1回いいだろ?」

 後ろからそっと抱きしめ、耳元で囁く修太。
耳にかかる修太の息が、耳元で囁かれる甘い誘いが私の頭を痺れさせる。
あ、あと1回か……どうせならもう2,3回くらいはしたいな。……ダメだダメだ!延長料金が高くついてしまう!

「ダメだ!延長料金を取られてしまう!」
「ええ〜?別にいいじゃんか。金払うのオレだし、彩が気にかける事ないだろ?
延長料金くらいオレが払ってやるからさぁ……いいだろ?」

 後ろからギュッと抱きしめられ、そのまま両手で胸を揉まれてしまう。
首筋にキスをされ、胸を揉まれ続ける。
胸を揉まれ乳首を摘まれる度、首筋にキスを落とされ耳元で囁かれる度に、押さえつけていた欲望が暴れだす。
欲望によって壊れかけの理性をなんとか繋ぎとめ、胸を揉んでいる両手を払いのける。
204不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:27:15 ID:FsOEuYoY
「ダ、ダメだ!……今、延長したら帰るのが遅くなってしまう。おじさん達に何を言われるか分かったものじゃない。
……来週だ。来週のデートは午前中からホテルに来よう。
来週には気の済むまで抱いてもいいから……抱いてもらうから。それまでは我慢してほしい」
 
 私も我慢するんだから、君も我慢してほしい。
私の提案に手が止まり、考え出した修太。きっとおじさんという言葉に引っかかってしまったのだろう。
もし私達が毎週ホテルでSEXをしていると知られたら、どうなるか想像もしたくない。
おそらく修太はおじさんに半殺し……いや、殺されてしまうのではないか?
最近のおじさんとおばさんは、私を実の娘のように大事に扱ってくれている。
ついこの間もあと少しで事件になってしまうようなことがあった。
店番をしていた私にナンパ目的で話しかけてきた若い男がいたんだ。
その男に気づいたおばさんが慌てておじさんを呼びに行き、
駆けつけたおじさんが男の胸倉を掴み、殺してしまうのではないかと思うほどの凄い勢いで怒鳴りつけたんだ。
実際私が止めなければ殴りつけていたと思う。そうなれば傷害事件としておじさんは逮捕されていたのではないか?
私のことをそこまで大事に思ってくれているおじさん達には感謝の言葉しかないが……
パパと同じく、少し……いや、かなり大げさのような気がする。
ナンパ目的で声をかけてきたとはいえ、一応はお客様だ。
そのお客様に10キロの米袋を投げつけるのは、いかがなものなんだろう?

「来週まで我慢するのか?そんなの無理だって!だってさ、オレ、もうこんなになってるんだぜ?
なぁあと一回だけ、いいだろ?な?なな?」

 考え事をしていた私のお尻にツンツンと当る、修太のペニス。
硬く、そして、とても熱くなっている。私なんかにこんなにも興奮してくれたいるんだ……物凄く嬉しい。

「こんなに硬くして……そ、その、手でもいいのであれば、修太の部屋でしてあげよう」
「おおおお!手コキか?手コキってヤツか!おし!絶対にしてくれよ?約束だからな!なな!」
「あ、あぁ、約束だ。だから早くシャワーを浴びて部屋に戻ろう」
「おお、さっさと汗流して帰ろうな。手っこき手コキ〜、気持ちい手コキ〜」

 嬉しそうに満面の笑みで歌いだす修太。手でするだけなのに、そこまで嬉しいものなのか?
……何故コンドームを持っているんだ?

「シャワーを浴びるだけなのに、何故コンドームを持っている?」
「まぁまぁ、それよりも早くシャワーに行こうぜ」

 問いかけに答えず、私の両肩を押し、シャワー室へと連れて行こうとする。
……まさかお風呂でするつもりなのか?

「ちょ、ちょっと待て!お前、お風呂でするつもりなのか?そんな時間はないと言っているだろうが!」
「まぁまぁまぁ、早くしなきゃ時間がないんだろ?」
「た、確かに時間はないな。って、何故コンドームの封を破く!
部屋に帰ってから手でしてあげると言っているだろうが!」
「まぁまぁまぁまぁ、それはそれ。これはこれってことでいいだろ?」
「な、何がいいだろうだ!いい加減にしないと本気で怒……んん!きゅ、急に触ってくるなんて反則、ひゃう!」

 無理やりお風呂に連れ込まれ、そのまま後ろからギュッと抱きしめられる。
後ろから回された逞しい腕が私を力強く抱きしめ、胸に回された手は、ムニムニと私の胸を揉み解す。
その手の動きがイヤらしく、首筋を這う舌の感触が子宮を疼かせる。
その疼きに抵抗していた私の理性は、耳元で囁かれた甘い言葉で崩壊してしまった。

「だ、だから、んあ!時間が……んん!延長料金を取られてし……あん!」
「彩……好きだぞ。オレ、お前のことが大好きだ。愛してるぞ」
「しゅうたぁ……わ、私も好き……愛してる!」
「うお!ちょ、ちょっと待て!彩、ちょっとストップ……んぐ!」

 修太のせいで崩壊してしまった私の理性。
理性の壊れた私は、本能のままに修太を押し倒し、キスの雨を降らせてしまった。
205不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:29:49 ID:FsOEuYoY
「ん、ちゅ……ちゅる、ぢゅちゅ……んん、すきぃ。しゅうたぁ……ん、すきぃ……ちゅぢゅ」

 バカな私なんかに愛を囁いてくれた唇に舌をねじ込み、修太の舌を絡めとる。
首筋にギュッと強く抱きつきながら、舌で修太を犯す。
ちゅくちゅくと舌を動かしながら、修太の唾液を味わい、私の唾液を送り込む。
すると修太も舌を絡めてきてくれ、ギュッと抱きしめてくれた。
修太に抱きしめてもらっている……修太に強く抱きしめてもらいながら激しいキスをされているんだ。
……そう考えただけで、私の身体は潤んでしまい、受け入れる準備が整ってしまった。

「しゅうたぁ、わたしぃ、もうわたしぃ……欲しい。君が欲しいんだ。
これを……この大きな君をわたしに入れて欲しい。もう我慢出来ない!
これも全部君が悪いんだ、君がすべて悪いんだ!」

 馬乗りになり、はち切れんばかりに大きくなっている修太に手を添え、私へと導く。
少し腰を浮かせ、後は腰を下ろすだけ……腰を下ろせば一つになれる。腰を下ろすだけで修太と一つになれるんだ。
本能に支配された私は、早く修太を体の中で感じたいがために腰を下ろそうとした。
けど、そんな私を両手を使い、力ずくで止める修太。……何故そんな意地悪をするんだ?君は私が欲しくないのか?

「ちょっと待ったぁ!コンドームつけなきゃヤバイって!お前、前から避妊はちゃんとしなきゃダメだって言ってたろ?
今すぐ着けるからさ、ちょっと待ってくれよ」
「……ダメだ。待てない。待ちたくない!一刻でも早く、君と一つになりたい!1秒でも早く君と愛し合いたいんだ!」
「彩、落ち着け!すぐだから!すぐ着けるから落ち着けって!」
「イヤだ!子供が出来ても生んであげる!だから早く君を入れて……んん!」

 くちゅ……異物を受け入れるのには十分すぎるほど潤んでいる私に何かが入ってきた。
その何かは、ペニスでは出来ない複雑な動きで私の中を動き回り、クチュクチュと掻き出すように私を犯し始めた。

「しゅ、たぁ……ヤ、だぁ……ゆび、イヤぁ……君が、いいのに……指なんかで感じたくな……んん!」
「もうちょっと待ってろよ……コンドーム、あと少しで着けれるからな。それまでは指で勘弁な」

 クチュクチュクチュ……私を掻き出す指が2本に増え、いっそう激しく私を犯す。
私は修太に覆いかぶさったまま、体の下に寝転がっている修太の指で犯されて快楽に支配されていく。
指で感じるはイヤなのに、私の意志に反して身体はドンドンと高まっていき……すぐに限界を迎えた。

「やぁだぁ……こんな、こんなの、いやぁ……い、やぁ……や、あ、んあああ!」

 腰から全体へ波及するかのように痙攣が広まっていく。
修太の指でグチュグチュと犯された私は、快楽に抵抗することも出来ず、一気に達してしまった。
ペニスではなく、指で達してしまった。……指なんかでイッてしまったんだ。
快楽に支配されている頭で考える。私は……イクことができればなんでもいい女なんじゃないか?
グスッ、私はなんて淫乱な女なんだ。修太がいいと言いながら、我慢できずに指なんかでイッてしまうなんて。
……こんな淫乱な女は嫌われてしまうのではないか?修太に嫌われてしまったのではないか?
自分自身が情けなくて涙が出てくる。……そんな泣きじゃくる私をギュッと抱きしめてくれる優しい修太。
抱きしめてくれながら、耳元で優しく囁いてくれた。
206不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:32:35 ID:FsOEuYoY
「彩……ゴメンな?オレがコンドームを着けるのに手間取っちまったから、指なんかでしちゃってさ。
でもさ、指でイッたお前の顔、メチャクチャ綺麗だったぞ?オレ、惚れ直したぞ」
「ひっぐ……しゅ、たぁ……ゴ、ゴメ……しゅうたぁ〜!」

 優しい言葉に涙が止まらない。ただし、先ほどまでと違い、悔し涙ではなく嬉し涙だ。
……修太に綺麗と言ってもらえた。惚れ直したと言ってもらえた!
人間というものはいい加減な生き物だ。我ながら呆れてしまう。
先ほどまでは死にそうなくらいに情けなく、悔しかったのに、今では嬉しすぎて天にも昇ってしまいそうだ。
そうか……修太は私に惚れ直したのか。……ますます私を好きになってくれたのか!
嬉しくて嬉しくて、ますます涙が止まらなくなってしまった私。
そんな泣きじゃくる私の頭を、優しく撫でてくれるとても優しい修太。
私は君のそんな優しいところも大好きだ。

「ホントにゴメンな?オレ、お前を泣かせるつもりなかったのに……オレ、ホントにバカだよな。
好きな女を泣かせちまうんだからな。ホントにゴメンな」
「……ヒック。しゅうたぁ……わたしぃ、わたしぃ〜!」

 優しい言葉にますます涙が零れ、声を出すことが出来なくなる。
何故君はここまで私を泣かせることが出来るんだ?

「ホントにゴメンな?……今日はもう帰ろうか?オレ、これ以上お前の泣き顔を見たくないんだよ。
オレ、お前の笑ってる顔が一番好きなんだ。オレ、お前を悲しませたくないんだ。……オレ、お前を守りたいんだよ」

 ……嬉しい。笑ってる顔が好きだと言ってもらえた。守りたいと言ってもらえた!
今までの人生の中で、今日ほど嬉しい日はない!
だが、修太と一緒なら、これからはもっと嬉しい日を……
修太と2人で笑いあえる、嬉しい日々を過ごすことが出来ると思う。
修太も私と過ごすことでそうであってくれたら、嬉しいな。……帰るだと?

「ダメだ!私はまだ君を感じていない!指なんかじゃ終わらせない。私は君を感じたい。君が欲しいんだ!」
「あ、彩?だってお前、号泣してたじゃんか」
「君のせいで泣いてたんだ!だから責任を取って……私を犯して欲しい。
はしたない話だが、私はまだ濡れている。君を受け入れたくて濡れたままなんだ。
君も大きいままじゃ辛いだろう?だから早く君を私の中に入れて欲しい。
私をこの大きな君でグチャグチャに突きまくり、指ではなく、君自身でイかせてほしい。
……私は君でイきたいんだ。君と一緒にイきたいんだ」

 修太は私の言葉に優しく微笑み、そっと唇を合わせるような優しいキスをしてくれた。
207不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:34:36 ID:FsOEuYoY
「お前はホントにバカだな。オレなんかにそんな嬉しいことを言ってくれるのは、世界中を探してもお前だけだぞ?」
「そうだ、私はバカだ。バカだからこそ、君を好きになった。バカだからこそ、君と恋人になれた。
私は自分がバカでよかったと、心の底から思っているよ。バカだからこそ、君とこうして愛し合えている」
「彩……オレもバカでよかったよ。ハハハ、お前とこうしてられるのもバカのおかげだな!」
「……バカ。また私を泣かせてどうするつもりだ?」
「どうって……こうするつもりだよ」

 くちゅ……大きいままの修太が、私の入口に添えられる。
その瞬間、背筋をゾクゾクとした、電気のようなものが走りぬける。
あぁ……何度してもこの瞬間が大好きだ。修太を私の中に向かい入れるこの瞬間が、とても大好きなんだ。

「彩……愛してるぞ。じゃあ、入れるからな」
「ん……愛してる。私も修太が大好き……んあああ!」

『ぐちゅ!ぐちゅ!ぐちゅ!』

 修太の上に乗ったままの私を、ギュッと身動きできないくらいに強く抱きしめながら力強く貫く。
息が出来ないくらいに抱きしめられて、パンパンと、お風呂場に音が響くくらいに激しく突き上げられる。
下から修太に激しく子宮を突かれる度に頭が真っ白になる。
キスで口をふさがれて、唾液流し込まれる度に、私が私じゃなくなる。
ラブホテルのお風呂場で、息が出来ないくらいに強く抱きしめられながら激しくキスをされ、激しく貫かれる。
その行為の一つ一つが私を狂わせていき、身体で感じる修太の激しさが、私を壊す。

「しゅうたぁ……しゅうたぁ!わた、も、いクぅ……イク!イクイクイク!」
「あやぁ……オレも、出そうだ!すっげえ気持ちよすぎてもう出そうだ!」
「イクぅ〜!イく!イク!イグぅ〜!イ、ヒィ!……んああああ〜!」

 ズグン!……子宮を貫くのではないか?そんな勢いで私を貫いた修太の激しさに、一気に達してしまった私。
修太も同時に射精をしてくれたようだし……コンドームで修太の精液を感じられないのが残念だ。
早く君の子供を生める年齢になりたいものだ。……早く、君の子供を生みたいな。
まぁ差し当たっては……子供を作るための行為の練習を重ねるとしようかな?

「はぁはぁはぁ……彩、気持ちよかったぞ。じゃあシャワーを浴びて、汗を流そうか?」
「はぁ〜はぁ〜はぁ〜……次はベッドでしてほしい」
「……へ?次って?お前、またヘンなスイッチ入っただろ!今日は4回もしたんだ、もう出ねぇっての!」
「変なスイッチだと?君が入れたんだろうが!責任取って体の疼きが収まるまで抱いてもらうからな!」
「ちょ、ちょっと待て!落ち着け彩!オレ、ホントにもう無理……んぷっ!」
「ん、ちゅ、ちゅば……しゅうたぁ、んちゅ、ちゅぢゅ……すきぃ、あいしてるぅ」
「よ、よせ!落ち着け!落ち着い……んんん〜!」

 ……2時間も延長してしまったのは反省をしないといけない。延長料金でお金も高くついてしまった。
帰りが遅いとパパとママにも怒られてしまったし、来週からは、もっと早くにホテルに入るとしよう。
208不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:36:39 ID:FsOEuYoY
「う〜ん……お前の気持ちも分かるがなぁ、もったいなくはないか?」

 月曜日の放課後、担任の先生に呼び出され、私の進路についての話をされる。
先生曰く、『就職ではなく大学に進学し、もっと色んな勉強をするべきだ』とのこと。
進学し、色々な勉強をすれば給料のいい会社にも就職でき、その方が家計も助かるだろうとの考えのようだ。

「いえ、以前から決めていることです。私は働いて家計を助けようと考えています」
「しかしだなぁ、お前のような賢い子が、就職なんてもったいないぞ。
いい大学を出たら、凄い給料のもらえる会社にも就職できるんだぞ?
そっちのほうがよくないか?後々を考えると、絶対進学した方がいいって!」

 確かにその通りだろう。しかし、私が進学をすれば、弟達が大学に行けなくなるかもしれない。
我が島津家は、私たち兄弟全員が進学できるほど裕福ではないのだ。
それに、進学をしてしまうと家を出て、大学の近くで1人暮らしをしなければいけなくなるだろう。
島津家の家計を取り仕切っている私が家を出てしまうと、誰が島津家の家計を支えるのだ?
パパもママも、私たちのために一生懸命働いてくれている。
仕事で忙しいパパやママの負担を軽減させる為、私が家事を取り仕切らなければいけないんだ。
……まぁ私も時々は大学に行ってみたいと思うこともある。
最近、クラスの友人達が話している大学に進学してからのこと。
色々なサークルに入り、大学生活を楽しみたいと嬉しそうに話している。
そんな楽しそうな話を聞いていると、私も進学について、考えてしまうこともままある。
しかしだな、進学し地元を離れるということは……高校卒業後には家業を手伝う予定の結城と離れてしまうことになる。
……嫌だ。結城と離れて暮らすなど、今では考えられないことだ。
パパやママ、弟達には悪いが、家族と離れて生活することよりも、結城と離れ離れになることのほうが嫌なんだ。

「私の将来のことを心配してくれているのは、とてもありがたいです。しかし、私は地元で働くつもりです。
出来れば公務員となり、家族を支え、弟達を大学に行かせてあげたいんです」
「……そうかぁ、そこまで言うのなら先生、無理に進学は薦めないよ。
しかしだな、まだ時間はあるんだ。就職すると決め付けないで、ゆっくりと考えればいい。
他の生徒と違って、お前は勉強に時間を割く必要もないからな。
大事な将来のことだ。焦って決めずに親や友人と相談し、ゆっくりと考えなさい」
「……はい、分かりました。話は以上ですか?では私は結城に勉強を教える約束をしているのでこれで失礼します」

 私の為に時間を割き、進路相談をしてくれた先生に頭を下げ、生活指導室を出る。
先生には悪いが、就職することはもうずいぶんと前から決めていることだ。
……そんな事よりも早く結城の部屋に行かなければ。
今日も私が作った小テストを解いてもらおう。成績がよければご褒美として……手でしてあげよう。
ふふふふ、私が手でしてあげるといったら、嬉しそうな顔をしていたことだしな。
嬉しさのあまり、『彩、大好きだ!愛してる!』と言ってくれないだろうか?……言ってくれるといいな。

「島津っち〜。廊下でなに結城の事を考えてるの?顔、ニヤケっぱなしだよ〜」
「いいねぇ〜、ラブラブだねぇ〜。2人の愛は燃え盛ってるんだねぇ〜」
「あはははは!盛ってるのは島津っちだけどねぇ〜。結城、またゲッソリしてたよ?今度は何回させたの?」

 結城の事を考えていた私を呼び止めるクラスメートの声。
んな?何故結城の事を考えていたと分かるんだ?私の心の中が分かってしまうとは……皆は超能力者なのか?

「ゆ、結城の事を考えてしまうのは仕方がないことだと思う。好きな人なのだから考えるのは当たり前だろう?」
「も、燃え盛ってる?た、確かに、その……2人きりだと燃えてしまっているな」
「な、何回といわれても……土曜日に7回、昨日が3回だ。これが平均的じゃないのか?」

 私の質問への答えに、はぁ〜っとため息を吐く友人達。
皆ため息なんか吐いてどうしたんだ?

「島津っち……盛るにも程があるよ。少しは我慢しなきゃ結城がヤリ疲れて死んじゃうよ?」
「やり疲れるとはいったい何のことだろうか?……んな、何故死んでしまうんだ!どうしてだ!」

 結城が死ぬと言った友人の両手で肩を掴みブンブンと揺さぶる。何故だ!何故死んでしまうんだ〜!
209不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:38:50 ID:FsOEuYoY
「ちょ、ちょっと島津っち?冗談!冗談だから!そんなに揺らさないでぇ〜!アタシが死んじゃうよ〜!」
「お、落ち着いて?深呼吸して落ち着こうね?」
「そそ、島津っち、落ち着こうよ。いくら結城がバカでも、こんな綺麗な彼女を置いて死なないって!」

 ……冗談?死ぬというのは冗談だったのか?
ふぅぅ〜、すっかり騙されてしまったな。まったく……いくら友人といえ、悪い冗談は止めてほしいな。 

「ふぅぅ〜、冗談なのか。いくらなんでもそんな冗談は止めてくれないか?死ぬほど驚いてしまったよ」
「ア、アタシは死ぬかと思ったけどねぇ〜。あ、頭がフラフラだよぉ〜」

 結城が死ぬかもと言った友人は、私が力いっぱいに激しく揺らした為か、軽く目を回しフラフラとふらついている。
悪い冗談を言うからそうなるんだ。……ゴメン、少し揺らしすぎた。

「と、ところでさ、今日も結城の部屋に行くの?結城、下駄箱で待ってたよ」
「え?ま、待っててくれたのか?時間がかかるから先に帰るようにと言ったのに……まったくバカなヤツだな」

 ホントにバカなヤツだ。先に帰って待っているようにと言ったのに……腕を組んで一緒に帰るとしよう。

「アハハハ、島津っち、スッゴク嬉しそうな顔してるよ?」
「ホントだねぇ、見てるこっちまで嬉しくなっちゃうよねぇ」
「そういえばさ、今日ってさ、結城の誕生日だよね?島津っち、プレゼントはなにあげるの?」

 今日が誕生日?誰の?……結城?ええ?そ、そんな話、知らない!私は聞いていないぞ!
 
「ええ?ゆ、結城の誕生日?そ、そんな話、知らないぞ!私は聞いていない!」
「へ?そうなの?島津っち、アイツの誕生日知らなかったの?恋人なのに?」
「アイツってさ、毎年誕生日になると『今日はオレの誕生日だ!何かくれよぉ』
ってクラス中にプレゼントをねだってきてたんだよね。確かアタシ、去年は消しゴムをあげたっけ?」
「アタシはシャー芯3本あげたよ。1本じゃ少ないって文句言ってたけど、3本あげたらメチャ喜んでたよ」

 な、何故だ?何故そんな大事なことを教えてくれない?何故恋人である私に教えてくれないんだ?
……グスッ、結城にとっては、私との関係は自分の誕生日を教える必要のない関係ということなのか?
ひっぐ、そうなのか?私は1人で恋人だと思い込んでいたのか?
結城にとっては、恋人でもなんでもないのか?
わ、私は、ひぐ、皆が知っている誕生日を教えてもらえないくらいの、希薄な関係の女なのか?
……やだ。嫌だ!そんな関係は嫌だ!私は恋人がいいんだ!結城の恋人でいたいんだ!

「し、島津っち?ゴ、ゴメンね?謝るから泣かないでよ……島津っちが泣いてると、アタシ達まで泣きたくなるんだから」
「そ、そうだよ、泣かないでよ。結城が誕生日を教えてなかったのにも理由があるんだよ」
「そうそう、アイツってバカだから、きっと自分の誕生日を忘れてるんだよ」
「……ぐすっ。結城はそこまでバカじゃない。きっと私に教える気がなかったのだろう。
教えるほどの女じゃないと思われているんだ。きっと私の事を恋人でもなんでもないと思っているんだ。
ひっぐ、何故私は嫌われたんだ?う、うえぇ、いやだぁ〜!うええ〜ん!」

 結城に嫌われた。そう考えただけで涙が溢れてくる。
学校の廊下だというのに、声をあげて泣きじゃくってしまう。
こんなにも大勢の前で泣きじゃくるようなバカな女だから、嫌われてしまったのか?
やはり結城はバカな女は嫌なのか?何故私はバカに生まれてしまったんだ?

「わ、わわ!島津っち、号泣しちゃったよ!ど、どうすれば……」
「ああ!結城が来た!結城に責任取らせようよ!」
「結城、早くきなさい!アンタの恋人が泣いてんのよ?早く慰めなさい!」

 え?ゆ、結城が来てくれたのか?私の為に?……いや、偶然通りかかっただけだろう。
結城はバカな女は嫌いなんだ。バカな私の為に来てくれるなんてありえない……ゆ、結城?

 学校の廊下で泣きじゃくる私を、ギュッと強く抱きしめてくれた結城。
何故だ?何故抱きしめてくれたんだ?君にとって私はどうでもいい女ではないのか?
210不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:40:39 ID:FsOEuYoY
「おい、ホントに大丈夫か?お前、なんでこんなところで泣いてたんだ?」

 泣きじゃくる私を抱きしめながら、優しく頭を撫でてくれる、とても優しい結城。
……何故だ?何故そんなにも優しくしてくれる?君にとって私はどうでもいい女ではないのか?
そんなに優しくされると……淡い期待を持ってしまうではないか。

「コラ、結城!アンタねぇ、島津っちを泣かせて、悲しませてどういうつもりよ!」
「そうよ!アンタ、なんで今日のこと島津っちに教えてなかったのよ!
島津っち、教えてもらってなかったことがショックで泣いちゃったんだからね?」
「アンタ、島津っちの恋人失格ね!島津っちの気持ち、ちゃんと考えたことあんの?
島津っち、アンタに嫌われてるって泣いちゃったんだよ?」 

 私の為に一気にまくし立ててくれた優しい友人達。
たとえ結城に嫌われていたとしても、優しい皆がいれば、私は生きていけそうだ。……皆、ありがとう。

「へ?オレに嫌われてる?なんで?オレ、島津のこと大好きだぞ?」
「ならなんで誕生日のこと黙ってたのよ!島津っち、教えてもらってないってショックで泣いちゃったのよ!」 
「誕生日?誰の?」
「アンタのでしょうが!忘れてたなんて言わせないわよ!」
「オレの誕生日?……ああああああ!そうだった!今日オレの誕生日だった!すっかり忘れてたぁ!」

 ……はい?結城の言葉に涙が止まる。あれほど流れていた涙がピタリと止まってしまった。
悲しさが消えたからではない。結城の予想外の言葉に驚いて止まってしまったんだ。
ま、まさか……友人の言うとおりだったのか?じ、自分の誕生日を忘れてただけなのか?

「わ、忘れてたぁ〜?ウソつくな!去年まであんだけプレゼントをたかって来てたでしょうが!」
「い、いや、だってさ、今年は島津にいろいろ勉強教えてもらってるじゃん?だからだよ」
「それがどうしたのよ!関係ないでしょうが!」
「いやいや、だっていろいろ覚えさせられてるんだぜ?そりゃ誕生日くらい忘れちまうよ」
「わけ分かんないこと言ってるんじゃないわよ!」

 ……何故だろう?結城がなにを言いたいのかが私にはハッキリと分かってしまった。
211不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:42:42 ID:FsOEuYoY
「結城、少し確認をしたい。
君が私に誕生日を教えてくれなかったのは、ただ単に自分の誕生日の事を忘れていたからなんだな?」
「おお、少しは元気になったか?あまり泣かないでくれよな。オレ、お前の泣き顔見たくないんだからさ」
「質問に答えてくれ。誕生日を忘れていたから教えてくれなかったんだな?」
「おう、そうだぞ。すっかり忘れてたなぁ。どおりでお袋が今日は島津と一緒に帰って来いって言ってた訳だ」
「そうか、忘れていただけなのか」

 よかった。嫌われていた訳でないのだな?……なんだろう?この胸に湧き上がる感情は?

「その忘れた理由なんだが、君が言いたいのはこうじゃないのか?」

 胸に湧き上がる感情を抑え、なるべく冷静に話す。冷静に話さないと友人達には分からないからな。

「私と勉強することによって、いろんな知識を覚えることが出来た。
そのかわり以前は覚えていた知識が、新しい知識に押し出されるかのように頭から出て行ったと言いたいんだな?」
「それそれ!その通りだぞ!やっぱりお前、頭いいなぁ。オレが言いたいこと、すぐに分かってくれるんだからな」

 嬉しそうに話す結城を見ていた友人達が視線で何かを訴えかけている。
……何故だろう?友人達の気持ちも分かる。それはきっと私も同じ気持ちだからだと思う。
この胸に湧き上がる感情のままに行動しろということなんだと思う。

「そっかぁ〜、今日はオレの誕生日なんだな。おっと忘れてた!なぁお前ら、誕生日プレゼントなにかくれよぉ〜」
「……るな」
「お?島津、何か言ったか?」
「ふ・ざ・け・る・な!と言ったんだ」
「……なぁ、いくら頭の悪いオレでも分かるぞ。お前、怒ってるだろ?なんで怒ってるんだ?」
「何故怒っているかだと?それはお前の頭がところてんの様に覚えていたものが押し出されるからだ!」
「お、落ち着かないか?オレ、お前の怒った顔も見たくないんだよ」
「……プレゼントをあげよう。とても強力なヤツだ、しっかりと喰らうがいい。……ふん!」
「く、喰らう?食べ物なの……へべし!」

 グシャリと足に感じる肉を潰すような感触。ここまで会心な蹴りは初めてじゃないのか?
その証拠に、私の蹴りを顔面に喰らい、倒れこんだ結城は痙攣をしている。
……ふん!私を心配させた罰だ!しばらくは痙攣しておけ!
212不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:44:25 ID:FsOEuYoY
「……なんか今日はさ、二人の惚気コントに巻き込まれたって感じしない?」
「ホントだねぇ。心配して損しちゃったね」
「それよりさ、下着、ブルーのストライプだったよ?島津っちも下着にお金をかけだしたねぇ」

 だから下着の品評は恥ずかしいから止めてくれないか?
……そろそろいいかな?これ以上床に寝かせておくのは、可哀想だ。

「けど結城もホントにバカだよねぇ。自分の誕生日を忘れちゃうなんてさ」
「だいたい結城って約束とか忘れること多いし、時間にもルーズだしねぇ」
「島津っちと付き合いだしてから改善されたと思ったけど、そうでもなかったんだねぇ」

 痙攣してる結城に膝枕してる私の目の前で結城の欠点を話し合う友人達。
確かにその通りだ。結城はよく約束を忘れたり、デートに遅れてきたりする。
きっとあまり時間を気にしない性格だからなんだろう。そこが結城らしいといえば結城らしいんだが……
デートの待ち合わせ時間くらいはキチンと守って欲しいな。
時計くらい身につけて、少しくらいは時間を気にして欲しいものだ……時計?

「そ、そうか!時計だ!腕時計だ!」
「おわ!きゅ、急に大声出して立ち上がるなんて、島津っちどうしたの?」
「皆、教えて欲しい。近くに男物の腕時計を売っている、いい店はないか?」
「へ?腕時計?あ、もしかして結城への誕生日プレゼント?」
「それよりさ、膝枕してたのに急に立ち上がるもんだから、結城の首、凄いことになってるよ?」

 腕時計をプレゼントして、デートの待ち合わせ時間を守ってもらうように教育しよう!
私は遅刻した結城がいつ来るのか待っている時間も大好きだ。
しかし、遅刻して過ぎてしまったその時間を一緒に過ごす方がいいに決まっている!
きっと結城もそうに決まっている。私と少しでも長く一緒にいたいに決まっているんだ。
そう思い、足元で寝たままの結城を見てみる。……人間の首というものはああいう形に曲がるものなんだろうか?

「ゆ、結城?何故首が変になってる?起きろ!目を覚ませ結城!起きるんだ〜!」

 ビクビクと痙攣が治まらない、首が変に曲がってる結城を揺する。
嫌だ!目を覚ましてくれ!起きてくれぇ〜!

「う〜ん、オチは一緒だけど、オチまでの流れは今までとは違ってたねぇ」
「けど結局はこうなっちゃうんだね。結城も災難だねぇ」
「それよりいい腕時計を売っているお店、ここら辺にあったかなぁ?」

 10分後、何事もなかったかのように目を覚ました結城を連れて、友人達に教えてもらったお店に腕時計を買いに行った。
結城はよく物にぶつかったりしてしまうから、壊れないように頑丈なのがいいだろう。
そう思い、とても頑丈なデジタルタイプの腕時計を買い、結城の誕生日のプレゼントとした。
ちょうどパパにお小遣いを渡す為にお金を下ろしていてよかったよ。
結構な値段がしてしまったが、どうにか買うことが出来た。ありがとう、パパ。
……今月のお小遣いなんだけど、私のバイト代が出るまで待っててほしい。
今月分だけでは足りないので、足りない分は分割で返すつもりだ。
それまではしばらく辛抱して欲しい。優しいパパならきっと今月分のお小遣いが少なくても辛抱してくれるはずだ。
213不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:46:28 ID:FsOEuYoY
「おい、オヤジ!これを積んだら午前の配達の分は終わりなんだな?」

 配達用の軽自動車に米袋を積み込み、オヤジに確認する。
朝っぱらから力仕事はシンドイよな。けど、金がいるから仕方ないしな……ホテル代が結構かかるんだよな。

「おう、これで終わりだ。積み終わったら、さっさと汗拭いて、着替えて出て行けよ。
今日もデートなんだろ?島津さんを待たせるんじゃないぞ?」
「大丈夫だって!今日は遅刻しないって!なんせこの腕時計があるんだからな」

 オレ自身が忘れていた誕生日にもらった、島津からのプレゼント。
黒色のカッコイイ腕時計。頑丈で防水加工ってのをしてて水に濡れても大丈夫なんだそうだ。
オレ、こんなまともなプレゼントを貰ったのって初めてだから、めちゃくちゃ嬉しくってさ。
貰ってから24時間毎日つけてるんだ。
この腕時計をつけてるとさ、いっつも島津と一緒にいるような気分になれるんだよ。
オレ、島津にもその気持ちを味わってほしくて、オレと同じ時計を買ってプレゼントしたんだ。
所謂ペアウオッチってヤツだな!島津の細い腕にはちょっとでかい様な気もしたけど、喜んでくれたからいいや。

「しかし、アンタのようなバカ息子にあんないい子が恋人になってくれるなんてねぇ……奇跡ってあるもんだねぇ」

 お袋は今だに信じられないらしい。オレと島津が恋人同士だってことが。
確かにはた目から見れば、島津は美人で天才で、オレなんかを相手にしてくれるような女じゃない。
でもな?……アイツもオレと同じくバカなんだよなぁ。

「お袋、最近そればっかりだな。じゃあオレ、そろそろ着替えて行く準備をするわ」
「今日はデートの待ち合わせ、午前中なのかい?珍しく早いんだね」
「別にいいだろ?仕事はちゃんと手伝ったんだからさ」

 そう、今日のデートは午前中、9時に待ち合わせだ。
いつもの駅前での待ち合わせ。いつものようにそのままホテルへと向かうことになると思う。
……先週は島津のスイッチが入っちまい、とんでもない目に遭ってしまった。
まぁ気持ちいいからいいんだけど……さすがに5発くらいまでに押さえてくれないかな?

「なにニヤニヤしてんだい!しかしあの子も変わり者だねぇ、こんなバカのどこがいいんだろうね?」
「お袋、自分の息子をバカ呼ばわりはないだろ?これでもテストじゃ平均以上取れるようになったんだぞ?」
「おい!いつまで喋ってんだ!いい加減着替えて待ち合わせ場所に行かねぇか!」
「オヤジも心配性だな。まだ時間あるって!
待ち合わせ時間になったら、アラームがなるようにタイマーをセットしてるんだよ。
オレだって遅刻しないように考えてるんだから、そう心配するなよ」

 そう、この9時にセットしたタイマーが鳴れば、待ち合わせの時間。
この腕時計には色んな機能がついているらしく、やっとタイマー機能を使い方が分かったところなんだ。
島津はすでに全ての機能を使いこなせるようになったと威張ってた。
今日、SEXをしたあとにでも教えてもらうとするかな?
214不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:48:31 ID:FsOEuYoY
「9時にタイマーが鳴るようにセットしてるから、それまでは大丈夫だよ」
「じゃあ9時に出て行くんだね?朝ごはんはどうするんだい?島津さんと何か食べるのかい?」
「9時にここを出るってことは、待ち合わせは10時くらいか?9時までは……20分もねぇな。
準備は出来てるんだろうな?たまにはビシッとしねぇと嫌われちまうぞ?」
「たまにはって……オレはいっつもビシッとしてるっての!
今日だって、待ち合わせの9時に遅刻しないようにしっかりとタイマーを合わせてるんだからな!」
「……は?お前、いま何時に待ち合わせって言ったんだ?9時とか言わなかったか?」
「そうだよ、9時だよ。9時に待ち合わせだから、9時にアラームが鳴るようにセットしてるんだ。
どうだ?オレ、ビシッとしてるだろ?」

 腕時計を指差し、勝ち誇るオレ。オレでもたまにはビシッと決めるんだよ!
まぁ遅刻しないことがビシッと決めてるかどうかは知らないけどな。

「お前は……本当にバカなんだなぁ。とうさん、悲しくなってきたぞ」
「……島津さん、この子と付き合っててもいいのかねぇ。
こんな大バカを相手にしてたら、あの子までバカになりそうで怖くなっちゃうよ」
「なんだよ2人とも。いきなりため息なんか吐いて、どうしたんだ?」
 
 ガックリと肩を落とし、大きなため息を吐くオヤジにお袋。2人とも急にどうしたんだ?

「お前なぁ……待ち合わせ時間にアラームが鳴るようにセットしてもダメだろうが!」
「……なんで?」
「お前、アラームが鳴ってから家を出るつもりだったろ?そのアラームがなった時点でもう待ち合わせ時間なんだよ!
アラームが鳴った時点で、島津さんは待ち合わせ場所でお前を待ってるんだ!
ホントにお前はバカだ!大バカだ!」

 凄い剣幕で怒鳴りつけてくるオヤジ。
……は?どういう意味だ?待ち合わせに遅れないように9時にセットしたタイマーが鳴ったら、既に待ち合わせ時間?
……うわ!マジだ!マジでその通りだ!ヤバイ!今日も遅刻だ!

「ヤ、ヤベエ!ち、遅刻だ!オレ、行ってくる!」
「このバカ息子!島津さんにしっかりと謝るんだぞ!」
「気をつけて行くんだよ。島津さんに失礼しないようにね」

 急いで着替えて慌てて家を出る。
やべぇなぁ〜、島津、今日のデートをメチャクチャ楽しみにしてたからな。
遅刻なんかしたら怒られちまうよ。まぁどう足掻いても間に合わないんだけどな。
急いで駅まで自転車を走らせる。立ち漕ぎ全開でダッシュで走るぜ!
でも待ち合わせ場所の駅まで3駅もあるんだよなぁ、どんなに急いでも絶対に間に合わないよなぁ。
どうやって機嫌をとればいいんだろ?ひたすら謝りたおすか?う〜ん、どうしよう?
どうすればいいのか悩むオレは、赤信号に引っかかり、駅まであと少しというところで足止めを食う。
チクショウ、さっさと青になれよな。1秒でも早く島津のところへ行かなきゃまた蹴り倒されちまう。
焦るオレを焦らすかのようになかなか変わらない赤信号。
イラつく気持ちを抑え信号が変わるのを待つ。
信号が変わった瞬間、自転車を漕ぎ出す。
自転車を一歩漕ぎ出した時、腕時計のアラームが鳴り響いた。

(うわ!もう9時になっちまったのか?はぁぁ〜今日も遅刻確定かぁ)

 そう思い、自転車を止め、アラームを止めようとした瞬間、けたたましい車のクラクションの音がした。
なんなんだ?そう思った瞬間、キキキキィー!っと聞こえた大きなブレーキ音。
その瞬間、ドン!という音と共に暗くなる視界。
真っ暗になった視界の中、彩の…微笑んでいる……顔を………見たような気が…………した。
215不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:50:19 ID:FsOEuYoY
『ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!』

 腕時計のアラームが鳴り、待ち合わせの時間の9時が来たことを告げる。
……はぁぁ〜、やはり遅刻なのか?腕時計をプレゼントしたくらいでは遅刻は直らないのか?
まったく結城のヤツは……今日は時間も十分にあるんだ、たくさん結城を感じさせてもらうとしよう。
腕時計のアラームを止め、周りを見渡す。……やはりいないな。遅刻確定、だな。
仕方がない、結城が来るまでの時間を利用して、もう一度腕時計の使い方を勉強しなおすとしよう。
どうせ使い方が分からないと泣きついてくるに決まっている。
優しく教えてあげて感謝させないといけないな。こんないい時計をプレゼントしてくれてありがとう、と。
結城にプレゼントしてもらった時計を撫でながら、説明書を手に取り、機能についての勉強をする。
……ふふふふ、何が『同じ時計がいい』だ。なにが『ペアウオッチで恋人って感じがするだろ?』だ。
女である私に男物の時計をプレゼントするなんて、君くらいなものだぞ?
私の手首を覆い隠すような大きさの腕時計。まるで私を守ってくれているかのようだ。
……ありがとう。一生大事にするよ。だから君も一生大事にするように!
プレゼントした時計も……恋人である私も。
ペラペラと説明書を流し読みしながら結城が来るのを待つ。
早く……早く結城に会いたいな。結城が来たら、抱きついてみようかな?ふふふふ、きっと驚くだろうな。
私を待たせた罰だ、抱きつくくらいはさせてもらうとしよう。
……腕時計のタイマーのように、止めることが出来たらいいのにな。
この『会いたい』と思う気持ちはとてもやっかいだ。
ついさっきまで会っていたのに、デートが終わり家に帰るともう会いたくなってくる。
会いたいと思ってしまったら、もう止めることは出来ない。
いくら電話で話しても、君の体温を感じることが出来なければ意味がないんだ。
はぁぁ〜。早く来ないかな?早く私を抱きしめてくれないかな?
……私は、この時間が好きだ。結城を待っているこの切ない時間が大好きなんだ。
この時間は私がどんなに結城の事が好きかを自覚させてくれる大切な時間だ。
そして、この時間があるからこそ、結城の顔を見た瞬間の嬉しさが倍増する。
結城にも、こういう時間があってくれたら嬉しいな。

 遠くで聞こえる救急車のサイレンを聞きながら、結城の事を想う。
早く……早く君に会いたいな。君も今、私の事を想っていてくれたら、嬉しいな。
216ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/07/17(木) 23:51:48 ID:FsOEuYoY
今回は以上です。次でラストの予定です。
217名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 00:53:42 ID:2p6eozfT
おつ〜。

>遠くで聞こえる救急車のサイレンを聞きながら、結城の事を想う。
嫌な予感がするのですが・・・
218名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 01:09:55 ID:wUTutgoA
なんというか君のぞっぽかったですねw
男女逆だったけど
彩かわいいよ彩
219名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 06:40:53 ID:zcLpvXko
GJGJ
いやいや、そこで直ぐにまさかと思わないのが島津っちぽくていいじゃない

>オレはいっつもビシッとしてるっての!
どうみてもムスコの事です本当にありがt(ry
220名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 07:26:03 ID:jNYUgXHh
まあ結城は頑丈だから死にはしないだろう
個人的には二人が病室でおっぱじめないか期待・・・じゃなくて不安だな
221名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 13:01:55 ID:L0KmytBT
浮上
222名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 13:05:19 ID:FpUQwfv1
パンツを汚してしまった強気っ娘が
ノーパンになったためにしおらしくなってしまうものに需要があr
223名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 13:18:43 ID:/OUJ7Wzb
>>>222
・需要がありますか→あるんなら書いてみたい
・需要があります→誰かに書いてほしい

さあどっちだ、言うんだ
224名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 20:55:23 ID:u1jEmt4W
俺は書いてほしいが果たしてこのスレで良いのか?
225名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 23:41:05 ID:9XaryVgd
ノーパン羞恥でゴ〜!! Part 3
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1169984411/
恥ずかしがる女の子に萌えるスレ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1213898274/

どっちかで。
226名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 01:28:32 ID:vhDE39EH
>>222
誘い受けなら止めてくれないかな。
期待が激しく膨らんで日常生活で挙動不審になるからっ
227名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 00:30:47 ID:xcS64eMq
身に付けた丈の短いスカートから、自身の愛液で濡れた下着が見えてしまわないように、
懸命に姿勢を整えながら、>>226は意思の強さを感じさせる顔を赤くして、そう告げた。
228ぱんつはいてない:2008/07/26(土) 01:35:32 ID:K/AlO5kh
 前の授業は体育だった。男子はこのクソ暑い中、外で走り幅跳びだとふざけんな。
 女子はプールでまだ生乾きの髪がちょいと色っぽい。階段で誰もいないのをいいことに
顔を寄せたらするっと避けられた。
「早くしなさい、次の授業始まっちゃうでしょう」
「もおいーよ、先行っとけ。委員長が遅れちゃまずいだろ」
「委員長だ・か・ら。クラスの動向は気になるわ。張り切りすぎて倒れる寸前になるバカがいるんだし」
「そんなバカは見捨ててしまえ」
 枠に寄りかかってしっしっと手を振ると、鼻を鳴らして俺の腕を取りかけて、やめた。
焦ったように駆け上がってしまう。さっきの避けようといい何か癪にさわる。
 困った顔をして数段上から教科書でスカートを押さえつつ見下ろす。
 相変わらずすらっと伸びた脚と黒のハイソが際立って……悔しいが見とれる。
「拗ねないでよ。あんたのその、一生懸命な所……向こう見ずとも言うけどね。
私は見てるんだから。…………好きよ」
 最後の所で照れ隠しにあっちを向いた。もう耳が赤くなってる。
 その一言で我ながら単純だと呆れるがまあいい、態度の悪さは帳消しだ。
二段飛びで昇って横に並ぶついでに、今日のパンツは何色だと軽くめくってみる。
「やあぁん! 駄目!」
 翻ったスカートの中は――――はいてなかった。……履いてない?!

「ちょ、おま……何で」
「もうバカバカバカいやえっちばかスケベ!」
 いつもなら殴られ蹴られしてるはずが、本人も動揺してるのかそのまま座り込んで
スカートの裾を引っ張りながら茹でダコ状態になってしまった。
「最近暑いでしょう? 今日は午前中プールだし、早く入りたいなあって思って、
……家から水着来てきたの」
「……で、パンツ忘れて来たと?」
 普段からは信じられない気弱な声で告白して、俺の言葉にこっくりと頷いた。
「さすがの強気委員長もノーパンでは心許ないか。上はどうした?」
「キャミ着てるし、気を付けてれば目立たないかなっ、て……」
 乳でかくないから大丈夫だろ、と喉で笑うとべちんと手の平で顔面をはたかれた。
「だだだ誰にも言わないでよ。友達にも内緒なんだから、言ったら殺すわよっ」
「イマドキ小学生でもやらねえヘマだよな。……なあ、俺を避けたのって、バレたくなかったから?」
「他に理由がある?」
「いーや。やっぱオマエ可愛いな。好きだぜ」
 何のてらいもなく言い放ちやがって。一瞬ガードが緩んだとこにキスを返す。
 胸を軽く撫でると、確かにノーブラだ。しかも柔らかい唇の感触とふやけた躰の匂い、
濡れた髪の手触りに加え、はいてない、とくればちょっとヤバイだろ。
「ダメよ駄目、授業行かなきゃ」
 怒りつつも唾液垂れてる口元と摺り合わせる太股がますますそそる。
「もうとっくに始まってるよ、サボりだサボり。……しようぜ」
「なに言ってんのよっ、嫌、いーやーっ! あんたバテてるんでしょ」
「下半身別。勃起しちまった。このまま授業行ったら挙動不審者扱いだな」
「こーのーヘンタイ! 本物の痴漢になるつもり?!」
「ノーパン委員長のせいだと大人しく自首するだけです俺は」
「ずるいわよ。脅迫してんの」
「オマエもこの状態で無理だろ? せめてトイレ行かないとな?」
 ハイソ越しに引き締まったふくらはぎから奧に手を滑らす。慌てて脚を閉じても
無理だって。はいてないんだからやめろっつっても生で触り放題だ。
 くちゅっと鳴る音にいくら目をつぶっても、切ない声と吐息は抑えきれるもんじゃない。
「やめて、トイレはいや、嫌だってばぁ。…………別の所で、して」
 ――――勝った。
「屋上へ行こう。今なら誰もいない」

 ……久しぶりだったんでやりすぎた。ちょいと反省。
 昼休みにコンビニへパンツ買いに行くと言ってたのに、委員長は疲れて動けず、
代わりに行ってやるという俺の申し出を無下にしたおかげで、放課後までノーパンだった。
 ぎりぎり睨み付ける眼に、命の危険を感じてしまったりした。
229名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 01:37:57 ID:GHwGYWW4
おっきした
230128:2008/07/26(土) 01:39:59 ID:K/AlO5kh
>>222氏ではありませんがノーパンでひとつ
失礼しました
231名無しさん@ピンキー:2008/07/27(日) 11:34:04 ID:3i2hvTRP
はいてないシチュはいいかもしれん
232名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 23:58:35 ID:e4n6/cmr
>>227
また最初のほうみたいなことになるかと思ったらならなかった
やっぱあれは例外中の例外の事態だったか
233名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 00:31:13 ID:zc/fATAD
リレーは難しいからな
234名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 22:00:08 ID:3Lfz1mAA
「リレーは難しい」
そう思って自分の気持ちを無理に押さえ込もうとする>>233であったが、
1度火が着いた想いは2度と消え去ることは無かった。
まるで自身の秘所からとどめなく溢れ出す蜜のように。
235名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 14:11:25 ID:umjZYDUK
「ちょっと、あなたたちも手伝いなさいよ」
「うるせーよ、一人でやってろ」
美咲真理は一人で後片付けをしていた
京子たちが水泳の授業後の片付けをさぼってしまうからだ
「まったくあの人たちは・・・」
先日もあの娘たちは先生に注意されているというのに・・・

「あっ、早く着替えないと次の授業に遅れちゃう」
真理は足早に更衣室に向かった
236名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 01:14:01 ID:lHqA5f2I
保守
237名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 02:34:28 ID:TMVj1mdq
保守
238名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 18:41:32 ID:55IHYtyF
「保守、保守って…!私はあんたの女房役じゃありません!」
「あの…それ…『捕手』ってダジャレ?」
「う、うるさいわね!だいたい、あんたはいちいち細かい所を見過ぎよ!」
「そ、それは…きみの事を考えて…さ」
「わたしはあんたなんか居なくても…居なくても…

大丈夫だから…」
彼女の目には、光る物があった。
そっと青年がハンカチを差し出したが
「泣いてません!」
彼の夏は、始まったばかり。

保守。
239名無しさん@ピンキー:2008/08/16(土) 04:43:06 ID:WaMz3G+9
あー。どっかに美人でグラマラスなツンデレお姉ちゃん落ちてないかなー。
240名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 09:06:08 ID:uMKEQL1q
デトロイトメタルシティを読んだんだが、レイっていう女が痴漢されたときに可愛くなるのに少し萌えた。
241名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 14:10:52 ID:NTBxPkl9
保守
242名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 21:39:30 ID:t1atbw5M
保守
243名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 01:53:37 ID:XKJydHow
ききき喜多さんがキター!
244名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 23:35:15 ID:If9j3caQ
てめえそんな嘘で人を騙せると…ほんとにキテルー!!!
245名無しさん@ピンキー:2008/09/05(金) 12:02:31 ID:5hzoCoH/
おいおいおい、エイプリルフールはまだまだ先だぜ?そんな野暮な嘘はやめときな……ってホントにキテター!
246名無しさん@ピンキー:2008/09/06(土) 23:14:29 ID:ACk2H/o+
ツクバ屋さんも更新してたぜ
247名無しさん@ピンキー:2008/09/07(日) 08:29:10 ID:RxBTMM/L
>>246
ア、アンタなんかに言われなくても知ってたわよ!
248名無しさん@ピンキー:2008/09/13(土) 23:30:44 ID:oyKQWx9L
ほしゅ
249名無しさん@ピンキー:2008/09/17(水) 23:46:37 ID:fqqu1Coz
保管庫にある「ボクっ娘!愛奴調教」の続きが
とても読みたいです。これからって感じなのに・・・
250名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 13:40:13 ID:6Jlt3fn5
だいぶ前にこのスレで話題になってたサンデーのヤンキー娘のラブコメ漫画の1巻出てたから買ってきた
馴れ初め編にあたる読み切りは残念ながら載ってなかったが、なかなか面白かった
とらのあなとかの一部書店で書き下ろしのペーパーが数量限定でついてるみたいだからお早めに
251名無しさん@ピンキー:2008/09/19(金) 11:41:27 ID:U7MNCZmg
ツクバさん、更新止まっちゃったね。何かあったのかな?
252名無しさん@ピンキー:2008/09/19(金) 22:50:15 ID:4qj6wEoQ
>>251
小説サイトが2〜3ヶ月程度に一度更新するだけでもすごいこと
253名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 18:38:10 ID:mkLRDUtM
下がりすぎ、アゲますよ
254名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 13:37:07 ID:nByuUvCl
定期的にあるツクバさん更新うんちゃらは自演?
誰も気にしちゃいねーんだけどw
255名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 22:50:06 ID:5E89XEBt
>>254

俺は気にしてる
256名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 13:58:21 ID:+/KyLrMl
俺も気にしてる
教えてくれるのはありがたい
257名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 13:19:04 ID:WSxegUII
今喜多さん読み返してるんだけど、2ch漫画用語辞典とバキとJOJOに目を通しておけばたいがいのネタはわかるな

2ch漫画用語辞典
ttp://www14.atwiki.jp/niman/
258ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 19:52:36 ID:pODSkiGy
不器用な彼女の最終話を投下します。
エロナシですので、エロナシが苦手な方は、スルーをお願いします。
259不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 19:53:15 ID:pODSkiGy
 月曜日の朝。いつもの通学路が、何故か色あせて見える。
普段ならガヤガヤとにぎやかな、通学途中の生徒達の話し声も、どこか遠くから聞こえるように感じる。
いつものように下駄箱を開け、上履きに履き替える。
いつものようにしているのに、どこか夢の中をさ迷っているかのような、ふわふわとした感じがする。
そう、まるで夢の中にいるように思えてくる。……夢、だったのだろうか?
実はまだ金曜日の夜で、明日のデートに備え早めに寝てしまった私が見ている夢なのだろうか?
そうか、これは夢なんだ。きっと土曜日にあった出来事も夢なんだ。
そうだ、そうに決まっている。でなければ、あんな酷いことが起こる筈はない!そう、結城が車に……

「し、島津っち……おはよう」

 フラフラとふらつく足取りで教室に入ると、友人達が恐々といった様子で話しかけてくる。
あぁ……夢の中にも皆は出てくるのだな。結城はまだ出てこないのかな?
夢とはいえ、大事な彼女を心配させたんだ。早く会いに来てくれてもいいと思うのだが?

「あの、なんて言ったらいいか分かんないけど……大丈夫だよ!きっと元気になるって!」
「そうそう!結城はバカだけど、島津っちを悲しませるような大バカじゃないって!」
「そうそうそう!あいつはああ見えて、なかなか男らしいところがあるから、きっと大丈夫だよ!」

 やはり元気がないように見えるのだろうか?……見えてしまうのも当たり前か。
あれからまる2日間、私は一睡もしていないのだから。
2日間寝ていない?そうか、2日間も続いている夢を見ているのか。
どうやら私は長い夢を見ているようだ。……夢ならどんなによかったことか。
夢でないことは分かっている。今も残っている、結城に触れた手の感触。
結城の変わり果てた顔。色々な管が通っている身体。
痙攣の為か、時折開く瞼。その瞼から覗いた光のない瞳。……あの全て夢だったら、どれほど嬉しいことか。
けど今も聞こえるように耳にこびり付いている。おばさんの鳴き声が。加害者の、涙声での謝罪の言葉が。
その人に対するおじさんの怒りの罵声。そして……私の泣きじゃくる声。
その全てが私の頭の中に記憶として残っている。
……何故私はこんな覚えたくもないことまで覚えてしまうのだろうか?
私はこれからの一生を、この記憶を抱えたまま生きていかなければいけないのだろうか?

「……おはよう」
「……元気になるかな?」
「……あまりバカなどと言わないでほしい」
「……男らしい?そう、結城はとても男らしいんだ」

 そう、結城は男らしい。家の手伝いで鍛えられたたくましい腕。
いつも私を抱いてくれた後にしてくれる腕枕が、ここ最近の一番の楽しみなんだ。
でも……その腕も今は力なく、ベッドの上で横たわっている。
260不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 19:54:17 ID:pODSkiGy
「し、島津っち……こんなこと聞いていいのか分からないけど、結城は大丈夫なの?」
「……お医者様の言うには、今の結城は息をして心臓が動いているだけの状態らしい。
常人なら即死だったと。鍛えていたから、車に跳ねられた後も心臓が動いているんだ、と」

 幸せな時間を過ごすはずだった、結城とのデートの約束。
遅刻ばかりしている結城にあげた、誕生日プレゼントの腕時計。
遅刻をしないようにと、タイマーを待ち合わせ時間の朝9時にセットしてあげたんだ。
まさかその約束の時間を守ろうとして……こんなことになるなんて。

「し、島津っち……だ、大丈夫だよ!こんな綺麗な彼女を残して死ぬなんてことないよ!」
「バ、バカ!死ぬとか言っちゃダメだって!」
「……死ぬ、のだろうか?やはり結城は死んでしまうのだろうか?私を一人にして……ひっく、死んでしまうのだろうか?」

 考えないようにしていた最悪な現実。どう考えても変えようのない、耐えられない現実。
デートの待ち合わせ時間に間に合おうと、急いで駅へと向かっていた結城。
駅前の歩道橋を渡ろうとしたとき、信号無視の車が突っ込んできた。
……お医者様が言うには、本人は車に跳ねられたことも気づいていないだろう、ということだった。
あれからまる2日。結城は息をして、心臓も動いている。しかし、ただそれだけだ。
私が好きだった、あのたくましい腕に力が入ることもなく、横たわったままだ。
何度も見詰め合ったあの顔も、寝ているのは結城だと、教えられなければ分からないくらいに、腫れ上がっている。
そう、結城は交通事故に遭い、生死の境をさまよっている。
……お医者様曰く、覚悟をしておいてください、と。
結城が死ぬ……死んでいなくなってしまう!
そう考えただけで、私の目からは涙があふれ出し、止まらなくなってしまう。

「ゴ、ゴメンね?でも事故から2日経ってるんだよね?それでも頑張ってるんだよね?だったら結城を信じようよ!
きっと結城は頑張って生きてくれるって!」
「そうそう!結城は打たれ強いんだから、すぐに元気になるって!」
「そうだよ!結城が元気になったとき、島津っちが泣いてたら悲しむよ?だからさ島津っち、泣かないでよ」

 友人達の優しい言葉にますます涙が溢れてくる。
声を上げ、泣きじゃくる私をギュッと抱きしめて慰めてくれる友人達。
皆の温かさが私を励まし、もう結城は死ぬしかないんじゃないのかと、絶望に打ちひしがれていた私を勇気付ける。

「ひっぐ、ぐす……皆、ありがとう。……そうだな。結城は私の泣き顔は嫌いだった。
私が泣いていれば、結城は安心して治療に専念できない。そうだ、私は泣いていてはいけないんだ」

 そうだ、結城は私の泣き顔は嫌いだと言っていた。
私が泣いて、結城を心配させてはいけない。うん、結城も頑張っているんだ、私も泣かないように頑張らないといけない。

「……皆、ありがとう。私は決して泣かない。以前結城は、私の泣き顔を見るのが嫌だと言っていた。
そうだ、私が泣いてしまったら、結城は安心して治療に専念できないではないか」
「そうだよ!島津っち、結城を心配させちゃダメだよ!」
「そうそう、それにね、アタシ達も島津っちの悲しい泣き顔なんて見たくないしね」
「うん、友達が悲しむところなんて見たくないよ」

 皆は私をギュッと抱きしめてくれて、励ましてくれる。
皆が落ち込んでいる私を励まそうとしてくれている。
こんな私なんかを友達と言ってくれて、一生懸命に励ましてくれる。皆……ありがとう。
つい今しがた泣かないと誓ったはずなのに、もう泣きそうになってしまった。
けど、ここで泣いてはいけない。次に泣く時は、結城の退院の時だ。
思いっきり泣いて、結城を困らせてやろう。ふふふふ、結城は困った顔をしてくれるかな?
261不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 19:55:01 ID:pODSkiGy
 結城が事故が遭ってから、毎日のお見舞いが私の日課となった。
事故から一週間。おじさんやおばさんにも疲れの色が見えてきた。
ただベッドで横になり、息をしているだけの結城。このような状態で、本当に治るのだろうか?
集中治療室で力なく横たわっている結城。
私は結城の側に付き添い、いつものように心の中で話しかける。


 まだ起きないのかい?君はほんとに寝ぼすけさんだな。
いい加減に早起きにならないと、ダメだぞ?早く起きて、また私を抱きしめて欲しい。
こんなに心配をさせているんだ、抱きしめてもらってもいいだろう?
私が君を起こせるようになればいいのだが……将来的には起こしてあげたいな。
その時はたたき起こしてあげよう。……優しく起こして欲しいだと?
ふふふふ、残念ながら我が島津家では、寝ぼすけはたたき起こされると決まっている。
……結城家はどうなのだろうか?結城家では優しく起こすと決まっているのであれば、私もそうしなければいけないかな?
……君はまた、私をギュッと抱きしめてくれるのだろうか?……抱きしめてくれなくてもいい。
ただ、生きてさえくれたら、それでいい。だから……早く意識を取り戻して欲しい。
でないと、おじさんやおばさんが疲れきって倒れてしまう。
結城、早く目を覚ましてほしい。君がいないと、結城米穀店が立ち行かなくなってしまう。
体に障害が残ってしまったとしても、私がお店を手伝おう。
いや、私が君と一緒に跡取りとして働いてもいい。
だから……早く目を覚ますんだ。私の友達も、学校の皆も結城が目覚めることを待っている。
……ふふふふ、君はいつも待たしてばかりだな。けど、君は遅刻はしても必ず来てくれた。
今回も……大丈夫だよね?皆を待たしてるんだ、またカレーをご馳走しなければ文句を言われてしまうぞ?
ふふふ、けど安心してほしい。今回は君1人にお勘定を払わせるつもりはない。
私は君の彼女だ。今回だけは、君と一緒に払ってあげよう。
……君は文句を言うのだろうか?『事故に遭ってまでお金を払わされるってなんなんだよ!』って。
けど、払うのが君と私の義務だと思う。今皆は、君の為に千羽鶴を折ってくれている。
君が早く退院するようにと鶴を折ってくれているんだ。
ふふふふ、皆の気持ちに答えるためにも、早く退院してカレーをご馳走しなければいけないな。
私も君が退院するまではカレーを食べないつもりだ。君と一緒に食べたいからな。
私のここまでさせているんだ、退院したら、感謝の言葉を囁いて欲しいな。
ギュッと抱きしめて、愛してると囁いて欲しい。……お礼に私も囁いてあげるから。
だから、一日でも早く、怪我を治して退院してほしい。
結城……また明日、君に会いに来るよ。明日こそは直接話し合えると願っているよ。


 短い時間だったが、結城との会話を終えて、集中治療室を出る。
ダメだ、結城の姿を見たら、涙がこぼれそうになってしまう。
私が泣いてしまったら、結城が安心して治療に専念できないではないか!我慢だ!我慢するんだ、私!
唇をかみ締め、涙を堪える私。そんな私におじさんが話しかけてきた。
262不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 19:55:59 ID:pODSkiGy
「島津さん、ちょっと時間いいかな?」
「おじさん、少しなら大丈夫ですが、いったいなんの用でしょうか?」

 おじさんから話しかけてくるとは珍しい。
結城の事故以来、おじさんとおばさんが話しかけてくることは減った。
多分、悲しみに打ちひしがれていた私に気を使ってくれていたのだろう。
一番辛いのはおじさん達なのに……そんな事も分からなかったバカな私に腹が立つ。
そうだ、一番悲しいのはおじさん達なんだ。実の息子が事故に遭ったんだ、私なんかよりもずっと悲しいはずだ。
そうだ!励まさなければいけない!私は友人達に励ましてもらい、どうにか元気になった。
今度は私が励まさなければ!おじさん達に元気がないと、結城も安心して治療に専念できないだろう。
うん、色々な話をして励まそう。誰かを励ます経験はほとんどないのだが、私がしなければいけないんだ。

「用事とかじゃないんだけどね、その……修太のことを教えて欲しいんだ」
「結城のこと、ですか?」
「そう、修太が学校でどういうことをしてたのか、いつもはどんなことを話してたのかとか。
おじさん達、あまり学校での修太の事を知らないんだ。……おじさん達に教えてくれかな?」

 悲しそうな顔をしたおじさん。心労からか、憔悴した顔のおばさん。
私が話すことで、少しでも元気になってもらえるのならば、いくらでも話そう。
今ではおじさん達は、私の大事な人達だ。
結城と出会ってから、私には大事な人たちがたくさん出来た。
いつも話しかけてくれ、私が困ったり落ち込んでいたりすると、いつも助けてくれる優しいクラスメートの皆。
慣れないバイトで戸惑っていた私をフォローしてくれて、いろいろなことを教えてくれた優しいおばさん。
いつも豪快に笑い、私を本当の娘のように優しくしてくれるおじさん。
それに、家族以外で生まれて初めて出来た……いや、家族以上に大事な人。
ふふふふ、そう、君のことだよ、結城。
君の事を話すことで、おじさん達が少しでも元気になれば、君も喜んでくれるかな?
……学校での君の事を話すと、あとで君は拳骨をもらうかも知れないな。
けど私に文句は言わないで欲しい。いつもバカなことをしている君が悪いんだ。

 それから少しの時間、私は思いつくままに結城の事を2人に話した。
初めての出会いが『長宗我部元親』から始まった事。何度も失礼なことを言われ、その度に蹴飛ばしてしまったこと。
教室の真ん中で気絶した結城を膝枕した話には、おじさん達も声を出して笑ってくれた。
学校の帰り道、私から腕を組み、キスをした話をしたときは、真っ赤な顔で驚いてくれた。

『島津さんはやっぱり変わり者なんだね。修太にお似合いだったよ』と。

 どこが変わり者なのか分からないが、2人にお似合いといわれて嬉しかった。
2人が楽しそうに笑ってくれたことで、私も胸が軽くなった気がした。
結城の話しを終え、帰ろうとした私におじさんが話しかけてきた。

『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』と。

 私はこの言葉の意味が分からずに、ただ、『ハイ』と頷いただけだった。
病院を出てから考えてみた。先ほど言われた言葉の意味を。
いったいおじさんは何を言いたかったのだろう?もう十分とはいったい何のことなのか?
……分からないな。おじさんがいったい何を言おうとしたのか、よく分からない。
家に帰ってからママに相談をしてみよう。ママなら何か分かるかもしれない。
そう考えて家路を急いだ。今日は少し帰るのが遅くなってしまった。
拓や直樹がお腹をすかして待っているだろう。早く帰って美味しいご飯を作ってあげねばいけない。
そうだ!今日は2人が大好きな餃子にしてあげよう。パパも発泡酒と一緒に食べるのが大好きだし、ママも大好きだ。
皆、餃子をおかずにすれば、喜んでくれるだろうか?喜んでくれたら、嬉しいな。
263不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 19:56:44 ID:pODSkiGy
「ママ、ちょっと聞きたいことがあるのだが、少し時間をもらってもいいだろうか?」

 美味しい夕食を終え、食器を洗い、手の空いたところでママに話しかける。
病院でおじさんが言った言葉に対してママの意見を聞くために。

『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』

 この言葉の意味はいったい何なんだろう?何が十分なのだろう?あとは私だけとはいったいどういうことなのだろう?
おじさんが神妙な表情で言ったこの言葉。意味を考えれば考えるほど、何か嫌な予感がした。
……何故嫌な予感がするのだろう?

「ん?話って何?……結城くんのこと?」
「うん、結城についてなんだが、今日、おじさんに変なことを言われたんだ」

 私の家族は、もちろん結城の事故のことを知っている。
パパは、落ち込み、泣きじゃくっていた私を優しく抱きしめてくれ、慰めてくれた。
拓と直樹は、私の大好物のタイヤキや、たこ焼き。屋台の焼きそばを買ってきてくれた。
落ち込んでいる私を、食べ物で慰めようなんてちょっと違うのではないか?
……おなかいっぱいになった後は、何故か落ち着いたとこは秘密にしておこう。
そして、ママは……一緒に寝てくれて、一晩中私の話を聞いてくれた。
優しく頭を撫でてくれ、きっと大丈夫。結城は必ず大丈夫と励ましてくれた。
家族みんなが私を励ましてくれたおかげで、私はどうにか踏ん張ることが出来た。
家族に励まされ、友人達に励まされ……私は立ち直ることが出来たんだ。
……本当に私は恵まれている。
私の些細な相談にも乗ってくれ、落ち込んだ時はいつも励ましてくれる、とても優しい友人達。
私のことをとても大事に思ってくれているパパ。……お小遣いを減らされても、文句一つ言ってこないとても優しいパパ。
いつも騒がしく、手がかかる二人だが、どんなに叱っても私を慕ってくれる自慢の弟達。
怒ると怖いけど、いつも私たち家族のことを考えてくれていて、色々な相談にも乗ってくれる、とても優しいママ。
それに……少しバカだけど、私のことをとても大切に思ってくれていて、とても大事にしてくれる。
バカな私を愛してると言ってくれた、私のとても大事な人。
初めて『愛』という感情を教えてくれた、私の大事な恋人……結城。
本当に……私は本当に恵まれている。
こんなにも優しい人たちに囲まれ、素敵な人に愛してもらえ、
大好きな人を愛することが出来る人間なんて、この世にそうはいないのではないか?
私は幸せだと断言できる。結城が退院してくれれば、もっと幸せになれる。
だから、結城……早く退院して、私を幸せにしてほしい。
264不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 19:57:36 ID:pODSkiGy
「……彩?なにニヤけた顔をしてるの?どうせ結城君のこと、考えてたんでしょ?」
「……え?い、いや、結城のことは考えてはいたが、その……マ、ママ!からかわないでほしい」
「あはははは!ゴメンゴメン、あまりにも彩が可愛かったからね。その様子だと、結城君、回復してきたの?」

 ママの何気ない言葉に表情を曇らせてしまう。
私は、何をのん気にはしゃいでいたのだ?結城は……私の大切な結城は、まだ意識はなく、苦しんでいるというのに。
私は……バカだ。大バカだ!大好きな人が苦しんでるというのに、何をはしゃいでいるんだ!

「あ、彩?ゴメンネ?ママ、考えなしに言っちゃって……」
「マ、ママは、わるぐない。わだじが、はじゃいだわだじがわるいんだ」
「あ、彩?唇かみ締めてどうしたの?」
「わだじが泣くと、結城があんじんじて治療でぎない。だからわだじはながない」

 唇をかみ締め、涙を堪える。私はいつからこんなに泣き虫になったのだろうか?

「そう……本当にゴメンね?貴女の気持ち、よく考えずにいたママを許してね」

 唇をかみ締め、涙を堪えている私を、優しくギュッと抱きしめてくれるママ。
ママ、抱きしめてくれるのは嬉しいのだが、そんなに優しくされるとますます涙が……

「彩、貴女、凄い顔してるわよ?そんな顔じゃ結城君にも笑われちゃうわね。
シャワーでも浴びて、スッキリしてきなさい。話はそれからね。
頭からシャワーを浴びれば顔中濡れちゃって、泣いているかどうかなんて分かんないわよ」
「頭がら浴びるど分がらない?」
「そう、分かんないわ。だから、ね?シャワーを浴びて、スッキリしてきなさい」
「で、でも……」
「溜めておくのは体によくないわ。シャワーが全てを流してくれるわよ。さ、すっきりして来なさい」

 優しくほほ笑みながら、そっと背中を押してくれるママ。
ママはいつもそうだ。私が困っている時は、優しくほほ笑みながら、励ましてくれる。
ママの言葉に甘えることにした私。
シャワーが私の涙を流してくれ、シャワーの音が、私の声を掻き消してくれた。
……強くならなければいけない。結城が私のことを心配せずにすむように、もっと強くならなければいけない!
熱いシャワーで涙を流し、心に誓った私。
熱いシャワーは涙を流すだけでなく、私の弱気になった心も温めてくれたようだった。 
265不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 19:58:24 ID:pODSkiGy
「で、彩。ママに聞きたいことって何?」

 シャワーで涙を流し、スッキリとしてお風呂を出てみれば……ママが冷たいアイスを用意してくれていた。
こ、これは!……モチモチとした触感が、まるで本物のお餅のような、お饅頭をモチーフにしたアイス。
2個入りのこのアイスを、拓と直樹の3人でどう分けるかを、いつも争っていた、とても冷たくて美味しいアイス。
アイスの形が月に似ているからその名がついた、『月見満月アイス』ではないか!
しかもママは、驚くことに一人で2個食べてもいいと言ってくれた!
あぁ……モチモチとしたこの触感。口に広がるバニラアイスの冷たくて美味しい芸術的な味。
あぁ……至福のひと時だ。このように美味しいアイスが、コンビニで買えてしまってもいいのだろうか?

「……彩、美味しくて夢中になるのは分かるけど、ママに話があるんでしょ?」
「はぐ!ふぉうふぁった!ふぁふぁ、おひひゃんはわわふぃにふぉういっふぁんふぁ」
「……はぁぁ〜。話は全部食べてからでいいわよ。食べながら話すのは、お行儀がよくないわ」

 何故かため息を吐いたママを尻目に美味しいアイスを味わうことにする。
あぁ……お風呂上りの冷たいアイス。これほどの贅沢がほかにあるのだろうか?
はむはむとアイスを食べ終わり、ママに本題の話をする。
……何故少しあきれているような顔をしているのだろうか?

「彩、満足した?で、ママに聞きたいことってなにかしら?」
「ものすごく美味しかった。私だけがこのように美味しい物を食べて、いいのだろうか?」
「もう!話がないならママ、お風呂に入るわよ!」
「ゴ、ゴメンママ!そ、その聞いてほしいことというのは……おじさんに言われた言葉の意味を教えてほしい」

 そう、おじさんは何故あんなことを言ったのだろう?
何が十分なのだろう?あとは私だけとはどういう意味なのだろう?

「おじさん?……あぁ、結城君のお父様のこと?」
「そう、結城米穀店の店主であり、結城の父親であるおじさんが、私に不思議なことを言ったんだ。
『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』と。これはいったいどういう意味なのだろう?
考えても考えてもどういう意味なのかよく分からないんだ」

 そう、おじさんに謎の言葉を言われてから私は考えた。この言葉にはどういった意味があるのか、を。
けど考えれば考えるほど、何故か胸の奥がザワつくというか……嫌な気分になる。
これはいったいどういうことなのだろう?

「……そっか。そこまで結城君、容態が悪かったのね。結城さん達は覚悟を決めたのね」
「容態が悪い?た、確かに結城はまだ意識を取り戻してはいない。しかしだな!結城は頑張っているんだ!
だからあまり容態が悪いとかは言わないでほし……覚悟を決めた?」

 ママの口から出た言葉、『覚悟を決めた』。この言葉を聞いて、何故か体が震えてきた。
な、何故だ?何故震えてしまう?アイスを食べたからか?2個も食べてしまったからなのか?

「彩……取り乱さずに聞いてほしいの。
部外者のアタシにはよく分からないことなんだけどね、多分、結城君……回復はしないと思うの」
「……え?か、回復しない?そ、それはどういう意味なのだろうか?」
「……言葉どおりの意味よ。このまま意識を取り戻すことなく生き続けるのか、それとも……死んでしまうのか」

 ママの言った言葉を理解できずにキョトンとしてしまう。
え?意識が戻ることがない?ええ?し、死んでしまう?……嘘だ!結城が私を残して死ぬはずがない!
何故ママはそんな酷いことを言うんだ!
266不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 19:59:11 ID:pODSkiGy
「マ、ママ……何故そんな酷いことを言うんだ」

 ガクガクと全身が震え、背中を冷たい汗が伝う。
今までなるべく考えないようにしていた。友人達に励まされてからは、まったく考えなかった。
今、目の前まで迫っている悲しい現実……結城の死。
ママの口から発せられた言葉に、私は身動き一つ取れなくなってしまった。

「彩……落ち着いて聞きなさいね?結城君のご両親はね、覚悟を決めたのよ。
可愛い我が子がいなくなってしまうことを」
「そ、そんなはずはない……あの優しいおじさんやおばさんが、結城を見捨てるなんてする訳がない!」

 ガクガクと震えながらママの言葉に反論する。おじさん達が結城を見捨てるなんてありえない!

「そんなの当たり前でしょ!誰が好き好んで愛する我が子を見捨てるもんですか!
親というものはね、たとえ我が子が犯罪者になっても見捨てないものよ」
「なら何故結城が死んでもいいと思うんだ!」
「彩……結城君のご両親はね、死んでもいいなんて思ってなんかないわよ。
むしろ結城君と変わってあげたいって思ってるわよ。……ベッドの上で苦しんでる結城君とね」
「当たり前だ!おじさんやおばさんはとても優しいんだ!ママのような薄情なことは決して言わない!」

 ママは私の味方だと思っていたのに、何故酷いことを言うんだ!
ママを見損なった!ママなんかに相談した私がバカだった!明日にでも友人達に相談しよう。
皆ならキチンと答えてくれるはず。ママなんかと違い、しっかりと答えてくれるはず。

「彩……なぜ結城君が頑張ってると思う?意識がないのに、事故から一週間。
普通なら即死の状態で、何故一週間も頑張ってくれてると思う?」
「何故結城が頑張っているかだって?そんなものは決まっている!結城は頑張って怪我を治したいと思っているんだ!」

 そう、怪我を治し、また皆と学校で騒ぎたいと思っているんだ!
おじさんやおばさんの手伝いをし、結城米穀店を支えたいと思っているに違いない!
私と……デートをのやり直しをしたいと頑張ってくれているんだ!

「ううん、それは違うと思うわ」
「ママ、酷い!何故酷いことばかりを言って私を苛めるんだ!ママは……私が嫌いなのか?」
「彩……アタシはね、彩が大好きよ。彩にパパ、拓に直樹が大好きなの。
例えママが死んじゃっても、守りたいほどに好きなの」
「なら、何故酷いことばかりを……」
「きっとね、結城君も、彩やご両親のことが大好きだから頑張ってると思うの。
頑張って生き続けて……少しでも長く生き続けようと頑張ってるのよ。あなた達が、頑張れるようにってね」

 私たちが頑張れるように?ママは何を言っているのだろう?
結城が私たちを応援してくれているとでも言うのだろうか?でも、今応援されなければいけないのは結城のほうだ。
何故その結城が私たちが頑張れるようにと頑張っているのだ?

「……どういう意味なのだろう?何故私たちが結城に応援されなければいけないのだろう?」
「きっとママが結城君と同じ立場になっても、そうしようと思っちゃうんじゃないかな?
多分だけどね……結城君は皆の為に時間を稼いでいるのよ」
「時間を稼ぐ?それはいったいどういう意味なのだろう?」
「それはね、長く生きることで、結城君が死ぬという覚悟を決める時間を作ってくれてると思うの。
だからね、結城君のご両親は覚悟が出来たのよ。
彩にもう十分だって言ったのは、結城君が死ぬことに、覚悟を決めることが出来たってことだと思うの」
「な……お、おじさん達が、結城が死ぬと思っているということなのか?」

 おじさん達がそんな酷いことを思うわけがな……そういえば思い当たる節がある。 
今日になって急に結城の話をしてほしいと言ってきた。
あれはもしかして結城のことを諦めるためではないのか?
もしかして、結城のことを思い出にするために聞いてきたのではないのか?
酷い……ママもおじさん達も酷い!結城はまだ頑張って生きているんだ!
それなのに、結城が死ぬとか考えているなんて……最低じゃないか!
267不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 19:59:54 ID:pODSkiGy
「彩……そんな顔、しないでよ。そんな悲しい顔はしないで」

 ママの話を聞いて、涙がポロポロと溢れてくる。
もう泣かないと誓ったのに溢れてくる。ママやおじさん達が酷いことを考えているからだ。
何故そんな酷いことを考えるのだろう?何故頑張っている結城を応援しようとしないのだろう?

「……ママが酷いことを言うからだ。おじさん達も酷い。何故皆酷いことを平気で考える?
結城は頑張って生きている。今、こうしてママと話している時も。それなのに、何故酷いことを……」
「……彩はね、結城君が苦しんでいるところを見ていたいの?」
「そんなの見たくない!見たいわけがないじゃないか!」

 大好きな人が苦しんでいるところを見たいかだって?そんなものは見たくないに決まっている!
そんなものが見たい人は変態しかいない!

「うん、見たくないわよね?結城君のご両親もね、きっとそうなのよ。
結城君、苦しんで生きてると思うの。だって酷い事故に遭っちゃったんだからね。
痛くて痛くてとっても辛いと思うの。普通なら痛くて苦しいから、すぐに死んじゃうと思うの。
でもね……結城君は皆のために痛いのも苦しいのも我慢して、辛いのも我慢して生きていると思うの」
「ゆ、結城が我慢して生きている?それはいったいどういう意味なのだろうか?」
「それはね、みんなの為。ご両親や彩のために苦しんで生きているの。
みんなが覚悟を決める時間を作ってくれてるのよ。
結城君が死んでも大丈夫なように、自分がいなくなってもみんなが頑張って生きていけるようにって。
みんなに自分が死んでいなくなることを、覚悟してもらうために頑張って生きて、時間を作ってると思うの」

 マ、ママは何を言っているんだ?結城が私たちのために時間を作っている?
結城がいなくなることを覚悟してもらうために、頑張って生きて時間を作っている?

「ご両親はね、もう無理して頑張っている結城君をみたくないと思ってるんじゃないかな?
苦しんでいる我が子を見たい親なんていないからね。だから彩に言ったと思うの。
『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』ってね。
ご両親は覚悟を決めたのよ。あとは……貴女が覚悟を決める番。
結城君がいなくなるという現実に、覚悟を決めるの。これはね、他の誰でもない、彩がしなきゃいけないことなの。
じゃないと、頑張っている結城君が可哀想よ」

 ママの残酷な言葉に涙が止まらなくなる。
な、何故そんな覚悟を決めなければいけない!私は嫌だ!結城がいなくなるなんて絶対に嫌だ!
268不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 20:00:37 ID:pODSkiGy
「わ、だじはぁ、ひぐ、やだぁ!いなぐなるなんで、ぜっだいにイヤダァ!」
「彩……うん、気持ちはよく分かるわ。でもね、覚悟を決めなきゃいけないの」
「イヤダァ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!絶対にいやだぁ〜!結城は私と生きるんだ!死ぬなんて……ひっぐ、やだぁぁ」
「彩……泣かないで、彩。あなたが泣いてたら、結城君、安心して天国にいけないわよ」

 泣きじゃくる私をギュッと抱きしめ頭を撫でてくれるママ。けど私の涙は止まらない。
ママが酷いことを言ったから?おじさん達が酷いことを考えていたと知ってしまったから?
……多分、違う。きっとママの言うことが正しいと分かってしまったから。
そう、結城はきっと助からない。きっと近いうちに死んでしまう。
私も分かっていた。結城は助からないだろうと。お医者様も言っていた、覚悟を決めておいてくださいと。
だけど……結城が頑張ってくれていたから、私は結城が生きてくれるんじゃないかと思ってしまった。
結城は生き続けてくれる……そう思い込むようにしていたんだ。
……そうか。結城はそんな私に時間をくれたんだ。
結城がいなくなっても大丈夫なように、生きていけるようにと、覚悟を決める時間を私に作ってくれたんだ。
……バカ。本当に君はバカだな。痛くて苦しいのなら、私のことなど無視して楽になればよかったのに。
本当に君は大バカだ!私なんかのために、痛くて苦しくて辛いのに……意識もないのに頑張ってくれるなんて。
……ありがとう。君が時間をくれたおかげで、どうにか覚悟が出来そうだ。
……うん。明日、君に別れを言いに行くよ。私の覚悟を見せるために。君に安心してもらうために。

「ママ……色々酷いことを言ってゴメンなさい。私も、おじさんたちのように頑張ってみる」
「彩……うん、頑張んなさいね。ママも酷いことを言ってごめんなさいね」
「ママ、今夜は一緒に寝てもらえるだろうか?……今夜は一人では寝る勇気がないんだ」
「うん、ママがギュッと抱きしめて寝てあげるわ。いっぱい泣いてもいいからね?
彩の涙、ママが胸で全部吸い取ってあげるわ」

 結局その日はそのままママの胸に抱かれて眠りについた。
ママの胸に顔を埋めながら結城との別れを考えた。……絶対に嫌だ。結城と分かれるなどと考えたくもない!
けど、苦しんでいる結城もこれ以上は見たくない。きっとおじさん達も同じ気持ちだったのだろう。
苦しんでいる結城を見たくないから覚悟を決めたのだと思う。
だったら、私も覚悟を決めて、結城に会いに行こう。
……君は私が泣いているところを見たくないと言っていた。
だから私は泣かない。これからは一生、君のために泣いたりはしない。
君は冷たいって怒るかな?でも、私を残して死んでしまう君が悪い。
悔しければ意識を取り戻せばいい。そうすればいくらでも泣いてあげるよ。
私も……君の胸で泣きたいんだ。明日、意識を取り戻した君の胸で、泣ければ、いい……な。

 ママの温もりに包まれて、眠りにつく。
眠りについた私に結城が会いに来てくれた。
心配そうな顔をして、『俺がいなくても大丈夫か?』と。
だから私は言ってやった。
『君がいなくて大丈夫な訳がない。でも、もう大丈夫だ。君のおかげで覚悟を決めることが出来た』と。
私の言葉に頷いた結城は、ほほ笑みながら消えていった。
バカ……だから君はバカなんだ。抱きしめるとか、キスをするとかしてから消えるべきじゃないのかい?
269不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 20:01:29 ID:pODSkiGy
 日曜日の午後、結城が入院している病院へと来た私は、おじさん達にお願いし、2人きりにさせてもらった。
私の無理なお願いにお医者様は反対したが、おじさんが頭を下げてお願いをしてくれた。
『息子の為なんです、どうか我が侭を聞いてください』と。
おじさんの必死の願いでお医者様も折れてくれ、二人だけにしてくれた。
おじさんに頭を下げ、集中治療室へと入る。ベッドに寝たまま動かない結城の側に近づき、そっと頭を撫でる。

「結城……外はいい天気だ。どうだい?少し起きてみようとは思わないのかい?」

 二人だけになって、改めて結城をよく見てみる。
腫れあがって、誰だか分からない顔。時折痙攣する身体。瞼が痙攣して開き、時折光のない瞳を覗かせる。

「今日ここに来る途中、たい焼きを売っているお店を見つけたんだ。
いい匂いがして、とても美味しそうだったよ。……君と、一緒に食べたいな」

 ……君は本当にバカだな。どうしようもない、大バカだ!
何故こんなにまでなって、頑張って生きていてくれるんだ!
痛いだろうに……辛いだろうに、何故生きていてくれた!

「君と……結城と、食べたかった」
 
 ……きっと君のことだ、私が泣くのを見たくないから、とか言ってくれるのだろう。
……バカ。君は本当に大バカだ。君のようなバカは、見たことがない。

「結城と……修太と一緒に色々なお店に行き、美味しい物を食べたかった」

 ベッドに横たわったまま動かない結城の手を握る。
……やはり握り返してはくれないのだな。もう、この手に力が戻ることはないのだな。

「お喋りをしながら腕を組み、色々な場所へ行きたかった」

 ……ありがとう。私は君に会えて本当によかった。
短い……本当に短い間だったけど、私は君にたくさんの思い出をもらえた。
もう、十分だ。これ以上私に優しくしてくれなくてもいいよ。

「私は……君と、一緒に生きていきたかったんだ。ずっと一緒の時を過ごしたかった」

 もうこれ以上頑張らなくてもいいよ。
君はもう、十分頑張ってくれた。私達に色々なものを残してくれた。

「……君のことは絶対に忘れない、決して忘れたりはしない。
安心して欲しい。私は一度覚えたものは決して忘れる事はないから。
だから、君から貰った素敵な思い出も忘れない。君と過ごした時間を忘れたりはしない。
君が残してくれた優しさを忘れることは決してない!……だから、安心、して……」

 涙が溢れそうになる。ギュッと唇をかみ締め、涙を堪える。

「だ、から……わた、じは、だいじょ、ぶ、だから……」

 唇をかみ締め、今、私に出来る精一杯の笑顔を作る。

「あんし、んじて、天国へ……いっでほしい」

 今、私に出来る、精一杯の笑顔。
唇をかみながら、顔を引きつらせ、無理やりに作った笑顔。今、私に出来る……精一杯の、不器用な笑顔。  

「……さようなら、修太。……愛しているよ」

 
 私が別れを告げた次の日……結城修太は、死んだ。
270不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 20:02:16 ID:pODSkiGy
『ピピピピピッ!ピピピピピッ!』

 朝九時、愛する人からもらった腕時計のタイマーが鳴る。
約束の時間。君とのデートの待ち合わせの時間。いい天気になってよかったよ。
……ふふふ、なにがペアルック、だ。大学でも男物の時計をしてる私は目立ってしまって仕方がなかったよ。
けど、君が残してくれた大切な時計だ。丈夫で頑丈で……まるで君のようだ。
少し乱暴者の私には似合っている。……あれからずっと、肌身離さず使用させてもらっているよ。
あれから4年……月日が流れるのは早いものだ。今や私は22歳だ。君よりもだいぶお姉さんになってしまったよ。
霊園にある休憩所から、水の入ったバケツと、蝋燭や線香、スポンジの入った鞄、お供え用の花束を持ち、結城の元へと向かう。
今日も時間通りに会いに来たよ。ふふふ、私は君と違って遅刻はしないよ。
たまには遅刻して、待ちぼうけをさせてあげようかとも思うのだが……君に文句を言われたくないからね。

「ちょうど九時だ。……おはよう、結城。急に会いに来てすまない。驚かせてしまったかな?」

 霊園にある、結城家と書かれた墓石。私の愛する人はこの下で眠っている。
私は彼の寝床を綺麗にするため、バケツから柄杓で水をくみ上げ、お墓にかける。

「今日は君に報告があるんだ。大学を卒業した後の、就職先が決まったんだ」

 水をかけた後、持参したスポンジで汚れを落とす。

「ついに決まったよ。臨時教員とはいえ、春からは私も教師だ。学校の先生だよ」

 汚れを落とした後、墓石の周りに生えてきている雑草を丁寧に抜く。

「まだママにも教えていないんだ。前から一番先に教えるのは、君にと考えていたからね」 

 雑草を抜き終わった後、持ってきたお供え用の花束を花立てに供え、綺麗な水を注ぐ。

「ふふふ、驚いたかい?この私が教師だよ?学校の先生だ」

 花を供えた後、蝋燭に火をつけ蝋燭立てに入れる。

「高校を出た後は、すぐに就職するつもりだったのに……これも君のせいだ。君が死んでしまうからだよ」

 その蝋燭で、線香に火をつけ香炉に供える。あたりには線香のいい香りが漂いはじめた。

「君が死んでから私は考えたんだ。『これからどうやって生きていけばいいのかな』ってね」

 そう、私は考えたんだ。修太が死に、私は何をして生きていけばいいのか、と。
たくさん考えた。バカな頭をフル回転させ考えたんだ。そして……思いついた。教師になろう、と。

「……教えたいんだ。私は色々なことを教わった。ママにパパ、弟達に教わった。
おじさんにおばさん、友人達にも教わったんだ。もちろん……君にも教えてもらった」

 君に会うことがなければこんなことは考えもしなかったと思う。
君が死にさえしなければ、思いつきもしなかったと思う。

「私は高校生活で、色々な事を学んだ。教科書では分からない様な事。1人では知りえなかった事。
みんなと知り合っていなければ、決して学ぶことが出来なかった事。私はそれを教えたい。
多分、それは……とても大切なことだと思うから。人生において、とても大切なことだと思うから」

 修太……私は教師になり、君との思い出を生徒達に話そうと思う。
君や友人達と過ごした大切な時間を話し、生徒達を導いていこうと思う。
もちろん思い出をそのまま話す訳じゃない。君達からもらった思い出を元に、生徒達を導きたいんだ。
私は君達と出会って、たくさんの経験をした。笑ったり怒ったり、喜んだり……悲しんだり。
人を愛するという素敵な気持ちも教わったし……絶望という、とても辛い感情も教わった。
これらを教えたいんだ。きっとこういう感情は、生きていくのにとても大切なことだと思うから。
私がこんな考えを持ってしまったのも、君のせいだな。君が急に死んだりするからだ。
急に死んだりするからこう考えるようになってしまった。……死んでまで私に影響を与えるとは、君ははた迷惑なヤツだ。
271不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 20:03:19 ID:pODSkiGy
「どうだい?驚いたかい?ふふふ、驚いてくれたら嬉しいな」

 君を驚かすために頑張ってきたんだ、盛大に驚いてほしいな。

「さて、私はそろそろ帰るとするよ。ママや友人達、おじさん達にも教えなければいけないからね」

 もって来た荷物を手に取り、帰り支度を始める。寂しいけど、これ以上ここにいると……辛くなってしまう。

「私と話したければ、君が会いに来てくれればいい。最近は夢でも会いに来てくれないじゃないか」
 
 そう、最近は夢の中でさえ、修太は会いにきてくれない。修太……恋人に寂しい思いをさせるなんて彼氏失格だぞ?

「たまには君から会いに来い。夢でもいい、お化けでもいい。生き返ってもかまわない。君なら、ゾンビでも構わないぞ?」

 ……会いに来てほしい。たとえ夢の中のひと時でもいいんだ。
生き返るなんて、無茶なことをしなくてもいいんだ。……私は君と会いたいんだ。君と話したいんだ!
だから……会いに来て。しゅうたぁ、君に私を好きだと言ってほしいんだ!
今まで堪えていた修太への思いがあふれ出て、涙が溢れそうになる。
涙を堪えるために、唇をグッとかみ締める。私は泣かない。君のためなんかに泣かないと決めたんだ!
修太のお墓の前で、唇をかみ締め、涙を堪える私。
せっかく今まで泣かずに頑張ってきたんだ。泣いてなんか堪るか……え?
堪えていた涙が溢れようとしたその瞬間……優しい風が吹き私を包み、蝋燭の炎が激しく燃え上がった。
その激しく燃え上がる蝋燭の炎は、まるで私を励ましているかのようだ。
……そう、か。今の風は君の仕業か。君は私に頑張れと言ってくれているのだな?
……ありがとう。君は死んでからも私を守ろうと努力してくれているのだな。

「……バカ。君はやはり大バカだ。私に気をかけてばかりだと、安らかに眠れないだろうに……バカ」

 私は墓石にそっとキスをし、話しかける。

「君は本当にバカだな。死んでもバカは治らないいうのは、本当らしいな。
ということは、私も死ぬまでバカのままなのか?ふふふ、そうか、私もバカなままか。
いつかはこんなバカな私にも、彼氏になってくれる君以外のバカな男は、現れるのかな?」

 抗議のためか、一段と激しく燃え上がる炎。修太は天国で嫉妬してくれているのだろうか?

「ふふふ、文句を言いたいのなら、会いに来い。夢でいいから、必ず会いにくるように!
……では私は帰るから。今度はおじさんたちと一緒に、君の命日にでも会いにくるよ」

 今の私に出来る、最高の笑顔を見せて修太の前から去る。
悲しみからではない、修太が側にいてくれているという嬉しさから、溢れそうになる涙を堪えての、精一杯の笑顔。
……今の私の出来る、精一杯の不器用な笑顔。
いつかはこの不器用な笑顔も、自然な笑顔になる日が来るのだろうか?その時に君は、喜んでくれるのだろうか?
いつかは自然な笑顔で、君と話し合える日が来るのだろうか?
私は不器用な笑顔を残して、結城修太との逢瀬を終える。夢で会いに来てくれることを祈って。

  修太……愛しているよ。君が死んでも、やはり私は君が好きなんだ。
あれから4年が経ったが、この気持ちは変わりそうにないよ。お嫁さんにいけなくなったらどうしてくれるんだい?
私は結城修太への想いを再確認して霊園を去る。
これから始まる新しい生活も、結城修太との思い出があればなんてことはない。
修太はいつも側にいてくれているんだ。今日、それが改めて分かった。
ありがとう、修太。君に守られていると考えるだけで、勇気が沸いてくるよ。
春からの新しい生活も頑張れそうだよ。……君が側にいてくれているのだから。


 私は、春から始まる新しい生活に思いを寄せつつ、愛する人の顔を思い浮かべ、家路へとついた。
 

             
                  不器用な彼女 終わり
272ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA :2008/10/01(水) 20:05:40 ID:pODSkiGy
不器用な彼女は以上で終わりです。
最終話の投下まで、散々待たした挙句、このような結末で申し訳ありません。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
では名無しの戻ります。
273名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 21:10:51 ID:dW28FbYj
全俺が泣いた
274名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 21:13:33 ID:dW28FbYj
てかベタな展開(修太フカーツ)を待ってたのは俺だけ?
275名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 21:40:00 ID:u9BMzWG3
>>274
ベタな展開だと思ってたから余計にビックリして目から汗が・・・

なにはともあれGJ
276名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 22:11:53 ID:Hl2dOpV0
>>272
お疲れさん。
バカやってる二人に慣れてた所に予想してなかった
結末でちょっとショックだ。
277名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 23:13:09 ID:JARBDDy6
>>272
お疲れ様でした

なんか、最後の方は風神と大学助教授がチラついたな
278名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 16:27:27 ID:/m07XQ/h
>>272
1週間後・・・そこには元気にヤリ狂う2人の姿が!
っていうハッピーエンド的展開だと普通に思ってたからちょっとショックだわ。
なにはともあれお疲れ様でした。島津っちには幸せになってもらいたい
279名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 23:09:09 ID:pxAHs3KC
>>272
お疲れさまでした。
まさかの展開だっだので驚いた。
なんか泣けてきた
280名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 06:05:04 ID:B0CUHNVX
初めから見てたらこの終わりかたはキッツイなぁ。
マジで涙でそうになる・・・
でも良かったです
お疲れさまでした。
281名無しさん@ピンキー:2008/10/18(土) 06:31:16 ID:fIBpx+WY
ほしゅ
282名無しさん@ピンキー:2008/10/21(火) 02:01:33 ID:Lau9tn68
捕手
283名無しさん@ピンキー:2008/10/26(日) 19:46:44 ID:E1JO5q/z
284名無しさん@ピンキー:2008/11/01(土) 18:58:03 ID:K1u+K0Vs
あげほしゅ
285名無しさん@ピンキー:2008/11/07(金) 22:49:44 ID:bXGQB8MF
ほしゅ
286名無しさん@ピンキー:2008/11/09(日) 23:59:59 ID:9ZESDX8s
hosyu
287名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 13:48:32 ID:OoPFPNAp
288名無しさん@ピンキー:2008/11/15(土) 09:53:35 ID:6gc3wQFi
289名無しさん@ピンキー:2008/11/16(日) 13:02:33 ID:azvgRdn/
290名無しさん@ピンキー:2008/11/16(日) 14:34:45 ID:aiMtrzU/
291名無しさん@ピンキー:2008/11/18(火) 17:32:21 ID:0wGwLrnp
292名無しさん@ピンキー:2008/11/19(水) 20:59:32 ID:MxuEMGNe
293名無しさん@ピンキー:2008/11/21(金) 23:44:21 ID:jhVxUc0C
294名無しさん@ピンキー:2008/11/22(土) 20:00:39 ID:znafviBx
295名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 17:41:27 ID:Qn5fQSPD
泣いた
296名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 18:20:09 ID:3xRJ4Gkt
とりあえずあげ
297名無しさん@ピンキー:2008/11/28(金) 01:09:34 ID:N46SNHv4
ほしゅ
298名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 00:51:26 ID:lkljoKMh
hosu
299名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 11:24:57 ID:Nwso/6l2
ほーたるこい
300名無しさん@ピンキー:2008/12/07(日) 02:49:36 ID:qNPXIHDW
保守
301名無しさん@ピンキー:2008/12/07(日) 17:41:50 ID:WTChqRZ7
302名無しさん@ピンキー:2008/12/08(月) 22:18:37 ID:vuCTJ3vu
泣いた
303名無しさん@ピンキー:2008/12/09(火) 15:50:02 ID:Z3kq7Kyn
>>302

「何故君は泣いているの?」
「ひっく、うっさいわよ!このバカ!」
「理由を話してくれなきゃ分からないよ」
「どうせアタシなんかより他のスレの方がいいんでしょ?もうほっといてよ!」
「き、急になにを言いだすんだい!」
「どうせアタシなんか素直じゃないし口答えばっかりしちゃうし、アンタに文句言ってばかりだし……」
「すぐに嫉妬しちゃうし、寂しがりやだし……それに、二人きりになれば素直だしね」
「な、なに真顔で恥ずかしいこと言ってんのよ!アンタなんかどっかのスレに行っちゃえばいいのよ!」
「……確かにここには色々なスレがあるよ。おとなしい娘やメイドさん。ハーレムのスレもあるね」
「や、やっぱり飽きたんだ……ぐす、アタシに飽きちゃったんだ」
「でも、ね?僕が好きなのは、文句を言いながらもずっとそばにいてくれて、時々叩いてきたりするけど、
二人きりになると涙を浮かべながら謝ってきて、優しい仲直りのキスをしてくれる、君のようなスレさ」
「バ、バカ……なに恥ずかしいこと言ってんのよ」
「寂しい思いをさせてゴメン……これからはずっと君を見てるよ」
「あ、謝るくらいなら最初からアタシだけを見ててよ!」
「ゴメン……これからは離れていても君だけを見てるよ」
「バカ……側で見てなさいよ」
「うん、分かった」
「わ、分かったのなら仕方ないわね。仲直りをしてあげるわ」

頬を赤く染めた彼女がそう呟き、目を閉じて唇を突き出してきた。 
僕はそんな愛しい彼女をギュッと抱き締め仲直りのキスをする。 
唇から伝わる彼女のこのスレへの思いを感じ取り、僕は彼女に囁いた。 

「これからもずっと一緒だ。……保守だよ」

304名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 16:50:44 ID:iZVDsiIE
305名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 11:56:16 ID:FXuErYIE
306名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 21:11:03 ID:Ug2A1dw9
307名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 00:08:58 ID:pqEftN+x
308名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 11:24:07 ID:Oj+tF+2K
309名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 02:16:44 ID:QlCj4N6V
【捕手中】

     ∧,,∧
    (´・ω・)           シュッ!!   ∧,,∧
    ( っ(⌒)   ◯三二≡=─  ⊂(・ω・`)、
     `u-u'                  ヽ  と)
                           `u-u'
310名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 03:10:40 ID:mt9bgIGK
保守ばかりじゃなく、職人さんが来ることを祈りながら、萌え語りでもしようぜ。

気の強い娘に似合う髪型は、もちろんツインテールだよな?
ツインテールで幼なじみな気の強い娘が王道だと思うが、逆に邪道な気の強い娘って何かあるかな?
311名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 06:24:03 ID:VJBppKvz
家に帰って裏声使ってお人形さんと会話
312名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 00:37:56 ID:WPohibV1
それを男に見つかって真っ赤になるわけだなww
313名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 04:00:12 ID:BhHNSzjn
ツンデレじゃなくて悪友ってのもいいよな
314名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 22:57:12 ID:IoOPYK5m
つまりこのスレはツンデレスレなのか?
315名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 23:56:35 ID:YKhYBSY1
ツンデレ娘は気の強い娘の中の一人でしかないよ


316名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 22:42:33 ID:fFSztu4E
寝るか
317名無しさん@ピンキー:2008/12/26(金) 06:21:04 ID:+q6QIHsO
「あんた誰が好きなの?」
「誰かなぁ…」
「まさか私とか!私かわいいしナイスバディだし、むっつりのあんたならありえない話じゃないわね!」
「うん」
「え?」
「看破されたら仕方ない。お前が一番好きだ」
「そんな…わ、私そんな…不細工だし体も平たいし…」
「…?」
318名無しさん@ピンキー:2008/12/27(土) 15:42:53 ID:IfKnU6D3
『弱っちー男は強い女、強そうな女に惹かれ、強い男は性格がえばりんぼうなので強い女を生意気と嫌い弱そうな女を好む。』
http://www.sunmarie.com/msn_renka/index22.html
↑(一部抜粋)男性ホルモンが多い男性は攻撃的で、闘争心が強いから「エストロゲン」が豊富な女性との相性は◎。
でも男性ホルモン少なめの男性は中性的なので、同じく中性的か少し男性的な女性との相性が◎よ。

中性的でシャイな男
シャイな男というのは、自ら果敢に攻めるということがないため、気が強くてちょっとわがままな女性や、しっかり者でリーダーシップのとれる年上の女性と付き合うことが多いようです。

俺様系の強引男
男としてのプライドが高く、どちらかと言えば女性を卑下する傾向も強いのが特徴です。
女に対しては綺麗でか弱いという幻想を抱いていることも少なくありませんですので、自分より有能そうなバリキャリの女性や、男勝りで女らしさに欠ける女性などは敬遠しがち。

似ていないひとに惹かれる=自分に無い魅力に惹かれる。自分とは違う遺伝子が欲しい。
強いもの同士・弱いもの同士は引かれ合わない

ヤフー知恵袋にあった書き込み↓
自分の職場に、見るからにとても気が強い女性がいます。
そんな女性の彼氏として務まるのは、やっぱり女性慣れしていてリードできる男性だろうな、と思っていたのですが、何と誰が見ても物静かな雰囲気の男性でした。
正直、「これだけ気が強い女の子の彼氏って、どんな人なんだろう・・・」と思っていたのですが、とてもビックリです。

http://www.chatran.net/dispfw.php3?_movie/_jean

なぜだか、ずっと、強い女性が好きでした。
それも単純に、アクション系の見た目強い女性、戦う女性が好きで、見ていてスカッとして憧れてしまうのでした。
自分自身は運動神経が鈍くて精神的にも弱く、すぐ落ち込んだりイジイジしやすい大人しめのダメダメタイプだったから、
よけいにそういう女性に憧れたのかもしれません。
http://www.yomiuri.co.jp/junior/articles_2003/030303.htm

――主人公に元気のいい女の子が多いですね。
 自分から一番遠い存在で、書いていて楽しいからでしょうか。
ぼくは気が弱いので、引っ張っていってくれる強い女の子が好きです。
それに、家に閉じこもってばかりいる子では、物語が進展しない(笑)。
ぼくが運動音痴(おんち)だったので、運動神経バツグンの主人公を書くなど、自分にできない夢を登場人物に実現してもらっています。
http://www.so-net.ne.jp/mc/columns/yohito/040325/index.html
気の強い女性が好きで、自分がリードするのは苦手。寺岡呼人によれば、そんな町田直隆の恋愛関係はミュージシャンの本道らしいんです。
319名無しさん@ピンキー:2008/12/27(土) 16:02:21 ID:uzMH9Y0h
懐かしいコピペだな。
スレ住人やSをMに変えたい奴はどう解釈されるのか。
320名無しさん@ピンキー:2008/12/27(土) 16:10:07 ID:IfKnU6D3
>>1みたいに女にか弱さを求める男は男らしいたくましい男です。
自分は逆なんで分かるんです。
強い女を女の癖に生意気だ!と言ってる男は弱々しい男たちではありません。
なぜなら、弱っちー男は女に対し弱さや弱そうなところに腹立ち、強さに惹かれるからです。
顔、体つき男勝りなのが好みです。といっても有名人にいい例がいないので画像を貼ることができませんが。
それは自分自身が弱っちーためになよなよした感じの女に腹立つんです。
強そうな女が魅力的に見えるのとは反対です。
弱いくせになにが弱い女が嫌いだ?ではなく腹立つものは腹立つんです。
多分遺伝子が弱い女を避け、強い女を求めてるのでしょう。
声も低いのが好みです。低くてでかい声で怒鳴るとその声がかっこいいし勃起します。
ですから、女はか弱いほうが女らしくて可愛いって性癖は強い男たちが言ってる台詞です。
実際テレビでタレントたちに可愛がられてるぶりっ子系は嫌いなタイプですし。











321名無しさん@ピンキー:2008/12/30(火) 19:15:09 ID:IHIjNgXM
緊急保守!
322名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 04:54:54 ID:BgByWZsP
「ふっふっふ……ついにお前達にも最後が訪れるようだな」
私は口角を上げ、ニヤリと心から愉快そうな笑みを浮かべた。
拳を地面に叩きつけながら唇を噛む武闘家。
MPが切れ、悔しそうに顔を歪ませる僧侶。
杖を頼りになんとか立ち上がろうとする魔法使い。
そして…私が最も痛めつけたい憎き勇者が地面に膝をついている。
…残念ながら顔は俯いていて見えないが。
「お前等なんか私が本気になればこんなものだ!
 所詮は人間…諦めて私の父上の下僕となるがいい」
黒く伸びたツインテールを風で揺らしながら私は得意気に薄い胸を張る。
「誰が…魔王なんかにっ…!」
屈辱に塗れた声を漏らしたのは普段きつい目つきで私を睨みつける武闘家。
「従うわけない…でしょ!」
漸く立ち上がった魔法使いが私を睨みつけながら強がって見せる。
「私達は……この命が尽きようとも、貴方達に抗うわ…!」
最後に、腰まで届く髪を靡かせながらどこまでも神を信ている僧侶が言い切った。
「ばっかじゃないのアンタ達。それ、ボロボロの状態で言う事じゃないのにさー」
私はあまりの必死さについつい噴出してしまった。
ああおかしい、こういうバカどもを力で捻じ伏せるのはこの上なく快感だ…。
そんな有頂天の私に、やっと口を開いた勇者の声が響いた。
「…わかった。従おう!」
顔を上げてやけに強い口調でそう言った勇者を他の3人はありえないものを見るような目で見ていた。
…それは私も同様だった。
「俺は従う!今すぐ魔王の元……いや、お義父さんに会わせてくれ!!」
……誰しも口を開けずにいた。
ただ1人、バカ勇者が熱く拳を握り締めているだけだった。
「…? もしかしてミリちーは結婚してから紹介したいタイプだったのか?
 いやいやそれはさすが駄目だろう。道徳的に…いくら魔王だからといって…」
1人延々と駄目だ駄目だ、まずは挨拶から…とかなんとかバカな事を勇者は呟いている。
私は漸く…キレた。
323名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 04:55:42 ID:BgByWZsP
「ばっ………バカな事を言うのも大概にしろ!!このバカ勇者!!!」
「ええっ!?どこがバカな事なのさ。おれ真剣だよ?」
「誰が…アンタみたいな正義正義した勇者と結婚するか!!
 私は魔王の娘だぞ!いい加減脈がない事くらい気づけ!」
「ハッハッハー、いいんだよいいんだよ無理しなくて。
 本当はミリちーが俺にゾッコンラブ!だってことは承知してるからさー」
そう言いながら勇者がにこやかに私に近づいてくる。
「っ!? く、来るなぁぁーー!!」
その笑顔に身の危険を感じ、身体が勝手に魔法を繰り出していた。
けれど勇者はボロボロになっていた筈なのに…何故か食らっても平気な顔をしていた。
「なっ、なんでぇ!?アンタ私に負けて………」
「んー、ミリちーに負けたらお義父さんのところに連れて行ってくれるかなーとか思って。
 だから今日はわざと手を抜いてみたよー」
…プツンと、私の中の何かが切れた。
「………ふ…………」
「…ふ? …不倫でも貴方を愛したい?」
「……ふぇぇぇん………折角…折角勝ったと思ったのにぃ…!」
この日の為に沢山準備をしてきたのに。
お小遣いを溜めて強い武器を買ったり…。
モンスター達や部下達のスケジュールが合う日を選んで…。
念には念を入れてトラップや魔封じの札だって用意した。
お金もかかって時間もかかって…漸く作ったチャンスだったのに…!
「うううぅぅぅぅぅぅっ……ひどいよぉ…折角頑張ったのに!うわぁぁーーーん!!」
とうとう私は泣き出してしまった。
涙が止め処なく溢れてくる。
憎き勇者は私の涙にオロオロしているようだ。
「み、ミリア様!ここは一先ず退却いたしましょう!」
「…うっ、ぐす…うん……退却ぅぅ………」
涙声で部下にそう指示して、ぐいっと涙を拭う。
そしてビシッと勇者どもに指を突きたてる。
「…きょ、今日はこのくらいで勘弁してやる!
 次会った時がお前達の最期………なんだからぁぁ!」
最期は涙声でうまく言えたか心配だったけど、私は一刻も早くこの場を立ち去りたくて足早に部下の作った転送用魔方陣の上に乗った。
「ミリちー!愛してるよーーーー!!!!」
バカ勇者が手を振りながらまたバカげた事を言っている。
「…アンタなんか、だぁぁぁぁーーーーーーっい嫌いなんだからぁぁぁーー!!」
私は精一杯勇者に向って言葉を返す。
…なんでこんなバカ勇者にわざわざ反応してやってるのか自分でもわからないけど、とにかくあいつはむかつく奴だ!
だから大嫌いだ!
私は徐々に転送されながら、ニコニコと笑顔で手を振る勇者をいつまでも見続けていた。


投下場所間違えたりもしたけどあけおめ保守ネタ
324名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 00:40:14 ID:sexZAzBX
なんというお年玉…!
ミリア可愛ええー!!
325名無しさん@ピンキー:2009/01/05(月) 00:41:14 ID:ixEdgz70
保守
326名無しさん@ピンキー:2009/01/05(月) 09:49:15 ID:G2kN0rY9
>>272
亀レスだけど泣きまくった
智代アフター思い出した
結末が悲しい物語って見るに耐えないはずなのに美しいと感じる
327名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 03:44:44 ID:BGW6oeJh
私、負けません!
328名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 17:27:55 ID:3vH6Kc/Q
329名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 19:35:57 ID:Sg4TZTvF
330名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 20:00:01 ID:T8MopP0m
331名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 21:09:24 ID:gonjRDy0
332名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 22:55:19 ID:YKzOe11J
333名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 23:13:03 ID:3tiM7Obg
334名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 01:16:51 ID:cC7lRPlI
335名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 02:27:43 ID:edkg71on
336名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 03:32:47 ID:/D2o9t8l
337名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 15:55:39 ID:t0m1nG6y
338名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 22:14:15 ID:i8h5m+GP
339名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 23:06:00 ID:BLXEL+Ei
340名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 00:48:28 ID:bfksChEe
341名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 01:52:14 ID:X4m8QjgW
342名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 03:32:57 ID:HtpeMTEZ
343名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 11:25:42 ID:PK7B6v5n
344名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 16:38:15 ID:azGG2ilh
本当はベヤングそーめん友よ。

これは難題だ…
345名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 17:33:12 ID:9lJ8GKnH
とも よや すら かに
346名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 20:20:32 ID:nKEivr0B
そーめん
347名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 19:22:10 ID:aQMQx4Cu
「ペヤング」とは「ペアでヤングな」の略らしいな。


貧乏な主人公(男)。同じクラスの少女に唐突に弁当を恵まれて狼狽。
「ほら、これ食べなさいよ。か、勘違いしないでよね!いっつも昼に教室の隅っこで一人でソーメンすすってて陰気臭いのよ!!」
親友に男の前では言えない本心を打ち明ける女。
「ホントは…ホントは……あいつと一緒に…一緒にソーメンすすりたいだけなのに…」
そんな若い二人。

うん、ありがち。
348名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 19:42:59 ID:9L5N/Mob
ペヤング=先生=クルサード・・・

349名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 21:58:33 ID:bB3UxAv7
やきそばだけかと思っていた。

そーめんも、まろやかなのか?
350名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 04:01:44 ID:uhTazF4Q
まろやかも何も、ペヤング辛いぞ
味は薄いんだけど何でか辛い
ヒリヒリする
351名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 17:30:42 ID:bqV+VeoO
ぺヤングのヒリヒリ感=化学調味料かなぁ
352名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 21:08:47 ID:fpBdbvK6
353名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 00:51:10 ID:Mu2tV/IW
354名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 01:19:20 ID:8QhYEgNY
355名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 20:29:26 ID:zJAdoy32
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356名無しさん@ピンキー:2009/02/07(土) 14:21:17 ID:vGrPMHD0
357名無しさん@ピンキー:2009/02/08(日) 11:49:33 ID:QWxF0MEg
358名無しさん@ピンキー:2009/02/09(月) 12:09:41 ID:Uw8uhkZp
359名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 02:22:38 ID:5vQwdqq4
さちねえさんの話は保管庫にあるので最後なの?
360名無しさん@ピンキー:2009/02/14(土) 23:54:15 ID:fEVquR0t
そのとおり。
また作者さんがフロッピーディスクを紛失したんだろう。
361名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 15:39:53 ID:QGXnJCZ9
足軽堂さんの鯖落ちた?
362 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:19:58 ID:NHu/P1zW
夢についての閑話
-*-*-*-*-*


うそだろう。

いやいやいやいやいやいやいやいや。
ありえないありえないありえないありえないありえない。
うん。

学校に遅刻しそうで走っていたら
「わー!どいてどいてー」
どしーん。
「いたたたた・・・気を付けなさいよね!」
「な、なんだよそっちこそ!」

「今日は転校生を紹介します。」
「なーなー。女かな。美人だと良いよな。」
「どっちでもいいよ・・・くっそ、いてて。」
「今日からこのクラスの仲間になります・・・」
「あーーー!!」
「あーーー!!」

ぐらいありえないと言えばいいだろうか。
うん。多分それくらいには、ありえない。
363 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:21:07 ID:NHu/P1zW
@@

「ねえ。貴志くん。醤油はどこ?」
「あ、その上です。右の棚の下。ヤマサの。そうそれです。」
「・・・私は醤油入れどこって聞いたつもりなんだけど……、このまま使ってるわけね。
 醤油入れぐらいは買おうよ。貴志くん。」
呆れた顔でこっちを見てくる和歌葉先輩の顔を見て頷く。
「あんまり使ってないので・・・」
顔が熱い。恐らく和歌葉先輩に向かって頷いた僕の顔は今、ものすごい呆けているんだろう。
熱の所為だと勘違いしてくれれば良いのだけれど。まともに顔を見れない。

「まあいいけど。いくら男の子の1人暮らしだって基本的なものは買っておいたほうが良いよ。」
「そ、そうですね。」

なんだろうか。これは。
目の前にエプロン姿の和歌葉先輩がいる、のは判る。
えらく可愛い。ものっそい可愛い。超可愛いって感じ。
いつものびっとした感じはそのままに、エプロンは熊さんだ。
スカートはお気に入りなんだろう、時々履いている赤のチェックのスカート。アメリカの女子高生みたいな奴。
そしてやばいくらいに真っ白で細い脚。
薄手のブラウスを腕まくりしている。何だか全体的に和歌葉先輩女子高生バージョン的な格好。
そしてトレードマークみたいに綺麗に編まれた長い一本の三つ編み。
狙ってやってるのだろうか。
物凄く似合うけれどそう言ったら言ったで和歌葉先輩は怒りそうな気もする。
364 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:21:56 ID:NHu/P1zW

「うっわ、案の定油も鍋も無いや。どうなってるんだきみの家は。持ってきてよかった。
ねえ、貴志君、きみ、梅干し大丈夫だよね。」
「…はい。」
「…あれ、熱上がったかな。」
僕の顔を見て、少し眉を潜めると、和歌葉先輩はぺっぺっと手から水を切ってこっちに近づいてきた。

「いえ、大丈夫です!全然、大丈夫ですから!」
「起き上がっちゃダメだってば。」
ぺと。とベッドから起き上がろうとした僕のおでこにかがみ込んで来た和歌葉先輩のひんやりとした手が当たる。
そしてそのままぐぐぐ、と力でベッドに押し倒される。
僕を押し倒した和歌葉先輩はつまり上半身を僕にくっ付けるように状態を倒しており、
そしてつまりその体勢、僕から見ると和歌葉先輩が圧し掛かる様にしている事によって僕の眼前に広がる未知との遭遇的な何か。
つまりブラウスの上の隙間から覗くすっごく際どい部分。
真っ白くて、柔らかそうで、ええと、思ったよりも大きいおっぱいの部分。とブラジャー。

おでこには和歌葉先輩の手。眼前にはおっぱい。
「んー。大丈夫かな。ご飯食べたら、解熱剤飲みなね。」
すっと体が離される。
和歌葉先輩が掛け布団をぽんぽんと叩く。
僕の顔を見て、にっこりと笑う。
やっぱめっちゃ可愛い。和歌葉先輩。

ああ、そうか。
僕は死ぬのかもしれない。

ふと思い至って、余りに自分の考えたその事が真実味を帯びていて背筋がぞっとした。

365 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:23:11 ID:NHu/P1zW

僕は今きっと、寒い自分の部屋にいるのだ。
エアコンも止まり、ひき込んだ酷い風邪の所為で意識はきっと朦朧としている。
1日前に食べたカップラーメンは片付けられないままきっと机の上に冷え切った汁が残ったまま放置されている。
電気は消えていてしん、と何の音もしない。
普段から使わない薬入れは空だ。
冷蔵庫にはビールと麦茶しか入っていない。
そんな中で弱弱しく咳込んでいるのだ。
最後にこんな幸せな夢を見ながら。

「うん、塩が無い。これは予想外だった。ね、貴志君、塩ってどこかな。もしかして無いなんて…寝ちゃった?」

だって、そんなはず無いもの。
和歌葉先輩がここにいるなんて、そんなはず無いもの。
366 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:24:20 ID:NHu/P1zW

@@

酒の上での過ち。という言葉を聞いて皆はどのような事を考えるだろうか。
酒の上での過ち=ちょっとした失敗
と考える人間はきっと幸せな人間だ。ね。
ちょっとした失敗なんだろうね。きっと。
吐いちゃって周囲に迷惑を掛けてしまった、とか。
絡んでしまった、位なんだろうね。
笑いながら語れちゃうんだろうね。ね。
持ちネタにしちゃったりするんだろうね。

僕は酒の上での過ちと聞く度に暗澹たる気分になる。
絶望的な気分になる。
死にたくなる。
その事を思い出す度、高い建物にいれば窓を破って外に飛び出したくなるし頭を掻き毟りたくなる。
ああああああああああああああああと叫びたくなる。
この前は近所のTUTAYAで思い出してしまって訳も無く店内を猛スピードで歩き回った。

そ、その、和歌葉先輩に対して。
それまでは上手くやっていたのだ。
上手くやっていたと思う。僕なりに。
好きな人に対する態度として、そんなに変な事はしていなかった。

サークルの勧誘で和歌葉先輩に勧誘してもらって。
地元が一緒っていう縁で僕の事をとっても可愛がってくれて。
だから、和歌葉先輩の事が好きになって。
和歌葉先輩と話がしたくて、もっと仲良くなりたくて。
1年間かけてようやく仲良くなって、もしかしたら今度デート出切るかもって事にもなりそうで。
和歌葉先輩も、もしかしたら僕のことが、なんて馬鹿なことさえ考えて。

それなのに、酒の上の過ちでぶち壊したのは、僕だ。
367 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:25:08 ID:NHu/P1zW

経緯はこうだ。
その日、というか2週間前、僕は同じ学科の奴らと飲みに行き、酔った挙句に忘れ物を思い出してサークル棟に行った。
するとそこに和歌葉先輩がちょこなんと座って勉強をしていた。
しかも。
サークル室のドアを開けたその時、和歌葉先輩がふと机から顔を上げて僕を見たその時、
ちょっと和歌葉先輩が嬉しそうな顔をしたように見えて、それで僕は有頂天になってしまったのだ。

その、普段はクールで勉強が出来て総代で卒業も間違い無しなんて言われている和歌葉先輩だけれど
ふと先輩は時々そうやって感情をみせてくれる。
僕だけにと思ったのはきっと自惚れだ。
でもそう云う時ってとても和歌葉先輩は無防備で可愛らしく見えて、
それで僕は勘違いをしてしまったのだ。

楽しく話をして(少なくとも僕はそう思っていた。)サークルの話とか、授業の話とかをして。
その時、僕と先輩の距離が近すぎたのが原因だと思う。
僕は椅子を逆側に座ってがこがこ揺らしていて和歌葉先輩は普通に背筋を伸ばして座っていた。

僕は酔っ払っていて、髪型とかがだらしなかったんだろう。
和歌葉先輩は
「貴志君、髪の毛がはねているよ。」
といって僕の頭に手を伸ばした。
サークルの窓の外は真っ暗で、窓から大学の広い敷地と、敷地内にある電灯だけが薄ぼんやりと見えてた。
サークル室に置いてある和歌葉先輩が中学生の時に使っていたっていうラジカセからは奥華子の曲なんかが流れてて、
夜中だからそれ以外の音は何も聞こえなかった。
そして和歌葉先輩の手が僕の頭を擽るように動いて。

そして僕はあろう事か、先輩の手を取って僕の方に引き寄せて、和歌葉先輩にキスをしたのだ。
思いっきり。
舌とか入れた。初めての癖に。
先輩の唇は柔らかくて、差し入れた舌が感じる口の中はあったかくて、そして甘い匂いがした。
先輩の唾液が僕の舌に感じられて、僕は震えるぐらい、感動した。

和歌葉先輩は本当にびっくりしたみたいに目を見開いていて、みるみる首筋まで真っ赤になった。
不思議な事に僕が唇を離すまで先輩は抵抗をせずに受け入れてくれていた。
きっと、びっくりして動けなかったんだろう。
368 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:25:40 ID:NHu/P1zW

うん。バカだな。やった僕もびっくりした位だ。先輩はもっとだ。
もしかしたら怖かったのかもしれない。
いや、怖かったに決まっている。
酔っていた僕はどんな顔をしていたのだろう。
赤い顔をして、酒臭くて、そして、和歌葉先輩に向かって欲望丸出しな、きっと醜い顔をしていただろう。

一分位して唇を離した瞬間、和歌葉先輩は目を見開いたままで。
それからはっと我に返ったみたいに唇を押さえた。
そして。
「貴志君の、馬鹿ぁっ!!!」
と叫んでばちこーーーーーんと僕のほっぺたを叩いたのだ。

僕も僕で混乱していてそのまま走って逃げた。
誰もいない大学の構内を、電灯の光に案内されるように僕は泣きながら全力で走った。

そして走りながら考えた。
終ったのだと。
僕の軽率な行動でとんでもない事をしてしまった。
和歌葉先輩を傷つけてしまった。

もう、僕と和歌葉先輩の仲も、おしまいだ。
きっともう先輩は口なんて聞いてもくれないに違いない。
そしてそれだけじゃない。
僕と先輩の仲も、そして先輩以外に僕しかメンバーのいない、
僕が入るまで先輩が1人で守ってきた水道管ゲームサークルもこれでおしまいなのだ。と。
369 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:26:31 ID:NHu/P1zW
@@

「塩がないなら味噌だ。という感じで途中で軌道修正できるあたり、自分の才能が時々怖くなる。うん。いける。多分。」
ふう。ふう。とスプーンの上に乗せたお粥を醒ましながら先輩はそのスプーンを半分、ぱくりと口に咥えた。
普通それは僕に食べさせてくれるのでは。と思った瞬間、
先輩はそのスプーンをそのまま、僕の口元へと持って来た。

それは先程、先輩の口にちょっと咥えられたスプーンで。
上には凄くおいしそうなおかゆが乗っている。

これは、罠なのではないだろうか。
ふと頭を過ぎる。
このスプーンを咥えようとすると先輩が鬼の形相になって鍋ごと頭からばしゃーって。あちちあちち、って。

「ほら、あーん。」
そんな事も無く、僕の口の中にスプーンが突っ込まれる。
何とも食欲をそそる、葱の風味と少しの味噌の風味が合わさった香りが口内に広がる。

急におなかがぐうと鳴って、自分が腹ペコだった事を思い出す。
「ほら、貴志君、もう一口。」

1人で食べれます。と言っても和歌葉先輩はスプーンを僕の口元に運び続けてくれた。
僕は生まれたての雛鳥みたいな気分になりながら、差し出されるお粥を食べ続けた。
温かいお粥がどんどんとお腹に溜まっていって、
それと同時にどんなに布団に包まっていても冷え切っていた僕の身体も温まってきた。
370 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:27:05 ID:NHu/P1zW

これが夢じゃない事は、もう判っていた。
部屋の電球は明るくて、部屋の中は温かくて、そして和歌葉先輩が目の前にいる。
食べ終わってから、僕は和歌葉先輩に向かって聞いた。
「和歌葉先輩、どうして」
「どうしてはこっちのセリフです。」
瞬間、遮られる僕の言葉。そしてなぜか敬語になる先輩。
「というかね、貴志君。ありえないでしょう。」
そして怒る和歌葉先輩。

「風邪ひいてるからちょっとだけにしておくけど。
急にキスしてきた上に走って逃げるわその上姿を現さなくなるわ。どうなってるの?
普通、キスっていうのはお付き合いをしている間柄でするものでしょう。」

「はい。」
突然飛び出た全くの正論に言葉も無いが、なんだかそういう話でも無い気もする。
とりあえず怒られているので正座は出来ないが神妙に頷く。

「しかも酔っ払った上でキスなんて。男の子ならもうちょっとちゃんとした舞台を整えるべきじゃない?
ううん。整えるべき。整えるべきです。」
和歌葉先輩はわたわたと手を振りながら主張してくる。
「はい。」
何を言っているか判らないけれど、頷く俺。
371 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:27:47 ID:NHu/P1zW

「こっちにだって心の準備だとか考えていた事とか、色々ある訳。そういうのをすっ飛ばしたら、ダメなの。
水道管ゲームだって、UNOだって、ルールをちゃんと覚えればもっと面白くなるって私、きみに教えたでしょう?」
「はい。」

「それに、私も初めてだったからびっくりして引っ叩いちゃって良くなかったけれど、
君もびっくりした女の子を放って走って逃げるって何?どういう事?
その上次の日も次の日もサークルに現れないってどういう事?
私言ったよね。水道管ゲームもUNOも1人で出来ないんだからサークルには毎日来る事って君に言ったよね。」
「はい。」

「あんな事された上に、サークル部屋に1人ぼっちでいる私の事を君は考えなかったわけ?」
「すいません。」
「女の子はね。1人でいるのに弱いの。判ってる?
わたし、じゃない水道管ゲームサークルは、君がいないともう成り立たないの!」
先輩は僕の目を見ながら、そう言って怒る。
先輩の目はちょっと潤んでいて、色白の可愛らしい顔で、怒っているから口がへの字型に曲がっていて。

「そ、その上、いい加減もうどういう事?と思って文句言おうと思って君の家にきたら寝込んでるし唸ってるし。
家の中には何も無いから家に色々取りに帰ったりスーパーに行ったり大変だったんだから。」
「はい。」
「で、何かいう事は。」
372 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:28:51 ID:NHu/P1zW

僕は息を吸った。
どうせ夢ならええいままよ。というものだ。
え?夢じゃないって言ったって?
そう。夢じゃない事は判っている。
でも和歌葉先輩が僕の事を嫌いになっていない事、
今ここにいてくれるって事は夢みたいなものだ。
だから、夢だと思って言うべき事を、しっかりと息を吸って僕は言う。
「和歌葉先輩が好きです。」

先輩は面食らったみたいな顔をして、それからぼん。と赤くなった。
「あ、あ、ありがとうございますとかでしょう。ここは・・・」

「和歌葉先輩が好きです。順番が逆になってごめんなさい。
僕は先輩の事が大好きで、それでこれからも一緒にいたい。
それから今日の先輩の服、すっごく可愛い。」

「ま、また急にそんなこと・・・」

「ダメですか?」
僕がそう言うと、先輩はむむむむむ。と困ったように両手を振った後、
両手の一番近くにあった自分の三つ編みを掴んでねじった。
暫く考えるようにした後、
「へ、返事は君の風邪が治ってからっ。も、もう食器片付けるからね。」
そう言って横を向いてしまう。

そして。

「少しは貴志君、にも気を揉んでもらわないといけないから、君の風邪が治ってからっ。」
和歌葉先輩はそう言い足すと、食器を持って立ち上がって、少しだけ僕を睨んでからぷいと僕から顔を反らせた。
373 ◆/pDb2FqpBw :2009/02/23(月) 16:30:19 ID:NHu/P1zW

-*-*
ご無沙汰しております。
小ネタですが、まあ、たまには。

では。
ノシ
374名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 17:51:39 ID:qZVWCjga
GOD JOB!
あいかわらずuniさんの文章はいいですねー。
375名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 19:38:56 ID:Q6sAN8BZ
>>373
ニヤニヤが止まりませんGJ!!
376名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 17:08:51 ID:yR6TMSXs
うにさああああああああああああああん
GJです
377名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 23:14:36 ID:IYt3+zCz
うん、すまない
そう、またなんだ
おっきした


うにさん、GJ
378名無しさん@ピンキー:2009/02/25(水) 11:46:31 ID:ypVvnSE1
いいなぁ、こういうの大好きです!さすがはうにさん、参りました。GJっす!
379名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 13:37:23 ID:Wqp884YX
3月も作品が来るまで保守
380 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/06(金) 14:09:25 ID:irW2LXWA
現実についての閑話
-*-*-*-*-*-*-*

普通にさ、彼女居るのに結婚しない人ってたくさんいると思う。
というか、いるよね。

何でだと思う?
ちょっと考えてみて。すぐ判るから。

そもそも、「彼女から奥さんにするのって、男が一方的に損する」んだよね。
愛もセ、セックスも自由も、別れる権利もあり、浮気しても賠償金がない。
それが結婚すると全部ひっくり返っちゃう。
この素晴らしい独身生活を辞めさせるに、それなりの対価が欲しい。
普通、男ってのはそう考える訳。

もちろん結婚してる男の人も多数居るけれど。
でもそう考える人間にとってみたら正直、結婚をすぐにする男って、
カイジの限定じゃんけんで、何も考えずヘラヘラ最初に勝負した人達みたいに見えるんじゃないかな。

もうちょっと考えないと、人生を損しちゃうよってね。
381 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/06(金) 14:09:58 ID:irW2LXWA

うん。
もちろん、結婚により充実する人間もいるだろうね。
うん、それは否定しない。
だけど、何を持って満たされるかは人それぞれ違うじゃない。
仕事に生きがいを持つ人間も入れば、家庭に生きがいを持つ人間もいる。

つまり、こう考える人が多くなっても仕方ない訳。
「オレはどうしても結婚におけるリスクの高さが目について、満たされるとは思えないな。」
こんな風に。

否定できる?


何?選択するのは個人の自由?

・・・そ、それは確かにそうだよ。
うん。それはそうかもしれないね。

……で、でもそれもこう相手を思えるのであればじゃないかな。
「自分が結婚するに値する女である」って。
そう思えて初めて決断するんじゃない?
382 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/06(金) 14:10:23 ID:irW2LXWA

あのね、世間には「この相手と結婚はないな」って考えながら付き合ってる人なんて沢山いるわけ。
じゃあそういう人がその後どうなるかっていうとそういう人は
ある程度の人間と付き合っていくうちに
「もし落ち着いたら結婚してもいい」っていう風に考え方が変化すると思うの。
でもこれも、ある程度の人物と付き合ってる事が前提だと思う。
そうやって人は変わっていく訳。

私?わ、私はつ、付き合ったこととか無いから。
一般論!今は、一般論の話をしているんです。
このまえ雑誌に書いてあっ・・・じゃなくて、ごく普通の一般論の話。

・・・矛盾してる?
べ、べ、別にそういう事じゃないもの。
私がその、お付き合いを断ったりしてるのは、今はそういう時期じゃないと思っているから。
あのね、貴志君が言うほどしょっちゅうじゃないからね。
年に2回とか3回とかそれくらいだから。
バイトしてた喫茶店のお客さんからのなんてきっと皆してからかってるんだから。
大体、ボーイフレンドとか、そういうのは、もっと後。
383 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/06(金) 14:10:45 ID:irW2LXWA

高校の時からそうじゃんってそれはそうでしょう。
高校の時から今までそういうのは早いと思っているってそういう事じゃない。
何の矛盾もないです。
大体貴志君だって、ちょっと目を離すとすぐにだらしの無い生活をしたりしているんだから
私がそんなことしてる暇なんてないでしょう?。
大体今日は私の話じゃないし。
ちゃんと聞く。不満そうな顔しない。

って事で、男の子にとっていくらでも恋愛もセ、セックスもできる現代で、
いくらでも居る女の子と結婚までしたいっていう男が居るかって言うと、多分いないんじゃないかなってそう書いて・・・じゃないそういう話。
そう、だから今は結婚が不利なの。だって損するから。
だ、だから結婚すると男の人は死んだ魚の目になるって書いて・・・じゃないそうなるの。
384 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/06(金) 14:11:13 ID:irW2LXWA

じゃあって、私?さ、させる訳無いでしょう?
あのね、貴志君、いくら幼馴染だからって言って良い事と悪い事があるよ。
わ、私がそんな風にいい加減にお付き合いとかするわけ無いじゃない。
だからって結婚ってそれは・・・屁理屈です。

な、なに笑ってんの?
あのね。君の方が年下なんだからね。
私がお姉さん。いつも言ってるでしょう?

だ、大体さ、君は私にもっとこう、私の事をお姉さんだと思うべき。
幼稚園の時に年長組だった私がいじめられて泣いてる貴志君を助けてあげたのも、
小学校の時からいっつも学校の勉強教えてあげたのも、
高校の時に生徒会に君を入れたのも、
大学に入ってどの教授の授業が面白いかとか教えたのも
1人暮らしになった君の家に時たま行ってご飯作ってあげてるのも、
いつまで経っても同じもの着てるから冬物と夏物の入れ替えしてあげてるのも
君が爛れた生活を送らないようにマメに電話してあげてるのも
帰省するときにどの電車で帰ろうとか決めてるのも
全部私。

だから。ね、君にとって私はお姉さんみたいなものでしょう?
お、お姉さんに見えないとか言わない。
だいたい貴志君はありがとう位言うべきだよ。
私にもっと感謝するべきです。
それなのにこの前なんか黙って合コンなんて行こうとしてるしさ。
知らなかったとか嘘。嘘です。
きっと行ったら鼻の下とか伸ばしてたに決まってるし。
そういうのは不潔。不潔です。
385 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/06(金) 14:11:45 ID:irW2LXWA

だから、なんだっけ。
私が言いたいのはちゃんと現実を見なさいっていう事。
きちんとと考えなさいっていう事。
人生取り返しのつかないこととかあるの。
いっつも私、言ってるでしょう?
軽々しく口に出して良い事と悪い事があるの。

そ、それを何?急に

「結婚を前提に結婚してくれない?唯奈ねえちゃん。」

・・・また言った。
顔赤くない!暑いの!
だ、だからね、わ、私が卒業するからって遠くに行く訳じゃないし
ちゃんと近くに就職したし、だからこれからもこうやって来れるし。
それにね。こう言った事は急だと貴志君後悔するかもしれないよ。
だってさっき言ったように普通思うんだよ。
ほら、結婚すると貴志君、こんなに不利なんだよ。
雑誌に載ってたもの。結婚は男の墓場だって。

それなのに君は私と結婚したいって、そう言うの?
386 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/06(金) 14:12:12 ID:irW2LXWA

ま、真顔でうんって・・・私の方が年上なんだよ。
一つ上なんだから当たり前とか言わない。そういうこと言ってるんじゃないの。

貴志君後悔しちゃうかもしれないよ。
け、結婚したら君にわ、別れる権利なんてな、無いんだからね。

・・・

嫌じゃないに決まってるで!・・・

・・・
ん?えーと。ちょっと待ってその、今の嫌じゃないって言うのはええっと
そうじゃなくってそうじゃなくってね。誤解しちゃ駄目。
ちょっとまって貴志君。
貴志君が大学来る為に家をでた時、私おじさんに言われた訳じゃない。
こいつはいい加減だからたまにでいいから死んで無いか見ててくれって。

それなのに私が卒業と同時に貴志君と結婚なんてしたら
なんかおじさん私の事こう、変に思うんじゃない?
こう、そんなことの為に頼んだんじゃない。みたいな。
も、もしかしたら学校もちゃんと行かずに爛れた関係にあったんじゃないかなんて思っちゃうかも

そうしたら何か私すっごくこう、ダメな女の子じゃない?
面倒を見てって頼まれてそれで騙しちゃったみたいなことにならない?
お父さん私のこと嫌いにならない?
387 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/06(金) 14:12:42 ID:irW2LXWA

えええええ!おじさんオッケーって言ってたって。
何考えてるの?おじさん。いつもいつもいい加減なんだから。
大体貴志君は学生なんだから。
ちゃんとこれから勉強していろんなことしなきゃいけないじゃない。
それなのにそんな簡単に考えておじさん何考えてるのよ。

・・・わ、私もおじさんの事は好きだけど・・・
すっごく可愛がってもらったし。

えっと、えっと。
で、でも。何?じゃあ何?
貴志君はそ、その、おじさんが楽しみにしてるから私にその、結婚して欲しいとかそんな事言ったわけ。


・・・ふーん。
違うとか言っても信じられないな。
へー。そうですか。


でもダメ。結婚しない。
388 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/06(金) 14:13:34 ID:irW2LXWA


・・・ほら。泣きそうにならない。

話は終わってないから。

あと一年、ちゃんと勉強して卒業したら。
そしたら結婚して。じゃないやプロポーズして。

判った?
…な、なんでってが、学生結婚は駄目だから。
それだけです。

それだけだって。
めーです。駄目です。
それだけです。
大体ね、お付き合いしようとかそういう言葉が先にあるもんじゃないの?
いきなり結婚って・・・
大体結婚を前提に結婚って意味わからな・・・

ん・・・

納得できないって・・・

あーもう!
判った!!

あのね!
・・・き、君が不利になるかもしれないでしょう!
判んないの!?
貴志君はほら、結構顔だっていいし。た、多分女の子にだってそこそこ人気あるでしょう?
そ、それなのに君はそんな風に決めちゃって良い訳?
もっと良い人がいるかもしれないとか思われたらやだもん。
わ、私は貴志君の事が幼稚園の頃から大好きだからいいけれど
ずっと独占してきた訳でしょ。そんな有利な状態で、
しかも私が卒業したからって私に合わせてそういうのってなんか私が誘導したみたいだし
そんなのずるい気がするし、将来貴志君があー、もしかしたらもっと良い人がって思ったら
ちょっとでも思ったら許さないんだからね!
だ、だから私なら待てるし貴志君が卒業してゆっくり考えてそれからだって
そ、それに今だって結構幸せなのにそれこそ君と結婚なんてしちゃったら私嬉しくて今まで以上にって

・・・

こら、ちょ、いつの間にスカート、え、駄目だってきゃ、キ、キスとか
んっ・・・こ、こらっ、胸、触っちゃ、きゃ、
きゃああああああああああああっ!!
389 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/06(金) 14:14:09 ID:irW2LXWA
-*-*
小ネタ第2弾。

では。
ノシ
390名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 22:31:28 ID:xeRampoH
やべえ、すげーツボってるw
今からwktkして待ってます
391名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 04:59:29 ID:ZcOflIf4
>>388
ああもおおおおおお

可愛いなあ
可愛すぎる!!!

第三弾もあるよね?ね?

っていうか唯奈ねえちゃんと貴志くんのらぶらぶエッチーシーンを希望
強く希望
392名無しさん@ピンキー:2009/03/15(日) 01:41:29 ID:rBIqJz16
ん?>>362-373>>380-389も貴志君?
393 ◆/pDb2FqpBw :2009/03/23(月) 13:07:11 ID:eWn5blEm
今気付きました。

あれ?えーと>>380-389書くときに
いつもみたいに確か普通にどういう響きにしようかなと考えて名前決めて、

・・・
・・
すんません。

>>362-373>>380-389も貴志君ですが別人です。
ええ。
394名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 18:09:58 ID:GF1TKXwC
ほしゅ
395名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 14:00:43 ID:l6L39yvQ
僕は今、彼女の部屋に来ていた、というのも、今日は彼女とデートの日なのだ。

「美香。」

「なにー」
「今日はどっか出かけよう。」
「なによいきなり」
「いや、デートといいつつもいつも家にいるだけだし、たまにはいいかなーと思ったんだけれど・・・」
「別に気使わなくてもいいわよ。お金ないんでしょ。」
それは・・・・
「いや、バイトして貯めたんで大丈夫です」
「ふーん、。」「そんでどこ行くのよ。」
「とりあえず買い物でも行こう。」

「んー、」
彼女は少し考えたが、
「そうね。いきましょ。」
僕は、今日の出費はかさみそうだ、と予感した。





僕は彼女と別れる。今日。
彼女が悪いわけじゃないし、僕にほかの好きな人ができたわけでもない。
デートの度、彼女に貢ぐことも、決していやなことじゃない。彼女の幸せは僕の幸せなのだ。
それでも、僕と彼女は今日別れる。





僕が彼女に告白したのは桜が舞う季節だった

その日は中学校の卒業式で、みんな支配からの卒業を喜んだり、全然理解できないが、泣いてたりする人もいた。
かくいう僕も送られる側の人であり、本命の公立高校受験も終わっていたので、心に緩みができていたのかもしれない。

卒業式が終わった後、僕は誰もいない教室で自分の荷物をまとめていた。
最後の荷物をまとめ終わり教室を出て行こうとすると、
「いつから?」
彼女がいた。こちらをじっと見据えていた。
「さっきから。たしか雄介に本貸していたと思ったんだけど。」
僕は、ああ、といって彼女に本を荷物入れから探す。
「どうだった?」
「美香らしい本だった。」
借りた本は江戸川乱歩賞をとったことのある本だそうで、なんというか、ハードボイルドを感じた。

僕は「でもおもしろかったよ。ありがとう。」といって本を手渡す。
396名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 14:02:50 ID:l6L39yvQ
僕らはそれぞれ別の高校へいく。


美香とは長い付き合いで、生まれたときからずっとお隣さんの、いわゆる幼馴染をしている。
昔から美香は美人だったが、中学に入り成長するにつれ、彼女はますます綺麗に、そして・・・なんというか、ハッキリした物言い(要は男勝り)になっていった。
そのため、同学年に限らず、さらには異性に限らず、多くの人にモテた。

中学一年の秋、その中の一人(女子だが・・・)に美香が僕を煙たくおもっているしあんたと美香はつりあわないから別れなさい、なんて言われた。
別に付き合ってたわけではないのだが、どうやら付き合ってるように見えたらしい。うわさには、というか俗的なものには僕は無頓着だったので全然気づかなかった。
確かに僕が美香の隣にいたら、美香に迷惑がかかるかもしれない。だけど美香は優しいから、言い出せないのだ。
それからは、一緒に登下校するのもやめたし、小学生のころはよく行っていた彼女の部屋にも行かないようにした。
それでも美香は僕の部屋に来ることはあったが、それも次第に減っていった。彼女のためだ、寂しいとは思わない。なのに、たまに胸がキリキリ痛んだ。



「雄介」
少し間をおいて
「それじゃ、あたし帰るから。」

長い沈黙を破った彼女の言葉だった。
「あ、うん・・・」

それが僕にはまるで今生の別れの言葉に聞こえた。
だから僕は

「・・・好きだ。」
つい口を滑滑らせてしまった。
397名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 14:03:40 ID:l6L39yvQ

「・・・え?」

美香は一瞬ピクリとしたあと、ゆっくり振り返ってこちらをじっと見る。
・・・・背中に冷や汗を感じる。
彼女の瞳の奥からはどんな感情も読み取れなかった。

「なんでもない。じゃあね。」

ぼくは本当になんでもないように彼女に返す。
そうすると彼女はどしどしと僕の近くまで寄ってきた。

「なんでもなくないでしょ。なんていったのよ。」

なんだ。ちゃんと聞こえていたんじゃないか。
彼女にはちょっと、いやかなりサドっ気がある。
ここでごまかせばさらに追求されるだろう・・・。ぼくは覚悟を決めた。

「ずっと好きだった。」

美香はSだが僕はMではない。と思う。たぶん。おそらく。
結果がわかった告白なんてしたくなかったし、答えも聞きたくない。
言ってすぐに僕はその場から逃げるように帰ろうとしたのだが・・・

美香はふーん、と一言いい、
「別にいいわよー。付き合ったげる。」
逃げ出そうとした僕は完全にフリーズした。
たしか彼女には彼氏がいたはずだ。
というか彼氏がいなかったためしがない。いつもとっかえひっかえしていた。

「・・・彼氏は?」
「いまはいないわよ。」

「あと、ひとつ言っておくけど、無理やり襲ってきたらただじゃおかないわよ。」

結局、僕らは幼馴染から恋人へ、よくある展開を遂げたらしい。

らしい、というのも、その後のことはよく思い出せないのだ。気づいたら家にたどり着いていた。

どうやら今日、僕と美香は恋人になったようだ。だが、僕は所詮僕は美香の彼氏と彼氏の中継ぎに過ぎない。
うぬぼれちゃいけない。それでいい。


彼女の幸せは僕の幸せなのだ。
398名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 14:04:45 ID:l6L39yvQ
--------------------------------

「あー、おいしかったー」
彼女はすっかりご満悦のようで心なしかほほがつやつやしていた。
「それは・・・よかったよ。」
僕らは街で買い物をし、レストランで夕食を取った。
といっても驚いたことに彼女はうさぎのキーホルダーふたつしか買わなかったのだが・・・。
僕はもっと豪快な買い物になることを予想していたため、この日のために財布をふくらませておいたのだが杞憂だったらしい。


僕らは夜の街を背にベンチで食休みをしていた。
秋の寂しさを含んだようなかわいたかぜがほほをなでる。
街の光が遠くに見える。心に安らぎと、そして孤独が広がっていくのを感じた。



今日のデートは概ね成功だったようだ。
あとは彼女と別れるだけ。


美香は僕とはつりあわない。それは彼女もわかっているだろう。これは単なる美香のきまぐれ。
だから僕は彼女にほかの好きな人ができたら分かれようと思っていた。
この前、美香の部屋でデート(?)したとき、僕は偶然ゴミ箱に捨てられていたコンドームの箱を発見してしまったのだ。
僕は彼女とはセックスどころかキスさえしていない。
となると美香に他の彼氏がいるということになる。

僕はそれを見て、潮時だと感じた
美香にとっても他の彼氏がいるのだから僕の存在はうざったいだけだろう。
でも彼女は優しいから、僕に別れを言い出せないのだ。
だから僕から言い出さなければ。彼女のために・・・

「美香・・・」
「なに?」

彼女のために・・・・。
僕は胸に痛みを感じた。それは無視した。

「別れよう」
399名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 14:05:23 ID:l6L39yvQ
美香は顔をゆっくりこちらに向けてきた。
彼女の大きな瞳は、僕が彼女に告白した時と同じだった。どんな感情も読み取ることができなかった。

「・・・・別れよう?」

「うん、別れよう」
僕はこみ上げる悲しみを感じた。
彼女の幸せは僕の幸せのはずなのに、たまらなく悲しくなって顔をふせた。
数秒の間をおいてから、美香は突如立ち上がり
「なにいってるのよ。あたしのことずっと好きだったんじゃなかったの。あんたから告白したくせに何で逃げるのよ!キスもする度胸もないのになんで告白なんかしたのよ!馬鹿みたいにお金ばっかりわたして!」
叫んだ。

「僕知ってるよ。美香は優しいから、僕の告白断れなかったんだろ?でももういいんだって・・・」
彼女のつめたい両手が突如僕の両ほほを包むのを感じた。ひっぱらっれるのに釣られて僕は立ち上がる。
僕は引っぱたかれるのを覚悟して目を瞑った。

・・・?
唇に暖かい感触を受ける。
美香の仕業だった。
美香が僕にキスしていた。

「・・・!」
唇が離れる。
「これ、あたしのファーストキスだから。」
というがはやいかもう一度口付けられる。
こんどは舌を入れられ、もう僕の頭は沸騰寸前だった。

「みっ、美香っ!」
僕は彼女の体を強引に離す。

彼女は泣いていた。
400名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 14:06:05 ID:l6L39yvQ

「あたしね、怖かったの。ゆーくん中学校はいったら急によそよそしくなったから・・・。」
「彼氏たくさんいるってのも全部嘘。ゆーくんの気を引きたかっただけ。ゆーくんがくれたお金も一円も使ってないよ。」

そこまで言うと美香は顔を手で覆う。
僕は美香を抱きしめたい衝動に駆られた。でもできない。
僕はこんな悲しそうな彼女を今までみたことがなかった。

「でもゆーくんはあたしのことどーでもいいんだよね」

「そんなこと・・・」
ない・・・という言おうとしていえなかった。僕は彼女の幸せというものを勝手に勘違いし、勝手に決め付けていたのかもしれない。
結局僕は僕のことしか考えていなかった・・・。

「でもね、あたしゆーくんがいないとだめ。ゆーくんじゃないとだめなんだよ」
「きらいにならないで・・・おねがい・・・」
美香は僕にしがみつき、服に顔をうずめている。時々嗚咽の声がきこえる。


僕は・・・こんなしおらしい美香をしらない。
どっちの美香が美香なのか。中学校に入って、僕と美香は離れすぎてしまった。
もう僕には美香の本当の幸せを見極めることはできない。

「ごめん・・・っ!」
僕は美香をひきはがしてそのまま逃げた。
悔しかった。美香を守れない自分がこの上なく情けなかった。

僕は家に着くと布団にもぐり、そのまま泣いた。

朝なんて来なければいい・・・・
401名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 14:08:24 ID:l6L39yvQ
初めてSS書きました。
見苦しい点が多々あると思いますが、
もし読んでくださった方いたら歯に衣せずどんどん批評おねがいします。
お目汚し失礼です。
402名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 15:49:13 ID:R/RoBDyr
>>401
まさかこれで終わりなんて言うんじゃないだろうな?
続かないとお前を取って喰う
403名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 16:44:08 ID:l6L39yvQ
時間がなかなかとれず、続き書くまでかなり時間かかると思いますのでとりあえず完結ということで勘弁してください・・・。
もし続き書くとしても恐らく非エロになってしまうかと思います
404名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 18:35:57 ID:8ESEQLEQ
こんな悲しい結末嫌だお・・・
405名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 19:53:28 ID:o7cfammK
非エロでも構わないんで、お願いします。
いや、マジで。
406>>401:2009/04/06(月) 21:07:31 ID:Sb27SNS8
続き書くことにしました。
ですが僕はかなりの遅筆なので、時間かかると思います・・・
いろいろわがまま言ってほんとすいません
なるべく早く仕上げます・・・
407名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 21:53:40 ID:SpAnedrh
>>406
とりあえずコンドームの伏線ぐらいは解決させておくれ
408名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 09:43:50 ID:cER7MCD1
美香さんは襲われるの覚悟でコンドーム用意して部屋に入り浸ってたのですが、
いつまでたっても襲わない雄介のヘタレさに呆れと空しさを抱いてすてちゃったみたいです  
409名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 10:04:19 ID:Wao0PqeH
続き書く前にネタバレしちゃ駄目だろw
410>>401:2009/04/09(木) 18:11:48 ID:ibxTcqqq
雨が降っている。
灰色の空と、灰色の空を映したいつもの道は、どこか幻想的である。

「雨っていいよね。」
僕は雨が好きだ。
でも美香には理解できないらしい。
「ぜんぜんわかんないんだけど・・・。一体これのどこがいいんだか。」
そんなこと言われましても・・・
「・・・においとか?」
そうすると美香は鼻をくんくんさせる。
が案の定彼女はすぐに盛大にむせはじめる。霧雨が気管に入ったらしい。
僕は笑いをかみ殺しながら、美香の背中をさすってやる。
ここで対応を間違えればに死活問題なので僕としても必死にならざるをえない。
・・・と、突如頭部に衝撃を感じた。どうやら真っ赤になった美香が僕の頭を叩いたらしい、結構本気で。
「笑ってんじゃないわよ!あんたのせいなんだからね!」
「やっぱしわかりますぅ・・・?」
「当たり前よ!あんたのことなんて全部わかるんだから!」
「・・・・・」
僕はこの発言にあえて触れなかった。彼女から熱気が伝わってくるのを感じる。かく言う僕も顔から火を噴きそうだった。
今日は本当にいい日だなぁ。


美香と僕は沈黙を守ったまま、家路を歩いていた。
僕は雨の音ととたまにきこえる車の走り去る音の間に、何かを聞いた。気がした。

「・・・うさぎ?」
僕は怪しく思い、音の発信源と思われるダンボールを開いてみたら、なんとうさぎがいた。
「え?何?うなぎ?」
「あ、いやうなぎは確かに食べたいけれども・・・」
「きゃああああ!なにこれなにこれかわいいかわいい!」
「誰かが捨てたのかな。」
「こんなかわいいのに捨てるなんて人間じゃないわ!」
「うん・・・どうしようか。」
僕のうちは母子家庭で、父は僕が幼いうちに亡くなっていた。
なので経済的にかなり圧迫されており、うさぎを飼うことはできないだろう。
美香のうちは・・・かなり裕福な家庭に属すると思う。
「美香んちってペット大丈夫なの。」
「・・・弟がアレルギー持ってる・・・」
困った。
「ここに置いていったら、死んじゃうよね・・・」
「・・・・」
「二回も捨てられることになるよね。ペットになりたくて生まれてきたわけじゃないのに」
「・・・一緒に飼う?」
「うん!」
さっきまでのしおらしい彼女は一転、満面の笑みを向けて返事を返した。
図られた・・・!
でもいい。笑顔が見れたし。
411>>401の続き:2009/04/09(木) 18:20:53 ID:ibxTcqqq
美香が泣いている。

僕らはうさぎを公園で飼うことにした。必要な小屋や何やらは拙いながらもぼくと美香が協力してつくった。
食べ物は小学校の行きと帰りに一回ずつ与えることにした。

だがそれも今日で終わり。

僕は、うさぎをを地面にゆっくりおろした。
するとこちらをふりかえり、僕の手をひとなめすると愛する妻と2匹の子供たちのほうへ走り去っていった。

美香のすすり泣く声が雨の音を縫ってわずかに聞こえる

「いっちゃったね・・・。」
「うさぎにとってみれば幸せなことなんだよ。」

ぼくはあえて、うさぎは僕らから離れるべくして離れたのだ、というニュアンスを含んだ物言いをした。
その言葉の半分は自分自身に言いきかせた。
なぜなら、僕たちもいつか家族を持ち、離れ離れになるのだから。

いざその時が来たら、痛みは少ないほうがいい。祝福できるくらいにあたりまえのことになってしまえばいい。

なのに・・・

胸が痛い。

「雄君」

「雄君は・・・雄君だけは・・・・
412>>401の続き:2009/04/09(木) 18:21:57 ID:ibxTcqqq
----------------
カチッ、カチッ、カチッ・・・・

時計の規則正しい音が耳の中でこだました。
見ると、すでに昼を回っている。
懐かしい夢を見た・・・。
ぼくはこのまま死ぬまで眠り続けていたい気分だったが、顔を洗いに強引に布団からでた。


顔を洗いながら、僕は昨日見た夢を思い出していた。

美香は・・・
美香はあの時僕に、どこにもいかないでといった。
そうだ。美香は昔から、いつも、たったひとつのことだけを僕に願い続けていた。

でも僕は中学生になって、ゆがんだ価値観を美香に押し付けて、美香の隣から姿を消した。
僕は、美香が美しくなると同時に彼女のことをますます好きになった。
だが、同時に寂しさも深まっていった。結局、僕と美香は相容れぬ者同士なのだと。
もしかしたら、裕福で、美人で、父もいる彼女の幸福に嫉妬していたのかもしれない。
だからそんなゆがんだ価値観が生まれたのかもしれない。
どう転んだって、僕が最低な人間であることにかわりはなさそうだった。
413>>401の続き:2009/04/09(木) 18:22:33 ID:ibxTcqqq
RRR、RRR、RRR、・・・
電子音が響く。僕はいま誰とも話したい気分ではなかったが、しぶしぶ受話器をとった。
「はい・・・駒沢です・・・」
「雄介っ?!あんたいままでなにしてたの?!」
「母さん?寝てたんだけど。どうしたのいきなり」
「あんたなにのんきにねてんのよ!この馬鹿息子!美香ちゃんが交通事故にあったの聞いてないの!」
え・・・・・

美香が・・・?
僕は視界が真っ暗になり、受話器を取り落とした。受話器から怒鳴る母さんの声が聞こえる。
飛び出すように家をでた。
そして隣の美香のうちのインターホンを叩く。
でてくれ・・・でてくれ・・・出てよ・・・はやくでて・・・。


インターホンからはなんの反応もなかった。美香のうちは不自然なほどの静けさに包まれていた。

僕は絶望が心を支配するのを感じた・・・

僕は茫然自失となりかけたが、思い出したように携帯電話を取り出し母の携帯にかける。
「ゆうすけ?!あんた今すごい音したけどなに「美香はどこ?」
母は僕の言葉の迫力を感じ取ったのかいいかけた言葉をとめた。
「・・・○○病院の62号室よ。気をつけていきなさいよ。あんたまで事故に・・・」
僕はそこまで聞くと携帯をポケットにねじ込んで走り出した。

美香・・・・みか、みか・・・!
414>>401の続き:2009/04/09(木) 18:23:35 ID:ibxTcqqq
ゆーくんに・・・捨てられた。
思えばあたしはゆーくんのことを裏切ってばっかりだった。
少しでもかまってほしくて、離れないでほしくてあたしはゆーくんが好きなあたしを汚していった。
ゆーくんは傷ついたことだろう。捨てられるのも当然のことだ。


あたしはあてもなく歩き続けた。多くの人があたしのまわりを流れていく。
なのにひとりぼっちだった。こんな孤独を感じたことはなかった。いつもゆーくんがいてくれた。

あたしは道端にうずくまり、からっぽの心を涙でうめるように泣いた。


・・・どれだけ時間が過ぎただろう。
さっきは多かった人通りもいまは少なくなり、店の明かりもいつの間にか消えていた。

・・・・帰ろう。
お母さんもお父さんも心配しているだろう。なによりゆーくんにこれ以上迷惑をかけたくなかった。

立ち上がった直後、あたしは手首をつかまれた。
「ねえ、お嬢さん。いくとこないの?いまどきいう家出?」
品のない笑い声が、近くなのに、遠くで聞こえた気がした。
「オレ達といいことしない?」
あたしは大声をだそうとしたが、
もういいや・・・・。もうどうでもいい・・・。
この人たちに犯されるんだったら、それはそれでいい。
卑しいあたしにはしかるべき罰なのかも・・・


そのとき、ポケットから出した片手に引っかかり、うさぎのストラップが落ちた。
ゆーくんがくれたストラップ・・・


直後、あたしはうさぎのストラップを掴むと手を振り払いそのまま走り出した。
助けて・・・助けてゆーくん!
あたしは必死で走った。なるべく人気のあるほうへ走った。
そして、遠くにコンビニの明かりを見て、
十字路をつっきろうとしたとき、あたしの体は真っ白な光に包まれた。
415>>401の続き:2009/04/09(木) 18:25:32 ID:ibxTcqqq
------------------

病室の前には、長いすに腰掛けている美香の家族がいた。

美香に似て(美香が似たのか)いつも修司さんをしりにしいているパワフルな香織さんもやつれた顔をして、修司さんのひざの上で寝ていた。
「雄介君・・・」
「あの、修司さん。美香さんの様態は・・・?」
「命に別状はないらしい。・・・だが、頭を打ったらしく意識が戻らないそうだ。こればかりは医者でも治せないらしい。
意識が戻るのは1時間後かもしれないし、あるいは10年後かもしれない。」
修司さんはその後口を固く閉ざした。

ということはもしかしたら死ぬまで植物人間・・・
いや、そんなことは考えたくない・・・美香に限ってありえない
昨日まであんなに笑ってたじゃないか・・・・
なのにぼくは美香の笑顔を思い出すことができなかった。泣いている顔しかイメージできない。


「・・・・失礼します。」
僕は意を決して美香のいる病室へ入った。


-----------------------------------
「美香・・・・」
美香は昨日の服装のまま、何も変わらずベッドの上で横たわっていた。
酸素マスクから聞こえる、規則正しい呼吸の音が聞こえる。
ともすれば今にも起き上がりそうに見えた。

「美香、起きて。ほんとは目さめてるんだろ?」
ぼくは美香のからだを弱く揺らした。
小学生だったころは、よく朝に弱い美香を起こしにきてあげたなあ

「美香起きて・・・おきてよ・・・」
ねむりまなこをこする彼女の姿はとてもかわいらしかった。
「おきて・・・みーちゃん・・・早く起きないと・・・・学校遅刻しちゃうよ・・・・・・・・!」
僕はもう、涙を抑えることはできなかった。

すべて僕の責任だ。
僕が美香を知ろうとしなかったからこんな結末になった。
僕が美香に、僕が知っている美香であるように強いて、知らない美香を切り捨てたんだ。
僕は美香が僕をいつか裏切ると思っていたから、
だから必要以上に彼女に接近しようとしなかったし、彼女にもそれを許さなかった。
美香はいつも僕を信じていたのに僕は裏切ったのだった。
こんないい女、世界にどこにもいない。なんでそんな簡単なことずっと気づかなかったのか。
裏切られることが怖かったから心のそこから好きにならないようにしてた。
いまさら気づいても遅い。


顔を上げると窓からは赤い光が差し込んでいた。
長い時間寝ていたようだ・・・・。
僕は美香の酸素マスクをはずした。
美香の赤い唇にそっと口付ける。

僕は美香に口付けながら静かに泣いた。
彼女の顔が僕の涙でぬれていった。
416名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 19:50:45 ID:QzvanxRp
支援
417名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 00:22:42 ID:VyTgERlb
続き待ってるよぉぉぉ!!!!
418>>415の続き:2009/04/10(金) 16:36:32 ID:QUqTJPGZ
ゆっくり唇を離そうとしたとき・・・
誰かの手が僕の頭を掴んだ。

「あんたに寝込みを襲う度胸があったとは知らなかったわ。」
「・・・っ!んっ!んー!」

美香の舌が僕の口の中で狂ったように動きまわる。
彼女の腕で固定された僕の頭はびくともしなかった。
こんな細い腕のいったいどこにそんな力があるのか。

ずいぶん長い間二人はお互いをむさぼった後
二人の唇が名残惜しそうに銀の橋をかけ、離れていく。

「美香・・・っ!」
僕は感極まって彼女に抱きついた。
「えへへーそんなに心配だった?」
美香は僕の頭をなでている。
「僕には美香がいないとだめだから、結婚してほしい。」
こんな歯が浮くような言葉も裏返ることなくいえた。
「そうよ・・・ゆーくんはあたしがいないとだめなんだから・・・気づくの遅いのよ!ばかぁ!」
「ごめん。」
「ばつとしてあたしの言うことしたがってもらうからね。」
「はい。」
「あたし以外の女の人と仲良くなっちゃだめ。」
「うん。」
「あたしの言うこと全部鵜呑みにしちゃだめ。」
「うん。」
「でもあたしが本当に伝えたいことわかって。」
「うん。」
「あたしを・・・きらいにならないで。」
「・・・うん。」

僕は、こんなしおらしい彼女を・・・・知っていた。

小学校にあがる前、美香は今とは正反対の性格をしていた。
だけど僕は、美香に気の強い女の子が好きだといった。
理由なんてあってないようだものだけど、強いてあげるなら僕ばっかり美香にほれるんだと思って
なんだか悔しかったことだろうか。

---------------------------------------------


美香の意識が戻った後も、経過をみるらしく何日か入院していたが、先日退院した。
ただ美香は・・・・骨折した足が完治するまで僕に高校の送迎を命令してきた。
なんだか美香の「気の強さ(?)」というものが最近拍車をかけて強まってきた気がする。



でも僕は知っている。
僕しか知らない美香を。
419名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 16:43:21 ID:QUqTJPGZ
すいません最後の展開ちょっと悩んで投下一日ずれました

ハッピーエンド要望の声があり、僕としてはこんな感じのストーリーをイメージしてたんですが
いざ文面にしてみると、これご都合主義じゃね?と思い、
いろいろ悩んだ挙句結局はそのままの状態で投下してしまいました。
>>402さんには、作者を取って食う権利があります。
あでもやっぱいやです。痛いのはいやです。

じゃあちょっと半年旅に出てくるんでぼくはこれで。
420名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 02:55:47 ID:d/F1O3jO
>>419
GJ。 ハッピーエンドで良かったぜw

それと半年旅に出るならコレ持って行け。
つ [ノートPC][携帯]

旅先からも投下よろしくw
421名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 12:09:52 ID:aWCXJoea
GJ!!
良い旅を
お気をつけて
422名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 11:04:55 ID:CbrKPwx+
>>419
突然の不幸はいいけど、車で美香ちゃんはねてしまったドライバーが気になる。
ドライバーは会社を首になったんだろうか。
423名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 08:06:26 ID:fFTwP4ph
保守アゲ
424名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 10:40:10 ID:YpSW9SMa
>>422
はねたドライバーが実は強気な女の子で
会社を首になっていつもバカにしていた
同僚の幼なじみに慰められてしおらしくなる

まで妄想した
425名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 19:15:43 ID:J1sm3iGR
SMの女王様がMを装ったS男の超絶テクでおねだりするまで堕とされる
ってのは微妙にスレチかね?
426名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 20:55:07 ID:AI8zyL0a
S女が堕ちるならありだろう
427保守ネタ:2009/04/27(月) 23:20:21 ID:SXY6nz7A
本編化する予定はない、何故なら保守だから





俺は今夢を見てるらしい……
毎朝起こしにくるがきっつい性格の幼馴染みが寝てる俺にキスするといいありえない状況、普段なら鳩尾に両膝落としてくるというのに…………

あー、目瞑って一心不乱に貪ってるよー。すげーツボなんすけど
あ、目があったよ……すげー動揺してるよ……頬つねったらマジ痛いんですけど
どうしよう、いや、どうする俺?

1.夢だと信じて寝直そう
2.夢だから醒めるまで楽しもう
3.現実みたいだから話し合いを求めよう


マジでどうする、俺!?
428保守ネタ:2009/04/27(月) 23:24:47 ID:SXY6nz7A
幼馴染み視点……秘密がバレる瞬間っていいと思わないかね?





ーがちゃー
お、今日もよく寝てるわね……ーぷにぷにー
よし、これなら起きないわね……いただきます
「ん……くちゅっ……くぷ……んふ……」
寝てる幼馴染みにキスをする。秘かに朝の日課だったりする
流石に顔間近で見ながらキスするのは恥ずかしすぎるから目ぇ瞑ってるけど……
「ぷはぁっ……ハァ……ハァ……ん。」
今日もご馳走様でした。美味しかったです。
……どうしよう。普通に起こしたいけどやっぱり恥ずかしすぎる……今日も蹴り起こして険悪気味な雰囲気にしな……え?
起きてる?……目開いてる?……口に手当てて……頬つねっちゃった!?

どどどどどうしよう!?
凄い恥ずかし……うわー!!ぎゃー!!
…………ほんとどうしよう?

1.首絞めて起こすところからやり直す
2.あくまで夢と白切ってやりたい放題やる
3.諦めて開き直る

…………マジでどうしよう、私
429名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 22:26:33 ID:AxIFwxCX
>>428
お互い夢だと思い込みながら好き放題求め合うのが一番好みかな
430名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 00:15:52 ID:w1K5tYd2
男は2
女は3
がいいな
431名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 12:25:08 ID:uZVQZhfZ
>>427
男1
女3
でおねがいします><
「・・・ZZzz」
グギッ
「覚悟を決めた乙女の純情を踏みにじるのか!!」

みたいな。
432名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 22:47:23 ID:fKW9/PVz
ゴールデンウィークで車で遠出するも
1,000円渋滞に巻き込まれてしまい、彼女はついつい彼に当たってしまう。
当然彼だけのせいではないので彼もキレテしまい彼女が謝って、
みたいなのをお願いします。
433名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 05:24:20 ID:Kv8NgbhD
「こまかいことばっかり気にする男はモテないわよ」
「なに!」
「あんたなんかモテない男の典型ね。悪戯のラブレターすらもらったことないんじゃない?」
「あ、それなんだが…これ。さっきラブレターもらったんだ」
「…は?」
「正真正銘の本物だ。隣のクラスの奴からもらったが…ほら、読んでみな」
「…」
「はっはっは、何も言えないか!」
「…ごめん…一人にしてくれない…?」
「どうした?」
「なんでもない…」
434名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 10:53:47 ID:Bb7ag2Cs
>>428
続きまだ〜?
435名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 12:08:19 ID:3g8NZZad
最近は
436栄太と由紀(1/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/12(火) 23:30:27 ID:rhqzusej
こっそり置き逃げ。エロなしコメディなので苦手な方はスルーして下さい。



「――うーむ……」
散らかった部屋の真ん中で、俺はひとり唸っていた。
時刻は深夜。そろそろ寝ないと明日起きられそうになく、
またお袋にどやされて朝から最悪の気分で出かけることになってしまう。
しかし俺が今考え込んでいるのは、なかなかに深刻な問題なのだ。
健康的な男子高校生が夜遅くまで悩むことと言えば、そう多くはない。
そう、女だ。
自慢じゃないが、俺は昔から明るいキャラクターで人気を集めてきた。
女の子にキャアキャア言われたことなんて数え切れない。
俺の方も女子、特に可愛い子には熱烈な愛情を注ぎ、機知に溢れたトークと
アグレッシブなパフォーマンスを駆使して彼女らを笑顔にしてきた。
人に笑われるのは馬鹿でもできるが、人を笑わせるのは本当に難しい。
だが気さくで教養に富んだ俺に不可能はなく、どこに行っても人気者で
幸せに満ちた充実した毎日を送っていたのだった。

そんな俺が夜遅くまでこうして悩んでいるのは、
突如として俺の前にイレギュラーな存在が現れたからだ。
数多の女を虜にしてきた百戦錬磨の俺でも手に余る変な女。
正直言って、何を考えているのかさっぱりわからん。
ここ数日俺なりにあいつを分析してはいるが、これがまた困難な作業だ。
乱暴で、惚れっぽくて、だが本人曰く俺は好みじゃないらしい。
俺の方もあんながさつな奴は、生物学的には女と認めても
淑女たるレディーの範疇にはとても入れてやる気になれない。
互いに興味がないはずの俺たちは、そのまま距離を取って
ただの顔見知りでいるのが当たり前のはずだった。中学生のときのように。
なのに現実はそうはいかず、俺はあいつとしょっちゅう顔を合わせては
馬鹿だのアホだのとののしられて痛い目に合わされている。
なぜだろう。俺が何かしたんだろうか。
ひょっとしてイジメですか。そのうち顔の青アザを親に見つかって
「ああ、ちょっと転んじゃって」とか言い訳しないといけなくなるんですか。
黄金の上り坂を駆け上っていたはずの俺が、地獄の餓鬼に引きずり下ろされるんですか。
そんなのは御免だ。何とか対策を練らなくては。
それをこうして考えている訳だが……非情にも現実は厳しく、
力尽きた俺がぐーぐーいびきをかいている間にまた朝が来てしまった。
もちろん寝坊してお袋にどやされた。マジ最悪。
437栄太と由紀(2/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/12(火) 23:31:14 ID:rhqzusej
うちの高校はごく普通の学校で、徒歩や自転車で来ている生徒が大半を占める。
俺は今日も晴れ晴れした空に見送られつつ、寝不足の頭をかかえて通学路を歩いていた。
遠くに校舎が見えてきた頃、視界の隅に見慣れた人物を二人ほど発見したので
俺は疲れた体を引きずってそいつらに近づいていった。
「よう啓一」
「あ、栄太」
友人の肩をポンと叩き、一瞬でもう一人に向き直る。
「おはようございます。恵さん」
俺は疲労を体の奥深くに押し込んで、我ながら明るく爽快な笑顔でその女性に挨拶した。
「おはよう、佐藤君」
微笑んだ拍子に長いストレートの黒髪がふわりと揺れ、朝の陽光に舞う。
普段からきっちり手入れされているのは明白だった。
水野恵。2年A組が誇る才媛にして、学校でも指折りの美少女だ。
勉強ができてスポーツも万能で顔が良くて、おまけに優しいとくれば
そりゃあんたどこの完璧超人かと言いたくもなる。
ただ顔のいい女の子ならC組の加藤みたいに他にもいるが、
ここまでパーフェクトな女性は探してもなかなかいそうにない。
しかもなぜか彼女には彼氏がいないという。絶対ありえん。まさに意味不明。

俺たちは恵さんを挟むように並び、学校に向かって歩いていた。
何とか恵さんと会話しようと話しかける俺だが、もっぱらそれに答えるのは
彼女の双子の兄貴の啓一の方だった。
お前、仮にも友人だったら空気読め! すみやかに彼女を俺に提供しろ!
激しい俺の心の声も虚しく、そのまま俺たち三人は校門をくぐってしまった。
と、そこに後ろから飛んでくる影が一つ。
「――恵ぃぃっ !!」
疾風のようなその女は、俺の横にいた恵さんに思い切り飛びかかった。
かなりの勢いのはずだったが、彼女は絶妙なバランス感覚で踏みとどまる。
恵さんは自分に抱きつくそいつを見て、少し呆れたような声を出した。
「由紀、朝から元気ね……」
「何よ恵。友達に向かっておはようのひと言もないの?」
「うん……おはよう」
恵さん、そんなやつに挨拶しないで下さい。もったいない。
俺はまたとてつもない疲労感に襲われながら、そのトラブル製造機を見つめていた。
438栄太と由紀(3/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/12(火) 23:31:53 ID:rhqzusej
そいつは短いショートヘアを茶色に染め、細い体を制服に包んでいる。
つり目だが顔の造作は悪くない。しかし性格は極めて悪い。
しかも手癖足癖はそれ以上に悪く、学校一の凶暴娘。
すぐ物を壊すわ人を殴るわで、たしか破壊王だか格闘王だかの異名を持つ。
坂本由紀。それがその生物の名前だった。
そいつは似合いもしない笑顔で、俺の友人の啓一に明るく話しかけた。
「啓一クンもおはよ♪」
「あ、ああ、うん……おはよう」
どう反応すればいいかわからないという顔で啓一が返す。
やはり双子だからか、その表情は恵さんにそっくりだった。
そこに俺が割り込み、坂本を非難する。
「ほら離れろよ。恵さんが迷惑してるだろ」
「……なんだ、あんたもいたの。佐藤」
啓一相手のときとは打って変わって冷たい口調の坂本に、俺は言い返した。
「あんたもいたの、じゃねーよ。朝からうぜーことするんじゃねー」
「だって、ここに恵がいたんだもん」
こいつ、あの恵さんに抱きつくとはなんてうらやましいことを……。
俺は震える怒りを露にして坂本を怒鳴りつけた。
「馬鹿かお前は! 自分のやってることがわかってんのか !?」
「何よ、何か文句あるの !?」
目を吊り上げてこちらをにらみつけてくる坂本に見せつけるように、
俺はそばにいた啓一の体にぎゅうっと抱きついた。

「…………」
「…………」
「…………」
時が止まる。
無関係だった周りの連中もそこに立ち止まり、呆然としてこちらを見ていた。
「どうだ! うらやましいだろう!」
勝ち誇って言う俺に呆気に取られ、坂本もぽかんと口を開けている。
「お前が恵さんにやってることはこういうことなんだぞ、馬鹿め!
 わかったら以後気をつけ――」
「馬鹿はお前だあああぁぁっ !!」
渾身の力を込めた坂本の右ストレートが俺の顔面に炸裂した。
派手に吹っ飛ばされ、背中から地面に落ちる俺。
残念ながら、かろうじて覚えていたのはそこまでだった。
439栄太と由紀(4/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/12(火) 23:32:42 ID:rhqzusej
保健室にかつぎ込まれた俺が意識を取り戻して教室に戻ってきたのは
ちょうど一時間目が終わった直後の休み時間だった。
「――訴えたら勝てますよね」
「……はあ?」
不思議そうに聞き返してくる啓一の席の前に座って俺は続けた。
「だから暴行容疑で、あの坂本とかいうキラーマシンを立件できませんかね」
「いや……お前は何を言ってるんだ。むしろ被害者は俺じゃないのか」
悲しいことに親友は冷たく俺を突き放し、自分のノートに目を落としている。
ちょっと男にハグされたからって怒るとは器の小さいやつめ。
第一、休み時間にまで勉強するとかあり得ないだろお前は。
周りじゃ女子が何人かチラチラ優等生のお前の方を見てるじゃねーか。
恵さんが完璧超人なのは素晴らしいが、兄までそうだと腹が立つ。
俺はお前の何百倍かは女性に優しいはずなのに、その俺がなぜあんな
見た目は女・中身はターミネーターの殺人兵器に殴られなきゃならんのか。
理不尽という言葉をびっしりノートに書き込んでも今の俺の気分は晴れないぞ。

何となく疲れた気分になって天井を見やるが、あいにく輝きの衰えた蛍光灯と
シミのついた灰色の板しか目に入らなかった。
ため息と共にぽつりと、思っていたセリフが口から漏れる。
「……なあ啓一」
「どうした?」
「お前、この間あいつを……坂本をフッたんだってな」
「ん……ああ、まあな」
「そうか。俺は恵さんにフラれたよ」
「…………」
「まぁわかってたことだけど、それにしても妙なフラれ方だったなぁ……」
級友たちの喧騒が、どこか遠いところから聞こえてくる。
俺と坂本の接点はこの双子の兄妹だった。
俺と啓一、坂本と恵さんが親しい友達同士なのだ。
そこで俺は何とか恵さんをゲットしようと、
この前の休日に坂本に合同デートを持ちかけたのだった。
綿密に計画を練って四人で行った水族館で、俺は恵さんに、あいつは啓一に告白した。
結果は共に、あえなく玉砕。
よくわからん断られ方をされて疲れ果てた俺は、同じような状態の坂本と
ふらふら帰宅の途についたのだった。
440栄太と由紀(5/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/12(火) 23:33:43 ID:rhqzusej
それからだ。俺と坂本の関わりが増えたのは。
清楚で可憐な恵さんのような女性が好みの俺はあんなやつ眼中になく、
それは向こうも同じはずだった。
なのに今日のように、気がつけば顔を合わせて痛い目に合っている俺がいる。
なぜだ。俺はあいつに何も悪いことしてないぞ。
ひょっとして啓一にフラれた八つ当たりですかね。
でも八つ当たりで人を蹴飛ばしたり殴り倒したりするのはどうかと思うんです。
何とかして下さいよ、無敵の水野啓一さん。
俺は心の中で親友に語りかけたが、啓一は何も言わずノートを広げている。
そのときチャイムがなり、俺は思考を中断しておもむろにカバンの中身を出し始めた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

やっと放課後になり、俺はひとり帰り道を歩いている。
啓一は部活だ。サッカー部のレギュラーは大変だな。
俺も野球部員のはずなんだが、いつの間にか幽霊になってしまった。
まぁうちはどこのクラブも地区の底辺で、大会とかでもろくに勝ったことがない。
そのためあまり熱心に部活に励む者も少なく、俺のような帰宅部員が大量発生していた。
「うーむ……どーすっかな」
湿布の貼られた頬をさすると、まだ少し痛む。
このまま家に帰るのも何となくためらわれて、俺はちょっと寄り道をすることにした。
夕方前で混み始めてきた駅前にはゲーセンやカラオケが多く、こんなときに丁度いい。
とりあえず馴染みのゲーセンにでも入ろうかと、俺がドアを開いたときだった。

突き出された拳が男の左頬を射抜く。
「――がっ !? てめえぇっ!」
怒りの声をあげたそいつの横を通り抜け、女は二人目の男に飛びかかった。
男は何とかその膝をかわしたものの、まともにバランスをくずしてその場に転んでしまう。
その間に女は既に体勢を立て直し、三人目に向き直っていた。
441栄太と由紀(6/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/12(火) 23:34:28 ID:rhqzusej
「…………」
他の客の注目を浴びながらゲーセンの中で大立ち回りをやらかすそいつの姿を、
俺は呆然と眺めている。
なぜだろう。うん、なぜだろう。
なんでこんなとこにあの戦闘民族の女がいて、他校の生徒と喧嘩してるんだろう。
なんかカウンターの後ろで店員が電話してるし。もちろん百十番ですよね先生。
まさかあいつが本当に暴行容疑で捕まる日がくるとは思わなかったが、
俺には所詮関係のない話でしかない。
それなのに、なぜだろう。
気がつけば俺は後ろからそっと忍び寄り、坂本の腕をつかんでいた。
「ちょっと何すんのよ――って佐藤 !?」
「来い! 逃げるぞ!」
俺はもう片方の手で落ちていたあいつのカバンを拾い、
大急ぎで坂本を裏口に引っ張っていった。
やつらの一人が追いかけてきたが、坂本が蹴りを入れひるませて店から脱出する。
その勢いで人通りを一区画ほど走りぬけ、そこでやっと俺たちは立ち止まった。

「――ハァ、ハァハァ……あーしんど」
「ふぅ……」
息を切らした俺とは違い、坂本はすぐに呼吸を整えて落ち着いた。
さすがはアマゾネス。スタミナも人一倍あるらしい。
あいつは安全を確認すると、俺に向かって口を開いた。
「……なんであんたがここにいんのよ」
「なんでって……寄り道してゲーセンに入ろうとしただけだぞ……。
 お前こそ、なんであんなとこで暴れてたんだよ」
不審そうに自分に向けられた視線も気にせず、坂本が返す。
「プリクラの新作が入ったって聞いたから見に行ったのよ。
 それなのにあいつら、女の子専用のコーナーにずかずか入ってきて――」
「そんなの店員に言えよ……」
疲れた声の俺に、あいつは当然のように言い放った。
「だって気に入らなかったんだもん。体が勝手に動いちゃって」
「やっぱ放っといた方が良かった……何このバーサーカー」
「あ! 何よその態度 !?」
怒ってにらみつけてくる女にうんうんうなずく俺。
「……とにかく疲れたから俺もう帰るわ。じゃあな坂本」
俺はそう言ってあいつに背を向け、歩き出した。
442栄太と由紀(7/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/12(火) 23:35:09 ID:rhqzusej
……が、今度は俺が腕をつかまれる。
「――ちょい待って」
何すか。また俺、お前に殴られるようなことしましたか。
左の頬を殴られれば右の頬も差し出せとか、そんな愛の溢れること言うんですか。
疲労と不安の入り混じった俺の顔をじろりと見て坂本は言った。
「あそこのお店に入ろ。奢ったげるから」
「はい?」
とうとう来たよ。事務所に連れ込んでボコにするアレ。
原形を留めないほど顔殴られて、怪しい契約書にハンコさせられるやつですよね。
ついにこの歳で俺の人生終わってしまうんですか。
俺は生きる希望を絶たれ、げっそりとして坂本に引っ張られていった。

レジの前でこちらを振り返るあいつ。
「コーヒーと紅茶どっちがいい? あと何か食べる?」
「じゃあ……アイスコーヒーで」
俺はそう言って坂本を残し、先に手近な席に座った。
逃げようと思えば逃げ出せるはずだが、間違いなく捕まってしまうだろう。
坂本の脚力とスタミナは明らかに俺より上だ。
俺は蜘蛛の巣に捕まった獲物の気分で、どっかりと椅子に倒れこんだ。
「――お待たせ。……どうしたのあんた、目が死んでるわよ」
ぐったりした俺を不思議そうに見つめつつ、坂本は湯気のたつコーヒーをすすった。
「ほっぺたどう? あたしが思い切り殴ったから、骨ヤバいかもしれないけど」
「幸いにも、折れてないみたいです……」
「そう、よかったわね」
怒りもせず、自然な様子でそう口にする坂本。
落ち着いて俺と二人きりで話すこいつは、意外にもまともなやつに見えた。
はっ、いかんいかん。騙されるな俺。こいつは混沌の破壊神だぞ。
“よくもあたしの邪魔をしてくれたわね”とか言ってまた殴りかかってくるかもしれん。
俺は静かに椅子に座り直し、アイスコーヒーのストローをくわえた。
443栄太と由紀(8/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/12(火) 23:35:57 ID:rhqzusej
「…………」
賑わう喫茶店の中、二人の静寂が続く。
坂本は時折ちらりとこちらを見ては、様子をうかがっているようだった。
半殺しにするべか、それとも皆殺しにするべか。そんなことを考えているのだろうか。
なんかもうどうでもよくなって、俺はコーヒーの底にたまっていたシロップを飲み干した。
蚊の鳴くような声が聞こえてきたのはそのときだ。
「…………ね」
「あん?」
あいつはテーブルの上に視線を落とし、少し落ち着かない様子でもう一度言った。
「――ありがとね」
「え? 何がだよ」
想像もしなかった礼の言葉を聞いて驚く俺。
信じられないことに坂本は、言いにくそうにもじもじと言葉を続けた。
「一応あんた、あたしを助けてくれたでしょ?
 だからこれはそのお礼。別に変な顔しなくていいから……」
「…………」
何だろう。これは夢? 俺は幻覚を見せられているのかっ !?
首を振った拍子に茶色の短い髪がふわりと揺れ、一筋が坂本の目にかかった。
……こいつ見た目は悪くないんだよな。恵さんには全然及ばんけど。

まさか相手も同じことを考えていたとはつゆも思わず、
俺は自分のペースを取り戻そうと、冗談めいた口調で言った。
「礼だって言うなら、何か別のサービスしてくれよ。ちゅーとか」
「な、なななななっ !? 調子に乗るな、この馬鹿!」
顔を真っ赤にして俺をののしる坂本。
聞いたところによるとこいつは面食いでかなり惚れやすいらしく、
あちこちの男にアタックしては啓一みたいにスルーされているそうだ。
ひょっとして男と付き合ったことがないのかもしれないな、と思った俺は
もうちょっとこいつをからかってみたくなった。
「そんなに赤くなっちゃって……お前、ひょっとしてちゅーしたことないのか?」
「ば、馬鹿にしないで! ちゃんとセックスだってしたことあるわよっ !!」
突然大声をあげて立ち上がった坂本に、俺のみならず周りの客も動きを止めた。
「…………」
そこであいつは自分の発言に気づき、旬のりんごのようになって座り直した。
「あ、どうもすいませーん。ごめんなさーい」
そんな坂本を尻目に、へらへらと笑顔で周りに愛想を振りまく俺。
うん、なんか調子が出てきたぞ。やっぱり俺はこうあるべきだよな。
その後も会話は完全に俺が主導権を握り、俺は坂本を散々からかって遊んだのだった。
444栄太と由紀(9/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/12(火) 23:36:48 ID:rhqzusej
赤い太陽が西に傾く中、俺と坂本は肩を並べて家路についている。
聞いてみれば、こいつの家は意外とうちの近所らしい。
よく考えたら同じ中学なんだから不思議ではないのだが、
あの頃のこいつとはまるで接点がなかったから知らなかった。
「尾崎って覚えてる? あの子、まだ安井と付き合ってるんだって」
「へえ、まぁ仲良かったからな。健太郎のやつには気の毒だけど」
「それがね、あの二人ったら――」
共通の知人の話題で話が弾む。
こちらを向いて喋る坂本の笑顔が、夕日を受けてほんのり赤く染まっている。
やべ、ちょっと可愛いとか思ってしまった。
落ち着け俺。今日もこいつに気絶するほど殴られたばかりじゃないか。
君は被害者だ、このまま犯罪者に泣き寝入りしていいのか?

「――んでさ、坂本は今付き合ってるやつとかいないの?」

気がつくと、俺はそんな言葉を口走っていた。
「…………」
ジトーっという暗い目つきが俺に向けられ、慌てて身構える。
やっぱり俺地雷踏んじゃいましたかね。今度こそ右頬ですか。
だがそんな俺に、あいつは疲れた声を返しただけだった。
「……あたしが啓一クンにフラれたの知ってるでしょ?
 彼氏なんている訳ないじゃん……」
普段のこいつからは考えられないような、弱々しい返事。
俺はその言葉に促されるように立ち止まった。
「佐藤……?」
つられてあいつも立ち止まり、じっとこちらを見つめてくる。
互いの距離はわずか一メートルほど。周囲に人影はない。
俺たちを見ているのは沈みかけの赤い陽の光だけだった。
445栄太と由紀(10/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/12(火) 23:37:31 ID:rhqzusej
吸い寄せられるように俺の腕が坂本の細い肩をつかみ、そのまま抱き寄せる。
「さ……佐藤、何すんのよ…… !?」
驚いた声をあげる坂本に構わず、俺は彼女を強く抱き締めた。
「――俺たち、付き合わないか?」
耳元に口を寄せ、自分でも思いもしなかったセリフを言う。
おかしいな、俺おかしくなっちまったんだろうか。
ずっと人外の化け物と思っていたプレデター相手に、まさかこんなことを言うなんて。
しかし彼女は抵抗せず、それどころか両手を俺の背中に回して抱き返してきた。
ぶつかりそうなほどすぐ目の前に坂本の顔がある。
なぜか彼女の目はうるんで、普段とはまるで別の人間のように見えた。
小さなつぶやきが、俺の耳にはっきり届く。
「うん……いいよ……」
俺がおかしくなったのと同じように、こいつも変になってしまったようだ。
不意に笑いを漏らして俺が言う。
「フラれたやつ同士、か……よく似てんじゃね? 俺たち」
「うん、空回りしてるとこなんて特にね」
「なんだ、自覚してんのかよ……」
「何よ……何か言いたいわけ?」
軽く目を吊り上げた坂本の唇を、俺の口が塞ぐ。
「んっ……!」
初めて触れたこいつの唇は思ったより柔らかく、やっぱり女の子だった。
いきなりちゅーして怒るかとも思ったが、向こうも満更ではないらしく俺を離そうとしない。
そのまま俺たちは、息が苦しくなるまでキスを続けた。

やっと顔を離したのは三十秒後か一分後か、よくわからない。
至近で互いの目を合わせると、何となくこいつの気持ちがわかる気がしてきた。
「ふふふふ……」
また笑いがこみあげ、我慢できなくなる。
坂本もそんな俺を見つめ、可愛らしい顔で笑い始めた。
「あはははは……」
「ははは、俺たち何やってんだろうな? はははは……!」
「ホントねー、何やってんのかしら……あははははは……!」
おかしくてたまらないといった感じで、似た者同士は笑い続けた。

こうして、俺に色々と大変な彼女ができました。
446名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 01:42:23 ID:UarHADzd
乙J!
447名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 02:46:19 ID:bT2A4asx
GJ!!!

続きはあるのかな? この二人の今後が気になるw
448名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 19:55:43 ID:asF53ZZ3
>>436
超乙
449名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 20:33:41 ID:4JGTQ65r
喜多さんが更新されることはもうないのかなぁ
450名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 16:12:24 ID:TYyTQEVW
保守
451名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 01:08:48 ID:MthZ2S6M
ホラーとか、災害物とかでのシチュエーションで、そういうシーンを期待した自分がくるスレですか?
・ホラー 男は女と二人で逃げていた。出会った時は近寄る事も許さなかったが、二人で
     困難を乗り越えていく内にお互いを意識し始め、脱出後の二人は…
・災害物 避難中に出会った二人。安全な場所に逃げ込んだ二人は、お互いの事を話して親しくなる。
     そして…脱出後か最期の数時間に二人は…   
452名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 01:28:11 ID:ktQNfzWO
それなんて吊り橋効果?
453名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 01:37:47 ID:pIqjOvUC
454名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 07:41:12 ID:FAR99wKA
気の強い"娘"つってんだろ!

いや、個人的には好きですけど
455名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 23:10:14 ID:HKbq4zjX
武道やってる娘とかいいよね
好きな人の前ではきゅ〜んってなる
456名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 20:57:18 ID:D03c4i4I
>>455
その妄想をSSにするんだ!
457名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 23:17:07 ID:TaGQdI4L
デートにフリフリのワンピース着たり、作った事も無いお弁当作ったりして
普段抑えてる分、Hの時は抑制きかなくなって求めまくったり
458名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 23:24:08 ID:6fjsgyjm
http://2d.moe.hm/2d/img/2d0044.jpg

こんな風に言われたい
459名無しさん@ピンキー:2009/06/23(火) 15:42:54 ID:otEOjr8R
ツンデレスレ落ちたんだな
460名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 01:32:47 ID:aC0uvBcQ
2次だけど
るろ剣の薫とか、勝気な性格だった気がする・・
461名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 17:33:43 ID:HEj0WIM6
ツンデレスレも終わったのか……職人がいればこのスレにも人が戻ってくるのかね?
462名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 00:24:28 ID:ZquAwGxW
信長の野望やってたら
「(大名)様、配下の(娘武将)の元に
(他の大名)の者が訪れたようです。」
ってメッセージが出て
プッツンする一方でムラムラと妄想湧き上がった
書いていい?
463名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 23:57:00 ID:ZquAwGxW
と言うわけで書きます。
464名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 02:48:52 ID:v7Uu5BVK
最初に言っておきますが、これはうちの信長の野望天翔記やってた時に思いついた
物なんで、当然架空の歴史です。史実に出てくる人も全然史実とは違った人物として
描かれています。秋月緑は勿論史実には出てきません。
465名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 02:52:06 ID:v7Uu5BVK
「鉄砲姫と不器用な使者」

 島津豊久はため息をついた。命令はこうだ。
 「秋月家の武将である秋月緑に内応の誘いをして来い。」
 (出来るわけねえだろ…。)
 秋月緑は当主種実の実の娘だ。それが応じるわけが無い。おまけに豊久は
元服したと言っても、内応やら偵察やらこの手の仕事が苦手で経験が無い。
 (でも言われた以上はやらなくちゃな。)
 とぼとぼと豊久は秋月領へ進んでいった。
 
 秋月種実。九州で知らない者はいない。武勇に優れたが機会に恵まれず外
交通商と領地経営に人生の殆どを捧げた先代当主の文種の後を継いだ種実は
、当時九州北部の殆どを手中に収め秋月領を完全包囲して多数の軍勢を擁する
大友宗麟相手に、手遅れになる前にと全てを賭けた戦争をしかけ、打ち破っ
てしまった。更に周辺の小大名も攻略し、今では九州は最北端と最南端のわ
ずかな地域を除いて秋月領となっている。その最南端が我らが島津領だった。
優秀な家臣団がいると言っても秋月家には更に多くの優秀な家臣団がある。
滅亡は時間の問題だった。

 秋月緑は古処山城の近辺にいるらしい。古処山城は山奥にある。まるで追
い詰められた弱小大名が立て篭もっているような不便で辺鄙な場所だった。に
も拘らず先代と家臣団の頑張りあって農業収入も商業収入も意外な高さになっ
ている。
 「緑様か…、緑様は只者じゃないぞ。」
 「まだ若いが凄い才能があるそうだぞ。」
 「種実様がそれはそれは大事になさってるんだと。」
 (こりゃますますもって無理そうだな…。)
 豊久は緑の噂話を聞いて更に気が重くなった。

 当主の種実が緑を連れて鉄砲を撃ちに行くと言う。豊久は忍び込む事にした。
466名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 02:57:14 ID:v7Uu5BVK
 「これでまた一歩鉄砲隊の指揮が上手くなったと思う。隆信の指南は悪くな
いな。うむ褒めてつかわす。」
 忍者の様な仕事が苦手な豊久でも潜り込めたのは運がよかった。当主種実も
また豊久ほどではないにしても潜入や偵察の様な事に詳しくなかったのも、関係
があるのかもしれない。
 「そっちはどうだ…さすがは緑だな。鎮信の言う事をよく聞いてる。」
 (うわ…あ…。)
 不敵な笑みを浮かべていた緑は真剣な顔になると様々な撃ち方で次々に命中
させている。手馴れた動きで鉄砲を構えて、また構えて、余裕を持ってすばや
く戻した。そしてまた口元が微かに上を向いている。
 (ありゃうちの叔父貴たち並みじゃねぇか。それにしても…。)
 豊久は恐れ入ると同時に、緑に惚れ込んでしまった。
 
 「あの姫様はな、こないだの深水氏攻めの時も鉄砲隊率いて大活躍したんだ
ってな。幾ら相手が小勢力だって言っても凄い活躍だったぞ。」
 「鉄砲が得意だが、取っ組み合いでも先代の文種様に勝るとも劣らない才能
がありそうだ。今はまだ完全には花開いてはいないがな。」
 日を置いてまた潜り込む機会に恵まれた豊久は噂話を反芻していた。
 (うむむ。)
 豊久は熱い視線で緑を見ていた。
 「父上、たまにはもっと変わった物を撃ってみたいです。」
 えっ、と皆が驚く中、緑がこっちを向いて、しかし一瞬で元に向き直って撃
った。やはり命中だった。
 「曲撃ちでございますか。緑様の技がこれほどまでに上達したかと思うと…。」
 鎮信が顔をほころばせている。豊久はより正面に近い緑の顔を見れて、そし
て緑の自信に満ちた声聞けて胸が高鳴ったが、その後我に返って気が気ではな
かった。
 (見つかったのか!?)
 結局その後も松浦親子と秋月親子は鉄砲をたくさん撃って、何事も無かった
ように帰った。

 「さて…、うわっ。」
 豊久はさらわれた。
467名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 03:00:28 ID:v7Uu5BVK
 「あなた誰?」
 「それより帰ったんじゃ…。」
 「従者が傘持ってて見えなかっただろうけど、あれ家来ね。」
 人を馬鹿にしたような顔で緑が言う。豊久をさらったのは、緑だった。
 「僕は、島津家の家臣島津豊久と申します。緑様の数々の功名はかねてより
聞いております。しかし…、…、…。」
 言葉が見つからなくなった。
 「で、寝返れ、と。九州探題に就くのも時間の問題の父上を裏切って、滅亡寸
前のあんた達に寝返れと。無理だね。」
 (冷たい目だ。)
 こうなるのはわかっていた。最初からわかっていた。
 「こんな内応の誘いまでするだなんて、いよいよ悪あがきもなりふりかまわ
なくなってきたみたい。それもこんな使者で。まあ、帰っても追放だの切腹だ
のになることはないと思うよ。最初から期待されてなさそうだし。さあさあ。」
 「あ、あの、ありがとうございました。」

 「で、成果は?」
 「残念ながら秋月緑の心を動かす事は出来ませんでした。出来ればもう一度…。」
 「馬鹿言うなよ。奇跡の為にお前も特訓だ。いつ攻められてもおかしくない
からな。次の季節は稽古がいっぱい待ってるぞ。」

 稽古は厳しかった。そして、秋月家が攻め込んできて、奇跡は起きず、お家
騒動で疲弊した軍はロクに抵抗できず、大名島津家は滅亡した。家臣は殆どが
捕虜になり豊久も捕虜になった。

 「ふむ、お前はうちで働く気があるか。そうか。第二軍団に入れてやる。人
手が足りないからな。ふむ、お前は…おお、いや、第一軍団の家来にしてやろ
う。お前は…。」
 捕虜の運命を秋月家当主種実が次々に決めていった。天下取りを目指す種実
は島津家の優秀な家臣団を気に入ったらしく大勢が登用された。
 「島津家の足軽頭の島津豊久です。」
 「ふむ、悪いけど追放ね。」
 豊久は雷に打たれたような衝撃を受けた。
 「父上」「どうした緑、ん?うんうん?うん?わかった。取り消し。やっぱ
り第一軍団に入れてやる。しっかり励めよ。」
 秋月家に勝手に住み着いてる野良猫がどこかでないた。種実の妻がタカジア
スターゼを飲めと言い、アレは効かないと種実が言った。だが妻は飲み続けな
いから効く物も効かないと言い、胃痛に苦しむ種実は飲んだ。住み着いてる野
良猫を女中が邪険に扱っているのが聞こえてくる。
468名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 03:02:49 ID:v7Uu5BVK
 九州南部をついに手中におさめた秋月家では様々な式が行われた。式典が終
わるとあちこちで稽古が始まった。豊久もまた、秋月家屈指の強豪木下昌直に
武術の稽古をつけられていた。
 「老いたとは言え…、まだまだお前に遅れをとる程じゃない…。」
 (この人無茶苦茶強いな…。あ!!)
 昌直の次々に繰り出す攻めに立つのがやっとの豊久は、偶然発見した。緑が
いた。緑の武術の稽古相手は、なんと秋月家の一二を争う戦上手の立花宗茂だ
った。
 「緑様の技のキレ、きっとお父上もお喜びになりますな。」
 「ありがとう。」
 あの宗茂を相手に緑は圧倒されていない。勝負になっている。
 「豊久…、油断してるぞ…。」

 豊久が休憩に入り、しばらくして緑もまた休憩に入った。
 「豊久ちょっと。」「ここに。」「特別に教えてやるから来なさい。」
 緑は豊久を連れて歩き始めた。

 (こんなに近くで見るの、初めてだな。やっぱりそそるもんがあるぜ…。)
 緑は古処山城で見た時のように微笑んだ。この世の全てを玩具にしているよう
に静かに微笑んだ。
 「豊久…、あなたはもうすぐ…、わたしの家来になる…。」
 「光栄です。」
 二人ともおし黙った。豊久にはしまってあった疑問をぶつけるチャンスだった。
だが、緑を前にして質問どころではなかった。至福の興奮が余裕を奪っている。
よりによって、家来にされた。一緒に歩いてもいる。
 「そうです。光栄に思いなさい。」
 だが、ここで聞けなかったら、もう聞くことが出来ないと、豊久は決断した。
 「緑様、なぜ、捕虜の戦後処理の時救って下さったのでしょうか。」
 「それは…。」
 緑の顔が緊張した。滅多に見ない顔だった。あの鉄砲を撃っていた時も、さ
っきの稽古でも、豊久をさらった時も助けた時も見せなかった顔だった。緊張
した顔が、膨らみ始めた。
 「緑様?」
 いきなり、緑が脚払いをかけた。疲れきっていた豊久は崩れ落ち、緑が胸倉
をつかんだ。
 
 「み、緑様…。く、苦しい…。」
 「わたしは…、実は…、好きになってた。あなたの事が。年が近い奴は他に
もいっぱいいる。あなたより優秀なのもいっぱいいる。でも、あなたをさらっ
て解放した後、とにかくわたしはあなたを好きになった。不器用な所を守って
やりたくなったと言うか…。」
 顔が近い。だから、姫の荒くなった吐息もかかっている。輝いてる目も見える。
 (緑様も、こんな目をするんだ…。)
 「豊久聞いてる?だから、下手に死なないで…。最後までわたしについてきて
…。豊久ならきっと出来る…。」
 「は…、い…。」
 現実と夢が一緒になったような気分で返事をしていた。
 「じゃあ、この口付けに誓って。」
 幼稚で、その割りに深い口付けだった。
469名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 03:04:52 ID:v7Uu5BVK
 「どうしよう…、豊久大丈夫?ねえ!!」
 稽古でつかれ切っていた所に口付けまでされて、豊久は気絶していた。緑がう
ろたえていた。豊久には見えなかったが。緑が本当に今まで豊久に見せた事が無
かった顔だった。
 「緑様…、豊久は…。」
 「昌直…、実はぁああ…、稽古つけていたらやり過ぎて。」
 「情けない上に緑様の手を煩わせるとは無礼な…。私が…。」
 「いや…、もうすぐ側近につけられる者だし、わたしが介抱してやる。もう後
はいいから。」

 「あれ?おおっわっ!!」
 「気がついたみたいね。」
 豊久は驚いた。何故なら、緑が添い寝していたから。
 「今日はすごく疲れたでしょ?ご褒美。」
 そう言うと、緑が豊久の両手を導いて胸に触らせる。
 (母ちゃんより小さい…。けど、おっぱいだ…。)
 「やさしく、軽く、そう。できるじゃない…。そう。そう…。」
 緑の顔が赤らんでいくのが見える。
 「あぁ…。はぁ…。たまらない…。」
 緑の手が緑自身の股間へと伸びていく。何をしているかは、見えない。
 「うぁっ。豊久…あっ…はぁ…。」
 豊久は気になった。女の子が、見た事も無い事をしてる。豊久も息が荒く
なってきている。
 「何…はぁはぁ…してるの…はぁはぁ…?」
 「き気持ちいいこと…うっ…。」
 意味不明な、理解不能な、不可思議な光景だった。豊久は唾を飲んだ。
 (すごい…色っぽい…。)
 そう思った時、緑が顔いっぱいに笑っていった。
 「これから頑張ったら、わたしの機嫌がよかったらこう言うご褒美出すね。
そして、関東まで進撃したら、もっとエッチな事するよっ。」
 「はは…かしこまりました…。」

 それから豊久と緑が歩んだ道は、論文を読めばわかる。秋月幕府が日本を統
一した後、その大偉業に大きく貢献した二人は九州に帰って、表向き主人と家
来のまま、熱々で暮らしたと言う。
(終わり)
470名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 09:43:08 ID:QJXZMv5T
GJ
471名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 02:40:55 ID:O6Ib+cgA
GJ!
472名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 23:22:18 ID:KvvG0qu3
緑様、可愛すぎるw
GJですっ。
秋月家で良くプレイするので、なおのこと!w
473名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 17:33:11 ID:SPYLvqVK
すいません投下しますすいません
474名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 17:33:40 ID:SPYLvqVK
俺はブランコに座り、どこを見るともなく、またなにをするでもなくぼうっと、背から差し込む赤く染まった風景を眺めていた。
きい、きい、と長い時間が酸化させた鉄の悲鳴が、何の音もないこの空間に妙に響く。

今、この公園には、どこか奇妙な雰囲気があった。
俺はその奇妙な違和感を具体的に言い表せないが、確かにそこにはあった。輪郭が見えないのに存在感だけがあるその違和感は、俺の中の感情を不安へと変えるのには十分であった。


不安がつのり、そしてそれが一気に途切れる直前、俺はブランコから飛び上がらんほどに立ち上がった。目の前には背の夕日が作るブランコの影。俺の影はない。
俺は恐怖で走り出した。心臓が急速に鼓動し、汗が吹き出る。恐怖におわれただただ走った。とにかくあの異様な空間にはもうこれ以上いたくなかった。
気づくと俺の昔の家の前に立っていた。玄関のドアをひらき家に入る。すると台所から物音が聞こえた。誰かいるのかもしれない。
俺はただ人がいるということに安堵していた。さっきのは悪い夢だったのかもしれない。
そこには、食事を作っている、昔の姿の久美がいた。小学校のころだろうか。なぜ幼い久美がうちで料理しているのかなんてことは考えなかった。俺は声をかけようとした。
すると俺が声を出す前に後ろから声が聞こえた。振り返ると卓也であった。こちらも久美と同年代くらいであった。台所にいる久美の返事が聞こえる。
そして卓也は俺を、まるでそこに誰もいないかのように文字通りすり抜けて台所へ向かっていった。

俺は激しく困惑した。
自分の手のひらを眺めた。俺の手は色がなかった。しろでもなく、また灰色でもない。色がないという事実はまったく形容しがたいものだった。
コルクボードにはられている写真の、左には卓也、右には久美。中心には黒洞々とした何もない空間がひろがっていた。







目を覚ますとすでに朝の気配が漂い始め、カーテンの隙間からはかすかな光が差し込んでいた。小鳥のさえずる音が聞こえる。


壁にかかった額縁の中の、小学校の卒業式のときに三人で取った写真に欠落しているところはどこもなかった。
・・・・・最近、まともに寝れていない。ねれたとしても、夢ばかり見るひどく浅い睡眠だ。
どうせあと学校までは4時間もないのだし、このままベッドで横になっていたとしても寝れるわけもない。
俺はひどくだるいからだを無理やり動かして机に座らせた。考査が近い。俺は何十回繰り返したかわからないその課題をまた1からノートにやり直していった。


右手で機械的に数式をときながらも、頭の中では二日前のことを思い出している。
要約すれば、卓也は、今月末には両親の仕事の都合で引っ越すということ。卓也は久美に・・・あのときからずいぶんかかったが、告白して、そして振られたこと。
そういう内容だった。
475名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 17:35:39 ID:SPYLvqVK

「朝勉なんてずいぶん勉強熱心じゃないの。」
振り返ると制服姿の久美がいた。そうか、もうそんな時間か。
「ノック位してくれよ」
「したわよ。」
「・・・今日朝早くおきて眠れなかったから勉強してたんさ」
弁解した風に聞こえたかもしれない。だが、俺は以前ほどそのことに関して神経を使わなくなった。何か勘ぐられるかもしれないが、別にいい。
どうせ、今回の試験ですべてが終わる。
「・・・あんた今日学校休みなさいよ。」
「なんでだし。」
「いや・・・なんでもないわ。あたしもういくけど、ご飯作っておいたからあっためて食べて。じゃね。」

うん。まるで母親だ。まあ、久美のような人間は、落ち度ばかりの俺みたいなのは対象外なのかもしれない、とぼんやりそう思った。


俺の家族、両親しかいないが、俺が小学校3年生のときに他界した。
父は根からのまじめな人間で、決してよい役職についていたわけでもなく、上司との関係もよくなかったようだがそれでも一生懸命働いていた。
一方母は父には到底つりあわないような美人で、父と同じ会社で同期であった。
多才な母はすでに出世ルートにのり、給料も父の何倍もあったらしい。
父は俺が小学校三年生のとき、自室で練炭を炊いて自殺した。発見したのは俺で、父の手に握られていた遺書は、当時の俺には理解できなかった。
――――僕のことは気にしないで、もっとよい夫と添い遂げてほしい。そして僕が君を苦しめたことに関しては、死で償うことにする。


父は何を勘違いしていたのかは知らない。単に父が勝手にそう想像していただけなのかもしれないし、
美貌の妻を持つ無能な父をうらやんだ男が父に何か吹き込んだのかもしれない。
父が死んでまもなく、母に求婚してくる男が家をたびたび訪れるようになった。なかには父と同じ会社の上司さえいた。
母は父の他界後まるで幽鬼のようになり、一年後の父の命日の日にまったく同じ場所で同じ方法で他界した。
俺はその日母が死のうとしていたことを知っていた。止めはしなかった。あの時俺は、自分の行動に責任なんかもてなかったし、なにより母に死んでもらいたいわけがない。
だが、こうすることが母にとって一番いいことなのだ、と理解し、俺はその日、小学校に登校していた。きっと俺がいないほうが母も未練なく死ねると考えたからだ。
声も上げず静かに涙を流す俺に、授業中気づいた先生は幾度と声をかけてきたが俺は大丈夫だと言った。
身を引き裂かれるような思いだったが、これが最後の親孝行だと思い血がにじむほど口内をかんだ記憶がある。
とんだ親不孝ものだ。


当時精神が錯乱しかけていた俺を救ってくれたのは久美だった。
母方の親戚から引き取る話があったのだが、結局俺の意思は尊重され、まもなくして俺は幼馴染であった久美のうちに引き取られた。
476名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 17:36:48 ID:SPYLvqVK

終業を告げるベルが鳴った。
おお、昼休みか、と思いかばんを開けた。いつもはそこにある弁当はなかった。うちに置き忘れたか。
寂しく腹を鳴らして不貞寝していると、どん、と弁当が目の前に置かれた。
「ほら、どうせ置いといても忘れるだろうと思ったから、もってきたわよ。」
「ああ・・・ありがとう久美。愛してるよ。」
「行動で示してもらいたいものね。」
こんなことをいうと、中学生のころは顔を真っ赤にして叩かれたものだが、最近はサラッと受け流されて始末が悪い。




久美は、昔からその頭角は表していたが、とんでもない才女だった。
スポーツはできるわ運動はできるわ、また勝気な性格と美しい容姿もあいまって中学のときは学年の華だった
俺は当然彼女の家に住まわせてもらってることは隠していたが、親しくしているところを見られてはどんな関係なのかを問い詰められたりした。


中学二年生の時。帰り道で他愛もない話をしていたときのことだ。
「・・・秀ちゃんは久美のことどう思ってる?」
俺はこのとき、やっときたか、そう思った。
勝気な久美と気兼ねなく話せる数少ない男子である俺は、よく友人から久美を紹介してくれとか、普段の性格について教えてとか頼まれたものだったが
卓也とこういう話をするのは初めてで、お互いなんとなく避けていた気がする。

「どうって?」
別に卓也の答えにくいように返したわけではない。だが、やはり真意は確認しておきたかった。
「どうって・・・その・・・・・・えと・・・」
口ごもる卓也。
長い沈黙があった。

「・・・僕、久美ちゃんのことすきだ。」
「そうか。」
「うん・・・」
「まあ、うん、がんばってほしい。」
「・・・・」


俺がおもうに、卓也は、久美と付き合うことになっても問題ないような自信は持っていると思う。
久美には及ばないが卓也もかなり勉強はできるほうだし、サッカー部では3年生に混じってレギュラーをとっている。
むしろもっと自信をもっていいんじゃないだろうかと思う。
対して俺は帰宅部で、卓也と比べるべくもない。自信などかけらもない。
自分の本当の感情を吐露するようなおろかなまねだけは絶対にしたくなかった。


「・・・ひでちゃん、本当の事いってよ。秀ちゃんも、久美ちゃんのことすきなんでしょ?」
「ああいう男みたいなのは興味ないんよ。」
「・・・じゃあ僕が久美ちゃんと付き合っても、かまわないんだよね?」
「いいんじゃない」
昔から、なぜか卓也は俺に対して競争心が強かった。
そのほとんどに俺がまけまくってもなお卓也はなにかにつけて勝負を挑むのを好んだ。
そして、今俺は、最後の勝負を挑まれているようだ。

だが俺はこの勝負、絶対に負けたくなかった。負けるくらいなら、棄権でいい。
477名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 17:37:41 ID:SPYLvqVK
俺が不眠症なのは最近始まったわけでなく、母が自殺してからだった。
久美の家ですむようになってから、隠していたのだが、彼女にはすぐに夜中うなされていることを見破られた。結局見破られてからは一緒に寝るようになった。
中学生に上がってからは俺はもともと用意されていた部屋に一人で寝るようになった。久美はそれでもかわらず俺のベッドに入ってきたが、俺がもう大丈夫だからという旨を暗闇の中伝えたとき
何が大丈夫なのよ、と言い残して部屋を出て行った。当然その日からまたうなされ始めたわけだが、久美を襲わないように自制するよりはいくばくか気が楽だった。


俺は父と母がまだ健在だったころ、よく父に似ていると母にかわいがられた記憶がある。
俺もそれはそれでうれしかった。父が自殺するまでは。


父はあらゆる劣等感を抱いていたんだ、と今の俺ならわかる。あの遺書の意味するところも。
だから、俺は、努力することで、ある一点でいい、久美を抜けたら、あの過去を忘れられるのではないかと思っている。
そうすれば、悪夢にうなされることもなくなるのではないか。本能的にそう直感が告げていた。そして彼女を抜くため必死で勉強してきたのだ。
だが一度も勝てたことはなく、最近は不眠症状もひどくなってきた。
だから今回のテストで久美を抜けなかったら、もうあきらめようと思っている。
478名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 17:39:59 ID:SPYLvqVK
久美について



壁に耳を当てる。
時折かすかにうめき声が聞こえた。
「・・・・ばっかじゃないの。」
あのやろうは私を拒んで以来・・・もう3年になるか、悪夢にうなされているようだった。
特にここ最近はひどい。ほぼ毎夜のようにうなされている。まともに寝れているのだろうか。
あたしを拒んだ罰だ、自業自得だ、
そうは思いながらも、本当はあいつのところへいって頭をなででやりたい。
小学生のころ、あたしたちはもっとシンプルであれた。でも今は

この壁が疎ましい。



朝、秀明の部屋の扉をそろ〜りあけると、やつは机に向かってかりかり勉強していた。
シャーペンのその音はまるで秀明の命を削っているようであたしは耐えられなくなった。
「朝から勉強熱心なことね。」
秀明が振り返った。目の下には大きなクマができており、目も充血している。
「ノック位してよ」
「したわよ。」
してないけど。
「・・・今日朝早くおきて眠れなかったから勉強してたんさ」
秀明はそういって目をそらす。
そんな死にそうな状態で勉強なんかしてんじゃないわよ このバカ
「・・・あんた学校休みなさいよ。」
「なんでだし。」
「いや・・・なんでもない。あたしもういくけど、ご飯作っておいたからあっためて食べて。じゃね。」
あいつ・・・大丈夫だろうか。どうみても睡眠不足だ。登校途中で車にひかれたりしないだろうか。
さめてしまった秀明の朝ごはんをレンジで暖めながらぼんやり思った。
・・・なんだか最近あいつのことばっかり考えている。
癪だったので、秀明の弁当をかばんにしまった。学校に持っていってやる。あいつの困る顔が目に浮かんだ。


帰りのHRが終わった。
机の中から教科書を引き出してかばんにしまう。
・・・たまには、秀明とも帰ってみるか。
中学のころは周りの目がなんちゃらとか色気づいたことをいいやがって、あんまり一緒に帰りたがらなかったあいつだったが、
もう高校生だ。そんなこと気にしないだろ。
それに、話したいこともある。

帰りの支度が終わり、秀明の席をみてみると机に突っ伏してあいつは眠っていた。

「おーい秀明ー、もう放課後だぞー起きろー」
私は、秀明の頭を叩く友人の手を全力で握り満面の笑顔で
「コイツはあたしが起こすから、お前はもう帰れ。」
というとひええぇええあひゃああとかいいながら帰っていった。
とにかく、私はコイツに少しでも長く休んでいてほしかった。
479名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 17:41:51 ID:SPYLvqVK
目を覚ますと、目の前に久美の顔があり、少なからず驚いた。
いや、少なからずというよりは、息が詰まるほど驚いた。それで完全に目が覚めて、体を起こしてみると、日は傾き夕焼けがまぶしい。
もうこんな時間か。
となりで薄笑いを浮かべ、なんかむにゃむにゃ寝言を言う久美をみながらぼーっとしていた。幸せそうだとぼんやり思う。
いつも見ている顔だ。なのになんだか懐かしい。
妙に感傷的な気分だ。って全然柄じゃないか。
「う、んー?」
「おお、やっと起きたか。」
「あ・・・う、うっさいわね!!もうあたしなんかあんたの寝顔見守るの疲れて寝ちゃったわよ!」
言うと、久美は妙に慌て出した。
「じゃなくて!勉強してたら眠くなっちゃった!そんだけ!」
あせあせと机に広げた勉強道具を片付けていく。

これ以上勉強されると追いつけなくなるからやめてほしいのだけれど。





地平線の向こうの太陽の光を反射する雲を見上げる。
日は完全に落ちて、あたりはすっかり暗くなっている。


俺は週に二度か三度、以前俺の引き取りの話があった親戚、つまり叔父さんや叔母さんなのだが、顔を出している。
叔父さんはそこで道場を構えていて、俺は毎回帰宅途中に脚を運んではボロ雑巾のようにめためたにされているのだった。
近所の子供たちに教えているときは、まるで別人の用に優しい笑顔で優しい指導をするのだが、俺との実戦練習のときはまるで鬼のような顔で鬼のような技が出てくる。
叔父いわく、君はセンスがいいから本気でやらないと勝てないんだよねー、だそうだ。
青は藍より出でて藍よりも青し。もう6年以上も通っているんだから一度くらい勝たせてくれよと思う。

俺はこのことをあんまり卓也や久美に知られたくなかった。
だから、なるべく一緒に帰らないようにはしていたので、久美と帰るのは久しぶりだった。
別に何を話すでもないが、別に気まずいわけではない。
沈黙が心地よかった。
480名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 17:42:56 ID:SPYLvqVK
「あ、あのさー。」
久美が突然切り出す。
「えとですね、えー・・・」
普段は歯切りのいい久美だが、なんかどもっている。
「・・・・この前帰り道に・・・」
「はあ。」
「・・・卓也に告白され・・・たんだけど。」
「そか」
おかしい。
卓也の話では久美はその場で卓也の告白を断った、と聞いている。
ならばなぜ俺にそのことを話す必要があるのか。

「それで付き合うことにしたのか」
「あうん、いやまあ、まだ保留してるんだけど・・・どうすればいいかなーって・・・」
「久美はどうしたいんだよ」
「・・・秀明はどう思うの。」
「久美がしたいようにすればいいと思う。」
「・・・秀明の言うとおりにする、って言ったら?」
「なんだよそれ。」
「言葉通りの意味だけど」
「つまりそれって俺が断ってほしいっていったら久美は断るのか。」
「・・・まあ、そうだけど」
「うーん」

俺は考えるそぶりを見せながら、反対に頭ではまったく違うことをほぼ反射的に考えていた。
そして俺は、その頭に思いついた最低な考えが悪くないと思っている自分に気がついた。
「俺は卓也と付き合ってほしい。」
久美が足を止めた。
俺も足を止める。
蛙の鳴き声が遠くに聞こえた。

久美はほとんど聞こえないようなかすかな声でわかった、とだけいい走り出した。というか家はすぐそこだ。
これでよかったのか・・・・。
卓也は、俺が安易な同情から、いましてしまったことを知ったら憤慨するだろう。少なくとも友達ではいられなくなる。
だが卓也の心中を考えたら、こうする他思いつかなかった。小学生のころからあいつは想っているのだ。
そして、真面目なあいつのことだから転校してもずっと想っているのだろう。


これでいい。



夜がすぐそこまで迫っていた。

481名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 17:46:51 ID:SPYLvqVK
すいません投下終了ですすいません

半年ROMるって言ったのにすいませんでした。
あと今回題名入れ忘れたので次回入れますすいません。
題名は「ナイト・ホークス」です 意味は特に無いです。
僕の好きな画家の作品から取らせていただいたので、他に好きな方がいたらすいませんでした。
482名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 19:33:50 ID:TovDwO/U
さぁ、続きを書くんだ
俺は最後まで読みたいぞ
483名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 23:50:36 ID:bFq+tDQl
全裸待機している
484名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 16:19:05 ID:VIGnq+7o
あーこんなにはっ倒したくて、それでいて愛おしいキャラは久しぶりだな。>秀明
できれば続き書いてください。
485名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 00:27:10 ID:/gHwRJ9U
GJ
続きに期待
486名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 18:17:07 ID:QVZ0i7b0
幼馴染のすれ違いかぁ。せつなひ。
書き出しから冷水浴びせられた感じがしてる俺なんぞ、
秀明に幸多きことを祈る、なんぞ思っちゃ間違いなのかな…。
続きが気になるよ
487名無しさん@ピンキー:2009/07/14(火) 19:16:20 ID:dW0YscvW
488名無しさん@ピンキー:2009/07/16(木) 13:34:27 ID:WouI1QRs
保守
489名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 21:29:27 ID:Pv6ItL/g
つくづく駄目ね、アンタ。
まあ折角だし、保守してあげないこともないわ。
490名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 01:09:32 ID:Wvk4O0Hr
投下遅れたことをおわびもうしあげます
要望があったようなのではっ倒してみました
491ないと・ほーくすその2:2009/07/20(月) 01:11:11 ID:Wvk4O0Hr
駅の乗り場へ続く階段に俺は座っている。                
俺、なにしてんだろう。早く帰らなくては。


階段を下りると、いくつかある、色褪せて硬そうなベンチのひとつに男がたったひとり座っていた。
しわのある背広。まるまった背筋。大きくて、くたびれた背中。

「おとうさん」
父さんは、俺の記憶にある大きな父さんのままだった。
自分の声まで幼くなったような気がする。


父がゆっくりとこちらに振り返った。
穏やかな顔だった。
「しをしった、あなたにきく。いきることとはなにか。」
父は答えない。
俺は父の穏やかな表情を長い間眺めていた。
でも、それは本当に長い間だったかはわからない。
父が口を開いた。
「秀明は、なににおびえているんだい」
おびえている?俺が?
そうか、俺はおびえているのか。
何にだ。

父はまた背中を向けた。
父は答えない。

電車が乗り場に、音もなく入ってきた。
父が立ちあがる。俺は見守る。

父は何かを言った。うまく聞き取れなかった。
電車のドアがしまる。
ゆっくりと動き出していく。
やがて電車の光が闇に溶けた。

乗り場には、俺が一人残っていた。
俺、何してんだろう。早く帰らなくては。
492ないと・ほーくすその2:2009/07/20(月) 01:12:04 ID:Wvk4O0Hr

目覚まし時計の轟音が部屋を叩く。
俺は時計の電源を切っておきだした。
今日は二日に分かれてやる試験の一日目である。

部屋から出ると、久美の部屋のドアがあきっぱなしになっていることに気づいた。すでに登校したらしい。
久美の両親は共働きで、夜遅くにならないと帰ってこない。
だから、いつもは食事は久美が作るのだが、昨日は久美が部屋に鍵をかけて閉じこもったから、結局俺が作らざるをえなかった。
昔から彼女は機嫌を損ねればだいたい部屋にこもる。
ちなみに俺の料理は・・・下手の横好きという言葉がある。
だから、久美の部屋の前においておいた料理の盆が消えていることから、ちゃんと食べてくれたかと俺は安堵した。

外に出るとひどい湿気がほほを撫でた。
空は分厚い雲で覆われていて、朝から陰鬱な気分だ

テスト終了のベルが鳴った。
俺はシャーペンを置いて深呼吸をした。
数学のテストは、毎回久美に百点を取られているので、それを阻止するためか、毎回最後の設問にえぐい問題がある。
だが今回はそれがさらに顕著であった。
とりあえず方針を立ててそれに従い最後までといてみたものの、もともとあってないような自信が完全に砕かれたことを感じていた。

俺は淡い絶望を感じながら、憔悴しきって椅子にもたれかかり、天井でせわしく首を回している扇風機の風にあたっている。
あっ!俺の体から真っ白な灰が!とか馬鹿なことを考えていた。



生徒が流れ出ていく校門に卓也を見つけた。
「よ。」
俺は挨拶代わりに軽く片手をあげた。
卓也は何もいわずついてくる。その表情は硬かった。

俺は絶望的な気持ちで空を見上げる。
鉛色の空ごと今にも降ってきそうだった。
493ないと・ほーくすその2:2009/07/20(月) 01:13:23 ID:Wvk4O0Hr

お互い無言が続く。この張り詰めた雰囲気はなんだ。いいたいことがあるなら早めにしてほしい。胃に穴が開きそう。
そう思いながらもくもくと歩く。

久美のうちと卓也のうちへの別れ道で、卓也が立ち止まった。


「今日久美から告白された。」
「・・・そうか」
「僕は・・・断ったよ。」
「なんでだよ」
「秀明・・・・久美に何を言ったんだ。」
「なにも言ってねえよ。・・・前は動揺して、卓也の告白を素直に受け取れなかっただけじゃないの。」

ほほに衝撃を感じた。視界が回る。
俺はその衝撃で塀に背中を激突させた。

「久美は泣いていた!泣きながら告白してきたんだぞ!」

頬から鋭い痛みが走った。血の味が口の中で広がる
どうやら俺は殴られたようだった。
「立て、秀明、勝負だ。」


秀明は卓也の顔を仰ぎ見た。
この眼だ。
力強い自信の光が宿っている。
久美の目にも宿っている。
いつも正しくある人間の光だ。
俺はこの光が怖い
494ないと・ほーくすその2:2009/07/20(月) 01:14:39 ID:Wvk4O0Hr

「負け戦はしない主義だ。」
卑怯な言い方だ。だがもう何とも戦う気が起きなかった。

「じゃあ僕の不戦勝だ。」
「ああ。」
「敗者は勝者の言うことを聞かなければいけない。」
「・・・ああ。」
償えるなら何でもしてやる、と思った。


「君は久美に告白しなければいけない。」
「なんでだ。」
前言を撤回します。
「・・・教えてやらない。」

俺は立ち上がって制服を手で払った。
「・・・いますぐか」
「自分で考えなよ。」


そういって卓也は歩き出した。
だんだん遠ざかっていく。

俺は一瞬口に出すのをためらった。だが叫んだ。
「お前は、それで、いいのか!」
「いいわけないだろ!」
怒鳴り返された。卓也が走り出す。すぐに角を曲がって姿が見えなくなった。



分かれ道には俺と鋭い痛みだけが残った。

「後悔してばっかりだ・・・。」
首筋にひやりとした冷温を感じた。
空を見上げる。
塵を多く含んだ大粒の雨が顔を叩いた。雨が地面に叩きつけられる音が俺を包んだ。

それは大きい音のはずなのに、俺はなぜだか静寂を感じていた。
495名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 01:23:42 ID:Wvk4O0Hr
自分は未熟で不器用なもんで、一回で納得できる文がなかなか書けないんですね
なので何回も添削かけるんですが、繰り返してるうちに何かいても納得できないという無限ループに陥ったりします。
なので至らない点が多々あるかと思うんですが、目を通してくださった方にはほんと感謝します。ありがとです

496名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 08:07:28 ID:Y3Xk61sN
まぁ、創作するのは大変な作業だとは分かっている
が、俺は続きを読みたいから楽しみに待ってるぜ
書きたいように書くと良い
497名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 10:26:40 ID:sUoU3P/Y
スリリングだな
ちょっと下がりすぎたから上げる
498名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 13:57:53 ID:htTQAgb3
はっ倒してくれて感謝。
いや秀明は気に入ってんのよ?誤解無きよう。
あーやべぇマジ続きが読みてー。
499名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 16:37:00 ID:YkLRsu8n
>>495
しおらしくなる瞬間待ってます
500名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 01:17:17 ID:ZG+vLdD/
まだかなー
501名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 14:37:03 ID:D0hhW7nW
GJ!頑張って完成させてください
502名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 03:29:41 ID:6WrJpvav
楽しみにしてる
503名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 18:03:56 ID:TqFIvVau
保守
504名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 13:48:36 ID:HlXSwq2A
投下します
505ナイト・ホークスそのさん:2009/08/07(金) 13:49:09 ID:HlXSwq2A
目を覚ました
ここは俺の知っている、今では見慣れた自室とは違う。
どこだろう?・・・いや、どこだったろう?
つまるところ、俺はこの部屋を知っている。
・・・そうだった。思い出した。思い出して、吐き気を催した。
ここは父と母の寝室だ。
ここは父と母が死んだ部屋だ。


俺はベッドに倒れたままの体をはねおこした。
部屋を照らすものは月明かりしかなく薄暗かった。

汗が滝のように流れる。体が痙攣した。
俺は震えながらも月明かりを頼りに壁沿いに千鳥足でドアを目指す。
ドアノブに手をかける。狂ったようにドアノブをまわした。
だがいくら押してもあかない。引いてもびくとも、きしむ音さえ立てない。それは生と死を分かつ壁のように揺るがなかった。

助けてくれと叫ぼうとしたがのどからはひゅうひゅうとかすれた吐息しか漏れてこなかった。
見るとドアはいつのかにか鏡になっている。俺の顔があるべきそこには父の顔があった。
506ナイト・ホークスそのさん:2009/08/07(金) 13:49:36 ID:HlXSwq2A
眼前に斑点状に湿った白いなにかがあった。

なんだこれ。俺の汗か。ノートか。

半ば転げ落ちるようにして勉強机を離れた。大量の汗をかいているのに、寒い。とてつもなく寒かった。
誰か、誰かいないか。母さん、父さん。
いや、そうか、そうだった、いないんだった。俺の家族は誰一人この世にいない。
壁に手をついて肩で息をした。丁度手を突いた先に、写真の中の三人が笑いかけている。俺と、卓也と・・・・


部屋のドアをこじあけて、久美の部屋の前まで走る。ドアの取っ手を回した。・・・しまっている。
おい久美、とドアを叩こうとしてやめた。

なにやってんだ俺は。

取っ手の冷たさが頭を少しだけ冷やした。
久美は昨日から部屋にこもってたんだった。
深呼吸をする。幾分か気持ちが落ち着いた。

と、突然取っ手に押された。
「うっさいわねこんな夜遅くに何してんのよ」
「うをー。」
床に無様に全力でしりもちをついた。痛い。
完全に腰を抜かしたようだった。
「いっ、いやあ、やっ、夜分遅くにすいませんねええへへへ」
「ちょっとあんた大丈夫?!なにその汗!」
顔を両手でがっちりつかまれた。手がひんやりとして気持ちいい反面抑える力が強すぎて痛い。
「だっ大丈夫で・・・」
「うっさい!大丈夫ってゆうな!」
なら聞くなよ、と思った。
「ちょっとタオル取ってくるから、おとなしく待ってなさいよ」

言うとすとすとと風呂場のある一階に降りていった。
かえってきたときに、腰ぬかした、なんて恥ずかしくていえるわけがないので、俺は必死の形相でほふくで自室を目指す。
「おとなしくしてろって言ったわよね」
ちょっと戻ってくるの早すぎやしないだろか。
「まったく、馬鹿じゃないのほんとに・・・」
といって抱き起こされる。俗に言うお姫様抱っこだ。
「くっ久美さん!それだけはやめましょうよ!ほら!」
「黙れ。」
ぴしゃっといわれた。
507ナイト・ホークスそのさん:2009/08/07(金) 13:50:11 ID:HlXSwq2A
ベッドに放り投げられる。俺は布団を引き寄せて丸くなった。多分今日のことは一生忘れられないだろう。死のう。死ぬしかない。
「どきなさいよあたしが入れないでしょ。」
というなり俺を足で押しのけてベッドに入ってきた。
「ちょここで寝んのかよ」
「いい加減にしなさいよあんたがいつもうなされてる限りあたしだって安眠できないんだからね。」
全部ばれてたのか。いよいよ死ぬしかなさそうだった。
「いっとくけど襲ってきたら生きたままホルマリン漬けの輪切りにしてやっから覚悟しときなさい。」
久美はどっかのマフィアも猿轡をのどに詰まらせそうなほど怖いことをサラッと言った。
「わかってないな。俺は紳士なんだ。イングリッシュマンなんだ。」
久美に背を向ける。とたんにまぶたが重くなった。久美が背で何かつぶやいていたようだがよく聞こえなかった。
久美と寝るなんていつ振りだろうか。
悪夢の恐怖におびえない夜なんてもうほとんど忘れかけていた。




目を覚ましたときには既に久美はいなかった。
昨日のは夢だったのだろうか。久美が寝ていたあたりの枕のにおいかいでみる。甘いにおいがした。
いかんいかん。あいむあんいんぐりっしゅまん。

下に降りてみると久美がちゃぶ台で朝食をとっていた。その隣でおじさんはビール片手に肩身狭そうにちびちびしている。
久美はめちゃくちゃ機嫌が悪そうだ。
「朝からビールって頭おかしいんじゃないの」
おじさんはさらに縮こまる。こころなしかビールを持つ手が震えていた。

すると、なんともきまずそうにテレビを見ていたおじさんの目がこちらへ向いた。
「お、おお、秀明いたのか、話がある。」
というが早いか俺の手を掴んで台所まで連れて行かれる。
「おい、秀明、おぬし久美に一体何をしたんだ。たまの休みくらい朝から酒飲んだっていいだろう。なのになんだあのキレ方は」
俺が起きてくる前に何をされたかはわからないが、さっき震えているように見えたのは気のせいでないということはわかった。ものすごい気の毒に思った。
「俺にもわからないですよ。あの、おばさんは?」
「ん、ああ。なんだかな。今日会議で企画だかなんやらを発表するらしくてな。発表内容のパワーポイントの最終調整だとかで朝早くに出て行った。」

「秀明!遅れんわよ!」
おじさんは久美の叫び声にヒッ、と小さく声を上げると、「じゃ、じゃあ後はおぬしに任せたぞ。うまくやれよ」といってそそくさ二階へあがっていった。気の毒すぎた。

508ナイト・ホークスそのさん:2009/08/07(金) 13:53:43 ID:HlXSwq2A


悪夢のようなテスト期間が終わりを告げ、クラスは爽快感と開放感に満ち溢れていた。今日は金曜というからなおさらだ。
そこらじゅうで遊ぶ計画を立てている。

「秀明ー、今日カラオケ行かない?」
「うん、行かない。」俺は答える。
「なんだよーつれねーなー」
というとまた友人の輪の中に戻っていった。
そんなこと言うんなら否定形で聞いてくるなよ。しかしそれが日本人というものかもしれない。

カラオケは嫌いじゃないが、俺としてはテスト結果が帰ってくるまではもろ手を挙げて遊びに興じるなんてできそうもなかった。




テストの出来を確認するのはもう毎回恒例となっている。
当然、いつもそれとなく聞いてるわけだが。
「これからカラオケ行かないか」
冷たい目で一瞥された。
「冗談だけどさ・・・」
「テストどうだったのよ。そんな軽口たたけるからさぞよかったんでしょーね。」
聞こうとしたことを先に聞かれてしまった。なにやってるんだ俺は。
「だめでした」
「それ以外聞いたことないんだけど。」
「だろうよ。」
誰も彼女に向かってよくできたなんて言えないだろうよ
「久美はどうなん」
「まあまあね」
「はあ。」
まあまあですか、俺もこれ以外聞いたことがないきがする。そしてそのたび涙を呑んでいる。
これでは勉強期間より待ってるほうがつらいかもしれない。
・・・なんだか疲れた。腹のそこに泥のように積もった疲労感があった。

509ナイト・ホークスそのさん:2009/08/07(金) 13:55:42 ID:HlXSwq2A
木の寿命か、すっかり重くなった引き戸をがんばって引く。懐かしいにおいがした。
中をのぞいてみると先生が近所の子供たちに稽古をつけていた。
「こんにちはー」
こんにちはー、お兄ちゃん久しぶりー、と囲まれた。もうすっかり顔なじみの子ばかりだ。

「ああ、久しぶりに来たところで悪いんだけど秀明君、この子達に稽古つけてくれないか。
ちょっと娘を幼稚園に迎えに行かなきゃならない時間なんでね。」
とにやけながらの先生。
「はあ、いいですけど」
やったー、お兄ちゃんーあそぼーと黄色い声が館内に響く。じゃあよろしくと先生は出て行ってしまった。

稽古をつけると先生は言ったが、実際のところはいわゆるお守りだ。
前に、初めて稽古を頼まれたときにまじめに稽古をつけてやろうとしたが誰一人従う子はいなかった。いや、近所の綾子ちゃんだけは俺の言うことを聞いてくれたか。
一人だけ女の子が味方についてくれた時は年甲斐もなく目頭が熱くなった。



「ねねー、今日は何して遊ぶのー?」
遊ぶじゃないよ、まったく。
不思議なことに、先生の指導にはまじめに従うのに、俺には全然従わない。子供たちはちゃんとわかってるんだなぁとそう思う。
「はい、じゃあまずは基本から」
師いわく、うちの流派はなんでも護身用だそうで、相手の攻撃をのらりくらり受け流す動作が基本である。
こちらからの攻めはけっして主力でなく、相手の攻撃を誘う一種のおとり動作と教わった。

えーあそばないのーと抗議が殺到する。群がられてなんかぽこぽこなぐられる。

「やっっかましいわ!ひでにーの言うこと聞けこの愚民どもが!」
すると突然叫び声が耳を貫いた。
館内は一瞬で静まり返る。それからすぐに子供たちはそそくさと二人組みになり基本練習をはじめた。
・・・愚民・・・・?いや、なにかの聞き間違いだろう・・・。

「いやーありがとう綾子ちゃん・・・綾子ちゃんだけだよ言うこと聞いてくれるの」
「いっ!いえそんな!ひで兄さんにはいつも教わっていて悪いですし・・・」
と顔を赤くして照れている。
いい子だ・・・。ほろりとなった。


でも、綾子ちゃんの言うことは聞くのに、俺の言うことは聞かないって。なんだろう、この気持ち。



哀愁にふけっていると突然、綾子ちゃんの笑顔がかすんだ。俺は足をもつらせて派手に転ぶ。
「いてて・・」
「だっ大丈夫ですか!顔色悪いですよ」
「ああ・・・だいじょうぶ・・・」
心配かけまいと、すぐに立ち上がろうとしたが足に力が入らず体制を崩して床に体をほうった。
吐き気と頭痛が交互に襲ってくる。大丈夫じゃないことは自分が一番よくわかった。
「ごめん・・・ちょっと疲れただけ・・」
それは自分に言っているのか綾子ちゃんに言っているのかわからなかったが
何とかそういって俺は壁に背をもたれる。胸が苦しい。視界の黒い斑点が次第に大きくなっていった。
「・・・!・・・・・!」
綾子ちゃんが何か叫んでいる。俺は答えようとして、息を激しく吐き出すことしかできなかった。
510ナイト・ホークスそのさん:2009/08/07(金) 14:01:22 ID:HlXSwq2A
>>507に訂正があります。すいませんでした
×>下に降りてみると久美がちゃぶ台で・・・・・・
○>下に降りてみると久美がダイニングテーブルで・・・・・
ちゃぶ台って何でしょうね。サザエさんですかね。
511名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 20:38:43 ID:5fruQ2aT
つづききてたー
しおらしくなる瞬間が楽しみです
気長に待ってます
512名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 21:36:45 ID:ajoYO9kl
なんという引き……!
wktkせざるをえない。

>ちゃぶ台
キレた久美がひっくり返すんだろうと思ってたが、そんなことはなかったぜ!
513名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 10:53:26 ID:tZJl2Wfd
和風な家なのかとおもったぜ
514名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 20:27:07 ID:3ATlurrr
股引きに腹巻にタオル鉢巻きした綾子を妄想しかけて止まった
515名無しさん@ピンキー:2009/08/09(日) 15:52:58 ID:thdYSn7j
>>514
いや、そのまま続けて。
516名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 21:45:21 ID:guotz5Nz
気がつくとドライアイになりそうなくらい読みふけってたぜ
ナイトホークスの人GJ!!
517名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 22:40:56 ID:r2BC944p
保守
518名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 19:46:55 ID:wDsEp1mb
age
519名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 02:24:39 ID:4tVjlks3
ほしゆ
520名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 16:01:31 ID:zLry3ANI
ほしゅあげ
521名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 00:46:51 ID:Jirx83Sl
522名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 15:35:58 ID:7jKn+41P
投下します
523ナイト・ホークス 4:2009/08/27(木) 15:36:52 ID:7jKn+41P
部屋は薄暗い。
遠くの公園にぽつりと孤独な街灯が佇んでいる。その弱弱しい光が窓から差し込んでいる。
これもまた、夢なのだろうか。
両腕を動かすとかすかに痛みがした。見てみると・・・・どうやらずいぶん大きな注射針をうたれたらしい。
今俺は自室にいるところと、注射をうたれたところをみると・・・・あの後綾子ちゃんが救急車を呼んでくれたのだろうか。では何で俺は自室にいるんだろう。
俺が意識を失った後のことを考えようとしたが眠さで頭が働かなかった。

このひどい倦怠感から言って、かなり長い間眠っていたのだろう。
だが、それでもなお眠かった。しかもその眠さは限りなく有害なものであるということもわかった。
・・・でも、いいか。まぶたを閉じた。
人は長い間寝続けると脳細胞が死んでいくという。
だが俺はもうなにもしたくない。何もほしくない。
だから俺になにも期待してほしくなかった。



呼吸の音がほんのかすかに聞こえた気がした。
見ると久美が静かに佇んでいる。俺は声を出そうとして、息をすることさえ忘れた。
彼女の、ほのかな光に照らされたその美しさは、同じ人間とは思えないほどだったから・・・。

俺は時々、彼女のあまりの美しさにひどく惨めな気持ちになる。ちょうど今感じているような感慨だ。

「テスト、どうだった。返ってきたんだろう。」
気付くと、かすれた声が頭の中で響いた。
癪に障る声だ。
自分で言ってあきれる。


「・・・・返ってきてない」
ほとんど聞こえないようなか細い声で、めをそらした。
「うそだ。かえってきたさ。」
久美は答えない。
「やっぱり、久美は一位だったのか。」
「・・・・」
久美は答えない
俺は知っている。
久美には、テストの点なんてどうだっていいことなのだ。
そういう俗的なものを超越している。
俺は惨めに『そういう俗的なもの』にしがみついたままだ。
むなしい。
「そういうわけにもいかないんだな」
「・・・私には、秀明が体を壊してまでなにをしたかったのかわからない。」
「わかんなくていい。くだらないことだから」
524ナイト・ホークス 4:2009/08/27(木) 15:37:56 ID:7jKn+41P

おれにはしたいことがあった
そのために愚かな振る舞いで久美も卓也も傷つけた。


俺は久美や卓也とは違うのだろうかと思ったのがきっかけだった。

人間、とくに自分が美しいとか優れているとか意識し始める思春期は特に、見られているというぎこちなさが生まれる。
注意深く見ても見なくても、うちのクラスにもそういう類のは何人もいる。つまり自分を演じているわけだ。

久美や卓也にはそれがない。鼻にもかけない。他人の評価に左右されない。自分と自分が一致している。自由である。
俺はどうか。自分を演じた挙句、この有様だった。



久美の父は言う。「お前ぐらいのがきんちょが自分を見積もってどうする。おぬしは老けすぎている。
十代というのはな、可能性がある。責任がない。無条件で幸せでいられるし、そうでなくてはならんのだ。」
それは俺がつまり根暗であるということを言いたいのだろうと思った。しかしそうではないようだった。




「じゃあ秀明は、なにがしたかったの。あなたはまるで、何かにおびえていた。」
長い沈黙と暗闇のむこうから声がした。

俺は答えない。こたえあぐねる。
ちいさいプライドのために、ずっと隠し通してきた劣等感だ。
いやしかし、と思い直す。
もうすべて終わったことだ。

「俺は証明がしたい。証明がしたかった。めずらしく俺はやる気になったのだ。久美や卓也と俺が同じ人間であるということを証明したかった。」

ちがう生物間で愛情は発生しない。もし久美が俺を好いてくれるんだったらそれは飼い主がペットに注ぐ愛情で、俺が今抱いてる感情は崇拝に近いなにかである。
「違ういきもの同士に愛はうまれない。」

俺はそれが怖くて否定し続けただけだ。
だけど証明を始める前にはもうこの題意は成立しないことをわかっていた。
それを言う必要はない。
525ナイト・ホークス 4:2009/08/27(木) 15:38:21 ID:7jKn+41P
見ると久美のほほに一筋光が走っていた。久美の泣き顔なんて想像すらできなかったけど

綺麗だなあ。

彼女はなぜ、泣いているんだろう。俺に、同情しているのか。
おれはこのまま惨めさに埋もれて死んでしまいたかった。

ここで告白したらどうだろう。

いまさっき力説していた俺の人間観とはまったく相反する。
当然勝算があるわけない。だが自棄になったわけでもない。
変わるのはせいぜい悪いのが最悪になるくらいで、
これはあくまで事後処理の一環だ。卓也との約束の事後処理と、もうひとつ。

「じゃあ、愛ができるかどうか試してみないの。」
俺が勝算のない事後処理にでるかどうか悩んでいるとき久美がそっと言った。


俺ははじめ久美が冗談を言ってるのかと思った。
「もう6年以上も一緒にいて、なにもできてないんじゃあこれ以上何ができるんだよ」
沈黙が部屋を包んだ。
のどがからからに渇いていることに俺は気づく。

べつに、たいしたことはない。
人間、成長するたびあきらめなくてはならないものが増える。
俺の場合、そのなかのひとつに、久美がいただけだ。
そう、久美が・・・・
窓の外の、藍色がほんのり淡くなった見慣れた空をみつめた。
久美だけは、そこにあってほしくなかった――――

俺はそのとき初めて悲しみというものを覚えた。
死んでも泣くか、と思った。直後滝のように涙があふれる。
俺は、もう、惨めで、惨めで、惨めで・・・・

「あの、あ、あたしは、その、」
頭の後ろで声がした。
俺は窓のほうを向いたまま固まる。
「あ、愛とか、えー、あるんだけど。」
俺は次に久美が冗談を言っているのだと思った
526ナイト・ホークス 4:2009/08/27(木) 15:38:52 ID:7jKn+41P




下に降りてみると、テーブルの上には朝食とは思えないような料理の品々がずらりと並んでいた。
「あの、なに?これ。」
何事かと思い台所であくせく働いている久美に聞いてみる
「朝食。」
「いや、意味がわからないんだけど、今日普通に学校だろ」
「あんた丸二日ものまず食わずだったんだから、当然これくらいは食べられるわよね。」
「はあ・・・。」
それにしてもこの量は異常である。これから宴会でもひらくつもりだろうか。
「はい、これスパゲティ。伸びないうちに食べなさいね。」
俺は、朝からスパゲティ作ってんじゃねーよ!と叫びたかったが何を言っても無駄なきがしたので半ばやけくそになってフォーク片手に食べ始める。

がつがつ食べてると料理を終えた久美が正面の椅子に座った。
俺が食べるのをニヤニヤしながら見られる。
「暇ならこれの処理手伝ってくれない?」
「なにが処理よ」
といいつつも箸で厚巻き卵をはさんであーん、とかしてくる。
やってらんねーよと思いつつも何を言っても無駄な気がしたので半ばやけくそ気味にくいついた。






憂鬱な月曜の登校風景だが、それがなぜだかずいぶん懐かしく思えた。
「ねえ、秀明。」
久美が言う
「なに」
「卓也はもう引越したの?」
「さあ、わからん。」
「そう」
結局卓也には出発日も、引越し先も教えてもらえなかった。


前を歩く久美の長い髪が、夏の朝の生暖かい風になびいている。
そういえば、卓也との約束守れなかったな、女の子に告白させるなんてなにやってるんだろうなあ、とうららかな光を受けながら思った。


自席に座る。クラスの喧騒もなぜか懐かしい。どうしたんだろう、たった二日寝ていただけなのに。妙に年老いた気分になった。
「おいひで、さっき4組のやつから聞いたんだが、今日もう中間返されるらしいぞ。先生たち張り切りすぎだろ」
となりの山田に言われた。中学からのつきあいで気の置けない友である。
「え、まだ返ってきてなかったんだっけ?」
「何言ってんだよ、先週受けたばっかだろ。ぼけるのはまだはえーぞ。」
頭を叩かれる。・・・そうか、今日は月曜日か。俺はもうだめかもしれない。
527ナイト・ホークス 4:2009/08/27(木) 15:40:01 ID:7jKn+41P

本日最後の地理の眠い授業が終わりを告げた。
休日に寝続けても、眠いものは眠いのだ。自分でも不思議である。今まで眠りたくとも眠れなかったのに。テストの緊張が解けたからかもしれない

「今日結局テスト返されなかったなー、あと一週間くらい返されなければいいのになあ。」
山田が机にへばりつきながら言う。こいつの授業が終わったとたんに目が覚めるというのはなかなかまねできない芸当である。

「おーし、中間返すぞー」
すると担任が、間の伸びた声をあげながらクラスに前の扉からはいる。隣は、やっぱかえすんかよぉーちくしょーと不満げな声を上げていた。

その一方、今度は俺が机にへばりついていた。手に汗がたまる。苦しいほど鼓動が早まった。
「はい順番に並んでー」
若番からどんどん消化されていく。・・・今久美が返された。久美のほうを決して見ないようにしながら、俺は死刑直前の囚人のような心持だった。




「ああああー・・・・まあ、思ったとおりですけどね。おい、ひではどうだったんだよ。ん?
・・・って、お、おい、なにも泣くことないだろう、気にするなよ、俺のほうがよっぽど悪いって。」
「なんでもない。ちょっと疲れただけ」
テスト結果をかばんにしまう。俺は目を閉じて、ただその虚脱感に身を任せた。





テスト結果の学年順位には、1と記してあった。
なんで・・・・・これじゃ秀明は報われない・・・。あんなに努力したのに・・・
恐る恐るみると、秀明は机に突っ伏していた。

テストでわざと間違えればよかったのだろうか・・・。
いや。
秀明は、あたしを超えるために努力していた。その努力を侮辱するようなことは、あたしにはできない。

秀明の努力に負けないように、あたしはがんばった。心の奥底で、秀明があたしを越すことを期待しながら。
528ナイト・ホークス 4:2009/08/27(木) 15:40:23 ID:7jKn+41P
あいつは、玄関で靴を履き替えていた。
「あ・・・秀明・・・。」
「ん?」
「・・・いっしょにかえろ。」
「うん」

前の秀明が作る長い影を眺めていた。
どうあいつに接すればいいかわからない。気まずい沈黙があった。
・・・ん?そういえば、あいつが前を歩くなんて・・・

「なあ、久美。テストの順位どうだった。」
びくっとして立ち止まる。のどから自分のじゃないような声が出てきた。
「・・・あたし、・・・秀明は、がんばったよ。順位なんてどうでもいいよ。だから・・・だって・・・」
あたしは何を言ってるんだろう。なんで泣いてるんだろう。本当は秀明が泣きたいはずなのに。





「久美・・・。」
あたしは俯いたまま。
「俺、末路は難かったけど、ちゃんと百里歩ききったよ。」
「?・・・」
秀明の言う意味がわからない。顔をあげると秀明が微笑んでいた。秀明のこんな自然な笑みは本当に、ほんとに久しぶりに思う。
そして、あたしは突然理解した。
「秀明、一位なの・・・?」
「うん」
そういえば、秀明は私と帰るとき、いつもあたしの後ろについていた。今日は私の前にいる。

あたしは駆け寄って秀明にしがみついた。
「この、ばか、あほ、早く言えよぉ・・・」
秀明はごめん、とつぶやいた。
あたしは、ばか、こういうときは抱きしめ返すのこのバカというと、おずおずと手を背に回してきた。

あたしはその甲斐性ない態度にむかついて、それからなんだかおかしくなって、胸に顔をうずめて人の目も気にせず道端でわんわん泣いた。

529名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 15:43:04 ID:7jKn+41P
投下終了。
保守代わりになれたら幸いです
530名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 16:00:04 ID:tMzcDV2J
GJGJ
つ、続きは、期待してもいいですか?
可能であればお願いしたい
531名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 20:48:59 ID:jW8NnJTL
GJですた。

>>526
>厚巻き卵をはさんであーん、とかしてくる。 (中略)半ばやけくそ気味にくいついた。
なんというバカップルw
この体たらくで付き合ってない(少なくともこの時点では)とかふざけてるの?
秀明を蹴っ飛ばしたくなったw
532名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 20:57:05 ID:burtmtjx
GJ!
なるほど、同率一位か。
533名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 23:10:03 ID:t2YKC6t3
GJ!!
>>532
なるほど
ゲームと学問に血眼になってて単細胞になってて気が付かなかった
534名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 07:03:09 ID:VVz8mLM2
なんか、もう…感動してしまった
こんなに自信のない主人公は珍しくてつい感情移入してしまった
すごく良かった。お疲れ様でした!幸せになった後のお話も読んでみたいなぁ
535名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 15:08:13 ID:foqGDr0h
才能あるな
536名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 05:35:56 ID:A1EpAb9r
いや、才能はない
537名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 00:00:59 ID:MsfEh01U
あるのは努力
そして度胸だ
538名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 03:56:29 ID:F53N9g4Q
そういえばツンデレスレ落ちたままか
539名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 18:39:52 ID:rFQYO5tQ
ツンデレものを何か一本書いて8スレ目を復活させてやるっ!!



……そんな妄想に取りつかれていた時期もありました
まだ諦めちゃいないけどな!
540名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 19:59:33 ID:QDderF6/
さぁ、今すぐ仕上げにかかるんだ
541名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 20:44:57 ID:LKpVQysP
まだ1レスにもならないんだお……
542名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 22:28:43 ID:z15p5TAA
543名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 13:26:16 ID:U2VZo+hZ
期待。
544名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 00:05:45 ID:snPvXHoL
保守
545名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 23:59:06 ID:snPvXHoL
保守代わり
546値万金の居眠り:2009/09/23(水) 00:00:42 ID:snPvXHoL
 「わたしがやっていいかな?」
 そう言うと直美は懸垂の要領ですいすいと上って戻ってきた。
 「あなたは別だけど、最近の子って怖がりだし鈍いんだよね。」
 余裕で言う直美が電灯を点けた。
 直美はもう50に手が届く歳のはずだが、若々しい。肌荒れも無いわ
けではないし皺もある。あるのだが、美しい。そして人を朗らかにする
不思議な力があった。アルバイトとしてこの職場に入ってまだ短いのだ
が、その快活で誠実な仕事振りは正社員で無い事で上司達を惜しませて
いた。
 「どうしたの」
 先ほどの直美の流れる様な身のこなしに銀二は見とれていた。
 「いや何でも。少し考え事を」
 「銀二君は時間を無駄にしないんだねえ。いい心がけだこと」
 そう言って直美は微笑した。
 (やっぱり見透かされてるのかな)
 直美に次いで銀二も歩き出した。
 (それにしても)
 直美は後姿も美しかった。その体は数々の肉体労働で鍛錬され、モ
デル並みの体型になっていた。そして力もあった。
 「じゃあちゃんと持った?いくよ」
 銀二と直美は机を抱えて立ち上がった。元々ここへは机を取りに来た
のだった。この机は軽くない。大人の男二人でちょうど安全に運べる程
度の机だった。
 「お疲れ様」
 「ありがとうございました」
 「それより、正社員の給料分は頑張ってね」
 直美はいたずらする様に軽く笑った。

 「こうした方が速いんじゃないかな」
 直美が新入社員の数え方に注文をつけていた。
 「そうそう。速くなったでしょ。しかめっ面して無駄に時間使っても
意味無いからね」
 直美が新入社員に笑いかけた。新入社員はにやけて答えている。当然だ
ろう。世間知らずな彼に直美は刺激が強すぎる。
 「銀二君も手を抜かない方がいいよ」
 銀二もまた、にやけて答えた。
547値万金の居眠り:2009/09/23(水) 00:01:39 ID:snPvXHoL
 机の上に置かれたメモを確認して帰ろうとした時気がついた。直美のメ
モには裏にも何か書かれてあった。裏返して、銀二はつばを飲んだ。
 直美が場所を指定して会いたがっている。
 銀二は気取られぬ様に退勤した。

 「用って何でしょう」
 直美が待っていたのは最寄り駅から離れた目立たないタクシー乗り場だった。
 (なにか、お説教かな)
 「ここじゃ話し辛いから、一緒に乗って」

 二人はタクシーを降りて何分か歩いた。銀二が普段訪れた事が無い方面
だった。何があるかわからない方面だった。全くどこに行くのか想像がつ
かない。
 「銀二君、悪いけど、目をつぶっていてくれるかな」
 「はい」
 直美に手を引かれてたどり着いたのは、ホテルだった。それもラブホテル。

 「ちょっと待って下さい。あの…」
 「銀二君、好きな人いる?」
 「いますけど…」
 直美は暗くなった。あの顔に陰りが出る所など悪夢にも思わなかった。
 「わたし、子供も家を出て旦那も死んで、寂しいの。もう、誰も寂しさを
忘れさせてくれるような人がいないの。銀二君…」
 直美の目はまっすぐに銀二をみつめていた。
 「ごめんなさいね。こんな、わたしどうかしてました」
 「直美さん…、あなたなら…」
 「ダメ!!やっぱりダメよ!!」
 直美がそう言ってから沈黙が束の間流れた。それを直美が口を開いて破った。
 「でも少しくらいなら、いいかも」
548値万金の居眠り(終):2009/09/23(水) 00:02:05 ID:snPvXHoL
 直美は裸体もまた美しかった。まさに絵に描いたような理想の肉体だった。
 「は、恥ずかしいな。そんなじろじろ見られちゃうと」
 直美はゆっくりと銀二に近づいた。
 「触っちゃっていいんですよね」
 「うん。あ、いや触っていいよ」
 銀二がやや小ぶりな胸を包むように揉む。甘美な息が口から湧き
上がった。
 「ああ…銀二君…」
 「直美さん、凄い」
 直美の体は見た目だけではなかった。その引き締まった腰も脚も、
完璧な美しさを湛えていた。接していて飽きそうになかった。
 「ああ…」
 体中を這い回る銀二の手に直美は酔っていた。
 「大変…クセになりそう…」
 「直美さん僕も」
 銀二もまた酔っていた。深くなりそうな酔いだった。二人は深い口
付けをした。お互いの手が硬く二人を抱きしめた。
 「赤ちゃんができちゃうのだけは、無しね」
 「はい」
 二人は唇を貪りながら乱れた。直美の美しい老いた体が蛍光灯に照ら
されて光を放っていた。その体を玉の汗が滑った。

 「大丈夫ですか?」
 新入社員が後ろから声を掛けていた。全て夢幻だった。考えてみればそうだ。
直美の旦那さんは元気そのものだった。子供も成人したとはいえまだ家に
いる。直美も旦那さんも、相手が不倫などしたら刑務所に入るつもりだと
言うほどの熱々の夫婦だ。
 銀二は予定の5分遅れで退勤した。直美のメモは裏面に何も書いてなかった。
 (終わり)
549名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 00:03:08 ID:8L+N7ge5
綺麗なおばさんが多い職場だったもんで
550名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 06:11:14 ID:kZB6wpLA

GJ!

熟女だったので脳内で25歳引き算しちゃったよ。
551名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 07:28:54 ID:39hfujxx
552名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 22:20:55 ID:RITLN4I4
っしお
553名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 21:48:07 ID:eqbrRzu9
☆ゅ
554名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 23:10:55 ID:DoPmJavt

「――ハッ! ……きゃー!? 遅刻遅刻!!」
 私は目覚まし時計を見るや否や、ベットから慌てて飛び起きる。時計はすでに八時を示していた。
「どうして目覚ましが鳴らないのよ!」
 しかし今は原因を追及している場合ではない。パジャマを脱ぎ捨てながら姿見の前に。――ああ、なんつー髪型。
 こんな日に限ってすごい寝ぐせがついているのはなぜなのだろう。
「あーもう! 全然髪がまとまらないじゃない!」
 しばらく櫛で梳いてたが、イライラしているのと慌てているので上手くいかない。私は髪のセットを諦め、とりあえず最低限寝ぐせだけは直す。
 バタバタとようやく身だしなみを終えて、一階のリビングに降りて行くと母が朝食の準備をしていた。
「もう! お母さん! 何で起こしてくれないの!」
 そんな母にやつあたりだと分かっていながらも、ついつい強く当たってしまう私。
「そんなこと言ってもあなた。母さんは声は掛けたわよ」
「初日から遅刻だなんて……。ああー! 行ってきます!」
 自分から突っかかって置きながら無視を決め込む。
 重ね重ね言うが私には時間が無いワケ。返事している場合じゃないの。……ゴマカシテナイヨ?
「朝ごはんはー?」
「食べながら行くー!」
 私は食卓にあった食パンを口に咥えて家を飛び出して行った。


 私は道路を全速力で走る。ああもう、信号待ちがうっとおしい! でも、確かここから先に信号はなかったはず。
 時間をちらと見ると、予想よりも早く進めてるようだ。――もしかしたら間に合うかも……
 ようやく信号が青に変わる。
「いっくわよー!」
 掛け声と共に発進。このまま直進、そしてそこの角を曲がれば――

 ドカーン!

 そんな轟音と共に私は強い衝撃を受ける。首がしなってむち打ちみたいになってしまった。とても痛い。
 ――何かにぶつかったみたいだ。
 クラクラする頭を上げてで前を見る。男の人が駆け寄ってきた。
「――って、どこ見てんのよ!」
 私がそう叫ぶとそいつは悪びれもせず、
「俺の車見てんだよ! ああ……こんなにでかい傷が……」
「ちょっと! それおかしいでしょ!」
 私は車から降りるとそいつに詰め寄って行く。あ、私の車もへこんでる……修理代結構かかりそう……
「うるせー! 大体確認もせずこんな狭い道で急に曲がってくるそっちが悪いだろ!」
「うっ……。そ、それはそうだけど……私が悪いかもだけど……。だからと言って一番に自分の車の心配する!?
 まずは相手の心配する方が先じゃない!?」
「い、いや……。その……それは悪かったけど――って何で俺が下手に出なきゃならないんだ!」
 最悪も最悪。出会いがしらの交通事故、それが私と彼の出会いだった。

                                                      つづかない
555名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 23:57:45 ID:ZbgElbFJ
ベタすぎる展開....
とおもいきや交通事故かww
556名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 15:25:20 ID:6+m3cS6p
マンガやアニメにはよくあること
557名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 13:15:05 ID:/3toAgkD
クリームがやってたベタドラマを思い出した
558名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 01:34:33 ID:V9Zef97n
あげ
559名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 18:21:29 ID:Ge+5Vohp
ウルトラスーパー亀だけど不器用な彼女一気に読んで泣いた
560名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 18:16:25 ID:Wt0kkEzV
保守あげ
561名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 21:10:12 ID:gCj3+8z7
562名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 05:01:05 ID:YRQGowxL
「……ねえ」
「なんですか?」
「どうしてここには誰もいないの?」
「去る者は日々に疎し。過去のブームではありましたが、きっと今では飽きられてしまったんでしょう」
「……」
「流行り廃れは世の常です。取り残された者達にしてみれば寂しいことこの上ないですがね」
「寂しくなんて……」
「まあ、いつか帰ってくる人もいるかもしれませんしね。人も物も、存在すること自体に価値があるんですよ」
「そうかしら……」
「きっと、そうですよ」
暖かい声でそう言うと、少年は廃墟に『保守』と書きつけた。
563名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 18:10:05 ID:Q/Xbi9X1
やくざ娘みたいなリレーでもするか?
564名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 18:16:21 ID:YT49UZK8
何人か居れば良いけどな
565名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 01:18:40 ID:biaO03lV
「何人かいればいいけどな」
気恥ずかしさを隠すように言った。もちろん隠せてはいない。
彼女は何かをごまかすとき、突然男のような口調になる。
そんな事は百も承知の幼なじみからにやけ顔をされ、
やや後に意味を解して彼女は少し赤くなった。
「人前では強がりを言うくせに、一人になると寂しがる。今は恥ずかしがる。
なるほど、少女だけに強ガール寂しガール恥ずかしガール、か」
つまらない話にさえ反応して赤くなる様子をニヤニヤと見つめられていた。
566名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 22:46:12 ID:Ag22ZBIF
「どうしてだれも来ないのよ!」
少女は駅前で待っていた。
彼女はクラスの中でもとびきりの美少女であったが、いかんせん気が強かった。
そんな彼女は女子の内部でも好き嫌いがはっきりと分かれていたのだ。グループの何人かは嫌っていた。
そしてグループでクリスマスパーティを開くことになり、彼女の家に集まることにしたのだ。
何人かの策略によって中止が伝えられていたが彼女は携帯電話を持っておらず、確認できなかった。
そうして待っていること一時間。雪が降り、辺りが暗くなってきたその時、一人のクラスメイトと出会った。
「これ、着なよ。俺のだから少しデカイかもしれないけど。」
小刻みに震えている彼女の肩の雪を払うと彼は学校制定コートをかける。
彼としては駅から出たらクラスの女の子が震えていたから掛けてあげただけなのだが…
彼女は冷えて赤くなった顔をさらに赤くして普段のように振る舞おうとしたが口から出た言葉は裏切った。
「アンタ、私の家に来ない?お茶くらいなら出すわ。」
そこには強気な彼女は無く、弱々しい泣きそうな彼女がいた。彼は声色を聞くとこう不器用な笑顔で言った。
お言葉に甘えて…と。そして二人は雪道を歩きだした。
567名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 02:33:57 ID:YcVYoEYJ
過疎りすぎ保守
568名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 18:00:55 ID:TU/rjU7d
>>566
早く続き書いてくれないと凍死する
569名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 02:11:21 ID:KXXfTvmk
俺も
570名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 07:32:57 ID:mDosIk1n
過疎やばいね
571名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 07:57:21 ID:ITZD9GNi
過疎りすぎだろ
572名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 10:48:25 ID:n+w5Z3m7
保守
573名無しさん@ピンキー:2009/12/17(木) 08:26:37 ID:fbls/Zys
期待age
574名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 04:24:01 ID:4lRv1ehT
保守的
575過疎化保守ネタ:2009/12/27(日) 14:51:47 ID:5IM7JWWn
「とうとう、あいつまで出てっちゃったね…。」
右隣に座る女の子に話しかける。
今は夕暮れ時。僕らは村全体を見下ろす丘に腰掛け、二人してぼんやりと夕日を眺めている。
「あんな薄情者、東京でもなんでも行っちゃえばいいのよ。…むしろいなくなって清々したくらい。」
口ではそういうが、夕焼け色に染まる彼女の横顔は、どこか暗い。
ここは過疎の山村。今日の午前中の電車で、幼い頃からの友人がまた一人、村を出て行った。
村に残る若者は、もう僕らしかいない。
「東京のどこがいいってのよ…。あんなとこ、ただ人とゴミが多いってだけじゃない。」
と毒づくその口振りにも、やはりどこか覇気がない。

彼女は小学生の頃に、東京からこの村に引っ越してきた。
後で彼女の母親に聞いた話では、彼女は東京でいじめられていたそうで、
母親の実家があるこの村に越してきたということだった。
一度彼女が、その時のことを少しだけ語ったことがある。
「私は、あの街に合わなかったのよ、きっと。でもこの村に来れて、本当によかった。本当の自分を思い出せたから…。」
そう語る表情は、非常に照れくさそうだった。
その後、「今じゃ、村でダントツに勝ち気で逞しいもんね」とからかうと、顔を真っ赤にしながら追いかけ回されたが。
実際、この村に越してきてからの彼女は元気一杯で、その溢れんばかりの行動力で、
僕らを含めた村の子どもたちを引っ張り回していた。
そしてそんな彼女を、僕はその頃から憎からず思っていた。

…彼女はきっと、僕以上に村を愛している。
だからきっと、僕以上に寂しいんだろう。
村を否定し、村を出て行く友人たちを見送るのが、悲しいんだろう。

「ねぇ…」
彼女の横顔を見ながらそんなことを考えていたら、彼女が前を見据えたまま話しかけてきた。
「あんたも、いつか出て行くつもりなの?」
僅かに震えた声で僕に問う彼女の横顔は、いつもの強気で、
自信に充ち満ちたそれからは考えられないぐらい、弱々しいものだった。
傾きかけた日が作り出す陰翳と相まって、その姿は神秘的なまでの儚さで…。
僕は不謹慎にも、それを美しい、と思ってしまった。

と。いつまでも見とれている訳にはいかない。
しおらしい彼女もたまにはいいけれど、彼女を不安と寂しさのただ中にいつまでも置いておくのは、僕の本意ではない。
それに、僕の答えは、考えるまでもなく、とうに決まっていたから。

僕は彼女の横顔を見つめながら答える。
「…たぶん僕は、君が思っている以上に、この村のことが好きだよ。僕がいて、君がいるこの村が。」
「っ!」
最後の部分を特に強めて言うと、彼女が何か言おうとこちらを振り返ってきた。
当然、さっきから彼女の方を見ていた僕と思い切り目が合って、正面から見つめ合う形になる。
彼女は一瞬ビクッとして、開きかけた口はそのまま止まってしまう。
そんな彼女の手を取って、少しだけ強く握ってみる。
はっと息を呑んだ彼女だったが、それ以上の言葉は出てこなかった。
僕は彼女の瞳を見ながら、自分の気持ちを伝える。
この強くてか弱い、僕の大切な人に。

「僕は離れないよ。絶対に。この村からも、君からも。」

彼女はそれを聞くと、驚いた様に目を見開いて、その後少しの間俯いた。
さらに、僕が声をかけようとした途端、ぷいっと顔を背けてしまった。
彼女はその後しばらく顔を背けたまま、何も言わなかった。
だけど、むこうを向いた彼女の頬と首筋が真っ赤だったのは、夕日のせいだけではなかっただろう。
そして、彼女の肩がほんの少し震えていたのも、彼女が僕の手を強く握りかえしてきたのも…。
きっと僕の気のせいではなかっただろう。
僕らは手をつなぎあったまま、夕日が沈んでもその場に座り続けていた。

「…絶っ、対…、絶対、一生、離してやんないから…。」
彼女がしゃくり上げながらそう言って、僕に抱きついてきたのは、日もとっぷり暮れた後のことだった。
576名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 11:25:15 ID:KsgrX3Pd
GJ!
577名無しさん@ピンキー:2009/12/29(火) 02:03:00 ID:Su7v68bh
取り上げてる題材が深刻すぎて素直にGJといいがたいがとりあえずGJといわざるを得ない
578名無しさん@ピンキー:2009/12/29(火) 02:38:15 ID:K8RhpEGt
GJです
579名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 12:34:28 ID:JF7U3L7B
GJ そして過疎
580名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 23:41:11 ID:ZtAQq8x1
>>575
いい話だな
581名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 00:58:08 ID:4nBFuoCw
今日も元気に保守
582名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 10:27:08 ID:OVTuQ84r
ベッドでは敏感過ぎる勝気少女
583 ◆/pDb2FqpBw :2010/01/07(木) 19:21:05 ID:hIxFE99Q
バス停から

-*-*


「や、やり方・・・ってそ、そんなの知ってるに決まってるでしょう!」
江見さんが紺色の制服のスカートの裾を翻しながら物凄く不機嫌そうに言う。

「じゃあ、どうやるの」
そう言うと江見さんは黙った。ぐぐうっと小さな手が握り締められている。
最近判ってきた。これは言うのが恥ずかしいとか、言いづらくてといった理由じゃない。
知らないのだ。

「知らないんでしょ。」
「知ってる!知ってます!」
「知らないなら知らないって言えば良いのに。」

「知ってるもの!知ってて言わないだけっ!」

はあ、と溜息を吐く。
瞬間、江見さんの額にビキビキと音を立てるかのように血管が浮く。
あー怒っている怒っている。

国内一の企業体の創立者をおじいさんに持ち、
県下一の大きな家に住んでいる一人娘で、
市内で一番ランクの高いこの学校の生徒で、学内一に可愛くて、学年一の秀才である江見桜さんは「知らない」と云う事が大嫌いだ。
負けず嫌いというよりもどちらかというとそういう生き方だと言っても良いくらいに江見さんは知らないと云う事が嫌いだ。
知らない事を知らないとは決して言わず、次の日には徹底的に調べ尽して来る。
つまりは気位が高いという事なのかも知れないけれど、江見さんは我侭ではないのでつまり何だかその行動はやたらと可愛い。

「君、私の事馬鹿にしてるでしょう。」
フランス人形のように自然な栗色の髪と色素の薄い、艶やかな白い肌がわなわなと震えている。
すっと伸びた眦を向けてきっとこちらを睨んでいる。
584 ◆/pDb2FqpBw :2010/01/07(木) 19:21:38 ID:hIxFE99Q

「してないよ。知らないでしょって言ってるだけ。」
「知ってる!」
「いや、多分知らないはずだよ。」

いや、多分じゃなくて絶対知らない。でなければこんな事は言わない筈だからだ。
4分前、江見さんは商店街のアーケードを帰る道すがら、僕に向かってこう言ったのだ。
「ねえ、私もそろそろフェラチオ位は君にした方が良いのかな。」
満面の笑みで。

江見さんの声は涼やかで生徒会仕込みの凛とした口調は非常に聞き取りやすく、つまりは良く通る。
向かって左側にいた八百善のオジさんはぎょっとした顔でこちらを見、右側にいたブティック山口の店先にいたおばさんは怪訝な顔をしながら振り向いた。
眼の前を歩いていたカップルの髭面の少し怖そうな男の人は振り向いた後に皆がするように江見さんの顔と制服姿を舐め回すように見て隣の彼女に抓られていたし、
斜め前を歩いていた禿頭のおじさんは振り向きこそしなかったけれど「ん!?」と声を上げ、明らかに背中をビクンとさせた。
因みに僕は口に含んでいた飲みかけのコーラを思い切り噴いた。

時計を見る。ここは田舎だからこの時間にはバスは30分に一本位しか来ない。
バスが来るまではあと15分位はあった。
夕暮れがかった日の光が柔らかく斜めに射してきていて、バス停の影が長く延びている。

最初に江見さんと帰ったのは確か、7月位だった。
僕が生徒会に入って2ヶ月位。その頃の僕には江見さんは一つ年上の、手に届かない位に凄い女の人だった。
大人っぽくて一つ一つの仕草が艶やかでカッコよくて、凛としている。

今よりもずっと日は長かったけれど、でもその日もこの位の夕焼けだった。
このバス停で立っていた江見さんを見て、挨拶するべきかしないべきかで固まっていた僕の顔を見て、
「君も、このバス停使ってるんだね。」と江見さんはそう言ったのだ。
585 ◆/pDb2FqpBw :2010/01/07(木) 19:22:38 ID:hIxFE99Q

@@
もしかしたら江見さんなりの好意の示し方なのかもしれない。と思ったのはそれから1ヶ月後だった。
1ヶ月連続で帰り道のバス停で江見さんと会い、
「君も、このバス停使ってるんだね。」と聞かれ続けたからだ。
僕は1ヶ月の間、毎回「そうです。」と答え続け、事の次第を今までの人生の中で一番深く慎重に考えた後に、
競馬をやった事はないけれど恐らく万馬券に全財産を掛けるのと同じような気持ちで
「明日は何時に帰るんですか?」と聞いた。
そして続けて、もし良かったら家の方向も一緒ですし、学校から一緒に帰りませんか。とそう言った。

江見さんが小首を傾げて、暫く考えるような素振りをしたから僕は焦った。
やってしまったかと思ったのだ。
江見さんのその仕草がこれといって冴えた部分のないただの偶々バス停で頻繁に会うというだけの後輩に何だかとても場違いな提案をされたといったように見えたからだ。

江見さんは暫く考えてから僕の顔を見て、
「校門にする?それとも下駄箱にしようか?
下駄箱にする位ならクラスまで迎えに行った方がいいかな?待ち合わせはどれが良いと思う?」
と、そう言ってきた。
「下駄箱やクラスは恥ずかしいので校門で待ち合わせが良いです。」
とそう言うと、江見さんはむっといつもリップクリームを塗りたてのようにつやつやとした唇を突き出して、
「そんな事は判ってる。じゃあ校門にしよう。」
と言った。

そして次の日、校門からの道すがら、江見さんはクラスや下駄箱で待ち合わせをした場合にいかに男の子が恥ずかしいと考えるかと云う事を小説や映画なんかを引き合いに出しながら滔々と熱く語り、その勢いはバス停でもバスの中でも留まる事を知らず、
最後に江見さんはバスを降りる僕に向かって
「・・・という事を私はちゃんと知っているからね。じゃあまた明日。」
と締め括った。
586 ◆/pDb2FqpBw :2010/01/07(木) 19:23:25 ID:hIxFE99Q

@@
僕と江見さんが付き合っているのか。というとこれは難しい。
はっきりと付き合っているとは言い切れない。
つまり僕は江見さんの事がとても好きだけれども好きだと言った事はなく。
江見さんが僕の事をどう思っているのかもはっきりと聞いた事はない。

でも毎日一緒に帰るし、たまに電話もするし、休日に遊んだりもする。
そして一度だけキスをした事もある。
つい最近の事だ。1週間前、土曜日に一緒に遊園地に行った時に
最後に乗った観覧車の一番てっぺんで、外を見ている江見さんの横顔が本当に綺麗で、
思わず僕からそうしてしまったのだ。
ゆっくりと顔を近づけたから、避けようと思えば避けれたと思う。
でも僕の顔が江見さんに近づいていって、ついにはちょん、と唇同士がくっつくまで江見さんは僕の顔を見つめ続け、
そしてちょん、と一瞬だけ唇がくっ付いた後、僕は恥ずかしさで俯いてしまったから江見さんがどうしていたかは判らない。

でも帰り道で江見さんはひたすら僕に恋愛映画とキスとその結果としての結末の関連性を説き、
名作ほど最初にキスをした相手と結ばれる可能性が高いと言った。
僕はそれが江見さんなりの照れ隠しのように思った。
そして何故江見さんがそんな事を知っているのかどうかについては深く考えると顔がにやけてしまいそうなので考えない事にした。
587 ◆/pDb2FqpBw :2010/01/07(木) 19:23:53 ID:hIxFE99Q
@@

「じゃあ、今ここでしてくれる?」
夕暮れのバス停で僕の隣に立つ江見さんにそう言うと、
江見さんは顔を真っ赤にさせて眦を上げてきっと僕を見上げてからぷいと顔を逸らした。
「君が意地悪を言うから今日はしない。でも明日ならしてあげてもいいけどね。」
つんと顎を上げる。背筋がぴっと伸びているからそうは見えないけれど、
こうして並ぶと江見さんは僕の顎の辺りまでしか身長がない。
多分150Cmかそれ位だ。

「そっか、でも寝転がったり座ったりする場所がないと難しくないかな。」
そう言うと江見さんはひゅんと音を立てるように僕の方に顔を回してきた。
目が猫みたいに爛々と光っている。
江見さんは学校では表情をあまり出さない方だけれど実はよくよく見ると結構表情豊かだ。
今のこれは引っかかったな。という顔だ。

「それは・・・あそこですればいいよ。」
と言ってバス停横のベンチを指差す。このバス停は大通りから一本逸れた所にあるのだけれど、ベンチは人通りの多い大通りの方を向いている。
田舎とはいってもこの時間帯なら人通りは途絶えない。

「寝てするよりも座ってする方が私は得意。」
江見さんはうんうんと頷きながらそう言う。
588 ◆/pDb2FqpBw :2010/01/07(木) 19:24:15 ID:hIxFE99Q

「でも、少し恥ずかしくないかな。」
きゅん、と音を立てるように江見さんの視線が僕を射す。
長くて綺麗な睫の奥で虹彩の綺麗な瞳がくるんと回って江見さんの口が開く
「確かに少し恥ずかしいかもしれないけど。でも・・・」
一拍置かれる。
考えてる考えてる。
恐らく今江見さんの頭の中では僕と一緒に学校から帰り始めた頃の事が回っているに違いない。
多分僕がクラスまで迎えに行くのが恥ずかしい、と言った件について。

「・・・私はそんなに恥ずかしいと思わないから。」
「そ、そうなんだ。」
「・・・いや、恥ずかしいのは恥ずかしいけど。そんなに気にする必要はないと思う。」

「そっかあ。」
と僕は答える。

アスファルトの向こうからバスがゆっくりとやってきて、タイヤの音を鳴らしながら僕達の前に止まる。
プシュー、と空気の漏れる音を出しながらバスのドアが開く。

僕と江見さんはバスに乗る。
589 ◆/pDb2FqpBw :2010/01/07(木) 19:24:38 ID:hIxFE99Q

@@

5人しか乗っていない、がらんとしたバスの中で江見さんが窓側、僕が通路側に隣り合って座る。
このバスだと僕の方が早く降りる。
ちなみに江見さんは1年生の時は車で送り迎えをして貰っていたそうで、
バス通学に変えたのは今年の7月からだそうだ。

江見さんの耳元に口を寄せる。江見さんがん?と言う感じに顔を寄せてくる。

「・・・さっきのだけど、僕もした方が良いかな。」
江見さんの瞳がくるんくるんと回る。
つん、と細い顎を突き出すようにして、そこに左手の人差し指を縦にして当てる。
ただ今考えてますのポーズだ。

それから、江見さんは江見さんにしては珍しく、少しだけ首元と頬を紅くして言いよどんだ。
「まずは私の方からしてあげたいんだ。この前は、君からだったし。」
だから、今度して貰っても良いけど明日は私から。と江見さんは言った。

僕はとても嬉しかった。江見さんのこの前は、が差すものが何だか判ったからだ。

「でもやっぱり外だと、恥ずかしいかもね。」
ヒントに近いかもしれない。やりすぎかも。
江見さんがん?といった感じで今考えてますのポーズに戻る。
江見さんの向こうの窓の外で景色が後ろに向かって飛んでいく。
夕日が江見さんの綺麗な長い髪の毛の上で光る。
590 ◆/pDb2FqpBw :2010/01/07(木) 19:25:23 ID:hIxFE99Q

「・・・じゃあ、・・・」
言いかけてつっかえる江見さんに
「僕も良く判らないけど部屋、とか。」
そう言うと、僕の顔をちら、と見てくる。
「落ち着いた所の方が良いと思う。」

たっぷり5秒は間を置いてから江見さんはいかにも私の考えていたとおり、といった感じで頷いた。
「そうだね。焦ってするものではないし、私も部屋の中の方が良いかもとは思ってたんだ。」
江見さんは何度も頷く。
そして、じゃあ明日、夕食を食べにくれば良い。と僕に向かって言った。
江見さんの信じられない位に大きな家には一度行った事がある。
本当にいるかどうかは判らないけれど執事がいるような家だ。
ちなみに近くに牧場があってそこには羊がいる。牛もいる。
江見さんのお父さんはいかにも大人物、という貫禄たっぷりの人で、
しかしやっぱり江見さんのお父さんでその表情から僕に対する隠そうとしても隠し切れないとてつもない警戒心が丸見えで
(「お友達。そうか、そうか。お友達。そうか。いや、桜が男の子を連れてくるなんて初めてで、私は嬉しいんだよははははは。」)、
僕は江見さんと同じようにそのお父さんの事も一発で好きになった。
591 ◆/pDb2FqpBw :2010/01/07(木) 19:26:18 ID:hIxFE99Q

僕の降りるバス停に向かってバスが減速する。
江見さんの方を見るとつい、と視線を逸らす。
いつも江見さんは別れ際に寂しそうな顔をしてくれる。
そしてそれを見せないように顔を背けて、座ったまま「じゃあね。」と言う。

でも今日は違った。江見さんは僕と一緒に立ち上がった。
そして降り口の所まで一緒に来て、そっと僕の耳に口を寄せてきた。
「フェラチオ、楽しみにしてていいからね。」

シルバーシートに座っている90歳位のおじいさんが不思議そうに僕達を見た。
おっと、と江見さんが口を抑える。
嬉しそうに笑う。
ばいばい、と手を振ってくる。

地面に降りてから僕はバスに向かって向き直る。
僕も凄く楽しみにしてるよ。という風に笑って頷く。

そして今日の夜は絶対に江見さんからの電話には出ない事を心に決めてから、
僕は動き出したバスの中で勝ち誇った表情で僕を見ている江見さんに向かって手を振った。

電話で言い訳も出来ずに困り果てた明日の江見さんの表情が楽しみだ。と考えながら僕は家に帰る。
僕には少し計画があって、さんざんからかった後で、僕は江見さんの事を桜さんと呼びたいと考えている事を伝えるつもりだ。

僕の計算なら江見さんは小首を傾げるかもしれないけれど、今考えてますのポーズはしないでくれると思う。

きっと思い切りもったいぶった後で許してくれるんじゃないかなと思っている。


592 ◆/pDb2FqpBw :2010/01/07(木) 19:32:54 ID:hIxFE99Q
-*-*

以上です。
では。
593名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 21:10:39 ID:VFapGP4X
一番槍GJ!

なかなか無いタイプの展開ですね
続きはあるのでしょうか
594名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 21:25:07 ID:MKdUDWDO
GJ!

続きまってる
595名無しさん@ピンキー:2010/01/08(金) 12:51:54 ID:t01YhPx+
>>592
是非!続編をお願いしますね
とっても良かったです
596名無しさん@ピンキー:2010/01/09(土) 07:20:50 ID:8xd/jhq0
>>583-592いいねー
597名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 13:48:52 ID:mJWr4FlV
亀レスだが
>>272
泣かせてもらった。っていうかどっぷり読み浸かっちまったじゃねーか
課題やる時間を返せw
598ええと:2010/01/12(火) 00:57:05 ID:uMWNxo2Z
昔読んだエロ漫画の脳内再現ssでもいいですか?
599名無しさん@ピンキー:2010/01/13(水) 23:14:27 ID:g5tITIlN
無問題
600ええと:2010/01/14(木) 23:45:52 ID:uhbt643f
>599
ありがとうございます。

601ええと:2010/01/14(木) 23:54:47 ID:uhbt643f
いつからか、気づけばそのドラゴンは国の脅威となっていた。
体長は南の山をはるかに超え、吹く炎は北の湖を干上がらせる。
気まぐれで動かす体に、国民の誰彼ともなく犠牲になる。
このままでは国が滅びるのも時間の問題だった。


「どこから来たのだ……あの忌まわしい魔物は」
王の苦悩は深く、もはや取るべき手段は一つしかなかった。

「お触れを……出せ」
王はついにそれを決意する。
出来れば選びたくなかった道。
たった一つの宝物を手放す決断。
「国を滅びすドラゴンを、倒したものに――」
けれそその瞳はもう迷ってはいない。
「姫を与える、と――」


602ええと2:2010/01/15(金) 00:01:26 ID:uhbt643f
姫の齢は15。
幼少のころより、その美貌が際立っていた。
麗しいブロンドに、整った顔立ち。
若くして亡くなったお妃と瓜二つとの評判だ。
数少ない国中の猛者はすぐにその気になった。
我こそはと、ドラゴンに立ち向かう。
けれど結果は思わしくなかった。
あるものはその炎に焼かれ、あるものは胃の腑に収められる。
姫をその手に入れられるものは、なかなか現れることはない。
王は、半ば喜び落胆し、姫は無表情に城下を眺める。
そこにはかつてののどかな風景はなかった。荒れ果てた土地。
ただそれだけが広がる。
603ええと2:2010/01/15(金) 00:06:40 ID:k4AWO0/F
けれどついに現れた。
憎きドラゴンを倒す猛者が。
「王様、約束通りおいらに姫を与えてください」
どこの馬の骨かとわからない猛者は、体など一度も洗ったことのない不潔な男だった。
姫はその男を一目見るなり絶望し、病に伏す。
王は、そんな姫を愛しく思うが、一度出したお触れをなかったことには出来ない。
仕方なく、姫は男と城を出る。
――それが忌まわしい運命の始まり。
604ええと3:2010/01/15(金) 00:13:41 ID:k4AWO0/F
「さあ、姫様、これで今日からおまえさんはおいらのものだ」
最初の夜、姫が連れて行かれたのは、隣の国との境目の、藪の中だった。
「こちとら、何年もドラゴンを追ってたんだ」
男はにやりといやらしい表情を浮かべる。
「この日のためにな……」
そして小さくつぶやく。
「容赦はしないぜ」
運命に逆らうつもりのなかった姫は、そこで初めて小さく悲鳴を上げた。


「ほら、どうした?」
――小一時間後、男は満足そうに笑う。
「姫さん?」
そこは先ほどと変わらぬ藪の中。
ただし、姫は、すでに破瓜の痛みを味わっていた。
「どんな高貴なお姫様も、酒場の女とおんなじだな」
男は満足げに笑う。
「たいしていい味ではないわ。これなら酒場の安女のほうが扱いやすい分、ずっといい」


605ええと3:2010/01/15(金) 00:18:53 ID:k4AWO0/F
「ふ、ふざけるな」
姫は初めて言葉を漏らした。
一糸まとわぬ裸で。
その胸は、まだふくらみが足らず、恥部の毛も生えそろってはないかと思う未成熟な体。
先ほど、生まれて初めて男を受け入れたとは思えぬ、初々しさがあふれている。
姫は、気丈な表情を変えずに言う。
男はひゅう、と口笛を吹く。
姫は男に向かってこう言った。
「わらわは、誰ぞ?」
男の股間は再び盛り上がる。
「わらわは、姫ぞ。その辺の女と一緒にするでない」
男は笑った。
「姫さん、あんた、わかっていないよ」



606ええと4:2010/01/15(金) 00:20:22 ID:k4AWO0/F
「姫でもだれでも、濡れる場所は一緒だ」
「一緒?」

607春菜5:2010/01/15(金) 01:38:21 ID:k4AWO0/F
男は姫の未成熟な胸をわしづかみにした。
「痛……」
姫の、小さな悲鳴が漏れる。今までそんな使いは受けたことがないのだから無理はない。
「ふん」
男は、垢のたまった爪で姫の乳首をいじりだす。
「え……や……や」
姫は、電流に似た快感を初めて味わう。
「ほう、感じるのか」
両手でもみしだく。
「く……」
わずかながら腰をくねらせた。
「これは見込みがあるのかも知れなないな」
男は不敵に笑った。

つぎの日、男は藪の中の木に姫の手足を縛ったまま、出かけた。
「ど、どうする気だ?」
初めて姫が不安げな瞳を見せた。
「どうもしない。このまま放っておくだけだ」
姫は昨日から服を着せてもらっていない。一糸まとわぬまぶしい裸体を藪の中で晒している。
「でも、もしかして、魔物や獣が来たら……」
「そのときは、姫さん、あんたの寿命が尽きたと思って諦めな」
「そんな……」
「おまえさんは、商品として、オイらに与えられたんだ。どうしようとおいらの勝手だ」
そう言い捨てて、男は立ち去った。残された姫は、両手両足を、開いたままの恰好で、藪に捨てられた。
――乳房と股間にたっぷりと蜜を塗られて。

「や……やめて」
初めに来たのは、狸の親子だった。
姫に気づき、はじめはおびえる様子を見せたが蜜の匂いに気づき、近づいてきた。
姫の手足は厳重に縛られている。
「や……あ、はう……く、ふう」
秘所に下を這わせる小動物に姫の声は漏れる。
「や、やめて…」
ちろちろ……子たぬきの下は止まらない。
乳首は右のほうが敏感なようだ。こしが、びく、びく、と動く。
「…あああああああ」
突然、絶頂に達したのか、背中をのけぞらして、姫がぐったりとする。と、そこへ、どこから見ていたのか、男がにやにやした顔で現れる。
「姫さん」
「……おまえ、見ていたのか……まさか」
「姫さん、あんな獣に、いっちまいましたね。ははっ。これはお笑いだ。高貴な生まれの姫様が、あんな獣に」
「……」
羞恥で黙りこむ姫に男は、さらに蜜を塗る。
「ひゃ……な、何を?」
「心配しなさんな。乳首はまだ立ってますね……おや、ここも濡れてる。ものたりないんじゃないですか」

608名無しさん@ピンキー:2010/01/15(金) 15:06:39 ID:WB4m6p1E
紫炎
609名無しさん@ピンキー:2010/01/16(土) 13:26:57 ID:PF8QVDcO
610名無しさん@ピンキー:2010/01/16(土) 19:54:48 ID:TfTXqQgI
611ええと:2010/01/16(土) 20:25:56 ID:VREnrREU
あれ。
反応あり、なのかな?
必要なら続き書きますけど、初ssなんであまりエロくないかと。
希望のシチュあればどうぞ。
612名無しさん@ピンキー:2010/01/17(日) 01:30:23 ID:c8e2NGRq
>>611
書きたいように書いてくれ。
613名無しさん@ピンキー:2010/01/20(水) 22:53:44 ID:Z7bwhNPy
burn
紫炎
614ええと6:2010/01/24(日) 01:49:52 ID:AbKWKTeB
「な、なにをするのじゃ……」
姫の目はすでに涙で濡れている。
「濡らす場所が違いますよ」
男は容赦なく笑い、蜂蜜を体中に塗りたくる。その間、問わず語りに語る。
「初めての男がわしのような不潔な男で、初めていかされたのがあんな獣で」
「……」
「それでも姫さんはまだ自分の事を他の女と違うといいますか」
返事は早かった。反射的に姫はうなずいた。そういう教育しか受けてこなかったのだ。
「……そうですか」
男の眼が暗く染まる。
「なら」
立ち上がったその手には見慣れない道具が握られていた。
「わしも本気を出しますぞい」
縄になど縛られたことのない、姫の手首には生傷が既にできていた。痛みにいまでも涙が出る。
でも、それすらまだ、ましだと思える――地獄の初まりだった。
615ええと7:2010/01/24(日) 02:22:17 ID:AbKWKTeB
「姫さん」
男は箱のようなものから、黒い塊を取り出した。
「わしのような中年の男が、なんでドラゴンを倒せたと思う?」
「え?」
姫は嫌な予感がして目をあける。
「こいつの……おかげさ」
黒塊はねちゃねちゃとした「何か」に形を変えていた。男はそれを姫の体の上に乗せる。
「……いや」
初めてそんな声が出た。
「おや、杯めて弱音を吐きましたね」
「……」
「またダンマリですか? 泣いて、やめて下さいと言えば、こいつは箱に戻りますよ」
ぬちゃ。
姫の腹の上で、そいつはどこに進もうか悩んでる。
丸い蛇。
おかしな言い方だが、それがぴったりくる。
黒くて、丸い蛇。
それも、形を自由自在に変えられる。
「……ひ!」
「時間切れだ」
姫が懇願する前に、それは姫の乳房に狙いを定めた。ロープのように細長く形を変えて、両の乳房をギリギリと締め付ける。
「痛い……」
涙声でつぶやいた。
「良くなりますよ」
男は少し離れた所から見守っている。片手で自分自身のそれをしごきながら。
「お願い……許して」
「いやですよ」
そっけなく断られて、姫はついに頬に涙を流す。
「痛い……」
「痛いだけじゃないです」
男の息遣いは荒い。
「腰を浮かせてみなさい。もう少し楽になりますぜ」
姫は素直に従う。黒い蛇はすかさず陰部へ移動した。
姫の秘所に狙いを定めてつつきだす。あらかじめ塗ってあった蜂蜜が甘く粘る。

616名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 16:32:21 ID:/3W4Up+y
書いてくれるのは嬉しいが
ある程度書きためて投下の前後に挨拶(投下します、以上etc)してくれるといいかも
617名無しさん@ピンキー:2010/02/01(月) 18:00:08 ID:EZc6IDWd
マダァー? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
618名無しさん@ピンキー:2010/02/12(金) 22:01:20 ID:yit0uyVk
ageないけどほす
619名無しさん@ピンキー:2010/02/18(木) 08:13:27 ID:1SXNXFMV
待ち。
620名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 03:24:11 ID:qDGixq3u
保守あげ
621名無しさん@ピンキー:2010/03/01(月) 15:36:13 ID:PC30MYRl
保守
622名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 06:54:02 ID:eyZdMuEQ
まだ待ち。
623名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 17:50:57 ID:ROaSybg5
保守
624名無しさん@ピンキー:2010/03/31(水) 16:04:31 ID:5WvgfM4t
保守
625名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 22:27:13 ID:4Z9IqbCx
捕手
626名無しさん@ピンキー:2010/04/16(金) 02:07:36 ID:B23PwTjO
不器用な彼女の生還ルートを希望しつつ保守
627名無しさん@ピンキー:2010/04/18(日) 13:28:18 ID:EtgM7mEl
それは俺も読みたい
628名無しさん@ピンキー:2010/04/29(木) 01:30:22 ID:gJH+q6OE
頭を撫でるのがスイッチな強気っ子
629名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 23:23:10 ID:lRcF2Jez
いいと思います
630名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 10:01:25 ID:G63QVM7K
保守ついでに投下させていただきますね。
631おとなりのお嬢様:2010/05/20(木) 10:03:45 ID:G63QVM7K
「小玉ヶ丘高等学校から来た神尾凛と申します。よろしくお願い致しますわ」
クラスの大半の男はその姿に見惚れ、
クラスの大半の女はその姿に憧れと嫉妬の眼差しを向けている。
担任の岡田の話によると、この転校生はとある会社の社長令嬢らしい。
よく漫画やアニメで同じような場面を見て"こんな展開あるわけねえだろ"などと思ったことがあるが、
実際ありえない話でもなかったんだな……。
そんな風に思いながら俺は再び転校生を見る。
ストレートのロングヘアー、前髪は程よく整っている。
髪の色は黒。まあ日本人なのだから当たり前といえば当たり前か。
ちょっとつり気味の凛々しい目、シミ一つない白い肌。引き締まった唇。
なるほど、野郎共の瞳がハートマークになるのも頷ける。
点数を付けるなら満点をくれてやってもいい。
「えーと、席は……確かそこは空席だったよな?」
そう言って岡田が俺の隣の席を指す。
「ああはい、そうです」
俺が返事をすると、岡田は転校生に隣の席に座るよう指示をした。
転校生のお嬢様は、隣の席までゆっくりと歩きそのまま椅子を引いて座った。
晴れてお嬢様の隣同士となった俺に、クラス中の男子からの視線が突き刺さる。
"呪われろ"、"クソ虫野郎"、"ゴミクズ"、挙句の果てには"死にさらせ"という呟きまで聞こえた。
俺がお前らに何をしたというんだ。
まあ、あんな嫉妬丸出しの呟きなんて気にしない。
俺は隣のお嬢様に声を掛ける。
632おとなりのお嬢様:2010/05/20(木) 10:05:23 ID:G63QVM7K
「あ、俺は野上雅也っていうんだ、よろしく」
一応、今日から同じクラスとなるんだ。
仲良くしておいて損はない。
しかし、お嬢様はそんな俺をチラリと見てすぐに前を向いた。
シカトですか、そうですか。
お嬢様にとって俺は道に転がってる石のような存在なんでしょうね。
転向早々この俺に喧嘩を売ってるわけですね。ちくしょうめ。
辺りから"プギャー!"とか"ざまぁwww"といった俺をあざ笑う声が聞こえてくる。
空中に吊るしてやろうか。

―キーンコーンカーンコーン―

お決まりのチャイムが鳴り、1時限目の授業が始まる。
担当の教師が来て、教科書を開くよう指示をする。
―いかんいかん。
こんな高飛車な女やバカ丸出しの罵倒に構ってる場合じゃない。
俺は机から教科書を取り出し、指示されたページを開く。
頬杖をつきながら教科書を見ていると、何やら隣から声が聞こえてきた。
「ちょっとあなた。私この学校の教科書を持ってないの、見せていただけないかしら?」
うん、きっと気のせいだ。
俺の隣の席には誰も居ない。だって空席だもの。
断固無視。
「ちょっと、聞いてるんですの!?」
はいはい無視。ハナクソほじっちゃお。
633おとなりのお嬢様:2010/05/20(木) 10:06:36 ID:G63QVM7K
「……あなた、もしかして耳が遠いのかしら?」
まったく、うるさい女だ。自分からシカトしてきた癖に、自分がされるとこれか。
さっきのシカトされた恨みを込めながら、俺は思いっきり皮肉を込めて言ってやった。
「おや? 私の名前は"あなた"じゃありませんよ。さっき自己紹介しませんでしたっけ?」
語尾に(笑)を付けるかの如く馬鹿にした口調で、さらに続けてやった。
「IQのお高いお嬢様は、自己紹介してきたお相手のお名前も覚えられないのでございますか?
 それとも、お耳がお遠くなっているのでございましょうか? それならば、良い耳鼻科をご案内致しますよ」
と一気に捲くし立てて、俺は視線を教科書に戻した。
確認したわけじゃないが、きっと顔を真っ赤にして震えてるに違いない。
ああいい気分だ。爽快だ。人をコケにするからこうなるんだ。因果応報ってやつだ。
「……それは大変失礼致しましたわ。では改めて野上さん、教科書を見せていただけませんこと?」
若干声が上ずっているように聞こえた。オホホホホ。くやしいのうくやしいのう。
まあ、あまり虐めて泣かれでもしたら厄介だ。これくらいにしてやろう。
俺は教科書をお嬢様の見える位置に移動させた。
「どうも」
そう言ってお嬢様は俺の教科書を覗き込んだ。
そして俺の教科書を見た瞬間、お嬢様は"ぷっ"と笑いを堪えるような声を上げる。
一体どうしたというのだろうか。俺は教科書を隅から隅まで見回した。
ふと歴史の人物画を見ると見事にラクガキされた跡があった。
「……あなた、こんなものを教科書に書いてて恥ずかしくないんですの?」
お嬢様は明らかに見下した目で俺を見ている。
さっきの笑い声はラクガキに笑ったんじゃなく、ラクガキをした俺を笑ったに違いない。
しかしこれは誤解だ。これは俺がやったのではない。
いくら俺でも高校生にもなって教科書の人物画にラクガキする程子供じゃない。
おそらく、弟が俺の教科書を勝手に覗いてラクガキしたんだろう。
しかし、"これは弟がやったんだ"なんて言っても言い訳がましい。
ああああ、どうしたものか。俺顔真っ赤。
634おとなりのお嬢様:2010/05/20(木) 10:07:31 ID:G63QVM7K
「あら、ここにも落書きがありますわね。貴方の知能指数の低さが伺えますわ」
と言いながら鼻で息をしながら俺を見下した表情で見つめてきた。
コノ・ペチャパイ・ヤロウ。ドウシテ・クレ・ヨウカン。
今まで殴りたくなった男や実際殴った男は何人もいたが、殴りたくなった女はコイツが始めてだ。
もしこいつが男だったら、今頃マウントポジションでフルボッコにしているだろう。
しかし、悲しいことにこいつは女なのだ。
さすがに女をフルボッコにしたら、クラス中から非難を浴びるだろう。
そして、変態リョナDV男とか卒業するまで言われ続け、俺の学園生活は終了を迎えることになる。
ここは男らしくグっと堪えなければ。
「実は俺、こういう人物像とか人物画を見ると、つい落書きしちゃう病気でね。仕方がないんだよ、うん」
「あらまあ、そうでしたの? あなたに相応しい病気ですわね。早く治るといいですわねぇ」
「ははは、なるべく早く治るように頑張るよ!」
ちなみに脳内では既に1000回くらいこの女を殴っている。
『もういいよ、現実でも殴っちまえ。』
そう囁くのは本能むき出しの俺。
『女を殴るのはやばいだろ、常識的に考えて……。脳内だけにしておけ、な?』
そう囁くのは冷静沈着な俺。
『ここは放課後に弁当の食べ残しとゴミを、こいつの机の中に入れて復讐するというのはどうか』
そう囁くのはどこか逝っちゃってる俺。
まあコイツの意見を選ぶと大抵ロクな結果にならんので無視する。
とりあえず今は冷静沈着な俺の意見に従っておこう。うんそうだ、それがいい。
「治療の方頑張ってくださいませ。悪化したら大変ですわ」
ははは、殴りてぇ……。
しかし、待て俺。まあ待て。
635おとなりのお嬢様:2010/05/20(木) 10:08:33 ID:G63QVM7K
よくよく考えればこういうお嬢様タイプと仲良くなって損はない。
金持ちは傲慢で嫌味な分、心が広いところがある。
事実、小学生の頃に金田というボンボンがいたが、そいつは嫌味こそ多かったが心は広かった。
奴の家に行けば高級な菓子などが食べられたし、古くなったオモチャをくれることもあったし、
奴のオモチャを壊してしまった時は「どうせ新しいオモチャ貰えるからいいよ」とあっさり許してもらった。
このお嬢さんもきっとこういうタイプに違いない。
ならば傲慢な態度など気にせずに仲良くなっておくべきだろう。
うまくすれば金目の物を貰えるかもしれない。
「おい野上! 聞いているのか!」
「……うぇあ!? な、なんすか先生」
脳内世界から、急に現実世界に戻された俺は間抜けな返事をしてしまう。
どうやら先生が俺に何か問題を出していたようだが、全く聞いていなかった。
やばい、どうしよう。俺赤っ恥。
「先生、私が代わりにお答え致しますわ」
お嬢様はそう言って席を立ち、俺の代わりに先生の問題に答えた。
まるで教科書に載っている模範解答のような完璧な答えを出し、先生を唖然とさせていた。
お見事でございますなぁ、お嬢様。
更にクラスメイトの好感度が上がったようでございますなぁ。
ただ、俺の好感度は急落しているようですなぁ。俺涙目ですなぁ。
"かっこわるw"とか"あいつダサくない?w"とか俺を失笑する声が聞こえてくるのは気のせいと思いたいですなぁ。
「あの、先生……。俺ちょっとお腹が痛いんで便所いってきます……」
そう言って俺は便所に行くふりをして屋上へ向かった。
636おとなりのお嬢様:2010/05/20(木) 10:09:26 ID:G63QVM7K
「うおー!うがー!ぬあー!!」
屋上のど真ん中で一人、頭を抱えてゴロゴロして悶える俺。
傍から見ればキモイことこの上ないだろう。
人生でこんなに腹が立ったのは生まれて初めてだ。屈辱だ。ちくしょう。
ストレス発散に屋上の柵をガンガン蹴って殴る。脚と拳が痛くなるだけだった。ちくしょう。
たまたま見回りをしていた先生に見つかって、こっぴどく叱られた。ちくしょう。
たった一日で、ただでさえ低かった俺の評価がさらに下がってしまった。俺さらに涙目。
5時限目の授業終わり、HRの前の休み時間では、お嬢様の周りにすっかり人だかりができていた。
無論、隣の席に座っている俺は、石ころのように無視されている。
たった一人、デブスの女が話しかけてきたが、"邪魔だから消えろ"みたいなことを言ってきた。
全力で殴りたかったが、こいつも一応女だったので我慢し、
デブスの席の椅子と机を接着剤で固定するという地味な復讐をして鬱憤を晴らした。
ついでに机の中に食べ残しが入ったコンビニ弁当を入れておいた。

―キーンコーンカーンコーン―

そして放課後。俺にとって悪夢のような1日は終わりを告げた。
もう今日は何もしたくない気分であった。
早く帰ろう。おうちに帰ろう。おいしいおやつを食べて、
ホカホカご飯を食べて、暖かい布団で眠ろう。そして悪夢のような1日にバイバイしよう。
颯爽と昇降口を出て、校門へと足を運んだ。
そして、校門を通過したところで、何者かとぶつかった。
「きゃ!」
幸い、体格が良い俺は怪我ひとつせずにすんだが、
代わりにぶつかった相手が転倒して尻餅をついたようだ。
まあ別にどうでもいい。適当に謝って早く帰ろう。
「ごめん、すまん、失礼。それじゃ!」
あれ、さっきの人、どこかで見た気がするなぁ?
いや、きっと気のせいだ。さあ早く帰ろう。
637おとなりのお嬢様:2010/05/20(木) 10:10:36 ID:G63QVM7K
「ちょっとお待ちなさい! それで謝ったつもりですの!?」
しかし、手を掴まれて強引に静止させられた。
気のせいと思いたかったが、やはり相手はあのお嬢様だった。
何この少女漫画みたいな展開。ねーよ。
「……あら、あなたでしたの。凄い偶然ですわね」
お嬢様が"お前、わざとぶつかっただろ"と言いたげな視線を送ってきた。
本当に偶然ぶつかったのだが、信じてもらえそうにもない。
何とか上手くやり過ごそうと考えていると、
お嬢様のスカートで何かがもぞもぞと動いているのを発見する。
「……お前、スカートになんかついてるぞ」
「あら、一体何がついていると言うのかしら?」
お嬢様は鼻で笑い、スカートを見ようともしなかった。
「いやいや見ろよマジで。イモ虫みたいのがついてんだけど」
「む……し……?」
ピクリと反応させると、お嬢様はおそるおそる自分のスカートを見た。
そして小さな尺取虫がついてるのを確認すると、ピタリと動きを停止させた。
お嬢様の顔が青ざめていく。
「ひっ……」
そして体をプルプルと小刻みに震わせて、大きな悲鳴を上げた。
「い、いやぁぁあああああ!」
「ちょ、どうし」
「虫! 虫嫌い! 取って、取ってぇぇぇえええ!」
尋常じゃない取り乱し方に、俺は思わず後ずさりする。
お嬢様は思い切り体を動かしているが、尺取虫はうんともすんとも言わない様子で
よっこらせっくすとスカートの道をよじ登っていた。
638おとなりのお嬢様:2010/05/20(木) 10:12:27 ID:G63QVM7K
「な、何をしてるんですの! 早く、早く取って下さい! お願い! やぁああ!」
半ば懇願するように俺の手を取ってスカートまで持っていく。
「ちょ、おま! 落ち着けって!」
「やぁああ! 早く! 早く取って! お願い、取ってぇ!」 
お嬢様は、俺の手を取りながらスカートを捲り上げた。
パンチラとかそういうレベルではない。丸見えだった。
ていうか何をしてくださってるんですかこの人。
「いやいやいや! 取るから落ち着け! お前自分が何してるかわかって」
「お、お願い……早くして……早くぅ……」
だめだこいつ……。早いところこの尺取虫を取っ払おう。
スカートの端にくっついていた尺取虫をつまんで、草むらに捨てる。
たったこれだけのことで、スカート捲り上げるか? おかしいだろ……。
「おい、虫取れたぞ。早くスカートを元に戻せよ!」
さすがにお嬢様のパンツをいつまでも見ているわけにもいかずに、
視線を微妙に逸らしながら言った。
しかし、このシーンを客観的に見るとスカートを捲り上げている
パンツ丸見えのお嬢様を俺がセクハラしているようにしか見えないだろう。
「おい! 一体どうし……た……」
そして、お嬢様の悲鳴を聞いて駆けつけた教師に都合よく今のシーンを目撃される。
俺、どうみても変態です。本当にありがとうございました。
「……さて、野上。先生と一緒に生徒指導室まで行こうか?」
「全力でお断りします」
キリっとした瞳で断る。俺は何も悪くない。
639おとなりのお嬢様:2010/05/20(木) 10:13:32 ID:G63QVM7K
「なぁに、遠慮するな! 夜まで徹底的に話し合おう! お前の父さん母さんを交えて!」
「トウサンとカアサン、旅行で出かけているヨ」
「はっはっは!嘘はいかんなぁ! さあ、行こうか! ご両親に迷惑かけちゃいかんぞぉ!」
「嫌だぁぁあああー―――! 行きたくないー――――ッ!!」
ずるずると教師に引きずられ、そのまま校舎の方へ強制的に移動させられる。
お嬢様の周りには人だかりが出来ていた。何やら慰めと怒りの声が聞こえてきた。
どうやら俺は変態のレッテルが貼られることになるようだ。
ああ、終わった。俺の高校生活終わった。ていうか俺何もしてないんですが。
意気消沈しながら、地獄の裁判所へ送られようとしている所に、救いの手が伸びた。
「ま、待って下さい先生!野上さんは、その……」
人ゴミを掻き分けて、お嬢様が駆け寄ってくる。
「ん、どうした?」
「あ、あの、野上さんはただ……」
お嬢様は説明しにくそうにオロオロしていた。
自分からパンツ見せたんだから、説明しにくいのだろう。
ていうか、説明なんてどうでもいいから、早いところ誤解をといてくれ。
「わ、わたしのスカートについてた虫を取ろうとしただけで、やましいことは、何も……」
「そ、そうなのか?」
「は、はい……」
お嬢様は顔を赤らめながら、返事をした。
そんな風にもじもじするくらいなら、最初から誤解を招くようなことするな……。
「そうか、俺はてっきりこいつがセクハラでもしたのかと思ってな!」
「先生、疑いが晴れたんなら、解放ほしいんですが」
「おっとっと!いやあ、誤解してすまなかったな!」
640おとなりのお嬢様:2010/05/20(木) 10:14:55 ID:G63QVM7K
すまなかったじゃねーよ、人の話を聞かずに変態扱いしやがって。
このことはいつかPTAにチクってやるからな、ダメ教師め。
教師は満足そうに校舎へと戻り、周りでヒソヒソ話をしていた奴らは、
バツが悪そうにその場を離れていった。この野次馬共め。
「あ、あの……大丈夫かしら?」
「大丈夫じゃねーよ! お前のせいで俺の評価はズタボロだ! どうしてくれる!」
そう、いくらこいつが誤解を解いたからといって、俺の評価が良くなるわけじゃない。
もはや全校生徒にとって、俺=変態というのは公式設定になっているだろう。
彼女ができないのは当然、友達も離れていくかもしれない。
「う……。も、申し訳ありませんでしたわ……」
「謝ってすむ問題か、ちくしょう!」
「むぅ……じゃ、じゃあどうすればいいんですの?」
「責任をとれ、責任を! 慰謝料とか、金とか、あるだろ、ほら! 損害賠償とか!」
金持ちから金を要求する。これは当然の権利だ。さあよこせ。
「……弱みに付け込んで、金を要求するなんて最低ですわ」
「うっ!」
あ、あれ? 俺別に悪いこと言ってないよね?
なのになんでコイツの言ってることが正しく聞こえるんだろう。
「じゃあ、何もないっていうわけ!? 俺はもはや、彼女はおろか、友達すら……」
「ああもう! それじゃあ私があなたの恋人になりますわ!」
641おとなりのお嬢様:2010/05/20(木) 10:17:21 ID:G63QVM7K
……はい? あれ、ちょ、何言ってるのこの人、大丈夫?
「ちょ、ちょっと待て! 何でそうなる!」
「せ、責任を取れと言ったのはあなたでしょう?」
確かに責任取れとは言ったが、彼女になれなんて一言も言ってないのですが。
ていうか、責任を取る=恋人になるって、お前……。
「その理屈はおかしいだろ……」
「そ、それにあなただって……わ、わたしのパン……うぅ……」
なんかスカートの前に手を置いてもじもじしている。
パンティーがどうした。あれはお前が勝手に見せたんだ。
俺が見せてくれと、どこかの変態ばりに頼み込んだんじゃない。
「とにかく、あなただって私の下着を見たのですから、責任はとってもらいますわ!」
「だからあれはお前がみせたんだよ! ていうか、何の責任だ何の!」
思い切り反論したが、そのままそそくさと行ってしまった。
なんだか凄い面倒なことになってしまった……。どうしよう。
ちなみに校門で口論していたため、思い切り注目の的になっていたのは言うまでもない。
周りからは、パンツがどうとか下着がどうとかいうヒソヒソ話が聞こえてきた。
もう、なんていうか、俺=変態でいいです……。
ちなみにこの一件で俺の周りには友達はおろか知人的ポジションすら失ったのは言うまでもない。
642名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 10:20:28 ID:G63QVM7K
以上です。
何かお嬢様的なものを書きたくなったら
いつの間にか長くなっていたでござるの巻でした。
お粗末様でした。
643名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 13:15:17 ID:jtuBgsa+
>>642


644名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 18:06:35 ID:JV0USMDb
GJ
続きに期待だ
645名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 21:58:43 ID:U/lzmPGl
グッジョブ!!!
646名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 05:15:46 ID:x4bsKPo/
>>642
続きはまだ????
647名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 05:54:24 ID:dKiUhe08
期待
648名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 08:04:49 ID:MGKLhNni
保守
649名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 22:55:11 ID:qSojHLMk
保守
650 ◆/pDb2FqpBw :2010/06/21(月) 20:48:57 ID:jOm1kT3c
ご無沙汰しております。(2年ほど)

なんの事やらな人はもし宜しければ
http://uni.lolipop.jp/Rock_Frame.html
http://uni.lolipop.jp/Wits_Frame.html
辺りをご参照頂ければと宣伝。

651uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/21(月) 20:49:29 ID:jOm1kT3c
THUNDERSTRUCK

-*-*

皆は、いや、通常の男の人は、人生で始めて女の子のおっぱいを見た時の事を覚えているものなのだろうか。
そう。女の子の胸。乳。乳房。いや、おっぱいという呼称がこの場合は最適だろう。
勿論母親のでも、姉妹のでもないそれだ。
なんていうか。つまり、その、ええと、同年代の、とても美しい人の。おっぱい。

それとも、その、僕の意思は兎も角として、19歳の今この時まで清い童貞を貫き通している
(というよりも女性と交際した事の無い)僕だから、
この光景はきっと網膜に張り付いて一生忘れないに違いない。とか今そう思っている、
そういうものなのだろうか。
普通の人ならああ、おっぱいね。ふふん。そんな事、大した事じゃあないじゃないか。
とかそんな感じに軽く言うのだろうか。
笑いながらいつだったかなあ。いつ見たっけなあ、そんな事、ちっとも覚えてないなあとか簡単に言うのだろうか。
652uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/21(月) 20:49:54 ID:jOm1kT3c
僕は多分違うと思う。
一生忘れないと断言できる。
さっきのあの一瞬の事を僕は一生忘れないと力強く断言出来る。
ポタポタと水の滴る真っ白なミルクを錬り込んだような肌。
タオルで腕で抑えてるんだけどぷやん。と弾む感じで眼の前に提示されたおっぱい。
いかにも柔らかそうな、何だか逆に凡そ人の肌とは思えないような、
例えればこの世で一番甘い、口に入れれば一瞬で溶けてしまうようなケーキを
そのまま形にしたような優しさと柔らかさを兼ね備えているようなおっぱい。
張り出した二つの真っ白なおっぱいのその谷間の部分には水滴が溜って、
そしてその水滴が息づく様なピンク色の先端部分を伝って床に落ちる。
つ、つ、と水滴が柔らかく肌を伝って、先端にゆっくりと向かい、
そのピンク色の先端部分で一瞬だけ時を止めるように静止する。
そして一瞬後、ぷるん、と音を立てるようにピンク色の乳首から水滴が跳ねるのだ。
そう、正に弾き飛ばされる。といった感じで。
653uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/21(月) 20:54:33 ID:jOm1kT3c
兎に角。僕は今までの人生でこれ以上のものを見たことが無かった。
昔、家族旅行で行ったフランス旅行の時に見たモナリザの絵を見た時や
(思ったより小さいなと思いながらも僕は今、教科書に載っている絵を見ているんだと思ってとても感動した)、
この前歴史好きの僕が始めて熊本に1人で旅行に行った時に感じた熊本城の威容とか。
あの時も僕は思ったものだ。ああ、僕はこの光景をずっと忘れないぞ。と。
じっと瞬きもせずにモナリザを見つめ、熊本城を見上げていた間、僕はその一瞬が僕の人生にとって特別な一瞬だと確信していたのだ。

でも今やそれらの素晴らしい瞬間の記憶も僕の中ではやや色褪せて見えてしまっている。
目の前にある二つの、ぷるんと大きく、真っ白で形の良い、艶めいていて、魅力的で、柔らかそうなおっぱいは
その、そんなものよりずっと心にどかん。と直で響いてきてしまったのだ。

僕は瞬きをしなかった。
いや、これはもう僕個人の意思によってそうしなかった、という類の話では無いだろう。
失礼を承知で言わせて貰えばピューリッツァー賞を取ったカメラマンが
その瞬間、恐らくこいつはピューリッツァー賞ものだぞ、何て事は心の片隅にも無く、
ただファインダーを覗き、瞬きもせずシャッターを押した、その瞬間のように
つまりそれはそのカメラマン自身にとって恐らく、微塵もそれ以外の対象を意識なんかせず、
それが必要なのだと自分の身体を構成する全てのもの、細胞や、血液なんてそんなちゃちなレベルではなく
今までの人生における人間関係や、自分を構成し形作ってきた歴史や文化、そして地球と宇宙(コスモ)、
そういうもの全てが大声でそうしろと叫んできたその結果としてそうだったのと同じように、
・・・
僕は僕より幾つか年上のおねえさんの、しかもとても美しいその人の
凄く柔らかそうで、大きくて、真っ白で、それでいて弾けそうな弾力を持ったおっぱいを前に
一瞬も瞬きをしなかった。
654uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/21(月) 20:54:57 ID:jOm1kT3c

きゃあと可愛らしく叫び、片手で口元を、そしてもう片手で下半身を隠そうとした後、
その人が凄まじいスピードでお風呂場の方に後ずさった時も、
僕は一瞬も瞬きせず、視線でおっぱいを追いかけた。
そして今、ゆっくりと迫りくる(しかし恐らくはそういうように検知されているというだけで、
実際は恐ろしいスピードで飛んできている)大き目の洗濯ものを入れているのであろう籠を脳内で感知しつつも
やはり目は寸分たりともおっぱいからは離れずに、僕はそのままそんな事を考えている。

一瞬後の事なんかは脇に置いておいて。

つまりとてもチープな言い方を許してもらえれば、
僕はその時、始めて見る女の子のおっぱいに、とても感動してしまっていたのだ。
655uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/21(月) 20:55:59 ID:jOm1kT3c

@@

「匠君が悪い。絶対に悪い。」

はっと目を開けると頭がグワングワンとした。側頭部が熱くて痛い。確実にタンコブが出来ている。
目の前の景色が横になっている。どうも僕は床に寝かされているらしかった。

そして、目の前では匠先輩が正座をしていて、その向かい側に先程の女の人が真っ赤な顔をして
何だか泣きそうな声で匠先輩を指差して糾弾している真っ最中だった。
無論、その女の人は髪が濡れてはいたけれどラフな大き目のTシャツにチェックのスカートという感じで洋服を着ていた。
しかし僕は、間違いなく一瞬前に、この何だかこうやってみると凄まじいまでに美人な女の人の生のおっぱいを眼にしたのだ。
656uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/21(月) 20:57:15 ID:jOm1kT3c
「た、た、た、確かに不用意に玄関に出た私も悪いかもしれない。
で、で、で、でも普通その、友達を連れてくるのなら連れて来ると一報を入れるべきだ。」

「でも涼子さん今日、うちに来るなんて一言も言って無かったよね。」
「な、な、匠君は私が悪いというのか?私が悪いって言うんだな。そんな事を言ったって
私の横を通ったダンプカーが雨水を跳ね飛ばして服がびしょびしょになってしまったんだからしょうがないじゃないか。
匠君の家なら近いし、シャワーを借りようと思っただけだ。匠君は私にびしょびしょのまま家に帰れとそう言うのか?」

「そ、そんなことは言ってないけど・・・」

「わ、わ、私だって一言言っておけば良かったなと思って、だから玄関の鍵が回った時、
君がびっくりするといけないと思って、
だからびっくりしないように慌ててドアを開けたんじゃないか。そ、そ、そ、そうしたら」

「仁科君がいたと。でもその行動は多分、俺でもびっくりしたと思うよ。」

「うう、う、うああ・・・・み、見られた・・・というか、積極的に見せたと言うんじゃないかああいう状況は。
あ、あんな格好で私は・・・」

「お風呂場のドアから顔を出す程度なら良かったのにね。」

「ば、ば、馬鹿、だ、だって、鍵を開けるなんて匠君以外にいるなんて思わないじゃないか。
普通、匠君の部屋に鍵を開けて入ってくるのは、匠君じゃないか。」

泣き声でそう言っている、先程の玄関で見た女の人、
まあつまり匠先輩の彼女である涼子先輩なのであろう女性が頭を抱えた所で、僕はゆっくりと顔を上げた。
657uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/21(月) 20:59:56 ID:jOm1kT3c
「あのー。」
僕の声に匠先輩と涼子先輩と思われる女性が顔をこちらに向ける。

「ああ、大丈夫?」
匠先輩が柔らかい笑顔を向けてきてくれるのに少し落ち着いて僕は口を開いた。
「あ、あ、あの。」
よろよろと起き上がって、匠先輩と同じように正座をする。その僕の顔を涼子先輩と思われる女性が見ている。
勿論今は涼子先輩は服を着ている訳だけれど僕はドギマギとし、そして不埒にもおっぱいだけでなく、
それ以外の部分も思い出せないかどうか自分の記憶を一生懸命探った。

しかし兎に角、話には聞いていたけれど落ち着いてみても凄い美人だ。
無造作にきゅいと結んだ髪が凄く可愛らしい。
今まで怒っていたからか、少し上気している感じの頬も色っぽい。
その涼子先輩が僕の方を見ている。
さっき僕はその、形良くクン、と持ち上がっているTシャツの下にある、生のおっぱいを見てしまった訳だ。
乳房の先端まで全て余さずそっくり。

「あ、仁科君だっけ。さ、さっきはも、申し訳ない。私は岸涼子という。
その、変な格好を見せてしまった上、お、思わず洗濯籠なんかを投げてしまって・・・」
「い、いえ。と、とんでもないです。そ、その。僕こそす、すみませんでした。
こちらこそは、はじめまして涼子先輩。仁科です。」
658uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/21(月) 21:02:15 ID:jOm1kT3c
直接そうやって御互いを見ながら挨拶をした瞬間に色んなものが頭の中で整理されて、
急に恥ずかしくなってきて顔が熱く火照ってくるのが自分でも判った。
つまり、僕はつい先程、何度も言うように僕の人生の中で初めてのおっぱいを、涼子先輩のそれを見たのだ。
これは、とんでもない事だ。そう思う度に顔が熱くなっていく。
こういう時は、というかどういう時だろうとこの状況では女性の方が恥ずかしいだろうし、
僕が顔を紅くしては失礼というものだろう。
きっと涼子先輩は気分を害するに違いない。
いや、これ以上害する余地があるとしての事だけれど。

そんな事を考えながらマズイ、マズイとパニックになると尚更顔が熱くなるのを止められない。
しかしどうしようもなくて、ぐっと顔を下に俯かせてしまった僕に向かって、
涼子先輩は怒りもしなければ皮肉を言う事もなかった。

ただ、非常に冷静な口調でこう言ってきたのだ。

「仁科君。涼子先輩ではない。私の事は涼子、もしくは言いづらいのであれば
匠君と同じように涼子さんと呼んでくれ。」
659uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/21(月) 21:04:03 ID:jOm1kT3c
-*-*-*-*-*-*-

THUNDERSTRUCKはAC/DCのそれです。
全部で5話位を想定していますがまだ書いていません。

ノシ
660名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 21:45:37 ID:JvYbAKQd
アヴェンジャーで戦車をヴォオオオ・・・するA−10しか浮かばんかった俺。

親方の乗ったA−10にアヴェンジャーで蒸発させられてくる・・・
661名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 21:52:07 ID:PxsTOhNC
おお、自作自演のうに大先生か・・・w
662名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 23:23:12 ID:tLo73fRv
>>659GJ!
涼子さんの新作か、これは期待せざるを得ない。
663名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 00:02:19 ID:thovA1y6
匠君と涼子さんの人か!

ファンですよ
また読めて嬉しいです
664uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/28(月) 14:24:42 ID:VLRAc/xb
THUNDERSTRUCK 2

@
もうちょっと前に話を戻そう。

僕が地元のつてを使って匠先輩の電話番号を教えてもらい、
なけなしの勇気を振り絞った上で電話を掛け、そして相談事をしたのには理由がある。

とある女性に思い切り振られたからである。

もうちょっと説明する。
僕には好きな人がいる。ずっと好きだった人がいる。
鍋島茉莉先輩という、高校の時の一年先輩の人だ。
同じ吹奏楽部に所属した縁で知り合って以来、僕はその、鍋島茉莉先輩の事をずっとずっと好きだった。
ちなみに先輩の卒業前に一度だけ告白して、返事を貰う前に僕は逃げた。
つまり、僕の一方的な片思いだ。
茉莉先輩は、高校を出た後、とても有名な大学に合格して東京に出て行った。
うちの高校では、過去に2人しか現役合格していない大学へ。
665uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/28(月) 14:25:06 ID:VLRAc/xb
即ち、とても名門な大学へ。
無論、背丈と顔つき存在感だけでなく、成績も普通である僕なんかはE判定も良い所の大学である。
普通は、諦めるのかもしれない。
いや、諦めるものだ。
しかし僕は勉強した。その、茉莉先輩に追いつきたかったから。
多分にストーカー的な根性かもしれないけれど僕は茉莉先輩に返事を貰っていなかったから
もしかしたら僕も茉莉先輩と同じ大学に入れたらもしかしたら
先輩は褒めてくれるんじゃないか。
そしてもし受かったら、結婚してくれるんじゃないか。
そんな風に考えたのだ。
やや気が早いのは自分でも認める。

自分でも不純だとは思うけれど僕は死に物狂いで頑張った。
正しい生活を心がけ、睡眠時間を確保しつつそれ以外の時間は全て勉強に振り向けた。
言うは安し、行なうは難しである。その道のりは艱難辛苦を極めた。
C+判定からが辛かった。
しかし僕は挫けず、将来、誰かに17,18歳の時に何をしていたの?と聞かれたら勉強してました。
と即答できる位に勉強した。
666uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/28(月) 14:25:26 ID:VLRAc/xb
勿論不安になった時には茉莉先輩に助けてもらった。
目を閉じると茉莉先輩がこう言ってくれるのだ。
「仁科君、頑張って。」
「仁科君ならできるよ。」
そう言って励ましてくれた。
僕は勉強の前に茉莉先輩に励ましてもらい、模擬試験の前には茉莉先輩に祈りを捧げ、
寝る前には茉莉先輩におやすみを言った。

ああ。ええ。それは童貞の妄想ですよ。自分でも判っている。
自分でも気持ち悪いなと思った。
でもあの辛い日々を、茉莉先輩が支えてくれた事に、間違いは無い。

そして僕は死に物狂いで頑張った結果、なんと奇跡的に合格を果たした訳です。
自分でもびっくり。

そして同時に合格通知を片手に我に返った訳です。

僕は何か違う夢を見ていたのかもしれないと。
僕は勘違いをしていたのではないのだろうか。と。
667uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/28(月) 14:25:47 ID:VLRAc/xb
僕は大学に受かれば茉莉先輩と付き合えうことが出来る。位の勢いで妄想していた訳だけれど
現実に直面してみればそんな筈は無い。
2代前の元吹奏楽部副部長である茉莉先輩と1代前の元吹奏楽部副部長である僕という縁だけを頼りに
この一年、東京に出た茉莉先輩と時折連絡をしていたのは確かだが、
それも後輩達の定期演奏会の応援の連絡だとか、まあ部活関係の話が主で時折
「大学はどうですか?」位の雑談が入れば良い方だった。
というか告白して逃げた時の事を思い出してそんなに上手く話せなかった。

そんな僕が大学にまで先輩を追っかけて行きました。なんていって、先輩は喜ぶのだろうか。と。
いや喜ぶはずが無い。ていうかそれって、かなりきもいんじゃないだろうか。

「先輩、僕、大学に受かりました!先輩を追っかけて来たんです!」
「うわ、きもっ。」
いや、優しい茉莉先輩はそんな事は多分言わないけれど。
でも、そう思われたりしないだろうか。

ていうか勝手にこっちが思ってただけで
「先輩、僕、大学に受かりました!」
「・・・?っ・・・?・・・あー!あーあー。懐かしいねーえー・・・と、誰・・・だっけ、んーーーとに、に、そう!仁科君。」
みたいに忘れられてたりするかもしれない。
うわ、その方が傷つく。かなり傷つく。
668uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/28(月) 14:26:10 ID:VLRAc/xb
それまで合格通知が来たらそのまま指輪でも買って茉莉先輩を迎えに行こうか。
までは思ってなかったにしろなんかそれに近いことすら妄想していた僕は、現実に合格通知を受け取った瞬間、
そんな恐怖感というか不安感というか、そんな感情で一歩も動けなくなってしまったのだ。

僕には元々そういう所がある。
気が弱いくせに考えなしで突っ走って、立ち止まる。
しかし一年間もの勉強生活で鍛えられた僕は少しだけ変っていた。

僕は茉莉先輩への気持ちを紙に書いた。
受験勉強の間に考えていた事、その前に考えていた事、これから考える事。
そういった事を何度も何度も書き直して、何度も何度も読み返した後、
僕は躊躇せずに茉莉先輩へ電話を掛けた。

669uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/28(月) 14:26:31 ID:VLRAc/xb

3コール後に「もしもし」と電話に出た茉莉先輩に僕は言った。

「大学に受かりました。」と。
「茉莉先輩と一緒の大学に受かりました。」と。
そこら辺で涙がこぼれて、僕は紙を握り締めながら受話器に向かって喋った。

ずっと茉莉先輩の事を考えていたと。
ずっと茉莉先輩と話したかったと。
ずっと茉莉先輩に会いたかったと。

僕は訥々と喋り続け、言葉は何度も何度も同じ所を廻り、
折角紙に書いた事の5分の1も伝えられなかった。
でも今考えてみるとそれをきちんと伝えられていたら僕は5倍ほどきもかった筈だから良かったのかもしれない。

何度もしゃくり上げながら僕は最後に、「茉莉先輩が好きです。」
とそう言った。
昔の告白の続きとして。
一つの事を成し遂げた男として。
堂々とそう言ったのだ。
茉莉先輩は僕の言葉を聞いた後、暫く沈黙した。

そしてたっぷりと逡巡するような沈黙の後に茉莉先輩はこう言ったのだ。
「・・・・・・・・・ええと、今、私、付き合ってる人がいるから。」

誰と?
と絞り出した僕の声に茉莉先輩は暫くうろたえたような声を出した後、こう言った
「・・・き、君の知らない、私がずっと好きだった鈴木匠さんって人。」
と。
670uni ◆/pDb2FqpBw :2010/06/28(月) 14:27:14 ID:VLRAc/xb
-*-*-*-*-*-*-

感想ありがとうございます。
続きは書けましたら。

ノシ
671名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 18:17:46 ID:CpRtAnRg
>>670GJ!
あの話の続きか、ずっと気になってた。
あの妄想しまくりの先輩の心情が気になるな。
672名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 03:55:18 ID:B0TMOu53
GJです。ジュブナイルっぽい甘酸っぱさがたまりません。
『灯り』から読んだので、この子達のその後はずっと気になってました。
気長に待ちます。
673名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 21:57:23 ID:fW4l3uNQ
674名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 07:38:17 ID:Tnh7o7yR
いつもは憎まれ口ばっかりなのに、手を繋ぐと急に大人しくなる幼馴染み
675名無しさん@ピンキー:2010/07/19(月) 12:26:02 ID:oWwX7vPl
足軽さんのHP消えたのか?
676uni ◆/pDb2FqpBw :2010/07/22(木) 18:14:24 ID:HnciCvmB
THUNDERSTRUCK 3
@@
私は怒っている。
自分で言うのもなんだけれどこれは私にしては珍しい事だ。
ムカムカして苛々として胸の中が嫌な気持ちで一杯になり、頭の中で自分は悪くないと考えて
私が怒っている相手がいかに責任感が無い人間なのだろうかというような事が
頭の中でぐるぐるぐるぐると回るのだ。

ぐるぐるぐるぐると。
何故こんなに怒っているのか、今一つ自分でも判らないけれど、でもこれだけは判る。
この感情はきっと憤怒と言って良いものだ。

私にもささやかではあるが、人生設計というものがある。
大抵の人と同じようにそれには2種類あって、一つはそれには宝くじの当選を願うような甘く夢見るようなそれだ。
もう一つは今の自分に出来うる望んでも良い現実的なものだ。

優しくて素敵な彼氏。(匠先輩であれば言う事は無い)
大学の成績で成功すること。
夏休みの友人との貧乏ではあるが楽しい旅行。
サークルの定期演奏会(私は吹奏楽サークルに所属している)が楽しいものである事。
そして遠い将来については望んだ職業への就職。
程々の給料とやりがいのある仕事。
26歳位での好きな人との結婚。
子供は二人。出来れば女の子と男の子。
今はまだ想像もつかないけれど、もしかしたら子供はもっといても良いかもしれない。
出来れば旦那様となる人とは子供が出来ても時々デートをしたりするような関係がいい。
(匠先輩であれば言う事は無いし、きっと匠先輩は結婚しても優しいままだろう。)
年に一度は家族で旅行するのもいいと思う。(何にせよ楽しい事は多い方がいい。)
677uni ◆/pDb2FqpBw :2010/07/22(木) 18:15:17 ID:HnciCvmB
こういう人生設計は、実現できるかどうかはともあれ他の人とそう変わるものでは無いだろうと思っている。
が、これはああいう事だろうか。
結婚する相手は年収1000万円以上が良いとか、恋人は背が高くてカッコいい方が良いとか、車はイタリア製じゃなくちゃ嫌だとか。
まあ、そういう事なのだろう。
規模は多少違うかもしれないけれどそういう事の一つなのだろう。
希望って奴だ。
叶えばいいと思う、希望。

あまりこうがいい、こうじゃなきゃ嫌だ。と周りに吹聴するのがはしたない事である事くらいは知っている。
確かにこう言った事を人に言うのは憚られる。
でも心の中に思い描く分には誰に迷惑をかける訳じゃない。
それに、それ自体が悪いものではないはずだ。

例えば私は恋人を車で選ぼうとは思わないけれど、もし恋人にはイタリア製の車に乗ってほしいと思ったのならそれはそうなるように努力する切っ掛けになるだろう。
きっと日本で私と同じくらいの年齢でイタリア製の車に乗った男の人は鼻持ちならない嫌らしい男だろうし、(匠先輩は自分のお金で買った国産の中古車に乗っている。誠実で、匠先輩らしく、とても好ましい。)
そういう男は決まって分不相応な注文を女の子に向かってするに違いない。
例えばミニスカートを履けとか、もっと化粧をしろとか、俺の後ろを歩けとか、そういった事だ。
イタリア製の車に乗っている恋人を持ちたいのならそういう要求に応える努力をする事になるだろう。

別にそれは悪いことじゃない。
何もしないよりずっとマシだ。
そう、何 も し な い よ り ず っ と マ シ だ。
678uni ◆/pDb2FqpBw :2010/07/22(木) 18:16:19 ID:HnciCvmB

希望とは努力の前にあるものなのだ。
こうありたいからこうする、こうでなくちゃ嫌だからこうする、というように希望とは何かをする原動力になるものだ。
逆に言えば希望があるのなら、それを達成すべく努力をすべきではないだろうか。


話は変わるが私に1年前に告白してきた年下の男子がいる。
仁科君という朴訥な感じのする男だ。背はぬぺりとやや高い。
吹奏楽部の後輩で、彼の控えめではあったが、私に向けられていた好意には薄々気がついていた。
彼の好意の表し方はとても控えめで、誠実で、ゆっくりとしたものだった。
部室でたまたま二人きりになった時に耳まで紅くしていた事。
そういうキャラでも無いくせに、たぶん、私が部長だったからっていう理由で、
薦められたリーダーを受けて苦労しながらみんなを纏めた事。
積極的に話しかけてくる事は無かったけれど、近くにいる時は懐いている犬のように離れなかったこと。

もしかしたらそれは部活の先輩であるという事がそうさせたのかもしれない。
もしかしたら同級生だったらもっと積極的にアプローチしてきたのかもしれない。
でも多分そんな事はないのだろう。
仁科君というのはそういう人間だった。
679uni ◆/pDb2FqpBw :2010/07/22(木) 18:25:36 ID:HnciCvmB

私の卒業直前に仁科君は私を呼び出す事に決めた。
私は何故呼び出されたのかは判っていたし、何を言われるのかも判っていたし、
自分がどう応えるのかも判っていた。

夕暮れの音楽室で、私は並んでいる机の一つに腰掛けて
足をぶらぶらさせながら窓の外の校庭と良く部活の空き時間に弾いたピアノとを交互に眺めながら仁科君を待った。
実の所それまでにもこうやって男の子に呼び出されたことが無い訳ではなかったけれど、
多分、不思議とそれまでの中で一番緊張していたように思う。
確か、私はどう答えるべきか、少し悩んでいたのだ。
それまではこう答える事にしていた。
「部活が忙しいし、好きな人がいるから。」
「受験勉強が忙しいし、好きな人がいるから。」

その時何故そんなに悩んだのか今となっては覚えていない。
でもその時の私はどう答えようかと真剣に悩んでいたように思う。
私は卒業間近で当然部活も終わり、そして大学も決まっていた。
部活が忙しいからとか、受験勉強が忙しいからと言えないから悩んでいたのだろうか。
そうかもしれない。
もしくは違うかもしれない。

仁科君はそれまでの私の人生の中で、ある意味一番長く一緒にいた男の子だった。
友情を感じていたし、忠実な犬のような所のある彼を可愛く思っていたのも確かだ。
だから、
どう言ったらいいか、そんな事を考えていたのかもしれない。
680uni ◆/pDb2FqpBw :2010/07/22(木) 18:26:58 ID:HnciCvmB

呼び出された音楽室でぼんやりそんな事を考えながら待っていると、
仁科君は息を切らせて教室に入ってきた。
そしていきなり私の顔を見て
「先輩の事が好きです。」
と、そう言ってきた。

もう少し考えたらどうだろうか、と、思ったものだ。
息を落ち着け、姿勢を整えてからでもいいのでは?
2塁に盗塁を試みたランナーが審判を見上げるようなタイミングで言うことは無いんじゃないだろうか。
そう思ったものだ。

でも仁科君はいつになく必死な表情で、誰も気づいてはいないだろうけれど形のよいと私が思っている額に汗を浮かべ、そう言ってきた。
それから私の表情を見て、何かまずいと思ったのだろう。しどろもどろになりながら
「僕は先輩の事が好きです。」
と繰り返した。

それからパニックになった仁科君は顔を真っ赤にして俯きながら話し続けた。
まるで私の答えを聞きたくないというかのように頑なな喋り方で、
部活に入ってから、私が卒業するまでの事を、順番に、喋ってきた。

遠慮なく言えばかなりスマートではなかった。
好意とは短くストレートに、かつインパクトのある言葉で伝えるものだ。
「僕は死にません」とか。
681uni ◆/pDb2FqpBw :2010/07/22(木) 18:28:01 ID:HnciCvmB

でも仁科君の言葉は何故だか不思議なほど心に響いた。
仁科君が私のことを私以上に知っていたからだ。
私が忘れていた大変だった事を仁科君は覚えていた。
私が忘れていた楽しかったことも仁科君は覚えていた。

つまり、なんだか妙に、ぐっとくる告白だった。
しかし私には好きな人がいたから、断らなくちゃいけなかった。
好きな人とはつまり、匠先輩である。

誠実な告白をしてくれた仁科君に対して、私は誠実に断らなくてはならないと思った。
と、思う。正直、あまり覚えていないのだ。
なんだか妙に顔が火照って、頭が真っ白になり、慌てていたように思う。
挙句私は言葉に詰り、仁科君は走って逃げた。

そう、走って逃げたのだ。
仁科君は。

根性が無いのではないだろうか。もっとこう、ガツンとすべきでは?
ああ、確かに私はYESとは言わなかっただろう。
なぜなら私は素敵な匠先輩のことが好きだったからだ。

人には持ち味というものがあるのは判る。得意不得意もあろう。
しかしもうちょっとこう、押してみたらどうなるだろうとか思わないものなのだろうか。

結果仁科君は言うだけ言って走って逃げ去り、私は東京に来て19歳となった。
682uni ◆/pDb2FqpBw :2010/07/22(木) 18:31:20 ID:HnciCvmB

自分で言うのも何だが19歳の一年間は人生の中で恋愛をする期間として貴重なものではないかと私は考察する。
ああそうだ。優しくて素敵な彼氏を作るには最適な期間だ。
就職活動は遥か彼方。大学入試の緊張感からは開放され、見るものすべてが目新しい19歳の1年間。
過酷な受験勉強を終えた結果としてかどうかは判らないが
私の控えめであった胸は心持ち、少しだけ成長したように思ったし、
結果としてそれなりに魅力的なスタイルも保てているのではないかと考えている。

ああそうだ。
確かに私の好きな匠先輩には少々私では敵いっこなさそうに見える恋人がいる。
涼子さんというその匠先輩の恋人は顔と身体も良い上に性格までいい。
恋敵である私を可愛がってくれるほどだ。
必死で粗を探すものの今の所、私には涼子さんの悪いところは見つかっていない。
(しいて言えば何故か盲目なまでに匠先輩に惚れているらしいという位だ。
しかしそれは私にとって都合が悪いという意味以上には悪いことではない。)

しかし、しかし私だって捨てたものでは無いのではないだろうか。
戦ってみても悪くは無いのでは?と思えるほどには私も大人っぽくなっているのではないだろうか。

そう、本気で戦ってみても悪くは無かったのだ。
広島東洋カープだって先発の調子が良くてかつバッターがヒットを打ち、そして相手の調子が悪ければ、たまには巨人にだって勝つ。
それに賭けてみても良かったのでは?
それだけじゃない。
言わせてもらうと私だってモテるのだ。
イタリア製の車を持った男の子にドライブを誘われた事だってある。
体育会系の爽やかなスポーツマンにしつこくデートを迫られたこともある。

それぞれ魅力的な提案だった。
おいしいものをご馳走してくれそうだったし、(見返りに何を求められるかは知れたものでは無かったけれど)楽しいところに連れて行ってくれそうだった。

19歳の恋愛をするには悪くなかった筈だ。
でも私は涼子さんと戦う事も放棄し(その代わりに仲良くなり、それはそれでとても楽しかった。)、大学で誘われたデートも全て断った。
つまり全ての選択肢を私は蹴ったのだ。

683uni ◆/pDb2FqpBw :2010/07/22(木) 18:36:57 ID:HnciCvmB

ああ、もちろん私は私と同じであれとは言わない。
人それぞれ考えがあって良いのだから、
私に好きと言ったのなら、きちんと跪いて私の美しさを讃えながら手の平にキスをする所までやるべきだとは言わない。

好きにすればいい。好きって言ったまま言いっぱなしで逃げるのだって勝手だ。
言いっぱなしで好きなままでいるってのも勝手にすればいい。

しかし一つ言わせてもらえれば告白したのならせめて小まめに連絡してくるってのは選択肢に無かったのだろうか?
ん?
部活以外の連絡もまめにしてご機嫌を伺うべきと思わなかったのか?
私を放っておく事になにか意図でも?
特別なことは期待してないけれど常識を身につけなさい。普通の。
間違ったことを言っているだろうか。

1年間放っておいた挙句、同じ大学に合格した?
馬鹿にするのもいい加減にすべきじゃないだろうか。
彼の一年間の努力は買おう。自分の大学の事をこう評するのもなんだが
私の知っていた彼の成績は到底ここに現役合格できるようなものでは無かった。
生半な努力では無かったのだろう。それは認める。
それに、少しうれしい。もし彼の努力の幾分かの原因に私に対する希望があったのなら。

でも私の一年間はどうなる?
私の人生の中で恋愛をする期間として貴重であるはずの19歳の一年間は。
どうしようもなかったのか?ん?
本当にどうしようもなかったのだろうか?
684uni ◆/pDb2FqpBw :2010/07/22(木) 18:37:56 ID:HnciCvmB

例えばこういうのはどうだろう。
「茉莉先輩と同じ大学に入りたいのですが、学力が足りないのです。
勉強を教えてくれませんか?」
そう言えば私だって悪い気はしなかったのでは?
そうじゃないだろうか。違うだろうか。
私はそう思うんじゃないだろうか?違うだろうか?
その位は考え付くべきじゃないの?

無論軽々に返事は出来ない。
何といっても私には匠先輩という好きな人がいるのだから。
その人以外と二人きりになるというのは多少、考えものだ。
いや、かなりもったいぶる必要があるだろう。
だがそれくらいの事は頼まれれば出来たかもしれない。
何といっても私があれだけ可愛がった仁科君なのだ。

週末の度に地元に戻るのは大変だっただろうけれど両親は喜ぶだろうし、
日々学力の上がる後輩を見るのは私にとっても嬉しい事だっただろうし。

無論仁科君らしい、と思ったのも確かなのだけれど自分だけで頑張って自分だけで満足するってのは、どうだろう。
もうちょっとやり方があったんじゃないかな。
と元部長で、お姉さん役であった私は思わないでもない訳だ。

間違ってる?
685uni ◆/pDb2FqpBw :2010/07/22(木) 18:41:33 ID:HnciCvmB

と、ここ数日そんなことばかりが頭を回り、
仁科君の電話以降、この憤懣やる方ない気分をどうしてくれようかと持て余してた挙句、
結局のところ私はいつも通りに匠先輩と涼子さんにこの鬱憤をぶちまけようと思いついた。
匠先輩と涼子さんはいつでも私の話を親身になって聞いてくれる。

幼馴染とはいえいつもいつも恋人のいない19歳の女が訪問するのは如何とは思うし、
匠先輩にも涼子さんにも悪いとは思うのだけれど、居心地が良いのだから仕方が無い。
私は今日も力いっぱい文句を言ってやろうと思って通い慣れた匠先輩の住んでいるアパートへ歩いたのだ。

手に近くのスーパーで買った差し入れを入れたビニール袋を持ちながら
桃の木のある坂道を登り、くたびれたコンクリートの塀の脇を抜けて駅からアパートへの道を私は歩いた。

そしてアパートに着くといつも通りにドアをノックし、いつもどおりに返事を待たずにドアを開けた。
しかし玄関に身体を入れながらの
「こんにちは。」
の声は途中で尻すぼみになった。

部屋の中には匠先輩と涼子さんと、それから何故か判らないけれど、
私が力いっぱい文句を言ってやろうと考えていた仁科君が座っていたからだ。

全員がびっくりした顔をしていただろうけど
仁科君はとりわけびっくりした顔をしてがたんと音を立てて立ち上がった。

私も当然驚いた。

何でここにいるの?
先回りしてたの?
私に文句を言われる為に?
686uni ◆/pDb2FqpBw :2010/07/22(木) 18:42:03 ID:HnciCvmB
-*-*-*-*-*-*-

感想ありがとうございます。
続きは書けましたら。

ノシ
687名無しさん@ピンキー:2010/07/22(木) 20:16:47 ID:QA+RFDMV
>>686GJ!
やっと出会ったか。これからの展開に期待だわ。

つかどんだけカープ好きなんだよww
688名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 03:41:09 ID:Wbo26rWT
久々に喜多さん読もうと思ったらサイト消えてた
調べたら鯖自体が停止してるみたいだ
長いこと更新してなかったけど、このまま終了はしないで欲しいなあ
689名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 05:17:58 ID:/cluUGYW
気の強いロリ系が読みたい
690名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 03:16:38 ID:hcp2e05m
保守
691名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 13:27:45 ID:Qi+YpeGr
uniさん、はりーあっぷぷりーず
692名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 04:59:24 ID:vbOTFvKR
保守
693名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 16:33:07 ID:bbNrsarn
このスレだけでしか書いてない訳でもあるまいよ
694名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 16:34:30 ID:bbNrsarn
これが、誤爆だと、伝われこの思い!!!
695名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 22:46:11 ID:u3Dkt+JZ
ほしゅあげ
696名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 02:30:04 ID:XgTEKnU1
保守
697名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 19:25:41 ID:1krrMjN5
気の弱いスレが落ちってしまった・・・
698名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 11:32:41 ID:aRPYt6PY
ごめんなさい
699名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 21:04:59 ID:XfIScEPD
規制解除されてたら一本書いて来る
700名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 22:06:45 ID:daTfrlrV
>>699
頼んだで
701名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 10:44:33 ID:1oLiDJay
ツンデレとはどう違うの?
702名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 21:19:37 ID:g5B43B9w
ライバルだと思っていた男に助けられて惚れてしまう女の話
703名無しさん@ピンキー:2010/12/12(日) 05:35:30 ID:4u6WAlE6
保守
704名無しさん@ピンキー:2010/12/26(日) 07:25:08 ID:ImpcAWgM
保守
705名無しさん@ピンキー:2011/01/07(金) 10:00:15 ID:25Vv1Pac
ほしゅ
706名無しさん@ピンキー:2011/01/18(火) 22:56:40 ID:1r0KAzAE
age
707名無しさん@ピンキー:2011/01/20(木) 20:00:27 ID:/PNXOLOE
 
708名無しさん@ピンキー:2011/01/23(日) 23:51:34 ID:RPOpMCST
保守
709名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 19:07:04 ID:afrwF9jz
age
710名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 19:28:00 ID:Mvq7ytDU
age
711名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 18:34:07 ID:OLNzKB48
保守
712名無しさん@ピンキー:2011/02/23(水) 15:18:30.25 ID:WPBmqdRx
713名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 00:49:10.46 ID:T+m4rWIh
復帰
714名無しさん@ピンキー:2011/02/28(月) 01:37:44.36 ID:+WCk4yFB
あげ
715名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 21:13:57.71 ID:ATP2Ldu6
716名無しさん@ピンキー:2011/03/23(水) 22:28:35.05 ID:biAMrODW
生意気だった年下の幼馴染が見せるしおらしさ
717名無しさん@ピンキー:2011/03/25(金) 15:46:16.50 ID:auJIwCUK
>>716
男が上の学校に進学するのを期に……
718名無しさん@ピンキー:2011/04/11(月) 22:03:06.76 ID:W61BAbRu
久しぶりに書いてみるか
とりあえず強気な幼馴染み♀×弱気な幼馴染み♂の組み合わせで
719名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 20:29:15.12 ID:csCPwHuw
どちらかが幼なじみならもう片方も自然と幼な・・・
気のせいだな。
説明に多くて損なんてのはないからな
720名無しさん@ピンキー:2011/04/16(土) 17:50:04.27 ID:fuKR7etJ
ほしゅ
721名無しさん@ピンキー:2011/04/24(日) 21:02:24.96 ID:JHDFmyYp
あおなにしお
722名無しさん@ピンキー:2011/04/24(日) 21:23:27.31 ID:ougxAjfz
ほっしゅ
723名無しさん@ピンキー:2011/05/05(木) 10:26:47.12 ID:1G5mVg1d
保管庫がないんですが
どなたかログください
724名無しさん@ピンキー:2011/05/05(木) 21:50:14.37 ID:7A4vyXmB
>>723
ttp://green.ribbon.to/~eroparo/contents/original2.html
2chエロパロ板SS保管庫の管理人氏は、
危険分散のためいくつもミラーサイト作ってくれてるので、
ググれば生きてるとこにたどりつきます。
725名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 00:06:11.63 ID:FABzy5A/
「こんなとこで何やってんの?他にやることあるんじゃない!?」
「いや?今日は何も・・・」
「じゃあちょっと付き合ってよ。重い運び物があるのよ」
「いいけど、ご褒美何かあるの?」
「無償でしてくれたなら良かったけど予想はしてたわ。何がほしいの?」
「保守って言ってほしい」
「ちょ・・・女の子になんてこと言わせる気なの?!」
「じゃあ手伝わなくていいんだよ?」
「分かったわよ!い、言えばいいんでしょ!」
「ほ・・・ほしゅ」
「保守してる君はかわいいな本当に」
「わ・・・ちょ!抱きつくなぁ!!」
「君をベットまで運ぶんじゃなかったんだ?」
「ぇ・・・」
「顔真っ赤だよ?」
「ぅん・・・」
「もっかい保守してもらっていい?」
「!!うん・・えっと・・・ほしゅ」

ここまで書いて気づいたけど、これ、気の強い娘が従順になる瞬間や
726名無しさん@ピンキー:2011/05/26(木) 03:37:35.91 ID:KCgcV3fN
間違ってないぞ
727725続き:2011/06/12(日) 12:06:39.96 ID:dh5Pcqqg
暇だった。名前適当。次の保守はしおらしくしてみる

「ちょ、降ろして!用事があるって言ったでしょ!」
「そういえば言ってた。重い荷物だっけ」
「話が早くて助かるわ。ほ・・・保守したんだからちゃんと働いてよね」
「さすがに女の子に重いなんて言えないから仕方ない」
「まだベッドに行くつもりだったの?!」
「まぁ。仕事の報酬に貰うから」
「あなたってそんな頭しかないの。まぁ早く終わらせましょ。」
「ところで荷物って?モノによっては意気込みが要るんだけど」
「えぇ、実家の野菜が着てたらしいんだけど、あいにく不在でね。集配センターから運んでほしいの」
「ハイィッ!?」
「あら?運んでくれたら手料理をサービスするわよ?」
「ふむふむ・・・よし乗った。でも条件二ついい?」
「いい予感はしないけど一応聞くわ」
「裸とまでは行かなくても下着エプロンと、食べるときにまた保守してほしいな」
「何処まで変態なのよ!」
「どこまでも。主導権は僕にあるし」
「くっ・・・わかったわ・・・は、はだっ、エプロン・・・と、保守でしょ。やってやろうじゃない」
「裸エプロンまでしてくれるんだ優しいなぁ美樹は。」
「あっ!ちょ!」
「待った無し♪」
728名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/12(日) 12:38:58.32 ID:dh5Pcqqg
こっちの事情で説明を省いたが、
 ・大荷物なので無理矢理に運ばせるのは気が引けて、
しかも自分では運べないので、わりと要求をのまないといけない感じ。
 ・男は根は優しいので結局は運んであげるつもりだが、
何処まで要求を受け入れるのか面白半分で要求した。
 ・女の子の方は根が真面目で、自分で宣言したことは
何があろうとやろうとする性格。
彼女の中では失言であろうと「待った無し」「言ったね?」などと言われたら撤回しないルール
 ・野菜は20kgくらい想定。ついでに米も10kgくらいは。
(プロットでは野菜50kgだったがさすがに女性一人で食べきれない。)

男の名前って要る?まぁ文の上で必要ならまた適当につけるが。
729名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/12(日) 16:32:53.10 ID:ODRidf1/
藤林丈司
730名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/17(金) 01:15:20.38 ID:CXRFTvrk
わかりました。丈司君ですね。
たけし・・・でいいのかな?
731名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 05:32:44.35 ID:Y8k9Mnhd
たけし様、で
732hosyuから始まった何か ◆xNDlZiuark :2011/06/23(木) 19:10:13.66 ID:pYxNjHdL
下宿の隣で、1歳上の美樹と親しくなったのはたしか、大学2年の頃。
俺、久保丈司が晩飯を作って、食べようとしていた時だ
いきなり玄関が開けられて、女性がふらふらと入ってきた
「え?守口さん!??」
隣人くらいは、と顔と名前は覚えていた。あとアレのお供の為にも
「ははは、お母さ〜ん、ご飯ありがと〜」
(この人、別の世界を見てる!!ってか酒臭っ!)
その後頑張って止めようとしたが、肉じゃが半分とご飯一杯半、
そしてベッドが彼女の餌食となった
あの時に初めて、いつも邪魔だったソファーに感謝したよ。
正直、ドキドキで眠れなかったけど

そのまま土曜の朝を迎え、俺は一応ではあるが、
彼女の分の朝飯まで作り出した
玉子焼きを巻き終わった辺りでベッドから守口さんの悲鳴が聞こえた
その後、彼女は俺が説明している間は倒れた犬耳を幻視するほど
しょんぼりしていた
(まずい。先輩相手に俺はなにしてんだ。ひとまず…)
「あの、朝ご飯食べます?守口さんの分も作ったんで良ければ」
「あ…家に戻って」ぐうぅぅう
見事な腹の虫だ
「やっぱり食べりゅ」
あ、噛んだ
「うぅごめんなさい」
「謝らないでくださいよ、気にしてませんよ」
733 ◆xNDlZiuark :2011/06/23(木) 19:59:58.25 ID:pYxNjHdL
その後3分ほどなだめていると、落ち着いてくれて
モグモグとご飯を食べてくれている。
「どうですか?お口に合います?」
「はふはふっ、ばっちぐーですよ後輩君!」
立ち直り早いな、おい
「あの、久保です。久保丈司」
「そうだった。そうだった。久保君。私は朝は牛乳なのだが、あるかい?」
「割と居直ってますね…ありますけども…」
そう言いながら僕はコップと牛乳パックを取り出す
「で、何やってるんですか?他人の携帯を勝手に…」
「へ?アドレス…要らなかった?お詫びとして彼女になってあげようかと」
何この人強引・・・
「ちょ、何を言ってるかわからないです」
「どうせ居ないでしょ?それともこんな年増のお姉さんは嫌?」
なんで涙目になってるんだ感情の起伏が激しすぎるだろ
こっちが涙目になりたいんだよ!
俺が童貞だからって足元を見やがって・・
「い、嫌なら…断っていい…よ?」
「いえ、お願いしますっ!」
「おっしゃ!料理人ゲット!」
「え?」

こうして付き合い始めた一年後、
俺は彼女の居る人生を前に書いたように楽しんでいる。



次回は時代戻して荷物運び編
容量ぎりぎりで失礼しました。
734名無しさん@自治スレで設定変更議論中
GJ

>「やっぱり食べりゅ」
可愛いなw