乙ですお嬢様
ho
syu
保守
即死は2週間で20レス?
保守
島津組のアニキ…久々に読んだらやっぱ泣けるッス
hosyu
保守
>1乙。
そして保守
ほしゅ
前スレに島津のSSが投下されてました。
ここも姉妹スレも過疎ってきてることだし合併してはどうだろう?
あっちもこっちも見てる人多いしあっちもこっちも投下してる書き手も多い。書き手に投下の前に女主か男主か明記してもらえれば問題ないと思うんだ。女主だけ見たければ男主はスルーすればいい。逆もまたしかり。
そうしたらスレ圧縮なんかで落ちる確率減ると思うんだよね。
>>15 自分は両スレとも日参してるから合併でもいいと思いますが
他の書き手さん&読み手さんのご意見もうかがいたいです。
俺はこっちしか読んでないなぁ
まあ合併に反対はしないけど
分かれた経緯はあるけど、あの頃の活発さはもうないから、合併もやむなしかな、と思う。
思うが、どのタイミングで合併するかが問題かと。
こっちはスレ立ったばかりだし、あちらはまだ容量たっぷりだし。
両スレとも過疎っているし、合併には反対じゃない。
だけど、元々こちら主スレであちらが従スレだから、あちらの361が書いてるみたいな
こちらをあちらに合併するのは有り得ないし、反対だな。
主従スレだけに主従関係には敏感だな。
合併は賛成だけど
>>18の言うように、タイミングが難しいな
・今からここに男主女従の注意書きを書き足す
・今から更に新スレ立てる
・あっちが埋まるまで待つ
この中から選べばいいのか?
>>20 一番目+三番目かな?あっちが埋まる頃合を見計らって、
こっちに注意書き加えて移行を促すと。さすがに二番目はマズイでしょ。
次スレで統合、というのはどうだ?
まあ、タイミングきっちりってわけもなかろうが、今どうこう、とするよりはいくらかましなのでは?
主従同盟ってホムペでここの職人3人見つけたケイタイでホムペやってる人おおいんだな
向こうのスレに書いてあるように
向こうの現スレが埋まり次第新スレを立てずに
こっちに統合でいいんじゃないか
反対意見はあっちもこっちも出てないみたいだしそれでいいんじゃないか?
態度は慇懃だけど性格はドSな従者に振り回されるツンツンツンデレお嬢様が好きだ。
先生、SSが読みたいです…orz
ほ
ほかの方がいらっしゃらないようなので・・・
お嬢×ボディーガードのエロ無しです
暇つぶしにでも
「どちらへお出かけになるつもりです、沙貴様」
あと少しで屋敷から抜け出せると思った、その時だった。
不意にかけられたその声は、今一番聞きたくない人物のもの。
「何でいるのよ、棗」
振り返った先にいるのは、数年前からボディーガードとして自分のそばにいる男。
ボディーガードと言うよりは、監視役と言った方が適切かもしれない。
「それは私がお聞きしたいですね。お一人で出歩かれては困ります」
「何でよ。いちいち護衛をつける必要なんてあるの?
たまには一人で外へ出たいと思うことが、そんなにいけないこと?」
いらいらしてくってかかるわたしを、この男は冷静な瞳で見つめる。
「何かが起こってからでは遅いのですよ。貴女には、自分の身を守る力はない。
それがわからないほど、もう子供ではないでしょう」
「・・・ッ」
反論したいと思うのに、言い返す言葉が見つからない。
悔しくて、せめてもの抵抗に、キッと男を睨みつける。
もちろん、そんな取るに足らない行動は、男に何の効果も及ぼさない。
「お部屋へお戻りください。今夜は旦那様方がお戻りになられます。お忘れになられたわけではないでしょう」
忘れるわけがない。
会いたくないから、屋敷を出ようと思っていたのだから。
この男も、それを知って言っているのだから、腹が立つ。
「いやよ、会いたくない」
娘の事など、大して気にも留めていない親に、どうして喜んで会おうと思えるだろう。
仕事や、自分の趣味ばかり優先するくせに、たまに会ったときには、いい親ぶってあれこれ話しかける。
苦痛だった。
昔から。
4つ年上の兄にはあれこれかまうくせに。
跡継ぎでもない女の自分は、思い出した時しか相手をしてもらえない。
ならいっそ、全く関わりのない方が楽なのに。
「会いたくない。お願い」
寂しさばかりが募った。
それが形になったように、堪えきれない涙が頬を伝う。
この男の前で弱いところなど見せたくないと思うのに、後から後から涙がこぼれ落ちる。
小さくしゃくりあげながら下を向いていると、男は小さく嘆息して、屋敷の奥へ入っていった。
何か話していると思うと、すぐにまたこちらに戻ってくる。
自分が下を向いているせいで、その表情は見えない。
冷たく切り捨てられるのを覚悟して、体が震えた。
男が口をひらく。
「風邪をひいた貴女は今から病院に向かいます。
運悪く伝染性の強いものだったため、旦那様方にうつさないよう今日はホテルに宿泊。
そういう事で宜しいですか」
「・・・え・・・・?」
驚いて顔をあげると、いつもの冷たい表情とは違い、男はどこか途方に暮れたような瞳でこちらを見ていた。
じっと見つめると、その口元に小さく苦笑が浮かぶ
「今回だけは、貴女の我が儘を聞いて差し上げます。ですから・・・」
不意に男はこちらに手を伸ばし、頬に触れた。
心臓がどきりと大きく揺れる。
「そんな風に、泣かないで下さい。」
長い指が、涙を拭ってゆく。
「・・え・・あ・・・」
早鐘を打つ鼓動。
普段とは異なる男の言動に、心が波立つ。
どう反応してよいのか分からず、ただただ男を見つめるしかなかった。
その視線に、男は一瞬はっとしたような顔を見せたが、すぐにまたいつもの読めない表情に戻る。
「車を出しますので、準備をしておいてください」
何も無かったかのように言って、さっさと外へ向かってしまった。
その後ろ姿を半ば呆然と見つめながら、無意識にさっき男が触れていった頬に手をやる。
初めて与えられた、優しい、感触。
胸の鼓動は、もうしばらく収まりそうにない。
以上です
拙い文、お目汚し失礼致しました
おいしくいただきました!
やっぱ主従はいいなぁ
34 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 20:46:23 ID:asuJSoQZ
フリーゲームサイトにあった主従物小説がものすごいツボにはまった
でも死ネタだったorz
ほしゅ用に小物をば
「ちょっと!離してよっ。離しなさいったら、この無礼者!!」
少女は叫びながら、自分を横抱きに抱えたまま廊下を歩く青年から身を離そうと暴れていた。
だが、青年の細身の体のどこにそんな力があるのか、少女を捉える腕は小揺るぎもしない。
「大人しくなさって下さい。こんな所を誰かに見られたら、どうするおつもりです」
「はぁ!?何を言ってるの。見られて困るのはあんただけでしょう!執事のくせに、気安く触るんじゃないわよッ」
「お嬢様。レディがその様な粗雑な言葉遣いをするものではありません」
「なら離しなさいよ!!」
「お断りします」
何を言っても表情一つ変えない青年を、少女はきっと睨みつける。
「心配なさらなくても、皆様まだパーティ会場におられますから、邪魔は入りません」
と、不意に青年がドアの前で足を止めた。
少女を抱えたまま器用にそれを開けると、部屋の中に入っていく。
「ちょ、ちょっと・・・!」
非難めいた声をあげる少女を無視し、その体をドサッとベッドにおろす。
「さて、お嬢様」
慌ててベッドの上で身を起こす少女に、青年はにこりと笑いかけた。
「私があれほどパーティー前に申し上げたこと、貴女様は一つも聞いていらっ
「・・・何のことよ」
「殿方に誘われても、ホール内から出ないようにと再三申し上げたはずですが」
その言葉を聞いて、少女は不満そうに顔をしかめた。
「一旦外に出れば、社交の場でなく男女の駆け引きの場になります。
その後の覚悟があるか、上手く相手をかわす技術がない限り、安易に誘いにのってはいけません」
青年は打って変わって厳しい目で少女をみた。
「それなのに、よりによってプレイボーイで有名なディール卿の誘いにのるなんて・・・。
私が行かなければ、どうなさるおつもりだったんです」
いつになく苛立った口調で言われて、少女はぐっと押し黙った。
実際、ディール卿は自分の手に負える相手ではなく、青年の助けがなければ相当まずい状況に陥っていただろう。
だが・・・
「ひとりでも、どうにか出来たわよ」
そんな言葉が口から飛び出す。
明らかな強がり。
その言葉は、青年の苛立ちを煽るだけだった。
冷たい視線が、少女を貫く。
「貴女には、まだ早い」
叩きつけるように言われて、少女は思わずかっとなって怒鳴った。
「子供扱いしないで!!わたしはもう、子供じゃないわ!!」
怒りの表情とは裏腹に、その瞳は今にも泣き出しそうに揺れていた。
それを見た青年は、一瞬驚いたように目を見張ったが、次の瞬間、不意にくすりと色っぽい笑みを零した。
「な、何を笑っているのよ!」
馬鹿にされたと思った少女が、激しく食ってかかる。
だが青年は、余裕の表情で少女を見つめた。
「お嬢様は、私に子供扱いされたくなくて、こんな無茶をなさったんですね」
「っ!?な、別に、そんなんじゃ・・・」
いきなり言われた言葉に、少女は動揺して視線を逸らした。
肯定しているも同然の態度に、青年は妖艶な笑みを浮かべる。
「そうですね。それならお望み通りに、女性として扱って差し上げます。
これ以上危ない事をされても困りますし」
言いながら伸ばされた手が、少女の顎を捕らえる。
驚きの浮かぶ少女の瞳を楽しげに見返し、青年は少女の唇に口付けを落とした。
「・・・ッ」
突然の事に硬直する少女。
それが我に返って押しのけにくる前に、青年は少女から離れた。
「ぁ・・・う、なん・・・」
少女は青年の触れていった唇に手をあてたまま、呆然と青年を見上げる。
言葉も満足に紡げないらしい。
混乱の極みにあるような様子の少女に、青年は口元に笑みを浮かべながらさらに追い討ちをかける。
「お嬢様。私のことが、お好きでしょう?」
「・・・ッ!!な、だ、誰が、あんたの事なんかっ!!!」
少女の顔が瞬時に真っ赤に染まった。
動揺に目が泳ぐ。
「お嬢様。お顔が真っ赤です」
「う、うるさいっ。違うっ」
「何が違うんです。愛しているくせに」
「・・・ッ」
青年は言葉を失った少女ににこりと笑いかけた。
「私が気づかないとでも、思っていらしたんですか」
そう言って再び少女に手を伸ばした。
それを払いのけようとする少女の手を逆に絡めとり、そのまま抱き寄せる。
少女が驚きに目を見張った。
「なっ。ちょっと待っ・・・」
「待ちません」
耳元で囁かれて、少女がぴたりと動きを止めた。
少女を抱きしめる腕は強く、その身体は熱い。
少女はいつになく激しい鼓動を自覚して、悟った。
もう、逃れようにも逃れられない。
捕らわれたのは、体ではなく。
この、心だ・・・。
いつになく静かになってしまった少女の髪を優しくなでながら、青年は少しだけ体を離し、少女と視線を合わせた。
真っ赤な顔に、潤んだ瞳。
思わずこぼれた笑みを隠すように、青年は再び少女に口付けた。
少女も抵抗せずに、それを受け入れる。
口付けがとけると、少女は恥じらうように、青年を胸に顔をうずめた。
「もぅ、なんなのよ。執事のくせに・・・」
泣き出しそうな声音。
青年は少女の思いを察し、口元に笑みを浮かべた。
ポンポンと頭をたたく。
「問題ありません。
アスター家の若君が使用人との結婚を決めてくれたおかげで、今は身分違いの恋がトレンディー。
それに乗るのも悪くないでしょう?」
少女はうつむいたまま、青年の服をきゅっと握った。
可愛らしい仕草に、青年は再び少女をきつく抱きしめる。
そしそのまま耳元に唇を寄せ、甘く囁く。
「大丈夫。愛してますから」
さらりと言われた言葉に、少女は顔を真っ赤に染めた。
「ううぅ。もううるさいっ。黙れっ」
「素直じゃありませんねぇ」
本気でない少女の抵抗を軽く抑えながら、青年はクスクスと笑う。
せっかく素直に大人しくなったと思っていたのに。
どうもこの少女の意地っ張りは、簡単に治りそうもない。
だが、それさえも愛おしい。
ふと悪戯心が頭をもたげて、青年はからかうような瞳で少女を見た。
「時にお嬢様。ものは相談なのですが・・・」
訝しげな顔を向ける少女を頬をすっとなで上げ、言葉を続ける。
「どうされます?これからここで、大人の階段登ってみますか?」
ちらりと後ろのベッドに視線を投げながら言われた言葉に、少女はばっと赤くなった。
同時に、思いっきり青年の体を突き飛ばす。
「だっ誰が登るかーッ!!」
必死の形相で叫ぶ少女に、青年は堪えきれずに吹き出した。
それを見て、少女がさらに怒りを募らせる。
少女が大人になるには、まだ少し、時間が必要なようだ。
以上ッス。
途中引っかかっちゃったよorz
しかも最初のやつ切れてるし(´∀`)
‘貴女様は一つも聞いていらっしゃらなかったのですか」’デス
は〜
GJ!
執事×お嬢様美味しすぎる。
萌え転がりました。ありがとう!
GJ!!
アスター家の若君と使用人は姉妹スレの二人ですか?
GJありがとう
>>43 全くもって無関係です。
アスターさん、いたのか・・・
本編(玻璃の家)が別にあって、今回投下分は本編後の外伝みたいな物です。
本編は使用人×お嬢様ですが、今回のは厳密に言えば
表向き使用人×お嬢様、その実婚約者同士です。
本編に息詰まって書いた物なので、本編フォローの為に
♂×♂(ショタ)シーンがあります。
そのシーンがある場所は、名前欄に『♂×♂あり』と
書き込みますので、NGワード等で飛ばして下さい。
視点が切り替わりが多かったり、1人称に近い3人称だったり
完璧な1人称だったり場面によって変わります。
登場メインキャラ
御厨百合亜:富豪の孫娘、17歳
大きな瞳とストレートロングの黒髪と数多くのコンプレックスの持ち主
須藤蒼雅(そうが):元使用人(役職色々)、24歳
昔美少年、実はとても口が悪い。過去のシーンは10年前
ほんのいたずらのつもりだった。
いつも冷静で自分を翻弄する婚約者をやりこめてやりたかっただけで、深い
意味は無かったのに、何故こうなってしまったのか…。
向かい合うように座る体勢で繋がったまま幾度か頂点に追いやられ、既にま
ともでいられないと言うのに、未だ離して貰えない。
逃れようと腰を浮かそうとするが、大きな両の手がそれを許すはずも無い。
「…も…許し…許して……」
ぽろぽろと際限なく大粒の涙が零れるが、大きく美しい青年は更に深く抱き
込む。
「ひぃ…っ!!」
これ以上無いと言うほどきつきつの胎内を更に抉るように突かれ、喉から引
きつったうような声が出た。
「お仕置きだと言ったでしょう……それほど簡単に許されると思って貰って
は困りますね」
使用人としての口調で、使用人にはあるまじき行為を行ってる青年は、そう
言うと細腰を掴む片手をそのまま下に移動し、双丘の奥に指を潜り込ませる。
「や……いや…やだ!! そこは…」
ゆっくりと柔らかく後ろの排泄器官をさすられ、びくびくと背筋が震えた。
いやいやをするように頭を振る。その度に、絹糸のような漆黒の髪が揺れ、
白い肌を打つ。
「いつもと同じことではお仕置きにならないでしょう、お嬢様…」
にっこりと微笑む青年に、怒ってる、と確信してしまった。普段絶対にしな
い表情に冷たい汗が吹き出るようだった。
「つまらない…」
呟くと、百合亜は行儀悪く深い溜息を吐いた。
視線の先には、少し前まで使用人だった青年が見え隠れしている。昔は細身
の美少年だったのに、今では長身でゴツイと言う程では無いが均整の取れた
体躯の持ち主だ。
使用人だった、と言うのは現在青年は百合亜の婚約者になっている。
しかし、当主である祖父の命でまだ公にはしておらず、青年はこれまで通り
祖父の秘書として働いていた。
だからパーティは嫌いだ。あの男が他人に愛想良くするのを見せつけられな
ければならないのだから。自分には滅多に愛想良くなどしないくせに。
「…蒼雅の馬鹿…」
新しい薄紫のワンピースも、青年の名前と目の色と同じ色の石が装飾された
ピアスとネックレスも全て彼のために選んだ。
真実はともかく、幼い頃から実の母に容姿を蔑まれてきた百合亜は、今まで
自らを飾りたてるようなことは無かった。メイクすら、今日の為に懸命に友
人から指導を受けてようやく一人で出来るようになったのに、肝心の青年に
見て貰えないなら意味が無い。
おまけに、遠巻きに沢山の視線を浴びている気がする。
やはり慣れないことをしたせいでどこかおかしいのだろうか。そう思うと、
途端に羞恥が芽生え会場にいるのも嫌になってしまった。
そそくさとホールから立ち去るとき、横目に青年が相変わらずにこやかに、
美しい女性の相手をしているのが見えた。
早足でエレベーターに乗り込むと、涙が溢れて止まらなくなり、そのままホ
テルの割り当てられた部屋に駆け込み、声を出して泣いた。
一通り気が済むまで泣くと、惚けたようにバスルームに入る。
メイクを落とし顔を上げると、目だけが大きい貧相な自分と鏡越しに相対し
た。
母は同性から見ても素晴らしく美しいスタイルの持ち主で、なぜ自分はそれ
に似なかったのだろうといつも思う。母としても人としても好きでは無かっ
たし、これからも好きになることは無いだろうけれど。
今日何度目かわからない溜息を吐くと、手早く服を脱ぎ捨て急いでシャワー
を浴びる。
ベッドルームは別だが、この部屋には蒼雅も割り当てられている。泣いたこ
となど知られたくなかったし、パーティ会場の華やかな雰囲気が纏わりつく
のも億劫だった。
ドライヤーで髪を乾かした後、着替えようとドレッサーを開いて呆然とする。
何かの手違いか着替えが用意されていなかったのだ。運ばれた荷物を慌てて
探すがやはり入っていない。
頭を一振りすると先ほどまで身に着けていたワンピースに再度袖を通す。
ピアスを付け直す頃には、もうこのまま屋敷に帰ってしまおうと決心してい
た。
フロントに頼めばタクシーもすぐに用意して貰える、と振り向いた瞬間、部
屋の扉前の黒影にギクリとした。
まだパーティが終わる時間には早い、いるはずが無いのに。
「浴室を使われたようですが……化粧まで直して、このような時間にどちら
へいらっしゃるおつもりですか?」
慇懃無礼、と言うのはこういうものだろうか。
口調は柔らかで丁寧なのに、冷たい声音と酷薄そうな薄い青の目に湛えられ
た光がそれを裏切っている。
「…どこ…にも…。着替えが無かったから、下に買いに…。蒼雅こそ! こ
んなところに来て良いの? まだ…」
「ああ、パーティでしたら政史様がおいでになりましたので、お役御免です」
そう言うと、長身がゆっくりと近付いてくる。
「お兄さまが?」
「ええ」
腰をぐっと引き寄せられ、胸の中に簡単に収められてしまった。
「お寂しかったですか?」
耳のすぐ側で囁かれ背筋がぞくりとしたのと同時に、自分の思考まで見透か
されていたことに顔が熱くなる。
「そっ…んなこと…ない…」
「ではなぜ途中で会場を出るなどと、はしたない真似を? 『お嬢様』」
最後の呼び方にびくりとした。二人きりだと言うのに、何故そんな呼び方を
されなければならないのか。
ふつふつと沸いた怒りのまま、平手を打つ。
「あ……」
青年の頬から高い音が鳴った。
「ごめ…ごめんなさい…蒼雅、ごめんなさい」
痛いのは相手だと言うのに、百合亜の方が狼狽してしまった。絶対に当たら
ないと思っていたのに。
この鍛えた青年相手に、自分の抵抗など児戯に等しいことは嫌と言うほど知
っている。
「お気が済まれましたか? 百合亜」
再び顔を近付けて、耳元に囁かれる。
青年の低いこの声に酷く弱いことは、既に見抜かれて久しい。わかってやっ
てることだ。
「いじわ……! んう!」
強引な口接けは毎度のことだ。
いつもこうやって搦め取られて身動き出来なくなる。
「ふ…んん…」
懸命に引き剥がそうとするが、力で適うわけもなく、両手を捉えられ、口中
を熱い舌で蹂躙されるのを受け入れるしかなかった。
心の中で自分の全てを知り尽くすようなこの男を罵りながら、それでも執拗
な舌の動きに頭がぼうっとしてくる。
開放された頃には、足に力が入らず青年に支えられて立つ羽目になってしま
っていた。
「蒼雅、唇痛い……」
呟くと訝しげな顔を一瞬するがすぐ思い出したように、ああと息を吐く。
「そういえば、今日は殆ど何も口にしてませんでしたね。乾燥して痛かった
ですか?」
気遣うように指で唇をなぞられ、うっとりとしてしまう。
「私、紅茶いれてくるわ」
「それは私の仕事ですよ」
フラつきながら備え付けのキッチンに行こうとするのを片手で制され、近く
のソファに座らせられるが、逆にその長身の手を掴む。
「偶には良いでしょう? 今日は蒼雅の方が疲れているのよ」
上目使いでやらせてくれと頼むと、今度は苦笑して頷いた。
「持っていくから、私の部屋で待ってて」
カップに紅茶を注ぎながら、どうしても自分は、大好きな、でも憎らしいあ
の婚約者に一矢報いたい気持ちが湧いてくる。
こちらの考えも、行動も全てお見通しだけれど、気持ちまでは絶対にわかっ
ていない。もしかしたらわかっていて、更に追いつめているのかもしれない
けれど。
そっと、スカートのポケットから美しい細工の施されたガラスの小瓶を取り
出す。もういない母の寝室に残されていた眠り薬だ。
ちょっと、ちょっとだけ悪戯してみよう…。
片方のカップに小瓶から数滴、淡い虹色に輝く水滴を垂らす。
目印の為に、もう片方は普段自分が好んで飲むミルクティーにしてしまう。
蒼雅はミルクティーは殆ど口にしないから、これで間違うことも無い。
眠り薬と言うのはこんなに簡単に効くものなのだろうか……。紅茶を口にし
て10分も経たずにベッドに倒れ込んでしまった青年を見つめ、困惑してしま
った。
不安になって慌てて呼吸を確かめたが死んではいない。
きゅと唇を噛むと寝ている青年の両腕を背中に回しシーツでぐるぐる巻きに
し、端をベッドの両柱に結び付ける。
後は目が覚めるまで待てば良い。
ベッドの端に座ると、そっと青年の顔から乱れた柔らかい髪を払う。
改めて、美しいと見ほれてしまう。
こんな綺麗な男の人が、自分の相手で良いのかといつも悩んでる。でも他の
女の人、いや男女含めてこの人に触れるのは許せないと思ってしまう。
何て醜い嫉妬なのだろう。
自分はいつかその嫉妬に飲み込まれてしまいそうで、それが怖かった。
部屋の鍵をそっと外す音がして、天使と過ごした幸せだった俺の気分は最悪
になった。
またかよ…。
男は部屋にそっと忍び込むと明かりを付けて俺が寝てるベッドにやってくる。
「蒼、蒼雅」
名前を呼ばれて体を起こすと、手に小振りなバイブを持ったガウン姿の、こ
の屋敷の主人の息子、使用人から若旦那様と呼ばれている男が立っている。
容姿の作りは悪くないのだが、本人の性質が滲み出ているのか全体的に締ま
りが無い印象を与える。
その男が、俺から布団をはぎ取り、性急に下半身の着衣をずりおろし、体の
中心に顔を埋めて子供のペニスを舐め捲る。
富豪の次期頭首がみっともないと言うか、子供心に滑稽に映った。
俺は抵抗するのも虚しいので、男にされるがままにする。
肉付きの良い太い指でしごき、べちゃりとした大きな舌で舐め回し、口で何
度も吸う。片方の手がその下の袋をいじり回していた。
この男が俺を初めて襲ったのは暫く前だ。その時は無理矢理押さえつけて、
行為に及んできた。
こう言うのは正直慣れていた。
両親が事故死して、施設に預けられたがその施設が最悪極まりなかったから
だ。
院長はいわゆるペドフィリア、小さい子供であれば女子でも男子でもどちら
でも良かった。奴は子供を犯すのを、子供に見せる行為がお好みだった。俺
自身は、奴の妻のお気に入りだったから、奴には口で奉仕、しゃぶられる、
尻に指を突っ込まれる位で済んだが、奴のお気に入りの男子は奴の無駄にで
かいペニスを尻の穴に押し込められ、流血するのは殆ど日常茶飯事だった。
そんな環境だったから、両親と一緒にいた頃は神童と言われた俺は、無駄に
性の知識が身についてしまったのだ。
勿論そんなことがこの時代にいつまでも続くわけが無い。
やがて、一人の女子が壊れた。院長の一番のお気に入りだったが、お気に入
りすぎて、心も身体もおかしくなってしまった。
詳しくは知らないが、漏れ聞こえた大人の会話によると一生まともな生活は
出来ないと言う。
当然、施設は閉鎖になり俺達子供は精神鑑定を受け、まともと診断された子
供は新たな施設に移されることになった。
あんな行為をされて、見なくてもいいこと知らなくていいことを知った子供
が、数日の診断でまともとか、大人って馬鹿ばかりだろ、と思うしかなかっ
たが、それこそ子供の俺に何が出来るわけでもなかった。
「…くう…!」
呻くと同時に、俺は精液を放った。男はそれを丁寧に舐め取ると、今度はの
そりとベッドに上がり、俺を跨ぐと既に勃ち上がっている己のペニスを取り
出し俺の顔に突きつける。体躯に比して小さい気がするが、それは俺があの
院長のデカブツを見ていたせいなのか。
俺は、いつもどおり臭いのきついそれを両手で掴み舌と口で奉仕する。精液
を飲み込むのは気持ち悪いが、早漏のこの男はすぐに放つから、拘束されて
いる時間が短くて楽だ。
一発放つと、今度は俺を抱え上げ逆向きにして自分の上に座らせる。いわゆ
る背面座位と言うヤツだ。
一旦腰を下ろすが、すぐさま片手で両膝を持ち上げ、尻を浮かせる。
ブブブ、と聞き慣れた電動音がした。
空いた片手が浮いた尻に回り、尻の穴をほぐすようにさすり指を差し入れる。
流石にこの時ばかりは喉がひきつる。
指は浅く深く何度も動き、抜かれたと思ったら今度は規則的に振動するバイ
ブを挿し入れられた。
男はその時の俺の苦痛に歪んでいるだろう顔つきに満足するのか、喉を鳴ら
して笑い、膝裏から手を離し俺の身体を自らに落とす。
その振動の痛みで背がしなる。
バイブは俺の尻穴にペニスを突っ込む代わりだろう。万が一俺が病院に運び
込まれでもしたら、このいかがわしい行為がバレて一巻の終わりだからな。
その代わりに目の前には、俺のペニスと男のペニスがぴたりと並んでいる。
男は俺のシャツをまくりあげ、耳をしゃぶりながら俺の身体をさすり、乳首
を弄ぶ。ここまで来るとかなりの興奮なのか、いつもすさまじく息が荒い。
いい迷惑だ。
興奮した男は俺の腰を掴み、ペニス同士が擦り合うように俺を上下に揺さぶ
る。ああ、気持ちわりー。
俺自身はいたってノーマルだ。いや、この年にして、もしかしたらロリコン
じゃないのかと自分自身が心配になっているところだが、男より女のが興奮
する。むしろ男じゃ感じない。それもこの年でどうなのかと思うが。
だから、男との行為の最中は初めから最後まで、誰でもいい、女を想像する。
大抵、あの院長の妻の記憶だったのだが……。
そうじゃなきゃ、イクのに時間が掛かる。子供としてその思考はどうなのだ、
と冷静な時に心の中で突っ込むが、それこそ男との行為にそんなに長時間取
られてたまるものか。
俺と男は全く違うことに興奮し、高みへと昇る。殆ど同時に精液を放つ時、
俺の脳裏には幼い天使が浮かぶ。俺自身が俺達を弄ぶ大人と同じような行為
を頭で描いてイクことに罪悪感を覚え、毎度胸が痛む。
男はそれで満足するのか、ぐったりとした俺を置いてそそくさと部屋を出て
いく。手元に何枚か――多分いつも通り10万だろう――の札を置いて。
こういうのは、売春って言うんだったか。
そんなまともじゃない行為を繰り返していた日々の中、俺は気付いた。
男が、俺が天使と思っている少女、男自身の娘に向ける視線に。
劣情とも言うべき感情の色だった。
背筋に冷たいものが走る。
いつかこの男は、俺に向けた毒牙を目の前の幼い少女に向ける。いや、俺は
娘を襲えない鬱憤を晴らす道具だったんだろうと思い至った。
男が、気弱なくせに欲望に我慢の効かない性質だと言うことは俺が一番良く
わかっている。
悩む暇なんかなかった。
俺はそのすぐ後に、男の父親、つまり屋敷の主人の部屋に向かっていた。
「爺様、話がある」
当主に向かって、子供なだけに仕事はまださせられていなかったとは言え、
使用人の俺がこんな口調で話すのは、最初に出会った時、二人きりの時はそ
うしろと言われたからだ。
「若旦那、あんたの息子のことだ」
爺様は俺のこの言葉を聞いた途端、目を細めて溜息を吐くとこう言い放ちや
がった。
「やっと来おったか」
つまり、この糞爺は息子と俺とのことを知っていたってことだ。
胸くそ悪いってどころの話じゃない。
「何故、もっと早くに来なかった?」
「……来てどうする?」
「困ったら、子供は大人に助けを求めるものだろう…」
「へぇ……で、誰が俺を救ってくれるんだ?」
アンタか? そんなワケねーよな、言いかけた後半は自重する。
俺はガラにも無くケンカ腰になっていた。
例えどんなに親切にされようと、俺は誰も信じちゃいない。目の前の俺を引
き取ったこの爺もだ。
根本的なところで、俺を救う人間などいるはずが無い。所詮血の繋がらない
他人ばかりだ、俺を最後に救うのは俺自身だけだ。
「では何故今ここに来た?」
何言ってんだ? まるで俺が助けを求めてくるのが当然のことのような会話
と、爺の憐れむ表情にイラつく。
「あんたの孫、の話だよ」
車椅子の上で、老人の身体が傾いだ気がした。
「政史…では無いな……百合亜か…」
切れ者の老人は、少ない俺の言葉で何もかも理解したんだろう。
唯でさえ老けているのに、一気に10歳位老け込んだように見える。
当然だろう、息子が幼い孫を襲うぞ、なんて知らされたらどんな強心臓だっ
て冷静になんてなれるわけもない。
俺は流石に気の毒になってその場を離れた。
それから暫く夜の行為が行われないと思ったら、唐突に男の訃報を知らされ
た。死因は心不全だと言う。
正直、ここまでやるとは思わなかった。心不全など、病気でも何でも無い。
爺が自分の息子を殺すよう誰かに指示した、俺はそれを疑わなかった。
とは言え、気色悪い思い出しか無い男の死に、特別に何か思うこともない。
追求する気など毛頭なかった。これで、天使が穢されずに済むのだから、そ
れで構わない。
屋敷が喪に服すある日、爺に呼ばれた。
「蒼雅、お前にはこれから勉学の他に上流階級の教育と体術を叩き込む」
唐突に何言い出すんだこの爺は。しかもこのタイミングで。
「はぁ!?」
この裕福な老人は、引き取った俺を普通に学校に通わせてくれた。自分で言
うのも何だが、俺は頭が良い。少なくとも、この家に引き取られてまともに
学校に通わせて貰うようになって2年の間、学年トップを保っている。全国
でも成績上位の中学での優等生なんだから、なかなかのものだろう。
使用人としての仕事と言えば、可愛らしい孫娘の遊び相手をするくらいだ。
もっともここ最近はその孫娘に避けられているんだけどな。何か少女に嫌わ
れるようなことをしたっけか?
「否やは許さん、これは命令だ」
こないだまで憔悴していた爺は、いつの間にか生気を取り戻していた。
まぁ、命令と言われれば面倒を見て貰ってる俺が拒否する言われは無い。
しかし、酔狂な爺さんだ。
「蒼雅よ、お前は百合亜をどう思う?」
「は?」
「……いや、何でもない。早すぎる質問だな……」
爺さんはそう呟くと、車椅子を操って背を向けた。
俺は老人の気持ちがさっぱり理解出来ずに自室へと戻る羽目になった。
次の日から早速教育カリキュラムが組まれていたのは辟易したが、今となっ
ては爺さんの数々の手回しには感謝するしかない。
手の平の上で転がされる人生だったが、結果は上々だ。
嫌な夢だ。思い出したくも無い過去を振り返るなど、ある意味拷問だろう。
「くっ」
妙に熱い下半身に目を開けると、婚約者殿が不安気に覗き込んでいる。
喉がグビリと音を立てた。
たく、どうしちまったんだ。顔を見ただけで、押し倒して突っ込みたい、な
んてどこの発情期の獣だよ。
……いや、理性で抑えていないと普段の俺もあんまり変わらないか……。で、
その肝心の理性がききそうにないのはどうしたことだ。
箍が外れれば、俺も俺を弄んだ連中と同じか、下手したらそれより性質が悪
い自覚がある。
「…百合亜…、腕を外してくれませんか…?」
取りあえずお願いしてみる。自分の寝室に移ろうにも、両手を後ろ手にベッ
ドに固定されていて身動きが取れない。
普段ならこんな拘束など自分で外せるのだが、下半身に神経が行ってしまい、
腕に集中するのは無理そうだ。
そこまで思って、ピンときた。先ほど飲んだ紅茶に何か薬物を混入されてい
たと言うことに。おまけに、状況を鑑みると犯人は間違いなく、この目の前
の愛しい少女だ。
「ダメ……いつも蒼雅に……だもの。今日くらいは私が意地悪するわ」
ああ、もう勘弁してくれ。顔を赤らめながらそういうこと言うんじゃねーよ。
ただでさえ血液が集中している場所が、凶悪な可愛さに首を擡げるのがわか
る。くそ、後で覚えてろよ。
「…で、私に一体どんな毒を盛ったんです?」
本当を言うと、今の身体の状態に覚えがあった。だが、いくら何でもこのお
嬢様が持つような代物じゃない。持っていた女は既に日本にはいないのだ。
「そんなの使ってないわ! お母さまの眠り薬よ。部屋に残されてたの」
言いながら、目の前に出された小瓶は良く見知ったものだ。中に残っている
液体をガラス越しに見ながら、呆れて物も言えなくなった。
このお嬢様の世間知らずは今に始まったことでは無いが、それしたって、一
般的に処方される眠り薬に、液体のものは滅多に無いことくらい知ってて欲
しかった。
おまけにお嬢様ときたら、既に俺の服を脱がそうとしている。
「本気……ですか?」
顔の下で懸命な表情でボタンを外そうと四苦八苦している百合亜に確認する。
「…お父さまも…お母さまもしたのでしょう?」
「!!!」
なんてこと言い出すんだ、この女は……。
よりにもよって、そんな理由かよ!
絶対、後で思い知らせてやる。
「……百合亜…上は良いですから、下を…」
まだ上着のボタンを外しただけだが、このまま行けば一晩中ボタンにかかり
っきりになるような気がして、俺は懇願してみせる。
こうなりゃ毒を食らわば皿までだ。この、俺に取ってはトラウマのような状
況を楽しむ他は無い。なにより相手は、薄汚い男でも女でもなく、手に入れ
たくて仕方なかった俺の天使だ。
ベルトにすら手間取ってる百合亜を見つめ、腕が自由になったら、滅茶苦茶
に泣かしてやる、と心に誓った。
ゴメンナサイ、タイムアウトなので続きは後日投下します
あともう少し続きます
あの液体は何だったの?
>>56 続き楽しみに待ってます
普段おとなしいお嬢様が攻めるのはたまらんです
>>57 質問は最後まで読んでからでもいいんでない?
というか大方の予想はつきそうなもんですが
そういうのは職人さん本人の許可取ってからやれよ。
直リンよくないからとかそう言う問題じゃねぇだろ。
そう言うのは自分だけでこっそりと楽しんでくれ。
ただでさえ過疎なのに、嫌がって職人さんが
来てくれなくなったらどうするんだ、
いま高度な荒らし&晒しを見た
ほしゅ
「おい、変態」
神様ってもんがいるなら今が奇跡の見せ所。さあ、俺の手を縛り付ける忌々しい縄を解いてくれ。天に向かって願っても縄が外れるなんてことはなく、俺は変わらず間抜け面を晒すしかないわけで。
「お嬢様に手ェつけてたっつーお前の不敬にゃ目つむってやっからよ。とりあえずこの縄ほどけや」
俺の存在など忘れてましたと言わんばかりの顔で桐生は俺を見た。浮かんだ笑みが本当に腹立つ笑い方で殴りたくてたまらない。だが、顔だけはいい。ムカつくが顔だけは本当にいいんだ、この男は。
「羨ましいですか?」
「ぜんっぜん」
「あなたがお嬢様に懸想していたことくらい存じておりますよ。羨ましいですよねえ、あなたの憧れのお嬢様を好きなときに好きなだけ抱ける私が」
「……死ね。ロリコン。変態。サディスト」
桐生が悪役じみた笑い声を上げて髪をかきあげる。映画に出てくる変態美形科学者みたいで妙に絵になるところが腹立たしい。というか、こいつが視界に入るだけでイラつくという事実についさっき気付いた。
「そうなの?」
弱々しい声が聞こえ、俺は自分でも情けなくなるほど表情が強張っていくのを感じた。
さっきからなるべく視界に入れないように気遣っていたのに、名を呼ばれては見ないわけにはいかない。俺は溜め息混じりにお嬢様の方へ顔を向けた。
「お前、わたくしを愛しているの?」
絶句。
そりゃあお嬢様は俺の天使だ。ちっちゃくて、やわっこくて、めちゃめちゃ可愛い。俺が守る。俺だけの天使――のはずだった。数時間前までは。
今の今まで変態野郎に犯されてたとは思えないほどに愛くるしいお嬢様を見て、俺は柄にもなく言葉につまった。
やっぱりだめだ。お嬢様は俺の天使だ。俺だけの天使じゃなくても俺の天使にかわりない。
「あー、なんつーんですかね、お嬢様。あんたは俺の天使なんですよ。不可侵領域っつーか。愛とかなんとかよりもむしろ崇拝? みたいな」
ごにょごにょと答えれば、変態が声高らかに笑う。お前、マジで死ね。
「これは傑作だ。いや、ロマンチシズムを感じずにはいられませんよ。顔に似合わず乙女ですねえ。ふふ、ははは…ハハ、あーっはっはっはっ」
「うるせぇよ! お前に俺の崇高な思いがわかってたまるかっつーんだよ! いいからとっととほどけ! くそっ、死ね変態!」
「否定はしませんよ。私はロリコンで変態でサディストですから」
「根にもってんじゃねーよ! ねちっこい奴だな」
お嬢様の視線が怖くてそっちを見れない。天使だなんて口走るなんざ俺は本当にアホだ。
早くここから逃げ出したいのに、机の脚に括りつけられた縄は少しも緩まない。
「天使だなんて、わたくしには過ぎた言葉ですわ。でも、嬉しい」
桐生に悪態をついていた俺は思わず耳を疑った。嬉しい。嬉しいとお嬢様は言ったのか。嬉しいって。
じーんと体の奥からこみ上げてくるものがある。
「では、その喜びを表してみてはいかがです」
言うなり、桐生はお嬢様の体をベッドから転げ落とした。
「馬鹿! 怪我したらどうすんだ」
「しませんよ。この女は丈夫にできてるんですから」
桐生に促されてお嬢様はのろのろと這って俺に近づく。反射的に伸ばしていた足を自分の方へ寄せる。膝を立てたが、お嬢様は構わずに俺の足に手をかける。
「お、お嬢様?」
今までのやりとりからお嬢様の目的にだいたいの予想はつくが認めたくない。お嬢様は俺の天使だ。不可侵領域だ。
「お礼がしたいの。動かないで」
命令され、俺の体はぴたりと反抗をやめた。忠犬の性かと思えば、うっかり涙が出そうになる。
なるべく反応するまいと俺は必死の抵抗で目を閉じて頭の中で九九を唱える。頼むから、大人しくしててくれよ。
俺の気持ちなど露知らず、お嬢様は慣れた様子でベルトを外し、ズボンのジッパーを下げた。
「桐生のより小さいわ」
萎えて縮んだ俺のモノを取り出して、お嬢様が呟いた。
「可愛い」
見えない分想像が膨らむというもので、九九は四の段すらまともにできなくなっている。お嬢様の吐息がかかるだけで血が滾る。
「んっ」
唾液をまぶされ、ぬるりとした感触が柔らかな手のひらで全体に広げられる。
しごきながら、お嬢様は躊躇いもなく先端をくわえる。
あのお嬢様が俺のモノをくわえている。ありえない。お嬢様には清らかなままでいてほしかったのに、自分からすすんで男に奉仕するなんぞ俺の天使のすることじゃない。しかも上手い。気持ちいい。
たまらずに目を開ければ一心不乱にモノをしゃぶるお嬢様が目に入る。それを認めた瞬間、俺は俺の天使を汚してしまった。
「あ、たくさん……まだ、出てる」
ありえないことに俺の精液を飲み下していったん口を離したお嬢様だったが、残滓を吸い取るように再びくわえだす。
「お嬢様に奉仕してもらうなんて二度とないチャンスですよ。あなたには過ぎた幸せですよね」
お嬢様の背後に膝をつき、桐生がいやらしく笑う。
「他の男のものをくわえてこんなに濡らすなんて、お仕置きが必要ですね」
ぴしゃりとお嬢様の尻を平手で打ってから、桐生は尻を掴んでモノを一気に突き入れた。
「ひっ……あァああああああっ!!!!」
俺のモノから口を離し、お嬢様は挿入の衝撃に耐えている。
桐生は容赦がなかった。お嬢様が落ち着くのを待つでもなく、自分の欲望に正直に腰を振る。大きく腰を突き入れる度にお嬢様の目からは涙がこぼれた。
それでも、桐生の動きに馴染んでくるとお嬢様は俺への奉仕を再開させる。しゃぶりながら突かれることに快感を覚えているようで、お嬢様は虚ろな目をしている。
「この女は天使なんかじゃありませんよ。男なしじゃいられないんです。ほら、こんなにされて悦んでる」
桐生がお嬢様の髪を掴み、荒々しく頭を動かす。俺のモノが喉の奥に当たりそうな動きにお嬢様が心配になるが、確かに悦んでいるように見えた。
快感で頭がかすむ。俺の天使にしゃぶらせてることも、目の前で俺の天使が犯されてることも全部現実味がなさすぎて夢のようだ。だけど、体に与えられる快感だけは生々しく本物だ。
倒錯的な行為に惑わされ、俺は二度目の精をお嬢様の口中に放った。
「次は中で出しますか?」
お嬢様の体から凶暴なモノを抜き去り、桐生が悪役の笑みを浮かべる。
俺が返事をするよりも早くお嬢様が俺の腰を跨ぐ。
ぬめった入り口に先端が擦りつけられるのを感じながら、俺は俺の天使の妖艶な微笑に見惚れていた。
おわり
ほしゅの一言じゃ味気ないかと書いてみたんだが読み直すと変態×忠犬みたいだ。反省してる。保管庫はいったん保存すると消せないみたいだから保存は丁重に辞退させていただく。
ちょっちょっちょ!
めっさ好みのシチュなんですが
続ききぼんぬ
波璃の家 悪戯 好きな展開だ、GJ!
本編も気になる・・・
>>66-69 めちゃめちゃGJですよこのやろー
お嬢様が何歳くらいなのか気になった。
73 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 01:27:14 ID:IFK1dLxh
下がり気味なのでage
保守がてら小ネタでも投下。
「お前を買ってあげる」
それはつまりこの少女の所有物になるということ。
「お前がこの手を取るならば」
小さくて無垢な手は汚れを含んだこちらに差し出される。幼いながらに毅然とした凛々しい少女は可愛らしい唇をゆるりと細めた。問われたのは少女の隷属になるか、ならないかということであり、普通の駆け引きとは程遠い。
否、こんな奴隷市場にいることからして「普通」からかけ離れている。
「わたしはお前を助けてあげる」
見つめてくる少女の瞳は純粋さとどこか熱情を孕んでいた。
惑わす瞳、とはこの瞳なのだろうか。
ぼんやりとした思考の中、ふらふらと伸ばされた薄汚れた手を小さくて柔らかな白い両手が包む。そして少女は嬉しそうに少年に微笑みかける。
「契約せいりつね。ーーわたしのウィルド」
この瞬間、俺はこの少女に買われ、隷属になることが決定した。ご丁寧に名前まで頂いて。
物心ついた時から奴隷市場やら男娼として生きてきた俺には今更酷いことなどこれ以上に無いだろう。
「わたしの、ウィルド」
甘く微笑む少女の手は荒んだ心を溶かしていく気がする。口角が自然と持ち上がる。今更酷いことなど無いのならば、きっと期待していいのだろう。
少しだけの、幸福を。
小さなマスターが齎してくれるだろう、暖かさを。
だから唇からこの少女に伝えるのは本心だ。
「御命令を、マスター」
そして俺は、この少女の所有物にーー数年後には何故か執事というものにーーなったのだ。
GJ
さあ、続きを書くんだ!!
男召使×女主人
多分長くなるけど過疎ってるので投下。成るべく短縮する。
エロは次回から。興味ない人はスルーよろ。保管庫は遠慮する。
三月。穏やかな日差しの、午後の昼下がり。
「ねぇ、春名」
白壁の豪奢な洋館のテラスでティータイムを過ごしていた藤代雪は、不意にカップを置き傍らに立って
いた細目の男の名を呼んだ。呼ばれた春名恭介はカップに紅茶を注ぎながら「はい」と応える。
「久し振りにオセロをしない? まだ捨てていなければあるはずだわ」
「私が……ですか?」
「いけない? 前はよく練習に付き合ってくれたじゃない」
「ですがあれから一度もやっておりません、下手でお嬢様のお相手にはならないかと」
「ただ遊ぶだけ、ゲームよ。久し振りに春名とゆっくり話をしたいなと思って」
言って「お願い」と微笑んだ雪に、春名は少し困ったように笑い返して「畏まりました」と頭を下げた。
「オセロをするのも三年ぶりかしら……高校生の頃はよく相手をしてもらったわよね」
雪の細指がオセロの駒を白側に裏返していく。
「ええ。確かご学友の間で流行っていらしたのでしたね。裕生様や私が練習のお相手を。
私はいつも負けてばかりでしたが」
「お父様はこういうゲームに強いのよ。相手が娘でも手加減をしてくれないし。春名は優しいわ」
「優しい? はは、まさか。私は下手なだけで−−」
「嘘」
盤上を眺めていた春名は顔を上げた。
柔和な笑みを浮かべ自分を見つめる目は、鳶色と緑が混ざったような不思議な色をしている。
この藤代財閥会長の一人娘は生まれつき色素が薄く、長い髪も黒より茶に近い。雪という名はその
肌の白さからとったという。儚ささえ感じるその容姿には似合いの名前だった。だがその美しさと引き
換えに体が弱く、雪の父藤代裕生は殆ど雪を外に出さなかった。勤め先にまで干渉して、この春大学
卒業だというのに結局雪は就職できなかった。恐らく結婚するまで家から出す気はないのだろう。
そんな環境で人間関係の駆け引きや損得を知らないからだろうか、雪は人への接し方が恐ろしく
ストレートなのだ。何のてらいもなく真っ直ぐに目を見る。心の奥底まで見透かされそうな緑色の
澄んだ視線が、春名はなんとなく苦手だった。
「手加減をしてくれているでしょう? あなたが賢いことは皆知っているもの」
「お嬢様は私を買いかぶっておいでですよ。三十半ばの私が貴女に勝てるわけが……」
「歳で勝ち負けが決まるならお父様はどうなるの。怒らないから本当の事を言って」
「……仰る通りです」
「やっぱり。でもどうして?」
「仕える主人に召使が勝ってはいけないでしょう」
「……そういえばそうね」
思い出したようにそう言って、雪は笑った。
「ねぇ春名」
「なんでしょう?」
「私には嘘をつかないでね。私、春名の事信頼してるのよ?」
「……承知いたしました。もう嘘は申しません」
−−もう嘘はつき尽くしているのだから。
微笑の裏側で春名は思う。
五年ぶりのオセロは、春名の勝ちだった。
春名が全てを失くしたのは二十二年前。十三の時だった。
父の経営していた会社が藤代裕生に乗っ取られたのだ。
失意のうちに父は首を吊った。母はぼろぼろになるまで働き春名が十六の時死んだ。
「春名」という名も養子先のもので元々の名ではない。「春名」の両親も三十の頃、立て続けに死んだ。
大学を卒業して直ぐにこの家の召使になった。十三年間本当の自分を隠し通して、裕生が目に入れても
痛くないほど可愛がる愛娘の担当を任せられるまで、信頼も厚い。
屋敷のどの部屋に出入りしても、公になれば裕生にとって不利な情報を探しても、疑われも気付かれも
しないほど。
春名は思う。
復讐は良くないなどと世間は言うが、家を、家族を、名前さえも奪われた人生を、今まで支えたのは
藤代裕生への怨みだった。復讐こそが、春名を生かしてきた。
−−今では、感謝すらしている。
だから裕生には父と母と自分から奪った分以上のものを贖ってもらう。春名はずっと、そう心に決めてきた。
五月、藤代家は俄かに慌しくなった。
十月に藤代の銀行と立花財閥の銀行が提携する祝賀会が開かれることになった為だ。
準備をしている雪を迎えに、春名は来客用のホールを見下ろせる廊下を歩いていた。まだ会が始まっても
いないのに祝いの花で飾られたホールは熱気に満ちている。来客に料理やドリンク類を勧める同僚を眺め
ながら、春名は冷たく微笑んだ。まだ一部の人間しか知らないが、業績が悪化している藤代の契約条件は
圧倒的に不利なものだった。今回の会も半ば提携先の立花財閥のご機嫌取りだ。
−−せいぜい最後の栄華を味わっておくがいいさ。
廊下の突き当たりの階段を上り、三界廊下の突き当たり。雪の部屋のドアをノックした。
「どうぞ」
「失礼いたします」
一歩部屋に入った途端、甘い花のような香りが鼻をくすぐった。恐らく香水の類だ。化粧台の前に座り、
メイドに髪を結ってもらっていた雪と鏡越しに目が合った。
「そろそろお時間です」
「わかりました」
ありがとうとメイドに声を掛け、雪は立ち上がった。
細身の白いドレスだった。純白の比較物があってやっと雪の肌にも色があることが分かる。
普段は薄化粧だが、今日は大勢の客が集まるとあって口紅の色も華やかだ。元の顔貌が整っているから、
しっかり化粧をすると敵の娘だというのに美しいとしか言い様がない。
「春名?」
不思議そうな雪の声に、春名は我に返った。
「ああ、いえ。ついつい見惚れてしまいました」
「まぁ、ありがとう」
春名の言葉に雪は嬉しそうに顔を綻ばせた。
−−よもくあの親からこんな娘が生れたものだ。
何故か憂鬱な気分になる自分が不思議だった。
「それでは藤代財閥、立花財閥の提携を記念いたしまして、乾杯!」
裕生と立花財閥の会長、立花義之の音頭でホールの客達が一斉にグラスを掲げた。
雪をホールへ案内した後、春名は給仕の仕事についた。
「どうぞ」
「ああ、すまんね」
換えのグラスを受け取った立花義之は春名に笑みを向けた。応えて春名も微笑する。
裕生は知らない。春名が義之と手を組み、立花と藤代の情報をやり取りしていること。裕生の法に触れるような行為も
義之が把握していること。検察が裕生を探っていること、そして恐らく提携の寸前に裕生の告訴に踏み切ることも。
裕生の逮捕で混乱した藤代を乗っ取る。それが義之の狙いだ。それを利用して、春名もまた復讐できる。
カウンターで空になったシャンパングラスを取り替えながら、ふと視界の隅に映った白い影に気をとられ、春名は視線
だけをそちらに向けた。裕生が雪を誰かと引き合わせている。中々端整な顔つきの男だ。
裕生が、溺愛している娘と男に引き合わせているのを見るのは初めてだった。
−−見覚えがある。確か、立花弘樹。
義之の息子だ。納得がいった。家族的に繋がりができれば上も下もない。娘を道具にして立花を抱きこむつもりなのだ。
−−どこまでも腐った男だ……ん?
誰かに声を掛けられたのか、裕生の視線が立花の息子から逸れた。つられて雪もそちらに向く。
ゆっくりと裕生と雪の間に見知らぬ男が割り込んだ。どうやら知り合いらしい。これといって何の特徴もない、のっぺりと
した顔だった。
−−どこかで見た気がする。
恐らく裕生の来客だったと思うが、誰だったかよく覚えていない。雪も顔見知りらしく、男に笑顔を向けた。二、三何かを
言って、男は雪を他の来客たちの元へ連れて行ってしまった。仲を取り持ついい機会を奪われた裕生は僅かに苦い顔を
したが、直ぐに機嫌をとろうと立花の息子に笑顔を向ける。
心の中で、嘲笑が浮かぶ。
−−精々必死になるがいいさ。
あと少しだ、裕生。お前は、確実にその地位から堕ちるのだから。
雪をホールへ案内した後、春名は給仕の仕事についた。
「どうぞ」
「ああ、すまんね」
換えのグラスを受け取った立花義之は春名に笑みを向けた。応えて春名も微笑する。
裕生は知らない。春名が義之と手を組み、立花と藤代の情報をやり取りしていること。裕生の法に触れるような行為も
義之が把握していること。検察が裕生を探っていること、そして恐らく提携の寸前に裕生の告訴に踏み切ることも。
裕生の逮捕で混乱した藤代を乗っ取る。それが義之の狙いだ。それを利用して、春名もまた復讐できる。
カウンターで空になったシャンパングラスを取り替えながら、ふと視界の隅に映った白い影に気をとられ、春名は視線
だけをそちらに向けた。裕生が雪を誰かと引き合わせている。中々端整な顔つきの男だ。
裕生が、溺愛している娘と男に引き合わせているのを見るのは初めてだった。
−−見覚えがある。確か、立花弘樹。
義之の息子だ。納得がいった。家族的に繋がりができれば上も下もない。娘を道具にして立花を抱きこむつもりなのだ。
−−どこまでも腐った男だ……ん?
誰かに声を掛けられたのか、裕生の視線が立花の息子から逸れた。つられて雪もそちらに向く。
ゆっくりと裕生と雪の間に見知らぬ男が割り込んだ。どうやら知り合いらしい。これといって何の特徴もない、のっぺりと
した顔だった。
−−どこかで見た気がする。
恐らく裕生の来客だったと思うが、誰だったかよく覚えていない。雪も顔見知りらしく、男に笑顔を向けた。二、三何かを
言って、男は雪を他の来客たちの元へ連れて行ってしまった。仲を取り持ついい機会を奪われた裕生は僅かに苦い顔を
したが、直ぐに機嫌をとろうと立花の息子に笑顔を向ける。
心の中で、嘲笑が浮かぶ。
−−精々必死になるがいいさ。
あと少しだ、裕生。お前は、確実にその地位から堕ちるのだから。
九月。藤代の豪邸を、おびただしい数のカメラクルーが取り囲んだ。
受託収賄、贈収賄などの疑いで裕生が逮捕された為だ。他の役員にも同様の嫌疑がかけられているらしく、藤代の屋敷は
もちろん、藤代系列の会社にも捜索が入った。弁護士が保釈の手続をしたらしいが、まだ勾留が続いている。
提携直前の逮捕に、藤代財閥には激震が奔った。関連企業の株価は軒並み下がり、立花は損害賠償請求の用意をして
いるらしい。義之の算段どおりだ。
春名は屋敷にいなかった。一週間前に辞表を出し、郊外の1Kの安アパートに引っ越していた。
藤代の不正の証拠の大部分は春名が握っているのだ、証言台に立つことになる。そうなればもうあの屋敷にいることはでき
ないし、最早いる必要もない。テレビすらないがらんとした部屋だった。空調はないが夏の気配もそろそろなくなり始めてそんなに
暑くはない。畳の上に寝転がり、ぼんやり木の天井を見上げて春名は思った。
−−案外、あっけなかったな。
十数年かけて集めた証拠だ。裕生の実刑は確実。賠償のために財産も失うだろう。春名の復讐は完成する。
その代わり、主人を売った春名の信用は地に落ちる。世間的には評価を得られるかもしれない、だが世の中の支配者層が
必要とするのは、不正を許さない高潔な勇者ではなく、従順な歯車だ。立花は報酬を支払ってくれるだろうが、復讐に生きる
ような男を雇うとも思えない。この先の生活をどうするか−−−−。
−−……もうどうでもいいことか。
裕生への復讐。それが全てだ。証拠を提出し、証言をし、裕生が罰せられれば、もうやることはない。今まで働いた蓄えと
立花からの報酬で裁判が終わるまでは食いつなげるだろう。その先の生活の心配などする必要などない。
思って目を瞑ったときだった。扉を二回、ノックする音が聞こえた。
「……?」
春名は怪訝に思いながら起き上がった。この住所は誰にも教えていない。
−−新聞の勧誘か何かか。
「はい」
ドアを開けた瞬間、緑がかった瞳に目が捕まった。整った色白の顔が安心したように微笑んだ。
「ああ、よかった。住所を間違ったかと思ったわ」
「……お嬢様……?」
間違いなく、雪だった。白いコートを着た雪が、目の前に立っていた。
「上がらせてもらってもいいかしら?」
「え、ええ。どうぞ」
我知らず、口が動いた。この十数年で身体に染み付いた習慣で勝手に動く身体に呆れて、動転していた春名は僅かに
冷静さを取り戻した。
何故ここにいるのか、何故ここが分かったのか聞かなければならない。
そして、何故雪が来たのかも。
「お邪魔します」
警戒のない白い背中を見つめながら、春名は後ろ手で音もなくドアの鍵を閉めた。
GJ!
続きをwktk
一刻も早く続きをくれ!GJ!!
GJの予感がする…続き、続き!
わっふるわっふる
85 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 22:01:52 ID:bWPnkk2K
続きが待ち遠しいです!
はやく!じゃないと続きを投下してくれるまで俺は息しないぞ・・・
死ぬぞw
自分のコピペミスを見つけた時って軽く鬱になるなorz
まぁそれはそれとして86はちゃんと息をしとけw
まだ開けてもいなかった引越しの荷の中から、急須と湯飲みを探して茶を入れた。
「申し訳ありません、お嬢様がいらっしゃるなど夢にも思いませんでしたのでつまらないものしか出せませんが……」
「そんな。気にしないで。不躾に訪ねた私が悪いんだもの」
ちゃぶ台の向かいに座った春名に、背筋をぴんと伸ばして正座した雪が、恐縮したように言った。
何とも異質な光景だった。傷んだ畳。染みのある襖。寝るのと食事以外、何の用途もないような薄汚れた部屋で雪だけが
白い。唇の色がいつもより薄く、口紅がついていないのだと気が付いた。雪が化粧を忘れるなど珍しかった。赤味のある色が
少ないせいか、色白の顔は一週間前より少しやつれた風に見える。
「どうしてここが? 引越し先は誰にも言わなかったはずですが……」
「……怒らないで、聞いてくれる?」
春名は頷いた。
「父の知り合いにね、探偵をやってらっしゃる方がいるの。春名に無断で良くないとは思ったんだけど、引越し先を調べて
いただいたの」
「……探偵……」
−−どこまで知った?
調べたのは住所だけか? その手の仕事に従事しているなら今回の計画に関することも知ったかもしれない。立花義之と
面識がある以上のことが世に知れれば影響は大きい。
「春名?」
不思議そうな雪の声に、我に返った。顔を上げると直ぐにあの緑の目と視線があった。何か言いたかったがいい言葉が
思いつかない。まるで視線に口を封じられているようだった。
「ごめんなさい、やっぱり良くないことよね」
「ああ、いえ……別に調べられて困るようなこともありませんし」
だがもしその探偵が計画について知ったとすれば、藤代の人間に教えないはずがない。万が一この何も知らない娘を
気遣っているにしても、雪はこうして訪ねてきている。父親を陥れようという男が相手なら、止めるなり何なりするはずだ。
雪に春名を疑うような素振りは微塵もない。そんなに深い情報までは知っていないということだろう。
「……でも、たった一週間で別人になってしまったわね、春名」
「え?」
「気付いてないの?」
雪はバッグから手鏡を出して、春名の顔を映す。小さな鏡面には無精ひげの酷くやつれた風な顔があった。着ている
ものも皺だらけのYシャツにズボンと、屋敷にいたときと比べて随分だらしない。
「これは申し訳有りません……お嬢様をお迎えできるような格好ではありませんでした」
「そんなことはいいんです。一体何があったの?」
「まぁ、転居の手続きやら何やらいろいろ忙しかったので……」
嘘だった。この部屋に越してきてからただぼんやりとするだけの毎日で、ろくに食事を取っていないのが原因だった。
「そういえば荷物も殆ど解いてないものね……ごめんなさい、いきなり訪ねるなんて軽率だったわ」
「いえ、そんな……今日は、何故いらっしゃったんです?」
春名の問いに、雪の表情が曇った。悲しげに目が伏せられる。
「お嬢様?」
「……春名」
「はい」
「私、どうすればいいのかしら」
声が涙ぐんでいる。
「裕生様のことですか」
「……屋敷はとても穏やかに過ごすことなんてできない状態で、お母様が二日前倒れてしまって……暫く
入院する必要があるって」
「佳代様が……」
口から出た声が酷く同情的な調子で、言った自分で春名は驚いていた。心の中には憐れみの欠片すら
なかった。
「今、少しだけ荷物を持って病院の近くのホテルに泊まっているの……だけど、不安でどうしようもなくて、
誰かに話を聞いて欲しくて、春名ならもしかしたらと思って……ごめんなさい、迷惑よね春名の事情を
考えもしないで……」
緑の目からぽろぽろと涙が零れる。気がつけばいつの間にか雪の横に来ていた。
「迷惑などではありません、私でお役に立てるなら幾らでもお聞かせ下さい」
俯いていた顔に目線を合わせる。
「……春名」
長い髪が揺れる。鼻先で甘い匂いが踊った。数ヶ月前の祝賀会の時と同じ花の香水の匂いだ。それに
気をとられて雪が自分の胸に飛び込んだことに春名は数秒気付かなかった。
「−−お嬢様」
色素の薄い茶色の髪が頬に触れている。腕にすっぽり納まるほど細い身体は柔らかい。感じる体温が
高い気がするのは、泣いているからだろうか?
「……ごめんなさい」
−−何故お前が謝る。
重いものが春名の胸を満たした。今雪を苦しめている原因は、春名の復讐に他ならない。
「ごめんなさい、みっともないところを見せてしまって……」
三十分ほどで雪は泣き止んだ。目はすっかり赤くなっていたが少しだけ元気になったようだった。
「とんでもない。辛い時には泣くことも必要です」
「……そうかしら」
「ええ。私も子どもの頃はよく泣きました」
「春名が? 泣き虫だったの?」
雪が目を丸くして訊いた。
「泣き虫でしたとも。辛いことがあるとずっと泣いていました」
欲しいものが買ってもらえないとか、大事なおもちゃが壊れたとか、小さい頃は本当につまらないことで泣いて
父や母をよく困らせた。子どもだった時にはそれが本当に辛いことだった。
−−そういえば、俺はいつから泣かなくなったのだろう?
「意外だわ」
「? 私が、泣き虫だったのがですか?」
「ええ。春名は強い感じがするもの。いつも真面目で優しいし、しっかりしているし」
「強い……ですか」
−−ああ、そうか。
めっきり泣かなくなったのは、父が死んでからだ。母の時はまだ涙も出たが、春名の両親が死んだ時にはもう
泣く気すら起きなかった。
裕生への憎しみが、悲しみを掻き消し春名を強くした。
「ねぇ春名。外へ食事に行かない? 話を聞いてくれたお礼にご馳走したいの。そろそろ晩御飯にいい時間だし」
見れば窓の外の家々は夕日で赤く染まっている。いつの間にか随分な時間が経っていたらしい。言われて意識
したからか、久々に空腹感を覚えた。
「そんな、お嬢様に奢らせるなど−−」
「お嬢様だなんて、あなたはもう私の召使じゃないのよ?」
確かにそうだ。もう春名には雪を「お嬢様」と呼ぶ必要などない。
「そういえばそうでした。十年以上ずっとこうお呼びしていましたから、簡単に習慣は抜けないものですね。ですが
それはそれとして、やはり奢っていただくのは気が引けます」
「でも……そうだ。なら、こうしましょう」
いい事を思いついたように、雪の顔が綻んだ。
「私が料理をするわ。材料はある?」
「え、ですがしかし……」
「大丈夫、高校と大学の家政科の時間に鍛えられたもの、不味くなんかないわよ」
春名が戸惑っている間に、雪は素早く立ち上がって台所まで行くと冷蔵庫のドアを開けた。
「いや、そういう問題ではなくて」
「あら、何にも入ってないのね……春名、この辺りで食材を売っているお店は知ってる? 買い物に行きましょう」
言うが早いか、返答も待たずに雪は春名の手をとって玄関に向かった。カチン、と軽い音をさせて鍵を開けると、
春名を引っ張って走り出した。
十一月。マスコミが屋敷の周りから退いた後も、雪は春名のアパートによくやってくるようになっていた。雪の母、
佳代は一ヶ月前に退院して今は自宅で療養中だという。ふとした瞬間、影が落ちた悲しげな顔をすることもあるが
雪もその頃から段々明るい表情が多くなった。
「大分元気になったのよ。この間も私の作った料理をおいしいって」
鍋でシチューを煮込みながら雪が嬉しそうに言った。
最初は話を聞いてもらう礼だと言っていたのに、今では料理を作るほうが春名の部屋に来る目的になっている
ような気がした。今まで裕生に閉じ込められて何もできなかった反動なのかもしれない。料理以外にも引越しの
荷物の片付けや掃除など、春名の制止など気にも留めず、雪は家事を手伝った。
「それは良かった」
雪の横で料理用具を洗う春名は、繕った笑顔とは逆に酷く陰鬱な気分だった。最近、腹立たしいとも憂鬱とも
言い難いざわざわした感情が全身を巡っている気がしている。
別に佳代が元気になったことが気に食わないわけではない。裕生や父を陥れた藤代の財閥幹部達には憎悪を
抱いているが、その家族に対して同じような感情はなかった。
原因は、恐らく雪だ。
雪が嬉しそうに笑うのを見る度、巡るざわめきは大きくなる。春名自身、それが何なのかを理解できない。
−−今更、罪悪感を覚えているというのか?
どんなことをしても裕生に復讐すると誓った。例えその家族を不幸にしてもだ。憎しみが道徳心など軽く超越して
いた。だが十年以上世話してきた娘が、何も知らず自分を慕ってくるのに微塵も哀れみを感じないといえば嘘になる。
−−違う。
確かに良心の呵責はある。だがそれが原因ならこんなに苛々する必要はない。何か似たような感じを覚えたことが
あるのに、うまく思い出せない。
「春名?」
雪が不思議そうに顔を覗き込んで、春名は我に返った。
「どうしたの? 難しい顔をして」
「ああ、すみません、少し考え事を」
「そう……? あ、そろそろいいみたい。食べましょう」
よそわれるクリーム色のシチューからいい匂いが漂った。煮込み料理だからか、今日はいつもより夕飯の時間が
遅く時計は七時半を過ぎていた。空っぽの胃が軽く痛む。
−−−−あ。
それは分からなかった答えにぴたりと当てはまる感覚だった。あのざわめきはどこか空腹感に似ている。
−−そうか、俺は。
ちゃぶ台に茶碗とシチューの皿を運ぶ雪の背を見つめながら、自分の身の内を巡っていたものの正体を、春名は
唐突に理解した。
「もう一品ぐらいあっても良かったかしら?」
「いえ……あれぐらいの量でいいと思います」
食事を終えて、横で雪が洗い終えた皿を拭きながら春名は雪を盗み見た。
調子を取り戻してから、化粧や服などの身だしなみも元に戻った。白い肌に赤い口紅がよく映えている。クリーム色の
細身のセーターの襟から、すらりとした白い項がのぞいている。どんな女でもそれなりの年になれば色香が漂うものなの
だろうか。そういえば雪も来月で二十三だ。もう子どもではない。
「……お嬢様」
「何?」
「もう、ここには来ないでいただきたいのです」
驚いた、というよりはショックを受けたような雪の顔が春名に向いた。
「後は私がやりますから、もうお帰り下さい」
「どうして? 私、なにか春名に悪い事をした……?」
「お嬢様のせいではありません。田舎の実家に帰るつもりなんです。両親はもういませんが、家がそのままになって
いるので。今までは年始や纏った休みに手入れしていたのですが、もう五年も無人のままですし、仕事も辞めたので
いい機会だろうと。元々ここに長く住むつもりはなかったので」
冷静を装って、春名は食器を流し台の横の棚に片付けた。殆ど嘘だった。
「もう探偵に頼んで住所を探すのもなしですよ」
「会いに行くのも駄目ということ?」
「例え私のような者でも、お嬢様のような方が一人暮らしの男の家に訪ねていくなど好ましいことではありませんから」
「……」
呆然とした様子の雪に、不意に身体がざわめいた。手を握り締めて何とか押さえた。
「この一ヶ月、本当にありがとうございました。いい思い出になりました」
雪に向き直り、笑顔を作った。頭を下げる瞬間、戸惑った顔が目に入った。
「……どうして?」
−−来るな。
近付いてくる足が見えた。握り締める手に更に力を込めた。
両肩に手を置いて、雪が頭を下げたままだった春名の身体を起こす。
「それならもっと早く言うはずよ。何で今なの?」
下を向いたままの顔を、雪が悲しげな顔で覗き込む。
見上げる緑の瞳。赤い口紅。甘い花の香り。
ざわめきが、理性を掻き消してく。
「ねぇ、は る
−−−−欲シイ。
気が付けば喰らうように雪の唇に口付けていた。
キスはエロ。一行でもエロ!(`・ω・´)
次回からきっちりそれ以上いく。
リアルタイム遭遇ktkr
前回から気になってたので続きが嬉しかった。
きっちりそれ以上との言葉に今からwktkが止まらん
雪お嬢様可愛いよハァハァ
94 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 01:30:41 ID:npbawLM0
GJ!
話の行方もエロも気になるー!
GJ
おかげで窒息せずに済んだぜww
さて、次は空気イスしながら待つとするかな・・・
じゃあ俺は空気嫁でも抱きながら待つとするか
GJ!
じゃあ、俺はエアーギター弾きながら待ってる
おいらは空気銃持ってコンビニ行ってくらぁ
じゃあ俺は無難に全裸で正座して待っとく
俺は腕立てでもして待つとするよ。
じゃあ俺は腹筋背筋
95がちょっとしたカリスマになっとるww
おれは倒立しながらまっとるわ
側転しながら待ってます
久々に落としに来てみたら何この空気で体育会系な連携。
驚きに動きを止めた雪を壁に押し付け手で細い腕を封じた。抵抗することをを思い出したようだが、雪のひ弱な腕力で
今更撥ね退けられるはずもない。舌を口内にねじ込むと身体をびくりと震わせた。顔を背けようとするのを阻んで更に深く
口付ける。ぐちゃりと、濡れた音が妙に大きく頭の中まで響いた。
「……!」
慣れない−−というよりは初めてだろう−−深い口付けに、呼吸が苦しいのか雪の身体が強張った。薄目を開けてみる。
上気した頬。耐えるように目を硬く瞑っている。息をするために少しだけ口を放した。混じった唾液がつ、と透明な糸を引く。
「……っ、はる、な……」
−−−−ああ。
「女」の声だ。
「! ん……!」
息継ぎもそこそこにまた喰らいつく。歯列をなぞり、舌を絡め吸い上げる。捕らえた四肢から、かろうじて抵抗を示していた
力が萎えていった。やがて身体を支える力もなくなりずるずると床に尻餅をつく。そのまま床の上に組み敷いた。
−−足りない。
セーターを剥ぎながら、首筋や胸元に唇を落とす。肌理の細かい白い肌は、張りがあるのに柔らかく、強く吸い上げると直ぐ
赤い花が散る。ブラジャーを外し、乳房に右手を伸ばした。丁度手に収まるぐらいで、吸い付くように馴染む。
−−足りない。もっと−−
「春名、やめて……いたい……」
今にも消え入りそうな声が春名に訴えた。やっと我に返って、春名は呆然と雪を見下ろした。
剥き出しの硬い木の床に組み敷かれた雪は、春名をじっと見上げていた。目じりから透明な涙が一つ零れた。
急激にざわめきは治まって春名を現実に引き戻した。時計の秒針の音。薄汚れた部屋。雪を犯そうとした自分。春名を見上
げて微動だにせず涙を流す雪。
「……」
自分で自分のした事が信じられなかった。
−−何を、しているんだ俺は。
−−警察に捕まる。
−−被告の家族に害意を持つ男の証言が信用されるか?
一時の肉欲に復讐を忘れるなど、馬鹿馬鹿しすぎていっそ死んでしまいたくなった。剥ぎ取ったセーターを雪の胸に被せた。
それでも尚、端から覗いた白く細い腕が見えた。目を背けたがそれでは足りない気がして立ち上がり後ろを向いた。
「お帰り下さい」
「春名、私は−−」
「帰って下さい。このままだと何をするか分からない」
秒針の音が響く。雪は動かない。
「……お願いです」
ようやく何かが動く音が聞こえた。何分かして、ドアが開き、閉まった。ゆっくりと振り返る。そこに雪はいなかった。
−−終わりだ。
何もかも。全部駄目になった。
一瞬、幻聴かと春名は思って顔を上げた。と同時に緑の視線とぶつかり、現実なのだと理解した。
だがその事実が一層春名を混乱させた。
−−何でここにいる。
住宅街を抜けた、空き地に囲まれた道だった。もう少し歩けば駅に出る。そちらの方角から歩いてきたということは春名のアパートに
行くつもりだったのだろう。
−−ならどうして。
「何をしにいらっしゃったのですか」
白いコートを着た雪は、困ったように俯いて黙り込んだ。
「……用がないのでしたらお帰り下さい」
できるだけ冷淡に言い放って横を通り抜けようとした春名の手を、雪は静かにとって引きとめた。
−−やめろ。
制止は自分へのものだった。奥底から突き上げてくる衝動を、春名はどうにか抑えていた。
「先日のことをお忘れですか」
「……いいえ」
「ならこういうことは止めていただきたい」
「……ごめんなさい」
きつく言ったつもりだったが、雪は手を放さなかった。
「自分でも分からないの。ただ」
「ただ?」
「……会いたく、なって」
−−何を。
何を言っている。
「春名、私は」
「帰ってください」
もどかしくなって雪に振り向いた。抑えてはいたが、思わず威圧的な声がでた。
「私が貴女に何をしようとしたかぐらい分かるでしょう、もう子どもじゃないんだ。貴女からすれば自分に仕えていた元召使に無邪気に
会いに来ているだけだろうが、私は男なんです。この先何もしないでいられるとは到底思えない。好きでもない男に身体を許すつもり
ですか」
春名を見上げた緑の瞳には驚きと怯えが浮かぶ。当然だろう、藤代に使えた十数年、雪に怒鳴ったことなど一度もない。
だがそれでも白く細い指は手を離さなかった。
−−−−逃ゲナイナラ、喰ッテシマエ。
掴まれていないもう一方の手で春名は雪の腕を捕まえた。そのまま雪を引っ張って早足に歩き出した。
「……? 春名どこに行くの、アパートはあっち……」
春名は応えなかった。雪の顔に不安の色が浮かぶ。
「ねぇ春名、私何か悪いことをした?」
「……」
「……あの……どこに行くつもりなの?」
「……」
無言で自分をどこかに連れて行く春名に、しかし雪は従順についてきた。当然といえば当然の話だった。あれだけ警告してそれでも
手を離さなかったのだ。雪が逆らわないことを、春名は頭のどこかで冷静に予想していた。
五分ほど歩いて、電車の駅が見えてきた。
「……そんなに、帰ったほうがいいの?」
春名が駅まで送り届けようとしていると思ったらしい。春名は立ち止まって振り返り、漸く口を開いた。
「いいえ」
「……そう」
少しほっとしたように雪は微笑んだ。それが尚更、今やしっかり火種となっている春名の中の劣情を煽った。
今まで人の害意にろくに晒されたことのないこの娘は、自分をまだ絶対的に信頼している。きっと数日前の出来事は一時の気の迷い
だったぐらいにしか考えていないに違いない。
再び春名は歩き出した。雪もそれについていった。
駅近くのホテル街。その一つに春名は雪を連れて入った。
部屋はすんなり取れた。フロントから鍵を受け取ってエレベーターで部屋に向かう。流石に疑念の一つでも湧いたのか、雪は口数が
少なくなった。だが、それでも抵抗一つ見せない。部屋に入るときもそれは変わらなかった。
雪を引き入れ鍵を閉めた。バスルームとベッドルームだけの簡素な部屋。
「……ねぇ、春名。何でここに−−」
質問を口付けで塞いだ。油断していた桜色の唇は舌の進入を簡単に許した。やっと己が置かれた状況を理解したのか、非力な腕で
春名の胸板を押して雪がもがく。
−−今更遅い。
逃れられないよう頬に手を沿え、深く口付ける。逃れようと後ずさるのを更に追う。安全な距離まで来たのを確認してから、雪をベッドに
押し倒した。
「……っ!」
こうなれば幾ら雪が抵抗しても、力でねじ伏せられる。春名は執拗に口内を責め続けた。呼吸を阻むような口付けに雪が気をとられて
いる間に、コートもその下に着ていた淡い暖色のカーディガンも、青いストライプのシャツも黒いスカートも下着も全て奪う。
まだ僅かに抵抗している腕を捕まえ、ベッドに押し付けてから、春名は静かに雪を見下ろした。
この前は完璧に理性を失っていたせいで服を剥ぎ取ったことと感触ぐらいしか覚えていなかったが、冷静になってみると雪の身体は
見とれる程美しかった。白い肌はそれ以外の色が目立ちやすいのか、胸元にまだ二日前の口付けの痕が残る。全体ほっそりしているのに
丸みは失っていない。二つの小ぶりな乳房は張りがあって、色付いた頂が春名に主張するように上を向いている。細い腰から下半身への
曲線は触れればいかにも心地良さそうだ。
そして、髪と同じく色素の薄い毛が、僅かに覆い隠そうとする場所。
「……やめて、見ないで……」
舐めるような春名の目線に、羞恥からか雪は目を瞑り顔を背けた。だがそれがかえって春名の加虐心を煽った。
「! え……」
ほんの僅かの時間だった。一瞬、腕が解放されて、雪は春名が自分を放したとでも思ったようだったが、それは大きな間違いだった。
先程剥ぎ取ったシャツで素早く捕まえていた腕を結びつけた春名は、雪の腕が効かないのを確認すると下半身に移動した。
「……! 嫌、やめて!」
必死に雪は足を閉じようとしたが、既に春名が身体を割り込ませていたので無理だった。膝裏に手をかけてそこがよく見えるように足を
持ち上げて開いた。
−−ああ、綺麗だ。
今まで何度か女の秘所を見たことはあったが、そのどれより綺麗だった。まだ誰にも犯されたことのない淡い色の肉。その狭い入り口は
春名の執拗な口付けのせいか、僅かに濡れているのが見てとれた。
「−−!?」
気付けば自然と舌を伸ばしていた。一端は羞恥にまた目を背けた雪だったが、何かが身体の中で蠢く感覚に、びくりと体を震わせた。
無意識に出た女の声に、背がぞくりと粟立つ。
「や……いや、っやめて……!」
抵抗の声は、しかし明らかに悦んでいる。少なくとも春名はそう思った。その証拠に雪の中は潤いを増して、女の匂いをさせている。
溢れる蜜は舐めると熱く、甘い。見ると、陰核が僅かに顔を覗かせていた。
「あ」
指先で軽く撫でた途端、雪が身体を強張らせた。奔ったものが何かを理解できずに困惑した表情を浮かべている。それが妙に愛おしくて、
今度は舌で撫でた。
「!? あ、ああっ」
大きく体が跳ねた。逃れられないように腰を押さえつけ、肉芽をひたすら愛撫した。春名が舐める度、今まで聞いたことのない嬌声が
上がる。粘着質な濡れた音と、雪の声が、ひたすら自分を煽り続けているのを春名は感じていた。
「や、あっ……はる、な、やめてっ……」
一番敏感な場所への執拗な愛撫に、段々雪の身体が強張っていくのが分かった。蜜の溢れる肉壷も物欲しそうに蠢いている。
−−そろそろか。
すっかり愛撫に赤く熟れた陰核を口に含み、吸い上げる。
「ーー−−!」
背を仰け反らせ硬直した体から、力が抜けた。足を下ろして横たえると、ひくつく秘所からとろりと愛液が垂れた。
指を二本差し入れ、掻き回す。びくりと体を震わせたが雪が痛がる様子はない。三本に増やしてもやはり同じだった。
−−もう十分だろう。
着ているものを脱ぎ捨てた。既に肉棒は熱く、痛いほど張り詰めている。
胸を上下させて放心している雪の入り口に先端を当てる。ぬるりとした感触が、背筋から脳まで一気に駆けた。
ーー避妊しなくていいのか。
ちらりと、そんな考えがよぎって身体が止まる。だが僅かに入り込んだだけの春名のものに吸い付いてきた、雪の熱い内壁が些細な理性を
吹き飛ばした。
「はるな……?」
少し落ち着いて秘所に当たる異物の感触が変わったのに気付いたのか、雪がぼんやりと春名を見上げる。潤んだ瞳に、拒絶の色はない。
−−欲シイ。
今。この女以外のことなど、どうでもいい。
圧し掛かると同時に、春名は雪に欲望を突き立てた。
強姦で妊娠EDじゃないぞ。そんなのお父さんは認めません。
続く。
GJは12をよんだあとにつけさせていただくよ!
orz
だが二日後、春名は変わらずアパートにいた。
警察が来る気配はない。雪が通報していないということだ。
−−強姦されかけたなど、言えないのだろうな。
安心しながら、どこかで春名は憂鬱だった。
何をするでもなく、畳に寝転がる。雨漏りでもしていたのか、ベニヤの天井は染みだらけだ。
−−そういえば、二ヶ月前はこんな感じだったな。
復讐が完成しそうなことへの安心感と、何もすることがなくなった虚無感で腑抜けていた。そこに雪が来た。
−−あの頃から、おかしくなったのだろうか。
身体に触れたのはあの時が初めてだった。女性経験はそこそこあるし、それほど禁欲的な生活を送ってきた
わけでもない。最近はご無沙汰だったが、それにしても理性が飛んでしまうなど今まで経験がない。
無機質な時計の音が響く。
「……出かけよう」
呟いて春名は重い腰を上げた。
財布をズボンのポケットに押し込み、ジャケットを着る。
一歩扉の外に出た途端、冷たさを増した風が春名の頬を撫でた。冬は、目前に迫っている。
近くのスーパーに向かって、夕飯の材料を買おうと思った。元々料理が下手ではないが、最近は進んで自炊する
ようになっていた。一ヶ月ほど前になるか、昼食に何日か続けて出来合いの惣菜を買ったとき、一品ぐらいは自分で
作ったほうがいいと、雪に言われたせいだった。
住宅街を抜ける。そろそろ家族が帰ってくる時間なのか、塀の向こうから笑い声が聞こえた。その分、歩く路地が
静かに思えた。
無音は、余計な思案を巡らせる。安心。怒り。諦め。どれともつかないものが、春名の中で渦を巻いていた。
−−これで良かったのだ。裁判に影響はでない。
−−だからどうしたというんだ。
−−もうどうでもいい。どうせ−−
そこまで考えて春名は立ち止まった。
−−−−どうせ?
俺は、何に期待している。
「春名」
110 :
108:2008/03/13(木) 00:12:33 ID:jkTrltrD
待ってた!GJ!!GJ!!
続きも楽しみにしてますお父さん!
お父さんGJ!
足は筋肉痛になっちまったが十分おつりが来るくらいのGJだぜ
さてじゃあ次の更新までロードワーク行って来っかな・・・
>>111 じゃぁ俺はハローワーク行って来っかな・・・
じゃあ俺は就活ナビでも登録するよ
じゃあ俺は履歴書の職歴欄に自宅警備員って書くか。
じゃあ自分は…これからどうしよう………
じゃあ私はちょっと自分探しの旅に行って来るよ。
人生のリセットボタンを押しに……
じゃあ俺は人型パソコンの起動ボタンでもいじってくらぁ
ぶっとびCPUキタワァァァァァ
保守
保守
働けよお前らw 俺社会人やりながらこれ書いてんだからw
今回は本編3→番外編2の構成。
本編後に持ってこようかと思ってた話だけどシャッフル構成にしたら面白くなる気がするので今回と次回は本編と
同時に投稿。
べ、別に前回の投稿ミスをごまかす為にやってるんじゃないんだからね!
「!! っあああ!!」
甘い嬌声が、苦痛を訴える悲鳴に変わった。
「く……」
亀頭と竿の部分が少し入っただけで、唯でさえきつい内壁が春名を押し出そうと痛いぐらいに締め付けた。思わず春名の
口からも呻き声が漏れる。
「……っ」
初めて男をーーしかも逞しい春名のものを受け入れる痛みに組み敷いた雪の顔が苦痛に歪んだ。女の本能的な、最後の
抵抗なのだろう、このまま挿れられない程に内壁が狭まる。
だが今や完全に四肢の自由を封じられた雪に、春名から逃れる術はなかった。
「……? ん……っ」
無防備に半開きになっていた唇に浅く深く、口付ける。汗でしっとりと柔らかくなった乳房や太腿に、優しく手を這わせる。
愛撫に快楽を思い出したのか、段々と雪の身体が弛緩して開いていった。潤った内壁が柔らかく、誘うようにうねる。
甘い、花の匂い。
「……んんっ!」
一気に腰を進めた。再び痛い程締め付けられる。同時に、先端に何かが障った。
−−−−ああ。
頭で理解する前に、貫いた。
「!!」
口付けに唇を塞がれて上げられなかった悲鳴の代わりに、内壁が春名を締め上げた。先程は進めないと思ったのに、急に
湧き上がった猛烈な衝動が春名に雪の体をこじ開けさせた。
破瓜の痛みにばたつく身体を上から押さえつけ、遂に根本まで全て、雪の中に納めた。
「はっ、はぁっ……」
気がつけば、春名も汗だくになっていた。まだ痛みが残っているのか熱い肉壷は酷く窮屈だ。だがその他に何も入り込めない
ような狭さが、妙に春名を満足させた。
「……あ……」
力ない声と涙が一つ落ちた。痛みからか、純潔を失ったからか。それとも信頼を裏切られたからか。
−−ああ。
一瞬で頭の芯が冷えた。春名自身にも何故だかはわからない、ただ腕の中の娘が萎えているのが苦痛だった。
だが、今更何をすればいいというのか。
嘘をつき、身体を奪い、この先父親を牢獄に送り、雪の平穏な生活を壊す。そんな自分が今更優しく接するのか。
−−いっそ。
もうどう足掻いても戻れない、それなら。
−−いっそ憎まれた方がいい。
「……お前が悪いんだぞ、雪」
「……は、るな……?」
耳元に顔を寄せ冷たく囁く。雪が小さく反応した。
「いくら世間知らずとはいえお前に被害者面する資格はない。わざわざ警告してやったのにそれでもついてきたのだから……
それとも淫らに犯されることを望んでいたか?」
「……」
雪は答えない。だが春名の声を聞いている気配はした。
「図星か? とんだ淫乱だな」
耳元から放れ、雪を見下ろす。
悲しげな、呆然とした顔で雪は春名を見上げていた。長年品性方向な召使だと思っていた男の暴言にショックを受けている
のだろう。頬をとめどなく透明な雫が伝う。
親指の腹で何となくそれを拭った。
「……なら望み通りにしてやる」
ゆっくりと顔を近づけ、慈しむように唇を重ねる。自分でも妙に優しい口付けだと思った。
苦痛に耐える雪に、容赦なく腰を打ち付ける。
相変わらずきついがそれでも破瓜の血と愛液で滑りはよくなった。剛直と内壁が擦れる度、背筋から脳天に向かって真っ白な
快感が奔る。
「ん、んっ、うぅ」
春名の動きに合わせてベッドが軋んだ。繋がった場所から粘着質な濡れた音が響き、桜色の唇から苦しげな声が漏れる。
だが最早雪を気遣うような余裕も罪悪感も、裕生への復讐心さえ春名の中にはなかった。
ただこの何も知らない娘の心にできるだけ深い傷をつけたい、ひどく暴力的な衝動に駆られていた。
膝の裏に腕を差し入れて角度を変え更に深く突き立てる。身体を無理矢理こじ開けられる痛みに、雪は声を上げ、
背筋を仰け反らせて涙を流す。
快楽を貪れば貪る程、雪は痛みを覚えるだろう。ならもう二度と味わいたくないような嫌悪感と苦痛を与えたかった。
思い出す度に疼く、深い爪痕が残ればいい。
込み上げてくる射精の衝動に、抽挿の速度が増した。こめかみを伝った汗が一つ、組み敷いた雪の胸に落ちる。
「ふ、ぐっ、あ、あ」
「くっーー」
限界まで張り詰めた怒張を突き立てた。
「……っ」
「……あ……」
爆ぜた熱が、雪の更に奥へ注ぎ込まれていく。
春名が動きを止め事が終わったのを悟ったからか、自分の中に熱いものが広がる感覚からか、雪の身体から力が抜けた。
久々に感じる充足感と共に疲労感が重石のように全身を満たした。一回の行為と射精で驚くほど疲弊した自分に、歳だろうかと
内心苦笑する。倒れこんで眠りに落ちてしまいたかったが、雪の目尻から零れた雫が春名にそれを堪えさせた。
ふと縛ったままだった腕が視界に入った。身をよじったときに擦れてしまったのか縛った箇所が赤くなっていた。何となくそれが
不快で自然と縛っていたシャツを解いていた。自由になったのに気付いていないようで、雪は腕をほとんど縛られていた形のまま
動かさない。
片方を手にとって、擦れた場所に唇を寄せた。肌理の細かい肌の感触が心地よかった。やっと解放されたのに気付いたのか、
もう片方の手が春名の顔に伸びた。
−−?
殴られるかと思ったが、雪の指先はそっと春名の頬に触れただけだった。まるで硝子でも触るように、そっと撫でる。
見つめる緑の瞳に怒りはない。喜びもない。涙を湛え、ただ悲しげに春名を見上げている。
「…………」
耳の裏で心臓が鳴る。
とった腕を布団に下ろして、掌を重ね指を絡める。雪の肌と比べるとどうしても自分の肌は色が黒い。心というのは外見に出る
らしいが、肌の色にも出るのだろうかと春名はぼんやり思う。
指の付け根でしっかり握り締めた。細い指を捕まえる無骨な自分の手が、大きな蜘蛛のように見えた。
喰われかけの白い手は、確かに春名の手を握り返した。
「…………」
頬に添えられた手は弱く春名を誘った。無意識にそれに従って、雪の上に身を横たえる。
遠慮がちに細い腕が伸び、春名の頭を胸元に抱き寄せる。
ーー雪、お前は。
淡い期待に思わず口を開きそうになって、思いとどまった。
予感がある。だが、それを聞いたら、きっと戻れなくなる。
春名の中にある喜び以外の全てを、それは掻き消してしまうだろう。
喉元まででかかった言葉を飲み込み首筋に顔を埋める。心地いい、甘い匂いが鼻をくすぐった。重なった胸から鼓動が伝わってくる。
一定のリズムと柔らかで温かい身体が、春名の意識を眠りへ誘っていく。
「−−ごめんなさい」
瞼を閉じる寸前、そんな声を聞いた気がした。
−−どうしてお前が謝る。
浮かんだ疑問は言葉になる前にまどろみに吸い込まれた。
彼女に出会ったのは十九年前、おおよそ二十年になるのだから月日が経つのは早いものである。彼女の父であり、私の
同級生である藤代裕生のパーティーに呼ばれた時が初対面だったと思う。何のパーティーだったかはもうよく覚えていない。
当時は藤代が何故私を呼んだのかは今よく分からなかった。藤代は親の跡を継いで大財閥の長、対する私はしがない
私立探偵である。学生時代それほど交友があったわけでもない。丁度事務所を開いたばかりで、たまたま営業も兼ねて
参加した同窓会で彼に会い話をしたので恐らくそれがきっかけだと思う。
妻の明菜を伴って挨拶に行った時、最初藤代がぽかんとして「何方でしたか」と訊ねたのをよく覚えている。
普通ならば失礼な話であるが私はこういうのがしょっちゅうである。元来地味な顔つき、地味な名前であるため、幼い頃から
私はどうにも印象の薄い人間であるらしい。またそれを改善しようと努力しなかったため、私は極めて認知されにくい人間に
なってしまった。だがその存在感の希薄さが、顔を覚えられては厄介な探偵という仕事にはうってつけだった。
「紹介するよ、私の娘だ」
私と妻に謝った後、藤代はそう言って傍らにいた幼い女の子の頭を撫でた。
愛らしい娘だった。色白、というよりは本当に白い肌で、髪も些か日本人離れした茶色だった。私たちを見上げる大きな瞳も
普通の黒や茶色ではなく緑色に近い。彼の奥方は日本人のはずだったのにと、妻と二人顔を見合わせた。
「やはり驚くか。生まれつき色素が薄いらしくてね、顔貌は日本人なんだが」
私達の反応を見て藤代は苦笑していた。
仕事の伝で色々な筋から情報を得ていたが、当時から藤代に関してあまりいい噂は聞かなかった。が、彼の娘に向ける優しい
眼差しは世の父親と何ら変わりなく、少し安心したのを覚えている。
恥ずかしいのか父親の後ろに隠れて、娘は「こんにちわ」とお辞儀をした。
これが私と妻、そして藤代雪との出会いだった。
それから藤代と親交を持つようになり、ピアノの講師をしていた妻のところへ雪が通うようにもなった。その頃、私達の間には
子どもがなく、私も妻も実の子のように雪を可愛がった。
雪は元気でにこにことよく笑う、いい子だった。いうことをよく聞き要領もよかった。それが幼稚園の年中になった頃にどこか様子が
変わり、ある日私と妻の前で突然泣き出してしまった。
話を聞くと、友達ができないのだという。理由は簡単だった。彼女の外見のせいだった。
幼い子どもというのは時に残酷で、容赦なく妬んだり非難や中傷を浴びせるものである。彼女の場合、その特異な髪や瞳の色が、
同世代の女の子のやっかみの対象になってしまったらしい。確かに彼女の姿は大勢の中でも思わず目を惹きつけてしまう。無理も
ない話だった。
「こんな髪の毛も目もだいきらい」
雪はよくそう言って、私達の家で泣いた。
小学校の四年ぐらいになって精神的に落ち着いたのか、雪は快活な子どもに戻った。だがまだ心の内を話せるような親しい友達は
できないらしかった。
「私が近付くと、皆遠くに行っちゃうの」
そう言って雪は悲しげに笑った。小学生には似つかわしくない、ひどく大人びた表情だった。
自分が見つめるとその人の気持ちが離れていく感じがするのだと彼女は言った。成る程、見つめること自体相手にプレッシャーを
与える行為だ。色素の薄い雪の緑の瞳は瞳孔が目立ち、それが強調される気はする。その考えを噛み砕いて説明して、とりあえず
目をじっと見つめることを避けてみてはとアドバイスした。
「おじ様とおば様は、私の友達でいてね」
彼女は軽い調子で言っていたが、本当は切実だったと思う。できる限り彼女を支えようと私と妻は約束した。
そんな唯でさえ良くなかった状況が、更に悪化したのはその頃だった。
体育の授業中に雪が倒れたのがきっかけだった。
夏が近付き日差しのきつくなってきた、雪にはあまり良くない季節のことだった。色素が薄いと太陽光さえも身体に障るので、野外での
授業に彼女は原則参加いないと聞いていた私達は驚き、雪の身を案じた。
自分の体質を理解して尚、彼女が授業に参加した理由は分からない。だが、その一件は父である藤代に大きな影響を与えた。
野外の授業に絶対参加させなくなったのに加えて、藤代は学校以外に雪を外に出さなくなった。ピアノのレッスン場所も藤代邸に変更
された。殆ど軟禁状態だ。
だがいい子であった彼女は従順に藤代の言いつけを守った。私も折を見て妻に付いていき雪の話し相手になったが、会う度に病的な
疲れの色が増した。哀れになるほど雪は快活さを失っていった。
流石にやりすぎだと思い、彼の奥方と共に忠告したことが効いたのか、数ヶ月経って漸く雪は外出を許可されレッスンの場所も私達の
家に戻った。ただしそれも召使を連れてのことで、雪が自由に行動できる機会は実質無くなってしまった。
当時は藤代が過保護を通り越して異常だと思ったものだが、今になれば彼の心情も少しは理解できる。親にとって子どもを失うのは
何より辛い、雪が再び倒れたらと彼も気が気ではなかったのだろう。だが見張りをつけたような状況で子ども同士が親しくなれるはずも
ない。結果として藤代の心配は、彼女から同年代の人間関係を築く時間も場所も奪い去ってしまった。
傍から見れば誰もが羨む儚げなその容姿が、本来その内面に向くべき目すら奪い、彼女を不幸にしていた。
雪は、ひとりぼっちの子どもだった。
うおおおおGJすぐる!!
イイネイイネー
続きは踊り狂いながら待ってるよ。
GJ!
雪タン…(´;ω;`)
GJだ!
じゃあ俺は器械体操しながら次の更新を待ってる
GJだ!!
逆上がりの練習しながら待ってるよ(`・ω・´)
GJ!
一人新体操でリボン振り回しながら待ってる。
GJ!
雪が可愛すぎるww
バイト探しながらまってるよ!
GJ!まだ肌寒いけど一人リオのカーニバルして続き待ってる。
ほしゅ
風邪ひくぞw
じゃあ、私はピアニカ演奏しながら待ってる。
じゃあ俺はかりぴーでも吹きながら待つかな
では自分は、ハーモニカでも吹きながら待つ。
暗い部屋でオカリナ吹きながら待ってるね。
じゃ、 私はザリガニに餌をやりながら待ってるよ。
早くしないと騒音で近所から苦情は来るわ、
ザリガニは肥えるわで大変なことに!
なんか人口増えたか?
本編2→番外編2→本編4
最後の二回分は明日に回そうかと思ってたんだがサービスで一気に。
就労意欲の高い133の為にエロを追加した。ただし今回だけだから就職したとか言われても次回は何もでないぞ。
今回投稿分読んで驚いてもらえるとうp主は嬉しい。
初めて春名が雪の世話を任されたのは、藤代に仕え始めたばかりの年の夏だった。それまで掃除ぐらいしか仕事のない下っ端だったの
にいきなり何故と戸惑ったが、理由は何のことはない。つまり下っ端で若いから、屋敷の中で一番雪に近い歳だから選ばれただけだった。
世話といってもその時の仕事内容は身の回りの世話をするのではなく、雪の話し相手になることだった。丁度その頃雪は体調を崩していて、
学校から帰ってくるとそれから後はずっと屋敷にいるような生活だったから、裕生なりに気を遣ったのだろう。本当は女に任せるつもりだった
ようだが、生憎裕生の眼鏡に適うような品性方向でくそ真面目だがそれなりにユーモアのある若いメイドが屋敷にいなかった。当時年相応の
女性と付き合いがあった為、春名に雪に手を出すようなロリータ・コンプレックスやペドフィリアの気はないと判断して裕生は渋々仕事を任せる
ことを了承したらしい。
初めて雪の部屋を訪ねた時の事を、春名はよく覚えている。
扉を開くと、まだ外が明るいのに半分カーテンが閉まっていて、部屋は随分薄暗かった。その只中に、そこだけ明かりが照らしているように
真っ白い少女が立っていた。間近で見るのはその時が初めてだったが年の割りに大人びていて、可愛いというより綺麗な娘だった。しかし目は
生気が無く、病んでいるのが見ただけで分かった。
「……ああ、男の人だったの」
少し驚いたような声だった。
「知り合いにアキナという人がいるから女の人だと思ってたの、ごめんなさい。苗字かしら?」
「はい。春の名前で、春名と」
「綺麗な名前ね……よろしく、春名」
雪は微笑んだ。今にも消え入りそうな、儚い笑顔だった。
最初はとにかく苦労した、というよりは悩んだ。屋敷の中で一番年が近くても、十以上年の離れた小学生の女の子が相手なのだ。
仕方なく「何かしたいことはございますか」と訊ねた春名に、雪はぼんやり「友だちがほしい」と呟いた。
雪はぽつりぽつりと話し始めた。学校のクラスメイトとあまり仲良くなれないこと。知り合いの大人がいうには、雪の目は普通の色と違うので
慣れない人はじっと見つめられると何となく居心地が悪くなってしまうのだということ。
「でも話をするときはその人の顔をじっと見るでしょう? だから、私には友だちができないの……でもどうしても皆と仲良くなりたくて、この前
体育の授業に出たの。皆、外で一緒なのに、私だけ校舎の中でひとりぼっちで見学してるのなんて嫌だったから……そうしたら倒れてしまって
お父様がもう勝手に外に出てはいけないって……」
言い終わって、一気に澄んだ緑の目から透明な涙が溢れ出した。慌てて胸ポケットのハンカチを手渡し、どうにか宥めて雪は泣き止んだ。
「それは辛かったですね……お可哀想に」
裕生を恨んでいるとはいえ、流石に春名も目の前の少女が哀れになった。だが欲しいといっても友達など無理矢理作れるものでもない。雪の
場合、彼女の性格とは無関係にその身体的な性質とその相手が問題で、体質については改善のしようがない。相手に対して協力を仰ぐことは
できるが、子どもの友達作りに大人が出て行くのは違う気がした。
「……お嬢様、では友達の作り方を勉強いたしましょう」
「友だちの……作り方? そんなものがあるの?」
目線を合わせてそう言った春名に、雪は不思議そうに首を傾げた。
「ええ。人と付き合うのに、こうすれば円滑にいくという方法は少なからずあるのです」
それは春名が今までとってきた方法でもあった。『春名』の両親に気に入られるのに役立ったし、何よりこの屋敷に潜り込み、いい印象を持た
せるのに一番役立った。
「真摯に目を見つめるのは確かに大切ですが、じっと見るだけでは相手は気圧されてしまいます。時に会話に相槌を打ったり、話題に合わせて
笑ったりするのが大切です。そうすれば自然と仲良く慣れます。それでも不安なら、友達になってほしいとお伝えになれば大丈夫なはずです」
「……そっか、笑顔が足りなかったのかも」
「こういうのは回数を重ねて上手になることが大切です。私がお付き合いしますから、練習いたしましょう」
それから二、三日後。練習を終えた時だった。ぽつりと雪が呟くように言った。
「……ねぇ春名」
「何でございましょう」
「私の、友だちになってくれる?」
少し驚いたが、心配そうに顔を見上げてくる少女に春名は微笑み返した。
「私などでよければ」
少女は花が綻ぶように笑った。
数年後、裕生のスケジュール管理の係を経て、春名は雪の世話を全面的に任されることになった。
軟禁が解かれて数ヶ月経ち冬も近くなった頃、雪は目に見えて元気を取り戻した。もしかして友達ができたのかいと訊ねると、少し照れて
頷いた。
「ハルナっていうの」
どんな子なんだいと言った私に、雪はおかしそうに笑った。聞けば召使の一人だという。数年前から雪の世話係になっているらしい。
「私も最初間違ったんだけど、女の子じゃないんです。もう大人だし。歳が離れているからお兄さんみたいだけど、とても優しくていい人なの」
ハルナという人間を心から慕っているのだろう、雪は嬉しそうに笑った。久しぶりに見る元気な笑顔だった。
それがきっかけになったのか、学校でクラスメイトとうまく付き合えるようになったらしい。雪は孤独から抜け出したように見えた。
だが彼女にはまだ何か憂いがあった。ふとした瞬間酷く寂しげな顔をすることがあって、私と妻は心配になって何かあったのかと訊ねたが、
大したことではないと彼女はいつも曖昧に話を誤魔化した。無理強いをするのも気が引けたので、それ以上のことは分からなかった。
雪が高校生になったばかりの四月、数年ぶりに藤代の家を訪ねた。生憎途中で急用ができたらしく藤代は席を外し、結局帰るまでろくに話が
できなかった。
休日だったので雪は在宅中だった。丁度ティータイムの時間帯で、雪の部屋で紅茶と茶菓子をお呼ばれになった。藤代の細君は私の妻とは
親しかったが、私とはそれほど付き合いを持ちたくなかったらしくやんわりと同席を断った。どうやら人の秘密を根掘り葉掘りする探偵という職業
が嫌いらしい。幾ら親しい間柄とはいえ、一人で若いレディーの部屋に入るのは妻の時以来で柄にもなく緊張したのをよく覚えている。「こんな
おじ様初めて見たわ」と雪はおかしそうに笑っていた。
日当たりのいい、広く静かな部屋だった。丁度いい天気だったので部屋のテラスでのお茶会となった。
ふと、階下から藤代が誰かと話している声が聞こえた。どうやら部下と仕事のことでもめているようだ。
この下は彼の書斎らしい。建物の構造的にこの部屋に音が漏れてしまうという。「電話の声まで聞こえてしまうの」と彼女は苦笑していた。
「失礼します」
ドアをノックして召使の男がティーセットとクッキーを載せた皿を運んで入ってきた。黒い短髪ですらりとした長身。中々の好青年だ。カップに
紅茶を注ぎ、「何かございましたらご遠慮なくお申し付けを」と丁寧に挨拶して男は出て行った。
「もしかすると、彼が例のハルナさんかな?」
「ええ」
成る程、友達というには確かに年が離れているように見える。若く見積もって二十代後半、十近く年齢が違うはずだ。
「ハンサムなんだね」
「おじ様もそう思います?」
「うん。細目できりっとした感じの知的な顔だ」
「真面目な人なんです。頭もいいの。だけどオセロとかチェスとかのゲームにはからきし弱いみたい。この前お父様に完敗していたから」
楽しげな雪の様子に、私はおやと思った。ハルナの事を話す雪は、十数年前、まだ何も彼女を悩ませることがなかった頃の無邪気で屈託のない
笑顔を見せた。
少し考えてから、ああ、と私はふと嬉しいような寂しいような気持ちになった。
雪も、もう年頃の娘だ。ハルナは好感の持てる人物だし外見もいい。一緒にいる間に、抱いていた感情が変化してもおかしくはない。
きっと、雪は彼に恋をしているのだ。
だが、私は同時に何か嫌なことが起きる予感めいた胸騒ぎを覚えていた。当時は娘を思う親のような気分のせいだと思って、長らくそんなものを
感じたことすら忘れていた。今思えば、あれは私の探偵としての勘だったのかもしれない。
春名はあまりいい人間ではないということの。
そして、その不安は当たることになる。
六年前の夏。私達の間に娘ができた。妻も私も半ば諦めかけていたところにできた子どもだったので、それはもう嬉しかった。
夏の太陽のように明るい子どもに、と陽子と名付けた。珍しく藤代が細君と一緒に我が家に来て祝福してくれた。
「子どもはいいよ。跡継ぎだなんだで男の子が欲しい時期もあったが、女の子は可愛い。身体が弱いが、うちの娘もいい子に育ってくれた。幸せに
なってくれればいいんだがね」
手段を選ばない経営者として世間では白い目で見られていた藤代だが、娘に対しての愛情はいたって普通の父親だったと私は思う。何故その
優しさを他の人間に向けられなかったのか、それは今も残念でならない。
雪はピアノのレッスンの後よく陽子の面倒を見てくれた。
「おじ様とおば様の子だもの、きっと陽子ちゃんはいい子になるわ」
愛おしそうに陽子をあやす雪が、何故か時折寂しげに見えた。
五年前の春。妻と私は自宅へ雪を招待し、ささやかなパーティーを開いた。表向きは彼女の高校卒業を祝ってのものだったが、本当の目的は
彼女を元気付けることだった。
いつ頃からだろう、数年前から見せていた憂いの表情が増え、笑顔が目に見えて曇った。十年近く前の軟禁状態の時のように−−いや、それ
よりもっとひどく彼女から生気が失せていった。
だがどうやらそれは私達にだけ見せるものだったらしい。心配になった私は藤代に連絡を取り雪の事を訊ねてみたが、家で雪にそんな様子は
微塵もないという。
もしや原因は私達なのではないかと思い切って訊ねてみた。雪は驚いて即座に違うと否定した。
「ごめんなさい、ご心配をおかけしてたんですね。大丈夫です、私の問題ですから……」
「……雪ちゃん、もしよければ話してくれない? 貴方に元気がないと私達も元気が出ないわ。もしかしたら力になれるかもしれないし……」
「……ごめんなさい、おば様。どうしても言えないことなんです」
妻の言葉に、雪は沈痛な面持ちになって俯いた。私も妻も、それ以上のことは聞けないのだと悟った。
恐らく、家族にも悩んでいることを隠していたのだろう。だから藤代が知らなかった。
そこまで隠さねばならず、彼女を悩ませることとは、一体何なのだろう。
「私達にできることはないのかい?」
我が子同然の彼女が、苦しんでいるのを見るのは辛かった。悩みの相談にのることはできなくてもせめて少しでも力になりたかった。
「…………なら、一つだけ」
長い沈黙の後、雪がゆっくり口を開いた。
「一つだけ、お願いしたいことがあります」
一月。アパートの自室で春名は肌寒さに目を覚ました。
時計は六時を指している。カーテンの僅かな隙間から、近所の家の屋根の上が一様に白くなっているのが見えた。
ぼろい上に暖房が備え付けられていないので部屋は冷え込みがきつい。手を伸ばして最近買った電気ストーブのスイッチをつける。直ぐには
温かくならないので、ぬくもりを求めて布団に潜り、背を向けて寝ていた白い身体を抱き寄せた。
「ん……」
睫毛の長い瞼が、重たげに開いた。寝ぼけた緑の瞳が、ぼんやりと後ろから抱きすくめる春名を見上げた。白い胸元に幾つも、昨晩つけた痕が
赤く花のように散っていた。
細い腰の曲線や胸の膨らみに手を伸ばす。絹のように柔らかな肌が隙間なく自分の肌にすり合わさる感覚。まだ起きたばかりだというのに、
情欲が燻り始めた。
身体を上向かせながら唇を重ねる。最近は自然と口を開けて春名の舌を受け入れる。これから行為が始まることを予感したのか、圧し掛かった
春名の背に華奢な手が回る。
愛撫もそこそこに避妊具をつけ、怒張を突き入れた。
「−−ああっ!」
背を仰け反らせる雪の腰を抱え、獣のように責め立てる。激しい打ち付けから逃げることもできず、雪は抽挿に合わせて甘い悲鳴を上げた。
あの日から後も雪は春名を訪ねてきた。以前のような気安い会話を交わすことはもうなくなり、春名に陵辱されることを分かっているのにそれでも
部屋に来るのを止めることはなかった。訊ねてくる度春名も抱いた。あの日から後はいつも避妊具をつけるようになったが、それが逆に何度犯しても
大丈夫だという安心感になってしまい一晩に何度も抱くことが多くなった。元々体力の無い雪は行為が終わると疲れ果てて、最近はこの部屋で夜を
明かすことが増えた。
マスコミもとりあえず落ち着いている。公判を待っている裕生は家にいるはずだ。例えそれに準備しているのだとしても、目に入れても痛くない娘が
朝帰りなどして何も言わないのか。この関係を探られていないか。気にはなったが、訊くことができずにいた。
「はっ、あ、あっ、んっ……!」
嬌声を上げ、抵抗もせず受け入れる女と、犯す男。傍から見れば、恋人同士のセックスに見えるのかもしれない。
だが現状は、春名が一方的に快楽を搾取するだけだった。少なくとも、春名はそう思った。
確かに激しい突き上げに上がる声に甘さが混じるようになった。狭かった内側も春名の形に馴染んだ感がある。拓かれた雪の身体は、きっともう
痛みをあまり感じていないはずだ。
なのに雪は抱かれる度、いつも辛そうに涙を流す。
二ヶ月前抱いた淡い期待は、幻だったのだと春名は思う。雪にとってこの交わりは本来望んでいないことなのだ。身体が快楽を覚えても、心の方が
そう感じている。だから、幾ら抱いても春名は満たされない。だが突き放すこともできない。
−−辛いのなら何故、俺に抱かれる。
そんな疑問を訊ねることすら、春名はできずにいた。
意味もなく体を重ねる日々。裕生の裁判が二月に開かれることが決まったのは、その頃のことだった。
二月。冷え込んだ朝、春名は裁判所にいた。
昨晩、雪は来なかった。もし来ても今日に備えて家に帰すつもりだったから、別段構わないといえば構わなかった。
−−ついに、この日が来た。
二十数年、裕生を失墜させる為だけに生きてきた。刑が確定するのはまだ先になるだろうが、春名は今日の日を待ち焦がれていた。
屋敷の人間や一部の藤代財閥の人間を抱きこみ、裕生のスケジュールや銀行の口座を綿密に調べ上げた。いつ誰と会い、どんな取引をしたかも
どこに金を隠しているかも正確に把握できる。春名のほかにも協力者が何人も証言に立つ。中には立花が買収した裕生の腹心の部下もいる。
−−一体どんな顔をするかな。
裕生が驚愕する様を想像して、春名はにやりと笑った。
久し振りに憎悪で心が塗りつぶされていく。目が暗むようなその感覚が、何故か春名を安心させた。
まるで本来あるべき場所に帰ってきたように。
早々に受付のノートに記入を済ませて傍聴席に座った。春名の席は、傍聴席から向かって右側の被告席が見やすい、前方の列だった。続々と他の席も
埋まっていく。どうやら多くはマスコミ関係者らしく、皆一様に手元にメモを用意していた。
程なくして裕生が入廷した。数ヶ月前と変わらずきっちりとしたスーツに身を包み、憮然とした表情だった。
「起立」
開廷を告げる裁判長の声が響いた。
裁判は人定質問、起訴状の朗読、冒頭陳述と滞りなく進み、いよいよ検察側の証人尋問となった。春名以外の証人が申請したのか、被告席と証人席の間には
衝立が置かれた。春名は二番目に、贈収賄が行われたとされる日の裕生のスケジュールを証言することになっている。
最初の証人は買収された裕生の部下だった。証人の名前が読み上げられると裕生の顔色が僅かに変わったのが見えた。受託収賄について検察側の主尋問、
次いで弁護側の反対尋問が続く。質問は殆ど想定していた内容ばかりだった。少し衝立の向こうを気にしながらも証人は矛盾なく言葉を並べていく。春名はその間、
じっと裕生の様子を眺めていた。
被告席の裕生は春名に気付いていないらしかった。俯いたまま眉間に皺を寄せ証言を聞いている。
−−どんな気分だ? 裕生。
−− 腹心の部下に裏切られて、腹が煮えくり返っているか? だがまだまだ足りない。こんなものでは俺は納得できない。この先も、お前が信頼していた人間達が
お前を貶める為準備している。証拠も出てくる。お前は全て失くすのだ。
まるで、かつての俺のように。
「春名恭介さん」
検察官の声に、春名は我に返った。いつの間にか最初の証人は傍聴席に戻っていた。春名の番だ。証人席に向かおうと、立ち上がり証人席へ向かう。
−−−−え?
ちらりと。視界の隅に映った何かに、目が吸い寄せられた。
最後列。傍聴席の黒と灰色の群衆の中で、それだけが白い。
雪だ。
−−馬鹿な。
否、冷静に考えればありえないことではない。これは雪の父親の裁判なのだ。だが、絶対に来るはずがないと春名は思い込んでいた。父親の汚い面を受け入れられる
程、雪は強くない。
−−いや違う。
汚い面などないと信じているのだ。無罪を信じて、ここに来たのだ。
目線を動かせない。見つめる春名に雪が気付いた。
−−−−。
混乱が、頭を空にした。雪には、春名が検察側の証人尋問に立つことが−−裕生にとって不利な発言をしようとしていることが分かるはずだ。
視線がぶつかる。一瞬が何倍にも引き伸ばされる。
雪は−−−−驚いていない。
怒ってもいない。
悲しんでもいない。
ただ真っ直ぐに、じっと春名を見つめた。
「春名恭介さん?」
裁判官の声で、春名は現実に戻ってきた。
「あ……はい」
証人席に向かい宣誓をしながら、しかし心はぐらぐらと揺れていた。
何を喋ったかもよく分からないまま、気がつけば春名の証言は終わっていた。
「何故だ」
夕方。空は夜の闇に染まり始めていた。
いつものように春名の部屋を訪れ、服を脱ごうとした雪は春名の問いに動きを止めた。
まだ灯りをつけていない部屋は薄暗い。窓辺に立ち春名に背を向ける雪の顔はよく見えない。
「……俺のした事の意味ぐらい分かるだろう」
「……ええ」
「なら何故ここに来る」
「…………」
雪は答えない。
「何の為に俺に抱かれる? 快楽に溺れるじゃないはずだ、お前はそもそも犯されることを望んでいない」
ぴくりと肩を震わせ、雪は僅かに春名を振り返った。驚きと、悲しげな色が浮かんでいる。
「……そうなんだな?」
驚きが消える。悲痛な表情で、無言のまま雪は力なく頷いた。
「なら何故」
「……あなたに……」
搾り出すような声だった。
「……俺に、何だ」
「……あなたに許してもらう為に」
−−−−?
意味が分からない。
「俺が何を許すというんだ」
「藤代を」
藤代?
「あなたに藤代を許してもらう為です」
「? お前、一体何のことを」
「カワモトキョウスケさん」
ぽろりと、透明な涙が零れた。
「−−−−……な、ん……−−−−」
カワモト。名前。その名前は。その名前を、何で。
その名前は。
「あなたの……元の名前、ですよね?」
「何で」
やっと言葉になった思考を吐き出した。
「何で、その名前を知ってる……お前は、何を知っているんだ!」
「全てです」
静かに、だがしっかりと雪は川本恭介の目を見て言った。
「父が−−藤代があなたにしたこと、あなたが藤代にしようとしたこと……そしてあなたのこと。全て知っています」
さーひっくり返すぞー。
次回「Othello-裏-」。多分最終回かその一回手前。
いいな……こういう展開大好きだ
GJ!
フンガー!面白い!
続きを心待ちにしてます!
ラストまでにhappyなセックスができるといいなー
GJ!
なんかもうエロじゃなくても構わないくらいだ。
最後どうなるのか楽しみ。
妖精になれるくらい身を清めて待ってます。
っていうか穢れる機会自体もなry
面接おちたけどなぐさめられたよGJ!
こういう関係は大好物です
あーGJだ。それしかない。幸せになれるかな・・・
>>153 気にすんじゃねえ
生き方は色々ある
詳細は探偵さんに調べてもらったんだろうけど、疑いを持ったきっかけが激しく気になる・・・
雪ちゃんの元気がなかったのもそれが原因だろうし、いろいろ想像させてもらいます。
というわけで、つづき待ってますね
GJだ!!
次はどうやって待とうかな…(´・ω・`)
アイナブリッジで待てばいいんだ
>>156 では、トランプでブリッジをしながら、待つとしませんか?
俺は絶対イナバウアーだね
続きを・・・
続きを早く・・・
ブリッジしたら、腰が、腰があぁあああああぁぁぁぁ
これから投下します。長い上に今回はエロがありません。
今回投下分は前編で後編でしっかりエロをやるんで勘弁してください。
SP」こう聞くとどんな者を想像するだろうか?黒いサングラスとスーツ?
何者にも負けない鋼の肉体と強い意思を持つ者?そういったものが想像されるのではないだろうか?しかしこの話に出てくるSPは一味違う。なにせ彼はメキシコプロレスの仮面を被った、鋼の肉体は持つが強い意思などまったく持たないSPなのだから。
これは
江戸川龍彦、身長189センチ。
「もうやめましょうよぉ〜。こんなこと」
と
尾ノ上小夜子、身長145センチ。
「弱音を吐くでない!ほれ、どんどん行くぞ」
この究極の凸凹コンビが織り成す、すったもんだなお話である。
『44センチの間に』
話は2週間ほど前に戻る。
そろそろ日も暮れようかという時間帯、河川敷に制服を着た高校生が、二人の男を中心として輪になって集まっている。
タバコを吸っている者、金髪でオールバックにしている者、風邪でもないのにマスクをしている者。皆おしなべてガラが悪い。
集団は学ランを着た者とブレザーを着た者、二種類に分かれていた。
「ぐわっっ」
円の中心にいた180センチはあろうかという男が一撃で吹っ飛び倒れる。学ランの男が放ったストレートが顔面に入ったのだ。
「クソッ、クソッッ!!」
倒れた男は必死に立ち上がろうとするも、手が地面を引っかくだけで立ち上がれない。ストレートが見事急所に決まったようだ。
周りを取り囲んでいる者が、驚嘆、失望、歓喜、様々な感情でざわめき始める。
そのざわめきの中心でストレートを放った男は、自分の拳と地面を這っている男を見比べながら悠然と立っていた。
この男、一言で説明するならば「デカイッッッ!」、それに尽きる。
190センチに及ばんとする身長。服の上からでもわかる大きく張った胸板。バットで殴られてもビクともしなそうな太い首。
そしてオールバックに強い意志を感じさせる雄々しい顔。
まさしく「漢」と呼ぶにふさわしい人物である。
「へっ、決まったな!」
前に出てきてそういったのは「狂犬」、そんな言葉がピッタリくる男だった。
「どいつもこいつもアホみてぇな面しやがって。ざまぁ見やがれクソ野郎!」
彼は、相手の集団にあらん限りの罵詈雑言を叩きつける。
「よせ、シュウ」
「漢」が、シュウを手で遮ると「すんません」と言いながら、彼は後ろへ下がっていった。
シュウが後ろに下がったことを確認すると、「漢」はずいと前に出る。
「俺はな、近くの高校のリーダーになりたいとか考えてないし、喧嘩も好きじゃない」
「漢」が低く、重みのある声で喋ると、一言で一歩ずつ相手の集団は後ずさっていく。
「だが、ウチの学校の生徒に手を出すなら、話は別だ」
そういうと「漢」は、ゆっくりと相手の集団を端から端までにらめ付け、
「わかったか!!」
その場にいる者たちの鼓膜が破れそうな声で、一気に怒鳴った。
「返事は!」
「わかりました!」
ブレザーの集団はその場から逃れたい一心であろう。深々と頭を下げ、そう答えた。
「ならいい」
「漢」はそう言うと学ランの裾を翻し帰って行く。
倒れていた男が痛む顔をゆっくりと上げ、砂埃の向こう、泰然と帰って行く「漢」と学ランの集団を見つめた。
「江戸川龍彦、あれこそ『番長』だ」
「ふぅ」
龍彦の家は1軒屋で、今彼は自室にいた。学ランを脱ぐとジャージに着替え、パソコンの電源をつける。
彼の部屋、何かがおかしい。
普通のヤンキー高校生の部屋、そう聞くと普通どのようなものを想像するだろうか。
タバコが山盛りになった灰皿、壁にかけられた日の丸の旗、何冊かあるヤンキー漫画、そういったものだろう。
彼の部屋にはそれらが一切ない。
そして代わりにあるのが部屋を埋め尽くさんばかりの、漫画、フィギュア、ポスター。
部屋の中ところ狭しと二次元の美少女達が笑顔を振り撒いている。
龍彦はマウスを操作し、デスクトップ上にあるアイコンをクリックした。
アイコンの名前は『木漏れ日の思い出』。3日前に買ったばかりのエロゲーだ。
早く進めようとしていたのだが、今日の一件で忙しくなかなか進められずにいたのだ。
ちなみにこのソフトは有名ブランドの新作で発売と同時に店舗から姿を消すほどだったのだが、
龍彦は開店の三時間前から店先に並び、見事このソフトを購入している。
モニターには人目でツンデレだとわかる目つきの鋭い少女が映っていた。
『べ、別にあんたと一緒にししゃも食べたいってわけじゃないんだからね!勘違いしないでよね!』
「ふぁぁ、堪らないなぁ〜」
身長190センチはあるガタイのいい男が窮屈そうに椅子に座り、こんな声をあげながらエロゲーをやっている姿は絵的にキツイものがある。
「な〜にキチガイみたいなこと言ってんのよ」
我に帰った龍彦がドアを見ると、姉が呆れた顔で立っていた。
江戸川景。龍彦の姉である。ショートカットで眼鏡をかけており、知的な印象を受ける。龍彦とは正反対だ。ちなみに龍彦にはもう一人姉がいる。
「景ちゃんノックぐらいしてよ!」
「何回も、な〜ん回もしましたよ。何かに夢中で気がつかなかったみたいだけど」
「うっ」
龍彦は恥ずかしそうに俯く。
「しっかし」
そう言いながら景は部屋を見回した。
「ホント信じられないわね、あんたがうちの学校の不良のリーダーだなんて」
「別にいいだろ、人の趣味なんだから」
「はいはいそうね、『番長』さん。ところで晩御飯ができましてよ」
「え?もしかして景ちゃんが作ったの?」
「そうよ、他のみんな出かけてるから」
龍彦の表情が固まる。景の料理は決して不味いわけではない。しかし彼女の料理は辛すぎるのだ。この前作った麻婆豆腐が特に酷く、その日一日中、何も食べられなかったぐらいだ。思い出すとまた喉がヒリヒリしてくる気がする。
「あっ、僕外で食べてきたから」
「何?」
景の表情が一瞬で変わった。
「お姉ちゃんの作った料理が食えないって言うの?」
まるで般若のような形相で睨み付けてくる。これに比べればヤンキーのほうがまだ可愛げのある。
「食べさせてもらいます」
龍彦が泣きそうな顔でそう言うと、景の顔はすぐにもとの知的な女性に戻った。
「そう?ごめんね、お腹いっぱいなのに食べさせちゃって」
「いいんだ。僕、景ちゃんの料理好きだから」
「そう?だったらいっぱい食べさせてあげるからね」
「はい」
どうやら明日のトイレは地獄のようです。
景と龍彦が一階のリビングで晩御飯を食べている。大きな背中を丸め、景特製激辛カレーをスプーンにちょこんと乗せ、四苦八苦しながら食べている龍彦の姿は妙に微笑ましい。
「しっかしさぁ、あんたどうにかならないの?その喋り方とか」
景がただでさえ辛いはずのカレーに、さらに辛みを入れていた
「いや、僕本当はこうだし」
「ほらぁ、その僕っての。似合わないわよ、あんたには」
「でも、本当にこうなんだよ。今だって勝手に周りから祭り上げられてるだけだし」
龍彦が不満そうな声でそう言うと、景はスプーンを動かす手を止め大きくため息をつく
「今の姿、ファンの子たちが見たらさぞかし幻滅するでしょうね」
「僕にファンなんているの?」
「あれ知らないの?江戸川龍彦なんっていったら、今うちの学校で一番人気のある男子なのよ」
「それはどこ情報なの?」
「もちろん我が新聞部よ」
彼女は自信満々にそう言うが、実はこの校内新聞相当ヒドイ。
東○スポとフラ○デーを足しっぱなしにしたのを想像してもらえると有難い。
龍彦は丸まった背中をさらに丸め、ため息をつくが、景はそんな弟を気にもとめず話続ける。
「たくましい体に整った顔、喧嘩は無敵、されど弱い者には優しい。道理をわきまえ、仁義を通す。これぞ男の中の男なりってね。龍彦だったら抱かれてもいいって子結構いるんだよ」
「お、女の子がそんなこと言わないでよ」
龍彦は途端に赤面する。
「あら、別にいいじゃない。優れた異性と付き合いたいってのは男女同じよ」
「でも・・・」
「っていうか、あんた女の子と付き合ったりしないの?あんたくらいだったらよりどりみどりでしょ?」
「ぼ、僕はそういうのはいいんだよ」
「ったく、どうしようもないわね」
「僕、もう上行く」
龍彦はそういうと食器を持ちながら椅子から立ち上がった
「何?またギャルゲーでもやるの?」
「別にいいでしょ、僕の勝手なんだから!」
そう言いながら部屋から出て行く龍彦の背中を見て、景は大きくため息をつく。
「ほんと、どうしようもないんだから・・・」
江戸川龍彦、このあたりの不良でその名を知らぬ者はいない、一本、筋がびしっと入ったいい男。しかしてその正体は、顔と体に似合わず気の小さい、こよなく二次元を愛する駄目な男なのであった。
「いってきまーす」
龍彦はそう言うと玄関から出て行く。景は一足先に学校へ向かっていた。春の日差しが、徹夜明けの目に染みる。昨日の夕食の後、『木漏れ日の思い出』を一心腐乱に進めていた結果だった。
ちなみにゲームの話のほうは、あの後龍彦が攻略していたツンデレ少女を謎の組織、「音巣対」が突如誘拐。殺意の波動に目覚めた主人公は仲間達と「末屠魏亜」を結成。圧倒的戦力差を誇る「音巣対」に対して敢然と挑んでゆくといったものである。
龍彦は、なぜかこの衝撃的展開にどっぷり嵌っていたのである。おそらく若さゆえの過ちであろう。
それにしても…龍彦は例のツンデレ少女のことを思い出していた。髪型、目つき、喋り方すべてが龍彦のツボだった。
「す、好きじゃなきゃこんなことしないわよ!」
少女のセリフを思い出すだけで、ついつい表情が緩んでくる。
「龍彦さん、おはようございます!!」
龍彦がハッとし振り返ると、そこにはシュウが立っていた。
「おう」
家の姿からは想像できないドスの効いた声で返事する龍彦。
「どうしたんすか、なんかニヤけてましたけど?しかも何か眠そうだし」
そういったところでシュウは何かに気づいたような表情をし、やたらエロそうにニヤけ始めた。
「あっ、もしかしてコレのところっすか」
そういいながらシュウが小指を突き立てる。
それにしても、この男妙に表現が古臭い。
「ったく、隅に置けないっすねぇ。あれからずっと女のとこにいたんですか?」
ずっと女といたという推理は間違ってはいない。二次元か三次元かの差はあるが。
「やっぱり年上の人ですか?いいなぁ、俺憧れるっすわ、そういうの」
シュウは見た目と裏腹に気さくでいい奴なのだが、喋りすぎるのがタマに傷である。
よくもまぁ、こんなに色々言ってもいないことを考えてつくなぁと呆れながら、龍彦はシュウを置いて歩き始めた。
「あれっすか?やっぱり年齢の差とか感じたりするんですか?でも龍彦さんだったらんなのないっすよね?って龍彦さん!置いてかないでくださいよ!!」
「急がねぇと遅刻するだろうが!」
そういいながら二人は学校への道を急ぐのであった。
ちなみに江戸川龍彦、現時点で無遅刻、無欠席である。
学校へ付くと生徒が早くも昨日の龍彦の決闘について噂話をしている
「おい聞いたかよ?相手、180センチで柔道有段者だったんだけど一撃だったらしいぜ」
「周りのやつらも龍彦さんの迫力に動けなかったてよ」
「へっ、昨日のことなのにもうみんな知ってるらしいっすよ」
シュウがまるで自分の手柄のように嬉しそうに言う。
「そんな噂話されるほどのことじゃないと思うんだがな」
そういいながら龍彦が自分の下駄箱を開けると、手紙が大量に出てくる。まるで雪崩のように。
「またそんなにもらったんですか?いいなぁ?俺にも一枚くださいよ。家帰って手紙の匂い嗅ぐんで」
シュウの変態的発想を聞き流しながら、龍彦は心の中でため息をついた。
昨日のような事件があった次の日はいつもこうなのである。
下駄箱には山のようにラブレターが入っているし、休み時間には教室の後ろのドアから女生徒たちがキャアキャア言いながら龍彦を見に来る。
景も言っていたが、弱い者いじめなどは決してしない龍彦は女生徒のみならず一般生徒から非常に人気があった。
そしてこのような日は運動部からの勧誘も非常に多い。身長190センチ近くあり、力もある龍彦は確実に即戦力だろう。バスケ部、柔道部、ラグビー部といった部活の部長達が女生徒たちと一緒に教室まで来る。
よって龍彦はこういった日は一日中、女生徒たちからの告白、運動部からの勧誘の両方を断り続けなければならない。龍
彦はこれらすべてを断り続けている。
これ以上周りから期待される『龍彦』を演じ続けるのはもううんざりなのだ。
「さて」
彼女はそう言いながら椅子に深く身を沈める。
「もう一度聞きたいのだが先程の我の頼み聞いてくれるかのぉ」
「どうせ僕には選択肢なんかないんでしょ?」
「まぁ確かにそうであるな。それで頼みというのがな」
彼女はそういいながらまた手を叩き、村上の名を呼ぶ。
「今日の一件を見てわかるように、最近我を付け狙う不届き者が多くての。ちと困っておるのじゃ。そこでじゃ」
彼女がそう言った時、村上が龍彦に黒い箱を持ってきた。
「それを開けるがよい」
彼女の言葉に従い、龍彦が箱を開けると中にはマスクが一つ。
メキシコのプロレスラーなどがよく着けてそうなマスクだった。
「これは?」
「いやお主には我のSPをやってもらおうと思っての。だが普通のSPではちとつまらんじゃろ?
何事も遊び心は大切であると思うしの。そこでお主にはそのマスクを被ってSPをやってもらおうかと思っての。」
あまりの話の展開の仕方についていけず固まる龍彦。
「どうしたのじゃ?このマスクのデザインが気に入らんのか?それなら他にもマスクは用意してあるぞ」
「そうじゃなくて!」
「ならなんなのじゃ?顔が隠れるから周囲の者にも気づかれずに済むぞ?」
不満そうに黙っている龍彦を見て、小夜子はため息をつく。
「もし嫌だったらやめてもいいのだぞ?」
「本当に!?」
小夜子の突然の思いがけない言葉に溢れんばかりの笑顔で答える龍彦。
しかし
「周囲の者にお主の趣味がわかってもよかったらの?」
との言葉に表情が一瞬で、その笑顔は失われた。
「あぁ、やればいいんでしょ!?やれば!」
「おぉ。そういってくれるか?そうと決まれば」
そういいながら小夜子は椅子から立ち上がり、龍彦の近くに来ると右手を差し出してきた。
「何をボケっとしておるのか?レディーが握手を求めてきたらしっかりし返すのが男というものであろう」
「あぁっ、そ、そうだね」
龍彦も握手をするために手を差し出す。
「それでよいのだ。ではこれからよろしくな」
彼女はそういいながら笑い、手をしっかりと握ってくる。
彼女の手は暖かく、笑ったときの頬はとても柔らかそうだった。
その瞬間であろうか。龍彦が彼女に魅了されたのは。
江戸川龍彦。その名を知らぬ者はいない不良の中の不良でありながら、家ではスクリーン越しの少女に熱を上げ続ける男。
そしてなんとも我侭で理不尽なお嬢様、尾ノ上小夜子のメキシコ覆面SPとなってしまった。
いったい彼が望むような生活になる日はいつなのだろうか?
すいません。書き込みミスで12まで飛んでしまいました・・・
この書き込みの後7からもう一度投下しますので12は飛ばしてください・・・
学校が終わってから龍彦は住んでいる町から三十分ほどで着く繁華街の中にいた。
この繁華街は龍彦が住んでいる町から程よく離れているので、
漫画やアニメのDVDを買うときには知り合いに見つからないようこの街によく来ている。
それでも周囲に気がつかれぬようマスクをし、サングラスを着けているのだが、龍彦、現在非常に息が荒い。
傍から見るとよく小学生の女の子に「ねぇ?いいもの食べない?とりあえずアツアツのフランクフルトでも」と声をかけてそうな感じではあるが、断じて何かに興奮しているわけではない。
学校が終わってから告白してくる女生徒や勧誘してくる運動部の部長達を振り切り、急いでここまできたからだ。
彼は学校が終わるまですっかり忘れていた、今日が『魔法少女との日々』三巻の発売日だったことを。
この三巻には限定版があり、ヒロインのフィギュアがついているのだ。これ限定版も通常版も買わざるを得ない。
発売日前からそう思っていたのだが、徹夜明けでボーっとしていたこともあり、失念していたのだ。
果たしてまだ残っているのか?無職の大きなお友達に買い占められてやしないか?龍彦は不安を抱えながら本屋へと急いでいた。
その時である、路次裏から悲鳴が聞こえてきたのは。
「やめぬか!わしを誰だと思っている!」
龍彦が路地裏を覗くと、中学1,2年と思しき女の子と、彼女の腕を掴んでいるスエットを着た男、そしてその様子を平然と見ているスーツの男の三人がいた。
少女とスエットを着た男は激しく言い争っている。
「離せ、離さぬか!わしにこんなことをしてただで済むと思っているのか!?」
「マジで可愛げのねぇガキだなぁ?少しぐらい静かにできねぇのか」
「うるさい、うるさい!お前のような者に触れられているだけで鳥肌が立つわ!」
切れ長の目と強い意志を感じさせる瞳。一本、筋がすっと入ったようにまっすぐとした鼻。
花の茎のように瑞々しい長い手足。そして肩の下まで伸びた黒く艶やかな髪の毛。
この少女、なかなかの美人である。口調が妙なのが玉にキズだが。
「マサル」
スーツの男がタバコに火をつけながら、マサルと呼ばれた男の声をかける。
「そんなにうるさいと運ぶとき面倒だから、一発殴って静かにしちまっていいぞ」
「いいんすか、兄貴?傷つけると後々面倒なんじゃないっすか?」
「腹とか殴っときゃ大丈夫だろ。それにそんなうるさいと運ぶものも運べねぇよ」
「お、お前達、私に向かって手を上-げるつもりか!」
「お嬢様が静かにしてくださればそんなことしなくて済むんですけどねぇ」
「お前たち、わしにどこに連れて行く気だ?誰に頼まれた?」
「まぁ、そいつは企業秘密ってやつで」
「まさかあの者たちに頼まれたのか?」
「だからそいつは教えられないんですよ」
「くっ、下衆がっ!お前達のようなものは人間以下の屑じゃ、汚物じゃ!」
サングラスをした男がそう言われると眉間に皺を寄せながら、吸っていたタバコを足で踏み潰す。
「もう面倒だ。マサル、殴っちまえ」
「だってよ、お嬢様。怖いです、ごめんなさいって言えば痛い目見なくてすむよぉ?」
「うっ、うるさい!お前達のようなものになど屈するか!」
気丈にそう言い放つ少女。しかし彼女の足は恐怖で震えている。
「あぁそうか!んじゃ遠慮なく殴らせてもらうわ!」
マサルが拳を握り締め、今まさに殴らんとしたその時。
「待て!」
そう言い放ったのは龍彦だった。
「なんだ、お前?ガキは向こう行ってろ!」
「まぁ、マサル待てよ」
そう言ってサングラスをかけた男がマサルをたしなめる。
「お兄さん、これはあんたには関係のないことなんだ。だから向こう行っててくれないか?正義のヒーロー気取って大怪我なんてしたくないだろ」
男は口調こそ丁寧だが、言葉の端々から脅迫めいた悪意がこれでもかと伝わってくる。
この時、龍彦はちょっとカッコつけて出て行ったことを後悔し始めていた。
いつもの不良が相手ではない。今日の相手は暴力を生業としている者たちなのだ。
コンクリート詰め、生き埋め、魚の餌。
未知の相手を前にして、漫画などで得た様々な情報が龍彦の頭の中を猛スピードで駆け巡る。
「な?俺らも許してやるから。早く帰りな」
そんな甘い言葉についつい乗ってしまいそうになった龍彦を止めたのは、少女の眼差しだった
。大の男二人に囲まれながらも決して屈さず、虚勢を張り続ける少女。
しかし本当は怖いのであろう。泣き出しそうに潤んだ目。そんな彼女の瞳には、助けずにはいられない何かがあった。
「その子を…」
「あ?」
「その子を放せ!」
「おい、マサル。このクソガキの骨、二、三本折ってやれ」
サングラスの男が舌打ちしながらそう言うと、マサルは待ってましたと言わんばかりに龍彦の前に出てくる。
「さっさと逃げりゃあよかったのによ」
そう言いながら彼は構える。どうやらボクシングの経験者のようだ。両足のステップがそれを証明している。
対する龍彦は何も構えていない。
「おい、いまさら謝ったって許さねぇぞ」
マサルの言葉に龍彦は答えない。
「このクッソガキが!」
何も反応のない龍彦が癪に障ったのか、マサルは渾身のストレートを龍彦の顔面に向け、放つ。
その瞬間、マサルの視界から龍彦が消えた。
マサルが龍彦の姿を捉えたのは、龍彦の拳がマサルの顔面に当たるのと同時だった。
龍彦は放たれたストレートを屈んで避け、いきよいよく立ち上がりながらマサルの顔面にアッパーを放ったのだ。
地面から50センチほど浮かび上がった後、そのまま倒れるマサル。おそらく今日はずっとこのままであろう。
「抉ってやるよ」
サングラスの男は真顔でそう言いながら、懐から刃渡り30センチほどのナイフを取り出した。鞘を取ると刀身の部分が不自然に光って見える。
「や、やめろ!そんなものを出すこともないだろう!」
「わかってねぇな。俺たちは舐められたらお終いなんだよ」
男はナイフを片手に持つと龍彦に用心深く近寄っていく。
ズリッ、ズリッ。
靴の裏が擦れる音が路地裏に響く。
「早く逃げろ!」
少女がそう叫ぶのと男がナイフを突き出してきたのは同時だった。
次の瞬間、ナイフはアサッテな方向へ飛んでいった。
龍彦が突き出されたナイフを持っていた手ごと蹴り上げたのだ。
龍彦は高く蹴り上げた足をそのまま男の脳天へと叩き落とす。
路地裏に衝撃音が響くと、男はうめき声もあげずそのまま崩れ落ちた。
「やれやれ」
そういいながら龍彦が少女のほうを見ると、彼女は呆けた顔で倒れている男達を見ている。
「大丈夫?」
龍彦がそう聞くと
「あ、当たり前だ。この程度のこと、まったく動じないわ」
と無理矢理高慢な表情を作るとそう言った。
「ならいいが」
「そ、それにしてもお主なかなか強いではないか。どうだ?私の」
そこまで言った時には龍彦の姿はもうなかった。当初の目的を果たすため急いで行ったのだろう。
「我を愚弄しおって…」
そう言ったとき、彼女は足元に落ちている何かに気がついた
「ない、ない!」
自室で龍彦は何回も何回もポケットの中を手探りしている。
巨漢の男が慌てふためく様は見ていて妙になさけない。
それにしても何を必死になって探しているのだろう?それは彼の一番大切なもの、彼の一番大好きなキャラクターの絵が入ったテレホンカードである。
彼はこれだけはどんな時も、例え喧嘩の時でさえ、肌身離さず持っていたのだ。いわば龍彦にとってのお守りである。だいぶ妙なお守りだが。
(落ち着け、落ち着けよ)
彼は自分にそう言い聞かせ今日一日の行動を思いだす。
胸ポケットに入れたものだからよほど激しい運動をしなければ亡くしはしないはずだ。
今日激しい運動をした場所は・・・・
思い当たる節がありすぎた。学校終わってすぐ走って、電車に乗ってすぐ走って、路地裏の一件の後もすぐ店に向かって走ってと今日一日走りっぱなしだったのだ。
深い絶望の中、頭を掻き毟っているとドアをノックする音が。
「誰?」
「私だけど」声の主は景だった。
「何?ちょっと後にしてよ!」
「うるさい、早く下に来なさい!なんか凄い人があんたを訪ねてきてるのよ!」
「えっ!?」
龍彦が玄関に行くとこの家にまったくふさわしくない人物が立っている。
綺麗な白髪をオールバッグで纏め、一目で一級品とわかるスーツを着こなす。その人物はまさしく知的な紳士のイメージそのものであった。
「あなたが江戸川龍彦様ですか?」
「そうだがあんたは?」
龍彦は少し緊張し、外での喋り方になっている。
「おっとこれは失礼しました。わたくし村上欣也と申す者です。尾ノ上家の執事をさせてもらっております」
「その尾ノ上家の執事さんとやらが俺になんのようだ」
「実はあなたにお礼を申し上げたいという者がおりまして…」
そう言ったとき、彼女は足元に落ちている何かに気がついた
「ない、ない!」
自室で龍彦は何回も何回もポケットの中を手探りしている。
巨漢の男が慌てふためく様は見ていて妙になさけない。
それにしても何を必死になって探しているのだろう?それは彼の一番大切なもの、彼の一番大好きなキャラクターの絵が入ったテレホンカードである。
彼はこれだけはどんな時も、例え喧嘩の時でさえ、肌身離さず持っていたのだ。いわば龍彦にとってのお守りである。だいぶ妙なお守りだが。
(落ち着け、落ち着けよ)
彼は自分にそう言い聞かせ今日一日の行動を思いだす。
胸ポケットに入れたものだからよほど激しい運動をしなければ亡くしはしないはずだ。
今日激しい運動をした場所は・・・・
思い当たる節がありすぎた。学校終わってすぐ走って、電車に乗ってすぐ走って、路地裏の一件の後もすぐ店に向かって走ってと今日一日走りっぱなしだったのだ。
深い絶望の中、頭を掻き毟っているとドアをノックする音が。
「誰?」
「私だけど」声の主は景だった。
「何?ちょっと後にしてよ!」
「うるさい、早く下に来なさい!なんか凄い人があんたを訪ねてきてるのよ!」
「えっ!?」
龍彦が玄関に行くとこの家にまったくふさわしくない人物が立っている。
綺麗な白髪をオールバッグで纏め、一目で一級品とわかるスーツを着こなす。その人物はまさしく知的な紳士のイメージそのものであった。
「あなたが江戸川龍彦様ですか?」
「そうだがあんたは?」
龍彦は少し緊張し、外での喋り方になっている。
「おっとこれは失礼しました。わたくし村上欣也と申す者です。尾ノ上家の執事をさせてもらっております」
「その尾ノ上家の執事さんとやらが俺になんのようだ」
「実はあなたにお礼を申し上げたいという者がおりまして…」
龍彦は彼の家の前に止まっていた超高級外車の中にいた。
車は夜の道を走る。
龍彦の中にあった戸惑いや不安は、普段乗りなれていない車に乗った興奮の中にすっかり飲み込まれていた。
車は高級マンションの地下駐車場の中へ入っていき、そこで止まった。
村上は車から降りるとエレベーターのボタンを押す。
二人が乗るとエレベーターは最上階へ上がって行く。最上階は全て同じ部屋主のものであるらしくエレベーターが開いた先が玄関となっていた。
「奥へどうぞ」
欣也に促され、龍彦は奥の部屋へ入ると非常に広い空間が広がっている。
はっきりいって圧倒された。大きな窓からは街中の夜景がはっきり見渡せる。
普段大きく感じる街並みが龍彦の手の中にすっぽり入ってしまいそうだ。
龍彦のような高校生でもこのマンション、しかも最上階という場所がいかに高額かはわかる。
「どうだ?この夜景は?」
すっかり呆けた顔をしていた龍彦だが。その声で連れ戻される。
「お主のような者にはすべてが珍しく見えるだろう?」
その声は大きな窓の前にあるリクライニングチェアーから聞こえてきた。
龍彦に対して椅子の背を向けているので顔は確認できない。
「客がきたら顔ぐらい見せるのが礼儀じゃないのか?」
「確かにそうであるな」
声の主はそう言うと椅子を回転させて龍彦のほうを向く。
そこに座っていたのは今日の昼、暴漢に絡まれていた少女だった。
「なんだ、昼に助けた女の子じゃないか」
「女の子とはなんだ!われは高校生だぞ!」
その子は顔を真っ赤にしながら反論してくる。…だが椅子から足が下に届かず、手足をバタバタさせているのでなんとも説得力がない。
「ふん、まぁいい。それにしても」
少女は椅子に座りながら、龍彦のことを上から下まで舐めまわすように見る。
「昼の件は礼を言うぞ。お主強いのだな。名はなんと言うのだ?」
少女はやたら上機嫌に話しかけてくる。
「…江戸川龍彦」
「そうか、龍彦か。われは尾ノ上小夜子というのじゃ。よろしくな」
「自己紹介のためだけに呼んだのか?」
「いや礼がしたいとさっき言わなかったか?それに少し頼まれて欲しいことがあっての」
小夜子がそう言ったとき龍彦は眉間に皺をよせた。
「悪いけど、面倒事なら帰らせてもらう」
「なぜじゃ?」
「こっちは色々と忙しいんだ。余計なことしている時間はない」
ちなみに龍彦は色々と忙しくない。単純に家での至福の時間が減るのが嫌なだけである。
「こんなに頼みこんでもか?」
「あぁ」
「それなら仕方ないのぉ」
彼女はそう言いながらため息をつく。
「悪いな。それじゃあ」
「ちょっと待て、龍彦」
小夜子は背を向け帰ろうとする龍彦に声をかける。
「なんだ?礼ならもうしただろう?」
「いやな。龍彦、これを知っているか?」
小夜子はニヤついた表情を浮かべながら、何かを龍彦に見せる。
「そっ、それは僕の!」
小夜子が出してきたのは龍彦がなくしたはずのカードだった。
「ほぉ、『僕』とな。それがお主の本当の性格か。村上」
小夜子がそういいながら手を叩くと部屋の照明が落ち、音もなくスクリーンが降りてきた。
「お主のこと少し調べさせてもらったぞ」
彼女がそういうとスクリーンに写真が映る。龍彦が取り巻きの不良連中と一緒にいるときの写真だ。
「江戸川龍彦、近所で知らない者はいない不良中の不良。喧嘩は百戦百勝、
しかし男気溢れる性格と器の大きさで不良のみならず一般生徒からも男女問わず人望が厚い。だが!」
小夜子は右端の唇を思い切り吊り上げるような笑い方をすると
「これがお主の本当の姿であろう」
強い口調でそう言い切る。
龍彦がスクリーンを見るとそこに映っているのは自室での龍彦だった。
エロゲーをやりながらニヤける龍彦。ラノベを読みながらニヤける龍彦。
フィギュアのパンツを覗き込みニヤける龍彦。そこには龍彦の真実の姿が映っていた。
それにしても・・・この龍彦のニヤけている表情は非常に気持ち悪い。
特にフィギュアのパンツを覗き込んでいる時の表情など発禁ものである。
「まったくとんだ番長がいたものよ」
「な、なんで僕の部屋が」
「甘いわ!尾ノ上家にかかればこの程度朝飯前よ」
「こんなの犯罪だよ!」との龍彦の叫びは
「法律など権力さえあればどうとでもなるものよ」
という傲岸極まりない言葉にかき消された。
「さて」
彼女はそう言いながら椅子に深く身を沈める。
「もう一度聞きたいのだが先程の我の頼み聞いてくれるかのぉ」
「どうせ僕には選択肢なんかないんでしょ?」
「まぁ確かにそうであるな。それで頼みというのがな」
彼女はそういいながらまた手を叩き、村上の名を呼ぶ。
「今日の一件を見てわかるように、最近我を付け狙う不届き者が多くての。ちと困っておるのじゃ。そこでじゃ」
彼女がそう言った時、村上が龍彦に黒い箱を持ってきた。
「それを開けるがよい」
彼女の言葉に従い、龍彦が箱を開けると中にはマスクが一つ。
メキシコのプロレスラーなどがよく着けてそうなマスクだった。
「これは?」
「いやお主には我のSPをやってもらおうと思っての。だが普通のSPではちとつまらんじゃろ?
何事も遊び心は大切であると思うしの。そこでお主にはそのマスクを被ってSPをやってもらおうかと思っての。」
あまりの話の展開の仕方についていけず固まる龍彦。
「どうしたのじゃ?このマスクのデザインが気に入らんのか?それなら他にもマスクは用意してあるぞ」
「そうじゃなくて!」
「ならなんなのじゃ?顔が隠れるから周囲の者にも気づかれずに済むぞ?」
不満そうに黙っている龍彦を見て、小夜子はため息をつく。
「もし嫌だったらやめてもいいのだぞ?」
「本当に!?」
小夜子の突然の思いがけない言葉に溢れんばかりの笑顔で答える龍彦。
しかし
「周囲の者にお主の趣味がわかってもよかったらの?」
との言葉に表情が一瞬で、その笑顔は失われた。
「あぁ、やればいいんでしょ!?やれば!」
「おぉ。そういってくれるか?そうと決まれば」
そういいながら小夜子は椅子から立ち上がり、龍彦の近くに来ると右手を差し出してきた。
「何をボケっとしておるのか?レディーが握手を求めてきたらしっかりし返すのが男というものであろう」
「あぁっ、そ、そうだね」
龍彦も握手をするために手を差し出す。
「それでよいのだ。ではこれからよろしくな」
彼女はそういいながら笑い、手をしっかりと握ってくる。
彼女の手は暖かく、笑ったときの頬はとても柔らかそうだった。
その瞬間であろうか。龍彦が彼女に魅了されたのは。
江戸川龍彦。その名を知らぬ者はいない不良の中の不良でありながら、家ではスクリーン越しの少女に熱を上げ続ける男。
そしてなんとも我侭で理不尽なお嬢様、尾ノ上小夜子のメキシコ覆面SPとなってしまった。
いったい彼が望むような生活になる日はいつなのだろうか?
以上です。このようなSSを書くのが始めてな上に
投稿ミスがあったりと色々問題がありますけど
生温かい目線で見守っていてください。
しかし、二重投稿は百歩譲ったとしても
ラストを途中で投稿するのはありえないだろうjk
蝶☆GJ!!
良いコンビだなぁ
ってか龍彦いいなw
龍彦のキャラがすごいいいよ!!
GJ!!
othello待ってる.....
面白れえなw
ただの喧嘩屋シロートの龍彦があんなに蹴りうまいのはちょっとムリじゃね?って思ったが
トランポリンしながら続きまってるわ
親指逆立しながら舞ってる
鍋つつきながら全部続きまってるわ
最終回。藤代雪の裏側。
裏3→???
「全部……知っているだと?」
「川本恭介さん。二十三年前に藤代不動産に吸収合併された川本不動産株式会社の創業者であり社長の川本平蔵さんの息子さん。お母さんは川本恵さん。十五歳の時
お子さんのなかった春名義之さんと春名スエさんの養子になった……そうでしょう?」
肯定も、否定もできなかった。口が動かない。
「……知り合いの探偵の方に、調べていただいたんです。ごめんなさい」
沈黙が落ちる。
聞きたいことは山程ある。何故調べようと思ったのか。何故恭介の身元を裕生に言わなかったのか。そして何故恭介に抱かれるのか。
疑問を纏めきれないうちに、雪が口を開いた。
「私の部屋から、下の父の部屋の音がよく聞こえるのを知っていますか」
よく知っていた。裕生は自ら会社に出向くより、あの部屋から訪ねてきた部下や電話で指示を出す方が多かった。召使の春名が裕生のスケジュール管理をしていたのも
その為だ。時折雪の部屋の隣の空室で裕生と部下の会話を盗み聞きしたこともあった。
「小学校の中学年近くになれば、大人が喋る内容でもかなりわかります……私の部屋には父の言葉がよく聞こえてきた。誰かを口汚く罵り侮蔑し不幸を願い、陥れるために
会社の部下と話し合っているのを、私は学校に行っている時間以外、毎日、ずっと聞いていた。父が逮捕された日まで十数年間、ほとんど絶えることなく。だから父がしてきた
ことは、あなたより詳しく知っているかもしれない」
−−−−あの男がしていたことを、そんな昔から?
気のせいか、よく見えないはずの雪の顔が青ざめていくように見えた。恭介も背筋に薄ら寒いものを感じた。
十数年そんな言葉を聞き続けた、その事自体もおぞましかったが、更に雪の少女時代を境遇を思い出したせいだ。
確かあの頃は体調を崩したせいで軟禁状態になっていた時期があった、日差しが弱まる秋口近くまで続いていたはずだ。夏の少し前に雪が倒れて欠席した一ヶ月近くと、
学校が夏休みになってから二学期の始めまでの二ヶ月、計約三ヶ月間。
その間当時十歳の子どもが三ヶ月ずっと、親が計略を巡らし誰かを呪っているのを独りで一日中聞き続けたということではないか。
「私は恐くなった。こんなことをし続けて許されるはずがないと……だけど父にやめてとも言えなかったし母に相談することもできなかった。母は人の秘密を噂することを嫌って
いました。両親に嫌な子だと思われたくなかった……それなのに結局、私は父が誰かから奪ったものを享受して生きてきた。幾ら心の中で悔いたって見て見ぬ振りをして自分の
生活を守る事を選んだも同然です。私も父と同罪だ、いつか裁かれる日が来るんだと思いました。そんな時、あなたが私の担当になった」
恭介は思い出していた。薄暗い部屋の中で、顔に病んだ色を浮かべて佇んでいた少女。
あれは、罪の意識に怯えていたのか。
「元々友達はほしかったけど、あの頃は特にそうでした。父や母には心配をかけたくなかった、けど不安で、恐ろしくて、悩みを話せなくてもいいから誰かに側にいてほしかった
……だからあなたが友達になってくれた時には、とても嬉しかった……あなたと遊んだり、話をしているときは父の声は聞こえなくなって、私は楽になることができた」
雪は、微笑む。まるで今にも消えてしまいそうな弱々しい微笑み。
恭介は、何も言えない。何を言えばいいのか分からない。
「それから数年は、心穏やかに過ごせました。罪悪感はあったけどいつか償うことができるかもしれないと思っていたから。だけど高校生の頃、あなたが時々、私達に嘘をつく
ことに気がついた」
「……どうして、分かった」
恭介は思わず訊ねた。
「あなたは嘘をついたり隠し事がある時は、私の顔を見て上手に喋れなくなるんですよ。気付いてませんでしたか?」
「…………」
呆然とした恭介に、雪は寂しげに微笑む。
「あなたが私を見てきたように、私もこの十三年、あなたを見てきましたから……」
いつの間にか日が沈み、窓から射す月明かりが雪の輪郭だけを淡く映し出している。
「あなたに気付かれないように遠まわしに質問を重ねて、あなたが自分についてすら何かしら隠していると憶測がつきました。調査の結果を聞いた時は、とてもショックだった。
父に会社を奪い取られた人の子どもが素性を隠して働く理由なんて一つぐらいしかない……父が逮捕されて、あなたが屋敷を去って、やっぱりそうだったんだと思いました」
「でもお前はここに来た。何故だ」
雪は俯く。
「……母が倒れた時は、どうしていいか分からなくて、ただ単純に誰かに縋りたい一心でした。父の逮捕は覚悟していましたが母まで倒れるとは思っていませんでしたから」
「それなら他にも行き場所はあったはずだ。何故わざわざ探偵に住所を調べさせてまで、その原因を作り出した俺のところに来た」
「……諦め切れなかったんです。どこかで、あなたを信じたかった−−−−あなたが好きだったから」
心臓が、跳ねる。緑の瞳から、涙が零れる。
「あなたに父を赦してもらいたかった……そしてそれ以上に藤代の娘である私を赦してもらいたかったんだと思います。例えそれがかなわなくても償っているのだと思えば私は
楽になることができた。ここで犯されかけた時は確かに恐かったけど、もし身体で償えるならそれでもいいと思ってまたこの部屋を訪ねたんです……いえ、あなたが言っていた
ようにそれを望んでいたのかもしれない。もしかしたらあなたも同じ気持ちではないかと」
堪えきれなくなったのか、華奢な手が顔を覆う。
「馬鹿ですよね、結局あなたは私を憎んでいたのに」
驚きが、現実に恭介を引き戻した。憎んでいる? 俺が? 雪を?
「あなたは私の浅ましい気持ちを理解していた。本当は私が藤代でも父でもなく、自分一人だけをあなたに赦してもらいたいと思っていることを見抜いていた」
「待て……一体何の事を言っているんだ」
露骨に驚愕の顔を見せた恭介に、しかし呆然として俯いたまま、顔も見ず雪は呟いた。
「あの日、あなたは私に言った。お前に被害者面する資格はない、と」
−−−−あ。
「あなたが自覚していなかった癖を私が知っていたように、私が自分でも気付いていなかった心の卑怯な部分にあなたは気付いていた。父を赦してもらいたい気持ちは本当だった
けど、私はどこかで何の責任もない被害者か、藤代の犯した罪と無関係でありたいと強く願っていた。あなたの復讐を誰にも言わなかったんじゃない、誰にも言えなかったんです。
言えば私が父がしたことを知っていると、それなのに何もしてこなかったと認めることになるから……」
自らの内面を苦しげに吐き出す目の前の女は、段々と小さくなっていくように見えた。
−−違う。
今度は恭介が呆然とする番だった。恭介は雪が全て知っていたことにも、彼女の心に降り積もっていた罪悪感にも微塵も気付いていなかった。あの言葉もそんなつもりで言った
わけではない。
だが雪にとって、恭介は藤代の断罪者だった。恭介の意図するところではなくても、自分への憎しみともとれる態度で、無意識に封じ込めていた気持ちを言い当てられ、「お前が
悪い」という烙印まで押されたことで恐らく雪の罪の意識はピークに達したはずだ。
痕を残すどころではない。恭介の言葉は、あと少しで千切れるところまで雪の心を抉っていた。
『ごめんなさい』
−−眠りに落ちる寸前に聞いたあの言葉は。
だからか。だからなのか。
身体中の空気を全部出してしまうように、雪は震える息を吐いた。
「……もう私はどうすればいいのかわからなくなってしまった。自分の心根の醜さにも気付いて、あなたに憎まれていることも知って……それでもあなたが好きで、藤代も自分も
赦してもらいたい気持ちは嘘ではなかった。だからあの日の後もここに来たんです。もしかしたらあなたの要求に応え続ければ何かを変えられるかもしれないと思った。性欲の
捌け口になってそれでどうにかなるとは思えなかったけど、拒むことはできなかった」
夜の闇の中、雪は今にも崩れ落ちそうに見えた。
少しでも触れ方を間違えればたちまち壊れて、二度と元に戻らないだろう。
「……でももう終わりにします。あなたにすれば、こんなこと不快で、迷惑でしかなかったですよね……今までごめんなさい。厚かましいお願いですが、父が罪を償ったら、いつか
幾許かでも赦してやってください。お願いします」
深々と頭を下げ、一歩玄関に踏み出した雪の前に恭介は立ち塞がった。
少し怯えた風に雪が見上げる。溜まった涙が今にも零れ落ちそうな瞳は、今にも最後の力を失いそうなほど頼りない。
「何故背負おうとする」
「……何故?」
「俺を怨めばよかっただろう」
恭介が裕生を怨むことで悲しみから抜け出したように。
「……藤代のせいで家も両親も名前も亡くしたあなたを、何故私が怨めるんです? それに、私はあなたを嫌いになどなれない」
「……元々お前が何かしたわけではない。それこそ無関係を決め込めばそれで済んだはずだ。知らないふりをしていればよかっただろう」
「……そうですね、そうすれば楽だったでしょうね」
僅かに強さを取り戻した緑色の視線が、恭介を目を見据える。
「でも、どんなに悪い事をしていても、私の父なんです。止めることすらできなかったのに見捨てるなんて、私にはできない」
恭介が見つめ返しても、その視線は揺らがなかった。
「……確かに、馬鹿だな……」
恭介と雪、どちらが罪人かなど明らかなのに。
怨むことも逃げることもできず、自分のものでない父親の罪を背負い続けてぼろぼろになっている目の前の女が。
「本当に馬鹿だ−−−−」
どうしようもなく哀れで。
どうしようもなく愛おしくて、抱きしめた。
「……? あの……」
「赦す」
細い身体が震えた。
腕の力を緩める。雪はひどくゆっくりと恭介の胸から離れた。
何が起きたのか確かめるように、戸惑った顔が春名を見上げる。
「え…………?」
「お前に罪はない。俺はお前を恨んでいない。それでもお前が自分を罪深いというなら、俺がお前を赦す」
頬に手を伸ばし、そっと冷たい涙の跡を拭った。
「どうして……」
「……恋だの愛だの、綺麗なものじゃない。裕生が憎いことにも変わりはない。だが……」
涙に濡れた緑の瞳。僅かな月明かりを受けて煌くそれは、ただただ綺麗だ。
今なら、この目に顔を背けず、惑わず偽らず伝えられるだろうか。
「お前が欲しい。心も、身体も」
萎えていた目に、力が戻る。拭ったばかりの頬に、また涙が伝う。
だがそれは、確かに温かい。
どちらともなく、恭介と雪は唇を重ねた。
俺の名前は春名優介という。優しい人になってほしいのと、父の名前から一文字とって両親が付けた名前だという。今年十六だ。
母さんは病気で二年前に亡くなり、後を追うように親父も昨年病気で亡くなった。
息子の俺が言うのもなんだが母さんはすごく綺麗で優しくて、俺は母さんが大好きだった。身体が弱くて、そのくせ頑張り屋だった。
またまた息子の俺がいうのもなんだが、親父は優しい上にかっこよくて、俺は親父も大好きだった。休みの日はよくキャッチボールをしてくれた。
もういないけど、今でも俺の自慢の親だ。
母は料理が上手かった。父と俺も手伝って、三人でよく料理やお菓子を作った。どれも全部うまくてよくおかわりをした。父も料理がうまかった。母に教えられたのだとよく
言っていた。
中学の入学式に撮った写真が、俺と父と母、三人で写った最後の写真だ。俺の宝物だ。
写真の二人は、まだぶかぶかの制服を着た俺の肩を抱いて幸せそうに笑っている。
誰も身寄りがいなくなり施設にでも行くのかと思っていた俺は、しかし祖父に引き取られた。俺は驚いた。今までじいさんがいるなんてちっとも教えられていなかったからだ。
俺にじいさんのことを教えてくれたのは母さんの知り合いの弁護士のおっちゃんだった。おっちゃんの家族と母さんは親しかったらしい。
「雪さん、綺麗だったなぁ。私の憧れだった」
六歳年上の陽子ねえちゃんは時々そう言って、少し悲しそうな顔をする。
最近は俺もおっちゃん達と仲良くなった。この前、町で偶然おっちゃんを見かけて声を掛けたらすごく驚いていた。どうやらおっちゃんは自分が物凄く地味で目立たない人間
だと思っているらしい。
俺にはそんなだとは思わないんだけど。田中一ってそんなに存在感のない名前だろうか?
初めてじいさんに会いに行った時もそれは驚いた。両親と暮らしてた3LDKのアパートと天と地の差がある豪邸だったんだから当然だ。でも本当は白いはずの壁はなんだか
薄汚れていて、あまり手入れをされていないようだった。
じいさんはおっちゃんと同い年だと聞いていたけど白髪も皺もおっちゃんよりずっと多くて、ひどく老けていた。
「優介といいます」
挨拶をしてもじいさんは返事をしてくれなかった。ただ背を丸めて自分の部屋に帰っていった。
どうやら何年か前に俺の知らないばあさんがなくなってから、じいさんは使用人数人だけと暮らしているらしい。普通の暮らししか知らない俺からすれば使用人がいるだけでも
驚きだったのだけど、おっちゃんによれば昔は今の四倍はいたというからさらに驚きだ。じいさんは母さんの親父らしい。一体どうやって親父が母さんと出会ったのか知りたかった
けど、おっちゃんはよく知らないと誤魔化すし、じいさんはとても聞ける雰囲気じゃない。俺は何となく、二人がじいさんの望まない形で結ばれたんだと悟った。
じっとしていても暇なので、じいさんの家に引っ越してからは使われていない部屋を探索して楽しんだ。お気に入ったのは、じいさんの部屋の上にあるベランダ付きの部屋だった。
晴れた日にこの部屋の窓辺で昼寝をするとすごく落ち着く。
ふと、苦しげな咳が聞こえた。下の階、じいさんの部屋からだ。防音が甘いみたいで、咳以外にも小さな物音が丸聞こえだった。
だがそれ以外、じいさんの声は聞こえない。俺はこの屋敷に来てから一ヶ月経っても、じいさんの声を知らなかった。
「あの、おじいさん……俺とオセロでもしませんか?」
じいさんはいつものむすっとした顔じゃない、何となく間の抜けたような顔をした。
俺はあの部屋のクローゼットにオセロゲーム一式がしまってあるのを見つけた。この家で初めて見つけた娯楽らしいものだった。
流石に何も話さないままなのは嫌だった。じいさんがゲームで心を開いてくれるとは思えなかったけど、他にいい考えもなかったのでやけっぱちで言ってみたのだ。だけど意外にも
じいさんはのってきた。相変わらず何も言わないで、ボードの向かいの席についただけだったけど。
見た目に似合わずじいさんは強かった。毎日最低でも一、二回はやったけど、俺は一回も勝てなかった。
一ヶ月ぐらい経って、気のせいかじいさんの丸まった背筋が伸びた気がした。盤面を見ている時はすごく真剣で、オセロをしている時はじいさんは若返って見えた。
「……懐かしいな」
ある日、ぽつりとじいさんが呟いた。
「? 懐かしい、んですか? 昔よくやってたとか?」
「ああ……流行っているからと付き合わされた。いつも私が勝っていた」
遠い遠い昔の事でも言うようにじいさんは呟く。じいさんが若い頃の話なのだろう。
「……一回ぐらい、勝たせてやればよかったのかもしれんな……」
いつの間にか、じいさんは背中の曲がった老人になっていた。
「懐かしいな……」
普通に会話をすることはできるようになったけど、結局母さんと親父の事は一言も喋らずじいさんは逝った。
じいさんの書斎で遺品を整理している時、俺は一冊のアルバムを見つけた。
中の写真に写っていたのは若い頃のじいさんと俺の知らないばあさん、そして幼い女の子。すぐに俺はそれが母さんだと分かった。
俺の宝物の写真と同じく、もう誰もこの世にいない三人家族は幸せそうに笑っている。
母さんは若かったし俺と親父の身を案じていたけど、安らかに旅立った。
父さんは俺にすまないと謝ったけど、幸せだったと言って息を引き取った。
だけどじいさんは、生きている時も死んだ時も、ずっと寂しそうだった。
じいさんは悪い人間ではなかったと、俺は思う。
なのに何で母さんは親父と俺だけを選んだのだろう。
今はもう、それを知る術はない。
最後だけ遅れてスマソ。何故か書き込みが弾かれた……。
今見直すと誤字脱字、内容に関する致命的添削ミスがあって鬱だがこれにて終了。
着地点は同じだが途中が大きな路線変更があり投下が大幅に遅れた。正直スマンカッタ。
一ヶ月超の長丁場に付き合ってくれてd。
おー、リアルで遭遇してしまった。
やばい、鼻の奥がつーんと…
幸せになったんだね…期待はしてたけど、本当に良かった。
お疲れ様でした。
GJと云う言葉では表し切れないんだけど、大変にGJでございました。
素晴らしい作品に大感謝。
191 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/07(月) 16:23:31 ID:etAGUj35
結末良かったよ…乙でした
目から汗が出たよ
この作品書いてくれてありがとう
ついでにあげておく
192 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/07(月) 21:12:35 ID:c5vVB8mV
お疲れ様ですた。
GJを送らせて頂きます。
Good jobじゃないよ。God jobだよ。
いい。心地よい切なさ。
なんでエロパロ板でこんな気分が味わえるんだ…GJ
196 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/13(日) 02:21:40 ID:FP9Cer48
ほしゅ
「可哀想なお嬢様……」
一糸纏わぬ姿で腕の中に納まり、時折擦り寄る仕種を見せる少女を見つめる青年の口から憐れむ言葉が零れた。
にもかかわらず、その響きは憐れんだものではなかった。
「貴女は私を愛してはいけなかったのに。ましてや、身体を許すなど」
くすくすとおかしそうに笑う青年は少女の髪を梳き、優しく撫でた。
その仕草こそ恋人に対するようなものであるが、その秀麗な面に表れるものはそれではない。
つ、と滑らかな背に指を這わせると眠る少女から、ん…と鼻にかかった甘い声が零れる。
くつりと薄く笑い、青年はその耳朶を甘噛みした。
腕の中の少女がひくりと震えるのを感じ、まだ熱が抜けきっていないのかと青年はまた小さく笑う。
今夜男を知ったばかりの少女の性感帯をくまなく暴き、幾度も絶頂に押し上げたのだ。
手加減など微塵もせずに教え込んだのだから、少女の無垢な身体はひとたまりもなかったろう。
何も知らずに、ふにゃりと嬉しそうにする少女を青年はしっかりと抱き寄せてやる。
今は、何の憂いもなく眠る少女の望みどおり目覚めるまでいてやらねばなるまい。
面倒なこと、と思わなくもないが。
少女には両親と弟が一人いる。
少女に見向きもしない父と義母と、お世辞にも仲が良いとは言えない腹違いの弟。
使用人達も弟の方に重きを措いており、少女に好んで係わろうというような者は多くない。
主人の命であり、生活を考えると理不尽であろうと従わざるを得なかったということも含まれるが。
自らが必要とされていないとひしひしと感じながら過ごす少女の心は飢え凍えていた。
そんななか、たった一人大切にしてくれる青年が見せる気遣いと優しさは少女を虜にした。
二人の出会いは今から遡ること、幾年。
父親が保護したのだという少年―かつての青年―が、他の使用人たちよりも歳が近いということで少女に付けられた。
その時すでに必要ではないという判断を下されてはいた娘だが、仮にも名家の娘。
側に控える者が一人もいないのは不自然であり、世間体にも係わる。
また、『娘』であることの利用価値がないわけでもない。
両親を亡くし身寄りがないという少年のことは当然調べられたが、その通りであったためさして問題にされなかった。
というよりも、彼にとって少年一人闇に葬るなど造作もなかったからだ。
また、娘の身に何か起こっても、少年に責を全て負わせてしまえばいいと考えたためだった。
仮に娘と少年に何か間違いが起こったとしても、いい厄介払いができる、そう考えていた。
ならず者たちに追われていた少年がたまたま居合わせた自分に助けを求めたのも、ただ身なりが一番良かったからだ、と少女の父親は思っていた。
しかし真実は違う。
少年を追っていたのは少年の友人の手下であり、少年にとって知らぬ者たちではなかった。
主の命を受けて、少年を追う振りをしていたに過ぎない。
少女の父親に助けを求めてその懐に潜り込んだのも、全ては演技であり少年の策謀だったのだ。
少女の父親の考えを少年が全て看過しているなど、思いもしなかった。
自分の思うとおりにことが運び、少年が内心ほくそえんでいたことも、当然のことながら気付いていなかった。
初めて少年と少女が引き合わされたとき、少年は自分の主となる少女をまっすぐ見つめた。
しかし緊張しているのか、少年はにこりともしなかった。
その時、もったいないな、笑ったらきっと綺麗だろうな、と少女は思ったものだ。
少年と少女はすぐに仲良くなった、というよりも、少年が甲斐甲斐しく少女の面倒を見た。
少年は少女と過ごすうちに微笑むようになった。少女が思った通りの綺麗な笑みだった。
笑ってくれたことが嬉しくて、少女は更に少年によく懐いた。
他の家族や使用人たちと違っていやな顔一つせず相手をしてくれるのだから、当然ともいえる。
大した教養もないだろうと思われていた少年は、良家の子息かと思えるほどに礼儀作法を心得ていた。
両親のどちらかが良家の出だったのかもしれない。少年の両親亡き今、辿る手立てはもうないが。
加えて、少年は賢かった。
家庭教師を付けること躊躇っていた少女の父親にとって好都合。
少女の父親は、これ幸いと少年に娘の教育を任せた。
懐いていることもあって、少女は素直に少年の教育を受けた。
大人顔負けの知識を披露することもあった少年に、少女は尊敬の念を抱いた。
やがて、尊敬は恋になった。
愚かにも少女は、その肌を許すほどに愛してしまった。
少女は青年を信じきっていたし、その優しさがどんな意図からであったか知る由もなかったのだ。
それが、そうなるように仕向けられ、仕組まれたものであると気付きもせずに。
というような主従は御所望か?
年齢設定が気になるな
誘い受けは嫌われるのねん
でも、過疎ってるから何でも歓迎
お嬢様と6歳程度差があると思ってくれればいい
続きカモン!
是非、続きを!!
続き希望!!
そうだなぁ、誘い受けするような奴は要らんな。
208 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/25(金) 15:21:59 ID:dFQNB+AW
ほ
ここの人は、やっぱ男前の従が好みなの?
ジャガイモみたいな顔の、「グエヘヘヘ」みたいのはダメ?
男前じゃなくてもいいけど「グエヘヘヘ」みたいのはダメ
自分はグエヘヘヘも新鮮でOK 書かれるもの拒まず、カモン。
直接の主従じゃなくても投下オッケー?
例えば兄の従者と妹姫とか。
主の妹姫ならば立場としては主従に準ずるような気がするし何より読んでみたい
wktk
オッケーみたいなんで投下する。直接の主従じゃないから主従要素は濃くはない。
保管庫保存は遠慮させてもらいたいので、保存しないようお願いします。
自分で自分を慰めるなど恥ずべき行為であるのは承知していた。けれど、だからといって他にどうすればいいのかセレストにはわからない。
達しても達しても解放されない体の奥から湧き上がる飢えと渇き。以前も同じ渇望を覚え、酷く苦しんだことを思い出す。
あの時はどうやってこの苦しみから解放されたのか。記憶を辿り、セレストの脳裏にまざまざとその時の光景が浮かび上がる。
「そう、だ……ん、はぁ……あ、ああああッ」
セレストの体が大きく跳ね、彼女はまたしても達した。
(リュシアン。あの時はリュシアンが)
金色の髪と白い肌を思い出すとそれだけで体が彼を求めて震えだす。
セレストは意を決してベッドから降り、汗を流すためにバスルームへと向かった。
◇◆◇
「お前に客だぞ」
開けたままにしていた扉から声がかかり、リュシアンは緩慢な仕草で顔を上げた。
「女の客とは珍しいな」
男はにやにやと品のない笑みを浮かべていたが、リュシアンに睨みつけられてそそくさと立ち去った。
椅子に掛けて剣の手入れをしていたリュシアンは女の客と聞いて怪訝に眉を顰めた。今夜は来客の予定などなかったし、約束もなしに押しかけてくるような間柄の女も今はいない。
誰だろうと考え込むよりも先に戸口に人影が現れた。
まず目についたのは短く切りそろえられた月光に似た色の髪。そして、蜜色をした艶のある肌。薄手の生地は申し訳程度にしか肌を覆ってはいないが下品ではない。寧ろ品良く見えるのは彼女の生まれが卑しからぬおかげだろう。
上から下まで視線を走らせ、リュシアンは瞬きを一つ。幻ならそれで消えるはずだった。
「夜分遅くにすまない。あなたならまだ起きていると思ったから」
しかし、彼女は消えなかった。幻ではない証拠に声まで聞かせてくれる。
「呆れた人だ。なぜここに……離宮で静養中だと聞きましたが体はもう回復を?」
深い紫の瞳に動揺に似た色が浮かぶ。どうやら許可を得て訪れたわけではないらしい。
リュシアンは溜め息をこぼす。
「前にも言ったと思いますがもう少し自分の立場というものを考えるべきです。一人で出歩いていい体ではないはずだ。傷でもついたら」
「商品価値が下がるのか。あなたの言い分もわかる。……私だって自分の立場がどういうものか自覚はある。それに、野盗の類に負けないだけの腕はあるつもりだ」
「確かに弱くはないでしょう。だが、強くもない。素人相手なら分はあるかもしれないが本職相手では話にならない。何のために警護がついているのか考えたらどうです」
間違ったことは一つも言っていないはずなのに、彼女の表情が曇れば曇るほどに腹が立つ。そんな表情をさせてしまう自分に苛立つのだからどうしようもない。
「あなたの側なら」
紫の瞳が縋るようにリュシアンに向けられる。
「あなたの側なら警護はいらない。あなたより強い人間などこの国にはいないはずだ」
今度はリュシアンが黙り込む番だった。
「あなたの側が危ないというならこの国には安全な場所などない。それに……あなたは何かあれば必ず私を守ってくれる。そうしなければあなたはあなたの主を裏切ることになるのだから」
それは論点がずれていると思いはしても、これ以上の問答に意味はないと悟ったリュシアンは反論しなかった。
その代わり、手にした剣でベッドを叩く。
「扉を閉めて、とりあえず座ったらどうです」
リュシアンが追い返すことを諦めたのだと気づき、安堵したように胸を撫で下ろす。その姿を眺め、リュシアンは難しい顔で髪をかきあげた。腰まで伸びた髪が指をすり抜けてさらりと流れる。
「それで、夜分の訪問に対して納得のいく説明をしてもらえるんでしょうね、セレスト殿下」
ベッドにちょこんと腰を掛け、膝の上で拳を握り、彼女は黙って床を見つめている。返事はない。
リュシアンの仕える主はこの国の第二王子であり、彼はセレストの兄である。セレストはリュシアンの主ではない。だがしかし、主の身内であるのだから無視するわけにはいかない。
彼女と第二王子とは母を違えてはいるものの、第二王子はセレストを溺愛している。邪険に扱えば主への不敬にあたる。
そうしたリュシアンの事情を逆手にとって、セレストは今までに何度もリュシアンを護衛代わりに使って無茶をやらかしてきた。そのお転婆を主が許すものだからリュシアンは何度も苦い思いをしている。
「まだ体は本調子ではないでしょう。大人しく離宮で回復を待つべきだ。さすがの殿下も妹御の我儘と体調の回復を天秤にかければ回復をとるはず。叱られますよ、今回は」
反論するだろうと思って投げた言葉にも反応せず、ベッドに座り込んでからのセレストは大人しいものだ。やはり調子が悪いのかとよくよく観察すればセレストは何かを堪えているように見えた。
「用件は?」
早く離宮に帰して休ませた方がいいのかもしれない。リュシアンはそう考えてセレストを急かす。
「セレスト殿下?」
しかし、セレストは返事をしない。額に汗まで浮いているし、心なしか頬も上気して瞳も潤んで見える。明らかに調子を崩しているセレストを見て、リュシアンも落ち着かなくなってきた。
「我儘ならあとでいくらでもききます。今日は帰りなさい。迎えを待てないほどなら俺が馬を」
「だめだっ!」
縋るようにセレストが顔を上げて見つめてくる。
「だめだ、リュシアン。私は帰らない。私、私は、あなたに頼みがあってきた」
立ち上がりかけたリュシアンは再び椅子に掛け、セレストと向き合う。
「頼みとは?」
促せばセレストは黙り込む。リュシアンは舌打ちをして立ち上がった。
目に見えて調子の悪くなるセレストを遊ばせておくほど無関心ではいられない。認めたくはないが心配なのだ。
「話す気がないなら無理にでも連れて帰ります」
立ち上がらせようと二の腕を掴んで引き起こした瞬間、セレストはリュシアンを振り払って床に座り込んだ。
「きゃあっ! さ、触るな……はぁ、っ、んッ」
呼吸を乱し、セレストは自分の体を守るように抱きしめている。まるで情事の最中のように吐息には艶めいたものが混ざっていた。
「セレスト? お前……」
呆然として見下ろすリュシアンをセレストは涙を溜めた目で見上げた。
「……朝からずっとなんだ。何度もしてきたのに、止まらない。あの時みたいに体が変だ」
あの時と言われてリュシアンの脳裏に半年前の出来事が浮かぶ。セレストが離宮で静養せざるを得なくなったきっかけの日だ。
「あの時はどうしようもなくて、切羽詰まっていたから、あなたは協力してくれたけど、今回は、そうではないから、あなたに無理強いはできない」
さっきまでの沈黙が嘘のようにセレストは喋り出す。まるでリュシアンが拒絶を口にするのを恐れるように、口を開く隙を与えない。
「あの時はそれ以外方法がなかったからで、今はそうじゃないから、あなたは嫌かもしれないと思ったら、言い出せなかった。だいたい、私はこういうことの頼み方を知らない。誘い方もわからない」
調子が悪そうに見えたのは欲情を抑え込んでいたからだと気づき、リュシアンは安堵した。
「なんだ。俺はてっきり体がどうかしたのかと」
拍子抜けしてベッドに腰を下ろしたリュシアンをセレストは潤んだ目で睨みつけた。
「体がどうかしていると言っている。私が苦しんでいるのに、何だとは何だ。私は、私は……」
そこで初めてリュシアンは気づいた。つまり、セレストはリュシアンに抱いてほしいと頼みにきたのだ。
「男が欲しくてたまらないのか」
「そんなあからさまな言い方はっ」
「違うのか」
「……か、体が熱いんだ。よく、わからない」
いたたまれなくなったのかセレストは俯く。リュシアンはセレストにはわからないようににやりと笑った。
「さっき朝からしてたって言ってたけど、何をだ」
びくりとセレストは体を大きく震わせる。
「言えないのか? 言えないなら……そうだな、見せてみろ。そこのベッドを使っていい」
のろのろと顔を上げ、リュシアンとベッドを交互に見る。
「リュシアン……」
撤回する気はないとばかりに目で促せば、セレストは立ち上がってベッドへ上がった。
「ちゃんと俺に見えるように」
服を脱ぎ、セレストはリュシアンに向かって足を開く。恥じらう気持ちはあるようだが、それよりも欲望の方が強いようだった。
「いやらしいな、セレスト。朝から何度慰めたんだ」
セレストの片手がたわわな乳房を形が変わるほどこね回し、もう片方の手は濡れそぼった秘裂を撫でる。
「こんな濡れた音をさせて、はしたないと思わないのか」
「ん、ああっ……リュシアン、い、やぁっ」
「気持ちいいんだろう? 自分で自分を辱めて、気持ちよくなってるんだろ」
セレストの指が陰核を撫でる。すっかり行為に夢中になっているようで、ひっきりなしに声を上げて腰を揺らす。
目の前で痴態を見せつけられ、リュシアンは欲望が頭を擡げてくるのを感じた。
「ひ、あっ……やだ、くるっ! きちゃ、う! あ……ああ、ああああッ!!」
体を痙攣させ、セレストは悲鳴を上げる。汗と体液で体は濡れ、顔は涙でぐしゃぐしゃだ。
胸を大きく上下させて呼吸し、ぐったり力なく横たわる姿を見ていると少し心配になってくる。リュシアンはセレストの両頬に手を当てて、顔を覗き込んだ。
「大丈夫か?」
虚ろな目でリュシアンを見上げ、セレストは弱々しい声で哀願する。
「リュシアン……お願いだ。あなたが、ほしい」
さすがに少し意地悪が過ぎたかもしれないと後ろめたさを感じつつ、リュシアンは頷いてから服を脱いだ。裸になってセレストの足の間に体を割り入れると彼女が期待に満ちた目で見つめてくる。
「リュシアン……」
堅く立ち上がった屹立を入り口に沿わせて滑らせる。ただ擦りつけているだけだというのにセレストは体をびくつかせて喘いだ。
「擦れただけでいいのか? まだ入れてないのに」
からかいをこめて言うとセレストは素直に頷いた。
「リュシアンのっ、かたくて、んッ……きもち、いっ」
わざと腰を引けば追うようにセレストの腰が浮く。本当に限界なんだなと半ば感心しながらリュシアンは一気に腰を進めた。
「あぁあああああっ!」
ぎゅうっと内部が締め付ける。挿入の衝撃だけでどうやら達したらしい。
「たっぷり可愛がってやるさ。どうせ満足するまでくわえ込んで離さないんだろう」
軽い口づけを頬に落とし、リュシアンは慣らしもせずに腰を激しく使いだす。何度も達したであろう内部は慣らす必要などないほどに柔らかく解れており、好き勝手に動いても狂ったように快楽を訴える。
がむしゃらに突いても返ってくるのは苦痛の呻きではなく歓喜の喘ぎ。とうに正気ではないのだろう。セレストは意味をなさない言葉を口にしながら自分で乳房を強く掴んだり、陰核を撫でたりしながら体に刺激を与え続けている。
それでも喘ぎの合間にリュシアンの名を呼ぶことがリュシアンの気をよくしていた。快楽に溺れ果てても、誰に抱かれているかをセレストは理解している。
「淫らな姫君、俺の前でだけと思えば可愛いものだな」
唇を重ねるとセレストは自分から舌を絡めてしがみついてくる。
リュシアンが唇を離せばその顔には不満の色が浮かぶ。しかし、深く突き上げてやればそれもすぐに愉悦へと変わる。
膝裏に手を当て、体が半分に曲がるほど押しやり、上から叩きつけるように責めてやる。セレストは涙をこぼして、きつくリュシアンを締め付けてきた。
「や、だめぇ、また、また、くるのぉっ! あっ、ああッ! やっ! ああっああああっ!!」
あまりの快楽に暴れ出しそうなセレストを押さえつけ、リュシアンは滾りのすべてを彼女の中に吐き出した。
余韻を味わう暇もなく、セレストの腰がリュシアンに押し付けられる。リュシアンは苦笑を浮かべてまだ萎えてはいない陰茎を抜き、セレストの体を反転させる。
「あっ……やだ、もっとぉ、リュシアン」
抜かれたことに不満を訴えるセレストの尻を掴み、リュシアンは白濁の滲み出てきた秘裂へ再度陰茎を突き入れた。
「心配しなくてももっとしてやるよ。もっと、ね」
ベッドに突っ伏して喘ぎだしたセレストの背に唇を寄せ、リュシアンは跡が残るように強く吸い付いた。普段は見えない場所にいくつも花を咲かせ、彼はその跡を指でなぞる。
「こんな時くらいしか……俺はお前をいたぶれないんだからな」
ぽつりと呟いた言葉に自嘲めいた笑みを乗せ、リュシアンはセレストを責めることに意識を集中させることにした。
◇◆◇
体はすっきりとして軽い。飢えも渇きもまったく感じられなかった。
(やっぱり、自分でするのと全然違う)
セレストは脱ぎ捨てた服を身に纏いながら、嬉しそうに微笑んだ。
ちらりと目を向ければベッドで眠るリュシアンが見える。日に焼けてはいるが肌はセレストより白く、髪は日の光を浴びてきらきらと輝いている。逞しい体を眺めていると昨夜の出来事を思い出しそうになり、セレストは慌てて目を反らした。
昨夜のことは朧気な記憶しかない。初めの方は覚えているが、夢中になってからの記憶は曖昧だ。
(でも、いっぱいしたはずだ)
何度も抱かれたであろうことは体に残る気だるい疲労感とベッドの有り様でわかる。それに、リュシアンも疲れ果てて寝ており、起きる気配がない。
身支度を終え、セレストはリュシアンの側へ近づき、身を屈めて頬に口づける。
「ありがとう、リュシアン。あなたのおかげで楽になれた」
起こさないようそっと囁き、セレストはリュシアンに背を向けて扉へ向かう。
リュシアンほどの武人ならもしかしたら目は覚めていたかもしれないなと思いながら扉を閉める。
(起きていたら気まずい思いをしたかもしれない。リュシアンなりの気遣いだろうか)
情を交わした翌朝にどんな顔をすればいいのかセレストはまだよくわからない。リュシアンが眠っていてくれてほっとしたのは事実だ。
どちらにせよリュシアンが何を考えているのかセレストにはわからない。その内わかるようになるだろうかと考えながら、セレストは離宮へ帰るために駆けだしていた。
おわり
GJ!!
('A`)ツマンネ
224 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 00:49:27 ID:UjsTHNh7
誤爆スレと間違えたorz
>>223-225 こらこら、何ちゅう誤爆だ!
>>215 GJ!
主の妹君を手篭めにするとは……やるな、リュシアン!
そして、ベッドの中だけSなところは、ツボだ。
>>215 GJ!GJ!
兄の従者と姫って関係いいな!
最後の独白、イイヨイイヨー
保守
保守
このスレって、小説を投稿する場所であって紹介する場所ではないよね?
そういうスレがあるなら誘導してはくれまいか?
保守
魔王の娘とお目付役の夢魔。
ゴハンと称して夢魔が人間の女の夢の中でえっちなことしてるのに嫉妬して「食べるなら私にしなさいよ!命令なんだから」と半泣きで命令する魔王の娘。ちょっと戸惑いながらもすったもんだの末に魔王の娘とにゃんにゃんしちゃう夢魔ってかんじの話はどうですか?
誰か書いてくれないかなー
島津組を思い出す季節が近づいてきやがったぜ…
昔は仲良しだったけど、成長するにつれ身分の差を痛感するようになり感情を押し殺してお嬢様に接する従者
そんな従者の気持ちに気付かず、捨てられたと思い何とか繋ぎ止めようと『抱く』ように命令するお嬢様
それに対してあくまで仕事として対応する従者
もう愛されてはいない、と思うようになるがせめて体だけでも繋がっていたいと毎夜夜伽を命ずるお嬢様
そんな真意に気付かず弄ばれていると思い込んだ従者は激昂する
最後お嬢様が涙ながらに思いを伝え、相思相愛であることに気付いた二人は結ばれてハッピーエンド…
雨が酷くて外出できなくてむしゃくしゃして書いた。今は反省してる。
はやく肉付けする作業にかかるんだ
ほしゅ
保守
242 :
名無しさん@ピンキー:2008/06/11(水) 17:00:47 ID:wvDsWFV+
今更なんだが、『Othello』を読みました。
これはマジで神だな…。やっぱり保管庫には上がらないのだろうか。残念。
ラストは和解した後の二人の蜜月的な描写をして終わるかなと思ってたんだが、
敢えてそれをせずに息子の淡々とした語り口で締めたのが却って良かった。
恭介と雪がきちんと和解してくっついて、その感動に浸っている最中、
最後の最後に優介が放った素朴な一言は不意打ちだった。
両親が望んだとおり、優介が本当に優しい子に育ったからこその言葉ではあるのだが、
だからこそこう、余計に胸に刺さってくるというか。
ともかく、なんとも言えない余韻が残った。
後半の方のミステリっぽい雰囲気、伏線の張り方なんかも良かった。
雪が朝帰りしても祐生が咎めなかったのも、壁が薄かったことに関係してるんだろうかね。
nice欠陥住宅!
>>238 あらすじ読んだだけで萌えた
楽しみにしてる
『Othello』てなに?どこで読めるんだ?
ちょい過疎で寂しいぜ
>>243 このスレ読み返してみることをおすすめする
ごめんタイトル覚えてなかったw
GJしたわ…
保守代わりにでもと書いてみた。
現代もの。上司と部下。エロ薄め。
保管庫保存は希望しませんので保管なしでお願いします。
控えめに扉が叩かれ、低く抑えた声が響く。
「ああ、今行く」
京は少し大きめに声を出して、それに応じた。
許可を与えねば扉を開きもしない。従順であれと言外に命じはしたが、従順すぎてもつまらぬものだと開かない扉を見やり舌を打つ。
姿見で自身の姿を再度眺め、京は満足げに口角を上げた。
見目良く生んでくれたことに対してはいつも両親に感謝する。常に美しくあるようにと磨いてきたのは京自身だが元が悪くてはこうはいかない。
美しさは武器だ。京はそう思っている。
「よし、悪くない」
姿見の前から離れ、京は部屋の外へと向かった。
扉を開き、控えていた香具山に上から下まで視線を這わせる。
「おはようございます」
不躾な京の視線には慣れているのか香具山は表情一つ変えずに深々と頭を下げた。京は軽く頷いてそれに応じ、玄関へ向かって歩き出す。
本日のスケジュール発表でもしてもらうべきなのかもしれない。だが、スケジュールは京の頭に入っているし、香具山もそれはわかっている。互いに無駄を嫌う性格である二人は公私ともに言葉を交わすことはほとんどなかった。
今日も京は無言で歩き、香具山は一歩下がってそれに続く。車内でも出社後もそれは変わらない。
香具山の無駄のないところが気に入って側に置いていたのに、今の京にはその無駄のなさが苛立ちを誘う。
(何か言ったらどうなんだ、朴念仁め)
表面には微塵も出さず、けれど内心では苦虫を噛んだように苦く思っている。
頭に入らないのがわかっていながら本のページをめくり、京は助手席からちらりと香具山を見た。
品のよい紺のスーツを身にまとい、短めの髪が清潔感を感じさせる。長身ですらりとした立ち姿は秘書として様になっている。美丈夫とはいかないが三枚目でもない。
視線に気づいたように香具山が京を見た。
京の鳶色の瞳が驚きに見開かれる。けれどそれは一瞬で、すぐに取り繕った冷静さに塗りかえられた。
「……何か?」
感情のこもらない淡々とした声が言葉を紡ぐ。短い言葉でも、香具山が口にすれば重く尊いものに感じられることがますます京を不機嫌にさせる。
「そのネクタイは趣味が悪いな」
香具山はネクタイへ視線を落とし、再び顔を上げる。
「以前は良いと仰られたと記憶していますが」
「では、私の趣味が変わったんだろう」
「そうかもしれません。わかりました。このネクタイは今日限りにいたします」
「ああ、そうしてくれ」
香具山が頷いたのを見届け、京は再び見るとはなしに開いたページへ目を向けた。
◇ ◆ ◇
「少し歩かれますか」
見るからに酔いの回った様子の京に香具山は声をかける。
「夜風がアルコールをとばしてくれるかもしれません」
短く切られた髪の合間から赤くなった耳が見える。
よろけた体を支えるために伸ばした香具山の腕へ、思いの外あっさりと京は捕まってくれた。スーツの上からでもわかるほどに京は華奢だ。
「香具山」
常より少し高めの声が名を呼ぶ。
支えるために回した手を離すタイミングを逃し、香具山は京を抱くようにして顔を覗き込んだ。
「海が見たい」
「海、ですか」
「そうだ。海だ」
突拍子のない上司の提案に、香具山は僅かに眉根を寄せた。
すっかり酔ってしまったらしい京は香具山の胸に頭をもたせ、今にも眠ってしまいそうだった。
(歩いて酔い醒ましとはいかないか)
その体を支えながら歩き、香具山は京を車の後部座席に乗せることに専念した。頭をぶつけたりしないように慎重に乗せ、香具山は運転席へ乗り込んだ。
いつもは運転手付きの送迎車を使う京だが今日は酒を飲みたいからと香具山の車で送迎することになっていた。
「海か」
節度ある行動を心がける京がこんなに酔っているのは珍しい。何かあったのだろうかと気を回すのは普段の自分らしくないし、そんな気遣いを京が望むとも思えない。
しかし、たまに言い出した我が儘の一つくらい叶えてもいいかもしれないと今日に限って香具山は思ってしまった。
シートベルトを締めて、香具山は車のエンジンを入れた。
◇
目的地に着いた頃には京は寝息を立てていたが、香具山はそれを優しく揺すり起こした。
「もう少しですから」
眠たげに目を擦る京を車から降ろし、香具山は体を支えて歩かせる。
ふらふらとした京を連れてエレベーターへ乗り込み、香具山は目的の階を押した。
「少し眠りましたから、酔いも少しはマシになってきたでしょう」
曖昧に答え、京は香具山の胸に頭を寄せた。
硝子張りのエレベーターからは外の景色がよく見える。眼下に広がる海と疎らな光の屑を見下ろし、それから硝子に映る自分達の姿を見た香具山は薄く笑う。
華奢な京は年より若く見えるし、香具山は年相応だ。三十過ぎの男が少年といっていい相手を酔わせてよからぬことを企んでいるように見える。
「知人に会わないことを願うしかないな」
苦笑混じりの香具山の声は京に届いているのかいないのか、京は何の反応も返さずにまた寝入ってしまいそうになっていた。
エレベーターが目的の階に止まり、香具山は京を促して降りた。
ふわりと足が沈む。実際に沈んだわけではないがそう錯覚してしまいそうになる。
ポケットからカードキーを取り出し、香具山は迷うことなく歩みを進めた。
カードキーで扉を開き、香具山は部屋へ入る。
そして、京を横抱きに抱き上げて香具山はベッドルームへ入り、キングサイズのベッドへ横たえた。
「水を持ってきます」
そう言って香具山はベッドルームから出て行った。
◇ ◆ ◇
目が覚めるとそこは見たことのない部屋だった。
ぼやける頭で辺りを見渡し、京はベッドから降りる。そのままベッドルームを歩き回り、どうやらここはホテルらしいと悟った。
壁一面が硝子張りになっていることに気づき、京は硝子越しに外の様子を窺った。真っ暗な海と沿岸部の新都市。都市部には疎らな明かりが煌めいている。
それをじっと眺めていると硝子に人影が映る。弾かれたように振り向くとそこには香具山が立っていた。
「香具山……?」
いまいち状況が飲み込めず、京は不審そうに香具山を見つめる。
「海は見えましたか」
上着を脱いでネクタイを外している香具山はいつもより砕けた調子で問いかける。
「見えた。だが、海が見えたからなんだと言うんだ。ここはどこだ」
京は不機嫌を隠しもせずに香具山へぶつけ、香具山は小さく笑う。香具山が笑った顔など珍しく、京はその薄い笑顔に毒気を抜かれて見入った。
「あなたが言ったんですよ。海が見たいと」
「覚えていない」
「そうでしょう。だいぶ酔っていましたから」
「酔っ払いの戯言など聞き流せ。いちいち従わなくてもいい」
京は顔を背け、苛立たしげに吐き捨てる。
言われずとも普段の香具山ならそうするだろう。今日に限って京の戯言を聞き流さなかったのには何か理由があるのかもしれない。
京は口を開きかけ、けれど問うことができずに閉じた。香具山が自分に興味を示したとは思えないし、仮にそうだとしても直接そんなことを言われてはなんと返せばいいかわからない。
「差し出がましい真似をいたしました」
香具山が頭を下げているのは見ずともわかる。
「酔いも醒めたようですから、帰りましょうか」
京は香具山へ視線を戻し、もう一度その姿を見つめた。
「……いけませんよ」
香具山は低く呟き、京への距離を詰める。
「あなたが寝ている間にワインを少々いただきましてね、俺は少し酔っている」
伸ばされた腕が京の腕を掴んで引き寄せる。
「だから、縋るような目をされてはたまらない」
言うなり重ねられた唇からはワインの香りがした。
◇ ◆ ◇
酒のせいだけではないのだろう。香具山は自嘲めいた笑みに口角を上げた。
正気の沙汰とは思えない。組み敷いた相手は従うべき上司だ。会長の孫だというのだから、明日から無職になってもおかしくない。下手をすれば訴えられることも有り得る。
白い足を跳ね上げ、香具山はより深く中を抉った。京の体がびくりと震え、潤った内部が収縮する。
込み上げた射精への欲求を抑え込み、香具山は乱暴に奥へと突き込んだ。
「ひ、あ……かぐ、やまぁ……だめ、はげしっ……う、ああっ」
リネンをぎゅうっと握りしめて身を竦め、京はいやいやをするように頭を振る。
粘着質な水音が結合部から響き、それが否応なしに香具山の欲望を煽る。
「あっ、い……いいッ……奥、あたっ! ゃ、うあっ」
涙と汗でぐしゃぐしゃになっても京はまだ綺麗だった。美人というのはこういうときも変わらず美人なのかと香具山は頭の片隅で感心する。
気遣いはあってないようなもので、京にのまれてしまいそうになる度にそれを押さえつけようと激しく責めて高みへ追いやる。既に何度も吐き出した白濁が京の腹や腿を汚しており、避妊になっているのかどうか怪しいものだった。
いろいろまずいというのは理解していたが本能が理性を凌駕する。
「かぐや、ま……はっ、ン、やあッ……ひっ、く……いっ、ちゃ」
またしても背を仰け反らせて絶頂する京に抗えず、香具山は品のない音を立てて京から屹立を抜き去った。
互いの粘液にまみれたそれを扱き、京の滑らかな腹に白濁を撒き散らした。
「まだ、だ」
まるで盛りのついた羊のようだと自身の尽きない欲望に呆れながら、京の体に再び身を沈める。そのまま背に手を回し、胡座をかいた上に座らせるようにする。
「や、もう……ああッ」
力なく胸にもたれながらも、京は香具山の首に手を回してしがみつく。
京の尻に手を回して揺すりながら、香具山は噛みつくように荒っぽく京の唇に自身のそれを重ねた。舌を絡め、息が出来なくなるほど深い口づけを交わす。
明日になって咎められると決まっているのなら、貪れるだけ貪ってやる。半ば自棄を起こし、香具山は京の体を隅々まで味わおうと欲望のままに動いた。
◇ ◆ ◇
気だるい感覚が全身を支配していた。
ベッドとは違う感触が自身の下にある。京はそれの正体を確かめようと顔を上げ、一気に頬を赤くした。
一度目を閉じ、ゆっくりと開く。
少し髭の伸びた顎を撫で、伏せられた瞼に触れて確かめる。夢ではなく、妄想でもなく、現実の香具山が京の下にいた。
パニックを起こしかける自分自身を叱咤し、互いに酔っていたのだと昨夜の行為に説明づけて落ち着かせる。男と女だ。期せずしてそうなることもあるだろう。
香具山を起こさないようにそっと体を離し、京はぐちゃぐちゃになったベッドを見下ろした。
感情のないロボットのように見えた香具山も血の通った人間であり、男だった。それを知れたことを嬉しく思い、嬉しいと感じた事実に眉をしかめる。
(やっぱりこいつが好きなんだろうか)
優秀な秘書に徹する香具山に不満を抱いていたのも事実で、不満に思う理由はいくら考えてもそういうものしか思い浮かばず、それを認められずに近頃は苛立ってばかりだった。
(抱かれて嫌ではなかったのだから、少なくとも嫌いではないということだ)
まだ手放しで香具山が好きと認める気にはならないが、多少は気持ちに整理がついたような気がする。どうも順番がおかしい気はするけれどそういうこともあるだろうと思うことに京は決めた。
とりあえずはべたつく体をきれいにしよう。京はベッドから抜け出し、バスルームへ向かうことにした。
◇ ◆ ◇
自宅まで送り届けた京から二時間後に出社すると告げられ、香具山は京の自宅を後にした。
マンションに帰ってスーツを着替えたらすぐに出社して京を待ちながらスケジュールの調整をせねばならないだろう。冷静に仕事のことを考えながら、頭の別の部分が昨夜のことを蒸し返す。
目を覚ましたら着替えた京が朝食をとっていた。「お前もさっさと着替えたらどうなんだ」とは開口一番京の台詞だ。普段通りすぎるほど普段通りな京につられて香具山も普段通りに振る舞った。
(レイプまがいのセックスしたってのに、なんで普通の顔ができるんだ)
マンションの駐車場に着くなり、香具山はハンドルに突っ伏して頭を抱えた。
低く唸ってから胸ポケットを漁り、そういえば煙草はやめたんだったと気がついて舌打ちする。体に悪いからやめろと京に言われて、京付きになってすぐやめた。
「……無罪放免ってことなのか」
ぽつり呟き、香具山はがっくりと肩を落とした。
年若い上に女だと軽く見られながらも遮二無二働く京の支えになれればと苦心していた今までの自分の働きが全部無駄になったのはどう考えても明らかだ。逆に考えれば、数年分の功績が昨夜の行為を相殺したのかもしれないが。
せっかく許されたのだから、今度は失敗しない。今まで以上の信頼を得るために今まで以上に秘書として有能であろうと香具山は心に決めた。
おわり
京(みやこ)
香具山(かぐやま)
GJ!久しぶりの主従はやっぱりいいなあ
いつも思うけど保管庫に保存しないのもったいないですね
ぐっじょ!
つか、これでエロ薄いのかw神の本気が見てみたいぜ…w
自サイトとか有るから保管拒否なのか?
これはいい主従!
面白かった
また気が向いたら投下おながいします
257 :
名無しさん@ピンキー:2008/06/17(火) 02:28:46 ID:ppVddg+V
もっとエロを!
すばらしい!GJ!!
はじめまして、とある所で書いてたんですけど、ちょっと改変して、
こっち向きっぽい内容ですので、こっちに書かせてもらいます。
「いやったら、いや!!」
バン!! 勢いよくテーブルをたたき少女は食事を中断させ、
自分の部屋に戻って行った。
「うーん……、あの子の好き嫌いも困ったものだ」
テーブルの上に残された、料理を見て父親のルドルフ公は溜息をつく。
「せっかく当代随一の料理人を呼んだのに……」
今まで、蝶よ、花よと過保護に育てすぎたせいか。
娘のマリアンヌのわがままにはほとほと手を焼いていた。
「セバスチャン、せっかく連れてきてくれた料理人だが、無駄になったようだ」
「そうですなぁ」
初老の執事ははぁ〜、っと深い溜息を吐いた。
「レヴィ、お前遊び相手だろう? 何とかならんのか?」
ご主人さま、僕は彼女の遊び道具ですよ?
そんな言葉をのみ込み、少年はしばし考え込む。
「わかりました、なんとかしてみます」
「レヴィ、頼むぞ」
「任せて下さい父上」
父親であるセバスチャンに頭を下げると少年は、部屋を後にした。
コンコン
「入りますよ、マリアンヌ様」
ガチャリ、レヴィがドアのかぎを開けると、
ボフ、顔に枕が飛んできた。
「……羽毛百%じゃなきゃ死んでましたよ」
少年は枕を拾いながら、少女のほうを見る。
「お父様に言われて来たんでしょ? 絶対あんな不味いもの食べませんからね」
不機嫌そうな顔でじっと少年を睨みつけ、顎でタンスをさすマリアンヌ。
「はい」
少年はそう言うと、タンスの中から、寝間着を取り出す。
「んっ!」
いつもの様に両手を広げるマリー、『着せろ』という意味だ。
パチパチ、と胸のボタンを外していき、
来ているドレスを器用に脱がしてゆくレヴィ。
「お嬢様、好き嫌いばかりしているから、いつまでも幼児体型なんですよ」
上半身裸となったマリアンヌを見て
はぁ、ため息を吐いた瞬間、
バチコン!!
すごい勢いで少年は後頭部を叩かれる。
「あ、あんた、何言ってんの、使用人の分際で!!」
顔を真っ赤にさせながらマリアンヌは怒りに体を揺らす。
「ですが、このちっこい胸は、事実ですよ」
「この……!!」
怒りにまかせて、再びマリーが拳を握るがそれより早く、
ピン、
少年は上半身裸となったマリーの胸を指ではじく。
「は、あうぅぅ」
今まで聞いたこともないかわいい声を出すマリーを見て、レヴィはくすりと笑う。
「かわいいですよ、お嬢様」
「……!!」
再び飛んできたパンチを掴むと、レヴィはそのまま優しくマリーをベットに押し倒す。
「さて、と」
そう言うとレヴィはゆっくり唇を重ねる。
「!?……!!」
マリーの中にレヴィの舌以外の異物が入ってくる。
それは先ほど夕食で残した、オニオンであった。
苦い感触が舌の上に広がり、舌を使って押し返そうとするが、
少年の舌技はそれを許さない。
「んんん!!」
やがて、観念するとマリーはそれをのみ込んだ。
「ほら、食べれるじゃないですか」
くすくすと笑いながら少年は口を放す、唾液の糸が二人の間に橋を作る。
「いつも、ご自分からされてるでしょ? どうですか、される気持ちは?」
「このままで済むと思ってるの?」
「はい」
睨むマリーに平然とした顔でレヴィは頷いた。
「悔しいのでしたら続けますか? もし僕が降参したら、
煮るなり焼くなり好きにされるといいですよ」
「大した自信ね、いつも私の玩具になってるのに」
「ええ、負けませんので」
平然と挑発的な言葉をかける執事の少年に、マリーはつかみかかる。
「負けたら、好き嫌いなく食事をしていただきますよ」
「分かってるわよ!!!」
大声で叫ぶと少年のズボンのベルトを下ろす。
「いくわよ、謝るなら今のうちだからね!!」
少女は少年のモノをつかむと乱暴にしごき始める。
「ふふふ、いつもみたいに、泣き叫びなさい」
マリーはにやにや笑いながら、少年のモノを乱暴にいじる。
「痛っ」
少年は苦痛に顔を歪める。快楽ではなく、痛みでどうにかなりそうだ。
( 今までよく我慢してたもんだ )
少年は心の中でつぶやく。
そして、
「はい、攻守交替」
くるりと態勢を変えるとマリーはあっという間に下になる。
「えっ!?」
何が起こったか分からない、そんな顔をしているうちに、
チュプ
マリーの大事な部分にレヴィの指が入ってきた。
「は、はわぁぁ」
クチュクチュ音を立てて少年はマリーの中を攪拌し続ける。
「う、ううう、ゆ、指を抜きなさい!!」
「いいですよ」
チュポン、指を抜くと、ジックリと外側の部分を指でなぞる。
「ああ、あああ」
堪え切れずに、少女は悲鳴を上げる。
ギュッと、シーツをつかんだまま必死に指の動きに耐えている。
「いいんですか、反撃しなくて」
「わ、わかってるわよ!!」
だが少女が動こうとする度に
クニュ、
周りの花弁と、花のつぼみに手をかける。
「はぁぁぁん、ず、ずるいわよ!!」
「何もずるくはないんですが、それよりもこのまま、
ジワジワ責め続けていいんですか?」
片手でマリーを抑えつけながら少年は楽しそうにつぶやく。
「うう、く、くやしいけど、今日はあなたの勝ちでいいわ、
だからもうやめなさい」
「……ちがうでしょ、私の負けです、だから、どうかイカセてくださいでしょ」
「そ、そんな……!! ああん!!」
少年の指の動きは絶妙なまでに少女の体を支配し、
イク寸前で寸止めを繰り返す。
「わ、わかった、わかったわ、私の負け、私の負けよ!!」
少女が叫ぶと少年は、自分の主の最も感じる部分を指で攻め立て始める。
それは今までと違いはっきりとフィニッシュへと誘う動きだった。
「ああ、ああん、す、すごい! すごい!!」
ぷしゃぁぁ!!!
少女は派手にお漏らしをすると、そのまま失神した。
モグモグ
次の日少女はテーブルの上のモノを口へと運んでいた。
「偉いぞマリー、きちんと食べれるではないか」
ルドルフ公は嬉しそうにうなずく。
「ええ」
気のない返事をすると、少女は
少し離れた所に立っている、レヴィをジロリと睨んだ。
「レヴィ、お前の作るもの、先のシェフにも負けてはおらんぞ」
「ありがたきお言葉です」
レヴィは深々とお辞儀をする。
テーブルに並ぶものは、みな、マリーの苦手なものばかりであった。
( あいつ、ぜったい許さないんだから!! )
頭を下げながら、こちらに舌を向けた少年を見て、
マリアンヌは復讐を心にちかうのであった。
終わり
うはwwGJ!
GJ!!
新作が2つもあって嬉しい限りだww
マリータンとレヴィの続編きぼんぬ!
主従なのに対決してるのって面白いね〜
gj ごちそうさまでしたw
感想どうもです、とりあえず、続編です。
ピチャ、ピチャ。
豪華な調度品が並ぶその部屋で、雫が垂れる音がひびく。
「ふふ、どうレヴィ? 痛むかしら?」
先ほどから少女は自身が傷をつけた使用人の傷口を、舌で舐めていた。
少女の舌が少年の傷口に触れるたびに少年は、
ビクリ、ビクリと過敏な反応を示す。
「ふふふ、この赤い模様、あなたの白い肌にとてもよく似合ってるわよ」
今しがたまで舐めていた傷跡を少女は優しく指でなぞる。
「うっ! あ、ぁぁ……」
低い悲鳴をあげて壁を指で少年は掻き毟った。
「……この前は使用人の分際で、私に生意気なこと、言ってたわよね?
どうレヴィ、これでもまだ生意気な事が言えて?」
そう言うと今度は少年の背中に描かれた赤い模様を指で強く抑えた。
「う! あっぁぁぁ!! 」大きく首をのけ反らせて、
少年は今までで一番大きな悲鳴を上げた。
「アハハハ、いい声で啼いてるわよレヴィ!
今度の演奏会で披露しようかしら」
少年の身悶える様子をマリアンヌは楽しそうに見つめる。
「今日はお父様も、お前の養父のセバスチャンもいないわ、
つ・ま・り、お前の飼い主は、わ・た・し」
少年の栗色の髪の毛をグイッと掴み、少女は少年の顔を覗き込む。
「ペットの躾は飼い主の勤め、
ペットが主人に生意気な態度をとったらどうなるか ―― 」
パシン
「あああ!!!」
乾いた音が立ち、少年が悲鳴を上げる。
「よーく、教えないとね」
くすくす、少女はまた楽しそうに笑った。
「生意気なペットのレヴィ、じゃあ、
最後にあんたが私のモノだって言う自覚をしてもらうわ」
そう言うとマリアンヌは椅子に腰かける、
そして足に履いていた真っ白なハイソックスを脱ぎ始める。
「さ、舐めなさいレヴィ!! 綺麗になるまでね」
レヴィの前に少女は足を投げ出す。
「…………」
少年は無言でマリーに近づくと、その場にひざまづき、
ゆっくりと少女の足を舐め始める。
ピチャ、ペチャ、再びマリアンヌの部屋の中に淫猥な雫の音が流れ始めた。
「いい格好よレヴィ、お前は、私のモノ、私だけのモノ、
よーく心に刻みつけておきなさい」
くすくすと少女は笑いながらひざまずく少年の姿を眺めていた。
―――――
ポタ、ポタ、少年の唾液が床に垂れはじめ、
マリーの顔色が少しづつ変わる。
「ふ、ふふ……お、お前も……誰が主人か、よく、わかったでしょ?
そ、そろそろ、ゆるして……あげるわ」
少女が足を引っこめようとした時。
ギュウっ
少年の手が、少女の白く細い足首を強く掴んだ。
「!? な、何してるのレヴィ!?」
「……まだ、綺麗にはなってませんよ? マリアンヌ様」
マリーのきいたそれは、実に冷ややかな声だった。
「くっ! 放しなさいレヴィ!!」
ぺちゃ
「あ! あ、ああぁぁ」
舌が足を這った瞬間マリーはたまらず嬌声を発し
あわてて口を押さえる。
「如何いたしました、マリアンヌ様?
まさかペットに足を舐められて欲情してらっしゃるのですか?」
「!? ……だ、だれが!!」
ペロリ、ツッー。
「ん!……ぅぅぅくっ!」
少年が指でなぞり、舌を這わす度、マリーは必死に声を押し殺す。
( だ、だめ、こえがでちゃう!!)
首を左右に振り、拳を強く握りこむマリー。
だが少年はゆっくりと足首から白く柔らかな太ももまでを、
指と舌で往復し足の付け根までいくと折り返すのを繰り返してゆく。
「あ、あうぅぅ」
切なさと、苦しさが入り混じる声が少しづつマリーの口から洩れる。
―― レヴィに肝心な部分を舐めてほしい、触ってほしい ――
それが今のマリーのウソ偽りのない心からの気持であった。
「レ、レヴィ、命令よ、も、もう少し上を舐めなさい!!」
太ももに舌を這わせていたレヴィはマリーの顔を見つめる。
そして優しく微笑む。
「上、とは、どこの部分です?」
それは優しくも冷たい笑顔であった。
「!? う、うえは、上よ!! は、はやくなさい!!」
だが少年は少女の叫びを無視し、自分の作業を続ける。
「!? あン、は、ああ、ち、ちがうわレヴィ!!」
「マリアンヌ様、
生意気なペットの主人だという自覚は出来ましたか?」
くすくすとレヴィは指を這わせながら静かに笑う。
「う、ぅぅぅぅぅ」
低いうなり声をあげ、少女は恨めしそうに少年を見つめた。
( だ、だめ、私、おかしくなっちゃう )
荒い息を吐きながら、少女は少年の目を見つめる。
すでに少女は我慢の限界であった。
「マリー様、先ほどからこぼれてくるこれは何です?」
少年は指先についた愛液を少女の顔のそばに持ってくる。
「あ…… し、しら、ない」
弱弱しげな声でつぶやくマリー。
もはや先ほどまでレヴィをいたぶっていた姿は何処にも無い。
「レ、レヴィ、お願い、意地悪は、もうやめて……」
ついに少女は自分がいたぶりペット呼ばわりした少年に哀願する。
「僕は、あなたの命令どうりに動いているだけですよ?」
だが少年はそんな少女を冷たく突き放す。
「そ、そんな……、あっ!! あああ!」
ビクビクと体を痙攣させながら、激しく首を左右に振るマリー。
「お、お願いレヴィ!! 私のあそこを触って!!」
ついに我慢の堤防が決壊するマリー。
「あそこって、ここですか?」
ツン、
指で軽くビショヌレになった、少女の白い下着に軽く触れる。
「そ、そう!! そこ、そこよ!!」
もはや恥も外聞も、主人と従者も無い。
あるのは男と、メスの本能だけ。
では、ご自分でお脱ぎになり、こちらに足を開いてください」
屈辱の言葉であったが、マリーに選択権はなかった。
下着を脱ぎ棄てると、足を広げる。
「……は、はやくして……おねがい」
「分かりました、では今から、愛液でぐしゃぐしゃになった、
マリー様のあすこに触れさせてもらいます」
そう言うと
チュプリ、
少年は少女のあすこへ指を差しいれた。
「あああんん!!♪ 」
マリーは待ち望んだ歓喜に身を震わせる。
少年の指はじっくりと焦らすようにかきまぜた後、
愛液を全て搔き出すように激しく攪拌を始める。
「あああ、いい、す、すごい、すごい!!」
少年の指が少女の胎内を掻き混ぜる度、
グチュグチュという音と共に、
少女の歓喜の声が混ざる。
「アハハハ、今度の演奏会で発表になるのはマリアンヌ様、
あなたの方みたいですね」
だがそんなレヴィの屈辱的な言葉も聞こえないように、
『すごい、すごい』を繰り返すマリー。
そして、
「あ、ああ、もう、もうだめ、いい、あああ!!!」
ジョバァァァァァ。
激しく失禁をして少女はゆっくりと失神していった。
――――――
「ん、んんん」
「気がつかれましたか? マリー様」
マリーが気がついたときには、
すでにカーペットが取り換えられており、
マリー自身も着替えさせられていた。
「レヴィ、こっちに来て……」
「はい?」
レヴィがマリーのそばに近づくと、
パシン!!
乾いた音が響き、
ほほが熱くなり、
レヴィの口の中に血の味が漂う。
「今度こんな真似をしてみなさい!!
あんたなんて殺してやるんだから!!」
「はい、マリー様」
ほほに手を当てて静かに頭を下げるレヴィ。
「カイイヌニテヲカマレル」
「えっ? なに?」
「いえ、東国の古い言葉です、お気になさらずに」
「……まぁ、いいわ、下がりなさい」
「はい」
一礼するとレヴィはマリーの部屋を出る。
「ま、この場合は、『飼い主が足を舐められる』か」
バタン
音を立てドアが閉まり。
物語も。
終わり
続編ktkr!二人ともツンツンしててタマラナスw
そのうちにマリータンはレヴィにやられちゃうんですね、わかります
はげ萌えた。
あくまでツンなマリーがたまらん
ツン、マリーとレヴィの続編です。
―― そう言えば内にレヴィが来たのはいつだったろう ――
マリアンヌはレヴィに香油を塗ってもらいながら考えていた。
まるで少女のような優しい手が、マリアンヌの背中を滑って行く。
「んう、 あ、あぁぁ……」
心地よい感覚が全身を支配してゆく。
湯浴みが終わった後のこの儀式が、マリーにとって最も至福の時であった。
「いい……、すごくいいわよ、レヴィ……」
「ありがとうございます、マリアンヌ様」
ごく一般的に、このように体に香油を塗らせる役を担うのは、
大体は女性であるのが普通であった。
男がこう云った事をやるのは、
近親者か、
さもなくば、
恋人であるか。
「ふふふ、誰かがこの光景を見たらどう思うのかしら?」
「召使に香油を塗らせてると思うでしょうね」
何の感慨もなくレヴィは答える。
「……ええ! そうでしょうとも!!」
レヴィのモノ言いに腹を立てたマリーは少年を怒鳴る。
「肩の所!! 塗りなおしなさい! なにもたもたしてるの!」
「はい、お嬢様」
白魚のような手が香油壷の中の液体を掬い、
ポタり
少女の肩に生暖かい油が垂れた。
そして
少女は少年との初めての出会いを思い出した。
「この者が……」
マリアンヌの父親であるルドルフ公は感心したように呟く。
その少年は鎖で厳重に縛られていた。
「はい、ヴィレーヌ伯、ゴードン男爵を打ち倒し、
わが聖騎士団団長ヴィルヘルム様と互角に渡り合ったと」
「ふむ、『地を走る稲妻』が、こんな幼い少年とはな」
その少年は喉笛を噛み破らん勢いで、
目の前に立つ敵の総司令官である、ルドルフ公を睨みつけている。
「お前の姉上には非常に残念なことをしたと思っている」
ルドルフは重々しく口を開く
「!!」
「姉のかたき討ちをしたいか?」
「……いや、姉上は、エステルは武人としては優れていた、
だが将としての才覚は、貴方の方が上だった、それだけだ」
少年もまた重々しく口を開いた。
―― エステル・プライム ――
ロウムに在りて、知らぬものなしと言われた勇将である。
女性の身でありながら、甲冑に身を固め、数々の武功を立てる彼女を、
『飛将軍』 恐怖と尊敬で皆はそう呼んだ。
「私は、主家であるタイレルに身を捧げている、
主家が滅びたというのに、生きながらえ、この様に縄目を受けるとは」
唇を強く噛み身を震わせる少年。
「ふむ、『地を這う稲妻』よ、――」
じっと眼を、
ルドルフは少年の目を見つめ、ぽつりと言った。
「アンリエッタの死体は見つかっておらぬぞ」
「!! 本当か!!」
ルドルフの言葉に傍にいた重臣たちは驚きの声を上げる。
タイレルに連なる最後の血族
アンリエッタ。
そのものが生きているかも知れぬと、なぜ敵に教えるのか?
否、皆は思った。
死に行く少年へのルドルフ公最後の慈愛なのだと。
「セバスチャン、お主、子がいなかったな」
ルドルフは傍らに立つ男に声をかける。
「!? はい……」
「ふむ、よし、『地を這う稲妻』よ、お主セバスチャンの
養子とならんか?」
「「な!!!」」
周りにいただれもが声をあげて驚いた。
無論、少年も。
「ル、ルドルフ……、お前何を考えている?」
鎖につながれた少年は唖然とした顔で、
目の前の男の真意を汲み取ろうとした。
「ふむ」
低く唸った後、ルドルフは口を開いた。
「娘が、遊び相手を探していてな」
そう言うとハハハハ、と、
笑った。
( こいつ、私と初めて会った時、私に挨拶もしなかったんだっけ )
マリーは初めて会った時のことを思い出していた。
( どこの誰だか知らないけど、なんでコイツこんなに反抗的なんだろう )
などとぼんやりと考えていると、
「……お嬢様、後ろは終わりましたよ」
不意にレヴィの声で、現実に引き戻された。
「あっ……そう、じゃぁ」
クルリ、
体に何も纏っていない状態でマリアンヌは仰向けになる。
「こっちも、しっかり塗りなさい」
「はい……」
先ほどと同じように手に油をつけると、
ヌルリ
マリーの体を擦り始めた。
「あっ! ぁぁぁぁ」
先ほどとは比べ物にならない快感が体を駆け巡る。
脇腹を、腰を、そして、マリーの慎ましやかな胸を、
レヴィの手が滑ってゆく。
つつましやかな胸の一番頂上に手がさしかかったときに、
「ああ!! あぁぁぁん!」
自分でも思ってないぐらいの声をあげてしまう。
( うう、今日は声を出さないようにって思ってたのに )
みっともない所をレヴィにまた晒してしまった。
そう思い目を閉じ、体から力を抜く。
その間も手は全身を滑って行く。
香油の塗られたマリーの体は、甘い香りを放ち、
ヌラヌラと輝いている。
( 気持ちいい )
そう思った時、レヴィの手が、
すっと上にあがり、
肩の上までくると、
急に、首に巻きついてきた。
「!? なに!? えっ!?」
手にだんだんと力が入る、
「いや!! なにしてるの!?」
両手を使い、レヴィの手を放そうとするが、
マリーの力では引きはがすことができない。
レヴィの両手にマリーの手が食い込んでゆく。
( 殺される!! 私レヴィに殺される!!! )
暴れまわり必死に手を放そうとするが、ぴくりとも動かない。
完全にマリーはパニックに陥っていた。
「お、お願い、レヴィ、殺さないで……」
マリーの瞳から、恐怖のために涙がこぼれる。
その途端すっと、手が離れる。
「う、ぅぅうう」
マリーは低い悲鳴を上げる。
「な、なにするの!!」
じっとマリーはレヴィを睨みつける。
「……お嬢様こそ何をするんですか、
今のは全身の緊張をほぐして、血行を良くする、東洋の業ですよ」
そう言うと、レヴィは自分の手をさする。
二人はじっと見つめあう。
「そう……、じゃあ、これからはもう、しなくていいわ」
「はい」
「下手糞なあんたのせいで疲れが一気に出たわ、もういい下がりなさい」
「はい」
レヴィは頭を下げると部屋を出て行こうとする。
「待ちなさいレヴィ!」
「はい?」
「今度こんな真似したら、本当に殺してやるからね!!」
「……はい、お嬢様」
パタン
ドアがしまる音がして、
少女はそちらを向く、
―― マッサージ? ――
成らばなぜ、少女が泣いて懇願したときに、
―― はっとした顔で、レヴィは手を放したんだろうか? ――
だがそれよりも重要なことがマリーには有った。
レヴィに首を絞められていたとき、
それでも尚、
レヴィの手が
とても気持ち良く感じていたのだ。
「絶対にユルサナイ、絶対に許さない!!」
そうベットの中で少女は叫ぶと、
そっと濡れた自分の秘所に手を差し伸べた。
終わり
k
「エステル見て、ヴァルカニアの職人に造ってもらったのよ」
アンリエッタは楽しそうに笑いながら目の前の ―― 飛将軍 ――
エステル・プライムにお気に入りのドレスを披露していた。
クルクルと回るその姿は、どんな精巧な技を持つオートマター職人でも決して作り出すことが出来ないであろう、美しいものであった。
「とてもよくお似合いですよ、姫」彼女は
優しく微笑みながらその姿をじっと見つめていた。
「あなたはどう思う? レヴィ?」
「え!?」
姫の美しさに心奪われていたレヴィは急に声をかけられあわてた。
そして、
「と、とても、お美しいと思います……」
それだけを言うのがやっとであった。
はぁ〜、隣で姉のエステルがため息をつく。
「お許し下さい、こ奴はまだ子どもゆえ」
「そんな、そう言ってもらって嬉しいわ、ありがとうレヴィ」
そう言うとアンリエッタはにっこりとほほ笑んだ。
「あ、は、はい、僕は本当のことを言ったまでです!!」
ビシ、
全身を緊張させて、思わず気をつけの姿勢をとるレヴィ。
「ふふ、レヴィ、ありがとう、これからもよろしくね」
「まったく、そんなことではこの先『獅子の騎士団』として、
姫をお守りすることなど出来んぞ」
やれやれ、そんな態度で姉のエステルは首を左右に振った。
「そ、そんな」
そんなレヴィの様子を見て二人は、
声をあげてわらいあった。
「レヴィ!! あなたの番よ!」苛々したマリーに、
急に声をかけられて、レヴィはハッとわれに返った。
「はやくなさい、あなたの番よ」
「……すいません、姫」
言ってからはっと、口ごもる。
「!? ふふん、あなたもそう言う立派な口が聞けるようになったのね、
でもダーメ、負けたら私の言うことを一つ何でも聞くのよ」
( 忘れてた、今こいつとトランプ遊びをしてたんだっけ )
手に持ったカード越しにちらりとマリアンヌを見つめる。
思えば、今までこんな物に触ったことなど殆ど無かった。
よくわからないまま、適当にやっていたら、どうやらもう二連敗しているらしい。
「ふふん、私ね、この『シトロイエン』で負けたこと無いのよ、
さてと、今からあなたが負けた時のこと考えておかなくっちゃね♪」
楽しそうに笑うマリアンヌ。
「はあぁ」
「な!! 何よ、早く切りなさい、レヴィ」
気のない溜息を吐くレヴィを見て、馬鹿にされたと思ったマリアンヌは、
思わず声を荒げた。
―― ……まあ良いわ、『みんなの前で裸になって犬の真似をしなさい!』
っていえばこいつも私に泣いて謝るはず、そうしたら私に二度と刃向うなんて
しなくなる筈 ――
自分の得意なこのカードでなら、レヴィに負けるはずない。
マリーは余裕を見せながら、勝負をしていた。
事実、二回ともマリーの圧勝であった。
「後一回勝ったら私の勝ちよ、そうしたら―― 」
パサ
マリーが言い終わる前にレヴィはカードを出した。
スペードの6、マリアンヌの手札に出せるカードは無かった。
「パス、よ、」
そう言うとレヴィは次のカードを出す。
クラブの9と、7、またしても
マリーはパスするしかなかった。
( まあ良いわ、これで負けたとしても次で勝てばいいんだし )
手札を見ながら見ながら、余裕の表情を浮かべるマリアンヌ。
「命拾いしたわね、レヴィ、でも次はどうかしらね?」
―― ネズミを目の前にした猫 ―― のようにくつくつと笑うマリー。
「なるほど、こういうゲームなんですね」
その言葉にマリーは驚きの表情を作る。
「なにあんた、このゲーム知らなかったの!?」
「はい」
ついでにいえばトランプ自体もさほど触ったことはない。
だがそれは黙っておくことにした。
「呆れた、このゲーム小さな子供でも知ってる一般的なゲームよ」
「そうなんですか? ふーん、なるほど」
「今更そんなこと言ったてだめよ、約束は約束だからね」
「ええ、いいですよ、……負けませんから」
「!!?」
( 絶対こいつ泣いたって許してやらないんだから!! )
怒りに身を震わせるマリーはじっとレヴィを睨みつけた。
だが、二回目もレヴィの言ったとうり、彼が勝ち、
同点となった。
「どうしますマリー様、此処で止めておきますか?」
「何言ってんの! たまたま二回勝ったぐらいで! 」
「なるほど。じゃあ ―― 」
「ま、まちなさい! 私がカードを配るわ、あんたがズルしてるかもしれないし」
レヴィからカードをひったくるとマリーはカードをぎこちなく切ってゆく。
「……さてと、これで、いかさまはできないはずね」
そう言うとそれぞれにカードを配り、残りの山は二人の手の届かない場所へと下げる
「さあ、これであなたの勝ちはなくなったわよ、レヴィ、あんたには負けたら
裸で犬の真似をして屋敷を歩き回ってもらうんだから」
「わかりました」
平然とした態度で返事をするレヴィに、今まで以上に怒りを覚えて、
マリーは
敗北した。
「う、ウソ、今まで一度だって私負けたことがなかったのに」
愕然とするマリー、テーブルの上のカードをレヴィは手早く片付ける。
自分の自信のあったもので、しかもレヴィは全くのど素人だったのに、
マリアンヌのプライドはガタガタに傷ついてしまった。
「さて、と、マリーお嬢様」
傷ついたマリーにレヴィは優しく微笑む。
「じゃあ、勝った僕の云う事を聞いてもらいましょうか」
その笑顔はとても残酷であった。
「え!? 何言って ―― 」
何を言われたか分からない、そんな顔でじっとレヴィの顔を見るマリー。
だが、レヴィはそんなマリーを無視して、
暖炉のそばに歩み寄った。
そして、火かき棒を一本取り出す。
「これを、今からあなたに押し当てます」
真っ赤に焼けた先端を見ながら、
レヴィは優しい声で言った。
「な、なに!? どういうこと!! 」
ガタン
イスから立ち上がり、驚きの声を上げるマリアンヌ。
「そのままの意味です、これをあなたに押し当てさせてもらいます、
マリアンヌ様」
そう言うとそばに置いてあった水差しの中の水に先端を差し込む。
その途端
ジュウゥ
という音とともに白煙が上がった。
「う、うそでしょ、レヴィ」
「僕はいたって本気ですよ、マリアンヌ様」
そう言うと火かき棒をマリアンヌに向ける。
「さ、さっき言った事は冗談よ、だから怒らないでレヴィ」
マリアンヌはゆっくりと後ずさる。だがドアはレヴィの傍だ。
「いいえ、マリアンヌ様、僕はあなたの白い肌がこの火かき棒によって真っ赤に焼けただれるのが見たいんです」
そう言うとレヴィはくすりと笑う。
「そ、そんなことしたら、お父様があなたを八つ裂きにするわよ!!」
「これはゲームの賭けです、お嬢様が言い出したことですよ、そう言えばルドルフ様も
何も言えないでしょう、それに ―― 」
距離を取ろうと動き回るマリアンヌに対してゆっくりと火かき棒をかざしたまま、進路をふさいでゆくレヴィ。
「それにね、マリアンヌ様、例え八つ裂きにされたとしても、僕は本望ですよ」
くすくすと笑うレヴィ。
( こ、怖い、こいつ本気で、私をバーベキューみたいにする気!!? )
徐々に逃げ場をふさがれて壁際までマリアンヌは追いつめられた。
ドン
背中に壁が辺り。
「ひぃ」
マリアンヌは低い声を上げた。
「ゆ、許して、レヴィ……」
そんなマリアンヌを哀れに思ったのか、レヴィはすっと火かき棒を下げる。
「いいでしょう」
ほっとするマリアンヌ、しかし、
「ただし」
再びレヴィは火かき棒をマリアンヌに向ける。
ひぃっと息をのむマリアンヌ。
「 『私は、大ウソつきで臆病者の、ルドルフ・リヒティンシュタインの娘
マリアンヌ・リヒティンシュタインです、どうか罰を与えないでください』
そう言えば許してあげますよ」
そう言うとレヴィはニコリとほほ笑んだ。
その途端
バチン!
激しい平手打ちが飛ぶ。
「黙れ!! 家名を汚すぐらいなら、焼け火箸など恐れるものか!! 」
レヴィを睨みつけるとそのままマリアンヌは身につけているドレスを脱ぎはじめ
下着姿となる。
そしてコルセットを外し、その裸身を目の前の少年の前に晒す。
「さ、さあ、それを私に押し当てなさい!!」
気丈にふるまっているが声が震えている。
両手を強く握り、体全体が小刻みに揺れていた。
少年は満足そうにうなずくと、
「わかりました、では壁に手をついてください」
冷たく言い放った。
「くっ」
少女は言われたとうりに壁に手をつく。
「さて、マリアンヌ様、今から私があなたにこの真っ赤に焼けた火箸を押し当てます、
本当ならば、胸か、あなたの大事な少女の部分に当ててもいいですが、
それではあんまりですので、背中に当ててあげますよ」
残酷な言葉であるが、レヴィはまるで、愛おしい恋人に囁く様に告げる。
「だ、だ、だまれ!!」
小さな背中が先ほどから震えている。
慎ましやかな胸の、先端部分が恐怖のためか、寒さのためか、それとも別の理由のためか
先ほどから、ツンと自己主張をしている。
真っ白なシルクのショーツはその少女の間の部分がシットリト濡れだして来ていた。
「今ならまだ間に合いますよ?」
「うるさい!! 覚悟はできている!! や、やるなら、は、はやくやれ」
「 『獅子は猫にはならない』 か……」
「な、なに?」
「いえ、……まずはじめに刺すような痛みがきて、肉を焼く音と臭いがします」
「う、うっぅ」
すーっと指で背中をなぞる、
「あ、はぁぁううぁう」
ピクピク
マリアンヌは体を揺らす。
さらに尾骶骨から、首筋にかけて優しく舌で舐めてゆく。
「はぁあ、や、いやあ」
「ふふ、マリー様、こうして湿らせておけば、案外何とも無いかも知れないですよ?」
「そ、そんなことあるわけ ―― あっ!」
「マリー様、お漏らしですか? はしたないですよ?」
レヴィは優しくショーツの割れ目部分を指でなぞる。
「や、やだ、足に力が入らない」
がくがくと先ほどとは違った震え方を繰り返すマリー。
「では行きますよ、お父上も、猫のように生きるより、
獅子として生きるあなたを大層誇りに思うでしょう」
そう言った瞬間、背中に焼け火箸がちかづいて来る熱さを感じ、
次の瞬間、
ギュッと刺すような痛みの後
ジュウゥ!!
肉が焼ける音と
においを感じ
「ああああっぁああ!!」
マリアンヌは大きな悲鳴をあげてゆっくりと意識を失っていった。
夜、マリーは一人ベッドの上で目を覚ました。
気がつくとドレスがその身に着せられていた。
「これは……」
マリアンヌは困惑した。
それはマリアンヌの物ではなかったからだ。
よく、パーティ会場に行った時に見かける、スタイルの整った、
年ごろの女性が身につけるものであった。
「なんで私こんなものを……」
そう思った瞬間に気がついた。
背中が大きく開いているのだ。
「そうだ、私あいつに……」
ふと気がつくと姿見がベットの傍に置いてある。
あの痛みと、あの臭い、そしてあの音。
背中には一生消えない跡が付いているのだろ。
― 獅子は猫にはならない ―
レヴィの言った言葉を思い出す。
「私は後悔なんてしない」
そう呟くと
恐る恐るマリーは姿見に背を向けた。
「どうしたんだい? レヴィ」
「あ、父上、いえ、お嬢様には、ほとほと手を焼かされますよ」
苦笑いをしながら
氷水の張った器から手を抜くと、レヴィは自分の手に火傷の薬を塗り始めた。
「!? ……あいつ……、ゆるさない、馬鹿にして!!」
ガシャン!
姿見が音を立てて砕け散り。
物語も
終わる。
GJ、よかった。
すげー!
職人さんGJ!!
なんか、ギューッとしたw良かった。
これは続きもワクテカせざるおえない
305 :
何を守る:2008/06/26(木) 01:14:58 ID:FFj50bVV
ありがとうございます。
続きです
キン、キン。
金属が激しくぶつかり合う音が部屋に響く。
大勢の男たちが剣技の練習を行っている、
その中で一人異彩を放つ者がいた。
レヴィである。
彼の周りに数人の男達が槍をもって立つ。
「イヤー!!」
裂帛の気合とともに、一斉にレヴィに向かって襲いかかる、
だが、一本の槍も、レヴィにはかする事無く逆に男達が、
地面に倒れた。
「ほかに、だれかお相手を務める方はいませんか?」
レヴィの言葉に、皆はただ首を横に見合わせるだけであった。
そんな中一人の少女がみんなの間に入ってくる。
マリアンヌだった。
「何よだらしないわね、それでも『黄金の鷲団』なの!!」
叫ぶが、だれもマリーに目を合わせようとはしなかった。
「マリー様、彼らは騎士で会って剣闘士では有りません、
見世物的な闘いはできないのですよ」
やんわりとその場を取り持とうとするレヴィ。
「もういい!! 帰るわよレヴィ!」
「はいマリー様」
少年は騎士たちに軽く一礼すると、
騎士たちの詰め所を後にした。
( 今日こそ絶対にレヴィが泣いて謝るようにしてやるんだから )
( 我儘で、世間知らずなお嬢様だと思ったら、やはり英雄ルドルフの娘か )
揺れる馬車の中、ガタガタと屋敷へと戻る二人。
306 :
何を守る:2008/06/26(木) 01:17:25 ID:FFj50bVV
ジーッとマリアンヌを見ていたレヴィは不意に振り返ったマリアンヌと目が合う。
「な、なに!? レヴィ」
顔を赤らめて、狼狽を始めるマリアンヌを見てレヴィはあわてて視線をそらす。
「す、すいませんマリアンヌ様」
そう言ったきり窓の外を向くレヴィの横顔が、
マリアンヌにとっていつも見慣れているはずなのに、
今初めて手に入れたような輝きを感じた。
「ね、ねえレヴィ――」
マリアンヌが何か言いかけたその時。
ガタン!!
急に馬車が止まり、マリアンヌは前方に倒れ込む。
「きゃぁ!」
「危ない!」
そんなマリーをレヴィは咄嗟に抱きよせる。
「ふぅ、……大丈夫ですか? お嬢様」
「う、うん……」
コクリ
マリーは頷き。
「ちょ、ちょっと、いつまで抱きついてんのよ!!」
パチン
マリーは少年のほほを軽くたたいた。
「失礼」
そっと座席に戻すと馬車の窓から顔を出し外の様子を確かめる。
「おい、何があった」
「前方に人が倒れてます!」
前方を見ると確かに人らしき何かが倒れていた。
「……たしかに、……おい! 大丈夫か! 」
レヴィが声をかけても、そのものはぴくりとも反応しない。
「大変! レヴィ助けなきゃ」
マリアンヌはあわてて馬車から飛び出し、倒れている者へと近づいた。
「駄目です! マリアンヌ様」
そう言って駆け出すレヴィ、その時、左右の茂みから矢が雨のように降り注いだ。
「きゃぁ!!!」
307 :
何を守る:2008/06/26(木) 01:20:31 ID:FFj50bVV
マリアンヌを地面に引きずり倒すと、そのままレヴィは覆いかぶさった。
「動かないで! 」
「は、はい!」
マリアンヌはレヴィの舌で恐怖のため小刻みに震えている。
「レ、レヴィ、大丈夫なの!?」
「へ、平気ですよマリー様、それよりも、動いてはいけませんよ」
「は、はい」
ギュウ
レヴィの服にしがみつき、堅く目を閉じる。
こんな状況だが、レヴィの体温と、優しげな匂いが、
マリアンヌに安心感を与えてくれた。
やがて矢がつき、茂みより何人もの男達が飛び出してくる。
「馬車に隠れて、マリー」
「は、はい」
転がるように駆けだすとマリーは馬車に飛び込む。
男達は数十人はいる。
「早く、レヴィ!!」
マリーの叫びにレヴィは首を振る。
「大丈夫だマリアンヌ! これぐらいなら片付けられる、
それよりしっかりとドアを閉めておくんだ!!
鋼鉄製のドアは一度鍵をかければ外からは開けられない!」
「うう、レヴィ、ゴメンナサイ」
バタン
マリーはレヴィの言葉を信じ馬車のドアを閉める。
外からは金属がぶつかりあう音が聞こえる。
マリアンヌは先ほどの騎士とレヴィの闘いの様子を思い出していた。
「大丈夫、大丈夫、レヴィは、レヴィはあんな奴らになんか負けない」
両手を胸の前で組み合わせ、あらしが過ぎ去るのを待つ小鳥のように、
マリアンヌは馬車の中で震えていた。
ドサリ
馬車の外ではまた一人レヴィによって刺客が切り伏せられる。
「どうする? まだ切りあうか?」
308 :
何を守る:2008/06/26(木) 01:22:05 ID:FFj50bVV
レヴィは周りを威嚇するように睨みつけながら馬車を守るように動く。
「……レヴィ?」
と、突然刺客の一人が口を開いた。
「お前、レヴィだろ?」
「!? まさかアルレオ!? 生きてたのか……」
レヴィは剣を下げる。
今までフードをかぶり、顔が見えなかったが、
目の前にいるものは紛れもなくレヴィの親友であった。
「レヴィ……なぜ君が、なんで君がルドルフの娘の傍にいるんだ!!」
目の前の青年が叫ぶ。
剣を構えていた残りの男達も、フードを外す、
みなレヴィの知っている者たちばかりであった。
「退いてくれ、レヴィ、我々はその馬車の中の者に用がある」
一番年配の男が静かに語りかけてくる。
「この少女に何をする気だ?」
レヴィは剣を構えなおすと静かに問いかけた。
「知れたこと! その娘と引き換えに、われらの祖国を奪還するのだ!」
―― 馬鹿なことを ――
レヴィは喉まで出かかった言葉を飲み込む。
「主家であるタイレルが滅んだ今、そのような事をして何になる」
レヴィは油断なく周囲を見回す。
「滅んでなどいない!! 」
アルレオが叫ぶ。
「アンリエッタさまが生きておられる」
―― アンリエッタさまがイキテイル ――
その言葉は魔法のようにレヴィの心と身体を縛り付けた。
309 :
何を守る:2008/06/26(木) 01:23:11 ID:FFj50bVV
「ふふ、レヴィ、いつもお疲れ様」
剣の稽古をしているレヴィの元に、アンリエッタがやってきた。
「あ、アンリエッタ様」
レヴィは一言言うと、はっと気が付き顔を赤くする。
剣の稽古をして暑かったため、先ほど、上に来ている物を全て脱ぎ棄てていたのだ。
「も、もうしわけありません」
あわてて上着を着ようとするレヴィ。
「いいんです、レヴィ」
そう言いながらアンリエッタは近づいてくる。
「実は、私、いつもレヴィが剣の稽古をしているのを、遠間から見ていたんです」
そう言った途端頬をアンリエッタは赤らめる。
「の、のぞくつもりでは……無かったんですよ?」
下を向いたアンリエッタは言葉を続けた。
「あ、あの、最初は偶然だったんです、邪魔をしてはいけないと思い、声をかけそびれて、
で、ですね、そのうち……レヴィの剣の稽古が大変美しい事に気がついて、
で、よく邪魔しないように見学を……」
後半は消え入りそうな声になってゆく。
「そう、ですか」
少年もそう言うのがやっとであった。
二人の間に沈黙が流れる。
「あ、あの、アンリエッタ様」
「は、ははは、はい、なんでしょう」
急に声をかけられて、アンリエッタは驚きの声を上げた。
「ええ、と、……私の剣はアンリエッタ様の物です、ですので、
邪魔などと言う事は在りません」
「まあ、うれしいわレヴィ」
ニコリとアンリエッタがほほ笑む、
その笑顔を見て
レヴィは剣だけでなく、
―― 自分の命の一片も ――
アンリエッタ様の物ですと
心の中でつぶやいた。
310 :
何を守る:2008/06/26(木) 01:25:48 ID:FFj50bVV
「レヴィ、君が来てくれれば、我々は百万の軍を手に入れたのと同じだ、
われわれと来てくれ、レヴィ」
剣を捨ててアルレオは歩み寄ってくる。
「アンリエッタ様は、君達の下に居るのか?」
その問いに対しアルレオは悲しそうに首を横に振る。
「いいや、だけど、生きてるのは間違いない、
多くの者が、アンリエッタ様らしき人物を見たと言っている、
レヴィ、来るべき日のために僕たちの所へ来てくれ」
アルレオはそう言うとさらに歩み寄ってくる。
だがレヴィはかつての仲間の問いかけに悲しそうに首を横に振った。
「アルレオ、そしてみんなもココは一旦引いてくれないか?
僕は君達について行く事は出来ない」
「なぜ……だ、レヴィ、君はルドルフに魂を売ったのか?」
その問いかけにも静かに首を振る。
「退け、レヴィ!! その娘を渡せ!!」
その問いかけに激しく首を振るレヴィ。
「出来ない!! 頼む、この場を立ち去ってくれ!!」
「うわぁぁぁ!!」
突然横から一番若い刺客の男が切りつけてくる。
だがレヴィはそれを振り向くことなく一太刀で切り伏せる。
「 『地をかける稲妻』か、まさか誇りと名声も地に落ちたとは……」
年配の男が油断なく剣を構える。
それに合わせ生き残ったすべての者が一斉にレヴィに切りかかった。
そして、
ドサリ、
すべての者達が、一瞬で地面に倒れた。
311 :
何を守る:2008/06/26(木) 01:28:22 ID:FFj50bVV
「アルレオ、君だけでも……」
そう言ってレヴィが振り向くと、
アルレオは剣を拾い上げて、レヴィを見つめていた。
「地に落ちた稲妻か」
「違う、僕は……」
「黙れ!!!」
そう言うとアルレオが一気に切りかかってくる。
カキン
金属音が響き
ドサリ
アルレオは地面に倒れた。
少しの静寂の後
馬車のドアがゆっくりと開く、
「レ、レヴィ!! レヴィ!!」
叫びながらマリアンヌが走り寄ってくる。
「大丈夫!? 大丈夫レヴィ!!」
「あ、マリアンヌ様、大丈夫ですよ」
「もう、馬鹿、あんたが死んだら、私、私」
レヴィに抱きつくとぼろぼろと涙を流すマリー。
「だい、じょうぶ、と、言ったでしょ……」
そう言った途端レヴィの目の前が暗闇に包まれ
どさりと地面に倒れた。
312 :
何を守る:2008/06/26(木) 01:29:19 ID:FFj50bVV
「レヴィ、私の自慢の騎士様、何かあったら一番に駆けつけてね」
アンリエッタはにっこりとほほ笑む。
「も、勿論ですよアンリエッタ様に何かあった時は稲妻の様に、
あなたのもとに駆け参じます」
「くそ、いいよな、レヴィばっかり」
傍らにいたアルレオは不満そうに口を尖らせた。
「ご、御免なさいアルレオそう言うつもりでは」
「ははは、冗談ですよアンリエッタ様、
僕は稲妻よりも早くあなたのもとに駆けてゆきますよ」
「な!?」「まあ!?」
「レヴィ、アンリエッタ様を守るのは俺だからな」
そう言うとアルレオはその場を後にする。
「おもしろいわね、アルレオって」
くすくすとアンリエッタは口を手で押さえて笑う。
「レヴィ、もしものことがあったら、お願いしますね」
レヴィ
―― レヴィ ――
313 :
何を守る:2008/06/26(木) 01:31:47 ID:FFj50bVV
「レヴィ!!」
「う! ん、んん、こ、ここは?」
「よかった気がついたのねレヴィ」
レヴィが気がつくと、マリアンヌの部屋で寝かされていた。
「もう3日も眠っていて、このままだったら危ないって、
レヴィ、私のために大怪我して、ああ、うううう……」
そう言うと、マリアンヌはレヴィの上に倒れ込み泣き声を上げる。
レヴィが見るとその手は、
何度も包帯を取り換え、
薬を塗り、
タオルを絞ったのであろう、
ひび割れてぼろぼろになっていた。
「えうぅぅ、よかった、よかったわ、レヴィが生きてて」
泣きじゃくるマリアンヌの頭にレヴィはそっと手をおく。
「ご心配をおかけしてすいません、マリアンヌ様」
そっと優しく囁きかける。
「ご免なさい、ごめんなさい、レヴィ」
「大丈夫ですよ、マリー様」
レヴィは優しくマリアンヌの頭を手でなでる。
「もし、マリアンヌ様の身に何か起ったら、今日の様にお守りして差し上げますよ」
そう言いながら優しく撫でていると、
疲れからか、マリーは静かに寝息をたてはじめて、
物語も、
終わり。
今日は以上です。
いつも読んでくれてる皆様ありがとうございます。
ちなみにこのSSのタイトルは
「獅子は猫にはならない」です。
獅子猫とでも呼んでください。
ではまた〜。
GJ!!!
遅くなったけど
毎回のクオリティ高いなぁ
超GJ!!です
GJです。
毎回終わり方がいいな、続きが楽しみ。
318 :
猫になる:2008/06/30(月) 23:00:14 ID:AzXG3okR
感想くれている方、読んでくださっている方々、本当にありがとうございます。
「ねえ、レヴィ、見て」
あの時の傷もすっかり癒えたレヴィはいつものようにマリアンヌの部屋の片づけ
をしていると、不意に声をかけられた。
「何で――」 何ですか?そう言おうとしてレヴィは固まった、
それもそのはず、
振り向いた視線の先にマリアンヌが立っていたからである。
頭から耳を生やして。
「ええと、なんの、真似でしょうか?」
恐る恐るレヴィは尋ねる。
「これ? ふふ、かわいいでしょ? この猫の耳」
そう言うとマリアンヌはくすくす笑いながら、頭の上の猫耳をいじってみせる、
金色の髪の毛からちょこんと出たその耳は、
レヴィの目にはとても奇妙なものに映った。
「今まで、私レヴィのことずっとペットみたいに苛めてたでしょ?」
そうだったろうか? かなり自分の方が苛めてた気がする、
だがレヴィはその考えを口に出す愚かな真似はしなかった。
「だ・か・ら・今日はそのお詫びに一日
マリ猫になってレヴィに可愛がらせてあげるネ」
どんな理屈だ。
そう思ってもやはりレヴィはそんな言葉を口に出すほど、愚かではなかった。
「はぁ、ありがとうございます」
「ほらほら、猫の尻尾もあるんだぞ」
そう言ってくるりと後ろを向くと、洋服の後ろ部分には尻尾が縫い付けてあった。
マリーお尻を振ってそれを強調して見せる。
「どう、かわいいでしょ? たっぷり可愛がっていいよ」
楽しそうに笑うマリアンヌ、
きっと彼女なりに、一生懸命考えた結果なのだろう。
(……ルドルフ公、あなたの娘は僕が思った以上に頭がゆるいよ……)
はぁ、レヴィはため息を一つ吐くと、
「で、そのマリ猫は、僕に何をしてくれるんですか?」
「え!?」
そう言われたマリアンヌは何を言われたか分からないといった顔で止まった。
319 :
猫になる:2008/06/30(月) 23:02:05 ID:AzXG3okR
「ええと、うーん、……あっ! 頭をなでたら、ニャンって言ってあげる」
グットアイディア 自分ではそう思ったのだろうマリアンヌはすっとレヴィに、
頭を差し出した。
「はぁ、じゃぁ」
力なく言うと
ナデナデ、
頭をなでるレヴィ。
「にゃん❤」
マリーは嬉しそうに啼いて見せた。
「じゃあ、あとは?」
「えっ! うーん、じゃあ、そうだ! 喉をなでたらゴロゴロって言ってあげる!」
すごいでしょ私! マリアンヌの目がレヴィに訴える。
無論レヴィは
―― いいえ、まったく ―― と言うほど、愚かでは無い。
「では、失礼」
ナデナデ、今度は喉をなでるレヴィ。
「ゴロゴロ」
またもやマリアンヌは嬉しそうに鳴き声を上げた。
「ありがとうございました」
そう言うとレヴィはまた元の仕事に戻ろうとする。
「えっ!? もう終わりなのレヴィ、遠慮しなくていいのよ」
じっとレヴィの目を見つめるマリー。
(ルドルフ公、本当にあなたの娘は、頭がゆるく育ちました)
「では」
そう言ってまた頭をなでるレヴィ、そのたびにマリアンヌは
「にゃあ」とか「ふにゃあ」とか「にゃん、にゃん」
などと言い続けた。
それはそれは嬉しそうに。
「……マリアンヌ様」
「ちがう! マリ猫!」
「はぁ、ではマリ猫、そこに毛糸の玉があるからそれで遊んでなさい」
「にゃん」
一声返事をするとそばに落ちていた毛糸玉を猫になりきり手で転がし始める
マリー、いや、マリ猫。
320 :
猫になる:2008/06/30(月) 23:03:48 ID:AzXG3okR
「今のうちに片づけをするか」
そういうと、マリ猫を尻目に部屋の片づけの続きを始めるレヴィ。
―― ―― ――
「ねえ、ねえ、レヴィ、毛糸玉全部ボロボロになっちゃった、どうする?」
4個ほどあった毛糸玉は全て無くなってしまっていた。
どうするもこうするも……。
―― 仕方ない、面倒だけど ――
「よし、マリ猫、こっちにおいで」
そう言うとレヴィはマリーを手招きした。
「にゃん」
そう言うとうれしそうに尻尾を振りながらレヴィの元の走ってくるマリー。
「にゃん、にゃん」
啼きながら頬をすりすりとレヴィの膝のあたりに擦りつけるマリー、
それはまさに猫そのものであった。
「頭をなでると、『にゃん』って言うんだよね」
そう言うと頭を撫でるレヴィ。
「にゃん、にゃん」
マリーは嬉しそうになく。
「で、顎の下を撫でると、ゴロゴロ言うと……」
「ゴロゴロ」
顎の下をなでてやるとやはり嬉しそうに啼いた。
「なる、ほ、ど、じゃあこれはどうかな?」
ペロリ
「ひゃ!? はぁぁぁ」
急にレヴィに耳の後ろを舐められたマリーは軽く悲鳴をあげてしまった。
321 :
猫になる:2008/06/30(月) 23:06:43 ID:AzXG3okR
「おやぁ、この耳がマリ猫の耳じゃないのかい?」
そう言うと頭上のヘアバンドで作られた猫の耳をグイッと引っ張る。
「あぅ……いや、やめてレヴィ、耳がちぎれちゃう」
手でヘアバンドを押さえて抵抗するマリー。
「あれ、猫なのに人間の言葉を話すんだ?」
そう言うと
ペロ
舌でマリーの耳をそっと舐め、
カプ
歯を使わぬよう唇を使い甘噛みをする。
「ひゃ――、 にゃ、にゃあん!!」
何とか猫語? で、悲鳴を上げるマリー、なんとかして猫に成りきろうとしているらしいその姿を見て、レヴィはますますマリーをからかいたくなった。
二人はベットの上に座っていた。
「マリー、猫が服着てたら変だろ? 自分で脱いでみなさい」
「……にゃあぁ」
そう返事をすると洋服を脱いでいく、
それを見てレヴィは満足そうに頷き、そして、
つぃー
舌で首筋の裏を舐め始めた。
「あっ!……!!」
軽く悲鳴を上げた後、
あわてて手で口をふさぐと声が出ないように必死に耐える。
「ん? 今何か女の子の声が聞こえたような、まさかお前じゃないよなマリー?」
コクコク
手で口を押さえたままうなずくマリー。
「そうだよなぁ、ここには弄られるのが大好きなHなマリ猫しかいないもんな」
コリ
そう言うと先ほどからピンと張り詰めて固く尖っていた、
小さな胸の先端を指で優しくつまんだ。
「んんんん!!」
何とか声が出ないようになおも必死でこらえるマリー。
「マリ猫はホントにいやらしい猫だな、ここがずっとコリコリしっぱなしだぞ」
そう言いながら左右の胸の一番感じる部分を指でいじり続けるレヴィ。
(あ、ああうぅ、こえ、こえがでちゃう!!)
何とか声が出ないようにマリーは必死に耐え続けていた。
322 :
猫になる:2008/06/30(月) 23:08:24 ID:AzXG3okR
「さてと、じゃあ次は」
そう言うとスーッと指先を優しく胸から下腹部、そしてへその下へと指を持っていった。
「ううう」
「ン、今喋らなかったかいマリー」
フルフル、マリーは首を横に振る。
「ふーん、そうか、じゃあ」
チュプリ
「あ!!」
レヴィの指が少女の一番大切な部分に入り、
我慢できなくなったマリーは、ついに悲鳴を上げた。
「ん? 何かいったかいマリー?」
「ん、んんん!」
だがそれでも必死に首を振り、口を押さえるマリー。
「そうか、じゃあ」
くちゅ、くちゅ、くちゅ。
レヴィの人差し指と中指が少女の中を攪拌し始める。
そのたびにネットリトした液体が、指を伝い
ポタ、ポタ、と床にこぼれおち続け、
その度にマリーは快楽をこらえるために体を揺らし続けた。
(ん、んん、ダメ 声が出ちゃうよ〜)
片手で口を押さえながら、もう片方の手で必死にレヴィにしがみつくマリー。
ギュウゥ、それはレヴィが痛みを感じるぐらい強く握ってきた。
(さてと、もうそろそろ我慢の限界かな)
マリーが快感を必死になって堪えるのをじっくり楽しんだレヴィは、
最後の追い込みにかかる。
今までとは比べ物になっらないくらいの快感が一気にマリーに襲い掛かり、
まぶたの裏に閃光のようなものが走り、
体の中心部分から熱い波が一気に体の外めがけて押し寄せてきた。
(ああ、も、もうだめー!!)
323 :
猫になる:2008/06/30(月) 23:09:57 ID:AzXG3okR
マリーがそう感じたまさにその時だった。
スポ
レヴィはマリーの体から指を引き抜いた。
「あああん!」
思わず悲鳴を上げるマリー。
「さてと、Hなマリ猫に質問だよ、何処を如何して貰いたい?」
マリーの目の前で、マリー自身の愛液に濡れた指を見せつけながら、
意地悪くレヴィは質問した。
「……にゃ、にゃあ、にゃん」
マリーはそれに猫語? で答える。
「馬鹿だね、僕は人間だから猫の言葉は解らないよ」
ピシ、
「はあぁん!」
そう言うと隆起した乳首をはじく。
「ほら、言ってごらん、如何して欲しい?」
ピシ、ピシ、
そう言いながら左右の乳首をはじき続ける。
「ああ、あ、お、お願い、あすこをもっと気持ち良くなるまでいじって!」
「ふふ、お利口さん、マリ猫」
そう言うと頭を左手で撫でながら、
ゆっくりと右手の人差し指をマリーの中に差し込みつつ、
親指でマリーのやわらかな真珠を擦り始める。
「にゃん、にゃあ、ああ、す、すごい!」
凄まじいまでの快楽に全身を震わせるマリー。
「駄目、駄目、が、我慢できない」
「いいんだよマリー、我慢しないで派手に声を上げて逝ったって」
「あああ、いきゅう!、だめ! だめええぇ!」
ぷしゃああぁぁ!!
ガクガクと全身を震わせると大きな悲鳴をあげてマリーは派手に絶頂に達した。
324 :
猫になる:2008/06/30(月) 23:11:20 ID:AzXG3okR
「ふふふ、どう? レヴィ、私のこと可愛がれてよかった?」
「はい、マリアンヌ様」
ベットの上に腰かけたレヴィの膝の上に頭を乗せながら、マリーは嬉しそうに
レヴィを見上げる。
そんなマリアンヌを見つめながら、レヴィは静かに頷いた。
「ふふふ、よかった」
そう言うと、ゴロゴロと転げまわるマリー。
まだ猫の真似事をしているのだろうか?
そんなマリーを見つめながら、
レヴィは思い出していた。
325 :
猫になる:2008/06/30(月) 23:12:39 ID:AzXG3okR
『地に堕ちた稲妻め!!』
かつての友の言葉を、
あの時は、マリアンヌを守りたくて、体が勝手に動いていた。
―― だが ――
( だが僕はアンリエッタ様に忠誠を誓い、アンリエッタ様が生きていた時は )
―― その時は ――
( ルドルフ公や今の父上、そして )
レヴィの視線の先には、嬉しそうにこちらを向いている少女。
( マリアンヌ、君とも敵対する事になるだろう )
―― だが ――
( だけど、本当に僕は、それが出来るんだろうか? )
あの時、かつての仲間ではなく、敵になるはずの娘を救った自分が。
326 :
猫になる:2008/06/30(月) 23:13:40 ID:AzXG3okR
「僕は……」
ポツリとレヴィがつぶやくと、
ぎゅぅ……。
後ろから小さくマリアンヌが抱きついてきた。
「どうしたのレヴィ? すごく悲しそう」
「あっ、いえ、すいません」
あわてて立ち上がろうとするレヴィ、
グイ!
だが立ち上がろうとしたレヴィの腕をマリアンヌが急に引っ張り
思わずレヴィはベットの上に倒れ込む。
「レヴィ、何処にも行かないで! 」
「マリ、アンヌ、様? 何を言ってるんですか? 片づけ物の続きをしないと」
フルフル
その言葉に首を大きく振るマリー。
「違う、私の前からいなくなったら嫌だよレヴィ! お願い、ずっと、ずっと」
そう言いながらギュウと今まで以上に強くレヴィにマリアンヌはしがみ付いた。
「大丈夫ですよマリー様、僕は何処にも行きません」
―― 少なくとも今は ――
だがその言葉を口にするほど、
レヴィは愚かではなく、
静かに目の前の少女の頭を撫で、
少女が嬉しそうに
「にゃん」
と鳴き、
物語も
終わる。
1番槍GJ。
最近のお気に入りシリーズだから作者様楽しみにしてるよ。
これはマリータンかわいいと言わざるおえない
続きが楽しみです
GJ!
実はアンリエッタとくっついて欲しいと思ってる
330 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 04:26:55 ID:J3b3XrFd
マリアンヌと敵対する展開もいいなあ。
ここに来てなんと恐ろしいデレ!!
「にゃん」かわいいよもう。GJ!
ふと、お嬢様の我が儘に説教代わりにヤってしまう教育係とかアリだろうか?
思い付いたはいいが、書けるかわからん。
猫になるいいね、GJ!
続きを楽しみにしてます。
獅子猫
少なさそうなアンリエッタ派だがどっちであっても楽しみにしてる
保守
ほしゅ
337 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 07:22:41 ID:tzLVULuf
今1から読んだが名前で王レベやゼロ魔を思い出して困る
だがグッジョブ
オタク番長の続きが気になる
獅子猫おもしろいね。今後楽しみ。
ところで、保管庫管理人ではないのだが、保管庫への保管や削除の作業を行おうかと思ってます。
保管して欲しい作者さん もしくは してほしくない作者さん または 保管済みだが削除してほしい作者さんは
それぞれお申し出ください。
来週の三連休あたりで行う予定なので、それまでに書き込んでくれれば、作業します。
なお、保管済みの作品ページを削除することはできないので、ページは存在するが文章を全消去する形で行います。
ここは初投稿にてしばらくお借りします。出戻りお嬢様と若き執事の話。
Save The Last Dance For Me 〜ラストダンスは私に〜
ダンスホールでは、たくさんの人がざわめきの中ステップを踏んでいる。
途切れることなく訪れる男たちの手を取って踊る令嬢ヴァイオラを見ながら、ウィルはそっとため息をついた。
ゆるやかにウェーブのかかった鳶色の髪をなびかせて、軽やかにステップを踏む彼女の、
悲しみについて知っているのは、屋敷の人間のほんの一部だけ。
そして、その屋敷の人間たちも今宵のパーティーを最後に、散り散りになるのだ。
―――この国は変わる。
最初にそう言われたのは、学生時代の友人のひとりからだったろうか。
ここ10年、不況に喘ぐこの国では、国粋主義を唱えるひとりの男が若者を中心に支持を集めていった。
その男が去年の選挙で政府の要職についてから、次々と制定された新しい法律により、
異民族の文化や仕事に対する締め付けが、だんだんときつくなってきている。
その事実は、古くから文化に精通し、異国のものや異民族を積極的に受け入れてきており、
当主の妻がジプシーの血を引くジェンキンス家を、この上なく締め付けていると言っても過言ではなかった。
16歳の誕生日の日に他家へと嫁いだヴァイオラは、離縁されて戻ってきた。
元から身体の弱かったヴァイオラの母親は、それからほどなく他界―――。
「ジプシーの迫害が始まる前に、国を出る」という結論に伯爵が至るまで、さして時間はかからなかった。
人望の篤い伯爵の送別パーティーともなれば、さすがに要人たちがつめかけているが、
そこに見当たらない人影が多いことにもまたウィルは気付いている。
(この国は変わる、か―――)
国粋主義に傾倒する若者の気持ちも、わからなくはない。
ウィル自身も父親の他界で学業を諦め、伯爵家に執事として仕える道を選んだのだから。
しかしジェンキンス家に帰ってきたヴァイオラの寂しげな表情を見るにつけ、
この国の進む方向に対して不安がむくむくと膨らんでいくのも事実だった。
ワルツ、スローフォックストロット、ヴェニーズワルツ…。
音楽が次々と変わる中、ヴァイオラがふと視線をこちらへ向ける。
(きれいになったな)
ウィルはふと、まだ子どものヴァイオラに始めてダンスを教えた日のことを思い出した。
(思えばあれから遠くへきたもんだ)
ヴァイオラはもう子どもではない。明日から自分は召使ではない。
ただ今宵、執事の自分が屋敷の令嬢と踊ることは許されない。それだけのことだ。
懐かしいのか、愛おしいのか。
不思議な郷愁が胸にこみ上げ、それをごまかすようにウィルはフロアから目を逸らした。
「痛っ!」
どさ、という誰かが倒れる音がひびく。
振り向くと、しりもちをついたヴァイオラの姿が目に飛び込んできた。
「ヴァイオラお嬢様!」
駆け寄るウィルに、彼女は苦笑いを浮かべて言った。
「ごめんなさい。ちょっと裾を踏んづけちゃって…」
「お怪我はございませんか?」
「大丈夫よ。」
鷹揚に微笑むヴァイオラを目で諌めると、ウィルは伯爵に退席の許可を得た。
冷やしたタオルを用意し、ベッドサイドに座らせたヴァイオラのもとへ行くと
彼女はまとめた髪をほどいて、リラックスした表情を見せていた。
「お嬢様。失礼いたします」
そう断って、彼女の足にタオルを近づける。
「つめたっ!」
「我慢してください。腫れてしまったら格好悪いですよ。」
目の前にある白く綺麗な足が気まずくて、ウィルは部屋の中へ視線をめぐらせる。
ヴァイオラの部屋に入るのは久しぶりだった。
かつて余計なものばかり持ち込み、ウィルを怒らせた部屋は
必要最低限のものしかなく、隅に荷物がいくつかまとめてあるだけだ。
「今日で最後ね。」
まるで彼の心を見透かしたように、ヴァイオラがぽつりと呟く。
「覚えてる?ウィル。私あなたにダンスを習ったのよ。」
「覚えていますとも。何度も足を踏んづけられた。」
「しょうがないじゃない。あの時は子どもだったもの。背だってかなり違ったし。」
「そうですね。しかしお上手になられました。」
「最後の最後に、けちがついちゃったけどね―――。」
ランプの灯りに照らされたヴァイオラの顔は、心なしかうす赤く見えた。
「今夜、ウィルと踊りたかったな。」
「ご冗談を。」
「本当よ。」
「お嬢様には、お相手をしなければならないゲストが沢山おられました。」
「わかってるわ。でも―――」
ふたりの間に沈黙が落ちる。
ダンスホールでは、どうやら静かなワルツが流れ始めたようだ。
思い切ってウィルは視線を上げた。
「足は大丈夫そうですか。」
「え?ええ…」
「少し、踊りましょうか。」
ヴァイオラの大きな瞳が見開かれる。ウィルは少しおどけて手を差し出した。
「今日が最後ですから。―――ヴァイオラ・ジェンキンス伯爵令嬢。私と踊っていただけますか?」
あっけにとられたヴァイオラの顔に、花が開くように微笑が浮かぶ。
「もちろん。」
ベッドから立ち上がり、彼女はウィルに身を預けてきた。
部屋の外から聞こえる遠い音楽に任せ、ふたりの身体はゆれる。
初めてダンスを教えたときは屈めていた背も、今はぴんと伸ばしたままでいい。
足が絡まるようにして転んだステップも、スムーズに運ぶ。
背中に回した手に思わず力が入りそうになるのを、ウィルは必死で抑えていた。
明日には異国へと離れていき、状況次第では二度と会うことも出来ない人に、
自分の思いを、気取られるわけにはいかない。
帰ってきてからこの半年、自分が彼女をどのような思いで見つめていたか、決して知られるわけにはいかなかった。
「ねえウィル。ありがとう。」
腕の中でヴァイオラが囁く。
「こんなに上手なのに、どうしてあの時転んだりなさったんです?」
―――理性を保つための冗談だったはずなのに。
「気付かなかった?」
「え?」
視線を上げるとそこには、ひそかに思った人の黒い瞳があって。
「私、ずっとあなたを見てたのよ。」
―――限界だ、とウィルは思った。
そしてそのまま足を止め、なりふり構わず彼女を抱きしめた。
一瞬身をこわばらせたヴァイオラの顎を持ち上げ、深い口付けをする。
唇を舌でこじあけ歯列をなぞると、彼女もそれにおずおずとこたえてきた。
角度を変え、高鳴る鼓動を感じながらひたすら貪りあうようにキスを繰り返しながら、
ウィルはヴァイオラをベッドの上に横たえた。
後戻りはできない。
かといって未来を約束しあうこともできない。
そんな狭間で大事なお嬢様を抱こうとしている残酷さを打ち消すように、
ウィルは彼女のドレスに手をかける。
胸元をくつろげ、肩をあらわにさせ、しずかに洋服を剥いでいくと
みずみずしい果実のような白い裸身があらわになった。
「綺麗です」
「やめて、恥ずかしい」
そんな姿のままで恥らうヴァイオラが愛しくて、思わず抱きしめ口付ける。
ドレスの上からではわからなかった、思いの外ゆたかな乳房に指を這わせると
彼女ははじめて「あ、」と高い声をあげた。
そのままゆっくりと、ヴァイオラの胸を揉みしだく。
ふんわりと柔らかな触感を楽しみながら、もう片方の乳房の先を舌で転がす。
時折ひくり、と動く彼女の身体が愛おしくて見上げると、自分の指を口元に当てて
声を立てないようにしているのが目に入った。
ウィルは手を伸ばし、指をつなぐと囁いた。
「声を聞かせてください。」
「あ…んっ…気持ち良すぎて…」
「大変にお可愛らしい。」
「やあっ…ウィル。そんなこと…」
身体をくねらせるヴァイオラが愛しくて、彼は乳首の先端を甘く噛んだ。
舌先でねぶり、指でつまんで丹念にほぐすと、彼女は高い声をあげて背中をしならせた。
がくがくと震え絶頂を知らせる身体を抱きしめると、彼女は背中に腕をまわしてくる。
息をはずませぎゅっと抱き合い、ふたりは再び唇を貪りあった。
「ウィル…」
かすれた声でヴァイオラが誘う。
と、熱を帯びた瞳でウィルを見つめた彼女の白い指が、彼の中心を優しく掴んだ。
「いけません。」
「いいの、私がしたいのよ。」
いたずらっぽく微笑むと、ヴァイオラは指で彼自身を刺激し始めた。
ときに強く、ときに柔らかく緩急をつけながらそこを擦られて、
ウィルは全身の血液がかあっと熱くたぎるのを感じた。
「お嬢様…」
そう呟くと彼女の手を取りベッドに再び押し倒す。
口付けをしながら指で触れた彼女のそこは、もう充分なほど熱くとろけきっていた。
「いいわ。来て。」
掠れた声に誘うような目つき。ランプに照らされた白く美しい裸体。
ウィルが大事に育てた、愛しく懐かしいお嬢様―――。
大事にしたいのに、めちゃくちゃにしてしまいたい。
そんなぐちゃぐちゃした思いに心をかき乱されながら、ウィルはヴァイオラの中へと分け入った。
「ひあぁぁんっ!」
それだけで彼女は軽くイってしまったらしく、熱くたぎるそこがひくひくと彼自身を締め付けている。
矢も盾もたまらず、彼はゆるゆると動き始めた。
「お嬢様…」
「はぁっ…んっ…お嬢様じゃ嫌…名前、呼んで・・・!」
快感に攫われながら、彼にすがる彼女は見たこともない女の顔をしていて。
キスを繰り返しながら触れる彼女の身体は、どこもかしこも柔らかく滑らかで。
「ヴァイオラ…」
思わず喘ぎ声を漏らしそうになりながら、ウィルが彼女を見つめて囁くと、
熱に浮かされながらヴァイオラは艶やかな笑顔を見せた。
「ウィル…好きよ…」
止めることなどできない、とウィルは思った。
蕩けきっているのはつながっている部分だけではない。肉体だけでもない。
心の底まで溶けてしまいそうだった。
「やん!ひゃっ…ああっ」
だんだん高くなる声が、ヴァイオラの絶頂が近いのを伝える。
「ウィル、私もう…」
「ヴァイオラ、一緒に…」
そう言ってウィルはヴァイオラの最奥を激しく攻め立てる。
ひときわ甘く高い声をあげたヴァイオラが背中をしならせ締め付けると、
ウィルはぎゅっと抱きしめた彼女の奥へと精を解き放った。
はあはあという荒い息づかいが、薄明るい部屋に静かに響く。
軽いキスをして自身を引き抜き横たわると、ヴァイオラは甘えるように身を寄せてきた。
「お嬢様。」
「駄目。名前で呼んで。」
「あ…ヴァイオラ。」
「もう!どっちでもいいわ。仕方のない人ね。」
「はあ…」
「私子どもの頃、パパよりもウィルのほうが怖かったのに。」
「そりゃ、大事なお嬢様ですから。」
ヴァイオラはふふふと笑うと、目を閉じてウィルの胸元に頬を寄せてきた。
「昔こうやって添い寝してくれたわね。私が怖い夢を見た夜は。」
「ええ。」
ジェンキンス伯爵は、そういうことに目くじらを立てない人だった。
それだけ周囲の人間を信じ愛する賢人が、こうして国を追われようとしている。
そしてその娘であるヴァイオラも。
「私が寝るまで一緒にいてね。怖い夢を見ないように…」
声はふざけた調子を作っているが、ウィルに向けた眼差しは真剣だった。
「もちろんです。だから、安心してお休みなさい。」
そう言って微笑むと、ヴァイオラは安らいだ笑顔を浮かべた。
それから彼女の寝息が聞こえてくるまでは、たったの5分ほどで。
――なぜ彼女が去っていかなければならないのだろう。
腕の中で眠るヴァイオラを見ながら、ウィルの心は悲しみで満ちていた。
ほんの2年とはいえ嫁いでいた彼女が生娘でないことくらいは、とうに理解していた。
しかし政情が不安定になっただけで花嫁を手放すとは、あまりに残酷ではないか。
決して幸せだったわけではない2年が、ヴァイオラに教えたことの非道さ。
そして彼女を抱きながら、口に出して「愛してる」とも「好きだ」とも伝えられない自分の不甲斐なさ―――。
本当ならこのまま、彼女を奪って逃げてしまいたい。
けれど一体どこへ?
暗い方へと転がっていくこの国のどこで、ウィルのような若造が彼女を幸せにできる?
腕の中の彼女はとても暖かいのに、彼の心は冷たい雨に打たれたようで。
部屋を立ち去る前に、ヴァイオラにそっと「愛しています」と呟くだけで精一杯だった。
いつの間にか、ゲストは皆帰ってしまったらしい。
忍び足で廊下を歩き自室に戻ろうと急いでいると
「やあ、ウィル。」
…後ろから聞こえたのは、この家の当主・ジェンキンス伯爵の声だった。
―――どうやら一番会いたくない人に、会ってしまったらしい。
背筋がひんやりとするのを感じながら振り向くと、彼はにこやかにこちらへ向かっていた。
「すまなかったね。ヴァイオラときたらうっかり者で。」
「いえ。お怪我はたいしたことがないようで、何よりです。」
「そうか…」
伯爵はふと窓の外に目を向ける。外には満天の星空が広がっていた。
「この家で見る星も、今日が最後だな。君には随分世話になった。」
「とんでもございません。私こそ、何もできない学生だった頃からお世話になり感謝しています。」
「なに、君の人柄に惹かれただけさ。私は身分や出自など気にしない性質だからね。」
そういう人だから付いてこれたのだ。そういう伯爵だから、別れがこんなにも惜しいのだ。
ウィルは自分の胸が熱くなるのを感じていた。
「心配しなくても、こんなことは長くは続かないさ。」
彼の心を見透かすように、伯爵は言葉をつないだ。
「続くわけがない。こんな風に偏った考えの世界が…」
伯爵の声が震え、途切れる。
何を話して良いのかわからないウィルは、ふと思いついたことを口にしていた。
「ご主人様…今夜のダンスパーティーですが。」
「何だね。」
「どうして踊られなかったんですか。お上手ですのに。」
ウィルの質問に伯爵は、はは、と軽く声を立てて笑った。
「本当はラストダンスくらいは、と思っていたんだがね。」
「―――え?」
「私の愛する人のひとりはこの世にはいないし、もうひとりは…他の男に取られたようだ。」
その言葉の意味に気付いて、ウィルは固まった。
「ま、それも今宵限りだと思えば、咎める気にもならないさ。」
伯爵は暖かな目で彼を見つめている。
「もし君が―――」
言いかけた伯爵をさえぎり、ウィルははっきりと宣言した。
「必ず迎えに行きます。」
伯爵は微笑を浮かべて、また窓の外へと視線を戻した。
「期待しないで待ってるよ、ウィリアム・ハーネット君。」
ジェンキンス家が馬車で国外へと旅立ったのは、それから数時間後のこと―――。
そして2年後。
外国暮らしから戻ってきたジェンキンス伯爵の家のパーティーで、
異国でビジネスを成功させたウィリアム・ハーネットという若者が、
ヴァイオラ・ジェンキンス伯爵令嬢にラストダンスを申し込んだのは、また別のお話。
以上、お目汚し失礼しました。
パロ経験はあるのですが、キャラから書くのは初めてで緊張しました。
保管庫に入れて頂けるならありがたいです。
ではでは。
GJ
よかったです
二年後の話も期待してよかですか(*´д`*)
え?
>>348?
中身も最後もよかったよ〜!こういうハッピーエンドは好きだ。
二年後楽しみにしてる。
>>2の下のほうの保管庫、リンク先が個人ブログになってる
+そのブログにウィルス仕込まれてます。
管理人さんご覧になってましたら修正お願いします…。
最近主従にハマってまとめみようと思ったらorz
ヴァイオラと聞いて某フレームランナー思い出しちまったぜw
管理人じゃないがwiki修正しました。
いまやいたちごっことなっているので、もしもリンク先が怪しいと思ったら、
左メニューの「ページ一覧」からリンクを開いてください。
こちらはスパムでもいじれない箇所のはずなので、安全です(確か)。
>348
GJ
よかったです。また是非書いてください。
保管庫作った人ってまだスレにいるのかな?
ページの削除は作った人にしかできなかったりとか管理してもらいたい面がいろいろあるだろうに作っただけで放置してるのか?
管理できないなら
>>338みたいな人にパス託してから消えればいいのに
こんにちは。島津組組員です
>>338さん
お手数ですが、島津組シリーズ関係の削除をお願いします。
エステルとゲイル、ジンとアイシャの人も消してもらいたがってたなあ。姉妹スレ含め
>>357反対とかではなく、純粋に、何で今回削除要請を?
サイト作ったからとかなら見に行きたい…
お久しぶりです。
ヲチはしていたのですが対応などは色々あってできませんでした。
>>356 ページ関係はlivedoorの仕様なのでこちらからはどうすることも出来ないです。すみません。
(削除は管理者画面の投稿者管理でのみ行うことができます)
削除権限を他の方に与える事も可能なのですが、BBSPINKという掲示板の特性上簡単に権限を譲渡するのはアレなんで
>>338さんみたいな感じでページ自体は削除せず既存ページを編集する方向でおねがいします
(BBSPINKに投稿した以上、まとめから削除出来たとしても、過去ログをサルベージすれば作品が読めると言うことを忘れないで下さい)
361 :
338:2008/07/19(土) 15:52:30 ID:6guNA/e9
保管、削除完了しました。
内容を読んで保管しているわけではないので、注意書きなどはレスに明記してあったものしか書いてません。
何か間違いなどありましたら、気づいた方が修正してください。
削除は357さん、前スレ409さん分が完了。まだスレを見ていらしたら、ご確認よろしく。「スティングとエレイン」というタイトルがみあたらなかったので、それは対応してません。
では、スレのますますの発展を祈って。
362 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 20:55:11 ID:suv7Hv7+
削除
363 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 21:00:33 ID:GnjB5SuM
なんでここの人たちは三流小説書いてほめあってるの?
>>357 組の人ご本人ではないが情報を。
島津組でググってごらん。シアワセが見つかる
優等生と同じ人だとは知らなかった…
あれすごく好きだからなんかうれしい
366 :
364:2008/07/22(火) 18:22:36 ID:W36gpoq7
アンカー間違えました
357さんじゃなくて359さん宛ですorz
ほしゅ
エロのぬるい姫と騎士話投下します。
名前欄の「姫パンツ」で嫌な方はNGしてね。
369 :
姫パンツ1:2008/07/26(土) 03:55:31 ID:/pPZLiQu
「姫様!そ、そのようなハレンチな…」
「うるさい。たかが騎士の分際で主に逆らうんじゃない」
城の一室で、立派な体躯の騎士が耳まで真っ赤に染めてせわしなく目を泳がせている。
彼の目の前のソファーには、彼の主である可憐な姫君があられもない格好で鎮座していた。
スカートを捲り上げ、幾重にも重なるパニエを持ち上げ、下着を堂々と見せつけているのだ。
「いいからちゃんと見なさい」
そう怒られビクリと視線を戻す。
マシュマロのようにきめ細かな素肌を、白いガーターベルトとフリルのショーツが飾っている。
まだ幼さの残るソコは腿の肉付きも薄く、切り込みの深いショーツをこんもりと押し上げる柔らかな膨らみは、砂糖菓子のように甘そうだった。
「で、この下着、男の目線で見てどう?」
捲ったスカートで口元を隠し、ジロリと騎士の顔を睨み上げて聞いた。
「えぇっ?そのっ、自分などが高貴な方のパン…いえ下着などを」
「黙れ、答えろ」
鋭く遮られ、全身からお湯の様な汗が吹き出した。感想を求められても困る。泣きたいくらい困る。
姫君の貞操を守るはずの騎士が、まさかその操の要を拝見するなんて。
「どう、と言われましても」
370 :
姫パンツ2:2008/07/26(土) 04:01:45 ID:/pPZLiQu
しどろもどろで要領を得ない騎士の態度にしびれを切らし、姫君は怒鳴りつけた。
「だからっ、この下着姿にあんたは欲情するかしないか聞いてんのよ!!」
「ししし、しませんっ!!」
欲情という言葉に反射的にNOと答えたが、騎士はすぐに自分の過ちに気付いてハッと口を覆う。
山より高いプライドを持つ姫君は、性の魅力を否定され瞬く間に不機嫌になっていく。
ガバッと勢いよくスカートを下ろし、冷気すら感じる目線で騎士を一瞥した。
「これじゃ魅力不足なんだ…」
「いえっ、十分可愛らしいと思います」
「だってあんた勃たないんでしょ」
「勃っ……!」
そこまでストレートに姫の口から言われて唖然とする。
姫パンツとりあえずここまでです。
ぬるいラブコメエッチで続きを書いています。
失礼しました。
本編に期待
姫君と騎士というだけで超期待
374 :
姫パンツ3:2008/07/27(日) 09:30:49 ID:JL6+V++S
王族である高潔なご婦人が下品な言葉を口にしたことへの嘆きと、主君とはいえ年下の女の子に男の性を馬鹿にされた悔しさで胸がギリギリと痛む。
そんな騎士の様子など気にもせず、姫は興も冷めたと言わんばかりに長い巻き髪に指で絡めていじり出した。
「…男的にはどういう下着がいいわけ?」
「……好みによって…違うかと」
「じゃあ、」
チロ、とふいに視線を騎士の瞳に合わせた姫の仕草は小悪魔のように見えた。
くるんとした大きな瞳に、生意気な挑発と侮蔑が透けている。
「あんたはどういうので勃っちゃうの?」
こめかみがひくつくのが自分でもよく分かるが、騎士は答えてやった。
「ヒモパン…です」
ブッと吹き出す姫の声に被せて付け足した。
「恥じらいのある女性の」
笑い声が消える。
笑顔のまま凍りついた姫の瞳が、急激に冷えていった。
「……何が言いたいわけ?」
「いえ…」
完全に姫君を怒らせたようだが、こちらも我慢の限界だ。張り詰めた空気が部屋に満ちる。
「私が恥知らずな女だから欲情しないって?…何?騎士風情が偉そうに私を批判するんだ」
姫はソファーから立ち上がると目線で床を指した。跪け、の合図だ。
375 :
姫パンツ4:2008/07/27(日) 09:36:18 ID:JL6+V++S
大人しく姫の足元に跪き、騎士はこの後起こる暴力を覚悟して深く頭を垂れた。
ビンタされるかも。いや、それならまだいい。頭を踏みつけられるかもしれない。
バサッと頭に落ちてきた布に視界が真っ暗になり、予想はそこで打ち切られた。
「な…?」
生温かい布を頭から引き剥がしてみて、目を見開く。
目の前に、ストッキングを履いた両足があった。
今剥がしたこの布はドレスだ。さっきまで姫君の肌を包んでいた体温の残る着衣が落ちてきた。
と、いうことは。
滝のように額から落ちる汗も拭わずに、目の前の足を呆然と見つめる。
その両足を下へ辿ると、右の足首に脱いだフリルのショーツが引っかかっていた。
「…ひ…め…様…?」
「顔を上げて」
絶対遵守の命令が頭上から降り注ぐ。騎士は、ぎこちない動作で顔を上げた。
そこには先程見せつけられた姫君の秘所があった。
ただ一部違うのは、ガーターベルトの上にあったショーツの覆いがなく、そこが素肌で晒されているということだ。
一瞬で目をそらし、ガバッと姫の顔を仰ぎ見る。
真っ赤な騎士と対照的に、涼しい顔で見下ろす姫君の上半身は小ぶりなブラジャーのみの裸だった。
姫パンツ続きです。
まとめて書ける量が少なく、ひどいブツ切りですみません。
本編に期待
wktk
379 :
クイング:2008/07/29(火) 13:56:07 ID:9NxIi66x
女の子に胸の写メ送ってってうったら本当に送ってきました*
380 :
姫パンツ5:2008/07/30(水) 02:08:32 ID:vvWare+E
「舐めなさい」
はっきりと、命令は下された。
姫は優雅にソファーに座り直すと、足をゆっくりと開いた。
ふっくらとした肉の割れ目も、足の開きに合わせて開かれる。
ほよほよしたうぶ毛しか生えていない桃色の入口が、無邪気に口を開けて男の視線を待ち構えていた。
騎士がゴクリと喉を鳴らす音が、静まりかえった部屋に響く。
長い沈黙の後、静かに騎士は告げた。
「…なりません。そこは、姫様が将来…結ばれる方に捧げられる物です」
「だまれ」
「御身を汚すことは…」
「命令だ」
逆らえない。
騎士は、跪いたまま膝でソファーへとにじり寄った。開いた姫の足の間に大きな体が入り込む。
武骨な手を姫君のか細い太ももに置き、丁重に丁重に左右に押し分ける。
頭を入れられる幅を確保し、ゆっくりと顔を埋めていった。
騎士の髪が内腿をくすぐり、吐息がうぶ毛を優しく震わせた。姫の双丘が反射的に締まる。
「…っ」
姫は少し眉を寄せた。手を股間の騎士の頭へ伸ばしそっと押さえる。
いいのか?いや、もう分からん!
意味の無い自問自答と共に、騎士はハムッと花びらをすっぽりくわえ込んだ。
381 :
姫パンツ6:2008/07/30(水) 02:10:35 ID:vvWare+E
「く…」
まず姫を襲った感覚は熱さだった。一瞬火傷でもしてしまうのではと怯えるほどに、騎士の唇と舌が熱い。
次に、花びらを食む唇の感触に背筋が震えた。
騎士は大切な姫君を傷つけぬよう、唇で大きく食んではチュウとすぼめて優しく愛撫を繰り返す。
「んっ……くっ…」
想像していたよりも口による奉仕は刺激的で、冷徹を決めこんでいた姫の顔も体もほてってしまう。
姫の息遣いや足の振動を注意深く探りながら、騎士は口淫を続ける。
痛くしてはいないかと気を付けているのだが、頭上から聞こえる姫の殺した息は別な感情も呼び起こす。
いつも自分をいいように扱うあの暴君が、今は余裕もなさそうに震え歯を食いしばって声を耐えているのだ。
騎士の身を快感が満たしてゆく。興奮と征服欲が下半身に荒々しく血を巡らせるのが分かった。
舌で蜜壷を微細にいじられ、すでに濡れていたそこから水っぽい愛液が大量に溢れ出す。おもらしに似たその感覚が恥ずかしく、姫は思わず顔を背けた。
「んくっ…ふっ…」
肉芽は舌でつつけば硬度を感じるほどにツンと膨らみ、騎士の唾液をたっぷりとまぶされた花びらは淫らにぬめっている。
382 :
姫パンツ7:2008/07/30(水) 02:12:14 ID:vvWare+E
尖らせた舌先で浅く内壁をくすぐっていた騎士の頭が、乱暴にベシベシと叩かれた。
「…ハァ…はい…」
汚れた口元のまま顔を上げると、目元を赤く染めた姫と視線がかち合った。
胸元のブラジャーは荒れた息と共に上下し、胸元や首筋にうっすらと汗が光る。うるんだ大きな瞳は、懇願するように真っ直ぐに騎士を映している。
誰コレ、というほどにしおらしくなられた姫君に、キュンと胸をときめかせる騎士の頭がもう一度ひっぱたかれた。
切なそうに眉根を寄せながら、姫は言った。
「………挿れて…」
待ってましたという下半身の反応と、いいや流石にいたしたら駄目だろうという理性が衝突し、騎士はしばらく固まってしまう。
だが、口を尖らせた姫君がだだっこのように
「挿れるの」
とワガママを言った瞬間理性は決壊し、騎士はベルトを外し下着からものを取り出した。
狭くキツい通りをじっくりとこじ開ける様に、重量のある杭が押し入ってゆく。
「はぁ…っ…ぁっ……!」
息の詰まる圧迫感に声も出せず、姫は騎士の肩にすがりついて涙をこぼした。
針に似た鋭い痛みが体の奥へ走り、苦しくて悲鳴を上げるのもままならない。
383 :
姫パンツ8:2008/07/30(水) 02:14:39 ID:vvWare+E
ソファーに片膝をついて乗り上げた騎士と背もたれに挟まれ、姫は中からも外からも潰されてしまいそうだった。
騎士が着衣のまま事に及んだので、肩やら背中やらに握りしめていられる布があるのが少しの救いだ。
「大丈夫…ですか?」
熱い息と共に騎士が問うが、うるさいと背中を殴り返す力も弱々しい。
ブラジャーやガーターベルトの下に手を入れることすら自重しているので、姫君の細い身をやんわりと抱き締めることしか出来ない。奥まで激しく突きまくりたいという本能を抑えるのも中々に辛く、騎士は顔をしかめて息をついた。
ようやく最奥まで収めきり、二人共ホッと体の力を抜く。
「…はぁあっ…くぅ…ンっ」
騎士の首に腕を絡めて抱きつくと、自らの中の騎士をも抱きしめるようにソコをきゅんと締めた。
痛みと圧迫に朦朧としながらも、太い幹や先端の丸みを体に刻み付けるようにみっちりくわえ込む。
「く…姫様っ…」
ヒダが柔らかく騎士を絞め上げ、チュクチュクと絡みついてくる。全てを搾り取られそうな快感が騎士の背を這い上がった。
だが、破瓜の痛みに涙する姫君を置いて自らのみが達するわけにはいかない。家臣としても、男としても。
384 :
姫パンツ9:2008/07/30(水) 02:36:38 ID:vvWare+E
「姫様…触れても…よろしいでしょうか」
「ん…許、すっ」
ありがとうございますと呟き、騎士は左手で姫の体を支えると、自由になった右手を結合部へと伸ばした。
最も敏感な小さな肉芽をいじり、同時に緩やかに腰を動かし出す。
「あふ…ぅっ、は、んっンンッ!」
あくまでも姫君の快楽のためだけに、浅く優しくあやすようなリズムでそれを繰り返すと、たちまち姫君の声が大きくなる。
くりくりと指で円をかいて粒を転がせば、片手にすっぽりと収まる細い体が震えあがった。
大きく体を反らせ、騎士の眼前に晒された姫君の顔は、まるで溺れているように必死に酸素を求めてあえいでいる。
愛しい、そうはっきりと感じた。
生意気なこの小さな主が乱れ、自分にすがりついて泣いている様に、征服欲よりも甘い何かが沸き上がる。
大切に汚したい。自分の腕の中で。
「やっ、…やぁあ…、あっ!ふあぁっ!」
ブルルッと強く痙攣し、姫は達した。
同時に姫の中が強烈に収縮し騎士も絶頂を迎えかけるが、そこは歯ぎしりしつつ気合いで耐えた。
危ない。危険過ぎる。暴発寸前だがキツすぎて自身が抜けない。
未婚の王女が家臣の子を孕むなど、正に国家の一大事だ。
385 :
姫パンツ10:2008/07/30(水) 03:21:09 ID:vvWare+E
「でっ、出てしまいます!!姫様っ力を抜いてください!」
「な…っ、ふざけんじゃないわよ!!ちょっと、は、早く抜きなさいよ!」
慌てふためいた姫君に体を突き飛ばされ、間一髪で蜜壷から引き抜き手の平に射精した。
窮地を逃れた安堵から、二人はしばし呆然と荒い息をつく。
やがて、姫君は脱力したのかポテンとソファーに倒れ込んだ。
それを見て、後片付けをと立ち上がった騎士が自らの情けない姿に気付く。
服から竿のみ露出し、片手はまだ受け皿のように白濁を持ったまま。
慌ててモノを下着に突っ込みベルトを締めようにも、手の液体が邪魔で上手くいかない。
精液片手にオロオロする騎士を尻目に、姫君は横になったまま足首のショーツに手を伸ばしていた。
「……私でちゃんと勃つじゃない…馬鹿騎士…」
口の中で小さく呟き、フリルのショーツをきゅっと引き上げた。
おしまい
姫パンツ終わりです。可哀想な奉仕エッチでした。
次の機会があれば、まとめて連投できるよう改善します。失礼しました。
GJGJGJ!!
続編あるなら楽しみに待ってます!
男主女従スレが容量埋まったらこっちと合併しようって話が
>>15辺りで出てたけどあっちもうじき埋まりそうだけど埋まったらこっちに移動する形でかまわないか?
>>387 読んで下さってありがとう。
次は姫看病で書いています。
>>388 合併して主従スレになるのですね。
テンプレなど新しく必要でしょうか。
テンプレへの意見なんだけど
従者お嬢様は好きだけどご主人様メイドとかは苦手なので
タイトルに男主女従とか女主男従とか作品タイトル以外に
ジャンルも入れるようにしてほしいんだが無理だろうか
>>390 例:女主SSの場合のタイトル欄→「♀/密かな情事3」
のように、♀♂の記号で区別するのはどうでしょうか。
「女主」「男主」表記でもいいですが、一文字のほうがスペースを取らないのでよいかと。
ご主人さまメイドは別スレあるからね
>>390 おまいにはスルースキルというものが(ry
基本説明無しでも苦手ならスルーでいきたいことろだが
冒頭一文で報告or名前欄つかうかという工夫でいかがだろうか。
でも本当は苦手なものは何も書いて無くてもスルー出来なきゃだめだぞ。
作品の投下前の今から投下します、という宣言を必須にして、
そこにシュチュエーションを書いてもらうってのはどうだろうか?
書いて頂く立場なのに
ずいぶん上から目線ですなw
投下に関するテンプレが多いスレは過疎る
すまん390だが
スレの多数意見が必要ないってのならそれにもちろん従う
>>391−394も自分一人の意見に答えてくれてありがとう
名前欄に一文字ならいいかと思うんだが
職人さんに面倒な制約が増えちゃうだけなら申し訳ないな
別スレでわかれていたものが一緒になると一方が苦手な住人も
自分のほかにそれなりにいるかと思って意見を出してみたんだ
上から目線のつもりはなかったんだが変な流れにしてすまなかった
まぁ、荒れる原因になることだから、改善できるならそのほうがいいとおもうのぜ
女主で投下したいのですが、とりあえず♀をタイトルに付けてみますか?
女主、男従で投下します。
姫様と騎士のライトなラブコメでエッチぬるめ。
嫌な方は名前欄タイトルの「♀姫風邪」をNGにして下さい。
401 :
♀姫風邪1:2008/08/02(土) 14:39:18 ID:avmAbQGq
ズビビッと鼻をすすって騎士は溜め息をついた。
体の頑丈さには自信があったが、まさか自分が自室のベッドに寝たきりになるとは。
とはいえ、一般人が城の氷室に一晩閉じ込められれば凍死しただろうから、風邪で済んだのは不幸中の幸いか。
昨日のことだ。
連日の猛暑にイライラ気味の姫様に連れられ、城の地下の氷室に行った。
厳重な造りの巨大な部屋には凍るような冷気が立ち込めている。
「ここの氷を私の部屋に運べるだけ運びなさい」「さすがに許可なしでそれはできません」「いいから今やれ」「なりません」
そんな口論の末、激昂した姫君によって騎士は氷室に閉じ込められてしまったのだ。
最早犯罪と言っていいレベルである。
翌朝見回りに発見され騎士はなんとか生還したが、姫君は大目玉を食らった。
お妃に烈火のごとく怒られ、ベソをかいて謝ったそうだ。
なんでも、幼児を叱るようにパンツを下ろされて、ちっちゃなお尻をパンパン叩かれたとか。
周りにはメイド達もいたそうだから、プライドの高い姫君には相当な屈辱だったろう。
医師に看病を受けながらそのような話を聞いて、騎士は少し溜飲の下がる思いがした。
402 :
♀姫風邪2:2008/08/02(土) 14:41:58 ID:avmAbQGq
しかし、今度の事は今までの我が侭や暴力とは段違いの悪事だ。
主君に仕える騎士として出過ぎた真似は避けたいが、今回は毅然とした態度で反省を諭さねばなるまい。
ズルルと鼻をすすりあげ天井を睨んでいたが、やがて風邪薬が効いてきたのか、騎士は深い眠りに落ちた。
物音で目が覚めた。
長い間寝ていたようで、熱もだるさも大分引いていた。
もう夜中か、部屋が暗い。
と、枕元のほのかなランプの明かりの中で動く人影がある。
長い巻き髪に、ベビードールのようなネグリジェ…。
姫様!?
心臓がバクンと飛び跳ねる。
何かいけない物を見てしまった気がして、思わず目を閉じて寝むったままのふりをする。
姫君には起きたと気付かれなかったようだ。ベッドの脇に座りこみ、下を向いてゴソゴソと手元を動かしている。
ああ!男の部屋にお一人で来られるなんて。しかもそんな薄着で。
逆恨みで闇討ちに来た可能性もあるのだが、夜着姿が瞼の裏に焼き付いてまともに思考が働かない。
緊張しつつ騎士は全神経を耳に集中した。
ジョロロロ…ピチョン…
あら、オシッコ?
水音に不安を感じ片目を薄く開けると、目の前に純白のハンカチが迫ってきて慌てて閉じる。
403 :
♀姫風邪3:2008/08/02(土) 14:45:49 ID:avmAbQGq
騎士の額に濡れたハンカチがビチョリと置かれた。
雑巾絞りなど一切したことがないお人だ。まともに水のきれていないハンカチから、髪やこめかみに水が筋を作って流れ落ちた。
これはもしかして、看病のつもりなのだろうか。
ダラダラと滴り落ちる水の不快感も耐えつつ、騎士の胸は歓喜に震えた。
額に張り付くこのレースの感触は、姫様の私物のシルクのハンカチだろう。
あの暴君が自ら赴いて、家臣のためにご自分のハンカチを使って下さるとは。
殺されかけたけど生きてて良かったと、騎士は目頭を熱くする。
「…変なの…」
小さな独り言と共に、そっと騎士の顎が細い指で撫でられた。
無精髭をジョリジョリといじられる。そういえば昨日から放置しているから大分伸びているはずだ。
普段身だしなみを整えた騎士の姿しか知らない姫君は、珍しそうに髭にじゃれた。
下着を見せてくるなどマセた言動でハラハラさせる姫様だが、やはり中身はまだ幼い。
小悪魔のように男を挑発したり、小動物のように無邪気にじゃれついたり、どちらの姫君の姿も知っているのはおそらく自分一人だ。
男としての優越感をくすぐられ、少し顔がほころんでしまう。
404 :
♀姫風邪4:2008/08/02(土) 14:49:36 ID:avmAbQGq
指が離れてしばらくの沈黙の後、シャンプーの甘い香りが顔に近付いてきた。
ちゅ
騎士の唇が、柔らかくプルッとした何かで小さくついばまれる。
触れてはならないはずの、尊い姫君とのキス。
切ないばかりの背徳感が媚薬のように身を蝕む。
と、幸福に酔いしれる騎士を戒めるように脳裏に電撃が走った。マウス・トゥ・マウスはマズイ!
クワッ!!
突如目を見開いた騎士に、姫君はギョッとして身を引いた。
バネ仕掛けのように瞬時に起き上がり、姫君の華奢な肩を捕まえ真剣に叫ぶ。
「風邪が感染してしまいます!早く、早くウガイを!」
剣幕に押されポカンと小さく口を開いている姫様を小脇に抱き上げながら、騎士は素早くベッドから降りた。
「姫様はお体が弱いのですから…、すぐ熱を出されて寝込んでしまわれるし…あ?水が無い!」
窓際のテーブルの上にあるはずの手桶と水を入れたポットが無い。
ハッと気付いてベッド脇を振り向くと、床にちょこんと桶とポットが置かれていた。姫がハンカチを濡らすのに使ったのだ。
あ、そういえばあのハンカチは…
騎士のデコに張り付いたままだったハンカチが、重量に耐えきれずボトッと落ちる。
405 :
♀姫風邪5:2008/08/02(土) 14:53:52 ID:avmAbQGq
それは、脇に抱えられた姫君の頭上にベチョリと落下した。
ベッドには、冷ややかな目をした姫君が足を組んで腰かけている。
そして床には、大きな体を縮めて騎士が正座していた。
テーブルに桶やハンカチは片付けられ、部屋はシンと静けさを取り戻している。
姫は嫌悪感を露に口を開く。
「たぬき寝入りとか、それが騎士のすることなの?」
「…申し訳ありません…」
「大体、風邪がうつるとかなんとか言って、あんた全然元気じゃない」
「お、お陰様で…」
「黙れ!」
姫君はしばらく騎士を睨みつけていたが、フンッと鼻を鳴らすと組んだ足を解いてベッドに寝そべった。
「あ…、お休みになられますか?」
腰を浮かせかけた騎士に、思いもかけない言葉が投げかけられる。
「あんたも寝るのよ」
悪戯っぽく、寝転がったままコロンと奥に移動して騎士の入るスペースを作ってやる。
カキーンと中腰のまま固まってしまった騎士に眉をひそめ、姫は急かした。
「風邪ひいてるんでしょ。早く」
シーツの上で姫様が子猫のようにしなやかに身をくねらせれば、ネグリジェの裾が乱れピンクのパンティーがチラリと覗く。
騎士の下半身がズンとうずいた。
406 :
♀姫風邪6:2008/08/02(土) 15:05:18 ID:avmAbQGq
一国の姫君がなんてハレンチな。しかし、姫様の労りの気持ちを無駄にすることはできない。騎士の務めだ。
明らかに自分に言い訳をしながら、騎士はベッドに上がりこんだ。
ベッドに横たわり向かい合うと、騎士は気恥ずかしさに赤面してしまう。
こんなに胸が高鳴って、姫様に笑われないだろうか。
涼しい顔の姫様は、そんな騎士の胸元にすり寄りくんくんと匂いを嗅いだ。
「…なんかこのベッド男臭い。この部屋もだけど」
ポツリともらす姫様からはシャンプーの甘い香りがする。
「お、男の部屋ですから」
上擦った声で答えると、姫様は胸板に顔を埋めた。
「…全部、あんたの匂いがする」
騎士も、バレぬようにそっと姫君の香りを吸い込む。大好きな姫様の香りだ。
姫様が命令を下す。
「抱っこ、しなさい」
命令には逆らえない。
ネグリジェを胸の上までたくし上げると、ランプの明かりの下でも眩しいほどの真っ白な素肌が広がる。
ちんまりした可愛いらしい二つの膨らみの先には、野イチゴのような小さいピンクがちょこんと立っていた。
可愛い…。
ゴクリと唾を飲み乳房をつつけばプユユンと愛らしく揺れる。まるで姫様のお好きなゼリーのようだ。
支援
408 :
♀姫風邪7:2008/08/02(土) 15:12:05 ID:avmAbQGq
「遊ぶな。馬鹿」
バシと頭をはたかれ、慌てて騎士はパンティーを脱がしに入る。
パンティーの左右の端に手を差し込み、大きな手でパックリと布地を広げてスルスルと脱がせた。
くすぐったそうに足をよじらせ、されるがままに下着を脱がされる姫様の姿が男の嗜虐心を煽る。
おや、姫様のお尻がほんのり赤く腫れている。そういえば尻叩きの刑を受けたのだった。
騎士は心配そうに尋ねる。「痛くありませんか…?」
「痛いに決まってんでしょ!」
キッと目を釣り上げて姫君は騎士のスネを蹴った。全部ご自分が悪いのですよ、とは決して言えない。
貴人であられる方の服を全て脱がせるのは少し気が引け、ネグリジェは半分脱がせたままで愛撫を始めた。
脇腹を下からサワサワとくすぐりあげ、小さな胸を指で挟むように優しく揉む。
「ふゅっ…ぅ」
くすぐりに弱い姫様は息を飲んで体をヒクンと反らせた。顔が赤く染まり体もしっとりと汗ばんでくる。
小さな乳房は二つまとめて騎士の片手で楽々ともて遊べるサイズだ。
指で二つの乳首をキュッとはさみつつ、手の平で柔らかな胸の感触を楽しんだ。
乳首を強くはさまれるごとに敏感に反応し、息を弾ませる姫君はとても愛らしい。
409 :
♀姫風邪8:2008/08/02(土) 15:21:47 ID:avmAbQGq
すでに膨れ上がった騎士の高ぶりもドクドクと脈打っている。
腫れたお尻を手の平でそっと包み、優しく優しく円を描いて撫でた。
「まだ…痛みますか?」
耳元で囁くと、姫様はふるふると頭を降った。
「んっ、もう…平気…ぃっ」
つるつるしたお尻は手触りが良い。姫様の痛みを取るように願いながら愛撫した。
「やっ…んぁっ」
騎士の手は、そのままお尻の後ろを通って割れ目をクチュクチュといじりだす。
既にびしょ濡れのそこに、傷付けぬよう注意しながらゆっくりと指を差し入れる。
「んンッ、んぅうっ」
姫様は涙を目にいっぱい溜めて身をよじった。
大丈夫、もう十二分にほぐれているだろう。
「姫様…参りますよ…」
「うぁっ、ぁ、あ…やぅ…はぁああぁっ!」
張り詰めた自身を入り口に当てがい、ずんと力を込めて押し入れた。
姫君は押し寄せる衝撃にえび反りになり、高い悲鳴を上げて悶えた。
きつく熱い内部が騎士を吸い込んでゆく。
心も満ちるような心地良さに騎士は低く唸った。
男の匂いがすると、姫様は言った。
騎士は姫様のココに、自分の匂いを染み付けたいと思う。
誰のものでもない、自分だけの姫君の証として。
410 :
♀姫風邪9:2008/08/02(土) 15:26:07 ID:avmAbQGq
何度も突き何度も泣き声をあげさせ、姫君と騎士は一つに溶け合った。
グチュグチュとぬかるむ結合部で、姫様と騎士の匂いが混ざりきるまで。
「ッくしゅん!…ケホッ…」
「な、何か温かい物をお持ちしましょうか?」
「…なんで本当に風邪がうつるのよ…」
「…寝間着を脱いで寝られたからでは?」
「あんたが汚いもんかけたからでしょ?」
「中に出しては…あれなので。申し訳ありません…」「馬鹿騎士!」
風邪はうつすと治るらしい。
おしまい
以上です。
男主歓迎記念で、次は男主もので投下します。
では失礼しました。
グッジョ!
GJ!
だが男主ものは向こうが落ちてからにしてくれ。あっち埋めるのが先だ。
GJ!
姫君かわいいよ!
GJ!GJ!
姫が可愛すぎる〜
情けない騎士も萌え
>>413 そうでした…。ご指摘ありがとうございます。
ドコモ規制に巻き込まれ、五輪終了まで投下ができなくなりました。
一住人として、次の書き手さんを心からお待ちしております。保守。
>>413 代行スレつかえばいいじゃないか!
森かえばp2だって使えるし、あきらめんなゴルァ
代行やるお!いつでも来てくれ
p2も森スレでクレクレしてたら結構たまる
ロリお嬢様と家庭教師。エッチ少量。NGは名前欄の「アリスの学習」で。
代行していただいて、少しずつですが投下します。
☆〜☆〜☆
「ショコラを返して!」
アリスは目に涙を溜めてピョンピョン跳ねる。
ジャンプの度に、金髪のショートカットと頭上に結われた大きなリボンが揺れた。
だがいくら頑張って手を伸ばしても、家庭教師が高く持ち上げたクマのぬいぐるみには届かない。
家庭教師のエドガーは無表情のまま淡々と告げた。
「次に無断で授業を抜け出せば、ショコラは取り上げると言ったはずです」
「そんなの知らないもん!」
アリスはわめいた。本当は前回お説教をされた時にちゃんと忠告されていたのだが、知ったこっちゃない。自分が法だ。
「嘘をおっしゃい。また嘘をつけばさらに減点しますよ」
冷たくあしらわれ、アリスはとうとう大声でギャアギャア泣きだした。
「うあ〜ぁん!先生がぁいじわるするのぉ…っ、アリスのっ、ショコラ取ったぁっああうぁあぁ〜ん!」
「……子供の泣き声は正に騒音だ」
眼鏡のフレームを指先でスッと直し、エドガーは神経質そうな細い眉を不快気に歪めた。
白い手袋をはめた指でわめくアリスの鼻をむぎゅっと摘む。
「ふんぎゅっ!?むふー!」
驚いて泣き止むアリスを元の無表情で見下すと、鼻を摘んだまま冷徹に言い放つ。
「お黙りなさい。非常に耳障りです。泣けば許されると思っているのは馬鹿げた甘えですよ」
ぐ……怖い。アリスはぐずりつつも、エプロンスカートを握り締めて押し黙った。
パッと指を鼻から外したエドガーは、ショコラを片手にスタスタと部屋を出ようとする。
「…あっ…どこ持ってくの?」
アリスの問いにエドガーは緩慢に振り向いた。
「今日からしばらく預かります。貴方が反省なさったらお返しします」
つ、続きは!?
「やだぁ!ショコラは私と毎日一緒じゃなきゃやなの。今日も一緒にご飯食べて抱っこして寝るの!」
ピクッと、エドガーの視線が手の平に乗せていたショコラに移った。
眉をひそめると、汚い物を触るようにショコラの片足をつまんでぶら下げる。
「貴方が肌身離さず持っているぬいぐるみ…。雑菌の温床ですね。不潔な…」
アリスの目の前で、エンガチョつまみされたショコラが逆さ吊りにされて哀れに揺れた。
あわわわ…アリスの唇がぷるぷるわなないた。雑菌、不潔…。女の子に向かってあまりに残酷な言葉だ。
怒りで足元から脳天まで真っ赤に燃えてゆく。
「ショコラ汚くない!先生のバカバカバーカ!嫌いぃ!」
「馬鹿は割り算もまともに出来ない貴方です。ちなみに、私のほうが数倍貴方を嫌っていますので」
エドガーは涼しい顔でサラリと言うと、部屋の外に出た。
扉を閉める直前、エドガーが告げる。
「次の授業までに反省文を提出して下さい。ノート3ページ分で結構です。休み時間が終るまでに完成させるように」
ひー!
「やだぁそんなの!」
アリスの悲鳴をかき消すようにガタンと重い扉が閉まった。
勉強部屋に一人ぼっちで残され、アリスはまたヒステリックにわんわん泣いた。
あんな怖くて冷たい家庭教師大っ嫌い。
アイツが家に来るまでは、優しい家族や使用人達に可愛いがられ楽しく過ごしていたのに。
どんなにイタズラしてもお稽古をサボっても許してくれたのに。
アイツが教育係としてこの屋敷に住み込んでから、アリスの自由な毎日は無くなってしまった。
「う…ぅ…パパに頼んでももアイツをクビにしてくれないし…誰もアリスを助けてくれない…」
大人は誰も助けてくれない、自分で何とかしなくては。
アリスはしゃくりあげながらも机に向かい、渋々ノートを開いた。
こんなに一杯線が入ってるノートのページを三枚も埋めるなんて無理だ。とりあえず1ページ丸々使って大きく「ごめんなさい」と書いたが、残り2ページが埋まらない。
大体反省文って何を書けばいいのか分からないよ…。
『分からないことがあれば、すぐに辞書で調べなさい』
エドガーの言葉が頭に蘇った。
「…辞書…」
“反省文”と辞書でひけば、スラスラと書けるのだろうか。
アリスは椅子から立つと、部屋の隅の本棚にトテテと駆け寄った。
たくさんの本が並んでいても、辞書は分厚い背表紙ですぐに見つかる。アリスの背でやっと届く上部の棚に辞書はあった。
「んっしょ…うんしょっ………あ?」
背伸びをして両手で辞書を引きずり出すアリスの目に、鮮やかなピンク色が飛び込んできた。
辞書の下段の一冊の本の上部から、ピンク色の冊子が少しだけはみ出ている。
丁度アリスの顔の位置から見えたので気付いたのだが、何かをこっそり本のページの隙間に隠しているようだ。
「何だろ?」
ひとまず取り出した辞書を床に置き、アリスはその冊子を引き抜いた。
「!!」
表紙を見てパチッと目を見開く。
これは……これは使えるかもしれない。
辞書なんて調べている場合じゃない。これこそが、アリスに今必要なお勉強ではないか。
アリスは夢中になってページをめくった。
ノックの音が勉強部屋に響く。
「アリス様、授業を始めます」
ガチャリ
戸を開けたエドガーがアリスを目にした瞬間、その鉄面皮が微かに崩れた。
「お帰りなさぁい。アリス、先生に会いたくて待ちくたびれちゃったぁ」
そこに待ち受けていたのは、満面の笑みのアリスだった。
上目使いにエドガーを見上げ、丸めた両手を顎につけてクネクネとしなを作っている。
怪し過ぎる。
>「アリスの学習」作者様
アリスは何歳の設定ですか?
>>426 もちろん18歳です。
小さいという表現は全て体型を指すものであり、
また、幼いという表現も内面を表す言葉です。
「早くぅ、こっちにいらしてくださいですぅ〜」
アリスは甘ったるい声でエドガーの手を引き、椅子へと誘う。
エドガーはあえて無言で従い椅子に座った。何を企んでいるか知らないが、その浅知恵を見てやろうではないか。
椅子に腰かけたエドガーと、傍らに立ったアリスの身長はほとんど変わらない。フリフリした服装と相まってまるでお人形の様だ。
こんなナリで何をしでかそうというのだろう。
アリスはウフッと笑ってエドガーのタイに手を伸ばした。
「あら、タイが曲がってますよぉ」
この潔癖症の家庭教師のタイが乱れているはずもないのに、わざとらしくペタペタとスキンシップをとってくる。
不器用な手つきだが、アリスは精一杯それらしくタイをいじくった。
首元のくすぐったさに軽く顎を上げて、エドガーは普段以上に無表情な目でジーッとアリスをただただ見つめる。いや、その目は普段より冷たい気がする。
あれ?おかしいな…。
チラリとエドガーの様子を盗み見ながら、アリスは少々焦った。もうとっくにデレデレになってるはずなのに…。
アリスはムムム…と首を傾げながらも、人差し指でつつーっとエドガーの喉元から胸へとなぞる。
ボタンを軽く輪をかいていじりながら、下へ下へと降りてくる。
いよいよとばかりにベルトに手が触れた瞬間、パンッとアリスの手が払い退けられた。
「ふにっ!」
驚いて見上げると、エドガーは眉間に皺を寄せ額を押さえている。
「馬鹿だ馬鹿だと思っていましたが、まさかこの年で痴女に成り下がるとは…」
エドガーが机の上を指す。
その先には、ノートと辞書の下からはみ出たピンクの冊子があった。
「あの毒々しい色には見覚えがあります。いつだか、メイド達がコソコソ回し読みしていた物だ」
うあ、バレた!女の秘密が!
怯むアリスにエドガーが畳みかけた。
「『おねだり指南書』だとか。所詮は低俗な娯楽本だと無視していましたが…、真に受ける様な人間がこちらにいらっしゃいましたか」
ギロリ
エドガーの視線が痛い。
それでもアリスは食い下がった。
「で、でも先生。アリスのこと好きになったでしょ?アリスのユーワクテクでドキドキしたでしょ?」
エドガーの袖をブンブン振って訴えるが、片手で振り払われて尻餅をついてしまう。
「きゃ〜!」コテン
「私にはちっちゃなお嬢様を偏愛するような特殊な性癖はありませんので」
何だか難しい言葉を使っているが、すっごく否定されたようだ。
お尻をさすりながらアリスはヨロリと立ち上がる。うぅ…。先生を言いなりにしてショコラを返してもらうつもりだったのに…。
むくれたアリスはジタバタ暴れ出した。
「まだ『おねだり上級編』があるもん!これからやるんだもん!」
>>429 わっふるわっふる!
続きもお待ちしております
「埃が舞うから暴れないように。いいから反省文を提出なさい」
「上級編やるのぉ!単純なオトコなんか簡単に骨抜きにできるって書いてあったもん!アリス出来るもん!」
「…ほう…」
アリスの不遜な物言いに、エドガーは眼鏡をクイと上げた。
「そこまで言うならやってご覧なさい。貴方の下らない自習の出来栄えを採点して差し上げます」
プウと頬を膨らませたまま、アリスは腰掛けたエドガーの足の間に駆け寄った。
小さな指が怖々とそこをつつく。
ツンツン…。何だか赤黒くてカワイクない…。
あの冊子の挿絵は色付きじゃなかったけど、こういう物なのかな…。
アリスはエドガーの足の間にちょこんと座ったまま、顔を赤くしてモジモジする。
まだ、片手で下着をずり下げて、少し覗いた茂みと芯をつついているだけだ。
さすがにおちんちんを触るなんて恥ずかしい…。でも、上手くいけばショコラが取り返せるかも。
「それで終わりですか?」
エドガーは特に動じた様子もなく、涼しい顔でアリスの挙動を観察してくる。
「…っ!まだこれからなのぉ!」
アリスはエドガーを股の間からムッと睨んだ。この位置から見上げると、いつもよりさらに見下されている感じがする。
アリスは視線を戻すと、まだ萎えているそれを二本の指で慎重にはさみ、そーっと下着から取り出した。
…よし、出た。えと、これをこう持って…。
まずは片手で包み、上下にずらしながら柔らかに握ってみる。
ショコラの手足をニギニギする感覚と少し似ている気がする。
けど、これは温かくて柔らかい中に固いのがあるような不思議な感触で、力を込めていいものか迷ってしまう。
エドガーは、真面目な顔で稚拙な愛撫を続けるアリスをやれやれと見下ろした。
それでも、小さな指でいじくられるのはむず痒いような快楽がある。
アリスは手の中の物が膨らむのを感じ、驚いて手を離してしまった。
「あぅ…!本当におっきくなった…」
何だかピンと固くなって、手の支えがなくても緩く立ってきた。変なの…。
アリスは恐る恐る幹に両手を添えた。触れると脈が打っているのが分かる。
先端に顔をそっと近付けて、キャンディーの様にレルッと小さく舌で舐めてみた。
「っ!!?」
途端にアリスが舌を引っ込め顔を離す。何とも言えないような微妙な表情だった。
何これ……オイシクないよぅ…!苦いし、しょっぱさもある。
「ふぇ…ぅ」
見る間に涙を溜めるアリスに、エドガーは平然と言い放つ。
「ああ、不味いですか。止めますか?」
ここで諦めたらせっかく学んだ上級編が台無しだ。
アリスは強がって何とか涙をこらえた。
「平気だもん…」
ふるふると僅かに震えながら、また顔を先端に近付ける。
チュル…
唇で軽く吸いながら、舌を押し当てた。
口を開けて舌を垂らし、シロップをかけるようにてろんと唾液をこぼしてゆく。
舌から伸びる唾液の糸が切れれば、今度は先端や幹についた唾液の線を舌で伸ばし始めた。
「はん…うゅ……んるっ…」
愛らしい舌が表面をチロチロくすぐり、懸命にエドガーを高めてゆく。
無表情だったエドガーも、その刺激に少し眉根をひそめた。
アリスは、はふぅと湿った息継ぎをすると、口を開きパクンと先端の丸みをくわえ込む。
「…んにゅっ…れる…」
ちっちゃな口を一杯に開いてそれを入れたが、くわえたまま顔を前後するのは無理そうだ。
トロ…と、エドガーの先端から汁が溢れてきた。ぬるぬるした美味しくない液体がアリスの舌にも絡みく。
「けふぅ…グスッ……」
苦しくて目がうるむ。口の端からポタポタと液が溢れ、エプロンのフリルに染みを落とした。
お口の中に大きいのがあって舌が上手く動かせない…。手を使わなきゃ。
両手で硬度を増した太い幹を擦り上げ、同時に口内一杯に膨らんだ先端を不自由な舌でペロペロと舐めた。
「ぷぅはっ…はむ…んるぅ」
たまに口を離して裏筋を下から舐め上げたり、浮き出た血管を舌でチュクチュクいじってみる。
サイズの合わないそれを一生懸命頬ばるアリスはまるで、大き過ぎる餌に難儀するハムスターか小ウサギのようだ。
そんなアリスを見ながらエドガーも余裕無さそうに息をついた。下半身に血が集まってゆく。
「…ふぁふ……ひぁう…」
口が疲れちゃったよう…。アリスはエドガーをくわえたままぐずり出してしまった。
と、泣き声に呼応してムクリと芯が膨んだ。
「っ!っぷはぁ!」
もう口に収まりきらず、唾液を引いてアリスの口からヌポンと外れてしまう。
「ふぁあん…出ちゃった…」
困ってアリスは口に戻そうとするが大き過ぎて入らない。あむあむと唇で愛撫をするのが精一杯だ。
「アリス…様…」
「うゅ?」
グスグスと涙目で見上げれば、エドガーが荒い息を耐えるように口元を押さえていた。
「…ぐっ」
「う?」
口を離し、キョトンと首を傾げたアリスの手の中で、ブルルとそれが波打つ。
ドクンッ
「!!」
勢いよく白い物が目の前に吹き付けられ、アリスは反射的にギュッと目をつむった。顔や髪にビュルビュルと何かがかけられる。
「……ふ…え?ぅう?」
しばらくして目を開けたアリスの前髪から、タランと白濁が垂れてきた。頭のリボンも濡れて倒れている。
ポカーンと固まってしまったアリスは、自分の身に何が起きたか分からなかった。
「…」
エドガーは椅子から降りて屈み、手袋を外してハンカチでアリス顔を拭いてやった。
さしものエドガーも少々バツが悪い。
ウニウニ…柔らかな頬を拭っていたら、途端にアリスがビクリと覚醒した。
「…ふ、え、え、……ぇええええぇ〜ん!気持ち悪いぃ!いじめたぁあああぁ〜!」
おねだり上級編はどこに行ったのか。いつものアリスに戻ってわんわん泣き出してしまう。
エドガーは騒音にこめかみを押さえながら溜め息をついた。
この分だと、ショコラを返却せねば治まるまい。
「うぁあ〜ん…ひっ、ぐすっ…ふくっ……うぅ…何点…だった…?」
しゃくりあげながらアリスが聞くと、エドガーは視線を外した。
「………まあ、20点くらいですね」
「ぅぅう…やだああああぁ!!先生のバカバーカ!」
その後、汚れた服を洗濯に出すわけにもいかず、不服そうに暴れるアリスを抱えて風呂に入ったのだが…。
「お嬢様が先生と一緒にお風呂だなんて、仲良しさんになったのね」と屋敷で評判である。
おしまい
アリスの学習以上です。
レス代行してくださった皆様ありがとうございました。
今更ですが、長い期間をかけて投下したことで、他の方の投下の妨げとなっていたら申し訳ありません。
今後投下する際は、「長期になりますので割り込みおkです」と一言つけます。
連投規制にかかkったの?
そうでなかったらメモ帳にコピペしておけ
あと何レス投下するか予告して欲しいな
>>441 ドコモ全鯖規制で書き込みできなくなりました。
代行スレは各板の方が利用しているので長文連投は難しそうです。
名前欄に「1/n」と総レス数を付記しますね。ありがとうございました。
とか言ってたら先ほど解除kitaaaaaaaaaaaaaaaaaa
この世のすべてにありがとうと言いたい解除人に抱かれたい。書き溜めた姫騎士投下する。
>>443 規制解除おめでとう。
こんな季節だし、蚊取り線香を焚いて全裸にネクタイでお待ちしてます。
羨ましいです。
僕はいまだに規制されたままなので、早く解除ならないかな。
というわけで小ネタでも。
姫「じいや、今日も疲れたからいつものお願い」
爺「はいはい、いつものマッサージですな」
姫「ああ、ん……このトロトロのあったかいの好き……」
爺「はい、秘伝の薬液ですので」
姫「肩がこってしょうがないの」
爺「はいはい」
姫「終わったら、胸の部分もお願い」
爺「はいはい」
姫「ん、ああ、んん、気持ちいい……ねえ、爺、こうして揉んでもらってたら、小さくならないかしら?」
爺「さあどうでしょう?母君様もふくよかな胸をしておられましたから」
姫「ああ、お母様もこうしてマッサージしてもらってたんだっけ」
爺「はい」
姫「ああ、もう!こんな邪魔な胸なんていらないのに!小さくならないかな……」
爺「なるとよいですね」
姫「あん……んん、ね、ねえ、じい、やっぱり全身もやって……」
爺「はいはい」
モミモミモミ……。
終わりです。
ではまた〜。
全ての規制が解除されることを祈って…。
投下します。
清楚な姫と筋肉馬鹿な騎士。ラブコメでエッチ少量。
(連投だから今回は総レス数記載ないれす)
NGは名前欄の「イヴの受難」で。
447 :
イヴの受難1:2008/08/13(水) 02:11:11 ID:Bq9Vf9tQ
元々色白なイヴの顔がさらに蒼白になってゆく。
血の気の引いた唇が、必死に言葉を紡ごうと震えていた。
「な、な、なっ」
「どうされましたぁ?姫様ぁ!」
湖の浅瀬から、全裸の騎士が仁王立ちでこちらを見ている。
爽やかな笑顔からこぼれる白い歯が、湖面の輝きに負けずに光っていた。
丸出しである。
「ラムソル、な、何をしているのです…っ。なんでっ…はだか…」
イヴは、なんとかそれだけ喉から振り絞った。
「はっはっは!泳ぐといったら裸が一番です!」
ラムソルがカンラカンラと胸を反らせて笑うごとに、逞しい筋肉が躍動し、見事なイチモツも一緒に揺れたした。
イヴはクラッと目まいを覚え額に手を当てる。
(確かに、カナヅチのわたくしに泳ぎを教えて欲しいと頼みましたが…)
まさか裸だなんて。
俗世の不浄と無縁に育った姫君には、異性の裸体など刺激が強すぎる。
気が遠くなり、ぐらりと膝が崩れた。薄手のサマードレスがヒラリと風にたなびく。
「むっ」
倒れかけた姫に目ざとく気付くと、ザバザバと水を掻き分けて騎士が猛スピードで駆け寄って来た。
飛び散る水しぶき。迫り来る肉体。イヴの顔面がひきつる。
448 :
イヴの受難2:2008/08/13(水) 02:12:49 ID:Bq9Vf9tQ
地面へ崩れ落ちかけた体が、ガシッと騎士の両腕に支えられた。
イヴの長いストレートヘアがその腕へハラリと流れ落ちるが、イヴはピクリとも動かなかい。
「姫様!お気を確かに!…また日射病でしょうか?」
違う、そう悲鳴をあげたいが、イヴの意識はそこで完全に途切れた。
どうしてこんな事になってしまったのか。
自分が浅はかだったのか。妹の忠告を信じなかった罰だろうか…。
暗い闇の中でイヴは悪夢のように思い出す――
イヴ、正式にはイヴリエ・イヴ・ティアドールはこの国の第二王女だ。
清楚で慎み深い姫君だと臣下や民に深く愛されているが、かなり内気な性格でもあった。
恥ずかしがり屋で男性と面と向かって話せないし、すぐ怖がってうつ向いてしまう。
イヴはそんな自分に大きなコンプレックスを持っていた。
克服しようにも、周りにいる異性は家臣ばかり。姫君に声をかけるなど恐れ多いと、みな跪いて頭を垂れるだけだ。
そんなイヴに、初めて積極的に接してくれたのが、騎士のラムソルだった。
目が合えば屈託なく笑って挨拶をしてくれた。
少し荒々しくて武骨だけど、お世辞や駆け引きでは無く本音でイヴに向かい合ってくれた。
449 :
イヴの受難3:2008/08/13(水) 02:14:12 ID:Bq9Vf9tQ
イヴは長い時間をかけてラムソルと打ち解け、たどたどしくも何とか会話ができるようになったのである。
背が高くてハンサムで、ちょっぴりワイルドなラムソル。
初めて殿方と触れ合う内に、イヴは彼に淡い恋心を抱くようになっていた。
そんなある日、妹のルナがこんな事を言ってきた。
「お姉様、あいつなんかおかしいよ。ちゃんと教育してんの?」
イヴはルナに膝枕をしてやりながら、ふわりと小首を傾げる。
「あいつって…ラムソルのことですか?」
「そう。身分ってものを分かってないんじゃないの?お姉様に対して態度が失礼過ぎ。なんか頭悪そうだし」
「まあ、ラムソルは武人としてとても立派な方です。そんな風に言ってはいけませんよ」
「えー、あいつ絶対脳みそまで筋肉な体力馬鹿だよ」
第三王女のルナーシュカ・ルナ・ティアドールは、大好きな姉を騎士に取られ、面白くなさそうに口をとがらせた。
今思えば、ルナの男性を見る目が正しかったのだ。
蓋を開けてみれば確かに筋肉馬鹿。
異性に対する免疫が無いイヴは、舞い上がって彼の全てを都合良く解釈していたらしい。
イヴは混濁した意識の中で己の未熟を恥じた。
「ん…」
450 :
イヴの受難4:2008/08/13(水) 02:16:18 ID:Bq9Vf9tQ
イヴがうっすら目を開けると、頭上には緑の葉が揺れていた。
涼しい木陰に寝かされていたらしい。体の下には布が敷かれている。
イヴは体を起こしてチラリと下を見た。やはりと言うか、敷かれていたのは騎士の制服だった。インナーのシャツまである。
(つまりラムソルはまだ裸…。逃げなくては…!)
ふらつきながら立ち上がると、背後から声をかけられた。
「姫様、お目覚めになりましたか」
ビクンと反射的に振り向いてしまい、小さな悲鳴をあがる。
「きゃぁッ」
真っ赤になり両手で顔を覆ったイヴは、全裸馬鹿にくるりと背を向けた。
「な、何か着てくださいっ…」
蚊の鳴くような声で必死で訴える。
「いえ、これから泳ぎますから。姫様はご気分はいかがですか?泳げそうでしょうか」
「殿方の裸など見れません…、は、恥ずかしいです…。泳ぐなんて…そんな」
しかし、ラムソルはまったく気にせずズカズカとイヴの前に回り込んでくる。
「ははは、肉体はその人物の精神を現すもの。恥ずかしがることなど何もありません」
ヒィと叫んでイヴはまた顔を反らす。何故誇らしげに見せに来るのだ。
(ああ、生まれて初めて殿方の裸を目にするのが、こんな機会だなんて…)
451 :
イヴの受難5:2008/08/13(水) 02:17:00 ID:Bq9Vf9tQ
恥ずかしさとショックで目をうるませるイヴに、さらにとんでもない一言が浴びせられる。
「姫様もどうぞお脱ぎください」
え…?
イヴは絶句して一歩後ずさった。
(脱げ?わたくしに裸になるようにと…?)
思わず胸元を覆うように手をやると、その手はプルンと素肌に触れた。
「えっ?あっ…きゃああ!」
イヴは自分の胸元を見て悲鳴を上げた。ドレスの胸元が大きく開いている。
ドレスの前を編み上げていたリボンが半分ほど解かれ、真っ白な乳房が今にもこぼれそうに露になっていた。
慌ててたわわな乳房を手で隠すが、まさか自分は今までずっと胸をはだけていたのだろうか。顔から火が出そうだ。
「ああ、倒れられた時息がお苦しそうでしたので、ほどいておきました」
あっけらかんとラムソルが言う。悪意の無い人間の行いとはこうも周りを苦しめるものなのか。
「さあ」
ラムソルがグイッと一歩踏み寄った。蛇に睨まれたカエルのように、イヴは硬直する。
「私が脱ぐのをお手伝いしますから」
「いや…いやですっダメ…!」
有無を言わせずドレスのリボンの端を捕まれる。
それを阻止しようとイヴが手を伸ばした瞬間、シュルルッと勢い良くリボンが引き抜かれた。
「いやぁっ!」
452 :
イヴの受難6:2008/08/13(水) 02:18:06 ID:Bq9Vf9tQ
閉じられていたドレスの前がするんと解放され、内側のレースの飾りもずり落ちてしまう。
手の支えも布の抑えも無くなった乳房が、プルルンと勢いよく外にこぼれ出た。
上下に大きく弾み、それに合わせぷっくり色付いた先端も目に残像を残して揺れる。
ぽつんと立った二つのピンクが、日の光と外の風に晒されている。
イヴはしばらく他人事のようにポカンと乳首を見つめていた。
「こういう紐状の物は泳ぐ時に体に絡みますから、非常に危険なのですよ」
リボンを片手にラムソルが何か言っているが、イヴの耳には入らない。
我に返って両手で必死で前を掻き抱いても、胸から臍の下までが大きく見えてしまう。
父にすら見せたことのない清らかな肌が、無神経な男の目前に晒された。
「もう…いや…酷いです…」
恥辱に赤く染まりながら涙ぐむイヴの姿に、さすがにラムソルも手を止めた。
「姫様…」
今までにない真摯な声に、イヴは恐る恐る顔をあげる。
ラムソルは少し悲しそうに顔を曇らせていた。
だが、いつもと同じ、偽りの無い真っ直ぐな眼差しでイヴを見つめた。
「私は…、姫様のお体が見たいです。私では…お嫌ですか?」
ドキン
胸が鳴った。
ラムソルが嫌いなわけではない。
453 :
イヴの受難7:2008/08/13(水) 02:19:40 ID:Bq9Vf9tQ
こんなにストレートに求めてくるラムソルは男らしく、抗い難い魅力がある。
(やっぱり…わたくしは……この方が好き…)
イヴの胸は甘く高鳴った。
ちょっと変わっていても、ラムソルはラムソルだ。
初めて愛しいと思ったラムソルになら、身を捧げても…。
「嫌では…ありません」
イヴは緊張に震えながら小さく告げた。
それを聞いてラムソルが瞬く間に笑顔になる。
まるで太陽のような明るい笑みは本当に素敵で、イヴは思わず見とれてしまう。
「良かった…!ずっとずっと拝見したかったのです。姫様の筋肉!」
……筋肉。
……筋…肉?
呆気に取られるイヴのドレスを嬉しそうに剥ぎとりながら、ラムソルは意気揚々と言った。
「姫様の肉体を存分に鍛えてさしあげます!」
どうして自分は、こうも殿方を見る目が無いのか。イヴはまたクラッとめまいを覚えた。
芝生に敷かれた騎士の制服を褥にして、イヴは仰向けに寝かされていた。
上にはラムソルの体が覆い被さり、檻のように逃げ場を奪っている。
「お細い…。もっと腹筋を鍛えなくてはなりませんぞ」
透けるような柔肌を、大きくザラついた手が無遠慮に撫でさする。
「ひっ…う…やめて…下さ…」
454 :
イヴの受難8:2008/08/13(水) 02:21:14 ID:Bq9Vf9tQ
イヴのお腹がヒクンと波打った。腰から下の力が抜けてしまう。
そのまま手は下へとずらされ、両手でお尻と下腹部を左右から包まれた。
「いやですっ…やめて…ラム、ソル…」
「姫様、このままではお体がますます弱くなるばかりです。きちんと大臀筋も鍛えてください」
透明感のあるミルクプリンのようなお尻がフニフニと揉みほだされる。
十本の指がみずみずしい肌に食い込み、その柔らかさを確かめるように深く押し込まれた。
「鍛錬になりませんよ、ちゃんと集中してください。ほら、私の手が触れている所に」
「ふ…いゃあ…」
両手からの熱でじんわりと温められ、体の中央がトロリと溶かされるようだった。
たまらずに足をよじり逃れようとすれば、お尻もキュウと縮み上がる。ラムソルは満足気にウムと頷いた。
イヴの吐息が熱い。体の中で何かが波の様にせり上がってくる。
このままその波に身を任せてしまいたい本能と、異性への恐怖と、自らを暴かれる羞恥。
全てが混ざってイヴを熱に浮かせていた。
震えるイヴの腿を撫でながら、ラムソルが瞳を覗き込んだ。
「全身を鍛えるのに良い運動があります。水泳よりももっと効果的な」
455 :
イヴの受難9:2008/08/13(水) 02:23:11 ID:Bq9Vf9tQ
涙に濡れた瞳でぼうっとしていたイヴだが、膝をパックリと広げられピクンと跳ね上がる。
「やっ…やぁ…」
「ゆっくり息を吐いて…。まずは体の力を抜いて下さい。大丈夫。さあ、ここを開いて…」
ラムソルの指先が、イヴの敏感な合わせ目をゆっくりと縦にいじった。
「はぁあっ!ぁあっ、…ぁ、ラムソルっ、ラム…ソル…っ」
すでに漏れたほどに濡れていた蜜壷を指が開き、熱い熱い何が当てがわれるのが分かった。
秘められた入狭い口に、ミチッと剛直が食い込む。
「っ…!んっ…ン、んンぅ……っああああぁあぁんっ!!」
長大な物に一気に貫かれ、痛みと衝撃が閃光の様に体を走った。
自らの最奥までいっぱいに詰まったラムソルを感じながら、イヴは意識を失った。
今度の気絶は、悲痛な闇の中に落とされるのではない。
満たされた気持ちの中にうっとりと浸るような、優しい光の世界に浮かんで行くようだった。
「あ…」
イヴが次に目覚めると、そこは自室のベッドだった。
ラムソルに運ばれたのだろう。サマードレスも元通りきちんと着せられており、体も拭われているようだった。
(わたくし、ラムソルと……結ばれてしまったのですね)
思い出すと全身がカッと熱くなる。
赤い頬に両手を当ててイヴはほぅと小さくため息をつく。
「あら…これは、ラムソルの…」
枕元にはラムソルの書き置きが合った。
姫君の部屋は男子禁制だから、いかにラムソルといえど踏み入ることはしなかったようだ。
カサ…金の飾りに縁取られたその便箋を開いた時、イヴはまたまた気が遠くなった。
『お体は大丈夫でしょうか?
体調が戻られましたら、また私と鍛錬を始めましょう。
朝は走り込み、昼は腕立て腹筋、夜は全身運動を欠かさずに』
おしまい
投下は以上です。
459 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 13:28:55 ID:sTZ3MTYB
乙
身体目当てっぽくて切ないな…
ごめん。次はラブラブするよ。
筋肉莫迦と姫の組み合わせは大好物だ。
いいぞ、もっとやれ。
キタジマの金に感動し過ぎて和風で金色モチーフの書いた。
和風ファンタジーで奥方×家臣。NGは名前欄の「金糸」
投下します。
464 :
金糸1:2008/08/15(金) 00:36:46 ID:OOz8vZ2l
後宮の誰もが、重苦しい顔で押し黙っている。
ただ一人、この後宮の主である万里(まり)だけは平然と面を上げていた。
「産めばいいのではなくて?」
その場にいた平七郎は耳を疑って身を起こした。
他の家臣も皆、万里の言葉に顔を上げる。
万里は流れる様な黒髪を下ろし、銀糸で刺繍された白い振袖を纏っている。
まるで死に装束の様に真っ白な万里の美しさは、どこか悲しく、痛々しい。
「その方を殿の側室として、正式に後宮にお迎えすればいいわ」
ただ虚ろな瞳で語る万里には、いささかの動揺も見られない。
平七郎は無礼を承知で前へ進み出た。
「お待ち下さい、奥方様」
万里がゆっくりと平七郎へ目をやる。平七郎は顔を朱に染め、憤怒に震えていた。
「殿は…もし男のお子を授かれば、この家の跡取りにされるおつもりです」
「ええ、聞いたわ」
万里の小さな顔は人形の様に静かだ。表情は無く、瞳は怒りも悲しみも映さない。
「ですから…」
平七郎は先を続けられず言葉を飲む。
――他の女に心奪われた挙句に子を成し、それを正式に跡取りに取り上げるなどと。
そもそも、武家では側室を持つことは恥とされているが、今回は、ただ手付きとなった娘を囲うのとは分けが違う。
465 :
金糸2:2008/08/15(金) 00:39:04 ID:OOz8vZ2l
家の血筋も、万里の立場も全てが転覆する。不義と不忠を極めた行為だ。
(万里様、どうぞ怒って下され。儂に何でも命じて下され)
平七郎は、喉が焼けるような怒りを感じていた。
元は万里も平七郎もこの国の人間ではない。他国へと嫁ぐ万里に付き従い、共にこの家へと来た。
幼き頃より仕えてきた万里の名誉を汚した殿に対し、不快と侮蔑が渦巻いてゆく。
万里は何でもないことの様に答えた。
「いいのよ。もし殿がその方を正室になさるのなら、私がここから追い出されるだけ」
ザワッと部屋の空気が震えた。
誰もが触れることを恐れていた可能性を、渦中の万里から付きつけられた。
固く握り締めた平七郎の拳に、爪が食い込む。
自らの発言で不安気に揺れた面々を目にして、万里は初めて瞳を伏せた。
軽率な言葉を詫びる様に悲しそうに微笑み、努めて柔らかな声で言う。
「殿のお子なのよ。お家が無事継がれれば、喜ばしいこと」
平七郎は泣き出しそうな顔で、そんな万里を見つめていた。
夜風が冷たい。
岩間に伸びる松を震わせ、万里の打掛を揺らせて吹き抜ける。
今の自分を人が見れば、それは幽鬼に似ているだろうと万里は思う。
466 :
金糸3:2008/08/15(金) 00:41:32 ID:OOz8vZ2l
曇った鏡で覗く顔は、いつだってそれほどに青い。
新しい鏡など、十五で嫁いでから四年経った今まで、一度も贈られてはいない。
物だけではない。殿の言葉も笑顔も全て、ただの一度も。
たった一月の新婚の間に、殿は別な娘と恋に落ちた。
万里はそれからの年月をあの城で、ただ飾りとして生かされてきた。
そして今、飾りの役目も見失なった。
(…何も感じない)
ふらり
水中を歩いている様に、歩く足に力が入らない。
(いつから、寂しいとも悔しいとも思わなくなった?ないがしろにされるのに慣れた?)
小石と草で荒れた地面は足に痛い筈なのに、その感覚すら淡い。
妻としての存在を無視され続け、いつしか心は硬くひび割れていった。
(もう私は帰れないの?)
ふらり
(ねぇ、平七郎…)
幼い頃の記憶が鮮やかに溢れ、万里は瞳を閉じた。
故郷の国の紅葉が燃える山で、万里は走り回ってはしゃいでいた。
今よりも若い平七郎に袖を振っては、苦笑をさせた。
眩しい夕日が金糸を引いて山を染めてゆく。暖かい、金糸を。
虚しいだけの毎日の中で、その記憶だけが熱を持っている。
(会いたい。平七郎)
万里の胸にとうに忘れた筈の痛みが走った。
467 :
金糸4:2008/08/15(金) 00:42:53 ID:OOz8vZ2l
その時、月明かりに照らされた道に人影を見た気がした。
万里がギクリと歩を止めた時、すでにそれは闇に消えていた。
草の者だろうか。今は付近で大きな戦は無いといえ、まだ天下は一つに定まっていない。
この家とて、将軍の命あらば兵を出すのだ。乱波がいたとて不思議ではない。
人影が消えてからも呆然と立ち尽くしていた万里の耳に、小石を踏みしめて歩く足音が聞こえた。
目を凝らしてその人物を認めた時、万里の虚ろな瞳に光が灯った。
それは、今まさに万里が想っていた平七郎だった。
「…奥方様…!」
こちらに気付いた平七郎もまた目を見張る。
「…このような遅くに、どうされました…。お付きは?」
「一人よ。少し外を歩きたかっただけ」
万里は少し押し黙った後、潔く切り出した。
「先ほどここで草の者を見たわ」
平七郎は静かに聞いている。
平七郎はあの草の者と同じ方向から現れた。
密会していたのだろう。
だが、万里は恐れずに平七郎を見つめる。平七郎もまた、誤魔化すこともせず万里の視線を受け止めていた。
思いつめた顔で、平七郎が口を開く。
「都で…将軍が御亡くなりになられました。…戦が始まります。天下を分ける大きな戦です」
468 :
金糸5:2008/08/15(金) 00:46:18 ID:OOz8vZ2l
草の者から伝え聞いたそれを、平七郎は万里に聞かせた。
万里の瞳が揺れる。
圧倒的な武力で全国を蹂躙したあの将軍が、召されたか。
「亡き将軍の世を守ろうとする者、この機に都に反旗を翻す者…。天下は二つに裂かれます」
平七郎の声は静かに澄んでいて、迷いは無かった。
「この家は将軍家と親交が深く、将軍の姫君が嫁がれたこともあります。おそらく亡き将軍の側に付きましょう」
ですが、と平七郎は言葉を区切った。
「私達の国は…故郷は違います。圧政に苦しんできた我らの国は、都を攻める軍に呼応します」
「父上も…?」
呆然とした様な万里の問いに、平七郎は重く頷いた。
「……戦は…反将軍側が勝つでしょう。将軍側には未熟な小飼しか付いていない。この家に残っていても…先は…」
平七郎は万里へと手を差しのべた。
幼い頃から万里の側にあった大きな手。
「万里様、帰りましょう。我らの国へ」
奥方ではなく、万里の名を呼んだ。ふっと万里の瞼の裏にあの日の紅葉が走る。
「平七郎…だけど、私はこの家の…」
言って自らの未来を思い出す。捨てられるしかない正室としての閉じた未来。
「…私、私は…」
「儂が、さらって行きます」
強い声だった。
469 :
金糸6:2008/08/15(金) 00:49:10 ID:OOz8vZ2l
「万里様を苦しめるだけのこの家に、何の未練がありましょうか」
平七郎の目に光るものに、万里は気付いた。伸ばされたままの手は、細かに震えている。
「万里様が…貴方様だけが平七郎の命の全てです。どうか…どうか、儂と共に…生きてくだされ」
万里の胸が、喉が震え、それは鳴咽となって溢れ出た。
眼から涙が落ちる。
帰りたい。平七郎と。あの山へ。
差し出された手を万里が掴む。
そして万里は、崩れる様に平七郎の胸へとすがりついた。
その身を固く抱き締め、平七郎は感じていた。虚ろな瞳の万里はもういない。
今腕の中にいるのは、あの頃の熱を持った素顔の万里なのだ。
「平七郎……私はずっと帰りたかった…」
万里が涙で途切れ途切れに言う。
「私の帰る場所は…平七郎の…ところ……平七郎の…側…」
濡れた顔を上げた万里が、平七郎の頬へと手を伸ばす。
唇が、重なった。
「万里様…」
平七郎の腕が素肌の背に回る。
万里はほどけぬ様にしっかりと腕を平七郎の体に絡め、その肩に顎を乗せた。
平らな岩に背を委ね、平七郎と身を合わせる。
「ぁっ…」
胸を吸われ、万里は喉を反らせた。
平七郎の肩越しに月が明るく光を放つ。
470 :
金糸7:2008/08/15(金) 00:52:33 ID:OOz8vZ2l
近くの松の枝にかけられた打掛と着物が、夜風から二人を守る様に揺れた。
平七郎は丹念に乳房を吸っては体を撫でる。
青白かった万里の体も、愛撫によって血が通い、しっとりとほてっていた。
ずっと傍らにいた平七郎が今自分の胸に顔を埋めている。不思議な気もする一方で、これがごく自然な縁なのだとも感じる。
二人はずっと昔から、あの金の糸で結ばれていたのだろう。
平七郎の舌が尖った赤い乳首を舐め、ぐっと悲鳴を飲んだ。
手に吸い付くような湿り気を帯びた肌をなぞりながら、平七郎の手が胸から腰へと辿る。その先は。
万里は目を閉じ、熱い息を長く吐いた。
指が、貝の合わせ目に触れ花弁を撫でる。
くちゅ、と甘く水音が響いた。
「は…ん…っ」
柔らかに抜き差しをするように蜜壺に指が押し入れられる。
敏感な秘所をほぐす指の動きに、万里の腰が浮いた。
「…万里様……」
内部の溶けるような熱がきつく指に絡み付く。
「あぁ…っ!あ!…はぁっ」
歯を食いしばろうとするが、艶やかな声は止まらない。
くちゅっくちゅ…ぐちゅっ…
その水音に気が高ぶったのか、平七郎の手の動きは激しさを増してゆく。
471 :
金糸8:2008/08/15(金) 00:55:15 ID:OOz8vZ2l
二本に増やされた指が、中の蜜を指に絡めながら出し入れされる。
「あぁっ!はぅ…、んあっ…ぁ…平…七郎っ」
はらりと涙を溢して名を呼ぶ万里の姿を、目に焼き付け、平七郎はしっかりと万里の身を抱き締めた。
「万里…様…愛しております……」
万里の左足を大きく担ぎ上げると、自らの肩に乗せる。
「はぁ…っん…私も…、私も…お前を………平七…郎…」
花弁を大きく開かれ、身を奥まで暴かれる。風が濡れたそこを優しく撫でていった。
平七郎は万里の腰を強く掴むと、大きな高ぶりを秘所へと当てる。
そして、一息にその槍を突き立てた。
「んぁあああっぁっ!!」
万里の頬に幾筋も涙が落ちた。
大きく固いその熱が、女の部分を強く割り開き中を擦り付ける。
担ぎ上げられた足が踊るように夜空を掻いだ。
強靭な腰が鋭く叩き付けられる。
万里は平七郎が奥にくる度に、引き抜かれる度に濡れた悲鳴を上げた。
そして、深くに槍が押し入り飛沫を放つ。
万里は朦朧とした中でも、しっかりとそのとろみを感じ、共に果てた。
平七郎の肩越しに、月が輝く。
あの日の夕日の様に、金の糸を伸ばす温かな月が―――
472 :
金糸9(完):2008/08/15(金) 00:56:47 ID:OOz8vZ2l
後に、戦は反将軍側の勝利となる。
新たな治世の下、二人は故郷の国で妻と夫となり寄り添っている。
完
以上です。日本ガムバ
おお、ほぼリアルタイム。
美しい。GJ。
良かった
乙です
476 :
使者は突然に:2008/08/17(日) 22:10:15 ID:gh7Y0xaQ
東の大国ヴァルカニア
先の戦にて滅亡したロウムと同盟関係にあった軍事国家である。
多くの人々がこの国の首都であるヴァルカンに訪れる、有るものは商業のため、
ある者は、この軍事国家の傭兵として、そしてまたある者は ――
この日この国の王城に、ボロを纏った一団が訪れた。
――――
「ルドルフ様、ノイエン子爵様の使いの者がお目道理を希望しております」
セバスチャンがルドルフの下にやってくる。
その手にはノイエン家の紋章が入った身分証明の書状が握られている。
「ま、た、か」
うんざりした顔で、ルドルフはその書状を一瞥すると、
「連れて来い」
嫌そうに手を振る。
「わかりました」
うやうやしく頭を下げると、彼は客間に待たせている使いの者を呼びに行った。
「いやいや、リヒティンシュタイン様ご機嫌麗しい――」
ルドルフの前にやってきた派手な服を着た使者はうやうやしく頭を下げた。
「大義である、して今日はいかなる用事があって、参られたのかな?」
「はい」
ルドルフに尋ねられ使者は一枚の書状をうやうやしく手渡した。
「わが主ノイエン・ベックフォード様が、先の戦にて大勝利を収めた
我が国の大英雄であるルドルフ・リヒティンシュタイン様を城にもてなして、
遅ればせながら祝賀会を開きたいと……」
笑顔を作りながら両の手をすり合わせる使者。
それに対しルドルフはにやりと笑う、
「ふむ、なるほど、では、わし一人が行けばよいのかな?」
ルドルフの笑みはひどく意地の悪いものであった。
「あ、いえ、……その」
「冗談だ、わが娘にも声をかけておく、アーデル殿にもそう伝えてくれ」
「は、はい」
使者はうやうやしく頭を下げてそそくさとその場を後にした。
477 :
使者は突然に:2008/08/17(日) 22:12:24 ID:gh7Y0xaQ
「まったく、ベックフォード家のアーデル坊やもまだうちの娘を諦めて無かったのか」
苦々しい顔をして、ルドルフは溜息をついた。
「まったくですな」
横でセバスチャンもやれやれと云った顔で同じく溜息を吐く。
「またマリーは怒り出すのだろうな……セバスチャン、申し訳ないが行ってきてくれ」
「……わかりました」
そう言うと、老執事は情けない顔をしてマリアンヌの部屋へと向かった。
「どうしたの、セバスチャン、そんなに驚いた顔をして」
不思議そうに首を傾げるマリアンヌ、その目の前で忠実なる老執事は、
聞きなれない者を聞いた顔をして、固まっていた。
「いま、なんと?」
「だ、か、ら! 行くっていったの、これで三回目よ、セバスチャン!」
驚くのも無理はない、今まで同じことを伝えて、
「なんで私――――−!!」
怒号だか罵声だか全く分からない声をあげ、
枕で殴りかかってくるのが、いつものパターンであるのに
今日は、一言。
「うん、いいわよ」
とだけしか言わないのである。
「ベックフォード家のパーティの御呼ばれですぞ?」
「うん」
「アーデル殿も恐らく見えられますぞ」
「うん」
「ホン ――」
「しつこい!!」
「は! はは」
マリーに怒鳴られ、慌ててセバスチャンは部屋を後にする。
478 :
使者は突然に:2008/08/17(日) 22:14:52 ID:gh7Y0xaQ
「もう、セバスチャンたら」
ぶつぶつ文句を言いながら、
勢いよくベットに飛び込むマリー。
「まあ、父上が困惑されるのも無理ありません、アーデル殿と言えば
以前は名前を口にするのも嫌がられていたではないですか」
洗い終わった洗濯物をクローゼットの中に仕舞い込みながら、
レヴィは苦笑する。
「え? 今も、嫌だけど? 」
何を言っているのか分からない。
そんな顔でマリアンヌは首をかしげた。
今度はレヴィが養父と同じ顔をした。
「言ってる意味がわかりません」
「だ、か、ら! 今でもあのにやけたつらが、大っ嫌いって言ってるの! 」
「ではなぜパーティに行くと?」
「決まってるじゃない! 」
そう言うとマリアンヌは目をキラキラさせて言った。
「レヴィ、あなたも一緒に行くからよ」
彼はふたたび、養父と同じ顔で動きを止めた。
「止まれ、何者か?」
城門の番兵がぼろを着た妖しげな一団を止める。
だが先頭のものが何かを見せると、
「し、失礼しました、少々お待ち下さい」
驚きで目を見開き、慌てて自分の上官のもとへと走った。
479 :
使者は突然に:2008/08/17(日) 22:15:47 ID:gh7Y0xaQ
「素敵よ、レヴィ」
一緒に腕を組みながら、マリアンヌは笑顔でそう告げる。
上流貴族が身に纏う上質な着衣に身を包みレヴィは居心地の悪さで一杯であった。
「本当によろしいんですか? ルドルフ様」
少年はまた改めて聞き返す。
「よい、と言っておる、心配せずともお主の名はともかく、
顔まで知っておる者はおらんよ」
はぁ、ルドルフは溜息を吐く。
「かりに知っていたところで、別段臆することもあるまい?
かつては敵国に身を置いていたとはいえ、今はわしの家で正式に働いておる」
「はぁ、どうなっても知りませんよ」
レヴィは溜息をつく、もうどうにでもなれという感じであった。
( そもそも敗戦国の人間の僕が戦勝パーティに出るとか、
あり得ないだろ、普通に)
「ねえレヴィ見て、ルイーゼ様とカスター様が並んでる素敵よね」
そんなレヴィの気持ちもよそにマリーは話しかけてくる。
ちらりとそちらに目を移すと、
カスター伯爵とその夫人ルイーゼが仲良く並んで誰かと話をしている。
二人は気品漂ういかにも上流階級の貴族と言う雰囲気を醸し出していた。
「すてきよね〜立ってるだけで芸術品見たい」
「はあ、そうですね」
何とも気のない返事をしてしまう。
ここにいる多くの貴族達は戦争など、遠い絵空事でしかないのだろう、
民から税を徴収し、配下の騎士を戦いに赴かせ自分達は着飾る事しかしない。
圧倒的な兵力を誇っても、兵力で劣るロウムを何年も攻めあぐね、
ルドルフがいなければ逆に攻め滅ぼされていたのは、
(この者達だったんだろうな)
そんな気持ちで自国の勝利に酔いしれる人々をレヴィは眺めていた。
と、
「もう、レヴィ、見とれすぎよ!!」
グイッと、袖を急にマリーに引っ張られた。
480 :
使者は突然に:2008/08/17(日) 22:16:58 ID:gh7Y0xaQ
「いえ、僕は、別に」
( そう言えばマリーも戦争とは無関係か)
渦中の人ルドルフの一人娘とはいえ、彼女は戦争の話をほとんど知らない、
時折レヴィが、ぽつぽつと語る話や、遠い異国の話を聞くばかりで、
戦争などと言う物からは遠い存在であった。
ルドルフ自身もあまりそう言った事を人に話すのが嫌いな人物である。
必然的にマリーは、
「お父様は時折危ない所に行って、凄い事をして帰ってくる」
ぐらいの認識でしか、戦争という物を考えて無い。
「ほら、レヴィ、私だって今日は特別な衣装なんだからね」
そう言って水色のスカートの裾を軽く持ち上げてみせる。
日焼けしてない白い肌に色鮮やかな金色の髪をした少女は、
金と銀の刺繍が施された艶やかなドレスを身にまとっている。
「ほらほら、感想は?」
「はい、『マゴニモ、イショウ』ですよ」
「?、そ、そうでしょ、えへへ」
ニコリと笑顔を向けるレヴィを見て、
言葉の意味は全然わからないが褒められたと思ったマリーは、
少し照れたような顔をする。
「おお、美しきわがマリアンヌ様!」
と、突然、マリーは背後から声をかけられた。
マリーは朝起きがけに背中にナメクジを入れられたような顔で驚くと、
ゆっくりとそちらを振り向いた。
「おお、マリアンヌ様、相変わらずお美しい」
大げさに両腕を広げて、一人の男が近づいて来る。
「あ、あら、こんばんは、ノイエン・ベックフォード様のご子息
アーデル・ベックフォード様」
ぎこちない言葉遣いでそれでも一応頭を下げるマリアンヌ。
「そんな他人行儀な、気軽に、アーデルとお呼び下さい」
「有難う御座います、ベックフォード様、
さ、レヴィ、お父様のところに戻りましょう」
マリーはレヴィの手を引きルドルフの元に戻ろうとする。
481 :
使者は突然に:2008/08/17(日) 22:33:07 ID:gh7Y0xaQ
「ははは、マリアンヌ様相変わらず照れ屋さんですね、だがそこが又可愛い」
―― 誰が照れ屋だ!! ――
そう言って殴りかからなかったのは一応人目を気にしてか、
それともドレスを気にしてか、
いずれにしろ幾らか賢い選択を取ったマリアンヌはぴたりと足を止めた。
「あらベックフォード様、レディに『可愛い』とはどう言う事ですの?」
アーデルへと向き直ったマリアンヌは、ツカツカと歩み寄る。
その顔にははっきりと怒りの表情が見て取れる。
予想外のリアクションなのだろう、アーデルは思わぬ彼女の剣幕に狼狽した。
「あ、いえ、あ、あの」
「人を子ども扱いするとは、侮辱ですわ!」
そう言って怒鳴ると、
「アーデル・ベックフォード卿あなたに決闘を申し込みます!」
びしりと指を突き付けて、アーデルを睨みつけるマリアンヌ。
「け、ケットウ!?」
あまりの成り行きに唖然とするアーデル。
そしてマリーの後ろのレヴィもまた、唖然とした顔で、眺めていた。
「ですが」
コホン
マリアンヌは咳払いをする。
「私は女の身ゆえこの者を代理に立てます」
そう言うとレヴィを指さすマリアンヌ。
後ろで呆気に取られていたレヴィは、さらに驚いた。
(おいおい!)
―― こんな人前で何をさせる気だ ――
「な、なるほど、よし、誰か剣を持ってこい」
レヴィを見て勝てると思ったのだろう、アーデルは強気な態度を取り始める。
「君、名前は」
「彼はレヴィよ、私の恋人」
「な!?」
突然の物言いに二人は同時に声を上げる。
「な、なるほ、ど、そ、そうすると、君は僕の恋敵で、勝った方が、
マリアンヌ様と交際できる、それでよいのかな」
「えっ!? なぜ……」
「そうよ、勝った方とお付き合いします」
(おい!!!)
482 :
使者は突然に:2008/08/17(日) 22:36:51 ID:gh7Y0xaQ
心の中でレヴィは大声をあげる。
―― なんでそんな話になるんだ!! ――
( とほほ )
だが困った表情は表には出さずに、家来が運んできたレイピアを手に取る。
「なるほど」
それを片手で軽く振ってみるレヴィ。
(こんな貴族用のお飾り剣つかったことないんだよな)
「いくぞレヴィとやら、先の戦いで『地をかける稲妻』が名を聞いただけで、
逃げ出した、ベックフォード家の妙技その身をもって知るが好い」
逃げ出したい。
レヴィの偽らざる本音である。
そんなレヴィの目の前で優雅にポーズを決めてみせるアーデル。
見惚れている女性たちが何人もいる。
ポーズを決めながら、いちいち目線をマリアンヌへと運ぶアーデル。
マリアンヌはレヴィに対して、
『さっさと殺っちゃって』
の目線を送る。
(やれやれ)
レヴィがため息をついた途端、
「いくぞ!」
掛け声勇ましくアーデルはレヴィに襲い掛かる。
確かによく訓練された剣さばきだ、言うだけの事はある。
宮廷の婦人たちより歓声が上がる中、レヴィに対しての声援も上がる。
皆は降ってわいたこの決闘を見世物として楽しんでいた。
宮中でプレイボーイとして鳴らすアーデルと、
マリアンヌの連れて来た美少年との決闘は貴族達を楽しませるのには、
十分すぎるほどの余興である。
鋭いアーデルの剣が徐々にレヴィを追い詰めてゆく。
「どうした、レヴィとやら、その程度か」
(なるほどこの程度か)
―― 訓練された犬では野生の獅子には勝てない ――
(ではそろそろ終わらすか)
レヴィはアーデルの攻めの間隙を縫い反撃に転ずる、
あっという間の攻守は入れ替わり、今度はアーデルが追い詰められていく。
483 :
使者は突然に:2008/08/17(日) 22:37:55 ID:gh7Y0xaQ
と、
キン。
金属音と共にレヴィの剣は真ん中から二つに折れ、
一方アーデルの剣は持ち主の手を離れて、床へと転がった。
「勝負無しですね、アーデル様」
折れた剣を見つめてレヴィはつぶやく。
「あ? あ、ああ」
力なくうなずくアーデル。
「さすがです、地を這う稲妻を退けた剣技お見事でした」
深々と頭を下げるレヴィ。
「あ、ああ、そうであろう! 貴公は傍に居なかったので解らないだろうが、
やつめ私に恐れを抱き、我が愛しきマリーの父上である、
ルドルフ様に挑んだのだ、卑劣な男め、私がルドルフ様の傍にいたならば、
危険な目にあわせずに済んだ者を」
―― よくもまあ ――
どこかで練習でもしたのだろうか、すらすらとよくセリフが出てくるものだ。
レヴィは、大仰な身振りで話すアーデルに頭を下げ
そそくさと皆の輪の中から退散する。
ちらり後ろを向くとアーデルの武勇伝は延々と続いていた。
輪から出てきたレヴィの手を引っ張るとマリーは皆から外れたところへと、
レヴィを連れてゆく。
やがて二人は人気のいない、バルコニーへとやってきた。
「ねえ、レヴィ、あいつそんなに強かったの?」
「え? いや、実際僕はあいつとは戦ってないですし……」
「は? 何言ってるのレヴィ? あいつと今闘ってたでしょ?」
「あ! ああ、失礼、そうですね、はは、ああそうです、闘ってないですよ、
手を抜きましたから」
事も無げにサラッと答えるレヴィ。
そう言えば彼女には自分の氏素性は話してないのだ、
「え!? そうなの?」
「はい、僕が本気を出して勝ったら後々災いの元になるでしょうし、まあ、と言って、
負けるわけにもいかないですからね」
何か釈然としないものを感じ、ふてくされた顔をするマリアンヌ。
484 :
使者は突然に:2008/08/17(日) 22:39:23 ID:gh7Y0xaQ
「それに彼は用意周到な男ですよ、
わざわざ僕の剣に分らないように細工していたのですから」
「え!? 卑怯じゃないそれ! あいつに言わないと!!」
「いいじゃないですか別に、しかし驚きましたよ、突然、この人は恋人です、
とか言いだされるので」
「あら、それは本気よ」
今度はマリーがサラッと答える。
「私ね、考えたの」
にっこりと笑ってマリーは言う。
「お父様に頼んで、あなたに爵位を授けてもらうの、そうすれば
あなたと結婚できるでしょ?」
そう言うとマリーはレヴィに抱きつき顔を胸へと埋めた。
急に吹いた冷たい夜風が、レヴィの頬を撫でる。
今のこの早鐘の様な心臓の鼓動がすべてマリーに聞かれてるのだろうか?
レヴィは、マリーを見つめながら思うのだった。
三人の男女がヴァルカン城の客間に座っている。
皆、長旅でぼろぼろであった。
その時、客間の扉が開き一人の男が入ってきた。
「おお! これはこれは!
いやいや、長旅お疲れ様でございましたな」
男がにこりと笑う。
ボロを纏った者の一人がフードを取り外すと、
そこからは、長旅で疲れ、やつれ、
ボロボロになりながらも、
なお気品を漂わす一人の少女がいた。
見るも無残に汚れた銀色の長い髪は、
それでも尚、彼女がタイレルの血族だと言う立派な証であった。
「温かなお出迎え、嬉しく思います、国王陛下」
恭しく、
アンリエッタは頭を下げ、
物語は
終わる。
有難うゴザイマシタ。
お久しぶりに書かせてもらいました。
ではまた〜。
GJ!
待ってました。また、続き願います。
うおぉ!!待ってました!!
何やら波乱が起きそうな感じだな
続きも期待して待ってる
GJ!!
これは続きが気になるなあ…
489 :
クライ アイ:2008/08/18(月) 22:28:35 ID:0ggARtfu
「もう一度申し上げます、その様な事は断じて出来ません」
少女 ―― アンリエッタ ―― は静かに、だが凛とした声で告げた。
「な!? なぜです? あなたの国を取り戻すための力をお貸ししようと、
申しているのですぞ?」
ヴァルカニアの王、ガイエル三世は困惑していた、
目の前の少女が何を言ったのか理解できなかったからだ。
「我が国が全面的に協力し、祖国を奴らから取り戻すための――」
「ガイエル様、聞こえぬのでしたら今一度言います
私がこの地に来たのは、ただ安寧の地を求めてきたにすぎません、
今一度、戦禍を起こそうなどと言う野心などからでは有りません」
静かにそう告げるアンリエッタはだがしっかりとした瞳でガイエルを見つめた。
(くっ、小娘め)
自分のもとを訪ね来るからには、兵や武器を借受、
今一度祖国奪還を考えているものとばかり思っていた、ガイエルは大きく検討を外した。
アンリエッタが祖国を取り戻した暁には、ヴァルカニアの属国に、
そのはずだった。
(とんだ期待外れの臆病者だわい)
だがまだチャンスはいくらでもある。
心を隠すかのように笑みを作るガイエル。
「なるほど、まあ、到着なされてすぐ言う話では有りませなんだな、
これは失礼、部屋を用意し、お召物も取り返させましょう」
パンパンと手をたたくと、彼の部下の兵士たちが数人現れる、
ガイエルは彼らになにか指示して、三人を部屋へと案内するように告げた。
「どうぞこちらへ」
兵士たちは三人を護衛するように取り囲むと、
そのまま用意された部屋へと連れて行った。
「どうぞ、アンリエッタ様は、このお部屋へ」
案内された部屋は、自分が今まで暮らしていた部屋と遜色無いほどの、
豪勢な部屋であった。
「恐れ入ります、ガイエル様の温かなお心に、天からの恵みがあらん事を」
胸の前で手を合わせながらアンリエッタは自分の国の祝福の言葉を述べる。
490 :
クライ アイ:2008/08/18(月) 22:29:24 ID:0ggARtfu
「有難う御座います、アンリエッタ様、さあ、お共の方々はこちらへ」
そう言うと兵士は二人を別の部屋へと連れて行く。
「アンリエッタ様のお洋服は後ほど別の者がお持ちします」
バタン
部屋の扉が閉まり、少女は急に一人となる、その瞬間、
今まで抑えていた感情が爆発した。
「ああぁぁ!! 父上! 母上! お兄様!」
アンリエッタは叫び目の前のベットに倒れ込む。
皆の前ではけして泣かない、そう誓っていた少女の瞳からせきを切ったように
涙がこぼれていく。
失った人、失ったものを思い、泣き崩れる。
今まで、野に眠り、追手におびえ、
安住の地などどこにも無かった。
ようやくたどり着いた先も又、
彼女を利用する野心をむき出しにした、狼の巣であった。
「ううう、如何したら良いの、エステル」
いつも自分の傍にいて、アンリエッタを守り、姉であり、教育係であり、
そして良き友人であった女性の名を呼び泣く。
だが、飛将軍とも呼ばれ、祖国と自分を支えていた女性はもうこの世にはいない。
「助けて、レヴィ……」
エステルと共に少女の傍らにいた少年も、もう彼女の傍にはいない。
「みんな、みんな失ってしまった……」
ヒック、ヒック。
喉から嗚咽が走る。
ただ、唯、平穏に暮らしたかった、
今更兵を起こし、多くの血を流し、たくさんの人々を傷つけたとして。
それで祖国を取り戻したとして。
「それが何になるというの?」
これ以上悲しみを増やして何になるというのだろう。
失ったモノはもう戻らないというのに。
ガイエルは自分を利用し、豊かなロウムを狙っているにすぎない。
491 :
クライ アイ:2008/08/18(月) 22:31:50 ID:0ggARtfu
「この国になど来なければよかった」
だがこのヴァルカニアに来なければ、今頃いく当ても無くさ迷い、
野盗に殺されていたか、追手に捕まり殺されていただろう。
「ううぅ」
アンリエッタは帰らぬ日々を思い出し泣き続けていた。
―――――――
どれほど時がたったか、
「少しは、気が晴れましたか?」
急に声をかけられビクリとして、アンリエッタが振り返ると、
其処にはいつの間にか一人の少女が立っていた。
「あ、あなたは?」
「はい」
少女はぺこりと頭を下げる。
「ガイエル様よりお傍にいるようにと申しつけられました」
にこりとほほ笑むその少女を見て、アンリエッタはある事に気がついた。
「あなた、名前は?」
「はい、レリーと申します」
似てる、それがアンリエッタの第一印象であった。
もちろん瓜二つというわけではない、
だが、髪型や体格、全体の雰囲気そう言った物がどことなく。
「ねえ、あなた、兄弟は?」
「いえ、私は一人っ子ですが?」
そうだろう、レヴィに姉妹はエステルだけだ。
「どうかされまして?」
「あ、いえ、ごめんなさい、あなたが私の良く知る方にそっくりだったので」
「へえ、そうなんですか」
レリーはそう言うとニコリと笑う。
「アンリエッタ様、さぞお疲れかと思います、湯浴みのご用意がしてありますので
どうぞお越し下さい」
クイ
アンリエッタの手を優しく引きながらレリーは浴場へ案内する。
「えっ、私……」
ためらう暇もなくアンリエッタはレリーに連れられて、
浴場へと連れてゆかれた。
492 :
クライ アイ:2008/08/18(月) 22:32:40 ID:0ggARtfu
「す、すごいです」
連れてこられた場所を見てアンリエッタは感嘆の声を思わず上げる。
豪勢な意匠をこらしたその大浴場は、
長旅で疲れたアンリエッタには桃源郷のように感じられた。
「お気にいただけましたか? アンリエッタ様」
「は、はい、お恥ずかしいですが、命からがら逃げ出してからこのような、
思いが再びできるとは夢にも……」
「ふふ、傍仕えとして、気にっていただき嬉しいです、さあ、アンリエッタ様、
その着ている物をお脱ぎ下さい」
「え、あ、は、はい」
スルスル
長旅でぼろぼろになった服や下着を脱ぎ始めるアンリエッタ。
その裸身を横で眺めながらレリーは思わずごくりと息をのむ。
長旅で薄汚れてはいても、その美しさは隠しようもない、
豊かな胸はタプタプと揺れ、形の良い乳首も桜色をして
ぷっくりと良い形に膨らんでいる。
腰もしっかりとくびれ、
形の良いお尻はムッチリとして、柔らかそうな印象を受ける。
汚れを落とす前からこれならば、汚れを落とせばいかばかりになるか。
「あ、あの、レリーどうしました?」
そんな姿をジーット見つめていたレリーはハッと気づいたように顔を上げる。
「あ、ああ、すいません」
慌てて、脱いだ衣服を片付ける。
長い逃避行の中、これだけの体型を維持してたのはさすがと言うか、
「あ、あの、あまり、見ないでくださいますか?」
少し顔を赤らめながら、気恥かしそうにアンリエッタはつぶやく。
手で胸を隠すが到底隠しきれるものではない。
「あら、アンリエッタ様ここには、私しかおりません、
それほど恥ずかしがらなくても平気ですわよ」
レリーは自分も衣服を脱ぎ始めるとその裸身をアンリエッタの前に晒す。
年頃の娘の程よい大きさの胸、形のいい丸いヒップ、
それらが湯気に照らされてほんのり赤みを帯びている。
「私の方が恥ずかしいです、アンリエッタ様に見られるのが」
そう言うと、くすりと照れ笑いをレリーは浮かべた。
493 :
クライ アイ:2008/08/18(月) 22:33:38 ID:0ggARtfu
「そ、そのようなこと、ないかと、思います」
今の今まで同じ年ごろの娘同士で、
肌の見せ合いなどしたことなど無かったアンリエッタは
ほんのり顔を赤らめながらうつ向き気味にこたえる。
何と答えてよいのかもよくわからない、
そんなにしっかり人の裸を見たことなど殆ど無いのだから。
「アンリエッタ様はいつもは湯浴みの時はどうされてたんですか?」
「えっ、あ、いつもは、乳母がやってくれておりました」
そう言い思い出す、
乳母のメアリーは無事だったのだろうか?
城に居た皆はどうしているのだろう。
( 私ばかり無駄に生きてしまった)
そう思った瞬間。
ムニュ
「きゃ! な、なにを!?」
アンリエッタは悲鳴をあげ、慌てて胸を手で隠す。
いつの間にやら、レリーが背後にまわりアンリエッタの豊かな胸を揉みしだいていた。
「手を放してくださいアンリエッタ様、これでは体が洗えません」
「えっ!? あ、し、失礼しました」
恐る恐る手を放すアンリエッタ。
その途端柔らかく大きな胸がレリーによって揉みほぐされる。
ムニュムニュと柔らかく豊かな胸は
手に汚れを落とすための液体をたっぷりつけたレリーの両腕により、
しっかりと揉みほぐされてゆく。
「お疲れでしょう、アンリエッタ様、さあ、私に任せてお座り下さい」
「は、はい」
床に置かれた椅子に腰をかけるアンリエッタ。
その間もレリーのマッサージは続く。
(い、いけない、私恥ずかしい気持ちになってる)
ギュウっと身を固くするアンリエッタ、太ももにも力を込め、足をきつく閉じる。
( 体を洗って頂いてるのに、ハシタナイ気持ちになるなんて! )
だが、体が感じる感覚に逆らおうとしても、湧き上がる気持は抑えられない。
レリーの手が次々とアンリエッタの体を刺激してゆく。
「あ、うう」
思わず切なげな声が漏れハッとするアンリエッタ。
(いけない、みっともない声をレリーさんに聞かれてしまった!)
だが彼女は別段気にしたふうもなく、今度は胸だけでなく、
体全体をこすり始める。
494 :
クライ アイ:2008/08/18(月) 22:36:43 ID:0ggARtfu
手が体をこする度にどんどん気持ちが湧き上がってくる。
(うう、なんで私こんなに恥ずかしい気持ちに)
頭がどうかなってしまったのだろうか?
今まで、乳母に体を洗ってもらってこんな気持ちになったことなど一度もない。
「あら? アンリエッタ様お気分が悪いのですか?」
「え、ああ、いえ、長旅で疲れているのかも、レリーさん、もう ――」
コリ
「アアン!!」
ピンと張りつめた乳首をひねられたアンリエッタは堪えられずに悲鳴を上げる。
「そうですね、アンリエッタ様、ここが疲れのため、コリコリになってますよ」
耳元に息を吹きかけながら、くすくすと笑うレリー。
「ア! あン! ヤ、アアア」
アンリエッタは身をよじるがしっかり抑えつけられ抜け出すことが出来ない。
「ふふふ、アンリエッタ様、先ほど私に似た方がいるとおっしゃられてましたよね、
もしも私がそのお方だとしたら、やはりそう言うかわいい声で鳴かれるんですか?」
「えっ!? な、何をおっしゃられてるんですか?」
その途端アンリエッタはビクリと身をのけ反らせる。
柔らかな舌先が首筋を優しく舐め始めたからだ。
体の感じる部分ばかりを徹底的に攻められるアンリエッタは、
意識が混濁し始める、
「あ、ああ」
そして先ほどレリーの言った言葉を思い出す。
―― もし彼女がレヴィなら ――
「ふふ、アンリエッタ、気持ち良いだろう? どうだい?」
レリーは甘く耳元でささやく。まるでレヴィを真似するように。
「ううう、す、素敵です」
「そうだろう、でもね、アンリエッタ、ここを弄ったらもっと素敵だと思うよ?」
クチュ
レリーの指先がアンリエッタの花園へと踏み込む。
「あああ!! す、すごいです!」
今までより大きな悲鳴をあげて、大きくのけ反るアンリエッタ。
495 :
クライ アイ:2008/08/18(月) 22:38:12 ID:0ggARtfu
再びレリーの声がアンリエッタに優しく囁きかけてくる。
それと同時にクチュクチュと音を立てながら、
レリーの指が、アンリエッタの体の中をじっくりと攪拌してゆく、
その度にアンリエッタは快感に体を揺らし続けていた。
「ああ、恥ずかしい、恥ずかしい気持ちになってます」
「いいんだよアンリエッタ、さあ、快楽に身をゆだねるんだ」
「ああ、とても気持ちいい」
ポタ、ポタ、レリーの指先から、アンリエッタの蜜が零れ落ち床へと溜って行った。
「うう、が、我慢できない……」
「アンリエッタ、我慢せずに大きな声をあげて逝ってしまいなよ」
「ああ、ああ、……」
指は、激しさを増し、アンリエッタの肉体は限界の極みに足しようとしていた、
が、
「どうだい、アンリエッタ、また前の様に暮らしたいだろう?」
その言葉を聞いた瞬間、
アンリエッタは腕を強く掴んだ。
「やめて下さい!! 何という破廉恥な真似を!!」
そのままアンリエッタは腕をひねり上げる。
「アンリエッタ様痛いです急に何をなさるのですか」
「お黙りなさい! 姑息な真似をして、それほどまでに私を籠絡したいのですか!」
「くっ」
レリーは舌打ちするとアンリエッタの手から自分の手を引き抜く。
「やれやれ大したお嬢様だ、残念だったねもう少しで逝けたのに」
くすくすとからかいながら、レリーは笑う。
「卑怯者!」
「なんとでもお言いなさいな、だがあなたは籠の鳥、ガイエル様の言う事を聞くようになるしかないのさ」
その言葉を聞きアンリエッタは顔を曇らせた。
「まあいいや、私だって鬼じゃないからね」
そう言いながらレリーはずいっとアンリエッタに近づいた。
「な!? なにを……」
そう言いかけたアンリエッタの唇に柔らかいものが触れる。
レリーの唇であった。
「ん!? んんん」
驚くアンリエッタの口の中に素早く舌を滑り込ますと、
クチュクチュクチュ、
じっくりと口の中を嘗めつくしてゆく。
(あ、ああ)
自分を味わいつくされてアンリエッタは逃れようとするがしっかりと抱き止められ
逃げることはできなくなっていた。
496 :
クライ アイ:2008/08/18(月) 22:39:20 ID:0ggARtfu
ムニュ
アンリエッタの豊かな胸をレリーの胸が押しつぶしてゆく。
一度火のついた体はあらゆる思いを打ち砕いてゆき、ただただ
高みへと精神を走らせる。
やがて唇から離れた口はアンリエッタの全身のすべてを味わってゆく。
「しっかりとイカセテやるよ」
「ああ、いや、いや、やめ、やめなさい!」
アンリエッタの最後の抵抗も虚しく、
やがてレリーの舌と口はアンリエッタの下の口へとキスをする。
舌が何度も口の中を出入りし、舐めつくされる。
「あ、いや、いや、あ、あ、あああー!!」
堤防が激流の押し流されるかのように官能の頂点に達したアンリエッタは、
自らの零した蜜の水溜りの出来た大理石の床の上へと倒れこんでいった。
「服を着たら早く部屋にお戻りなさい、明日は早いよ」
くすくすと笑いながらレリーはアンリエッタに背を向ける。
レリーに味わい尽くされてしまったアンリエッタは、
「レヴィ……」
愛おしい者の名を小さく呼びながら
今日何度目か分からない
涙をこぼし
物語は
終わる。
GJ!
恋模様複雑に絡まってるね。どうなるのよ。
本当に統合するの?殺伐としててなんか不安なんだけど
>>440 超遅レスですが
すっごいおもしろかったです!
同じ設定で書くことがあったらまた投下して欲しいです!
>>489 GJGJGJ!!
ここからどうなってしまうのか凄い楽しみだ!!
サキュバス×神官で投下します。
NGは名前欄の「囚われてサキュバス」
「とっとと来なさいよ。使えない奴隷ね」
その侮辱の言葉に、思わず頭上のリゼを睨み付けた。
夜空に浮かぶ、コウモリの翼とムチのようにしなる長い尻尾を持つ淫魔。
「お前のような汚れたサキュバスなんぞに…なぜこの私が…くそっ」
私は自分の両手の銀の輪を憎々しげに見つめた。この首にも同じ輪がはめられている。
神を呪う文字と魔の紋章が刻まれたその輪は、神官である私の力を吸い取り無力化させてしまう。
本来ならばこのような下等で下品な魔物など、神霊の御力で叩き潰してやるところだ。それが、それが――…
「あっそ、負け犬の遠吠えお疲れ様でぇす。いい加減に学習して大人しくしてくださぁい」
リゼはチロリと赤い舌を出すと、人差し指をピンと私に向けた。
ビリッ
「ふぎゃあああぁ!いだだだっ!」
痛い!私は悲鳴を上げて膝を折る。
一瞬だが、三つの輪から魔力の電流が流れ私の全身に痛みをもたらす。
冬場の静電気ですら苦手なこの私に、なんという非道な仕打ちをするのだ…!痛みにジワッと涙が溢れてきた。
「だいたいね、私だってあんたみたいな使えない小物狙ってなかったんだから」
リゼは小馬鹿にするように手をひらひらと振っりながら言った。
「なっ…誰が小物だ!」
聞き捨てならん!私は痺れの残る体でヨロヨロと立ち上がった。
リゼはそんな私を虫を見るように見下しながら、ワインのロゼのような紅い髪をかき上げる。
……くそ。
大変不愉快なことだが、挑発するようなリゼのその姿は、見とれてしまうほどに…美しい。
妖しくうねった長い髪が月光を受け艶を帯びていた。一見幼く従順そうですらある可憐な顔と、甘い桃色の瞳。肌も露な黒い革の衣装に、童顔には不釣り合いな豊満な体を押し込んでいる。
男を惑わすために生まれた淫魔は、女の魅力をこれでもかと凝縮した容姿を持つ。視線を奪われるのは不可抗力だ…。
「誰ってあんたよ、あんた。口ばっかり小うるさくて体力無いし、神霊力が無かったらただのもやしじゃない」
も、もやしは禁句だ!淫魔めが…っ。
腹腸が煮えくりかえるが、また機嫌を損ねて電流攻撃をされるのは辛い。私は歯ぎしりをして堪えた。
「せっかく高い魔具を用意して大神官狙ってたのにさぁ。あんたみたいなヒラが引っかかっちゃって大損だよ」
魔具とは私を苦しめているこの銀の輪のことだ。対神官用として魔族共が作り上げた道具らしいが、神官を生け捕りにして何をするつもりなのだ…。まあいい。
「フン!残念だったな。貴様ごときに大神官様の御身は指一本も触れさせぬ」
大神官様のご無事だけが、奴隷扱いを強いられる日々の中で唯一の心の支えだった。
あればまだ一週間前。神殿に夜襲をかけたリゼの魔手から、この私が大神官様をかばい身代わりに捕えられたのだ。
なんと勇敢で高潔な我が行い!私は自らの麗しい自己犠牲に誇らしく胸を反らしてみせた。
ビリリッ
「うぎゃああっ!」
痛い痛いだから痛い!電流を流され私は地面にひっくり返る。
「余計なことをしてくれたよねー…。あーあ、本当なら今頃ヘルミナ様に大神官を進呈してさ、たっくさん褒めていただいてナデナデしてもらって〜…」
リゼはヘルミナ様とやらの妄想に浸ってくねくねと尻尾を揺らせた。…どうやらこの女の上司にあたる魔物がいるらしい。
「はー…、ただの神官なんかじゃ喜んでいただけないよ。それに、」
言葉を区切ると、リゼはヒラリと私の前に降下した。倒れた私の体にに被さる様に近付き、ずいっと顔を覗き込んでくる。
ち、近い…。馬鹿。そんなに寄ったら、その。
磨きあげられた玉の様な肌が鼻先に寄せられる。む、胸の谷間もまる見えで目のやり場に困るだろうが!
「な…なんだ…」
顔を赤くしながら聞くが、リゼはそれには答えず私の顔を両手で包んだ。熱い顔に当てられた手はひんやりと冷たい。バクンと胸が跳ね上がった。
「ふわっ、ちょ…っや、やめ…むぐ!」
ちうっ
私の唇はリゼのそれで塞がれる。
甘い蜜を注ぐ様に柔らかな舌が滑り込み、私の舌に絡みついた。
ちゅる…くちゅっ…ちゅく…
口中をゆっくりと味わうリゼの舌。優しくまさぐられると頭の中がトロンと溶けてしまいそうになる。
く…だめだ。こいつとの口付けは…やっぱり気持ちいい…。
思わずリゼの背中に私は手を伸ばしかけた。だがその前にふっと口を離されてしまう。私とリゼの唇に銀の糸が伸びた。
あ、もうちょっと…。い、いや、断じて名残惜しいという分けではないが。
「あー、やっぱダメ。神官の精気なんて食べれたモンじゃない」
リゼは顔をしかめるとうえぇと舌を出した。
失敬な!!お前がキスしたんだろうが!
拳を上げて怒鳴ろうとして、私は自分の体がひどく重いことに気付いた。
「ぅ…ぐ…っ…」
…だめだ、起き上がれない。今のキスでずいぶんと精気を吸われてしまったらしい。
「食料としても使えないなんてサイアク〜」
吐き捨ててリゼはふわっと空に舞い上がった。
そうなのだ。男の精気を糧として生きるサキュバスだが、神に属する物の気だけは苦手で受け付けない。
魔具で抑えられてはいても、神官である私の体には常に清い御力の加護が流れている。おかげで私はリゼの食料として食い潰される心配はないのだが…。
「ほらぁ!だから早く家に帰るのよ。とっとと夕食を用意しなさい」
「動け…な…からっ…精気は…吸うなと…言っている…だろうがっ…」
ハアハアと苦しい息の下で私は訴える。
命に危険がある程には吸われはしないが、それでも激しい運動をした程には疲弊する。
数分横になれば回復するのだが、私の様な高貴な頭脳労働者にとってそれはかなりのダメージとなるのだぞ…!
「早くぅ、ゴハン〜!」
「う…うるさ…い…」
これからリゼのねぐらへと帰り、料理に掃除に風呂の支度までさせられる。ああ…地獄だ。
絶望と共に見上げる空には、パタパタとコウモリの羽を羽ばたかせるリゼの影がある。
私を悩ませる、憎たらしい小悪魔の――
おしまい
以上です
是非エロありで続きが読みたい
うむ。
ラブが芽生えたりとかするとさらに大好物に。
大分前に別板で書いたお嬢様と家庭教師モノ発掘したから投下させていただきます。
NGはタイトル欄の「家庭教師」で。
512 :
家庭教師:2008/08/25(月) 17:55:00 ID:CTMUqqWv
――なぜ、今、自分は彼の私室で裸で転がっているのか。
確か風邪をひいたと聞いたから、お見舞いに林檎を持って部屋を訪れて───
国内でも有数の資産家の下に産まれ、蝶よ花よと育てられたニィナは生粋のお姫様だ。
男ばかり三人も続いた男兄弟の末妹で両親も兄達もニィナを溺愛している。
その過保護さは、ニィナの病弱な体質を理由に学校へやらず代わりに多数の家庭教師を雇うほどだった。
その家庭教師の中でも彼――クランは、名門の大学で教鞭を取っていた経歴と、複数の教科をこなす優秀な能力を買われ、屋敷に住み込みの教育係として滞在している。
男の身でニィナの側にいることを許されているのは親族以外ではクランのみだ。
そしてニィナは、そんなクランを師として兄として友として敬愛していた。今日、服をはぎとられるこの瞬間までは。
「…どうして…?」
ニィナは冷たい床を裸の背で感じながら、自分を押し倒す男に問う。
513 :
家庭教師:2008/08/25(月) 17:56:02 ID:CTMUqqWv
「貴方こそ、どうしてそんなに残酷なのですか?」
床に広がるニィナのミルクティー色の巻き髪を指でもて遊び、クランはいつもと変わらない声色で笑った。
いつもと変わらない優しい表情。その整った顔の右半分を大きくえぐる古傷も、片目だけの穏やかな視線もいつもと同じクランだ。
「残酷…?わ、たしが…?」
「ええ、ニィナ様が」
クランはニィナの愛らしい顔を、大きく繊細な両手でそっと包む。
「…どうして私がニィナ様のお側に置いていただいているか、ご存知でしょう?」
「それは…クラン先生がとても優秀な方だから…」
「これは酷い回答だ。0点を付けますよ。……正解は、私が醜いから、でしょう?」
醜い、と自ら口に出す瞬間クランの表情が一変した。
家庭教師の優しい顔は消え去り、自虐と劣情にまみれた冷笑が浮かぶ。
尊敬していた師が一瞬で他人へと変貌する姿に、ニィナは首筋に鳥肌を立てた。
「や…」
怖い。逃げようと肘を立てるが、すぐさま腕を掴まれ床に倒れ込む。
「こんな化物みたいな顔の男なら貴方と間違いなど起きないだろうと、そう雇われたのです。貴方も本当は分かっているのでしょう?」
514 :
家庭教師:2008/08/25(月) 17:56:49 ID:CTMUqqWv
ニィナは涙を浮かべて首を左右に降る。彼の待遇や外見をそんな目で見たことはなど無かった。
床に倒れるニィナにクランの影がゆっくりと被さってゆく。
ニィナの白い素肌をスーツの生地が撫で、二人の吐息が熱く混ざり合う。これから何が始まるのかニィナには分からない。
「私は…っ、私はただ、クラン先生が優しくて立派な方でっ……ぅ!」
言葉の途中で遮ったのはニィナの下半身に伸びたクランの手だった。
人差し指と薬指で貝を柔らかに揉み込む。
「い、いやぁっ!そんなところ触らないでください!」
「性教育ですよ。これからたっぷりと教えて差し上げます」
排泄にしか使わない不浄な秘所を他人にいじられ、ニィナはショックのあまり悲鳴をあげて暴れた。
抵抗するニィナのか細い体を体重差で押し伏せ、クランは笑う。
「ここをどんな風に使うか、そんな馬鹿みたいな常識すら知らされずに生きてきたのですか。さすがはお姫様だ。無垢で無知で可愛らしい」
ニィナの両手を頭上で押さえ付けた瞬間、クランの片目とニィナの瞳がかち合った。
「…先生っはっ…」
思わず、ニィナの口から涙声がこぼれる。
「クラン先生は…私がお嫌いなのですか…?」
515 :
家庭教師:2008/08/25(月) 17:57:55 ID:CTMUqqWv
二人の時間が止まった。その言葉にクランの体がこわばるのを、彼の身の下でニィナも感じた。
ニィナの瞳から視線を外せず、クランは初めて笑顔を失った。
一瞬、助けを求めるように唇が震え、そして彼はまた笑う。
「…そうですよ。私は…貴方が嫌いです。綺麗な世界しか知らないで…勝手に他人も綺麗な物だと信じこんで…、そんな馬鹿な貴方が不愉快で…大嫌いだ」
ニィナの頬に小さな雫が筋を作って落ちた。ニィナの涙ではない。クランの片目から落ちた雫だった。
「…先…生…」
濡れた瞳を張って呆然と見上げるニィナを、クランが固く抱き締める。
「嫌いですよ…。だから、こんな酷い事をしているんです。こうしたらもう、私は貴方から離れられるでしょう…?」
クランの肩越しには豪奢な天井しか見えない。彼が今どんな顔をしているのか見えない。
「…先生……私、は、私は…」
クランが落とした涙の筋に、ニィナの涙が混ざって滑り落ちた。クランの背中に震えながら両腕を回しニィナは彼を抱き返した。
「私は、先生が…好きです…」
ニィナは瞳を固く閉じて思い描く。
彼の優しい笑顔を、その古傷を、大切なクランの全てを。
おしまい
以上です。
>>516 ちょ。ものすごいGJ!なんというGJ!ほぼ未遂なのに何このもの凄い萌え
続きはないのか…
>>516 ちょ、ちょ、GJです。
続き、続きの予定はないのですか??
NA☆MA☆GO☆RO☆SHI
GJ!!
つ、続きは?続きはあるの?
これはGJとしか言い様がない
ぜひぜひ続きを
マジレスすると続きは無いのです。
皆様の想像に二人のその後を委ねます。
シリアスではつなぎ物が書けなくて、気楽に書こうと生まれたのがアリスとエドg
すげえ…
文才があるってこういう人を言うんだな
簡潔なのに読んでて状況や背景が浮かぶし二人ともキャラクター設定がしっかりしてて…短いのにめっさ萌えました!!
どうしてくれるんだこの萌えをwww
続きでも番外編でもいいからまた投下して下さいまし
525 :
姫ほしゅ:2008/08/29(金) 14:03:46 ID:ak3cdklm
最近の姫様はご機嫌斜めだ。
大好きな姉上を訳の分からん筋肉馬鹿に取られてしまい、姉妹の時間が大幅に減ってしまったのだ。
今日だって秋向けの新しいドレスを姉上と一緒に仕立てるはずだったのに、その馬鹿にかっ攫われて姉上はどこかに消えてしまった。
もちろん、姉上が本気で嫌がっていたのなら、姫様だって自らのお付き騎士を繰り出し姉上の救出を謀るだろう。
しかし残念ながら姉上はあの阿呆を憎く思ってはいないようだ。
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんちゃらである。
ワガママ一杯の姫様にしては珍しく、ガマンの子と化して二人を遠目に見守っているのだ。
「…お姉様…なんであんなのに……。つまんない…」
姫様はソファーにつっぷして寝転がった。
「お察しします…」
「うるさい。あんたごときに察されたくない」
寝返りをうちながら傍らに立つ騎士に素早く蹴りを入れる。
スカートの中からお行儀悪く真っ白な素足が伸び、ポフッと騎士の腹に当たった。
(うはぁ!)
騎士はその蹴りを避けるでも守るでもなく、目をギンと見開いてその足に見入る。
すべすべで、騎士の大きな手の平で容易く握れてしまうほっそりしたふくらはぎ。
キュウと細い足首や小さな踵は汚れを知らないほどに清らかなのに、実はその御身を2回も汚してしまったのは他でもない、この自分だ。
しかも、姫様の純潔を奪ったのは今姫様が横になられているこのソファーの上……。
そのとんでもない事実を思うと騎士の胸は甘く締め付けられる。
性格も口も悪いこの小さな姫君が、自分の腕の中では目一杯甘える様にしがみ付いてくること。か弱い吐息が愛らしいこと。胸がちっちゃ
くてくすぐったがりやでその他もろもろがたまらなく可愛らしいこと。
全てが騎士だけのナイショの姫様の姿だった。
(ああ…国王様お妃様お許しください。自分はやってはならぬことをいたしてしまいました…。でも自分が責任を持って姫様を幸せに…!)
「ちょっと、何ニヤニヤしてんの」
姫様は両足をバタつかせ騎士の腹をぽこぽこ蹴り続けるが、騎士は幸せな妄想の世界に浸っているらしく一向に帰ってこない。
屈強な体を持つ騎士が姫様のような女の子に蹴られても、痛みなどはたかが知れているのだろうが、おもしろくない。
「馬鹿騎士!」
姫様はムッと膨れると騎士の股座を蹴り上げた。
ぽこ!
倒れこんだ騎士の背を足で踏み踏みして、ようやく機嫌を直した姫様でした。
ちょw姫さまw
GJであります!
このシリーズ大好きだなぁ
保守ついでに途中まで投下。
ロリお嬢様と家庭教師、まだエロ無しの前半戦。NGは名前欄「ありすのうた」でお願いします。
「はい、頭からもう一度」
「う〜…」
アリスはエドガーの指示にブスッとむくれ、ピアノの楽譜立てに開かれた教本の五線譜を睨みつけた。
どうしても左手での和音の移動が上手くいかない。
美しく磨かれたグランドピアノの前の椅子にアリスはクマのぬいぐるみと並んでお人形の様にちょこんと座っていた。
脇に立った家庭教師のエドガーがそれを静かに指導している。その鉄面皮の眼鏡から注ぐ視線は、見守るというより監視という言葉が合っているほどに冷徹だ。
屋敷の角に作られたこの部屋は庭園に面した壁が大きな硝子窓でできており、カーテンは開け放され秋の迫る穏やかな陽気が明るく降り注いでいた。
鬼教官の無言の催促に負け、アリスは仕方なく目線を鍵盤に落とす。
(ええと、“ド”は黒二つ並びの端っこで、“ミ”はその隣の隣で…)
最初の音に手を構える段階も一苦労だ。鍵盤の白と黒を目で数えながらたどたどしい手つきで指を鍵盤にピトピト当ててゆく。
アリスの纏う白いブラウスと紺のジャンパースカートは地味な色合いで落ち着いているがとても上品な仕立てで、一見して彼女が上流階級のお嬢様だと窺い知れた。
金髪のショートカットには青いサテンで編んだカチューシャを着けており、隣のショコラ(クマのぬいぐるみだ)の首にもお揃いの青のリボンを飾っているあたり、ちびっこながらも女の子らしいオシャレに気を使っているらしい。
しかし、いくら見た目を飾り立てていても令嬢としてのたしなみに関しては酷い有り様だ。
この屋敷のお嬢様として甘やかされ、やりたい放題でお稽古をサボりまくったツケが回っておりピアノもバイオリンもまるで下手っぴなのだ。
アリスはむつかしい顔で両手の指の位置を確認するとよし、と気合いを入れ右手で主旋律、左手で和音の伴奏を弾き出す。
―ド・ミ・ソ、ジャーン
―レ・ファ・ラ、ジャーン
―ミ・ソ・シ、ドドビジャローン
「はい、そこまで」
不響和音に神経質そうに眼鏡を押さえ、エドガーが8度目のやり直しを命じた。
とうとうアリスはプイッと横を向いてしまう。「こんなの弾けないもん!もうやだっ」と頬を膨らませ口をブーと尖らせた。
「貴方が今まで散々お稽古をさぼっていたから上手く弾けないのです」
「違うもん。アリスの手はまだ小さいから鍵盤に届かないんだもん」
「練習さえしていればまともな人間は指が開くようになります」
エドガーは白い手袋はめた右手でそっぽを向いたままのアリスの頭をむんずと掴み、力ずくで前を向かせた。ゴキッ
「うぎゅっ!」
アリスの悲鳴を無視し、そのまま手をすっと鍵盤へと降ろす。エドガーは鍵盤を軽やかに叩いてみせた。ポロロンと澄んだ旋律が響く。
「ズルイ〜!先生は大人で手が大きいから簡単に弾けるのー!」
まとも以下な人間のアリスは痛む頭を押さえ憤慨する。指の長いエドガーにそんなことを言われても納得など出来ない。
「アリスだって片手だけなら上手に弾けるもん」
アリスはショコラを左手でワシッと抱きかかえると、右手でメロディを弾いてゆく。
利き手のみで演奏すればつっかかって止まることもなくごく簡単だ。
「片手だけの演奏を先に覚えてしまうと両手で弾く感覚が掴みにくくなります。やめなさい」
「やだもん」
アリスの左手はクマのぬいぐるみを抱いて離さない。テコでも動かないという意思表示だ。以前の一件からショコラが奪われれることを警戒し、アリスはショコラを抱く手に力を込めた。
冷たい視線でギロリとアリスを見下ろすエドガーが静かに背後に回り、気付かずに演奏するアリスの頭をげんこつで挟みかけた瞬間、アリスはきっぱりと言った。
「それにこの練習曲好きじゃないの。なんか音が隣同士に上がったり下がったりするだけでつまんない」
そのつまらない曲すら弾けない分際でなかなか分かった風なことを言うではないか。
確かに単調で起伏もない芸の無い曲であるが、初歩の指使いを習うために書かれた物だから仕方がない。
だが、アリスがただ面倒くさがって嫌がるのではなく、こういった文句を言うのは珍しかった。
エドガーはほう、と挑戦的に片眉を釣り上げ両手を下ろす。
「ではどの様な曲がお好みですか?」
隣に戻ったエドガーの問いにアリスは待ってましたと言わんばかりに笑顔を向けた。
「あのねっ“ショコラは茶色”って曲!アリスが作ったんだよ!聞く?」
まさかの自作である。
曲名からして既に脱力する様な幼稚さが滲み出ているのだが、エドガーは首を縦に降った。
えっへん。アリスは背中をピンと伸ばしピアノに向き直る。ショコラを抱いたまま右手一本のみを迷わずに配置する。
ポロン
流れる様に指が鍵盤の上を動いた。
跳ねる様につま弾き、緩やかに連符を撫で、キラキラと明るいメロディが広がる。
アリスは楽しそうに鼻歌を合わせた。るーるるーんと愛らしい幼い声がピアノに乗って部屋に満ちる。
以上です
アリスは調子が乗ってきた様で、歌詞を歌い出す。
―ショコラは〜♪ 真ん丸〜おめめにぃ〜♪
茶色い〜 フワフワした毛の〜
く〜ま〜さぁ〜ん
ららら〜る〜ん♪
タイトルに偽り無い極めて写実的な歌詞である。
いや、歌詞はどうでもいい。
エドガーは無表情を微かに崩していた。
驚いた様に瞳が開かれアリスの横顔を見つめている。
それは、透明感溢れるハイトーンボイスだった。
繊細な硝子細工の様に澄んでいて、オルゴールの音の様にきらめきを持つ。
子供特有の無理な張り上げや妙な作り声でも無い。素直な発声で、どこまでも伸びやかだ。
歌声は表情豊かに胸へ吸い込まれた。
るーんの部分で一旦歌は途切れ、ピアノは出だしのメロディに戻った。
どうやらこの歌には二番もあるらしく、アリスはすぅと息を吸い新たな歌詞を歌い出した。
―先生は〜♪ アリスの〜顔にぃ〜♪
白い〜 ベタベタしたのを〜
か〜け〜たぁあ〜
「はい、止めなさい」
スパーン!とエドガーが強く両手を叩く音で曲は途切れた。
「えー」
せっかく心地よく歌っていたのにとアリスは非難の声を上げる。
エドガーは腰の後ろで手を組み、アリスに背を向けた。
外の風景を眺めたまま、エドガーは静かな声で訊いた。
「今の先生は、という歌詞は?」
アリスは問われるままに「二番の歌詞」と簡潔に答えた。
「二番は、今後一切歌うことを禁じます。屋敷の内外を関わらず二度と口にしてはなりません」
「えーっ!?」
なんてことだ。言語弾圧か。
一番と同じく二番の歌詞も写実的なノンフィクション作品である。
無論、小さいアリスに言葉狩りだなんだと難しい言葉が分かるはずもないが、不当な権力の行使を感じざるをえなかった。
アリスはキイッと逆上してわめく。
「先生がアリスに変な白いおしっこかけたの本当なのにぃ!先生が悪いのー!」
プンプンと腕に持ったショコラを振り回し、必死に教師サイドの非を訴える。
「そんなことより」エドガーは唐突に振り向いた。そんなこと、の一言で流す気である。
「アリス様には何一つ取り柄が無いと思っていましたが、声楽の才能がおありとは驚きました」
褒める気があるとは思えない言葉でだが、エドガーはアリスの歌を評価した。厳しい彼にアリスが高い評価を得るなど初めてだ。
だが当のアリスはそれどころじゃない。
自分の発言は無視されるわ取り柄が無いだわ、悔しくて悔しくてたまらない。
怒りで耳たぶまで赤く茹だつアリスを横に、エドガーは上の空でせわしなく考えを巡らせていた。
顎に指を当て、ふむ、と独り言の様に言う。
「もう一度一番を歌ってみて下さい。ああ、ピアノの下手な演奏は結構です。アカペラで。できれば歌詞も無くしドレミの音階で歌って下さい。稚拙で気が削がれます」
ジワリとアリスの両目に涙が溢れた。
前から大嫌いな先生だが、やっぱり大っっ嫌いである。
歌はお勉強とはかけ離れたアリスの自由な楽しみなのに、何で教師にあれこれいじわるされなければいけないのか。
ブチンッとアリスの感情が決壊する。
「うっ…えっぇ…ぁああああ〜っ!やだもん!バカ!!歌わないもん!」
怒涛の様な泣き声が鼓膜を引き裂いた。
エドガーはやかましさに顔を背けながら、この大音量の秘密が明らかになったなと心中で呟く。
歌で鍛えられていたのか。いや、“泣き”で歌声が鍛えられたのか定かではないが。
しかし、いくらアリスに対し無神経無表情のエドガーでも、涙をいっぱいに流してえんえん泣くアリスの姿に今回ばかりは責任を感じた。
今回アリスに落ち度は無かった。
奇跡的に発見したアリスの唯一無二の才能に、少々自分が暴走してしまったようだ。
普段はアリスの鼻を摘んだり、ほっぺをむぎゅ〜と両側から押し潰したりと力技で泣き止ませてきたのだが、今使うにはふさわしくない気がする。
エドガーは床に片膝をつき、椅子の上で泣くアリスと視線を合わせてみた。
「アリス様」
できる限りそっと声をかける。
「うぅぁあぁあっ、あぁああっうぇえぇああぁあ」
アリスはぎゅうとショコラを抱き締め、今も新しい涙をポロポロと落とし全身全霊で泣きじゃくっている。
どうしたものかと、エドガーは泣くアリスに顔を寄せた。息が触れ合う程に近く。
「アリス様」
もう一度、そっと。
ようやく気付いたのか、アリスはしゃくり上げつつもうるむ目を開けエドガーを見た。
グスッグスッとまだ体が震えている。目元も鼻の頭も真っ赤だ。
可哀想、なんて似合わない感想がエドガーの胸をよぎった。
エドガーは問う。
「いつも、アリス様は泣かれた時旦那様にどう慰めていただいているのですか?」
うぐうぐ、アリスはしゃっくりにつっかかりながらも答えた。
「パ、パはぁっ、だっこ…し、てくれるっ…だも、んっ…」
「なるほど」
アリスの小さな背中と膝の下をエドガーの腕が支える。
ふわり
アリスは浮遊感に包まれた。
エドガーはひょいとアリスを抱き上げ、そのままアリスの座っていた椅子に腰掛けた。
そして、膝の上にアリスをポフンと座らせる。
アリスは驚いて涙も引っ込んだのか、濡れた瞳をぱちくりと瞬かせた。
「…ご機嫌は直られましたか?」
エドガーの声が頭のすぐ上から降ってくる。アリスの背中はぴったりとエドガーの胴体に付けられているので、なんだか体にエドガーの声が反響する様な不思議な感覚だ。
…ぐすん……すん…
すすり泣きの声は小さくなっていく。
エドガーの腿の上には、桃の様なアリスのお尻の柔らかな感触がある。
アリスはアリスでゴツゴツぐらぐらと収まりの悪い足のクッションが気に入らないのか、お尻のちゃんと安定するポイントを探しモゾモゾお尻をズラしている。
モゾモゾ…モゾ…
ようやくぴったりとフィットする場所を見つけ、アリスは動きを止めた。
大部落ち着いた様で、頭を大きく反らせエドガーを仰ぎ見た。
「これだっこじゃないもん…ただの椅子だもん」
まだ拗ねているのか、ブゥと膨れている。
「ちゃんと手でもだっこしなきゃダメだもん」
エドガーは大人しく従い、アリスを後ろから抱き締めた。
アリスの抱いているショコラごとすっぽりと包む。
ベルトだー。
アリスはエドガーの腕ベルトにニッコリご満悦で、腕を掴んだり引っ張ったりイタズラする。
「今日だけですよ」
「やだぁ!」
「もう未来永劫しません。ベタベタされて不愉快です」
「…うー!バカ!先生なんかどっか行っちゃえ!」
人前でアリスに二番の歌詞を歌われたら、エドガーの人生は本当にどっか行っちゃいそうである。
エドガーに後ろから手を重ねられ、アリスはご機嫌で両手弾きの練習を再開した。
おしまい
GJ!
アリス可愛い!エドガーとの掛け合いが面白い!
シリーズもっと読みたいです。
>人前でアリスに二番の歌詞を歌われたら、エドガーの人生は本当にどっか行っちゃいそうである。
ワロタw
アリスの設定がSEXしても差し支えない年令で言動がこれじゃ、ロリじゃなくて知的障害者だろ
文章はうまいと思うが、設定がひどい
アリスを年令もロリにしてロリスレ行ったほうがよいと思う
せっかく書いてくれてるのに悪いが
アリスの中身が少女というより幼女だ
設定年齢より確実に10歳は幼い感じで、ちょっとキツい…
あれ?幼女だと思ってた
年齢に言及してる箇所どこだろう
ここ
>>427 自分もこの18というのが気になって素直に楽しめないうちのひとり
ロリならロリで構わないんだけどなー
12、3歳くらいかと思ってたw
>>545 これはエロゲの登場人物がどんなにロリでも18歳以上とされることの
揶揄だと思ってたんだがw
18歳以上うんぬんは商業ロリの注意文を真似ました。
アリスはロリ系スレにしますね。ごめんよ。
読んでくれた方ありがとうございます。
わかってないのは一部のアホだけだから、移動しなくていいのに
まぁそんなアホがいるとわかっている場所に無理にいる必要も無いわけで
実際、
>>545は、ソフ倫規制を揶揄してネタとして書いたんだろうけど、書いちゃった以上
「あれはネタです」ってフォローしない限り、それは作者公式に18歳以上って設定でしょ
どうしても、読んでいて、その設定がちらつく人は存在するだろ
読者を限定・・・とまでは言わないまでも、気になったり、多少引いたりする人もいるような設定を
あえて導入したのは、作者自身が選んだこと
だからと言って、スレ違いでも何でもないし、このスレを出て行く必要は全くないと思うが
ネタをネタと(ry
今回の話とは関係ないけど、たまに、ただのソフ倫規定を
本気で法的規制か何かと勘違いしている人って、いるよな
>>552 ネタ≠嘘
この場合、18歳以上という嘘ネタを吐いたんじゃなくて、ネタで18歳以上に設定したら、
ロリキャラのはずが池沼になったってだけ
それが良いとも悪いとも俺は思わんが
555 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/05(金) 18:19:54 ID:w1FjEIjw
あげようか
つうか、作者に聞きたいんだけど、結局アリスは18歳なの?
はい、問題解決
あとは、ちゃんと主従してるから、このスレでもいいし
ロリということで、ロリスレでもいいし
作者さんの好きな方で書かれると良いかと
ありがと。
別設定の主従ネタストックも幾つかあるし、今後もお邪魔させていただきます。
他の方の作品が早く読みたいし、
アリスは忘れて投下を待つ流れで…。
男主女従スレが容量いっぱいで書き込めなくなっちゃったんだけど、こっちに投下していいの?
投下途中だったから全部落としたいんだが。
いいんじゃないかな
気を悪くしないで聞いてほしいんだけど、
あまりスレを占領しないでね
他の人の投下の後は一日は投下できないから他書き手は控えてるけど、どうやら間を置かず連投してるよね
普段あまり投下がなかったから大丈夫かと思ってましたが、気遣いが足りませんでした。
しばらく投下は控えます。すみません。
女主男主のジャンル明記して注意文を添えたらOKじゃないかしらん。
その、よければうちも姫様やカーナや投下したい。
統合の意見も出てたし、いいんじゃない?
投下やめちゃったのかな…
復活待ってます
ちょっとこんな場ですまんが女主の投下いいか
投下しないと保存数最大になっちゃっててもう書けない
執事とお嬢様。NGは名前欄の「罪と、その先へ」で
身を伏せたままの篠村が、まるで懺悔する罪人に見えたのだ。
ユリカの胸を憐れみがかすめ、そっとなだめる様に篠村の乱れた髪を撫でてやる。
「悪いのは篠村じゃないから気にしないで」
そう呼びかけても、篠村はユリカの膝にすがりつき顔を上げない。
彼は震えていた。
いつもあれ程に静かな男を、自らの幼い独占欲がここまで追い詰めたのか。
今更ながらにユリカは己のを馬鹿げた行動を呪った。
「私の悪ふざけだし、黙ってればいい。誰にもバレない」
そう言い聞かせるように呟き、ユリカは自らの頬にかかる黒髪を耳にかけた。
長い髪の流れ落ちる肩や胸は、手形や鬱血の跡がまだらに散り生々しく赤い。
ユリカの声はかすれている。初めての行為の疲労のせいもあるが、怖かったのだ。
バレたらどうなるのか。
今は、それが怖い。
この家の一人娘の自分とその執事。二人の体が交ざった事が知れたらどうなってしまうのか。
篠村もそれを恐れているのかとユリカは思う。
ユリカは彼に自分を抱かせたのだ。
ユリカから一方的に誘い、篠村の理性を引き剥がすまで執拗になじって、彼の欲を手に入れた。
彼は私を怨むだろうか、嫌うだろうか。
それ以前に、微かにでも女として愛してくれたことはあったのだろうか。
顔を上げさせて問いたいが、これ以上彼を傷つけてまで何を求めるのだろう。
ユリカはシーツにくるまれたまま、無力に篠村を見下ろしていた。
翌朝。
ユリカを待っていたのは最悪の結末だった。
「篠村が、辞めた?」
朝食の時間、母の報告を聞いたユリカは呆然とその言葉をくり返した。
母は寂しそうに微笑んで頷く。
ユリカの脳が氷柱を打ち込まれたように痺れた。
「私も驚いたわ。そんな、急にね…でも、十何年も勤めてくれた篠村の初めての我が侭なのよ」
ユリカは黙ったままそれを聴いていた。
どこか実感が無く、言葉は心の表面をするすると滑り落ちるだけだ。
「我が侭、最初で最後になってしまったけれど…。だから引き留められなくて」
――私のせいだ。
どうしたらいい。
ユリカは真っ白に血の引いた顔で椅子から立ち上がった。
途端に鋭い痛みが秘所を突く。昨夜失った物が、痛む。
ただならぬユリカの様子に母も腰を浮かせるが、「大丈夫だから」とユリカはうわ言のように告げる。
心配そうな母の顔を振りきりユリカは部屋を飛び出た。
必死で篠村の部屋へと駆けるのに、貧血で揺れる世界は回り、夢の中を歩むようにもどかしい。
喉元を覆う襟首の、長袖のブラウスで隠したその身はいたるところに昨夜の痕がある。
全身が重く、痛く、ひどくだるい。
手首に真っ赤に残った篠村の手の平の痕も、噛みつかれたような胸の赤も、手荒なまでに抱かれた証。
篠村がそうなるまで、無理矢理に誘った愚かな自分の証だ。
「篠村っ!」
部屋の扉を突き飛ばすように開けて転がりこめば、まだ、篠村はそこに居てくれた。
安堵に思わずその場で崩れ落ちそうになる。
篠村は驚いたように瞳を開くが、ユリカの黒髪の乱れた様と、激しく上下する肩に彼女の強い焦燥を知った。
そして、彼は穏やかに微笑むと、ユリカに深く礼をした。
再び見る、許しを乞うようなその姿にユリカの全身が震えた。
片付けられた篠村の部屋。空になった棚。篠村は何も残さないつもりなのか、私物は郵送用に全て包み終えられている。
乱暴に開けられた扉は蝶番を軋ませながら緩やかに閉じてゆく。
扉が閉まる音に弾かれ、ユリカは怒鳴った。
「どうしてよ!」
篠村は顔を上げ、激昂するユリカを穏やかに見つめる。
「私が悪いのにっ。そんなに私が嫌なら文句の一つも言えばいいじゃない!」
わめきながら、ユリカは涙を滲ませる。
違う。どうして彼を責めているのだろう。こんな事をするはずじゃないのに。
あまりに醜い自分が情けなく、涙がボロボロと溢れ落ちた。
篠村は静かにユリカに歩み寄ると清潔なハンカチを差し出す。
「申し訳ありません」
もうやめて。
ユリカは悲痛な声で叫んだ。
「謝らないでよ!」
がらんとした部屋の空気を裂いて、それは反響する。
勝手に好きになって、執着して、どうしても篠村の思いが欲しくて酷い事をした自分。
謝られれば、その度に矮小な自分を目前に叩き付けられるようだった。
篠村は決して受け取られないハンカチをそっと戻すと、いいえと首を振った。
「悪いのは私なのですよ、お嬢様」
いつもの、いつも以上の柔らかな篠村の声。
ユリカは涙に濡れたままでキッと篠村を睨み上げた。
「どうして?」
篠村の表情は憎らしいほどに穏やかだ。
自らを睨み付ける強い視線すらも愛しむように、篠村はふっと瞳を細める。
白状をするように、ゆっくりと篠村は言った。
「私は、ずっと…お嬢様を束縛していました」
何を、とユリカは声を上げそうになった。散々束縛してきたのはこちらだ。
ユリカが幼い頃から傍らの篠村に無理を言っては困らせて、昨夜だって――
篠村は一歩ユリカに踏み出した。
そして、深く跪く。
「お嬢様、お慕いしております。…昔から、変わらずにずっと…」
ユリカは目を張って眼下の篠村を見る。
驚きよりも、信じられない気持ちが強い。
かすれる声で否定した。
「嘘…。昨日私があんなことしたから…篠村は私にそう言わされてるだけでしょ?」
「いいえ。愛しい方だったから、だから私はお嬢様を汚してしまった」
篠村の笑みは悲しそうな自嘲を帯びた。
「汚してしまうことを恐れていたのに、もっと前にお嬢様から離れるべきだったのに私には出来なかった。
…無意識の内に、貴方が私に依存するよう仕向けていました」
叱り、愛し、守り。
常に親以上に側にある大きな存在に、幼いユリカが傾倒しない筈などないのに。
「貴方を独占したかったのですよ。私だけを見ていて欲しかった」
篠村はユリカを仰ぎ見る。
ユリカは泣き出しそうな顔で篠村を見下ろしている。
「なら」ユリカの声は震えている。
「なら、どうして辞めてしまうの?…私を好きなら…側にいてよ」
それなのに、篠村は微笑んだまま首を横に答える。
「私は、私の欲望で貴方に傷を付けてしまいました。これ以上お嬢様の未来に干渉することは、許されません」
「…関係ない」
「私はもう大人ですし、執事です」
「そんなの知ってる。私は…私は篠村がいい」
「いいえ、ユリカ様はもっと良い方と幸せになれますよ。執事と添い遂げるよりもずっと幸せに」
篠村は何を言おうとしているのだろう。
ユリカはそれを聞きたくなくて焦っているのに、喉が震え言葉が出てこない。
「私はユリカ様の物です。ですが、ユリカ様は私の物ではありません。ユリカ様には…私では駄目なのです」
篠村は寂しそうに笑っていた。
大の男のはずなのにあまりにも儚げな笑顔だった。
「将来ユリカ様にふさわしい方が現れます。きっと、すぐに」
ユリカには未来がある。
これから誰かと恋に落ち、成長をしていくのだろう。
まだ小さな世界しか知らないユリカに、自分という人間が蓋をして閉じ込めることはできない。
屋敷の外に出てたくさんのものに触れて、そして一番大切なものを見つけてほしい。
それは、執事という自分に固執した、歪んだ目では決して見つからないだろう。
誰よりもユリカの幸せを祈っているのは篠村なのだ。
ユリカはただ黙って涙を落とした。何も答えられなかった。
昨日篠村と繋がっていた体が、ひどく痛かった。
小さな手荷物だけを提げ屋敷を後にする篠村を、ユリカは見送っていた。
「ねえ」
ポツリと、何かを思い付いたようにユリカがその背中に声をかける。
篠村が振り向いた先には、目元を赤く染めたユリカがうつ向いている。
「連絡はしてちょうだい」
篠村はユリカへと向き直り、頷く。
「はい」
ユリカは顔を上げると、ふいに笑った。
「まだ、判らないわよ。未来は」
篠村は虚をつかれたように息を飲んだ。
「大人になった私がやっぱり篠村を好きになる未来と、篠村がまだ、私を好きでいてくれるかもしれない未来」
篠村の愛する人は、晴れやかに笑った。
だから、篠村は思った。
いつか二人の歩む道が交わるのなら、それは罪に怯えることのない未来なのだと。
了
以上です
>>567 GJでした!
お嬢様も執事も互いに思いあってるのに離れてしまうのが切ないけど萌えました。
もしその気があるなら、二人の幸せな未来も読んでみたいです。
男主に落としてた続きですが、他の人が投下したがってるのに気付かずにスレ占拠してた自分が恥ずかしいんで戒めの意味も込めて投下は断念します。続き投下するかもって気にして投下見送ってる方いらしたら気にせずどうぞ。
そういうわけで未完になってしまったので、館の主人と使用人のシリーズは保管庫にも保存しないでください。未完のまま保管されるのは見苦しいと思いますので。
これ以降は名無しのROMに戻ります。
>>567 篠村さんのお嬢様への想いが深すぎて切ないですね……
リビドーのままに相手を求めるのもありだけど、
ストイックで献身的な愛もやはりいい!GJ!!
>>576 丁寧で繊細な描写と切ない人間関係が大好きだったので、大変残念です。
もともとが過疎気味のスレだったので
連投を喜んでいた人も多かったのではないでしょうか。
名無しに戻られるということですが、
ROMと言わず次回作を楽しみにしています。
>>576はエロが苦手みたいだから創作板に移住したらどうか。
あれ以上エロなしが続くようなら言われただろうし。
つーか、いきなり容量一杯にされてしまいアナウンス出来なかったから立ててしまう人や元々派生な経緯やこっちに統合することを知らない人が難民にならないといいけど。
こう言う場所に投下する場合、技巧も大事だけどルールも守らないとな…
本当にすみませんでした。
二回くらい合併の話は出てたんでずっと見てた人は大丈夫だと思いたいです。自分の不手際で皆様にご迷惑おかけしてしまい申し訳ございません。
スレの空気まで濁してしまい、本当にスレ汚しでしかなかったと反省してます。
復活とか新作とか言われると心苦しいので改めて書きますが、このスレにはもう二度と投下はしませんし、もうROMでいることもやめるつもりです。それぐらいしないと難民になった方々に申し訳がたちません。
本当にすみませんでした。
言い訳がましいですが、後編はエロ描写がほとんどでしたし、後編まで投下したら完結でした。
でも、おっしゃる通り投下マナーがなってなかったらエロがあろうがなんだろうが意味なんてないと思うので本当に申し訳ありませんでした。
こうして謝罪するのももしかしたらマナー違反なのかもしれませんが、どうしても謝りたくて。
これ以上はスレの空気を悪くするだけなので、皆さんスルーしていただけたらと思います。
最後までこんなですみません。
続き読みたかった…
どうせ過疎スレだし連投あってもなくても投下なんてなかっただろ
もういいわ
追い出しスレに後編投下したの言ったらいいじゃないか。
>>579 あそこはちょうど二次だけど主従ものっぽいのが投下されていたから見てたよw
これで問題は解決された
書き手はまた新たな場所で新たなSSを書くのでしょう
次の方お待ちしています
もしかして愚痴スレにぐちってた?
あれは他の書き手じゃないの?
そんな文面だった
せっかく終わりそうだったのにわざわざ他スレの話題まで持ってこないでくれ
何で作者カワイソスみたいになってんのかもわかんないし
どうでもいいです
べつにカワイソスにはなっていないような。
統合時はこんなもんかなーと。
女の書き手さんは語りが長いから、gdgd長引くんだよな。
一言自己弁護せずにいられんつうか。
>>586 すまん
嫌な空気を断ち切る
ひぐちカッター(AA略)
スレが荒れると毎回思う
ああ、このスレこんなに人がいたんだwと
>>567 ちょっと遅れたけどGJ!!
その前の日のエピソードも読んでみたかったな
追い出しって初めて見た。
しかしエロ八割て書いてるあたり
>>578に対する当てつけというか、この長文言い訳とか負けずぎらいだねえ…
誤爆や愚痴スレってカキコに行っている人案外多いんだな。
しつこい
このジャンルって下手打つとただの昔の少女マンガみたいになるよね
難しいわ
次スレで統合するなら、スレタイに【身分差】って入れて欲しいと思ったりするんだけど。
いらないだろ
あそこで少女小説短編ダラダラ続ける気なのかな〜。
お前ももう終わった話題をダラダラ続ける気なのか?
統合無理な気がしてきた。
あっちは見ていなかったんだが、今回読んで、やっぱり同じ主従と言ってもベクトルが違いすぎる。
投下ルールの問題もあるし、今回の件でそれほど過疎ではないと…
きもい粘着いるし統合やめないか?
自分も止めた方が良いと思う
あまりに雰囲気悪過ぎる
この流れに行くための壮大な計画の気がしてきたw
まあ、あちらは女の人が好みそうなシチュだしあんまり賛成でなかったよ
ごばくすれわろた
まぁあまり長々と気に病む事でも無いと思うぞ
ついでに言うと長々と書く事でもないと思うぞ
今後どうするべ
女主投下します
乱暴なお嬢様がダメ執事を夜の街で再教育。
前後編予定で前編まで。ヒロインが口悪いギャル注意。
NGはタイトルの「ホスしき!」でお願い。
―ガシャーン!
「ぅああっ、もっ申し訳ありませんっ!」
若い執事は慌てふためいて床に屈み込んだ。
台拭きで床に溢した紅茶を必死で拭う。
(僕は最低だ!またヘマやってしまった)
もさい丸縁メガネを涙で曇らせながら床をセコセコ拭く男の姿。正に無様である。
「マ〜キ〜ノォ〜…」
地を這うような声にビクッと縮み上がって、執事・槇野は声の主を見上げた。
「亜美子(あみこ)お嬢様っ…」
名を呼ばれたその少女は仁王立ちで腕を組み、這いつくばる槇野を鬼の形相で見下ろしていた。
カールした茶髪のロングヘアーが背でうねり、地獄の炎を背負うかのような威圧感を発している。
「お前はなぁ…」
彼女が組んだ手の先には、槇野が床に落として割ったカップの取っ手が握られていた。
あわわわわ、あれはお嬢様のお気に入りのカップ…!
槇野は歯の根も合わぬまま、真っ青になって身を凍えさせる。
身動きのとれぬ獲物を前に、ラメのシャドウで飾られた亜美子の瞳がクワッと見開かれた。
「本っっ当に使えないダサ野郎だな!!もっさいメガネして!!!」
怒号を全身に叩き付けられ槇野はフギャアと飛び上がる。
「ひぃいっ、ごめんなさいごめんなさいっ!」
手で頭をかばい身を屈めてヘコヘコ謝り続ける。どこまでも無様である。
「お前っ!今月入ってドジしたの何度目なんだよ!言ってみろ!」
「は、はいぃっ、ごっ、五回でございますぅ」
「五回!ご・か・い!だぞ、それがプロのやることか!お前サービス業舐めてんのか!?」
「ななな舐めてないですっ!申し訳ありませんっ申し訳ありませんっ」
もう鼻水すら垂らす勢いで泣き、土下座を続ける槇野。
その床に擦り付ける頭を、今にもミュールで踏み潰しそうな剣幕の亜美子。
典型的な支配者と奴隷の図である。
しかし、亜美子はチラと時計を見ると、怒りを堪えるようにフゥーと長く息をついた。
「…もういい。片付けろ。すぐに出るぞ」
「…グスッ…はひぃ…あ、あのっお、お出かけなのですか…?」
鼻をズビズビすすりながら槇野は立ち上がる。
「そうだ、お前も出かけるんだ。――その前に!」
ビシッと亜美子の艶やかなデコレーションのネイルがテーブルに向けられた。槇野の視線もそれを追う。
「このテーブルの様子を良く覚えておけ」
「はいっ!」
槇野はハンカチでメガネや顔を拭き、真剣にテーブルを見た。
テーブルは一見して雑多な印象があった。
紅茶の飛沫は勿論のこと、亜美子の飲み終わった濡れたグラスやソーサーがまばらに置かれ、水滴の跡も目立つ。
(あんまり綺麗じゃないな…)
ウムムとテーブルと睨めっこする槇野をチラと見やり、亜美子は部屋を後にした。
片付けが終わった槇野は、可愛いらしいワンピースに着替えた亜美子にリムジンに放り込まれていた。
「うわぁ!」
座席のソファーにドテンと尻餅を付く。
次いで亜美子も乗り込み、運転手によりドアが閉められ。
「新宿まで」
席に座った運転手に亜美子は行き先を告げた。「かしこまりました」とすぐさま返事がきた。
速やかに車は発進する。窓から見える空はもうだいぶ暗い。
槇野はキョトンと隣の亜美子を見た。
「亜美子様、し、新宿に?」
「そうだ。わざわざお前のために行くんだからありがたく思え」
「えっ?そんな!ぼ、僕なんかのために!?ええっ、何をしに行かれるのです?僕、こんないつものスーツだし…」
槇野は自分の着衣を見下ろす。黒いスーツはまだいいとしても、白いシャツは立襟だしクロスタイだし、繁華街に行ったら悪い意味で目立ちそうだ。
亜美子は「まあ、変だけど、そんなに浮かないかも」と良く分からないことを言う。
槇野はその意味はよく理解できなかったが、とりあえず緊張に身を正した。
(亜美子様がダメ執事の僕のためにわざわざ…。一体どこに連れて行ってくださるのだろう)
タイを直したりメガネを直したり落ち着きのない槇野とは対照的に、亜美子は足を組んでリラックスしたまま外の景色を見つめていた。
窓を見た、横顔でポツリと話し出す。
「お前はさ、いつも何を思いながら私の世話してんの?」
「へっ?」
不意な質問に、槇野は答えに詰まる。
「その…ええと…」
いつも亜美子の身の回りの世話をする時、常に思っているのは、亜美子自身のことである。
今日はご機嫌悪いなーとか、風邪気味なので心配だなーとか、今日もオシャレで可愛いなーとか、綺麗だなー好きだなーとか……
槇野は頬を赤くした。
執事の分際で何をと自分でも思うが、可愛くて強気な亜美子に惹かれているのは事実なのだ。
(いつも僕は亜美子様に見とれて、亜美子様のことで頭がいっぱいで…)
ゴニョゴニョ
こんなことを本人に言うわけにもいかず、しどろもどろになってしまう。
亜美子は要領を得ない槇野の答えにケッと顔をしかめた。
そうこうしてる内にリムジンは目的地に辿り着いた。
テレビ番組でよく中継されている場所だ。今も駅前の開けたスペースに人が大勢たむろしていた。
「ここでいい、ありがと」
亜美子が停車指示を出す。
駐車スペースに車を停めると、槇野は亜美子にタイを掴まれリムジンから引きずり出された。
ゲホゲホとむせながら、亜美子に連れられるままに信号を渡り、路地に入る。
槇野は徐々に不安になった。
「あ、あのっ、どこに…」
だが亜美子はそれに答えずスタスタと進んで行く。
なんだか妖しげなネオンや店名の連なる通りではないか。
肌も露な女の子の写真が貼られた看板も見え、槇野の不安は最高潮に達した。
亜美子は、一件の店の前で足を止めた。
「ここだ」
「はぁ……は、はぁああぁいぃっ!!?」
その店を見た瞬間、槇野は通りに響く絶叫をかました。
『Club・ORIGIN』
黒光りする柱と金の装飾に包まれた扉。その横のショウウィンドウに飾られた茶髪の男性達のスナップ。
そう、そこはまぎれもなく、
ホストクラブだったのである。
つづく
以上です
さっきまでやたら人がいたのに感想の一つも付きやしない
ここや誤爆スレで益体もない事をグダグダやってる暇があったら
>605にGJの一つも言ってあげれば良いのに
完結してから感想つけようと思ったんだがw
投下乙でした
どうすっべか。
女主で二本ネタある
男主で二本ネタある
このスレの間だけ様子見でこのまま統合を続けてみたらどうだろう
ぶっちゃけ議論で人が沸いても人が多いのと職人さんが多いのは別次元の問題
職人さんが少なきゃ分割してもお互い共倒れになるだけだよ
荒れたらまた別ジャンルとして住み分ける感じ?
>>612普段は住んでるスレに過疎と思われるほどレスも付けないのに
わざわざ他に行って前にならえなレス付けるとかねーよw
誤爆で同情集める前にこっちにも投下してくれてありがとう!繊細ですばらしい!て書けばいいのに
もう荒れて居るなぁ。
だいたい同じ主従でも力配分が全く逆だからむりだよ。
それにそれほど過疎でもないと思う。
投下渋滞が軽く起こったら単純に読み手は喜ぶだろうけど、…
あっち立て直したら期待してる人も居るみたいだしあの人も戻ってくるだろうし。
>>606ギャルなのか?!
ギャルに従事するヘタレ執事w
続きまってます
男主と女主はジャンルが180度違うから難しいのかな
投下用に男主書いてる途中なんだけどどうしよう
愚痴スレがここ専門になっとるw
このスレを一杯まで実験的に女主・男主の総合として扱うか、
男主スレをもう一度立てるか、結局はどうしましょうか。
個人的には、書き手は投下最初に女主か男主なのかを明記する。
読み手は苦手な方だったらNGかけてスルーする、でいいかなと思っています。
必要でしたら男主スレを立てます。
>>623 まだ統合したばっかだし、スレ立てるのは見送りで良いんじゃない
どうせ次スレ立てるときにテンプレ改変なり分ける話なりしなきゃなんないしね
分割はその時の雰囲気で決めた方がいいと思う
男主投下します。
性格の悪い見習いに振り回される男騎士。女天下。
前後編の前編投下です。
最初なので名前欄に「男主」と入れてみます。
NGは名前欄の「男主:ナイーツ」でお願いします。
とある大陸のとある騎士団領。とある騎士団のお城。
もふもふ…
城のすぐ裏手の木陰で、白い毛玉が丸くなっていた。
それは、綿菓子のようにふわふわワッフルの髪の女の子。
丸めた布を枕にして、芝生に横になり小さく寝息をたてている。
すぴー…ほよほよ…ぴふー…
プラチナブロンドの長い髪に包まれ眠るさまは、まるで豪華なペルシャ猫のようだ。
平和に眠りこける少女の元へ、芝生を踏みしめ近付く人影がある。
男だ。しかもかなりデカイ。
男は少女が枕にしている布を見て、前髪をさっぱりと上げたその額に青筋を立てた。
「こんのクソ見習いはっ…」
忌々しそうに呟きながら身を屈め、少女の枕をわし掴む。
そして、「起きぬか!!馬鹿もん!」一気に引き抜いた。
「…っ!」
下敷きを引き抜かれた少女は芝生に頭を打ち付ける。白い髪がモサッと地面に広がった。
驚いて身を起こす少女に男は一喝した。
「貴様はどうして毎っ回毎回無断で稽古を抜けるんだ!」
体も大きければ怒鳴りつける声もまた大きい。ビリビリ響く重低音は大の男でも縮み上がる程だろう。
しかし少女は、ブスーッと迷惑そうな一瞥をくれただけで男から顔を背けた。
それどころか説教など完全に無視し、自分の髪をいじくりだした。
「サイアク…汚れた」
自慢のワッフルに絡みついた草や土をちまちま指で払い落とす。
「マシュリ!貴様ぁ!聞いているのか!」
名を呼ばれても気にしない。少女マシュリは優雅に毛繕い中である。
マシュリの態度はさらに男の神経を逆撫でした。
忠義に命を賭す騎士団に、こんな不遜な騎士見習いが居ていいのだろうか。
この男―マシュリの上官である隊長シスレイは、怒りにわななきながらマシュリを睨んだ。
マシュリの厚い二重瞼は常にぼんやりと眠たそうで、やる気も覇気もゼロ。
さらには無表情な上に淡白で、どうにも相手を小馬鹿にしているようにしか見えない。
いや、実際に馬鹿しているのは確実なのだが。
(許っっせん!)
沸騰したシスレイはマシュリの目前に、さっきまで枕だった布を突き出した。
「貴様は何を下敷きにしていた」
それはマントである。
隊長各がその証として左肩に下げるものだ。
「俺が手合わせする間預かっておくよう渡した物だろうが!なぜ上官の物を粗末に扱う?」
そう、一時間程前、修練場でとある新米騎士と手合わせをする前に、マントを肩から外しマシュリに持たせていたのだ。
それが、いざ終わってみたら試合を見学しているはずの見習いは消え、マントを枕に裏庭ですーぴー昼寝。
騎士団創立以来の問題児っぷりである。
怒れる上官殿の詰問に、マシュリはさも面倒くさそうに答えた。
「…芝生に直に寝たら髪が汚れる」
「なっ!」
マシュリさんは、上官のマントより乙女のふわふわヘアが大事なのである。
なんと恐ろしい思想回路をしているのだろうか。シスレイは開いた口が塞がらなかった。
その時、
「おーい、シスレーイ!」
頭上から隊長を呼ぶ声がした。
驚いてシスレイが声の方向を見上げれば、城の二階の窓から美しい女性が手を振っている。
その姿を見た途端シスレイは大いにうろたえた。
「だ、団長っ」
「ははは、お前またマシュリをいじめてるのか?酷い奴だ」
ラランス団長は華やかな笑みを浮かべた。
茶がかかった濃い金色の髪と切長のつり目が色っぽい。
「な、だから俺はいじめてなど」
慌てるシスレイの様子にカラカラ笑い、ラランスは窓枠に足を掛けた。
ラランスの行動にギョッとするシスレイと、いつも通りの無表情でぼーっと見上げるマシュリ。
「受け止めろよ」
シスレイに言うと、ラランスはヒョイッと窓から飛び降りた。
「ちょ!?待…っギャアアア!!」
なんでまた窓から!
血相を変えて駆け寄るシスレイ目掛け、楽しそうに落ちる美女一人。
バムッポヨヨンッ
シスレイの顔面がラランスの巨大な胸で押し潰された。
見事、ラランスは彼の腕の中に着地した。
「む…むがっ」
団服の布地越しでも十分に感じる胸の柔らかさに、シスレイの頭が見る間に燃え上がった。
じー…
マシュリは無言のままその光景を見ている。半月型の目からはまったく感情が読めなかった。
「よーしよし、着地成功。さすがは騎士隊長だぞ!立派立派!」
ストンと地に降りると、ラランスはシスレイの肩をバンバン叩いてやった。
「団長…いつも俺をからかって」
うううと唸るシスレイに楽しげに笑う団長。
じー…
見つめるマシュリ。
「マシュリはまだ見習いになって日が浅いんだから、怒鳴ったりしちゃだめだろ」
そう言ってシスレイを見上げるラランスの顔立ちはどこか狐を思わせる。セクシーで意地悪な笑みだ。
「こ、こいつは本当に性根が曲がってて、少しは怒らないと」
なんとか反論しつつも、間近で見るラランスの美貌に赤くなるシスレイ。
じー…
二人の姿にマシュリは一体何を思うのか。
つづく
以上です
>>631 おー、いい感じ。後編期待してます。じー…。
性別交互の主従三人モノかー。真ん中の男は気苦労がたえなそうw
これは続きが楽しみだ
質問なのですが、主従スレはイラストの投下はOKでしょうか。
他のスレではたまに絵もあるのか
>>634 イラストだけ投下なら板違い。
以下LRより抜粋。
>以下は禁止、より相応しい他の板でどうぞ。
>画像の貼り付け →半角二次元/お絵描き・創作等
二次スレは見ないから知らないけど、SSの挿絵としてのイラスト投下なら他のシチュスレ
で見たことある。
了解しました。わざわざすみません。
ありがとうございます。
男主投下します。
続き物の厨二ファンタジーです。
(あらすじ)読心できるショタと義手の女傭兵が船に乗った。
NGはトリかタイトルの「光の庭へ」でお願いします。
海に出て3日目。
「怖、怖い、お、降りたいですっ」
船の柱の最上部に作られた見張り台の上、手摺にしがみついて神官衣の少年がへたりこんでいた。
少年の名はジュネ。
満12歳の小さな上位神官である。
(僕は馬鹿だ。なんで登っちゃったんだろう)
自分をいくら罵ってももう遅い。船員に勧められるままホイホイと柱の梯子を登りきってしまったのだ。
登る最中「下を見ちゃ駄目!」との指示に素直に従っていたジュネは、見張り台から辺りを見て初めて真っ青になった。
小さな足場に立ち強い潮風に身を晒せば膝が笑う。
このまま吹き飛ばされ大海原にポチャンと落ちるんじゃないかとすら思えた。
海に生きる船乗りと毎日顔を合わせていたお陰で、ジュネの脳裏には鮮明に水難事故の末路が浮かんでいる。
パンパンに膨れた真っ白な溺死体。フジツボまみれの白骨死体。藻が絡んだ人体らしき塊。
(僕もあんな姿になるのかなぁ。お父さんもお母さんもきっと悲しむよぅわあぁあ)
震えるジュネの姿に甲板は騒然となった。
「神官殿固まってないか?」
「早く降ろして差し上げろ!」
船員が口々にわめいて慌てて柱の下に駆け寄るが、誰より早くその柱を登る影があった。
青い髪が残像を残し風を切る。
ジュネの護衛、女傭兵のカーナだ。
ジュネの声を聞くやいなや、カーナは柱に沿う梯子を目がけ床を蹴っていた。
右手の鉤爪を梯子に掛け、それを支えに振り子のように足を梯子に着ける。
カーナは瞬時に両手を伸ばし、猫科の獣のように身を屈めた。
ギチ、ギチ、ギチ
伸ばされた右腕の歯車が金属音をたてて回る。
そして、十分に勢いを溜めた後、カーナは弾けるように上に跳んだ。
――柱を縦に駆け上がっている。
船員達は唖然としてその人間離れした技に見入った。
ブーツの底が数段飛ばしで梯子を蹴る硬い音が、猛烈な勢いで連なる。
そして、カーナはたった一息の間で見張り台へと辿り着いた。
「ジュネ様」
台に乗り出すカーナの顔を見た時、ジュネは安堵のあまり泣き笑いになってしまった。
カーナの、いつもと同じ小作りな綺麗な顔。静かな青い瞳。
カーナが側に来てくれただけで恐ろしい妄想は途切れた。
しかしジュネのこわばる筋肉は未だほどけず、手摺から体が離れない。
「降ります」
ポツリと言い、カーナはジュネの背に左腕を伸ばし抱き寄せた。
とがった鋼の甲殻で組まれた右腕の義手は、主君を抱きしめるのに適格ではない。
641 :
光の庭へ13:2008/09/14(日) 18:33:29 ID:2rloBbKj
しなやかな女性の腕に絡め取られ、ジュネの体はようやく手摺から引き離された。
「うう…ごめんね、ごめんねカーナ…」
ジュネは両腕両足をカーナの胴に巻き付け必死で捕まる。柔らかな胸に顔を埋め、景色を目に入れぬよう固く目を閉じた。
「降りて来たぞ」
甲板にホッとため息が満ちた。
ジュネを体にくっつけ、今度はゆっくりと両手両足で梯子を降りて来るカーナ。
その姿はさながら猿の母子、と思うが不敬なのでもちろん口にできない。
しかし、ようやく床に降ろされたジュネが「お騒がせしました」と周囲を見回した瞬間、お猿の映像がジュネに滑り込む。
ジュネは真っ赤になってうつむいた。
「見張り台から、白潮が見えました」
カーナが船員にポツリと告げた言葉に、その場に居た全員の顔色が変わった。
「ほ、本当ですか?」
船員に訊かれ、カーナは目線で頷いて短く答える。
「船の前方に」
すぐに望遠鏡を腰に下げた見張り係が梯子を登っていった。
何事か解らないジュネは、不安そうにカーナを見上げる。
その視線に気付き、カーナはジュネの正面に屈んだ。
「アアメという生き物をご存知ですか?」
言いながら神官衣の乱れを直してやる。
ジュネはうん、と首を縦に振った。
アアメは陸地の川辺でも多く見られる。海に多く生息し人間を好んで食う、一般的に魔物と呼ばれる類の生物だ。
「白潮とは、アアメが脱皮し海に捨てた皮を求め海蟲が群れ、海が白く濁って見える現象です」
「え…。じゃあアアメが近くにいるの?」
「はい」
「うえっ!じゃあこの船危ないよね!?」
「はい」
再び青ざめるジュネの耳を、見張り台から怒鳴る船員の声がつん裂いた。
「おい本当だ!進路一時の方向に白潮あり!距離はまだある!」
脅えてと首をすくめるジュネとは対照的に、船員達はカッと体熱を上げた。
船長への報告のため走る者。自らも望遠鏡で前方を覗く者。正に水を得た魚のようにいきいきと動き出す。
海を渡る人間ならば、魔物から船を守って戦うことも珍しくない。
瞳を覗かずとも、顔を見るだけでジュネには船員達の戦歌が聞こえてきた。
戦う。殺す。命をかけて。
男性的な狩りの悦びが高まれば、同時に種を残そうとする本能も高まる。
―護衛ちゃんとヤりたい。
―右腕がトゲトゲして邪魔だから、バックから抱きたい。
―とりあえず戦いの前に一発相手してくれないかな。紅一点だし。
うわ…見るんじゃなかった。
思わず、カーナを船員の視線に晒さぬよう立ち塞がってみるのだが、他人からはこの少年が何をしているかイマイチ解らない。
「神官殿、ご安心下さい。この船には魔物を迎撃する備えがありますから!」
力強く言ってくれる船員に、ジュネはひきつった顔で頷いてみせた。
戦いが、始まる。
投下ここまでです
待ってましたよ!
ジュネかわいいなぁ
続きも期待してます
気づくのちょい遅れたw
GJでした!!
ジュネ良いキャラだな
カーナ可愛いよカーナ
ナイーツ続き投下します。
前中後編になってしまってその中編。
NGは名前欄「男主:ナイーツ」でお願いします。
「お疲れ様です!シスレイ隊長」
昼間に手合わせしてやった新米騎士と宿舎の廊下ですれ違った。
顔にすり傷や痣をこさえた新米は、尊敬の瞳でシスレイを真っ直ぐ見上げてくる。
これぞ“理想の部下”の姿。まるで空に伸びる新芽のように爽やかだ。
シスレイは新米君の眩しさに感動しつつ、軽く手を上げて答えてやった。
「打ち身は痛むか?早く寝て明日に備えろよ」
隊長殿から優しい言葉を掛けられ、新米は感激に全身を上気させる。
「だ、大丈夫ですっ!またご指導よろしくお願いします!おやすみなさいっ」
ビシッと敬礼すると、嬉しそうに小走りで廊下の角に消えて行った。
(はー…可愛いもんだなぁ)
シスレイは羨ましそうにその背中を見送った。
彼とうちのクソ見習いを取っ替えて欲しい。
だが、団長直々に「マシュリはお前の付き人にする。お前が面倒を見ろよ」と言われている。部下のチェンジなど夢のまた夢。
明日も明後日もマシュリに振り回され続けるのだ。
「あー最悪だ…。俺も早く寝るか…」
風呂上がりで寝ている髪を掻き、シスレイはトボトボと自室へ向かった。
全員で六人の隊長の個室は横に三部屋ずつ向かいあって作られている。
左右に並ぶ部屋の、向かって右側の真ん中、シスレイは自室のドアノブに手を掛けた。
ギイと微かに軋みながら木製のドアが開く。
ドアの隙間から覗く部屋の中、備え付けのベッドの上に白い毛玉が――…
バタン
開きかけたドアを速攻閉めた。
シスレイはドアノブを握ったまま数秒考える。
居た。
奴が居た。
(な、ななな、何でだよ!?)
シスレイは意を決し、再びドアを開ける。
部屋に飛び込みベッドを見れば、掛け布団をすっぽり被ったマシュリが頭だけ出してこちらを見ていた。
枕とシーツにプラチナブロンドの長いワッフルがもふもふはみだしている。
「マ、マシュリ…貴様、ここで何をしてる」
軽いパニックに声が上擦る。
マシュリは何の動揺も見せず、眠た気な目のままシスレイのひきつる顔をじーっと観察した。
その小さな唇がボソッと動く。
「ここで寝る」
「だっ、ダメだ!何を言ってるんだバカモン!見習いは別の宿舎だろ、とっとと帰…っ」
シスレイは大声で怒鳴りかけ、自分の口を慌てて塞いだ。
周りに気付かれたらマズイ。
この状況を傍から見たら、部下の女の子を部屋に連れ込んだと思われるだろう。
清廉潔癖な騎士団でそんなセクハラが許される訳がない。
シスレイは大いに焦った。
ベッドに駆け寄り、小声で必死に訴える。
「とにかく帰れって…!ほら、早くベッドから出ろ…!」
マシュリの被る掛け布団を掴み乱暴にひっぺがした。
――布団をペロンと剥かれたそこには、柔らかそうな女の子の素肌があった。
「…」
掛け布団を持ったまま、シスレイは目を真ん丸にして固まる。
マシュリは生まれたままの姿で横たわっていた。
白くきめ細かな肌を惜しげもなく晒しながら、無表情でシスレイを見上げている。
(ギィイャアアアアアァーー!!)
シスレイは声に出せない絶叫を心の中であげる。頭の中で火山がドカーンと噴火した。
「……ふ、…服…は?」
声を押し殺し問うが、マシュリは答えない。
ここは並んでいる隊長室の真ん中だし、廊下を裸で歩いて来た訳はないだろう。
この部屋のどこかに服を隠したのだ。
(こいつっ、テコでもここで寝る気か…!!)
裸のままでは追い出せないし、かと言って男物のデカいシャツを羽織った姿を誰かに見られれば、間違いなくセクハラ隊長の汚名決定である。
いや…落ち着け、落ち着け。
シスレイは自分に言い聞かせた。
この部屋のどこかに服はあるのだから、探せばいいのだ。
(そうだ、服をどこに隠しやがった!)
部屋を見渡そうとシスレイは体を返す。
その時、今まで無言だったマシュリが背中に向かい呟いた。
「…私じゃ、イヤ?…団長じゃなきゃ駄目?」
初めて聞く、消え入りそうに弱い声。
背中に投げ掛けられたその声は、胸にまで染みて何故かシスレイを締め付ける。
ラランス団長の名前が思いがけず上がった驚きよりも、何かがたまらなく歯がゆく、胸がざわついた。
シスレイはゆっくりと振り向く。困ったように眉をよせマシュリを見下ろす。
マシュリは枕に顔を半分埋め、足を抱いて丸まっていた。
親に叱られた子供のように、頼りなく、小さい。
「…何を言ってるんだ。お前じゃ駄目とか、団長がどうとか…そういう問題じゃないだろう」
シスレイの言葉に、マシュリは枕に押し付けた顔を横に振る。
「だって、隊長いつも団長と仲良くしてる」
「あれは、団長が俺をからかって…」
「隊長に叱ってもらってる時だって、団長が横から取ってっちゃう、ズルイ」
ドキン
シスレイの胸が強く高鳴った。
だってこれではまるで、構ってほしいからわざと悪いことをしているダダッ子のようで――
(こいつ、俺に、甘えたかったのか…?)
つづく
以上です
GJ!
続き待ってます
連載中、失礼いたします。
女主で似非レトロ風味
没落した成り上がり金持ちの娘と、彼女に仕える男の話
ほとんどエロくもなく、甘くもなく、全体的に地味で曖昧
苦手な方は名前欄「写真と楓」NGでお願いします。
657 :
写真と楓1:2008/09/20(土) 00:53:09 ID:H+zoZKX5
父が亡くなってから、全て変わってしまった。
それはあまりにも唐突で、気が付いたらわたしは、多くの家具やらの財産と同様に、誰かの下へと払い下げられていた。
わたしに父以外の身寄りはなく、生まれてきた時に母を殺してしまったわたしを、父は憎んでいた。
主家筋にあたる母をを好いた父は、色々なことをして成り上がり、そしてその金を母を手に入れるためだけにばらまいた。
父がようやく手に入れた体の弱い母を、わたしは十ヶ月も孕ませたあげく、あっさりと殺してしまった。
そんなわたしに父から遺されたものは、身の回りの品々と両親の結婚写真1枚きりだった。
すっかり物がなくなってしまった部屋は、がらんとして広く、もうわたしの住んでいた場所のようではなかった。
必要最低限の荷物を詰めた小さな鞄を持って、慣れ親しんできた部屋を出た。
車に乗せられ着いたところには、小さな庭の付いた古びた平屋建てが一つ。
去っていく黒塗りの車は、もう2度と目にすることがないのかもしれない。
玄関の前には、木綿の白い開襟シャツを着た男が一人、立っていた。
「これからは私が、夕子様のお世話をさせて頂きます。村上とお呼び下さい」
初めて見る男だ。
年の頃は20半ばぐらいだろうか、質素だが小綺麗な服を身につけ、真面目そうな端正な顔をして、物腰はあくまでも丁寧だ。
けれどその目には、一瞬憎悪とも嫌悪とも付かない色が表れたような気がした。
私はこの男と暮らすのだろうか。得体も知れない、敵意を抱いているかもしれないこの男と。
けれど、どうしようもないことだ。わたしには他に行くところがない。
「わかりました村上さん。よろしくお願いします」
「村上で結構です。どうぞこちらへ」
下げた頭を持ち上げ、促されて家の中へと入る。
古びているが、柱などの造りはしっかりしているようだ。張り替えたばかりらしい畳の匂いが、鼻につく。
決して広くはない。居間が一つと、和室が二つ。今まで暮らしてきた家の広さに比べると、十分の一にも満たない。
あてがわれた和室の一つには、小さな本棚と文机だけが置いてある。
「みすぼらしい環境で戸惑われるかも知れませんが、どうかご容赦ください」
「いいえ、大丈夫です。ありがとう」
何か用事があるのか、男はわたしを残して部屋を出た。
文机の上に、鞄から写真立てを取りだして置いた。
固い顔をした、父と母が並んでいる。
窓からは、緑の葉をそよがせている楓が見える。
花も咲かせぬ木だ。
それだけだった。
658 :
写真と楓2:2008/09/20(土) 00:53:50 ID:H+zoZKX5
それからの生活は、静かなものだった。
彼は無駄なことを喋らなかったし、わたしも殊更話しかけはしなかった。
彼はわたしが学校へ行くあとに仕事に出かけ、私が帰ったあとに帰ってきて、黙って食事を作ってくれる。
その繰り返しが、淡々と続く。
学校に関するあれこれ細々としたことや、ほんの少しの力仕事など、わたしはただ必要なことを頼み、彼がそれに応じる。
頼む前に、すでに用意していることも多い。
あやまって湯呑みを割ってしまった時も、彼は黙って欠片の一つ一つを拾い、何事もなかったかのように新しいものを差し出した。
もともと独り暮らしだったらしい家に、わたしが一人増えても、ほとんど何も変わらないようだった。
わたしの頼みを、黙って当然のように聞く人と暮らすことに、わたしはすぐに慣れた。
私をただの同居人としてではなく、まるで仕えるべき主として、控えめながらもその線を決して崩さない彼が少し不思議なだけだった。
生活が質素になったことと周りの人が減っただけで、わたしの生活も今までと何も変わらないと思っていた。
身の回りのものは、たびたび家に来る五十がらみのつねさんという女性と一緒に買いに行く。
彼女は、彼の遠縁の親戚にあたり、お手伝いさんのようなことを生業としていて、頼まれてこの家にもたびたびやってくるのだと話した。
彼女はとてもお喋りで、彼が父親の代からわたしの父に従っていたこと、わたしの住んでいた家は売りに出されたこと、父に仕えていた者達は皆それなりのところに職を斡旋してもらったことなども、聞かないうちから話してくれた。
けれどつねさんは、一番知りたかったわたしがこの人に引き取られることになった経緯については、何も話さなかった。
わたしも何も聞かなかった。
659 :
写真と楓3:2008/09/20(土) 00:54:38 ID:H+zoZKX5
ふとした隙に、彼がわたしを見ていることがある。
侮蔑のような、嫌悪のような、そんな目でわたしを見ていることがある。
そしてわたしはどうしてこの家で自分が暮らしているのか、あまつさえ彼が私に従うのか、たまに考えることがある。
わたしには継ぐべき資産ももうない。容貌が特に美しいわけでもない。
父は一代で成り上がり、高貴な血筋であるわけでもない。
ましてわたしが頼んだわけでもない。
彼がわたしに従うべき理由など、何もない。
けれど彼は、何も強いることなく、静かにわたしに仕えている。
いつでも静かに側にいて、絶え間なくわたしに気を配り、彼が作った境界線越しに憎悪で染まったような視線で時たま見つめる。
そして、それを決して越えようとはしない。
だから彼はわたしが『村上さん』と呼ぶたびに、『村上で結構です』と断りを入れた。
けれど、わたしは彼を呼び捨てにする気はない。
そのうちわたしは、彼の名前を呼ばなくなった。
相手しかいない空間で、わざわざ名前を呼ぶ必要はない。
彼を『村上』と呼ばないことが、あの視線で見つめながらわたしに従い続ける彼へのたったひとつの反抗だった。
660 :
写真と楓4:2008/09/20(土) 00:55:39 ID:H+zoZKX5
あれは雨のひどい日だったろうか。
夕刻から黒い雲が雷をかき鳴らしながら、空を覆っていた。
薄い屋根に跳ね返る雨の音はやかましく、近くに落ちる雷の音とともに小さな家が揺れる。
わたしは雨も雷も苦手だった。
幼い頃に、夜陰と大雨に乗じての強盗騒ぎがあったのだ。
侵入者に脅え、竦み上がる家の気配を今でもよく覚えている。
この小さな部屋ではどこにも逃げようが無く、わたしはただ窓から背を向け、部屋の真ん中でうずくまっていた。
絶え間なく続く雨音と、雷の閃光に喉からこらえきれない悲鳴が漏れる。
見かねたのだろうか、普段は決して部屋には入ってこない彼が、障子を開けた。
かがみ込んだ彼の目線が、わたしを捉えた。
「ひっ…!」
「大丈夫ですか、夕子様」
雨の音と、細かな振動と、なれない人の気配がたまらなくおそろしかった。
喉がとても重い。
「お願いだけら、わたしの傍にいないで頂戴。家から出ていって。一人にして…」
「かしこまりました。ごゆっくりお休み下さい」
静かに彼が障子を閉める。わたしはまた、部屋でひとりうずくまる。
縮めた手足がしびれ、喉がからからに渇ききったころ、雨はすでに収まっていた。
どのくらい経ったのだろうか。
部屋から出ても、家の中に人の気配はなかった。
玄関の戸を開ければ、軒先に彼が立っていた。
吹き込む雨風で彼の肩は濡れて重い。髪の先までしっとり濡れて、ぽたぽたと水滴が垂れていた。
彼は何も言わない。わたしも何も言えない。
ふと見た時計の針を見れば、一刻半はいたことになる。
取ってきた手拭いを彼の肩に掛ける。ほんの少しだけ彼に触れた。
再び彼の視線がわたしを捉える。
ぞっとするほど冷たかった。
わたしの言葉は、どんなに傲慢に彼の耳には聞こえただろう。
そんな恐怖によるうわごとさえ、忠実に守る必要がわたしには分からない。
わたしは彼が怖かった。
だからその手を握った。両手で縋るように包んだ。
必要もないのに人に触れたのは、はじめてだった。
冷え切った手のひらは、一瞬でわたしの両手の熱を奪う。彼へと吸い込まれた熱は、あっという間に消えていく。
わたしたちの手は冷たい。
661 :
写真と楓5:2008/09/20(土) 00:56:14 ID:H+zoZKX5
その手を急に引かれた。
引き倒され、畳に打ち付けてしまった頭が鈍く痛み、けれどそれにひたる間もなく、意志持つ力に体を押さえつけられた。
ずっとうずくまっていたわたしの体は、力が入らない。
見上げた彼の表情は、はじめて憎しみを剥き出しにしていた。
憎悪に染まった視線はわたしを射抜く。
わたしはどこまでも弱者だった。
何もない厄介者の娘が陵辱されるなんて、当たり前の話だった。
どうしてずっと以前からこういうことにならなかったのか、むしろ不思議なくらいだ。
わたしはどこかほっとしたような、泣きたいような気持ちで彼の顔を見上げた。
陰になって彼の表情が見えない。
頬に当たる熱っぽい吐息が、湿り気を持って肌を伝わり、その感触にわたしはおののいた。
声と雫が落ちてくる。
「やめろとおっしゃれば、すぐにやめます」
それは嘘だ。
わたしは辱められているのだ。
この期に及んでそんな言葉が、何の役に立つのだろう。
金も力も何もないわたしが、哀願の言葉を発したところで、止めさせることなどできるわけがない。
「もう、やめて頂戴…。離れて…」
それでも怖くて、恐ろしくて、どうしても弱々しい言葉が漏れた。
体がふっと軽くなる。
上からのいた彼は、だらしなくはみ出た裾をなおしながら、何事もなかったように台所に向かう。
わたしは投げ出された手足のまま、ぼんやり天井の木目を眺めた。
膝下まで覆っていたスカートは、よじれて太股のあたりでくしゃくしゃになっている。
のろのろとした手つきで、ブラウスのボタンを締め直す。
少し湿った衣服は、やけに体にまとわりついた。
なぜ彼は、自分の言うことを聞いたのだろう。
いつもの問いが頭に浮かぶ。
じんわりと滲んでいく天井の木目を見ながら、まとまらない考えが流れていく。
「お茶が入りました」
いつもと変わらない声がかかる。奥の間でさっさと着替えたらしく、彼の衣服はすでに乾いている。
居間の明かりは、何も知らないように柔らかく暖かそうに見えた。
「わかりました。今行きます」
温かいものを飲みながら、ゆっくり考えようと灯りのついた居間へ向かう。
その途中で、靴下が片方脱げいてたことに気がついた。
662 :
写真と楓6:2008/09/20(土) 00:57:15 ID:H+zoZKX5
彼と出かけたことがある。
和裁の授業で、男物の浴衣を作ることになった時だ。
同級生は、父親や兄弟に作ってやるのだとはしゃいでいた。
身近に彼以外の男の人がいるはずもなく、わたしは彼の浴衣を作ることにした。
電車に乗って、彼とともに生地を買いに行った。
店は広い。
どれがよいかと聞けば、どれでもよいと答えられた。
並べられたたくさんの反物から適当に見繕い、彼と布地をあわせる。
藍色はきっと貴方に似合うでしょう。
そう言って、控えめだが上品に仕上げられた藍の布地を彼にあてた。
気まずかったのか、それとも触れられたのが不快だったのか。
後ろを向いた彼の耳だけが鮮やかに朱に染まり、わたしはそれを不思議なような、可笑しいような気持ちで眺めていた。
一ヶ月後にできた藍色の浴衣は、我ながらうまくできていた。
そして浴衣は一度も袖を通されることなく、箪笥のどこかにしまい込まれた。
できあがった浴衣を渡した時の彼の苦い目を、わたしは藍色とともによく思い出す。
663 :
写真と楓7:2008/09/20(土) 00:58:07 ID:H+zoZKX5
わたしがこの家に来て1年になろうとしている。
父と母の結婚写真は日に晒されて、少し色褪せた。楓は相変わらず、花もつけずに青々としている。
どうして父は狂気のように奔走して、母を手に入れようとしたのだろう。父の主であった母は何を思っていたのだろう。
わたしのせいで母を亡くした父は何を思っただろう。
わたしには、分かるようで分からない。
写真で微笑む両親の面影は遠い。
わたしは裏の林へと向かった。
そこは、彼の父親が首を吊ったところだった。
父の右腕だったその男は死に、父はその男の妻と息子の生活を援助した。
ちょうどそのころから、父の羽振りは良くなっていった。
その男の息子は、父の会社に勤めるようになった。
まもなく男の妻は肺炎をこじらせて亡くなった。
そして父も死んだ。
彼はもう別のところへと勤め、わたしと彼だけが今ここに残っている。
全ては、おつねさんやまわりの噂とわたしの推測だ。
遺留分、特別代理人、そんなささやきは聞こえるが、何も本当のことを語ってくれない。
そんな簡単な言葉で括れてしまったら、どんなにか私の気持ちは晴れやかだろう。
相変わらず彼は時たま、嫌悪と憎悪の籠もったような視線でわたしを見つめ、
けれど初めて会った時とそれは微妙に色を変えていた。
その視線を感じるわたしの気持ちも、すでにあの頃と同じものではない。
664 :
写真と楓8:2008/09/20(土) 00:58:55 ID:H+zoZKX5
「どうしたのですか、夕子様。もうすぐ日が落ちます」
さくりと草を踏みしめる音がし、振り返れば、彼が立っていた。
まだ少し冷たい風が彼の髪を揺らし、私のスカートをふわりと持ち上げ、彼の父親が吊り下がっていただろう枝がそよぐ。
「村上さん」
「村上で結構です」
久しぶりに彼の名を呼ぶ。
こうして普通に呼べば、私と彼はごく当たり前の青年と少女でしかない。
「どうしてあなたは…」
問おうとしていた言葉が止まる。
振り返ったわたしを彼の腕が捉える。
首を絞めるように、きつくきつく抱き締められ、身じろぎさえできない。
あの雨の日と同じ匂いがした。
それでも、離してと言えば、彼はわたしを離すだろう。
それは彼が決めて、わたしに押しつけたルールだ。
彼が従う限り、わたしは主だ。
どこまで、何を、許して良いのか、全てわたしが決めなければならない。
何も分からぬまま責任を強制され、わたしはそれに縛られる。
「貴方に従います」という彼の言葉以外何者も、わたしは持っていはしないのに。
背を撫でる彼の手は熱く、ブラウス越しにも徐々にわたしへと浸み渡っていく。
だからわたしは彼に許した。
圧倒的な無力感の中で、ただわたしの意志によってのみ従う彼に流され、その背中に縋る。
ぼんやりと主であるしかないわたしに、彼に問うべき言葉はなかった。
夕日を背にして影になる彼に浮かぶ表情は、暗く見えない。
肌を這う感触に震えながら、彼の名を呼ぶ。
「村上さん…」
「村上で結構です」
「わたしはあなたを呼び捨てにはしません」
「…かしこまりました」
そして彼はわたしの言葉に従う。
血を垂れ流したかのように、空は赤い。
夜になったら、わたしは彼の名前を聞こうと思う。
きつく抱きしめる腕の中で、わたしは目を閉じた。
以上
続きは、鬼畜でも和姦でもお好きな方をご想像下さい
何この生殺しw
雇用関係じゃない主従って面白いね。
エロは妄想で我慢するとしても
村上さんの視線の意味は知りたい。
続ききぼん!
村上さんとどうなっちゃうのか期待
こういうロウテンションでじわっとくるのイイ!
ホスしき!の後半投下します
6〜12前振り。13シャンパンコール。15〜本番。
NGは名前欄の「ホスしき!」でお願いします
「ぃらっしゃぃませーぃ」
「「ぃらっしゃぃませーぃ」」
入店と同時に男達の威勢の良い声が掛けられる。
槇野は思わずたじろいだ。
いらっしゃいませ、の「せ」にアクセントがあり、尻上がりに高くなる独特の発音。少しかすれた声は、酒ヤケというやつ?
暗い店内に、酒と煙草と香水の混ざりあった甘苦い空気が充満し、無数の男女の笑い声がさざめきあう。
亜美子はカウンターの人物と目くばせし、小声で話し合った。
「遅くなってごめんなさい」
「いえいえ、大丈夫です。ではこちらへどうぞ」
応対するこの男は、地味な黒い服でホストという感じではない。ボーイさんなのだろうか。
男にテーブルへと案内される間、亜美子が「彼は内勤」と耳打ちしてくれた。どうやらホストクラブ内にも様々な職種があるらしい。
女性同伴ならば男でも入店できるとすら知らなかった槇野には、まったくの未知の世界だ。
槇野は歩きながらそっと周囲の様子を盗み見た。
間接照明で巧みにムードを煽る店内に、黒で統一された背の低い机とソファーが並ぶ。
キャバ嬢のような派手な女の子から、意外にも地味なOL風の女性まで、客はそれぞれのテーブルでホスト達と盛り上がっていた。
(皆楽しそう…)
アンダーグラウンドな怪しい場所かと思ったが、ホストクラブはなかなか明るく開放的な雰囲気だった。
槇野は少しほっとする。
予め用意されていたらしい角のテーブルと着くと、内勤は会釈してどこかへ向かって行った。
亜美子に倣って、ソファーの隣に槇野もおずおずと腰を下ろす。
「おい」槇野の腕をグイッと引き寄せ、亜美子が耳元に顔を寄せた。
(ひ、肘に胸が当たってます!耳に吐息がぁっ…)
一瞬で沸騰する槇野だが、真剣な様子の亜美子の手前邪まな態度を出す訳にはいかず、ビシッと背筋を伸ばした。
「今から一流のホストがテーブルに付いて、お前に接客の基本を叩き込む。お前のために特別に店に頼んだんだ。
一応お客さんの少ない時間を選んだけど、それでも忙しい合間を縫って来てくれるんだから、しっかりと身に刻めよ」
「は、はいっ!」
亜美子の言葉に槇野は気を引き締める。
僅かでも成長して帰らねば、お嬢様にもこのお店にも申し訳が立たない。
そう固くなる槇野と厳しい顔で監督する亜美子の前に、トレイを手にしたホストが現れた。
「いらっしゃいませ」
微笑む茶髪の彼は、正に槇野が思い浮かべるホストそのものの姿だった。
軽く跪くと二人にお冷やとおしぼりを出してくれる。
「ああ、ど、どうもです」ホストが両手で丁寧に差し出すおしぼりをペコペコ受け取り、槇野は感嘆した。
(イケメンだなぁ…)
長く流した前髪に、フェミニンとも思えるパーマのかかった襟足。鼻筋が通った精悍な顔に似合った細身で綺麗なスーツ。
これぞザ・ホスト。彼の前で古めかしいスーツを着て座っている自分が恥ずかしい。
亜美子が着席を勧めると、イケメンはきちんとお辞儀をして通路側の小さな丸椅子に座った。
槇野はハッとして彼の一挙一動に注目する。
この礼儀正しさと洗練された動き。彼の顔立ちよりもこれを見なくてはならないのだ。
「優夜と申します」イケメンは自己紹介し、槇野を見た。「今日はこちらの王子がホストのお勉強をされるということで…」
ブゥウーーーッ!
槇野は口に含んでいたお冷やを盛大に吹き出した。
「きゃあっ!?コラァ!ふざけんなよ槇野!」
「ずびばぜんっ!で、でも…王子って…」
突然の王子呼ばわりに槇野はゲッフゲッフと激しくむせる。王子って何?犬野郎の言い間違いではないだろうか。
幸い噴射物を被ることを免れた優夜は、慌ても怒りもせず、素早く槇野に清潔な手拭きを渡す。
そして、瞬時に台拭きでテーブルを拭いた。
優夜は苦笑して槇野に言う。
「お客様は皆『姫』。接客するホストは『王子』なんです。いきなりだからびっくりしますよね。ごめんなさい」
「いえ!そんな、僕が悪くて…」
優夜の手際の良さは圧巻だった。一瞬でテーブルも元通りに片付け、槇野もフォローするこの気配り。これが一流のサービスか…!
見れば、小さなワゴンがテーブルの脇に置かれており、そこに替えの灰皿や氷など、必要な物がすぐ取り出せるようになっているらしい。
僕も真似しようとじーっとワゴンを見ていた槇野の脇腹を、亜美子が肘でつつく。
「おら、テーブル見ろ。よそのテーブルも」
テーブル…
槇野はハッとして他の客のテーブルを見た。
(ど、どのテーブルも…綺麗すぎる…!)
「それでぇーなんか、私が悪いみたいに言われちゃってんのぉ」
「えーマジ?それ最悪じゃん!ありえないわー」
まるで友人との飲み会のようにはしゃぐあの一角。
担当となっているホストと会話に花を咲かせている横で、脇に小さく控えたヘルプが素早く机を片付けている。
「ねえ〜、どういう髪型の女の子が一番好き?」
「そうだな…好みっつーか、キミの髪型がいつでも一番好きだよ」
恋人同士のようにくっついているあのテーブルでも、客が目を離した瞬間、さりげなくホスト自身が客のグラスの水滴を拭った。
汚れた灰皿や飲み終わったグラスは自らの前に引き下げ、それをヘルプがササッと回収する。
なんという完璧な流れ…。
白鳥が水面下で激しく水を掻いているように、彼らは客に夢を与えながらも、常に綺麗な環境を保つ努力をしているのだ。
整ったテーブルで過ごす客は、ストレスなく心から寛げる。
(それに比べ僕は…いつもつっ立ってるだけで、全然亜美子様のために動いてない…)
自らを顧みて重い顔になる槇野に気付き、優夜は優しく声をかけた。
「上手いやり方さえ覚えたら、すぐに王子も最高のエスコートができるようになりますよ」
…優夜さん優しい。槇野はもさいメガネの下で目をうるませた。イケメンで性格が良くて、そりゃ指名もくるはずだ。
「とりあえず何か飲みますか?グラスの出し方や乾杯のお作法も覚えるでしょ?」
うーん、と亜美子はブラウンのロングをかき上げた。
「こいつお酒弱いからなー。なんか水多めの割り物でお願い。私は焼酎」
…亜美子様、結構飲むなぁ。
「はあ…優夜さんも努力なさってナンバーワンになったんですよね」
呟いた槇野の言葉に優夜は破顔した。
「やだなぁ!俺なんかがナンバーワンな訳ないじゃないですか!俺はヘルプですよ」
……は?
優夜さんのレベルでヘルプだと…?ホストクラブの戦力は底無しか。
亜美子は気まずいことを口走った馬鹿の頭をバシッと叩いた。
「なんかごめんなさい」槇野の代わりに謝るが、優夜はいやいやと笑って流す。
「あ、ほら本物のナンバーワンが来ましたよ」
テーブルに近付く人影に気付き、優夜は顔を上げた。つられて槇野も亜美子もそちらを見る。
「悪い、お待たせ」
さっと上げた指に輝くシルバー。暗い中で映える純白のスーツ。ナチュラルに黒いショートカット。
こ、これがナンバーワン…?
槇野はズリ落ちた丸メガネを掛け直した。
…フツメン。
そう、彼は雰囲気イケメン。髪型と服装がきまっているフツメンさんだった。
「ううん、昴、忙しいのに来てくれてありがと」
亜美子はスバルと彼を呼んで笑った。ムッ。久しく見ない可愛い笑顔である。
昴は慣れた様子で亜美子の隣へ腰掛けようとするが、慌てて逆側へと回った。
「今日はカレが主役だったね」ハハハと笑って槇野の隣に座る。
背もたれに腕を回し、槇野を包囲するようガバッと体を向けた。
開いたシャツの胸元から、フェロモンだかフレグランスだかがフワンと漂う。
(え…何この人近い、近いって)
槇野は思わず亜美子側にずり寄って逃げる。嫌な汗が額につたった。
「ね、槇野君さ」
ふいに名前を囁かれ、バクンと全身が跳ねた。「はいっ!?」
「君はすごく真面目で、いつも亜美子ちゃんのことを思って頑張ってるんだね」
ハスキーで、柔らかな声。槇野は思わずはうと胸を押さえた。
「そ、そうなんです!でも毎回毎回失敗ばかりして…」
「思いは強いのに、中々言葉や行動に出せない?」
「はいっ!本当に…空回りばっかりなんです」
「うん。それじゃ、君も辛いよね…解るよ」
「解っていただけますかぁ?うぅ、ありがとうございますっ」
と、ものの数秒で槇野は昴に落とされた。
亜美子は槇野の単細胞を横目で見ながら、「そういうのいいから実践的なの教えてあげて」と焼酎を煽った。
「ハハ、そうだね。じゃ、ほら見てごらん。今独りで席にいる姫は居ないよね」
「はい」
「姫が退屈したり寂しくならないように、ちゃんと気遣ってキャストを回してるからなの」
なるほどー、為になるホスト講座である。
槇野はふむふむと昴の言葉を噛み締めた。
厳しいプロ意識。客や先輩を立てる心構え。さらには女性の誉め方まで。
ホスト式の接客を必死に学ぶダサメガネの横顔を、亜美子はそっと見つめた。
槇野の、不器用だが真面目な眼差し。グラスで隠した亜美子の口元がふっと緩む。
「じゃーシャンパン入れよっかな!」
「ありとぅーす!」
突然挙手をしてピンドンをお買い上げした亜美子に、テーブルの周りはにわかにお祭り状態になった。
「ひっ、何?」
わらわらと集まってきたホストの群れに槇野はキョロキョロと辺りを見回す。出来上がった亜美子はケラケラ笑っていた。
マイクを持ったホストが司会者のように飛び出て、テーブル前で音頭を取り出す。
「こーちらーの姫からぁ、シャンッパンッいただきました〜!」
「「ぅぇあぃ!」」
よく聞き取れない合いの手が一斉に上がった。
「あ、感謝の心をぉ、あ、込めましてぇ(あいあい!)シャンパンコォール行くぞオラァ!(おぁーぇ!)
ハイ、姫ありがとう!(っえーい!)マジ可愛いよ!(かわいいよぉあ!)
ハイ、王子もイケメン!(あい!あい!)マジイケメンだぁ(いけめんだぁあ!)
あい、二人に感謝ぁ!本当にありがとぉ!いっただきまーす!!(いぃただきますぁあ!!)」
異界の儀式に固まる槇野を置いて、亜美子も優夜も昴も、皆高らかに乾杯していた。
「亜美子様大丈夫ですか?」
「だぁ〜めぇ〜」
うわ、酒臭い…。焼酎、ワインにシャンパンとチャンポンした亜美子は見事に酔い潰れた。
行きに通ったネオン街を、亜美子を背負って駅に向かう。涼しい夜風が心地よい。
(疲れたけどすごく勉強になったな。…やっぱりホストさんは皆かっこよかった)
星の少ない夜空を見上げると、途端に不安が胸を突いた。
「あの…亜美子様」
「なにー?」
かったるそうに、背中から投げやりな返事がする。
「亜美子様は、その…ホストさんみたいに、イケメンで話が上手な人が好きなんですか?」
「アホかー」
「え?」
いきなりアホって。
「だ、だって、今日も僕をホストみたいに磨きたいから、店に連れて来たんですよね」
「そんなにホストが好きならホストを執事として雇ってるわアホー」
投げやり調子のまま亜美子は言う。
「お前は本当にバカだなアホー。おらー、ここで休むぞアホー」
「へ?ここで…?」
足を止めると、そこはラブホテルの真ん前だ。
ガチッと全身を硬直させる槇野のうなじに、亜美子は顔を埋めた。
「お前はもう一つ学ぶことがあるな」
酔いも醒めたのか、それともさっきまでは酔ったふりをしていたのか、亜美子の声は少し落ち着いている。
ホテルで学ぶこと…
「せ、性教育ですか…?」
ゴンッと後頭部に頭突きされた。
自らも痛む額を押さえ、亜美子はダサメガネのダメ野郎と呟く。
「“私の気持ち”だ」
大きなベッドの上、バスローブ一枚を纏った亜美子が寝そべっている。
槇野は真っ赤な顔で、亜美子の上に覆い被さった。
「亜美子様…き、綺麗…です」
槇野は慣れない誉め言葉に照れながら、本当に綺麗な亜美子の頬に微かに触れた。
「言うようになったじゃん」
シャワーを浴びた亜美子はすっぴんで、勝気そうな眉と目元の印象が和らぎ幼く見える。
素顔の方が可愛くて好きだと槇野は思った。
「思いはちゃんと言葉と行動で姫に伝えなきゃだめって、教わったので…」
亜美子の胸元を緊張に震える手で開く。
重力で潰れた半円はそれでも可憐な形を保っていた。
桃色の先端を唇でつまめば、酔った体は緩慢に反応を示す。
舌で撫でられ、もう片方を指で押しされて、亜美子の乳首はジワジワと硬度を増した。
「もう…痛いってば!下手くそっ」
「ご、ごめんなさ…」
慌てて口を離し顔を上げる。
睨む亜美子の目はうるんでいた。マスカラではない裸のまつ毛に涙の玉が光る。
「!!痛かったですか?僕初めてで解らなくてっ、申し訳ありませんっ」
途端に青ざめて亜美子をわたわたと心配する槇野。
やっぱりダサいその様子に、亜美子はプッと小さく吹き出した。
「そんな大げさにしなくて平気だっつぅの。……お前は、いつも不器用だしダメ野郎だけどさ」
機嫌良く微笑むのは、やはり酒が抜けきれないからか。
「いつも真面目に頑張るもんな。私、ちゃんと見てるから」
嬉しくて、やっぱりなんだか申し訳なくて、槇野は恐縮したようにペコリと頭を下げた。
「ねぇ…、お前メガネ外さないの?」
亜美子は槇野の腰にすらりとした足を掛けて、槇野の纏うバスローブをずり落とす。
槇野は亜美子の広がった裾の間にぎこちなく手を差し込んだ。そっと指先で探れば、濡れた柔らかいものに当たる。
「メガネ外したら見えなくなっちゃいます…姫からは目を離しちゃいけないんです…」
言いながらそこを上下に擦った。亜美子は両足をヒクンと漕ぐように震わせる。
「んっ…あ、だって、邪魔、じゃんっ、それぇっ」
槇野は亜美子のバスローブを足まで引き下げ、優しく抜き取り床に捨てた。
「見えなきゃ、姫がして欲しいこと…解らなくなるから…」
素肌の亜美子を掻き抱いた拍子に、槇野の鼻先にメガネがズリッと落ちる。
体の分け目を撫でる指はたっぷりと濡れ、試しに一本挿し込めば安々と中に飲み込まれた。
亜美子の体を甘い快楽が襲う。出し入れされる指がひだを撫でた。
「やぁあんっ…あ!あっ、キス、するのに邪魔だって!」
亜美子は槇野の首に抱きつくとメガネをむしり取る。
噛みつくように、口付けた。
どちらの舌もシャンパンの香りが残っていて、二人はキスしたまま思わず微笑した。
「あは、酒くさっ…、うン!ああぁっ!あ!」
笑い声が鼻にかかった悲鳴に変わる。
入口を思い切り指で押し広げ、槇野の不器用で真っ直ぐな固まりがそこに割り込んだ。
「亜美子様っ…あ、姫…大丈夫、ですか…?」
「は…はぁあっ!…あ、あはは、やっぱお前には似合わないな…姫とか」
身を貫く硬い物に涙しながら、それでも亜美子は笑った。
チップを外した爪が槇野の背中に食い込む。痛ててと顔をしかめつつ、槇野も笑った。
お嬢様と執事って、ホストの永久指名に当たるのだろうか。
カップを割るドジが減れば、愛あるアフターも増えるかもしれない。
了
投下以上です
>>682 異界の儀式フイタwww
他に形容のしようがないって感じw
面白かったです。GJ!
684 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 00:36:50 ID:OsG4vQwm
お嬢様、上に参ります。
「今日は私の16歳のお誕生日です!」
「ああ、そうでしたか」
「先生!私にプレゼントは?」
「は?」
「(うわ…やっぱりなしか…)じゃあ、誕生日のお祝いとして一週間お稽古免除とか…」
「馬鹿のまま16まで成長してしまうなんて、めでたいことなど何一つありません」
「な、何その言い方!先生なんて性格の悪いまま老けてもうオッサンじゃん!」
「減点20」
「白髪も出てるし!」
「減点30」
「目元の皺も最近深いし!」
「減点50。はい、罰として数学の課題を増加します」
「ひー!!」
686 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 04:59:05 ID:jBNXeL+b
アリスが大きくなってる!
やりとりはあんまり変わってないがw
先生は何歳くらいの設定?
出戻って来てくれて嬉しい!
この色気の無い会話がたまらん。
ぜひとも続き書いてホスィ。
おかえりーw
実は、青信号の犬を待っている。ずっと待っている。
そして俺は、あの引き裂かれた二人の行方が気になる。
まだ途中ですみませんが、ナイーツの続きを保守代わりに投下します。
NGはタイトルの男主:ナイーツで。
「なあ、マシュリ…」
頭上から名を呼ぶ声は低く優しい。
マシュリはシスレイと視線を合わせようと、そっと仰向けにる。
転がるマシュリの体に合わせ、胸の膨らみもプルルンと揺れた。
胸の先っぽは汚れも知らないようなベビーピンクで、色っぽいというより可愛いらしい印象のほうが強い。
この見習いがまだお子様な風貌だったため、シスレイは性的な興奮を抑えていられた。
「お前は、その、なんだ。俺のことが…嫌いじゃないのか?」
その問いに、マシュリの眠たげな二重の目がゆっくりと閉じられる。小さな肯定の証だった。
無防備に瞳を閉じたまま、マシュリの唇から吐息のような声がそっとこぼれる。
「隊長が好き」
拍子抜けしてしまうような事実にシスレイは頬を染め、「ああ」だか「うう」だかと不明瞭にうめいた。
(これはまいった…。想定外というか、信じられん…)
なんと、今までのマシュリの素行の悪さは愛情の裏返しであるという。
あの悪意に満ちたサボタージュも、上官に対する敬意がみじんも見られない態度の悪さも、全て子どもゆえのひねくれた愛情表現だったなんて…!
……本当かよ。
キッと表情を引き締めると、シスレイはベッドに片膝で乗り上げた。
ズシリとベッドのスプリングが揺らぎ、寝ころぶマシュリを沈ませる。
「おい、それが本当なら証拠を見せろ」
些か意地の悪いシスレイの台詞にマシュリの目線が険しくなった。「証拠って言われても…」とぼやく。
「普段のお前の態度じゃ、いきなり、す、好きだなどと言われても疑うのも当前だ」
シスレイは慎重にマシュリの真意を探ろうとした。
証拠なんて出せないと言われれば、それを盾に言いくるめ部屋から帰らせるつもりだ。
もしこの告白が真実だとしても、今はまだマシュリをどう受け止めていいか分からない。
とにかくシスレイには考える時間が必要なのだ。
お互い意地を張ったように見つめ合っていたが、ややあって「じゃあ、これ」とマシュリがもそもそ動き出す。
何をするのかと見守るシスレイの前で、マシュリは猫のように柔らかな動きで両膝を高く上げた。
「ま、待て!何やって…!」
シスレイの制止も間に合わず、マシュリは足を大きく左右に開く。
足を開けば当然股間も露になる訳で、ふに、と女の子の部分が丸出しになってしまう。
女の子の体の中で、一番恥ずかしいトコロ。
マシュリの恥ずかしいソコが、シスレイの前に大胆に見せつけられる。
ズドッカーーーン!!!
脳内で火山が数十発噴火し、シスレイの全身がボフッと真っ赤に燃えた。
マシュリはたじろぐシスレイをいつもの無表情で見つめる。
「処女膜…、これを隊長にあげる。これが好きだって証拠」
体を折り曲げた無理な姿勢のせいか、囁く声はやや舌足らずだ。言葉の意味を分かっているのか疑わしい程あどけない。
すべすべと白く滑らかな太ももの間、奥の奥に桃色の花びらが柔らかそうに広げられている。周りには毛も生えておらずつるつるだ。
そのすぐ下にはキュッとすぼまった菊の門までよく見え、白いお尻の割れ目をほのかに赤く色付けていた。
(も、桃か…こいつの尻は…)
シスレイの喉仏がゴキュッと上下する。
そのシスレイの反応を欲情と見たのか、マシュリは人差し指と中指で女の子の入り口をさらにふにっと広げて見せた。
ふにー
シスレイの視線をソコに激しく浴びて、ちょっとだけ蜜で潤ってしまっている。
まるで、食べ頃の桃の果実からからピーチジュースが溢れてしまっているようで…。
(ぬ、濡れてる…って見てる場合じゃない!!)
シスレイはやっと我に返った。
「こらぁ」とやや間抜けな声をあげ、マシュリの両腿を掴んで閉じさせる。
「女の子がそんなトコ見せちゃだめだ!しまえ!」
「…証拠を見せろって言ったのは隊長」
「馬鹿!こ、こういうのを求めてたんじゃない!」
照れまかせに掴んだ足をベッドに叩きつける。
勢いでボヨンとベッドの上で弾み、マシュリは不服そうに目を細めた。
(しかし処女膜とは…本気なんだな…)
シスレイはこめかみにじわりと汗を滲ませる。
処女喪失なんて人生に一度きりの大切なものを捧げるというのだから、マシュリの告白は偽りない本心なのだろう。
ええと、ではこの場はどうしたらいいのだ。シスレイは腕を組んで考えこんでしまった。
動きのないシスレイに飽きたのか、マシュリはまた体を丸め、もふもふの長い髪に顔を埋めた。
拗ねたように呟く。
「隊長…騎士なのに女性に恥をかかせるの?私はここまでしたのに…」
ぐ、とシスレイは顔を苦い顔をする。卑怯な責め言葉だ。
マシュリはさらに追い討ちをかける。
「据え膳食わぬは男の恥…」
うぐ。
「部下の面倒を見るのは上官の義務…」
うぐぐ。
シスレイは困った顔でマシュリに目をやった。
マシュリは怠惰な猫のように瞳だけでこちらを見ている。
「…隊長が処女をもらってくれたら、明日からいい子になれるのに…」
(それは、確かに…)
シスレイは考えた。
確かにここで構ってやれば、自分の気を引きたいがために悪さをすることもなくなるかもしれない。
それに、この生意気娘が今夜を境に自分に懐いたらどうだろうか。
従順になったマシュリを妄想してみた。
―名を呼べば、もふもふと毛玉をなびかせて駆け寄ってくるマシュリ。
―厳しい稽古にも一生懸命励み、頭をなでてあげると喜ぶマシュリ。
―ちょっと叱られると、たちまちしょぼくれ涙目になってしまうマシュリ。
(悪くないな…)
思わずシスレイの口元がにやけた。
可愛いじゃないか。なんだか明るい未来が開けた気がする。
シスレイは覚悟を決め、ベッドに両膝を上げた。
マシュリの頭の脇に両手を着く。
「…マシュリ、いいんだな?」
マシュリの顎がこくんと縦に動く。
「よし…覚悟しろよ」
シスレイはかすかに意地悪な笑みを浮かべた。
この見習いに今までの復讐も込め、たっぷりと教育的指導をしよう。
大人の技巧を駆使し、身も心も上官に懐かせるのだ。
わがまま猫への躾が始まる。
つづく
以上です
連載中失礼します。
こちらのスレでは初投下です。どうぞよしなに。
男主、近未来?っぽい世界で、従者は猫耳アンドロイド。
苦手な方は、どうか名前欄: IceDoll でNG指定をお願いします。
「わたくしは貴方の下僕です。」
それが彼女と私の出会いだった。
誰も訪れる事のない地下深くに凍結されていた私を、目覚めさせたのは彼女だった。
彼女は起きぬけの不機嫌な私に、必要な情報を淡々と伝えた。
私が眠りについてから既に300年近く経過したこと。3国間の戦争は終結し、ひとつの国家となったが、今になって新たな脅威に怯えている事
。そのために、この時代に私の力が必要だと言う事。
こちらの了解も取らずに起こしておいて、ずいぶん勝手な要請だと腹も立ったが、それを伝えるメッセンジャーが可愛らしいだった少女の姿を
していたのは、この時代の人間達の策略だったのかもしれない。
私の両手を取って、すがるような目で「貴方が必要なのです」と懇願されれば、嫌とは言いにくい。
もう、二度と地上に戻るつもりは無かったのに。ましてや、人殺しの私を必要とする時代など。
しかし、結局私は、地上に帰還した。彼女に寄り添われて。
彼女は実に優秀な『下僕』だった。
強化人間である私のサポートをするために調整されたアンドロイド…彼女はそう自己紹介した。
状況分析と戦闘支援に特化された彼女の助言も援護もとても的確で、人外との戦いの中で私は常に、背中の心配をすることもなく、存分に己の
力を発揮する事ができた。
戦闘下においてだけでなく、食事や身の回りの世話など、私生活のあらゆる物事を一人でこなしてくれていた。
与えられた、広いが丈夫な鍵と監視つきの部屋に帰ると、私は彼女と二人きりになる。
料理は上手いし、掃除も行き届いている。毎日の体調管理も滞りなく、働き者の優秀なメイドなのだが、私には少しだけ不満がある。
「…食事は、お気に召しませんでしたか?」
浮かない私の表情を気遣って、彼女が遠慮がちに声をかける。
「いや、とても美味いよ。」
そう答えながら、私は皿の中身を平らげた。お世辞ではない。さっぱりした野菜ベースのソースが、合成肉特有の臭みを消して食べやすかった。
「それは良かったです。今日はソースの味付けを少し変えてみましたので、お口に合いますかどうか、心配しました。」
彼女はにこりと笑って、汚れた皿を下げる。
この笑顔だ、私の憂鬱の元は。
私と接する時に作る、いつも同じ笑顔。
アンドロイドとはいえ、彼女は生身の部分が多く残されていた。顔も機械化していないので、少女らしい自然な表情を作る事ができる。それな
のに、彼女の笑顔はいつも、作り物のような情緒に欠けるものに見える。
私の考えすぎなのかもしれない。
『わたくしは貴方の下僕です。』
その言葉に囚われすぎているのかもしれない。
彼女はキッチンで丁寧に皿を洗っていた。食器洗浄器を使えば楽だろうに、彼女はいつも手洗いする。
ひとつに束ねられた柔らかなプラチナの髪が、静かに彼女の背中で揺れている。
近づいてみるとしみじみ思うが、戦闘にも耐えうるように開発されたアンドロイドの割には、彼女は本当に華奢だ。背は、強化人間である私の
胸くらいまでしか無いし、首も肩も驚くほど細い。身体の線の出るぴったりとしたスーツが、四肢と尻尾のしなやかさを際立たせる。
私が背後に立つと、人間の耳に聞こえない音まで感知する猫のような三角の耳が、ぴくりと動いた。
「いかがなさいましたか?」
怪訝そうに彼女は振り返る。
用が無くては、近寄ってはいけないのか?…そう、問いかけそうになる。
「手伝おうか?暇だし。」
私は努めて軽い口調で提案すると、袖をまくる。
「貴方にそんなことをしていただく訳にはまいりません。」
彼女はあっさり断って背を向け、また黙々と皿をすすぎはじめた。
「皿を洗うのをやめてこちらに渡しなさい、と言えばいいのかな?」
私はすこし苛立っていた。
先日の戦闘で後れを取り、彼女を負傷させてしまった。ひどい怪我を気遣う私に、彼女は言い放った。
「わたくしは『物』です。『人』であるあなたが『物』の心配をなさる心配はございません。」
なんだか、突き放されたような気がした。
手当てはしたものの、スーツの下に隠した腕の裂傷は、今もまだ完治したとは思えない。
痛むのなら雑用など溜め込んでもいいし、私ができることは代わってやりたいのだが、彼女は頑としてそれを受け入れようとしないのだ。
「それが、ご命令ならば。」
唇を引き結び、彼女は手を止め、綺麗にすすぎ終わった皿を差し出した。
「…命令なら何でも従うんだな。」
「はい。」
私の言葉に臆することなく、彼女は頷く。
「わたくしは貴方の下僕ですから。」
その言葉がまた、ちりちりと私の胸を焦がす。
感情の色を見せない冷たい色の瞳が、静かに私を見つめていた。
「…それが主人なら、どんな嫌な相手にも従うのか、君達アンドロイドは。」
「………はい。」
ほんの少し躊躇してから、彼女はまた、頷いた。
どんな嫌な相手にも、か。それは私自身も含まれるのだろうな。
心の中にあった黒い小さな染みが、夕暮れの影のように広がる。
「…笑え。」
予想外の命令に戸惑って、それから彼女は、あの笑顔を作る。
作り物の微笑みの仮面。
私は、彼女が強い感情を露にするところを見たことがない。怒る顔も、泣いた顔も、嬉しそうに笑う顔も。
きっと、「私を愛せ」と命ずれば、彼女は一生懸命、恋する女性の姿を演じてくれるのだろうな。そんなことを考えて、可笑しいような、泣き
たいような気分になる。
情けないことに、私はこの人形のような少女に夢中なのだ。
「命令だ。」
自分でも驚くほど、声が低く冷たい。
「服を脱げ。」
「え…」
一瞬、何を言われたのか分からなかったのだろう、彼女は振り返ったまま絶句した。そして、凍りついた表情のまま、するするとスーツを脱ぎ
始める。
全身を覆っていたつやつやした布地がはがれて、彼女の素肌がさらけ出された。
衝撃や温度差に耐える為コーティングされた素肌が、部屋の照明に照らされて淡い真珠色に光る。普段スーツに隠された機械化された手足も姿
を現す。
下着まで一体化されたスーツをすべて脱ぎ捨て、両腕で申し訳程度に身体を隠して、室温の寒さにかすかに震えながら彼女は目を上げた。
「これで、よろしいでしょうか。」
露になった肢体を舐めるように鑑賞する。
こうやって見ると改めてアンドロイドだと認識させられると同時に、生身の部分が多いことにも驚かされた。
両脚は膝上からつま先まで銀色の有機金属で構成されていたが、あとは耳と尻尾、左手の一部くらいしか、はっきり機械化されていると分かる
部位はなかった。頭の中、脳と神経の一部もいじられているらしいが、そちらは髪に隠されていて見た目では分からない。
アンドロイドでも羞恥心があるのだろうか。値踏みするような私の視線が乳房から下腹部に向けられるのに気づき、うつむいた顔が赤く染まる。
豊満ではないが、椀を伏せた形の整った乳房。折れそうな細い腰から臀部へのなめらかな曲線。
ふるいつきたいほど魅力的な身体だった。
脚の間を隠そうとする、包帯を巻いた右腕が少し痛々しかった。
「寝室に来い。」
私が背を向けベッドに向かうと、ひたひたと、素足で歩く控えめな足音が従った。
わざわざ女性型のアンドロイドをあてがった理由など、簡単に想像がつく。主の性欲処理までもが彼女等の仕事なのだ。
…そうだ、どうせそういう人形なんだ。遠慮などせず、最初からこう扱えば良かったんだ、と今頃気づく。
現に、彼女は嫌がらず、要求どおり従順に身体を開いた。
控えめだが綺麗な形の乳房にむしゃぶりつきながら、いったい今まで、何人の主人にこうやって仕えてきたのだろうと思うと苛立ちは増し、
憤りは乱暴な愛撫になって彼女をさいなむ。
「…!……っ!!」
美しい人形は、私の腕の中で声を押し殺して身悶えた。ひんやりとした感触の肌が熱を帯び、氷のような表情が少しずつ崩れ、とろけていく。
…いい顔をするじゃないか。
顎を掴んで、伏せている顔を上げさせる。上気して朱に染まった頬、潤んだ瞳。誘うように薄く開いた薔薇色の唇を奪った。
舌を絡めるとおずおずと受け止める様は、実に初々しく見える。
…鳴き声はどうなんだ?
声を上げるのを我慢しているのが癪で、刺激に固くなった乳首を軽く噛んでやる。
「あっ!」
思ったよりもずっと甘く甲高い声が、解放した唇から漏れた。私はその反応に満足して、指先で弄んでいた下半身にも舌を這わせる。
「…ん…っ!」
誘うようにほどけたひだをかきわけ、かすかに漏れ出した蜜を舐め取ると、女の匂いが鼻腔をくすぐり、私の中の雄を刺激する。
もっと乱れろ。もっとだ。
はぁはぁと荒い息を吐く唇に私の指を押し込むと、彼女は卑猥な表情でそれを舐めた。その指を、しどしどに濡れた彼女の中心に埋める。
「…あ…っ!」
びくんと、腕の中の細い躯が硬直する。指一本挿れただけだというのに、そこはとてもきつく締め付ける。
包帯を巻いた腕にくちづけながら、その指をゆっくりと動かす。
「…ん……ん……ぁ……ぁ…ぁ」
せつない吐息が、私の胸にかかってくすぐる。
心はもう要らない。本当の笑顔を見せないならそれでも良い。素直で従順な身体だけあれば…。
行き場のない感情を持て余しながら、私は彼女を責める指をもう一本増やした。
「ぅ…ぁぁ…」
長い尻尾が苦しげにシーツを叩く。
動かすには狭いと感じるが、ほぐすようにまさぐると、じわじわと力が緩んでくるのがわかる。漏れ出した愛液も、二本の指が滑らかに動くのを
助けた。
「あ…あああああ…あああ…っ!」
もはや声を抑えることもできないのだろう。彼女は喘ぎながら、私にしがみついてきた。
顎を上げさせ、貪るように口づけると、指を激しく突き立て、もう片方の手で最も敏感なしこりを探し、指先で揉みしだく。
「あっ…だめぇっ……っ!」
細い体がぴんとのけぞり、私の指を咥えたままがくがくと収縮する。すがりついた左手の爪が私の背を引っかき、傷を作った。
放心して、ぐったりと力の抜けた彼女の身体を、仰向けに寝転がった私の胸に引き上げる。
「ぅ…」
潤んだ瞳が私を見た。そこにかすかな怯えの色を見つけて、私はまた苛立つ。
身体だけでいい、と納得したはずなのに、私はまだ彼女の心が欲しいのか。
「跨れ。」
「…え……?」
理解できないという表情の彼女に、私の声は驚くほど冷たい。
「挿れろ。」
彼女の細い指が、そそり立った私の男根におずおずと触れた。膨張しきったそれは期待にうち震える。
が。その時、彼女の肩がかすかに震えた。
「でき…ません…」
その言葉に耳を疑う。
「命令だ!」
怒鳴りつける私に、ふるふると首を振って、嗚咽の混ざった声で、もう一度彼女は告げる。
「…できない…です…」
熱にうかされていた頭の芯が、すっと冷える。
それほど嫌か?命令ならばどんなことも従うと言ったくせに、そんなにも私に抱かれたくないのか?
「…もういい!」
私は彼女の肩をつかむと、体の上から引きずりおろした。
「出て行け!二度と、私の前にその顔を見せるな!!」
彼女は、はっと私の顔を見て、唇を噛みしめてうつむいた。そして、のろのろと立ち上がってスーツを着ると、静かに立ち去った。
彼女がいないとこれほど退屈なのかと思うほど、時間の流れは遅い。
手当たり次第に辺りの物を蹴飛ばして気を紛らす。食事を作る気にもならないので、そのまま口に入るものを食い散らかす。そして半日も
しないうちに、彼女がきれいに掃除していた部屋は台風が通り過ぎた後のように物が散らかり、陰鬱な気分を加速させた。
心も体も拒まれた怒りと、泣くほど追い詰めてしまった罪悪感が、胸の中で荒れ狂う。
不意に、機械的な呼び出し音が、静かな部屋に響いた。普段なら彼女が取り次いでくれるのだが、今この部屋で他に対応してくれる人間は
いない。
今は誰とも話したくない気分だったが、戦闘任務なら思う存分暴れる事ができると思い直し、モニターの電源を入れる。
オペレーターのアンドロイドの女性が、モニターに映し出された。その感情を読み取ることのできない表情が、どこか彼女を髣髴とさせる。
――貴方の所有するアンドロイドが、許可無く市街を徘徊していたため、公安に拘束されました――
オペレーターは私に、機械的に告げる。
徘徊?公安?
私が、状況がよく理解できないことに気づいて、オペレーターはいろいろ補足した。
現行の法律では、アンドロイドは所有者が申請しなくては、公共の場に出す事はできないということ。無許可で出歩かせれば、所有者が厳しく
管理責任を問われるということ。
アンドロイドを物のように扱うこの法律を、そのアンドロイド本人から説明を受けるのは、奇妙な光景だった。
今までも彼女と二人で街に出た事は何度かあったが、そういう決め事があるとは知らなかった。おそらく外出が必要な時は、私に代わって
彼女自身が法的な手続きを済ませてくれていたのだろう。
「彼女は、既に貴方が所有権を放棄していたと証言しています。これが真実ならば、貴方が罰せられる事はありませんが…」
暗に、所有権を放棄しろ、と言いたそうな口ぶりだった。誰か『偉い人』が、オペレーターを通して、私にそう言わせようとしているのだろう。
政府の監視下にある私が法に触れることをすれば、誰かがその責任を負わねばならない。
「…私が所有権を放棄したら、彼女はどうなるんだ。」
オペレーターが一瞬、答えに詰まるのが分かった。しばらく何かを考え込む素振りで…おそらく内部のデーターベースから、事例を探している
のだろう…沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「所有権を放棄されたアンドロイドは、通常は製造されたファクトリーに戻されて調整され、再出荷されます。しかし、政府の重要な機密に
関わったアンドロイドは、情報の流出を避けるため、廃棄されることになるでしょう。」
廃棄?
その言葉の意味することに気づいて、背筋に寒気が走った。
廃棄だと?殺すのか、彼女を。私が一言、「出て行け」と言っただけで、彼女は死なねばならないのか…?
焦りを隠し、できるだけ冷静を装いながら、私はオペレーターに告げた。
「彼女は間違っている。私は、所有権を放棄などしていない。」
…本当は、間違っているのは私だと言うのに。
オペレーターは静かに、分かりました、とだけ答えた。その瞳に一瞬、柔らかい光が差した気がした。
ファクトリーで私を出迎えたのは、不機嫌な青年だった。
彼女のメンテナンスでたびたびここを訪れているので、何度かは会った事がある。
50年に一人の天才、と言われるこの博士は、有機人体工学研究の第一人者であり、彼女の製作者でもある。自分自身にも臨床試験と称して改造を
施している変人らしいが、驚くほど若く、神経質そうな男だった。
「本当に所有権を放棄したと言ったら、一発ぶん殴ってやろうかと思ってたよ。」
彼の細腕では、私にダメージを与える事など出来ないだろう。逆に拳の骨が折れるかもしれない。
戦闘のプロである私を恐れず、博士はストレートに怒りをぶつけてくる。
「あの子に何を言った?一生懸命尽くしたあの子を気まぐれに捨てるのか。所詮どいつもこいつも、あの子達を『物』扱いだ。あの子達に
だって、心はあると言うのに!」
「…心は…ある…のか…。」
私のつぶやきに、博士はふん、と鼻を鳴らした。
「当たり前だ。僕がいくら天才でも、あの子が持って生まれた心は消せない。…それがどれほど辛い現実でも。」
そして博士は、立ち止まった。
透明なガラスの棺のような、アンドロイド調整用のベッドの中に、彼女は横たわって眠っていた。
「…公安から身柄を引き取ってきた。可哀想なほど傷ついて、取り乱していたから、無理やり眠らせたんだ。」
普段の落ち着いた大人らしい雰囲気と違い、寝顔はとても幼く見える。頬にはまだ涙の跡が残っていた。
「僕は所有者には逆らえん。起こせと言われれば、どんなに可哀想でも起こすしかない。」
「…起こしてくれ。」
私が即答すると、博士はうんざりとした顔で操作盤をはじいた。透明な蓋が音も無く開き、彼女がうっすらと瞳を開ける。
「…おはよう。」
私の声に、彼女は信じられない、という顔をしてみせた。
自室に帰っても、彼女はうつむいて、一言も喋ろうとしなかった。
ただ、おそろしく散らかっている部屋を見て片付け始めようとするから、私は慌ててそれを制止すると、二人掛けのソファに招いた。
「話を、したいんだ。」
「…申し訳ありません。」
傍らに座り、顔を伏せたまま、抑揚のない言葉で彼女は謝罪する。
「…申し訳ありません。もう二度と、あのような真似は致しません。」
「やめてくれ。あれは私が悪…」
「…申し訳ありません…」
「………やめろ!」
機械のように繰り返す彼女に、私は怒鳴りつけた。小さな背中がびくっと震える。
うつむいたまま目を合わせようとしない彼女の顎をつかんで、無理やり上向かせる。彼女は一瞬、泣きそうな顔をして、ぎゅっと目をつぶる。
「申し訳…ありません。…顔を見せるなと…言われてたのに…」
「…そんなことを。」
どうしてそんなところだけ従順なんだと、私は呆れた。
私が出て行けと言ったときも、そのまま出て行けば死ぬ以外に道は無い事も分かっていただろうに。
…私の元にいるよりも、死ぬ方が良いと思った、か…
そう思うと、情けないほど寂しくなった。
「………せめて、これ以上君に嫌われないようにするから…どうか、ここに居てくれ。」
それは心からの懇願だった。言葉にすれば、彼女にとって抗えない命令になってしまうのも分かっている。
抱けなくても良い。愛されなくても良い。今はただ側に居て欲しかった。
「嫌う…?わたくしが…貴方を…?」
彼女は、とても不思議そうに私に問いかけた。私は力なく頷く。
「…そんな…そんなこと、ありません!」
彼女はすがるように私の手を両手で掴み、己の行動にはっとした様だった。「申し訳ありません」と謝って離そうとしたその手を強く握り
返すと、彼女の頬がすっと朱に染まった。
「わたしくが貴方を嫌っているなんて、何かの誤解です。わたくしは貴方を…」
そこまで言って、彼女は口ごもると、いつもの無感情な顔になった。
「わたくしは貴方の下僕です。」
「…やめてくれ。」
私は首を振り、うめいた。
「私は、下僕など要らない。」
要らない、という言葉に、彼女はひどく傷ついた顔をした。一瞬息を飲み、表情を凍らせたまま、いっぱいに涙をためる。
『可哀想なほど傷ついて、取り乱していたから』
あの日、出て行けと告げた後、自分のいない所で彼女がどれだけ悲しんだか、私にはわからない。私を嫌ってはいないと彼女は言った。
それが主をのための嘘でなく、心からの言葉だと信じたい。
「博士は、君にも心はあると、言った。私と同じように。…だから」
諭すように、私は言葉を捜す。
「私は、君に隣にいて欲しい。主人と下僕ではなく、対等なパートナーとして。」
私の言葉を、目を丸くして聞いていた彼女は、苦しげにふるふると首を振った。
「そんなこと、許されるはずがありません。…わたくしはアンドロイドです。ただの『物』であって…人ではないんです。」
彼女はまるで、自分に言い聞かせているかのようだった。
「君は『物』なんかじゃない。」
私はきっぱり言い放った。
「誰にも許されなくてもいい。私は、君が好きなんだ。どうしようもなく、ね。」
「…あ…」
やっと告げる事のできた私の想いに、彼女の声が震えた。
細い腕が遠慮がちに私の背に回され、ぎゅっと力が込められる。
「…こんなこと…許されることのないことなんです。…でもわたくしは、ずっとずっと、貴方をお慕いしていました…」
「アンドロイドにどうして人権が無いか、貴方はご存知ではありませんね。」
長い口づけの余韻に浸る私に、彼女の澄んだ声は心地よかった。
君の本音が聞きたい、と請うと、彼女は少しためらったあと、胸の奥に閉じ込めていた思いを語り始めた。
「生きている人間の改造や機械化が、倫理の問題から全面的に禁止されて、もう100年くらいになります。…全ては、貴方がたのような悲劇を、
もう二度と起こさないために。」
君は私の…私達のことを知っているのか。
遠い遠い、記憶の底の悪夢が一瞬、記憶の表層まで浮かんでくる。
私が『虐殺の魔人』と恐れられていたことを知って、それでも君は私の側にいるのか。
「ですからわたくし達アンドロイドは、亡くなった人間…主に幼い子供…を素体に作られます。一般の方はわたくし達を、動く死体のごとく
捉えられ、気味悪く思われているようです。」
「そんな馬鹿な!」
私は思わず叫んだ。腕の中でこんなにあたたかく息づいている彼女が、屍と同等の扱いとは、この時代の人間はいったい何を考えているのか。
彼女は静かに微笑んだ。それはとても綺麗な、春の日差しのような優しい微笑だった。
「…生きていた頃の記憶は深層意識の底に沈んでしまうので、思い出すことはありません。ですからわたくしの最初の記憶は、成長促進カプセル
の中で聞いた、博士の声です。」
彼女は歌うようにそらんじた。
「『僕が君に与える運命は、君にとって死ぬより辛い思いをさせることになるかもしれない。でも僕は君に生きて欲しいと思った。そして君が
幸せになって欲しいと、心から願っている。』」
つい先程、私に食って掛かった博士のことを思い出す。大量虐殺の担い手と知って、それでも私を恐れず向き合って話すことのできる人間は、
昔も今も、ほとんどいない。
「カプセルの中で、アンドロイドとしての教育を受けながら、わたくしが仕えるべき主のことも、聞かせてもらいました。…自分の意思とは
関係なく身体を作り変えられて、悲しい使命を果たさなければならなかった方。…そして、守ったはずの人々から裏切られて、長い時間をただ
独りで眠っている方だと。」
「…そんな格好良いものじゃない。ただの人殺しだ。」
暗い記憶を振り切るように、私は目を閉じる。彼女は不安そうに私の手を…血にまみれた私の手を取り、抱きしめるように胸元に引き寄せた。
「わたくしは、その方に仕えるためにこの命を頂いたと知りました。だから、その方がどんな方でも、精一杯お勤めしようと、心に決めました。
…それが。」
そして、はにかむようにうつむく。
「こんなに…素敵な方だとは聞いていなくて…本当に…気づいたらわたくしは…貴方が好きで好きで、たまらなくなってしまいました。」
「だったら…」
不満げな私の言葉を、彼女の指先が遮る。
「しかし、それは許されない想いです。アンドロイドが人に…しかも仕えるべき主に恋をするなんて、身の程をわきまえない愚かな事です。
ですからわたくしは、この想いを凍らせる事にしました。」
生き生きとしていた彼女の表情が、すぅっと、あの冷たい仮面をかぶる。
「わたくしは貴方の下僕です。」
その言葉は今でも私の胸にちくりと刺さる。
「…こうやって己に言い聞かせて、心を凍らせれば、辛くありません…でした。ただ…」
仮面が砕け、今度は本当に寂しそうに笑う。
「お料理を褒められたり、怪我を気遣ってくださったり…アンドロイドのわたくしに、貴方は本当に優しくて…そういう時は、嬉しくて泣き
たくて、どうしていいか解りませんでした。」
「…そう…か…」
私は声を絞り出す。どうして気づかなかったのだろう。彼女もまた、あの凍りついた笑顔の下で、苦しんでいた。
「あの…夜…も…」
唇を噛みしめて涙を堪えるのを見て、私は制止する。
「…あれは私が悪かったんだ。本当に…」
「いいえ。」
くるりと私に背を向け、彼女は眼を伏せる。尻尾だけが所在無げにうろうろと、私の手をくすぐった。
「…男の方にお仕えしていれば、寝所に侍るのもまた務めだと、わたくし達は教育を受けています。ですから、あの時も…ああ、ついにこの日が
来たんだな、と覚悟しました。…でも…」
耐え切れず、顔を覆って泣き出すのを見て、私は慌てて背中から彼女を抱きしめた。
「…知識はあっても…どうすればいいのか…本当に…わからなかったんです。」
ああ。あれはそういう意味だったのか。
私は自分の愚かさを心から呪った。初めての経験でどれだけ不安にさせただろうか。優しくしてやれば、あの時もきっと応えてくれただろうに
「済まない。」
許してくれ、とは言えなかった。そう請えば彼女は簡単に私を許してしまうだろう。
「…もう一度…あのときの続きを、どうか…」
力の限り抱きしめると、彼女はせつなげにねだった。
ほんの少しでも気を緩めると、その細い躯を滅茶苦茶に蹂躙してしまいそうなほど、気持ちが高ぶっているのが自分でも解る。
望んでも手に入らないと思っていた彼女の心は、本当はもうずっと、私の元にあった。そして自分から、まだ男を知らない身体を私に奉げて
くれる。
こんな、気が狂いそうなほど誰かを愛する事があろうとは、思っていなかった。
「できるだけ、優しくする…」
自分で自分に言い聞かせるようにつぶやくと彼女は、大丈夫ですよ、と柔らかな声で答えた。
「わたくしは、戦闘も想定した個体ですから、痛覚は鈍く調整されています。その代わり、他の感覚は敏感な設定に…」
「なるほど、つまり…」
私は彼女の三角の耳に口元を寄せ、ささやいた。
「イヤラシイ身体なんだな。」
彼女は真っ赤になって顔をそらした。その仕草が愛しくてどうしようもない。
独特の艶のある、しっとりとした肌に掌を滑らせると、ぴくんと肩が震える。優しく、優しくと頭の中で唱えながら、うなじから肩、腕に唇を
這わせ、赤い花びらのような痕を残す。
「怪我は、治ったんだな。」
裂けて骨まで見えそうだった右腕の怪我も、もう、うっすらと赤い筋のような傷跡を残すだけになっていた。
「…はい。ファクトリーで、再生治療を受けられましたから。」
せっかくなら、こちらの手も機械化しても良かったのですが…まだ生身の右腕をかざしながら、彼女はつぶやいた。
「そんなことはしなくていい。」
私はその手を取り、傷跡にそって唇を這わせる。
「もう、君に怪我などさせない。」
彼女は困ったように私を見た。しょげた顔をするな、と私は彼女の眉間をつつき、キスを落とすと、今度は柔らかい乳房に手を伸ばす。
「…あっ…」
身をよじり、その手から反射的に逃げようとする彼女を背中から抱きしめ、両手でやわやわと揉みしだいた。
「…ぁ…は…ぁ…」
軽く頂点に触れると、ぴくぴくと耳が揺れる。反らせた細い喉から、高く甘い声が漏れ出した。
あの時処女だと思い及ばなかったのも仕方ないと思った。男を喜ばせるために調整したわけじゃないだろうが、この反応の良さはたまらない。
「本当に敏感なんだな。」
私が笑うと、彼女は目を閉じ身体をこわばらせ、唇を噛んだ。だんだん濃厚になってきた愛撫にも、必死に声をかみ殺す。
…強情だな。
乳房を玩ぶ片手はそのままに、もう片手をするすると脚の間に伸ばす。尻から太股を撫であげる感覚に、彼女は慌てて脚を閉じようとしたが、
私は自分の足でそれを押さえ込み、抵抗を許さない。
濡れぼそった裂け目を下から上に撫で、最も敏感なしこりを探しあてると、つついてつまみあげる。
「ひあっ!」
耐え切れず、彼女が高い声を上げた。慌てて口を押さえようとする仕草に気づいて、私は弄ぶ手の速度を増す。
「だめ…だめぇ…っ」
絶え間なく与えられる強い刺激に、どうしようもなく彼女はただ悶える。
「可愛いな。」
普段の清楚さからは考えられない乱れぶりに、否応無く興奮させられる。
指先に彼女の蜜をなすりつけると、半ば強引に、二本の指を秘所につき立てた。
「ん…っ!」
苦しそうに顔をしかめたのに気づいて、私は焦って指を引き抜いた。びくっ、と尻尾が跳ね上がる。
今度はもう少しゆっくり、馴染ませるように差し入れていく。そこは異物を拒むようにきつく締め付けながらも、反対に招くように
絡み付いてくる。
「ん…ぅぅん…。」
さっきまでの弾けるような反応とは違って、なまめかしく身体をくねらせる。
「キモチイイ?」
彼女ははぁはぁと喘ぎながら、潤んだまなざしでこくりと頷いた。
「ね…これ…で…いいん…ですか…?」
吐息の混ざった細い声で、彼女は問いかける。」
「何が?」
「…わたしだけ…気持ちいい…から…」
私は嬉しそうに笑って見せた。
「とても楽しいよ。」
男が、こうやって思い通りに女の身体を味わう事も、知らないらしい。
ゆっくりゆっくり、指が奥まで潜り込み、引き出されるたび、彼女は快楽に身を震わす。その間隔をだんだん短く、動きを激しくしてやると、
彼女は私にしがみつき、嗚咽のような嬌声を上げた。
…もう、いいかな。
ぐずぐずに濡れて、柔軟に指先を受け入れるようになったそこに、根元まで指をねじ込み、もう片手は陰核を、唇は乳首を吸い上げる。
「ああああああああぁ……っ!」
甲高い切れ切れの声が上がる。小さな身体がわなわなと震え、内壁がきゅうっと指を締め付け、快楽の天辺に達した事を教えてくれた。
がくりと力が抜け、半ば気を失った彼女に口づけた。
まだ夢の中にいるように、ぼうっとしている彼女の脚を、いっぱいまで開かせる。
私のものはとんでもなく熱く、痛いほど張り詰めていた。もう我慢できる余裕は、ない。
指とは違う、固いものの感触に気づいたのか、彼女は不安そうに顔を上げる。その唇にもう一度キスをすると、たぎった欲望を思い切り深く、
彼女の中に沈めた。
私の脳髄に最上の快楽が駆け抜ける。
悲鳴が上がった。さっきまでとは違う、甘さのかけらの無い声。
中はとんでもなくきつく、痛いほど狭い。強引に貫かれて、彼女の身体もぎちぎちと悲鳴を上げているかのようだった。彼女は苦痛から
逃れようとするかのように、必死にしがみついてくる。ぽろぽろと涙がこぼれて、わたしの胸を濡らす。
一つになれたという充実感と、苦しめているという罪悪感がないまぜになって、快楽とともに私を狂わせる。
欲望に歯止めは利かず、私は苦しむ彼女を深く深くえぐり、何度も腰を突き立てる。ソファのきしむ音と、彼女の悲鳴が耳をつく。
痛みに鈍い、と言ったのは嘘だったのだろうか。それともそれほどひどい苦痛なのだろうか。苦しむ姿が哀れでもう解してやりたいとも
思いながらも、身体の方はさらに激しく彼女に喰らいつく。
欲しい。離したくない。離さない。もう私のものだ。
そのうち這い上がってきた爆ぜるような衝動に任せて、私は欲望のありったけを、彼女の中に吐き出した。
…優しくすると言っておいて。
事が済んでからの私は、自己嫌悪に頭からどっぷり浸っていた。
これじゃあ、まるでレイプしたみたいじゃないか。
ソファに垂れた血と精液の混ざった染みが、なおさら私の罪悪感を増す。いくら女を抱くのは久しぶりとはいえ、これ程自分に自制心が
ないとは思っていなかった。
頬につたったぬるい涙を指先でぬぐってやると、そんな私の気持ちを知ってか知らずか、彼女は私の頬に唇を寄せた。
「…だいすき…です…。」
「…愛しているよ。」
愛してる、と言う言葉では表現しきれないほど、彼女の全てがいとおしい。
「…貴方が…貴方で…よかっ…た…」
私の肩に身体を預けて、彼女はすうっと眠りに落ちた。そんな彼女のやわらかいぬくもりを抱きしめて、私も目を閉じる。
300年前、死にたいと思った。
だが偽善者どもは、殺してくれという私の最後の望みすら聞き入れず、地下深くに私を凍結して、そのまま忘却の淵に追いやった。
私を目覚めさせた彼女は、私のために命を与えられた、と言った。
それだけでも、生きていて良かったと初めて思った。生きていたから彼女は私のために生まれ、巡り合うことができた。
もう眠る時、昔の夢を見ないで済む。腕の中で無邪気に眠る少女を抱きしめながら、何の根拠も無くそう確信した。
以上です。
一部改行などお見苦しい点がありまして、失礼いたしました。
最後に。
規制解除、万歳!!!!
GJ!SF系って珍しくておもしろかったです。
さて、次スレの季節になりましたがどうしましょう?このまま主従統合スレで行きますか?
前通り女主スレ男主スレ分けますか?
誘導する前に落ちた男主スレを思い出すよ
残りが少ないのに考えずに投下
話し合う余地もない
スレタイもテンプレも決まってないんだ、分けてスレ立てて下さい
また過疎るようなら、改めて統合を考えればいいよ
賛成。危惧している人も多い。
どっちでもいいから職人叩きだけはやめてくれ
こう言うスレ活用して一旦話し合ってみるとかtp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1222573260/
>>711-712 うん、分かれているほうがいい
投下ペースがはやくて職人様にGJしそびれた
いやっほーーーん
>>709 投下タイミングこそアレでしたが、面白かったです。GJ。
めげずにまた何か書いて投下してくださると嬉しいです。
>>696 猫っぽい部下相変わらず最高ですね。GJ!
可愛いくせにエロいです。続き期待してます。じー…。
うめる?
生め!
お嬢様に種付け500回目
>709 です。
とんでもないタイミングで投下してしまい、
皆様にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
次スレが立ち、ほっとしています。本当にごめんなさい。