らき☆すたの女の子でエロパロ31

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@ピンキー
アニメも好評のうちに終了し原作も大好評連載中、PS2版も08年1月発売予定の「らき☆すた」でエロいの行ってみよ。



☆カップリングは自由
☆基本的に百合マンセー
☆801は禁止(と言っても男キャラあんまいねぇ)
☆投下した作品の保管を希望しない場合、前もってその旨を知らせること



※マナー等※
※割込みを防止するため、書き込みや投下の前等にリロードを。
※荒らしや煽り、気に入らない人・作品等はスルーで。
※グロやSM、鬱モノなどの過激な内容は断りを入れてから投稿する
※読者=主人公の作品(いわゆる俺キャラもの)についてはNGワード指定や断り文を確実に。
※480KBまたは950レスのどちらかに近づいたら、次スレの準備を。



■みゆきさんの一言メモ

・投稿の際に、メール欄に半角英数でsageと入力すると、スレッドを上げずに書き込めます
 『sage』では有効になりませんので、全角・半角を確認してください

・スレッドの閲覧・書き込みは、絶対ではありませんが専用ブラウザの使用を推奨します
 これにより『人大杉』のエラーが回避できます

・SS投下は、一度メモ帳やワードパッドなどで書き上げてからまとめて投下してください
 投下間隔があくと、他の方がレスできなくなってしまいます



マターリはぁはぁしましょうか。



☆まとめサイト(管理人と職人に感謝!)(避難所の行方はここ参照)
ttp://www33.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1.html
☆派生サイト:てけてけかなたさん伺か化計画
ttp://neo-experiment.hp.infoseek.co.jp/index.html
☆前スレ
らき☆すたの女の子でエロパロ30
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1198685337/l50
2名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 22:40:25 ID:QlRNmTvz
>>1

さあ今年も始まるザマスよあけおめ!
3名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 22:44:36 ID:mDJhFz0/
>>1
今年もいくでガンスよあけおめ!
4名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 22:47:22 ID:yZIPACs7
>>1
今年もフンガーあけおめ!
5名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 22:50:47 ID:kNxzCFft
今年もまともに>>1乙りなさいよあけおめ! 
6名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 22:51:27 ID:ZJWrCs/Z
あーいまーいあけおめ!
7名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 22:54:48 ID:l7xSZ1r/
>>1
今年も乙なんだってヴぁ!
829スレ19-24の人:2008/01/02(水) 22:56:33 ID:sniA1O4P
それ>>1乙って事かい?ちょwwww

9名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 22:57:17 ID:4AzQ6sE7
>>1

おつヴぁ
10名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 23:04:50 ID:BuHMn/55
うふふ、なんかみさちゃん、必死でアピールしてるみたいね。
でも^^そうは^^問屋が^^卸さないからね^^^^^^
キャラソン独占のウラミハラサデオクベキk…
11名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 23:23:32 ID:YOdjxqmk
こなた「>>1さん、……ぐっじょーぶ! Σd(=ω=.)」
12名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 23:29:14 ID:WnD250xY
みゆき「>>1さん、GJです。あと、>>11さんはお持ちかえりします。だばだばだば」
13とある神様:2008/01/02(水) 23:48:53 ID:SW+CPqEZ
みなさん、あけましておめでとうございます。
今年もあの子を可愛がってあげてくださいね。

……ところで、どうして屋根裏ってこうも寒いのでしょうか。
PCの中に戻りたい……(涙)。
14名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 00:22:24 ID:Y3ZFXNUT
>>13

ウイングかなたさんでもよろしければ、身体をご用意しますがだばだば。
15名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 00:31:32 ID:vQdCSqye
とうとう来たか・・・かみ☆フェチが!
16名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 00:34:55 ID:IyfB6kyM
まさしく母娘丼ですねだばだば
17恐るべき嗅覚を持つツンデレ:2008/01/03(木) 00:40:26 ID:uqSxh9/8
>>1乙なんだからね!!

さて、新しい年が始まったのだけれど、>>11が見当たらないわね……
まぁ、例え達人といえど、2008年版にグレードアップした私の嗅覚なら捉えることが可能だわ。
クンカクンカ……!!
あのダンボールね♪
18日夜鍛錬を怠らないヲタク:2008/01/03(木) 00:50:36 ID:uMeuE0kB
ざんねん、それはわたしの、かげむしゃ、だ。

まあ、そのダンボール内のやつは、デコイだったりするから、
かがみはしあわせかもね…。

それにしても、もうここまでかぎつけてきたか…
こりゃ、えろっぺ(かのサスペンス悲劇)じゃないけど、
本気で、旅芸人化を考えないといけないかもネ。
はぁ…別世界のみゆきさん、ワクチン開発まだかな…
19こなつー:2008/01/03(木) 00:58:23 ID:Y3ZFXNUT
>>18

ね、姉さ〜ん、たまには患者の相手してよ〜〜〜〜(泣)
20コナーク:2008/01/03(木) 02:05:41 ID:pUv6RBqP
んー、たまに性欲を持て余したら帰ってみんなのお相手してるよ♪
21名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 02:24:11 ID:rJ2trC3w
>>20
転んでもタダでは起きない女、それがコナーク
夕陽の似合う女、と人は呼ぶ
224-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/01/03(木) 03:29:02 ID:2gtCrP2X
>>前スレ753
こんな感じでひとつ(´・ω・)ノシ
http://www.geocities.jp/extream_noise/rakisutaep/img/hatuyumehiyorin.jpg
今日こっそり描いた「見せられないよひよりん」を使ってみたかったのは内緒…

>>前スレ762
ちょww
夜中だと思って安心してノンビリ描いてたらなんてこったw
腹筋が痛いorz"

あと埋め乙です♪
オヤスミナサイ
23名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 04:33:57 ID:sMltCYIN
>>1乙〜
さぁ、今回も盛り上がっていくんだぜ!
24名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 05:16:14 ID:4g37dGGG
乙です。
そろそろ寝るかな。
25名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 06:20:13 ID:rwTzORZS
>>24
IDがガオガイガー!!
26名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 06:38:32 ID:F149uMwd
>>25
そういう貴方もIDが小文字にしたらorz
27名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 08:21:33 ID:uqSxh9/8
>>26
そんなあなたも、F1だとか4wdだとか隠れてますぜ
28名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 09:00:50 ID:3Dm5KpHw
前スレ埋め乙
29ぶーわ:2008/01/03(木) 09:54:54 ID:QF8/yBxV
ども、一年の締めをグロ作品で締めたぶーわです
何でもトラウマになった人が二人も居るそうです土下座!
『彼女は遷移状態で恋をする』の続き投下させてもらいますね
え? 一発目からまさかのTS? どどんまい!
・TSもの注意(メインこなた以外男)
・かがみ編6レス こなた編4レス拝借します↓
30彼女は遷移状態で恋をする(6)-かがみside-(1/6):2008/01/03(木) 09:58:14 ID:QF8/yBxV
 今日は約束の日。
 約束の、峰岸や日下部との花火大会の日。
 ウキウキしながらそれの準備してたところで、変態メガネからのメール。
『駅前で集合ですよ、甘露煮君』
 ……んがくくっ!
 そう、所謂なんというか……ダブルブッキングしてしまったわけだ。
 詳しくは前回の俺の愚行を振り返ってくれ……今自己嫌悪で死にそうで忙しいんだ。
 まさかこなたの事をすっかり忘れてたとは何たる不覚、というか最低。
 今週はなんというか、浮かれまくってたからなぁ俺。
 ぶっちゃけ、弟や変態メガネの話なんぞ軽く聞き流してた。
 あいつらも深く突っ込んでこなかったからなぁ……こなたの事考えてるとでも思ったのか!
 くぅう、あの変態メガネ。こういう時の皮肉だろうよ!!
 しかしどうする?
 ああ、ええとそうだ。電話電話!
 こういう時の携帯だろ!?
 ええと、ええと、峰岸? 「み」……「み」は、と。
 あ、「く」が先か。日下部日下部。
 断る? もったいない常考!!!
 ああええと、じゃああれだ……そうあれ。
 一緒に回ればいいだろ、お互い違うクラスメイトと交友を深める機会だ。
 こなたの事もまとめてやってやればいいんだろ、男ならやってやれ!
 ……。
 電子音が耳に続く。
 日下部に電話したが、なかなか出ない。
 ああもう、こいつもさては携帯不携帯派だな!
 ええい、じゃあもういい峰岸だよ!
 ……。
 話し中!!!
 くそっ、こういう時って無駄に慌てるからいけないよな。
 着信は残るんだから、返ってくるよな。
 峰岸の方は話し中だから無理か。
 なら日下部から……っと、着信だよ早速。
 って峰岸? おかしいな、日下部のほうかと思ってたんだけど。
 まぁいっか、峰岸の声で目も覚めるってもんよ。
『もしもし、柊君? 何かあった?』
 ああ、あったあった。
 ……ってちょっと待て、なんでお前が知ってるんだよ。
「んああ、急用というかまぁ……急用だ」
 考えられるに、まず俺が日下部に電話した。
 日下部が峰岸に電話した、だから峰岸は話し中。
 そして峰岸が俺に? 何この遠回り……頭使わせんな!
 まぁいいか、特に気にする事でもないよな。女の考えてる事なんざ分からん。
31彼女は遷移状態で恋をする(6)-かがみside-(2/6):2008/01/03(木) 10:01:14 ID:QF8/yBxV
 峰岸はダブルブッキングの話も素直に受け入れてくれた。
 何でもみゆきやつかさは他のクラスでも女子には人気らしい。
 ふぅ、こんな時に変態メガネの容姿端麗八方美人っぷりが役に立つとは。
 あと弟のお菓子作り好きな。
 ……しかし、今の問題はそっちの二人でもあるか。
 うう、皮肉の刹那五月雨撃ちだよきっと。
「お兄ちゃん、そろそろ行こうよ」
「うっ……ああ」
 もちろん言い出せないまま、約束の時間を迎えた。
 こなたとお祭り、ということもあってか少しめかし込んでる弟。
 きっと変態メガネも同じ状態だろうな……とか思ったら、案の定決め込んでやがったよ。
 それに突っ込んでたおかげで……言い出せなかったわけだよ、峰岸たちのこと。
「あ、こなちゃん来たよっ」
 そんな事考えてるうちにこなたも来ちゃったわけで。
「こんにちわ泉さん、浴衣が良く似合っていますね」
「うん、本当。すっごい可愛い」
 何、浴衣? ああ、本当だ。
 髪も後ろでくくってる、珍しいかもな。
 こう見ると案外……。
「ほらっ、お兄ちゃん」
「ん……ああ」
 つかさに急かされ、何か慌てる。
 うう、久しぶりだってだけで何で緊張してんだ俺は。
「……よッス」
 なんか照れくさかったので、適当に返事をした。
 そしたら久々にその顔に……笑顔の花が咲いた。
「なんか久しぶりだねっ、かがみ」
 そりゃそうだよ、こちとら避けられまくってたわけなんだから。
 むぅ、なんか焦ってるな。何を焦ってる俺よ。
 そこで変態メガネと弟に肘で思いっきり小突かれた。
 なっ何だよお前ら、脇に入ったぞ!
 何だ? 小声で何を……浴衣?
 お、俺も言えってか? 浴衣似合ってるぞって。
 んなの言えるか! そんなキャラじゃねえよ!
「ねぇ、かがみ」
 そこで慌ててる俺に、こなたの声がする。
 眼は、俺を見てる。
 な、なんだよ。
 だから何で焦ってるんだ俺は!
 ……。
 その時、だ。
 こなたの口が小さく、何かを紡ごうとした時……。
32彼女は遷移状態で恋をする(6)-かがみside-(3/6):2008/01/03(木) 10:03:03 ID:QF8/yBxV
「ぅおーい、柊ぃー!」
「ぬおっ!」
 声と共に俺の体が大きく揺れる。
 背中に走ったのは、衝撃。
 この声には聞き覚えがある……ってしまった、慌ててた所為で忘れてたよ!
「お待たせ、柊君」
 そこには居た。
 峰岸と、日下部。
 そりゃそうだ……俺が誘ったわけだからな。
 じゃあ今の一撃は日下部か……くぅ、背中思いっきり叩きやがって。
「ああえっと」
 そのインパクトのある登場に、三人が面食らう。
 視線も、自然と俺に集まる。
「説明しようと思ってたんだが……今日、こいつらも一緒だから」
「へっ?」
「はっ?」
 ん、何だよ弟にメガネよ。
 何でそんな顔してるんだ?
「こっちが峰岸、で日下部。どっちも同じクラスのやつ」
「よろしく」
「よろしくなぁー」
 丁寧にお辞儀する峰岸と適当に手を振る日下部。
 相変わらず対照的な二人だな。
「んでこっちが俺の弟、あと高良に、泉だ」
「あ……よ、よろしく」
「よろしくおねがいします」
「……」
 こっちの三人も挨拶する。
 みゆきの八方美人な笑顔はともかくとして、何て顔してるんだ? つかさのやつ。
 こなたも何か強張ったまま頭下げたし……。
「ねっ、ねっ。どうかな? 柊君」
「?」
 そんな呆けた顔を気にする前に、峰岸から声がかかる。
 そして何故か一回転。
 ん? なんだよ。
 ああ、大分印象が違うと思えばそういう事か。
 そうそう、さっきもみゆき達に小突かれたっけ。
 ええと、うんそうそう。
「ああ、『二人とも』よく浴衣似合ってるな」
 ……。
 そこから先は、あんまり覚えてない。
 とりあえず、殴られて意識が飛んだな。

33彼女は遷移状態で恋をする(6)-かがみside-(4/6):2008/01/03(木) 10:05:02 ID:QF8/yBxV


「痛ぅ……何すんだよ、お前ら」
 思いっきり二人に殴られた頭が痛む。
 そのまま二人に首根っこを掴まれ、女子とは離れた場所に拉致られる。
 こいつらこんなに暴力的だったっけか?
「つかさ君……鈍器を」
「ごめん、金属バットしかないや」
 ってなんでんなもん持ってんだよってちょらめウッディイイイイイ!
「……まず、説明してもらいましょうか。脳みそ佃煮君」
「な、何がだよ?」
 フクロにされた後に、みゆきに襟首を掴まれる。
 顔は笑ってるが眼が笑ってないぞ! ってか甘露煮から佃煮に!
「お兄ちゃん、さすがに今日のはないよ……フォロー出来ない」
 ってなんかつかさまで溜息ついてるし!
 あ、あああれか。
 峰岸たちのことか。
「い、言い忘れてたんだ。悪かったよ」
 でもお前らも嬉しいだろ?
 男女比もこれで均等じゃないか。
 しかもあの峰岸と一緒だなんてむしろ大殊勲だろ!
「佃煮君……今日の目的を覚えてますか?」
 目的って、あれか? こなたと仲直りって……。
「そ、それは俺とこなたが居れば出来るだろ? 他のメンバーなんて関係ないんじゃ……」
「……つかさ君、パス」
 呆れた、といった感じで俺の襟首から手を離す。
 う、なんだよ。いつもの皮肉はどうしたんだ?
「……ゆき、僕も無理」
 だからなんでお前らそんな顔してんだよ!!
「行きましょうか、女性陣を待たせてはいけませんし」
「うん、だねっ」
 そのまま俺を無視して二人で女性陣の元へ。
 ……。
 って俺を置いてくな!




「どうぞ、泉さん。足元に気をつけてください」
「うん、ありがとっ」
「あ、こなちゃんほら。そこ段だよ」
「うわっ、あははっ。危ないね」
 六人で祭りの場所まで歩く。
 こなたの両側にはピッタリと馬鹿二人がくっ付き、近寄ったら何か睨まれた。
34彼女は遷移状態で恋をする(6)-かがみside-(5/6):2008/01/03(木) 10:07:05 ID:QF8/yBxV
 ったく、俺とこなたの仲直り企画はどうなったんだ?
 もう頓挫したのか……天才が聞いて呆れるな。
「ふふっ、泉ちゃんってモテモテなんだね」
「ああ、あの二人はゾッコンらしい……俺には皆目理解が出来ないが」
「そ、そうなのかっ!?」
 そこで日下部が何故か割って入る。
 ん? 何か顔が赤いぞ?
「やっ、な、なんだよー。怖いので知られる柊に彼女でも出来たのかと思ったぜー」
 もう一度背中を叩かれる。
 くぅ、さっきより威力が上がってる。
 何がそんなに陽気なんだよお前はいつも。
 なんか峰岸も異様に笑顔だし!
「つかさが最初に仲良くなってさ、俺はついでだよついで」
「ふぅん」
 と、訝しげに俺を見る峰岸。
 むおお、顔が近いぞ。
 はぅうシャンプーの良い香り……役得役得。
「あ、大分人増えてきたね」
「そりゃお祭りだもんなー、皆来るだろ」
 河川敷を歩くうちに人通りも増えていく。
 皆こぞっては花火のよく見える場所に居るわけだ。
 考えることは皆同じなんだなぁ……。
「ぬわっ!」
 と、そこで日下部が雑巾を絞ったような声を出して倒れる。
 雑踏に押されたのか? ったく、仕方ないな。
「ほら、大丈夫か?」
「ん、あっ……あんがと」
 手を差し伸べると、日下部のそれと重なった。
 結構、柔らかいです。
 ……って日下部相手に何考えてんだ!
「みさちゃんまだ浴衣になれてないんだって、柊君エスコートしてあげてよ」
「な、何言うんだよあやのっ!」
「今朝だって朝から電話がかかってきて浴衣の着付けが分かんないって……」
「ぬわぁー!!!」
 仲良く絡み合う二人……と思ったが日下部が峰岸を締め上げてるだけか。
 幼馴染なんだっけ? 仲良いなさすがに。
「エスコートつっても、俺は良く分からんぞ?」
 あの変態メガネじゃないんだ、礼儀作法云々は苦手だよ。
35彼女は遷移状態で恋をする(6)-かがみside-(6/6):2008/01/03(木) 10:09:13 ID:QF8/yBxV
「大丈夫大丈夫、倒れないように手繋いでるだけでいいから」
「んなぁ!」
「手?」
 手、ねぇ。
 そりゃ繋いでれば支えてやるぐらいは出来るが……柔らかかったし。
「俺はいいけど」
 と、手を差し出してやる。
 しかし日下部的にはあれなんじゃないか?
 同級生にでも見られたら冷やかされるだけだしなぁ。
 ほら、なかなか掴み返さないし。
 まぁ峰岸が提案しただけだから別に……。
「私もお願いしちゃおっかな」
「ぬお!」
 手に柔らかい感触。
 見ると、俺の手に手が重なってる。
 ……峰岸の、が。
 ふぉおおお、な、何だか凄い状況に!
 みみ、み峰岸さんなんばしょっとね!
「あ、あやの!」
「だってみさちゃんなかなか繋がないし」
「う……」
「あ、ほら。右手が開いてるよ?」
 ってちょっと待て! そしたら俺は……。
「……」
 俺の意見もないまま、日下部が手を差し出してくる。
 俺、に。
 ……い、いや。これは繋がないといけないわけか?
 だよな、向こうが伸ばしてるわけだから。
 まぁ、そんなわけで。
 今ちょっと、凄い状態なわけだ。
 いかん……俺、うかれてる。


(続)
36彼女は遷移状態で恋をする(6)-こなたside-(1/4):2008/01/03(木) 10:13:02 ID:QF8/yBxV
「泉ちゃんだっけ、よろしくね」
「よろしくぅー……ってチビだなぁ、本当に同い年なのかぁ?」
 峰岸さんと日下部さん……かがみのクラスメイトだという二人が突然現れた。
 そして今は、その彼女らと三人。
 みゆき君とつかさは、かがみの襟首を捕まえてどっか行っちゃった。
 でも……クラスメイト、かぁ。
 私はかがみのそんなカテゴリにも入ってない……羨ましいな。
 あ、だ、駄目駄目。
 何暗くなってるんだろっ、笑顔笑顔。
「いやぁー、こっちこそよろしく。うちのかがみがいつもお世話になってます」
 と、わざと馬鹿にした風で頭を下げる。
 あはは、これぐらいでいいよね。
 ……ん? 笑い声くらいくるかと思ったんだけどなぁ。
「いやいや、こっちこそ。うちの柊がお世話になってっからよー」
 少ししてようやく日下部さんから返事。
 印象としては活発な感じ?
 八重歯が特徴的だね、よく笑うし。
 こりゃ隠れたファンが居そう。
 ……。
 ん?
 今なんか……喧嘩売られなかった?
「いやいや、うちのかがみが」
「いやいやうちの柊が」
 そしてよく分からない言い合いが始まる。
 な、なんの戦いしてるんだろ私ら。
 でもなんか……引きたくないな。
「ほらほら、その辺にね?」
 そこで間に峰岸さんが入ってくる。
 こっちはこっちで美人。
 歩く姿は百合の花……ってのは言いすぎだけど、華があるのは確か。
 そういや友人A(仮称)が言ってたっけね、可愛い女子が居るって。
「お待たせしました、では行きましょうか」
 少ししてみゆき君とつかさが戻ってくる。
 妙にみゆき君は笑顔で、つかさは何処か威圧感を放ってた。
 な、なんか二人とも……怒ってる?
 あはは、まさかねっ。
「あ、大分人増えてきたね」
「そりゃお祭りだもんなー、皆来るだろ」
 六人で駅からお祭りの場所まで歩く。
 すると予想通りに人が少しずつ増えていき、見る見るうちに視界が埋まっていく。
 うーん、皆考えることは一緒だね。
 夏、お祭り、花火。日本人なら外せないねっ。
37彼女は遷移状態で恋をする(6)-こなたside-(2/4):2008/01/03(木) 10:15:41 ID:QF8/yBxV
「ぬおっ!」
 と、そこで雑巾を絞ったような声が響く。
 ん? 日下部さん?
 ああ、雑踏に押されたのかな。
 まぁ浴衣って動きにくいもんねー分かる分かる。
 私も何度つかさやみゆき君に支えられたか……。
「ほら、大丈夫か?」
「ん、あっ……あんがと」
 倒れた彼女に、かがみが手を差し伸べる。
 ……。
 いいな、って思うのは……私が馬鹿だからかな。
「みさちゃんまだ浴衣になれてないんだって、柊君エスコートしてあげてよ」
 峰岸さんが、二人の間に入る。
 その言葉を聞いて……また、心臓が揺れる。
 嫌だな……多分これ、一番みっともない感情。
 無視できないその感情が……心を蝕む。
「エスコートつっても、俺は良く分からんぞ?」
 心臓が暴れる。
 多分それは……嫌だから。
 嫌?
 そうだ……嫌なんだ、私。
 そんなかがみ……見たくない、から。
「大丈夫大丈夫、倒れないように手繋いでるだけでいいから」
「……っ」
 思わず上げそうになった声を、殺す。
 駄目。
 考えちゃ駄目。
 そんなの、気にしなければいいんだから。
 手なんか繋いだって、別に何もない。
 支えてあげないと転んじゃうなら、危ないから!
「手? 俺はいいけど……」
 そのまま、手を差し出すかがみ。
 危ないから仕方なく。
 危ない……から。
 ……。
 私だって……危ない。
 浴衣だって着慣れてるわけじゃない。
 じゃあ……言う?
 かがみの前にちょっと出て行って、言う?
 私も……お願いって。
 だって片手は空いてるから……うう、また私変なこと考えてる。
38彼女は遷移状態で恋をする(6)-こなたside-(3/4):2008/01/03(木) 10:18:12 ID:QF8/yBxV
「じゃあ私も、お願いしよっかな」
「ぬおっ!」
「あっ……」
 その時だ。
 私よりも。
 日下部さんよりも先に……峰岸さんが、その手をとった。
 それと一緒に、心臓が切り裂かれる。
 ……ほらね。
 期待したら……こうなる。
 みっともなく心臓を跳ねさせて。
 みっともなく切り刻まれる。
 その度に苦しくて……哀しくて。
 なのに……抜け出せない。
「あははっ、両手に花だねっ。かがみ」
「うっさい、仕方なくだ。仕方なく!」
 そのまま右手で日下部さんと手を繋いだかがみを、からかう。
 そんな自分が惨めで……空しい。
 私、嫉妬してるんだ。
 かがみと手を繋いでる、二人に。
 そんなの……無駄なのにね。
 視線を下ろすだけで、私の体が視界に映る。
 それが滑稽で惨めで……憎らしい。
 同世代のそれと比べてどう?
 小さい背。
 張りのない胸。
 幼い顔立ち。
 どれをとったって……目の前の二人には敵いやしない。
 それに浴衣……だって。
『浴衣、似合ってるな』
 かがみの言葉が反響する。
 私にじゃない、『二人』に向けた言葉。
 それを、言って欲しかっただけなのに。
 私に……ただ、一言。
 その一言が聞きたくて、朝から押入れひっくり返して。
 お父さんにも着付け手伝ってもらって。
 髪型だって、何度も見直して。
 でも結局……そんな言葉が返ってくるはずもなくて。
 ……。
 何でだろう。
 視界が……滲んだ。
39彼女は遷移状態で恋をする(6)-こなたside-(4/4):2008/01/03(木) 10:21:10 ID:QF8/yBxV
「あ、そろそろ始まりますよ」
 みゆき君の声が聞こえた。
 それに合わせて、皆が空を仰ぐ。
 空に花火が光ってて、良かった。
 私の背が、一番小さくて良かった。
 零れた涙を、誰にも見られなかったから。
 きっと……駄目、なんだよね。
 あははっ、何を考えてたんだろ。
 かがみが好き?
 そんなの……駄目。
 駄目に決まってるじゃん。
 一瞬ですらそんな事……考えちゃ駄目だったんだよ。
 好きでいる事すら駄目だって、神様が言ってるんだよきっと。
 大丈夫、ほら花火を見よう。
 空はきっと、百花繚乱。
 カラフルにデコレートされた空に、皆も目を奪われてる。
 だから、今のうち。
 今のうちに……涙、拭かなきゃ。
「……こなた?」
「!」
 声が耳を、劈いた。
 聞きなれた声。
 私の心の中で、暴れる彼の声。
 かがみの……声。
「あ……」
 かがみと、目があった。
 空に広がっているはずの満開の花火。
 その咲き乱れる破裂音をBGMに、皆が空に見惚れてる。
 なのにその中でかがみだけ……。
 かがみだけが……私を、見てた。
 涙の零れた、みっともない顔の……私を。


(続)
40ぶーわ:2008/01/03(木) 10:21:40 ID:QF8/yBxV
続きます
次回かがみ君
……男を見せます!(未定
41名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 10:28:56 ID:vQdCSqye
>>40
リアルタイムGJ!
というかぶーわ氏のホームページトップのゴッドかなたさんが気になって眠れないんですけど
背景の文字は何かの伏線ですか?
平安かがみの事っぽいけど
42名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 11:58:17 ID:vWKnkyRu
>>40
乙です。
さて、確かにここからが男かがみの腕の見せ所ですね。
読んでいると何だかぶーわさん、少女漫画を結構読み込んでいるように感じるなあ。

>>41
本編からイメージしたものをそのまま描いているだけじゃ?
後の文字を読んだけど、ほぼ全て本編で書かれていた内容だったし。
43名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 12:34:54 ID:3k5a4Xl5
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm1908981
らき☆すたの順位の高さに吹いたw
44名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 12:58:01 ID:aIE5bCvq
原作はそうでもないけどやっぱりアニメがね
45名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 13:16:38 ID:iv/VoQE2
>43
百合アニメだったのか。
46名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 13:32:08 ID:sMltCYIN
>>40
GJ!あー、これは確かにイラっと来るかも…。
でもこなた視点のほうでかがみだけが見てた、ってのはあれかな。いい感じかな。
次で男らしいところ、見せてくれること期待してます。
もうこのバカかがみ!とか読みながら思わなくなれるのかな。
47名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 13:45:43 ID:rJ2trC3w
前スレ759-762
埋めネタにしておくにはもったいない。。。GJ

そしていろんなネタ仕込みすぎw
もっとやr(ry
48名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 15:16:31 ID:iv/VoQE2
どなたも準備されていないようなら、投下させていただきます。
4923-251:2008/01/03(木) 15:30:45 ID:iv/VoQE2
「ガラスの壁」 第4話

こなた&ゆたか(みゆき、みなみ、つかさ)(みゆき視点)

注意事項

・続き物
・非エロ
・シリアス(ダーク)
・みゆきさん注意
50ガラスの壁 1/11:2008/01/03(木) 15:31:56 ID:iv/VoQE2

 4.

 私が、岩崎みなみさんから電話を受けたのは、私たちが泉さんと
小早川さんの後をつけた、翌日の夜でした。
 みなみさんは、電話口からも、動揺が激しいことが分かったので、
私の家に来てもらうようにお願いしました。

 幸い、お隣同士なので5分も経たない内に、みなみさんを、
私の部屋に招くことができました。
「どうしたんですか? みなみさん」
 みなみさんの顔色は、あまり良くありませんでした。
 しかも、身体が小刻みに震えています。

 みなみさんとは小さな頃から親しくしていて、妹に近い感情を持って
いるのですが、これほど憔悴している姿は初めてです。
 とりあえず、ホットミルクを作って、彼女の気持ちが落ち着くまで
待つことにします。
「あ…… ありがとうございます」
 みなみさんは小さな声で、ミルクをすすります。
「もし良ければ、話してもらえませんか。何か、力になれることが
あるかもしれません」

 少し落ち着いたところを見計らって、私は声をかけました。
「みゆきさん。泉先輩とゆたかが恋人同士っていうことを
信じられますか? 」
51ガラスの壁 2/11:2008/01/03(木) 15:32:41 ID:iv/VoQE2

 ずいぶん直接的な発言です。
「私、昨日、泉さんとゆたかが仲良く食事しているところを見たんです。
それも恋人のような雰囲気でした…… 」
「みなみさん。あなたも知ってしまったのですね」
 私は少し首を傾げて、話の続きを促しました。

「実は、みゆきさんや、柊先輩達が、二人の後を追っていたと
いうことを、クラスメイトから聞いていたんです」
「なるほど。私たちは、その女生徒に目撃されていたのですね」
 私はカップを置いてから、みなみさんの瞳を見据えて続けます。
「二人が『恋人』になったいたことを、みなみさんはどう思って
いるのですか? 」
 とても酷な質問だということは承知しております。
 しかし、みなみさんの気持ちを最初に聞かないと、相談に乗ることは
できません。
 みなみさんは辛そうな表情のまま、答えてくれました。

「私は、ゆたかが泉先輩のものになってしまうのがイヤです。
ゆたかの、一番傍にいたい」
 力を失っていた瞳に、小さな火がついたようです。
「みなみさんは、小早川さんと泉さんの仲を、引き裂いてしまいたいと
思いますか? 」
 私は、悪魔のように囁きます。いわゆる『分岐点』でしょう。
 みなみさんの善なる心が強ければ、私の問いにNOと答えるでしょう。
 しかし、弱ければ……

「はい…… 思います」
 この瞬間、みなみさんも、天国に行ける資格を喪うことになりました。
 地獄というものが実在するのならば、仲間が増えることは嬉しい
ことかもしれません。
52ガラスの壁 3/11:2008/01/03(木) 15:33:33 ID:iv/VoQE2

「分かりました。今から、柊つかささんに電話をします。
みなみさんは、そのまま、私とつかささんとの話を聞いてくださいね」
「はい」
 みなみさんは小さく頷きます。

 明日は土曜日で、学校は休みです。
 私は、携帯電話を手に取り、つかささんの番号を押します。
『もしもし、柊ですが』
 ほとんど待つことなく、繋がりました。
「夜分失礼します。高良です」
『あっ、ゆきちゃん。こんばんは』
「こんばんは、つかささん。少し相談したいことがあるのですが」
『ゆきちゃんが、相談? 』
「ええ。実は…… 泉さんと小早川さん、お二人のことです」
 私は、いきなり本題に入ります。

『ええっと、どういうこと? 』
 つかささんは、首を傾げているようです。私は慎重に言葉を選びました。
「実は、岩崎みなみさんから相談を受けたのです」
『みなみちゃんから? 』
「ええ。彼女は、ゆたかさんが泉さんと親しくなって、ゆたかさんが傍から
離れていることを心配しているのです」
『あっ…… で、でも、ゆきちゃん。こなちゃんと、ゆたかちゃんの間は
仕方ないことじゃ』
「つかささん。泉さんが私たちと離れてしまって、寂しくありませんか? 」
 私の言い方はかなり利己的なものです。しかし、正直な感情でもあります。

「私も寂しいよ」
「つかささんは、このままで良いと思っていますか? 」
『ううん…… 思ってなんかない』
 私は、少し切迫した声色に変えて言います。
「泉さんと、元の関係に戻れるように、私たちで知恵を合わせませんか? 」
53ガラスの壁 4/11:2008/01/03(木) 15:34:24 ID:iv/VoQE2

 しばらく、無言が続いた後、つかささんの返事が聞こえてきます。
『うん。分かったよ。それで、どうすればいいの? 』
「明日は土曜日で休みですよね。私と、同意が得られればみなみさんも
一緒に、つかささんの家まで行っても良いのですが…… 」
『でも、お姉ちゃんが…… 』
 つかささんは、双子の姉である、かがみさんと何かあったようです。

「それなら、つかささんが、私たちの家まで来ていただけますか? 」
『うん』
「申し訳ありません。少し遠くなりますが」
『ううん。気にしないで』
「では、明日の午前11時でいかがでしょうか? 」
『分かったよ。ゆきちゃんの家に直接行くからね』
「すみません。よろしくお願いします」
『おやすみなさい。ゆきちゃん』
「おやすみなさい。つかささん」
 私が携帯を切った時、みなみさんは私の顔を不思議そうにみています。
多少の説明が必要でしょう。

「みなみさんは、どうしてつかささんを誘ったのか分からない、
といった顔をしていますね」
 みなみさんは、顔を少しだけ赤らめて頷きました。
「昨日、二人の後をつけたのは、私と、かがみさん、つかささんの
3人です。しかし、私とかがみさんは、途中で教室に戻ったのです」
「えっ? 」
「泉さんとゆたかさんが、仲良く昼食をとっているところを見ただけで、
講堂を去りましたが、つかささんだけは残りました」
「どうしてですか? 」
 みなみさんは首を傾げて尋ねてきます。

「それを明日、聞こうと思っています。みなみさんも同席してもらえますね 」
「は、はい」
 みなみさんに反対する理由があるはずもなく、あっさりと頷きます。
 それから、今日の泉さん達の様子を伺ってから、帰宅して
もらいました。
 みなみさんには、多少の希望は抱いてもらえたのではないでしょうか。
54ガラスの壁 5/11:2008/01/03(木) 15:35:23 ID:iv/VoQE2

 もう、ご存知な方もおられるかと思いますが、つかささん『だけ』
を講堂に残したことには、きちんとした理由があります。
 まずは、私が、泉さんと小早川さんの『恋愛関係』を、かがみさんや、
つかささんよりも、先に把握していたことを申し上げなければいけません。

 お恥ずかしい限りですが、私にファンのような感情を抱いている
複数の下級生から、定期的に、泉さんについて情報を貰っており、
二人がキス以上の関係になっていることも、既に把握しておりました。

 簡単に言えば、家では我慢できずに学校でも、ということでしょう。
 ただ、私は泉さんが悪いなどとは、全く思っていません。
 おそらく『さかり』のついた、小早川さんが駄々をこねて、泉さんも
断りきれずという展開でしょう。
 私の泉さんを強奪する泥棒猫…… こほん。失礼しました。
 泉さんを、特殊な色香で惑わす小早川さんは、断固排除しなくては
いけません。
 しかし、泉さんが現状、小早川さんの悪魔のような誘惑に乗せられて
しまっている現状を、否定できることもできません。

 今後の行動はよほど慎重かつ、迅速に行わなくてはいけません。
 受験と卒業も間近にせまっております。残された短い期間で、泉さんと
小早川さんの仲を引き裂くには、他者の強制力が必要でしょう。
55ガラスの壁 6/11:2008/01/03(木) 15:36:03 ID:iv/VoQE2

 話がずれてしまい、申し訳ありません。
 とにかく泉さんと小早川さんが、既に性的な関係にあることは
把握しておりましたので、昨日の目的は、二人の情事を、柊つかささんに
見せることが、最大の目的でした。

 しかし同時に、かがみさんには、情事を見せてはいけないという部分が、
とても難しかったのです。
 行動的なかがみさんは、泉さんと小早川さんがキス以上のことをした時に、
黙って眺めていることなどできやしません。
 必ず、飛び掛って、二人を引き剥がしにかかるでしょう。
 確かにその場での性交は止められるかもしれませんが、私たちの仲は
永遠に引き裂かれてしまいます。短慮は破滅を招くのです。

 しかし、少し引っ込み思案な、つかささんならどうでしょう。
 彼女は、じっと息を潜めて、ひたすら情事を見ているに違いありません。
 推測ですが、家に帰った後、つかささんは二人の情事を思い浮かべながら、
自慰にふけっているかもしれませんね。

 私が強調しておきたい点は、泉さんと小早川さんの問題について、
関係者では、私だけが知っても意味がないということです。
 少なくとも、つかささん、みなみさんには知って頂き、かつ、今後の私の
方針に対して、賛同してもらわなくてはなりません。
 二人の協力なしでは事を進めることはできないのです。
56ガラスの壁 7/11:2008/01/03(木) 15:37:35 ID:iv/VoQE2

 土曜日の午前11時、つかささんがほぼ時間通りにチャイムを
鳴らしました。
 私は笑顔で、彼女を迎え入れます。
 隣に住んでいるみなみさんは、既に私の部屋に来ています。
 私服姿のつかささんは久しぶりに見るような気がします。
 白いふわふわのセーターと、紺のスカートを合わせていて、清楚な感じを
受けます。

 お二人に、紅茶とケーキをお出しして、つかささんが持参してきた、
手作りのクッキーを頂いた後、私は、本題に入ります。
「つかささんに、私の家まで来ていただいた理由は他でもありません」
 つかささんは緊張した様子で、居住まいを正しました。
「泉さんと小早川さんが親密に『なりすぎている』ことについて、『相談』を
したかったのです」
「うん。分かってるよ。ゆきちゃん」
「私は、昨日泉さんと小早川さんが、仲良く食事をされていることを
知った時、残念ですが、仕方が無いことだと思っていました」
 最初から嘘を織り交ぜます。
 ファンの下級生を使って、二人の仲を嗅ぎ回させていたなんてことは、
口が裂けても言えませんから。

「しかし、昨夜、みなみさんから電話を受けました。みなみさんが、
小早川さんと泉さんが、仲良くお弁当を食べているところを見てしまい、
ショックで保健室で寝込んでしまったそうです」
 みなみさんにとっては、晴天の霹靂でしたから、無理もありません。
57ガラスの壁 8/11:2008/01/03(木) 15:38:23 ID:iv/VoQE2

「え…… みなみちゃんが」
 つかささんは、みなみさんの顔を見て、大きなため息をつきました。
「泉さんは私たちにとって、小早川さんは、みなみさん達1年生にとって
太陽のような存在です。太陽に照らされてこそ、周囲を回っている
惑星は光ることができる、と思います」

 私の比喩を理解したつかささんは、真剣な表情で頷きました。
 ここで、事実の一端をもらすことにいたしましょう。
「実は、泉さんと、小早川さんの関係は、私達や、みなみさん以外にも
知られています」
「ゆきちゃん。本当? 」
 つかささんは、ティーカップを机に置いて、私を覗きました。
「みなみさんの同級生から話があったようです」
「みなみちゃんの? 」
 ここで、みなみさんが口を開きます。
「私のクラスメイトが、ゆたかと泉先輩が、恋人同然の親密さであると、
教えてくれました」
「そう…… 」
 つかささんは、少なくないショックを受けているようです。
「ええ。彼女の言葉で私は、ゆたか達を追うことに決めたのです」
58ガラスの壁 9/11:2008/01/03(木) 15:39:20 ID:iv/VoQE2

 みなみさんは、気がついてはいないでしょう。
 そのクラスメイトは、私を慕ってくれている方の一人です。
 彼女にはみなみさんに、二人の関係について話してもらうように
誘導してあります。
 もっとも、彼女は自分の言葉として、みなみさんに話しているはずです。
 人間、他人に操られていると感じることは、誰しも不快に思います。

 私の苦心は、実はそこにありましたが、どうやら彼女はメッセンジャー
としての『任務』を無事に果たしてくれたようで、ほっとしています。
 しかし、みなみさんの話によると、既に泉さんは、みなみさんが二人の後を
追っていることに、気がついていたそうです。
 さすが、泉さんですね。

 私は、頭の良い泉さんが好きです。誤解の無いようにお願いしたいのですが、
テストの成績のことではありません。
 もっと本質的な部分の話です。泉さんは恐ろしく頭の回転が速いのです。
 おそらく本気で勉強に打ち込めば、東大だって狙えるに違いありません。
 ただ、泉さんは受験そのものに、何の意味も見出していないだけなのです。

 泉さんの長所をあげるときりがありませんが、ともかく、私は泉さんと
話すたびに彼女に惹き込まれていって、気がつけば、恋をしてしまったのです。
 しかし、勇気の無い私は、泉さんに想いを打ち明けることは
できませんでした。
59ガラスの壁 10/11:2008/01/03(木) 15:41:04 ID:iv/VoQE2

 理由は、彼女と同性だということを否定する訳にはいけません。
 それに私は、泉さんに、つかささん、かがみさんを加えた4人で、
高校生活を、仲良く過ごすことで満足していました。
 しかし、この関係をあっという間に壊してしまった女狐…… 言葉が
すぎました。引き離した方が、泉さんの従姉妹である、一年生の
小早川ゆたかさんです。
 彼女は小柄な泉さんより、更に身長が低くとても可愛らしい顔だちを
しています。
 表情も豊かで、何より病弱という事が、保護欲を誘うらしいのです。
 傍らで話に加わっているみなみさんも、ゆたかさんの虜になってしまった
一人です。

 申し訳ありません。話を元にもどすことにしましょう。
 みなみさんは、講堂で泉さんと、小早川さんの間の親密な様子を
話してくれます
「ゆたかが、キスをするように、泉先輩にせがみました」
 みなみさんの顔が辛そうに歪みます。

「でも、泉先輩は『悪い大きなねずみさんが覗いているから駄目だよ』と、
断りました。そして…… 
『今すぐ退散するならゆーちゃんに黙ってあげてもいいんだけどな』
と怖い口調で、幕の裏側にいた『私』に向かって警告しました」

 みなみさんは辛そうな口調で続けます。
「私が、ゆたかたちの後をつけていることは、泉先輩は、分かっていたのです。
私は何も考えることができずに、ひたすら逃げることしかできませんでした」
 寒そうに身体を震わせながら言って、みなみさんは口を閉ざしました。
「みなみさん。ありがとうございます」
 私は少しだけ頭をさげると、紅茶で唇を湿らせます。さて、ここからが本題です。
60ガラスの壁 11/11:2008/01/03(木) 15:42:40 ID:iv/VoQE2

「つかささん」
「う、うん」
「申し訳ありませんが、昨日、私とかがみさんが離れた後の事を教えて
欲しいのです」
「で、でも…… 」
「泉さんに口止めされましたか? 」
「ど、どうして、わかったの? 」
 つかささんは、あたふたしています。

 泉さんから、口止めされていることは容易に推測できます。
 既に、二人は『秘密の花園』で性交を重ねているのですから、昨日だけ
『しない』ことなんかあり得ないのです。

 そして、泉さんは、つかささんの覗き見も把握していたのでしょう。
 おそらく、つかささんに情事を見られていることに興奮して、敢えて
放置していたのかと思われます。
「今更、隠しても意味がないのではないでしょうか。つかささん」
「そ、そうかな」
「私たちにはほとんど時間が残されていないのです。冬休みに入っては
何もすることはできません」
「はぅ…… そうだよね」

 私は、尚も迷っているつかささんの後を、そっと押してあげます。
「つかささんは、このまま、泉さんが離れてしまってもいいとお考えですか? 」
「それは嫌っ 」
 つかささんは、小さく叫びました。彼女も泉さんに恋心を抱いています。
 泉さんは、とても罪作りな人です。
「それなら、現状を打ち破るために、協力を頂くわけにはいきませんか? 」
 つかささんは、後ろめたい気持ちを振り払うように言いました。
「う、うん。分かったよ。ゆきちゃん」
 少し時間がかかりましたが、ほぼ予定通り、つかささんに納得してもらう
ことができました。

「じゃあ。言うね」
 つかささんは小さな声で呟くと、私とみなみさんに向けて、昨日のお昼に
彼女が見た出来事を話し始めました。
6123-251:2008/01/03(木) 15:46:54 ID:iv/VoQE2
読んでいただいた方、ありがとうございます。
予想以上に、みゆきさんが真っ黒となってしまいました。

あと、みゆきさんの丁寧な口調は、難しいですね。

62名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 15:49:11 ID:gYBbvJQR
>>61
なんというGJ!
続き楽しみにしてます
63名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 15:49:40 ID:sMltCYIN
>>61
リアルタイムGJ!
黒いよ!みゆきさん!
ここで計画が立てられるわけですかぁ・・・
しかし根回しがすごいな・・・みゆきさんの中では合意の上で、ってことにはなってないのか。
すでにゆーちゃんは邪魔者っていう認識でしかないんだね。
正直怖いわぁ…でも続きが気になってしまう読者の性。
64名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 16:46:15 ID:3Dm5KpHw
GJ
このみゆきさんには鼻血を吹いてほしくないな
65名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 17:16:49 ID:7iI8wjlQ
ここからどうElopeに繋がるのかwktkだ


……というか、これで後になってみゆきさんを疑わないつかさは流石つかさ
読み返したらむしろ姉を疑ってたり
66名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 17:29:32 ID:b8w7S1tC
「え・・・え!?私?
 い、いつのまに、わたしそんなに役が上がったの?」
「さっすがゆーちゃん、みゆきさんの立ち位置すら奪う勢いだネ」
「いえいえ、正直な感想ですだばだば、いまやあなたの魅力は
 そういう比喩すら物足りない勢いです、罪です。
 いっそのことモノにだばだば」
「・・・・・・;;」
「だから落ち着いてみなみちゃん」
「さすが、簡単にはいきませんかだばだば
 騎士さんもいけずですだばだば」
>>61さんGJです。高良先輩とみなみちゃんが邪に落ちていく感じが
 はらはらとつたわってきます、次に目が放せません」
「続きなんて・・・つづきなんて・・・;;」
「だから、みなみちゃんてば・・・ホラ、部屋いこ」
「うん・・・」
「(おっかしいブツブツ・・・調教ブツブツ・・・今夜はボソボソ・・・)」



「Σ(=ω=.)今なんかゆーちゃんから邪悪な言葉を聞いたような・・・」
「これは末恐ろしくて将来楽しみで濡れちゃいそうですだばだば」
67ぶーわ:2008/01/03(木) 17:49:24 ID:QF8/yBxV
亀レス失礼
ちょっと目をはずすと30ぐらいレスがついてるのがこのスレの恐ろしいところ

>>41
>>42さんの言うとおり、内容は本編のかがみんをイメージした詩?です
今更人袖もあれだし自分で読んで赤面だったんで没にしちゃってました
痛い詩ですがよかったらどうぞ
・改良版
ttp://www.geocities.jp/je104049/god.PNG
・おまけ
ttp://www.geocities.jp/je104049/god2.PNG

>>42
そう……遷移状態のテーマは『少女漫画』ですから!
最終話でバラそうと思ったのに! え? ばれてた?

長文私文失礼
68名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 20:42:36 ID:cPYyvk17
>>67
GJです !
人によりけりだと思いますが、ぶーわ氏の連載の中でTSが一番続きが気になってる私は異端者w
6941:2008/01/03(木) 21:05:15 ID:vQdCSqye
>>67
ありです!
わざわざありがとうございました
70名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 21:42:07 ID:xCvZXxFT
最近黒化多いなw大歓迎だ。
もしこなたが黒化したら誰も敵わない気がする
あのほんわか猫口からすっごく冷たくなるんだと思うとガクブル
71名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 21:52:37 ID:iv/VoQE2
>70
黒こなたは、以前、短いのを書いたことあるけど
非常に危険なのでお勧めできないw
72名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 21:54:07 ID:+HjNIW8x
それ以前に黒化させてもどう動かしたらいいかわかんないぜ…
73名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 21:56:08 ID:TPJySdPT
やっぱあれだ、リチャード王だ(゚∀゚)

こりゃたしかに危険し、扱いづらいwwww
74名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 21:57:07 ID:2CAielC6
それは恐ろしい……

誰もいかれないようでしたら投下したいのですが
勢い余って続編+それに関係する短編、と
二作同時に抱え込んでしまいました
連投おkですかね?
75名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 21:59:53 ID:LgpZ3U3h
>>70
黒ゆーちゃんはFoolish Form氏が量産してるなwww


>>74
どんどん投下してくれい!!
76名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 22:00:41 ID:xCvZXxFT
>>71
あれはガクブルでしたw
77名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 22:01:07 ID:iv/VoQE2
>74
投下おねがいします。

>75
読んでみたいなw
786-748:2008/01/03(木) 22:01:36 ID:2CAielC6
ありがとうございます

・「お楽しみ日曜日」の続編
・4スレ拝借
・かがみ×こなた

ではいきますね
79時間の問題(1/4):2008/01/03(木) 22:02:21 ID:2CAielC6
 時の流れ。
 足掻いてももがいても冷酷に過ぎ行く、決して止まる事のない存在。
 それは時に、色々な事を錆びつかせてしまう。





 時間の問題





「ふ〜、さっぱり」
 お風呂上り、冷蔵庫から冷たい飲み物を取り出すタオルを頭に掛けたこなたが言った。
「かがみもいるよね?」
「おー……」
 私は力なく返事をした。欲しいという事は伝わったらしく、こなたがガラスのコップを二つと麦茶を持ってくるのが横目で確認出来た。
 情けない事に私は長湯でのぼせてしまったらしい。お風呂から上がって、頭にタオルを巻いたままソファーに寝転がって天井と睨めっこをしている。
 こなたは平気だったのに何故だろう。ぼんやりとした意識の中考えても明確な答えなんて得られるわけがなかった。
「やっぱりかがみんはえっちなんだねぇ」
 朱に染まった顔を見られてこなたに言われた事を思い出す。真っ向から否定できないのが悔しいやら別に良いような。
 頭が回らなくなって思考を停止する。これ以上脳を働かせても疲れるだけだ。
「お待たせ〜」
 こなたが近くのテーブルに持っていたものを置いた。液体が注がれているのが音という情報で聴覚から伝わってくる。
「かがみ、飲める?」
 麦茶が入ったコップを手に取ったこなたが私の顔を上から覗き込んだ。
「ん〜……」
 正直に言うと飲ませて貰いたい。面倒だからという理由の他にもやましい思いがあるような気もしたが無視を決め込む。
「……飲ませてくれる?」
 試しに言ってみた。慣れないと痛感しながらも媚びるような声を出すとこなたは少し反応して肩を揺らした。
 そして顔を赤面しながら頷く。心の中の私が踊り出した。
 この体勢ではやり難いだろうとソファーに手をつき上半身を起こすと、こなたは口にお茶を含んだ。
 こなたも喉乾いてたのかなと思ったのも束の間、肩を掴まれて私の思考は吹き飛んだ。
「こ、こな―――」
 一足遅かった私がこなたを呼ぶ行為は中断された。
 視界がこなたのみになったから。
 一瞬何をされたのか理解出来なかったけれど、伝わってきたこなたの柔らかい唇の感触が私に現状を教えてくれた。
 こなたにキスされていると。
 何故急にしたのかという疑問が浮かんできたのと冷えた液体が私の口内に潤いをくれたのはほぼ同時。刹那、前者は遥か遠くの忘却の地へと追いやられる。
 ちょ、こなたさん、飲ませてくれるってそういう方法ッスか。コップを口元まで持ってきてくれるものばかりだと思っていた私は完全に不意をつかれてしまった。
 こなたはこなたで恥ずかしいのか、いつの間にか目を瞑っている。
 私はそんなこなたを、温もりを感じながらずっと見ていた。
80時間の問題(2/4):2008/01/03(木) 22:02:58 ID:2CAielC6
 液体が全てこなたの口から私の口へと移っても、私達はそのまま唇を触れ合わせていた。
「んっ……」
 先程浴室で深い快楽の泉に溺れたはずなのに、こなたが舌を伸ばして私を求めてきた。熱を帯びた息や少しくすぐったい前髪が私の欲情を更に煽る。
 いつもは私がこなたに舌を絡めていっていたから、こなたが積極的に舌を伸ばしてくるのがとても嬉しかった。
 私も応えるように、火傷しそうなほど熱を持ったこなたの舌を手に入れようと探し求める。
「あふっ……」
 舌が触れ合った瞬間、微弱な電流が私を駆け抜けた。
 もっとこなたが欲しくなって、私はこなたの後頭部に手を回して身体を引き寄せた。
「ふえっ?」
 それがいきなりだったからか、中腰になっていたこなたはバランスを崩して私に倒れ掛かってきた。
「えっ?」
 唐突に凭れ掛かってきたのは良かったのだが、一気に全体重の支持を任されてしまうと焦ってしまう。
「わあっ!」
「きゃっ!」
 私はソファーからずり落ちて床に背中を打ち付けてしまった。鋭い激痛が全身に走る。
 そしてこなたは私に被さるように倒れ込んでいた。
 こんな場面でもおいしいシチュだとかこの後の展開を考えてしまう私は大分こなたに毒されてきたのだろうか。それとも私の本能なのか。
「も、もう、いきなり引っ張らないでよ」
 こなたは膨れて批判めいた事を口にするが顔は笑っていた。何だかんだ言って普段とは立場が逆のこの体勢が良いのだろうか。
「こなたこそ、いきなりキスしてくるなんて吃驚するじゃない」
 私が反論するとこなたは急にばつが悪そうな顔になった。
「も、もしかして嫌だった?」
 不安そうに聞いてくるこなた。
 確かに驚きはしたが大好きな人からの口付けなのだ。嬉しくないはずがない。
「もう、そんなわけないでしょ」
 こなたの頭を抱きしめた手で優しく撫でてやると、途端にこなたの顔が一転して明るいものへと変わっていった。
「えへへ、かがみ大好きっ」
 そう言って満面の笑みを浮かべるこなたに私の中で何かが外れた。
「よし、じゃあ続きするか」
「わわっ!ちょっと待って!」
 懲りずにこなたの顔を引き寄せる私と慌てて顔を染め上げるこなた。
 そしてお互いの唇が再び触れ合ったその時―――
 リビングのドアが何者かの手によって開かれた。
「ふー、やっと原稿届け終わったよー。疲れた……」
 入ってきたのはそうじろうおじさんだと声でわかる。
「なぁ……」
 時は止まり、語尾だけがむなしく静寂の空間に響いた。
81時間の問題(3/4):2008/01/03(木) 22:03:30 ID:2CAielC6
「……そうか」
 今まで一言も喋らずに私達の話を聞いていたおじさんが確認するように呟いた。
 愛し合っている最中を見られたのを切っ掛けに、私達の関係を打ち明ける事にした。元々近い内に話そうと思っていたからこちらとしても好都合だった。
「二人は付き合っていたのか……」
 おじさんの顔は何処か納得がいったような、それでいていきなり突きつけられた事実に全く動じていないようだった。
「お父さん、驚かないの?」
 私も気になっていた事をこなたが尋ねた。
「何が?」
「いや、女同士で付き合ってる事とか……」
「色んな文化が交じり合った社会になってるんだ。そうそう珍しい事じゃないさ」
 おじさんは笑って言った。
「要はストパニとかマリ見てに毒されたって事だよね」
「はは……」
 こっそりと私に耳打ちしてくるこなたに曖昧に笑う。
 つかさ達もそうだったが、やはり身近にいる者の変化には例え些細な事でも気付くものなのだろう。おじさんももしかしたら確信していたのかもしれない。
「ひょっとすると……気付いてましたか?」
「二人の間に何かフラグが立ったって事ぐらいはね」
 返答を聞いてやはりこの二人は親子なんだなと思い知らされた。真面目な話をしているのに何処か笑っていてマニアックな単語を使ってくる。
「反対されないんですか?」
 あっさりと言葉が口から出て自分でも驚いた。
「ああ、二人も中途半端な覚悟じゃないはずだからな。ただ……」
 おじさんの顔が激変した。穏やかな雰囲気は消え去り、父親の威厳と風格を備えた真剣な目つきになる。
「これは俺からの一つだけの願いだ」
 おじさんはこなたを見て次に私を見ると、最後に私達二人を同時に見据えた。
「絶対に逃げ出すな」
 凛とした声が張り詰めた空気を伝わって波を作った。おじさんの思いがこれでもかというほど表れる。
 こなたを手放すわけなんてない―――
 心の中では幾らでも誓えるのに、雰囲気や空気に圧倒されている所為か口に出す事は憚られてしまった。
「……うん」
 沈黙に耐えかねたのか、こなたが頷いて小さく呟いた。深緑の瞳には計り知れない熱意が溢れんばかりに漲っている。
「……はい」
 私も目に闘志を燃やし、力強く頷いた。
「うむ」
 おじさんは満足げに頷くと立ち上がった。
「そろそろ飯にしようか。二人もまだだろう?」
「あ、今から作るよ」
 こなたも続いて席を外し椅子の背凭れに掛けてあったエプロンを手に取った。
「お父さんが危ないから裸エプロンは止めるよ?」
「あ、うん」
 私の遅い返事を待たずにエプロンを着用し始めているこなた。『いるから』ではなく『危ないから』とこなたは言ったが、そこは触れてはいけないような気がして私は台所へ向かうこなたの背中を見送った。
 切断音や流水音等料理に関する様々な音を聞きながら机に頬杖をついていると、おじさんが私の真向かいの椅子に腰を掛けた。
「こなたをよろしく頼むよ」
 そう言うなりおじさんは頭を深々と下げた。
「あ、い、いえ」
 焦っていたのかまともな返事も出来ず、取り敢えず私は同じように目線を机に落とした。
 顔を上げるとおじさんと目が合って笑いかけられたから私も微笑を返す。
「そう言えばこなた、ゆーちゃんは?」
 顔だけ台所へと向けておじさんが少し声を大きく叫ぶ。
「友達の家に泊まりに行ってるよー」
「おお、そうか」
 おじさんはこなたの声を聞いて向き直ると腕組みをした。
「近い内にゆーちゃんにも話さないとなぁ」
「そうですね……」
 こなたの従姉妹のゆたかちゃんはどう言った反応をするのだろうか。
 丁度料理が運ばれてきたので、私は一旦小難しい考えを止め楽しく食事を取る事に専念した。
82時間の問題(4/4):2008/01/03(木) 22:04:03 ID:2CAielC6
 夕食を終えて私達はこなたの自室に入った。
「さて、寝るまで何しようかなっと」
 そう言いながらパソコンの電源を入れるこなた。
「パソコンする気満々じゃない」
 私の的確なツッコミをこなたは華麗にスルー。
「私は放置ってわけね……」
「たまには放置プレイも良いもんだよ」
「黙れ」
 即座に反応してみるもののやはりスルー。私はこれ以上言っても無駄だと判断する。
「ごめんねー、いつも見て回ってるサイトに顔出したら終わるから」
「分かったわよ」
 納得した様子を見せると、こなたは再び画面と向き合ってしまう。溜息をつき私はこなたの部屋の詮索を開始する。
 今私が腰掛けている場所が、いつもこなたが寝ている魅惑のベッドだ。ただの就寝器具なのに、異様な魅力を放っているのは言うまでもなくこなたが使用しているからだろう。
 柊かがみの詮索、これにて終了。
 さて、潜り込みますかね。
「……かがみ、何してんの?」
 こなたの声で別離した空間から元の世界へと引き戻される。
 私は毛布を被って枕に顔を埋めパジャマの上から三番目と四番目のボタンを外していた。
 ええ、自分でも何してたか分かりませんよ。
「まぁ良いや」
 自分のベッド荒らされてても良いのか。
「もう終わったの?」
「うん」
 こなたにすれば驚くべき速さだろう。本当にサイトを見て回っただけのようだ。
「かがみ、私があげた指輪持ってる?」
「ああ、鞄の中」
 こなたの質問に私は部屋の隅に置いていた鞄を指差した。
「ちょっと出してきて」
「?うん……」
 何が目的なのかさっぱりだったが、私は言われた通りにベッドから降りて鞄から喫茶店で受け取った指輪を取り出す。
 それを持ってこなたの元に戻ると、こなたはベッドの上で頭から薄い布団を掛け、待機していた。
「来て来て」
 私はこなたの促すままに傍へ移動する。すると布団が私にも分け与えられた。
 白い生地にふわりと包まれこなたとの距離が一気に近くなる。
 こなたも指輪を手に持っていた。
 そして私の手を取り、薬指に嵌める。
「ほら、かがみも」
 今度は自ら手を差し出して倣うよう私に言ってくる。
「えへへ、雰囲気出るでしょ?」
 こなたはそう言って目を閉じた。
「病める時も、貧しい時も、道がない時も、胸がない時も……」
 その光景がとても微笑ましくて、私は思わずツッコミを入れ忘れてしまった。
 まぁ、こなたらしいっちゃこなたらしいわね。
 私は少し笑みを浮かべてこなたの手に自分の手をそっと添えた。
「ずっと一緒よ、こなた……」
 こなたの細い指に指輪を通すと、顔を上げたこなたと目線が合った。
 そのまま―――私達は吸い寄せられるように、小鳥がついばむような自然な口付けを交わした。
836-748:2008/01/03(木) 22:04:56 ID:2CAielC6
続いていかせて頂きます

・↑の関連短編
・2スレお借り
・つかさ→かがみ
84しかし二人は姉妹だった(1/2):2008/01/03(木) 22:05:38 ID:2CAielC6
 お姉ちゃんとこなちゃんが付き合っている事を知ったのはつい最近。
 二人の感じからして何かあったなっていうのはそれよりも前から分かっていたけど。
 思えばその時から私は心の鍵を手に取っていたのかもしれない。





 しかし二人は姉妹だった





 一人寂しく家路につく土曜日。
 休日だから学校からではない。こなちゃんのお家からだ。
 ゆきちゃん達もそれぞれの帰るべき場所へ歩みを進めている事だろう。
 お姉ちゃんとこなちゃんがどちらがお嫁さんなのかを競う闘い、最後の種目は私が観戦する事は許されなかった。
 ひよりちゃんに後押しされながら部屋を出て行く際、お姉ちゃんにエールを目で送って同じように目で返された光景が今でも鮮明に私の脳を彩る。
 でも私の行為にお姉ちゃんを応援する気などこれっぽっちも含まれてはいなかった。
 作った優しい目線に込めたのは、伝わるはずもない想い。

 いつも一緒に過ごしてきたお姉ちゃん。
 二人で遊んだり笑ったり、時には喧嘩してすぐに仲直りしたり。
 私にはないものを持っていて、しっかりしてて頼れるお姉ちゃんが私は誰よりも好きだった。
 そしてその感情は―――気がつくと禁忌のものへと変わっていた。

 お姉ちゃんの口から分かりかけていた事実が告げられた時、私の中で何かが、確実に変化した。
 正直言うとこなちゃんが羨ましい。
 お姉ちゃんの本当の笑顔を引き出せるのは、こなちゃんだけだから。
 時には極上の癒しとなり、時には強靭な支えとなってくれたお姉ちゃんの笑顔。私を何度も救ってくれた存在。
 それが今では、どうしても遠く感じてしまう。
 確かにお姉ちゃんは私と話していても笑ってくれる。
 けどそれは、こなちゃんに見せるものとは何かが違って映る。
 決定的な、何かが。
 弱い私はこなちゃんを妬む事も出来ず、二人を心から祝福する事も出来ず、やり場のない想いを胸に出口のない迷宮を彷徨っていた。

 私達は女同士なんだ―――
 私達は姉妹なんだ―――
 そう自分に必死に言い聞かせ、気持ちを偽ってきた。
 ただ逃げているだけなのに気付かない振りをして。
 後悔した時はもう遅い。
 心に巻きつけられた鎖は何重にもなって私を、私の気持ちを縛っていた。
 自分で自分の愚かさを呪っても何も起こらない。
 分かっていたけれどそうせずにはいられなかった。

 ―――不思議だな。
 二人の前では笑っていられたのに、応援するよって言えたのに。
 赤くなる鼻、潤む瞳。
 私はそれを冷たい風の所為にしてひたすら歩き続けた。
 重たく心に鬱積する、後悔の元となる言い訳がまた一つ増えた。
85しかし二人は姉妹だった(2/2):2008/01/03(木) 22:06:14 ID:2CAielC6
「ただいまー」
 私が同じ台詞を玄関に響かせてから数時間後、お姉ちゃんの声が聞こえた。
「お帰りー」
 私が出迎えるとお姉ちゃんはとてもにこやかな表情をして、鼻歌交じりに靴を脱いでいた。聞かずとも勝負を制した事が伝わる。
 おめでとう、とか凄いね、とか、掛けるべき言葉は沢山あるはずなのに。
 どれもが私の喉から空気中に発せられるのを拒絶した。
「今日こなたの家に泊まる事になったから」
 気がつくとお姉ちゃんが目の前に立っていた。
「あ、そ、そうなんだ」
 急いで返事をしたから不自然になってしまったかもしれない。
 けどお姉ちゃんはそんな私の様子を気に掛ける素振りも見せずに、自室がある二階へと軽快なステップで階段を上っていった。
 その後姿を眺めていた私だけが、静けさを纏う玄関に残された。

 素早く宿泊の準備を済ませたお姉ちゃんが降りてくる。音でそれを判断した私は見送る為に腰を上げた。
「泊まるって事は、明日はこなちゃんの家から直接学校行くんだよね?」
 荷物を近くに置いて再び靴に足を通すお姉ちゃんの背中に聞いた。
「うん、そうそう、朝ちゃんと起きるのよ」
 言いながら私の方を振り向くお姉ちゃん。
「うん……」
「……つかさ」
 声が少し沈んでしまったからだろうか、お姉ちゃんは急に眉を寄せて心配そうな顔になった。私を呼ぶ声も少しトーンが落ちている。
「私もこなたと付き合い始めたから、つかさといられる時間は減ると思うけど……」
 お姉ちゃんは静かに立ち上がり、私の頭にポンと手を乗せた。
 ふわりと、身体に温かさが湧き上がる。
「つかさはかけがえのない……大好きな家族だからね」
 心地良い、お姉ちゃんだけの温もり。
「そんな顔してたら心配されるわよ?」
「……うん、そうだね」
 私は精一杯の笑顔を、作った。
「いってらっしゃい、お姉ちゃん。明日学校でね」
「うん」
 笑って頷き、お姉ちゃんは振り返った。
「行ってくるわね」
 最後にもう一度、私の方を向いた。
「お姉ちゃん」
 外へ出ようとするお姉ちゃんを呼び止める。
「私、寂しくないよ」
 口から紡がれた言葉は、私だけにしか分からない嘘。
 しかし中途半端な私は完全に虚言を言う事が出来ずに―――
「私は大丈夫」
 今までの私なら言えたかもしれない、楽しんできてねの八文字が言葉に出来ずに―――
「お姉ちゃんの幸せは、私の幸せでもあるから」
 半分本当、半分嘘の台詞を紡ぎだした。
 お姉ちゃんに伝えるというか、自分に説き聞かせるように。
「……ありがと」
 お姉ちゃんはそう言って、今度こそ家の外から扉を閉めた。
 再び、重い沈静を招く玄関に、私は力なく座り込んだ。
 そう、お姉ちゃんの幸せは、私、の、しあわ、せ―――
 必死に頑張ってくれていた涙腺が、ついに限界を告げた。
866-748:2008/01/03(木) 22:09:02 ID:2CAielC6
稚拙な文章の連続投下でしたが
如何だったでしょうか?
次回は多分色々と動きを見せると思います
気持ちを露にしたあの方か名前だけ出たあの方か…
ではまた
87名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 22:16:14 ID:iv/VoQE2
>86
リアルタイムでGJです。
1作目。描写がとても細やかに書かれていたと思います。
こなたとかがみのキスシーンは凄くエロかったです。
そうじろう、しめる時はびしっと締めますな。父親の威厳が伝わってきました。
2作目。つかさの辛さが痛いほど伝わってきました。
最愛の姉が取られてしまったという嫉妬と、姉の幸せを願う間で揺れる心に
ぐっときてしまいました。
「次回」とありますので、続きをwktkしてお待ちしております。
88名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 22:33:00 ID:cPYyvk17
>>86
次回までwktkがとまらない・・・GJ !
89Foolish Form ◆UEcU7qAhfM :2008/01/03(木) 22:41:01 ID:LlbfEsZU
呼ばれて飛び出て何とやら、俺の名が出たみたいなので召喚されてみた。
……え、お呼びでない? (´・ω・`)

>77
直リンしてもいいのかな……? 取り敢えず先頭のhは抜いておく。
ttp://www33.atwiki.jp/kairakunoza/pages/40.html
「Black Heart」は完全な黒ゆーちゃんで、もはや原型を留めてるか怪しいくらいのヤンデレ仕様。
真っ黒が好きなら是非。
お勧めは最新作の「Shifting Heart -episode4-」だが、「episode2」も個人的には良いと思ってる。
こっちはちょっと黒い程度。


……只呼ばれただけなのも何なので、書評の一つでもしてみようと思う。
>86
まずはGJでした。しかし、幾つか気になるところが。

>冷蔵庫から冷たい飲み物を取り出すタオルを頭に掛けた
ここの修飾関係が良く分からなかった。「飲み物を取り出す」のと「タオルを頭に掛ける」のを別々に描写した方が良いかも。

>一足遅かった私がこなたを呼ぶ行為は中断された。
ここも。『一足遅かった。』で文を一旦切った方がよさげ。

あと、全体的に読点が少ない感じ。
声に出して読んで、突っかかり過ぎない程度に挿入した方が読みやすくなる。


『しかし二人は姉妹だった』は結構良い感じ。
強いて言うなら、「つかさの一人称にしては表現がやや堅く感じた」というところ。

>楽しんできてねの八文字
これが「八文字」だと考えるのは文字の上であって、
つかさの心の中では「た・の・し・ん・で・き・て・ね」で九文字のはず。
三人称だと効果的だったかもしれない。

〜凄く私的な指摘〜
>必死に頑張ってくれていた涙腺
ここは一行開けて、更に『私の涙腺』とすると、効果は上がったんじゃないかしら。
〜ここまで〜



中身に関しては、どっちもレベルが高いなぁと思った。
特に、前半の、そうじろうが厳しくなるシーン。
親として、茨の道を歩むであろう娘とその愛する人を心配する心が如実に出ていて、これは俺も見習いたいくらい。
後半も、つかさが泣き出すシーンが凄く自然で、一方俺は涙の一滴も出さないシナリオばかりなのでこれも見習いたいと思った。

そんな感じで。次回作の役に立てれば幸いです。



P.S.
episode5の製作が遅れてる……正月が正月じゃなくなった頃に正月ネタを投下するかも知れないが、
それでも大丈夫だろうか?>住人の皆
90久留里:2008/01/03(木) 22:41:54 ID:mkVjnP4V
みなさん禿しくGJ!!

明日から仕事だというのに(社会人組はみんなそうか)、
どうやら漏れを睡眠不足に陥らせようとするつもりだな。
全部読むのに苦労したぜ。受け付けない作品はスルーさせていただいたけど。

んで、
前スレだか前々スレだかで受信した電波を作品にしてみました。

・パラレルワードルドもの(昔に飛ばされます)
・鬱展開あり
・オリジナル設定が多いのは『仕様』
・鉄分が濃いのも『仕様』

大雪で列車の到着が遅れております。発車は0時前後になる見込みです。
91名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 22:46:39 ID:iv/VoQE2
>89
うおっ、ありがとー
今、「Black Heart」を読み終えたところです。
黒ゆーちゃん、極めていますね。
いつか、そんな素敵なゆーちゃんを書いてみたいです。
926-748:2008/01/03(木) 22:54:30 ID:2CAielC6
>>89
色々と指摘有難う御座います
先人様のご意見を聞けて嬉しい限りです
まだまだ学ぶ事が多そうです
参考にさせて頂きます

しかし「楽しんできてね」は平仮名にしても八文字では?
93Foolish Form ◆UEcU7qAhfM :2008/01/03(木) 22:54:45 ID:LlbfEsZU
あ……間違えた。
「たのしんできてね」って八文字じゃんOTL
まぁ、例え八文字としても、人は単語の文字数を心の中で数えるということをしないので、
結論は変わらないのですが……

>91
読んでくれてありがとう。ってか『素敵なゆーちゃん』って(苦笑
次回作が明日になるか来週になるか、ともかくお待ち下さい。。。
94名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 23:11:18 ID:2vjGxEII
支援
957-896:2008/01/03(木) 23:25:49 ID:nq8DtFDx
96名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 23:26:35 ID:gYBbvJQR
>>95
ちょw
97名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 23:29:27 ID:ptIidxsz
>>95
ちょっとまてwwwwwww
98名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 23:30:42 ID:uqSxh9/8
>>95
あwwwそwwwぶwwwなwwwwwww
99名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 23:32:37 ID:aIE5bCvq
これはひどいwwwww
1007-896:2008/01/03(木) 23:35:17 ID:nq8DtFDx
ごめんなさい、冗談です(´・ω・`)

コナーク
ttp://momoiro.s4.dxbeat.com/up/img/momoiro03776.jpg

ちょっと謝罪
>4-243氏
勝手にカガミーメイト使ってしまってすみませんでした。
101名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 23:39:10 ID:TPJySdPT
>>95>>100
性欲を持て余したら〜のネタを振った自分といたしましては
こういういたずらはうれしいものですwwwww

ここはぜひ、カガミッド・スネークとの一騎打ちがみたいものですw

「コナタアアアアアアアアアアア!!」
「カガミイイイイイイイイイイイ!!」

チュドドドドドドドズガガガガガガ(隠語的擬音)
「「オオオオオオオオオオオオ!」」
102名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 23:42:34 ID:8L/OLVxr
「いかん……かがみ分が不足してきた」
「かがみぶん?」
「そうだ。かがみ分だ」
「それは・・・糖分とか塩分とかみたいなものか?」
「その通りだ。勉強していると減ってくる。かがみ分が足りなくなると、疲労や集中力・思考力の低下等の症状が現れる」
「かがみ分は・・・かがみに含まれているのか?」
「はっはっは、当たり前だろう」
「大変だ! コナークが・・・コナークがもうダメだ!!」

「かがみ食べたいなぁ」

そんなあなたにカガミーメイト。
103名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 23:43:08 ID:0tCTdzmS
>>100
GJだが
>>95見て吹いたコーヒー返せwww
104名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 23:47:37 ID:ycLHYZSn
>>100
ネタに大いに吹いてコナークに素で感動wwwかっこよすぎるwww

>>90
31日から今日まで仕事で、明日からようやく休みな俺もいるんだぜ
105名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 23:51:18 ID:iv/VoQE2
>100
コナークかっこいいけど。駄目だ >95のインパクトが頭から離れんw

>102
あずまんがネタキタ
106名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 23:55:56 ID:ptIidxsz
>>100
GJ!ww
>>97でちょっとまてって言ったけど取り消し!
もっとやってくださいw
107久留里:2008/01/04(金) 00:01:50 ID:TzdCkSz8
さて、予告通り投下致します。

タイトル:カケラ
・序: こなた×つかさ×かがみ
・一: こなた視点 絡みなし
・非エロ
・5レスほど使用
・タイムリープもの
・オリジナル設定が多いのは仕様です
・作品の性格上、鉄分が濃いです

デハ、発車致します。
108名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 00:03:28 ID:0LyLp/fg
>>95が6才になって、50人に増えたところで
>>100に引き戻された
危ない危ないwww
てかコナークマジかっこよすぎる
109カケラ 序-01:2008/01/04(金) 00:04:55 ID:TzdCkSz8
〜序章〜

「いやぁ〜今日も大漁大漁♪」
ルンルン気分(古)の泉こなたは、大きな紙袋を抱きかかえる様に持って、東京・秋葉原の繁華街を歩いていた。

「アンタの行動力には、毎回頭が下がるわ」
「へへ、私、ちょっと疲れちゃった……」
友人二人を連れて。

友人二人こと柊かがみ・つかさの双子の姉妹は、半ば強制的にこなたの買い物に付き合わされていた。
しかし、これは第三者から見た様子。

秋葉原に行ったことのなかったつかさとかがみは、こなたの誘いを受けてこの街に来たのだ。
「こなたと一緒に秋葉原に行く」という時点でどういう展開になるか、二人にはよ〜く分かっていた。
嫌なら行かなければ良い。ただそれだけのことだ。


師走も半ばに入った季節、まだ冬至を迎えていないので日没が早い。
地域にもよるが、関東の場合は4時半頃には空が夕焼け色に染まり、
5時半頃になれば空は紺色一色に染まる。
朝早くから一日中歩きっぱなしだった三人の顔には、流石に疲れの色が出ていた。


「さて、そろそろお開きとしますカネ」
友人二人を散々振り回しまくったこなたは、地下鉄日比谷線秋葉原駅の入口で解散を宣言、
それぞれが帰途につくことになった。

しかし、三人がそれぞれバラバラに帰る訳ではない。
柊姉妹は同じ家に住んでいるし、一人だけ方面の違うこなたも、乗る列車は東武動物公園駅まで一緒である。
北千住から急行に乗ればあっという間に着いてしまうが、三人は敢えて乗り換えたりはしない。
日比谷線直通の列車は全て各駅停車な上、東武伊勢崎線は駅間距離が短いので、とても時間が掛かる。

それでも、三人にとって、それはとても楽しい時間だった。
目的地まで時間が掛かる分、それだけ一緒にいられる。


そう、

いつまでも、一緒に。

一緒に。

一緒に。







一緒に居られればどんなに良かったことか。
110カケラ 1-01:2008/01/04(金) 00:08:19 ID:TzdCkSz8
〜第一章〜

目が覚めた。
どうやら私は帰りの列車で寝てしまったらしい。
現に、私は今、寝ている。

───寝ている?

「……………ん? ここは…………?」
体を起こそうとした。


『ガン!!』


「いった〜〜〜〜〜!!」
両手で頭を抱え、痛みに耐える。
私は頭上にある『何か』に頭をぶつけてしまった。豪快に。


こ、ここは一体何処だ?

今度は頭をぶつけない程度にゆっくりと身を起こし、小型蛍光灯で照らされた薄暗い『空間』を見渡す。
「……カプセルホテル?」

私はカプセルホテルというものに泊まったことはないけれど、どういうものかはテレビや漫画で見たことならある。
私が知っている(というか漫画で見たことのある)カプセルホテルは文字通りのカプセルで、
その1つ1つにはベッドがあるだけ。それが上下二段なっていて、ずらっと並んでいる………イメージだ。
そうかそうか、これがカプセルホテルというモノか。

………ん? でも待てよ?

じゃあ何で私がカプセルホテルの中に居るのだろう?
私は確か、『友人達』と一緒にアキバに行って、買い物して、遊んで、その後……、

「あ。そうだ。帰りの電車で寝ちゃったんだ」

電車?

そう言えばこの『ホテル』、
さっきから縦に揺れたり横に揺れたり、時折ベッドごと傾いたりする。
そして、普通の『ホテル』ではまず聞かない、場違いな音が響いている。

その音とは、「ごぉぉぉぉぉぉ」というモータらしき音………。
そして、「カタン、カタン」というジョイント音…………。
どう考えても『電車』ではないか!!

でも、何で?

私の頭の中は、「?」マークでいっぱいになっていた。
元々中身が無いので、その量は半端ではない。それはまぁいいや。
とにかく、私は今何処で何をしているのか、
そして、数時間前まで一緒だった筈の友人達は何処へ行ったのかを確認しなければならない。

流石にこのような非常事態では「面倒くさいな〜」とは思わない。思えない。
私は直ちに行動を開始した。
111カケラ 1-02:2008/01/04(金) 00:09:59 ID:TzdCkSz8
「うんしょっと」
カーテンから顔を出す。

電車とカプセルホテルを足して2で割った様な『それ』は、一つの『部屋』の中にあった。
その『部屋』は中央に通路があり、その両脇がカーテンに覆われている。
おそらくこの中は全てベッドなのだろう。私もその一区画で横になっている。
通路はとても暗い。どうやらわざと照明の明るさを落としているようだ。

私は『それ』の状況を把握するため、
ちゃんと服を着ていることを確認してから梯子を使って通路に降りた。


「これで全部っと」

私が何故か乗っているのは、寝台列車だった。12両編成で、端から端まで歩くのに苦労した。
この前観た鉄道旅行モノのアニメにも出てきた様な気がする。
私が乗っているやつは、寝台列車でも特に珍しい「寝台電車」というものらしい。
特徴が非常に良く似ている。

車内はどれもベッドのある寝台車で、2号車だけが「グリーン車」と呼ばれる座席車だった。
座席は………正直、地元の特急列車(スペーシアだっけ?)の方が立派だ。
天井がやたらと高く、何だか落ち着かない。内装も白一色で寒々しい。
デザインセンスからして『昭和』の臭いがプンプン漂う。
こんなところを特別車両とするとは、鉄道会社は一体何考えてるんだ?

私が車内をきょろきょろ観察している間、2号車の乗客に変な目で見られた。
私は怪しい者ではありません。


各車両の端っこには、幅の狭い折りたたみ式の扉が1両につき1箇所あり、客室とは壁と扉で仕切られている。
もう片方の端っこには粗末な洗面台が3つ、反対側にはトイレが2つもあった。
洗面台は自動水洗ではなく、自分でレバーを操作するというもの。
レバーを操作している間しか水が出ないので、手を洗うには効率が悪い様な……。
状況把握のついでにトイレに行きたくなったので行ったけど、
トイレは和式で下に穴が開いているやつで、しかも電車がぐらんぐらん揺れるので色々と大変だった。



甲高いモータ音を響かせ、長い長い寝台列車は何処かへ向かって走り続ける。
扉の窓からは雪が見えた。どう考えても北国です。ありがじゅしたー。

体が冷えてきた。客室に戻り、私が寝ていた4号車「6中」区画のベッドへと戻る。
車内の状況はこれで分かった。
後は、
1. 持ち物の確認
2. 時間
3. 『友人』達の状況
それと、
4. 列車の行き先
を確認しよう。

てか、1.は真っ先ににやるべきだったヨ……。
112カケラ 1-03:2008/01/04(金) 00:10:59 ID:TzdCkSz8
何だか探偵モノのゲームの主人公のようだが、いつもの様にドキがムネムネすることは無い。
何となくだけど、この時から嫌〜な予感がした。

さて、持ち物をチェックしてみる。
私が背負っていたナップザックはちゃんと狭いベッドの隅に置かれてあった。
中身も無事だったけど、戦利品の入った紙袋は残念ながら見付からなかった。
服装はそのままで、ポケットに入れていた携帯電話と鍵も無事だった。
財布は…………『一応』は無事だった。
『一応』というのは、中のお札が昔のやつにすり替わっていたということ。
3枚だけ生き残っていた千円札は、絵柄が野口英世でも夏目漱石でもなかった。
こんな千円札って、あったっけ?
因みにポイントカードと定期券は無事だった。

2番目。時間を確認する。
私の腕時計と携帯電話は午後8時…言い方を変えると20時を指している。
アキバの帰り、私が『友人』達と一緒に日比谷線に乗ったのが、大体17時半頃。
私が車内で寝てしまったのは………、
松原団地駅を過ぎた後で、『友人』達と別れる前だったから、18時以降だと思う。
で、現在の時間が本当に20時なのかはとても怪しい。
車内は暗いし、みんな寝ているし。

あ、そうだ。
私は携帯電話を取り出し、「117」を押して時間を確認してみる。
NTTが惚けなければ、正しい時間を教えてくれる筈だ。30円取られるけど。
ところが、携帯電話はウンともスンとも言わない。
よく見たら電波状況の表示が「圏外」だった。
寝台列車はウチの地元よりもド田舎を走っているようだ。

他に策は無いか?
思い出した。私の携帯電話は確か、テレビ機能とラジオ機能が付いているんだった。
テレビはダメだった。どうやらワンセグ放送に未対応の地域を走っているようだ。
ラジオはどうだろう? 1局だけだけど、何とか繋がった。

でも、聴かなきゃ良かった。
113カケラ 1-04:2008/01/04(金) 00:11:29 ID:TzdCkSz8
歌謡曲が流れた後、ラジオパーソナリティは確かに言った。
『昭和5X年、「今年の」ヒット曲「プレイバック」でした』
何時から2007年は昭和5X年になったんだ?
私の頭が確かならば、2007年は平成19年であり、昭和5X年を西暦に換算すると「197X年」になる。
どう考えても30年の誤差がある。
「おかしい」

そう言えば、財布から見覚えの無い『モノ』が出てきたんだった。
その『モノ』とは、

「ゆうづる2号 上野→青森」
「B寝台 6B 中段」
「S5X.12.18 国鉄」

と書かれた切符だった。
切符の日付はラジオで言っていた時間と一致する。

分からなくなってきた。

私は再びベッドから降りて、静かに、かつ早足で2号車の車掌室へ行った。
「お嬢ちゃん、こんな時間にどうしたんだい?」
態度のデカそうな車掌氏に思い切って今日の年月日と時間を訊いてみる。
「あの、今日は何年何月何日で、今、何時ですか?」
車掌氏は一瞬怪訝な顔を浮かべたが、すぐにカレンダと懐中時計を私に見せて答えてくれた。
「今日は昭和5X年の12月……えーっと、日付が変わったから19日。
 時間は2時13分だよ」
「それ、本当ですか?」
「本当だよ。お嬢ちゃんに嘘言ってどうするんだい?」

私の日常はいつの間にか失われてしまった。
これは悪い夢だ。そうであって欲しい。
『友人』も何処にいるか分からないし、もしかしたら私だけ30年前に飛ばされたのかも知れない。

夢というものは覚めると終わるもの。
私は再び床に就き、そして、眠った。

もう、訳が分からなくなってしまった。
114カケラ 序・一 by 久留里:2008/01/04(金) 00:13:28 ID:TzdCkSz8
今回はここまでです。

因みに作者は83年生まれであり、当時の様子は一切分かりません。
多少年代がズレることがありますが、お許し下さい。



次回はかがみサイドのお話をお送りします。
115名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 00:19:37 ID:0LyLp/fg
>>114
割り込みすまんかったorz

続きwktkして待ってる
116名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 00:36:43 ID:wmMnqhaJ
>>114
なんか、雰囲気的に、ある作品を思い出した俺



〜石炭袋〜
かがみ、どこまでも一緒に行こうねえ。
・・・あれ?かがみ?
かがみ? かがみ!!
・・・

・・・
・・・
ぐす・・・
かがみ〜〜〜〜〜!!!!











かがみ「縁起でもないこと言うんじゃない!」
ごす・・・
(〒ω〒.)「いて、雰囲気じゃんよー、なぐんなくてもいいじゃん・・・」
117久留里:2008/01/04(金) 00:37:51 ID:TzdCkSz8
>>115
いえいえ、話の途中に投下してすんません。

おまけ

兄「うぃ〜〜〜」
み「兄貴ぃ〜飲み過ぎだぜ。明日から仕事なのに大丈夫か?」
兄「おい作者、お前だお前」
み「って聞いてねーし…」
兄「おれらを団地住民にするのは勝手だけどよぉ、
 うちはアルミサッシ入ってんぞ!!」
み「口調まで変わってるし」
兄「うるへぇ!! それに、柊さんとこのSSで鷲宮商店街の事を書いてたが、
 そもそも鷲宮駅にテレビに出てくるような商店街は、ねぇ!! ヒック」
み「あのーもしもしー?」
兄「どうせSS書くんなら、せめて町の描写くらい正しく書けぇ!!
 うぃ〜〜ヒック」
み「あー、いい加減にしろこのアホ兄貴!!」
兄「ヒック、うぃ〜〜」
み「もう、しょうがねーな。ほれ、お茶飲んでさっさと寝ろよ」
兄「ZZZZZ」
み「ホント、世話焼ける兄貴だぜ」

みさおは、そのまま居間代わりの六畳間に横たわった兄に、
寝室から運んできた布団をそっと被せてやりましたとさ。



今日、鷲宮神社と鷲宮団地の写真を撮りに行ってきた。
神社は大盛況、団地商店街は90%空き家だったどす。
118名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 00:49:33 ID:qVlPrgDd
>>114
GJ!583系は狭いですからなぁ……
「はくつる」で青森まで行って、青函連絡船で北海道に上陸したあの頃が懐かしいorz

>>115
あおいアホげの こなた
ふりわけたかみの かがみ
きいろのリボン つかさ
ももいろのかみの みゆき
ひよりんはあつく もだえ
ふゆのげんこう おとす
11929スレ19-24の人:2008/01/04(金) 01:33:46 ID:S47LzYix
>>117
奇遇な・・・・・・俺も今日(日付上は昨日だが)鷲宮神社に初詣逝ってましたわ。

こなたぬきそば
ttp://www.odnir.com/cgi/src/nup8351.jpg
色紙とか
ttp://www.odnir.com/cgi/src/nup8353.jpg
午後3時前の大酉茶屋
ttp://www.odnir.com/cgi/src/nup8354.jpg

これで何か書けそうな感じもするが今書き進めてる物を完成させないことにはァァァァorz
120名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 01:37:27 ID:wmMnqhaJ
もうね、ここまできたら、神社における新たなる文化として
歴史に残・・・



るべきなのかなあ(=ω=.;)
柊ズ「商売繁盛!!」
(=ω=.;)「ぬおっ!かがみ!?つかさ!?」
121名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 01:57:56 ID:feUMfPA3
19-646、今さら登場。えっ、なんで名乗るかて?

>>前スレ762(亀すぎるが…)
 それを とめるなんて とんでもない!埋めとか関係なくぜひ続けてくださいな
そして「みーみー」の名が出てきた時にktkrと思うと同時に変なプレッシャーを受けたのは
内緒だwいやでもどうぞ使ってやってくださいな

 で、皆様GJなわけだが長くなるので途中はまとめさせてもらうとして

>>117
寝台電車といえば583系よりも285系サンライズ(地域的な意味で)な俺が(ry
いや、街の様子とかどうせなら実際取材して書きたいところだけど、遠方だと厳しいね…
(京都・奈良21話修学旅行巡りは実際したけどw)
1224-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/01/04(金) 02:03:57 ID:S5eVGVED
>>100
カガミーメイト、元々このスレでネタ頂いたものですし
使って頂けるなんてネタ絵屋冥利に尽きます(*´∀`)

そして便乗してみたり
>>101
http://www.geocities.jp/extream_noise/rakisutaep/img/kagamid.jpg
123性欲ネタ振り主:2008/01/04(金) 02:25:24 ID:wmMnqhaJ
>>122
ちょwwwwwww
マジでキタ━━(゚Д(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━!!!

かがみ「性体験を楽しんでるんだよ貴様は!」
こなた「なにを・・・」
かがみ「違うとでも言うのか!?
     貴様は俺の仲間を大勢イカしたじゃないか」

・・・

こなた「性欲を持て余す」
かがみ「空爆までの一時を愛し合うことも出来る」





一瞬、違和感をなくしかけた俺に、みゆきさんの鼻血をかけてくれヽ(`Д´)ノ
124名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 02:37:09 ID:qVlPrgDd

>>123さぁぁぁぁぁん!まだです!まだ終わってません!!だばだば」
125名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 02:38:52 ID:qVlPrgDd
かがみ
「FO……X…………」



みさお
「DAZE☆」



こなた
「……なにやってんの、みさきち?」
126名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 02:41:48 ID:qQViU/N+
「酷いじゃないですかコナーク、私というものがありながらだばだば」
と白衣を鼻血で真っ赤に染め上げるコナークの相棒(?)、コナタギア設計者
「コナーク!
彼女は何のために性体験をしたんでしょうか?
私は何のために?
コナークは何のために?」
1277-896:2008/01/04(金) 02:56:20 ID:3s82ZCqB
128名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 03:03:41 ID:Tduk7gT6
>>127
ちょ、仕事早すぎwww30分とかwww
休憩室で変な目でみられたじゃないか、俺の今までのイメージを返せwww
129名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 04:31:54 ID:EoQaUBul
鷲宮の発展に貢献するのは良いことなんだとは思うんだが・・・

これはちょっとアレだよな?
ttp://news4vip.livedoor.biz/archives/51018703.html

まあ鷲宮のひとが良いと思ってるんなら良いが
130名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 04:36:50 ID:DQ1j/xKY
>>86
GJ!
1作目はもう、キスシーンでニヤニヤして
そうじろうの父親っぷりに惚れて
最後の誓いで心が満たされた!
2作目のほうは切ないですわ・・・
うぅむ・・・これで次に続くと仰る。全力で待機しておりますよ!
131名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 05:15:31 ID:gxkivOTt
FF4の某兄妹見てたら、こなたのために自身を石化するかがみとつかさという電波がww

まぁあの状況なら、こな☆フェチみゆきさんが、こなた抱いて(どっちの意味かは御想像にry)鼻血出して、水圧で壁を押し返すなり、ドアぶち破るなりできただろうけどwww

こなたんファンタジーか・・・
これは売れるな(主にこのスレ住人に)
132名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 07:29:28 ID:CW13RVd/
>>114
GJ!なんだが、脳内BGMが津軽海峡冬景色になってしまった俺を誰かどうにかしてくれ。
133132:2008/01/04(金) 11:00:44 ID:CW13RVd/
三時間も経って今更sage忘れに気付いた(from携帯)
雪に埋もれて来るorz
134妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/01/04(金) 16:13:18 ID:qVlPrgDd

前スレ>>701より……
絵&SSも書かずに、結局一から作り直してる俺キモスorz

設定編:つ【ttp://freedeai.com/up/src/up6049.jpg
作例編:つ【ttp://freedeai.com/up/src/up6050.jpg


ごめんね、しつこくてごめんねorz
あとみゆきさん作ったら、絵&SS書きに戻ります。
135名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 17:01:49 ID:AEAmKGkU
えと、初投稿しようと思ってる者です。
このスレは一レス何バイトまでで、改行は何個まで平気か教えて頂けないでしょうか?
PCが壊れて、携帯からなので…スイマセンorz
136名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 17:09:02 ID:A92/odqZ
おいでませ

60行、4096バイトまで
ただしあんまりギリギリだと弾かれることも
137名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 17:28:53 ID:AEAmKGkU
>>136
ありがとうございますm(__)m


では投下させて頂きますね。
ニコニコの有名曲メルトを小説にしてみました。
今のところ前半部分のみです。

・三レス使用。多分w
・かがみ→こなた
・エロ無し
・歌を小説にしました。

無理な人はスルーでお願いします。


これが初投稿ですが、あまり気にせず、批判、批評をバシバシ言ってくれると喜びます。
138メルト(1/3):2008/01/04(金) 17:31:59 ID:AEAmKGkU
チリリリリ。


喧しく鳴り響く目覚ましを無造作に上から叩く。
パシッ、ガシッ、ガシャン…
……寝ているときの平行感覚ほど当てにならないものはないわね。
欠伸をしながら、上体を起こす。
上から叩いた筈の目覚ましは見事に机から落ちて、床に這いつくばっていた。
音は止まったものの、何処かのネジが一本、目覚ましの横に転がっている。
……こなたがいたら絶対、
「うわっ、やっぱりかがみは凶暴だよ。」
とか言うんだろうななんて思い浮かべて、自然と笑みが溢れた。
カーテンをパッと開いて、朝日を浴びる。
もう一度、体を伸ばしながら大きな欠伸をして、前髪を掻き分けようとした所で、昨日髪を切った事を思い出した。
切ったと言っても少し揃えた位だけど。
またこなたにからかわれるんだろうなって、少し苦笑する。
「絶対男だ!」
って、目を輝かせながら。
「ホント、馬鹿ね…」
そっと呟いて、床に落ちた目覚ましを拾い上げた。
とりあえず、着替えて、朝御飯食べて。
約束迄まだ時間はあるからゆっくり出来るわね。
…にしても、このネジ、どうしよう。
139メルト(2/3):2008/01/04(金) 17:33:46 ID:AEAmKGkU
「昼休みから兆候はあったし、五限ではポツポツ降ってたけど、まさかこんなどしゃ降りになるなんてね。」
「うぉぉ、天気予報嘘つきだよ……」
みゆきは委員会の仕事で、つかさはこの間仲良くなった峰岸と一緒に家庭科室に行ってしまった。
なんでもちょっと特殊な料理を家庭科部で作るらしく、顧問の先生一人だけだと教えきらないらしい。
というわけで、今はこなたと二人で帰っている。
「でもさ、教えられるレベルだなんて、峰岸さんもつかさも凄いよね。」
下駄箱から靴を取り出して、昇降口でこなたが言う。
「まあ、お菓子系らしいしね。つかさも峰岸も料理も得意だけど専門はお菓子系なのよ。つかさのクッキーとかプロ顔負けじゃない。峰岸も料理の腕前、つかさと同じ位だし。」
玄関口で、私は鞄の中から折り畳み傘を取り出した。
グラウンドは水溜まりと言うより、池に近い。
雨がコンクリートを叩く音が昇降口に響いていた。
折り畳み傘をほぐして、持つ部分を引っ張って長くする。
はぁ…、特に意味なんかないけど、やっぱり雨は少し憂鬱だ。
「むぅ。かがみの料理はあれなのになぁ。」
「あれってなんだ。あれって。」
私はこなたを睨み付けると、傘を開いて中に入った。
だけど、妙にせまい。
「なんであんたが私の傘の中に入ってんのよ」
理由は単純で、そもそもさして大きくない女性用の折り畳み傘に、こなたと私の二人で入ってるからだった。
いくらこなたが小さくても、折り畳み傘に二人はちょっと辛い。
「置き傘は、、あるわけないか…」
今日二度目の溜め息をつく。
こなたがそんな気の利く事をする筈がない。
「かがみ何気酷いこと考えてるでしょ。」
こなたがむーっと唸る。
「さっきのお返しよ。どーせ置き傘なんかしてないんでしょ?まあ今日は天気予報も晴れの筈だったし、しょうがないわね。」
「仕方ないなぁかがみんは、しょうがないなら入ってあげよう!」
…色々と間違ってる気がするけど、きっと一番間違ってるのが私の感情じゃないかと思う。
こなたが発した言葉と一緒に、笑った顔を見て、私の胸は一際大きく鼓動したから…
140メルト(3/3):2008/01/04(金) 17:35:49 ID:AEAmKGkU
朝食も取り終わって、鏡の前で最終チェック。
11時集合で、今はまだ9時30分だから、後30分位は時間がある。
青系をベースにした上着に、薄桃色のスカートで合わせる。
派手に見えなくもないけど、これくらいなら大丈夫だろう。
今迷ってるのは、髪飾り。
小さい花が2つ付いてる小物。
ゆたかちゃんとかがつけたら似合いそうだけど、私のイメージとは微妙に違う。
でも……、今日は可愛くいこうって決めたから。
覚悟を決めて、頭の左側に髪飾りをそっと付けて、鏡を見る。
昨日美容院に言って少し短くした髪は優しそうな印象で、青と薄桃色の上下も決まってるし、髪飾りもちゃんと似合ってる。
このつり目だけはどうにかして欲しかったけど、これだけはどうにもならないし。
それにしても、気合い入れすぎたかな?
普段は付けないルージュまで薄く唇に引かれているのは、友達と遊びに行くにしてはやりすぎじゃないかな…
「大丈夫!今日の私はカワイイんだから!」
半ば自分に思い込ませるように言って、時計を見る。
丁度家を出る時間になっていた。
バックを掴んで、財布、携帯、小物と確認をしてから、まだ眠っているつかさの部屋の前で、小さく、行ってくるねって言って、家を出た。
141名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 17:44:14 ID:AEAmKGkU
以上で前編終了です。
今後編を書いているので、明日迄には上げたい…けど遅筆なんだよなぁorz
素晴らしい作品を作り上げた方たちが大勢いらっしゃるなか、このような稚拙な作品を投下するのは誠に恥ずかしいんですが、私もここにいる方目指して精進していけたらと思います。
という事で、批評批判どんどん下さいm(__)m



ちなみに1、3は歌詞的に見て、一番の部分で、2は二番の部分になってます。
うざったくならないように場面切り替えをしたつもりなんですが、わかりにくくなったかも…
ちなみに最後かがみとこなたが結ばれるかどうかは決めてません^^;
鬱展開にはならないと思いますが…
どうしよw
142名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 18:00:28 ID:wmMnqhaJ
「ぽー・・・」

「どしたのこなた」
「うぇっ!えっ!あっ!」
「なんなのもーそんなにあわてて・・・」
「ナンデモナイデゴザイマスデスヨカガミサマ」
「全く、あんたのことだからまたろくでもない事でも考えてるんでしょ」
「むー、偏見だー(=ω=.)」





(いえないよ、一々心の中で私に突っ込みいれるかがみと、
 私に良く見せようとしてあわててるかがみが可愛すぎて
 私アッチ逝きかけただなんて・・・)
「えーとなになに?>>141GJ?なにこれ?」
「うをっ!Σ(=ω=.)かがみ覗き見反則!」
143名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 20:25:48 ID:Q9PpWgJh
新らっきー☆ちゃんねる、メンバー発表されましたね!!

……37th☆Luckyを思い出して来ました。
144名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 20:36:15 ID:AnVPZFXC
>>141
初投下乙、そしてGJ!!!
たまたまメルト聞きながら読んだからすんなりシンクロできました。
メルトベースなら告白までいかないのかな?
まぁそれをひっくるめて後編にwktk。
1454-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/01/04(金) 20:41:22 ID:S5eVGVED
>>141
歓迎ぐじょーぶ
コソーリかがみ置いときますね(´・ω・)ノシ
http://www.geocities.jp/extream_noise/rakisutaep/img/sifukukagami.jpg
髪を切ったと聞いて、ショートカットにすべきかツインテールは残すべきか
迷ったあげく、いつもどおりの髪型になってしまったかがみどどんまいorz
146名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 20:42:35 ID:v2NhHNZz
>141
初投下乙でした。かがみが可愛く描写できてたのはホントGJ。

ただ、段落の行頭は一文字開けること。
あと『教えきらない』は『教えきれない』じゃないかと。

気になったのはそんなとこ。初めてにしては上手いと思うよ。
これからもどんどん投下して下さいな。
147名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 20:50:43 ID:uhDn4djg
>>141
GJです !
メルトということで今後の展開がある程度読めてしまいますが、奇をてらわずド真ん中ストレートの続編を
希望しますw
148久留里:2008/01/04(金) 21:17:15 ID:TzdCkSz8
>>119
大荷物とキスデジ(カメラ)を持ってうろうろしてた変な奴が居たことは、忘れて下さい。
あ、あたしゃ「ただの観光客」として行っただけですよ。

写真が見たい?
そのうち拙サイトで公開するから適当に探しておくれ。
ttp://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper58596.jpg
ttp://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper58597.jpg



忘れてはならないのが、>>141 GJ!!
3話のショートカットかがみで即死した漏れガイル
149名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 22:02:21 ID:EvFZx7/c
>141
乙彼様です。
作品自体は、別に悪くないというか、むしろ心理描写が細かくて
良いと思います。
メルトは知らないから、話の筋は分からないのは仕方がないですし。

むしろ気になったのは、後書きの部分です。
人に読んでもらおうとする話なのだから、謙譲だとしても自分の作品を
稚拙と貶めないでほしい。堂々と投下して頂きたいと思います。

敢えて批評するとすれば、そんなところですが、後編を楽しみにしております。



15043Hev0JB:2008/01/04(金) 22:19:17 ID:ebVhQLn6
>>141
これが初めて!?冗談でしょう?
このくらい上手いです!断言しよう!
元の曲は聴いた事はないのでどうなるか楽しみにさせて貰いましょうか。
151名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 23:00:32 ID:woDHS0Mv
というかですね、前から思ってたんだけど

「初投下」というのは「初めて書いたSS」を意味してないし、
「初めて書いたSS」は「初めて書いた小説」を意味してないと思うんだ

なんで、初めてにしては云々〜という感想はちょっと違うんじゃないかなーと
152久留里:2008/01/04(金) 23:16:18 ID:TzdCkSz8
まいど、久留里です。
「カケラ」の続きを投下いたします。

>>107,109-113 の続き。
・かがみ視点
・非エロ
・3レスほど使用
・タイムリープもの
・オリジナル設定が多いのは仕様です
・物語の性格上、鉄分が濃いです

では、発車致します。
153カケラ 2-1/3:2008/01/04(金) 23:17:02 ID:TzdCkSz8
〜第二章〜

『友達』と秋葉原へ出掛けた帰りの電車で、私は突然激しい頭痛に襲われた。
頭の中が真っ白になり、ふと気が付くと、『景色』が変わっていた。

でも、その景色は何処かで見たことがあった。
否、ここは私が知っている場所だった。

私は、『改装する前の』小田原駅のホームに居た。


私の小学校時代の友達が、その小田原という神奈川県の街に住んでいる。
あれは小5の時だったっけかな?
ずっと一緒だったその友達の家を訪ねて、まつり姉さんと一緒に小田原まで行ったんだ。
ちなみにまつり姉さんは当時中学生で、彼女のお姉さんと友達同士だった。
つまり、姉妹同士で仲が良かったのだ。


『また、会おうね』
『うん、約束だよ』


彼女が転校して以来遊びに行ったのは、あの時と中学3年の時の2回だけ。
次に行ったときは駅が改装工事中で、新しくなった改札口には大きな「小田原提灯」がぶら下がっていたわね。
彼女は今、どうしているのかしら?


……って感慨にふけっている場合じゃないわ!!
「一体、ここは何処なのよ!!」
って、小田原駅か。『単色の駅名看板』にはちゃんと「おだわら」と書いてあるし。


改装前の小田原駅のホームは確かに古臭く、ボロかった。
でも、いくら何でもここまで殺風景ではなかった筈だ。
ホームの灯りもどこか頼りなく、薄暗くて気味が悪い。
案内板とかも何だか凄く古臭い。
新幹線も止まる大きな駅な筈なのに、電光掲示板が無い。
そんなマニアックな事はともかく、だ。

さっきから行き交う人の服装が、凄く古臭い。
最近は昔の格好をするのが流行りなのかしら?
いや、あんな格好やこんな格好をしている人は大宮でも池袋でもまず見掛けない。
秋葉原は別次元なのでスルーするとして。

今、男子高校生数名が、私をジロジロ見ながらすれ違った。
丈の短い詰め襟にダボダボのズボンを穿いた、リーゼント頭の高校生。
所謂「ツッパリ」ってヤツ、か。
何よ、何か文句あるの?



そういえば……、
154カケラ 2-2/3:2008/01/04(金) 23:17:36 ID:TzdCkSz8
さっきから『あの子』の姿がない。

私の、顔と性格が全然似ない、双子の妹。
「つかさ!! つかさ!! つかさは何処なの!?」


私は妹の名前を呼びながら、駅じゅうを探し回った。
行き交う人から痛い視線で見られたけれど、無視した。
それよりも、つかさのことが心配だった。


結局、つかさは小田原駅の構内には居なかった。

駅員さんに事情を説明して、一旦改札口を出させて貰ったけど、
改札の外にもつかさの姿は無かった。
そう言えば、改札口には無言で乗車券や定期券、ICカードの処理をする『箱』は無く、
全て『人』が大勢の旅客の切符を捌いていた。

大きな提灯がぶら下がっていた、南北自由通路があった『筈の』改札口で、私は途方に暮れる。
「この先、どうしたらいいのかしら…………」

普段、私は気が強くてしっかりしている様に思われているし、
『誰かさん』にツンデレなどと呼ばれているけれど、
本当の私は、つかさよりも弱くて、泣き虫で、心脆い。
ちょっと格好付けちゃうのは私の悪い癖なのよね。
つかさ、こんな姉でごめんなさい。

「きっと、大丈夫よね」
何がって?
きっとそのうち、つかさに会えること。
多分つかさの事だから、きっと会える筈。
そう思ったら、あと一歩で決壊しそうになった涙腺が正常に戻った。
私に、勇気が湧いてきた。
「私、大丈夫なんだから。つかさ、待ってて」


少し落ち着いてきた。
今のうちに今の状況を確かめよう。
155カケラ 2-3/3:2008/01/04(金) 23:18:17 ID:TzdCkSz8
まずは「持ち物」ね。
服装やバッグ、小物などは全て無事だった。バッグは開けられた形跡も無い。

ただ、疑問に思うことが2点。

財布の中身を確認したけれど、残り少ない紙幣は全て見覚えのない柄に変わっており、
嬉しくて思わずしまっておいた「平成十九年」と刻まれたピッカピカの十円玉も何故か古ぼけた「ギザ十」に変わっていた。
これはこれで珍しいからいいんだけど。

それと、私が今日使っていたオレンジのカンバス地のトートバッグの他、身に覚えのない『紙袋』が1つだけあった。
これは意識が戻ったときに気付いたのだけれど、私は何故かこの紙袋を手に持っていた。
中身は、やたらと厚みのない漫画。表紙は………『ピンク』な絵柄。
紙袋から完全に出さなくて良かった。本当に焦った。
同人誌という奴ね。ってか、何で私が知ってるのかしら?
ていうか、コレ、誰の持ち物よ?
紙袋には他にも、小さな縫いぐるみや携帯電話のストラップ、ハンドタオルなどが入っていた。
袋自体はそれほど大きくないが、如何せんピンクな漫画本が入っているのでこれが重い。
何処かに捨てようかと思ったけど、『何か』引っ掛かるので、結局持っている次第だ。

謎の紙袋はさておき、次は「時間」と「場所」を把握しよう。
場所は良く分かった。ここは誰が何と言おうと「小田原駅」だ。
景色がまるっきし違うけど、「小田原駅」と書いてあるから小田原駅だ。
私は駅の入口にあった、閉店間際の売店で大あわてで余った夕刊を買った。
ついでに紙パックの林檎ジュースも。
何故か消費税は徴収されなかった。あ、今は税込み価格で表示するんだっけ。
新聞の日付をすぐさまチェックする。


「…………やっぱりそうね」

驚いた。
日付を見た感想ではない。
新聞に印字された日付を見て『何故か納得してしまった自分』に驚いた。
新聞には昭和5X年12月18日と印字されてあった。
新聞の一面には「世界最強タッグ決定リーグ戦」と題し、白黒の写真にでかでかと写っていたのは、
私が小学生の頃に亡くなったはずのジャイアント馬場選手とジャンボ鶴田選手の勇姿だった。

私とつかさは平成元年、まつり姉さんといのり姉さんは昭和60年代の生まれだから、
私たち姉妹は全員生まれていない。
それどころか、お父さんとお母さんもまだ結婚しておらず、
特に18歳で結婚したお母さんは、まだ小学生である。

成る程。だから『ここの』小田原駅と行き交う人のファッションがやたらと古臭いのか。
これ、所謂「タイムリープ」ってヤツか。面白いわね。
私は今ハマっているラノベで、主人公が20年前に飛ばされたシーンを思い浮かべながら、笑った。
心の中で。


「誰がやったか知らないけれど、とにかく私を30年前の小田原に飛ばしたというからには、
 何かやって欲しいことがあるようね。
 いいわ、その挑戦状、受けてあげるわ」
私は見えない相手に向かって、与えられた『試練』に立ち向かうことを宣言した。

まさか、あんなことになるとは、ね。



たった今、やたらとスカートの長い、癖の入った黒髪の高校生達が私の前を通り過ぎた。
アンタ達、今、私の事で何か話してるでしょ?
悪口だけはたとえ小声でも良く聞こえるのよね。
156カケラ 2 by 久留里:2008/01/04(金) 23:19:53 ID:TzdCkSz8
以上でございます。

さっきから「夢のカケラ」が脳内再生されて困っているワタシは
ZONEのファンだったりする。
157名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 23:27:50 ID:AEAmKGkU
あう。
なんか色んな人からgj言われて実感持てませんが、凄い嬉しいです!
どうもありがとうございますm(__)m
話しはこのままそのまま一直線に進める予定です(ならさっさと書け)


>>4-243さん
まじありがとうございます。
まさか初作品にこんな素晴らしいイラストが貰えるなんて思ってもいませんでした。
今では俺の携帯の待受ですw


>>146さん
あそこは教えきれないですね。
指摘どうもです!
他の人の作品をざっと見た感じ、皆一行目の最初は一文字文空いてました。
次からは俺もそうしようと思います!

>>149さん
…そうですね。
自分の作品が可哀想だし、悪く言うのは止めます。
ただよく言える作品では無いっす^^;


>>151さん
確かに間違いやすいですよね。
俺のは一応初小説、初投稿、初作品になるのかな?
ノートのすみにぐしゃぐしゃと書いた事位はありますが、まともに文章にしたのは初めてでした。
やっぱ一つの物語にするのは厳しい…
明日までに終わるかなw
158名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 23:36:12 ID:wmMnqhaJ
>>156

「しっかしだね、かがみんや」
「なによこなた」
「随分と昔にトバされたみたいだけど、一つとっても気になることが・・・」
「気になること?」
「あの当時のセーラー服って、今私たちが着てるような
 スカートの丈が短く、あとちょっとで聖域が見えそうな
 扇情的なものじゃあないはづなんだよね」
「何が言いたいわけ?」
「当時の人間からみたら、相当破廉恥人間に見られても、
 仕方ないよねえかがみん(=ω=.)」
「う、うるさい!それはあんたも同じでしょうが!」
「心無い男共に勘違いされて、私の大事なかがみんの純潔が
 散らされるんじゃないかと、あたしゃ心配で心配でオヨヨヨヨ(〒ω〒.)」
「そういう発想すること事態エロゲのやりすぎだろ!
 それにさりげなく、私のってなんだよ!(///)」
「つっこみつつ照れてるのが隠せないかがみん萌え」
「や、、、やかましい!」

「まあとりあえずだね、先が楽しみですぞ
 SF&鉄ってことで、ますます銀河鉄道(999じゃないほう)
 を思い起こさせる作品に、期待をこめて、GJ(=ω=.)b」
15931-141:2008/01/04(金) 23:37:32 ID:AEAmKGkU
>>久留里さん
GJ!
風景感が生々しくて、肌に感じながら読めました。
これからの展開にwktkしてます。
リロードするの忘れてて、危うく割り込む所だった^^;
160名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 23:39:19 ID:qVlPrgDd
>>156
GJっす。
確かに、あの時代に菫色のツインテールは目立ちまくるだろうなぁ。
……てか、キャラデザがあの当時の流行にシフト((C)ヴァグランツ)してたら、かがみもやたらと前髪の量が多かったりするんだろうかw

過去の両親に会いに行って、二人が直感で「未来の娘」だと気づいたら面白いかなぁ、とかオモタ。
161名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 23:47:51 ID:EvFZx7/c
>156
GJ!
流石冷静なかがみん。つかさの行方も気になりますな。
でも、あのスカートの短さは昭和50年代の女子高生からみたら、異次元だと思うぞw
50年代とはいっても、後半しかしらないけど、ドリフとか、スケバン刑事とかが
辛うじて思い浮かぶかな。今後の展開に期待。
余談ながら、「タイム・リープ」は凄く面白かった。
162久留里:2008/01/04(金) 23:57:25 ID:TzdCkSz8
皆様ご意見有り難う御座います。

>>160
髪色はともかく、ツインテールは異色でしょうなぁ。
つかさの「頭リボン」もペコちゃんくらいしかやっていないでしょうし。


どうでもいいけど、らき☆すたキャラの胸ランクを昭和50年代基準にすれば、
全員1つずつ上がりそうな希ガス。
こなた 極小→小
つかさ 小→中
かがみ 中の小→中の中
みさお 中の中→大
あやの 中の大→大
みゆき 巨→爆

みなみ「…………ゼロにゼロを掛けても、ゼロ…………」
こなた「病まない病まない」
163名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 00:05:31 ID:zQck3ClR
>>156
GJ!
てか、ギザ10集めてるからペタウラヤマシス
164名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 00:49:22 ID:2CLLFEiz
>>156
いいよいいよー
今後の展開が楽しみです


みなさん凄いですねやっぱり
自分で熟考してSS書こうとしても全く手が進みません・・・
どうすれば読み手に楽しんでもらえるか・・とか考えてるとorz
1657-896:2008/01/05(土) 00:49:51 ID:yT+V5XWq
なるほど

ttp://momoiro.s4.dxbeat.com/up/img/momoiro03790.jpg

すごくごめんなさい(´・ω・`)
166名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 00:53:05 ID:jo2C+8di
>>165
俺のコーヒー牛乳返せwwww
167名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 00:56:18 ID:bww4K1GK
盛大にフイタwwwwwwwwww

なにこの東芝提供らき☆すたwwwwwwwwwww
168名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 00:58:22 ID:277NJf2l
>>165
こんなに笑ったの久しぶりだwwwwwwwwwwwツボすぎて笑い涙出たwwwwwwwwwwwwwwwww
169名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 01:03:50 ID:O6JTFS2j
>>165
俺を笑い死にさせる気かwwwwwもう腹筋崩壊したwwwwwwww
170名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 01:10:30 ID:bww4K1GK
>>165の逆バージョンって、多分これになるなwww

http://www.nicovideo.jp/watch/sm1707020
171名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 01:16:48 ID:rmfk6Mv1
>>165
「かがみでございまーす!」

♪お魚くわえたこなたん 追っかけて
♪裸足で 駆けてく 愉快なかがみさん

要約するとGJ。
172名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 01:29:05 ID:89D8RBVG
>>165
たった今淹れたばかりの緑茶返せwwww
寝る前に飲むつもりだったのにwwwww
173名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 01:32:34 ID:TKI9WiZH
>>165
モニターが汚れちまったじゃねぇかwwwwwwwww
174名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 02:05:52 ID:WsF7loQ6
画像化されると吹かざる負えないw

>>162
GJ!
(今回は出ていないが)みゆきは昭和に飛ばされたら現代よりもっと活躍できそうだw
逆に、「昭和の基準で見たら」ペチャパイで父子家庭で興味対象が歪んでるetc…なこなたは相当辛いだろうな・・・
175名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 02:21:57 ID:bww4K1GK
なぜかは知らないが、これを出さねばならないと思ってしまった。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm1752587
17618-230:2008/01/05(土) 02:32:53 ID:fJOhPH+z
ヨンダー?
……気のせいですかそうですか
でもラジオは嬉しい限りですねー
皆さんも聞きましょう!(何

>>141
GJ!
初めてなのに俺よりうまいorz
続き期待してますよ〜

>>156
GJです!
昭和という設定は大変でしょうけど、頑張って下さい
あとかがみかっこいいよかがみ

>>165
フイタww俺のコーラスウォーター返して下さいよwwww

それでは(?)久々に投下させていただきます
以下注意事項です
・みさお&白石
・エロ無し
・本文8レス+おまけ3レスで合計11レスです
・受け付けない方はスルーで
あと携帯からなので文体がおかしいかもしれません
では
177名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 02:33:47 ID:5VtHPXS2
ID:bww4K1GK は有料サイトのURLを貼って宣伝行為にならないの?
17837th lucky! 第8話(1/8):2008/01/05(土) 02:35:00 ID:fJOhPH+z
「ん……」

朝の太陽の光が、瞼の裏に映る。

「もう朝か……」

いつもより少し早いけどいいだろう。
今日からはもう一人分手間がかかるからな。
横にある目覚まし時計がその役目を果たす前に止めを刺すべく手を伸ばす――と。

ふに。

「……?」

何だこの感触は。
目を閉じたままもう一度その『何か』を触ってみる。

ふにふに。

……柔らかいな。
その謎の感触を確かめる為に閉じていた目を開け、横を見る。
すると日下部がものすごく気持ちよさそうな顔で寝ていた。
なるほど、さっき触ったのは日下部の胸だったのか。
何だ、心配して損した……。

「のわっ!?」

脳が今自分が置かれている状況を理解した瞬間、体が勝手に思いきり日下部との距離を離した。

「んー……なんだよ、朝から騒がしいな……」

今の動作で起きてしまった日下部が眠たそうな目を擦って俺のほうを向く。

「いや、ごめん。柔らかかった」
「んあ?」
「はっ!いやいや、今のは忘れてくれ!」
「うぃー、分かった……。ふあぁぁ……」

あくびをしながら生返事をする日下部。
まだ眠ってたのに起こして悪いことしたな――って、いやそうじゃないぞ俺。

17937th lucky! 第8話(2/8):2008/01/05(土) 02:37:07 ID:fJOhPH+z
「何で俺の布団の中で一緒に寝てるんだ!」
「お前が布団出さないのが悪いんだぞー」
「だからって俺の布団に潜り込むなよ!」
「だって寒いじゃんかよ」

理由になってねぇ!
そんな俺の気持ちを全く気にしないで、日下部はいきなり挨拶をしてきた。

「おはよ、みのる」
「あ、ああ。おはよう」

と、何か微妙な違和感を感じる。
そしてすぐにそれに気がついた。

「……お前、俺の名前呼んだか?」
「ん?ああ、昨日小神が言ってたじゃんか。お互いに名前で呼んだほうがいいだろ?」
「いや、そうじゃなくてだな」

なんていうか……恥ずかしい。

「なんだよー。私たち、長い付き合いだろ?」
「一ヶ月ぐらいしか経ってないけどな」
「駄目か?」
「駄目って訳じゃないんだが……お前まだかがみのこと名前で呼んでないだろ?」
「それ言ったらお前だってあやののこと名字で呼んでるじゃねーかよ」
「だったら……」

と、その先の台詞を言うのを止める。
忙しい朝にこの話題だけで時間を浪費するのは流石にまずい。

「分かったよ。これからは名前で呼べばいいんだろ?」

えーと。確かこいつの名前は……。

「みさお?」
「ん、オッケーオッケー」

18037th lucky! 第8話(3/8):2008/01/05(土) 02:39:13 ID:fJOhPH+z
満足そうな表情を浮かべる日下部――いや、みさお。

「あー……」

やっぱり何か名前を呼んだだけで恥ずかしくなってきた。
赤くなった顔をからかわれないように、逃げるように台所へと向かう。

「と、とにかく。朝何食べるんだ?」
「ミートボール〜」

やっぱりか。
……まあ仕方ない。

「ちなみに昼は?」
「ミートボール〜」
「……夜は?」
「ミートボール〜」
「ミートボールしか言えないのかお前は!」
「えー、いいじゃんか別にー」
「偏食は良くないだろうが!」
「何をー!偏食のどこがいけないって」

ガリッ。

「〜〜〜〜〜っ!」

急に顔を抑えてうずくまるみさお。

「どうしたみさお!?」

みさおのところに駆け寄る。

「こ、口内炎噛んじまった……」

口内炎……?

「何だ、心配して損したな」

そう台詞を吐き捨てて、そのままを台所へと引き返す。

「で、飯は何にするんだ?」
「ううう……。みのるがツンデレぐらい冷たい……」
「ツンデレじゃねえよ」
「あれ、違った?おっかしーなー。もしかすっと、ちびっこが言ったことと私の覚えてることが頭の中でごっちゃに……」

18137th lucky! 第8話(4/8):2008/01/05(土) 02:41:18 ID:fJOhPH+z
その後、『ヤンデレ』やら『天テレ』やらみさおの口から別の単語は出るが、答えから段々と遠回りになっていったので仕方なく答えを教えてやった。

「さて、始めるか」

すっかり時間食ったな。
俺は台所で朝と昼の飯の用意を始めた。と、後ろで。

ガリッ。

「あ゛〜〜〜!」

みさおはまた口内炎を噛んで悶絶していた。
「自業自得だな」
「ううう……。みのるー、口内炎治す方法知らないかー?」

まずお前のその偏食を『直せ』よ。
と言いたいが、どうせ言ったところで無駄だろうだからやめておくことにする。

「ドラッグストアか何かに売って無かったっけか?」

前に行ったときにそういう物を売ってた覚えがある。

「じゃあ買ってきてくれよー。ついでに宝くじも」
「何で宝くじもなんだ。自分の金で買えよ。っていうかそもそもお前が買いに行けばいいだろ」
「いちいち注文多いなー。そんなんだとモテないぞ?」
「出ていくか?」
「……ゴメンナサイ」

玄関まで誘導しようとしたところをみさおに止められる。
……相変わらず単純な奴だな、こいつ。

18237th lucky! 第8話(5/8):2008/01/05(土) 02:43:26 ID:fJOhPH+z
「それじゃあ次は俺からの注文だ。弁当に入れて欲しくないものは?」
「うーんとなー……。あ、野菜!」
「却下」

とりあえず即答する俺。

「野菜は食え。でなけりゃ肉も入れないぞ」

それを聞いたみさおは5分ぐらい頭を抱え、

「分かった……でも出来ればこんにゃくは入れないでくれ……」
「安心しろ。こんにゃくは野菜じゃない」

……はずだ。
それにそもそもこんにゃくを弁当のおかずにしたことはない。
と、喋りながら作っていた朝食が出来た。
とりあえず先にみさおのほうに置く。

「おー!スゲーなみのる!」
「そんなに喜ばれる程じゃないけどな」

自分の分の朝食を反対側に置いて、机に向かい合って座る。

「……なんか違和感あるな……」
「ま、慣れていけばいいんじゃね?」
「お前は順応しすぎだけどな」
「はっはっはっ。そんな褒めるなよー」

みさおは本当に恥ずかしそうに頭を掻いた。
いや、褒めてないから。

「さ、とにかくさっさと食べようぜ」
「現金な奴だな……」

まあいいか。いちいち付き合ってたらこっちの身が保たない。
俺は向かい側に居るみさおと同じ様に両手を合わせる。

「いただきます」
「いただきまーす!」
18337th lucky! 第8話(6/8):2008/01/05(土) 02:45:46 ID:fJOhPH+z



―――



放課後。
少し面倒だったが、みさおを迎えに隣の教室へと向かった。

「おーい。みさお」
「ん?どうしたーみのるー」

みさおと俺のそのたった二言だけで、みさおの後ろに居たかがみと峰岸の表情が固まった。

「……みさちゃんをよろしくね、白石君」
「いきなり勘違いしてんじゃねえよ!っていうか顔恐い!」
「あんたたちいつの間にそんな関係に……」「お前もか!」
「だって名前で呼びあってるじゃないのよ」
「友達だったら普通だろ」
「そうだぞー。全く、柊は分かってないなー」
「あんたがそれを言うのか!それにいい加減、もう5年の付き合いなんだから同じクラスなんだし名前で呼びなさいよ!」

みさおと峰岸が『お前もな』みたいな表情でかがみを見ている。多分俺も同じ表情をしてるだろう。
直後、俺たちは見計らったように顔を見合わせる。

「そりゃ……なあ?」
「……だよね?」
「な、何よ」

かがみの質問に、みさおが止めの一撃を加える。

「柊は恐いからな。仕方ないんだよ」
「それだけの理由!?」
「……ごめんね柊ちゃん」

さらに峰岸が追い打ちをかける。
するとかがみは、

18437th lucky! 第8話(7/8):2008/01/05(土) 02:47:51 ID:fJOhPH+z
「まあいいわ。私は一生この十字架を背負い続けていくのよ……」

フフフフ……、と不気味な笑いを続けていた。
背中からは何か黒いオーラのような物が出ている。
それを見かねた峰岸が代わりに質問してきた。

「そ、それで白石君。どうしてみさちゃんと一緒に帰るの?」
「ああ、それは」

と、俺が言いかけたときに、

「あれ、言って無かったっけ?私しばらくみのるのところに住むことにしたんだよ」

空気が死んだ。

「はあ……」

こいつ、昨日の説教聞いて無かったのか?
頼むから、言うにしてももう少し遠回しにしてくれ……。

「すまん、詳しいことは明日話す。行くぞみさお!」
「うおっ!?」

みさおの手を掴み、逃げるように走り出す。

「んじゃ二人ともまたなー!」

みさおは空いているほうの手を鞄と一緒にブンブンと降っていた。
かがみと峰岸は石のように固まったままで、もちろん返事は返って来なかった。
そしてそのまま下駄箱へと向かう途中、みさおが話しかけてくる。

「なーみのる?」
「ん?何だ?」
「私たち、今カップルに見えてんのかなー?」

はあ?

「そんなの知らねーよ!」
「何だよー。正直に答えろよー」

18537th lucky! 第8話(8/8):2008/01/05(土) 02:50:21 ID:fJOhPH+z
真後ろからブーイングを放つみさお。
……本当に反省してないな。
こいつには今日から一週間弁当に肉類を入れるのを禁止しよう。
それぐらいしないと聞かなそうだしな。

「はあ……」

走りながら深いため息をつく。
なんだか、また明日も色々と疲れそうだ――
18637th lucky! 第8話おまけ(1/3):2008/01/05(土) 02:52:32 ID:fJOhPH+z
「ただいまー」

ドアを開け、みのるが言ったほうがいい台詞を先に言う。

「いやー、なんか悪いな。宝くじまで買って貰っちまって」
「ったく、今日だけだぞ?あと、さっきの台詞は本気だからな」
「……マジで?」
「マジで」

さっきの話っていうのは、一週間弁当に肉類禁止って話だ。
……ヤバい。明日辺り死ぬかもしれない……。
私は肉が無いと生きていけないんだよ!

「……と言いたいんだけどな」

その言葉を聞いて思いきり顔をあげる。

「こっちも今日だけ許してやる。た・だ・し、本当に今日だけだからな」
「みのる……。お前いい奴だな……」
「……お前、本当に反省してるか?」

『今すぐ実行するぞ』みたいな顔をみのるがしたので、反射的に顔をブンブンと縦に振る。

「はあ……。仕方ないか、元々こいつはそういう奴だしな」

こっちに聞こえるようにぶつぶつと文句をつぶやきながら鞄の中の整理をするみのる。
性格悪いぞ、それ。

「……でも」

学校から下駄箱までの短い間に繋いでた手の感触を思い出す。

「あったかかったな……」

18737th lucky! 第8話おまけ(2/3):2008/01/05(土) 02:54:35 ID:fJOhPH+z
気がついたら自然とそのとんでもない台詞が口から出ていた。
キョロキョロと辺りを見渡す。
今の聞こえてないよな?な?

「どうした?」

私の様子がよっぽど変だったのか、みのるが心配そうに声をかけてきた。

「い、いや、ナンデモナイデスヨ!?」

ううう、駄目だ。
こんなんじゃ誰だって心配しちまう。

「そうか?顔が真っ赤だぞ?」

みのるはそう言うと自分の額を私の額にコツン、と軽く当てた。

「――っ」

私の顔がさらに真っ赤になる。

「少し熱いな」
「そ、それは……お前が、そういう事やってる、せいだってば……」

全身から火が噴き出てるみたいに暑い。
だから、口から出る言葉も途切れ途切れになってた。

「……?ってうわ!!」

ようやく自分のした行動に気がついたみのるが、思いっきりバックステップした。

「ごめん。お前が女っぽくないからつい……」
「……ひでー」

でもそれってまだまだ私の努力が必要だってことだよな……。
そう考えてるのを知ってか知らずか、みのるは私に励ましの言葉をかける。

「ま、時間はあるし。大丈夫だろ」
「時間、どんくらいあるんだよ」
「あー……。高校卒業するぐらいまでか?」
18837th lucky! 第8話おまけ(3/3):2008/01/05(土) 02:56:43 ID:fJOhPH+z
「……それ短くね?」
「気にするなって。それに個性は無くさないほうがいいと思うぞ?」

無責任だろ、今の発言は。
一体私はどうすりゃいいんだよ。

「さて。んじゃすっかり買い物で遅くなったし、夕飯作るな」

しかも逃げやがった。
……ま、いっか。腹減ったし。

「肉は多めで頼むー。野菜は無しで」
「はいはい。でも偏食は矯正してやるから覚悟しろよ」

仕方なさそうに返事をして制服のまま台所へと向かうみのる。
でもなんだかんだで作ってくれそうな気がするんだよな。野菜無しのおかず。

「さてと……」

私は制服を着替えなきゃな。
あいつにはこっち見ないように言ってあるし、大丈夫だよな。
そう思って制服に手をかけた瞬間に、一気にいろんな疑問が頭の中に浮かんだ。
何で、さっきみたいな事を聞いたんだろ?
何で、さっきあんなに赤くなったんだろ?
もう一度台所の方に目を向ける。
あいつはこっちを全く気にしないで、難しい顔をして今日の夜メシを考えていた。

「何で……」

あいつのことなんか気にしてなかったはずなのに、

『白石のこと……好きなの?』

小神のあの台詞が、今も私の頭の中をぐるぐると回っていた。
18937th lucky! 第8話あとがき:2008/01/05(土) 02:58:56 ID:fJOhPH+z
投下終了です
このgdgd話はいつまで続くのか……
多分今年中には終わるとは思いますがね(何
あと少し遅いですが、皆さんあけましておめでとうございます
今年も色々書けていければこれ幸いです
それでは
190名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 03:05:26 ID:bww4K1GK
そうか・・・そもそもニコニコアドレスは自重すべきだな、ったくKYだな俺・・・orz



ByTheWay
みのみさという新しいジャンルで活躍する>>189GJ!
生活観と登場人物関係性を徐々にすすめながら、
すこしずつ変遷していく2人の心。う〜ん、先が楽しみになってきた!
191名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 06:06:39 ID:aB2eZo8L
巫女さんかがみんの写真でハァハァしている
父親を目撃してしまったこなたはどんな行動をとるだろうか
192名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 08:31:34 ID:Ts2YXf+U
>>189
GJですー
ミートボールばっかりたのむみさおに笑ってしもた
でもこれ見たあきら様がなんて言うか…怖いこわい…!

●<ミートボールですよ
19343Hev0JB:2008/01/05(土) 11:35:34 ID:AC/T8jZn
>>189
GJ。
しらみさって新しいジャンルですね。
白石とみさおがディモールト好き!
なんで良いんですがね。
しらみさ好きなんて変わってると言われてるんですよ
194名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 12:35:11 ID:EfOjsKN1
>>193
確かに変わってるよ超コアだね(=ω=.)


だが、そこが良い
19523-49:2008/01/05(土) 14:57:31 ID:FNHy7IP4
では更にコアなこの組合わせにはついてこられるかな?


どうも、変食好きな23-49です
前スレのゆきひよ、「四枚のレンズ」の、今度こそ裏側じゃなくて続き
予告どおりつかさのターン
投下させてください

・つかさ&パティ
・8レス使用
196ハニマスタード・ラプソティー 1/8:2008/01/05(土) 14:59:39 ID:FNHy7IP4

 私、柊つかさは混乱していた。
 日ごろから何かとヒィヒィ言うことの多い私だけど、今回のこれはそんなのとはケタが違う。
 正真正銘の大ピンチだよぅ。

 二年前にも、ちょっとだけ似たようなことがあった。
 まだ高校に上がりたてのころ、街を歩いていて外国の人に道を尋ねられた、あのとき。
 実際、今私の目の前にいるのも街で買い物をしてたところに声をかけてきた外国人だ。
 けど他の部分がかなり違う。
 それも、悪い方向に。
 まずなんと言っても場所がまずい。
 話しかけられたそこじゃなくて、相手が一人暮らしをしているアパートの部屋。
 この時点で、二年前のように救いの手が入る可能性はほとんどゼロ。
 さらに言うと、相手の部屋の、ベッドの上だったりする。
 馴染みのない、やや癖のある体臭がほんのりと染み付いてる。イヤなニオイじゃないけど。
 そして相手の顔があるのは、目の前は目の前でも、水平方向ではなく垂直方向。
 つまり真上。
 要するに、押し倒されてる。

「……何ヲそんなニ、脅えテいるのデス? ツカサ」

 ただ二年前とは違って、日本語が通じるのが救いといえば救いなのかな。
 あと相手が見知らぬ男の人じゃなく、少なくとも顔見知りと言える間柄だってことも。

「あ、あの、なんで――パティちゃん……」

 だけどお互いの人となりを理解しあっているとはまだぜんぜん言えなくて。
 それどころか――ううん、そのせいでって言うべきかな。

「誘ったのハ、貴女デスよ?」

 どうしてかそんな誤解を与えちゃってるみたいなので、あまり意味はないのかも。
 ああ、なんでこんなことになっちゃったんだっけ……


     ☆


「誕生日?」

 久しぶりにお姉ちゃんと二人きりでお昼と過ごすことになった、その日の放課後。
 私たちは、相談したいことがありますと親友のゆきちゃんに声をかけられた。
 そして言われたのが、私がオウム返しした上の一言。
「はい。私の幼馴染の岩崎みなみさん……ご存知ですよね? その方の」
「ああ……あの背の高い子ね」
 なんとなく気のない調子で、お姉ちゃんがつぶやく。
 私も知ってる。
 背が高くて、私よりももう少しだけ髪が短くて、すごくキレイなんだけど、あまり喋らない子だ。
 けど、それだけ。
 夏休みに、みんなと一緒に花火大会に行ったりもしたけど、それ以上のことはよくわからない。
「いつなの?」
 お姉ちゃんの質問に、ゆきちゃんは言いにくそうに答えた。
「それが……九月の、十二日なんです……」
「ふぅん……って、ちょっと待ってよ。それ昨日じゃない」
197ハニマスタード・ラプソティー 2/8:2008/01/05(土) 15:00:41 ID:FNHy7IP4
 頬杖から身を起こして、訝しげな声を上げるお姉ちゃん。
 ……やっぱり、ちょっと機嫌が悪いみたい。
 こなちゃんがさっさと帰っちゃったからだと思う。

 六時間目が終わったあと、こなちゃんはお姉ちゃんが来るのも待たずに教室を出ていっちゃた。
 呼び止めたんだけど、従妹で一年生の小早川ゆたかちゃんに用があるって、急いでて。
 なんだか様子が変だったよ。考えてみれば、昼休みから。
 ずーっと何か考えごとしてるみたいで、
 お姉ちゃんのこと訊いて欲しくて、一生懸命「話を聞いて〜!」って念を飛ばしてたんだけど、
 ぜんぜん気付いてくれなかったし。
 一緒に声をかけたゆきちゃんは、「では田村さんに聞いてください」って、行かせちゃった。
 昼休みに同じ話を、ゆたかちゃんのクラスメイトである田村ひよりちゃんにもしたんだって。
 でも、せめてお姉ちゃんを待って欲しかったなあ……

「ええ。昨晩、ご両親と三人だけでお祝いをしたそうです」
「三人だけ? え、お友だちは? ゆたかちゃんとか呼んでなかったの?」
 驚いて、聞き返した。
 ゆきちゃんは悲しそうにうなずく。
「はい。私も訊いたのですが、誕生日のことを教えてすらいないとのことで」
「そんなぁ」
「何それ」
 私とお姉ちゃんはほとんど同時に、同じような反応をした。
 私はそこで黙ったけど、お姉ちゃんは不機嫌そうに続ける。
「そりゃ高校生にもなってお誕生会もないだろうとは思うけど、ちょっと冷たいんじゃない?」
「いえ……遠慮しているんだと思うんです。自分では『恥ずかしい』とおっしゃってましたが……」
 ほっぺに手を添えて、ほぅ、とため息をつくゆきちゃん。
 憂いを秘めた、っていうのかな。大人っぽい仕草に、場違いにもドキッとする。
「昔から、人との付き合いが苦手な方で……それでも、田村さんや小早川さんと出会ってからは
随分と明るくなりまして、私も安心していたのですが……やはりまだ、自分から、となると、
どうしていいのか分からないのかも知れません……」
 ええと、みなみちゃん、のことなんだよね?
 なんだかイメージが違う。
 ゆきちゃんが言うんだから本当のことなんだろうけど、でもなんだかそれって、私のことみたいだ。
「……ふぅん」
 お姉ちゃんが相槌を打ちながら、ちらりとこちら見てきた。
 同じことを思ってるのかな。
「それで、私たちにどうしろって?」
「あ、はい。昼休みに田村さんにも相談しましたら、今度の日曜日にパーティーを開いてはどうかと
いうことになりまして」
「参加しろってことね。……なるほど、確かに週の真ん中よりは都合がつくか。わかったわ」
 じれったくなったのか、お姉ちゃんは急に話を進めた。
 ちょっと戸惑ったけど、私もなんとかついていく。
「わ、私もっ。今日とか言われたらちょっと困るけど、日曜日なら大丈夫だよ。お料理とか、手伝うね」
「はい、是非それは、お願いしたいと思ってました。ありがとうございます」
 ゆきちゃんがにっこりと笑顔を向けてくれる。
 それだけで、私も嬉しくなってくる。
「うん、がんばるっ! みなみちゃんって、何が好きなのかな?」
「そうですね。どちらかと言えば和食の方が好きなようですが……特に好き嫌いもなさらない方ですし、
それにつかささんの作るものでしたら、なんだって喜んでくださると思いますよ」
「そ、そうかな……そんなことないと思うけど……」
 確かにお料理は好きだけど、私なんかまだまだぜんぜんだ。
 それに、本格的なものを家族以外の人に食べてもらうのは、たぶんこれが初めてになる。
 そう思ったらちょっと緊張してきちゃった。けど、ゆきちゃんの期待に応えるためにも、がんばらなきゃ。
198ハニマスタード・ラプソティー 3/8:2008/01/05(土) 15:01:45 ID:FNHy7IP4

 そして、その翌日の放課後。つまり今日。
 私は家から少し離れたところにある大型のスーパーに買い物に来ていた。
 ふだん利用してる安売りメインのお店じゃなくて、業務用商品とか輸入品なんかも扱ってる、
 ちょっとした高級店。
 昨日、あれから家に帰っていろいろ調べて、作りたい料理の内容はだいたい決まったんだけど、
 やっぱりそれなりのものを作るためには、普通のお店で手に入る材料だけじゃ足りなくて。
 このお店、値段が少し高めなぶん、商品の幅は本当に広いんだ。
 お金のこともお母さんに相談して少し協力してもらうことになったから、なんとかなるし。

 ちなみに、ここは月に何度かって割合で来くることがある、私のお気に入りの場所でもある。
 一応調理師目指してるから、学校の帰りとかにたまに覗きにくるの。
 ほとんどは冷やかしなんだけど、食材を見てるだけでも勉強になるし。……なる、気がするし。
 ただそのせいで、学校からわりと近いんだよね。それがちょっと心配。
 今回の企画、本人には当日まで内緒ってことだから、鉢合わせとかしないように気をつけないと。

「――ツカサ?」
「うひゃうっ!?」 

 とかなんとか思った矢先に声をかけられた!
 弾かれるように振り返ると、そこにいたのは……よかった。みなみちゃんじゃない。
「Oh、ヤパリツカサデスネ。……ドゥしましタ?」
「な、なんでもないよ。えっと……パティちゃん、だっけ」
 パティちゃんこと、パトリシア=マーティンちゃん。
 同じ学校の一年の、アメリカからの留学生。
 こなちゃんのバイト仲間で、みなみちゃん、ゆたかちゃん、ひよりちゃんのクラスメートでもある。
 例の花火大会でも一緒になった。
 けど直接のつながりはほとんどなくて、一対一で話をするのも、たぶん初めて。
「ハイ! Patricia Martin デス。憶えテテくれマシタね」
「うん。もちろんだよ」
 でも、怖いって気はあんまりしなかった。
 どちらかといえば人見知りしがちな私だけど、第一印象がすごく良かったからかな。
 こなちゃんと一緒に踊ってた、えっと……はれはれダンス? とっても格好よかった。
 花火大会のときも無邪気な感じではしゃいでたし、良い子なんだってわかるよ。
「パティちゃんも、お買いもの?」
 言いつつ、その手にぶら下げた買い物かごを覗き見る。
 ほとんどが輸入品みたいで、カラフルなパッケージにはたぶん英語っぽいロゴが踊っている。
 だからぱっと見ではよく分からないけど、表面に印刷されたイラストからして、どうやら、
「おかしばっかり……?」
「ハイ!」
 らしい。
 パティちゃんはかごから板チョコらしき商品を一つ取り出すと、誇らしげに掲げて見せた。
「ニホンはマンガ、アニメとトモにオカシもスバラシイのデスが、ヤパリ食べなれたフルサトの味が
一番デス!」
「はぁ……」
 確かに。
 その、「HERSHEY」と書かれたチョコレートを始め、他のどの商品も一般的なスーパーなどでは
 まず見かけないようなものばかりだ。
 けど、そんなことより。
 パティちゃんのかごに入っているのは半分以上がお菓子、あとはレトルトや冷凍食品ばっかりで、
 食材や調味料といったものはほとんどない。
「……パティちゃん、お料理とか、しないの?」
 思わず、尋ねていた。
 ちょっと失礼かなとも思ったけど、これだけ偏った買い物かごを見せられれば、さすがに気になる。
 それに、こなちゃんから聞いたところだと、彼女は一人暮らしをしてるって話だし。
 私じゃなくても心配になると思う。
 そしてその心配は、的を射ていた。
199ハニマスタード・ラプソティー 4/8:2008/01/05(土) 15:03:09 ID:FNHy7IP4
「お料理デスか……? デキナイこともないデスが、ニホンにはベンリでオイシイ instant 食品が
タクサンありマス」
 やっぱり。
 一人暮らしの若者にアリガチな、っていうやつになってるんだ。
 慣れない外国生活で、学校だけでなくアルバイトもこなしてるんだから、忙しいに違いない。
 こんなのに頼っちゃうのも仕方がないと言えるのかも知れない。
 でも逆に、だからこそそんなことではいけないと、私は思う。
「だめだよそんなんじゃ。身体こわしちゃうよ?」
「Hum? 大丈夫ダイジョウブ。足りナイ栄養は supplement で補えマス」
「だ、だめだって。ちゃんとお料理しなくちゃ」
「Wmm……デスが、そんな時間がアレバ、溜まってルDVDを消化したいデス」
 だけどパティちゃんは取り合ってくれない。
 そうだった。彼女は趣味人なんだ。好きなものに情熱を傾ける人間が、それ以外のものには
 まるで無頓着になっちゃうってことは、こなちゃんを見ててもわかる。
 こなちゃんの場合は、その……家庭環境のせいもあってか、料理を始めとした家事の腕前は
 私よりもずっと上だから、心配いらないと思うけど。
 だけど……
「?」
 明らかに分かっていない笑顔で首を傾げるパティちゃん。

 私の中の何かに火が着いた。
 たぶん、母性本能と呼ばれるもの。

「ううん、だめっ。ちゃんとしたもの食べないと、DVDどころじゃなくなっちゃうよっ?」
「ハイ? イエ、デスが……」
「大丈夫、私が教えてあげるっ。安くて誰でも簡単に作れるの、たくさん知ってるの。
人に教えるのも慣れてるし。分かりやすいって、お姉ちゃんにも褒められたんだよ?
もしどうしても無理って言うんなら、せめて今日だけでもちゃんとしたもの食べてよ。
パティちゃんの好きなもの、作ってあげるからっ。
あ、そうだ。ついでにパーティー用のお料理の試食、してくれると嬉しいな。って、知ってるよね?
あさっての、みなみちゃんのお誕生会」
 自分でもちょっと意外なぐらい、スラスラと言葉が飛び出した。
 あの快活なパティちゃんが口を挟む間もないぐらい。
 ちょっと強引かな、とも思ったけど、間違ったことは言ってないはずだ。いや、言ってない。
 だって温かいごはんは正義だから!
「ね?」
 とどめの笑顔。
 パティちゃんは、操り人形みたいにカックリと頷いた。
 そして我に返ったように、苦笑い。
「ツカサは優しいネ。オモチカエリしたくなりマス」
「お持ちかえり……?」
 なんだろ?
 マクドナルド?
 ――あ、そっか。
「うん、いいよ〜」
「ハイ?」
「お持ちかえり、して?」
 すっかり自分の家に招くつもりでいたけど、考えてみればその方がいいよね。
 相手の家の台所の様子を知っておいた方が、より詳しく教えてあげられるし。
 ついでにお掃除なんかもしてあげようかな。あは、なんか出張家政婦さんだ。
「WHAT!?」
 と、パティちゃんが甲高い声を上げた。
 ちょっとびっくり。
「ど、どうしたの?」
「……イイのデスか? ワタシはノンケだろうと構わズ食っちマウ女デスよ?」
200ハニマスタード・ラプソティー 5/8:2008/01/05(土) 15:04:11 ID:FNHy7IP4
 尋ねると、どこか慎重な感じでそんなことを言ってくる。
 のんけ……?
 なんだろ? ノンフライみたいなモノかな。「ケ」っていうのが何のことか分からないけど……
 まあいいや。
「いいよ〜。がんばるから、たくさん食べて欲しいな?」
「Jesus……!」
 すると今度は頭を抱えてのけぞった。
 こっちの驚きもちょっとどころじゃない。
「どっ、どうしたのパティちゃん!?」
「ドゥもコゥも…………イエ……イエ。ナンでもアリマセン。スコシ、喜びスギタだけデス」
「そ、そうなの? ……え? 喜び?」
「Yes――スエゼン食わぬハ女のハジ……ゴショウバンに預かラセテ頂きマス」
 なんだか、声と目つきがおかしいけど……
「う、うん。まかせてっ」
 っていうか、難しい日本語知ってるんだなぁ。ごしょうばん、なんて、私でも漢字で書けないよ。


     ☆


 ――で。
 必要な食材を買い込んで、友だちの家に寄るからと少し遅くなることをお父さんメールして、
 妙に口数の減ったパティちゃんに案内されて、このアパートの部屋に到着して、
 そして現在に至る……で、いいんだよね?

「誘ったのハ、貴女デスよ?」

 よくない! ちっともよくないよ! なんでそうなるの!? ぜんぜんわかんないよぉ!!
 でもこのままじゃマズイのは確かだ。
 なんとか誤解をとかなくちゃ。
「ま、待って。わたし、そんな、つもりじゃ――ってゆーかおかしいよね? おかしいよ!?」
「ウ・フ・フ? 何を今サラ?」
 一生懸命にうったえるけど、パティちゃんはまるで動じない。
 妖しげで余裕げな笑みを浮かべて、そのくせ私の両手首をがっしり掴んで離さない。
 冗談には、見えない。
「だって……だって、こんな、私たち……」
 それでもどうにか説得を試みる。
 けど気持ちばかりが上滑りして口が回らない。言いたいことははっきりしてるはずなのに、
 何かに邪魔されるみたいにその言葉が出てこない。
「なんデス? ……女同士は、嫌デスか?」
「そっ――」
 そう。
 まさにその通り。それが言いたかった。
 でも、

「――そんなことないよっ!!」

 気がつけば、今まで――生まれてこの方出したことのないほどの大声で、私は叫んでいた。
 思っていたのとはまるで正反対のことを。
 それなのに、なんでだろう。
 そう言ってしまったことに……ううん、言えたことに、達成感みたいなものを憶えてる私がいる。
201ハニマスタード・ラプソティー 6/8:2008/01/05(土) 15:05:17 ID:FNHy7IP4
「フゥン……?」
 パティちゃんが薄っすらとつぶやいた。
 私の大声に、少しだけ驚いた顔を見せていたけど、今はもう元通りの笑みに戻っている。
 いや……でも、どこがどうとは上手く言えないけど、さっきとは微妙に違う感じの笑い方だ。
 なんだろ……?
「――ナラバ、問題はないデスね?」
 ってそれどころじゃなかった!
「ま、待って! そうかも知れないけど、こういうのは、好きな――恋人とか、そういうのじゃ、ないと……」
 回らない頭を必死で回して、どうにか言葉を吐き出す。
 だけど、
「古風デスね。サスガは巫女さんデス」
 ちろり、赤い舌先でピンクの唇を舐めながら、パティちゃんはさらに頬を緩めた。
 なんか喜んでるうう!
「か、かっ、関係ないよ! そうじゃなく、そうじゃなくて――ひっ!?」
 言い淀んでるうちに、手首を押さえていた指が、上腕、二の腕と、滑るように撫で下ろされた。
 突然の刺激に頭が一瞬、白くなる。
 そしてその空白のど真ん中に、とんでもないモノが降ってきた。

「ワタシは、ツカサのコト、好きデスよ?」

「へ……え、ええっ!?」
「初めて見たトキから、ズットかわいいっテ思ってマシタ」
「え、あ、そ――え?」
 待って。
 待って、待って。
 今、何が、どうなって、どうなったの? え? す――え? え? え?
「ツカサは――」
 目の前に、パティちゃんの顔がある。
 綺麗な、上気した、潤んだマリンブルーの瞳が、睫毛が長くて。
「――ワタシのコト、嫌いデスか?」
「そそそっ、そんなこと、ない……けど……」
 待って。
 落ち着こう、落ち着こう。
 落ち着いて、一つずつ。
 まず――私はパティちゃんのことが…………嫌いじゃ、ない。
 自分よりも二つも年下なのに、異国の地にたった一人で立ち向かっていることとか、憧れるし、
 あと、その……見事に整ったプロポーションも、羨ましいと思う。
 それらは、ぜんぜんまったく、嫌いという感情には結びつかない。
 うん、OK。
「ナラ問題なしデス」
 パティちゃんがにっこり笑う。
 ……あれ?
「え……っと……そう、なの、かな……?」
「ソゥなのデス」
 そう?
 本当に、そう?
 わからない。
 わからない、けど――違う気がする。何かがすごく間違ってる気がする。
「サァ、ツカサ?」
「ぁ……」
 パティちゃんの、顔が、
「目を閉じテ……」
 ゆっくりと迫ってきて、私は、
「――は、」
 言われるがままに、
「はい……」
 目を、閉じて――
202ハニマスタード・ラプソティー 7/8:2008/01/05(土) 15:06:15 ID:FNHy7IP4

「――やっぱりダメぇーーーーーーーーーーーーっっっ!!!」



 全力で思いっきり身をよじった。

「ニャワッふ!?」
 驚いた猫みたいな声。
 続いて、どすん、と何かの重い音。
「Ouch ……」
「あ」
 見ると、パティちゃんがベッドの脇で痛そうに腰をさすっていた。
「Wmm……酷いデスよツカサ……」
「ご、ごめん……でもやっぱり、私……」
「?」
 床に座りなおして、不満げな顔を向けてくるパティちゃん。
 私も上体を起こして、特に乱れてもいない服の胸元をなんとなく押さえながら後ずさる。
 心臓がすごくドキドキ言ってる。今気付いた。
「……なんデス? 今サラ、イヤだとデモ?」
「う、うん。……ごめんなさい」
 今さらというか、最初からそんな気はぜんぜんなかったんだけど。
 でも、どういうわけだか私が誤解させちゃったのは確かみたいだし。
「……」
 パティちゃんは、引き続き不満そうな、そして探るような目でジッと私を見つめてくる。
 その視線が痛くって、怖くって、うつむいて逃げた。
 沈黙が重くのしかかる。
 心臓の音だけがうるさく響いて、まったく収まる気配がない。
 そしてどれほどの時間が経ったのか。
 やがて視線の方向から、「ハァッ」と大きなため息が聞こえてきた。
「興ガ削がレタ」
「え?」
 顔を上げると、パティちゃんは……なんだろ?
 お姉ちゃんに話が通じなかったときのこなちゃんみたいな、微妙な顔。
 そしてアメリカ人らしい仕草で肩をすくめる。
「……マァ、イイでショウ。分かりマシタ。ソコまで嫌がるのヲ無理ヤリというのハ、サスガに
趣味じゃアリマセン」
 その口調や表情からは、先ほどまでの妖しげな雰囲気は消えていた。
 私のよく知っているパティちゃんの笑顔で、だけど眉だけが残念そうに下がっていて。
「ご、ごめんなさい……」
「謝らナイでクダサイ。余計ミジメになりマス」
 そんなこと言われても。
「……マァ、ワタシもウワキしないデすみマシタし、ネ……」
「え?」
 私から目を逸らしておもむろに立ち上がりながら、パティちゃんがぽそりとつぶやいた。
 だけど私は突然の動きに反射的に身をすくませてしまい、
「サテト――それジャ、ツカサ。何ヲ作っテくれマスデスカ?」
「へ? ……あ、うん。えっと……」
 その上ぜんぜん別の、ってゆーか本題を振られてしまって、聞きなおすことはできなかった。


     ☆
203ハニマスタード・ラプソティー 8/8:2008/01/05(土) 15:07:18 ID:FNHy7IP4
 ――その後。
 パティちゃんは、普通だった。
 さっきのことが夢か幻かと思えるぐらいに、本当にいつもどおりのパティちゃんだった。
 逆に私の方が挙動不審になっちゃって、いくつか失敗しちゃったりしたけど、
 やがて無事、お料理は完成した。
 パーティー用に考えていたメニューの中から、鶏肉を甘辛く煮込んだものと、エビの入ったサラダ。
 あと、ごはんの代わりにフランスパン。……まさか炊飯器がないとは思わなかったよ。
 でもこれ、ガーリックトーストにして本番にも出してみようかな。
 ともあれ、どれもパティちゃんには好評だったし、当初の目的はどうにか達成できた。
 他にもいくつか簡単なメニューのレシピを書いたり、電子レンジの便利な使い方を教えたり、
 そうやってアレコレしていると思ったより時間が経っちゃって、気がつけば外は真っ暗。
 家に電話して謝ったら、お父さんが車で迎えに来てくれることになって。
 その到着を待つ間、ようやく落ち着けた私は、思い切って気になっていたことを訊いてみた。

「……ねえ、パティちゃん」
「ハイ。なんデショウ?」
「パティちゃんって、その……恋人、いるの?」
「ハイ? いまセンヨ? ドゥしてデスカ?」
「だってさっき……浮気しないですんだ、とか……」
 パティちゃんの表情が一瞬、固まった。
 そして「聞こえテまシタカ」と苦笑い。
「Wmm……ヤパリ日本語はムツカシイですネ。一方的なココロを自分で裏切っテしまうコトは、
ナンと言うのでショウ?」
「え? えと、うぅんと……わかんないけど、浮気でいいんじゃないかな……?」
 てゆーか、聞かせる気がなかったのなら英語で言えばよかったのに。
 てゆーか、ってゆーか、それよりも今のってつまり、パティちゃんには別に好きな人がいるってこと、
 だよね?
「じゃあ私が、その…………す、好きだっていう、のは……」
「ウソじゃアリマセンヨ。マァ、love ジャなくテ like デスガ……コナタや、ユタカやミナミに対するのと
同じデス。……今日で love にシテしまうのモまた一興、と思ったんデスけど、ネ」
 そんないいかげんな……ん?
 今、名前が上がらなかった人がいたような?
「ツカサはイルのデスか? 好きナ人」
「ふえっ!? いっ、いないっ! いないよっ!?」
 慌てて思いっきり首を振る。もちろん横に。
 そんな私を、パティちゃんがニヤニヤと眺めてくる。そんな顔されたって、本当にいないもん。
 だって、その、男の人のことはよくわからないし……
 あ、もうっ。だから笑わないでよっ。
「そういうパティちゃんには、いる――いるんだよね? 好きな人。 ど、どんな人?」
 私の質問に、パティちゃんは少し迷うそぶりを見せたあと。
 右手の人差し指を唇に当てながら、ぱちりとウインクをして。
 同時に私の携帯が着信を告げた。

「禁則じ 「わっ。――あ、お父さんだ。ついたみたい」

「……」
「あ……ごめんパティちゃん。なんて?」
「ナンでもアリマセンっ」
 ぷぅ、とほっぺを膨らませてそっぽを向くその姿は、なんだか無性に、可愛らしかった。
 あんなことがあったけど。
 やっぱりこの子のことは、嫌いじゃない。




20423-49:2008/01/05(土) 15:08:25 ID:FNHy7IP4
以上です
ありがとうございました


なんて言うか・・・・・ごめんなさい
でも寸止めとツンデレって似てるよね

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・
205名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 15:42:54 ID:x0yL9qvk
>>204
GJ!
これぞつかさのターン……? むしろパティのターンな気が……
つーか
>「……イイのデスか? ワタシはノンケだろうと構わズ食っちマウ女デスよ?」
阿部パティ自重www
206名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 16:58:38 ID:bww4K1GK
ふむ・・・パティはつかさ先輩の所に行ったッスか・・・
やっとこれで・・・フェチから開放されるッス
ダンボール生活ともお別れをつげれるっす・゚・(ノД`)・゚・。
つかさ先輩とパティの活躍の場を設けてくださった>>204GJッス!
これでまた、一段と私の創作のネタも増えるッス・・・エヘヘヘヘ・・・
207名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 17:42:23 ID:kt6Gw9IH
さて、人の少ない時間ですが、投下させてもらいます。
自分の初めての作品です。

・まつりとつかさ中心
・エロ無し
・本編とおまけに分かれています
・視点は つかさ→まつり→いのり となっています
208姉たちとつかさ つかさ編:2008/01/05(土) 17:43:25 ID:kt6Gw9IH

 休日。今日はかがみが風邪をひいて寝ている。
 そんなある日のおはなし。


 姉たちとつかさ


【つかさ編】

 今、私は家族で映画を見ているところ。
 まつりお姉ちゃんが友達から借りてきたんだって。
 かがみお姉ちゃんが見れないから、明日にしないかと聞いたけど、
 明日返す約束らしいから、今日こうしてみんなで見ているの。
 でも、その映画っていうのが……

「うぅ…怖いよ、お姉ちゃん……」

 とっても怖い、ホラーの映画。みんなこういうの見て平気なのかな。
 怖い映画とか見ると、いつも夜眠れなくなっちゃうけど、
 こういうのって、私だけ……?





 夜。やっぱり怖い。さっき見た映画のシーンが頭から離れないし、
 そのせいか、さっきから物音がするたびにビクビクしてしまう。
 こういうときは一人だと心細くて、ついかがみお姉ちゃんのところへ
 いっちゃうけれど、今日は風邪で寝ているし、迷惑だよね。
 ……でも、やっぱり怖いものは怖い。

209姉たちとつかさ まつり編:2008/01/05(土) 17:44:09 ID:kt6Gw9IH

【まつり編】

 コンコン。
「お姉ちゃん、入っていい?」
 つかさだ。何か用かしら。
「いいわよ」
 そう答えると、つかさが入ってきた。

「どうしたの?」
「えっと、さっき見た映画が怖くて…その、それで寝れなくなっちゃって。
 それで、一緒に寝てもらえないかなって。ほら、かがみお姉ちゃん、
 風邪ひいてるでしょ?だから…」

 高校生にもなって、一人で寝れないのか。
 まあ、つかさらしいといえばつかさらしいか。
「いいわよ」
 そう言って一緒に布団に入る。

「つかさは、本当に怖がりよね。
 こういうときって、いつもかがみのところで寝てるの?」
 少し前にも、私が怖い映画を借りたことを思い出し、聞いてみた。
 あの時もつかさはかなり怖がっていた。
「うん。誰かと一緒にいると、安心できるから」
 つかさの怖がりは、昔から変わらないみたいね。

「おやすみ、つかさ」
「おやすみなさい、お姉ちゃん」

 そういえば、つかさが私に甘えてくるなんて、久しぶりね。
 昔はかがみもつかさも私を頼ってくることも多かったけど、
 かがみはだんだんとしっかりしてきたし、それにつれて
 つかさはかがみの方に頼ることが多くなってきてしまったから。
 それはそれで、少し寂しい気もする。
 そういえば、私にも姉さんを頼っていた時期がある。
 もしかしたら、姉さんも同じ寂しさを感じるのかもね。
 つかさはいまでもかがみに頼り、甘えている。
 でも、それはかがみも同じ。
 あの子はしっかりしてるけど、結構寂しがり屋だから、
 かがみの方がつかさから離れられないんじゃないのかしら。

 気がつくと、つかさはもう眠っていた。
 私も寝るとするか。
「おやすみ、つかさ」
 そう言って私も眠りについた。
210姉たちとつかさ いのり編:2008/01/05(土) 17:44:50 ID:kt6Gw9IH

【いのり編】

 朝。着替えを済ませて部屋を出ると、まつりとつかさがいた。
 いつも起きるのが遅いつかさが、今日は私と同じくらいの時間に起きている。

「つかさがこんな時間に起きるなんて、珍しいわね。」
 私がそう言うと、まつりがその理由を説明してくれた。
「それがね、つかさったら昨日の映画が怖くて寝れないからって、
 私のところへ来たのよ」
「だって、本当に怖かったから…」

 なぁんだ、そういうことか。
 それで、一緒に起きてきたのか。
 こういうとき、つかさならかがみのところへ行きそうだけど、
 かがみは風邪で寝ていたしね。

「そういえば、少し前にもまつりが怖い映画を借りてきたけど、
 あのときはかがみのところへ行ったの?」
「うん。ああいうの見ると、一人だと心細くなっちゃって」
 つかさが甘えんぼなのは、今でも変わらないみたいね。
 高校生にもなって、そんなので大丈夫なのだろうか。
 姉として、そう思ってしまう。
 でも……

 まつりもかがみも風邪のときなら、私のところへきてくれるのかしら、と
 ついそんなことを、考えてしまうのだった。

211名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 17:45:32 ID:kt6Gw9IH
本編は以上です。
初めての投稿ですので、変なところもあったかと思いますが、
読んでくださった方、ありがとうございます。
次からがおまけです。
おまけは、本編の別バージョンです。

・いわゆるキャラ壊れバージョン
・視点は まつり→いのり→かがみ となっています
212おまけ 壊れた姉たちとつかさ まつり編:2008/01/05(土) 17:46:22 ID:kt6Gw9IH

 休日。今日はかがみが風邪をひいて寝ている。
 そんなある日のおはなし……の、別バージョン。


 壊れた姉たちとつかさ


【まつり編】

 今日は、友達から借りた映画をみんなで見る予定。
 ちなみに、内容はホラーのもの。


「うぅ…怖いよ、お姉ちゃん…」
 予想通り、つかさは怖がり、私にくっついてくる。
 怖がるつかさも可愛い。
 私は、さっきからつかさに抱きついている。
 ちなみに姉さんも、さっきからずっとつかさにくっついたままだ。
 その状態でずっと映画を見ていた。





 夜。私が寝ようとしていると、コンコン、というノックの音が聞こえた。

「お姉ちゃん、入っていい?」
「いいわよ、つかさ」
 そう言うと、つかさが入ってきた。

「どうしたの?」
 そう言いながらも、つかさに抱きつく。
 つかさは本当に可愛いなあ。
「えっと、さっき見た映画が怖くて…その、それで寝れなくなっちゃって。
 それで、一緒に寝てもらえないかなって…」

 …今、何と?
 つかさと一緒に寝る?
 こんなチャンス、滅多にない。
「いいわよつかさ、ほら、早く寝よ♪」
 そう言ってつかさを布団へ連れて行く。
 そして、布団のなかで、しっかりと抱きしめる。
 つかさの可愛い寝顔をしっかり堪能して、
 ついでにキスでもして……
 ヤバい。考えただけで、意識が飛びそう。

「それなら、私と寝ない?」
 いつの間に入ってきたのか、姉さんがいた。

213おまけ 壊れた姉たちとつかさ いのり編:2008/01/05(土) 17:47:23 ID:kt6Gw9IH

【いのり編】

「お姉ちゃん、いつ入ってきたの?」
「つかさが一人で寝れないっていうから、来てあげたのよ」
 そう答えながら、私もまつりの布団のなかにいる
 つかさに抱きつく。

「つかさは私と寝るんだから、大丈夫よ」
「ずるいわよ、まつり。私だって、つかさと寝たいんだから」
「でも、つかさは私と一緒に寝たくて、こっちに来たんだから」
「一人だと心細いから、っていうだけよ。つかさだって、
 私と一緒に寝た方が安心できるに決まってるわよ」
 ……
 …

 しばらくまつりと言い争っていると、つかさが、
「お姉ちゃん、とりあえず、早く寝ない?」
 と言ったので、とりあえずつかさを寝せてあげることにする。
 そして、しかたなくつかさから離れる。
 ま、いいか。
 つかさがすぐに寝てしまうのはわかっている。
 まつりもそれはわかっているはず。
 つかさが寝たら、まずはつかさの可愛い寝顔をしっかりと堪能して、
 キスでもして、それから……

 あれ?なぜか私の記憶はここで途切れている。
 聞くと、まつりもつかさが寝てしまったあとの記憶がないらしい。
 つかさの寝顔の可愛さを前にして、意識が飛んでしまったのだろうか。
 それとも、後にかがみによって記憶を消されたのだろうか。
 
 
214おまけ 壊れた姉たちとつかさ かがみ編:2008/01/05(土) 17:48:45 ID:kt6Gw9IH

【かがみ編】

朝。目が覚めると、体のけだるさはなくなっていた。
風邪はもう治ったみたい。
それにしても、昨日が休日で良かったと思う。
平日だったなら、つかさは一人で学校に行くことになる。
昼休みなどは、私がつかさのクラスにいってやらないと、
こなたやみゆきが何をするかわかったものじゃない。
特にみゆき。

これでも、私はかなり抑えている方だと思う。
それは当然、私がつかさの頼れる姉としての地位を守りたいから。
この前ホラーの映画をみたときみたいに、つかさに一緒に寝てほしい
なんて言われると、つい暴走してしまうけど。

とりあえず、つかさを起こし行く。
起きるのが遅いつかさは、きっとまだ寝てるだろう。
起こす前に、つかさの可愛い寝顔をしっかり堪能して、
頬に軽くキスでもして…
そんなことを考えながら、つかさの部屋に入る。

あれ?つかさがいない。今日は珍しく、早く起きたみたいね。
少し残念に思いながら部屋を出ると、いのり姉さんにまつり姉さん、
そしてつかさがいた。
こら姉さんたち私のつかさに抱きつくな。
いつの間にウイルスに感染したんだ。
そう思っていると、
「あ、お姉ちゃん、具合はどう?」
 つかさが私の体調を心配してきてくれた。
「もう平気よ。それにしても今日はよく一人で起きれたわね、つかさ」
 そう言いながら、つかさの頭を撫でる私。

「一人で、じゃないよ。今日起きれたのは、昨日まつりお姉ちゃんと
寝てたからだよ」
「そうそう。私が借りてきた映画が怖くて、一人で寝れないからって、
 私のとこに来たのよ」

 そういえば、いのり姉さんもまつり姉さんも眠そうにしている。
 つかさが寝たあと、二人で何をしていたのか。
 後で、怒りを込めた一発を加えておこう。

それにしても、マズいわね。こなたやみゆきを見る限り、ウイルスに感染したなら、
すぐに症状が進行し、もっと壊れてくる。
今日からは学校だけでなく、家でもしっかりとつかさの傍にいなくてはいけない。
そう思うかがみであった。

215名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 17:49:11 ID:kt6Gw9IH
以上、おまけでした。
初めての投稿なのに、壊れネタに挑戦してしまいました。
いつか見た つか☆フェチ 世界の柊家を見てみたい、と思い
勢いでかいてしまいました。
読み返すと、壊れ具合が微妙、と感じてしまいます。
もっと派手に壊したかったかな、と思います。
読んでくださった方、ありがとうございます。
216ばるさみこす:2008/01/05(土) 17:54:38 ID:bww4K1GK
>>215
GJだけど・・・その・・・え?
私、なんでみんなに狙われてるの?
みんな目の色が違うし・・・

え?こなちゃん、ダンボールの中から手招きしてどうしたの?
「次はつかさの番だネェ」ってどゆこと?
2177-896:2008/01/05(土) 17:56:49 ID:yT+V5XWq
>>215
リアルタイムGJですw
珍しいタイプのSSで、長さも丁度よかったので
飽きずに読むことができました。
しかもいつぞやに自分の書いたつかフェチを舞台にしたVerまで書いていただけるとは
感激です。


それから
>>206
ttp://momoiro.s4.dxbeat.com/up/img/momoiro03801.jpg
218名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 18:02:46 ID:Xk4taiLO
>>204
おつかれGJ!
パティとつかさは自分的には好きだったので楽しかったですよww

>>215
つかフェチか…柊家恐ろしい…

219名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 18:06:20 ID:277NJf2l
>>217
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
ひよりん逃げてええええええええええええええええ!!!!!!!!!!
220名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 18:11:55 ID:bww4K1GK
>>217

ちょwwwwwwwwwwww
ひよりんに平静の時はこないのかwwwwwwww





アッーーーー!!!
221名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 18:32:59 ID:ZzMU4/kT
>>204
ひさしぶりに来たんですけど、相変わらず上手いなぁ…
あなたの文章ならカップリングだれでも楽しく読めますね

>>215
GJ! 群像劇っぽい書き方で面白かったです

あんま間が空いてないようにも思うのですが、
特になにもなければ5分後くらいに投下します
22216-187:2008/01/05(土) 18:39:42 ID:ZzMU4/kT
それじゃ投下します。

えー、ご無沙汰してます。実に一ヶ月ぶりですが、
っていうか誰も気にしてないと思いますが、『4seasons』の続きです。

間が空いているので、以前の話にリンク張っておきます。
http://www33.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1281.html

■CPはかが→こなですが、今回は全編かがみゆきです。
■エロなしです。

6レスになります。

それにしても、なぜ5スレも進んでいるのか……。
223夏/窓枠の花(第二話)1/6:2008/01/05(土) 18:40:26 ID:ZzMU4/kT
§2

「うわぁ、やっぱみゆきには敵わないなぁ、なんだよ100点って! あんたなら東大理IIIとか
普通に入れるんじゃないの?」
「いえいえ、そんな。さすがにあそこは無理かと思います。センターでいくらとっても当てに
ならないところですし。それに、私の学力もこれから先あまり伸びないと思いますから」
「ふーん?」
 なんでそう思うのだろう。
 よくわからなかったが、特に追求して欲しそうでもなかったので、相づちをうって適当に
話を切り上げた。
 私とみゆき、自室で二人きりだった。
 つかさとこなたは先に寝てしまっている。今ごろつかさの部屋で二人とも高いびきだろう。
 別にそう意図したわけではないのだけれど、結果として進学に意欲的な二人が私の部屋に
取り残されたところで、随分と本気の勉強会になってしまった。二人でやったセンター試験
生物Iの過去問はみゆきが満点で、私は86点をとった。

「かがみさん、不思議ですね。オーキシンの極性移動が重力に拠らないことと、光屈性の
概念がわかっていらっしゃるのに、どうしてこちらで間違えてしまうのでしょう?」
「んー、なんだろ。正の重力屈性とか負の光屈性とか、言葉がごっちゃになっちゃったの
よね」
「ああ、なんとなくわかります。総体としては完全に理解していらっしゃるのに、もってまわった
科学用語を暗記する時点でつまづかれているような」
「そうそう、ほんとあんたの記憶力分けて欲しいわよ」
「あ、あはは……」
 みゆきは照れながら笑い、仕切り直すように咳払いをしてから続けて云った。
「でも私思うのですが、これからの時代に必要になる智慧というものは、そういった概念や
構造を広く直感的に認識できる力なのではないでしょうか」
「えっと、些末な知識より、全体を見極める力が大事っていうこと?」
「ええ。トリビアルな知識なら、パソコンで検索してすぐにわかりますから、わざわざ覚える
必要もないことなのかもしれません。テクストよりコンテクストと申しましょうか」
「はぁ、そうは云っても、受験にパソコン持ち込むわけにもいかないしね……」
 フォローをしてくれているのはわかっているけれど。
 ため息をつきながら周囲を見回した。
 部屋にはお菓子の空き袋をまとめたゴミ袋や、飲み終わった空き缶、それに掃除し残した
クラッカーの紙吹雪などがまだちらほらと残っていた。
224夏/窓枠の花(第二話)2/6:2008/01/05(土) 18:41:00 ID:ZzMU4/kT


 元々は私とつかさの誕生日パーティーで、泊まりで騒ごうという話だった。けれど時期が
時期だけに、ちゃんと勉強会をしていこうという流れになったのだ。
 そう決まった途端、日下部は慌てて逃げ出していった。あいつにとって勉強というものは
あくまでも嫌々ながらやるもので、めでたい日にわざわざやりたくなるようなものでは
ないのだろう。ましてや夏休みが近いともなればなおさらで、どうせ頭のなかはすでに真っ白な
入道雲と蝉の声で一杯なのだ。
 日下部が帰ると云ったら、当然のように峰岸も帰り支度を始めた。やはりこの四人に対して
峰岸一人だと、気後れするのだろうか。
 もっとも元々二人とも近所であるし、わざわざ私たちの家に泊る理由もあまりないのだった。
 結局いつもの四人ですることになった勉強会だけれど、これもまたいつものごとく、一時間経ち、
二時間も経つころには、一人、二人と脱落していった。
 つかさはともかくこなたがこんなに早く寝てしまうのは珍しかったけれど、聞けば昨日は
ネトゲで半分徹夜だったらしい。全くいつまでたっても受験生としての自覚がないやつだと思う。
 とりあえず進学するつもりではあるようだけれど、では志望校はどこだと訊ねてもなんだか
判然としない。どんな学部に行きたいかも漠然としてよくわからない。
 本当にどうしようもないやつだと思う。
 けれど惚れた弱みか、そんな駄目人間っぷりにも保護欲をかき立てられてしまって、少しでも
勉強させようと面倒をみてしまうのだから、我ながら重傷だと思う。
 嫌そうにしかめる顔つきすら見てて嬉しく思ってしまうのだから、救いようがない。病膏肓に
入るとはこのことだ。
 その病というのはいうまでもなく、昔から不治の病として名高い例の病気――恋だった。
 そしてその病気には、夏の暑さは大敵なのだ。
 なんといっても、今の私にとって、夏のこなたは酷く危険な存在なのだから。
 自宅はおろか、私の部屋の中ですら、できるかぎり軽装になろうとする。ただでさえ薄着で
あるのに、可能な限り肌を露出したがるのだ。一度などはカットソーを脱いでスポーツブラ一つに
なろうとしたのだから目に毒だ。
 特に勉強を始めて机にかじりついているときなどは最悪だった。集中しているときは自分の
服のどこがまくれていようが、自分の身体の何が見えていようが気にしない。
 集中がきれたらきれたで、急に寝っ転がったり伸びをしたり、やたらと複雑で独創的な
ストレッチを始めたりして、その度に私は顔を赤らめて目をそらすことになる。
 だから、最近は隣で勉強をみてあげることも控えるようになっていた。理性で衝動を抑えこむ
のにも限界がある。正直に云って、今日も先に脱落してくれて少しほっとしたものだった。

「ちょっとお茶淹れてくるわ」
「あ、すみません、おかまいなく」
 恐縮するみゆきにひらひらと手を振り、空き缶が入ったビニール袋を携えて部屋をでていった。
 とっておきのプリンスオブウェールズを淹れてあげよう。あの優雅で穏やかな香りはみゆきに
合っているはずだ。
 茶漉しとティーコージを用意して、空き缶をすすぎながらお湯が沸騰するのを待つ。
 窓の外ではざわざわと公孫樹がゆれている。台所の窓からは、裏庭の庭園がよく見えた。
関東最古の神社にふさわしく、自宅と社務所がある敷地内には純和風の小庭園が広がって
いるのだ。
 それは子供のころからずっとみてきた風景だった。
 ――私は本当にずっとこの家で育ってきたんだな。
 そんな当たり前のことをなぜだか考える。
 高校を卒業したら、一人暮らしをしてみるのもいいのかもしれない。知らない街の知らない
部屋でなら、この家では知ることができないなにかを学べるだろう。そう思った。
 けれどどう想像を逞しくさせても、つかさがそばにいない生活というものがイメージできなくて、
私は一人苦笑する。いつか妹離れをしないといけないことはわかっているけれど、できれば
その決断はまだ先送りしておきたいと思った。
『つかさを守る強い姉』という自己像を無くしたとき、私はきっと恐ろしく弱くなってしまうだろう。
風の前の一本の葦のように。それが怖かった。
 空き缶をすすぎ終わり資源ゴミとしてまとめると、お湯が沸くまで手持ちぶさたになってしまった。
 夜風の冷たさが肌に心地いい。ふわふわと風に身体を撫でさせながら、ぼんやりと月を
見上げていた。そんなときに頭に思い浮かぶのは、やはりこなたのことばかりで。
225夏/窓枠の花(第二話)3/6:2008/01/05(土) 18:41:36 ID:ZzMU4/kT


 ――私は、数時間前のあいつを思い出していた。

「誕生日おめでとう!」
 そういってこなたがさしだしたのは、包装紙とリボンに包まれた、高さ20センチほどの箱が
二つ。片方は立方体に近く、もう片方は直方体だった。
「わあ、なんだろう〜?」
「おお、あんたにしては期待できそうなプレゼントじゃない」
「こっちがかがみ用で、こっちがつかさ用。開けてみてよー」
 いかにも“誕生日プレゼントです”と主張するようなその鮮やかなラッピングをみて、急に
胸がどきどきしてきた。
 また去年の団長腕章のようにネタに走ってくると思っていたけれど、思いのほかしっかりした
プレゼントで、なぜだかそれが凄く嬉しかった。
 値段の高低や中身の問題ではない。ただその綺麗なラッピングが、これが私に対する誕生日
プレゼントであり、こなたが私のために選んで買ってくれたものだと主張するようだったからだ。
 逸る気持ちを抑えながら丁寧に包装を外すと、中からでてきたのは果たしてアニメDVDの
セットだった。単色のブックケースには、気弱そうな微笑みを浮かべたツインテールの少女が
描かれている。
「わ、マリみてだ!」
 そこにあったのは、テレビアニメ『マリア様がみてる』ファーストシーズンのDVD全7巻コレクターズ
エディションなのだった。
「あー、ケロロー!」
 その声にふりむけば、つかさの方は『ケロロ軍曹』の、これもファーストシーズン全13巻ボックス。
 これはなんだろう。
 嬉しいけれど、素直に喜んでは負けな気がする。かといって心の籠もったプレゼントであるのは
確かなので、無碍にすることもできない。迷ったあげくそんな気持ちをそのまま伝えたら、
こなたはニヤニヤしながら私に云った。
「ぷくく、プレゼント開いてからどう反応しようか考え込んでるかがみの顔が超面白かったから、
わたしは満足だよ。あれを見られただけで贈った甲斐があるってもんだー」
「え、嘘っ! 私百面相してた!?」
「ぬおっ! そうくるかっ!」
「なんだよ、乗れよ! 私が馬鹿みたいだろ!」
“百面相”というのは、『マリア様がみてる』の主人公福沢祐巳が、思ってることがすぐに顔に出る
という特徴を指して云う言葉なのだった。
 サービスというわけでもないけれど、せっかくこなたに合わせてオタクネタを振ってみたのに
そんな反応で、少しがっくりした。
 それにしても。
「つかさ、前ケロロの一年目見てないっていってたでしょ? だからどうかなって」
「うん、嬉しいよ、ありがと〜」
「でも、つかさはともかく、私マリみて読んでるなんていったっけか?」
 さきほどから疑問に思っていたことを口にすると、こなたはニヤリと笑って本棚のほうに
顔を向けた。
 そこには書店でつけてもらったカバーがかかったままの文庫本が、綺麗に30冊ほど並んでいる。
「う……確かにあれマリみてだけど……。よくわかったな」
「ま、ねー。やっぱさ、人が読んでる本って気になるじゃん? かがみが読んでるところ後ろ
から覗いたとき、挿絵がマリみてだったからね。それに、かがみん家くる度にあの本棚の本、
順調に増えてくしさ」
 別に隠していたわけではないのだけれど。
 なんとなく云いたくなかったのだ。『マリア様がみてる』に興味を持つに至った心情を見透かされ
そうに思えたから。
226夏/窓枠の花(第二話)4/6:2008/01/05(土) 18:42:30 ID:ZzMU4/kT


 こなたに恋をしていることに気づいてから、私はその手の本をよく読むようになった。

 レズビアンの告白本、吉屋信子の少女小説、同性愛を生物学的に考察した学術書、
性同一性障害に関する研究書、嶽本野ばらのエッセイ、クィア理論と絡めてフェミニズムを
アジテートする政治的な本、はてはレスボス島に住んだことで“レスビアン”の語源になった、
閨秀詩人サッフォーの叙情詩まで。
 色々な本を読んでわかったことは、自分が両性愛者であること、そしてそういった人々は
――少数ではあるけれど――社会学的、生物学的にみて決して特殊な存在ではないということだ。
 それだけでも随分生きやすくなった。
 なんというか、私がこんなに日々苦しくて後ろめたく思い、まるで自分が犯罪者であるかの
ように感じてしまうのは、原罪だとか、異常者だとか、神の摂理に反しているとか、そういう
先天的な原因によるものではないということがわかったから。
 だからといって、一足飛びに全て社会が悪いと結論づけることもまた間違っているとは思う
けれど。少なくとも私は、同性を好きになったことで自分を責める日々からは解放された。

 けれどどんな本を読んでもわからないことがある。

 どうして私がこなたのことを好きなのか。

 電車の中で、駅前で、出かけた街中で、すれ違っていく沢山の人々。
 男もいれば女もいる。お年寄りも、少しだけ年上の大人も、同年代も年下も。

 どうしてこんなに人がいるなかで、私はこなたでなければいけないのだろう。

 あの目が、あの口が、あの声が、あの手が、あの髪が。

 目の前でキラキラと煌めく度に、私の心は張り裂けそうになる。
 胸をかきむしって大声で叫びたくなる。

 触れたくて、抱きしめたくて、抱きしめて欲しくて。

 この感情は一体なんなのだろう。

 性欲が、近しい遺伝子型を残すために用意された生命の策略なら、こなたに感じるこの
思いは一体なんのためにあるのか。

 それだけは、いくら考えてもわからなかった。


 お盆を持って部屋に入ると、みゆきが大あくびをしているところに出くわした。
 慌てて口元に手をあててかみ殺そうとするけれど、出てしまったあくびを止めることも
できず、頬を染めてあたふたとしていた。そんなみゆきが可笑しくて、持っていた紅茶を
こぼしそうになる。
「……お、お恥ずかしい限りで……」
 目元に涙を浮かべて小さく呟くみゆきのことを、凄く可愛いと思った。
「あははっ、今のは本当に恥ずかしかったわよねー」
 変に気まずくならないように、明るく笑い飛ばして云うと、みゆきはますます縮こまって
しまうのだった。
 淹れてきた紅茶は褒めてもらえた。
「プリンスオブウェールズですね。私、大好きなんです。凄く丁寧に淹れて下さってますね」 
 銘柄を当てられてしまったことには驚いたけれど、お嬢様というものはそういうものなの
かもしれない。そういえばこなたが『マリア様がみてる』に嵌って物まねしていたときも、
みゆきだけは素で対応していたな。
 そうか、あれはもう一年近く前のことなんだ。
227夏/窓枠の花(第二話)5/6:2008/01/05(土) 18:43:01 ID:ZzMU4/kT


 あの頃私はただみんなといることが楽しくて、無邪気に日々を過ごしていたんだっけ。
 去年の夏、みんなで海にいったときも、どうしてこんなにどきどきするのだろうと思っていた。
私はそんな自分にとまどって、でもみんなが普通にしていることがなんだか悔しくて、少しだけ
不機嫌だった。お風呂に入ったときもみんなの裸を意識してしまって、ずっと仏頂面をしていた。
 全部ナンパのせいにして。
 それで自分の心にも説明がついた気になっていたのだから、呆れるというかほほえましいと
いうか。

 思えばあの頃から、随分遠くまできてしまったきがする。
 もう永遠にあの夏には戻れない。
 いなくなってしまったあの頃の自分のことを、懐かしく思いだしていた。

 ふと我にかえってみゆきの方を眺めると、参考書をひらきながらうつらうつらとしていた。
「……みゆき、もしかしてもう眠い?」
 私が訊ねると、みゆきははっと頭を起こして慌てて云う。
「……あ。え、ええ、実は少し……」
 時計をみると、もう十一時になっていた。
「そっか、みゆき、普段十一時に寝てるんだっけ」
「ええ、お恥ずかしいことですけれど、もう習慣になってしまっておりまして、十一時になると
急に眠気が襲ってくるのです」
「まあ、規則正しい生活ってのは大切だと思うけどね。ってか、よくそれで今の成績維持
できるなぁ……」
 皮肉というわけでもないのだけれど。いつも遅くまで勉強をしている自分としては、基本
スペックの違いに文句の一つもつけてみたくなったのだ。
 けれど返ってきた返事はまるで予想もしていなかったもので。

「ええ、ですから、私の学力もこれから先あまり伸びないもの、と……」

 そう云って、なぜか寂しそうにニコリと笑った。

 私は、返事に窮して黙り込んでしまった。みゆきはそんな私をみると、困ったような顔を
して言葉を続けた。
「実は、私の今の成績は、中学生時代の遺産が大きいのですよ」
「……えっと、それはつまり、中学生のころから高校の勉強をしてたってこと?」
「……そういうことになりますけれど。どちらかと云いますと、陵桜に入ってから余り勉強
時間が取れていないことの方が問題なのだと思います」
「ああ、確かにね。通学に片道一時間半かかれば、そりゃ勉強時間もなくなるかー」
 私がそう云うと、みゆきは“駅までとバスの待ち時間なども含めますと、二時間は掛かり
ますね”と訂正してから、こう云った。
228夏/窓枠の花(第二話)6/6:2008/01/05(土) 18:43:35 ID:ZzMU4/kT


「それに、勉強をしているよりも一緒にいるのが楽しい、そんな友達ができましたから」

 それは全くの不意打ちだった。
 ふわりと笑う友人を前にして、私は何も云えず、ただ顔を赤らめることしかできなかった。
「あら、うふふ、可愛らしい反応ですね。なんだか泉さんの気持ちがわかった気がします」
 そう云ってペロリと舌を出すみゆきを見たとき、急に呪縛が解けたように再びものを考える
ことができるようになった。
「……な、なによあんたまで……。みゆきもなんだかこなたに染められてきたわね」
「うふふ、そうかもしれませんね。かがみさんみたいな方のことを“ツンデレ”と呼ぶの
ですよね?」
「そ、そうだけどさ……なんかそれ、おばあちゃんが頑張って若者言葉云ってるみたいな
気恥ずかしさがあるから、やめれって」
「あら、私、おばあちゃんみたいですか」
「物知りで落ち着いてて揺らぎがないから、そんな雰囲気あるわね。……って、なんか
ほんと今日のみゆきはいつもと違う感じするわよ?」
「えっと、なんだか眠くてですね、半分寝ぼけているのではないかと思います」
「そっか、寝ぼけてるのか」
「ええ、寝ぼけているのです。……ふふ」
 そう云ってテーブルに腕を組んで頭を乗せたみゆきは、とろんとした半眼をしていて、
確かに眠そうな様子だった。
 なんだか酷く調子が狂う。
 その焦点の合っていない眼でけだるそうにみつめられると、なんだか全てを見透かされて
しまうような気がする。今のみゆきは、どんなことを訊ねても即座に正解を導きだして
くれそうな、まるで世界の秘密を何でも知っているかのような、そんな雰囲気を纏っていた。

「……かがみさん、泉さんのこと、好きなんですよね?」

 だから私は、みゆきがそう云ったとき、ごく自然に答えてしまったのだ。

「うん。大好き」

 ――私たちは、どこへ行くのだろう。
 雪解け水を孕んだ春の川のように急峻な、時の流れに翻弄されて。
 全身を飲み込まれて、上も下もわからず、突き出した腕は何も掴めずに空を切る。

 その伸ばした腕の先で、一輪の花が揺れていた。

 窓枠で、マーガレットが揺れていた。

(つづく)
22916-187:2008/01/05(土) 18:44:25 ID:ZzMU4/kT
以上です。

ちなみになんで間が空いたかというと、
ネタに使おうと思って読み始めたマリみてに
おもいっきりはまってしまったからです。
リリアンから帰ってくるのが大変でした。

正直ちょっと書いてみたいと思ってたりして。

まあ、何をなくともこれを終わらせなければ……。
最初に思っていたよりも長丁場になりそうです。

それではありがとうございました。
230名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 18:50:54 ID:mvkySgGD
>>229
リアルタイムGJ!
久しぶりの続きですねー。
夏の話もそろそろ終わるのかな?
続きが楽しみです。
231名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 18:58:34 ID:bww4K1GK
>>229
これはすごい!!
正直、お待ちしておりました。

あいも変わらず、人物、背景、状況の描写がディテールに富んでて
しかも、長く細かい説明にもかかわらずスイスイ読ませる。
この先を、是非期待するものです。

しっかし、みゆきはもう、長老扱いか・・・
何もかも知っていて、全てお見通しの知識のシンボル。
さながら、賢者、または大僧正、といった所か。
232名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 19:29:17 ID:V5Do8NSI
>>229
GJです。
夏も終わりに近付き、そろそろ…という感じですね。

本格的に重くなる前に、私も一つ投下したいと思います。
特に問題が無ければ、数分後に投下開始しますね。
233名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 19:38:19 ID:V5Do8NSI
では、投下します。
以下注意事項。

■実験作です。Wikiへの保管はしないでください。
■こなた←かがみ
■11レス前後
■非エロ

それでは、宜しくお願い致します。
234狂愛:2008/01/05(土) 19:40:30 ID:V5Do8NSI
今の時間は、夜の六時。
今日は、お父さんもゆーちゃんもいない。
お父さんは締め切りが危ないという事で、編集さんとホテルに泊り込みで仕事中。
ゆーちゃんは、みなみちゃんの家でいつもの四人とお泊り会をしている。
何でこんな時に限って、二人ともいないんだろう。
悪い事って、何故か重なることが多いんだよね。

さっきから、家の電話が鳴りっぱなしだ。
鳴り始めた時に、発信者をディスプレイで確認してみた。
そこには、予想通りの名前があったんだ。

『カガミ ケイタイ』

しばらく、これをどうしようか迷っていたけど…
私は受話器を一旦持ち上げた後、すぐに元の場所に置いて通話を切った。
無駄な行動かもしれない。
こんな事も、一時凌ぎでしかない事だとわかっている。
だって…

―――トゥルルルル…

ほら、またすぐに電話がかかってきた。
発信者は確認するまでもない。
どうせまたかがみだし。
…どうしてだろう。
何故、こんな事になってしまったんだろう…
あの時にしっかりと気付いていれば…
こんな事にはならなかったのかもしれない…
235狂愛:2008/01/05(土) 19:42:11 ID:V5Do8NSI


「かがみってさ、最近殆ど毎日こっちでお昼ご飯食べるよね。
 もしかして、こっちのクラスに誰かお目当ての男子がいるとか?」
「なっ…なぁっ!?何言ってるのよこなた!別にそんなのいないわよ!
 別に、つかさと一緒にご飯を食べたいから来ているだけで、その…」
「えー?だって、たまーにだけど落ち着かない様子をしてるじゃない。
 あれは絶対男絡みだと踏んだんだけどなー」
「こなちゃん、お姉ちゃんを妙なイジり方するのはやめなよ〜」

二ヶ月程前、いつものように皆でお昼ご飯を食べていた時。
私はいつもの感じで、かがみをからかったりして楽しんでいた。
この日も、かがみが慌ててつかさが微妙なフォローを入れ、みゆきさんが場を収めるという形で終わる筈だったんだけど…
この時は、かがみの反応がいつもと少し違っていたんだ。

「いい加減にしなさいよ。妙な想像するな!」
「いかんねぇ、かがみ。そんなんじゃいつまで経っても良い相手ができないよ?」
「あんたに言われたくはないわ!…むしろ、私が……るのは…」

この時、かがみが珍しく口ごもったんだよね。
今思うと、この時強引にでも追及しておけば…今の状況が変わっていたのかもしれないなあ…

「え、かがみ、今最後に何て言ったの?」
「…えっ、何でもない何でもない、あはは。
 そ、それよりほら、そろそろお昼休みが終わるわよ」
「あ、本当だ、いつの間に…」
「やはり皆で喋っていると、時間が経つのが早いですね」
「そうだね〜」

気が付かないほどの、いつもとの小さな違い。
この日を境に、少しずつ私に対するかがみの態度が変わってきたんだ。

「こなた、一緒に帰ろう」
「こなた、今日遊びに行ってもいい?」
「こなた、あんたこれ欲しがってたでしょ?
 知り合いから貰ったんだけど、私使わないからあげるわよ」
「こなた、昨日バイトで変な客に絡まれたんだって?
 今度そんなことがあったら連絡してよ、私が何としてでも守るから」

少しずつ、本当に少しずつ…かがみは何かが変わっていった。
でも、自分の鈍感さの悲しさ…それに気付くまで、一ヶ月以上かかったんだよね。
『いつもとの違い』が段々大きくなっていったのに、まるで気が付かなかった。
…つかさから、かがみについての忠告を受けるまで。
236狂愛:2008/01/05(土) 19:43:15 ID:V5Do8NSI


「…こなちゃん、ちょっといい?」
「ん、なーに、つかさ?」
「ここじゃ何だから…ちょっと一階の階段のところへ来て」

ある日、私はつかさに呼び出された。
言われた通りに階段付近へ行くと、つかさに階段下倉庫の近くに誘導された。
そこで、私はかがみについての信じられない事実を聞かされた。

「今、丁度お姉ちゃんがいないから言うけど…
 お姉ちゃんね、こなちゃんの事が好き…みたい」
「…へ?好きって…」
「友達として…じゃなくて、どうやら恋愛対象として見ているみたいなの」
「…!?」

正直、この言葉を言われたことはショックだった。
まさか、親友とも言える仲のかがみが私の事を恋愛対象として見ているだなんて。
…でも、何でそれをつかさが知っているのか。
そして、何故それを私に教えるのかがわからなかった。

「こなちゃんにこれを教えるのはね…気をつけてほしいからなんだ」
「…気をつける…って…どういう事…なの…?」

私は、さっきのつかさの言葉で気が動転していた。
でも、この後の言葉でひっくり返るほどの衝撃を受けたんだ。

「お姉ちゃんね…最近、何だか変なんだ。
 こなちゃんに関係するあらゆる事柄や物を調べたり集めたりしているみたい。
 この前お姉ちゃんの部屋に入った時…びっくりしちゃって。
 部屋の壁一杯に…こなちゃんの写真が張ってあったんだ…」
「…え…!?」

この時、私はその言葉の意味を理解することができなかった。
そこから更に、つかさが言葉を続けていった。

「最近こなちゃん、お姉ちゃんに色々プレゼント貰ってるでしょ?
 …それ、こなちゃんが最近欲しいと思っていたものばかりじゃなかった?」
「う…うん、手に入らなかったグッズとか、PCのパーツとか…
 かがみにしては、妙にピンポイントな物をくれるなーとは思っていたんだけど…」
「…お姉ちゃんね、こなちゃんが『何々が欲しい』って呟いたものを全部メモしてるんだよ。
 家に帰った後、まるで何かに取りつかれたみたいにメモをした物をネットとかで探してくるんだ。
 そうやって手に入れたものを、こなちゃんに渡しているんだよ。
 私もこの前、探すのを手伝わされたから…」

これを聞いている間、私は何だか寒気を感じていたんだ。
これが得体の知れない恐怖感ってやつなのかな。
そして同時に、こんな考えも浮かんでいたんだ。
もしかして、今のかがみは…

「お姉ちゃん…もしかしたら、道を踏み外す一歩手前にいるのかもしれない。
 お姉ちゃんが完全にそうならないよう、私も努力するけど…
 こなちゃんも十分気をつけて」

…丁度考えていた事を、つかさに言われたんだよね。
この事実を改めて聞かされた私の頭は、もはや入ってくる言葉の意味を処理するだけで精一杯だった。

「…わかった…教えてくれてありがとう、つかさ」
237狂愛:2008/01/05(土) 19:44:26 ID:V5Do8NSI
一通り話し終えた後、漸く頭も冷静さを少し取り戻せた。
かがみは、少し危ない方向へ歩き出そうとしている。
できるならば、踏み留めさせたい。
でも、どうすればいいんだろう?
かがみの裏の気持ちを汲んで、こちらから先手を打つべき?
それとも別の方法を取るべきなのだろうか?
そんな事を考えつつ、私はその場を離れた。
…でも、その直後に…聞きたくなかった会話が聞こえてきたんだ。

『…つかさ、今こなたと一緒にいたわよね?何をしてたの!』
『ちょっと話してただけだよ、何もしてないって』
『嘘、嘘でしょ。こんな人気の無い場所でこなたと二人きりでいるとか…
 何をしてたのよ、キス?それとも…』
『本当だって、何もしてないって!』

どこから出てきたのか、かがみがつかさに詰め寄っているような声が聞こえてきた。
この時、聞こえないふりをして教室に戻ることができればよかったのに。
でも…それができなかった。
足がその場で止まって、気が付いたら耳を傾けていた。
私は、この会話の一部始終を全て聞いてしまったんだ。

『許さないわよ、こなたに触るなんて、こなたと交わるなんて絶対に許さない。
 こなたは私と一緒にいるのが一番幸せなんだから、私と、私と…』
『落ち着いてよお姉ちゃん!本当に私はこなちゃんと会話してただけで…』
『こなちゃん、こなちゃん、こなちゃん…何よ、そんないかにも私はこなたと親密です、みたいな呼び方して!
 …そうか、つかさもこなたを狙っているのね?だからこんな場所に呼び出したりしたんでしょ!』
『違うんだって!お願い…信じてよ…お姉…ちゃん…!』
『嘘よ、嘘、嘘、嘘…嘘に決まってる…!つかさがそのつもりなら…私も容赦しないわよ…!』
『あ…う…うぁ……お…姉……ちゃ……っ…!』

つかさがかがみの言葉に押されて、遂に泣き出した。
それでもかがみは、つかさを疑い続けたんだ。
この時点で、もう私の知っているかがみはいなくなっていた。
容赦なくつかさに浴びせる厳しい言葉。
今のかがみは、常軌を逸しているとしか思えなかった…
238狂愛:2008/01/05(土) 19:45:25 ID:V5Do8NSI


翌日、つかさは学校を休んだ。
かがみは『急に風邪をひいた』と説明したけど…私は信用できなかった。
嫌な予感がしたから、授業の間にこっそりとつかさにメールを送ってみたら…
こんな文が送られてきたんだ。

『ちょっと怪我しちゃったから、しばらく休む事になりそう』

…それは、かがみの教えてくれた内容と食い違っていた。
どちらが正しいことを言っているのか、この時の私には判断する術が無かった。
だけど…この時、昨日のつかさとかがみの会話が頭に浮かんだんだ。
そこから考えると、嫌な方向にしか想像が働かない。
私はつかさに『私からのメールを消しておいた方がいい』と送信しておいた。
もしつかさの言うことが正しいのなら…何故怪我をしたのか、その理由の予想がつく。
でも、確証は無い。
丁度この日、かがみは委員会の仕事で帰りがいつもより遅い日だった。
…チャンスは、今しかない。
真相を確かめるために、私はつかさの様子を見に行った。

電車に素早く乗り、駅に降りてから目一杯走って、柊家に到着。
丁度都合の良いことに、家にはつかさとおばさんしかいなかった。
私が来たことをかがみに話さないように…と、多少内容をごまかしながらおばさんに頼み込んで、私はつかさの部屋に入った。
そして、そこにいたつかさの姿を見た瞬間…私はその場で固まった。
見える部分だけでも顔半分・首の付近・そして両腕。
それぞれの場所に青いアザができ、昨日とはまるで別人になったつかさが寝ていたんだ。

「つ…つかさ!?どうしたの……何があったの、一体…!」
「…あ、こなちゃん…来ちゃ駄目だよ…お姉ちゃんが見たら…また…」
「お姉ちゃんが見たらって…つかさ、もしかして…かがみに…?」
「あ…」

つかさは口を滑らせちゃった、という顔をした。
その表情と言葉から、私は全てを悟った。
…つかさは、かがみにこんな姿にされたんだ。
昨日の事から、かがみはつかさに対して一方的に嫉妬心を起こしたんだろう。
そして家に帰った後、かがみはつかさに手を出したんだ。
…邪魔な者は排除する、という考えのもとに。
239狂愛:2008/01/05(土) 19:46:34 ID:V5Do8NSI
何なのこれ、何かのゲームの話?
私は、ヒロインが急に性格が変わるゲームを何本かプレーした事がある。
大体はおとなしかったり性格が優しかった子が、何かのきっかけで性格が急変するものだった。
それと似た出来事が、今目の前で起こっている。
これはゲームじゃない、実際に起きている事。
その事をはっきりと認識した時、私の体に震えが起こった。
そして同時に、私の目から涙が流れた。
恐怖心、かがみの変化に気が付くことができなかった自分への情けなさ。
そして、つかさを巻き込んでしまった事のやりきれない気持ちが一気に襲ってきたからだ。

「つか…さ……っ!」
「…わかっちゃったんだね、こなちゃん…」
「…ごめん…つかさ……ごめんね……!」

涙が止まらなかった。
もっと早くかがみの心の変化に気がついていれば、こんな事にはならなかった。
そうすれば、私とかがみの問題という事で片がついたのに…
大切な友達である、つかさを巻き込んでしまった。

「こなちゃんが謝る必要は無いよ。
 これはお姉ちゃんに誤解を受けるような事をした、私のせいなんだから…」

つかさが優しい言葉をかけてくれる。
…でもその言葉が、心にちくちくと痛む。
こんな事になったのは、私にも責任がある。
私は、そう考えることしかできなかった。

「…私がここにいたら、またかがみが誤解すると思うから…そろそろ帰るね。
 怪我が治ったら、また遊ぼうよ…『皆』で、ね…」
「うん…そうだね。
 またいつもみたいに…こなちゃんにゆきちゃん、それにお姉ちゃんと…一緒に楽しく遊びたいね…」

そう、できる事なら、また以前のような関係に戻りたい。
でも、こんな事実を目の当たりにしてしまうと…
私はどう表現していいかわからない気持ちのまま、柊家を後にした。

それから私は、かがみといつも通りに接することができなくなった。
どこかかがみに対してよそよそしい態度を取るようになったし、一緒に帰る事も少なくなった。
そう、いつしか私はかがみに『恐怖心』を抱くようになっていたんだ。
…そして今日の放課後、かがみからこんな言葉をかけられた。
240狂愛:2008/01/05(土) 19:48:14 ID:V5Do8NSI
「ねえこなた、今日こなたの家に遊びに行ってもいい?」

この言葉を聞いた瞬間、私の体は強張った。
…正直、来てほしくないと思った。
以前のままのかがみだったら、私はこの申し出を喜んで受けたと思う。
でも…今は違う。
今のかがみは普通じゃない。
だから私は…逃げてしまった。

「…ごめんかがみ、今日はちょっと遊べないんだ。
 個人的な用事があってね…」
「あれ、そうなの?今日はアルバイト、お店が臨時休業で休みじゃなかったっけ?」

…本当に、私の事について何でも調べているらしい。
今日が臨時休業になる事だって、つい一週間前に決まった事だったのに。
しかし、ここで負けてはいけない。
用事があるという嘘を突き通さなければ。

「アルバイトは無いんだけど、別の用事が入っちゃってね。
 だから今回はごめん」
「…そう、残念ね…わかったわ」

その返事を聞いて、私はすぐに鞄を持って足早に教室を出た。
教室から出ようと扉を開けたとき、後ろから何かが聞こえた気がしたけど…
気にしたらきりがない。
私は急いで家へと帰った。
…そして家に戻った私を出迎えたのは、一枚のメモ用紙だった。
そこにはお父さんとゆーちゃんの字があった。
どうやら、どちらも今日は帰ってこないらしい。
そうなると必然的に、私は一人で留守番をしなければならない。

…この事が、かがみに知られないで良かった。
もしこの状態でかがみを迎え入れていたら、どうなっていたか…
241狂愛:2008/01/05(土) 19:50:13 ID:V5Do8NSI
と、その時だった。
家の電話が急に鳴りだしたんだ。
ナンバーディスプレイで確認すると…そこには『カガミ ケイタイ』の文字が。
ここで電話に出てしまったのが、私の最大の失敗だった…

「もしもし?」
『…こなた、嘘をついちゃ駄目だよ?本当は今日、何も用事無いんでしょ?』
「…そんな事無いよー、現に今色々とやっていて…」
『昨日ゆたかちゃんに聞いのよ。明日はこなた、何か用事ある?って。
 そしたら、特に無いはずですよって教えてくれたわよ』
「え……あ……」
「それに、今日はゆたかちゃんもおじさんも泊まりなのよね?」
「…!」

まさかゆーちゃんから情報を取っていたとは思わなかった。
だけどそれ以上に驚いたのは、お父さんが今日仕事で泊まりという事まで知っていたことだった。
…一体、どこまで私に関することを調べているんだろう。
怖くなった私は、そのまま通話を切ってしまった。

ところが、切った直後にまた電話がかかってくる。
発信者は…同じくかがみ。
気を落ち着かせて、もう一度受話器を取る。
流石にさっきの行為は失礼だったと思ったからなんだけど…
直後のかがみの言葉を聞いて、二回目の受話器を取ったことを後悔する事になったんだ。

『どうしたのよ、いきなり切るなんてひどいじゃない…
 何も用事が無いのなら、行ってもいいでしょ?
 来てもいいって返事してよ。
 私はこなたとお話がしたいの。こなたと遊びたいの。こなたと一緒にいたいの。こなたと…』

ここで、私はまた通話を切った。
正直、何で受話器を取っちゃったんだろうと酷く後悔した。

…そんな後悔をしているうちに、また電話が鳴った。
ディスプレイには、またかがみの名前が出ている。
もう取らないでおこうと放置したけど…いつまで経っても鳴り止まない。
どうしよう、どうすればいいんだろう。
散々悩んだのに、答えが出ない。
…結局私は、着信を無理やり切るという方法しか思い浮かばなかった。
242狂愛:2008/01/05(土) 19:52:17 ID:V5Do8NSI


これが、今に至る経緯。
家の電話は、まだ鳴り続けている。
…もう、最終手段を取るしかないのかな。

私は電話機に近付き、後ろにある電話線を掴んで引き抜いた。
これでもう、電話はかかってこないはず。
ひとまずは安心…かな?


――――ピンポーン


あれ、こんな時間に誰だろう。
宅配便でも来たかな?

「はい、どちらさまですか?」
『こなた、来たわよ。
 電話に全然出てくれないなんて酷いじゃない…さあ、入れてよ』
「…!」

…何で、かがみがいるの?
何でここに来ているの?

『ねえ、入れてよこなた。
 遊ぼうよ、一緒にお話しようよ、一緒にゲームしようよ、一緒に…』
「…あ、あの…?か・が・み…?」
『もう私の気持ちには気付いてくれている筈でしょう?
 私はこなたが好きなのよ、一緒にいたいのよ。
 いつも一緒に、いつまでも一緒に、ずーっと、一緒に、ふたりで…』

そこで私はインターフォンの受話器を切った。
…無茶苦茶すぎるよ。
今のかがみは狂っているとしか思えない。
何でこうなっちゃったんだろう。
私はどうすればいいんだろう?
…ああ、考えがまとまらない。
誰か…助けて。
お父さん、ゆーちゃん…お母さん…っ!

―――ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン…

かがみが…家のチャイムを鳴らし続けてる。
まだ家の前で粘っているんだ…
もう嫌だ、こんな状況から逃げ出したい。
でも…それは無理。
逃げられない…
243狂愛:2008/01/05(土) 19:54:15 ID:V5Do8NSI
『〜♪』
『メールが届きましたよ、ご主人様〜』
『ヴヴヴヴヴヴヴ、ガー』

…私の携帯と、PC、そしてお父さんが使っているFAXが一斉に動いた。
鳴り続けているチャイムを無視して、まずは携帯を見てみる。
…メールだ。
送信者は…ひいら…ぎ……か…が……み……

『私はこなただけを愛しているわ。
 だから、一緒にいよう。ずっと一緒に。』

……!!!
じゃあ…PCは…?
メールソフトを開いて…送信者は…ひい…ラ…ギ…

『私はこなただけを愛しているわ。
 だから、一緒にいよう。ずっと一緒に。』

…これも同じ文章だ…
まさか…まさかまさかまさか…!
考えたくないけど…FAXも…!

『私はこなただけを愛しているわ。
 だから、一緒にいよう。ずっと一緒に。』

…っ…!
何なの…これ…おかしいよ…
かがみ…一体…どうして…?

『〜♪』
『メールが届きましたよ、ご主人様〜』
―――ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン…

携帯とPCへのメール、そして家のチャイムが止まる気配が全く無い。
私は耐え切れなくなって、部屋の隅で隠れるようにうずくまった。
…もうやめて、かがみ。
これ以上やったら、私の方が持たないよ。
…誰か助けて。
怖い。
怖い。
怖い。
怖い…!
244狂愛:2008/01/05(土) 19:56:14 ID:V5Do8NSI
その直後だった。
全ての音が一斉に止んだんだ。
…チャイムも鳴っていない。
携帯とPCのメール着信音も鳴っていない。
かがみは…帰ったの…かな?

「…よかっ…」

そう口に出した瞬間…私の肩が誰かに掴まれた。
…誰!?
玄関の鍵は閉めておいたはず。
この家には、今は私しかいない筈なのに…!

『…来たよ、こなた…』

この声は……か・が・み…!?
どうやって入って…いや、その前に…

『やっと…二人きりになれたね…
 私達は…ずーっと…一緒だよ…?』

私は、恐る恐る後ろを見た。
そこには…今まで私が見たことがない、正気を失ったかがみがいた。
その手には、妙な道具が握られている。
…もう…逃げられない。

『こなた…ダ・イ・ス・キ…』

…誰か…助けて……
24525-176:2008/01/05(土) 19:59:36 ID:V5Do8NSI
以上です。
実はこれ、以前製作した手書きMADの内容を基にした話だったりします。
所謂PV形式のやつですね。(MAD自体は未公開です)
作っていた映像は一分半位の長さだったんですけど、文にしたら補足文やら何やらで長くなりましたorz
慣れない文形式で書いたので、妙な箇所がある所はお許し下さい。
やっぱり自分は三人称の方が楽に書けます…

原稿データをすっ飛ばして落ち込んだ勢いで書き始めたものでしたが、
思った以上に長くなっちゃいました。
後、最初に名前を入れ忘れてたorz
246名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 20:01:26 ID:7N+BX8zB
>>245
リアルタイムGJ
247名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 20:03:57 ID:EZAhdvXf
>>245
GJ!
248名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 20:04:18 ID:v0Kzp4XI
>>245
リアルタイムGJ!
これを保管しないなんて、も っ た い な い
249名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 20:07:21 ID:oiWymtSm
ひいいぃぃぃ!
これは何か?俺がついさっきまでひぐらしのMADを見ていたことを知っての犯行(違)か!? だとしたら

(ここから下は切り離されているが、そこを要約すると >>245GJという類の内容が書かれていた)
250コナーク:2008/01/05(土) 20:08:02 ID:bww4K1GK
>>245

KGS、KGS、GJ、GJ
こちらコナーク

久々の作風、ジャンル、とてもすごかったデス、コワカッタデス。
しかし、これによりかがみんがかつてない発作を起こしたため
再び潜伏モードに入る。ダンボールダンボール・・・。

KGS、KGS、別世界のみゆきさん応答せよ・・・
くわばらくわばらこわやこわや・・・(((〒ω〒.))))
251名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 20:12:13 ID:EZ2t3fxO
>>229
GJ!!
あなたの書くSSが一番好きだったりします
最近見かけないなと思ってたらマリみて読んでたんですかw
252名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 20:18:36 ID:mvkySgGD
>>245
GJ・・・なんだけどこえええええええええええ!!!!!!
253名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 20:21:47 ID:cdmmSrj5
つかさ=刹那
かがみ=言葉

…さしずめ、みゆきさんは世界かな?
「私は血みどろとかホラーとかそういうのはダメなんですよ泉さん。
でも泉さんの体液なら何でも歓迎ですねだばだば」
「ちょ、みゆきさん目が、目が怖いよ…たす、たすけアッー!!」


>245
それにしてもこれは良いヤンデレ。
最近こういうのにしか反応できなくなったのはこのスレのせいだ!
黒化キャラ多すぎだろ常考
254名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 20:26:43 ID:vpUvwrth
>>229
GJ!貴方の書くSSがすごい好きです!
描写がとても綺麗で、なおかつ語彙も豊富で正直嫉妬w
こんなSS書けるようになりたいなあ…
255こなた:2008/01/05(土) 20:26:57 ID:bww4K1GK
だめだよぉ、私の首を落としたら












我眠様になっちゃうじゃん
256名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 20:32:55 ID:Xk4taiLO
>>245
ヤンデレか…リアルでいたらと思うととても怖いわぁ…
とにかくG(ここから先は血のようなもので見えなくなっていた)
257名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 20:35:50 ID:hDmKJ3I6
>>245
初投稿でなくて
ここまでキャラを壊すなら
鬱注意等の注意書きなど
投稿ルールを守れ
258こなた:2008/01/05(土) 20:45:58 ID:bww4K1GK
そこまで声荒げなくてもいーじゃん。
んまあでも、>>245はこのスレの基本ルールに立ち返る必要はあったよね。
「キャラが嘗てない方向に壊れます」
「めっさヤンデレ入ります。苦手な人注意」
くらいは前フリ注意に入れてほしかったぁね(=ω=.)
259名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 20:49:31 ID:V5Do8NSI
>>257-258
うは、ごめんなさい。
確かに注意事項にその事を入れ忘れていました…
確認ミスをしてしまったことをお詫び申し上げます。
失礼致しました。
26017-234:2008/01/05(土) 20:49:56 ID:Ts2YXf+U
まとめですみません、投下された方々GJです。

wikiのほうで、宣言通り、自作「贈りもの」(あきら&白石・非エロ)を修正しました。
一応こっちでも報告したほうが良いのかと思って報告しに来ました。
スルーしたい人はしてください。

以上、長々と失礼しました。
261257:2008/01/05(土) 21:03:33 ID:CPYGNwO7
>>259
乱暴な書き方で失礼
作品に引き込まれて神経が昂ぶっていたのかな
まあそれくらいインパクトのある作品だということですGJ

>>258 フォローありがとう




262名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 21:10:45 ID:rmfk6Mv1
今日一日でこれだけ! 職人さんもUターンラッシュですな、皆様ぐっじょぶです。
263名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 21:24:13 ID:D1viDiDh
>>245GJです
ヤンデレ物は大好物な自分にとって、見ていてゾクゾクしました。
それにしても、このスレは素晴らしいですね。毎日、気になる連載物や面白い短編が読めて。

この勢いに乗じて私も投下したいと思いますが
投下準備の方、居ますでしょうか?
居ないようでしたら数分後に投下いたします。
26422-468:2008/01/05(土) 21:26:45 ID:D1viDiDh
それでは投下させて頂きます。

タイトル『IFから始まるStory 第2章 巡る想い』
29スレ目『IFから始まるStory 第2章 愛情編【曲げられた想い】』の続きになります。

注意事項
・かがみ&こなた(+つかさ)
・かがみ視点
・非エロ
・2レス使わせていただきます。
・パラレル(つかさが稜桜学園を落ちたという設定)で若干シリアス
  ↑苦手な方はスルーでお願いします。
265IFから始まるStory 第2章 巡る想い その1:2008/01/05(土) 21:27:28 ID:D1viDiDh

重力に逆らって、ベッドに横たわっていた上半身をバネ仕掛けの様に勢い良く起こし
窓から差し込む光が藍色をしているのを見た限り、朝には程遠く
「・・・ゆめ?」
と、自ら呟いた独り言で今まで見ていたのが夢だと分かった。
「酷い寝汗。シャワーでも浴びてこようかな」

脱衣所でパジャマを脱ぎ棄て、一糸纏わぬ姿になれば全身に感じる冷気の存在が
今が秋だという事をアピールしているようで
さっきまで見ていた夢なんか、嫌悪感だけを残して既に記憶から消え去っていた。


秋晴れの下、学校指定の冬服だけでは寒気を感じ始めると
焼き芋が美味しい季節になったと実感させてくれる。
そんな中、学校が終わった私は、こなたと一緒に我が家に帰って来た。
こなたの目的は私と一緒に遊ぶでも無く、ましてや宿題を片付けるなんて殊勝な考えでも無い。
こなたの恋人で、私の双子の妹。
つかさに会いに来たのだ。

「やっほ〜、つかさ」
「あ、いらっしゃい。こなちゃん」

既に帰宅していたつかさが、居間で私達の帰りを待っていたようで
玄関を開けたら、すぐに顔を出してきた。
そして、こなたはつかさの部屋に行き、私は自室で読書をしたり居間でゲームをしたりと
二人とは別々の行動を取っている。

別に二人を気遣っている訳では無く、逆に二人が付き合って間もない頃は
私も一緒に出掛けたり、ゲームをしたりと行動を共にしていた。
でも、それが駄目だったみたい。

気付いちゃったのよね。
こなたが向ける笑顔の違いに・・・

こなたが私に向ける笑顔は親友として触れてくれる嘘偽りない笑顔で
つかさに向ける笑顔は曇りの無い愛おしい者にしか見せない笑顔。

266IFから始まるStory 第2章 巡る想い その2:2008/01/05(土) 21:27:59 ID:D1viDiDh
その違いに気づいた時『どうして私に、その笑顔を向けてくれないの?』と
考えている自分に愕然として、そして全てが分かった。


“私は、こなたの事が好きなんだ”


この気持ちに気付いてしまえば、今まで感じていた不安の正体も簡単に見抜けてた。
つまり、今の様な状況になるのが嫌だったんだ。

つかさはこなただけを見て、こなたはつかさだけを見て
そして私には振り向いてくれない。

だけど、つかさが幸せになれるなら、
こなたが幸せになれるなら、
私の想いなんか不燃ゴミと一緒に捨ててしまえと思い
こなたとつかさが一緒の時は距離を置くようになった。

私はこなたの親友として高校生活を堪能出来れば、それで満足。
明日も見る事が出来る、こなたの笑顔を思い浮かべながら
全く頭に入ってこない小説を閉じた。


次の日
昨日までの秋晴れが、まるで嘘の様に分厚い雲が掛かり
それは私の心情を反映しているみたいで、少し憂鬱な気分にさせてくれる。

「こなたは休みか・・・」

何気なく向ける泉こなたの座席は、空虚にも主を失っており
それだけで今日という日がセピア色に霞んで見えてしまうのは
私の恋心が見せる幻覚だと思う。
そして、1日会わないだけで、こなたへの想いが溢れそうになってくる。

“こなたに会いたい! 会って、私の気持ちを伝えたい!”

でも、それは決して許されぬ行為。
だから私は、いつまで保てるか分らない理性に便りながら
自分の気持ちを抑え続ける事を選んだ。


IFから始まるStory 第2章 完
26722-468:2008/01/05(土) 21:29:21 ID:D1viDiDh
以上で第2章終わりました。
今まで読んで頂いた方、前々スレで感想を頂いた方ありがとうございます。
そして前話から大分時間が空いてしまい申し訳無いです。
268名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 22:06:03 ID:mvkySgGD
>>267
GJ!
うぅむ…切ないなぁ…
もしも伝えてしまったら大変なことに…。
思うことはたくさんあるけど、大人しく次をまつです
269名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 22:07:29 ID:xPvQrDj/
ここにいる天才たちの才能は飛び抜けている
コミケでたちまちお誕生席以上にいけるんじゃないか?
なにあともあれGJです。
270名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 22:14:50 ID:2xFsICum
絵もいける小説もいける
あな恐ろしや

最近は絵の投稿も多くて嬉しい限り
271名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 22:42:29 ID:bww4K1GK
「いやあ、最近私って、モテモテだねェ(=ω=.)ムッフン
 ああ、罪な女ですのね私って・・・(マリみて声)」
「あー、だりぃからつっこまなくてもいいか?
・・・まあ、>>267にはGJと言って置いてあげるわ。
 揺れ動く心とか葛藤とか、描けてると思うし」
「そんなこといいつつ、動揺を隠せないかがみん萌え」
「う・・・うるさいうるさいっ!」
272名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 22:46:45 ID:Xk4taiLO
「そういえばみさちゃんって、また歌うんだっけ?」
「まぁなー」
「そっかぁ、じゃあ頑張ってね」
「おう、この前より頑張るってヴぁ!」
「…ぶつぶつ……」
「あやのー、どうしたー?」
「あっ、いや、なんでもないから…」
「そっかー、なんでもないなら大丈夫だな」
「う…うん…」

「みさちゃんだけ…」



なんであやののも出ないんでしょうね
273名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 23:06:59 ID:bww4K1GK
「(しかもまたラジオのアシスタントとして
  活躍するみたいだしね・・・みさちゃんてば・・・)^^」
「どしたんだあやの?心なしか空気が冷てえぞ・・・」








「というわけで柊ちゃん、次は思い切って小早川ちゃんを
 狙ってみましょ、変則的な所で田村さんとか、
 くれぐれもみさちゃんだけはやめなさいよ^^」

「ぐあっ!あやのぉ、やっぱり根に持ってんじゃねえかよえううううう(T△T)」



>>272
所詮は人気の差なんだろうn
あれ?あやのさん何でここにあqwせdrftgyふじこlp
274名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 23:10:48 ID:MB0yzIp6
人気の差、か……悲しいな

さて、投下予定のお方がいらっしゃらないのでしたら
数分後ぐらいに投下します
2756-748:2008/01/05(土) 23:15:24 ID:MB0yzIp6
いきます

・「時間の問題」の続編
・6スレ拝借
・かがみ×こなた←ゆたか
・今回は多分ちょっとだけシリアス展開なのです
276交錯する気持ち(1/6):2008/01/05(土) 23:16:09 ID:MB0yzIp6
 恋に障害は付き物とは良く言ったものだ。
 特に女同士の恋なんて茨の道になるに決まっている。
 それでも私を愛してくれたかがみと離れるつもりは、決してなかった。





 交錯する気持ち





 私とかがみが付き合いだしてから一ヶ月は経っただろうか。それを記念して、というわけではないが、私達は休日を丸一日費やして海に来ていた。
 夏にはかなりの人でごった返すであろう砂浜も冬となれば人気はまばら、辺りを見回しても私達以外の人影は殆どなかった。
 ここまで来た甲斐があったな、と彼方まで広がる蒼を見つめながら思う。
 海を見たいと言ったのは私で遠くまで足を伸ばそうと言ったのはかがみ。
 以前私の家の近くの商店街を一緒に歩いた時、かがみの何も握っていない手が寂しそうに揺れていたのに気付いた。それを察する事が出来たのは、恐らく私も同じだったから。
 しかし知人の誰かに見つかったらどう噂になるか分からない。私達を仲の良い友達と解釈する人もいればもしかしたらこの関係を見抜く人もいるかもしれない。
 そう危惧したのであろうかがみは、電車で片道約一時間程離れた海岸をデートの場所へと選択したのだ。これなら知り合いに見つかる事もないだろう。
 本当は地元の街を練り歩いたりしながら手を繋いだりしたいのだが、それはまだ叶えられない。
 それは、私達の関係が皆に認められてから。それまでは―――
「ねぇってば」
 私の思考を急停止させたかがみの声に気づいてその発信源へと向き直ると、かがみが私をじっと見つめていた。
「何?」
「私の話、聞いてた?」
 どうやらかがみは私に何かを話し掛けていたらしいのだが、物思いに耽っていた私には届いてなかったという事を投げ掛けられた台詞から瞬時に読み取る。
「ごめん、聞いてなかった」
 幾ら意識ここにあらずといった状態でも、かがみの話を聞いていなかった事には変わりはないのだから、非は私にあるわけだ。
「いや、何も言ってないんだけどね」
 それを認め素直に謝ったがかがみは軽い口調でそう言ってのけた。
 からかわれているようで私は軽く気分を悪くしたが、その後にかがみの無邪気に笑った顔が私の目に飛び込んできたからそれは見事に相殺された。むしろプラスになったといっても過言ではない。
「冬の海って初めて見たけど、綺麗だね」
 私は打ち寄せる波間を見遣った。するとかがみも倣うように私と同じかそれに近い箇所へと目を向けた。
「そうね、私も初めて」
 灼熱の太陽が照りつける真夏日に見た、記憶上の景色とは全く違って映る目の前の海辺。
 何処が違うのかと聞かれれば明確な答えは出せないかもしれないが、感覚的な違いを感じさせる風景を、私はかがみと一緒に眺めていた。
277交錯する気持ち(2/6):2008/01/05(土) 23:16:40 ID:MB0yzIp6
「かがみ、手……繋がない?」
 言い方が少し控えめになったかもしれない。紅潮する頬は気づかない振りをする。
「うん」
 断る理由がない、むしろ大歓迎であるとでもいうように、かがみは即行で了解の返事をくれた。しかし、それでもまだ恥ずかしさが残る私は少しずつ手を伸ばす。
 見られているわけでもないのに、外だと妙に羞恥心が込み上げてくるのはどうしてだろう。自分の部屋で二人きりだと平気なのになぁ―――
 そんな事を考えていると、かがみが私の指を絡め取った。
 伝達してきた穏やかな温もりに、冷えきっていた私の手はすぐに夢心地となった。同時に心の中の悩みも吹き飛んでいく。
「暖かい……」
 やっぱりかがみに触れられるとドキドキする。私を性的な意味で可愛がってくれる時の感覚も好きだが、やはり一番好きなのはこのかがみ特有の温もりだ。
 その時私は、指に何か冷たいものが触れたのを感じた。
 見なくともそれが何かは分かる。
「かがみ、指輪してくれてたんだね」
 今になって気づくのは迂闊だったが、私は嬉しい気持ちでいっぱいになって言った。
「当然じゃない」
 かがみが優しく微笑む。金属の感触が何故か暖かい。
「こなた。私達は付き合ってるのよ?」
 かがみが分かりきったことを確認するように聞いてきた。
「へ?うん」
「だからその、遠慮とかしなくて良いのよ?」
 何だかこなたはそんな感じがしたから、と付け加えるかがみ。
 どうやらかがみは私が恥ずかしくて大胆な行動に出ないのを、何かに遠慮しているからと勘違いしたらしい。
「遠慮なんかしてないよ。ただちょっと……恥ずかしいだけ」
 それは違うと伝えたいだけなのに、最後の方は何故か声が出てくれなかった。尻すぼみに声量が下がるのが何だか恥ずかしくて、私は目を逸らしてしまう。
「でも今日は誰もいないし……」
 しかしかがみの表情を見る限り、私が遠慮をしているのではないと理解したようだ。
 向き直ってそう確信した私は安堵の気持ちを伝えるようににっこりと笑った。
「遠慮なくかがみを独り占めしちゃおっかな」
 私の言葉を聞いたかがみの身体が一瞬ぐらついたように見えたけど、すぐに持ち直したので忘れる事にする。
 かがみはここのところ頻繁に、私の言動を見ては足から崩れかけたりと危なっかしい様子を見せるのだが何故だろう。
 前に考えても分からなかったから今は気にしないようにしているんだけど。
「かがみ」
「こなた」
 お互いの名を呼び合って、温かい何かを得る。
「キス、して」
 先程は疑問形で言った私だったが今度は自分の宣言通り、遠慮は完全に排除した。
 かがみは頷いて、壮大な夕日を背景に私の唇を奪った。
 舌で余す事なく唇を舐め回され、続いて口を押し開かれ口内に侵入してきたかがみの舌に歯茎を存分に堪能される。
「んっ……」
 相変わらず私は受身だったが、そんな事気にならないほどにかがみは私を求めてくる。私はそれが嬉しかったし何より自分も良い気分だった。
 舌と舌が絡み合うと弱い電流が走った。
「あふっ……」
 かがみも同様の現象が起きたらしく声を上げた。
 濃厚なキスをもっと続けて欲しかったが息継ぎの為か、かがみは触れ合わせていた唇を離す。
 唾液で生成された、透明で光を反射する糸が未練がましく私とかがみを繋いでいた。
278交錯する気持ち(3/6):2008/01/05(土) 23:17:11 ID:MB0yzIp6
「かがみ、今日帰り家に来て欲しいんだけど」
 二人きりの散歩や会話を楽しんだ後、私は今朝から話そうと思っていた事をかがみに言った。
「良いわよ」
 かがみは二つ返事で了承してくれた。
「ゆたかちゃんに話すのね」
 私の言葉に少し重さを感じたのか、かがみも少し神妙な雰囲気を纏った。隠す意味も理由もないから静かに頷いてかがみの言葉を肯定する。
 今や家族も同然の従姉妹のゆーちゃん。お父さんに打ち明けた時、ゆーちゃんは不在だったから私達の関係を知らないだろう。他の人みたく薄々気づいているのかもしれないけど。
「きっと大丈夫よ」
 まだ不安が残る私の胸中を察したのか、かがみが私の頭に優しく手を置いた。
 流れ込むように、私の身体に温かいかがみの気持ちが溢れる。
「さ、そろそろ帰りましょ」
 かがみが私に手を差し伸べた。
「うん、そうだねっ」
 私はその夕焼けに映える綺麗な手を精一杯の笑顔で握ると、勢い良く駆け出した。
 駅まで一度も振り返らなかったのは、熱くなり始めた目頭を知られたくなかったから。

 冬にもなると太陽が仕事を終えるのも大分早くなる。時刻は五時を回ったぐらいだろうが空には漆黒の色が滲み出ていた。
「結構遅くなっちゃったね」
 暗くなった空を見上げる私。
「ちょっといちゃつきすぎちゃったかしらね」
 街道沿いの明かりに照らされたかがみが楽しそうに言った。からかうような口調で私の反応を期待しているのかもしれない。
 しかし私も人間、学習する生き物だ。そう何度も同じ手段に同じ反応を返すわけではない。
「私はもっといちゃつきたかったけど」
 思いっきり口元を緩めてそう返す。
「続きはベッドの上で良いでしょ?」
 しかしかがみは表情を変える事なく、にやけたまま答えた。脳内に自室のベッドで身体を重ね合わせる、私達の姿が瞬く間に思い浮かぶ。
「なっ、ななななな……」
 特別な思い入れがあるわけでもないのに一文字をひたすらに繰り返す私。顔が真っ赤になっているのが手に取るように分かる。
「あははっ」
 かがみが含み笑いのような顔を破顔させた。
「むぅ〜……かがみの意地悪ぅ!ツンエロ!」
 おちょくられている事を再認識すると無性に腹が立ち、私は腕を振り上げた。勿論本気で怒っているのではない事をかがみも分かっているのだろう、謝罪などは一切なしで楽しそうに笑っている。
 私もそれにつられて笑う。
「ほら、いつまでも拗ねてないで行くわよ」
 そう言って私を先導するかがみだったが―――
 今度は手を差し出してはくれなかった。
 了解していた事ではあるのだが、どうしても数時間前のかがみの姿と被ってしまい、寂しさを覚えてしまう。
「ま、仕方ないよね」
 しかし、ここで私が駄々を捏ねてもかがみを困らせるだけだ。
 誰にも聞こえないように呟いて、孤独感を胸の奥へと閉じ込めると私は歩みを速めた。
「もう少しの辛抱だよ」
「ん?何か言った?」
 自分にだけ聞かせるつもりだった声がかがみにも届いたらしい。何を言ったかまでは伝わっていないようだったが。
 かがみの手が何かを求めているように宙を彷徨っている様子を見て―――
「ううん、何でもないっ」
 私の心は快晴となった。
279交錯する気持ち(4/6):2008/01/05(土) 23:17:41 ID:MB0yzIp6
「たっだいまー」
「お邪魔します」
 来客者を告げる音に続いて私の声、そして礼儀正しいかがみの声が我家の玄関に響く。
 時刻を確認すると既に七時前、通りでお腹が煩いわけだ。
「かがみ、ご飯食べてく?」
「良いの?じゃあご馳走になろうかしら」
 人間の三大欲求には逆らえない、というか逆らうつもりはないのだろうかがみは嬉しそうに微笑んだ。それが疲れている私を台所へと向かわせる原動力となる。
「おー、二人ともお帰り」
「お邪魔してます」
 居間に入るとパソコンの画面と睨めっこをしていたお父さんと目が合う。かがみが頭を下げるとお父さんは笑顔で応えた。
「ただいま、すぐ夕飯作るからね」
 前半はお父さんに、後半は二人に向かって言った。返事を確認してから私は冷蔵庫を開く。中の食材と相談した結果、今日の夕食はハンバーグとポテトサラダに決定した。

「あ、お姉ちゃんお帰りー」
 食事の仕度が完了したのを見計らったかのように、ゆーちゃんが自分の部屋から居間へとやってきた。
「おおゆーちゃん、ただいま」
 飛び込んできた明るい声とその持ち主に応えながら、私は麦茶を冷蔵庫から取り出す。それを机の上に運び、今度はコップを出すべく食器棚へと舞い戻る。
「あ、柊先輩いらしてたんですね」
「こんばんは、お邪魔してるわ」
 恐らく家の方に連絡を入れていたのだろう、携帯を操作していたかがみがゆーちゃんと言葉を交わす。
 これから重大な事をしなければならないのだが腹が減っては戦は出来ぬ、その前に腹ごしらえだ。私は両手に人数分のガラスコップを持ち、出来立てのハンバーグがメインとなって彩る机へと向かった。
「さ、ご飯にしよう」
 私の言葉を聞いてかどうかは分からないが、お父さんもパソコンを閉じてこちらへのそのそと歩いてきた。
「いただきまーす」
 リビングに四人の声が重なって響いた。
 それからは楽しい会話が弾み、のどかな感じで夕食の時は過ぎ去っていった。
「ご馳走様」
 そう言って一番に席を立ったのはお父さんだった。
「いつになく早いね」
「ちょっと原稿が遅れ気味でな、本当はもっとゆっくりしたいんだが……」
 お父さんの返答の後半に詰まった真意は分からない振りをする。
「お皿は私が下げといてあげるよ」
「すまんな」
 お父さんはそう言い残して歩き出した。自分の部屋に篭って集中するのだろう、
ノートパソコンを抱えて居間を出て行く。
「おじさん、忙しそうだね」
 ゆーちゃんが手を止めて口を開いた。
「いつのまにかギャルゲやってたなんて事にならなきゃいいんだけど」
 何の心配をしているんだとでも言うようなかがみの目線が私に向けられたが何となくスルー。気分転換とか言い訳して本当にやりかねないんだって。
 残った私達三人は楽しくお喋りしながら食事を終えた。普段なら洗い物を済ませるところだけど今日は大事な用事がある。
「ゆーちゃん、実はゆーちゃんに言っておかなきゃいけない事があるんだ」
「な、何?」
 珍しく真剣な表情を見せたからか、同時にかがみにも目を向けられたからか。
 ゆーちゃんはちょっと怯えた様子で聞き返してきた。
 私は大きく息を吸い込む。
「実は私達、付き合ってるの」
280交錯する気持ち(5/6):2008/01/05(土) 23:18:12 ID:MB0yzIp6
 話を聞き終えたゆーちゃんは他の人達とは違う反応を見せていた。
 何も言わずに、目には見えない空気しかない空間をただぼんやりと眺めていた。放心状態といった語がまさに適切だろう。
 それだけ衝撃が大きいのだろうか。
 私は居たたまれない気持ちになって口を開く。
「ごめん」
 まず出てきたのは謝罪の言葉。しかしそれを聞いてもゆーちゃんは微動だにしなかった。
「ゆーちゃんを騙すつもりはなかったんだよ。でも」
「やっぱりそうだったんだね」
 ずっと無言で私の話を聞いていたゆーちゃんが突然私の言葉を遮った。
「やっぱりって……分かってたの?」
 かがみの問い掛けにゆーちゃんは静かに頷く。
 確かに付き合い始めてからかがみの事を話す機会が多くなったりはしたが、私達は相当分かりやすい性格をしているらしい。
「私が気付いたのは一ヶ月程前かな」
 不意にゆーちゃんが語り始めた。そんな早い内に気付いていたのかと驚きと同時に、私の事を良く見ているなと関心の気持ちも抱く。
「お姉ちゃん達はその頃から付き合ってたの?」
「うん」
「じゃあ何でもっと早く教えてくれなかったの?」
「それは……」
 ゆーちゃんの問い詰めに私はすぐに返事をする事が出来なかった。上手く説明出来そうにないと思ったのもそうだが、話せば話すほど、底の見えない沼に足を踏み入れるように言葉の真実性を失ってしまう気がした。
 かがみも同じ気持ちらしく、何も言わずにスカートを強く握り締めている。
「早く話してくれれば、もしかしたら二人を素直に祝福出来たかもしれないのに」
「…………」
 ゆーちゃんの言葉が正しいからだろうか、私達は咄嗟に言い返す事は出来ずずっと押し黙っていた。
「遅かったの。何もかも」
 呟くようにゆーちゃんが胸中を漏らす。
「私が真実を知るのも」
 ゆーちゃんが私を潤んだ目で見てきた。
 それで私はようやく―――
「私が想いを伝えるのも」
 ゆーちゃんが私を祝福出来ない理由を悟った。
281交錯する気持ち(6/6):2008/01/05(土) 23:18:42 ID:MB0yzIp6
 ゆーちゃんが私に好意を抱いている。これは慢心でも何でもない、今間接的に告げられた間違いない事実。
 告白するのがこんなに遅くなければ、ゆーちゃんは苦しまないで済んだかもしれない。私の決断の遅さがゆーちゃんの心を締め付けてしまった。
 最も身近な家族の一員であるゆーちゃんには理解して貰いたかったのに。
 もうそれは叶わないのだろうか。
 ―――心に鬱積して膨れ上がる不安が。
「もっと早くから確信してたら諦めれたかもしれない」
 ―――それに気づいてやれなかった不甲斐なさが。
「今更膨れ上がった気持ちを消すなんて出来ないよ」
 ―――早く伝えれば良かったという後悔が。
「どうして……ずっと隠してたの?」
 全てが自責の念となり、私に襲い掛かる。
 私達はゆーちゃんの質問に答える事は出来なかった。食事時の賑やかなリビングは嘘のようにその姿を消して、代わりに重苦しい空気がいつまでも居座っている。
 かなりの時間が経っただろうが、私達は何一つ分かり合えないままだった。悪戯に過ぎ行く時を刻む時計の音が酷く耳障りだった。
「いい加減、お風呂入らないと……」
 ゆーちゃんがおもむろに立ち上がる。
「ゆーちゃんっ、待ってよ!」
「ごめんお姉ちゃん」
 虚ろな表情のままゆーちゃんが呟いた。涙を溜めて揺らめく瞳はまるで、不安定な情緒を示すようだった。
「……少し時間が欲しいの」
 確かにゆーちゃんの言う通り、今はとても会話を成立させられる状況ではない。ここは時間をおいてまた話をした方が良いのかもしれない。
「……分かった」
 そう思った私は弱く頷いた。
「じゃあ私、部屋に……」
 瞬間、ゆーちゃんの身体が揺らいだ。
「ゆーちゃんっ!」
 私は急いでゆーちゃんの身体を抱き留めた。かがみも慌てて駆け寄ってくる。
 熱があるのだろうゆーちゃんの顔は火照っていて、見るからに気だるそうだった。
「ごめんね……」
 ゆーちゃんは力なく言った後、余力を振り絞るように体勢を元に戻した。
「ゆたかちゃん……」
 かがみが心配そうな顔になるが、ゆーちゃんは目線を合わせない。
「大丈夫……?」
「うん……」
 素っ気なく答えて、ゆーちゃんは覚束ない足取りで居間を後にした。
 私達を拒絶するかのような後姿を、私達はただ眺める事しか出来なかった。
2826-748:2008/01/05(土) 23:21:11 ID:MB0yzIp6
言い忘れましたがこなた視点です、すみません

今回はちょっと砂糖の量を減らしてみました
何でこうも自分は片想いが好きなのか……
次回に続きます
283名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 23:24:31 ID:GTP/mfBd
何という、こなかが&かがこなラッシュ!
全てのSS&職人さんににGJを!
284名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 23:25:01 ID:nbmrxvnK
おちゅ
285名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 23:34:39 ID:bww4K1GK
だからほらぁ、かがみんてば、
そんなにしがみつかなくても、離れないってばもー
最近不安要素たっぷりの作品ラッシュなもんだから
うさちゃん発動中のかがみん萌え(=ω=.)

それはそうとして>>282GJなのですよ。
あの激甘展開から一変、揺れ動きシリアスへ・・・
どうなってゆくのか恋の行方!
二人はこれを乗り越えてゆくのか!

だから腕の力強いってかがみん(=ω=.;)
286名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 00:00:36 ID:mvkySgGD
>>282
GJ!ここでまさかのゆーちゃん…
ううむ・・・確かにもっと早ければ…でもいえなかったわけで・・・
あぁもう!次を待つことにします!
287名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 00:16:10 ID:4OVmFwbP
確かに最近はこなゆたが多いですなー
寂しんぼかがみんもいいけど(=ω=.)
28826−598:2008/01/06(日) 00:53:24 ID:QxXlKHK8
どうも、26-598です。
良作の後なので少し躊躇いましたが、こなかがものを投下します。
かがみが壊れます。
289こなたの看病:2008/01/06(日) 00:54:08 ID:QxXlKHK8
「こなちゃーん、遅れてごめんねー」
「あっ、つかさ!遅かったから心配しちゃったよ〜」
学校は冬休みに入り、私たちは早速買い物に出かけることになっていた。
でも、珍しく時間通りに待ち合わせ場所に行ってみると、つかさもかがみも来ていなかった。
・・・携帯を持たない私は、それから約30分放置プレイの気分を味わった。
うう、待つことの辛さを初めて知ったよ・・・。

「そういえば、つかさは何で遅れたの?かがみは来てないみたいだし」
「うーん、それがね、お姉ちゃんが出かける直前に倒れちゃって・・・」
「ええっ、かがみが!?な、何で!?」
驚いてつかさに尋ねる。
私の嫁であるかがみの身に何かあったら、私はこれから先、どうやって生きていけばいいの!?

「実はお姉ちゃんね、今朝からずっと熱があったみたいなの。でも、こなちゃんと久しぶりに遊べるからって無理してたみたいなの」
「そうなんだ・・・」
最近テストとかで忙しかったからなあ・・・。
実際私が早く来たのも、かがみとつかさと思いっきり遊べるのが楽しみだったからだからね。

「でね、今日家に誰もいないから、私がお姉ちゃんの看病をしないといけなくて・・・」
申し訳なさそうに言うつかさ。
でも、私が携帯を持っていたらわざわざここまで来なくても伝えることは出来ただろう。
あー、今度からは携帯も持ち歩かなくちゃねー・・・。
・・・よしっ!

「つかさ、私も行くよ。かがみが心配だし」
「えっ、本当?よかった〜、お姉ちゃんも喜ぶよ〜」
こうして私はつかさと共にかがみの看病をすることになった。
とんでもない悲劇が私を襲うとも知らずに・・・。
290こなたの看病:2008/01/06(日) 00:54:51 ID:QxXlKHK8
「おじゃましま〜す。・・・ってあれ?つかさ、家族の人はどうしたの?」
柊家に行ってみると、いつも見かけていたおじさんやかがみそっくりのおばさんがいなかった。
「うん、みんな朝から出かけちゃって・・・。私一人って結構不安だったんだ〜」
つかさが私に笑顔を向ける。
やっぱりつかさもかなりの萌えキャラだよね〜。
かがみんがいなかったら、襲い掛かって食べちゃうとこだよ〜。
「さて、それじゃあかがみんの様子でも見てきましょうかね♪」

「すう、すう・・・」
ぐっすり眠っているかがみの顔を覗き込む。
「う、んん・・・」
寝苦しいのか、少し寝返りを打ったかがみの顔は、熱のせいかうっすらと赤く染まっていた。
汗もかいているようで、髪が少し顔に張り付いている。
・・・やばい。物凄く可愛い。

「すう、すう・・・」
「・・・・・」
しばらくの間かがみを見続ける私。
うう、もう我慢できない!
「ん・・・こなた?」
かがみに触れようと手を伸ばしたところで、かがみが突然目を覚ました。

「うわっ!?え、えーと、いや〜、お見舞いに来たんだけど、また良い寝顔を見せて貰ったよ〜」
しどろもどろになりながらも、何とかごまかすことに成功。
かがみも、
「ま、またアンタは・・・!からかいに来たんなら帰れ!」
と、顔を真っ赤にしながらいつも通りのセリフをくれた。

「ダメだよ〜お姉ちゃん。こなちゃんはお姉ちゃんを心配して来てくれたんだよ?」
「えっ?こ、こなたが私のことを・・・?」
私の後ろからひょっこり顔を出してかがみをたしなめるつかさ・・・いたんだ。
うう、ずっとかがみのこと見つめてたの、気づかれちゃったかな・・・?
そう思いながらも、とりあえず私はかがみに声をかけることにした。

「そうだよ〜かがみん。私の嫁に何かあったら大変だからね♪しっかり看病してあげるから、私に任せたまへ〜」
「い、いつ私がアンタの嫁になったのよ!?」
「気にしない気にしない♪とりあえずかがみは寝てていいよ」
いつもはもっとかがみをからかうところだけど、熱が上がっちゃいけないからね。
「それじゃあつかさ、かがみに昼ごはんを作ってあげようか」
「うん、そうだね!おかゆとかでいいかな?」
こうして私とつかさでかがみのお昼ご飯をつくり、食べさせてあげた。
ここまでは良かったんだ、ここまでは・・・。
291こなたの看病:2008/01/06(日) 00:55:42 ID:QxXlKHK8
「あれ?つかさー、飲み物無くなってるよ?かがみ全部飲んじゃったみたい」
「えー、そうなの?冷蔵庫にも何もないし・・・。買ってこないといけないね〜」
「あ、じゃあ私が行って来るよ。つかさはかがみに薬飲ませてあげてよ、熱下げるやつとか」
「うん、わかった〜」
本当は私がかがみに飲ませてあげたいんだけど、そこら辺はつかさに任せることにした。
ちょっと残念だけど、あの2人は姉妹だからね〜。

「ありがとうございました〜」
コンビニを出て、かがみの家に戻る。
かがみんのためにアイスやプリンも買ったので少し袋が重い。
ちょっと時間かかっちゃったかな?

「ただいま〜。つかさ〜、買って来たよ〜・・・ってあれ?」
台所には誰もいなかった。つかさも、当然かがみも。
う〜ん、かがみの部屋かな?
そう思ってかがみの部屋へ向かう。
何か騒がしい気がするんだけど・・・。

勘違いじゃありませんでした。
「あはははははっ!見ろ、東方は赤く萌えている!」
「や、やめてよお姉ちゃ〜ん、近所迷惑だよ〜」
「つかさ、私は空を飛べる気がするわ・・・ううん、きっと飛べる!いざ行かん、イスカンダルへ!」
「む、無理だよ〜」
・・・かがみのキャラの壊れかたが半端じゃない。まさにカオス。
一体どうしたらこんなことに!?
292こなたの看病:2008/01/06(日) 00:57:34 ID:QxXlKHK8
「こ、こなちゃ〜ん、く、薬を飲んだらお姉ちゃんが変に・・・ひゃうううっ」
「あはははははっ」
「薬ってまさか・・・これ?」
私が拾い上げたそれはまさしく・・・
「タ、タミ○ル!?しかも使用期限切れてるし!」
な、なんでこんなものが・・・。
ってゆーかつかさ、こんなとこで自分の萌え要素をアピールしなくても・・・。
かがみもこれであそこまで壊れるのはおかしくない?

「あ、こなただ〜〜〜♪」
「うひゃああああっ!?」
色々考えてるうちにかがみに襲い掛かられた。
つかさはいつの間にか逃げ出している。
くうっ、こんな時だけ素早いなんて・・・!

「んんっ、こなた可愛い・・・」
「ちょ、ちょっとかがみ・・・。とにかく寝よう、ねっ!?」
「こ、こなた・・・。全くもう、気が早いんだから♪」
そう言うと同時にかがみのベッドに引きずり込まれる私。
「ち、違うよ!そういう意味じゃ・・・ふわあっ!?」
「こなたったら凄く可愛い声出すのね、可愛い・・・」

「んっ、ふう・・・ん、あはあっ!そ、そこはダメ・・・んひゃうっ!」
「こなた、こなたあ・・・」
体のあちこちを弄られ、私は声を抑えることが出来ない。
エロゲの達人である私がここまで翻弄されるなん、てえ・・・。
「んじゃ、こなたも準備オッケーみたいだし、いっただっきまーす♪」
「や、やめてかがみ・・・うにゃああああああああああああああああああ!?つ、つかさ、あんっ・・・た、助けて〜〜〜!」

こうして私はかがみが正気に戻るまで攻められ続けた。
・・・つかさは私の声が聞こえてたはずなのに助けてくれなかった。
うう、覚えてろよ〜・・・。
かがみに抱かれたまま、私はつかさへの復讐を誓うのであった。
29326−598:2008/01/06(日) 01:01:41 ID:QxXlKHK8
以上です。
誤字・脱字・不自然な点があるとは思いますが、ご容赦を。
それにしても皆さん本当に良作ばかりですね・・・。
294名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 01:12:46 ID:5Y5g7IOj
>>293GJです。
しかしかがみにタミ降るという発想はなかった。面白い。
そして最後にこなたがやられる…最高です。
295名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 01:27:41 ID:3Uz3LXL7
今度は壊れかがみブームなのか?
296名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 01:27:54 ID:xXYl/5IW
こら!かがみ!
今までの鬱屈をここで・・・・んくっ・・・はらすんじゃ・・・ふわあっ!
タミフル・・・解毒剤・・・んはあっ・・・ないのおっ!

>>293GJアッーーー!!
297名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 01:32:19 ID:bvUiCk9o
>>293
GJ!です
そこでタミフルという発想には気付かなかったです。面白かったです。
………ところで、287の書き込みは「かがこな」が正しいのでは?

>>245
遅レスですがGJ!!素晴らしい!!!!
ヤンデレ好きの俺のストライクゾーンど真ん中ですよ!!!
ホントに保管されないなんて勿体無い………
………ところで、この組み合わせだと厳密には「かがみ→こなた」では?


細かい突っ込みすまん。
しかしまとめWikiの中の人も大変な気がするので、カプはわかりやすく書いた方がいいのと思う。
ま、チラ裏なんでスルーして下さってもいいのですが。。。
298名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 01:35:43 ID:0ZELzoq6
専ブラでスレチェックしたらめちゃめちゃ時間かかったんで、もしやと思ったら……
ヤンデレあり純愛あり、えらい神作ラッシュに!
てか、レベル高すぎっすw

久しぶりにSS書き始めたけど、こりゃ気合入れて練らないと申し訳が立たないなあ。


>>293
BGMの替え歌思い出したw
♪タミフル飲んだら空飛べる〜♪
2997-896:2008/01/06(日) 01:52:17 ID:MLrH31nG
>>293
GJですw
まさかタミフルをもってくるとは
予想外デス。


さて、こなかがだらけにまみれてちょっと投下してみたいと思います。
といってもSSではないのですが。

ちょっとした出来心で書き始めたSSがあるのですが
このカプって需要あるんでしょうかね。
取り敢えず絵だけ置いていきます。

ttp://momoiro.s4.dxbeat.com/up/img/momoiro03812.jpg

ちなみに自分の中では5本指に入るくらい好きなカプです。
元気で小柄な先輩と無口で長身の後輩って萌えませんか?

そうですか俺だけですか(´・ω・`)

……あれ?この2人取っちゃったらゆたかがヤンデr(ry
300名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 01:59:59 ID:xXYl/5IW
キタ━━(゚Д(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━!!!

この組み合わせはありそうでなかった!!

>……あれ?この2人取っちゃったらゆたかがヤンデr(ry
そしてかがみと一緒に(ry
301名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:18:58 ID:0ZELzoq6
こなたは高性能ミサイルみたいなもんで、マルチロックオンが可能なんだよ。
つまりハーレム状たi(ズドン!(ガガッ、ピー
302名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:20:30 ID:jdH8oIqH
ならこのところミッソーHITしまくりだね
303名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:27:06 ID:xXYl/5IW
そしてこな☆フェチへ







コナーク「身動きが取れない、再び潜伏モードへ移行する」
304名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:29:33 ID:5grrrHwP
>>299
俺の脳内で革命が起こった
かなり魅力的なカプだが、接点が少ないために誰もやれずにいたのだろうか
取り敢えず俺は今から全裸待機へと洒落込む。

っとそのまえに7-896氏フォルダに絵をお持ち帰りしないと……
ンマンマ
305名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:46:36 ID:ZDTu4dke
>>299
これは我慢の限界突破するw
誰であろうとも!GJ!
そして保存保存と。
あー、カワイイなぁ・・
306名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:51:04 ID:TH/+AAGm
>>229
http://sakura02.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1190829730/666
を見て以来どなたかがどこかでおやりにならないかワクワクしてました
是非!
307名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 03:24:08 ID:u7T/O7ME
>>306
>>229 は >>299 の安価ミス
308名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 03:43:41 ID:VLimD6ZQ
そして、みな×こなブームへ・・・









ゆたか「ミナミチャンハワタシノモノミナミチャンハワタシノモノ・・・」
かがみ「コナタ、ワタシトイウモノガアリナガラ・・・」

お、お二人ともその冷気はなんですかアッーーーー!
309名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 04:13:26 ID:vhzcZsy7
>>550
GJ
310名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 04:15:03 ID:vhzcZsy7
誤爆しました
311名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 04:19:46 ID:jdH8oIqH
>>550に期待
312名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 04:23:20 ID:lzxqkUB2
突然作品が投下されまくって、全部読むのに2時間半掛かった
みなさんGJです。


さて、緊急事態が発生。
今書いているSSのカップリングが複雑になり過ぎて、ただいま大混乱orz
313久留里:2008/01/06(日) 05:29:13 ID:lzxqkUB2
久留里です。
『カケラ』の続編をお送りします。

>>151-156 の続き。
・つかさ視点
・非エロ
・3レスほど使用
・タイムリープもの
・オリジナル設定が多いのは仕様です
・オリジナルキャラが登場します
・物語の性格上、鉄分が濃いです
314久留里:2008/01/06(日) 05:29:50 ID:lzxqkUB2
3.

「……………ここ、どこ?」

こなちゃん達と秋葉原へお出掛けした帰りの電車で、私は意識を失った。
そして目が覚めると、そこは星輝く一面の夜空が拡がっていた。

つまり、私は『何か』の上で眠っていたことになる。
「寒いよぅ」

今、私が何処に居るかはすぐに分かった。
駅のホームだった。
私が寝ていたのはホームに二脚だけ置かれてある木製のベンチだった。

屋根は無く、頼りない水銀灯がその周りをぽつんと照らしているだけ。
電気の無い所は真っ暗で危うく線路に落ちそうになってしまった。
ホームから少し離れたところにコンクリートで出来た駅舎がある。
どうやら田舎の無人駅のようで、待合室と思われる場所以外は電気が消えていた。

そして、私は驚いた。
「な、何でこんな所にいるの!!?」
ホームにはベンチの他に、駅名の書かれた看板が掲げられてあった。
えっと、「駅名標」って言うのかな?
鷲宮駅にも残っているけれど、白地に「T」字型の線と文字が書かれただけの非常にシンプルなやつで、
そこには
『きりしまにしぐち』
『鹿児島県姶良郡牧園町』
と書かれていた。

「どうしよう、どうやったら帰れるか、分からないよう」
こんな何も無い所だと、携帯電話も使えない。
実際、私の携帯電話は「圏外」と表示されていた。

私以外に人は居ない。
こなちゃんも居なければ、『二人のお姉ちゃん』も居ない。
お父さんもお母さんも居ない。
クラスの他のお友達も居ない。
それどころか、全然関係の無い人も居ない。

「どうしよう、どうしよう、
 私……私………このまま……帰れなくなったら……………うっ……うっ………」
思わず私は駅のホームで泣いてしまった。
315カケラ 3-2/3:2008/01/06(日) 05:30:17 ID:lzxqkUB2
その時だった。

『カンカンカンカン……』

聞き覚えのある警鐘音がホームの外れから聞こえてきた。
踏切だ。
しばらくすると、向こうから眩しい一筋の光が見えてきた。
電車だ。電車が来たんだ。

でも、それは『電車』ではなかった。
その『電車』、見た目は電車だけど、いつも通学で乗っているようなやつとは違って、
モータの音はしない。その代わり、バスの様に豪快なエンジンを「ガラガラガラ」と響かせている。
その電車だかバスだか分からない様な「列車」が、「キーッ」と甲高いブレーキ音を鳴らして
ゆっくりと、ゆっくりと到着した。

エンジン音がやかましい列車をしばらく見ていると、車掌さんの声が聞こえた。
「お客さん、乗るの?」

幸いバッグもお財布もある。
私は、その『隼人行き』と書かれた普通列車に乗ることにした。



車内はとても寒かった。
と言っても地元の鷲宮の様に北風が吹いている訳では無い。
列車はたったの1両で、座席は4人ずつに分けられたボックス席だった。
そう、(東武)日光線を走ってる行楽電車みたいな感じだった。
座席は現代人の体格を考えれば明らかに狭い。
車内が混んでいたら大変だ。

天井はがらんとしていて、ゆきちゃんの地元を走っている電車の様に扇風機がたくさん並んでいる。
蛍光灯の数が少ないのか、それとも天井が高いのか、はたまた車内の色のせいなのか、薄暗くて寒々しい。
でも、足下から来る熱気から、どうやら暖房は付いている様だ。
「でも、なんでこんなトコに付いてるの?」
私はボックス席の窓側、足下にある熱を持ったステンレスの箱を靴で突きながら思った。

線路が悪いのか、列車がボロいのか、列車はとにかく揺れる。
トンネルに入ると、ただでさえやかましいエンジン音が更に響いて、これだと人と会話をするのも大変だ。
窓は全部閉まっているけれど、立て付けが悪いのか、排気ガスが車内に入り込んできて臭い。

ちなみに、乗客は私の他にも一人乗っていた。
316カケラ 3-3/3:2008/01/06(日) 05:30:44 ID:lzxqkUB2
「次は〜終点、隼人〜隼人〜」
車掌さんが車内を歩きながらアナウンスをする。
駅を出る度に、車掌さんは車内を往復しながらアナウンスをする。
へぇ、田舎の列車って、こうやって車掌さんが歩いてアナウンスしてるんだ。

これが勘違いだということには、この時、全く気付いていなかった。

私が車掌さんが運転席に戻る様子を観察していると、もう一人の乗客が私の下へやって来た。
その子は、私よりも年下の、女の子だった。
白いコートに、ふわふわの「ボンボン」が付いたピンクと白の縞模様のマフラーが可愛らしい。
私が軽く会釈をすると、女の子はいきなり私にこう言った。

「あなた、まだ気付いていないようね」

何に?
女の子が突拍子も無いことを言い出したので、私は驚いた。
「私が、鹿児島にいること?」
「それだけじゃないわ」
どうでもいいけど、この女の子、言葉がこっち(埼玉)の訛りで親近感が沸く。
「…………気付いていないんなら、仕方ないわ。
 この列車が隼人駅に着いたら西鹿児島に向かいなさい」
「え?!」
女の子が何を言いたいのかがさっぱり分からない。
「これであなたが気付かなかったら、多分、『元いた所へ』帰れなくなるわ?」
「あ……で、でも…」
「何よ、早く言いなさいよ!」
この子、『お姉ちゃん』みたい……。
「わ、私……こっちのこと、良く…分からなくて………」
あたふたしていると、女の子は怒った様に、でも、丁寧にこう言ってくれた。
「仕方ないわね! 私が案内してあげるわ。
 ちょうど私も『そっち』に帰るつもりだったし」
「貴方は鹿児島に住んでるの?」
「………」
しばらくの間。
「………まぁ、そんなところよ」
あやふやな答え。どうやら私に知られたくはないようなので、私はこれ以上訊くことはやめにした。
『まもなく、終点、隼人、隼人です。
 日豊線、加治木、姶良、鹿児島方面、西鹿児島行きは────』
「ほら、もうすぐ着くわよ」
「う、うん。あ、ちょっと待って」

一両編成の気動車は、隼人駅のホームに、ゆっくりと停車した。
317カケラ 3 by 久留里:2008/01/06(日) 05:34:27 ID:lzxqkUB2
以上でございます。

さて、3人をどうやって動かそうか? (列車で移動するという意味で)
318名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 05:43:22 ID:ZDTu4dke
>>317
おぉ、3人目のつかさですね。
つかさが言ってた二人のお姉ちゃんと、
車内で会った子は誰だ・・・?
つかさが平成から来たことを知ってるみたいだけど・・・。
319名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 09:24:34 ID:nn7YDQyd
>>317
鉄にはビタイチ興味ないけどこれは興味深く読める
三人の反応の違いが面白い
つかさにはハードル高すぎるだろと思ってたけど、なるほどオプションつけてきましたか
続き期待!



>>300-308
みな×こなは、確か一本だけあったはず・・・
と思って調べてみたら、発見
5スレ目、「年の差FRIEND」
320名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 10:19:00 ID:w3p00UXb
>>317
地元鹿児島ktkr
続き楽しみにしてます
321名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 11:20:07 ID:lCVbYNNI
322名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 13:12:23 ID:5grrrHwP
>>319
あれは確かにストーリー上みなみとこなたではあるけれど
中身はこな×かがとゆた×みなで、こなたとみなみは友達という設定だから
今回言われてるみな×こなとは違うと思う。
たぶん恋人という設定(なのか?)のみな×こなはこのスレでも初めてだろうね
323名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 14:55:08 ID:rmE9rWdk
>>299
今までのイラストにない何かを感じて…じ〜〜〜〜…っとよく見ると

身長だけではなく、こなたの顔の小ささとかとか腕の細さとか、
体のパーツそれぞれも、かなりはっきり差をつけているんからだと気付いた

このこなたの小ささはみなみでなくともプルプルだ
324名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 15:12:55 ID:0AsfqHZz
はじめまして。つかさ×みゆき(みゆき×つかさ)シンパな者です。
他職人さんの良作傑作数多い中ではありますが
作品を投下させていただきたいと思います。

・みゆき×つかさ
・前中後編予定
・7〜8レス拝借
・ノーマル

ではいきます
325みゆき×つかさ・前編1:2008/01/06(日) 15:15:01 ID:0AsfqHZz
一度知りたいと思ったら、気が済むまで何度でも調べて見るのが私の性格でした。
でも今はどうしても知りたいのに、どれだけ調べてもわからない事があるのです。
いえ、調べる前に調べる事自体難しいことなんですけれど……。
あまりにも難しいその謎は、どこかに答えが書いてあるわけでも、誰かに聞いてもわかるわけでもなく
もしかすると、誰にも永遠に答えが出せないままなのかもしれません。
私が知りたい謎。それは……お恥ずかしながら私の想い人の、柊つかささんのすべてなんです。

******

「私達、付き合うことになったんだ」
顔を真っ赤にして私達から目をそらすかがみさんの横で、少し含みを持ったような笑顔の泉さんが
その言葉を口にしたとき、私達のいつもの楽しい昼食はわずかな間だけ時間を止めました。
「えと……その……え?」
小さなお口に運びかけた箸を止めたまま、つかささんは頭の上にクエスチョンマークを浮かべています。
私もまた、かがみさんと泉さんの顔を見比べるように視線を運びました。
「泉さんと、かがみさんがですか……?」
「そうだよ〜。実際は一月ぐらい前から付き合ってたんだけどね。だからこれからそういうことで、よろしくね!」
「ちょ、ちょっとこなた! そういうことはもっとデリケートなんだから……」
「どうして?」
「だっ、だって、私達は女の子同士なんだから、つかさやみゆきに、その……」
「変だと思われるのが怖い?」
「だって、ほら、ね……?」
かがみさんが不安そうな顔でつかささんと私を見ています。
いわゆる世間とは違う、道ならぬ恋に走る事への否定、嫌悪、私達からそういった言葉や感情を
ぶつけられることへの恐怖がそうさせたのでしょう。泉さんはそんなところを微塵も感じさせませんが。
確かにいきなりの発表で驚きはしましたけれど、私は二人の関係を否定しようだなんて全く思いません。
それに、かがみさんの不安は私にも理解できているつもり……なのですから。
身体を震えさせて、私とつかささんの反応を待つかがみさん。私は最適な言葉を捜すために頭を働かせました。
早く優しい言葉をかけて、二人の新しい関係を祝福したい。そして不安を取り除いてあげたい。
泉さんは笑顔を消し、凛とした表情でこちらを見ています。きっとその手はかがみさんの手を握って……。
「お……」
「お姉ちゃん、こなちゃん、おめでとうっ!!」
『お二人とも、おめでとうございます』ととびきりの笑顔で口にしようとしたのですが、
そんな私の言葉を遮るように、つかささんは満面の笑みで答えました。
ああ……なんていい表情。
「つ、つかさ? 私達のこと、認めてくれるの? だって、女同士だよ? 気持ち悪いとか思ったりしないの?」
「もちろんだよ。たしかにちょっとびっくりしちゃったけど、お姉ちゃんとこなちゃんは好きあってるんでしょ?
それなら私は嬉しいよ。私は二人とも大好きだし、そんな二人が幸せなんだから……認めないなんてことないよ!」
326みゆき×つかさ・前編1:2008/01/06(日) 15:16:27 ID:0AsfqHZz
「つかさ……つかさ、ありがとう」
涙目になっているかがみさんです。泉さんはうんうんと納得したような表情でいます。
ね、ゆきちゃん?と次はつかささんがこちらの反応を伺い出しました。私はもちろん心からの笑みで
「ええ、もちろんです。お二人ともおめでとうございます。 心から応援させていただきますね」
そう言うと、かがみさんは涙を一粒、ぽろりと零しました。
泉さんが意地悪そうな顔でかがみさんを泣き顔を覗くと、かがみさんは恥ずかしそうに涙を拭います。
お二人とも、本当にお幸せに……その感情に全くの嘘はありません。ただ、私が本当に嬉しいと思ったのは
つかささんが女の子同士の恋愛に否定的でなかったという事実を知る事ができたからなのです。
するほうになるとまた違うのかもしれませんが、私の中でまたひとつ、新たなつかささんの知識が増えました。
それは私に一筋の希望を見出させる、とても価値のある情報でした。
「やっぱり二人とも認めてくれると思ってたよ」
泉さんは得意げな顔をして、再びチョココロネを口にしはじめました。
「つかさはもう、当然のように認めてくれると踏んでいたし、みゆきさんは……ねぇ?」
そういうと、泉さんは不審な表情を私に向けました。その意味がわからずに私が首を傾けると、
「(……みゆきさんも頑張るんだよ? つかさの今の言葉を聞くと、大丈夫みたいだからさ)」
耳打ちで私だけに聞こえるように、そっと囁きました。
「えっ! ……あ……!」
心臓が早鐘を打ち、私は顔を真っ赤にして頭からぼんと煙を出し……たような気持ちにになりました。
泉さんはふっふっふっと笑い、つかささんとかがみさんは不思議そうに私を見ています。
つかささん、そんなつぶらな瞳で今の私を見ないでください。心が見抜かれちゃいそうで……。
しかし泉さん、いつの間に私の気持ちを……ひょうひょうとしていながら、鋭いお方なんですね。
「ゆきちゃん、お顔真っ赤だよ?」
ああ、そんなこと言わないでください……あなたのことを考えたから、そうなってしまったんですよ?
「……お二人の熱気にあてられちゃったみたいですね」
私がそう返すと、かがみさんは頭からぼんと煙を出しました。さっきの私もそうだったのでしょうか……。
私の気持ち、まだ悟られてませんよね? 小さくて純粋な私の想い人には、重すぎるかもしれない気持ち……。

******

自室のPCでネットの検索に「ひ」と入力するだけで、予測変換に現われる『柊つかさ』の文字。
検索しても彼女の情報が載っているわけでもありません。そもそも珍しい名前なのでたいしてヒットしません。
邪な知識欲、これは重症です……。勉強中もノートの端に、『つかささん』と書いては消すのを繰り返し……。
机の引出しを開けると、一番上にあるのは『つかささん情報』と書いてあるメモ張。
こんなのを持っているだなんて知ると、つかささんは引いちゃうでしょうか。ストーカーと思われたり……。
でも、それでも私はつかささんの新しい情報が手に入ると、こうして書き溜めずにはいられないのです。
知りたい、知りたい、知りたい。つかささんの知識が足りない。誰も教えられない、裏の裏まで知りたい。
つかささんの好きなこと、嫌いなこと、好きな人、嫌いな人、好きな動物、苦手な動物、過去から未来まで、
恋をするとどんな顔をするのか、キスをするとどういう反応をするのか、身体を重ねると……。
つかささんに関することで、無駄な情報などひとつもありません。全てが100へぇの知識。
できれば自分の手で、それらを知っていきたい。つかささんの全てを、私の全てで理解していきたい。
つかささんがそばにいれば、こんなメモ張はいらないのに。気持ちを受け入れてもらえなかったら、潔く捨てられるのに。
お母さん、ごめんなさい。私は女の子に恋をしています。いつもの笑顔で許してくれるでしょうか……。
327みゆき×つかさ・前編3:2008/01/06(日) 15:17:48 ID:0AsfqHZz
「みゆき、お友達からお電話よ〜」
「は、はいっっっっっ!!!」
我ながら間抜けな声を出したものです。赤面を悟られない様に階段を降りると、お母さんから受話器を受け取りました。
「はい、変わりました私です」
『あ、ゆきちゃん? 夜遅くにごめんね』
「つか……! つかささんですか? こんばんわ。今夜も寒いですね」
電話なんて初めてなわけでも、一度や二度だけなわけでもないのに、どうしてこんなに胸が高鳴るのでしょう。
心音が受話器を通して、つかささんに聞こえてしまいそうです……。
「あのね、お姉ちゃんとこなちゃんについてなんだけど……」
「はい、お二人がどうかされましたか?」
「お姉ちゃんがこなちゃんと電話で話していたのを聞いちゃったんだけど……あ、盗み聞きしたんじゃないよ!!」
「はい、わかっていますよ。(必死に否定するつかささん可愛い……)それで、どうされたんですか?」
「こなちゃん家、ゆたかちゃん家になにかあったらしくて、こなちゃんのお父さんも行かなきゃならないってことで、
こなちゃんひとりになるらしくて。私達がお泊りに行くことになるのかなって思って喜んでたんだけど……」
「ですけど?」
「お姉ちゃん、ひとりで泊まりに行くみたいなんだぁ」
思わず何かを吹き出しそうになりました。かがみさんが泉さんのおうちに、二人きりでお泊まり……。
しかも二人は恋人同士です。これはもう、な、何かあってもおかしくは……。
「そそそ、そうなんですか? まあ、お二人も恋人ですからたまに二人きりになるのもよろしいかと……」
「んー、そうなんだけどね。私はちょっと寂しいかな? やっぱり付き合ってるとそういうものなのかな?」
「まあ、その、はい。ええ、そうですね……好きな人と二人きりというのは誰も願っている事ですし」
つかささんはかがみさんのお泊まりに対し、単なるお友達同士のお泊まりの延長くらいにしか考えてないみたいです。
その純粋さに、申し訳がありません。私の頭の中ではあのお二人が口に出せないようなことをしている姿が……。
「それでさ……私もお姉ちゃんがいないと寂しいし、なんか羨ましいし、だからね? ゆきちゃん」
「はい、なんでしょう」
「お姉ちゃんが泊まるのは明日なんだけど……ゆきちゃんさえ良かったらうちに泊まりにきてほしいなって……」
「え……あwせdrftgyふじこlp! あ、お、お泊まりですか!?」
「うん。お姉ちゃんだとが二人でお泊まりするなら、私達もしちゃえってことで……」
「ふ、二人きりなのでしょうか?」
「いや、いのりお姉ちゃんもまつりお姉ちゃんもお父さんもお母さんもいるんだけど……」
「そ、そうですね。すみません……」
「それにね? 恥ずかしいケド、お姉ちゃんが羨ましい反面寂しくて……ゆきちゃん、だめ……かな?」
完全にノックアウトされました。受話器の向こうには憂いを秘めた目をした寂しげなつかささんがいるのでしょう。
「では、喜んで窺わせてもらいます。でも、よろしいんですか?」
「本当に? もちろんだよっ! ありがとう、ゆきちゃん」
「いえいえ、こちらこそ。お世話になります」
「じゃあお母さんとお父さんに話しておくね! 何時ぐらいに……」
かがみさん、泉さん、お泊まりしてくれてありがとうございます。たくさん楽しんできてください。
そんな感謝の言葉を陶酔状態で思っている私の耳に、つかささんの言葉は届いていませんでした……。
328みゆき×つかさ・前編4:2008/01/06(日) 15:19:00 ID:0AsfqHZz
******

柊家の門構え、靴箱の形、庭の色。すべてが新しい情報。ここは、つかささんの全てを見てきた知識の箱。
そこに一晩も呼吸できるなんて……私にとっては図書館よりも有難い場所なのです。
夕方6時。柊家に明るく迎え入れられた私。すでにかがみさんの姿はなく、もうお泊りに向かった模様ですね。
「いらっしゃい、ゆきちゃん! あがってあがってー♪」
満面の笑みで私を招き入れるつかささん。つかささんが私を求めている……!
部屋着のつかささん。別に初めて見る訳でもないのに、新鮮で愛らしいです。
私がくるということで、この日の晩御飯はつかささんが腕によりをかけて作るそうです。
手伝いを申し入れたのですが、お客さんだからとつかささんのお部屋に通され……。
つまり私は今……禁断の場所に立っているのです。つかささんを良く知る家の、つかささんをよく知る部屋。
ここにはつかささんの日常の、生活の全てが詰まっています。無限の知識欲が更なる高みへと……。
本棚に手を伸ばします。これがつかささんの好きな漫画でしょうか。ケロロ軍曹。初めて聞く名前です。
小説は置いていないみたいです。活字は苦手なようですね。参考書の類も見つかりません。
「これは……!!」
私の身体に衝撃が走りました。色とりどりのカラフルな棚。どこからどうみても衣類棚です。
しかもご丁寧に、どの段に何が収納されているのかわかりやすいように、名前が書いてあります。
一番上はシャツですね。二段目がズボン、三段目はスカートですね。小棚にはハンカチ、と。
一番下は……下着、下着です。大丈夫です。まだ、まだ中は覗いてはいません。
知りたい……! 知識欲のスペースシャトルははすでに成層圏を超えて宇宙に到達しようとしています。
「つ、つかっ、つかささんの、したしたしたっ、下着っはぁ……!」
私は首をぶんぶんと振り、ポケットの中の『つかささん情報』を取り出すとおでこをペシペシと叩きました。
おさまれ私の好奇心、まだ、まだ大丈夫です。デンジャラスゾーンは未知の領域のままです。
壁に掛かっているセーラー服を凝視したあとで、荒くなった息を整えると私は再び部屋を見まわしました。
ファンシーなぬいぐるみがベッドに横たわっています。つかささんは寂しがりやだと聞きました。
いつもこのぬいぐるみを抱いて寝ているのでしょうか。あの小さな身体をぎゅっと押しつけて……。
「はぁ……つかさ……さん……」
私は申し訳無いと思いながらも、そのぬいぐるみを拾い上げると、力強く抱き締め、その香りを味わいました。
気のせいなのかもしれませんが、癖のないフローラルな香り。鼻腔で感じ、身体に電流となって流れます。
「好きです、つかささん……」
つかささん、つかささん、つかささん。幸せなはずなのに、つかささんの温もりを感じると、泣きそうになります。
知りたいことはなんでも知ってきたつもりでした。後で後悔する事になっても、知らないよりはマシなつもりでいました。
私にとって知らないままでいることは、何より悲しい事です。なのにつかささんには私の知らないことが多すぎます。
私が一番知りたいことなのに、もしかすると私は永遠に知らないままなのかもしれません。
色んな事を知ってきたつもりでも、知識だけではどうにもならないこともあるということはわかっていました。
恋心なんていうものも、私もいつかは経験して、そして知っていくものだと。そして今、私は知ってしまっています。
しかし……まさかこんな形で知ってしまうことになるなんて。よりによって相手が女の子なんて。
つかささんは女の子同士の恋愛に寛容ではあっても、当事者になれば違うかもしれない。私は拒絶されるかもしれません。
知りたくてたまらなかったはずなのに、こんなに悩むなら、こんなに苦しいなら、こんな気持ち知らなければよかった。
知りたがりの私が、何を知っても後悔はしなかった私が、『知らなければよかった』と考える日が来るなんて。
329みゆき×つかさ・前編5:2008/01/06(日) 15:20:18 ID:0AsfqHZz
「つかささん、つかささん……!」
つかささんが愛くるしくて、愛しすぎて、だからこそ私はこの気持ちを打ち明けられなくて、それがまた悲しくて、
今のように涙が出る理由は知っています。それはきっと、知らないことが悲しいからだけではないからです……。
涙が染み込んではまずいと思い、ぬいぐるみをベッドに戻します。それにしても丸くて柔らかいぬいぐるみですね……。
窓から外を見ると太陽はすでに沈みきっていて、私は思っていたより長い事ぬいぐるみを抱いていたようです。
「ゆきちゃーん」
急にドアが開かれたので、私はびっくりしてしまいました。涙で腫れた目を見せまいと、振りかえらずに答えました。
「は、はい!」
「ご飯できたよー。みんなで食べよ?」
「あ、はい。そうですね! ではいただきますね」
できるだけ目を見せないように前髪をおろして隠すと、つかささんとリビングへ降りました。
つかささんの作ったグラタンはとても美味しく、暗闇が掛かっていた私の気持ちは少しづつほぐれていきます。
自分でも意外と単純なもので、少し恥ずかしいですね……つかささんが作ったと思えば、フォークまで美味しいですね。

******

「ゆきちゃん、お風呂あがったよー」
身体がから湯気を出して、パジャマ姿のつかささんが現われました。上気してるお顔がまた可愛くて……。
私はつかささんの部屋の構造から配置配色を、克明に『つかささん情報』に書き記していたところです。
ペンとメモ帳を素早く隠すと、「では私もいただきますね」とだけ告げ、着替えを持って部屋を出ました。
あれ……ということはつかささんの全身が浸かった残り湯……。一糸纏わぬつかささんを包んだ残り湯……。
「あ、お湯は変えておいたから安心してね」
そうですか……。
ああ、リボンを外して濡れた髪のつかささんも素晴らしいです。柊家のお風呂の構造、記憶しておきましょう。
あら? これは洗濯機ですね。まさかこの中には……。

******

しばらくしてお風呂からあがると、私は居間でテレビを見ているつかささんのお父様とお母様に軽く会釈をして、
「お風呂いただきましたー」と言いながらつかささんの部屋にドアをノックし、ゆっくりと開きました。
「あっ、ゆ、ゆきちゃんもうあがっちゃったんだ? は、早いねー」
わかりやすいもので、つかささんは明らかに動揺していて、何かを隠すような笑みを見せていました。
ああ、そんな笑みもやっぱり可愛いです……とかではなくてですね、なにかあったのでしょうか。
つかささんにも知られたくないことはあるでしょう。私は気にしないフリをして、クッションに座りました。
それから二人で他愛の無い話をして、ふと、話題はかがみさんと泉さんのことになりました。
「今ごろ二人ともなにしてるんだろうねー。メールしてみようかな?」
「いえ、せっかく水入らずですので……そっとしておいてあげましょう」
「そうだね。でもなにやってるんだろう。やっぱりゲームしてたりして」
時刻は10時半……私もいつもなら寝ている時間帯です。あの二人はきっと……。
堪えれなくなり、クッションに顔を埋めると、つかささんは不思議そうな顔で私を見つめています。
「きっと……すごく。すごく仲良くしているところですよ」
「やっぱりねー。ああいうのってよくわかんないけど、ちょっと憧れちゃうナー」
悲しいですけれど、つかささんにも想う人がいるのでしょうか。私でよければいつでも……口には出せませんけれど。
泉さん達カップルはどのように、どちらから告白したのでしょう。経験者からヒントを得るのもいいですね。
330みゆき×つかさ・前編6:2008/01/06(日) 15:21:51 ID:0AsfqHZz
「ねぇ、ゆきちゃん……」
「はい、なんですか?」
「ゆきちゃんってさ、お姉ちゃんやこなちゃんのことについて、自分はどれくらい知っていると思う?」
「どれくらい、ですか……? そうですね。誕生日、家族構成、住所に電話番号。趣味や人格……。
人格に関しては、誰に対してもそうですが、私も全てを知っているつもりはありません。
それでもあの二人は、一番のお友達ですし、素晴らしい人間だという事は知っているつもりですね」
つかささんはそれを聞き、うんうんと頷いていましたが、何かを思うような顔をした後、
「じゃあ、私については……?」
「つ、つかささんについてですか? 前述の通り誕生日、家族構成、住所……はかがみさんと同じで、
趣味はお菓子作りで、好きな漫画がクッキーで、得意料理はケロロ軍曹で、その……あっ、えっと……」
私は決断を迫られていました。本当はこんな基本的な情報より、もっとたくさんの知識があったはずです。
しかし、正直にそれらを口にして、つかささんに気味悪がられたりでもしたなら……。
「ありがとう、ゆきちゃん。変な事聞いちゃってごめんね」
つかささんはいつもの笑顔でそう言ってくれました。ああ、助かりました……。

******

夜11時。消灯の時間です。つかささんはベッドに、私は布団に。
横でつかささんが寝ていると思うと、私の目はぱっちりと開いたままです。
しばらくするとつかささんは、寂しくなったのか寝るときの習慣なのか、あのぬいぐるみに抱きつき始めました。
(ぬいぐるみがうらやましいです……)
そんな邪な考えを持つ自分が恥ずかしくて、私は目を閉じ無理にでも眠りに入ろうとしました。
「……ふっ……んっ……」
静寂が包んでいた真っ暗な部屋に、突然くぐもった声が響きました。しゅるしゅると、衣擦れの音も混じっています。
(つかささん、寝苦しいのでしょうか……?)
寝返りのふりをして、つかささんの方へと身体を向けました。私の背を向けてぬいぐるみに抱きついたまま、
つかささんは身体を動かし、なにやらごそごそとしています。私はその動きから目を離せませんんでした。
「んんっ……きゅぅ……」
つかささんの声には甘い音色が含まれており、それはまるで淫靡な心地良さをを享受しているかのような……。
(……まさか、つかささん?)
「ふぅっ……あっ……んんっ……はふぅ……」
そんなことがあるわけ……そう思ったのですが、ぬいぐるみの形が潰れるほど強く抱きしめながら腰を動かして、
甘美な声を漏らすつかささんは誰がどう見ても、その、ひ、ひとりでなさっておりまして……。
(つ、つかささん。私が横にいるんですけど……!)
突然の出来事にパニックになりながらも、狸寝入りのままつかささんの痴態を眺める私です。
「ああっ、あっ、あっ、ふぅ……んん……」
(つかささんがこんなお声を出すなんて……こういうことは知らないとばかり思っていたんですけれど……)
言い方は悪いのですが、つかささんには子供のような純粋さをイメージとして抱いていたので……。
そんないつものつかささんと、目の前の快楽を貪るつかささんとがどうしても私の中で重ならなくて、
しかしそのギャップといいますか……それが一層この状況を艶めきたったものにしていっていまして……。
331みゆき×つかさ・前編7:2008/01/06(日) 15:23:18 ID:0AsfqHZz
(あ、つかささんはそんなお声で感じるんですね……)
つかささんは私が横にいるというのに、我慢が効かなかったのでしょうか。それとも気にしない性格……。
もしかして私がいるからこそ……などとも考えましたが、そんなわけはないと考えを振りきりました。
「ああっ、みゅ……ひぅぅ……」
世界で一番愛している人の、そんな淫らな声を聞いて、私自身なんの反応もないわけではなく、
嫌悪はもちろんありませんが、困惑や状況整理よりも……もっと正直な反応を身体がしてしまって……。
もじもじと足を擦り合わせていた私は、気がつけば自分のパジャマの中に手を差し伸べて……胸を……。
「ひあっ、あっ、あっ、ああっ……!」
バレないと思ってきたのか、制限ができなくなったのか、つかささんの声はさらに大きくなります。
下着の中から胸を揉みしだいていた私も、声を漏らしそうになりましたが、毛布を噛んで耐えていました。
(つかささん、つかささん……!)
「あっ、いいよぅ……んみゅ……あっ、ふぁ……!」
(つかささん、ごめんなさい! つかささんでこんなことして、ごめんなさい……!)
暗い部屋に二人、大声を出して快楽を貪るつかささんと、それを見て声を殺しながら感じている私。
その状況はとても不自然で、しかしとても背徳感に満ちており、私の官能をさらに高めてしまい……。
「んっ、すき、すきぃ……ああっ、ふぅっ……!」
(つかささん……好きな方を想って……どなたが、どなたが好きなんですか?)
それはとても悲しい言葉のはずでした。それなのに私は胸を触る手を止める事が出来ません。
今はつかささんと一緒に、快感に身を委ねる事しか出来ませんでした。悲しみが少しは紛れるので……。
「すきっ、あっ、あっ、ひぁぁ……」
つかささんの荒いときは徐々に早くなり、快感の波が強くなっていることを表していました。
声色は、強く抑揚をつけ、腰の動きはこれ以上にないほど早くなっており……。
その華奢でいたいけな身体で、精一杯気持ち良くなろうと頑張っていて、その姿がまた愛しくて堪らなくて……。
(つかささん、もう、限界なんですね?)
「ひあっ、あっ、あっ、あっ、もう、あっ……」
(大丈夫ですよ。感じてください、つかささん……)
「すきっ、すきっ、もう、あっ」
(つかささん、つかささん……!)
「ゆきちゃんっ、すきっ、あっ、ひあぁっ……!!」
(私も好きです、つかささん……って、えっ!?)
私の目がかっと開かれ、目の前のつかささんは身体をびくびくと大きく揺らすと、身体を震わせ、
最後には疲れ切ったようにぐったりとしはじめました。潰れたぬいぐるみの形が戻っていきます。
私はの頭の中はつかささんがひとりでしはじめていることを確認したときよりも混乱しており、
そのまま何も考えられずに自身の心臓の早鐘を聞いていると、やがて小さな寝息が聞こえてきました。
(つかささん、寝たようですね……いえ、そんなことよりも……)
私はゆっくりと身体を起こすと、つかささんに近付いて寝顔を確認しました。
汚れた事など何も知らない、純粋無垢な愛らしい寝顔。私が知りたかった、誰よりも愛しい寝顔。
(つかささんは、私のことが好きなんですか? 私、本気にしていいんですか?)
せっかく眠りについているのですから、起こして確認するわけにもいきません。
どれだけ知識欲を刺激されても、どれだけ知りたい知りたいと願っていても、それだけはしてはいけません。
(お願いですから、これが冗談でありませんように。夢なんかじゃありませんように……)
私は今日2度目の涙をポロリとこぼすと、つかささんの髪を軽く撫でて、自分の布団に潜り、眠りにつきました。
332名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 15:25:52 ID:0AsfqHZz
前編は以上です。続きは明日にでも投下させていただきたいと思います。
他職人さんのつかさ×みゆきを読んで以来情熱が抑えきれなくなり……。
誤字脱字ありましたら、申し訳ありません。
333名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 15:29:57 ID:WDcjtR3R
リアルタイムGJ!!!
萌えた!
334名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 15:50:06 ID:ZDTu4dke
>>332
同じくリアルタイムGJ!
つかさ隣でなにやってんだww
335名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 16:00:36 ID:jdH8oIqH
>>332
リアルタイムGJ!!!
後編待ってます!
6の
> 好きな漫画がクッキーで、得意料理はケロロ軍曹で
というのはみゆきさんが焦って言ってしまったという解釈でよろしいのでしょうか?
336名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 16:46:39 ID:9x05qbpF
GJ!
つか☆フェチに見えるw
337名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 16:50:09 ID:lzxqkUB2
>>332
GJ!!
みゆきさん壊れすぎww
でも、みゆきさんだったら本当にこうなりそうだ。
338名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 17:05:10 ID:NJSMXBS4
GJ!
かがつかしか書いてなかった俺でしたが、みゆつかの魅力に気付いてしまった。
今度一本書こうかな…
339名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 17:08:03 ID:w3p00UXb
>>332
GJGJGJ!!
得意料理ケロロ軍曹に吹いたw
340名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 17:08:22 ID:hpu3BrbP
>>332
GJっす!
ナチュラルに壊れてるみゆきさん萌え
341名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 18:46:14 ID:rM+joDOj
いっぱいいっぱいのみゆきさんが実にキュート。
そして3部構成ということで、濡れ場方面にも期待しつつぐっじょぶです。 
342名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 19:31:27 ID:W31xW6wr
>>332
GJ
直球ではないけどじわじわとくるエロさが好きです
343桜舞:2008/01/06(日) 21:18:40 ID:Oncr2FHP
は、はじめて投下させていただきます。
(本気で初心者ですので至らない所があれば教えてください)

内容としましては、■こなた×かがみ■シリアス? です。
下記をプロローグとしまして、少しずつ上げていきます。
1〜2のスレを使うのかな?
344現代版ファウスト プロローグ(1):2008/01/06(日) 21:22:51 ID:Oncr2FHP

「瞬間よ止まれ。汝はいかにも美しい」

 ■ ■ ■

夢を夢と結論づけてしまう根拠が、どこに在るというのだろう?
ここが現実てある根拠も、夢である根拠もないのだから。
ならば私は今いったい何処の世界に生きているのだろうか?
何を信じていいのか分からない。
何を認めていいのか分からない。
本当に私は私のまま生きていられるのだろうか。

「叶えてやろうか」

私の心が作り出した妄言か。
目の前には黒い犬がエメラルドの深い濁った瞳をこちらに向けていた。
口元からチラチラ見え隠れくる鋭い牙が、犬の笑い方を表している。
「あ、あんた………」
私は無意識に数歩後ずさりしていた。
ニタニタと笑う黒い犬から少しでも離れられるように。
しかし黒犬はまた一層深く笑うと、同じ距離近づいた。
「柊かがみ」
黒犬は確認ではなく、ただ告げるように言う。
お前は【柊かがみ】でしかないのだと。
「私の名はメフィストフェレス。―――ご存知かな?」
「め、メフィスト………?」
その名前ならこの私でさえ聞き覚えがある。
18〜19世紀ドイツの文人ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの
代表作とされる長編の戯曲に出てくる悪魔の名前である。
「あ、悪魔がなんで私のとこになんてくんのよ……?」
「ふふ。それくらいは既に知っていたか」
「だいたい、叶えるって…一体なにをよ……?」
私は知識欲求なんてそんなにないし、学者ですらない。
あの有名なメフィストフェレスが現れるような要素がまるでないのだ。
顔がひきつるのが分かる。
しかし前の悪魔はまだニタニタと笑っているのだった。
「無論、汝の願いだ」
「私の願い……?」
「そう。この世の日の限りは伴侶、召使、あるいは奴隷のように汝に仕えて、
  自らの術でかつて誰も得る事のなかったほどの享楽を提供しようというのだよ」
それは教科書に少し載っていた程度の知識だった。
読んだとこのある台詞。そして、イメージにぴったりな姿。
「私は、別に……」
「本当かな?」
「………っ!」
犬の瞳は何もかもを見透かすように、覗いてきた。
「汝はこの世界にある平穏を不満に思っているのだろう?」
「………………」
否定は、しない。
345現代版ファウスト プロローグ(2):2008/01/06(日) 21:24:17 ID:Oncr2FHP
「何かが足りない。そうだろう?」
「………そ、れは……」
「これが現実なら、夢を見たいのだろう?」
犬は目の前に座ると、ニタニタと笑いながらこっちを観察していくる。
昼間の自室で、誰が悪魔に遭遇するだなんて思っただろう。
誰がこんな世界を予想できただろう。
「………」
夢が夢であるうちに、私はそれを謳歌しよう。
目覚めて何も起こらない無意味な日常を受け入れる前に。
「………いいわよ」
「ならば話しは早いな」
犬はさっと私に近づき、額をあわせ目を瞑る。
体が少し柔らかい光につつまれ、温かさを感じ取る。

「 Verweile doch! Du bist so schön. 」

私は犬が何かを喋っているのを聞きながら、少し思った。
これはあの有名な台詞だったのだろうかと。
そしてそのまま、私の意識は潰えるのだった。

 ■ ■ ■

「あ、かがみ、目が覚めた?」
あれは夢だったのだろうかと朦朧とした意識の中で思った。
私の視界の中には可愛らしい少女がいた。
濃く蒼い髪を長々と伸ばし、大きなエメラルドの瞳を覗かせている。
「あれ……私は……?」
体を起すと、いつもの自分の部屋だった。
ここは2008年を迎えようとしている日本だ。
「夢………だったのかな?」
「何がだ?」
「!?」
あの犬の声が聞こえた気がして、私はバっと振り返る。
全裸の少女は、あの可愛らしい瞳の色を濁していた。
346名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 21:48:29 ID:cJUixG1Z
まずsageろ
そして続きを残して放置するな
347名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 21:50:40 ID:DpVPSrDJ
要するに期待してるんだな?
348名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 22:00:57 ID:cJUixG1Z
いや、そのままにしたら別の職人さんや住人が書き込めないからだろ
349名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 22:19:14 ID:AWZowJnz
1,2スレを使い潰すほど投下されるんでしょ?
だったら元から外野の書き込む余裕なんてない罠w

まぁ冗談は置いといて、何かしらの終了宣言がほしいところではあるね
「続く」でも「To Be Continued」でもいいけど
350憤慨ぎみのこなた:2008/01/06(日) 22:19:38 ID:xXYl/5IW
「初めて」か、うーん、真っ先にここみつけて、
作品を書き込んでくれるのはとってもうれすいウンウン(=ω=.)
でもせめて、初心者なら初心者らしく、2chのルールと、このスレの>>1
最低限読んでもらってから書き込んでほしかったにゃあ(=ω=.)

「とりあえずここで一旦ストップします」とコメントしておくべき、というのは賛成。
理由はまさに>>348の言うとおり。

sageは、もうこのスレひいては板における最低限常識と、
そろそろ覚えていただいてもいいと思うんだけどどうかね?(=ω=.)
351桜舞:2008/01/06(日) 22:19:50 ID:Oncr2FHP
すみません。
かなりの初心者ですので…

はい。これで続きます。
お手数をおかけしました。
352名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 22:39:22 ID:eM8InGP3
>>351
メール欄に半角小文字でsageと入力するように。
続きは待っているので頑張って!!
353名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 22:56:51 ID:xXYl/5IW
こなた「もうね、>>1読んでから書き込めと・・・
    それ位なぜできんのかカリカリカリ(=ω=.#)」
かがみ「落ち着けこなた、あんたが荒らしになるっての('A`)」

こなた「・・・とまあ、世の中にはこの通り気の短い人もおるわけです」
かがみ「演技かよっ!」
こなた「それに、過去から様々な問題や諍いなども経て、>>1のルールが
    出来上がってるのです、だから、最低限>>1は読んでから
    書き込んでほしいと、重ねてお願いするのであります(=ω=.)b」
かがみ「あらかじめルールで縛ると窮屈に思っちゃうけど、
    ここの板って、ルールや周囲を無視して書き込むようになると
    荒れて収集つかなくなって、場が簡単に破壊されてしまうからねぇ・・・」

こなた「というわけで、今後に期待しますぞっ(=ω=.)9m」
354桜舞:2008/01/06(日) 23:01:30 ID:Oncr2FHP
すみません…分からない単語はちゃんと調べます…
ですが教えてくださってありがとうございます!
355名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 23:08:30 ID:OAPsAuMy
とりあえずメール欄にsageは必須。全角じゃくて半角な。
後は基本ルールと>>1読んで頑張れ
356名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 23:08:37 ID:MLrH31nG
>>354
E-mail(省略可)のところに半角英数で『sage』といれてみてください。
しっかりルールを把握してから続きを投下してくれることを心待ちにしてます。

ちょっとギャグを交えて支援します。
ttp://momoiro.s4.dxbeat.com/up/img/momoiro03832.jpg
357名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 23:10:50 ID:RpxqPCTl
>>354
>>1に書いてある事なんだけど、
>投稿の際に、メール欄に半角英数でsageと入力すると、スレッドを上げずに書き込めます
というのがここでは推奨されてる。って、もう書かれてるな・・w

あと投下が終わった後にはその旨を知らせてくれると良心的。
358名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 23:12:30 ID:Z8N0Mjej
>>356
あんたって人はwww
359名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 23:25:45 ID:5grrrHwP
>>356
あんたはまいどまいどGJだなww
もう絵柄だけで誰だか分かるよw

そしてこれ
ttp://usokomaker.com/nenga/?a=Maker&oo=%B9%E2%CE%C9%A4%DF%A4%E6%A4%AD&oo2=%C0%F4%A4%B3%A4%CA%A4%BF
鼻血みゆきさんすぎるwww
360名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 23:34:39 ID:xXYl/5IW
>>356 >>359
盛大にフイタwwwwww

しかし、>>359はいわゆる、「このスレ仕様」
こっちのほうが、設定的には忠実かも知れないw
http://usokomaker.com/nenga/?a=Maker&oo=%C0%F4%A4%B3%A4%CA%A4%BF&oo2=%C9%A2%A4%AB%A4%AC%A4%DF
361名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 23:46:05 ID:4OVmFwbP
>>360
吹いたwww
丸っきりそのままじゃないかw
36243Hev0JB:2008/01/06(日) 23:55:11 ID:1LEKzr93
>>360
ちょwwww
ついでに携帯からじゃ無理だからここに書いておきます。
やるもやらないも好きに。
「鼻血みゆきから泉こなたへ」
実にこのスレらしかったです
363名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 23:58:29 ID:xw2O/IBZ
そういやみゆきさんが鼻血出し始めたのは9月からだったなぁ…
364名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 00:00:13 ID:RpxqPCTl
覚えてるか?アニメ放送前から初期のこなたって、超絶攻めキャラだったんだぜ・・・
365名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 00:21:18 ID:6WMZGRrN
>>356,>>359,>>360
腹筋が8つに割れました。(GJ的な意味で)


さて、日もまたぎましたし…投下しようと思います。

他に投下予定の方がいなければ数分後、投下します。
366久留里:2008/01/07(月) 00:23:42 ID:R9mz+48t
さて、「カケラ」の続きが3話分仕上がったのだが、
単発で出そうか、纏めて出そうか考え中。



それにしても、つかさはちょっと遠方に飛ばしすぎた鴨orz
一人だけ九州だからねぇ。

>>356,359,360
自分ら、わての腹つぶすつもりやろwww
367名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 00:28:50 ID:T4Uy34jM
>>364
キャラの掘り下げが浅いエロ同人なんかでは万能攻めキャラとして使われることが多かったな
こなたは第一印象で萌えるタイプじゃなくて、描写を重ねることで萌えが見いだされるキャラだと思う
今じゃ受けキャラの筆頭って印象が・・・・・w

でも俺は総攻めなこなた大好きなんだ
368名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 00:29:45 ID:6WMZGRrN
>>366
単発で投下に1万2千票っスwww



それでは投下します。

前スレの「言霊」の続編です。
タイトル「言霊 2話」
こな×かが(+ゆたか)
非エロ
鬱展開予定なので苦手な方はヌルーでお願いします。
3レスお借りします。
369言霊 2話:2008/01/07(月) 00:31:27 ID:6WMZGRrN
「お、おじゃまします」
私に背を向けていた状態のかがみ先輩に向かって呟くと、かがみ先輩はくるっと私の方を見上げて少し潤んだ瞳を細めた。
「いらっしゃい。って普通は私の方が『おじゃまします』なんだけどね」
ハハッといつもより半音くらいうわずった声でかがみ先輩が笑った。
頬がうっすらと赤いけど…大丈夫かな?
自分が病気がちなせいか、人の体調不良には人一倍心配してしまう。そんなの杞憂なのにって前にゆいお姉ちゃんに言われたんだけど、心配なものは心配だ。
だから聞かずにはいられなかった…
「あ、あの…何してたんですか?」
と。


「へっ?」
「え…?」
それぞれ違う言葉を発したけど、お姉ちゃんもかがみ先輩もびっくりしているような顔をしている。
あれ、私なんかおかしい事言ったのかな?


「………」
「………」
「…お、お姉ちゃん?」
おかしな空気に耐えきれなくて、助け船を貰おうとお姉ちゃんの名前を呼ぶと、ちょっと困ったように眉毛をハの字にしながら溜め息をついた。
「うん、まぁいずれバレると思ってたんだけどね…」
「ちょっ…こなたっ!!」
やれやれといったように両手をあげながら話すお姉ちゃんの口をかがみ先輩が手で覆う。


いずれバレる?
なにがバレるんだろう…。
お姉ちゃんとかがみ先輩が私に秘密にしていることがある、ってことなのかな?

次の言葉を聞きたくてもお姉ちゃんの口はかがみ先輩の手で抑えられている。

……なんだろう、このモヤモヤする気持ち。
怒りでも悲しみでもない、だけど胸の奥にチクリと針を刺されたような痛み。
お姉ちゃん達が私に秘密ごとをしていたから、っていう理由じゃなくて…
かがみ先輩がお姉ちゃんに触れる度、お姉ちゃんがかがみ先輩に瞳を向ける度、感じるこの感情。

370言霊 2話:2008/01/07(月) 00:32:39 ID:6WMZGRrN
「…ぷはっ、かがみっ!!いつか話すって言ってたじゃんっ!」
「そ、そうだけど…こ、心の準備が…」
「ゆーちゃんは、私達の…声、聞いたんだよね?」
かがみ先輩が諦めたように頭を抱え込む姿を横目で見ながら、お姉ちゃんが私の瞳を見据えた。
声…?あ、確かにお姉ちゃんの部屋から聞こえてきた声で起きたけど…
「う、うん」
「…そっか。ね、かがみ、言うよ?」
私が見たことのないような優しい瞳でかがみ先輩を見つめる。

チクッ。

…まただ。
なんなんだろう。この痛み。
よく分からない痛みの元凶を和らげようと胸の真ん中を擦ってみるけど…一向にひかない。

「…分かった、わよ…」
痛みの緩和に注意が向いていたけど、かがみ先輩がはぁと溜め息をついたその言葉で私は顔をあげる。

「うん。…あのね、ゆーちゃん」
いつもの細い目じゃなくて、きちんと瞳を開いた目をして私を見据える。
なんだかその目を直視するのが気恥ずかしくて、お姉ちゃんとかがみ先輩の座っている間のテーブルの端に視線を下げる。




「私達……付き合ってるんだ」




371言霊 2話:2008/01/07(月) 00:33:28 ID:6WMZGRrN
――――へ?

今なんて…
付き合ってる?
誰が、誰と?

お姉ちゃんの口から発された言葉の意味が分からなくて…
いや、正確には分かりたくなくて…
おずおずと視線をかがみ先輩へと向けると、少し恥かしそうな、バツの悪そうな表情を私に向けていた。

「…っ」
その顔に、その表情に何故か胸のあたりから頭までカッと重力に逆らうように血液が上がった。

「ゆたかちゃん…?」
バッと顔を背けた私に心配そうにかがみ先輩が声を掛ける。

「…なんでも、ないです」
上がった血液が今度は目頭の方に下がってきたみたいで、視界が自分の意識と関係なしに歪んでいく…。
悲しい、いや違う…
切ない?でも違うような、よく分からない感情が私の胸を押しつぶす。

痛い、痛い、痛い。

心配そうに私を見つめるお姉ちゃんの視線と、かがみ先輩の視線。

胸が苦しい、呼吸でさえままならないほど、喉が焼けるように熱い。

目の前にいる二人が、どんどん霞んで…


「…っ、ゆーちゃんっ…?!」


慌てて私の方に駆け寄るお姉ちゃんの顔を最後に、私の意識は暗い暗い闇へと落ちていった。
372名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 00:36:49 ID:6WMZGRrN
以上です。
名乗り忘れましたが18-490です。
ヤンデゆーちゃん(命名オレ)にしたいのに…甘々も捨てがたい…orz

亀速で申し訳ないです。

それでは、スレ汚し失礼しました。
373名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 00:48:25 ID:fvFX09M4
てすと
374久留里:2008/01/07(月) 01:23:01 ID:R9mz+48t
久留里です。結局単発投下をすることにしました。
第三者視点に切り替わるまではこの方針で行きます。

>>313-317 の続き。
・かがみ視点
・非エロ
・3レスほど使用
・タイムリープもの
・オリジナル設定が多いのは仕様です
・物語の性格上、鉄分が濃いです
375カケラ 4-1/3:2008/01/07(月) 01:23:32 ID:R9mz+48t
4.

困ったのは服装だった。
制服だったらともかく、私が『飛ばされる』前の日は休日で、私服を着ていた。
まぁ、この時代から見れば稜桜の制服は結構派手なので目立つかも知れないけど。

私はお母さんに似て寒さには強いので、今の格好ではちっとも寒くない。
珍しくスカートじゃなくてパンツにしているしね。
ただ、明らかに着ている服装が当時の基準とはかけ離れており、さっきから周りの視線が気になってしょうがない。
はじめは無視していたのだけれど、これも段々限界に達してきた。

そんなことを考えつつ、これからどうしようかと考えていると、突然携帯電話が着信した。
まず、つかさや友達からでは無いことは確かだ。
というか、この時代で携帯電話が鳴ること自体がおかしい。
携帯電話のバイブレータはすぐに鳴りやんだ。どうやらメールのようだ。
「コレ」を人前に出すのは些か抵抗があったので、私は公衆トイレの個室へ駆け込んで、その中で開いた。

送り主は、不明。
だが、誰が送ったかは大体想像が付く。
メールの内容はこうだった。

 本文:
  大垣夜行に乗車せよ。
  乗車券は西口の第三ロッカー、213番にあり。


ちょうど今いるトイレは、新幹線側、つまり西口にある。
私は使ってもいないトイレの水をわざと流し、手まで洗う演技までしてトイレを出た。
ちょっとわざとらしかったかな?

小田原駅西口、建物自体は変わらぬ新幹線側の入口に第三ロッカーはあった。
駅舎の外れにあるこのロッカーは、滅多に人が通らない所にあるため、それはそれは不気味だった。
そのくせ、ホームとは対照的に無駄に照明が明るく、不気味さを更に増長させた。
213番のロッカーは鍵が刺さったまま。つまり、「空いている」状態だった。
私に何らかの方法でメールを送りつけた『主』はちょっとアホだと思う。
誰かが閉めちゃったらどうするのよ。

誰も居ないことを確認し、ロッカーを開ける。
そこには怪しげな茶封筒と鍵が置かれていた。
本当、誰かに持って行かれたらどうするつもりなのよ。
私を利用するならもっと上手く利用しなさいよね。

茶封筒の中身は、案の定、乗車券が入っていた。
現代の磁気シートが貼られたものではなく、ただの厚紙で出来た乗車券。
券面には『小田原→米原』と書かれていた。
米原に行かせるのなら新幹線を使えばいいのに。終電はまだでしょ?
私は乗車券にツッコミを入れつつ、それを茶封筒に戻した。
鍵は財布の中に入れて第三ロッカーを後にした。

恐怖心は意外と無かった。
この時の私は、何故か、ワクワクしていた。

「お腹、減ったわね」
時計は9時を廻ったところ。まだラーメン屋くらいなら空いているかしら?
私は再び東側の地下街にあるラーメン屋さんへと向かった。
何故地下街か?
それは、この時代の小田原駅は駅を貫く自由通路が無いため、
反対側へ行くには駅の外にある地下道を通らねばならないからだ。
正直面倒だった。乗車券も東口のロッカーに入れて欲しかった。
376カケラ 4-2/3:2008/01/07(月) 01:24:05 ID:R9mz+48t
『大垣夜行』という列車は、東京と大垣を結ぶ夜行快速列車だ。
私は鉄道趣味は無いので詳しくも無いし、興味も無いので今の今までどんな列車かは分からなかったが、
それはそれは色々な意味で凄い列車だった。

深夜0時を過ぎて、日付が変わった。
帰宅ラッシュもとっくに過ぎており、ホームも、改札口も、駅前も、人通りが少なくなってきた。
しかし、国鉄東海道線の下りホームは逆に人がどんどん増えている。
皆コンパクトなリュックサックやボストンバッグを手に持って、
ある人は立ったまま、ある人はうろうろしながら、ある人は地べたに座ったまま、列車の到着を待つ。
大体予想が付いた。
「みんな、大垣夜行に乗るつもりなのね」
そうひとりごちて、私も皆と同じく列車の到着を待っていた。

『大垣夜行ただいま到着致します。危険ですから白線より内側に下がってください』
アナウンスの後、オレンジと緑色に塗装された、どこか懐かしい列車がホームに滑り込んできた。
しかし、車内の様子を見て私は愕然とした。

「嘘でしょ………」
初めての鉄道旅行。
『現代』へ戻るための鉄道旅行。
その第一列車はあまりにもカオスな状態となっていた。

私も含め、多くの乗客が文字通り詰め込まれると、笛の合図と共に扉が閉まる。
かくて、私は小田原の地を離れた。
377カケラ 4-3/3:2008/01/07(月) 01:24:34 ID:R9mz+48t
車内は文字通りのカオス状態だった。
この際、サイズに乏しい胸が触られようが何されようが文句は言いまい。
(わざと触った奴は問答無用で死刑だけど)
私はひたすらトートバッグと怪しげな紙袋を守ることで精一杯だった。

『ご乗車ありがとうございます。大垣行き、快速列車です。
 車内は大変混雑しております。ご迷惑をお掛けします。』
本当に迷惑だわ!!

列車は2つドアの車両で、客室とデッキは壁と扉で仕切られていた。
客室は全てボックス席で、どうやら旅行用の電車らしい。
ボックス席は既に満杯で、座席と座席との間の通路も旅行客で埋まっていた。
デッキ付近もさながら都内の通勤電車状態で、明らかに定員オーバー。
座ることなど許されぬ状態であり、全員立ったままであるかと言えばそうでもない。
流石に大垣駅まで立ったまま寝るのは苦痛なため、それぞれが譲り合って立ったり座ったりしている。
私はこの時代へ来て、改めて「人間の温かさ」を実感した。
私も先ほど、大学生とおぼしきお兄さんに「どうぞ」と言われ、床に座らさせて貰った。
しばらくしたら代わってあげよう。

窮屈なデッキで体を荷物ごと丸めて座っていると、私の大嫌いな臭いが漂ってきた。
煙草だ。
客室との扉は開いたままになっているので、客室内から煙草の煙が流れ込んできたのだ。
平成時代に生まれ、平成時代で育った私にとって、電車の中で煙草を吸うことなど、信じがたい行いだ。
時代が時代とは言え、せめて空いている時か駅で吸ってもらいたかった。

『───終点、大垣には6時59分、終点大垣には6時59分に到着します。
 大垣駅到着の後、この列車はこのまま美濃赤坂行きとなります。』
378カケラ 間:2008/01/07(月) 01:25:25 ID:R9mz+48t
間.

春日部駅の賑わいが別のベクトルで大きくなっていた。
改札口が大混雑しており、メガホンを持った駅員がしきりに大宮からJRに乗る様、大声でアナウンスをしている。
「兄貴ー、これじゃ帰れねーぞ」
「参ったな。何とかならないかな」

おれと妹のみさおは、駅前のロータリにて身動きひとつとれない駅の様子を観察しながら話し合っていた。

しばらくの沈黙の後、みさおがこう切り出した。
「なんとなくだけどさ」
「ん?」

「私、さっきから嫌〜な予感がするんだ」

予感……か。
「どんな予感だ?」
「何かさ、でっけー事故とか起きててさ、人が…」
そこでみさおの言葉が詰まった。
「兄貴………………」


「……………ちょっと、何があったか訊いてみようぜ」
379カケラ 4 and 間 by 久留里:2008/01/07(月) 01:27:35 ID:R9mz+48t
以上でございます。
1レス増やしてすんません。

次回はこなた視点でお送りします。
380名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 01:30:47 ID:hElG0UdJ
つかさ視点の時に誰かが言ってたのはもしかして…
とか考えながら続きに期待でGJ!
381名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 01:32:04 ID:o3wKwlGW
>>379
おお!ついに状況開始のようですな。
鉄道と謎解きが絡み合う物語、今後も目が話せない・・・
うん、そうなんだよ!
あの当時の大垣行きは、地獄の様相だったんだよ!
段々思い出してきた!!





こなた「なんかオラワクワクしてきたぞ」
かがみ「漫画が違う漫画が!」
こなた「(自分で言ったくせに・・・)・・・じゃあこれは?
     ♪嗚呼一寸待ってくれ〜俺を置いていかーないでくれ!」
かがみ「ば・・・ばんぷ!?」
382名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 01:55:19 ID:0cg2nuA4
お二人ともGJです

すいません、あんまり間があいてなくて恐縮ですけど、
2時くらいに投下します
38316-187:2008/01/07(月) 02:00:23 ID:0cg2nuA4
ごきげんよう。
それでは投下させていただきます。
『4seasons』の続きです。


■かが→こな。
■大変シリアスな感じです。 
 あんまりこの言葉簡単に使うの好きじゃないのですが、
 もしかしたら「鬱」なのかもしれません。
■エロなしです。

6レスになります。
384夏/窓枠の花(第三話)1/6:2008/01/07(月) 02:01:00 ID:0cg2nuA4
§3

 予兆は、あった。

 今思えば、この頃のこなたはずっとおかしかった。
 なのに私がそれに気づくことができなかったのは、ひとえに私自身がおかしかったからに
他ならない。
 こなたの様子に常と違うところを見いだしたとしても、それが果たしてあいつ自身の変化に
よるものなのか、それとも色に惚けた私の受け取り方に問題があるものなのか、判然と
しなかったからだ。
 それに最近の私は、自制しようと必死になるあまり、こなたとできるだけ二人きりになるまいと
していたから。
 だからこなたの変化に気づけなかったのだし、だからこそあいつはそれを誰にも相談
できずに、一人で胸の裡にため込んでいってしまったのだろう。
 自分の不甲斐なさに愕然とする。こなたのことを傷つけて、そしてこなたがその傷口を
自分で拡げては呻いていることに気づきもせずに、なにが“自制”なのか。

 そんな私は、夏の驟雨を浴びて一人佇んでいるのがお似合いだ。

 空を振り仰げば、滝のような雨が全て私に向かって降り注いでくるように思える。
 厚い雲に覆われて、太陽がどこにあるのか探せない。
 手で庇を作って、眼に入り込む雨を少しでも遮ろうとするけれど、すぐにそんなことは
無意味だと思い知る。
 探したかったのは、太陽じゃない。
 遮りたいのは雨じゃない。

 このまま雨に溶けて消えていければいいのに。
 ――そう、思った。


 それに最初に気づいたのは、誕生日プレゼントに貰った『マリア様がみてる』のアニメを
見ているときだった。
 馬鹿みたいに私は、自分を主人公の福沢祐巳に見立てて妄想していた。主人公だし、
ツインテールだし、そのくらい自己投影してもかまわないだろうと思った。
 当然長髪の祥子様はこなただ。
 その清流のようにこぼれ落ちるぬばたまに艶めく黒髪は、光の加減かあいつの髪みたいに
青めいて見えるから。
“かがみ、リボンが曲がっていてよ”
 そう云って、こなたは私のリボンを直してくれる。手元が見えないから、少しつま先だちして。
“かがみ、このロザリオ、あなたの首にかけていい?”
 そう云ってこなたは私の首にロザリオをかける。それは崇高な姉妹の儀式だ。妄想の中の
こなたは、私の頭に手が届かなくて、やっぱりつまさき立ちになっていた。
「……お姉様」
 小声で呟いてみる。
 口に出すと途端に恥ずかしく、慌ててその妄想を打ち消した。
 姿見に映った私の顔は、馬鹿みたいに蕩けていた。
 ――なにやってんだ私は。
 そんな自分に呆れかえりながら、トレイからDVDを取り出してケースにしまう。
 そのとき、ふとブックケースに書かれた値段表示が目についた。

 税込価格:8,190円。
 えっと、全6巻だから――48,000円!?
385夏/窓枠の花(第三話)2/6:2008/01/07(月) 02:01:33 ID:0cg2nuA4


 その値段の高さに気づいて愕然とする。
 アニメのDVDがこんなに高いとは思わなかった。私だけではなくつかさにも贈っているの
だから、併せて十万近くにもなるだろう。
 それは高校生が気軽に出せる金額じゃない。
 いくらこなたがバイトをしているといっても、まだ学生のこと。平日は週二で放課後四時間、
それに土日のどちらかで出るというシフトだったはずだ。
 時給がいくらかは知らないけれど、少なくとも一月分のお給料をまるまるつぎ込んでも
足りないだろう。
 お互い社会人なら高価なプレゼントを喜びもしようけれど、私たちはまだ親のすねをかじって
いる高校生で。誕生日プレゼントなんて、そこに気持ちが籠もっていれば、お小遣いで気軽に
買えるもので十分なのだ。
 だからそのとき私は、嬉しいと思うよりも先に、なんだか釈然としない、変な気持ちになった。
急にきなくさい臭いを嗅いだような、なにか大切なものを見過ごしているような。
 そんな感覚だった。

「ふひー、すずしー! やっぱ喫茶店は都会のオアシスだよ」
「ほんと、今年の夏は暑いわよねー」
 太宮駅東口、ルミネ前の喫茶店で、私とこなたはほっと一息ついていた。
 夏休みも一週間が過ぎ、私は久しぶりにこなたと会った。
 なんのかの理由をつけて会うのを避けてきた私だけれど、『参考書を買うから一緒に見て
欲しいんだ』と云われたらつきあわざるをえない。
 太宮に来たのは三省堂があるからだったけれど、用が済んだ後ゲーマーズに寄るのもどうせ
いつものことで。その点はすでに最初から諦めていたのだった。
 喫茶店の半透明の窓から見える駅前広場では、じりじりと降り注ぐ陽射しに誰もが辟易した
様子だった。
 早く涼しい所に避難しようとしてるのか足早に歩く人、ぐったりと肩を落として力なく歩く人、
待ち合わせなのだろう、親の敵のように陽射しを睨みながら時計のポール脇で佇んでいる人。
 この国は今夏で、外はうだるように暑く、誰もが汗をかきながらそれに耐えている。
 けれど私はこの涼しい喫茶店で、暑さのせいではない汗が噴き出てくるのを感じていた。
 サテン地のレースが入ったキャミに、胸元にリボンの入った花柄の透けキャミを併せた
こなたは可愛らしかった。
 黙々とチョコレートバナナパフェをついばむ姿が、なにかの小動物みたいで無性に抱きしめ
たくなる。
 と思えば突然「交換」といって、私のマンゴーフラッペとパフェを入れ替えた。
「あ、ちょっ、返事聞く前に勝手に交換するなっ!」
「いいでしょ、食べたかったんだもん!」
 そう云って、まるで私に取られるのを恐れるようにフラッペを抱えこんで、勢いよく食べ出す。
「おおお……頭が……」
 そう云って頭を抱えて突っ伏した。
「……お約束だな、おい」
 まったく何をやってるんだか。 
 呆れながらも目の前にあるパフェを食べようとして手が止まる。
 こなたが使ったスプーン。
 ためらったのは一瞬のこと。こんなことで照れるのも明らかに不自然だったから、平気な
ふりをして食べ始める。
 ちらとこなたの方を眺めると、何も気づかなかった様子で、黙々とマンゴーフラッペを
ついばんでいた。
 その姿がなにかの小動物みたいで、無性に抱きしめたくなる。
 ――私こそ、まったく何をやってるんだかな。

 パフェの味は全然わからなかった。
386夏/窓枠の花(第三話)3/6:2008/01/07(月) 02:02:05 ID:0cg2nuA4


 食べながら、色々とたわいないことを話した。
 最近のテレビのこと、マリみて小説版の展開のこと、受験のこと、家でつかさがだらしないこと。
 私はそれだけで幸せだったけれど、なんだかこなたはたまに沈んだ表情をしていた。思い
起こせば、近頃たまにこんな表情をみせていた気がする。それを見る度に、なぜだか私の
脳裏には桜の幻影が浮かぶのだ。
 そして会計のときだった。
 こなたはおもむろに伝票を掴むと、「ここ、わたしが払っとくから」と云ってさっさと会計に
向かってしまったのだ。
「え、ちょ、ちょっとこなた?」
 鞄の中を確かめていた私は慌てておいかけたけれど、こなたはもうお財布を出してしまって
いた。ここで押し問答をすると迷惑になると思って、お店を出たところで問い詰めた。
「なんでよ、なんであんたのおごりなの? 払うってば」
「いいからいいから。ほら、今日はわたしにつきあってもらったんだし?」
「はぁ? そんなの…誰が誰につきあってもらったとか、私たちそんなんじゃないだろ」
「んなこと云ったら、おごったとかおごってもらったとかも、そんなんじゃないんじゃないの?」
「……そりゃ…そうだけどさ。うーん、でもなんか今のは違くないか?」
「もう、かがみってほんと変なところで生真面目だよね。わたしは働いてて、かがみはそうじゃ
ないんだから、もらっとけばいいじゃん」
「働いてるっていっても、バイトでしょうに。そんな十万二十万もらってるわけじゃないだろ。
本分は学生なんだから、やっぱりおごってもらう筋合いなんてない!」

 なんでだろう、今日はやけにつっかかる。
 そもそもあのオタク趣味一直線でいつもお金に困っていたこなたが、飲食物を気軽に
おごろうなんていうのはおかしいのだ。
 そういえば今日は本屋やゲーマーズでもなにかおかしかった。私が手にとった本をみて、
『欲しかったら買ったげようか』なんて変なことを何度か云っていた。てっきりなにかの
ネタなのかと思って流していたけれど、してみるとあれは本気だったのだろうか。
 表通りでは目立ってしかたがなかったから、裏路地にひっこんで、汗だくになりながら
払うの払わないの云い続けた。
 私は、誕生日プレゼントのDVDの値段のことを考えていた。
 今日のこなたの服だって、初めて見たものだった。去年も一昨年も、ずっと同じ服を着合わせで
ごまかしてたのに。
「あんたまさか……」
 声色が変わったのを察したか、こなたが虚を突かれたように私を見つめる。
「あんたまさか、変なバイトに手を……」
 と云いかけたところでこなたの鞄が私の顔面に直撃する。痛くはなかったけれど、
『ふごっ』なんて変な声がでた。
「んなわけないでしょ!!」
 真っ赤な顔をして、ふーふーと息を荒げて私をにらみつけてくる。“あ、可愛い”なんて
思った私はきっと暑くて脳が溶けている。
 しばらく無言でにらみあったあと、こなたはふっと哀しそうな顔をしてこう云った。

「かがみは、そんなにわたしに借りを作りたくないの?」
387夏/窓枠の花(第三話)4/6:2008/01/07(月) 02:02:36 ID:0cg2nuA4


 なにか電撃のようなものが私の背筋を貫いた。
 この会話は危険だ。本能がそう告げる。
「そ、そんなことないわよ……でも……」
 そう云って目を伏せた私に、こなたは激するでもなく責めるでもなく、淡々とした口調で
問いかけた。

「かがみはさ、最近わたしに冷たいよね?」

「ちがっ!」

 反射的に顔を上げて放った言葉は、最後まで云いきることもできず、私とこなたの間、
空中のどこかで消えていった。

 こなたの青竹色をした大きな瞳の端に、みるみる涙がふくれあがっていって、頬を伝って
こぼれ落ちていく。

「みんなと一緒にいてもわたしと目をあわせてくれないし、勉強も教えてくれなくなったし、
前は自然と隣に座ってくれたのに、最近絶対つかさを間に挟むようにしてるし、試験休みから
何回誘っても全然会ってくれないし、メールの返事は他人行儀だし、今日だって……
久しぶりに会ったのに、あんまり楽しそうじゃなかった……」

 だってそれは。
 全部。
 あなたのことが好きだからで。
 
 好きで好きでどうしようもないから、なんとか距離を置こうとしていて。
 それで。

 そう云いたかった。声を荒げて叫びたかった。
 けれど私は何も云えずに立ちつくしていた。

「……ごめん、ほんとはわかってるよ。かがみは受験で一生懸命だから、そういうの邪魔
なんだよね? わたしなんかと違ってかがみには夢があって……。慶応とか上智とか入って、
弁護士になって、沢山の人を助けてあげるんだよね? それには一杯一杯勉強しないといけないから、
わたしみたいな落ち溢れと遊んでる暇なんて、そりゃないよね……」

「ちが……ちがうよ……こなた…そんな…そんなことじゃ……」

 のどがひりつくように痛い。
 懸命に言葉を絞りだそうとするけれど、喋り方を忘れてしまったみたいに、途切れ途切れに
しか声がでてこない。
 それでもこなたはそんな私の言葉を黙って聞いてくれたあと、ぎゅっと目を閉じてぶんぶんと
頭を振った。
 こなたの青い長髪がたおやかに流麗になびき、そのあわいに舞い飛ぶ涙がきらきらと光を
反射していて。
 なんて綺麗なんだろうと、こんなときなのに、まるで人ごとみたいに思った。

「じゃ……なに?」
 うつむいたまま、こなたは呟いた。
「なに……なにって……」
 なんだろう。
 なんて云えばいいのだろう。
 なにが云えるだろう。
388夏/窓枠の花(第三話)5/6:2008/01/07(月) 02:04:35 ID:0cg2nuA4


“私はずっと黙ってたけど実は両性愛者です。あなたが好きです”

 云えない。
 それは云えない。
 人口の97%を占める異性愛者の中で、こなたが私を受け入れてくれる可能性は3%を
はるかに下回る。
 アニメや漫画なら、どれだけ可能性の低さを示されてもハッピーエンドになるけれど、
生憎現実はそうじゃない。

 永遠に失ってしまうなら、誤解されたままのほうがましだった。

 私が押し黙っていると、こなたはうつむいたまま小さくため息を一つついた。

「云えないんだね……」

 そう云うとこなたは振り向いて、手の平で涙を拭いながら走り去っていく。

「あ、こなた! ま、まって、まってよ!」

 慌てて手を伸ばして追いかけようとするけれど、私の足はまるで別人みたいに云うことを
聞かなくて。
 心も体も錆びついて軋んでいる。
 走り出そうとしたけれど、足がもつれてふらふらとしゃがみこんだ。
 そして私は力尽きたように倒れ込む。

 ――何かが、砕けていく音がした。


 雨がいつ降り出したのかは、よくわからない。

 気がついたらどしゃぶりの雨に打たれていた。
 それが私の心象風景なのか、それとも現実の雨なのか、それすら判然としなかった。
 そんなことはどちらでもよかった。

 こんな私など、夏の驟雨を浴びて一人佇んでいるのがお似合いだ。

 空を振り仰げば、滝のような雨が全て私に向かって降り注いでくるように思える。
 厚い雲に覆われて、太陽がどこにあるのか探せない。
 手で庇を作って、眼に入り込む雨を少しでも遮ろうとするけれど、すぐにそんなことは
無意味だと思い知る。
 探したかったのは、太陽じゃない。
 遮りたいのは雨じゃない。
389夏/窓枠の花(第三話)6/6:2008/01/07(月) 02:05:06 ID:0cg2nuA4

 ――こなた。
 こなた。あいつは。
 私に嫌われていると思って、悩んでたのかな。
 私がこなたのことを避けようとしたことなんて、初めてだったから。
 だから、どうしていいかわかんなくて、迷って悩んで。
 せめて気前よくお金をだすことで、つなぎ止めようとしたのか。

 それがあまりにも哀しすぎて、なぜだか笑ってしまった。
 不器用で、馬鹿で、優しくて。
 そんなこなたが哀しすぎるから。

 そしてこなたにそんなことをさせたのが私なのだ。

 ――このまま、雨に溶けて消えていければいいのに。

 服が雨に濡れそぼり、水を吸って身体に張り付いて気持ち悪い。

 それはつかさが見立ててくれたお気に入りの服。

 ボーダーのタイ付きカットソーに、リボンがついたフレアスカート。
 今朝姿見の前でこの服を着たときは、あんなに幸せだったのに。

 あのときの気持ちを思い出そうとしたけれど、なんだかテレビでみたシーンを思い浮かべて
いるみたいで、まるで現実感がなかった。

 ――ごめんね。ごめんねつかさ。あんたが選んでくれた服、哀しい思い出の服に
なっちゃった。
 きっとあんたのことだから、“この服を着てて、おねえちゃんがずっと笑ってたらいいな”
なんて思ってたんだろうにね。

 いったいどのくらいそうしていたのだろう。
 まるで時間感覚が失われていた中で、ふと鞄の中のケータイが着メロを歌いだした。
反射的に慣れ親しんだ動作で取り出して、送信者名を確認した。

『ツカサ』

 そのなによりも日常を思い出させてくれる文字列は、私をやっと現実に引き戻してくれた。

 そのときになって初めて、私は泣くことができたのだ。

(つづく)
39016-187:2008/01/07(月) 02:05:51 ID:0cg2nuA4
以上です。ありがとうございました。

えー、前回の感想で「そろそろ夏も終わり?」
というものをいただきましたけれども、
大変申し訳ないのですが、
「夏はあとちょっとだけつづくのじゃ」ということで。

あと、最終的にはハッピーエンドになる予定…です…たぶん…。

それではごきげんよう。
391名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 02:24:44 ID:R9mz+48t
GJです!!
結末が非常に気になる件について。
392名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 02:31:37 ID:o3wKwlGW
「ぬぐあああああああっ!はっぴいえんど!
 はっぴいにしないと許さない!ていうかSATSUGAI!!」
「どうどう、おちつけかがみ!わかったからもー
 書いてくださった作者様にしちれーだよ(=ω=.;)
 あー、えっと、>>390GJだよー。
 あいも変わらずのディテール能力、そして今回は
 叙情面、感情面にも描写がほどこされてて、
 別方向に、ぐぃぐぃっとぉ、引き込まれましたよ」
「ううううう;;あんたはこんなときにようも冷静に・・・
 もう一度その体に私を刻み込んでやるうううう!」
「ひぇえぇええぇ!鬱屈して発作発情すなアッーーー!!」
393名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 03:04:12 ID:po4EGNEw
>>390
激しくGJ!
せつないのう…せつないのう…
394名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 03:14:57 ID:PVrCHcz2
>>390
GJすぎる・・・
だが胸が痛い・・・
こなたもかがみも悲しすぎる…
できれば幸せになってもらいたいなぁ
395名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 03:43:38 ID:/YBtIDfs
切ないわぁGJ
俺も切ない展開が書きたいのに、なんか欝になるんですけど!
バランスが難しい・・・助けてゴッドかなたさん!

最近ゴッドかなたさん分が足りない
396名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 03:44:52 ID:x+3PEzlW
>>390
重!
あ、いやいや、大変GJでございました、しかし切ないですね、お互い相手を大切に想っているからこその擦れ違い……ああ、続きが気になります。
と言うことでありがとうございました!
397名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 03:51:03 ID:WxpncEjA
>>390
切ねえっす…
こなたとかがみはハッピーエンドで終わるというのが俺のデフォ(勝手的な意味で)


それはそうと。
昨日スキー行ったら壮大にこけて鼻血出た瞬間みゆきさんを思い出した。


 お 前 ら の せ い だ。
398名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 06:48:25 ID:r1AYE1sj
>>390
ぬう、相変わらずシリアス上手いですなあなたという人は。
はらはらやきもきしながら、続きをお待ちしております。ぐっじょぶ。


あー、でも夏にこじれたということは秋もすれ違い続きますか。はらはら。
399名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 10:28:36 ID:j+c07j1N
ぎょぴちゃん×かがみんのハードエロ(・∀・*)マダー?
400名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 10:51:47 ID:X5kezr5y
いいだしっぺの法則。
みんな、>>399に期待だ。
401名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 11:03:17 ID:zOKwOgPs
てのりきんぎょ〜
402名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 11:31:22 ID:UWdvhQId
手乗り金魚に食われるのか…
403名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 11:34:02 ID:78HGn5Cv
かがみがぎょぴちゃんを食べる話か。シリアスだな
404名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 11:37:05 ID:/YBtIDfs
「かがみ、これウミガメスープだよ」
405名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 11:39:38 ID:hElG0UdJ
「お姉ちゃん、これウミガメスープだよ」


これじゃ黒つかさじゃないかww
406名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 11:41:52 ID:zJQrMj5A
「煮て良し。焼いて良し(扇子持って踊りだす)」
「やっぱり餌やりすぎたわコイツ・・・」
407名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 12:05:58 ID:rPWbDOxy
>>395
ぶーわ氏のHP行くと良い事あるかも
408名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 13:09:47 ID:MYWCrhhz
こことらき☆ばとのスレを見てたら、らき☆ばとに隠しで『こなたんず(オリジナル除く)』がでるかな〜なんて。


ちなみに基本的にはボーイッシュこなた&インテリこなた(メルブラの翡翠&琥珀)で行動、
コマンドで攻撃するときに他のこなた達が出てくるなんて妄s(ここから先は血まみれになって読めない
409名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 13:14:40 ID:TdvftegY
ぶーわ氏のマイミクに7-896氏っぽい人がいて
なんか和んだ。
あの二人が組んだら大変なことになりそうだ(いい意味で
410名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 13:14:45 ID:/YBtIDfs
>>408
そここそゴッドかなたさんだろ
411名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 13:30:09 ID:tJ+OsDji
ぶーわ氏のHPってどこにあるんですか?
前も質問したんですが、いまだにわからなくて・・・
412名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 13:31:20 ID:9EpM/3jJ
金魚でざざむし思い出した俺はもうダメですね

>>411
画像のURLを削るとスクラッチ!
413名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 13:44:01 ID:/YBtIDfs
ぶーわ氏があげてくれるイラストのURLから最後のスラッシュ以降を消せばおk
mixiでは人袖の番外編的な事やってくれてます
414名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 13:44:12 ID:8TGiYVWF
しっかし最近
wikiの最新情報がちょっと問題定義な件。

しかし、最適な回答も同時に出た件。
結構、重大な問題も含まれたよなあ、今回・・・。
415名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 14:16:58 ID:9EpM/3jJ
あのとき、ちょっと向こうを覗いたが煽ってるのは携帯ばっかりだったな

ここにはVIPから流れてきた草民も居るんだろうが、
同じようなノリで凸なんかしたらどうなるかぐらい予測できなかったのかね
URL晒した奴も、便乗して凸した奴も……
ここは2chじゃなくて年齢制限のあるBBSPINK
大人な対応を出来ないようなら草板から出てくるなと
416名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 15:14:36 ID:wa8+r4am
内容:
-- (2008-01-07 14:48:43) に追加された文章は誰が書いたのかな
名無しでもなく、管理人の名前でもない、BBS運営者の名前でもない

-- 名無し (2008-01-07 02:10:22) が書き込みしてるだけで
携帯サイトの管理人が高校生だとは向こうのサイトのコメントには
書かれていないので確かな情報ではないから、それを前提に書き込むのも
このスレ住民のとるべき大人の対応ではないと考えます

それ以前に、無断転載された職人さんの一人もスレにこの件が書き込まれたとき
削除依頼をかけたので静観するようにレスされていましたから、
このスレにいる大人の住民なら仮にあちらのサイトに意見するにしても暴言を吐いたりしないでしょう
417名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 15:57:39 ID:iwtLKCRS
転載された本人が、

244 名無しさん@ピンキー sage 2007/12/29(土) 05:23:45 ID:2BTkKvck
>>241
先ほど違反報告フォームを発見しましたので、そちらを介してサーバー管理会社に
本件のことを報告いたしました。当方の作品のみでなく、まとめwikiより無断転載された
作品に関しても記載してありますが、年末年始ということで対応は遅くなりそうですね。

ただ、このような事象に関しては管理会社のほうにお願いするのが現状では
一番良いと思いますので、返信があるまでは静観しておきたく思います。

と最良であろう選択をしたのに、荒らしがそれを無視して凸して今回みたいになってあとは放置だろ?
静観してた人も作者本人もやりきれないだろ、これじゃあ。
418名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 16:02:22 ID:/YBtIDfs
>>409
二人の協力があってあの人袖触のラストがあるわけですね! 感服いたしました
419名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 16:03:33 ID:7SbWWCXI
私はこのスレに久しぶりに来たんだが、見ない間に無断転載でもあったのか?
420名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 16:06:41 ID:UWdvhQId
>>419
御名答。
しかし保管庫の長文があれであんまり読んでないのだが
結局どうなったの…?
421名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 16:31:34 ID:iwtLKCRS
>>419 >>420
今回のまとめ。

・かなたさんモノやかがこな・こなかがモノ計数十作品が携帯サイトに転載される
・前スレ238で問題の携帯サイトのURLが書き込まれる
・前スレ239で◆cj23Vc.0u.氏が嘆く書き込みをし、その後>>417を書き込む
・携帯サイトの掲示板に突撃・炎上が発生する
・アナウンスなしで小説コーナー閉鎖、しかしトップの掲示板は引き続き炎上
・アナウンスなしでサイト凍結
・サイト管理人からのメッセージが掲載される
・wikiに飛び火 ←今ココ
422名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 16:39:53 ID:j+c07j1N
掲示板への突撃はともかくサイトの閉鎖や管理人のショックは自業自得
Wikiの書き込みはKY
せっかく収まってた話なんだからもうぶり返さないようにして
Wikiのあれも放置で今回はこれでおしまい
423名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 16:44:04 ID:Vr9qPTJv
揉め事ですか?危険があるかも知れないので泉さんを安全な場所に隔離して置きますね(だばだば
424名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 17:10:53 ID:qYyR0kj/
パニックになったのかも知れないがあちらの管理人氏の対応がまずすぎた
炎上といっても、掲示板への書き込みの中には
「まず何より先に無断掲載であることを認めて詫びないと攻撃され続けるよ」
という意味合いの丁寧な言葉で書かれたアドバイスもあった
凍結するなら一気にやればいいのに、書き込みフォームは入力できる状態で
何を書いてもNGワードが含まれますで跳ね返されるという状態だった
(417絡みで静観を求める内容を書こうとした)
しかも炎上前の書き込みで、あちらのサイトの住民が掲載されてる作品群は
かなた(管理人)さんのものですかとの問いにも否定も肯定もせず
後に書き込まれた別の書き込みにレスしていた
謝罪しないまま、今のコメントにある様に、PCだけではなく携帯からも見てもらいたかった
という意味合いの書き込みをしていたかな?
425名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 17:35:41 ID:UWdvhQId
ふぬ、大体把握。
書いてくれた方々ありがとう。
426名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 18:11:27 ID:GyM1kq60
どうでもいいんだが、wikiは携帯でも見られるから、言い訳にもならないよ。
ここで反省がないようなら、また同じ事を繰り返すだけだ。
427名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 18:20:30 ID:Ler3uGSP
ttp://www.vridge.co.jp/homepage/contents/products/lucky_ps2/word.html

このやり取りに、深い意味を感じざるを得ない
428名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 18:42:06 ID:tJ+OsDji
ぶーわ氏のサイトへ行けました。
教えてくださった方、ありがとうございました。
429名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 18:48:28 ID:PSZO1zMG
事実関係がほぼ出尽くしてる様ならもう大人の対応で掘り返さなくてよいと思う
これ以上掘り返しても板が汚れるだけだし、おかしな流れをまた生じさせかねない
>>417がコピペしてくれた◆cj23Vc.0u.氏の前スレ244のレス内容を尊重したい
430みゆつか愛してる:2008/01/07(月) 19:32:48 ID:L/Jwuw18
>>335
はい、その通りです

>>338
是 非
つかみゆが公式になるくらいつかみゆの魅力を多くの方に教えましょう!

>>325-331を投下したものです。
今日も投下させていただきたいと思います。

>>325-331の続き
・自慰あり
・8〜9レス拝借

それではいきます
431みゆき×つかさ・中編1:2008/01/07(月) 19:35:37 ID:L/Jwuw18
『つかさってば、みゆきさんのこと好きでしょ』
こなちゃんにそう言われたのは、お姉ちゃんとこなちゃんが付き合っていることを私達に告白してくれた日の夜。
晩御飯を食べ終えてから間もなく、お姉ちゃんはこなちゃんと電話でお話をしていたら、急に顔を真っ赤にして
恥ずかしそうで、でもかなり嬉しそうに、電話を終えると自分の部屋に、浮き足立った様子で戻ってったんだ。
私の携帯にこなちゃんから連絡がきたのはそれからすぐ。
話してみたら、お姉ちゃんはひとりでこなちゃんのおうちでお泊まりするみたい。
最初はお姉ちゃんだけっていうのに違和感を覚えたんだけど、こなちゃんいわく恋人同士ってそんなものなんだって。
ちょっと寂しいな〜……なんてことをこなちゃんに漏らしたら、こなちゃんは受話器の向こうでふっふっふっと笑って
『じゃあさ、つかさも泊まりに来てもらえばいいんじゃん』
「ふぇ? 誰に?」
『決まってるじゃん。みゆきさんだヨ』
「ゆきちゃん? それはいい考えだね〜♪ でも大丈夫かな? ゆきちゃん忙しくないかな?」
『大丈夫だヨ〜、だってみゆきさ……っと。みゆきさんが泊まればつかさだって寂しくないし、それにね』
「なあに?」
――――好きでしょ、なんて言われると思ってなかった。自分では、その想いをずっと隠してたつもりだったから。
もしかしてみんなに気付かれてた? それともこなちゃんだけ? 驚いた私がこなちゃんに訊ねると、
『かがみは鈍感だし、みゆきさんは気付きそうであれでなかなか……というか向こうが……いや、なんでも』
とりあえず、気付いていたのはこなちゃんだけらしくて。私は顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。
私がいつもちらちらと、ゆきちゃんを見ていたのがバレてたのかな? 
だってゆきちゃん、私と違って頭も良くてなんでも知っていて、大人っぽくて余裕があって、優しくて、綺麗で、
運動もできて、体付きもすごくて、でもちょっとぼけぼけとしたところが私に似て親近感も覚えて、その……。
好きなところはまだまだあったはずなんだけど、私の言葉だけじゃ表せきれないくらい、魅力的な女の子。
四人で食事をするときも、私はなるべくゆきちゃんに向かって笑いかけるようになっていた。
なにか賛同を求めたり、反応を伺ったりするときは、ゆきちゃんの表情から読み取るようにしていた。
少しでも多くゆきちゃんを見つめていたかったから。きっとゆきちゃんなら、私が満足する表情を見せてくれる。
今日だってこなちゃんから打ち明けられたとき、ゆきちゃんにパスを回したのは、私にそんな気持ちがあったから?
私がそんなことを考えるのは、自分にないものをたくさん持っているゆきちゃんへの強い憧れだと思っていた。
それは恋愛だってこなちゃんに指摘されても、なぜか自分で考えても否定しちゃいたくなることだったし……。
『いつもは四人でお泊まりだし、泊まるとしても私の部屋かかがみの部屋だからね〜。色気のないものだヨ。
それはそれで嫌いじゃないんだけどさ、今度は二人きりでじっくり愛を語らうのもいいじゃん』
「あ、愛って……」
そんなこと言われても、私にはよくわからなかった。そもそも、ゆきちゃんと二人でそういう話をするってことを
想像するだけでも恥ずかしいのに……こなちゃんは『告白!告白!』と私の後押しを連呼していた。
たしかに、ゆきちゃんのことを考えると、胸がズキズキ痛いし。今だってこうして……。
少女漫画とかだとそういうのは恋愛感情だっていうけど、後押しされても私には、不安なことが多すぎて……。
432みゆき×つかさ・中編2:2008/01/07(月) 19:37:33 ID:L/Jwuw18
「……こなちゃんは、私のこと応援してくれるの?」
『当たり前じゃん。つかさやみゆきさんだって、私達のこと応援してくれてるんでしょ? 
みゆきさんは女の子同士とか気にしないみたいだし、私もつかさと同じで、大好きな二人が好き合えば嬉しいヨ。
それはきっとかがみも同じだからさー。まあかがみはつかさのこんな気持ちに気付いてないみたいだケド』
「ありがとう……でも、ゆきちゃんはお姉ちゃん達を認めたけど、自分がそういうことになるのは嫌な人だったら……。
それで友情とか壊れちゃって、今の関係が台無しになっちゃったりしちゃったらって考えたら、
それに告白とか私にはよくわかんないし、もしかしたら私の気持ちが恋人同士の好きとかじゃないかもしれないし、
だから、今のままでもいいのかなって思っちゃうんだ。ゆきちゃんに迷惑かけたくないし、嫌われたくないから……」
こなちゃんは小声で『あー……それはないかナ……?』なんて呟いてた。それがどんな意味なのかはわからなかった。
なんだか話しているうちに、涙が出てきそうになってた。私、こんなこと誰かに話したくなかったのかな。
それとも、誰かに聞いてもらいたかったのかな? 胸の中にモヤモヤはなくても、なんだか切ない痛みがあって。
『つかさは、みゆきさんが恋人だったらって思って、イヤだななんて思わないでしょ?』
「わかんない。でも……」
私は頭の中をぐるぐる巡らせた。恋人同士だったらってどういうコト? 今と何が変わってくるんだろう?
より強く仲がよくなるなら、たとえば手を繋いだり、キスをしたり、その……。
「……思わない、かも」
『あのねー、つかさ。私とかがみのことなんだけどさ。実は告白したのは私のほうからなんだよネ』
「え? こなちゃんから?」
『ツンデレのかがみが自分から告白するように見える?』
それはよくわかんないけど……お姉ちゃんはそういうのすごく恥ずかしがりそうだから、そうなのかも。
反面こなちゃんはすごく大胆で、押せ押せって感じだから、時々羨ましくなっちゃうんだ。
『私はずっとかがみのことが好きだったし、かがみも私のことが好きなのかもしれないってことは薄々感づいていた。
ギャルゲーのしすぎで他人の恋愛感情に敏感になっちゃったのかな……ってことはないだろうけど、それはともかく。
両想いだってわかっていても、私は自分の気持ちを打ち明けるのにかなり勇気が必要だった。一生一度くらいの気持ちでね。
それこそ、さっきのつかさみたいなことも考えた。両想いなんて勘違いかもって思ったし、友情が壊れるかもってね。
二度とかがみと話も出来ないなんてことになったら、とても生きていける気持ちじゃなかったよ。
実際告白してOKをもらってみれば、かがみも私と同じことを考えてたみたいだけどネ。さすが私の嫁だヨ』
お姉ちゃんって、そんなことをずっと考えてたんだ? いつも一緒にいたのに、全然気付いてあげられなかった。
自分の鈍感さが恨めしい。もっと早く気付けば、優しい言葉をかけて安心させてあげたかったのに……。
『二人の気持ちが同じだってわかれば、あとはみんなから理解を得るだけだった。まずは親友の二人にはね。
あの場でこそ私は軽いノリで言ってはいたんだけど、実際は心臓ドキドキでねー。かがみ以上に不安だったかも。
まあ二人から拒絶されるなんて考えなかったけど、万が一されても私はかがみを守り通すつもりでいたよ。
だからつかさとみゆきさんから応援の言葉をかけられたとき、嬉しさと一緒にもうひとつやることができたんだ』
「私の、こと……?」
『そ。こんなに応援してくれるのに、私達だけ幸せなのはあまりにも不公平だからね。つかさの気持ちはわかってたわけだし。
他人の恋愛感情にいやに鋭い人間になって、よかったと思った瞬間でもあったよー。ギャルゲーさまさまだネ。
仮にみゆきさんにつかさの想いが届かなかったからって、友情は壊れたりしないよ。私達がフォローするから。
つかさがみゆきさんに想いを告げるのに、私やかがみが抱いていたような恐怖や不安を抱かないようにしてあげたいからさ。
だって二人は私達を理解して、応援してくれた大事な親友だもん。幸せになってほしいからネ』
433みゆき×つかさ・中編3:2008/01/07(月) 19:38:46 ID:L/Jwuw18
こなちゃんが優しい響きでそう口にした途端、私の気持ちが激しく揺さぶられて……。
「……うー」
『ど、どうしたのさつかさ!?』
ついに我慢できなくなって、私は涙をぽろぽろとこぼし始めた。ここが自分の部屋で本当に良かったと思う。
こなちゃんとお姉ちゃんの抱いていた不安が私の今の不安と同じで、それを理解してくれる人がいたこと。
そして優しい言葉をかけて、応援してくれる人がいること。お姉ちゃんやこなちゃんもきっと一緒だったんだ。
最初はきちんと恋と自覚はしていなかったけど、こなちゃんと話していてようやくわかった。
このままでもいいかななんて、私はきっと本当は考えてない。友情が壊れるのはたしかにイヤだった。でも。
ゆきちゃんを思うたびに感じるこの胸の痛みを、気付かないフリで早く解き放たれたかったのかも……。
お姉ちゃんとこなちゃんが幸せになってくれてよかった。自分の恋まで幸せになった気持ちがするから。
「こなちゃあん……ひっ、ひっ……ありがどう……ぐすっ」
『こっちこそありがとうだよつかさ。私とかがみだって、つかさとみゆきさんの言葉に救われたんだから。
かがみもきっと、私と同じことを言ってくれるから。つかさの恋はいわば、私達の恋だよ。なんてネ』
「今夜、ゆきちゃんを誘ってみる。こなちゃん、お姉ちゃんをお願いね?」
『任せといてヨ〜、せっかく誘ったんだし。むっふっふ……いや、かがみを誘ったのはあくまでつかさのためで、
そんないやらしいことを考えたわけじゃあありませんヨ? かがみの中ではわかんないけどねー』
もしかしてこなちゃんは、最初からこうなることを狙ってたのかな? 私にはわかんないけど……。
こなちゃんとの電話のあと、私は涙を拭いて深呼吸をすると携帯のアドレス帳からゆきちゃん家の番号を表示した。
ゆきちゃんからOKをもらうと、私はベッドの上のぬいぐるみを抱き寄せ、ぎゅっと抱き締めた。
「ゆきちゃん……」
丸っこくて柔らかいぬいぐるみ。私はこれをデパートで見つけたとき、ゆきちゃんの姿を思い浮かべた。
こんなこと知られたらゆきちゃんに怒られるかも。嫌われるかも。がっかりさせられるかも。
抱き締めたときの柔らかさ、暖かさ、どれも私はゆきちゃんから欲しかったものだったかもしれない。
このぬいぐるみを抱いて寝るとき、ゆきちゃんに抱き締められているところを考える。
いやらしい子だって思われるかもしれなかったし、自分でもどうかなって思ったけど、それは幸せな時間だった。
ゆきちゃんの名前を唱えながら、私はぬいぐるみを抱いたままベッドに転がった。
眠りにつく前に、ぬいぐるみにキスをして勇気をもらうことにした。こなちゃんの想いに、応えるため。

******

「いらっしゃい、ゆきちゃん! あがってあがってー♪」
やっぱり初めてひとりでお泊まりってことで緊張してたのかな? 
ゆきちゃんは私の家にあがると家の中を舐め回すように見てた。初めてきたわけじゃないのに。
緊張してるなら私だって一緒で……今日はできるだけゆきちゃんに楽しんでもらいたかったし、それに夜には……。
今日は私が晩御飯を作ることにした。ゆきちゃんに喜んでもらうべく、覚えたばかりのグラタンを振舞うつもり。
喜んでくれたら嬉しいな。そんな気持ちを抑えきれず、手伝いを申し出たゆきちゃんを自分のお部屋に閉じ込めた。
でもグラタンを作っている間、ゆきちゃんは手持ち無沙汰になっちゃってるかもという不安も出てきた。
私の部屋には、ゆきちゃんの喜びそうなものはひとつもない。ゆきちゃんはケロロ軍曹なんて読まないだろうし、
リビングでテレビでも見てもらったほうがよかったのかも……。
急いでグラタンを作りあげると、私はゆきちゃんを呼ぶべく自分の部屋へと向かった。
434みゆき×つかさ・中編4:2008/01/07(月) 19:40:05 ID:L/Jwuw18
「ゆきちゃーん」
「は、はい!」
「ご飯できたよー。みんなで食べよ?」
「あ、はい。そうですね! ではいただきますね」
ゆきちゃんはこっちを振り向かずに答えた。部屋の真中に立っていたゆきちゃんの腕には、ぬいぐるみが抱かれていた。
ゆきちゃんがゆきちゃんを抱いてる……あのぬいぐるみ、気に入ったのかな? デパートにまだ同じのあったっけ。
ゆきちゃんもぬいぐるみを抱き締めることなんてあるんだと思うと、意外でちょっと微笑ましかった。
でもそのぬいぐるみ、私がいつも抱き締めているんだよ? できればいつか、私のことも抱き締めて欲しいな。
なんてことを考えると、私は自分の顔が熱くなるのを感じた。ゆきちゃんが私を見てなくて、本当に良かった。
ゆきちゃんは本当に美味しそうにグラタンを食べてくれた。フォークまで食べているように見えていたくらい。
こんなに喜んでもらえるなら毎日作ってあげても……あ、そういうことをするのが恋人っていうの、かな?

******

お風呂が沸いた。お父さんもお母さんも、いのりお姉ちゃんもまつりお姉ちゃんも入って、私は新しいお湯を張る。
「ゆきちゃん、お風呂できたよ」
「あ、私はあとでかまいません。お先に入っていただいても……」
「そう? じゃあ私、先にいただいちゃうね」
「はい、ごゆっくり」
下着とパジャマを抱えてお風呂場に向かうと、私は脱いだ衣類を洗濯機に押し込んだ。
ふと、脱衣所に備え付けられている姿見に映る自分の姿をじっと見てみる。
お世辞にも発育がいいとは呼べない私の身体……いやでもゆきちゃんと比べちゃうんだよね。
ゆきちゃんはあのスタイルを指摘されるのを恥ずかしがるけど、羨ましさもあって私はどうしても気にしてしまう。
男の人はそういうのが好きなんだよね、きっと。ゆきちゃんはどういう身体が好き? 私はゆきちゃんのなんにも知らない。
湯船に身体を沈めて、ゆきちゃん好みの身体になりたいと思った。初めて自分のためじゃなく、誰かのために。
お風呂からあがるとき、自分の浸かったお湯にゆきちゃんが入るのが気恥ずかしくなって、私はまた新しいお湯を張る。
綺麗なゆきちゃんには綺麗なお湯に入ってもらいたい。私なんかが入ったお湯に入ってもらいたくないし……。
「あ、お湯は変えておいたから安心してね」
と言うと、ゆきちゃんの表情に少し陰りのようなものが見えたような気がした。
余分に水道代を使わせたと思わせたのかも。ゆきちゃんは優しいから。悪い事しちゃったかな……。
お風呂場へと向かうゆきちゃん。私はその間に、飲み物でも用意しておく事にしたんだけど、
ゆきちゃんが座っていた場所に、一冊の小さなメモ帳を見つけて足を止めてしまった。
「これ、なんだろ。ゆきちゃんが忘れちゃったのかな……」
もしかしたら大事な事が書いてるのかも。勝手に覗くわけにもいかないよねと思って私はそれを拾った。
でも、そのメモ帳の表紙を見て、私はどうしてもその中身を覗きたい欲求に襲われちゃったんだ。
「……『つかささん情報』?」
私の情報? タイトルからするとそういうことだよね。これをゆきちゃんが持ってたの?
色々考えると、私はちょっと面白いと思っちゃった。ゆきちゃんが何でも調べるのが大好きなのは知ってる。
もしかしたら友達の事まで、忘れずにしっかり覚えておこうと思って、こういうメモ帳を作ってるのかも。
友達思いと知りたがりがあいまった、ゆきちゃんらしいことだと思う。私はこんなに几帳面になれないし。
今日はお泊まりにきたから、予備知識をつけて私に対して粗相がないようにしたのかな?
435みゆき×つかさ・中編5:2008/01/07(月) 19:43:07 ID:L/Jwuw18
それに……ゆきちゃんが私のことを色々知っているっていうのはちょっと恥ずかしいケド、反面結構嬉しかったり。
もしかしたら『かがみさん情報』や『泉さん情報』なんていうものも持ってるのかもしれなかったんだけどね。
案の定、私はその中身を覗きたい欲求と対決する事になった。私の事とはいえ、勝手に読まれて気持ち良くはないはず。
「う……でもぉ……」
『つかささん情報』を持つ指がぷるぷる震えて、心の中の天使と悪魔が露骨に戦っちゃってる。
「わ、私のことだし、ちょっとだけならいいよね……?」
私は必死に言い訳を作り出して、それでもずいぶん苦しかったケド……。
『ゆきちゃん、ごめん!』と心の中で必死に謝ると、私はそのメモ帳のページを開いた。
1ページ目にはまず、プロフィール。名前、年齢、誕生日、血液型、身長に体重、住所に電話番号、趣味から利き手まで。
その他基本的な私の情報が書かれていた。やっぱりゆきちゃんはすごい。字もすごく綺麗だし。
私は自分の顔がニヤけていることに気付いた。そんなにわかりやすく喜ばなくても……顔の筋肉を引き締める。
『情報23 つかささんはチョココロネを虫に例えるとき、細いほうを頭だと考えるみたいです』
『情報38 つかささんの好きな調味料はバルサミコ酢のようです。意外です』
『情報54 つかささんはハードルを飛び越えるのが苦手のようです。何度も転んでいました』
さすがにそれは恥ずかしかった。でも、
「すごい……こんなに細かいところまでわかっちゃってたなんて……えへへ」
普通の人だったらちょっとは嫌悪感を持つところなのかも、私はむしろ嬉しくてたまらなかった。
ゆきちゃんがそんなに私のことを見てくれていたなんて。自意識過剰なのかもしれないケド……。
『情報89 つかささんの携帯は二代目になりました。一代目は洗ってしまわれたそうです』
ページをめくる手が止まらなかった。私のことをどこまで知ってるんだろう? どこまで知ってくれてるんだろう?
いつのまに私のことをそんなに見てくれていたんだろう? 私以外の誰かにも、そんな視線を送っているのかな?
『情報586 つかささんは後輩のひよりさんのためにネタを考えてくれているそうですが、
 ひよりさんからの評価はあまり芳しくないみたいです。つかささん、ファイトです』
そうだったんだ……私は軽いショックを受けながらページをめくる。
情報は3476まで来て、ストップしていた。最後の情報は私の家のテレビのインチの数だった。
ふと、最後のページのほうに起伏を感じた。最後のページのほうにも、なにか書いてある?
私はそっと開けて読むことにした。ここまで読んだら同じだという気持ちがあったのかも。
『私、高良みゆきが世界で一番愛――――』
そこで、廊下のほうから足音が聞こえて、私は心臓が飛び出しそうなほど驚いちゃって、
あわあわとメモ帳を手のひらに踊らせると、急いでパジャマのポケットに突っ込んでいた。
「お風呂いただきましたー」
ノックの後に部屋のドアが開くと、パジャマ姿で顔を上気させているゆきちゃんが現れた。お風呂上りってなんだか色っぽい。
「あっ、ゆ、ゆきちゃんもうあがっちゃったんだ? は、早いねー」
私はできるだけ自然な笑顔で答えたつもりだったけど、不器用だからゆきちゃんには見抜かれていたかもしれない。
気がつけばポケットのメモ帳を返すタイミングを完全に失っちゃってて……そのまま夜は更けていって……。
436みゆき×つかさ・中編6:2008/01/07(月) 19:44:51 ID:L/Jwuw18
******

それから私達はとりとめのない話をたくさんした。その会話の節々で、私はゆきちゃんの頭の良さを感じることになった。
私の知らない沢山の知識、綺麗な言葉遣い、安心を運んでくれる柔らかい声、ぷるぷるの唇、艶やかな瞳……。
……途中からはともかく、私は自分にはないゆきちゃんのそういった魅力に、ぐっと惹き込まれていて、
ゆきちゃんが何を話していたかわからなくなるくらいに、うっとりとした気持ちになって……それはとても幸せな気分で、
そういうことが人を好きになるっていうことなのかなって考えると、ちょっと恥ずかしいケド全然イヤじゃなくて、
多分そういったこともゆきちゃんは私より詳しいんだろうね……そう思ったら、私の胸に小さな不安が生まれてきた。
ゆきちゃんは好きな人はいるの……? 女の子同士だし、二人きりだから聞きやすい質問のはずなのに、
いつまでも聞いていたいくらい大好きなその声で、その答えを聞くことが怖くて、私は結局聞けなかった。
でも、これだけは聞いておきたかった。ゆきちゃんの中にはどれだけ、私のことが存在しているの……。
「じゃあ、私については……?」
私についてどこまで知ってるの? あのメモ帳の中身の分だけ? こんな気持ちを持ってることは知らないよね?
あのメモ帳は他の人にも作っているの? 私だけじゃダメなの? 私の全部を知っていてほしいんだよ?
「つ、つかささんについてですか……?」
ちょっと慌てていたみたいだけど、ゆきちゃんの口からは私の基本的な情報しか出て来なかった。
恋をすると胸の奥が苦しいって言うけど、本当だった。もっとゆきちゃんの口から、私のことを話してほしいんだ。
誕生日や血液型なんかじゃ足りない。もっと私の名前を呼んでほしいよ。「つかささん」っていつものように。
知りたいことならなんでも教えてあげるから、今の私の顔を、身体を、声を、心を全部……わかってほしい。
「ありがとう、ゆきちゃん。変な事聞いちゃってごめんね」
私は笑顔でそう返した。本当はまだまだ物足りないケド、ゆきちゃんもなんだか困ってたみたいだし。
満たされてないけど、今はそれでよかった。ゆきちゃんの中にはまだまだ私の知識があることを知っているから。
ゆきちゃん、ワガママでごめんね……それと、私ももっとゆきちゃんのことを知りたいんだ。
「私もね、ゆきちゃんのこと色々知りたいな」
「私のこと、ですか……?」
「うん、さすがに誕生日とかそういうのは知ってるケド、もっと色々な事知ってたら今よりずっと仲良く……」
「い、今よりずっと仲良く……! ……ですか」
ゆきちゃんはお顔を真っ赤にして、微笑んでいた。たしかに『もっとあなたのことを知りたい』なんて言われたら照れるよね。
「それは……自分の口からはどう伝えればいいのかはわかりませんけれど」
「うん……確かに難しいかも〜」
「ただ、私とつかささんはお友達です。まだまだたくさん時間はあります。これからもお互いに色々なことを知っていきますよ」
『お友達』の言葉に、また胸が痛んだ。今日はずっと、心がチクチクしてる。
「そっか……そうだよね。これからもよろしくね、ゆきちゃん!」
「はい、よろしくお願いします。ふふふ、何だか変な感じですね」
「あはは、そうだね。きっと、お姉ちゃんやこなちゃんもこんな風に仲良くなっていってるんだろうね」
ゆきちゃんは『ずっと仲良く』『これからもよろしく』と何度も呟いていた。喜んでもらえて嬉しいよ。
でも私のほうが、ずっときっと喜んでいる。本当にずっと仲良しでいられる? 私の気持ちを知っても?
せっかくこなちゃんが応援してくれているのに、私の心は不安でいっぱいになっていた。
437みゆき×つかさ・中編7:2008/01/07(月) 19:46:26 ID:L/Jwuw18
「ねぇ、ゆきちゃん」
「はい、何ですか?」
「……ううん、なんでもない」
「ふふ、変なつかささんですね。そこが可愛……くふっ」

******

夜11時。ベッドの横にゆきちゃん用の布団をひく。私の部屋に布団を敷いたのは何年振りなのかな?
寂しくなって誰かと一緒に寝たいときは、いつもお姉ちゃんのお部屋に行って、一緒のベッドで寝ていた。
シングルベッドだけど、私には大きな寝具だと思う。シーツの生地の私の体温が残らない部分、そこが時折怖くなる。
本当はゆきちゃんにそばにいてほしい。そんなことをいつも思っていたし、今日だって思っていた。
こんな私はきっと、ふしだらな女の子なんだよね。だからせめてそんな私を、ゆきちゃんにだけは悟られたくなかった。
「それではつかささん、おやすみなさい」
「うん、おやすみゆきちゃん」
……とは言ったものの、ゆきちゃんが横にいると思うと全然眠れない。それだけじゃない不思議もあった。
今、私の部屋にいるのは私だけじゃないはずなのに、どうしてこんなに寂しいんだろう?
大好きなゆきちゃんがそばにいるのに、どうしてこんなに寂しいんだろう?
ベッドの高さと、布団がしかれた床までの距離、私とゆきちゃんが離れている距離、1メートルほどしかないはずなのに、
私にとっては何十メートルにも思えるほど遠かった。昔から寂しがり屋とからかわれてたけど、今日は何故か特に寂しかった。
(ゆきちゃん……寝ちゃった?)
話しかけて確認するのもよかったけど、もしゆきちゃんが眠りかけていたら迷惑になると思って、私は口を噤んだ。
私にはわからない。大好きな人がこんなに近くにいて、どうしてこんなに孤独な気持ちにならないといけないのかな?
ぬいぐるみを抱き寄せ、ギュッと強く、できるだけ強く抱き締めた。私がゆきちゃんだと思っているぬいぐるみ。
(ゆきちゃんのお布団に入ったら、怒られるかな? ゆきちゃんはきっと笑ってくれると思うけど、迷惑かな?
 寂しがり屋だって思われるかもしれないし、もう思われてるんだろうけど……やっぱりゆきちゃんって温かいのかな?)
たまらなく寂しい夜、私はお姉ちゃんのベッドで寝る。ゆきちゃんの事を思って寂しい夜も、お姉ちゃんと一緒に寝る。
お姉ちゃんにゆきちゃんの代わりをさせているようで、いつも悪いと思っていた。だから私はぬいぐるみを買った。
できるだけゆきちゃんの胸の中で寝ている気分を味わえるように、柔らかくて弾力のあるぬいぐるみを……。
おかげでお姉ちゃんのベッドで寝ることは少なくなった。それでもやっぱり、我慢ができない時がある。
(ゆきちゃん……寂しいよ、ゆきちゃん……)
気がつくと私は、抱き枕ほどのサイズもあるそのぬいぐるみに……大事な部分を擦りつけていた。
その度に、ぞくぞくっとした感覚が身体に走る。
私が『それ』を覚えたのは、寂しくてたまらなかったある夜。ぬいぐるみだけじゃ孤独が収まらなくて、お姉ちゃんの部屋に行く事にした。
お姉ちゃんはその日、夜遅くまで勉強していて……邪魔しちゃいけないと思った私は部屋に戻った。
でもやっぱり寂しくて、私はゆきちゃんの代わり身をゆきちゃんだと思うようにして、身体を押しつけるように抱き締めた。
そのときたまたま私の大事な部分にぬいぐるみが擦れて……気がつけば私はそれの虜になってたんだ。
438みゆき×つかさ・中編8:2008/01/07(月) 19:47:24 ID:L/Jwuw18
「……ふっ……んっ……」
思わず声を漏らしてしまって、ゆきちゃんにバレてないか不安になった。でも私は我慢できなくて、
『それ』を覚えてから、私の中のゆきちゃんに対する寂しさはエッチな気持ちみたいになっちゃって、
どうしようもなく寂しいときは、ゆきちゃんを想ってぬいぐるみを抱き締めて『それ』をしていた。
ゆきちゃんのことを思ったときだけ私はそういう気持ちになって、強く想えば想うほど気持ち良くて、
ゆきちゃんに悪いって思いながら、自分のことを嫌いになりながら、それでも私は『それ』が止められなくて……。
(ゆきちゃんがいるのに……! そばにいるのに……! こんなことしちゃダメだよ……!)
心はずっと闘っていた。ゆきちゃんにこんな私を知られたくなかった。それなのに私は腰の動きを早めていく。
押し殺したくて堪らないのに、すごく恥ずかしいのに、私は漏れる声を抑えきれなかった。
「ああっ、あっ、あっ、ふぅ……んん……」
声は次第に大きくなって、私はショーツに熱いものが染みていくのを感じていた。
身体中が熱くなる。甘い痺れが頭の上からつま先まで走って、私はさらに強くぬいぐるみを抱き締める。
(やだやだやだ! ゆきちゃんに聞こえちゃうよ! お願い、もう止まってよ!)
頭の中ではそう思っているのに、身体がいうことを聞かなかった。いつもの『それ』よりもずっと気持ちいい。
ショーツだけじゃなくて、パジャマのズボンまで汚れちゃうくらい、私はもう溢れかえっていた。
自分でも気付いていたんだ。ゆきちゃんがそばにいるから、こんなに感じちゃってるんだって……。
「あっ、いいよぅ……んみゅ……あっ、ふぁ……!」
こんなところゆきちゃんに知られたら、絶対に嫌われる。それなのに私は、ゆきちゃんに抱き締められるところを想って……。
(ごめんね、ゆきちゃん……ごめん、ごめんね……!)
ゆきちゃんに髪を撫でられて、ゆきちゃんに頬に触れられて、ゆきちゃんに抱き締めてもらって、ゆきちゃんに……。
「すきっ、あっ、あっ、ひぁぁ……」
『すき』と言葉に出すだけで、下腹部がキュンと熱くなる。ずっと言いたくてたまらなかった言葉。
ゆきちゃんの笑顔を、声を、身体を思い出すだけで、爆発しそうになる気持ち。
(ゆきちゃん……抱き締めてほしいよ……私のこと、触ってほしいよ……!)
汗が止まらかった。ゆきちゃんも私と同じで、好きな人のことを想って気持ち良くなるのかな?
私のことを想って気持ち良くなる日が、いつか来てくれるのかな?
波のように押し寄せる気持ち良さが、次第に早く大きくなって、私は身体が浮きそうになった。そろそろあれがくる。
「ゆきちゃんっ、すきっ、あっ、ひあぁっ……!!」
大好きな人の名前を呼んで、私はその大きな波を受け入れる。身体がどこまでも浮かんでいきそうなこの感じ。
「あっ、あっ……はぁ、ふあ……」
(ゆきちゃん……大好きだよ……)
私は荒い息を吐いて、身体中の脱力感を感じながらも、ぼんやりとする頭の中でゆきちゃんを想っていた。
ふわふわしている私は、そのまま気持ち良さに抱かれて、ゆきちゃんを想ったまま、眠ることにする。
まぶたが重くなって……ぴたりと閉じて、意識が遠くなって、何も聞こえなくなってきて……。
―――何かが私の髪を、軽く撫でたのを感じたんだ。
意識が急に引き戻された私は、驚いたけれど急に飛び起きたり、目を開けたりはしなかった。
なんとか狸寝入りは続けていて……耳はさっきより敏感に音を感じるようになっていて、
私は……横の布団に何かが入る音を聞いていた。それからしばらくしてはっきりと……ゆきちゃんの寝息を聞いちゃって。
(うそ……ゆきちゃん、起きてたの? 私のさっきの……ずっとゆきちゃんに聞かれて……)
ふと、崖の上から突き落とされたような気分になった。恥ずかしさもあるけど、それよりももっと重要なこと。
ゆきちゃんの名前を呼んだ事も、好きって言ったことも、ゆきちゃんを想ってしていたことも全て知られて……。
私はゆきちゃんのほうを向くことができなくて、ぬいぐるみを強く抱き締めると、溢れる涙を染み込ませた。
もうこれ以上、ゆきちゃんに迷惑はかけたくないから、泣き声だけは必死に押し殺しながら。
439みゆつか愛してる:2008/01/07(月) 19:49:40 ID:L/Jwuw18
今回は以上です。
後編は近日投下させていただきます。
ありがとうございました。

こなたとかがみが、みゆきとつかさが付き合って
4人で幸せに暮らしていけばいいのに……。
440愛のために_血を流す女:2008/01/07(月) 20:00:07 ID:o3wKwlGW
>>439
ディッモーーーーーールトすばらしいです。
お互い知らない相思相愛を、これでもか、これでもかと
描き続けるその我慢力と描写力。
お互いの気持ちが、痛いほど、痛いほど伝わりました。
そして、後編のカタルシスにむけて、十分な期待が高まりました。
もう我慢できません、つかさs(ルパンダイブ





p.s.
>4人で幸せに暮らしていけばいいのに
同感です。3人とも非常に魅力的ですしねだばだば

「「「4人でする気かよ!?」」」
441名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 21:34:44 ID:r1AYE1sj
>>439
嗚呼、つかさが前編の裏でそんなことを考えていたとは。いじらしいなあ、可愛いなあ。
二人が結ばれますようにと祈りつつ、ぐっじょぶ。

そして。
>こなたとかがみが、みゆきとつかさが付き合って
燃え盛る炎のように熱く激しく同意。
442Foolish Form ◆UEcU7qAhfM :2008/01/07(月) 22:47:14 ID:8Tvyo/Yl
>439
これはいいつかさ。心情の表現が巧いですな。
こなかがに対するみゆつか(……どっちが攻めなんだ?)は
いずれ来る真理と信じていたぜ!


さて……あけましておめでとう!!
(まだ7日だし大丈夫だよな?)
(´・ω・`)うん、すまない。このエロSSはサービスだから(略

週も明けてしまい仕事始めの皆さん、授業初めの皆さん、すんませんでした。
本当は昨日か一昨日上げる予定だったんだけど……

全力を出してみた。だがこれで終った訳ではない。
ゆたか×みなみを、このスレで誰よりも極めるまでは、
きっと投下し続けるだろう。


それでは、Shifting Heart -episode5-を、どうぞ御賞味あれ。
443Shifting heart -episode5- 1/10:2008/01/07(月) 22:48:24 ID:8Tvyo/Yl
「コミケが終った後もオンリーの原稿っスよ、ハハハ……」
「諦めちゃダメです、才能の最後の一滴が絞り尽くされるマデ全力全開で頑張るのデス、ひよりん!」
「あ……あいあいさー……ん? そろそろ時間だ」
「え? ああ、ホントですね。それじゃひよりん、出かけマショう。きっと二人とも、先に行って待ってマスよ」
「ええ、きっとそうでしょうよ……よよよ……原稿、ああ原稿……」
 作っている方の二人が修羅場に差し掛かろうという頃、読むのに徹している方の二人はほのぼのと新年を迎えていた。
444Shifting heart -episode5- 2/10:2008/01/07(月) 22:48:57 ID:8Tvyo/Yl
 みなみが元旦にゆたかの家を訪れたのは、まだ夜も明けぬ頃で、東の空がぼんやりと漆黒から藍色になろうとしていた。
「あけましておめでとう、ゆたか」
「あけましておめでとう、みなみちゃんっ」
 二人で迎える、初めての正月。はにかみながら挨拶を簡単に済ませると、準備の既に整ったゆたかの手を引いて、
今歩いて来た道を、駅まで戻り始めた。
「ごめんねみなみちゃん、家まで来て貰って」
「ううん、構わないよ。それにゆたか、こういう時は『ごめんなさい』じゃなくて、『ありがとう』だよ」
「う、うん、そうだね。……ありがとう、みなみちゃん」
「どういたしまして」
 二人が初詣の場所に選んだのは、鷲宮神社。そもそも始まりはこなたが言い出したことで、
「冬コミから買える途中で鷲宮に寄って、その後帰るから」と意気揚々と出かけていき、そして満身創痍で帰って来たのが
夜中の一時、良い感じに『深夜』と呼ばれる時間帯だった。
「ゆ、ゆーちゃん……後は頼んだ。何としても、鷲宮に参拝を……」
 そのままバタリと倒れて泥のように眠ってしまってから、早四時間。夢果たせずに都落ちしてきたのであろうこなたを見て、
ゆたかがある種の弔いを抱いたのだった。
「確か鷲宮神社には柊先輩とかがいるはずだし、田村さん達もそこに行くみたいだから、皆で一緒に行こう?」

 しばらくガタゴトと揺られて着いたホームからもう、人、人、人の波。
みなみはゆたかを精一杯かばって、できるだけ人が少ない場所を選んで歩いていき、そして何度かぶつかった。
だが、ゆたかの為ならとみなみは必死にゆたかをエスコートして、やっとのことで待ち合わせ場所に着いたのだった。
「遅いデス、一体ドコで油売ってたんデスか!?」
 実際は約束より大分早く来ていたひよりとパティが、約束の場所で二人を迎え入れる。
 集合場所は神社の裏手、本来なら神主を初めとする神社関係者しか入れない、いわゆるところのスタッフルームだったが、
こなたを初めとする三年生メンバーによって、病弱なゆたかの為に、特別に中に入れて貰えたのだった。
「ごめ……あ、ありがとう、二人とも。私たちを待っててくれて」
「いえいえ、気にしないで下さい、私たちも今来たばかりですから」
「じゃあミンナ揃ったトコロで、行きマスか!」
 先に来ていた二人と合流して、参道へと赴く四人。他の三人が私服なのに比べて、一人だけやたらハイテンションなパティが
振袖を着ているのは、端から見て妙な光景だった。私服の日本人三人に、振袖の外国人が一人。
後にこなたとかがみ両方から、『日本人は日本人らしい服装で神社に行きなさいよ!』とお互い少し意図のずれた説教を
受ける羽目になろうとは、この時点の日本人組は考えてもいなかった。
 裏手は表に対して不思議なほど静かで、まだ日が昇りきっていないのも相まってかなり暗く、
新年の鷲宮神社とは思えないほどだった。
 空にはうっすらと下限の月が真上に光り、星々もチカチカと瞬きを残している。
そんな中で四人の足元は段差が辛うじて見える程度で、細かい溝などは全く見えなかった──
「わ、わぁっ!」
 やはりというか、ゆたかは小さな溝に足を突っかけてバランスを崩してしまった。
身体がゆっくりと前に倒れていって、だがそれでもゆたかは転ぶことはなかった。
みなみが身を挺してゆたかを肩から支えたから、何とかゆたかはまた起き上がることができたのだ。
「ありがとう、みなみちゃん。……みなみちゃんは、私がピンチになったらいつでも助けてくれるね」
 満面の笑みで礼を言うゆたかに、みなみははにかんで横を向く。
「べ、別に私がしたいことをしてるだけだから……ゆたかには、元気でいて欲しいし」
 封鎖領域完成。真赤な顔でお互いに見つめあう二人に、もはや外からの干渉は不可能に等しい。
「お二人さーん。早くしないとおいてっちゃうよー」
 何を言っても、もう効き目はない。誰の声も届かない、一種のマヨイガ。
初日の出が東の空にほんのり明るく輝き出し、星たちがその姿を隠そうとも、ここの時間だけはかっきりと止まっていた。
445Shifting heart -episode5- 3/10:2008/01/07(月) 22:49:42 ID:8Tvyo/Yl
「モウ、こういうのは実力行使でイクのデス!」
 言うが早いか、パティはゆたかの背中に回り、笑顔で時を止めているその口に人差し指を突っ込んで、
ぐいと左右に引っ張り始めた。文字通りの『おしおき』。
「いはい、いはいよ……ひょ、はめへ……いはい……」
 封鎖領域は解除され、ゆたかは再び日常の世界へと帰還した。かに見えた。
 みなみは未だ、愛に満ちた空想世界の中でゆたかと向き合っていて、このままでは本当にどこかに逝ってしまいそうなほど
恍惚とした表情を浮かべていて、とてもではないが肩を揺らす位では還ってきそうにもなかった。
 この現状を冷静に分析したひよりは、一つの結論を生み出した。
「そうだ! これだ、これしかない!!」
 現実に帰還して尚パティに口を抓られているゆたかに小さく『それじゃ、お借りしまーす……』と
口先だけの許可を勝手に貰うと、徐にひよりはみなみの背中に周り、パティと同じく指を口に、持って行かなかった。
代りに手を伸ばした先は、胸。2007年が終ろうとも、相変わらず洗濯板よりもまだ平らなそこを、ひよりは大胆にも押さえた。
「あ、あれ? あれ!?」
 悲しいかな、『流石に揉むだけの胸はあるだろう』と思って触ったひよりだったが、
まさか揉めない程どうしようもなかったとは想定の範囲外だった。
素肌ならまだ希望はあったような気がしないでもないが、それが許されるのは今度こそ封鎖領域の中に限られる。
 ひよりはにっちもさっちも行かなくなって、仕方無しにその何も無き大平原をさわさわと撫でた。
すると効果はあったらしく、みなみの顔は耳まで首まで真紅に染まっていく。
「うひゃあぁぁぁ!?」
 凡そ、長身でスレンダーな外見からは考えられない程の金切り声で、みなみは叫び声を上げた。
それにびっくり仰天して、慌ててひよりも手を離す。
「え、あ、こ、ここ、どこ……?」
 遠くの世界から帰って来た我に帰ったみなみは、自分が夢遊病者であったかのように周りをキョロキョロと見回し、
そして暫く経った後惚けたように明け方の夜空を見上げた。
 そこには、太陽に負けじと輝きを放つ、半分に欠けた月が見えた。その欠けた断面が自分の胸に重なって、
みなみはまたしても陰鬱な気分に沈んだ。
「それにシテも、みなみ、随分と大きナ悲鳴デシたネ?」
「あ、あー……うん、そうだったのかも、知れない……」
 虚ろにしか答えず、視線を宙に彷徨わせているみなみに、パティの問い詰めが迫る。
「ゆたかとノロケるのもいいデスが、公共の場所では控えて下さいネ?」
「アンタが言っちゃあかんでしょう……」
 ひよりの突っ込みは完全にスルーされ、みなみはポツポツと答える。
「ゆ、ゆたかと……」
「小早川さんと?」
「ゆたかと……その、こう、揉み方が違った……ゆたかはもっと優しくて、もっと……情熱的だから」
 爆弾発言、否、核爆弾発言。ゆたかの顔は瞬く間に茹で上がり、正常な思考と歩行が不可能になってしまった。
「み、みな、みなみちゃん、そんなこと言っちゃ、恥ずかしいよ……ふにゅ〜」
 頭から湯気でも吹き上げそうな顔で、そのまま今度はパティの方へと倒れこんでしまった。
「Oh! 流石ゆたか、やっぱり軽いデスね」

 むにゅ。

「あれ? みなみちゃん、じゃない? あれ、パトリシアさん? 何で!?」
 どうやら完全には現実に戻りきれていなかったらしい。ゆたかは混乱してあちらこちらを見回し、そして全てを理解したのか、
急に風船がしぼむように身体を小さく丸め込んでいった。
「えっと、もしかして私、恥ずかしいことしてた?」
 今度はひよりが、親指を真っ直ぐ天に向けて答える。
「もちろん! 色んな意味でごちそうさまッス! これでネタ切れの修羅場を乗り越えられそうです!!」
「うわあああああぁぁぁ……」
 紅くなったり蒼くなったり、まったく忙しいゆたか。対するみなみも、別な意味で蒼くなっていた。
「ああ、パトリシアさんの胸……ああ、胸……」
 そこに、ひよりの更なる追撃が掛かる。
「そういえば、何で小早川さん、パティと岩崎さんの違いが分かったんですか?」
「ああ、あれはパトリシアさんの胸が『むにゅっ』って……あ」
446Shifting heart -episode5- 4/10:2008/01/07(月) 22:50:26 ID:8Tvyo/Yl
 時、既に遅し。みなみは地面に蹲り「の」の字を書き始めた。
「どうせ私は……ぺったんこ……貧乳……いや、無乳……ぺったんこ……無乳……むにゅう……」
 このままでは負の感情が爆発しかねない。ゆたかは急いでみなみの元へ寄り添っていって、耳元で優しく囁く。
「大丈夫、私はみなみちゃんの胸、ちっとも気にしてないよ。それにほら、」
 ゆたかは一層声を落として、誰にも聞こえないような小さな声でみなみに教える。
「『小さい方が感度が良い』っていうじゃない?」

 数秒後、今度はみなみが茹で上がり、パティがその肩を担いで参拝の道を歩く羽目になった。

 表参道に出ると、今度は打って変って賑やかな神社。明らかにひよりと同類の連中がいる一方で、
敬虔なる人々、気軽に来た地元の人、そして緊張した面持ちの、受験を間近に控えた人たちがあちらこちらに犇いている。
「流石、関東最古の神社ってだけはありますねー……さ、早いところ参拝しましょう」
 『気軽に来た人』をあくまで装って提案したひよりだったが、それは簡単にパティの一言で蹴られた。
「何を甘っちょろいコトを言ってるんデスか!? 神社といえば巫女サン、巫女サンといえば神社でショウ?
おみくじを買って、巫女サンと握手シテ、新しい一年の始まりヲ占って貰うんデス!」
「いやパティ、今日はそこまで拘る体力もないから……いたっ、痛ッ! パティやめて──」
「そんなコトを言うのハこの口デスか? 萌えなくしてニッポンは語れないのデス!!」
「パティ、はから、それはへんへんはっへ……いはい、いはい!」
「パトリシアさん、いくらなんでも巫女さんは占いできないと思うよ……」
 ゆたかの冷静な突込みにもめげず、パティは一人ハイテンションでおみくじを引きに、とにかく巫女のいる方へと
駆けていった。
「あ、パティ、おみくじはそっちじゃ……あーあ」
 あっという間にパティは『その他大勢』の一人となり、群衆に紛れて見えなくなってしまった。
ひよりは追いかけようとする努力を諦めて、みなみとゆたかと、三人で一緒に参拝することに決めた。
「なんにせよ、まずは手水舎で手を洗いましょう」
 そうは言ったものの、封鎖領域が展開されて時間を食い、相変わらずどころかますます人の増えた空間を
はぐれずに移動するのは中々難しい。三人で手を繋いで──ゆたかを真ん中に挟んで──、何としても離れないように、
じりじりと賽銭箱の前までにじり寄って行った。
「はぁ、はぁ……やっと着いた」
 元旦から早くもやたらと疲れて、三人は賽銭箱に五円玉を投げ入れていった。そして鈴をガラガラと鳴らし、
二回手を叩いて、それぞれ心の中で新年の礼を捧げる。
『今年こそは大きくなりますように』
『今年こそは大きくなりますように』
『今年こそは大きくなりますように』
 心中での祈り文句こそ同じだったが、誰かは背の話で、誰かは胸の話で、誰かはサークル規模の話だった。
それをどこの神様が聞き入れていたのかは定かではないが、一人だけ夢が早速叶うこととなったのは、また別の話。
勿論彼女らはそれを知ることはない。天上で全てを知る者でさえも。
447Shifting heart -episode5- 5/10:2008/01/07(月) 22:51:10 ID:8Tvyo/Yl
「くちゅんっ」
「あれ、泉さんどうしたんですか、くしゃみなんかして。どなたが噂してるんでしょうね?」
「ええ、多分私の娘と、そうく……夫の姪っ子さんの辺りでしょうね。夫の噂でいちいちくしゃみをしていたら、
私風邪を引いちゃいますから」
「はは、羨ましいですね、私はもう下界に知り合いなんていませんから」
「ふふ、でもやっぱりちょっと寂しいんですよ。……それでも、皆さんにはもう少し下界にいて欲しいですけどね」
「それはごもっとも。さ、行きましょう、泉さん。天上のおせち料理も待ってますよ」
「そうですね。行きましょうか、後藤さん。……ばいばい、そう君」
448Shifting heart -episode5- 6/10:2008/01/07(月) 22:51:45 ID:8Tvyo/Yl
 おみくじ売り場に三人が行くと、ちょうと柊の双子が売り子をしているところだった。
「あ、ゆたかちゃん。岩崎さんも田村さんも、明けましておめでとう」
「明けましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます、先輩。……それにしても、ツインテールの巫女さんってのはやっぱりポイント高いですね」
「う、うるさいうるさいうるさい! おみくじ買っていくなら早くしてよね、時間ないんだから!! その、後ろもつっかえてるし」
 明らかにどこぞのラノベに影響を受けた口調で会話を展開するかがみだが、それが全く違和感なくマッチしているのは、
本人の才能もある程度寄与しているからなのだろう。
「はい、おみくじ。良い結果だといいわね」
「ありがとうございます。……あ、大吉だ!」
 ゆたかのは高校生活最大の山場を感じさせるおみくじ。
『恋愛:大いなる発展あり。時を違わぬべし』
「私のは……小吉か」
 みなみのは、これからの戒めが書かれている。
『学問:事に溺れ怠らぬべし』
 そしてひよりは……
「ぐはっ!」
 凶だった。
『商売:下り坂。引き締めた財政管理をすべし』
「そ、そんな……神様、仏様……」
「だ、大丈夫だよ、悪いおみくじは木に結べば……」
 大吉のゆたかに励まされても、一向に元気のでないひよりであった。

 結局パティは最後まで見つからず、仕方なく帰ろうとしていた所で、団子茶屋で色々頬張りつつ、
巫女装束を纏った妙齢の女性と話し込んでいるのを発見された。
「最近はライトなオタクが多すぎるんデス、情熱のカケラもなく、只タダ『萌えー』とか叫んでるだけの人には、
ぶぶ漬けでも食べサセてさっさと帰らせるのデス!!」
「は、はぁ……」
 前言撤回、どうやらパティは一方的にオタク談義を吹っかけているだけであった。
「はいはいパティ、私たちと同じ感覚で一般人に話しかけないの」
 笑顔のままひよりはパティの耳を引っ張って連行していく。
「ひよりんは悔しくないんデスかぁ? 聖地がオタクに蹂躙されてイクのを見るのは悔しくないんデスかぁ!?」
「あのねパティ、世の中には『類は友を呼ぶ』って言葉があってだね……」
 オタクがオタクに何を言っても通じないんだよ、と半ば涙目で留学生を説得しにかかったひよりだった。
「あはは、パトリシアさんらしいね……ううっ」
 そのやり取りが面白く、笑いながら見守っていたゆたかだったが、人波に酔ったのか、またフラリと身体を傾けた。
「あっ、危ない!」
 本日三度目、またもゆたかは支えられて、そして立ち上がろうとして、その場にくず折れた。
「ゆっ、ゆたか!?」
「はは、ごめんね、みなみちゃん。ちょっと、今、歩けそうにないや……少し待てば治ると思うけど……うぅっ」
 心なしか、ゆたかの呼吸は浅く速く、顔も紅潮して、熱があるのではとみなみを大いに心配させた。念の為と、
「熱、計らないと」
みなみが額をゆたかのそれにくっつけて、
「ん……熱はないみたい。大丈夫、私が負ぶっていくから」
「え、そんな、悪いよ、みなみちゃん」
「気にしないで。それに、ゆたかは早く暖かい場所に戻った方が良い」
手厚く背中に負ぶって、帰り道を颯爽と歩き出したのまでは良かった。良かった……が。
「い、岩崎さん、もうこれ以上私をどうにかしないで……」
 今度はひよりが鼻血を噴き出して、パティに背負われて搬送される羽目になった。
「まったく、ひよりんはダメダメですネ」
「面目ない……」
449Shifting heart -episode5- 7/10:2008/01/07(月) 22:52:58 ID:8Tvyo/Yl
 四人の足音が二人ぶんに減って、神社を後にする。
 駅前はまだまだ混んでいたけれど、電車に乗った後は比較的楽で、倒れた一名とぶっ倒れた一名は、
なんとか気力を取り戻して立ち上がることができた。
「ありがとう、もう大丈夫だよ、みなみちゃん」
「本当? 私はゆたかを家まで送っていっても良いんだよ?」
「ううん、ホントに大丈夫だから。今日はありがとね」
「凶!?」
 ひよりはショックから立ち直れていないのか、単語の一つに過剰反応していた。
「小早川さん……流石に『凶』は辛いっス……」
「いや、田村さん、『凶』じゃなくて『今日』だから」
 完全に燃え尽きている。恐らく二三日は復活しないだろうその身体をゆらりと起こして、不気味に微笑む。
「『商売:下り坂』っスか。それならそれで結構、何だろうとネタにして、いずれはシャッターを目指すっス……」
 唇は釣り上がり、目は虚ろで、『たかが占いで何を』とも言いたくなるが、そこはそれ、一過性のショックである。
コミケと打ち上げで疲れ切った上での徹夜明け、信憑性の濃い薄いもあったものではない。
「ふはは……ははははは……」
 だが残念なことに、それを理解する程回りの人間は彼女の私生活を知らない。
気が付いた時には、ひよりの周囲は微妙にぽっかりと穴が開いていた。

「そ、それじゃ田村さん、原稿頑張ってね」
「あいあいさー……」
 幾つか駅過ぎた頃、パティとひよりは降りていった。一方は肩を担ぎ、一方は白い煙を吐き出していた。
すぐ先の駅でゆたかも降りて、みなみ一人になった。
「本当に大丈夫?」
「ホントのホントに大丈夫だよ。もう、みなみちゃんは心配性なんだから」
 みなみはホームから出て行く電車を、これ程までに恨めしいと思ったことはなかった。
「はぁ……」
 溜息一つ、みなみは空を見上げた。小さな雲が低い空にぽっかりと浮かんで、静かに流れていく。
だが電車の動きは速く、あっという間に遠ざかって見えなくなっていく。手を伸ばしても、届かない。
「ゆたか、ちゃんと家に帰れたかな?」
 心配するなと言われても、心配してしまうのはみなみの性というよりは人とのしての人情であろう。
電車から降りたらメールの一つでも送ってみようと心に決めて、みなみは座席に深く座った。
 空では相変わらず小さな雲が幾つか、浮かんでは流れていった。

『ゆたか、ちゃんと家に着いた? モチとかで喉詰まらせないでね。
新学期に会うのを楽しみにしています』
 家に着き、メールも送り終って、暇になったみなみは急に眠気を催してきた。
いつもより大幅に早起きしたのが利いてきたのだろう、パジャマに着替えるのももどかしく、
みなみは上着だけを脱いで、ベッドにコロンと横になった。
「……?」
 ベッドの感触がおかしい。なんというかモコモコしている。そう不審がってみなみが布団を引き剥がすと、
「ワン♪」
「チェリーか……ダメだよ、こんなとこで寝てちゃ」
 だが愛すべきバカ(?)犬はそんなことを歯牙にもかけずゴロゴロとみなみのベッドを転がり続けている。
困り果てたみなみはしばらく腕を組んで考え、そして結論を得た。
「よし、チェリーがそんなことするんなら、私も……」
 みなみは手早く服を脱いで下着姿になると、ベッドにダイヴしてそのまま布団を頭から被った。
「ほら、逃げられないよ、チェリー」
 モフモフとした毛皮は柔らかく、ちょっとくすぐったかったが、その温かさにいつか眠ってしまっていた。
寝ている最中に高良母の手によって恥ずかしい写真がみゆき→こなた→ひよりと流れていったのは、
この時のみなみは知る由もなかった。

 その時は余りの激写っぷりに何が何だか分からなくって錯乱し、夢なぞ覚えていなかったのだが、
夜になると、みなみは夢をはっきりと見た。だがそれでも、起きた時には奇妙な感覚だけが残っていて、
それが何だったのか、忘れてしまっていた。それでも一つだけ、覚えていたことがある。
「私、幸せだったんだなぁ、きっと……」
450Shifting heart -episode5- 8/10:2008/01/07(月) 22:53:41 ID:8Tvyo/Yl
 起き抜けに計る、バストサイズ。いつもの習慣。だが、今日はいつもよりちょっと違った習慣になりそうだった。
「え? あれ?」
 トップとアンダーの差が、いつもより伸びている。目を凝らして、もう一度確かめてみる。
「お、おかしいな……あれ?」
 念のため、もう一度計る。間違いない、今度こそ。
「バストサイズが、上がった……」
 AAAから、AAに。トップ─アンダー差は、昨日までは自分でも考える必要さえないくらい、
0に等しい値を指し続けていたというのに、いよいよ以って、ミクロな差はマクロな形となってメジャーに現れてきたのだった。
「な、何かの間違いかな? ……でも、もし夢でも、できるなら覚めて欲しくない」
 取り敢えず起き上がってみる。そこから自分の胸を見下ろしてみると、今までは綺麗な流線型だったのが、
僅かな凹凸が付いているのが見えた。
「ああ、やっぱりちょっと大きくなってる」
 念の為、頬を抓ってみる。痛い。試しに胸も揉んでみる。偽物じゃない。
「た、大変だ、ゆたかにちゃんと言わなきゃ……」
 高がバストサイズ、されどバストサイズ。みなみにとっては一大事なこのことを、早くゆたかに知らせたくて、
矢も盾もたまらず、みなみは速攻で着替えて走り出した。
「ゆた、か! ゆたか!!」
 まだ午前も早く、泉家まで駆け込んだみなみは、ゆたかの奇妙奇天烈な顔に出迎えられた。
「どうしたの、急に?」
「た、大変なの!!」
 寡黙なみなみにしては珍しく、息せき切って矢継ぎ早に事情を説明し始めるものだから、
ゆたかは何事かと思い、まずはみなみに深呼吸させて落ち着かせ、自分の部屋へと案内した。
次に温かいお茶を持って行き、みなみに飲ませると、やっと無乳改め貧乳の少女は一息ついた。
「えっと……実は、かくかくしかじかで、胸が大きくなったの」
「え!?」
 そう叫んでから、ゆたかはしまったという顔で固まった。
「ゆたか、ひどらなんでもその驚き方は酷い」
「あ、ご、ごめん。にゃはは……」
 世紀の大ニュースを事細かに、とても嬉しそうに話すみなみは活き活きとしていて、
とてもいつもの『岩崎みなみ』とは思えなかった。
「で、朝に計ったら、ちょっとだけ大きくなってたの!」
「おめでとう、みなみちゃん」
「もう嬉しくって……ゆたかに見せたくて、飛んできたの」
「あはは、みなみちゃんらしいっていうか、その気持ち分かるよ」
 一頻りマシンガントークを繰り広げた後、みなみは顔を赤らめてもじもじと言った。
「それでね、ゆたか……確かめて、欲しい」
「え?」
 言うが早いか、みなみは服を大胆にも脱いで、下着だけの姿になった。
「ね? いつもみたいに、また揉んでみて……大きくなってるはずだから」
 否、恥ずかしくて一思いにやってしまったというべきか、いつもとは違う胸を曝け出したみなみの横顔は、
ぷるぷると震えていた。
「い、良いの?」
 ゆたかが反復して確認すると、みなみはゆっくりと微笑んだ。
「ゆたかだから、頼めるの。だから、ね? お願い」
451Shifting heart -episode5- 9/10:2008/01/07(月) 22:54:19 ID:8Tvyo/Yl
 はにかみながら言い切ったみなみに、ゆたかはもう野暮なことは言わなかった。
ようやくその意味を帯び始めた前線最後の砦、ブラジャーの上から、ゆたかはみなみの胸に触れた。
「あ、ふにふにする……」
「そ、そう? きゃぅっ」
 未知の感覚。ゆたかにとって胸とは『撫でる』存在であり、『揉む』とは形容であって有名無実な行為であった。
それはみなみも同じ事で、お互い初めての感覚に、戸惑いは隠せなかった。
「い、行くよ?」
「うん」
 だがそれでも、一歩一歩確実に進んでいく。
 ゆたかはブラジャーのホックを外し、露になったその双丘へと進撃していった。
「気持ち良い、みなみなちゃん?」
「うん……なんだかいつもと違って、暖かい感じ」
 一層柔らかくなったその場所を、僅かな膨らみを、ゆたかは思うがままに征服していく。
時々に頂上の蕾に触れると、みなみは次第に甘い声と甘い吐息を繰り返し始めた。
「新鮮だね。それに、ホントに柔らかい……みなみちゃん」
「ゆたか……」
 二人はどちらともなく唇を重ねた。ちゅぷちゅぷと水音が響き渡り、重ねる舌は深く、
どこまでも互いを貪るように絡めていく。
「ちゅむ…んちゅ……ぷはぁ、みなみちゃん、キス、上手くなったね」
「そ、そんな上手くなっただなんて……ひゃぁっ」
 みなみが言葉を紡ぐよりも早く、ゆたかはみなみの蕾に舌を這わせた。紅く開花したみなみの乳首を、
まるで飴玉でも舐めるかのようにコロコロと転がしていく。舌先が敏感な先端に触れる度に、
みなみはあられもない嬌声を上げる。
「ゆた、かぁ……もう、我慢できない……その、し、下の方も……」
「下の方?」
 悪戯っぽく笑うとゆたかは、胸で踊らせていた舌を徐々に下半身に移動させていった。
玉の汗を舐め取りながら、へそ、下腹部へと進み、遂に最後の本拠地へと辿り着いた。
「下の方ってどこかなぁ?」
 意地悪い質問をぶつけるゆたかに、みなみはふるふると首を振った。
「は、ずかしい、よ……もう、これ以上……お願い、ゆたかぁ……」
 もちろん、潤んだ目で頼まれて無下に断るほどゆたかは鬼畜でもない──聖人君子でもないが。
ゆたかは軽く頷くとみなみの濡れぼそったショーツを一気に引き下げて、輝くばかりにテラテラと滑り光る、
みなみの最大の弱点、神秘の場所へと行軍を開始した。
 だがゆたかは中々『ピンポイント』へと辿り着かない。秘所の周りを撫で回したり、蜜泉の入り口に軽く指を入れる程度で、
高まるみなみの官能に対し、ゆたかはじっくりとしか責めていかない──今日が秘め初めであることを加味しなければ。
「みなみちゃん、今日は特別だよ? 今年初めての、私たちのえっちなことだから」
 ゆたかは一気にみなみの淫豆へと指を伸ばし、既に愛液でぬるぬるになった柔突起を激しく扱き始めた。
同時に秘所の奥深く、Gスポットから子宮口まで指を二本三本と突き上げ、みなみを完全に蹂躙し始めた。
 みなみは大きな声で喘ぐが、そんなことなど歯牙にもかけず、今度は秘豆を口に含んで強烈に吸引した。
すると、みなみの秘所は痙攣してビクビクと波打ち、そして一際大きい声を上げたかと思うと一気に脱力して、
みなみは息も絶え絶え、息を何度も吸っては吐き、虚空を彷徨う目の焦点を何とか合わせようと全身を落ち着けようとした。
「みなみちゃん、ホント良いイき方するね。……大好きだよ、みなみちゃん」
「ゆた、ゆたか……私も、私も大好きだよ、ゆたか……」
 最後に軽いキスを交わしたのを最後に、みなみの意識は深い闇へと転落して行った。
温い大洋を彷徨うかのような不可思議な浮遊感がみなみの身体を占めて、そして夢からも世界は乖離されていった。
452Shifting heart -episode5- 10/10:2008/01/07(月) 22:55:10 ID:8Tvyo/Yl
「……ん?」
 みなみが次に目覚めた時、ご丁寧に自分の体に毛布が掛かっているのが分かった。
だがそれ以上に不思議だったのは、頭の感覚。どうも、自分がいつも使っている枕の感触で、ゆたかの家にあるそれとは……
「ん? ん?」
 目覚めたベッドは、見紛う事なき岩崎家の、自分のベッド。着ていたパジャマは、昨日のまま。
『まさかゆたかがここまで運んでくる訳は……』と思い、そして遂にみなみは冷酷な宣言に気が付いた。
「ま、まさか!」
 哀れむべきは何か。みなみが現実世界で図った胸囲は、見事に洗濯板以下だった。
「ウソ、でしょ? ウソだ……ウソだ、ウソだぁっ!!」
 みなみが八つ当たりと投げた枕は、飼い主の声を聞いて丁度部屋に入ってきたチェリーに当たり、
余りに突然の衝撃で愛犬はひっくり返って気絶した。
「チェリー? チェリー!?」
 みなみの一月二日には、安息は許されそうになかった。

 新学期、ガックリと肩を落として登校するみなみの姿が目撃されたが、誰も彼もその真理を知る者はいなかった。
そう、例えそれが夢の中で愛してくれた人でさえも。
453Foolish Form ◆UEcU7qAhfM :2008/01/07(月) 23:04:27 ID:8Tvyo/Yl
え、エロが少ない? 気にするな!
途中で出てきた「後藤さん」って誰だって? それは禁則事項だ!!

……投下してから気付いたけど「夢落ち注意」と書くべきだったのだろうか?
あと、ミクロ〜マクロとは言うけど、バストサイズって5cm刻みだから実際に
ああなることは有り得ません、貧乳の皆様ご注意を(苦笑



そんな訳で最新作だ。
スレの流れが非エロに傾いてる気がするがそんなことは気にしない。
俺は俺の道を往く。果てしないエロスの道を!!

という訳で、楽しんで頂けただろうか。
最近気付いたことだがゆたみなのエロシリーズ作ってるの俺だけだったのな。
もっと書き手の需要があると思ってたのに(待て

次に投下するのはElder youthのep2だ。
前回投下時はスレの流れを混乱させてしまい申し訳ないことをした。
だから、これを投下するのは時期的に言っても次スレの初めの方になるだろう。
その時もまた、愛読して頂ければ幸いだ。

ではまた、出会える日まで。



追伸
誰か無乳改め貧乳のみなみちゃんを描いて下さいお願いします
454名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 23:06:51 ID:NPnv41yX
>>453
激しくGJです!
455名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 23:09:20 ID:o3wKwlGW
>>453さん激しくGJ!
 嗚呼結局・・・のみなみちゃんがかわいそうっ!










 でも、そこがいい(ギラリ)」

「ゆ・・・ゆたかっ!?」
456名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 23:17:18 ID:r1AYE1sj
>>453
おのれ、可愛いみなみちゃんを書きおって! 大好きだ!!


という訳でぐっじょぶでした。10レス目のどたばたっぷりと新学期の落ち込みっぷりが可愛くってもう。
457名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 23:27:03 ID:R9mz+48t
>>453
お主、人が残業疲れでヘロヘロだと言うのに長々と書きおって……。
 一 か ら 全 部 読 ん で し ま っ た で は な い か !!
どうしてくれる、眠くて氏にそうだと言うのに。






つまり激しくGJ!!
さて、こちらもそろそろ投下の準備に取りかかりますか。
458Foolish Form ◆UEcU7qAhfM :2008/01/07(月) 23:42:34 ID:8Tvyo/Yl
番外編:みゆきさん豆知識
「五円が御縁に繋がっているという話は皆さん御存知かとは思います。
でも、十円は『とおえん』→『遠縁』と解釈されて、我が国では忌避されることもあります。
五円玉がないからといって安易に代用するのはいけませんね」

「こ、こうなったら困った時の諭吉頼み! サークルよ花開けぇっ!!」
「ひよりん辞めてェー!!」



>454-457
読んでくれてありがとうなんだぜっ!
今回もみなみちゃんの洗濯板っぷりには時間をかけて描写して……って、
みなみさんなんですかそのドッヂボールはうわやめてなげないd

……ちなみに早速誤植を見つけた。まとめサイト掲載後には直っていると思われる。
それまでは脳内変換で宜しく!OTL
459名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 23:52:42 ID:FDzGkeus


「みなみは無乳」       「みなみはむにゅう」



一見、一つは無い乳で一つは大きいおっぱいを表しているように見えますが
この二つは実は同じ読みで同じ意味なのです

これが目の錯覚です
460名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 23:58:27 ID:NPnv41yX
誤植があっても気にしない!
こなたなら、軽いミスも「萌え要素」と言って許してくれるよw
実際「みなみな」もかわいいと思いますよ、正直。
461名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 01:17:08 ID:KzoXK7/s
いきなり書き込みなくなったな

じゃああと1時間レスがなければゆーちゃんの胸ランクが巨になる
462みなみん:2008/01/08(火) 01:18:38 ID:1YzxWPOF
させない・・・私とほとんど・・・差がない立場に・・・いるべき・・・
463名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 01:38:48 ID:b+j0qU1M
>>461
まあ平日な上に冬休みが終わる時期だし

無断転載の件でまだウダウダ言ってのがwikiにいるけど、ここじゃなく避難所間借りして対処したほうがいいか?
464名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 01:44:47 ID:rfHNFlFB
Wikiのアレは今後放置でネ
465名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 01:48:27 ID:1YzxWPOF
んだなあ。
放置しても書き込みを続けるようなら避難所誘導。
それを守らないようなら警告、
それでもだめときゃ、wiki管理者とともに物理的な対策をしていただく。
こんなかんじかな?
466名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 01:52:15 ID:rfHNFlFB
いや、もう何を書かれても今後絶対放置
むこうの管理人がどうこうなんて知りません
KYにはいつまでもかまってはいけません
そのうち何も言わなくなります
467名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 01:55:42 ID:AslZZbKa
ま、放っておくなら気にしても仕方ないさね。
というわけで以下何事も無かったように稲荷町……もとい投下待ち
468名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 01:57:31 ID:1YzxWPOF
いえね、それでも触る人間がいるという、掲示板の宿命から
一応対応策を言ってるだけっすから。
みんなもう触らないってんなら、
今後何があっても触らないってのにはおらも賛成なんすよ。
出すぎたマネ失敬orz
46931-141:2008/01/08(火) 01:59:24 ID:Riouomaw
相変わらずレベルが高い場所だ…( ^ω^;)
職人多すぎだろ常考…
みなゆたまじGJでした!


メルト、無事仕上がったので投下したいと思うのですが、実は後編を書いている途中に前編もこちょこちょと変えてしまって、前回前編を投下したのに、今回、前編含めて投下したいんですが…こういうのはいいんでしょうか?
シリーズ物書いてる人とか、本当に凄いと実感しましたorz
470名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 02:04:24 ID:ztP7W355
>>469
wikiで前編を更新してきて、後日投下とかでいいんじゃないか
471久留里:2008/01/08(火) 02:10:49 ID:e69OyNNM
まいど、久留里です。
「カケラ」の続きを投下いたします。

>>374-379 の続き。
・こなた視点 +α
・非エロ
・5レスほど使用
・シリアスもの
・タイムリープもの
・鬱展開あり
・オリジナル設定が多いのは仕様です
・物語の性格上、鉄分が濃いです
472カケラ 5-1/4:2008/01/08(火) 02:11:49 ID:e69OyNNM
5.

『青森ー青森ー、青函連絡船は─────』

私の脳内で『津軽海峡・冬景色』が流れている。
歌詞の通り「上野発の夜行列車降りた時から〜青森駅は雪の中〜」の青森駅。
目は覚めたものの、頭がまだ夢の中。
しかし、列車から降りた瞬間、強烈な寒さで一気に頭も覚めた。

「寒っ!!」
元々寒さに弱い私にとって、軽く氷点下に達しているであろう青森の寒さは正に地獄だった。
比較的日の出が早い青森でも、まだ空は真っ暗。夜行列車はとんでもない時間に青森駅に到着した。
東北地方は遠いようで意外と近い。そう実感した。

そんな場合では無い。

「ここで私はどうしろと。まさかここで凍え死ねというコトなの?」
こんなトコで死ぬのはゴメンだ。でも、これから何をすれば良いのか分からない。

乗客のほとんどは猛ダッシュで青函連絡船の連絡口へと消えてしまった。
私だけ一人、取り残される。
駅は独特の静寂に包まれていた。
ホームで聞こえるのは寝台列車の床下から聞こえる送風機の音。
電車というモノは停まっていても五月蠅い乗り物だ。

さて、寒いからさっさと改札口へ行くとしよう。



改札口を出て外に出てみたが、まだ日は昇っていないし、とにかく寒いので、私は早々と待合室に避難した。
その待合室にはストーブが置かれてあるが、非情な事に火が点いていない。
寒い。寒い。寒い。

この時代基準で見てもボロボロの待合室は木造で、窓枠も木製なので密閉性は最悪。
隙間風が容赦なく入り込んで来てとても寒い。
四方の壁は半分以上が窓ガラスで、窓枠も壁も白に近いクリーム色で塗られている。
少しでも視覚的に明るくしようと努めたのだろう。確かに少ない照明の下でも明るい様な気がする。
でも、お陰で部屋は寒々しいし、実際、寒い。ええい、ストーブの点火はまだかー!!
部屋の隅には出入り口とは別の扉がある。
これがRPGだったら謎の地下ダンジョンへ繋がっているのだろうが、
開けたら『嫌なモノ』が出てきそうな予感がするので、悪戯をするのは止めにした。


ところで、この格好プラスこの身長でたった一人で待合室に佇んでいるのは明らかに異様だと思う。
さっきから通り過ぎる掃除のおばさんや駅員が、奇妙なモノを見る目でこちらを見ている。
喧嘩を売られている訳ではないのでスルーしていたつもりだが、さっきから気になって気になって仕様がない。
「あー…これ何て羞恥プレイ?」
私はハッキリ言って恥ずかしかった。
今は地味な服装なのでまだいい。これがもっとお洒落なやつだったらもっと『浮いていた』に違いない。
473カケラ 5-2/4:2008/01/08(火) 02:12:23 ID:e69OyNNM
5時50分。もうすぐ夜が明ける頃かな?
青森の朝は埼玉よりも少し早く訪れる。これは緯度の関係なんだろうね。

そんなことはどうでもいい。
「一体全体私に何をしろと言うのだ」
私はさっきから機嫌が悪い。無理も無い。私はいきなり30年前に飛ばされ、訳も分からずに未踏の地・青森駅に行かされたのだ。
それも雪降る未明の朝に。

訳も分からずに30年前に飛ばされた身にもなって欲しい。
私はまだ高校生だけど、私にはお父さんや一緒に暮らしている従姉のゆーちゃんも居る。
それに親友のかがみんやみゆきさん、最近仲良くなったみさきちや峰岸さん、
寝る前のネトゲで一緒に楽しんでくれる黒井先生………、
私の『元の時代』には沢山の掛け替えのない人達が沢山居る。
まだやりかけのゲームや読みかけの漫画も山積みだ。
だから、私はさっさと元に時代に帰りたい。てか、さっさと帰せ。
私の心の中の怒りがこみ上げてくる。しかし、ここで爆発させたとしても私にとって何の得にはならない。
私は静かに、静かに、次に何をすれば良いのかを考えていた。
普段だったら「面倒臭い」で片付けてしまう私だけど、色々な意味で深刻な問題なので逃げる訳にはいかない。

「そうだ!」
私は元の時代に帰らなければならない。誰も帰してくれなさそうだから、自分の力で、帰るんだ。
でも、どうやって?
「そこが問題なんだよねぇ〜」


私が冷蔵庫状態の待合室で私が冷蔵庫状態の待合室でブツブツひとりごちていると、
出入り口の戸がガラガラと音を立てて開いた。

待合室に入ってきたのは、詰め襟を着た学生だった。この駅のアルバイトか、単なる旅行客かどうかは分からない。
歳は……私より少し下くらいかな? 私よりもずっと背の高い彼は、茶封筒を片手に私に近付いて来た。
「伝言です。どうか聴いて下さい。この封筒の中には乗車券が入っています。
 これで富山まで行って下さい。
 途中で『貴方に近しい方』と乗り合わせる筈です。その彼女と話をして下さい」
「富山? なにゆえ?」
富山と言えば北陸地方。ここからは結構な距離の筈。
ちなみに富山県のお隣、石川県はお父さんとお母さんの故郷であり、二人とも能登半島の田舎町で生まれ育ったという。
「そこで、貴方が『するべき事』がある筈です。それを必ず遂行して下さい」
意味が分からない。
「それと」
だからあによ?
「貴方に『近しい』人が、途中で乗り合わせる筈です。その人に声を掛けてみて下さい。
 伝言は以上です」
「ちょっと待って」
「はい」
「それって、誰からの伝言?」
「それは…」
彼は黙ってしまった。怪しい。
「それはそうと」
「何さ?!」
「早くしないと列車が発車してしまいます」
「ちょ、ちょっと待って!!」
「さぁ、早く!」
私は彼に背中を押され、待合室を強制退場させられると、そのまま改札口へ急がせた。
474カケラ 5-3/4:2008/01/08(火) 02:13:12 ID:e69OyNNM
6時台に発車した特急「いなほ」号は、新潟へ向かって南下している。

「これで丸一日掛けて行けというのか」

変な学生から渡された封筒には、一枚の乗車券と二枚の特急券が入っていた。
一枚は今乗っている「いなほ」号のもの。もう一枚は新潟駅で乗り換える予定の「北越」号のものだ。
「いなほ」には時間ぎりぎりで間に合った。
おにーさん、私に封筒を寄越してくれるのはいいけれど、もっと早くしてよね。
こっちだって色々と…………まぁ暇だったから別にいいけどさ。

その特急券は、何と『グリーン車』と呼ばれる特別車両のモノだった。
最初は「ラッキー」と浮かれていたのだが、その喜びは当該列車の到着とともに瞬く間に消えた。
グリーン車は「特別車両」と呼ばれるだけあって、確かに他の車両よりも立派な座席だった。
でも、それは『この時代』での話。
ぶっちゃけ、小学校の修学旅行で乗った「スペーシア」の方がずっと立派だった。
(鉄研のクラスメイト(男子)によると、「スペーシア」はそこらの特急よりもずっとハイスペックらしいけど………)
特にテーブルがあまりにもショボいのには閉口した。これじゃ飲み物しか置けないぢゃないか!!
でも、いいや。
クッションはふかふかだし、背もたれもぐぐぐぃーっと倒れるから、終点までゆっくりと寝られる。
一番残念なのは「フットレスト」だね。
この車両、特別車両なだけあって座席の間隔が広く、背丈が小学生並の私では……、
「足が………届かない………」

ああ、もうちょっとだけ、あとちょっとだけ大きくなりたいな。
475カケラ 5-4/4:2008/01/08(火) 02:14:37 ID:e69OyNNM
午前8時。
雪が降っているにも拘わらず、私が乗っている特急「いなほ」号は時間通りに秋田駅に到着した。
時間調整のために5分ほど停まるとのこと。お腹が減っていたのでホームで駅弁を買って食べることにした。
この時代の物価の安さには感謝するよ。所持金残り3000円+何故か渡された乗車券で何処まで持つか分からないからネ。

新幹線が通る前の時代だけど、朝の秋田駅は活気に溢れていた。
反対側のホームには別の特急列車が停まっていた。
何処に行くのかな〜っと「行き先を表示するやつ」を注意して見てみると、何と上野行きだった。
新幹線が出来る前は、特急列車が長い距離を走って色んな街を結んでいたんだなぁ。


そう言えば、お父さんとお母さんの故郷にも、延々と長い距離を走る列車がある。
「能登」号ってやつだ。
お父さんはああ見えても忙しい人なので、私が帰省のお供をする機会はあまりない。
前帰ったのは何時だっけ? あ、確か、昨年のお盆だったな。

和倉のお婆ちゃんの家に行く時は、いつもゆき叔母さん、つまり、ゆーちゃんの家族といつも一緒なんだよね。
最終列車で北千住からJRで上野駅まで行くんだよね。
ゆーちゃんは既に電池切れで小さい子の様にフラフラなんだ。
で、「能登」号って他の列車と違って下の方にあるホームから発車するんだ。日付が変わる直前に。
電車は、そう、今乗ってるやつみたいにとても古いやつで、中もボロボロで、何故か肘掛けだけ水色で気持ち悪くて……。
ふと目が覚めるとそこはもう日本海。で、津幡で降りて普通列車で和倉駅に行くの……。
そこから今度は「のと鉄道」っていう列車に乗って、本当は「矢波(やなみ)」駅まで行くんだけど、
2年くらい前に穴水から先が廃止になっちゃったから、あの時は穴水駅からバスに乗って、
それから、それから────────、

どちらかと言えば家の中に居る方が好きな私だけど、家族みんなで行く「旅行」はとても楽しかった。
「今頃お父さん、どうしてるかな………。ゆーちゃんも、ゆい姉さんも、ゆき叔母さんも…」
みんな、みんなどうしているのかな…………?

『夏影』(Airの挿入歌)のボーカル付きバージョンが脳内再生される。
「あ……あれ、わ…私…………ダメだよ………こんな所で……………」
私の中で、何かが『破裂』した。
「うっ…………うっ……………ううぅ…………………」



私は、止まらない涙を必死に止めようとした。
涙は、止まらなかった。

「帰りたい………………。私の居た時代に帰りたい」
帰りたい、帰りたい、帰りたい、帰りたい、帰りたい……………。

私が心の中で何度も叫んだ「帰りたい」は、決して怠惰から来るものではなかった。
こういうのって、何て言うのだろう。
お父さんだったら私の今の感情を、ちゃんと言葉で表すことが出来るのだろう。

涙が止まらず、私は食べかけの弁当を座席に置いて、洗面所へと走った。
その時……、
「きゃっ……」
「あ、ご、ごめんなさいっ」

他の人とぶつかってしまった。
この後、私はこの女性と本日の目的地・富山までお付き合いすることになる。
476カケラ 間-1/2:2008/01/08(火) 02:15:52 ID:e69OyNNM
間.

それは史上最悪の鉄道事故だった。
2年前、福知山線(通称: JR宝塚線)脱線事故の様子が、
また、同じ年に起きた羽越本線の脱線事故の様子が脳裏に再生された。
前者は会社の出張で三田(さんだ)まで行く時に宝塚線に乗ったので、事故現場となった場所を通ったことがある。
後者はテレビの映像でしか知らないが、無惨な姿を晒す車両と、現場で涙を流すご遺族の様子を見て、心を強く痛めたものだ。

そして、今日…………。



側にいたみさおが、着信音を奏でる携帯電話を操作する。どうやらメールが届いた様だ。
そのみそおは、先ほどからずっとくっついていて離れようとしない。
「あやのは無事だって。一本後の電車に乗ってて、途中で足止め喰らったらしい」
それは良かった。
峰岸あやの。おれの小さな恋人。みさおの親友でもある。
みさおとは違う意味での理解者。
そんな彼女は今日、東京の日比谷という街まで出掛ける用事があったらしい。
「今、電車の中に缶詰にされてるみてーだ。電話には出られないらしい」
「そうか。おれ達も無事だって、返信してあげな」
「それくらい自分でやれよ。…って何ニヤニヤしてんだ、このムッツリエロ兄貴!!」
「ちょ……い、今メールを送ろうとしていた所なんだよ」
「何照れてんだ。気持ち悪いからやめろ」
「おまっ………まぁいい。とにかく無事で良かった」

おれ達が聞いた話によると、伊勢崎線の新田(しんでん)駅〜蒲生駅との間の高架橋が突然崩れ、
ちょうどそこを走っていた列車が巻き込まれて川に落ちたという。
事故の発生時間は18時〜18時10分頃、列車は普通列車らしい。
詳しいことは家に帰ってから調べてみることにするが、全員無事であることを祈ってやまない。

ところで、何故鷲宮町民のおれとみさおが春日部に居るのかというと、
折角の休日な上、あやのは姉貴(因みにおれの幼馴染みで腐れ縁)と日比谷へお出掛けなので、
折角だから古着屋でも行こうかと…………つまり、お互い暇だったからちょっくら出掛けた訳だ。
でもみさおさん、貴方は確か受験生だったような気がするのですが………?

春日部からは駅員がアナウンスしている通り、野田線で大宮駅まで行けばJRで久喜駅まで行くことが出来る。
そこからはバスなりタクシーなりを使えば家に帰る事は出来るのだが……。
「あれだけ駅がごった返してちゃ、とでもじゃねーけど電車には乗れねーな」
我が妹の言う通り、今あの駅に行ったら明日の朝まで身動きがとれなくなりそうだ。
477カケラ 間-2/2:2008/01/08(火) 02:16:13 ID:e69OyNNM
お、いいこと考えた!
「なぁ、みさお」
「あん?」
「歩いて帰るか?」
「どこまで?」
「大宮」
「距離あるな。何時間掛かると思ってんだよ!」
「何なら走るか?」
「えー、私短距離専門だから200m以上は走れねーよ」
「お前、毎朝2km走ってるだろ?」
「それとこれとは別だよ」
「だったら何だよ?」
「コレ持ってどうやって走れってんだ?」
みさおが指さすのは、おれ達の足下にある大きな袋。お互い、ちょっと服を買いすぎた。
あれはヨーカドーが一着1000円の特売セールをやったのが悪い。ついつい買ってしまったんだ。
「言い訳すんな」
「お、お前だってまたボロボロのジーンズ買ったじゃないか!」
「うるせーな。『ヴィンテージ品』って言って貰いたいね。
 ま、自転車と(仕事柄)ブレーキの事しか頭にねーカタブツ頭にはコイツの良さは一生わかんねーだろーけどな!」
「な、なんだと!」
「お、やるか?」
「上等だ」

「二人とも、いい加減にしなさいっ!」
おれとみさおが取っ組み合いの喧嘩になりかけた時、後から聞き覚えのある声が耳に届いた。
「「あやの?!」」
「何やってるのよ。こんな時に」
「何だ、お前まで居たのか」
おれが言う『お前』とはあやのの姉であり、おれの腐れ縁の誰かさんである。


結局おれ達は、豊春駅まで歩いて、そこから野田線に乗って大宮駅に行き、
大宮からJRで久喜駅まで行って、バスで帰宅した。
478カケラ 5 by 久留里:2008/01/08(火) 02:17:56 ID:e69OyNNM
以上でございます。
次回はつかさ視点でお送り致します。


その次は週末になるかも知れません。
479名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 02:23:49 ID:DVLeDcD2
連続GJ!
うううむ、なんでみんなにうまく連作書けるんだろう……

短編しか書けないヘタレの独り言でした。



>>443
ひよりん……いいんだ、もういいんだ。
そのオンリーイベントは、開催当日に突然中止になt(ry
480名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 02:32:58 ID:1YzxWPOF
最近は短編すら危うくて、ネタしか書けない俺がきましt

それはさておき

>>478
こういっては失礼極まりないが、なんだか回を重ねていくごとに
モノが深くなっていくような、どんどんと深遠に引き込まれていくぞ・・・
やっぱりある時代の鉄道という代物は、なにか独特の世界を
作り上げていくものだろうか、と、的違いなことを考える始末だ俺orz
とにかく、引き続き先を期待するのであります。
ハラハラもんだこれ・・・・

印象批評的になって申し訳ないす。

こなた「ますます銀河鉄道じみてきた、かがみん、おいてかないでね」
かがみ「だから縁起悪いっての」
こなた「だから痛いっての(〒ω〒.)」
481久留里:2008/01/08(火) 02:34:20 ID:e69OyNNM
>>479
初の長編(しかもなりゆきでこうなった)だから、最後まで書けるか不安なんだぜ。
4827-896:2008/01/08(火) 02:46:22 ID:NTWZnKXK
続編の間が1ヶ月以上開くのろまが通りますね。

>>481
GJなのです。
鉄道事故が伏線に見えてしかたがないです(´・ω・`)
全力で続編待機の姿勢に入ります。
止めても無駄です(黙


それから
>>453
期待していただろう『誰か』じゃなく、俺なんかですいません(´・ω・`)
描いてみました。

ttp://momoiro.s4.dxbeat.com/up/img/momoiro03860.jpg

描いていくうちに、みなみちゃんの顔が表情豊かな乙女になりました。
いや、ここでのみなみちゃんは生き生きしてるので、こんな感じであってるのでしょうか……

最後に、小さいは正義。
483名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 03:05:48 ID:KzoXK7/s
無乳みなみ→ゆたか「みなみちゃーん!」
貧乳みなみ→ゆたか「えと、あ、みなみちゃーん…?」
普通乳みなみ→ゆたか「え、えと…みな…みちゃ…ん?」

巨乳みなみ→ゆたか「すいません…どこかでお会いしましたか?」

みなみ(顔じゃなくて胸で判断している?!)
484名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 03:19:28 ID:bkrG/XYG
>>482
鼻血出るかと思った(みゆきさん的な意味ではなく
なんでこうあんたはいつもぐっじょなんだ
マジ大好きだ
保存しすぎて携帯の待受になった
485名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 03:20:07 ID:C+UyPr2C
>>463-468
すまない、最後のお節介をさせて下さい
3時に長文書き込んだ馬鹿者です
486名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 03:30:55 ID:dyTz+UND
とりあえずあやの姉にWKtK
487名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 03:40:04 ID:a+55vZiW
>>483
そして元サイズにしぼむ
ゆたか「ああ、やっぱりみなみちゃんだぁ、安心するよぉゴロゴロ
     (みなみの胸に甘える)」
みなみ「(これはこれで・・・いいのだけど・・・何か素直に・・・喜べない・・・;;)」
こなた「(みなみの肩に手をおく)だから病むなって言ったっしょ
     需要はあるって(=ω=.)」
みなみ「・・・・・・・・・・」
48831-141:2008/01/08(火) 03:53:08 ID:Riouomaw
んー、携帯しかないんで、WIKIの更新の仕方がわからないんですよねorz
誰かやり方を……



にしても久留里氏の作品はやっぱりレベル高いな。
いつかああいう作品を作りたいもんです…
489名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 04:22:15 ID:BemqaP7Z
>>478相変わらずの深い重厚な物語ですな。
なぜ過去に飛ばされたのか?こなたの成すべき事とは?
気になり過ぎるぜ。続きが楽しみだ。
GJ!!

>>482な・・・なんてけしからん!!こんなえちい物を描くお前にはお仕置だ!!くらえ!


つ こな☆フェチウイルス、かが☆フェチウイルス、つか☆フェチウイルス、みゆ☆フェチウイルス、ゆた☆フェチウイルス、みな☆フェチウイルス、みさ☆フェチウイルス、あや☆フェチウイルス、パテ☆フェチウイルス
ひよ☆フェチウイルス、こう☆フェチウイルス、なな☆フェチウイルス、かな☆フェチウイルス、さく☆フェチウイルス、ふゆ☆フェチウイルス、ひな☆フェチウイルス
ひか☆フェチウイルス、そう☆フェチウイルス、ただ☆フェチウイルス、みき☆フェチウイルス、いの☆フェチウイルス、まつ☆フェチウイルス、あき☆フェチウイルス、みの☆フェチウイルス
490名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 04:29:54 ID:jHOGhx4K
>>489
おいおい、これ忘れてますよ

つ かみ☆フェチ
491名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 04:54:30 ID:4OG+xUbg
>>478
こなたに近しいヒトと聞いて、真っ先に浮かんだのがかがみとかなたさんだった・・・
そうじろう俺の中で涙目。
492名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 08:02:43 ID:BemqaP7Z
>>490更にわすれてたorz。
つ ゆい☆フェチウイルス、ゆか☆フェチウイルス、やま☆フェチウイルス

いや・・・あの・・・ゆい姉さんは多少出番あってもくうk(ここから先は血で濡れていて読めない)
493名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 08:05:43 ID:yfvX8i8S
>>478
「近しい人」?「途中で乗り合わせて」?かがみなら米原から北陸に出てくるかも
しれんがその時は反対方向に向かってるはずだし…?
そして 九 州 に 飛 ば さ れ た つかさは?
続きに激しく期待だな

 しかしその中で一箇所
>青森の朝は埼玉よりも少し早く訪れる。これは緯度の関係なんだろうね
 確かに夏場なら、経度がほぼ同じ(厳密には約1度青森のほうが東)でより北にある青森
のほうが緯度の関係で昼間時間が長く、つまり日の出が早く日没が遅くなります。
ですが、この話の舞台、つまり冬場は逆に、緯度の高い地域ほど昼間の時間が短く、つまり
日の出が遅く、日没が早くなりますね。
494名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 09:48:13 ID:e7gi8HXM
どうにも我慢できないので小ネタ投下させてください…
久々にきた17-234です。
あきら+白石・非エロ1レス。
単なるネタなので保管不要です。
今の私の話ですw


よくある話(機種変編)

あきら様は、機種変をしたようです。
が。

「がー!!」
「…どうされましたかあきら様。」
「使いづらい!」
「あぁ、昨日機種変したその携帯ですね。良いじゃないですか、カッコいいし…」
「機種変したて、っつーのは使いづらいのよ!あぁなんで記号の位置が違うわけぇ?あーやだやだ。」
「まぁ…慣れですよ、ね?」
「ちょっ、記号じゃないの!あたしが出したいのは絵文字!」
「………。」
「ぎゃー!使いづらいー!!」
がしゃん!!
「あ、こりゃまた携帯買わなきゃかなぁ…」


流石に壊しませんけどね。
それじゃ退散しまノシ
495名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 10:37:24 ID:bkrG/XYG
>>490 >>492
本家にウイルスが効くわけないじゃないか
あれだけ使いこなしてるんだしw
というかばらまいた張本人だし
逆に返り討ちにさr(鼻血のようなもので塗り潰されている
496名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 11:23:12 ID:K6fT+pg2
>>490 >>492
しっかし、全員が全員に、全員分のウィルスにかかったらどうなるんだろう。
かつてないカオスになるんだろうな。一度見てみたい気もするw









かがみ「それなんて乱k(ここからかがみの記憶は閉ざされている)」
497名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 11:25:30 ID:kpmyMG8n
かみ☆フェチは誰だ?
498名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 11:33:27 ID:Xh+tw74y
神、いわゆるゴッド
499名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 11:34:08 ID:1VeEIzHP
前々からこのスレで目にしてるだろう
ゴッドと名のつく方が
500名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 11:34:24 ID:A5WgZJk0
つまりはゴッドさん……もといゴッドかなたさん
501名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 11:44:54 ID:t6W/Hk39
改めてまとめWikiで23-251さんのSSを読んでみたんだけど、「明日へ」だけじゃなく「危険な関係」、「Saturday Morning」、「夜のひととき」も“Elope の前日譚”に見えて仕方がない。

ちょっと深読みし過ぎかなwwww

ところで「明日へ」だけど、 Elopeやガラスの壁と同じリストにまとめた方がいいような気もするけれど、どう?
場所はElopeの第8話とガラスの壁の第1話の間ってのはどうだろうか、発表順に合わせる形で。
502名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 12:18:24 ID:jHOGhx4K
そしていまやゴッドかなたさんは2008年バージョンで凄い進化を遂げてるんだぜ?

とりあえず今回のぶーわ氏のトップはやばい
新境地かが×かな!?

もう何がしたいんだこの人w
50331-141:2008/01/08(火) 17:35:00 ID:Riouomaw
メルト、全編投下しようと思います。
初めは助言通り前編をWikiで修正して後編を投下しようと思ったんですが、Wikiの編集の仕方がわかりませんでしたorz
1日で仕上げるといって四日もかかって本当にすみませんでした。
でも、俺の中の1日は100時間(殴



では、
・メルト
・かがみ→こなた
・エロ無し
・歌を小説にしました。

無理な人はスルーでお願いします。
504メルト 1/A:2008/01/08(火) 17:37:14 ID:Riouomaw
 チリリリリ。


 喧しく鳴り響く目覚ましを無造作に上から叩く。
 パシッ、ガシッ、ガシャン…
 ……寝ているときの平行感覚ほど当てにならないものはないわね。
 欠伸をしながら、上体を起こす。
 上から叩いた筈の目覚ましは見事に机から落ちて、床に這いつくばっていた。
 音は止まったものの、何処かのネジが一本、目覚ましの横に転がっている。
 ……こなたがいたら絶対、
「うわっ、やっぱりかがみは凶暴だよ。」
とか言うんだろうななんて思い浮かべて、自然と笑みが溢れた。
 カーテンをパッと開いて、朝日を浴びる。
 もう一度、体を伸ばしながら大きな欠伸をして、前髪を掻き分けようとした所で、昨日髪を切った事を思い出した。
 切ったと言っても少し揃えた位だけど。
 またこなたにからかわれるんだろうなって、ちょっと苦笑。
 「絶対男だ!」
って、目を輝かせながら。
 「ホント、馬鹿ね…」
そっと呟いて、床に落ちた目覚ましを拾い上げた。
 とりあえず、着替えて、朝御飯を食べて。
 約束迄結構時間はあるからゆっくり出来るわね。
 …にしても、このネジ、どうしよう。
505メルト 2/B:2008/01/08(火) 17:40:03 ID:Riouomaw
 「昼休みから兆候はあったし、五限ではポツポツ降ってたけど、まさかこんなどしゃ降りになるなんてね。」
 「うぉぉ、天気予報嘘つきだよ……」
 みゆきは委員会の仕事で、つかさはこの間仲良くなった峰岸と一緒に家庭科室に行ってしまった。
 なんでもちょっと特殊な料理を家庭科部で作るらしく、顧問の先生一人だけだと教えきれないらしい。
 というわけで、今はこなたと二人で帰っている。
 「でもさ、教えられるレベルだなんて、峰岸さんもつかさも凄いよね。」
 下駄箱から靴を取り出して、昇降口でこなたが言う。
 「まあ、お菓子系らしいしね。つかさも峰岸も料理も得意だけど専門はお菓子系なのよ。つかさのクッキーとかプロ顔負けじゃない。峰岸も料理の腕前、つかさと同じ位だし。」
 玄関口で、私は鞄の中から折り畳み傘を取り出した。
 グラウンドは水溜まりと言うより、池に近い。
 雨がコンクリートを叩く音が昇降口に響く。
 折り畳み傘をほぐして、持つ部分を引っ張って長くした。
 はぁ…、特に意味なんかないけど、やっぱり雨は少し憂鬱だ。
 「むぅ。かがみの料理はあれなのになぁ。」
 「あれってなんだ。あれって。」
 私はこなたを睨み付けると、傘を開いて中に入った。
 だけど、妙にせまい。
 「なんであんたが私の傘の中に入ってんのよ」
 理由は単純で、そもそもさして大きくない女性用の折り畳み傘に、こなたと私の二人で入ってるからだった。
 いくらこなたが小さくても、折り畳み傘に二人はちょっと辛い。
 「置き傘は、、あるわけないか…」
 今日二度目の溜め息をつく。
 こなたがそんな気の利く事をする筈がない。
 「かがみ何気酷いこと考えてるでしょ。」
 こなたがむーっと唸る。
 そういうところは可愛いけど、調子に乗るから絶対に口に出してやらない。
 「さっきのお返しよ。どーせ置き傘なんかしてないんでしょ?まあ今日は天気予報も晴れの筈だったし、しょうがないわね。」
 「仕方ないなぁかがみんは、しょうがないなら入ってあげよう!」
 …色々と間違ってる気がするけど、きっと一番間違ってるのは私の感情だ。
 こなたが発した言葉と一緒に、笑った顔を見て、私はドキッとしちゃったから。
今まで意識したことも無い感情が、私の胸の中で激しく音をたてたのが聞こえた。
506メルト 3/A:2008/01/08(火) 17:42:19 ID:Riouomaw
 朝食も取り終わって、鏡の前で最終チェック。
 11時集合で、今はまだ9時30分だから、後30分位は時間がある。
 青系をベースにした上着に、薄桃色のスカートで合わせる。
 派手に見えなくもないけど、これくらいなら大丈夫だろう。
 今迷ってるのは、髪飾り。
 小さい花が2つ付いてる小物。
 ゆたかちゃんとかがつけたら似合いそうだけど、私のイメージとは微妙に違う。
 でも……、今日は可愛くいこうって決めたから。
 覚悟を決めて、頭の左側に髪飾りをそっと差して、鏡を見る。
 昨日美容院に行って少し短くした髪は優しそうな印象で、青と薄桃色の上下も決まってるし、髪飾りもちゃんと似合ってる。
 このつり目だけはどうにかして欲しかったけど、これだけはどうにもならないし。
 それにしても、気合い入れすぎたかな?
 普段は付けないルージュまで薄く唇に引かれているのは、友達と遊びに行くにしてはやりすぎじゃないかしら…
 「大丈夫!今日の私はカワイイんだから!」
 半ば自分に思い込ませるように言って、時計を見ると、時刻は丁度10時。
 ぴったりと家を出る時間になっていた。
 バックを掴んで、財布、携帯、小物と確認をしてから、まだ眠っているつかさの部屋の前で、小さく、行ってくるねって言って、家を出た。
 玄関を開けると太陽が猛烈な自己主張中。
 駅に行くために、私は明るい境内を歩いた。
 高鳴る胸と、ちょっぴりの不安を持って。
507メルト 4/B:2008/01/08(火) 17:44:26 ID:Riouomaw
 今まで感じた事の無い感情が、急激に自分の中に溶け込んでいく。
 それと同時に、物凄く戸惑っている自分に気付く。
 ……いや、それは仕方が無いのかも知れない。
だって今の今まで親友だと思ってたこなたに感じた感情。
それはきっと……
「……か……がみ、かがみ!」
そこで私の思考は一端中断された。
 突然近付いて来たこなたの顔に、どぎまぎしてしまって。
「そ、そんなに大声出さなくたって、聞こえるわよ。」
 思わず後ずさる。
その渦中の人物が自分のすぐそばに居ることをすっかり忘れていた自分が恥ずかしい。
大体こなたの顔を見ながら考えてた筈なのに、なんで忘れられるかな。
 「ほら、早く行こうよ。待っててもやむ気配がある雲じゃないってば。」
後ずさったと言ってもこなたは私の傘の中にいるわけで。
ついさっきまで気にもしなかったのに、今では言葉が発せられる唇に気を取られて。
その紅色の唇の艶かしさに、つい唾をのんでしまう。
「そ、そうね。行きましょう。」
そういって、小さな傘の中に上手く二人で入り込むと、紺色の繊維は景気よく雨粒を弾きだした。
 「ねぇかがみ。」
歩きながら、こなたが話しかけてくる。
世界が、雨と傘の境界線で切り取られて、私達しかいないんじゃないかって錯覚しそうだ。
「何?」
「さっき、ぼーっとしてたけど大丈夫?」
なんでこの子はこういう所にだけは鋭いのかしら。 靴下に入り込んでくる雨水が、靴の中の感覚を無くしてしまうほどに冷たい。
こなたの方を見ると、私の傘を持つ右手がこなたの肩と接触していることに気が付いた。
そして、今までどこか浮遊感のあった頭の中が、急速に醒める。
そうか、今私はこなたと二人きりなんだ……。
胸が高鳴る。傘を持った右手は少し震えて、息が苦しい位の緊張感が私を襲った。
 手を伸ばす所じゃなく、顔を近づければキスだってできる距離だってことを強く自覚する。
「別に、な、何でも無いわよ」
それだけを絞り出すように言うと、こなたが突然ニマーっと嫌な笑みを浮かべた。
「なんて顔してんの。」
「んー、さっきからかがみん、私の顔を見る度にぼーっとしてるからさ。もしかして惚れちゃった?」
ボッと、一瞬本当に音が出たんじゃないかと思う位、私の顔は一瞬で真っ赤になった。
「な、な、な、なな、何いっへっんのよあんたは!」
いや、自分でも突っ込みたい位、綺麗に見事に超動揺しつつ噛みまくってしまった。
こなたがすこし間の抜けた顔でこっちを見つめる。
「いや、あの、冗談だよ?かがみん?」
「あ、当たり前じゃない。あんたがあまりにも変な事言うから驚いたのよ!」
気付いたのはついさっきでも、好きだったのはずっと前からだ。
だからって、こんな場所でいきなり告白なんて出来るわけがない。
だから今は祈るだけにしよう。
この思いが、いつかきっとこなたに届きますようにって!
508メルト 5/A:2008/01/08(火) 17:46:10 ID:Riouomaw
 約束の駅に着いたのは、10時50分。
こなたの事だから、まだ来てないだろうなって思ってたけど、たまには早起きする事だってあるらしい。
いつも待ち合わせの場所にしてる柱時計のそばで、青い髪を揺らしながらこちらに手を振っていた。
「おはようかがみ。」
「おはようこなた。今日は珍しく早いのね。どうしたの?」
「一言多いよ。私だって春の陽気を楽しみたいことがあるのさ。」
いくらなんでもそんなことがあるはずがない。
私は怪訝な目でこなたを見下ろした。
暖かい天気のせいか、普段よりも少し薄着のこなたは、茶系のシャツにパーカーを一枚羽織っているだけの薄着だ。
そして目に入るピンク色のポッチ。
…ポッチ?思わず、じっと見つめてしまった。
「どしたの、かがみ?」 と、そこにドアップで入ってくるこなたの顔。
まさか、上から乳首を覗いてましたなんて言えるはずもない。
「い、いや、なんでも無いわよ。あんたの嘘が判りやすすぎて、ちょっと呆れただけ。何が春の陽気よ。どうせエロゲしてて徹夜したとか、そんなんでしょ。」
女が女に恋してるってだけで問題あるのに、これじゃ私変態よ。
 ふぅっと、溜め息をつく。
「いやぁそれが、昨日はメンテでネトゲが出来なくてさ。エロゲも一昨日鬱ゲーやり終わったばっかで、あんまりやる気しなかったんだよね。」
「やっぱそんな理由か。」
額に手をやって、頭を少し振る。
やれやれという感じを出しながら、気付かれなかったことに内心ホッとした。
「でもね。」
それに続いて、こなたは真顔で言う。
少しだけ頬が赤みがかっていた。
「かがみと二人だけで遊びに行くなんて久しぶりだから、ち、ちゃんと朝起きようって思ったんらよ!ほ、本当だよ。」
言い終わった時にはこなたの顔は真っ赤で。
あんな不埒な事をしていた自分が恥ずかしすぎて、こなたとまともに目を合わせられなかった。
 きっと私の顔も茹で蛸みたいだ。
大体、私の事はいつもツンデレツンデレ言ってからかうし、およそ女の子って感じの羞恥心が無いくせに、なんでこういう時だけ恥ずかしがるのよ。
絶っ対卑怯だ。
「それで、どこ行くの?映画までは時間あるし、どっか寄りたいって言ってたじゃない。」
なるべく平静に、冷静に言う。
目線がこなたじゃなく、駅の売店とか、道行く人の間を泳いでいるのは仕方が無いと思う。
「そ、そうだね、まずアニメイトとメロブ行って色々と買いたいものがあるんだ。まずアニメイトから行こう。」
そう言うと、まだ顔が赤いこなたは照れ隠しに私の手を掴んで歩き出す。
だから私も思わず、パシッとこなたの手を握り返してしまった。
ビクッとこなたの肩が震える。
こなたは前を向いていて、歩は止まったが、こっちに振り向く様子は無い。
ただ、耳まで完全に紅色になったのはよくわかる。
一瞬の沈黙の後に、こなたは黙々と歩き出した。
私と手を繋ぎながら。
509メルト 6/A:2008/01/08(火) 17:59:04 ID:Riouomaw
 こなたと過ごしたその日は余りにも楽しすぎて。
ふと、このなんでもない瞬間に泣きそうな程の嬉しさと幸せを感じた。
 何回か、このまま時間が止まらないかな?なんて願いながら。
それでも、終わりの時がやってくるのは、この物理法則に支配された中で生きるなら仕方が無い事で。
映画館を出た頃には、綺麗な夕陽が顔を覗かせていた。
「中々だったね。ちょっと甘味が強かったけど。」
「まあ原作自体恋愛関係が濃い内容だったし、私はあの位ロマンティックでも好きよ?」
帰り道を歩きながら、さっき見た映画の批評をする。
小説が原作のその映画はその筋の人には結構な人気の作品。
逆に「表側」の人にはあまり知られてなくて、つかさに題名を言ったら
「何それ?」
と言われてしまった。
それがこなたと二人で来た理由でもある。
「普段は何かと現実主義なのに、こんな時だけ女の子ぶるかがみん萌え。」
「女の子ぶるってなんだ、ぶるって。」
というかこなたにだけは言われたくない。
映画館は駅からそう遠くなくて、後一、二分も歩けばこの時間も終わりになってしまう。
…なんか、寂しいな。
確かに電話をすれば声は聞けるし、最近はメールもちゃんと返すようになったけど、やっぱり、実際に会うのとは違うから。
…だから、最後くらいは。
510メルト 7/A:2008/01/08(火) 18:02:59 ID:Riouomaw
こなたは、足を止めた私にすぐに気付いた。
「ん?どったのかがみん?」
普段の顔で、普通に聞いてくるこなたに、私はちょっとだけ意地悪をする。
 思い付いたのは、たった今だ。
「ねえ、泉ちゃん。私、このまま帰るの、寂しいな。」
そう言って、自分の手をこなたの前に差し出した。
「手……繋いで欲しい。」
さっきの映画の中のワンシーンをそのまま真似る。
もしかしたらおちょくられるかな?とも思ったけど、こなたの反応は私の思った通りだった。
「お、俺でイいなラ!」
作中と同じ言葉、同じ動作で私の手を取った。
でも声は裏返ってるし、手は震えてる。
来るときは不可抗力に近かったから慌てたけど、自分からやるならどうにかなる。
これは演技だと思い込ませて。
……心拍数は上がりっぱなしで、さっきから耳元でドクドクと煩いけど、まあそれくらいは仕方ない。
こなたはずっと私の方を見ないで、街路側に目を泳がせていた。
沈黙を守ったまま、駅前に出る。
夕陽に染まった空は眩しくて、茜色の中にはキラリと輝く一番星。
ここからは、映画じゃない。
私のオリジナルだ。
「ねえこなた。」
空いている手でこなたの肩に手をかける。
ビクッとしたこなたは、それでもこちらに顔を向けた。
その顔が紅潮しているのは、夕焼けのせいだけじゃないはず。
「な、なに?かがみ。」 私はこなたの耳元に口を近づけて、はっきりと言った。
「私、こなたの事、大好き。」
「え?!」
驚嘆の声を上げて私の顔を見上げる。
普段の私だったら、こんな人の多い駅前で、冗談ですらこんなことは言えないけど。
きっと私はこなたに溶けている。
「お願い、抱きしめて。」
こなたの目を見ながら、はっきりと言い切った。狼狽の仕方が楽しい。
あぅ、とか、えと、とかいいながら、目は泳ぎまくってるし、顔は絵の具より赤い。
何か言おうとして私をじっと見つめたかと思うと、うぅ、とか言って俯いたりしている。
そろそろ頃合いか。
「……なんてね。」
「え?」
「ふっ、ふははははっ、ば、馬鹿ね、すっかり騙されちゃって。」
私は、出来る限り抑えて笑うけど、あんまり抑制できそうもない。
でも流石にこんな場所で本気で笑いこけたら、白い目どころか黄色い救急車を呼ばれかねない。
「え?え?どういうこと?」
こなたはもうすっかり混乱してて、それが一層可笑しかった。
「ひっく、馬鹿ね、冗談に決まってるでしよ。」
私がこういうと、こなたはようやく頭の整理がついたらしい。
腕をブンブン振り上げて抗議してきた。
「ひ、酷いよかがみ!私、どうしようか真剣に悩んだのに!」
それは嬉しいわね。
「この間のお返しよ。大体こんなベタに引っ掛かるのが悪い。」
怒った声で当たってくるこなたをいなす。
でも、あの雨の日以来、ずっとこなたの事を思ってきたんだから。
これ位の悪戯、許されて当然よね。


fin.
51131-141:2008/01/08(火) 18:06:24 ID:Riouomaw
以上です。
レス数書き忘れたり、なんかよくわからないはじきかたをされて、少しまごつきました。
メルトを聞きながら投下しましたが、この軽快なテンポと、爽やかな恋が表現できてれば嬉しいです。
付き合ってくださった皆さん、本当にありがとうございました!
512名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 18:42:53 ID:/MlNef8W
>>511 GJ!
メルトからNice Konagkaga.
しっかりニヤニヤさせて貰いましたよ

どーでもいいが、タイトルの /Aと/Bは何か意味があるのか?と思ったので質問。


>>501
確かにそう感じますよね。
一部だけタイムパラドックスがあるところ(「告白」が冬休み直前で12月頭頃に付き合って1ヶ月になる「ガラスの壁」と矛盾)
を除けば、全部が一貫しているように見えますよね。
で、そこからその間の所を書こうと思っていながらも進まないorz
513名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 19:29:39 ID:kIfNaK/s
>>511
GJ !
おお、ちゃんとメルトしてるw 曲からここまで発想できるなんてすごい
続編ムリだろうけど、ちょっと希望する
514久留里:2008/01/08(火) 20:36:24 ID:e69OyNNM
>>511
GJ!!

>>501,512
一瞬ゆーちゃんを起用しようかどうか迷ってしまったではないか!
ちょうど12月だしw

>>480,482,489,493
ご意見有り難う御座います。

>この話の舞台、つまり冬場は逆に、緯度の高い地域ほど昼間の時間が短く、
>つまり日の出が遅く、日没が早くなりますね。
(=ω=.)「流石はみゆきさん。私、今の今まで季節を問わず、
  『東日本は日の出が早く、日没も早い』
  『西日本は日の出が遅いく、日没も遅い』
  とだけしか認識してなかったよ」
かがみ「まったくしょうがないわね」
51526-485(元6-748:2008/01/08(火) 22:49:08 ID:mDnvv7dI
大分前の話になるのですが
自分が名前は各個人がつけているものと勘違いし
勝手に名前をつけてしまったので
今更ですが時代の先駆者様たちに倣って改名しました
これからもどうぞよろしく

さて、他に予定されている方がいなければ
早速投下したいのですがどうですか?
516名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 22:51:31 ID:e69OyNNM
>>515
かめへんかめへん。むしろスレが埋まるまで投下してまえ(無理)
51726-485:2008/01/08(火) 22:53:38 ID:mDnvv7dI
ではいきます

・「交錯する気持ち」の続編
・6スレ拝借
・かがみ視点
・シリアス注意
518世界は私を中心としない(1/6):2008/01/08(火) 22:54:19 ID:mDnvv7dI
 ゆたかちゃんから告げられた衝撃の事実。
 私は初めてこなたとの関係が周りの人を巻き込んでいると知った。
 こなたの大切な従姉妹、ゆたかちゃんを。





 世界は私を中心としない





「それで……」
 私はこなたから今日もゆたかちゃんが学校を欠席した事を聞いて、重い口を開いた。
 話があると言ってきたこなたを家に招いたのは、私達の関係をゆたかちゃんに告げ、そしてゆたかちゃんの想いがこなたに告げられてから数日後の放課後。
 ゆたかちゃんは最近連日に渡って風邪で寝込んでいる。身体が弱く頻繁に体調を崩す事は知っていたが、こんなにも長く風邪を引いたままというのは久しぶりだそうだ。
 原因は容易に推測出来る。
 私達が付き合っている事を、そして自分の気持ちがこなたに伝わらないと知ったから。
「ゆたかちゃんの具合はどうなの?」
 こなたの話によると、また今度ゆっくり話し合おうという結論に至り私が帰路へついた直後に、廊下で苦しそうに倒れているゆたかちゃんを発見したらしい。すぐにおじさんに手伝って貰ってベッドへと寝かせ安静にさせたが、発熱や咳などの症状が未だ治まってないと言う。
「大分良くなったみたいだけど、まだ完全には治ってないって」
 こなたもおじさんから伝聞した話なのだろう、断言はせずに私の質問に答えた。
 学校に行っている間は仕方がないとして、帰宅してからこなたはゆたかちゃんの看病をしているのだろうか。今顔を合わせても気まずい空気に取り込まれるだけのような気がする。
「お粥とか作るのは私だけど持っていくのはお父さん」
 聞くと思ったとおりの答えが返ってきた。間接的には色々とやっているが顔を合わせたりはしていない、という事だろう。
「おじさんは何か言ってた?」
 度重なる私の質問に、今度は首を横に振って否定するこなた。
「もしかしたら知ってるのかもしれないけど……こっちからは聞けないしね」
「そうね……」
 指を顎に宛がい考える。
 同じ一つ屋根の下に住んでいるのに顔も見ず言葉も交わさないなんて辛いに決まっている。こなたもゆたかちゃんも元の関係に戻りたいと思っているだろう。
 或いはゆたかちゃんは、それ以上の関係を望むかもしれない。むしろこの可能性のほうが高いと言える。
 今のゆたかちゃんを支配する一途な感情が爆発したら―――
 ゆたかちゃんが私やこなたを拒み続けたら―――
 嫌な想像ばかりが私の頭を過る。
 もうこの関係を変える事は不可能なのだろうか。
「ゆーちゃん、きっと怒ってるだろうな……」
 こなたが悲しげに目を伏せて呟いた。
「このまま看病を続けたらきっと良くなるわよ」
「……もし良くならなかったら?」
 ありきたりの励ましを投げ掛ける私にこなたが最悪の仮定をした。
 私はそれに咄嗟に答えられず言葉に詰まってしまう。
「そうなったら、私達もう……」
「こなたっ」
 声を大にした私に驚きこなたが身体を震わせる。
 私は手を伸ばしてこなたの震える肩を掴んだ。
519世界は私を中心としない(2/6):2008/01/08(火) 22:55:46 ID:mDnvv7dI
 一瞬何をしたのか自分でも分からなかった。
 気づいたら私はこなたを床に押し倒していて、揺れる瞳を真上から覗き込んでいた。
 心が折れそうなこなたを見ていると私まで弱気になってしまいそうで、高ぶった感情が身体を勝手に動かしたのだろうか。
 それとも、気持ちを通じ合わせるのはこうするのが良いと本能が判断したのだろうか。
 私はゆっくりとこなたに顔を近づけ、唇を重ね合わせた。
「んっ……」
 目を細めて小さく声を上げるこなた。段々と頬を染め上げて、切なげな眼差しを私に向けてくる。
 今思うと私の部屋でするのは初めてだ。恋人を自分の部屋に招いて、そして強引に押し倒して唇を奪ったという事実が普段より一層私を興奮させる。
 底知れない不安を感じているであろうこなたに自分の気持ちを伝えるかのように、私はむさぼるかのごとく唇を押し付けていった。
「あ……むぅ……」
 こなたが目を閉じながら喘ぐ。火傷しそうなほどの熱さを感じながら、私は更に強くこなたの唇を求めていった。
 こなたの華奢な肩を押さえつけていた両手を離して手の平に優しく添え、こなたの細い指をからめとる←漢字変換。暖房が効いている部屋で密着しているからだろう、私達の手はじっとりと汗ばんでいたが、妙に心地良かった。
「んむぅ……」
 互いの唇を触れ合わせつつ、舌を伸ばしてこなたの柔らかい唇を舐め回す。どちらのか区別がつかない唾液が一部こなたの口の端から顎へと伝う。
 その淫靡な光景は酷く私を高ぶらせた。舌の動きを激しくすると、それに比例するようにこなたが私の手を強く握る。
 やがてこなたが私を受け止める用意が出来たのか、口を開いて僅かな隙間を作り出した。
 私はそこからこなたの口内に下を割り入れる。
「あっ……」
 私の部屋に甘美な嬌声と乱れた息遣いが響く。
 そう言えば先程からかなりの量の唾が出ているはずだ。摂理には逆らえない液体は、自然の法則に従って空間を落ち行く。
 仰向けになったこなたの上に位置している私は平気だが、こなたの口内には二人分の唾液が溜まっている事だろう。
 それのやり場はどう考えても一つしか思い浮かばない。
 瞬間、こなたが喉を鳴らして無色透明の粘っこい液を嚥下した。
 飲み下した時の音、少し目を顰めたこなたの顔、それらはとても扇情的で、上手く表現出来ないけど胸が少し締め付けられるような感覚に私はなった。
 揺さぶられた情動をどうする事も出来ずに、私はこなたの唇を強く吸った。
 すると、苦しくなったのかこなたが身じろいで足をばたつかせた。
「んっ……」
 踵が床をのたうつ衝撃が私にも伝わり、名残惜しさを感じながらも私はこなたの舌と唇を開放した。
520世界は私を中心としない(3/6):2008/01/08(火) 22:56:33 ID:mDnvv7dI
「吃驚したなぁ……」
 急に押し倒した事か急にキスした事か。恐らくは両方だろうと思いながら、口を尖らせながらもとろんとした表情のこなたを見つめる。
 徐々に細くなる、光を反射して輝いていた糸はやがてちぎれて、私達の口に収束していった。手の甲で拭うように処理して、惚けているこなたの背中に両手を回す。
 こなたは僅かに床から身体を浮かせてくれた。形成されたスペースに手を潜り込ませ、抱きかかえるようにこなたの上半身を起こす。私達の距離が再び縮まった。
 物憂げな瞳を見ていると私の本能は吸い込まれてしまいそうな魔力を見出したが、それを口実に折角抱き上げたこなたを再び横たえようとする自分がいて、考えを忘却の海へと投げ捨てる。
「何かさ、かがみと触れ合ってるとかがみの気持ちが伝わるんだよね」
 優しく微笑んで嬉しい事を言ってくれるこなた。そしてこのアングルはヤバい。
「かがみが告白してくれた時もそうだったけど、キスされてかがみの気持ちが私の身体に流れ込んでくる感じ?」
 こなたがゆっくりと目を閉じる。
「それで私は初めて、自分の本当の気持ちや大切な事に気づけるんだ」
 腕の中のこなたは本当に心地が良さそうだった。
 私だってそうだ。こなたと唇を重ねる事で、沢山得るものがある。
 言葉じゃ足りないから行動で表すんだ。
 嬉しい気持ち、悲しい気持ち、楽しい気持ち、切ない気持ち。
「私弱気になってた……ごめんね」
「ううん、良いのよ」
 私はこなたの顔を引き寄せると、おでこに軽く口づけた。
「ゆたかちゃんの調子が良くなったら、もう一度話し合いましょ」
 きっと分かってくれるはずだから、とこなたにというよりは自分に言い聞かせるように、言葉にした後も繰り返し心の中で復唱する。
「うん……」
 しかしやはり不安が拭いきれないのだろうか、こなたの返事は絞り出したようなか細い声だった。
 不安に支配されそうな身体、込み上げてきそうな嗚咽、実現しそうな最悪の想定を封じ込めるように、私はひたすらにこなたを抱き締める。
 それだけがお互いの気持ちを通わせる唯一の手段だった。

 私の心を映し出すかのように、薄暗い雲が限りなく広がる空を覆う日曜日。
 午後から雨が降るかもしれないわね。昼食を取り終えて部屋に戻った私は、窓を通して外界の天候の悪さをぼんやりと眺めていた。
 ここ最近の休日は連日こなたの家にお邪魔していたが、今日は特に誰とも一緒に過ごす予定はなかった。偶には一人でいるのも良いかもしれない。
 私の頬を支えていた手を動かし今読み進めている途中のラノベへと手を伸ばす。頁を捲っても殆ど頭に内容が入らなかったので、すぐに本棚へと仕舞う。
 昼寝でもしようかと思いベッドに仰向けになるものの、睡魔は全くやってこなかった。次に思い立ったのは明日の授業の予習だが、眠くないにしても一度寝転んでしまうとやけに身体が重く、机が遠く感じる。
 何も手につかないのは、押し寄せてくる不安の所為だろう。集結して大波を形成する、半端じゃない量のどす黒い感情は容赦なく私の心に入り込む。
 こなた何してるのかしら……目を閉じて暗闇の世界に最愛の恋人の笑顔を描く。
 魔のトライアングルを人知れず作っていたゆたかちゃんと同じ家で過ごしているのだから、私よりも遥かに苦しんでいるに違いない。
 こなたの家を訪れたい衝動に駆られたが、今は止めておいた方が良いのだろうか。
「お姉ちゃん、お客さんだよ」
 色々と思考を巡らせていると、ドアの外からつかさの声がした。我家に私に用事があって来訪してきた者がいるらしい。
「誰?」
 私は頭を掻きながら身体を起こし、ベッドから降り立った。
「こなちゃん―――」
 ……こなたっ!?
「―――のおじさん」
 ……のおじさんっ!?一瞬の内に歓喜と驚愕が繰り返される。
 こなたのおじさんが休日の昼間から私に何の用だろうか。不思議に思いつつも対面を謝絶する理由もないので、私は軽く身だしなみを整えて部屋から出る。
 客人の来訪を教えてくれたつかさにお礼を言って階段を降りる。自然と早足になるのは待たせると申し訳ないからか、わざわざ訪ねてきた理由を知りたいからか。
 玄関には茶色のコートを羽織り類似した色のシャツとズボンを召しているこなたのおじさんが立っていた。開け放たれた扉から見える道路脇には一台の車が停めてある。
「突然押しかけたりしてすまないね」
「いえ……それより、どういったご用件で?」
 おじさんは真摯な眼差しのまま、言った。
「こなたとゆーちゃんが家で待っている。一緒に来てくれるね?」
521世界は私を中心としない(4/6):2008/01/08(火) 22:57:06 ID:mDnvv7dI
「ゆたかちゃんの具合はどうですか?」
 助手席に座った私は隣でハンドルを握るおじさんに聞いた。
「大分良くなったよ。俺の職業が幸いしたかな」
 運転中だから当たり前なのだが、私の方を見ずにおじさんは答える。作家という職業柄、家にいる事が多いからつきっきりで看病出来たのだろう。
「ゆーちゃんは元々身体が弱かったが……」
 ふとおじさんが語りだしたので、私は静かに続きを待つ。それを見計らったかのように信号が赤色に点灯した。
 ブレーキを踏んでおじさんは沈黙を催促と感じたようだ。
「今回みたいに症状が長引くのは久し振りの事なんだ」
 言い終ると同時に私の方を向いた。
「ええ、こなたから聞きました」
「そうか」
 おじさんは一つ頷くと、青色が進めを示したので一時的に停止させていた車を再び走らせるべく前方に向き直った。
 私は意味もなくシートベルトを握り締め、あっという間に移り変わる外の景色に目をやった。
 今までは意識していなかったから知らなかったが、道行くカップルは殆どの割合で手を繋いでいる事に気づく。しっかりと握り合っていたり、指先を少し絡ませただけだったりと、その様子は非常に多様だったが、誰もが幸せそうに見えた。
 私達にもあんな風になれる日が来るのだろうか。
「三人の間に何があったかは知らないが、ゆーちゃんは俺にとってもこなたにとっても大事な家族だ」
 不意に聞こえたおじさんの声に視線を移動させる。その横顔はとても凛々しかった。
「早く仲直りしてくれよ」
 車が止まったと思うともうこなたの家の前だった。
「同席されないんですか?」
 私はドアを開けながら尋ねた。おじさんは力強く頷いた。
「こなたが選んだ道を俺は応援するさ」
 何もかも知っているかのような口調に本当にそうなのではないかと疑いを持ってしまう。ある程度は想像がついているのかもしれないけど。
 降車して車内のおじさんに頭を下げる。おじさんはそれを見届けてから颯爽と車を操作し何処かへ走っていってしまった。
 何度も見ているはずの泉家の玄関。それが今は試練への門に見える。
 大事な家族―――おじさんの言葉を頭の中で繰り返す。
 そこに私が入り込む余地はあるのだろうか。

「いらっしゃい、かがみ」
「おっす、こなた」
 インターホンを押して、来た事を知らせるとすぐにこなたが出迎えてくれた。挨拶もそこそこに私は早速上がらせて貰う。
「お父さんから聞いてると思うけど、今からゆーちゃんと話をつけるよ」
 こなたの真摯な瞳に私は頷く。こういうところもおじさんから受け継いでいるようだ。
「おじさんは私達三人の事知ってるのかな」
 先導するこなたの後姿に聞いてみた。
「多分……知ってると思うよ」
 こなたは振り返ると何の思案もなく肯定した。
「私達の問題は私達で解決しろって事じゃないかな」
 そう続けるとこなたは再度前に目線を直した。
 これもある意味信頼の形、なのだろうか。
 そんな事を考えている内にゆたかちゃんの部屋の前まで辿り着いた。心臓が早鐘を打っているのが分かる。
 こなたは何の躊躇いもなく扉を二回ほど叩く。
「ゆーちゃん、私……とかがみ」
「……入って良いよ」
 沈んだ声に歓迎を受け、こなたがドアノブに手を掛ける。
 部屋の中には、ベッドに寝たまま窓の外を見て儚んでいる一人の少女の姿があった。
522世界は私を中心としない(5/6):2008/01/08(火) 22:57:38 ID:mDnvv7dI
「調子はどう?ゆーちゃん」
「大分良くなったよ。皆が看病してくれたから」
 本人はそう言っているものの、顔はすっかり痩せ細り嘘でも健康だと言うのが憚られるほどだった。
 こんなになるまで悩ませていたのか―――私の胸に申し訳なさが募る。
「心配掛けてごめんね」
 ゆたかちゃんがそう言うと、室内は静寂を纏い始めた。
 今日もまた、分かり合えないまま悪戯に時間だけが過ぎてゆくのだろうか。
「ゆーちゃんが家に来てから大分経った」
 沈黙を打ち破るようにこなたが呟いた。
「ゆーちゃんは本当に可愛くて、本物の妹みたいだった」
 昔の自分とゆたかちゃんを思い浮かべているのだろう、こなたは目を細めて続ける。
「今ではもう、ゆーちゃんは私の家族の一員だよ」
 一つ一つ、言葉を探しながら丁寧に紡いでいくこなた。それを黙って聞いている私、俯きがちに耳を傾けているゆたかちゃん。
 目尻には大粒の涙が溜まっている。
「だからこそ……ゆーちゃんには理解して貰いたかった」
 そこでこなたの話は途切れ、再び重たい空気がやってくる。
 やたらと響く、枕元の目覚し時計定期的な音。
「……だったら」
 それが六十を数えようかという時―――
「どうしてすぐに言ってくれなかったのっ!?」
 ゆたかちゃんの秘めていた想いが爆発した。いきなりベッドから起き上がり、その弾みで雫が煌きながら零れる。
「家族だと思ってくれてるんなら、どうしてもっと早くっ」
 思わず己の目を疑ってしまうほどの激しい剣幕。熱くなりすぎて抑制が効かないのだろう、最後の方は感情に支配されて途中までしか言えてなかった。
 私達が答えを出せずにいた質問は一週間前と同じく、私達を封じ込める。
「もう私、お姉ちゃんと今まで通り過ごすなんて出来ないよ……!」
 好きな人と一つ屋根の下。
 それはとても理想的な関係に見えて、今のゆたかちゃんには生き地獄のような場所なのだと瞬時に理解する。
「……最初から知ってればこんな事にならずに済んだのに……」
 ゆたかちゃんは決壊した涙腺を隠すように顔を伏せて言った。
 自分で悔やんでいるだけかもしれない。残忍な神様を呪っているのかもしれない。
 しかし私には、それは私に向けて言われているような気がした。
「あなたが私から何もかもを奪ったんだ……」
 そして私は確信した。
 ゆたかちゃんは私を恨んでいるのだと。
 背筋に戦慄を覚える。
「私のお姉ちゃんも、私の居場所も……」
「かがみを悪く言わないで!」
 こなたが立ち上がって叫んだ。
「こなた……」
「ゆーちゃん、それは我儘ってもんだよ」
 こなたの冷徹な言葉にゆたかちゃんの腫れた目元が反応した。
「自分の意気地のなさを棚に上げて何言ってるの。ゆーちゃんがもっと早く私に気持ちを伝えていればこの状況は違ってたかもしれないんだよ?今のゆーちゃんは自分の非は無視して駄々捏ねる子供と一緒だよ」
 ゆたかちゃんに言っている言葉のはずなのに、私の胸に何かが刺さってくるのは何故だろう。
「ゆーちゃん、私は元の関係に戻りたいよ。仲良かった家族に……」
「じゃあお姉ちゃんの言う家族って何なの!?」
 ゆたかちゃんが怒りに似た感情を露にして、勢いに任せて声を張り上げる。
「おじさんとお姉ちゃんは家族だけど私は血は繋がってない、従姉妹じゃないっ」
 一度口から出てしまった憤りは止まる術を知らなかった。家族に関しての口論が二人の間で飛び交う。
 手が震えた。
 私がこなたの家庭を崩壊させている、二人を苦しめているという事実に。
「ゆーちゃんは私やお父さんを家族だと思ってないの?信じてくれてないの?」
「そんなわけないじゃない」
 家族が、崩れていく。
「お姉ちゃんは私が二人を信頼してないとでも思ってたの?」
「そうじゃないよ」
「じゃあどうしてっ」
「止めてっ!!」
 家中に響き渡るかのような大声を上げて、私はこなたとゆたかちゃんの間に割って入った。
「こんなの……ダメだよ」
 他に言葉が見つからなくて、私はそう呟くと部屋を飛び出した。
523世界は私を中心としない(6/6):2008/01/08(火) 22:58:09 ID:mDnvv7dI
 走って走って行き着いた先の公園は、私を迎え入れるかのように人気がなかった。良く見れば遊具は所々破損していたりして、人が全くいないのも納得がいく。
 ブランコやベンチなど腰を下ろせる場所は何箇所か近くに存在したが、私は興味を示さずゆっくりと歩いて公園の中央で止まる。
 寂れたこの場所は今の私にお似合いだ。
 あれだけ逃げ出さないと誓ったのに。
 あれだけ後悔しないと誓ったのに。
 あれだけ離さないと誓ったのに。
 全て爆ぜてしまった。
 全て失ってしまった。
 全てなくなってしまった。
 鼻の頭に落ちた水滴に顔を上げれば、空は分厚い雲に完全に隠されていた。雨粒はあっという間に激しくなり私の身体を濡らす。
 それでも私は空を見上げていた。
「……そんなところにいたら風邪引くよ」
 背後から声が聞こえたけど振り返らない。返事もしない。
「どうして逃げたの?」
 私が何の反応も見せないからか、こなたは話題を変えた。
 逃げた―――その言葉が深く突き刺さる。
「かがみはもう……私を好きじゃないの?」
 そんなわけない。違う。あり得ない。
 否定の言葉は幾らでも思い浮かぶのに、声にはならなかった。
 こなたを好きという気持ちには変わりない。
 しかしそれは、こなたの家族を壊してまで優先するべき事なのか。
 頑なに自分の気持ちを押し通す。二人で何処か遠くまで駆け落ちする。
 他にも自分の気持ちを優先させる手段は多様にある。
 しかしそれは、周りの人達を巻き込んでまでする事なのか。
「……かがみっ!」
 苛立ちを覚えたこなたの声が聞こえる。
 逃げ出すなと言われてからまだ十日も経っていない。それなのにこのざまだ。もう逃げてしまった。我ながら情けなさすぎる。
 大丈夫だと励ましたにもかかわらず、その本人が挫けるなんて。
 約束の一つも守れない者が、周りに迷惑を掛ける者が、困難だらけの道を進み幸せになれるのか。
 なれるわけがない。こなたと共に絶望へと続く道程を歩くわけにはいかない。
 愛しさが溢れて、これ以上こなたを苦しめる前に、これ以上こなたを傷つける前に―――
「かがみ、何か言ってよっ!」
 右手首に痛みが走る。顔を顰めた途端強い力が加えられこなたに引き寄せられる。
「こなた……ごめん」
「かがみ……」
「私もう……頑張れない」
 力なく呟く私にこなたは一瞬悲痛の色を見せたが、すぐに目尻を吊り上げて私の手首を思い切り掴む。
 殴られる―――と私は直感で感じた。だがそれでも仕方がないと思えた。私はそれだけの事をしでかしたのだから。
 ところが来るべき衝撃に備えて目を瞑っていた私は、温もりに包まれた。
 こなたに抱き締められていると思ったら、私はまたすぐに冷たい雨に晒される。
 激しい雨の中、私は去り行くこなたの後姿を確認した。
 不思議と涙は出なかった。
52426-485:2008/01/08(火) 23:00:58 ID:mDnvv7dI
色々と拙い点等あるでしょうがいかがでしょうか
シリアス物は中々筆が進まない……
結末はどうなる事やら
続きます
525名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 00:02:41 ID:GG+xVZAS
GJ!
緊迫した場面の連続で一気に読めました。
ただ >522で、今まで話し合いをしていた、こなたが急に、かがみをかばって
ゆーちゃんを責める言葉を放った部分の描写については、やや唐突な印象を受けました。
もう少し、描写を厚くして『ため』を持たせた方が、こなたの憤りが伝わった気がします。
続きを楽しみにしております。
526名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 00:04:22 ID:4OG+xUbg
>>524
GJですぜ
うぅむ・・・胸が苦しい・・・
ダメだよかがみ…ちゃんと向き合っていかないと…
二人で進んでいかないとダメだぁぁ・・・
みんな辛いなぁ・・・でもがんばれー!
527名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 00:27:54 ID:Qy803dAB
>>524
激しくGJ。
切なねぇ…切なすぎるぜ、かがみっ!
続編にwktk。


メガッサ私事だが、最近ノロウイルスだか、こな☆フェチだかが流行ってるらしく…
皆体調管理には気をつけるべきっ!
と、さっそく急性胃腸炎になったオレが言ってみるorz
528名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 00:44:54 ID:rjuOCsPR
>>524
部屋の緊張感が伝わってきて、思わず鳥肌が立ってしまいました。
シリアスものは大変ですが、頑張って下さい!

さて、最近「お風呂」というシチュエーションがすごくツボで、こんなのを作ってしまいました。
息抜きによんでいただけたら幸いです。地の文無し、4レスです。
529ふたりでお風呂・こなたとゆたか (1/2):2008/01/09(水) 00:45:56 ID:rjuOCsPR
 

 カッポーン


「……あちちっ」

 パシャパシャ

「ん……大丈夫、かな」

 ガラッ

「ゆーちゃんはろー☆」
「うわあぁっ! び、びっくりさせないでよー」
「ごめんごめん、たまには一緒にどうカナと思ってネ」
「んもー、しょうがないんだからー」
「ほらほらっ、いとこ同士なんだから隠さない隠さないっ」
「わっ、ちょっと、お姉ちゃんっ! ふふっ、くすぐったいよぅっ」

 チャプン

 ザバァ...

「ふぃー、やっぱりお風呂は温まるネ」
「うんっ、体の中からぽかぽかしてくるよね」
「ゆーちゃんはお風呂好き?」
「うん、好きだよっ」
「私も好き。ウチのお風呂はそれほど広くないけどさ、
 それでもお風呂に入るとなんだかゆーっくりと出来るんだよね」
「確かにそうだよね。なんだかすごく落ち着いた気分になるもんね」

 ピチョン

「……ゆーちゃんは、私のこと、好き?」
「えっ? うん、もちろん好きだよっ?」
「じゃあ、ゆい姉さんと私、どっちのほうが好き?」
「ええーっ!? そ、そんなの言えないよぅっ!
 二人とも私の大事なお姉ちゃんだもん……どっちが、なんて決められないよっ」
「ふふ、ごめんごめん。ゆーちゃんがそういうのは分かってたけどさ、それでも聞いてみたくて」
「どういうこと……?」

 チャプ...

「私さ、ゆーちゃんがウチに来てから、頑張って『良いお姉ちゃん』を目指してたんだ」
「うん……」
「ゆい姉さんって、普段は結構ぶっ飛んでるって感じだけど、
 実はゆーちゃんのこと、誰よりもよーく見てて、よーく知ってるんだよね。
 だから、ゆーちゃんがウチに来るって決まったとき、
 そんなゆい姉さんの代わりになれるかなって、正直言うとちょっと不安だったんだ。
 今でも、私はちゃんとゆーちゃんの頼れる存在になれてるかな、とか、たまに自信持てないときがあるんだよね」
「そんなことないよっ、こなたお姉ちゃんは、すごく良いお姉ちゃんだと思うもん……。
 私も、すっごくこなたお姉ちゃんに助けられてるなって思うこと、よくあるし……」
「ありがと、ゆーちゃん。でも、やっぱりまだまだだなって思うんだよね。
 この前まで私は、お父さんと二人で暮らしてて、どっちかっていうと『頼る側』の人間でさ、
 かがみ達にも結構頼ってばっかりで、誰かに頼られたりするなんてこと、なかった。
 けど、ゆーちゃんが来て、私も『頼られる側』の人間になってみて、初めてその大変さ……
 んー、大変さっていうよりは……『大切さ』が分かったんだよね」
「『大切さ』……?」
530名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 00:46:01 ID:Qzv0lmVQ
そうじろうが良い味出してるなあ……
父って凄いよね。
531ふたりでお風呂・こなたとゆたか (2/2):2008/01/09(水) 00:46:38 ID:rjuOCsPR
「うん……やっぱり誰かに頼られるような人間じゃないと駄目だなって、最近思うんだ。
 そういう、頼られる人って、すごく輝いてて、すごく優しくて、すごく魅力的な人で、
 そしてなにより、誰かに頼ってもらうってことは、すごく嬉しいことなんだよね。
 頼ってばっかりじゃ気づけないようなことが、頼られてみていっぱい分かった。
 だから私、ゆーちゃんにはすごく感謝してるんだ」
「そんな……私のほうこそ、こなたお姉ちゃんにはいっぱい感謝してるんだよっ。 
 ……さっきお姉ちゃん、ゆいお姉ちゃんの代わりって言ってたけど、
 最近、お姉ちゃんのこと、すごくゆいお姉ちゃんぽいなって思うんだ。
 お姉ちゃん、前にゲームしながら寝ちゃってたことあったでしょっ?」
「う、うん……コタツに入ったままだとついつい……」
「ふふっ、あのとき、お姉ちゃん寝言で私の名前を呼んでくれてたんだ」
「ホントっ!? な、なんだか恥ずかしいナ……」
「昔、ゆいお姉ちゃんが遅くに酔っ払って帰ってきたことがあって、
 そのままソファーで寝ちゃったんだけど、そのときもお姉ちゃんみたいに私の名前を呼んでくれててさ、
 なんだかそのことを思い出しちゃって。
 だから、私、すごく二人に愛されてるんだなって思うんだよね」

 ピチョン

「……ゆいお姉ちゃんがきよたかお兄ちゃんに着いていかなかった理由って、知ってる?」
「今の仕事が好きだから……ってこと?」
「うん……。お姉ちゃんはそう言ってるけど、
 本当は……私のために残ってくれたんじゃないかなって思うんだ……。
 そう言うと、きっと私が迷惑かけてるんじゃないかなって思うだろうから、言わないだけで……
 んー、やっぱり考えすぎかなっ?」
「ゆーちゃんのため、かぁ……。でも、ゆい姉さんなら、それも分かる気がするな。
 ゆーちゃんのこと、きっときー兄さんと同じくらい……ひょっとしたらそれ以上に大切に思ってる人だからね」
「きよたかお兄ちゃん以上は言いすぎだよぅっ、多分……。
 でも……ゆいお姉ちゃんが残ってくれるって聞いたとき、やっぱり嬉しかった。
 ゆいお姉ちゃんと離れなくて済むんだなって思ったら、すごくほっとした。
 私も、ゆいお姉ちゃんのこと、やっぱりすごく大切なんだなって思う……。
 あっ、もちろんこなたお姉ちゃんのことも、すっごく大切に思ってるからねっ?」
「ふふっ、分かってるって。ゆーちゃんは優しいネ」
「ホントだってばぁっ! んもうっ」

 ジャブジャブ...

「……こなたお姉ちゃんは私のこと、好きなんだよねっ?」
「うん、もちろんっ」
「じゃあ、かがみ先輩とはどっちが好き?」
「な、なななんでそこでかがみの名前がっ!?」
「ねぇ、どっち?」
「え、えーっ!? うーん、そ、それは……ゆ、ゆーちゃん、意地悪だよぅっ……」
「さっきのお返しっ♪ それで、どっち?」
「うぅ……じゃあゆーちゃんが私とみなみちゃん、どっちが好きか答えたら言ってあげる」
「み、みなみちゃんは関係ないでしょっ!?」
「じゃあ、私のほうが好きなんだ。やったぁっ」
「そ、そんなことないもんっ! 
 あっ、でもこなたお姉ちゃんが嫌いってわけじゃなくて……うわああっ」
「ふふ、ゆーちゃんはホントにかわいいなぁっ。やっぱりかがみといい勝負だネ」
「わっ、き、きゅーに抱きつかないでよっ! 危ないよぅ、お姉ちゃんっ!」

 ワーワー

 ザブン゙ザブン...

532名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 01:09:45 ID:JoVccXd2
ぬ、人多杉に引っかかったかな?
でわその間に、>>527へのネタw

かがみ「依存性此方抱擁接吻症」
つかさ「夢遊病性此方視界内進入時気絶症」
みゆき「造血性此方感覚認識型鼻粘膜不全出血熱」

みさお「発作型鏡嫉妬時情動失禁」
あやの「操伽羅歌嫉妬性影付微笑症」

ゆたか「黒笑性南着替調教症」
みなみ「沈黙性豊服従時々病照症」
ひより「突発性百合現場遭遇時原稿量産症候群」
パティ「衣装遊性日和虎視眈々的秋葉原中毒症」
5339-727:2008/01/09(水) 01:34:31 ID:7dtqZCCK
すみません…なんかきゅーに書き込めなくなりまして…これがアクセス規制というやつなのでしょうか。
携帯から書き込もうとしても端末番号うんたらかんたらで出来ず、ずっとパニック状態でした。(今書き込み方法を調べたところです)
結構長いのにこんなトラブルで中途終了とは情けないです。
残りはwikiにあげさせていただきます!スレの皆様に多大な迷惑をおかけしまして本当にすみませんでした。
534久留里:2008/01/09(水) 01:40:48 ID:FebRDn7J
>>524
GJ!!
切ないよ、切なすぎるよ。泣きそうになりましたよ。

>>529
GJ!!
みさお
「この間チビっ子の家行ってシャワー借りたんだけどさー、我が家の4〜5倍くらい広くてビビったぜ。
 ウチなんか2人で入れねーどころか、足も伸ばせねーんだぜorz」




さて、「カケラ」の続きを投下いたしますよ。容量大丈夫かにゃ?

・>>クモハ471-478 の続き。
・つかさ視点 / みさお兄視点
・非エロ
・7レスほど使用
・シリアス/タイムリープ/鬱展開あり
・オリジナルキャラが登場します。
・オリジナル設定が多いのは仕様です。
・物語の性格上、鉄分が濃いです。

※アクセス規制で書けなかった場合はごめんなさい。次スレで投下します。
535名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 01:40:58 ID:nA+kDDUW
どどんまい
536カケラ 6-1/5:2008/01/09(水) 01:41:39 ID:FebRDn7J
6.

「朝よ」
「ん………んんーっ」

ゆっくりと身を起こす。
「ん……ふぇっ?! ここどこ?!!」
「やっと目が覚めたわね」

あ、そうだった。
私は気が付いたら鹿児島県の山中の駅に居て、そこで普通列車に乗ってこの女の子と出会ったんだ。
で、隼人駅で乗り換えて、それから…………、
「えっと、何だっけ?」
「忘れたの? あなた、一生『元の場所』へ帰れないわよ」
ごめん、悪気はなかったんだけど、途中で眠くなっちゃって。
「はぁ、まあいいわ。それよりお腹空いたでしょ?」
「うん……」
「朝ごはんにしましょ」

そうだ、思い出した。
私は隼人駅で日豊線という路線で西鹿児島駅に向かって、この子が「自分の家」で泊まらせてくれたんだ。
で、今いる古い木造アパートがその子のお家……………にしてはあんまりな部屋だった。
テレビドラマに出てくるようなアパートで、部屋は畳敷きの6畳間だけ。
お風呂は無く、トイレと洗面所は共通のまるで独身寮のような所だった。
あ、独身寮っていうのはテレビドラマで見たのがそういう設定であって、私は一人暮らしはまだした事ないよ。

その子はどこか「親近感」があった。
歳は12歳くらいで身長はこなちゃんと同じくらい。
昨日は白いコートを着ていたから分からなかったけど、淡い黄色のトレーナーに臙脂色のチェック模様の入ったキュロットを穿いていた。
対する私はデニムのオーバーオールで下は黄緑と緑の縞模様のセーター。
彼女は、日豊線の列車(一番前は何故か機関車が付いていた)の中で、私の今の状況を全部話してくれた。



まず、私が飛ばされたのは『昭和5X年』の12月18日。日付が変わったから今は19日。
その鹿児島県にある『霧島西口』駅(今は霧島温泉駅というらしい)に『意図的に』飛ばされたらしい。
ただ、私を飛ばしたのは悪意があってではなく、私を、そして『私にとって大事な人』を助けるためだったらしい。
まさかと思って彼女に「あなたが飛ばしたの?」と訊いてみたけれど、答えはノーだった。
代わりに彼女はこう言った。

『あなたがこの時代で死なれては困るの。何としてでも元の時代に戻らなければならないの』

この言葉を聞いたとき、私は彼女の言っていることがサッパリ分からなかった。
多分、私が馬鹿だからだけじゃないと思う。
彼女の言っていることが、悪く言えば馬鹿馬鹿しく聞こえたからだ。
まわりから見れば、彼女は「おかしな子ども」としか見られなかったのかも知れない。
でも、彼女のこの一言…いや二言は、説得力があって、力強かった。
だから、私は彼女の話を全部信じる事にしたんだ。

それにしても……。
「『私にとって大事な人』って………………誰?」
真っ先に思い浮かんだのは同じクラスで一番仲の良いこなちゃんとゆきちゃんだった。
確かに二人共好きだけど、彼女が言う『私にとって大事な人』とはちょっと違う様な気がする。
537カケラ 6-2/5:2008/01/09(水) 01:42:19 ID:FebRDn7J
「朝ごはん、出来たわよ」
女の子がぶっきらぼうな声で私を呼ぶ。

彼女の生活はいたって謎だった。
この部屋はどう考えても彼女の家ではない。数年間ずっと空き家だったとしか考えられない。
そうでなければ『当時の』小学生くらいの女の子が、ここまで生活感の無い家に一人で住んでいる筈がない。
そもそも彼女は私が『この時代に』飛ばされたことを知っているし、
服装なども『現代』に近いものとなっている。
この時代にはまだ普及していない筈の携帯電話を見せても、特に驚くことは無かった。
ただ単に興味が無かっただけなのかも知れないけれど。
果たして、この子はどうやって生活をしているのだろう?


「昨日も言った通り、私で良ければ一緒に付いていくわ。あまり役に立たないとは思うけど。
 でも、現代に戻るには───」
彼女が言いかけた台詞を私が続けて言う。
「──私が自分の力で『鍵』を見付ける必要がある、だったね」
「やっと思い出したようね」
ちょっとおマセな女の子がニコリと笑う。
あまりにも不自然なその表情を見るに、彼女は十数年の人生の中であまり笑ったことは無さそうだ。
「何よ?」
目玉焼きを口に入れながら私に問いかける少女。私はずっと彼女のことを凝視していたらしい。
「え…あ………ごめん、何でもない」
お陰で恥ずかしくなっちゃった。

トーストにマーガリンを塗って口に入れる。市販品をただ焼いただけのものだが、これが結構美味しい。
目玉焼きも良く焼けており、不器用そうで結構器用だ。
朝ごはんはそれだけしか無かったけど、私は泊まらせてもらった身なので文句は言えない。
「で、その『鍵』は、どこで手に入るの?」
「私だって分からないわよ。私は元々、アナタに付いていくつもりは無かったんだし。
 私の使命はアナタに『西鹿児島へ行け』と言うことだけだったんだし」
「しめい?」
「そうよ……ってそれはどうでもいいわ」
私にはあまりどうでも良くないんだけど。
「とにかく、『鍵』の場所は分からない。でも、何となくだけど『気配』は感じるられる。
 だから私で良ければ付いていってもいい」
「うん、いいよ。てか、むしろ付いて来て。私、一人じゃ多分帰れないと思うから」
もしここで拒否したら、間違いなく私は元の時代へ帰る事は出来ないと思う。
折角の情報源を捨てる訳にはいかない。それに、根拠は無いけど彼女の事は信用出来る。
538カケラ 6-3/5:2008/01/09(水) 01:42:43 ID:FebRDn7J
1枚のトーストと1枚の目玉焼きはあっと言う間に食べ終わった。
彼女が食器と布巾を持って部屋を出る前に、どうしても訊きたいことがあったので訊いてみる。
「ひとつ訊いていいかな?」
「何よ?」
「名前」
「名前?」
「あなたの名前。良かったら教えて?」
「そういうのって、自分から名乗るものなんじゃないの?」
あ…そういうものだよね。普通は。
って何で私は年下の子に気を遣っているのだろう……。
「ごめん。私は柊つかさ。『つかさ』でいいよ」
「ふーん」
「あなたは?」
「………………」
「………?」
「………あゆみ」
ちょっと恥ずかしそうな彼女。
「『あゆみ』ちゃんね」
「………うん」
「あ、そうだ。ねぇ、『あゆちゃん』って呼んでいい?」
しゃがんで彼女と目線を合わせる私。いきなりあだ名で呼ぶのは、やっぱりダメかな?
「……う、うん。いいわよ」
あれ? 顔真っ赤にしちゃった。
「どうしたの?」
「う………うるさいうるさいうるさい!! べ、べべべ別に何でも無いわよ!!」
何故か焦ってる『あゆちゃん』。何だか照れている様に見えるけど、気のせいなのかな?
「ほ、ほら、は、はは早く支度しなさいよっ。も、もうすぐ行くわよ」
あゆちゃんはドスドスとわざと音を立てながら部屋を出て行ってしまった。

私、悪いことしちゃったかなぁ……。
539カケラ 6-4/5:2008/01/09(水) 01:43:25 ID:FebRDn7J
天文館の商店街を抜けて、路面電車が行き交う「天文館電車通り」という大通りに出る。
わざわざ電車を使う距離ではないし、お金をあまり持っていないので、私たちはこの道をひたすら歩いていく。
昭和5X年(西暦で言えば197X年)と言えば、第二次オイルショックのあった年だ。
これも歴史の授業で習ったんだけど、街の活気をみるに、
二度目の方はトイレットペーパーを買い占めるほどの騒動には至らなかったみたいだ。

大久保利通の大きな銅像を右手にみて、私とあゆちゃんは高見橋を渡る。
やがて、広いロータリが現れて私たちは西鹿児島駅に到着した。
まわりからはどんな風に見えるのかな? やっぱり姉妹に見えるのかな?
ちょっとだけ「お姉さん」になった気分で何だか嬉しい。

三角屋根が可愛らしい西鹿児島駅。
テレビで観た今の駅舎は確か真っ赤で角張った建物で、そこだけさいたま新都心みたいだった。
雰囲気が全然違う。30年間の『重み』を感じた……ような気がした。

因みにどうして私が西鹿児島駅の事を知っているのかというと、
中学3年の時の社会科のテストで、時事問題として九州新幹線が採り上げられたから。
「3月に新八代駅と鹿児島中央駅を結ぶ新幹線が開通しました。
 将来は博多駅まで開業するこの新幹線の名前を答えなさい」
という少々マニアックな問題だったので、よく覚えている。
テスト当日の朝、NHKのニュースを観ていなかったら間違いなく答えられなかったよ……。

「ぼけーっとしてないで、早く行きましょ?」
あゆちゃんが私を呼ぶ。そうだった、『鍵』を見付けなきゃいけないんだった。
私たちは駅舎の中へ入る……と思いきや、あゆちゃんは何故か外の女子トイレの方へ。
そして、何故か二人で個室に入った。

「ど、どうしたの?」
「大丈夫。多分だけど、そろそろ『来る』と思うの」
『来る』?
今私たちはトイレの個室の中にいて、あゆちゃんは確かに『来る』と行った。
「く、来るって、も、も、もしかして、アレの事?」
それを聞いたあゆちゃんは「はァ?」という顔をして呆れている。
え? アレじゃないの?
「何勘違いしてんのよ。私は『まだ』よ」
背丈はこなちゃんくらいあるんだけどね……。
「えっと、そうだ。貴方の携帯電話って奴? それ開いてみて?」
「え? ここ電波届くの?」
……いや、流石に『時間単位』で離れているから、いくらFOMAでも電波は絶対届かないよね?

その時だった─────。
540カケラ 6-5/5:2008/01/09(水) 01:43:55 ID:FebRDn7J
携帯電話が着信した。昨年の授業中での反省を活かして携帯電話はマナーモードにしていた。
ブルブルと震える電話機の画面には、シンプルに『MMS Received: 1』と表示されている。
──って誰? 英語表示にしたの!!
あ、そう言えば昨日、こなちゃんが私の電話機をイタズラしてたような気が。
うぅぅ、酷いよぉ。
────あゆちゃんが恐い顔をしたので慌ててそのメールを開いてみる。

『西鹿児島駅前の女子トイレに行け。
 掃除用具入れの中から封筒を見つけ出し、その中にある乗車券で目的地へ迎え』

それだけでメッセージは終わっていた。
「ふーん」
「何か分かったの?」
「ちょっと『臭う』わね」
「『鍵』のこと?」
「そう」
「その、『気配』が感じるの?」
「違う。とにかく、掃除用具入れからその封筒とやらを見付けましょ?」
「うん。でも……」
「何よ? 早くしないと乗り遅れるかも知れないわよ?」
「わ、分かってるよ。でも……」
「でも?」
ここ、公衆トイレだよ?
二人で掃除用具入れを漁っている所を他の人に見られるのはちょっと……。

結局、私がトイレの前で見張ることにし、あゆちゃんが一人で探すことになった。
封筒はあっけなく見付かった。
流しの奥に積んであった、予備のトイレットペーパーの間に挟まっていたらしい。
乗車券を確認する。
「小倉?」
「北九州の街よ。アナタの町から列車で行くと、最初に通る大きな駅が小倉駅」
「へぇ、詳しいんだね」
「ま、まぁ、地元だしね」
その割には埼玉訛りだよね?
「さ、は、早く乗りましょう? えっと、今の時間は?」
「えーっと、7時55分……」
「つ、つかさ!!」
「な、なななな何??!!」
「発車まであと1分!!」
「えーーーーっ!!」


私たちは何とか列車に乗ることが出来た。
特急「有明」号門司港行きは、北九州へ向けて長い長い道のりを走っていく────。
541カケラ 間-1/2:2008/01/09(水) 01:44:36 ID:FebRDn7J
間.


『376』


この数字を見て何のことか分かった人は、今、おれが見ているニュースサイトを開いていることになる。
この数字───


───夕方の『事故』で犠牲となった電車の乗客と、高架橋の下で生活していた住民たちの数だ。


全乗客およそ800名のうち、約半数が亡くなり、残りは重軽傷を負った。
おれとみさおが住んでいる5階建てのわし宮団地よりも背の高い高架橋から、電車が落ちたのだ。『橋ごと』。
無理もない。酷い言い方になるが、おれはむしろ、現時点での生存者が居たことに驚いた。
それとともに、胸を強く痛めた。



東武伊勢崎線は北側と南側の区間に別れて折り返し運転を実施、北千住〜久喜・日光線南栗橋間の列車は全て運行を取りやめた。
車両基地が春日部駅の北側にあるので、南側の区間は電車が詰まって『渋滞』を起こしているらしい。
おれ達はあの時、JRで帰ったのは正解だった。そのJRも今ではカオス状態になっているという。

史上最悪の鉄道『事故』が起こった。
救出作業をしている中、早くも埼玉県警による現場検証が始まった。
事故が発生してまだ半日も経っていないというのに、早くもマスコミはお得意の「安全神話」だの「危機管理体制」を餌に東武鉄道を叩いている。
全く、アンタらは全くの幸せ者だな。
直接の被害者は利用客と電車の乗務員、そして橋の崩壊で下敷きになった住宅街だろう。
しかし、東武鉄道も被害者なのだ。

国立高専の機械学科出身のおれは、機械工学の他に、囓っただけだが建築物の構造計算の勉強もしている。
それが今の職に活かされている訳だが、それはどうでもいい。
現代の建築技術や頭の固い東武鉄道の管理体制を考える(後者はあくまでもイメージだが)と、
大地震でも起こらない限り複々線の橋がそう簡単に崩れる筈がない。
それに、崩壊したのは新田駅と蒲生駅との間だけであって、他の高架区間は特に問題は無かったという。
(ソースは東武のニュースリリース「秋の高架橋点検の結果について」による)
もしかしたら、これは『事件』なのかも知れない。誰かが、意図的に。
いやいや、もしかしたらこういうケースもあり得るのかも知れない。
542カケラ 間-2/2:2008/01/09(水) 01:50:54 ID:FebRDn7J
「兄貴ぃ〜」
みさおはさっきからおれの側にずっと丸くなっている。
体をガクガクと震わせて。

本当に怖がっている。

いつものアホみたいに笑っている我が妹が。

みさおここまで怯えることは滅多に無い。『あの』時以来だったような気がする。
それはどうでもいい。

「大丈夫だって。クラスメイトの事が心配なんだろ?」
「うん……でも、ちょっと違う」
「?」
「今さ、すんげー『嫌な予感』がしてならねーんだ」
「? あやのは無事だったぞ」
あの凶暴な姉貴が居りゃ、例え津波で埼玉が水没したとしても大丈夫だ。
「ちげーよ。他の友達だよ。例えば…」
「例えば?」
みさおが友達の名前を言おうとした時、

『ジーーッ』

間抜けなブザーが鳴った。昭和40年代以前では標準だった『呼び鈴』の音である。
母親が玄関を開ける。おれとみさおも顔だけ出して来客を迎える。
扉が開くや否や、40代半ばの「お母さん」らしき人が現れた。はて、この前神社でお会いした様な気が?
「あら、『柊』さん?」
「う、ウチの娘、こちらにお邪魔していませんか?!」
と大声で言った。完全に平静さを失っている。
彼女の一言で、おれは何を言いたいのか理解した。みさおの『嫌〜な予感』が当たってしまった。


「ウチの娘がまだ帰っていないんです。電話も、携帯電話のメールも、一つも入っていなくて…………」
みさおの友達、柊かがみちゃんのお母さんは、泣きながらおれ達に説明した。
「みさおちゃん、何か聞いてない?」
「い、いや、今日は一度も連絡が……」



『嘘』であって欲しい。
『嘘』であって欲しい。
そうだ、ちょっと帰りがいつもより遅いだけなんだ。
余所の子だとはいえ、かがみちゃんはウチの妹がいつもお世話になっている。
「みさお、安心しな。ちゃんと帰って来るさ。そうだ、今から鷲宮神社に行こう。
 そこで『無事に帰れますように』ってお祈りするんだ。いいな?」
おれは小さな子どもをあやすように、みさおに言う。

我が妹は、泣きながら小さく「こくん」と頷いた。





『今、新しいニュースが入りました。今日午後6時頃発生した高架橋崩壊事故現場で、
 大破した車両から10代後半と思われる女性3人が先ほど救出されました。
 草加市立病院へ運ばれましたが、意識不明の重体となっております。
 繰り返します──────』
543名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 01:53:33 ID:eyz8R2aS
え…えっと…

とりあえずリアルタイム乙

嘘だよな?、偶然だと言ってくれ!
違うにしてもタイミング良すぎるよ…。
544名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 01:56:54 ID:qcQmucqh
>>542
同じくリアルタイムにて読了。


みさ兄視点が入ったときからこうなるんじゃないか、とは思っていましたがやはりそうでしたか。
しかし、あゆみちゃんといいこなたがぶつかった人といい、まだまだパズルのピースが必要そうで……。
とりあえず、こなたたちの復活を信じて続きをお待ちします。ぐっじょぶ。
545カケラ 6 by 久留里:2008/01/09(水) 02:04:04 ID:FebRDn7J
以上でございます。
燃料が尽きたので一旦ここで区切ります。
その間、現場検証でもしておいて下さい。



おまけ
「みんな携帯電話はどんなの使ってる?
 じゃじゃーん、私は最新型のauなのだよ。テレビ観れるしラジオも聴けるのだよ。
 ふっふっふ。これでアニメが何時でも観放題」
「アンタ、ツーカーやめたんだ」
「酷いよかがみん。しょうがないじゃん。会社自体無くなっちゃったんだから」
「まぁね。ウチは家族全員ドコモだよ。私はコレで、つかさはコレ。
 どっちも横のボタンを押すだけでパカっと開くヤツよ」
「あんまりよく分からないんだけど、お姉ちゃんの方が高性能みたいだよ」
「その割にはかがみは使いこなしていないような気がするけど…」
「う、五月蠅いわねっ。ケータイなんか、電話とメールが出来ればそれでいいのよっ!!」
「みゆきさんは?」
「私は泉さんと同じauですよ。父が同じ系列の会社を経営しておりますので」
((今この人、地味に凄いこと言った))
「おーっすチビっ子〜、あと柊ぃ〜!! 何の話してんだ?」
「私はオマケかよ」
「今ケータイはどこの会社のやつ使ってるか話してたところだよ」
「へーっ。私はSoftbankだぜ。ほれ」
「おぉー、見掛けによらず可愛い電話ですこと」
「うるせーよ、泉。ちなみに兄貴は外国製の変なやつ使ってる」
「え? お兄さんは確かパソコンみたいなPHSだったはず……」
「あれ? 兄貴地味に2台持ってるのか。何に使ってんだ?」
「さ、さぁ。私はドコモだよ。お姉ちゃんから貰ったやつだけど」
「み、峰岸………」
「それ、何年前の?」
「えっと、お姉ちゃんが確か学生の頃だったから…、ちょうど5年前の機種かな?」
「「おお、凄い」」
「電池はこの前買い換えたばかりだし、まだ使えるから私はこれでいいの」
「おぉ、流石はあやのん。凄いね〜」
「こなた、それ、聞きようによってはバカにしているように聞こえるわよ」
「ご、ごめんなさい……」
546名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 02:08:38 ID:ruxgCg99
あやのもみさお兄と揃えてウィルコム持ってるのかw
実際恋人用にウィルコムは便利だよねぇ
547名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 02:09:29 ID:JoVccXd2
こなた「カム・・・パネル・・・」
ゴス・・・
こなた「だから痛いって(〒ω〒.)」
かがみ「やかましい、今度縁起悪いこといったらフェチ発動だかんね」
こなた「うぐぅ・・・
    それにしてもかがみ、これすっごい読ませるよね・・・」
かがみ「ああ、例の『カケラ』?」
こなた「こんなに引き込まれるSFは久しぶりだぁよ。
    単なるタイムリープものに駄することのないよう
    鉄道と時代の風景を上手く盛り込み、
    物語を組み上げてる」
かがみ「鉄道と時代背景の知識もかなりあるみたいね。
    物語が進むごとに引き出しが増えそうね」
こなた「そして・・・少しずつ進んでゆくサスペンス!
    この3人って・・・もしや・・・もしや・・・
    カム・・・パ・・・」
かがみ「こなた・・・ルパンダイブしていい?」
こなた「ユルシテクダサヒカガミサマ」
かがみ「とにかく、>>545はGJといっておいてあげるんだからね」
こなた「同じくグジョォ!先期待してるよっ!」
548名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 02:32:08 ID:ZPvpt7FG
>>527
ああ、それか……
ここ数日、半ば断食状態ですぜorz 仕事はしてるけど。


>>532
総称して、突発性難治性対特定対象性欲異常亢進症候群。
正式名称はこの五倍ほどの長さがあるのだが(以下略

仕込み中のSSより。
体調不良とスランプで進まねぇ……orz
549名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 02:37:04 ID:nA+kDDUW
こなた「推理ものといえば最近あれ見ないよね、かがみんが殺されたやつ」
かがみ「ぶーわさんのやつね。0から始めましょうだっけ?」
こなた「ちょwそれ違うww0から始めよう!だよ、あれも最初はギャグだと思わせといてまさかのミステリーだよね」
かがみ「つかさが犯人かどうかってやつね、これも推理しがいがあるじゃない」
こなた「ゆーちゃんが嘘をつく理由はないし、やっぱ何か違うのを見たのかな?」
かがみ「どうかしら、ミスリードの定石として劇中でその可能性が提示されたやつはブラフが多いのよね」
こなた「かがみ・・・ひ○らしのやりすぎだよ。つかそういう推理の仕方ってどうなのさ」
かがみ「いいのよ、またきっと予想を裏切ってくれるわよ!」
こなた「うわさりげにハードル上げた」

続き・・・まだですか?
5504-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/01/09(水) 02:40:43 ID:ra8zacJj
>>453
超絶亀レス&KYながら、ゆたみな大好き支援(´・ω・)ノシ
http://www.geocities.jp/extream_noise/rakisutaep/img/yutamina2.jpg
551名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 02:52:43 ID:T0tUQ1SS
>>542
GJ!謎が謎を呼ぶ展開、引き込まれますな

しかし、最初の方から思ってましたが、
もしかして飛ばされた三人、それぞれが一人忘れてる?
552名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 02:52:47 ID:NpzskgKC
もうすぐ次スレ必要だし小ネタ投下
〜こなかがツンデレ漫才〜

「ねーねーかがみ。私にお弁当作ってよ」
「やーよ。なんで私が」
「お願いだヨ〜、『べ、別にアンタのために作ったんじゃないんだからね!』を見たいんだよ〜」
「めんどくさいわよ。つかさの分も作らなきゃならないのに」
「この際チョココロネをかがみからもらうだけでもいいんだヨ〜。
かがみからもらうことに意味があるんだからさ〜」
「本当にチョココロネでいいのね?
アンタは本当にしょうがないわね〜・・・。

で、小麦粉っていくらだっけ」
「生地から作るのかよ」
――――――――――
「ねーねーかがみ。宿題写させてよ」
「やーよ。自分でやりなさい」
「お願いだヨ〜、ネトゲのやりすぎでついつい寝ちゃうんだよ〜」
「自分でやらなきゃ頭に入らないでしょ」
「今度からは自分でちゃんとやるからさ〜。
かがみにはもう迷惑かけないって誓うヨ〜」
「本当に自分でやるのね?
アンタは本当にしょうがないわね〜・・・。

じゃあ写しちゃうからノートを貸して30分待って」
「アンタが書くのかよ」
――――――――――
「ねーねーかがみ。バレンタインチョコちょうだい」
「やーよ。アンタ女でしょ」
「お願いだヨ〜、かがみからツンデレ的な貰い方をしたいんだよ〜」
「急に言われても困るでしょ」
「この際手作りだなんてワガママは言わないヨ〜、
市販の物でいいからかがみの愛を受け取りたいんだよ〜」
「本当に市販でいいのね?
アンタは本当にしょうがないわね〜・・・。

すみません、そこのゴディバください」
「高級品かよ」
――――――――――
「ねーねーかがみ。私のバイト先に遊びにきてよ」
「やーよ。意味わかんないわよ」
「お願いだヨ〜、いつもオタクの男の対応ばっかりでつまらないんだよ〜」
「女性客もたまにはくるんでしょ」
「同じ女性客ならかがみにきてもらいたいヨ〜。
ちょっとサービスしちゃうからさ〜」
「本当にサービスしてくれんのね?
アンタは本当にしょうがないわね〜・・・。

で、その店はカメラOKなの?」
「撮るのかよ」
553名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 03:19:44 ID:chJQ10gc
>>309は予知能力を持っているようです。
554名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 05:04:27 ID:VqG8YCTk
555名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 06:57:38 ID:F1qlOZpT
>>550
ちょw なんてモノをww
みなみはゆたかのモノでも、ゆたかは俺のもの
556名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 08:02:18 ID:fjIA23ge
>>545
GJ! やっぱり…なのか?

そんな中、
>「え? ここ電波届くの?」
>……いや、流石に『時間単位』で離れているから、いくらFOMAでも電波は絶対届かないよね?

>その時だった─────。
ここまで読んだ瞬間に俺の携帯(DoCoMo P702i)が本当に鳴って、そのあまりのタイミングの
よさに笑うしかなかったわけだが。
557名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 10:54:29 ID:jEnja7Z6
>>545
GJ!うーむ。。。どうなってしまうやら・・・
日下部兄妹の視点が入ってきたあたりからもしかしてー・・・とは思ってたけど。
続きが気になるー
558名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 13:29:45 ID:zr9TNB0c
やっぱりベテランな職人さん方は描写が巧いですね……。
お勉強させていただいてます。
魅力的な「世界は私を中心としない」に触発されちゃいましたよ〜……。

>>431-438を書いたみゆ×つかシンパです
続きを投下したいと思うのですが、
少々長く容量的に不安が残るので
次スレを立てて投下させていただいてもよろしいでしょうか?
次スレにはまだ早いようでしたら、立つまで投下を見送るようにしたいのですが……。
559名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 14:17:15 ID:G04MaS5x
次スレを立てといてこっちに投下、すれば埋めにもなって一石二鳥!(え

いやまぁ、30キロバイトなんてすぐなようで意外と埋まらないもんだから大丈夫だとは思うんですが
どうでしょう?
560みゆつか愛してる:2008/01/09(水) 14:24:09 ID:zr9TNB0c
そうですか〜では、投下させて頂きます。
容量が埋まるようでしたら次スレを立てさせていただきますね。

>>431-438の続き
・みゆき×つかさ
・ちょっと長め
・エロ有り

ではいきます〜
561みゆき×つかさ・後編1:2008/01/09(水) 14:26:02 ID:zr9TNB0c
Miyuki-side

ああ、そうでした……私は昨日つかささんのお部屋にお泊まりしたんですよね。
今日はたしか土曜日。学校はお休みでした。ゆっくりと上半身を起こし、時刻を確認します。
早朝6時半。つかささんは未だ眠りの中のようです。昨日の夜はあれだけ……疲れたのだから当然ですね。
昇りたての朝日が窓から差し込みます。リビングに降りればつかささんのご両親が朝食の準備でもしているのでしょう。
私はどうしましょう。二度寝というのも難しいですし……早起きもこういうときに困りますね。
「つかささん……」
小さな寝息を立てるつかささんにそっと近付き、その愛くるしい寝顔を確認します。
ああ……胸にズキューンときますね。小さなお口、キュートなお鼻、少しはれぼったい瞼……はれぼったい?
(つかささん……泣いていたのでしょうか?)
もしかして、昨日の、その……行為の最中に? 私の……私の名前を、呼びながら……。
思い出して、私は顔が熱くなるのを感じました。昨晩のつかささんの声、あれは私に向けられていたもの……。
本当は喜ぶべきことのはずなのですが、頭の中で整理が追いつきません。
(と、いうことは……私とつかささんは、その、両想いと考えてよろしいのでしょうか……)
だとすれば私は、どのようにしてつかささんに想いを伝えればいいのでしょう。受け入れる気ならありますのに。
再びつかささんの寝顔に視線を移します。少しの力で壊れそうなくらい、小さくてか弱くて、いとおしいその寝顔。
胸の奥が強く締めつけられてたまらなくなり、私はため息をひとつ零しました。
なぜ、つかささんは泣いたのでしょうか。怖い夢を見た……ということはなさそうです。
お恥ずかしながら、私もつかささんのことを想っては、時折……ひとりでいたすようなこともあるのですが、
感極まってくると涙腺が緩むということは度々あります。しかし、瞼が腫れるほど泣く事はありません。
かがみさんがいないので、寂しさが抑えきれなかったのだとしたら……私は自分を呪うしかありません。
こんなに近くにいながら、つかささんが小さな胸に抱く寂しさを癒すことができなかったのですから。
(つかささん……私ならいつでもそばにいます。寂しがらせたりなんか、絶対にしません。約束します。
私じゃダメですか? つかささんのあの言葉が本当なら、私にあなたの寂しさを紛らわせてくれませんか?)
もし、あのときのつかささんの言葉が……私のことを好きだと言ってくれたあの言葉が……。
勢いで出てしまっただけの言葉なら、寂しさのあまりに出ただけの言葉なら……。
私はそれでも構わないと思いました。つかささんの寂しさを、一緒に抱えてあげるだけの存在でもいいんです。
(苦しいです、つかささん)
つかささんを包むシーツをつまんで、強く握りました。涙腺がまた緩くなってきたみたいです。
つかささんを起こさないように、その胸に顔を押し付けました。なぜか私まで寂しくなってきたみたいです。
(ごめんなさい、つかささん。私まで、つかささんに頼って寂しさを紛らわせようとしてしまっています)
愛する人が傍にいても、たまらなく寂しくなる事もあるようですね。シーツが私の涙を吸っていきます。
だとすれば……つかささんは私を想って泣いてくれたのでしょうか。あの言葉通りに私を好いてくれていたのなら、
今の私と同じ寂しさで泣いてくれていたのでしょうか。それは、私に都合のいい勘違いなのでしょうか……。
(こういうとき泉さんならどうするんでしょう。きっと、自分に正直に、愛しい人に甘えるんでしょうね。
かがみさんなら……できるだけ我慢して、ふとしたときに泉さんに思いっきり甘えてきそうですね。
お二人とも羨ましい限りです。私にも、それくらいの勇気や、行動力が、つかささんに対してあったなら……)
そういえばあの二人、昨日はついに……なのでしょうか。私は二人に失礼だと思い、その考えを振り払います。
やがてシーツから顔を起こすと、私は少し残っていた涙を拭い、つかささんのお部屋から出ました。
リビングにいるつかささんのご両親に、何かお手伝いできることがあればと思ったのです。
つかささんの寝顔をいつまでも見ていると、切なさで潰れそうなので……。

******
562みゆき×つかさ・後編2:2008/01/09(水) 14:27:01 ID:zr9TNB0c
Tsukasa-side

「ふぇ……」
目を覚ました。枕もとの時計を見ると、朝の8時半だった。一瞬「遅刻!」と思ったけれど、そういえば土曜日。
それからゆっくりと昨日の記憶が戻ってきて、私はシーツを頭からかぶった。それからゆっくりと、ベッドの下を見る。
ゆきちゃんはいなかった。布団はしっかりとたたんであって、さすがは早起き……って私が遅いんだけど。
(やだな……起きたくない。いつまでも寝ていたかったのに……)
それは、いつものように私がねぼすけだからじゃなかった。起きて、ゆきちゃんに会わせる顔がなかったから。
きっと昨日のあれは、全部ゆきちゃんに聞かれてた。はしたない声も、ずっと胸に秘めていた本当の気持ちも……。
そもそも、ゆきちゃんが隣にいるのにあんなことをしてしまった私のせいだ。ゆきちゃんに、イヤらしい女の子だと思われちゃったんだ。
ううん、思われたんじゃない。私はきっと、イヤらしい女の子なんだ。ゆきちゃんに嫌われても仕方ないようなことをしたんだから。
(……やだ)
ゆきちゃんに嫌われても仕方ない? 本当に? 私の中で、仕方ないなんて言葉じゃ片付けられない事だった。
(……いやだよ、嫌われたくないよ。ゆきちゃんと離れるのなんて、絶対イヤだよ)
たとえ私がゆきちゃんに想いを打ち明けて、それで二人が気まずくなる事があっても、離れ離れにはならないようにしてあげるって、
こなちゃんは電話で言っていたけど、こんなことで嫌われちゃったら、こなちゃんやお姉ちゃんがいくらフォローしても無理。
私だって、自分の事を考えてそんなことをされたら……驚くし、ちょっとイヤだなって思う。それが好きな人なら別だけど……。
(私、どうすればいいのかな……辛いよ、お姉ちゃん、こなちゃん、助けてよ……)
もしも今顔を合わせたら、ゆきちゃんはどんな顔をするんだろう。ゆきちゃんは優しいから、そんなにイヤそうな顔はしないはず。
でも、戸惑ったような顔しちゃうんだろうな。それから私のことをちょっと避けるような感じで、口数も少なくなって……。
そんなことを考えるほどに、私は私を責めたい気持ちになった。人を叩いた事の無い私でも、もし目の前に私がいたらきっと叩いてる。
(ゆきちゃん、嫌いにならないで……たくさん謝るから、もう二度としないから、お願いだから……)
私はシーツに身体をくるんだまま、枕に顔を押しつけて、そんな言葉を唱えていた。ちゃんとゆきちゃんの前で、口にすればいいのに。
歯医者が怖いね、と何気ない話をすることも、もう無くなってしまうなんて私には耐えられなかったから……。
昨日の、私の髪を撫でたあの手が、ゆきちゃんが布団に入るあの音が、寝入り端で聞いた幻聴だったら、気のせいだったらよかったのに。
そんなことを考えてたら、ふと……ひとつの疑問が生まれた。
(どうしてゆきちゃんは……私の髪を撫でたの?)
隣であんなことを……しかも、自分のことを考えながらされたはずなのに、どうして私をあやすように、慰めるように、
あんなに優しい手つきで、私のことを撫でてくれたんだろう。私のことを、汚いとか思わなかった? 触るのもイヤだとか、考えてない?
(私が疲れてるように見えたから、眠りやすいように撫でてくれたのかな……?)
だとしたらゆきちゃんは、私のことを嫌いにならなかった? それとも、混乱してふいに出た行動? ゆきちゃんは優しいから?
ますます私の頭の中はこんがらがって……でもそれは、ほんの少し希望を持たせてくれて、もしかしたらぬか喜びなのかもしれないけど。
(ゆきちゃんって、あのとき実は寝ぼけてました……とかじゃないよね)
そんなことを考える余裕が、ようやく出てきた。あのとき頭を撫でられた、あの感触。傷付けないように優しく触れてくれたかのような。
好きだった。図々しいかもしれないけど、これからもああいう風に私のことを撫でてほしかった。叶わない願いなんだけど……。
(……逃げてちゃダメだよね)
私はシーツを脱いで、がばっと上半身を起こした。時刻は8時45分。あんまり寝ていると、ゆきちゃんが帰ってしまう。
(こんな大事な事まで、寝逃げに走っちゃダメだよね。……こなちゃんが応援してくれているんだから!)
嫌われるのは怖い。けど、いつまでも逃げていられるわけじゃないし、嫌われそうなら私も頑張って、ゆきちゃんの信頼を取り戻したい。
私って単純だと思った。ほんのちょっと嫌われていない可能性ができただけで、ここまで前向きになれちゃうなんて、笑っちゃうくらい。
(想いを伝えるのは難しいけど、こなちゃんだって、お姉ちゃんだって頑張ったんだよ? だったら今度は……私が頑張らなきゃ!)

******
563みゆき×つかさ・後編3:2008/01/09(水) 14:28:20 ID:zr9TNB0c
Miyuki-side

つかささんはまだ起きていないみたいです。つかささんのお母さんと一緒に朝食を作り、すでにみなさんお召し上がりになりました。
つかささんのお姉さん……いのりお姉さんが「起こしてくるよ」とは言ってくれましたが、昨日の事もあったので疲れてるだろうと思い、
いえ、まだ寝かせてあげてくださいとお願いしました。それまでの間に世間話などをして、時刻は8時50分を回りました。
「ゆ、ゆきちゃん、おはよー」
「えっ、あ……おはようございます、つかささん」
パジャマ姿のつかささんがリビングへと起きてきました。あまり起きぬけといった感じがしないのは気のせいでしょうか。
私はできるだけ自然な笑顔で返事を返しました。大丈夫、不安定なこの感情は、悟られてはいないみたいです。
「えへへ……ごめんね、ずっと寝ちゃってて」
「いえ、気になさらないでください。せっかくの休日ですしね」
「でも、ゆきちゃんが泊まりに来てるのに、なんだか悪いよ〜……」
「そうよつかさ。みゆきちゃんなんか早起きしてご飯作るの手伝ってくれたんだからね。あなたもそのくらい、できるようにしなさい」
つかささんのお母さんが、呆れた顔で言いました。それから私に向かって「本当にごめんなさいねえ」と。
「うう〜……自分でお弁当きちんと作ってるから、いいかなーって……」
「つかささん、料理はお上手ですからね」
「ゆきちゃん、ご飯作ってくれたの? お客さんなんだから、もっとゆっくりしてってもよかったのに……」
「いえいえ、他のお宅の台所を触れる機会もそんなにありませんし、むしろ楽しかったですよ」
「みゆきちゃん、お料理すごく上手で、今日なんかバルサミコ酢を使った……何かを作ってくれたのよ? レシピ教えてもらっちゃった」
「バルサミコ酢を使った……何かは割と簡単にできるので、忙しい朝型には最適ですね」
「うわぁ、楽しみだよ! ゆきちゃんの作ったバルサミコ酢を使った……何か!」
そんなに喜んでもらえると、私もお手伝いの甲斐があったというものです。昨日はつかささんのグラタンを堪能させていただきましたし。
「みゆきちゃんは本当に、物腰も柔らかくて、上品で、どこにお嫁に出しても恥ずかしくない女の子ね」
「そ、そんなことは……」
急に褒められてしまって、私は赤面したままかぶりを振りました。少しばかり褒め過ぎです……。
「本当、私に息子がいたらこんな子をお嫁にしたいくらい。この際娘でもいいからもらってくれないかしら。つかさとかいかが?」
「「えっ!!!!!」」
私とつかささんの声が見事にユニゾンしました。二人揃って頭のてっぺんまで真っ赤になって……。
「も、もう! お母さん変な事言わないでよ!」
「冗談に決まってるじゃないの」
「ううー……どんだけ〜……」
私は返す言葉も無く、ふふふと笑っていました。冷静を装ってはいましたが、心臓はすでにはちきれんばかりの早鐘で……。
内心、『つかささんのお母さん公認!』とも思いましたが、そんなわけはなく……とりあえず、今だけは勝手に浮かれててもいいですよね?
(つかささんは私の嫁……いえ、私はつかささんの嫁?)
つかささんのお母さんは割と、お冗談がお好きなようです。柊家の台所に立って、いろんな知識を得る事もできました。
(これらは是非、『つかささん情報』に記入すべきですね)
私は「お手洗いお借りします」と告げると、トイレへと向かいました。トイレのドアを閉めると、メモ帳を取るためポケットに手を……。
……何もありません。たしか今朝、パジャマから昨日のお洋服に着替えて、たしかポケットには常にメモ帳を入れるようにしていて……。
同時に、全身の血の気が引く音が聞こえ……たような気分になりました。先程よりもさらに早く、心臓がドクンドクンと鳴っています。
(……落とした? この家のどこかに、あのメモ帳を?)

******
564みゆき×つかさ・後編3:2008/01/09(水) 14:28:52 ID:zr9TNB0c
Tsukasa-side

ゆきちゃんの作ったバルサミコ酢を使った……何かはとても美味しかった。なんていうか、ゆきちゃんのように優しい味わいだった。
身はとても柔らかくて、でも歯ごたえがあって、味は甘からず、辛からず、さっぱりしながらコクが……って、よくわかんないや。
(朝からゆきちゃんの作ったご飯を食べられるなんて、幸せ〜)
食卓には、私の分だけ朝食が並んでいた。みんなもう食べちゃってたみたい。私の目の前には、ゆきちゃんが座っている。
トイレを出たばかりのゆきちゃんは、なんだか浮かない顔をしていて、なにか落ち着かないようにそわそわ……。
お腹でも痛いのかな? 便秘気味だとか、月のものが始まっちゃったとか……それとも、私がゆきちゃんのお料理を食べているから?
「おいしいよ、ゆきちゃん♪」
「あ、ありがとうございます……」
「ゆきちゃん……お腹痛いの? なんだかずっとそわそわして……」
「あっ……いえ、なんでもありません。お気になさらないでください」
「……?」
ゆきちゃんはいつもの笑顔を私に返してくれた。
変なゆきちゃん。何かあったのかな……って思ったとき、私はすっかり頭から消え去っていた事を思い出した。
(もしかして、昨日の夜のこと……?)
私のお箸が止まった。ゆきちゃんはそのことを思い出して、私になんて言葉をかけてあげようか考えてるのかな?
これは私の勘だから、あまりあてにはならないケド……ゆきちゃんは私が心配していたより、私のことを嫌ってないように思えた。
でもゆきちゃんはしっかりと、私が『好き』って言ったのを聞いてたんだよね。こんなにそわそわするのも無理無くて……。
それに気がつけば、食卓のあるリビングには二人きりで、お姉ちゃん二人は外出、お父さんは休日出勤、お母さんはお洗濯。
お互いに、どうしても意識しちゃうに決まってる。私は止めていたお箸を動かして、朝ご飯の残りをちょっと無理めに平らげた。
「ゆ、ゆきちゃん!」
「は、はい! ……なんでしょう?」
「あ、あのね……」
「は、はい……」
「……きょ、今日、お休みだし、どこかいこっか?」
違うのに〜……私が言いたかったのかこんなことじゃなくて、昨日のことなのに。でも、時間はまだまだあるからいいよね?
だけど私は、そこでゆきちゃんが断ってきたらどうしようかまでは予想してなかった。もしかしたら、ゆきちゃん帰っちゃうかも……。
「きょ、今日ですか? そうですね、お天気もいいですし……あっ、でも……」
「でも?」
「いえ、その……はい、あの、そうですね! あっ、でもつかささん、お勉強のほうは……」
「あっ! そっかぁ、そうだよね……」
そういえば昨日、してなかった。もうすぐテストも近いのに。それにしてもさすがゆきちゃん。私なんか完全に忘れちゃってたよ。
……って、そうじゃないよね。一緒に遊ぼうって誘ったのを、流されたのかもしれないんだし……やっぱり避けられてるのかな。
「じゃあ、ゆきちゃんはおうちに帰ってお勉強しないといけないよね……」
「え、ええ……あ、いえ、そうですつかささん。よかったら一緒にお勉強しませんか?」
その言葉に、私はばっと顔を上げた。真っ暗な底無し沼に落ちているところを、急に引き上げられたような気持ち。
一緒に? ゆきちゃん、一緒にお勉強してくれるの? 私のこと、避けてないの? まだ一緒にいてもいいの? いてくれるの?
「で、でも、ゆきちゃんはいいの? 私、お勉強の足ひっぱっちゃうかもだし、それに……」
「いえ、お気になさらないでください。つかささんの教科書と筆記用具を貸していただければ、こちらでもできますし……」
「ありがと……ゆきちゃん、ありがとっ!」
天にも昇る気持ち。とりあえずゆきちゃんには嫌われてないってことがわかった。朝食、ゆっくり味わって食べればよかった。
あとは、タイミング。本当に大切な事を伝えるタイミングと、私の勇気だけ。

******
565みゆき×つかさ・後編5:2008/01/09(水) 14:30:32 ID:zr9TNB0c
Miyuki-side

つかささん達にバレないように、私はしっかりと家中を凝視していました。どこかに、私のメモ帳が落ちているはずです。
あれをもし、つかささんに見られていたらと思うと……つかささんが嫌悪の表情で私を見つめるシーンが容易に想像できます。
せっかく両思いなのかも知れないとわかったのに、すべてが台無しになってしまいます。
運良くそれがつかささんではなく、つかささんのご家族の方に見られてしまったとしても……。
大事な家族がその友達に、しかも同性の友達に、ストーカーまがいのことをされているだなんて知られたら……。
「ゆきちゃん……お腹痛いの? なんだかずっとそわそわして……」
「あっ……いえ、なんでもありません。お気になさらないでください」
「……?」
どうやらだいぶ挙動不審になってしまっていたようです。つかささんでも気付いてしまうくらい(つかささん、ごめんなさい)、
私は動揺を隠しきれていないのでしょうか? つかささんはお箸を止めて、なんだか不安そうな顔をしていました。
おそらく、つかささんはメモ帳をまだ見ていないはずです。だとすれば、まだこの家のどこかにメモ帳は……。
つかささんは朝食を急いで食べると、私を外出に誘いました。お休みですし、それは当たり前の事なのかもしれません。
しかし、私はこの家を離れるわけには行きませんでした。迷惑な話かもしれませんが、アレを見つけるまでは……。
「いえ、その……はい、あの、そうですね! あっ、でもつかささん、お勉強のほうは……」
「あっ! そっかぁ、そうだよね……」
つかささんは露骨に落ち込んだ顔をしました。ああ、ごめんなさいつかささん。私もできればつかささんと遊びたいんですよ?
こういうのをKYというのでしょうか、せっかくのお休みなんですから、ちょっとくらい一緒に遊んでもよかった筈です……。
「じゃあ、ゆきちゃんはおうちに帰ってお勉強しないといけないよね……」
「え、ええ……あ、いえ、そうですつかささん。よかったら一緒にお勉強しませんか?」
我ながら名案だと思いました。これなら、私は柊家にまだ居続けることができます。メモ帳を探す猶予が生まれます。
つかささんに断られたらどうしようかと思いましたが、「ありがと……ゆきちゃん、ありがとっ!」と素晴らしい笑顔で言われ、
私はあやうく昇天するところでした。愛らしいです、可愛すぎます。一緒に勉強できるのを、そこまで喜んでもらえるなんて。
もっとも私が、保身のために出した提案なのです。つかささん、ごめんなさい。でも私も一緒に勉強できて幸せです。
「じゃあ、私準備しちゃうね!」
「あ、私もお手伝いします」
「お勉強って苦手だけどね……ゆきちゃんと一緒ならきっと楽しいかも〜」
「私もです。楽しすぎて、集中できないように気をつけないとですね」
私達はうふふあははと笑いあって……そのすごく和んでいる空気に対し、急に気恥ずかしくなりました。
今、二人揃ってちょっと恥ずかしい事を口にしていたような……いえ、単なる友達として、ですよね。でも両想いですし……。
万が一つかささんと私が結ばれることがあって……もしそうなったのなら、先程のような会話をいつものようにするのでしょうか。
お互いの何気ない言葉に笑い合って……それはあの昼食の時間のときとはまた違う空気があって、二人は頬を染めて……だばだば。
「私、数学でちょっとわからないところがあって……ゆきちゃん、よかったらちょっとだけ教えてもらえる?」
「ええ、わかる範囲でしたら……私も少し、英語のほうに不安がありまして……」
「う、それは助けてあげられないかも……」
ああ……つかささんつかささんつかさsんつつtかkkつかt……勉強があまりお得意でない所も可愛らしいです……。
私達はつかささんのお部屋に向かうと、テーブルと教科書、二人分のノートと筆記用具を用意しました。
「それでは、まずはつかささんが苦手なところを一緒に考えながら解いていきましょう」
「うん、よろしくお願いします、ゆきちゃん先生♪」
あ、だめです、血圧がアがってシんでしまいマス……。なんとか耐えきって、とりあえず勉強は始まりました。
そのほのぼのとした空気に少しばかりあやうく、メモ帳の存在を忘れるところでしたけれど……。

******
566みゆき×つかさ・後編6:2008/01/09(水) 14:31:44 ID:zr9TNB0c
Tsukasa-side

お勉強をしている間、ゆきちゃんは何度かくらくらとしていたみたい。本当に大丈夫かな?
ゆきちゃんは驚くほど教えるのが上手で、私もなんとかだけどついていけて、教え方の節々にゆきちゃんの優しさを感じた。
なにより、ゆきちゃんの声を聞きながらだと、どうしてもそれを聞きたくなるから、一つも聞き飛ばすことがないし、
ゆきちゃんの声をさらに聞きたくて、私は必要以上に何度も質問して……ゆきちゃんの迷惑になっていたかも。
「……それでここのBrsmks=dndk^120にこの公式を代入したようなフリをして、ここがこうなるわけです」
「あ、そっかぁ。う〜ん……うん! 覚えた! ……と思う」
「つかささんはわからないところを中途半端にせずにきちんと質問していただくので、教えるほうも助かります」
「そうなの?」
「ええ、わからない部分を残したまま次に移ると、どうしても躓いてしまいますし」
えへへ……だって、ゆきちゃんの声、もっといっぱい聞きたいし……。
「ごめんね。ゆきちゃんのお勉強、全然はかどってなくて……」
「いえ、いいんですよ。私も復習のつもりでいますし、教える側に立つのも十分勉強になりますしね」
ゆきちゃんってば、やっぱり優しいよ〜……『それに……つかささん……近付け……密着……』とか呟いてたけど……。
「次からはひとりでできる……と思う……」
「なにかわからないことがあったら、何でも聞いてくださいね」
じゃあ……ゆきちゃんの気持ちが知りたいな。そんなことを考えて、私はひとりで勝手に顔を真っ赤にした。
勉強も大事だけど、私には昨日の事を聞くことと、自分の気持ちを告白するっていう大事な仕事が残ってる。
告白って、今まで想像したことなんてなかったけど、もしもするんだったらロマンチックなところかなって思ってた。
自分の部屋で勉強中に……なんてことになっちゃうかもしれないなんて、全然思ってなかった。
せっかくゆきちゃんが教えてくれたんだから、きちんと勉強に集中しないといけないのに、いざ告白の事を考えていると、
どうしても心臓がバクバクいって、教科書の文字を追うことが出来なかった。ゆきちゃんはゆきちゃんで、まだそわそわしてる。
「ゆきちゃん……」
「はい、何ですか?」
「……ううん、なんでもない」
やっぱり何度決意を固めてみても、土壇場で尻すぼみになっちゃう。こなちゃんのエールを何度も頭の中で再生してみる。
今日の朝の反応や一緒に勉強してくれることから考えても、ゆきちゃんは私の想いを聞いても、嫌ってはくれないはず。
……私の気持ちは昨日のうちにとっくにバレちゃってるんだけど……。
だから私は必要以上に怖がらずに、想いを打ち明けてもいいはず。ゆきちゃんは迷惑に思うかもしれないけど……。
それとも、もしかしたらゆきちゃんも、私のこと受け入れていいと思ってる? 私の勘違いとか、そうじゃなく?
(ねぇ、ゆきちゃん。そうなの?)
ゆきちゃんは聞こえるか聞こえないかの小さなため息をひとつ吐くと、ペンをノートに走らせていた。
座りっぱなしでお尻が痛い。何気なく座り方を帰ると、ポケットに何か感触がした。中に何か入ってるって、ようやく気付いた。
あ……そういえば昨日、ゆきちゃんのメモ帳拾ったんだっけ……たくさんの私が詰まった、ちょっと嬉しいメモ帳。
これ、ゆきちゃんに返さないとまずいよね。もしかしてさっきからそわそわしてたのも、これを探してたのかもしれないし。
「ね、これってゆきちゃんのだよね? 昨日拾っちゃって……遅れちゃったけど、返すね」
私はメモ帳をポケットから取り出すと、それを何気なくゆきちゃんの目の前に出した。
そのとき私は見ちゃったんだ……ゆきちゃんの顔が、一瞬で真っ青になっていくのを……。

******
567みゆき×つかさ・後編7:2008/01/09(水) 14:33:23 ID:zr9TNB0c
Miyuki-side

気がつけば私は……つかささんの手からメモ帳を強引に取り上げてました。
(どうして!? どうしてつかささんがこれを……!)
そのメモ帳を隠すように、私はつかささんに背を向けてかがみこみ……全身から嫌な汗が吹き出るのを感じました。
つかささんが差し出したそれには、たしかに書いてありました。私の文字で、『つかささん情報』と。
(よりによってつかささんが……一番見られたくない人なのに……)
私はつかささんの顔を直視する事が出来ず、背を向けたままメモ帳を強く握りました。唇はふるふると震え……。
「あ、ゆきちゃん、その……」
「つ、つかささん……」
「う、はい……」
「その……中は覗きましたか?」
しばらく沈黙が流れて、つかささんは大きく頭を下げ、大声で答えました。
「ごめんなさいっ! いけないことだとは思ってたんだけど、私の名前が書いてあったから、我慢ができなくて……!
すぐに返そうと思ってたんだけど、うっかり忘れちゃってて……ごめんね、軽蔑しちゃうよね、本当にごめんなさい!」
「ど、どこまで……」
「え?」
「どこまで見たんですか……」
「……たぶん、全部」
この家に来て、何度顔を赤くした事でしょう。しかし、今この瞬間が一番、私の顔が真っ赤になったのかもしれません。
見られてしまいました。よりによってつかささんに、一番知られたくない私の姿を、全て見られてしまいました。
(恥ずかしい……! つかささんに嫌われて……こんな私の本性を……つかささんはずっと知ってたなんて……!)
もう何も考えられなくなりました。つかささんはきっと、私のことを気持ち悪いと思っていることでしょう。
このメモ帳をつかささんがいつ読んだのかはわかりませんが、朝からずっと私の前で、平気そうなフリをして……。
こういうときはきちんと、たとえ許してもらう事はなくても、相手の目を見て謝らなければいけません。
しかし私は、目から溢れる物を堪える事ができずに、つかささんに背を向けたまま口にする事しか出来ませんでした。
「つかささん、ごめんなさい! つかささんに黙って、こんな恐ろしい、気持ちの悪いことをしていてごめんなさい! 
私、つかささんのことが好きで……つかささんのことを少しでも多く知りたくて、それでこんな出過ぎた真似を……!
もう二度としませんから許してください! これは全部破いて捨てますから、嫌いになってもいいですから……!」
自分の知識欲を、生まれて初めて呪った瞬間でした。こんな風に生まれた自分を、殺してしまいたい気持ちになっています。
「ゆ、ゆきちゃん……」
つかささんはよろよろと近付くと、私の頭をそっと抱きかかえました。私の嗚咽に混じり、もうひとつのすすり泣く声……。
それでも私は顔を上げて、つかささんをきちんと見つめる事が出来ません。愛する人が、泣いているというのに……。
「お願い、ゆきちゃん、泣かないで……気持ち悪いだなんて思ってないよ、破ったりしなくてもいいから泣かないで……。
嫌いになったりしないから……ゆきちゃんの知られたくないこと、勝手に覗いちゃってごめんね。本当にごめんね」
「本当ですか? 嫌いになっちゃいませんか? 気持ち悪いって、思わないですか?」
「ホントだよ。だから泣かないで……私、あんなにたくさん私の事知られてるなんて思わなかったから驚いちゃったけど、
こんなに知ってくれて嬉しいって思っちゃった。あんなに私の事知りたいと思ってる人が、しかもゆきちゃんで……」
つかささんは優しすぎます。こんな私にも温かい言葉をかけてくれるだなんて。それだけで私は、赦しを得た気分になりました。
「そ、それにね……おあいこなんだよ? 私達」
「おあいこですか……?」
私はまだ顔を上げず、つかささんの胸に頭を預けたままでしたが、つかささんが小さく深呼吸したことはわかりました。
「ゆきちゃんも私の……は、恥ずかしいところ見ちゃったでしょ……?」

******
568みゆき×つかさ・後編8:2008/01/09(水) 14:37:52 ID:zr9TNB0c
Tsukasa-side

顔から火が出るくらい恥ずかしかった。だってもう知られちゃってるとはいえ、一人でしてたことを告白するんだもん……。
でも、私の大好きなゆきちゃんが、あのゆきちゃんが、泣きながら私に謝ってる。ゆきちゃんは何も悪くないのに。
ゆきちゃんは私のせいでたくさん恥ずかしい思いをしたのに。だから私も、恥ずかしい思いをしなくちゃいけないんだ。
「ゆきちゃん……昨日、見てたんだよね? 私が、その……ひ、ひとりでしてたところ」
「え……?」
ゆきちゃんがようやく顔を上げてくれた。眼鏡の奥の聡明な瞳は、今だけは強く潤んでいて、儚げに見えた。
「私がゆきちゃんの名前を呼んで……その……」
「わ、私が起きてたのを知ってたんですか……?」
「う、ううん! している間は知らなかったんだけど……ゆきちゃんが髪を撫でてくれたときに気付いちゃって……」
「あ……!」
ゆきちゃんは顔を真っ赤にしている。きっと私も同じはずだった。俯いたままスカートをぎゅっと握って、話し続ける。
「ゆきちゃんは寝ていると思ってたみたいだけど、私起きてて……それに、私がゆきちゃんのことを、その」
「つ、つかささん……」
「す、す……」
恥ずかしさはピークに達していた。たぶん、一人でしていたことを改めて告白した事より、ずっと恥ずかしい事だった。
『好き』の一言は私にとってすごく重く、勢いにまかせて言えてしまうかもって思ったけど、やっぱり怖くて。
「ゆきちゃんのこと、す……」
「つかささんっ!」
私は急に、強く抱き締められた。でも、全く苦しさや圧迫感を感じない、優しさと包容力に満ちた腕の強さで。
背中に回された、ゆきちゃんの両手。私のささやかな胸に押しつけられた、豊満で柔らかい感触。
「ありがとうございます。でも、もう大丈夫です。無理はしないで……続きは、私に言わせてください」
「ゆ、ゆきちゃ……」
「好きです、つかささん。世界中の誰よりも好きなんです。お願いですから、つかささんの全てを教えてください」
緊張が一瞬で全て解けていったのを感じた。やっぱりゆきちゃんの言葉が、私に一番の安心を与えてくれるんだ。
『好き』の一言は重い言葉だけど、好きな人から言われれば、とても嬉しい言葉で。私は胸の中に溢れる物を感じていた。
「ありがとう、ゆきちゃん……でも私、もう無理はしてないよ。今ならはっきりと言えちゃうんだから。
私も好きだよ、ゆきちゃん。ずっと言えなくてごめんね。ゆきちゃんに辛い思いをさせちゃって、ごめんね」
ゆきちゃんはさらに腕の力を強めて……ちょっと苦しいかな? 胸おっきいし。でも、全然イヤじゃない。
「どうしてなんでしょうね、私達は互いに想い合っていたはずですのに、ずいぶんすれ違っていました」
「あはは、おかしいね」
私達は落ち着くと、二人で並んで座ってベッドに背中をあずけたまま、勉強も忘れて寄り添い合っていた。
「ね、ゆきちゃん。聞きたい事があるんだけど……」
「はい、なんでしょう?」
「あのメモ帳、私以外の人の分もあるの?」
「あ……いえ、つかささんの分だけです。私が全てを知りたかった相手は、その、つかささんだけで……」
「私も。ゆきちゃんに、私のこともっとたくさん知ってほしいな。……だからね?」
私はゆきちゃんの目を、上目遣いでじっと見詰めた。それを口に出すにはすごく恥ずかしかったけど。
「ゆきちゃんのしたいように……私のことをたくさん調べてほしいな……?」

******
569みゆつか愛してる:2008/01/09(水) 14:43:11 ID:zr9TNB0c
と、容量に限界が訪れましたので
次スレを立てたので続きはこちらで投下したいと思います。
他職人さん&支援&読み手のみなさん、今回もGJでした。

らき☆すたの女の子でエロパロ32
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199857229/
570名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 14:48:04 ID:j+C9O0/W
つ、つ、つかゆき!つかゆき!
わっふる!わっふる!
スレ立て乙!
571名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 15:42:21 ID:qcQmucqh
>>570
ワッフルは次スレにあり、急行せよ!

らき☆すたの女の子でエロパロ32
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199857229/

つーことでここも埋まる、かな? あじゅじゅじゅしたー。
572名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 16:00:43 ID:/R+K6FN7
まだ追いついてないのに次スレに行こうとしている…
このスレ怖い(いい意味で)
573名無しさん@ピンキー
             __t─-v-─ァ__
            <:::::::::::::::::::::::::::::::>
          <´:::z-r─--v、:::::::::>
           く:::::{  |    }ハ::}:::::〉
      ,...:::' ̄ヾ<::::i  ィ=z  z=く 〉:::>
   ,...::::´::::::::::::::::::V:::レ´ !       `!::/   らき☆すたの女の子でエロパロ32
  /:::::::::::::::::::::::::::::::}rj ≡≡   ≡≡|<    http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199857229/
. 〈:::::::::::::::::::::::::_::z-┤ u '''  i   '' |ノ
  ヽ:::::::::::::::::ス_r- 、`¨l、  、__   ノ   <2008年もらき☆すたエロパロをよろしくおねがいしまっす!
   ヽ:::::::::::::::::::ヾ:::::`ー-{ヽー--‐ イ_..:-─::.、
    \:::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ-{チ-<::::::::::::::::l
     \:::::::::::::::::::\:::::::::::|o::::::::::::::::::::::l::l
       \::::::::::::::::::ヽ::::::::|::::::::::::::::::::::::l::l
.          入::::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::l:〈