エロくない作品はこのスレに8

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1名無しさん@ピンキー:2007/12/20(木) 03:55:58 ID:C9FO1cik
・萌え主体でエロシーンが無い
・エロシーンはあるけどそれは本題じゃ無い
こんな作品はここによろしく。

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エロくない作品はこのスレに
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2ロザグラ:2007/12/20(木) 03:58:54 ID:C9FO1cik
残り容量をミテナカッター!
スレまたぎ申し訳ありません、以下前スレより続きます。

「道化師からか?」
「えーと……フラウさんから」
 誰だ、そりゃ、とグラッドが顔を顰める。
 ロザリーはひょいと肩を竦めて見せ、直後にフロージアの愛称を思い出して戦慄した。
 意識せずに唇を紙、緊張した面持ちで文面に目を落とす。
「で? なんだって?」
 聞かれて、ロザリーは意味不明なものを見た時に人がそうするように、困惑して吹き出した。
 グラッドがますます眉間の皺を深くして、ロザリーの手から手紙を奪う。
「なんだ、こりゃ」
 まったく意味が分からないと、グラッドは手紙をウィリアムに押し付けた。
 無論、ウィリアムにもその意味が分かるはずなどない。

 ずっとおまちしていましたのに、ダンスに誘ってくださいませんでしたわね。
 私の心はあなたを想い、千千に乱れて夜風を彷徨っておりました。
 あなたとおしゃべりをしたくて、私は夜もろくに眠れませんでした。
 つきましては、私の新居にあなたをお招きしたく存じます。
 来てくださらなかったら、私から押しかけてしまうかもしれませんわ。
 いつでも、あなたのお好きなときにいらしてくださいね。いつでもおまちしています。
 追伸・八針も縫いましたわ。感動したので、私とお友達になってください。

「恋文ですか……?」
 八針? 縫う? と、ウィリアムが首をかしげる。
 たまらず、ロザリーは吹き出した。
「ウィリアム。フロージア様って変な人じゃない?」
「はぁ……? いえ、そういう噂は聞きませんが……」
「だと思った。うわぁ、都会って怖い」
「おい、怪文のせいでロズが壊れたぞ」
 なんとかしろ、とばかりにウィリアムを睨むグラッドに、ご自分でどうぞ、とウィリアム
が嫌そうに顔を顰める。
 抜けるように青い空を見上げて、ロザリーは眩しさに目を細めた。
「お幸せに」
 心から、本当に心からそう願う。
「よっしゃ! 僕も幸せになるぞぉ!」
 両腕を空に突き上げて、ロザリーは叫んだ。
 くすくすとさざなみのように笑いが広がり、私の愛人にしてあげるわよ坊や、と、
どこかで妖艶な声が上がる。
「よしわかった。それじゃあ早速城に帰って婚姻の準備を――」
「そんなわけでウィリアム。今度いい人紹介してね。出来れば粗野じゃなくて乱暴じゃな
くて出会った初日に人様の服を引き裂かない優しい人がいいな」
 身を乗り出しかけたグラッドを無視して、ウィリアムににこにこと笑いかける。
 堪えきれずに思い切り吹き出し、ウィリアムは肩を揺らして苦しげに腹を抑えた。
「ロズ! てめぇ――!」
「好きなだけ他の男にかまけていいんでしょ? 十年分の恋を取り戻すんだもんね」
 もうだめだ、とばかりに、ウィリアムが声を上げて大笑いをはじめた。
 なんと、ウィリアムが笑っているぞと、どこかで恐怖に戦慄した声が上がった。
 今夜は嵐か、いや吹雪か、と囁き合う声がする。
3ロザグラ:2007/12/20(木) 04:01:50 ID:C9FO1cik
「なんなら、ウィリアムが恋人になってくれてもいいよ。先輩護衛と交配の恋。なんだか
恋愛小説みたいじゃない?」
「いえ、私は故郷に妻がいますので――」
 え、と、ロザリーが硬直する。
 去年子供も産まれたんですよ、と人差し指を突きたてる。
 だが、叫んだのはグラッドだった。
「聞いてねぇぞウィリアム! てめぇ、主君を差し置いてよくも――!」
「閣下が三十も過ぎて妻を娶らない悪いんでしょう!」
「よぉしわかった! ロズ! 今すぐ城に戻って式の準備だ! 男遊びは俺と婚姻を結ん
でからにしろ!」
 遠巻きに見守っていた人々が、グラッドの宣言にどよめく。
 おお、ついにあのグラッド卿が――と囁く隣で、だが、あれは少年ではないのかと息を
呑んだ。
 はっと、昨晩と同様に、自分に視線が集まり始めるのをロザリーは意識した。
「あら! よく見たら昨晩の赤いドレスの子じゃない!」
「なんと! 装いをかえるだけでこんなにも印象が変わるのか……!」
「ちょ、ちょちょ! ちょっとまって、待ってください! 違うんです! 僕はただの
護衛で――!」
 ぽん、と、ウィリアムがロザリーの肩を叩く。
「招待客は貴族を含む名士百人――明日にはきっと、祝いの品が山のように届くでしょう。
こうなったら、もはやどうにもなりません」
「そんな……だって、そんな……!」
「約束は約束だからな。初夜は後回しでいい」
 それならば構わんだろうと、グラッドが鼻を鳴らす。
 おめでとう、おめでとうと、口々に言い合いながら、あちこちでグラスを合わせる音が響いた。
 ぐらりと、眩暈を覚えてふらふらと後退する。
 割れんばかりに鳴り響く拍手のなか――ロザリーは声の限りに絶叫した。


 以上です。お付き合いありがとうございました。
 不注意でほんとに申し訳ない。
4名無しさん@ピンキー:2007/12/20(木) 09:38:48 ID:7k2DvrWP
泣きそうになった! 震えがきた! 面白かった!
ロザリーかっこよくて可愛い。もちろんグラッドも。
みんなが幸せに笑うラストの絵にまた幸せすぎて泣きそう。
ありがとう、本当にありがとう!!

何度も反芻して楽しみます。
5名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 01:58:51 ID:ZUzTilTW
とり急ぎ日記見て支援www
後で読みます
6名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 04:14:48 ID:jA00ii/w
楽しませてもらいました。GJ!!
男前な3人も良いですが、
フラウもいい味をかもしてますね。
7名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 16:05:18 ID:yMlBONX+
ああ…完結させてくれてありがとう。
すごい勢いで最後まで読めてしまいました。
まじで号泣ですよ。
8名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 00:37:02 ID:mBT0JOcn
 職業、絵描き。
 そう一括りにしてしまえば、なんとも高尚に聞こえる物だが、実際そんなに上品なものでは無い。
 木に、器に、障子に、壁に。人はありとあらゆる筆を走らせ、ありとあらゆる物を描く。
 それは風景であったり、人物であったり、動物であったりと様々だが、彼女はその全てを描いた。
 名を美絵と言う。
 姐さん、と多くの人は彼女の事をそう呼んだ。年は三十を少し過ぎた頃。だが、くたびれた印象は何処にもない。
 いつも煙草を咥えており、切るのが面倒だと言う髪は、いつもゴムでひとつに束ねられていた。

「姐さん。今日は色、入れてくれるんだろ」
 まだ若い――だが一目でヤクザ者と知れる青年が、少年のように頬を上気させて美絵のアトリエに飛び込んできた。
 約束の時間は、まだ二十分も先である。
 美絵は咥え煙草で青年をじろりと睨み、無言でアトリエの真ん中に広げた白い布を指差した。
 アトリエ――と言っても、ほんの六畳一間の粗末な部屋である。畳はざらざらとささくれ立ち、一歩足を踏み出すごとにギシギシと危うい音を立てる。
 青年はスーツの上着を脱いでその辺に放り出し、そそくさとワイシャツに手をかけた。
 脱ぎ捨てた背に、黒い筋が無数に這う。筋彫り――と言って伝わる者がどれだけいるか、美絵は知らない。
美絵が無言で立ち上がると、青年は慌てて布の上にうつ伏せに寝そべった。
 彫師――と言えば、多くのものは彫刻を想像する。
 だが、美絵は間違いなく、絵師だった。
 絵筆は針。キャンパスは――人である。

「ちゃんと兄貴に話、つけてあるんだろうね。しばらくは熱で寝込むよ」
「あぁ。兄貴も姐さんのとこなら安心だって――兄貴の龍、姐さんが彫ったんだろ?」
「矢島の龍ね……ったく、ああだこうだ注文の多い奴だったよ」
9名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 00:37:38 ID:mBT0JOcn
「あれに憧れて彫り物しょうやつ、多いんだぜ。俺、どうしても兄貴と同じ彫師にやってもらいたくてさ、渋る兄貴を必死に拝み倒したんだ」
「噛んでな」
 手ぬぐいを差し出し、うきうきと語る青年に噛ませる。
 矢島か――。
 青年の背に色を帯びた針を刺し、美絵はぼんやりと、いかつい顔をしたヤクザ者を思い返した。
 痛い、辛い、もう嫌だ、と泣き言を言って、最後まで彫らずに逃げ出す輩は多くいる。
 海外からわざわざ彫り物をしょいに来て、泣いて逃げ帰った大男もいる程だ。
 だがそんな中、矢島は声一つ上げずに耐え切った。
 手ぬぐいを差し出してもそれを噛む事を拒み、激痛に脂汗を滲ませながら、大して痛くねぇや、とほざいたのが、五年前である。
 ぐぅ、と青年が呻いて、苦しげに布を握り締めた。
 これはもたないな――。線を入れる時も思ったが、色を入れる作業は遥かに永く地獄である。

「――今ならまだ、目立たないよ」
 ぎょっとして、青年が首だけで美絵に振り向いた。
「色半分入れて逃げ出すと、半端彫りつって格好が付かない。金が無いのか痛いのか――ってね。今のうちに止めとくかい」
「冗談じゃねぇや! そんな事したら、兄貴に破門されちまう!」
「矢島はタフだったけどね。あんた、相当に“痛がり”だ。もたないよ。やめときな」
「もつさ。そいつはがまんづえぇからな」
 先程よりも遥かに愕然として、青年が美絵の背後を凝視した。
 引き戸の音がしただろうか――彫るのに夢中で気付かなかった。
「耕太ぁ。てめぇが情けなくひぃひぃ言う声、外まで聞こえてんぞ。ちったぁ気張れ。みっともねぇな」
「あ、兄貴……!」
「よう、美絵。続けてやってくれ。途中で逃げ出そうとしたら、俺がふんじばってでも終らせるからよ」
「そんな事されたら、気が散ってしょうがないだろ。連れて帰って、他をあたんなよ。今時、痛くない彫り方してくれるとこなんて腐るほどある」
10名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 00:38:14 ID:mBT0JOcn
「ね、姐さんがいいんだよ!」
 耕太、と言う名だったか――。
 今ようやく名を思い出し、美絵は懐疑の瞳で耕太を睨んだ。
「痛くねぇ彫り物なんて、背負ってたって格好つかねぇよ! いてぇの我慢するから、意味があるんだ!」
 熱に浮かされる程の激痛の果てに背負う、極道としての永久に消えない烙印。
 そんな物の、何が格好良いと言うのだろう。だがその言葉は、美絵自身に帰ってくる物だった。人の皮膚に針を打ち、二度と消えない烙印を押し続けているのは他ならぬ自分だ。
 耕太の懇願に根負けしたように、美絵はわかったよ、と吐き捨てた。
「矢島。気が散る。帰んな」
「なぁに、身動きしねぇから気にするこたねぇ。俺は空気だ」
「こんな不純物だらけの空気がいてたまるか」
「しらねぇのか? 空気は混ざりもんだらけなんだぜ?」
 ああ言えばこう言う男である。
 美絵は勝手にしろと吐き捨てて、再び耕太に手ぬぐいを噛ませた。
 
 結論から言えば――耕太は耐え切った。
 一ヶ月。二ヶ月。三ヶ月。
 その間いつも矢島が付き添いで現れたのも、耐え切る事が出来た大きな要因であるだろう。
 それでも、耕太は熱に浮かされ激痛に耐えながら、八ヶ月に及んだ苦痛を乗り切ったのである。
 出来上がったのは、艶やかな唐獅子。
 矢島も出来上がった絵を睨み、満足そうに頷いた。
「また今度、気合の入ってそうな若い衆をよこす。おい、言っとくが俺のより立派なもん描くんじゃねぇぞ」
「知ったこっちゃ無いね。あたしはただ、客が選んだ絵柄を彫るだけさ」
 吐き捨てた美絵に、矢島が笑う。
 背を向けたワイシャツに、昇り龍が透けている。
 自分が描いた物だ。
 男の逞しい広い背に針を打って、一色一色、魂を込めて。
11名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 00:38:50 ID:mBT0JOcn
 幼い頃――どこで見たかは覚えていないが、恐らくテレビか本だろう。男の広い背に描かれた菩薩の絵に、美絵は強烈に惹きつけられた。
「――粋だねぇ」
「あぁ?」
「なんでもないさ。次はもうちょっと柔肌の男の子がいいねぇ。やる気があるんなら、女だってかまわない。白い肌に色を入れるとさ、綺麗に栄えるんだ」
 変態め、と罵って、矢島がスーツの上着を羽織る。
 職業、絵描き。
 そう括ってしまえば、この仕事は急激に色あせる。
 キャンパスが生きている。
 美絵の作品は、美絵一人ではどう足掻いても完成しない。
 激痛に堪え、熱に浮かされてまで見栄を張る馬鹿がいるからこそ、彫り物は芸術なのだ。
「矢島」
「なんだよ」
「あたしの職業って、なんだい?」
「ヤクでもやったか? 彫師だろうがよ」
 怪訝そうに、矢島が太い眉を吊り上げる。
 美絵は煙草の煙を吐き出して――笑った。
12名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 00:39:24 ID:mBT0JOcn
以上です。
即死回避即死回避。
13名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 05:25:43 ID:nn/IAnl8
GJ!! 艶っぽいし雰囲気いいなぁ。
14名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 22:26:08 ID:Q0M9+qgP
落としてなる物か
15名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 22:26:38 ID:Q0M9+qgP
ついでにage
16名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 17:39:53 ID:ANR2Wr1G
保守
17名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 18:58:09 ID:w8tbCelR
頬朱
18名無しさん@ピンキー
hssh