>>1は大変なものを盗んでいきました、私たちの乙です!
なんと気持ちの良いスレ立てじゃ
>>1乙
新スレも立ったし、インフルエンザもなおった。
これで安心してSSの投下をまてる…全裸に正座で
7 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 05:24:53 ID:f+Jx7Pqe
>>6 足が痺れるからあぐらにしとけ
それはそれとして
>>1乙
ほしゅ
ほっしゅ
11 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 16:48:14 ID:PY5HloTk
上げ保守
12 :
AM:2007/12/25(火) 12:22:41 ID:/yDFj3Gb
めりーくるしみます(怪盗が)
新スレもたったし、今日はクリスマスなので投下します。
投下するのはAMでもTMでもない完全新作の短編です。
見直しが終わり次第投下しますねー
「くっ…こ、この…っ!」
ガチャガチャと後手にかけられた手錠を鳴らしながら女はじたばたと暴れる。
身体は床に横倒しにされているので服が汚れてしまうのだがそんなことは気にしてはいられない。
上を見上げれば二人の男がニヤニヤと自分を見下ろしている。
彼らは自分をこのような状態にした張本人たちだった。
なんとか立ち上がろうと足を動かすが、そのたびに足払いをくらい再び床を舐めさせられてしまう。
「いいザマだなぁ、オイ」
「長かったぜ…この時をどれほどの時間待ったことか」
「あ、貴方達! 一体これはなんのつもり!?」
気丈に一喝する女に構わず、男二人は相変わらずニヤニヤと彼女を見下ろした。
男たちは黒を基調とした全身タイツのようなスーツを身につけている。
目元から下にスカーフのようなものを巻き、素顔を隠しているがその上から覗く目はギラギラと欲望に溢れていた。
「怪盗パープルローズもこうなっちゃあただの女だなぁ?」
男の一人が嘲るように口を開く。
目線はぐっと悔しげに唇をかむ女――怪盗パープルローズへと向けられていた。
ディープパープルのチャイナ服タイプの衣装に包まれている魅力的な肢体。
深いスリットから覗く生足はすらりと伸びていながらも肉付きよくその存在を主張している。
大きく膨らんだ胸元はダイヤ型に大胆なカットをされ、双乳の間に深い谷間を見せ付ける。
少女から大人に羽化しようとしている整った顔は目を覆う蝶型の仮面に包まれ、素顔を見せない。
そう、彼女こそが世間を騒がせる女怪盗パープルローズだった。
「こんなことをして…ただですむと思っているんですの!?」
「思ってるからしてるんじゃねえか」
「大体、いつまでも俺たちがお前の言いなりになってると思うほうがおかしいんだよ」
美女の鋭い眼光にも全くひるまない男二人の名は黒須惨太と東名戒。
海東学園でも有名な不良二人組である。
彼らと怪盗が出会ったのは三ヶ月前だった。
違法の薬の売人をしていた二人の前に彼女は現れ、このことを警察にバラされたくなければ自分に協力しろと脅してきたのだ。
当然、二人は女怪盗の言いなりになるしかない。
それからというもの、彼らはパープルローズの使い走りとして散々にこき使われてきた。
彼女が華やかに活躍する裏では、彼らの血のにじむような裏作業があった。
だが、名声を得るのは彼女一人で二人には報酬は何もない。
今までしてきたことを思えばそれは当然のことなのだが、彼らは不満だった。
いつかこの女怪盗に目にもの見せてやる。
その一念で彼らは彼女の仕事を手伝い続けてきたのだ。
そして今、その忍耐は実を結んだ。
クリスマスにしか展示されないという幻の宝石『サイレントナイト』
それを盗むことに成功した女怪盗はついに隙を見せたのだ。
アジトの一つで祝杯をあげようという普段ならば乗るはずのない提案に賛成した女怪盗はその時点で二人の手に落ちたも同然だった。
大仕事の後で気の緩んでいる女一人に手錠をかけるなど惨太と戒にはたやすいことだったのだから。
「今までの分、たっぷりおかえしさせてもらうぜぇ?」
べろり、と舌なめずりする二人は自分たちの絶対有利を確信しているのか、隙だらけだ。
チャンス――そう考え、動こうとした女怪盗の前に数枚の写真が突きつけられる。
「え――?」
パープルローズの動きが止まる。
写真に写っていたのは女性の着替え中の写真だった。
明らかに盗撮とわかるそれは、何枚にもわたって連続して撮られている。
「くく、よく写ってるだろ? なあ、白百合有希さん?」
「まさか我が海東学園の誇る生徒会長様がパープルローズの正体だったとは、ねえ?」
仮面の下の瞳を見開き、パープルローズ――白百合有希はあまりのショックに声も出せない。
そこに写っているのは怪盗衣装を脱ぎ、下着姿を惜しげもなく見せ、そして素顔を晒している自分の姿だったのだから。
「仕事の間は気を配っていたようだが、その後がよくなかったな?」
「素人の尾行にも気がつかないようじゃあ怪盗失格だぜ?」
「そ、そんな…っ」
ガクガクと震える女怪盗。
先程のまでの強気な姿が消え、一転して動揺の表情を見せる。
「さて、俺たちの言いたいことはわかるな?」
「これをバラまかれたくなかったら、大人しくしていてもらおうか?」
「くぅっ…ひ、卑怯なっ!」
「オイオイ、脅して俺たちを扱き使ってきたアンタが言っていい台詞じゃないぜ?」
「そうそう、あんまり反抗的だとこの写真を学校の掲示板に貼っちゃうよ〜?」
ヒラヒラと目の前で揺らされる写真に女怪盗は口を閉じるしかない。
だが、それを肯定の返事だと受け取った男たちは一気に床に転がる女へと襲い掛かり、身体を拘束していく。
「抵抗するなよ? まああんまりマグロでも困るから、喘ぐのは自由だけどな!」
「まずはこのおっぱいを見せてもらおうか。はじめて見た時からひん剥いてやりたいと思ってたんだ!」
「い、イヤ……ッ!」
ビビィッ!
ダイヤ型に開かれていた胸元が縦長に引き裂かれていく。
ぽろりと零れ落ちるように姿を見せた双丘はCカップといったところか。
大きすぎず、小さすぎずといった感じだ。
「おや? 乳首勃起してきてないか?」
「え、マジで? まだ触ってもないのに、とんだ淫乱女だな!」
(な……!?)
男たちの言葉に慌てて胸元に目を向ける仮面の少女。
確かに、ピンク色の乳首が通常よりも大きく膨らみ、その身を起こしかけているのがわかる。
だが、囚われの怪盗には混乱する暇さえ与えられない。
我慢できないとばかりに惨太が胸にむしゃぶりついてきたのだ。
「あ……っ、う! はぁ!」
「おお、どんどんデカくなってきたぞ。まだ舐め始めたばかりなのに敏感な乳首だなぁオイ」
「そ、そんな……うぁ!?」
むくむくと育っていく自分の乳首を呆然と見つめる女怪盗。
胸の頂点から伝わってくる刺激に我知らずぴくんぴくんと身体が反応してしまう。
(こんなの…おかしい…っ)
あまりに過敏な身体の反応に訝しがるパープルローズ。
彼女とて年頃の女性なのだから自分を慰めたことはある。
だが、ここまでの刺激は体験したことがなかった。
愛する男性がやっているならともかく、胸を責めているのは汚らわしい不良だ。
ありえない刺激の連続に女怪盗は動揺するしかない。
「くくく、どうした? 身体が感じすぎちまうか? まあそうだろうなぁ」
「どういう…ま、まさか……!?」
「そうさ、さっきの祝杯に混ぜておいたのは特性の媚薬だ。ま、安心しな。別に身体に害はないし中毒性もない」
「ただし、効果期間中は処女でも濡れ濡れでヒイヒイ喘ぐことになるけどな」
「なんて、ハァ…ことを……んっ!」
完全に勃起してしまった乳首を舌で弾かれ、美貌の怪盗はおとがいを跳ね上げてしまう。
薬が体中に回ってきたのか、頬が赤らみ、発汗が始まっていく。
熱が脳に達し、思考がぼうっとし始める。
「さて、そろそろこっちはびしょびしょか?」
「あ…そこは…お、おやめなさいっ」
下半身に手を伸ばされ、ハッと気を取り戻す女怪盗だったが、快感に支配され始めた身体では碌な抵抗もできない。
あっという間に長いスカートが捲くられ。横にはだけられてしまう。
夜を駆ける白い足が、その上に息づく乙女の秘密が男二人の目に晒される。
「ひゅう! 下は紐パンかよ! 衣装の大胆さといい、お前実は見せたがりなんじゃないか?」
「ははは、そりゃいい! 刺々しい薔薇の生徒会長こと白百合有希の正体は淫乱だったってか!」
「いやいや、それよりも夜の高貴な淑女パープルローズがこんなんだったってことのほうが問題だぜ」
「いやっ…そんなこと、言わないで…!」
怪盗パープルローズと白百合有希。
表の裏の二つの姿の両方を揶揄してくる二人に仮面の怪盗は怒りを隠せない。
しかし、それと同時に言葉によって嬲られた身体が疼いてしまうのも止められない。
ああ、これではまるでマゾのようではないか。
苦悩する少女を他所に、戒は正面に座ると両手を左右の紐の結び目に伸ばし、一気に引き抜いていく。
腰から消えていく布の感触にパープルローズは狼狽するが、身体は後ろからガッシリと惨太に押さえつけられていて動かせない。
あっという間に紐はほどかれ、少女の大事な部分を隠していた布地が剥がれていく。
そして露わになる女怪盗の足の付け根。
「け、汚らわしい! 見るなっ!」
「おお、予想通りびしょぬれだな」
「それにしてもぬれすぎじゃね? こりゃ薬だけのせいじゃないな。この淫乱女が!」
「だ、誰が―――うああっ!?」
じゅぶっ!
少女が抗議するよりも先に戒の指が女穴の中に進入する。
不意打ちの刺激に女怪盗は裏返った声を上げてしまう。
だが、指が浅いところで抜き差しされ始めるとその声は段々甘くかすれたものへと変化していく。
「あう! ひぁ! やめ…あぅんっ」
「普段は生徒会長としてあんなにお堅いのに可愛い声だすじゃねーか!」
「全くだ。これがあのパープルローズだと知ったら皆幻滅するぜ?」
惨太と戒の二面の言葉責めにパープルローズの理性がぐらぐらと揺さぶられる。
これは薬のせいなのだといってしまえればいいと切に思う。
しかし、それは今まで積み上げてきた矜持が許さない。
薬という理由があっても、不良ごときに屈するなど有希の、パープルローズの誇りに関わるのだ。
「あんっ、ひんっ、うぐぅんっ…はうっ…」
だが、快楽に犯された身体はもはや制御不能だった。
抵抗する力は抜け落ち、手足はまるで動かずに男たちのされるがままだ。
惨太は相方ばかりが楽しんでいるのに辛抱できなくなったのか、僅かに少女の身体を抱えあげると股間に自身の勃起した性器をあてがう。
「おい、もう入れるのか?」
「辛抱たまらん! それに先に入れるのは俺だってジャンケンで決めただろ?」
「…まあ、仕方ないか。じゃあ俺は上をもらうぞ」
「う、上……むぐっ?」
なんのことだと問い詰めようとして開いたパープルローズの口に戒の性器が突きこまれる。
異物の侵入に思わず目を白黒させる女怪盗だったが、すぐに事態を理解するとそれを吐き出すべく口を引く。
だが、それよりも先に男は少女の頭を両手で固定し、吐き出しを拒否した。
「んん――! んぐっ、ん!」
「うお、やべっ、この女の口気持ちよすぎ…」
「よっしゃ、じゃあ俺も…!」
口を犯された女怪盗に、続け様に危機が襲い掛かる。
侵入口を探り当てた惨太がずぶずぶと自身の性器をパープルローズのそれに突き入れてきたのだ。
「あぐっ…!」
ぶつん、と何かが突き破られたかのような感触とともに女怪盗の股間から赤い液体が流れる。
だが、媚薬の力は痛みすらもすぐさま快感に代えてしまうらしく、苦痛の表情が次第に緩んでいく。
「初物ゲットー! やっぱ処女だ!」
「マジかよ? こんなスケベな衣装と身体で処女とかありえなくね?」
「この…んぐっ…ケダモノっ…うんぷっ…あぅんっ」
「ぷぷっ、そんなよがりまくった顔と声じゃ説得力がないぜ? ほら、お前の股間も気持ちいいっていってるぜ?」
(嘘…こんなのは嘘です…!)
じゅぶじゅぶと男の一物を美味しそうに飲み込んでは吐き出していく自分の股間を信じられないものを見るような目で見つめる。
だが、現実として男から与えられる刺激に女の本能が揺さぶられていく。
チカチカと思考が点滅を開始し始める。
「うっ…!」
「んっ…んんううっ!」
ドクッドククッ!
その時、下よりも先に上の口へと白濁液が発射された。
口から戒の性器が抜かれ、女怪盗の口内と顔、そして仮面に粘った精液が次々にへばりついていく。
「戒、お前早漏すぎ」
「う、うるせえ! この女の口がやばすぎるだけだって! …しかし、見事に汚れちまったなぁ」
相棒の突っ込みに気まずさを覚えながらも戒は自らの精液で汚した美貌を見つめる。
何が起こったのか理解しきれていない呆然とした表情に汚れの白が満遍なく張り付いていた。
警察が手も足も出ない女、学校では羨望の目を向けられている女を今自分が征服したのだという実感がこみ上げる。
「さって、汚れたことだし、これはもういらないよな?」
「え……あっ! 駄目、か、返しなさい!」
さっと男の手によって剥ぎ取られてしまった仮面に少女は手を伸ばす。
だが、拘束された状態では手が届かない。
むなしく宙を切る手が、一瞬後に膣内を突かれる快感でビクリと震える。
「生徒会長、白百合有希様のご登場か。仮面をつけた姿もいいが、やっぱ素顔のほうが美人だぜ?」
「い、いやっ…」
すでに正体がバレているにも関わらず、有希は顔を隠そうと手を動かす。
しかしその手は戒に掴まれ、万歳の形で持ち上げられ、固定されてしまう。
これによって囚われの生贄は、怪盗パープルローズからただの白百合有希へと戻ってしまった。
「ああんっ…ひぃっ…はぁんっ…!」
目に見えて少女の様子が変わる。
怪盗パープルローズとしてだからこそなんとか精神だけは負けなかった。
それが仮面を外されたことにより、弱気という二文字が顔を覗かせてはじめてしまったのだ。
「オラオラどうした白百合。ナカがきゅんきゅん締まってきたぞ?」
「ち、がう…私は…怪盗…パープル……あはぁんっ」
「強情な奴。ま、どっちでもいいけどな。どっちみち今のお前はただの女だ。俺らのチ〇コで悦ぶだけのメス犬なんだよ!」
惨太に突かれるたびに有希の身体が上下に揺れ、あわせるように乳房が弾む。
戒はそれをタイミングよく口で捕らえると、ちゅうちゅうと吸い始める。
胸と股間という二大性感帯への同時刺激にもはや有希は意識を保つので精一杯だった。
「だっ、出すぞ! あの怪盗パープルローズのおま〇この中に、俺の精液を!」
「最高のアクメ顔、見せてくれよ。生徒会長さん!」
どくんっ!
膣内で肉棒が解放の歓喜に震え、溜めていた白い液体を遠慮なく吐き出していく。
それと同時に、パープルローズも、いや、白百合有希も限界を迎えた。
「あっあっあっ! あひぃぃぃぃっ!」
ビクン! ビクン! ビクン!
数度の痙攣を繰り返し、少女の身体が惨太の上で跳ねる。
絶頂を迎えた淫らな女に、無遠慮な二つの視線が降り注ぐ。
「くくく、流石はパープルローズ! 俺の精液が盗まれちまった!」
「おいおい、誰が上手いこといえっていったよ」
「あふっ…はぁ…はぁ…はぁっ…」
有希は最後に一度大きく身体を揺らすと、くたりと脱力して背を惨太に預ける。
その表情は悦楽に染まり、身体は汗と女の匂いに包み込まれている。
だが、有希は朦朧とする意識の中で未だに燻る火種のような感覚を覚えていた。
恐るべきは媚薬の効果か、それとも開花した女の本能か――再び少女の膣がオスを求めて収縮を始める。
「うわっ、もうおねだりかよ? ったく淫乱な女だぜ」
「じゃあこんどは俺が挿れる番だな」
「ああ、まだまだ夜は長い。今日はクリスマス、聖夜は、いや性夜は始まったばかりだぜ?」
女の反応を喜び、二人の男が有希へとのしかかっていく。
薬の効果は未だ切れず、少女の身体はオスを求めるべく動き出す。
「今夜一晩でどこまで堕ちるかな?」
「さて、な。まあ今までの報酬、たっぷり払ってもらおうぜ……この身体で、なっ!」
ずぶり、と戒の肉棒が突きこまれていく。
有希は身体が求めるがままに声を上げ、腰を動かす。
身体の隅々にまでいきわたった媚薬は彼女の精神をも蝕みはじめていた。
いやいやと力なく左右に揺れる首だけが最後の抵抗だが、それも徐々に動きが小さくなっていく。
周囲に引きちぎられた朱の衣装がまるで薔薇の花びらのようでもあり、有希の状態を指し示しているのかのようだ。
怪盗パープルローズ……その薔薇は棘を抜かれ、ただ花を散らせるのみだった。
19 :
AM:2007/12/25(火) 13:08:19 ID:/yDFj3Gb
以上、サンタクロースとトナカイがお贈り致しました。
つか短編難しすぎる…
めりーくるしみますGJ!
>>19 心ゆくまでの満足のいくエロをありがとー!
めりーめりーくりすます!
クリスマスプレゼントGJ! ありがたく頂戴しました
独り身に嬉しい惨太さんと東名戒からのプレゼントGJでした
>俺の精液が盗まれちまった!
の名言に噴いた
サンタさんからプレゼントキタ━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━!!!!
2度読み返して名前に気が付いたw
俺の精子も盗んで欲しいぜ(*゚∀゚)=3ハァハァ
25 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 14:27:39 ID:zKpM4PnU
なんかヤバイ気配なので保守
夜の高貴な淑女という表現にクソワロタよ
また来るかもしれないんで保守
28 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 03:12:28 ID:02gCpEGw
何か大騒ぎの様だな
保守
あけましておめでとうございます
新スレたってたの気づかなかった
あけおめ保守
新年最初の投下はどんな作品だろう保守
新スレ立ってたとは。
同じく保守。
34 :
前スレ503:2008/01/07(月) 21:55:44 ID:FsjWeX9t
ずいぶん間が開いてしまったし新年初投下などと言われると尻込みしてしまうが…
機装怪盗PTフィズ
第一話『勝利?敗北?…崖っぷちの初戦!』前編(投下数11)…投下開始
いちおう冒頭あらすじ
桃木志由は両親の敵である闇の組織の存在を世に知らしめ、復讐する為に
超テクを駆使する白き怪盗『Fizz』として、
両親の形見である超技術の結晶、超AI『ピーチ』と共に世間を騒がす!
巨大な組織と戦う為にマスコミを利用し敵の正体を暴こうというのだ。
マスコミ業界に精通し情報を得るため、さらに正体を隠す意味でも
大胆にもロリ系アイドルとしても活動する志由………
今日も盗みの後、TVに出演するのだった。
志由の予想どおり生放送のバラエティーは『Fizz』の話題で持ち切りだった。
TV局としては速報を兼ねつつ、フィズと『顔が似ている』と評判の志由が出演、
二倍に視聴率UPが見込める番組構成にホクホクだ。
多少急かされようとも志由の立場からも正体を隠す意味では有り難かった。
…10分前まで警官達に追われていた者がTVに出演しているなどと誰が思おうか?
だが…
「志由ちゃんもあと何年かしたらこれくらいのおっぱいになるよね〜w」
フィズと比較される際、よく言われる言葉…これだけは内心辛酸を舐める思いだ。
志由は…アイドルとしてのプロフィールは12歳……だが実年齢は18歳……
既に「あと何年か後」の姿なのだ。
胸の小さいこと…ロリ体型は志由の最大のコンプレックス…本当に辛い。
だから志由はいつもこう返して話を逸らす。
「ええ〜…でも似てるかなぁ?…ほら…フィズさんはフランス人形みたいだけど……
私は『こけし』みたいだし………機械オンチだし…………」
「こけし」と言うより志由は日本人形…和的な可憐さなのだが…
外見上のイメージ、その最も分かりやすい例えだ。
内面の特徴、様々な超テクノロジーを駆使するFizzとの違いを強調する。
「そうだね〜、光学迷彩!…ホログラム!…空を飛ぶのもハイテクらしいし……」
若い男のコメンテーターも唸る。そして初老の著名人も続ける。
「噂じゃ国連軍の極秘部隊でも敵わないほどの技術と言うじゃないか?」
志由は大袈裟に驚きながらコメントする。
「それじゃ……ひょっとして宇宙人?!…やだ、怖いよ〜〜〜」
そう言って会場を沸かす。内心ではその『技術』について深く追求したいのだが……
(これだけ騒ぎになれば…『ヤツら』も…きっと動き出す……!)
『ヤツら』…闇の組織『BARTENDERS』の悪事を白日の元に曝す……
…そんな事を考えている時に新たな速報が入った。
「……ええ、ただ今…速報が入りました。
世界有数の大富豪、Missヴァイオレットからフィズに向けての声明映像が発表され…
…あ、映像入りますか?……それではご覧ください!」
コメンテーターの言葉と同時にスタジオの巨大スクリーンに映像が表示される。
妖艶な…素晴らしい巨乳を強調したドレスを纏った女性…
「怪盗PTフィズ…私は貴女に挑戦します!
…来週の19:00、この秘宝のサークレットを持って貴女の国にお邪魔するわ♪
貴女が怪盗を名乗るなら……見事盗んでごらんなさい♪♪」
唐突にして訳のわからない声明……だが志由にだけは伝わった。
PTとはピーチの開発コード…その単語を入れてくるのは組織の手の者の証……
(……やっぱり来た!……ピーチ、お願い!)
口は開かない声帯だけの極小の囁き。
それでもピーチには首のチョーカーを通じて伝わるからくりだ。
それを証明するように途端にスクリーンの画像が乱れてフィズの姿が……
こんな時の為に用意しておいた映像だ。
「電波ジャック、本当にごめんなさい。
でも…私は誰の挑戦でも受けます☆
その『お宝』…必ずこのFizzが戴きますので♪」
ペコリと頭を下げて映像が戻る。
既に騒然としていた会場にさらに油を注ぐフィズの声明返し…
…放送はそこで『しばらくお待ち下さい』に切り替わった……
翌日…
ロリ系アイドルの肩書どおり…ランドセルを背負い名門の制服を着て登校する志由。
ランドセルの横の簡素な袋にクマのぬいぐるみがいても不思議ではない姿……
「……ホントに……やるのね?………」
聞くまでもない質問をクマ…ピーチが問う。
「……………うん!」
そう返事をして学校へと駆け出す。
…
志由には…学校へ行くことも、アイドルとして歌うことも…
フィズとしての怪盗行為…組織と戦うことも…全て同列……当然のことなのだ。
ついに…その日がやってきた。
指定された場所は…最近建造されたばかりの王立美術館。
その入口の鍵を難無く開けてエントランスロビーに立つフィズ……
例によって外は警官と観客で大変な騒ぎ…今回は突入時の大立ち回りも過剰に暴れた。
仕事を済ませた頃にはもっと人が増えているはず。
…目撃者が多いほど敵も誤魔化しが効かない。煽るだけ煽って会場の熱気を高めた。
そんな外とのギャップ…美術館の中は異質な空気に満ち寒気すら覚える。
思わず身震いするが…今日の為に万全を期してきた。
背中のリュックからピーチの本体であるくまのぬいぐるみが顔を出す。
他はいつもと変わらない外見だが…フィズにとってはフル装備…
備えられることは全て備えた。恐れることは何もないはずだが……
「…予想どおり中は誰もいないね。」
ピーチの声を確認するようにフィズはバイザーに表示される各種情報をチェックする。
確かにセンサー有効範囲には生命反応はない。
極秘を信条とする敵組織は捕えられて尋問等で尻尾を出すような愚は犯さない…
ピーチと志由は事前にそう予測していた。そして予測どおりだとすれば。
「……でも……敵も超級AIだよね?」
ピーチがそうするようにこちらの機器も騙されている可能性も否めない。
センサーで無人でも安心は出来ない。組織に関係ない人物が雇われている可能性もある。
「大丈夫!…私を信じて♪」
そう言うピーチの戦いは既に始まっていた。
…建物周辺に、あらゆる通信を遮断する見えない防壁…結界が張られていた。
闇から世界を支配する敵としては当然の反応…
フィズのほうも初戦から敵に情報を与えるわけにはいかない。
ピーチの攻性防壁を敵の結界全周囲に上乗せ展開、
二重の結界に今や建物内部は完全に外界から孤立している。
ピーチと敵AIの電脳戦…その勝者が今回の情報を独占出来る。
だが…超級はお互い様、膠着状態に陥りなかなか進展しないはず。
…そこでフィズの出番だ。
フィズの役割は…物理世界で敵AIを攻撃…すなわち相手の守る『お宝』を戴く。
宝の姿を借りた敵AI本体を物理制圧するのだ。
索敵範囲や対情報制御をフィズの周囲だけに限定、ピーチは防御に徹する。
護りはほぼ完璧になる…充分な勝機が見込める作戦だった。
…それが……簡単に覆されるとは思ってなかった。
フィズは一気に二階まで駆け上がる。
重量軽減効果のある装備はフィズの体重まで軽くする。
今のフィズは全装重量5kgに満たない。
パワーアシスト機能を使わなくても疾風の如き速さで動くことが可能だ。
そして敵AIもガードを自分の周辺に限定している。
センサーを邪魔する要素がある方向へ向かえばいい。順調に思えたが…
「…止まって!!」
ドアを開けようとしたフィズをピーチが強く制止する。
根は臆病、慎重な志由だ。即座に動きを止める。
「どうしたの?…ドアには罠とかないと思うんだけど……」
モニターの情報を再チェックしながら問う。
やはりドアにもドアの向こうにも怪しげな機器の反応はない。
「…まさか…そんな………ここまで…やるなんて…………」
声からピーチの焦りが伝わる。不明瞭な言葉からもだ。
今にも「引き返そう」と言い出しそうなピーチ……
「どうしたの?……どうすればいい?」
再度問いながら引き返すつもりはないことを主張する。
…沈黙とは言えないピーチの一瞬の迷い。
(……事前に気付けた、対処策もある。………けど……っ!)
志由の安全を第一に考えるピーチが引き返したいのは当然。
だが、ただ撤退すれば少なくとも現時点までの情報を敵に与えることになる。
フィズ自体をガードするこちらの情報制御能力を悟られてしまう。
募る焦燥感。悩んだ末に志由=フィズの意志を尊重する。
「…この先は毒ガスに満ちてる……酸素キャンディーを使って!」
その言葉にゾッとしつつもポシェットから迅速にキャンディーを取り出し口に入れる。
その味と酸素を味わいながらピーチの躊躇の理由を知るフィズ。
(キャンディーの効果は30分……急がなきゃ!)
そしてピーチは冷静に状況を、敵を分析する。
(毒……それも即効性の催淫成分!
そして最初から全館に満たしておかずに…油断させて二階から……
……陰湿!…姑息!…最悪な嗜好!)
動揺を避けるため催淫成分のことは志由には言えないが…
フィズはドアの向こうに踏み込んだ後、扉を閉める。毒ガスの拡散を防ぐ為だ。
仮に帰りには一階にも散布されているとしても、帰りに一階を通るとは限らなくても
毒ガスなどという忌まわしいモノを広げたくないフィズ…
…その甘さを嘲笑うような声が響く。
「あらあら、この香水はお気に召していただけないようね?……素敵な芳香なのに♪」
声と同時にプロジェクターから壁に映像が投影される。
妖艶な美女…ヴァイオレットの姿。
「………っ!!」
フィズもピーチも驚愕する。外部からは完全隔離の状態。
その上でこちらの様子を把握して話しかけてきている。
(…ヴァイオレットはこの中にいるの?)
(…ううん…敵AIが状況に応じて映像を選択してるだけかも……)
超小声と骨振動伝達スピーカーによる内緒話…
「そんなにビビらないで♪…ぶっちゃけると今回は様子見……
貴女たちをどうこうする気はないの。…まあ楽しんでもらえるように
ちょっとした悪戯程度の仕掛けは用意させていただいたけど♪」
様子見…そんな台詞など信用する二人ではないが
罠があることは確実……それがどんな罠かが問題だ。
そして時間は限られている。ここで映像を眺めている時間すら惜しい。
攻略するための何らかのヒントが含まれている可能性など極少…
先を急ぐべきだが…ピーチにはリスクを伴う秘策が思い浮かんでいた。
(……こんな事は敵も予測すらしないはず…だからこそ勝算も高い………けど!)
フィズ=志由の身の安全を考慮すると躊躇せざるを得ない……が。
「……ピーチ……この映像から……敵AIを制圧出来ない?」
フィズがピーチと同じ策を持ち掛ける。多少言葉足らずだが…
正確には映像装置の制御から敵AIに接触、有線で相手の防壁を崩す…
ピーチの性能は闇の技術でも最高レベル…電脳戦で圧倒できる公算は高い…
…成功すればその時点で勝利。
仮に敵AIが同格であっても全力で攻めれば敵AIの能力を防御に集中させられる。
フィズの行動に関与する余裕は無くなる。攻略が楽になるはず…
…フィズが敵本体に辿り着けた場合も勝利。
だがその場合…ピーチ本体もこの場を動けない。制圧完了まで通信も出来ない。
通信からフィズに汚染が及ぶ可能性もあるからだ。
フィズ一人で、ピーチの助言無しで先へ…敵AI本体へ進まなければならなくなる。
「だいじょぶ!…超AIさえ封じてくれれば…いつもの装備でも楽勝…だよね?」
確かに今まで完璧に『Fizz』として怪盗を演じてきた実績もある。
それでも…敵の超技術と相対するこの状況では
命綱と言っても過言ではない超AIピーチと別行動を取るなど……
だからこそ敵も予測出来ない……そして……命綱無しでも渡れる障害ならば……
「…わかった!…でも充っ分!…気をつけてね!
…フィズがやられちゃったら私が勝っても無意味なんだからね!」
言いながらリュックから飛び降りるクマのぬいぐるみ。
そして背中のチャックから触手型マニュピレーターを伸ばし壁に穴を開けていく。
「わかってる♪…私が盗むのが早いか…ピーチが制圧するのが早いか…競争ね☆」
そのまま通路を風のように疾走していった……
軽い言葉や行動とは真逆の厳重な注意を払いつつ………
バイザーに投影される情報を抜かりなくチェックしつつ走るフィズ。
ヴァイオレットの様子見という言葉は真実だったのかと思えるほどに何も無い。
(あとちょっとで目的の部屋…仕掛けるとすればこの辺り…)
さらに警戒しつつ目的の展示場の前…
「……っ!!」
入退場を円滑に行えるよう廊下が広くなっている部分のほぼ中央、
…そこでフィズは急ブレーキをかけた。
床を踏んだ際、奇妙な違和感を感じたのだ。
…実際にはフィズが乗った瞬間、床がわずかに2mmほど沈んだのだ。
集中していたからこそ気付けた微妙な床の挙動に考えを巡らせる。
(…落とし穴??…ううん、違う!)
フィズのバイザーは物体を透過して分析できる。
そんな原始的な罠など文字どおり一目瞭然のはず。
事実、踏んでいる床の下には空洞などない。
それでも飛びのきたい心境に駆られながらフィズはその場で待機する。
その退避動作こそが敵の狙いかも知れない……そしてその考えは正しかった。
「流石に怪盗を名乗るだけはあるわねぇ……♪」
少し離れた壁に、またも現れるヴァイオレットの映像。
(っ?!…そんな!…敵AIはピーチが牽制してるはず……!)
フィズの行動に合わせてリアクションを取れる映像を流せるわけがない。
「あ、PTなら大丈夫よ♪…流石に超高性能AI…
こちらのヘボいAIでは全く歯が立たないわ♪…足止めが精一杯…でも♪
…貴女がピンチになれば…隙が出来て制圧できちゃうかもね?」
「くぅ……っ」
歯噛みするしかない。ピーチは感情を持っている。
それに流されることはなくとも志由が危険な状況なら…
リスクの高い選択肢も選びかねない。ヴァイオレットの言うとおりなのだ。
(なんとか……しなきゃ!)
バイザーのスキャン範囲を広げて違和感…罠の正体を見極めようとする。
「………っ!……そんな………これって………っ!」
あまりもの事実に思わず声が出る。
「そう♪……ピタゴラスビッチってとこね♪」
フィズが踏んでいる床…そこからフィズの重量が消えると床は再び元の位置に戻る。
その際に小さな球が転がるように仕掛けてある。
その球はレールに導かれ様々なスイッチを起動、連動させていき……
最終的に行き着く先には…ドクロが描かれたボタン。
落とし穴並に原始的だが…思考を凝らされた単純にして複雑な罠。
「…その床は…この美術館周辺のビルを爆破しちゃうスイッチね♪」
「………っ!?!?」
想像を越える最悪の事態にフィズは驚愕する。
美術館自体はピーチが入念に調査解析、爆発物など見逃すはずもない。
しかし周辺の建造物は…どうだろう?……わからない。
そして仮にフィズは爆発から逃れることが可能だとしても。
自分が呼び寄せた「観客」は……
(そんなこと………絶対にダメっ!)
表情からフィズの心理がわかるのかヴァイオレットが高笑いしながら言う。
「もう貴女はそこから一歩も動けないわけよ♪
…貴女の立っている床に掛かる重量がある程度軽くなれば…ボンっ!
だから……無駄に接着剤とか撒かないでねw」
特殊装備のクォーキングジェルで床を固定する…
試そうとしていた策に釘を刺されてフィズはグウの音も出ない。
だが向こうから言い出すと言うことは対策が成されていると見るのが妥当だ。
(………どうしたら………いいの?)
この状況でもフィズは諦めない。その頭脳は抜け出す方法を考え…そして……
(……これなら………でも………ううん!……迷ってる時間は…無いっ!)
フィズはバイザーの自重軽減機能をオフにした。
羽のように軽かったフィズの全装重量は今、本来の重さに戻る。
この状態で装備を外して、衣服を脱いで床に置けば…
先程までの重量を維持できるかも知れない。
単純な策だが、それが有効だと言うことはヴァイオレットの態度が示す。
「ち!…もう気付いたの?!
…今回は対貴女用の罠はこれしか用意してないの……
だから…もう少し時間を稼がせてもらうわよ!」
その言葉が終わる前に壁の隅に備えられた非常口の扉が開く。
そして…ゾロゾロと男どもが入ってきた。
皆、一様にデジカメ等の撮影機器を手にしてだ。
各々がフィズの姿を見て奇声を発する。
「あ!フィズたんだ!「すごい…「こんな近くで…ハァハァ…」等々……
思わず生理的嫌悪が沸くフィズだが…逆に冷静になれた。
(これは…立体映像!……それも…出来の悪い!)
バイザーに表示される生命反応その他のデータを見るまでもない。
第一こんな大勢が警官の警備を抜けてここまで入れるはずもない。
毒ガスの中で平気な点もおかしい。
…完全に時間稼ぎ…男どもの視線がある状況ならば
服を脱ぐのを躊躇うと考えての策だろうが……
「…こんな手にひっかかると思ってるの!」
フィズはヴァイオレットに怒鳴りつける。
男どもは自分が一喝されたようにある者は怯え、
一部の男たちは単純にフィズの生声を聞けた喜びに震える。
そのリアルな反応に内心驚きつつ…ヴァイオレットの言葉を待つ。
「あ〜あ、やっぱすぐバレちゃうか……バレちゃ仕方ないなぁ……
そう、立体映像だから…安心して…ストリップしちゃって♪」
「立体映像って…俺らのことか?」「つか!ストリップ…?!…!!」
「「……フィズたんが………脱ぐ?………」」
男どもの様子が一変する。全員の視線に…いやらしい光が宿る。
「それに…なんか熱くね?」「俺、もう堪らねぇよ!」「お、俺も!」
男どもの何人かはズボンを下ろし醜い陰茎を丸出しにして扱き始める……
あまりのおぞましさにフィズは後ずさりしそうになりその場を踏み直す。
「っ?!………これって……?!」
「ああ、気にしないで♪…媚薬ガスが効いてる演出よ…
それくらいしないと立体映像ってバレちゃうって思ったんでしょうねw」
もうバレてるのにね、やれやれ…というような仕草付きでヴァイオレットは返すが…
(まさか……こっちのセンサーが…騙されてる?!)
フィズは最悪の事態を想定する。有り得ない話ではない。
相手はピーチを足止め可能……同等以上の技術があると推測出来る。
それなら警備をかい潜ることも可能かも知れない。
…ヴァイオレットがあっさり立体映像と認める事すら怪しく思えてしまう。
(……それに……媚薬ガスって!!)
どんな毒ガスかは聞いてない、もし媚薬なら…ピーチは言わないだろう。
フィズ=志由は性に関しては必要以上に臆病、苦手なのだから…
あらゆる事実が最悪の事態を否定できない。
(けど……ここで…もたつくわけには……っ!)
フィズは光学迷彩を発動させるが…
「あ!あ!…フィズたんが消えてく!」「そんなぁ!」
「落ち着け!…これがあれば……」
そう言って妙なリモコンのような物体を向けられる。
「やった!…見えるよ!」「ぼ、僕もだ!w」
「…姿を消そうとするってことはさ……」「マジに脱ぐのか!」
「ひょっとしたら…フィズもエロい気分になってんじゃね?w」
(…………っ?!?!)
絶句するしかないフィズ…実際、もし媚薬を吸ってしまえば……
酸素キャンディが無くなったら…
しかし…この状況で服を脱ぐ…フィズ=志由には耐え難い恥辱……
葛藤の渦中でいたずらに時間を浪費し…焦りは募るばかり………
一方その頃………
ピーチも窮地に立たされていた。
正確に言えばピーチ自身には危険はない。この状態を保つことは容易……だが。
明らかに格下のAIに動きを封じられている事実がピーチを戦慄させるのだ。
敵AIの半分ほどは既に制圧している。美術館の機能の大半は制御できる。
故にフィズの置かれている状況、罠に苦しむ様子も把握は出来る。
その先に待つ…さらなる危機も……
それなのに肝心の映像通信制御が奪えない。
早急にこの事態をフィズに伝えなければならないのにだ。
(だからこそ……早くコイツを片付けなくちゃ!)
そう思って仕掛ける度にカウンターを喰らうのだ。
直に有線で敵と接触している為に見紛うことはない。
超テクノロジーとはいえピーチとは比較にならない性能の低さ。
にも関わらず逆襲されるのは…
ピーチの思考が完全にエミュレートされ予め備えられている為としか考えられない。
いかに低性能でも「こう来るから」と事前に誰かに教えられていれば対処できる。
さらに言えばその『誰か』は巧妙に的確に罠を張っている。
…そんな感じだ。
電脳空間のイメージで表現するなら……
ピーチは四肢を大の字に縛られている状態まで追い込まれてしまった。
そのかわり、ピーチの美しい肢体は特注の全身鎧で隙間なく覆われている。
敵からの攻撃も一切、微塵も受け付けない。
そんな状態だ。ピーチから何もしなければ、このまま耐えきることは可能…
「フィズが敵本体に物理接触すれば勝ち」は変わってない。
だが。その可能性は…もはや無いに等しい。
敵の戦略の全ては把握した。
敵AIが低性能なことを筆頭に技術的には本当に様子見…
現代レベルに毛の生えた程度、
使用されていた媚薬ガスすら一般の裏社会でも珍しい物ではないことも判明。
罠も単純極まりない。しかしフィズの心理的弱さを巧妙に突く。
そうやって戦力を削いだ上で待ち受ける脅威の存在……現実に人間…男が居る事実。
ピーチは思う。
…あたかもこの美術館自体が巨大な檻……
フィズは既に捕われの身、
その監獄の中でさらにねずみ捕りに向かっているようなもの…
…ねずみ捕りにはちっぽけなチーズしかないのに。
その罠で待ち受ける汚らわしい男…可愛らしいフィズを凌辱するに決まっている。
(私が…何とかコイツを攻略しなきゃ……っ
もう………なりふりかまってられないっ!)
ピーチは…戦略上、絶対に有り得ない策を取る。
自分の纏っている攻性防壁…鋼の鎧を放棄する…
完全に無防備、格下にすら接触されれば制圧される危険がある。
まさに自殺行為…そんな状態を自ら選ぼうというのだ。
(そのかわり…この戒めを解ける!
…殺るか殺られるかになっちゃうけど…負けない!……一刻も早く…倒す!)
普通なら殺るか殺られるかではない。確実に殺される。
自由に動けるようになっても触れられるだけで死ぬ『鬼ごっこ』…
それを逃げ切る技…
(まだ未完成だけど…試すしかない!)
ピーチ自身ですら情報を持たない、知らないこの技を敵が備えることは不可能…
未完成ゆえの危険は伴うがリスクを承知で勝負を賭ける。
全身の輝く装甲をパージ…次の瞬間には捕捉されないように高速移動する!
………はずだった。
(っ?!………な……そんなぁ……っ!)
確かに鎧を脱ぎ捨てた。それは間違いない。…なのに装甲は未だ健在だった。
(脱いだ瞬間…『着せられた』っ!?………ありえない!)
敵の性能からすればこの鎧を精製するだけで機能の大半は失われる。
それで自分を守らずに敵であるピーチに着せるなど…
そもそも防壁を解くことを予測など出来るはずがない。
だが現実に超高速制圧は発動させられなかった。
まるで敵に操られているような気分にすらなる。結局ふりだし……
(変わらずの膠着…こうまでして足止めしたいなんて……………あ?!……違う!)
着せられた鎧は簡単には脱げない……だが着せた敵は自由に脱がせる。
手足の鎧はそのままで…胸の部分だけを消去された。
サイズは標準だが…実に整った美乳があらわになる。
現実とは違い鎧の下は一切アンダーウェアを着けていない。
ピンク色の突起まで晒け出してしまっている。
その尖端を舌だけ具現化した敵が舐め撫でる。
…もちろんこれは飽くまで電脳戦のイメージだが。
敵は舌しか存在させられないレベルの低機能だという証明でもあるのだが。
ピーチ自身が完全制圧寸前の窮地に立たされていることを示してもいる。
(だ……だめぇ………っ
乳首……制圧されちゃうぅ………ぁ………っ)
たやすく制圧され隆起したピーチの乳首は…
機能の低い敵の幼稚な愛撫にすら反応してしまう。
単調に機械的に先端を舐める動きすら達人のそれと同等なのだ。
「んく!……そんなにされたら……はぁ、……か、感じちゃ……うぅ……っ」
複数の舌だけの存在が少女を舐め回す…異様な光景。
だが、せつない喘ぎがその色を淫らにする。
敵に制圧されているとはいえ、ピーチ自身の乳首だ。その感度は極めて高い。
そこから発される性感信号も絶大…こうなってはピーチの高性能が逆に災いする。
乳首だけを執拗に責められるのも刺激が集中して辛い。
そしてようやくその行為に…わずかながら慣れ耐えられるようになってから…
「ふぁ!ダメ!……揉まないで!…強く舐めたら…胸が……ひぁ!」
チロチロと舐め転がすだけだった舌が球状の膨らみを潰すように歪ませる。
舌が戻ると反動で弾み揺れる乳房全体が制圧されてしまった。
「や、やはぁう!…ちくびのキモチいのが…増幅されちゃ……あう!……んはぁ!」
胸全体が乳首の繊細な感度をもっているようだ。乳首自体は本来以上に反応する。
舌だけゆえに乳首を巻くような動きも可能…そのまま回転して刺激も渦巻く。
壮絶なピンチ…快感信号はピーチ中枢に直通している。
敵からの攻撃ではない。自らのセンサーが純粋な反応を送信してくるだけ…
遮断は出来ない。すれば機能の一部を敵に与えることになる。
さらに責めが強化されてしまう。しかし……
(このまま…イかされたら……わたし………だめ!……ダメぇ!)
CPU周辺がどんどん過熱していく。熱暴走…そしてフリーズの危機。
この状況でのそれは完全制圧されることを意味する。
そうなれば……
(志由……っ!……志由まで………犯されちゃう!……ダメえ!……志由だけは!)
必死の抵抗……だが…性刺激受信は何故か逆に強まる………
それを見切ったかのように敵は新たな戦場を用意する。
「あ!…いやっ!……ソコはぁ………っ!!」
ピーチの股間を護るアーマーも…外されてしまった………
「やあ……やあ……みないでぇ………っ」
言いつつ身をよじらせるピーチだが…四肢の鎧はそのまま、
大の字に固定され捻れる範囲も狭い。…当然、局部を隠せるはずもない。
(ちくび…胸だけで……こんな…キモチいいのに………
…まんこ……クリまで…制圧…されちゃったら………っ!………っっ!!)
垂れるほどに愛液の溢れるピーチの無毛の局部に
無慈悲に舌のイメージが接近していく………
……
…
フィズがその場に立ち尽くし5分が経過した。
時間が制限されているフィズ本人にはとてつもなく貴重な時間が…
体感時間ではあっという間だが逆に実時間を凄まじく浪費してしまった気がする。
これ以上のロスは致命的……
(コイツらは…立体映像……だから…………恥ずかしくなんか…ない!)
そう自分に言い聞かせる、それを証明する為に…
フィズはスカートの裾をペチコートごと摘み、
…恐る恐る、震えながら持ち上げる。
「「うひょ!うおおっ!」」
瞬時に沸き上がる男どもの奇声。
スカートの中身を見るべく全員が姿勢を低くして中央へ寄りカメラを向ける。
「マジか!「今まで誰もみたことないフィズたんのパンツが…
「待てよ、脱ぐのとスカートめくるのと関係なくね?
「だからよ、脱ぎたいんじゃなくて見せたいんだよw
「ちょw…マジ淫乱露出症モードっすかwww
「白だ!…パンツは白っ!」
男どもの色欲に満ちた嘲りに耐えてきたフィズだが…
下着の色を叫ばれて溜まらずスカートを押さえる。
もちろん下着を見せるためにめくったわけではない。
立体映像なら…こちらの動きに合わせて映像を作っておく必要がある。
予想外の行動を取ればリアクションは出来ない…
…故に脱ぐ動作とは関係ない素振りをしてみせたのだ。
(こんな反応……直接みてなきゃ……できないよぅ………っ
でも………でも…………脱がなきゃ…………っ
………ぱんつ………自分から………みせちゃったぁ………………)
フィズは完全に混乱してしまった。
…立体映像だろうが否であろうが脱がなくてはならない。
試す行為自体が時間の無駄だったと思ってしまう。
だが…立体映像だろうが否であろうが…飛び抜けて恥ずかしいのだ。
再び立ち尽くしてしまうフィズだが…今度はさらに悪い。
下着を見れた男も角度が悪く見えなかった男も…激しい叱咤を口にする。
「どうした!…早く脱げや!」
「フィズたん…パンツもう一回見せて!」
「恥ずかしくてみせられないのさw…もうグチョグチョに濡れてるからww」
「………マジで……そうかも知れない………フィズと…セクロスできる……?」
ゴクリと唾を飲む男ども……
何人かは露出させた肉棒を扱いていたが…その動きを止める。
もしかしたらフィズに挿入できる…そう思えば無駄弾は撃ちたくないのだろう。
ビクリと全身を痙攣させたのはフィズだ。
(このまま……時間切れで…ガスを吸っちゃったら………っ?!)
見も知らぬ、それも複数の、醜い男に……強姦されてしまう。
いや。…自分がどれほどに乱れてしまうか…………
…自ら肉棒を求め複数の男と淫らに性交する姿を…フィズは想像してしまった。
(そんなの……絶っ…対………っ!!!)
それまでの躊躇が嘘のように息せき切って脱ぎ始める。
リュックを降ろし、コルセットを外し…
ドレスに手をかけると流石に一瞬戸惑うが…
裾から一気に捲くり上げて脱ぎ捨てた。
その他の装飾品も外し…残るは。
ペチコート付きのキャミソールと手袋、ブーツ……後は下着とバイザーだけ。
…手袋とブーツは脱いでしまうと本来の身長がバレてしまう。
キャミソールを脱げば下着姿まで晒してしまう。
下着やバイザーは言わずもがな…
…どれもこれ以上脱ぐのは抵抗がある。
今まで脱いだぶんで必要な重さを満たしていることを祈りながら…
フィズは仕掛けの床から一歩踏み出し少しづつ重心を移動させる。
(…お願い……っ………止まって…………っ!!)
乙女の思いも空しく床は元の高さを取り戻しそうになる。
フィズは1mmにも満たないわずかな差異を感知して足を戻す。
(………そんな!………そんなぁ…………ぅ……ぅ………)
バイザーの奥の瞳に涙が浮かぶ。
二の腕まである手袋、太股までカバーするブーツ、
この二つは腕力と脚力を増幅する働きもある。
これを外しては本来の非力な少女に戻ってしまう。
万一に襲われた場合の武器が減るのだ。
かと言ってキャミソールを脱げば…肌の露出が大きくなる。
どちらも選び難い、正に苦渋の選択……
(それに…脱いでも…重さが足りなかったら……っ)
ゾッとする。慌ててバイザーの視線入力を用いて計算してみる。
(…ギリギリ…届く………けど………っ!………くぅ………)
ホっとすることさえ出来ない。踏んだ時点の重さを確保する為には…
バイザーを除く全ての衣装を外さなくてはならないのだ。
キャミやブーツだけでなく下着、ウィッグまで外さなければ………
さらに酷な結果…床の高低差と戻る時間から計算して
かなりシビアに重さを再現する必要があることが判明した。
クォーキングジェルを使用していたら本当に重さが足りなくなっていた……
(……ま、まさか……最初から…裸に…ならなきゃいけないように………っ……っ!
…仕組まれてた……?
男どもが映像なのもソイツらを倒してスイッチに乗せられないように……?)
「……ぃや………いやぁあああぁっ!」
フィズの羞恥心が急激に膨らみ破裂した。
キャミ姿だけでも限界なのだ……胸を両手で隠しその場にへたれ込む。
(もぅ…ダメだょ………助けて………ピーチ………っ)
瞳に貯まる涙が許容量を越え流れてしまう。
泣くまいと目を閉じると…さらに溢れてしまい…鳴咽さえ止められなくなる……
小さくヒックヒックと揺れるフィズの姿にも男たちは容赦ない。
言葉こそ発しないが…いやらしい視線でフィズを嬲る。
その妄想の中では既に真っ裸…いや、犯されているかも知れない。
(これ以上……恥ずかしいとこ………みられたくないよぉ………っ)
凍りつくフィズを時間が追い詰める。口の中でキャンディが味を変えたのだ。
(あと…15分………っ
このまま…間に合わなかったら………っ)
媚薬などという未知の毒…どうなってしまうのか予測できない。
いや、想像したくない。
床にしゃがんだ姿勢のまま…キャミソールの肩紐をずらしていく。
右………左………震える手で虫の這うような遅さだったが
フィズの肩にはブラの肩紐しか残っていない。
あまりにも焦れったい、だが少しづつ露出していくフィズ…
男どもがそれぞれ何か言っているが…その耳には雑音にしか聞こえない。
思考が羞恥のあまり言語を解さないのだ。
だが…次の瞬間には認識させられてしまう。
怖ず怖ずとキャミをずらしていき…その胸の双丘を晒した瞬間だ。
「あれ?…思ったより…ちっちゃいなww」
「着痩せするタイプなんじゃね?……」
「大丈夫、いっぱい揉んで大きくしてやるよw」
荒い吐息混じりの男ども…何人かは止めていた肉棒を擦る作業を再開している。
フィズ…いや、志由にとって最大のコンプレックスである……
胸の大きさを視認されているのだ。
ドレスを脱いでもキャミのフリルとリボンで誤魔化せていた膨らみ……
それも、まだブラのパッドとヌーブラに助けられている大きさ……
白いブラのデザインとフリルにも助けられている。
「っ!!…………ゃ………ぁ…………」
小さく恥じらいを漏らすがキャミを脱衣する動作は止めない。
本当は今すぐにも両手で胸を覆いたい。いや、服を着直して即座に逃げたい。
(でも………ここで…逃げたら……)
自分の為に死傷者が出るかも知れない。
規模すら予測不能な大惨事になる可能性もあるのだ。
しかしこのまま留まって酸素が尽きれば…媚毒の餌食……
そうなれば肌を晒すどころではない。
加えてもっと大勢に…外の観客にまで見られてしまう可能性すら孕んでいる。
それも淫らに乱れる姿を………
ペタンと床に付けていたお尻をわずかに浮かせる。
先程めくった時は前からだが…今度は上からキャミを脱ぎ後ろからショーツを見せていく。
「おい、尻こっち向けろよ!」
「ブラ同様フリルいっぱいの…ぱんつ………ハァハァ」
「ちょっとお子様ぽいけどなw」
「だがそれがいいw」
口々に評価する男たちの歓声を浴びながらキャミは膝まで辿り着いた。
それでも立ち上がらず床とブーツの間を少し浮かせたり無理に引っ張り…
キャミソールを脱ぎ終える。間髪を入れず手袋を脱ぎ放つ。
これは迅速に取り去る…そしてブーツ……
せめて逃走用にブーツは履いておきたかったのだが…今の装備で1番重い物。
脱がないわけにはいかないだろう。
太股の中ほどまであるブーツを脱ぐには膝を立てなくてはならなかった。
右、左と交互に膝を立てる度に白いショーツの股間部分が三角に見える。
再び男たちの視姦モードにフィズは射抜かれつつ
ブーツと同じ丈のオーバーニーと…最後にウィッグを外して置いた。
(神様……お願い…します………これで……通らせて………っ!!)
今度こそ本当に神に祈りつつ…四つん這いで歩みを進める。
ブーツを脱いだ今、立てば志由本来の身長を知らしめてしまうからだが…
…その四つん這いのまま……フィズは止まった。
ぽろぽろと涙がバイザーに当たり流れて水滴となって床を濡らす。
…重量は…足りなかった。
男たちはフィズが軽くしないと進めない状況だと理解したようだ。
「ほらほらw…ブラもパンティも取らないとww」
「もっと泣けば涙の分だけ軽くなるかもなw」
「いやいや、小便漏らせば軽くなるぜ?」
「いっそ……うんちも…出して…スカトロ……フィズたんの排泄……ハァハァ」
極度の羞恥からフィズ…志由は男たちの言葉に事々く反応してしまう。
(ホントに…たくさん泣けば進める?
…!……おしっこ…したら……おしっこの重さで…………
…そんなこと!……出来るわけっ…………っ!!)
いつの間にか全裸をも越える羞恥を要求されている事実。
…男どもの妄想の中では既にさせられているのかも知れない。
屈辱、敗北感……フィズの心を蝕んでいく絶望………
(ブラも……ぱんつも……バイザーも………絶対…取れない………)
志由は…装備のほとんどを外した今…天下の怪盗『Fizz』とは自分では思えない。
ただの少女である志由はピーチの助けを待つことしか出来ない…
再び服を着る気力も…手で隠す気力すらなく
四つん這いから膝を付いたまま上体だけで天を仰ぐ。
虚ろな瞳で…両手をだらりと下げひざまづく美少女…
男たちには、まるでおねだりしているように見えたのだろう。
「お、俺もうダメだ!」「俺も出ちまう!」…
二人の男が射精…精液をフィズ目掛けて飛ばしてくる。
距離があるため届かなかったが…男たちの妄想の中では犯された証明……
(もっと近くで…いっぱい射精してくれたら……
せーえきの重さで…進めるかなぁ………)
志由は想像してしまう。男たちの前で性欲を促すポーズを取る自分を。
大量の白濁を浴びせられる自分を。
アイドルとはいえ水着姿すら見せたことのない志由が…
雨のように男の欲望を全身に……
(どうせ立体映像か……射精してもらっても…重くならな…………っ?!
待って!…雨のように?………ひょっとしたら!)
…ドラマの撮影で豪雨に打たれたこともある志由だからこそ。
この状況に一筋の光明を見出だすことが出来た。
その閃きを即座に実行する。
瞳は標的を探す…バイザーにターゲットサイトが表示される…
指を二本立てた左手を額に当ててポーズをつけ……
気合いを込めて技名を叫ぶ。
「…フィーズっ…ノヴァっ!!」
フィズのバイザーの右耳部分から発射される…レーザー!
電力消費が激しいため実戦では使ったことのない機能…
床や壁を破壊すれば罠が作動してしまう可能性があったため
現状では無用な機能と思っていたが……
向けられた先は天井、それも破壊するほどではない一瞬。
しかし。それは充分な効果を発揮した。
…
降り注ぐ救いの雨………
その霧の中、フィズの笑顔が周囲の水滴まで輝かせる。
バイザー周辺はエアバリアで水が弾かれるせいでもあるが…
そんな理由などなくとも眩しく思えただろう。
…
フィズが狙ったのは感熱装置…火災報知器だ。
スプリンクラーが作動、その水は脱ぎ置かれたフィズの衣服に染み渡る。
下着分の重さは確実に満たした。
「あちゃあ……残念……ここまでかぁ……
こんな事態は想定してなかったわ…」
先程まで沈黙していたヴァイオレットの映像が喋りだす。
具体的にどんな「事態」か語らないあたり本当に想定外だったと思えた。
そして男どもの姿もスプリンクラーの雨に乱されている。
やはり立体映像…それだけではない。全く動きを止めている…
水に濡れたフィズに対してリアクションを取れないのだ。
男たちの反応は全て造られたものだった。
半裸の恥ずかしい姿は誰にも見られてない。そう思える。
少なくとも可能性はある。
そう、敵はスプリンクラーの制御が出来ない。
それは…ピーチもまだ頑張っている何よりの証明……
ピーチが制圧されてないなら…
この中での出来事、映像が外部に出ることはない。
フィズは絶望の土俵際からギリギリ体勢を整えられた……
(でも………まだ勝ったわけじゃ…ないっ!)
床の罠自体は生きているであらうから服を着直すことは出来ないが…
時間は10分も残されていない。
……フィズは歩みを進める。勝利を信じて…………。
スプリンクラーの影響か…ヴァイオレットの映像、音声も乱れ始めている。
故に無視して進んだのだが…
……もし。正常に表示、発声されていたらフィズは聞いていたかも知れない。
「最後の…部屋には………最強…の……………
………彼の名前は…………
……ソル………ドッ…………
よろしく……伝えておい…………
ザーー…………………
…あるいは。
ピーチが人間…生物であったなら…
不可思議な力でテレパシーを送っていたかも知れない。
それほどに強く思っていた。
「フィズ……ううん!…志由! ……逃げて………っ!
…絶対……勝て…ない………っ………」
自らも絶対絶命の危機にありながら…ピーチは志由だけを案じていた……
キタコレ!凄いGJ!
なんか華麗なバトルってのがしっくりくる話だな
こちとら怪盗って言葉があるとヒラヒラと美少女が舞うイメージが植え付けられてるからな
続きも期待させてもらうぜ
おおっ、新しいのが来てる!
……俺も、今書き進めてる怪盗物連載があるんですが、書き上がり次第順に投下してもいいですか?
……ただ、初代含めた全SSの中で1番恋愛に比重を置いている+そもそも最終話近辺にならないと拘束されない
そして拘束も「忍び込んだ先で敵に捕まって拘束」じゃないとかいう代物ですがw
>>34 キター! 待ってたぜGJ!
>>47 勿論かまわないぜ、職人が増えるのはいいことだ。
捕まって、とはあるがまあ実際のところそこまでの過程も大事だしね
GJ!
こういう怪盗ならではのトラップバトルはいいね。
正に面白エロくて大変興奮しますた!
しかし実年齢18で12のふりって…実生活でも小〇生とかどういう人生送ってるんだw
続きを楽しみに待ってます。
そういえば前スレにいた、ここのスレの保管庫を作ると言っていた偉大な方はどうなされたのだろうか。
やはり忙しいのかな?
保管庫だけに中身を盗まれたとみた
>>51はとんでもないものを盗んで逝きました!
このスレの笑いです
こっそりと外枠は出来ました。
というより以前書いた通り別スレの保管庫のパクリです(中の人のOKはもらってます
ちょこちょことSSを補完しつつ体裁を整えてますが
お目汚しな状態でもよければ今の内から公開します。
私事ですが12月は出勤31日、1月は今の所10日出勤ですw
というか現在仕事ちゅ…
禁断の毎日出社…。なんだそこ?奴隷牧場かなんかか?
人の心が感じられない事をする会社は必ず無茶をまた繰り返す
今のうちからその点を退社も視野に入れて上司とかと話し合った方が良いよ。
簡単に仕事辞めれないとか思うが、その所行に耐えれるようなヤツはどこでも重宝されて欲しがって貰えるから。
まあそれはともかくそんな中での投下準備お疲れ様です!頑張って!
55 :
AM:2008/01/10(木) 08:22:38 ID:TamkmP8N
PTフィズの更新キタコレ。
あまりの趣味との一致に俺ウハウハですよ!
続きも楽しみにしてます。
>>53 うわ、毎日出社とかなんという労働基準法違反www
とにもかくにも健康にはお気をつけて。
といわけで第六話投下します。
「ぶげらぁっ!?」
「ウィッチィに何をしてるんだよっ!」
小柄な少女の怒声と共に放たれたドロップキックをまともにくらい、男は吹き飛ばされる。
それでも手に握ったウィッチィのパンティを手放さないところは見上げた根性だろうか。
だが、男にできたのはそこまでだった。
いたいけな少女に不埒な真似をしようとした代償として顔面が陥没するほどの蹴りを受けた彼は
幾人かを道ずれにあっさりと気絶してしまう。
「ウィッチィ、大丈夫!?」
「は、はい。助かりました…ありがとう」
「これで全員合流できたな。後はここを突破するだけだ」
ラビットがウィッチィを助け起こそうとする隙を続けて現れたブレイドが守る。
一度はバラバラにされたトライアングルムーンたちだったが、これで全員が集合できた。
だが、不利な状況は依然としてかわりがない。
三人の少女を取り囲むように円を作った男たちは彼女たちを拘束するべく飛び掛る機会を窺っているのだ。
ウィッチィとしては脱出は勿論、下着も取り返したいところだが、既に犯人の男は人波の中に隠れてしまっている。
スカートは膝まであるのでそう簡単には中身は露出しないだろうが…
普段あるものがないという状態は酷く落ち着かなかった。
(いけない。こんな時に何を考えているの私…っ)
ぶんぶんと首を振る金髪の少女。
絶体絶命の危機という瀬戸際に羞恥心などもってのほかである。
だが、ウブな少女は一度意識してしまった自分の状態を思考から消すことができなかった。
無意識に足が内側に寄り、僅かながらもかがみこむように内股になってしまう。
「オラァァ!」
と、膠着状態に痺れを切らしたのかウィッチィの前にいた一人の男が動いた。
続いてブレイドとラビットの方にも一人ずつ男たちが飛び掛る。
だが、連携も作戦もあったものではない無秩序なその突撃は怪盗少女たちには何の意味も成さない。
ブレイドの剣、ラビットのハイキック、ウィッチィの鞭の連打。
男たちは瞬時に床を舐めることになった。
「ふん、いくら数がいようとも所詮は烏合の衆」
「ボクたちの敵じゃあないねっ」
「さあ、道を開けてください」
男たちを瞬殺した少女たちの凄みによって包囲に動揺が走る。
手柄はほしい、だが自分の身は可愛い。
その迷いが男たちの一歩を躊躇わせる。
「ウィッチィ。ブレイドの前方に窓があるのは見える?」
「え? は、はい、見えます。まさかあそこから脱出を?」
「その通り。ちょっと高い位置にあるけど逃げるならあそこからしかない」
「ですが、私の跳躍力では…」
「大丈夫、ボクが踏み台になるから」
「となると順番はウィッチィ、ラビット、そして私だな」
「幸い奴らは今動揺している。つけ込むなら今しかないよ」
「わかりました。行きましょう」
小声の雑談を終えた三人は意を決したように頷きあう。
包囲陣の男たちも気配が変わったことに気がついたのか、いぶかしげに様子を窺っている。
一瞬の静寂の間、それを女剣士は見逃さなかった。
「行くぞ! はあっ!」
ブレイドは大きく足をたわませるとまるで猛獣が獲物に襲い掛かるかのように床を蹴った。
まさか向こうから動くとは思っていなかったのか、完全に不意を突かれた形になる包囲の面々。
しかしその隙をブレイドが逃すはずもなく、繰り出された突きが包囲の一角を文字通り突き崩す。
「行こう!」
「はい!」
ラビットとウィッチィがその後ろに張り付くように駆け出す。
この時点でようやく状況を飲み込めた男たちが少女たちを再度包囲するべく動き出すが既に手遅れだった。
女剣士の突破を妨げることもできず、無様に怪盗たちの後を追うばかり。
「はっ…はっ…はっ…!」
窓までの距離は百メートルもない。
だがここまで四面楚歌の中で戦ってきたトライアングルムーンたちの脚色は明らかに鈍っていた。
とりわけ、一番後ろを走っているウィッチィは疲労が濃い。
見る見るうちに後ろからの追撃者たちが追いついてくる。
「まずい、追いつかれる! ウィッチィ、頑張って!」
「はぁっ…はい……っ!?」
ラビットの励ましも虚しく、ついに男たちの足はウィッチィを捉えた。
少女を取り押さえるべく複数の手が伸びる。
「い、いやっ……」
このままでは再び床に押し倒され、辱められてしまう。
ウィッチィの脳裏で、先程の陵辱が蘇った。
懸命に駆けるもののスピードは上がらない。
ラビットとブレイドは前を走っているため急に体勢を反転させる事は無理。
もはやこれまでか――
そう絶望しかけた瞬間、思わぬ事態が発生した。
多人数が密集して走っていた弊害か、男たちの後尾勢が足を絡ませてドミノ倒しが起こってしまったのである。
「つかまえ……たぁああっ!?」
獲物の肩に手をかけた。
そう確信した刹那、後ろからの圧力によって先頭の男が前のめりに倒れこんでいく。
それでもなんとかウィッチィを捕らえようと手は伸びる。
だが、虚しくも指はスカートの裾を掠めるのが精一杯。
後はもうむさ苦しい仲間たちに圧し掛かられるだけだった。
「あははっ、ラッキー! よし、ウィッチィ…ボクの背中をっ!」
「はいっ…」
息を切らしながら金髪の少女はぐっと足を踏み込む。
とんっ
軽く床を蹴り、跳躍。
更に前方にいる軽くしゃがみこんだラビットの肩を踏み、二段ジャンプでウィッチィは宙を駆ける。
(…これなら、届く!)
十分な助走とジャンプ台のおかげでウィッチィの身体は窓へと向かって一直線に進んでいく。
しかしその瞬間、男たちの歓声が少女の耳に突き刺さった。
「おおっ、ウィッチィのスカートが!」
「中が見えるぞ!」
「えっ!?」
振り向いた先に見える男たちの視線はウィッチィの下半身へと注がれていた。
跳躍によってスカートがひるがえり、きわどい部分まで持ち上がってしまっていたのである。
スカートにすっぽり覆われていたはずの膝から上はロングソックスを越え、既に素肌を露出させてしまっている。
下から見上げる形になっている男たちから見れば、今のウィッチィはおしりを突き出すような体勢だ。
ぐんぐんと少女の身体が上昇するにつれてスカートの中の露出が大きくなっていく。
ぷりっと丸みを帯びたヒップが今にもヒラヒラの布地の中からこぼれ出そうな按配だ。
「だ、ダメですっ!」
ウィッチィは咄嗟に身体を丸めると右手で股間を押さえる。
その動作の代償として完全にスカートがめくれ返ってしまうが、間一髪手のほうが早い。
惜しいっ!
それがウィッチィを凝視していた男たちの心の叫びだった。
スカートがめくれあがっていたため、綺麗な半球形を描いているヒップは見えたが肝心の部分は手に隠されて見えない。
とはいえ、それでもウィッチィからすれば恥ずかしいことには変わりはなかった。
ぽつりと
「えっち…」
と呟くとその身を窓ガラスにぶつけ、粉々になった破片と共に夜空へと身を投げ出した。
そして、続け様に踏み台になっていたラビットが動き出す。
こちらは華麗にバク転から軽やかに床を踏み込むと伸身ムーンサルトで宙を舞う。
勿論、そんな大げさな動作をすれば短いスカートがひるがえるのだが、露出するのはスパッツなので問題はない。
体操選手もかくやというムーブメントに思わず目を奪われてしまう男たち。
「じゃあねっ」
パチリ、とウインク一つを置き土産にラビットも壊れた窓から身を投げ出した。
ここは十階にあたるため、飛び降りたらただで済むはずもない。
しかし少女たちに躊躇の色はなかった。
つまり、何らかの落下手段を確保しているのは間違いないわけで。
「い、いかん、逃がすな!」
包囲の半分が慌てて部屋を出て行く。
しかし十階から地上までたどり着くには時間がかかる。
手遅れなのは明白であり、ウィッチィとラビットの二人を取り逃がすことになるのはもはや確定的だった。
「くっ、せめてコイツだけは…」
最後に残ったブレイドへ殺気を向ける面々。
ここまで有利な状況を演出されておきながら全員取り逃がすなどあってはならない。
だが既にブレイドは壁際まで移動している。
ジャンプした瞬間を狙えばあるいはどうにかなるかもしれないが、飛び掛るには距離が足りない。
近づこうにも女剣士の発している剣気に気圧されてしまう。
「ふん、こないのか? ならば私も脱出させてもらおう」
一人の女に気圧されている男たちに侮蔑の視線を向ける女剣士。
ぐ、と足が強く床を踏み込む動作に男たちがハッとしたように動き出すがもう遅い。
彼らにできるのは、怪盗の飛翔の瞬間を見守ることだけだった。
(…よかった。下に人はいないみたい)
ジャケットの背中に仕込んでいた小型パラシュートに揺られつつ、ウィッチィはほっと息をつく。
夜中とはいえ、下から見上げられたらスカートの中身が見えてしまうかもしれない。
懐中電灯やライトで照らされた日には乙女の秘密が丸見えだ。
空圧で持ち上がりそうになるスカートを両手で押さえながら金髪の少女はふわりと地面へと着地する。
「よっ…と」
送れて数秒、ラビットも同様に着陸。
待ち伏せがいるかもしれないと念のため周囲を警戒してみるが、やはり人の気配はない。
罠に自信があったのか、あの部屋にいた人員が全兵力のようだ。
「いやー、結構危なかったね」
「はい、間一髪でした」
「けどウィッチィ。怪盗が物を盗まれたらダメなんじゃない?」
「え? あ……ど、どこを見てるんですか!?」
スカートに注がれる視線にウィッチィは思わず頬を染める。
いくら同性とはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしい。
しかもそこは今ノーパンなのだ。
だからこそラビットは揶揄してきたのではあるが。
「次にくる時は、下着も取り返さなきゃね?」
「も、もう。言わないでください。本当に恥ずかしいんですし、怖かったんですから…」
「あはは、ゴメンゴメン。けど、ブレイドどうしたんだろ? 随分遅いけど」
ラビットが上を見上げるのにつられるようにウィッチィも視線を上に向ける。
月明かりに照らされた夜空に仲間の姿はない。
何か不測の事態でも起きたのだろうか?
不安が二人の心を包み込み始める。
「どうする? ここで待つか、一旦撤退するか。それとももう一度踏み込む?」
「もう少しだけ待ってみましょう」
「そうだね。あのブレイドがそう簡単にやられるとは思えないけど…」
しかし待てども待てども女剣士の姿は現れなかった。
そうこうするうちに大勢の足音が近づいてくる。
「…仕方ありません。撤退しましょう」
「…うん、残念だけどもう一度踏み込むには準備か足りないしね。それに、ブレイドならきっと大丈夫!」
不安をかき消すようにラビットが笑う。
ウィッチィは一度窓の部分を振り向き、仲間の身を案じながら駆け出すのだった。
キィンッ!
金属が金属を弾く甲高い音が鳴り響く。
ブレイドは手に持った剣で弾き飛ばしたものを一瞥する。
それは曲線を描いた刀、円月刀だった。
「…誰だ」
女剣士は油断なく前方を見据える。
跳躍の瞬間、自分に向かって飛来してきた円月刀によって脱出は邪魔されてしまった。
今現在追撃が来る様子はないが、だからといって跳躍中に先程の攻撃が来れば防ぐのは困難だ。
だからこそ、相手を見極める必要があった。
小さなどよめきと共に包囲が真っ二つに割れる。
その間から一人の男が姿を現した。
「なんだなんだぁ? 一人しか残ってねえじゃねえか! お前ら、何してたんだよ?」
「も、申し訳ございません!」
「ったく……まあ、一人でも残っていたのは僥倖か。なあ、トライアングルムーンよぉ?」
「貴様、何者だ」
「おっと、これは失敬。俺の名はジャック。一応こいつらの上司さ」
ニヤニヤと薄笑いを浮かべながら歩み寄ってくる男にブレイドは眉をひそめる。
もっとも嫌いなタイプの男だ。
しかし先程の投擲の正確さから考えても腕が立つのは間違いない。
後ろを見せるのは論外、となるとこの男を倒す他脱出の道はない。
そう考えた女剣士は正眼の構えをとり、キッとジャックを睨みつけた。
「おお、怖い怖い。けどそんなんじゃあ折角の美人が台無しだぜ?」
「戯言を。女だからといって油断をすると痛い目にあうぞ」
「いいねいいねぇ! その済ました顔を真っ赤な泣き顔に染め上げるのが今から楽しみだ!」
ジャックはカラカラと笑いを上げると両手に一本ずつの円月刀を取り出した。
剣気がぶつかる。
瞬間、ブレイドは察した。
目の前の男は物を、人を斬り慣れている。
「…外道が」
「ひっひっひ! さて、いくぜぇ! 安心しなよ、他の奴には手を出させない、一対一の決闘ってやつさ!」
「参る!」
もはやブレイド、いや、カグヤの目にはジャックしか入っていなかった。
剣士としての憤りと誇りがただ目の前の男を倒せと叫んでいる。
カグヤは心の声の赴くがまま、剣を振り上げた。
62 :
AM:2008/01/10(木) 08:38:52 ID:TamkmP8N
なんか最初の一行を開けようとしたら書き込みが反映されなかった。
新たな規制かなにかだろうか。
お、朝っぱらから来てたw
GJ!
ではこちらも投下します。
恋するキャットシーフ 第1話
「……くそっ! 奴は何処だ!」
「け、警部! 上です!」
そう配下の刑事に言われ、大山 司警部が上を見上げると、バルコニーに人影が映る。
小柄なその身体はぴっちりとしたボディースーツに覆われて、その体格とは不釣合いな程熟れた身体を存分に浮き立たせている。
「……名玉『虹の雫』、確かにいただいたよ♪」
そう言って左手に握った宝石を突き出すその人影。
その声色は、どう考えても中学生か高校生ぐらいの少女が持つもので。
「悔しかったら取り返してみろー♪」
そうおちょくるように言って来る少女に、大山は青筋を立て、
「……いいだろう! 怪盗『レインボーキャット』! そこを動くなあっ!」
そう言って、大山は警官隊を連れて階段に突進し、
「うん、じゃあ動かないね。……こっちまで来れないと思うけど♪」
……そうレインボーキャットが言うと同時に、警官隊が駆け上がる途中だった階段が崩れ落ちた。
「だあああっ!」
そう悲鳴を上げて落下した大山を見下ろしながら、レインボーキャットはくすくす笑う。
「じゃあね、ゴリラのおじさん! また遊んでねー♪」
そう言って楽しそうに走り去って行くレインボーキャットを見送って、大山は怒鳴り声を上げる。
「コラーッ! 誰がゴリラだ! 戻って来い、逮捕してやる!」
そんな大山の怒鳴り声を聞きながら、警官隊副隊長の小原 瞬は溜息を吐く。
「……一体いつの間に階段に切り込みを……。
……警部が言っていた『切り札』も、『レインボーキャット』の前では形無しだったようですね……」
その小原の呟きを聞き、大山は今気付いた、と言うようにあたりを見回す。
「……おい、そう言えば高原の奴は何処に行った!?」
……そう言われ、何故か小原は硬直した。
「へっへーん、楽勝楽勝♪」
そう言いながら、レインボーキャットは仮面越しにでも分かる笑みを浮かべ、廊下を走り抜ける。
……道々に転がる警官隊の中で身体を起こしかけている人にとどめを刺しながら。
「でもゴリラのおじさんじゃ、もうワンパターンすぎてつまんないなあ……」
そう言いながらレインボーキャットが廊下を走っていると、
「……だったら、面白くしてあげましょうか?」
「!!?」
そう声がすると同時に正面から光が浴びせられて、レインボーキャットは慌てて横に飛んだ。
と、一瞬前までレインボーキャットがいた空間を、捕縄が貫いた。
「誰っ!?」
そう叫んでレインボーキャットも右手に持っていたライトを光が差す方向に向け……、……一瞬、きょとん、とした。
「……えっと……ご同業さん? 変装中だったりします?」
そうレインボーキャットが呟いたのにも無理は無く。
一応警官の制服を着ているが、顔立ちからして明らかに若すぎる。
そう、恐らくは自分と同じ高校生くらいと思われる少年が、その人影だった。
「……誰が、泥棒ですか」
そう呟いた少年の顔に浮かぶ青筋を見て、レインボーキャットは苦笑を浮かべる。
しかし、その身体はほんの少しだけ沈み込んでいて。
「あ、本物の警官さん? ……だったら……突破っ!」
そう叫ぶと同時に、レインボーキャットは少年の少し右側を通るようにライトを投げ付ける。
そのライトを目で追ってしまった少年が自分の失敗に気付いた時には既に遅く。
逆側から回り込んだレインボーキャットが右手に握ったスタンガンを突き出していた。
「っ!!」
電撃をまともに受け、少年はものも言えずにうつ伏せに崩れ落ちる。
そんな少年を見下ろして、レインボーキャットは勝利の笑みを浮かべた。
「……ちょっとびっくりしたけど……、私の完全勝利だね♪」
そう言って走り去って行くレインボーキャット。少年は起き上がる事も出来ずに倒れ伏したまま。
しかし、その顔は勝利の笑みに彩られていて。
「……いいえ、僕の逆転勝利です」
……そう呟いて、少年―高原涼人―は、気を失った。身体の下にある、『虹の雫』の感触を感じながら……。
翌日。
「……う〜……」
完全に膨れっ面をして、夏目里緒はふてくされている。
「(……まさか、あの一瞬で取り返されちゃうなんて〜!)」
……そう、今膨れっ面をしている里緒こそが、怪盗レインボーキャットなのだった。
そんな事などクラスメイトは知る由も無く、教室の中は昨夜の話で持ちきりで。
「なあなあ、知ってるか!? 昨夜の『レインボーキャット』の初敗北!」
「『レインボーキャット』対策で外国から呼んだ警官が一騎討ちで取り返したんだろ!?
凄えよな、その警官!」
「……」
話されている話題が話題だけに、里緒の機嫌は加速度的に悪くなって行く。
と、そんな里緒の前に、ふわふわとした笑みを浮かべた少女が座った。
「……一美……」
「どうかなさいましたか? ご機嫌が悪いようですが。
……里緒は『レインボーキャット』のファンですし、仕方ないのかもしれませんが」
そう言って笑う佐倉一美に、里緒は曖昧な笑みを浮かべる。
まさか教室でアンタ私の正体知ってるでしょうがとは言えないしなあ……、と里緒が考えていると、
「はいはい、みんな注もーく♪」
……突然そんな声が聞こえ、里緒が教卓の方を向くと、そこに人影が映る。
「HR始めるわよー♪」
そう言った人影は里緒の担任で、名前は前田淳子。気さくで明るい先生として、生徒からの人気は高いのだが、
「(……いつの間に?)」
……その忍者並みの神出鬼没っぷりが、彼女の唯一の謎だった。
教室内に漂う微妙な空気に気付いているのかいないのか、前田はさくさくと話を進める。
「……今日は、転校生を紹介します。……いいわよー、入ってきてー♪」
その前田の言葉に、里緒は教室の入り口に視線を送り……、
……入ってきた少年を見た瞬間、完全に凍り付いた。
そんな里緒には全く気付かず、その転校生は教卓の前に立つと、口を開く。
「……高原、涼人です。どうか、よろしくお願いします」
……そう、その転校生は涼人だった。
男の、しかもかなり美形な転校生に、里緒以外の女子生徒は色めき立つ。
そんな女子生徒達を手で制しつつ、前田は涼人に声をかけた。
「高原君。夏目さんの横……、1番後ろの窓際に席を用意したわ」
「あ、はい」
そう言って、涼人が席に向かうと、隣の席で未だ硬直している里緒が視界に入る。
凍り付いて動かない里緒に、涼人は首を傾げ、
「……大丈夫ですか?」
「!?」
そう言って涼人が肩を叩くと、里緒は飛び上がった。
そんな里緒に、涼人はにこにこと微笑んで声をかけた。
「えっと……夏目さん、でいいんだよね? ……これから、よろしく」
「あ、う、うん……」
そう微笑みを絶やさないまま言って来る涼人に、里緒は顔が引き攣るのを堪えるだけで精一杯だった……。
これで終わりです。
……うん、あからさまに異質なんだ、このスレにとって。
プロットは大体の背骨は作ってあるんですが、そのまま書くと半分以上が学園生活になると言うねw
しかも最終決戦は学園祭でやる予定なんだからもう、ねorz
第1話で突っ込みたい部分は多々あるでしょうが(主に涼人の正体、一美が何者かあたりで)、
そこらあたりは話が進んで行くにつれて解明される予定です。
うお、気がつけば色々と作品の投下が
職人の皆様方GJです
>>68 クラスメート同士で化かし合いか…定番で良いな!GJ!
ここからデスノートばりの頭脳戦はじめたりしてもまた良しww
>>70 ……化かし合いでは無かったりするんですorz
里緒の方は知ってて隠そうとするうちにだんだんと惹かれて葛藤、
涼人は知らないままでだんだんと惹かれて行くんだけど、だんだんと正体に気付いて行ってこれまた葛藤、ってルートでw
つかデスノートは好きじゃなかったからそんなに見てないしもっと無理orz
では、第2話投下します。
・怪盗物「ラブ」ストーリー
・ベタな事やりますw
恋するキャットシーフ 第2話
「……はあ?」
そう完全に呆れ果てたような口調で言う涼人に、大山はだらだら冷汗を流す。
助けを求めるように小原を見やるが、さっと小原からも視線を逸らされる。
そんな大山を睨み付けて、涼人は口を開いた。
「……大山のおじさん。僕は向こうでもう大学出てますし、警察官です。……公務員です。
と、言うか、僕はもう17なんですから、高校生なんですよ? 分かりますか?
まだ年齢的に中学生だからって事なら納得しますよ、この国では中学までは義務教育ですから。
……でも、高校は義務教育でも何でも無いでしょう?」
そう淡々と声を荒げる事も無く大山を問い詰める涼人。
そんな涼人に、大山は一言も返せないまま言葉に詰まって……、
「そう言われてももう転入届は出した! 抵抗するな!」
「ふざけるな」
……苦し紛れに開き直って見たが、もはや敬語すら使っていない涼人の絶対零度の言葉に撃沈した。
と、そんな涼人の肩を叩いて、小原が苦笑しながら言った。
「大山警部は純粋に涼人君の事を心配して手を打ったんだよ。
……高原先輩が亡くなった時からずっと、涼人君の父親代わりを自認してるんだから」
そう小原に言われ、涼人は黙りこくる。
そして、一つ大きな溜息を吐くと、口を開いた。
「……分かりました、分かりましたよ。……行きますよ、高校」
そう言われ、大山はほっと溜息を吐いて、胸を張る。
「ああ! 思う存分青春と言う物を満喫して来い!」
「……青春、か……。……捨てたつもり、だったんだけどなあ……」
そう苦笑する涼人に、大山も小原も動きを止める。
そんな2人を見て、涼人は慌てたように手を振ると、口を開いた。
「……でも、手に入ったんですから、楽しむつもりではいますよ、うん!」
そう言って、涼人はその場から逃げ出した。
「……大山警部……」
そう呟いた小原に、大山は軽く頷く。
「……吹っ切れられる訳が無いし、まだ吹っ切れるつもりも無いんだろうよ……、
……恭一と、亜紀君。……自分の両親の、敵を取るまでは……」
「7年前は、ひどかったですからね……」
「……ああ、涼人の奴が壊れなかっただけ、奇跡だったよ……」
そう言った大山。脳裏に映るのは、7年前の涼人のあの言葉で。
―――大山さん! ……教えて! 出来るだけ早く警官になる方法、出来るだけ早くあいつら捕まえる方法!
……知らず知らずの内に痛い程拳を握っていた事に気付き、大山は慌てて手から力を抜く。
と、小原がしみじみと口を開いた。
「……高校に通う事で、心の傷が少しでも癒されてくれればいいですね」
「ああ、『レインボーキャット』は日曜にしか動かないし、他の事件に使うつもりも無いからな」
少しでも、青春を楽しんでくれるといいんだが……、と呟く大山。
と、急に小原が笑い出し、大山は首を傾げた。
「……どうした?」
「……いえね、わざわざICPOから招聘して来た人間を高校通わせてるって思ったら……」
「ははっ! 確かにICPOは目を剥いて怒るだろうな」
その小原の言葉に、大山も笑った。
一しきり笑った後、大山は急に真剣な表情になり、口を開く。
「……小原、これは極秘なんだが……、
どうやら『レインボーキャット』は自身の利益を求めて動いているんじゃないらしい」
「……何ですって?」
思わずそう聞き返す小原に、大山は続けた。
「今まで『レインボーキャット』が働いた盗みは9件……、その被害者全てが、繋がっていたよ。
……恭一と亜紀君を殺した、組織にね」
「!!!」
そう言われ、小原はその場に棒立ちになった。
そんな小原を見て、大山は1つ頷き、続ける。
「……多分、だがね。『レインボーキャット』は涼人と同じ境遇なんだと思う。
ただ、涼人は警官になる道を教えてもらったが、それが『レインボーキャット』には無かった、ただ、それだけだろうな」
そう言った大山に、小原は驚愕の表情を向けたまま。
この警部が顔に似ずきめ細やかな推理を見せる事は知っていたが、これはその中でも一級品で。
「……でしたら、警部の見たてでは、『レインボーキャット』の行動は……!」
「……営利目的ではなく、組織とこいつが繋がっていると教えるため、だろうな。
案外盗んだ品物も、組織が壊滅したらまとめてどこかの博物館にでも送られるんじゃないか?」
そうやたら楽観的な予想をする大山に、小原はさすがに呆れたような視線を向け……、呟いた。
「……そう言えば……、涼人君に、その事は?」
「伝えていない。……伝えたら、暴走するぞ? 涼人は」
そう言われ、小原は頭を掻いた。
「そう……ですね。不注意でした」
「に、しても……、危ないのは『レインボーキャット』だな……」
すると、急に大山がそう呟き、小原は首を傾げた。
「危ない……とは?」
「涼人にはまだ話していないし、もし知ったとしても俺達で暴走を止めればいい。
……だが、『レインボーキャット』にそう言う『止める奴』がいるのかと思ってな……」
そう言った大山に、小原ははっとしたように目を見開く。
「……それに……、9人もスポンサーが潰されたんじゃ、組織も……!」
「……ああ、そろそろ本腰を入れて『レインボーキャット』を探し始めるだろうな。
いくら何でもスポンサーを9人も失っては、組織にも大きなダメージが行っているはずだ」
組織に捕まる前に『レインボーキャット』をこちらで確保出来ればいいんだが……、と呟く大山。
そんな大山を見て、小原は呆れ果てたような表情をしながら溜息を吐き、口を開いた。
「……だったら、最前線に立たないでくださいよ。警部は犯人を目の前にすると暴走するんですから……」
そうじと目で小原に言われ、大山は冷汗を流しながら乾いた笑い声を上げた……。
一方。
「……里緒、今日、家に遊びにいらっしゃいませんか?」
そう一美から言われ、里緒は笑って頷く。
と、そんな2人を見ていた涼人が、少し目を見開いて声をかけた。
「……へぇ……、仲、いいんですね、夏目さんと……えっと……」
「一美、でよろしいですわ」
涼人の言葉にそう返してきた一美に、涼人は面食らう。
「……え、でも名字知らないですし」
「……私は、一美でいいと言っているんですのよ?」
「……はい」
……しかし、どこか静かな迫力を持った一美に迫られ、口を噤んだ。
と、そんな涼人に、里緒も声をかける。
「だったら、私も里緒って呼んで欲しいな」
「え、でも」
「……なーに? 一美は名前で呼べて、私は呼べないって訳?」
そう言って里緒が涼人に詰め寄ると、涼人は思わずのけぞる。
そんな涼人に、里緒はさらに詰め寄って……、
「……きゃっ!?」
「う、わっ!?」
……バランスを崩し、涼人の方に倒れ込んだ。
「……痛たた……」
そう呟いて、里緒は顔を上げる。
……そのすぐ目の前に涼人の顔が映り、里緒はそのまま硬直した。
「……っ、うーん……」
すると、一瞬意識を失っていたのか、涼人が目の焦点が合っていないままで身体を起こそうとして、
「「!?」」
……その時、確かに2人の唇が触れ合った。
「き、きゃーっ!」
そう悲鳴を上げて、里緒はその場で飛び上がる。
と、そこに何やら変な視線を大量に感じ、里緒が恐る恐る振り向くと、
「……あらあら♪」
そう言って笑う一美を筆頭に、クラスの全員が里緒をにやにやと笑いながら見詰めていた。
一気に真っ赤になる里緒を見て、一美がくすくす笑いながら口を開いた。
「……随分と思い切ったプロポーズですわね♪」
「プ、プロ……ッ!?」
もう一度飛び上がった一美に、絶好の燃料を得て盛り上がるクラスメイト。
その両方を無視するかのように、一美はマイペースで言った。
「……前に、宣言していらっしゃったじゃないですか。『私が唇を許すのは一生の相手だけ!』って」
「た、確かに言ったけど、こ、これは事故よーっ!」
涙目になって里緒はそう叫ぶが、クラスメイトは誰も聞いておらず。と、
「夏目さ……、いえ、里緒さん」
下から声が聞こえ、里緒が下を向くと、苦笑している涼人と目が合った。
「た、高原君! これは、その……」
「事故、なんですよね?」
慌てふためく里緒だったが、涼人が苦笑しながら言った一言に、慌てて頷く。
そんな里緒に、涼人は苦笑を続けながら口を開いた。
「それならこの話はおしまいなんですけど……、……いい加減、どいてくれませんか?」
「……ふえ? ……あ、ご、ごごご、ごめん!」
その涼人の言葉にきょとん、とする里緒だったが、自分が涼人の上に乗っている事に気付き、飛び退く。
すると、涼人は立ち上がって身体に付いた埃をはたくと、鞄を掴み、口を開いた。
「……聞きましたよね? 事故なんですから騒ぐ意味は無いんですよ。
……それじゃ、僕は帰りますので」
そう、やたら冷静な声色で言った涼人に、誰も何も言えなかった。
……だから、気付けなかった。そう言った涼人の耳が、真っ赤に染まっていた事に……。
これで終わりです。
……事故チューは男の(と、言うか俺の)ロマンですw
キャラ設定
大山 司 42歳
警視庁所属の敏腕警部。
推理力には定評があるのだが、現場に出たがり+犯人見たら暴走な性格のせいでキャリア組の癖に出世は遅れている。
涼人の父恭一とは幼馴染であり、恭一の死後は涼人の父親代わりを自認している。
小原 瞬 31歳
警視庁所属の警部補。
警視庁入りした直後からずっと大山の下についている、名実的に大山の相棒。
しかし、大山とは違い順調にキャリア組のルートを歩んでいる。
大山と恭一とは同じ大学の先輩後輩に当たり、涼人とは兄弟のような関係。
……ここで涼人や里緒といった主人公クラスからじゃなくて脇役から設定紹介するのが俺クオリティw
……涼人はもっと後で設定使う予定で、里緒は3話でスリーサイズネタ使うから自重したってのが真相ですがw
唇を奪われてしまうとは何事じゃ!
三点リーダーがちょっと多すぎてクドい印象を受けたかな
短文の前後についてたり、句読点を挟んで連続してついてたり
いつもそうである必要はないけど、沈黙や、間を取って話していることを表現したいなら、たまに地の文も活用したほうがいいと思う
台詞だけに頼ると、台本っぽくなっちゃうしね
>>77 乙ですぜ。
確かにベタだ、だがそれがいい
前スレから書く書く言ってるが書き終らない…orz
書けた分投下とか嫌だから1話分はきちんと書いてるけど、余裕で一万字越えそうなんだ(´・ω・`)
GJですぜ
もどかしくて悶えそうな展開ですね
>>80氏にも期待
分量が多くても適度に分割して投下すれば問題ないかと(私見ですが
推敲してスマートになるのも結構ですが
プロの場でもないのですし、モチベーションとリビドーが溢れてる内に投下しないと
住人の目に触れられること無くお蔵入りとかになりかねませんしw
---
当初は陵辱が多かったこのスレですが純愛ものもちらほらでてきましたね
陵辱に強い反応を示す住人がいるスレだと保管庫のSSリストで陵辱の有無を表記してたりしますが
このスレは住人の嗜好からして心配ないですよね
ある程度できるまで待って公開とかするといつになるかわからなくなるので
お目苦しい点も目立つでしょうが近いうちに保管庫晒します
この作品読んでると微妙にセイントテールを思い出すなぁ。
怪盗だって人間ですから普段の生活があるわけで、恋とかしてたりしてもおかしくはないんですよね。
まあ背景があるからこそ捕まって陵辱されたりすれば興奮するし
純愛を貫けば物語的に面白いんでいいんですが。
そう考えると怪盗ものってのは幅の広がりがあっていいですよねー
良スレだな
とりあえずこんな形で保管庫を作ってみました。
苦情・要望等どしどし下さい。
ttp://www.usamimi.info/~kuma/kaito/ 最初の3作位は読み直して堪能しながら格納してましたが
「部屋を掃除してたらいつの間にか本を読んでた」状態になったので
途中から機械的ですw
SS補完を優先して作業してますが
前スレ流れちゃったので、過去ログ欲しいよって人がいれば先に作ります。
タイトルや作者名はこっちで勝手に決めちゃってますので
こういうタイトルにしたかった等あればそちらもどぞ
SSを完/未完どちらにするかは当方も悩んでますw
>>84 貴方は大変なものを盗んでいきました。
それは俺たちのGJで(ry
…いや本当マジでご苦労様です。
88 :
AM:2008/01/19(土) 01:55:27 ID:4xFmQVBU
>>84 GJ! 素晴らしい!
感謝の気持ちを込めて第七話投下。
「はぁっ!」
「ひょうっ」
先手は女剣士がとった。
真上から降り下ろされる剣撃に円月刀使いの男は奇声を上げながら身をかわす。
だが、剣士の攻撃は終わらない。
逃げ惑う男を捉えんと縦横無尽に斬撃が打ち放たれていく。
「わっ! おっ! くおっ!?」
ジャックは反撃する暇もなくひたすら身をかわし続ける。
ふざけているようだが、一撃たりとも攻撃を受けていないあたりはその回避力が非凡なものであることを窺わせる。
カグヤは男の動きに少々いらつきを覚えながらも続けざまに剣を振るう。
「くっ、ちょこまかと!」
「あぶねえあぶねえ! 姉ちゃん、おっかなすぎるぜ」
女剣士渾身の胴薙ぎを腰を引いてかわしたジャックはカサカサと後退して行く。
逃がすか、とばかりにカグヤはそれを追う。
だが、その足は突きつけられた二本の刃物によって止められる。
逃げてばかりだった男がついに武器を構えたのだ。
「ようやく逃げるのをやめたか」
「姉ちゃんに追い回されるのもオツだがね……やはり女の尻は追いかけてナンボだろう?」
「下衆が。逃げ回るだけの貴様に何ができる」
「ひゃひゃっ。逃げ回っていたわけじゃねえよ、観察してたのさ。こう見えても俺は慎重派なんだ。
今まで集めたデータと、直に見たお前さんの動きを総合して分析してたのさ」
「ほう、それで? 構えたということは勝算があるということか?」
「さぁてね。それは……これからのお楽しみだろっ!」
ジャックが初めて自分からつっかけた。
だがカグヤはまるで動じることなくそれを迎え撃つ。
刃と刃がぶつかり、火花を生む。
「ひゃひゃひゃ! 確かにお前さんは強いよ。身のこなし、スピード、技のキレ、どれをとっても一流だ」
「貴様ごときに褒められても嬉しくはないっ」
「だがね、女の身の悲しさか。いかんせん……パワー不足だなぁ!」
「くっ!」
鍔迫り合いの状態からカグヤは弾き飛ばされる。
だが、女剣士は動じない。
パワーで劣るのは百も承知、しかしどれはあくまで今のようにまともに正面からぶつかった場合だ。
それに、体重を乗せた必殺の突きならばパワー不足を十分に補える。
それは相手も承知なのだろう、突きだけは警戒するように剣先の動きを注意しているようだった。
「やあッ!」
それならばと女剣士は手数で押し切るべく剣を振るう。
やがて、男の注意が下段に集中し、上段のガードが開いていく。
当然それを見逃さなかったカグヤは剣を大きく振りかぶるとその脳天を叩き割るべく一気に振り下ろす。
刹那、身の危険を察知したジャックが片手をガードに上げる。
(甘い!)
片手、しかも咄嗟の行動ではこの一撃は防げない。
勝利を確信し、笑みを浮かべるカグヤ。
しかし、その表情は一瞬後に大きく歪んだ。
弾き飛ばされるはずの円月刀がガッチリと女剣士の剣を受け止めていたのだ。
「な――」
「言っただろ? パワー不足だってなぁ!」
一瞬の隙をついて男の手が横に振るわれる。
カグヤはかろうじてそれをかわすと大きく後退した。
だが、その瞬間。
少女のズボンのベルトが真っ二つに切り裂かれ、その下のボタンが弾け飛んでいった。
「何……!?」
腰を包む衣服の緩みに少女剣士は僅かに狼狽した。
千切れとんだボタンとチャックの間から微かに白い下着が覗く。
だが、カグヤが狼狽した理由はそこではない。
確かに斬撃がとめられたことには動揺したが、確かに男の攻撃はかわしたはずなのだ。
自分の間合いの把握に絶対の自信を持っているカグヤは信じられないといった様子で前を向く。
「ひっひっひ、どうしたい? 鳩が豆鉄砲でもくらったような顔をして?」
「な、何をした!」
「それを素直に俺が言うとでも?」
未だ混乱の続くカグヤにジャックが襲い掛かる。
なんとか体勢を整えようと女剣士は足を動かそうとし、何かを踏んだ。
それはずり下がった自分のズボンの裾だった。
ベルトとボタンがなくなったことによってズボンは自重に耐え切れず、徐々にずり下がり始めていたのである。
「しまっ…」
「ほうら、隙だらけだぜっ!」
ビッ、ビビッ!
円月刀が煌き、怪盗少女のお腹の辺りの服が切り裂かれる。
大きく開いた服の下からはすらっと引き締まった腹部とその中央に鎮座しているおへそが覗く。
カグヤはなんとかジャックから離れようとするが、ズボンを支えるために片手が塞がって思うように動けない。
「くそ…こ、このっ!」
ジャックの攻撃を防ごうとなんとか剣を振るうカグヤだが、不安定な体勢では満足に防御すらできなかった。
円月刀使いの男がその両腕を振るうたびに布が千切れ飛び、徐々に少女の肌が露わになっていく。
「いいぞいいぞ!」
「色っぺえぞ姉ちゃん!」
「ケケケ、大人気だな?」
「黙れっ!」
周囲の野次に怒声をあげる女剣士だったが、その一瞬後には太もものあたりを大きく切り裂かれてしまう。
その後ようやくジャックの攻撃が止み、カグヤはなんとか後退に成功する。
だが、少女の服はもはやボロボロといって差し支えない状態だった。
服を着ているというよりもボロ布を身に纏っているといったほうが正しい状況だ。
トライアングルムーンの共通コスチュームであるジャケットは既に見る影もない。
その下の服からはところどころから肌が覗き、かろうじて下着のみを隠している有様。
ある意味、裸よりも扇情的な格好になった女剣士に対し、男たちの歓声が飛ぶ。
「ヒヒヒ、いい格好になったなあオイ?」
「貴様……なんのつもりだ!」
「なんのつもりぃ? 見りゃわかるだろ、俺は女の服を切り裂くのが何よりも快感なんだ。
ま、男はどうでもいいんでソッコーで殺すけどな。それでついたあだ名が切り裂きジャック。良い名前だろ?」
「外道が…!」
女性を辱める行為に快感を感じるなど潔癖な女剣士にとって許せるものではない。
ましてや、今現在その行為の被害を被っているのは自分なのだ。
なんとしても目の前の男に鉄槌を加えるべくカグヤは猛然と走り出す。
しかし、彼女は熱くなっていたがゆえについズボンのことを疎かにしてしまっていた。
一歩一歩足が進むたびにズボンに振動が加えられ、ずり下がっていく。
そして腰を包む下着が完全に露わになった瞬間、ズボンの裾はカグヤの足を捕らえた。
「うあっ!」
「ククッ、間抜けすぎるぜぇ姉ちゃん!」
不注意に後悔するが、時は既に遅かった。
嘲る様な男の顔が視界に入った瞬間、煌く剣線が少女の身体の表面を次々に通過する。
ハラリ、と女剣士の衣服が床に落ち、ついにその下着姿が晒されてしまう。
「オオッ!?」
「きゃっ…」
男たちのどよめきに反応し、カグヤは反射的に両手で身体を隠すように覆う。
だが、その細腕で身体の全てを隠しきれるはずもなく、腕の隙間からは女剣士の肌が覗く。
トライアングルムーン・ブレイドは長身に見合ったスレンダーな身体つきだった。
剣で鍛えられていたおかげか、無駄な脂肪はまるで見えず、むしろやせすぎともいえるくらいに儚げな稜線だ。
だが、腰はきゅっとくびれ、すらりと長い脚線美は十分に女性らしさを感じさせる。
そして、なんといっても注目はその胸だった。
爆乳といっても差し支えないほど膨らんでいるバストに男たちの視線が吸い寄せられる。
小玉のスイカほどはあろうその二つの丸みはさらしに押さえつけられてはいるものの、その大きさが見て取れる。
「うひー、たまらねえ!」
「なんだよあのおっぱいのデカさ! 反則だろ!」
「あのさらしをとったらどれだけデカいんだろうな。ああ、早く生で見てえ!」
「……っ!」
男たちの揶揄に、思わず胸を隠そうとする女剣士。
本人の意思に反し、大きく育った胸は少女にとってコンプレックスだった。
女の身を捨て、剣士として生きたいと願うカグヤにとって大きな胸など邪魔でしかない。
女子からは羨望を、男子からは欲望を向けられるのもはっきり言って迷惑なのだ。
だが、それでもカグヤは手を胸から離し、剣を構えた。
羞恥心あるが、目の前には敵がいる。
それに、恥ずかしがって男たちを喜ばせることはない。
集中した女剣士はキッとジャックを睨み付けた。
「ヒッヒッヒ、きゃっ、だってよ。可愛い声もだせるじゃねえか!」
「……」
「おや、だんまりか。まあ、もう一枚くらい剥ぎ取ればもっと大きな声をあげてくれるかなぁ?」
ジャックの笑い声に追従するかのように周囲の男たちの笑い声が響く。
だが、女剣士の耳にはそれらの声は届いていなかった。
極度の集中が外部からの雑音をシャットアウトしていたのだ。
(生半可な攻撃は通じない、ならば……!)
先程までの攻防を考えるに、既に自分の攻撃は見切られていると思って間違いないだろう。
ならばとるべき道は唯一つ、全力の一撃にかけるだけだ。
幸いなことに、絶対有利を確信しているジャックに最初ほどの警戒はない。
ぐっと腰をかがませ、足の親指に力を込める。
瞬間、カグヤの身体がまるで疾風のように床を駆けた。
全体重を乗せた突きの一撃、決まればただで済むはずがない。
二人の距離が後五歩に迫ったところでジャックが女剣士の接近に反応する。
慌てた様に頭部がガードされるが、元より狙いは頭部ではなく腹部。
急所の一つ、鳩尾目掛けて突き出された剣が深々と突き刺さった。
「うげっ!」
モロに突きを食らう形になったジャックは無様な悲鳴とともに足元から崩れ落ちる。
嘔吐こそしなかったものの、その顔は青褪め、身体はピクピクと痙攣していた。
ついさっきまで少女剣士の下着姿に騒いでいた男たちの声が静まる。
まさかたったの一撃で自分たちの上司がやられるとは思ってもいなかったのだろう。
信じられない、といった視線が恐怖という感情とともにカグヤへと向けられる。
(勝った…!)
会心の感触に思わず笑みを浮かべるカグヤ。
流石に疲れたのか、息が乱れるがこれで一番厄介な男は沈んだ。
包囲網は解けていないが、動揺が走っている今なら突破できる。
そう考え、男に背を向けて窓の方向へと向かおうとする。
だがその瞬間、カグヤの背筋に寒いものが走った。
「え……なっ!?」
「油断大敵だぜぇ!」
振り向いた女剣士の視界に円月刀を構えたジャックの姿が映った。
そんな馬鹿な――
その驚愕の思考は致命的な隙だった。
下から切り上げるように振るわれた二つの閃光がカグヤの目に映る。
二つの剣閃は、それぞれ少女の顔面と胸部を通過していった。
「さ、流石に痛かったぜぇ。だが、トドメはちゃんとさすもんだぜ姉ちゃん?」
「ば、馬鹿な。今の一撃をくらってすぐに動けるはずは……」
「ひゃっひゃっひゃ! 種明かしをしてやってもいいんだが、いいのかい?」
「え…」
「しっかし硬ってえなその仮面は。俺様のコレクションがこの様だ」
男の円月刀の一本にはっきりとわかるヒビが刻まれている。
それを確認した刹那――ピシリ、ハラリ。
二つの音がカグヤの耳朶を打つ。
視界の一部がヒビ割れていく。
特殊素材で作られたバイザー型の仮面に損傷が発生したのだ。
それに続くように乙女の胸を守る白い布がハラハラとほどけはじめる。
「な…」
少女の呆然とした声の中、全てのさらしが床へと落ちた。
と同時にヒビ割れが限界に達し、怪盗の素顔を隠すマスクが木っ端微塵に崩れ落ちていく。
瞬間、怒号のような男たちの歓声が巻き起こった。
「うひょう! でっけえー!」
「何食ったらあんな巨乳になるんだ?」
「見ろよ、たぷんたぷん揺れてるぜ!」
男たちは露わになった少女の素顔に見向きもせずに生乳へと視線を集中させる。
窮屈なさらしから解放された二つの果実は嬉しそうにぶるんっと大きく弾むとその巨大さを誇るように存在を主張する。
通常、胸は大きければ大きいほどたれるものだが、カグヤのそれは日々の鍛錬のおかげかツンと上向きを保っていた。
細身の身体にアンバランスな爆乳。
そのギャップに男たちの視線は釘付けになってしまう。
「え…あ…」
集まる視線にようやく事態を把握したカグヤの顔が朱に染まっていく。
ふと前を見れば、ジャックがニヤニヤと笑いながら自分の胸を見つめている。
刹那、カグヤの心の中に爆発的な羞恥心が湧き上がった。
「い、いやああああっ!」
ぺたん、とまるでウブな少女のように両手で胸を隠しながら床にうずくまるカグヤ。
胸の大きさゆえに横から見れば腕からむにゅりとはみ出した乳肌が見えるのだが、気にする暇もない。
とにかく肌を隠したい。
その一念で女剣士は身を縮こまらせる。
(ど、どうしたというんだ、私は…!)
よりにもよって男たちの前でか弱い女のような軟弱な悲鳴をあげてしまったことにカグヤは動揺する。
早く立って剣を構えなければ。
そう思うが、両手は頑として胸から離れようとはしてくれない。
「ヒッヒ! いいざまだなぁ、オイ!」
望む光景の実現に、ご機嫌になった円月刀使いの男が少女へと近づいていく。
だが、抵抗できる体勢ではない少女がとることができる道は一つしかなかった。
「く、来るな…っ」
ずりずりと四つんばいのような体勢のままカグヤは男から離れようともがく。
少女の身体が動くたびに突き出されたおしりが揺れ、男たちの目を楽しませる。
手が塞がっているため、かなり無様な格好での動きになってしまうが、それにかまっている暇はない。
カグヤは屈辱に耐えながら少しでも離れようと足を動かす。
しかしその望みはあっさりと潰えた。
足首が捕まれる感触が脳へと伝わる。
慌てて振り向き、そして少女は驚愕した。
なんとジャックの腕が伸びて自分の足首を掴んでいたのだ。
「な、な…?」
「驚いたかい? これが俺様の秘密さ。俺の身体は生体兵器として改造されていてね、こうやって手を伸ばしたり
一時的に肉体の強度や筋肉を強めることが可能なのさ!」
自慢するように自身の異常を語る男にカグヤは戦慄する。
成程それならば剣が片手で塞がれたことも、届くはずがなかった攻撃を食らったのも、渾身の一撃で仕留められなかったことも納得がいく。
だが、この状態でそんなことがわかっても状況が好転するはずもない。
「そして当然伸ばした腕は…縮めることもできるッ!」
「あっ……や、やめっ!」
ぐんっ!
まるで伸ばされたゴムが元に戻るように勢いよくジャックの腕が元の長さへと縮んでいく。
当然、その手に掴まれているカグヤの身体も引き摺られる。
守るものがなくなった双乳が床を舐め、衝撃によって大きく歪んでは元の形に戻るという変形を見せる。
「ひっひっひ、お帰りっ!」
「は、放せ!」
「だが断る。それに…いいのかなぁ? 胸ばっかり隠してもよぉ?」
「何……あ!?」
男の指摘にカグヤはようやく自分が素顔を晒したままだということに気がついた。
慌てて両手で顔を隠すが、今更だった。
むしろそれによって胸の守りが解放され、大きく弾む生乳が男たちの目に晒されてしまう。
「ヒヒッ、胸に見合った別嬪さんじゃねえか。怪盗っていうもんだからもっと見れねえ面だと思ってたぜ?」
「くっ…」
ジャックの揶揄に耐えながらも、カグヤの心は後悔一色に染められていた。
下劣な男たちの前で半裸に剥かれたことは勿論、素顔を晒すなどあってはならないことだった。
自分の正体がバレるということは、仲間たちに迷惑がかかるということに他ならない。
表向き、三人に繋がりはないように振舞ってはいるが、情報というものはどこから漏れるかわかったものではないのだ。
(すまない、二人とも…!)
うつ伏せになったまま、二人の仲間へとカグヤは謝罪をする。
羞恥心にかられ、素顔よりも胸を隠すことを優先してしまいこの結果だ。
この上は舌を噛んで自害でもするしかない。
しかし、それは許されないことだった。
剣士としての誇りが、何よりも仲間たちとの誓いが死という道を選ばせないのだ。
「おっ、おとなしくなったじゃねえか。ヒヒッ、それじゃあ最後の一枚も裂いちまうか」
「えっ…なっ!?」
ジャックの宣言にはっと我に帰るカグヤ。
既に半裸にされてしまったとはいえ、この上最後の下着まで剥ぎ取られてはたまらない。
なんとか男の拘束から逃れようと身体をジタバタと暴れさせる。
だが、足首を掴む手は全く緩まず、むしろ徐々に男の懐へと引き寄せられてしまう。
「やっ、やめろ! やめるんだっ!」
「生きがいい姉ちゃんだ! だがそれでこそ剥き甲斐があるってもんよ!」
暴れる少女の身体をものともせずにジャックは円月刀を股間へと差し向ける。
刃物の接近に大股開きにされた少女の股間がひくりと怯えたように震える。
「ひっ…」
肌に触れる冷たい金属の感触にカグヤは思わず上擦った声を上げてしまう。
だが、ジャックはそれに構わずに刃を下着の中へと侵入させる。
ぶちっ! ぶちちっ!
徐々に少女の腰を包む簡素な下着が切り裂かれていく。
「やっ、やめ…!」
「ほーら、ご開帳!」
ぶちんっ!
真っ二つに切り裂かれた純白の下着が身を縮ませながらぱさりと床へ落ちる。
「あ、あああっ!」
信じられない、とでもいいたげなカグヤの悲鳴。
だが無常にも股間を通る空気の感触が、そこに何もないことを告げる。
「み、見るなぁっ!!」
瞬間、カグヤは素顔を隠すことも忘れて股間へと両手を伸ばした。
しかし、片足を持ち上げられているという体勢上、手のひらで大事な部分を覆うのが精一杯。
結果、女剣士は剣を投げ出して必死に股間を隠すというこの上ない無様な格好を披露することになってしまう。
「オイオイ、剣士が剣を捨ててどうするよ?」
「所詮は女ってことだろ」
「コイツがこんなんじゃあ、他の二人もたかが知れてるぜ」
「だっ、黙れ…!」
中傷の野次に、涙目で反論するカグヤ。
だが大開脚で床を舐めている状態ではまるで迫力がない。
と、ようやく掴まれていた足が放された。
カグヤは素早く身を縮めると再び亀のような体勢になり、自分の身体を視線から守る。
(こんなっ、こんなことがっ…)
女として自分を捨て去り、剣の道に邁進したはずがこの失態。
挙句の果てには己の魂ともいえる剣すら手放してしまった。
これでは例えこの場を切り抜けることができたとしても仲間や両親にあわせる顔がない。
「さぁて…」
うずくまった少女に覆いかぶさるようにジャックが迫る。
もはや裸に剥かれた小娘一人になすすべはない。
ふと、目の前に転がる剣が目に映った。
あれさえ拾えばまだ戦えるのではないか。
折れかけていた少女の心に火が灯りかける。
(そうだ、まだ負けたわけではない。あれさえ、あれさえ手にできれば…)
そろそろと手を伸ばす。
だが、手を伸ばすということは身体の守りが手薄になるということだ。
それゆえに少女の身体は無意識のうちに羞恥心にほだされて鈍くなってしまう。
あと少し。
しかし指先が柄に触れた瞬間、剣が蹴り飛ばされた。
「あ…」
「姉ちゃん、惜しかったな」
心が絶望に覆われる。
最後の希望をたたれた少女の心の火が完全に沈黙してしまう。
そしてカグヤは、首に走る鋭い痛みとともに意識を失っていくのだった。
98 :
AM:2008/01/19(土) 02:12:44 ID:4xFmQVBU
さらしっていいよね…
GJ!!!!!!!!!!!
AMさん待ってましたよ!!期待を裏切らない恥辱。さらし好きな自分はもうウハウハですよWW
GJ
一番頼りになりそうなブレイドが真っ先に…
ブレイドの行く末も気になるし
窮地を脱した2人の運命も気になる
保管庫の人もAMの人もGJ!
初2ちゃんねるでしかも処女作…ドキドキしながら投下します。
貧乏神になっちゃったらごめんなさい。
「た、タロットが! 私のタロットがないぃッ!!」
「ちっ、やられたか……サーチライト照射! 全員周囲を警戒しろ!」
無線で指示を出し終えると、半狂乱になっている美術館の館長を打ち捨てて
棚橋警部は外へと飛び出した。
(なに、予告状が届いたその日から、既に屋敷は警官隊が密かに包囲している。
いかに相手が怪盗であろうと、確保までにはそう時間はかからないさ)
大きく構えていた警部の目論見は、外に出た瞬間脆くも崩れ去ることになった。
美術館の外の庭園で警備にあたっているはずの警官隊。
彼らは全員後ろ手に縛り上げられ、庭園の中央で静かに水音を奏でている
大きな噴水に浸かり、折り重なって水浴びをしていた。
ただでさえ肌寒い十一月の夜風に冷水まで浴びせられた警官の一人が、
耐えきれず大きなくしゃみをした。
「へーっくしょいッ」
その間の抜けた響きが、指揮官である自分の迂闊さを表しているようで、
棚橋警部は歯噛みをして独り走りだした。
前任の担当者から怪盗の情報は幾分なりとも聞いている。
何とも馬鹿にされた話だが、奴がいるとすればあそこだ。
乱暴に扉を開けて一度館内に戻ると、音を響かせて階段を駆け上り、
息を切らせながら屋上へと通じる梯子を昇った。
いた。
月の柔らかな光に照らされて、一人の女性が屋根の上に佇んでいた。
背を向けているためはっきりとはわからないが、
この状況でこの場所にいること自体が怪盗本人である証だ。
棚橋警部の気配に気づいたのか、怪盗はゆっくりと振り返った。
「遅かったじゃない、中島警視……あら? 違うわね。
とすると、今夜のデートの相手は貴方がしてくださるわけ?」
「……デ、デートだと? 随分とコケにしてくれるじゃねぇか」
とっさに切り返したものの、反応が遅れたのは棚橋警部にとって不覚だった。
濃紺を基調とした衣装に銀色の髪が映え、まず目を奪われた。
視線を下に向けると、いかにも怪盗らしく目を覆うマスクをしているが、
仮面越しでも美貌の持ち主であろうことが窺い知れた。
そこから覗く琥珀色の澄んだ瞳はまっすぐにこちらを射て、
浮かべている余裕の表情とは裏腹に意志の強さと覚悟が感じられる。
そして体に密着している衣装のせいではっきりとわかる二つの膨らみ。
さらに下を見ればミニスカートから生えた黒タイツの脚線美。
つまり彼は自分の中の雄に負け、しばし任務を忘れて立ちつくしたのだ。
だが、警察官としての誇りが彼を動かしめた。
提げていた携帯用の投げ縄を腰から外し、戦闘態勢をとる。
ヒュンヒュンと小気味よい音を立てて、縄は宙に円を描いた。
「せっかちな方ね。自己紹介ぐらいしていただけないのかしら?」
「ルシアン警察特別犯罪対策部隊所属、棚橋警部だ。
好きな物はキングスバーガーのポテトセット、嫌いな物は怪盗。……満足かい?」
「ありがとう、棚橋警部。見たところお若いようだけど警部なんてすごいのね。
でもその割に随分とクラシックな物を使うじゃない」
「銃はどうにも性に合わないのさ。撃っても当たんないし、なッ!」
突如棚橋警部の右手を離れた縄は、生き物の如くうねり女怪盗を襲う。
しかし不安定な足場を楽しむかのようなステップで、
怪盗は易々と初撃をかわしてみせた。
(なるほど、速い……な。だが見たところ相手は丸腰。ここは三階建ての屋上。
さしもの女怪盗も年貢の納め時ってやつだろうさ)
「いい加減、大人しく捕まったらどうだい?
今なら檻の中にブルー・ムーンでも差し入れてやるぜ?
青ざめて震えるあんたにはお似合いの一杯ってやつさ」
投げられた縄は不規則に動いて足元を掬ったと思うと、
瞬時に手元に戻り間合いを詰めさせない。
勝利を確信した警部だったが、怪盗は余裕の笑みを浮かべ、
さらに動くスピードを上げた。
投げ縄がその動きについていけなくなり始め、追い詰めていたはずが
いつしか翻弄されているような感覚を棚橋警部は覚えた。
焦りは磨かれた技術に狂いを生じさせる。
精緻に動いていた縄は勢いを失い、明後日の方向へと飛んでいった。
「あっ」
呆けた声をあげる警部の顔の前に、あっという間に間合いを詰めた
女怪盗の顔が近づき、互いの息がかかる距離で静止した。
顔を赤らめて困惑する警部に、怪盗は
誘うような笑顔を向け、軽く唇を重ねた。
予想外の行動にしばらく思考停止した後、その接吻の意味が
嘲笑なのだとようやく気づいた警部に怪盗は小さく囁く。
「悪いけどお断りするわ。
だって……ブルー・ムーンに込められた意味、知ってる?」
「なにをッ!?」
ブンッ!
鍛え上げられた腕で振り払うも、そこにはもう怪盗はいない。
動きを見失った警部に、空中から声が聞こえた。
「『出来ない相談』よ」
「ーーッ!!?」
……ガスッ!
体重を乗せたブーツの踵が延髄に音を立てて直撃し、白目を剥いて崩れ落ちた。
「カクテルで口説くつもりならビトウィーン・ザ・シーツぐらい言わなきゃ。
今度はもう少しマシなデートプラン、考えてきてよね?」
オーバーアクション気味に溜め息をついて言い残すと、
女怪盗は屋根から跳躍し、夜の闇へと消えていった。
ある女怪盗の存在が大都会ルシアンバレーを賑わせるように
なったのはいつの頃からだろう。
その怪盗の特異な点は、現金や宝石には目もくれず、
あるタロットカードばかりを狙い犯行に及んでいることに尽きる。
ここでいうタロットとは、ご存知の通り占いに用いるあのタロットである。
だがそこらの店で数千円程度で買えるような玩具とは物が違う。
彼女が盗んでいくタロットは美術的な価値もさることながら、
さりげなくかつ豪華に宝石で装飾されており、金銭的な価値たるや
ひと財産築けるほどだと言われている。
それだけの秘宝を盗んでいく怪盗だが、世間からはほぼ好意的に見られている。
それは、持ち主が皆大衆から恨みを買っている人間だということが大きい。
抜群のプロポーションを持つ美女。
多数の警備員をものともしない鮮やかな手口。
マスコミは連日センセーショナルに騒ぎ立て、民衆はますます義賊だと褒め称えた。
鮮やかな手口といえば、その怪盗は律儀にも事前に予告状をよこしてくるらしい。
それにより配備された警戒網をいとも簡単にすり抜け、皮肉にも盗んだ
タロットの代わりにメッセージカードを残していくのだ。
今夜の美術館においてもその例外ではない。
盗まれる前はそのタロットは確かに豪華な額縁に収められていた。
警戒中の棚橋警部らを聴衆に、館長はそのタロットがいかに価値のあるものか、
そして自分がいかにそれを持つに相応しい人物であるかを力説していた。
しかしその館長の表情を変えたのは、数分の停電の後、その豪華な額縁の中に
忽然と現れた一枚のメッセージカードだった。
『警察の皆さん、夜遅くまでお疲れ様。
悪徳美術品バイヤーの館長さん、本当にご愁傷様。
囚われた『塔』のカードは私が救い出しました。
人知れず悪事を働いても、月が照らしていることを忘れないで』
そして、そのメッセージカードにはいつものように差出人の名が彫られていた。
『怪盗アンバームーン』と。
新職人キター
今までになかった大人系の怪盗か、wktk。
翌日の私立アイオライト学園の教室は、怪盗アンバームーンの話題でもちきりだった。
登校途中で配られていたのだろう、誰かが号外新聞を持ち込み、クラスメイト達は
それに群がって怪盗の素性や警察の失態を好き放題に口にする。
話が女怪盗の容姿に及ぶと、異性への興味から男子生徒の話は熱を帯び、
反対に女子生徒は彼らを冷ややかな目で見るのだった。
彼らにとっては、女怪盗は退屈な学校生活に刺激を与えてくれる
格好の存在だったのかもしれない。
そしてその興奮は休み時間が終わっても冷めることはなかった。
カッカッ。カッカッカッ。
黒板にチョークで文字を書く音が小気味よく教室に響く。
「ここで、旅人はその村の村長に反感をもったのですね。
その後の段落は旅人の心理を描写しているもので……」
壇上では女性教師が黒板になにやら教科書の一文を写しているようだった。
ようだった、と曖昧に表現したのには理由がある。
教師はなんとか黒板の上の方に文字を書きたいらしいのだが、
背が低いためうまく書くことができず、背伸びをするも苦戦している。
ときたま「ふっ!」「えいっ!」と小声が聞こえてくるところからすると、
小さくジャンプをして文字を書くことにしたようだ。
「やっぱりいいよなぁ、セクシーな女怪盗アンバームーン。
あんな怪盗なら俺ん家にも盗みに入ってほしいもんだよ」
「バーカ。お前ん家に怪盗に盗まれるような宝があるかよ。
せいぜい唐草模様の風呂敷かついだ空き巣がいいとこだ」
「そうだよなぁ……でもさ、やっぱり女は年上だと思うわけよ。
なんたって色気があって、そんで優しくリードしてくれてさ」
男子生徒は奮闘している教師をよそに、小声で私語を交わしている。
入学時の新鮮な気持ちも薄れ、といって受験までまだ間がある下級生は
勉強にさして身が入っていないようだった。
話しかけられた生徒は、壇上の教師を一瞥すると、授業中にもかかわらず
『年上の女性にあんな事やこんな事をしてもらう』という妄想に
ふけっている生徒に向かって言った。
あれ、ひょっとして書きながら投下してるのか支援
「年上っていやさ、宝月先生だって年上だろ」
「うーん、なんか宝月先生は年上って感じがしねぇんだよなー。
そりゃ可愛い顔してるなとは思うけど、俺の好みとは違うな」
「カワイイ系よりキレイ系ってことか。俺はカワイイ系だな」
「あー、お前そうだもんな。こないだなんてドラマの……」
カッカッカッ、……カッ!
黒板にチョークで文字を書く音がふいに止まる。
それに気づいた二人の男子生徒は、そーっと壇上を見た。
そこには、女性国語教師・宝月 香織のこちらを睨む顔があった。
「二宮くん、後藤くん、授業中は私語禁止ですっ!」
注意を受けた男子生徒二人はあまりこたえていないらしく、首をすくめてみせた。
これが体育教師の権田先生、通称『ゴリラ』から怒られたのであれば、
俯いて反省の弁を述べたであろう彼らも、こと宝月先生に対しては別だった。
その理由の一つには宝月先生の容姿にある。
怒っているのには違いないのだが、その小柄で華奢な体格ととても二十四歳には
見えない幼い顔立ちから、どうしてもぷりぷりという擬態語がしっくりきてしまう。
「だってさー、先生も聞いたろ? 昨日のアンバームーンの活躍」
「そ、そりゃ朝からテレビもその話題ばっかりでしたけど……
でもそれとこれとは話が違うでしょう!」
「あーあー、先生も怒ってばかりいないでもう少し大人の
色気ってもんを出してみた方がいいんじゃない?
『先生が色んなことを教えてア・ゲ・ル』みたいな」
男子生徒がからかうと、宝月先生は顔を真っ赤にして慌てた。
「え、あ、そんな……とにかく授業に集中してくださいっ!」
その瞬間、顔を赤らめていた宝月先生の顔がキュッと引き締まった。
軽口を放った男子生徒に狙いを定めると、右手に持っていたチョークを
サイドスローで思い切り投げつけたのだ。
ビュッと空を切る音を立てて放たれたそのチョークは、
その軸がぶれることなく一直線に飛び、音を立てて生徒の眉間に命中した。
……男子生徒の隣の、真面目に授業を聞いていた女子生徒の眉間に。
「あっ、ごめんなさい! 村上さん大丈夫?」
慌てて宝月先生が駆け寄ろうとしたその時、
「あっ、さっきの背伸びで足がつっちゃっ」
バランスを崩した宝月先生は床へと派手にダイビングし、
その光景を見ていた男子生徒は、半ば呆れながら呟いた。
「今日は水色、か」
「やっぱりもう少し大人の色気を出した方がいいよな」
アンバームーンの作者です。
今ネット環境がないので、書き上がったものを携帯で……。
早くエロが書きたいのですが、次の『背景』(エロなし)で今日は終了。
オリキャラは世界観や設定を描写するだけで長くなる……。
わかるわかる。
といってもここの大半の作品は一次だからどの職人さんも通ってる道だ、頑張れ!
掴みは十分バッチリだと思いますよー
その日の放課後、宝月香織は喫茶店で独り俯いていた。
コーヒーを飲みながら文庫本を読むつもりだったが、ページが頭に入ってこない。
(……私、教師向いてないのかな。友達感覚で楽しいんだけど、
教師としては何か違う気がする……)
(……それに、「大人の色気を出せ」なんて生徒に言われちゃったし。
そりゃ私に魅力がないことは知ってるけどさ……)
『魅力がない』というのは単なる彼女の思い込みであり、
童顔ながらも整った顔立ち、それによく似合う黒髪のボブカットは
男性を惹きつけるには十分なのだが、彼女はそれに気づいていない。
現に、彼女に憧れる男が一人、喫茶店のドアを開けた。
「おや、宝月さん。また会いましたね」
「あ、棚橋警部。お仕事お疲れ様です」
そう、先日投げ縄を駆使してアンバームーンと対決した警部である。
棚橋は黒いジャンパーを脱いで椅子にかけ、エスプレッソを注文した。
「お疲れ様……というより見ての通りお疲れ中なんですけどね。
今夜も捜査会議だし、眠気覚ましにコーヒーでもと思って」
「……えと、捜査会議というと、その、アンバームーンですか?」
「あ、テレビご覧になったんですね。
恥ずかしい話ですが、先日こてんぱんにやられちゃったもんで大目玉ですよ」
物静かなマスターが運んできたコーヒーを一口飲むと、棚橋は溜め息をついた。
「あ、ごめんなさい、仕事の話なんかして。
そういえば最近宝月さんの影響で柄にもなく読書始めちゃったんですよ。
こないだの新刊『ヴォイス』。とても切なくて泣いちゃったなぁ」
「あれ、でもあの本は確かホラーサスペンスのはずじゃ?」
「……え!? あ、こ、こりゃまいったなぁ。あははは……」
頭を掻きながらバツが悪そうに笑う棚橋を見て、
落ち込んでいたはずの香織はクスクスと笑い出した。
その顔を見ると、棚橋はニッコリと微笑んだ。
(……ありがとう、棚橋さん。なんだかお気遣いいただいたみたい)
滅入った気分を吹き飛ばしてくれた棚橋に、香織は心の中で感謝した。
少し遅く帰宅した香織を迎えたのは、執事の神崎だった。
「お帰りなさいませ、お嬢様。夕食の準備は出来ております。
それとも先に入浴なさいますか?」
「ありがとう、爺や。それじゃご飯にしましょう」
「かしこまりました」
うやうやしく白い頭を垂れると、神崎は料理の盛り付けにかかる。
後を追ってダイニングの椅子に座り、神崎の背中に向かって香織は言った。
「また一人、タロットの持ち主がわかったわ」
しゃもじの手が止まり、神崎はゆっくりと振り向く。
「さようでございますか。して、次はどちらに?」
香織は少し言葉に詰まると、拳をキュッと握り震わせた。
厳しい表情でしばらく沈黙し、ようやく次の言葉を紡ぎ出した。
「神崎もよく知ってる相手です。……あの飯綱 晃」
「ーー!?」
ガシャンッ。
神崎の手から茶碗がこぼれ落ち、音を立てて床に砕けた。
怪盗アンバームーンこと宝月香織が盗みを繰り返すタロットの大半は、
もともと宝月家が所蔵していたものだった。
そもそも、そのタロットは単なる宝石の散りばめられたカードではない。
タロットには古代の魔力が込められており、その魔力を引き出せば
それぞれのカードに応じた能力を与えてくれるアイテムなのだ。
『全て揃えれば願いが一つ叶う』と言い伝えられるそのタロットを、
香織の両親は平和利用するべく密かに研究を続けていた。
ところが、どこからか在処を嗅ぎつけられたものらしく、
十四年前のある晩に宝月家は強盗の襲撃を受けた。
香織の両親は必死の抵抗も空しくこの世を去り、使用人も全て殺された。
生き残ったのはベッドの下で震えていた香織と、たまたま骨折して
入院していた執事の神崎五郎の二人だけだった。
そして、タロットは全て持ち去られた。
描かれていた女性が可愛くて、両親にも内緒で香織が隠し持っていた
『月』のカード、ただ一つを除いて。
数日後、煌びやかな額に入ったタロットの前で下卑た笑いを浮かべながら
テレビの取材を受ける資産家の姿を見た時、香織は悟った。
両親は単なる物取りに殺されたんじゃないと。
あの資産家……飯綱といったか、彼の差し金だったんだと。
唇を噛みながらテレビの電源を消し、香織は一人決意した。
いつかタロットを全て取り戻してやろう。
そして平和のためにその能力を使い、両親のお墓に報告するんだ。
「しかし、飯綱家はあの後事業の経営が傾き、タロットを全て手放したはずでは?」
「この間忍び込んだ館長の話を盗み聞きしたところ、一枚だけ手元に
残しているみたいです。どうりで闇マーケットに流れていないわけね」
砕けた茶碗のかけらをほうきとちりとりで器用に集めながら、
神崎は心配そうな目を香織に向けた。
「お嬢様、無茶はお控えくださいませ。警察も特別部隊を編成して
警備にあたることになったようですし、ほとぼりが冷めるのを待たれては……」
「それじゃ駄目ですっ。世間がタロットの魔力に気づけば、必ず悪用する人間が
現れてしまう。単なる宝石と思われているうちになんとしても取り戻さないと」
これまで怪盗アンバームーンが取り戻したタロットは十四枚。
香織が持っていた『月』のカードを合わせて十五枚を集めたことになる。
残るカードは『吊された男』『恋人』『運命の輪』『隠者』『教皇』そして『世界』。
その六枚を秘められた魔力に気づかれる前に、『月』の能力を駆使して奪い取る。
それこそが怪盗アンバームーンが犯行を繰り返す理由。
「申し訳ありません、十四年前のあの時私めが入院などしていたばっかりに……
そして今もお嬢様が戦っていらっしゃるのに家事をこなすことしかできず……」
「神崎、それは言わない約束よ」
床に座り込んで打ちひしがれる神崎の体に、香織はそっと手を添える。
「そうそう、特別部隊といえばこの間お目にかかりました。
まさか顔見知りの警部がその一員とは知りませんでしたけど。
怪盗たるもの余裕を演じきりましたが、確かにあの投げ縄は厄介でした」
「はて、投げ縄とはまた時代錯誤も甚だしいですな
その警部、さては西部出身ですかな?」
「……神崎、それは私を馬呼ばわりしてるわけです?」
「い、いえ! 滅相もない!!」
なんだかんだあったけど、それでも平和な一日の終わり。
だが、香織はまだ知らない。
怪盗アンバームーンに、これまでにない苦難が降りかかることを。
前フリ長かった……orz
エロ無しで恐縮ですが、今日はここまでです。
次こそはエロエロのグチュグチュですよ、ええそりゃあもう!
……とハードル上げてみる(まだ書いてない)。
来週ネット開通するし携帯の手打ちともおさらばです。
今度こそ投下終了かな?
かなり設定が作りこまれているようでストーリー的にも面白そうですねー
月の能力は幻影か変化なんだろーか。
しかし残り六枚ってことは結構な長編の予感、まあ読み手からすれば完結さえしてもらえれば長いことはむしろ喜ばしいのですが。
とにもかくにもGJ!
GJです
更に言うと携帯から投下お疲れ様です
エロエロのグチュグチュには期待せざるをえない
カクテルの辺りの問答とか格好良かったです
おお、GJ!
それではこっちも投下します。
恋するキャットシーフ 第3話
「……ん?」
警察署入り口で当直をしていた今井 祐巡査は、こちらに向かって走ってくる少年がいる事に気付いた。
その少年の表情に何か気になる物を感じた今井は、その少年を呼び止めた。
「待ちなさい! 君は」
「通してください同業者です!」
しかし、その少年は無茶苦茶な事を言って突破しようとする。
そんな少年を、今井は呆れたように見て、言った。
「……あのなあ……、顔つきにしても、着てる制服にしても、どうみても高校生だろう!」
「学校帰りに直接来たから仕方ないでしょう!」
「……待て待て待て! 現役高校生が警官になれる訳がないだろう!」
そう、今井と少年が押し問答をしていると、
「何だ、騒々しい!」
そう怒鳴り声が聞こえ、警察署内から大山が顔を出した。
「お、大山警部!」
「大山のおじさん!」
「高原……何やってるんだ?」
大山を見て、慌てて敬礼をする今井。しかし、その少年は普通に大山と会話をして。
そして、その少年に向かって言った、大山の『高原』という言葉。
その言葉に、今井は硬直した。
「(……高原って、確かICPOから招聘した……っ!)」
その事に気付き、今井は我に返り、真っ青になる。
「も、申し訳……!?」
……しかし、今井が謝ろうとしたときには、そこには誰もいなかった。
「……だから、僕は嫌だったんです。別に童顔って訳じゃないけど、年相応ぐらいの顔立ちらしいんだから」
そうぶつぶつと呟き続ける涼人に、大山は脂汗をだらだら流す。
そうこうしている内に会議室に着き、大山はこれ幸いとばかりに、さっさと会議室の中に駆け込んだ。
「お、来たか、涼人君」
「すいません、遅れました」
それを追いかけて涼人も会議室に入り、声をかけて来た小原に会釈を返す。
そして、先に入った大山を横目で睨み付け、口を開いた。
「小原さん。『レインボーキャット』の予告状が届いたと聞きましたが」
「……ああ、これだよ」
そう言って、小原が差し出した虹色のカードを涼人は覗き込む。
そこには、
「……『貴殿が所有しているペンダント『暁の羽』を4日後、午後10時に頂戴いたします』……。
……また、日曜日なんですか?」
今日が水曜日なのを考えて、そう小原に聞いた涼人。
いままでレインボーキャットは日曜日にしか仕事をしておらず、今回もそうだった。
「日曜しか盗みに入らないって、何か原因があるんじゃないですか?
……それに、どうやらこれ、共犯者、もしくは便乗した馬鹿が書いたものっぽいですし……」
そう呟いた涼人に、大山と小原は目を剥いた。
「ど、どうしてだ!?」
「何故、そんな判断を!?」
そう噛み付くように聞いて来る大山と小原に、涼人は微笑んで、口を開いた。
「今まで届いた予告状は全部読んだんですけど、全部同じ文体……、この文体でした。
……でも、本人と相対して声を聞いた限りだと、こんな文体で書ける性格をしているとは思えないんですよ。
つまり、予告状は別の人が書いているんじゃないかと考えたんです。
……こんなあからさまな予告状を書いておいて、『レインボーキャット』と無関係な訳が無いですしね。
でも、予告状の内容は大体報道されているんで、真似して書けなくはないかな、と。
これまでの犯行周期から考えれば、日曜にしか『レインボーキャット』が動かない事は読めますしね」
そう自信たっぷりに言い切った涼人に、大山と小原は声を失った。
と、
「……ふふふ……、はははははっ! どうやら、大山のたっての頼みを聞いて、正解だったようだな!
この推理力、さすがはICPOのホープだ!」
そう笑い声がして、話に50代半ばと思われる男性が参加してくる。
その男に大山はにやにや笑いながら敬礼して、言った。
「はっ! 光栄であります、本部長!」
「……大山……ふざけてるだろ?」
そう青筋を立てる男こそ、レインボーキャット対策本部長、東川零次だった。
「……そうそう、高原君の疑問だがな、確かに予告状の内容は報道している。
しかし、『それがどんなカードに書かれているか』までは偽物との判別のために報道していないのだよ」
「それじゃあ……!」
思わずそう叫んだ涼人に、東川は頷く。
「ああ、この予告状は本物だ」
そう言われ、涼人は考え込むように人差し指を口の近くに当てる。
「……それじゃあ、やっぱりいるんだ。共犯者が……」
「どうかね? 高原君。その共犯者のプロファイリングは可能かね?」
「……それなりの、目処は立ってます」
そう呟くように言った涼人に、東川は目を剥く。
言った東川ですらさすがに無理だろうと思っていたのに、素でそう返されては無理も無かった。
「お、教えてくれ!」
思わずそう叫んだ東川に、涼人は微笑んで、答えた。
「多分、共犯者は何処かの企業グループの社長や会長、もしくはそれに近い人だと思います。
……今まで『レインボーキャット』の被害を受けた人は、結局みんな逮捕されています。
しかも、その被害者は全員何らかの大企業の上層部に属しています。
そんな上層部の人間が逮捕されれば、当然その企業のイメージは急降下します。
……そうなって1番喜ぶのは、ライバル企業だとは思いませんか?」
そこまで言い切って、涼人は何となく天井を見上げる。
「(『レインボーキャット』……、君の正体を暴くのも、君を逮捕するのも、僕だ!)」
その頃、そのレインボーキャット、夏目里緒は、
「り、里緒、悪いとは思っていますから、許してはいただけませんか……?」
一美の家で、ソファに座ったままふてくされていた。
そんな里緒に、一美は平謝りに謝るが、里緒はそっぽを向いたまま。
「り、里緒ぉ……」
そんな里緒に、一美は泣きそうになって……、
「……ぷっ!」
「……え?」
……突然笑い出した里緒に、きょとん、とした。
そんな一美に、里緒は必死に笑いを堪えながら口を開く。
「ふふっ、もう怒ってないよ♪」
「り、里緒! 騙していたんですのね!」
そのまま笑う里緒に、一美は真っ赤になって怒る。
そのまま2人はわいわいと楽しそうにふざけ合い……、
「……一美、仕事でしょ?」
急に里緒の纏う空気が変わり、口調も真剣な物に変わる。
そんな里緒を見て、一美は微笑みながら頷いた。
「ええ♪ 今週の日曜日、午後10時に『レインボーキャット』が動く、と予告状を送っておきましたわ♪」
「……ん、分かった。それで、今回の獲物の裏は取れてるの?」
にこにこと笑いながらそう言う一美に、里緒は真剣な表情で聞く。
……そう、涼人が推理していた『共犯者』。それが、佐倉グループ総帥令嬢、佐倉一美であった。
「ええ、もちろんですわ。彼が例の『組織』のスポンサーである、それは間違いの無い事実ですわ」
そう言われ、里緒はこくりと1つ頷く。
……そして、顔を上げ、一美と視線を合わせると、すまなそうな表情で口を開いた。
「……ごめんね? 一美。私の復讐に、一美を巻き込んじゃって……。
ううん、一美だけじゃない。一美の家全体を巻き込んじゃって……」
「……里緒?」
そんな里緒の言葉にきょとん、とする一美だったが、すぐに笑い出す。
そして、里緒に近付いて、その身体を抱き締めて、言った。
「……一体、里緒は何をおっしゃっているのです? 里緒は私の1番の親友じゃありませんか。
親友の願いのお手伝いが出来るのですから、私は結構幸せなんですのよ?
……それに、俊也様の事に関しては、私のお父様も怒っていらっしゃるのです。お父様と俊也様は、ご学友でしたから……」
そう言った一美に、里緒は一美の胸の中で1つ頷く。
自分と一美の友人関係は、自分の父俊也と、一美の父武巳、
そして自分の母あやめと、一美の母稜子の友人関係から始まったものだったから。
「……私がお父様にこの事をお話いたしました時、お父様は最初は反対なされましたわ。
『組織』は自分がグループの総力を上げて潰すから、子供が動くのは止めろと……。
でも、最後には全面協力を約束していただいて、情報部を貸していただいて……」
そう言って、一美は里緒を抱き締める腕の力を強くする。
「……だから、謝る必要なんてないんですのよ? 私達は、全力で里緒をサポートする。
そう、お母様も含めた家族全員が約束しているのですから……」
そう言われ、里緒はもう1つ頷き、……苦しそうに、口を開いた。
「か、一美、痛い……」
「あ、ごめんなさい、強すぎましたか?」
「うん、肋が顔に……」
そう言われた佐倉一美、B70cm。
「ん、んまっ! 人の親切を……!」
「……だって、痛い物は痛いよ〜……」
そう言って額を擦る夏目里緒、B88cm。
「……まあ、それは置いておくとして。……あの転校生の方……、怪しいですわね」
……そう、里緒の胸との戦力差に凹みながら一美が言うと、里緒も頷く。
「……高原君、でしょ? ……この前、獲物を取り返された警察官、高原君にそっくりだったんだ。
……一美、悪いけど……」
「分かりました、調べておきますわ」
これで終わりです。
あらかじめ言っておきます、これはハッピーエンドです、バッドエンド書けない俺的に考えて。
そしていきなりここでクイズをやろうと思いますw
涼人、里緒、一美の両親6名の名前は、ある版権物から取ってあります。
それは一体何でしょうか?
正解者の方にはこの小説のキャラ使ったCP短編をプレゼントします、ここに載せていいのかは分かりませんがw
……だって、どう考えても怪盗物にはならないんだぜ?
キャラ設定2
夏目 里緒 17歳 163cm 54kg B88(D) W60 H84
世間を騒がせる怪盗『レインボーキャット』である少女。
生来の運動神経の良さ、中学校の頃短距離で全国まで行った経験のある脚力で、大人も手玉に取る。
本質は明るいクラスのムードメイカー的な少女で、親が親友同士であった事から仲が良くなった一美とは親友同士。
胸が大き過ぎるのをコンプレックスにしているが、それを口にするといつも一美に殴られる。
佐倉 一美 17歳 165cm 49kg B70(A) W55 H72
かなり広範囲の商品を手がける『佐倉グループ』の総帥令嬢である少女。
里緒が『レインボーキャット』である事を知っており、そのサポートを行っている。
実は『レインボーキャット』の泥棒用具は、全て佐倉グループ警備部の特製品。
胸が小さいを通り越してぺったんこなのが悩み。
ちょっと頭脳戦テイストを入れてくれていてリアルタイムGJ!
で、
答えは電撃文庫の甲田学人のMiising(スペル合ってる?)
うおお……GJ!!
二人の対決がいよいよで楽しみですね。
個人的にはほのぼのとした学園テイストが微笑ましくてツボだったり。
やっぱり怪盗の表の顔を描くのは大事ですよねー。
38の人GJ!
ちょ、皆投下のタイミング合わせすぎwww
二日で三本とか前スレでは考えられなかった盛況ぶりだなー
だが喜ばしい!
えーとこのスレだけでも既に連載が四本か、盛り上がってきたな。
どの連載もこれから本番って感じだし、wktkが止まらないぜ。
>>115 怪盗が女教師とはすばらしい(;´Д`)
129 :
102:2008/01/20(日) 14:04:48 ID:yiYbccB0
GJのキャットシーフに触発されて一気に書き上げてみました。
…のに、さっき漫喫で書き込もうとしたら弾かれたよorz
しばらくの間、ずっと俺のターン状態が続くと思いますがお許し下さい。
それでは投下します。
それから一週間後の夜。それは予告状で宣言した決行の日。
香織は自宅の玄関で目を瞑り、深呼吸をしていた。
何度か深呼吸を繰り返すと、目を開けてポケットから『月』のカードを取り出し、
胸の辺りに押し当てた。
すると、カードが柔らかい銀色の光を放ち、やがてその光は彼女の姿を包んだ。
ボブカットだった黒い髪はみるみる肩の辺りまで伸びて銀色に変わる。
小柄で華奢だった体格は、背が伸びて肉感的なボディラインへと成長した。
彼女を包んでいた銀色の光は濃紺のコスチュームへと変化し、
光が収束して消えた後には、あの女怪盗アンバームーンの姿が現れた。
朧月怪盗アンバームーン。
それは、自分のスタイルにコンプレックスを抱いている香織が
『月』のカードの魔力を使い生み出したもう一人の自分。
容姿は性格をも変えるらしく、生生真面目で少し引っ込み思案な性格から
自信家で挑発的な性格へと変わっていた。
「いよいよ飯綱家に赴かれるわけですな」
「うん、あの醜く欲深いオジサマに引導を渡してくるわ」
「……ご武運を、お嬢様」
「……ありがと、神崎。行ってくるね」
カチカチ。
背後で火打石を鳴らしてくれた神崎に礼を言うと、
怪盗アンバームーンはドアを開け、夜の闇へ向かって高く跳躍した。
一時間後。
雑居ビルの屋上から、今回の標的となる飯綱邸を見下ろしていた
アンバームーンはいつになく訝しげな表情を浮かべていた。
「やっぱりおかしい……予告状は確かに送りつけたのに、
警察も警備員もマスコミもいないなんて……」
そのとき突風が吹いて、彼女は思わず目を瞑る。
乱れた銀髪を手で軽く直し、開いた瞳にはもう迷いはなかった。
「超鈍感な相手だろうが、罠だろうが、必ずタロットは奪ってみせる。」
手入れの行き届いた飯綱邸の庭園を駆け抜けても、警察や警備員が
駆けつけてくる気配は微塵も感じられなかった。
「やっぱり、静かすぎる。
単に寝静まっているのか、罠を張って息を潜めているのか」
ギイイイィィィィ……
そのとき、豪華な意匠が凝らされた玄関のドアが音を立てて開いた。
警備員の突撃に備え、アンバームーンは腰を落として身構える。
しかし、数秒経ってもそこから出てくる者は誰もいない。
「罠、確定ね……」
彼女に入って来いと言わんばかりに開いたままのドアから、
無人の玄関ホールの様子が見えている。
そしてそこからは確かにタロットカードの魔力が流れ出しているのを感じるのだ。
「虎穴に入らずんば、虎子を得ず……か。
古臭い諺だけど、今の私を表現するのにはいい言葉だわ」
開いたままのドアから玄関ホールへ抜けると、後方で先ほどのドアが
軋む音を立てて閉まるのを感じた。
期待はしていなかったが、念のために押してみてもやはりびくともしない。
これで退路は完全に断たれたわけだ。
パッ。
必ずしも趣味がよいとは言えない天井のシャンデリアが点灯し、
広い玄関ホールの内装を照らし出す。
床は大理石だろうか。
両脇には各部屋に通じるであろう木製のドア。
目の前には上階への大きな階段。
その階段から、一人の大柄な年配の男が姿を現した。
「今晩は、飯綱家当主、晃さん。お招きいただいたこと、感謝いたしますわ」
「いやいや、楽しんでいかれるといい。使用人たちは今日は暇をとらせた。
警察やマスコミといった無粋な輩はここにはいない。つまり二人きりというわけだ」
飯綱は、上等なスーツのポケットから気取った手つきでタロットを取り出した。
カードをちらつかせるその仕草は、これが欲しいんだろうと言わんばかりだ。
「残念だけど、オジサマとチークダンスを踊る趣味はないの。
できれば、そのタロットをプレゼントしていただけると嬉しいんだけど」
「それはご容赦願えますか、ミス.アンバームーン。
プレゼントしては貴女が早々に帰られてしまいますからね」
とりあえずその日の投下終了だけは最後にちゃんと書けば大丈夫だと思うよ支援
余裕ある言葉を交わしてはいるものの、アンバームーンは飯綱の
行動の真意をはかりかねていた。
マスコミや使用人はともかく、警察も私設警備員もここにはいない。
なのにこちらが狙うタロットを不用意に晒している。
敵を前にしてあれこれ考えるのをやめた彼女は、意識を魔力に集中させた。
「それじゃ、パーティを始めさせてもらうわッ!」
そう言うと、タンッと床を蹴って跳躍した。
まだ相当距離があると思われた飯綱の眼前にアンバームーンの姿が迫る。
そう、『月』のカードの能力。
それは無重力を思わせるまでの跳躍力と、それに付随する脚力。
猛スピードで迫るアンバームーンの膝が、飯綱の顔に叩き込まれた。
かに見えたそのとき、飯綱は姿を消していた。
必殺の膝は後に残されたスーツの抜け殻を捕らえたにすぎなかった。
手ごたえ、いや足ごたえがなくすり抜けてしまい、階段に激突しそうになりながらも
辛うじて着地したアンバームーンは、きょろきょろと辺りを見回した。
「上ですよ、ミス・アンバームーン。
まったく、乾杯はまだだというのに気の早いお方だ」
上を見上げると、蜘蛛を思わせる黄色と黒の縞模様の格好をした飯綱が、
天井から伸びた糸に捕まりぶら下がっていた。
まさか既にカードに秘められた魔力に気づいて引き出していようとは。
アンバームーンはその可能性に思い至らなかった自分の思慮の足りなさを恨んだ。
「『吊るされた男(ハングドマン)』ってわけね……」
「ご名答。でも吊るされるだけではないのですよ?」
「ーーなッ!?」
いつの間にか、床から生えた糸がアンバームーンの足に絡み付いていた。
足を上げて必死で切るのだが、次から次へと伸びてくる糸が彼女を補足する。
いつしか糸は縒り合わさって縄になっていた。
「くぅッ!」
切れないのならなんとかほどこうと足に意識を向けているうちに、
天井から伸びた縄に両手を縛られ、吊り下げられてしまった。
「さて、お待ちかねのパーティの始まりですよ、ミス・アンバームーン」
するすると下に降りてきた飯綱が、凶悪な笑みを浮かべた。
天井から伸びた縄に両手首を縛られ吊り下げられたアンバームーンに、
飯綱はその肢体を上から下まで嘗め回すような視線を向けた。
その嫌らしい視線に身震いし、なんとか打開策を考えようとする。
空中に浮いた形になっているということは、地面を蹴ることができない。
自然と『月』の能力はほぼ無効化されてしまっているということだ。
唯一の活路、それは。
「いい格好ですよ、ミス・アンバームーン。
さしずめ蜘蛛の巣に捕らえられた美しい蝶といったところか。
……おっと、あまり近づくと蹴りをお見舞いされてしまうかな」
「レディの扱いがなっていないようね、ミスタ・飯綱。
それにその禍々しい姿、今晩の趣向が仮装大会なんて初耳よ」
精一杯の皮肉も、この状況を打破する唯一の希望を見透かされてしまっては、
いつもの余裕たっぷりな声には程遠い。
「さて、それではあまり近づかないようにして楽しむとしようか。
『吊るされた男』の能力ならそれが可能なのだからな」
そう言うと、どこからともなく現れた縄がアンバームーンの体に
シュルシュルとひとりでに動いて絡みついた。
「くゥッ! い、痛ッ! な、なにを……」
体を揺らして抵抗しようとするも、縄は器用に彼女の体に絡みつき、
いつしかアンバームーンの『亀甲縛り』が出来上がっていた。
「フハハハハッ! これはいい! 今をときめく美しい女怪盗が、
こんな恥ずかしい格好を私の前に晒しているとはな!」
確かにそれは扇情的な光景だった。
抜群のプロポーションを誇る女怪盗の体を荒々しい縄が彩り、
大きな胸を変形させ強制的に突き出させている。
さらにミニスカートを巻き込んではいるものの秘部には縄が食い込み、
美しい顔は苦痛と羞恥に歪んでいる。
その顔の中心にある怪盗のマスクさえ、今となってはどこか怪しく、
官能的なアクセサリーのようにも思えるのだった。
「はぁッ……こ、こんな……ことぐらいで……きゃあッ」
必死で耐える彼女だったが、シュルシュルと近づいた縄が
亀甲縛りの上から下半身を覆うミニスカートを力強くたくし上げた。
単にスカートの下の黒タイツが露わになるだけでなく、ますます股に
食い込む縄の感触に、アンバームーンは体をよじらせて呻くのだった。
「ふむ……ヒップのラインも芸術的だ。しかも黒タイツというのがまた男心を
くすぐられるよ。ひょっとして普段から男を誘っているんじゃないか?」
「……そ、そんなわけ……はぁッ……ないでしょッ……くぅンっ」
「さて、それでは次はその大きな胸の感度を調べてみようか」
「な、なにを……する気……はうっ」
突如床から生えた何本もの縄が、再び縒り合わさって綱となり、
そうしてできた二本の綱がいっせいに彼女の両胸を触り始めたのだ。
優しく撫でるように、強く揉みしだくように絶妙な強弱をつけて綱は動き、
それはまるで意志をもった蛇のようだった。
「くっ……はぁッ……はんっ……あ、悪趣味の極みね……」
「気に入ってもらえたようで嬉しいよ、ミス・アンバームーン。
それじゃ、もっと楽しんでもらえるようにしてあげようか」
パチンッと飯綱が指を鳴らすのを合図に、胸をまさぐっている二つの綱とは
別の縄が、シュルシュルと背後から伸び、アンバームーンの胸の谷間から服の中へと潜り込んだ。
「きゃぁうッ……だ、だめっ……」
服の中へと入り込んだ縄はブラのフロントホックを引きちぎり、
単なる布切れと化したそれを服の外へと投げ捨てた。
「しまったな、体を縛っていると少々脱がせるのに骨だよ。
やっぱり脱がしてから縛るべきだったかな、ふはははははっ」
いつの間にか胸を責めていた綱の先端はそれぞれの縄に分離し、
まるで人間の指のような形状となって本格的に揉みしだきはじめた。
それに加え、先ほどブラを取り去った縄は再び服の内部へと侵入し、
覆い隠す物のなくなった乳首を愛撫しはじめる。
一方で、亀甲縛りの一部分である股に食い込んでいる縄もまた振動をはじめ、
秘部を絶妙なポイントで刺激している。
「ふあッ! ……はんッあっぁう……くぅ……あぁンッ」
「いい声がでてきたじゃないか、ミス・アンバームーン。
乳首も立ってきているみたいだし、こりゃ本当に楽しんでいるみたいだな」
「……だ、……ふぁうッ……誰が……うぅぅ……はぅ……」
「ふははは、否定できないか! こりゃあいいや。
美女怪盗アンバームーンは縄責めがお好き! クククク……」
飯綱は葉巻をふかしながら、面白い見世物を見るかのように眺めていた。
時たま彼が投げかける言葉責めが、アンバームーンを次第に追い詰めていく。
(くッ、悔しいけど今は耐えるしかないわね。油断させて何とか奴をこちらに
近寄らせることができればまだ逆転の余地はある……えッ? きゃあッ!!)
彼女の思惑を嘲笑うかのように、天井から伸びた縄が彼女の膝に絡みつき、
強制的に両膝を上へと持ち上げる。
結果、亀甲縛りの上M字開脚というこれ以上ないほどの恥辱的な格好を
憎き敵の前に晒してしまうことになった。
そしてそれは同時に、最後の望みであった起死回生の一撃を放つことも
叶わなくなるという、絶望的な格好でもあった。
「おや、表情が変わったよミス・アンバームーン。
まさか私が易々と蹴られてやるとでも思ったのかな?」
「……な、なんの……ふぅっ……ことかしら……はぁ、はぁ……」
「ふははは、自分の格好を見てみろ、強がっても無駄だ。
そうだ、もう少しいい格好にしてあげれば減らず口も叩けなくなるかな?」
そう言ってパチンッと指を鳴らした彼は、隣の部屋まで縄を伸ばす。
やがてシュルシュルと戻ってきた縄にはハサミが握られていた。
「便利だろう? 私みたいなものぐさには堪えられないね。
さて、それではご開帳といこうか」
「あっ!……あっ……ああああ、や、やめて……ああっ」
ジョキジョキとハサミを走らせ、コスチュームの胸の部分だけを円く切り取る。
濃紺色の丸い布切れが二つ、ヒラリハラリと床に落ち、美しい胸が露わになる。
次に飯綱はハサミの矛先を黒タイツに向け、股の部分を同じように円く
切り取ると、その部分だけ白いパンティが姿を見せた。
「やっぱり黒タイツの下には下着を穿いているんだな。……おや?
なにやら湿っているように見えるんだが、気のせいかな?」
「……嘘よ! そんなわけ……あぁッ!」
ジャキッ! ジョキジョキッ!
飯綱はパンティに手を伸ばすと、何回かハサミを走らせた。
単なる布の切れ端となった下着は、パラパラと床へと散った。
これで胸と秘所を覆い隠す物は何もなくなってしまった。
しかも全裸なのであればその肉体そのものに好色の目は向くのに対し、
今の格好は怪盗のコスチュームの胸と股の部分だけが
切り取られているため、アンバームーンというものに官能的なイメージが付与される。
それはこれ以上ないぐらい恥ずかしく、また屈辱的なことだった。
好色な視線が両親の仇となれば、なおさらである。
「い、飯綱ぁーー!!」
「ほう、その格好で凄むのか? 胸も大事な所も丸見えのその格好で?
ふふ……少し味見をさせてもらおうかな」
「あぅっ……い、いや……それは……ふあぁぁぁっ!」
ジュルッ! ピチャピチャ、ジュルルルッ!
M字状態になっている両腿を両腕で抱え込むと、飯綱は秘所に
音を立ててむしゃぶりついた。
腿を抱え込んだ先の両手で、胸を執拗に愛撫することも忘れない。
「なんだ、もう濡れているじゃないか。義賊の女怪盗だというから
どんなものかと思ったが、とんだ淫乱女だった、というわけだ」
「……はあぁぁぁ……くぅ、悔し……あぁうン!……や、やめて……」
「ははは、怪盗ともあろう者が標的に懇願か? 情けないなアンバームーン。
ふむ、思った通り処女ではない、か。淫乱女なら当然だな。
何人の男をここにくわえ込んできたんだ? あ?」
「……うあぁ……はうぅ……ぅくっ」
飯綱はある程度舐めると一度秘所から離れ、さらに一本虚空に綱を出現させた。
その綱は空中を蠢くと、アンバームーンの口へと潜り込んだ。
「んむゥッ! ふむむ……」
ちゅぼッ! じゅぶッ!
綱は怪盗の口で出し入れを繰り返し、卑猥な音をホールへ響き渡らせた。
無理やりに犯された口からは涎が一筋こぼれ、しずくが裸の胸へと落ちる。
「んー、テクニックはいま一つだが、なかなか気持ちいいよ。
もう少し舌を使ってくれると申し分ないんだがなぁ」
ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべると、飯綱は再び秘所を責めはじめた。
ぬぷっ。
「ーーふぅッ!?」
今度は指を挿入させ、わざとピチャピチャと音が聞こえるように動かす。
「聞こえるかアンバームーン。これは何の音だ?
ふははは……義賊が悪の資産家にこんなことをされて感じるなんてなぁ。
アイドル扱いしている世間が知ったら大騒ぎだろう」
(……そうよ、憎い両親の仇なのに……なんで私……感じて)
「んむッおむっ……ゲホッゴホッ!」
秘所へ出し入れされる飯綱の太い指は一本から二本に増え、三本になった。
ジュブジュブと音を立てる指の間からは、愛液の雫が糸をひいて床へこぼれ落ちる。
意識が飛びそうになるのを必死でこらえるアンバームーンの頬には
いつしか涙が筋を描いていた。
「そろそろイきそうなんだろ?
遠慮なく標的の前でイキ顔を晒せよ、アンバームーン!」
「ふあぁぁぁあぁぁ! あぁうッ! はぁあうッ!」
指使いがますます激しくなり、アンバームーンの顔が歪む。
「あぁぁぁああああぁぁぁっぁぁっあーーーーッ!!」
じゅばっじゅばばばっじゅばーッ!
秘所からは愛液が勢いよくほとばしり、女怪盗は絶頂に達した。
「……ふはは、イッたか。イッたな? ふははっははっ!
とんだ淫乱怪盗さんだよ。敵にアソコをほじくられて昇天とはな!」
「……ふぁ……はぁ……はぁ」
怪盗アンバームーンは縄に体を預け、ぐったりとして息を切らせていた。
目を瞑り、時折ビクッビクッと体を痙攣させるその姿は、飯綱の指摘を
体全体で肯定しているかのようだった。
「休む暇は与えないぞ。次は私も気持ちよくなる番だからな」
虚空にあった綱が再びアンバームーンの口に侵入し、強制フェラを繰り返す。
今度はアンバームーンが能動的に動き、舌を使って舐めまわした。
飯綱はしばしその感触を楽しむかのように目を瞑り、気持ちよいのか
時たま小さく呻き声をあげる。
彼はおもむろに上着を脱いで床に投げ捨てると、ズボンのチャックを下ろす。
(……さっき、この綱をくわえている時、飯綱は確かに「気持ちいい」と言った。
舌で刺激を与えた時の彼の反応……間違いない、神経を繋げている)
琥珀色の目が自分に向けられていることに気づいた飯綱は、
何を勘違いしたのか、誇らしげに自分のモノをそそり立たせた。
「だいぶ従順になったじゃないか。そうか、コレが欲しくて堪らないか。
そう焦らなくてもじきに……うあぁぁァああアあぁぁッ!!」
がぶっ!
アンバームーンが自らの口を汚していた綱を思い切り噛むのと、
飯綱が絶叫して股間を押さえるのとは同時だった。
床に倒れ込んだ飯綱は、股間を押さえたままごろごろと転げまわり、
意識が離れたせいかアンバームーンを捕らえていた縄は解けて消滅した。
「不注意にもほどがあるわね、ミスタ・飯綱。
今こそ悪事の報いを受けるときよ」
「お、おのれぇぇェェエエエッ!!」
よろよろと立ち上がる両者。
拘束が解かれたアンバームーンは余裕の表情を取り戻したのに対し、
飯綱の目は血走り、隠していた獣性が剥き出しになっている。
「覚悟ぉーーッ!」
「オオオヲヲヲヲォォーーーーッ!!」
おのおの気合を発して前に出る。
アンバームーンは再び必殺の跳び膝蹴り。
飯綱は縄を自らに巻きつかせて強化を図っての突進。
二つの影が交わった刹那。
「ぶげぇッ!」
飯綱は白目を剥き、胃液を吐き出した。
彼の腹部には、今度こそアンバームーンの膝が食い込んでいる。
崩れるように倒れた飯綱の体を光が包み、背中に忽然と『吊るされた男』の
カードが姿を現した。
「気絶したから本体と分離したのね。これでようやくお暇できる」
怪盗はタロットを拾い上げると、ピクリとも動かない飯綱を一瞥した。
「悪いけど、舞踏会はこれでお開きにさせてもらうわね。
カボチャの馬車が迎えに来てしまっているの」
そう言うと、奪い返したカードを懐にしまおうとして、
自らの衣装がもはや裸同然であることに気づき、慌ててしゃがんだ。
「……ドレスの魔法はとっくに切れてたみたいだけど」
「ふえ……えぐ……」
自宅のリビングで、香織は一人泣いていた。無理もない。
盗みに入った相手、しかも両親の仇である相手に
恥辱を与えられてしまったのだから。
結局ボロボロになった衣装では帰ることができず、変身を解いて
飯綱家の召使の格好に着替えて電車で帰ってきたのだ。
泣き出したいのを電車では必死でこらえ、とぼとぼと歩いて
自宅まで帰ってきた瞬間、堰を切ったように涙が溢れ出した。
両手首にはくっきりと縄の跡が残っていて、それを見るたび
加えられた陵辱を思い出して吐きそうになる。
その後で、親の仇の前で絶頂に達してしまった自分への嫌悪感が襲う。
(私……あの時確かに……感じていた……)
ソファで自らを抱きしめるかのようにして震える香織。
……ファサッ。
そのとき、香織の背後から毛布がかけられた。
「お嬢様、お茶が入りましたよ」
神崎が気を遣って毛布と温かい紅茶を持ってきてくれたのだ。
毛布に包まり、レモンティーを一口啜ると柑橘系特有の酸っぱい香りが
ようやく気持ちを落ち着かせてくれた。
「これは酷い……奴に陵辱されて……あ、いや、その……」
手首の縄の跡に目をやった執事が目を見開き、その後「陵辱」という
直接的な言葉を発してしまったことに気づいて口ごもる。
香織は厳しい表情でしばらく考え込むと、ポツリと言った。
「ううん、いいの、本当のことですもの。
私、アイツに汚されてしまったの……怪盗失格ね」
「いいえ、そんなことはございません。何があろうと肉体でのことです。
その内奥にある心さえ折れなければ、恥じることなどありません。
それに、それに、こうして無事に帰って、きて」
何とか元気づけようと言葉を紡いだ神崎だったが、
しだいに彼女を心配する気持ちが涙となって溢れ出したようだった。
(……このままじゃいけない。今回はなんとか盗んでこれたけど、
魔力を引き出した人間相手では『月』のカードだけでは限界がある。
複数のカードを持っていかないと……次は……)
難しい顔で考え込む香織をよそに、神崎はテレビの画面に釘付けとなっていた。
「しかし……アレの方がよっぽど陵辱のような気がするのですが」
そこには。
全裸に亀甲縛りを施され、胸に『露出狂』と書かれた紙を貼られて
往来に投げ出された飯綱昇の姿が報道されていた。
〜『吊るされた男』奪還完了〜
残りカード枚数…五枚
141 :
102:2008/01/20(日) 15:01:04 ID:yiYbccB0
そんなわけで今日の投下は終了です。
香織ちゃん親の仇相手(飯綱ジョリーン)に感じすぎです。
その辺の心理描写が出来ない辺り未熟な点だと思います。
だってガチエロが書きたかっ(ry
>残りカード枚数
確かに多いです。色んなエロシチュ(今回は触手)を
書きたくて欲張りました。少し後悔。
まぁプロットもオチも出来てるので、まったりいきます。
リアルタイムGJ!
月が跳躍力と脚力、吊るされた男が蜘蛛能力か。
『恋人』や『隠者』あたりはなんとなく検討がつくけど他の三枚の能力がさっぱり予測がつきません(w
まあそれでこそ続きが楽しみなのですが。
>>141 エロエロのグチュグチュGJ!
設定とか個人的にすごい好きだ
次も楽しみにしてます
>アンバームーン
非常にぐっじょーぶ。楽しみにさせてもらう。
ただ少し気になったのが、15枚所持で残り6枚ってところ。
タロットって1〜21+ナンバーレスの愚者で22枚じゃなかったかな。
145 :
102:2008/01/20(日) 16:02:36 ID:yiYbccB0
Σ やば…間違えた…。
そうです、ご指摘の通りなんです愚者は0なんですむしろ俺が愚者ですorz
そんなわけで脳内補完お願いしますー。
146 :
前スレ503:2008/01/21(月) 23:46:56 ID:R89xll0c
同じ携帯厨として助言させてもらえば…
メールで下書きしてコピペすると楽かも…
…機種に依って違うだろけどw
素晴らしい投下たくさん…
レスする間も惜しんで続き書いてたけど…終わりません('A`)
一話後編(Aパート)みたいな形になるかも…膨大なテキスト量…orz
とりま第一話、後編は完成させてから考えます、今週末予定
…二話からは長さや読み易さも考慮してくので今回は御目こぼしを……
>>125 正解です。甲田学人氏の『missing』から取りました。
では、どのCPがいいか指定していただけますか?
親世代の過去編でも可です。
>>146 ルーズリーフか何かに下書きすればある程度は行数削れると思いますよ。
大体6mm幅大学ノート(俺が使ってる下書き用紙)裏表1枚で5KB前後なので、分量も大体計算できますし。
……つか、俺はこんな事書いてる暇あったら下書きをちゃんと打ち込めとw(5話まで下書き終わってたりw)
148 :
125:2008/01/22(火) 03:21:08 ID:MCNjBu29
>>147 それではお言葉に甘えて
里緒と一美がレズりながら涼人へエロエロ奉仕しちゃう話とかリクエストしてもOK?
二人がくちゅくちゅキスしながら涼人のペニスを秘所と秘所で挟んでスマタ疑似挿入プレイするようなヤツ
149 :
AM:2008/01/22(火) 08:31:16 ID:AdYSZUFe
>>141&
>>124 うお、いつの間にか投下がいっぱい…
前スレのずっと俺のターンが懐かしいぜ、だがGJ!
>>146 楽しみにしてるよー応援してます。
こちらはただいまTMの最新話よ平行して久しぶりにAMの外伝を製作中。
帰宅ミッションの最終話放置していたことにようやく気がついた今日この頃。
>>148 ちょw強烈すぎw
……何とか考えてみますが、代わりのブツも考えておいてくださいorz
俺の中で一美=涼人×里緒の応援者(レインボーキャット抜きに考えて)なので、一美の奉仕は考え難いと言うか何と言うかorz
シーンは浮かんだので電波を文にしただけでいいのなら発信可能ですが。
……どうやって一美を涼人に奉仕させるか、が浮かばないんだぜorz
151 :
125:2008/01/22(火) 17:52:15 ID:MCNjBu29
>>150 ゴメwww夜勤でトラブル続出で混乱してたwwww
でも諦めないよ!期待してるよ!
学園祭で怪盗メイド喫茶とかの企画でメイドコスと怪盗コスを合体させた衣装で
もじもじ涼人へ
「あ、あなたの注文を盗みに参上いたしました、ご主人様…、
ど、どうぞメニューを取り調べくださいな…」
とかと拙くアプローチをかける里緒を見かねた一美が一緒になって接客するうちに妖しい雰囲気に陶然となっていつしか…
みたいな感じはどうかな?
ゴメwwwまだ頭腐ってるwwww
>>151 >学園祭で怪盗メイド喫茶とかの企画でメイドコスと怪盗コスを合体させた衣装
ちょwキャットシーフの今考えてる最終局面とそれなりにかぶってるw
学園祭でクラスの出し物が仮装喫茶→衣装制作の指揮が一美→里緒に露出多め+顔のマスク無しなキャットシーフの服渡す
とか普通に考えてたんですがorz
つかそれだけ考えられるのなら、許可出しますから自分で書いたらどうですかと小1時間(ry
で、書き上がったので投下ですw
恋するキャットシーフ 第4話
「……ねえ、高原君。高原君って、この街の事、分かってる?」
突然里緒にそう言われ、涼人は目を丸くする。
「え? いえ。通学路くらいなら大体把握しましたけど、街中までは……」
そう言った涼人に、里緒はにっこりと笑って、口を開いた。
「やっぱり! ……あのね、日曜に一美とショッピングに行くんだけど……、良かったら、その時に案内しようか?」
「え、いいんですか?」
その里緒の言葉に、涼人はぱっ、と表情を明るくする。
しかし、何かに気付くと、一転してすまなそうな表情になり、言った。
「あ、でも日曜は、両親が友人を呼んでパーティーをやるって……」
「そうなの? それじゃあ、仕方ないね……」
「すいません……」
そう言って残念そうな表情をする里緒に、涼人は頭を下げる。
そんな涼人を見て、里緒は大慌てで両手を振り、言った。
「べ、別に謝られる事じゃないよ! ……そうだ! 日曜日が駄目なら、土曜日はどう!?」
「あ、はい。土曜日なら……何とか……」
「じゃあ、決まりっ!」
そう言って笑う里緒に、涼人も微笑んで……、口を開いた。
「……あの、里緒さん」
「ん? なーに?」
そう言って可愛らしく首を傾げる里緒に、涼人は一瞬だけたじろぐ。
しかし、何とか気を取り直すと、口を開いた。
「僕は、里緒さんって呼んでるんですから、里緒さんも僕の事、名前で呼んでくれませんか?」
「……え、じゃ、じゃあ、涼人……君?」
「ええ♪」
涼人の言葉に戸惑いながらそう言った里緒に、涼人は満面の笑みを浮かべた。
その日の昼休み、屋上で。
「……この、馬鹿里緒! 遊びに誘うって名目で確かめるって言いましたわよね!?
だから、予想が正しければ涼人さんが遊びに行けない日曜日に遊ぼうって誘ってとお願いしたのです!
それなのに、わざわざ日をずらして本当に遊びに行くなんて、里緒は一体何を考えているのですか!?」
「だ、だって〜……」
一美に思い切り怒鳴りつけられ、里緒は涙目になる。
……そんな里緒を見て、一美は1つ本当に大きな溜息を吐くと、口を開いた。
「……まあ、これで涼人さんが警察官……、それも、1番注意すべき人である事ははっきりしましたわね。
本当に彼がICPOなのかどうかはさすがにはっきりしておりませんが……」
そう呟いた一美。さすがに一晩で国際刑事機構のメインコンピュータに進入するのは無理があり、上手く情報収集は出来なかった。
しかし、それでも何とか収集した情報と、涼人の言動に明らかな矛盾があって。
それでも何とか収集した情報と、涼人の言動に明らかな矛盾があって。
「涼人さんのご両親はもうすでに亡くなっているのは確認済みです。
ですから、『両親が友人を呼んでパーティーする』訳がありませんわ」
「……ひょっとして、『友人達』が警察の人で、『パーティー』がお屋敷の警備って事?」
一美の言葉に必死で考え込みながらそう言った里緒。
そんな里緒に、一美はにっこりと微笑んで、頷いた。
「……恐らくは、そうだと思いますわ。その準備に忙しくなりますから、襲撃当日は無理なはず。
……そう考えて、私は日曜日に遊びに行くように言って欲しいとお願いしたのですけれど……」
「……ぁぅ……」
そう言いながら一美がじと目で睨み付けると、里緒は小さくなる。
そんな里緒を見ながら、一美は考え込んだ。
「(……里緒にも、春が来たと言う事なのでしょうか? ……ただ、相手が悪すぎますけれど)」
里緒に恋人が出来るのは悪い事では無いし、それで里緒の心の傷が癒されてくれたらとも思う。
しかし、その相手が警察官だと言うのは、あからさまに相手が悪すぎて。
「……犯罪者と警察官の恋……、上手くなんて、行く訳
が無いでしょうに……」
そう、里緒に聞こえないように呟いて、一美は天を仰いだ。
「……大山のおじさん。今週の土曜日、休んでもいいですか?」
「ん? ああ、構わんが……、どうしてだ?」
急に涼人からそう言われて、大山は目を丸くして聞く。
と、何故か涼人は微かに赤くなり、微妙に大山から視線を逸らしながら、口を開いた。
「……土曜日に、り、……いえ、友人……が街を案内してくれるので……」
そうしどろもどろになりながら涼人は言い、手元にあった自分の湯飲みを口元に持って行く。
その涼人の言動を見て、大山は何か脳裏に閃くものを感じた。
「……デートか?」
「ぶっ!」
……大山がそう言ってやると、涼人は口に含んでいたお茶を思い切り噴いた。
「ち、ちち、違いますよ! ただ里緒さんが街を案内してくれるだけですし、それに、一美さんもいますし!」
「……OK、把握した。お前がその里緒とか言う娘が好きだと言う事はな」
大慌てで涼人は否定するが、大山がにやにやと笑いながら大山がそう言うと、一瞬にして硬直する。
そのまま動かない涼人を見ながら、大山は口を開いた。
「……多分、お前が言いたかったのは、『里緒って娘と一美って娘が2人で案内してくれるからデートじゃない』だろ?
だけどな、お前の話し方、あからさまに里緒って娘しか目に入ってない言い方だったぞ。
顔が赤くなってた時点で、好きな奴と街に行くって事は読めてたしな」
そう言われて、ようやく解凍した涼人は、真っ赤な顔で大山を睨み付ける。
だが、大山はそんな涼人の視線を何処吹く風と受け流して、口を開いた。
「さて、それじゃあその里緒とか言う娘について、じっくりと話してもらおうか」
「何でそうなるんですかぁっ!」
思わず、とばかりに席を立って、そう大山に怒鳴り付ける涼人。
そんな涼人に、大山はにやにや笑いながら、とどめを刺した。
「……あ、話したくなかったら話さないでいいぞ。
……その代わり、土曜は休ませないけどな」
そう言われて、涼人の動きが止まった。
「……っこの……」
怒りと羞恥心がごちゃまぜになった表情で、涼人は大山を睨み付ける。
その2つの気持ちが強すぎて、涼人が何も言えないでいると。
「大山警部、そんなに涼人君をからかわなくても……」
そう小原が助け舟を出すように割って入り、涼人はほっと溜息を吐き……、
「……で、里緒さんって誰なんだい?」
……机の上に突っ伏した。
「……里緒さんは、僕の席の隣に座ってる、ただのクラスメートです。それ以上でも以下でもありません」
……しばらくして。
観念したのか、涼人はぽつりぽつりと口を開く。
……その表情は、まだ完全に不機嫌な表情のままだったが。
「明るい人ですから、僕がクラスで浮かないようにしてくれてるんですよ」
「……で、そんな所に涼人君は落とされた、って訳?」
そういきなり小原に突っ込まれ、涼人はじと目で小原を睨み付けた。
「……何で、そうなるんですか?」
「いや、さっき大山警部に散々言われてたじゃないか、『里緒って娘の事が好きなんだろう』って」
そう小原に言われるが、涼人の表情は全くもって変わらないまま。
そんな涼人に、小原が怪訝そうな表情を向けていると、涼人が急に口を開いた。
「……分からないんです」
「……は?」
いきなりそう言った涼人に、小原が呆気に取られていると。
「……今まで人を好きになった、恋人にしたいって意味で人を好きになった事が無いから、分からないんですよ。
この気持ちが、何なのか。僕が、里緒さんの事を好きなのかどうかが……」
そう苦笑しながら言う涼人に、大山と小原は思わず顔を見合わせた。
これで終わりです。
はーなしーがすすまないー♪ ……orz
10歳で両親失って、そのまま『組織』への復讐のために外国に留学して警察官目指してたら、恋もしてないと思うんです。
リクエスト小説ですが、すいません、本気でしばらく待ってくださいorz
今下書きが前半の山場に入っているのでその流れを切りたくないんですorz
GJですわ
GJであります!
ただまあ第四話にして未だなんのエロ要素も見えないのがあれだが。
キャットシーフはこのスレでも結構異色っぽいからなー仕方ないか。
ただネタバレ的なことはあんまり言わないほうがいいと思うよ。
文の感じからして変更するんだろうけど。
160 :
102:2008/01/23(水) 18:25:34 ID:2CVfej+f
GJです!
ウブな恋愛っていいなぁ……と思っていたら、いつの間にか自分の
SSも展開がそうなっていた罠。
てなわけで投下します。
今回はエロなしでラブってコメります。
>>149 アクアメロディはSS書き始めるきっかけになった作品なので
外伝読めるのすごい嬉しいです、期待してます。
バサッバサバサッ!
「えーっと、次は吉崎さんね。……うんうんよくできてます。
最近宿題も真面目にやってくるようになったし、伸び盛りって感じですね。
あとはケアレスミスに気をつければ言うことないんですけど」
シャカッ! ピッ! シャカッシャカッ!
バサッ!
「次は後藤くん、と。あれ、授業態度は不真面目なのに意外ですね。
要領がいいタイプなのかな、あ、でも文法は苦手みたい」
ピッ! シャカッ! ピッ! ピッ! シャカッ!
バサリ。
「二宮くんはー……あちゃー、これはひどいです。
授業中何をしてたんでしょう。おまけに悪戯書きまで。
こんな時だけ『先生の笑顔素敵です』なんて書いてあったって、
補習は勘弁してあげませんよ」
ピッピッ! シャカッ!
あの仇敵・飯綱との激闘から1ヶ月が経とうとしていたある晩のこと。
誰もいない職員室に、テスト用紙をめくる音と赤ペンの音が響く。
どうやら生徒一人一人の答案に対して独り言を呟くのは
彼女の癖のようで、それが採点の能率を大幅に低下させていた。
「……うーーーーっん、と」
それでもどうやら一区切りしたようで、彼女は軽く背伸びをしてから、
電気スタンドのスイッチをオフにして給湯室へと向かった。
「あれ?」
まだあると思っていたインスタントコーヒーの残りが僅かだったので、
瓶の底を指で叩いて焦げ茶色の粉をカップに落とし、ポットの湯を注いだ。
じょぼぼー……ごひゅっ。
「あ」
どうやらポットの湯もなかったようで、呆然とする彼女の前には
重く澱む超濃口のコーヒーらしきものが現れた。
「最近いいことないなぁ」
溜め息とともにその粉っぽい半液体を流すと、彼女は独り呟いた。
教師としての表の顔をもつ怪盗アンバームーンこと宝月香織は、
期末テストの採点に通知表の作成と大忙しの毎日を送っていた。
ただでさえ教師としては半人前、しかも怪盗と二足の草鞋を履いている。
これまで溜めてきたツケが、ここにきて回ってきたようだった。
ガラガラガラ。
「ふわぁ、寒い寒い。……おーい、宝月ー。生きとるかぁー?
優しい先輩が差し入れ持ってきてやったでー」
「あ、茂木先生、ありがとうございます!」
関西弁の茂木と呼ばれた女はコンビニ袋を机に置くと、近くの椅子に腰掛けた。
「しかし、採点ぐらいまだ終わらんのん? そんなん流れ作業やんか?」
「そんな! 生徒が一生懸命書いた答案を流れ作業なんて……」
「あーあー、教育論はまた焼酎飲みながらしよな。
それよりウチが見とったるから早よ片付けてまい」
プシュッ! ごきゅごきゅ。ぷはー。
「茂木先生、なにビールなんか飲んでるんですか!?」
「阿呆。ビールとさきいかは勝者に与えられた特権や」
言っても無駄だと悟った香織は、再び採点作業へと没頭し始めた。
独り言は茂木の手前自粛しているらしく、静かな教室にくちゃくちゃと
さきいかを噛む音と、シャカシャカと赤ペンを走らせる音が響く。
「しかしアレやな。うら若き乙女がこんなんばっかで寂しないか?」
「何の話ですか?」
シャカッ! シャカッ!
くちゃくちゃ。
「もう十二月やで? 十二月言うたらサンタさんや。
自分、もうサンタさんは見つけたんか?」
「私がまだサンタを信じてると思ってるんですか?」
シャカッ! ピッ! シャカッ!
ごきゅごきゅ。
「ちゃうちゃう、男やオトコ。気になる奴の一人ぐらいおらへんのか?」
シャカッ……
ごきゅっ。
「そんな人いないですよ」
「嘘つけ。今赤ペンの手止まったやないか。白状せえ」
作業の手を止め、ふいに見つめ合う二人。と、同時にプッと吹き出した。
「先輩、ねぎらいに来たんですか? 邪魔しに来たんですか?」
微笑みながら香織は尋ねた。
「両方や」
歯を見せて茂木はニッコリ笑った。
時を同じくして、商店街の片隅にあるバー『タイガーアイ』では、
一人の男がカウンターで黒ビールを飲んでいた。
木目調の落ち着いた空間にデキシージャズが静かに流れる。
カウンターの向こうでは洒落たあご髭を生やしたマスターがグラスを磨いていた。
平日ということもあって店内に他の客の姿は見当たらない。
男は忙しげに折り畳み式の携帯を開いては、考え直して閉じるという行為を
ビールそっちのけで繰り返していた。
その様子を見かねたマスターが話の口火を切る。
「棚橋警部、どうかなさったんですか?」
「いや、ちょっと……な」
言葉を濁す棚橋に、物静かなマスターは珍しくさらに話の水を向けた。
今日の棚橋の表情が踏ん切りがつかず後押しを欲しがっているように見えたからだ。
「お仕事……ですか?」
「いや、そうじゃないんだ。ただ、電話を、ね」
やはり多くを語ろうとしない棚橋だったが、その耳は真っ赤だった。
「想い人……ですね?」
「え? あ、ああ……いや、別にそこまでは」
嘘だ。
ひとたび事件が起これば投げ縄片手に悪人を震え上がらせる棚橋警部も、
どうやら色恋沙汰には不器用らしい。
マスターは微笑み、棚橋は居心地が悪くなったのかビールを一気に飲み干した。
マスターの見透かしたような瞳にしばらくどうしていいかわからない様子の
棚橋だったが、何か思いついたのかふいに重い口を開いた。
「そうだマスター、『ブルー・ムーン』の意味って知ってるかい?」
「そうですね……『出来ない相談』もしくは『叶わぬ恋』。
バーで口説かれた女性が体よく断る際に使うカクテルです」
一ヶ月ほど前、美術館の屋上で対決した美しい怪盗の言葉をようやく理解する。
「マスター、そういうのって他のカクテルにもあるのかい?」
「ございますよ。花言葉ほど有名ではありませんが」
「そうかい、それじゃ……例えばギムレットは?」
「確か『遠い人を想う』または『長いお別れ』だったかと」
「……それじゃやめとこう、ますますビビってしまいそうだ」
ダークブラウンのやや長めの髪と整った顔立ちのせいか一見手練れに
見えるのだが、なかなかどうしてウブな所があるようだ、とマスターは思う。
「それではダイキリなんていかがでしょう? 意味は『希望』です」
「『希望』……か。過ぎた言葉だけど、それをもらうとしよう」
「かしこまりました」
マスターが手慣れた手つきでシェイカーを振ると、ほどなくして
ショート・グラスに入った白色の液体が目の前に差し出された。
棚橋はそれを一口味わうと、意を決したように携帯を掴んで出て行った。
Prrrr……
突然、職員室に機械的な着信音が響いた。
「なんや、今時着メロも使うてへんのかい」
「普段かかってくることがないですから」
そう言いながら何気なく携帯を取り出した香織は、待受画面に表示された
『棚橋警部』の文字に目を見開いた。
「はい、宝月です。ああ、はい。大丈夫です」
一見自然に振る舞っているようだが、なぜか椅子から立ち上がって
話している香織を見て、茂木はニヤニヤとして香織にちょっかいを出す。
「え? 今週の日曜なら大丈夫ですけど。買い物?
……ちょっと茂木先生やめてください! いえ、こちらの話です。
それじゃ十二時に駅前の広場ですね。はい、おやすみなさい」
香織は電話を切ると、一部始終を聞いていた茂木が見つめているのに気づいた。
「なんや、自分にもちゃんとサンタさんいるやんか」
「そ、そんなんじゃないです。ただの知り合いですよ」
「阿呆。反応見りゃ丸わかりやっちゅうねん。
どんな相手なん? 写メとかないん?」
結局その日、採点作業は終わらなかった。
一方、遠く離れた『タイガーアイ』では。
携帯を手に戻ってきた棚橋は、カウンターに座りダイキリを飲み干した。
「マスターのおかげだよ。電話してよかった」
「それはよかったですね、おめでとうございます」
そう言うと、マスターは棚橋に一杯のカクテルを差し出した。
「これは私からのおごりです」
「へえ、いつになく気が利くじゃないかマスター。
これにも意味があったりするのかい?」
「ええ、もちろん。このカクテル、キールの意味は……」
マスターは悪戯好きな子供のような目を棚橋に向けた。
「『最高のめぐり逢い』です」
棚橋は赤面した。
約束の日曜日の正午。
時間よりやや早く着いていた香織のもとに棚橋が駆け寄り、
声をかけようとしてその手が止まった。
ベージュ色のウールのコートに赤いマフラーをして、
手を息で温めている香織に見とれてしまったのだ。
突如、棚橋をデジャヴが襲う。
あれは……そう、確か怪盗と屋上で対決したとき。
不覚にも月に照らされる女怪盗の美姿に目を奪われてしまったのだった。
容姿も性格も似ても似つかないはずなのに、なぜ二人の姿が重なったのだろう。
「大丈夫ですか?」
気がつくと、考え込んでいた棚橋の顔を香織が心配そうに覗き込んでいた。
変な考えを頭から振り払うと、棚橋は意図的に明るい声を作った。
「大丈夫です。すみません、お待たせしてしまったようで」
「いえ、私も今来たところです。ところで、今日の買い物って……?」
「実は、クリスマスプレゼントを見立ててほしいんです。
お恥ずかしいことですが、女物はどうも分からなくて」
「え……?」
予想していなかった言葉に、香織の表情が強張る。
女物のクリスマスプレゼントを選ぶということは、それを贈る
意中の相手が棚橋にいるということではないか。
千々に乱れる香織の気持ちを知ってか知らずか、棚橋は笑顔を見せる。
「お腹空きましたよね、付き合っていただくお礼にご馳走しますよ」
「あ、はい……そうですね」
どことなく表情が暗くなった香織を不思議そうに見ながら、
棚橋は適当なレストランへと香織を誘った。
昼食中も香織は上の空だった。
興味がひけそうな話題をしても反応は芳しくない。
棚橋はその理由が分からず、内心焦りを感じていた。
いまいち盛り上がらないまま女性向けのショップへ移動した二人は、
本題のクリスマスプレゼント選びをすることにした。
棚橋は手袋かマフラーを考えているらしく、手に取っては首をかしげている。
意見を求められた香織は耐えかねて、内心祈りながら棚橋に言った。
「その……棚橋さんの彼女さんの服の好みがわからないと難しいです」
「へ!?」
棚橋は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
「あ、いや、彼女ではなくてですね、妹へのプレゼントなんですよ。
電話で言いませんでしたっけ?」
「え、あ、いやだ、すみません」
(……多分茂木先生が邪魔してきたときだ)
ようやく誤解の解けた二人の間の妙な雰囲気は霧散し、
プレゼントが決まってからもあちこちショッピングをして歩いた。
楽しい時間は時計の針を加速させる。
「ごめんなさい、こんな時間までお付き合いさせてしまって」
「いえ、私も楽しかったです」
迫り来る別れの刻を惜しむかのように、世間話で間をもたせている二人は、
ビルの外に出た瞬間驚嘆の声を上げた。
「あっ」
「雪……だ」
降り始めた雪は歩道を白く染め、急ぎ足の人達が二人を通り過ぎる。
しばらく空を見上げていた二人だったが、どちらともなく歩を進めた。
その時。
「きゃっ!」
舗装された歩道が雪に濡れ、香織の足を滑らせた。
「危ないっ!」
ガシッ!
すんでのところで体を支えた棚橋は、慌てて香織の体から手を話した。
その手を追い求めるかのように香織は棚橋の大きな手を握る。
無言で手を繋いで歩く二人。
お互い何かを言おうとしては飲み込み、沈黙が続く。
その沈黙を破ったのは、香織でもなく、棚橋でもなく、
道すがらにある電器屋の街頭テレビだった。
「緊急ニュースをお伝えします!
政治家の影山氏が怪盗アンバームーンに宣戦布告です!」
歩みを止めた棚橋の表情が強張り、画面に釘付けとなる。
そして、それは香織も同じだった。
「局に送られて参りました影山氏からの声明文を朗読致します。
『私は現在、貴方が探しているタロットを所持している。
腕に覚えがあるのであれば、盗みに入られたい』、以上です。
さて、本日は怪盗に詳しいジャーナリストの梶原氏をお招きして」
Prrrr……
声明文の朗読が終わるが早いか、棚橋の携帯が鳴った。
「はい、今見てます。了解、すぐ署に向かいます」
ピッ。
短い通話が終わると、棚橋は首をすくめてみせた。
「すみません、香織さん。お聞きの通りです。
ディナーはまた今度ということで。」「これから……捜査会議ですか?」
「はい、急遽対策を練らねばならなくなりましたから。
大変失礼ですが……今日はお送りできません」
「ええ、私のことは気になさらず」
両手を合わせてすまなそうな顔をした棚橋はタクシーを捕まえる。
その姿に香織は声をかけた。
「あ、あのっ」
「はい?」
「い、いえ。お仕事頑張って下さい」
軽く手を振りそれに応える棚橋を乗せたタクシーは、急発進で走り去った。
後に残された香織は、それを見送りながら独り呟く。
「私だって対策練らなきゃ……いけないんだけどな」
169 :
102:2008/01/23(水) 18:45:50 ID:2CVfej+f
今日の投下は以上です。
日常を描写してみたのですが、「二人は微妙な関係だった」と説明すれば
一行で終わる話なんですよねー……初心者なのでわかりませんがスレの
容量とか大丈夫なんでしょうか?
でも日常があってエロが引き立つと思うわけです。
すなわち、日常はエロへの布石!!
てなわけで次回はエロエロのグチュ(ry
GJ
いやいや、日常の描写も大事だと思うので問題ないですよー
その分次回への期待が高まりますし(w
容量は500KBくらいまでは大丈夫なはずなのでまだ300近く余裕はあるはずです。
172 :
AM:2008/01/24(木) 11:38:20 ID:KwaqsazH
キャットシーフやアンバームーン見てると触発されて恋愛要素を入れてみたくなる。
しかしいざ書こうとすると男側が変態にしかならないという不思議。
そんな中、長らく放置していたアクアメロディの外伝「美音のドキドキ帰宅ミッション!」の最終話が完成したので投下します。
前スレでのあまりの人気(?)に応えてダンボールを使ってみましたが思い切り失敗しています。
注意・勢いだけで書いた、今は公開している。
ガサゴソ、ガサゴソ。
月明かりが照らす闇夜の道を四角い物体が駆け抜ける。
子供がすっぽりと納まるくらいの大きさのそれはダンボール箱だった。
電柱から電柱へ。
移動のたびににょきっと足を出しては移動する箱は客観的に滑稽でしかない。
だが、中の人こと水無月美音は真剣だった。
何せ、なんとか塔亜邸から脱出したものの、その際のいざこざで着衣をほぼ全て奪われてしまったのだから。
「でもよかった、ゴミ置き場にダンボールがあって…」
塔亜邸の塀を乗り越えた段階で美音に残されていた着衣は靴だけだった。
はっきりいってフルヌードといっても差し支えない状態。
そんな格好のまま数キロの道を帰宅するなど年頃の乙女には耐えられるはずもない。
とはいえ、ダンボールを被っただけというのも十分恥ずべき格好ではあるのだが。
「はぁ…せめて靴がちゃんと動いてくれれば」
一つため息をつきながら周囲を警戒。
本来、怪盗アクアメロディの衣装の一部として身につけられている靴には様々な機能が搭載されている。
だが、風見のとの戦いでその機能は全て破壊されてしまったため、今はただの靴に過ぎない。
タクシーや電車が論外である以上、美音が自宅に辿り着くためには徒歩という手段しかないのである。
「ふぅ、ここまで来れば一応は大丈夫よね」
周囲に人がいないことを確認し、よやく一心地をつく。
ここまで来れば自宅までは相対した距離は残っていない。
塔亜邸を脱出し、ここまで来るには数々の苦難とハプニングが少女を待っていた。
ある場所では酔っ払いに小便をかけられそうになり、ある場所では野犬に追い立てられる。
またある場所ではホームレスの縄張り争いに巻き込まれそうにもなった。
他にも数々の苦労があったのだが、精神衛生上の都合で割愛する。
とにもかくにも、怪盗少女改めダンボール少女こと美音は波乱万丈の夜をようやく終わらせようとしていた。
「早く帰ってシャワーをあび――」
「盗みだ! 宝石が盗まれたぞー!」
「くそっ、手荒な真似を…!」
「ホホホ、この怪盗アクアメロディを捕まえられるかしら!?」
「――たいって、ええっ!?」
しかしその瞬間、後方から聞こえてきた叫び声に美音は思わず振り向いてしまう。
自分は今ここにいるのにアクアメロディがでたとは一体どういうことなのか。
混乱しかける美音だが、聞こえてくる足音に慌てて手足を引っ込めてダンボール箱の中にうつぶせる。
すると、複数の足音がダンボール箱の横を通過していく。
(な、なんなの…あれ…?)
隙間から通り抜けていく影を覗き見た美音は思わず呆然としてしまう。
影は三つあり、そのいずれもが人影だった。
その中の先頭の影――女は目元に仮面、ミニスカートに軽装とアクアメロディと同じような格好をしていたのだ。
月明かりのみが光源のため細部までは見えないが、成程確かにこれならアクアメロディといえなくもない。
が、本物がここにいる以上、今逃げていく女は紛れもなく偽者だ。
(また偽者…?)
怪盗アクアメロディはその知名度とは裏腹に、外見の情報露出が非常に少ない。
故に大半の一般市民は怪盗の容姿を知らず、それ故に彼女の名を語る偽者の出現も珍しくはなかった。
とはいえ、その大半は見た目はおろか盗みの腕すら本物には遠く及ばないためすぐに警察に捕まってしまう。
中には、美音自身が処断した者すらいるくらいだ。
おそらく今駆け去って行く女もその類だろう。
よりにもよってこんな時に…
見て見ぬふりをしても良いのだが、相手は自分の偽者である。
しかも状況的に見て捕まる様子もないし、このままでは下手すると怪盗アクアメロディの名前に傷がつく。
今の格好が格好だけに、できれば係わり合いになりたくないのだが、そうもいってはいられない。
こうしている間にも偽者との距離が開いていく。
後ろからは警備員たちが迫ってくる。
美音は、少し泣きたくなりながらもダンボールから足を出すと偽者の追走を開始するのだった。
「オーホッホッホッ! 大量、大量ねっ!」
「ですねー。いやー上手くいきましたねドロボ様」
「コラ、今のアタシはアクアメロディだよ!」
「おっとそうでした、すみませんアクマメロディ様!」
「アクマになってるぞアニキ。しかし思ったよりも警備が手薄で助かったっすね」
「運も実力のうち! 仮に失敗してても責任は全部本物に行くわけだし、こりゃやめられないねぇ」
アジトの中、偽者アクアメロディの女を始めとした三人組が高笑いをあげていた。
この三人、駆け出しの怪盗チームで腕は実のところそれほど大したことはない。
本来ならば今回の盗みも失敗の可能性のほうが高かったのだが、
警官隊の大半が塔亜邸へと向かっていたため彼らへの追跡が甘くなっていたのである。
実にこの三人、悪運が強いといえよう。
「…ところでさっきから不思議に思ってたんだけど」
「ああ、俺も思ってました。あんなところにダンボール箱おいてたっけ?」
ひとしきり高笑いを終えた三人はふと見慣れぬ物体がアジトの中にあるのを発見する。
それは部屋の隅に鎮座しているダンボール箱だった。
(…み、見つかった?)
密閉空間の中、たらりと冷や汗を流す美音。
上手く追跡を続け、偽者たちのアジトを突き止めて潜入したまでは良かった。
だが誤算だったのはあまりの物の少なさ。
ダンボール箱が一つあるくらい疑問に思われないだろう。
そう思っての潜入だったのだが、物がほとんど置かれていないとなってはいかなダンボール箱とはいえ目立つのは必然だった。
「怪しいねぇ。ちょっと調べてみなさい」
「おいーす」
(こ、こっちに来る)
痩せ気味の男がドロボと呼ばれていた女に命じられて近寄ってくる。
正直、三人とも大した腕には見えないので一対三でも特に問題はないだろう。
そう判断した美音は意を決してダンボール箱ごと立ち上がった。
「うわっ、ダンボール箱が浮いた!?」
「馬鹿! 中に人がいたんだよ!」
「ス、ス〇ーク!?」
「人の名前を勝手に語り、悪事を働くなんて許せない。この怪盗アクアメロディが貴方たちを処罰します!」
『えーっ!?』
三人組の驚愕の声がアジトの木霊する。
怪しげなダンボールから人が現れたと思えば、その人物が本物のアクアメロディを名乗ったのだからそれも当然だ。
だが、真面目に驚いているのは小太りの男だけだった。
数瞬後、白けたような二つの視線が美音を貫く。
思わぬ相手の反応に怪盗少女は僅かにひるんでしまう。
「な、何よその反応は…」
「いや、だってなあ?」
「そんな格好で本物でございって言われても」
「え、ほ、本物じゃないんっすか!?」
「どこにダンボールをコスチュームにした怪盗がいるんだい!?」
「あ…」
そこでようやく気がついたように美音は自分の姿を見下ろした。
胸元から膝上までを覆うダンボール以外は全裸、顔にはダンボールの切れ端とゴムで作った即席の仮面。
これで本物だというほうがどうかしている。
(い、いけない。つい…)
色々あったせいでテンションがおかしくなっていたが、冷静になって考えると今の自分はかなり間抜けだ。
そもそもこの状況では名乗る必要性すらない。
(だ、だけどっ)
やってしまったものは仕方がない。
そう気を取り直した美音はキッと三人組、とりわけリーダー格の偽者を睨み付けた。
こうして明るい場所で見てみると、偽者にはかなり粗があった。
本物を見たことがあるのだろう、格好こそは似せているようだったが、肝心の中身が似ても似つかない。
歳は四十近くだろうか、微妙に小じわが見える肌。
ややたるんだお腹にくびれが少ないウエスト。
そしてほとんど隆起のないバスト。
別段スタイルを誇っているわけではないが、それでもこのような女に名前を語られるのは著しく不快だ。
その怒りが視線を強め、なんとしてもこの三人組を退治しなければという使命感が湧き上がる。
「ふん、小娘が。大方本物に憧れてるだけの一般人なんだろう? お嬢ちゃんは変態に襲われる前におうちに帰りな!」
「誰が帰るものですか。そっちこそさっさと警察に自首しなさい、この偽者!」
「この怪盗かぶれの小娘が…あんまり舐めた口を聞いてると酷い目にあうよ?」
「そうだそうだ、えっちぃことしちゃうぞ!」
胸元から覗く胸のふくらみに誘惑されてしまったのか、ふらふらと不用意に痩せ気味の男が美音へと近づく。
だが、その無防備さは怪盗少女からすれば絶好のカモでしかない。
美音の足が持ち上がり、ダンボールの裾からチラリと肉付きの良い太ももが覗く。
痩せ気味の男はそれを近くで見ようと頭を下げ、次の瞬間。
ドガッ!
「ぶげっ!?」
「あ、アニキ!? こ、このーっ! ってウボァッ!?」
顔面に蹴りの直撃を食らい、男がすっとんでいく。
それを見た小太りの男が敵討ちとばかりに襲い掛かってくるも、やはりこちらもあっさりとキックの一閃で床に沈んでしまう。
「や、やるじゃないのさ」
「さあ、盗んだものを返して! 自首なら罪は軽くなるわよ?」
「えらそうな口を。ザコ二人を倒したからといっていい気になるんじゃないよ!」
本物と偽者。
二人の怪盗アクアメロディが睨み合う。
だが、口調とは裏腹に偽者の女はその場から一歩も動こうとはしない。
怖気づいたのかといぶかしむも、それならば何故逃げ出さないのか。
(…ひょっとして、罠?)
偽者の少し前にある床に赤い丸が書かれている。
普通に考えれば、そこに罠が仕掛けてあるのは間違いない。
(なんか、馬鹿にされているような…)
真剣にとりあっているこちらが馬鹿みたいに思えてくる陳腐な罠だ。
落とし穴でも掘ってあるのだろうが、人を馬鹿にするにもほどがある。
最新の技術によって配備された数々の罠を潜り抜けてきた怪盗に向かってこれはない。
「そっちがこないなら、こっちから行くわよ!」
一直線に駆け出すと、ニヤリと偽者が笑うのが見えた。
いよいよあの赤い丸が罠であることは間違いなさそうだ。
苦労の連続だった夜の締めがこんな馬鹿たちの相手だとは今日はどういう厄日なのか。
美音は心中で深い深いため息をつきながら赤い丸の前でサイドステップをする。
刹那、驚愕に覆われる偽者の表情が見える。
(わかりやすすぎる…)
横には何もあるようには見えない。
男たちと同じように一撃入れて終わらせよう。
そう考え、片足を踏み込んだ瞬間――その足が何かに捕らわれた。
「えっ!?」
それは完全に相手の弱さと馬鹿さを見くびったがゆえの油断だった。
普段ならば起こすはずがなかったミス。
だが現実に美音の左足は床下から現れた縄に締め付けられ、そして一気に持ち上げられていく。
古典的ともいえる縄による吊り下げ捕獲トラップだ。
「きっ…きゃあっ!?」
踵落としのような体勢で大開脚を強いられた美音は羞恥の叫びを上げる。
ダンボールの下は何も穿いてないので思い切り股間が晒されてしまう格好だ。
だが縄は更に巻き上がると少女の身体を宙に持ち上げる。
爪先立ちになっていた右足が床から離れ、美音はあっという間に逆さまに吊るされてしまう。
「ふふん、いい格好じゃないか」
「く、うっ…」
「どうだい、アタシの華麗な頭脳プレーは!」
(自分で言う…?)
呆れる美音だったが、罠に引っかかってしまったのは事実である。
あからさまな罠の傍に本命の罠を仕掛ける。
トラップ設置の中でも基本中の基本だった。
(あれが演技だったなんて…ちょっと見くびりすぎてた…!)
あまりにもそれまでのやり取りがバカ丸出しだったということは言い訳にすらならない。
結果が全て、捕まってしまったという現実は覆せない。
「くっ…」
なんとか縛めから逃れようと身体を振ってみるもギシギシときしむ音がするだけだった。
なまじ片足だけが吊られているという状態もまずい。
ただでさえ逆さまという状態なのに、片足が吊られることによってバランスが取りずらくなってしまっているのだ。
じわじわとピンチであるという実感が湧いてくる。
風見のときと比べて危機感こそはそれほど湧かないが、この状態ではロクな抵抗もできないのも確かだ。
「さぁて、暴れん坊の子猫ちゃんにはどうオシオキしてやろうかねぇ」
「この…下ろしなさい!」
「おやおや、まだ自分の立場がわかってないと見える。これはちょっとおとなしくさせる必要があるようだね」
「ちょっと、こないで。何を…」
「なあに、その邪魔っけなダンボールを引っぺがすだけさ」
「え……ちょ、ちょっと!? あっ、ダメ!?」
吊り下げられている状態でも辛うじて身体を覆っていたダンボールへと偽者の手が伸びる。
そうはさせじと美音も抵抗をするが、この体勢では抵抗らしい抵抗すらできない。
あっという間に乙女の肌を守るダンボールはつかまれ、派手な音を立てながら引き裂かれてしまう。
「やっやめなさい、ダメよっ!」
「なんだいなんだい、下はすっぽんぽんかい!」
「や、やめてっ」
「やなこった。ほうら、びりびり〜! アッハハ! いいザマだよ!」
「うぅっ…」
再び丸裸に剥かれてしまった美音は咄嗟に両腕で胸と股間を隠す。
いくら見ているのが同性とはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしい。
それに倒れている男たちもいつ目を覚ますかわからない。
熱が頭へと下り、少女の顔が赤く染まっていく。
「ふん、そんな格好をしてるくせに一丁前に羞恥心はあるようだね」
「あ、当たり前でしょう!?」
「うるさいねぇ。それじゃあ…お次はそのツラを見せてもらうよ」
「あっ、や、やめなさい! 触らないで!」
「やめろと言われてやめるもんか。こんなボロっちい仮面で隠すくらいなんだ、さぞかし不細工なツラをしてるんだろうね?」
感動の支援
ダンボールで作られた即興の仮面に手が伸びる。
本物だと認識されていない今、仮に素顔を見られたとしてもアクアメロディとしては特に被害はない。
だが、一人の女の子としては非常に困る。
たとえ相手が警察でもなく、面識もない相手だったとしても素顔を見られるということは水無月美音という個人を認識されるということだ。
まさか自分の素性を調べて脅しをかけてくるなどということはあるまいが、不安は残る。
「いやっ! もう、放してよっ!」
「やなこった。そらっ!」
「ああっ…」
美音は胸と股間が見えてしまうのも構わず両手で必死に抵抗する。
しかしいかんせん吊り下げられている状態ではバランスがとれずに力を上手くこめる事ができない。
健闘むなしく少女の仮面は偽者の手に落ちてしまい、仮面の下の素顔が露出した。
慌てて両手で顔を覆うが、偽者は問答無用で少女の両手を振り払ってしまう。
「なんだい、本当に小娘じゃないか! それに…なにさ、それは!」
「えっ」
偽者が突きつけた指の先にあるのは美音のおっぱいだった。
豊かな二つのふくらみは逆さまにされてもほとんどたれずに綺麗な半球を描いたままその存在を誇示している。
男ならば誰でも見とれてしまうであろうそれを、偽者の女は親の敵のような視線で睨み付けた。
「最近のガキは頭の中身に反比例するように発育ばかりよくなりやがって…何食ってそんなデカパイを作ったんだい!?」
「な、何を言っているの!?」
「うるさいうるさい! こんなモノ……こんなモノッ!」
「あ…ちょっ、あんっ!?」
ぐわしっ!
そんな擬音が聞こえてきそうな勢いで偽者は美音の両胸を掴み握る。
余程大きな胸に恨みでもあるのか、乳房を千切りとらんばかりの勢いだ。
「い、痛い痛い!」
当然そんなに乱暴にされては持ち主である美音はたまらない。
だが偽者の手は止まらず、ぐにぐにとバストを揉みつぶしたりぐりんぐりん掴みまわしたりと好き放題だった。
恐らくは自分が貧乳なことがコンプレックスなのだろう。
私怨が入りまくった責めに美音はたまらず非難の声を上げる。
「やめて、やめてってば! この…おばさん!」
「なっ!? 言うに事欠いてこの小娘! 誰がおばさんだって、このっ!」
「あうっ…もう、そんなところ叩かないでっ!」
まだまだ支援
偽者の平手が美音の肌を打つ。
といっても叩かれているのは頬やおしりではなく怒りの元となっている胸の双子山だった。
ビシッ、バシッ!
まるで振り子のようなリズムで豊かな二つの果実が右へ左へと振り回される。
見た目はかなりアレな状態だが、縦横無尽に弾んで揺れるおっぱいは大迫力だ。
幸いにも、男二人は気絶したままだが、もしも彼らが起きていれば悶絶もの間違いないスパンキングである。
あまりの痛みに美音の身体から徐々に力が失われていく。
股間を少しでも隠すためにと閉じられていた右足がくたりと垂れ下がった。
自然、開脚の形になった少女の体位はエロビデオの女優顔負けの淫猥なポーズとなってしまう。
しかしそのことに対して偽者の女も美音本人も気をとられることはなかった。
既に偽者のほうは目がイきかけているし、美音のほうは痛みに耐えるので精一杯だったのだ。
「ハァッ…ハァッ…」
が、全力で腕を振るっていれば女の身ではすぐにバテる。
偽者は肩で息をしながら、それでもなおキッと美音の乳房をにらみつける。
もはやここまで来れば目的が手段に摩り替わってしまっているといっていいだろう。
対する美音は薄赤くはれた自分の胸から伝わるヒリヒリ感に嘆くばかりだった。
命の危険はなさそうだが、このままでは別の意味で危険だ。
だが、どうにかして脱出しなければ、と思案をめぐらせようとした美音の目に驚愕の光景が映った。
偽者が鞭を持ち出したのである。
「ふ、ふふふ…これで叩けば、そのでっかい脂肪も減るんじゃないかねぇ…」
「ちょ、ちょっと、本気なの!?」
「アハハハハ!」
当たり前だが美音にSMの趣味はない。
このままでは鞭で胸を拷問されるという変態プレイを施されてしまう。
しかし今の状況を脱する術がすぐに思い浮かぶわけもなく、少女の目に大きく振りかぶった年増の姿が映る。
鞭打の恐怖に思わず目をつぶる美音。
「あ」
だがその瞬間、汗で手元が狂ったらしく、鞭が思わぬ場所を切り裂いた。
それは美音を縛るロープだった。
当然、左足は開放され、床に着地した少女は自由の身となる。
「よくも、やって――」
後はもう説明するまでもない。
裸の少女に叩きのめされる女の姿があるだけだった。
なお、この翌日、警察署の前に件の三人組が盗まれた品とともに置き捨てられていたのだが、犯人は不明のままだった。
183 :
AM:2008/01/24(木) 12:02:30 ID:KwaqsazH
支援感謝、なんか連続投稿規制食らって焦った。
そしてこんなんですまん、コメディが書きたかったんだ…
お詫びとお知らせ。
一応キリのいいところまで進んだのでトライアングルムーンを一時休載して中編を書きたいと思ってます。
内容は帰宅ミッションと同時期に考えていたアクアメロディの外伝で水のジュエルを盗むときの話です。
本編前の話なのでプレ・アクアメロディといったところでしょうか。
帰宅ミッションとは違い、コメディ要素は入れないつもり。
一応三話以内に終わらせるつもりなのでTMの続きをお待ちの方はしばしお待ちを。
なんというソードマスターヤマトwww
心からGJを贈る
どっちも楽しみすぎるwww
しかし
>>149曰く、TMももう最終話なのか・・・
AMさんの作品好きでほぼ毎日ここに来てる俺にとっては残念すぎる><
>>183 いいよいいよ!応援するよ!
AMのエロエロバッドエンドを拝むその日までずっとアンタについていくよ!
そして外伝ではついにダンボールがwwww
>185
大丈夫だ、安心しろ。最新話、と書いてある。
最終話なのは帰宅ミッションだ。
189 :
102:2008/01/25(金) 03:23:58 ID:k8CBKQjW
うおー、GJ!!
ついに念願の段ボールがwww
そして空気読まないで投下します〜。
その晩。宝月家の地下室にある小さな金庫。
香織は今まで手に入れたタロットを取り出すと机に広げ、考え込んでいた。
「お嬢様、何をなさるおつもりです?」
お茶を運んできた神崎が、その真剣な表情に息を飲む。
「こないだの飯綱との戦いで、私は分かったのです。
カードの魔力を引き出した人間が相手では、『月』だけでは無理だと。
そしてあれだけ大々的に宣戦布告をしてきた影山は、確実に魔力を
引き出していると考えていいでしょう」
影山 勉。
年の頃は五十歳ほどだろうか。
痩躯ながら長身で、神経質そうな男だ。
表向きは政治家なのだが、裏では暴力団と手を組んで脅迫や地上げなど
相当悪どいことをやって財を成したという噂が絶えなかった。
その財の裏では沢山の人が泣いていることは想像に難くないのだが、
何故かそれが明るみにならないことから、警察との癒着が噂されたこともある。
ただでさえ恐ろしいそんな男が、タロットの魔力を引き出して
手ぐすね引いて待ち構えているというのだ。
「しかし『月』では無理だというのでは……」
「だからこそ、封印したカードの力を借りるのです」
ポンッと、名案だと言わんばかりに手を打つ神崎。
「その手がありましたか! ここにあるすべてのタロットの力を使えば
どんな相手だろうと倒すことは赤子の手をひねるより容易いことでしょう」
楽観的な声をあげる神崎とは対照的に、香織の表情は暗い。
「いえ、事はそう簡単ではありません。
この一ヶ月間、私は実験と鍛錬を繰り返してきました。
それでも、一晩で変身出来るのは……三回が限度なのです」
「三回……でございますか?」
「そう、『月』を入れると残り二回ね。それでも体への負担は大きいの。
だからこそ使いどころを過てば全てが終わる……私はそれが怖いのです」
思い悩んだ香織は、机の上に並べられたタロットを手で弄んだ。
煌びやかな宝石に彩られたカードは指が触れるたびに怪しい光を放つ。
「それでは、強力なカードを使うに越したことはありませんな。
名前から察するに……『戦車』なんてのはいかがですか?」
「盗みに入った家を重火器で爆破、皆殺しにしろというのですか?」
「なッ!? じゅう……?」
どうやら『戦車』とは虚空から古代の魔法兵器を出現させる能力らしい。
確かにそれを用いれば倒すことは可能だろうが、同時に周囲の建物や
一般人に与える被害は甚大となるだろう。
それは、もはや怪盗と呼べる行為ではない。
「そうなのです。強力なカードは強力であるが故に使えないの。
それらの持ち主が魔力を引き出していなかったことに感謝したいですね」
そう溜め息をつく彼女の手に握られたノートに神崎は目を向ける。
「ところで、それは何ですかな?」
「これ? お父様とお母様が残してくれた研究メモです。
もっとも十四年前に途中から破れてしまったみたいですけど」
「そんなものが……知りませんでした」
「両親は私にこれを託してから息を引き取ったの。
でも、これから戦う相手の能力がどんなものかは書かれていない。
残りのカードはもともと宝月家が所蔵してなかったものだから」
「……はぁ、それは……しかしお嬢様、あまり根を詰めては……おや?」
神崎の言葉を途中で止めさせたもの。
それは、机の上で一際目立つ一枚のカードだった。
そのカードは他のカードに比べて特段煌びやかなわけではない。
むしろ、逆だからこそ神崎の目を引いたのだ。
宝石が光り輝くカードの中にあって、何の装飾もないくすんだカード。
「これは……何ですかな?」
そのカードをぞんざいに手に持ち、香織は面白くなさそうに答えた。
「『愚者』のカードです。やっぱり目立ちます?」
「それは、どのような能力なのですか? 名前からは……その」
好奇心からか尋ねた神崎に、香織は怪しげな微笑みを向けた。
「なんなら神崎、貴方に使ってあげましょうか?」
「え!? お、お嬢様、ご冗談はおやめくださいまし」
諫める神崎の言葉に耳を傾ける様子もなく、香織は『愚者』の
カードを胸に押し当てて魔力を引き出した。
銀色の光が香織を包み込み、やがて変身を終える。
そこには、普段と変わらないアンバームーンの姿があった。
「衣装は『月』と変わらないんだけど。それじゃいきますわよ、神崎」
「ちょっと、お嬢様それは!」
両手で体を護るかのようにして慌てふためく神崎をよそに、
アンバームーン、いやアンバーフールの手に魔力が込められていく。
周囲の空気が歪み、力がどんどん膨れ上がり凝縮されるのが分かる。
その尋常じゃない魔力に神崎は戦慄する。
「ひぃぃーッ!!」
「くらいなさい、神崎!!」
神崎は目を瞑り、体を丸めた。
襲うのは体を打ち抜き吹き飛ばす衝撃か。
それとも肉を切り裂き骨を砕く斬撃か。
はたまた、思いも及ばない恐ろしい別の何かか。
十数秒後、恐る恐る目を開けた神崎の身には。
何も起こっていなかった。
どういうことなのか理解できない神崎に、変身を解いた香織が謝る。
「ごめんなさい、神崎。悪ふざけが過ぎました」
「お、お、お嬢様……どういうことなのですか」
「あのね、能力は『何も起こらない』ことなの。
何か凄いことが起きると思わせておいて相手を驚かす。
振り回されてビビった相手の顔が『愚者』だというわけ」
「は、は、はぁ……悪い冗談です。死を覚悟しましたぞ」
「本当にごめんなさい、神崎。でも使えないカードだってことが
はっきり分かったでしょう?」
「し、心臓に持病を抱える相手なら使えることが分かりました」
両手を合わせてしきりに謝る香織だったが、神崎には
その後二、三日口を聞いてもらえなかった。
そして肝心の対策もそこそこに、第二の決戦がすぐそこまで迫っている。
「ふざけるなッ!!」
バンッ!!
会議室に怒号と机を叩く音が響く。
普段は温厚な棚橋が、いつになく逆上し肩を弾ませている。
隣にいた後輩が、肩を掴んで押し留めているものの、彼もまた
不服そうに視線を正面に座る人物に向けていた。
「……気持ちは分かるが、仕方ないのだよ棚橋。
全ては上が決めたことだ。影山氏の護衛はしない。
そして怪盗の相手もしない。これは命令だよ」
「圧力……ですか?」
棚橋は後輩の手を振り払い、上司であり隊長である片倉警視正を睨んだ。
直球すぎる言葉にも片倉は動じない様子で、眼鏡を指で直した。
「そんなところだろう。影山が裏で手を回したとしか考えられない。
彼の手はよほど長く、腹はよほど探られては痛いらしい」
「しかし、それでは何のための特別犯罪対策部隊なのですか?」
「所詮我々も駒の一つだということだ」
片倉の淡々とした語り口に、会議室は静まり返った。
その場にいる誰もがやるせなさに唇を噛みしめている。
片倉はすっかり冷めたコーヒーを一口啜ると、再び口を開いた。
「お前たち、博打は好きか?」
「は?」
あまりに意表を突く言葉に、誰もがまともな反応が出来ずにいた。
「棚橋、どうしても動きたいなら公然と動いてはまずい。
休暇を取って一般人として動け」
「しかし、怪盗に一人で立ち向かえ、と?」
片倉は少し考え込むと、強い視線で棚橋を見据えた。
「今回ばかりは怪盗は二の次で構わん。
政治家と警察上層部の悪事を白日の下に引きずり出せ。
分の悪い賭けだが……責任は私が取る」
「……分かりました、このままじゃ怪盗追えやしませんからね。
邪魔なお偉方たちにはここらでお引き取りいただくとしましょう」
「よし、他の者は通常業務をしながら棚橋を密かにサポート。
報告する際はくれぐれも動きを悟られないよう注意しろ」
「了解!」
ガタガタと立ち上がり、会議室を出て行く隊員達。
先ほどとは打って変わって、その表情には輝きに満ちていた。
夜の街を、濃紺の影が疾駆する。
屋根から屋根へ跳び移るたびに、艶やかな銀髪が踊る。
その腰には、以前にはなかった小さなポーチが揺れていた。
「影山……首を洗って待ってなさいッ!」
電柱の上に降り立った怪盗アンバームーンは深呼吸をすると、
大きく身を縮めてから空へと飛翔した。
雲をも突き抜けんとばかりに上昇すると空中でピタリと動きを止め、
一転して重力に身を任せ目的地へと急降下していく。
その姿は獲物を狙う猛禽のようであった。
「な、なんだ……うごぉッ!!」
「お、お前はアンぶげぇッ!!」
黒いスーツの男の背中に着地した怪盗は、驚愕して動きを止めている
周囲の男達の首に、あるいは腹に、素早く蹴りをお見舞いし倒していく。
一分後。
庭で警備にあたっていた黒服の男達は全員地面を舐めていた。
「いかにも悪徳政治家の手先って感じね。ヤバそうな連中がうようよしてるわ」
ぼやきながら邸内に入り込んだ怪盗は、そこにいた黒服達の銃撃を
辛うじてかわすと、宙を舞うかのような動きで確実に蹴りを叩き込んでいく。
最後に一人残されたサングラスの男は、既に弾切れとなった銃を
ガチンガチンと連射しながら座り込んでいた。
「あ……あ……」
「震えなくても大丈夫よ、優しくしてあげるから」
甘い声で近づくと、怪盗はしゃがんで男の頭を撫でた。
「一つ教えてちょうだい。貴方達のボスはどこかしら?」
「わからない……さっきまでは確かにいたんだが、
いつの間にかいなくなっちまった……」
「そう」
隙を突いて襲いかかろうとした男を手刀で気絶させると、怪盗は周囲を見渡した。
(おかしい……確かにカードの魔力は近くに感じるのに……)
次の瞬間、警戒を緩めないようそろそろと歩く怪盗を異変が襲った。
「あうッ!?」
怪盗の腹部を強烈な衝撃が突き抜けたのだ。
何が起きたのか分からないといった表情で、腹を押さえながら
なんとか崩れ落ちるのをこらえる怪盗。
周囲を見回しても、そこには倒れている黒服しかいない。
にもかかわらず、
「はぅッ!! あぅッ!? きゃぁッ!!」
次は背中を蹴られたような衝撃が襲い、体がのけぞった瞬間
再び腹部に拳を叩き込まれたような衝撃が襲い、膝をついたところを
胸を鷲掴みにされたような感覚が襲う。
(まさか……これが影山の能力……)
気づいた時には既に遅く、女怪盗は見えない手に首を絞められ気絶した。
(う……ぅん……?……ここは……?)
目を覚ましたアンバームーンは、自分の両手が手錠に拘束され、
天井から吊り下げられていることに気づいた。
どうやら地下の一室らしく、壁も床もコンクリートの打ちっ放しで
家具のような物は何一つない。
天井も同じように一面コンクリートなのだが、室内を薄暗く照らす
ランプと、フックのついた鎖が垂れ下がっている。
そのフックの一つに、怪盗は手錠で繋がれていたのだった。
(この展開……悪党の考えることは同じなのかしら……)
怪盗はこれから自分を襲うであろう恥辱を想像して身を震わせるのだった。
「お目覚めかな、怪盗アンバームーン」
コツコツと床を鳴らして近づいてきたその男は、テレビで
何回か目にした覚えのある影山勉その人だった。
だが国会で答弁をする時と同じスーツ姿にもかかわらず、
嗜虐心を滲ませたその表情はまるで別人のようだった。
「ええ、モーニングコーヒーでもいただけるのかしら?」
「ふふふ、気の強い女だ。だがそうじゃないとおびき寄せた甲斐がない。
せいぜい私を楽しませてくれよ」
そう言った影山の姿がみるみる透き通っていく。
間もなく完全に姿が消え、声だけが室内に響いた。
「さすがのアンバームーンも、『隠者』が相手とあっては
手も足も出ないか……おわッ!?」
声の聞こえてくる方向を頼りに、怪盗が足を出したのである。
しかしどうやらあと少しのところで不発に終わったようだった。
「この……ッ!!」
「はぁうッ!!」
次の瞬間、ズムッという音とともに怪盗の体が少し浮いた。
腹部に見えない拳が食い込んだのである。
怪盗は叶う限り体を折って苦悶の表情を浮かべる。
「危ない所だったよ。少しお仕置きをしなければな」
ズムッ! ドムッ! ズムッ!
「ふぅッ、ぐぅッ、はぁぅッ!!」
怪盗のコスチュームが歪み、何度も何度も強烈なボディブローを
喰らったことを示している。
その衝撃に銀色の長い髪は乱れ、怪盗の顔にかかって揺れた。
艶やかな唇からは一筋の涎が垂れ、膝はガクガクと震えている。
強制的に体を支えている手錠の拘束がなければ、
床を転げてのたうちまわっていることだろう。
「ハァ……ハァ……今度抵抗してみろ。
地獄の苦しみを味わわせてやるからそう思え!」
「うぐ……ふぅ……」
怪盗は与えられた苦痛に顔を歪め、弱々しくうなだれた。
196 :
102:2008/01/25(金) 03:46:08 ID:k8CBKQjW
エロ未遂で恐縮ですが、今夜の投下はここまでです。
こないだは恋愛で、今回は腹パンチ……忙しいSSになったものです、我ながら。
GJ! しかし投下速度が速くて嬉しいぜ。
隠者の能力は予想通り透明化の模様。
しかし私的な時間があまりないであろう影山にはあんまり意味がない能力だろうな。
俺だったらガンガン使いまくるが(w
俺だったら女風呂を覗……いや、世界平和に使わせてもらうぜ
199 :
AM:2008/01/25(金) 17:57:18 ID:0lR6Rn97
アンバームーンきてた、エロがなくともGJ!(w
さて、前回の予告通りにアクアメロディの外伝二本目行きます。
おそらくは前中後の三回で終わるはず。
完結済みの本編前の話ですが、話の中にいくつか本編との矛盾がありますのでそこは見逃してくれるとありがたいです。
「ねえ、美音。聞いた聞いた? また予告状が出たんですって!」
「え…出たって、何?」
「もう、テレビとか新聞とか見てないの? アクアメロディよ、怪盗の!」
穏やかな気候が続く春のある日。
美音は友人の興奮したような声に苦笑しながらゆっくりと振り向く。
見れば彼女は手に怪盗アクアメロディの記事が一面を飾る新聞を持っていた。
勿論当のアクアメロディ本人である美音は新聞に書かれているよりも詳細な情報を持っている。
しかし、それをおくびにも出さず美音は友人へ返答を返した。
「ああ、あの泥棒さん?」
「泥棒じゃなくて怪盗! けど凄いよね、噂じゃあ若い女の子だって言うのにこれでもう十件目だし!」
「どんな人なのかな? 若い女の子ってことは私たちと同じ高校生なのかも?」
「ありうる! あ、ひょっとして美音がそうなんじゃないの?」
ギクッ。
一瞬跳ねた心臓の鼓動を表に出さず、美音は「まさかぁ」と手を振る。
友人はまさか自分のからかい発言が真実を射ているなどとは夢にも思ってはいないだろう。
一介の女子高生が夜な夜な多数の警備を掻い潜り宝石を盗んでいるなど小説や漫画の世界の話だ。
だが、実際に怪盗アクアメロディとして活動している美音からすれば心臓に悪い発言でしかない。
図星を指され、僅かに顔をしかめた美音を見て、複数の男子の抗議が湧き起こる。
「おいお前、水無月さんになって失礼なことをいうんだ!」
「コソ泥と水無月さんを一緒にするなよ!」
「そうだそうだ!」
「何よ、アンタ達この前アクアメロディの話題で盛り上がってたじゃない! ファンのくせに、こういう時は違うのね?」
美音に好意を持つ男たちが一斉に友人を攻撃するが、その切り替えしに彼らは沈黙を余儀なくされる。
年頃の男子からすれば、自分たちとそう歳が変わらない女の子が活躍しているなど格好の注目の的だ。
当然、中には情報を集めるものが現れ、憧れを抱いたりするものもいる。
ファンクラブというほど大げさな動きこそないが、既にそれに近い人気があることは周知の事実。
だが、祭り上げられる立場の当の本人としてはその人気は戸惑いの元でしかない。
どんなに言い訳をしようともやっていることは犯罪にすぎないのだから。
「けどアクアメロディの目的ってなんなんだろうね?」
「エレメントジュエルを集めてるって話だけど…」
「億を超える価値のある宝石だもんねー。女の子としては気持ちはわかるわ!」
ぐっとこぶしを握り締めて目の中を宝石マークにする友人に苦笑しつつ美音は内心でため息を吐く。
友人は軽く言うが、かの宝石の本当の価値は金銭的なものではない。
エレメントジュエルには人知を超えた魔力が備わっている。
それを理解し、力を引き出した者は国の覇権すら奪うことが可能なのだ。
エレメントジュエルを悪人の手に渡すわけにはいかない。
だからこそ、美音は怪盗アクアメロディというもう一人の自分を作り上げたのだから。
「あれがターゲットの屋敷…でもあれは屋敷っていうよりはまるで宮殿ね」
呆れたような声が深夜のビルディングの屋上で呟かれる。
仮面とコスチューム、そして幾つかの道具を装備して怪盗アクアメロディに変身した美音は双眼鏡を覗いていた。
眼下には中世の王宮もかくやという豪美な屋敷がそびえ立っている。
水のエレメントジュエル『アクアル』を持っていると思われる富豪の住居だ。
屋敷の周囲には複数のパトカーと警官たちが陣取り、鼠の入る隙間すら与えないとばかりに気を張っている。
十件目ともなると流石に警察も本腰を入れてきたのか、厳重な警備だった。
「ふう、わかってはいたけど楽には行きそうにない、か…さて、どうやって……キャッ!?」
ひゅうっ。
思案にふけようとしていた少女のスカートを突如背後から吹いてきた風がめくりあげる。
軽い材質でできている布地はあっという間に中身を全開にしてしまう。
ピンクの水玉模様が月明かりの下に現れてしまい、美音は慌てて裾を押さえた。
「もうっ、えっちな風! あ、そうだ…」
悪戯な風に憤慨しながらも怪盗少女は一つの案を思いつく。
ちょうどいいことに風の吹く方角は少女のいるビルから屋敷のほうへと向いている。
これ幸いとばかりに美音は背中のリュックから一つの袋を取り出した。
「そろそろ予告された時間だ。皆、気張れよ!」
おう! という威勢の良い返事に顔を緩めつつ、小銭警部は油断なく周囲を見回す。
新設されたばかりの怪盗捕縛チームの初陣だ、失敗するわけにはいかない。
やや過剰ともいえるほど気を入れて警備をする小銭。
しかし彼は一抹の不安を抱えていた。
警備が許されたのは屋敷の外部だけ、内部はお断りと屋敷の主からのお達しがあったのだから無理もない。
こういわれれば屋敷の主は何か後ろめたいことを隠しているのではないかと勘繰ってしまうが
植物たちの傍に無粋な人たちを置くわけにはいかないと強く拒絶されてはグウの根も出ない。
何せ相手は人一倍植物に愛を注ぐ人物だ、下手に怒らせては自分の首すら危うい。
(…まあいい、要は屋敷の内部に入れなければいいだけだ)
「警部! あれを見てください!」
目がいいことがとりえらしい新人巡査の報告に小銭は気を取り直し、言われた方向へと視線を向ける。
そこには、パラシュートでこちらに降下してくる人影があった。
アクアメロディか!?
一堂に緊張が走る。
だが彼らは次の瞬間、驚愕に目を見開いた。
「な、なんだあの数は…?」
降下してくる人影は一つではなかった。
三十、いや五十はいるであろうパラシュートが次々とこちらへと向かってくる。
目を疑い、かぶりをふる小銭だったが周囲の様子を見た限り見間違いではないらしい。
だが、動揺はそこまでだった。
状況から考えてあの中に怪盗がいるのは間違いない。
数が数だけに識別は困難だが、ならば全てを捕らえればいいだけのこと。
そう決断した小銭はどよめく部下たちを一喝すると素早く指示を出す。
「よし、総員は各自落下してくるパラシュートへと向かえ! 発砲はするな、生け捕りにするんだ!」
『了解しました!』
そういいながら自身も怪盗を捕縛するべく駆け出す小銭。
既にパラシュートの大群は目前に迫っていた。
着地させてしまえば逃げられる可能性が高い。
そう判断した小銭らは地面にパラシュートが着地する前に人影へと飛びつき、動きを封じていく。
「よし……って、こ、これはなんだ!?」
腕の中の人影は簡素な作りの風船人形だった。
茶目っ気たっぷりに顔の部分に『ハズレ』と書かれているそれは明らかな偽者。
だが、小銭からすればそれは織り込み済みの事態だ。
本物がいるのは間違いない、ならば次へ行くだけ。
しかし小銭を始めとした警官たちのその望みはかなうことはなかった。
彼らが手を放した瞬間、風船人形たちは次々に割れ出したのだ。
「ぶはっ! な、なんだ!? 粉が…あはっ、はははっ!」
「いかん、それを吸うな! 笑い粉だ……ぐわははっ!」
小銭が慌てて注意を促すも、現場は大混乱に陥ってしまう。
風船の中から出てきた粉末がエントランス前の広場を覆い、あっという間に警官たちは行動不能へと追い込まれていく。
そんな中、一つの影が警官たちの裏を通るようにして駆け抜けていった。
いうまでもなく、それは怪盗アクアメロディだ。
彼女の狙いは数による撹乱ではなく、笑い粉による無力化だったのである。
(ごめんね、皆さん)
笑い転げる警官たちに心の中で謝罪しつつ怪盗少女は一気にエントランスを駆け抜ける。
こうして、怪盗捕縛チームの初陣は惨敗という形で幕を閉じることになるのであった。
「んしょ、んしょ…」
数分後、アクアメロディの姿は排気口の中にあった。
内部の警備の数はそれほどでもなく、一直線に目的地へ向かっても良かったのだが罠や伏兵がないとも限らない。
安全策をとることに越したことはない、と少女は誰もいない排気口の中をよじよじと進んでいく。
「この人がアクアルを持っていればいいんだけど…」
狭い通路をゆっくりと進みつつ、美音は小型モニターに移った男の顔を見る。
木野剛三、この屋敷の主人にしてシティ有数の富豪の一人だ。
植物学の権威でもある彼は植物の品種改良にかけては天才とも言われ、今まで数々の功績を残している。
だが本人の能力と人格は別物なのか、彼の評判はすこぶる悪い。
まず、公式の場に全く現れないというのがその理由の一点だ。
面倒くさいというその一言でメディアに出てこない彼はマスコミからすれば問題児以外の何者でもない。
映像を通さない会話の記録ならば幾つか残ってはいるものの、それにしたところで大したことを喋っている訳ではない。
更に、彼は自分のやりたいことしかしない。
いくら高額の依頼があったとしても、気に召さなければ嫌だの一言で全てを断ってる。
故に、一般大衆からすれば木野剛三という男は自宅で植物をいじっているだけの引きこもりでしかないのである。
「うーん、話に聞くほど悪い人には見えないんだけどなぁ」
画面に映る木野剛三の顔は温和そうな表情に満ち溢れ、恰幅のいいおじさんにしか見えない。
数年前に偶然撮られたという写真だが、少なくとも見た目からは世間で言われるほどの変人だとは思えなかった。
だが、ならば何故そんな人物がアクアルを所有しているのかという話になってしまう。
勿論彼が所持する宝石が本物とは限らない。
実際、美音とて今まで当たった九件のうちで本物に出会ったのは二回だ。
金銭的な価値だけでも桁外れのエレメントジュエルには偽物が多く、その真贋を見分けるのは難しい。
美音には見分けることが可能だが、それにしたところでジュエルに接近しなければならない。
当然、数億の価値のある宝石に一介の女子学生がそう簡単に近づけるはずもなく
盗みに入るぶっつけ本番でしか鑑定は不可能なのだ。
しかしジュエルが本物であれ偽物であれ、木野剛三がそれらしき宝石を持っているという情報を掴んだ以上は見過ごせない。
彼が悪人なのか善人なのかは不明だが、もしもアクアルが本物であればいつ問題がおきるかわからないのだから。
「アクアルは本人が身に着けてるって話だし、まずは彼の部屋に行くことが先決ね」
木野剛三本人が情報の露出を嫌う人物のせいか、住まいである彼の屋敷も情報はあまり出回っていない。
植物が多く置かれている、本人の部屋は最奥にある、使用人は少ない。
精々がこの程度の情報で、これでは行き当たりばったりにならざるを得ない。
だからこそ美音は万全の準備で今回の盗みに臨んでいた。
だが、用意されていた道具の大半は今手元にはない。
何故なら、道具の入ったリュックは排気口の外に置いて来てしまったからだった。
「やっぱり、他のルートのほうがよかったかも…はぁっ…」
僅かな息苦しさを覚えながら額の汗をぬぐう。
植物を置いているだけに湿度や温度に気をつけているのか、排気口には熱気が充満していた。
まるでサウナの中にいるかのような暑さにだくだくと汗が吹き出ていく。
怪盗コスチュームは通気性に優れ、薄手の軽装になっているのだがそれでも襲い来る熱気を防ぐには不十分のようだ。
顔や首筋、二の腕や太腿と肌が露出している部分には珠のような汗粒が次々と浮き出ては滑り落ちていく。
「熱いし、それに狭い…もうっ」
自分で選んだルートである以上、建物の構造を美音がどうこういえる筋合いはない。
しかし熱い、狭い、暗いと三拍子揃っては愚痴の一つも言いたくなるというものだ。
排気口といえば怪盗の侵入ルートとしては一般的だと思われがちだが、実際は違う。
そもそも排気口は人が通ることを前提にしていないため狭い。
通れるのが小柄な人間に限定されてしまうのだ。
しかも出入り口が限られているため侵入がバレれば逃げ場がなくなってしまう。
故に、盗みに入る人間は隠れる時でもなければ排気口を使うことはない。
とはいえ、通路として有効なのは事実であり、美音もそれは認識していた。
だからこそこうしてうつぶせになりながら匍匐前進気味に狭い道を這い進んでいる。
まあ、その代償として排気口に入りきらなかったリュックは置いていく羽目になってしまったのだが。
「ちょっと、胸が苦しいかも…んっ、えいっ!」
細く狭まった部分を通ろうとするが、豊かに育った二つのふくらみが中々そこを通過してくれない。
ぎゅむぎゅむとたっぷり中身の詰まった果実が窮屈そうに底をすって押し出されていく。
すぽんっ。
ようやく抜け出たおっぱいが服の中で通過の喜びに弾み、美音も胸の圧迫感から解放される。
「ふう…さて、もう一頑張りっ、んっ」
難所を突破した美音は屋敷奥を目指して再び前進を開始した。
床に押し付けられるようにして密着した双乳が前進のたびにぐにゅんぐにゅんとたわわに変形する。
ずっと床をすってきたせいか、コスチュームの中のブラジャーがずれ始めた。
カップから中身がこぼれ、二つの蕾が服の表面に浮かび上がる。
当然そのことに気がついた美音だが、それを直すほどの隙間の余裕はない。
仕方なく、ずれたブラと床の摩擦に胸がこすれる痛みに時々顔をしかめながら進む怪盗少女。
「ふぅっ…ふぅっ…」
身体を縮めるような体勢のため、両腕に挟まれて寄せあげられるように重なった乳房の谷間にどんどん汗が滑り落ちていく。
谷間の蒸れが体感温度を上げ、少女の体力を奪う。
美音は少しでも換気を良くしようと首元の襟をパタパタと開いて空気を迎え入れるがあまり効果は上がらない。
このままでは暑さでへばってしまいそうだ。
上半身に集まった熱を逃がすかのように怪盗少女のヒップが揺れ動く。
手と足が動くたびに桃のようなおしりがふりふりと左右に艶かしく動き、丈の短いスカートをひらひらと揺れる。
後ろから見れば、美音は膝を立てておしりを突き出すような格好になっている。
そのため、動きが起こるたびに揺れるスカートの裾からは汗を吸収して
べったりとおしりと股間に張り付いた下着がチラチラと覗く。
見えない部分では水分を含んで縮まった水玉模様のショーツが足の付け根に食い込み、うっすらと股間とおしりの割れ目を見せている。
そこから伸びるしなやかな美脚も既にぐっしょりと汗に濡れ、つやつやとした輝きを放つ。
仮にこの怪盗少女の移動の様子を前後のアングルから至近距離でカメラに捉えることができたならば
それだけで一本のAVが作れそうな、そんな生唾モノの光景だった。
「んっ、出口が見えてきた。もうちょっと…」
客観的に見て自分がそんな恥ずかしい格好をしているとは夢にも思っていない美音は見えてきた光にほっと息を漏らす。
ようやくこの熱気地獄から開放される。
そう思えば気力がみなぎり、活力も湧いてくる。
「よし、後はここを開けて…」
排気口の出口を道具でこじ開け、外す。
涼やかな風が顔を打ち、暑さに火照った美音の身体を冷やしていく。
「涼しい……さて、早く降りないと」
見たところ人はいないようだが、今誰かに見つかれば逃げることは難しい。
美音は身体を排気口から引っ張り出すと、空中で一回転し、軽やかに地面へと着地した。
(ここはどこなんだろう?)
地図がない以上、手探りで進んでいくしかない美音はブラの位置を直しながら慎重に周囲を見回す。
恐らくは温度調整室なのだろう、多数のパイプと機械が目に映る。
だが、怪盗少女の目的はこの場所ではない。
目的地はあくまで木野剛三のいる場所だ。
と、美音の目に一枚の紙が映った。
「これは…ひょっとして、屋敷の地図?」
壁に貼り付けられていた紙はどうやら屋敷の見取り図のようだった。
ご丁寧にも現在位置が記されている。
この見取り図が正しければ、木野剛三の部屋までは相対した距離は残っていない。
「けれど、あの広い空間はなんなんだろう…」
見取り図を頭に叩き込んだ美音は扉に手をかけながらこの先にある部屋に思いを馳せる。
名前のない、広めに取られた空間。
一体何が待っているのか、怪盗少女は喉を鳴らしながら扉を開いた。
『木野様、申し訳ございません! 屋敷に怪盗が!』
「そう必死に謝ることはない。顔を上げたまえ」
モニターに映った警備責任者を穏やかな表情で眺めつつ、屋敷の主人――木野剛三はギシリと椅子を鳴らす。
『し、しかしおめおめと侵入を許すなど…』
「許したのは警察だろう? 君が気にすることはない。それより、件の怪盗はどこに?」
『はい、それがエントランスを潜ったのは確かに確認したのですが…』
「見失った、と」
『申し訳ありません!』
「いい、いい。謝る必要はないといったはずだ。それに元々この屋敷の警備の数を少なくしているのはワシだしな」
ホッホッホッ、と好々爺のごとく笑いを上げる主人に警備責任者の男は安堵の息を吐く。
確かに、剛三の言う通り屋敷内部の警備はその広さに反して数が少ない。
通常は数十人単位でいるはずの警備は実のところ十人もいないのだ。
警備責任者としては当然増員を望みたい。
だが、事はそう簡単にはいかない。
剛三は無粋な連中が屋敷をうろつく事を良しとしない人物だ。
更に、人員――とりわけ、外部の人間を多く配置できない理由がこの屋敷にはある。
『これから我々はどう動けば?』
「今『庭園』には誰もいないはずだな?」
『はい、あそこは必要なとき以外誰も立ち入らないようにしておりますので』
「確認したが、『庭園』に侵入者が入ったようだ。状況から考えて、アクアメロディとやらだろう」
『なっ、いつの間にそんなところまで!? わかりました、すぐに人員を向かわせ――』
「いや、いい、必要ない。あそこには奴がいる。心配する必要はないだろう」
『…確かに。アクアメロディは見目麗しい女性との話ですし、奴ならば問題ありませんね』
怪盗がいつの間にか屋敷の奥にまで侵入していたことに焦っていた警備の男がニヤリと笑う。
それに応えるようにして剛三もうっすらと笑みを浮かべた。
「少し時間がかかるだろう。後で何人かを向かわせなさい」
『はっ!』
「ああ、それと…仕込が終わっているようだったら連れてきたまえ、味見がしたい」
『了解しました』
プツン、とモニターが消える。
薄暗い部屋の中、剛三は別のモニターへと目を移した。
そこには数分前のエントランス、アクアメロディがそこを潜るときの映像が映っている。
「さてさて、これでまたコレクションが一つ増えそうだ。楽しみだよ…怪盗のお嬢さん」
穏やかに微笑んでいた表情が僅かに歪み、確かな悪意を覗かせる。
その胸元には、光り輝く青の宝石の姿があった。
207 :
AM:2008/01/25(金) 18:19:12 ID:0lR6Rn97
連休のためか、調子に乗って連日の投下。
怪盗が排気口を通るのはデフォルトですが、今回はそこをどれだけエロく描写できるか試してみた。
208 :
102:2008/01/25(金) 18:31:58 ID:k8CBKQjW
リアルタイムGJ!!
むしろお爺ちゃん頑張って!!
排気口いいなぁ…いいなぁ…(子供かよ)
ぴょんぴょん飛び跳ねる主人公にしたことを少し後悔。
乙です!!!庭園でどんなエロいことが起こるのか今からワクワクしています><
>>207 こうやって感想を言うのは初めてですが、いつも楽しく(って言っていいのか?)読ませていただいています。
……つか正直怪盗物書きたいなと思ったのはアクアメロディ見てだったりw
AM氏は本当に愛すべき変態書けますよね。(誉め言葉ですw)
俺がTM書いたらジャックが真面目な変態になると思うんですよねw
「こんなんじゃ邪魔だよなー」とか言いながら気絶したブレイドの胸真顔でたぷたぷ揺らしたりw
>>208 俺も後悔。
キャットシーフは怪盗キッドの女版みたいなイメージで作ったからなあ……
それと、キャットシーフですが、第8話まで下書き終わって、ようやく完結までのラインが見えました。
……エロが最後にしか入らない事が判明しましたorz
職人同士が刺激し合って素晴らしい状態になってますね
アンバームーンのライトリョナにハァハァ
純エロ無くても個人的には十分満足できました
AM氏の「仕込み」にも期待です
過去編という事で結末はある程度予想できちゃいますが
AM氏ならきっとエロの神様が脳内降臨して
エログチョifストーリーというおまけが来るに違いない(ぇ
212 :
AM:2008/01/26(土) 16:35:18 ID:2iFOQi/0
実は自分自身が一番の変態である俺が空気を読まずに三日連続での投下を開始しますよ。
投下できる時に投下しておく、それが俺のジャスティス。
皆様、毎度の感想本当にありがとうございますです。
「ここは…庭園?」
扉を開いた怪盗を待っていたのは一面に広がる緑だった。
木々が生い茂り、地面には草や花が青々と咲き誇っている。
夜中だというのに、天井の無数のライトがまるで昼のように明るさを保つその空間。
緊張に身構えていた美音は意外な光景に拍子抜けすると同時に木野への好感度を上方修正する。
「植物学の権威って聞いていたけど、凄い…」
庭園には身近なものから見たことがないものまで多種多様な植物が存在していた。
気候や土壌条件の都合で生息しているはずもない花もあったりするが、それらはおそらく品種改良されたものなのだろう。
つい先程まで狭苦しい暑苦しいの二重苦に苦しんでいた美音はその光景に癒され、すっかり警戒を解いてしまう。
だが、そんな認識も所詮は表向きのことだったのだと彼女はすぐに思い知ることになる。
一分後。
庭園内を散策していた美音はふと不思議な光景を見つけていた。
(え、女物の服……だよね?)
木の枝に女ものの服が無造作に引っ掛けられている。
見れば枝からは数十本の蔓が伸び、美音の頭くらいの高さの場所に縦横無尽に張り巡らされていた。
まるで物干し竿のような役目を果たしているそれには、数え切れないほどの服が洗濯物のように干されている。
いや、服だけではない。
よく見れば下着や靴下、それに帽子や手袋と人が身につける装飾品が蔓にはかけられている。
だが、一律して共通しているのはそれらが全て女性のものであるという点だ。
普通に考えて、屋敷の女性が洗濯物を干しているという可能性は低い。
こんなところに干す理由がないし、そもそも服の数だけの女性は屋敷にいないはずだ。
疑問とともに美音の心に不安が広がっていく。
「これは……ッ?」
ガサッ!
異様な光景に目を瞬かせた美音は奥から聞こえてきた葉ずれの音に身を竦ませる。
耳をすましてみると、やはり奥から物音が聞こえてくる。
誰かいるのだろうか?
美音は好奇心と情報収集の半々で音のほうへと向かう。
(……っ!? な、何これ!?)
愕然とした怪盗少女の驚愕の声が口の中で押し殺された。
服飾群を抜けて辿り着いた開けた場所。
そこでは、先程を上回る異様な光景が美音を待ち受けていた。
蔓が空中に複雑に絡み合うような形で四方に伸びていた。
あまりの数の多さに光が制限され、その場所だけがやや薄暗くなっている。
一見、先程の場所と同じような光景だが、あからさまに違う点がある。
蔓に引っ掛けられているのは服ではない、人間の女性たちだった。
いや、引っ掛けられているというのは正確ではない。
彼女らは蔓に拘束されるような形で宙に固定されているのだ。
それはさながら蜘蛛の巣にかかった蝶のような風体だった。
「ぁ…ぁ…」
「ぅぁ…」
「意識がある…? だ、大丈夫!?」
女性たちの口から漏れたうめきに反応した美音は彼女らと話をするべく近寄っていく。
だが、囚われの女性たちの口から漏れるのは意味を成さないうめき声ばかり。
よく見れば、彼女たちに意識はなかった。
拘束されたその姿は皆裸で、服を着ているものはいない。
恐らく先程の服はこの女性たちのものなのだろう。
美音は彼女たちを解放するべく動こうとするが、一歩踏み出したところで足を止めた。
ガサガサ、と更に奥から先程の物音が聞こえてきたのだ。
「この音…行ってみるしかない、か」
この人たちを放っていくのは心苦しいが、何かがいるとなってはまずはそちらを確認しなければならない。
怪盗としての思考に切り替えた美音はゆっくりと慎重に女体のカーテンを潜っていく。
「なっ…」
そこで美音が目にしたものは信じられない怪生物だった。
わさわさと動く根でできた足。
茎が密集して幹のようになっている胴体。
胴体から伸びる触手のような蔓や蔦。
そして、その頭頂部で咲き誇っている赤い不気味な花。
全長三メートルほどのソレは美音に背を向けた状態で何か作業をしている。
「あ…い、いやぁ…」
掠れた声が耳に届く。
少女が一人、謎の生物に囚われていた。
まだ意識があるらしく、怯えに顔を染めたその少女はガタガタと震えながら
なんとか拘束から逃れようと身体を揺らしている。
だが、蔓の強度は見た目よりも頑強らしく、少女の力ではビクともしない。
少女が暴れ疲れてぐったりしたところで怪生物は動き出した。
「や、やめてぇ…」
蔓が少女の服を脱がせていく。
無論、少女とて抵抗をするが、拘束されてなおかつ疲れている状態では満足に身体を動かすことすらできない。
あっという間に少女は裸に剥かれ、謎の生物の目の前に引き寄せられてしまう。
そこが頭に当たる部分なのだろうか、赤い花弁が開き中身が露出する。
「ひぃっ…」
少女は恐怖に引きつった声を上げた。
花弁の中は普通の花のようにめしべやおしべがあるわけではなく、動物の目や口のような器官が存在していた。
かぱり、と口が開く。
すると霧のようなものが放出され、少女の首から上を包み込んでいく。
自然、口を開けていた少女は直にそれを吸い込むことになってしまう。
「…んんっ? えっ、何これ……あっ、はぅんっ…あふぅんっ」
数秒後、少女の身体が朱に染まり、くねくねと動き始めた。
顔は身体以上に赤く染まり、先程までの恐怖が嘘のように幸福そうな表情になる。
とろんと垂れ下がった目からは正気の光が消え去り、少女はもっとほしいとばかりに口を開けて呼吸。
足の付け根からは彼女自身が分泌した蜜がしとどにあふれ、足をつたい落ちていく。
「な、何…何なの、あれは…」
動揺のあまり、一連の状況をただ見つめることしかできない美音。
噴出された霧には強力な媚薬成分が含まれているのか、少女は既に意識を失っているようだった。
状況を推測するに、先程の女性たちもこの生物が手をくだしたのだろう。
身体はよく見ていなかったため気がつかなかったが、先程の女性たちも思い返せば恍惚の表情を浮かべていた。
「……あ、あの女の子!?」
こちらのほうを向いた顔に美音は覚えがあった。
彼女はつい先日行方不明が報じられたばかりの売れっ子アイドルの少女だったのである。
そういえば、ここ数ヶ月女性の失踪が相次いでいる。
恐らくは先程の女性たちも行方不明にされていた人たちだったのだろう。
よくよく思い返せば幾人かテレビで捜索願が出されている顔があった。
手がかりも見つからず、警察も途方にくれているという怪事件だったが、まさかこんなところに被害者がいようとは。
「木野剛三……裏で、こんなことを…!」
怒りに握り締められた美音の手が震える。
ここが剛三所有の屋敷の中である以上、主人である彼がこのことを知らないはずがない。
となれば、女性たちの失踪は全て彼が関わっているということになる。
彼が主犯なのかはわからないが、一枚噛んでいることは確かだ。
なまじ好感をもっていただけに、裏切られた気分になった美音は激しい怒りで身を焦がす。
だが、その怒気もすぐに沈静化される。
今は怒っている場合ではない。
なんとか、この女性たちを助けなければ。
正義感に突き動かされた怪盗少女は怪生物に囚われている少女を助けるべく近づいていく。
だがその瞬間。
本能なのか、それともセンサーのようなものを備えているのか。
怪生物がくるりと背後、すなわち美音の方向を向いた。
「……っ!」
謎の生物と向き合う形になった美音はごくりと唾を飲んだ。
正面から見るその生物は異様の一言に尽きる。
植物の集合体にしか過ぎないはずなのに、うねうねと蠢くその様は嫌悪感しか引き起こさない。
「シュルルル…」
怪生物は無粋な侵入者を威嚇するように蔓を振り上げ、唸り声を上げた。
だが次の瞬間、その巨体が揺れると同時に数本の緑触手が怪盗少女へと襲い掛かる。
「いきなりなんて、失礼ねっ…!」
美音は軽やかに襲い来る蔓をかわし、接近を窺う。
だが、そうしている間に怪生物は捕らえていた少女をいずこへと連れ去っていく。
瞬間、それに気をとられた怪盗少女の動きが止まる。
そしてそれを見逃さなかった触手が一斉に美音へと襲い掛かった。
「うっ、こ、このっ!」
身を絡めとらんと迫り来る緑の触手の群れを美音は辛うじてかわしていく。
だが、多勢に無勢の上、一時的に動きを止めたことで怪盗少女の周囲は既に包囲されていた。
背後から一本の蔓が伸びてくる。
振り向きざまのハイキックでなんとかそれを撃退する美音、
だが、その瞬間がら空きになってしまった左足がついに緑触手によって捕らえてしまう。
「くっ、は、放してっ!」
引きちぎろうと足を降るが、ギシギシと軋むだけで足を拘束する蔓は千切れる様子を見せない。
そうこうしている間に別の触手たちが美音へ襲い掛かる。
片足を封じられた美音になすすべはなかった。
あっという間に四肢が緑の触手に絡み取られ、怪盗少女の身体は先程の少女と同じく空中に吊り上げられてしまう。
「うっ、く…」
両手は背中の後ろに、足は人の字に開かれた状態で宙に固定される。
四肢が引っ張られる感触に苦痛の色を見せるも、蔓が力を緩める様子はない。
美音はなんとか蔓を引きちぎろうともがくが、先程の少女と同じくそれが千切れる様子はなかった。
しゅるしゅる、と怪生物の胴体から数本の新たな触手が伸びる。
やがて、怪盗少女の身体に到着したそれらは襟元や肩口、そしてスカートの下から服の中へと侵入を開始。
何かを確かめるかのようにもそもそと美音の身体をまさぐっていく。
「あっ…何を……ひゃんっ」
スカートの中に潜り込んでいた一本が下着越しに少女の股間をさする。
その動きに危機感を覚えた美音だったが、触手はすぐにそこから離れた。
同時に、胸のふくらみを確かめるように動いていた上半身の触手もその手を引いていく。
獲物がオスかメスかということを確認したかったのだろう。
その動きに性的な意図は感じられず、美音はほっと息を吐いた。
しかし安心したのも束の間。
蔓たちは獲物の武器を奪うべく動き出す。
煙幕玉、ピッキングツール、暗視ゴーグル、改造銃…
装備していた怪盗の秘密道具が次々に奪われていく。
(…この植物、知能がある? だとしたら、まずい…っ!)
思ったよりも慎重な怪物に美音は焦りを隠せない。
そうこうしているうちに装備していた道具はすっかり奪われ、地面へと捨てられてしまう。
だが、緑の触手たちの動きはそこで終わらなかった。
服から這い出た蔓たちは器用にアクアメロディのコスチュームに絡みつき、脱がし始める。
「いやっ、ちょっと…脱がさないで……あ…っ」
少女の抗議を完全に無視して緑の手が不気味に蠢く。
まず脱がされたのは上着だった。
次いで、スカートが剥ぎ取られ、怪盗少女はあっという間に下着姿にされてしまう。
相手の意思を省みない乱暴な所業だが、その動作は意外にも繊細だった。
まるで果物や野菜の皮を剥くかのように一枚一枚丁寧に服にも美音の身体にも傷をつけないように触手は動く。
しかし動きそのものは上着を脱がすだけでは終わらない。
残る二枚の下着にも蔓が絡みつき、少女の身体からそれらを引き離そうと力を込めてくる。
「や、やめてってばっ。それは取っちゃ駄目!」
動物に言い聞かせるように命令する美音だが、当然相手は言うことを聞かなかった。
ブラジャーのホックが外され、肩から引き抜かれる。
残った最後の一枚も既に太股の辺りまで脱がされ、足の付け根が見え隠れしている有様だ。
せめてパンティだけはと美音は足をバタつかせる。
だが、怪生物は何の意も解さずに少女の両足を折りたたむようにして閉じ合わさせ
脱がしやすい体勢にするとするすると水玉パンティを抜き取っていく。
やがて、足首から美音の最後の砦が抜かれ、少女の裸体を守る物は何もなくなってしまう。
「あっ、待って…持って行っちゃダメッ!」
しゅるしゅるとコスチュームと下着を奪った触手が美音がやってきた方へと伸びていく。
最初に見た場所に戦利品を飾るつもりなのだろう、どことなく怪生物は嬉しそうに身を振るわせる。
だが、美音からすれば身を包んでいた衣装が奪われた挙句に遠くに持ち去られるなど冗談ではなかった。
裸になったことを恥ずかしがる暇もなくなんとか服を取り替えそうと怪盗少女は身をよじる。
暴れる身体に連動して、ぷるぷると元気よく上向きに突き出されたDカップのバストが弾んで揺れる。
しかし拘束が緩むことはなく、美音は大事な部分を全て晒した状態で荒い息を吐くことしかできない。
「シュルル…」
獲物の活きのよさに目を細めた怪生物は完全に相手を丸裸にするべく更なる蔓を伸ばしていく。
裸に剥かれた怪盗少女だが、まだ装飾品は残っているのだ。
行き場のない怒りを代弁するかのように宙を蹴っていた足からブーツとニーソックスが脱がされる。
ぎゅっと握られたままだった手は強引に開かされ、グローブが抜かれていく。
(この生物…全部脱がすつもりなの…!? だとしたら、次は…ッ!)
その可能性に思い当たった刹那、美音の頬を緑の管が掠めた。
それはそのまま上へと伸びると、怪盗アクアメロディの象徴とも言える仮面へと触れる。
いけない、その行動だけは断じて許してはならない。
顔をそらし、首をひねってなんとか触手から逃げようと抵抗する怪盗少女。
しかしその行動は所詮一時しのぎの悪あがきにしか過ぎなかった。
健闘もむなしく、別方向から伸びてきた蔓がサッと仮面を剥ぎ取ってしまう。
「い、いやっ…」
別に見ている人間がいるわけではないが、美音は顔を伏せることで少しでも素顔を隠そうとする。
怪生物は素顔には興味がないのか美音には目もくれずに戦利品の仮面を持ち去っていく。
(いけない…この状態で警備が来たら手も足も出ない。それに、こ、こんなところを見られたら…!)
視界から離れていく仮面を見て、美音はいよいよ追い詰められてしまう。
既にアクアメロディの侵入は伝わっていると見て間違いない。
つまり、今この瞬間にも警備の人員がここになだれ込んでくるかもしれないのだ。
そうなってしまえば、自分は終わりだ。
すっぽんぽんの状態で素顔を晒し、その上拘束されていてはどうしようもない。
後は取り押さえられて警察に突き出される、あるいは男たちの慰みものにされるかの二択しかない。
しかしそんな事態になってしまうことを受け入れられるはずもない美音は
なんとかこの状況からの脱出を図るべく思考を巡らせる。
だが、そんな獲物の努力をあざ笑うかのように怪生物は最後の仕上げへと取り掛かろうとしていた。
ゆっくりと頭頂部の花が首を伸ばして囚われの怪盗少女へと近づいていく。
その動きに美音が気がついたときには既に赤い花びらは目と鼻の先に迫っていた。
花弁が開き、中の口が少女の目に映る。
(いけないっ!)
怪生物の口が開いたのと、美音が口を閉じて息を止めたのは同時だった。
開かれた口から霧ふきのように微粒に細分化された液体が吹き出て、怪盗少女の首から上を覆う。
幸いにもその前に息を止めることに成功していた美音はそれを吸うことはなかった。
やがて数秒が経過するが、少女の身体に変化は起きない。
どうやら、呼吸による体内への摂取でしかその液体は効果を発揮しないらしい。
ひとまず安心と顔をほころばせる怪盗少女。
されど、安心してばかりもいられない。
息を止めていられるのは精々一分が限界だ。
それをすぎれば酸素を吸うために口を開かざるを得ず、当然呼吸の際に霧も一緒に吸い込むことになる。
そうなれば、待っているのはあの少女や女性たちと同じ末路だ。
(どうすれば…このままじゃ、私まで…)
先程の少女のことを思い出す。
顔を身体ごと赤く染め上げ、快感に身を捩じらせて怪生物に哀願するように媚びる姿。
自分も一分後にはああなってしまうというのか。
いい考えが浮かぶ暇もなく時間は刻々とすぎていく。
しかし、一分後を待つつもりはないのか、業を煮やした怪生物が触手たちを怪盗少女の身体へと向かわせる。
腋の下、脇腹、足の裏、それに首筋とくすぐったくなるようなポイントを蔓たちが這い始めた。
(そ、そんなっ…そんなことされたら…くすぐったくて、息が…っ)
先端の繊毛で敏感な部分をくすぐられる感触に少女の身体が激しく震える。
辛うじて息こそ吐き出さないものの、くすぐったさをこらえられずビクビクと裸の身体がのたうってしまう。
突き出されたバストやヒップが狂ったように揺れ踊り、それが美音の限界が近いことを指し示す。
だが、怪生物は容赦なく悶える獲物を追い詰めようとしていた。
くすぐりの速度をあげ、早く陥落しろとばかりに霧を更に吹きかける。
(が、我慢しないと…でも、ああ…ダメ…!)
少女の顔が酸欠によって首筋から真っ赤に染まりはじめる。
もはや限界は目前だった。
くすぐり班から外れ、手持ち無沙汰だった触手の一本が少女の頭へと向かい始める。
美音に残された最後の装飾品である髪留めのリボンを外すつもりのようだ。
(もう、ダメ…)
美音は霞む視界の中、ゆっくりと唇を動かした。
220 :
AM:2008/01/26(土) 16:59:53 ID:2iFOQi/0
次回、エロエロのグチョグチョ……ただしAM的な意味で。
しかし自分も加担しているとはいえ、220レスで既にスレの容量の半分とかどういう濃さなんだここは(w
221 :
102:2008/01/26(土) 17:07:40 ID:dSW+BetH
リアルタイムGJ!!
後編に激しく期待。
俺も今晩投下してみます(長すぎて未だ携帯に未移換)。
一番の変態の座は譲らない、それが俺のジャスティス。
>既にスレの容量が
恐らく怪盗に盗まれたのではと。
というか貴方が色んな人のリビドーを刺激したためではと(賛辞)
すげぇよこのスレwww
やったー!二日連続投下きたー!
おじいちゃんと戦う前にあんなことやこんなことをされてしまうのか・・・
まだ、ラスボスという楽しみが残ってるのにどんどんエロくなっていきますなぁ。
エロパロ板でこのスレが一番好きだwww
忙しくて正月の三が日以来来てなかったが
あまりのスレのレベルの高さに吹いたw
みなさんとてもGJです!
>>220 GJ!
>スレの容量
以前投下してた某魔砲少女スレの全盛期の頃はこの密度で1スレ消化に1週間とか言うトンデモペースだったので無問題。
>>221 12時まで投下が無いようなので、こちらから先に投下しますね。
貴方方が変態で競ってる中、唯一純愛で奮闘する。それが俺のジャスティス。
恋するキャットシーフ 第5話
「……」
黙りこくったまま、うろうろとせわしなく歩き回る里緒を見て、一美は溜息を吐く。
危険は確かに大きいが、里緒の、親友の恋を応援しようと心にきめたのだが。
「(ドタキャンして、2人きりのデートにするつもりでしたのに……。
それに、里緒、早く来過ぎですわよ……)」
適当な理由をつけて家にこもって、明日の作戦でも練っておこうと思っていた一美。
しかし、里緒に家に強襲され、引きずり出されてはどうしようもなくて。
しかも、待ち合わせが10時なのに、待ち合わせ場所に着いたのが8時55分。
「(少しくらい女性が遅れるのがベストですのに……)」
……さすがに1時間以上前に来た人間より早く来いとか言う無茶な事は言えず。
これだけ待ちぼうけ状態だと、多分来るんですわよねえ……、と一美が考えていると。
「ねぇ、彼女達!」
「(……ほら来た)」
そう里緒と一美に声がかかり、一美はげんなりとしてそちらを向く。
すると、そこには全身から軽そうなオーラを撒き散らせた、何処からどう見てもナンパ男が2人立っていた。
「そんな風に待ちぼうけしてるくらいならさ、俺達と遊ばねえ?」
「……まだ、待ち合わせ時間にもなっておりませんの。それではごきげんよう」
そう声をかけてきた男に、一美はわざと言葉を噛み合わせずに返す。
一美も里緒もかなりの美人に入る部類なので、こう言う手合いの相手は慣れていた。
「そう言う事なんで、ごめんなさい」
「えー……、いいじゃん、俺達と遊ぼうぜー」
そう言って断る里緒だったが、その男は全く人の話を聞かずに、里緒に手を伸ばす。
一瞬里緒は蹴り飛ばそうかと思うが、ここが往来である事を思い出して慌てて自制する。
そんな里緒の方に、男の右手が触れようとして……、
「……いいってぇぇえぇ!」
「……へ?」
……その瞬間、横合いから伸びて来た手に右手首を極められ、男は悲鳴を上げた。
…規制食らった?
>>227 人多杉の嵐食らいましたorz
明日休みなんで、昼くらいの人少ないだろう時間帯に投下しなおします……
ありゃ、残念。
だが
>>146や
>>221を見るにPTフィズやアンバームーンの投下の予感。
これは今から二十四時間ずっと全裸で待機しておかねば…!
230 :
102:2008/01/27(日) 03:00:03 ID:cUhb0/53
寝落ちしてた……orz
今スレ読み返してみたら支援してくれた人を全無視してる自分に気がついた。
支援・感想・GJくれた皆さん有難うございます。
アンバームーンの半分は優しさでできています(あとの半分は俺のエロス)。
>>225 魔砲少女……ずごぉぉん!www
どんまいです、続き楽しみにしてます。
「なんだ……これは……?」
棚橋は呆然としていた。
愛用の投げ縄を頼りに決死の覚悟で影山邸へ侵入したはいいものの、
目にしたのは倒れている黒服、黒服、黒服。
その数の多さと手にしているあからさまな銃火器にも驚いたが、
なによりそれらが一様に気絶し戦闘不能になっている光景に愕然とした。
そこから類推される事態は一つしかない。
(どうやら先客がいたようだ……そのおかげで助かったようだが)
今の棚橋は、特命を受けているとはいえ事実上休暇中の身だ。
つまり警察の表立った援護は期待できない単身突入。
本来、想定外のこの人数と装備が相手とあっては、いかに棚橋とはいえ
無事で済むはずはなかった。
そういう意味では彼は幸運だったといえよう。
しかし、同時に怪盗を追う身としては絶望を感じずにはいられなかった。
武装した連中をものともしない圧倒的な戦闘力。
たとえ直接対峙できたとして、何ほどのことが出来ただろうか。
しかも警備が気絶しているということは、今回の犯行はとうに終わって
怪盗はこの場から立ち去っていると考えるべきだろう。
つまりは、また怪盗を取り逃がしたというわけだ。
「連邦の怪盗は……化け物かよ」
最近ハマったアニメの台詞にかけて棚橋は嘆息した。
その化け物が実は地下室で陵辱されていることを彼は知らない。
(まあいい、とにかく今回の仕事を済ませるとするか)
気を取り直すと、堂々と影山の書斎へと侵入する。
マホガニーのデスクやアンティークの鳩時計に混じって、大仰な金庫が
部屋の隅に鎮座して一際目を引いた。
目的の物は見つけたものの、暗証番号式のロックが彼を阻む。
「なんだかどっちが怪盗なんだか分からなくなってきたな」
そう一人ごちると、鑑識から拝借しておいたアルミ粉を
暗証番号を入力するキーに付着させ、軽く息を吹きかけた。
余分な白い粉が吹き飛ばされて宙を舞い、後には指紋が浮かび上がる。
(四桁の暗証番号は……どうやら0と1と6と2の順列組み合わせか)
押すべき数字はある程度絞られたものの、棚橋は少し慎重になった。
見たところそれらしき装置はないようだが、ひょっとして
何回か間違えると自動的に発報する仕掛けになっている可能性がある。
闇雲に押していくよりは、数字に何か意味が付与されていないかを
検討しておくに越したことはないだろう。
(ん……まさか、な)
ある可能性に思い当たって、棚橋はキーを四回押した。
するとピー、という電子音とともにランプが緑色に光り、
次の瞬間ガチャッという音がしてロックが外れた。
「ま、まさか暗証番号って……『2106』『ツ・ト・ム』なのか……」
あまりにも安直な解答につんのめりそうになりながらも、
棚橋は金庫の取っ手を握り扉を開けた。
そこから出てきたものは。
「おわッ!? マジかよ……」
棚橋が目を白黒させたのも無理はない。
普段厳格な人物として知られている警視総監がよだれかけを身につけて
赤ちゃんプレイを楽しんでいるとおぼしき写真。
市長が縛られマスク姿の女性に赤い蝋燭を垂らされている写真。
暴力団の組長が鬼の形相で血の付いた日本刀を振りかざしている、
身も凍るような抗争直後の写真。
そこから出てきたのは有力者の暗部を収めた写真の数々だった。
どうやら影山はこれらの写真をネタに彼らを脅迫していたらしい。
警察や暴力団が大人しく彼に従っているのも無理からぬことだ。
「しかし……盗撮にしては何か……そう、鮮明すぎないか?
ここまであからさまにやられたら気がつくだろう、普通」
確かにそれらの写真はアングルといい解像度といい、まるでスナップ写真だ。
実は『隠者(ハーミット)』の透過能力を使って撮影したものだったのだが、
そこまで考えが及ばない棚橋は、全ての現場に影山がいたものと結論づけた。
(つまり暴力団の犯行のすべてに影山はせっに関わっていた、てことか。
もちろん警視総監の赤ちゃんプレイにも、市長のSMプレイにも、な。
……個人的にはそっちの方がショックだぜ)
だが今の棚橋にはそれを押収する権限はない。
証拠品がもみ消されないように手を打つ必要があった。
棚橋は立ち上がると、ポケットから携帯を取り出した。
「あ、隊長ですか? いえ、ちょっとお金貸していただけないかなって。
そう、ビンゴです。例の雀荘でやられちゃったんですよ。
今日一日で二十一万六百円のマイナスです。お願いしますよ、それじゃ」
前もって打ち合わせておいた符牒を使い片倉に合図を送ると、
棚橋は写真を金庫に戻して入念に現状復帰を始めた。
だが誰かの気配を感じ、慌ててデスクの陰に隠れる。
ガタッ! カツカツカツ……
(あ、あれは……)
影山邸の地下室では、怪盗アンバームーンが震えていた。
腹部を襲う鈍い痛み。胃液が逆流しそうな苦しみ。
彼女にはもはや抵抗する力も気力もほとんど残ってはいなかった。
「ふふ……苦しいか、苦しいだろうアンバームーン。
これに懲りたら大人しくしていた方が身のためだぞ」
姿なき声が地下室という密閉空間に反響する。
そのくぐもった声が、まるで彼女には悪魔の囁きのように感じられた。
「ふぅッ! あぁ……ぁぁ……」
ちゅばっ。れろれろ。ちゅぶっ。
首筋を舌でねっとりと舐められ、耳たぶをしゃぶられる卑猥な音が室内に響く。
コスチュームの胸部の繊維は指の形に歪み、ひとりでに蠢いているように見えた。
(……くぅッ、次はどこを……ひゃぅんッ! わ、脇……!?)
実は影山にとって、誰もいない地下室で姿を消すことにさして意味はない。
深い考えもなく、なんとなく能力を使っているに過ぎなかった。
だが、囚われの女怪盗を追い詰めるのにその能力は着実に効果をあげていた。
気配は確かに感じるものの、肝心の相手の姿が見えないため
次に自分の体のどこをなぶられるのかが分からないのだ。
今まで首筋を舐めていた舌が突如脇の下を責めだして意表を突かれる。
さわさわと黒タイツ越しに腿を撫でていた手が、今度は膝裏を刺激する。
不可視の愛撫は少しずつ、だが着実に彼女の官能を刺激していった。
「ぁう……んん……んむぅ!? ふむ……うむぅ……」
怪盗の顎に手が添えられると、顔を背後に向けられた。
次の瞬間、唇に生暖かい感触を感じ、怪盗は目を閉じて呻いた。
ちゅぶっ。ぬちゅっ。じゅぱっ。
(やだ……わ、私こんな音を立てて……)
影山の舌は怪盗の唇を吸ったかと思うと、一転して口の中に侵入し、
また顔面を舐めてその唾液で濡らす。
右手はミニスカートの中に潜り、美尻をさわさわと爪を立てて撫で、
尻たぶを劣情のままに揉みしだいた。
左手は依然として背後から胸を鷲掴みにし、人差し指で突起を刺激し続けている。
顔面と唇を唾液で蹂躙される音。
黒タイツの繊維が擦れる音。
時たま漏れる影山と女怪盗の吐息。
それらの淫靡な音が地下室に反響し、協奏曲を奏でる。
影山がコンダクターだとすると、女怪盗はさしずめ楽器であろうか。
魔手に逐一反応しないではいられない女怪盗は、自らの衣装と声が
奏でる音のあまりの淫靡さに、その身を紅潮させてよじった。
「ーーはぁうッ!!」
突然、背後から伸ばされた右手が、股の間をくぐり秘部に触れた。
立てられた人差し指と中指が割れ目に沿って動き敏感な部分を擦る。
その刺激に女怪盗は目を見開き声をあげずにいられなかった。
「だいぶいい声が出てきたじゃないか」
「……んんん……あぁぁ……そ、そこは……だめ」
「ダメと言われるとますます触りたくなるじゃないか」
「ああぁぁ……そんな……」
首を嫌々と振る女怪盗の反応を楽しむと、影山は下半身を覆う
黒タイツと下着をまとめて膝の辺りまでずり下げた。
女怪盗の白く滑らかな素肌がついに外気にさらされることとなる。
しかも完全に脱がされることなく中途半端な位置で止まっているタイツが、
女怪盗の羞恥心を一層煽る結果となった。
それは男なら誰しもが欲情するであろう卑猥な姿。
今の自分の格好を想像して震え、女怪盗は再び目を瞑り無心を試みた。
だが、影山の言葉がそれを許さない。
「下の毛も銀色なんだな。しかもなかなか濃いじゃないか。
駄目だぞ、お手入れはこまめにしないとな。ははははははッ」
「ーーーーッ!?」
「やっぱり感じているんじゃないか。ここはもうぬらぬらと光っているぞ」
「いや……もう言わないで……」
恥毛を指でつままれ、割れ目を指で広げられ、辱めの言葉をかけられる。
これ以上ないほどの恥辱に、女怪盗は言葉が出ず唇を噛む。
じゅぷっ。
「ーーはぁうッ! ふぅん……んあぁぁッ!! うぅぅうう……」
ぴちゃぴちゃ。じゅぷっ。びちゅっ。
秘部に指が挿入され、かき混ぜるたびに溢れる蜜が淫靡な音を立てる。
女怪盗の口からは喘ぎ声が漏れ、協奏曲は終盤へさしかかっていく。
「ひぁあッ……んんんんん……んあぁぁッもうッ……もうッ!」
女怪盗の声からは余裕が失われ、切羽詰まったものに変わった。
顔を歪めて俯くと、次の瞬間、女怪盗の体が跳ねてピンと伸びた。
「うぅぅううぅぅ……だめぇッ……だめぇーーッ!!」
恥を忘れあげてしまった大声が薄暗い室内にこだまし、
シンバルのように協奏曲のラストを締めくくった。
「はぁ……はぁッ……わ、私……」
「さて、お楽しみのところ悪いが、次はお散歩の時間だよ?」
そう言って姿を現した影山の手には、いつの間にか首輪が握られていた。
人気のない夜の公園。
怪盗アンバームーンは街灯に体を預けて立っていた。
その手首は手錠により体の前で拘束されている。
だが拘束されているのは手首だけではない。
怪盗の首には家畜を思わせる赤い首輪がはめられており、鎖が伸びている。
その鎖の先を持った影山が、怪盗に非情な命令をした。
「さて、服を脱いでもらおうか」
「ーーッ!? そんなこと出来るわけが……ぁうんッ!!」
反抗的な言葉を吐いたその顔が、苦悶に歪む。
再び腹部に強烈な一撃が加えられ、湧き上がった反抗心を萎えさせた。
「そういや手錠をしているんだったな。
自分で脱げないなら手伝ってやるよ」
ビビッ! ビリッ! ビビビッ!
深夜の公園に文字通り衣を裂く音が響いた。
その姿は見えないが、ナイフでコスチュームを切り裂いているらしい。
支えのなくなった衣装は重力に従ってストッと地面に落ちた。
薄手のトップスも、ミニスカートも、ポーチも、黒タイツも。
女怪盗の身を覆うものは、白い上下の下着だけとなった。
「怪盗のくせに随分と可愛い下着を履いてるじゃないか」
(……さ、寒いッ! 体がちぎれちゃいそうッ)
雪が降っていないのがせめてもの救いだが、十二月の深夜の公園に
裸体を晒した女怪盗は、吹きつける冷たい夜風にその身を縮めた。
その露出している美しい肌にも鳥肌が目立つ。
だが、その体を覆い隠している下着までも影山はずり下げると、
コードがついている棒状の何かを取り出し、女怪盗の秘部に挿入した。
「んッ!! くふぅ……い、嫌……もうやめ……」
怪盗の懇願を影山は意にも介さない様子で、下着を元の位置に戻す。
そして手に持ったスイッチをONにした。
ヴヴヴヴヴ……
「んんんッ!? い、いったい何を……ふぅぅぅッ」
「バイヴも知らないのか? てっきり毎晩使っているのだと思っていたが」
下着に包み込まれた機械はそれゆえ固定され、振動をやめない。
その刺激に女怪盗は内股になり、膝をガクガクと震わせて街灯にすがった。
だが、影山はその手を街灯から引き剥がし、地面へと投げ倒した。
「四つん這いになってもらわないと散歩にはならないだろう」
「さ、散歩ですって……んんん……くぅぅぅ……」
悔しさと股間の刺激に顔を歪め、片目で影山を見上げる怪盗。
その視線の先には虚空があるばかりだ。
「そうだ、散歩だ。分かったらさっさと歩け」
「あぁうッ!!」
パシィッ!
影山は露出した尻を後方から平手で叩いた。
反射的に前へと進み、結果命令を聞いた格好になってしまう怪盗。
張られた尻がじんじんと痺れ、下着の中では機械が怪しく蠢いている。
女怪盗はしばらく進んだ後、その刺激に負けて止まってしまった。
「くぅぅ……んぁぁあ……」
「歩けと言っているのが分からんのか、この雌犬が」
パシィッ!
再び尻を平手で張られ、突き上げられた双丘には紅葉の跡がつく。
怪盗は涙を流しながら、命令に従うほかなく前に進む。
「しかし、こんな姿を見られたらどう思われるだろうなぁ。
私は今姿を消している。露出狂の女が尻を振って四つん這いで
歩いているように見えるのではないか?」
「い、嫌ぁぁーッ」
能力のことは常に頭にはあったものの、今まで誰もいない地下室で
なぶられていたため、第三者の視点というものを女怪盗は忘れていた。
言われてみれば、確かに影山の姿は『隠者』の力で透明になっているので、
誰かに見られようものなら自主的に痴態を見せていると思われてしまうのだ。
「だから止まるなと言っているだろうがッ」
パシィッ! パシィッ!
今度は二回スパンキングされ、その痛みに渋々前へ進む女怪盗。
そこにはもはや余裕を湛えた美姿の面影はなく、敗北の惨めさに
頬を濡らして命令に従う哀れな奴隷のようだった。
幸い公園には人影がなかったものの、いつ人に見られるか怯えながら
小さな公園を四つん這いで一周して元の街灯の下に戻ってきた。
マスクの下を涙でぐしゃぐしゃにしながら、四つん這いのまま
体を亀のように縮こめる怪盗を影山は見下ろした。
「次は立って中腰で街灯に掴まるんだ。尻を突き出して、な」
「も、もう……許して……」
「駄目だ。命令がきけないのなら今度は腹を殴るぞ」
かけられた冷徹な言葉にビクッと体を震わせると、怪盗はおずおずと
立ち上がり、命令された通りの格好で街灯に掴まった。
影山はその突き出された尻から下着を膝の辺りまでずり下げると、
凶悪な姿を表したバイヴを掴んで動かした。
「んんんんんぁぁあ……ひぁぁ……」
ぐじゅぐじゅと音を立てて出し入れされる機械の刺激と、
人目に触れかねない夜の公園という状況に、怪盗は身悶えるほかなかった。
その時、恐れていた事態が起こった。
「お、おい……あ、あれ何だ……?」
「キャアッ! こんな所で一人で何してるの? 信じられない!」
(え!? この声もしかして……誰か、来た……?)
運悪く、散歩中のカップルに姿を見つけられてしまったのだ。
その声に、ホームレスらしき男達が数人集まってくる。
「あれって……怪盗アンバームーン……だよな?」
「バカ、本物がこんな所にいるわけないだろ。コスプレだよ。
こないだボンキホーテに売ってたぜ」
「じゃあ、あの女は一人でコスプレしてる変態ってことか」
(ち、違う……これは影山に無理矢理……くぅぅ……)
どうやら彼らはコスプレの露出狂だと思い込んだらしい。
壮絶な光景にある程度の距離は置いているものの、
周囲を取り囲んで好き勝手なことを言っている。
そのざわめきに、女怪盗は青ざめた。
「ふふふ、気づかれてしまったな、アンバームーン。
集まってくれたギャラリーにはサービスしてあげないとな」
「んふぅッ……な、何を……する気なの……あうッ!?」
影山は女怪盗の左足を抱えると、高く持ち上げた。
街灯に掴まっているので何とか姿勢は保っているが、それゆえに
大開脚となりバイヴの突き刺さった秘部が丸見えとなる。
首輪をしていることもあって、その光景は犬の排泄中のポーズを連想させた。
「お、おいッこっちに向かって足広げたぞ?」
「見せたがりかよ……おい、何か入ってないか?」
「ば、バイヴじゃねえか……変態ここに極まれりだな」
(お願い……もう見ないで……)
すっかり変態扱いされ、容赦なくかけられる辛辣な言葉に女怪盗はうなだれた。
すぐ傍では姿を消した影山が声を殺してクックッと笑っている。
その時、妙に聞き慣れた声がした。
「おいッ!! そこで何やってるんだ?」
(こ、この声……まさか棚橋さん?……なんでこんな所に?)
声のする方向を見ると、棚橋がこちらへ駆けてくるのが見えた。
実は影山邸でアンバームーンがフラフラと外に出ていくのを見て
追ってきたのだが、彼女はそれを知るよしもない。
とにかく助かったと思ったのも束の間、浮かんできた考えに青ざめる。
(今のは影山に向けられた言葉じゃない……私に向かって……)
よりにもよって好意を寄せている男に痴態を見られてしまった上に、
このままでは変態扱いされてしまうのは明白だ。
(こ、来ないで……お願い……)
だが無慈悲にも、棚橋はその歩みを止めることはなかった。
「お前、本物か? 何だってこんな所で……」
駆け寄ってきた棚橋は、ガシッと怪盗の肩を掴んだ。
しかし怪盗の表情は普段の強気なものではなく、屈辱の涙で濡れている。
その手には手錠が、首には首輪がそれぞれはめられギラリと光った。
ただならぬ異常を感じた棚橋の表情が厳しいものに変わる。
「た、棚橋警部……逃げて……」
「これは……影山の仕業、か?」
つい先ほど棚橋は影山の所業を金庫から発見している。
その家に盗みに入った女怪盗が異常な目に遭っていることから、
答えを導き出すのにそう時間はかからなかった。
だが、棚橋はタロットの魔力のことを知らない。
まさかその恐ろしい相手がすぐ傍に立っていようとは思いも知らなかった。
「ぐあぁッ!!」
腹部に突然強烈な打撃が叩き込まれ、棚橋はふっ飛んだ。
タロットで変身した状態の攻撃をまともに食らったのだ。
普通の人間なら内臓破裂は必至である。
「棚橋さんッ!! 嫌ぁぁーッ!!」
想いを寄せた男が吹き飛ぶのを目の当たりにして、つい状況を忘れて
「棚橋さん」と叫んでしまう女怪盗。
棚橋は腹部を押さえてよろよろと立ち上がった。
「くッ、何だ今のは……防弾チョッキがなかったら死んでたぞ」
影山邸に潜入するとあって念のため着ておいたのだ。
だが、命を取り留めた棚橋に、隠者が立ちふさがる。
「初めまして、えーと……棚橋警部、でよかったかな?」
ずっとその身を透過させて潜んでいた怪人が姿を現したのである。
見慣れたスーツ姿ではなく鼠色のローブを身につけてはいるものの、
確かに政治家 影山勉その人だった。
だが、その体は群青色に染まり、髪は逆立ち、顔には血管が浮き出ている。
異様な雰囲気に呑まれ言葉を失っていた見物人は、その異形を目にすると
蜘蛛の子を散らすように立ち去っていった。
「確かに初めましてだ。できればお目にかかりたくはなかったが」
「大丈夫だ、挨拶はじきに『さようなら』に変わる。
それも永遠の別れ、ロング・グッドバイってやつにな」
そう言い放つと、影山は青ざめる棚橋の前から姿を消した。
「B級ホラーかよ……いまどき流行らないぜ」
そう言いながら後方に跳びしざった棚橋がいた空間を、見えない刃が薙いだ。
棚橋はとにかく動き回りながら投げ縄を腰から外して戦闘体勢を整える。
先日とは違い、その投げ縄の片端には重い分銅がついていた。
対凶悪犯用の投げ縄を持ってきたのだが、透明人間を相手にするには
最悪の装備としか言いようがなかった。
これが拳銃を持っていたのであれば、乱射すればまぐれ当たりも有り得る。
だが、投げ縄では一度投げてしまうと隙が大きすぎるのだ。
「ちっ、姿が見えさえすれば……」
今までぺたんと座り込んでいたアンバームーンは、その言葉に弾かれたように
街灯の下に駆け寄ると、手錠で拘束された手でポーチを拾い上げた。
そこから一枚のカードを取り出すと、胸に押し当てて念じる。
刹那、黄色の光が彼女を包み込み収束していく。
そこから現れたのは、黄色と黒を基調とした衣装を身につけた怪盗の姿だった。
「お願い、『吊るされた男』……力を貸してッ!」
そう言うと、地面に両手を押し当てて魔力を解放した。
その瞬間、地面からいくつもの縄が出現してその触手を伸ばす。
何もない空間を探し回るかのように伸びた縄は、何かに突き当たると
いっせいにその何かに向かって伸びていった。
「くッ! 何だこれは……縄!?」
焦る影山をよそに、縄は次々に彼を捕捉し絡めとる。
数秒後にはロープでぐるぐる巻きにされたミイラ男が出現した。
それはまるで、大きなボーリングのピンのようだった。
「これで姿は丸見えよ、『隠者』さん」
勝ち誇った声をあげる怪盗に棚橋は問いかけた。
「お、お前アンバームーンだよな? 何がどうなってるんだ?」
「今はアンバームーンじゃないわ。アンバーハングドマンとでも言うのかしら」
「女なのに『マン』なのか? 語呂も悪すぎるし、その衣装も栄養剤みたいだぞ」
「黄色と黒は勇気の印、かしら? 戦えるからいいんじゃないかしら」
どこかピントのずれた会話を交わす彼らに、ミイラからくぐもった笑い声が漏れる。
「これぐらいで勝ったつもりかね? 甘く見られたものだ」
「負け惜しみを……えッ!?」
影山の方を見やると、動きを封じる縄すらも背景と同化して、完全に透過した。
ブッ!ブッ!とナイフで縄を切る音がしたかと思うと、バラバラと
ロープの残骸が地面に落ちて姿を現した。
影山は怪盗の衣装を切り裂いたあのナイフの刃をとっさに立てておいたのだ。
「ふん、『隠者』の能力が自分の体しか透明に出来ないのなら、
私は全裸じゃないとおかしいだろう?」
「くッ……デタラメ人間の万国ビックリショーかよッ!?」
状況がよく分かっていない棚橋だったが、目論見がご破算になったことだけは
理解して、絶望的な表情を浮かべた。
女怪盗もさぞ打ちひしがれているだろうと思いきや、
彼女は不敵な笑みを浮かべていた。
「気づくのが遅かったわ……棚橋警部、後のことは任せたわよ」
「いったい何をするつもりだ?」
怪盗はその質問には答えず、再びポーチからカードを取り出して魔力を引き出す。
今度は赤を基調とした衣装に身を包んだ怪盗の姿があった。
「お願い、『魔術師(マジシャン)』……力を貸して!」
次の瞬間、みるみると雲行きが怪しくなり、天から大粒の雨が降り注いだ。
どうやら『魔術師』の能力は天候を操ることらしい。
「お、お天気お姉さん泣かせだな……」
棚橋はふと正面に目を向けると彼女の狙いに気がついた。
そこには人型に切り取ったように雨が消えている部分があった。
影山が自分の体で雨を遮っている以上は、透明になろうがなるまいが
もはやその姿を隠すことはできなくなったのである。
「しまッ」
影山は慌てて逃げようとした所を投げ縄で足を掬われ、
脳天に必殺の分銅を喰らって気絶した。
支援
棚橋は、傍に落ちていた『隠者』のカードを拾い上げ、
そしてサポートしてくれた女怪盗に礼を言おうと彼女に近づいた。
「やったなアン……おい、どうした?」
言いかけて、異変に気がつき彼女の元へと駆け寄る。
街灯の下に座り込んだ怪盗は、雨の中自らを抱きしめるようにして震えていた。
まるで必死で苦痛に耐えているような、そんな表情。
棚橋はしゃがんで彼女の肩を掴むと、わけもわからず抱きしめた。
「うぐッ!!……ぐぅぅ……うあぁぁ……」
自分の腕の中にいる彼女の体から、パリパリと力が溢れているのが分かる。
不安定で、制御しきれないとても強い力。
その力はしばらくすると収束して彼女の体へと戻っていった。
「ハァッ、ハァッ。や、やっぱり三回の変身はキツいわね。
しばらく立ち上がれそうにないし、それに手錠はめられたまま。
警部さん、私も年貢の納め時みたいね……」
いつになく弱々しい彼女に、棚橋は声をかける。
「捕まえねえよ」
予想外の返答に、怪盗は目を見開いて棚橋を見た。
棚橋は指で頬をポリポリと掻いていた。
「わけあって俺は今休暇中だ。それに……今回はお前も被害者みたいだしな」
「そうだ……私影山に……あ、あんな……うぅッ……うわぁぁーーッ」
怪盗は自らが受けた陵辱を思い出し、棚橋の腕の中で号泣した。
その表情を隠す長い銀髪の間から嗚咽が漏れる。
棚橋は怪盗の初めて見せた弱い女性の部分に戸惑いながら、
降りしきる雨から護るように、優しく、きつく抱きしめるのだった。
ひとしきり泣き終わると、怪盗はマスクの奥の赤く腫らした目で
棚橋を見つめると、そっと体を離した。
「本当にいいのね……もうチャンスはないかもしれないわよ?」
「バカ言え。次会うときがお前の最後だ」
二人は微笑み合うと、立ち上がってどちらともなく背中を向けた。
歩いて立ち去っていく怪盗の気配を感じながら、棚橋は胸ポケットからカードを取り出した。
「今回はタロットを守ったし、痛み分けってやつだな、
怪盗アンバームーン……なッ!?」
その手にあるものはタロットではなくメッセージカードだった。
『男前の警部さんへ。女性の涙には気をつけることね。
怪盗アンバームーンより』
「やられたか……まぁいいさ」
棚橋は微笑むと、彼女が立ち去った方向を見やった。
いつしか雨はあがっていた。
〜『隠者』奪還完了〜
残りカード枚数…四枚
243 :
102:2008/01/27(日) 03:41:52 ID:cUhb0/53
支援感謝!
というわけで今夜の投下はここまでです。
すっかりガチエロSSのアンバームーンですが、今回のシチュは……
なんていうか凄いですね、サブタイトルが『奴隷』って(汗)
りあるたいむGJ。
職人さんごとの嗜好があるんだからガチエロでも全く問題はない。
むしろどんとこい。
しかし棚橋男前だなぁ…それに比べて影山と飯綱ときたら。
怪盗捕まえたらまずは正体あらためだろ!(そこか)
GJ!
俺みたいにエロが欠片すら感じられないSSをエロパロで書いてる奴がいるんだから無問題です。
あと棚橋かっけえw
何だか少し軽くなってるっぽいので投下します。
……今見てる人は4:10ぐらいまで別の板見てくれると嬉しい(少しでも軽くする意味で)
恋するキャットシーフ 第5話
「……」
黙りこくったまま、うろうろとせわしなく歩き回る里緒を見て、一美は溜息を吐く。
危険は確かに大きいが、里緒の、親友の恋を応援しようと心にきめたのだが。
「(ドタキャンして、2人きりのデートにするつもりでしたのに……。
それに、里緒、早く来過ぎですわよ……)」
適当な理由をつけて家にこもって、明日の作戦でも練っておこうと思っていた一美。
しかし、里緒に家に強襲され、引きずり出されてはどうしようもなくて。
しかも、待ち合わせが10時なのに、待ち合わせ場所に着いたのが8時55分。
「(少しくらい女性が遅れるのがベストですのに……)」
……さすがに1時間以上前に来た人間より早く来いとか言う無茶な事は言えず。
これだけ待ちぼうけ状態だと、多分来るんですわよねえ……、と一美が考えていると。
「ねぇ、彼女達!」
「(……ほら来た)」
そう里緒と一美に声がかかり、一美はげんなりとしてそちらを向く。
すると、そこには全身から軽そうなオーラを撒き散らせた、何処からどう見てもナンパ男が2人立っていた。
「そんな風に待ちぼうけしてるくらいならさ、俺達と遊ばねえ?」
「……まだ、待ち合わせ時間にもなっておりませんの。それではごきげんよう」
そう声をかけてきた男に、一美はわざと言葉を噛み合わせずに返す。
一美も里緒もかなりの美人に入る部類なので、こう言う手合いの相手は慣れていた。
「そう言う事なんで、ごめんなさい」
「えー……、いいじゃん、俺達と遊ぼうぜー」
そう言って断る里緒だったが、その男は全く人の話を聞かずに、里緒に手を伸ばす。
一瞬里緒は蹴り飛ばそうかと思うが、ここが往来である事を思い出して慌てて自制する。
そんな里緒の方に、男の右手が触れようとして……、
「……いいってぇぇえぇ!」
「……へ?」
……その瞬間、横合いから伸びて来た手に右手首を極められ、男は悲鳴を上げた。
「すいません、待たせちゃいましたね」
「……涼人君!?」
驚いたように声をかける里緒に、涼人はにこやかに微笑む。
……その手は、まだナンパ男の右手首を極め続けていたが。
「……と、言う事なので、ナンパなら別の人にお願いしますね♪」
「わ、分かった! 分かったから離せ! 折れる!」
じたばた暴れる男から涼人が手を離すと、その男は右手首を押さえながら逃げて行く。
それにもう1人の男も付いて行き、里緒と一美はほっと安堵の溜息を吐いた。
「あ、ありがとう、涼人君」
「いえ、僕が遅れちゃったからこんな事になったんですから……」
そう言って苦笑する涼人に、一美は首を横に振る。
「いえいえ、涼人さんは30分も前に来ているじゃありませんか。
……1番悪いのは、待ち合わせの1時間以上前に私を無理矢理引き摺ってきた里緒ですわよ」
「……へ?」
そう言われ、涼人は呆気に取られた表情で里緒を見やる。
その視線を受け、里緒は思わず真っ赤になって、大パニックになった。
「あ、え、その、違うの! えっと、その……」
「里緒さん、何がどう違うのかは分からないですけれど、とりあえず落ち着いて」
そう言ってどうどう、と涼人が里緒を宥めていると、一美がにやつきながら口を開く。
「里緒ー? 涼人さーん? ……いちゃついてないで、歩きませんかー?」
「か、かかかか一美!?」
「一美さん!? な、何を言ってるんですかっ!」
その一美の言葉に、涼人と里緒は一瞬にして真っ赤になる。
そんな2人を見て、一美は心底微妙な表情を浮かべた。
「(……友人としては嬉しいけど、『レインボーキャット』の協力者としてはまずい光景ですわね、これ……)」
そして、昼過ぎ。
「へえ……、あんな美味しいお店があったんですね……」
レストランから出て、そう感心したように呟く涼人に、里緒はえへへ、とはにかむ。
そんな2人を見て、一美ははぁ、と溜息を吐き、……急にぴくり、と身体を動かすと携帯電話を取り出した。
「……はい……はい。……ええ!? お父様とお母様が!?」
急にそう叫んだ一美に、涼人と里緒は顔を見合わせて首を傾げる。
と、一美が電話を切り、すまなそうな表情で、涼人と里緒に手を合わせた。
「……申し訳ありません……。お父様とお母様が急に帰って来られたらしくて……」
「え、おじさまとおばさまが!? それじゃあ、こっちはいいから早く帰りなよ! 久し振りに会うんでしょう!?」
そう、びっくりしたように叫ぶ里緒に、涼人は訳が分からない、といった表情をして首を傾げる。
と、そんな涼人に、里緒が説明した。
「一美の両親はね、いつも仕事で世界中飛び回ってて、なかなか家に帰れないの」
「あ、なるほど……。それなら、早く帰った方がいいですよ? 一美さん。
……何よりも、家族との団欒が1番大事。僕は、そう思いますから……」
そう言った涼人に、一美は本当に申し訳なさそうに頭を下げる。
そんな一美を見て、里緒は苦笑すると、言った。
「ほーら! 早く行くの! ……涼人君は、私だけでも案内出来るから、ね?」
「……ええ!」
その里緒の言葉に、一美はようやく決心したように顔を上げ、2人にもう一度頭を下げて、走り出す。
そんな一美を見て、涼人は微笑みながら口を開いた。
「一美さんって、優しいんですね」
「そうだよ。優しくて、友達思いで……、私の1番の、自慢の親友なんだ!」
そう言ってにっこりと笑った里緒に、涼人もつられたように微笑み返す。
その笑みをまともに見てしまい、里緒は真っ赤になって視線を逸らし、……気付いた。
元々最初は里緒、一美、涼人の3人だった。そして、さっき一美が家に帰った。
3-1=2。そんな小学校1年生でも分かる計算から、導き出される答えは1つ。
……今、里緒と涼人は、2人きりになっていた。
「あ、あわわわわ……」
「里緒、さん?」
急に慌て出した里緒を見て、涼人は首を傾げる。
しかし、往来のど真ん中で、まさかこのまま里緒を放っておく訳にも行かず。
涼人はふう、と溜息を吐くと、里緒の正面に回りこんで、
……突然、人差し指を里緒の鼻先に突き付けた。
「!!?」
「……落ち着きました?」
その行動に、里緒は思わず飛び上がる。
……その次の瞬間、まるで魔法か何かにかけられたかのように、里緒の表情に落ち着きが戻っていた。
「教えてくれて感謝するよ……、父さん」
そんな里緒を見て、そうぼそりと呟いた涼人。
その言葉を聞いて首を傾げた里緒に、涼人は苦笑気味に微笑んで、言った。
「驚愕法……だったかな? パニックになってる人は何かしらの方法で驚かせてそっちに意識を向けさせれば、落ち着く。
そう、父さんから教わった事があったんです」
「へえ……、涼人君のお父さんって心理学者か何かなの?」
「いえ、父さんは探偵で、母さんは警察官で……す」
そうにこやかに笑い合いながら話を続ける涼人と里緒。
しかし、その笑みの1枚下では、涼人は自分の両親が亡くなっている事を気付かれないように、
里緒はその事を知っている事を気付かれないように、それぞれ必死だった。
「……へえ……凄いねー……」
「いえ、大変ですよ? 仕事が被って喧嘩、とか結構ありま、すから」
思わず過去形で言いかける自分を必死で制しながら、涼人は言葉を紡ぐ。
里緒も、自分が知っているとぼろを出さないように気を付けながら、それに答える。
「え、えへへ……」
「あ、あはは……」
……今、里緒と涼人の2人の心の中は、相手にばれないようにしようと言う思いで一杯だった。
たとえそれが、傍から見る限りでは、初々しいカップルにしか見えなかったとしても……。
その夜。
「えへへ……」
ベッドに寝転がり、里緒は左腕を目の前に掲げる。
その左手首に光るブレスレットを見て、里緒はにへら、と笑って腕を胸に当てた。
「涼人君……♪」
そう呟いて、ベッドの上をごろごろ転がり回る里緒。
何故里緒がここまで完璧に壊れてしまっているのかと言うと。
「里緒さん、今日はありがとうございました」
「う、ううん! 気にしないで!」
そう言って微笑む涼人に、里緒は真っ赤になってどぎまぎする。
すると、そんな里緒を見て、涼人も何故か真っ赤になって……、
「こ、これ!」
「……え?」
急に、涼人が紙袋を取り出し、里緒はきょとん、とした。
「え、えっとですね、それ、今日のお礼です! そ、それじゃあ!」
「え、あ、涼人君!?」
そう言って、涼人は紙袋を里緒に押し付けるように渡すと、逃げ出した。
……1人取り残されて、里緒は押し付けられた紙袋を開く。
と、
「……わぁ……」
紙袋の中に、ブレスレットが入っていた。
恐らくは真珠ので形作られたバラの花が飾りとなっているだけの簡素なもの。
だが、それは1日街を案内しただけの相手にプレゼントするには、明らかに高そうに見えて。
……そんなプレゼントを贈られる程度には特別に思われている事に、里緒は気付いて。
たちまちのうちに、顔を喜びの色に染め上げた。
これで終わりです。
うん、初々しいデートって傍から見てたら萌えるよねw
最後のブレスレットですが、ある意味を持たせてあります。
……涼人はただ里緒に似合いそうなブレスレット買っただけで、その意味には全く気付いていないんですがw
ヒント:つ「花言葉&宝石言葉」
真珠は、ピンクパールとかじゃなくて、普通の白い真珠です。
>>230 ずごおおおんと言うよりも、
ひとみのーおくのーひみつ♪とか、
「この悪魔……」「それでもいいよ」とか、
「少し、頭冷やそうか……」とかですねw
本日二度目のリアルタイムGJ。
いやもう本当に怪盗関係ないね! 褒め言葉的な意味で。
253 :
102:2008/01/27(日) 04:34:24 ID:cUhb0/53
リアルタイムGJ!!
ヤバいヤバい、キュン死にしそうになったよ!
ブレスの意味ですか……伏線や今後の展開とかはあまり言わない方がいいですよ?
手品のタネは最後に劇的にバラさないとっ♪
>魔砲少女
あ、そんなのがあるんですね。
てっきりガンキャノン子とかガンタンク美とか(ry
なんてGJ続きなんだ最近は
それぞれの感想を
勝手に妄想してるだけなのでご本人は
>>253の
>伏線や今後の展開とかはあまり言わない方がいいですよ?
>手品のタネは最後に劇的にバラさないとっ♪
な方向で^^
>怪盗アクアメロディ外伝
エロースエロース
救援は期待できないだろうからこのまま仕込みを遂行するしか
頑張れ生物
>朧月怪盗アンバームーン
エロースエロース
リョナられて怯える少女怪盗は最高です
人によって好き嫌いが激しそうな嗜好なのが個人的に残念です
>恋するキャットシーフ
エロスの荒波の中の清涼剤です
一美は嘘で席を外して実はヲチしてたに違いないw
>>253 >手品のタネは最後に劇的にバラさないとっ♪
ええ、分かってます。
……伏線にするつもりが出来なかったんですorz
もう第8話まで下書きが終わってて、どう考えてもエピローグ含めて15話以内には終わる状態で、(恐らく全12話)
どうやってもそれが入らなかった罠w
だからこそ後書きで設定をばらした、と。
>魔砲少女
ガンダム好きならようつべやニコニコで「リリカルなのは」で検索すれば幸せな気分になれると思いますよw
特に無印なのはVSフェイト決戦シーンは完全に燃えますから。
>>254 >エロスの荒波の中の清涼剤です
……エロに入ったら覚悟しておいてくださいよ?
俺のエロの本質はイカされすぎて……スレに行くべきレベルですからw
>一美は嘘で席を外して実はヲチしてたに違いないw
あ、後書きで書き忘れてたorz
ヲチはしてませんが、帰った理由は真っ赤な嘘ですw
>魔砲少女
結構前はニコニコ内で「管理局の白い悪魔」で検索すれば楽しめる動画が転がってましたが
今は随分スマートになっちゃってますね
>>255 悶える様な激甘展開と思っていたのにっ
ここの職人は皆、住人に全裸で待てと言うって事か
257 :
102:2008/01/27(日) 06:58:52 ID:cUhb0/53
頻繁に書き込んでごめんなさい。
>>254 ま、まぁこのスレ一番の変態ですから。
むしろ他の人の考えるエロシチュとか要望が聞きたいですねー。
プロットが崩れるような反映は出来ないんですけど。
>>255 ちょwww こりゃ全裸で正座して待つしか!
個人的にはPTフィズの続きが気になる……。
>>257 無理を承知で敢えて言おうではないか
孕ませキボンヌ
頻繁に書き込んじゃってるなあ……
>>258 その願い、確かに受け取った!
……最終話書いた時に覚えてたらの話ですがw
260 :
AM:2008/01/27(日) 10:41:30 ID:rY4/KTDZ
よくないとわかっていながら頻繁に書き込んでしまう102氏と38氏に萌えてしまう俺。
貴方たち本当にこのスレ大好きですね!www
全然人のことは言えない俺がここにいますが。
他のスレでは職人は作品以外では必要最低限のこと以外は黙っておくのが美徳みたいなところがありますしねー
ここのスレの場合はむしろ職人が喋ることで活性化してる感じですし、限度さえちゃんと考えればいいのでは?
>>257 アンバームーンで、という条件なら…今後出てくるカードの能力や敵の性格次第ではあるんですが
コスチュームは怪盗のままで肉体部分だけ元に戻り、幼い肉体を揶揄されながら責められるとか。
動けない状態で服の中に苦手な虫とかウナギを入れる生き物責めとか。
羽毛によるくすぐり責めが段々快楽に変わってこの変態めとかいわれるとか。
こっちはAM外伝の後編が今しがた書き終わりました。
後は見直しすれば投下できるので今日中にはいけそうな予感。
PTフィズが今日投下される可能性が高いから被らないようにしないといけないな…
なんてこった
投下を待ち、読んでりゃ職人さん達でGJを出してくれて意見出し合って高めあっててくれる
俺らROM専は据え膳上げ膳じゃんwww
ありきたりな書き込みで非常に申し訳ないが皆様GJ!
恋愛物あり、陵辱、ライトリョナ…
どれも本当に味があって陵辱物以外を食わず嫌いしてたのが目が覚めたよ
>>261 そう思いながらもROM専から脱却して書き込んだお前はえらい。
やっぱ読み専も書き込んでこそスレが盛り上がるってものさ。
そして職人の皆様毎回本当にGJな作品をありがとう。
それぞれに味がありすぎて俺の体が枯れはてそうだぜ。
>アンバームーン
GJ!次のはなしも期待してます。
残りは 『恋人』 『運命の輪』 『教皇』 『世界』 ですね…どれが出てくるんだろう。
264 :
AM:2008/01/28(月) 18:08:15 ID:4IUuQg4W
急なバイトが入って四日連続投下の夢は淡く消え去った…
というわけで悔しさをこらえつつ後編投下開始。
プシュンッ。
庭園へ続く自動ドアが開き、三人の男が地を踏みしめた。
男たちは少しの間耳をすまし、何も聞こえてこないのを確認して歩を進める。
「どうやら仕込は終わっているようだな」
「出直す羽目にならなくて良かったぜ、なんせ最中に踏み込めば俺たちまで襲われちまう」
「まあな……お、見てみろ!」
男の一人が怪生物の戦利品置き場の一ヶ所を指さす。
怪生物は見た目に沿わず几帳面な性格らしく、獲物の順番に奪った装飾品を並べる癖がある。
ということは一番手前においてある服が一番新しい獲物から奪った戦利品。
つまり、怪盗アクアメロディから奪った服ということになる。
「間違いないな、警備カメラに映っていたあの女の服だ」
「ってことは噂の女怪盗も今はすっぽんぽんってことか?」
「だろうな、しかも今頃は媚薬を吸ってあんあん喘いでいるだろうぜ」
「おいっ、見ろよ。このブラジャー、カップがDはあるぜ!」
「マジかよ、結構巨乳じゃねえか……でも水玉模様ってのはちょっとお子様くさいな」
「お、このパンツまだ温かい! 脱がしたてか」
「こらこら、遊ぶのは後だ。まずは確保が先だ」
脱がしたてホカホカの下着を手にしてはしゃぐ部下二人は隊長のもっともな言葉にしぶしぶと手に持っていたものを戻していく。
と、一人の部下が下着の横にかけられた仮面を見つけた。
「これって、もしかしてアクアメロディの仮面なんじゃ…?」
「何? む、確かに……今までの女はこんなものを持っていたはずがないしな」
「てことは今奴は素顔ってこと…?」
「だろうな。ふぅむ、これは…」
うむ、と三人の男は頷き合い、足早に歩き出した。
彼らもこのような仕事をしているのだから怪盗アクアメロディの名前くらいは聞き及んでいる。
警察を手玉に取り、未だ誰にも正体を知られていないという美少女怪盗。
だがこの先には、仮面を剥がされた素顔の怪盗がいる。
自分たちが最初にアクアメロディの正体を見ることができるかもしれないという興奮に男たちの足の速度が増す。
「アクアメロディか……一体どんな顔してるんだろうな」
「可愛い系か美人系か、どっちですかね?」
「おいおい、ブスの可能性だってあるんだぞ? おい、お前はどうおも……」
もう一人の部下に意見を聞こうとした隊長の声が止まる。
それを怪訝に思った部下が振り返ると、さっきまでいたはずの同僚の姿がないことに気がつく。
「あれ? アイツどこいったんだ。立ちションか?」
「いや、それなら俺たちに一声かけるはずだ。気をつけろ、何か嫌な予感がする」
突然の仲間の消失に二人は背中合わせになって警戒する。
だが次の瞬間、ゴンッ! という鈍い音が背後から聞こえてくる。
隊長は慌てて振り向くが、部下は既に額に大きなたんこぶをつけて気絶していた。
すぐ傍に小型の鉄球が転がっているところを見るに、これで撃たれたのだろう。
「…これは奴の仕業じゃあない。まさか、あの化け物から…っ!?」
「正解っ♪」
瞬間、背後に生まれた気配に隊長は身体を硬直させた。
振り向く間もなく腕を拘束され、口に布が押し当てられる。
クロロホルムを使っているのだろう、途端に眠気が襲ってきた。
せめて顔を見てやろうと首を後ろに捻る。
だが、既に目は閉じかけていて怪盗少女の素顔を見ることは叶わない。
(…噂以上の腕ってわけか、まさか奴を倒すとは。だが……乳、やっぱりでかいな)
隊長は霞む視界の中、地に伏せる怪植物の姿を見る。
そして彼は背中に押し当てられた胸の感触に鼻を伸ばしつつ、ゆっくりと眠りについていった。
「…ふう。よかった、来たのがたったの三人で」
男たちが全員沈黙したのを確認すると、それをやった犯人――美音はほっと息を吐いた。
そして数分前のことを思い出す。
そう、絶体絶命のピンチだったあの瞬間のことを。
(もう、ダメ…)
酸欠の苦しさにあがらえず、ついに口を開きかける美音。
だが、衣擦れ音と共にほどかれていくリボンの感覚に閃きを覚え、最後の力を振り絞ってぐっと唇を閉じる。
まだ一つだけこの状況を脱出する手段がある…!
リボンがほどけると同時に怪盗少女のポニーテールがとかれ、水無月美音の髪型へと戻っていく。
と同時にリボンが触手に絡み取られ、その下に隠されていた小さなケースが零れ落ちた。
美音は後ろ手でそれを掴むと、素早くケースを外して中身を取り出す。
次の瞬間、ブツッという音と共に両手首を拘束していた蔓が千切れた。
「ギュルッ!?」
思わぬ痛みに怪生物は悲鳴を上げる。
美音はそのまま前のめりに倒れるようにして足を拘束する蔓をも手にしたナイフで切り裂いた。
「…ハァッ!! ハァーッ、ハァーッ……」
拘束から逃れ、美音は思い切り息を吸い込む。
幸いにも霧は上空だけに散布されていたので地面に降りてしまえば吸ってしまうこともない。
新鮮な酸素を取り込んだことで、怪盗少女の身体に活力が戻ってくる。
「シャアアッ!」
が、身体の一部を切り裂かれた怪物は怒り心頭だった。
再び獲物を捕らえるべく複数の触手を襲い掛からせる。
脱出を果たしたとはいえ、美音の手にはナイフが一本だけであり、このままでは再度拘束されてしまうのは間違いない。
そしてそうなってしまえば今度こそ媚薬の虜にされてしまうだろう。
しかし触手が迫り来ようとしていたその瞬間。
美音は地面に落ちていた一つのボールを拾うと思い切りそれを怪生物へと投げつけた。
「シュギッ!? ギ……ギィィィィ!?」
頭頂部の口の中に命中したボールの中からモクモクと煙が立ち昇る。
美音が投げたのは目くらまし用の煙幕玉だった。
植物である怪物にはそれを身体の中に放り込まれるというのはたまらなかったらしい。
狂ったように身を捩じらせて暴れ狂う緑の巨体。
だが、それも数十秒後には終わり、怪生物はグッタリと地面に倒れ伏していく。
(本当、ギリギリ…危なかった…)
怪生物が沈黙したのを確認した美音は服を取り返すべく道を戻っている最中であり
ちょうどそこに現れたのがこの男たちだったのだ。
先に気がつくことができたため、待ち伏せという形で撃退できたが…
もしも相手が先に気がついていたら。
もっと大勢でこられていたら。
もっと早く踏み込まれ、拘束されている状態に居合わされたら。
そう思うと手放しに喜べる結果ではなかった。
一糸纏わぬという表現がピッタリな素っ裸の状態で三人の男を気絶させる女の子。
そのシュールな図も少女をへこませる一端ではあったのだが。
「あっ、いけないっ。早く着替えないと…」
自分の衣装を見つけた美音はすぐさま着替えを開始する。
追加の人員が送られてくるかもしれないし、まだあの生物のような存在がいるかもしれない。
そうなるとこの庭園に留まっているのは危険だ。
怪盗少女は最後に上着のボタンを閉めると、慌しく庭園のドアを潜っていった。
ギィィィ…
屋敷の主である男が身を置く部屋の扉がゆっくりと開かれる。
木野剛三は唐突な来客の存在に焦ることなくゆったりと椅子ごと振り向いた。
「ようこそ、怪盗のお嬢さん。その様子だとどうやら奴や警備の者はやられてしまったようだね」
「ええ、今頃は良い夢を見ていると思うわ。木野剛三、貴方もすぐにそうなるけれど」
怪盗少女は嫌悪の眼差しで初老の老人を見つめる。
風呂上りだったのか、剛三は腰にタオル一枚という格好でソファーに座っていた。
後ろには無数のコードが伸びている。
ソファーから伸びた機械の手が彼の身体をマッサージしたり水滴を拭き取ったりしているのを見るに、コードはそれらに繋がっているのだろう。
「こんな格好ですまないね。どうもワシはものぐさでな、こうして機械に頼らねば生活できんのだよ」
「……思ったより、だらしのない人だったのね」
「これは手厳しいことをいうお嬢さんだ。ふむ、そんなにあの子は気に入らなかったかね」
「あんな悪趣味な植物…! 大体一体何のつもりなの!? 女の人たちを攫って、あんな化け物に襲わせて…!」
女性たちの惨状と自分の受けた屈辱に身を振るわせる怪盗少女。
だが、暖簾に腕押しとばかりに剛三はその怒気を受け流す。
「ワシは選ばれた存在なのだよ。知っての通り、ワシは植物学の権威だ。今まで幾つもの新種を生み出し
あるいは品種改良を行ってきた。だがね、ある日気がついたのだよ。ワシのやっていることはいわば生命を生み出すということだ。
それはある意味で神の所業だ。つまり、ワシは神と同格ということだ」
「…悪いけれど、ただの妄想にしか聞こえないわ」
「ホッホッ。まあ理解してもらおうとは思っておらんよ。とにかくだ、ワシは思った。
神と同格の優秀な遺伝子を世に残さねばと。だが既にワシもこんな歳でな、子種をやるといっても大概の女は承諾せん」
「だから、女の人を攫ったと? 自分の子供を生ませるために…!」
「その通りだ。とはいえ、ワシの遺伝子をくれてやるのだからそこらの凡婦ではいかん。
やはり優秀な男には優秀な女が必要だからの。故にワシは選別するために女を集めた」
「なんて…ことを!」
「だが、世に評判の美人や才女といっても一皮剥けば浅ましい本性のメスばかりでの。
少々ガッカリしておったのだよ。まあ、今では彼女たちはワシのコレクションだな」
「勝手なことを。あの女の人たちは貴方の玩具じゃあないっ!」
「手荒い真似はしておらぬ。いずれ時が来れば解放するつもりだ。勿論、その時に社会復帰が可能なのかは知らんがな…ククク」
たるんだ腹をゆさゆさと揺らしながら笑う剛三の表情は既に人のよさそうな老人のものではなかった。
欲を丸出しにした醜い、ただの人間だった。
「その点、君はここまでは合格だよ怪盗アクアメロディ。まさか私が手塩にかけて育てたあの子を倒すとは思わなかった」
「あいにくだけれど…貴方のような様な人は、タイプじゃないのっ!」
問答はここまでだとばかりに美音は懐から銃を引き抜き即座に発砲する。
美音の父親が作ったその改造銃は弾丸ではなく小型の鉄球が打ち出される仕組みだ。
本物の拳銃に比べ、殺傷性も速度も劣るがまともにヒットすれば当然ただではすまない。
「いきなりとは、乱暴だな」
「えっ…」
着弾を確認した美音は自分の目を疑った。
確かに鉄球は老人の身体にめり込むようにして命中している。
にもかかわらず剛三は痛みを覚えている様子はない。
めり込んでいたはずの鉄球が身体から押されるようにしてぶよんっと弾き出される。
「くっ!」
「無駄だよ」
鳩尾、すね、腕と次々に鉄球を打ち込んでいくが剛三はソファーに身を沈めたまま微動だにしない。
バリアか何かといぶかしむも、確かに肉にめり込んでいるのは確かなのだからそれはありえない。
残る可能性は肉体改造くらいだが、この男の性格上それをするとは思えない。
ならば残る可能性は…
(まさか、アクアルが…?)
水のエレメントジュエル、アクアル。
かの宝石ならばあるいはこの馬鹿げた防御力もありえるのかもしれない。
だが、それが事実ならば剛三は既に魔力を引き出しているということだ。
だとすればもはや一刻の猶予もない。
美音は一気にダッシュで加速をつけると軽く跳躍して剛三に肉薄。
渾身の力で爪先を顔面に蹴りこんだ。
(これなら……っ!?)
だが、そのトゥーキックすらも老人の身体に苦痛を与えるには足りなかった。
老人の身体からの反発作用が一気に襲い掛かり、怪盗少女は床へと跳ね飛ばされてしまう。
「やれやれ、だから無駄だといったのに……まあ、ワシには眼福だがね」
「え……あっ!」
剛三の指摘に視線を下に向けた美音は慌ててスカートの裾を引き下げる。
不安定な状態での着地のショックで少女は大股開きになっていたのだ。
当然、短いスカートの中身は全開で老人の目に晒されていた。
「水玉模様とは可愛らしいが、いささか子供っぽくはないかね?」
「あ、貴方には関係ないでしょう!?」
「ホホホ…まあいい。肝心なのは中身だしの」
服の中を見透かすが如く、舐めるような視線を向けてくる剛三に美音の身体が嫌悪に震える。
しかしその瞬間、美音の目にキラリと光る宝石が目に映る。
剛三の胸元から覗く青い石、それは紛れもなく捜し求めていたアクアルだった。
(この魔力…間違いない、本物!)
「うん、どうしたのかね? ああ、なるほど。お嬢さんはこれを盗みに来たんだったね」
「それを、渡してもらうわ…!」
「ホッホッホ、悪いがこれは誰にも譲る気はないよ。この宝石を手に入れてからのワシの人生は順風満帆だ。
思いもかけず手に入れた代物だが…まさに幸運のアイテムだよ」
少女の視線に気がついた剛三は自慢するようにアクアルを撫でさする。
宝石の中心では鈍い光が灯っており、魔力が発動していることを示している。
だが、光の大きさと剛三の発言からして本人が意図して魔力を引き出しているわけではないようだ。
となれば、宝石の本当の力に気づかれる前にケリをつけなければならない。
(だけどどうやって…ううん、あの肉体がアクアルによるものなら…!)
確かに剛三の肉体は脅威だが、動きの速さそのものは美音の足元にも及ばない。
アクアルさえ奪えばただの人間に戻るはず。
怪盗少女はやることが決まったとばかりに後方へと一旦下がると、再び加速をつけて剛三へと迫っていく。
「やれやれ、懲りないお嬢さんだ…」
それを見て老人は呆れたような溜息をつく。
だがそれこそが美音の狙いだった。
完全に自分の肉体を過信して油断している老人からジュエルを奪うなど怪盗少女にとってはたやすい仕事だ。
一度フェイントを入れて顔面に意識を向けた美音は腕を折って老人の胸元へと手を突っ込む。
しかし――
「もらっ……え!?」
「ホホ…なるほどなるほど。狙いは宝石のほうだったか、だが残念…」
アクアルは剛三の肌に張り付くように固定され、ピクリとも動く様子を見せない。
そして、少女の手がずぶずぶと老人の身体の中へと埋まっていく。
慌てて引き抜こうと力を込めるが、まるで老人の肉体に食べられてしまったかのように右手は抜けてくれない。
「ほれ、捕まえたぞ」
「あぅっ…」
動揺している隙に怪盗少女の身体は剛三の手によって引き寄せられる。
刹那、ようやく右手が抜けるが既に時は遅し。
アクアルを奪うことすら叶わなかった美音は剛三の膝の上にまたがるような格好で捕らえられてしまう。
(くっ、離れないと……え、か、身体が…!?)
醜悪な老人と密着する嫌悪感に美音は脱出を図るべく身体に力を込める。
だが、少女の身体はまるで接着剤で貼り付けられたかのように老人の身体から離れない。
「驚いたかね? 最近ワシの身体には三つの特殊な力が備わってな。
一つは先程見せた衝撃を寄せ付けないゴムのような身体だ。これによってあらゆる攻撃はワシには効かない。
そして二つ目。それは触れたものを放さない吸着の肌なのだよ」
「……ッ!」
怪盗少女は自慢気に語る老人の目を睨み付けた。
足の間に老人の身体が位置しているため、足を閉じられない美音は開脚の継続を余儀なくされる。
客観的に見て、俗に言う駅弁の体位をとらされている状況だ。
性知識に聡くない美音は体位という単語すら知らない。
だが、自分が取らされているポーズが恥ずかしいものだということは性的な知識がなくても理解できる。
羞恥心に頬を赤らめ、怪盗少女は懸命にもがく。
「無駄無駄。諦めたほうが利口だよお嬢さん…だがまあ元気なほうが仕込み甲斐もあるというもの」
「仕込みって……何を、言ってっ」
「あの子ができなかったようだからね。こうなればワシが直々に仕込むしかないだろう?」
顔に迫ってくる老人の唇に美音は首を反らして対抗する。
だが、老人の狙いは怪盗少女の顔ではなく、反らされたことで大きく開いた首筋だった。
ブチュゥゥ…
ヒルが獲物に吸い付くように、不快な音を立ててシミ一つない乙女の白い首肌に老人の唇が吸い付いていく。
「や、やめっ…うくっ!」
たまらぬ不快感に美音はぶんぶんとかぶりを振る。
吸い付いた唇は頑として離れず、皮膚の水分を全て吸収するかのように強い吸引を繰り返す。
ちゅぽんっ
数秒後、ようやく放された首筋は吸引によって真っ赤に腫れ上がっていた。
痛みに顔をしかめる美音。
だが、不思議なことに痛み以外の感覚が首筋で生まれていた。
吸われた部分が熱を持ち、じくじくと疼いていく。
「え…あ…?」
「ふう、素晴らしい肌のハリと滑らかさだ。おや、その感覚が不思議かね? では、もっとそれを味あわせてあげよう」
「あっ…ちょっと…っ」
自身に生まれた感覚に戸惑う怪盗少女。
その隙をつかれ、たわわに実ったバストを両手で掴まれてしまう。
力を込めている様子すらないのに老人の手はベッタリと胸に張り付いたまま剥がれようとはしない。
むぐっと汗ばんだ両手がコスチューム越しに豊満な双子山へと沈み込んでいく。
揉まれる――そう感じた美音はビクリと身体を硬直させる。
しかし老人の指が動く様子はなかった。
思わぬ展開にきょとんとする美音。
だが、剛三の第三の能力は既に進行を始めていた。
(え…汗? 違う、これは一体……?)
老人の手のひらからじんわりと液体が滲み出してくるのを美音は感じた。
それはコスチュームに染み込み、やがてブラジャーを通って直接肌へと触れる。
どくん。
液体が触れた肌が熱を持ち、その奥の心臓が鼓動を早め始める。
それは先程首筋に感じた感覚と同じだった。
「……はぁっ…んっ」
あまりの熱さに思わず美音は吐息を漏らす。
それはとても色っぽく、客観的には男を誘っているような仕草だった。
老人は怪盗少女の変化に目を細めると、ニヤリと口元を吊り上げる。
「どうしたのかね? 随分とおとなしくなったようだが」
「だ、誰がっ…はぁ、ふぅ…」
強気を保とうとするも、胸からこみ上げてくる切なさのような感覚に美音は翻弄される。
だが、胸の頂点までが疼き出すとそうも言っていられなくなる。
桜色の乳首がブラジャーを押し上げるようにムクムクと成長をはじめ、硬化をはじめたのだ。
(ぁ…な、なんで…っ?)
肌が熱くなるのはともかく、乳首まで勃起を始めてはさしもの怪盗少女も冷静ではいられなくなる。
刺激を与えられてもいないのに性感反応を見せるなどありえない話だ。
だが、現実に少女のつぼみはどんどん大きさを増し、やがて完全にピンッと硬化してしまう。
「う、嘘…」
「ほほう? どうやらその様子だと乳のほうは大変なことになってるようだね?」
「ち、違う! それよりも、私に一体何をしたの!?」
「ホッホッホ、これがワシの三つ目の能力だよ。ワシの身体から分泌された液には催淫作用があっての。
あの子のそれとは違い、これは相手の肌に触れるだけで効果を発揮する」
「な…そ、そんなっ」
「効果は…まあ、身にしみてわかっただろう? さあ、話はここまでだ。
たっぷりとお嬢さんの身体にワシの味を仕込んでやろう。
何、心配することはない、すぐに気持ちよくなって何も考えられなくなる」
「そんなこと、あるはずがない…」
「ホホホ、今までの女も皆同じことを言っておったよ。だが例外なく彼女たちは最後にはワシに屈した。
君はどこまで耐えられるかな、怪盗アクアメロディ?」
言葉を切ると同時に、剛三の身体全体からぬるぬると汗のような液があふれ出し、蒸気となって美音に襲い掛かる。
だが、逃れようと暴れても密着状態で肌と肌がくっついている状態ではどうしようもなかった。
二の腕や太股といった肌が露出している部分を中心に液が纏わりついていくのを防げない。
(あ、熱い…っ)
胸が、首筋が、露出した肌全てが火に炙られているかのようにかっかと熱を持つ。
だがそれは排気口の中にいたときのような苦痛の感覚ではない。
熱の裏にくすぶる不思議な感覚――快感が怪盗少女を苛んでいく。
「はぁ…はぁ……ひっ!?」
ビクンッ!
荒く息を吐きながら顔を俯かせた美音の口から悲鳴がこぼれた。
未だ液の影響を受けずにいた一番大切な部分に接触する何かを知覚してしまったのだ。
それはアクアメロディのミニスカートの前面をこんもりと押し上げ、乙女の秘所に密着している。
ビクビクと時折震え、その温度は火箸のように熱い。
美音の頬が一気に赤く染まっていく。
いかにウブな少女とて、自分に押し付けられているこれがなんなのかは知っている。
男の、勃起した性器だ。
「や、やだぁっ!!」
下着越しとはいえ、男根が接触しているという事実は少女を恐慌に陥らせるには十分なショックだった。
淫液によってグッタリし始めていた身体が再び活力を取り戻す。
嫌悪感と貞操心に突き動かされ、美音は自由な両手を振り回し下半身を離そうともがき動く。
だが、男根とて剛三の一部には違いがなく、怒張はピッタリと張り付いたまま怪盗少女の股間から離れようとはしない。
むしろ、激しく動くことによって股間と太股でマッサージをするような、いわゆる素股の状態にすらなってしまう。
「ホッホッホ、こりゃあいかん。思わず射精してしまいそうだ」
「うぅっ…こんなの、嫌ぁ…っ」
「おや、もう終わりかね? ならばこちらから行くぞ?」
「…はぅんっ……ああっ!?」
くちゅっ
パンティに触れる水分の感触に美音は目を見開く。
精液ではない液体が男根から滲み出るようにして少女の下着へと移動する。
そして、乙女の秘所を守る小さな布に染み込んだ液はその奥に隠されている部分へと侵攻を始めた。
「あぁっ…」
美音の口から悲壮な声がこぼれる。
今股間を浸しつつあるのは間違いなく先程から自分を苦しめている淫液だ。
だが、既に全体に淫液が染み込んでパンティは防壁の意味を成していない。
このままでは他の部分と同じように、いや、この部分だからこそ恥ずかしい反応をしてしまうようになるだろう。
そうなってしまえば自分の身体が淫液に屈服するのも時間の問題だ。
しかし攻撃の効かない剛三に捕まえられている状態で一体何ができるというのか。
先程から自由になっている両手はひたすら老人の身体を打っている。
だが、平手で叩こうが拳を握って殴ろうがゴムのような身体にダメージを与えることはできない。
その気になれば両手も封じることは可能だろうに、わざとそれをしないあたりが老人のいやらしさを感じさせる。
気のせいか、徐々におなかの奥にうずうずと熱を帯びるような感覚が生まれてくる。
「ほれ、ほれ」
「あっく、うぁ…っ」
更に淫液を含ませようというのか、男根が少女の股間に激しくこすり付けられる。
下着を突き破らんばかりの勢いに美音はたまらず背をのけぞらせ、おとがいを跳ね上げてしまう。
ぐちゅ…ぐちゅっ…
やがて液にまみれた男根とパンティの間で淫らな音が発せられ始めた。
「ほれ、聞こえるかねこの音が?」
「い、いやっ…放しなさいっ! 放してっ」
「ほう、まだそんな口がきけるのか。だが身体は正直なようだの。この音…お嬢さんの蜜も混じっておるのではないか?」
「…っ、そ、そんなことないっ! く、ぅぁっ…」
老人の揶揄に気丈に反論する美音。
だが、淫液に浸された股間はもはや言い訳のしようがないほどに熱を帯びてしまっている。
それ故に、怪盗少女は本当に自分がえっちな蜜を漏らしていないか不安になってしまう。
パンティの水玉模様は液にぬれて濃い水玉になってしまい、今では淫らな演出の一部にまで成り下がっている。
淫液に犯されているのだから仕方がない、そう思えれば楽になるだろう。
しかし美音は怪盗アクアメロディとして最後まであきらめるわけには行かなかった。
萎えかける身体と意思を奮い起こし、周囲を見回す。
(何か、何か使えるものは…っ)
「ククッ、若い娘の肌はたまらんのぉ。それにその快楽を健気に耐える表情…いいぞ、実に君はいいぞ!」
老人は今夜の獲物に大変満足していた。
ハリのある肌も、整った容姿も、喘ぎ出る声も、鼻腔をくすぐる甘い匂いも、どれをとっても極上品だ。
この女ならば子供を生ませるのも悪くない。
そう思いながら剛三は腰の動きを早め、更に淫液を分泌していく。
未だに耐える精神力は見事だが、眉間によった皺は徐々に緩み始め、目元もとろんと垂れ下がりかけている。
無意識の行動だろうが、胸はもっと触ってくれとばかりに突き出され、快楽の喜びにふるふると揺れ老人の目を楽しませる。
怪盗少女の陥落は目前だった。
しかしその刹那、剛三の後頭部に焼けるような灼熱の痛みが襲い掛かる。
「グ、グァァッ!?」
あまりの痛みに剛三はたまらずソファーから転げ落ちてしまう。
同時に、能力の効果が止まり美音の身体は自由になって老人の身体から離れていく。
(効いた…!)
心中でガッツポーズを取りながら美音は床から立ち上がる。
怪盗少女の手には一本のコードがあった。
ソファーのマッサージ機に繋がっていたそれはナイフによって切られ、切断口を放電させながらバチバチと唸っている。
確かにジュエルの魔力によるゴムのような肉体への強化は驚異的だ。
だが、所詮ベースが人間の身体である以上ゴムとは違い感電までは防げない。
賭けの要素も含んだ攻撃だったが、結果は美音へと微笑んだのである。
「き、貴様ァァァ!」
顔を歪ませた老人が丁寧語を捨てて憤怒の表情を作り、突進してくる。
服に染み込んだ淫液が粘ついて気持ち悪いが贅沢を言っている場合ではない。
美音は素早くそれをかわすと、ソファー裏のコードを全て切り裂いて一つに束ねていく。
「ウォォォーッ!」
「これでも…くらいなさいっ!」
咆哮して再度突進してくる剛三の身体に美音は束ねたコードの切断面を接触させる。
即席のスタンガンだが、威力は十分。
老人は声を上げる間もなく身体を焦げ付かせながらのけぞり、そして仰向けにバタンと倒れた。
美音は浅い呼吸を繰り返しながら老人の胸元へと慎重に手を伸ばす。
所有者が気を失ったためか、アクアルは先程とは違いあっさりと怪盗の手に渡った。
「アクアル、ゲット…これで、エレメントジュエル…三つ目っ!」
苦難の末、ようやく手に入れた宝石は怪盗少女の手の上で青く光り輝く。
と、その瞬間美音の股間から太股にかけて一筋の液体がトロリと滑り落ちた。
「あ……」
ポッ、と美音の頬が染まる。
嬉しさに忘れていたが、今のアクアメロディの見た目はかなり凄いことになっているのだ。
水分を多分に含んでベッタリと肌に張り付いたコスチューム。
そして白い肌に満遍なく張り付いた透明な粘着質な液体。
身体の火照りは徐々におさまってはきているものの
汚水の海から出てきたようなその格好はとても巷でアイドル扱いされている美少女怪盗のものではない。
早くお風呂に入りたいとばかりに美音は足早にその場を去っていく。
残るジュエルは三つ。
怪盗少女は未だ続く苦難の道を思いながら、それでも力強く地面を踏むのだった。
なお、気絶した木野剛三はこの後強行突入してきた警察によってその悪行が判明し、逮捕されることとなる。
勿論囚われていた女性たちは解放され、医療施設に送られた。
しかし庭園にいたあの怪生物だけは懸命な捜索にも見つからず、行方不明となる。
その数日後から、一人歩きの女性が夜の道で裸に剥かれる事件が多発するのだが…それは余談である。
277 :
AM:2008/01/28(月) 18:38:48 ID:4IUuQg4W
外伝完結。大半の読者様が予想していたであろう媚薬吸ってギシギシアンアンな展開はなし! 寸止め万歳。
つかこの状況でガチエロやっちゃうと逆転が不可能になっちゃいますし何よりも俺がそういうのを未だ書けそうにありません。
ごめん、所詮俺は直エロよりもえっちぃな描写のほうが好きな異端者なんだ…
他の職人さんの作品やコメント見てると切に孤独を感じるぜ、しかしそれも俺のジャスティス。
次回からはトライアングルムーン再開です。
エロ場面は我々が脳内補完するから君は君の想うままに書き綴るがいい。
279 :
102:2008/01/28(月) 19:16:39 ID:L9YtqWzh
グッド!!
さすがです。
昨日から何度更新ボタンを押してみたことか。
待った甲斐がありました、GJ!!
つか、神のAMさんに孤独感じられると俺の立場がなくなる罠。
寸止めでここまでエロを感じさせるのは難しいし、痺れます憧れますよ。
アンアン言わせた方が楽だから俺はそっちに特化させただけです。
(大人の怪盗にするなど、差別化の意味もありましたが)
アクアメロディキター!GJ!
寸止めでいいじゃないですか!
どう考えても俺が書くガチエロよりエロスを感じるんですからorz
俺は逆に寸止め書こうとしても止まれなくなってガチエロになるので、行ける限り突っ走るようにしてるだけです。
アクアメロディの可愛さは異常
たまらん
282 :
102:2008/01/29(火) 00:15:30 ID:3DpqWNR6
負けじと投下します。
もっともエロ無しの上、章と章の間の繋ぎの短いものですが。
>孕ませ
それは……無理ッ!!
でも次に何か書くことがあったら参考にしてみます。
棚橋は、自宅アパートで一人物思いに耽っていた。
彼は、ただ自分自身の両手を見つめている。
雨に濡れ打ちひしがれた怪盗を確かに温めていたはずの手。
そして、彼女の体温を確かに感じていたはずの手。
だが、彼女は気まぐれな猫のようにその手からするりと抜けて去っていった。
後には何も残らない。
あの深夜の公園での出来事から、一週間が経っていた。
隊長には怪盗が既に立ち去っていたと嘘の報告をしている。
メッセージカードが現場に残されていなかったことに隊長は若干の
不審は感じたようだったが、特に追求する様子はなかった。
実際、真実をぶつけたとして信じる者はいなかっただろう。
そう、あの不可思議な現象。
怪盗が裸体を晒し、影山は姿を消し、縄が出現し、突然豪雨が降り出した。
ひょっとしてあれは全て夢だったのではないかと何度も思った。
だが、そのたびに胸ポケットのメッセージカードが現実であることを告げる。
彼女の涙も。温もりも。寂しげに強がる表情も。
目を瞑ると、網膜に焼き付いたように彼女の姿が浮かんで離れない。
彼女はいったい何者なのだろう。
影山に受けた仕打ちは、恐らく生半可なものではあるまい。
しかし、彼女は悲壮な決意で前を見据えていた。
その強気な振る舞いの裏には、何を抱えているというのだろう。
そして、自分に彼女の道を遮る権利があるのだろうか。
棚橋は小さく笑った。
馬鹿馬鹿しい。
いくら悪評高い奴ら相手だろうが、人の物を盗むのは悪だ。
そして俺は警察官だ。
しかし。
それだけでは割り切れないのも事実だった。
それじゃ何か? 理由を聞いて納得出来れば協力してやるってのか?
そんなことが出来るわけがないだけど彼女に何もしてやれないのかおかしいぞ
泥棒に何かしてやりたいと思っているのか俺はでもあの彼女の姿が頭から離れな
頭を掻きむしった棚橋の目に入ったものは、ラッピングされた妹への
クリスマスプレゼントだった。
それを一緒に選んでくれた香織の笑顔が棚橋を現実に繋ぎとめる。
「棚橋さん、これなんてどうですか? 毛足が長くて暖かそう」
「わぁー、棚橋さん棚橋さん、これ見て下さい、可愛いですよ」
「ふふっ、棚橋さんは妹さん想いなんですね。妹さんが羨ましいな」
棚橋はそのプレゼントをそっと触った。
そうだ、明日彼女に会いに行こう。
彼女が微笑んでくれさえすれば、俺はまだ戦える。
香織は、寝室で枕を抱きしめるようにして床についていた。
だが、襲ってくる眠気とは裏腹に目が冴えてなかなか寝付けない。
彼女は寝返りを打つと、抗うのはやめて浮かんでくる考えに身を任せることにした。
暗い部屋に独りでいると、息苦しく押し潰されそうになる。
それは十四年前のあの日からずっとだ。
あの日、自分は決意した筈だ。
この手でタロットの魔力から人々を護るんだと。
両親の遺志を継いで平和のために役立てるんだと。
そのためなら、この手が汚れようと、この身が切り刻まれようと構いはしない。
そう思っていた筈なのに、いつしか香織は傷つき道を見失っていた。
まるで満月が雲に隠れ、朧となるように。
生徒に人の道を教える教師を志しながら、その裏で盗みを繰り返す。
そこにどんな理由があったとしても、免罪符になどなりはしない。
義賊よ怪盗よと囃し立てられてはいるが、つまるところ泥棒ではないか。
自分が接している人たち全てを欺いている小悪党ではないか。
嘘。全て嘘。
男の目を奪う美しい姿だって、所詮は嘘で固められた自分の姿に過ぎない。
怪盗の容姿が噂にのぼるたび、貧弱で臆病な自分がどうしようもなく嫌になる。
「男や、オ・ト・コ。宝月にだっておるんやろ?」
茂木の脳天気な言葉が頭の中で反響する。
私だって。そう、こんな私だって。
あの日の棚橋のことを思い浮かべ、香織は枕を強く抱きしめた。
影山に恥辱を受けた自分を、何も言わないで抱きしめてくれた彼。
甘える子供のように泣きじゃくる自分を繊細に慰めてくれた彼。
降りしきる雨の冷たさから戸惑いながら護ってくれた彼。
彼の逞しい腕と、温かい体温を思い出すたび、顔が火照る。
できることならば、彼と一緒に歩いていきたい。
願いが叶うならば、彼の傍で微笑んでいたい。
けれど、その想いの後に訪れるのは、絶望だった。
彼は怪盗アンバームーンを追う警察官だ。
彼にだけは、自分の正体が知れるようなことがあってはならない。
知れたが最後、あの優しい眼差しを自分に向けてくれることはなくなるだろう。
彼に知られるのが怖い。どうしようもなく怖い。
それならば……いっそ彼と会うのを止めよう。
避けて、避けて、この想いを断ち切ろう。
彼は自分を嫌いになるだろうが、全ては嘘だったのだから。
だから……だからせめて夢の中だけでも。
いつしか眠りについた彼女の目からは、涙が一雫こぼれ落ちていた。
285 :
102:2008/01/29(火) 00:33:17 ID:3DpqWNR6
今日はサラッと以上です。
暗いですね。シリアスですね。
……ごめんなさい。
次回は次章突入です。
>>285 しかしこういう繋ぎがあるからこそ前後が活きるわけで、そういう意味ではGJといわざるを得ない。
ただ2レスなら前の話か次の話にくっつけておけばよかったような気もしますね。
はてさて、先週投下予定のはずのPTフィズはどうなったんだろう。
規制か、リアルの都合か…職人さんの都合があるのは百も承知だが続きが気になる罠。
フィズの人はもう書かないと思うけど、書いてくれると嬉しい。
ところで、今のところは連載ばかりだから問題はないと思うけど、
いずれ単発読み切りが投下された時に連載に読み切りが流されるかもしれない。
連載は毎回の評価を受けているからまだいいだろう。
だけど、流れた読み切りのGJは帰って来ない。
「奴は大変なGJを奪っていきました。」
という事態になりかねない。
ちょっとの我慢が他人の幸せ。
なのに、僕は我慢ができなかったんだ・・・。
>>287 じゃあさ、読み切りの人が来たら俺とお前でGJしようぜ!
ほら、これでGJが2つ。簡単だろ?
すまん、俺は頭が悪いんでよくわからんが要するに今いる連載職人さん投下速度自重しろってこと?
それなら別に問題はないんじゃね?
連載に挟まれたからって絶対にレスがつかないわけでもあるまいし。
第一連載も短編も結局は中身がよくないとレスはつかないわけだし、読みきり投下だと今の流れではレスつかないみたいな言い方はどうかと思う。
あと、悪気はないんだろうけど仮定にしろ「もう書かないと思うけど」とか書いちゃダメだよー
>>288 ちょ、お前孔明か!?www
なんてナイスな提案だ…オタオタして感情的な反論をした自分が恥ずかしいぜ…すまん
どんまいどんまい
>>290 面白ければ感想をつける、面白くなかったらつけない。ただそれだけだと思うんですが……。
ここで流れを完全に無視して投下しますw
恋するキャットシーフ 第6話
「一体、どう言う事なんですか、それは!」
そう激高して叫ぶ涼人を見て、インターホン越しからこの屋敷の主であり、『暁の羽』の所有者でもある中村 宗司は笑みを浮かべる。
『言った通りの意味だよ? 役立たずの警察はいらないからね。我々は我々の力だけで守ると言っているのさ』
何か問題でも? と中村は薄く笑い、さらに続けた。
『出来るだけ早く帰って貰えないかな? そう言う風に警察にいられると、思い切り迷惑なんだ。
……心配しなくても、捕まえた猫はしっかり警察に届けるさ』
そう言いたい事だけ言って通信をぶった切った中村に、涼人はさらに青筋を浮かべる。
見れば、大山も小原も怒り具合は似たような物で。
「……フン! 我々が捕らえられない『レインボーキャット』を、素人ごときが捕まえられると……!」
「……? 大山のおじさん?」
怒りの余り叫ぼうとして、何故か固まった大山。そんな大山に、涼人は不思議そうに首を傾げて……、
「……まさか……、『組織』が動いた……?」
「っ!?」
……その大山の言葉に、凍り付いた。
「警部!」
「あ……」
その小原の言葉に、大山は慌てて口を押さえるが、時既に遅し。
「……どういう、事ですか? 教えてください」
そう完全に座った目で言って来る涼人に気圧され、大山は天を仰いだ。
「……そう、だったんですか……」
レインボーキャットの被害者と、組織との繋がり、そして大山の推理。
それを聞かされて、涼人はぐっ、と深く俯いた。
「じゃあ、今回の、中村も……?」
「ああ、恐らくはな。今、裏を取ってるが、今日中に逮捕出来るまで固められるかどうかは……」
そう言った大山に、涼人は顔を上げ、口を開いた。
「大山のおじさんは、このまま裏が取れるのを待って、それから突入してください」
「……ちょっと待て、涼人。まさか……」
その涼人の言い方に、大山は果てしなく嫌な予感がして……、
「……僕は、ちょっと忍び込んで、証拠探して来ます」
……その予感を全く裏切らない涼人の言葉に、もう一度天を仰いだ。
「ま、待った! 涼人君、1人じゃ危険すぎる!」
「大丈夫ですよ。『レインボーキャット』が侵入した後の混乱を突きますから」
そう言って小原が止めるが、涼人は顔色1つ変えずにそう返す。
なおも言い募ろうとする小原を宥めるように、涼人は口を開いた。
「侵入した『レインボーキャット』を確保するため、と言う名目なら、大して不自然じゃないですよ。
踏み込めるだけの証拠を見付けたら、これで合図しますから」
そう言って、一瞬だけ銃のグリップを見せて、歩き出した涼人。
それを小原は慌てて追いかけようとして……、
「待て、小原!」
何故か大山に呼びとめられ、小原は大山に詰め寄った。
「まさか……許す気ですか!? 涼人君の暴走を!」
「……ああ」
「どうして!?」
そう叫ぶ小原だったが、大山は首を振るだけで、何も答えなかった……。
「っ、と……」
塀を乗り越え、涼人は屋敷の敷地内へと足を踏み入れる。
涼人が思った通り、警備員はレインボーキャットに翻弄され、もう1人の侵入者には全く気付いていなくて。
「こればっかりは『レインボーキャット』に感謝しなきゃな……」
そう呟くと、涼人はそろりそろりと足を踏み出して……、
「……ん?」
……庭の隅に、やけにこの屋敷から浮いた雰囲気の小屋がある事に気付いた。
「何だ? あの小屋」
そう呟いて、涼人はその小屋に近付く。
すると、そこから何とも形容し難い匂いが漂って来る事に気付き、涼人は顔色を変えた。
「まさか……、この匂い……!」
そう叫んで、涼人は慌ててその小屋に駆け寄り、ドアを見る。
そこにかかっていたのは、何の変哲も無い南京錠で。
「これならっ!」
そう叫び、涼人は全く躊躇わずにその小屋のドアを蹴り破り……、
小屋の内部が見えた瞬間、涼人は絶句して、その場に立ち竦んだ。
「……ぁ……」
そこに立ち込めるのは、何かが饐えたような、異常な匂い。
小屋の中央に鎖で繋がれているのは、20代後半とも30代半ばとも見て取れる女性で。
死んだようにぐったりとしているその女性は、一糸纏わぬ姿で、何が起こっていたのかははっきりしていて。
「……くっ!」
我に返った涼人は迷わず拳銃を抜き、その明らかに手と不釣合いな44マグナムを空に構え……、
次の瞬間、屋敷中に轟音が響き渡った。
「大丈夫ですか!?」
「……ぁ……」
響いた銃声で目を覚ましたその女性に背広をかけると、涼人は女性を拘束していた鎖を撃ち抜く。
崩れ落ちかけたその女性を支えると、女性は慌てた。
「あ、す、すいません、ごめんなさい」
やたら謝りながらわたわたと慌てるその女性に、涼人は苦笑した。
「体力落ちてるでしょうから、今は出来るだけ安静にしておいてください、ねっ?」
「すいません……」
身体を起こし、上着を掻き合わせて縮こまるその女性から涼人は視線を逸らして……、
そこに、箱に入った薬を見つけてそれを拾い、溜息を吐いた。
「……出来るだけ長く楽しむために、気を付けてたんだろうね……、外道が」
そう言うと、涼人は手に持っていたピルの箱を足元に落として、踏み砕く。
そうこうしていると、遠くからばたばたと走ってくる音が聞こえ、涼人は銃を構えた。
「小屋の隅の方に隠れていてください!」
そう女性に声をかけ、小屋の入り口から涼人は足音が聞こえてくる方を覗き込み……、
ほっと溜息を吐いて、声を上げた。
「大山のおじさん! こっちです!」
その声に気付き、駆け寄って来る大山。
そんな大山を見て、涼人は小屋の中を指差した。
「あの小屋の中に女の人がいるので、保護を。僕は、中村を確保します!」
「お、おい!?」
そう言うなり駆け出した涼人に、大山は慌てる。
「小原! 何人かと残ってその女性を保護しろ! 残りは俺について来い!」
そう叫んで、大山は警官隊と一緒に涼人を追いかけた。
これで終わりです。
この女性が誰かは2話後ぐらいに判明しますw
投下速度が速すぎるとの声がありますが、正直本文の執筆速度が下書きの執筆速度に追い付いていない俺がいますw
だって今、下書きは第11話の陵辱シーンに突入してたりw
乙。
今回はヒロインの出番はなしかー、さて謎の女性は一体誰かな?
前のほうにもかかれてますけど、あんま先のことは具体的には言わないほうが…
299 :
前スレ503:2008/01/30(水) 00:41:59 ID:sVf/FSBx
心配ごむ用、続きは機を見て投下します、たぶん
つか、予告しといてごめんなさい。生粋の携帯厨だから色々あるのですm(._.)m
ヘタレとは言え書き手として言わせてもらえば…
作品を投下する以上、よくも悪くもスレに与える影響は少なくないわけで。。。
それなりに思う所はあるわけですよ
そして書き手と言えど住人の一人に過ぎないわけで。。。
GJやら感想やら欲しいわけぢゃなく、純粋にログを流したくないわけですよ
…特に俺みたく長文多投下系だとね;
生意気なことを言いましたが
GJを下さる御方には限りない感謝をしていることと、
意見、要望等には応じられる範囲で応えることをついでに表明しておきます
…本来は投下以外は必要最低限しかカキコしないタイプのスタンド(成長度E)なのでw
300 :
名無しさん@ピンキー:sage:2008/01/30(水) 01:22:33 ID:Cs1yDFGE
キャットシーフはキュキュンという死語を遺憾なく我々の心に産み落としていく
アンバームーンはもうエロパロの真骨頂だろう
AMさん関連はもう…な…
その変態度と寸止めとAMさんという才能全てが我のツボにGJとしかいえないw
そしてここの住人のオマイラ
都会で冷えたオレのハートをまんまと温めるような雰囲気作りやがってww
第2夜とか保管庫作成の流れに(゜д`*)))何かしてないんだぜw
そんで個人的にむっちゃ楽しみにしてたフィズ殿…
何やら↑ですごいショックなフラグが書かれているがオレはずっと待ってるんで!
マジ怪盗で電子世界とかツボなんで!
としがないROM専が長くスマソでした
>>299 フィズの人の生存報告キター!
まあ読み手的には間が空こうが連続になろうが投下さえあれば嬉しいわけで。
勿論その感覚が短ければいうことはないんですが…レスはまとめて書けばいいだけだし。
さて、早速全裸待機開始だ。
キャットシーフの作者様、執筆お疲れさまでした!
リョウト格好いいよリョウト
>>298 分かってますよ? 今回は期待させてズコーを狙ってただけですw
作品連投になりますが、行かせていただきます。
恋するキャットシーフ 第7話
「えいっ! ……やあっ!」
「がはぁっ!?」
襲いかかってくる警備員をスタンガンで気絶させながら、里緒は廊下を駆け抜ける。
その早さは、高校生の女子の物とは到底思えなくて。
「一美に、感謝だ、ねっ!」
そう叫んで、また警備員を気絶させた里緒が身につけているのは、ぴったりとした全身タイツ。
その全身タイツに、里緒のこの早さの秘密があって。
タイツ自体は競泳用水着と同じく、抵抗を減らす役割を持っている。
真の秘密は、脚部を覆うタイツの内側にあって。
電気刺激を送る事によって、筋肉を通常では考えられない程の、かと言って負担が過剰になりすぎて壊れない程度の力で動かす。
中学校時代に陸上で全中に出場経験のある里緒の脚力と合わされば、かなりの高速移動が可能で。
「はっ!」
そう叫んで、里緒はまた1人警備員をスタンガンで沈める。
その隙を突くように、もう1人警備員が回り込んできて……、
「っ!」
「ぐはっ!」
……その瞬間、里緒が突き出した右手から飛び出した何かが直撃し、警備員はもんどり打って倒れた。
「これ使うのも久し振りだけど……っ!」
そう言って、里緒は警備員にぶつかった太目のチョークのような物を拾い上げ、一振りする。
すると、そのチョークは一気に伸び、1m前後の長さのロッドに変わった。
「このアマ……!」
「ていっ!」
身体を起こしかけた警備員にそのロッドを叩きつけて沈黙させると、里緒はまた走り出した。
その進路を塞ぐように、また新たな警備員が襲いかかるが、
「はぁっ!」
スピードと体重が存分に乗ったロッドの一撃を食らい、気絶した。
「このっ!」
また警備員をロッドで仕留めるが、そう離れていない所から、また何人かが走って来る気配がして。
「キリがないよー……」
もうすでに20人以上の警備員を沈めているのだが、倒しても倒しても警備員は現れて。
一度に来るのが2人か3人だからまだ助かっているが、体力的にそろそろキツくなってきていて。
「ふっ! ……はあっ!」
襲いかかって来た警備員を1人はロッドで、もう1人はスタンガンで葬って、里緒は角を曲がり、
「っ! 誰……!」
一気にドアの前に立っていた警備員の懐に飛び込み、スタンガンで沈めた。
しかし、
「電池切れ、だね……」
スタンガンの電池が切れていた。
スタンガン本体が鳩尾に入ったお陰でその警備員は気絶してくれたが、もう使えなくて。
「しょうがないな……」
里緒はスタンガンをバックパックに入れ、ロッドを右手に構えると、部屋の中に入った。
さっき警備員が立っていたドアから、『暁の羽』が安置されている部屋に……。
「やあ、よく来たね」
ドアを開けて中に入ると、部屋の中央にある椅子に座っていた男が顔を上げる。
その男―中村―の首に掛けられているネックレスは、
「『暁の羽』……!?」
「ああ。肌身離さず身に付けて、ずっと手で握っておく。これ以上安全な保管方法は無いからね」
そう言うと、中村は何を思ったのか、里緒をじろじろ見詰める。
そして、悔しそうに口を開いた。
「やれやれ……、あの少年に引き渡すと約束するんじゃなかったな。
顔は分からないが、その身体……、調教しがいがありそうなんだが……」
真顔でそう言う中村に、里緒はぞわぞわと鳥肌を立て、叫んだ。
「冗談! そんなの受ける趣味なんかないわよ!」
「そうか、残念だね……」
と、本気で残念そうに言う中村に、里緒はもう一度鳥肌を立て……、叫んだ。
「とにかく! あなたの首にかかってる『暁の羽』私がいただくわ!」
そう叫んだ里緒に肩をすくめて、中村は立ち上がる。
そして椅子に立てかけてあった細身の剣を掴んだ。
「これは中世の騎士剣でね……、古い物だが、切れ味は本物だ」
「……で、それがどうしたの?」
いきなり剣の説明を始めた中村に、油断なくロッドを構えた里緒が聞く。
と、中村はそれに対して笑って、答えた。
「何、簡単な事さ。『取りたければ勝って取れ』……。そう言う事だ」
そう言って、中村は鞘から剣を抜き、構える。
そんな中村を見て、里緒はにっこりと笑い……、
「それじゃあ……、遠慮無く♪」
そう言うが早いか、神速で中村に切りかかった。
……そして、響いたのは甲高い金属音。
仮面越しにでも分かる程里緒は表情を驚愕に染め上げる。
そんな里緒を見て、中村はそのまま力で押し切ろうとして……、
里緒は慌てて後ろに飛んで距離を取った。
「どうかしたのかい? 私が君の動きに付いて来ている事が、そんなに不思議かい?」
そう言って来る中村に、ロッドを構えたまま里緒は思わず頷く。
それを見て、中村は楽しそうに笑って、口を開いた。
「確かに君は速いよ。多分踏み込みの速さだけならば、剣道の有段者を越えているだろうね。
……だが、こう見えても私はフェンシングの腕には少しばかり自信があってね。
守りに徹すれば、充分に受け止められる速さなんだよ、君の速さは。
後は、力はこっちが上なんだから押し切ればいいだけの話さ」
そう笑みを浮かべて言う中村に、里緒は思わず歯を食い縛る。
と、
「「!?」」
突然警報とおぼしきブザーが鳴り響き、2人とも顔色を変えた。
「こ、この音……! あの小屋に誰か侵入したのか!?」
そう、今までの余裕が嘘のように慌てふためく中村。
それを見て、里緒はくすくすと笑うと、口を開いた。
「よくは分からないけれど、あなたは年貢の納め時のようね♪」
「……貴様……!」
里緒の言葉に、中村は里緒を壮絶な目付きで睨み付ける。
その視線を簡単に受け流して、里緒はさらに中村をおちょくるように続けた。
「私は、『暁の羽』を持って逃げる。あなたは、無一文で捕まる。
……何だ。ベストの展開じゃない♪」
「貴様、キサマキサマキサマキサマーッ!!」
そう里緒が言うと、中村は完全に冷静さを失い、突撃して来る。
それを見て、里緒は勝利の微笑みを浮かべた。
「(守りに徹すれば止められるって事は、攻撃しながらじゃ止められないって事!)」
そう考えて、里緒も突っ込んで来る中村に突貫した。
これで終わりです。
……自分で書いてて何だが、里緒強いなw
俺の中では里緒はAM氏のトライアングルムーンでのブレイドとラビットの間くらいの強さって感じに設定してます。
ただし、その2人と違うのは、足の電極付きで、と言う事ですね。
それが無かったら、多分このスレの怪盗の中でダントツに弱いと思いますw
それと、俺が他の人と作品と区別化させようとしてるのは、技術面ですね。
魔術系(アクアメロディ、アンバームーン)、超科学(PTフィズ、トライアングルムーンのメイドさん)。
そういうのを使わずに、あくまで近未来程度の科学力で怪盗をやらせよう、と。
下半身が麻痺している人用に、脳波を受け取って、電気刺激で足を動かすって機械はもうあるらしいですし。
GJ!
確かに里緒強いなw
まあ、素でという条件ならフィズ、ウィッチィ、あとアンバームーンも弱そうではあるが。
しかし全身タイツとか電気信号とかなんかエロくていいなぁ、ハァハァ。
GJ
次くらいに女性の正体が明らかにですねっ
ロッドといえば前スレで棒を使った立ち回りをしていた作品の
◆atsvcNXXN.氏はもういないのでしょうか
こっそりと続編を待っている住人もいますので〜
>>309 あー、素なフィズには勝てるかもwウィッチィとは互角って所だと思います。
ただ、里緒が取っている戦法が強化された脚力で突っ込んでスピードと体重が乗った一撃を叩き込むだけ。
つまり一撃必殺に特化した戦法なんですよ。
いつもの戦法取れないって意味で弱いと書いたんです。
>全身タイツ
レインボーキャットのイメージはTOLのクロエ・ヴァレンス−ジャケットですw
で、ずっと俺のターンで行きますw
恋するキャットシーフ 第8話
「監禁と、暴行傷害! それが中村の容疑です! 暴行傷害はともかく、監禁は現行犯で行けます!」
「ああ、屋敷の敷地内に監禁だからな、言い逃れはできない!」
そう、屋敷内を走りながら叫び合う大山と涼人。
その走っている廊下には、気絶した警備員風の服装をした男がそこかしこに転がっていて。
その1人1人を確保するために警官隊を置いて行き、22人いた警官隊が、今では大山と涼人の2人だった。
「もう『レインボーキャット』は宝物庫に着いているはずです! 恐らく、中村もそこに!」
「急げば、二人纏めて逮捕出来るか!?」
「可能、かもしれません!」
そう言って、涼人は大山と一緒に宝物庫に飛び込み……、
そして、それを見た。
「食ら、えええええっ!」
「―――っ!」
凄まじい速度で交錯する中村とレインボーキャット。
その直後、レインボーキャットの左肩から地が噴き出して、レインボーキャットは膝を着き、
……次の瞬間、中村は仰向けに倒れた。
「はぁ……、はぁ……っ!」
荒い息を吐きながら、レインボーキャットは男の首にかかっていた『暁の羽』を奪い取り、
……その次の瞬間、大山と涼人がいる事に気付いた。
「っ!」
「逃がすか、―――っ!?」
慌てて身を翻したレインボーキャットを涼人は追いかけようとして、
……何故か急に凍り付いた。
それを幸いとして、レインボーキャットは窓をぶち破って庭に飛び降りるが、涼人はそれにすら気付かずに。
「……ま……さか……」
レインボーキャットが身を翻した瞬間、右手首に見えたブレスレット。
それに、白い花のような何かが見えた。ただそれだけ。
「……里緒……さん、なのか……?」
だが、それだけでも、涼人が疑いを抱くのには充分だった。
「里緒! 大丈夫ですの!?」
「……ごめん、ちょっとドジっちゃった」
血が滴り落ちる左肩を押さえながら戻って来た里緒に、一美は悲鳴を上げる。
メイドに急いで救急箱を持って来させると、一美は応急処置を始めた。
「ありがと、ね。一美」
「こんな怪我をなさるなんて……、一体何がありましたの?」
肩の手当てをしながらそう聞いて来る一美に、里緒は真剣な表情になって、口を開いた。
「……一美、動いたみたいだよ、『組織』が」
「っ! それは本当ですの!?」
そう言った里緒に、一美は声を上げる。
そんな一美に、里緒は頷いて、言った。
「今回、ね、ゴリラのいじさんとも、涼人君とも、最後にちょっと顔を合わせただけなんだ。
警察の人が締め出されてて、警備員みたいな人はいたんだけど、その警備員、何て言ったと思う?
……『最近俺達に兵糧攻め仕掛けてるのはお前か!』だって」
そう言った里緒に、一美は笑みを浮かべる。
「……ようやく、終わりが見えてきましたわね……」
「ふえ?」
そう呟くように言った一美に、里緒は首を傾げる。
そんな里緒に、一美は微笑みを浮かべたまま、口を開いた。
「あの『組織は、いままでどんな攻撃が来ても、その攻撃を受けた部分を切り捨てて生き延びて来ているらしいのですわ。
それが、動いた。つまり、切り捨てる部分がなくなったと考えていいのですわ。
と、言う事は、『組織』は今苦しい状況に立たされていると見るべきですわね。
それに、動いてくれれば動いてくれるだけ警察もしっぽが掴みやすくなる、と言う事ですわ」
そう言い切った一美に、里緒も表情を明るくした。
一方、警察病院では。
「まずは、あなたのお名前を教えていただけませんか?」
そう言った涼人に、その女性はおどおどとしたまま……、
爆弾を投下した。
「……あやめ……です。夏目 あやめと言います」
「なつ……っ!?」
「?」
その言葉を聞くなり、驚愕の表情を浮かべる涼人に、あやめはきょとんとする。
と、涼人はぶんぶん首を振って何とか立ち直ると、続けて口を開いた。
「す、すいません。それで……、どれくらい前からあそこにいたんですか?」
「……7年前、から……」
そう言われ、涼人はまた少し引き攣る。
しかし、もう一度立ち直ると、脇に控えていた警官の方を振り向き、言った。
「署に連絡して、7年前の事件、洗い出すようにと伝えてください」
「分かりました」
そう言って出て行く警官を見送ると、涼人はあやめに向き直り、携帯電話を取り出す。
その行動にきょとん、とするあやめを見て、涼人は口を開いた。
「最後に1つ質問です。……娘さん、いらっしゃいますか?」
「え!? ええ。多分、今17歳かと」
そう答えたあやめに、涼人は苦笑に近い笑みを浮かべて、言う。
「……その娘さんの名前、里緒って言いませんか?」
「!?」
その涼人の言葉を聞き、あやめは驚いたような表情で硬直した。
「……全く、携帯使える病室にして、正解だったね、これじゃ……。
えっと、小原さんでもスケープゴートに使えば、ばれないかな……?」
そう呟いて、涼人は携帯をかけ始めた。
「きゃっ!?」
手当てが終わり、里緒がキャットシーフの衣装から着替えていると。
突然携帯から着信メロディが流れ出し、里緒は飛び上がった。
「は、はい! 夏目です!」
『あ、里緒さん、高原です』
電話に出ると、かけてきたのは涼人で。
「り、涼人君!? な、ななななな、何か用!?」
もしやばれたのかと、里緒がこれ以上無い程慌てて聞くと、涼人は不思議そうな声で答えた。
『いや、ね。父さんの警察の後輩に小原さんって人がいるんだけど……、
さっきその人から電話がかかって来てね。里緒さんに伝えて欲しい事があるんだって』
「小原……さん?」
聞き覚えの無い人の名に、里緒が首を傾げていると。
『いい? 言うよ。『夏目 あやめと言う女性を保護しました、警察病院にいます』だって』
「―――っ!?」
そう涼人に言われ、里緒は言葉を失った。
『確かに、伝えたよ。……里緒さん?』
「……あ、う、うん、ありがとう! それじゃあね!」
心配するようにかけられた涼人の声に、里緒は我に返ると電話を切り、……その場に崩れ落ちた。
「……お母さん……、お母さん……っ!」
そのまま、しばらくの間、里緒は泣き崩れていた。
これで終わりです。
と、言う事で、あの女性は里緒の母親、あやめでした。
『組織』に捕まっていた人が欲しいな、と考えてこうなりました。
最初は涼人の母親、亜紀も一緒に捕まっていた事にしようかな、とも考えたんですがねw
そして、次回はクライマックスへの間章、と言った所です。
GJです
涼人に身バレした里緒、保護された母あやめ、そして涼人
あやめのおかげで展開が全く読めなくなってwktkが止まりません
---
保管庫から3点程連絡事項をば
○サブのメールアドレスを用意しました
アドレスは保管庫に書いてあります。
保管庫に書いてあったメアドは一部のアドレスからはメールを受信出来ていない様です。
#というか自分のメインメアドから届きませんw
#送信側にエラーは帰りません
現時点で受信したメールは全て返信していますので
レスポンスのない方はお手数ですが上記メアドへ再送願います。
○
http://kuma.usamimi.info/kaito/ でもアクセスできます
URLがちょっと短くなります。
前のアドレスのまま使っても問題なしです。お好きな方でどうぞ。
○トップページにWeb拍手を設置しました
気軽に連絡したい場合はご利用下さい
文字数制限はかなり緩くしてあります(200文字)
318 :
前スレ503:2008/02/02(土) 13:18:49 ID:O1M+TTVX
さてフィズ1話後半(Aパート)いきます
投下数12予定…orz
…Cパートまでいってしまうやも知れぬ……実力の無さが浮き彫りですなw
漆黒の電脳空間…サファイアブルーに輝く鎧。
その胸と腰…本来ブラとパンティのあるべき部分から覗くピーチの白い肌。
その美しい顔は涙に塗れピンクの長い髪まで濡らしていく。
淫熱に頬を染め怯える表情…背景の闇すらもセクシャルな演出と化している。
「お願いだから…おまんこ…だけは…!……舐めないで……っ!」
四肢を空間に圧迫され動けない少女の訴えを聞き入れる者がいるだろうか?
性器から滴る果汁が言葉の意味を逆転しているのだ。
加虐的な意味でも求めるものを与える優しさの意味でも攻めないわけがない。
…しかし。『舌』はどちらの意味も解さずただ無感動に機械的に動作した。
駅の自動改札に切符を入れれば吸い込む。そんな風に当然のことのように。
「んくうぅうう………ッ!!」
対するピーチはそれだけで絶頂したように顎を天に向け喘ぐ。
(あ………あ………クリが…クリがぁ………っ)
制圧された証明をその膨張で示す。
既に制圧されていた胸だが…敵の意図とは関係なく呼応して乳首が震えた。
(感じちゃう………感じちゃうよ………だって………
勃起させられてるんだもん………っ!)
乳房責め同様、単調な舌の愛撫がピーチの花芯で再現される。
一定の間隔で繰り返し舐められるだけ…
理科の実験で使うシンプルな水車が股間をくすぐるような…
「んく、ん!……やん……っ
こんな…ことで……イかされたく……ないぃ…………ん、あん!」
そう思っても高密度イメージの結晶である自身の性器…
そこから発される信号は超級の快感……抗えない。
(おもちゃ…なんかに…イかされるなんて………っ)
敵の性能を罵倒する意味で、自身を叱る意味で思ったことだが…
ピーチの周囲に舌ではなく『おもちゃ』が具現化される。
…大人のおもちゃではない。
ウサギが太鼓を叩いて笛を吹く、イヌが歩いたりしゃがんで吠えたりする…
…乳幼児向け玩具。正真正銘のおもちゃだ。
「な…なに?………あ!……そんなこと………やめてえぇ!
あん…っ…ん、ぅ……く………っ……ひぃ…………っ!」
タンタンタン♪タンタンタン♪ピっピっピっピっ……
ガショガショガショガショ…キャンキャンキャンキャン♪
ウサギが太鼓の代わりに乳首を叩きイヌが股間へ行進し吠える動作でクリを嬲る……
…完全にバカにされている。
だが。真の屈辱は…それでも回路を走る快感信号……喘いでしまう自分……
愛液として具現化されているプログラムを敵は舐めとることで吸収、
玩具などを具現化できるまで機能を高めていったのだ。
マニアックな放置プレイのような仕打ち……
「ひん!…ぅ………ぐ………っ
こんなんなら……舌のほうが…マシよ………あふ!……ん!」
言い返して後悔する。再び舌が具現化されるが……
それは先程までの舌ではない。
動物…ケダモノの荒々しさ、巧みな舌技を合わせ持つ…最強の舌責め!
「ん、ふああぁあ………っ!」
情報、データが愛液に変換され洪水となり漏洩する。
舌はそのジュースを零すことなく入念に舐めとる。そこに含まれる情報…
一部の舌は手へと進化し、繊細な指使いで花芯や菊門、乳首をなぞる。
悪循環…それにより愛液は勢いを増し…ピーチはより深みへと追いやられる。
(あう……あうう!……これじゃ………このままじゃ……ひあ!
反撃どころか……防御も………ひうう………っ)
胸と股間だけではなく胴体全体の鎧も取り外され…愛撫は大胆に激しくなる。
淫らな水音とピーチの喘ぎだけ……電脳空間の音響は淫らな意味しか持たない。
大きな蛇まで具現化されてピーチの乳房を絞り
股間をうねり、舌でもう片方の乳首をチロチロ舐める。
(あ……蛇…っ?……毒?……だめえ!……噛まれたら……きっと………)
「きゃあああっ!……志由ぅ!……たすけ………助けてぇ!………ひぁう!……っ?!」
毒…ウイルスの恐怖……引き攣りつつも、まだ噛まれてなくとも悶えてしまう…
股間を弄っていた指がピーチの目前に突き出された。
その手の根本…既に人影すら形成されつつある。
敵にそれだけの力を与えるほどの情報が含まれているピーチの愛液に塗れた指……
舐めなければウイルスを注入する…そんな脅しの意図を抜きにしても…
(舐めるしか……ない………っ)
はしたなく口を開け…舌を伸ばし指を…己の愛液を……ピーチは音を立てて舐める。
堪らない屈辱感…
「ちゅぷ………ん!………ぴちゃ………う………覚えてなさい………
志由が本体に着いたら……焼き殺して…やるんだから………っ!………ああんっ」
悶えつつ強気な台詞を吐いたあとで気付く。
(志由……?…っ!……私!志由って言っちゃった?!)
とんでもない大失態。…これでは仮に逃げだせてもフィズの正体がバレてしまう。
…フィズ=志由も…自分も…二人ともが完膚なき勝利を納めない限り確実に破滅……
(こんな…状況から………?
有り得ない……無理よぉ…………っ………はう!…くふぁ?!……っ)
舐めていた指が…いつの間にか男性器へ変貌していた。
三本ほどの肉棒がローテーションで股間と顔を往復しているのだ。
ピーチの花唇でその強張り全体に蜜をたっぷりと付けてピーチの鼻先に……
指とは比較にならない屈辱……
(それでも……舐めなきゃ……)
愛液はもともとピーチの情報だ。自身で舐めたところで敵ほどの能力向上は望めない。
そもそも舐めとれる量より垂れ流す量のほうが数倍も多い。
それでも敵の強化を減らすことが出来る。微々たる効果だが…
コンマ以下の、今もってグングン下がり続けている勝利への可能性…
その減少率をわずかに緩和出来るだけ……
(でも!…あきらめない……志由……せめて…志由だけでも…………っ)
献身的…無論、志由に対してだが…積極的に肉棒をおしゃぶりするピーチ。
その様子から判断したのか敵はピーチの右腕の鎧も開放する。
自由に動くようになった右手で別の肉棒に付いた愛液を拭うように扱くピーチ。
残る肉棒が胸の間に納まるのと左手の開放は同時だった。
左手と敵の具現化された手のパーツを連携させて両乳で挟み扱く……
…その動作はピーチ自身の意思で行われていたが…
それ故に両腕をも制圧された事実に気付けない。
……今の行為が導く『結果』にも……気付けるわけがなかった。
(このまま……イかせれば……敵の能力を削ぐことが………ふああ………っ)
「お願い……イってえ!………熱いの………かけてえ………っ!」
(……じゃないと……はうん!………私のほうが…………あ……ぅぁ…………っ)
愛液として情報を漏らしているピーチは
敵に射精させれば機能を低下させられると考えていた。
その為には恥ずかしい台詞でも何でも吐く。
だが…演技のはずが…
自身でも敵との性行為を望んでいるような錯覚まで芽生えてしまう。
分泌される情報は増加するばかり……
両足の鎧も開放され、今や端から見ればピーチは三本のバイブに自ら奉仕する肉奴隷だ。
舌や指、触手のように絡む蛇…それらに如実に快感を覚えている発情った牝………
「せーえきぃ!………欲しいのォ!……ふあ………
いっぱい………白いので………ドロドロにしてえ!………あん!あぁ……んっ!」
牝奴隷そのものの叫び……
呼応するように両乳で包んでいた肉棒が目前に浮きピーチの顔に照準を合わせる……
「あ………あ…………っ」
敵を弱体化させられると思い込んでいるピーチ…
惚けた表情に歓喜を混ぜて目の前の漲りから発射される瞬間を待つ…。が………
ビュ!…ピュル!
「っ?!……ふあ?!……やあああぁあ…………っ!
くさい……にがいよぉ………っ
ひあっふ!……ら、らめえぇーっ!………っッ!!
…っ…ふひあああぁあぁ………っッ!!」
口で奉仕していた肉棒は右乳に、右手で扱いていたペニスは左乳に……
三本が相次いで白濁をピーチに注いだ。…圧倒的な制圧力を持つウイルスを。
そしてピーチは…かけられた以上の愛液を潮として噴いた……
そう、…絶頂という恥態と一緒に…致命的な情報まで……晒してしまった。
…
思いもよらない絶頂からピーチはまだ降りてこれない。
機能のほとんど…首から下は全て…中枢も深刻な域まで浸蝕されている状況だ。
無理もない。
イく寸前の時点で既に制圧域が尋常ではなかった。
結果として敵の機能と相当量の同調が起こってしまったのだ。
己の絶頂だけではなく射精三回分の絶頂まで味あわされた。
非生物であるピーチには生殖本能はない。
故に射精に対しての怯えは全くなかったのだが…
ウイルスの効果と相俟ってその意味を、恐怖を学習した。
凌辱の最終段階……相手の欲望の炸裂……自らの絶頂と併せて心底より屈した証明……
もう何も出来ない。完膚なく勝利どころか完全なる敗北……
(…志由………しゆ………ごめん………………
わらひ……イかされ………ちゃた…………もぉ………制圧………されちゃう………よぉ………)
残る機能を全て論理爆弾として使用し敵もろとも自爆しようかなどとも思う。
それほどにピーチは追い詰められているが
…そんなことをしても双方の防壁消失=志由の立場が悪くなるだけ…
絶頂の余韻…薄れゆく思考回路は最後に志由の姿を確認しようとする。
(ぁ……ぁ………志由………あんな姿に…………)
罠から抜けだすべく下着とバイザーだけの衣装で泣きじゃくるフィズ……
…機転を利かしスプリンクラーを作動させる少し前だ。
ピーチの電脳裏に自分は何も出来ない無力が満ちる…が。
それだけではなかった。疑問も生じる。
(これだけ…制圧されてるのに映像は…美術館の制御は…まだ取り上げられてない?)
そして今のこの無防備状態でも…未だ完全制圧されてない……
(もしか……したら……っ!)
砂浜に砂利ほどの希望…可能性…コンマ以下は相変わらずだが…砂一粒よりは大きい。
強風の中、飛ばされる木の葉が一時だけ何かにひっかかった程度の幸運………
(それでも………まだ………っ…………あ?…………そんな…………そんなぁ!)
最低限の防壁を組み直し備えるピーチの…極小の希望すら吹き飛ぶ……
…敵は…その姿を『ヒト』として具現化していく。
ぼんやりと…次第に明確になっていくイメージ……
……『桃木 志由』……バイザーすらない全裸の少女だった。
「志由………お願い……今は……ダメぇ…っ!
きゃっふぁ……ッ!……はうう!……あううぅんっッ!」
『志由』に乳首を甘噛みされたピーチはそれだけでイったような喘ぎを放つ。
絶頂直後で感度が高すぎるせいもある。少女らしからぬ舌技、指技のせいもある。
だがそれ以上に…『志由』に責められているという事実がピーチを狂わせるのだ。
…敵の幻影だとは理解している。その性技術、何より股間から反り返る立派な男性器……
明らかに本物ではない。
だがそれ以外は、ピーチの記憶から忠実に再現されたその姿は…
本物同様に可憐で華奢、愛くるしいこと極まりない。
微細なディテールまで完全完璧に創造されていた。
それほどに事細かなデータを保持している…ピーチ。
どれほどに志由を大事に想っているのかが伺える。
敵の造り出した幻…偽者というよりも
ピーチの電脳内の志由が具現化されたといったほうが適切かも知れない。
少なくともこの空間においては、ピーチにとっては、『志由』そのもの…
抗えるわけがない。そして彼女から施される『悪戯』は……
(しゅ、しゅごいぃ……キモチぃ……キモチいよぉ……っ!
志由が……しゆが……わらひの…おっぱい……イジめてるぅ………はぅ!……ん!)
双乳をおもちゃにされながら感じる至福。
電脳全体に「もっと!もっとぉ!」と淫らな信号が駆け巡る。
その情報すら愛液で示してしまう。
『志由』はそれに応じて優しくキスをしながらピーチの花芯を撫であげる。
「ん……っ………ちゅ!……ちゅ………っ
志由…らめえ……クリ…キモチよすぎりゅのォ!
そんなにされたら……熱暴走しちゃう………フリーズしちゃうよぉ………ッッ!!」
それこそが敵の狙いだろう。
先程は同調しすぎていた為に隙だらけのピーチに対し何も出来なかった。
今度は自身はイかずに、機能に余裕がある状態でピーチをイかせる。
ピーチとしては絶対に阻止しなくてはならない事態だが…
…もうそんな事は考えられなかった。快楽だけを演算、処理してしまう。
「んはぅ!……志由ぅ……っ
しゆぅ…っ………いい……いいのォ………っ!
もっと……あんッ!………もっとおぉ………ッ!!」
志由に抱き着いて躯を擦りつけてしまう。指に合わせて尻が弾む。
…不幸中の幸いと言えるかどうかは微妙と言うしかない。
それほどに発情しているからこそ敵の同調を誘うことができた。
が。それは即ち、敵の発情…責めの激化も意味している。
「ひゃああう!…ひゃああん!
クリ……ペロペロしちゃ…噛んじゃ…らめえっッ!!
愛液……噴いちゃううぅッ!!…はう!…あ!……あああんっ!」
上体をのけ反らせ振り乱す。いつイっても不思議ではない。
いや、既に昇り始める過程にあるのか……?
『志由』はこの制圧行為を終わらせるべく…
肉棒をピーチの割れ目に擦り…その挿入に備える。
「あ……あっ………くああっ!……んっく………ッ!」
志由のペニスに花芯、若芽を擦られるとそれだけで中枢が真っ白になっていく。
かろうじて絶頂を堪えられたのは敗北を恐れてではない。
挿入されたかったから。激しく突かれてイきたかったから……
…その一方で最後の警告も響く。
(挿入られたら……ぜっ…たい……イっちゃう………
中に…射精されたら……ぜっ…たい………制圧されちゃう…………)
しかし…その警告すら…今のピーチにはアクセルとなる。
「いい!……もういい!
せ、制圧してえ……はぅあ!……しゆの…おちんちんで…イきたいのォ……
いれてぇ……ッ!……ひう!……こすられてりゅだけで……らめえぇ…ッ!
…おちんちん……はぅ……いれて……志由の…せーえき……中で出してぇッ!!」
…ヌチュっ!!
濡れまくりの花唇はさしたる抵抗もなく肉棒を受け入れる。
「くひぃ!…ひゃう、ひゃあうぅ……っ!……あっ……あ……ぁん!!」
先端が入っただけで達しそうになったピーチを押し止めたのは志由の表情………
(志由?…志由もキモチいの……?
……わらひも…キモチいっ!……志由!……しゆっ!
一緒に………ああぁ!……一緒にィィ………っッ!!)
電脳空間だからこそ可能な体位…体面座位から『志由』が立ち上がったような
立ちバックから仰向けに変えたような…現実で再現するなら
志由の腰の位置までの台が必要だろう。
敵の性能の限界なのか『志由』は無言で腰を抜き差しするが…
荒い吐息とせつなげな表情がその快楽を示す。
『志由が自分に挿入して感じてくれている』
…それだけで中枢に響く超快感に耐え、自らも全身で跳ねるのだ。
「キモチいぃ!…あふっ!……ちんちんっ!……志由ちんちん……いぃん……ッッ!!
ひゃふ!……イく!……イくイくぅ!……まんこぉ!…ちんちんんぅ……ッっ!!
志由ぅ!……好きぃ……っ……だいすきぃ………ッッ!!」
正確には腰を突き立てられるたびにイっている。突かれる度に高みへ飛ばされる。
愛液が噴水のようにバシャバシャと飛沫を上げ続け
二人は性器どころか全身びしょ濡れだ。
イきながら…叫びながら…ピーチは到達する。
『志由を愛している』と言う事実に。
その瞬間!…断続的な絶頂から…さらに高い領域にまで飛ぶ。
二人の絶叫が響く。
「うぁ!あああぁアあアアア…………ッッっ!!」
「ひゃひいいいぃん!……ひゃあああぁあア…………っッッ!!」
……
一際深く挿入されたペニスから白濁のウイルスがピーチの膣内に注入された。
力の限り抱きしめ合う二人の結合部から愛液と混じり零れる………。
……そう。
制圧は完了した。ただし……ピーチが敵を制したのだ。
ほとんどを制圧された状態…その状態における機能の同調…
…ピーチの超絶なオーガズムを敵AIも体感したのだ。
一度目の絶頂の際にも機能障害を起こしていた。
敵の射精を受けての連鎖絶頂でそうなるのだから…
『こちらの絶頂で射精…敵の絶頂を促せば…より大きな機能障害を引き起こせる』
…それがピーチの最後の策だった。
結果として敵は機能障害どころか完全にフリーズ……
再起動をかけるオペレーターもいない。
…辛くも一応の『完膚なき勝利』を得たのだ。
……だが。
本当に危なかった。何度勝手にイきかけたことか…
作戦の性質上、敵も絶頂が近い状態でイかなければならなかった。
でなければ、一方的にこちらのみのダメージとなり…負けていた。
ピーチが耐えることが出来たのは…敵に勝利するためではない。
(しゆ……志由………あいしてりゅ………)
愛おしい存在…ひたすらに『相手』を想っていた。一緒にイきたかった。
だからこそ……機能の限界を越えて耐えることが出来たのだろう。
ピーチ自身が意図したことではないからこその奇跡とも言えた。
……しかし。
(…わらひも………もぉ……らめぇ…………
熱いのが………しゆの…せーえき……おまんこに……いぱい………あふぁ…………
………再起動……しなきゃ…………動けな………ぃ…………………ふぁ………)
かけられた、膣に中出しされたウイルスに対するリカバリと再起動………
勝利の代償だが…どれほどの時間を要するのか……
その間、装備のほとんどを失ったフィズが
最強級の『漢』相手に持ちこたえることが出来るのか……
今のピーチには計算不能だった…………
………
……
…
目的の部屋…その扉を開け放った瞬間、フィズの背筋は凍りついた。
スプリンクラーで濡れた身体にブラとショーツだけだからではない。
凄まじいばかりの『氣』が部屋全体に漲っていたからだ。
(な……何?…………何か……いる?…………っ)
その『氣』を発する者は…実はフィズの視界の中にいた。
しかしフィズはその姿を彫刻か何かだと思った。
理由の一つは…あまりにも逞しい肉体。
あまりにも巨大で…一糸纏わぬ全裸の『漢』は美術品と見紛っても無理は無い。
もう一つの理由…それはその『氣』がヒトのモノとは思えなかったからだ。
猛獣か何か…悪魔や怪物…それほどに異質な『氣』。
『Fizz』は怪盗であって戦士ではない。
その『氣』が闘気や殺気の類だと知り得る経験など皆無だった。
だからその『氣』そのものが振動して音声のように聞こえた時、
かつてないほどに驚愕し…恐怖した。
「……深呼吸せい」
「ひゃっ……?…………………っッ!!!!」
悲鳴より先に身体が怯む。腰が抜けて膝を立てて尻を落とす。
それでも少しでも対象から離れようと上体を背中の方へ傾けてしまう。
脱力した下半身は伴わないため、自然に両手は上体を支える為に床に……
正面から見れば足はM字……真横から見ても腕、胴体、足でやはりM字……
女の子としてあるまじき姿勢…それ以前に完全なる畏怖を体現していた。
「きゃ…きゃああああぁあっッ!!……っ?!?!………っ!
……〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
絶叫…少女が発声できる限界の絶叫が響く。
次いで肉体に異常なまでな震えが起こり…少しだけ失禁してしまった。
尿の温もりをわずかにショーツに感じ…
志由特有の鋭敏かつ強大な羞恥心が本格的な決壊を堪えさせる。
それが結果的に志由…フィズの自意識を保ったのだが…
絶大な恐怖、驚愕を改めて認識するだけだ。
言葉など出るはずもない。思考すらままならない。
本能が最大音量で「逃げろ」と警鐘を鳴らす。
だが身体は震えることだけに全力を尽くす。
「深呼吸せい」
目の前の…彫刻だと思っていた物体が再び同じ台詞を言っても
フィズはカチカチと歯の音を鳴らし泣き震えるだけ。
『漢』は仕方なさそうに言葉を補則していく。
「少女の身でありながら『組織』に刃向かおうという猛者がいると聞き…
それほどの胆力の持ち主ならば…
あるいは我と闘い得るかと思い出向いてみたのだ……」
彼なりに幼子に言い聞かせるようにゆっくりと語る。
純真な志由…フィズはその『漢』の心意気を察し…理解しようと恐怖を抑える。
「だが無理なものは無理…
恥じることはない。まさに『無理もない』のだ……
今から我は…この昂ぶりを鎮めるために…うぬを犯す………
だから『深呼吸して』媚薬を吸い、せめて苦痛を緩和せよと言うのだ…………」
志由はようやく理解した。
『深呼吸』は『ギブアップ』と言い換えてもいい。
そして…『Fizz』としての自分も思いだす。
言わば『漢』は宝の番人……『組織』を敵に回すということを…
今、本当の意味で知った。心底、骨身に、染みた。
…ここで立ち向かえなければ…本当にギブアップするしかない。
……
…
(怖い……ホントに……怖い……
でも………戦えなきゃ………ここで………終わる……………っ!!)
敗北は必至……しかし。白旗を上げるわけにはいかない。
(たとえ……負けても……ヤられちゃっても……
ぜったい………諦めない!……死なないかぎり……戦う!)
今は屈しようとも…『次』に繋げる。望みを捨てない。
フィズは…よろよろと立つ。
震えは止まらない。涙も止まらない。
少女に出来る精一杯、極限の意思表示なのだが……
目撃者がいたとしても…立っただけ、フィズに戦意など感じられないだろう。
だが目の前の『漢』には伝わった。
「………ふむ。…………では……参る」
台詞と共に拳を構える、今にも放たれそうな一撃……
(ぁ………ダメ………足が……動かない…………)
喰らってはいけない、そう思いつつも身体は反応してくれない。
ドコォォッ!!……ドガッ!!
『漢』のパンチがフィズを吹き飛ばし壁に激突させた。
勢いよく弾かれ、まるで弾丸のように壁に一直線……
バイザーのエアバリアが出力全開で全身を保護してなければ…
か弱い少女の身体は破裂していたかも知れない。
バリアのおかげで物理ダメージこそ軽微だが…精神的ダメージは計り知れない。
(い…一発で……バッテリーがこんなに消耗してる………っ
っ!……それに…ショックで……キャンディ…噛んじゃった………っ!)
銃弾すら弾くエアバリア…
マシンガンの斉射を受けてもここまでバッテリーを酷使しない。
…あと二回も喰らえば全容量を使い切るだろう。
飛ばされた際に舌の上から見失ったキャンディ…
壁にぶつかったときに奥歯で砕いてしまった。唾液に当たる面積が増えた。
…加速して溶けていく…あと5分維持出来るか否か。
叩きつけられた壁から身体が離れるとそのまま俯せに倒れてしまう。
「…よくぞ耐えた。…もう充分であろう?…うぬは戦った。
結果、敗れた……それだけだ。…敗北を…糧に強くなれよう……」
…台詞の後に「深呼吸しろ」と幻聴が聞こえた気がする。
フィズは腕だけで上体だけ起こし哀願する。
「…お……お口で!……お口でご奉仕………しますから!
…下手かも知れませんが…… まだ……処女なんです!
…お願い……挿入れるのだけは……許して…くださぃ……」
乙女にあるまじき台詞…それでも志由の選択できる唯一の言葉だった。
改めて『漢』の反り返るイチモツを見る……
壁まで飛ばされ距離が開いていも大きい…
先程の立体映像の男たちとは比べるべくもない巨大さ……
志由の腕と較べても遜色ないほどに見える。
そんな肉棒で秘部を貫かれては……
媚薬を吸えば痛みは緩らぐのかも知れないが…それだけはしたくない。
…志由が性に臆病なのは…快楽の凄まじさを知っているから。
年頃の娘だ…生理現象で発情してしまうこともあった。
だが軽く触れるだけで…発狂しそうなほどの快感が走った。
故に本格的に自慰をすることすら今まで無かったのだ。
…媚薬でどれほど淫らな牝になるのか…見当もつかない。
(今の気持ち…「戦う意思」すら…失ってしまうかも……
絶対に……媚薬だけは…………っ!)
そう思っている間にも漢はゆっくり近付いてくる。
そして腕だけで上体を支えている、半分は倒れたフィズの前に片膝を着いて座った。
「案ずるな、最初から挿入する気などない………」
そう言いながらフィズの頭を、髪を整えるように優しく撫でる。
「その体躯では我のモノはどう挿入れようと苦痛のみ…
回数を重ね…ゆるりと拡張調教を施してから突いてくれる……
今回は…そうよな、この肉棒で…その秘所を擦りつける……
うぬは愛液を撒き散らしながら太股にて締めるがよい」
頭を撫でる手はそのままに尊大な笑顔で言う漢。
志由は涙に濡れたまま表情を戸惑い、困惑に変える。
それを解そうというのか漢は言葉を続けた。
「まだ齢17、8といったところと見受けた……
見知らぬ男になど触れられるだけで苦痛であろう?
…くわえるにしてもだ。…うぬが望むなら存分に頬張らせてやろう。だが…
いずれにせよ媚薬を吸って乱れてしまえと言っておる。
媚薬のせいにして快楽を純粋に楽しめ………
その後も…うぬにとって決して悪いようにはせぬと誓う………全てを委ねよ」
志由は…思わず深呼吸してしまいそうになる。
表情に赤みが差し…流れる涙の意味も変わった。
目前の巨躯は…自分を敵として扱いながらも「女」として
彼なりに敬意を払ってくれているのだ。
己が欲望だけを突き詰めてくるだけではない。
そして…自分ですら幼く見える外見を無視して相応の年齢と見抜いた漢……
その器。…好意、恋愛感情まではいかないが……彼になら……などと思ってしまう。
(でも………でもぉ……………………っ!…………!)
少女としての迷い………それを断ち切るように……
『フィズ』は顔を上げ、目を閉じた。唇を結び……待つ。
……気配。……『漢』の顔が自分の顔に近付くのがわかる。
唇に唇の近付く気配…触れるか否かの刹那!
「ッ!!」
『フィズ』は目を見開く。同時にバイザー左耳部から極小の機械音!
シュッ!と風を切る音……
これも今回初めて使う機能……フィーズパラバルカン!
3cm程度の極細麻酔針を連射するニードルマシンガンだ。
(凄いヒトだもん…普通に撃っても…きっと…避けられちゃう…から……)
自分の騙し討ちに罪悪感を覚えるフィズ。
本当に迷っていたのだ。敵だが何故か信頼できた。
彼の囁きに…股間は水とも尿とも違う湿り気を感じたほどだ。
だからこそ応じられなかった、負けられなかったとも言える。
(カラダを許したら……ドレイみたくなっちゃたかも……)
頬を染めて…改めて『漢』の顔を確認する。そして…絶句。浮かれた妄想など吹き飛ぶ。
「っ!?…〜〜〜〜〜〜〜ッ!!??」
先程の尊大な、優しげな笑顔ではない。
嬉々として笑み…その上で狂気を感じる。
ニヤリと口が大きく歪むのを、射抜かれるような鋭い眼光を、フィズは見てしまった。
(なんで……?!………なんでぇ……ッ?!!)
先程の再現…フィズは尻餅を突いて手で上体を支え後ずさる。
やはり失禁しそうになる。今度は意思だけでは止め切れない。
片手で性器全体を押さえるようにしてようやく止まるが…
股間の布はしっかりと温かい。押さえる指すら尿に濡れる。
羞恥と驚愕は先程より大きい証拠だ。
…漢の巨体はその場を動いてない。避けてない証拠だ。
麻酔針銃を今まで使わなかったのは…
麻酔が強力すぎるから…一針で鯨も動けなるほどにだ。
これを数発も喰らって平気など有り得ないにも程がある。
だが『漢』は…もっと有り得ない方法で防いでいた。
漢の手が不自然に顔の横にある。目を凝らすと…指々の間に麻酔針が……
『至近距離から高速射出された無数の針を掌で防ぐどころか全て指で挟んだ』
結果からみるとそうとしか考えられない。
その手はそのままに漢は立ち上がった。
「フハハハハハハッ!」
豪快、大音量の笑いが響く。フィズはそれだけで吹き飛ばされそうな気分になる。
「素晴らしいぞ!…心から詫びよう!…うぬを見くびっておったわ!」
…とんでもなく上機嫌な漢は饒舌に語り始める。
「実際…迷ったのだ。うぬが口奉仕を申し出た時…
無言でしゃぶらせたほうがよいか?…とな!
もしさせておったなら…捕れなかったやも知れぬ!
顔を狙ってくれたからこそ、殺気に反応し目が追いついた……
いや!実に危なかった! …敗北を受け入れた様子で油断させての不意打ちも見事!
実力差をものともせず我に攻撃する気概も絶賛しよう!
フィズと言ったな!…その名、しかと覚えたぞ!」
…あまりの興奮ぶり。本当に無邪気に笑う…ある意味怖いが……
(…もしかしたら…このまま……見逃してくれる?)
恐怖と羞恥で混乱するフィズは甘い期待を抱く。
「万全の状態で戦いたい」などと言ってくれるのではないか?と……
無言で次の言葉を待ったが…
「心底より気に入ったわ!
…組織の連中からは『今回は様子見、最後は逃がせ』と言われておったが…
絶対に逃さぬっ!…フィズ!…うぬは今日…この我が貰い受ける!
我が性奴隷としての調教を…今!この時より開始する!
もう媚薬など吸う必要はないぞ!
…媚薬で得られる快感より…千倍は凄い快楽を与えてやる!
有無を言わさぬ!」
…
フィズは本当に何も言えなくなった。
漢は本気だ。やると言えば必ずやる…それだけの自信と気迫が凝縮されている。
だが性に未熟な志由には千倍の快楽と言われても思慮の外だ。
媚薬の快感ですら未知…それが少女の想像の限界……
故に性調教には怯えずに済んだ。漠然的すぎるからだ。
そして…困難ではあるが…まだ手はあった。
(……フィーズノヴァ…
残りバッテリーでも……ギリギリ……あと一回撃てる!…最大…出力でっ!)
問題は…発射前に一秒、いや一呼吸の間がかかる。
その隙に如何様にも対処されてしまうだろう。どうやって当てるか……
さらに化け物のような漢の体にどれほどの効果があるか…
一般人相手には命の保証は出来ない、対人に向けて使用することすら想定していない、
戦車すら軽く撃ち抜くフィズ最強の破壊兵器だが…
目の前の漢には逆にどこを狙えば行動不能に出来るかを考えなければならない。
…だがその思考も徒労に終わった。
「…返すぞ」
短い言葉の後、漢は軽く手でフィズを扇ぐ仕草をする。
フィズにはその動作しか認識出来なかったが…
エアバリアは作動した。…数秒遅れてフィズは気付く。
バイザーの耳の部分に自らが放った麻酔針が刺さっているのを。それも両耳側の装甲に。
オートで作動するエアバリアを貫通して…
さらにフィズの体表をナノ単位で被う無色透明の防護膜すら破って刺さったということ…
当然エアバリアは先程同様全開…バッテリーも異常に消耗した。
…それ以前に麻酔針で体を狙われていれば微塵も動くことが出来なくなっていた。
「ゃ………ぁ………いや!、いや!……いやああああぁっ!」
何度めの絶叫だろう。フィズは麻酔から免れた体を懸命に動かして逃げる。
恐怖、混乱で四つん這いで…亀のような速度だが…ひたすらに逃げる。
もう残存電力ではレーザーも撃てない。
撃てたとしても絶対当たらない。当たっても効かない。
どころか。漢の速度なら…いつバイザーを剥ぎ取られても全く不思議ではない。
そして…性奴隷。戦う意志も何もかも無くしてしまう…確信!
……志由は逃げるしかない。
もうフィズとしての体裁すら保てない。まともに逃げる仕草すら叶わない。
前述のように四つん這いで逃げているのだが
尿意を抑える為に押さえていた手を放してしまえば途端に決壊しそうになる。
「ひゃ…ひゃああう!………っ」
はしたない喘ぎを上げて悶えては耐え、進んでは悶え喘ぐ。
四つん這いの、プルプルと揺れる尻を漢はニコニコと爽やかに笑いながら眺める。
「素晴らしいぞ……幼い容姿だが…充分な色香を放ちよる!
うぬと交わることで少女嗜好と咎められるのならば…我のほうから宣言しようぞ!
………我は鬼畜!変態なり!」
その朗々たる独白にフィズは尿意と共に疼きを感じる。
「は………はうぅ…………ん…………っ」
これから間違いなくされるであろう行為に牝として反応してしまうのだ。
「まずはその可愛らしい胸を見せてもらおうか!」
フィズがビクンと震えた時にはブラのホックが外されていた。
漢は一歩も動いてないように見えるのに。
「やああう!……み、みないでえ………っ」
真っ赤な顔で両手でブラを押さえる。
四つん這いの体勢からは重力でブラは落ちかけて完全にズレた。
どちらの手を放しても乳房は露出してしまう。
強い尿意と腰が抜けて立てないフィズは進む術すら失った。
それでも逃げようと膝を床に擦りつけるようにするが…
もはや数cmづつしか動かない。
ツカツカと歩みよる漢はあっという間に追い付いた。
そして突き出された少女の尻を包む布に手をかける。
「ひ、ひいいぃ………っ!」
フィズは自分の純潔が引き裂かれる思いに襲われる。
(ぱ……ぱんつ……破かれちゃう………??!?)
…そうはならなかった。くるりと身体が上下反転して尻餅をつかされる。
お尻から伝わる床の冷たさより先に…
先程まで穿いていたショーツを嗅ぐ漢の顔を見て気付く。
「っ!…いあぁっ………やぁ………っ」
手は動かせない、ペタリと太股を合わせそれを床に付ける。
正座から両踵を外へ逃がした姿勢。微塵も進めなくなった。
もうフィズは口の中など意識できていなかったが…
酸素を供給していたキャンディも消えようとしていた。
(あぁ……終わっちゃった……………)
消失しかけのキャンディとは関係なく呼吸を止める。
もう尿も堪えきれない。次に何かされれば確実に漏らしてしまう。
限界を越える羞恥を晒す覚悟を、全てを受け入れる覚悟を決めその瞼を閉じる………
………
…が!
「我の負けだ……フィズ……大儀であった………」
鐘のような漢の声……幻聴と思うことも許さない響きにフィズは目を開ける。
漢はフィズのショーツを強く握りしめ、その拳を胸に棒立ち……
その巨躯がさらに大きく見えるが…不思議なことに恐怖は無くなっていた。
「まさか…殺気も発せず針を飛ばせるとはな……達人の域の所業よ!
うぬをまだまだ見くびっておった我の未熟さか………」
漢に言われて初めて気付く。パラバルカンの残弾が0になっている。
疑問に思う前に漢が解説する。
「そうか……AIとやらの仕業か……
フハハ!…うぬは一人ではなかった……『うぬら』に敗れたわけか……
見事!……天晴れなり!」
ほどなくピーチの声がバイザーから響く。
「フィズ!…だいじょうぶ?!……フィズ!!」
(そうか………ピーチ………助けて………くれた…………)
敵AI制圧を終え、機能回復したピーチがフィズのバルカンを遠隔操作した…
『漢』の言うとおり…二人の勝利だ。
(助…かった?………勝った?…………っ)
緩みかけたフィズの気を漢が引き締める。
漢の拳が高く掲げられた。ピーチの声も響く。
「まさかっ……この麻酔を喰らって動けるなんてっ………フィズ逃げてぇ!」
間に合わないことはフィズが1番理解している。
(やられ………ちゃう!)
…が。
「何をしておる!…とっとと逃げぬか!………うぬにそんな余裕は無かろう!」
…ハッと我に帰る。キャンディはその瞬間消えた。ピーチも叫ぶ。
「後のことは私に任せて!……とにかく外へ!」
よたよたと力無く立ち上がり去っていくフィズに漢は最後の賛辞を贈る。
「よき戦いであった!…次の逢瀬では…必ずや!うぬ自身を貰い受ける!
天下に名だたる怪盗を盗むのもまた雅!…風流よ!」
微かに振り返り『漢』に頭を下げると…フィズは走った。
それを見届けてから『漢』は意識を失った。
今回の戦利品であるフィズのショーツを…拳を天に掲げる様は…
本当に芸術品のようでもある。鍛え抜かれた『漢』の姿だ……
フィズは苦悶の表情で走っていた。
呼吸が出来ないだけではない。一歩走る毎に尿意が重くなる。
(けど………ここまできて……………っ)
漏らしてしまったら…今度こそ燃え尽き、力尽きる。
『漢』を倒しておいてこんなところで敗北するわけにはいかなかった。
限界を越えて耐え走るフィズ…
その視界に立体映像の男どもが入ってきた非常扉……
ピーチが開けてくれたのか、扉は開いて室内の空気が風となり外へ流れ出ている。
(あそこまで……いけば………でも……もう……息が…………っ)
それでも死力を尽くして全力で駆け…残り少ないバッテリーで光学迷彩を発動する。
(やった………外っ!………っ!?!?……………っ!!!)
扉を駆け抜けた先…想像もしなかった風景に…フィズは息を飲む。
いつものフィズならたやすく気付けていた。見逃すはずもない。
『室内の空気が風となり流れ出ている』=気圧差があるということに。
もう少し慎重になったかも知れない。
有り得ないことに…二階のはずが超高層ビル並の高さだった。
そして、当然あると思っていた非常階段の足場はなく……
フィズの身体は空中に放り出されてしまった。
(お……落ちる………っ)
が、瞬時にバイザーが残り電力で重力軽減する……
そして脱げかけていたブラも発動……
左右のパッドがそれぞれ二つの気球となり…取り敢えずの落下を防いだ。
本来ならばスカート内側のペチコートが推進力を生み瞬時に離脱出来るのだが…
今はブラも失った全裸…仮にペチコートを着ていてもバッテリーがなかったが…
とにかく風に任せて流されるしかない。
(………うううっ………っ)
春とはいえ全裸だ。そして高空……夜風は冷たい。
ずっしりと重い尿意に拍車をかける。
だが下には自らが招き集めた観客たちの群れ……
もし漏らせば…その水滴を受けた人々は上を向くだろう。
そうなれば…重力軽減に電力を回したフィズに光学迷彩は無い…
二つの気球を両手でコントロールしなくてはならない今のフィズは……
全裸の空中遊泳を晒すことになる。…マスコミも大勢いる。
こんな姿が撮影、放映されては…二度とフィズにはなれない。
膀胱が破裂しようと漏らすわけにはいかない。
激しい鼓動を静めることも出来ないまま風に揺らされるフィズに…
悪魔の唸り声が聞こえてきた。
リアルタイムGJ!
漢が漢すぎてヤバイ、つかこういう敵は発想になかったわw
あとは脱出だけですが、唸り声とは一体…てかこのヒキは卑怯だ、続きが待ち遠しすぎる!
うあぁ…漢らしすぎるぜ『漢』。フィズよりキャラたってそうな…w
この敵にならある意味負けても潔く屈服できそうだ。
ところで…いくらなんでも、敵のAIめちゃくちゃ高性能じゃないのか?w
333 :
102:2008/02/02(土) 17:03:47 ID:QUMVp25Q
やっとネット開通しましたー。
ワーイヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノワーイ
フィズも帰ってきたし、キャットシーフは急展開だし、
このスレの連載もいよいよ佳境ですねー。
それでは俺も負けずに投下してみます。
「すみませんが、今日は急いでるんです。失礼します」
「ちょ、ちょっと待ってください。だって今まで文庫本を読んで……」
いつもの喫茶店。
彼の姿を見るや会計を済ませて足早に走り去る香織の背中を、
棚橋は呆然と見送っていた。
本当に忙しかったんだろうと自分を懸命に納得させようとするが、
すれ違いざまに感じた明らかな拒絶は拭い去ることができない。
あちこち探し回った挙句やっと逢えたというのに。
先日のショッピングでいい雰囲気になったと思ったのは勘違いだったのか。
彼女の真意は見えないままだったが、次の日も、次の次の日も、
彼女は彼に冷たくあたるのだった。
「あ、宝月さん。こんばん……わ?」
「すみません、急いでるので」
(ごめんなさい……棚橋さん。私、貴方を傷つけてる……でも)
唇を噛みながら走り去る彼女の鞄の中で携帯が鳴るが、
香織はそれを取り出そうともしない。
棚橋は重く沈んだ顔で携帯の通話終了ボタンを押すと、警察署へと戻った。
その日は散々な一日だった。
仕事にまるで身が入らず、上司からは何度も叱責を受けた。
帰りにここ数日会えずにいた香織の姿をやっと見かけたかと思うと、
あからさまに背を向けて走り去られる始末。
気晴らしにバー「タイガーアイ」にでも行こうかと商店街を
通り抜けてふと目を向けた所に、そのお店はあった。
「骨董品店 天河石」
かなりガタがきていると思われるレンガ造りの小さな店。
ただでさえ地味な店構えの上、ビルとビルの間に挟まれてすっかり陰になっている。
そのお店は客が入っているところを見た者がなく、なぜ潰れないのかが謎だと
普段からこの界隈では囁かれている骨董品店だ。
その店に、半ば気まぐれで、半ば自棄になって棚橋は入ってみることにした。
ドアを開けると、チリンチリンとベルが鳴り、来訪者の存在を告げる。
店の奥からは店主だと思われる年老いて背中の曲がった男が姿を見せた。
「いらっしゃい」
店主はそう言うと、久方ぶりの客には興味がないらしく新聞を読み始めた。
(……無駄足だな)
普段は決して入ることのない店に入れば違った目が出るかと思ったが、
そのささやかな希望を叶えるには、あまりに店には魅力がなく
店主には商売気がなさすぎた。
並んでいる品物はひと目で掘り出し物ではないことが分かる物ばかりだし、
むしろお金を払ってでも引き取ってもらいたい商品が多数だった。
この店に何を期待しているのかが分からなくなり帰ろうとした彼の目に、
信じられないものが飛び込んできた。
『タロットカード入荷 ただし一枚限り』
汚い文字が書かれた紙が貼ってある棚には、あのタロットカードが鎮座していたのだ。
そう、宝石が散りばめられた、怪盗が血眼で狙い続けているあのタロットだ。
「爺さん、これは……?」
「ああ、俺の親の世代からそこに並んでるよ。
一枚だけのタロットカードだからな、売れないのも無理はないさ」
「本物……じゃないだろうな。こんな店にあるわけがない」
本物だと信じるには、値段があまりに安すぎた。
また、怪盗ブームに乗っかった玩具メーカーが最近その
タロットカードの模造品を商品化しているということもあった。
まじまじと眺めてみても宝石の価値など分からない棚橋は
その値段に惑わされ、よく出来ているものの玩具だと結論づけた。
だが、どうにもそのタロットのことが気になって頭から離れない。
『恋人(ラバーズ)』と書かれたタロットは、彼を誘うかのようにキラリと光った。
それを目にしたとき、棚橋はそのカードを買うことに決めた。
「親父、これをくれないか」
「旦那、本当にそれを買うのかい? 確かにはまってるガラス玉は綺麗と
言えなくもないが、一枚きりじゃ占いもできないよ」
「ああ、いいんだ。このカードが俺を呼んでる気がしたんだ」
「ふぅん……まぁ何でもいいさ、どうせこの店も来週には閉めるんだからな」
結局ただ同然でそのカードを手に入れた棚橋は、
スーツの胸ポケットに無造作に突っ込むと帰路に着いた。
『恋人』というからにはお守り程度にはなるだろう、という軽い気持ちだった。
そのポケットの中では、『恋人』が怪しい光を放ち続けていた。
その翌日、棚橋を待っていたのは、また違った意味での災難だった。
女難、と言ってもいいかもしれない。
警察署の廊下を歩くたびにすれ違う婦警に熱い視線を向けられ、
就業フロアでは彼のことを噂するヒソヒソ話が聞えてくる。
結局その日一日で四人に告白され、一人に押し倒された。
それも若い新人婦警から、色んな意味でどっしりしたお局様まで幅広く。
ついでに言うと、棚橋を押し倒したのは……お局様だった。
(……ったく、いったい何だってんだ)
ぼやきながら帰路に着く棚橋の目に、本屋に入っていく一人の女性の姿が映る。
その女性はしばらく文庫本を選んでいたが、どうやら平積みされている
ハードカバーの恋愛小説を買うことに決めたようだった。
香織だ。
自分を避けるかのような彼女の振る舞いを思い出して少し躊躇した棚橋だったが、
唾を飲み込むと、意を決したように声をかけた。
「こ、こんばんは、宝月さん。お仕事帰りですか?」
「あ……棚橋……さん? こ、こんばんは」
棚橋の顔を見た香織の様子がどうもおかしい。
ここ数日の彼女であれば、顔をそむけてにべもなく立ち去っているはずだ。
だが、目の前の彼女はというと、その瞳は潤み、頬は上気して赤く染まっている。
どうやって彼女を引き止めようかということしか頭になかった棚橋は、
予想外の反応に言葉をどう繋げていいものかわからず黙ってしまった。
一方、香織は戸惑っていた。
棚橋の存在に気づくや、適当な理由をつけて立ち去るつもりだった。
しかし、彼と目が合った瞬間、背中に電流が走ったような感覚をおぼえ、
彼から目を背けることがどうしてもできなくなってしまったのだ。
(なんで……私、ドキドキしてる……)
彼に聞こえてしまいそうなぐらい自分の鼓動が早くなるのを感じ、
それを意識するあまり頭が真っ白になってかける言葉が見つからない。
二人はしばらく沈黙して見つめ合っていたが、棚橋がなんとか言葉を紡ぐ。
「ほ、宝月さん。もしよかったら晩御飯でも、いかが、ですか?」
(……馬鹿、いくらなんでも唐突すぎだろ俺。くそ、また逃げられちまう)
「た、棚橋さん。ぜひ、その、ご一緒させて、ください」
(……え? なに言ってるの私。もう彼のことは諦めるって決めたじゃない)
お互い内心とは裏腹の言葉。
しかし、色よい返事を聞いた瞬間、棚橋の顔からぱぁーっと満面の笑みがこぼれ、
それを見た香織は今日の彼が放つ不思議な魅力に抗えなくなっていた。
一時間後。
バー「タイガーアイ」で棚橋は硬直していた。
カウンターに並んで座り、マスターご自慢のパスタを食べるところまではよかった。
だが、お酒をいくらも飲まないうちに香織が自分の肩にしなだれかかってきたのだ。
驚いて香織の表情を窺うと、気を許したのかすぅすぅと寝息を立てている。
「ぅん……たな……はし……さん……」
肩から伝わる彼女の温もりと心地よい重み、そして無防備な寝顔に
彼はいつになく動揺しながらビールを飲んでいたのだが、
舌足らずな寝言で自分の名前を呼ばれた瞬間、血が燃えるのを感じた。
かぁーっと顔が熱くなり、何も考えられなくなる。
そ知らぬ顔で氷を削っていたマスターと目が合うと、慌てて勘定を頼んだ。
マスターは苦笑していた。
バーの外に出てからも、香織は棚橋の腕を離そうとしなかった。
こんな積極的な甘え方は、ここ数日の香織はおろか以前の香織からも
とても想像できない姿だった。
「ほ、宝月さん。そんなにくっつくと歩きづらいですよ」
「あっ、ごめんなさい、でも今はこうしていたい気分なんです」
「え……あ……ま、まいったな。
それより、宝月さんのお家はどちらですか? お送りしますよ」
「いやッ!!」
突然大きな声をあげた香織に、棚橋は驚いて歩を止める。
香織はフルフルと体を震わせ、涙目で彼の顔を見つめている。
「ご、ごめんなさい。今日の私、どうかしてますね……。
でも、もう少し、もう少しだけでもこうしていたいんです。駄目ですか?」
自分の目にまっすぐに向けられた熱視線と、懇願するかのような
甘い言葉に、棚橋は自制心が音を立てて崩れていくのを感じていた。
昨日までは自分はわけもわからずけんもほろろに拒絶されていたのに。
関係をいくらかでも修正できればと思い本屋で声をかけただけだったのに。
それが、まさか一日でこんな展開になるなんて。
(安直な表現だが、これが夢ならば醒めないでくれ)
棚橋は心からそう思った。
棚橋は自宅アパートに香織を招き入れると、エアコンのスイッチを入れた。
暖かい空気がそよそよと流れ出し、二人の頬を撫でる。
「その辺に適当に座ってください。何か飲みますか?」
「い、いえ。おかまいなく」
二人の会話はどこかぎこちなく、まるで童貞と処女のようだった。
棚橋は、自室に彼女が存在していることを実感できずにいる。
香織は、自らの積極的な言動が自分のことながらも信じられずにいる。
二人ともどこか幻のような、油断すると泡のように消えてしまいそうな儚さを
感じながらも、同時にこの後に訪れるであろう展開を予感していた。
しかし、どう切り出したものかがわからない。
香織はベッドの上に座って俯いているし、棚橋は冷蔵庫からペットボトルの
お茶を取り出してグラスに注いでいる。
次第に暖まっていく部屋で、お互い無言でズズ…とお茶を啜ったとき、
そのタイミングが同じだったことに気づき、顔を見合わせて笑みがこぼれる。
直後、棚橋が真剣な表情になり、香織は胸を高鳴らせた。
「その笑顔……もう見られないかと思ってた」
「ごめんなさい。私、ひどいことをしたって思ってます」
責められたと勘違いした香織が下を向き、その頬に棚橋の手が添えられた。
香織は目を瞑り、愛おしそうにその手を両手で包み込んだ。
「理由、聞かないんですか? 私、棚橋さんのことを傷つけたのに」
「そんなのはもういいんだ、それよりも今を感じたい」
ちょっと臭かったかな、と指で頬を掻く棚橋の目の前には、
目を瞑って唇をそっと突き出す香織の顔があった。
その顔にうっかり見とれてしまった棚橋は、彼女に対する想いを
噛みしめると、時間をかけてゆっくりと唇を重ねた。
二人の初めてのキスは、優しく、淡い口づけだった。
怪盗アンバームーンとそれを追う警部、という立場では実は接吻は既に
経験済みなのだが、嘲笑が基にあるキスと恋焦がれた上でのキスとでは
まったく別物なのだということを香織は密かに感じていた。
しかも自信家で挑発的なアンバームーンとしての姿ならいざ知らず、
臆病な素の自分が精一杯の勇気を絞り出して求めたキスなのだから。
そっと唇が離れて見つめ合った後も、さらに二人は唇を重ね合った。
二回目のキスは、強く、むさぼるようなディープキスだった。
互いの口腔を舌で探り合い、歯茎をなぞり合い、唾液をからませ合った。
ちゅくっ。ぴちゅっ。くちゅっ。
狭い部屋にお互いの存在を求め合う音が響き、いやがおうにも情感は高まる。
「……ん……ふむぅ……ぅん……」
時たま口から吐息が漏れ、鼻息が顔にかかる。
アルコールと緑茶が混ざり合ったような何とも表現しがたいキスの味。
そろそろ離れようか。でもまだ離れたくない。あと少しだけ。
その時、棚橋の右手が香織の胸にそっと触れた。
「いや……恥ずかしい……」
顔を真っ赤にして俯く香織を、棚橋はそっとベッドに押し倒した。
抱きしめた彼女の体は温かく、それでいてとても華奢だった。
体重をかけると壊れてしまいそうで、棚橋はそっと体を浮かす。
仰向けになった彼女の体では、タートルネックのセーターが慎ましやかな
胸の形に膨らみ、細身のパンツが腰のなだらかな曲線を描いている。
「宝月さん、その、とても綺麗だ」
「そんなことないです。私なんて貧弱で、子供っぽくて、魅力がなくて…」
表情を強張らせて固く目を瞑る香織に、棚橋は強く言い放つ。
「そんなことはない!」
その語気にビクッと体を震わせ、恐る恐る目を開ける香織をそっと
抱きしめると、棚橋は優しく言い聞かせた。
「大好きな人にそんなことを言われると、とても悲しいじゃないですか。
他の誰が何と言おうと、俺は宝月さんのことを綺麗だと思う。
それじゃ……駄目ですか?」
香織はその瞬間、理解する。
自分に自信がない、なんて控えめで奥ゆかしい態度を取っているようでいて、
それは目の前の人を傷つける行為に他ならないのだと。
心の中で今日何度目かのごめんなさいを唱えながら、香織は涙目で微笑む。
「嬉しいです。棚橋さんも格好いいですよ」
「え!? いや、その、参ったなぁ……」
慰めた相手からの思わぬ逆襲に、思わずたじろいでしまう棚橋。
ゴホン、とわざとらしい咳払いをすると、彼は改めてそっと胸の膨らみに触れた。
「ん……」
今度は香織も拒絶しなかった。
棚橋は左手で彼女の腰を抱きながら、右手でさわさわと愛撫を続ける。
「んッ……く、くすぐったいで……ふむぅ……」
彼女が言いかけた言葉を唇で栓をする。
顔を赤らめて身をよじる彼女のセーターを下からまくり上げ、
露わになったブラの上から大きな手で乳房を包み込み、乳首を刺激する。
「んぁッ……くぅんっ……で、でんきを……電気消してください……」
切なげな吐息とともに吐き出された言葉に棚橋は頷く。
本当は彼女の姿をずっと見ていたかったが、明るいまま続けるのは
香織にはまだ酷だろうと思い直してリモコンを手で探る。
室内が暗転する。
闇の中で、触覚を頼りにセーターを脱がし、パンツのファスナーを下ろした。
その下の素肌に手が触れ、女性の肌のあまりの滑らかさにしばらく手で撫でる。
腿に、胸に、鎖骨に、棚橋の手が触れてそのたびに香織は身をくねらせた。
「んんん……ふぁッ……ああぅッ」
機を見てブラのホックを外そうと背中に手を回し入れる棚橋だったが、
暗闇ということもありなかなかうまくいかない。
焦る彼の頭を香織がそっと撫で、もぞもぞと動いた。
「大丈夫ですよ、……んっ」
いつも控えめな彼女が、俺のために余裕を演じて自分からブラを外してくれた。
それに気づいたとき、棚橋は膨らみにむしゃぶりつかずにはいられなかった。
彼の右手は背中から下腹部へと伸び、パンティの布地ごしに秘奥に触れる。
ふにふにと指で刺激するそこは、既に湿っていた。
「んあッ……そ、そこは……ふぅん、あッ……はぁう」
「とても可愛いよ、香織」
そっとパンティをずり下げる彼の手に軽く抵抗しながら、
彼が自分を名前で呼んでくれたことに気づいて、体を熱くさせる。
「はぅ……え、と……わ、私棚橋さんッ……の下の名前……」
「あ、そうか。『正弘』というんだ」
「くあぁぁッ……ま、まさひろ……んんんんぁぁぁ!」
下着をずり下げられ、直接秘部を指で刺激された香織は
初めて聞く彼の名前を呼びながら軽く達した。
はぁはぁと荒い息を吐く彼女が愛おしく、棚橋は彼女を軽く抱きしめた。
だが、その腕から逃れるように彼女が体を起こしたようだった。
「え? か、香織……?」
「こ、今度は私が正弘のことを……」
もぞもぞと動く彼女の手によって、棚橋の上着もズボンを取り払われた。
鍛え上げられた彼の体に、香織の唇が吸い付く。
細い指は股間に伸び、彼の怒張をそっと包み込んで軽くしごいた。
「くッ……あぁぁ……か、かおりぃ……」
「えと、その、気持ちいいですか?」
彼女は質問に対する返答を待つことなく彼のモノを口に含む。
突如訪れたその刺激に、彼は小さく呻く。
ごぷっ。ちゅばっ。ちゅぶっ。
闇の中に唇と唾液が奏でる淫靡な音が響き渡った。
(……わ、私……自分から男の人の……)
彼に懸命に奉仕しながら、香織は自分の積極的な行動に驚いていた。
彼女とて、男性経験が全くないわけではない。
しかし、コンプレックスの塊だった彼女にとって、初めての行為は
耐え難く苦しい、痛いだけのものだったのである。
首を振って抗う彼女を、当時の男は欲望に任せて乱暴に扱った。
それからだ、彼女が男性を恐怖するようになったのは。
だが、棚橋が相手なら不思議と嫌悪感はなかった。
いつも自分に優しく扱ってくれる棚橋になら、その想いに応えたい。
自分の感情を反芻しながら、彼女は不慣れな行為を夢中で続けた。
彼のモノが硬くそそり立つのを口の中で感じてからしばらくして、
彼の手がそっと彼女の体を誘導した。
ベッドの中で再び抱き合う形になったとき、彼がそっと言った。
「入れる、よ……?」
「はい……」
ぎこちない合図を交わし、彼は彼女の体に自分の分身を挿し入れた。
香織は彼の体の一部が自分の中に入ってくる感覚を噛みしめていた。
「くぅあッ……んんん……は、入ってきたぁっ……」
「うくっ……か、香織の中、とても温かいよ……」
お互いの体温を感じながら、そっと動き始める二人。
騎上位で繋がった二人の動きに、安物のベッドがギシギシときしむ。
棚橋は彼女の軽すぎる重みを感じながら、下から突き上げる。
香織は恥ずかしさに両手で顔を覆いながらも腰を動かす。
「あふッ……くあぁぁ……ふ、太いのぉ……んあああぁ」
「うっ……き、気持ちいいよ……か、香織は?……」
「わ、私も……気持ち……うんんんッ……いいです……お、おかしく……」
棚橋は暗闇の中で彼女の体に手を伸ばし引き寄せると、一度
彼女の体から自分のモノを抜いた。
不安そうな声をあげる香織の体をそっと反転させると、今度は
後ろから彼女の中に突き入れた。
「きゃっ……え? え?……んあぁぁッ!! お、奥までぇ……」
「くっ……うあぁ……か、香織……」
「これっ! これ……深いの……だめっ……だめなのぉ……」
声を押し殺すこと叶わず、先ほどより切羽詰った声をあげる。
二人の体がぶつかり合い、パンッパンッと音を立てた。
動きが加速し、その音が激しくなるごとに二人は乱れていく。
「あんッ! はぁうッ! ……あぁぁはぁう……い、いやぁッ!」
「んんんッ! くぉぉ……い、嫌なの?」
「い、いやじゃ……ないけど……んんん! は、激し……」
想いの深さゆえにどこかぎこちなくウブだった彼らが、今はお互いの体を
遠慮なく貪り、激しく求め合っている。
永遠にも思われたその時間は、やがて限界を迎えるとともに終わりを告げる。
「ふあッ! ああああぁぁ……わ、私もう……もう! あはぁぁ」
「ううぅぅ……うくッ! お、俺もイきそう……」
「だい……大丈夫ですから……んんん! な、中にぃッ!
あああぁぁあ! イく、イくのぉ……うあぁあ! イく! イっちゃう!」
「うああぁ……ああああ!」
どくっ。びゅるっ。
熱い飛沫が彼女の中に放たれ、二人は抱き合いながら絶頂に達した。
「お、俺達……二人で、その、イけたんだね……」
「はぁッ、はぁ……は、はい……」
幻想とも思われる奇跡を彼らは手にしていた。
乱れた後だからこそ一層愛しく思える互いの体を寄せ合い、彼らは囁き合う。
「これも、あのお守りのおかげか……なんてな」
「お守り?」
「ああ……ほら、商店街にある骨董品店で見つけたんだ。ちゃちなおもちゃ
なんだけど……でも世間を騒がせてるあのタロットにそっくりだろ?」
「!? あ、ほ、ほんとだ……そんなの売ってるのね……素敵……」
何気なく相槌を打ちながらも、香織は心臓が飛び出したかと思った。
彼の上着から飛び出したそのカードからは、確かに魔力を感じたからだ。
(間違いない……ほ、本物だ……でもそんなことって……)
「そうだ、これ香織にあげるよ」
「え!?」
「なんたって『恋人』だし、香織に持っててほしいんだ。
本物をプレゼントできればいいんだけど……
さすがに俺の給料じゃ無理か。はははは……」
「あ、あ、あははは……」
果たしてこんなことがあっていいのかという思いと
本物であることを告げられない罪悪感を秘めながら、
香織は顔をひきつらせながら乾いた笑いをあげた。
棚橋は幸せそうに笑いながら、寝息を立て始めた。
「お、お嬢様、昨夜はどちらに……?」
「ごめんなさい神崎。酔い潰れてしまって、茂木先輩の家に泊めてもらったの」
土曜日で学校は休みだったので、自宅まで電車で帰ってきた香織は
自室で静かに昨夜のことを思い返していた。
まだ股の間に何か挟まっているような感覚に顔を赤らめると、
鞄の中から『恋人』のカードをそっと取り出す。
今思うと、昨夜の自分らしからぬ行動は『恋人』のカードの魔力が
棚橋の体から漏れ出していた故なのだろう。
しかし、こうしてカードを手に入れてからも棚橋への想いは変わることがない。
この想いは決して魔力によるものなんかじゃないことを香織は確信していた。
(ありがと、『恋人』。そして、ごめんなさい……棚橋さん)
目を閉じ、臆病だった自分の背中を押してくれた『恋人』に礼を言うと、
再び開かれた彼女の瞳からは迷いは消えていた。
窓からは朝の光が差し込んで、彼女を照らしている。
〜『恋人』奪還(?)完了〜
残りカード枚数…三枚
344 :
102:2008/02/02(土) 17:34:09 ID:QUMVp25Q
今日の投下は以上です。途中ナンバリング間違えてますけどorz
まずはログ流れ防止のための誘導。
>>293 恋するキャットシーフ 第6話
>>304 恋するキャットシーフ 第7話
>>312 恋するキャットシーフ 第8話
GJです! 甘々だと思っていたのにまさかの急展開。
ちくしょう、続きが気になるぜ。
>>317 保管庫管理人様からの連絡
乙です、いつもありがとうございます。
>
>>319 機装怪盗PTフィズ(1話後半)
エロGJ! 漢強すぎwww こちらも続きを全裸で待ちます。
さて、今回のエロシチュは『和姦』……だったんですが。
陵辱モノに比べて筆がまったく進まない自分に凹む。
本当は棚橋×香織パートとアンバームーン×棚橋パートの二部構成を
考えていたんですが、長くなるので断念。
プロットメモを見てみると、
「『恋人』=異性を魅了する能力。イタリア人。」と書いてありました。
……どうやらイタリア人の敵が魅了して従順にさせる話を考えていたらしい。
当初一話限りのチョイ役のはずだった棚橋に見事に奪われました。
可哀想なイタリア人。負けるなイタリア人。
>>344 イタリア人wwwww
棚橋になってよかったwGJ!!
正体バレが楽しみです
そして誘導乙
どの作品も佳境を迎えてますね
改めて職人さんたちGJです
このレスでこの容量はねーよwww
どんだけ中身濃いんだよwww
>>318 GJです
サイバーパンクちっくな展開に新鮮味を感じながらも
後半の漢に全ての意識をもっていかれました
圧倒的戦闘力に愚直なまでの真っ直ぐな生き様
…キャラ濃すぎw(良い意味で)
こっそりと悪堕ちスレ住人でもある自分はピーチが篭絡される展開にも期待してましたw
>>344 これまたGJです
イタリア人だったらあの強力なパワーでNTR展開がっ
こっそり寝取られ(ry
格好良い事しつつも報われていなかった棚橋警部にも役得があったのでこれもありですね
誘導もthanksです
>>318 『漢』が某「わが人生に一片の悔い無し!」な人にしか見えなかったw
>>344 GJ!
何故にイタリア人w
>当初一話限りのチョイ役
ああ、それ分かりますw大山小原コンビがそうでしたからw
そして、俺のターンはまだ終わらないぜ!
投下行きます。
恋するキャットシーフ 第9話
それじゃあ今日は、再来週の学園祭の出し物を決めたいと思いまーす♪」
LHRが始まると同時に、そう言った前田。
それを聞いて変な風に盛り上がるクラスを見て、まだこのノリに慣れていない涼人は戸惑う。
と、そんな涼人を、一美が突付いた。
「……涼人さん、涼人さん」
「一美さん? 何か?」
「里緒から聞いたんですけれど、涼人さんがあやめおばさまを見つけられたのですの?」
そう聞いて来る一美に、涼人は面食らい、慌てて首を横に振った。
「違いますよ。父さんの友人に小原って言う警官がいて、その人が伝えて欲しいって。
小原さんには、里緒さんや一美さんの話してましたから、それで」
「……まあ、そう言う事にしておきますわ」
涼人がそう弁解すると、一美は追及を止める。
そんな一美に、涼人が胸を撫で下ろしていると。
「前田先生、出し物ですけれど、コスプレ喫茶なんて言うのはいかがでしょうか?」
……急に一美が前田に向けてそう言い、涼人はその切り換えの速さに呆気に取られた。
「コスプレ喫茶、ですかー?」
「ええ。さまざまなコスプレをして、お客様をおもてなしする喫茶店ですわ♪
そうですわね……、目玉として『レインボーキャット』のコスプレを出せば、まず外れはないと思いますわ」
そう言った一美に、クラス中がおおっ、とどよめきに包まれる。
と、涼人が1つ大きな溜息を吐き、一美に突っ込んだ。
「……一体誰が着るんですか、あんな露出狂が着そうな衣装。
小原さんから聞いた限りだと、身体のライン浮き出るボディスーツ+仮面らしいですよ?
『レインボーキャット』自体のスタイルも凄くいいらしいですし、生半可なのだと逆にコケますよ?」
「……あら、『レインボーキャット』のスタイルがいいのなら、里緒に着させればいいじゃありませんか♪」
その涼人の突っ込みに、にっこりと笑って返した一美。
思わず一瞬固まった涼人には構わず、一美は考え込むように頬に人差し指を当てた。
「うーん、ボディスーツだとちょっとインパクトが……、改造、した方がいいですわね♪」
そう楽しそうに言う一美を見て、クラス中が一斉に里緒に同情の溜息を吐いた。
一方、病院では。
「あやめちゃーん!」
「って、待った! あやめちゃんはまだ入院中なんだから!」
そう叫んで、あやめに飛び付こうとする女性を、男性が慌てて押さえる。
そのままどたばたと絡み合う2人を見て、里緒は冷汗を流しながらあやめに囁いた。
「……お母さん。武巳さんと稜子さんって、いつもこうだったの……?」
「え、えっと……」
そう、今もどたばた絡み合っているこの2人が、佐倉武巳と佐倉稜子だった。
「もう、離してよ武巳!」
「だーかーら、入院患者に飛び付くのはやめろって!」
そう、あんたら結婚何年目だと突っ込みたくなるような痴話喧嘩を続ける武巳と稜子。
と、稜子が武巳の拘束から逃れ、あやめにしがみついた。
「あやめちゃーん!」
「お久し、振りです、稜子さん」
そうあやめが言うと、稜子はあやめにしがみ付いたまま泣き出す。
その稜子の行動にわたわたと慌てるあやめの頭を、武巳が撫でた。
「こう言う時にどう言えばいいか、おれには良く分かんねーんだけどさ……、
……おかえり、あやめちゃん」
「……はい……!」
そう武巳に言われ、あやめはぽろぽろ涙を流す。
それに貰い泣きするように、里緒も涙ぐんで。
……そのシーンをドア越しに聞いていた小原は、溜息を吐いた。
「(……黙っておくつもり、なんだろうね。夏目 あやめさんは……)」
そう考えて、小原はもう一度溜息を吐く。
「(しかし……まさか高原先輩が俺達にも内緒で『組織』を追ってたなんてな……)」
そこまで考えて、小原は思い出す。あやめの、証言を……。
「私達は、高校生からの親友だった人の頼みで、その人のお手伝いをしていたんです。
……高原、恭一さん。彼の、お手伝いを……」
そう言ったあやめに、小原は飛び上がりかけるが、何とか自分を押さえる。
「た、高原さん、ですね。……それで?」
「そのお手伝いは、ある『組織』を壊滅させる事でした。
私達の、高校生時代からのもう2人の友人……、佐倉武巳さんと稜子さんを守るために」
「守る……ですか?」
そう聞いた小原に、あやめは頷く。
「武巳さんと稜子さんは、ある企業集団のトップなんですけれど、それを暗殺しようとしたらしくて……」
その言葉に、小原は驚くと同時に納得した。
自分からはほとんど動かないが、金さえ積まれれば動く。それが『組織』だったから。
「成る程……、その佐倉夫妻を守るために、『組織』を壊滅させようとして……、返り討ちに?」
「……はい」
そう答えた後、あやめは一瞬だけ目を伏せ、小原に向き直る。
「……あの、この話、武巳さんと稜子さんには伝えないでいただけませんか?
お2人とも、優しいですから……」
「負い目に、したくないと?」
そう小原が聞くと、あやめは頷いた……。
「(……本当に、水臭いですよ高原先輩。何で、俺達に話してくれなかったんですか?)」
そう、小原は心の中で恭一に問い掛ける。
「(おまけに、勝手に死んじゃって。これじゃあ文句も言えないじゃないですか)」
そこまで考えて、小原は目を閉じる。
脳裏に浮かんだのは、7年前の、あの映像。
お互いを庇い合うように折り重なって倒れた、血まみれの恭一と亜紀の姿。
そして、押入れの中で見つかった、戸の隙間から二人を覗き込んだまま動かない涼人の姿。
「(あれから、涼人君は海外留学して、一心不乱に、警官を目指して)」
2年前に涼人から送られて来た1通の小包。
そこには、ケンブリッジ大学の卒業証書のコピーと、ICPOに入局したと書かれた手紙が入っていて。
「(でも、そのために涼人君は全てを捨て去った。
十代の少年が体験すべき青春を、過ごす事を拒否した。
ただ、『組織』に復讐するためだけに、『組織』を壊滅させるために)」
そして、『組織』は動いた。10年前と同じ苦境に立たされて。
10年前と同じように『組織』を腐らせる毒草、その芽を摘み取るために。
「(けれど、10年前とは違う。10年前は、たった4人だった。
けれど、今は涼人君だけじゃない、俺もいる、大山警部もいる、警察全てが涼人君に付いてる。
それに、夏目 あやめさん。彼女の証言もある。『組織』を知ってる人の証言もある)」
そこまで考えて、小原は天井を見上げ、独りごちる。
「……大丈夫、もう少しですよ、高原先輩。もう少しで先輩の敵は取れます。
でも、敵を取るのは俺じゃありません。
高原涼人が、先輩の息子が、先輩の敵を、取ります」
これで終わりです。
一美が言っている改造コスチュームはdでもない物にする予定です。
詳しくは言いませんが、とりあえずエロいのはガチですw
それと、涼人はまだ気付いてはいませんよ。
あくまで「もしかしたらそうかも知れない」レベルですから。
ケンブリッジ大にしたのは、ICPO本部が確かパリにあったはずだよな?
→って事は大学はヨーロッパの頭良い所出した方が自然だよな
→ヨーロッパの大学ケンブリッジしか知らねえよorz
……と言う流れですw
>>353 GJ
前回の怒涛の展開から良い感じに箸休めになりそうな学園祭
エロコスにも期待です
ボディスーツがインパクト不足ならスク水しかあるまいて
アクアメロディを描き起こしてくれる絵師はいずこに…
GJー。
一体どの方向で攻めて来るのかwktkしながら待つとしようw
面積で来るのかデザインで来るのか、厚さや素材で来るのか…w
>>318 更新待ってたぜ、GJ!
漢のキャラ立ちまくりだな、何でこの人組織なんかに所属してるんだろ…
ただ、あえていうならこの漢が相手だとイマイチエロを感じないのが問題だなw
エロよりも先に感動と笑いを覚えてしまうぜ。
>>344 このスレ初の正統派和姦(だよね?)キタコレ。
恋人の能力はこれまた予想通りだったけど、この展開は予想してなかったわ。
しかし残る三枚は相変わらずサッパリ能力がわからん…
>>353 GJ!
つか前回からも思ったが、結構迂闊だなレインボーキャットw
プレゼント身に着けてたり追ってる本人の前で仮装とかどれだけバレない自信があるんだ。
>>354 ……ふーん……、箸休め、ですか……
>>355 それは次回のお楽しみ、と言う事でw
まあ1つ以外はやりますけどw
>>356 ちょっと待ってください。
確かにプレゼントはレインボーキャットの迂闊ですが、仮装は一美が仕掛けて、里緒は全く感知してないんですがw
一応、原型とどめないぐらいに改造するのでバレる訳が無い、と一美は考えてます。
>>357 あ、レインボーキャットってのは里緒だけを指したわけではなく
一美を含めた意味でということです。
ややこしい書き方で申し訳ない。
つか
>>354さんへの返答が良い意味で不吉すぎるwww
>>357 転に移る前にちょっと一拍…と想像していたのですが
#夜暗戦前の美音のドキドキ帰宅ミッション!みたいな
ハプニングや策士一美を前に
理緒には学園祭すらも安らぎの場にはならなかったりする…のか…
wktkしつつ全裸で待機しときます
360 :
AM:2008/02/03(日) 14:39:32 ID:MwhSqqZY
やったー、PTフィズの更新が着てる!
今回も中身ギッシリ趣味マッチングと俺ウハウハ。
凄く…次回が気になります。
アンバームーンやキャットシーフも良いペースだし、こちらも負けずに第八話投下開始。
「起きて、起きてよルナさん!」
「ん…サキ、さん…?」
「カグヤさんの居場所がわかったんだよっ!」
「……ええっ!?」
身体にかけられたタオルケットを剥ぎ取りながらルナは慌てて身を起こした。
顔を見合わせたサキの瞳に嘘や冗談の色はない。
ルナは急いで身だしなみを整えるとサキを引き連れて隣の部屋へと向かう。
そこには、冷静そのものといった表情で二人を待つメイドの姿があった。
「アルテ、カグヤさんは…っ」
「落ち着いてください、お嬢様。まずは、このモニターをご覧ください」
アルテの手元のリモコンのスイッチが押されるとモニターに光が点る。
スクリーンの中央部では赤い光点が点滅している。
トライアングルムーンそれぞれのバイザーマスクには発信機としての役目もあった。
つまり、地図の中で点滅している赤い光点はカグヤがいる場所ということになる。
「ミリオンライトビル…?」
思わぬ場所の名前にルナは首を傾げた。
そこはつい先日自分が招待された場所だ。
確か今日の今頃も先日と同規模のパーティーが行われているはず。
「まさかここが奴らの本拠地ってことはない……よね?」
「はい、それはないでしょうね。そうなると、これはほぼ間違いなく」
「罠、ですね」
細い眉を眉間に寄せながらルナはスクリーンを睨み付ける。
昨夜、やっとの思いで帰還したルナとサキは一人残されたカグヤの身を案じていた。
だが、待てど暮らせどカグヤからの連絡はなく、頼りにしていた発信機の反応もない。
本来ならば夜通しで仲間の帰還を待つつもりの二人だったのだが
休めるときに休んでおかないと身体が持たないというアルテの言に渋々と睡眠を取っていたのだ。
そして翌日の現在、急に現れた発信機の反応が目の前にはある。
「十中八九そうでしょう。先程調べてみたのですが、ミリオンライトビルは数時間前から人の出入りがなくなっています」
「それって…中にいた人たちはブラックサンに捕まってるってこと?」
「状況的に見て、ほぼ間違いないでしょう」
ブレイドはおろか、多人数の人質がとられている可能性が高い状況の場所。
しかしだからといって仲間を見捨てるわけにもいかない。
ルナとサキはお互いに顔を見合わせ、こくりと頷き合う。
アルテはそんな二人の様子に口を挟むことなく、ただ情報を集めることに力を注いでいた。
主人たちの危険を少しでも減らす、それが彼女の役目なのだから。
(うっ……ん…)
少しだけ開いた瞼の下から入ってくる光の感覚にカグヤは僅かに身じろぎをする。
次の感じたのは身体を包み込むようなひんやりとした寒さだった。
暖房が入っているのか、風邪を引いてしまうというほどの温度ではないが、どこか肌寒い。
まるでいつもあるべきものが自分を守ってくれていないような、そんな頼りない感覚による寒さ。
(……ここ、は?)
徐々に意識が覚醒していた女剣士はゆっくりと視線をさまよわせる。
そこは物があまり置かれていない広い部屋だった。
電気はついているらしく、視界は十分確保されている。
カグヤはとりあえず状況を確認するべく手を動かそうとし
「な、に…?」
ピクリとも動かない右手をいぶかしむ。
先程よりも力をこめてみるも、やはり全く動かない。
それは左手も同じで、力を込めるたびに手首に食い込んでくる金属の感触がやけにはっきりと感じ取れる。
「な……!?」
ここに至って少女の目がハッキリと覚めた。
ぼんやりとしていた瞳はぱっちりと大きく見開かる。
両手だけではない、両足もまるで動かない。
首から上は自由に動く。
だが、それがわかったところで四肢が動かせない状況に変わりはない。
カグヤは慌てて状況を把握しようとし、そして絶句した。
「こ、これは…っ」
少女は椅子の上に座らされていた。
座らされている、といってもその格好はかなり珍妙だ。
両手首は頭の後ろの部分に括り付けられ、足は体育座りのように折り曲げられて縛り付けられている。
椅子のデザインも奇妙な造りをしていた。
ゆったりとした傾斜のある背もたれに黒い革でできた表面と四肢を拘束する銀色の金属の拘束輪。
下は普通の椅子にはありえない可動式の足受けが備え付けられ、カグヤの両足を拘束している。
椅子、というよりも女性用の内診台といったところだろうか。
「よう、お目覚めかい?」
「貴様はっ!」
その男の声が聞こえた瞬間、動揺に歪んでいた少女の表情が怒りへと変わる。
後ろから覗き込むように顔を見せたのは気絶する前に戦っていた敵――ジャックだった。
「おお、威勢がいいねぇ! んな格好だってのに勇ましいこった」
「何…あっ、ああっ!?」
ジャックの指摘に改めて自分を格好を見下ろしたカグヤが悲鳴を上げる。
少女の身体は一糸も纏わぬ裸だった。
下半身、上半身、そして素顔を隠す仮面も全て取り払われた生まれたままの姿。
幸い、体勢はピッタリと両膝を閉じた体育座りなので胸も股間も見えはしない。
しかし、横から見れば膝からこぼれる乳肉がはっきりと見える。
乳首は太ももに押し付けられるようにして隠れているためその姿は見えない。
だが、柔らかな肉同士を押し付け合い、むにゅりと変形した巨乳と太ももは見るものに興奮を抱かせずにはいられない。
なまじ全てが見えないことと、折りたたまれるように縮こまらされた身体が逆に豊満な肉体を誇示している。
それが今のカグヤの状態だった。
「ど、どういうつもりだ!?」
「どういうも何も、昨日のことを忘れちまったのか? お前さんは俺にひん剥かれたんだよ」
「あ…」
思い出す。
そうだ、自分は目の前の男に言いように弄られたのだ。
ジャケットを、ズボンを、そして最後には仮面や下着を切り裂かれ、みっともない声を上げた。
途端に怒りと羞恥心が湧き上がってくる。
だが、カグヤは同時に敗北感を覚えていた。
過程はどうであれ、自分が負けたという事実は変わらない。
疲労があったとはいえ、一対一の勝負でだ。
しかも相手はもっとも自分が嫌うタイプの下種な男。
情けなさとやるせなさ、そして屈辱感が女剣士の身体を震わせる。
「ひひっ、思い出したかい? よかったぜぇ、あの時のアンタの表情は! オッパイを見られて恥ずかしそうに染まった頬!
アソコを必死に隠そうとする泣き顔! どれも最高だった!」
「だ、黙れっ!!」
男の卑猥な感想にカグヤの怒りが爆発する。
だが、指一本動かすこともできず、ただ恥じらい混じりに顔を赤らめるだけの少女に迫力などない。
ジャックはそんな女剣士の様子にニヤニヤとした表情を崩さず、背後から一本の剣を取り出した。
「さぁて」
「…っ!? それは、私の剣…! か、返せっ! それはお前のような男が持っていいものではない!」
「ひひっ、いい剣だなぁこれは。逆刃ってのはちょっといただけないが、業物ってのはわかるぜ」
「くっ、その剣をはな……っ!? な、何をしている!?」
愛刀を手にしている男に吼える様に罵声を浴びせるカグヤ。
だが次の瞬間、ジャックがとった行動に少女は目を見開いた。
なんとジャックは、剣をゆっくりとカグヤの太ももの間に差し込んできたのだ。
「動くなよ…動いたら斬れちまうかもしれないぜ?」
「なっ何を…はうっ…」
ピッタリと閉じあわされた柔らかな肌の間を刃物が通り抜ける。
そのヒヤリとした感触にカグヤは思わず身を竦ませて足を震わせる。
ジャックは刃を縦にゆっくりと差し入れているため、肌が切れるということはないだろう。
だが、刃物が無防備な肌の間を潜り抜けていくという感触は少女に本能的な恐怖を与えるには十分だった。
ドスッ。
やがて、床に剣先が突き刺さるのを確認すると、ジャックは剣から手を放した。
「よし、これで最初の準備は終わりっと」
「準備だと…何を言っている!」
「そうギャーギャー騒ぐなって。すぐにわかるさ…すぐにな」
男の口調に不吉なものを感じるカグヤだが、拘束された状態ではどうしようもない。
瞬間、ジャックの姿が視界から消える。
背後に回ったのだろう、背中側からは何かを取り出すゴソゴソとした音が聞こえてきた。
(今度は何をするつもりだ…)
さっぱりわけがわからず、カグヤは疑問符を浮かべることしかできない。
次の刹那、頭の上に何かを乗せられる感覚を女剣士は知覚した。
ジャックは少女の頭を掴むようにして固定すると、乗せていた何かをかぶせていく。
「っ! 今度はなんだ!」
「騒ぐなって言ってるだろ。それにこれはお前さんのためでもあるんだぜ?」
「私のため…? どういうことだ!」
「ひっひ! 前を見てみればわかるぜ!」
「前……なっ、こ、これはっ…!?」
男に従い、前を向いたカグヤの驚愕の悲鳴が部屋に響き渡った。
そこにあったのは一台のテレビカメラだった。
いつの間にか置かれていたそれは無言でレンズをこちらに向けている。
その周りにはライトなどのいくつかの機材が置かれ、何人かの黒服が忙しそうに動き回っていた。
「どうやら気がついていなかったようだなぁ? ま、見ればわかると思うが、コイツはカメラさ。
そして今から始まるのは姉ちゃんのエロエロ撮影会だ!」
「な、なんだって…」
嬉しそうに語る男の言葉にカグヤは愕然とするしかなかった。
ジャックの言い方からして自分の淫らな映像を撮るつもりなのは間違いない。
しかし撮影会ということは、映したものを公開するということだ。
一体どこにその映像を映すつもりなのか。
想像を巡らせるカグヤに楽しそうなジャックの声が降りかかる。
「おっといい忘れていたな、ここはミリオンビルの中の一室さ」
「何…!?」
「知っての通り、このビルの外には巨大スクリーンが取り付けられている。いつもはニュースやらを映してるあれさ。
そしてこのカメラに映る映像はそこを電波ジャックして…ひひ、もうわかったよな?」
「な…何だと…っ」
「だからこれで顔を隠してやろうっていうのさ。まあ姉ちゃんが素顔で出演したいっていうんなら構わんが?」
その言葉にカグヤはぐっと唇を噛むことしかできない。
ミリオンビルは最も人通りの多い都市のど真ん中に立てられている建物だ。
今が何時かはわからないが、外に人がいるのは間違いない。
そんな中、裸で拘束されたままの素顔の映像が映し出されればカグヤの人生は終わったも同然。
二度と日のあたる場所を歩くことはできないだろう。
「ま、ちょっと小さいが我慢してくれや。なんせこれはお前のお友達のパンツだからな」
「っな…」
男の言葉にカグヤは目を見開く。
そして昨夜、ウィッチィがパンツを脱がされていた記憶が蘇ってくる。
今自分にかぶせられようとしているのはまさかそれだというのか。
下着で顔を隠されるなど屈辱にもほどがある。
しかもそれが仲間の下着だとは…
怒りから抗議をするカグヤだが、では素顔のままでいいんだな? と問われると返す言葉がない。
やがて、ふちの部分が鼻に引っ掛けられる。
感触からして恐らくは逆さまに下着を被らされるような格好になっているのだろう。
足を通す部分からは目が覗いているが、とりあえず素顔がバレる心配はなさそうだ。
カグヤはルナに心中で謝罪しつつ、自分のふがいなさに落ち込む。
「よし、後はマイクをつけてっと」
最後にジャックは超小型のマイクを口元に設置する。
これで微かな声ですら拾われてしまうことになり、女剣士は吐息すら迂闊に漏らせなくなった。
「これで下準備は終わりだな。んじゃ始めるか」
ジャックの合図と共に部屋の電気が消え、闇一色に染まる。
すぐさまライトの明かりがつき、カグヤだけを照らした。
闇の向こうからは無機質な透明の瞳が見えるだけ。
カグヤは唾を飲み込みながらも覚悟を決めた。
これから自分は辱めにあうのだろう。
しかし剣士として、怪盗トライアングルムーンとして情けない姿だけは晒すまい、と。
「それじゃあ、ポチッとな!」
そんな少女の決意を嘲笑うかのように、ジャックの手が何かのスイッチを押す。
刹那、機械の稼動音がカグヤの耳に届く。
「な、なんだ…足が……うああっ…」
ウイイーン、と機械質な音を立てて両の足受けが外へと開きだす。
カグヤは抵抗するべく必死に足へと力を込める。
しかし機械の力に勝てるはずもなく、徐々に、だが確実に足は開いていく。
硬く閉じられていた膝が拳大の大きさに開き、胸の谷間と股間の茂みが見え始める。
女剣士は顔を真っ赤にして足を震わせるが、僅かに開脚が遅れるだけ。
男たちの、そしてカメラの視線が容赦なく明らかにされていく少女の中心を捉えていく。
「やっ、やめ…見るな…っ」
毅然と言い放ったつもりだった。
だがその声は女々しく震え、まるでか弱い小動物を髣髴させるものでしかない。
眼光こそかろうじて強い意志の光を保っているものの、既に男たちにとって少女は生贄の雌にすぎなかった。
「ほ〜れ見えちまうぞ〜」
「く、くそっ…うああっ……あっ!」
抵抗むなしく、ついにカグヤの両足は大きく開脚を果たしてしまう。
百五十度ほどに開かれた両足の間からは少女の裸体が惜しげもなく公開される。
太ももの圧迫から解き放たれた乳房がたぷんっと大きく弾む。
贅肉のまるでない腹筋はうっすらと汗をまとわせながら力みにぷるぷると震えている。
その下にある女性自身はピッタリとその入り口を閉じているが、外気にさらされ、怯える様にわななく。
背もたれに背を預け、全身が後ろに傾いているため、お尻の割れ目にある最も恥ずかしい穴がチラチラと覗いていた。
ただ、突き刺された愛刀がその身を張って股間を正面からの視線。
つまりカメラの視線から遮っているのがせめてもの救いだった。
「おおーご開帳!」
「あ、は、ああああっ!」
「ひひひっ、良い悲鳴だ! それにこの身体! 昨日は服を切り裂くのに夢中でよく見てなかったが、ものすげえじゃねえか!」
「いっ、嫌だ。見るな、見るんじゃない!」
いかに覚悟をしようとも、潔癖な乙女にとって裸を見られるという現実は耐え切れるものではなかった。
少しでも男たちの視線から逃れようと右へ左へと身体をよじる。
しかし、拘束台に縛り付けられた状態では精々台をギシギシと鳴らすことしかできない。
むしろ暴れることによってたわわに実っている二つの果実がぶるんぶるんと揺れ動き、男たちの目を楽しませている始末だった。
「いいぜいいぜ! いきなり良い映像を撮らせてくれやがる。外の奴等も今頃は姉ちゃんの裸に生唾ごっくんしてるだろうぜ!」
「な…ぁ…!?」
ジャックの言葉にカグヤは今の自分の格好がこの場の人間以外にも晒されていることを思い出さされる。
男の言が正しければ、自分の身体はあますところなく通りすがりの一般人に見られているかもしれないのだ。
顔こそ仲間の下着によってなんとか隠されてはいるものの、一人の女性としてこれほどの恥はない。
(お、落ち着け…たかが裸を見られたくらいで動揺してどうする…! ここでみっともない態度をとればこいつらの思う壺だ…!)
弱気を見せるわけにはいかない。
その一念だけでカグヤは羞恥心による震えを強引に押しとどめる。
だが、それが虚勢であることは見るものには明らかだった。
ジャックが鈍く輝く円月刀を近づけるのを見て、女剣士の瞳に怯えがはっきりと宿る。
「そんなにビビらなくても傷をつけたりはしねえよ。もっとも、あんまり動くようだとわからんけどなぁ?」
「くぅ…!」
「さぁて、まずはそのでっかい乳を弄るとするか」
刃物の腹の部分が少女の下乳へと触れる。
ジャックはそのまま乳房を持ち上げるとたぷたぷと豊かな乳肉を上下に弾ませていく。
男の手が上下するたびにゴムマリのようなバストがお手玉のように空へと放り出されては重力によって落下する。
「や、やめろっ…! 人の身体で、遊ぶな…っ」
「何言ってるんだ。こんな見事な乳を弄るなってほうが無理な相談だぜ!」
刃物使いの男は刃を滑らせると横乳、上乳と少女の巨乳を満遍なく弄っていく。
だが、金属の冷たい感触は決してその頂点には触れようとはしなかった。
背筋に走る身体を弄り回されるおぞましさ。
刃物によって女性の象徴に触れられる恐怖。
そして胸の奥に無意識のレベルで微かに灯るむずがゆいようなもどかしさ。
カグヤはふるふると頭を振ってそれらを追い出そうとする。
「ひひっ、乳首、触ってほしいか?」
「なっ…バカなことを言うな!」
「我慢するなって。そうかそうか、そんなに触ってほしいか。それなら仕方ないな、リクエストに応えないとな」
「だ、だから違うと……んぁっ」
ぴくんっ!
かすめるようにして桜色のつぼみに触れた刃物の感触にカグヤはおとがいを上げる。
と同時に集音マイクが少女の微細な喘ぎを拾う。
「お、そんなに気持ちよかったのか?」
「ち、違う。そんなことはな……うっ、くっ…んはっ…」
刃が胸の頂点が交差するたびに女剣士の唇から切なそうな声がこぼれ出る。
普通ならば聞こえない程度の大きさの声だが、高性能の集音マイクはそれを逃さない。
鈴の鳴るような少女の喘ぎがマイクによって増幅され、男たちの耳へと鮮明に届いていく。
「ひっひひ…お? 見ろよ、姉ちゃんの乳首がおっ勃ってきたぜ!」
「なっ…何をバカなことを……あっ、嘘だ、そんな…っ!?」
男の嬲りなどに自分の身体が反応するはずがない。
そう一笑して胸を見下ろしたカグヤの目がこれ以上ないほど見開かれた。
刃先でちょんちょんと弄られている乳首は、明らかにその大きさと姿を変え始めていたのだ。
巨大な肉の大地に埋もれていたはずの実はムクムクと育ち、誇らしげに上向いてその存在を主張していくのが見て取れる。
少女は自分の肉体の思わぬ裏切りに呆然とするほかなかった。
だが、それも少しの間のことでしかない。
数瞬後、抑えようのない恥辱が女剣士を襲う。
男の、カメラの前で肌を晒しているだけでも屈辱なのだ。
だというのに、この上勃起した乳首を彼らに披露するなど恥にもほどがある。
例えそれが生理的反応による仕方のないものであるとしても何の慰めにもならない。
男の手によって感じさせられた。
その事実だけがカグヤの心の刃にヒビを刻んでいく。
「ひひっ、それじゃあそろそろ皆お待ちかねの部分に行くとするかね」
「な、何?」
動揺からジャックの言葉を聞き逃したカグヤは不安気な声を上げる。
だが刃物使いの男は容赦なく少女に追い討ちをかけるべく動き出した。
片手は乳首を弄るままに、もう片方の手を女剣士の前に刺さっている剣へと伸ばしていく。
「っ!? 何を…何をする気だ!」
「なぁに、これを使ってお前さんのアソコを弄ってやろうって思ってるだけさ」
「な! なん、だと…!?」
ジャックの発案にカグヤは心臓が止まったかのような衝撃を受ける。
今まで数々の戦場を共に潜り抜けてきた愛用の武器。
その自身の片割れとも言うべき剣で忌むべき女としての部分を弄られる。
その残酷にして外道の所業に対し、女剣士は怒気を露わに叫んだ。
「ふ…ふざけるな! そんな…そんなこと、許さないっ!」
「そんな興奮するなって。どうせ夜な夜なやってんだろ? これを使ったオナニーとかよ」
「っっっ!! 私を…侮辱するかっ!!」
「そんなあからさまな反応だとバレバレだぜ? いいから落ち着けって、そんな暴れるとアソコが丸見えになるぜ?」
「うっ…!?」
男の注意にハッとなったカグヤは咄嗟に怒りによって突き動かされた身体の動きを止めた。
いくら隠されているといっても剣の幅は僅か数センチでしかない。
かろうじて縦筋が隠れているという程度で、実際のところは防壁の役割をほとんど果たしていないのだ。
それゆえに少しでも腰が動けば、それだけで足の付け根が丸見えになってしまう。
後ろから覗き込んでいるジャックには既に見えてしまっているだろう。
だが、カメラに、ひいてはこの映像を見ているであろう赤の他人にその部分を見られるわけにはいかない。
マグマのように煮立っていた激情が羞恥心によって沈静化されていくことにカグヤは歯噛みをすることしかできなかった。
経緯はどうあれ一旦落ち着いた心も、床から抜きさられた愛刀によって再びざわめきを取り戻すことになる。
つい昨日までは己の手に握られていたはずの剣が、他人の手によって握られ股間に押し付けられていく。
その現実にカグヤの心は狼狽するしかない。
ヒヤリとした硬い感触が、もっとも敏感な部分に押し当てられる。
腹の部分を当てられているとはいえ、下手に動けば女性器を傷つけられてしまうかもしれない。
その女性としての本能的な恐怖がカグヤの身体を金縛りにかける。
「う、ううっ…」
「そうそう、大人しくしていればちゃんと気持ちよくしてやるって」
しゅっ…しゅっ…
男の手に連動して少女の愛刀が主人の性器をこする。
時折、割れ目の上にある黒い茂みが刃に触れてかさっと揺れ動く。
なめらかな金属の感覚にカグヤはくすぐったさを感じつつも、ぎゅっと目を閉じて無反応を続けた。
剣士としての誇りにかけて、何があってもこの行為にだけは反応するわけにはいかない。
その頑なな意思が肉体にも通じたのか、カグヤは一分を超えても吐息一つ漏らすことなく責めに耐え続ける。
「ほー、頑張るねぇ」
「これ以上やっても無駄だ。私は決して貴様らには屈しない…!」
「感心感心、この状況でそこまでいえるのは虚勢といえどもすげえな。ふむ、こりゃどうしたもんかね」
弱った、とばかりに溜息をつくジャックにカグヤは勝ち誇った表情を向ける。
こうして耐え続けてさえいればきっと仲間たちが助けに来てくれるに違いない。
そうなれば、この男たちも一網打尽だ。
一時は折れかけていた心が持ち直し、女剣士の強靭な意思がキッとカメラを睨み付ける。
ほぼフルヌードで足をおっぴろげているにもかかわらず、諦めを浮かべないその姿は美しかった。
色欲を浮かべて撮影していた男たちも思わずその眼光にひるみ、我知らず冷や汗を浮かべる。
(やれやれ、調子に乗らせちまったなぁ)
しかしジャックはそれを見ても慌てることはなかった。
ここまでは想定の範囲内でしかない。
責めを耐える理性は確かに驚嘆に値する。
だが、ここまでは小手調べにしか過ぎない。
恥辱の撮影はここからが本番なのだから。
(ひひっ、余裕をかましてるようだが、コイツも耐えられるかな?)
ジャックはポケットの中のソレを握り締め、ニヤリと笑う。
この気高い女が快楽に狂う姿はどんなものなのだろうか。
そしてそれを耐えようとする苦悶の表情はどんなに自分を興奮させてくれるのか。
刃物使いの男は気丈に恥辱を耐え続ける少女を見下ろし、ゆっくりと手を引き抜いた。
370 :
AM:2008/02/03(日) 15:02:06 ID:MwhSqqZY
気がつけば容量が400超えてるし。
ホントつい一ヶ月前までは考えられなかった状態だ…
そして作中時間で数分の出来事を一話丸々使ってまだ次回に続くってあたりが俺クオリティ。
リアルタイムGJ!
…でも、どうせなら1レス分だけでもいいから外の様子も描写して欲しかったw
372 :
102:2008/02/03(日) 15:46:51 ID:hM8pgHe6
リアルタイムGJ!
そして集音マイク……見事にかぶったぁー(泣)
GJ
拘束+開脚+刃物
ここから導かれる公式は…
_ ∩
( ゚∀゚)彡 剃毛!剃毛!
⊂彡
豆をぶつけられる怪盗
>374
豆に豆をぶつけるんですね…
しかし…このスレの濃厚さは凄いわ。
376 :
102:2008/02/03(日) 23:56:21 ID:Y7iW7diA
どうも、執筆中の集音マイクネタがトライアングルムーンと見事に
タイミングカブって頭を抱えているアンバームーンの作者です。
気晴らしに短編でスレの濃厚さに拍車をかけてみます。
>>374 こういうことですか?
***********************************
「ふふ……とうとう捕まえたぞ怪盗ローズマリーめ」
「くぅッ、こんなことをして許されると思っているの?」
「泥棒相手に許されるも何もないだろう。それとも訴えてみるかね?
もっともその格好ではそれも不可能だがな」
ローズマリーと呼ばれた怪盗は、壁に手足を拘束され磔にされていた。
その顔はマスクで隠されてはいるものの、美少女であろうことがわかる。
年の頃は十代後半ぐらいだろうが、体に密着したレオタードという格好が
十分に発達した体型を露わにし、なんともいえない色気を放っていた。
「は、離しなさいッ! 何をするつもりなの?」
「人の家に盗みに入った犯罪者には、お仕置きをしないといけないだろう?
さて、どうしてやろうか……そうだ、今日は節分だったな」
「……はぁ?」
地下室で磔にされている状況だというのに、怪盗は気の抜けた声をあげた。
自らが制裁を受けるという脅威と、節分という行事が結びつかなかったのだ。
「犯罪者は恐るべき存在、つまり鬼だ。
我々善良な民衆が鬼に対抗するためには必要なものがあるということだよ」
パチンと男が指を鳴らすと、部下と思われる黒服が数人怪盗に群がり、
身に着けているレオタードを力ずくで脱がし始めた。
「い、いやぁッ!! 何をするのよこの変態ッ!!
頭おかしいんじゃないの? ちょっと、やめてよ、やめてったら!!」
必死の抵抗も空しく、レオタードは男達の手によってボロボロに破られ、
布の切れ端が無残にも垂れ下がっている以外はほとんど下着姿という格好を
ローズマリーは男達に晒してしまうこととなった。
「い、いやぁ……こんな格好にして何をするの……?」
普段隠されている部分を手で覆い隠そうと暴れるローズマリーであったが、
その両手の拘束は固く、かえって艶かしい下着姿を男達に晒すだけだった。
男の手には枡に入った大豆と、大豆のお買い得パックに付録としてついていた
安っぽい紙製の鬼のお面が握られていた。
男はツカツカと美少女怪盗に近づき、顔を背ける怪盗の頭に
鬼のお面をそっと乗せて輪ゴムで固定した。
「これでお前は鬼、というわけだ。人々から忌み嫌われる鬼、だ」
「わ、私が……おに……?」
苦しむ人々のために義賊として懸命に働いてきたはずだった。
その私が、人々から忌み嫌われる鬼にされてしまっている……?
377 :
102:2008/02/04(月) 00:00:22 ID:L8XJ5+/M
(……何を考えているの、私! 外道の言葉に振り回されてはダメ!)
ローズマリーは頭を振り浮かんだ考えを打ち消すと、目の前の男を強く睨む。
だが、下着姿で磔にされているという格好で睨んだとしても、
一層エロティシズムを喚起させるだけだということを彼女は知らない。
男は舌なめずりをすると、枡の大豆を手で掬い、怪盗に向かって投げつけた。
「鬼はぁー外ぉッ!」
「い、痛ッ!! 痛い……痛いよ……」
大豆とはいえ、大の男が至近距離から思い切り投げつけたのだ。
しかも、それを受け止める美少女怪盗は素肌の大部分を晒している。
柔肌に、容赦なく大豆の粒が突き刺さった。
「もういっちょいくぞ、鬼はぁー外ぉッ!!」
「い、痛いッ! や、やめて……もう、やめて、お願い……」
美少女怪盗の弱々しい懇願を歯牙にもかけない様子で、男は繰り返し
大豆をその裸体に投げつけ、ぶつけていく。
その度にローズマリーの柔肌は朱に染まり、磔にされているにもかかわらず
なんとかその痛みから逃れようと四肢が艶かしく動く。
「これぐらいじゃ鬼は退散するまい。おいっ」
男の合図とともに、再び部下が嫌々をする怪盗に群がる。
体を暴れさせて懸命に抵抗するローズマリーだったが、磔にされていては
満足に抗うこともできず胸と股間を覆う下着を取り払われてしまった。
全裸にブーツというフェティシズム溢れる姿で磔にされているその姿に、
取り巻く男達すべてが生唾を飲み込まずにはいられなかった。
「お前達も鬼を払ってやるんだ。それっ」
「鬼はぁー外ぉッ!」「鬼はぁー外ぉッ!」「鬼はぁー外ぉッ!」
周囲の男が口々に叫び、一斉にその手に握られた大豆を
涙目の美少女怪盗に向かって投げつけた。
「い、痛ッ! 痛い痛いッ! もう許してよぉ……」
今にも泣き出しそうな表情を浮かべながら身をよじるローズマリー。
口をついて出る言葉には怪盗としての矜持はもはやなく、
苦痛から逃れようとする懇願でしかなかった。
と、男がすいっとローズマリーに近づき頬に手を添えた。
怪盗はその行動にビクッと反応し、ふるふると体を震わせて潤んだ目を向ける。
「お前ら、やりすぎだぞ。まったく……可哀想に」
予想外の優しい言葉にきょとんとする美少女怪盗。
ひょっとしてもう許してくれるのだろうか。
だが、その期待は男の次の言葉によってあっさりと裏切られた。
「鬼の体に豆がへばりついてしまったじゃないか。取ってあげないとな」
そう言うが早いか、胸の突起を指でつまみ、引っ張り、弾きはじめた。
ギリギリと加えられる強い刺激に、ローズマリーは苦悶の声をあげる。
「はうぅッ!? あはぁぁ、そ、そこは……ま、豆じゃ……あんんぅ!!」
378 :
102:2008/02/04(月) 00:01:51 ID:Y7iW7diA
取り巻きの男達もリーダー格の行動に追従し、何本ものゴツい手が
美少女怪盗のふくよかな胸に容赦なく伸びる。
「ふぅぅ……あ、あふぅぅッ……つ、強くつままないでぇッ!!」
ローズマリーの悲鳴を心地よいクラシックを聴くかのように楽しんだ
リーダー格の男は、さらに攻撃対象を下に向けていった。
「おや、こんなところにも豆があるじゃないか。可哀想に、
あんまり強くぶつけられたもんだからめり込んでしまったんだな」
「あっくぅぅぅ……そ、そこはだめぇッ……お、お願いですからぁ……
ひぎいぃぃッ!! いっひぃぃ……あっああぁぁ……いっひひぃぃ!!」
ぷしゃあぁぁぁーッ!!
哀れ、男達が凝視する中、美少女怪盗の股間からは尿とも愛液とも
つかぬ液体がほとばしり、床を濡らしていく。
「そ、そんなぁ……わ、私……怪盗なのに……お、おもらしなんてぇ……」
「まったく、はしたない鬼だなぁ。豆をぶつけられて失禁か」
「いや、感じてたんじゃねぇの? ドMの鬼だったんだろう」
あまりの恥辱に自我が崩壊しそうになっているローズマリーに、
容赦なく周囲の男達からは口汚く罵る言葉がかけられる。
怪盗の目はもはや虚ろで、自分が汚してしまった床を見つめていた。
「そろそろ鬼にもご褒美をあげないと駄目だろう」
「ーーッ!? な、何をする……つもりなの……もう、許して……」
「鬼が大好きな物といったら決まっているだろう、金棒だよ、金棒」
「……い、いやぁぁーーーーッ!!」
磔から解き放たれた怪盗ローズマリーは、ダメージのせいで床に倒れ込んでしまう。
その傍で、カチャカチャとズボンを下ろし始めるリーダー格の男。
逃げようとする美少女怪盗だが、周囲の男達の腕がそれを許さない。
「さぁ鬼め、ゆっくりと大好きな金棒を味わうといい」
ズブズブズブッ!! 男の太い金棒が怪盗の膣内に音を立てて突き込まれる。
その喉元まで突き抜けるような衝撃に、ローズマリーは仰け反って呻いた。
「ひ、ぎぃッ! ふ、深いひぃぃ……ん、あひぃぃぃッ!!」
レオタードを纏い、颯爽と盗みを働く義賊としての姿はそこにはない。
今そこにあるのは、牡に金棒を挿出されて悦びの声をあげる牝鬼でしかなかった。
ズブッズブッとリズミカルに動く男の腰に合わせて、怪盗も喘ぎ声をあげる。
「はあぁあぁぁ……んあッ! あふぅッ!! あはぁあああッ!!
も、もうだめえへえぇぇッ!!」
379 :
102:2008/02/04(月) 00:03:37 ID:Y7iW7diA
美しい肢体がガクガクと砕け、目を見開いて悲鳴にも似た声をあげたかと思うと、
力の抜けた怪盗の体はビクッビクッと震えながら床にぺしゃんと崩れ落ちた。
「あ、あはぁぁぁ……わ、私……い、イカされて、しまった……」
屈辱的な敗北感と、それを上回る甘美な愉悦。
それを全身で味わいながら荒い息遣いで倒れている怪盗の体を男が持ち上げた。
「鬼は金棒一本じゃ満足しないよなぁ? お前ら、金棒を鬼に与えてやれ」
リーダー格の男の声に、歓声をあげながらローズマリーに群がる男達。
我先にとズボンを下ろして自らの金棒を露わにし、怪盗へとむしゃぶりついた。
「あぐぅぅッ!! だ、駄目えへぇ、イ、イッたばかりだからっ……
今は敏感になりすぎてるからぁ……ひっ、や、やぁ……んっひぃぃぃ」
怪盗は絶頂の余韻に浸ることも許されず、秘部はおろか口にも尻穴にも金棒を
挿入され、それだけでは収まらない金棒が両手にあてがわれた。
「ひあぁああぁ……す、すごいの……お、おひりも……ほっぱいもぉッ……
おむっむむむぅ……お、おふちにもほぉッ……だめえへぇ……わたひぃ、
怪盗なのにひぃ……悪者に犯されてぇ……感じるなんていけないのにひぃ……」
「おい、鬼ッ! 金棒は気持ちいいのか、言ってみろ!」
「す、すごぉ……あ、はひぃぃ……気持ち、いいですぅ……んっんんんッ!」
怪盗の瞳からは光は失われ、目の前の快楽を貪ることしか考えられなくなっていた。
「き、気持ちいいいぃぃのぉぉ、んんん……ひあぁぁ……んあぁぁぁ、
こ、こんなの……だめえへぇ……お、おかしく、なっちゃいまふぅぅ……
さ、さっきイッたばかりなのに……ひああぁ、ま、またイ……イッ……」
再び突き上がってくる絶頂感に、怪盗は呂律をおかしくしながら懇願した。
「ひあぁ……い、イカせてくださひぃぃ……い、いやあぁぁ、来るぅ……
来ちゃう、何か来ちゃうぅぅ……んあぁぁぁイク、イクッ、イクゥゥゥ!!」
どぷっ。ぴちゃっ。ぷしぃっ。
愛液と男達の白濁液にまみれながら、怪盗ローズマリーは絶頂を迎えた。
「ふふ……これで怪盗ローズマリーも正真正銘鬼の仲間入りってわけだ……ふふ」
男達がどっと笑うのを意識の遠くで聞きながら、美少女怪盗は気を失った。
***********************************
初・読切投下終了です。おそまつさまでした。
>>376 GJすぎるだろ・・・・
このスレまだレスが一桁台のときに見つけたけどまさかここまで盛り上がるとはw
勃起した
抜いてスッキリしないとモヤモヤして眠れなくなったじゃねーかwww
残りスレ容量50kbを切ったので次スレテンプレ案作ってみましたが
保管庫FTPが不調でアップできませんw
とりあえずこっちに貼ります。
改善等の指摘はこのスレでお願いします。
スレタイは
怪盗が捕まってあんな事こんな事・・・第3夜
です。
タイトル通り怪盗が警察などに捕まってあんな事こんな事に逢う作品はここに投下してください。
長編短編バッドエンドグッドエンド一次二次どちらでもOK。
とにかく住人たちの心を盗む怪盗求む。
【前スレ】
怪盗が捕まってあんな事こんな事・・・第2夜
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1198052206/l50 【注意事項】
○sage進行でお願いします。
○職人さんは特殊嗜好の作品の場合は投下前に注意書きをお願いします。
○職人さんが投下しづらい雰囲気はやめましょう。供給があってこそのエロパロ板です。
○好みに合わない作品や意見はスルー(読み飛ばし)を推奨します。
○荒らし、煽り、広告はスルーしましょう。
以上テンプレでした。
---
>>376 GJです
個人的にバッドエンド大好きなので嬉しさ倍増
クリスマスにもAM氏が投下してましたし
行事の投下をスレ名物にするしかw
となると次はバレンタインデーか?
周期を考えると次はひな祭りではないかとw
>>384 細かいこと言えば、あんな目やこんな目に「遭う」ですね。
くそう、昨日投下する予定だったのに……orz
弟にパソ占拠されて投下出来なくなるわ、3/4書き上げてた11話丸ごと消されるわorz
とりあえず第10話投下します……
恋するキャットシーフ 第10話
「……一体どんなの着せられてるんだ? 里緒さんは……」
そう冷汗を流しながら呟く涼人。
それもそのはず、女子の着替えに使わせてもらっている隣の教室から、
「無理! 絶対無理! こんなの、着れる訳無いから!」
といった里緒の悲鳴がひっきりなしに聞こえて来ていたから。
「しかも、どう考えても僕と里緒さん組ませる気だろ? 一美さんは……」
そう言って溜息を吐いた涼人が着ているのは、いつもと同じ警官の制服。
『父の友人の警官からお古をもらって来た』と言う事にしてあるものの、実は自前の物で。
「(まあ、好都合かな。
大山のおじさんからいつも武装してろって無茶な命令が出たばっかりなんだし……。
それに……ずっと里緒さんと組んでたら、分かるはずだ、本物かどうかが……。
里緒さんが本物の『レインボーキャット』かどうかが……)」
ショルダーホルスターにコルトポケットを忍ばせたままでそう考える涼人。
と、教室のドアが開き、そこからやけにさっぱりとした表情の一美が顔を出した。
「女子の方の着替え、終わりましたわ♪ ではこれから、ファッションショーを行いますわね♪」
そう悪戯っぽく一美が言うと、開け放したままのドアから、女子が1人ずつ入って来た。
「……ここまで並ぶと、却って清々しく感じるね、主に一美さんの壊れっぷりが」
「あら、お褒めいただき、光栄ですわ♪」
「いや、褒めてないから」
さまざまなコスチュームに身を包んだ女子達を見て、涼人は一美にそう皮肉る。
しかし、一美ににこやかにスルーされて、涼人は溜息を吐き……、
「……あれ? 里緒さん、は?」
……里緒がいない事に気付いた。
良く見ると、教室の入口に、人影らしきものがちらちらと映っていて。
「里緒ー? 恥ずかしいのは分かりますけれど、廊下にいる方がもっと恥ずかしいですわよー♪」
そう一美が楽しそうに言うと、その影はびくり、と肩を震わせて、ゆっくりと教室に入って来て……、
「……は?」
……涼人は、凍り付いた。
レインボーキャットのコスチュームと言うのは、厚手の素材で出来た全身タイツ。
水を通さない素材と思われ、身体のラインは浮き出るものの、露出はほとんど無い。
しかし、今の里緒が着ている、いや、里緒の身体に引っ掛かっている物は、
「『いやらしい警官に捕まったレインボーキャット』と言うシチュエーションですわ♪」
胸と背中が思い切り深く抉られ、脚の部分はタイツすら無く、足が剥き出しになっている。
しかも、ご丁寧にもいかにも破られましたと言った加工がされていて。
「〜っ!」
入って来たはいいものの、恥ずかしさに耐えかねたように、里緒は身体を腕で覆ってしゃがみ込む。
その里緒の行動を見て、ようやく涼人は我に返ると、一美に詰め寄った。
「ちょっ……! あのコスチューム、高校の文化祭としてあるべき限界越えてるでしょ!
と、言うか、その『スケベな警官』って、僕の事ですよね!?」
そう一美に怒鳴り付ける涼人だったが、一美は平然としたままで。
「本番ではもう少し露出を増やして、腰縄を付けて、連行中みたいにするつもりですわ♪」
「これ以上露出!? しかもこの流れだとただ巻き付けるだけじゃない気が!?」
「ええ、亀」
「それ以上言わない! 絶対越えてますからそれ! 年齢制限要りますから!」
珍しくぎゃいぎゃいと怒鳴りまくる涼人と、それを何処吹く風と受け流す一美。
その話の渦中となっている里緒は、涙目になっているままで。
「……うー……」
必死にタイツに包まれたままの腕で、里緒は身体を隠す。
元々同年代の平均を遥かに超えたスタイルで、顔も美人な里緒にそんな格好をさせたらどうなるか。
口論中の一美と涼人を除く、クラス全員が男女を問わずに里緒に見惚れていた。
そして一美と涼人は口論で忙しく、里緒は恥ずかしさで周りを見れる状態ではない。
つまり、この瞬間、全員の意識が教室の入口から完全に逸れていて。
「全員、動くなぁっ!」
……その瞬間、その隙を突くかのように、何人かの男が乱入して来た。
「!?」
「……ん?」
乱入して来た男達に、涼人は完全に虚を突かれ、棒立ちになる。
だが、虚を突かれたのは男達も同じだったらしく。
「……何だ何だ、コスプレ大会か?」
そう毒気を抜かれたように呟く男に、涼人は飛びかかろうと身構え、
「……止めた方がいいぞ、そこの警察官君。こっちは6人いるんだ。1人で何とか出来る数じゃない事は君でも分かるな?」
……その男の声と同時に5つのサブマシンガンを向けられて、涼人は沈黙した。
「今、君達は人質となった。……何、おとなしくしていれば危害は加えないさ。
……おい! そこのしゃがんでいる子を連れて来い!」
そうその男が言うと、その男の仲間の男が里緒に近付いて、
「や、やだ! 来ないで……きゃあっ!?」
……里緒を、その肩に担ぎ上げた。
「里緒さんっ!」
「里緒っ!」
途端に血相を変える涼人と一美を見て、その男はにやつきながら言い放つ。
「別に殺そうって訳じゃない。……だが、もし抵抗したら……、どうなるか、分かるな?」
そう言ったその男に、涼人は歯を食い縛る。
そんな涼人を知ってか知らずか、その男は口を開いた。
「自己紹介がまだだったな、私の名前は高橋 天山。短い間だが、よろしく頼むよ」
そう言うと、見張りに1人だけ残して、高橋は里緒を連れてその場から立ち去った。
一人残った男は、退屈そうに椅子を持ってきて、そこに腰掛ける。
そして、ひょいひょいと1人ずつ指を差して、人数を数え始めた。
「ボス、36人です」
そして、そうトランシーバーで連絡を送ると、その男は欠伸をして、言った。
「全員、そこに固まって座れ。……そこの1人だけ学校の制服の女! これで全員の手首と足首を縛れ」
「え!? わ、私ですか!?」
「ああ。……ん?」
そう、驚く一美にその男は頷いて見せて、……部屋の隅にパンや茶葉が積まれている事に気が付いた。
「ちょうどいい、腹が減ってたんだ。……ついでだ、サンドイッチでも作れ」
そう言った男に、何故か教室中の全員がチャレンジャーを見るような視線を送る。
その視線に気付き、怪訝そうな表情をした男に、涼人が言った。
「……作った料理が全部BC兵器な人に料理作らせるなんて……」
「お前作れ、警察官」
その涼人の言葉を聞き、速攻で調理人に涼人を指名した男。
それを受けて、涼人は立ち上がると、教室の反対側にある食材置き場に向かおうとして……、
「はっ!」
「がはっ!?」
……その男の横を通った瞬間に後ろ回し蹴りを飛ばし、男の意識を刈り取った。
成す術なくぶっ倒れたその男を男が用意していたロープで縛り上げると、涼人はほっと息を吐いた。
「……り、涼人さん……?」
涼人がした大胆すぎる行動に、一美はさすがに慄く。
と、そんな一美、……いや、クラス全員を見渡して、涼人は口を開いた。
「……他のクラスを解放して、里緒さんを助けたい。そう僕は思ってます。
……みんなも、手伝ってくれますか?」
急にそう言った涼人に、クラス全員がきょとん、とする。
しかし、それはほんの一瞬の出来事で。
次の瞬間、クラスの全員が涼人にサムズアップを返していた。
これで終わりです。
……ノンストップで最後まで突っ走る気満々ですよ、ええw
箸休めどころか一気に結に突っ込んで行くという意味での
>>357だったりしますw
里緒の服装は、長袖なのを除けばスク水に近い感じです。
ただし、胸元の抉りはへそ上まで抉ってありますし、股はハイレグなので、里緒はノーブラ、ノーパンでこれを着てますw
ここで1つ質問があるんですが、この『恋するキャットシーフ』は13話で一段落付いて、その後2話後日談があると言う感じになるんです。
……後日談が完璧に怪盗関係無い内容になる可能性がほぼ100%なんですorz
14話はまだ後始末も多少書く予定なんでまだしも、最終話はもう、ねorz
最終話まで怪盗スレでやっても良い物なんでしょうか?
流れとしては一応13話できっちり切れるので……。
>>386 ……流れ的に、書くのは俺かフィズの人……?
AM氏がサンタとトナカイを貸していただけたらバレンタインで純愛行きますが……。
>>388 指摘ありがとうございます。
保管庫内のテンプレを修正しました。
これで問題なさそうなら今夜〜早朝辺りに立ててみます
●持ちだから大丈夫だとは思いますがスレ立てした事がないので心配w
慣れている人が先に立てちゃってもOKですよ
>>394 GJです
そんなエロコスで何をされるのか心配で心配で(ハァハァ
どうみても犯罪者集団なだけに躊躇もないでしょうし
以下インデント部 私見
2話位ならスレに投下しても問題ないかと
後日談投下という甘い餌につられて
アクアメロディエンディングも書き上げられる流れも期待できますし(ぇ
気になる様でしたらどこかのロダにtxtをアップ→保管庫に収録でもOKです
人気作家の原稿を盗み去ったのも束の間
捕まってしまいマッドサイエンティストに女の子にされた弟が
D・V・D!! D・V・D!!な目に遭う短編も全裸でお待ちしております
396 :
AM:2008/02/04(月) 21:12:22 ID:hub3KV3P
>>376 なんという節分、これはエロエロGJといわざるを得ない。
あー、ネタかぶりについては中身がまるで同じでない限りは俺は気にしませんといっておきます。
そもそも俺のほうはあんまプッシュしたネタじゃなかったし。
>>394 いなきりの急展開、これは次回をwktkせざるを得ない…!
果たして我々は次回で涼人空気嫁と叫ぶことになるのか(ぇ
てか涼人、そのまま一美の料理食わせればよかったんじゃね?
後日談に関しては閑話や日常パートと同じく本編のためのスパイスなわけですし、いいんじゃないかと思われ。
サンタとトナカイの貸し出しは無問題ですが、あいつらでどう純愛するんだろう…?
頃合だったと思うよ。乙
>>395-396 了解です。
……今日書いてたら変に盛り上がって一気にキャットシーフの下書き全部書き上げたなんて言えない……!
>>396 >そのまま一美の料理食わせればよかったんじゃね?
いや、「BC兵器」のくだりは嘘ですよw
普通に不味いのは事実ですけど、それだけです。
クラスメイトの同情は、他に上手いのは結構いる(涼人だって結構上手い)のにわざわざクラス一下手な奴選んだ同情ですしw
>サンタとトナカイ
別にあいつら×パープルローズ考えてる訳でもありませんので。
バレンタインですしね。
400 :
前スレ503:2008/02/07(木) 22:38:55 ID:3DJoCi4N
さて埋めますかね
…二万文字近く書いた第一話エピローグを自分で没に、削除した勢いでw
PTフィズ後編(Bパート)投下数8…Cパートへ続きますorz
例によって半端な、卑怯なとこで切れますm(._.)m
無理矢理縮めた部分が多々あるので…説明くさい台詞は笑い所と思ってくださいw
支援
ババババババババ………
ヘリコプターの喧騒が近づいて来る。
「っ?!!!」
振り返るフィズの視界に入ったのは…四本の柱で天高く持ち上げられた美術館。
ヘリが来ても不思議はない突拍子もない風景。
そしてそのヘリは当然、問題の建造物に徐々に接近してくる。
…悲鳴を必死で飲み込む。
その付近をゆるゆる漂う胸パットの気球は飽くまで非常用の装備…
ヘリに積極されればその風圧でどうなることか……
だがフィズの飲み込まれた悲鳴は生命危機に対してではない。
恐怖したのは…ヘリの放つ光……サーチライトだ。
その光に照らされれば……映しだされるのは……生まれたままの姿………
(いや!……やだぁ!……もうこんなの………いやあぁ………もう…『Fizz』やめる!
だから……もう許して……っ
お願いだから……来ないでえ………っッ!!!)
音に、声にしないからこそ思考が爆発する。
あまりにも高空、だから今までは『視られる』という恐怖は薄かった。
それが一気にひっくり返された。警察かマスコミか…
誰であっても関係ない、視られる……撮られる………
このまま悠長に浮かんでいれば確実にだ。
そしてバッテリー残量の少なさ……
重力軽減と光学迷彩を同時に発動できないほどに消耗している=ゼロになるのも目前…
あまつさえ自由に行動出来ない今の状況……
落下を覚悟で光学迷彩を使っても気球までは隠せない。追尾は簡単だ。
考えれば考えるほどに万事休す…袋小路、行き止まり……
絶望の材料は余るほど揃っている。なのに。
さらにハバネロ級の決定的なスパイスが加えられる。
……ドクン!
(ふあああっ!……なっ………なにこれぇ…………っ……っ………あっッ!
ふぁ………あ………ん………はぁ………は…………はぁ…………っ!)
フル回転していたエンジン…心臓にニトロをブチ込まれたようだ。
一瞬尿意すら忘れかける。チョロリと漏れて…また全身全霊で蛇口を絞る……が
(やあ……おしっこは……止めてるのにぃ…………っ!
なにか……あふれて………っ…やぁ………ひぁ……………)
それは確かに尿ではない。じゅわっと股間を湿らせていく粘りのある液体……
熱くなっていく体温、荒くなる吐息、紅潮の意味を変える頬、背筋に走る……快感。
(うそ……嘘っ!………やだぁ………なんで………………あっ!………ま、まさか!)
迂闊にも虚空へ跳び出した時……『思わず息を飲んだ』
…充満していた媚薬ガスが流れでていた扉周辺……媚薬が凄まじく強力なモノなら……
(そんな………外へ………出てた…のにぃ…………んぁ!……ひぁう………っ)
志由には…そうとしか考えられない。そして…例え原因が何であろうと……
(ダメぇ……風が当たるだけで…………ぅ……あぅ……んっ!)
ビクビクと痙攣してしまうほどに電流に似た快感が突き抜けてしまう。
顔をのけ反らせ逸る気で気球を見つめる……
(お願い………早く………ここから………っ?!ッ?!……〜〜〜〜〜〜〜っッ!!)
見つめた気球の一つに模様が浮かび上がる……バイザーを被った少女のシルエット……
全身が強張る。毛穴まで絞めているような感覚……
胸の微かな膨らみの先端まで完全に勃ってしまう……
「ぅ………うあああぁああああぁん………っ!!……っ!!…ッッ!!!」
振り乱す頭、その勢いでバイザーが夥しい水滴…涙で濡れる。
まだヘリとは距離があるが…やや下、背後からフィズに浴びせられる光……
陽光に曝された吸血鬼の気分だ。羞恥が全身を焼いていく。
反射的に光学迷彩を作動させようとして…落下の警告が表示されるが
即座にコマンドを最優先させる……その一瞬のタイムラグさえ呪う志由……
途端に重力に捕われ…ぐんぐん落下していくフィズ。
気球のおかげで自由落下ほどの速度はないが流石にパラシュートほどは減速しない。
パワーアシストの付いたブーツさえ履いていれば無傷で済むだろうが…
今の志由では良くても骨折ぐらいしてしまうであろう速度。
だが…そんな事を考えられる心理状態ではない。
(………お尻………みられちゃった………っ
絶…対…………みられちゃったよおぉ……………っ!)
今度こそ幻影相手ではない、強敵と戦い、その結果の被害でもない。
ただの一般人、ギャラリーに生尻を晒したのだ。それも屋外で…
(こんなの……こんなの…………っ
……へんたい…だよ……わたし………変態…?!………やああぁ………ッ!)
落ちていく肉体と同様に堕ちていく精神……
相乗効果で志由の心に襲い掛かる絶望。
激しすぎる動悸も追い撃ちをかける。
興奮に応じてアドレナリンや様々なモノが分泌される。…伴って愛液も……
落下の風が容赦なく全身を嬲るせいもある。
もう志由は尿意と性衝動を押さえることだけで精一杯…ほかには何も出来ない。
気球のコントロールも…このまま落ちゆく先を思うことも……
…バイザーの生命保護優先プログラムのことを考える余裕も当然なかった。
漢との戦いでもそうであったように…フィズ=志由が自覚出来ない攻撃を受けても
…例えば遠距離からの精密狙撃などでもエアバリアは自動作動する。
同様に…負傷を避ける為に再び自動的に重力軽減に電力を回すのも当然なのだ。
それを避ける為には予めコマンド入力しておく必要があった…。
地上から30mほど…負傷しない速度まで減速できる限界高度で…それは起こった。
皮肉にも…大勢の観客がフィズを見失い探索するヘリを見上げて
気球の急接近に気付き凝視、ざわめき始めた頃だ。
バイザーに重力軽減発動予告のウインドウが表示された。
ひたすらに耐えるだけの志由は…理解するのに時間を要した。
(え………? なに………?
………うそ…………うそ…………うそおおぉ…………っ!!)
反射、瞬時に咄嗟に両手で胸を隠し身を丸めるのと同時に重力軽減発動…光学迷彩消失…
「…こ、こうがくめいさいっ!………光学迷彩ぃいっ!!」
トサッと軽い落下音の直後にフィズの絶叫が響く。
幸い…と言っていいのかどうか…
フィズの落下先には観客がいて、その体がクッションになった。
でなければ気球を手放してしまった志由は重力軽減していても
相当なダメージを受けたはず…気絶していたかも知れない。
だが気絶しなかったことで…地獄の羞恥を…味あわなければならなかった。
胎児のように体を丸めた全裸の少女が突如空中に現れて落下するまで3〜4秒……
落下する気球の前振りを含め多くの人間が見上げていた。
全裸ゆえにその少女がフィズかどうか…バイザーまで視認出来たのは数人だったが…
皆、フィズを見るために集まっていたのだ。状況から考えてもフィズと決めてかかる。
さらに落着後の叫び…上を見ていなかった者にまで存在を報しめてしまった。
今や現場は阿鼻叫喚…馬が居れば目を抜かれただろう。
男女を問わず皆が皆、騒がしく周囲を探索している。
フィズが落着した場所を中心に人はどんどん集まる……
特にトラップで使用された立体映像の男たちと同類のような者達はカメラを手に血眼だ。
そしてフィズは…その騒ぎの中で微塵の身動きも取れずにいた。
呼吸…震え…目の瞬きすら止めている。
もし光学迷彩が効いてなければ人々に「これは人形だ」と思われたかも知れないほどに。
…最も全裸のフィズは例え人形だとしても視線の集中砲火を浴びただろうが。
叫びながらも無意識に地を蹴った志由は落着地点から数m離れたベンチの上まで跳躍…
重力軽減の効果があるうちに跳び速度を得てから
空中で重くなった為にそこまで跳べたのだ。
ベンチの上、本来は尻を置く場所に降り立てたことは真実に幸運だった。
この状況で座っている、座ろうとする者などいない。
…もし着地点が30cmズレていたら………
フィズを捜して激しく流動する人の波に揉まれていた。
見えない何かにぶつかった者は手探りででも正体を探ろうとするだろう。
そして消えられることこそフィズの証明…どこかを掴めれば離さない。
バッテリーが空になるまで捕まえられていた………いや、
わずかでも触れられた時点で志由は叫びを堪えることは出来なかった。
放尿し、喘ぎ、絶叫と共に志由の精神は崩壊してしまっていた。
そこまで追い詰められている。
それは今のフィズの姿勢、ポーズも物語っている。
爪先立ちの『気をつけ』の状態から両腕を肘から曲げ肩の横辺りに手がある……
…その小さな胸も、極薄の陰毛も、可憐なヒップも一切隠していない。
…………
……
着地した瞬間。
(ひゃああああう!…出ちゃう………おしっこ………もれちゃ…………ッ!)
本能が勝手に両手を動かした。
放出を止めようと尿道口を押さえたのだが……次の一瞬で両手は肩まで跳ね上がる。
(ふひぁあああああぁ!………らめえぇええッ!!)
手は尿道口のみならず性器全体を押さえてしまった。
その際の全身を貫く電撃が手を肩まで上げさせたのだ。
限界の数倍を軽く超越する羞恥に…性感も数倍に増幅されていたのだ。
そのまま股間を押さえていたら…間違いなく自慰を始めていた。
手を上げたのも本能……精神崩壊を避ける為、理性を保つ為の行動…
そして守られた理性が今の微動だに許さない硬直を命じる。
手で股間を押さえずに放尿を止める唯一の手段だ。
志由は考えて行っているわけではないが……
新陳代謝を極力抑えることと動かないことで尿道口に綻びを作らない点で有効な方法だ。
まさに気絶の一歩手前、志由の桁並外れた羞恥心の成せる荒業だが……
…そんな状態を長く継続させられるはずもない。
1分以上も保った現時点で僥倖だ。
…決壊は秒読み段階に入った。
思考までも止めていた志由だが…
決壊を前に何とか事態を打破できないかと知恵の悪あがきを再開する。
が。…もうモジモジと太股を擦り合わせるだけで尿は漏洩してしまうのだ。
愛液に至っては何もしていなくても太股を一筋、二筋、雫が這っていく。
躯は変わらず微動すら出来ない。
そんな状況で志由が何も出来るわけがない。
(たくさん…こんなたくさんの…ヒトの前で………
オトコのヒトも女のコも…たくさん…いるよぅ………
カメラ持ってるヒトも…いっぱい………
こんな……とこで…………あ……ひあ!…あのヒト…こっち見た…………っッ!)
志由の半径30m以内に5、60人はうろうろしている。
フィズの姿は見えなくてもたまたま見た方角の先に志由がいることなどままある。
それだけのことなのに…光学迷彩が効いていることも忘れて戦慄した。
ブルッ………抑えていた反動…一際大きく身体が震え…………
ぷしゃあッ!
(ふひあっ……………あっ…………ぁ……………)
躯の震え、動きと同調して尿が噴き出した。
飛沫がベンチとその下のコンクリートを濡らす。
最後の全力制止…一応は止まった、止められたが…これまでで最大量の放出…
その壮絶な開放感……身体は勝手にGOサインを出す。
叫ばなかったのは先程まで通用していた無我の境地を呼び戻すためだが……
(止まって………止まって………………止まってぇ………………っ!)
心臓までは止められないように生理現象をこれ以上留めるのは無理だった。
ぷしゅ!……チョロ、チョロロ………シャアアアアァァ…………………
(あ………あ…………ああ…………ぅ…………あああ……………)
思考が真っ白になっていく。
突き抜ける爽快感、紅蓮に燃え盛る恥辱、
気絶したいのに…それすら凌駕する………性的な快感。
志由は…生まれて初めてのオーガズムへ向けて…高く…高く昇天していく。
立ったまま失禁しながら……尿を漏らす、ただそれだけで………
…ベンチとコンクリートを叩く水の音に気付いた男が志由のほうへ振り返っても……
減速できないどころか加速する。
(みてりゅ……あのヒト………知らないヒトに…みられてりゅ………ッ!
し、志由が……おもらし…してりゅとこ…………
おしっこ…してるとこ……みられてるぅぅッ………ッ!)
凄まじい羞恥の津波……志由はなす術もなく…その悦楽に流されていく。
光学迷彩はまだギリギリ機能していた。フィズのそれはハイスペック、
迷彩表面が濡れようとも瞬時に水滴までカバーするため
尿と愛液が伝いびしょ濡れの太股から足先も完全に不可視だ。
しかし。フィズの体表ではない空中…放物線を描く尿の奔流は誰の目にも見える。
街灯の明かりで雫の一滴一滴が光り輝く。
その不思議な現象の答えを男は近くの男に尋ねる。
「おい、…なんだアレ?」
その声に二人、三人…視線の数が増えていく。
(ひぁ………ひああ…………みんなが………みてりゅよお……………
わらひが………おしっこ……おもらし…してりゅとこ………っ
………はぁ…ぅ………キモチ………ぃ…ぃ……………?
はぅ……くふあ………………っッ!)
志由が自然にその頂きに昇り詰めようとするその時……電力切れの警告音が響く。
『バイザーの』光学迷彩は解除されてしまった証拠だ。そして響く誰かの叫び。
「…フィズだっ!!」
(ん…っッ!…〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!………ぁ…きゃあああああぁあ………
…………………………………………っ……っッ!!!)
名を呼ばれた瞬間…絶頂の高みから更なる忘我の極みへ飛ばされる。
…
果てしないエクスタシー…一抹の理性も…最後の断末魔を残し消え去った……………
「あ……………あ…………は…ぁ………♪
ん………はぁ………んぅ…………ぁ………………///」
絶頂…余韻…絶頂………それを繰り返す志由は…甘い喘ぎを声にしていた。
近くにいれば完全に聞こえる音量だ。
色を失った瞳はもう何も映していない。
糸が切れた操り人形のようにベンチにM字に座る…
いまさらながら和式の放尿スタイルになって尿に濡れた性器や足に当たる風の冷たさに…
ほてりを醒ますような快感に身を任せる。
…そんな状態だ。
観客が群れをなして『離れていく』ことにも気付けるはずもない。
…
男が叫んだ対象…その『フィズ』は『失禁した志由』のことではなかった。
…棒高跳びなら届きそうな空中に突如現れたフィズを見て指で差し示し叫んだのだ。
全裸ではないが…スカートやドレスの肩が破れて非常に際どい衣装のフィズ。
相変わらず何層ものペチコートに阻まれ下着も露出していないが…
今にも見えそうなチラリズム…エロさ全開…苦悶の表情…
いつもの精彩を欠きフラフラと空中を漂っていくフィズの『幻』を群集は追っていった。
…
『後始末』を一応終えて追い付いたクマのぬいぐるみの仕業…
ピーチが投影するホログラムのフィズはその役目を充二分に果たした。
もう少し行列を行進させて観客が疲れた頃合いを見計らい消す算段。
フィズ、志由自身の体も光学迷彩をピーチが発動、その存在を消していた。
「……さて……どうしようかなぁ………?」
…呆れ半分、途方に暮れ半分でピーチは独り言を呟いた。
志由の動きは広域センサーでチェック、そのバイタルもバイザーを通じて把握していた。
(…まさか…視られる、視られると思っただけで…こんなにHになっちゃうなんて……)
そう、媚薬ガスは効いていなかった。
ピーチは機能回復後、すぐに換気作業を行ったのだ。
元々二階の一部…フィズの進路にだけ散布されていたガスだ。
…短時間でかなり薄くなっていた。
それでも万全を期して、志由が発情しないように外へ急がせたのだが…
非常口で呼吸を確保するだけでよかったのだ。
まさかブラ一枚で虚空へ身を躍らせるとは思ってなかった。
それに…性に臆病な志由が視られて発情するとは思ってなかった。
(ううん……もともと感じやすいコだから……逆にHが怖かったんだ……)
自分で制御できないほど強い性欲を…無理矢理封じ込めてきたことになる。
ふとしたきっかけで炸裂しても不思議ではない。
溜めに溜めたぶんだけ強烈に発情した………今になって理解る事実。
そして凄まじいが故にこれ以上の刺激は危険だ。
「人前で失禁しイき果てた」…こんなことは誰にも知られたくないはず。
たとえそれがAIであってもだ。仲間であるピーチであってもだ。
他者に事実を認識されることで志由自身も深く事態を認識、傷ついてしまう。
ピーチも格下のAIにイかされまくった事実は志由にだけは知られなくない。
大好きな志由にだからこそ……
…『志由が好き』
その気持ちを自覚できたのが今回得た最大の報奨…ピーチはそう考える。
こんなことで二人の関係をギクシャクさせたくない。
(やっぱり…気絶するまで待って…私は何があったか知らないフリして………
う〜、それじゃ志由が恥ずかしいとこ視られたことになるし…
やっぱ発情したのは媚薬のせいってことにして……)
ピーチがそんなことで悶々と悩んでいる間に…志由は……
…その小さな手で、指で胸の突起を撫でる。
「あ………んぅ………ちくび……キモチぃ……………っ」
誰に言うでもなく感じたままを言葉にする。
それを聞いたピーチは焦りと…言い知れない感情を覚えた。
(そっか…イったのは心だけだから……カラダは…まだ欲しいんだ………)
冷静に状況を分析しながらも回路を廻る電子の不安定さを隠せない。
もしピーチが生物なら…激しく脈動する心臓で興奮状態を自覚出来たかも知れない。
そう、オナニーを始めた志由に対して………ピーチは欲情を覚えたのだ。
…電脳空間での危険極まりなかった、
それでいて悦楽も半端なく凄まじかった…志由との交わりがリフレインする。
(今度は…私が…志由をキモチよく……………っ?)
クマのぬいぐるみが首を振る。誰も見ていなくても人間くさい動作を行う超AI…。
そこに志由を思いやる気持ちがあることも間違いない。
しかし大半は自身の欲望…志由を抱きたいというエゴ。それもまた事実。
(やっぱり…ダメ!……志由が自分で満足するまで…)
誰にも認識されないように超結界でガード…それ以外はしない。
…襲っても許される状況。想い人をだ。…しかし。
志由が望むときに結ばれたい。その気持ちが劣情に勝ったのだ。
……短い勝利…だったが。
…例えば空腹の状態で御馳走を前にどれくらい我慢できるだろう?
電脳空間で自らの中の志由と交わった…言わば志由をネタにオナニーした。
直前にそんな経験をしたピーチ、妄想ではない御馳走が目の前で跳ねる。
それを『小1時間』は拷問以外の何物でもない。
そう、『一時間』…志由はそのまま拙い自慰を続けていた。
見守っている方…ピーチはもう限界だった。
(こんなの……こんなのォ………いけない……ょ………っ!)
クマの本体上部に自身の、人型の虚像を投影して晒している。
欲情に身を任せる姿、両膝で中腰になり股間と乳房を弄ぶ様をだ。
無論、志由に悟られない位置、結界も警戒も維持したまま……
姿を晒すのは志由のオナニーを覗いて自慰に耽る自分に対する戒め…
背徳の思いがそうさせるのだが…それは志由も同じだった。
(…クスリの…せい…媚薬の…せい……だけど………
お外で……みんなに……お尻…ハダカ…みせて………おしっこ…漏らして……
こんな……恥ずかしいこと…しちゃう…なんて………ッ!)
…淫乱以外の何者でもない。無意識…本能のレベルでは理解しているのかも知れない。
媚薬など効いていない事実を。
『一時間』という時間は志由の精神を回復させていた。
初めてのオーガズムから醒めてみれば…羞恥と後悔の…豪雨、暴風。
その罰として、罪を償う意味で、羞恥を味わっている。そんな気分なのだ。
…建前は、だが。
観客が消えたことも逆に災いしていた。自慰行為を止められない。それも一時間も……
実際には自らの指だけでも過敏に反応する性感帯を、再度の絶頂を恐れているのだ。
無意識下ではその上で甘美な快感を長く愉しんでいる面もある。
理性では、表層意識では絶対に認められない…極度に変態度の高い性癖。
((でも………このままじゃ…………っッ!!))
二人の少女を苛む性の疼きは治まらない。
二人は同じように…決定的な刺激を求めていた。
磁石のように被虐と加虐が惹き合っている。それでも動くべき加虐側…
ピーチは何も出来ない。
(志由……しゆぅ………っ)
好きだからこそ、自分はAI…本来隷属すべき立場だからこその…金縛り。
…物理的な理由も一応はある。
先程の敵AIとの攻防…その絶頂、再起動の際には結界を維持できた。
だが今度は…本物の志由と本当に性行為をしては…結界を張り続けられる自信がない。
それほどに溺れてしまう確信。それがどれほどの危険か…
…実際には対応策はあるのだが…ここまでの苦難を、この勝利を危うくしたくない。
その二つの呪縛を解き放つ為には…『彼』の回復を待たねばならなかった。
「何をしておるか!」
志由には聞こえない大きさの囁き、ピーチには大音量のサイレンに思えるほどの。
…遥か上空から『漢』の声が響いた。
その漢の巨躯が高空…上から降ってきたとき。
ピーチはフィズのバイザーの索敵機能を無効にした。
しかし志由自身が自分の聴覚等の五感で『漢』の気配に気付いたら…
恥ずかしい自慰、この状況…野外での行為を他者に見られたら…その心は砕け散る。
凄まじく焦ったが…漢は気配を絶つことにも長けていたようだ。着地もほぼ無音、
志由は至近距離…木々の影に漢が降り立ったことを察知できず恥態を晒し続けている。
「ちょ、ちょっと!…契約破る気?!
私はちゃんと守ってる!…フィズと…私の…映像、ちゃんと…見せてるでしょ!
『ソルジャードッグ』と呼ばれる超一流の傭兵…貴方が約束破る気?!
そっちがその気なら……爆弾!…作動させちゃうからね!」
小声で言いつつ…爆弾作動は志由に悟られる公算が高い、不可能だとも悟っていた。
…そして同時に思い出す。『漢』との奇妙な契約を結ぶことになったいきさつを…
…
……
………
フィズが『漢』の前から去った後…一分ほどでクマのぬいぐるみ…ピーチは来た。
ピユピユと幼児の靴が鳴るような足音で立ち往生…麻酔で気絶している漢の前で進み…
「『組織』とも対等に交渉できる…契約無しでは組織に従わない、勝手に契約を破れる…
それが許されるほどの実力を持つ傭兵『ソルジャードッグ』…
惜しい気もするけど…死んでもらうわ…」
その言葉の終わり、クマの背中から触手が一閃!
蠍の針のように漢の体…胸、心臓を貫こうとするが…
「…なんてこと!…気絶してるのに!」
気を失っていても漢の纏う『闘氣』は失われていなかった。
コンクリートに穴を開けることも苦としない触手ですら皮膚も破れない。
無駄を悟り触手を止めるピーチだが…
(フィズ…志由の秘密を守る為には…殺すしかない!)
「…目ん玉からなら…脳味噌を…」
触手を瞼に向け操作しながら何気なく呟いた言葉に返答があった。
「効かぬ!…殺るならば鼻と口を押さえ呼吸を封じるのだな…
…あるいは痺れが回復する前に窒息するやも知れぬわ」
『漢』自身からのアドバイスにピーチは触手の進行を止める。
見開かれた漢の眼光…確かに触手で貫けるものではなさそうだ。
(…普通なら三日は昏睡する麻酔を…化け物が……)
「……窒息死するのにどれくらい時間かかりますか?」
率直な質問を本人に向けるピーチ。不敵に微笑を浮かべ答える漢。
「…30分くらいか?…その間に腕くらいは動かせるようになるだろうがな!」
…他の殺傷手段を検討し始めるピーチに漢のほうが問いかける。
「…踏み止まるわけにはいかぬか?」
「むしろ闘氣を解いてくださいよ!」
即答するピーチだが…その台詞は漢の殺傷が困難だと吐露している。
そして尋ね返す。
「…どうして…フィズの麻酔針を喰らってくれたの?」
この闘氣…麻酔針など無効なはず……しばしの間を置いて漢が答える。
「汝の心意気が我が氣を上回ったのやも知れぬな……」
ツッコミを…「じゃあ何で今、殺せないのか」と入れようとしてピーチは止めた。
漢は油断していたわけでも手心を加えてくれたわけでもない。
麻酔針が刺さったのは単なる結果…それを悟ったからだ。
今、殺害出来ないのも同じこと…単なる結果だ。
仕方なく漢の案を実行しようと漢の巨躯を、鼻と口を目指して
抱き着きつつ、ぴょこぴょこと登り始めるクマのぬいぐるみ…
「……『取引』をせぬか?」
逞しい胸筋にへばり付くピーチの顔を見て漢が問う。
「しません。殺します。。。」
ピーチは即答するが…クマの巨躯登山は止まった。
話を聞く雰囲気を察した漢は言葉を続ける。
「汝は…あの娘を助けたい。…今も安全とは言えぬのでは?
条件さえ飲めば…とりあえずは…あの娘を襲わぬことを誓おう…
汝との約定を違えた場合は我を即殺出来得るであろう手段を与える…
………これでどうだ??」
無言を続けるクマに漢が語った条件はこうだ。
フィズに関する全ての情報を漢に教えること…代償にフィズの秘密は口外しない。
「フィズを完全に性奴隷にするには彼女自身を熟知する必要がある」とのこと。
…それが済むまでは襲わないと。襲う場合も宣言、宣戦布告してから襲うと。
そして条約を交わすのであれば…闘氣を解き体内に毒や爆弾を仕込めるようにすると。
沈黙……。
10秒ほど漢の胸に抱き着いたままだった小さいクマは飛び降りる。
「…爆弾……取って来ます」
背を向けたままそう言ってピユピユと足音を立てて部屋を出ていった。
………
……
…
(やっぱ…あのとき殺しとくべきだった…)
爆弾は心臓や肺の近くに埋めた。その際に手元(触手)を狂わせれば済んだ。
…いつかは敵になるのだ。そしてフィズ=志由に関しても知り過ぎている。
充分な殺害動機だが…利用するだけ利用できると考えたから踏み止まった。
(志由を狙ってるなら…『組織』の手に堕ちるのも阻止してくれる………けど!)
今、襲われては元も粉もない。だが止める手立てもない。
「ふふん!…条約を破った時ならば潔く爆弾の餌食にもなるわ!
だが!…それ以外では死んでやるわけにはいかぬな!」
ニヤリと笑う漢…契約の後、『戌』と名乗った彼は不敵に笑う。
(こいつ………っ!…マジに爆弾に耐えるかも………)
どころか爆弾を埋め込む際に心臓を攻撃にも耐えたかも知れない。
自信があるから無謀な取引を持ち掛けた…そう思えるほど。
…結局は戌を信頼するしかない。そんな無力感すら覚える。
「そんな些細なことなど!どうでもよいわ!
何故に性交わらぬ?!…あの娘の欲することを叶えてやらぬか!
それであの娘のパートナー気取りか?…片腹痛いわっ!!」
戌の一喝に即座に反論する。
「そんなことしたら!…志…フィズが傷つくでしょ!
ちったあ考えろよ!…筋肉バカっ!!」
全裸の、股間からは愛液の滴る少女の立体映像が怒鳴る。
その大音量は漢にしか聞こえない。戌の体内の爆弾を振動させて声とする荒技だ。
「笑止っ!…バカは汝よ!」
それに身じろぎもせず戌は小声で一蹴し…その後に穏やかな言葉で続けた。
「………それしきのことで壊れる娘ならば我は求めたりせぬ………
何より…汝らの信頼は並のモノでは無かろう?…我が言うまでもなくな!
……だから……恐れるな……」
(…恐れてる?…私が?……志由に……嫌われるのを??)
戌の言う事は…志由とは初対面、それもつい先程、わずかに邂逅しただけの漢の言葉は…
…真実。
沈黙するしかない。…ヒトとして生物としてのシンパシーなのか?
ピーチは己の未熟さを恥じる。そんなピーチに戌はさらに続けた。
「…先程に制圧したAIを独立稼動させ結界を張らせよ……我も見守ってやる!」
「…っ………アンタが見たいだけでしょ!………へんたい!」
そう返しながら…ピーチの立体映像はフワリと浮かび、クマは歩いて志由へと近付く。
少女の立体映像が戌の巨体を摺り抜けたのは…
唇の座標が一致していたのは何故かわからないが。
GJ!
このスレ最後にいいものを見せてもらった…!
しかしフィズは開始第一話から想像できないような展開ばかり続くなぁ。
なんだこの歪んだ人間(?)関係www
観衆?に見られるのかと思ってドキドキしたよ…ホントGJ
次回はピーチ×フィズだよな?楽しみにしてるww
GJ、おっきした!
もうピーチがAIって設定すら忘れそうな展開だ…つか三、四秒って誰か撮影してそうだな。
しかしフィズの人はシチュ展開が上手いなぁ。
ギミックによる状況の説得力と構成がエロとマッチングして臨場感が出てるし。
一行一行ハラハラワクワクできるぜ。
>>400 GJです
戌が既にメインキャラに昇格してるっ
没とか修正とか苦難の道は全て奴のせいに違いないw
強烈な個性とパワー、そしてエロス。俺もこのキャラ大好きです
志由一直線だと思っていたピーチに
>>409の最後の段落は…
なんて所でぶち切るんだ…
ほ
ほ
保守。
新スレが立っていることだし、埋めてしまわないか?
そこで誰か短編投下ですよ
ご新規さんも大歓迎
419 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 21:54:39 ID:NPYLFLsY
あ、ありのまま(AAry
短編で埋めちまおうと書いてたら本編で使おうと思ってるシチュと似ちまってた!
何を言ってるのかわからねーと思うが俺も何を書いてるかわからなくなった
パクリとかネタ被りとかじゃ断じてねえ(同じ作者だから)
もっと恐ろしいものの片鱗を(ry
………素直に本編進めりゃよかった…orz
逆に考えるんだ
似たシチュなのに全く違う展開になって
より多くの嗜好の人向けに投下できると考えるんだ
堕落エンドの方が良いよって人も
二次元エンドで後味良くないと駄目だよって人も
どっちもござれ みたいなw
だが断るw
何故なら…「ネタは二つあった!」
いや、やっぱさ…投下するにしても本編を先にしたいじゃん?
…週末までに埋まってなければ違うネタで埋めるよ
容量が足らなさそうだが…その場合はそこまでって事でw
423 :
摩天楼遊戯:2008/02/16(土) 20:26:43 ID:bW0tLkMK
「か、怪盗〜〜〜?」
「…さようでございます」
訝しげな声を上げる少女に執事は頭の悪い者に言い聞かせるようにゆっくりと答えた。
プライドの高い少女は馬鹿にされた気になり即座に怒鳴り返す。
「なんで!…この私がコソ泥の真似なんかしなくちゃいけないのよっ!」
今にも噛み付きそうな八重歯が光る怒り顔。
しかし執事は慣れているのか変わらない口調で語る。
「何をおっしゃいます。『怪盗』とは…
見目麗しく聡明で類い稀なる運動能力を持つ者のみが名乗れるものでございます。
…お嬢様はその全てを満たしておいでと私めは思っているのですが?」
…執事の少女に対する評価の「大部分は」世辞ではなく本心だった。
執事の口調はやはり気に入らないが、その内容は真実と思っている少女。
怒り顔から膨れっ面へとややクールダウンした。
表情としては良いものではないにも関わらず怒り顔も仏頂面も大変に愛らしい。
そして運動能力も高かった。揺れる双乳すら加速に使われているかのような俊足。
標準以上の胸と尻以外は華奢な彼女の走る様は実速より疾く感じるせいもある。
その柔軟さ、高いバランス感覚も彼女の魅力を引き立てる要素である。
様々なスポーツ、要所の局面で衆目を集めるポーズが自然に決まる。
腰まである緩やかなふわふわの頭髪が揺れることで芸術点も加味される…
だが「聡明」だけは彼女の『家』の威光、そのおかげだ。
大財閥の令嬢…学校のほうからそれとなく試験内容がリークされる仕組み。
それでもトップは取れない有様…優秀とは言い難い。
そんな彼女だ。少し褒められただけでその気になりかけてる。
流石に「すぐ食いついては馬鹿っぽい」と自覚しての仏頂面だ。
「その通りだけど……でも………」
膨れっ面に頬を染めて執事の言葉を待つ。
「既にお嬢様は何をなさっても頂点におられます
お嬢様ではない別人…『怪盗』という存在でもなければ下々の者たちは驚きますまい
世間の噂話に花を添えることも高貴なる者の務めかと………」
「…そ、そこまで言うなら仕方ないわね!」
…こうして怪盗『ルミナルージュ』は「赤園寺 彩香」の仮の姿として誕生した。
―――――
「なんで………私が………こんな………」
標的の屋敷に忍び込んで直ぐさま彩香は後悔していた。
赤園寺財閥と肩を並べる青乃宮コンツェルンの豪邸……
見つかっては、捕まっては大財閥の一人娘と言えどもただでは済まない。
…いや、ライバルである青乃宮だからこそマズいことになる。
「そのほうがスリルがありましょう?」とは執事の言。
そもそも「面白い退屈しのぎはないか?」→「怪盗など如何でしょう?」という流れ。
「無理ならばもっと格下の標的を探しますが何か?」的な事を言われ
意地で「やる」と言った自分が愚かなのだが………
424 :
摩天楼遊戯:2008/02/16(土) 20:32:34 ID:bW0tLkMK
「へへへ、侵入者は女だってな」
「身体は相当エロいらしいぜ?」
「イカれたコスプレしてるらしいから頭は悪いだろ?」
「何でもいいさ…ここは治外法権だからな……やりたい放題……」
屋敷本館へ辿り着く以前に見つかり凄い人数に追い回された。何とか逃げ切り…
…今は使用人用の家屋、その男子トイレの個室。
用を足しながら雑談する男どもを殴りたいのを彩香は必死で耐えていた。
女性用トイレもあったが捜索の最中で隠れられず止むを得ず…だが。
(こんな……臭くて汚いとこに…………!)
別に普通のトイレなのだが贅を極めた「お嬢様」には耐え難いのだろう。
場所も男どもの言い草も。
(見つかったら……どんな目に遭うか……)
正体を明かさなければほぼ間違いなく…いや、確実に輪姦される、
だがバラせばこれを材料に『家』にどれほどの迷惑をかけるかわからない。
…どちらも絶対に駄目だ。
(仕方ない、ギブアップするか…………)
それも彩香にとっては苦汁だが…所詮は遊び、その割にリスクが高すぎるのだ。
執事から「もしもの時に」と預かった機器のボタンを押した。
『その時点でお嬢様の安全は保証されます』…執事の言葉を疑いもしなかった。
ジリリリリリーーッッ
ボタンを押した機器自体が轟き叫ぶ。それを持つ彩香は気絶しそうになった。
隠れている、見つかりたくない状況を抜きにしてもだ。それ程の大音量が鳴り響く。
…何も言う間もなく、何も考える間もなく蹴破られる個室のドア。
その向こうには…信じられない人数が詰め寄っていた。
トイレには大小合わせて10基ほど便器があるが…その数倍。
ネコ一匹通る隙間もない。…彩香は一瞬にして何十人もの男に包囲された。
…
男の数は増える一方、場所は本館の大広間に移動された。
そこで天井から吊される彩香…
その名が示すように鮮やかな真紅のチャイナドレス、
スリットからは網の大きいストッキングが覗きガーターベルトまで見える。
仮面舞踏会で使っていたマスクは目の穴が大きく彼女の美貌を殆ど隠していない。
知っている者なら正体を見抜く…というか彩香以外何者でもない。
それは男どもも気付いているのだろう。
ざわめきの中にその気配を感じる。まだ吊されただけで済んでいるのは
上からの指示を待っているだけだと思われる。
直接手を出せない、まだ本名を呼べない腹いせか?
男たちは盗んだモノと引き換えに置くはずだったカードに書かれた名で嘲る。
「ルミナルージュちゃん、色っぽいねえ!」「男子トイレで何をしてたのかなあ?」
「決まってんだろ?…オナってたんだよ!」
「オナだけじゃ我慢出来なくなって自分から居場所を知らせたってか?」
言い返したいのを歯を食いしばって耐える。
その怒りを込めて拘束具…SMで使うような革手錠を引っ張るがビクともしない。
手首を覆う幅が広いのでさほどは痛くないぶん思いきりなのだが…
(これから…私……犯され…ちゃう?
……この私が?………そんなの……許されるはずないでしょ?!………ッ)
…だが現実は無情だ。助からない。
425 :
摩天楼遊戯:
「おやおや、これはこれは…」
新聞のトップにもよく載る、新聞など読まない彩香でも知っている。
青乃宮コンツェルン総帥のご到着だ。
好色そうな、舐めるような視線。
彩香はボディラインどころか中身まで見透かされたような気分になりゾっとする。
「さてどうしたものか…
本来の貴女として『丁重に』もてなすか… 不法侵入の犯罪者として扱うか…
…貴女に選ばせてあげましょうか?」
「く………っ」
どちらも選べる訳がない。そして総帥の目を見て思う。
(こいつ…弄んだ後で『家』に言うつもりだ………っ)
最悪のシナリオ。その中でも『家』に知られることだけは絶対に避けたい彩香だが…
(…お父様にだけは…知られちゃダメ!……でも…ここで媚びても………っ
とにかく…時間を稼がないと………)
だがその方法が思いつかない。時間を稼いでも解決しないことも気付かない。
「仕方ありませんね、では手始めに…」
そう言うと総帥は銃を取り出し彩香に狙いを定める。
手始めと言う単語など忘れて彩香は恐怖してしまった。
人を殺しても完全に隠蔽出来る連中だから無理もないが…
「ちょ…! やだ! やめて! …………ッッ!」
なまじ卓越した視力がある為に引き金を絞る動きがよくわかる。
その瞬間に思わず目を閉じてしまった。が、聞こえるはずの銃声が無い。
変わりにチャイナドレスの裾に濡れた感触を覚える。
目を開けて確認するとやはり濡れている。
彩香は恐怖のあまり失禁してしまったのかとゾッとする羞恥に襲われるが
その割には下着は濡れてない。確認すべく総帥を見て銃口から滴る水にようやく気付く。
「…み、水鉄砲?」
安堵と屈辱が溢れるが総帥の次の言葉にそれは戦慄と羞恥に変わる。
「もちろん普通の水ではありませんが……」
効果は説明を聞く前に理解した。
ドレスの濡れた部分が乾燥していき…その部分の布地も蒸発していく。
「人体には無害…さて、射撃大会を始めましょうか♪」
下卑た笑いを浮かべた男たちは配られた水鉄砲を手に集中砲火を開始した………
…彩香も頑張った。
人体には無害と聞き縛られていない、そのスラリとした足で直撃するはずの水を蹴る。
身体を激しく揺らしながら足を大きく回し迎撃するが…
その動作のたびに眩しい太股、根本まで晒してしまう。
さらに蹴った際の細かい飛沫までは防げるはずもない。
少しづつ確実に溶けていく衣装…
右肩、上半身を覆うチャイナドレスの要に被弾すると衣装はベロリとめくれ、
その豪華な装飾のブラがあらわになる。…途端に動きは悪くなった。
しかし狙いはその揺れる双乳に集中する。防御する足を高く上げなくてはならない。
上品なレースのパンティの露出率も上がり…恥じらいが更なる失敗を呼ぶ。
天井の装飾、シャンデリアから伸びる鎖に唯一の盾、足を絡めてしまった。