ゼルダの伝説でエロパロ 【6】

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1名無しさん@ピンキー
このスレはゼルダの伝説について語ったり、SSを書き込むスレです。マターリして下さい。
荒らしはスルーでお願いします。

<前スレ>
ゼルダの伝説でエロパロ 【5】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1185718980/

<保管庫>
http://red.ribbon.to/~eroparo/
ゲームの部屋1号室になります

過去スレなど↓
ゼルダの伝説のエロパロを書くスレ
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1082282005/
ゼルダの伝説
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1096633379/
ゼルダの伝説でエロパロ 【2】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147879180/
ゼルダの伝説でエロパロ 【3】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1169875819/
ゼルダの伝説でエロパロ 【4】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1177259262/
2名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 18:42:31 ID:FUqpLyxw
も、もしかして、2?
3名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 20:32:02 ID:sbiYghnT
乙でごわす。
4名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 20:56:29 ID:9Za2vp8D
>>1

一応転載するあまり意味のない過去ログ

ムジュラの仮面のエロ小説さがしてます
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1009/10095/1009503336.html
ゼル伝のえち物
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1020/10201/1020102094.html
ゼルダの伝説画像キボーン
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1021/10212/1021207433.html
小説 ゼ○ダの伝説
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1023/10230/1023027964.html
ゼルダの伝説エロ小説
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1068/10682/1068220024.html
ゼルダの伝説エロ小説 LV2
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1068/10688/1068813331.html
ゼルダの伝説 エロパロ
http://idol.bbspink.com/eroparo/kako/1093/10933/1093395909.html
ゼルダの伝説シリーズ総合
http://idol.bbspink.com/eroparo/kako/1094/10942/1094238104.html
5名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 23:14:11 ID:O/261/S3
>>1
乙ELDA





これ言ってみたかったんだよなぁ…
6名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 04:05:15 ID:9QwH9pOl
>>1
乙!
7名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 23:04:38 ID:77jqOzoC
乙。次スレ立たぬまま落ちるかと思ったぜ
8名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 07:57:51 ID:umBaV4n6
乙保守
9名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 10:05:11 ID:1kBUeqA+
保守
10名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 10:19:17 ID:7Vu0gLGw
保守
11名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 10:04:35 ID:Txe1r/wm
>>1
12名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 09:05:42 ID:uCrDrmvP
>>1おつ!!
13名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 00:14:36 ID:oMg5qZMx
14名無しさん@ピンキー:2007/11/10(土) 15:03:32 ID:944Z3EDi
ミドナかわいいよミドナ
15名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 01:02:52 ID:1H3jzFU9
やぁ
16名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 14:13:55 ID:ZEnM9Byx
流石にポストマンではシコれねぇぜ
17名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 18:27:16 ID:bnQPnnW+
町長ア-ッ
18名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 23:24:37 ID:5ji3nnBW
ムジュラのルルはあんまり人気ないのな。会話に上ったこともないんじゃ
19名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 01:24:49 ID:TTSYuXuD
確かに影薄いな
出会った時は既に子持ちだし
20名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 08:41:54 ID:s6aU/tSX
て言うか続きの投下はまだかな。
待ち遠しい・・・
21名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 08:42:19 ID:i9o1YHPJ
ムジュラといえばアンジュとカーフェイとかも人気ないのか
22名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 11:52:39 ID:rxXOVbKf
エロパロ的にはあんま無いのかもしれんが
一般的にならあるんじゃない?
23名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 13:40:50 ID:rxXOVbKf
連投スマン
前スレの埋め立て完了したんだね、最後に投下した人超GJ
このスレは埋めついでに良作品投下されることがあるから侮れない
ってか何気に夢幻は初登場だよな?しかもあの組み合わせとは…やるな
24名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 17:46:05 ID:qTufpe5w
      ____
     ノ"/⌒ヽ\     ∧  
   ノ<___∠_ノj ,}   |Y|  
 ∠_,トi.て> , 'て)jク.   |.|.| 続きの投下マダー?
     ~ゝ、.ー‐_/へ   _|.|.|_
   ,イ´_l ヽ ̄ノ`フ二二に)
   \_>|   ̄ {::::/   U
     (_,j ニ@ニl;/
      ├‐r‐i‐┤
       |ー'|. |ー'|
     'ー'   ー`
25 ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 21:55:57 ID:gCkA/357
遅ればせながら>>1乙です。

私本・時のオカリナ/第四部/第四章/サリア編その6/前編、投下します。
といっても、リンクの今回の相手はサリアではなく、幽霊四姉妹。しかも未遂。エロ薄いです。
264-4-1 Saria VI-1 (1/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 21:57:14 ID:gCkA/357
 南の荒野からコキリの森まで、リンクはシークと行動をともにした。
 すでに知り合っていたはずのシークとエポナは、この歴史改変後の世界では、初対面という
間柄に戻ってしまっていた。そのため、当初、エポナはシークを大いに警戒した。しかしここでも
エポナは、リンクがシークに寄せる信頼を感じ取ったようであり、また、改変前の世界の記憶を
持つシークが、エポナの扱いをわきまえていたこともあって、関係は急速に改善した。三日後、
ハイラル平原とコキリの森が接する場所に到達する頃には、エポナはシークが自分の背に乗る
ことを──やはりリンクが同乗する場合に限ってではあったが──許すようになっていた。
 平原と森が接する場所といっても、森の方は焼け跡だった。焼け跡は、南東の方角を中心として、
そこから先のかなりの範囲に広がっていた。が、東方には森の焼け残った部分が遠望でき、歴史の
改変が紛れもない事実であることを物語っていた。
「ここからは、君ひとりで行きたまえ」
 焼け跡を前にして、シークは言った。
「君はどうするんだ?」
「ここで見張りをする。敵が寄せてくることはないと思うが、念のためだ。何かあったら知らせに
行く」
 リンクは頷いた。エポナをどうするか、と考え、やはり残してゆくと決めた。焼け跡を行く
だけなら支障はないが、神殿に入っている間、魔物が跳梁しているという森にエポナを留め置く
ことになるのが心配だったからだ。ここでシークと一緒にいれば安全を保てる。
 すでに聞いていた森の現況を、再度確認したのち、リンクはシークに別れを告げ、黒々と
焦げついた土地へ入っていった。

 改変前の世界で森の壊滅を初めて知った時には、限りなく重い心で、身を引きずるようにして
進んだ焼け跡を、いまはうってかわった高揚感に煽られ、リンクは力強く歩んでいた。
 サリアを助けるために。サリアに『森の賢者』としての真の覚醒をもたらすために。
 だが──と思いは浮遊する。
 サリアをどうやって覚醒させるか。半覚醒したサリアに会えばわかるのでは、とシークは
言ったが……そうするまでもなく、ぼくはその方法について、すでに手がかりを持っている──
そんな気がしてならない。
 半覚醒といえば、そこにも引っかかる点がある。サリアが神殿という場の力で半覚醒に至った、
というのがシークの推測だ。けれども、ぼくは疑問を感じる。それだけではないのではないかと。
理由はわからないが……
 曖昧な思考を続けるうち、不意に記憶がよみがえった。
 ナボール。
 ぼくがナボールに会ったのは、魂の神殿の中だった。なのに、ナボールには、覚醒どころか
半覚醒の気配すらなかったじゃないか。
 では、なぜサリアだけが? サリアとナボールの違いは?
 答はすぐに出る。サリアとは、身体の交わりがある。ナボールとは、ない。
 そういえば、マロンの場合も、その未来が変わった原因は、もとを正せば、ぼくとの交わり
だった……
 稲妻のような衝撃がリンクを襲った。
 そうだ! あの確信! サリアと結ばれることがサリアを救うことになるという不思議な確信!
あれはこのことを意味していたんだ!
 七年前の世界で、ぼくとサリアは結ばれた。それが第一の要因だった。その時には何の変化も
ないように見えたサリアだが、のちに森の神殿に入り、神殿という場の影響──第二の要因──を
受けることで、半覚醒に至ったのだ。
 時の勇者としての力を発揮できない子供のぼくは、サリアに完全な覚醒をもたらすことは
できなかった。とはいえ、その前段までは可能だった。子供のぼくにも潜在的な力くらいはあった、
ということか。
 ならば、サリアに完全な覚醒をもたらすためには……勇者としての真の力を発揮できるはずの、
いまのぼくが……もう一度……サリアと……
 むず痒いような、くすぐったいような、ぞくぞくとした感触が背筋を走り、リンクの意識は
現実に戻った。すでに焼け跡は尽きようとしており、リンクの前には、焼失を免れた森の領域が、
美しく幽玄な、大きな影となって横たわっていた。
274-4-1 Saria VI-1 (2/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 21:58:00 ID:gCkA/357
 焼け跡と森との境界は、かつてデクの樹が築いていた障壁の線に一致していた。先には一筋の
道が、深い森を貫いて延びている。
 ここにサリアが結界を張っているのだ。ガノンドロフやゲルド族の侵入を禁じる、その結界を、
ぼくは通り抜けることができるだろうか。
 疑問は一瞬で消え去る。
 シークは森へ潜入できた。ぼくにできないわけがない。
 一歩、踏み出す。何の抵抗もなく、身体は境界線を越え、森の中へと入る。次いで慎重に、道の
上を、数歩、進んでみる。異常なことは起こらない。
 安堵の息をつき、リンクは前進を再開した。やがて道は谷川に行き当たった。焼け落ちる
ことなく架かっている吊り橋を渡り、トンネルのように木々が生い茂った一本道を急ぐ。
 道が終わりに達し、仲間たちの住む、開けた場所に出た。その瞬間、前方から突っこんでくる
異様なものの気配を感じ、リンクは咄嗟に横っ飛びで身をかわした。
 青黒い球状の物体。大きく開かれた口。密集したギザギザの歯。デクババだ!
 以前、デクの樹サマのまわりで見た魔物。けれども、いま目の前にいるこいつは、その時の
ものよりも格段に大きい。
 剣を抜き、楯を構える。じりっと足を近づけた瞬間、それは猛然と頭を突進させ、楯に
ぶち当たってきた。盾を持つ右手にしびれが走る。
 大きいだけじゃない。力も速さも凶暴さも、前の奴とは大違いだ。
 だが──と心を落ち着かせる。
 茎で地面に釘づけになっている相手だ。動ける範囲は限られている。
 足を出す。猪突してくる頭を、またも横っ飛びで避け、着地と同時に剣を横に払う。剣は茎を
切り飛ばし、舞い上がった頭が地面に落ちる。動かなくなる。
 リンクは周囲を見まわした。森の風景は、一見、七年前と変わらない。しかしここでも空は
暗雲に覆われ、陰鬱な空気が重く澱んでいる。そして、いま倒した相手だけでなく、あたりには
数々の魔物が群れをなしていた。
「きゃッ!」
 悲鳴が聞こえた。目をやると、前方の斜面に一人の少女が倒れていた。近くに生えた大デクババが、
歯を剥き出して飛びかかろうとしている。
 一足飛びに接近する。大デクババの頭がこちらに向きを変える。変えきらないうちに剣を
振りおろし、頭を両断する。
「大丈夫かい?」
 怯えきった表情で、身を動かすこともできないでいる少女に、リンクは優しく声をかけた。
 双子の女の子の片方。そっくりの姉妹だけれど、長い間ここで一緒に暮らしてきたぼくには
わかる。この娘は妹の方だ。ただ、コキリ族が大人にならないことはわかっていても、七年を経て
何の変化もない仲間を見ると、懐かしさとともに、やはり奇異な印象を受けてしまう。
284-4-1 Saria VI-1 (3/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 21:59:09 ID:gCkA/357
 リンクの感慨をよそに、少女は怯えた表情を変えなかった。のみならず、表情は徐々に恐怖の
色すら帯び、地についた尻がじりじりと後退してゆく。ようやく腰を上げたかと思うと、少女は
あとをも見ずに駆け去り、近くの家の中へ飛びこんでいった。
 どうしたんだ? 助けてやったぼくを、どうしてそんなに怖がるんだ?
 すぐに思い当たった。
 ぼくが誰だかわからないんだ。ぼくは大人になっている。わからないのも無理はない。それに
『外の世界』を知らない彼女は、大人というものを、いま初めて見たわけだ。恐怖を感じて当然だ。
 頭では納得するリンクだったが、心が寂しさに浸されるのはどうしようもなかった。
 ここで暮らしていた時も、仲間に溶けこめない疎外感が常にあった。それはいまもなくならない。
なくならないどころか、いっそう強くなったと言わざるを得ない。
 リンクは首を振った。
 みんなに何と思われてもかまわない。ぼくはぼくにできることをやるだけだ。
 歩を進めながら状況を観察する。見える範囲内だけでも、数え切れないほどの魔物がいる。
大デクババだけではない。地にもぐっていたオコリナッツが顔を出し、大きな種を吐きかけてくる。
池の中にはオクタロックがいて、これも石を吐き飛ばしてくる。近づくとすぐ身を隠してしまう、
臆病ながらも厄介な敵だ。飛んでくる種や石を楯で跳ね返して命中させ、動きを止めている間に
剣でとどめを刺す。大デクババも手当たり次第に斬り捨てる。
 とりあえず手近な範囲の魔物を一掃したが、全滅させるにはほど遠い。これほどの数の魔物を、
ガノンドロフは森に送りこんだのだ。みんなさぞかし苦しい思いをしたことだろう。
 ふり返ると、知った顔のいくつかが、各々の家の戸口からわずかに覗き、こちらを注視していた。
しかし目が合うが早いか、顔はそそくさと家の中に引っこんでしまう。
 いいさ、気にはしない。こうやって、外に出られるくらいにはしておいたから、少しは気を
休めてくれよ。
 心で仲間たちに語りかけ、リンクは迷いの森へと足を向けた。

 迷いの森からは奇妙な風が流れ出ていた。勢いはさして強くなく、それほど冷たくもなかったが、
肌にまとわりつく何とも言えない異様な雰囲気が、入口に立つリンクの身体を震わせた。
 心を奮い立たせ、曲がりくねった道をたどって行く。森の中に魔物は見当たらず、進行に障害は
なかった。が、進むにつれ、風は強さと異様さを増し、先にひそむ邪悪なものの存在が、明白に
感じ取れるようになっていった。
 森の神殿にいるサリアが危機に瀕している徴候なのだろうか──と胸は騒ぎ、歩みは速まる。
その歩みが、いくつめかの角を曲がった瞬間、ぴたりと止まった。
 細い道がそこだけ幅を増している、小さな泉のほとりに、一人の少年が腰を下ろしていた。
 ミドだった。
294-4-1 Saria VI-1 (4/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:00:01 ID:gCkA/357
 会いたかったわけではない。子供の頃は喧嘩ばかりしていて、ろくな思い出がない相手だ。
それでも、ひしひしと迫る邪悪な空気の中、敵ではない、見知った人間の姿を目にして、心は
和んだ。同時に、こんな所でミドは何をしているのだろう、と疑問も湧く。
 おびやかさないように、と、ゆっくり近づいた。足音を聞きつけたのだろう、ミドが頭を上げ、
こちらを見た。両目と口が大きく開かれ、顔には驚愕と戦慄が満ちあふれた。弾かれたように身が
起きた。けれどもミドは逃げようとはしなかった。
「なんだ、おまえ!? どこから来た!?」
 声は震えているが、勇ましい態度だ。腰を落とし、両手を握って、隙あらば飛びかかろうという
格好。立ち向かわんとする意志がこめられた、まっすぐな視線。ミドも大人を見るのは初めてに
違いないのに、さすがはコキリ族のボス、と感心する。子供の頃にはわからなかったミドの気丈さだ。
 その子供の頃のぼくを、やっぱりミドは、いまのぼくとは結びつけられていない。わかって
欲しくはあるが、詳しい事情を話しても、とうてい理解してはもらえないだろう。
「サリアを助けにきたんだ」
 穏やかに言う。
「サリアを?」
 下から見上げるミドの顔が、一瞬、いぶかしげなものに変わった。が、たちまちそこには敵意が
戻った。
「嘘だ! そんなコキリっぽい服なんかでごまかされないぞ! おまえは森の外から来たんだろう!
外の奴が森に入ったら、スタルフォスになっちまうんだぞ! そうならないうちに早く出て行け!」
 記憶が掘り起こされ、思わずくすりと笑ってしまう。
 昔、デクの樹サマが話してくれた。コキリ族は森の外へは出られない。同様に、『外の世界』の
人間も森に入ることはできない。無理に入ってきた者は、歳に応じて、骸骨剣士のスタルフォスか、
顔なし妖怪のスタルキッドに変化してしまうのだ──と。
 当時は、ぼくも仲間たちも、みんな怯えたものだ。いま思えば、あれは警告の意味をこめた
デクの樹サマのおどかしだったのだろう。そんなものを森で実際に見たことはないのだから。
「何をにやにやしてるんだ! サリアを助けるなんてでたらめを言ってないで、さっさと森から
出て行け!」
「でたらめじゃないよ」
 ミドの叫びに、あくまで穏やかさを保ち、リンクは答えた。
「ぼくはサリアを助けるためにここへ来たんだ。だから先へ行かせてくれないか」
「だめだ! ここは誰も通さない!」
 ミドが両腕を広げて立ちふさがる。
 さて、どうしたものか。腕ずくで通るのは簡単だが、そうはしたくない。どうすればミドを
納得させられるだろう。
304-4-1 Saria VI-1 (5/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:00:47 ID:gCkA/357
 考えた末、リンクはサリアのオカリナを取り出した。それだけでは気づかない様子のミドを見て、
オカリナに口をつけ、『サリアの歌』を奏でてみせる。ミドの表情から敵意が消え、
「それ……サリアがよく吹いてた曲だ。おまえ……ほんとうにサリアを知ってんのか?」
 驚きと意外さにとってかわり、
「その曲……サリアが友達にだけ教えてくれる歌なのに……」
 そして沈静がもたらされる。
 迷うがごとく、自分に何かを言い聞かせるがごとく、複雑な顔となってうつむいていたミドは、
やがて意を決したように面を上げ、きっぱりと言った。
「わかった。おまえ、信じる」
 リンクは、ほっとした。
『外の世界』の人間であるはずのぼくが、どうしてこの曲を知っているのか、ミドにはさっぱり
わからないはず。けれどもミドにとっては、そんな事情はどうでもよく、ぼくがその曲を知って
いるということ自体が重要なのだ。それがぼくに対するサリアの信頼の証明になるのだから。
 サリアを思って行動している点では、ぼくたち二人に変わりはない。ミドには理解してもらえた。
そしてぼくもまた、理解を新たにする。かつては二人の対立のもとだったその点が、いまは二人を
同志として結びつけているのだ──と。
 リンクは泉のほとりにすわった。促して、ミドにも腰を下ろさせる。ぽつりぽつりと会話が
始まり、ミドはサリアが神殿に赴いた経緯を語った。それはシークから聞いていた情報と同様の
ものだったが、より詳しい点も含まれていた。
 六年前のこと。森の外から黒い煙が上がるのを見、サリアは森の神殿に隠れて難を避けようと
言い出した。迷いの森に駆けこむサリアを、ミド以下、仲間たち全員が追いかけた。サリアは
神殿の前に立つ木に登ろうと悪戦苦闘していた。みんなでサリアを助けて木に登らせた。サリアは
神殿の入口に飛び移り、みんなも早く、と言い残して、一足先に中に入った。いきなり神殿の扉が
閉まり、あとの者は神殿に入れなくなった。黒い煙はいつの間にか消えてしまい、何ほどの被害も
なく事は収まったが、以後、神殿の扉が開くことはなく、サリアの消息は途絶えたままである。
が……
「……サリアはいつか必ず帰ってくる、そう思って、俺、ずっと待ってるんだ。でも……そのうち、
森に魔物が出るようになって、神殿の方から変な風が吹くようにもなって、俺……サリアのことが
心配で……毎日ここへ来て……けど、俺一人じゃあどうにもできなくて……」
 ミドの正直な気持ちを聞くのも、弱気な態度を見るのも、初めてのことだった。あのミドが──
と驚く一方で、垣間見たミドの真情に、ほのぼのとした思いも生まれる。
「ぼくが行って、サリアを助け出してくるよ」
 リンクはミドの肩を叩き、立ち上がった。ミドが不安そうな声を出す。
「ここから先は危ないぞ。俺たちが住んでいる所にいる奴らよりも、もっとずっと怖ろしい魔物が、
うようよしてるんだぞ」
「大丈夫さ。待っててくれ」
 笑いかけるリンクに、
「おまえ……勇気あるんだな」
 嘆じたようにミドは言い、次いで顔をそむけ、小さな声でつけ加えた。
「おまえ見てると……なんだか……あいつ、思い出すよ……」
 ミドの言う「あいつ」の正体に思い当たる。微笑みが漏れる。それを一別の挨拶に代え、
リンクは森の奥へと進んでいった。
314-4-1 Saria VI-1 (6/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:01:24 ID:gCkA/357
 迷いの森を抜けると、すぐに魔物たちが襲ってきた。みずうみ博士の図鑑で、名前と姿だけは
知っていたが、実際には遭遇したことのない連中だった。
 森を出てすぐの地点には、狼に似たウルフォスが待ちかまえていた。動きが速く、鋭い爪の
生えた前脚を振りまわしてくるのに手こずったものの、背後をとって尻尾を剣で斬り落とすと、
その場に倒れて姿を消した。
 その先の曲がった小道では、醜い犬のような顔をしたモリブリンが、リンクを認めるやいなや、
槍を構え、巨体を震わせて突進してきた。初めは手の出しようがなく、ひたすら身を隠すだけ
だったが、これも背後が無防備とわかり、突進をやり過ごして後ろから斬り伏せた。
 最後の石段には、モリブリンの親玉であるボスブリンが立ちふさがっており、棍棒を地面に
叩きつけて衝撃波を放ってきた。あまり俊敏な動きではないと見切って、衝撃波を避けながら
素早く前進し、やはり背後からの攻撃で倒すことができた。
『森の聖域』に魔物はいなかった。サリアとの思い出の場所が荒らされていないのは嬉しかったが、
神殿の上方からは、あの邪悪な風が、いっそう勢いを増して吹きつけてきていた。邪悪さの源が
神殿に存在することは明らかであり、それはとりもなおさず、神殿にひそむサリアの身に危険が
迫っていることを意味していた。
 かつてサリアが、そして自分もがそうしたように、リンクは神殿のそばの木に登り、入口の前に
飛び移った。聞いていたとおり、そこは厚い石の扉で塞がれていた。シークの教示に従い、
『時のオカリナ』を取り出して、『森のメヌエット』を奏でる。
 果たして!
 重々しい響きとともに、扉は開いた。
 心の中で快哉を叫び、シークへの感謝の思いを噛みしめつつ、リンクは森の神殿へと踏みこんだ。
324-4-1 Saria VI-1 (7/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:02:16 ID:gCkA/357
 前に来た時は無人の廃墟に過ぎなかった神殿だが、いまはそうもいくまい──という予想は、
いきなり的中した。入った所で二体のウルフォスに襲われた。時間はかかったものの、先刻の
経験を生かして斬り捨てた。次の廊下では、大蜘蛛のスタルチュラが天井から急降下してきた。
硬い背には剣も効かない。試行錯誤の末、腹部を刺して葬り去る。
 最初から立て続けにこのありさまでは、先が思いやられる。ハイラル平原の魔物など、これに
比べればのんびりしたものだった。
 嘆息しつつも気を張りつめさせ、廊下を抜けて大広間に出る。あたりに注意を払うが、敵の
気配はない。いや……
 中央に、低い垣で囲われた、やや広い正方形の領域がある。垣の四隅の燭台に灯がともっている。
緑、青、赤、そして紫。もちろん以前には、こんな灯などついてはいなかった。
 慎重に近づく。が、あと少しというところで、四つの灯は燭台から浮き上がり、四方に散って、
壁の中へと消えていった。
 何なのだろう。皆目わからない。気にかかるが、いまはこの部屋に敵はいないようだ。早く
サリアの居場所を突き止めなければ。
 神殿の構造は覚えている。中心部にあたるこの大広間が各部への起点となる。
 正面の廊下を通り抜け、行き止まりの部屋に入る。
 無人。
 引き返そうとした途端、背後で物音。ぎょっとしてふり向く。剣と楯を構えた骸骨の剣士が
立っている。
『スタルフォス!?』
 目を見張るリンクに、ごおっと空気を巻いて剣が振りおろされる。咄嗟に楯で受け、こちらも
剣を構える。
 デクの樹サマの言っていたことはほんとうだったのか。それとも単なる偶然の一致で、こいつは
数ある魔物の一種に過ぎないのか。
 思ううちにも剣が迫る。盾で防ぐ身はじりじりと後退する。
 些末なことを考えている余裕はない。集中しろ! 集中しろ!
 剣を振るって反撃する。すべてが楯で跳ね返される。隙がない。斬りこめない。
 こんな正統派の敵は、ドドンゴの洞窟で出会った大蜥蜴──リザルフォス以来だ。だがこいつは
もっと強い。
 下がって間合いを取り、深く息を吐く。それが油断だった。取ったはずの間合いをものともせず、
敵は大きく跳躍して上から剣を叩きつけてきた。予想外の攻撃を避けきれず、右肩を剣先に
抉られてしまう。
 異常なほどの運動能力──と背筋に冷たいものを感じながらも、リンクは一筋の光明を
見いだしていた。
 剣を振りかぶって跳躍する際、奴の胴はがら空きになる。それがおそらく唯一の隙。しかし
タイミングはきわどい。奴の剣が早いか、自分の剣が早いか、一瞬の差だ。
 覚悟を決める。わざと小競り合いを続け、機を見て後退する。誘いにかかり、跳ね飛んでくる敵。
 見極めろ!
 殺到する剣をぎりぎりまで引きつけ、ここしかないという瞬間に、攻撃をかいくぐって左腕を
突き出す。マスターソードが脊椎骨を貫く。上下に分離した敵が床に落ちる。即座に頭蓋骨を
破砕する。直後、敵の全身の骨がばらばらになり、その場に散らばった。
 息を喘がせ、リンクは勝利を反芻した。
 頭蓋骨と脊椎骨を狙う。シークがスタルベビーを倒したやり方だ。自分がスタルベビーを相手に
する際には、マスターソードの威力に任せ、細かいことなど気にせず倒しまくるのだが、より
強力な敵と相対して、シークの効率的な方法を思い出し、同じ骸骨の敵ならば、と応用したのが
図に当たった。
 右肩の傷は痛むものの、腕を動かすのに支障はなかった。布を巻きつけて止血を施し、リンクは
大広間に戻った。
334-4-1 Saria VI-1 (8/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:03:14 ID:gCkA/357
 中庭は大デクババとオクタロックの巣だった。楯と剣を使い分けて何体かを倒したが、きりが
ないとわかって引き下がった。
 神殿は中庭を取り囲むような形で建てられており、左右の廊下を通じてぐるりと一周できる
ようになっている。リンクは左側の廊下を進んだ。スタルチュラの不意打ちや、色つきの炎を
まとった頭蓋骨──青バブルと緑バブルの浮遊攻撃を切り抜け、神殿の側面の廊下に入る。
『これは!?』
 驚愕する。廊下が先に延びるにつれ、九十度ねじれているのだ。空間の把握ができず、目眩が
しそうになる。
 以前は普通の廊下だった。何かの罠かもしれない。だが道はこれだけ。行くしかない。
 リンクはそろそろと足を進めた。進めば側壁に横向きで立つことになる。頭がぐらぐらしたが、
廊下に合わせて自分の位置もねじれていくためか、落ちたり転んだりすることはなく、無事に
突き当たりまで行けた。
 戸をあける。四角い小部屋。立ち止まって見まわす。見覚えがあるようで、しかし記憶とは
異なった場所だ。
 不意に頭上に気配。反射的に前転。背後に落下音。ふり返る。巨大な手。フォールマスター!
剣を振る! 斬る! 斬る! 斬る! 数度の斬撃に寸断される手。
 一瞬も気が抜けない。
 肩で息をし、それでも気を奮わせ、次の廊下に進む。ねじれはなく、記憶のとおりの古びた
廊下だった。敵の姿もないので、しばらくとどまり呼吸を整えてから、先に続く階段を登った。
 踊り場の壁に目がとまる。絵が掛かっている。若い女性の肖像画。
 前にはこんなものはなかったはず……
 気にはなったが、絵は敵ではない。懸念を捨てて階上に至り、リンクは新たな部屋に入った。

 部屋には何もいなかった。いないように見えた。見せかけだ、とリンクは思った。
 案の定、数歩踏み出すと、
『スタルフォス!』
 しかも、
『二体!』
 激闘が始まった。一体だけでも容易ではないのに、二体となると手の施しようがない。片方の
隙をうかがっていると、必ずもう片方が攻撃してくるのだ。回避しようにも動ける範囲は狭く、
受ける手傷が増えてゆく。がむしゃらに攻めに出る。完璧に封じられる。さらに手傷は増す。
 これではだめだ。二方向に敵を置くのは禁物。二体を一方に固めなければ。
 横っ飛びを駆使して素早く位置を変え、二体が重なるように誘導する。これで敵も動きが鈍る。
下手に動けば同士討ちになるからだ。そのうち焦れて──
 やはり来た!
 一体の跳躍。さっきの要領で脊椎骨を突き崩し、さらに頭蓋骨に狙いをつけた瞬間、残りの
一体が跳躍してきた。寸前でかわし、距離をとって向かい合う。
 一体だけなら、とじっくり構えるうち、倒したはずの一体の骨格が元に戻り始める。
 復活するのか! 頭蓋骨を砕かなければとどめを刺せないと!
 振り出しに戻ってしまう。
 同じ戦法でいいだろうか。いいだろう。一体が囮となり、もう一体がけりをつける、というのが、
いまの奴らの狙いだ。それにかかったふりをしてやる。
 二体を重ねる。さっそく一体が跳んでくる。もはや慣れたタイミングで脊椎骨を刺し貫く。
もう一体が襲いかかってくる気配を背に、落下する頭蓋骨を思い切り蹴飛ばす。同方向へ身を
投げる。ぎりぎりで空を切る敵の剣。壁に衝突した頭蓋骨に追いつき、すぐさま剣で叩き壊す。
 これで残り一体。いつでも跳んでこい。もうやり方は会得した。
 だが敵も慎重になった。跳躍しようとはしない。こちらのカウンター攻撃を読まれているのだ。
間合いはそのままに互いがぐるぐると位置を変える持久戦となる。
 相手もカウンターを狙っているだろう。迂闊には攻められない。かといって、この状態が続けば、
負傷しているこちらが不利。別の戦法をとらなければ。
 腹を決める。鋭く踏みこみ突きを繰り出す。楯で防がれる。思ったとおり──と瞬時に横転。
背後に回って脊椎骨を断つ!
 崩れ落ちる頭蓋骨にマスターソードを突き刺し、戦闘の幕は下りた。
344-4-1 Saria VI-1 (9/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:03:59 ID:gCkA/357
 勝った──と思った直後、疲労の蓄積が実感され、リンクは床に膝をついた。身体を動かせ
なかった。息は切れ、傷は痛んだ。が、難敵を倒した達成感は肉体的な消耗を充分に補ってくれた。
傷は多いが、いずれも軽く、運動に大きな影響はない。水筒の水で喉を潤し、呼吸が静まるのを
待つ。待つうちに──
 ──リンク……
 声?
 ──リンク……
 声だ! 誰の?
 ──リンク……あたし……
「サリア!」
 あわてて立ち上がり、室内を見まわす。姿はない。ないけれど、この声は確かに──
 ──リンク……これを……
 部屋の中央にまぶしい光が現れる。驚き見守るリンクの前で、やがて光は散り、あとには大きな
箱が残される。
 サリアが、ぼくに、これを?
 歩み寄り、箱の蓋をあける。中にあるのは、頑丈そうな弓と、三十本ほどの矢が入った矢立。
 ──『妖精の弓』……これからは、それが必要になるわ……気をつけて、リンク……絵が……
をだ……として……
 何とか聞き取れていたかぼそい声が、突如、不明瞭になる。
「サリア?」
 ──あ……しん……かにいる……ここに……ろしい……りょうが……リンク……
「何だって?」
 ──はやく……きて……
「サリア! どこにいるんだ!?」
 ──たすけて……
「サリア!!」
 声は消えた。
 リンクの身は震える。敵への憤りのために。
 サリアは神殿の中にいる。魔物どもがその身をおびやかしている。ぼくが魔物を倒したことで、
サリアの声が届くようになったのだ。とはいえ、危険はなくなっていない。声が聞き取りづらく
なったのは、残った敵が妨害しているからだ。
 そして自らへの憤りが、リンクを苛む。
 サリアに「助けて」と言わせてしまった! 二度と言わせまいと思っていた言葉なのに!
 しかし──と心を奮い立たせる。
 まだ遅くはない。決して遅くはない。サリアはいる。ここにいる。ぼくの助けを求めて、
サリアはぼくを待っている!
 あの世界ではサリアを助けられなかった。だが二度とその轍は踏まない!
 サリアがもたらした弓と矢を背に負い、リンクは力強く足を踏み出した。
354-4-1 Saria VI-1 (10/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:04:52 ID:gCkA/357
 神殿は、ほぼ左右対称の形状となっている。二体のスタルフォスを倒した部屋の向こうは、
通ってきた側と同様、階段となっていた。そこにも掛かっている別の女性の肖像画を横目で
見ながら階下に至り、さらに続く廊下をリンクは進んだ。先にはやはり四角い小部屋があり、
そこで角を曲がると、またもねじれた廊下が現れた。落ち着かない環境に耐え、突き当たりの
部屋に入る。石の壁で囲まれた奇妙な部屋で、そこから先は行き止まりだった。
 おかしい。前に来た時には、こんな部屋はなかった。神殿を一周して、元の大広間に戻れたはずだ。
 道を間違えたか、と引き返す。それらしい分岐は見当たらない。何度も往復してみる。敵が
出現しないので、移動は楽だったが、やはり道は見つからなかった。
 さんざん右往左往した末に、あのねじれた廊下が怪しい、と思いついた。注意深く観察し、
最初のねじれ廊下の入口の上に、目玉のような印を発見した。少し考え、弓を使うことにした。
ゲルドの砦で弓の扱い方は習得しており、印を射るのは造作もなかった。
 廊下への戸をあけてみると、ねじれはみごとに消え去っていた。先の四角い小部屋も、
さっきとは様相が異なり、記憶に合致する形となっていた。廊下とともに九十度回転していたため、
見たことがありながら、そうとわからなかったのだ。
 反対側の小部屋とねじれ廊下も復元していた。小部屋からは、それまでは壁の高い所に開いて
いた別方向の通路をたどれるようになっていた。覚えのある部屋に出る。三枚目の肖像画が壁を
飾っているその部屋を過ぎ、次の廊下を抜けると、そこが元の大広間だった。
 言うまでもなくガノンドロフのものであろう、空間をも狂わせる魔力を目の当たりにし、
リンクの精神は絶え間ない緊張にさらされていた。その緊張が、大広間に戻ったことで、ふと緩んだ。
「お待ちしていました」
 驚き、立ち止まる。が、警戒心は起こらなかった。それほど穏やかで、心の緩みに染みいって
くるような、女の声だった。
364-4-1 Saria VI-1 (11/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:05:35 ID:gCkA/357
 大広間の中央の、低い垣で囲われた、正方形の領域。その四つの隅に一人ずつ、若い娘が
立っていた。歳は少しずつ異なっている。各々の間の差は、一、二歳ほどか。いま声を発した
娘が最年長で、自分と同じくらいの年齢と見えた。その娘が、
「私たちは、この屋敷に住んでいた姉妹です。魔王の呪いで身を消されていましたが、あなたが
魔物を退治して下さったおかげで、元の姿を取り戻すことができました。心よりお礼を申し上げます」
 と言葉を続け、最後にゆったりとした仕草でお辞儀をした。他の三人も同じように、丁重な礼を
送ってくる。
「あ、いや……」
 突然の成りゆきに当惑し、まともな返事ができない。目の前にいる女性たちの様子を把握する
のに精いっぱいだ。
 四人の姉妹。顔が似たところがあるのはそのせいか。いずれも美しい。物腰や服装にも高貴な
雰囲気が共通して感じられる。けれども風貌にはそれぞれの特徴があって、たとえば、最年長の、
この娘は……
「私は長女のマーガレット。メグと呼んで下さい」
 ちょうど彼女が名乗りをあげた。
 そう、このメグは、年上だけあって、大人っぽく、落ち着いていて、優しげだ。紫色のドレスの
上からでも、身体つきがふっくらとしているのがわかる。
「こちらは次女のジョーゼフィン」
「ジョオって呼んで」
 メグの隣の一角に立っていた娘が、気さくな態度で歩み寄ってきた。身にまとう赤い衣服に
合った、活発そうな印象を受ける。男っぽいと言ってもいいくらいだ。次女というが、メグより
少し背が高いかもしれない。
「そちらは三女のエリザベス。さあ……」
 別の一角に立つ青い服の少女を、メグが手で差し招いた。少女は何も言わず、もじもじしている。
「ベス、こっちにいらっしゃい」
 メグの再度の呼びかけに、少女はうつむき、それでもようやく近づいてきて、
「よろしく」
 と蚊の鳴くような声で言った。内気な性質のようだ。その心の内をぜひ知りたい、という誘惑に
駆られそうになる。
 ベスから目を離せないでいると、咳払いが聞こえた。四人目の少女だ。メグが微笑みながら
紹介する。
「あちらが四女のエイミーです」
「初めまして。お会いできて光栄ですわ」
 待ちかまえていたように言葉が飛び出す。口調は淑女を気取っていても、緑色の衣装を
ひるがえして駆け寄ってくるさまは、歳に合った子供っぽさをあらわにしている。その天真爛漫な
笑顔に誘われ、リンクも笑みを返した。
374-4-1 Saria VI-1 (12/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:06:15 ID:gCkA/357
「さぞお疲れのことでしょう。こちらでお休みになって」
 メグが手で示す方を見る。正方形の領域の真ん中に、天蓋つきの大きなベッドが現れていた。
いつの間に──といぶかしく思いつつも、心は優先すべきことがらへと走る。
 神殿を一周してもわからなかったこと。
「心遣いはありがたいけれど、ぼくはサリアに会わなくちゃならないんだ。サリアがどこに
いるのか、知っているのなら教えてくれないか?」
 四人は顔を見合わせた。無言で意志を通じ合わせているようだった。
「知っています」
 向き直ったメグが言い、さらに続けた。
「場所はすぐにでもお教えできます。ですが、その前に、私たちの願いを聞いていただけないで
しょうか」
「君たちの願い?」
「あなたに救われた私たちですが、まだ救いは完全ではないのです。元のままの私たちに戻る
ためには、あと少し、あなたのお力を借りなければなりません」
「どうすればいいと?」
「賢者の目覚めに必要なことが、私たちにも必要なのです」
「え──?」
 賢者の目覚めに必要なこと。それが何なのか、ぼくは知っている。知っているが……
「お願いします」
 とメグが腰をかがめる。続けて、
「あたしたちを」
「どうか」
「お救い下さい」
 ジョオ、ベス、エイミーが順に言葉を継ぐ。
 四人の麗しい女性が、かしずくがごとく眼前にある。さっきまで魔物が跳梁していた神殿の
薄闇の中で、それは場違いともいえる幻想的な光景だった。
 頭がぼうっとしてくる。酒に酔った時のようだ。まさに彼女たちから、自分を酔わせる香気が
放たれているのではないか、と思えてならないほどに。
 そう、ぼくはサリアを、そして他の賢者たちを救うべく、行動しようとしている。それは
マロンを救った行動でもある。ならばここで、目の前の彼女たちを救うよう行動することに、
何の問題があるだろう。
「さあ……」
 メグが左に寄り添い、腕を取る。
「一緒に……」
 ジョオが右に寄り添い、腕を取る。
 二人にはさまれ、ベスとエイミーに先導されて、足は進んでゆく。ベッドに到達する。柔らかい
布団に腰を下ろす。ブーツを脱がされる。いつの間にか剣と楯と弓矢も背から下ろされている。
どこに置かれたのか、と確かめようとする目が、前に立つ姉妹たちから離れなくなる。
 一様に優雅な動きをもって、四人がはらりと着衣を解く。顔のみならぬ美しい裸身が、
四者四様の魅力を湛えて披露される。言葉も出せず見つめていると、四つの裸体にまわりを
取り囲まれ、ベッドの中央へと運ばれる。
384-4-1 Saria VI-1 (13/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:07:02 ID:gCkA/357
 上体を起こしたまま両脚を伸ばしたリンクの、やはり左腕を取ったメグに手招きされ、ベスが
顔を赤らめながら位置を移し、右腕にすがりつく。左脚にはジョオが、右脚にはエイミーが、
それぞれ腰を落として触れかかる。
 メグが身をもたせかけてくる。左腕が胴を抱く形になり、手は自然にメグの乳房に触れる。
手で包みきれない豊満な柔らかみと、ほのかに湿り気を帯びた肌に心を奪われるうち、メグの唇が
首筋から頬へと這い寄ってくる。左に顔を向けて、その唇に応えようとした時、右腕をぐいと
引っぱられた。手のひらが別の柔らかみを感知する。ふくらみきるにはまだ間のある発達途上の
隆起。引っこみ思案のはずのベスが、大胆にも自らの意志で右手に胸を押しつけてくる。
 メグとベスに上半身を分け与え、接触を陶然と味わううち、下半身への侵蝕も始まる。ジョオの
細い身体が左脚を跨ぎ、浅黒い皮膚に覆われた、小さめながらも緊密な弾力を秘める乳房が、
大腿に押しつけられる。純白の肌のエイミーも、小さな身体を右脚に絡ませ、あるかなきかの胸の
隆起をこすりつけてくる。二人の手が、脚から腰へ、そして股間へと伸び、すでに硬く膨張した
部分に、絶妙な愛撫が施される。
「う……」
 肌着を介しているとは思えない、生々しい手と指の感触に、思わず口から呻きが漏れる。その
部分の感覚だけがぐんぐん増幅され、他の部分からは次第に力が失われてゆく。
 下着を奪われる。抵抗しようという気にもならない。ジョオとエイミーが争うように、直立した
欲望の中心をまさぐる。荒々しいほどの玩弄が、いまはただ快い。
 両手を下に導かれる。恥毛の感触。左は濃く、右は薄い。けれどもその下の狭間の、熱と潤みの
おびただしさと、
「あ……はぁ……ぁ……」
「う……ん……あん……」
 快美を訴えてやまない声は、メグもベスも変わらない。
 ああ、こうして身を投げ出し、四人の美女のなすがままになっている自分は、何と幸福な
存在だろう。酔っている。ぼくは酔っている。酒の酔いはごめんだが、こんな酔いならいくらでも……
 うつろう目が、正面の壁に止まる。掛けられた絵。四枚目の肖像画。描かれているのは……メグ。
 思い出した。他の三枚の絵に描かれていたのは、ジョオとベスとエイミーだった。ここに
住んでいたという四人の姉妹。だからその絵が飾られているんだ。
 しかし待てよ、前には絵なんか掛かっていなかったぞ。どうして……
 ああ、あれは改変前の世界だった。いまは世界が変わっているんだ。だから前にはなかった絵が
あっても、何の不思議も──
 ないか?
 どこか……おかしな感じが……
「ジョオ」
 メグの呼びかけにジョオが頷き、直立した部分を握りしめ、激しく摩擦を加え始める。どっと
押し寄せる快感が、すべての思考を洗い流そうと──
 いや、やっぱりおかしい。前にはこの神殿になかった絵。同じく前にこの神殿にいなかったのは……
『魔物?』
 馬鹿な。彼女たちはむしろ魔物の被害者だ。
 四人の衣装。紫、赤、青、そして緑。
 燭台の灯。緑、青、赤、そして紫。
 あの灯の正体は、彼女たちだったんだ。ここで暮らしていて、ガノンドロフの魔力によって身を
消されて……そういえば……サリアが絵のことを何か言いかけていたようだけれど……あれは……
394-4-1 Saria VI-1 (14/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:08:05 ID:gCkA/357
 ──リンク!
 声!
 一気に意識が冴えわたる。
 違う! ぼくは知っている! たびたびサリアと一緒に『森の聖域』で時を過ごしたぼくは
知っている! ガノンドロフが暗躍し始める前から、ここは廃墟だった! 人など住んでは
いなかった! いままでどうして気がつかなかったのか!
「離せ!」
 まとわりつく女たちを振り払おうとした瞬間、もの凄い力が身体に加わった。左腕をメグに、
左脚をジョオに、右腕をベスに、右脚をエイミーに、それぞれがっちりと固められる。動けない。
女とは思えない力だ。
「ジョオ! 早く!」
 メグが叫ぶ。激した声。穏やかさの欠片もない。
 陰茎を握ったまま、ジョオが顔を引き裂くように大口をあけた。悪鬼の形相!
『噛み切られる!』
 全身の筋肉が最大限の瞬発力を発揮した。
 攻撃にかかったジョオが圧迫を緩めたのに乗じ、強引に左膝を腹へ打ちこむ。動物的な呻きを
あげてうずくまるジョオ。その頭越しに右へ旋回させた左足が、エイミーの側頭部を直撃する。
小柄な身体が吹っ飛んでゆく。解放された両脚を後転させ、
「畜生! こいつ!」
 と豹変し怒鳴り声をあげるベスに蹴りを入れる。右腕が自由になる。すかさずメグに拳を
叩きこみ、左腕を引き抜く。ベッドから飛び降りる。前転で壁際まで逃れる。
 ふり向く。ベッドは忽然と消えていた。四姉妹の姿もない。かわりに四つの黒い影が室内を
浮遊していた。醜い顔。ねじ曲がった両腕。握った手燭が四つの光を発している。紫、赤、青、そして緑。
 これが奴らの正体!
 見まわす。床に放置された剣と楯と弓矢。駆け寄ってマスターソードに飛びつく。鞘を払って
斬りかかる。届かない。剣を振りまわす。ぎりぎりのところで避けられる。
 一体を追い回すうち、後ろに気配がした。避ける間もなく、いきなり背中に衝撃が加わり、床に
突っ伏してしまう。残りのうちの一体が体当たりしてきたのだ。そっちに狙いを移すと、今度は
背中に熱を感じた。燃えている。手燭の火を服に移されてしまった。あわてて床に転がり、消し止める。
 四体を同時に相手にしていては勝ち目がない。かといって一体に攻撃を集中させてはくれない。
スタルフォスのようにひとまとめにしたいが、敵は分散を心がけているようだ。簡単にはいかない
だろう。それに、できたところで剣は効かないのだ。
404-4-1 Saria VI-1 (15/15) ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:08:41 ID:gCkA/357
 ふわふわと空中を自在に飛びまわる四体。幽霊のように。ポウのように。
『ポウ?』
 思い出す。シークの言葉。
『剣の間合いは完全に見切られる。倒すには飛び道具が必要だ』
 飛び道具! サリアも言った!
『これからは、それが必要になるわ』
 剣を捨てる。弓に飛びつく。構える。矢をつがえる。突進してくる一体。手燭の緑の光。狙う。
放つ。目の前で矢に貫かれ、空気を裂くような悲鳴をあげて消え散るエイミー。
『いける!』
 残る三体を目で追う。立体的な動きだが、速くはない。軌道もある程度は予測できる。
 気を落ち着けて、素早く射かける。ベスが、続けてジョオが、聞き苦しい声とともに消滅する。
 残りは一体、と狙いをつけた瞬間、
『えッ?』
 メグが四つに分裂し、周囲をぐるぐると回り始めた。狼狽しかかる心を叱咤し、思考する。
 四体のメグ。そのうち一つが本体だろう。他の三つは囮だ。だが、どれが本体なのか。
 弓を構えたまま必死で見定めようとするが、わからない。メグの回転は徐々に速くなり、中心に
いる自分を包みこむように迫ってくる。一体に向けて放った矢は、あっさり素通りしてしまう。
 四体が同時に飛びかかってきた。バック宙の連続でかわす。それも束の間、たちまち追いついて
きた四体は、またも周囲で回転を始めた。射てみる。当たらない。突撃を受ける。避ける。
 延々と同じ攻防の繰り返しになる。当てずっぽうで射ても埒は明かない。焦る。疲れを意識する。
脚の力が抜けそうになる。
 焦りを抑え、攻撃を手控えて観察に専念する。
 何度かの突進をかわしたのち、ようやくわかった。攻撃の直前、一体のみが、わずかに早く
動くのだ。その一体から目を離さないようにしておき、攻撃寸前で回転を止めた瞬間、
すかさず矢を放つ。矢はみごとに命中し、四体のメグは四つの叫びを残して消え失せた。
 切れそうになる緊張の糸をかろうじて保ち、さらなる敵を警戒する。
 いない。
 ほっと息をつき、リンクは床にすわりこんだ。石の冷たさが尻に感じられ、自分が股間を
露出させて戦っていたことに気づく。あたりに目をやる。下着が落ちている。恥ずかしさで頬が
火照ってくる。
 ぼくからまともな思考力を奪うような、何か術のようなものを、あの幽霊どもは仕掛けたに
違いない。それにしても、こんなにあっさり敵の誘惑にはまってしまうとは……何という間抜けさ、
情けなさ。もっと気を引き締めなければ。
 おのれを叱りつけ、衣服と装備を整えながら、危ういところで自分を救ってくれた声のことを、
リンクは思い出した。
 あれは間違いなくサリアの声。そのサリアは、まだ姿を現さない。敵が残っているという
ことなのか。いったいサリアはどこにいるのか。
 その時、気づいた。
 大広間の中央に、四角い穴が黒々と口をあけていた。


To be continued.
41 ◆JmQ19ALdig :2007/11/14(水) 22:09:25 ID:gCkA/357
以上です。最初の神殿なので、敢えてリンクには探索・戦闘をみっちりやらせましたが
今後は簡略にします。
42名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 22:18:59 ID:QKgmlFcr
乙〜 4姉妹にちょっとDSの夢幻の砂時計の
幽霊船の4姉妹を思い出しました
43名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 22:52:34 ID:qTufpe5w
乙です。
丁度VCで時オカを遊んでいる最中だったので
数日前に通り過ぎた神殿とその苦労がまざまざと蘇ってきました。
あの四姉妹が萌えキャラに変わるとはw いつもながらお見事です。
44名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 03:14:54 ID:8GadFG6i
乙。記憶が蘇ってくる…
フックショットは出さない方向ですか?でもロングフックは外せないですよね…
そこらあたりも含めて楽しみにしています。
45名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 05:07:15 ID:3wGOHZwn
四姉妹の姿と声がアニメ世名作劇場バージョンで再生された俺は
間違いなくオッサン

いつかきっと私にも〜♪
46名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 06:42:13 ID:4SqG/6Qt
>>41、前スレ>>486
GJ!!
ちょうど砂時計クリアしたとこだw

この行きずりの男はラインバック?
突き放しているようでどこか優しい口調は
奴に違いない

ナビィ…じゃなくてシエラってすげー
ツンデレじゃね?禿萌
最後あたりのシエラとのやり取りとか
ジョリーンとのアレコレとか
ラインバックってあんな顔でツンデレにモテるよなw
スレ的には是非扱って欲しい
47名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 08:29:15 ID:4QHXlwBY
GJ!
毎度のことながら、すごい技量だ…
48名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 08:37:49 ID:PZYxD0tt
乙です〜!!
サリアとリンクが再び出会うのが楽しみ!!
49名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 22:38:34 ID:L6NB9Q+1
>>25
乙です
>>42
よう、俺
50名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 21:49:28 ID:DXHu8yDl
超 G J ! ! !
51名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 23:43:19 ID:mrFJX42h
まさかポゥで来るとは思わなかったどす。GJ

>>45
やあ俺
52名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 23:46:34 ID:PLYj/NKp
GJ!

>>42
やあ、俺
53名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 12:16:28 ID:9ef7/lo0
セックスが世界を救うのか!
54名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 21:35:13 ID:zKNG6ZQ6
姉妹とリンクの絡みをもっと見せろと思ってしまった俺。
55名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 21:59:31 ID:V9Jgpzte
コキリ村の子たちの集団全裸水浴びを再び見せろと思(ry
56名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 23:46:44 ID:xBAyFDC3
hosyu
57名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 10:56:45 ID:9kJkSuqG
下半身丸出し勇者に吹いた俺。
58名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 11:43:50 ID:OKezQol2
枡かいている最中にゲルドに襲われたしなぁ
もう何があっても驚かんよw
59名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 21:14:46 ID:GqzN2XEG
>>57
後にリンクはダビデ像のモデルとなったのである
60名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 00:05:55 ID:ZiCRhtrB
ほっしゅ
61名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 08:45:32 ID:sG4X+GpC
wktk
62名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 12:51:26 ID:dtgPaUMm
>>59
ダビデ像は意図的にマスターソードがコキリの剣だから
63名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 03:19:30 ID:U76EtGBq
ダイゴロン刀→ガノンドロフ(巨根)
マスターソード→リンク(勇者サイズ)
コキリの剣→シーク(小さいがテクニックでカバー)
64名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 17:35:11 ID:+hjCOzuN
折れた巨人のナイフ→リンク(ゴロンの)
65名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 17:38:13 ID:CJ5Fuv3o
なんという勤労感謝の日…
◆JmQ19ALdig氏の作品を読むだけで一日が終わってしまった
しかし今日という日は間違いなく有益な時間だった
66名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 22:38:41 ID:OjHZPpd4
全部読んだのか?俺もやれば良かった。
67名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 03:59:31 ID:GbJMYiNX
ルト姫さまとペアルックで正座待機…お、思いついたから書きこんだだけで
まだ脱いでないんだからねっ!



でも今マジでくしゃみでた
68名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 09:24:00 ID:K5feDC2f
俺はもう今から、ゼルダとリンクの絡みにwktkしてる。
でもリンクはアンジュとの行為が濃かっただけに
ゼルダとの行為が薄くならないかと心配してしまう・・・
69名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 10:37:46 ID:9HTBWCJn
おいおい、まだサリア、ダルニア、ルト、インパ、ナボール、
ひょっとするとゲポラ・ゲポラまで控えてるんだぞ
70名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 18:26:46 ID:5bfGUSuZ
次投下来−い。
71名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 21:47:43 ID:mmC71qjk
そろそろ全裸待機の時間ですか?
72名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 23:28:17 ID:cjThOMJ8
>>71
風邪引くぞ
靴下履いとけ
73名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 00:14:47 ID:MNeNsLyX
靴下以外スッポンポンってどこのフェチだよ
74名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 00:29:04 ID:7QnNU+Ma
>>71
あとネクタイも忘れんな。紳士のたしなみだ
75名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 09:19:28 ID:hhnHb//f
>>71
じゃあコレも頭にかぶっとけ
つトランクス
76名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 13:49:40 ID:XFTvtjO3
>>71
腹は冷やしちゃいかん
つ腹巻き
77名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 16:39:10 ID:zWMpAuUQ
>>71
忘れ物ですよ
つ[ガノンドロフ]
78名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 19:04:52 ID:MObEAeES
>>71
これもなかなかあったかいぞ
つデブ猫
79名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 22:19:11 ID:MNeNsLyX
おいおい、>>71は要らない物を引き取る係じゃないぞw
80名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 23:29:03 ID:XFTvtjO3
>>77に貰った奴に与えてあげてください
つオルガン
81名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 23:45:01 ID:tTAjc3d0
伸びてるから投下きたと思って、覗いたらこの流れwワロタwww


>>71
靴下、ネクタイ、腹巻ときてるからな…

つ うさみみずきん
82名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 00:23:26 ID:BhdoY4ca
ああ、つまり被ったトランクスの足を出す部分から、うさ耳がぴょこん、と飛び出ているわけだな

重ね着オシャレじゃん>>71
83名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 01:14:13 ID:MbDu8cI2
え?
このスレではトランクスから出るのは大抵ガノンドロフの巨根だろ?
84名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 04:44:27 ID:g3CG4ifA
ガノンドロフはトランクスかブリーフかとか以前に
「履いてない」が正解だと思う。

ていうかこういうファンタジー世界の人達って
どんな下着履いてんのかな
85名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 07:17:05 ID:O3AYO8cz
ステテコパンツかエッチな下着
86名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 08:25:38 ID:vl0ed3f2
貴重な男性器だから、下着じゃなくて防具じゃね?
87名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 13:18:24 ID:VNerCLqj
クラシックパンツ一択
88名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 15:45:04 ID:i4FpWeuh
ふんどし似合いそう
89名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 16:00:30 ID:x65Nvqx5
新着レスが増えてるから投下きたかと思ってみたら
おまえらwwwwwwwww
90名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 22:05:52 ID:RKeMmLPK
完璧に騙されたwwww
91名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 00:46:33 ID:5taRYs5x
結局今>>71はどうなってんだwwwwww
92名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 01:04:40 ID:tU3OX1CO
これまでの流れから行くと
トランクスから色んなものがはみ出てるんですよね?
93名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 01:29:57 ID:7dfs12I1
>>71→[装備]→ガノンドロフ←[敵対]→リンク←[愛]→ゼルダ→[鬱]→サリア
94名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 02:22:34 ID:2PF5NzuK
現在>>71
うさぎずきんとトランクスを頭にかぶり
あとはネクタイ・腹巻き・靴下のみという恰好でガノンドロフのオルガン演奏を聴いている
で、たまに掘られてるわけだな
95名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 00:32:18 ID:t6LHqMXN
レス増えてるから「続き投下キターーッ!」と思ったらレスだけで増えてたのかorz騙されたよw
96名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 02:59:58 ID:suOkHzZF
>>71が全裸とか言うからw
でも俺はここで一緒にwktkしてるおまいらが大好きだ
97名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 03:09:14 ID:3dudmEkD
しかしまぁ>>71にあれこれ突っ込みながらも服を一枚一枚脱いでゆく俺もいるわけで

wktkだね☆
98名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 16:44:47 ID:fqW9GSM8
もうすぐ100なのに、投下は1回だけで
あとはおまいらのレスかww
みんな待ち遠しいんだな。
99名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 22:16:03 ID:JYv49DoC
>>98
投下→数レス感想→投下

の流れより良いと思うけどね。
100名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 22:54:57 ID:PVxgCyHD
なんだかんだ言って大勢いるな。みんな待ち遠しいんだな。
101名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 23:48:57 ID:/jsndCbq
俺は日に3回はのぞきにきてるし。
もはや生きる楽しみのひとつになってる
102名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 13:43:14 ID:mRGtn5r6
毎日覗きに来てる俺は間違いなく暇人ww
103名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 02:32:32 ID:o8EkRg8j
いやいや俺のほうが
104名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 09:54:38 ID:6yAuC3xi
どちらかといえば書き手側なんだけどこんな氏マンセーな空気が他の人の投下を妨げてるってことに気づいてほしい

確かにこっちも氏の作品に期待してるしあんな上手く書けないけどさ
105名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 11:03:06 ID:mdnPeC6l
>>104
同意だな
氏自体は良いんだがその周りの信者の過剰マンセーがウザい
106名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 11:09:17 ID:2Y6W9pFE
他に語るネタが無いんで自然とマンセ−の状況になって
その結果他の作品が投下されないと
無限ループだなこりゃ
107名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 11:43:49 ID:QRY6CWeP
投下がないんだから仕方がない
別にこっちは辛口評価なんてする気はないんだ
よっぽどの虐待とかじゃない限り歓迎するということも分かって欲しい

俺もどっちかと言うと書き手側だが
108名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 12:00:21 ID:JOopWVso
投下されない作品について語れっても_w

だいたい「そろそろ他の人の作品もよみたいなー」「他の作品wktk」
なんて不思然な流れ、信者がどうこうより100倍キモいわwww

むしろこの流れでまったく関係ない新人が投下したとして
こいつひょっとして>>104>>105じゃね?
とか余計な詮索されかねない方がスレにとって害悪

ないものねだりはヤメロ
109名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 14:39:40 ID:vDpBYqHd
◆JmQ19ALdigのSSと信者のマンセー発言しかないんなら◆JmQ19ALdigの単独スレたてれば?
こんな状況で別作品の投下があるわけないし、過疎ってるのと変わらん。
110名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 15:39:27 ID:ChFFDgip
他のSSスレだと雑談とかは誰かの投下待つまでの場繋ぎでしかないんだが…
一旦途中で話切れてるんだからその人だけ待つ必要ないんじゃないの?
と言っても俺は読み手なんだが
111名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 16:57:31 ID:kpmTcuw5
別に出来たから投下とか言って投下してくれれば全然大丈夫だと思う
書いてる側にとっては気になることかもしれんけど、読んでる側としては投下きたしズボン脱ぐかくらいなもんだ

ただ◆JmQ19ALdig氏はなにもしてないのに専スレ立てろは酷いんじゃないか
レスの流れがウザイなら自分で話題を振ればいいし、文句だけ言われてもな
112名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 19:03:25 ID:13Vf1yQ2
よくわからん雑談もマンセー状態も他の投下が来れば治まる。
まさか氏の作品のみ読めればいいなんて住人いないだろ?
113名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 19:28:42 ID:o8EkRg8j
氏の作品以外いらんとか誰も言ってないし
むしろ彼一人の投下しか無いからGJが集中するんじゃないか
ネタがあるんなら何も気にせず書けばいい。
いつでも歓迎だ。

ていうかこの流れだと氏も投下しづらくなると思うんだが
114名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 19:33:39 ID:0yaOPsVY
連載中の作品に期待して何が悪い
115名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 20:27:07 ID:y+fMdQWR
氏以外の作品いらんなんて一言も言ってないし言われてる気もしない罠
自分は書き手側だけど出来た物は気にせず投下していきたいと思うし氏の作品にはwktkしてる
むしろここの住民みんな優しいから好きだ
116名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 21:54:22 ID:0HvI2A1n
職人さんはいつでも誰でも大歓迎なんだぜ!!(*゚∀゚)=3
雑談と絡みも楽しみだしゼル伝が好きなんだ、それでいいじゃないか
117名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 00:08:51 ID:tUnIiztg
とりあえず皆靴下だけでも履いとけよ、と

ミドナ好きの俺が言ってみる
118名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 00:19:16 ID:OYiohsv+
靴下はシルク混紡の五本指ソックスの上にアクリル&ウールのルームソックスの二枚履きが最強なんだぜ、と

ミドナ大好きだけど大妖精様にも浮気がちな俺が言ってみる
119名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 00:30:44 ID:vTpUbr5q
じゃ俺はあの分裂したちっちゃい妖精
120名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 01:41:15 ID:ovQTlhy3
おまいらネクタイもちゃんと締めとけよ。
紳士のたしなみだ
121名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 02:03:21 ID:RyO9bldq
誰も入って来れない険しい洞窟の奥底に
美しい全裸の女性が…

試練の洞窟の大妖精ってミドナさえいなければものすごく美味しいシチュなのではなかろうか
122名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 10:01:37 ID:tCDGfTug
>>119
あの密閉空間で複数の小さな妖精に
あんなことやこんなことされるリンクを妄想した。
123名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 15:09:14 ID:/MAj0vnf
>>122
あの逃げ場の無い密閉空間でビンを片手に迫ってくるリンクから
必死になって逃げる妖精たちを妄想した
124名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 16:01:28 ID:vTpUbr5q
妖精「ビン太いのぉぉおぉ!!らめぇぇえらめなのぉぉお!!!」
125名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 16:49:38 ID:wcD2iijl
・・・悲しいのう。
126名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 18:27:09 ID:O3MQmQKY
>>121
妖精とは言え、トップレスな女目の前にして
涼しい顔していられるリンクはある意味凄いと思った
127名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 22:56:08 ID:eMde6DOI
不覚にも>>123の言ってる場面を想像して吹いた
128 ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:14:05 ID:u29LpJA4
私本・時のオカリナ/第四部/第四章/サリア編その6/後編、投下します。
リンク×サリア@大人時代。
1294-4-2 Saria VI-2 (1/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:15:22 ID:u29LpJA4
 穴は地下へと続く長い石段の入口だった。奥は真っ暗で、危険な臭いがぷんぷんしたが、
リンクは躊躇しなかった。
 地上の階では、サリアは見つからなかった。ならば、地下だ。行ける所へは行かねばならない。
どれほどの危険があろうとも。
 蝋燭に火をつけ、リンクは石段を降りていった。火は足元を充分に照らしてはくれず、頼りに
なるのは足の裏の触覚だけだった。
 ゆっくりと、急な傾斜を下る。
 やがて足は広い平面を感知し、石段が尽きたことがわかった。そこは真の暗黒ではなかった。
前方にかすかな光が差していた。リンクは光に向かい、狭い通路を進んだ。すぐに奇妙な空間が
現れた。
 六角形の大きな部屋で、いずれの壁にも大きな風景画が掛かっていた。不思議なことに、
あたりに差す光は、その絵から発しているようで、蝋燭の火を消してみても、六方からの淡い光が
確かに感じ取れるのだった。絵がきわめて写実的なせいもあり、自分が地下にいると知らなければ、
壁に窓があって神殿の外の景色が見えているのだ、と思いこんでしまいそうだった。
 薄暗い空を背景に、荒涼とした野原が描かれており、その真ん中を突っ切って、奥の方へ一本の
道が延びている。ぞっと身が震えるような寒々しさを感じるとともに、六枚の絵がすべて同じ
ものであることに気づき、リンクはいぶかしく思った。
 部屋の装飾にしてはあまりにも単調ではないか。
 やはり絵となっていた四姉妹に翻弄されたばかりだったので、注意深く観察してみたが、ここの
絵には、敵の存在を示唆するようなものは見られない。絵だけではなく、この部屋そのものにも、
敵の気配は感じられない。サリアがいる様子もない。
 他に行くべき場所があるのだろうか。
 踵を返し、部屋を出ようとした刹那、軋むような音をたてて足元から数本の金属の棒が
飛び上がり、出口を塞いだ。
『閉じこめられた!』
 冷たい衝撃とともに、
『やはりここだった!』
 確信を得て腹が据わる。背後に感じる。何もいなかったはずの室内に固まり始める邪悪な存在。
 ふり返る。
 部屋の中央に、巨大な黒い影が立ちはだかっていた。
1304-4-2 Saria VI-2 (2/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:15:56 ID:u29LpJA4
『ガノンドロフ!?』
 リンクは驚愕に打たれた。装甲をまとう黒馬に跨った、いかつい巨体。そこから発散される、
どす黒い悪の匂い。それはハイラル城下町の正門前で対峙したガノンドロフのものと寸分
たがわなかった。が……
 違う。
 まず顔だ。ガノンドロフは生身の顔を持っていた。なのに、いまの敵の顔は、髑髏のような
仮面で覆われている。もっと大きな違いは、ガノンドロフが発していた、あの身を押しつぶしそうな
重圧感が、眼前の敵からは感じられない点だった。
『分身?』
 思い出す。ツインローバに見せられた幻影の中で、ガノンドロフとともにサリアを陵辱していた、
ガノンドロフそっくりの何者か。
 あれがこいつだ!
 全身の毛が逆立つような激しい感情が渦巻き、リンクはマスターソードを抜き放った。同時に
馬が床を蹴って空中に身を躍らせた。のしかかってくる脚を避けて横に跳び、着地時を狙って
剣を構える。しかし馬はそのまま宙を駆け、壁に掛かった絵の中へと吸いこまれていった。
 愕然となる。絵に走り寄る。荒野の一本道を駆け去ってゆく馬。
 どういうことだ? 絵の中を動けるとは? 二次元の虚構と三次元の現実を行き来できる
魔性の存在!
 画面の奥で馬が向きを変え、手前に近づいてきた。絵から飛び出してくる気だ、と察し、
腰に力を溜めて剣を構え直す。敵の姿は徐々に大きくなり、画面を埋めつくさんばかりとなった。
リンクは剣を振り上げた。ところが馬は再び回れ右をした。
 逃げるのか、と意外に思った瞬間、後ろで気配がした。ふり向くと、全く同じ姿の敵が別の
絵から実体化し始めていた。あわてて元の絵を見直す。背を見せて遠ざかる敵が確かにそこにいる。
 分身は二つ! 一方は囮!
 新たな方の分身が絵から飛び出した。大きく空中を跳躍する馬の上で、髑髏顔の敵が長大な矛を
振りまわした。その先端が光ったと見るや、ばりばりと音をたてて白熱した光弾が殺到してきた。
咄嗟に横へ跳ぶも避けきれず、片足を捉えられる。全身に激しい痺れが走り、床に倒れてしまう。
 ここで追加攻撃を受けたら終わり──と肝を冷やしたが、空間を渡った敵は、あっという間に
向かいの絵の中に飛びこんだ。
 痺れに耐え、身を起こしながら考える。
 敵が攻撃できるのは、絵と絵の間を飛ぶ短い時間だけだ。だがこちらが攻撃できるのも、
敵が実体化した同じその時間だけ。しかも飛ぶ敵は高所。剣は届かない。ならば……
 剣を鞘に戻し、かわりに弓を持つ。矢をつがえて、二体の敵がいるはずの絵を交互に見る。
 姿はない。
1314-4-2 Saria VI-2 (3/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:16:40 ID:u29LpJA4
 一瞬、動転しかかるが、
『別の絵!』
 見まわす。やはり別の二枚の絵の中から、敵が迫っていた。
 本物はどっちだ? どっちを狙う?
 見比べる。わからない。ぐんぐん大きくなる敵の影。同一の動き。同一の姿。
 焦るな! ぎりぎりまで待つんだ!
 二枚の絵が敵の影でいっぱいになった。勘で決めるしかない、と観念しかけた時、一方の絵の
表面に紫色の波立ちが生じた。
『そっちか!』
 左手に力をこめ、ぐいと弦を引き絞る。
 波立ちの中心から馬の鼻先が現れた。次いで顔が、首が、前脚が実体化し、さらには胴と、
背に跨る敵の本体が空中に出現した。
 すかさず射る。矢はみごとに本体の胸を貫く。馬の姿がかき消える。おどろおどろしい叫びを
あげて、敵は床に落下する。
『やったか?』
 まだだった。敵は起き上がり、今度は単独で空中に浮遊した。
 どんな攻撃をしてくるだろう。手から魔力による波動を放つガノンドロフの分身だ。同様の
遠隔攻撃か。とすると……
 敵の矛が光弾を発した。予想どおりとあって、着弾寸前にかわすことができた。
 こっちはどう攻める? 空中の敵が相手では、やはり矢か。
 弓を構える。光弾が放たれる。かわす。再び構える。また光弾がくる。避ける。
 位置を変えつつ隙を衝こうとしても、光弾は次々に降り注ぎ、射る暇を与えてくれない。着弾の
直前まで粘ろうとするが、間に合わない。やむなく逃げる。足がすべる。
『しまった!』
 うつ伏せに倒れたところへ光弾を食らった──はずなのに、背に衝撃を感じただけで、痺れは
生じない。背負ったハイリアの楯が光弾を防いだのだ。
 楯で防げるなら近づける。敵は騎乗時ほどの高さにはいない。ジャンプ斬りなら届くかも。
 弓を捨て、剣と楯を手にして接近を試みる。いきなり敵が突進し、矛を突き出してきた。
予期せぬ直接攻撃。避けられない。盾の陰に身を隠す。矛が楯に激突する。楯が右手から
すっ飛ばされる。
『まずい!』
 しかも至近から光弾が飛んできた。手には剣のみ。防御不可能!
 いや! マスターソード! この退魔の剣なら!
 迫る光弾を見据え、剣を振りおろす。確かな手応えを残して跳ね返った光弾が、空中の敵に
突き刺さる。叫びをあげて再び床にくずおれるガノンドロフの分身。
 とどめだ!
 残る力をふり絞り、跳躍からの一撃を見舞う。鮮やかに両断される敵の肢体。着地してのち
見守るリンクの前で、それは赤い光に包まれ、やがて跡形もなく消え去った。
1324-4-2 Saria VI-2 (4/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:17:24 ID:u29LpJA4
 勝利を確認した瞬間、ふっと意識が遠のきかけた。気の緩みと自覚したが、リンクはそれを
許容した。これまでにない苦闘の連続となった森の神殿。その最後の敵を、いま自分は撃破したのだ、
という確信、そして、すでに改変された過去のできごととはいえ、サリアの仇の一端を討つことが
できた、との感慨が、体内に限界まで溜まった疲労を溶かしてゆくように感じられた。
 そこで意識が引き戻された。
 そのサリアは、どこにいる?
 あちこちとさまよう目が、部屋の中央に止まる。小さな緑色の光点が一つ、空間の低い所で
揺らめいている。その光点が、二つ、三つと数を増し、見る間に無数の光の集積となってあたりを
照らし出す。複雑玄妙に明滅を繰り返しながら、光は徐々に人の形をなす。頭部が、躯幹が、
四肢が、そして全身の形状が完成されたと見るや、不意に光は消え──
 七年前と同じ少女の姿が、そこにあった。

 名を呼ぼうとする声が喉に滞る。自然な語りかけが憚られる。
 なぜ? ぼくは何を躊躇している? サリアを求めてここまで来たぼくなのに。その求めが、
いまやっと満たされたというのに。安らかな微笑みを浮かべるサリアに向けて、なぜぼくはただの
ひと言も発せられない?
 いや……その微笑みは……
 ためらいが生み出す隙間に、静かな声が投じられる。
「きっと来てくれると、信じていたわ……」
 穏やかな──
「ありがとう……リンクのおかげで……あたしは、『森の賢者』としての存在を、守ることが
できた……」
 あまりにも穏やかな、その声。その表情。ミドや他の仲間たちが、大人のぼくに示した驚きや
怖れなど、断片さえもうかがえない。
「……ぼくが、わかるんだね」
 やっと、それだけ言う。
「わかるわ、リンク。どんなに姿が変わっても……あたしには、わかるの……」
 サリアの不変の微笑みは、あらゆる感情を超越していた。深い温かみを宿しながら、その
温かみに触れることができない。そんな隔絶感すら覚えてしまうほどに。
 ためらいの理由は、それだった。

 サリアは思う。
 そう。目の前にいる、背の高い、筋骨の逞しい「大人」がリンクであると、誰に教えられる
までもなく、あたしにはわかる。
 六年前、神殿に足を踏み入れたあたしの背後で、重々しい音をたてて入口の扉が閉ざされた瞬間、
あたしは『森の賢者』としての自分を明瞭に自覚し、同時に、すべてを知ったのだ。
『確かにおまえには、他の者とは異なるところがある。しかしそれは意味があってのこと。それが
おまえの運命であり、使命とも言えるのじゃ』
 デクの樹サマが暗示していたとおり。
 七年前のリンクとの交わりは、あたしが賢者となるのに必要不可欠な儀式だった。あたしの
身体の育ちが進んだ理由も、そこにあった。そしてリンクと再会したいま、あたしは賢者としての
真の目覚めを得る。その意味、その目的を、すでにあたしは知っている。巨悪を倒し、世界を救う
という使命を帯びたリンクを助けることこそが、賢者たるあたしの使命だったのだ。
 そのために、自分自身とコキリの森を、あたしはどうにか守ってきた。いずれ目覚めるべき
賢者であるあたしは、それだけの力を身にすることができていた。が……
 捨て去らなければならないものも、あたしにはあった。
 この六年間、半ば覚醒した状態で、人の実体と賢者の虚体の間を移ろい、ひたすらリンクを
待ち続けながら、葛藤し、煩悶し、あたしはやっと自分に言い聞かせることができた。
 次にリンクと会う時、あたしはただのサリアとしてではなく、『森の賢者』としてリンクの前に
あらねばならない。それがあたしという存在に刻みこまれた運命なのだ──と。
1334-4-2 Saria VI-2 (5/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:18:13 ID:u29LpJA4
「リンク」
 微笑みを絶やさず、サリアが言う。
「あたしが賢者としての真の目覚めを迎える時が、とうとう来たわ」
 賢者としての真の目覚め。それをいかにしてサリアにもたらすか、ぼくは知っている。
「だから……お願い、リンク……あたしを……」
 ああ、サリアも知っている。何の疑念もなくぼくをぼくと認められるサリアは、もちろん
そのことをも知っているのだ。
「……ここで?」
 思わず問う。つい先刻まで緊迫した戦いが繰り広げられていたこの部屋は、七年前のままの、
たおやかな少女の姿のサリアには、あまりにも似つかわしくないような気がして。
「そうね……」
 わずかに首をかしげ、あたりに視線を這わせたのち、
「ここは、暗すぎるね」
 歩み寄ってきたサリアが、
「もっと明るい所へ行きましょう」
 左の腕に、そっと手をかけてきた。
 封鎖されていた部屋の出口は、いつの間にか元のように開かれていた。二人は通路をたどった。
部屋を離れるにつれ、壁の絵からの光も遠ざかり、暗闇が二人を包みこんだ。蝋燭を使おうか、
とリンクは思ったが、サリアの足取りは変わらなかった。石段を登るにあたって、ともすれば
躓きそうになるリンクに対し、サリアは確実に段を踏み進んだ。暗闇の中でも足元がはっきりと
見えているかのようだった。その奇妙さが、最前よりサリアから受けていた違和感を増幅させた。
 どうしたというのだろう。姿形は以前のサリアと全く変わりがないのに、何かが違う。たとえば、
いまサリアはぼくの左腕に手を添えていて、ぼくたちは七年ぶりに身体を触れ合わせていると
いうのに、それにふさわしい感情が、ぼくには湧いてこないのだ。サリアも同じではないだろうか。
この落ち着き払った態度。ぼくの隣にいるのは、サリアであってサリアではない、そう思えて
ならない。
 まだ賢者として覚醒していないサリアだが、すでに半覚醒には至っている。そのためなのかも
しれない。しかし、それにしても……
 違和感を拭えないまま、大広間に出た。神殿の入口に向かおうとするリンクの左腕に、抵抗が
加わった。サリアが足を止めていた。
「あたし、神殿の外へは出られないの」
 サリアはうつむき、短くつけ加えた。
「……もう」
 寂しげな表情だった。再会ののち、初めて滲み出た、サリアの内奥の片鱗だった。
 卒然と、リンクは悟った。
 そうだったんだ。サリアが賢者になるというのは、そういうことだったんだ。
 サリアは神殿から出られない。サリアはサリアとしてではなく、賢者としてあらねばならない。
それをサリアは自覚している。自覚しているがゆえの、この感情の抑制。
 賢者としてのサリアの運命が幸せなものであるかどうか、ぼくは考えたことがある。その時は、
たとえいかなる運命となろうとも、サリアを賢者として目覚めさせるのが自分の使命、と結論した。
その結論は、いまも動かない。動かしようがない。世界を救うため、そしてサリア本人を救うため、
それは絶対に必要なことなのだ。が……
 賢者であるということが、サリアという一人の人間のあり方を、こうまで変えてしまうとは!
「こっちへ……」
 サリアが腕を引き、入口とは反対の方へリンクを導いた。リンクは従った。これから始まる
行いに、ぼくはどう臨めばいいのか──と心を惑わせながら。
1344-4-2 Saria VI-2 (6/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:19:04 ID:u29LpJA4
 サリアに導かれた先は中庭だった。魔物はすべて消え失せており、厳かな静謐さだけが、
その空間を満たしていた。
「あたし、神殿の中で、ここがいちばん好きなの」
 いつしか微笑みを取り戻したサリアが、静かに呟いた。
「ここって、『森の聖域』に似ているから……」
 確かに。
 さっき来た時は、魔物との戦いで、まわりの様子を感じ取る余裕がなかった。改変前の世界で
ここを訪れた時も、森の壊滅が心を重くし、寂しい所としか感じられなかった。でも、いま、
こうして周囲に目をやると……
 決して広い場所ではない。けれども、中庭を取り巻く、蔦の絡まった石壁や露台や石柱は、
荘厳でありこそすれ威圧感はなく、むしろ癒しを与えてくれるような、和やかな雰囲気を
醸し出していた。地では土と草とが絶妙な組み合わせをなし、隅では清澄な水を湛えた池が、
文字どおり潤いとなって場を引き締めていた。
「建物にさえぎられてはいても……ほら、ね……」
 サリアの顔が上を向いた。
「空を通じて、ここは外と繋がってる。だから、ここにいたら、あの『森の聖域』にいるのと
同じことなんだ──って……あたしには、思えるの……」
 空は依然として雲に埋まっていた。神殿に入った時には雲越しにうかがわれていた昼の明るみが、
いまは夕べの暗がりへと移りつつあった。心安まるとは言い難い情景だったが、上空から生じて
いた邪悪な風はすでになく、自然が平穏さを取り戻してゆく徴候が感じられた。そのことが、
この中庭と『森の聖域』を重ね合わせるサリアの言葉に、充分な説得力を与えていた。が……
 リンクの思いは旋回する。
 いま、この中庭にいるぼくたちは、『森の聖域』で初めて結ばれた時のぼくたちから、どれほど
遠く隔たってしまったことか。あの時の幸せを──あの純粋な幸せを──ぼくたちは再び得る
ことができるのだろうか。
「あ」
 驚いたような声がした。
「リンク、その傷──」
 声に感情がこもっていた。サリアの内奥が、先刻よりも、もっと明瞭に覗き見えた。
 サリアの視線を追い、右肩を見る。服に血の染みが広がっていた。
 スタルフォス戦の際に負った傷だ。止血はしたものの、地下での戦いで傷口が開いてしまった
ようだ。ただ、サリアと会った時には、これほどの染みにはなっていなかった。そのあとサリアは
ずっとぼくの左側にいたので、染みが広がるのに気づかなかったのだろう。
「ひどいの?」
 心配そうなサリアに、
「大したことはないよ」
 強いてあっさりと答える。が、サリアの声の調子は変わらなかった。
「洗った?」
「いや」
「黴菌が入ったらたいへんよ。ちゃんと洗わなくちゃ、だめじゃないの」
 サリアが下からこちらを見上げている。返事ができず、その顔を見つめるうちに、だんだん
おかしくなってくる。
 あの戦いの連続のさなかに、傷を洗う余裕などあるわけがない。それに、神殿の中で唯一、
水を得られる場所であるこの中庭は、魔物に占拠されていて、洗おうとしても洗えるような
状況ではなかった。賢者もそこまでは見通せないのか。いや、サリアは女の子だから、戦いに
関することには気がまわらないのかもしれない。
 のみならず──と、笑みが顔に出る。
 少女のサリアが、大人のぼくを、聞き分けのない子供のように扱って、半ば憤った表情で、
けれども確かな親愛をこめて、「だめじゃないの」と、お小言を言って……
 心の温度が上がってゆくのを感じながら、リンクは思いを口にした。
「やっぱり、サリアはサリアだね」
1354-4-2 Saria VI-2 (7/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:19:55 ID:u29LpJA4
 リンクの言葉が胸を貫いた。言葉が出なかった。
「森の中を遊びまわったり、ミドと喧嘩したりして、生傷を作った時、洗わなくちゃだめだって、
よくサリアはぼくに言ったね」
 ──そう、確かにあたしは、しばしばリンクにそう言ったものだ。
「それだけじゃない。サリアにはしょっちゅう言われたよ。お行儀よくしなくちゃだめだとか、
早く起きなくちゃだめだとか……」
 ──覚えている。あたしもよく覚えている。だって……だって、あたしが言ってやらないと、
あたしが見ていてやらないと、リンクは森でひとりぼっちになってしまうから……あたしが
リンクを守ってやらなくちゃいけないと……
「うるさいなあって、思ったこともあるけれど……そうやって、サリアに気にかけてもらえて、
サリアがそばにいてくれて……森でサリアと一緒にいられて……ぼくは……とても……嬉しかったよ」
 ──あたしも、そう。守ってやろうという義務感だけじゃない。リンクと一緒にいることは、
あたし自身の喜びでもあった。だからこそ、だからこそ、あたしはあたしのすべてをリンクに
見てもらいたいとまで願って……
「それから……あの時も……『優しくしてくれなくちゃ、だめじゃないの』──って……」
 ──あの幸せ! あたしの願いがかなえられた先でついに得られたあの幸せ! あたしは決して
忘れはしない! どうして忘れることができるだろう! あの時のあたしの、あたしたちの、
あの無上の幸せを! ああ、しかし……しかし……その幸せは、永遠のものではなく……
「ねえ、サリア」
 ほのぼのと過去を顧みていたリンクの声が、訴えかけるような調子に変わる。
「サリアが『森の賢者』だってことは、よくわかっているつもりだったけれど……いざ会ってみて
……サリアは元のままのサリアじゃなくなってしまったみたいに思えて……ぼくは……何だか……
寂しかったんだ……」
 ──あたしは敢えてそうふるまった。すべての感情を抑え、あたしは賢者としてリンクの前に
立った。そうしなければ、耐えられなかった。サリアとしての想いを抱いたままでは、先に待つ
自分の運命に、とうてい耐えることはできないと思った。でも……でも……リンクは……
「だけど、いまのサリアの言葉で、はっきりしたよ。賢者になっても、やっぱり、サリアは
サリアなんだ。それは変わっちゃいないんだ。そうだろ、サリア?」
 ──そうなんだわ! リンクがずばりと言い切るように。デクの樹サマも言ったように。
『サリアよ、おまえはおまえじゃ。それは変わらぬ真実なのじゃよ』
 ──あたしは思ったはず。自分がどうあっても、それが自分なのだと肯定すること。あたしは
あたし。変わらぬ真実。いくら想いを消そうとしても、消せるはずがない。想うあたしこそが
ほんとうのあたしだから!
「これからサリアは、賢者として目覚めなくちゃならない。ぼくがそうしなくちゃならない。
けれど、ぼくがそうする相手は、賢者という偉そうなものなんかじゃなくて、サリアなんだ」
 リンクに手を握られる。にわかに身体が熱を持つ。その熱が、すべての葛藤を、すべての煩悶を、
瞬時のうちに蒸発させる。
 ──温かい。温かい。どうしてこんなに温かいの。この温かみに触れていられるなら、リンクに
触れていられるなら、たとえ先に何が起ころうと……
「だから……ぼくは……」
 ──いま、この時だけは……
「サリアを……サリアとして……」
 ──あたしは……あたしとして……
「ここにいたいんだ!」
 ──ここにいるわ!
1364-4-2 Saria VI-2 (8/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:20:30 ID:u29LpJA4
「リンク!」
 叫びとともにサリアが身をぶつけてくる。抑えこまれていた真実が、一気に弾けてほとばしる。
「会いたかった……会いたかったわ!」
 前にはちょっとだけ高い所にあったサリアの顔が、いまはやっと胸に届くくらいだ。ちょうど
その高さで、サリアがぼくの胸に顔をうずめている。
 腕にすっぽりと包まれる、小さな身体。
 肩が震えている。声を押し殺してはいるけれど、サリアは泣いている。子供時代、ぼくが
コキリの森から旅立った時にも、その後に再会した時にも泣かなかったサリアが、初めて自分を
さらけ出して泣いている。
 サリアであるサリアが、ぼくの腕の中にいる。
 限りない、いとおしみの想いをこめて、リンクはサリアを抱き、その場に立ちつくした。
何も言わなかった。言う気はなかった。それで充分だとわかっていた。

 やがて、腕の中の震えは治まった。
 腕をほどき、サリアの頬に手をやる。涙に濡れた顔には、何かを弁解しようとするような意図が
感じられた。
「リンク、あたし──」
 言いかける唇に、そっと手を当てる。微笑んで、首を振る。
 わずかののち、サリアの表情から緊張が消える。口が閉じられる。顔が頷く。微笑みが返される。
さっきまでのものとは異なる、その新たな微笑みに、心が洗われる。
 そうだ、心だけじゃなくて……
1374-4-2 Saria VI-2 (9/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:21:07 ID:u29LpJA4
「サリアの言いつけは、守らなくちゃ」
 何のことかわからなかった。訊ねる間もなく、リンクが行動を開始した。
 装備をはずし、地面に置く。チュニックを脱ぐ。下の肌着だけを残して、上半身があらわになる。
あちこちに刻まれた傷。とりわけ右肩に巻かれた布に目がゆく。べっとりと血に染まっている。
 リンクが服から新しい布を取り出す。手渡される。
「水に浸して」
 傷を洗うのだ、と、ようやくわかった。池に寄り、布に水をふくませる。ふり返ると、リンクは
草の上に腰を下ろし、右肩の布をはずしていた。血を満たした深い傷が目に飛びこむ。ぎくりとする。
心が騒ぐ。
 ああ、それでも……
 前にはあたしが守ってやっていたリンクが、今度はあたしを守ってくれた、その証の傷なのだ
──と思うと、おそろしい傷までが、いとおしくなる。
「拭いてくれる?」
 我に返る。リンクの右側に膝で立ち、おそるおそる、濡れた布を傷に当てる。
「つッ!」
 小さく鋭い声を出し、顔をしかめるリンク。
「痛い?」
 思わず訊く。しかめられた顔がこちらを向き、次いで、ふと笑みに置き換えられる。
「ずいぶん優しいんだね」
 意図をつかめず黙っていると、リンクは面白そうに言葉を継いだ。
「昔のサリアは、そうじゃなかった。男の子なんだから痛いくらい我慢しなさい──って、
よく言ってたじゃないか」
 そんなふうに言ったかもしれない。あの頃のリンクは、小さく頼りない、ほんの子供だったから。
でも、いまのリンクは……
 地下で会った時から、わかっていたことだけれど、こうして、改めて素肌のリンクを眺めて
みると……
 逞しく筋肉がついた、肩、胸、腹。顔つきもすっかり精悍になって。
 サリアは悟る。
 リンクは成長した。これからも歳をとってゆく。リンクは『外の世界』の人だから。だけど、
コキリ族であるあたしは、歳をとらない。
 成長し、大人になり、そしていずれは老いてゆくリンクと、いつまでも子供のままのあたし。
所詮、あたしたち二人は……
1384-4-2 Saria VI-2 (10/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:22:03 ID:u29LpJA4
「ありがとう、もういいよ」
 快活な声がした。傷を押さえていた手を離す。リンクが自らの左手で、だめ押しのように、
ぐっと圧迫を加える。布が取り去られる。まだ血が滲んでいたが、傷はかなり落ち着いたようだった。
 立ち上がったリンクが、池の端に近づいた。しゃがみこんだ。血に染まった二枚の布を洗っている。
その手が止まる。水面を眺めている。
 不意にリンクが下半身の肌着を脱ぎ下ろす。背中を見せて、ざぶざぶと水の中へ入ってゆく
全裸のリンク。腹まで浸かったあたりで立ち止まる。ふり向く。
「ついでだから、他の所も洗っておくよ」
 リンクは布で全身をこすり始めた。生き生きとした動き。気持ちよさそうな表情。つりこまれ、
翳りかけた心が安らいでゆく。
 ひととおり身体を清めたリンクは、再び布を濯ぎ、二重にして右肩に巻きつけた。
「これでよし、と」
 けりをつけたように言いながらも、リンクは水から上がろうとはしなかった。こちらに
向けられた顔が、明るくほころぶ。
「サリアも、洗ったら」
『え?』
 どくんと、動悸。
「前には、よく一緒に水浴びしただろ。おいでよ」
 賢者であるあたしは、普通の人間のように汚れたりはしない。身体を洗う必要はない。だけど、
リンクが言いたいのは……いかにも無邪気な様子の裏で、ほんとうに言いたいことは……
 気温は低い。肌寒い。水の中だと、もっと寒いだろう。
 でも……
『寒いのなら、温めてもらえばいい』
 服に手をかける。ひとつひとつ、着ているものを脱いでゆく。
 リンクの前で裸になること。子供の頃は平気だった。身体が成長し始めてから抵抗を覚える
ようになって、なのに、そうしたいというひそかな願望を持つようにもなって。
 その願望を、すでにあたしはかなえている。ためらう理由など、ありはしない。
 すべての肌を空気にさらす。すべてをリンクの目にさらす。身体が震える。寒さのせいばかり
ではない、この震え。止める方法は、ただ一つだけ。
 水に足を浸ける。冷たい。冷たいけれど、かまわない。冷たさの向こうに、それをずっと
上まわる温かみがあるから。
 足首が、膝が、腰が、腹が、そしてとうとう胸が、水面下に没する。ぎりぎり肩が出るくらいと
なって、ようやくリンクの前に着く。
 リンクがあたしを見下ろす。限りない優しさと真剣さにあふれた目が、まっすぐに、ただ
まっすぐにあたしを見つめて、両手が肩に触れて、あたしの身体はびくんと痙攣してしまって、
あたしは思わず目を閉じてしまって、肩から伝わるリンクのぬくもりが、あたしの中に熱い流れを
呼び起こして、あたしは両手を下ろして立ったまま、その流れが身体中を駆けめぐるのを感じて……
 リンクの手が動く。肩から腕へ、背へ、尻へ、そして、
「あ!」
 胸を、あたしの小さな二つの胸を、手が、リンクの両手が撫でて、撫でて、それはあたしの
身体を洗ってくれているような動きでありながら、他の意図があることはあたしにもわかっていて、
わかった上であたしはリンクの手にあたしのすべてを任せて、リンクが触れた所から新しい
ぬくもりが次々にあたしの中へ注ぎこまれて、身体の中でいくつもの流れがぶつかり合って、
あたしの身体の中心に、両脚の間の窪みの奥に、最高の快さを生み出すあの場所に、リンクだけに
許されたあたしの極点に、合流して、集中して、熱しきった別の流れがそこからじわじわと、
とろとろと、滲んで、あふれて、こぼれ落ちて、ああ、溶けちゃいそう、溶けちゃいそう、身体が
形を保っていられなくなりそうなこの感じ、立っていられない、もうだめ、もうだめ、だから
リンク、リンク、あたしを、どうかあたしを──!
1394-4-2 Saria VI-2 (11/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:23:00 ID:u29LpJA4
 サリアの身体が揺らぐ。沈みそうになる頭を、ぼくは両手で支える。後ろにまわした右手が
緑の髪を濡らす。雫が顔にしたたる。
「サリア」
 ささやきに応えて、サリアが目を開く。濃い青みを帯びた瞳。その色のとおりに、そこは奥深い
潤いに満ちて、顔を伝う雫とともに、たとえようもない清らかさをサリアにもたらしていて。
 左手を顎に当てる。持ち上げる。顔を近づける。焦点の合わない映像の中で、サリアの目蓋が、
ゆっくりと落ち始める。ぼくも合わせて目蓋を落とす。狭まる視野。消えてゆく雑念。やがて
絶たれた目の繋がりを受け継いで──
 唇が合わさる。
 いきなりサリアが硬くなる。手に伝わる急速な振動。激しくよじれる肢体。思わぬ暴発を
抑えようと、右手で頭に、左手で背に力を加え、自分の身体に押しつける。サリアの両腕がぼくの
胴をかき抱く。しかし下半身の動きは止まらない。がくがくと跳ね踊る腰と膝が、ぼくの脚に
ぶつかってくる。
 サリアに何が起こっているかをぼくは察知する。サリアの喉に声が溜まってゆく。唇を強く
合わせ続け、声の解放をぼくは封じる。封じこめる。限界まで封じたところで、口に舌をねじこむ。
二つの舌が触れ合った、その瞬間──
 凄まじい身震いがサリアの体表を走った。身体はぴたりと躍動を止め……そして、弛緩した。

 何が起こったの? あたしに何が? あたし自身にはどうすることもできない爆発。これは、
これは、あの時と同じ。リンクと初めて互いの唇を触れ合わせた時、あたしが達した頂点と同じ。
いま、また、唇の触れ合いだけで、あたしはそこに行き着いてしまった。でも、まだ足りない。
これだけじゃ足りない。だって、だって、それ以上のものがあることを、男と女の間には
それ以上の繋がり方があることを、あたしはもう知ってしまっているから。もっと高い頂点を、
リンクと初めて互いの秘密の部分を結び合わせた時に、あたしは極めてしまっているから!
 身体の向きが変わった。どっちを向いているのかわからない。立っているの? いいえ、
そんな力なんてない。じゃあどうなっているの? 立てなければ沈んでしまう。なのに、あたしは
ちゃんと息をしていて。リンクは? リンクはどこ?
 リンクの手はあたしに触れている。背中と、膝の後ろと。ああ、わかった。あたしは仰向けに
なっていて、リンクに抱きかかえられていて──
1404-4-2 Saria VI-2 (12/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:23:51 ID:u29LpJA4
 力を失ってしまったサリアを抱き上げ、池から出る。草の上に横たえる。全身の肌に水滴を
まとった、限りなく瑞々しい肉体が、時おり不規則に痙攣している。
 傍らにおのれの身をも横たえて、なおもぼくはサリアに触れる。手で、指で、唇で、舌で、
サリアの身体のすみずみまでを、優しく、くまなく、いとおしむ。
 それに応じて、
「んッ!」
 サリアに残っていた絶頂の余韻が、
「くッ!」
 次々に分裂し、
「あッ!」
 新しい胎動となって、
「やッ!」
 再度の上昇に向け、
「ひッ!」
 サリアの中で膨らんでゆくのをぼくは感得する。とりわけ二つの胸の未熟な突出と、
「あぅッ!……んん……はぁッ!」
 かすかな飾り毛の下の、そこだけは別種の液体にあふれかえった熱い谷間は、
「んぁッ!……ぉああ……あぁあぁぁああッ!」
 ぼくの刺激によって、いっそうの加速をサリアにもたらす。
 そしてさらなる加速を与えるために、ぼくは燃え上がる自分を抑え、何かを求めるように
さまようサリアの手をも無視して、小さく固まった両の乳首を指で弄びながら、股間にある、
より敏感なもう一つの固まりと、紅く煮え立つ深まりを、静やかに、けれども執拗に、舐めて、
吸って、舐めて舐めて舐めて吸って吸って吸って、遠慮がちだった声が中庭いっぱいに響きわたる
ようになるまでサリアを高めて、高めて、高めて、ついには高まりを超えた高まりへとなだれこむ
サリアの奥底にとどめとばかり固めた舌を挿しこんで──

「ぅあ! あ! あ! ぁぁぁああああーーーーーーッッ!!」
 また来た! また来た! あたしの中のこの爆発!
 男と女の別の繋がり方で、リンクの口とあたしのそことの結合で、あたしはまたも行き着いて
しまった!
 ああ、すごい、すごい、なんて素晴らしい気持ち。どうして、どうしてこんなに感じてしまうの?
言うまでもないわ。リンクだから、リンクだから、あたしの胸を触ってくれるのが、あたしの
脚の間に顔を埋めて口を使ってくれるのが、他ならないリンクだからなの!
 でも、でも、あの時は、あたしも同時に口を使って、反対の繋がり方でリンクを感じさせて
あげられたのに、いまはできない、それができない、だってあたしには届かなかったから、必死で
首を伸ばしても、リンクのそこには届かなかったから、リンクの背が伸びていて、小さいままの
あたしには、どうしても無理なことだったから。
 だけど、さあ、リンクが顔を離してくれたから、もうあたしにはそれができる。身体はまだ
じんじんしていて、動かすともっとじんじんして、どうにかなってしまいそうだけれど、あたしは
そうしなくちゃいけない。リンクを感じさせてあげなくちゃいけない。だから手を伸ばして、
リンクのそれに手を触れて──
「う……」
 リンクの呻きを耳にしながら、あたしの意識はそれをまともに聞いてはいない。そのくらい
あたしはびっくりしてしまう。硬いのは前と同じ。ただ、この大きさは、この太さは、いったい
どうしたの? これがリンクなの? これがあの小さくかわいかったリンクなの?
 そうなんだわ。これが「大人」なんだわ。あたしなんか及びもつかないほど黒々と密生した
毛の中から、猛々しい肉の槍を直立させている、これが大人のリンクなんだわ。
 目の前のこれをあたしがどうすることになるのかを考えると、震えそうになる。それでも
あたしは、ええ、あたしはするべきことをするの。いまは、いまは、リンクを握って、握りしめて、
赤黒く光る先端のふくらみに、こうして──
1414-4-2 Saria VI-2 (13/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:24:38 ID:u29LpJA4
「あ……くッ……」
 サリアの舌がそこを這う。サリアの唇がそこを覆う。サリアの口がそこを含む。やみくもとも
いえるその動きが、拙いサリアの行為が、すでに経験しているサリアの口技が、どういうわけか、
異常な興奮をぼくにもたらす。いままで抑えてきた欲情が噴き出してしまいそうになる。
 どうしてなんだ? どうしてなんだ? 言うまでもない。サリアだから、サリアだから、
小さい頃から、セックスのことなんか知らなかった頃から、一緒に過ごしてきた、一緒に育って
きたサリアが、いまはこうしてぼくの股間に跪いて、それもあの頃と同じ姿で、大人のぼくに
ひたすら奉仕するさまを見てしまっては、いきり立つなと言う方が無理だ。
 ああ、感じる、感じる、子供のぼくのような極度の敏感さはないはずなのに、やっぱりぼくは
感じてしまう、感じるあまり、もうぼくは自分を抑えられない!
 上半身を起こす。サリアの頭を両手でつかむ。おのれにぐいと近づける。腰を動かす。
「んんッ!」
 くぐもったサリアの声が、さらに欲望をかき立てる。サリアの口中を前後させ、粘膜との摩擦を
享受するうち、獰猛な気分になってくる。
 こんなふうに、こんなふうに、サリアの口を攻め立てて、それだけじゃない、サリアに、
サリアのあらゆる部分に、ぼくはぼくのこれで、やれるだけのことはやりつくして──
 ぐぅッ!──と異様な音がした。サリアの喉の奥から。突き入れたペニスの圧迫によって。
 ぎょっとして腰の動きを止める。口を離したサリアが、けほけほと咳をする。背を丸めた、
小さな身体。
 小さな身体!
 にわかに心が戻ってくる。
 だめだ! だめだ! だめだ、だめだ、だめだ、だめだ、だめだ!
 自分を保て! 欲望に流されるな! サリアのことを考えろ! 無茶をしちゃいけない!
 顔を寄せる。サリアの顔が上がる。苦しそうな表情が、じわりと緩み、その身をどっと預けられる。
「ごめんよ」
 ささやきに、
「ううん、平気」
 首が振られ、続けて、
「どうだった?」
 と、消え入りそうな声。胸がかきむしられ、
「最高だよ」
 ──そう、自分を忘れてしまいそうになるくらいに!
 腕はサリアを抱きしめる。その小ささ。わかっていたことなのに、ここで改めて突きつけられた
事実。
 これからぼくたちがするべきこと。サリアはそれに耐えられるだろうか。七年前に一度経験して
いるとはいえ、いまの二人の体格を考えると……子供同士の初めてよりも、もっと厳しい関門に
なるのでは?
 しかし、やらなければならないことなのだ。だからできうる限りの配慮を──
「サリア」
 思いを定めて呼びかける。サリアが真剣な面持ちとなり、頷いた。察したのだ。
 サリアを横にさせようとして、迷った。
 ぼくが上になったら、サリアを押しつぶしてしまうだろう。身長の差もある。それなら……
1424-4-2 Saria VI-2 (14/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:25:31 ID:u29LpJA4
 リンクが仰向けになった。
「上に」
 と腕を引かれる。どうしたらいいのかがわかる。脚を広げてリンクに跨る。
 こんな繋がり方もあるんだわ……
「サリアがいいように……つらかったら、無理しないで……ゆっくりすればいいから」
 気遣わしげなリンクの言葉に、
「うん……」
 と答えて、けれどその答は半ば無意識で、あたしはリンクのそこに目をやって、その大きさ、
太さを確かめて、胸をどきどきさせて、それでも心を強くして、自分をそこへ持っていって──
 手を添える。熱い。硬い。
 腰を下げる。先が触れる。
「あ……」
 それだけで気持ちいい。それだけなら気持ちいい。でも、この先は……
 さらに腰を下げる。先がめりこむ。広げられる。
「ん……」
 まだ大丈夫。これなら大丈夫。だけど……
『迷っちゃだめ!』
 そうよ、迷っちゃだめ。あたしはするの。たとえこの身がどうなっても、あたしはするの!
 賢者の目覚めに必要なことだから?
『違う!』
 違う違う違う違う違う!
 そうじゃない! あたしがこうするのは、あたしがこうするのは、それは、それは、あたしが、
リンクを──

「んんんッッ!!」
 サリアが一気に腰を落とす。股間に強烈な圧迫が加わる。肉柱がきつい鞘へと完全に没した
ことを、ぼくは知る。思わずサリアの腰を両手で持つ。倒れないかと、暴れないかと危惧する
支えは、しかし、ぎりぎりと引き絞られる筋肉の感触だけを得る。
 ぎゅっと閉じられた目。かっと開かれた口。だがその口は、いっさい声を発しない。痛いのか?
苦しいのか? わからない。ただそこにはサリアが感じている衝撃のとてつもない激しさだけが
現れて──

 痛い? そうかも。
 苦しい? そうみたい。
 けれどそんな言葉ではとうてい言い表せないこの圧倒的な充実感、七年前の交わりで得たのと
同じ感動が、いまはいっそう巨大なものとなってあたしを満たす!
 こうなりたかった。あたしはリンクとこうなりたかった。ずっと、ずっと、そう思ってきた。
リンクの男の部分をあたしの女の部分に受け入れて、男と女が繋がる最上のやり方で、あたしたち
二人にとっての至上の幸せを得るために、得るために、ああ、来てる、来てるわ、もうそこまで
来てる、来てる、来る、来る、それはどんどん大きくなって強くなってあたしに近づいて迫って
触れて入ってきて染みとおって膨らんで膨らんで膨らみ続けて限界まで膨らみきってああついに
ついについにそれはそれはそれは──!!
1434-4-2 Saria VI-2 (15/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:26:37 ID:u29LpJA4
 ただでさえ狭いサリアの膣がますます狭まり、激越な圧縮が陰茎を締め上げる。音のない絶叫が
サリアの口から噴き出す。
 これは? これは? サリアは達したのか? こんな状況でも、こんな不釣り合いな結ばれ方でも、
サリアは達することができたのか? 何という驚き、何という感激、サリア、ああサリア、
ぼくがサリアをそこに至らせることができたのなら、ぼくは、もうぼくは、これ以上のことを
望まなくても──

 爆発! 爆発! 爆発!
 あたしを打ち砕く爆発の連続!
 でもまだよ。まだ終わりじゃない。あたしは行き着いた。だけどリンクは行き着いていない。
あたしだけじゃだめなんだわ。リンクにもこの爆発を感じてもらわなければだめなんだわ。
そのためにはどうしたらいいだろう。さっきあたしが口でリンクを感じさせた時、リンクは
どうしたか。あれを前後にすべらせて、あたしの口の中ですべらせて、そうよ、あの動きが
要るんだわ。いまのあたしにできること、いまのあたしがすべきこと、それはこれよ、これよ、
これなのよ!

 サリアの腰が持ち上がる。少しずつ、少しずつ、持ち上がってゆく。かと思うと、今度は
下りてくる。下りてくる。下りてぼくの股間に接着する。また持ち上がる。また下りてくる。
上がる。下りる。上がる。下りる。この動きは、だんだん速まってゆくこの動きは、明らかに
サリアの意志によるこの動きは、まさか、まさか、ぼくにこれ以上の悦びを与えてくれようとする
サリアの、サリアの思いゆえのもの?

「サリア!」
 リンクが起き上がる。繋がったままあたしを抱きしめる。あたしもリンクを抱きしめる。
あたしの名を呼ぶリンクの声、あたしを包みこむリンクの腕と胸が、あたしを舞い上がらせる。
舞い上がらせる。でもあたしは忘れない。身体の動きは忘れない。痛い? 苦しい? そんなこと
どうだっていいの! 二人の部分をすべらせて、二人の部分をこすり合わせて、それでリンクが
感じてくれるのなら、リンクが行き着いてくれるのなら、あたしはどうなったってかまわない。
それにあたしも、あたしも、こうしていたら、こうしていたら──!

 この動き! この接触! 急速にぼくの中心を沸騰させてゆくこの感覚!
 サリア、すごいよサリア、ぼくがこんなにすごい気持ちになれるなら、サリアも、そうだ
サリアも、きっと感じているだろう、その顔は、その身体の躍動は、そうなんだろサリア、
ならサリアのためにぼくだって、ぼくだって、できることを、できる限りのことをしてあげる、
こうやって、こうやって、どうだいサリア? どう? 感じる? 気持ちいい?
1444-4-2 Saria VI-2 (16/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:27:20 ID:u29LpJA4
 いいわ! いいわ! いいわ! いいわ!
「あぁッ! あぁッ! あぁッ! あぁッ!」
 声が出る、あたしの口から声が出る、あたしの動きに合わせてリンクが下から突き上げて、
その規則的な突き上げがあたしに声をあげさせて、そのつど起こる爆発、爆発、爆発、あまりの
頻度に長い長いひと続きの爆発になってしまって、爆発が爆発と感じられないくらいになって
しまって──

 いいんだね? いいんだね? ぼくにももうすぐ限界が来る、もうそこまで来ている、
来るまでにできることは全部しておこう、いまぼくたちが向かい合って結びついている部分、
胸と腹と腕と脚と股間の他に、残った一つの部分を結び合わせよう!

「んんんんんんーーーーーーッッ!」
 声が出なくなる、出せなくなる、リンクが口を塞いだから、リンクが唇であたしの唇を押さえ
こんだから、リンクが舌をあたしの口の中に突っこんできたから、あたしたちの最後に残った
部分がいま結び合ったから!

 サリア、いいかいサリア! もういくよ! サリアの中に、サリアの中に、ぼくは、ぼくは、
ぼくは!

 リンク、いいわリンク! いつでもきて! リンクを待って、リンクを待って、あたしは、
あたしは、あたしは!

 サリア──!!

 リンク──!!

 最後の、そして最大の爆発がサリアを襲った。リンクの体内から激しい勢いで何かが噴出し、
自分の中にぶちまけられるのを、サリアは感じた。
『これなんだわ!』
 リンクが行き着いた証。リンクの命のしるし。そして──
『……あたしに、必要だったもの……』
1454-4-2 Saria VI-2 (17/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:28:15 ID:u29LpJA4
 短く凝縮した時間が過ぎたあと、リンクは再び上半身を草の上に倒した。サリアはリンクの上で
うつ伏せの格好になった。
 リンクは身体を動かせなかった。さほど体力は使っていないはずなのに、精根尽き果てた
感じだった。サリアもまた、すべての動きを止めていた。
 しばしののち、サリアが動く気配を示した。抱いていた腕を緩めると、身体がゆっくりと横に
回転し、傍らに落ちて、仰向けとなった。言葉はなかった。目は閉じられ、胸は大きく上下し、
半開きの口からは、深い吐息が繰り返し漏れ出ていた。
 顔をサリアに向け、リンクは横たわったままでいた。さらに時が経つうち、サリアの息は
少しずつ平穏さを取り戻し、やがて安らかな周期的呼吸へと移っていった。
 眠りに落ちたのだ、とわかった。
 リンクはサリアを腕に包み、自らも眠りに入った。

 サリアが意識を取り戻した時、中庭は暗黒に満たされていた。夜になっていたのだった。
眠り続けるリンクの腕の中で、その温かみを肌に受けながら、ぼんやりと、サリアは思った。
『あたしは賢者として目覚めたのかしら』
 空を見る。夜である上に、暗雲が覆いつくすそこは、やはり完全な暗黒だった。
 こうなればいい──と、念じてみる。
 待つうち、暗黒の中に黄色っぽいおぼろな光が浮かび始め、次いで、その周囲に散在する、
より小さな光点群が見えるようになった。七年近くの時を経て、森の上空に、再び月と星々が
現れたのだった。
『やっぱり……』
 感動はなかった。なるようになったのだ、と、淡々と思うだけだった。股間に重く鈍い感覚がした。
その感覚の方が、はるかに重要だった。
 大人のリンクを受け入れるという、無謀ともいえる行為を、あたしはためらわなかった。
そうしたいと心から願った。それは賢者としての目覚めを得るのに必要なことではあったのだが、
あたしが願ったほんとうの理由は、そうではなかった。
 リンクの顔を見る。眠りが解ける様子はない。
 言っておきたい。答を期待してはならないことを。
 いまなら、言える。
「好きよ」
 リンクの腕が動いた。起きていたのか、と驚いたが、違っていた。無意識の体動であっただけで、
リンクの目は開かず、寝息もやむことはなかった。サリアを抱く腕の力のみが、強さを増したまま
残っていた。
『これで、充分だわ……』
 目の奥が熱くなった。熱があふれそうになった。サリアは急いで目蓋を閉じ、眠りをおのれに
強いた。
 眠りはなかなか訪れなかった。サリアは耐えた。耐え続けた。耐えきれたと思ったところで、
ようやく眠りに身を任せることができた。
1464-4-2 Saria VI-2 (18/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:29:35 ID:u29LpJA4
 リンクは目を開いた。両腕と胸とが形づくる小さな空間が、眠るサリアを包みこんでいた。
横たわったまま、その温かみを肌に受けるうち、大気がすでに朝の明るみを宿し始めていることに、
リンクは気づいた。たゆたう意識がゆったりと流れ、ひとつの思いに収束した。
 七年前の世界での、あの初めての交わりのあと、『森の聖域』で夜明けを迎えた時と同じ姿で、
いま、ぼくたちはいるんだな……
 完全に同じではなかった。唇に軽く接吻を施すと、かつては容易に目を覚まさなかったサリアが、
今度はすぐと寝息を止めた。両の目蓋が持ち上がり、口元をほのかな笑みが彩った。
 リンクは腕に力をこめた。サリアの肌のなめらかさが快かった。サリアの身体の小ささが
いとしかった。
 時は過ぎゆき、心は揺れる。
 いつまでも、とは言わない。ただ、せめてあと少し、あと少しだけ、この触れ合いを続けて
いられるなら……
 しかし、ついに、安息は尽きた。

 サリアが身を動かした。リンクの腕の中から抜け出し、上体を起こして、草の上に坐した。
少し遅れてリンクも同じ動作をとった。
 自分の股間を見る。陰茎に血痕が印されていた。
 ああ、やはり……サリアには厳しいことだったか。
 傍らに脱ぎ捨てた服を探る。新しい布は見つからない。使い切ってしまったのだ。
 こちらの様子をうかがっていたサリアが、自身の服を手に取り、ポケットから何かを引き出した。
「これで……」
 手渡されたのは古びた布だった。くすんだ白地に黒っぽい染みがついている。何だろう、と
いぶかしみつつおのれを清めるうち、その布が、自分の持っていた布と同じ材質であることに
気づいた。直後、染みの正体が知れた。
 サリアは、ずっと、これを持っていたのか。
 しみじみとした思いを抱きながら、リンクはサリアに身を寄せた。束の間、サリアはためらう
様子を見せたが、すぐに黙って脚を開いた。両脚の合わせ目には少量の血が付着しており、
奥からは昨晩の名残の精液が滲み出ていた。
 そっと、拭いてやる。
「ん……」
 目を閉じ、眉間に皺を寄せるサリア。
「大丈夫だった?」
 思わず発した問いに、こくりと頷きが返された。
 ほんとうだろうか。我慢しているのでは……?
 サリアがゆっくりと言葉を口にのぼらせた。
「とても、素敵な気持ちだったわ……」
 夢見るような口調だった。懸念は和らいだ。サリアの言葉が素直に信じられた。
 拭き終えたあとの布には、古い血に重なって、新しい血の赤みを混じる粘液が染みこんでいた。
サリアが差し出す手に、リンクは布を戻した。サリアは布をポケットに入れ、目を伏せて、
「……ありがと」
 と小声で言った。
 七年前と似たようなやりとりだな──とリンクは思った。朝の空気も、七年前と同じように
冷たい。が……
 七年前と同じ? そんなはずはない。いまは、あの頃よりも、かなり気温が下がっていて──
 いや、いまの空気の冷たさは、やはり七年前の、あの朝と同じくらいだ。この七年後の世界に
しては、むしろ暖かいともいえるくらいの──
 待てよ、そういえば……
 リンクは周囲に目をやった。いつもより明るいと感じられた。
 はっとして、上を見る。
 霞の向こうに、白んだ空が広がっていた。
『これは……』
 茫然と空を見続けるうちに、思い当たった。
 サリアに目を戻す。視線を受けたサリアは、小さく頷くと、立ち上がって着衣し始めた。
あとを追うように立って服を着ながら、リンクは胸の中で独言した。
 森の上空を覆っていた暗雲が消え去った、そのわけは──
「リンク」
 静かな声がした。身なりを整えたサリアが、超然とした態度で、こちらを見つめていた。
1474-4-2 Saria VI-2 (19/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:30:28 ID:u29LpJA4
「あたし、賢者として目覚めることができたわ」
 とうとう、この時が来てしまった……
「あたしは、『森の賢者』として、いままでよりも大きな力で、これからも、コキリの森を守って
ゆくの」
 ともすれば膨れあがりそうになる感情を抑えつつ、サリアは語った。
「もう一つ。リンクには、使命があるわね。それを助けるのが、あたしの使命。リンクが世界を
救うために必要な力を、あたしはリンクに託したの」
「力を? ぼくに?」
 リンクが不思議そうな声を出した。
「そう……その力をどうすればいいかは、いずれ、時が来たら、リンクにもわかるわ」
 リンクは何も言わず、ややあって、別の問いを発した。
「ここに来れば、また、サリアに会える?」
 サリアは首を振る。
「……あたしは、ずっとここにいるわ。だけど、もう会うことはできないの。ううん、何も言わないで」
 口を開きかけたリンクを、押しとどめる。
「あたしたち二人は、同じ世界では生きていけない運命だもの……」
 察していたのだろう、リンクの顔に驚きはなかった。何かを言いたそうな様子はうかがわれたが、
しかしリンクは沈黙を守っていた。その沈黙を引き取って、サリアは続けた。
「リンクは、行くべき道を進んでいって。どこまでも、まっすぐに……」
 抑えていた想いが、湧き上がってくる。
 あたしとリンクの行く道は、結びつかない。そして、リンクと結びついているのが誰なのかを、
いまのあたしは知っている。
『あたしは!』
 噴き出しかけた想いを、押さえつける。
 あたしは賢者なんかになりたくはなかった! リンクと同じ世界で生きられない賢者なんかには!
 でも……
 想いは静まる。
 七年ぶりにリンクを見て、あたしにはわかった。
 大人のリンク。子供のあたし。
 もともとリンクは別の世界に生きるべき存在だったのだ。たとえあたしが賢者でなくても、
リンクと一緒に生きることは、初めからかなわない願いだったのだ。
 ならば、せめて賢者として、リンクとともに力を尽くすことこそが、いまのあたしにとっては、
リンクとの絆を保つ、ただ一つの方法ではないか。それが最大の喜びではないか。
 その絆の証として──
『あたしには、これがある』
 ポケットに納められたもの。あたしが流した血と、リンクが放った命とが、混じり合い、
染みこんだ、一枚の布。あたしたち二人がともに得た、至上の幸せの証明。
 そして、リンクには……
1484-4-2 Saria VI-2 (20/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:31:18 ID:u29LpJA4
「あたしがあげたオカリナ……持ってる?」
 唐突な問いに怪訝な表情をしながらも、リンクは懐に手をやった。取り出されたオカリナを、
サリアは懐かしい気持ちで見つめた。
「それ……『妖精のオカリナ』って、あたし、呼んでたの。リンクには妖精がいなかったけれど……」
 リンクの顔に目を移す。
「それがリンクの妖精。ね?」
 間をおいて、途切れがちに──
「……ずっと……ぼくと一緒に……いてくれるんだね」
 こちらの答も、途切れ途切れに──
「そう、これからも……ずっと……リンクと一緒に……いさせてあげて」
 再度の間。
 そののち、今度は途切れなく──
「ずっと一緒にいるよ」
 オカリナが懐にしまわれる。決然としたリンクの視線に応じ、サリアも最後の想いを口にする。
「忘れないでね。サリアは、いつまでも、リンクの──」
 友達──と続けようとして、絶句する。
 友達だなんて!
 身も心もリンクに許しきった自分のことを、どうしていまさら友達などという言葉で呼べるだろうか!
 だが、それに代わるどんな言葉があるだろう。あたしはリンクにとって、どう呼ばれるべき
存在なのだろう。
「かけがえのないひと」
 リンクが呟くように言った。
「サリアがいたから、いまのぼくがある。サリアがいるから、この先のぼくがある。サリアは、
ぼくにとって、他の誰にも代えられない、ただひとりのサリアさ」
『ああ!』
 それでいい。それでいい。それ以上、何を望むことがあるだろう。
 頷く。見つめ合う。言葉のない想いの交換の果てに、リンクが、数歩、後ずさる。
 サリアはリンクに向けて両手をかざした。リンクの身体が光に包まれ、徐々に輪郭を失ってゆく。
 行って、リンク。遠い先に待つものを、しっかりと見据えて、まっすぐに、ただまっすぐに、
リンクは、進んでいって。
 リンクの姿が中庭から消えた。即座に両手を胸の前で組み合わせ、おのれに光を呼び寄せる。
 自分の身が実体を捨て、二度とは元に戻らない存在となりつつあるのを、サリアは感じた。
惑いはなかった。凪いだ水面のように、心は平らかだった。
 あたしは、永遠に、見守っているわ。
『……リンク……あたしの、ただひとりのひと……』
1494-4-2 Saria VI-2 (21/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:32:03 ID:u29LpJA4
 突然まわりを取り巻いた光は、驚きを実感するいとまもなく、生じた時と同じ唐突さで消え去った。
風景が変わっていた。目の前に聳えているのは森の神殿なのだが、中庭からの見え方とは違っている。
いま自分は『森の聖域』にいて、外から神殿を眺めているのだ、と知れた。
 サリアが賢者の力を使って、ぼくを神殿の外へ送り出したのだ。
 思いをめぐらしながら、しばらく立ちつくしたのち、リンクは神殿に背を向け、迷いの森へと
向かった。途中の道に、もはや魔物はいなかった。
 泉のほとりにミドがすわっていた。一晩中、待っていたのだろう。こくりこくりと上体が
揺らいでいる。リンクが近づくと、それでも気配を鋭敏に察知したようで、両目がぱちりと
開かれた。その目がリンクを捉えるやいなや、
「サリアは?」
 口が性急な声を発してきた。
「サリアは無事なのか?」
 興奮の体で立ち上がるミドに対し、リンクは短く答えた。
「無事だよ」
 ミドが大きく息をつき、笑みを浮かべた。が、その笑みは、すぐに不審の色へと変わった。
「サリアはどこにいるんだ?」
「サリアは──」
 リンクは率直に語った。
 神殿に巣くう魔物を倒して、サリアを救い出したこと。サリアは『森の賢者』として目覚め、
森を守る存在となったこと。そして、そのために、サリアは森の神殿から離れられない運命を
担ったこと。
1504-4-2 Saria VI-2 (22/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:32:37 ID:u29LpJA4
 最後のくだりで、ミドは顔を曇らせ、うつむいた。長い沈黙を経て、声が絞り出された。
「そうか……サリア……もう、戻ってこないのか……」
 苦しげな声が、かつてのミドの叫びを思い出させた。
『サリアを幸せにできないなら、二度と森へは帰ってくるな!』
(帰ってきて、幸せにしてやれ!)
 ぼくは森へ帰ってきた。力の限り戦ってサリアを救い、賢者としての真の目覚めをもたらした。
けれども……それによって……サリアは……
「サリアは幸せだと思ってるに違いないさ」
 心を見通したようなミドの言が、リンクの心を揺すぶった。
「サリアは、森が大好きだった。賢者になって、森を守っていけるんなら、サリアがそれを
喜ばないはずがないじゃないか。そうだろ? な?」
 すがるがごとく言葉をぶつけてくるミド。
「そうだね」
 呟きを返しながら、リンクは自分の胸が温まってゆくのを感じた。
 ミドにそう言ってもらえるなら……
「でも、一つだけ……」
 ミドが神妙な面持ちになった。
「前に、この森に、リンクっていう奴がいてさ」
 どきりとする。
「七年前に『外の世界』へ出て行っちまって、それきり帰ってこないんだけど……サリアは、
あいつを、ずっと待ってたんだ。そのことを、絶対あいつに教えてやらなきゃって……俺は……
思ってて……」
 ゆがみ始めるミドの顔。
「……だって……サリアは……あいつを……」
 崩れ去る直前で、ゆがみは止まる。
「なあ、おまえ」
 こちらを向いたミドが、しっかりとした声をかけてきた。
「おまえは『外の世界』のやつだから、どっかであいつに会うかもしれないよな。会ったら、
このこと、伝えて欲しいんだ」
 続く声が、小さくなる。
「それから、ついでに……意地悪して……ごめん──って……さ……」
 ほころぶ思いに、しばし身をゆだね、
「わかった。伝えるよ」
 ミドの肩に手を置き、リンクは言った。
「それを聞いたら、リンクも……きっと、嬉しいって、思うだろう」
1514-4-2 Saria VI-2 (23/23) ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:33:35 ID:u29LpJA4
 迷いの森を抜けた二人のもとへ、仲間たちが駆け集まってきた。先にみなが自分に向けていた
恐怖の目を意識して、リンクは森の出口にとどまり、ミドだけを先に進ませた。
 仲間たちは口々に歓声をあげてミドを取り囲んだ。
「魔物がいなくなったよ!」
「あのいやな風もやんでしまって!」
「空もきれいに晴れて!」
「森が元に戻ったよ!」
「いったい何があったの?」
「教えて!」
「教えて、ミド!」
 ミドがふり向き、にっと笑って、歩み寄ってきた。リンクの横で立ち止まり、大げさな声を出す。
「いいか、みんな、よく聞けよ。この──」
 そこで急に言葉を切り、ミドが戸惑ったように小声で訊いてきた。
「おまえのこと、何て呼んだらいい?」
 少し考え、ふだん年上の人を呼ぶ呼び方でいい、と返答した。頷いたミドが、仲間たちに向き直る。
「このにいちゃんが神殿へ行って、魔物を退治してくれたんだ。森が元に戻ったのは、にいちゃんの
おかげだ。俺たちを助けてくれたんだ。みんな、ちゃんとお礼を言うんだぞ」
 しん──と、場が静まった。複雑な視線がリンクに集まった。そのまま時間が過ぎ、いたたまれない
気持ちになりかけた時、一人の少女が集団から歩み出て、リンクの前に立った。大デクババに
襲われていた、双子の妹だった。
 見上げる顔がこわばっている。と、不意にそのこわばりが解け、ぱっと明るい笑いが咲いた。
「ありがとう」
 それをきっかけとして、
「ありがとう!」
「ありがとう、にいちゃん!」
 走り寄る仲間たちが、リンクをもみくちゃにした。いささか乱暴な歓迎だったが、気には
ならなかった。
 立場の微妙さはあるけれど……それでも、ぼくは、やっと、みんなに……
 思いが染みわたる。
 森を救ったのは、ほんとうは、ぼくの力じゃない。そして、ぼくが森の仲間たちに受け入れ
られたのも……
 迷いの森に目を向ける。見えるはずのない『森の聖域』が──その片隅の切り株にすわり、
慎ましやかな笑みを湛える、緑の髪を持った少女の姿が──リンクの目には、はっきりと見えた。


To be continued.
152 ◆JmQ19ALdig :2007/12/06(木) 00:34:11 ID:u29LpJA4
以上です。原作設定の縛りに挑んでみました。
153名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 01:07:29 ID:yFctmfB3
GJ
サリアさんカワソス。
でもリンクと心でも繋がれて良かった。
154名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 07:18:55 ID:Cr7r0uuG
GJ!
切なくて泣けてしまった。
やっぱり何歳になってもサリアが一番好きだ。
155名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 10:43:43 ID:ltflXIDQ
みんなで「ありがとう!」って叫んで◆JmQ19ALdigをもみくちゃにしようぜ
もちろん全裸で
156名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 11:51:27 ID:r4CsFgZT
サリア・・・悲しス・・
話としては納得するんだけど、やっぱ切ない。
そしてGJ!!!
157名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 12:36:30 ID:QuQwSQ/t
ハーレムフラグを立てまくりつつダンジョンをクリアしたら永久放置の任天堂がにくい!
158名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 15:10:33 ID:syghwMuF
GJ。独特の濡れ場でした。形容し難いほどに。次回投下までに言い表す言葉を探しておきます。
159名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 18:33:28 ID:piGq8+Qh
あれ…俺の目から何か流れてくる…
GJすぎるんだぜ
160名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 03:52:14 ID:auTOAaPW
161名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 02:47:39 ID:yPGkHwZW
外道

保存した
162名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 10:08:35 ID:0mu00C0O
◆JmQ19ALdigの過去の作品だれかまとめてくれw
163名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 10:10:25 ID:0mu00C0O
すまん、テンプレみてなかった
半年、、、いや 3年ROMる
164名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 09:33:16 ID:xj/cu7tH
>>160
GJ!!保存したw
165名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 00:26:02 ID:dmgltvAl
保守
166名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 17:47:45 ID:DrCpQ7hE
過疎ってんなage
167 ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:07:55 ID:JwESS2bl
私本・時のオカリナ/第四部/第五章/シーク編その4、投下します。
ほぼエロ無し。今回はもっぱら伏線の整理です。
1684-5 Sheik IV (1/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:09:23 ID:JwESS2bl
 森の回復を祝う宴がたけなわとなり、仲間たちの喜びが最高潮に達しつつあったさなか、
リンクは自らの席を立った。主役がどこへ行くのか、と引き止められたが、適当な言い訳を返して、
宴の場となっていたミドの家を出た。
 中天から西に傾き始めた太陽が、霞がかった大気を通して、穏やかな光を一帯に降らせ、
さやかな風に踊る木々の葉は、いっそうの生彩をもって煌めいていた。昨日までの陰鬱な雰囲気は
跡形もなく、以前と同じ、のどかで自然なたたずまいを、森の風景は取り戻していた。
 周囲を満たす平安に満足感を覚えつつ、リンクはぶらぶらと歩みを進めた。
 まず自分の家へ行ってみた。長い間、無人であった部屋は、すっかり埃にまみれていた。が、
家具や什器、あるいは壁の落書きなど、すべては記憶にあるとおりのありさまをとどめており、
リンクを懐旧の情に誘った。
 次に森のはずれの広場へと赴いた。そこでは、歴史改変前には焼け落ちてしまっていた
デクの樹が、雄大な姿を、なおしっかりと保っていた。それは命のない抜け殻に過ぎなかったが、
かつてデクの樹が自分に注いでくれた愛情、そして、その死の直前における、自分の生きる道を
決定づけることになった会話が思い出され、リンクにとって何よりの励みとなるのだった。
 しばし感慨を味わったのち、去ろうとして、足が止まった。デクの樹の正面に奇妙なものが
見えた。前にはなかったもの──と怪しみながら、リンクは近寄った。両手で何とか抱え上げられ
そうなくらいの丸い物体が、太い幹の根元に接するような形で、地面に鎮座していた。側面から
何本かの細い突起が出ており、それらの先端には緑の葉が数枚ついている。
 小さな木──と認識した瞬間、
「リンク」
 甲高い声がした。目の前の小さな木が発した声とわかり、リンクは驚きに打たれた。
「ぼく、デクの樹のこどもデス。きみとサリアが森の神殿の呪いを解いてくれたから、ぼく、
生まれることができたデス。ほんとうにありがとうデス」
 舌足らずな言葉づかいだったが、老成したような落ち着きもそこには感じられ、デクの樹の
こどもという小さな木の言葉を、リンクは素直に受け入れることができた。
「じゃあ……森はすっかり元どおりになるんだね。ぼくが暮らしていた頃と同じように」
「そうデス。デクの樹が死んでから、コキリ族に子供は生まれなくなったデス。でもぼくが
もう少し大きくなったら、再び子供は生まれてくるデス。コキリ族は絶えることなく、この森で
生き続けるデス。ぼくとサリアがみんなを守っていくデス」
「頼むよ」
 森の完全なる復活を、リンクは心から喜び、祝福した。が……
 何もかもが元のままというわけではない。サリアは『森の賢者』となった。そして、ぼくは──
「リンク」
 デクの樹のこどもが改まった声を出した。
「きみは魔の力から森を解放し、大きな一歩を踏み出したのデス。けれどもそれは、最初の一歩に
過ぎないのデス。きみには、まだまだやるべきことがあるのデス」
 そう、ぼくは生きてゆく。『外の世界』で。なすべきことをなすために。
「すべての神殿の呪いを解き、悪にまみれたこの世界を救うのが、きみの使命。きみは進んで
ゆかなければならないのデス」
「進んでゆくよ」
 相手の言葉を力強く繰り返し、踵を返しかけた時、
「一つ、伝えておくデス」
 さらに深刻となった声が、リンクを引き止めた。
「……何だい?」
「コキリ族ではないきみが、どうしてこの森で暮らすようになったか──を、デス」
1694-5 Sheik IV (2/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:10:17 ID:JwESS2bl
 愕然となる。
「デクの樹はきみに伝えようとしたデスが、死に瀕していたために、できなかったデス。
その秘密をきみに話すこと、それもぼくの役目だったんデス」
 いつかは知ろうと思っていたこと。使命を果たそうと奔走する間にも、常に心の底にあった疑問。
それが、いま、明らかになる?
 いまの森の仲間たちは知らないことだが──と前置きして、デクの樹のこどもが淡々と述べる
経緯に、リンクは心を震わせながら聞き入った。
 ──ハイラル王国がハイラル全土を統一する前のこと。戦火に追われて、コキリの森に
逃げこんだ、ハイリア人の母親と赤ん坊があった。深い傷を負っていた母親は、森の精霊である
デクの樹に、我が子の命を託した。コキリの森は外部の者を厳しく拒む禁断の地であったが、
デクの樹はその子を見た時、世界の未来にかかわる宿命を感じ、敢えて受け入れる決意を
したのだった。母親が息をひきとったのち、赤ん坊はコキリ族として育てられ、九年後、ついに
運命の日を迎えることとなった──
「その赤ん坊が……ぼくなんだね」
「そうデス。リンクという名は、母親がデクの樹に告げた、きみのほんとうの名前なんデス」
「何か……残されたものは?」
「ないデス。デクの樹が、すべてを土に返したのデス。が……」
 デクの樹のこどもの声が、優しい色を帯びた。
「その場所は、デクの樹の後ろにあるデス。見てみるデスか?」
 リンクは訪った。そこは、子供では乗り越えられない高さまで露出したデクの樹の太い根が、
防壁のようにまわりを囲む、狭い場所だった。黒い土の上に、苔むした大きな石が一つあった。
墓の代わりかとも思われる、その石を見つめるうち、リンクの胸は徐々に高ぶりを増していった。
 いるはずだ、と思ってはいた。どこでどうしているのだろう、と疑問でもあった。仲睦まじそうな
家族を見た時などは、羨ましいとも感じていた。ただ、自分の母親というものに、これまで実感を
持てなかったことも、また事実。しかし、いま……
「母さん」
 言ってみる。発した言葉が、高ぶりを増幅させる。
 戦火を逃れ、瀕死の身で、ここまで来た、母。赤ん坊のぼくを抱いて。ぼくを守って。
 ぼくがあるのは……ぼくが生きてここにあるのは……それは……すべて……
「母さん!」
 今度は意志なく出る叫び。目にあふれる熱い感情の結果をとどめるつもりもなく。
 命を、生を、ぼくに与え、伝えてくれた、その人。
 そして、もうひとり。
 ぼくの命のいまひとつの源である、まだ行方の知れない父親をも、ぼくは実感する。
 残された品物は、何もない。けれども、その名とともに、ぼくという存在そのものを、二人は
残してくれた。
 父に、母に──いまこそ確かな繋がりを信じることができる両親に──
「ありがとう」
 頭を垂れ、立ちつくし、思いの限りを、リンクは捧げた。
 時が経ち、心が静まるとともに、新たな疑問がリンクの頭に浮かんだ。
 母が巻きこまれた戦いとは、どんなものだったのだろう。その時、父はどうしていたのか。
ガノンドロフは父を知っていた。母の命を奪った戦いには、ガノンドロフが関係していたのだろうか。
 立ち戻り、デクの樹のこどもに訊ねてみたが、わからないとのことだった。デクの樹も詳細を
知らなかったのだ。
「……デスが、リンク、きみはいずれ、知ることになるはずデス。それを知ることも、また、
きみの使命の一つと言えるのデス」
 リンクは強く頷いた。
1704-5 Sheik IV (3/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:10:59 ID:JwESS2bl
 また来いよ──というミドらの声を背に受け、リンクは森をあとにした。日没の頃で、空は
急速に翳りつつあったが、焼け跡を行くリンクの目には、地に新たな草木が芽吹き始めているのが、
はっきりと見てとれた。復活の気配がここにも及んでいるのだとわかり、リンクの胸は感動に満ちた。
 ハイラル平原に達した時には、あたりはすっかり暗くなっていた。さほど離れていない場所に
光が見えた。改変前の世界で、焼きつくされたコキリの森から平原に戻った時、シークが待って
いたのと同じ場所だった。今度も──と思いながら近づくと、案の定、焚き火の横にシークが
すわっていた。
 静かな声がリンクを迎えた。
「うまくいったようだな」
 なぜ何も話さないうちからわかるのか、と驚いたが、シークが上へ目をやるのを見て納得した。
平原の上空は依然として厚い雲に覆われていた。しかし森の方には雲のかけらもなく、無数の星が
輝いている。その劇的な変化が、シークに事態を悟らせたに違いなかった。
「君のおかげだよ」
 シークの横に腰を下ろし、リンクは心からの言葉を送った。
「神殿に入れるのは『時のオカリナ』を持つぼくだけだけれど、神殿に入るためのメロディを
得られるのは君だけだ。君とぼくとが力を合わせて初めて成し遂げられたことさ」
 シークが穏やかな笑みを浮かべ、右腕を立てた。手が握られていた。リンクも左腕を立て、
拳を作った。二つの拳の尺側が打ち合わされた。その接触は言葉を超えて、シークとの一体感を、
リンクに深くもたらすのだった。

 エポナとも再会を喜び合ったのち、リンクはシークと夕食を摂った。食事の間は、主に
森の神殿での戦いのことが話題となった。リンクは語り、シークは適度に相づちを入れつつ、
話を聞いていた。
 夕食を終え、一息ついたところで、シークが訊いてきた。
「ところで……どうやって賢者を目覚めさせたんだ?」
 一瞬、詰まった。シークが最も知りたいのはそれだろう、と思いながらも、話すのを後まわしに
していたのだった。が、話さないわけにはいかない。リンクは最初からのいきさつを正直に告白した。
 過去の世界での、サリアとの交わり。そのサリアが森の神殿に入ったことで、賢者として
半覚醒し、命を保つとともに、森も焼失を免れる、という歴史の改変が生じた。サリアの真の
覚醒は、この七年後の世界での、サリアとの再度の交わりによってもたらされた。また、マロンの
未来が変わったのも、同じく、過去での自分との交わりが遠因となっていた──
 シークは無言だった。リンクが話し終わっても、沈黙を続けていた。その沈黙が妙に気恥ずかしく、
リンクは自嘲めかして言葉を継いだ。
「おかしな話だね。賢者を目覚めさせるのがぼくの使命だけれど、その方法が賢者とのセックス
だった──なんてさ」
「けっこうなことじゃないか」
 唐突にシークが口を開いた。
「勇者の役得、とでも思っておくんだな」
 突き放すような言い方だった。奇妙に感じてシークの顔を見る。何らの感情もうかがえない。
ただ、こちらと目を合わせるのを避ける様子が、微妙な心の揺れを物語っているとも思われた。が、
「すまない」
 次に声を発した時には、いつものごとく冷静なシークとなっていた。
「変なことを言ってしまった。忘れてくれ」
「ああ……気にしてないよ」
 答えながらも、リンクの頭には、シークの態度が違和感として残った。
1714-5 Sheik IV (4/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:11:45 ID:JwESS2bl
 なぜ──と、シークは自問した。
 なぜ僕は、いまのリンクの話に心を揺らしてしまったのか。リンクが他の女性とセックスする
ことへの引っかかりは、とうに克服したはずではなかったか。
 サリアはリンクと交わることによって、ガノンドロフによる陵辱と死を免れた。マロンの場合も、
リンクとの交わりが悲惨な生活を一変させた。リンクは二人を救ったのだ。喜ぶべきことだ。
 いや、そんな理屈では、この心の揺れは治まらない。建て前だ。
 建て前? しかし建て前を抜きにしても、リンクがその二人と関係することには、何の
不自然さもない。もともとつき合いのある相手なのだから。
 アンジュについては、もう僕はわだかまりを持ってはいない。『副官』についてもだ。
 リンクと『副官』との間に何があったかは、ゲルドの谷で会った時、すでに知らされている。
『副官』の求めに応じたのだ、と、口ごもりながらも悪びれずにリンクは言い、僕も動揺する
ことなくそれを聞いた。僕と深い関係があっても、独立独歩の『副官』なら、そういう行動を
とりもするだろう、と理解できた。
 自分と関係のあるアンジュや『副官』にしてそうなのだ。ましてや個人的関係のないサリアや
マロンが、リンクと何をしようと、僕がこだわる理由などないはずなのだ。
 そのはずなのに……克服したはずなのに……折に触れて顔を出す、この感情……
 心を落ち着かせ、考える。
 リンクに女性を知れと勧めたのは、僕自身だ。リンクが成長するためには必要なことだったし、
これからもやはり必要となる。人生には多くの出会いが待っているのだから。
 それに……
 リンクは決してうわついた気持ちで女性と接しているのではない。誰に対しても常に真剣だ。
世間の常識には合わないかもしれないが、そこがリンクの個性であり、魅力でもある。その
リンクの行動が、出会う人々に救いをもたらすのであれば──そしてさらに賢者の覚醒という
大きな意義を有しているからには──言うべきことなどないではないか。
 この件で惑うのは、もうやめにしよう。
 ただ……
 最後に残る、一つの懸念。
 リンクが「他の」女性に向けるのと同じ真剣さを……いや、願わくば……わずかでもいい、
それ以上の真剣さを……
「ゼルダは……」
 リンクの呟きが、シークを我に返らせた。
「え?」
「賢者を目覚めさせるために、ぼくが何をするかってことを知ったら……ゼルダは、どう思う
だろうな……」
 かすかな苦笑いが、リンクの顔に浮かんでいた。見つめるうち、シークの胸は温かみに浸された。
リンクが口にしたゼルダという名前が、快く脳裏に響いた。
 そう、ゼルダだ。リンクの方も引っかかりを消せないでいるのだ。消せないという、そのことが、
リンクとゼルダの間にある特別な「何か」を証明しているのだ。
1724-5 Sheik IV (5/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:12:28 ID:JwESS2bl
 胸の温かみが、おのれの懸念を溶かしてゆくのを感じながら、シークはリンクに問いかけた。
「君は、自分が間違った行動をとっていると思うか?」
 リンクの顔から笑いが引き、強い答が返ってきた。
「いや」
「じゃあ、問題はないだろう」
 リンクが目を落とす。
「使命を果たすためには必要な行動だ。ゼルダもわかってくれるんじゃないか」
「……だといいんだけれど……」
 屈託は去らないようだった。
「……まあ、それは……ちゃんとした目的があるんだから……いいとしても……」
「他にも気になることがあるのか?」
 続けての問いに、訥々と返事が戻ってきた。
「……うん……ぼくは、過去の世界で……子供の状態で……セックスしたわけだけれど……子供が
そんなことをして……よかったのかな」
 意外に常識的な──と、シークは微笑ましい気持ちになった。懸念が去り、心が平穏に戻って
いたせいかもしれなかった。
「もちろん、そうする理由はあって……それは自然なことなんだって……思いはしたけれど……
だけどやっぱり……過去のぼくみたいな小さな子供がするのは……どこか……変な気がして……」
「別に変じゃない」
 何気ないふうに言ってやる。
「僕だって、最初に経験したのは、子供の君と同じ歳の時だったからな」
「え?」
 リンクが顔を上げた。
「君も?」
「ああ」
「誰と?」
「インパ」
 リンクは目を丸くし、間をおいて、遠慮がちに訊いてきた。
「……どうして?」
「いろいろ事情があったんだが……君にとってのマロンやアンジュと同じさ。修行のために
カカリコ村を出る時、女を教えてもらったんだ」
 よほど意外だったのか、リンクはしばらく沈黙したままだった。
 あの男まさりのインパが女として自発的に性交するという状況が、うまく呑みこめないのだろう。
だが、いずれはリンク自身がその状況に直面することになる。知っておいた方がいい。インパの
名を出したのは、そういう意図もあったからだ。
 意図が伝わったのか、リンクの驚きの色は次第に薄まった。子供のセックスへの心がかりも
消し飛んだと見えた。が、なおもリンクには、思うところがあるようだった。
「その頃から、というのなら……君は、ずいぶん経験豊富なんだね」
「それほどでもない」
 と、いなす。謙遜ではない。関係した女性の人数なら、リンクの方が多い。
 リンクは聞いていなかった。
「君なら、女の人の心理が、よくわかるんじゃない?」
「……何が言いたい?」
 奇異に感じて訊き返す。
 下を向いたリンクが、やがて、つっかえつっかえ、言葉を出した。
「男が……ある女の人を想って……オナニーしたとして……それを、その女の人が知ったら……
男を……どんなふうに思うかな」
1734-5 Sheik IV (6/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:13:07 ID:JwESS2bl
 吹き出しそうになる。固有名詞は使っていないが、誰のことを指しているかは明らかだ。
「君の場合、最初は、ゼルダを想って、だったな。いまもそうなのか?」
 核心を突いてやる。どぎまぎした様子で、それでも率直に、リンクが答える。
「……うん……たまにしか、してないけれど……」
「ゼルダに悪いと思うのなら、我慢すれば」
「悪いとかじゃないんだ。それはぼくの正直な気持ちだから。だけど……ちょっと……気に
なってさ……」
 面白い、と言ってはよくないのだが、無性にリンクを刺激したくなり、挑発的な応答をしてしまう。
「逆に考えてみたらいい」
「逆に?」
「ああ。ゼルダがオナニーする時に──」
「ゼルダが? オナニー?」
 リンクがさえぎった。さも心外といった顔つきだ。
「そうさ。ゼルダは神様じゃない。一人の女性なんだ。オナニーくらいしても不思議はないだろう」
「君はゼルダを知らないからそんなことを──」
「僕なら女性の心理がわかると言ったのは君だぞ」
 気色ばむリンクを、今度はこちらがさえぎってやる。
「それに君だって経験を積んできているんだ。女性が男性に対して、どういう考えを持ち、
どういう行動をとるか、もう多少は知っているはずだ」
 リンクは黙ってしまった。思い当たる点があるようだ。
「そう深刻にならなくてもいい。あくまで仮定の話だ。その話に戻ると──だな」
 なだめておいて、先を続ける。
「ゼルダがオナニーする時に、君を想ってしているとしたら、君はどんな感想を持つ?」
 リンクの顔が真っ赤になった。
「いやか?」
 目を伏せ、首を横に振るリンク。
「どうなんだ?」
 ややあって、小さな声がした。
「……嬉しいよ」
 リンクの脚が、すわりにくそうに、もぞもぞと動いている。勃起したらしい。
「そういうことさ。まあ、結局は──前にも言ったけれども──ゼルダがどう思うかは、当人に
会って訊いてみなければわからないがね」
 笑いが漏れそうになるのを抑え、話にけりをつける。
 ゼルダという女性に幻想を抱くな、という以前の忠告を、まだ理解しきれていないようだ。
だから敢えて露骨に言ってやった。すぐには割り切れなくとも、すでに女を知っているリンクのこと、
そのうち落ち着いた見方ができるようになるはず。いまはこれくらいにしておこう。
「それはそれとして……」
 朗らかな気分に後押しされ、しかし浮かれることなく、シークは喫緊の件へと話題を移した。
「ゼルダに会うためにも、君は今後、いっそうの努力をしなければならない」
1744-5 Sheik IV (7/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:14:13 ID:JwESS2bl
 オナニーするゼルダ──という、これまで抱いたこともなかったイメージに、絶大な、かつ
甘美な動揺を誘発され、まともな思考ができずにいたリンクだったが、シークの言葉によって、
意識は現実へと戻った。
「サリアの例を敷衍させれば、筋書きはこうだ。君はこれからもう一度過去へ戻って、残りの
賢者たちに会う。彼女らと契り、事あらば神殿に赴くよう徹底させておけば、みなの命は保たれ、
各々の地域も守られる。そして君がこの世界に帰ってきたのち、再び彼女らと契ることによって、
賢者の覚醒は完全となる」
 リンクは頷いた。
「だが、過去での活動は、前のように簡単にはいかないぞ」
「どうして?」
「ゲルド族の反乱が始まるからだ」
「あ──」
 シークの答が、気がかりだった矛盾を思い出させた。
「そのことなんだけれど──」
 反乱の勃発はゼルダ失踪から一週間後と聞いていたのに、実際には十二日経っても反乱は
起こらなかった。シークの得た情報は誤りだったのか、と思っていたが──
 疑問を呈するリンクに、シークは驚いた顔もせず、解説を述べた。
「いままで話す機会がなかったが……実は、この世界には、コキリの森の情勢以外にも変化した
点がある。その一つが反乱勃発の時期だ。改変前の世界ではゼルダ失踪から一週間だった。
それは間違いない。けれども改変後のこの世界では十二日だ。僕の方は、君の活動が時期を
遅らせたのだと思っていた」
 過去での自分の行程をたどってみる。が……
「何も思い当たらないな」
 シークの眉に皺が寄ったが、
「君の何気ない行動が、君自身も気づかないうちに、事態を変えたのかもしれない。あり得ることだ」
 表情はすぐに元へと戻った。
 反乱そのものを防ぐことができないだろうか──と、リンクは持ちかけてみた。
 過去でそれを思いつき、時の神殿を見張る兵士に働きかけたが、うまくいかなかった。次に
過去へ戻った際、もう一度、試してみるのはどうだろう──
 シークは厳しい顔になった。
「確かに、反乱自体を防止できれば、世界の運命は大きく変わる。が……難しい」
 続けてシークは語った。
 これまでの例からみて、リンクが次に過去へ旅立った時、到着するのは、過去から未来へ帰る
ためにマスターソードを抜いた直後の時点になるだろう。すなわちゼルダ失踪から十二日目の朝。
反乱勃発の当日だ。何かをしようにも、ほとんど時間の余裕はない──
 納得せざるを得ないリンクだったが、
「でも……やれるだけのことはやってみるよ」
 気を奮わせて応じると、シークは表情を和らげた。
「うむ……試す価値はある。やってみたまえ。だが、できなかったからといって気を落とすなよ。
うまくいけば儲けもの──くらいに考えておくことだ」
「ああ」
「反乱が起こってしまえば、城下町からの脱出すら困難になる。臨機応変に行動しなければならない」
「そうだね」
「その後も各地での行動に障害が生じるだろう。充分に気をつけたまえ」
「わかった」
 来たるべき試練に立ち向かう意志を固め、リンクは力強く返答した。シークは励ますように
温かい視線を送ってきていたが、やがて再び、その表情が厳しくなった。
1754-5 Sheik IV (8/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:14:48 ID:JwESS2bl
「もう一つ、注意すべき点がある」
「何だい?」
「ガノンドロフの動きだ」
 シークが噛んで含めるように言い始めた。
 かつてリンクが光の神殿に封印された時点で、マスターソードは台座から消えた。その後、
時の神殿に侵入したガノンドロフは、何もない台座を見ているはず。リンクが過去で活動している間、
マスターソードは台座に刺さった状態になるが、それをガノンドロフに知られたら──反乱勃発後は
ゲルド族の支配下に置かれる城下町、その可能性はきわめて高い──怪しまれるのは確実だ。
リンクが時を越えた旅をしているという真相を、直ちに悟られはしないとしても、リンクの存在が
知られ、追求される事態となるかもしれない。できるだけ早く七年後の世界に帰ってくる必要がある。
しかし帰る際にも、時の神殿は見張られている、と覚悟しておかねばならない──
 そこまで考えていなかったリンクは、シークの周到さに感嘆し、かつ感謝した。同時に自らの
試練の困難さが改めて実感された。ただ、その実感はリンクにとって負の要素とはならず、むしろ
ますます闘志はかきたてられた。
「ところで、闇の神殿についてだが──」
 シークが話題を転じた。
「それが最難関になる」
「神殿の場所さえわかっていないからね」
 応じるリンクに、シークは意外なことを言った。
「ところが、手がかりになるかもしれない点があるんだ」
 これも改変後の世界に生じた相違の一つ──と前置きし、シークは言葉を続けた。
 歴史改変前は無人だったカカリコ村の風車小屋に、いまは一人の男が住みついている。
地下通路や井戸とともに、闇の神殿との関わりが推測される風車小屋だ。その男に会ってみれば、
何らかの情報が得られるかも──
「──というわけだ。過去へ戻る前に、一度カカリコ村へ行ってみないか」
「いいとも。だけど、それはどんな人?」
「詳しいことは知らない。僕が子供で、まだ村にいた頃は、遠くから見ただけだ。数年後に
地下通路を探索した時、風車小屋で出くわして、初めて会話を交わしたけれども、お互い警戒心が
先に立って、突っこんだ話にはならなかった。その後、何度か村を訪れた際、情報を引き出せる
ような関係を作ろうと接触を図った。といっても挨拶程度で、まだ身の上は聞けていない。
気はよさそうなのに神経質な男なんだ。が、もう頃合いだろう」
「顔見知りなんだね。じゃあ、今度は一緒に村へ行ってくれるかい?」
「……ああ」
 シークが返事をするまでに若干の間があいたが、リンクは大して気にも留めず、今後の冒険へと
思いを馳せていった。
1764-5 Sheik IV (9/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:15:29 ID:JwESS2bl
 シークは想いをまさぐった。
 カカリコ村。その土地の名は、必然的に、一人の人物を想起させる。
 わだかまりは、ない。そしてわだかまりがないからこそ、ある行動を、僕はとらなければ
ならない。僕にとって、彼女にとって、大きな運命の転換となる決断を、僕はしなければならない。
 痛みを伴う決断だ。しかし、迷う余地はない。僕は……僕がすべきことは……
「話は変わるけれど──」
 リンクの言葉がシークの注意を引き戻した。
「何か?」
「ぼくの両親のことなんだ」
 リンクの数奇な生い立ちについては、すでによく知っていたシークだったが、リンクが
デクの樹のこどもから聞いたという件には、改めて興味を惹かれた。
「──両親について、何とか手がかりを得られないものかな」
 母親の受難に哀悼の意を表したのち、シークは思うところを述べた。
「戦火に追われてコキリの森へ逃げこんだというのなら、その戦いは森の近辺で起こったんだろう。
どこかに記録が残っているかもしれない。だが、荒廃したこの世界では、記録の保存は望めまいし
……七年前の世界でも、探索する余裕があるかどうか。特に反乱が起こってしまえば、な」
「うん……」
 リンクは無念そうな顔をしていたが、やがて吹っ切るように言った。
「いつか知る機会はあると信じているよ。いまは賢者の覚醒を第一に考えておく」
「そうだな」
 前向きなリンクの態度を心強く思いながらも、シークの心は新たな思考に占められた。
 両親といえば、自分の場合はどうなのだろう。僕には両親の記憶がない。それは例の記憶の
欠落に属する事柄に違いないが、僕の両親とは……いったい……
 いや、欠落した記憶を追求するのはやめておけ。いずれわかることだ。僕たちの使命が
果たされた時には……
「賢者の覚醒といえば、さ……」
 リンクの声が憂いの色を帯びた。
「サリアもそうだし、これから出会う他の賢者もそうなんだけれど……賢者として目覚めて
しまったら、別の世界で生きることになって、もう会えなくなってしまうんだ。もちろん、賢者が
死なずにすむためには、そしてこの世界を救うためには、絶対に必要なことだ、と、わかっては
いるよ。でも……寂しいよね……」
1774-5 Sheik IV (10/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:16:10 ID:JwESS2bl
「重く受け止めなければならない点だな」
 冷静に答えつつも、シークは思わぬ衝撃がおのれの心に加わるのを感じた。
 ──賢者が目覚めたら、リンクとは会えなくなる。
 ──リンクとは会えなくなる。
 ──会えなくなる。
 それが・自分にも・密接に・関係した・ことのように・思われて──
 なぜだ? 僕は賢者ではない。なのにどうしてそう思ってしまう? これも記憶の欠落に
属すること? やめろ。考えるな。これ以上は考えるな。
 必死で心を抑えようとするが、抑えきれない。のみならず、封じていた思いまでが再び
湧き上がってくる。
 リンクが他の女性とセックスすることへの引っかかり。これは……これは……嫉妬なのか?
嫉妬? 馬鹿な! 僕は男だ。リンクが誰と何をしようが関係ない。
 ほんとうに? では、あの行為は? ゲルドの谷で僕がリンクにした行為は……
 あれは違う。そんな意図ではなかった。僕自身、いまだに理解できないことなのだ。あたかも、
自分の中にある自分ではない何者かが、僕を突き動かしたかのような……
 自分ではない何者か、だって? 何者かとは誰だ? わからない。特定できない。当然だ。
特定できないのは、そんな何者かなど存在しないからだ。
 そうだろうか? そうだろうか? そうだろうか?
「そんな賢者の運命を背負っていくんだから──」
 耳に達するリンクの言葉を意識の隅で捉え、シークは強引に自らの心を抑制した。
「──ぼくは必ず世界を救う。救ってみせるよ」
「……その意気だ」
 何とか乗り切った──と、シークは自覚した。
 どうやら、僕の記憶の欠落には、とてつもない秘密が隠されているらしい。が……いまは
考えてもしかたのないこと。すべてが解明される時を、僕は待とう。自然に。あくまでも自然に。
「そうだ、過去へ戻ったら──」
 シークの内面の葛藤など気づきもしない様子で、リンクが無邪気な声を出す。
「──子供の頃の君に会えるかもしれないな」
「ああ……しかし……」
 立て直した心で、リンクの発言を吟味する。
「君と僕とは、過去の世界では、会わない方がいいと思う」
「え? なぜだい?」
「会うことによって、僕の未来が大きく変化しないとも限らない。改変前の世界の記憶を保てる
僕といっても、万が一、取り返しのつかないことが起こったら、大変だからな」
「うーん、それもそうだね。残念だけれど、子供の君を見るのは諦めておくか」
 天真爛漫なリンクの笑いに、シークも微笑みを誘われた。微笑みつつも、
『改変前の世界の記憶を保てるのは、果たして僕ひとりだけなのだろうか』
 自分の言葉が呼び起こした疑問を、シークは胸の中で繰り返していた。右手の甲に漠然とした
痛みが走るのを感じながら。
1784-5 Sheik IV (11/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:16:50 ID:JwESS2bl
「『森の賢者』が目覚めたわね」
 熟女姿のツインローバが、部屋に入るなり声をかけてきた。
「ああ……」
 豪壮な椅子に身を沈めたまま、ガノンドロフは短く応じた。森の神殿に派遣していたファントム
ガノンが倒されたことは、ツインローバと同じく、すでに魔力で感知していた。
 小僧──と、心で呼びかける。
 なかなかやるな。少しは腕を上げた、というわけか。だが、貴様が倒したのは、所詮、俺の
幻影に過ぎぬ。俺と戦う時は、こうはいかんぞ。
 余裕を持った呼びかけのはずだったが、胸に苦みが満ちるのを止めることはできなかった。
 ファントムガノンめ……俺の分身でありながら、不甲斐なき奴。次元の狭間に消え去るのが
せいぜいの無能者だったか……
 ここ数日、どうも気が晴れない。何かが頭の隅に引っかかっているような気がするのに、
何なのかわからない。ずっとガノン城にいるのだから、原因は城内にありそうなものだが、
思い当たらない。それがなおさら気分を悪くさせる。加えて、森の神殿における、この失敗……
「まあ、しかたがないかもね。あそこは賢者を殺しそこねた所だから」
 ツインローバが肩をすくめた。
 そう──と、ガノンドロフは回想する。
 他の賢者どもはすべて抹殺したものの、『森の賢者』だけは殺せなかった。コキリの森の外郭を
焼き、中心部に侵入しようとして、どうしてもできなかった。いち早く神殿に入った賢者が結界を
張っているのだ、とツインローバは告げた。そこで結界の隙を衝いて魔物を送りこみ、賢者を
葬ろうと試みた。が……
「賢者が神殿にいるだけなら、そのうち何とかなっただろう。けど、リンクが賢者に会って、
完全な目覚めをもたらしちまった。もうあそこには手出しができなくなったよ」
 いかにも悔しげな声でツインローバは言い、次いで自らを納得させるように、ゆっくりと言葉を
継いだ。
「とはいえ……生き残った賢者は一人だけだ。あんたを封印することは……できないはずさ……」
1794-5 Sheik IV (12/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:17:31 ID:JwESS2bl
「一人でも生かしておくと封印の危険が残る、と、お前は言ったぞ」
 つい声が不機嫌になる。
「そりゃそうだけど……可能性がゼロではないって程度のことよ。実際には、人ひとりを
封印するには、もの凄い力が要る。一人だけじゃ、まず不可能さ」
「ならいいのだがな」
 吐き捨てる。ツインローバが猫なで声を出した。
「大丈夫だって。それとも、賢者を犯れなかったのが残念?」
「あんな小便臭いガキなど、どうでもよいわ」
「え?」
 ツインローバの顔が、いぶかしそうにゆがむ。
「ガノン、あんた、『森の賢者』が誰だか知ってるの?」
「何だと?」
「『あんな小便臭いガキ』って、いま言ったわね」
「『森の賢者』はコキリ族だ。ガキに決まっている」
「でも、『あんな』って……いかにも知ってるような口ぶりじゃないの」
 言われてみて、気がついた。『森の賢者』の正体を、俺は知らない。知らないはずなのに、
いま賢者のことを考えた時、俺の脳裏には、一人の人物の具体的な姿が浮かんでいた。
 少女。緑色の服。緑色の髪の毛。活発そうな、整った顔立ち。不安に満ちているにもかかわらず、
何らかの強い意志の片鱗をも宿しているように思われる、その目。
 ──これは!?
 落雷のような衝撃が、ガノンドロフを打った。
 俺は……俺は、あの少女を──サリア──そうだ、サリアという名の、あの少女を……犯して、
殺した。俺は『森の賢者』を抹殺した。抹殺したのだ!
 その記憶は明らかに現実とは異なる。異なるのだが、それもまた明白な現実だと俺にはわかる。
この記憶の混乱は、いったい……
 そうだ、ここ数日、頭の隅に引っかかっていたのは、これだったのだ。何かがおかしいという
歴史への違和感。『森の賢者』をめぐる思考が、その違和感を増幅し、新たな記憶を意識の表に
浮かび上がらせたのだ。
 理由は? 何を契機に?
 確か……あの時……地震のような揺れを、俺は感じて……
「ちょっと、どうしたのよ?」
「うるさい!」
 心配そうに寄ってくるツインローバを右手で振り払う。その甲に漠然とした痛みが走るのを
感じながら、ガノンドロフは椅子から立ち上がり、早足で部屋を出た。動揺で心がひっくり返らん
ばかりとなっていた。
 魔王として世界を掌握し、何の障害もなく我が道を突き進んできたガノンドロフが、いま初めて
経験する、それは正体不明の不安感だった。
1804-5 Sheik IV (13/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:18:15 ID:JwESS2bl
 リンクはシークとともに平原を旅し、五日後の夕方、カカリコ村へと続く石段が見える地点に
到達した。シークは村の様子を探りに出かけ、リンクは待った。ほどなく戻ったシークは、
こう告げた。
「ゲルド族は来ていない。だが念のため、完全に暗くなるまでは、ここにいよう」
 シークらしい用心深さ──と感心し、リンクは同意した。
 大気が暗黒に満たされたのを確かめてから、二人は石段を登った。さほど時間はかからない
だろうから──というシークの言に従い、エポナは石段の下に残しておいた。
 村の荒れた雰囲気も、デスマウンテン頂上の猛炎も、記憶にあるままの状態であり、歴史の
改変がここには及んでいないことが実感された。が、リンクはそんな陰鬱な光景にも気落ちせず、
いずれはここにも──と、逆に意欲を燃やすのだった。
 広場を横切ってゆく途中、酒場から一人の男が出てくるのが見えた。髪の毛の薄い、髭面の
太った中年男だ。
「あれは──」
 思わず漏らした声を質問と解釈したのか、男に目をやったシークがささやいてきた。
「酒場の下男だ。三、四年前に、どこからか流れてきたそうだ。博打好きで、評判はよくない。
そういえば、あの男も改変前は村にいなかったな」
 タロンだ。間違いない。カカリコ村にいるとマロンが言っていたが……
 戸の横に置かれた木箱から、何か品物を取り出している。酒場の仕事の一つなのだろう。
牧場主だったタロンが、あんなに落ちぶれて……
「おい」
 シークの声を無視して、リンクは戸口に近づいた。人目につかないよう心がけているシークの
意には反することと思われたが、このまま立ち去るには忍びなかった。
「タロンおじさん」
 呼びかけに対し、驚きと警戒の視線が返ってきた。こちらの正体がわからないようだった。
しかしリンクが名を告げ、過去の出会いに言及すると、タロンもすぐに思い出したと見え、
懐かしそうに返事をよこした。
「マロンが心配していたよ。早く牧場に帰ってあげたら」
 実際のマロンは心配というより憤慨していたのだが、そのあたりは脚色し、リンクは心からの
忠告を述べた。が、タロンは、
「ああ……まあ……そのうちに、な……」
 と、煮え切らない態度をとるばかりだった。
 それ以上はどうしようもなく、ちょうど店内から呼び声のかかったタロンに、短く別れを
告げたのち、リンクはシークのもとへと戻った。
「知り合いなのか?」
 と意外そうに言うシークに、タロンの履歴を説明する。
「あれが、マロンの……」
 店内に入ってゆくタロンの背を見ながら、シークが感慨深げな声を出した。
「彼を村から去らせるのは難しいな。博打に没入しきってしまっているから」
「うん……」
 それでも記憶を保持しているだけ、改変前の世界のタロンよりは恵まれているといえるかも
しれない。
 その思いだけを慰めとして、リンクはシークを促し、風車小屋へと向かった。
1814-5 Sheik IV (14/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:19:08 ID:JwESS2bl
「よお、あんたか。久しぶりだな」
 風車小屋に入った二人を、陽気な声が出迎えた。シークへの挨拶である、その声を発したのは、
タロンと同様、禿頭に髭の中年男だったが、こちらはかなり痩せていた。目尻の下がった、
人懐こそうな顔つきだ。
 どこかで見たような──と、リンクの記憶は刺激された。
「訊きたいことがある。礼はする」
 床にすわる男の前に立ったシークが、懐でルピーをじゃらつかせた。あまりにも単刀直入な
始め方を、横に立つリンクは危ぶんだが、男がごくりと唾を呑みこむ様子を目にして、シークは
男の性癖を見抜いているのだ、と悟った。
「いいとも、何でも聞いてくれ」
 卑しげな笑いを浮かべて両腕を広げる男に、シークは質問を放った。
「まず、この風車小屋についてだ。あんたはなぜここに住んでいるんだ?」
「ここはもともと俺の家だよ。俺が住んで当然じゃないか」
 では改変前の世界で無人だったのはどうして?
 同じ疑問をシークも抱いたのだろう、少し間をおいて、次の質問がなされた。
「……離れたことはないのか?」
「いや、城下町にいて、しばらく留守にしたことはある」
「いつ?」
「七年前。反乱が起こる、すぐ前の頃さ」
「どういう理由で城下町に?」
「これだよ」
 男が傍らに置いてあった箱を示した。上に大きなラッパのようなものがついている。
「手回しオルガンさ。俺が自分で作ったんだ。城下町じゃ、ちょっと名の知られた芸人だったんだぜ、
俺は。『グル・グルさん』って呼ばれてな。かなりの儲けになったよ。ところが反乱のおかげで、
何もかもパアになっちまった」
「反乱が起こった時、城下町にいたのか?」
「そこだよ」
 男が身を乗り出した。
「いま思えば冷や汗ものなんだが……反乱が始まるちょっと前、下らない事故でオルガンを
壊されちまって、しょうがないんで修理しに村へ戻ってきたのさ。そうしたら城下町で反乱が
起こって……あの事故がなかったら、俺は城下町に居続けただろうし、反乱に巻きこまれて
死んでたかもしれない。儲けがなくなったのを嘆くのは贅沢なのかもな」
 そうだ! この男は死んでいたのだ! 事故のなかった改変前の世界では!
 記憶がありありと蘇り、リンクはすべてを理解した。
 過去に戻った直後のぼくが、城下町の大通りで、騎兵の駆る馬に跳ね飛ばされそうになった、
あの事故。騎兵はぼくを避けて壁に衝突し、ゲルド族の女が逃げ、向こうから来る男にぶつかって
……その男が──荷物をつぶされて文句を言っていた男が──いまぼくの前にいる。つぶされた
荷物とは手回しオルガン。ぼくが軽率に道へ飛び出したことで、この男の命は助かったのだ!
 感動ともいえる大きなうねりがリンクの心を満たした。が……
 この件が闇の神殿に関する謎を解く手がかりになるのだろうか。
 シークの質問は続いていた。
「村に戻ったあとは?」
「ずっとここで暮らしてるよ。離れたことはない。離れようにも、ゲルド族との戦いが始まって、
離れようがなかった。俺も戦いには加わったが、やっぱり運よく命は助かって、けどもそれからは、
うだつの上がらない生活さ」
「村では儲けにならないのか?」
「なるわけないだろ。客といえば密輸入業者だ。オルガンなんか聴いてくれやしないよ。それで
なくても、俺は村じゃ、うさんくさく思われてるんだ」
「なぜ?」
「井戸の件でな」
「井戸?」
 リンクは、はっとして男の顔を見直した。シークの声も真剣さを増した。
「どういうことだ?」
1824-5 Sheik IV (15/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:20:18 ID:JwESS2bl
「俺のせいじゃない! あのオカリナ小僧のせいだ!」
 いきなり男の目が吊り上がり、険しい表情となった。その突然の変化と、意味不明な台詞、
特に「オカリナ小僧」という奇妙な呼び名が、リンクを驚かせた。シークも言葉を失っていた。
こちらの戸惑いに気づいた様子で、男は表情を和らげ、しかし声にはむかむかしたような気分を
匂わせたまま、話を続けていった。
「つまり……こういうわけなのさ」
 ──カカリコ村とゲルド族との戦いが始まる直前のある日。一人の少年が風車小屋に現れた。
緑の服を着たその少年は──(ちょうどあんたみたいな服装だったよ、と男はリンクに向かって
言った)──男の前でオカリナを取り出し、あるメロディを奏した。そのとたん、強い風雨が
巻き起こり、風車が異常な速さで回転し始めたかと思うと、外にある井戸の水がすっかり涸れて
しまった──
「天気はすぐよくなったし、風車の回転も止まった。じきに井戸も元に戻ったが、開戦前で
殺気立ってた村の連中には、『お前が風車や井戸に何か細工をしたんだろう』って責められたよ。
オカリナ小僧はさっさとどこかへ行っちまってたしな。さんざんな目に遭ったもんさ」
 シークが再び質問を投じた。
「そのメロディを覚えているか?」
「ああ。『嵐の歌』って、俺はこっそり名をつけたよ」
「教えてくれ」
「あ?」
「そのメロディを教えてくれ」
 男は怖じ気づいたように風車小屋の中を見まわした。しばしの逡巡ののち、
「……まあ……いまは風車も壊れてて、回転はしないから……大丈夫か……」
 と呟き、手回しオルガンを取り上げ、抑えた音で演奏を始めた。テンポの速い三拍子の
メロディで、哀愁を漂わせながらも活気が感じられる曲想だった。シークが目配せするのに気づき、
リンクはそのメロディを記憶した。
 シークは、なおも男に質問を続けたが、それ以上の収穫はないと判断したのか、適当なところで
会見は打ち切られた。ルピーを受け取ってほくほく顔の男を残し、二人は風車小屋を出た。
 出るやいなや、リンクは熱をこめて、自分の行動が男の運命を変えた経緯を語った。シークは
頷きながら聞いていたが、
「だけど……あの『オカリナ小僧』というのは、いったい誰なんだろう」
 リンクが素直な疑問を漏らすと、さもおかしそうな顔になった。
「君だよ」
「え?」
「君が過去の世界でやったことだ」
「ぼくはあんなことはしていないよ」
「これからもう一度過去へ戻った君が、やることになるのさ。もう歴史がそのように決まって
いるんだ」
 考えるうち、リンクにも状況が呑みこめてきた。どこか奇妙な矛盾があるような気もしたが、
結局はシークの言うとおりと結論する他はなかった。
 シークが表情を引き締めた。
「『嵐の歌』を奏でることによって、井戸の水が涸れたという。闇の神殿の所在を突き止める
ための大きな手がかり──と、僕は思う。彼が言ったように、いまは風車の回転が止まって
いるから、ここで試すことはできない。過去の世界で、ぜひそれを確かめてきてくれたまえ」
「任せてくれ」
 リンクは力をこめて返事をした。
 ぼくの過去での何気ない行動が男の命を救い、ひいては闇の神殿の謎を解決する糸口となった。
偶然? いや、必然だ。時の勇者としてのぼくがもたらした、これは必然的な結果なのだ。
 大いなる自覚と勇気を胸に抱き、リンクは風車を見上げ、先に──いや、過去に繰り広げられる
歴史の転変へと、強固な思いを向けるのだった。
1834-5 Sheik IV (16/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:21:08 ID:JwESS2bl
 しばらくの間をはさんで、
「リンク」
 シークが深刻な顔で呼びかけてきた。
「君に個人的な頼みがある」
「……なに?」
 ただならぬ様子をいぶかしみながら訊ねると、シークは、まっすぐな視線を送ってよこすと
ともに、低い、けれども明瞭な声で、リンクが予想もしなかったことを言った。
「過去へ戻ったら、アンジュを幸せにしてやってくれ」
 意味を量りかねた。
「……ぼくが?……どうして──」
「君にしかできないことなんだ」
 かぶせるようにシークは声を強め、次いで、
「……マロンを幸せにしたように……」
 再び声は抑えられた。
 ようやく、わかった。
 マロンを幸せにしたのは、過去でのぼくとの交わりだった。つまり、シークが言いたいのは……
 娼婦というアンジュの生活が、どれほど悲哀に満ちたものだったか、いまのぼくは理解できる。
その悲哀がなくなれば、アンジュにとって、この上ない幸せ。そしてシークが言うとおり、それが
できるのは、ぼくだけだ。
 しかし……しかし……他ならないシークが、それをぼくに頼むとは……シークは……そう、
シーク自身は否定したけれど、シークがアンジュに特別な気持ちを持っていることを、ぼくは実は
確信していて……ああ、それは……すべてを乗り越えて──なくなるのは悲哀だけではないかも
しれないと知りながら──アンジュの幸せのみを願う、シークの気持ちとは……それは……
ひょっとして……ぼくがまだ知らないはずの、あの……
「君は……」
 思わず、口にしてしまう。
「アンジュを……愛しているんだね」
1844-5 Sheik IV (17/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:22:39 ID:JwESS2bl
 リンクの発言が脳内で反響した。
 余人ならぬリンクが──愛の何たるかも知らないはずのリンクが──その言葉を使って僕の
想いを表現するとは!
 否定しようとして、できなかった。意図は形を変え、言いたくもないことを僕に言わせる。
「アンジュに会っていくか?」
 リンクは首を振る。
「いや……ぼくは……すぐに出発するよ」
 眉根にひそかな哀しみを、頬にかすかな笑みを宿し、リンクが言う。
「シーク、君とは、ここで別れよう」
 リンクは行く。僕をここに置いて。
「過去から帰ったら、ぼくは真っ先にここへ来る。待っていてくれ」
 その間、僕はここで何をするのか。何ができるのか。リンクは知っている。知っていて僕に
促している。僕がリンクに頼んだことへの、それは言葉を換えた返答なのだ。
 リンクは片手を軽く上げ、風車小屋の前から歩み去っていった。通りを行く後ろ姿は、すぐに
闇の中へと消え、シークはひとり、その場に残された。
 心の中を洗ってみる。
 リンクとアンジュの関係に、わだかまりは、ない。いっさい、ない。
 たとえ自身の所産でなくとも、他者の力によるものであっても、アンジュの幸せを願うなら、
僕は喜んでそれを認めるべきなのだ。リンクなら、僕にはもたらせない幸せを、アンジュに
もたらすことができるのだ。それはすでに呑みこんだこと。
 しかし──これが最大の痛みなのだが──リンクによってアンジュの未来が変わったのち、僕と
アンジュの関係はどうなるのか。
 わからない。
 わからないが……たとえ何が起ころうとも──アンジュにとって僕の存在が、仮に無と
化そうとも──僕は迷うことなく決断しなければならなかった。そして、そう決断した。
 アンジュに幸せをもたらすためならば!
 それを愛と呼べるだろうか。
 あるいはこんなものか──と、僕が思い描いていた愛とは、明らかに違う。が……
1854-5 Sheik IV (18/18) ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:23:27 ID:JwESS2bl
『これも一つの愛のかたちなのかもしれない』
 その自覚が、やにわにシークを動かした。風車小屋を離れ、夜道を急いだ。急ぎながら、自身の
不思議さを、シークは考えた。
 女性に対するリンクの行動に気を揉む僕がいるかと思えば、女性への想いを抑えきれずに
こうして急いでいる僕がいる。僕の中に自分ではない何者かがいるとしても、我ながら複雑と
言うしかないこの人格は、とてもある特定の何者かの存在で説明できるものではない。
 深みに落ちないうちに心を抑制する。
 目的の場所で立ち止まる。
 庭に面した一軒の家。寝室の窓に灯火は見えない。客はいない。庭に足を踏み入れ、勝手口の
前に身を置く。そっと戸を叩く。いつものように。続けて二回。間をあけて一回。そして再び
間をあけて二回。僕だとわかる、二人だけの合図。
 中で足音。駆け寄ってくる。聞きつつ瞬時に計算する。
 カカリコ村から城下町まで、馬を飛ばせば半日。過去から帰ってきたリンクが時の神殿に
現れるのは、早ければ、明日の昼──
 戸が開く。室内からの光を背に立つ、その姿。
「シーク!」
 喜びにあふれた、その声。
「今日は会えるような気がしてたのよ。来てくれて、嬉しいわ」
 想いのままを吐露する、その口。早くも潤みを湛えた、その目。満開の笑みに飾られた、その顔。
 しかし……ああ、しかし、やはり顔色はよくない。疲れている。この疲れが……この疲れが……
取り除かれた……あとには……
「アンジュ!」
 シークはアンジュを抱きしめた。アンジュの身体が、一瞬、戸惑ったように硬くなり、次いで
背にまわされた腕が、劣らぬ力でシークを締めつけた。
 二人にとって最後となるかもしれない夜は、明けるまでには、なお、かなりの間を余していた。
が、シークにとって、それは絶望的なほどに短い時間であり、ただ一方で、限りなく濃密な時間と
なり得る望みも、まだ残されているのだった。一体とならんばかりの強さでアンジュを抱きながら、
その望みにすべてをつぎこむ決心を、シークは胸の中で固めていた。


To be continued.
186 ◆JmQ19ALdig :2007/12/16(日) 19:24:02 ID:JwESS2bl
以上です。リンクが再び過去へ赴く前に片づけておかなければならないことをまとめました。
話はまとまってませんが。
187名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 19:55:55 ID:GszOV3xg
エロ無し!

全裸待機していたら…凍死だった(赤くて三倍の人調で)

好き勝手絶頂だったガノンがじりじり追い詰められていく展開wktk

188名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 20:54:48 ID:GiUiT0C5
うおおおキター!


最近まとめサイト見れないんだが移転でもしたの?
189名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 21:55:40 ID:0FRB24Cg
GJ! 次回はずいぶん濃厚な内容になりそうですな。

>188
普通に見れるけど? とりあえず、ミラーサイトのURL貼っとくよ。
ttp://database.f-adult.com/
190名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 02:50:30 ID:wt9KVaXj
>>187
エロが苦手だけどJmQ19ALdig氏の作品が読みたくて来ている私がいます。
エロ部分は小恥ずかしくて、申し訳ないのですが飛ばし読み気味っ…
うん、エロパロだからエロいのは判ってるんだ!でも好きだから読みたいのさ!
191名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 10:04:40 ID:/8FcJBiY
うんうん、こうやってたまにまとまった話が出てくると、
「ああ、そういえばゲームもこんな風だったなあ」とか思い出せる。
エロ無しだけど、話としてもとても面白いです!!
これで準備はおっけーです。wktk。
192名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 11:06:18 ID:Q9sEhuL6
>>190
このSSの見所のひとつはエロの初々しい気恥ずかしさを丹念に書いてるとこなのに
なんともったいない。でも気持ちはわかるw
193名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 12:40:25 ID:WymZkogV
ここって18禁じゃなかったっけ
194名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 14:26:41 ID:fDV03M/J
初めてのオナニーの感動みたいな恥ずかしさをあえて描き出すタイプだから
普通のポルノが平気な大人でも恥ずかしくなっちゃう可能性はあると思う。
195名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 22:30:57 ID:Fr0g+jsN
>>193
もう投下してくれれば何でもいいよ。
196名無しさん@ピンキー:2007/12/18(火) 00:20:13 ID:+rl1S13n
>>193>>190に対してかと
197名無しさん@ピンキー:2007/12/18(火) 01:00:53 ID:vClnCEu+
19才以上が全員エロに抵抗なくなるわけでもあろうまいに…
198名無しさん@ピンキー:2007/12/18(火) 01:12:31 ID:GEwrEEgH
知らんがな
199名無しさん@ピンキー:2007/12/18(火) 07:14:19 ID:GpJ7W7U0
そもそもエロが苦手ならこの板来ないだろ。
手当たり次第に時オカ小説を探していて
たまたまここへたどり着いたってんならわかるが…
どうやって>>190がこのスレを知ったのか気になる。どこかに晒されてんの?
200名無しさん@ピンキー:2007/12/18(火) 09:45:34 ID:zzaVvry8
どんな奴が読んでも別にいいじゃない。
201名無しさん@ピンキー:2007/12/18(火) 23:21:16 ID:GEwrEEgH
だがここがエロパロ板である
という前提は忘れないこと
202名無しさん@ピンキー:2007/12/19(水) 08:27:40 ID:9dhgaVL+
エロだろうがパロだろうが、いい作品はイイ!!と言う事で。
203名無しさん@ピンキー:2007/12/19(水) 12:31:36 ID:w6Cba3lF
じゃ俺がマロンを犯すよ!!それでいいんだろ!!!!
204名無しさん@ピンキー:2007/12/19(水) 15:09:12 ID:s2nKV+N9
    _, ,_  パーン
 ( ‘д‘)
  ⊂彡☆))Д´) ←>>203
205名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 04:31:40 ID:/3j3CCTg
リンク少ピンチ!
△もっとる奴だけ記憶あるんかなぁ
206名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 11:50:45 ID:qtI6uWWR
>204
ナイスツッコミgj
207名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 18:52:39 ID:rUDMi+Ic
>>205
超越した力だからかな?

>>206
叩いてるのはマロン
つまりマロンはドSで(ry
208名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 02:28:54 ID:iPxOPfFf
マロンはSかMか、どちらかに特化してると思うんだ。
209名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 19:53:00 ID:kgEEQRxf
改変前のマロンがM
改変後のマロンがS
210名無しさん@ピンキー:2007/12/25(火) 07:55:09 ID:d6Pmi2Ku
メリークリスマス。
211名無しさん@ピンキー:2007/12/25(火) 16:07:01 ID:91/otV2D
メリークマリスク
212名無しさん@ピンキー:2007/12/25(火) 21:30:42 ID:zw912VCP
メリークリ○○ス
213名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 04:00:43 ID:vIKGP1Qw
メリークリリンス
214名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 16:56:04 ID:Md1WgPTq
ここもか?

荒らしから保守
215名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 19:26:17 ID:M+useQKk
ほしゅ
216名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 03:50:53 ID:rfEZbcdN
保守
217名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 22:53:09 ID:fdbi/Gwc
ひと段落してるみたいだけど誰が書いてもいいの?
218名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 23:40:45 ID:YIKZAmD2
>>217
大歓迎!!お待ちしております
219名無しさん@ピンキー:2007/12/28(金) 03:42:21 ID:HZVgPCRW
誰かがSSを書いてくれる聞いて転がってきま(ry

|          ゴロゴロゴロゴロ
|r'⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒ヽ ⊂゙⌒゙、∩
|ヽ__乂__乂__乂__乂__乂__ノ  ⊂(。Д。)イヤァァァッァァアァァァァァァァァァァ
220名無しさん@ピンキー:2007/12/28(金) 13:17:26 ID:pQ3oeGNR
>>217
wktkしております。
221217:2007/12/29(土) 22:33:57 ID:tlrREFYL
焦ったら変なのができた。
掟破りの風タクリン×メド  しかもあんまりエロくない


…ガノンドロフの復活……3つの宝玉を集め、神の塔へ……そして…手にしたマスターソードは無力化…

いままであったあらゆる出来事が、リンクの頭の中を駆け巡る…
全ては運命だったのだろうか。それとも、神が自分を選んだのだろうか。
この年になるまで一つの島で平和に生きてきた自分が勇者であると…

「リンクさん…どうか…なさいましたか?」
急に我にかえるリンク。
ここは赤獅子の王の上。今はマスターソードの力を取り戻すために大地の賢者である【メドリ】と共に航海をしている。目指すは大地の神殿だ。

ザバァッ!!
「きゃっ!」
急に波しぶきが上がり、僕とメドリに水がかかる。
僕は慣れているからどうってことはないけど、メドリはひどく怯んだようだ。
「うーんっ…」
「だいじょうぶ?」
「…は、はい…」
メドリは水を被って服がびしょぬれだ。
僕の服は水に濡れてもいいようなものだけど、メドリの服はかなり水を吸いやすい素材らしい。
「メドリ、あぁ…服…」
「だ、大丈夫です…」
メドリはそう言っているが、やがてくしゃみをして、震えだした。
「メドリ、寒い?」
メドリは僅かにうなずいた。季節的には寒くはないけれど、水浸しになって潮風に当たっていれば体があっというまに冷えてしまう。メドリの故郷は暖かい島だったから、なお寒さには慣れていないようだ。
「寒いか……どうしよう、どこかで休んで、服、乾かそうか。」
「えっ! …い、いえ…ワタシには大事な使命が…休んでなんていられません…クシュン!」
「ほら…そんなにくしゃみして…寒いんでしょ、無茶しないで。…ね、いいでしょ? 寄り道しても…」
僕は赤獅子の王に頼んだ。赤獅子の王は一刻も早くと言ったが、僕が粘ったのでとうとう折れてくれた。
僕は勇者である前に…一人の男だ。寒さに震える子を放っておくなんて、できるわけがない。

僕は海図を開いてみた。
「ウーン…ここからなら…うん、僕の島が近いかな。」
「えっ? リンクさんの島?」
僕はタウラ島のある先生から、島の別荘の権利書を貰った。この権利書を持っていれば島一つが僕の物なのだ!
幸い僕の島はすぐ近くだ。そこでメドリを暖めてあげることにしよう。
「クシュンッ!」
「メドリ、待ってて、もうすぐ島に着くから。その服も、すぐに乾かせば………」
僕はチラっとメドリの服を見て、おもわず目を奪われた。

メドリは前言ったように暖かい島で暮らしていた。そのため、メドリの服は島に適応した薄い生地のもの。
そのメドリの服は水を吸ってメドリの体にピッタリ張り付いている。メドリのゆったりした服で今まで分からなかったメドリの体のラインがはっきり分かる。
…メドリの体系は、決してセクシーとかナイスバディとかそういうわけじゃなかった。
腰のラインもあるわけじゃないし…ちょっと胸に目をやると、まだほとんど膨らんでいない。

ザバァァッ!!
ぼうっとしてたら、また波しぶきがあがった。今度はさっきのよりも波が高い。
「きゃーっ!!」
今度は全身に水を浴びたメドリ。髪まで濡れてしまった。
「うぁー…」
ちょっとべそをかき気味のメドリ。しょっぱい海水をたくさん飲んでしまったらしい。
「大丈夫? も、もうすぐ着くからね!」
「…はい…。」
僕達は別荘の島へ急ぐ。
222217:2007/12/29(土) 22:34:41 ID:tlrREFYL
「…じゃぁ、赤獅子の王。もう日が沈みそうだから、出発は明日の朝だね。」
赤獅子の王はしばしば承諾してくれた。今回は冒険ではないので、剣や盾や他の装備品、それに、赤獅子の王との通信手段であるゴシップストーンも外して、僕自身も一日骨休めすることにした。
「ふうっ…装備品が重かった…。」
一息つくまえに、まずはメドリをなんとかしてあげないと。そのために停泊してるんだから…

「さてと…」
別荘の中に入る僕達。さて…メドリの服を乾かしてあげるにあたって一つ問題が…
「服…」
メドリの服を乾かすには当然メドリの服を脱がせてあげないといけない。
そして、服を乾かしている間は…当然…全裸でいてもらうわけにもいかない。
しかし…別荘の中を探し回って見つけたのはバスローブだけだった。
「メドリ、どうする?」
「ワタシは、かまいませんよ。この島、なんだか暖かいですし…」
確かに、この島はバスローブ一枚でも快適なほどだけど
「でもさ…女の子がバスローブ一枚…」
「ぁ…」
メドリはちょっと赤くなった。
「大丈夫…です…。ここにいるのは、リンクさんだけですから…。」
「大丈夫? 恥ずかしくないかな…も、もうちょっと服、探してみるね。」
メドリに気を使ってなのか、自分自身が恥ずかしいからなのか…僕はなおも懸命に服を探した。
しかし…どんなに探しても服は無かった…

結局諦めて、メドリにはしばらくバスローブでガマンしてもらうことにした。
「…じゃぁ、すみません…失礼します…」
メドリは服を脱ぎ始めた。問題は僕がどうするか。この別荘は広いからいいんだけど部屋が一つだ。僕はメドリを気遣って外に出ることにした。
「じゃぁ、着替え終わったら呼んでね。」
「…すみません…」
メドリは申し訳なさそうに頭を下げた。

僕はぼうっと外で着替えを待っている。
「…終わりました…」
…あ、中から声が聞こえた。着替え終えたらしい。
別荘に入ると、メドリはバスローブ姿で待っていた。
「……」
バスローブはかなり短めだった。メドリのひざほどまでしかない。
メドリの素足がいつもよりも目だって見える。細く色白だ。
「…リンクさん? 何か…?」
「あ…あー…いや…」
223217:2007/12/29(土) 22:36:57 ID:tlrREFYL
メドリが入浴中は再び外で待機。僕は再び、ぼうっと海を眺めていた。
どこまで遠くを眺めても、海。そのはるか先には神の塔が見えた。
…ん? 海の上で何か光ってる……なんだ? あれは…? バクダン島の付近のようだけど…望遠鏡で見てみよう。

…あ、望遠鏡は別荘の中だ…

メドリはまだ入浴中。だけどどうしてもあの光が気になって、僕は…
「…メドリ…」
「…はい…」
別荘の中に話しかけた。
「メドリ…ゴメン、ちょっとなかに入らせてもらえないかな?」
「? はい、いいですよ…」
僕はメドリの了承を得て、そっと別荘の中に入った。
「…どうかなさいましたか?」
「ゴメン、ちょっと望遠鏡取りに…気にしないで、まだゆっくり入ってていいから。」
仕切りがあるとはいえ、なるべくメドリのほうを見ないようにサッと望遠鏡を取ってさっさと別荘を出る。

さて、望遠鏡で海の上を改めてみてみよう。えっと…確かバクダン島のほうだったな……ウーン…あれは…
あ! 光の輪だ! しかも光が強い!!
あれはきっと…なにか大物に違いない! 釣りに行こう!!

…あ、鍵爪ロープは別荘の中だ……

224217:2007/12/29(土) 22:38:31 ID:tlrREFYL
「ご、ごめんよ…メドリ…また取りたいものがあるんだけど…」
「あ、はい、どうぞ。」
僕はまたメドリに頼み、別荘に入れてもらった。
さて、すぐに鍵爪ロープを取って帰ろうと思ったけど、運悪く鍵爪が箪笥に引っかかっていた。
(と…取れない…)
ムキになって引っ張ったせいで箪笥が倒れてしまった。
ガタンッ!!!
別荘が揺れる。使っていない帽子掛けが倒れた。いや、倒れたのはそれだけじゃない。
ガタッ
「キャーッ!!!」
お風呂の仕切りまで倒れた。
「うっ!」
一瞬、入浴中のメドリが目に入る。下半身は浴槽だし、反射的に両手で両胸を隠したので見てはいけない部分は見なくて済んだけど…
「わぁぁっ!」
僕も驚いて、あわてて別荘から飛び出した。

…別荘の中と外…気まずい空気が流れる…僕は別荘の外、浴槽の近くの窓の前でメドリに話しかける。
「…ごめん…」
メドリも、僕に返してくれる。
「…いえ…気にしないでください。わざとではないんですから…」
「……怒ってる?」
「いえいえ…とんでもありません…ただ、ちょっとびっくりしましたけど…。」
メドリは、怒っている様子ではなかった。
「…リンクさん…どうか、気になさらずに…」
「…うん…」

メドリが入浴を終え、ようやく僕も別荘に入る。
メドリは再びバスローブに着替えていた。
僕は気まずかったけど、メドリは笑顔で迎えてくれた。メドリの姿はさっきにも増して色っぽかった。顔は軽く紅潮しており、髪はほどいている。
「メドリ…温まった?」
「はい…ありがとうございます。」
「そう。よかった。…じゃぁ…今夜はここで休むからね。」
「はい。」
とりあえず倒れた家具を建て直し、もう夜遅いので眠る準備をはじめる。

この別荘にはベッドが一つあった。いや、一つしかなかった。
「メドリ、今日は君がベッドで休みなよ。僕は床とかで寝るのにも慣れてるから。」
「ええっ! そんな…」
「気にしないで。…お互い…気にすることないよ。」
「………………」
僕たちは複雑な気持ちのまま眠りについた。
225名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 09:38:43 ID:TI0GVNuG
投下終了なのかな
メドリはここでは珍しいキャラだし、萌えポイントは的確に突いているので
ぜひ続きをお願いしたい
226名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 20:26:00 ID:gp2dOO87
>>224 GJ!
メドリかわいす (*´д`*)ハァハァ
227名無しさん@ピンキー:2008/01/01(火) 01:56:05 ID:2O1bpC1j
あけおめことよろ!!
2008年もゼル伝ラブだぜイェア
228名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 00:21:50 ID:yk2hORQG
誰かリンク×ミドナを投下してくれw
229名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 14:37:11 ID:ikRxw/WO
>>228
全俺が全裸になって待ってる
230 ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:28:34 ID:+c2JoyrR
私本・時のオカリナ/第四部/第六章/ルト編その4、投下します。
リンク×ルト@子供時代。
2314-6 Ruto IV (1/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:29:36 ID:+c2JoyrR
 カカリコ村から城下町までの行程は、実に複雑な葛藤をリンクに強いた。
 使命の遂行を考えるならば、一刻も早く時の神殿に赴いて過去へ旅立つべきだ。反面、シークが
心おきなくアンジュとともに過ごせるよう、できるだけ到着を遅らせたいとも思う。
 迷いは手綱の操りに伝わった。速度の頻繁な変更に、初めは素直に従っていたエポナも、
そのうち不満げな嘶きを聞かせ始めた。腹を決め、真夜中を過ぎたあたりで、リンクは前進を
中断した。自分にもエポナにも休息が必要なのだ、と理由をつけ、朝までの眠りについた。
 明けて旅を再開すれば、ガノンドロフの居所に近づいているとあって、もうのんびりとは
していられなかった。夕刻には城下町が見えてきた。例によって、西端の門から城壁内へ侵入し、
王家の別荘跡の馬小屋でエポナと別れたのち、充分に警戒を払って時の神殿に至った。
 まっすぐ足を進め、奥の部屋に入って台座の前に立つ。
 再度の過去への旅。なすべきことはわかっている。ここまで来たら、迷ってはならない。
 リンクはマスターソードを背の鞘から抜き、即座に刃先を台座の空隙へと突き刺した。

 おのれの身が子供に戻っているのを確かめるやいなや、リンクは脱兎のごとく部屋から飛び出し、
神殿の入口に急行した。外はさわやかな朝の光に満たされており、シークが予測したとおり、
先に未来へ向けて旅立った時点から、さほど離れてはいない頃、と思われた。
 まだ城下の空気は平穏を保っている。反乱を防ぐ手だてを講じなければ。
 ここに至っては遠慮も不要。すでに顔馴染みとなった見張りの兵士に、リンクは激しく言い立てた。
「まだ反乱のことを城に伝えていないの? 早くしてよ! もう時間がないんだ!」
「おいおい」
 二人の兵士のうちの一方が、あきれ声を出した。これまでずっとリンクに邪険な態度を
とっていた方の兵士だった。
「さっきお前が神殿に入っていってから、いくらも経っていないんだぞ。俺たちは交代の時刻に
なるまではここから動けんのだ。あまり無茶を言うな」
 現在がいつかという点を明らかにしてくれる言葉だ。それはいいのだが──
「そっちこそ、のんきなことを言っている場合じゃないよ! 反乱は今日中に起こるんだから!」
 さすがに兵士も驚いたようで、言葉が返ってこなかった。その間を縫って、もともとリンクに
同情的だった、もう一方の兵士が、
「この子の様子を見ろよ。ただごとじゃないぜ。ゼルダ様の命を受けて働いているというのなら、
どこかで探り当てた機密があるのかもしれんぞ」
 と助け船を出してくれた。
 二人の兵士はひとしきり言い合っていたが、そのうち邪険な兵士も折れ、とにかくリンクを
城門まで連れて行こう、ということになった。親切な方の兵士が、その役を買って出、あとに
ついてくるようリンクに指示して、城の方へと歩き始めた。
 兵士は兵士なりに急いでいるふうだった。けれどもリンクにしてみれば、何とも遅々とした
歩みだった。一人で駆け出したい誘惑に何度も駆られたが、実際にそうするわけにもいかず、
リンクは焦燥に胸を焦がしながら、すでに活気ある賑わいを呈し始めた町の中を、兵士について
進んでいった。
2324-6 Ruto IV (2/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:30:15 ID:+c2JoyrR
 城門に立っていたのは、かつてゼルダに会いにきたリンクをすげなく追い返した、あの衛兵だった。
親切な兵士が語るのに耳を傾けてはいたものの、リンクに向ける意地悪げな視線は以前と変わらず、
反乱についても容易に信じようとはしなかった。ここでも言い合いが続き、リンクはいてもたっても
いられない気分になったが、自分が口を出しても話は進まないとわかっていたので、我慢して口を
つぐんでいた。
 兵士の粘り強い説得が衛兵を譲歩させた。この件を城内のしかるべき立場の人物に伝え、
その意向によってはリンクに直接話をさせる、と決まり、衛兵の同僚が面倒くさそうに城へ
向かった。任務があるから、と言って城下町へ戻る兵士に、リンクは心からの礼を述べた。
 城からの返事は一向に届かなかった。じっとしているのに耐えられず、城門の前を行ったり
来たりする間、状況に興味を覚えたらしい衛兵が何度か話しかけてきたが、まともに応対する
余裕は、リンクにはなかった。
 朝が昼に移り始めた頃、ようやく衛兵の同僚が帰ってきた。去った時とはうってかわった
駆け足で、声には緊張がみなぎっていた。
「その子を城に連れていく。反乱の話は、どうやらほんとうだ」
「何だって?」
 衛兵の表情も一変した。
「今朝、騎兵が一騎、ここを通って城に入っていっただろう」
「うむ、やけにあわてていたな」
「あの騎兵はゼルダ様を捜しに出た騎兵団の一員だったんだ。捜索中、ゲルド族の襲撃を
受けたらしい」
「えッ? 確かか?」
「ああ、いま城の中は大騒ぎだ。陛下がガノンドロフをお呼びになって、御問責の最中だそうだ」
 リンクの胸に希望の灯がともった。
 ガノンドロフが国王に呼ばれている! これならあいつを抑えこむことができる!
「その騒ぎで俺もなかなか話を通せなかったんだが、やっと一人、お偉いさんをつかまえて
伝えたら、すぐその子を連れてこい、との命令なんだ。さあ──」
 衛兵の同僚がリンクに顔を向けた。
「一緒に来い。知っていることを全部話すんだぞ」
「うん!」
 衛兵があたふたと開いた門を駆け抜けようとした、その時。
 遠くで響くどよめきを、リンクは聞いた。
「おい、あれは?」
 驚愕に満ちた衛兵と同僚の目。上に向いた、その視線を追う。
 城下町の空に数条の黒煙が立ちのぼっていた。
2334-6 Ruto IV (3/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:30:53 ID:+c2JoyrR
 まさか!?
 背筋を走る冷たい感覚が治まらないうちに、城下町の方から、あわてふためく兵士の一団が
駆けてきた。
「ゲルド族の奇襲だ!」
「早く城へ知らせろ!」
 兵士らの叫びに応じて、衛兵の同僚が即座に城へと駆け出し、数人の仲間があとを追った。
衛兵を含む残りの兵士たちは、あわただしく対応を協議し始めた。
 遅かったか──とリンクは歯噛みした。しかし一縷の望みが残っていた。
 城内でガノンドロフを取り押さえることができれば、まだ反乱にも対応はできる。
 望みが絶たれるまでに時間はかからなかった。激しい叫喚が城の裏手から聞こえ始め、
北の山より攻め下ったゲルド族が、城下町のみならずハイラル城へも攻撃を加えている情勢が
明らかとなった。さらに城からは、ガノンドロフが国王以下の指導者たちを一挙に殺害して
しまった、という驚くべき知らせがもたらされた。
 場は恐慌に陥った。その頃には、城下町から逃げてくる兵士らの数も増え、かなりの人数が
城門付近に集まっていたが、誰もが何をすべきかを見失っていた。
 立ちつくすリンクの目に、覚えのある人物の姿が映った。時の神殿を見張っていた、邪険な方の
兵士だった。地面に横たわった相棒──あの親切な兵士──の介抱をしている。町で戦闘に
遭遇し負傷したのを、助けてここまで連れてきたのだろう。
 ついさっき元気な姿を見送ったばかりの兵士。いまは血まみれで、意識もないようだ。
 リンクは駆け寄った。介抱していた兵士が顔を上げ、驚きの表情になった。
「お前、まだここにいたのか! 早く逃げるんだ!」
 相変わらず粗雑な物言いだったが、声には邪険さではなく真剣味があふれていた。
「ぼくは──」
 思わず言いかける。
 ぼくだけが逃げるわけにはいかない。ぼくは勇者の名を背負って──
「もう子供がどうこうできる状況じゃないんだ! 逃げろったら!」
 兵士の叫びが自分の実態を思い出させる。
 ……そうだ……いまのぼくは、子供なんだ……
 言葉を出せないリンクに向かい、兵士はさらに言いつのった。
「お前はゼルダ様のために働いているんだろう! こんな所で死んじゃならん! 生きて
ゼルダ様をお守りしてくれ!」
 急に場が静まった。周囲の注目を意識しつつ、リンクは記憶を引き出した。
 ぼくが初めて時の神殿を訪れた時、この兵士はゼルダへの純粋な忠誠心を口にしていた。
そしてそれは彼のみではなく──
「この子はゼルダ様の側近なのか?」
「なら、この子だけでも逃がしてやろうぜ」
「そうだ、早く行け、ここは俺たちに任せろ」
「城下町を通るのは無理だぞ。戦闘の真っ最中だ」
「他に城外へ抜ける道はないのか?」
「西の別荘から平原へ出られる」
「あそこなら、ここから近道があるぞ」
「教えてやれよ」
「よし」
 リンクの胸を熱い感情が満たした。
 ゼルダの名が、混乱を収め、兵士たちの心を一つにした。ゼルダを守れという彼らの思いが、
ぼくへの気遣いにこめられている。今後の彼らの運命を考えると、自分一人だけこの場を去るのは
実に心苦しい。が、それは彼らの思いを引き受けることでもあるのだ。
 道筋を聞き終えたリンクは、励ましの声を送ってくる兵士らに一礼し、城門に背を向けて
駆け出した。
2344-6 Ruto IV (4/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:31:33 ID:+c2JoyrR
 別荘までの道に危険はなかった。別荘もゲルド族の襲撃を受けてはおらず、他にも人はいない
ようだった。七年後の世界で近辺の様子は把握していたので、リンクはたやすく平原に続く門まで
行き着くことができた。
 門に戸締まりはされていなかった。最近、誰かが門を通ったのち、放置されていたのだろう。
不用心とは思われたが、脱出が容易になったのだから、感謝すべき不用心さではあった。
 平原に出てから、検討してみる。
 反乱を防げなかったのは無念だが、気落ちしていてはいけない。シークにも言われたじゃないか。
次になすべきことを考えるんだ。
 反乱が始まった以上、もう、うかつに時の神殿へは行けない。たびたび過去と未来を行き来する
ことはできなくなった。この過去の世界に腰を据えて、なすべきことは全部すませてからでないと、
未来へは帰れない。
 どうするか。
 ゼルダは? 当面は大丈夫だ。最初に過去へ戻った時にも、ぼくは自分に言い聞かせた。
七年後の世界でもゼルダは生きている。ここでぼくがゼルダに会いに行かなくとも、ゼルダの
安全は保証されている。
 ならば賢者だ。サリアの安全はすでに確保した。残りの五人の賢者に会わなければならない。
まず誰に?
 ナボールは? 無理だ。反乱勃発直後のいま、ゲルド族に接触するのは、ほぼ不可能。後日、
改めて機会を探そう。
 インパは? これも無理。ゼルダと一緒のはずだが、所在は不明。いずれカカリコ村に
現れるのだから、それを待つべきだ。
 ラウルは? ケポラ・ゲボラは、この世界のどこかにいる。けれども、やはり居場所は知れない。
すぐには会えない。
 とすれば、ダルニアか、ルト。
 デスマウンテンとゾーラの里では、デスマウンテンの方が近い。麓のカカリコ村には、
アンジュの件でも用がある。が……
 賢者に会うこと自体の他に、両所への訪問は、二つの部族に反乱勃発を知らせ、対策を促す、
という意味合いも持つ。その点を考えると……
 今後、カカリコ村へは多くの難民が押し寄せる。反乱の件は自然に広まる。すぐゴロンシティへも
伝わるに違いない。一方、ゾーラの里は孤立している。情報が届くのは遅れるだろう。
 心を決め、リンクは目的地に向かって走り始めた。

 ゲルド族の襲撃範囲は城下に限定されているようで、ハイラル平原を横切る旅は、何ものにも
妨げられることはなかった。水量の豊富なゾーラ川を遡るのは、かつてと同じく一苦労だったが、
水が涸れ果ててしまった七年後の惨状を考えると、自然の恵みが保たれているのは、むしろ
喜ばしい状態といえた。
 ゾーラの里に到着したリンクは、直ちにキングゾーラに謁見し、『水の精霊石』を貰い受けた
礼を改めて述べ、しかし残念ながらその厚意を生かせず──自らの封印や時を駆ける旅などに
ついては伏せた上で──ゼルダの失踪とゲルド族の反乱を生じさせてしまった経緯を説明すると
ともに、それでも今後、世界支配の野望をあらわにしたガノンドロフに対抗してゆく必要がある、
と熱心に訴えた。以前のジャブジャブ様の変調もガノンドロフの仕業と見られることはすでに
伝えており、またその際のリンクの活躍を評価してくれているためか、キングゾーラは疑いを
差しはさむことなく、真剣な面持ちでリンクの話に耳を傾けていた。
 一族の戦闘力の乏しさを危惧するキングゾーラに対し、リンクは、シークから聞いていた歴史に
則って、カカリコ村やゴロン族との共闘を提案した。キングゾーラは深く頷き、さらに詳細な
相談が、二人の間で続けられた。
2354-6 Ruto IV (5/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:32:12 ID:+c2JoyrR
 ベッドの上に身を投げ出し、ルトは思いにふけっていた。
『リンク……』
 いま、どうしているのだろう。『ゾーラのサファイア』を渡して以来、再会は果たしていない。
「なぜ、会いに来ぬ」
 そう口に出してみる。王女の威厳をこめて、いかめしい声で。
 でも心には、いかめしさなどかけらもない。
 別れ際に見たリンクの笑顔。ただそれだけが思い浮かぶ。その笑顔を、もう一度……いや、
一度と言わず、何度でも……いやいや、ずっとずっと、いつもいつも、それを見ていられる
ようにと……なぜなら……
『そなたはわらわのフィアンセじゃからな』
 リンクの気持ちを確かめたわけではない。しかしルトはかたくなに信じていた。今度リンクが
来れば、今度リンクに会いさえすれば、想いは一方的なものではなくなると。あの笑顔は、自分に
対するリンクの愛情の証であると。
「そなたの気持ちは、わらわにはお見通しじゃ」
 もう一度、口に出す。自らに言い聞かせるように。
 が、そこに無理があることを、心の隅で感じてしまう。どうしても。
 ならば、どうしてリンクは会いに来ない?
 別れてから、まだ二週間あまり。長の無沙汰というほどではない。
 そう思うことにして、心を慰める。それに……
 リンクは大きな使命を負っている、と父は言っていた。その使命とやらで忙しいのだろう。
そこにあのゼルダ姫が関係しているらしい点は気にかかるが……
 激しく首を振る。
 ゼルダ姫など関係ない。リンクはいずれここへやって来る。リンクが来たら……
 ルトはごくんと唾を呑んだ。
 めおとの作法。
 すでに初潮の際、まわりの者から教育は受けていた。リンクとのことがあってから、侍女たちに
せがんで詳しい話を聞き出したこともある。男と女が閨で何をするのか、もうあらかたのことは
知っている。
 しかし、知識だけだ。
 全裸で暮らすゾーラ族ゆえ、いまさら性器を見、想像することで、惑いが生じたりはしない。
ただ、それが自分の中に入ってくるということに、実感が持てない。どういう心持ちがするのだろう。
ある者は快いと言い、ある者は痛いと言う。確かに、試した限りでは……
 人差し指を立ててみる。リンクのそれを見たことはないが、里にいる同年代の男の子を見るに、
この人差し指くらいの大きさではないか。
 指を、そっと股間へ忍ばせる。男を受け入れる場所。
 何ともいえない感触。くすぐったい。けれどそれだけではない。快いといえば、そうなのかも
しれない。
 奥へと指を進める。
 快い? そうかも。そう呼んでいいのかも。でも……
 指がそれ以上進まなくなる。いつもそこで止まってしまう。それでも進めようとすると……
「つッ!」
 痛みがそれを妨げる。耐えなければならないのだろうか。この先にはもっと大きな快さが
ひそんでいて、痛みに耐えることができれば、それに達することができるのだろうか。
 いまはまだ、確かめる勇気がない。それでも、リンクが来たら……リンクが目の前でそれを
さらけ出したら……自分はきっと、おののきながらも、喜んでそれを迎え入れ、どんな苦痛にも……
2364-6 Ruto IV (6/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:32:43 ID:+c2JoyrR
 ノックの音がした。ルトの心臓は縮み上がった。
「な、なんじゃ」
 あわてて指を引く。戸が開いて、侍女が顔を出し、あきれたように言った。
「もうお昼でございますよ。まだおやすみなのですか」
 ばれてはいないとわかり、ほっとする。そんな態度にも気づかない様子で、侍女が改まった声を
出した。
「国王陛下のお言いつけでございます。重要なお客人をお迎えし、会談中なれば、呼ぶまでに
仕度をして待ち、のちほど挨拶にまかり出よ──とのことで」
 客とは珍しい。だが堅苦しい場所に引っ張り出されるのはまっぴらだ。いまはリンクのこと
だけを考えていたい。
「面倒くさいのう」
 不機嫌な声色を使ってみる。
「ご気分がすぐれませんか?」
「すぐれぬ」
「では、お断りに?」
「断ろう。誰にも会いとうない」
「承知しました。陛下にはそのようにお伝え申し上げます」
 いつも口うるさい侍女なのに、やけに物わかりのいい──とルトは不思議に思った。顔に妙な
笑いが浮かんでいるのにも引っかかる。
 部屋を出て行きかけた侍女が、ふり向いて言った。
「よろしいのですね。お見えになっておられるのは、リンク様でございますのに」
 跳ね起きる。
「なぜそれを早う言わぬ!」
 ベッドから飛び降り、そのまま部屋から駆け出そうとして、思いとどまる。鏡の前に走り寄り、
身支度にかかる。侍女がそばについて、手伝ってくれた。くすくす笑いを必死で抑えている。
 王女が自らの所存を明らかにするのに遠慮など要らない。よってリンクへの想いは常に公言して
いるところ。この侍女もそれを知っている。知った上での、この態度。
『こやつめ、わらわをからかっておったな』
 腹立たしくはあるが、いまはそんなことにこだわってはいられない。
 身支度には意外に時間がかかった。全裸暮らしなのだから、他の地域のハイリア人のごとく、
衣装に気を遣う必要はない。だが素肌をさらすからには、それなりの配慮はしなければならない。
 どこから見てもおかしくない格好と見定めてから、ルトはあわただしく部屋を出た。王の間の
前まで行くと、衛兵に止められた。
「陛下はお人払いをされて、ご密談中でございます。誰も部屋に入れるなとの仰せ」
「リンクはわらわに会いに来たのじゃ。わらわが入って何の不都合があろうか」
「陛下がお呼びになるまでお待ち下さい」
「かまわん! 通るぞ!」
2374-6 Ruto IV (7/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:33:13 ID:+c2JoyrR
 衛兵を押しのけ、戸を開く。
 玉座の父と、その前に立つリンクが、驚いた顔でこちらを見た。
「ルト姫!」
 リンクが叫ぶ。顔が崩れる。無限の感情を湛えて。
 ああ、やはり! リンクはわらわのことを……
 安堵と歓喜が胸を破裂させそうになる。なのに、口は勝手に言葉を吐き出す。
「ずいぶん来るのが遅かったではないか。いままで何をしておったのじゃ」
「これ、ルト」
 想いとは裏腹な自分の台詞も、父の穏やかな叱責も耳に入らない様子で、泣き笑いの表情で、
リンクが歩み寄ってくる。立ち止まる。手を取られる。
「君は……生きてるんだね……よかった……嬉しいよ……ほんとうに……」
 何を大げさな──と思いながらも、そこまで言うリンクを前にして、もう態度を装ってなど
いられない。
「わらわも……会いたかったぞ……」
 小声で答える。
 見つめ合ううち、どれくらいの時間が経っただろう。永遠のごとく感じられたが、その実、
一瞬のことだったのかもしれない。
 リンクの手が、ぴくりと動いた。こちらの顔に向けられていた視線が、少しずつ下に移り、
行き着いたところで、急に再び顔に戻った。表情が変わっていた。泣き笑いが消え、あわてた
ような、困ったような顔つきになっている。その顔が、心なしか赤らんでいる。
 どうしたのだろう──といぶかしむうち、ハイリア湖で初めて会った時のリンクが、同じ顔を
していたことを思い出す。
 これは……リンクの、この表情が意味するものは……
 すでに激しい胸の鼓動が、いっそう激しさを増してくる。息苦しいほどに。倒れてしまいそうに
なるほどに。ああ、このままだと……このままだと……
「ルトよ、積もる話もあるであろうが──」
 父が口をはさんできた。
「こちらの話が終わっておらぬ。いましばらく外にて待っておれ。よいな」
 リンクの手が離れた。緊張から解放され、ルトは深く息をついた。ほっとしたような、残念な
ような、複雑な気分。
 それでも、リンクの心根は知ることができた。ここはそれで充分に満足。
 のちほどの再会をリンクと約し、ルトは温かい想いを抱いて王の間を去った。
2384-6 Ruto IV (8/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:34:02 ID:+c2JoyrR
 生きていると、頭ではわかっていた。けれどその姿を見た瞬間、思いが噴出するのを抑えられ
なかった。
 陵辱の果ての無惨な死への痛憤。その死を看過せざるを得なかったという激しい悔恨。そして
いま、整った美貌も小憎たらしい物言いも丸ごと包含し、一人の人間としてのルトがそこにある
ことへの感動。
 こうして会えた以上、あの酷たらしいルトの運命を、ぼくは絶対に書き換えてやる。
 そのために──と考え、意識してしまった。見入ってしまった。
 自分よりも少し背の高い、すらりと伸びた清冽な肢体。体内が透けて見えそうなほどの青白い肌。
控えめながらも明らかな隆起を示す二つの乳房。わずかな面積であれ密度ある集合を見せる黒い
恥毛。小さいマロンよりも、サリアよりも、それは明確に女の成長を主張していて、さりとて
成熟というにはなお遠く、まさに子供と大人の中間にある、一種独特の魅力に満ちあふれていて……
 このルトへの意識は、すでにハイリア湖での出会いの時からぼくを揺り動かしてきたもので、
しかしいまのぼくはルトの存在がそれ以上の意味を持っていることを知ってしまっていて、
なぜならぼくは、ルトを救うためにぼくは、この手で、この全身で、ルトを、ルトのこの全身を……
 胸から心臓が飛び出んばかりの緊張は、キングゾーラの割りこみによって解かれた。のちほどの
再会を約して部屋を出るルトを見送り、リンクは大きく息を漏らした。刺激が去ってほっとした
気がし、刺激がなくなって残念な気もした。
「礼儀をわきまえぬ娘で、すまんの」
 大してすまなそうな顔もせず、キングゾーラが言った。むしろ娘のおてんばぶりを微笑ましく
思っている様子だった。が、その顔はすぐに真剣なものとなった。
「ところで、確かめておきたいのじゃが……そなた、ルトと婚約したというのは、まことかの?」
 唖然とする。
 婚約? 結婚の約束? ぼくが? ルトと?
2394-6 Ruto IV (9/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:34:48 ID:+c2JoyrR
 ものも言えなかったが、顔に出た驚きで察したのだろう、キングゾーラは頭をゆるゆると
振りながら、困り果てたといった感じで言葉を続けた。
「やはりルトが一人で騒ぎたてておるだけなのじゃな。そんなことではないかと思うてはおった。
ゼルダ姫との縁で、大きな使命を負うて生きておるそなたじゃ。婿になどと馬鹿げた期待はするな
──と、常々言うてはおるものの、あの子は一向に聞き入れようとはせん」
「はあ……」
 としか答えられない。
「この件は改めて、ルトによく言い聞かせておく。そなたにはすまぬことばかりで、まことに
申し訳ない」
 キングゾーラは頭を下げた。今度は心底からの謝罪と見えた。
「あ、いや……」
 王様に謝られるのはさすがに畏れ多い。リンクは意味もなくお辞儀を返した。そこへキングゾーラが
言葉をかぶせてきた。
「申し訳ないついでに、と言っては何じゃが……そなたに一つ頼みがある」
 ゲルド族との戦争が始まれば、ゾーラの里は危険にさらされる。そうなる前にルトを疎開させたい。
ルトがしばしば訪れているという、ハイリア湖あたりがよいかと思う。すぐにでもルトを連れ、
ハイリア湖まで赴いてはくれまいか──
 聞けばもっともな案だ。リンクは賛意を述べ、心の中で考えた。
 ハイリア湖にはみずうみ博士がいる。頼めばルトの世話をしてくれるだろう。それに、水の神殿が
ある場所だ。いざという時には、いつでも神殿に入ることができる。
 そこまできて、ついにリンクは重大な件をキングゾーラに告げざるを得なくなった。
 ゾーラ族にとって、いや、それだけでなく、この世界全体にとって、ガノンドロフへの根本的な
対抗策は、ルトが『水の賢者』として覚醒することだ。そこに必要な自分とルトとの契り、そして
賢者となったのちのルトの運命を考慮すると、父親であるキングゾーラには言いづらい。が……
 いずれは知らせなければならないこと──と決心し、リンクは語った。
 キングゾーラは衝撃を受けたようで、長い間、沈黙を守っていた。ゾーラの王としての公的な
立場と、ルトの父親としての私的な立場との間で、葛藤が繰り広げられているのだった。しかし
最後には、キングゾーラも決断を下した。
「永遠の別れになろうとも、それがルトの運命ならば──それが世界を救う手だてとなるならば
──余は私情を慎まねばならぬ」
 感情を抑えた声でキングゾーラは言い、次いで、短い言葉を送ってきた。
「頼むぞ」
 限りない重みを持ったその言葉を、リンクは深い一礼をもって受け止めた。
2404-6 Ruto IV (10/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:35:19 ID:+c2JoyrR
 賢者の件もこちらから伝えておこうか、というキングゾーラの言を、丁重ながらも断固として、
自分が知らせるから、と退けたリンクだったが、その機会は容易には訪れそうになかった。以前の
つっけんどんな態度など忘れ果てたように、ルトはリンクについて離れず、浮き浮きした様子で
里のあちこちを案内してまわった。当然、二人は一族の好奇の視線にさらされたが、ルトは何の
斟酌もしなかった。「仲のよろしいことで」などと時にかけられる冷やかしの言葉には、一応、
憤慨の色を現していたものの、内心では嬉しがっているのが明らかだった。とても深刻な話が
できる雰囲気ではなく、説明は先送りにせざるを得なかった。
 リンクはジャブジャブ様の件でゾーラ族の恩人と言ってよい立場にあったため、大々的な歓迎の
晩餐を、との提案が一部からなされたが、ルトは難色を示し、結局、リンクの夕食にあたっては、
ルトとキングゾーラのみが席をともにすることとなった。大仰な儀式が苦手なリンクにとっては、
ありがたい成りゆきだった。のみならず、他の者の干渉なくリンクのそばにいられるという点で、
それはルトにとっても都合のよい状況であるらしかった。ルトが大がかりな晩餐を拒否した理由を、
リンクはそこで初めて悟った。
 夕食の皿はほとんどが魚料理だった。ふだん魚を食べつけないリンクは対応に困り、ただでさえ
怪しい食事マナーが、いっそう乱脈を極めてしまった。過去の経験から、またマナーのひどさを
罵られるか、と危ぶんで、ちらりと隣を見やると、ルトは罵るどころか、満面に笑みを浮かべ、
懇切丁寧に食べ方を教えてくれるのだった。
 そんな自分たちに向けられる、温かくも寂しげなキングゾーラの視線を、リンクは意識していた。
食事中、ほとんど口を開かなかったキングゾーラは、食後の飲み物をあおったのち、ルトを私室に
呼び入れた。そこでは、反乱の勃発、来たるべき戦争、ハイリア湖への疎開といった切迫した
情報の伝達に加えて、一方的な婚約への苦言がなされているに違いなかったが、しばらくして
部屋から出てきたルトの喜色にあふれた顔を見ると、そのほとんどは耳を素通りし、リンクと
二人でハイリア湖へ赴けるという浮かれ気分だけが頭を占めているように思われた。それは事後の
キングゾーラの言でも確かめられた。
 ハイリア湖への経路が地下水路であることは前提だった。かつてはルトだけが知る秘密だった
地下水路も、その頃にはゾーラ族の間に広く知れ渡る存在となっていたのだ。時により移りかわる
水流の方向を鑑みて、出発は翌朝と決められていた。それまでに賢者の話はできそうにない、と
リンクは詫びたが、キングゾーラは理解を示してくれた。
「ルトが賢者となるには、まだ間があろうゆえ、これが余との最後の別れというわけでもあるまい。
賢者については、あちらで落ち着いてから、とっくりと話してやるがよい。そなたの言うことなら、
ルトも素直に聞くであろう」
 リンクは神妙に頷いた。
2414-6 Ruto IV (11/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:35:54 ID:+c2JoyrR
 地下水路の急流は、多くの荷物を運ぶには不都合とあって、出発にあたりルトが身につけて
いたのは、わずかな手回り品のみだった。その中にある一つの品を、リンクはルトから手渡された。
くわえれば水中でも呼吸可能という『ゾーラのうろこ』だった。
『ゾーラのうろこ』には『金のうろこ』と『銀のうろこ』の二種類があるそうで、ルトはそれらを
一枚ずつ持っていた。リンクが受け取ったのは、より効果が長持ちするという『金のうろこ』の
方だった。
 キングゾーラや近侍の者たちに別れを告げ、二人はハイリア湖へ向けて地下水路に入った。
息ができるとはいえ、泳ぎに慣れないリンクは、急流の中では目をあけてもいられず、ルトの
身体にしがみついているのが精いっぱいだった。裸の女性をかき抱くという、本来ならば
興奮すべき状態は、そこでは何の悦びともならず、一刻も早く目的地に着いてくれ、と、リンクは
心の中で繰り返すのみだった。
 やがて水流の速度は落ち、かろうじて目を開いていられるようになった。慣れてくると、周囲に
視線をやる余裕も生まれた。地下ではあっても、ところどころには地上に通じる隙間があると見え、
わずかな光が水中にも届いているのだった。
 そのうち、平静だったルトの表情が、苦しげな色を帯び始めた。呼吸に支障をきたしている
ようだった。ルトがくわえているのは効力の短い『銀のうろこ』で、その効力が切れてしまった
ものと思われた。リンクは自分がくわえていた『金のうろこ』をルトに渡し、ルトが息をつく間、
呼吸を止めて待機した。限界に達する前に、ルトが『金のうろこ』を返してきた。こうして二人は、
一枚のうろこを代わるがわる使い合い、水の流れに身を任せていった。
 幸い、そんな緊急事態も長くは続かず、二人はハイリア湖に到着した。ルトは呼吸の制限にも
平気な様子で、リンクにしおらしく礼を言った。リンクの方はそれどころではなく、ぜいぜい喉を
鳴らしながら、やっと制約なく呼吸できる安楽さを噛みしめた。
 息が落ち着いたあとになってから、前にうろこをくわえ合う情景を想像して頭をかっかとさせた
ことが思い出され、リンクは苦笑した。実際にやってみると、それほど悪い気はしない行為だった。
2424-6 Ruto IV (12/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:36:30 ID:+c2JoyrR
 まず、湖研究所を訪れた。みずうみ博士は在宅しており、戸口に立つ二人を見て、率直な歓迎の
言葉をくれた。七年後の世界で老いの進んだ博士を見てきたリンクにとっては、いまの博士の
矍鑠とした姿が感慨深かったが、この世界では先の別れからまだ二週間あまりとあって、その場の
出会いは、感動の再会というにはあたらない、平凡な挨拶の交換に終わった。
 来訪の理由を訊く博士に、ルトは臆面もなく、
「婚前旅行なのじゃ」
 と答え、リンクをあわてさせた。やはりキングゾーラの説得は全く功を奏していないのだった。
博士はあっけにとられたように二人を見、次いでいかにも面白そうな顔になった。
「お前さんたち、知らん間に、ずいぶんと仲よくなったもんじゃのう」
 居心地の悪さを感じたリンクは、服が濡れているから乾くまで家に入るのは遠慮する、と急いで
言い、ルトを連れて戸口を離れた。

 湖畔で時間を潰すうち、ルトが釣り堀に興味を示したので、行ってみた。いずれ命を落とす
ことになるはずの親父は、いまはもちろん元気な姿を保っていた。全裸のルトの出現に、ぎょっと
していたものの、見るのは初めてではないらしく、別段、詮索はしてこなかった。
 釣りというものを見たい、とルトにせがまれた。経験はなかったが、親父が例の奇妙な訛りで
説明するのを聞くと、それほど難しくもなさそうだった。リンクは二十ルピーを払って釣り竿を
借り、水際にすわって糸を垂れた。ルトは隣で興味津々の態だった。
 魚はなかなか針にかからなかった。業を煮やしたルトは、魚くらい竿を使わずとも捕まえるのは
簡単だと言い、ざぶざぶと水の中に入っていった。たちまち親父の怒声が飛び、ルトはふくれっ面で
岸に戻った。
 そんな不機嫌さも、ようやくリンクが最初の魚を釣り上げると、一気に消し飛んだようで、
ルトは手を叩いてリンクの腕を褒めそやした。気恥ずかしかったが、竿の扱いに慣れたせいか、
続けて三匹を手中に収めることができ、リンクも満更でない気分になった。
 その頃には服も乾いていたので、四匹の獲物のうち最も大きなものを親父の勧めで水槽に
キープし、二匹を水に戻し、一匹をみずうみ博士への土産として持ち帰ることにした。

 土産は博士の包丁によって昼食に供された。
 食事の間、ルトはリンクにつきっきりとなり、魚の食べ方を復習させた。リンクは全く
上達しなかった。ルトは大げさにため息をついて見せ、これでは当分目が離せない、などと軽口を
叩いた。
 話題となったのは、まずは博士が以前ルトに渡した虫下しの薬についてで、いきさつを問う
博士に、ルトはその絶大な効果を告げ、おかげでジャブジャブ様を救うことができた、と、深甚な
礼を述べた。次いでルトの口から、リンクの武勇伝が語られた。話の中のリンクは、身を挺して
姫君を守りながら、巨大な怪物と勇敢に戦ってこれを倒した稀代の英雄、といった、虚偽では
ないにしても異様に美化された存在となっていた。訂正しようにも口をはさむ機会がないほど
ルトが熱心だったので、しかたなく話すままに任せたが、リンクの全身はむずがゆくなった。
2434-6 Ruto IV (13/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:37:07 ID:+c2JoyrR
 食事が終わると、さすがに疲れたのか、ルトは昼寝をすると言い、客用の寝室に引き取った。
二人きりになって、これからが本題といわんばかりに、博士が真面目な顔でリンクに問いかけてきた。
「で、どういう事情があってここへ来たんじゃ?」
 婚前旅行というルトの言葉を、そのまま受け取ってはいないのだった。リンクはとりあえず、
ゲルド族の反乱が勃発し、戦争を控えたゾーラの里からルトを避難させたのだ、と説明した。
博士は反乱の件に驚いていたが、ルトをかくまうことは気軽に引き受けてくれた。
「家賃を貰おうとは思わんから、安心するがいい。あのお姫様なら湖で魚を捕って、食べるには
困らんようにしてくれるじゃろうからの」
 飄々と口にされる冗談は、リンクを安堵させた。が、博士の追求は終わらなかった。
「それで、お前さんはどうする? ここにおるのか?」
「いや、ぼくは他の所でやらなくちゃならないことがあるから……」
「ルト姫はそれを承知か? あの様子では、お前さんがずっと一緒におると思うておるんじゃ
なかろうかな」
「うん……」
 沈黙が落ち、しばらくして、博士がおもむろに口を開いた。
「のう、リンク」
 優しげな声だった。
「お前さん、前に会った時とは、ずいぶん変わったの」
 はっとする。
「落ち着いたというか、大人びたというか……寄生虫退治のことといい、短い間に、いろいろ
経験を積んだと見える」
 短い間とは言えないが、確かに経験は積んだ。人生の年輪を刻んだ博士には、それが見通せる
のだろうか。
「やらなくてはならんことがある、と言うが……お前さん……何か──使命──とでもいうべき
ものを、背負うておるようじゃな」
 慧眼。まさに。
「やらねばならんことは、やらねばならん。それが道理。じゃが、男には、女に対する責任、と
いうものもある」
 責任? そういえば、前に──(男なら……責任を取れ!)──ルトが……
「お前さんとルト姫がどんな仲なのか、とか、野暮なことは訊かんでおくが、きちんと片はつけて
おかにゃならんぞい」
 返事ができなかった。
 どうすれば責任を取ることになるのか。どうすれば片をつけることになるのか。
 博士が口調をがらりと変え、剽軽な台詞を吐いた。
「まあ、お前さんたちが何をするにせよ、この家で、というのは御免こうむる。いくらわしが
年寄りじゃとて、身近でごちゃごちゃやられると、かなわんからの」
 やはり見通されているのか──
 リンクは身の縮む思いがした。
2444-6 Ruto IV (14/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:37:48 ID:+c2JoyrR
 夕食を終え、三人で話をするうちに、夜は更けていった。昼寝のせいか、ルトは眠気も感じない
様子で、他愛のないおしゃべりを続けていたが、だんだん言葉が少なくなり、リンクにじっと
視線を送ってくるようになった。何かを期待している目つきだった。それを意識し、また、
早くしろと自らを叱咤しながら、しかしリンクは行動を起こすことができずにいた。ルトに
どう対応するかを決めかねていたのだった。
 決められないまま、時は夜半となった。これ以上は躊躇できない、と決心し、ついにリンクは
席を立った。
 ルトに呼びかける。
「散歩しようか」
 ルトの顔が、ぱっと輝く。
「うん!」
 跳ねるに近い足取りで、ルトが近寄ってきた。みずうみ博士はそっぽを向いている。こちらの
ことが目にも耳にも入っていないかのようだ。一種の気遣いと察し、博士には何も告げず、
リンクはルトとともに戸外へ出た。
 家の横に架かった橋を渡ってゆく。ルトが横に寄り添い、腕を組んできた。拒む気にはなれない。
もう下がってあとをついてゆく必要はないのだ、と思うと、胸は自然に温かくなる。
 第二の小島に達し、二人は草の上に腰を下ろした。
 下弦の半月が東の空を昇り始めており、天空を飾る無数の星々とともに、鏡のごとく静まった
湖面へ、清澄な銀の光を投げかけていた。夜気はしみじみと涼しく、水と草木のほのかな香りを
宿し、身にも、また心にも、しめやかな清々しさが染み渡った。
 隣にすわるルトが、ほ──と、小さく息をつく。まさにため息が出るほど、それは美しい夜の
世界だった。
 純粋な感銘を胸に満たしながら、リンクは思いを広げていった。
 この小島に来るのは三度目だが、これほど素敵な場所だとは気づかなかった。荒れ果てた未来の
世界での経験は別としても、この過去の世界で初めてここに来た時には、いろいろと気がかりが
あって、風景に気をまわす余裕がなかった。あの時は──
「そなたと初めて会うたのが、ここじゃったの」
 ほのぼのと、ルトが言葉を口にした。
 そう、あの時は、気がつくと、水面にルトの顔が現れていて、それからルトがこの島に上がって
きて、その身体を見て、ぼくは……
 記憶が鮮明に湧き上がり、同時に、隣にあるルトが強烈に意識され──
「あの折りは、そなたには、実に面白うないわらわであったか、と、恥じ入るばかりじゃが……」
 ルトが身体を寄せてくる。
「いまは、このように、そなたと仲ようなれて、嬉しゅう思うておる」
 腕が絡んでくる。ぼくの手が裸の肌に触れる。その冷ややかな心地よさ。すべるような
つややかさ。否応なく、否応なく、ぼくの身体は反応を──
「ルト姫……」
 思わず漏らす呼びかけに──
「呼び捨てで、よいぞ」
 応じるルトの、その声が──
「もう他人行儀な物言いなど、要らぬ仲であろうが」
 ますますぼくを高ぶらせる。それは言葉にとどまらず、迫るルトの顔が、潤んだ目が、わずかに
開いた口が、かすかに達する吐息が、ぼくを攻め立てる。ぼくを追いつめる。どうする? いいのか?
待て。言わなければ。言っておかなければ。けれどこの距離の近さ、もはやそんな余裕はぼくには──
2454-6 Ruto IV (15/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:38:20 ID:+c2JoyrR
 触れかかる。ルトの唇が触れかかる。ひんやりと快いその唇を、なすすべもなくぼくの唇は
受けて、包んで、揺り動かして、その奥に続く熱い粘膜を、さらになすすべもなくぼくの舌は
撫でて、えどって、味わって──
 ルトが離れる。は──と喘ぐ。苦しいのか。地下水路での突発事には平気だったルトが、
ぼくとのキスでは息を乱すのか。ルトにはそれほどのことなのか。ならばなおさら、なおさら、
ぼくは、ルトに──
「そなた、歳はいくつであったかの?」
 突然の質問。口は勝手に答える。その答に──
「わらわよりも、二つ下か……」
 少しく曇った表情が──
「ゾーラ族の慣習には合わぬことじゃが……」
 すぐに笑みへと取って代わり──
「わらわがよいと言えば、問題ない。たとえ夫が妻より年下であっても」
 夫? 妻? ああ、ルトは、なおも──
「リンク」
 ルトが呼ぶ。ぼくの名を。真剣に。目を据えて。
「結婚は、まだ先のこと。じゃが、今宵、わらわは、心を決めておる」
 決めている? 何を? あれを? ほんとうに?
「そなたに、わらわの初めてを、捧げようぞ」
 初めて。ルトの。やっぱり。ぼくに。
「いまの口づけも、その一つ。それを受けてくれたのじゃから……」
 待て。その前に。言わなければ。結婚のこと。賢者のこと。君に言っておかなければ。
「他の初めても、受けてくれるであろうな?」
 受けなければならない。さもなくば、君はこの小島に沿う湖の底に亡骸となって横たわる
ことになる。それだけは絶対に防がなければ。だから受けなければ。けれど──
「これからも、ずっと、わらわとともに、いてくれような?」
 それは、それは、ぼくは、そうだ、いまは、いまこの場では──
「わらわだけのそなたで、いてくれような?」
 この場では頷いてやれ。「うん」と言ってやれ。それで事は丸く収まる。説得はあとですればいい。
「な?」
 抱いてやれ。抱いてやれ。「うん」と頷いて抱いてやれ。
「ルト……」
 余計なことは言わなくていい。ただ頷いてやるだけでいい。
「ぼくは……」
 それ以上は言うな! 何も言うな!
「君だけの……ぼくでは……」
 言うな! 言うな! 言うな!
「いられない」
2464-6 Ruto IV (16/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:39:06 ID:+c2JoyrR
 ああ!──とおのれを罵倒する。
 何と馬鹿な自分。なぜそんなことを言ってしまうのか。
「……どういう……ことじゃ……?」
 ルトの表情が硬くなる。視線が刺すように強くなる。
「君と、結婚は、できないよ」
 まだ言うか。どこまで馬鹿なんだぼくは。いまそれを言って何になる。
 いや──と、もう一人の自分が反駁する。
 嘘は言えない。そこはどうしても譲れない。どんな結果になろうとも。
「……結婚……できない……?」
 が、その結果がこれだ。ルトが身を離す。顔がわなわなと震え出す。見る間に逆上に充ち満ちて。
これにぼくはどう対応する?
「婚約したではないか!」
 待ってくれ。それはそっちが一方的に──
「『ゾーラのサファイア』を渡す時、エンゲージリングと言うたであろうが!」
 エンゲージリング? 何のことだ? あれはそういう意味だったのか?
「わかったぞ。他に女がおるのじゃな」
 は? 何をいきなり──
「誰じゃ! ゼルダ姫か!?」
「え? いや……」
 なんでゼルダの名前が出てくるのか。確かにぼくはゼルダを──しかしゼルダとは何をした
わけでも──
「では誰じゃ! おらぬとは言わせぬぞ。思えばさっきの口づけは、たいそう上手であった。
経験があるのであろう!」
 そう、経験はいろいろとある。でもそれはこの際、関係のないことで──
「……そやつは……わらわより……美しいのか……?」
 逆上が、一転、悄然と──
「……わらわには……魅力がないか……?」
 とんでもない。君の魅力には初めから振りまわされっぱなしだった。けれど問題はそういう
ところにあるのではなくて──
 ルトの両目にあふれる涙。
 ああ、ルトが泣き出す。あの時のように──バリネードを倒したあとのように──また大声で
泣きわめくのだろう。無理もない。筋が通らない結婚話とはいえ、いくら泣きわめかれても
しかたがないことを、ぼくはしてしまったのだ。
 違っていた。涙を滝のごとく目から頬へと流しこぼしながらも、ルトは全く声を漏らさなかった。
それがいっそうルトの心情を映し出しているようで、リンクの胸は激しく痛んだ。
 どうする?
 正直に言うしかない。
「ルト……君には、ほんとうにすまないと思う。だけど、ぼくは……ぼくには、使命が……
しなければならないことがあって……それはとても大切なことで……他の何よりも優先させなければ
ならないことで……だから……だから、ぼくは──」
「聞きとうない!」
 激しい一声。
「ルト──」
「もう聞きとうない!」
 だめか。わかってもらうことはできないのか。
 そうではなかった。
「……わかって……おった……」
2474-6 Ruto IV (17/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:39:34 ID:+c2JoyrR
 わかっていた。ほんとうは、わかっていた。
 父が常に言っていた。リンクには使命がある。自分のもとにはとどまれない。
『ゾーラのサファイア』を必要としたのも、寄生虫を打ち倒したのも、リンクの使命の一環で
あって、自分を助けることになったのは、ただその派生事に過ぎなかったのだ。
 心の底では知りながら、けれども、認めたくなかった。たび重なる父の諫めも聞こえない
ふりをして、自分の望みだけに固執して、そうあって欲しいと願い続ければ望みはかなうと無理に
自分に言い聞かせて……
 リンクの気持ちを確かめもしなかった。確かめるのが恐かったのだ。当のリンクが自分の望みを
砕くことになるのが恐かったのだ。
 そうなることがわかっていたから!
 独善は、いつか破綻する。そのいつかが、いまなのだ。おのれの身勝手さの報いを、いま自分は
受けているのだ。
「……悪いのは……わらわの方じゃ……」
 認めなければならない。リンクには使命がある。自分のもとにはとどまれない。
「……そなたは……行くがよい……」
 耐えよう。耐えなければならない。
「……じゃが……」
 耐えられるのか? このまま何もせずリンクと別れることが、自分にできるのか?
「……このままでは……耐えられぬ……」
 あの決意は、いまも変わらない。
「……今宵限りで……かまわぬゆえ……」
 もしリンクが、わずかなりとも想いを注いでくれるのであれば──
「……どうか……」
 せめてその証を残したい!
「わらわの初めてを貰うてくれ!」

 激しくぶつかってくるルトの身体。それを何とか抱き止めつつ、しかし頭は混乱する。
 わかってもらえたのだろうか。「行くがよい」と、「今宵限り」と、ルトは言う。結婚のことは
諦めたのだろうか。諦めたとは言っていない。言ってはいないが、そう解釈はできそうだ。
できそうだが……
「ルト、君は──」
「何も言うな!」
 訊けない。確かめられない。男はこんな時どうすればいいのか。下手な言葉は要らないのか。
女の心が読めない自分がもどかしい。頭がまわらない。急転する状況が、腕に密着するルトの
身体の感触が、ぼくを乱す。ぼくを惑わせる。だけど、ああ、だけど一つだけ確かなこと。ぼくの
前に身を投げ出したルト。そのルトが求めているもの。その求めにぼくは応じなければならない。
他の事情がどうあってもぼくはそれにだけは応じなければならない。ルトのためには応じなければ
ならない。応じなければならない。応じたい。抱きたい。感じたい。ルトのすべてを感じたい。
初めて出会った時からぼくをどきどきさせてきたこのルトを、ぼくはいまこそ感じたい。
この想いは止められない。止められない。もう何もぼくを止められない!
2484-6 Ruto IV (18/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:40:08 ID:+c2JoyrR
 腕に力をこめ、仰向けに押し倒す。
 あ──と息を呑むルトにのしかかる。まっすぐ見据える。
 涙に濡れた目。緊張した顔。
 もう泣くんじゃない。
 睫毛に、目蓋に、頬に、顎に残る涙を、唇で拭いてやる。悲しみの塩辛い残滓を消し去ってやる。
続けて再び唇に、今度はおのれの意志で唇をかぶせる。じっと、時が過ぎるのを待つ。静かに、
静かに、待つ。
 唇を離す。ルトの顔にとどまっていた緊張が、口元で、不意に小さな笑みへと変わる。
 そう、笑ってくれ。笑ってぼくを見てくれ。ぼくに触れてくれ。
 そこで気がつく。ルトだけじゃない、ぼく自身、いままでどれだけ緊張した顔をしていたことか。
でも、それもこれきりだ。ぼくも笑って君を見よう。君に触れよう。
「ルト」
 ささやく。
「リンク……」
 ささやきが返る。
 重みをかけて抱きしめる。固く、固く、抱きしめる。
 ルトの腕もぼくの背にまわる。固く、固く、抱きしめられる。
 触れ合う頬と頬。耳元をくすぐるルトの吐息。その深く早い周期を意識しながら、初めて
これほど密に接する清新な肉体を、どうにかしてぼくは感じようと、ぼくの身体に感じようと、
強く、強く、自分を触れさせて、押しつけて──
 だけどこれだけじゃだめだ。これだけじゃ足りない。裸のルト。着衣のぼく。二人の間に
はさまる布。ほんとうのルトを感じるためにはあってはならない邪魔ものを、いつまでぼくは
身に着けてるんだ。こんなもの、こんなもの、さっさと捨ててしまえ。胸も、腹も、足も、
破裂せんばかりに立ち上がったぼくの男の部分も、全部、全部、さらしてしまえ!
 ほら、そうしたぞ。ルトと同じ姿になったぞ。もうさえぎるものはない。二人を邪魔するものは
ない。だから触れよう、触れ合おう、ぼくたちの生身の肌を、さあ、こうして触れ合わせよう!
2494-6 Ruto IV (19/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:41:30 ID:+c2JoyrR
「あ! あぁ……」
 ルトが叫び喘ぐ。君は感じている。ぼくの下になって、ぼくに抱きすくめられて、君はぼくの
素肌を感じている。
 ぼくも感じる。ルトの素肌の真髄。濡れたように涼やかな、流れるように滑らかな、君にしか
ないこの肌の生々しさ、鮮やかさ、麗しさ。
 その肌の下にひそむ健やかな弾力。泳ぎに長けた証としての若々しい筋肉の張り。しかし全身は
あくまで細く、女としてのしなやかさを絶妙に保っていて、未熟ながらも女としての丸みを明確に
述べ立てていて──
 ああ、それだ。これまでぼくを惑わせ、いきり立たせ、振りまわしてきたのは、そしていま、
ぼくがこの手に触れたい、感じたいと思っているのは、まさに、君の、その女の丸み!
「ひゃ! や! あ……ぁ……」
 胸の丸みに触れた瞬間、奇抜な声をあげてルトが身を震わせる。何とかわいい反応!
 続けて胸を弄ぶ。柔らかくもあり硬くもある成熟途上の二つの乳房を、頂で盛り上がる豆粒の
ような乳首を、繰り返し、繰り返し、撫でて、押さえて、こねまわして──
「んん……んん……んぁ……あぁ……」
 息の周期に乗る声を、わくわくと耳にとどめながら、別の丸みに向けてぼくは手を下ろす。
これまでぼくの目の前で弾み踊っては、ぼくを釘づけにしてきた、二つの尻のふくらみを、ぼくは
とうとうこの手に持って、この手につかんで、やはり柔らかくもあり硬くもある不思議な感触を、
思う存分、手に焼きつけて──
「あぁ……あぁ……あぁッ……はぁッ……」
 高まり始めるルトの声。感じている。ルトは感じている。いいぞ、感じてくれ。もっともっと
感じてくれ。そのために、君のもう一つの丸みを、尻の前にある、腹の下にある、低く小さな
丸みを、ぼくの手は目指す。ぼくの手は探る。ささやかな範囲に、しかし明らかな密度で群れる、
しゃりっとした感触。それは大人の兆し。そう、君はもう大人になりかかってる。そんな君が、
ぼくよりもずっと大人に近づいた君が、子供のぼくの手で、喘いでいる。喘いでいる。嬉しい。
誇らしい。年上の君にここまで感じてもらえて。だけどまだ終わりじゃない。終わらないどころか
これからだ。これから君の最後のふくらみに、いまぼくの手がいるこのふくらみよりも、もっと
下にある、もっと小さな、もっと敏感なふくらみに、ぼくは、こうして、触れてあげる。
「きゃ! ひぁ! あ! あぁ! あ……あぁぁ……ぁ……」
 息が乱れる。声が飛ぶ。身体がのたうち跳ね踊る。
 わかるよ、ルト。君がぼくを感じてくれているのが、はっきりわかる。指を浸すこのぬめり。
君の奥からこんこんと湧き出るこの潤み。けれどまだ早い。まだ足りない。もっと準備が要る。
君は初めてなんだから。そこを許すのはこれが初めてなんだから!
2504-6 Ruto IV (20/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:42:09 ID:+c2JoyrR
 初めて! 初めて! 何もかも初めて!
 唇を合わせるのも、抱きしめられるのも、素肌をくっつけ合うのも、胸を撫でられるのも、
尻をつかまれるのも、下腹の毛を梳られるのも、そしてその部分を触られるのも!
 自分で触れたことはある。できるかどうかを確かめようとして。快いかどうかを確かめようとして。
でもわからなかった。自分の手ではわからなかった。そんな自分が、いまはリンクに抱かれて、
リンクに触られて、身体の中から止めようもなく湧き出てくるこの感覚に翻弄されて──
 知らなかった! 知らなかった! 知らなかった!
 これほどの感覚を生み出す場所がそこにあるとは。そこがこれほどの快さを──そう! 快さを!
感じることが! できるとは!
 でもそれだけではない。ここまでの初めてが、すべて、すべて、この快さの理由。すべての
初めてをリンクに捧げることこそがこの快さの源!
 では、これからの初めてはどうなのか。苦痛は覚悟している。しているが、果たして、それは、
どれほどの──
 それが始まる。リンクの指が入ってくる。ゆっくりと。ゆっくりと。どこまでくる? どこまで
くる? 自分では無理だった。痛くて途中でやめてしまった。なのに、なのに、いまは痛くない。
どうして? リンクの指はその地点をとうに過ぎてしまっているというのに、この抵抗のなさは
どうしたこと? それどころか──それどころか! この! 快さは! どうした! こと!?
 中を緩やかにすべる指。濡れている。そこは濡れている。そこがそんなになるなど、やはり
初めてのこと。だから痛みもなく快さだけを得ることができるのか。わかった、わかった、
わかったから、続けて、もっと続けて、ずっとずっとこうしていてリンク、リンク、リンク、あ、
抜けてしまう、行ってしまう、戻ってきて、戻って──
 来る!
 脚の間に身を置いたリンクが、また上にのしかかって、腰を落として、あれを、男のあれを
そこに触れさせて、ついに、ついにその時が──
 覆いかぶさるリンクの、まっすぐな視線。無言の問いかけ。
 頷く。ただ頷く。
 だけどほんとうに受け入れることができる? できる。やってみせる。何があっても受け入れて
みせる。指ができたのだからそれくらい、でも指よりは太そうなそれ、それ、それが、ああ、
それが、少しずつ、少しずつ、そこを押して、そこを分けて、そこを広げて──!
「あ! たッ! あつッ!」
 無意識にはぜる声。
 リンクの動きが止まる。息を荒げながらも、目を燃え立たせながらも、リンクは待ってくれている。
そう、ちょっとだけ待っていて、この痛みを痛みと感じなくなるまで、だから少しだけ、少しだけ、
うん、もういい、もう我慢できる、もうためらわない!
「かまわぬ」
 励ます。
「そなたを、くれ」
 一瞬の間。
 そして貫かれる!
「────!!!」
 叫ぶ。しかし声は出ない。出せない。どんな表現も不可能なこの衝撃!
 あらゆる苦痛を超えた、それは圧倒的な感動だった。
2514-6 Ruto IV (21/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:42:38 ID:+c2JoyrR
 おのれを打ちこみ、密着を保って、ただし動きはとどめる。
 大丈夫だろうか。指で準備を施すには問題なかったが、いまの挿入は苦しそうだった。
促したのはルトの方とはいえ、ここはしばらく静かにしていなければ──
 などと理性的な思考を頭の隅に残しながら、その実、動けない理由はこちらにもある。
狭い肉鞘にきりきりとはさまれた陰茎が、例の敏感さにさいなまれて、いまにも暴発しそうだ。
経験を重ねて多少は慣れてきたものの、身体の未熟さだけはどうにもならない子供のぼく。
 耐える。じっと耐える。
 何とかやり過ごし、大きく息を吐いたところへ、
「……嬉しい……ぞ……」
 喘ぎとともに漏らされる、小さな声。
「……ようよう……そなたと……結ばれて……」
 声にとどまらず、半ば開いた目が、かすかにほころぶ口元が、
「……これ以上の……悦びを……」
 陶然と想いを訴える。
「……わらわは……知らぬ……」
 かき抱く。
 そこまで言ってくれるのか──と、胸が絞られる。が……
 これ以上の悦びが、まだあるんだ。まだ君が知らないほんとうの悦び。それを、これから、
感じて欲しい。
 そっと、引く。君は目を閉じ、息を吐き、けれども表情に苦悶はなく──
 そっと、進む。息はさらに深く、なおも表情は安寧に満たされて──
 引く。進む。引く。進む。ゆっくりと。ゆっくりと。自分を保てる限りの速度で。
「どう? いい? 大丈夫?」
「……ああ……よい……よいぞ……」
「痛かったら、言って……我慢しないで……」
「……痛うない……心地よい……我慢など……」
「気持ちいい? ほんとうに?」
「……まこと……誓って……」
「じゃあ、もっと……こう……これだと、どう?」
 速度を上げる。
「……ああ……たまらぬ……」
「いいんだね、ルト」
「うん、そなたは──」
「ぼくも──」
「わらわも──」
「ルト!」
「リンク!」
 もう口をきいている余裕はない!
2524-6 Ruto IV (22/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:43:24 ID:+c2JoyrR
 俄然リンクが動きを速める。勢いよく体内をこすられる。言葉のとおり、そこには快感だけ、
快感だけ、身体がばらばらになりそうな快感だけしかそこにはない!
 のみならず、口を吸われ、舌を挿しこまれ、それに夢中で応じるうち、さらに胸を揉まれ、
胸に口づけられ、快感に快感が重なって、何がどうなっているのかわからなくなって、口が何かを
叫んでいるのに何を叫んでいるのか自分でもわからなくなって、言葉もなくがんがんと身を
打ちつけてくるリンクを固く抱きしめていることしかできなくなって、このとてつもない快感に
舞い飛ばされることしかできなくなって、この快感を快感と受け止めること自体が快感になって、
頭の中も身体中も快感だらけになって、何もかもが快感で、自分自身が快感で、快感で、快感で、
たまらない、たまらない、もうたまらない、もうこのままではいられない、壊れる、壊れる、
壊れてしまう、壊れたい、壊して、どうか壊して、どうかリンク、リンク、最後の、最後の、
一片まで、壊して、壊して、壊しつくしてリンク──!

 直後、希望は実現した。
 リンクが最大の力で突入してきた瞬間、すべての快感が限界を超えて炸裂した。ぴたりと体動を
止めたリンクの、そこだけはびくびくと脈打つ器官が体内に感じられ、それが最後の快感となって
ルトを投げ放った。
 落ちる。落ちる。落ちる。
 落下はとめどなく、着地の気配もなく、けれども不安はなく、むしろこのままどこまでも
落ち続けてゆきたいと……ゆきたいと……ゆきたいと──

 ──思う間に、静止していた。
 去ってゆく快感が惜しく、しかし静止の安楽が別種の快さをもたらしてもいた。その新たな
快さに身を浸すうち、いまの自分の有様が徐々に感知されてきた。
 変わらぬ夜の涼気。星が見える。背には草の感触。仰向けだ。
 ずっとこの姿勢だったが、さっきまで──さっきまで? あれからどれほど経ったのか?
見当もつかない。が、いずれにせよ、覚えている限りの間──上に感じていた重みは、ない。
リンクの身体は上にない。すでに結び合いは解かれている。リンクは、どこに……
 そばにいた。横になって、右の肘をついて、手で頭を支えて、こちらをじっと眺めるような
格好で、ただし目は閉じられていて……
 その目が開いた。こちらの意識が覚めるわずかな気配を感じ取ったのだ。眠っていたのでは
ないらしい。
 左腕がかぶさってくる。向かい合わせになるよう、身体を横に起こされる。抱き寄せられる。
身体に力が入らず、なすがままになってしまう。そんな受け身の自分が、また快く、改めて触れる
リンクの素肌が、さらにほんのりと快い。
 時は流れる。
 沈黙は暖かく、だが、どこか物足らなくもあった。言葉が欲しい──と、思った時、あたかも、
その思いを読み取ったかのごとく、
「君の──」
 リンクが呟いた。
「──初めてを……ありがとう」
 つりこまれるような、その笑み。
「ん……」
 胸が詰まって、頷くことしかできなかった。
 強引に押しつける形になった自分の想いを、リンクは受け取ってくれたのだ。二人の関係が
この場限りのものであっても、その言葉だけで、その笑みだけで、もう充分ではないか。
 いや、心残りが一つだけある。
 何もできず、ただ身体を固めて横たわっているだけの自分を、リンクは優しく──熱を
こめながらも一貫して優しく──的確に扱ってくれ、信じられないほどの快さを──そう、
前に想像していたよりもはるかに大きな快さを──もたらしてくれた。
 リンクに女性経験があるのは確実だ。
 いまさら他の女性のことを云々する気はない。が、リンクが言ってくれたことを、自分も
リンクに言いたかった、という思いは消せなかった。
「……わらわも……」
 詮ないと知りながら、言葉は漏れる。
「……そなたの初めてが……欲しかったの……」
2534-6 Ruto IV (23/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:43:59 ID:+c2JoyrR
 それは──と、リンクは心の中で苦笑する。
 できることなら聞いてあげたいけれど、そればかりは無理だ。未来ではマロンと、過去では
サリアと、ぼくは初めてを経験している。その他にも大概のことはやってしまっていて──
 そこで思い当たった。あまりのことに自分で自分を否定しようとしたが、あまりのことだけに
いっそう心が動かされる。心だけでなく、それは萎えていた部分にも再び力を注ぎこみ始める。
 こんなことをルトが承知するだろうか。いや、ぼくの初めてが欲しいと言ったのはルトなのだから──
「ルト」
 訊くだけは訊いてみて……
「いまのぼくが経験していないことが、一つ、あるんだ」
 不思議そうな顔となるルト。その耳元に口を寄せ、ささやくように告げる。
 ルトの目が大きく開かれた。あり得ない、とでも言いたげに、まじまじとこちらを見つめている。
 やっぱり。無茶な話と思うだろう。当然だ。だいたい、前の初めてを知ったばかりで、
そっちの方も、などというのは──
「そのようなことが……できるのか?」
 ルトが問う。そこにあるのは純粋な疑問。嫌悪の情は感じられない。
 頷く。
 ルトが目を伏せる。無言が続く。ややあって、顔が上がり、
「やる」
 きっぱりと言葉が放たれる。
「それがそなたの初めてならば、わらわは受ける」
 ほっとしたところへ、不安げな声が届いた。
「わらわも、初めてじゃが……」
 何とかなる。子供のぼくにとっては初めての行為だが、大人の時にアンジュから教わったことだ。
その時の忠告を思い出して──
 潤滑剤がない、と気づく。
 子供のぼくの大きさなら、そんなにきつくはないかもしれないが、何もなしではまずいだろう。
 考えた末、結論する。
 体液を使うしかない。
 ルトの股間に手を伸ばす。いまだ残る潤いを指で掬い取り、後ろに移して、そっと撫でつける。
それを繰り返す。陰部への接触が既知の快美感を、肛門への接触が未知の違和感を引き起こす
ようで、ルトの表情が、そのつど、微妙に移ろう。その移ろいが、かわいらしい。
 しばらく続けるうちに、ほぐれてきたと感じられたので、人差し指の先を、ちょっぴり
もぐらせてみた。さすがに顔をしかめて緊張するルトに、力を抜くよう諭しておき、じっと待つ。
緊張の緩みを得たのち、指を少しだけ奥に進める。筋肉の収縮は、強くはない。が、すべりが
足りていない。
 顔を股間に持ってゆく。
「あッ!」
 ルトが小さく叫んだ。
「そのような所に……口など……きたない……」
 きたなくなんかあるもんか。君のここは、ほんとうにきれいだ。青白い肌とは対照的に、
鮮やかな赤みを帯びた粘膜が、複雑な曲線を描いて、女にしかない美を形づくっている。
 膣口に滲む血すら美しく感じられ、たまらず舌を這わせる。傷はさほどでもないらしく、
苦痛の声は聞こえてこない。それどころか、いまぼくをたしなめていた口からあふれてくるのは、
まぎれもない悦楽の喘ぎだ。
 陰核への愛撫で感覚を高まらせておき、後ろへ舌を送る。抵抗感は全く湧かない。水中で過ごす
時間が長いせいか、ルトのその部分はあくまで清冽。それに、肛門への口づけは、大人の時にも
経験のない、真に初めての行為だ。ルトに施してこそふさわしい。
 仰向けの股間にうずくまり、両脚を持ち上げ、尻を浮かせるようにして、唾液を満たす。
舌で広げる。送りこむ。絶え間なく続くルトの喘ぎが、徐々に音量と音程を上げてくる。
 もういいか。
 ルトの身体を裏返そうとして、思いとどまる。
 どうせなら、別の向きでやってみよう。後ろからじゃなく、向かい合って。そうすれば、
ルトの顔を見ていられる。
2544-6 Ruto IV (24/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:44:40 ID:+c2JoyrR
 両脚を持ち、浮かせた尻に、膝でにじり寄る。鈴口から出る粘液を、手でおのれの全長に
伸展させたのち、先端をあてがう。ルトの全身が怯えたように竦む。目をぎゅっと閉じて、
それでも可能な限り心と身体の張りを解こうとしていて、続く数度の吐息とともに、竦みは
薄まってゆく。
 その機を逃さず、突く。そっと。
「く……ぅ……」
 ルトが呻く。筋肉が硬化する。先端部はすでに侵入を果たしたが、それ以上は進まない。
 無理しちゃいけない。あくまで優しく。優しい上にも優しく。
 自分に言い聞かせ、待つうちに、ルトの筋肉が弛緩する。再び突く。硬化する。待つ。
 硬化と弛緩の合間を縫い、少しずつ、少しずつ、リンクは幼い武器を送りこんでいった。
長い時間を要する過程だったが、リンクはそれを厭わなかった。ルトの身を思えば当然の
配慮であり、また、ともすればあの敏感さに我を忘れそうになる自分を抑えるためにも、事は
慎重に進めなければならなかった。
 やがて陰茎は根元までが腸内に没した。しばしののち、呻きを静めて、ルトがおぼろげな声を
出した。
「……もう……収まったか……」
 こちらの動きが止まったことで察したのだろう。
「すっかり入ったよ。君のお尻の中に」
 敢えて露骨に言ってやる。
「……わらわの……尻……」
 ルトが繰り返す。薄目をあけて、ぼうっとした顔。何を言っているのか自分でもわかって
いないのではないか。
「……わらわの……尻は……快いか……?」
 続くルトの言葉が心臓を鷲づかみにした。戯れに放った露骨な弁を、倍にして返された気分。
「……どうじゃ……快いか……?」
 追い討ちがかかる。答えざるを得なくなる。
「気持ちいい……とても……」
 ほんとうだ。がっちりと絞られた肛門の奥で、ぼくのペニスは必死に快感とせめぎ合っている。
それを告白したことで、なおさら快感がたちまさってくる。
「……わらわの尻で……そなたは……いくのか……?」
 またもや心臓をつかまれる。
 その言葉がどんなにぼくを興奮させるか、ルトはわかって言っているのか? わかって煽って
いるのか? そうではないだろう。ないだろうが、もう──
「いって……いい?」
 哀願めいた問いを止められない。
「……よいぞ……」
 ルトが微笑む。
「……わらわの尻に……そなたの初めてを……」
 激発しそうになる自分をかろうじて抑制し、小刻みに腰を前後させる。
 気をつけろ、気をつけろ、『力任せに無理やり動いたりはせずに』、優しく、あくまで優しく、
初めてのルトには、そうだ、ルトはどうなんだろう、ルトは感じているんだろうか、確かめ
られなかった、けれどもう訊いている暇はない、せめて、せめてこうして──
 持ち上がった両脚の裏を身体で押さえつけ、斜め上から短い突きを繰り返しつつ、前門に片手を
伸ばす。べっとりと濡れそぼった──(ああ、ルトは感じているんだ)──そこを刺激しながら、
残る手を胸にやって、固まった乳頭を撫でてやる。
 それが引き金となったか、
「ひあぁぁッッ!!」
 ルトがいきなり絶叫し、びくんと背をのけぞらせた。一気に収縮する筋肉が強烈な圧迫を内部に
加え、
「か! あッ!」
 最後の抵抗を打ち砕いた。
 もはや前後動を封じられた肉柱は、激しく狂おしく脈動し、絶頂の震えを周囲の粘膜に
伝わらせていった。
2554-6 Ruto IV (25/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:45:42 ID:+c2JoyrR
 身の上に投げ出されたリンクの身体を柔らかく抱き、霞のかかったような頭で、しかし奇妙に
冷静さも残した意識をもって、ルトは思いをめぐらしていた。
 これまで想像したこともなかった、肛門での交わり。
 初めは苦痛を感じもしたが、そのうち、どう言い表したらいいのかわからない、不思議な感覚に
支配され、それがついには──これもリンクの優しさのおかげなのだろう──明らかな快感と
なって、自分を虜にした。
 何か恥ずかしいことを口走ったようだけれど、そんなことは気にもならない。
 リンクの初めてを受けられたのだから、そして、自分の──先の初めてに加えて──もう一つの
初めてもリンクに捧げられたのだから、今度こそ、充分すぎるほど充分と言わなければならない。
 そう、今度こそ。
 リンクと至福の時間を共有する悦び。それは今宵限りと決めたこと。
 リンクには使命がある。自分のもとにはとどまれない。
 厳しくおのれに言い聞かせながらも、胸にわだかまる哀しみは消えなかった。消えるはずが
なかった。
 それでも、耐えなければならない。耐えるためには──

 リンクは我に返った。下になっていたルトが身体を動かしたのだ。
 重みをかけすぎたか、と気遣って、身を傍らに寄せる。ルトが上半身を起こした。妙に顔が
こわばっている。声をかけるのを憚っていると、ルトの方が口を切った。
「『金のうろこ』を持っておるか?」
 硬い声と唐突な質問に戸惑いつつ、リンクは脱ぎ捨てた服を探った。地下水路での突発事で
うろこをやりとりするうち、リンクは二枚のうろこをともに保持することとなっていた。
そのうちの『金のうろこ』を差し出すと、ルトは礼も言わずにそれを取り上げた。次いですっくと
身を立たせ、変わらぬ硬い声で、短く言った。
「里へ帰る」
 驚いて腰を上げかかるリンクに、叱責するような声が投げられた。
「そなたは来るな」
 腰は途中で止まってしまい、何とも中途半端な姿勢のまま、リンクはルトの顔を見上げた。
 切り口上で、ルトが言う。
「そなたとの婚約は、解消する」
「ルト──」
「よって!」
 呼びかけはぴしゃりと封じられる。
「そなたとは、ここで別れじゃ。どこへなりと好きな所へ行き、好きなようにするがよい。ただし
ゾーラの里へは来るな」
 左手を腰に当て、やや首を傾けて、こちらを見下ろすルト。この小島で初めて会った時と同様の、
高飛車な態度だ。
「どうして……」
 やっと言えたのは、それだけだった。
 ルトの表情が動いた。唇が開き、きれぎれに声が絞り出される。
「二度と、そなたの顔は、見とうない」
 罵倒としかとれない言葉だった。が、そこには、なぜか、哀しみとも呼び得る感情がひそんで
いるように思われた。ゆがめられた表情には、いまにも散り乱れそうな儚さがうかがわれた。
 それも束の間のことだった。不意に元のこわばった表情を取り戻し、ルトはついと背を向けた。
みぎわへ歩み寄った。湖に身を躍らせた。どぼりと音がし、水に映る月と星々の光が大きく
揺れ動いた。
 やがて湖面には静寂が帰り、反射する光も再び形をなした。
 ルトの姿だけが消えたままだった。
2564-6 Ruto IV (26/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:46:23 ID:+c2JoyrR
 リンクは茫然とするばかりだった。
 しばらくしてから、自分が不安定な姿勢を続けているのにようやく気づき、上げかけた腰を
草の上に戻した。
 ルトの態度の急変が理解できなかった。
 結婚を断ったのを怒っているのだろうか。そうとは思えない。自分から婚約解消を持ち出す
からには、やはりあの時点で──「行くがよい」と、「今宵限り」と言った時点で──ルトは
納得していたはずなのだ。その後の交わりで、素直なルトを近しく感じて、望みには添えない
までも、身体とともに心を触れ合わせることができたと思ったのに……
 いくら考えても答は出そうになかった。リンクは服を着、とぼとぼと橋を渡って、みずうみ博士の
家へ戻った。
 すでに夜明けも遠からぬ時刻となっていたが、博士は起きていた。椅子に腰を据えて本を
読んでいた博士は、戸をあけて室内に入るリンクに、からかうような視線をちらりと送って
きたあと、すぐ怪訝な表情となった。
「ルト姫は?」
 やむなく答える。
「ゾーラの里へ帰ったよ」
 博士の不審の目を意識しながら、向かいの椅子にかけ、テーブルの上に頬杖をつく。
「嫌われちゃったみたいだ」
 博士は何も言わなかった。応答を期待していたわけではなかったが、沈黙が続くのは気詰まり
だった。リンクは言葉を継いだ。
「男が責任を取るって、難しいことなんだね」
 ぷっ──と吹き出す音が聞こえた。見ると、博士が肩を震わせてくつくつと笑っている。
別に腹は立たないが、何がそんなにおかしいのか、と疑問になる。
 じきにわかった。
『確かに、子供が深刻げに言う台詞じゃないな』
 自分でもおかしくなってくる。
2574-6 Ruto IV (27/27) ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:47:04 ID:+c2JoyrR
「例によって、何があったかは訊かんでおくが──」
 笑いを収めた博士が、それでも顔に微笑を残して、優しげに話しかけてきた。
「お前さんのことじゃ。決して半端な気持ちでおったんではあるまい。お前さんなりに真剣に
考えて行動したんじゃろ」
 ふり返る。
 ルトの想いを慮るならば、あからさまに結婚を拒絶するべきではなかったのかもしれない。でも、
偽ることはできなかった。そこは間違っていない。絶対に。
「うん」
 確信をこめて、頷く。
 博士が続けた。
「なら、心配はない。若いうちは、いろいろある。そのうち、お互いわかり合える時は来るて」
 惑いを消し去るには至らなかったが、慰めになる言葉ではあった。
 ルトの心が読めないぼくだけれど、いずれは理解できる時が──
「ともあれ──」
 博士の口調が軽くなった。
「ルト姫を預かる話は、ご破算ということでいいんじゃな?」
 はたと気がつく。
 ここへ来たのはルトを戦禍から守るためだったが、結局、ルトはゾーラの里へ帰っていって
しまった。このままでは危険。ルトと交わることによって、その悲劇的な死を回避する目途は
ついたものの……
 そこで頭に浮かぶ大きな手抜かり。
 賢者の件をルトに伝えていない!
 キングゾーラには賢者の話をしてある。いざとなればルトに説明してくれるだろうが……
いや……
「これをどうするかのう」
 博士の声に注意を惹かれ、視線を追う。テーブルの端に小さな袋があった。ルトが手回り品を
入れていたものだ。
「ぼくが届けるよ」
 リンクは袋を懐にしまった。
 賢者については、ぼく自身がルトに伝えよう。それも責任のうちだ。キングゾーラと約束した
ことでもある。ゾーラの里へは来るなと釘を刺されたが、行かないではすまない。
 とはいえ……
 二度と顔を見たくない、とまで言い放ったルトに、この次、どんな顔をして会ったらいいのか。
 懸念が湧くのはどうしようもなく、リンクの心は重みを増すのだった。


To be continued.
258 ◆JmQ19ALdig :2008/01/02(水) 16:47:38 ID:+c2JoyrR
以上です。例によって Ruto II から引用しています。
259名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 18:41:23 ID:RMZpauxw
>>231-257
乙です!
ルトの元祖ツンデレぶりが愛らしく切なくて良かったです。
後半でここの誰かさんのリクエストにもきっちり応えてあったのがまた
良い仕事をされてるなあと思いましたw
何重にもGJ!でした。
260名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 21:35:31 ID:XKu1muJH
さすが、というか圧倒的だな。
261名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 21:45:54 ID:qz3lWoGM
全裸ルト姫さま(;´Д`)ハァハァ
アナルルト姫さま'`ァ'`ァ(*´Д`)=3 '`ァ'`ァ


しかし今後のことを考えるとゾーラの里にいても
ハイリア湖にいてもルト姫さまは助からないような…?
ルト姫さま7年間も全裸のままどこにいたらいいの(;´Д`)ハァハァ

今回の少年編ではまとめて用事を済ますようなことを
言っていたので、ルト姫さまとの再会後も未来に帰らず
他の賢者と会っていくのかも?
リンクの(性的な意味での)活躍に期待。
262名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 22:54:32 ID:0jw5CDpb
今回のは、今までので一番好きかも。
263名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 13:33:44 ID:geqMggDG
ルトかわいいよルト
264名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 01:11:46 ID:IG6Cg5Xy
しばらく子供リンクのターンですね?wktkwktk
265名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 15:27:45 ID:1hzxTDVY
>>258
乙でした。荷物を届けるという事はルト姫との続きがあるんですか?
266名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 17:13:25 ID:+nRFPuxD
「ここがリンクのアナルセックス童貞を奪った穴…」と
7年間リンクを思い出すたびアナルオナニーしまくって
すっかりお尻じゃないとイケなくなるルト姫。

ていうか「婚約は取りけしじゃ! そなたなどににわらわの純潔はやれぬ。」
267名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 17:14:50 ID:+nRFPuxD
「だが…こちらの穴でならまぐわってもよい」
と処女のままアナナセクロスして処女は7年後までおあずけ
というパターンも見たかった
268名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 00:50:41 ID:qCfTAqbC
>221-224
おお、田舎に帰ってるうちに2人目の神が!
風タクのほのぼのした雰囲気がよく出ててGJ! 続きもお待ちしてます。
>231-258
いつもながらハイクオリティでGJ! この分だと次もルトと、かな。
269名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 17:08:14 ID:eJCBTRAu
見ててムズムズするぜ……だがそれがいい
270名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 09:45:14 ID:Q8pttAOW
あげ
271名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 20:02:37 ID:1b+bjwVa
age
272名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 21:53:37 ID:WmK5RlZR
この季節は全裸待機しなくてもいいよね?
273名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 21:55:54 ID:kt7PqbAY
靴下待機なら
274名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 22:40:29 ID:IvTb1N66
ネクタイも巻かないと。
275名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 22:42:50 ID:vylpimWv
風邪引いてもいいようにはじめからネギも突っ込んどけ
276名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 22:51:17 ID:8TpnRLcb
それだけじゃ不安だな、練炭も貸してやるよ
277 ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:04:50 ID:l2KUwdIF
>>265 あるというかどうなのか・・・まあそれはいずれ。
>>267 それは考えたのですが、半覚醒には足りないかと思ったもので。

私本・時のオカリナ/第四部/第七章/アンジュ編その6/前編、投下します。
アンジュ×リンク@子供時代。(どっちを先に表記すべきか迷いますが)
註:アンジュ(仮名)=コッコ姉さん
2784-7-1 Ange VI-1 (1/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:06:14 ID:l2KUwdIF
 いくらも眠らぬうちに、夜は明けた。みずうみ博士の勧めで朝食をともにしたのち、リンクは
感謝を述べて湖研究所を辞した。
 湖畔に立ち、今後の行動を考える。
 ゾーラの里へ戻るべきか。
 試しにと思い、手元にある『銀のうろこ』をくわえて湖に顔を突っこんでみると、水中での
呼吸は可能だった。どうやら、いったん切れた効力も、時間をおけば回復するらしい。とはいえ、
地下水路を通ってゾーラの里へ到達するには、効力が足りない。それは昨日の経験でわかっている。
平原を歩いて行くことになるが……
 耳の奥に残る、ルトの言葉。
『二度と、そなたの顔は、見とうない』
 腰が引けてしまう。
 すぐ行っても、ルトは会ってくれないだろう。日をあけたほうがいい。となれば……
 心を決め、その場を去ろうとした時、湖に浮かぶ島の一つ──湖研究所の横から延びる橋が
行き着く第一の小島──に、黒い影が見えた。
 見覚えがあった。
 期待と興奮に胸を震わせ、リンクは橋に向かって駆け出した。

 影の正体は、思ったとおりのものだった。
 小島の真ん中にある石碑の上で、巨体を休ませる、一羽の梟。
 前に立ち、じっと顔を見つめる。相手もまた、目をまるまると見開き、一度の瞬きもなく、
こちらに視線を送ってくる。気味悪さとともに安心感をも呼び起こす、すべてを見通すような、
その視線。
 無言の対面が生み出す緊張に抗し、それを押し返す意志をもって、リンクは言った。
「あなたは……ラウル、だね」
 ケポラ・ゲボラは答えなかった。身体をぴくりとも動かさず、視線をちらりとも揺るがせず、
完全な沈黙を保っていた。
 再び緊張に耐えられなくなった時、ようやくケポラ・ゲボラが口を開いた。
「じゃとしたら?」
 いなされたような気がしたが、リンクは意志を保ち、声に力をこめた。
「あなたを賢者として目覚めさせなきゃならない」
 今度は間をおかず、ケポラ・ゲボラが応じる。
「いかにして?」
 詰まってしまう。
 賢者の覚醒はぼくとの交わりによってもたらされるが、ラウルの場合もそうなのか。ぼくは
この梟と交わることになるのか。それはあまりにも異常すぎはしないか。
 ためらっているところへ、しわがれた声がかぶさる。
「おぬしは何を知っておる?」
2794-7-1 Ange VI-1 (2/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:07:14 ID:l2KUwdIF
 漠然とした質問が、ますますリンクを戸惑わせた。
 ケポラ・ゲボラこそ、何を知っているのか。賢者の覚醒方法をぼくに訊ねるということは、
自分ではそれを知っていないのか。そもそも──他の賢者たちと同じく──自分が賢者であると
気づいていないのか。いや、ぼくが光の神殿に封印されたのはラウルの計らいであるはずだから、
賢者の自覚がないというのは変だ。では、すべてを知っていて、ぼくを試そうとでもしているのか。
 混乱する思考を引き戻す。
 かつてケポラ・ゲボラは言った。自分は世界を救う使命を負ったぼくを導く者なのだと。ならば──
 リンクはすべてを語った。これまで他者には伏せてきたことも隠さなかった。
 時の神殿でマスターソードを抜き、ラウルの企てによって──(ここでリンクはケポラ・ゲボラの
顔をうかがったが、何の反応も得られなかった)──七年間、光の神殿に封印されたこと。封印が
解かれた七年後の世界で、シークと協力しつつ、ガノンドロフ打倒に必要な賢者の覚醒を図ったが、
ケポラ・ゲボラを含めて六人の賢者は全員──(ここでもケポラ・ゲボラの反応はなかった)──
死んでしまったこと。そののちマスターソードの作用を知り、過去の世界に戻って賢者の死を
防ごうと、いま活動中であること。
 リンクが話し終えても、ケポラ・ゲボラは無言のままだったが、やがて、
「まことに不思議なことじゃて」
 と、はぐらかすような応答をし、次いで、感慨深げに言葉を続けた。
「二つの時代を行き来する少年のことを、このわしですら、伝説だとばかり思っとったよ」
 つまり──とリンクは考える。
 マスターソードによって時を越える旅ができることを、ケポラ・ゲボラは知らなかったのだ。
であれば、封印されたはずのぼくが、それからいくらも経っていない現在、ここにこうしているのを、
おかしいと思うはず。ケポラ・ゲボラがぼくの前に現れたのは、その点を質すためだったのだろうか。
「で、おぬしは──」
 声が思考を中断させた。
「──わしが命を落とすことにならぬよう、わしと契る、というのかな?」
 返事ができない。それがどうしても必要なら……いや、いくらなんでも……
 ケポラ・ゲボラの顔を見る。こちらに据えられた視線が、何とはなく諧謔めいた色を帯びている
ようだ。
「不要じゃ」
 ぽつりと吐かれる言葉。ほっとする。が、そうなると新たな疑問が生じてくる。
「じゃあ、どうしたら──」
「いずれ、わかる」
 さえぎるケポラ・ゲボラ。素っ気ない態度に、またも言葉を失ってしまう。
「おぬしの目指す場所は?」
 唐突に話題が変えられた。突然のことで考えをまとめる暇もなく、リンクは自動的に答えていた。
「カカリコ村」
 石碑の上で身を伸ばし、ケポラ・ゲボラは短く言った。
「つかまれ」
2804-7-1 Ange VI-1 (3/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:07:48 ID:l2KUwdIF
 ケポラ・ゲボラにぶら下がって空中を旅するのは、これが二度目になる。以前、ゾーラの里へ
運ばれた時は、ハイラル平原の中央上空を横切る最短経路をとったが、今回のケポラ・ゲボラは
真東へ向かい始めた。平原の外縁に沿って、その南端から東端へと、反時計回りに飛んで行く
つもりらしい。万が一にもゲルド族の目に触れぬよう、できるだけ城下町から離れておこう、
という意図だろうか。
 前回とは異なる、しかし雄大な点では変わらない下界の光景に心惹かれながらも、リンクの
頭脳は数々の疑問と戦い続けていた。
 梟とのセックスという、ツインローバの幻影で文字どおり吐き気を催させられた行為を免れた
のはいいが、それではラウルを覚醒させるにはどうしたらいいのか。ラウルの場合は、他の賢者とは
違った覚醒方法があるのか。だとしても、なぜケポラ・ゲボラはそれを教えてくれないのか。
いずれわかる、とケポラ・ゲボラは言う。いずれ、とは、いったいいつなのか。そして、ぼくとの
契りなくしてガノンドロフによる死から逃れる策を、ケポラ・ゲボラは持っているのだろうか。
 解せない。が、ラウルの覚醒に関しては、いまのぼくが──そして将来のシークも──思い
及ばないような、何か大きな秘密が隠されているに違いない。その秘密を現時点では明らかに
できない理由が、この思慮深そうな老いた鳥にはあるのだろう。
 もやもやした気分は晴れないものの、信じるしかない、と自分に言い聞かせ、リンクは疑問との
戦いにとりあえずの終止符を打った。

 気がつくと、下界の色調が変化し始めていた。緑の草に覆われた平原が尽き、荒れた灰色の
地面が露出する南の荒野へと、場が移っているのだった。
 やがて突兀と集族する岩の塊が現れる。シークと何度か落ち合った──いや、七年後の世界で
落ち合うはずの、あの洞窟がある地帯だな、とリンクは察知した。
 地上で見るのとは相当異なる、この上空からの眺めだが、地形をたどれば、かなり細かく場所を
特定できる。そう、洞窟の入口は、あの大きな岩の横だ。その前に伸びる岩棚で、ぼくたちは
焚き火をすることになる。
 未来の思い出という、時の勇者にして初めて可能な感慨を抱きながら、足の下を過ぎてゆく
風景を、リンクは目で追い続けていた。

 この時、仮に──
 賊の追撃を逃れて洞窟にひそむ一人の少女が、常に周囲を閉ざす暗がりの陰鬱さに耐えかね、
たまにはよしと外の明るみの中へ歩みを進めていたとしたら……晴れ渡った空の高みを悠々と
横切ってゆく巨大な鳥と、その足に吊り支えられた、少年とおぼしき小さな影を、少女の双眸は
捉えていただろう。あるいは少年の側も、少女とわからぬでもないささやかな人の佇みを岩棚の
上に認め、正体を確かめようと、かりそめの宿主である鳥に、暫時の休息を申し入れていたかも
しれない。
 けれども現実には──たとえ一瞬たりともおのれを危険にさらすまい、との自制が破れようも
ないほど少女の意志は堅固であり、天地に分かれた二人の身は、ひとたび近づいたと見るや、
互いを目にする機会のないまま、再び遠く離れ去ってゆくのだった。
 リンクとゼルダ。
 見えない糸でかろうじて結ばれた、幼い二人の行く道を、運命は、まだ、交わらせなかった。
2814-7-1 Ange VI-1 (4/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:08:24 ID:l2KUwdIF
 ゴロンシティへ赴く前にカカリコ村での用件をすませておく、という計画が、いかに非現実的な
ものであるかを、村に入った瞬間、リンクは悟った。
 カカリコ村は混乱の渦の中にあった。平和で落ち着いた本来の雰囲気が失われているのは
もちろんのこと、荒廃しつつも相応の静けさがあった七年後とも、様相は大きく異なっていた。
ゲルド族の反乱で修羅場と化した城下町から、着の身着のままで逃げ出した難民たちが、大挙して
なだれこんできていたのだ。
 家々は可能な限り彼らを収容し、しかしそれでも身の置き場のない人々が、戸外を埋めつくす
ほどに密集していた。苦痛を訴える負傷者の喘ぎ、家族を失った悲哀からの慟哭、残虐な襲撃に
対する怒りの声が、総出で救済にあたる村人たちの励ましや慰め、突然の戦時到来に緊張する
守備隊兵士らの切迫したやりとりなどを混じて、村を沸騰させんばかりの喧噪となっていた。
かと思えば、絶望のためか諦めのためか、放心状態を呈して沈黙するばかりの者も、難民の中には、
また少なくないのだった。
 地にうずくまり、あるいは右往左往する人々の間をすり抜けるようにして、リンクは足を進めた。
風変わりな身なりをしているとはいえ、このような混乱の中では、リンクも集団に埋没した小さな
一個人に過ぎず、誰の注意も惹くことはなかった。戦乱がもたらす悲惨な結末を、七年後の
世界ですでに見聞きしていたリンクだったが、ハイラル城の城門での体験に加え、いまこうして、
まさに戦乱のただ中で展開される悲劇を目の当たりにし、心は震え、胸は痛んだ。
 アンジュの家は難民であふれていた。当のアンジュの姿は見えなかった。風車小屋も同様に
難民を容れ、『グル・グルさん』の異名を持つ、あの手回しオルガンの男も、その場にはいなかった。
二人とも村のどこかで難民の救助にあたっているのだろうが、見つけだすのは難しそうだし、
また見つかったところで、こちらの用事につき合え、などとはとても言えない。『嵐の歌』を
奏でるだけなら一人でもできるが、この状況で井戸の水を涸れさせてしまったら、それこそ
袋叩きの目に遭うだろう。第一、あの男の前で『嵐の歌』を演奏するのは、カカリコ村が
ゲルド族との戦争に直面する、もっとあとの時点であるはずなのだ。
 いまの村に自分のいる場所はない──と、疎外感にも似た思いを抱きながら、ゴロンシティへと
向かいかけたリンクは、
『いや』
 デスマウンテン登山口の手前で、なすべき、いま一つの事柄を思い出した。
 墓地。
 いまだ所在の知れない闇の神殿。謎を解く手がかりは、そこにこそある。
 踵を返し、人混みをかき分けて、リンクは村の奥へと道をたどっていった。
2824-7-1 Ange VI-1 (5/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:09:01 ID:l2KUwdIF
 かなり広大な面積を擁しながら、場所が場所であるせいか、墓地は難民の避難所とはなって
おらず、種々の大きさと形を持った墓標の群れだけが、ひっそりと立ち並んでいた。そこは時間が
止まったような超然とした静寂に支配され、村の喧噪が現実のものとは思われないほどだった。
ハイラル平原を飛行中は、からりと晴れていた空が、いつの間にか、いまにも雨を落として
きそうな厚い雲に埋めつくされ、夕暮れという刻限とも相まって、重苦しい暗さをその場に
わだかまらせていた。
 墓地に入ってあたりを見まわしたリンクは、目的とする人物を一角に発見した。
 大柄でごつごつした体型の男が、わずかに盛り上がった地面をシャベルでならしている。死んだ
難民の一人を埋葬した直後でもあろうか。
 リンクは男のもとへ歩み寄り、率直に訊ねた。
「ダンペイさんだね」
 男の顔がリンクに向いた。驚くほど醜い顔だ。その点はみずうみ博士も同じだが、博士の場合は
愛嬌が感じられた。ところがこの男の顔から伝わってくるのは、不気味な陰鬱さだけだ。
 何らの感情もうかがえない表情でリンクを見ていた男は、ややあって、唸るように声を出した。
「ああ」
 墓守のダンペイ。ぼくやシークの知る限り、闇の神殿に関する情報を持つ、ただ一人の人物だ。
七年後には死んでしまっていたが、この世界では、こうして会うことができる。
「ここに神殿があるって、聞いたんだけれど……」
 ダンペイの視線がちらりと動き、すぐさま元へと戻った。
「その場所を教えてもらえないかな」
「だめだ」
 にべもない返事だった。リンクは怯まなかった。
「大事な用があって、どうしても知りたいんだ」
「言えねえ」
 押し問答が続いた。ダンペイは拒否の態度を貫いた。やっと聞き出したところでは、神殿の
場所はカカリコ村の墓守に代々伝わる秘密で、決して他人に明かしてはならないことになって
いるらしい。話はそこで頓挫してしまった。が……
 リンクは気づいていた。
 神殿という単語を出した時、ちらりと動いたダンペイの視線。それは咄嗟のことで隠しようの
なかった、ダンペイの内心の発露ではなかったか。
 視線が動いた先を見る。墓地の最も奥まった部分だ。そう、あそこには、あれが……
「あの崩れた石碑は何なの?」
 ダンペイは警戒するような顔つきとなったが、間をおいて、ぶっきらぼうに答を返してきた。
「王家の墓」
 再び重い口を割らせて得た内容は、こんなものである。
 ──王家の墓といっても、王族の遺体が埋葬されているわけではない。ハイラル王家に忠誠を
誓い、特に功績のあった者たちの魂が祀られている。だが、それも遠い昔のことで、いつしか
そのような者たちも、ハイラル城の墓地に埋葬されるようになった。かつて、王家に仕える
民であるシーカー族が、眠れる魂を守るために築いた、このカカリコ村も、いまは庶民に
開放されて俗な場所へと変貌し、古い謂われを知る者も、墓守である自分の他にはいなくなって
しまった──
 興味深い伝説ではあるが、闇の神殿と直接の関係があるとは思えない。ただ、一点だけ……
 予感を得たリンクは、それ以上の収穫が期待できそうにないダンペイとの会話を打ち切り、
礼を言って、墓地の奥へと一歩を踏み出した。とたんにダンペイの怒鳴り声が降ってきた。
「王家の墓に近づいちゃならねえ!」
 ただならぬ形相に驚く。
「どうして?」
 リンクの問いに対し、ダンペイは、ためらうように沈黙したあと、
「……神聖な場所だからな」
 と、口をもぐもぐさせながら不明瞭な声で答え、ぷいと横を向いて、埋葬の後始末を再開した。
もう何も話さない、とでも言いたげな雰囲気がありありとしていた。
 ダンペイの態度は明らかにおかしい。あの石碑──王家の墓には、闇の神殿に関連した、
何らかの秘密があるのだ。その秘密を解く鍵を、ぼくは持っている。とはいえ、ダンペイが
見ている前では、王家の墓へは近づけない。ここは無理をせず、出直すとしよう。
 リンクは黙ってダンペイから離れ、墓地を去った。
2834-7-1 Ange VI-1 (6/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:10:11 ID:l2KUwdIF
 村へ戻ったリンクは、群衆の中をさまよい、ようやく隙間を見つけて腰を下ろした。すでに
日は落ちていたが、狂騒は治まる気配もなく、それどころか、いっそう激しさを増すようだった。
新たな難民が次々に到着しているのだろう、とリンクは推測した。
 時が過ぎるのを待つうちに、空腹感が押し寄せてきた。手持ちの食料があったので、空腹には
対応できたが、水筒は空に近かった。雑踏に揉まれながら向かった井戸のまわりでは、水を求める
人々が長蛇の列を作っていた。リンクは列の後ろに並び、順番を待った。
 水筒を満たすまでには、かなりの時間を要した。再び雑踏を抜けて元の場所に戻ってみると、
そこはもう人で埋まっていた。しかたなく、別の安息の場を求めて、またもリンクは沸きたつ村を
さまよい歩かなければならなかった。
 真夜中近くになって、雨が降り始めた。戸外にいて雨を避けることのできない人々に、雨具を
提供する作業が始められた。深夜だというのに、村の混乱は、いつ果てるとも知れなかった。
 そろそろ頃合いか、と思っていたところだったので、リンクは雨具を受け取らず、濡れるに
任せて墓地へと向かった。

 墓地には何者の気配もなかった。入口の近くに建つ、ダンペイの掘っ立て小屋を観察してみる。
灯火は見えず、人が動く様子もない。ダンペイは眠っているのだろう、と判断し、リンクは墓地の
奥を目指した。
 雨の夜、しかも灯りもないとあって、見通しはきかなかったが、確かこの方向、と記憶を頼りに
歩みを進め、石碑の前に到達した。『時のオカリナ』を取り出し、雨に濡れぬよう、顔を下に
向けて、口につける。
 ダンペイとの会話から得た手がかり。王家の墓。「王家」の墓だ。王家にかかわる者の
身の証となる、この曲なら……
 音を抑えて『ゼルダの子守歌』を奏でる。待つほどもなく、足元の地面に重々しい振動が生じ、
同時に石碑がゆっくり後方へと移動して、すぐに静止した。
 やはり!──と胸を躍らせながら、しゃがんで、石碑が立っていた場所を検分する。
 穴。人が二人くらいはゆったりと並んで通れるくらいの広さ。しかし階段はない。垂直の縦穴だ。
奥には何があるのか。暗くて様子はわからない……
 そこでリンクの意識は背後に飛んだ。
 誰かいる!
 あわててふり向く。揺らめく小さな光。カンテラだ。傘を差した人物が一人、こちらへ
近づいてくる。
 ダンペイに見つかったか──と観念しかかったが、よく見ると、どうも感じが違う。おそるおそると
いった、ためらいがちな歩調だ。向こうもこちらを警戒しているのか。
 その人物は、リンクから少し離れた所で立ち止まった。何も言わない。
 乏しい光に照らされた部分から判断すると、細身のようだ。ダンペイではない。では誰が──
「リンク?」
 小さな声だったが、それはまるで大喝のようにリンクを打った。
 この声は──!
 カンテラが動いた。リンクの全身が光の到達範囲に入る。
「リンク! やっぱり!」
 安堵と驚きと懐かしさが入り混じったような声を発し、相手はリンクの目の前まで駆け寄ってきた。
リンクを包んでいたカンテラの光が、その持ち主をも照らし出した。
 アンジュだった。
2844-7-1 Ange VI-1 (7/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:10:50 ID:l2KUwdIF
 思わぬ場面での再会が、何よりもまず、未来の甘美な記憶を引き出した。
 二日にわたって身体を合わせ、セックスのさまざまなありようを教わった、あの目くるめく体験。
「村で見かけて、ひょっとしたらと思って、あとをついて来たのよ」
 微笑みながら、アンジュが傘を差しかけてくる。未来と変わらない、その微笑み。ただ七年分の
若さをとどめて。
 微笑みはすぐに消え、表情が心配げとなる。
「リンクも城下町から逃げてきたの?」
「あ、そう……そうなんだ」
 他の難民たちとは全く状況が異なるのだが、城下町を抜け出してきたことには変わりない。口は
肯定の返事をし、一方で思いはさらに漂ってゆく。
 もちろんいまのアンジュは、あの二日間を経験していない。ぼくについてアンジュが持っている
記憶は、ぼくが初めてカカリコ村を訪れた時のものだけだ。この世界では一ヶ月ほど前のことになる。
あの時、ぼくは──
「大変だったでしょう。怪我はない?」
「うん、大丈夫」
 ──アンジュの裸の胸を見て、どうしたらいいのか、と、思い惑ったものだ。あの時と比べたら、
いまのぼくは、ずいぶん──
「ここで何をしてるの?」
 アンジュの声が怪しむような調子に変わる。不意に思いを覚まされ、適切な答が浮かばない。
ぼくに注がれる疑惑の視線。その視線が、ふと動き──
「この穴は?」
 アンジュが穴の縁に歩み寄り、カンテラをかざした。その光で様子がわかるのではないかと考え、
しゃがんだまま、立ち姿のアンジュの横へと移動し、穴の奥を注視する。
 底と思われる平面が、かろうじて見える。
 他に何かないか、と身を乗り出した瞬間、
「あッ!」
「きゃッ!」
 いきなり足元の支えが消え、身体は穴に落ちこんでいった。
2854-7-1 Ange VI-1 (8/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:11:20 ID:l2KUwdIF
 突然の不安定感を認識するいとまもなく、アンジュは背に激しい衝撃を感じた。何が起こったのか
わからなかった。
 穴に落ちたのだ、と、ようやく気づいた時、背に鈍い痛みが湧き上がってきた。その背の下に
動きを感じた。動きは背を押し上げ、移動した。背は硬い平面に下ろされた。
 床に横たわったわたしの身体。
「どう、アンジュ?」
 声。リンクだ。背の下の動きはリンクのものだったのだ。とすると、リンクはわたしの下敷きに
なって──
「アンジュ、怪我はない?」
 わたしがさっきリンクに言ったこと……同じ気遣いを、今度はリンクがわたしに──
「大丈夫?」
「……ええ……」
 背は痛むが、動かせる。他の所に痛みは感じない。いや、それよりも──
「……リンクは?」
「ぼくは平気だよ」
 ほんとうに? わたしの下敷きになったのだから、衝撃はもっと大きかったはず……
 顔を横に向ける。リンクの姿が目に入る。腕と脚に擦り傷があるが、それだけだ。
 床は……ああ、床は石造り。リンクに大した怪我がないのは驚きだ。咄嗟にうまい体勢を
とったのか。だとしたら相当の運動神経。わたしならそうはいかない。リンクの上に落ちた
わたしは、リンクに助けられたことになる。そればかりか──
 身体のあちこちを探られる。
「ここは痛くない? こっちは?」
 頭。腕。脚。リンクが調べてくれているのだ。わたしは、ただ、頷くだけ……
 きびきびとしたリンクの動き。引き締まったリンクの顔。
 そうだ、こうしてまわりが見えるということは……
 灯の入ったカンテラが床の隅に置かれている。落ちても壊れなかったのだ。幸いなこと。
でも、それを拾ってそこに置いたのはリンク。よくそんなところまで注意して──
「ここだと濡れちゃうね」
 初めて気づく。雨が穴の底に降りかかっていて、わたしの肌や服はかなり湿ってしまっている。
リンクの方は……ずぶ濡れだ。傘もなく、長いこと外にいたから──
 そういえばわたしの傘は? ここにはない。落ちた時、手を離してしまったのか。おそらく
穴のまわりのどこかに転がっているのだろう。
2864-7-1 Ange VI-1 (9/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:11:53 ID:l2KUwdIF
「こっちに寄って」
 リンクに手を引かれ、起き上がる。穴の側面に窪みがあって、そこにいれば雨に打たれない。
幅は狭いが、高さはあり、立っても頭はつかえない。通路のようでもある。しかし奥は石の壁で
閉ざされている……
「ここにもたれたらいいよ。でこぼこもなくて、背中に負担はかからないから」
 奥の壁の状態を調べていたリンクが勧めてくれる。腰を下ろし、壁に背をもたせかけて、
じっとしているうち、断片的だった思考が、少しずつまとまってきた。
「落ちちゃったわね」
 問うでもなく言う。カンテラを間にはさんで、前にすわるリンクが、明快な声で教えてくれた。
「穴の縁が崩れたんだね。ぼくたち二人の重みに耐えられなくて。ほら──」
 リンクが指さす先を見る。割れた敷石のかけらと、ばらけた土くれが散らばっている。
「上がれるかしら」
 リンクは眉に皺を寄せ、それでもてきぱきと答えた。
「無理だと思う。深すぎて、ぼくはもちろん、アンジュだって背が足りない。ぼくがアンジュの
肩に乗っても、穴の縁には手が届かないよ。他に踏み台になるようなものもないし、壁には手を
かける所もないときてる」
「どうしたらいいの?」
 頼るような口調になってしまう。
「助けを呼ぶしかない。来てくれるとしたら、ダンペイさんだろうけれど」
 そこで窪みを出、穴の口を見上げながら、二人して声を限りに叫んでみた。助けは一向に来ない。
ここからダンペイの小屋までは結構な距離があるし、眠っていたら、いくら叫んでも耳には
届くまい。しかも折悪しく強まった雨の音が、声をかき消してしまう。
「だめだ」
 肩をすくめるリンク。
「ダンペイさんは来ないね。夜だし、おまけに雨だし、たまたま他の人が近くに来る、なんて
ことも……ないだろうから……」
 リンクの声が、徐々に小さく、呟くようになり、そして、
「朝まで待とう」
 と締めくくられた。目がちらりとこちらを向く。何かを意識しているかのように。
「そうね」
 朝になればダンペイが放置された傘を見つけるだろう。穴があることにも、すぐ気づくに違いない。
 ──と思考を保ちながら、アンジュもそれを意識する。
 ここで、朝まで、リンクと、二人で。
2874-7-1 Ange VI-1 (10/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:12:27 ID:l2KUwdIF
 待つ、と決まってしまうと、それまでは不安そうだったアンジュが、意外に明るい雰囲気となった。
「この二日ほど、逃げてきた人たちの世話で大変だったから、休息になってちょうどいいわ」
 などと言って笑っている。落ちた時に背中を打ったはずだが、痛みは軽いらしい。身体を
動かすのにも支障はないようだ。
 その様子にほっとして、窪みに戻る。さっきと同じように、アンジュを奥にすわらせ、
向かい合って、あぐらをかく。背中が窪みからはみ出し、雨を受けてしまうが、それくらいは
我慢する。アンジュを雨に打たせるわけにはいかない。奥にいれば濡れずにすむ。穴の底に
溜まった雨水は、微妙な高低差があるせいか、幸い、窪みの方には流れこんでこない。
 訊ねると、昼から何も食べていないとのこと。パンの残りと水筒を取り出して、勧める。
遠慮しているが、こっちは夕食をすませたから、と押し切る。アンジュは礼を言い、受け取った。
 食事とも言えない食事を終えたのち、アンジュが改めて、ここで何をしていたのか、と訊いてきた。
少し考え、今回の反乱を話の枕とし、未来の世界で語った内容よりは、やや詳しい説明をする。
世界支配というガノンドロフの野望を打ち砕くため、そこに必要な賢者の覚醒を目指して、
カカリコ村の神殿を探しているのだ──と。
「この村に神殿が?」
 と不思議そうなアンジュ。その情報をぼくに伝えたのはシークで、そのシークに伝えたのは
(未来の、ではあるが)アンジュ自身なのに──と考えて、おかしくなる。
 半信半疑といった顔で聞いていたアンジュは、それでもしまいには、感心したように言ってくれた。
「偉いのね、リンクは」
 そこで会話が途切れた。思考は自然に、最後の話題から続く件へと移ってゆく。
 アンジュが一緒だから、さっきは助けを呼びもしたが、ここを調べてみたいという気持ちは
変わっていない。朝になればダンペイに助けてもらえるといっても、近づくなと言われたにも
かかわらず、こんな所にいるのだから、さぞかし怒られることだろう。警戒が強まって、二度と
ここへは近づけないかもしれない。とすれば、朝までの時間が探索の唯一の機会だ。
 とはいえ、どこを探索する? まわりは石の壁ばかりで、何の情報も得られそうにない。
 いや、おかしなことがある。ここは墓のはずなのに、まるで墓らしくない。何もない狭い空間だ。
ほんとうの墓がどこかにあって、そこへ繋がる道があるのではないか。
 そうなると、怪しいのはこの窪みだ。通路が途中で途切れたようになっている。その奥の壁の
向こうに、何かがあるのでは? さっき壁を調べた時は、おかしな点には気づかなかった。もっと
詳しく調べてみるか。でもいまはそっちでアンジュが休んでいるから──
2884-7-1 Ange VI-1 (11/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:13:19 ID:l2KUwdIF
 そこで思考が旋回する。
 アンジュ。
 ここで朝までアンジュと二人で待つ──となった時、すでに意識していた。
 未来のアンジュを幸せにする。シークに頼まれたこと。そのためにぼくとアンジュがしなければ
ならないこと。それについても、いまが唯一の機会なのではないか。地上に戻ったら、アンジュは
再び難民の世話に追われるのだから。
 しかし──と、ためらいが胸に湧く。
 ここでぼくがアンジュを求めたとして、アンジュはぼくを受け入れるだろうか。
 二人がそれを望むなら、そうするのが自然なこと──と、未来のアンジュは教えてくれた。
その未来のアンジュは、言葉のとおり、望んだ上で、ぼくを受け入れてくれた。ただし大人の
ぼくを、だ。
 子供のぼくに関しては……サリアやマロンやルトとは、やはり互いがそれを望んだ結果、
ああいうふうになったわけだが、彼女らとは歳も大して違わなかった。
 ところがいまの場合、アンジュはちゃんとした大人で、子供に過ぎないぼくとの行為を望むとは、
どうにも考えづらい。ぼくがアンジュを口説いて、その気にさせればいいのかもしれないが、
どう口説いたらいいのかなんて、ぼくにはわからない。
 だが……ちょっと待て。アンジュは実際、ぼくのことをどう思っているのだろう。あの時の──
子供のぼくに裸の胸を見せてくれた時のアンジュは、どういう気持ちだったのか。あれはどういう
意図だったのか。ひょっとすると……アンジュは……
 身体がぶるりと震える。一瞬、なまめかしいことを考えていたせいか、と思ったが、そうではない。
寒いのだ。雨に濡れっぱなしで、それに夜中で気温も下がってきていて……
 ぞくぞくと震えが止まらなくなる。
「どうしたの?」
 アンジュに気づかれる。
「寒いの?」
「……うん……ちょっと……」
「ちょっと──って……そんなに震えて──まあ!」
 驚いたように上体を寄せてくるアンジュ。
「背中に雨がかかってるじゃない。こっちへ寄りなさい」
 引っぱられる。けれども場所のゆとりはない。どうしても背中がはみ出てしまう。
「場所を替わるわ」
「いや、気にしないで」
「気にするわよ。ずぶ濡れで、背中以外のところも乾いてないのに。ほら、替わって」
「だめだよ。アンジュが濡れちゃうから」
 アンジュの口が何かを言いかけて、しかし言葉は出さない。目が何らかの感情を湛えている。
強情な、とあきれているのだろうか。
 やがて、ひそりと──
「……いいわ」
 え? 何が?
「一緒に、いましょう」
 一緒にって……もう一緒なのに。
「温めてあげる」
 ぼくを? どうやって?
「脱いで」
2894-7-1 Ange VI-1 (12/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:13:55 ID:l2KUwdIF
 リンクが息を呑んで硬直する。その硬直からリンクが解放されないうちにと、その硬直に自分が
動じてしまわないようにと、続けて言葉をたたみかける。
「そんなに濡れた服を着てたら、身体が冷えるばかりよ。早く脱いで。抱いて温めてあげるから。
こっちで一緒にいれば、二人とも雨にあたらないですむし」
 茫然と表情を固めて、それでもゆっくりと、リンクは立ち上がり、手を動かし始める。
ひとつひとつ、服が落ちてゆく。そのさまを確かめてから、わたしも着ているものに手をかける。
「アンジュも?」
 リンクがぎょっとした様子で手を止める。
「そうよ。わたしの服も濡れてるんだし、じかに肌を合わせないと温められないわ」
 言ってやる。きっぱりと。余計な言葉を封じるために。
 見られていても気になどならない、と説き聞かせるかのような態度で、わたしは淡々と裸になる。
それくらいは残しておいてもいいはずの下履きまでも脱ぎ去って。リンクもそうしろと言わん
ばかりに。
 わたしは動く。事務的に。服を床に敷き、上に尻を置く。やや背を後ろに傾けて壁に当て、
脚を伸ばす。
「さあ」
 口をあけてこちらを見ていたリンクが、はっとして、短い間ののち、おずおずと最後の着衣を
解きおろす。立ちすくむ全裸のリンクに、
「いらっしゃい」
 と両腕を差し出す。リンクの足が前に出る。一歩、また一歩と近づいてくる。伸びた両脚を
跨いで、リンクがわたしの前に立つ。手をつかむ。引っぱる。リンクの身体が倒れこむ。二人の
肌が接触する。
 膝を立て、胴と脚の間にできた谷間に、横向きのリンクを落としこむ。尻がわたしの下腹に
据えられる。左手をまわして肩を抱き寄せ、顔をこちらの左肩に触れさせる。右にはみ出した
両脚の上に右腕を置き、手は左の太股に添わせる。
 小さなリンクがわたしに包まれる。
 母親が子供を抱く時は、こんな感じなのだろうか。いや、二人の歳の差からすると、姉と弟に
近いだろうか。実際には血の繋がりなどないリンクだけど……
 そこで意識が働き出す。心を抑えて一直線に行動してきた、その心が、ざわざわと波立ち始める。
つん、と身体の奥に感じる刺激。
 よその子供を裸にして抱いている、やはり裸のわたし。
 こんなところを誰かに見られたら……
 いや、見られることはない。リンクが言ったように、この深夜、この雨の中、墓地に来る人など
ありはしない。
 雨でなければ、来る人もいる。といっても、それはわたし自身だ。家族があって互いの家では
愛し合えないわたしと彼が、しばしば逢瀬を重ねている、夜の墓地。他の人に邪魔されたことは
なかった。だからいまだって安全なのだ。が……
 彼!
 婚約している彼というものがありながら、わたしはこうして裸になって、裸のリンクを……
 違う!──と思いを振り払う。
 わたしがしているのは、そうじゃない。
 わたしは、ただ、寒さで震えているリンクを温めてあげているだけなんだわ。
2904-7-1 Ange VI-1 (13/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:14:34 ID:l2KUwdIF
 アンジュは、ただ、寒さで震えているぼくを温めてくれているだけなんだ。
 ──と自分に言い聞かせ、ぼくは無理やり思考を飛ばす。
 七年後の世界ほど気温が低いわけでもないのに、やけに寒さを感じてしまう。雨に濡れたせいで
あるのは確かだが、それのみなのか。きのう長時間、地下水路を泳いだのが影響しているのか。
あるいは、うち続く冒険の疲れが溜まっているのか。身体だけでなく、気持ちも張りつめすぎて
いるようだ。その気持ちの張りが緩んだために、身体の疲れが表に出てきたのかもしれない。
 アンジュの額が、そっとぼくの額に当てられる。
「熱はないわね」
 そう、病気というほどではない。気持ちが緩んだだけなのだ。ただ、その理由は……
 思考が戻ってきてしまう。
 理由はアンジュ。
 アンジュに会って──未来の世界で、セックスについて思い惑うぼくに深い安らぎを与えて
くれたアンジュに、ここで再び会って──ぼくが無意識に同様の安らぎを求めたからなのだ。
その証拠に、こうしてアンジュに抱かれて、この上ない安らぎを、やはり、ぼくは感じている。
 温かい。温かい。震えが少しずつ治まってゆく。
 しかし……
 アンジュの肩に頭をもたせかけているぼくの、その目の前にあるもの。アンジュの乳房。ぼくは
見る。見ないではいられない。もう見慣れたはずのそれが、異様な力で思考を引きつけ、ぼくを
再びあの疑問に立ち返らせる。
 あの時、アンジュはどうしてぼくに裸の胸を見せたのか。
 そしていま、アンジュはどうして裸になって裸のぼくを抱いているのか。
 アンジュは寒さで震えるぼくを温めているだけ──の、はずなのだが、ほんとうにそれだけ
なんだろうか。

 リンクが見ている。わたしの胸を見ている。リンクも思い出しているんだわ。
 そう、リンクも。
 そして、わたしも。
 ああ、ついに意識してしまった。あの時のことを。リンクに裸の胸を見せてやった、あの秘密の
時間のことを。
 わたしは寒さで震えるリンクを温めているだけ──の、はずなのだけど、ほんとうはそれだけ
じゃない。
 それを理由にして、迷わないようにと、ためらわないようにと、心を抑えて行動してきた。
わたしの心の奥にあったのは、あの時と同じ願望。その願望を果たす機会を得て、わたしは
突っ走ってきてしまった。胸だけでなく身体のすべてをさらすという、あの時以上の格好にまで
なって。
 でもここまでよ。ここまでにしておかなければだめ。わたしがこんなことを考えているなんて、
リンクに知られてはいけない。何も言っちゃいけない。なぜなら、リンクは──
 なのにわたしは言ってしまう。
「……また、見せちゃったわね……胸……」
2914-7-1 Ange VI-1 (14/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:15:23 ID:l2KUwdIF
 ささやくようなアンジュの声が、ぼくをびくりと震わせる。それは決して寒さのためではなく、
むしろじわじわと燃え広がる炎となって、ぼくを悩ましく熱し始める。
 アンジュも思い出している。あの時のことを。ぼくに裸の胸を見せてくれた、あの秘密の時間の
ことを。
 その意図。その目的。何だったのか。あの時アンジュは何を考えていたのか。
 七年後の再現の場面では、ぼくの求めにアンジュが応じた形だった。だけど最初の時は、
そうじゃなかった。どうして大人の女の胸はふくらんでいるのか、とぼくが訊き、アンジュは
教えてくれた。そのあと、アンジュの方からこう言ってきたんだ。
『見たい?』
『見せてあげるわ』
『触ってもいいのよ』
 あの時ぼくは動転していて、アンジュの気持ちを推し量る余裕もなかったけれど、あれは──
ひょっとすると──誘いではなかったか。だとしたら、胸どころか身体のすべてをさらし、
あまつさえ素肌を合わせることをもためらっていない、いまのアンジュも、やはりぼくを誘って
いるんだろうか。アンジュはぼくを求めているんだろうか。もしそうなら、ぼくは──
 そこへ降りかかるアンジュの言葉。
「触ってみる?」

 言ってしまった。また言ってしまった。自分の願望を口に出してしまった。もう身体を温めて
やっているだけなんて言い訳はきかない。
 そうよ。そのとおりよ。わたしは隠さない。もう隠さない。何も知らない小さな子供を
誘惑したいという妖しい願望を隠しはしない。これには理由があるんだから。結婚というものの
知識すらなかった、あまりにも無知なリンクを導いてやるという、立派な理由があるんだから。
『わたしが教えてあげないと』
 ひと月前のわたしは思いとどまった。あの時のリンクは、困惑と、助けを欲しがるような
頼りなさを目に溜めて、けれどもその目は──
『ほんとに……いいのかな……こんなこと……』
 ──正しいものを求めようとするまっすぐな感情を、侵してはならない純粋さを訴えていて、
そんなリンクを一方的に誘惑するのは、正しくないことだったから。
 でも、いまはそれが正しいことなの。だって、いまのリンクの目は、わたしを見ているリンクの
目は──

 ぼくはアンジュの顔を見る。
 感情のうかがえない顔。そこだけに意志を宿す目。何かが燃えている目。一ヶ月前のアンジュと
同じように。七年後のアンジュと同じように。
 やっぱりそうなのか。「触ってみる?」といういまのアンジュの言葉は、やっぱりそういう
意味なのか。
 目を下ろす。
 とりわけ豊かというわけではないが、ふっくらとまるくて、やわらかそうで、だけど内には
張りつめた肉感を秘めて、絶妙な曲面を形づくる、美しい一双の乳房。先端では、控えめな広さを
薄赤く染める乳暈と、繊細な硬さをもって立ち上がる乳頭が、一組の花となって咲いている。
 ぼくが未来で味わいつくしたアンジュの女のしるしが、いまは七年の時を遡り、一段と
むせかえるような魅力を放ってそこにある。
 そう、これは女のしるし。成熟した大人の女のしるし。
 大人のアンジュ。子供のぼく。
 いいのか? ほんとうにいいのか? 
 もう一度、アンジュの顔を見る。
 頷くアンジュ。
 どくどくと心臓を暴れさせながらも、迷いを振り払い、ぼくは左手を伸ばす。
 アンジュがぼくを求めているなら、ぼくがアンジュを求めることに、何の問題もありはしない。
それは正しいことなんだ!
2924-7-1 Ange VI-1 (15/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:16:02 ID:l2KUwdIF
 触らせた! リンクに胸を触らせた! とうとうここまでしてしまった!
 わずかに澱むやましさは、しかし、リンクが触れている部分から全身に走り抜ける、痺れの
ような感覚に押し流され、あの確信だけがしっかりと残る。
 わたしは正しいことをしているんだわ!
 リンクの目。あの時のように困惑しながら、けれど頼りなさなど全くない、力強い目。わたしを
求める目。それは男の目。
 目だけじゃない。世界を救おうと奔走しているリンク。穴に落ちるという予期しない事態にも
冷静に対処し、茫然とするばかりのわたしを気遣ってくれたリンク。わたしを雨から庇ってくれた
リンク。それは男の行動。
 このひと月で、リンクは変わった。何があったのかはわからないけど、リンクは大きく成長した。
子供であっても、リンクは男。わたしにここまでのことをさせたのは、それ。リンクが男だという、
その事実。だから誘ったってかまわない。教えてやってもかまいはしない!
 だけど、ああ、このリンクの手の動き。ただ触れるだけじゃなく、やみくもにつかむのでもなく、
乳房の形を、肌触りを、弾力を確かめるように、微妙に、複雑に、的確になされる手の動き。
撫でられ、揉まれ、さすられる二つの乳房。こんなふうにされたら……こんなふうにされたら……
わたしは……わたしは──!

 やにわにアンジュの顔が寄る。きつく唇が合わされる。
 突然の行為にどきんと胸を突かれながらも、ぼくは応じる。唇を尖らせ、揺らせ、蠢かせ、
そして軽く開くと、アンジュの唇も開き、二人の舌が触れ合い、ねぶり合い、絡み合い、一転して
強く吸われ、ぼくも吸い、息を閉ざした口の接触が延々と続き……
 胸への愛撫をも続けながら、ぼくは考える。
 やっぱりアンジュはぼくを求めている。が……
 どこまで求めているのだろう。アンジュはどこまでぼくに許す気なのだろう。最後まで?
大人のアンジュが? 子供のぼくに? ほんとうにそこまでアンジュはぼくに──

 してしまった! キスまで許してしまった! わたしには彼がいるというのに!
 いや、リンクは違う。彼との関係とは次元が違う。わたしはリンクに教えているだけ。どういう
ふうに女と接したらいいか、リンクに教えているだけなの!
 でも、でも、わたしはどこまで教えるつもり? ここまで? キスまで? どうしよう、
どうしよう、まだいいかしら、まだいいわね、もうちょっと、もうちょっとだけ──
 呼吸の途絶に耐えられず、やっと離れたリンクの顔を、続けて胸へと押しつける。口同士の
行いを経たあとで、リンクは戸惑いもなく、わたしの乳房に口を使い始める。
 その感覚! それは明白な性的快感!
 漏れそうになる声を必死で抑え、リンクの太股に添わせていた右手を、わたしは移動させる。
同じ感覚をリンクに与えてやるために!
2934-7-1 Ange VI-1 (16/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:16:50 ID:l2KUwdIF
「あ!」
 突き抜けるような感触をそこに得て、ぼくは思わず声をあげてしまう。これまで頭がさまざまな
思いに乱れている間にも、ずっと猛っていたぼくの股間。そこをいま、アンジュがまさぐっている。
ぎゅっと、あるいはやわやわと、強く、弱く、そっと撫でさすり、と思うと急に激しくこすりあげ、
手が、指が、あらゆる種類の動きを駆使してぼくの中心部を翻弄する。
「気持ちいい?」
 アンジュの声に、
「うん……」
 かすかな頷きしか返せない。アンジュの乳房を弄んでいたぼくの手も、アンジュの乳首を
含んでいたぼくの口も、もう活動を続けられない。それほどぼくの部分は、敏感なその部分は、
ひたすらアンジュの手による快感を甘受して、快感にどっぷりと浸りきって、そしてさらに大きな
快感を得ようと、追い求めようと──

 リンクの腰が揺れ始める。自分から快感を追い求めようとするその動きが、ますますわたしを
燃え上がらせ、右手の捌きを駆り立てる。
 握る、というより、つまむ、くらいの大きさでしかない、リンクのペニス。まわりに一本の毛も
生えていない、幼いペニス。でもそれは、かちんかちんに固まって、男の欲望を堂々と主張していて。
 初めからそうだった、リンクが服を脱いだ時から、それは勃ちっぱなしで、そう、リンクは
男だった、その部分も男だった、わたしを突っ走らせたリンクの男は、そこにもくっきりと
現れていた!
 まだ子供の状態だけど、包皮を押し下げてやると、さほどの抵抗もなく、赤みの増した滑らかな
先端部が露出して、小さな口からは透明な粘液が次から次へと湧き出してきていて、やっぱり
男としてのありさまを、そこは明確に呈していて!
 わかるわ。リンクが男だということが、はっきりわかる。だったら次は、わたしが女だという
ことを、もっとはっきりわからせてやらなくちゃ。
「リンク……」
 肩を抱いていた左手を、リンクの左腕にかける。
「わたしの、そこにも……触って……」

 左腕が後ろに送られる。アンジュの下腹に乗ったぼくの尻、その下をくぐって、わずかに開いた
アンジュの脚の間に、ぼくの左手は導かれる。
 手は少しずつ、少しずつ、近づいて、近づいて、そしてついに到達する。
 女の部分。熱い粘液にあふれかえったアンジュの女の部分!
 間違いない。アンジュは求めている。アンジュはぼくを求めている。ぼくが子供であっても、
アンジュのそこはぼくの男を求めている!
 それといまこそ確信し、ぼくは再び活動を開始する。密な恥毛に覆われる、なだらかな
盛り上がり。その真ん中の、べとべとに潤みきった深い谷間に、ぼくは指を埋めて、
「ん……!」
 忍び出るアンジュの呻きを、もっと強めてやろうと、もっと高めてやろうと、綴じ目の上で
固まっている小さな芽に、ぼくの指は触れて、
「ん……んあぁ……あ……んん……」
 未来で習った指使いを思い出して、どうすればアンジュが最も感じるか、最も悦ぶか、
その方法を思い出して、
「くぅ……ぅ……ん……んぁ……ぁ……」
 ぼくは攻める。攻めてやる。目を閉じ、口をあけ、息を荒げ、紅潮し汗ばんだ顔をふるふると
震わせ、ぼくをいじっていた右手の動きすら止めてしまって、あらん限りの感覚をぼくの指に
集中させているアンジュを、ぼくはどこまでも攻め抜いてやる!
2944-7-1 Ange VI-1 (17/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:18:05 ID:l2KUwdIF
 どういうこと? これはどういうこと?
 信じられない。何も知らない子供とはとても思えない。女のその部分をすでに知っているかの
ような、いいえそれどころか、それどころか、どうすればわたしが最も感じるか、最も悦ぶかを、
完全に知りつくしたかのようなリンクの指!
 けれどこのままじゃだめ。わたしが快感に呑みこまれてしまってはだめ。
 忘れていた右手の動きを再開する。
「うぁ!……あ……」
 勃起をこすられてリンクが喘ぐ。喘ぐその口を唇で塞ぎ、思い切り吸いたてる。リンクも激しく
口を吸ってくる。今度は右手を胸に伸ばしてくる。わたしの股間にある左手の動作も一段と活発に
なって。
 わたしの口とリンクの口。わたしの胸とリンクの右手。わたしの右手とリンクの性器。わたしの
性器とリンクの左手。
 四つの場所で触れ合い、攻め合い、煽り合うわたしたち。もう母子でも姉弟でもあり得ない
わたしたちの振る舞い。もはや互いを求め合う男と女でしかないわたしたち二人!
 その思いがますます快感を増幅させる。
 だめ! だめよ! わたしは自分を保っていないと、わたしが教えてあげないと──
 教える? これ以上、何を教えるつもり? 最後まで? 男と女が互いを求め合う最後の
方法さえ、わたしは教えてしまうというの? これまで彼以外の男に身を任せたことのない
わたしが? リンクに? この小さな子供のリンクに?
 何という倒錯! 何という背徳!
 でも……ああ、でも……わたしはそれを望んでいたのでは? 初めから──そう、ひと月前、
リンクに出会った時から──わたしはひそかに心の底でそれを望んでいたのでは?
 そうだわ、そうなんだわ、認めよう、正直になろう、いまこそわたしはぶちまけよう!
『リンクと、したい!』

 不意にアンジュの両脚が広がる。床に落ちるぼくの尻。四つの場所の触れ合いが絶たれ、
どうしたのかと思う間もなく、
「……リンク……」
 アンジュが低く据わった声を出して──
「……これから……」
 ぼくの肩をつかんで真正面に向き直らせて──
「……わたしたち……」
 壁につけた頭と肩をずり下げて──
「……いままでより……」
 腰をこちらにすべらせてきて──
「……もっと、ずっと……」
 膝を高く立てて、股を大きく開いて──
「……気持ちのいいことを……」
 濡れそぼったそこを全開にして──
「……するのよ……」
 ぼくを上に引き寄せて──
「……だから……」
 ぼくを両脚ではさみこんで──
「……リンクの、これを……」
 ぼくの高ぶりきった男の部分に手を添えて──
「……わたしの、ここに……」
 煮えたぎった女の部分に触れさせて──
「……ちょうだい」
 言葉が切れるやいなや、
「アンジュ!」
 もう寸時も待てないところまできていたぼくは一気に自分をアンジュの中に没入させる!
2954-7-1 Ange VI-1 (18/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:18:49 ID:l2KUwdIF
「あぁッ!」
 ついに、ついに、やってしまった! ついにリンクを迎え入れてしまった!
 その衝撃! その感激! そしてためらう素振りも示さず突っこんできたリンクの、男としての
ありようへの驚き!
 いまはじっと動かず、顔をゆがませて、わたしにしがみついている、このかわいいリンクが、
見えない所では、幼い楔をしっかりとわたしに打ちこんでいて、短いはずのその楔に、わたしは
串刺しにされてしまっていて、何の抵抗もなくするりともぐりこんでこられるほど小さなリンクを、
まるでその何倍もの大きさをもった巨茎のように、わたしは感じてしまっていて!
 錯覚? 錯覚に違いない。でも、たとえそれが実際でなくても、わたしの感じているそのままが、
わたしにとってはまぎれもない真実!
 そしてリンクが動き出す。何も教えていないのに、リンクが前後に動き出す。快感を求める
本能的な動き? そうよ、それ以外にはない。だけどそうとは思えないリンクのこの動き。
わたしに悦びをもたらそうという目的があってとしか思えないリンクのこの精緻な動き。欲望に
任せただけの乱暴な単調な動きじゃなくて、ゆっくりと、じわじわと、まるで思いをわたしに
染みこませるような、しっとりとした進退、それが少しずつ、少しずつ速くなって、速くなって、
荒々しいまでにわたしの中をこすりたてて、リンクのそれには広すぎるはずのわたしの膣も、
それを求めて可能な限り収縮して、リンクとの接触を、リンクとの摩擦を、最大限に感じようとして、
わたしは──
「……ああ……リンク……」
 両脚で尻を抱えこんで、
「……感じる……感じるわ……」
 腰を動きに合わせて突き出して、
「……リンク……もっと……」
 両腕を背に巻きつけて、これより上にはないくらい密に、密にリンクとくっついて──!

 ──密にアンジュとくっついて、いまにも弾けそうになる自分の敏感さにぼくは耐えて、耐えて、
耐えて、こうすればアンジュは感じるはず、こうすればアンジュは悦ぶはず、と、未来の
アンジュで会得した動きを、緩急つけて繰り返し、繰り返し、ぼくはただただ繰り返し、
「はぁッ!……はぁッ!……リンク!……あぁんッ!……」
 高まるアンジュの喘ぎに励まされながら、
「あぁッ!……うぁッ!……もっとッ!……リンクッ!……」
 速まるアンジュの動きに追い立てられながら、しかしまだ、まだ、まだ、と欲望を制御し、
その部分だけではなく、と欲望を分かち、眼前のアンジュの乳房に手を、
「あうッ!」
 口を、
「あんッ!」
 じっくりと這わせ、けれど余裕はなくなってきて、自分の限界が見え始めてきて、それでも、
もう少し、もう少し、もう少しだけ我慢して、いまのアンジュに幸せを、未来のアンジュに幸せを、
すべてのアンジュに幸せを──!
2964-7-1 Ange VI-1 (19/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:19:25 ID:l2KUwdIF
 ──幸せを、幸せを、もうちょっとで得ることができる、もう見えている、もう来かかっている、
もういきかかっている、いってしまう、いかされる、わたしはリンクにいかされる、子供の
リンクにいかされる、こんな小さな子供を相手に、わたしはいまにもいってしまいそう、
そんなことが、そんなことが、ああでもリンクになら、リンクになら、いかされてしまってもいい、
いい、いいけれど、これだと、これだとあまりにも一方的、わたしにできることを、大人の
わたしにできることを、リンクに経験させてあげないと、リンクに教えてあげないと!
 頭をぐいと前に傾ける。はっとリンクが顔を上げる。その唇に唇をぶつけ、腕と脚とでリンクの
全身を絡めとって、動きを封じて、同時に全神経を膣に注いで、あの技を、男の一物をなぶり抜く
あの技を繰り出して、締めて、放して、締めて、放して、絶え間ない蠕動でリンクを攻めて、
攻めつくして──!
 唇で塞いだ口の奥から、呻きとも唸りともつかない声が伝わってくる。リンクの身体が震え出す。
 どう? リンク? 感じてる? わたしを感じてる? いいのよ、いって、いかせてあげる、
わたしがいかせてあげる、わたしも感じてる、わたしもリンクを感じてる、わたしもいくわ、
もういくわ、だからリンク、我慢しないで、いきなさい、いっちゃいなさい、いくのよ、さあ
いくのよ、いますぐいくのよリンク!

 最強の力で締め上げてやった瞬間、自らの中でリンクが激しく痙攣するのを、アンジュは
感じ取った。その感覚がアンジュの限界をも突き破った。感電したかのように背がのけぞり、
後頭部が壁にしたたか打ちつけられた。頭はゆっくりと壁の表面をすべり落ち、尻はずるずると
前に送られ、リンクを上に抱きとめたまま、アンジュの身体は、やがて、ひっそりと、床の上に
横たわった。
2974-7-1 Ange VI-1 (20/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:20:20 ID:l2KUwdIF
 散り残る快美感を安らかに味わいながら、その所以であるリンクとの交わりを、アンジュは
穏やかに顧みていた。
 巧み──というほどではないのだけど……そう、リンクの思いが──どこまでもまっすぐな
リンクの思いが──素直に伝わってくるような……そんな、激しい、優しい、セックスだった。
 それにしても……
 どうにかリンクを先着させることができたが、ぎりぎりだった。もう少しでわたしの方が先に
絶頂してしまうところだった。これが初めてとは考えられないほど。いや、おそらく、リンクは──
 そこでアンジュの思考はさえぎられた。仰向けのアンジュの上で息を切らせていたリンクが、
身体を動かした。アンジュと同じくいままでの睦み合いを回想してのことか、ほろ酔いのような
和やかな微笑が、リンクの顔には浮かんでいた。が、その顔はすぐと真剣な色合いに転じた。
「大丈夫?」
 え? 大丈夫よ、リンクと繋がることができて、わたし、とても──
「頭、痛くない?」
 頭? 頭がどうしたの?
「さっき壁にぶつかったけれど……」
 壁に? わたしの頭が? 全然気づかなかった。そういえば、後ろの方がちょっとじんじんする
ような──
「どうなの? 強く当たったみたいだから、気になって……」
「……いいえ」
 首を振る。
「痛くはないわ、大丈夫よ」
 嘘ではない。痛みなど全く感じなかった。全身が快美感だけに支配されていたせいだろうか。
「なら、よかった」
 ほっと息をつき、リンクは身を起こした。陰茎が膣から抜かれるのが名残惜しかったが、
硬い床の上にずっと横たわっているのも楽ではなかった。リンクが離れたあとで、アンジュも
上体を立て、ゆったりと手足を伸ばした。
「あれ?」
 リンクが上ずった声を出した。その顔を見、次いで、視線をたどる。
 壁の一部が陥没していた。
2984-7-1 Ange VI-1 (21/21) ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:21:41 ID:l2KUwdIF
 アンジュとの交歓の悦びも忘れ、リンクは壁に身を寄せて、陥没した部分を観察した。
 ちょうどアンジュが頭をぶつけたあたり。だが、そのせいで崩れたのではない。そんな柔な
壁ではないし、陥没面はきれいな正方形で、明らかに人の手で作られたものとわかる。壁に
切れ目が入れられているのだ。さっき調べた時は、切れ目など見えなかった。それくらい精密な
工作。どんな仕組みで陥没したのかもわからないが、おそらく物理的な作用で──いまの場合は
アンジュが頭をぶつけたことで──その部分だけが陥没するよう設計されているのだ。
「何かしら、これ……」
 顔を寄せてくるアンジュをよそに、リンクは自らの思考を再検討した。
 工作? 設計? そんな念入りな仕込みを、なぜ?
 やはり、この壁には秘密がある。この奥には、きっと何かがある。
 カンテラの灯で照らしてみると──暗さのせいでこれもさっきは見逃していたのだが──
陥没した壁面に小さな印が刻まれているのがわかった。あるかなきかの大きさの、その印は、
明らかにトライフォースを象っていた。壁面をくまなく探した結果、さらに二つ、同じ印が
見つかった。
「何してるの、リンク?」
 いぶかしげに問うアンジュに、
「たぶん……そうだと思うんだけれど……」
 と、答にならない答を返しておき、リンクは次の行動に移った。
 二つの印のうち、一つは床に近い低い場所にあった。リンクはそこへ踵を思い切り打ちつけてみた。
果たして、その部は先の陥没部と同じく、正確な正方形となって凹みを形づくった。もう一つの
印は天井近くの高所にあり、リンクの手は届かなかったので、そこを叩いてみて、とアンジュに
頼んだ。不思議そうな顔をしながらも、アンジュはそのとおりにしてくれた。そこはやはり
正方形の陥没をなし、アンジュは叩いた手の下で壁が引っこむのに驚いた様子だった。が、
その驚きは、次いで湧き起こった重々しい音響への驚きに、すぐ取って代わられた。リンクもまた、
壁から響いてくる音に意識を奪われ、しかし予感が的中したことへの満足感、そして未知なる
ものへの期待感をも持って、いまやじりじりと下方に沈んでゆく石の壁を、瞬きもせず眺めていた。
 三つの陥没点が、この壁を破る鍵だった。偶然ではあるが、アンジュが壁に頭を打ちつけた
ことによって──さらに言えば、ぼくとアンジュがここで結ばれたことによって──それが
わかったのだ。ぼく一人では解明できなかっただろう。
 やがて壁はすっかり床面に埋まった。その先にあるものの名を、リンクはすでに知っていた。
 王家の墓。
 どこまで続くのかもわからない、それは深い暗黒の空間だった。


To be continued.
299 ◆JmQ19ALdig :2008/01/14(月) 00:22:22 ID:l2KUwdIF
以上です。台詞の一部を Ange V より引用。
アンジュを書くと、どうしても長くなってしまう。
300名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 00:45:37 ID:CskO+I/z
GJ
リンクのラッキースケベめ。
王道展開じゃねえか。だがそれがよし。
301名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 01:00:39 ID:GUFTV8yc
ラッキースケベwww
302名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 01:36:04 ID:dJwP5l5w
アンジュ姉さん悪い人wwww
正直今回は強引かと思って読み進めてたが…
なんという王道展開。GJ。ごちそうさまでした。
303名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 02:08:14 ID:b+p1/1Nl
作者さんアンジュさん好き杉w(;´Д`)ハァハァ

どうせだれも見てないし服も濡れたままなんだから
2人とも全裸のまま探検しちゃいなYo!

って抱きつきミイラがいるからダメか…
304名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 09:25:26 ID:RyX496fE
王家の墓はトラウマ
305名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 12:27:17 ID:GUFTV8yc
だが太陽の歌の効果を知ってからはそりゃあもうウヘヘ
306名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 14:19:14 ID:2zIv9odZ
GJ!こうも丁寧に本編をなぞっていくのは本当に凄い
307名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 19:37:40 ID:NtpJz9ar
はじめまして、僕がしていたレスは、いやな人が多かったので、
こっちにきました。エロパロやりましょう!!
308名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 00:13:07 ID:CVtq8vj0
ラッキースケベwww
309名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 02:06:08 ID:lNR5oeQ9
JmQ19ALdig氏 いつも楽しく読ませてもらってます!次回も待ち遠しいです。
心理描写とか、話の繋がりとか、もう大好きです!!

あぁ…おれもアンジュさんに責められたいw
310名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 15:10:05 ID:Tq1wQVsZ
エロパロとは言え、イったアンジュが頭ぶつけて突破口が〜ってとこが
何となく間の抜けた感じがして良かったw
311名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 17:13:58 ID:/nGrKBAq
>>310
俺は例の効果音つきで再現された
312名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 23:25:42 ID:3/zPe+ru
このリンクなら気付かずに全裸で戦ってそうだw
313名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 01:27:21 ID:0FuH2hig
GJ!アンジュさんえろすぎる(*´Д`)

次回はアンジュさんと二人で墓探索になるのかな?
デッテハーレムがアンジュさんのトラウマになりそうでw
314名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 18:22:05 ID:mCnHk6Tn
スレ違いな気もするけどスマブラXにシーク再登板キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!

公式サイトにある大股開いたシークと仰け反るリンクのツーショットがまた(*´Д`)
315名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 22:55:05 ID:MlWkWR0q
いやな予感がする
リーデット
まさか

陵辱は苦手です
316名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 00:05:37 ID:VkT0qt32
リーデットが全員ロリ美少女なら抱きつかれたい
317名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 09:37:52 ID:bK7Sa4ei
俺も陵辱は苦手だ・・・

まぁ作者のおかげで、思い入れも強くなってしまったので
アンジュ姉さんには幸せになって欲しい。
318名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 17:59:34 ID:zss9YRLf
精気タップリの幼いティムポとタマを喰いちぎろうと襲い来るリーデッド集団…

ヒィイイイイイイイイ
319名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 00:22:09 ID:BQ3u07m9
だめだもうリーデッドがロリっ子にしか思えない……
320名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 00:41:59 ID:mP2Sv+y4
そういえば、カカリコ村には「まことのメガネ」というエロアイテムが…
321名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 00:45:42 ID:KCILxCpw
「お、あの子着やせしてるだけなのか…w」
「こっちの子はただの着太りか…」
「あの子は…パッドか…」
322名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 02:07:39 ID:Gvt8w6gd
>>321
だんだんと絶望していく・・・
323名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 11:37:16 ID:SPY8km2M
1年前時オカ長編が始まってた時から気になってはいたんだが
Wiiが買えずトワプリのネタバレを恐れてこのスレから離れ幾星霜

スマブラに備えて時オカ(裏)を始めたら気になってきて、
久しぶりに保管庫覗いたら増えてる増えてる

…ってまだ続いてたんかい!!作者の根気と技量に感服

何か原作を上手く補完してるうえにエロイし
壮大すぎるのでもう書き終わったら一冊に纏めて出してほすぃ
324名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 02:22:02 ID:1yn05f+5
リンク×ミドナ
リンク×ゼルダ
投下してくれェェェーーー!!!!!!!!!!
325名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 10:16:00 ID:mhUkzJnT
気持ちは分かるがもれも見てるだけ住民…
修行して自分でも書けるようになりたいもんだ
リンクとゼルダは待ちぼうけ食らわされたほうが
結ばれたときに嬉しさが倍増しそうな気がするな
「うぉー待たされた甲斐があったぜ!!!」みたいな。
326名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 20:07:03 ID:jnlPT7hy
原作通りってことはやっぱシークがゼルダだったっていうオチになるのか?w(ニヤニヤ
327名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 00:42:03 ID:wWVId86u
そんなもん、作者次第だ
328名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 08:12:28 ID:lkQDl5rA
俺、原作を自分で最後までやった事ないから
シークがゼルダだって実は知らなかった。
いや、話の流れで気がついてはいたけど・・・
・・とりあえず楽しみにしてたのに・゚・(つД`)・゚・
329名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 08:29:34 ID:A/iQband
10年くらい前のソフトを未クリアのままでエロパロに来て
ネタバレされて泣いたって、誰も同情しないぞ
330名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 13:19:51 ID:yFz9tCRQ
エロパロでネタバレ期待していたって…何だかなぁ
331名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 13:27:20 ID:lVy/vpe6
>>328が知らないのが悪い
>>326は性格が悪い
332名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 21:21:16 ID:jEPtjG8K
この流れで行くと>>331は反応するのが悪い、かなw
333名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 23:35:41 ID:I4w1onYi
いやいや俺が悪かったよ…
334名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 00:13:59 ID:y9dfr/OX
今まさに時オカ初プレイの俺は攻略ヒントとして割り切ろうと思う全裸で
335名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 07:12:40 ID:35Mpgfjk
>>333
いやいや俺の方が悪かった
336名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 14:08:54 ID:rEvZpYrM
>>334
今からやる人は時オカが官能ゲームになりそうだから羨ましいor2
337名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 17:28:38 ID:3yR9T8TZ
ゲームよりオカリナの曲を教わるペースが遅いような気がして心配
太陽の曲は…?
338名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 19:17:44 ID:rEvZpYrM
太○の歌は原作の中でもそんなに重要じゃなかったしな
平気だよきっと
339名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 19:57:01 ID:35Mpgfjk
ヒント・今から探索するのは何処だ
340名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 06:23:22 ID:k0scLOOd
>>339
ロリっ子リーデッドの下の洞窟の中
341名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 10:00:34 ID:y9kHf6T2
319自重ww
342 ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:47:19 ID:FaS7G74/
私本・時のオカリナ/第四部/第七章/アンジュ編その6/後編、投下します。
リンク×アンジュ@子供時代。
註:アンジュ(仮名)=コッコ姉さん
3434-7-2 Ange VI-2 (1/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:48:19 ID:FaS7G74/
 眼前の暗闇の中へは、下りの石段が続いていた。リンクはカンテラを手に取り、腕をできるだけ
前に突き出して、奥を凝視した。
 何も見えない。それでも直ちに危険な事態が生じるような徴候は感じられない。空気は黴臭く
澱んでいるものの、意外に暖かく、呼吸にも差し支えはなさそうだ。
「この先が神殿なの?」
 かすれた声でアンジュが問う。
「かもしれないけれど……ここからじゃ、よくわからない」
「行くの?」
「うん」
「寒くない?」
 言われて初めて気づいた。さっきまであれだけ寒さを感じていたのに、いまはさほどでもない。
震えも止まっている。アンジュと抱き合ったのがよかったのか。
「もう平気だよ」
 答えつつ、自分の身体も現金なものだな──と、リンクは心の中で苦笑した。
 ただ、探索するにあたっては……
 脱ぎ落とした服に目をやる。ほとんど乾いていない。
 ここでまた、ぐっしょり濡れた服を着たら、震えがぶり返してしまうかもしれない。といっても、
乾くのを待っている時間はない。奥の気温はここより高そうだから、いっそ裸のままで行って
やろう。魔物でもいるとなると厄介だが、そんな気配はない。仮にいたとしても、戦闘になった
場合、濡れた服だと重くなるし、身体に貼りついて動きが制限されてしまう。探索が長引く
ようなら、その時はその時で、また戻ってくればいい。足元には注意しなければならないが
 リンクはブーツを履き、鞘から抜いたコキリの剣とカンテラだけを持って、石段に足をかけた。
背後であわただしげな物音がした。ふり返ると、あわてた様子でアンジュが靴に足を入れている。
「アンジュはここにいて」
 リンクの制止に、
「いやよ」
 強い調子でアンジュは答え、一転し、はにかむような風情でつけ加えた。
「一人でいるのは、心細いわ」
 微笑ましくなる。
 ぼくを追ってのこととはいえ、薄気味悪い夜の墓地へ一人でやって来るような、大の大人が言う
台詞とも思えない。
 しかし──と考え直す。
 アンジュは地元の人だから、夜の墓地くらいで動じたりはしないのだろう。だがこの穴の中は、
アンジュにとって未知の領域。心細く感じても不思議はない。それに何といっても、アンジュは
女性なのだ。
「じゃあ、一緒に行こう」
 そう言うと、アンジュはいかにも嬉しそうな顔をして、そばに寄ってきた。服を着る気も
ないようだ。こちらに合わせるつもりなのかもしれないが、アンジュの服はそれほど濡れては
いないのに──と思い、床に目を落とすと、広げられたスカートに大きな染みがついている。
その染みが、さっきアンジュが尻を置いていた場所に一致していること、そして、雨ではない
液体によってできたものであることに気づくまで、若干の間を要した。
 ぼくは射精していないのだから、もっぱらアンジュから漏れ出た液体のせい、ということに
なるが、それにしても大きな染み。アンジュは気づいているのだろうか。気づいていたとしても、
その程度なら身に着けたって大した障害はないはず。いや、身体の下に敷かれてしわくちゃに
なった服を着るのは、快適とは言えないだろうから……
 待て。なんでぼくはこうも躍起になってアンジュの動機を詮索してるんだ? どういう
理由であれ、アンジュが裸でいたいのなら、いさせてやればいいんだ。いまは探索に専念しよう。
 リンクは無理やり思考を打ち切った。が、心のどこかが妙に浮き立つのを止めることは
できなかった。
3444-7-2 Ange VI-2 (2/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:49:06 ID:FaS7G74/
 石段の幅は狭く、二人並んで降りる余裕はなかった。リンクが先に立ち、アンジュはあとに
従った。間もなく石段は尽き、開けた空間が現れた。リンクは立ち止まり、全身の感覚を
研ぎ澄ませた。
 真っ暗で様子はわからないが、敵の気配は感じられない。
「わたしがカンテラを持つわ」
 アンジュが言った。右手のカンテラを差し出すと、同じく右手でそれを受け取ったアンジュは、
こちらの空いた右手に左手を繋いできた。そうしたいがための申し出だったのか──と考えて
しまい、どきりとするが、不安なんだろう、それくらいは応じてやらなくては、と心を静める。
 左手に剣を、右手にアンジュの手を持ち、一歩、一歩と、リンクは慎重に足を進めた。ここでも
リンクが前に出る格好となったが、後ろのアンジュがカンテラを前方に掲げてくれているので、
足元は充分に確認できた。
 歩きながら周囲に目をやり、状態を把握する。人が数十人は余裕をもって入れそうな、がらんと
した広い部屋。ここも床は石造りで、ところどころに水たまりがあるものの、ほぼ水平といって
よく、歩行の邪魔になるようなものはない。ただ、ある程度の間隔をおいて、細長い箱のような
物体が、規則正しく配列している。物体の長さは自分の身長の倍ほどで、表面には複雑な文様が
彫られている。明らかに古びた感じがし、相当、昔に作られたものと思われた。
「これ、棺だわ。上と同じで、ここもお墓なのね」
 かぼそい声でアンジュが言う。棺というものに縁遠かったリンクは、そこで初めて合点がいった。
 やはり、ここが王家の墓。
 足を止め、アンジュの方を向いて、ダンペイから引き出した王家の墓の伝説を話してやった。
興味ありげに聞きながらも、アンジュは時々、怯えたような視線を棺に送っている。いきなり蓋が
開いて何かが飛び出してくるのでは、などと考えているのかもしれないが、もちろんそんなことは
起こらない──
「ひゃッ!」
 悲鳴とともにアンジュが飛びついてきた。あわてて左手の剣を後ろへまわす。かろうじて
傷つけずにすんだが、できたのはそれだけ。アンジュの胸が顔面を直撃する。咄嗟に右腕を
アンジュの胴に巻いて、転びそうになるのをこらえる。
 何が起こったんだ? まさか──
 胸に冷たいものを感じて棺に目をやる。蓋は開いていない。ほっとして、しかし自分までもが
空想的になってしまったのを恥じながら、
「どうしたの?」
 と訊くと、
「音がしたのよ、後ろで」
 アンジュが震え声で答えた。右手はカンテラを放していないが、左腕はこちらの肩をかき抱いて
いる。
「何かいるわ」
3454-7-2 Ange VI-2 (3/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:49:43 ID:FaS7G74/
 左腕にぎゅっと抱き寄せられる。顔が乳房に押しつけられる。同時に腹の皮膚が、じゃりっと
した恥叢の感触を得る。
 どきまぎしつつ、それでも緊張に身を固め、まわりに注意を飛ばす。
 何の気配もない。
「ほんとうに音がしたの?」
「ほんとよ」
 ぴちゃ──とかすかな音。
「ほら! いまの!」
 この音は──と緊張を解き、アンジュの身体を押しやって、その後ろの床を見る。水たまりが
できている。
「ここに天井から水滴が落ちたんだよ。心配ないさ」
 左手を口に当て、ぽかんとして水たまりに目を向けていたアンジュは、一拍の間をおいて大きく
息をつき、決まり悪げな顔になった。
「ごめんなさいね、驚かせたりして──あ」
 言葉の途切れに不審を感じて、アンジュの顔を見直すと、目がこちらの下半身に据えられている。
視線を追う。勃起した自分を見いだす。いましがたの接触で刺激されてしまったのだ。
 あわてて右手をかぶせる。だが、考えてみると、さっきまで同じ状態のそれをアンジュの前に
さらし、なおかつ、その中にまで送りこんでいたのだ。いまさら隠すのも変な話。
 右手をどける。何となく落ち着かない。
 アンジュがくすりと笑った。
「元気ね」
 先刻の交合からさほども経っていないので、そう言うのだろうが、褒められているのか、
からかわれているのか、よくわからない。
「行くよ」
 照れ臭くなり、ぷいと背を向けて、二、三歩、足を出すと、
「あ、待って」
 うろたえたような声を出して、アンジュが走り寄ってきた。再び右手をつかまれる。それで
照れ臭さも和らいだ。
 頼られる立場というのも悪くはない。大人のアンジュが、かわいいとさえ感じられてくる。
 ただ、そのアンジュは、セックス以外の場面でも裸でいるとの状況に、全く照れていないようだ。
ゾーラ族なら話はわかるが、アンジュはいったいどういう心境なのか。七年後にも──見たのは
一度きりながら──全裸で料理をし、食事をしていたアンジュだ。ぼくが子供だから気を許している、
というだけではないだろう。女性は身体を合わせた男の前だと、そんな態度をとれるものなのか。
それとも一種の性癖なのか。いずれにせよ、アンジュの場合、実に自然にそう振る舞うので、
いちいち意識する方がおかしいのだ、と思わされてしまう。
 とはいえ……子供の自分と大人のアンジュが、ともに裸で、連れ立って冒険している、という
現状は、やはり自然なものとは言えないだろう──と、心の揺れを抑えきれないリンクだった。
3464-7-2 Ange VI-2 (4/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:50:18 ID:FaS7G74/
 部屋の突き当たりに、今度は上りの石段があった。その先もまた、いっさい光のない空間で、
空気はいよいよ生暖かく、いかにも何かがひそんでいそうな、不気味な雰囲気を醸し出していた。
が、いくら気配を探ってみても、危険なものの存在は感知できなかった。
 そろそろと進むうち、床が陥凹した部分に行き当たった。広い反面、浅い陥凹で、透明な液体が
溜まっている。どこからか地下水が流れこんでいるのだろう。かすかに湯気が立っているのは、
活火山であるデスマウンテンの地熱の影響か。
「温泉ね」
 聞き慣れないアンジュの言葉だったが、説明を聞くと、自分の考えに一致していた。気温が
高いのはこのためだったのだ、と納得できた。
 先の墓所よりは狭いその部屋の、さらに続きは、石段を介在させることなく、新たな部屋と
なっていた。部屋の面積はなお狭く、奥は膝くらいの高さの低い壇となっていた。奥の壁には、
天井まで届く大きな平たい石が張られており、表面には文字が刻まれていた。
 中をぐるりと回って、部屋の四方を確かめてみる。来た側以外に出口はなく、道は行き止まりと
なっていた。
「ここが神殿?」
 アンジュが小さな声で訊いてきた。
「いや……」
 王家の墓というのが、すなわち闇の神殿なのではないか、と、ぼくは期待していた。けれども、
いまはそうとは思えない。墓所の部分を含めても、神殿にしては狭すぎる。これまで入ったことの
ある神殿は、森の神殿、水の神殿、そして魂の神殿のいずれも、ここよりずっと規模が大きかった。
当てがはずれてしまった。
 それでも諦めるのは早い──と気を取り直し、リンクは奥の石壁を調べてみた。アンジュに
カンテラで照らしてもらいながら、彫られた文字を観察する。
 左右の二段に分かれた文字の集団。左段は通常のハイリア文字。右段は地上の崩れた石碑にも
刻まれていた古代文字だ。文字の数はほぼ等しい。同じ意味の文章を、異なった二種の文字で
書いてあるのだろう。地上の石碑には古代文字しかなかったが、あるいはここと同様、崩れた
部分に同じ意味のハイリア文字が記されていたのかもしれない。
3474-7-2 Ange VI-2 (5/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:51:08 ID:FaS7G74/
 自分にも読めるハイリア文字の方に注目する。

 この詩を 王の一族に 捧ぐ

 という第一行のあとに、狭い間をはさんで、六行の文章が続いている。

 のぼる太陽 やがて 沈み
 生まれし命 いつか 消えゆく
 太陽は 月に
 月は 太陽に
 生ける 死者には
 安らかな 眠りを

 さらに一行空けた次に、

 この世に 迷う魂を
 太陽の歌をもって しずめよ

 とあり、その下の、壁の最も低い部分の中央──ハイリア文字の左段と古代文字の右段を
ともに受けるような位置──には、横走する四本の平行線が描かれていた。明らかに楽譜。
しかし音符はない。目を近づけてみたが、汚れに隠されているわけでもなく、削り取られている
わけでもない。ただ四本の線があるばかりだ。
 しばらく眺め続けたが、それ以上の情報は得られない。リンクは石壁に背を向け、壇に腰かけて
考えこんだ。
 王家の墓に入ることができて、道が開けたかと思ったのに、謎は解けない。むしろ深まる一方だ。
この詩の意味は何なのか。『太陽の歌』とは何なのか。いかにもその歌を記録してあるふうで
ありながら、楽譜に音符がないのはなぜなのか。そして、闇の神殿はどこにあるのか。
 わからない。
 が、闇の神殿については、まだ手がかりが残っている。井戸だ。神殿への道は、そっちの方に
あるのかもしれない。『太陽の歌』の謎も、井戸を調べてみたらわかるのではないだろうか。
 とはいえ、井戸の探索にあたっては、水を取り除く必要がある。『嵐の歌』で可能なはずだが、
村が難民であふれている現在、そんな迷惑な事態を引き起こすわけにはいかない。時期を
待たなければ。
 では、ぼくがとるべきこれからの行動は……
3484-7-2 Ange VI-2 (6/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:51:42 ID:FaS7G74/
 熟考する様子のリンクを、アンジュはそばで見守っていた。壁に書かれた詩の意味はさっぱり
わからなかったし、リンクにも理解できていないことは態度で察せられた。神殿を探していると
いうリンクが、障害にぶち当たっているのは明らかだった。
 横に並ぶ形で、そっと壇に腰を下ろす。リンクはふり向きもしない。わたしがいることも忘れて
しまっているような──と微笑を誘われ、反面、一抹の物足りなさをも感じながら、アンジュは
リンクの横顔に目を注いだ。
 大真面目な顔で、何かを考えている。言葉をかけるのも憚られるくらいの真剣さ。小さな
子供には不釣り合いなほどの真剣さ。でも、その真剣さがまぶしい。男らしい。
 一人でいるのは心細い、とわたしはリンクに言った。けれども安全という点では、何があるかも
わからない、真っ暗な穴蔵をうろつくよりは、一人で入口にいた方が、ずっとましだったはず。
にもかかわらず、わたしがリンクについてきたのは、そんなリンクの男らしさを、近くにいて、
この目で見ていたかったから……
 期待したとおり、リンクは立派だった。どんなことがあってもわたしを守るとでも言うかの
ように、わたしの前に立って、わたしの手を引いて、落ち着いた態度を崩すことなく、ここまでの
行動を貫いた。いまは一心に頭を働かせ、神殿の謎を解き明かそうと、世界を救う手だてを
得ようと、一生懸命、努力している。
 頼もしい。
 惹かれる。
 リンクの男らしさに。探検を始める前から感じていたリンクの男としてのありように。わたしを
抱き、わたしを貫き、わたしを絶頂させたリンクの男に。
 思いの流れが、視線をリンクの股間へと導く。さっき抱きついてしまった時には、ぴんと
突っ立っていたペニスが、思考に熱中しているせいか、すっかりおとなしくなっている。
 こうして見ると、リンクがほんの子供に過ぎないことが、改めてよくわかる。発毛もして
いないし、先ほどの交わりでは、達しながらも射精はしなかった。そんなリンクに、わたしは
あそこまで熱狂させられてしまったのだ。
 幼い子供と関係するという異常さが、わたしを興奮させたのは確かだ。幼いながらも男を感じさせる
リンクが相手であることで、ますます興奮が高められたのも事実。だが、それだけではない。
秘所への指の使い方、挿入後の腰の動かし方は、明らかに女を知った男のそれだった。リンクには
経験があったのだ。
 ひと月前には、そんな素振りなど全くなかったのに。
 同年代の女友達とでも体験したのか。いや、未熟な者同士では、あれほど慣れた行為は身に
つくまい。熟達した女に教えられたのだ。いったい、どこの誰に?
3494-7-2 Ange VI-2 (7/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:52:14 ID:FaS7G74/
 それが誰であれ……リンクが経験していたとなると、何も知らない小さな男の子に性を教えて
やるというわたしの願望は、果たされなかったことになる。残念な気もするが、しかし、
それ以上の妖しい気分を、いまのわたしは感じてしまう。
 幼い身で女を知った少年に攻められ、いかされてしまった、大人のわたし。
 リンクが、そんな表現で想像されるような、いやらしい気持ちでいたのではないことは、
よくわかっている。リンクの行動は、あくまで真摯、あくまでまっすぐだった。でも、わたしは
……わたしの方は……自分がそういう立場にあると考えてしまうと……こらえようもなく……
 ぞくり──と背筋に震えが走る。寒さゆえでも、恐怖ゆえでもない、その震え。
 そっと股間に指を這わせる。
 濡れている。
 先刻の残りではない、新たに湧き出しているわたしの愛液。
 欲情している。わたしは欲情している。
 リンクに。こんなに小さな子供のリンクに。
 もう教えるなどという理由づけもなく、ただただ、わたしは、欲情している。
 すでに一度リンクと交わってしまったいま、何の躊躇も、何の葛藤も、わたしには、ない──
「戻ろうか」
 不意のリンクの呟きが、アンジュをどきりとさせた。
「ここにいても、無駄みたいだ」
 さっきまでの深刻な色は消え、すっきりとした前向きの意志が、リンクの顔には現れていた。
思考を無理やり現実へと戻し、アンジュはリンクに問うた。
「神殿のこと、何かわかった?」
 リンクは首を振った。
「わからない。だけど神殿については、他にも気がかりなことがあるんだ。今度、別の時に、
そっちを当たってみるよ」
「そう……」
 リンクの快活な態度とは相反するような、自分の淫らな情念を、後ろめたく感じながら、そして、
その情念を発散しつくしてしまいたいとの衝動を抑えこむのに多大な苦労を払いながら、リンクが
腰を上げるのに合わせ、アンジュは脇に置いていたカンテラへと手を伸ばした。
 その時。
 キィッ!──という耳を引き裂くような甲高い声とともに、部屋の隅の暗がりから黒い塊が
アンジュの顔めがけて突っこんできた。
「きゃッ!」
 咄嗟に伏せたので、危うく衝突は免れたが、空気の振動が髪を逆巻かせるほどの近距離を、
その塊は飛び過ぎた。
「動かないでアンジュ!」
 鋭い叫びと素早い足捌きの音がアンジュの耳を打った。
 壇上に身を倒したまま、音の方へと顔を向ける。
 目の前にリンクの踏ん張った両脚があった。
3504-7-2 Ange VI-2 (8/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:52:43 ID:FaS7G74/
 アンジュの前に立ちはだかり、左手に剣を握りしめ、リンクは最大級の警戒態勢をとった。
 ついさっきまでは何の気配もなかった。いまは何かがいる。場所は突き止められないが、
この部屋のどこかにひそんでいるのは確実だ。
 何かとは? その正体は? 暗闇を飛翔する黒い影。大きなものではなかった。たぶん、
あいつだ。
 視界の隅に小さな赤い光が見えた。そちらを向くと同時に、光はぐんと大きさを増した。
高速の接近、と瞬時に判断し、迷わず剣を突き出す。
 ギェ!──と不快な鳴き声をあげ、二つの赤い目の間を貫かれた飛行物体は、ぼたりと床面に
落ちた。
 ほっと息をついた瞬間、左右の二方向から気配が突進してきた。構えをとる余裕はない。
左が近いと察知し、気配だけを頼りに位置を測って剣を振りおろす。手応えを実感する暇もなく、
右の気配に向けて即座に剣を払う。切り裂かれた二体の敵が落下する。
 まだいるか?
 いる。
 目を凝らす。見えない。気配はあるのだが。
 待つ。じっと待つ。気配は消えない。さらに待つ。
「リンク──」
「まだだ。伏せてて」
 起き上がりかけるアンジュを制した直後、壇とは反対側の壁面に、赤い光を見いだす。すぐさま
剣を構える。光は動かない。
 睨み合っていても埒は明かない。パチンコかブーメランを持ってきていれば容易に対処できたのだが、
ここは剣を使うしかない。ただ、やるなら一度で仕留めなければ。逃がせばアンジュに危険が
及ぶかもしれない。
 揺らめきもしない光に向け、一歩、また一歩と、ゆっくり足を近づける。
 近づきすぎると、飛びつかれた時、応戦しづらくなる。この距離が限界か。しかし敵は動こうと
しない──
3514-7-2 Ange VI-2 (9/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:53:23 ID:FaS7G74/
 いきなり光が大きくなった。羽ばたく音が耳を刺す。気をみなぎらせていたので機会は逸しない。
それでもぎりぎりだった。左腕を上げた時、光は眼前に迫っていた。右に身体をひねりながら
斜めの角度で斬り落とす。手は両断の感覚を確実に得た。
 なおも油断なく周囲の様子を探る。
 いるか?
 いない。
 ようやく警戒を解き、ふり返る。壇に腰をつけたアンジュが、石壁の前に頭を投げ出すような
格好で横たわっている。顔だけがこちらに向けられて。
 歩み寄って、声をかける。
「全部やっつけたよ。もう大丈夫」
 アンジュの目がぼくを追う。おどおどと声が発せられる。
「……何だったの?」
 横にすわり、安心させるつもりで、そっと肩に手を置いてやる。
「キースさ。蝙蝠だよ。大した奴じゃない」
 部屋のどこかに、外へ通じる小さな穴でもあって、そこから入りこんできたのだろう。
この密閉空間で呼吸に支障をきたさないのも、内部の空気が外気と繋がっているからに違いない。
 アンジュが腕にすがってきた。その腕に力を入れ、上体を引き起こす。と──
 いったん起きたアンジュの上体が、今度はこっちに傾いた。がばと両腕で抱きすくめられる。
二つの乳房の間に顔をはさまれ、息が詰まりそうになる。
 怖かったのか。ほんとうに大した敵じゃないんだから、そんなに怖がらなくてもいいんだよ。
 ほのぼのとした思いを抱きつつ、顔を胸から離し、アンジュを見上げる。
 ぎくりとする。
 アンジュの目が燃えていた。
 この目は──と記憶を引き出しかけたところへ、アンジュの顔がかぶさる。唇を奪われる。
舌を突っこまれる。
 踊り狂うアンジュの口を、なすすべもなく受け入れながら、意識はきりきり舞いをする。
 突然どうしたんだ? いったいアンジュに何があったと?
 目。アンジュの、あの目。
 アンジュがぼくの前であんな目をするのは……それは、いつも……ぼくを誘って、ぼくを求めて
いる時で……だからいまもアンジュはぼくを……そうだ、アンジュは……アンジュは!
3524-7-2 Ange VI-2 (10/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:54:00 ID:FaS7G74/
 わたしは欲情している!
 もう抑えきれない! もう止められない! もうわたしは我慢できない!
 リンクはわたしを守ってくれた。これまで以上の男らしさを、まざまざとわたしに見せつけて
くれた。そんなリンクの男の前で、わたしは自分をさらけ出さずにはいられない。リンクの男を
求めないではいられない!
 口を貪り貪り貪ったのち、身をかがめつつ、唇をすべらせる。顎へと。首へと。胸へと。
鳩尾へと。腹へと。
 壇を降り、腰かけたリンクの両脚を開いて、その間に身を置く。床に膝をつき、リンクの局部と
向かい合う。
 またもや元気を取り戻し、硬く直立したリンクのペニス。無毛の股間から立ち上がる、
まだ剥けきっていない小さなペニス。けれどそれは男の象徴。リンクの男の象徴。わたしが
圧倒的とさえ感じてしまっているリンクの男の、それは歴然とした象徴!
 それが欲しい。わたしは欲しい。だからこうしてわたしは、リンクの前に跪いて、リンクの
そこに顔を寄せて……
 含む。
「あ!」
 リンクの呻きを快く耳にとどめつつ、わたしはひたすら口を使う。頬をすぼめて、舌を動かして、
口のまわりの筋肉を総動員して、中のリンクを吸い、転がし、押し包み、揺すりに揺すり、
揉みに揉み──
「あ……うぅ……」
 いったん解放して、今度は舌を伸ばして、上から下まで舐めおろして、下から上まで舐めあげて、
先を剥き出しにして、舐めまわして、舐めすすって、舐めつくして──
「お……う、ぁッ……」
 唇ではさんで、覆って、くるんで、軟らかな圧迫を加えながら、撫でるように、さするように、
あふれる透明な粘液の上で、舌をすべらせ、走らせ、こすらせて──
「くッ……アンジュ……」
 もう一度含んで、かぶりついて、小さなリンクは奥までは届かないけど、それでもできる限りと
根元まですっぽり口の中に収めて、鼻が下腹をぐいぐいと押すくらい密着して──
「いッ……んッ、んん……」
 ゆっくりと引いて、ゆっくりと進んで、また引いて、また進んで、引いて、進んで、引いて、
進んで、口でリンクをしごいて、しごいて、しごきたてて──
「あッ、アンジュ!……も、もう……」
 いくの? いきそうなの? ああ、このままいかせたい。びくびくと脈打つリンクのペニスを
この口に感じたい。でも、でも、それを感じるべき場所は他にある。こうしている間にも、
じんじんと、わんわんと、唸りをあげるようにそれを求めているわたしの部分、いまでは脚を伝って
流れ落ち床に溜まりすらつくっているかもしれないほどだらだらと淫らな液をしたたらせている
わたしの欲情の源、そこにこそわたしはリンクを、このリンクの男を受け入れなければ、
受け入れなければ、けれどその前に、その前に、別のリンクを、別のリンクの男をそこに──
 口を離す。リンクを見上げる。
「よかった?」
 息を弾ませ、表情を引きつらせながらも、かすかな頷きを、リンクは返す。
「じゃあ、今度はわたしにも、同じようにして」
3534-7-2 Ange VI-2 (11/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:54:51 ID:FaS7G74/
 どう反応するかと思う間もなく、
「うん」
 即座に素直な応答がなされ、
 ──やっぱり、リンクは……
 リンクが立ち上がる。位置を替える。壇に腰を落としたわたしは両脚を開く。リンクが間に入る。
膝をつく。見ている。わたしを見ている。ある種の感動を現して。しかし驚きも惑いもそこにはなく、
 ──女のそこを見たことがあるんだわ。ならこれからすることもリンクは……
 静かな情熱をもって、顔が寄せられる。
「んあぁッ!」
 来た! リンクが来た! リンクの口が来た!
 唇で、舌で、歯で、吸われる、舐められる、噛まれる、リンクは知っている、口の使い方を
知っている、どういうふうに女を口で攻めるのか、リンクは明らかに知っている!
 それだけじゃない、指と同じように、ペニスと同じように、口でもまた、わたしがいちばん
感じるやり方を、いちばん悦ぶやり方を、わたしに施してくれている!
 どうしてなの? どうしてそんなことができるの? まるでわたし自身がリンクに教えてやった
ことがあるかのように、わたしの急所を正確に適切に一心に誠実に柔和にそれでいて屈強に攻めて、
攻めて、攻めてきてわたしはただその攻めを受けて、受けて、受けるしかなくて、でもこれでいい
このまま続けてリンクどうかこのまま、わたしが感じることができる極点まで続けてお願いリンク、
リンク、リンクああいいわすごいわ素晴らしいわ続けて続けて最後まで続けて最後まで最後まで
最後まで──!
「あ! あ! あああぁぁぁああああーーーッッ!!」
 いった! いかされた! わたしはリンクにいかされた!
 わたしはリンクがいく寸前でやめたのにリンクはわたしを、だけどわたしがやめたのはわたしが
リンクを他の場所に欲しかったからで、そういう遠慮のないリンクがわたしをいかせてもおかしく
ないしそれどころかそうしてもらいたかったのはわたし自身なんだからこれでいいんだわ、
いいんだわ、いいわ、いいわ、またいく、またいく、またわたしはいかされてしまう──!
「ぉあッ! あッ! あおぉぉぅぁぁあああッッ!!」
 いってしまった、立て続けにいってしまった、けれどまだ終わらない、終わりそうにない、
わたしの谷間の上で凝縮する女の中心点にリンクの舌が触れるたびに、
「くうぅッッ!!」
 触れるたびに、
「あぁんッッ!!」
 触れるたびに、
「んおぁッッ!!」
 次から次へと快感が炸裂して、その炸裂をもっともっと感じたいわたしはリンクの頭を両手で
そこに押しつけて、動く範囲を制限されたリンクの舌が今度はわたしの奥へと伸びる肉洞の中に
突き入れられ、
「ぅわぁッッ!!」
 突き入れられ、
「ひぃぁッッ!!」
 突き入れられ、
「あおぉッッ!!」
 獣のように吼えながら、全身を快感に乗っ取られて、満ちあふれさせて、埋めつくされて、
続けて何度でも何度でもリンクの口で頂上を極めたいとの渇望を、いやそれではいけないと必死に
抑えつけてわたしはリンクの顔をもぎ離し、わたしが垂れ流す液体にべっとりと濡れたその顔を
見据えてわたしは激しく叫びをあげる!
「来てッ!」
3544-7-2 Ange VI-2 (12/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:55:44 ID:FaS7G74/
 何に来て欲しいのか、どこに来て欲しいのか、アンジュの欲情に煽りまくられ身震いするほど
のぼせ上がりながらもぼくはちゃんと理解していて、すでに一度アンジュと交わったぼくは未来の
アンジュを幸せにすることができたはずだがこうなったら一度きりではもう収まらない、わかった
すぐにと立ち上がって身を寄せてのしかかろうとするぼくをアンジュは──
「待って!」
 ──となぜか押しとどめ、床に下ろしていた両脚を上げたかと思うとくるりと向きを変えて、
壇の上に肘と膝で四つん這いになって尻をぼくの方に突き出して──
「さあッ!」
 ──脚を開いてそこも開いてぼくを迎え入れる体勢を調えて、ああそうかこの格好ならいちばん
奥に届くと未来のアンジュに教えられた、だけど子供のぼくではとうてい奥まで届かない、いや
それでもできる限りぼくを深く感じたいからこの体位を──
「早くッ!」
 ──とっているんだねアンジュ、それに壇に上がったのは四つん這いになったアンジュのそこと
床に身を立たせたぼくのこれとの高さがちょうど合うからで、同じ面にいたら身長の差がある
ぼくたちがこの体位で繋がることは難しかっただろうから、そこまで考えてアンジュは──
「どうしたのッ! 早く来てッ!」
 ──ぼくを待って、ぼくを求めて、焦れて、乱れて、我を忘れて、淫らなアンジュ、何という
アンジュ、そんなに、そんなに、ぼくが欲しい?
「欲しいッ! リンクが欲しいのッ!」
 いいよぼくもアンジュが欲しい、欲しい、欲しいから行くよ、行くよ、細身の胴から張り出す
丸い尻に両手を添えて──
「あッ! 早くッ! 早くぅッ!」
 ──いきり立つぼくの先端を、熔け落ちそうなくらいどろどろにぬかるんだアンジュの入口に
触れさせて──
「あぁッ! 来てぇッ! 挿れてぇッ!」
 ──ゆっくりと、ぬったりと、押しこんでいって──
「そうよッ! もっとッ! もっとぉッ!」
 ──ぼくの下腹とアンジュの尻がぴったりとくっつくまでいっぱいに押しこんで──
「ああぁッ! リンクッ! 感じるぅッ!」
 ──感じる、ぼくも感じるよアンジュを、アンジュの熱い熱い女の肉を──
「いいわッ! あうぅッ! いいわぁッ!」
 ──ぼくもいいよアンジュ、だからもっといい気持ちになろう、こうして、引いて──
「あぁんッ! まだぁッ! まだよぉッ!」
 ──そう、まだだ、まだ終わるもんか、引いて、引いて、引ききったところで──
「そこからッ! 突いてッ! 突いてぇッ!」
 ──いいともアンジュの望みどおり、力いっぱいぼくはぼくをアンジュに!
「くぁッ! あ……あぁッ……ぁぁぁあああああッッ!!」
 いった? いったんだねアンジュ? ぼくの口で何度も行き着いたアンジュが、いまぼくの
男の器官で再び行き着いて、ぼくを感じてくれて、子供のぼくを最高に感じてくれて、それで
ぼくはぼくの男をしっかりと自分で認めることができて、だからぼくはいっそう猛り立って、
絶頂後もまた次の絶頂を求めて叫び出すアンジュの痙攣する尻をつかんでもはや歯止めもなく
後ろから荒々しく突いて突いて突いて突いて突いて、これくらいにされた方がアンジュは
嬉しかったりするんだろう確かそう言ったよねアンジュ、嬉しい、ぼくも嬉しい、嬉しすぎて、
ここでアンジュがあの技を繰り出してきたらぼくはひとたまりもないだろう、なのにアンジュは
そうしない、どうしてアンジュ? どうして? どうして?
3554-7-2 Ange VI-2 (13/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:57:11 ID:FaS7G74/
 出せない、あの技は出せない、いいえわたしは出さないの、出すつもりもないの!
 最初の時はリンクに教えてやろうと思って、違うわそうじゃない、大人のわたしが子供の
リンクに先にいかされたら恥ずかしいと思って出したあの技も、口で続けていかされて、さらに
ペニスでいかされて、しかもその恥ずかしい立場を自分自身から求めたこのわたしが、いまさら
繰り出す意味などありはしない。
 恥ずかしい? そう、確かに。年端もいかない子供の前で、大人のわたしが、這いつくばって、
尻を上げて、その子供にペニスを後ろから叩きこまれているなんて、恥ずかしさの極まった姿としか
言いようがないだろう。しかし恥ずかしいがゆえにわたしはここまで感じてしまっていて、いや違う、
こうあってこそわたしはリンクの男を極限まで感じることができるのだから恥ずかしくなどない、
それどころかこうあるべきなのだ、だからリンクをあの技で攻めたりしてはいけないのだ、などと
朦朧とする頭で筋が通っているのか通っていないのかわからない思考を漂わせる間にも、身体を
内から爆発させそうな快感の連続の中、わたしは何やら叫びながら痙攣する尻をつかまれてもはや
歯止めもなく後ろから荒々しく突かれて突かれて突かれて突かれて突かれて、突かれるたびに
達して、達するたびに突かれて、いって、いって、いきまくった末に、とうとう、わたしの、
意識は、少しずつ、少しずつ、かすれて、薄まって……
3564-7-2 Ange VI-2 (14/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:58:38 ID:FaS7G74/
 ぼくの突きに応じる躍動が徐々に静まりアンジュの身体から力が抜けてゆく、欲望全開の喚きが
呟きに変わりそれが次第に消えてゆく、でも気を失ったわけじゃない、顔をぐったりと伏せながらも
尻は上げられてぼくの前にあって、周期を延ばしながらも口は深い呼吸を続けていて、だけど──
「アンジュ?」
 ──返事はない、聞こえていない、アンジュの意識はちりぢりになっていて、肉体だけが
かろうじて活力を残していて、どうしよう、アンジュがあの技がなかったからどうにかぼくは
ここまでもった、けれどいきたい、ぼくもいきたい、もういきたい、いきたいけれどいいんだろうか、
こんな状態で続けていいんだろうか、大量の粘液を際限もなくあふれさせているアンジュの
この部分に──
 と目をやったぼくは、思わず動きを止めてしまって、いまさらのようにそこが見えてしまって、
ぼくがぼくを挿しこんでいる部分の上側にある黒ずんだすぼまりが見えてしまって、ああ未来の
アンジュはそこでのやり方も教えてくれた、いまのアンジュはどうだろう、さっきアンジュが口を
使ってくれた時は、サリアの口を経験した子供のぼくだけれど大人にしてもらうのは初めて
だったからぼくは激しく感じてしまった、だからルトのそこを経験した子供のぼくをも大人の
アンジュのそこは激しく感じさせてくれるだろう、塗るものは持っていないがルトの時のように、
あたりを浸す粘液をこうして指でなすりつけてやって──
「あ……」
 ──ちょっと指先をもぐらせて──
「ああ……」
 ──呻いてはいるけれどアンジュのここの筋肉は軟らかい、この調子ならいいだろう、子供の
ぼくの物は小さいんだし、いまはそれをアンジュが充分に濡らしてくれているんだし、それに
何といってもアンジュなんだから、ぼくに教えてくれたアンジュなんだから、大丈夫だ、問題ない、
よし、やろう、やってやる、膣から自分を引き出して──
「あ、リンク……」
 ──先をそっちの入口にあてがって──
「リンク、何を──」
 ──じわりと先に進めてやって──
「あ! 何するの!?」
 ──こうするんだよ、アンジュが教えてくれたとおりに──
「違う! そこは違う!」
 ──違う? 何が違うんだ?
「痛ッ! やめてッ! 痛ぁいッッ!!」
 頭を振り上げ背をのけぞらせたアンジュのその部分の筋肉が急激に引き絞られてぼくをひっつかみ、
「ぅわッ!」
 とぼくの口からも叫びがあがり、どうしたんだアンジュ、そんなに力を入れちゃだめだ、
力を抜かせるようにと言ったのはアンジュ自身じゃないか、それなのにどうして、待てよ、痛い?
痛いだって?
「……何てこと……するの……」
 苦しげな声が──
「……そんな……所に……挿れるなんて……」
 ぼくの頭から血を引かせ──
「……無茶よ……」
 まさか、まさか、アンジュは、そうか、七年前、いまは七年前なんだ、なぜ思いつかなかったんだ
ぼくは、七年後のアンジュは知っていた、しかしいまのアンジュは──
「もしかして……初めて?」
3574-7-2 Ange VI-2 (15/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 16:59:31 ID:FaS7G74/
「当たり前でしょ──あつッ!」
 じりじりと肛門に染みる痛みが、声を出すとよけいに響く。
「ごめんよ、アンジュ──」
「だめ! 動かないで! ぁたッ!」
 ペニスが引き抜かれそうになるが、それだけでも痛い。
「……しばらく……このままでいて……」
 治まるまで待つしかない。耐えるため、再び頭を伏せ、無理やり思考を振る。
 リンクはまごついているみたいだけど、わたしに経験があると思っていたのかしら。
 とんでもない!
 そういうやり方があるとは知っていたし、興味が全くなかったわけでもない。けれども実行する
気にはなれなかった。実際、アナルセックスの経験がある女なんか、そうそういるものじゃない。
 ところがリンクは……そうだ、リンクには経験がある。言動から明白。これもどこかの女に
教わったのね。誰だか知らないけど、普通のセックスだけじゃなく、アナルセックスまで教える
なんて、とてつもなく淫乱な女に違いないわ。
 こういう交わりを楽しむ女がいるというのが信じられない。小さいリンクですらこんなに
痛いのに、大人の男のペニスだったらどれほど苦痛であることか。でもそれで平気な女が
いるんだから、リンクくらいだとほんとは大した苦痛じゃないはずだわ。どうやったら快感が
得られるのかしら。何かこつでもあるのかしら。
「アンジュ、力を抜いて……」
 力を抜く? 無理よ。お尻にこんなものを突っこまれたら、どうしたって力が入ってしまう。
だけどこれだとリンクを締めつけすぎなのかも。だから動かされたら痛いのかも。わかったわ、
やってみる。ちょっとずつ、ちょっとずつ、力を抜いて、力を抜いて、ああ、よくなった、痛みが
引いた、これなら大丈夫、これなら耐えられる、けれど何だか変な感じ、お尻に物が入って
いるのはやっぱり変な感じ、いままでに経験したことのない奇妙な感覚、痛いというのではない、
苦しいというのでもない、身体の奥底を重々しく押さえこまれるような、おなかから頭に向けて
何かがじわじわと流れてゆくような、これは何? この感覚は何?
「もういい? 抜くよ」
「あ、まだ!」
 ちょっと待っててリンク、もう少し、もう少し、この不思議な感覚に浸っていたい、この未知の
感覚を味わっていたい、この感覚、この感覚、ひょっとして、これが快感? これがお尻で
得られる快感? 膣での快感とは違った、でもそれを追い求めたい、それに身を任せたいと
思わずにはいられなくなるこの感覚は、いまリンクがわたしに与えてくれいるこの感覚は──
 そうだ! リンク!
 わかりきっていたことをいまさらのように意識する。
 わたしはお尻でセックスしている、お尻でリンクと繋がっている、生まれて初めてのアナル
セックスを、いまわたしはリンクと体験している、こんな子供に、こんな小さなリンクに、
わたしは後ろの処女をあげてしまった!
「……あ……あぁぁ……」
 何てこと、何てこと、あたしは何てことをしているの、倒錯以上の倒錯、背徳以上の背徳、ああ、
だけど、だけど──
「うぁ……あ……おぉ……」
 かまわないわ、当然だわ、リンクは男なんだもの、リンクの男を感じるためなら、お尻だって
何だって使ってやるわ。
3584-7-2 Ange VI-2 (16/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 17:00:12 ID:FaS7G74/
「アンジュ?」
「んん……リンク……突いて……」
「え?」
「突いて……んぁ……あうぅ……」
「いいの?」
「いいから……お願い……あぁ……」
 リンクが動き出す。ゆっくり、ゆっくり、わたしを気遣うように、優しく、優しく、優しい
上にも優しく、突いて、引いて、突いて、引いて、そうよ、そうして、それでいいのよ、いいのよ、
いいわ、いいわ──
「いいわ……リンク……気持ちいい……」
 ──気持ちいい、そう、気持ちいい、わかった、この快感をわたしは知った、だからリンク、
続けて、続けて、もっと、もっと──
「もっと……あぁん……もっとぉ……」
 ──もっと速くして、もっと強くして、リンクの男を感じたい、わたしのお尻に感じたい、
感じたいからリンクどうかもっともっともっと──
「もっとよ、リンク、もっと来て!」
「アンジュ!」
「リンク!」
 速く、速く、速く、強く、強く、強く、リンクが動いて、わたしも動いて、動くにつれて快感が
どんどんどんどん大きくなって大きくなってわたしを膨れあがらせていって!
「どう?」
「いいわ!」
「感じる?」
「とっても!」
 呼び交わす二人の声が、同期する二人の動きが、こすれ合う二人の部分から生まれる感覚が、
わたしを高めて、リンクを高めて、わたしたち二人をどんどんどんどん高ぶらせていって!
「だめ! いきそう!」
「いいよ! アンジュ!」
「リンクも! お願い!」
「うん! ぼくも!」
 速く速く速く強く強く強くリンクとわたしが結び合う部分で二人の身体がぶつかってぶつかって
ぶつかり続けて!
「いっちゃう!」
「いって!」
「お尻で!」
「さあもう!」
「わたしを!」
「これで!」
「いかせて!」
「いくんだ!」
「リンク!!」
「アンジュ!!」
「いくわ!!」
「いくよ!!」
「あッッ──!!!」
3594-7-2 Ange VI-2 (17/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 17:00:52 ID:FaS7G74/
 最後の叫びとともにアンジュの腸壁が極限まで収縮し、同時にぼくは爆発し、痙攣し、硬直し、
何がどうなっているのかわからなくなり、ただ絶大な快感のみに打ちのめされ、打ち震え、
時を忘れて立ちつくし、立ちつくし、立ちつくし──

 ──股間に接していたものの感触がなくなった。
 閉じていた目をあけると、萎えた陰茎が肛門から抜けたところだった。アンジュの身体が
ゆっくりと前方に崩れてゆき、うつ伏せに倒れて、動かなくなった。
 声をかけようとして、がくりと膝が折れた。ずっと立ったまま激しい運動を続けてきたため、
脚の力が限界に達していたのだった。
 床に膝をついて息が整うのを待ち、身をいったん起こしてから、どさりと壇に腰を落とす。
 傍らに横たわる裸体を、優しく見やる。
 未来のアンジュが教えてくれたことを、今度はぼくが、いまのアンジュに教えてあげられた。
初めてだというのに気がつかなくて悪かったけれど……最後には、アンジュも、感じてくれたね……
 アンジュに寄り添う形で、壇の上に身体を倒す。アンジュの目蓋がわずかに開く。ぼうっとした
表情が、ややあって、静かな笑顔へと変わる。
 微笑みを返し、リンクはさらに身を寄せ、アンジュの胸に顔を埋めた。アンジュの腕が、
リンクを抱き包んだ。
 この上なく安楽な時間が過ぎていった。
 
 その時間を堪能しつくすことはできないと、リンクは理解していた。それはアンジュも同じで
あっただろう。やがて、どちらからともなく、身は起こされた。リンクは剣を、アンジュは
カンテラを手にし、連れ立って部屋を出た。
 温泉の湯で身体を洗ったのち、二人は入口に立ち帰り、着衣した。服は乾いてはいなかった
ものの、湯と、心の温かみとが、その湿りを忘れさせてくれた。
 夜が明けるまでには、まだ時間があった。雨はやんでいたが、穴の底には水が溜まったまま
だったので、いまは本来の通路となった、元の窪みの場所に、二人は並んで腰を下ろした。
手を繋ぎ、互いに頭をもたせかけ、そして、しばしの眠りについた。
3604-7-2 Ange VI-2 (18/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 17:01:33 ID:FaS7G74/
 翌朝、二人はダンペイに救助された。
 アンジュが期待したとおり、朝になって墓地に出てきたダンペイは、転がった傘に目を引かれ、
さらに、近くの石碑が動かされていること、石碑のあった場所が深い穴と化していることを
知ったのである。窪みにいると上からは見えないだろう、と予想していたリンクが、穴の底に
剣と楯を置いていた。それを認めたダンペイの呼びかけで、二人は目を覚ました。助けを求めると、
ダンペイはいったんその場を離れたが、間もなく再び姿を見せ、上から縄梯子を垂らしてくれた。
二人はやっと地上に戻ることができた。
 救助作業が終わるやいなや、それまで抑えていたらしい怒りをあらわにして、ダンペイが
ことの顛末を質してきた。リンクが答えた。
 ──力いっぱい押したら、石碑が動いた。来合わせたアンジュと穴を覗いていて、底に落ちた。
自力では上がれないので、朝までじっと助けを待っていた──
「でたらめ言うな! 押したくれえでこれが動くわけ──ありゃ?」
 虚偽を証明しようとしたのだろう、ダンペイは石碑に手をかけ、ぐいと押してみせたのだが、
その目論見をあざ笑うかのように、石碑はわずかながら位置を移動させた。あっけにとられた
ような顔のダンペイが、改めて両手に力をこめると、石碑はずりずりと地を這い、元の場所に
帰って穴を塞いだ。
「おかしいな、こんなんで動くはずはねえんだが……」
 ぶつぶつ言いながら、押したり引いたりを繰り返すダンペイを前に、アンジュは沈黙を守っていた。
 わたしがここに来た時には、すでに穴があった。リンクがどうやって石碑を動かしたのか、
わたしは知らない。押しただけというのが真実なのかどうか、疑わしい気もする。が、穴の底が
どこに続いているかを、いっさい口にしようとしないリンクだ。隠しておきたいことが他にも
あるのだろう。ここは黙っているべきだ……
「まあいい」
 石碑を穴の上に戻したダンペイは、無理やり自分を納得させるように言葉を吐いたのち、
「だいたい、ここには近づくなと言ったのに、おめえは──」
 と、頭ごなしにリンクを怒鳴りつけ始めた。リンクは反駁せず、うなだれていた。そんなに
叱らなくてもいいのに──と同情しながらも口をはさめずにいたアンジュだったが、
「あんたもあんただ。こんなガキが夜中に墓地をうろついてるのを止めようともしねえで、
あげく一緒に穴に落っこっちまうたあ──」
 矛先が自分に向けられると、ひたすら謝罪を述べるしかなかった。
3614-7-2 Ange VI-2 (19/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 17:02:30 ID:FaS7G74/
 さんざん油を絞られ、二度と石碑を動かしたり穴に降りたりはしない、と約束させられたあと、
ようやく二人はダンペイから解放された。
 墓地の出口に向かいながら、うつむいて横を歩くリンクを、アンジュは思いやった。
 世界を救おうと頑張っているリンクが、あれほど罵られなければならないなんて……
 ところが墓地を出るとすぐ、リンクは顔を上げてアンジュを見、にこっと笑って、こう言った。
「怒られちゃったね」
 ダンペイの目が届かなくなるのを待っていた、という感じだった。アンジュも思わず微笑んだ。
「そうね」
 叱られたことを、全然、気にしていないようだ。それくらいの覚悟がなければ、世界を救うと
いった勇敢な行動はとれないだろう。こうして見ているだけだと、いかにも子供っぽい、無邪気な
様子のリンクなのに。
 でも、その子供のリンクに……わたしは……
 思いを湧き上がらせつつ、アンジュはまわりに目をやった。
 雨上がりの清々しい空気の中、草木に残る無数の水滴が、朝の光を反射させ、墓地から村へと
続く道を彩っている。生まれてこのかた何度歩いたか知れない、この道。わたしにとっては、
ごくありふれた日常の風景。
 この風景を眺めていると、昨夜のできごとが、いかに異常なものであったかを、つくづく
思い知らされる。
 ダンペイは気づかなかった。当然だ。見つかった時、わたしたちは服を着ていたし、そもそも、
いかに一晩をともに過ごしたとはいえ、わたしたちがそんな行為に及んだなどとは、想像する
ことすらできなかっただろう。
 それほどの異常さだったのだ。
 大人のわたしと、子供のリンクが、裸になって、抱き合って、貪り合って、果て合って、あとは
裸のまま暗闇の中をさまよって、さらに身体を結び合わせて、大人のわたしが、子供のリンクに
圧倒されて、ついには処女の肛門まで許してしまって……
 とても現実とは思えない。まるで夢のような……そう、これは……一夜限りの夢だったんだわ……
「アンジュ」
 リンクが真顔に戻って呼びかけてきた。
「お願いなんだけれど……王家の墓で見たことは、当分、誰にも言わないでいて欲しいんだ」
「当分?」
「うん、神殿についての謎が解けるまでは」
「……ええ、いいわ」
 リンクの現実。神殿を探し、世界を救う。それがリンクにとっての現実。
 それから……
「リンクも……」
 こちらも真剣に呼びかける。リンクが言及しなかった点を指摘する。
「ゆうべ、わたしたちの間にあったことは、誰にも言わないでね」
 まっすぐな視線を保ったリンクが、こくりと頷く。
「わかった」
3624-7-2 Ange VI-2 (20/20) ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 17:04:02 ID:FaS7G74/
 わたしにとっての現実。
 彼。
 婚約している彼。
 リンクとの体験を、わたしは後悔していない。それどころか、一生忘れられない、甘美な記憶と
なるだろう。にもかかわらず、わたしは彼を愛している。その想いは、決して揺るぎはしない。
 わたしの中で、彼と、リンクとは、全く異なる次元にある。
 今後、わたしとリンクの関係が続くようなことがあってはならないし、また、続くはずもない
ことなのだ。一夜限りの夢だったのだ。
 彼の場合は、そうではない。
 その人のそばにいたい。その人と一緒に生きていきたい。その人のためなら何でもできる。
そんな想いを、彼以外の誰に捧げることができるだろう。
 できるわけがない!
 でも……
 村に近づくにつれ、あわただしい人声が聞こえ始める。難民の到来による混乱は、今日も
続いている。
 反乱の勃発。予期される戦争。世界が動いてゆく。世界が変わってゆく。これが現実。これが
わたしの前にある、新たな現実。この現実の中で、わたしと彼とは、どんな運命をたどることに
なるのだろう。
「アンジュも、この先、大変だろうけれど……」
 思いを読み取ったようなリンクの呟きが、アンジュを我に返らせた。
「……どうか……幸せに……」
 途切れる言葉が、切なげな目の訴えが、心に染み入ってくる。
「……ありがとう」
 アンジュは答える。その幸せをもたらすものが、あたかもリンク当人であるかのごとく。
 いや……
 そうなのかもしれない。荒れ狂い始めた世界の現実に、真正面から立ち向かい、道を切り開こうと
しているのが、他でもない、このリンクではないか。
 そして、その幸せは、わたしと彼との間にも……
『そうだわ』
 今度、彼と寝る時には、リンクが教えてくれたやり方で、愛してもらおう。
 かあっ──と頬が熱をもった。
 きっと真っ赤になっている。リンクに怪しまれるんじゃないかしら。
 いいわ。怪しまれたって、かまいはしない。
 いまのわたしが持つささやかな希望に、それが繋がるものであるのなら──と、高まる胸の
ときめきを快く感じながら、アンジュは思った。


To be continued.
363 ◆JmQ19ALdig :2008/01/26(土) 17:04:35 ID:FaS7G74/
以上です。展開を見透かされてしまったw
ただ今後の都合もあって、リーデットには登場を遠慮してもらいました。
364名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 20:32:56 ID:2nESm2+a
わぁーい!新作だぁー
すぐさま熟読させてもらいました。

いつもながらこんな素晴らしい小説をありがとうございます!お疲れさまです。

うーん、アンジュさん実はMなのか・・・?w
もしかして改変7年後にはお尻でもあの技を使えるようになってたりしてww

リーデットタンはいつでるのかな〜。


首を長くして気ままに待つ、おれ参上!!


365名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 20:58:02 ID:v2lbO3f/
全裸探検キター(;´Д`)ハァハァ
本文にはなかったけど、高い段差を越えるときに
リンクが全裸アンジュさんを下から押し上げて
いろいろ見えちゃったりしたに違いないと妄想(;´Д`)ハァハァ

ルト姫とおしりでするときは舌までつかって優しくほぐしたのに
アンジュさん相手には許可なしでいきなりアナル挿入w
他の人だったら殴りたおされかねない、
まさにアンジュさん相手でしかできないプレイ(;´Д`)ハァハァ

366名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 21:07:33 ID:v2lbO3f/
そういえば、時オカの大妖精はリーデッドに近い意味でトラウマものだったけど
トワプリの大妖精みたいだったらいいな(;´Д`)ハァハァ
367名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 21:50:18 ID:dck1udKG
新作乙です。

まさかの全裸探検の展開で、リンクの目前で為す術もなくアンジュさんが
リーデッド集団に襲われたらどうしようと思ってドキドキしてたけど、
無事に探検が済んで別なドキドキ展開でなによりでした。

アンジュさん、そのうち大人リンクともまた再戦すると思うと
婚約者のカーフェイ(仮名)が少し気の毒な気も。
368名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 22:18:44 ID:WV64vjhs
歴史改変でラブラブ新婚生活になってたりすればさすがにリンクも自重…する?
369名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 01:42:17 ID:UzoFg4W3
>>368
「彼のじゃ満足出来ないの…」
これじゃNTRになっちまうか
370名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 02:10:02 ID:kax4P1VD
ラブラブ新婚だとシークがアンジュさんとセクロスできないので
ゲルドの副官と会えないときはたまってくる度にオナヌーするはめになるヨカソ
371名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 03:26:23 ID:Pu3K+Ro9
新作乙です!
まさか初めてだったとは…予想外でした
興奮してたとはいえリンクも確認ぐらいすればいいのにw

>>370
シークは溜まらないんじゃないか?出ないんだし
372名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 12:42:34 ID:k3BwYuCR
ならシークは私がさらっていくけど、いいかな?かな?
373名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 19:19:07 ID:CGOxWfdM
>>372
残念ながらそれはガノンだ。ドロフですらなく。
374名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 23:24:49 ID:FqvODT8k
GJ。アンジュ姉さんがどのように改変されるかと未だ未修得のデッテ封じ曲が気になるところ。
375名無しさん@ピンキー:2008/01/28(月) 03:24:26 ID:b9U1XGvO
アンジュが大人リンクにアナルを教える

子供リンクがその経験を以てアンジュにアナルを教える

アンジュがその経験を以て(ry

なんという無限アナループ!
376名無しさん@ピンキー:2008/01/28(月) 12:38:00 ID:O3NwZm/6
アナループ言いたいだけちゃうんかと
377名無しさん@ピンキー:2008/01/28(月) 14:31:37 ID:63y7X2jE
思っくそ吹いたw
378名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 19:32:44 ID:TJirGYQa
アナループからなぜかフラフープを惹起されてちょっぴりノスタルジックになった
379名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 22:36:39 ID:CkxCmPAK
フラフープ≠アナループ=エネループ
380名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 01:33:53 ID:dFl2511Y
アナ<アナル<アナループ
381名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 06:38:12 ID:W4Rzntz1
アナルファッカー<アナルーパー
382名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 08:23:19 ID:92Fu2/rH
アナルシスト
383くだらないリンゼルin時オカ:2008/01/30(水) 22:47:18 ID:2VI9LEBE
ラウルの爺がグダグダ言うんで時の神殿へ来てみたら、そこにいたのはあのシークだ。
「待っていたよ。リンク」
待っていたよ、じゃねーよ。なんでおまえがここにいるんだよ。用があるならさっさとすまそうぜ。
例によって自己陶酔のポエムを語り出すシーク。しょーがねーな。こいつはこういう風にしか話せないのか。
「聖なる三角を求めるならば、心して聞け……」
わかったよ、聞いてやるよ。今日のポエムは長いな。早く終われ。
「そして、もう一人……知恵のトライフォース宿りし者……賢者の長となる七人目の賢者……」
ふーん、それで? お? どうしたシーク? なんか光ってるぞ?
「この私……ハイラル王女、ゼルダです」
おお、なんとあなたがゼルダ姫だったのですか。驚きましたよ。驚きのあまり勃起してしまいました。
だからセックスしようじゃありませんか。
「ちょ、ちょっと、まだ私のセリフが終わっていませんわ」
いや、ポエムはもういいです。どうか僕の思いのたけを受け取って下さい。
「だめよリンク。ああ、でも、私も七年間あなたを待っていたの。この際どうなってもかまわないわ」
よし、行くよ。
「来て、リンク」
ふんふんふん。
「あんあんあん」
ふう、とってもよかったよ。最高です。
「私もよ。ところで、あなたに言っておきたいことがあるの」
なんです?
「魔王の追及を逃れるためとはいえ、シーカー族と偽り接してきた事、どうか許してください」
それは許せませんな。
「え?」
許せないと言ったのです。それなりの罰は受けてもらいましょう。
「罰ですって? どんな?」
これだ!
「まあ、それはバイブ!」
これが何かわかるとは、姫も隅に置けませんね。そうだ。これを挿入してやる。うりゃ!
ヴヴヴヴヴヴヴヴ
「あ! ひどいわ! でも、でも、なんだか変な気分……」
フフフどうです? こういうのもオツな味でしょう。
「おい、こら」
げ、ガノンドロフ! あんた覗いてやがったのかよ!
「覗くなどとは失礼な。出番を待っていたら、キサマらが勝手に事を始めたのだ。ん? なんだそこでヴヴヴと鳴っているのは」
「きゃっ! 見ないで!」
「いや、見たぞ。むむ、バイブが共鳴している……」
アホかおっさん。そりゃ電池で動いてるんだぜ。
「黙れ! キサマらには過ぎたオモチャだ。返してもらうぞ!」
え? これあんたのだったの?
「そうだ。いったいこれをどこで手に入れた?」
ゲルドの砦でガメてきたのさ。あんたもそーゆープレイがお好みだったのか。
「ゲルドの女は数が多いから、こんな物でもないと体がもたんのだ」
プッ、案外貧弱だな。
「ええいやかましい! 話を元に戻して、こいつは戴いていくぞ!」
「助けて、リンク!」
「ゼルダを助けたくば、わが城まで来い!」
うーむ、ゼルダ姫を奪われてしまった。このままでは、あんなことやこんなことをされてしまうに違いない。
ここは一発、助けに行かねば。姫に悪戯できるのは、時の勇者である僕だけなんだぞ。
待ってろよ、ガノンドロフ!


おしまい
384名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 00:14:13 ID:G+SsdzZP
何この流れwwww
385名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 00:59:36 ID:axMtTO7f
>>383
こーゆーのけっこう好きかもwwwww
386名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 01:28:04 ID:y4dDHbUw
ぶwwwwwwwwwwwwwwww
387名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 02:01:19 ID:79S5F4rQ
「ええいやかましい! 話を元に戻して、こいつは戴いていくぞ!」
「ああっなんてことを!」
「バイブがほしくば、わが城まで来い!」
うーむ、バイブを奪われてしまった。このままでは、あんなことやこんなことができない。
ここは一発、取り返しに行かねば。姫を満足させるには、ちんちん一本じゃ足りないんだぞ。
待ってろよ、ゼルダ姫!

388名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 16:16:04 ID:ij2/3bWn
続き書いてみて
389名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 17:26:17 ID:C9ikJD7+
ガノンと協力して満足させてやればいいと思うよw
390名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 22:25:31 ID:3acETGIg
>「黙れ! キサマらには過ぎたオモチャだ。返してもらうぞ!」

ここで噴いたwwww
391名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 22:48:21 ID:/kEP+cs+
シークとゼルダで態度変わり過ぎワロタww
392名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 15:49:33 ID:8Q+ALIz+
才能に嫉妬した
393名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 23:38:02 ID:Ta9TLYoa
昨日発売したスマブラX買った人いる?
394名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 00:38:04 ID:i25aLf4O
スマブラは専スレあるよ
395名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 01:00:26 ID:R7jwT9G4
>>393
スレ違いだから一応手短に
ゼルダがエロすぎる。以上
396名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 03:49:35 ID:LQWjK/f5
脇とかがエロいな
397名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 23:39:50 ID:GemqcAaV
ハルバードの甲板上でピーチ姫と共にお茶をするシーク(ゼルダ姫)のハイソぶりに吹いたw
398名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 01:37:43 ID:nJA5Fs3f
表情も豊かだしな
399名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 02:12:00 ID:4zriihr8
>>397
流石のフォックスも多少困惑してたな
シークは適応力ありすぎ
400名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 02:51:46 ID:e23haqNF
ゼルダもピーチもあれだけ攫われたら肝も据わるし適応力も判断力もつきまくるw
それにしてもゼルダは勿論、シークがエロすぎるな
男にも見えるがもうあのシークは女だということにした
トワプリで没になったのが残念でならん
401名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 07:51:01 ID:sDbvj6Aw
エロいゼルダと聞いて飛んできました。
402名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 09:27:53 ID:RgIlTXQ8
みんなスマブラXでエロいキャプをとりまくってると聞いたのですが
どんな検索ワードだと見つかりますか(´;ω;`)
403名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 16:30:24 ID:KC4hZBsX
分かりやすくておもしろい
サリアの話より、いい!!
404名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:44:41 ID:rkb7nglL
スマブラでフィギュアのドレス覗いたら
ピーチは暗黒だったのに対してゼルダ姫様は中身を見せてくれたんだぜ……

しかし一緒に見ていた母親が
「あっ、後ろからだとパンツの線見えるね」
とか指摘してきた。
カーチャン……
405名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 23:23:08 ID:MB0O84gW
>>404
母親と一緒にスマブラのフィギュア下着鑑賞してるお前が怖い
406 ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:10:43 ID:/oquTBNd
私本・時のオカリナ/第四部/第八章/ダルニア編その3、投下します。
リンク×ダルニア@子供時代。
註:この話のダルニアは「女体化」しています。
4074-8 Darunia III (1/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:11:57 ID:/oquTBNd
 来たるべきゲルド族との戦争に際し、ゾーラ族に共闘の用意がある旨を伝えるため、リンクは
カカリコ村の指導者との面会を希望していた。この先、村に来て真の指導者となるインパが、
他部族との共闘という同じ計画を考え出すはずだが、ここで先に話をしておけば、より早く態勢が
調うだろう──と期待したのだ。しかし、それはリンクが予想していたほど容易なことではなかった。
 どこの村にもあるはずの村長という役職が、カカリコ村には存在しなかった。村長にふさわしい
人物といえば、村を開いたシーカー族の末裔であるインパだったが、村を庶民に開放したあとは、
インパも形の上では単なる一住人に過ぎず、かといって、変わらぬ深い尊敬と信頼をインパに
寄せ続ける村人たちにとっては、他に村長を選ぶなど、考えられないことだったのだ。ゼルダ姫の
乳母となったのちのインパは、ハイラル城に居住し、めったに帰郷しなくなっていたが、引き続き
村長を欠きながらも、村の生活に大した支障は生じなかった。それほど平和なカカリコ村だった
のである。ところが多数の難民を受け入れざるを得なくなったいま、平和時には問題とならなかった
村長不在という事態が、村の混乱を大きく助長することになってしまっていた。
 そうした中で指導者と呼びうる立場にあったのは、村に駐屯する守備隊の隊長である。乗馬と
矛をよくする、この初老の武人は、戦場での勇敢さに定評がある一方、平時の態度はいたって
温和であり、村人たちの人気を得ていた。が、その隊長に、リンクは会えなかった。今回の反乱に
即刻の対応を迫られた隊長が、自ら城下町方面へ偵察に出かけていたからである。
 以上のような状況をアンジュから知らされ、リンクは困惑した。
 伝えるべき内容はきわめて重要であり、誰かれなしに話すのは憚られる。とはいえ、いつ
戻るかもわからない隊長をじっと待つのももどかしい。
 そこへアンジュが一案を出した。
 ──自分の父は、ふだんから守備隊長とつき合いがある。温厚な隊長とは反対に、気が短い
父だが、腹蔵なく話ができる相手として、二人は互いを認めている。隊長に知らせたいことが
あるなら、父から伝えてもらえるだろう──
 さらに聞けば、アンジュの父親は、大工の親方という職業柄か、みなの先頭に立って現在の
難事を捌こうと尽力しているらしい。そのような人物なら信用できるだろう、と判断し、リンクは
伝言を頼むことにした。
 アンジュに連れられて赴いた村の広場では、親方が四人の弟子を指揮して、とりあえず
難民たちが雨露をしのげるようにと、仮小屋を建てている最中だった。アンジュが呼びかけても、
親方はいっかな手を休めようとしなかったが、再三の要請に、ようやく会話を承諾した。
「このくそ忙しい時に何だってんだ」
 親方の不機嫌そうな様子にも動じることなく、リンクは言うべき内容を簡潔に述べた。
 ゾーラ族との共闘の件。そして同じ提案を、これから訪ねるゴロン族へも持ちかけるつもりで
あること。
 子供の分際で──とでも言いたげに、あきれたような顔で聞いていた親方だったが、アンジュの
口添えや、リンクが示したゼルダの手紙の効果もあってか、最後には頷いて、守備隊長への伝達を
引き受けてくれた。
 懸案を片づけたリンクは、二人に──とりわけアンジュには心からの──感謝と別れの言葉を
贈ったのち、デスマウンテン登山道へと足を向けた。
4084-8 Darunia III (2/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:12:41 ID:/oquTBNd
 初めてゴロンシティを目指した時と同じく、崖に沿った細い登山道を進むには、多大な注意が
必要だった。さらに落石や火山弾がしばしば進行を妨げた。ただそれらも、未来で経験した
デスマウンテン大噴火後の惨状に比べれば、ものの数とはならず、リンクの足は着実に、
ゴロンシティへの道をたどっていった。
 七年後の世界では熔岩流で断ち切られていた地点も、いまは問題なく通り過ぎることができた。
その事実に勇気づけられながらも、太陽が西に沈みかかっているのを考慮し、リンクは前進を
中止した。
 このまま休まず行けば、真夜中までにはゴロンシティに着ける。だが日没後、灯りのない
真っ暗な登山道を歩くのは危険。月の出は真夜中よりもあとだから、その光も期待できない。
それに……
 王家の墓で感じたように、冒険の連続で疲れが溜まっている。特にこの二日は夜の活動があって、
睡眠時間が足りていない。今日は早めに寝て、身体を休めておこう。
 暗くなるまでにとあたりを探し、見つけだした横穴へ、リンクは身を収めた。カカリコ村で
補給しておいた食料と水を腹に入れ、穴の内壁にもたれて、全身の力を抜いた。
 肉体には休息を与えておき、けれども心はすぐには眠らせない。問題点を整理するべく、
リンクは思考した。
 問題点の一つは神殿の場所だ。デスマウンテンに神殿があるのは確実と思われるが、ぼくも
シークも、それを確かめてはいない。が、同じく場所の知れない闇の神殿に比べれば、この問題の
解決は容易だろう。ゴロン族、特に族長であるダルニアならば、知っているはずだ。七年後には
死んでしまっていたダルニアに、いまのぼくは会うことができる。
 そのダルニアが第二の問題点。ルトと会った時には、状況のせいもあって、結局、賢者のことを
伝えそこなってしまった。同じ失敗を繰り返してはならない。ダルニアには最初からきちんと話を
しておかなければ。
 そこで大きな懸念を感じてしまう。
 ダルニアを賢者として覚醒させるには──現時点では半覚醒に過ぎないものの──ぼくと
ダルニアが契りを結ぶ必要がある。女性としてのダルニアに、ぼくは対することになるわけだが……
 ぼくの方に問題はない。しかしダルニアの方はどうだろう。
 男ばかりのゴロン族の中で、なぜかは知らないが、女であるダルニアが族長という地位にある。
その奇妙さは、ダルニアが女でありながら男として行動することによって、彼らの間では
解消されているようだ。ゴロン族はダルニアを男と見なし、ダルニア本人もそう振る舞っている。
 そんなダルニアが、女性として、ぼくと契ろうという気になるだろうか。
 その上、大人のダルニアと子供のぼくという年齢差の問題がある。同じく年齢差のあった
アンジュの場合は、あちらもぼくを求めてくれたからよかったが、あのダルニアが子供のぼくを
求める場面など、想像すらできない。
 うまい説得のしかたがあるだろうか。
 いくら考えても妙案は思い浮かばなかった。が……
 下手に言辞を弄しても、ダルニアは納得しないだろう。ぼくの思うままを正直にぶつけるしかない。
 それが最終的な解答なのだ、と思考を打ち切り、リンクは心にも眠りを許した。
4094-8 Darunia III (3/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:14:08 ID:/oquTBNd
「兄貴! リンクが来ましたぜ!」
 部屋に駆けこんできた仲間の弾んだ声を耳にした瞬間、ダルニアの胸はどきりとした。
 来訪の意図は瞬時に察せられた。にもかかわらず、すぐ通せ、と言うべき口は、凍りついた
ように言葉を失った。どうして──と心を探る暇もなく、リンクがずかずかと入ってき、部屋の
中央にすわっていたダルニアの前で立ち止まった。リンクの顔を見て、ダルニアの胸は再び動悸を
打った。
『たったひと月で、やけに面構えが男っぽくなりやがったな』
 動悸はその急激な変化が意外だったからに過ぎない、とおのれに言い聞かせ、ではなぜ名前を
聞いただけで自分は動揺したのか、との疑問は無理やり封じておき、ダルニアは族長として
落ち着いた態度をとろうと心がけた。
「よく来た。まあゆっくりしていけ、と言いてえところだが──」
 リンクの真剣な表情は、ダルニアが言葉をかけても不変だった。
「そうもいかねえ情勢のようだな」
「じゃあ、反乱のことは知っているんだね」
 挨拶も抜きに急きこんで訊いてくるリンクへ、ダルニアは頷きを返し、黙ったまま、すわれ、と
手で示した。リンクはダルニアと向かい合う位置に腰を下ろした。
 他部族との交流が密とはいえないゴロン族であったが、後継者をハイラル全土に求める必要上、
完全に孤立はしていない。特にデスマウンテンの麓にあるカカリコ村の商人とは、収入源となる
ゴロン刀や爆弾を仲介してもらうため、定期的な交易を行っている。つい先日、その目的で村を
訪れた仲間が、ゲルド族決起の飛報をゴロンシティにもたらしたのだった。
「『ゴロンのルビー』は役に立たなかったってことか」
 嘆息するダルニアに、
「そういうわけでもないんだけれど……」
 と、奥歯に物のはさまったような言い方をしながらも、リンクはゼルダ失踪と反乱勃発の経緯を
短く語った。知っていることを全部は話していないな、という印象を受けたものの、ダルニアは
敢えて追求しなかった。
「で、今日はどういう用件だ? また王女様からの頼みなのか?」
 そうだと思って誘導したのだが、答は違っていた。
「いや、ぼく自身からの頼みなんだ」
 そこでリンクが、室内にとどまっていた仲間へ、ちらりと視線を移した。意を察し、ダルニアは
仲間に部屋を出るよう指示した。二人きりになって、リンクは再び話し始めた。
 ──世界支配を目論むガノンドロフのこと、城下町を占領するだけでは飽きたらず、いずれは
カカリコ村を、さらにはゴロンシティを攻撃してくるだろう。対抗するにはゴロン族とカカリコ村とが
共闘する必要がある。すでにゾーラ族は共闘を承諾し、準備を始めている──
 壮大ともいえる話の内容もさることながら、その大仕事の調整役が目の前のリンクであると
いう点が、ダルニアを驚かせた。『ゴロンのルビー』の探索を王家に任されるくらいだから、
意外にはあたらないかもしれないが、それにしてもこんな子供が──と、感嘆の思いをダルニアは
抱いた。リンクを疑う気持ちには、全くならなかった。
『何といってもこいつは、キングドドンゴを倒したほどの男なんだ』
 その「男」という認識が、またも動揺を引き起こしそうになり、ダルニアはあわてて思考を
元に戻した。
 反乱にどう対応するかは、自分も迷っていたところだ。ゴロン族が傍観者でいられるほど
ガノンドロフは甘くないだろう。とはいえ、表立って反抗するのは危険に過ぎる。が、リンクが
ここまで言うのなら……
「わかった」
 ダルニアは腹をくくった。
「具体的には、誰と話をすればいい?」
 まずはカカリコ村の守備隊長に、とリンクは言い、次いで、近いうちに到来するであろう、
インパの名を挙げた。インパの評判はかねてから聞いていたので、ダルニアは納得し、使者を
立てることを約束した。
「忠告を感謝するぜ。大変な世の中になったもんだが、なあに、ゴロン族の安全は俺が守って
みせらあ」
 強がるわけではなく、話の区切りのつもりで、ダルニアは言った。ところがリンクの表情は、
そこでいよいよ真剣味を増した。
「話はこれだけじゃないんだよ。ダルニアがゴロン族を守るためには、ここからの話を聞いて
もらわなくちゃならないんだ」
4104-8 Darunia III (4/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:14:55 ID:/oquTBNd
 勿体ぶった台詞がダルニアの不審を誘った。
「どういうこった?」
 問いに対するリンクの答は、確かに深刻な内容を孕んでいた。
 ──ゲルド族との戦闘だけなら、カカリコ村やゾーラ族との共闘で対応もできる。しかし最大の
問題は、力のトライフォースを得て魔王となったガノンドロフの強大な魔力。奴がゴロン族に
対して打ってくる手は、デスマウンテンを大噴火させること──
「大噴火? いったいどうやって?」
 いくら強大な魔力があるといっても、にわかには信じがたい。
「それは……ぼくも……わからないけれど……」
 リンクは自信なげとなり、黙ってしまったが、突然、霊感を受けたかのごとく、表情に活力が
戻った。
「そうだ! デスマウンテンには竜が棲んでいるんじゃない? 熔岩の中でも生きられるような」
「竜だと?」
「うん、ガノンドロフはそいつを操ってたんじゃないかと思うんだ」
『操ってた』? なぜ過去形なんだ? リンクはその竜とやらを見たことがあるのか? そもそも
リンクは、ガノンドロフがデスマウンテンの大噴火を引き起こすと、どうして知っている?
 疑問は引きも切らなかったが、信頼するリンクが自分から話さないことを詮索するのは控えよう、
とダルニアは自制した。それに、リンクの言う竜についても、思い当たる点があった。
「ヴァルバジアのことか?」
「いるの?」
「伝説だがな」
 ダルニアはゴロン族の古い口伝をリンクに話して聞かせた。
 ──かつてデスマウンテンには、ヴァルバジアという邪竜が生息していた。しばしば暴れては
噴火を誘発し、自らも火を吐きちらして、ゴロン族を苦しめた。そこで当時の族長が、強力な
ハンマーをもって邪竜に戦いを挑み、みごとこれを倒して火山の奥深くに封じこめた。族長は
英雄として称揚され、その名は現在に至るまで語り継がれている──
「心許ない言い伝えだが、邪竜は実在したとも考えられる。お前の言うのが正しいのかもな」
 ダルニアが語り終えると、リンクは勢いよく頷いた。信じきっている様子だった。
「ただ……そうなると、どうやって対抗したらいいんだ? 伝説のハンマーとやらで竜をぶっ叩く
ってえわけにもいくまいし、第一、でかい噴火が起こったら、ここから逃げ出すだけでも容易じゃ
ねえぞ」
 不安を漏らすダルニアへのリンクの返事は、その不安をいっそう強めると同時に、先刻から
感じていた疑問をも強めるものだった。
「そうなんだ! ゴロン族は全滅してしまうんだよ!」
 ダルニアはまじまじとリンクを見つめた。視線を受けたリンクは、はっとあわてた様子で、
「あ、いや……全滅、するかもって……」
 と、きれぎれに言葉を継ぎ、目を伏せた。
 こいつはやはり何かを知っているな──とダルニアは確信した。
 未来に起こることを把握しきっているかのようだ。どういうわけなのか……いや、詮索しないと
決めた以上、リンクを信じるだけだ。重要なのはこれからのこと。未来を知っているのなら、
対応策も持っているはず。
「どうすればいい?」
 端的に問う。顔を上げたリンクは、答の代わりに別の質問をよこした。
「デスマウンテンに神殿がある?」
4114-8 Darunia III (5/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:15:43 ID:/oquTBNd
「ああ、あるぜ」
 質問を奇異に感じながらも、ダルニアは素直に答えた。リンクの顔が喜色に満ちた。
「やっぱり! どこにあるの?」
「デスマウンテンの火口の中だ。ゴロン族の聖地でな。俺たちゃ炎の神殿と呼んでるが」
「炎の神殿か……デスマウンテンの神殿にはぴったりの名前だね」
 はしゃぐように言うリンクに向け、ダルニアは改めて問いを発した。
「で、その神殿がどうだってんだ?」
 リンクは一転して神妙な顔つきとなり、ゆっくりと話し始めた。
 ──強大な魔王ガノンドロフを倒すためには、こちらにも相応の力が必要。鍵を握るのは、
ハイラル各地の六つの神殿に関わる、六人の賢者。賢者たちを覚醒させ、その力を得なければ
ならない──
「ちょっと待て」
 片手を開いて前に出し、ダルニアはリンクを制止した。
「聞いてりゃ、やたら勇ましい話だが、ガノンドロフを倒すだの、賢者を覚醒させるだの、そりゃ
いったい誰がやることなんだ?」
 短い間をおいて、リンクがぽつりと言った。
「ぼくだよ」
 お前のようなガキが──と大声を出しそうになり、どうにか抑える。
 キングドドンゴの件がある。が、そればかりではない。
 リンクの表情。勇気と意志と使命感に満ちあふれた、その表情。
 ただのガキではない。単なる使者でもない。
『いくつもの修羅場をくぐり抜けてきたみてえな、いっぱしの男のツラじゃねえか』
 またも「男」という認識に動悸を誘発される。しかしダルニアは、そこから生まれてくる
温かくも快い感情を、もう避ける気にはなれなかった。
「勇者──か……」
 ダルニアの呟きに、リンクの目が見開かれ──
「あの伝説のマスターソードだって、お前なら引き抜けるんじゃねえかと思うくらいだぜ」
 ──口が何かを言いかけて、けれどもついに声は聞かれない。
 隠していることがあるのだ。
 それでもいい。
「お前が賢者を目覚めさせるんだな?」
 念を押す。リンクが頷く。
「お前がガノンドロフを倒すんだな?」
 さらに強く、リンクが頷く。
「よし」
 どんないきさつがあるのかはわからない。だが、信じる。俺はリンクをどこまでも信じる。
「話の続きだ。お前がここへ来たのは、炎の神殿に関わる賢者──『炎の賢者』とでもいうのか
──そいつを目覚めさせるためなんだな?」
 三たび頷くリンク。
「どこにいるんだ、そいつは?」
 答はなかった。ますます力を増した視線だけが送られてきた。奇妙に思い、そして、不意に
理解ができた。
「……俺──なのか?」
 四度目の頷きが返された。
4124-8 Darunia III (6/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:16:13 ID:/oquTBNd
 場に落ちる沈黙の中、出し抜けに突きつけられた自らの存在意義を、ダルニアは脳内で吟味した。
 デスマウンテンはゴロン族の縄張り。その火口内に建てられた、ゴロン族の聖地である、
炎の神殿。そこに関わる『炎の賢者』が、ゴロン族の族長たる自分である、との指摘は、なるほど
筋の通ったものと思われた。
「つまり──」
 直ちに受容するには、なかなか困難な、その自覚を、どうにかおのれに刷りこませようと
努力しながら、ダルニアはおもむろに口を開いた。
「ゴロン族が全滅を免れるためには、俺が賢者として目覚めなけりゃならねえ、と……そういう
わけか」
 なおもリンクが頷く。
「そのために、俺はどうすりゃいいんだ?」
 一瞬、迷うような表情となったリンクは、しかし思い直したふうに、前にも増して真剣な調子で
説明を始めた。
 ──炎の神殿に身を投じることで、ダルニアは賢者としての力の一端を得る。その力により、
神殿を中心とした一帯に結界が張られ、ゴロン族の安全は守られるだろう。ただし、いったん
神殿に入ったならば、ダルニアは二度と外へ出ることはできず、現実世界とは切り離された存在と
なってしまう──
 最後のくだりを、リンクはいかにも言いづらそうに、途切れがちな言葉で述べた。が、
ダルニア当人は、その言葉の重みを十二分に受け止めながらも、心の平静さを失いはしなかった。
「……この俺が『炎の賢者』サマだなんて……笑っちまうぜ、なあ」
 言ったとおりに苦笑いを漏らし、
「まあ、これも運命ってやつだ……」
 諦観にも似た深い信念をもって、ダルニアはおのれのあり方を確認した。
 族長という立場にあるのだから、いざという時、一族のために我が身を投げ出すくらいの覚悟は、
当然、できている。それに、ゴロン族の一員となって、初めてつらい生い立ちから解放され、
人として真っ当に生きてこられた自分なのだ。一族への恩はなおさら忘れられない。
「俺が賢者として目覚めることで、仲間を助けられるなら、これほど嬉しいこたあねえ」
 穏やかな気持ちで、ダルニアは言い切った。リンクは安堵したように微笑んだ。その微笑みが、
なお心を潤すのを感じながらも、
「だが──」
 ダルニアは疑問を呈することを忘れなかった。
「俺が神殿に行けば賢者として目覚める、とお前は言うが……俺はいままでにも何度か神殿に
入ったことがあるのに、目覚めなんぞは起こらなかったぞ。こいつはどういうわけなんでえ?」
 そこで再び、リンクが迷いの表情となった。無言で何かを考えている様子だったが、やがて
表情は決然とした色調を帯び、低い声による返答が、ゆっくりと口から発せられた。
「目覚めるためには、神殿に行く前に、もう一つ、しておかなくちゃならないことがあるんだ」
「なんだ、それは?」
「ぼくとダルニアが契りを結ぶこと」
4134-8 Darunia III (7/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:16:52 ID:/oquTBNd
 まさに、あいた口がふさがらない、という状態で固まってしまったダルニアが、
「……お前……『契り』の意味をわかってて言ってんのか?」
 ようやく出した言葉に対しても、リンクの決然とした表情は変わらなかった。
「わかってる」
 ダルニアはため息をつき、腕を組んで考えこんだ。
 お前となら喜んで『兄弟の契り』を結んでやるところだが──と、キングドドンゴを倒したあと、
確かに俺は思ったものだ。しかし、それは実現するはずのないことだとも、俺は承知していた。
ゴロン族が契りの相手とするのは、それなりの年齢に達した者だけであって、リンクのような
子供を相手にする習慣はない。
「そりゃ、無理ってもんだぜ」
 ダルニアの諭しにも、リンクは動じなかった。
「無理じゃないよ。ダルニアがその気になってくれるんなら」
 そうは言うが──と、再びため息をつき、ダルニアは思いをめぐらせた。
 契りを施す際、いつも使っている器具は、とうていリンクには受け入れられまい。肥大した
自前の物ならあるいは……いや、それとても、リンクの歳を考えると──
「無理だ。お前にゃ受けられねえ」
「え?」
 リンクが不思議そうな顔になった。
 わかっていないようだ。はっきり告げてやらなければならないか。
「お前のケツにゃでかすぎるってこった」
 ますます不思議そうに、ぽかんと開いていたリンクの口が、やがて、おずおずと言葉を漏らした。
「……あの……ダルニアの言う『契り』って……どんなものなの?」
「そりゃあもちろん──」
 と言いかけ、ダルニアは気づいた。
 どうも話が噛み合っていない。契りといえば『兄弟の契り』と思いこんでいたのだが。
 ダルニアはリンクに説明した。部族内の上下関係を明らかにし、確認するための儀式である
『兄弟の契り』について。上に立つ者の陰茎を、下の者がその肛門に受け入れること。
「えッ!?」
 心底驚いた様子のリンクが、
「ち、違うんだ」
 焦りをあらわにして、首を大きく横に振る。
 やはり誤解があったのか。ではリンクはどういうつもりで『契り』などと言い出したのだろう。
 その疑問は、すぐに解かれた。
「逆なんだよ」
「逆?」
「ダルニアが、ぼくを、受け入れてくれないか、って──」
「何だと!?」
 部屋中に響きわたる大声をあげ、しかしダルニアは、それ以上の感情の激発を、かろうじて
抑制した。
 頭をさまざまな思いが乱れ飛ぶ。
 長い沈黙をはさんで、ダルニアに言えたのは、
「……しばらく……考えさせてくれ……」
 それだけだった。
4144-8 Darunia III (8/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:17:53 ID:/oquTBNd
 ドドンゴの洞窟においてリンクがなした絶大な功績は、ゴロン族全員の知るところであったから、
今回ゴロンシティを訪れたリンクが大いに歓迎されたのは、当然の上にも当然のことだった。
かつてリンクの辞退によって実現の運びとはならなかった宴会が、再び強く提案され、誰の
反対もなく承認された。時局がら、大がかりな祝宴を張るわけにはいかなかったが、前途に
立ちこめる暗い雰囲気を吹き飛ばそうという、みなの暗黙の了解もあって、その晩、ゴロンシティの
大食堂は、常にない熱気と笑い声に満たされた。
 いかつい男たちに囲まれ、背中をどんと叩かれたり、髪をもみくちゃにされたりと、手荒な、
けれども心からのもてなしを受けるリンクは、いかにも子供らしい無邪気な笑みを周囲に
返しながらも、精悍な連中の間にあって何の不自然さもない、確固とした存在感を示していた。
そんなリンクを我がことのように誇らしく思う一方で、ダルニアは心に深い惑いをも澱ませていた。
他の者たちのように、純粋な喜びに浸ることはできなかった。
『ダルニアが、ぼくを、受け入れてくれないか、って──』
 本来なら即座に拒絶しなければならない要求だ。ゴロン族では各人の上下関係が厳密に
規定されている。『兄弟の契り』は目上の者が目下の者に施すもの。とりわけ自分は一族すべてに
契りを施すべき族長であり、契りを受ける立場になることなど、決してあり得ない。
 だが──と、ダルニアは揺れる。
 リンクはゴロン族の一員ではない。制約に束縛されなければならない理由はないし、そもそも
リンクの言う契りは、『兄弟の契り』とは異なったものだ。勇者と言っていいだろう、リンクの
資格により、自分は賢者として目覚める。ならば、リンクが契りを施し、自分がそれを受ける、
というあり方が、むしろ自然。一族を全滅から救うためは、そうしなければならない。
 ──しかし、いくら一族のためとはいえ、族長である俺が……
 ──いや、族長であるからこそ、この俺は……
 振り子のごとく、二つの思いの間を、何度も、何度も、往復したあげく、ついにダルニアは
心を定めた。決め手となったのは、リンクとともに成し遂げた、キングドドンゴ退治の件だった。
 ゴロン族はリンクに恩義がある。その点で、リンクは──年齢とは関係なく──ゴロン族全員に
とって目上の存在だ。族長である自分が契りを受けても、何らおかしいことはない。それどころか、
受けるべきとさえ言えるだろう。恩義には報いなければならないのだから。
 宴が終わりを告げ、一同が大食堂をあとにする中、ダルニアはリンクを呼び止め、周囲に
聞こえぬよう、小さな声で告げた。
「承知だ」
4154-8 Darunia III (9/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:18:51 ID:/oquTBNd
 ゴロンシティには、『兄弟の契り』を行うための特別な部屋が設けられていた。が、ダルニアは
その部屋を使うつもりはなかった。リンクとの契りは『兄弟の契り』とは別物なのだし、族長が
部外者に契りを施されるといった大事件を──いくら自分が納得した上のことであっても──
一族の者に知られてはならなかったからだ。
 ダルニアはリンクを自室に招いた。シティには客用の寝室がないので、ダルニアが客人の
リンクを自室に泊めるという状況を怪しむ者はいない。もちろん、そこで契りがなされるなどとは
誰も想像すらしない、と言い切れる。それでもダルニアは、部屋の入口にしっかりと施錠するのを
忘れなかった。
 薄暗い部屋の隅にしつらえられた寝床に、どすんと腰を落とし、平静な態度を保とうと
努めながら、ダルニアは短く言った。
「来い」
 リンクが歩み寄ってきた。先ほど応諾の返事を聞いた時には、ほっとしたような顔つき
だったのが、いまは緊張のためか、表情はこわばり気味だ。
「経験はあるのか?」
 立ったまま、黙って頷くリンク。
『どこでどうやって知ったのやら……』
 子供のくせに──と、苦笑めいた思いが湧く。が……
 その「子供のくせに」という印象を、自分はこれまで何度リンクに対して持ったことか。
リンクがただの子供ではないことを、すでに知りすぎるほど知っている自分ではないか。
「言っとくがよ」
 自らが達した結論を伝え、かつ、再度おのれにも言い聞かせる目的で、ダルニアはリンクに
語りかけた。
「本来なら、族長の俺が、お前のようなガキから契りを受けるなんざ、あっちゃならねえ
ことなんだ。でも、一族を守り、世界を救うのに必要なことだってんなら、俺は受けてやるぜ。
他ならぬお前の言うことだしな」
 リンクが再び頷いた。表情は固いままだった。緊張をほぐそうと意図し、ダルニアは口調を
軽くした。
「長いこと契りを施す側だったから、ケツを使うのはずいぶん久しぶりだが、たまにゃそういうのも
いいだろう。昔を思い出して、励むとするぜ」
 冗談っぽい台詞にも、リンクの表情は緩まなかった。
「ダルニア……」
 絞り出される声。
「……ちょっと……違うんだ」
 違う?
「……ぼくが契るのは……族長としてのダルニア、というよりも……」
 言葉が切れる。
 うつむき、しばらく無言を続けた末、思い切ったようにリンクは顔を上げ、はっきりと言い放った。
「女としてのダルニアなんだ」
4164-8 Darunia III (10/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:19:36 ID:/oquTBNd
 積み重ねてきた思いの過程を根こそぎ吹き飛ばすリンクの発言で、今度こそ、ダルニアは完全に
言葉を失った。
 ──女だと? 女としての俺と契るだと?
 胸に激情が沸騰する。表に立つのは女と見られることへの頑なな拒否感。絶対に受け入れられない
指摘。
 たちどころに葬るべきリンクの要望を、しかしダルニアは切り捨てられなかった。
 女と見られることへのひそかな喜び。
 おのれの内奥に厳然と存在する、その感情。
 そう、リンクは、初めから俺を女と見なしていた。物事をあるがままに見る素直さで、ずっと
そうだと言い続けてきた。そんなリンクを、俺は肯定した。リンクに女と見られることで生まれる
感情を──(……それでも……いいや……)──俺は自分に許したじゃないか。
 今日だってそうだ。リンクの名前を聞いて俺が動揺したのは、その感情のせいなんだ。さいさい
胸が動悸を打ったのも、リンクの言動の端々に「男」を感じた、「女」の俺の、正直な感情の
表れだったんだ。
 だが……だが……
 おのれの容姿を顧みる。
 子供の頃から女と見られたことがなかった理由。女を捨て、男として生きるしかなかった理由。
 それは忘れられない! どうしても!
「ふざけんな!」
 ダルニアは吼えた。真の感情に反することと知りながらも、自分を吐き出さずにはいられなかった。
「俺のどこが女に見える? そこらの男よりずっとでけえ図体だし、身体つきはがちがちだし、
ツラは不細工だし、胸はねえし、女らしいとこなんざ、これっぽっちもありゃしねえんだ。
こんな俺を、お前は女として相手にできるのか? できるわけねえだろう!」
 怒鳴りつける。仲間の男なら萎縮すること間違いなしの迫力で。
 リンクは萎縮しなかった。
「でも、ダルニアは、女だよ」
 まっすぐな視線は揺るぎもしない。
「他の女の人とは違ったところがあるけれど、ダルニアが女だってことに変わりはないし、それに、
違っているところこそが、ダルニアの魅力だ、と、ぼくは思うんだ」
 魅力──だって?
 予想もしなかった言葉が、思考を停止させた。装備を床に下ろし、服を脱ぎ始めるリンクに、
もはやダルニアは、何も言うことができなかった。
 ほどなく全裸となったリンクが、眼前に立った。股間を隠そうともせず、むしろそこを
ダルニアに見せつけるような態度だった。親子ほども年齢差のある幼い少年の持ち物は、
勃起状態でも貧弱としか呼べないほどの大きさだったが、ダルニアはその「男」に圧倒される
思いだった。何よりも、リンクが女としての自分に対して勃起しているという事実が、生まれて
このかた抱いたことのない、畏れにも似た、しかし甘美な感動を、ダルニアの中に引き起こしていた。
 リンクが近づく。二つの手が肩にかけられる。二つの目が座したダルニアを見下ろす。
「抱きたい」
 そのひと言に、貫かれた。
 優しくも力強いリンクの視線を、やっとのことで受け止めながら、ダルニアは、こくりと頷いた。
4174-8 Darunia III (11/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:20:15 ID:/oquTBNd
 思いは届いた──と安堵し、なお温かな心情を目にこめてダルニアへと送りつつ、リンクは
自らの内面を反芻した。
 確かにぼくは、サリアやマロンやルトやアンジュに対するような見方を、ダルニアに対して
積極的にしたことはなかった。陵辱されるダルニアの幻影をツインローバに見せられて、大きな
違和感を覚えたほどなのだ。それでも、ダルニアが女性であるとの認識は、ぼくの中で一貫している。
最初に会った時からそうだった。
 ぼくはダルニアを賢者として目覚めさせなければならない。熔岩流に蹴落とされて落命すると
いう悲惨な運命からダルニアを救わなければならない。だがぼくの心にあるのは、そんな
義務感だけでは、決してない。
 ダルニアにはダルニアの魅力がある。本人にもわかっていないようだけれど、その魅力を、
ぼくは、はっきりと、感じ取れる。
 寝床に足を踏み入れ、横になる。ダルニアはすわった姿勢を崩さず、戸惑いの表情でこちらを
見下ろしている。腕に手をかけて軽く引っぱると、促しとわかったようで、その身は傍らに
横たえられた。
 手を腕に触れさせたまま、そこに生じる感覚を、リンクは味わった。
 ぼくの脚よりも太い腕。皮膚は硬く、その下にはさらに硬い筋肉が張りつめている。女性らしからぬ
様相ではあるが、これほどの肉体を女性が備えているということ自体が、新鮮な印象としてぼくを
打つ。
 手を肌の上ですべらせる。ダルニアがびくりと身を震わせた。正面にある顔を見つめると、
いつもは怒ったように引き締まっている表情が、いかにも困惑しきった感じになっている。
目の向きも定まらない。こちらを見たかと思えば、すぐに視線はそらされてしまう。
「どうすりゃ、いいんだ?」
 ダルニアがぼそりと言った。意味がとれず、黙っていると、続けて、ややいらつき気味の、
しかし頼りなげな色合いが透けても見える声が、ダルニアの口から発せられた。
「どうするもんなんだ? 女が男と契る時ってのは」
 理解するのに多少の時間が要った。理解ができた瞬間、リンクは思わず、頭に浮かんだとおりの
言葉を漏らしてしまっていた。
「まさか、ダルニアは……初めて、なの?」
「悪いかよ!」
 ダルニアがぷいとそっぽを向いた。
「そんな機会なんざ、いままでなかったんだ。しかたねえじゃねえか」
 言い方は乱暴でも、顔は紅潮している。日焼けと重なって、それは赤黒いというべき色調だったが、
ダルニアの真情を吐露するその変化を、リンクはかわいらしいとさえ思った。
 考えてみれば、驚くまでもないこと。大人はセックスの経験があるもの、と、何となく
思いこんでいたけれど、ゴロン族として生きてきたダルニアなのだから、女としての経験が
なくても不思議はない。
 経験のない女性に対したことは、サリア、マロン、ルトと、三度ある。大人に教えるのは
ゲルドの砦と似た状況だし、先日のアンジュとの体験もその一面を含んでいた。だが、自分より
ずっと年上の大人で、しかも女として未経験という相手は、ダルニアが初めてだ。
「ぼくに任せて」
 とダルニアに、そして自らにも言い聞かせ、リンクは行動を開始した。
4184-8 Darunia III (12/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:21:03 ID:/oquTBNd
 横に向けた身体の前面に、リンクが寄ってきた。頭と両手が胸に触れる。それだけでダルニアの
心臓は激しく鼓動した。
 こんな形で身体を触れ合わせることなど、ゴロン族同士ではあり得ない。『兄弟の契り』は
欲望や愛情が介在しない崇高な儀式だが、一方で、形式的、事務的な面もある。互いの局部を
繋ぐだけの接触だ。それに比べると、いまの状態は、はるかに大きく心を揺り動かす。ただ肌と
肌とをくっつけ合っているだけでありながら。
 自分の腕のやり場に困った末、これが最も自然だろう、と、リンクの背にまわす。
 リンクは俺を「抱きたい」と言ったが、これだとこっちが抱いてやっている格好だ。だいたい、
リンクが腕をいっぱいに広げたって、俺を抱くことはできない。それほど体格が違うのだ。なのに、
抱いている俺が、抱かれているリンクに、逆に大きく包まれているような気がするのはなぜなのか。
 疑問に答えるかのように、リンクの手が動き出す。胸を、腹を、脇を、静かに、穏やかに、
手が撫でさする。その感触が、心をさらに大きく揺らす。身体が固まる。頬が熱くなる。喉元に
衝動がこみ上げる。
 そこへ未知の感触が加わった。何なのか、すぐにはわからなかった。しばらく続けられて、
やっとわかった。
 口。
 リンクの唇が、リンクの舌が、肌の上を這っている。
 これもゴロン族にはあり得ない接触。ぞくりと身体が震えてしまう。嫌悪のためではない。
嫌悪どころか、正反対だ。もっと続けて欲しい、もっと感じさせて欲しいと思わずにはいられない、
この不思議な快さ。
 そう、快さ!
 自覚した刹那、
「あッ!」
 とうとうダルニアの喉から声が漏れた。リンクの口に一方の乳首を捉えられたためだった。
もう一方は指に刺激され、次いで口と手の位置が交代し、乳房とも呼びがたい小さな隆起の上で、
そこだけは女としての特徴を明示する、男よりは大きな乳首を、優しく弄ばれるうち、ダルニアの
感じていた快さはぐんぐんと程度を増し、喉からの呻きも間隔を狭めていった。
 愛撫が休息し、上昇するばかりだった快感が一段落した時、ダルニアの口は深く速い呼吸を続け、
仰向けの胸は同期して大きな上下を繰り返していた。
 それが治まる間もおかず、リンクが身体をずらせ、顔の上に顔を近づけてきた。
「待て!」
 予感がし、
「何するつもりだ?」
 訊いてしまう。
「キス……だけど」
 キス! だって!?
 不思議そうなリンク。そうだろう。こっちの思いなど、わかりはすまい。
 やはりゴロン族がなすはずもない行為。しかし思いの理由は、そこにはない。
 ゴロンシティに来る前、生まれた村で、その行為を交わす男女を見たことがある。みじめな
気持ちがしたものだ。恋人たちの象徴。自分には決して縁のない行為。
 そのはずだったそれを! その行為を! リンクが! 俺に!
 感情が怒濤となって押し寄せる。
 ダルニアは目蓋を閉じた。感情が目から発露してしまうのを封じようと。そして……
 待ち受ける唇に、触れかかる唇。
 同時にリンクをかき抱き、ダルニアはすべての抑制を解き放った。
 女としてリンクの前にあるために。
4194-8 Darunia III (13/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:21:43 ID:/oquTBNd
 リンクも知った。
 背にまわされた腕の力が、唇に応じる唇の動きが、ダルニアの決心を物語っていると。
 両手を頬に当て、できる限りの優しさと激しさで、口を貪る。ためらいがちだったダルニアの
反応も、やがてつられるように活気を帯びた。リンク以上の熱意をもって、唇と舌が乱れ舞った。
 ひとしきりの交歓ののち、今度は顔いっぱいを口づけで埋めつくす。埋めつくしたあとは、首へ、
喉へ、胸へと、少しずつ口をすべらせてゆく。
 再び乳首を吸ってやる。ダルニアが喘ぐ。さっきのようなくぐもった呻きではなく、甲高い
女の声が、あからさまに快感を訴えている。
 そうなんだ。ここがダルニアの女の場所なんだ。他のゴロン族と同じく胸を露出させていても
さほど奇異ではないくらい、いまみたいに仰向けだとわからなくなってしまうくらい、ささやかな
ふくらみだけれど、やっぱりここは女を主張している。逞しい筋肉の上にあって、それは不均衡な
主張かもしれない。だとしても、その不均衡なところが、ダルニアの個性であり、魅力であり、
美しさとさえ言えるんだ。
 口を胸にとどめたまま、もう一つの女の場所を求める。ダルニアが身に着けた唯一のものである
腰布の、裾の下から手を差し入れると、そこは何にも覆われてはいない。探る手が、濃密に
繁茂する毛とともに、ねっとりとした潤みを感知する。その潤みの源である谷間を、女にしかない
谷間を、そう、まさに女の証である谷間を、指はまさぐって、耳は高まる女の声をしっかりと
聞き取って、ところがその時、谷間の上に異常な大きさで濡れ立つ中心点を、指は得てしまって、
心臓は大きく拍動して──
 胸から口を離し、下半身に注意を集める。腰布を解きにかかると、尻が浮いた。ダルニア自身の
意思による動きだった。
 すぐにその部があらわとなる。
 他のゴロン族ほど毛深くはないダルニアだが、それでも恥毛の生え具合は、並みの女性の
比ではない。密度の高さは恥丘と陰唇の皮膚が全く見えないくらい。範囲も広大で、上は臍から、
下は両の大腿の内側までを、一面、覆いつくしている。
 そして最も刺激的なのは、密生する毛を分けて立ち上がった、親指の先ほどもある巨大な陰核だ。
小さなペニスとも呼べるだろう、その異様な器官は、異様さと同時に妖しくも鮮烈な存在感を放ち、
ダルニアにしかあり得ない美を顕示している。
 その美を、ぼくは、堪能したい。
 ダルニアの股間に顔を寄せ、硬い毛が皮膚を刺すのもいとわず、恥液に光る女の勃起を、
リンクはそっと口に含んだ。
4204-8 Darunia III (14/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:22:36 ID:/oquTBNd
 その瞬間、背が弓なりにのけぞり、口が放埒な叫びをあげるのを、悦楽に満たされた脳の片隅で、
ダルニアは意識した。とても自分のものとは思われない高音程の声を、実は確かに自分が発して
いるのだ、ということは、さっきからわかっていた。初めはそんな自分に驚いたダルニアも、
ここに至っては何のためらいもなく、ただ本能に従って、感じるままを喉からほとばしらせるのだった。
陰部と口との接触は、これまたゴロン族にはありうべからざる行為だったが、そんなことは、もう、
どうでもよかった。
 陰核への刺激で得られる快感は、それを『兄弟の契り』で使用してきたダルニアにとって、
既知のはずのものだった。が、リンクの口によってもたらされる感覚は、肛門を往復する際の
単調な摩擦とは比較にならないほど、複雑、繊細、かつ躍動的といえた。ゴロン族の掟は自慰を
禁じていたので、ダルニアの陰核がそこまで素晴らしい感覚を得るのは、このたびが初めての
ことだった。それをダルニアは率直に嬉しいと思った。
 次いでさらに大きな悦びが訪れた。リンクの口が下に移り、膣口を舌で愛撫し始めたのだ。
敏感さでは陰核に劣るはずのその部分は、しかし陰核とは異なって、これまでいかなる理由に
よっても使用されることのなかった、まごうことなき女の領域だった。ゆえにそこへの誠実な
奉仕は、自分は女であるとのダルニアの自覚を強烈に高め、陰核が得る以上の快美感を、
その身中に呼び覚ますのだった。
 舌と唇の幻惑的な活動が、ダルニアの内の快感をぐんぐん膨れあがらせた。固められた舌が
膣へと差しこまれるや、ついにダルニアは絶頂に至った。生まれて初めて女として果てたという
感動が、ダルニアを幸福感でいっぱいにした。
 幸福は終わらなかった。舌は強力に膣を攻め続け、応じてダルニアは達し続けた。体格の
差により、リンクの舌が届く範囲は、膣口のわずか奥までに過ぎなかったが、快さを感じるには
充分だった。
 何度となく絶頂を経たのち、リンクの口が股間から離れるのを、ダルニアは察知した。目で見る
余裕は失われており、ただ触感がなくなったことで、それと知ったのである。
 快感の途絶を惜しむ間もなく、今度はリンクが身体を乗せてきた。いままで舌が差しこまれて
いた部分に、別の硬い物が触れた。触れただけで達してしまった。その波がまだ引かないうちに、
触れていた物が入ってきた。これも体格差のためだろう、痛みはなく、波に波が重なった結果の
純粋な喜悦のみが、ダルニアを支配した。
 陰茎の先端が到達しうる場所は、舌よりは深いようだったが、子供のリンクでは、大柄な自分の
膣を満たすには、まだまだ及ばないだろう──と、かすれかかる頭で、ダルニアは考えた。
 といって、その実態が何かを妨げるわけでもなかった。それどころか、自分の膣の中にリンクの
陰茎が収まっているというだけで、ダルニアの幸福感は頂点を極めていた。
 自分が女であること。
 自分が、いま、女として性交していること。
 自分が、いま、女として性交している相手が、リンクであること。
 何もかもが嬉しい。何もかもが悦ばしい。
 自分が、こうした交わりを、生涯のうちで、いま、この時、ただ一度しか経験できないとしても、
何の不足があるだろう。
 リンクが動き始めた。
 体内を陰茎で摩擦される感覚は、肛門で知りつくしていた。だが感覚の性質は、膣と肛門とでは、
明白に異なっていた。膣の方がよほどいい──とダルニアは思った。それはやはり自分が女だから
なのだ──とも。
 その思いが、なおさらダルニアを燃え上がらせた。あまりにも小さいリンクは、頭の位置が
やっと胸に届くかどうかで、どんなに頑張っても顔を間近に見ることはできない。股間で
結び合ったままでは、唇を合わせられない。それだけが残念だった。代わりにダルニアは、
リンクを抱えこむように背へとまわした腕に、ぐっと力をこめた。応えるかのように、その時までは
控えめだったリンクの動きが、俄然、速度と勢いを増した。嬌声を放ちながら、ダルニアは
絶え間なく登りつめた。どれくらいの時間ののちか、リンクが、これ以上は不可能と思われる
ほどの激しい躍動に移り、ぴたりと体動を止め、陰茎の脈打ちだけを残してがくりと力を失い、
そして脈打ちが静かに消えてゆく頃となっても、ダルニアの絶頂感は終わらなかった。
 やがて萎縮した陰茎が膣からこぼれ落ち、ようやくダルニアの身体にも、終幕の平安が訪れた。
4214-8 Darunia III (15/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:23:14 ID:/oquTBNd
 最初に肌を合わせた時と同じ体勢で、二人は身を弛緩させた。リンクは横を向いたダルニアの
胸にぴったりと身を寄せ、ダルニアは逞しい腕でリンクを抱いた。
 抱いている俺が、抱かれているリンクに、逆に大きく包まれているような気がする。
 その印象は、リンクとの契りを経たいま、いっそう大きくなっているようだ。
 なぜだろう。これもリンクの器というものだろうか。
 胸元にあるリンクの顔を見る。目を閉じている。眠っているのか。頬が胸にくっついていて、
表情がよくわからない。
 もっとよく見ようとして、身体を引く。頬が胸から離れると同時に、リンクが目をあけた。
こちらを見上げ、にっこりと微笑む。
『こうしてると、歳相応のガキとしか思えねえんだが……』
 そのリンクが、自分に、どれほどのものをもたらしてくれたことか。
 リンクに何か言うべきだろうか。
 ダルニアはリンクの顔を見つめた。無邪気な微笑みとともに、深い満足感がうかがわれた。
しかもそれは、決してリンク単独の満足ではなく、ダルニアが満足していることを知った上で、
そのことに満足している、とでも言いたげな、篤い心遣いを含んでいると感じられるのだった。
言葉は要らないな──と、ダルニアは得心した。
 代わりにダルニアが口にしたのは、実際的なことである。
「デスマウンテンの大噴火ってのは、いつなんだ?」
 リンクの顔から微笑みが消えた。
「半年くらいあと……だと思う」
 曖昧さを残す言葉とは裏腹に、表情は確信を宿していた。疑う余地はなかった。
「半年か……」
 いますぐ炎の神殿に赴けば、余裕をもって一族を救うことができる。しかし、ゲルド族との
衝突を目前に控えた現在、いきなり族長が姿を消すわけにはいかない。共闘態勢について
カカリコ村と協議する必要があるし、部隊の編成、武器の調達、食糧の確保など、やるべきことは
いくらでもある。族長の跡継ぎも決めなければならない。半年あっても足りないくらいだ。
「山の様子にゃ、気をつけとくよ。噴火の兆候があったら、すぐ神殿へ行く。それでいいんだな?」
 リンクが頷く。
「そうやって賢者として目覚めたら、俺も役目を果たせるってこったな」
 ダルニアは軽く笑った。リンクは笑いに応じなかった。
「実は……」
4224-8 Darunia III (16/16) ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:24:09 ID:/oquTBNd
 ──いまの状態で神殿に入っても、ダルニアは賢者として完全には覚醒できない。結界を張って
ゴロン族を守ることは可能だが、ガノンドロフを倒すためには、その後、さらに真の覚醒へと至る
必要がある──
「どうやって?」
 いぶかしむダルニアの凝視を避けようともせず、リンクは明快に言い切った。
「ぼくと、もう一度、契ることで」
「ほう……」
 今夜きりかと思っていたら……
「いつだ?」
「七年後」
「へえ……」
 ずいぶんと先の長え話だが……
「楽しみにしてるぜ」
 リンクの頭をぽんと叩き、頬に笑みを溜めながら、ダルニアは想いを浮遊させた。
 まだ機会があるとは嬉しいことだ。それに七年も経てば、リンクも立派な大人。今夜とは、また
違った契りになるだろう。
『そういや──』
 結局、尻を使う必要はなかったわけだ。せっかく念入りに清めてきたのに、勇み足だった。
もちろん──朝までには時間もあるから──無駄にならないようにしようと思えば、できもするが……
 いや、もう充分だ。
 そっちは七年後のためにとっておこう。恩義に報いるのは、その時でいい。
 ダルニアはおかしくなった。
 世界を救うための契りだというのに、俺は自分の快楽のことばかり考えている。
『まあいいじゃねえか』
 自嘲が開き直りへと転化する。
 やっと女になれたんだ。せめて今夜くらい、女として想いを馳せたって、罰は当たるまい。
「な」
 独り言のつもりだったが、呼びかけと取ったのか、リンクがきょとんとした顔つきになった。
説明する気は起こらなかった。リンクのそんな顔を見ているのが、愉快でもあった。


To be continued.
423 ◆JmQ19ALdig :2008/02/05(火) 00:24:42 ID:/oquTBNd
以上です。やはりダルニアでエロというのは難しいと痛感。
424名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:33:16 ID:+pPPTVIk
スマブラスレ見てからリロードしたらびっくり
今回もお疲れさま。
425名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:50:05 ID:NX40DIF1
とめてくれてありがと
426名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 03:48:06 ID:/jhWnrP0
リンクの笛で1ノリノリでダンスしちゃうダルニアが好きすぐるので、
今回の小説の脳内イメージを格ゲーの女キャラぐらいに押さえこむのに
ものすごい苦労した
427名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 08:58:37 ID:I7my/WfN
俺はこの物語の設定にどっぷり入り込んでるから違和感ないな。
1回で終わったのがちと残念だけど、7年後に期待。wktk
428名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 20:53:41 ID:s1glVYqb
とりあえず俺の脳内ダルニア姉さんはポニテで
429名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 22:46:37 ID:8HqJJlBn
古いCMだが、「ダッダーン ボヨヨンボヨヨン」なイメージだ
430名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 01:51:42 ID:sU6jZ42e
「行くぞ!Like×2!!」
リンクはジャンプ斬りを放った!
「うぉわ!」
しかし、そのまま飲まれてしまった!
「む、誰だ?」
奥の方から声が聞こえてきた・・・
「何やってんの?シーク・・・」
声の主はシークだった!
「いや、君をストーカーしてたら飲まれてしまった。」
「は??」



色々とゴメン
431名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 05:53:55 ID:TppTAoAV
>>430の続き

「どうだい、もう少しこっちへ来ないか?」
内部は意外にも広がっており、シークと僕が収まるには十分な空間だった。
だが、こんな悠長でいいのだろうか。
「こっちへ、って……脱出しなきゃ!」
「まぁ待ちたまえ」
落ち着いた、低い調子の声色で僕を呼び止めるシーク。
「二人きりになるなんてめったにないんだ」
「だ、だから?」
「そこでだ。 その、そう、えー、あー、リンク」
シークは言葉を曖昧にしたまま僕に向き直ると、おもむろに下半身を露出させた。
「シーク、それは……!」
「リンク、すまない」
翳りのある独特な表情で。
炎の中に哀愁を隠す緋色の瞳で。
薄暗い空間の中で、シークは静かに言葉を紡いでゆく。
「リンク……僕のライクライクも応戦状態になってしまったみたいなんだ」
「なっ……!」
「君のマスターソードで、僕のライクライクにお仕置きをしてくれ」

To be confused...
432名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 14:11:48 ID:sczsUuQu
>>423
コッコ姉さん苦手だけどダルニアは好きだな
GJ!!でした
433名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 20:59:33 ID:/7nlcKZO
◆JmQ19ALdig氏のssを初めて読んだ。

ハイラルで革命を起こし、賢者制度を永久に廃止すべきだ!
434名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 21:22:49 ID:2YrweUmE
むしろハイラルのうら若き女性は全員賢者にすべきだ!

リンク腎虚
435名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 00:23:33 ID:/qOxi2wk
>>431
これはウホッなのかアッーなのかどちらでもないのか。
436名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 04:24:24 ID:KtEN1bIk
>>435
多分ネタじゃね?最終行のとべの後から考えるに。
437名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 20:36:12 ID:QYZr6rXI
>>423
相も変わらずすごいなぁ。
これでまだ物語の半分も行ってないなんて……
生きててよかったぜ
438名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 18:31:34 ID:71pNOiwn
これは?携帯だけだけど
ttp://courseagain.com
439名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:30:45 ID:/lGenhZD
はいはいブラクラブラクラ
440名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 01:20:06 ID:oAdUaZdT
しかもマルチ
441 ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:43:07 ID:739AAdYT
私本・時のオカリナ/第四部/第九章/大妖精編、投下します。
リンク×大妖精@子供時代。エロ分は少ないです。
4424-9 Great Fairy (1/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:43:51 ID:739AAdYT
「ちょっと気になるんだが……」
 翌朝、ゴロンシティを発とうとするリンクに、眉根を寄せたダルニアが、心配そうな声で
語りかけてきた。
「いったん神殿に入ったら、俺は二度と外へ出られない──と、お前は言ったな?」
 リンクは頷いた。
「すると、俺たちが七年後に会おうと思ったら、お前は神殿に入ってこなきゃならねえ」
 当然だ。初めからそのつもりでいる。
「そいつは難題だぜ」
「え?」
 不審を感じるリンクに向けて、ダルニアが説明を始めた。
 ──炎の神殿があるデスマウンテン火口内は、灼熱地獄といってもいい暑さである。火山という
ものに慣れているゴロン族でも、いられるのは一時間が限度。他の者なら数分と耐えられまい。
自分は賢者となるのだから、神殿に入りさえすれば安全なのだろうが、リンクの場合は、神殿の
入口に達することすら覚束ない──
 思わぬ障害に当惑するリンクだったが、
「しかし、当てがねえわけでもねえ」
 とのダルニアの言葉に希望を持ち、続きを促した。
「例の伝説だ。きのうはそこまで話さなかったが、かつて邪竜に戦いを挑んだゴロンの族長は、
デスマウンテンの頂上付近に住む二人の大妖精から大いなる力を授かった、と言われてるんだ。
その力の一つがハンマーだったんだとさ。邪竜が実在するなら、大妖精だって実在するだろう。
お前の助けになるかもしれねえ。山頂へ登って捜してみたらどうだ?」
 あやふやな話ではあるが、行ってみる価値はありそうだ。
 リンクはダルニアから山頂までの道筋を聞き取り、別れを告げて、ゴロンシティをあとにした。

 初めは険しかった道も、尾根伝いとなってからは歩きやすく、行程は順調に進んだ。山頂に
近づくにつれ、小噴火に伴う火山弾の飛来が頻度を増したが、進行をとどめさせるほどでは
なかった。最後は垂直に近い崖をよじ登る羽目となったものの、慎重な行動の末、リンクは無事に
山頂へ到達した。
 道は岩壁にさえぎられて終わっていた。岩壁には二つの横穴があった。右側の穴を覗いてみると、
奥はかなり深そうで、遠くに赤っぽい光が見えた。リンクは先を目指した。
 気温の上昇で察せられたとおり、穴を抜けた所がデスマウンテンの火口だった。ダルニアが
言ったように、そこは猛烈な熱気が渦巻く炎暑の地であり、立っているだけで意識が失われ
そうだった。目の前の崖際まで足を出し、底に煮えたぎる熔岩の海を見下ろすのが精いっぱいで、
神殿の場所を同定する余裕などなかった。ただ、崖の端に一体のゴシップストーンがあり、
炎の神殿に関するメロディを秘めているのが、あるいはそれかもしれない、と推測できただけ
だった。しかたなくリンクは来た道を帰った。
4434-9 Great Fairy (2/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:44:27 ID:739AAdYT
 山頂に戻り、今度は左側の穴を探ってみた。こちらも奥は深く、しかし光はなかった。側壁に
手を触れさせて身体の安定を保ちながら、リンクは真っ暗な穴の中をゆっくりと前進した。
 やがて、ぼんやりとした光が見えてきた。安堵と警戒を入り混じらせ、光を目指して歩みを
速める。穴は袋状に広がった空間で行き止まりとなっており、最奥部には泉が横たわっていた。
その泉の水が光源だった。外光は届いていないのだから、それを反射させているわけではない。
水そのものが、おぼろげな黄色っぽい光を発しているのだ。
 以前の経験により、泉は妖精を連想させた。しかも自然に光るという不思議な水を湛えた泉だ。
リンクは期待を抱いた。が、しばらく待っても、期待したことは起こらなかった。
 失望してその場を去ろうとした時、水際の岩に目が行った。トライフォースの紋様が彫られていた。
王家の墓で壁を開いた時のことを思い出し、そこを叩いてみた。岩は何の反応もよこさなかった。
諦めず、頭を絞った末、トライフォースと王家の関係から、一つの着想が得られた。リンクは
『時のオカリナ』を取り出し、『ゼルダの子守歌』を奏でてみた。
 そのとたん、耳をつんざくような、絶叫に近い笑い声とともに、泉の水面から巨大な女が身を
回転させながら飛び出してきた。宙に浮いたまま、ぴたりと動きを止めた女は、リンクに目を向け、
顔に笑みを浮かべて、こう言った。
「ようこそ、リンク。私は、力の大妖精」
 リンクは唖然として女を眺めた。
 目的とする相手に会えた。それはいいのだが、この突拍子もない対象に、ぼくはどう反応すべき
なのか。
 大妖精というからには普通の妖精よりは大きいのだろう、と思ってはいたものの、これほどとは
予想しなかった。コキリ族が連れている妖精や、コキリの森の近くの泉で見た妖精は、らくらく
手に乗る大きさでしかなかったのに、この大妖精たるや、ダルニアをもはるかに上まわる巨体なのだ。
 見たところは成熟した女性の姿。歳の頃はよくわからない。十代後半から中年までの、
どこにでも当てはまりそうな感じがする。だがその間であるという保証もない。なにしろ
妖精なのだから、何百歳かもしれないし、何千歳かもしれない。年齢という概念があるか
どうかさえ、定かではない。
 容貌は独特。長く豊かな赤い髪が、三つの固まりにまとめられ、頭の後ろにぶら下がっている。
顔立ちは整っていると言えなくもないけれども、目が異様に大きい。また睫毛が濃く長いせいか、
目のまわりに黒い線が引かれているように見える。そこから放たれる視線は、こちらの身を貫く
かのごとく強靱で、見返すだけでもかなりの気力が必要。顔は笑っているが、それがかえって
不気味にも感じられる。
 首から下も風変わりだ。丈の短い毛皮が胸から下の胴を覆っている。両脚には膝の上まで届く
黒っぽいブーツ。肩と両腕と両大腿は素肌のまま。胸の盛り上がりは衣装を突き破らんばかりで、
身体全体の大きさを考慮しても、なお驚異的なボリュームだ。
 妖精というイメージにはほど遠い、原始の獣と呼びたくなる様相。
 ところが──さっきの笑いは別として──声は実に美しい。ちょっと聞いただけで幻想に
引きこまれそうになるくらい陶酔的で、それだけは妖精にふさわしいと思わされる。
 その声で自分の名を呼ばれたことに、改めて気づいた。そして、
「いずれ時の勇者が来ると思っていたわ。ガノンドロフも近頃は悪さが過ぎるようだから」
 続く大妖精の言葉は、リンクに驚きをもたらすと同時に、その存在の深遠さをも思い知らせた。
 ぼくの素性も、存在意義も、行動背景も、すべてわかっているのだ。こちらが何も言わないのに
見通しているあたり、さすが大妖精というべきか。
4444-9 Great Fairy (3/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:45:55 ID:739AAdYT
「求めることがあって、来たのではない?」
「うん」
 気圧される心を奮い立たせ、どうにか頷く。笑みを大きくした大妖精は、
「いいわ。助けてあげる」
 と応じ、意味ありげな口調であとを続けた。
「でも、その前に、私の言うことをきいてもらうわ」
 代償がいるのか──と思う間もなく、大妖精は空中にとどまったまま衣装を脱いだ。下には
何も着けておらず、ブーツを履いただけの裸体が、次いでゆっくりと降下し、泉水に浸された。
腰が底についた。水深は浅いようで、その肢体のほとんどが水面上に現れている。
「私を満足させてちょうだい。人間に会うのは久しぶりだから、期待しているわよ」
 後ろに傾けた上体を、水底についた両手で支え、大妖精は両脚を開いた。膝を曲げ、股間を前に
突き出すような格好だ。
 何が期待されているかは明白だった。が、リンクは棒のように動けなかった。
 単刀直入にもほどがある。段取り抜きでいきなり誘われても、即応できるわけがない。いや、
できたとしたって……
 伝説のゴロンの族長も、同じことを要求されたのだろうか。ゴロン族なら身体が大きいから、
相手になれたかもしれない。しかし子供のぼくだと話は全然違う。挿入しようとしても挿入に
ならないだろう。この泉にペニスを突っこむようなものだ。
「さあ、早くして」
 大妖精が促す。声の調子がいくぶん強くなっている。
「でも……」
 ためらうところへ、さらに声がかぶさる。
「無理は言わないわ。あなたにできることをしてくれたらいいのよ」
 何かしないではすまないようだ。だが、いったいぼくに何ができるだろう。
 しばし思考したのち、リンクは腹を据えた。装備を下ろし、泉に踏みこんで、身を近づけた。
やはり水は浅く、下腿の半ばまでも濡れることはなかった。
 情を煽るつもりか、大妖精は脚をさらに大きく開き、局部を露呈させた。それを無視して、
胸元に歩み寄る。不審げな表情となる大妖精だったが、リンクが片側の乳房の前で立ち止まると、
再び顔に笑みを戻し、
「順序を踏むというわけ? いいわ。好きにして」
 と蠱惑的な声で言いながら、胸を突き出してきた。リンクの頭よりも大きな、まるまると
張りつめた乳房が、眼前に迫った。両手で抱えるようにして受け止める。足を踏ん張らなければ
押し倒されかねない重量感だ。
 おそるおそる手を這わせる。よほど中身が詰まっていると見え、肌は緊満し、押さえる手に
強い弾力を返してくる。その皮膚は、やや黄色味を帯びているが、泉の光を浴びていることを
考えると、ほんとうは純白に近いのだろう。染みも黒子もない、不自然なほど均一な色調の中で、
穏やかなアクセントとなっているのが、乳房の頂上にある薄赤い乳暈。ただし穏やかなのは
色だけで、規模からくる印象は強烈だ。そこだけは弾力を想像させない、皺のある皮膚で覆われた、
硬そうな乳首がそそり立っている。そう、そそり立っているとしか表現できないくらいの、それは
雄大な器官だった。
 指でつまむには大きすぎるその部分を、片手に包んで、やんわりと揉む。
「……ん……んん……んあぁ……ぁぁ……」
 ため息とともに、大妖精がくぐもった呻きを漏らす。ふだんとは異なる触り方ではあるものの、
この様子だと適切な行為を自分はしているのだろう──と鼓舞され、揉む手に力をこめる。両手で
こねてやる。口に含んでやる。乳首は口腔を満杯にし、舌を動かすだけでも一苦労だ。けれども
耐えて頬と顎を懸命に運動させ、熱をこめて刺激する。同時に両手で乳房を抱き、届く範囲
すべてにその手を及ばせて、可能な限りの愛撫を施す。
4454-9 Great Fairy (4/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:46:48 ID:739AAdYT
 口技を続け、さらに片手をもう一方の乳房へと伸ばす。なんとか乳首に指が届く。大妖精の声が
音程を上げる。悦んでくれているようだ。それはいいのだが、この体勢は苦しい。横に立って
いたのでは、反対側の乳房には、手をやるのが精いっぱいだ。
 いったん手と口を引き、訊ねてみる。
「上に乗ってもいい?」
 怪訝な顔をしながらも、
「いいわよ」
 と許しをくれる大妖精の下腹部へ、ブーツを脱いだリンクは、身を跨らせた。前傾すると、
ちょうど顔が乳房に届く。手で触れるにも好都合だ。
 胸への接触を再開する。今度は存分に両方を攻められる。いっそうの力と熱意を発揮する
リンクに、大妖精は絶え間ない喘ぎの下から、快美と賞賛の言葉を贈ってくれた。
 ひとしきりの戯れののち、
「そろそろこっちもかわいがってちょうだい」
 淫らな調子で大妖精は言い、リンクを軽々と抱き上げ、股の間に置き直した。リンクは泉の中で
膝をつき、かがんだ姿勢となって、あられもなく開陳された陰部を観察した。
 形状は人間の女性と変わらない。陰毛は髪と同色で、密度は濃いが、範囲は通常の域内だ。
しかし身体が大きい分、著しく広いと見えてしまう。陰核も巨体に比例し、異常な腫脹を呈している。
実寸はダルニアよりも上だ。すでに何度も見た女性の部分が、大きいというだけで、やけに奇怪な、
けれども新鮮なものとして目に映る。
 努めて新鮮さの方に印象を傾け、ごくりと唾を呑みこんで、リンクは顔を近づけた。開かれた
粘膜は充血し、すでにたっぷりと分泌された恥液によって、てらてらと光り輝いている。
焦れでもしたのか、大妖精がやにわに腰を突出させてきた。リンクの顔面は二つの唇の間に
押しつけられ、粘液まみれとなってしまった。
 そうなると、もう躊躇してはいられなかった。おのれを励まし、リンクは活動を開始した。
 左右の襞を唇にはさむ。その内側に舌と指を這いまわらせる。尖った陰核を口中に入れる。
乳首ほどではなかったが、それでも相当な体積を持つ陰核は、リンクの口をかなりの領域に
わたって占領した。折から大妖精が、
「おぉッ!……おあぁッ!……んんあああぁぁぁぁッ!」
 猛った声とともに股間を激しく揺り動かし始めたため、息をするのも難しくなった。加えて、
女が男のペニスをくわえる時はこんな感じなのだろうか、などとしたくもない想像をしてしまい、
頭が惑乱しかかる。そうした動揺もなんとか抑え、リンクはひたすら口の奉仕を続けていった。
 身体の動きから察せられるように、大妖精は明らかに喜悦を感じており、しかも感じる程度は、
リンクが活動を旺盛にするにつれ、ぐんぐん増加しているようだった。これなら満足させることが
できそうだ、とリンクが安心しかかった時、いまやとどまるところなく快感の喘ぎをあげていた
大妖精の口が、奔放きわまりない叫びを噴出させた。
「リンク! いいわッ! とてもいいッ! だけど中も! 中もよくしてッ!」
 中だって? 膣のことか? それは無理だ。ぼくの身体では無理なんだ。
「早くッ! 早くぅッ! 私の中も気持ちよくしてぇッ!!」
 無理は言わないと、ぼくにできることをしてくれたらと、そういう話だったじゃないか。
「もう我慢できないッ! どうにかしてッ! 私のここをどうにかしてぇッ!!」
 どうにかしてと言われても、どうしようもない。ぼくにはとうてい不可能だ。こんな巨体の膣を
満たすためには、ロンロン牧場で見た馬くらいでないと追いつかない。あの馬の物はぼくの
腕ほどの太さと長さがあって──
4464-9 Great Fairy (5/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:47:23 ID:739AAdYT
『腕?』
 連想がとてつもない思いつきとなってリンクを襲った。
 冗談じゃない。そんなことできるわけがない。できるわけが──
 ないだろうか? ほんとうに?
 そこに指を挿れるのを、いままで全くためらわなかったぼくじゃないか。挿れる物が多少
大きくなったって同じじゃないか。
 あまりにも奇抜な自らの発想におののき、しかし考えれば考えるほど、その発想は合理的と
思えてくる。
 そうだ、これだって「ぼくにできること」の一つには違いない。ならば──
 覚悟を決める。左手を握り、膣口に押し当てる。接触を感じ取った大妖精が、ひときわ激しく
叫びを乱れ散らせる。それに応じて、リンクは腕を突入させた。
「うおおあああぁぁぁぁッッ!!!」
 咆哮という表現がぴったりの激越な音響を口からほとばしらせ、大妖精は体動を止めた。
骨盤部の筋肉がぎしぎしと収縮し、膣に挿入されたリンクの左腕は痛いほどに圧迫された。
その圧迫に耐え、じりじりと腕を進ませてゆくと、筋肉の収縮も少しずつ緩み、やがてリンクの
手の先は最深部に到達した。
 膣壁が、のたうつ触感と想像以上の熱感を、腕の皮膚に伝えてくる。指やペニスでは得られない
異様な生々しさが、リンクの胸をどくどくと拍動させた。それは決して大妖精に固有の特徴なのでは
なく──巨体がそれを増幅させているのは確かであろうが──これまで特に意識しなかった、
女の性器というものに共通する「生物的」な側面を、如実に表現している、と思われるのだった。
 一時の緊張を解いた大妖精が、再び行動を要求してきた。リンクはゆっくりと左腕を前後に
往復させた。腕は膣内にゆったり収まっており、過剰な衝撃を与えてはいないと確信できては
いたが、さすがに急速な運動はためらわれたのだ。けれども大妖精にとって、そんな気遣いは
無用のようだった。悠長な動きでは物足りないとでも言いたげに、もっと、もっと、と、大妖精は
リンクを叱咤激励した。そこでリンクも逡巡を捨て、腕の振幅速度を倍加させた。嬌声を
響き渡らせ、身をのたうちまわらせながらも、大妖精は要求をやめなかった。リンクは最大の力を
腕にこめ、できる限りのスピードでピストン運動を繰り返した。
 腕がちぎれそうに感じられてきた頃、ようやく大妖精は絶頂に至った。耳がつぶれるかと
思われるほどのわめき声が爆発し、先刻をはるかに凌ぐ膣圧が左腕を押し包み、同時に挿入部から
大量の粘液が飛び散った。前にいたリンクは粘液の直撃をまともに受け、全身がべとべとになって
しまった。
4474-9 Great Fairy (6/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:48:03 ID:739AAdYT
 背をのけぞらせ、息を大きく荒げていた大妖精は、しかし大した間もおかずに涼しい笑顔を
取り戻し、
「期待した以上によくやってくれたわね。満足よ」
 けろりとした調子で言うと、身なりを調えて、泉の上に浮き上がった。
「では、あなたに剣の技を授けてあげる。さあ、受け取って」
 大妖精の両手から、波のような黄金色の光が放たれ、リンクの身体を取り囲んだ。特に苦痛も
快感ももたらすことはなく、じきに光は消え去った。
 何が起こったかわからず戸惑うリンクに、大妖精が説明をくれた。それによると、いまリンクが
得た剣技は『回転斬り』というもので、身のまわりを一周させるように剣を振るうと、剣が届く
範囲を超え──さほどの距離ではないが──空間を隔てた場所にまで力を到達させることができる、
とのことだった。試しに剣を抜いて振りまわしてみると、剣の長さよりも遠い地点の水面に波が
立ち、大妖精の言葉が真実であると納得できた。
 これなら、刃渡りの短いコキリの剣も、もっと長い大人用の剣と同じ威力を持つことになる。
マスターソードなら、なおさら強力になるわけだ。
「どうもありがとう。でも──」
 礼を述べながらも、リンクの戸惑いはなくならなかった。
 剣技は確かに助けとなるが、そもそも大妖精に会いに来たのは、超高温下のデスマウンテン火口で
活動するにあたって援助が欲しかったからだ。
 その点を告げると、大妖精は首を横に振った。
「それは私の管轄ではないの。火口にいる、もう一人の大妖精の領分よ。そちらに頼んでごらんなさい」
 火口のどこにいるのか、とリンクは訊いたが、期待した答は得られなかった。
「いまのあなたには、まだ早いわ。大人になったら、もう一度いらっしゃい」
 それだけでは素っ気ないと思ったものか、大妖精は続けて別の忠告を口にした。
「大妖精はハイラルの他の地方にもいるのよ。機会があったら訪ねてみることね。きっとあなたを
助けてくれるわ。ここからだとゾーラの泉が近いかしら」
 言うだけのことは言った、というふうに、大妖精はそこで言葉を切り、あの絶叫めいた笑いを
あげて、回転しながら水面に落ちた。浅いはずの水は大妖精の巨体をかき消すように呑みこみ、
あとには何も残らなかった。

 泉の水で身を清めたあと、穴を出て山頂に戻ったリンクは、思わぬ相手と再会することになった。
ケポラ・ゲボラである。崖際の岩上に身を置いた、この巨大な梟は、気味悪さと安心感を合わせて
印象づける、例の不思議な目でリンクを見つめ、
「大妖精の力で、一段と逞しくなったようじゃな」
 と、おかしみをこめたような調子で話しかけてきた。
 ぼくと大妖精が何をしたのか知っているのだろうか──と気後れするリンクだったが、その
気後れを打ち消すつもりもあり、ケポラ・ゲボラの言葉に直接は答えず、やや強い声で問いかけた。
「あなたの覚醒については、まだ教えてくれないの?」
「まだまだ」
 ケポラ・ゲボラは目を閉じ、首を片側に傾けた。肩をすくめたようにも見えた。
「いずれ、わかる──と言うたじゃろう」
 その「いずれ」がいつなのかを知りたいのに……
『いや』
 おのれを抑える。
 この梟を信じる、と、ぼくは決めたんだ。ここで焦ってもしかたがない。
「下界まで行くなら、力を貸そう」
 話題が転じられた。ケポラ・ゲボラもこの件に触れられることを望んでいない、と悟った
リンクは、自らの意識を、さっきの大妖精の言葉と、懐にある品とに向け、端的に返事をした。
「ゾーラの里へ」
4484-9 Great Fairy (7/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:48:40 ID:739AAdYT
 ルトはハイリア湖での顛末を誰にも漏らさなかったようで、キングゾーラはリンクを王の間に
迎え入れるやいなや、心配げに事情の説明を求めてきた。戦争から避難させた娘が、あっという
間に舞い戻り、しかもことの次第をいっさい話そうとしないとあっては、キングゾーラが心を
痛めるのも無理はなかった。リンクは簡単に経緯を述べた。しかしルトが突然に機嫌を損ねた
理由はリンク本人にもわからないままであり、その点でキングゾーラの愁眉を開かせることは
できなかった。
「どうせ、いつもの気まぐれなのじゃろうが……そなたには、すまぬことであったの」
 非はルトにある、とでも言いたげなキングゾーラの言葉は、かえってリンクを恐縮させ、
いたたまれない気分にさせた。
 リンクはルトとの面会を申し入れた。望みはかなわなかった。キングゾーラは親切にも仲立ちを
試みてくれたのだが、ルトは頑としてリンクの前に姿を現すことを拒んだのだった。
 じかに話をしようと決意し、リンクはルトの部屋を訪れた。部屋の戸は固く閉ざされていた。
戸の前から何度も声をかけた。返事は得られなかった。
 せめて怒るなり泣くなりしてくれれば接触の手がかりにもなるのだが、完全に無反応とあっては
どうしようもない。
 ハイリア湖でともに夜を過ごした折り、自分はルトに対して間違ったことはしなかった、と
信じるリンクは、あまりに頑ななルトの拒絶にあって、辟易とした気分になりかけた。それでも、
初めてルトに会った時のような怒りの感情は湧かなかった。
 ルトの態度を、ぼくは理解できない。ただ、ぼくの方に問題があるとすれば、理解できないと
いう察しの悪さ自体が問題なのだろう。お互いわかり合える時は来る、とみずうみ博士は言った。
まだ時間が必要なのかもしれない。
 とはいえ、時間が経つのをじっと待っている余裕はない。この先、ルトを再訪する機会があれば
いいのだが、できない場合のことも考えておかねばならない。
 結局、リンクにできたのは、ルトがみずうみ博士の家に置き忘れた手回り品の袋を返却する
ことと、賢者としての目覚めにあたってルトがなすべきことを改めてキングゾーラに言い置くこと
だけだった。
 ──ガノンドロフの襲撃を受ける前に水の神殿へ赴く。現実世界との繋がりを絶たれようとも、
それこそがルトの身を救い、ゾーラ族を救い、世界を救う唯一の方法である──
 自らがルトに伝えられなかった不手際を詫びた上で、くれぐれも、と念押しし、リンクは
キングゾーラに善処を依頼した。キングゾーラは承諾し、最後にぽつりと本音らしきものを
つけ加えた。
「それまでは、余も娘とともにいられるの……」
4494-9 Great Fairy (8/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:49:18 ID:739AAdYT
 大妖精がゾーラの泉のどこにいるかについて、リンクには心当たりがあった。先にゾーラの里を
訪れた時、元気になったジャブジャブ様に会わせる、と言ってリンクを泉に連れ出したルトが、
あたりの案内をするうち、対岸にある洞穴の奥に別の小さな泉がひそんでいることを教えてくれて
いたのだ。その際は聞いただけで、洞穴には入らなかった。ルトが大妖精の話をしたわけでもない。
ルトのみならず、ゾーラ族の誰もが大妖精の存在を知らないようで、それはゾーラ族が──
ゴロン族とは異なり──大妖精にまつわる伝説を持たないゆえと思われた。にもかかわらず、
そこが求める場所だという確信が、リンクにはあった。
 キングゾーラの許可を得て、リンクは洞穴を探ってみた。それはちょうどバリネードとの戦いが
繰り広げられた岸辺にあり、その折りには気づかなかった岩の陰に、黒々と口をあけていたのだった。
 洞穴の奥には、案の定、デスマウンテン頂上の穴と同じく、黄色っぽい光を放つ泉があった。
そばの岩にトライフォースが彫られているのも同じなら、『ゼルダの子守歌』を奏でることにより
水面から大妖精が出現する過程も同じであり、さらにその姿もデスマウンテンで会った大妖精と
寸分違わなかった。同一個体かと怪しんだが、今度の大妖精は「魔法の大妖精」と名乗り、
リンクを初対面の人物として扱った。
 けれども相違点はそれだけで、この大妖精もまた、助けてやるから肉体を満足させろ、と
要求してきた。先と同様の手順で、リンクは要求に応えた。腕によるセックスは、ここでも大いに
満足をもたらしたようだった。ただ今度の相手は耐久力が強く、絶頂させるまでには、前回よりも
長い時間が必要だった。
 授かったのは『フロルの風』である。これは空間移動の魔法で、まず任意の一地点で発動させ、
のちに別の任意地点で再び発動させると、瞬間的に元の地点へ戻ることができる、という説明だった。
発動させる際は意志をこめて魔法の名称を口にすればよい、と続けたあと、大妖精は、この魔法は
一度きりしか使えないから使いどころをよく考えろ、と釘を刺した。どういう場面で使ったら
いいのか、リンクにはぴんとこなかったが、その場では神妙に頷いておいた。
 礼を言って去ろうとするリンクに、大妖精は同族の新たな居場所を二カ所教えてくれた。
 一つはハイラル城の城門をくぐった先。もう一つは『幻影の砂漠』の果てにある巨大邪神像の近く。
 どちらも行くには難しい場所だ。ハイラル城はガノンドロフの支配下にあるし、ゲルド族の
本拠地と苛酷な砂漠を突っ切って巨大邪神像へ向かうことの困難さもまた明白。
 思いに沈むリンクに、大妖精は、大人になったらまた来い、と言い残し、奇態な笑いとともに
泉の中へ消えた。

 考慮の末、リンクは当面、カカリコ村へは戻らないことにした。三つの理由があった。
 第一。シークから聞いていた情報によれば、インパがカカリコ村に現れるまでには、なお
しばらくの日数がかかること。
 第二。インパがカカリコ村に到着しても、難民救済作業の目途がつくまでは、『嵐の歌』に
よって井戸の水を干上がらせるわけにはいかないこと。
 第三。風車小屋の男の証言では、自分が『嵐の歌』を使うべき時期は、まだ二ヶ月ほども先の
はずであること。
 それまでの時間を利用し、ナボールとの出会いを図ってみよう──と、リンクは考えたのである。
 未来の世界で『副官』が言うには、ナボールは反乱勃発直後にゲルドの砦へ戻ったとのこと。
いまならすでに帰っているだろう。もちろん簡単に砦まで行けるとは思っていないが、時が経てば
経つほど状況は悪化するのだ。ハイラル平原西方の決戦で王国軍が破れ、ゲルド族の平原移住が
始まってしまったら、砦に到達するためには、広範囲の敵中を突破しなければならなくなる。
それはまず不可能だ。いまの自分にはエポナがいないのだから。
 意志を固め、リンクは西を目指して旅に出た。
4504-9 Great Fairy (9/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:49:57 ID:739AAdYT
 ハイラル平原を横切り、その西端の町に着くまで、一週間あまりを要した。ゲルドの谷への
入口にあり、やがてゲルド族の支配下に置かれるはずのこの町も、リンクが到着した時点では、
まだ王国軍の勢力圏内にとどまっていた。しかし、リンク以外の人々にとっては、一寸先の未来も
わからない、混沌とした状況に、町はさらされていたのだった。
 ハイラル城の陥落と王の死去を伝える急報は、平原西方に展開していた王国軍を、混乱の渦に
巻きこんだ。軍としての体裁を失わず、すぐさま対応に移ったところは、さすがに王国の正規軍と
言うべきであったが、突然の破局による諸人の動揺は、作戦の円滑な進行を大きく妨げることに
なった。やがて東から挑んでくるに違いないゲルド遠征軍に対抗できるだけの戦力を確保するため、
分散していた各軍を集結させる一方、西のゲルド族本拠地への警戒も怠るわけにはいかない、
という二正面作戦の困難さが、混乱に拍車をかけていた。
 ただ王国軍にとって幸運なことに、城下町を占領したゲルド族は、略奪と暴行に明け暮れ、
直ちに戦端を開こうとはしなかった。またゲルドの谷方面の敵も、なぜか鳴りをひそめ、王国軍の
背後を襲おうとはしなかったのである。この隙を衝いて王国軍は、混乱の中にありながらも、
徐々に戦闘態勢を調えつつあった。
 町に入ったリンクを出迎えたのは、そんな殺伐とした空気だった。風変わりな格好をした
一人旅の子供という、常時なら人目を惹いたであろうリンクの姿も、切迫感に追われてあわただしく
行き来する人々の注目対象とはならなかった。
 この様子なら先へ行くのに問題はないだろう、と心を安んじさせ、ゲルドの谷へ向けて町を
通り抜けようとしたリンクだったが、それが楽観に過ぎたことを、すぐに思い知らされることと
なった。
 町の出口の門には、かなりの数の兵士が集結していた。ゲルドの谷に対する最前線なのだから
当然である。ここで止められては面倒と思い、リンクは門から離れた所で町を囲む柵を
乗り越えようとした。ところが乗り越えないうちから、たまたま近くに来た兵士の一人に
見咎められてしまった。
「おい! そこで何してる!」
 一瞬どうしようかと迷ったものの、言い訳をするより逃げ切った方が早い、と判断したリンクは、
柵の向こうに飛び降り、全力疾走を始めた。不運にも道は門の方に向かっており、リンクを
発見した兵士の叫びによって、門に詰めていた連中が前をさえぎった。リンクは観念し、事情を
話そうとして立ち止まったが、たちまち激高した兵士の集団に押しつぶされた。
「貴様、谷に何の用がある!」
「さてはゲルド族に通じる密偵だろう!」
 そうじゃないんだ、話を聞いてくれ──と言葉を出す間もなく、後頭部にがつんと衝撃が加わり、
リンクは意識を失ってしまった。
4514-9 Great Fairy (10/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:50:29 ID:739AAdYT
 気がつくと、身は牢の中にあった。
 拘束されてはいなかったが、目の前は鉄格子でさえぎられ、行動の自由は皆無に等しかった。
剣や盾はもちろん、持ち物はすべて没収されていた。殴られたらしい後頭部が、さほどの痛みを
訴えないことだけが慰めだった。
 リンクはため息をついた。
 世界を救うために活動している自分が、なぜこんな目に遭わなければならないのか。あの兵士らも、
子供相手にやることが荒っぽすぎる──と恨めしい気持ちになる。が……
 シークの言葉を思い出す。
『君は危なっかしくて放っておけない。行動に際しての考えが浅すぎる』
 冒険を続けるうち注意深くなったと自分では思っていたが、やっぱり無鉄砲な気質がどこかに
残っている。
 ぼくが軽率だったのだ。最前線に立つ兵士が敵陣へ走る人間に過敏となるのは当たり前のこと。
こそこそしたりせず、初めから堂々と彼らに当たっていれば──ナボールに会うなどとは
明かせずとも──少しは対応が違っていただろう。たとえばゼルダの手紙を見せて──
『そうだ!』

 この手紙を持参する者 王家のために働く者なり
 あらゆる便宜を図るよう 配慮されたし

 あの手紙を見せていればよかったんだ。
『兵士や役人に足止めされたら、これをお見せなさい。きっと役に立つはずです』
 ゼルダにそう言われたというのに、これまで何度もぼくを助けてくれた手紙だというのに、
どうして今度に限って忘れていたのか。
 敵中に乗りこむ興奮がそうさせたのだ──と自分で説明をつける。しかし、いまさらそんな
ことを考えても後の祭り……
『いや、そうでもない』
 と期待を抱く。
 あの手紙も他の持ち物と一緒に没収されている。誰かがそれを読んでくれたら、ぼくの身の証は
立つ。そうでなくとも、ぼくは取り調べられるはずだから、その時に手紙のことを話せばいい。
 期待に反し、取り調べは行われなかった。
 食事はきちんと運ばれてきた。係は民間人らしい年老いた男で、リンクが捕らえられた事情に
ついては何も知らず、ただ軍に命じられた仕事を淡々とこなしているだけ、というふうだった。
リンクはこの男に、早く自分を取り調べるよう伝えてくれ、と訴えたのだが、耳が遠いらしい男は、
ろくろく反応もよこさないのだった。案じたとおり、男への依頼は全く奏功せず、リンクは
放置され続けた。
 おそらく戦いを目前にして、子供一人にかかずらっている暇などないのだろう、とリンクは
推測した。
4524-9 Great Fairy (11/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:51:20 ID:739AAdYT
 釈放されたのは十日後だった。
 リンクの推測は当たっていた。王国軍は散発し始めていたゲルド族との小競り合いに注力し、
他の些事に興味を示す余裕を持たなかったのだ。戦闘の合間を縫って、とりあえず捕らえておいた
子供の件がようやく取り上げられ、持ち物が調べられた。そこで初めて奇妙な手紙が担当者の
注意を惹き、リンクは牢から出ることができたのである。
 軍首脳部の前に連れ出されたリンクが、まず問われたのは、ゼルダの安否についてだった。
失踪後のゼルダに会ったわけではないものの、未来での体験から、リンクはゼルダが安全であると
自信を持って言い切ることができた。現在の居場所は不明とせざるを得なかったが、それでも
リンクの回答は、みなに深い安堵と新たな力を与えたようだった。
 ゲルドの谷へ行こうとした理由については、軽はずみな行為を謝罪した上で、一種の偵察で
あると言葉を濁した。それだけでは納得させられないと感じたので、カカリコ村、ゴロン族、
ゾーラ族の三者共闘の話を持ち出した。聞き手はそれらがゼルダの指示によるものと考えたらしく
──無論リンクはその誤解を解いてやろうとは思わなかった──リンクの名誉は回復された。
持ち物もすべて返却された。
 さらにリンクの評価を高めたのは、ガノンドロフの戦法や魔力の実態を知っている、という
点だった。リンクがガノンドロフの魔力と直接的に相対したのは、ハイラル城の正門前で
なすすべもなく叩きのめされた時だけだったが、この世界では少し先のことになるハイラル平原の
決戦で、ガノンドロフがどのように戦ったかを、カカリコ村にいたシークは伝え聞いており、
それをリンクもシークから知らされていたのだった。
 ──攻撃的なガノンドロフは、常に全軍の先頭に立ち、部下を大きく引き離しても躊躇せず、
単独で突っこんでくる。いきなり魔力を使うことはない。最大の効果が得られる機会を待ち、
大兵力を相手にした時など、ここぞという場面で使ってくる。使う際は、右の手のひらから白い
衝撃の波動を放つ。放つ前に溜めが入る。等々──
 ガノンドロフが魔力によって召還する魔物の件でも、リンクは王国軍に貢献できた。シークより
得ていた情報で、決戦の場に召還される魔物の主力は、人間のように武装した集団とわかっていた。
スタルフォスやリザルフォスの類であろう、とリンクは推察し、その実態や弱点、対処方法などを
詳しく説明した。他の魔物についても、リンクは知る限りの詳細を伝えてやった。
 これらの情報に基づき、王国軍は戦法を練り直した。新たな戦法がどれほどの効果を有するかは
わからなかったが、多少とも戦況を好転させられるならば、とリンクは期待をかけた。反乱を防ぐ
ことができなかったリンクにとっては、これが歴史の大勢を動かし得る最後の機会であったのだ。
 以上のような経緯で軍の信用を得たリンクは、改めてゲルドの砦の探索を申し出た。奇妙な
静観を保った敵の実情を調べる、という大義名分があったので、この申し出は承認され、今度は
後ろ暗いところなく、リンクは西へ向かうことができた。
4534-9 Great Fairy (12/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:51:58 ID:739AAdYT
 ゲルドの谷までは問題のない行程だった。が、谷に架かった吊り橋が見えた地点で、リンクの
足は止まった。
 対岸は──七年後の世界では取り払われていたが──ものものしい柵でさえぎられ、橋の
西詰めには一人のゲルド女が立ちはだかっていた。
 リンクは岩陰に身を隠し、どうしたものか、と考えた。
 ここはゲルド族にとっての最前線。警戒は厳しいはず。見張りが一人きりとは考えられない。
おそらく柵の向こうには、もっと多くのゲルド女がいるだろう。
 できれば誰にも見つからないままナボールに会いたい。ぼくがゲルド族と接触し、そこから
ガノンドロフに緑の服を着た少年の話が伝わってしまったら、その少年が封印されたはずの
「リンク」であると悟られる可能性が高くなる。シークが指摘したように、いまのガノンドロフは、
時の神殿にマスターソードが再出現していることをすでに知っているはずだから、なおさら危険だ。
悟られたら──ぼくが未来から来ているとまでは思わないとしても──今後の活動が著しく困難に
なってしまう。
 とはいえ、この様子では、ゲルド族との接触なしには砦へ行けそうにない。「リンク」が
この世界に存在する、と察知されるのを覚悟した上で行動するしかない。もちろん、今後
できるだけ早く未来に帰る、と前提してのことだが。
 では、どういう形でゲルド族と接触するか。
 突撃するのは愚策だ。対岸の柵を突破するだけでも難事だし、仮に突破できたとしても砦へは
行き着けまい。無理な行動が失敗に繋がるのは、先日も経験したこと。
 穏やかにいこう。
 心を決め、リンクは岩陰を出て、吊り橋に向かった。対岸のゲルド女がこちらに気づき、
手にした薙刀を構え直した。敵意がないことを示すため、リンクは両手を上に差し上げ、
ゆっくりと橋を渡った。
「止まれ!」
 橋の中ほどにかかった時、鋭い声が飛んできた。リンクは従った。
「なんだ、お前は!」
「ナボールに会いに来たんだ」
 率直なリンクの言葉で、女の顔が不思議そうなものに変わり、薙刀の構えが緩くなった。
少し間をおいてから、リンクは両手を上げたまま、再び歩を進めた。女は制止しなかった。
ほどなくリンクは女の前に至った。
「ナボールに、用だと?」
 口調に警戒を残しつつも、女は問いかけてくる。
「そうなんだ」
「何の用だ?」
「大事な話があって」
「どんな?」
「本人にしか言えない。砦にいるんだろう?」
「うむ……」
 やはりナボールは砦に帰っていた。女は考えているようだ。話の持っていきようによっては、
うまくいくかも……
 うまくいかなかった。
「信じられん! さては王国軍の密偵だろう!」
 ここでも密偵扱いか──と落胆する暇もなく、女が勢いこんで薙刀を突き出してきた。咄嗟の
バック宙でかわす。ところが吊り橋という頼りない足場が降着を不安定にした。片足が橋板から
はずれる。そのまま下へずり落ちる。
『しまった!』
 橋を吊る綱に手をかけようとするも及ばず、リンクの身は谷底へと落ちていった。
4544-9 Great Fairy (13/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:52:43 ID:739AAdYT
 落下中の空虚な緊張感、着水時の物理的衝撃、そして慣れない水中での息苦しさが、リンクの
思考を翻弄した。とにかく呼吸をと浮き上がる。川の流れは速く、身体はどんどん流される。
幸い岸が近くに見え、腕は必死で水を掻いた。もう少しというところで頭が沈み、したたか水を
呑んでしまう。息ができなくなる。意識が遠くなりかかった時、ぐいと引っぱられる感覚がし、
肺は呼吸を再開できた。
 岸にうずくまり、咳と嘔吐を繰り返しつつ、リンクはぼんやりと考えた。
 ひどい目には遭ったが、この時代で助かった。水の涸れた七年後なら、河床に激突して
間違いなく死んでいた……
「大丈夫かい?」
 頭の上で声がする。そうだ、岸にいた誰かがぼくを引き上げてくれたんだ。誰だろう。
 見上げる。いぶかしげな顔がこちらを覗きこんでいる。女。若い女。ゲルド族の女。
 これは……この女は……
「『副官』!」
 思わず叫ぶ。
 間違いない。未来の彼女より数段若いが、見誤るはずもない。
「はぁ?」
 あきれたような顔と声。
「あたしゃ副官なんてお偉いさんじゃないよ。ただの下っ端さ」
 そう、彼女が『副官』と呼ばれるようになるのは、他のゲルド族がハイラル平原に移住したのち、
ナボールらと砦に残ってからのことだ。いまの彼女は『副官』じゃない。
「何があったんだい? いきなり降ってきて」
 やけに気安く話してくれる。警戒しないのか。ぼくが子供だから甘く見ているのかもしれない。
「……橋の上で……見張りに襲われて……足を踏みはずして……」
 息を切らしながら、やっとのことで声を出す。
 上空に架かる橋を見上げた『副官』──やはりそう呼んでおくしかないだろう──が、苦笑いを
漏らした。
「あそこじゃ、みんなぴりぴりしてるから。あんたみたいなガキ相手に、大人げないこった」
 そこでこちらに向き直った『副官』は、声と表情を厳しいものにした。
「だけど、こんな物騒な所をうろちょろしてるあんたも悪いんだよ。いったいどこの誰で、何しに
ここへ来たのさ?」
 すわり直し、息を整える。その間に素早く考える。
 七年後の『副官』は、ぼくの味方だが、いまの彼女は、あくまでも敵の立場。ただ、彼女と
ナボールの間には深い関係があるから、ここで話を通じておけば……
「実は──」
 ナボールに会いに来たのだ、と正直に告げる。リンクの前に腰を下ろしていた『副官』は、
驚いた様子で身を乗り出し、対面の目的を問い質してきた。
「ガノンドロフのことなんだ」
 ナボールと『副官』はガノンドロフ嫌いという点で共通している。そこを糸口にしよう、という
つもりだった。『副官』が怪しむような面持ちとなった。
「うちの大将がどうしたって?」
 再び考える。
 ゲルド族の立場からすると、反乱を成功させた現時点のガノンドロフは、英雄といってもいい
存在だ。いくら『副官』がガノンドロフ嫌いといっても、あまり悪し様に言うと、かえって反感を
買うかもしれない。後日、ガノンドロフが魔王として世界破滅の所業を露骨にやり出す時期なら、
その点で訴えかけることもできようが、いまはそこを糾弾はできない。
「ちょっと……危ないんじゃないかって思うんだ」
「危ないって、何が?」
「なんていうか……このままだと、世の中がまずいことになりそうな気がして……」
「ハイラル王国をひっくり返したのが気に入らないってわけかい」
『副官』の口調がきつくなる。
 ここも対応が難しい。いったん王国側の人間と見なされたら──事実そうなのだが──
『副官』だってゲルド族だ。まともに対応してはくれないだろう。
4554-9 Great Fairy (14/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:53:30 ID:739AAdYT
「いや、そうじゃなくて……ハイラル王国とか、ゲルド族とか、そういう小さい話じゃなくてさ、
もっと大きな……世界全体が……危険な状態に陥りかねないっていうか……」
 はっきり言えないのがもどかしい。だがこれはぼくの本音だし、未来の『副官』自身が漏らして
いたことでもある。
 しばらくの沈黙をはさんで、『副官』が新たな問いを発した。
「で、あんた、ナボールの姐さんとはどういう関わりなんだい?」
 これも答えにくい質問。七年後ならともかく、いまの『副官』に使命の詳細を告げるわけには
いかない。
「会ったことはないんだ。でも、ある所で、ナボールもぼくと同じことを考えているらしいって
聞いて……それで、どうしたらいいのか相談しようと思って、ぼくはここまで来たんだよ」
 虚実を取り混ぜ──その虚の部分もあながち虚ではないのだったが──リンクは精いっぱいの
返答をした。
 再度の沈黙ののち、目に真剣な色合いを溜め、『副官』は言った。
「いいだろう。会わせてやる」
「ほんと?」
 リンクの胸に曙光が差した。
「ああ。ガキのくせしてあんたの話は大仰だし、内容もはっきりしないが、わからないでもない。
確かに姐さんも似たようなことを考えてるふしがある。ただし──」
『副官』は続けていた言葉を切り、横に視線をやった。
「まだ仕事が終わってないんだ。ちょいと待ってな」
 視線の先に一頭の牛がいた。『副官』は立ち上がり、牛の体表を濡れた布で拭き始めた。
 岸に上がった時から、牛がいるのには気づいていた。が、どうしてここに牛がいるのか
わからなかった。訊ねると、砦で飼われている牛の世話をするのが『副官』の仕事で、毎日
この川岸へ身体を洗いに来るのだ、という。七年後の砦には牛などいなかった。移住前のいまは、
砦の生活も変化に富んでいるようだ。
「ゲルド族といえば馬と思っていたけれど、牛もいたんだね」
 微笑ましい気持ちで言うリンクに、『副官』は自嘲めいた応答をした。
「馬の世話ができりゃ、あたしも嬉しいんだけどね。下っ端は馬なんか、なかなか触らせて
もらえないのさ」
 七年後には集団のリーダーとなる『副官』が、いまは一介の下働きなのだ。
 その運命の数奇さに深い感慨を抱きながら、リンクは『副官』の作業を見守った。待つ時間は
「ちょいと」どころではなく長かったが、服を乾かすには好都合だった。
 リーダーという責任がないせいか、『副官』の態度は七年後よりもさらに開放的で、仕事の手を
休めないまま、とりとめもない話題を次々と口にした。それらの多くは、さっきのような、
下っ端としての愚痴であり、リンクという相手がいるのをいいことに、ふだん仲間の前では
できない鬱憤晴らしをしている感があった。しかし、中にはけっこう重要な話題も混ざっていた。
『副官』は戦闘に出ないのか、と訊いたところ、砦のゲルド族は戦闘を予定していない、という
答が返ってきた。これは『副官』も失言と思ったか、すぐに話題を変えたのだが、それで
リンクには砦の内情が推測できた。
 ハイラル城を目指して主力軍が出発したあと、砦には大した兵力が残っていないのだろう。
防衛するのがせいぜいで、攻勢には出られないと見える。王国軍の背後が平穏なのは、そのため
だったのだ。
 リンクは巨大邪神像についても訊ねてみた。いずれナボールが、そして自分が赴くことになる
場所の現状を知っておきたかったからである。が、『副官』は答を持たなかった。巨大邪神像など
興味の域外といった感じで、なぜそんなことを知りたいのか、と逆に質問してきた。神殿の意義を
語れないリンクは、
「ナボールやぼくにとって、そこは重要な所なんだ」
 と、曖昧な答を返すにとどめた。
4564-9 Great Fairy (15/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:53:58 ID:739AAdYT
「ついて来な」
 仕事を終えた『副官』はリンクにそう言い、牛を牽いて、川岸から谷の上へと続く、つづら折りの
道を上り始めた。リンクはあとに従った。
 道は途中で二手に分かれていた。一方は吊り橋の方へ、もう一方は上流の滝の方へと続いている
ようだった。道が分かれた所に小屋があり、その前でゲルド女が三人、立ち話をしていた。
リンクは緊張したが、『副官』が歩みを止めないので、そのままついて行った。
「そいつは誰だ?」
 女の一人がリンクを見咎め、鋭く呼びかけてきた。立ち止まった『副官』が、
「ああ、こいつは──」
 と言いかけたところへ、別の一人が荒っぽい声をかぶせた。
「さっき橋から落っこちたガキじゃないのか? 見張りが言ってたぞ。王国軍の密偵だとか」
『副官』がぎょっとした顔でふり向き、リンクを凝視した。リンクは急いで首を横に振った。
信じてくれたようで、『副官』は再び女たちに向き直り、
「そうじゃないんだ。実はこいつはナボールの姐さんに──」
 と説得を始めたが、それは完全に無視された。
「下っ端は黙ってろ!」
「そんな怪しげな奴を連れこむな!」
「そうだ! 殺っちまえ!」
 三人が三人、抜刀して迫ってきた。リンクは迷った。
 頭に血が上っている。説得は無理だ。戦うか? そうはしたくない。こいつらを倒せたところで、
あとがややこしくなるだけだ。『副官』の立場も微妙にしてしまう。敢えて捕まった方がいいか?
いや、捕まえるなどと悠長なことをこいつらは考えていない。ぼくを殺すことしか考えていない。
戦わざるを得ない。だが狭い山道。ここでは応戦できない。いったん退くしかない!
 瞬時に思考をめぐらせ、リンクは回れ右をし、『副官』を残して道を駆け下りた。追いすがる
足音を背後に聞きつつ、川岸に着く。水際に達したところでふり返る。三人が追いついてきた。
リンクは剣を抜いた。ただし本気で立ちまわりをする気はなかった。
 左手に剣を持ち、右手を懐に忍ばせる。
 デクの実。これでこいつらを一時的に足止めしておき、あとは『副官』とともに砦へ走って──
 目つぶしの効果は近距離でないと期待できない。リンクは相手が近づくのを待った。近づいて
くれなかった。懐に入れた手を怪しむのか、三人は刀を使おうとはせず、代わりに弓を取り出した。
『まずい!』
 矢が飛んでくる。横っ飛びでかわす。かわしたところへ次の矢が来る。かする。よろける。
また矢が来る。かわせない。これはかわせない! このままでは──!
 リンクは川に身を投げた。
4574-9 Great Fairy (16/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:54:57 ID:739AAdYT
 目をあけると、みずうみ博士の顔があった。身体はベッドに横たわっていた。
 矢を避けるためゲルドの谷でゾーラ川に飛びこんだのはいいが、渓谷を走り下る激流に行動の
自由を奪われてしまい、半死半生となってハイリア湖に流れ着いたのを、博士に助けられたのだった。
聞けば、まる二日も意識を失っていたのだという。
 リンクは礼を言い、手短に事情を語った。博士は驚きの表情で聞いていたが、話が終わると、
例の飄々とした口調で、面白げに評を述べた。
「その歳でゲルド族とやり合うとは、何とも勇ましいことじゃわい。それも使命のうちなんじゃろうが、
ルト姫を寄生虫から守った一件といい、お前さん、まるで勇者といった奮闘ぶりじゃの」
 思わず苦笑するリンクだった。

 三日後、リンクは湖研究所をあとにした。体力は回復しきっていなかったが、のんびりとしては
いられなかった。
 さらに四日ののち、リンクは再び平原西端の町に入った。町の雰囲気は、前にも増して混迷の
度を深めていた。ハイラル城下のゲルド族が、いよいよ決戦に打って出ようとしている、との噂が
しきりだった。リンクは王国軍の司令部を訪れ、その噂が真実であると知った。
 建て前上の任務とはいえ、ゲルドの谷方面の敵情は伝えておかねばならなかった。リンクは
『副官』との会話から察した内容を報告した。ゲルドの砦の兵力は少なく、向こうから攻撃を
しかけてくることはないだろう、との情報は、王国軍を安堵させた。その分、城下町から
攻め寄せる敵勢に集中できるからだった。
 一方でリンクは、砦の防御はしっかりしている、とつけ加えることも忘れなかった。王国軍が
砦を攻撃しないように、との配慮である。敵ではあっても、ナボールや『副官』を危地に落とす
わけにはいかなかった。
『副官』はぼくを信じてくれたのに、その『副官』から得た情報を、ぼくは王国軍に知らせて
しまった。騙すつもりはなかったのだが、せめて埋め合わせの一部にでもなれば──
 そんな思いも、リンクにはあった。
4584-9 Great Fairy (17/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:55:44 ID:739AAdYT
 この先の行動をどうするかにつき、リンクは熟慮に熟慮を重ねた。今回の旅はトラブル続きで、
予想以上の日数を費やしてしまい、時間的余裕がなくなってきている。その点を踏まえなければ
ならなかった。
 できればもう一度ゲルドの砦を目指したい。せっかく『副官』に渡りをつけられたのだ。
ナボールと会うには絶好の機会。
 しかし問題はある。見てきたように、先方の警戒は厳重だ。再度の挑戦が実を結ぶかどうかは
心許ない。
 加えて、王国軍とゲルド族との決戦の行方が、状況を大きく左右する。仮に決戦が──自分の
提供したガノンドロフ情報が役立って──王国軍の勝利に終われば、後顧の憂いなくナボールとの
接触に専念できる。けれども反対にゲルド族が勝利してしまえば、背後を絶たれて立ち往生という
ことになってしまう。
 この町にとどまって決戦の結果を見極めてから動けばいいのでは、とも考えてみる。王国軍が
勝てば、すべての活動が容易になるのだ。だがこの案は採用できない。逆の場合、この地の安全が
失われるばかりでなく、別方面にも影響が及ぶ。
 カカリコ村だ。
 決戦に勝ったゲルド族は、とって返して東に向かうことになる。インパに会うのはカカリコ村
攻防戦が始まる前でなければならないが、その時点でここを発ってカカリコ村に向かうのでは
遅きに過ぎる。いや、いますぐにでも出発しないと間に合わないかもしれない。
 リンクはゲルドの砦への接近を断念し、カカリコ村へ戻ると決めた。ナボールや『副官』の
去就が気にかかったが、それについては後日の機会を改めて待つ、とせざるを得なかった。

 帰りの行程は往路以上に時間を要した。決戦の舞台となる地域を避けるため、ハイラル平原の
南方を大きく迂回する必要があったからである。のみならず、戦乱の噂が各地に混乱を波及させて
おり、錯綜する人馬の往来がしばしば前途を妨げた。食料の入手も困難になっていた。さらに、
連日の強行軍でリンクは疲労困憊し、一日あたりに進める距離が、徐々に短くなっていった。
 二十日近くをかけ、リンクはようやく、カカリコ村まであと少しという地点までたどり着いた。
そこには比較的人口の多い村があり、世間のさまざまな情報が飛び交っていた。ハイラル平原
西方の決戦についても、すでに結果が伝わっていた。
 王国軍は敗北していた。
 暗澹とした気分に襲われるリンクだったが、情報は意外な事実をも知らせていた。戦いに
勝利したゲルド族は、いったんハイラル城下町に帰還し、カカリコ村攻撃の準備に着手したのだが、
つい先日、それとは反対の西に向け、再び全軍が出発した──というのが、その内容だった。
敗戦によっても西方の王国軍は全滅に至らず、なお残存勢力が抵抗を続けているらしい。
ささやかな変化ではあるものの、これは自分が王国軍に知識を与えたことによる歴史改変の現れ
なのかもしれない、と、リンクはおのれを慰めた。
 これでカカリコ村には余裕ができた。いまから村に行けば、もう帰還しているはずのインパと、
じっくり話ができる。
 そのように動こうとしたところで、リンクの頭に別の考えが浮かんだ。
 全軍が出払った城下町。留守居の部隊はいるだろうが、数は少ないのではないか。反乱勃発後には
至難と思われていた城下町への潜入が、いまは容易なのではないか。時の神殿に赴くことが
できるのではないか。いったん未来へ帰ることができるのではないか。ルトとダルニアの運命を
確かめることができるのではないか。
 この町は城下町にも近い。ここで未来との間を往復しても、大して日数はかからない。
カカリコ村訪問への時間的影響はないに等しい。
 疲れた心身を奮起させ、リンクは城下町へと進路をとった。
4594-9 Great Fairy (18/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:56:25 ID:739AAdYT
 城下町の正門には、さすがに守備の一隊が詰めていた。が、王家の別荘へ続く西の門に人影は
なく、リンクはそこから城壁内に入った。期待したとおり、城下のゲルド族は少数で、日中の
こととて充分な注意は要ったものの、リンクは誰にも見つかることなく、時の神殿に到達できた。
略奪を受けた町の惨状にリンクは心を痛めたが、潜入の成功による喜びが、それを打ち消して
余りあった。
 マスターソードの再出現を知られたら、時の神殿は見張られる──というシークの言を、
リンクは覚えていた。しかし──現状ではそこまで手がまわらないのか──神殿の入口に見張りは
おらず、リンクは簡単に中へと歩を進められた。
 吹き抜けの部屋も無人で、奥の石板に填めこまれた三つの精霊石が、天窓から差す日の光を受け、
緑、赤、そして青と、美しくも厳粛な輝きを放っているばかりだった。七年後の世界では、神殿に
いるのが夜間であることが多く、気づかなかったのだが、石板には、かつては見られなかった
多数の傷がついていた。ゲルド族が精霊石を剥がし奪おうとした痕跡と思われた。貪欲な執着にも
負けず、精霊石は石板との接触を固く保っており、その神秘的な不可思議さを、リンクは改めて
印象づけられた。
 続けて『時の扉』に近づき、リンクは奥の部屋へと目をやった。どきりとした。足が止まった。
 剣の間の中を、武装した一人のゲルド女が、ぶらぶらと歩いていた。
 やはり見張りはいたのだ。
 リンクは開いた『時の扉』の陰に隠れ、女の様子を観察した。歩いたり、立ち止まったり、
はたまた床にすわりこんだり、と、いかにも手持ち無沙汰という感じだ。いつ現れるとも
わからない、いや、現れるかどうかもわからない人物──その人物は、いままさに現れて
いるのだが──を待っていなければならないのだ。退屈するのも無理はない。
 女が台座に近づいた。マスターソードに目を注いでいる。手を伸ばす。触れかけたところで、
ためらうように手を引く。間をおいて、また手を伸ばす。今度は止まらず、手の先が、柄に触れる──
「ひゃッ!」
 悲鳴があがり、女の手が感電したかのごとく弾き飛んだ。怯えのうかがえる表情でマスターソードを
見ていた女は、やがて、ぷいと目をそらし、ぶらぶら歩きに戻った。
 興味本位の行為だろうが、勇者の資格のない者がマスターソードに触れようとすると、ああいう
ことになるのだ。これなら奪われる心配はあるまい。
 それはいいとして──と、リンクは思案する。
 マスターソードの所まで行けるだろうか。台座は部屋の真ん中にある。どんなにこっそり
近づいたとしても、女の目は避けられない。けれども女は油断しきっているから、全力で
突進すれば、機先を制してマスターソードを抜くことはできるだろう……
『いや、待て』
 無鉄砲ゆえの失敗を繰り返してはならない。もっと先のことを考えろ。
 この過去の世界でなすべきことは終わっていない。無事に未来へ帰っても、また戻って
こなくてはならないのだ。ここで女に姿を見られてしまったら、戻ってくる頃には──それは、
一、二時間というわずかののちだ──大騒ぎになっているに違いない。人数も増えているはず。
神殿を逃れ出るのが難しくなる。
 逃れられたとしても、あとが問題だ。マスターソードを抜き放てるのはぼくだけなのだから、
緑の服の少年といった抽象的人物ではない、他ならぬ「リンク」の存在を、ガノンドロフは確実に
知ってしまう。
 さらなる問題。なすべきことを終えたら、ぼくはもう一度ここへ来なければならない。
その時には厳戒態勢となっているだろう。神殿に近づくことすら不可能かもしれない。
 いま未来への帰還を強行するのは愚かである──とリンクは結論した。
 帰還の機会は一度きりだ。前に考えたとおり、なすべきことは全部すませてからでないと、
未来へは帰れない。
 とはいえ、帰還を先に延ばすうち、出撃しているゲルド族が城下町に戻ったら、神殿を
訪れるのは、やはりたいへんな難行となる。
 どうすればいいか。
 熟考の末、リンクは一つの案を得た。そして、その場で処置をした。
4604-9 Great Fairy (19/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:57:11 ID:739AAdYT
 リンクはハイラル城へ向かう道をたどった。この機会を使って、城門の先にいるという大妖精に
会おうと思ったのだ。
 城門の手前の曲がり角で、切り通しの崖に隠れ、様子をうかがう。城門には多数の見張りが
立っている。そこを突破するのは無理だ。迂回しなければならない。
 どこを?──と考えたリンクは、近くの崖の上から地面まで、太い植物の蔓が垂れ下がっている
のを見いだした。力を入れて引っぱってみたところでは、相当の強度があると思われた。リンクは
蔓に手足をかけ、上へと身を登らせていった。期待したとおり、蔓は切れることなくリンクの
行動に耐えた。
 崖の上は意外に平坦だった。細い帯状の平面が、城門の脇をかすめ、その向こうまでずっと
伸びている。見渡してみると、城門の前を除いて人の姿はほとんどなく、遠くに見える城の近辺に、
豆粒のような影が散在している程度だった。それでも念のために──と、リンクは伏せの姿勢をとり、
崖上の迂回路をそろそろと這い進んだ。
 城門の横を過ぎ、しばらく行った所で、崖は尽きていた。続く緩やかな傾斜を下り、道に
降り立つ。城門からは死角になっており、見つかるおそれはなかった。
 道は城へと続いていたが、それとは別に分かれ道があり、奥は行き止まりになっている
ようだった。ただの行き止まりではあるまい、と予想し、リンクは分かれ道の先へ足を運んだ。
道の終端は大きな岩で、予想に違わず、地面と接する所に穴が開口していた。穴は小さく、
入るには腹這いとならなければならなかった。窮屈な環境を我慢し、リンクは再度、匍匐前進を
行った。
 やがて穴は広くなり、立ち上がることが可能となった。そこで起こったことは、以前の
繰り返しである。同じ泉から、同じ方法で、同じ姿の大妖精が出現し──「魔法の大妖精」という
名前までが第二の大妖精と同じだったが、やはり態度は初対面の人間に対するそれだった──
同じ要求を突きつけてきた。リンクがとった行動も同じだった。下腹部に跨って胸を弄び、股間に
うずくまって口を使い、左腕を膣に挿入して躍動させた。大妖精は悶え狂いながらも、いっそう
強い耐久力を発揮し、到達させるまでには前に倍する時間を要した。ただでさえ疲れの溜まって
いたリンクは、事が終わった時には体力を使い切り、まともに立っていられないほどの状態と
なっていた。
 絶頂から醒めた大妖精は、新たな魔法を授けてくれた。『フロルの風』と同じく、発動させるには
意志をもって名称を唱えればよい、というこの魔法を、大妖精は『ディンの炎』と呼び、身体の
周囲に烈火を生じさせ、着火はもちろんのこと、攻撃にも防御にも使えるものだ、と解説した。
次いで、これも『フロルの風』と同様、使用できるのは一回のみであることを強調した。
4614-9 Great Fairy (20/20) ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:58:09 ID:739AAdYT
 大妖精の説明を、リンクは必死で頭に刻んだ。が、疲労に苛まれる身体はふらつき、ともすれば
意識は飛散しかけた。そうしたありさまを大妖精も認知したようで、
「たいへんそうね」
 と優しげに声をかけてきた。
「いつも満足させてもらっているから、今度は私があなたの疲れを癒してあげる」
 台詞に違和感を覚えたが、それを脳内で追求する前に、次の言葉が送られてきた。
「服を脱ぎなさい」
 意図がつかめず、リンクは大妖精の顔に見入った。深い慈愛の色が、そこにはまざまざと
現れていた。正視が困難と感じられるくらい独特であった表情が、いまは見るのに全く抵抗を
生じさせない。心の抵抗もが消え失せてしまい、リンクは諾々と言葉に従った。
 裸の身体が、やはり裸の大妖精に抱え上げられ、下腹に置かれる。手が背にまわり、抱き寄せられる。
さっき胸に奉仕した時と同じ体勢だが、二人の身体の正面が素肌と素肌で合わさっている点が異なる。
 大妖精の肌。これまで触れた、どの女性の肌とも違っていて。
 柔らかさ? 滑らかさ? 張り? 鮮度? 温度? 粘度? 産毛の具合?
 どれもが違っているようで、けれども、何が違っているのか、うまく表現できない。ただ
確かなのは、この触れ合いがぼくにもたらす感覚と感情。恍惚と感謝、安寧と雄志、そして
それらすべてが混淆した新生の気。
 こんな経験を、ぼくはいまだかつてしたことがない。今後も経験できるかどうか。
『そういえば……』
 先に会った二人の大妖精は、大人になったらまた来い、と言っていた。この大妖精は……
 問うてみる。
「大人になったら、ぼくは、もう一度、ここに来ることになる?」
「ええ」
 大妖精は短く答え、ややあって、謎めいた言を続けた。
「でも、すぐには会えないわ。あなたが資格を得て……そう……最後の戦いに臨んだら、また
いらっしゃい」
 どういう意味か、といぶかる思いも、朦朧とする意識の陰に隠れ去り、リンクは眠りへと
沈んでいった。

 目覚めた時、リンクの身体は浅い水に浸され、泉の中に横たわっていた。大妖精の姿はすでに
なかった。
 立ち上がって、気がついた。
 あれほど蓄積されていた肉体の疲労が、完全に消え去っていた。のみならず、止めようとしても
止められない、わくわくするような勇躍感が、全身を駆けめぐっていた。
 これが癒しの効果なのか──と感嘆しつつ、眠り際に大妖精が残した言葉を、リンクは
思い起こした。
 最後の戦い。
 いつになるかは、まだわからない。しかし、何と戦うことになるのかは、はっきりしている。
その時、その場に至るまで、ぼくは、まっすぐに、進んでゆこう。
 決意を新たにし、おのれの根幹をなす所懐を、リンクは改めて心に響かせた。
 勇気をもって──と。


To be continued.
462 ◆JmQ19ALdig :2008/02/15(金) 23:58:48 ID:739AAdYT
以上です。大妖精が相手だと、こんなやり方しか思いつきませんでした。
手を握って突っこむのは本当はダメらしいので、真似しないで下さいw
463名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 00:57:33 ID:Sya6BxNT
どんどん面白くなってきてる!すごい。なんというエピック!
ていうか大妖精まで毒牙にかけるなんてどんだけエロい人なんだ
フロルの風とディンの炎の使いどころが楽しみだ。
続きに一層の期待を添えて。
464名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 04:46:38 ID:lXdyDIAq
GJ
子宮口くりくりする描写がなかったのだけ残念
465名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 10:25:58 ID:uexBbJ/u
GJ!
大妖精が出て来るとこの描写に吹いたww
466名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 12:58:42 ID:Oa6H8Kor
トラウマよみがえったw
467名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 17:18:34 ID:qMbsgu05
エロないとスレ違い?
468名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 17:38:33 ID:Pc4Pjrj/
スレタイからいって、基本スレ違いだろうが

エロに繋がる前振りなら、あるいは...
469名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 22:35:26 ID:2A4Plqis
大妖精の容姿の描写が原作のまんまで吹いたwwww
エロの為にトワプリ大妖精みたいなのに変えるかと思ってたら、甘かったわwww
470名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 22:35:48 ID:F1d0IYtN
>>467
僕は存在自体がエロだよ
471名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 23:59:46 ID:Sya6BxNT
>>469
全くだ。エロい人もここまでリアル志向なんて掘れ……惚れる
472名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 10:44:19 ID:Y5/PAREO
風タクの大妖精じゃないだけよかったというべきか
しかしダルニアと大妖精2連荘でチャレンジャブルな相とは。
これで次が大フクロウだった日には…
473名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 11:40:02 ID:OFfVr1A5
必要ないって言ってくれてよかったなw >大フクロウ
474名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 23:53:21 ID:eJTN/j9e
おお、しばらく留守にしている間に続編が!

ダルニア編を読んで思ったんだけど、賢者にとってリンクと
肉体交渉を持つ事は、ある意味自分と向き合う行為と言うか、
ありのままの自分を受け入れるための行為でもあるんだね。
「自己受容のプロセス」としてのセックスってか。

リンクと賢者達のセックスが、いつも微妙に切なく感じるのは
彼らがこれまでの自分自身の浄化と、これから向かう運命への受容を
肉体を通して行っているからかも知れんなぁ・・・と思いますた。
475名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 00:11:08 ID:zvEsMV9N
>>474
なんか……
凄くあなたとセックスしたくなって(ry
476名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 00:14:55 ID:OIrmrdGS
>>474
なるほどなぁ……大フクロウとヤる羽目になったらそれはそれで
477名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 10:54:17 ID:pIsy0SH2
悪夢やめてツインローバの悪夢やめて
478名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 11:31:09 ID:sAI+LnGW
>>476

もう我慢ならん! 脳内で全裸ルト姫さまとキャッキャウフフして来る!
479名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 18:42:31 ID:x2eHQXIM
?ルト姫はもともと全裸じゃないの?ムジュラのルルは服着てたけどさ
480名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 18:44:20 ID:x2eHQXIM
↑すまんageた
481名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 20:42:29 ID:zvEsMV9N
ちょっとルルと繁殖してくる
482名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 21:05:26 ID:OIrmrdGS
じゃあミカウは俺が貰うな
483名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 23:09:56 ID:Rv433kYF
フクロウは誰にもやらんぞ
484名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 00:07:11 ID:GDmnV1nW
大妖精は俺の……そういや長らく忘れてたけど、かの氏の作品にはナビィいないのね
485名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 02:35:21 ID:fskqrrGP
なんて衝撃的なことに気づかされてしまったんだ…
トワプリだとただのカーソルだから忘れてた
486名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 05:02:14 ID:US6mOJvp
色々厳しくなるから居ないことにしただかなんだか書いてたような希ガス
487名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 08:10:51 ID:z2oDrfyY
確かにいたらいたで、ややこしいよな。
ずっとそばにいられたらやりにくいし。
行為後にダメ出しとかしてきそう。
488名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 08:56:40 ID:6YHQ+09h
どきどき魔女神判みたいにエロオヤジ系セクハラキャラで
リンクにやたら猥褻行為を勧めてきたりとかw
489名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 11:04:27 ID:3rxqxdjn
言われるまで素でナビィの存在忘れていた
490名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 12:37:42 ID:nXH7Qr0/
カカリコ村の「Cでおねがいします」の人や
スタルチュラハウスの人も居ない…って居なくていいw
491名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 13:16:35 ID:+LMP/j2z
ズレたことを言うが、今連載中の長編を保管庫で読んで、(凌辱するために)サリアを抱き上げたガンモドウフに萌えてしまった俺はどうしたらいいのだろう。
リンクの和姦よりガンモの凌辱シーンのほうが好きな俺は異端
492名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 14:10:17 ID:4Z2kcid5
リンクが歴史を改変するたびにガノンドロフはレイープ未遂になるわけだよね
その分たまった性欲のしわ寄せが全部…

ツインローバ「ヤリ過ぎで腰が抜けた」
493名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 20:36:23 ID:5+5NSQX9
>>490
「Cでおねがいします!Cで私をイかせて下さい!」
にすればおk。
494名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 20:42:44 ID:C+nK5sXk
アンジュ「Aは10ルピー、Bなら30ルピー、Cは100ルピーよ」
「Cでおねがいします! Cでおねがいします!」
495名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 00:12:58 ID:gn8lqXG3
>>492
魂の神殿にはすでに昇天したツインローバが…
496名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 19:10:51 ID:CJM+nRoo
ガノンも歴史改変の違和感を多少は感じられるみたいだから
次にリンクが未来に戻ったときは、何か手を打って来るんじゃなかろうか
497名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 00:36:48 ID:nYEkkebT
ふと思ったが
もし、(ただ、単に男装してるだけ設定で)
シークがゼルダだってことに
リンクより先にガノンが気付いた
らどうなってただろう?
498名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 00:43:01 ID:2B4P9XSF
>>497
犯す。
499名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 03:06:45 ID:udm6cfeZ
仮に男体化であってもガノンならやりそうだ
500名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 09:06:54 ID:KteEgrco
Ωアッー!
501名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 09:22:11 ID:9SnH3l+R
フクロウまで犯すんだから、
男相手でも全く問題なしだろうなぁ。
502497:2008/02/22(金) 09:41:26 ID:N/BUMJf5
いや、ただ単に
女であることを隠していたのがふとしたことから男装がばれて犯レル・・・。

なんて展開が美味しいなと思っただけです・・・。
503名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 09:43:08 ID:vJiL+Gdj
フクロウ犯したのはツインローバ
いやガノンもミド犯してたけどさ
504名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 01:11:28 ID:IB0tRVnA
確か城下町のカップルの男も掘ってなかったっけ?
505名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 02:32:27 ID:a0v4juFb
ガノンの半分は性欲でできています
ごめん嘘半分どころじゃないバファリンみたく言ってみたかっただけなんだ
506名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 06:13:39 ID:cy+KO5Zu
よく考えたらリンクが一番ヤバイよな
ガノンに負けたら・・・
507名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 11:41:10 ID:eYW8Uu9C
男体化でもシークを掘る=ゼルダのアナル処女喪失と脳内変換すればなんとかいけそうな俺が居るんだ…

今連載中の神の文章でならな
508名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 01:34:11 ID:OlE/IbFc
どうでもいいことだが
シーク男派根強いな・・・。
自分は
姫と同一人物と知ってからは自動的に女派になったが
509名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 01:45:13 ID:BsVzbeJ7
>>508
シーカー族の少年、と明言されちゃってるからな
胸板とかも分厚いし
510名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 01:49:57 ID:LZ9PfMsK
時オカのシークはムキムキで女には見えないのよ

ナビィ萌えの方には申し訳ないのだが、ナビィがいないからこそ
>>148のやりとりが生まれたことが嬉しい俺はサリア萌え
511名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 10:26:03 ID:LyqGASHW
ええい、ふたなり派はおらんのか
512名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 10:50:16 ID:+5C/qDew
ふたなりも有りだ
513名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 11:41:41 ID:51RMR/xz
魔法で何でもできるよ派
514名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 14:02:00 ID:qxv7nB5H
スマブラXのシークは胸あるしモロ女だよな
515名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 15:22:05 ID:xWOrANJX
姫川さんの漫画では女のようだった
516名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 16:25:52 ID:bObJIAoQ
二本ついてるよ派
517名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 16:28:34 ID:BK7PCyPh
スマブラシークのエロさは異常
518名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 21:43:41 ID:MGShXq1P
じゃあゼルダはむきむき派で
519名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 23:48:23 ID:YNhy0qn2
見た目明らかに西洋系だから日本人から見たら間違いなくガタイ良いだろうな
520名無しさん@ピンキー:2008/02/25(月) 23:21:14 ID:SoRPdXYU
>>221-224を執筆していた者ですが
こういう流れのときは続きは載せないほうがいいのでしょうか
521名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 00:01:41 ID:xfMHwISD
エロパロ板で職人が投下してはいけない流れなどない!!!

ぜひ読みたいです
522名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 02:46:59 ID:PQJV2PE6
職人待ちの雑談なんだから
遠慮なんて要らないよ
523名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 15:23:23 ID:uJFXPtam
では今日中に投下します。
524名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 21:17:35 ID:uJFXPtam
投下します。
一応>>221-224を読まないと話の内容がさっぱり分からないと思いますのであしからず。


メドリと別荘に泊まった夜…
その夜は寝苦しい夜だった。湿度が高い。眠れない…
いや、眠れないのには別な理由がある。

メドリとの関係が揺らいでいる…

メドリは、過去の大地の賢者の血を引く現代の賢者にあたる存在で、僕は彼女を大地の島へ連れて行かなければならない。
ところが今は、航海の途中に高波で体を濡らしてしまったメドリを暖めるため、僕が別荘として手に入れた島に来ている。
そこで、僕はちょっとした失敗でメドリの体(上半身だけだけど)を『そのままの姿』で見てしまったのだ…
メドリは「気にしないで」と言っていたが…

メドリの肌は白く体は綺麗だった…
僕は自分の故郷にいたころ、幼いころだけど妹と一緒に入浴したりしていたから女の子の体を見たのは初めてじゃなかった。
でも、幼いときの長い記憶よりも、その一瞬のほうがやけに興奮する。
…なんだか興奮してきた…このことはもう考えないようにしよう…

今、僕は床で寝ている…
普段からこういうところで眠っているから慣れてるけど…
メドリはベッドで寝かせてあげている。女の子に優遇するのは当然だ。

どうしても寝苦しい…なんだか気分がよくない。
ちょっと体を起こしてメドリのほうを見た。バスローブ姿だけど、寝息を立てて眠っている。
…可愛らしかった。言葉に例えられないくらい…

そういえば、冒険に出てからはこんな、何かを愛おしむ感情なんて沸かなかったな…。
…そうだ、毎日が命がけの戦いだった。死と隣り合わせな戦いの毎日、休む暇なんてなかった。
…僕はそれで、自分を高めて、強くなった。それは、その戦いの中で、安心感を得ようとしていたから…。
でも、自分が強くなることは、不安でもある。
自分が強くなって、それと同時に、本当の自分が失われているような気もする…。
元々僕は、小さい島で平和に過ごしていた、普通の人間だった。
それが、運命の導きで、剣士、そして、選ばれた勇者になった。
…それは、人間である自分から離れていくような…そんな感じがする…。

…僕はもういちどメドリを見た。
確かに僕は、この冒険で、だんだん元の自分でなくなっているかもしれない。
でも、この冒険があったから、メドリにも会えた。
やっぱり、これは運命なんだろうか…。

メドリの体を眺めていてギョッとした。
メドリが寝返りをうったからか、メドリの着ているバスローブがはだけて太股がのぞいている。もうちょっと捲れてしまうと、本当にまずいかもしれない。今メドリは下着も着ていないのだから…。
僕はすぐ、元通り横になって、それから目をそらすように、無理に眠りについた。
525名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 21:18:03 ID:uJFXPtam
…次に目が覚めたときに窓を見上げたら、うっすら光が差していた。いけない、もう夜明けが近い…。
起き上がってみると、体中、汗びっしょりだった。普段の緑色の服は脱いで寝たにしても、暑かったからかな。
…いや、それ以上に、馬鹿なことを考えて体がすっかり火照ってしまったからか…
シャワーを浴びたいけど、シャワーもベッドルームもぜんぶ同じ部屋の中にあるこの別荘でシャワーを浴びようとすれば、当然メドリが起きてしまう。
…そうだ…外の池って泳げるようになってたっけ…。…なんか暑いし、どうせ朝になるまで出発はしないし、ちょっと入っていこうかな…。

僕は音を立てないように外へ出た。うん、外の池は確かに、プールのように泳げるようになっている。それに浅いから安心だ。
メドリは起きてこないかな…。なら、大丈夫か…。…普段着を脱いで、裸になって水に浸かった。
あぁ…冷たくて気持ちいい。なんだか、疲れが取れた気がする。
全裸で、冷たい水に浸かって、生き返るようだ…。
…気持ちいい…。
なんだか、いろいろなことがリセットされるような気分。
僕は今、剣を持っていない。盾も装備していない。戦う武器も、体を守る衣服さえも。
僕は今、人間に戻っているようだ…。
水の中で横になって、肩から上だけ水の上に出し、あとは水の中に浸かっている。
海の向こうが、ほんのちょっと、明るい。太陽が昇ろうとしている。でも真上はまだ星空だ。
こんな風景を落ち着いて眺めたのは、生まれ故郷のプロロ島にいた頃くらいだ…。
ほっと一息ついた。心から、安心する。
これが、僕の求めていた安心感なのかもしれない。

「…リンク…さん?」
「うわぁっ!!」
急に呼びかけられた。メドリが起きて、外に出てきたのだ。相変わらずバスローブ姿だけど…。
「リンクさん、何をなさって…あっ!」
メドリは、僕が何をしているか、どういう状態かに気がついたようだ。
僕はどうすることもできず、ただ、そのまま硬直するしかなかった。
僕は今、無防備だ。戦闘力の話じゃない、人間としても、完全に無防備な状態になっている。
幸い僕は水に浸かっているから、メドリから、僕の体までは見えないはずだ。(たぶん………)
「メ、メドリ! あ、あの! これは…」
僕は顔を赤くしてなにか弁明しようとしたが、無駄だった。こういうときは何も浮かばない。
それはそう。間違いとはいえ、昨夜はメドリの体を見てしまったし、今回はよりによって、自分の体を見せるような行為。僕は変態か!!?

…だけど、メドリの反応は意外なものだった。
メドリは、落ち着いた様子で語りかけてきた。
「…これで…」
「?」
メドリはちょっと悪戯っぽく笑って、言った。
「これで、お相子ですね。」
「? …??」
僕ははじめ、メドリの言った言葉の意味が理解できなかった。まぁ…僕がパニックになってたからかもしれないけど。メドリはさらに、微笑んで続けた。
「リンクさん…あなたは、昨夜、私の体を見てしまいましたね…。でも、ワタシも今、リンクさんの体を、見てしまいました。…これでお互い、同じです。もう、何も気にすることはありませんよ…。」
僕は安堵感からか、深いため息をついて、浅い池に沈んでしまいそうになった。
僕は、メドリに助けられた。
526名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 21:18:50 ID:uJFXPtam
「………そうですか…人間ではなくなっている…。」
僕は、日が昇ってくる前に、メドリと並んで座り、話をした。僕が昨夜や今朝考えた、「人間離れしている」事について…。
僕は服は着たし(緑の服ではない、普段着だけど)、メドリは相変わらずバスローブのまま。お互い、暑苦しかったり、堅苦しい格好はしていないから、逆に安心して、打ち解けた話ができた。
それに、さっきもメドリに助けられた。なんだか、メドリを信頼している、自分がいる。だから僕は、素直にメドリに打ち明けることがたのかもしれない。
赤獅子の王にも話したことがない、僕の本音。強くなるのが、安心ではないこと。それが、怖いこと…。世界を助けたい自分がいる反面、元の人間に戻りたい自分も、心のどこかにいること…。
僕は、今まで心のどこかで抑えていたものを何もかも、メドリに話した。
「…リンクさん……」
メドリは、僕にそっと言った。
「………ワタシにも…賢者であるという大切な使命が課せられています。…とても怖いです…不安です。…リンクさんと同じなのかもしれませんね。ワタシも…」
「…うん…そうか………怖い…うん、怖いよ…。…なんだか、後戻りできないような気持ちになるんだ…。」
頭で言葉が考えられない。ただ、正直な気持ちが全部口から出ているような気がする。
それがいけなかった…。
「…………………」
メドリは僕の話を聞いて、じっと、黙っている。
「………?」
あんまり黙っているのが長くて、心配になって、ちょっと顔を覗き込んでみた。
「!!」
メドリの頬は涙で濡れている。ちょっと顔も赤い。
「ど、どうしたのメドリ!」
意外だった。僕の中では、メドリは、芯が強い、何でも優しく聞いてくれる姉のような印象があった。
だけど、僕の目の前のメドリは、泣いていた。
「メドリ……?」
僕は、ただ驚いてその言葉しか発せない。メドリは両手で涙を拭うが、それでも、目から涙があふれてくる。
「…ごめんなさい………ちょっと…さびしくて…コモリ様にも、もう会えないかと思うと…それに、ワタシも、今までの自分でなくなることが……」
そうか…メドリも、やはり、不安なんだ…
メドリは泣き止まない。声を上げず、静かに…。だけど分かる。メドリは本当に、寂しくて、悲しくて泣いてるんだ…。
「…………メドリ…」
そうだ…メドリだって僕と同じ気持ちのはずなのに…こんなときに、メドリを余計に不安にさせるようなことを言って…メドリが泣いてしまうような原因をつくったのは僕だ。
「メドリ……ごめん…。」
527名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 21:21:30 ID:uJFXPtam
僕は、いつだって要領が悪い。失敗して、人を不安にさせてしまうこともよくある。僕は本当に、何をやってもダメだ…。
「ごめん…………メドリ…余計なこと言って…ほんとに……」
僕は自分が嫌になってうつむいた。そういえば、プロロ島にいる頃も、失敗ばっかりして、妹に怒られたり、ばあちゃんを困らせたりしていたな…。
ふと、誰かが肩に、手をのせているような気がした。…いや、メドリが手をのせているんだ。
「リンクさん………。」
僕はうつむいたまま、でもしっかり話を聞いていた。
「リンクさん……ワタシのことは気にしないでください。確かに…ちょっとさびしいですけど…でも…大丈夫…リンクさんに聞いていただいて…ちょっとだけ安心しました。」
…メドリにそう言われて、僕も少し落ち着いた。また、メドリに助けられた。
「………メドリ…ありがとう…。それから…ごめん……つい甘えちゃって……僕って、バカだな……いつも失敗ばっかり……」
自分でも分かってる。けっきょく、メドリに甘えてしまっている。ダメだ。
それでもメドリは僕に優しい言葉をかけてくれる。
「リンクさん……失敗したっていいじゃないですか…。完全な人間なんていません…何度も失敗して、それを悔やんだりするのが、『人間らしい』ことじゃないですか?」
「…………」
「リンクさん…あなたは…失敗をしてしまったかもしれません。それは、あなたが人間だからです。リンクさんは、人間を失ってなんていません。」
「…………」
僕が顔を上げると、メドリは笑っていた。
メドリは僕の頬に触れて、涙を拭いてくれた。知らない間に流していた涙を。
悲しい涙じゃない。嬉しさの涙だった。メドリが、僕を人間として、見てくれたことに、流した涙。メドリが、僕の疲れた心を癒してくれた、その優しさに流した涙。
僕の気持ちは、今、メドリに守られている。そのおかげで、心から安心できる。
…そうか…
…この島に、メドリと来て…分かった…
…どんなに強い力よりも…
…どんなに強力な武器よりも…
……安心感が得られるもの…
……それは…優しさ…
……今まで、忘れていた…
………これが…僕を…守ってくれる…
………本当に…甘えられるもの…
………本当に…信頼できるもの…
…………僕が…本当に求めていた…安心…感………



528名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 21:22:27 ID:uJFXPtam
もう、自分でも何書いてるのか分からなくなってます。
この先、抜ける小説にはならなそうですが、それでも続きます。
529名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 23:33:37 ID:PQJV2PE6
これはこれで・・・
530名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 07:22:33 ID:NXGJzD9w
GJ たとえスレチ的展開になろうとも続きお待ちしてます
531名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 19:26:20 ID:r3w/fzOn
乙。今後の展開に期待。
532名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 22:41:21 ID:tujbYME1
今回はどっちかっていうとメドリよりリンクに萌えた。
533名無しさん@ピンキー:2008/02/28(木) 16:54:25 ID:tUWI5FoH
女性の身体を洗い、マッサージをする仕事になります。
射精の瞬間を見たいという要望も多数あります。
[email protected]
534名無しさん@ピンキー:2008/02/29(金) 00:03:55 ID:MG70zj2I
ttp://www.e-ohkoku.sakura.ne.jp/votec/votec.cgi

ゼルダ姫が大分下で頑張ってるぞ
535 ◆JmQ19ALdig :2008/02/29(金) 23:05:49 ID:L1YHstB/
投下しようと思ったけど、容量が足りません。
次スレ立ててもいいものでしょうか?
536名無しさん@ピンキー:2008/02/29(金) 23:37:17 ID:ji0wye7D
是非
537名無しさん@ピンキー:2008/02/29(金) 23:40:11 ID:S9Uttiml
よろ
538 ◆JmQ19ALdig :2008/03/01(土) 00:34:39 ID:LcLLr0m0
立てました。

ゼルダの伝説でエロパロ 【7】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1204298074/

んでもって投下しました。
539名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 13:19:47 ID:UpwADcX/
>>528
GJ
メドリは貴重だから…
是非エロも
540名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 20:57:20 ID:Dp9IAreo
こりゃ埋めるのに時間かかるな
完全乗換えでいいのか?
541名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 00:21:03 ID:ANLyxP6x
またナイスな埋めSSは来るかもよ。

トワプリSSが意外に少ないような気がするんだが、これはやはりあれか
リンクとミドナの繋がりがあまりに確定されてて、話が広がりにくいせいなのかね。
二人が組んで他の女を落とすとか、アリじゃないかと思うんだが。
そういう話はキャラが違うと言われそうでもあるがな。
542名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 01:06:37 ID:nreDV35f
個人的には、ダークリンクかガノンに捕まって女(ゼルダ)ってことバレてヤラレルシークが見たい。
スマデラと公式イラでは涙目になったがシーク女設定がどうしても諦めきれん・・・。
543名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 01:38:43 ID:2x1fIlGt
スマブラXのシークはトワプリの開発段階であったシークだそうだから
没にならなかったことにしてしまえば…
あのシークは女にしか見えん
544名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 01:39:15 ID:WgQMVUge
>>541
大人ミドナの妖艶ぶりからして
男も女もみさかいなく食っちまう女なんだぜと言われてもOK
リンクといっしょに3P(;´Д`)ハァハァ
545名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 13:39:17 ID:SWzup+pm
トワプリのゼルダがシークに変装(変身ではなく)する場合
どういう理由で、どういう状況下で、ということになるのかな
546名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 14:08:00 ID:nreDV35f
シークに変装する時はサラシと肩パットは付けて欲しいと思った。
547名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 02:10:01 ID:fou4O0DV
>>542
>ダークリンクかガノンに捕まって女(ゼルダ)ってことバレてヤラレルシーク

余所で見たことがあるような・・・
548名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 15:10:20 ID:0g3XNq4m
個人サイトなので出すのは控えるが
そういうマンガが裏ページにあるのは知ってる
シーク(ゼルダ)がダークリンクに犯され…かけてるところで未完成だったけど。
549名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 18:26:40 ID:HThLVxL1
初めて来たけどなにこの個人スレ
良識ある大人なら自分でサイト立ち上げてそこで書くだろ
550名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 18:29:10 ID:HThLVxL1
途中送信しちまった
こんな状態だとほかの人が書きづらいのわからないのか?
551名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 19:00:14 ID:TF90w3Jf
たまに小ネタ書いてるし
別に書きづらくないけど?
552名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 21:23:03 ID:AD42Ojp4
>>550
ワロタww
553名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 00:12:31 ID:TFxx1VfQ
ww
554名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 01:23:20 ID:nd+1uG9N
二次創作書いてる人?
自作投下したいんならいつでも歓迎だよ

新聞の連載小説ばりに毎日投下してるわけじゃあるまいし、
投稿の間隔は空いてる
その間に投下すればよかろう

いま足りないのは誰かさんの度胸だけかもよ

555名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 22:00:16 ID:t4H2cj4K
久々にまとめ読みしようと覗いてみれば・・・
みんな元気だね
556名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 11:01:23 ID:u92rCbaD
取り敢えず放置しててもしょうがないのでうめうめ
557名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 12:58:12 ID:LYnGr4dg
どうでも良い喚き合いはこっちでやれば埋めにちょうどいい
558名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 17:22:07 ID:wo2YrAH0
559名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 17:22:56 ID:wo2YrAH0
560名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 17:23:25 ID:wo2YrAH0
561名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 20:43:20 ID:l7K8iY75
562名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 01:30:14 ID:M+0NO2Og
563名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 02:04:06 ID:qL0pSvwu
564名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 10:58:20 ID:oumgPCoQ
565名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 11:29:11 ID:eDjhneSw
俺は信じない!俺は信じないぞ!
566名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 14:04:47 ID:bsSJyv3W
わろた
567名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 02:42:33 ID:A+V+iioy
ならば俺はミドナ様な
568名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 20:43:11 ID:RdsbUSva
なら俺はナデクロさんになる
569名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:03:01 ID:XK/nnLV9
ミドナ様に跨がられたい
大小どっちでもいい
570名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 23:44:28 ID:ifQnk0Ic
皆で埋めよう
571名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 23:51:40 ID:j3cpX1r5
ただ埋めるのもアレなんで、俺は煩悩を語るぜ

トワプリのリズは人気ないのか
あの巨乳は捨てがたいと思うんだが
572名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 01:24:12 ID:C+inI0oY
トワプリの最萌えキャラはベス
これは譲れない
573名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 02:13:35 ID:KtOkAgo3
孤高の女剣士アッシュを忘れられては困る



でもやっぱり黄昏の姫君ミドナ様
574名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 10:38:37 ID:9CuVpeVO
リズが誰だか思い出せない…
575名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 14:03:21 ID:BNjj0vmC
トワプリはゼルダ以外クズ。
576名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 16:46:22 ID:sQwkndhh
ボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコ
コボコボコボコボコ とりまきの三人娘 ボコボコボコボコ
ボコボコ リズ ∧_∧ ∧_∧∧_∧ アッシュ ボコボコ
ボコボコ∧_∧´・ω・)(´・ω・`)・ω・`∧_∧ボコボコ
ホコボコ(´・ω・)∧_,∧lll ∪)∧_∧・ω・`)ボコボコ
ボコボコ∧_∧ ´・ω∧∪∧(・ω・∧_∧⊂)ボコボコ
コボコ (´・ω・)ベスつ);;)ω(;;(⊂ヘナ(・ω・`)___\ボコボコ
ボコ (っ女王つ=つ(>>575)⊂=⊂≡猿⊂) \ )ボコボコ
ボコボコ/∧_∧∧_∧∧ ∧_∧∧_∧\ボコボコ
ボコボ( ( ´・ω)(  ´・) (    )`  )(ω・` ) )ボコボコ
コボコ (っ  つ/アゲハ ) ( イリア ) ウーリ\ ⊂)ボコボコ
ボコボ/ ミドナ)`u-u'. バ∪ ̄∪バ`u-u'テルマ\ボコボコ
ボコ( / ̄∪ ボコボコボコボコボコボコボコ ∪ ̄\ )ボコボコ
ボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコ
コボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコ
577名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 21:59:31 ID:IBinGEND
巨乳といえばテルマだな
トワプリの女キャラの中で最も性技に長けていそうだ
578名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 00:39:02 ID:S3VspjZr
>>576
ブスと化け物のバーゲンセールだなw
579名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 09:42:24 ID:CS5ngE8Z
>>576
>とりまきの三人娘

誰だっけそれ
580名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 11:45:55 ID:TM5eJuZr
>>541
何かスマブラのエロパロスレでそういうの見たぜ
ミドナと分かれた後のリンクとゼルダのパロ
なよなよした文だが読んで損はないとおも
581名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 23:29:15 ID:XJgdr6hc
>>579
あれだろ、城下町のなんかミニゲームクリアすると寄ってくる奴ら
無駄にハートもらいまくった
582名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 00:51:51 ID:qVH++vzr
ハート散らして走り去る三人娘を延々追い掛けたのはいい思い出
583名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 03:30:54 ID:cyiFHiNi
>>574
リズは川下りの貸しボート屋にいる姉ちゃん

巨乳だが顔は・・・のリズ
顔はかわいいが貧乳のヘナ
狙っているとしか思えん組み合わせの姉妹だな
584名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 07:34:33 ID:hb7qa11d
埋め埋め。空気読まずに夢砂の船長と姐さん。エロくなくてすまぬ。
585ゲームオーバー、そのあと:2008/03/16(日) 07:35:03 ID:hb7qa11d
船長の意識が戻ると知らない船の中に居て首に首輪と鎖が付けられていました。
頭の後ろが痛いので気を失うぐらいの勢いで殴られたと判ります。
首輪はとても頑丈で長い鎖は壁に繋がれていてどんなに引っ張っても外れません。

どうしてこんな事になったのか一生懸命考えてみました。
目の前でリンクが闘いに負けて倒れた所までは覚えています。
気絶してるリンクを助けようかどうしようか迷ってるうちに
隠れてた木箱の蓋がいきなり開かれて「見〜つけた♪」という声が聞こえてきて……。

目の前に疑問の答えが立っていました。
「おや?お目覚めかい?ようこそアタイの船に。」

女海賊の姐さんの声を聞いた瞬間に船長は脊髄反射で猛ダッシュで逃げだしました。
船長は昔彼女と組んで海賊をしていたのですが暴力は嫌という勝手な理由で突然姐さんを裏切って
夜逃げするついでに姐さんの財宝もくすねて行ったので滅茶苦茶怨まれていたからです。
姐さんはそれ以来執念深く追いかけてきては海で出会うたび魚雷で爆撃して船を沈めようとしたり
何度も船に乗り込んできて船長を渡せとリンクを殴って脅したりと
いちいち航海の邪魔をしてくるので船長にとって疫病神以外の何者でもありませんでした。

10歳そこらのリンクを容赦なく気絶するまで斬り付けるような女ですから
捕まったら何をされるかわかったものじゃありませんのでそれはもう必死で逃げます。
逃げるのは良いのですが壁に繋がれてしまった事を忘れていたのはうかつでした。
伸びきった鎖に引っ張られひっくり返った船長を踏みつけると姐さんは高笑いしました。
「もうどこにも逃げられないよ観念しな。じわじわとなぶり殺しにしてくれるわ。」

船長は臆病なのでまともに喧嘩したり戦ったりした事が無くて痛いのは苦手です。
今からミンチになるまで拷問されたり逆レイプされてミイラになるまで搾り取られたり
そういった死ぬほど恐ろしい目に合わされるのかと思うと涙目になり
肝っ玉やら何やら色んな所が縮み上がりました。

殺す宣言をしたのにそれ以上何もせず姐さんは別な部屋へ消えました。
やがて刃物がかちゃかちゃ触れ合う音や炎にあぶられた鉄の焼ける臭いがしてきたので
そのたび船長はパニックになりました。
戻ってきた姐さんはマ・グロのステーキとアマシイラのシチューをテーブルに置くと船長を手招きします。
毒でも入ってるかと警戒してみましたが姐さんは同じ皿の物を平気で食べているうえに
断るとそれを口実にバイオレンス劇場が開催される予感がして恐る恐る口にしてみましたが
怯えて料理を楽しむ余裕も無く味はろくにわかりませんでした。

食事が終わると姐さんは危害を加える事も罵って脅す事も無くただ去っていったので
船長は机と椅子しかないがらんとした部屋にひとりで残されました。
もしこの鎖や壊した椅子の尖った先を武器に戦ってみたら勝てるかどうかシミュレートしてみましたが
一方的に虐殺される無残な結果しか見えなかったのでその方法は諦めました。
鎖は数メートルの長さがあって廊下の小部屋の洗面所までは行けるので
扉は閉められませんがトイレと浴槽ぐらいはどうにか使えそうです。
便器で用を足しながらとりあえず今のところ部屋に閉じ込められたまま姐さんの目前で
排泄を強制されるような情けない状態になってない事に安堵しました。
もっともそんな事になっても若い女の前で出す事は別に平気でしたが。

その晩は監視があるかもしれないので長椅子で寝たふりをしたまま特に何もしないでいました。
次の朝油断した姐さんが獲物を漁りに出て行った隙に首輪を外そうと色々試してみましたが
鎖の留め金の鋼は硬くてそう簡単には曲げたり削ったり出来そうになく
こっそり手に入れた錆釘で壁を掘ろうにも膨大な時間が掛かりそうで困り果てました。

そうこうしてるうち遠くから大砲の響きや戦いの咆哮や武器のぶつかる音が聞こえてきたので
また大嫌いな略奪沙汰に巻き込まれる日々が戻ったかと思うとぞっとしました。
腹が立つのでそのまま相手に殺られてしまえとも思いましたが
物音が途絶えてからかなり長い間姐さんが帰って来ないとそれはそれで不安になって
乗り込んだ先で姐さんが斃れてしまいこのまま放置されて餓死する姿や
反撃で撃沈されしまい船に鎖で繋がれたまま溺死する姿を思い浮かべて涙目の時間を過ごしました。
586名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 07:35:20 ID:hb7qa11d
姐さんは毎日一緒に食事をするだけで船長には何もしてきませんでした。
どうせ裏があると思って警戒し緊張する日々が続きましたが
余りに何も起きないのでだんだん拍子抜けて姐さんに平気で軽口を叩けるようになりました。
時には戦闘のあと傷だらけで帰って来た姐さんに薬を塗りながら
今お前に死なれたら困るから仕方なく手を貸してるんだからなと毒づいたりしました。
この状態に慣れきた船長は本来の俺様な性格に戻って色々姐さんに要求し始めました。
大抵の要求は尻を蹴飛ばされて終わりましたが暇だからと机に酒やつまみを大量に置かせる事と
床で寝るのは背が痛いとわがままぶっこいてぼろいマットと毛布をせしめる事には成功しました。

毎日酒と海産物をたらふく腹に詰め込んでごろごろと昼寝をしてるうち
なーんだこれっていわゆるツンデレってやつかと思ってちょっといい気になってきました。
ひょっとして俺の事はもう許す気になったけどうまく言えないからこんな過激な手段に出たのかな?
試しに姐さんのおっぱいを触って怒らないかどうか試してみたところ
鼻血が出るくらいの勢いで張り飛ばされて股間も蹴飛ばされたので2度と試そうと思いませんでした。

無駄に栄養を摂って精力を持て余す状態になってきたので姐さんが無防備に見せる褐色の肌の
緩い動きやヘソ出しスタイルのビキニからはみ出てる下乳や腰のくびれは船長にとって目の毒でした。
ゆるやかなハーレムパンツに隠れて外からは見えませんがあの布の下には
引き締まった腿や大ぶりで弾力があって形の良い尻が隠されているのを船長は知っています。
また玉を蹴られるのが怖いので姐さんに見つからないようこっそり抜きながら
立場が逆転して姐さんを鎖で繋いだらこうしてくれるという妄想でとりあえず憂さを晴らしました。

幾らガス抜きしても船長のコレステロールは溜まる一方で油っこい食事続きで胃がもたれたので
もう逃げないから運動できるように鎖を外すかもうちょっと軽いメニューにしてくれと頼んでみました。
姐さんはにこっと笑うと言いました。
「嫌だよ。高カロリーで栄養たっぷりな飯と酒に溺れてろ。
心不全を起こすか。高血圧で脳血管がぶち切れるか。糖尿になるか。
サァ楽しみだ。じっくり時間をかけてじわじわとなぶり殺しにしてやる。メタボと肝肥大で死ね。」

((((((;゚Д゚))))))gkgkbrbr
最初から許す気なんか全然無かったと判って今度こそ心底怖くなり
涙やら何やら色々ちびっと漏らして気を失いかけました。

それからは幾ら目の前に美味しそうな料理や上等な酒や魅惑的な肢体を出されても
孔明の罠に見えてきて何も手が付けられなくなりました。
ろくに食事もしなくなったので元々痩せてる身体がげっそりと痩せてきて
ひたすらここから逃げ出す事だけ考えて夜もろくに眠らず隙をうかがってるうちに
目の下の隈も壮絶に増えていって元々目つきの悪い目を血走らせて辺りを見回すので
どう見ても挙動不審な危ない人にしか見えなくなりました。

やつれていく船長のそんな様子にお構い無しに姐さんは
「どうして食べないの?おいしいわよ〜?」と意地悪な事を言って酒や料理を見せびらかします。
目の前にうまそうな物があっても命が惜しいので自制するしか無くて
美味をちょっとしか味わえないというのは欲の張った船長の性格には耐え難い事でした。
極上の酒を前につい杯に手が出そうになるのを必死に堪えているととても惨めな気分になって
なんて酷い奴だやっぱりあの時逃げて正解だったと思って憤慨しました。

他人から見るとどこが我慢なのかさっぱり判らない状態だけど
船長本人は理不尽な虐待にけなげに耐えてるつもりでいましたが
さんざんからかわれたあげく年代物の高級ワインを目の前で全部飲まれてしまって遂にぶち切れました。
暴力は大嫌いでしたがこうなったら正当防衛でこいつを倒すしかないと決心したのです。
大量の獲物相手に戦って疲れ果てて帰って来た姐さんを見てチャンスだと思い様子を窺いました。
姐さんはいつもなら鎖の範囲外の遠く離れた隣部屋のベッドで眠るのですが
今日は食事もそこそこに長椅子に腰掛けたままうたた寝しています。
ぐっすり眠っている姐さんを見下ろして俺のターンキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!と心でガッツポーズです。
身動きできないようぐるぐる巻きに縛るか酒瓶で殴って気絶させるかこのままいっそとどめを刺すか……。
587名無しさん@ピンキー
いきなり寝返りを打った姐さんに自分の名前を呼ばれて心臓が飛び出るぐらい驚いた船長は
素早くテーブルの下に隠れるとドキがムネムネ状態のまま嫌な汗を流しまくりました。
いつまで経っても反撃して来ないので恐る恐る様子を見ると姐さんは深く眠ったままでいます。
なんだ寝言かと安心して近寄るとまた姐さんは小さく船長の名前をつぶやいて一筋の涙を流しました。

どうやら姐さんは眠りながら泣いてるようです。
元々姐さんを嬉し泣きさせて啜り泣く姿を見るのは嫌いじゃなかったのでじっくり観察しましたが
これはどう見ても仕返しに成功して泣き喜んでる姿には見えませんでした。
俺をいじめて喜んでるんじゃなかったの?と船長の頭は疑問でいっぱいになりました。

姐さんの顔を眺めているうちふと頬を流れる涙を舐め取って涙を伝って喉に舌を伸ばし
そのまま下へ下へと顔を埋めました。
どうもこんな泣き顔じゃない別な泣き顔が見たいというスイッチが入ってしまったようです。

目を開いて驚いたような顔で船長を見つめてきましたが既に下半身が暴れん坊天狗と化して止まらないので
逃げるとか土下座して姐さんに許しを請うよりも構わず続ける道を選択しました。
姐さんはよっぽど疲れていたのでしょう。抵抗らしい抵抗もせずされるがままになっています。
カフェオレ色の肌に玉のような汗を浮かべて何度も背中を仰け反らして切ない声を上げる姐さんを見上げて
勝った!!第3部完!!という勝利の気持ちでいっぱいになった船長ですが
同時に貧血を起こしたように頭と心臓がくらくらして腰が抜けそうになりました。
これはいかんと思い血糖値を上げようと冷めた料理をかっ喰らって手近な酒を飲んで一息つくと
がくがくと身体を震わせながらまだ呆然としてる姐さんを捕まえて続きを再開しました。
最初からクライマックスだった姐さんは一撃目から逝かされて突き引きされるたびに派手なリアクションを返します。

姐さんが気を失うまで責めて攻めまくり溜まりまくった鬱憤やら何やら色々外に出してすっきりしたので
これなら後で20発くらい殴られても元は取れたかなと船長は思いました。
多分殴られない自信もありました。
実際は8発殴られてから投げ飛ばされたあと「大丈夫?」と心配そうに抱き起こされたので
勢いで押し倒してもう数回昇天させておきました。

それ以来姐さんに触っても時々しか怒らなくなった上に
やらせろやらせろと騒いだら5回に1回くらいはOKしてくれるようになりました。
疲れるからと言ってすぐに断って逃げられるので出来る時にがっつり犯す習慣がついて
全身運動したからいいやとばかり酒も料理もどんどん口にするようになりました。

カロリーを摂り過ぎた気がすると姐さんで解消して
姐さんに出し切ると虚脱して酒と料理で栄養補給して
また飲み食いし過ぎた気がして姐さんを組み敷いて
これは駄目だと思って酒を断とうとしましたがつい飲んでしまって姐さんに走り
禁欲的になろうにも姐さんの胸チラや長い髪を掻き揚げたうなじについ食いついてしまい
出すだけ出すと栄養補給しないと死にそうになったのでがつがつ飲み食いして
うっかり飲みすぎてまたカロリー消費を口実に姐さんを誘って……。

どうやら酒と女を輪廻する負のデススパイラルに陥ったようでした。
痛めつけられて無理やり酒や料理を口に押し込まれたり過度の御奉仕を強制されたなら
見かけより脆い船長はすぐに身体や心を壊して生きる屍になってしまっていたでしょう。
自から進んで飲み食いして自ら望んで姐さんを抱いてるうちに
気が付くと姐さん無しではいられない身体になっていたのです。

緩やかに調教された自分に唖然として文字通りハメられたなと船長は思いました。
このまま栄養の取り過ぎで成人病で死ぬか局地的な運動のし過ぎで腎虚で死ぬか
嫌な二択しか無いのかなあとぼんやりと考えつつ本当に酷い女だと思いながら
腕の中で小さく寝息を立ててる姐さんの髪や背を撫でたり
おっぱいを揉む手を休める事はありませんでした。


負けたショックで経験値やアイテムやルピーを若干失いながらそれでも再び立ち上がったリンクが
いつか助けに来て最後に日記を付けてた場所へと船長を連れ戻すまで
この恐ろしい拉致監禁と虐待の日々は続くのでしょう。