嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その39・40

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1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSSを扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その38
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1188451287/l50

■まとめサイト
2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html

■避難所
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二人目の子
http://www2.atchs.jp/dorobouneko/
2名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 23:53:36 ID:S8geNuWV
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第22章
http://qiufen.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1190013647/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板 その2
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1172035731/
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレin角煮板4th
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1191295796/

誘導用
【一人で】ハーレムな小説を書くスレ【総食い】 11P
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1186857625/
ヤンデレの小説を書こう!Part10
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1189967712/
ほのぼの純愛 9スレ目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171372657/
●●寝取り・寝取られ総合スレ5●●
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179749372/
キモ姉&キモウト小説を書こう!
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1190487974/
3名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 23:54:31 ID:S8geNuWV
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
4名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 23:57:26 ID:S8geNuWV
このままだと39は要らない子になりそうでしたので、前スレの>>805の案を採用させてもらいました。
なお「39・40合併号 」と出来なかったのはサブジェクトが長すぎた為です。
あしからず・・・
5名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:01:02 ID:QKdKgFM0
>>1
6名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:15:31 ID:qQt0PMup
>>1
乙。しかしもう40スレとは…人口が多いのか住人の熱量がいやに高いのか…
7名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 01:13:35 ID:uYc5ElpL
1乙
そして意見を汲んでくれてアリガトウ
8名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 05:18:08 ID:AtcnalhG
1乙
9名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 15:53:43 ID:syNdc4Nt
美奈子の娘さくらと、美耶の娘しおんか……よし、妄想湧いてきた
スレタイ付けた>>1GJ!
10トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/10/05(金) 01:53:50 ID:iFPoC0gq
では投下致します
11桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/05(金) 01:58:07 ID:iFPoC0gq
 第16話『追憶2』

 次、目が覚めた場所は見慣れた桜荘の自分の借りた部屋の天井がそこにあった。
どうやら、今度は桜荘へ戻ってきたようである。部屋の周囲を確かめるように調べたが、一つだけ異変に気付いた。
カレンダーの日付が先程の飲み会から3日後になっていた。
そう、桜荘にやって来てから、2日目の朝であった。
春休みに突入するとすぐにこの桜荘へとやってきたことを思い出した。
 確か1年前の俺はこれから始まるであろう桜荘の生活に希望と期待を全く抱くことなく、
幼馴染から逃げるため傷心した気持ちで沈んでいた。
そう、陰気な男と評されてもおかしくない。
それ程に更紗と刹那と別れてしまったことに精神的なダメージを負っていたんだ。
それがこの桜荘の生活で何もかも変わってしまうとは一体誰が思うのであろうか。
 
 過去を遡っているなら、その現象に大人しく従おう。これから語られるのは俺が桜荘にやってきたばかり頃の話だ。

 
一人で朝食を食べる日々、それは男の独り暮らしとは虚しく心に空白を開けることに等しい行為であった。
一応、桜荘の管理人である奈津子さんの話では憩いの場と名付けられている住人たちの交流の場として使われている
部屋には美味しいご飯と味噌汁が常時しているらしいのだが、
初日に人間が作った物ではない食事を味わうことになろうとは夢にも思わなかった。
あんなクソ不味い飯を食べるぐらいなら、自室に引き篭もって食パンを生かじりで食べていた方が何倍もマシである。
 ただ、自室に引き篭もっていると遠い故郷で見捨てるような形で別れた幼馴染を嫌でも思い出すのは欝だったからさ、
まだ、この桜荘の住民の方々に挨拶してないし、この際に済ませておこう。

 ドアを開けると桜の花吹雪が枚落ちてきた。
廊下に散らばる桜の花びらは一体どこの誰が片付けるんだろうと胸中で思いながら、
隣の部屋を借りている住人のドアまで辿り着くと深呼吸をした。
 最初の第一印象というのは大事である。
第一印象が特に悪い場合はその後の人間関係は円満に上手く築くことができずに憎しみと悲しみを呼ぶ、
争いに突入することだってあるのだ。
 最低限の気を遣いながら、俺は隣の住人のドアをノックした。


「あの……すみません。一昨日に桜荘に引っ越してきた者なんですけど」
「は〜い」
 可愛らしい声で返事して、初めて隣の部屋に住んでいる住人が女性だと気付いた。その内側から開くと女性が姿を現わした。
「い、一体。何のようですか?」
「初めまして。俺は深山一樹っス。今度、桜荘に引っ越してきました。よろしくお願い致しますね」
「ええ。そうですか。ご用件はそれだけですね。
私は誰とも仲良くしませんし、あなたとは永遠に関わる機会はないと思います。
それに馴々しい態度で近付いてくる人間は私の経験上、絶対に災いを運んでくるに決まっているんですから」
「あの……」
「ではこれで失礼致します。では」
 と、不機嫌な態度で俺を薄汚れたような視線で睨み付けていた少女は乱暴にドアをおもいきりに閉めた。
そして、ドアをロックする音まで聞こえてくる。

「い、一体。なんだったんだ……彼女は?」
 名前も知らない隣の住人に絶対零度に等しい冷たさに接するような事をやった覚えのない
俺は茫然として彼女のドアの前で口を開けて、立ち尽くしていた。
 表札を見ると少女の名前はこう書かれていた。


 安曇 真穂。

 深山一樹の痛い人リストに加えておこう。
12桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/05(金) 02:01:55 ID:iFPoC0gq
 暖かい日差しが桜荘の敷地に降り注いでいるおかげで欠伸が出そうになる。
 春という季節は人に心地良い睡魔を与えてくれる。大きな桜の木を身近で見学しようと桜荘の敷地を探険している途中だが、
 桜以外に見物できる場所はないのでいい加減に見飽きていた。
 先程の痛い少女、安曇真穂の邂逅を思い出すと、それは深山一樹にとってはそれなりの衝撃を与えていた。

 だって、そうだろう。


  隣人を愛せよという言葉通りに周囲の人間関係を築くことは桜荘という一種の社会にとっては大切な物であり、
  適用できない物は冷酷に排除される。少なくても、孤独することは避けられないであろう。
  だが、安曇真穂という陰気な少女と隣人関係を築こうとしても、
  あちらは俺に対しての敵対心と警戒心は常人に理解できるようなものではない。
  一体、どういう人生を送れば、引っ越しの挨拶に来た人間に罵声を浴びることができるのか。
  逆に問い詰めたくもなる。 
  一応、仲良くするつもりはないが……顔を見合わせる度にあんな冷たい視線で見られると
  どんな嬉しいことすらも台無しになりそうだ。

「それに……桜荘の住人は俺とあの安曇真穂だけ。それでアパートなんて経営できるんだろうか?」
 親の反対を押し切って、この土地にある大学に進学することを選んだのに。
  先行きがこんなに不安に思えるなんてこれまでの人生にはなかったんだけどな。
 目蓋に浮かぶのはいつも隣に居てくれた幼馴染の更紗と刹那。二人が傍に居続けてくれたから、
 一人になる孤独の辛さも寂しいことも知らなかった。世間知らずでなんて馬鹿な自分。哀れだよ。
「さっさと部屋に戻るか。気晴らしにもならない」
 案外、こっちに来てから引っ越してすぐにホームシックにかかっているかもな。


 桜荘の敷地を一周して、玄関の場所まで戻ってくると配達員の方が出てくる姿を目撃した。
 軽く一礼してから、俺は桜荘の中に戻る。桜荘の共用の下駄箱に自分の靴を置くと専用のポストに
 自分宛ての宅配物がないかと確認するが、誰も俺がここにいるのを知らないのであるはずがなかった。
 そのまま、自分の部屋に戻ろうとした瞬間に俺は自分の目に映った物を疑った。
 布団を自分の体に身に纏った少女がそこに居た。

「あわわわわわっっっ……」
 俺の姿を凝視すると少女は顔を青くして怯えていた。
 ここにいるってことは桜荘に住んでいる住民なんだろうかと俺は素朴な疑問を抱いていると。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ〜〜〜〜〜!!」
 少女は唐突に声にならない叫びをあげると、布団を抱えたまま、脱兎のごとく逃げ去っていく。

「一体、何なんだ……。俺と安曇真穂と管理人さん以外は敷地内にいるはずがないのに……」
 と、呆気に取られた俺は嘆息しながら呟いていた。
「んっ……どうしたんだ」
「あっ。奈津子さん。実はですね」
 先程の布団お化けについての詳細を奈津子さんに話した。
 彼女は軽く苦笑をしながら、温かい目で去っていた布団お化けの道を見ていた。

「その布団お化けはさ……私の妹なんだ。高倉美耶子。
 今年の春から高校生なんだけどさ。まあ、今日は桜荘恒例のお花見会でじっくりと話すとするか。
 一樹君は強制参加だから出ないと桜荘から追い出して警察に通報する。わかった? わかったなら、返事をしなさい」
「う、うん。わかった」
「じゃあ、今日の夜7時の大きな桜の木にね」
 そう、告げると奈津子さんは管理人室の方に向かって去っていた。
 嫌と言えないヘタレの俺は奈津子さんが主催するお花見会とやらに参加する羽目になった。

 とりあえず、深山一樹の痛い人リストに高倉姉妹を追加するべし。
13桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/05(金) 02:05:07 ID:iFPoC0gq
 夜。
 不気味な夜風と舞い散る桜の花びらの道を通り過ぎると大きな桜の木にもたれている奈津子さんの姿がそこに在った。
 時間厳守にやってきたつもりだが、すでに酒の瓶を2つとも開けていて、
 顔を朱に染まっていた彼女が遅いぞとろれつが回らないぐらいに酔っていた。
 あの酔っ払いの相手をするぐらいなら、部屋で夕食のカップラーメンを食べていた方が幸せのはずなんだが……。
「来るのが遅いぞ。一樹君」
「すみません」
 一応、謝る俺。二度も言わないでくれ。
 これだから酔っ払いの相手は嫌なのだと。
 そういえば、桜荘にやってきた時は二日酔いに苦しみながら、ここに辿り着いたんだったけ。
  奈津子さんの息が酒臭かったおかげで飲み会で飲み過ぎて、頭痛を抱えながらの旅立ちに誓った事を思い出したじゃないか。

 酒は二十歳になってから。

「で、一体何を話したいんですか?」
「そりゃ、決まっている。妹の美耶子について」
「妹さんは変わった趣味については俺は誰にも言い触らしませんよ。お墓にまでその事実を持ってゆくつもりです」
「アンタ、いい度胸してるわ……。私の大切な妹を変態扱いしないでくれる」
「そうじゃないんですか? こんな所まで呼び出したのは妹さんの奇行を口止めするために俺を亡き者に」
「いい加減にまともな話をしたいんだけど?」
 恐ろしく迫力のある奈津子の睨みに俺は悪ふざけをやめて、真面目に彼女の話に耳を傾けた。
 短い人生を終わらせたくないからな。

「高倉美耶子。私の妹は不登校児というか、ひきこもりなんだ。
 中学生2年生の時にクラス全員に無視されたことがきっかけでずっと家に閉じ篭もっている。
 一応、高校の入学試験だけは受けさせたが……入学式を待たずにずっとひきこもりをしているんだ」

「ひきこもり。リアルで存在していたとはな……」
「私も美耶子がひきこもりになるなんて夢にも思わなかったよ。

 両親が死んで、この桜荘を遺産として引き継いで、妹が一人前になるまで頑張って面倒を見ようと矢先にこれだ。
 美耶子と会話したのは高校受験を無理矢理に受けさせた日以来かな。
 それっきり、美耶子の姿を見ることなんてなかったよ」

「まあ、ひきこもりの人を強制的に高校受験を受けさせたら、姉妹の仲もギクシャクになるわ」
「確かに。姉として妹を救ってあげられないなんて情けないのにも程がある。
 死んでしまった、母さんや父さんにどう申し開きができようか?」

 酒を呑みながら、饒舌に過去の出来事を懐かしく想いながら、
 何も解決していない現状に苛立ちを隠せない奈津子さん。彼女の言葉一つ一つに重みがあった。
 だが、一昨日に桜荘にやってきたばかりの俺に家庭の事情を話すのには互いの信頼と信用が築き合ってはいない。

「いや、出来ない。出来るはずがない。私は無力な人間。だから、一樹君に託したいんだ……妹や安曇さんの事を」


「はい?」
14桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/05(金) 02:07:44 ID:iFPoC0gq
 どうして、一昨日にやってきたばかりの人間に赤の他人の問題に関わらないといけないんだ。
 そもそも、俺は幼馴染の事で傷心していて、他人を気遣ってやれる余裕はない。
「母さんが目指していた桜荘は住人たちが一つの大家族として支え合って苦楽を共にすることを目標にしていたんだ。
 この敷地内に入居しているだけで家族なんだ。だから、一樹君も家族の一員なんだよ」
「あの……契約書には何にも書かれていなかったんですけど?」
「細かいことを気にするな……家族として妹と安曇さんを絶望から救ってやってくれ」
「妹さん、もとい、何で安曇さんまで……!?」
「安曇真穂。近所に住んでいるから、奥様方の井戸端会議ネットワークからいくらでも情報が入ってくる。
 彼女の複雑な家庭の事情のおかげであんなにも捻くれて誰も寄せ付けない態度を取るようになったんだ」
「だから、どうして。俺なんですか? 俺は何の取り柄もない平凡な大学生になる予定の一般人ですよ。
 他人の問題を解決なんてできるはずじゃないですか」
 それは俺自身が保証する。幼馴染から逃げるためにこの遠い故郷まで逃げてきたのだ。
 そんな自分にひきこもりや複雑な家庭の事情など言った問題を解決できるわけがない。
 奈津子さんは一体何を考えてやがる?
「一樹君が他の二人と同じように絶望していたから。
 だから、二人を暗闇の奈落から救うことができるかもしれないと思ったからかな?」
「絶望だって……」
 俺が絶望している。
 その言葉に胸の奥底をナイフで切り裂かれるような痛みを感じたのは錯覚じゃあない。
 幼馴染を傷つけて、拒絶して、最後には見捨てた。

(カズちゃん)
(カズ君)

 俺に助けを求める訴えていた姿が脳裏に焼き付いている。
 思い出すだけで自分の首を絞めたくなる衝動に駆られてしまうだろう。それほどに俺の犯した罪は重い。
 ならば、その罪を償うためにはどうすればいいのだろうか。更紗と刹那にどれだけ謝ったとしても許されるはずがない。
 だとすると。
「俺に出来ることがあると思いますか?」
「仮に天才がどれだけ苦労しても出来なかったことが赤の他人ならあっさりと出来たりする世の中だ。
 赤の他人の一樹君になら出来るかもしれない。そのかもしれないが大切なんだよ。
 それは可能性。誰にも可能性はある。
 それを最初から諦めているから、人は自分に絶望する。
 常日頃から絶望と向き合う強さを持つことが大切なんだよ」
「奈津子さんはそんな強さを持つことができたんですか?」
「んなわけないだろ。強さを持っていたら、昼からお酒に頼って、生きている生活はしてないだろうね」
「おいおい。そんな、体たらくなのに自分の妹と安曇さんを助けてくれって言えたな」
「だから、頼んでいるんでしょう。他の桜荘の住人は誰も入居していないし、
15桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/05(金) 02:09:44 ID:iFPoC0gq
 そこは男の一樹君が颯爽に皆の問題をヒーローのように解決するのが筋でしょうに」
「人に頼みをする前に何を隠してやがる。赤の他人に身内の問題を解決させるためにはどんな思惑が隠れているんだよ」
「それは……立派な厨房はあるのに誰もご飯を作ってくれないから……まともな食事を摂りたいの。
ほらっ。安曇さんや美耶子なら美味しいご飯を作ってくれそうだし。
毎日、コンビニのお弁当ばかりだと飽きるでしょ?」
「あの……憩いの場にあるご飯と味噌汁は誰が作ったの?」
「桜の精じゃないの? 私が学生の頃の家庭科の成績は測定不能だったのよ。作れるはずがないじゃん」

 桜荘の未来に絶望した。
 俺は開いた口が塞がらないということわざの意味を体で思い知らされた。
昔の人は名言ばかり残したもんだ。

奈津子さんという女は妹のひきこもりの問題ですらも他人任せにするような廃人なのだ。
このままだと高倉妹や安曇さんまで人生のどん底に落ちる可能性は高い。
正直、こんな風に誰かを助けなくちゃいけない要求に駆られるのは始めてだ。

「俺が絶対にあいつらを絶望から救ってやる」
「一樹君……ついに決心してくれたね。あなたの双肩には桜荘の朝ご飯と昼食と夕食がかかっているのよ。
男の子なんだから。人生の崖から誤って落ちるぐらいの勢いで頑張りなさいよ!!」
 完全に酔っ払っている奈津子さんの励まし声援は無視して、俺は自分の口から出てきた言葉の重さに絶望する。

 だが、停滞していた自分の人生って奴が再び動きだすような予感を感じていた。

 更紗と刹那を傷つけた罪は彼女たちを救うことで償おう。

今の俺が立ち直るために何でいいから理由があればそれで良かったのだから。
16トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/10/05(金) 02:11:48 ID:iFPoC0gq
投下終了です

次回は御堂雪菜の初めて出会った時の回想です。
それで回想編は終了。

今日の夜辺りに投稿します。
17名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 03:41:40 ID:qaXaKfiL
>>16
GJ!!!!
安曇さん、前はこんなにやさぐれてたんだな・・・。
18名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 05:01:50 ID:qaXaKfiL
すまん、sage忘れた・・・orz
19名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 05:51:35 ID:rPckanE+
グッジョ!
しかし、この人数で修羅場ったらどうなるんだ?
気になーる。
20名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 18:25:00 ID:VfhbMab3
きっとバトルロワイアル化するよ。
21名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 20:41:33 ID:tLRIpsbC
>>16
GJ
気になり昨日、一気に読んだよ
期待
22トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/10/06(土) 01:20:34 ID:WnjGWgWS
では投下致します。
23桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/06(土) 01:24:05 ID:WnjGWgWS
 第17話『回想3』

★御堂雪菜視点
 はぁはぁはぁっっ……。
 私は激しく息を切らしながら、唐突に降り注いだ雨から身体を防ぐために雨宿りの場所を探すために走っていた。
家出してから20日目なのに雨で洋服が濡れるなんて本当に運がないよ。
 中学2年の終業式終了後の春休みを利用して、私は家出を決行した。
 よくTVやニュースにあるような、何の意味もない家出ではないし、

長期期間の休みだけ家を出るプチ家出のような類でもない。これはあの家から抜け出すための逃避行だ。
 雪菜の家庭はお父さんやお母さんも雪菜に全然関心を持たない。
例えば、私が学校から帰ってきても、雪菜にただいまって言ってくれない。
私がどれだけ誉められるために学校でいい成績を取っても、喜びこともなく、ただの紙切れをゴミ同然に捨てる。

親の愛情に飢えていた頃の私は親が私に言葉の一つをかけてくれないのは私が悪い子だからだと勝手に思い込んでいた。
だから、いい子になろうと思った。
ちゃんと自分で出来ることは自分でやろうと張り切った。
朝早く起きてみたり、自分で家事一般を頑張ってみたりしていたのだが。

 全ては無駄だった。

 あいつらは……何も反応しなかった。私がここにいるってことを認識してないのか、自分達の趣味や仕事に没頭していた。
そう、自分の娘よりも自分達の娯楽の方が大切なのだと分かった時に心底絶望した。
 それからは雪菜もあいつらがいないように扱った。でも、学校の参観日や体育祭などいった行事には
親の愛情に渇望していることを思い知らされる。クラスメイト達に深い嫉妬と羨望が入り交じってしまう。

 自暴自棄になって無計画に家出を決行したのは雪菜があの家から居なくなったら、

お父さんとお母さんは雪菜のことを心配してくれるのかな? 
ちゃんと他の子の親のように雪菜を叱ってくれるよね?
 そんな、甘い期待を抱いて家出をしたけど。
 わかってた。わかっていたんだよ。

 両親は娘が家出した事実にも気が付いていない。なんせ、春休みだ。
誰か友達の所に泊りに行っているということすらも脳裏に浮かんでいないはずだ。
 雪菜にはそんな友達はいないんだよ。お父さん。お母さん。

 親の愛情を知らない私がまともな人間であるはずがない。クラスではいつも一人だけ浮いているし、
流行の話題にも付いていけずにいつも孤独なんだよ。
 
 この行く先のない家出は、雪菜の死に場所を求めているかもしれないね。

 そんな風に自虐的に物事を考えていると頬から涙が流れていた。
零れる雫を拭かずに灰色の空を見上げて、雨の音で私の泣き声が遮ることできるなら、この際だから思い切り泣いてしまおう。
 どうせ、誰も雪菜の存在を気にかけるような人間はいない。
 もし、そんな人間が居たとするならば、それこそ奇跡だ。
 
 しばらく、嗚咽を洩らして泣いていると知らない男性が雨宿りに私の隣にやってきた。
どうせ、雪菜の存在はこの世界から認識されていない。幽霊のように誰からも見えない存在なんだよ……。
 と、私は雨宿りにやってきた男性の言葉に耳を疑ってしまった。

「どうしたの? 大丈夫」

 それは雪菜がずっと求めていた温かな手であった。
24桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/06(土) 01:27:04 ID:WnjGWgWS
★深山一樹視点

 大学の帰りに暗雲な足取りで桜荘の帰路をゆっくりと歩いていた。
俺が桜荘の皆を救ってやると大きな事を口してからすでに月日が流れていた。
時が過ぎるのは早すぎるというか、もう少し悠長に進んでくれたらいいと思う。
 始まった大学には馴染まずにほとんどやる気もない日々を続く最中、

俺は意気揚揚と頑張っているのは桜荘の住人の問題児とコミニケーションを取ることだ。
ひきこもりである美耶子にはドアに鍵が閉められて開けてくれず、
安曇さんに関しては冷たい口調で罵られて、今度私に近付いたら警察を呼びますからと言われ、
自分のやることが全てが裏目に出ていた。拒絶されても、頑張っていれば、
心を開いてくれるってのは俺の妄想かもしれないな。奈津子さんにご飯まだぁ? 
と間の抜けた事を言われるとさすがにあの言葉は俺がお酒で酔った勢いで出た何の根拠もない戯言だと思うようになってきた。

 ただ、今でも悪夢を見てしまうあの時の更紗と刹那の事を思い出す度に罪悪感が胸を苦しめる。
その痛みから解放されたいために桜荘の住人を救いたいと諦めずに
今日も二人に返ってくることがない会話のキャッチボールを仕掛ける。
 思わず、嘆息して。

(俺は一体何をやっているだろうね)

 しばらく、頭をからっぽにして歩いていると雨が振り出してきた。
先程までは晴天だったというのに、今は雲行きが怪しくなっている。
すぐに雨は強く勢いよく振り出していた。俺はどこか雨宿りする場所がないかと走っていると
屋根付きの自動販売機とベンチがあったので、俺はそこで雨宿りすることに決めた。
 その場所には中学生らしい女の子が顔を下に向けて座っていた。

この子も急に振り出した雨を避けるためにここに逃げ込んだ来たのであろう。
 俺は少し離れた場所に座って、安堵の息を吐いた。雨の勢いが少しだけ弱まったら、
桜荘までBダッシュで帰ることにしよう。ちょっと濡れた服を洗濯することになるのだが、洗濯機は共同だからな……。
安曇さんと鉢合わせすることになったら、どれだけ冷たい言葉で罵られることになるのであろうか。
極度のマゾ体質ならともかく、一般人なら3日以上はずっと落ち込むぞ。あれは。

 そんな風に思考しながら、思わず退屈なためか周囲を見渡した。何にもない街の風景。
そして、隣には中学生らしい女の子が……泣いていた。
 しかも、その泣き方は尋常ではない。悲鳴に似た嗚咽を洩らして、少女の涙から雫が頬を伝って零れ落ちてゆく。
 一体、少女に何があったんだろうか? 
 だが、赤の他人に関わっても決して良い事はない。
逆に見知らぬ人間から声をかけて、泣いている原因は何って聞くのか。気味悪がって警戒されて拒絶されるだけだ。
 何もしない方がいいのに。
 俺というバカ野郎は少女に声をかけてしまった。

「どうしたの? 大丈夫」
「えっ?」
 少女は驚いた表情を浮かべて、目を丸くして俺を眺めていた。そりゃ、当然だ。
 見知らぬ男性がいきなり話しかけられたら、誰だってびっくりするし、恐がってしまう。
特に最近は少女を狙う犯罪が増加の一方を辿っていると聞く。
女にとっては男が近付くだけで襲われると思い込んでいてもおかしくないわけであって。
俺は哀しんでいる少女に声をかけたこと、ほんの少しだけ後悔した。
「な、何でもないです。気にしないでください」
「あっ。そうですか……」

 俺は消沈して元にいた場所まで戻ると安堵の息を洩らした。
赤の他人を救うことが傷つけた幼馴染の贖罪になればいいなと思っていたが、現実はそうココアのように甘くないようだ。
 と、思っていたら、さっきの少女が俺の前にやってきて、口を震わせた声で言った。

「あ、あの……もし、よろしければ、雪菜のお話を聞いてくれませんか?」
 少女、雪菜が何かすがるような子犬のような瞳で助けを求めるように会ったばかりの俺に自分の過去話を長々と語ってくれた。
25桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/06(土) 01:30:12 ID:WnjGWgWS
「というわけなんです」
 雪菜の長い懺悔のような独白が終わる頃には、降り注いでいた雨が病んだ代わりに雲の隙間から綺麗な虹がかかっていた。
俺は彼女の零れる涙をハンカチを押える役目に没頭しながら過去話を聞いていた。
 つまり、御堂雪菜は親から徹底的に放任されて、自分の居場所がなくなった家を逃げ出すためにあてのない家出を決行した。
と要約すればわかりやすいが。とはいえ、困った話だ。俺が突っ込んでどうにか出来る問題じゃあない。
 そんな、俺の杞憂した姿を表に出さずに冷静な表情を繕いながら、雪菜に優しい口調で言った。
「で、家出した雪菜ちゃんは今までどこに?」
「ずっと公園かネット喫茶で過ごしていました。でも、もうお金がないから今日からは完全に野宿するしかないですけど」
「女の子が野宿するなんて危ないだろ。親御さんの元に帰るという選択肢は?」
「あんな家に戻るぐらいなら、このままお腹を空かせて餓死した方がよっぽどマシです」
「ふ〜む」


 俺は首を傾げて、この難問を抱えていた。家出少女は安全かつ平穏に家に帰るように説得すればいいと思っていたが、
現状は破綻してしまった家族の関係を修復するのは現実的に不可能。
だったら、俺は雪菜が野宿生活を送らずに最善な方法で彼女の希望通りの生活を送らせる必要がある。
一応、関わってしまったのが不運ってことか?
 でも、事情を聞いておいて見捨てるような行為は、あの時の光景を嫌にでも思い出してしまう。
「いい名案を思いつきました」
 雪菜の表情が電球のように輝いてこれこそが年金問題を解決させそうな名案だと言わんばかりに胸を張った。
「ようするにお兄ちゃんの家に泊めてもらえばいいんですよ!!」
 と、俺の予想を遥かに超えるとんでもない戯言を雪菜は言いやがった。
冗談を聞き逃すっていうレベルじゃないぞ。
親からの仕送りの援助を打ち切られている貧困生活を送っている大学生には、
今日の夕食をご馳走する程のお金の余裕はないぞ。

「えっ? ダメなんですか」
「ダメというか、世間体的にまずいだろ。
一つの屋根の下に若い男女が一夜を過ごすだけでも大問題になる世の中なのに」
 いや、待てよ……。
 あの強欲でアルコール依存症の女の顔を脳裏に浮かべて。今の現状を打開する良案を思いついた。

「雪菜ちゃん。もし、住む場所がなければ桜荘を紹介してもいい。あそこはボロアパートだけど
管理人がと〜て〜も〜いい加減な人が管理しているから。きっと、お願い次第では中学生でも住まわせてもらえると思うぞ」
「ほ、ほ、本当ですか!!」
「まあ、家賃と生活費はどうにか払えばの問題なんだけどな」
「大丈夫です。私、ゆとり教育に絶望していますから。今の中学を辞めて、勤労少女として頑張って働きますから。
その桜荘に連れて行ってください」
「わ、わかった……」
 雪菜の勢いに圧されて、曖昧な返事をする。ついでに言うと中学は辞められないと思うんだが。一応、義務教育だし。
 その事は触れず、雪菜と俺は一緒に横に並びながら桜荘へと向かった。


 その帰路の途中に雪菜は俺の手を握って、初めて会った時とは反対に笑顔を浮かべて、言った。
「私は誰かに初めて優しく接してもらいました。こんな事は私が生きている限りは絶対にありえないと思っていたんですよ」
「そんな、大袈裟な……」
「大袈裟じゃないですよ。私は今まで親の愛情を知らずに育ってきたんです。
そんな子が真面目に社会と共存できるはずがないよ。いつも友達も作れずにずっと寂しい想いをしていたの。
あなたにとってはほんの少しの気紛れだったとしても、私にとっては暗闇の底から僅かに照らされる光だったの」
「雪菜ちゃん」
「だから、今日からあなたの事を私の本当の『兄』のように接していいですか?」
「いや、会ってから3時間も経っていないのに兄呼ばわりされてもな」
「大丈夫だよ。きっと慣れますから」
「慣れの問題じゃねぇーーー!!」

 これが深山一樹と御堂雪菜の出会いであった。

 それから、雪菜を入居させるためには奈津子さんの無理難題を聞き、
大学を辞めて、あのカレー専門店『オレンジ』に働くことになる。
26桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/06(土) 01:31:19 ID:WnjGWgWS
暗黒の視界を通り過ぎて、過去の出来事をこの目で体感してきた。
法則性のない夢と似た現象で過去を辿ってきた。
それは更紗と刹那、幼馴染達の平穏な日々と見捨てた過去。
安曇さん、美耶子さん、雪菜と始めて出会った過去。桜荘の住人はそれぞれに問題を抱えていた。
彼女自身の力では到底解決できるものではなかったが。
ほんの僅かな温かな手が差し出されたおかげで彼女たちはようやく一歩を踏み出すことができた。

 この1年間は一体何だったのか。
 振り返ってみると桜荘の住人は救われたが……本当に救いたかった人たちはここに含まれていない。
(むしろ……)

「大好きな人に見捨てられたことが絶望なのよ。あなたが現実逃避したことによって、
傷つけられた二人は悲しみ最中にいる。そして、大きく育まれた絶望は悲劇を生む。」

 お花見会の時にいた不思議な少女さくらの呟きが暗闇の中でしっかりと力強く聞こえてきた。
その言葉だけが脳裏に刻みこんだのかのように頭から離れることなく、意識は更に遠く深い場所へ旅立った。

 次に目覚める時は一体何が変わっているのだろうか?
27トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/10/06(土) 01:36:35 ID:WnjGWgWS
投下終了です。
一応、今回で回想編は終了です。
残念ながら、安曇、美耶子、雪菜に関するシナリオは
プロット段階では一応存在していたんですが、多忙のために
省く事になりました。
この回想編からどうやって立ち直ったのかは本編で断片的にしか
書くことができないので、本当に申し訳ありません。

では。次も楽しみに待っていてください。
それでは。
28名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 04:36:14 ID:lH3N3btl
>>27
GJ!!!!
一樹優しすぎだろw
29蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/06(土) 09:16:59 ID:0jjn4FlQ
皆さんおはようございます。
今回は少し長いので前編、後編に分けて投下させて頂きます。
30蒼天の夢 07 前編 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/06(土) 09:18:06 ID:0jjn4FlQ
 月曜日の朝。
 竜場は今日も鍛錬に精を出すスキッダーとワイバーンでいっぱいである。
 俺はと言えば、いつものレース結果にいつもの如く意気消沈していた。
 それに加え、試合の後に起こったティオーナとのいざこざもある。
 冷静に考えてみれば、俺はついカッとなってとんでもない無礼を働いたのだ。
 しかも公爵家の娘に。
 あの日以来、練習中いつティオーナと鉢合わせになるのか気が気ではなかった。
 もし鏡があったら俺の顔は夜の闇より暗く映っていたに違いない。
 するとそこに眩しいばかりの光が差し込んできた。
「ジースさん!元気出して下さいよ」
 いつも元気なミリアちゃんである。
 ロープを肩にかけたつなぎ姿は普段のスカートより似合っているかもしれない。
「ハハ、大丈夫だって」
 なんとか笑ってみるが自分でも乾いた笑いだと分かる。
「大丈夫じゃありません。ジースさんが元気出さないとわたしまで落ち込んじゃいますよ?」
 彼女の笑みに陰りが生じる。
「それは困るな」
「でしょう?」
 そしてすぐ笑顔に戻る。
 俺も見習って、演技でもいいからうまく笑おうとする。
「ハハハ」
「そうですよ。人間笑っているのが一番です」
 と彼女は言いながら思い出したように付け加える。
「それに今日はお父さんが午後から店に来てくれって言ってましたから、笑顔で行かなきゃだめですよ?」
「……え?」
 俺の笑いは凍りついた。
 スポンサーになってからほとんど顔を合わせなかったライアンおやじが突然、直接会いに来いと言ってくる。
 備品の支給なら誰かをよこすだろうし、伝言があるならミリアちゃんに託すだろう。
 考えられるのは一つ。解雇を言い渡すためだ。
 ついに最悪の事態が訪れた。
 頭が真っ白になった。
 いや、正確には解雇という文字がぐるぐると頭の中を渦巻いている。
 ミリアちゃんが何か話しているようだが言葉が耳に入ってこない。
31蒼天の夢 07 前編 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/06(土) 09:18:44 ID:0jjn4FlQ
 毅然と現実を直視するのが男らしいのだろうが、今の俺にはできない。
 どうする、と自問する。このまま解雇を受け入れるのか。
 できない。長年の夢を簡単に諦めることなんて無理だ。
 だからと言って解雇に対して俺に拒否権はない。
 では土下座して何とか考え直してもらうか。
 いや、スポンサーは一人じゃない。商会の全員を説得するなんて不可能だ。特に俺が残してきた成績では。
 頭が混乱している。考えがまとまらない。
 対して時間は滞りなく進み、有無言わせず俺を引きずってゆく。
 
 午後。山を下り、ライアンおやじの防具店に着いた俺は崩れ落ちた。
 余りの自分のくだらなさに。
 用件は解雇宣言などではなかった。
 実は昨日、グレイ・クリフの市長からパーティーの招待状が届いたらしい。
 開催されるのは三日後の木曜日。場所は市長邸。
 グレイ・クリフの有力者が多く招待されている。
 驚きなのはクリフ・スキッド関係者に至っては身分問わず呼ばれていることだ。
 それこそ上は貴族のスポンサーから下は平民の清掃係まで。
 当然スキッダーたちも呼ばれている。
 ただ俺たち選手は制服、つまり革鎧を着用してくるようにとのお達しだ。
 その打ち合わせでライアンおやじは俺を呼んだ、ということだ。
「ははは、そうだったんですか」
 自分の肩から見えない重りが消える感じがした。
 同時に自分の早とちりに嘆息する。
 てっきり解雇されるのとばかり考えていたため、午前中は普段はしない行動の連続だった。
 相棒に長々と話しかけたり、記念にと水色の鱗をポケットにしまったり。
 竜場から観客席まで、山頂施設を記憶に留めようと感傷的にうろついたりもした。
 思い出すだけで顔が熱を帯びてくる。
 しかも一部始終をミリアちゃんに見られていた。後で口止めしておかなくては。
 とにかく解雇じゃないのは嬉しいが平民まで招いてのパーティーとは珍しい。
「何でまたパーティーなんて?」
 俺は疑問を口にしてみる。
「なんでも日頃グレイ・クリフのために尽力してくれているお礼だとよ。ま、ここは素直に招待されようじゃないか」
 ライアンおやじは招待状がきたのが嬉しいのか上機嫌である。
32蒼天の夢 07 前編 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/06(土) 09:21:16 ID:0jjn4FlQ
「パーティーは夕刻からだからな。行きと帰りはわしの馬車で送ってやるから、練習は早めに切り上げて来るんだぞ」
 その後俺はライアンおやじと待ち合わせ場所を決め、安堵を胸に防具店を出た。
 
 そしてつつまなく三日が過ぎた。
 木曜の夕方、俺は街の広場でライアンおやじの荷台馬車に乗っけてもらい市長邸を目指す。
 赤とオレンジが混ざり合う夕暮れの下、市長邸へと通じる石畳の道を何台もの馬車が行進している。
 貴族の豪華な屋根付の馬車もあれば、俺が今乗っている平民の荷台車もある。さながら民族大移動だ。
 しばらく馬車に揺られていると燃えるような夕日を背に市長邸が見えてきた。
 街の開けた一角に市長邸は建てられていた。
 緑豊かな庭園に囲まれた北方風の丸太造りの大きな館だ。
 一見地味に見えるが、木柱には神話の彫刻が施されている。一つの柱は隣の柱から物語を受け継いでおり、まるで立体的な絵本のようだ。
 貴族の豪邸なんて派手なだけで例えお金があっても住みたくないと思っていた。
 だが目の前の市長邸は平民の俺でも住んでみたいと思えるほど落ち着いたデザインだ。
 招待客たちは馬車を敷地のすぐ外にとめ、招待状片手に庭園へと続くアーチを潜る。
 どうやら全員正装してきているようだ。
 ライアンおやじに同伴しているミリアちゃんもラベンダー色のガウンを身にまとい、普段は見られない魅力をかもし出している。
 そんな中、衛兵でもないのに革鎧を着ているスキッダーたちは目立つ。
 特に俺の革鎧は泥茶色の安物なので余計視線を集めている気がする。悪い意味で。
 人が大勢いるため、宴は外の庭園で行われるようだった。
 館の手前の噴水を囲むようにテーブルが配置され、その上には大量の料理が湯気を立てている。
 しばらくして招待客が落ち着くと、館からグレイ・クリフの市長が出てきた。
 随分と恰幅のいい紳士だ。歩き方もテキパキしており、どちらかと言うと執事のような雰囲気をしている。
 市長は咳払いをしたとあと、堂々とした声で演説をはじめた。
 渋い声だとは思うがこの時点で俺は演説よりも料理に方に興味が移っていた。
 幸い演説はすぐに終わり、パーティーがはじまった。
 早速貴族様の料理とやらを味わおうと思ったが、すぐに呼び止められる。
 正直に言うとファンだと期待していた。だが現実は違った。
 俺に話しかけてきたのは雑貨店のおばさんや酒場のおじさんなど、商会の人たちだった。
33蒼天の夢 07 前編 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/06(土) 09:22:26 ID:0jjn4FlQ
 なぜかファンは一人もいなかった。
 あのアザラスでさえ三人の女の子に囲まれているというのに。
 平均的に言えば俺より成績が下のくせにこの差は何なのだろうか。
 これが貴族と平民の違いとで言うのか?
 一方商会の人々との会話で収穫があったのなら、それは表面的にせよ自分がまだ期待されているということだった。
 もちろん叱咤ともとれることは言われた。
 だから安心はできないが絶望するほどでもない、というのが現状だろう。
 そして永遠に続くかと思われた社交辞令が終わり、俺はようやく料理に手をつけることができた。
 ご馳走を口に運び、上流社会の味をかみ締める。少し脂っこいが美味い。
 豪華な夕食を堪能し、次はワインでも試そうかと考えていた時だった。
「ジース君」
 宴の喧騒を無視して、声が俺の耳に届いた。
 一瞬、自分の名前が呼ばれたのかどうか分からなかった。
 それだけ洗練され、歌うように快い発音だった。
 頭では何処から声が来たのか分からなかったが、身体は自動的に声の主へと向いていた。
 共通語を流れるように喋れる、否、詠える人といったら俺の知る限り一人しかいない。
「エリシアさん……」
 振り向くと、エリシアさんが人ごみの中からゆったりと歩み寄ってくる。
 彼女はいつものとんがり帽子に木の葉をモチーフにしたローブを着込んでいた。
 普段着のはずなのに周りの正装した人間たちに全く見劣っていないあたり流石である。
 むしろ服装にしても美貌にしてもエリシアさんは人間では到達しえない領域にいる。
 正直、そこらの貴族娘なんて目じゃない。
「エリシアさんも来てたんだ」
 俺は笑顔で彼女を出迎えた。
 会えると思ってなかっただけ、この偶然は嬉しい。
「呼ばれた」
 なるほど。確かにエリシアさんも地元の有“力”者だ。
「それよりジース君。傷」
 彼女は微笑を浮かべながら、スッと細い指を俺の喉元に添える。
「ああ、これ?ちょっとしたかすり傷だよ」
 本当はこの間ティオーナにつけられた傷だが、一々言う程のものでもない。
 するとエリシアさんは人差し指を口に含み、なんとその指で俺の喉元の傷を優しく撫でた。
 濡れた感触が素肌に伝わった刹那電撃が身体を走り、頭が真っ白になる。
34蒼天の夢 07 前編 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/06(土) 09:23:43 ID:0jjn4FlQ
「エ、エリシアさん?!」
「ずるい!」
 エリシアさんの謎の行動に俺の頭は軽いパニックになった。
 同時にいつからそこにいたのか、ミリアちゃんの言動も訳が分からない。
 どちらから先に説明してもらおうかと迷ったが、エリシアさんは元から謎なので先にミリアちゃんに聞いてみる。
「ミ、ミリアちゃん、なんでそこでずるいってなるんだ?」
「ち、ち、違うんです!別にわわわ、私は……」
 上ずった声で支離滅裂なことを言うミリアちゃん。
 言葉を発するたびに声が小さくなっていく。最後には両手を合わせながら俯いて黙ってしまった。
 疑問は残るが更に問い詰めるのはかわいそうな気がしたのでそっとしておく。
「エリシアさんもいきなり何を――」
「傷。治った」
「え?」
 自分の首を触ってみる。本当だ。
 傷口がかさぶたごとなくなっている。
「ふふふ」
 控えめに笑うエリシアさん。
 別に大した怪我ではなかったが触れるだけで治せるなんて、彼女はやっぱり凄い。
「あ、ありがとう」
「どう致しまして」
 未だ信じられないように首をいじりながら俺は彼女にお礼を言った。
 気をとり直して、二人の美女を見据える。 
 かなり変わった出会い方ではあるが調度いい。
 俺はこの機会を利用してエリシアさんとミリアちゃんをお互いに紹介することにした。
 簡単にエリシアさんは昔からの知人で、ミリアちゃんは俺の雑務係だと伝える。
 初対面で緊張してかミリアちゃんの表情は硬い。
 意外だったのはエリシアさんも同様に緊張していることだった。
 いつもの微笑はなく、口を横一文字に結んでいる。
 淀みない水流を思わせる瑠璃色の瞳も今は凍りついているような印象さえ受ける。
「そうでしたか。それで、エリシアさんはジースさんと知り合ってから長いんですか」
「ずっと一緒」
 エリシアさんはそう言うといきなり俺の腕を両手で絡めとる。
「え、ちょっ――」
「奇遇ですね。わたしもジースさんと働いてるんですよ。毎日。一緒に」
35蒼天の夢 07 前編 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/06(土) 09:25:02 ID:0jjn4FlQ
 ミリアちゃんはもう一方の腕をとり、二人は俺を挟んで睨み合う。
 痒いのか、二人の頬が時折ビクっと痙攣している。
 二人を紹介するはずが何やら議論がはじまってしまった。
 しかも妙に加わりにくい雰囲気だ。
「たった一週間ちょっと」
「引き篭もって何もしてあげられない人に比べればマシですよ」
「役に立っていると思い込んでいるだけ」
「誰かさんこそ何もかも知ったふりをしてるだけなんじゃないですか?」
「私は知ってる。すみずみまで」
「へ、へえ。その根拠がどこから来るのか知りたいですねえ」
「最近まで一緒にお風呂に入っていた」
「ジースさん!」
 ミリアちゃんが悲痛な顔で掴みかかってくる。
「本当なんですか?!」
「な、何が?」
 何について話していたのか分からないがそんなに真剣な話題なのだろうか。
「ジースさんってつい最近までエリシアさんとお風呂入っていたんですか?!」
「はあ?!」
 俺は説明を求めるべくエリシアさんに視線を向けた。
「最近まで一緒に入ってた」
 と彼女は余裕の笑みで言う。
「そりゃ長寿のエルフ族にしてみれば最近だろうけど……」
 どういう経緯でお風呂の話になったのかは知らないがミリアちゃんは何か誤解をしているようだ。
「あのな、確かに入ってたけど――」
「入ってたんですね!」
「いや、それは俺が小さかった頃の話だから!」
「え?」
「だからエリシアさんと一緒にお風呂に入っていたのは俺がまだ小さかった頃の話なんだって!」
 もちろんその幼さを盾に、抜群のプロポーションを誇るエリシアさんの身体を触ったことがあるのは秘密である。
「そ、そうですよね。ジースさんがそんな破廉恥なことする訳ないですもんね」
 ミリアちゃんはホッと胸を撫で下ろす。
 その純粋さが俺の心を鋭く刺す。
「エリシアさんもミリアちゃんをからかわないでよ」
「はーい」
 つまらなさそうな顔をするエリシアさん。
 困ったものだ、と呆れていると庭園の中央から音楽が聞こえてきた。
 太鼓と笛を中心としたテンポの早い演奏。庶民に馴染み深い踊曲である。
 どうやら踊りがはじまるようだった。周りの招待客たちも加わろうと、次々と庭園の中央へ集まってゆく。
「行きましょう」
「行こう」
「え?」
 反応する間もなく、突然二人に引っ張られていく。
 物凄く疲れそうだ。なぜそう思ったか分からないが、俺の勘がそう囁いていた。
36蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/06(土) 09:28:08 ID:0jjn4FlQ
投下終了です。
前回コメント、指摘して下さった皆さん、ありがとうございました。
ご期待に沿えるよう頑張っていきたいと思います。
それでは失礼致します。
37名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 09:51:00 ID:QTjLgNFn
朝っぱらからGJ!

嫉妬分が出てきて、これからがますます楽しみです。
38名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 09:57:45 ID:dcy7rqLE
遂に対面した!おもしれええええええええ!!!!GJGJGJGJ!!!!!
39名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 11:35:26 ID:RDhKJEah
>>36
Nice Boat
40名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 17:17:28 ID:RqHCzWbT
>>39
待て待て、まだNice boat.には早い。
流血が起きてからだ。
ともあれ>>36GJ!
41名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 18:49:24 ID:nN6iUcPk
いやいや起きる前だからこそNice boatなのではないだろうか
42名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 21:52:56 ID:Teeyl1bL
GJっす

二人とも対面した先から偉い剣幕だな
正直修羅場成分はもう少し後だと思ってたが
43名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 23:57:54 ID:vSbvyWeL
>>36
GJ!
修羅場がとうとう・・・面白いです!
44名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 03:50:24 ID:u2e7n/pT
作者乙です

また見返してみたが、カットバックドロップターン(違)で首位に立ってもすぐ抜かれるとは
はたしてジースがへっぽこなのか、飛竜がハルウララなのか、敵が強いのか
どうなんだろうなぁ
45 ◆88FzqwpUTw :2007/10/07(日) 04:40:43 ID:nJXgDP54
久しぶりに投下します。
トリップ変わってますが、気にしないで下さい。忘れただけです。
46すみか ◆88FzqwpUTw :2007/10/07(日) 04:47:42 ID:nJXgDP54

ふと目覚めると、そこはまるでおとぎの国のように見知らぬ世界だった。いや、正確に言うとそれは違う。知っているのに、思い出
せないのだ。頭の中に張り巡らされた繭のようなものが、記憶を遡る事を妨害している。
気味が悪い。まるで夢の中をさ迷っているように、現実と夢の境界が曖昧になってる。
その境界をはっきりさせたくて、辺りを伺おうと体を起こした瞬間、ズキリと鈍い痛みが前頭葉を駆け抜けた。その痛みに、水樹澄
香は思わず頭をおさえた。
ズキズキと頭が割れそうに痛む。
そして、まるでそれがきっかけだったかのように、次々と体に異変が襲った。
ぐにゃりと、いきなり視界が歪み、血の気が失せたように平行感覚を失い、起き上がっている事が出来なくなった。体をベッドに横
たえた瞬間、今度は身震いするような寒気が、そして関節が軋むような痛みが澄香の神経を蝕んでいく。
呼吸があらくなる。もう何も考える事が出来なくなった。ただ辛い、痛い、苦しい。体の痛みに耐えるように、体を丸めるとほんの
少しだけ楽になった気がした。
しかし、それはほんの一瞬の効果で、やがてタオルに水が染み込むように体が蝕れていくのを感じた。ただベッドに転がっているだ
けで、症状が悪化していくような気さえした。
世界が歪む。心の底が凍えて、孤独が染みる。
途端に怖くなった。
誰もいない、知らない場所で死んでしまうのではないか。本気でそう思った。
押し潰されそうな不安に悲鳴をあげたくて大きく息を吸ったが、それは激しい咳と共に流れてしまった。
苦しい。
寂しい。
怖い。
誰もいない。
ここがどこかさえ分からない。
涙が溢れて止まらなくなった。
そして、得体の知れない音が澄香の頭の中だけで響いた。それは二つの大きな何かが激しく動いているような音。それはまるで振り子
のように互いに振れ合い、そしてぶつかり弾かれる。その何かがぶつかる度に、澄香は頭が狂っていくように感じた。
ぐるぐる、どかどか。
ぐるぐる、どかどか。
ぐるぐる、どかどか。
47すみか ◆88FzqwpUTw :2007/10/07(日) 04:49:49 ID:nJXgDP54
──そのとき、部屋の隅の蝶番がきしみ、頭の中で響いていた音がタクトを無くしたオーケストラのように一斉に消えた。誰かが部
屋に入ってきたのだと、気配で分かった。反射的に澄香は音のした方に目をやったが、視界は涙で歪んでいて、それが誰かは分からな
かった。
「……だ、誰?」
ヒューヒューと、口笛を吹くような音に混じり、澄香はかろうじてそう尋ねた。
「ん? ああ、起きてたんだ」
そう言いながら、人影が近付いてくる。
全然顔が見えない、真っ黒いシルエット。蘇る過去の記憶。
漠然とした恐怖が、澄香の体を冷淡せしめた。
「どれどれ」
声が思いの外近くから聞こえて、澄香は身を固くした。そして、何が起きてもいいように、あらゆる事に心の準備をする。
事の始まりと共に意識を心を遮断し、混沌とした闇の中に落ちていくのだ。始めは怖いけど何も感じない分、この方が楽だった。そ
うすればやがて、気味の悪い吐き気と共に得体の知れない快楽がやってくる。それだけをすくい取ればいい。
澄香はずっとそうやってきたのだ。そして、今回も……。
ふいに、額に柔らかくて暖かいものが置かれた。それはまるで暖かさが染み込むように、冷えきった体に僅かな温もりを思い出させ、
優しい気持ちにしてくれる。
何故だろう。すごく安心する。
「うわ……、これは、まずいな」
そう言うと、人影はうごめいた。同時に暖かくて優しい感触が額から逃げていく。
「あ……」
名残り惜しい気持ちが吐息となった。もう少し、あの感触に包まれていたかったのに。
そして、今度はひんやりと冷たい何かが額に乗った。すると体全体を爽やかな清涼感に包まれて、澄香は思わず吐息を漏らした。
「……気持ちいい」
頭の痛みやモヤが引いていく。
少しづつ、視界がクリアになっていく。
まだ水面を眺めるような歪んだ視界だったが、それでも人影の正体が分かった。
48すみか ◆88FzqwpUTw :2007/10/07(日) 04:52:08 ID:nJXgDP54
「あ……センパイ……?」
「ん、どうした?」
翔は体温計の頭を押して、ブンブンと振る。そして澄香の腕を上げると、脇の間に体温計を挟んだ。
「こ、こは?」
「俺ん家だよ。お前、倒れてたんだぞ、家の前で」
倒れていた?
家の前で?
何で──
「──痛っ」
ズキリと頭が痛む。駄目だ。頭を使うと激しい頭痛にさいなまれる。
「食欲、あるか?」
「ううん」
今はあまり食べたくなかった。
「……そうか。でも、薬飲めないから、少しでもいいから食べないと」
「うん……」
「なるべく消化のいいものがいいな。お粥かうどんか、」
「私、お粥がいい」
翔はふうと息をつき、
「分かった。すぐ持ってくるように『伝えとくよ』」
翔が立ち上がるのが気配で分かった。そのまま彼が遠くへ行ってしまうような気がして、心に焦りが集う。
行かないで欲しい。側にいて欲しい。
「ま、待って!!」
澄香は慌てて翔のシャツの裾を掴んだ。行かないで。その思いを伝えようとしたのだ。
しかし、彼はその手を振り払い、振り返りもせずに部屋の出口へと歩いていく。そして、澄香が声を上げる間もなく、乾いた音と共に
ドアが閉じ、翔の姿が見えなくなった。
澄香はそれを愕然とした気持ちで見ていた。
「どうして……?」
意味が分からなかった。信じられなかった。昨日までの翔なら、きっと澄香の手を振り払ったりなどしなかったはずだ。それなのに、
今の仕草はまるで……。
次に部屋に現れたのは家政婦を名乗る初老の女性だった。彼女は翔が登校した事を伝えると澄香に粥を食べさせ薬を飲ませ、そして澄
香をタクシーで家に送り返した。
翔がお見舞いに来てくれるのを信じて、自分の家でおとなしく待ってたけど、この日、彼は澄香の前に表さなかった。
49 ◆88FzqwpUTw :2007/10/07(日) 04:55:27 ID:nJXgDP54
月日がたつのは早いですね。
タイトルをいんすぱいあさせて頂いた某マンガも連載終了してしまったらしいです。読んだ事ないのですが。
これからは、定期的に投下していく(つもり)ので、またよろしくお願いします。
50名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 05:04:40 ID:/tVJJ6NO
>>49
GJ!
すみか久しぶりだなw
また楽しみにしてるよ!
51名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 05:33:06 ID:6mAikIoW
>>49
早朝投下乙&GJ!
52名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 05:47:20 ID:o4RvclOo
>>49
涼●のことか… ●風のことかーーーッ!!!
53名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 06:22:10 ID:MzNTEbSE
>>49
GJ!
今の二人を第一章の始めからは想像できんなぁw


しかし、生『すみか』か。
入れ違いで住人になった俺も『月日がたつのは早い』と感じたよ。
54「わたあの」第3話 ◆kQUeECQccM :2007/10/07(日) 15:37:21 ID:qfPcbJYM
「おばか。あんたまで一緒になって騒いでどーすんのよ。しかもこれ何回言わせる気?」
「いやー、かわいいは正義、って言うじゃないですか」
「誰の言葉よ…」
「リンカーン」
 大統領はそういうことをたぶん言わない。
 そして少なくとも、こんな人民のための政治はやらないだろう。

「でも、あんたに限らず、私に対するスキンシップが最近ちょっと過剰じゃない?
 隙あらばべたべたべたべた…冬ならともかく、暑苦しくてしょうがないんだけど」
「う…これ、言ってもいいのかな……」
「…何か知ってるなら、言わないと後で酷いわよ」
 杏樹の顔からみるみる血の気が引いていく。
「お、お姉ちゃんの『後で酷い』は本当にヒドいからなー。
 でもなー、これ言うとお姉ちゃん絶対怒りそうだしなー…」
「―――あ、もしもし、楓かあさん? アスパラガスとカリフラワーが…」
「わぁぁぁぁぁぁぁっ!! やめて! それだけは! ごしょーだから! かんにんして!」
「…安かったから、買って帰るね。それじゃ」
「おねーちゃん、外道…」
「あんたの器だけ大盛りにされたくなかったら、さっさと喋った方がいいと思うけど?」
 アスパラとカリフラワーのホットサラダは、対・杏樹戦におけるリーサルウェポンである。
 使用する側にとって完全に無毒であり、かつ極めて安価で入手も容易。
 さらには攻撃対象が一切耐性を獲得しないという、まさに無敵の兵器である。
55「わたあの」第3話 ◆kQUeECQccM :2007/10/07(日) 15:37:53 ID:qfPcbJYM
「…怒らない?」
 叱られた子犬のような目でこちらの顔色を伺っている。
「あんたが私を怒らせるようなことを言わなければね」
「ずるい…。えーとね、お姉ちゃん、最近また男の子から告白されたでしょ。でも、断っちゃったよね?
 確かその前も、さらに前も、そのまた前も断ってたし、
 もしかしてお姉ちゃん、その……男の人に興味のないひとなんじゃないかなーっていででででででぇ!」
 言いようのない嫌悪感が全身を駆け巡った腹いせに、とりあえず抓っておく。
「誰がおレズさんだって? 憶測で適当なこと言うんじゃないの!」
「あたしが言ったんじゃないもん! うー…じんじんする…ひどいよ…おねーちゃんのばかぁ」

 確かに、これまでに何度も男子から愛の告白というやつを受けてきている私ではあるが。
「何て言ったらいいのかしら…こう、違うのよ。顔とか、背が高いとか、そういうことじゃなくて…」
 もっとこう…たとえば…無口なんだけど頼りがいがあって、どっしり落ち着いてる感じというか…」
 そんな甲斐性を同年代の男性に求めることがそもそも間違いだとは、わかってはいるのだけれど。
「お姉ちゃん、寂しがりやだから」
「…っさい」
 否定はしない。どんなに憎まれ口を叩こうが、常にシニカルな態度を装っていようが、
 私の根幹は常に安楽な依存先を求めている。
 両親らに依存し、妹に依存し、友人たちに依存する。
 そしていつの日か、日差しを遮る大樹の木陰が見つかればいいな、なんて考えていたりする。
 …甘い、よね。
56「わたあの」第3話 ◆kQUeECQccM :2007/10/07(日) 15:39:10 ID:qfPcbJYM

 静かな茜色の空の下、妹と共に家路をゆく。
「…にんげんってさあ、むつかしーよねえ」
「熱でもあるの?」
「いやあ、うちのおとーさんとかおかーさんたちのことを考えてたら、なんかこんがらがってきちゃって」
「こんがらがってることは事実よ少なくとも社会的には」
「いつかあたしも、誰かと誰かを取り合ったりする日が来るのかなあ」
「…なんで略奪愛前提なのよ」
 前略親御さん方。
 あんたらの影響で妹の恋愛観は歪んでいます。
「え? だって好きになっちゃったらどうしようもないんじゃないの?」
「誰が言ったのそんなこと」
「うちのお母さんたち」
 訂正。歪みは直伝でした。

「…おかえり。早速だけど手を洗ってきて、パウンドケーキを焼いてみたから、お茶にしましょう」
 たおやか、という言葉を心身ともに体現しているようなこの母親が、
 まさかそんな生臭い思想を腹の底に隠し持っているとするなら、杏樹ではないが本当に人間は難しい。
 どたばたと洗面所へ走ってゆく妹を尻目に、ふと疑問を投げかけてみる。
57「わたあの」第3話 ◆kQUeECQccM :2007/10/07(日) 15:39:40 ID:qfPcbJYM
「楓かあさん、〆切はいいの?」
 びしり、と空気に亀裂が入ったような気がした。
「知ってる? パウンドケーキってね、小麦粉・砂糖・卵・バターを一ポンドずつ使うからその名がついたのよ。
 発祥の地イギリスでは一日に七回もティータイムがあって、そのうちのひとつ“アフタヌーン・ティー”の
 お供によく出されたそうよ。そうそう、嗜好品を巡って戦争が起こることが珍しくないのは有名ね。
 アヘン戦争の発端も、輸入元の中国に対してイギリスが銀でなくアヘンでお茶の代金を支払ったのが発端だし、
 アメリカのイギリスからの独立も、紅茶に掛けられる法外な税金が原因のひとつだった、とされているわ」
「はいはい、ネタのためにネットで調べた知識を娘にひけらかさないの。さっきから電話鳴ってるよ? 出なくていいの?」
 着信メロディに設定していると思われるラプソディ・イン・ブルーが、先ほどから延々と家の奥から響いてくる。
「忘れようとしてたのに…うう…」
「後で差し入れしてあげるから、頑張って」
「はーい……」
 幽鬼のような足取りで自室へと引っ込む母は、物書きを生業としている。
 私と杏樹の世話を焼きつつ、一般的なクリエイターへのイメージと大して変わらない、
 躁鬱の激しい生活を日々送っている。
 もう一人の母親、樹里かあさんは祖父の法律事務所で秘書の仕事を、
 父は大手自動車メーカーの営業部門でそれなりに出世していたりするらしい。
 二人とも多忙らしく、昨日のように五人揃って夕食のテーブルを囲うことができることはわりと少なかったりする。
 この日は三人で夕食を取り、電話を手に虚空に向かって頭を下げ続ける母を後に、姉妹共々早々に床に入ったのであった。
58 ◆kQUeECQccM :2007/10/07(日) 15:41:14 ID:qfPcbJYM
導入編はそろそろ終わりです多分。
ちなみに、まだ行く先は定まっていません。
59名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 17:10:38 ID:O8l4Ift+
結局これはどういう話なの?
前作の主人公を4人で取り合う話ではなさげ?
60名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 17:23:16 ID:+itDHNOy
>>59
どうかなー 前回の主人公を4人で奪い合うのか
前作キャラはサブキャラ扱いで新しい男が出てくるのか・・・
61名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 18:09:39 ID:71yR95TX
4人で取り合う話なら、
もうちょっと母組二人ってか父親に焦点当たるだろうし、
別の話なんじゃない?
62名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 18:42:13 ID:todcqn6A
>>49
遅レスかもしれないけど、言わせてくれ。

貴方の作品をずっと待っていた!!GGGJJJJぇぇえ!!!
63名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 21:12:37 ID:MCv7XD/I
姉→妹→男→姉という三角関係かも分からんね
64名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 21:43:35 ID:rTOxAXUL
パウンドケーキはフランス語だとカトル・カール……
とても恐ろしい修羅場になる気がしてきた
65名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 21:49:52 ID:5BCQ+qTm
>>63
もし百合要素が入るんだったら、一応書いておいてもらいたいものだな。
66名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 00:27:17 ID:RR9QZjH1
前作主人公を4人取り合うとかどう考えてもm(ryの家系です、本当にありがとうございました。
67名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 00:36:58 ID:/5u++iRr
m(ryの血筋というか止の血筋というか……。
ま、何も明らかにされてない状態でうだうだいうのもアレだがね。
のんびり投下をwktkしながら待とうじゃないか。

>>58
なにはともあれGJ!
68愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/08(月) 01:05:37 ID:/7bMnSez
こんにちは。
前スレ>>621の続き投下します。
69愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/08(月) 01:06:28 ID:/7bMnSez
「はい、止め。鉛筆置いて〜」

 チャイムと同時に教師の言葉が発せられて、期末テスト二日目は終了した。さして出
来た訳ではないんだけれど、それほど出来なかったという訳でもなく、まあ詰まるとこ
ろいつも通りということだった。

「問3の答えってさ……」
「ああ、34通りだろ?」

 答えの確認のため話しかけてくるクラスメイトと適当に会話する。

「ああ、よかった〜。当たってたよ」
「ああいうのって不安になるよな〜」

 手早く帰り支度を済ませて席を立つ。

「じゃ〜な〜」
「おう、またな」

 辛い試験期間だけど、唯一の救いといえば早く帰れるということだろう。今日は十二時
丁度に全ての試験が終了した。
 テスト期間中は部活動は禁止されているので、放送室に行くことはできないし、恐らく
連絡放送の依頼もないだろう。
さあ今日も早く帰って昼寝と行くか、と思って席を立ったところだった。

「あの……中原さん」

 綾瀬さんだった。言うまでもなく今日も可愛い。声かけられるだけでドキッとするじゃ
ねえかこの野郎。

「どうしたの?」
「いや……あの、えっと」

 言いにくそうな、ためらっているようなそんな感じ。一体どうしたんだろう?
 まさかチャックでも開いていただろうか!?
 急いで確認。
 よし、開いてない!
 じゃあ何だ? もしかして、鼻毛か!? それはまずい!!
 いくら鼻の下を伸ばしたって、そればっかりは確認できない。
 くそっ、鏡!! 鏡はどこだ!!

「……これから、何か予定とかありますか?」
「ふぇ?」

 鼻の下を伸ばした状態の僕には、そんな間抜けな返事しか出来なかった。

70愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/08(月) 01:10:01 ID:/7bMnSez


「……こ、ここが『幕怒鳴る度』」
「いや、何か変換間違ってるけどね」

 綾瀬さんは緊張した面持ちで、おなじみの赤地にMの看板を眺めていた。

「こういうとこってやっぱ、初めて?」

 綾瀬さんは恥ずかしそうに頷く。
 彼女のようなお嬢様をこんなところに連れて行くのも気が引けたけど、僕の財布の中の
状態を考えるとこういう安いところしかない訳で。

「ほんとにいいの? こんなとこで」
「も、もちろんです!!」

 やっぱり綾瀬さんみたいな人を連れて行くのは高い店……ロイ○ルホストとかがいいん
だろうか? てか高い店って言ってロ○ホぐらいしか思いつかない自分が嫌になった。悲
しきは庶民の性、か……。

「それじゃあ入ろっか」

 気を取り直して僕は言った。

「は、はい!!」

 そんなこんなで、僕らは昼ごはんを食べに来たのだった。


71愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/08(月) 01:11:16 ID:/7bMnSez
「い、いただきます」

 綾瀬さんは丁寧にそんなことを言ってから、ハンバーガーの包みを開ける。

「このまま、かぶりつくんですよね」
「う、うんそうだよ」

 もちろんこんな所にナイフもフォークもあるはずがない。
 そしてハンバーガーを口に運ぶ。
 真剣な顔でハンバーガーを味わう綾瀬さん。
 そんな様子を黙って見る僕。
 ファーストフード店ではまず見られないような奇妙な構図。

「…………ど、どう?」

 ハンバーガーを飲み込んだ綾瀬さんに僕は恐る恐る尋ねた。

「はい、とても美味しいです!!」

 いつもの太陽のような笑顔を見て、僕はやっと安心した。

「初めてだったから少し心配してたんですけど、すっごくおいしいです!!」

 そう言って綾瀬さんは二口目を食べた。

「よかった〜」
 そう言って僕もようやくハンバーガーを食べ始めた。
 綾瀬さんはポテトを食べては感動し、コーラを飲んではびっくりし、さらにここまで安
い値段に疑問を持ち(というかきっと、いつも食べてる物が高級すぎるのだ)、とにかく見
ていて飽きなかった。
72愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/08(月) 01:13:28 ID:/7bMnSez

「……こういうのって、テレビとかで見て憧れてたんです」

 うっとりしながらそんなことを言う綾瀬さん。

「俺なんかにしたら、こんなんしょっちゅう何だけどね」
「えっ、そうなんですか!?」

 何だかショックを受けたように綾瀬さんは言った。

「そりゃあ、俺らにしたらマ○クなんて普通だしね」

 僕がそう言うと綾瀬さんはホッとしたように、

「そ、そういうことですか。もうビックリさせないでくださいよ」

 そう言って一息ついた。僕にはさっぱり分からない。

「どゆこと?」
「そ、それはですね、つまり……」
「つまり?」
「こ、こういう風に、中原さんみたいな人と………で、デート……するのに憧れてたんです」
「………………………………………」

 言葉を失う。
 思考回路がまともに働かない。
 ただひたすら『デート』という単語が頭の中をぐるぐる回って、綾瀬さんの反則なくら
い可愛い仕草が目から離れない。
 
 え? デートってあれ? 「date」? 日付とかそういう意味だよな。うんOK、合っ
てる合ってる。これくらい中学知識さアハハハ。うん、もちろん日本語でのアレとは違う
よね。まさかまさか、そんなことって、ねえ? え、でも待てよ。綾瀬さんのあの言い方
はどう見ても………あは、あはははは。

「あ、あの中原さん?」
「え? あ、ああごめんごめん、ついボーっとしちゃって」

 これって、もしかして僕は本当に綾瀬さんに、その……そーゆー風に見られてるってこ
となんだろうか? いや、綾瀬さんって何だかんだで世間知らずっていうかそんな感じだ
し、そういう意味で言ったわけじゃ……。
73愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/08(月) 01:14:22 ID:/7bMnSez
 頭の中で必死にその可能性を否定する。だってこんな可愛い娘が僕のことを好きになる
なんて考えられないし………それに何より勘違いしてしまうのが怖かった。
 臆病、とでもいうのだろうか。そうなのかもしれない。だけど、どうしても僕は慎重に
ならざるを得ないのだ。
 格好悪いけど、やっぱり思い切ることは出来ない。

「………それで、中原さん」
「は、はい何でしょう!?」

 何て考え事をしていたから、僕の返事はこんなものになってしまった。そんな僕をみて
綾瀬さんがクスリと笑った。その笑顔はやっぱり天使みたに温かくて、陳腐な比喩だろう
けど、僕にはその表現しか出てこなかった。

「それで、中原さんはそういうのには慣れてるんですか?」

 いつになく真剣な顔で綾瀬さんは聞いてきた。

「えっと……」

 その態度を見て、思わず答えあぐねた。記憶を辿って綾瀬さんの問いへの回答を探す。

 ―――少なくとも、こういうところに女の子と来たことはない。

「慣れてなんかないよ」

 ―――そう、こういうところに来たことは、ない。

「ほ、本当ですか!?」
「もちろん」

 笑って、心の中を見透かされないように、笑って僕は答えた。
 嘘は言ってないのだから、問題はないだろう。

「そうなんですか……、よかったあ」
「そもそも、俺がそんなにモテるように見える?」
「は、はいもちろん!!」
「そ、そう……」

 何かこの娘といると妙に照れるっていうかドキドキするっていうか、心のどこかが落ち
着かなかった。でもそれと同時に、このくすぐったさに楽しさを覚える自分もいて、――
―でも、怖さを覚える自分もいて、やっぱりどうにも複雑だった。
74愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/08(月) 01:16:43 ID:/7bMnSez
以上で今回分投下終了です。
何か最近PCの調子が目茶苦茶悪くって……。

そんな訳で次回もよろしくお願いします。
75名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 02:17:00 ID:9OIJGJva
GJだぜ
あんたの灯火、いつもwktkして待ってるぜ
76名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 03:02:51 ID:TV5O/Ioz
>>74
復元して、扇風機で冷やしてあげながら使ってあげればいいんじゃないかな。
77名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 03:03:03 ID:y/t+jW8T
>>74
GJ!
綾瀬さんかわいいなw
先輩の動向も気になるけど。
78名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 09:53:05 ID:DqxOLIWb
>>74
朝から悶えました。GJ!!!!
79名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 20:44:38 ID:OBL6judF
電波受信したので初投下します
80秋の星空:2007/10/08(月) 20:45:51 ID:OBL6judF
学校ってやつは社会の縮図だ、なんてよく言われるけどほんとにそうなんだろうか。
この小さな箱庭には同世代の人間しかいないし、価値観とか道徳意識も似たようなやつばかりだ。
ほんとの社会に出れば歳の離れた全然別の価値観を持つ人に出会うだろうし、自分の苦手な人とも付き合わなきゃいけない。
社会と学校はまるで違う次元のもだと、僕は思う。
それでもこの「学校」というものと「社会」ってものに共通点があるとするなら。
それは小さなコミュニティの群体でなりたっている、というところだ。
僕の学校はクラスという30数名のコミュニティが3学年、一学年6クラス分存在し、それによって成り立っている。
さらにクラスの中もスポーツ好きなグループ、オシャレ好きなグループ、音楽好きなグループ、オタクグループ、不良グループ、
クラスの中心人物たちのグループ、地味な一般群集グループ、美男美女グループなど、細かくカテゴリィ分けされている。
体育祭や文化祭といったクラスごとのイベントではひとつにまとまったりするけど基本的にどこのグループも普段は互いに干渉しあわない。
なかにはグループに属さないでふらふらとしている人間もいるけれど。
僕はそのふらふらとしているやつらの一員だ。で、結局そんなやつらが集まってできた変なグループに属してしまっている。

何が言いたいのかっていうと僕と三浦美希は全然別のグループの人間で、全然別のタイプの人間だってこと。

美希はクラスの中心人物グループの一員で、オシャレ、美男美女グループとも属性が一致している。
僕らは昼間のクラスじゃ全然会話しないし、授業で班分けされるときも一緒にはならない。
僕らがコミュニケーションを取るのは皆が下校したり、部活に行ったりしたあとのことだ。
人のまばらになった図書館や誰もいない教室、お互いの家、とにかく二人でいられるところで会う。
二人っきりで、会う。
81秋の星空:2007/10/08(月) 20:46:55 ID:OBL6judF
「ふっ……うん…はぁ」
互いの舌を吸いあいながら唾液の交換を始める。
「んん……んっ」
僕は美希の背中から腰にわたる綺麗な曲線に手をかけながら、美希は僕の背中に手を回しながら。
「ちゅっ…ちゅっ…」
お互いの唇をむさぼる。
「んんん……ふぅ」
なごり惜しむように離したお互いの舌から、唾液が白い糸となってたれていく。

「ふふ…キスまたうまくなったね。」
僕の瞳をまっすぐ見つめながら、悪戯っぽく美希が笑う。
「そりゃこんだけ毎日してりゃあね」
美希の眼に見つめられるのがなんとなく恥ずかしくて、僕はつい視線をそらしてしまう。
そらした視線の先では、暗い夜の空の中まんまるい月が誇らしげに輝いていた。
3階に存在するこの教室からは窓の先、夜の学校で照明に照らされながら一生懸命練習しているクラブ生たちが見える。
テニス部、サッカー部、野球部、陸上部…彼らが青春の汗を流している中、僕は美希の唇に夢中でくらいついていた。
なにやってんだろ僕は……。
変な劣等感を感じながら僕の正面で机に腰掛けている美希に視線を戻す。美希の視線もまた、窓の外に向いていた。
月明かりの中、制服の端々からみえる美希の白い素肌がなんとなく輝いてみえる。
極端に短くしたスカート、手首や首元につけられたアクセサリー、綺麗に塗られたマニキュア、はだけた制服の胸元、
肩ほどにまで伸ばされた茶色がかったまっすぐなストレートヘア、薄く塗られた口紅やマスカラ……
対する僕はというと、学校指定のブレザーとYシャツ、ちょっとよれよれのズボン、真っ黒などこにでもいる短髪のヘアスタイル、
中肉中背な身体。いやちょっとはジムで鍛えてるから…まあそこまで誇れるものでもないか。

改めて思う。……全然タイプがちがうよなぁ。
82秋の星空:2007/10/08(月) 20:47:43 ID:OBL6judF
ぼーっと美希を眺めているとそれに気づいたのか、美希がまた小悪魔っぽい笑みを浮かべながら僕の瞳を覗いてくる。
「なぁに?また欲情しちゃったの?エッチしたくなっちゃった?」
クスクス笑いながら僕に身を寄せてくる。
「要はスケベだからなぁ……どうせ昨日もアタシのことオカズにしてシタんでしょ?」
耳元で息を吹きかけるように、妖艶にささやく美希。
「し、してないっての!」
見事に図星を突かれてしどろもどろになってしまう。なんでいつもこんなに鋭いんだろ?
「嘘嘘♪要の嘘は分かりやすいんだよ。要のことならなーんでも分かるよ…」
そう言いながら少しずつ、僕のワイシャツのボタンをはずしていく。
「どうする?ここでする?学校でするのも久しぶりだし…いいかもね。」
濡れはじめた瞳で僕を見つめる美希。この展開はやばい。
「そ…そろそろ出ないとまずくない?もうすぐ9時だし」
なんとか話題をそらそうと時計も見ずに適当な時間を言ってみる。
美希は一旦「始める」とほんとに止まんなくなっちゃうから学校で「始める」のはまずい。
「あれ?もうそんな時間?……ほんとだっ!やばっ!」
美希が慌てて僕から離れカバンを持って帰り支度を始める。
あれ?ほんとにそんな時間だったのか?…やばい!
「ほらっ!要っ!はやく!」
自分だけさっさと準備を済ませて教室の外に出る美希。服脱がせはじめたのはどこのどいつだよ!まったく!

「はぁはぁ……」
「ふぃ〜…」
急いで裏口の校門から学校を出て、ふたりであがった息を整える。
だから学校はあんまり好きじゃないんだ。誰かに見られるかもしれないし、時間制限あるし。
でも美希はなぜか学校でこういうことをしたがる。昼間まともに話せない反動からかな…
83秋の星空:2007/10/08(月) 20:48:21 ID:OBL6judF
僕が美希と付き合いはじめたのは丁度一年前、2年生の秋先だ。
美希と僕は小学校からどういうわけかこの学校にくるまでずっと同じ学校で同じクラスだった。
いわゆる幼馴染みたいな感じだったんだけど漫画やゲームとちがって朝起こしにきたり一緒に登校したり
なんてことあるわけもなく、ただの友達かそれ以下みたいな関係が続いていた。
美希はおとなしいけど元々優秀な子だったし、平々凡々な僕と距離が開いていくのは自然なことのように思えた。
中学校からはお互い別のグループに所属してまるで接点を持つことがなくなり、この学校に入ってからはさらにそれに磨きがかかった。
美希はクラスの中心として、美人でよく働く人気者になっていった。
オシャレをしたり、いろんな企画の中心になったり、学校一の人気者の男と付き合ったり。
性格も地味なかんじから明るく悪戯好きな性格になり、まるで別人…要するに僕とは全然別の世界の人間になっていったのだ。
いつの間にか僕らはあいさつすら交わすことがないような関係になっていった。

付き合う人間も違うし、やることもまるで違う僕らが再び接点をもちはじめたのは2年のクラス委員分けのときからだった。
こういう委員分けって言うのは大抵楽な図書委員とかに人が集まり、そこで争奪戦になるものだがうちのクラスはどういうわけか
学祭実行委員や体育祭委員などあまりふつうみんながやりたがらないようなものに人気が集まった。
あっという間にめんどうな委員の役員はすべてうまり、残りはあまった図書委員だけになった。
結局僕はその余った図書委員を任されることになるんだけど、なぜかそこに美希も立候補してきた。
美希のことだから生徒会役員かなにかになるのかななんて思ったのだけれど、美希はどれにも立候補せず僕と同じあまりものの
図書委員の席を狙っていたようだった。当然周りからは色々言われてたけどな美希は図書委員にこだわった。
前に一度そのことを美希に尋ねたとき、「楽だとおもったから」の一点張りで返されてしまったことがある。
でもなんだか別の理由があったんじゃないかな、なんて今では思う。楽な役職なら他にもあったわけだし……
84秋の星空:2007/10/08(月) 20:49:10 ID:OBL6judF
何はともあれ、図書委員として再び接点を持った僕らは以前と変わった美希の性格もあってかすぐに仲良くなった。
美希の悪戯っぽい性格と前向きな性格に接しているうちにぼくも長年のしこりみたいなものが消えていくのを感じていた。
同時に、美希に対する思いも少しずつ変化していっていた。
美希が人気があるのは外見や優秀さだけじゃない、その性格からくるものなんだと僕は理解し始めていた。
中には羨望や嫉妬で美希を嫌う人もいるだろう。けど美希の明るい性格はそれを感じさせない強さがあった。
美希に触れていくうち、僕はだんだんと美希に惹かれていっていた。美希ともっと仲良くなりたい、そう思うようになった。
でも図書委員であること、それ以外に接点のない僕は普段は遠くから美希を眺めることしかできないでいた。
美希の周りには人気者達の輪があり、そこに僕が入っていくのはとてつもない勇気が必要だったのだ。
それに美希には付き合っている先輩がいた。生徒会長でサッカー部のエース。学校の中心。だれもが惹かれる存在だ。
僕が敵う相手じゃない。ケンカなら勝てるかもしれないけど男としては完敗してる気がする。
悶々とした想いを抱えながらサンドバックを叩く日々が続いた。
そんなある日、美希と先輩が別れたってうわさを友人達から耳にした。
うわさ好きな友人達と、クラスメイト達の間で一斉にいろんなうわさがどびかった。
美希に好きなやつができたとか、先輩が浮気したとか、三角関係がもつれたとか、いろいろ。
どうやら現場は女2人男1人の修羅場だったらしいからいろんな憶測が飛び交うのも無理はなかったんだろう。
でもどんなうわさも僕にとってはどうでもよかった。
先輩と美希が別れたって事実が重要だ。僕は有頂天になった。たぶん他にもほくそ笑んでるやつらがいるはずだ。
先輩に憧れてたやつ、美希を好きだったやつ、美希を嫌っている連中。
ふたりのスキャンダルはそんな馬鹿達を喜ばせるに十分なものだった。

そう、本当に馬鹿なやつだった。ぼくってやつは。
85秋の星空:2007/10/08(月) 20:50:17 ID:OBL6judF
意気揚々とその日の委員の仕事を行うために図書室に向かった僕は、本当に自分が馬鹿であることに気づかされた。

美希が、泣いていた。声を押し殺して、一人で泣いていた。

そりゃそうだろう。彼氏と別れた上、周りにあることないこと言われたんだ。
悲しまないほうがおかしくないか。
彼女が悲しんでいることも知らずに喜んでいた、周りの人間と同じだ。僕は最低だ……。

気づけば僕は先輩の下に走っていた。グラウンドでいつもどおり練習している先輩の下へ。
美希の泣いてる顔が頭に浮かんでは消えていった。
なんでこんなことしてるのか自分でもよくわからなかった。でもしなきゃいけないような気がした。
僕は先輩に土下座した。
「お願いします!もう一回三浦さんとやり直してください!」
周りの部員達が唖然としている中、僕は叫び続けた。
「おねがいします!おねがいします!」
先輩もまた唖然としていたが次第に顔をしかめはじめると僕に近づいてきた。
「なに?お前あいつのなんなの?」
「おねがいします!僕は…クラスメイトです。ただの…でもおねがいします!」
ひたすら頭を下げる。まわりから次第に嘲笑の声が聞こえてくる。
「はぁ…あのなぁこれはあいつと俺の問題なのよ。お前には関係ないの。わかる?」
「で…でも………あのっ!なんで、なんでなんですか?なんでこんなことに!?」
先輩は馬鹿にしたような眼で僕を見ながら鼻で笑った。
「だってさぁ…あいつうぜぇんだもん。重いっつーの?それにしょーじきもうヤリあきたし。」
―――え?……なんだって?
「ちょっと甘い顔したら、すぐついてきちゃって。んで彼女顔だもんなー。こっちのほうがたまんねーっつーの。」
86秋の星空:2007/10/08(月) 20:51:15 ID:OBL6judF
……は?なんだよ……こいつ。
「お前あいつに惚れてんでしょ?やめとけって。ああいう重いのはさ。地雷っつーのよ。ああいうの」
こ……こいつは……
「まあ可愛かったし、処女だったし?そんくらいだぜ。得したの。色々噂されて迷惑してんのこっちだっての」
………………
「とにかくお前には関係ねーから。あー…このことだれにも言うなよ?言ったら……」

「どうなるってんだよ!ええ!?」

―――それから先はあんまり覚えてない。とにかくめちゃくちゃになったことは覚えてる。
僕は謹慎処分になって先輩達のサッカー部はメンバーが足りなくなって試合に出られなくなった。
というよりこの事件で色々調べが入った結果、先輩達が揃ってとんでもないこと(口に言えないようなこと)
をやっていたことが学校にばれてサッカー部は試合出場停止処分になったんだけど。

謹慎が解かれ両親に多大な迷惑をかけた後、なんとか僕は学校に復帰できた。
学校に戻ったとき僕を待ってたのは不良グループからの勧誘の相談と周りの人間からの畏怖と侮蔑の目線だった。
特にサッカー部のやつらからは僕が原因で試合に出られなくなったってことで結構責められた。
それもしょうがない。覚悟してやったことだから。唯一の救いは友人達が僕を見捨てなかったことだ。
僕の周りに怪我と経過を心配しに(興味津々で)集まってきてくれた。
元々変なやつらだったからかもしれないけど、その時はすごく助かった。
87秋の星空:2007/10/08(月) 20:52:16 ID:OBL6judF
そのまま授業が始まると僕はまだ少し痛む傷を抑えながら時々美希の席を盗み見た。
美希は僕が教室に入ってきたとき、まるで興味がなさそうに窓の外を眺めていた。
今も僕にまるで興味を示さず黒板の文字を目で追っている。
これもしょうがないことだ。どんな理由でも元恋人をぼこぼこにしたんだから……

沈んだ気持ちのまま、図書館に向かう。秋の夕暮れの中、校舎がオレンジ色に染まっていく。
古臭い引き戸のドアを開けるとそこには一人の女生徒が佇んでいた。

夕日を背負った彼女の表情はよく見えない。

「なんであんなことしたの?」
感情のこもらない、静かな声で彼女がささやく。
「………………」
なにも言えない僕。
「なんで、あんなことしたの?」
今度はやわらかい、優しい声で彼女がささやく。
「………………ごめん」
小さく、つぶやく僕。
「たのんでないよ、あんなの……」
彼女の声が少し涙声になっているのがわかる。
「ごめん……」
どうしようもなくて、俯いてしまう。
「でも……ありがとう……」
涙声の中に暖かさがまじっているのがわかる。
はっとして俯いた顔をあげる。彼女の表情は見えないけれど、微笑んでいるように見える。
88秋の星空:2007/10/08(月) 20:52:55 ID:OBL6judF
急に胸が締め付けられるように苦しくなる。胸の鼓動が早くなる。
口が……勝手に動き出す。
「ぼ……ぼくは……三浦さんのことが……好き、です」
精一杯の勇気を振り絞ってもう一度彼女の表情を伺う。

彼女の微笑んでいる表情が、今度ははっきりと見えた。

それから僕達は周りにばれないよう隠れて付き合い始めた。
もう彼女にあんな思いはさせたくないし、なにより僕の評判で彼女の評価まで落としたくなかった。
美希はそんなこと気にしないって言ってたけど、やっぱり彼女はこのクラスの中心人物だから。
僕とは違うから。
でもなんだか最近美希がだんだん大胆になってるようなきがする。
このままだといつか学校中にばれてしまう。自重しようって言ってるのに全く……。

「どしたの?お腹でも痛い?」
僕の腕に身体をおしつけながらパッチリとした眼で僕を見上げてくる美希。
「うん。昼のお弁当が効いたかも」
「なにそれ!結構自信あったんだけどなぁ……」
ちぇっと唇を尖らせながら僕の腕にしがみつくように歩く。
「まあいいや!夕飯でリベンジするし!早く帰ろ!」
「うん……」
「ほらぁ早く!」
急に歩くスピードを速めた彼女に今度は僕がひきずられる
「ちょっ……そんなにいそがなくても」
「急がないと要が我慢できなくなるでしょ?イ・ロ・イ・ロと」
またあの悪戯っぽい眼で僕を見つめてくる。ほんと敵わないな。
幸せをかみ締めながら二人で秋の夜空の下を歩く。

その後ろに迫ってくる別の誰かの足音にまるで気づかないまま……
89名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 20:54:15 ID:OBL6judF
終わりです。ただの導入部です・・・
90名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 21:18:02 ID:UB3xoiVu
GJ!
連載楽しみにしてます。
91名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 22:25:46 ID:9GEs5Jm2
 前スレ879-です。埋めネタを投下していたんですが、気がつけば512kbを
超して中途半端なところで終わってしまった orz
 我ながら頭が足りない……

 もともと埋めネタかつ没ネタなので現行スレに投下するのも微妙な内容
なのですが、こういう場合ってどうするべき?

>>前スレ880

 指摘ありがとうございます。
92名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 22:29:41 ID:Tea/ekaM
>>91
避難所に投下してみるというのはどうか
93名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 22:43:08 ID:9GEs5Jm2
>>92
 その案イタダキ!
 二人目の子の方に投下します。
 アドバイスありがとうございます。
94名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 23:06:28 ID:DqxOLIWb
>>89
こんな素晴らしい電波ならもっと受信してください。GJ!!!!
95名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 02:47:44 ID:xWHacRgx
投下します。
96秋の星空:2007/10/09(火) 02:48:57 ID:xWHacRgx
あの人は……山下要はほんとに気づいてないんだろうか?あの女の本性に。

距離を図りながらゆっくり、ゆっくり二人の後をつける。
幸せそうに手を組んで歩く山下君と……糞女三浦。
二人が駅に着き、改札を通るまで私は息を殺し、二人の様子を観察する。
まったく……バカップルもいいところだわ。昼間はそんなそぶりまるでみせないくせに。
三浦がネコを被るのがうまいことはよく知っているが山下君も相当なものだ。
やっぱり似たもの同士ってことなのか?あの山下君も三浦とおなじ……
いや!そんなことあるわけがない!あの人はアイツとは全然違う!

高ぶった感情を抑えながら二人の通った駅ターミナルを見上げる。
忌々しい女、嫌な女、最低の女、三浦美希。
私をここまで堕としておいて、自分だけ幸せになろうなんて……


そんなの絶対にゆるさない!お前には私が味わったのと同じ苦痛を教えてやる!
97秋の星空:2007/10/09(火) 02:50:03 ID:xWHacRgx
9月下旬……この秋の始まりの季節は僕らの学年にとっては勝負のときだ。
去年までとは違って今年は人生の分岐点である受験という試練が僕らには待っている。
この大切な時期に学校の授業を受けている悠長な連中はほとんどいない。
みんな内職で忙しいのだ。それぞれが自分の用意した参考書を開いて自習を始めている。
僕もそんな連中に漏れることなく、参考書を読み込む。
美希と同じ大学に行くためにはまだかなり努力が必要だからだ。

そんな必死な僕の背中をさっきからずっと鉛筆でつついてくるやつがいる。
「おい!山下!……お〜いってば!」
「………………」
つつく力がどんどん強くなる
「お〜い山下くぅ〜ん。やましたかなめくぅ〜ん」
「ぐっ…………」
こいつはほんとにもう……
「もういいじゃん。どうせ無駄だって。あきらめて俺と同じ大学入ろうよ、ね?」
「………………」
つんつんつんつんつん……
「かなめちゃ〜んあきらめましょーよぉ」
……ええい!
「やめろ!このばか!」
ガタンッ

「そこ!さっきからなにしてんだ!」
98秋の星空:2007/10/09(火) 02:50:41 ID:xWHacRgx
「だからさぁ無理だって言ってんのよ」
月見そばをすすりながら飯田勇気はバカにするように言う。
「あの大学の倍率と偏差値わかってんの?エリート校なんだぜ?」
「そんなことわかってるよ……」
美希に作ってもらった弁当をつつきながら適当に返事をする。いつものことだ。
こいつはどうしても僕を同じ大学にいかせたいらしく、事あるごとにこの話題を振ってくる。
「そんな無駄な努力しないでさ、合コン行こうぜ合コン〜」
「やだよ。どうせ数あわせだろ。僕も、お前も」
弁当の半分をしめるそぼろご飯をゆっくりほおばる。味濃いなぁ。
「でも高校3年間で彼女なしだぞここままじゃ!最後くらい一発あげようや!」
「………………」
「……おい、お前やっぱり……」
「……ん?」
ガタンッと食堂の椅子を思いっきり引き、飯田が大声で叫ぶ。
「お、お前!その弁当やっぱりかあちゃんじゃなくて彼女につくってもらってんだろう!そうなんだな!」
「バカ!声がでかすぎるっつーの!」
飯田の口をすばやく手でふさぎまわりを見渡す。
「んーーー!んーー!」
僕らに注目していたやつらも僕と目が合うととたんに眼をそらす。
そのままみんなちりじりにそれぞれの席へと向かっていく。
ほんとこいつの会話と行動はワンパターンだ。
99秋の星空:2007/10/09(火) 02:51:29 ID:xWHacRgx
「山下君に彼女かぁ……たしかにいそうだなぁ」
おぼんにハンバーグ定食を乗せて丸い顔をした優しそうな男が近づいてくる。
「な?森本もそう思うだろ?」
飯田が同意を求めるように丸い男―――森本義男と視線を交わす。
森本はきつそうな制服の襟をただしながら僕の横に座る。
「最近付き合い悪いしね。コミケにも一緒に行ってくれないし。」
森本はまさにカブリつくという表現がふさわしい勢いでハンバーグ定食に手を出し始める。
「コミケはオタ友と行けよ……あ!お前にはMOMOちゃんがいたなぁ!MOMOちゃんと行けよ。ぷくく」
飯田がまたバカにしたような笑いをうかべる。森本の箸がピタッと止まる。
「MOMOちゃんのことは言わないで…お願いだから」
「はいはい。まだストーカーされてんの?いい加減警察突き出せよ。イカレてるぜあの女」
森本は落ち込んだように俯いてしまった。飯田はそれを見て呆れ返っている。
MOMOちゃんっていうのは森本がネットゲームで知り合った友達だ。
仲良くなっていざ現実で会ってみたらなんと20代後半の美人さんだったそうだ。
飯田はそれを聞いてうらやましがっていたが、MOMOちゃんは頭のネジが飛んでいる女性だったらしく、
一度会ったその日から今日まで森本のストーカーを続けているのだ。
僕らは実際MOMOちゃんをみたのでその恐怖が手に取るように分かる。
たしかにMOMOちゃんは美人だ。でもあれはやばい。まさにさ○こそのものだ。
100秋の星空:2007/10/09(火) 02:52:42 ID:xWHacRgx
森本のこういう姿を見てると思う。
ストーカーって好きな人を苦しめてるのにそれのなにが楽しいんだろう。
嫌いなやつにするストーカーもあるけどどっちにしろ執着だ。
なんでそうまでして自分の思いをおしつけたいのかな……
「それは他人の気持ちを考えられない、自分本位な人間だからですよ。」
僕の心を読んだかのように、いつのまにか飯田の隣に座ったメガネをかけた細身の男が疑問の答えをだす。
「ストーカーっていうのは自分のやってることが正しいと思ってる人間ですからね。
 ようするに自分の幸せが相手の幸せだと勘違いしてるんです」
このメガネの男、本間武は新聞部の部長だ。人間観察と噂集めが趣味で、大抵の事はこいつに聞けばわかる。
「んでもそれも愛の形じゃね?そういうのって人間の数だけあるでしょ」
ひょこっと飯田の後ろから背丈の高いやけに顔のパーツの整った男が出てくる。
「あーはいはい。モテルお方の言うことは全然違いますね〜っと」
飯田のモテルやつに対する嫉妬はすごい。ほんとに興味なさそうだ。
「相変わらず冷たいやつだなぁ〜。なあ森本。受け入れてやれよ。MOMOちゃんを。」
森本の肉付きのいい肩をもみながら高田圭吾がささやく。

これが僕のコミュニティ。どいつもこいつもよくわかんないやつだ。
飯田はひょうきんで人気者なのにもてないし、森本はオタクなのにその優しさからかいろんな友達がいる。
武は単純におかしなやつだし、高田はすごいもてるのにブラブラしてばかりいる。
そして僕は例の事件でいろんなやつに目をつけられた問題児。
みんな不思議なやつだけど、みんないいやつだ。
101秋の星空:2007/10/09(火) 02:53:58 ID:xWHacRgx
「まあ森本にはMOMOちゃんがいるとして、俺とお前と武には彼女ができる気配が一向にない!これはまずいんじゃないのか!?」
……どうやらさっきの弁当の話はMOMOちゃんのおかげでどこかに行ってしまったようだ。
「おいおい〜俺もいないんだけど〜」
高田がヘラヘラ笑いながら僕ら3人に近づいてくる。
「ええい!お前のことなどどうでもいい!とにかく合コンだ!合コン行くぞ!」
飯田のやけっぱちな声につられて僕と武はしかたなく腕を組み、なぜか廊下を横断する。高田もトボトボついてくる。
周りから白い眼で見られながらも飯田はバカみたいにはしゃぎまわる。
こいつのこういう変なポジティブさはほんとに見習いたい……いや見習いたくない。

廊下の先で美希やその友達と一瞬目が合った。美希の友達はバカにしたように僕らを見つめていたが美希は目をそらすだけだった。
それは僕らが決めた昼間のルールにしたがってのもの。
別につらいとは思わない。美希が嫌な思いをしなくてすむから。
「おお!三浦さんとそのグループじゃないか!ずっとこっち見てるぞ!やっぱあそこにまざりたいなぁ。可愛い子ばっかだし。」
…こいつはほんとにもう…………


―――閉め切った暗い部屋の中、聞きなれた甘い声が響く。

「はぁはぁ……ねぇ…もっとぉ」
「ん……こう?」
「はぁぁ……だめぇ…もっとぉ」

昼間学校でああいうことがあると、夜の美希はかならずスイッチが入る。
貪欲に、性を、僕を求める。

「いいでしょ……?今日は家なんだし、もっとシよ?」
「う、うん…わかったよ。もっとね……」
「そう、もっと…んくぅ!」

僕も美希のこと、あんまり言えないんだけど。
102秋の星空:2007/10/09(火) 02:55:24 ID:xWHacRgx
事が終わると、穏やかな寝息をたてる美希を置いて僕はパソコンを起動させる。
やっぱり今日も来てるのかな……
画面に巨大なオウムの壁紙が映ると、すぐにメールボックスを開く。
受信ボックスにはやっぱり数十通のメールが届いている。
どうせ内容はわかってるけど、一応目を通す。カチカチッとダブルクリックで受信したメールのひとつを開く。

「三浦美希と別れなさい。それがあなたのため。じゃないと絶対不幸になる」

―――やっぱりこれだ。残りのやつもどうせ似たような内容だ。
数日前からこういうメールが大量に来るようになった。いくらアドレスを変えても届く。
最近はパソコンだけじゃなくて携帯にまでくるようになった。
それだけじゃない、美希と一緒に帰っていると時々別の誰かの足音がすぐ後ろから聞こえてくる。
美希は気づいてないのか?僕だけなんで?美希には山下と別れろってメールは着てないようだし……
森本とMOMOちゃん、武の話、高田の話……


僕は、ストーカーされている。
103名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 02:57:54 ID:xWHacRgx
ここまでが導入ってことで・・次からトリップ着けます
104名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 03:02:02 ID:D97Ys1iP
うん、先が気になる GJ!
105名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 03:09:30 ID:1+yUIIVC
やばい、おもしろい。
続き期待してます。
GJ!
106名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 04:48:03 ID:wq+eDQ8s
>>103
GJ!
またひとつ楽しみが増えたよ!
107名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 05:37:29 ID:mOlgwiXv
GJ
ヤバイ匂いがブンスカするな
これ系のヒロインが絡むと泥沼確変
108名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 09:34:02 ID:0PrjCNTz
楽しみが増えたんだぜ

ところでMOMOちゃんで月宮事件を思い出したのは俺だけじゃないはず
109名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 10:56:46 ID:15KbUQxi
>>103
ぐっじょ。
何故かMOMOちゃんが美人・20代後半と書かれてるにも関わらず、
合法ロリな美少女タイプのイメージな自分……
110名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 21:29:14 ID:smmPSU6T
連載作品が多くて頭混乱しちきた

だが投下ラッシュはうれしいな
111「わたあの」第4話 ◆kQUeECQccM :2007/10/09(火) 23:36:30 ID:6BCM0mAZ
 ある休日のこと。
 珍しく朝と呼んで差し支えない時間帯に覚醒した私は、朝食を摂ろうとダイニングへやってきた。
 と、杏樹がテレビに向かって何やらがちゃがちゃとやっている。
「朝っぱらからうるさいわね、いったい何事?」
「あ、おねーちゃん。おはよー」
「はい、おはよう。…私は朝ごはんまだなんだから、ホコリを立てないでほしいんだけど」
「うー、ごめん」
 灰色に煤けたパジャマを着替えに脱衣所へ向かう杏樹にため息をつきながら、
 樹里かあさんが湯気の立つコーヒーを淹れてくれる。
「さっきからあの調子なの。ゲームがどうとか言ってたけど…」
「ゲームだったら、自分の部屋でやればいいのに」
「何でも、こっちの大きいテレビじゃないと駄目なんだって」
「ナマイキ言いよってからに」
 樹里かあさんはまだ昨夜までの疲れが抜けきっていないらしく、欠伸ばかりしている。
「あとは私がやっておくから、もう少し寝たら?」
「そうねえ…じゃあ、ごめんね」
 そう言って、潔く撤退するあたりが樹里かあさんらしいというか。
 これが楓かあさんなら、意固地になった挙句にコンロでヤケドするのが関の山といったところだろう。
 卓上の食パンをトースターに投入し、冷蔵庫の中から作りおきのサラダを出す。
 既に流しの上に出してあったベーコンを、油をひいて熱したフライパンに投入。
 間髪いれず生卵を投入し、蓋をして数十秒待つ。
 頃合をみて、少量の水をさし、蒸し焼きをしつつトースターを監視。
 しばしの後、きつね色に焼けた食パンと、半熟ベーコンエッグを同じ皿に盛ってダイニングへと戻ったところで杏樹がやってきた。
112「わたあの」第4話 ◆kQUeECQccM :2007/10/09(火) 23:37:20 ID:6BCM0mAZ
「うー、いいにおい」
 Tシャツとハーフパンツに着替えた樹里の髪は濡れており、ほのかにシャンプーの匂いが漂ってくる。
 昨夜はいつものように夜更かしした挙句に風呂に入らず、そのまま寝入ったらしい。
「あんた、もう食べたんでしょ?」
「えへー」
 餓鬼かこいつは。
 私に向けられる何か物欲しげな視線を無視しつつ、杏樹に問う。
「さっきから、何やってたの?」
「えーとね。ゲーム機を繋ごうと思って。大昔の。すごい古いやつ」
「大昔って、どのくらい昔?」
「えーとね。えーと。…十八年くらい前?」
「私たちが生まれる前じゃない! よくそんなのあったわねえ。動くの?」
「それがねえ、動くんだよねえ」
 テレビのかたわらに置いてあった紙袋から、なにやら白いヌンチャクのようなものを取り出し、頭上に掲げる。
「うゐー!」
 奇声を発する妹。
「何それ」
「えー、お姉ちゃんしらないの? テンドン256だよ」
「……天丼?」
「こうやってねえ、コントローラーをっ、振り回してっ、遊ぶんだよぉぉぉぉぉっ!?」
 珍妙な掛け声と共に、中華っぽい演舞を繰り出す妹。
 とうとうおかしくなったか、と胡乱に思っていると。
113「わたあの」第4話 ◆kQUeECQccM :2007/10/09(火) 23:39:02 ID:6BCM0mAZ
「…おお! 懐かしいなっ! テンドン256か! どこで手に入れた?」
 やたらハイテンションな父登場。どうやら親世代だとメジャーなアイテムらしい。
「友達に借してもらったの」
「ずいぶん物持ちのいいウチもあったもんだなー…。親御さんのか?」
「ううん、こういう古いゲームを集めるのが趣味なんだって。他にも色々あったよ。ギガドライブとか」
「渋ッ! いやー渋いなあ。あの時期はなー。
 普通はぴーえす4かバツバコテンエイティかテンドンか、の三択でなあ…」
 父、やたらと歓喜。
「実際にやってみせてよ」
 ちょっと気になってきた私は、杏樹を促す。
「それがね、ケーブルを繋ぐ所がないっぽいんだよね…」
 ひらひらと杏樹の手元で左右するケーブルの末端を、父が捕まえて目をこらす。
「眼鏡がないとよく見えんが…。これは…D端子か? うわ、大昔の規格だぞ? 最近のテレビには普通ついてないぞ」
「ええええ! そうなの!? あっちのテレビにも見当たらないから、おかしいと思ったんだよね…」
「よくわからないけど、とにかくそのゲーム機はうちのテレビじゃ遊べないってこと?」
 父は無精髭の伸びた顎に手を当てると、
「うーん、変換コネクタか何かあれば…。その、これを貸してくれた友達はどうしてたんだ?」
「電話して聞いてみるよ」
 すかさず、杏樹は“静かに”のジェスチャーをしながら耳元にPDAを押し当てた。
「――あ、やぎっち? わたしー。おはよー。あのね、借りたテンドンなんだけど、
 うちのテレビじゃ繋がらないみたいなんだよねー。…え? 変換? あ、そう。
 え? 今から? 悪いなあ。いいの? わかった。でも、うちの場所わかんないよね?
 うん。じゃあ、駅で待ち合わせしない? 十時にサンカクの像で。あいさー。じゃね。ばいばーい」
 通話を終えた杏樹は満面の笑みで、
「その変換するナントカ、ってやつ貸してくれるって」
「そか。なら、さっさと借りてきて父さんと対戦しよう。車出してやるから」
 父さん、喜びすぎ。
114「わたあの」第4話 ◆kQUeECQccM :2007/10/09(火) 23:40:05 ID:6BCM0mAZ

 意気揚々と出かけていったのに、何故か帰ってきた父の顔色はあまりすぐれず、
 そのテンドンとやらに目もくれずに書斎に引きこもってしまった。
 そんなことを気にも留めず、テレビの前で踊り狂う妹。
 結局、修羅場中の楓かあさんが怒鳴り込んでくるまで、杏樹の乱痴気騒ぎは続いたのであった。
115 ◆kQUeECQccM :2007/10/09(火) 23:43:34 ID:6BCM0mAZ
前作の続編という扱いですがあくまで主役は子供世代のつもりナノですーナノですーナノですー。
百合は多分ありません。
前作がどぎつい修羅場んばばんでしたが、今回はライトめだと思いますが予定は未定です。
116名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 23:45:05 ID:7Ep/PCbG
リアルタイム投下いえい!
未だにほのぼのしてるがさてこの先どうなるのか期待してまってますです
117名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 00:23:14 ID:NyGkW0Az
……ここは、修羅場スレだったんじゃないのか。
118名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 00:42:09 ID:CvoBxL60
対象は父なのか新キャラなのか気になる…
119 ◆SVNDcoHudE :2007/10/10(水) 00:48:17 ID:BPimwkaA
投下します
120秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/10(水) 00:49:07 ID:BPimwkaA
「村田さんはどうよ?あの巨乳はすばらしいの一言につきるよな!」
「村田さんは3組の元バスケ部エース、木村君と付き合ってますね」
「ぐっ…じゃあ戸田さんはどうだ?同い年なのに大人っぽくておねえさまってかんじだよな!」
「戸田さんはうちのクラスの村上君と付き合ってますね」
「なに!あのいけ好かない悪ぶったすまし面野郎のなにがいいんだ!?」
「ちょっと悪っぽい方がこの年頃はもてるんですよ」
「ぐぐっ…じゃあ緑山は!?あのスポーツ大好き美少女が彼氏なんて作るはずが……」
「緑山さんは元野球部キャプテンの香川君と…」
「だぁぁぁあ!もういい!」
飯田が大声で武の解説をさえぎる。
「なんだ?みんな彼氏持ちじゃねえか!どうなってんだ!お前の情報、まちがってるだろ!」
武がむっとしたようにメガネを光らせる。
「失礼な!ちゃんと裏もとってあります!大体可愛い子っていうのは狙ったときには彼氏がいるものですよ。」
それを聞いてがっくりと肩を落とした飯田がうなだれながらつぶやく。
「じゃあ…じゃあ三浦さんは?」
「三浦さんは……いないですね。去年付き合っていた先輩とも別れましたし。」
それを聞いた途端、飯田が気持ちの悪い笑顔を浮かべながら笑い始める。
「ふふふ……はははは!!やっぱ最後に勝つのはこの俺だな!見てろ!お前達とは違う次元へ俺は行く!」
それを見た武が呆れたように肩をすくめる。
「……なんでもいいですけど、飯田君が三浦さんと付き合える確率ははっきり言って0%ですよ」

そりゃ、そうだよな。
121秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/10(水) 00:50:01 ID:BPimwkaA
この時期の体育の授業はいままでのようなカリキュラムに則ったものではなく、個人個人が自由にできる、いわば休み時間だ。
やる気のある森本や高田みたいなやつは校庭でサッカーをしたりソフトボールをしたりし、やる気のないやつは僕らのように体育館に集まる。
体育館に集まるのは女子が各クラス合同でバスケやバレーをしているからだ。
飯田のようなスケベはこの期を逃すまいと女子のデータ集めにやっきになっている。

「おい、山下。興味ないなぁなんて顔してんじゃねえよ。お前だって彼女ほしいだろ」
「…………」
「おいこら!」
飯田が僕に詰め寄ってくるが、あえて無視する。こんなとこでいやらしい眼で女子を見ることが彼女獲得に繋がるわけない。
女子達はそれぞれ声を掛け合いながら、意外と楽しそうにスポーツを楽しんでいる。
やっぱ緑山さんすごいなぁ……なんて思いながら、美希を探す。
「美希!」
「オッケ!」
美希が軽い足取りでポンポンっとリズムよくゴールに向かい、そのままレイアップシュートを決める。
「ナイス美希!」
「さっすが!」
チームメイトたちに賞賛されながら美希はコートの中を走りまわっていた。
セミロングの髪をポニーテールに纏め上げている美希は、なんだか別人に見える。
「お、武!あの子はどうよ?」
「えーっと……」
飯田と武の声に反応し、二人の目線の先を追う。
コートの外で試合を眺めている数名の女子の中にその子はいた。
眼鏡をかけた知的な可愛らしい顔と、黒いショートカットのその子は退屈そうに試合をながめていた。
「彼女は庄田秋穂。彼氏は…いませんね。」
122秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/10(水) 00:51:05 ID:BPimwkaA
庄田秋穂…そういえば彼女も僕と美希とずっと同じクラスだ。
たしか一年のとき生徒会の一員で、美希とも仲がよかったような気がする。
僕もそれなりに仲がよかったんだけど……。
今は二人がまともに話しているところをみたことがない。僕も学年が上がってからほとんど話をしなくなった。
地味系のグループに属する彼女が今の美希と仲良くなるって方が難しいのかもしれないけれど……。
でもなんだろう…美希と庄田さんにはもっと深い溝みたいなものがあるような気がする。なにかあったのかな?
「ていうか自分のクラスの女子でしょう?名前も知らないとは呆れかえりますね。」
武が本当にあきれ返ったかのように軽蔑のまなざしで飯田を睨む。
「ははは……ま、まあこれを期に仲良くなればいいじゃん!よし!彼女に決めた!俺はやるぞ!」
飯田がまた叫びだす。こいつ、ほんとは女子だったら誰でもいいんじゃないだろうか。

体育が終わり、皆の着替えが終わるともうあとは寝るだけの6限があるだけだ。
この日は自習だったので配られたプリントをやりもせず、みんな受験勉強をしたり、おしゃべりをしたりそれぞれの時間をすごしていた。
僕は相変わらず参考書を開き、飯田いわく無駄な努力を必死に続けていた。
「いいなぁ…あいつら」
なにをするでもなく、机にただ寝そべりながら飯田がつぶやく。
その視線の先では美希や戸田さん達のグループとクラスの中心である山田、鳩山達と高田のグループが談笑を続けていた。
「いいなぁ…俺も混ざりたいなぁ。なんで美少女はイケメンとなかよくするのに俺達とはしてくれないの?ねえ!答えてよ要ちゃん!」
飯田が僕の肩に手を乗せ、ゆさぶってくる。
「うるさいなぁ…じゃあまざってくればいいだろ。お前ならうまくやれるよ。」
「俺が行っても山田達の引き立て役になるだけなの!はぁ…あんな顔に生まれたかった…」
飯田は肩を落としまた机に寝そべる。
僕からみれば飯田も十分いいやつだし、おもしろいし、結構もてるとおもうんだけどなぁ…現実は厳しい。
123秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/10(水) 00:52:15 ID:BPimwkaA
美希達と山田達はたしかにお似合いってかんじだ。合コンなんていったらちょうどよくカップルができるんじゃないだろうか。
高田もあの中に混ざってると僕らと全然ちがうタイプの人間だってよくわかる。
ああいうのが漫画の主人公になるやつらなんだろうな。
しばらく様子を見ていると、山田がなにか面白いことでも言ったのか美希のまぶしい笑顔が覗き見えた。
僕以外に美希が笑顔を見せる。美希が山田や高田とじゃれあう。

心が、痛い。苦しい。潰れそうになる。

僕がおもわず目線をそらすと、その先に庄田さんが一人で本を読んでいるのが見えた。
なんとなく彼女が気になった僕は彼女を観察してみることにした。
姿勢を正してただ一心に本を読み込んでいる。周りにはだれもいない。
だいたい彼女はいつも一人でいるし、友達と一緒にいたとしても全然目立たない。
静かに、そこに「いる」だけだ。
でも昔の彼女はもっと活発で、明るい目立つ子だったように思う。
いつからだったか…彼女が美希と行動を分かつようになってから、彼女は変わったような気がする。
やっぱりなにかあったんだろう……僕が計り知れないような何かが。

「なに?要はああいう子が好みなの?」
いつのまにか現れ、僕の肩に手を乗せた高田が興味津々な様子で尋ねてくる。
「うわ!びっくりするだろ!急にこっちくるなよ」
高田はそんな僕の言葉になんの反応もしめさず、続ける。
「ま〜結構かわいいよねぇ。あんま目立つような子でもないし。ていうか要とお似合いかもね」
そんな高田の言葉になぜか顔が赤くなっていくのがわかる。
「な…!ばか!なに言って…」
「そうだ!庄田さんは俺が最初に狙ってたんだぞ!」
飯田が急に起き上がり、高田に詰め寄る。
「いいか高田!お前に俺の恋路を邪魔する権利はない!今すぐここを立ち去れ!」
高田はヘラヘラと笑いながら少しずつ僕らから離れていく。
「はいはい〜まあがんばってよ。元祖モテ王君!」
「あっ!おい!てめえ!そのあだ名で呼ぶなっつったろ!待てこら!」
僕を置いてけぼりにして、飯田と高田のおにごっこがいつものように始まった。
124秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/10(水) 00:53:26 ID:BPimwkaA
――夜の暗い教室でいつもの行為が行われる。

「ねえ…今日秋穂のほうばっかみてたでしょ。」
美希が鋭いまなざしで僕を問い詰める。
「み…見てないよ」
そのまなざしが無性に怖くて思わず眼をそらす。
「嘘言ったってわかるって、前に言ったよね?それでもまだ嘘つくんだぁ。」
美希が左手で僕のモノをなでながら怒りのこもった声で言う。
「高田君にお似合いだ、なんて言われて顔真っ赤にしてたでしょ。全部わかってるんだから。」
「な…なら美希だって、山田たちと楽しそうに話してたじゃないか。」
僕の頬を舐めまわしながら美希が心底うれしそうに笑う。
「ふふ…嫉妬しちゃったの?だから私はいいって言ってるんだよ。みんなに私たちのことばれても。」
「それは、だめだよ…」
美希は僕と違う世界の人間だから。
「はぁ…要が私のモノだって皆に言ってやりたいよ。そうすれば私のまわりも大分きれいになるのに。」
「え…?どういうこと?」
元の小悪魔っぽい眼に戻り、僕を見下ろしながら美希がささやく。
「さぁ?…ようするに要の知らないことがまだまだいっぱいあるってこと、かな。」
そのまま僕の唇に自分の唇を重ねる。
「んっ……私は約束守ってるんだから要も約束守ってよね。それが恋人でしょ?」
「んんっ……うん。ごめん。もうしないよ…」
美希との約束。美希と隠れて付き合うかわりに美希以外の女の子と仲良くしたり、見惚れたりしないって約束。
簡単なことだと思ってたけど、結構きつい。…そうだ、庄田さんとなにがあったのか聞いてみようかな。
「んっ…ちゅっ」
美希の貪るようなキスがまだ続いている。
…………いいやまた今度で。
125秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/10(水) 00:54:35 ID:BPimwkaA
――今日もあのふたりは教室でセックスしてる。
山下君は乗り気じゃなかったみたいだけど、三浦が誘った。
理由はわかってる。私にみせつけるためだ。
私がここで覗いてることに、あの女は気づいてる。
私がいつも妄想の中でしかできていないことを、あの女は現実で行っている。
悔しい…なんであそこにいるのが私じゃないの……
二人のいやらしい声が私の耳に響いてくる。
聞きたくない!でもここで眼をそらしたら三浦に負けたことになる…
歯を食いしばりながら二人の行為を見続ける。
なんで……なんであの女が……なんで!

彼に再三警告を送っているのに彼はそのことを誰にも言わない。
それどころかどんどんあの女に傾いていってしまっている。
このままじゃだめだ。もっと、直接的に彼に伝えないと。

行為の終わった二人をいつものように見送った後、私はこれからのことを考える。
そういえば今日はひとつ、いいことがあった。
彼が私を意識していたことが、クラスの連中にしれたのだ。
あの時は高田君に賛辞を送ってあげたかったし、山下君の赤くなった顔も見れてすごくうれしかった。
それにあの時の三浦の顔といったら……!

希望が見えてきた。これからはもっと積極的に行ってみよう。
見えてきた確かな光を目印に、私は夜の街を歩き始めた。
126 ◆SVNDcoHudE :2007/10/10(水) 00:55:54 ID:BPimwkaA
終わりです。秋穂をさっさと出したかったのでさらっと書きました。
感想レスありがとうございます。
これから要くんの嫉妬もちょこちょこ出てきてそうですが気にしないでください。
>>114
次回に期待してます!杏樹かわいいよ杏樹
127名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 01:30:16 ID:k/SmWuID
めっちゃGJです!!
秋穂は名前からしてこの作品のメインヒロインかな?
とりあえず美希の方も黒い所がチラホラ見えるので続きに期待です!!
128名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 03:41:28 ID:JsFMc/DM
阿修羅氏更新乙です
129名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 04:14:21 ID:T7s5w1tP
秋穂かわいいよ秋穂
次回も期待してます、Gj!!
130名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 09:42:39 ID:KFzJIB4S
>>115
和む……父さんの様子がおかしいのはフラグか……
>>117
落ち着け。
『軽い修羅場』って意味だろ。
>>125
執筆ペース速す
男の嫉妬は良い調味料、続きwktk
131名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 11:08:44 ID:n4HB0pKI
保管庫更新されてる

乙です
132名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 11:10:09 ID:pqngHKbZ
神の投下を待って、前スレを必死にリロードしていた俺を笑ってくれ
133名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 12:19:04 ID:v4jgiZWJ
>>132
おまえは何スレか前の俺か
とりあえずあざ笑ってやるwwwwwwww
134名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 12:34:32 ID:ZJZcqYJl
アハッ、だから何度も言ってるじゃん、いくら連絡しても無駄だって。
挨拶も無しに失踪なんてどう考えても、君捨てられちゃったんだよ。
それにさ、今の君には立派な彼女のボクがいるじゃないか。
ボクの人生の五分の一を君にささげてるのに、まーだあんなビッチに未練があるの?
…うんっ、うんっ!そうだよね「いなくなった」人のことは忘れて、残りの人生楽しく生きなくっちゃね!
…そして「埋まる」時は一緒にねッ…
135名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 14:43:29 ID:bqa6jTR7
修羅場サウンドノベルを作ってみました
とはいえNScripterの超初心者である私が出来たことは
文字をタグ打ち出来る程度であり、
音楽や画像や演出は行っていません。
画面は常に真っ暗です。

誰か有能な人に後を任せます

収録作品
山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM
ノン・トロッポ ◆zIIME6i97I

以上です。

後は任せたw

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org5858.zip.html
パス yashu
136名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 18:21:20 ID:aZ4sEg8f
>>135

サウンドノベルをうpした神はこれで何人目だ? 
137名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 19:04:05 ID:jEtGMHnV
サウンドでもビジュアルでもないノベルだけどなとりあえず乙w
音楽と背景をつけてくれる誰かを期待して待つとするか
138名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 20:30:28 ID:b6TNVgfQ
さすがに修羅場スレのSSで背景と音楽と演出は難しいと思うぞ
別にNScripterの超初心者じゃなくても、演出は少し熟練度がいるんじゃないの?
139名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 23:07:34 ID:v4jgiZWJ
>>135
とりあえず乙

サウンドノベルもいいが山本くんとお姉さんの3話はまだかい?
140名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 01:27:21 ID:tmBps23d
>>135
やる気なさすぎだろw
141 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:36:58 ID:iE62740J
連日ですが、投下します。
142秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:38:02 ID:iE62740J
きれいな秋の星空の下、二人で並んで夜の街の中をゆったり歩く。
でも今日僕の隣にいるのは美希じゃない、背の低い丸い男だ。
「ごめんね…方向違うのに一緒に帰ってもらっちゃって」
申し訳なさそうに森本が言う。
「いいって。なんで森本があやまるんだよ。MOMOちゃんが怖いのは僕もよくわかるからさ。」
――そう、よくわかる。だって今も僕の後ろに誰かがついてきてるのを、感じるから。

最近、森本へのMOMOちゃんのストーカー行為が激しくなってきているらしい。
毎日のように登下校中の森本のあとをついてまわり、家に帰った後も外から監視されているのがわかるらしいのだ。
おまけに手紙は届くわ、変なものが玄関ポストにいれられているわ、いつのまにか部屋の中が片付いてるわで大変らしい。
このままじゃやばいと思った森本が、僕らに助けを求めるのも自然なことだ。
とりあえず僕は何日か森本と一緒に帰ることにした。男が隣にいるとMOMOちゃんはつけてこないんだそうだ。
飯田も「だから警察いけって言ってんだよ。ホント甘いやつだなぁ。」なんて言いながらも僕らについてこようとしたんだけど、
校門の前で別の学校の制服を着たある女子に見つかって、それができなくなってしまった。
「お兄ちゃん、遅いよ!夕飯の買い物間に合わなくなるでしょ!」
「うっ!理沙、悪いんだけど今日はひとりで……」
「い〜いからっ!早く!」
飯田がブラコン気味な妹の理沙ちゃんに引きずられながら僕らに向かってなにごとか叫ぶ。
「おまえら!ちゃんと後ろ確認しながら帰るんだぞ!それともしものときのために武器を……」
飯田の声があっという間に小さくなる。気づけば飯田の姿はまるで見えなくなっていた。
……飯田に彼女ができないのって理沙ちゃんも関係しているような気が、僕にはする。
143秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:39:21 ID:iE62740J
このところ毎夜美希と逢い、一緒に帰ったあとはただ帰って寝るだけの生活が続いていた僕にとってこれはいい機会だ。
このままじゃやばい。優秀な美希と違って僕は人より何倍も勉強しなくちゃあの大学には入れない。
おまけに例の事件で内申書の内容は決していいものじゃなくなってるだろうし。
せっかくジムに行くのもやめてるのに美希とこんな生活続けてたら絶対間に合わない。
美希にこのことを話しても「私が教えてあげるよ」なんて言いながら結局ヤっちゃてるだけだし……
実のところ森本には感謝してる。それに…これなら例のストーカーが僕だけ標的にしてるのか、確かめることもできる。
「そういえば山下君はいつもなんで一人で帰ってるの?予備校にでも行ってるの?」
森本が帰り道に買ったたい焼きをほおばりながら僕に尋ねてくる。
「えーっと…そうそう!補習を受けてるんだよ。」
僕もたい焼きをかじりながらなんとか答える。
「ふ〜ん…。どの先生の補習?僕も受けたいな。」
「あ…あ〜っと、森本には必要ないだろ?大学行かないんだし。」
森本は進路先は確かアニメ製作の専門学校だ。
「そうだけど……」
「ま、まあいいじゃん。それより、MOMOちゃんは着いてきてないよね?」
ビクッと肩を震わせながら森本がゆっくり後ろを覗き見る。
「う、うん……たぶんだいじょうぶ…男の子が隣にいればついてこないはず……だから」
森本の油ののった丸い顔が恐怖で引きつっているのが分かる。
「だいじょうぶだって!いざとなったら僕が……」
「ぼ、暴力はダメだよ。相手は女の人なんだし。」
森本のこういうとこは優しさなのか、それとも甘いというべきなのか……
迷惑をかけたくないからかなるべく僕らに頼らないようにしていた森本がここまでになるんだから、
僕らには言えない様な被害を、他にも受けているんじゃないだろうか。
2つ目のたい焼きをぱくつく森本の手が、震えているように見えた。
144秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:40:45 ID:iE62740J
僕のほうのストーカーはというと、特に変化したところは全くない。
例のメールは届くし、足音も聞こえるけど、それだけ。
直接的になにかやってくることはない。今も帰宅するサラリーマンや学生の群れにまぎれて聞きづらいけれど、
いつもの足音が僕の後ろで響いているのがわかる。でもそれだけだ。
周りに被害が及ぶこともしないし、MOMOちゃんみたいなことをするわけでもない。
僕らが付き合ってることをなんで知ってるのかわからないけど、それを周りにバラすわけでもない。
ただついてくる。で、駅に着くとその足音はピタッと止む。どうやら駅の中までくることはないようだ。
そのまま電車に乗り、電車の中で森本と最近発売されたゲームのことについて話しながら森本の住む町の駅に着くのを待つ。
「じゃあ、ここで。わざわざどうもありがとう。」
森本が玄関先で手を振りながら感謝の言葉を述べる。
「ん、なにもなくてよかったね。また明日。」
僕も手を振り、きた道を戻ろうと振り返る。そのとき、電柱の影にサッと誰かが隠れるのが見えた。
「ま……まさか」
ゆっくりと電柱に近づき気づかれないように影の中を覗き見る。
背の低いパッと見では大人と分からない、黒い長いストレートの女性が真っ黒なゴスロリ服を着て佇んでいる。
間違いない、MOMOちゃんだ。僕らが見たときと服装が違うがあの異様に長いストレートヘアはMOMOちゃんで間違いない。
MOMOちゃんは僕に見られていることに気づいているのかじっとそこから動かない。
「あ、あの……すいません。森本君に何か用ですか…?」
勇気を振り絞ってMOMOちゃんに話しかけてみる。正直めちゃくちゃ怖い。
「………………」
「あの……」
MOMOちゃんはまるで動かない。表情も影に隠れて全然見えない。
「す、すいません…」
「…………」
なぜか謝ってしまった。ごめん森本、僕には無理だ。
「それじゃ…失礼します。」
ごめん、ほんとにごめん森本。

「待って。」
145秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:41:52 ID:iE62740J
やけにはっきりとした、可憐な声が僕の耳に届く。
「あなた、つけられてるわよ。女の子に。」
MOMOちゃんの声だ。こんなかわいい声だったのか。いや、年上にむかってそれはないか。
そんなことより……なんだって?女の子?
「メガネをかけたショートカットの大人しそうな女の子。駅に入るまでだったけどあなたをつけてたわ。」
MOMOちゃんが電柱の影に隠れたまま言う。
「目的は私と違うけれど理由は同じね。あなたのことが好きなんでしょう。」
「へ…?なんでそんなこと……」
「わかるのよ。同類だから。」
影に隠れて見えないのにMOMOちゃんが心なしか笑っているように感じる。怖い。
「気をつけてね。義男ちゃんと違ってあなた他に彼女がいるみたいだし。」
よ、義男ちゃんって……ていうかなんで僕に彼女がいること知ってるんだ?
「な、なんで教えてくれるんですか…?」
「義男ちゃんがあなたのこと好きみたいだから。もちろん友達としてね。義男ちゃんには私っていう妻がいるし。」
クスクスとMOMOちゃんが笑う。今度は笑っているのがはっきりとわかる。
「ほんとは同類としてあの子を応援してあげたいんだけど…まあこれはサービスね。後はあなたが自由にして。」
「は…はぁ……ありがとうござい、ます」
「義男ちゃんを巻き込まないでね。あの人、人に頼まれると断れないたちだから。このまえだって……」
「そ、それじゃ失礼します!」
森本の話を嬉々としてはじめたMOMOちゃんを置いて全速力でその場を立ち去る。
妻とか言ってたな…まさかそこまでイッてるとは。
それよりも……メガネでショートカットの女の子?う〜む…
なんでかしらないけど、庄田秋穂の顔が頭の中に浮かんだ。
146秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:43:57 ID:iE62740J
電車に乗り、見慣れた一軒家のまえに着くまでさっきのMOMOちゃんの言葉が僕の頭の中で反復されていた。
つけられてる……大人しそうな女の子…メガネ…ショートカット。
何度考えても庄田秋穂の顔が浮かぶ。他にもいっぱいいるだろうに、なぜか彼女だけ。
「う〜ん……」
そのまま家の鍵を開け、2階に上り、ベッドの上に横になる。
まだ美希の匂いがするベッドの上で僕は別の女の子のことを考える。
もしかして庄田さんが僕を……?なんで…?いや庄田さんと決まったわけじゃ……
もやもやした嫌な感じが頭の中を満たしていく。
「そうだ……メールだ。」
ブレザーのポケットから携帯電話を取り出す。受信メールボックスを開き、そこから迷惑メールフォルダを開く。
念のためにストーカーからのメールはこうやって保存してある。それが役に立つときがきたようだ。
意味のわからないローマ字の組み合わさったアドレスを保存し、送信メールボックスを開く。
なんて送るか……前にあなたは誰ですか、なんてメールを送っても返信すらこなかったからなぁ。
よし!ここは思い切って……
「もしかして、庄田さん?」
……これでいってみるか。でも違ったら庄田さんに迷惑かかるんじゃないのか?そうだよ。違ってたら…
悩む僕の頭に聞きなれたベルの音が響いてくる。
「お〜い。帰ったよ〜。要、いるんでしょ〜?」
姉さんだ。そういえば今日は早番だった。
「は〜い!今開けるよ」
携帯をほっぽりだし部屋を出て、階段を降り、玄関の鍵を開ける。
両手に買い物袋をさげた姉さんがいそいそと滑り込むように家の中に入ってくる。
「いや〜買いすぎちゃった。重い重い!こんなことならあんたに手伝ってもらえばよかったかな。」
苦笑しながら姉さんが靴を脱ぐ。……よかった、森本を見送りに行っておいて。
147秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:45:12 ID:iE62740J
「あれぇ?今日は美希ちゃん来てないの?」
鍋の肉をものすごいスピードで自分の皿に入れながら姉さんが尋ねてくる。
「そんな毎日家にくるわけないでしょ。受験生なんだし。」
僕も負けじと肉を取る。クソ、なんてスピードだ。
「ちぇ、今日はあの可愛い顔を拝めないのか。あんたの顔眺めて食べるより、おいしいご飯になるのにねぇ」
「実の弟に向かってそういうこというなよな……」
姉さんは僕の言葉など気にせず鍋に箸をのばしつづける。
「そろそろちゃんと勉強しないとまずいからさ。自重しようかなって。」
それを聞いた姉さんが食べていた肉を思いっきり吹き出す。
「うわっ!きたなっ!」
「ぶっ…げほ、げほ……ごめん〜だってあんたがあまりにも面白いこというもんだからさぁ」
くくくっと嫌な笑いを浮かべる姉さん。
「あんだけ毎日ヤリにヤリまくってんのに今更勉強とか……ふふふ。」
「うっ…ま、まだ全然間に合うだろ。」
姉さんがふふんっと鼻をならし、バカにしたように笑う。
「無理だって。元々美希ちゃんとあんたじゃ月とスッポンなんだし。あきらめてもっと下の大学ねらいな。」
「飯田みたいなこというね…姉さんには弟を信じてあげようって気持ちがないの?」
「あるわよ。だから心配してんの。」
箸をおき、急に真剣な顔になった姉さんが僕の眼をまっすぐみつめる。
「あんた、美希ちゃんと同じ大学だからあの大学入りたいんでしょ?」
「そ…そうだよ。別にいいだろ。」
こういうときの姉さんはほんとに真剣だから、苦手だ。
「よくかんがえなさい。身の丈に合わない大学入って、続くと思う?授業、ついていけると思う?」
「…………」
「美希ちゃんと一緒に行きたいってのはわかるけど、美希ちゃんとあんたがずっと同じ気持ちでいられるって保障はないのよ。」
「それってどういう……」
「聞きなさい」
姉さんが僕の言葉をさえぎる。僕は黙るしかない。
148秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:46:43 ID:iE62740J
「人の心はね、変わっていくものなの。あんたは父さんと母さんみてるからわかってるでしょう?」
「…………」
「大学に行けばいろんな出会いがあるわ。社会に出ればもっとね。今の環境がすべてじゃない。
そんな中で二人の気持ちがずっと繋がってられるって、あんた言える?」
「…………」
「美希ちゃんが違う男を好きになるかもしれない、もちろんあんたが努力すればそういうことはないかもしれないけど、
人の気持ちは一定じゃないの。それはあんたにも言えることよ、要。」
僕が?美希以外と?美希が僕以外と?
山田達と笑う美希の顔が頭に浮かぶ。先輩と美希が付き合っていた時のあの気持ちが再び湧いてくる。
「二人の未来はまだ一緒じゃないのよ。あんたはあんたの人生を生きなきゃいけない。もっとよく考えて。」
「…………」
僕の未来……美希の未来……
あの箱庭から旅立つとき、僕らの世界は少しは重なっているんだろうか?
今はまだ、わからない。

結局メールは送れなかった。あの後美希から電話がかかってきてそれでうやむやになってしまった。
姉さんに言われたこととMOMOちゃんに言われたことが心の中にヘドロみたいにへばりついたまま、今日も学校へ向かう。
飯田たちとあいさつを交わし、なんとなく落ち込んだ気分のまま無意味な授業を受ける。
教科書の下に隠した参考書をぼーっと眺めているとマナーモードのままの携帯電話が振動しはじめた。
携帯の液晶画面には「美希」と表示されている。メールだ。カチカチッと手馴れた操作で受信メールを開く。
「今日夜、教室でね」
短い、それだけの文。でもいつもの合図だ。今日は森本がなぜか一緒に帰るのを断ったからいけるんだけど……
姉さんの言葉がまた頭の中に浮かんでくる。「二人の未来はまだ一緒じゃないのよ――」
「うん。OK」
それでも、今だけは……
149秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:48:04 ID:iE62740J
校舎から人がいなくなり、先生達が職員室に引っ込むまで僕は図書室で時間を潰す。
そういえば一年前、美希に告白したのもここでだった。
相変わらず人がほとんど来ない、ボロイところだ。でも新刊だけはすぐ入荷するんだよなぁ。
この場所で秋の夕暮れの中、美希が僕に微笑んでくれた。
あの笑顔を、これからもずっと見ていたい……

秋は夜の暗闇の訪れが本当に早い。これから冬にはいればもっと早くなるだろう。
陽が完全に落ちると僕は図書室を出、人の気配がまばらになった校舎の中を3階の教室を目指して歩きだす。
階段を登りきった先、僕らの教室から光が漏れている。
もしかして美希がもういるのかな?でも電気をつけるなんてまずいような……
警戒しながら教室のドアに手をかける。そこには見知った明るい少女の姿はなく、
静かに、庄田美希が自分の席に座りなにかノートのようなものにペンを走らせていた。
ドアを開いた音に気づいたのか、庄田さんがゆっくりと僕に視線を向ける。
「…………」
「あっ…えっと……」
庄田さんが口を開く
「私、今日週番だから。まだ日誌、終わってなくって。」
静かな表情のまま庄田さんは続ける。
「心配しないで。もうすぐ終わるから。邪魔はしないわ。」
「えっ?じゃ、邪魔って?」
「セックスの。今日もするんでしょ?美希と。」
え……?
150秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:49:21 ID:iE62740J
胸の鼓動が激しくなってくる。額に汗がにじんでいくのがわかる。
「え……?み、三浦さんがどうかしたの?僕は忘れ物を取りにきただけで…」
庄田さんはそんな僕の言葉を鼻で笑う。
「三浦さんって…いつもみたいに美希って呼べばいいのに。だいじょぶだよ、私以外知らないから。」
えっ……なんで??まさかずっと…?
「しょ、庄田さんあの…」
そんな僕の言葉をさえぎるように教室のドアがすごい勢いで開かれる。
「ごめん!おまたせっ!おそくなっちゃっ……た…。」
息を切らせて教室に入ってきた美希が心底驚いたように庄田さんを見つめる。庄田さんはそんな美希の視線にも静かに答える。
「遅かったね、美希」
「な…なんで……秋穂……」
庄田さんは何も言わず、日誌と鞄を持つとそのままドアに手をかける。
「庄田さん!あのっ!」
「……山下君、聞きたいことあるならここでじゃなくてメール頂戴。アドレス知ってるでしょ?」
そのままドアを開けゆっくり、僕らを振り返りながら教室を出る。
「それじゃ、ごゆっくり。」
庄田さんの手で、静かにドアが閉められる……。

「ねえなんで?なんで秋穂がいるわけ!?アドレスってなに!?秋穂となに話してたの!?」
美希が困惑の表情をうかべながら僕に問い詰めてくる。そんなの……
「わかんない……わかんないよ…。」
アドレス……ショートカット…メガネ…大人しそう…足音……メール……
いつから知ってたんだろう?いつから……見てたんだろう。


その時、僕と美希の未来が、僕達の世界が、僕達の関係が、壊れていくのがなんとなく、わかった…
151秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:50:38 ID:iE62740J
――きれいな秋の星空を見渡しながら、私はゆったり夜の街を歩く。
今日は気分がいい。こんな日は久しぶりだ。
百桃お姉さんのおかげかな。最初年上だってわからなかったけど。
「自分の気持ちは自分で伝えなきゃ」か……
たしかにそうだ。やっぱりメールで伝えるより全然効果があった。
今度お礼の電話しないと。あと森本君の隠し撮り写真もプレゼントしないとなぁ。

しかし美希はともかく山下君のあの驚きようはすごかった。
再三メールで伝えてるんだからあそこまで驚くことないだろうに。
どうせばらされないんだろうから、なんてたかくくってたんだろうな。甘いよ山下君。
美希は気にしてないけどあなたは周りの人間の評価をすごい気にするタイプだよね。
自分が問題児だって思ってるし、美希と世界が違うとも思ってる。
美希と全然違う考えしてる。そのこと気づいてるのかな?
私と同じタイプ……そういう意味じゃ確かに美希と違う世界の人間。

ねえ、美希…あなたと要君は違う人間なんだよ。そろそろそのことに気づいたら?

スカートのポケットの中で携帯電話が震える。液晶の表示は「山下要」。
受信メールボックスをすばやく開き、メールの内容を確認する。

「さっきの話、くわしくきかせてもらっていいかな?」

……美希、今度は前とは違うよ。次は私が奪ってあげる。
でも安心して。奪うのは要君だけ。別にいいよね?あなたには戸田さん達も山田君達もいるでしょ?
要君だけ…もらうわ。

「いいよ。じゃあ何から話そうか?」
152秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/11(木) 02:53:15 ID:iE62740J
終わりです。さっそく誤字が見つかってしまいました・・・
MOMOちゃんのイメージは>>109さんからもらいました。ありがとうございます。
153名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 04:02:46 ID:ZriQU78l
GJと言わせてくれ
154名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 05:37:47 ID:CsYq/EUu
>>152
GJ!
美希と秋穂の過去に一体何があったのかも気になるところだな。
155名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 07:05:36 ID:2Tm2iIXy
>>152
GJ!MOMOちゃんが想像よりいい人そうだな
156名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 14:09:03 ID:FOhJOGuO
飯田君も修羅場ってたりするのかね
157名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 14:21:46 ID:05wS0lnT
MOMOちゃんいいな…
158名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 15:20:23 ID:7IJ/i51t
>>152
お疲れ様、次も楽しみにしているぜ。
>>155
「ブラコン妹」「ストーカー」「気の弱い男」……
うん、リーチ掛かってるね!
159名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 17:13:12 ID:GTdhz2rj
リーチっていうかビンゴ
160名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 17:31:03 ID:+rcWjjr9
姉がいつも修羅場に絡んでると妄想してる俺が来ましたよ。

>>152
連日GJですね!次も期待してます
161名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 18:58:59 ID:h8q2bbVC
>>135
どうせなら、自分が作った作品としてYOU売ってしまいなYo!!
162名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 20:45:50 ID:Yc6+iusP
それはマズイマズイw
163名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 21:11:29 ID:54ojg85K
投下ラッシュwwwwテラウレシスwwwwwwwwww


おしむらくは雨の音がまだ来ていないことか
164名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 21:43:46 ID:CdvBACrn
前スレのPassion fruitsとかちかち山の続きが気になるお!
165名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 21:47:12 ID:CHyqn6rq
今気付いたが避難所にSS来てたよ
166名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 21:53:03 ID:/gxQJEEk
>>165
お前遅れすぎだろ・・・
皆とっくに読んでるぞ
167名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 21:59:43 ID:JCnADy/e
>>155
よく読むんだ。ストーカー同士で情報交換しているフシがあるぞ
168 ◆SVNDcoHudE :2007/10/12(金) 00:53:42 ID:VwXBfiPy
今日も投下させていただきます。
169秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/12(金) 00:54:42 ID:VwXBfiPy
まさかほんとに庄田さんだったなんて……
でも、どうして?いつから見てたんだろ?美希が関係してるのは間違いないけど、
別れないと不幸になるってどういうことだ?美希となにがあったんだ?
頭の中がぐちゃぐちゃだ。考えがまとまらない。
なんでこんなことに……

結局、あの後美希と僕は何もせずに学校を出た。美希がずっと僕に何か言っていたけど、何言ってたのか覚えてない。
庄田さんがつけてるんじゃないかって、帰ってる途中も気が気でなかったからだ。
美希とわかれたあとも庄田さんのことばかりが頭の中に浮かび続けている。
「アドレスか……」
この意味のわからないアドレスも、庄田さんのものだったなんて…
「メールしろって言ってたな…どうしよう」
何を聞けばいい?なんて送ればいい?聞きたいことがありすぎてどうしたらいいのかわからない。
とにかく、何か送ろう。
「さっきの話、くわしくきかせてもらっていいかな?」
……これでいい、これなら向こうからも返信しやすいはずだ。
数秒と待たないうちに携帯電話が振動がする。すごい速さだ。
「いいよ。じゃあ何から話そうか?」
何から…とりあえずひとつずつだ。
「いつから見てたの?」
「だいぶ前、一学期の始めのころからかな」
「だれかに言った?」
「誰にも言ってないよ」
「なんで僕の後つけてたの?」
「それはまだ言えない」
「美希と別れろって、どうして?」
「それも言えない」
「美希となにがあったの?」
「それもまだ言えない」
……これじゃらちがあかない
170秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/12(金) 00:55:56 ID:VwXBfiPy
「明日、ちゃんと話をしましょう。これからのことについてもね」
それっきり、庄田さんからのメールは途切れてしまった。


今日も飯田は武を連れて、いやらしい眼で体育館の女子達を眺めている。
昨日はあんまり眠れなかった。ちゃんと話をするって言っておいて庄田さんからは何のコンタクトもない。
コートの外で退屈そうにしている庄田さんを盗み見る。どうしたらいいんだ、僕は。
「やっぱり要は庄田さんが好きなんだ?」
めずらしく体育館に来た高田が話しかけてきた。いつもは鳩山達とサッカーをしてるはずだ。
「そうじゃないよ…」
「でもさっきからずっと庄田さん気にしてるじゃん。それって気があるんじゃないの?」
高田は人の心の動きに敏感なやつだ。だからもてるんだろうけど。
「別に……高田こそなんでここにいるんだよ。サッカーは?」
「今日はゆっくりしたい気分なんだ。別にいいだろ?」
高田はさっきからずっとコートの中の女子達を見つめている。
女子達も高田を意識しているのか、やたら張り切ってるように見える。
「高田はいいね……自由でさ」
ほんと、うらやましい。僕のように周りを気にせず、自分のしたいようにやる。好きなように生きる。
高田はすごいやつだ。
「そういえばさ、要は三浦さんのことどう思う?」
「え?」
突然の質問に、思わず隣に座る高田の顔を見てしまう。高田の視線は女子達の方に固定されている。
「可愛いよね。明るいし、前向きだし。」
「……ああ、そうだ、ね…」
高田?お前……
「いいよね、三浦さん。」
「………………」
高田の視線が、コートの中を走り回る美希に固定されているのがようやく、わかった。
171秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/12(金) 00:57:06 ID:VwXBfiPy
なんでかしらないけど、今日も体育の後の6限は自習だった。
飯田は相変わらずぶつくさ言いながらうらやましそうに戸田さん達と山田達を見ている。
僕も高田が気になって自然と視線がそっちに向かってしまう。
美希や戸田さん達と話す高田の顔はなんだかすごく嬉しそうに見える。
高田は…もしかして美希のことが……
美希と高田。なんか絵になってる。飄々としたかっこいい高田と明るい、悪戯好きな可愛い美希。
「くっ……」
いつのまにか拳を痛いほど握り締めている僕がいた。何嫉妬してるんだ僕は。
自分で付き合ってること隠そうって言っておきながらこれか……ほんと美希と釣り合ってないな。
自己嫌悪に陥っている僕の耳に、急に静かな声が届く。
「山下君、ちょっといいかな?」
「えっ?あ…」
いつのまにか、メガネをかけたショートカットの女の子が僕の机の前に立っていた。
「ちょっといい?話、したいんだけど。」
静かな表情で僕の眼をじっと見つめている。
「あ…ああ、うん。いいよ。」
その表情につられて僕もやけに冷静に返事をしてしまった。
「しょ、しょしょしょ庄田さん!?!?なんで山下なの??俺じゃないの??」
突然現れた庄田さんを見て呆然としていた飯田が、急に大声で叫びだす。その瞬間教室中の視線が一斉に僕らに集まる。
「うん。山下君に用があるの。ちょっと借りてもいいかな?」
「そ、そんな……どうして俺じゃないんだ…なんで……」
大きくうなだれる飯田。庄田さんは表情を変えず、僕に向き直る。
「じゃあ、ちょっとついてきて。」
そう言うと僕の手を引いて教室のドアに手をかける。
「ちょ、ちょっと!」
「だいじょうぶ、どうせ先生が見回りに来ても誰も私たちのこと気にしないから。」
そういって僕の手を引いて庄田さんが廊下に出る。
教室を出た僕の後ろで、静まり返っていた教室の中が次第に騒がしくなっていく……
172秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/12(金) 00:58:29 ID:VwXBfiPy
中庭に出た僕らは、そこでようやく対等に向き合う。こうやって庄田さんと話すのは本当に久しぶりだ。
向き合った庄田さんの全身像は昔とほとんどかわっていない。
程よく短いスカートに、綺麗に着こなした制服、知的さを感じさせるメガネとその奥から見える透き通った瞳。
黒くて綺麗な流れるような髪で作られたショートヘアは今の彼女のイメージにぴったりだ。
顔の形も結構整っていて、美希たちのグループに入っててもおかしくないような人だ。
でも、全然そんなそぶりはない。むしろ対極に位置する存在として、彼女はうちのクラスにいる。その理由がもうすぐわかる。
「ごめんなさい。いきなりあんなことしちゃって……」
申し訳なさそうに庄田さんが俯く。…いや悪いのは僕もだ。
「僕のほうこそ、ごめん。なんかタイミングがつかめなくて…」
「そうだね、私もすごいドキドキしちゃってなかなか言い出せなかったの。ごめんね。」
顔を上げ、庄田さんが照れたような笑いを見せる。なんか、かわいいな……
「え、えっと…じゃあ話してもらえるかな?メールのこと、いままでのこと…」
内にめばえた感情をごまかすように、本題に入る。
「うん……そうだね。」
庄田さんが真剣な、それでいて静かな表情に戻る。
ここはとにかく僕の疑問をぶつけてみることにする。
「別れないと不幸になるってどういうこと?なんでそれが庄田さんにわかるの?」
「……それは…まだ言えないの。ほんとに。ごめんなさい。」
「美希となにかあったんでしょ?教えて欲しい」
「ごめんなさい……それもまだ言えない。でもいずれ必ず教えるわ」
「……ほんとに、ずっと僕らを見てたんだね…?」
「…………うん。でも、誰にも言ってないわ。まだ、ね。」
それは本当だろう。事実、周りにはばれてない。でも、まだってことは…これからはありえるってことだ。
「なんで、僕の後をつけてたの?美希のため?でも僕だけつけてる日もあったよね?どうして?」
「それは…………んと…美希のこともあるけど……その……えっと」
庄田さんがまた俯いてしまう。なんだかモジモジしてるように見える。顔が少し赤いような気もする。
ん……?この反応はまさか……
173秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/12(金) 00:59:51 ID:VwXBfiPy
――目的は私と違うけれど理由は同じね。あなたのことが好きなんでしょう。
MOMOちゃんの言葉が頭に浮かぶ。僕の顔も赤くなっていくのがわかる。
「あ…いや、あの、い、今のはやっぱなしで!」
あわてて質問内容を変える。
「ええっと…これからのことっていうのについて話してほしいんだけど……」
庄田さんが俯いた顔をあげる。まだ少し頬に赤みがかかっている。
「うん………バラしてほしくないよね?美希とのこと…」
……やっぱりこれか。なんとなく予想はしてたけど。
「…うん。僕はなにをすればいいの?」
意を決して自分から尋ねてみる。
「…………………私と友達になって。」
庄田さんが真剣な表情で答える。って…え?
「え?えっと…もう一回言ってもらえるかな?」
「……だから、私と友達になって。」
庄田さんはほんとに真剣な表情だ。いや、恥ずかしがってるようにも見える。
「あ……あーっと…………」
「…………ダメかな?」
庄田さんが首をかしげながら僕の顔を覗き込んでくる。ううっ…
「い、いいよ………僕でよければ、喜んで。」
「ほんと!?ありがとう!」
パッと花が咲いたような笑顔が庄田さんの顔に広がる。その瞬間、胸の鼓動が一気に高鳴った。
「で、でもそんなことでいいの?他になにかあるんじゃ……」
「いいの。今はそれで、十分だよ」
今はってとこが気になる。けど、そんなことより胸の鼓動が止まらない。なんでだ?
「じゃあ……よろしくね。山下要君。」
「あ……こ、こちらこそ、庄田秋穂さん。」
差し出された右手を、まだドキドキしている胸の鼓動を押さえながら右手で握る。
正田さん手は冷たかったけれど、僕の心はなぜかとても暖かくなっていっているのが、わかった
174秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/12(金) 01:01:24 ID:VwXBfiPy
――――うん、今のところ計画通りだ。
教室に戻った私たちを見て、みんなヒソヒソと内緒話をしはじめる。でも私たち本人に話しかけてくるやつはだれもいなかった。
まあ私たちが付き合っていようが、なにしてようが彼らにとってはほんとはどうでもいいんだろう。
ただ一時、注目の的になった私たちの話題を仲間内であれやこれやとする。それだけだ。
私と仲のいい由梨絵達や、山下君と仲のいい飯田君達は当然のように話を聞きにくるけど。
私が適当に由梨絵達の相手をしていると、飯田君がすごい勢いで山下君に突っかかってるのが見えた。
「山下ぁ!てめえ!そういう関係なら最初からそう言えよ!期待させるだけさせやがって!このバカ!バカバカ!」
「ち、ちがうってば!お前の考えているような関係じゃないよ!」
二人が争っているところに森本君や本間君も加わり、結構な騒ぎになってる。あーあ。
……そういえばさっきからずっと私を睨んでるヤツも私の話を聞きたいんじゃないかな?ねえ?美希?
「ちょ、ちょっと美希!どうしたの!?あんた今すごい顔してたよ?」
「えっ!……あ、なんでもないよ。はははっ………」
戸田に指摘され、慌てて取り繕うとする美希。だめだ、このままじゃ笑いがこらえきれない。
ふふふ………そんなんじゃあこれから持たないよ?
由梨絵達に事情を話し、鞄を持って山下君の席に向かう。
「山下君、一緒に帰らない?」
飯田君と取っ組み合っていた山下君が私を見上げる。私と目が合った瞬間、顔が赤くなったのがわかる。
「あ、えっと……うん…」
ちらちらと美希の方を見ながら赤くなった顔で答える山下君。かわいいなぁ。

美希………これからだよ…これから卒業までに、山下君を私の色で染めていってあげる。
山下君が私のことしか考えられなくなるようにしてあげる……
それがあなたへの罰。私を捨てた、裏切ったあなたへの罰。
ま、山下君がいなくなったくらいじゃあなたの心はくじけないと思うけど。それでもいい。
山下君を手に入れて、あなたに少しでもこの苦しみの味を知ってもらう。

それが、私の望みなんだから。
175 ◆SVNDcoHudE :2007/10/12(金) 01:03:19 ID:VwXBfiPy
終わりです。SSって書いてみると楽しいんですね。妄想がとまりません。モブキャラの設定まで沸いてきます。
職人さんの投下までの暇つぶしとして楽しんでくだされば幸いです。
あとみなさんのおかげでMOMOちゃんで一本お話が作れそうです。ありがとうございます。
176名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 01:06:41 ID:xMbDRHt+
リアル投下に遭遇してしまった・・・いいですね、最高です。暇つぶしなんてとんでもない。GJ!!!!
177名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 01:26:15 ID:Gj+4/XoJ
>>175
GJ!!
秋穂は策士だな。
>あとみなさんのおかげでMOMOちゃんで一本お話が作れそうです。
そんな事言ったら期待しちゃうぜ?
178名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 01:27:53 ID:NE97otdG
GJ!!
とても面白い、後は秋穂の目的が
恋か復讐かその両方か、今から先が楽しみです。
179名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 02:22:57 ID:Ma8HFbay
百合か?百合なのか?
しかし美希の嫉妬は萌えるな。
『隠さなきゃ駄目なのに漏れちゃう嫉妬』大好き。
GJ
180名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 10:37:59 ID:Tg0O5ivg
色んなフラグが立ちすぎててもーなにがなにやら
どいつもこいつも一筋縄では行きそうにない奴らばっかだ
181名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 16:13:52 ID:P/Ns9k4p
学園屈指の美少女が彼を横取りされて嫉妬するのは最高なんだぜ
182名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 16:36:26 ID:E+mgf65g
庄田が要を狙うの理由が要への愛情じゃないのがちょっと残念。
183名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 16:43:08 ID:1X3+tdz3
俺もそれは感じたがまだわからんぞ。
ということで次回も期待してます、Gj!!
184名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 16:51:26 ID:ucoyWHPG
その通りだな。手段と目的が逆転していくのは復讐寝取りの常套なんだぜ。

ともあれGJ!今晩も期待してバイトにいくとするか。
185名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 21:30:57 ID:9iiwwRGo
どの作品か言わないけど登場人物を広げすぎちゃった作品は必ずと言って良いほど
完結せずに作者放置が始まるよな。
186名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 21:56:59 ID:eL7kFknV
納得せざるを得ない
187名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 23:08:40 ID:Mu7mWEcn
なんでわざわざ空気が悪くなるような物言いをするのか。
そして何故黙っていられないのか。
188 :2007/10/12(金) 23:18:48 ID:HqUI/ACu
いつもの日本語お化け(笑)だからだろ
189名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 23:32:23 ID:7NHeG1ax
>>185
桜荘にようこそはキャラクターの数が多くて
作者は自滅しているけどなw 完結しないだろw
どの作品か言わないけど
190名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 23:45:54 ID:7tJawlog
スルー検定3級試験です
191名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 23:49:51 ID:7NHeG1ax
投稿するのはいいんだけど、作者は投下しても3日坊主で飽きるのが
早いだろ? まとめの半分以上は完結もしてないじゃん

阿修羅様は10話以上連載していない作品はちょっと分別してくれ
192名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 00:08:59 ID:phvcplIo
>191
長期の停止から続きがちゃんと投下されるケースもある、
勝手な思い込みでの判断は禁物。

個人的には現在の管理人さんのやり方はベストだと思ってる。
193名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 00:33:12 ID:86ZUmIk8
>>191
転帰予報とかの例もあるだろう。
さすがにそれは早計すぎる。
194名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 00:41:57 ID:J2rRph7j
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             |         ー     l
               l,              /
               \          _,,/
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↓↓日本一簡単なシナリオコンテスト↓↓
 
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/iga/1192036731/l50



195 ◆kQUeECQccM :2007/10/13(土) 01:19:49 ID:iYQL74lx
釈明とか全部こっちで。
http://wataano.blog122.fc2.com/
スレ汚してごめんなさい。そして後の身の振り方は後で考えます。
196名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 01:35:15 ID:Qwenmp1v
ブログ持ちの作家さんはいつでも発表できる場を持つと安心して
更新を止めるからな


どのブログも停滞中ですね
197名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 01:41:20 ID:k8Su8RuU
ありゃりゃ。本当はヤキモチもこっちの範疇なんだけどなあ。
まぁ、それはともかく。このスレの黎明期よりお世話になって感謝してます、ありがとうございました。
198名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 06:27:48 ID:Z1slXJF2
最近、夜が冷えるようになってきた.
全裸で正座しているとこたえる。



長剣、包丁など、8人の付喪神が王子の夜伽の権利をかけ
闘技場で毎日トーナメント戦を繰り広げるという夢を見た。

だからどうしたと言われてもこまるのだが・・・・




攻城兵器の怪物姉萌え。
まさに傾城の美姫。

緑猫先生、カムバック!!!
199名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 07:03:08 ID:6rChEspv
考え直しちゃくれまいか?
ここは猟奇スレではないし、刃傷沙汰ばかり求めてもないっす。
インフレしてばっかじゃ終期のDBになっちまいます。
>>198
またお前か。
つ【毛布】
身体、大事にしろよ。
>>196
逆に言えば、スレに投下する作家にゃそれだけ重圧が掛かってるんじゃね?
200名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 08:14:26 ID:Xj/WBrGR
部屋のCDラックから『カローラII』のCMソングが出てきたが、時が経つと見方が変わる不思議

覚えてるヤシいるかな?
201名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 08:23:09 ID:Z1slXJF2
>>199
>つ【毛布】
>身体、大事にしろよ。

ありがとう,ありがとう・・・
人の情けが身に染みるのぅ・・・

大事に使わせて・・・・
いや、待つ身としては、ここはあくまでも
全裸で心意気を見せるべきに違いない。

お気遣いだけ、ありがたく受け取っておくよ・・・
202 ◆SVNDcoHudE :2007/10/13(土) 11:22:24 ID:e1Lr+EHJ
微妙な空気ですが、投下させていただきます
203秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/13(土) 11:23:17 ID:e1Lr+EHJ
――――なんでよ…要………どうして………
要はさっきからずっと黙ったままだ。私の質問に全然答えようとしない。
「ねえ?なんで何も教えてくれないわけ?秋穂と何話してたの?なんで一緒に帰っちゃったのよ!?」
「……だからそれは、その……」
ベッドに腰掛け、うな垂れている要。
「ごめん、言えない。でも信じてほしいんだ!別にやましいこととかはなにも……」
「十分やましい行動だよ、これは!」
私の言葉に、要はまたうな垂れる。こういう要の態度は時々見ててイライラする。
「こんなことなら……もう約束守る必要ないよね。言うね、皆に。私達が付き合ってること。」
「え!そ、それはだめだよ!」
「先に約束破ったのは要だよ!?そんな事言えるの!?」
「うっ………!そうだけど……」
また要が黙る。ほんとにもう………

昨日要が秋穂と一緒に帰った後、私はとにかく要に事情を聞こうと電話やメールを送り続けた。
なのに要はそれを全部無視し、あろうことか今日約束していた「勉強会」まで蹴ろうとした。
なんで??理由もわからないのにそんなこと、許せるわけない。
だから今日、要が家にいるだろう頃合を見計らい、直接事情を聞くためにここまで来たのだ。
夕方家を出て、電車に乗り、見知った道を歩いているとあっという間に要の家の前に着いた。
何度か要の家のチャイムを押し続けていると、少し眠そうな顔をした桜お姉さんが家から出てきた。
「あらぁ〜美希ちゃんじゃない。ひさしぶりぃ〜。」
「こんばんわ。桜さん」
「ん〜と、要なら今いないから、あがって待っとく?」
「はい、ありがとうございます。お邪魔します。」
笑顔を作って桜さんに答える。ちゃんと細かく点数稼ぎはしておかないといけないからね。
桜さんに案内され、リビングに通される。
「ごめんねぇ〜私これから病院いかなきゃいけないの。今日は遅くなるから、夜までゆっくりしてっててね」
「あ、はい!頑張ってください!」
桜さんが微笑みながら荷物を持って家のドアを開ける。
「あいつ最近がんばってるからさ。しっかりケツ叩いてやってよ」
「まかせてください。しっかり、要君のめんどうはみさせていただきますから」
手を振りながら桜さんが駐車場へと向かっていくのを見送る。
………ふう、これで邪魔者はいなくなった。
204秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/13(土) 11:24:31 ID:e1Lr+EHJ
玄関のドアを閉めると、すぐそばに位置する2階への階段を登り始める。
登った先、奥に繋がる廊下の左から2番目のドアの前で立ち止まる。
ゆっくりドアノブを回し、少しずつドアを開いていく。
相変わらず質素な部屋だ。机、ベッド、テレビ、本棚、ゲーム機、パソコン、クローゼット…
小さなサンドバックとグローブが置いてあるが、他は特に同年代の男子達と変わらない、普通の部屋。
だけど、ここは要の匂いで満たされている。とても安心できる匂いで、満たされている。
「ふう………」
いつものようにベッドに腰掛ける。ギシッと木のきしむ音が聞こえる。
要がいつも寝ている、そして私が時々寝てもいる古いベッド。
この下にエッチなDVDやら本が隠してあることを知ってるけど、あえて何も言ってない。言ったって無駄だし。
このままここで眠ってしまいたい……要、驚くだろうなぁ。で、そのまま二人で………
…ってだめだ!今日はそんなことシにきたんじゃない!秋穂の事、ちゃんと話してもらわなきゃ!
緩んだ頬を引き締め、要が帰ってくるのを待つ。ガチャッと玄関のドアの開く音がする。来た。
「ただいま〜。姉さん。まだ家にいるの〜?」
要がまず洗面所に向かい、続いてリビングに向かっていく足音が聞こえる。
桜さんがいないことを確認したのか、2階への階段を登ってくる。
「鍵開けたままでかけるなよな〜泥棒が入ったらどうす………うっ!」
部屋のドアを開けた要がかたまる。
「み、美希…なんで……」
「なんでって、今日約束してたでしょ。「勉強会」の。」
私の言葉を聞いて要の表情が引きつる。
「あ、そうだったっけ〜?忘れてたよ〜はははは………」
「しらじらしい…電話もメールも無視しといて、よくそんなこと言えるね。」
「………………ごめんなさい。」
要が素直に頭を下げる。だったら始めからやるな!全く!
205秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/13(土) 11:25:33 ID:e1Lr+EHJ
で、今のこのありさまだ。これじゃほんとにらちがあかない。
「じゃ、月曜に皆に言うからね。それでいいよね?」
それを聞いた要が私に懇願する。
「そ、それは……」
「だったら約束守ってよ!秋穂ともう二度としゃべらないで!目も合わせないで!」
そうだよ!私はちゃんと約束守ってるのに……要が好きだから、守ってるのに………
「……ねえ…庄田さんとなにがあったの?」
………………………
「要には……関係ない。」
「関係あるよ!だって、僕、庄田さんにストーカーみたいなことされてたんだよ!?」
「………………」
「美希、知ってたんだろ?だから学校であんなこと……」
「……うるさい。」
「ねえ、美希!」
「うるさい!」
私の叫び声にビクッと要の身体が震える。
「み、美希…」
「要には関係ないよ!どうでもいいことなの!」
そうだ……どうでもいいことだ。昔のこと。もう、関係ない。秋穂の事なんてどうでもいい。
「とにかく、約束守って……私もちゃんと守るから……」
「………………………」
今の要の話でやっぱり秋穂がなにかやってることがわかった。
秋穂……私たちのこと、覗くことしかできなかったくせに。要の後をつけることしかできなかったくせに。
なんで今なのよ!?もうすぐあんたともお別れだって思ってたのに………

静まり返った要の部屋で、私たちは黙り込んだままになってしまった。
206秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/13(土) 11:27:22 ID:e1Lr+EHJ
結局「勉強会」はまるではかどらず、要に抱いてもらう気分にもなれないまま、月曜の朝をむかえてしまった。
トーストをかじりながら、今日一日の事について考える。
秋穂に話しかけてみようか…いやでも、涼子達がついてきたら厄介だ。とにかく要の行動に注意しなきゃ。
私が悩んでいると、2つ年下の妹の舞が牛乳を持って心配そうに話しかけてきた。
「お姉ちゃん、だいじょぶ?具合でも悪いの?」
「…ん、ううん。だいじょぶよ。ありがとう。」
舞はいい子だ。気配り上手だし、人の心の動きにも敏感だ。そういうところ、うちのクラスの高田君に似ている。
「あんまり無理しないでね?お姉ちゃんなら絶対あの大学受かるよ!」
舞が小さくガッツポーズを作って私を応援してくれる。
「ふふっありがと。」
こういう天然っぽいところがこの子のモテる秘訣なのかな。計算じゃないって保障はないんだけどね。

舞と玄関先で別れ、私はいつもの通学電車に乗る。この方向の電車は朝だというのに空いているから好きだ。
そういえば……高田君か。なんか最近やたら私に絡んでくるような気がする。気のせいかな?
そんなことを考えていると、途中に停車した駅でなんと高田君が乗ってきた。
「あ、三浦さんじゃん。偶然だね。」
私を見つけた高田君が薄く微笑みながら声をかけてくる。
「おはよう高田君。今日ははやいんだね。」
「たまにはね。朝の日差しをゆっくり浴びたいんだよ。」
高田君が眩しそうに窓の外の景色を眺める。高田君の横顔はどこかのモデルじゃないかってくらい整っている。
こんなに綺麗な顔してるのに、高田君には彼女がいるって噂をまるで聞かない。
「ん?なに?俺の顔になんかついてる?」
私の視線に気づいた高田君が尋ねてくる。
「ん〜。別になんでもなーい。」
「なんだよ〜気になるなぁ」
高田君がまた視線を窓の外に戻す。…まあ彼女が作らないのには、何か理由があるんだろう。
私もつられて窓の外に視線を這わせる。綺麗な景色だ。
私たちは無言のまま、学校の駅に着くまで、お互いに外の景色に見とれていた。
207秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/13(土) 11:28:31 ID:e1Lr+EHJ
高田君とふたりで並んで駅の改札を出ると、そこはもう制服を来た生徒達でごった返していた。
「あ、美希!」
「ちぃ〜っす!」
うちのクラスの村田涼子と違うクラスだけど私たちと仲のいい緑川美穂が声をかけてくる。
「おはよう〜ふたりとも。」
「おはよー。…ってうん?高田君?」
涼子が驚いた表情で私の横にいる高田君を見つめる。
「やあ。おはようふたりとも。」
高田君が静かに微笑む。
「お、おはよう、高田君…」
少し顔を赤らめながら高田君にあいさつをする美穂。…あんた彼氏いるでしょ。
「あれぇ〜?美希ぃ。あんたまさかついに…」
涼子がクスクス笑いながら私をつついてくる。
「えっ?なに?なによ?」
「とぼけちゃってまぁ…いいけどさぁ。ふふふ…」
涼子が高田君と私の間に滑り込むように入ってくる。
「お似合いよ。あんた達。」
ポンポンと私たちの背中を叩く。
「ちょっと!涼子!」
「あははっ照れない照れない」
全く…涼子は事あるごとに私と高田君をそういう関係にしようとする。
少しは高田君の気持ちも考えるべきだろうに。
…あれ?……なんかさっきから美穂に睨まれているような………
「おーっ!お前ら今日早いなぁ」
やけに陽気な声が学生達の群れの中から聞こえてくる。山田君と鳩山君だ。
「おはよ〜あれ?村上君は?」
「あいつ今日はさぼりだってさ。ま、もう授業なんてどうでもいいしな」
「あ〜!そういえば麻希も今日休むって言ってた。あいつらふたりして寝てるな〜」
涼子がニヤニヤしながら言う。村上君と戸田麻希は付き合ってる。でもあんまり知ってる人はいない。
大人っぽくてお嬢様な麻希と不良っぽい村上君が付き合ってるなんて思ってる人ほとんどいないだろう。

まあ私と要が付き合ってるって知ってる人間の方が絶対少ないけど。
208秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/13(土) 11:29:34 ID:e1Lr+EHJ
その少ない人間のひとり、庄田秋穂は今日も一人で登校してくる…そう、思ってた。
だけど今日教室に入ってきた秋穂の隣には、信じられないような人が立っていた。
要だ……一昨日あれだけ言ったのに今日も秋穂と仲良くしゃべっている。しかも一緒に登校してる…
「あら?あの二人ほんとにつきあってんのか?」
山田君が興味津々な様子で言う。
「ん〜?どうでもいいじゃん。山下と庄田のことなんて。」
涼子が心底どうでもよさそうな顔で、ふたりをちらっと見る。

なんで……?なんで、私がしたくてしょうがないことを秋穂が要としてるわけ?
私だって要と一緒に登校したい。一緒に話しながらあの通学路を歩きたい。
なんで彼女の私が禁止されてることを、秋穂がしてるの?
ドス黒い、怒りと悲しみの感情が私の心を満たしていく。秋穂…あんたは………

朝礼が終わり、授業が開始されても、黒い感情はまだ心の中を漂っている。
休み時間に秋穂が要に話しかけるたび、その感情が増幅していってるのがわかる。
どうして…?要も要だよ、私、ちゃんと言ったよね?約束守ってって。それなのに…
要が秋穂と笑う、飯田君や森本君と楽しそうにしゃべる、本間君と問題を解きあう…
いつも感じている胸の痛みが今日は何倍にも感じる。
要の勉強なら私が見てあげるのに。
要の面白いと思うことなら私のほうがよく知ってるのに。
要の笑顔は私のモノなのに………
「くぅぅぅ…」
もう、だめだ、限界だ。このままじゃ我慢ができなくなる。
でも要に嫌われたくない。どうしたらいいんだろう…

どうしたら、この怒りを静められるんだろう。
209秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/13(土) 11:30:40 ID:e1Lr+EHJ
昼休み、私は思い切って行動することにした。このくらいならだいじょぶのはずだ。
「美希〜お昼………」
「ごめん、先食べてて!」
「ちょ、ちょっとぉ!美希!」
お昼の誘いをしてきた涼子を置いて私は秋穂の元へ向かう。
「庄田さん、ちょっといいかな?」
弁当を持って、恐らく要の元へ行こうとしていた秋穂になるべく穏やかな声で話しかける
「なに…?三浦さん?」
「ちょっと付き合ってもらっていいかな?すぐ終わるから。」
秋穂はしばらく考え込んでいたが、私の眼を見ると首を縦に振った。
「じゃ、中庭にいきましょう」


中庭には結構な数の生徒がお昼を取るために集まっていた。
でもこれなら好都合だ。誰にも私たちが話していることは知られないだろう。
「用件はわかってるよね?」
私の怒りのこもった声のことなどまるで気にしないかのように秋穂は答える。
「わかってる。要君のことでしょ?」
「っ…!要君、なんて呼ばないでくれる!?」
「要君がそう呼んでいいって言ったんだよ?なんなら本人に聞いてみたら?」
クスクスと笑う秋穂。嫌な笑い方だ。
「………まあいいわ。とにかく、今後一切要に近づかないで。」
「…………なんで?」
「わかってるでしょ?私たち付き合ってるのよ!なのに彼女でもないあんたが気安く要に…」
「別に私たち友達として付き合ってるだけよ?あなたも話しかければいいじゃない。「彼女」なんだし。」
興奮気味の私にむかって秋穂はあくまで冷静に答える。
「………できたらやってるわよ。」
「まっ、そうだよねえ?約束してるんだもんねえ?」
はっとなって秋穂の顔を見る。バカにしたような眼で私を見つめる秋穂。
「あんたわかってて……!!」
「ふふっ………」
こいつ………!!!
210秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/13(土) 11:31:47 ID:e1Lr+EHJ
パンッと乾いた音が響き渡る。でもその音も周りの喧騒にまぎれてかき消されてしまう。
秋穂は赤くなった頬を押さえることもせず、じっと私の眼をみつめる。
「な、なによ………」
「変わってないね、ほんと…そういうとこは。」
秋穂がまたバカにしたような笑いを浮かべる。くっ……!
「あき……!」
そのとき、昼休みの終了を告げるチャイムの音が中庭に響いてきた。
「もどらないと、授業始まっちゃうよ?村田さんたちにも怪しまれるし…要君にもね?」
「話はまだ終わってないわ!」
「…また今度にしてくれる?私は逃げたりしないから…」
そう言って私の横を通り過ぎる瞬間、秋穂が静かに耳元でささやいた。
「要君は私がもらうわ。絶対にね。」
「え?」
その声に振り向いたとき、秋穂はもう校舎の中に入ってしまっていた。
「秋穂…」

中庭の中で一人佇む私に、秋の冷たく鋭い風が、吹き付けてきた………
211 ◆SVNDcoHudE :2007/10/13(土) 11:33:39 ID:e1Lr+EHJ
終わりです。やっともうひとりの主人公、美希の視点でお話が書けました。長かった・・美希の気持ちがみなさんに伝わってるか不安です。
当初の構想よりどんどん美希と秋穂が怖い人になっていってます。みなさんのおかげです。ありがとうございます。
>>195
ヤキモチでも全然いいと思ってます。私はこの作品が大好きです。
212名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 11:38:03 ID:QMH4XbTk
>>211
GJ!
213名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 11:53:19 ID:3JkxBp70
>>211
GJっす!!
しかし、過去に美希と秋穂にどんな事があったのか謎ですね・・・
他の脇役も色々行動してるようですし、今後の展開が楽しみです!
214名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 14:04:16 ID:QWvNG4Da
>当初の構想よりどんどん美希と秋穂が怖い人になっていってます。みなさんのおかげです。ありがとうございます。
なんじゃそりゃw とにかくGJ
215名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 15:56:52 ID:/jK3Lfd7
>>193
転帰予報といえば、皆殺しスレと38スレに投下された分更新されてなくない?
216名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 15:57:03 ID:rScofotv
>>211 GJ!
美希が思った以上にマジ惚れで
他の男の事が眼中に無い所が素晴らしい。
217名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 16:11:19 ID:DYiGz+YB
この二人の間に本人を加えてどんな修羅場が展開されるのかとニヤニヤが止まりません
218名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 21:34:14 ID:lr+Zxqzb
駄目だ。 ちっとも展開が読めない。
ひとまず百合展開があるのなら忠告してほしい。
219名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 22:12:05 ID:LkRe2Hvg
いや、百合展開があっても多分過去にあったとかぐらいだろう。
220名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 22:14:26 ID:owERNQ3N
>>211
GJ!!
駄目だ俺が美希に惚れた…
221218:2007/10/13(土) 22:49:46 ID:lr+Zxqzb
んじゃあ百合シーンがあるのなら忠告してほしい。
222名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 23:15:04 ID:Xj/WBrGR
それわかったら読む楽しみ減るような…この場合。
223名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 23:20:14 ID:FRJTN5gV
俺もいって欲しいけどな。
あるなら読まないし。
読まないから文句も言わないし。
224名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 00:16:09 ID:NZDAzLi6
何summer
225名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 00:25:39 ID:ph8pFXus
フラグが絡み合いすぎw
これは次回が楽しみだ
226名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 00:51:48 ID:IPrDp/0r
いやなら読むながスレの基本姿勢なんだから人を選びそうな内容(レイプやNTRや百合みたいなの)には注意書きがほしい
227名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 01:00:32 ID:OCM7BOe1
そろそろ空気を読んで避難所でやれ
228トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/10/14(日) 01:47:34 ID:LQu1Iqk9
では投下致します
229桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/14(日) 01:51:21 ID:LQu1Iqk9
 第18話『争乱の幕開け』

 目が覚めると見慣れない天井をそこにあった。
意識はまだ遠く、頭の回転が鈍いために現状把握もできないまま、今自分がどこに居て、
何をしているのか思い出そうとした時。100円ショップの商品を買い漁るために美耶子や雪菜や朝倉京子を率いて向かっている最中に
マンホールの蓋が開いていて、下水道に繋がる穴に踏み外して転落した時のことを鮮明に覚えていた。

 ケガをしているのだろうか。俺の体のあちこちに包帯が巻かれ、
頭部には何重も重点に巻かれていた。転落した時に頭を強く打ったのか、鈍い痛みを感じる。
どうやら、あの転落で俺の体は重傷を負ったのか?
 消毒臭い匂いと妙に部屋が全体に清潔感がある空間は、ここは病院と言うことなのだろうか。

俺はようやく頭の回転が元通りに動きだすとベットの上に置いてあるナースコールのボタンを押した。
 看護士さんの声が聞こえると深山さんはもう意識が戻っていたんですね。
すぐにそっちへ行きますと告げて、初めてナースコ−ルの通信を終えた。
ふと疑問に思ったのだが、看護婦から看護士と呼称が変わったなら、
ナースコールも呼称を変える必要があるのではないかとどうでもいい事を数秒間考えている間に看護士さんと医者がやってきた。

「大丈夫かね。深山君。君は昨日までやっていた工事現場の呆れたミスのおかげで
マンホールを踏むと自然と落下するという珍しい事故の被害者になったんですよ」
「そ、そうなんですか……」
 その工事を請け負っていた会社に損害賠償で訴えることを視野に入れておくことにしよう。
と、俺は誰も見舞いに来てくれる客がいなかったので、誰か来ているのかと尋ねると……医者はスラリと言った。
「ピーピー鳴くから病院から追い出した。
又は立入禁止になった。
さすがにここは病院であって、ハーレム天国ではないと厳重に抗議しておいた」

「そ、そうですか……」
「今時の若い子は最低限の病院のマナーを知らなくて困る。
特に病院の中で平気で携帯電話をかけている姿を見ると真っ二つに壊したくなる。全く」
「で、俺の容態は……」
「若い子のことを語るとつい話を脱線してしまうな。
深山君。君が転落事故に遭ってから3日も意識がなかったんだ。
転落した時に頭を強く打ってな。大したケガではなかったが、

脳へのダメージが激しかったはよくわからないが、君は死人のように眠り続けていた。
まるで毒リンゴを食べた白雪姫のようだった」

「白雪姫って……微妙な例え方だな」
「7人の女性が見舞いに来る野郎に王子という比喩の表現を使いたくなかっただけだ」
「あんた、本当に医者か?」
 白い髭を生やした威厳のある高齢の医者は修羅場を潜り抜けてきた猛者のような獲物を狩る細い瞳で俺を睨み付けた。

「深山君。明日からは検査検査の日々だ。その検査結果の次第で何事もなかったら、病院を退院することができるだろう。
それまで、裏口試験で受かった私の医師としての神髄を受けることになる。覚悟したまえ」

 と、妙な捨て台詞を残して、看護士を率いて俺の病室を後にした。
「あの人。うちの店長といい勝負かもしれんな」
 珍しく、あの医者に畏怖して、俺はベットに寝転んだ。
230桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/14(日) 01:53:55 ID:LQu1Iqk9
 それから、1時間もしない内にお見舞いの客は訪れた。
今日は休日らしいので桜荘の皆も特に予定が入っていないおかげで病院からの連絡ですぐに駆け付けてきた。
 個人の病室に、更紗、刹那、雪菜、美耶子、安曇さん、奈津子さんらが入るととても狭く感じるのは仕方ない。
ただ、俺の事を心配してくれているのか、目に涙まで浮かべていた。更紗と刹那に至ってはもう泣きだしている。

「うっ……カズちゃんの意識が戻って良かったよ〜」
「ぐすっ……カズ君カズ君」
「皆に心配かけたな」
 と、この場にいる皆に申し訳ないように頭を下げた。マンホールの蓋が開いて、
その底に落ちるという俺の人生でも前代未聞な出来事のせいでいらぬ心配を桜荘の住民にさせてしまったこと。
本当に悪いと思っていた。今度からはちゃんと下を向いて歩こう。

「で、結局、100円ショップの方はどうなったの? 今月は確か給料が貰えなかったはずなんだけど?」
「ごめんなさい。お兄ちゃん。お兄ちゃんの転落事故のおかげで動転してすっかりと忘れてたよ。
本当に大変だったんだよ。急いで、救急車を呼んだり、警察に事情を聞かれたりと」
「そりゃ、大変だったな」

「でもね。朝倉京子さんが狼狽えている私たちに喝を入れて、ちゃんとお兄ちゃんのために病院の入院手続きをやったり、
警察と救急隊員の方とテキパキと対応したり。桜荘の皆に連絡を入れたのも朝倉京子さんのおかげなんだから」

「あの貧乳がそこまでやってくれたのか。後でお礼を言っていた方がいいかもな」
 ライバル店の従業員だから見捨てて、とどめにマンホールの蓋を落としちゃったって感じで
残忍な奴だと思っていたが、少しだけ見直してやるか。

「それに朝倉京子さんは『別にあいつのために頑張ってわけじゃないんだからね』って、
ツンデレ娘のありきたりな事を言ってましたよ。良かったですね。一樹さん。これでフラグが立ちましたよ」
 五月蝿い外野の美耶子が面白おかしく俺をからかってくる。
これも桜荘では見慣れた光景であり、夢の中の彼女とはまるで全然違う。
蔓延なる笑顔の明るさは陰気だった過去の面影さえもない。ただ、余計な一言にちょっとムカつくこともあるが。

「フラグってオイオイ」
「深山さん深山さん。美耶子ちゃんもさっきまでは目を真っ赤にして泣いていたんですよ。
意識が目覚めた途端に天邪鬼さんに戻ちゃってるし」
「あわわっっっ……。真穂さんっっっ!! それは言わないお約束だよっっ!!」
 安曇さんの指摘されると美耶子の頬がトマトのように赤く染まっていた。
恥ずかしがり屋な彼女はどうしても素直になれない部分はあるからこそ、
いつも刺々しい口調で隠そうとしているのはこの1年間の付き合いでわかってきた。

「正にハーレム状態だね。一樹君」
「ここの医者から散々嫌味を言われましたよ。奈津子さん」
「あの医師は私の知り合いでね。一樹君がアルバイトしている東山田店長とは親類だそうだ。
まあ、あの一族とは私の仕事関係上でいろいろと知り合う機会が多いからな」

「どうりで……あのクソ店長と同類な予感がしたわけか」
 てか、一族って……。クソ店長の顔を浮かべると殺意と様々なトラブルの事を思い出すが、
この病院も同じノリで患者を看ているんじゃねぇよな?
 そんな不安を抱いていると病室のドアが勢いよく開いた。

「コラコラ……。君達は病院の立ち入りを禁止したはずだろう。
こんな可愛い女の子達が見舞いにやってくると他の大部屋で入院している男性患者に知られてみろ。
そいつは間違いなく殺されるだろう。
私だって医者という聖職じゃなければ点滴の中に牛乳を入れるのに」

 ダメだ。こいつ。後で殺そう。
231トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/10/14(日) 01:56:11 ID:LQu1Iqk9
以上で投下終了です

そろそろ、修羅場に向けて本格的に加速する予定
232名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 06:19:07 ID:nbGhsNAw
続き待ってたよ!
乙!GJ!!
233名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 12:41:29 ID:4PhdIzSJ
乙。期待してます。
234 ◆SVNDcoHudE :2007/10/14(日) 17:18:14 ID:I8uN+yz1
投下します。
235秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/14(日) 17:19:35 ID:I8uN+yz1
「ねーそれでさぁ……」
「ん〜………」
「ちょっと!美希、聞いてる?」
「ん〜…聞いてる〜」
「聞いてないでしょ、その反応……」
「聞いてるよぉ…木村君の話でしょ?それでどうしたの?」
「うん、それでさぁ……」
毎度のことだけど、涼子との電話は長い。気づいたらそろそろ2時間だ。
いつも内容は色々だけど、最近は木村君に対するグチばっかりだ。まるで倦怠期の夫婦みたい。
「………でさぁ俺は悪くないっ、て言うのよ!信じられる?」
「そうだねー……」
…でもほんとはうらやましい。好きな人のことを他人に自由に話すことができる涼子が。
私がこんな愚痴を言えるのは、桜さんか舞に対してだけだから……
「そういえばさ、あんたの方はどうなのよ?」
「なにが〜?」
「高田君のこと。そろそろはっきりしたら?」
「………あのね、前から散々言ってるけど、高田君とはなんにもないってば!」
「そうかな〜?だってあんた他に男の噂聞かないし〜あんたモテるのにさ。」
「………………………」
「しょーじきに言いなって。……それともまだ良治先輩の事引きずってたりする?」
「………涼子、あのね」
「あーわかったわかった。ごめん!なんでもない。」
「………………」
「えっと……そうそう、美穂のことなんだけどさ。」
……良治か…あんなクズのことはもうどうでもいい。ただの過去だ。……そうだ、過去だ。
なのに過去の象徴のはずである秋穂が最近、私の未来の象徴である要にまとわりついている現実。
認めたくない、現実……
236秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/14(日) 17:20:41 ID:I8uN+yz1
「……ふう、随分話し込んじゃった。そんじゃまた明日ね、美希。」
「ん、またね〜」
携帯電話の通話ボタンを押し、通話を切る。そのまま携帯電話をベッドの上に放り出す。
やれやれ、そろそろほんとにうざったくなってきた。
「ここ」まで来るのには随分かかったけど、もう卒業だし、そろそろ切りたいな……
「はぁ……」
コンコンっと部屋のドアを叩く音がする。
「お姉ちゃん?入ってもいい?」
「ん〜…いいよ。おいで〜」
舞が寝巻き姿のまま、ノートを手に持っていそいそと部屋の中に入ってくる。
「どしたの?」
「うん、ちょっと課題でわかんないとこあって。お姉ちゃんならわかるかなって」
覗き込むように、首をかしげながら私の顔を見つめる舞。…これ、男の子ならイチコロだろうな。
「私より舞のほうが頭いいんだから、聞いても無駄じゃない?」
舞はお嬢様学校に通う、いわゆる才女だ。父も母も随分舞にはお金をかけている。
「意地悪な言い方しないでよお姉ちゃん〜。お姉ちゃんじゃなきゃだめなんだよ〜」
…こうやって人を持ち上げるのも上手だ。絶対将来大物になると思う。腹黒そうだし。
「はいはい、見せてみて。できなくっても文句言わないでよ?」
私がそう言うと、舞は手のひらを合わせ、大げさに喜んだ仕草をし、ノートを机に広げる。
「やったー!さっすがお姉ちゃん。だいじょぶ、お姉ちゃんにわかんないものなんてないって!」
……どういう根拠で言ってんのかな、この子は。
舞の処世術に呆れと尊敬の念を抱きながら、私は舞の勉強を見始めた。

「………だからここはね、be動詞の活用が……」
「あ、そっか。さっすがお姉ちゃん。」
舞が私の説明にいちいち大げさに反応しながら、ノートにペンを走らせる。
そういえば、私が真面目に勉強を教えているのは舞だけなような気がする。
要に教えるときはこういう「勉強」じゃなくてちがう「勉強」になっちゃうからなぁ…
237秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/14(日) 17:21:40 ID:I8uN+yz1
「お姉ちゃん?お姉ちゃんってば!」
舞に呼ばれ、はっとなって頭の中に浮かんだ妄想をかき消す。
あぶないあぶない。ちょっとトリップしそうになってしまった。
「お姉ちゃんどうしたの〜?すごい顔緩んでたよ〜?」
舞がニヤニヤしながら尋ねてくる。
「べ、別になんでもないよ!そ、それより解けたの?この問題」
「ん〜解けたけど、別の疑問が湧いてきちゃった。」
ノートを閉じ、舞が私の正面に位置するように椅子を回す。
「な、なによ?」
探るように舞の眼が私の眼をじっくりと見つめてくる。この眼は苦手だ…
「ふ〜ん……お姉ちゃん、山下さんとなにかあった?」
えっ!?
「んーと…けんかでもしたのかな?で、その反動で今山下さんのこと考えちゃったんでしょ?」
舞がすべて理解したかのような表情になる。ここまで鋭いなんて……
「全部、お見通しってわけね………」
「うんうん。話して御覧なさい。お姉ちゃん。」
得意げに胸を張る舞。うう、仕方ない…
「じゃあ……えっと、なにから話そうかな………」

私は舞に今まであったことを順々に話した。ただ、舞の知らないであろう秋穂との事をごまかしながら。
妹に恋の相談をする姉。これってなんか立場が逆なような気もする。
舞は黙って聞いていたが、私の話がすべて終わるとしばらく考え込んだ後、ゆっくり口を開き始めた。
「前々から思ってたんだけど、そもそもなんでお姉ちゃん山下さんと隠れて付き合ってるの?」
舞が疑問の表情を浮かべながら問いかけてくる。
「えっと…要が言うには私に迷惑かけたくないかららしいけど……」
「お姉ちゃんはそれで納得したの?」
「納得はしてないけど………要がそう言うなら、しょうがないかなって。」
それを聞き、呆れたようにため息をつく舞。
「はぁ…それってさ、もうその時点で対等な恋人じゃないじゃない。お姉ちゃん、それわかってるの?」
「え?だって要はちゃんと私の約束まもってくれてるし……」
238秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/14(日) 17:22:39 ID:I8uN+yz1
「もう守ってないじゃん。実際、そのクラスメイトと仲良くしてるんでしょ?」
確かにそうだ。でも……
「でも、私も約束破ったらきっと要、ほんとに怒るし……」
「それがおかしいって言ってるの!そんなの約束じゃない。ただの一方的な気持ちの押し付けじゃない!」
舞が急に声を荒げて私に詰め寄ってくる。
「いい?お姉ちゃん、このままじゃ山下さんに取ってただの都合のいい女になっちゃうんだよ!?
山下さんの言うことになんの疑問も抱かずにただ従うなんて、それじゃ奴隷と変わんないよ!」
こんなに怒った舞は始めて見た…あまりの迫力に反論すらまともにできない。
「お姉ちゃん。ちゃんと山下さんに言うべきだよ。もうやめてって、約束破らないでって。
それでもやめないんなら、お姉ちゃんも約束守る必要なんてない!皆に言うべきだよ!私たち付き合ってますって。
そうすればその人と仲良くすることだってできないはずだよ。恋人ならね。」
一気まくし立てるように舞が言う。
「ううっ…確かにその通りなんだけど………」
「大体その人と仲良くしてる理由も言わないんでしょ?それってやましい事があるってことだよ。
それでもお姉ちゃんが約束破って怒るんなら、その程度の人ってこと。お姉ちゃんには全然ふさわしくない!」
気がつくと、舞の表情は今まで見たこともないような形相になっていた。怖い…。
「とにかく、ちゃんと山下さんに伝えるんだよ?自分の言葉で、自分がほんとにしてほしいことを」
「……う、うん。わかった。やってみる………」
私のしてほしいこと……私の望み、か。


まだ要の悪口をブツブツ言っている舞を無理やり自分の部屋押しに戻し、ひとり、ベッドの上でこれからの事を考える。
あの日…秋穂と直接話したあの日から、状況は悪くなる一方だった。
要は秋穂と一緒に下校してばかりいるし、そのことに関して言及する勇気が私にはない。
秋穂に話しかけるタイミングも全然つかめない上、要と「逢う」こともまるでなくなってしまった。
ただ、二人の様子を見て怒りと悲しみを一人、募らせる。そんな日々が、気づいたら一週間も続いてしまっていた。
…確かに普通なら舞の言うとおり、私は怒っていいはずだ。約束を破ったのは要が先なんだし。
でも、もしそれで要が私に愛想をつかせたら?私を嫌いになったら?
要がその程度の人間だったって思えばいいって舞は言ってたけど、私は要が「好き」なのだ。そんな簡単に割り切れない。
結局私は昔と変わってない……秋穂の言った通り。臆病で、好きな人に嫌われるのが怖くて後ろ向きな考えしかできない私。
要と仲良くする勇気がなかった幼い頃の私………。結局上っ面だけなんだ。今でも全然成長してない。
239秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/14(日) 17:23:49 ID:I8uN+yz1
「こんなんじゃ、全然要と釣り合ってないよ…」
だからあんな約束したの?私が自分にふさわしくないから…でも私の事好きだって、要は言ってくれたよね?
漠然とした大きな不安が心を蝕む中、意識が少しずつ暗い闇の中に沈んでいく…


―――暗い教室の中で、二人の男女が絡み合っている。
「ふぅ……今日は、どうだった?」
メガネをかけた妖艶な雰囲気をまとった女が、自分に覆いかぶさる男に向かって言う。
「うん、今日もすごい、気持ちよかった……」
そう言うと、男はそのまま再び身体をゆすり始める。
「あっ…まだ、するの?ふふ…いいよ。」
女もそれに答え、男の動きに合わせて腰を動かし始める。
二人の結合部から出る淫らな音が教室中に響き渡る。
「秋穂…秋穂!」
「要…要ぇ!」
互いの名前を呼び合いながら唇を貪りあう男と女。
その時、女の鋭い視線が教室の外でこの行為を覗く、もう一人の女に対して向けられた……


「うあぁぁぁ!!」
気づくとそこは見知った部屋。私が10年以上使っている、私の匂いで満たされた部屋。
「はぁ…なんて夢見てるのよ、私は。」
朝の眩しい日差しがカーテンのかかった窓の外から漏れてくる。今は何時だろう?
枕元においてある目覚まし時計を見る。時計の針は9時10分を回っている。
「やばい!遅刻だ!お母さん!なんで起こしてくれないのよ!」
急いで制服に着替え、朝食も取らずに家を出る。舞はもう家を出た後のようだ。
もう!こんな時間になったのは舞のせいでもあるのに!
240秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/14(日) 17:25:08 ID:I8uN+yz1
急いで自転車に乗り、いつも使っている駅構内に向かう。
改札を通ると丁度電車がくる頃合だった。でもこの時間の電車じゃまず1限開始には間に合わない。
「しょうがないか……ゆっくり行こっと」
人のまばらな電車の中で一人、小さくため息をつく。窓の外の景色をみながら時間を潰す。
相変わらずここから見える景色は綺麗だ。時々見える木々達が葉を散らし、秋の終わりと冬の始まりを告げている。
しばらく外の景色を眺めていると鞄の中にしまった携帯電話が振動している事に気づいた。
恐らく涼子か麻希あたりからの着信だろう。ま、今はどうでもいいことだ。
そのまま外の景色に視線を戻し、要と秋穂の事について考え始める。
……あれは、ただの夢だ。あんなことあるわけがない。だってあそこにいるのは秋穂じゃなくて私のはずだから。
でもなんだろう、昨日から続く焦燥感とこの異様な不安感は…
『篠崎町〜篠崎町〜お出口は右側です』
車掌のアナウンスが電車が目的地に着いたことを知らせる。俯きながら電車を降りる。
…もしかして、要が秋穂に惹かれ始めてることの暗示か?いや予知夢なんて見たことないし、それに…
「あっ!三浦さんじゃん!今日は遅刻?」
いやに明るい声に、俯いていた顔を上げる。まだサラリーマンや学生がポツポツといる改札口に高田君が立っていた。
「おはよ〜高田君。あれ?高田君も遅刻しちゃったの?」
「まぁね。昨日夜中まで勉強してたからさぁ」
眠そうな顔で高田君が言う。
「久々に勉強すると疲れるね。ほんと、これからこんなのが激しくなるかと思うと先がおもいやられるよ」
そういえば、高田君っていつもフラフラしてるっぽいのにすごく成績がいい。隠れて勉強してるのかと思ってたけど…
「三浦さんはなんで?遅刻するなんて珍しいじゃん」
「あ、えっと…私も昨日妹の勉強見てたら遅くなっちゃたんだ。同じだね」
ほんとは他にも色々してたんだけど。
「ふ〜ん…彼氏と電話でもしてたのかと思った」
「はは…彼氏なんていないってば。そういえば、高田君ってどこの大学目指してるんだっけ?」
ごまかすように笑って、話題を変える。
「あ、俺?えっとね……」
「え!それ私と同じ大学じゃない!」
「あれ!?そうなの!!?知らなかったなぁ〜」
高田君が本当に今知ったかのように驚く。う〜ん……いままでそんな話聞いたことなかった
241秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/14(日) 17:26:32 ID:I8uN+yz1
「あーそっかぁ…じゃお互いライバルだな。同じとこを目指す仲間でもあるけどさ。」
高田君が青く晴れ渡った空を見上げながら言う。
「でも三浦さん、頭いいからなぁ。俺じゃまず相手になんないか」
「何言ってんの。いつも私より学年順位、上のくせして」
「はははっ…あれは偶然がただ重なってああなっただけだよ」
「どーだか。偶然があんなに続くものかな〜?」
お互い笑いあいながら、通学路をゆっくり並んで歩く。……なんかいいな、こういうの。
チラッと横に立つ高田君の顔を見る。相変わらず綺麗な顔してるぁ。
私の視線に気づいたのか、高田君も私を見つめる。慌てて視線を前に戻す。
「そ、そういえばさ。高田君って彼女とか、いないの?」
しまった!せっかく話題を変えたのに。
「ん〜…今はいないよ。俺ってなんか長続きしないんだよね」
前を向いたまま高田君が言う。
「なんかさ、違うんだよなぁ…しっくりこないっていうかさ、違う人間だなぁなんて思っちゃうんだよね」
「……??どういうこと?」
「ん〜……なんて言ったらいいのかな。自分でもよくわかんないんだ」
振り返り、寂しそうな笑顔で高田君が私に答える。その瞬間、なぜか胸の鼓動が激しくなったのがわかった。
「パズルのピースがあわないっていうのかな。そんな感じ。とにかく合わないんだ」
「ふ、ふ〜ん……」
「でももうすぐ、そんな感覚ともお別れできそうな気がする」
そう言うと、突然私の手を握り、高田君が学校とは別方向へ向かい始めた。
「ちょ、ちょっと!そっち方向ちがうよ!」
「いいって!どうせ間に合わないんだし、今日はさぼっちゃおうぜ!」
私の手を握りながら、そのまま街に高田君が向かって歩き出す。
私もなぜか反抗する気になれないまま、高田君についていく。胸の鼓動がまだ止まない。
「高田君っ!」
「たまにはいいだろ。こういうのもさ!」

要でない男の子に手を握られながら、私は街に向かう。
気がつけば、要と秋穂の事は私の頭の中からすっかり消えてしまっていた。
242 ◆SVNDcoHudE :2007/10/14(日) 17:28:21 ID:I8uN+yz1
終わりです。小休止ってことで。ここら辺はとんでもなく長くなっちゃったので構成しなおしました。
これじゃ普通の青春ですね。すいません。リア充すぎるぞ高田!コラ!氏ね!って思ってくだされば幸いです。
あとレズとかについてですがあったら事前に言いますので、よろしくおねがいします。
てか誤字おおすぎワロタwもっとよく見直します・・・
243名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 17:29:33 ID:3T1Vssr2
乙!
244名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 17:40:27 ID:fGgEa/R4
ぐっじょぶ( ´ω`)b
245名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 17:55:11 ID:hLETcME3
>>242
ああ、擦れ違いフラグが立ってしまった・・・
この先は知りたくないのに読みたいと言うジレンマ
GJです・・・
246名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 17:55:38 ID:t0rY+bpo
>>242
すごく面白いんですけど、展開的にNTRがあるようだったら先に注意書きしてくれると嬉しいです。
読んでてつらくなるので。
247名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 18:34:10 ID:wcsJ30rf
>>242
GJです
いいねー、この話の主人公にはちとイライラさせられてたんで
個人的にはおもしろい展開になってきたわ
248名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 20:12:15 ID:ZVXcgIMs
GJ!!!
書くペース早くてウラマシス

249名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 22:00:32 ID:i/rP8fIc
>>247
おれは逆で、美希にイライラさせられてるんだけど
同じく面白い展開になってきたと思う。
250名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 22:13:38 ID:hBOdilwT
GJ!!
美希が高田に流れると、主人公は心に痛み感じてももともとつりあってないとか感じてて普通に諦めそう。
秋穂が主人公に〜でも美希に〜でも、修羅場になりそうにないor修羅場から主人公がハズレそうな気が……ある意味幸せ?
まあ、もちろんこのスレでそんな幸運(?)は望めるはずもないだろうけど(笑)
というわけでどんな展開が待ち受けてるのか期待で目が離せません。
251名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 22:55:47 ID:ph8pFXus
ほう・・これは
個人的には全然アリだな。高田×美希
庄田さんが何を思って要に近づいてるのかは知らんがもともとこの二人長続きしないと思った。
俺も美希にイライラしてたしな
252名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 22:59:34 ID:LVVEWldT
ただ、まだ要と美希の馴れ初め……というか、美希の要に対する意識のきっかけが明らかになってないんだよな
253名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 23:58:41 ID:JICu3TeK
要-美希派の俺涙目wwwwwwwwwww
254名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 00:12:54 ID:SfdKfSvA
>>253
俺も涙目
255名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 00:17:38 ID:XSMD4cnf
じゃあ俺も涙目!
256名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 00:23:04 ID:Q3IUDW8+
みんな涙目!
257名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 00:26:25 ID:7TI9K27B
美希派のヤツラは少し落ち着け、

もしかして、この流れだと要も遅刻してるんじゃないか?
そう考えれば修羅場は目の前だ、な?
258名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 00:28:48 ID:CY7B/9zt
作者の自作自演じゃないのか?
259名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 00:39:41 ID:Q3IUDW8+
>>257
男のジェラシーはみっともないぜ

でもみたい!ふしぎ!おやすみ!
260名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 00:42:10 ID:ifI3uEpf
GJ

設定、状況は全然違うけど君が望む永遠を思い出してしまった。あれはゲームもアニメも鬱だった。
高田−美希は全然おk。
261名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 00:56:41 ID:eru55VOd
修羅場があればなんでもいいや
262名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 00:59:03 ID:3Vrffhvo
高田って単なるストーカーだろやってることは。
高田×美希とかきもいこと言ってるやつは死ねばいいよ。
263名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 01:03:40 ID:XSMD4cnf
単に流れにのってみただけのつもりだったんだがなんかすまん
264名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 01:09:24 ID:nBa4W9hI
投下していいよな?
してもいいんだよな?

投下します。
265真相:2007/10/15(月) 01:10:27 ID:nBa4W9hI
虚無感とでも言おう、この異様な虚しさはそうとしか例えられまい。
一度打ちのめされた精神とはなかなか立ち直れるものではない。
引きこもりを罵倒していた頃、言わば数日いや数時間前のことなのだが、それが懐かしく思える。

妹が死んだ。

原因は刺殺、全身数十箇所を滅多刺しにされた、見るに耐えないほどの惨殺だったらしい。
現場を見てない限りなんともいえないが…
見なくて良かったかもしれない。誰が好き好んで妹の惨殺体など見る?
よほどの死体マニアでない限り、願わぬことだ。

容姿、学業、人当たりとまぁ絵に描いたような完璧人間で、誰からも恨まれること無く、
むしろ常に他人の憧れの的、それが俺の妹だった。
それが他殺、その才能故の殺人であるのならば、俺は加害者を一生恨むであろう…
なんていっても、今の俺にはそんな事考える余力など残されてはいない。
ただこのなんともいえない絶望感に打ちひしがれているだけ。
266真相:2007/10/15(月) 01:14:53 ID:nBa4W9hI
暫しの休暇を挟み、いざ学校へ行ってみると、周りから何かささやかれるわ、
友人知人からの第一声は「大丈夫?」やら「残念だったね」やら、
止めてくれ、まだ整理がついていないんだ、応える。
そんな状態で出席した授業など、当然耳に入るはずも無く、
教師は教師で気を使ってんのかなんだか知らんが、俺を指名することも無く、
ぼーっとしていても咎めることすらしなかったりした。

「早瀬君、ちょっといい?」
放課後まで完全無気力人間だった俺は、そのペースを下駄箱まで持ち込んでいたところ、
クラスメイトの神凪綾香に呼び止められた。
「なんだ?」
そっけない返事、まぁ顔が知れた仲だから別段気にすることもないが…
状況が状況だ、こいつにまで同情されたくはない。
「…ちょっと付き合いなさい」
ふぅ、と溜息をつかれたが、いつものようにうるさく咎められることはなかった。
放っておいてほしいんだが…
267真相:2007/10/15(月) 01:16:59 ID:nBa4W9hI
つれてこられたは屋上だが、当然放課後なので人はいない…とゆうか…
「マジメ人間のお前が何故禁止区域に入るかね?」
それ以前に、ここは立ち入り禁止区域なのだ。
風紀委員面したこの風紀委員所属女、ありとあらゆる面で他人、自分に容赦ないはずなのに…
「非常時だからね」
そういって鍵の束をジャラジャラと鳴らし、悪戯っぽく微笑んだ。
「単刀直入に問おう、用件とはなんだ?」
「単刀直入に言うわ、あなたの妹さんの事よ」
またそれか…いや厚意はありがたいんだがね、
「俺としてはまだ自覚したくはないのだがね」
「いい加減現実に目を向けなさい」
厳しく、いやいつも厳しいが、其れを上回るほどの険しい目つきで俺を見据えながら、
厳しく言い放った。
「あなたの妹、麗華さんは亡くなったの、この世にはもういないの」
「止めてくれ…」
最後の朝、「おはよう、兄さん」と微笑みかけてくれた…
「もう、あなたにお弁当を作ってあげる人はいないの!」
「止めてくれ…!」
毎朝、律儀に弁当を手渡してくれた…
「もう、放課後あなたを迎えに来る人はいないの!」
「止めてくれ…!!」
「兄さん」聞こえた先に目をやると、いつもそこには…
「もう、あなたに−」
「止めてくれ!!!」
麗華はもう、いない。
ようやく認識できたのかもしれない、だが同時に襲い掛かってきたのは、
感情の濁流。
決壊した俺の精神は、みっともなく俺に涙を流させた。
自らの肩を抱き、震え、膝を着き、しゃくりあげながら…
「そう…麗華さんはもういない…」
わかってる、分かってるけど…!
「でも…」
「今日から私が、あなたの妹になってあげる」
「え?」
汚れた顔で見上げる
「私が毎朝あなたを起こしに行ってあげる、私が毎日…その…
 麗華さんほど上手じゃないかもしれないけど…お弁当を作ってあげる、
 わたしが毎日、放課後迎えに行ってあげる、だから…」
いつになく柔和な笑みを浮かべる、刹那、震えも涙も、全て治まった。
「もう…迷わないで…ね?」
そう、手を差し伸べられる。
漫画とかによくある、ありきたりなパターンだが、何故だろうか、
暖かいな、切にそう感じながら彼女の手に近づく、
気のせいかな?気のせいだろう、一瞬彼女の手が赤黒く光って見えたが、
俺はその温もりに身を委ねた…。

268名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 01:19:41 ID:nBa4W9hI
投下終了。
即興で書き上げた小ネタですが、
クールダウンにでもお使いくださいまし。
269名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 01:25:52 ID:ovSZXNOU
RTグッジョブ!
あぁ、殺人か…

270名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 01:26:34 ID:ovSZXNOU
ageてしまった…
スマンorz
271名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 01:30:54 ID:PJ+8Ux/q
こどものお時間が放送休止になったので

先生とこどもの嫉妬修羅場関係話をやれば
このスレもストッパーをかけられる可能性はあるんだろうかと
言ってみるテストw
272名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:20:25 ID:aT7qGT+z
ええいッ! 新作もいいけど既存作品の続きはまだか!?
273名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:29:59 ID:1wp0QLIF
妹属性の俺も虚しくなった。
OhMyGodJob!
>>272
追えば追うほど逃げるものなーんだ?
274名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:48:20 ID:O9qkXBjO
強盗
275名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 03:07:28 ID:n2qY5xzi
>>268
ワッフルワッフル!!
276名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 03:13:02 ID:UM+XfBCp
>>274
笑っちゃった。くやしい。
277名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 17:11:43 ID:vBvepkJ+
草待ちwktk
278名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 21:26:55 ID:Evp4iCH4
うがぁ〜うがぁ??
279トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/10/15(月) 23:11:41 ID:7+aYKogC
では投下を致します
280桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/15(月) 23:13:58 ID:7+aYKogC
第19話『消失』
 ヤブ医者の顔面を数回殴った後に病院の方で退院手続きをしてから、病院を後にした。
まあ、検査結果は脳に異常はなかったが、検査検査の度にヤブ医者の嫌がらせをしてくるので、

俺の血圧が200を突破するぐらい頭に血が登りそうになった。
報復手段としてクソ店長と同じように手加減なしのパンチとキックによる滅殺コンボをお見舞いしてやったが、
さすがはクソ店長の血縁者なのだろうか。数秒後にあっさりと復活しやがった。不死身か。このヤブ医者?
 最後にヤブ医者は呪われそうな捨て台詞を言い放った。

「今度来る時は女の子に刺されて運び込まれてくる時かな 」
 問答無用で深山家秘伝の奥義、『零式』をヤブ医者に炸裂した事は言うまでもない。
 
 久々に桜荘に戻ってくるとこの敷地全体が懐かしく思えてしまった。
たった、3日程度ぐらいしか入院してないというのに。
俺は感慨にふけていた。敷地内に入ると桜荘の名物であった桜は枯れていた。
いや、俺が転落事故に遭う頃には完全に桜は枯れていた。

とはいえ。桜が枯れてしまっている風景を寂しさと杞憂を覚えるのは何故だろうか。
あのさくらという桜の木の精の戯言を真に受けているわけではない。
 絶望。
 耳にタコができるまでこの言葉を聞かされていた。
一体、何のために。その言葉の意味を強く印象付ける過去の夢を見せ続けられたのか。

あれは俺の絶望ではなくて、桜荘の住人の絶望。
そう、全てはこれから起きる『絶望』に立ち向かうためではないのか? 
 過去の夢のおかげで思い出したことはいくつかある。

 それは、更紗と刹那を見捨ててしまった飲み会。
その後、二人とも他の男達と一緒に連れて行かれて襲われてしまったのか? 

あの時の記憶は今の俺にはない。
ヤケ酒を飲んで、二人を見捨てた現実から逃避するために必死だった。
だから、次に意識が目覚めた時は俺は自分の家でなぜか裸でベットで寝ていたし。

次の朝は旅立ちの朝だったので二日酔いの頭で故郷から逃げるように離れたために事実把握は全くわからなかった。
いや、更紗と刹那が他の男に抱かれている事自体が俺にとっては知りたくもない現実だった。
 だから、今まで忘れていた。

 桜荘の日常が楽しくて幸せだったから。
 俺は更紗と刹那を傷つけた過去を今まで忘れていたんだ。
 最後の更紗と刹那の助けを訴えている瞳を無視して見捨てたことすらも。
281桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/15(月) 23:16:53 ID:7+aYKogC
 最悪な過去に目を背けて、今ある幸福に酔い痴れていた。
愚かな自分を自分で首を絞めてやりたい気持ちにもなる。

 桜荘の玄関の扉をくぐって、住人事に指定された下駄箱に下靴を置くと自分の部屋に向かった。
気分は最悪だった。
夢の出来事を真面目に考える度に自分の犯した罪を対面する事を意味するのだから当然であろう。
特に忍び足で静かに自分の帰宅を知らせないように廊下を歩いている最中に更紗か刹那のどちらかに会えば、
俺はサスペンスホラーに出てくる殺人鬼がとてつもない凶器を持って、
ニヤリと微笑んでいる姿に悲鳴をあげるぐらい動揺する。絶対に……。

「うわっ!! カズちゃん。帰ってきたんだぁぁ!!」
「jdkoふあいおふあおふあおふあおふあおふぁ!!」
「どうしたの? カズちゃん」
「この時間なら更紗はアルバイト中じゃないのか?」
「カズちゃんが退院する日なんだから。
仕事なんて休んで当たり前でしょう。カレー専門店『オレンジ』の店長さんに頼んで、
今日はオフにしてもらったの。刹那ちゃんは早めに切り上げて、戻ってくるから。
幼馴染だけで退院パーティでもしようかなって」

「そ、そうなんだ……」
「もう、カズちゃんがいない間は私たちがちゃんとお掃除していたから。綺麗だよ。
さあ、一緒に行こうね 」
「そうだね」
 強制的に更紗が俺の腕を掴んで、そのまま部屋まで連行された。

 更紗は俺の腕を離さずにぴったりとくっついて離れようとはしない。その事を数回ぐらい指摘しても、
「カズちゃんは私と腕を組むのは嫌なの?」

 と、目に涙を蓄めながら、上目遣いで見てくるのだ。
さすがに嫌とは言えないので、俺は仕方なく、この状況を受け入れた。

これで刹那が帰ってくるとどんな事態を招いてしまうことやら。
刹那は内気で人見知り激しいが、心を許した相手なら容赦することはない。 
部屋全体は俺が転落した当日以前よりも綺麗になっていた。ちゃんと散らかった物は整頓されて、

適当に脱いだ服も片付けられている。おそるべし、幼馴染。
と、言っても故郷にいた頃は更紗と刹那が日常茶飯事にいらんお節介ばかりやっていた。
おかげで衣食住に困ることはなかったが、代わりに自由はなかったような気がする。

エロ本が見れる歳になって、勇気を振り絞って成年指定の本を書店から買ってきた。
隠し場所としてはお約束のベットの下に隠したが、二人が掃除した後には綺麗さっぱりと無くなっていた。
代わりに置かれていたのは、更紗と刹那の写真だった。

 そのことがトラウマになって、俺は厳重に隠し場所を作ることになった。と、そんなどうでもいい過去はともかくだ。
 更紗がべったりと俺に甘えていた。
俺の腕に自分の頬を擦り付けるぐらいに滅多に見られない彼女の頬が真っ赤に染まっていた。

「あの更紗さん?」
「どうしたの? カズちゃん」
「何かちょっとだけ体がひっつきすぎなのでは?」
「えっ? これは自然な幼馴染の関係だよ。恋人でもない男女がこうやってイチャイチャできる人種って、幼馴染しかいないよ〜」

 てか、幼馴染は人種だったのか? んなわけねぇだろう。
282桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/15(月) 23:19:09 ID:7+aYKogC
「更紗。病院に行こう。最近、知り合った頭のおかしい医者は俺の事を実験動物のように扱うけど、腕は確かだ。
幼馴染ってのは他の男と付き合ったりすると公式BBSがマッハを超えて光の速度で荒れるんだ。
頭の中身の悪い腫瘍を取り除いて真っ当な幼馴染に生まれ変わりなさい」

「何の事を言っているのかわからないけどさ。幼馴染同士でイチャイチャするのは悪い事なの?」
「悪いことじゃないけどさ……」
「私はカズちゃんが手抜き工事でマンホールの蓋が開いていたのを気付かずに転落して病院に運び込まれたって。
朝倉さんから連絡があったとき。世界が崩壊するぐらいにショックを受けたんだよ」
「大袈裟な」
「大袈裟じゃないよっっ!!」
 更紗が俺の言葉を遮るような大きな声で言った。

「カズちゃんは全然わかってないよ。意識を失っていたカズちゃんを見ただけで私は恐かったもん。
もう、カズちゃんが二度と目覚めないんじゃないかって。
私はこの世界からカズちゃんがいなくなるだけでもうダメだよ。い、生きていられないよぉ!!」

 それは悲痛な叫びだった。俺自身は自分が意識を失っていた時の皆の心情は全く知らなかった。
たった、3日間でも彼女たちに恐怖と絶望を与えてしまったことに後悔する。
それが更紗にとっては抑え込んでいた想いさえも溢れ出すトリガーを引いてしまった。

「ううん。私は言うよ。だって、人間はいつ死ぬかわからないじゃない。
今回のことで私はようやくわかったよ。人間は生きられる時間が決まっているんだ。そ
の時間を無駄になんか出来ないから」

「駄目だ……更紗」
 更紗は俺の腕を離して、真っ正面になるように移動する。
胸の位置を合わせて、頬は朱に染まり、瞳は潤んでいた。

「私はずっと恐かったの。この1年間はずっと一人で寂しくて辛くて……カズちゃんの事ばかり想っていたんだよ。
ようやく、再会した時に嬉しくして我を忘れるぐらいに不法侵入までして。
カズちゃんが働いている場所を閉店になるまでずっとストーカーのように見ていたんだよ。
後を追いかけたけど、カズちゃんって呼べなかった。どうしてか、わかる?」

「もういい。やめるんだ」

「1年前。カズちゃんが私と刹那ちゃんを拒絶していたよね。
あの頃を思い出すだけで声をかけるのが恐くて仕方なかった。
だって、カズちゃんにあの時みたいに避けられたら。
私の心が壊れちゃう。だから、カズちゃんが皆に問い詰められた時に庇ってくれたのは嬉しかったよ。
私たちと一緒に居たいためにカズちゃんが働いている場所を紹介してくれたよね。
本当に昔みたいに3人で仲良く出来ると思っていた」

「やめるんだ!!」

「言うよ」

「わたし、カズちゃんの事が大好きです」

「小さな頃からずっとずっと大好きでした。カズちゃんが傍にいないと私は生きていけない。
だから、私と付き合ってください。」

「更紗ちゃんっっ!!」
 たくさんの買物袋を抱えていた刹那が玄関の前で顔色を悪くして立ち尽くしていた。
そして、その視線は真っすぐに更紗に向けられていた。

 ついに俺が恐れた事態が起きようとしていた。
283トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/10/15(月) 23:22:30 ID:7+aYKogC
以上で投下終了です。

次回から本格的に修羅場突入なのか?

さて、次回作品の構想を考えると4つもネタが浮かび上がってしまったので
プロット投下しておきましょう。

1魔法使いと人喰い魔の話
 主人公である少年は幼少の頃に重い病を患っていた。
 後、余命半年の命だったが、遠縁の祖父が魔法使いを呼び、主人公の命を助ける。
 それから、数年後。主人公の街には連続猟奇殺人事件が発生する。人喰い魔と呼ばれる
人の形をした異形な存在が夜の街で人を食い散らす。化け物を討伐するために主人公の
命を助けた魔法使いが主人公にいる学校に潜入。
 犯人はこの学園の学生と断定した、魔法使いは捜査を開始する。
 その過程で容疑者として捜査線上に浮かび上がったのは
 主人公の幼馴染である女の子であった。

 魔法使いVS人喰い魔による主人公争奪戦が始まる。
*ちなみに主人公が幼少の頃に重い病を患った理由は
 幼馴染が主人公に恋心を抱いて、その魂の根源を食べてしまったから
 

2またまた姉妹ネタ
 離婚した母の方に引き取られた妹を姉は溺愛していた
 軽蔑している父親が他の女と隠し子を作ったことが離婚の原因。
 離れ離れになったことも
 原因の一つで姉は普通の姉妹以上に固い絆があった。 
 その妹に彼氏(主人公)が出来たと言う。その彼氏に僅かばかりの嫉妬していたが
 妹の幸せな笑顔に姉は素直に二人を祝福していた。だが、その半年後。
 週に一度か二度に妹と会う約束をしているのだが、妹は自室に引き篭もっていた。
 その理由を聞こうとしても、『お姉ちゃんにはわからないんだよ!!」と枕を投げられる始末。
 姉は事情は全くわからなかったが、一つだけわかったことがあった。
 妹の友人の聞き取り調査をした結果、主人公と妹は別れたとい事実を聞く。
 憤慨した姉は大切な妹を傷つけた、その男に復讐することに決めた。

 復讐方法は一つ。
 徹底的に自分を惚れされてから、告白してくる時に振ってしまうという計画を立てる
 その復讐の過程において、姉は主人公にだんだんと惹かれて、自分の方が好きになるのであった。
 一方、
 引き篭もっていた妹は友人から元カレである主人公と姉がいい仲になっていることを知らされる
 なぜ、どうして、二人がそんな関係になっているかわからない妹は二人に問い詰めた。

 そして、全ての事実を姉は知る。

 主人公は父親が作った愛人の隠し子であり、姉妹は異母姉弟妹であること。
 愛人の母をゴミ屑のように捨てた父親とその家族を恨んでいること。
 自分が付き合っている彼女が実の妹だったから、別れた。
 その妹が彼の子を妊娠してしまっていること。

 それらの要因が絡み合い、

 姉VS妹の修羅場と発展する。

*物語の展開次第ではNice Boatもありw 姉妹丼展開もあり
284トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/10/15(月) 23:24:00 ID:7+aYKogC
3 兎
現時点は題名が『白兎に恋して』(未定)というタイトルだけしか思いついてない。
ヒロインである兎と主人公と泥棒猫による修羅場の予定。
ハートフルみたいな物語?

4 死神と少女
死神と少女のお話。次回作品有力作品
内容的にはやっぱり人間って…面白!!
みたいな感じw 

と言っても、すでに死神モノが嫉妬スレSSで投稿されてますね
やはり、ネタが被るのはNG?



以上 現在考えているプロットを軽く文章として流したわけですが
作品にする時間がないので、誰か書いてみませんか?


桜荘にようこそが書き終わっていないので次回作品のネタだけが
浮かんできます。


この世に足りないものは時間です。マジでw

それでは。
285名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 23:28:53 ID:JMiE64a7
286名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 23:29:40 ID:RaxId4QG
>>283
nice boat.
287名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 23:35:56 ID:TOPAFx+b
GJ!

個人的には4ですかね。
多分件の作品ってDaring, please don't die!の事だと思いますが
大分前の作品ですし大丈夫ではないでしょうか?
個人的にアレは好きでした。読みきりだったのが本当に悔やまれる・・・
288287:2007/10/15(月) 23:38:10 ID:TOPAFx+b
言い忘れましたけどそう言えば3にも良く似た作品有るんですよね。
アレのタイトル見た瞬間思わず某アニメの『ストレス解消殴られ木偶うさぎ』が
思い浮かびました
289 ◆tVzTTTyvm. :2007/10/16(火) 00:23:40 ID:/DfZwrnK
久しぶりに目安箱BBSに絵を投下してきました
SSの方は近日中にでも投下……
出来るよう頑張ります……orz
290 ◆SVNDcoHudE :2007/10/16(火) 00:23:56 ID:La3D+ugB
投下します。最終回です。
人によってはNTRと判断できる場面がありますので注意のほどよろしくおねがいします。
291秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/16(火) 00:25:04 ID:La3D+ugB
「そういや、そのアクセ。ずっと着けてるけどお気に入りなの?」
高田君が紙コップに注がれたオレンジジュースに口をつけながら尋ねてくる。
「ん、ん〜…まあ、ね。」
ネックレス、ブレスレット……これらは全部要からのプレゼントだ。
指輪も買ってもらいたかったけど、周りにばれるからって事で自重することにした。
大学に入れば、ここに指輪が加わる…それが楽しみでしょうがない。
「ふ〜ん……そっか。大事な人にもらったものなんだね。」
高田君の声が心なしか不機嫌なように聞こえる。
「え?なんで?」
「だって三浦さん、今すごい嬉しそうな顔してたからさ。」
……ああ、そっか。高田君も舞と同じタイプの人間だった。そういえば。
「ま、いいや次はどこ行く?」
気を取り直すように席を立つ高田君。私もつられて席を立つ。


結局、私達はあの後、すべての授業をキャンセルし、昼間の街の中を歩き回っていた。
ショッピング、カラオケ、ゲームセンター、ボーリング……
全部私が要としたかったことだ。それを今は要じゃない男の子と行っている。
だけど、なんだか楽しい。高田君は私を導くように街の中を進んでいく。
最近あった嫌なこと…要と秋穂の事が今だけは頭の中から消えていっているのがわかる。
もしかして、高田君は……
「お〜い!三浦さん!」
「あ、うん。ごめん!」
いつのまにか離れていた高田君に呼ばれ、顔を上げて高田君の元に走る。
そういえば、さっきから私達の事を周りの人達がたまにちらちら見てくる。
制服だからかな?でももうこの時間なら学生もチラホラみかけるし……
やっぱり高田君を見てるんだろう。本物のモデルみたいだしなぁ。
「なんかさっきからチラチラ俺らのこと見てくる人いるね。」
高田君もそれに気づいていたのか、周りを見渡す。
その瞬間、私達を見ていた人たちが一斉に目をそらす。やっぱそうか。
「高田君、モテモテだね〜」
「三浦さんがそう言うと、ちょっと嫌味に聞こえるな。」
「え?でも……」
「これは俺を見てるんじゃないよ。「俺達」を見てるのさ」
292秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/16(火) 00:25:52 ID:La3D+ugB
「私達……のこと?」
「そ。カップルに見えるんだろ。」
ピタッと足が止まる。カップル……私の恋人……私は………
「……三浦さん、次は向こう行こう。」
立ち止まった私の手を握り、高田君が歩き出す。
私は……要、私……


「ふい〜。随分歩いたなぁ。」
ベンチに座った高田君がう〜んと伸びをする。
「そうだね……久々だった。こういうの。」
気づけばもう夜も更け、空には綺麗な星達が輝き始めている。
公園の時計を見ると、針はもうすぐ7時を回ろうとしている。
「……ありがと、高田君。私のためにここまでしてくれたんでしょ?」
「…………ん?なんのこと?俺が学校サボりたかっただけだよ。巻き込んじゃってごめん」
高田君はずっと空を見上げている。
「私が落ち込んでるって思ったからでしょ?高田君そういうとこよく気がつくもんね。」
「……………………」
「ありがとう、ほんとに。」
「………………」
「それじゃ、私そろそろ…」
「……要のことだろ?」
……え!?
「山下要のことだろ?悩んでたの」
ベンチを立ち上がった私を見上げながら高田君が言う。もう、視線は空を向いていない。
「なん……で…」
「そりゃね。あれだけ要のこと気にしてればさ。クラスの連中はまるで気づいてないけど。」
ゆっくり、高田君がベンチから立ち上がる。
ベンチの前で私達は丁度向かい合う形になった。高田君は背が高いから、今度は私が見上げる形になる。
「あ、えっと……え?ええっと…」
「要の事好きなんだろ?」
……え?あ、そっか。そこまでしかわかってないんだ。そっか。
「あ、あの、でもなんでわかっ……」
「分かるよ。好きだから。」
293秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/16(火) 00:27:02 ID:La3D+ugB
高田君がとても真剣な表情で私を見つめてくる。やっぱ綺麗な顔してる、なんて場違いな考えが頭をよぎる。
「俺、三浦さんの事が好きだから。だから、わかる。」
「ええ!?でも、わ、私は……」
「わかってる!でも、要は…こんなこと言いたくないけど、要は……」
…あ、だめだ。それ以上は言っちゃ…だめ。
「わかるんだ、俺。そういうのわかっちゃうんだ。要は…」
「やめて」
「要は、要は庄田さんのことが…!」
「やめて!!」
静かな公園に、乾いた音が響き渡る。今度はあの時の中庭とは違う。ちゃんと音が聞こえる。
叩いた手が震える。でも、高田君はじっと真剣な表情で私を見つめてくる。
「あ、ごめ…私……」
「………俺は、そんなことしない。こんな辛い顔、三浦さんにさせない」
「えっ……」
気づいたときには、高田君の綺麗な顔が私のすぐ目の前まで来ていた。
唇にやわらかい感触が伝わってくる。
……なんで?なんで抵抗しないの美希?この人は要の友達で…私は要の彼女で……
でも、要…秋穂の事……要……なんで…………
舞の言葉が頭に浮かぶ。要の言い訳が頭に浮かぶ。秋穂のバカにしたような笑顔が、頭に浮かぶ。
どうしたらいいの?どうしたら、いいの…………

私は…………わたし、は…………

しばらくしてから、高田君はゆっくりと唇を離した。そのまま真剣な表情で私を見つめている。
「……あっ!」
はっとなって慌てて高田君を突き飛ばす。私は……私は!
「ごめん……」
高田君が頭を下げる。何を、何をしてるの…私は……
「………………」
「……送るよ。」
「…………いい、ひとりで帰れる、から。」
「そっか……」
高田君がどこか寂しそうに背を向ける。
「また明日な。三浦さん」
その声に、俯いた顔を上げたときには、もう高田君の姿は見えなくなっていた。

「私…何してるんだろ?どうしたら、いいんだろう?要、私……!!」
空を見上げ、星の輝く綺麗な空に向かって問いかける。
けれど、秋の星空は何も言わず、ただ私を遥か高みから見下ろすだけだった。
294秋の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/16(火) 00:27:58 ID:La3D+ugB
―――これは面白いもの見ちゃったなぁ。
美希は空を見上げながらまるで動かない。まぬけな姿だ。笑っちゃう。
さてと、現場はしっかりこのカメラに押さえたし、あとは……
「どう?役に立った?それ。」
私のすぐ後ろの茂みの影から、いやに可愛らしい声が聞こえてきた。
「ええ。ありがとうございます。百桃さん。」
「いいのよ。あなたにはいつも義男ちゃんのことでお世話になってるし。」
クスクス笑う百桃お姉さん。
「そういえば、山下君とはうまくいってるの?」
「はい、とっても。そちらは森本君とは?」
茂みの影の中からため息が聞こえる。
「相変わらずよ。でもそろそろクリスマスよね?そこで色々計画してるの。楽しみだわふふ…」
「クリスマスですか、確かに……楽しみですね……」
そうか、クリスマスか。確かに楽しみだ。
しかし……美希と高田君か。高田君が美希に惹かれてるのはわかってたけどこうなるとはね。
そういえば隣のクラスの緑川美穂は高田君に惚れてるって本間君が言ってたな。彼氏いるのにね。
他にもあの二人に惹かれてる人間は多いだろうし…。これはほんとに面白くなってきた。
「それじゃ、百桃さん、また連絡しますね。」
「ええ、頑張ってね。アキちゃん。」
手を振りながら、影に隠れている百桃お姉さんとわかれ、高田君の後を追う。
背の高いモデルのような風貌は街の中に紛れていても目立つため、すぐに見つけることができた。
「高田君。」
「ん?…庄田さん?」
高田君が振り返り、不思議そうな顔で問いかけてくる。
「あれ?なんでここにいるの?要は?」
「いいじゃない。要君の事は。それよりも……」


――秋が終わり、冬が訪れる。それと同時に私たちの関係も変わり始めようとしている。
要君、もうちょっとだよ。もうちょっとで私達の「幸せ」が始まるから。もう少しだけ待ってて。

…さあ、美希。ここからが本番だよ?
295 ◆SVNDcoHudE :2007/10/16(火) 00:28:50 ID:La3D+ugB
勝った!第一部完!!さすがSS初心者だ、主人公がまるで出てこなくてもなんともないぜ!
すいません。これで「秋の星空」は終わりです。次から「冬の星空」になります。
「冬の星空」はすんごいドロドロになりそうなので苦手な方は読み飛ばしてください。登場人物は同じです。
それでは読んでくださった方、感想レス下さった方、まとめサイトの阿修羅氏、本当にありがとうございました!
実は「冬の星空」第1話は書きあがってるので、よく見直してから投下します。「冬の星空」もよろしくおねがいします!
>>284
乙です!死神がいいですねー。
296名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 00:45:06 ID:ndXdoMIn
gj
冬の星空も楽しみ
297名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 01:07:28 ID:5axQpONp
>>295
第一部完結乙です。
毎回wktkしながら読ませてもらいました。
だがすまない。
この先は、読めそうにない……
298名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 01:08:45 ID:7PXICvUc
GJ!!
冬の星空も楽しみにしてます、頑張ってください。
299名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 01:17:01 ID:Yed+aQJR
>>289
待ってるから……ずっと、待ってるから
300愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:04:13 ID:nfqiyrZl
皆さん乙です。
>>73の続き投下します。
301愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:05:36 ID:nfqiyrZl
「今日はとっても楽しかったです、ありがとうございました」
「いやいや、こっちも楽しかったし」

 丁寧に頭を下げる綾瀬さんに僕は恐縮してしまった。

「はい、それではまた明日」
「うん、またね」

 最後に綾瀬さんの笑顔を残して、いつもの黒塗りベンツは遠ざかっていった。

 というか、マ○クの前にあんな高級車が横付けしている光景なんて、一生に一回見られ
るかどうか分からないようなものだ。

「………何つーか、貴重な体験だったかも」
「ふ〜ん、そう。そんなに楽しかったんだ」
「へ?」

 振り返ると僕のすぐ後ろに、由美先輩が立っていた。

「う、うわあ!!」

 その距離があまりに近かったから、僕は思わず飛びのいてしまった。

「………そんなに楽しかったんだ、あの娘と一緒にいて」
「………せ、先輩?」

 先輩がただ、無表情でそこに立っていた。

「い、いつから見てたんですか?」
「二時間くらい前から」

 それってほぼ最初からじゃないか。

「ど、どうしてここに?」
「帰りに寄ったら偶然二人がここにいたから」
「アハハ、覗き見なんて趣味悪いっすよ〜」
「…………………」

 先輩の様子はおかしかった。
 ふざけてる様子もないし、別に僕をおちょくってる訳でもなさそうだ。
 微妙に気まずい沈黙の後、先輩が口を開いた。

「……ねえ遼君」
「は、はい」

 今までに見たことのないような先輩の顔、それは何だか―――

「……あの娘のこと、好きなの?」

 ―――何だかとても、寂しそうだった。
302愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:07:20 ID:nfqiyrZl

「………先輩、どうしたんすか?」

 あまりに様子がおかし過ぎる。今にも壊れてしまいそうな、そんな表情で僕を見る。

 先輩の方に手を伸ばす。

「あっ………」

 先輩の体がビクンと揺れた。

「大丈夫、ですか?」

 その一言を機に、先輩の表情が変わった。

 『戻った』という表現が適切だろうか、ともかく先輩の様子はそれからだんだん人間味の
あるものに変わっていった。

「あ、アハハハ!! 冗談よ冗談」

 まるで今までのことを全て誤魔化すために笑っているようだった。

「もう、遼君たら本気でビックリしちゃってるんだもん。私の演技力も捨てたもんじゃな
いかもね〜。あはははは〜」
「……何か、あったんすか?」

 そうやって笑っている先輩は、とても無理をしているように見えた。

「何にも無いってば〜、もう〜遼君ったらホント騙されやすいんだから〜!!」

 何にも無い訳ないじゃないか、そんな顔してたら。

「……その、俺で良かったら何でも力になりますよ!!!」

 そんな先輩が心配で、放っておきたくなくて、僕はそんなことを言っていた。

「えっ?」

 僕がそう言うと先輩は少し驚いたように黙って―――まあ僕もこんなことを言った自分に驚い
たんだけど―――それからため息をついて、

「………その張本人にそんなこと言われてもね」
「え、何です?」
「何でもないですー」
303愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:08:43 ID:nfqiyrZl

 一言目は、何と言ったのか良く聞き取れなかった。

「先輩」
「何よー?」
「何か、拗ねてます?」
「なっ、そ、そんなことある訳ないでしょ」
「そ、そうっすか」

 どう見てもそういう風に見えるのだが。

「……ねえ、遼君」
「はい、何すか?」

 少しの沈黙が過ぎた後、先輩がおもむろに口を開く。

「さっき『何でも力になってくれる』って言ったよね?」

 確かにそう言った。思わず出た言葉ではあったが。

「ええ、まあ。俺に出来ることだったらですけどね」
「うん、問題ない」
「?」

 僕には先輩が何を言おうとしてるのか分からなかった。だけど先輩は何だかとても楽し
そうに、ニヤニヤと笑っている。

「そしたら、これからの登下校は毎日必ず私と一緒にすること!!」

 先輩が言った意外なことに、僕は思わずポカンとして言葉を失った。

「いい、毎日だからね、毎日!! 一日だってサボったら駄目なんだからね!!」

 毎日一緒に登下校、別にどうってことない。クラスの男子どもには何て言われるか分か
らないけど。

「………はい、別に構わないっすけど」
「ホントに!!??」

 断る理由がどこにあるというのだろう。

「ええ、っつーかそんなことで良いんですか?」
「アハハ、やったー!!」

 てっきりもっと無理難題を押し付けられるのかと思っていたので、思いっきり拍子抜け
してしまった。

「約束だからねっ、遼君!!」

 何故かは分からないけど子供みたいにはしゃぐ先輩を見て、僕は少し安心した。
304愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:11:52 ID:nfqiyrZl



 走る車の中から流れていく町の景色をぼんやり眺めながら、彼のこと、中原さんのこと
を考える。

 今日は幸運にも中原さんと二人でお昼ご飯を食べに行けた。今まで一度も行ったことの
なかったファーストフード店に連れて行ってもらって、おいしくハンバーガーを食べて、
楽しくおしゃべりをして、まさに待ち望んだ通りの展開。

 なのに、

「……なのに、どうしてでしょうか?」

 こんなに、満たされない感じがするのは。

 この数日間、中原さんと一緒に過ごして分かったことが幾つかある。

 一つ目は、中原さんがあまり積極的に人と交わろうとしていないこと。クラスに特に親
しい友人が居るわけでもなく、どこか一歩引いた付き合いとでもいうような友好関係。人
当たりも良く、もっと異性にも人気があるように思えていたが、彼自身が何と言うか、心
に『壁』を作っている感じがした。

 その壁は限りなく透明に近くじっと目を凝らしても分からないくらいで、それでも確か
にそこに存在していて、彼と他人とを隔絶していた。

 恐らく、その壁の存在に気付いていない人も多くいるのだろうと思う。私だって最初は
そんなこと分からなかった。それでも何となく違和感がして、私は中原さんを見続けた。
確信を得たのは一昨日くらいだろうか。

 それくらい、中原さんは上手に人を避ける。避けた相手に不快感を与えることもなく、
上手く人から遠ざかろうとする。
 私の彼への好意も、わざわざ転校までしてきた時点でバレバレだろうに、彼の行動が鈍
感なためのものなのか、それとも意識して気付かないようにしているものなのか、よく分
からないものだった。

 そして二つ目、これが一番問題だ。

「…………はあ」

 思い出すだけでため息が出る。

 その中原さんの『壁』が、ある特定の人物の前でだけ、薄くなる。もちろん完全になく
なるという訳ではなくて、薄くなるだけ。それでもその人の前では、中原さんの笑顔は、
ずっと自然で、ずっと本物に近い。私やクラスメートと話しているときとは確実に違う。
 その人物は一番私が負けたくない人で、認めざるを得ない現実は今まで感じたことのな
いくらい歯がゆくて、悔しいものだった。中原さんと一緒に過ごした時間、その点でやは
り私は彼女に敵わない。
305愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:13:03 ID:nfqiyrZl
 しかし、それ以外の部分では負けている気はしない。容姿でも、彼を想う気持ちでも、
少しも譲る気持ちはないのだ。強いて一つ上げるとするなら………、

「………これぐらいでしょうか」

 自分の胸部に目を向ける。

「………情けない」

 思わずそうこぼしてしまった。眼下に広がるはなだらかな平原。もちろん女性の価値が
これの大きさだけで決まるわけではない、ということは分かっている。それでも敵役の彼
女と比べると、自分のそれは明らかに劣っていた。

 やっぱり中原さんも、その………大きい方が好きなのだろうか?

「お嬢様、どうかされましたか?」

 そんな私の様子に気付いたのか信号待ちの際、運転をしていた滝村さんが声を掛けてき
てくれた。

「いえ、その……」

 そうだ、滝村さんにも聞いてみよう。彼は私が生まれたときからずっと側に居てくれた
信頼できる老執事だ。

「あの、滝村さん」
「はい、何でしょう?」
「……滝村さんは、『山』と『平地』だったらどっちが好きですか?」
「……は? それはどういう意味で?」
「いいからお願いします!!!」

 しばらく悩んだ後滝村さんは、

「そうですな〜……私は『山』ですかな」

 そう答えた。

「……そうですか」

 やっぱり男とはそういう生き物らしい。思わずため息が出てしまう。

「山は自然も多く、美味しいキノコや山菜も沢山取れますしな。それに何より空気が綺麗
で……っと、お嬢様どうされましたか?」
「………いえ、別に」

 滝村さんは減給処分にでもしてもらおうか、そう思った。

306愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:14:29 ID:nfqiyrZl



 腕時計を見る。約束の時間まで、あと十分。ちなみに待ち合わせ場所には三十分前から
いた。何と言うか、落ち着いていられなかったのだ。

 だってだって、朝から待ち合わせをして一緒に学校に行くなんて……まるで、まるで、

「まるでカップルみたいじゃない……」

 自分でも自分の顔が思いっきり緩んでいることには気付いていた。決して知り合いには
見せたくないような顔だったが、自分ではどうすることも出来なかった。これから私のた
めにここに来てくれる遼君のことを考えると、どうしてもにやけてしまうのだった。

 手鏡を取り出して身だしなみをチェック。家を出る前も散々確認したが、この場所に着
いてからも何回やったかは分からない。

 よし、大丈夫、私、可愛い。

 自分で自分に何度も言い聞かせる。

 ああ、遼君が来たらまず何て挨拶しようか。

 笑顔で元気に、

『おはよう遼君!!』

 だろうか?

 それとも甘えた感じで、

『もう〜遅いよ〜遼く〜ん』

 とかもいいかな?

 そしたら遼君は、いつもみたいにちょっと困ったように笑いながら、

『すいません先輩、ちょっと寝坊しちゃって』
『も〜こんなに手冷えちゃったよ〜』

 それでそれで、遼君は私の手を優しく握って、

『ああ本当にゴメンよ、僕の愛しの由美。僕がすぐに暖めてあげるからね』
『だ、ダメよ遼……みんな見てる』
『そんなの関係ないよ由美。さ、目を閉じて………』
『もう、遼ったら……………』

 …………………………………。

 ……………………。

 ……………。
307愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:16:02 ID:nfqiyrZl
 って、なんじゃこりゃああああああ!!!!!

 思わずそう叫びたくなるところを、寸前で我慢する。


「はあ……はあ……、まったく何考えてんだか……」

 色んなところが色々間違っている、全く持って大した想像力、もとい妄想力だった。

 何か遼君は私のことを呼び捨てにしてたし(まあ、別にそれも悪くないんだけど)、それに
私も『遼』だなんて………。

「……うん、いい」

 ためしに口に出してみようか、ああでも何か恥ずかしいなあ〜。

 うん、でもちょっとだけ。ちょっとだけ言ってみよう。

「りょ、遼……」
「はい、何すか?」
「って、うわああああああああ!!!!!」

 いつの間にか私のすぐ隣に遼君が立っていた。

「な、何で、そこに?」
「何でって、そういう約束だったじゃないっすか」

 当然のように言う遼君。全く本当にビックリした。

「いや、いつの間にそこにいたのかって聞いてるの!」
「ちょっと前から」
「どうして声かけてくれなかったの?」
「言いましたよ、『おはようございます』って。でも何か先輩上の空だったっていうか」

 まさかそこまで自分が妄想に耽っていたとは……。というかその姿を遼君に見られてい
たなんて、恥ずかしくて死にそうだ。これでは『もう〜遅いよ〜遼く〜ん』なんて出来る
はずもない。

「という訳で、改めておはようございます。由美先輩」
「おっおお、おはよう遼君」

 全くこっちが照れてどうするんだ。

「待ちましたか?」
「う、ううん、私も今来たところだから」

 ああ、一度やってみたかったこのやり取り。ホントにカップルみたいだ。

 腕時計を見ると時間はきっかり待ち合わせ時間の五分前。流石遼君。
308愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:18:30 ID:nfqiyrZl
「今日も寒いっすね〜」
「うん、そうだね」

 日に日に寒さを増していく十二月中旬。だけど今の私には寒さなんて関係なくって、た
だ遼君と二人でいられることが嬉しかった。

「それにしても先輩」
「ん、何?」

 おもむろに遼君が口を開く。

「昨日も言ったんすけど、ホントにこんなんでいいんですか?」
「え?」
「だからその………俺が先輩の力になるっていうのです」
「ああ、そのことね……」

 しかし、昨日の自分のことは正直思い出したくないくらいだ。

 帰り際に偶然立ち寄ったファーストフード店で、遼君と綾瀬さんを見つけて、それから
ずっと二人のことを離れた席から見ていた。

 その時の私の様子はさらにヤバかったと思う。

 頼んだ飲み物の中の氷を、気付いたときには全て粉々に砕ききっていた。

 ―――どす黒い気持ちがグルグル回って、抑えきれなくなって、結局遼君の目の前に出
て、あんなことまでしてしまった。

 格好悪過ぎる、思い出すと自己嫌悪で首でも吊りたくなってしまう。

 最終的には正気を取り戻すことが出来たけど、それまでは完全に嫉妬に狂って理性を失っ
てしまっていた。

 ああ、あんな顔を遼君に見られていたのかと思うと………。

「えっと………」

 しかし、どう説明したらいいんだろうか?
309愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:19:35 ID:nfqiyrZl
『自分の汚い嫉妬が嫌で、でも遼君がいつでもわたしの側にいてくれればそんなこともな
くなるだろうからです』

 …………………………。

 ………言えるはずない。

 言える訳がないし、こんなのだって結局は根本的な解決には繋がらない応急処置に過ぎ
ない。

 私が強くなるしか、ないんだと思う。私が強くなって、自分にもっと自信を持って、それ
で遼君と思いが通じ合えたなら、そうしたらきっとこんな気持ちもなくなるんだろう。


 だけど今は、今はまだ

「…………迷惑、かな?」

 それには時間がかかるだろうかから、今はまだ少し甘えさせて欲しい、こうやって誤魔
化させて欲しい。ダメかな、遼君?

「い、いや迷惑なんて事はないんすけどね」

 急いで否定してくれる遼君。

 優しくて、こんな駄目な自分でも一緒にいてくれるのが嬉しくて、やっぱり私は遼君が
好きだ。

「うん、ありがとっ」

 少し照れたように頭を掻きながら、私のすぐ隣を歩く遼君。
 待っててね、遼君。頑張ってすぐに遼君に相応しい女の子になるから。

「……頑張れ、あたしっ!」

 遼君に聞こえないよう小さな声で、新たな決意を固めて私は意気揚々と歩き出す。

 と、その矢先、
310愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:20:32 ID:nfqiyrZl
「あ、あれ」
「……はあ」

 目の前を忌々しい黒塗りベンツが通り過ぎて、少し行ったところで停車した。

「おはようございます、中原さん!!」

 中には案の定、宿敵綾瀬楓嬢が。

「おはよう綾瀬さん」
「はいっ、おはようございます。………あ、あと松本先輩も」

 全く朝からやってくれる。

「お、おはよう綾瀬さん」

 必死で笑顔を作って挨拶を返す。

 頑張れ、頑張るんだ私。遼君に相応しい女の子になるんだから、こんなことで頬をピク
ピクいわせていてはダメだ。

「滝村さん、ここまででいいので降ろしてください」
「かしこまりました」

 うわ、なんか上品そうな運転手。どんだけ金持ちなんだ、この娘の家は。

「では、行きましょうか中原さん」
「え、あ、うん」

 何でこうなるのかなあ、心の中で深い深いため息をついて、学校への坂道を遼君と、邪
魔者と一緒に歩いていった。

「……頑張れ、あたし」

 遼君に聞こえないように私は小さく呟いた。

311愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/16(火) 02:22:48 ID:nfqiyrZl
以上で今回分終了です。
深夜のこの時間って妙にお腹が空きませんか?
そんな訳で次回もよろしくお願いします。
312名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 02:25:15 ID:W6XPqhqU
GJでした!

中原嬢の巻き返しと先輩の沈殿物の溜まり具合に期待しています。
313名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 02:41:21 ID:2tZd7ZK3
>>311
もう腹一杯です。
満腹乙でした。
314名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 03:13:40 ID:IXvqBA7g
>>311
い、いいよ、いいッ!
説明下手だからなんつーかうまく言えないけど
丁寧で自分のツボにくる心理描写がタマラなくいいです!!
もっと続けてくだしあ
315名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 04:08:30 ID:i+ULj8Gp
>>311
先輩可愛いよ先輩!!GJ!!!!
316名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 08:15:43 ID:TiRM9/ah
滝村さんの給料は大丈夫だろうか…
317名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 08:45:41 ID:wXlZSv4+
なんかFF12をやってた時のことを思い出した。
サブキャラをたくさん出すのはいいけど、主人公が完璧に埋もれてるのはどうかと。
318名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 10:16:12 ID:xiDd9TdE
凄い投下数ですね
319名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 22:08:57 ID:ImWnvdA8
多少黒いがこういう爽やかーな感じは久しくなかった気がするからなんか救われるぜ
320名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 23:17:08 ID:ejlcf9ow
>>311
もうカチカチだぜっ!カッチカチだぜー
それから、かちかち山第二話の投下をかちかちしながら待つぜ
321名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 23:54:14 ID:/Pmhk31s
じゃあ俺は草と1/8と九十九を裸で待ってるわ
322名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 23:56:00 ID:9f739J7w
>>295
「要」なのにまったく話の要になってない、むしろ刺身のツマ程度の存在なのは、皮肉なのか?w
この展開させようもない主人公をどう展開させるのか、楽しみにしてる!
323名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 00:07:03 ID:nTi0zX6j
とりあえず高田は俺が殺す
324名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 00:24:49 ID:gVbdQEUG
>>323
そんなおまいにGJ
325名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 02:04:51 ID:vZQXSszj
雨の音と天帰予報を全裸で待ってる
326カジ:2007/10/17(水) 05:07:29 ID:T6iXWFpi
俺も書きたいけど携帯では長文かけないんですか?初心者でスイマセン
327名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 05:20:01 ID:RDhwxgnR
最近修羅場スレ賑わいすぎだろw
328名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 05:24:16 ID:vZQXSszj
>>326
なんか・・・・
とりあえずやめとけ
329名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 05:54:24 ID:qOSlwchH
>>323
ごめん、もう殺ってきちゃった…
330名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 06:12:23 ID:RDhwxgnR
俺は別に高田に嫌悪感はないな
むしろ話を盛り上げてくれてGJ
331名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 06:14:41 ID:T6iXWFpi
>>328 なんで?
332名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 06:59:32 ID:nLkVDrcc
ずばり地雷の臭いがするか
333名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 07:13:00 ID:T6iXWFpi
>>332 死ねカス
334名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 07:14:09 ID:mYwMsN5Q
>>332禿同
335名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 07:14:32 ID:l3uNh/Vy
俺は一生ノントロを待ち続ける、半裸で
336名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 11:53:49 ID:vFV/Ol+Y
>>326
>>331
>>333

こいつはひどい……(;^ω^)
337名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 11:55:32 ID:ifSx9VNq
だな
携帯がどうとかいう問題ではなく、書くことが地雷だな
この前のあれみたく・・・・
338名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 13:30:33 ID:NsEBaRFe
諸君、とりあえず見なかったことにしようではないか

rァNG指定
339名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 14:28:54 ID:gVbdQEUG
ま、スレが長く続くとこういう基地外も沸いてくるさ
340 ◆SVNDcoHudE :2007/10/17(水) 22:03:39 ID:LfzlU0Yp
冬の星空投下します。
341冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/17(水) 22:04:33 ID:LfzlU0Yp
『あるところに、二人の仲のいい女の子がいました。』


『二人はいつも一緒で、何をするにも、どこへいくにも一緒でした。』


『そんな二人が、同じ人を好きになるのは、ある意味必然だったのかもしれません。』


『一人の女の子が言います「私の事は気にしないで」』


『それを聞いたもう一人の女の子は言います「だけど、ほんとにそれでいいの?」』


『女の子は微笑みます「うん。でもその変わり……」』


『二人は約束をしました。とても大事な約束です。絶対にやぶってはならない約束です。』




『……けれど、残念なことにその約束が守られることはありませんでした。女の子はとても悲しみ、そして決意します。』


『「だったら…だったら私だって……!!!」』



『こうして、物語は始まります。女の子達の約束から、すべては始まります。』



『悲しい物語が、始まります―――』
342冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/17(水) 22:05:35 ID:LfzlU0Yp
―――耳元で、小さな熊の目覚まし時計がうるさく鳴り響いているのが聞こえます。
「……うーん」
布団の中で身体をひねり、どうにか時計まで手をのばすことができました。
「ふぁぁ…今日も寒いなぁ」
ベッドの上で軽くのびをした後、そのまま鏡の前に立ち、制服に着替え始めます。
セーターに腕を通していると、下の階からお母さんの声が聞こえてきました。
「美穂〜!起きてるの〜?ご飯よ〜」
「は〜い!今行く〜」
……こうして、私、緑川美穂の変わり映えのない一日が、今日も始まります。


「行って来まーす!」
「はーい!気をつけてね〜。コラ!幸人!さっさと支度しなさい!」
「もううるさいな〜わかってるよぉ〜」
弟の愚痴る声を聞きながら、私はいつも通学に使っている赤い自転車に乗り込みます。
肌寒い風に吹かれながら駅に向かってペダルを踏みこんでいると、後ろから聞きなれた声が聞こえてきました。
「おっはよー美穂!今日も寒いねぇ」
「おはよう〜涼子ちゃん。」
私の隣に自転車をつけてきたこの大きな胸と可愛らしい顔をした女の子は村田涼子。
小さい頃から同じ学校に通っていた、いわゆる幼馴染です。
「そういえばさぁ、聞いてよ〜昨日も尚人ったら……」
「はははっ……」
最近涼子ちゃんは恋人である木村君の愚痴ばかり言っています。
でも、こんなときの涼子ちゃんの顔はすごく嬉しそうなんです。木村君がほんとに好きなんだなって事が分かります。
「それでね、……」
「うんうん……」
照れたような笑顔を浮かべながら木村君の話をする涼子ちゃん。
「そしたらさ……」
「ふんふん……」

…涼子ちゃんがうらやましいです、本当に。好きな人のことを素直に話せる涼子ちゃんが……
343冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/17(水) 22:06:31 ID:LfzlU0Yp
「……で、そっちは?」
「えっ?」
「直純のことよ〜。最近あんま会ってないらしいじゃない?」
「あ、ああ…う、うん。最近勉強で忙しくて…」
直純君……鳩山直純君は涼子ちゃん達に紹介してもらった男の子です。
いわゆる合コンっていうので知り合った私達はいつのまにか付き合うようになっていました。
でも…直純君は……
「ま、色々あるだろうけどさ。ちょっと寂しがってたよ?会ってあげたら?」
「う、うん。そう、だね…」
あいまいに笑いながら涼子ちゃんに答えます。涼子ちゃんは鳩山君と付き合いが長いので、
私達の事にもよく相談に乗ってくれます。
でも、だからこそ言えません。今の私の気持ちについては…

電車を降り、学校に近い篠崎町駅に着くと、そこはすでに学生と通勤する人々でごった返していました。
「あ〜今日も混んでるね〜。美希達いるかなぁ?」
混雑する駅前で涼子ちゃんは美希ちゃんを探しています。
三浦美希ちゃんは私とは別のクラスなのですが、涼子ちゃんの懇意もあって仲良くさせてもらっている友達の一人です。
美希ちゃんは可愛い子で、学校内でも目立つ優秀な子です。私とは大違いなのにすごくよくしてもらっています。
だから…「あの人」が惹かれてしまうのも無理はないのかもしれません…
「あ!美希!いたいた!ちぃーす!」
涼子ちゃんの声につられて振り向くと、丁度改札口から美希ちゃんと…「あの人」が並んで出てきました。
「おはよう〜ふたりとも。」
「おはよー。…ってうん?」
涼子ちゃんが驚いた表情で美希ちゃんの隣にいる「あの人」を見つめます。
「やあ。おはようふたりとも。」
静かに、私達に微笑む「あの人」。…ああ。この笑顔です。
「お、おはよう、高田君…」
声、震えてないかな?顔赤くなってないかな?
涼子ちゃんにばれてないかな?

そうです。私は、静かに優しそうな笑顔を浮かべるこの人、高田圭吾君に恋をしているのです。
344冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/17(水) 22:07:16 ID:LfzlU0Yp
…だけど………
「あれぇ〜?美希ぃ。あんたまさかついに…」
「えっ?なに?なによ?」
「とぼけちゃってまぁ…いいけどさぁ。ふふふ…」
だけど………だけど……
「お似合いよ。あんた達!」
「ちょっと!涼子!」
「あははっ照れない照れない」
…私には、わかってるんです。
高田君は……

―――高田君は、美希ちゃんの事が好きなんだってことを。


仕方のないことなのかもしれません。高田君はとてもかっこよくって、女の子達の間でもよく話題になる人です。
美希ちゃんも負けず劣らず、いろんな人達の話題になっています。中には嫌ってる人もいるけれど…
だけど、私は美希ちゃんが好きです。引っ込み思案な私にも美希ちゃんはちゃんと気をつかってくれます。
それに美希ちゃんや麻希ちゃんと仲良くなれたおかげで高嶺の花だった高田君とも話すことができたんです。
美希ちゃんに彼氏はいないし、高田君にも特定の彼女はいないらしいので、ふたりはすごくお似合いだと思います。
お似合いだと思うんですけど……でも、でも……
「どうした?美穂?」
私の横を歩く直純君が心配そうに声をかけてきました。
私達二人の前では高田君が美希ちゃんと一緒に、楽しそうに話しながら歩いています。
「あ、なんでもないよ…気にしないで」
「そっか。今怖い顔してたからさ。具合でも悪いのかと思って…」
怖い顔……そんな顔してたんでしょうか?気をつけないと…
「う、うん。だいじょぶ。」
「ん、そっか。…ところでさ、今日……」
直純君が恥ずかしそうに小声で言います。
こういうときはなんとなく、内容が予測できてしまいます。
「美穂ん家行っていい?」
…やっぱり………
345冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/17(水) 22:07:57 ID:LfzlU0Yp
「ごめんなさい…今日は弟もお母さんもいるから……」
「なんだよ〜最近、そればっかだな。前はそうでもなかったのに…」
「ごめんなさい…」
ごめんなさい。ほんとはお母さんも幸人も今夜はいないんです。だけど…
「ま、しょうがないか。」
「…………」
そういうと直純君は前を歩く高田君たちに合流してしまいました。
…私はこういう直純君が苦手でした。なにかと私の家に来たり、私を家に誘ったりしてエッチな事をさせる直純君。
元々性に関する知識が薄かった私にはこの行動が思春期の男の子にはよくあることだと知っても、受け入れることが難しかったのです。
こんな事するために直純君と付き合ってるんじゃないのに…そう思ったことが何度もあります。
でも涼子ちゃんのためにも直純君と仲良くしなきゃ。そう思って我慢して付き合ってきました。
……目の前では直純君も含めて、高田君が嬉しそうに美希ちゃんと笑いあっています。
心が、苦しいです。痛いです。潰れそうです。

私は、どうしたらいいんでしょう?




悶々とした想いを抱えながら、今日も涼子ちゃんと学校へ向かいます。
けど、今日は美希ちゃんが来ていません。
「あれ〜?あの美希どうしたのかなぁ?」
「ただの寝坊じゃないの?それとも体調崩したとか?」
「うーん。ま、いっか。あとでメール入れとこう。行こ、美穂」
「あ、う、うん」
涼子ちゃんに呼ばれ、麻希ちゃんと3人で学校に向かいます。

…なんでしょう。この感じ。すごく嫌な予感がします……
346冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/17(水) 22:08:51 ID:LfzlU0Yp
その嫌な予感は昼休み、涼子ちゃん達とお昼を取っているときに聞いた話で的中してしまいました。
「今日さ〜高田君も休みだったのよ。なんか怪しくない?」
「だよねー?しかも二人とも携帯に連絡してもなんにも返さないし」
「これはとうとう……?」
「だね!明日絶対問い詰めないと!」
涼子ちゃんと麻希ちゃんが楽しそうに話しています。そんな……まさか…
「あれ?美穂どしたの?具合でも悪い?」
私の様子に気づいたのか、涼子ちゃんが心配そうに顔を覗き込んできました。
「だ、だいじょぶ!なんでもないよ……」
まさか、こんなに早く…?
まだ涼子ちゃんがなにか言っていましたがその声がまるで聞き取れないほど、私の心は深く沈んでいっていました。



放課後、涼子ちゃんとわかれ、自転車で自宅に向かう途中も二人のことが頭から離れませんでした。
結局、美希ちゃんも高田君も学校には来ず、私達になんの連絡もくれませんでした。
もしかしてあの二人……で、でもそんな………
異様な不安感が胸の中を満たしていきます。
気がつくと、いつの間にか家の前の道までたどり着いていました。
………?あれ?誰だろう……?
家の前に、私と同じ学校の制服を着た女の子が立っています。
「あの…すいません。家になにか用ですか……?」
私が呼びかけると、家の中を伺っていた女の子はゆっくりとこちらを向き始めました。
「…こんばんは。始めまして。緑川美穂さん?」
メガネをかけたショートカットの可愛らしい顔立ちをしたその子は、私と同じ学年の子のようでした。
「はい……そうですけど…あなたは?」
「私は3年の庄田秋穂。少し、あなたにお話があるんだけど……」
庄田秋穂と名乗るその女の子は、小さく会釈しながら私に薄く微笑みかけてきました。



――その笑顔を見た瞬間、とてつもない悪寒が背中を走っていったのが、私にはよくわかりました……
347 ◆SVNDcoHudE :2007/10/17(水) 22:10:16 ID:LfzlU0Yp
終わりです。次からようやく要君視点でのお話です。緑川さんと緑山さんは別人です。誤植ではありません、たぶん。
キャラの多さについてですが、当初から群像劇みたいな感じにしようと思ってたのでこの数になってしまいました。
ちゃんとまとめられるようにがんばります・・・
348名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 22:11:51 ID:mYwMsN5Q
リアルタイムGJ
登場人物多くて大変でしょうが頑張ってください
349名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 22:11:52 ID:f952zCMT
GJ。

高田は別に悪いことしてないが、死ねばいいのにって思った
350名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 22:13:42 ID:lHmKw6fW
一旦人間関係を図で表してみたい。
中心にいるのは…美希なのか?
351名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 22:15:51 ID:i7MjV0yc
>>349
勝手な憶測で人の気持ちをああだこうだ言うのは、結構悪いことだと思う
352名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 22:16:43 ID:20x5pWVy
GJ
そういえば読み返してて思ったんだが
美希って昔から要のことが好きだったのかな?
353名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 22:36:01 ID:5so/pS4U
>>347
GJっす!
>当初から群像劇みたいな感じにしようと思ってたのでこの数になってしまいました。
この一言でキャラの数の多さに納得しました。
話をまとめるのは色々と大変でしょうが頑張ってください!!
354名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 22:36:01 ID:+sQO8w9G
登場人物多くて混乱するって人・作者は自分なりにまとめてみるといいよ
iEditってのがフリーソフト且つ人間関係を図に表せるから
まぁ、もう知ってるかもしれんけど
355名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 22:39:38 ID:RDhwxgnR
GJ!
俺は庄田が一番許せないな
もし美希への恨みが原因で要も美穂も利用してるとしたらマジ許せねえ
356名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 23:00:19 ID:9SGG1+1j
登場人物に生の感情向けるな阿呆
357名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 23:09:58 ID:f952zCMT
>>356
クールビズだな

感情を一切省いて読み物よむとかマジ無理だわ
358名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 23:14:12 ID:NsEBaRFe
どの辺りにBizがからんでんだw
359名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 23:14:45 ID:2si16v74
秋穂がかき回さなかったら、駄目な要君が才色兼備な高田君に彼女奪われるだけの話で終わってしまうじゃないか。
ってか現状そう終わりそうだ。秋穂の美希への恨みの強さで成り立ってる作品でもあるな。
360名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 23:26:42 ID:Q6sJSfEj
人物の名前すら覚えてないようなのが何人もいる。
とりあえず話を広げすぎずまとめてくれ
361名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 00:07:41 ID:5aYTNZe3
秋穂は嫌がらせで動いてるようにしか見えないのがなんともなあ
誰かへの愛ゆえにかき回すんならこのスレでは大好物だけど
362名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 00:34:57 ID:YtByLTU1
最初は要が主人公だったのに、
今はだれが主人公なのか分かんなくなっちゃってるな
363名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 00:40:07 ID:qH0VT7+3
まー、群像劇ってのはそうしたもんさ
364名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 00:54:13 ID:YtByLTU1
>>363
そういうもんなのか

あんまり男の嫉妬は見たくねえけど、
とりあえず服でも脱いで待ってるか
365名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 10:34:47 ID:7qFz832W
とりあえずみんな、昔の作品でも読んで和もう
俺は合鍵ね
366名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 12:04:14 ID:0OjdD6+2
…「」の横に誰が喋ってるか書いてあるようなSSじゃ和めない
367名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 12:06:47 ID:V5qJQ4Cc
読んでからモノを言え
368名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 12:25:03 ID:KtSthMpw
合鍵は・・・・・・・



最後、飛行機事故で
369名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 15:21:14 ID:S2xAEYSq
また盛り上がってきたなこのスレも。いいことだw
相関図ね・・・作者さんの許可がないとなんともなーネタバレ的なものもあるだろうし。
370名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 15:33:19 ID:ZnBORvD/
だよな草のときもわからんから設定とか書いてくださいとかうやつもいたが
基本的にそういうのは個人個人でやらないと作者の邪魔しちゃうからアウトなんだよなー
371名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 16:19:59 ID:R+sUnlir
そろそろ、草叩きのように星空叩きが出てくるのかな?
トライデント氏叩きの時は酷かった。おかげで彼はこのスレじゃあ
すっかりと落ち目になってしまいましたね

他の作者もそうならないように祈る
372名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 16:26:37 ID:YtByLTU1
保管庫を見たが、煌めく〜 は彼の作品で一番好きだな
373名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 16:27:39 ID:H34qVORI
スルーする
374名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 16:30:52 ID:nJFT3/3s
するする
375名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 17:24:20 ID:grqLD73z
スルー技能検定4級
376名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 17:37:50 ID:5Ur7Qw7y
>>366
自然に「とっしーの横で誰か喋ってるか書いてあるようなSSじゃ和めない」と読んで
「常に主人公の横に嫉妬深い女の子がいるこのスレ向きの話なんじゃね」
と思った俺いもげっしー

……これはいけるかもしれんね
377名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 19:20:51 ID:AGU4J7cW
>>376
imgに帰れ
378 ◆SVNDcoHudE :2007/10/18(木) 21:43:25 ID:XApOrkdE
こんばんは。関係図についてですが、みなさんで自由に作っていただけるとありがたいです。
キャラの関係がみなさんからどんなふうに見えてるのか、すごく興味があるので。
一応「私から見たキャラ相関図」を>>354さんから紹介されたツールを使って作ってみたいと思います
できるかどうか不安ですが(汗)それでは、次回もよろしくおねがいいたします。
379名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 23:35:51 ID:zkdwUMFw
あはははは、この手の話題になったとき私が昔名無しで書いた作品は絶対にあげられない駄作者な私乙。
ていうか記憶に残らないのは兎も角読んではくれているのだろうかねぇ…
380名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 23:50:32 ID:iAC0BTtf
スルー技能検定準2級試験
381名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 00:18:10 ID:1vv97Uzi
>>378
おお、まさか本当に作ってくださるとは・・・まってますよ〜
382名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 00:45:54 ID:xTCHtbjq
>>379
安心しろ、保管庫の作品は全て読んでる
383名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 00:53:44 ID:4+dTZ2+b
序盤から登場人物のほとんどに個性を与えてしまったからこんがらがる
>>347に限らず、自分で作った設定に縛られてリタイヤする作者多いんじゃない
あと高田KY
384名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 01:16:39 ID:nKPhBbs6
スルー技能検定5級試験
385名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 01:25:26 ID:Gu8OoJj6
│   \  __  /
│   _ (m) _ピコーン
│      |ミ|
│   /  `´  \
│     ('A`)    体技:スルー!
│     ノヽノヽ
│       くく

│ ≡  ('('('('A` )
│≡ 〜( ( ( ( 〜)
↓ ≡  ノノノノ ノ  サッ
386名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 02:05:52 ID:+5jVjMh8
RIG2氏は拘束されてるのかなあ
387名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 02:08:27 ID:wbqe4CUj
パリイ
388 ◆SVNDcoHudE :2007/10/19(金) 22:59:23 ID:fJ4vnqUo
こんばんわ。一応ZIPでできたやつをttp://www.hsjp.net/upload/index.htmlに上げました
見づらいようでしたらすいません・・・
389名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 14:27:56 ID:z/SuzAk+
>>388
アップしたファイル名を知らせず、それでも見つけて解凍して出てきたファイル名が不思議なファイル名で
それを.zipに名前変更した後解凍してみたら拡張子が.ied (-ω-`)ナニコレ?
スレ読み返してiEditのドキュメントと判り、iEditをインストールして開いて見たらこの図があった

http://www.hsjp.net/upload/src/up4552.gif

見づらいなんてレベルじゃねぇ!
390名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 17:00:33 ID:TCDc+KJE
>>389
人物多すぎワラタ
391名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 17:19:51 ID:Wxf6/6Nz
ちょwしめて20名様になりますwww

話は非常に期待してるんで、頑張ってくれぃ(`・ω・´)
392名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 18:50:34 ID:6cFY3OXj
二十人もいるのかよw
それだけキャラが居るなら何も一本にまとめなくてもネタを振り分けて何本かの別のストーリーにしておいたほうが……とも思うけどなんにせよwktkして待ちます
393名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 19:01:44 ID:4Ee+O7TG
まあ名前5人くらいしか覚えてないけど。
というか正直キャラを動かしきれてないのでもう少し減らした方がいいと思う
394転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/20(土) 19:05:59 ID:Hc66HQPw
投下します
395転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/20(土) 19:06:31 ID:Hc66HQPw
 山岡さんとの話が済んだ後も学園祭へ向けて準備は着々と進んでいった。
 6時になるまで帰る人は誰もいなくて、
 本当になんでもないことだけれど、みんなとこうやって一つの目的に向かってゆくのはとても楽しい。
 それこそ学園祭の当日がこなければ良いのにとさえ思えてしまう。

「お疲れさん」
「また明日ね」
「じゃあな〜」

 また明日もあるのに、教室を去ってゆく級友達の後姿を追うのは妙に寂しい。
 なんとなく、最後の二人になるまで僕は全員の背中を見送った。
「天野君、私達も帰ろう」
 山岡さんに促されて廊下へ出ると、雨音ちゃんが鞄を持ったまま窓辺に背中を預けていた。
 僕が教室から出てきたのを見つけると、表情を明るくしてこちらへと駆け寄ってくる。
「お疲れ様です、兄さん」
 雨音ちゃんは自然な動作で僕の左腕を取ると、山岡さんから僕を引き離すようにして歩き始める。
「ちょっと待って。どうしてそんなに急ぐの?」
 歩幅を緩めようとするも、雨音ちゃんは何も言わずに歩を進める。

「あ、あの、ちょっと待ってください……」

 山岡さんの声に僕が振り返ると雨音ちゃんはしぶしぶといった様子で足を止め、
 まるで喧嘩でも仕掛けるような剣幕で山岡さんを射抜く。
「何用ですか?」
「あ、あの……」
 萎縮してしまった山岡さんは次の言葉を出せないでいる。
 怯えている山岡さんを見る雨音ちゃんの目付きが次第に怖くなってきているので、ここは早々に助け舟を出す。
「えっと、雨音ちゃん。この子はクラスメイトの山岡さん。
 学園祭の実行委員で、最近模擬店の件でお世話になってる」
 人に見られてはマズイと雨音ちゃんに捕まっている左腕を外しながら、雨音ちゃんに山岡さん紹介する。
「こっちは妹の雨音ちゃん。
 ちょっと人見知りする子だから……別に怒ってるわけじゃないよ」
 同様に山岡さんにも雨音ちゃんを紹介するけれど、これは半分嘘。
 どちらかというと雨音ちゃんは人見知りする方だけれど、最低限の礼儀はわかっている。
 初対面の相手にいきなり冷たく接するようなことはこれが初めてだった。

「どうもよろしく」
 山岡さんが頭を下げると、
「……どうも」
 と、雨音ちゃんも軽く頭を下げる。
396転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/20(土) 19:07:28 ID:Hc66HQPw
「それで、どうしたの?」
「えっと、二人で話したいことがあるんですけど……」
「それは構わな―――」
「いったい何の話なんですか?」
 相変わらずの冷めた口調で雨音ちゃんが僕を遮った。
 どうも雨音ちゃんは山岡さんを敵視している節がある。
 そういえば、姉さんも山岡さんに対して良い印象を持っていないらしい。
 僕の知る限り、雨音ちゃんと山岡さんは初対面で姉さんはまだ会ってすらいないはずなのに……。
「雨音ちゃん、山岡さんは僕の友達とはいえ先輩なんだからそういう態度はいけないと思う」
 雨音ちゃんを注意すると、無言でこちらを恨めしそうな目で睨む。
 なんとなくだけれど『どうしてあの人の肩を持つんですか?』と、責められているような気がする。

「いえ、別にいいんです。それで、話というのは学園祭についての話なんですけど……」
「それは兄さんとじゃなくて、実行委員の人と話し合うことじゃないんですか?」

「えっと……それは……」

 クラスの内情を知らない雨音ちゃんには、それに違和感を感じるのだろう。

「僕達のクラスの出し物は喫茶店なんだけど、
 実行委員は二人とも喫茶店についてよく知らないらしくて、それで―――」

「先程から兄さんには聞いていません! 私は山岡先輩に聞いているんです!!」

 息が詰まって、しんと場が静まる。
 雨音ちゃんがこれだけ敵意を剥き出しにしているのを見るのは久しぶりだった。
 それは昔の僕に向けられていた感情。
 威嚇でも警告でもなく、はっきりとした敵対意思。

「でも、私達が何を話していようと貴女には関係ないじゃないですか………」

 圧倒されていた山岡さんが弱腰になりながらも反論を続ける。

「天野君が誰と何を話していようと、それを兄妹だからっていちいち報告しないといけませんか?
 天野君には天野君の人付き合いがあります。それを妹だからといって蔑ろにするのはおかしいと思います」

 一見弱々しく見える山岡さん。
 けれど、その目には一本芯の通ったものを感じた。

 ぎりぃぃぃ。
 と、不愉快な音が鼓膜を震わす。
 音の方角に目を向けるとそこには冷めた表情で歯を食いしばる雨音ちゃんがいる。

「別に僕は気にしてないよ!」

 咄嗟の判断で雨音ちゃんが言葉を発する前に口を挟む。
 もしも雨音ちゃんが口を開いていたら、恐ろしいことになっていたのが本能的にわかってしまったから。

 もしかしたら……この二人は、絶望的に反りが合わないのかもしれない。
 今になってそんな事を思う。
397転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/20(土) 19:08:26 ID:Hc66HQPw
「そうやって、すぐに妹さんを庇う!!
 私、いつも思っていたんですけど、天野君は妹さんやお姉さんに対して甘すぎですし、
 お二人は天野君に寄りかかりすぎです。
 兄妹だからって、いつまでもベタベタしていたら気持ち悪いだけですよ!」

 既に興奮状態に突入している山岡さんは我を忘れて言葉を投げつけてくる。

「私と兄さんは―――!!」

 途中まで言葉にして雨音ちゃんは揺れる瞳でほんの一度だけこちらを見ると、全力でブレーキをかける。
 噴火寸前の雨音ちゃんが踏みとどまった。
 そのときの僕はどんな顔をしていたのだろう?
 わかっていたのはその後に続く言葉が―――本当の兄弟じゃないってことだけ。

「まさか、お兄さんが一番だなんて言うわけありませんよね?」

 雨音ちゃんの表情に隠しきれないほどの怒りと動揺が浮かび上がる。

「……当たり前じゃないですか」

 それでも、雨音ちゃんは嘘をついた。

「ごめん。やっぱり今日はもう帰るよ」
「え?」
「別に今日じゃなくても大丈夫でしょ?」
 有無を言わせないように告げて、雨音ちゃんの背中を軽く叩いて先を促す。
「埋め合わせは明日するからさ」
 速すぎないよう、遅すぎないようにこの場を離れる。
 校門を出るまでの間、小さな背中はずっと震えたままだった。



398転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/20(土) 19:09:42 ID:Hc66HQPw
「あのさ、ちょっと離れて欲しいんだけど……」
「嫌です」
 校門を出て人目の多い道を抜けると、雨音ちゃんは今朝と同じように左腕に抱きついて僕に身体を預けてくる。
 今朝と同じように姉さんを置いてきたまま。
 でも、今朝とは違って今は人の目もある。
 そっと腕を解こうとすると、雨音ちゃんが上目使いに睨みつけてくる。
「私の怒りはまだ治まっていません……」
 いったいどうしろというのだろうか?
 雨音ちゃんの要望に応えていつまでもこうしているわけにもいかない。
 空模様も薄暗くなって顔が確認しづらいとはいえ、誰かに見られたりでもしたら大問題になる。
 それに僕だって死ぬほど恥ずかしい。
 雨音ちゃんには悪いけれど、少しだけ強めに腕を引っこ抜こうと試みる。
「ダメッ!!」
 雨音ちゃんがじたばたとが暴れ始めるが実はそれどころじゃない。
 こうやって触れ合っているとわかるが女の子の身体は柔らかくて、危うい。
 男とは構造からして違う。
 正直、左腕にもう少し力を込めて抱きしめたなら殺してしまえるのではないかと思った。
 そのくらい触れたら壊れてしまいそうなんだけど離れたくないと思わせてしまう感覚。
 だって、すごく暖かい。
 得体の知れない安心感がある。

 早い話が―――ヤバイ。

「やっぱりマズイって!!」
 火が出そうな勢いで顔が真っ赤になっていくのがわかる。
 雨音ちゃんは拗ねた顔でこちらを見上げ、
「そんなに、嫌ですか……」
 と、僕を責め上げる。

 結局、雨音ちゃんに押し切られ、なるべく人気の無い道を選んで進んでゆくことになる。

「あのさ、山岡さんのことなんだけど……」
「あの人はよくないです」
 歩き始めて数歩、雨音ちゃんが口を開く。
「どうも山岡さんとは相性が悪いみたいだね」
「私、あの人嫌いですから……」
「どうして?」
「………理由はありません」
 本当にそうなのだろうか?
 聞いた所で雨音ちゃんは答えてくれないような気がした。

「そういえば姉さんの話は聞いた?」
「例の『好きな人がいる』発言ですか?」
「そう、雨音ちゃんは誰か知ってる?」
 雨音ちゃんは微笑むように口元に手を当てる。

「知ってますよ―――でも、教えてあげません」

「え!? どうして?」
「兄さんには関係ありませんから……」
 関係ない、のだろうか?
 こと恋愛に関しては兄弟である自分がどのようなスタンスを取れば良いのかわからない。
「それに、姉さんのことなんてどうでもいいじゃないですか?」
「どうでもいいって……そんな……」
「先程から姉さんやあの女の人の話ばかり。
 そうやって、兄さんが他の女性の話をするたびに私は不安になります」

 雨音ちゃんが大きな一歩で僕の正面に立つ。
 道を塞がれて、僕も自然と立ち止まる。
399転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/20(土) 19:10:45 ID:Hc66HQPw
「ねぇ、兄さん。
 山岡先輩に詰問されて私が思わず兄さんとの関係を明かそうとしたとき、私は途中で止めましたよね。
 本当は凄く言いたかったんです。私と兄さんは血が繋がっていない、私と兄さんは結ばれてもいいんだって。
 でも、それをしなかったのは兄さんがとても不安そうな顔をしていたから……」

 雨音ちゃんが一歩踏み出すと、昨日と同じ柔らかい香りが鼻先を掠めてゆく。

「だから、今度は兄さんの番です―――私を安心させてください」
 そう言って、雨音ちゃんはそっと目を閉じた。

 言葉が右から左へと流れてゆく。現状認識が事態に追いついてゆかない。
 目の前には目を閉じて何かを待っている雨音ちゃん。
 その姿が記憶のイメージと重なって、昨日の晩に何があったのかを唇が鮮明に思い出す。

 僕はもう薄いピンクの唇から目が離せない。
 重力のようにどんどん意識が雨音ちゃんの唇へと引き込まれてゆく。

 一度も二度も変わらない!!
 奪い取ってしまえ!!
 あの子もそれを望んでる!!

 けれど、あと一歩が踏み出せない。
 ここがギリギリの分岐点。
 ここを超えたら後戻りできない。
 僕は血の繋がりが無いにせよ雨音ちゃんのことを本当の妹だと思ってる。
 戸籍上だって、イモウトだ。
 だから雨音ちゃんが望むような関係はあってはならない。
400転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/20(土) 19:11:41 ID:Hc66HQPw
 それに……、
 たとえ僕が雨音ちゃんを受け入れたとしても雨音ちゃんは今以上に僕に依存してしまう。
 きっと、これより先の雨音ちゃんは僕のために何でもしてくれるだろう。

 どんなに淫らなことでも、どんなに残酷なことでも、どんなに間違ったことでも………

 でもそれは本来の雨音ちゃんを壊してしまうことかもしれない。
 恥ずかしがり屋で、そのくせ少し甘えん坊で、なんだかんだで姉思いな雨音ちゃんを歪めてしまう。

 先程の山岡さんとのやり取りだってそう。
 他人を傷つけるようなことを言うような子じゃない。
 本当は兄思いのとても優しい子。

 今日の姉さんの対応にしたってそう。
 姉さんを放って置けるような薄情な子じゃない。
 二人にはいつまでも仲良くしていて欲しい。

 雨音ちゃんは望んでいるのかもしれない。
 全てを委ねてしまうことを……。
 たとえどんな選択であろうと、望む権利は雨音ちゃんにある。
 大体それが間違いだなんて僕が言えるわけでもない。

 だからこれは僕の我が儘。
 本当の妹のように真剣に接してきた、足りないながらも本気で兄であろうとした、
 そんな出来損ないの男の最後の意地。

 僕のための雨音ちゃんなんて、僕は見たくない。
 こんな駄目な兄に依存なんかしなくていい。
 雨音ちゃんには自分の足で歩いてゆける素敵な女性になって欲しい。
 僕は雨音ちゃんのこれからを大切にしたい。

 雨音ちゃんは掛け替えの無い、たった一人の僕の妹だから。
401転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/20(土) 19:12:28 ID:Hc66HQPw
「雨音ちゃん………」
 そっと雨音ちゃんの肩を押し返す。

「だめだよ」

 その瞬間、雨音ちゃんの笑顔に亀裂が走り、剥げ落ちた表情の裏からはあの晩と同じ瞳が僕を覗いていた。
「………………どうしてですか?」
「僕らは……」
「兄妹、ですか?」
 黙って頷くと、雨音ちゃんは僕の両腕を強く掴む。
 でも、痛くは無い。その指先は僕を傷つけないように必死に抵抗し、震えていた。

「違いますよ!! 何度も……何度も言わせないでください……」

 顔を隠すように俯きながら、雨音ちゃんは僕の胸にもたれかかる。
 かすれた声。
 華奢な身体。
 身体の根っこから雨音ちゃんを抱きしめてあげたい衝動が込み上げてくる。

「雨音ちゃんは僕の―――妹だよ」

 でも、必死に押し留めた。
 こうした方が雨音ちゃんのためになる。

「……どうして……どうしてそんなイジワルなこと言うんですか……嫌です……私、もう……」

 僕は何も言わなかった。
 口を開けば、この根性無しはきっと優しいことを言ってしまう。
 でもそれは雨音ちゃんのためにはならない。

「………っ!!」

 軽く僕を突き飛ばして、雨音ちゃんは走り去ってしまう。
 遠ざかる後ろ姿―――僕は何も言わずに見送った。



402転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/20(土) 19:13:30 ID:Hc66HQPw

 これで、よかった。

 優しさじゃない。
 自分の身勝手で雨音ちゃんを傷つけた。
 それも、残酷な方法で。

 これで、雨音ちゃんは僕を恨むだろう。
 これで、雨音ちゃんの僕に対する依存は薄れる。
 これで、僕らは兄妹のまま。

 これで、よかった。

 今は恨んでくれて構わない。
 でも、いつかわかって欲しい。

 初めて雨音ちゃんが僕を兄さんと呼んでくれた日を覚えてる。
 あの日から僕の天野八雲としての本当の人生が始まった。
 それから毎日が嬉しくて、楽しくて、温かくて………
 僕はそれを手放せなくて―――強く握り締めた。

 少しでも緩めたら家族を失うと恐れてばかりいた。

 でも、本当はもっと前に巣立たせなければいけなかった。
 多少厳しいことを言っても、たまには叱ってでも、例え嫌われるような事になったとしても、
 本当の兄であろうとするならばそうすべきだった。

 だから、これでよかった。

 許されないのに、やけに目の前が滲んで見えない。
 よかったのにどうしてだろう?
 思い返してみると、単純な理由だった。

 僕は雨音ちゃんに惹かれ始めていた。

 その理由はもっと単純。

 本当はずっと誰かに好きだと言ってもらいたかった。
 ただそれだけ。

 家族も、兄弟も、本当はどうでもいい。
 必死に家族を取り繕っていたのも、人の顔色を窺ってしまう性格も、剥き出しの自分を閉じ込めたのも、
 ただ、『誰か』に『好き』と言ってもらいたかったから。

 雨音ちゃんは初めて僕に好きだと言ってくれた人。愛しているとまで言ってくれた人。
 雨音ちゃんを好きになる理由はそれで十分だったのに……。

 奥歯がカタカタと鳴っている。
 意思は曲げられても、感情までは曲げられない。
 瞳の奥から熱いものが込み上げてくる。


 今更気付くなんて本当に鈍い。


 本当はどちらが欲しかったのだろう?

 家族と、愛情と―――
403転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/20(土) 19:14:14 ID:Hc66HQPw
 ここまでです。

 次回は姉も出ます。
404名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 19:23:54 ID:hChlFMD5
>>403
GJ!
主人公ちょっとカッコヨス
でも次回お姉ちゃんに頑張って欲しいぞ
405名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 19:34:19 ID:QCll7slu
>>393
確かにちょっと多いよな。けど中心のやつら以外モブキャラだと思えばいいんでないの?MOMOちゃんとかは違うかもしれんが。
キャラ動かしきれてないんじゃなくてわざと動かしてないように見えるけど。もっとよく読めよ。
>>403
GJ!!雨音ちゃんフラグか!
406名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 19:45:54 ID:Wxf6/6Nz
グッジョブ!!
お姉ちゃんに期待大
407名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 21:01:28 ID:oRmUVdUD
兄でいたい気持ちと、好意が嬉しくて今すぐ答えたい気持ちに揺れる主人公が切ないな……
408名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 21:16:47 ID:05vqGkgj
GJ!!

だがせつNEEEEEEEE!!
409名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 21:45:10 ID:s0Ka8Lo6
サイコーですよ!!!!!
410Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/20(土) 23:54:51 ID:GEgDJzTM
 流れ行く景色を見つめ呟く。

「そろそろ帝都が見えてきてもいい頃だな…」

 ウィルは馬車の小窓を覗きながら独りごちた。
遥か向こうに見える林と地平の先まで続く青々とした平野。
その青を鮮やかに照らす空は、これまた底抜けに蒼い。
そんな風景がずっと続いているが、未だ帝都らしき輪郭を確認することはできなかった。


 ウィルは今、オークニーを離れ帝都へ続く馬車の中で揺られている。
オークニーから帝国へは定期便も出ているのだが、彼が現在利用しているのはアシュリーに頼んで紹介してもらった馬車だ。
少しでも早く帝都に行きたかった彼は定期便には乗らず、ある程度融通が利くオークニー領主御用達の高速馬車に依頼したのだ。


「んふふ〜」

 すりすり。


 グレイル帝国。
大陸の三分の一を領有し、建国以来、北部に位置する北方大教国と頻繁に戦争を繰り返してきた大国だ。
…故に、帝国の歴史は有史から現在に至るその全てが血に塗れていると言っても過言ではない。
だが、ここから見える景色は穏やかそのもの。とても周りの国を震え上がらせる強国の領土とは思えない。
此処二十年近くは争い事がなかったせいか、それとも元来この辺りはそういう場所なのか。
真相は不明だが、少なくともウィルにとってはかつての故郷を連想させるくらいに平和な風景だった。


「にゃ〜」

 すりすり。


 馬車を走らせること早十日。
御者にはかなりの無理を言って帝都までの道を急いでもらっている。
危うく馬を二頭潰しかけたのは気の毒だったが、その甲斐あって今日中には帝都に着きそうだ。
411Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/20(土) 23:55:41 ID:GEgDJzTM


「ウィリアムぅ〜」

 すりすり。


「………あのですね、姫様」

 はぁ、と肩を落として一拍。
 さっきから腕に頬擦りしている少女の存在に、彼はとうとう耐えかねて眉間に手を当てた。
「これは遠足でも旅行でもないんですからね。そこんところ解ってます?」
「ウィリアム、堅苦しいのは言いっこなしじゃ。ほれほれ、もっと近ぅ寄れ」

……駄目だこりゃ。
 ウィルは項垂れながら、マリベルを引き離すのは無理だと潔く諦めた。

「まったく、もう…」

「せっかくマリィがいないのじゃ。もっとイチャイチャしても良かろう?」
「その団長から『二人きりでイチャイチャしない』ことを条件に同行を許してもらったのを忘れてませんか?」

 ぺたぺたと体を触りまくるマリベル王女殿下を諌めながら、もう一度車窓から外に目をやった。
後ろに流れていく景色の速さを考えれば、相当速いスピードで帝都に向かっているのはよく解る。
それでもなぜかウィルは一抹の不安を禁じえなかった。


「姫様。本当にシャロンちゃんの故郷って帝都なんですか?」
 既に此処まで来ておいて何を今さら……という気がしないでもないが、念のためウィルは尋ねてみた。
いや、確認というよりはむしろ自分の不安な気分を和らげたいという思いが多分に含まれている。
「むっ…。わらわの言葉が信用ならぬか?」
「そういうわけじゃないんですけど…」
 マリベルの責める視線から逃れるように他所に目を向ける。

 マリベル王女を信用していないわけではないが――ウィルは"あの"シャロンちゃんが自分の出生について簡単に口を開くとは思えなかった。
彼女とは入団直後の訓練騎士時代に一ヶ月と少し、そして王国を出てからの半年くらいの付き合いだが。
 ウィルはシャロンの素性について殆ど何も知らなかった。
解っているのは彼女の類稀なスキル――旅慣れしている、ナイフの扱いに覚えがある――等から、侍女をやる以前に
別の生業をしていたのではないかと推測できるくらいなのだ。
 彼女自身あまり話したがらないことや、偽名を使っていることを考えるときっと後ろ暗い過去でも持っているのだろう。
そういう気持ちは痛いほどよく知っているウィルだからこそ、深く追求することもしなかったのだが。
412Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/20(土) 23:56:26 ID:GEgDJzTM


「…まだ、シャロンと知り合って間もない頃の話なのじゃがな」
 昔を思い出すように。
流れる景色に眼をやりながらマリベルが口を開いた。

「帝国のロラン家から書簡が届いたことがあったのじゃ。
と言ってもまぁ、内容は何の他愛も無い、戦時中の援助物資に関することじゃったのじゃが……」

 そのときの光景が余程不可解だったのだろうか。マリベルは僅かに眉を顰めた。

「あのときのシャロンの顔はよく覚えておる。
おぬしも知っている通り、いつもはピクリとも変わらないあやつの表情が、みるみるうちに真っ青になっておった。
わらわはただロラン家から手紙が来たとしか言っておらぬのに、じゃぞ?」

「…ロラン家と面識でもあるんでしょうか」
 そうだとするなら、恐らく只事ではない。
――あのシャロンちゃんが名前を聞くだけで血の気を引かせるほどなんて。
 ウィルはこれまで見てきたあらゆる限りの彼女の表情を思い出してみたが、
多少驚いているのがせいぜいで血の気が引くほど引き攣った顔には見覚えがなかった。

「まぁ、細かい部分はわらわにも解らぬのじゃがな。
ともかく、そのときにシャロンを問い詰めたら『自分は帝都の生まれだから、懐かしい名前を聞いて驚いた』と答えよった。
あの顔はロラン家との関係を誤魔化すのに精一杯で思わず生まれ故郷まで口走ってしまった…という感じじゃな」

「やっぱり――先週届いた、俺宛ての手紙と関係あるのかもしれませんね……」
 ロラン家から届いた依頼書。
あの手紙には仕事の内容については殆ど触れられてなかった。
その手紙を見たときのシャロンは、さして気に留めるほどの変化はなかったとウィルは記憶している。

 シャロンが姿を消したのはそれから数日経った頃だ。
マリベルの察しの通り、シャロンが帝都に居た頃にロラン家と関わっていたとするなら。
やはり、マーガレット=ロランなる人物から来た手紙が何らかの原因になっていると考えるのが自然と言えよう。

「…ロラン家で使用人やってた……とかだけじゃなさそうだな、いくらなんでも」
 シャロンのナイフ捌きを思い出し、嘆息。
413Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/20(土) 23:57:33 ID:GEgDJzTM

「――何を問いただすにしても、先ずはシャロンを捜し出さねば始まらぬな」
 シャロンが残していった置手紙を取り出して、マリベルはひとり呟いた。
ウィルたちの中では一番付き合いが長いせいか、心配しているのが表情からも容易く読み取れる。





 さて。
このあたりでなぜウィルたちが帝都に向かっているのか、現在に至るまでの経緯を説明せねばなるまい。
事の始まりは十日前。アシュリーが催した、あの悪名高いミス・オークニー・コンテストから数日が過ぎた頃のことだ。




「ウィリアムッ!起きよッ、ウィリアム!!」

 マリベルの叫ぶ声で覚醒する。
騒がしい起こされ方ではあったが、ウィルにとってはいつもの日常だ。
ただこの日は少しばかり勝手が違っていた。

「ウィリアム、頼む!起きてくれ!」
 やや必死なマリベル王女の声色で、ウィルは飛び跳ねるように目覚めた。

「なっ、なんなんですっ!?」
 キョロキョロと周りを見わたしながら、脇に置いてあった一対の剣を引っ掴む。
怒号で目覚めることはウィルにとっては戦争で慣れっこだったのだが。
同時にそういうときは決まって敵襲によるものだったから、習慣のせいか目が覚めたウィルは異様な興奮状態だった。
 家の中に賊でも入り込んだのか、と視線を尖らせながらいつでも戦いになってもいいように周囲の気配に気をやっていた。

「シャロンがっ、シャロンがっ…!」
 その彼の胸元へ、言葉を詰まらせながらすがり付いてくるマリベル。
彼女のその只ならぬ形相にウィルは戦慄した。

―――まさか。
 まさか、シャロンちゃんが……。


「――実家に帰りおったッ!!」


「…………………は?」


 かしゃん、と。
ウィルは握っていた剣を取り落とした。
414名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 23:58:10 ID:z/SuzAk+
>>403
うあーっ、もっと読みてェェェェェェェッ!!!
それとウッカリ主人公に萌えてしまった!
415Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/20(土) 23:58:23 ID:GEgDJzTM



――――――…………



「……で。姫様が起きたときにはその手紙を置いて姿を消してたと。そういうことなんですね?」

 とりあえずコーヒーを飲んで一端奮起していた感情を落ち着けてから。
マリベルたちから一部始終の話を聞いたウィルが、二人の顔を交互に見て確認する。

「私も今起きてきたばかりなので詳しいことは解らないんですけど……」
 ウィルが叩き起こされる少し前に、既に起床していたというマリィも未だよく状況を把握していないらしい。
だからこうして朝食も作らず珈琲だけでテーブルを囲んでいるわけなのだが。
 置手紙を見つけたマリベルが最初に騒ぎ立てたせいで余計に場が混乱してしまった。

「とりあえずその手紙、見せてもらえますか?」
 ウィルはマリベルが握っている便箋を指差して、話を切り出した。
余程強く握っていたらしく、その手紙はもうマリベルの手の中でくしゃくしゃになっている。

「う、うむ」
 そう頷いてシャロンが残していったという置手紙を差し出すマリベル。
 
「……えぇと……」
 この上なく悪い目覚めで頭をポリポリ掻きながら、受け取った手紙に目を通した。



『拝啓、麗しきウィリアム様とその愛人様方へ。
 少し所用を思い出しましたので、暫く実家の方へ帰らせていただきます。
二月もすれば戻ってこられると思いますので、どうかご心配なさらぬよう。
                                     敬具。
   追伸。
  実家に帰る理由は、御二方が夜な夜な盛り声を上げて眠れないからというわけでは御座いませんので悪しからず。』


――う〜む。
 一通り手紙を読んだウィルはどうしたものかと首を捻っていた。
相変わらず達筆だなぁとか、文脈の要所要所で皮肉が混じってるのが実に彼女らしいだとか、そんなことは置いといて。

「突然実家に帰るって……どういうことなんだろう。
俺たちに一言も言わないで、敢えてわざわざ手紙を残すなんて……」
 シャロンはあまり多くを語らない性格ではあったが、こういう大事なことを黙っているほど無口というわけでもない。
むしろ、こ重要なことを話忘れるのはマリィの方が多い。シャロンは彼らの顔ぶれの中では最もしっかりした人物であったはずだ。
喉の奥に小骨が刺さったような違和感を感じて、ウィルは顎に手を当てた。
416Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/20(土) 23:59:20 ID:GEgDJzTM

「なにかシャロンさんに変わった様子はなかったんですか?」
「いえ、特には――――あ」
 横から手紙の文章を覗き込んでいたマリィの問いに、ウィルは小さく声を上げてから内心「しまった」と思った。

「……?」
「あ、いえ。なんでもありません」

 船上での突然のキス。不意にその時の光景が脳裡に浮かんだ。

『それでしたら―――――お言葉に甘えて…』

 危うく紅潮しそうになったが、すぐに別のことを頭に思い浮かべてマリィたちに悟られるのだけは避けた。


(次の日にはもういつもどおりのシャロンちゃんだったし………あのキスと今回の一件は関係ないと思うんだけどなぁ…)

 
「心配ですね。俺たちの考えすぎならいいんですが……一応追いかけた方がよくありませんか?」
「…あやつは元から己のことは話さないタチじゃったからな……」
「子供じゃないんですから、過度の心配は余計に話をややこしくするだけですよ」

 めいめい思ったことを口にする。

 少しでも心当たりがあれば多少なりとも安心できたのだろうが。
四人の中では最も落ち着いている人物であったシャロンには、今まで目立った奇行もなかった。
オークニーの住人からも『何でも屋"ハーレム"の唯一の良心』と言われていたほどだ。

それ故に今回の一件は三人――特にマリベルにとっては酷く違和感を感じる行動に映るのだろう。
酷く心配げなマリベルの表情を垣間見たウィルは心を痛めた。

「……姫様…」

「やっぱり五月蝿い盛り声というのはマリィの方だと思うのじゃが、そこんとこどうじゃろう?」
「なっ…!?そ、そそ、それはあなたの方でしょう!」

「……そっちの心配ですか」
 いつものようにいがみ合い始める二人を他所に、ウィルはシャロンの助け舟がないことを心細く思っていた。

「実家……ねぇ。
俺はてっきりシャロンちゃんは根無し草だと思ってたんですけど」

 王都を出てから此処――オークニーまでの旅路の際、頼もしいくらい旅慣れた彼女の一挙一投足を脳裡に浮かべる。
どう考えたって侍女をやる前はあちこち旅して回ってたに違いない。
 失礼な話ではあるが、シャロンにも帰る家はないのだろうとウィルは予想していた。
417Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/21(日) 00:00:07 ID:MbENM8oN


「そもそも、シャロンさんの実家ってどこなんですか?」
 マリィの素朴な質問。
まぁ当然の疑問だろう。
だが、当のウィルは完全に失念していたらしく、顎に手を当てたまま固まった。

「あー……えーと……」
 いくら記憶を掘り起こそうとも答えられるはずがない。
シャロンについての生い立ちは全くといっていいほど聞かされてないのだ。
ウィルが知っているのは、せいぜい本名がマリアンヌだったということくらいのはずだ。

「ああ、それなら…」
 と、横でマリベルが口を開く。

「シャロンの生まれ故郷なら、グレイル帝国の帝都じゃぞ」
 自らの記憶を辿るように目線を上に向けて、軽く頷いてからそう言った。

「へぇ……帝都出身なんですか。意外に都会生まれなん………ってちょっと!?」
 初めて聞いたとウィルは納得していたが、直後にいきなりマリベルに詰め寄る。
その形相にちょっとだけ王女様はたじろいだ。

「なっなんじゃ!?」
「なんじゃ、じゃないですよ!忘れたんですか!以前うち宛てに来たロラン家の手紙!
どう考えたってあれが原因じゃないですか!」

 グレイル帝国の大貴族ロラン家。
帝国のトップクラスの貴族ならその邸宅も帝都にあるはずだ。
シャロンの置手紙の文面を信じるなら、ロラン家のあの手紙が何らかの引き金になっている可能性は充分にある。
――思えば、あの手紙の中身についても不審な点が間々あった。

 僅かな――見方を変えれば過剰な心配だとも言える――
胸のあたりが詰まるような、ざわざわした不快感。

「………」
「ウィル?」

 ガタッと椅子を揺らす勢いで突然席を立ち、旅支度を始めたウィル。
モーニングコーヒー片手にそれをポカンと眺めながら、マリィが尋ねた。


「俺、とりあえず彼女を追いかけます。
取り越し苦労ならいいんですけど、どうもキナ臭い匂いがプンプンする」

 とりあえず最低限必要そうな荷物だけまとめながら、静かに問いに答えた。

「シャロンちゃんのナイフの腕前。内容が不明瞭な国外貴族からの依頼状。
……で、その後に消えた帝都出身のシャロンちゃん。
状況から言ってあからさまに怪しい」

「ちょ、ちょっと待ってください!今から行くんですか!?」

「早ければ早い程いいに決まってるじゃないですか。
運が良ければ帝都に着く前にシャロンちゃんとバッタリ会えるかも知れませんし」

 かつての経験からか。
『後手に回ったせいで取り返しのつかない事態になってからでは遅い』なんてことは今まで何度も味わってきた。
アリマテアの一連の騒動、ベイリン傭兵旅団の壊滅――それらを脳裡に思い返していた彼にとって、
日和見にシャロンの帰り待つ選択は到底できなかった。
418Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/21(日) 00:01:03 ID:MbENM8oN

「そ、そんな……いきなり……。
……帝都までの足の用意とかどうするんです…?
それによしんば目的地についてもシャロンさんが何処で何してるか、全く手がかりないんですよ?
まさかあの広い帝都を虱潰しに探すつもり……なんてことはないですよね?」
 マリィは荷物をまとめているウィルにくっ付いて回り、なんとか引きとめようと捲くし立てた。

「それは道中で考えます。
帝都中の貴族の邸宅を回って、新しく雇われたメイドがいないか訊いてまわってもいい。
後ろ暗い仕事をしてるなら情報屋に金を積めばいずれは接触できます。
何かしら方法はありますよ――どっちにしても帝都に行かないことには始まりません」

 最後に一対の剣が収められた鉄鞘を腰に挿して、

「馬ならアシュリーに頼めば用意してくれるでしょう。
……後が怖いですけど」

 あのトラブルメーカーを地で行く彼女に貸しを作るのは、いささか不安を感じるが……と、最後に苦い顔で笑った。

「まぁともかく。すぐに出発します。
幸いシャロンちゃんが此処を出たのは夜明け頃でしょうし、急げばすぐに追いつくかも知れない」

「うぅ……」
 もはやこれ以上の説得は無意味と解っていても、マリィには納得がいかないらしく、
なんとかそれらしい言い訳が思い浮かばないか唸り声を出していた。

「ウィリアム」
「…はい?」
 そのマリィの横で、すくっとマリベルが起立。
普段はあまり見せることのない真面目な表情だった。

「わらわも行くぞ。シャロンには普段から世話になっておるしな」
 きゅっ、とその小さな唇を硬く結んでウィルに歩み寄る。
その足取りもしっかりしていた。

 マリベルはこの中で一番シャロンと付き合いが長い。
ウィルが『王の盾』になるずっと前から侍女として傍に置いていたのだ。一際彼女の身を案じるのは当然だろう。

「それに、シャロンが居なければマリィを亡き者にするけいか……んんっ…いや何でもない」
「私を、何です?」
「別に」
 コホンと咳払いをしてマリィの視線から目を反らした。
訂正。マリベル王女は自分のことしか考えてない悪女です。間違いなく。


「――わかりました。
でも勝手な行動はしないって約束できますね?」

「うむ。心得ておる。今は有事じゃからな、余計なことはせん」

 マリィをどうこうする計画とやらはともかく。
マリベルがシャロンを心配しているのは嘘偽りのない事実だろう。
それを見越して、多少危険な旅路になる可能性があろうともウィルはマリベルの同行をあっさり許可したのだ。
419Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/21(日) 00:02:25 ID:MbENM8oN

 とととっ、と駆け足で自分の荷物を取りに行くマリベルを尻目に。

「……もうっ!」
 わざとらしい溜息と共にマリィの口から不満が漏れる。
 笑顔で支度を始めたマリベルの様子を暫く眺めていた彼女は、ウィルにアピールするように大仰に肩を落としてみせた。
「……団長?」

「私だけ残っても仕方ありません。シャロンさん探し、私も手伝います。
姫様ひとりだけを同行させるなんてとても容認できませんし。
それに……もし荒事になれば"戦姫"の力が必要でしょう?」
 もう腹を括った様子で、腰に下げていた剣の柄をぽんぽんと叩く。

「……いいんですか?」
「独りで此処に残れって言う方が私には拷問なんですっ!」
 さっきからずっと不機嫌そうだったものだから、おっかなびっくりにウィルが尋ねると
益々機嫌を損ねた様子で頬を膨らませた。

「いや……えと、すいません……」
 結局全員で出立することになったな……と思いながら、頬を掻く。
 
「それじゃあ、俺と一緒に来てください。団長」

「あ……」
 ちょっと真剣な顔でそう言っただけ。
それだけのことなのに、厳しかったマリィの表情は僅かに緩んだ。
彼女のウィルに対する心酔っぷりが凄まじい故か、それとも割と安上がりな性格なのか。

「も、も……勿論です、私はウィルの傍にいると決めてますから。王国を去ったあの日からそうずっと――」
 自分でもそれは気付いてるらしい。
すぐに厳しい表情を取り繕うが、言葉を口にする度、にへらにへらと顔が綻んでいる。
マリィのそんな百面相を少し不気味に感じていたウィルも、少し引き攣った顔をしていたが。

 どう彼女に返答すべきか逡巡していたウィルの元へ、
助け舟―――否、さらに場を混乱させる元凶が扉を叩いた。

「ちょっと!マリィさん!」

 さっそく怒声。この声は彼女しかない。
その声にウィルたちが反応する前に。

 バタンッ!
…と、玄関扉を蹴破りかねない勢いで、かのトラブルメーカーが勇み足で住居侵入。
大層ご立腹の様子で、肩を怒らせ鼻息も荒い。
三人の今の状況を大して確認もせず、アシュリーは更に捲くし立てた。


「初日から遅刻するなんてイイ度胸ですね!今日はもうノーギャラで働いて……もらい、ます…?」

 そこまで口にして、やっと気が付いたらしい。
荷造りしているウィルたちそれぞれの顔を暫く眺めると、ぱちぱちと数回瞼を瞬かせた。


「「「………」」」

 (わぁ。いつも嫌なタイミングで沸いて出てくるなぁ、この人。)
 旅支度を始めている三人の光景を把握できずに固まっているアシュリー嬢を見つめつつ。
彼女にどこから説明しようか、などと考えていた――――
420Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/21(日) 00:03:30 ID:GEgDJzTM







 ……と、まぁちょっとした紆余曲折がありながらも。
すんなりとアシュリーから馬を手配してもらえ、その日のうちにオークニーを発つことができたわけだが。
さすがに帝都は遠く、あれから十日が経っても未だにこうして馬車の中で揺られているのである。


「ぷっ……くくっ……」

 ずっと外の景色を眺めていたウィルは、隣から漏れる堪え笑いに眉根を顰めた。
「……いきなり思い出し笑いなんてしないでください……不気味すぎます」
「ふっ……ふふっ……いや、すまぬ。
別れ際のときのマリィの顔を思い出してな……あのときのアヤツの顔と言ったら……くくくっ……これが笑わずに……」

 とうとう腹を抱えだしたマリベル王女を呆れたような目で見つめ、嘆息。
そして。

「あんまり団長をイジメないでください。
あの人が本当にキレたら俺にだって止められないんですからね」
 と言ってマリベルを諌めたが、マリベルの笑い声が収まることはなかった。
はぁ、とウィルが漏らす溜息はマリベルの堪え笑いに掻き消えていた。

 そろそろお気づきの方もおられるだろう。
アシュリーが紹介してくれた、この馬車。
御者を除いて同乗しているのはウィルとマリベルの二人だけで、某騎士団長殿の姿がないのだ。
 実を言うと、マリィはアシュリーの意向でウィルたちとの同行を許されなかった。
ミス・オークニー・コンテストで優勝していた彼女は、ミスオークニーとして通商組合に暫く従事しなければならないらしい。
マリィ自身はどうやらバックレるつもりだったようだが、
アシュリーが「馬車を紹介する代わりにマリィは置いて行く」という条件を提示してきたために、
やむなく彼女はオークニーに残ることになったのだ。

 無論、マリィは「嫌だ」と連呼しながら剣を振り回していたが、
ウィルが長い長〜い時間を掛けて説得したおかげでなんとか首を縦に振ってくれた。


「大丈夫かな……団長」
 出立したとき、振り返るといつまでも半べそで見送っていたマリィを思い出す。
自活能力が激しく怪しい彼女を独り置いてきたのはマズかったか――などと今さらながらに不安を禁じえなかった。

「おぬし……いくらなんでもマリィを子供扱いしすぎではないか?」
 今度はマリベルがウィルを呆れた顔で見ていた。

 実のところ、マリィを同行させられなかった理由はもうひとつあるのだが。
そのことについては追々説明することにしよう。
421Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/21(日) 00:04:39 ID:MbENM8oN




 ともあれ、大した策もなくシャロンを連れ戻しに来た二人ではあったのだが。
ウィルは内心で帝都に着くまでの間にシャロンに出会えるのではないかと期待していた。

 というのもオークニーから帝都へ続く、この一本の街道。
物流のために整備されたこの道は、単に往来するだけにしても非常に便利な道だ。
二つの街を行き来する人間は先ずここを通っていると言っても過言ではない。

 だが。
これだけの急ぎ足で踏破した道のりにシャロンがいなかったということは、彼女はきっとこの道を利用しなかったのだろう。
ウィルたちよりも早く帝都に着いたとは考えにくい。それこそ、夜通し馬を走らせていなければならないからだ。

(ただ……シャロンちゃんの場合、その辺のツテがありそうだから怖いんだよなぁ)

 どこで培った能力なのか解らないが、彼女は情報網を張る速度が異様なほど速い。
オークニーで何でも屋を開いてからこっち、彼女のコネのおかげで解決した依頼は星の数ほどある。
しかもウィルたちと同じく初めて来た街で、しかも二ヶ月と経たないうちから……だ。
 その度にウィルは彼女の(裏の?)顔の広さに驚かされたものだ。
もし仮に彼女が街道を行くよりも早く帝都に着く手段を知っていたとしても、何ら不思議ではない。

 とにかく状況がどうあろうと、もはや帝都の中で彼女を探すしか手はない。
いくらか手段を考えておかなければならないだろう。

「マーガレット・ロラン―――か」

 やはり、一番有力な手がかりはこの手紙の差出人だ。
依頼の手紙を利用して、彼女に探りを入れてみるのも悪くないかもしれない。……少々危険かもしれないが。

(でも――例の手紙が海の藻屑になったのが悔やまれる……うぅ…)

 帆船で食事したあの夜、漆黒の海中に消えていった依頼の手紙を思い出してウィルは大いに頭を抱えた。
あの手紙がなければ自分がオークニーのウィリアム・ケノビラックだと証明できない。なんとか身なりだけで判ってくれれば良いのだが……と。
422Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/21(日) 00:05:25 ID:MbENM8oN


「ウィリアム、ウィリアム」

 『どうしたものか』と考えていたウィルの袖を、忙しなく引っ張るマリベル。
どうやらこちらはそれほど重荷を感じていないようで、シャロンを心配しているのとは別腹にしてこの旅を楽しんでいるらしい。
なんというか……箱入りのお姫様だった割にこういうところは妙に逞しい。

「なんですか、もう……」
「ほら!あれ、あれ」

 ぐずる子供をあやすような顔で返答するウィル。
そんな彼の態度も気にせず、マリベルはしきりに窓の外を指差した。

「あれ…?」
 彼女に言われるまま、渋々と小窓から覗いてみる。

 その小さな窓枠の向こう。
遠くからでもはっきりと解る高い城壁が、街道の果てに聳えていた。
まだ見えるのはおぼろげな輪郭だけであるが、あれほど高い城壁は帝国にひとつしかない。

―――帝都。
この大陸で双璧を成す大国、グレイル帝国の首都だ。


「やっと……着きましたね」


 引き締めた顔でウィルが呟く。
――何事もなければいいが。
 そう懸念する彼をせせら笑うように、先刻まで青かった空は少しずつ翳り始めていた。
423Bloody Mary the last order 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2007/10/21(日) 00:06:38 ID:MbENM8oN
以上。
タイトルロールとは離れ離れの状態から本編スタートです。
424名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 00:08:55 ID:QjqCwuIn
割り込んじゃってゴメーン(;´Д`)ノ
425名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 00:11:10 ID:cx/4tO9E
リアルタイム更新!
本編の連中が出てきて一安心だったりなかったり
426名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 00:15:45 ID:DHv3vPHv
GJ!!
待ってました、これからも期待してます。
427名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 00:23:28 ID:BDw2cOPz
きたあああああああああああああああああああ
GJ!
428名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 00:29:04 ID:QAUQcsfc
GJ!!
ああやっぱりマリィ団長はいいなあ……
続きも期待してます!!!!
429 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 01:08:42 ID:AhOpUdy+
みなさん乙です!
>>389
ごめんね。おかあさんはじめてこういうの作ってあっぷしたから、ごめんね。
どうもありがとうございますw わかりにくくてすいません。投下します。
430冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 01:09:59 ID:AhOpUdy+
「いってきま〜す…」
誰もいないリビングに向けて今日も声をかける。
「…………」
何の返答もない。当たり前か。
姉さんはまだ病院だし、父さんと母さんが帰ってきているわけがない。
いつかは声が返ってくる、そう思って10年近く繰り返してきたこの行為。
「……もう無駄かな」
10年たっても、両親は仲直りする気配がまるでない。
離婚だけはしないで、って姉さんが頼んだからまだ籍は入ってるけど実質離婚してるようなものだ。
家にもほとんど帰ってこないし、帰ってきてもお互い顔を合わせないような生活をする。
前に両親が揃ったのはあの事件で僕が学校の呼び出しを食らったときだ。
あの時もお互いに僕がこうなったのはお前のせいだって罵りあってたっけ……
それからは父さんと母さんが揃ったのを見たことがない。
家にお金を入れて、あとはほっぽりだし。これじゃ姉さんの願いの意味なんてまるでない。

僕の家族は、姉さんだけだ……





いつも使っている駅目指して、すこし早めに歩を進める。
別に遅刻するわけじゃないけど、早めにいかないといけない理由があった。
「はぁ……」
吐く息が白い。秋が終わり、冬になろうとしてるんだ。いや、もうなってるか。
駅に着くと、サラリーマンや学生でほぼ満員状態になっている電車に半分無理やり入り込む。
この方向の電車は朝はこうだから嫌だ。これじゃ痴漢に間違われたりしても文句が言えない。
ぎゅうぎゅう詰めの電車がようやく動き出すと、その反動で僕はドアの近くに押し出されてしまった。
うー……もう嫌だ。はやく卒業したい…
押し付けられたドアの窓をふと見つめると、僕の首にかかっている黒い布の生地がよく見えた。
美希からプレゼントされた黒いマフラーの生地。確か、手作りだって言ってたマフラー。
そういや僕はお返しに何送ったっけ……そうだ。ネックレスだ。
431冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 01:10:53 ID:AhOpUdy+
初めての女の子へのプレゼントだからよくわかんなくって、姉さんにアドバイスしてもらいながら、
四苦八苦しながらようやく選んだネックレスだ。嬉しい事に、美希はずっと着けてくれている。

――美希…あれから庄田さんの事について全然聞いてこない。
向こうが遠慮してる感があるけど、それなら好都合だ。
庄田さんとの約束をやぶったら、庄田さんがみんなに僕らの関係をバラす。
美希との約束で、もし美希がみんなに言ったらそれで僕らの関係はバレる。
要するに八方塞なのだ。どうしようもない。どっちにしろ、バレる。
それは…だめだ。僕のことをクラスの、学校の皆がどう見てるかは知ってる。
しかも美希のグループの中心、鳩山は元サッカー部だ。僕に対する恨みは相当のはず。
そんな僕と美希が付き合ってるなんてしれたら…絶対いい結果になるわけがない。
美希もそのくらいわかってくれればいいのに…。庄田さんと友達になるくらいならいいじゃないか。
なんであんなに怒るんだろう。理由も教えてくれないし…。

「あれじゃどうしようもないじゃん…」
小声で一人愚痴っていると、車掌さんのアナウンスが天井のスピーカーから聞こえてきた。
『篠崎町〜篠崎町〜お出口は左側です』
やった!ようやくここから開放される!
急行のこの電車が、僕の使っている駅から出て最初に止まるのはこの篠崎町駅だ。
丁度僕の学校もここにあるので、この人の海から抜け出ることができる。
電車が停止し、ドアが開くと僕を先頭にするように一斉に駅に向かって人がなだれ出る。
「イテッ!はぁ…もういやだ」
この駅は学生、社会人共によく利用する駅なのでこうなるのは当然のことなんだけど。
「ふう……」
ようやく人ごみから開放され、駅の改札口に出ることができた。
ここで待っているだろう人物を探してあたりを見回す。
「え〜っと……」
「あっ!要君、こっちこっち!」
メガネをかけたショートカットの女の子がこっちにむかって手を振っている。
「おはよう、要君」
「お、おはよう。しょう…じゃなかった。えっと…秋穂」
432冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 01:11:58 ID:AhOpUdy+
秋穂が少し不機嫌な表情になる。
「今、噛んだでしょう?」
「か、噛んでないよ」
「まあ、いいけど。ちゃんと名前で呼んでくれたし」
秋穂が微笑む。ううっ…なんかこの顔を見るたびドキッとしてしまう。
「じゃ、行こう?要君」
「あ、うん」
秋穂につれられて、いつもつかっている通学路を二人並んで歩き出す。
僕らの一日が、始まった。


「そういえば昨日、ちゃんと課題終わらせた?」
「ああ、うん。終わらせたよ。秋穂のおかげで簡単にできた」
「ふ〜ん。やっぱりまじめだね、要君」
「まじめ…そうなのかなぁ」
「そうだよ、それに素直だし」
「うーん……」
「バカ正直、とも言うけどね」
「なっ!うぐっ…」
「ふふっ…」

……あの日、秋穂と友達になる約束をした日から、僕らの交流が久しぶりにはじまった。
やっぱり秋穂は昔と違ってちょっと引っ込み思案な、おとなしい子になっていた。
だけどとても聞き上手で、僕の下手な会話にも何かとうなずいたり、いろんなリアクションを取ってくれた。
あの事件以来、美希以外の女の子とまともに話をしていない僕としてはそれはすごく助かった。
美希は何かと話しかけてくれるからいいけど、僕はあんまり自分から話を振るタイプじゃないから。
それに秋穂といるとなんだかとてもなつかしい、くすぐったい感じがして、それがとても心地よかった。
僕らは離れていた年月を埋めるかのように、急速に仲良くなっていった。
そして今、いつのまにか名前で呼び合うような仲になっている。
ていうか名前で呼んでもいい?って言い出したのは秋穂の方なんだけど。
「…ふあぁぁ〜」
「寝不足?」
「うん、ちょっと遅くまで勉強してたからさ」
秋穂と仲良くなってから、やけに勉強がはかどるようになった。
美希並に頭がいい秋穂は、勉強の教え方もすごくうまかった。
…このまま行けば美希と同じ大学にも入れるかもしれない。
433冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 01:12:47 ID:AhOpUdy+
「がんばってるね〜。…美希のため?」
「え?えっと……ま、まあね」
「ふ〜ん…」
…美希と昔何があったのか、いまだに聞いていない。
何だかそれを今聞いたら、秋穂との仲が壊れてしまうような気がする。
それは嫌だった。
「んと……そうだ。昨日のさ…」
「……うん」
――秋穂と朝の通学路を歩く。美希でない女の子と、歩く。
美希としたかったこと、できないことを別の女の子としてる。
罪悪感と変な背徳感みたいなものが入り混じった奇妙な感覚が僕を包む。
…そうだ、そういえばこの前の昼休み、美希と秋穂が一緒にどこかへ出て行った。
もしかして仲直りとかしたのかな?だから美希もなんにも言わないのかな?
いやいや、だったらなにか連絡くれてもいいだろう。大体相変わらず二人は教室で話さないし。
普通に考えれば僕の話か…何話してたんだろ。う〜ん……気になる。
そういえばもどってきた秋穂の頬がちょっと赤かったような…い、いやそんなまさか――
「どうしたの?何か考え事?」
「へ?あ……」
秋穂が怪訝な表情で見つめてくる。うーむ…。このくらいならだいじょぶかな?
「あのさ、この前美希と昼休みどこか行ってたでしょ?」
「え?…ああ、うん。気づいてたんだ」
「うん、まぁ…それで、なんの話してたの?」
「………………」
秋穂が足を止め、黙って俯く。うっ、まずい!
「あっ!いや!言いたくないんだったらいいよ!うん!」
「………………」
「あはは…………」
「…………聞きたい?」
秋穂は俯いたままだ。
「えっ………うん。まぁ……」
「……その前に聞きたいんだけど、気になったのは私?それとも、美希?」
「えっ……」
「私たちが教室を出たとき、どっちが一番気になった?」
434冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 01:13:47 ID:AhOpUdy+
どっちって…なんでそんな事聞くんだ?
「どっちも…かな」
「ふ〜ん…」
秋穂はまた黙り込んでしまった。
「………………」
「あ、あの……」
「…………内緒っ!」
そういうや否や、急に秋穂が走り出した。
「あ、ちょっと!」
「ホラ!いそご!」
遅刻する時間でもないだろうに、秋穂はそのまま走って学校に向かっていってしまった。
やっぱりまずかったのかな………



なんとか秋穂に追いつき二人揃って教室に着くと、授業開始までだいぶあるというのにすでに多くのクラスメイトが席に着いているのが見えた。
みんなおしゃべりもほどほどに友人同士で問題を出し合ったり、お互いに教えあったり、受験生としての生活を始めている。
「お〜今日もお二人で登校ですか。うらやましいですねえ〜」
いつの間にか背後に立っていた飯田がニヤニヤしながら声をかけてきた。
「おはよう。あれ?今日も早いんだね」
「まぁな〜もう習慣づきはじめてるしさ〜」
大きなあくびをする飯田。かなり無理してる感がでてるけど、理由はわかってる。
「あ、おはよう!秋穂、山下君」
飯田の後ろからひょこっと小さな背丈の女の子が顔を覗かせてきた。
「おはよう〜由梨絵」
「おはよう。氷川さん」
……やっぱね。こういうことだろうと思った。
「ほら、飯田君!さっきの続きやるから席着いて!」
「は〜い!」
氷川さんに背中を押されながら、緩んだ表情で自分の席に向かう飯田。
ま、無理もないか。あいつがあんなに女子と仲良くしてるを見たのは久しぶりだし。
今までもあったにはあったけど、なにかの原因で(恐らく理沙ちゃん)あいつは女子との仲が悪くなることが多かった。
今度はうまくいってほしいな…
「私達も始めようか?」
「あ、うん」
秋穂に促され、席に着く。僕は僕でこっちの方をがんばらないと。
435冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 01:15:03 ID:AhOpUdy+
秋穂と「友人」になってから、僕は朝早めに学校に来て、こうして勉強を教わっている。
最初は秋穂と二人だったんだけど、そこに友人の氷川さんも加わって3人体制になった。
さらにそれを見た飯田が「俺も混ぜてください。お願いします。」と懇願してきたこともあって、
いつのまにか秋穂、氷川さん、僕、飯田の4人体制の勉強会になった。
でも当然のごとく飯田の狙いは勉強なんかではなくて………
「あ、だからそこ違うってば!さっきも教えたでしょ〜?」
「ああ、そっかぁ〜ごめ〜ん。えへへ」
いつか見た気持ちの悪い笑顔を見せながら、飯田がポリポリ頭を掻く。
氷川さんも飯田の本当の目的が分かっているのかいないのか、異様な優しさで飯田に何度も注意する。
「由梨絵はね、飯田君が前から気になってたのよ」
僕の思考を読んだかのように、秋穂が問題集に目を落としながら言う。
「だからこの「勉強会」に参加したいって言ってきたのね。要君、飯田君と仲いいから」
「でも、僕がいるからって飯田が来るとは限らないんじゃ…」
「分かるわよ。飯田君の性格を考えれば。要君を一人にしておくわけないわ」
僕を一人に…?そういえば美希と「逢う」ために補習だって嘘ついてたときもあいつやたらついてきたがってたな…
「そういう人じゃない?飯田君って」
「………………」
僕と秋穂の前で、嬉しそうに氷川さんと笑う飯田。
もしかして飯田は、僕を一人にしないようにずっと側にいてくれてたのかな…
「はい。できた。明日はここから、ここまでね」
「あ、ああ。うん。ありがとう」
秋穂からチェックを入れてもらった参考書を受け取る。
こうして毎日重要なところにチェックを入れてもらい、次の日までの課題を秋穂に出してもらう。
それを解いて次の日の朝、秋穂に採点してもらい、また次の課題を出してもらう。
間違えたところはこの朝の時間になるべくヒントをもらって、自分で夜考えてみる。
「ん〜とね、問7だけど…」
「うん」
こうして、僕は秋穂に勉強を教わっている。
この方法がいいのか悪いのか、僕にはよくわからないけど実際勉強がはかどってるんだし正しいんだろう。
それに秋穂とこうしてコミュニケーションが取れることが僕には嬉しいことになり始めている。
美希と秋穂の関係なんて忘れてしまいそうなくらいに…
436冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 01:16:15 ID:AhOpUdy+
「お〜い。お前らさっさと席につけ〜始めるぞ〜」
担任の大きな声に顔を上げ、時計を見ると、もう授業開始時間になっていた。
この勉強会をやっていると時間が立つのがあっという間に感じてしまう。
「じゃ、要君、また後でね」
「うん、また後で」
秋穂の席から離れ自分の席に着く。飯田はまだ氷川さんにくっついている。
「コラッ!飯田!さっさと席につけ!…えーっと出席取るぞ〜。相川〜…」
…あれ?そういえば美希がまだ着てないような気がする。それに、高田も。
「高田〜。…ん?休みか。次、武田〜。」
高田が休むなんて珍しい。ほとんど風邪も引かない健康優良児って自分で言ってたのに。
「三浦〜。…んん?三浦も休みか。しょーがないな…」
美希も休みか…単に遅刻してるだけかな。後で、メール入れとこう。




ほとんど意味のない授業を受けた後の昼休み、勉強会の4人と森本達も加えた昼食が始まる。
なんだかいつのまにかすごい大御所になってしまっているような気がする。
「高田が休みか〜めずらしいよな。あいつ風邪とか引かないやつなのにさ」
「法事で休みのはずなときも学校きてたよね」
「だよな〜ほんとよくわかんねぇやつだよ。ま、あんなヤツのことより三浦さんが心配だ!なにか大怪我とかしてたら…」
「それはないと思うけど…」
――そうだ、美希。結局学校に来なかった。どうしたんだろう…メールの返事もこないし。
「そんなに、三浦さんが心配…?」
さっきから俯いていた氷川さんが顔を上げる。
「あっ!いや!そういうわけじゃないよ〜ただクラスメイトとしてさ…」
「ふ〜ん……」
いきなり必死になった飯田が氷川さんに弁解を始める。…やっぱ理沙ちゃんは関係ないのかな。
ぎゃあぎゃあ言い合う二人の横で、黙って話を聞いていた秋穂がゆっくりと口を開く。
「きっと、二人ともなにか事情があったのよ。どう思う?本間君」
「え、ええ。そ、そう、ですね…」
秋穂に話を振られ、なぜかうろたえる武。……?どうしたんだろう?
「どうした武?具合でも悪いのか?」
「い、いえ。別になんでもありませんよ」
そう言って僕を見た武の眼は、とても大丈夫そうには見えなかった。
437冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 01:17:14 ID:AhOpUdy+
その後、放課後になっても美希と高田はなんの連絡もしてこなかった。
それに、なぜか武まで学校を早退してしまった。
秋穂も今日は用事があるって言って先に帰っちゃったし…風邪でもはやってるのかな?

予定がなくなってしまった僕は久しぶりに、森本と一緒に帰ることになった。
ついでに飯田も氷川さんといちゃいちゃしながらついてきた。見せつけてるのかこいつは……
けどこういうときは大抵校門には理沙ちゃんが……ってうん?あれは…
「勇気さん!」
「ん…?……ゲッ!美月姉ちゃん!!!」
かわいい白地のエプロンをつけた20代中盤くらいの綺麗な女性が校門の外に立っている。
その人は、下校する周りの生徒達の視線もまるで気にせず、仁王立ちで飯田を睨んでいた。
「どういうことですか!その女性は誰なんですか!」
「え!?えっ?!?なんで美月姉ちゃんが!!?!?」
「理沙から話は聞きました。でもまさかここまでになってるなんて……!」
ギロッと、見るものが震え上がるような迫力で氷川さんを睨む美月さん。
「ヒッ…!」
「全く……!さっ、帰りますよ勇気さん。「言い訳」はしっかり家で聞かせてもらいます!」
「あっ!ちょっと!姉さん!やめて!引っ張らないで!」
ズルズルと引きずられながら、飯田が僕達に向かってなにごとか叫ぶ。
「山下!森本!氷川さんに弁明しといてくれ!あとちゃんと家まで送って……うあああ!」
唖然としている僕らを残して、美月さんと飯田はあっという間に校門の前から消えていってしまった。
「あ、えっと…じゃあ僕はここで。氷川さんも方向同じだよね?」
「え、あ、う、うん。」
森本がまだ呆然としている氷川さんを連れて僕と逆方向へ向かおうとする。
「あ、僕もついていこうか?MOMOちゃんのこともあるだろうし」
「ううん、だいじょうぶ。なんでか知らないけど最近MOMOちゃん何もしてこないんだ。もう僕に飽きたみたい」
そう言って丸い顔に優しい笑顔を浮かべる森本。やっぱりこういう表情の方が森本には似合う。
でもあのMOMOちゃんがそんな簡単に森本に飽きるとかあり得ないような気がするんだけど…
まぁあんな笑顔が戻ったんだ。きっと森本の言うことが正しいんだろう。
「ん、そっか…じゃあまた明日!」
「うん、また明日ね!」
「また明日ね…山下君」
手を振り、フラフラになっている氷川さんを支えながら歩く森本と別れる。
今日は一人で帰宅か…久しぶりだな。
438冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 01:18:26 ID:AhOpUdy+
―――朝と同じくギュウギュウ詰め状態だった電車から降り、見知った帰路を一人、歩く。
家の前まで着くと、すぐに中には入らず、まずインターホンを押す。
一回、二回、三回……
明かりがついてないんだ。誰もいないことは分かってる。でも、これも朝と同じ儀式の一環だ。
返事がないのを確認するとポケットから鍵を取り出し、玄関のドアを開ける。
そのまま真っ暗な廊下とその奥に見えるリビングに向けてゆっくりつぶやく。

「ただいま」


洗面所で手洗いを済ませるとすぐ2階にの自分の部屋にあがる。夕飯はあとで作ればいいや。どうせ一人だし。
鞄をベッドの上に投げ、制服も脱ぎ散らかした。掃除するのも自分でやるんだし別にこれでいい。
ポケットから携帯電話を取り出す。美希からはまだなんの連絡もない。
「どうしたのかな?なにかあったのかな…」
でもなにかあったんなら舞ちゃんとか家族の人が知らせてくるはずだ。僕の連絡先は知ってるはずだし。
美希の家に行ってみようかな…いやなんか事情があるのかもしれないし、わざわざこんな夜に気持ち悪いとか思われるかも…
「いいやもう!明日聞こう!」
明日も学校に来ないようだったらそのときは家に行ってみよう。うん、それでいい。
何か連絡が来たらすぐに繋げるよう机に携帯電話を置き、机に向かう。

けれど結局、その夜美希からは何の連絡も来ず、僕は勉強に没頭し続けることになってしまった。
439 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 01:19:29 ID:AhOpUdy+
終わりです。クソ長くなってしまいました。すいません。
飯田君とMOMOちゃんに関しては別のお話で詳しくやろうと思ってます。
440名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 01:45:23 ID:+6rjH0Mi
転帰がマリーな星空。
今、サハラに大雨が降った。
ちょっと最高の気分だからコンビニのうまい棒買い占めてくる。
441名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 01:46:37 ID:Aduz6x5b
寝取られフラグキタァー(゜∀゜)ーー!!!!
GJです
442名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 01:48:24 ID:fTHOIFjz
>>439
GJです!
ただNTRは勘弁してくれな・・・?
443名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 01:49:09 ID:AV9muAbZ
>>439
おつかれさまです
要はしっかりと美希一筋みたいで良かった。
登場人物みんなが簡単に心奪われる様な描写が多くてしんどかったですけどなんか安心できました。
飯田君の話は最高にこのスレに向いてそうですね。楽しみです!
444名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 02:05:56 ID:QjqCwuIn
うー草の中の人〜
草かPassion fruitsどっちでもいいから早く投下してぇ〜
全裸は寒くて凍えそうだよ〜
445名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 02:19:17 ID:M/VKJE6A
一気に投下されたなぁ。しかもクオリティ高いのが。皆さん乙です!

>>442
NTRは…心配しなくてもないような気がする。
そうなると次は秋穂が高田君を落とさなにゃならんようになるからなw
それはそれで一大復讐叙事詩になりそうで見たみてくもあるんだけど。
446名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 03:14:46 ID:GeyJeMe4
個人的には
要には秋穂が合ってると思うからこのままでいいと思うんだけどなあ・・・
447名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 03:48:20 ID:BDw2cOPz
>>444
せめて靴下と眼鏡位はつけろ

あとだぼいYシャツを羽織るのも許可する
448名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 05:08:10 ID:GWNdbyvd
>>444
つ■ ←毛糸の腹巻
449名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 05:11:18 ID:geN+F02Y
>>439
登場人物がいすぎて、すでに訳わかんないです(;´д`)ノ
450名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 06:49:50 ID:GeyJeMe4
転帰予報、次回は姉のターンらしいが
ただでさえ妹でいっぱいいっぱいなのに姉からも告白されたらどうなるんだろうなマジで
451名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 07:49:53 ID:gfxARtHQ
全ての神にGJ

星空の登場人物大杉てワケワカメ
先が気になるけど。

もう少し既存のキャラでやりくりしてくれると分かりやすいんだが
452名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 09:06:39 ID:1VGPlTdU
今夜は豊作でしたなぁ。作者様方おつかれ様です。

「核心を話せない、話さない」ことから生まれるすれ違いっていうのも良い
よねぇ。「両手に嫉妬の華を」もそういうところで続きが気になる作品なん
だけど、もう来ないのかなぁ・・・
453名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 09:45:54 ID:0/iVYd/w
女の嫉妬は美しいが男の嫉妬は醜い・・・
454名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 10:09:46 ID:hKVlVTIl
>>403
お姉ちゃんを早く!!お姉ちゃん分が足りんのです!!次まで我慢できんのです!!GJです!!!!
455名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 10:16:14 ID:GiHFS9br
飯田のキモ姉妹の話もwktk
456名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 10:53:10 ID:yLmC2W3l
美希は何か他の男に乗り換えそうな伏線があるので
寝取られキタァー(゜∀゜)ーー!!!!

しかし、ここの作者はデレになったヒロインとイチャラブ話をちょっと書いてくれないからな
ちょっと残念
457名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 11:02:02 ID:yLmC2W3l
ちなみにここの作者=嫉妬スレの作者なので
誤解しないようにお願いしますね
458名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 13:41:51 ID:oadgpE77
>>456
そういう需要があんまないスレだかんね
459一万年と二千年前から愛してる:2007/10/21(日) 15:15:30 ID:xNmGD9wJ
久しぶりに投下します。


「それでさ、大空さんが僕を好きなのが嘘じゃないのは信じる。でも、その理由を答えてくれないかな?自分で言うのもアレだけど、僕って今までに女の子から告白された事も無いし、君みたいな学校のプリンセスには釣り合わないんじゃないかって」
「えっと、私が神山君を好きになった理由は、その、優しいところとか、あ、その、去年、私が入学式でクラスが分からなくて困ってた時、声を掛けて下さったじゃないですか?」
「え、ああ、あの時声を掛けた子って君だったんだ」
「え?憶えて無かったんですか?」
「あ、うん、あの時前髪で隠れてたし、僕は他人、特に女の子の顔とか直視しない方で・・・」
「そうですか・・・・」
「あ、もしかして気を悪くした?」
「いえ、いいんです。あ、それと、苛められて落ち込んでた私に『大丈夫?保健室行こうか?』って言ってくれましたし」
彼女は可愛いから男子からもてるがその反面、女子からは嫌われている。嫉妬されるというのもあるのだろうが、無口で大人しい彼女は他の女の子の話題についていけないようで、いつも場が暗くなると言われ、無視されることが多いのである。
「僕は小さい頃あまり同年代の子と話題が合わなかったから。独りぼっちで座っている光景を見て少し昔を思い出してね。僕も昔イジメとかでいくつかそういうトラブルがあったんだ」
「そう、なんですか?」
「うん、まあ、色々ね」
460一万年と二千年前から愛してる:2007/10/21(日) 15:19:40 ID:xNmGD9wJ
僕は幼稚園で既に集団から浮いていた。
普通、子供というのは他の子供の真似をしながら一緒に遊んだりするの
だが、僕はいつも一人で絵本や図鑑を読んだり、テレビなどで聞いた知
らない単語を大人に質問して過ごしていた。これは生まれつきの個性ら
しく、幼稚園の時には既に辞書も引けたし、新聞も読む事ができた。周
りの大人は僕の事を賢いと褒めてくれたが、同時にお遊戯や集団行動と
言った、周りにある程度合わせる事は苦手だったため、幼稚園の同級生
からはいつも変人呼ばわりされていた。他人の事などどうだって良かっ
た当時の自分(今でもだが)は性格を改善と言うか変化させる気も無く
、小学校も卒業し、消極的ではあるがある程度は周りに合わせる事も出
来るようになった今(出来るようになったと言っても、小さい時から周
囲への無関心の裏面として、他人へ迷惑を掛けない等の常識は、他の子
よりずっと早くに身に付いていた)でも、友達と呼べる存在はいない。
唯一の例外、幼馴染みの天野舞香を除いて。彼女とは幼稚園の二年生(
幼稚園や保育園では年中と呼ぶのか)の時知り合った。いつもの様に他
の子が遊んでいるのを無視して部屋の隅で家から持ってきた母の小学一
年生の国語の教科書(その時の自分にちょうどレベルの合う文章がいく
つか載っていた)を読んでいたら、隣から舞香が教科書を覗き込んでき
た。他人の顔なんて親と保母の先生以外ろくに憶えていなかった自分は
当然彼女の顔も知らなかったが特段迷惑でもなかったので、何も言わず
教科書に視線を戻した。しばらく読み進む内に、彼女が『これ、何て読
むの?』と言ってある漢字を指差し、僕は『空だよ』と答えた。すると
彼女は『優君は難しい字を知ってるね』と言って笑った。同じ年の子か
ら褒められたのは初めてだったので少し驚いた。その子に興味を持った
僕はその日から彼女に毎日色々な本を読み聞かせてあげた。ある日、悪
餓鬼盛りの男子三人に苛められて泣いていた舞香を見て、初めて他人へ
の怒りを覚えた僕はそいつら三人に殴りかかった。とは言っても僕は背
こそ高かったが、いつも舞香と一緒に室内にいたから力だってそんなに
強くない。だから、すぐそばにあった小さな椅子を両手に一個ずつ持っ
て、三人を思いっきり殴りつけた。道具を使った僕はその三人相手に勝
ったがその内の一人を大怪我(五針縫ったそうだ)させてしまった為、
居辛くなってその幼稚園を止める羽目になった。幸い舞香とは家が近所
だったことが分かり舞香が幼稚園から帰ってきたら一緒に遊ぶ約束をし
たのだが、ある日の朝、僕はいつものように近所の公園で舞香が来るま
での時間を潰しに行こうと思い、玄関で靴を履いていたらインターフォ
ンが鳴り、舞香とそのお母さんが現れた。僕は『幼稚園始まる時間じゃ
ないの?』と聞いたら彼女は急にとても悲しそうな顔をして泣き出して
しまった。僕はどうして良いか分からず困っていると彼女のお母さんに
『優君、ちょっと優君のお母さんとお話がしたいんだけど、しばらく舞
香と一緒に遊んでくれない?』と言ったので、僕は舞香が泣き止むまで
部屋で頭を撫でてあげた。しばらくすると舞香のお母さんが部屋に来て
『優君、ウチの舞香ね、幼稚園止める事にしたの。それでこれから毎日
舞香と遊んであげてくれない?』と言った。話を要約すると、舞香は幼
稚園で相変わらず苛められており幼稚園に行きたがらないからどうした
らいいか僕のお母さんに相談に来て、結局、幼稚園を止める決断をした
ということだった。それから、舞香とは毎日遊び、ずっと同じ学校に通
って現在に至ると言うわけだが――――――
「あの、神山君」
急に回想から戻る
「え、あ、はい」
「告白、受け入れていただけますか?」
「あ、その、少しゆっくり考えたいから、今日が金曜日だから返事は来週の月曜日の帰りまで待ってくれないかな?」
「あ、はい、わかりました。さようなら。気を付けて帰ってください」
「うん。大空さんも気を付けて」
461一万年と二千年前から愛してる:2007/10/21(日) 15:20:56 ID:xNmGD9wJ
今日はここまで
462一万年と二千年前から愛してる:2007/10/21(日) 15:42:05 ID:xNmGD9wJ
SSまとめサイトでは改行を修正しといてください
463名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 15:53:10 ID:Cr+GvwVB
またお前か
もはや何も言うまい
464名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 16:06:20 ID:81ny4Mkx
見えない
465名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 16:07:01 ID:paVoFkaf

男の嫉妬は醜い以前に主人公の好きな人が他の女と仲良くする光景は
読み手側はちょっと悲しく思えてしまうのだが
466名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 16:17:50 ID:xWgA5YnC
男の嫉妬
変則的なのだと、ヒロインが他の女子と親しいのを嫉妬するなんてのも

例えば「ゼロの使い魔」で
主人公がヒロインに慕われてる女王陛下に嫉妬してるみたいな

そう言うのも駄目かね?
467名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 16:35:01 ID:+SgWgeW+
駄目
468名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 16:40:50 ID:Ey9+FPGf
例えを知らんのだがその女王様はレズか何かなのか?
469名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 16:46:58 ID:OJcjoYNt
むしろ主人公に惚れて・・・るorた。
470名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 16:50:43 ID:gfxARtHQ
>>466

まあ書け。話はそれからだ

書いてくれさえすれば、共感できなくとも理解はしてやれるから
471 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:03:06 ID:AhOpUdy+
投下します。また長くなりました。すいません。
472冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:03:52 ID:AhOpUdy+
「今日も寒いね〜」
「ん……そうだね…」
今日も秋穂と一緒に通学路を歩く。でも、頭の中は美希の事でいっぱいだ。
昨日、美希からは連絡がなかった。もし今日も休みだったら絶対なにかあったってことだ。
もしそうなら絶対美希の家に行かないと。戸田さんや村田さんに聞くわけにはいかないし…。
「う〜ん……」
「…………また美希のこと?きっとただの風邪よ、だいじょうぶ」
「そうかな〜でもいくら連絡しても返してくれなかった…」
「………………」
「…そういえばさ、秋穂の方の用事ってなんだったの?」
「……別に、たいした用事じゃないよ」
秋穂はチラッと僕の顔を見てそう言うと、すぐまた前を向いてしまった。
「…そんなことより、もし今日放課後大丈夫なら、要君の家行ってもいいかな?」
「………え!?」
突然の要望に、思わず隣で歩く秋穂の顔を見る。
秋穂も僕の方を向いていた。図らずも丁度眼が合ってしまう。
「ん…と、なんで?」
「朝だけじゃそろそろきついでしょ?やっぱり放課後にちゃんとやったほうがいいと思うの」
いつもの通り静かな表情で秋穂が言う。
……たしかにそうだ。言ってることは実際正しいと思う。
でも、正直美希以外の女の子を家にあげるのはなんだか気が引ける。
浮気とかじゃないけど、美希と秋穂の関係を考えるとすごく後ろめたい。
「ん〜と…え〜っと……」
でもそろそろしっかり教えてもらわないとまずい。もう11月になる。
「ん〜…」
でも…………
「美希と同じ大学、行きたいんでしょ?」
………………………………
「わかった。今日は特になにもないからだいじょぶだよ」
――――そうだ。今ここで止まるわけにはいかない。
「ん。じゃあ今日放課後にね」
うん。そうだ、これでいい。勉強するだけなんだし、浮気でもなんでもない。
……あれ?でもそれなら別に僕の家じゃなくてもいいじゃないか。
「あ、秋穂。あの…」
「はぁ〜。要君家か〜。楽しみだなぁ〜。ねっ?」
嬉しそうに天を仰ぐ秋穂。
「え?ああ、うん…」
…まあ、いっか。別に。
473冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:04:52 ID:AhOpUdy+
教室に着いた僕らは、早速いつもの「勉強会」に取り掛かった。でも、今日は飯田が来ていない。
「飯田君どうしたのかな…?」
氷川さんが心配そうに飯田の席を見る。
「だいじょぶだよ。あいつのことだし。学校始まるまでには来るって」
なんとなく美月さんが関係してるような気はする。
でも別に何されるってわけでもないだろう。ただの姉弟なんだし。
「ま、飯田君の事はいいとして。昨日の課題ちゃんと解けた?」
秋穂は、特に飯田のことは気にしてないみたいだ。
「ああ。うん。ちゃんとやってきたよ」
「どれどれ……」
気を取り直して、勉強の続きに取り掛かる。
まあ飯田のことだ。どうせただ寝坊しただけとかそんなところだろう……



勉強を始めてしばらくすると、クラスメイト達が続々と教室に入ってきた。
僕らが学校に着いた頃にはもうすでに結構な数の生徒がいたけれど、彼らはあくまで「受験生」だ。
このクラスには就職するやつだっているし、専門学校にいくやつだっている。
それに上位大学を目指すヤツはこんな朝早くから学校で勉強するってことがあんまりない。
うちの学校が特別なだけで、頭のいいやつってのは大抵予備校とか図書室で勉強するものだ。
そんな連中に混じって、飯田と高田が揃って教室に入ってきた。
「よう、山下。今日もやってるな〜…ははは……」
なんか飯田の様子がおかしい。やけにやつれている。
「お前どうしたんだ!?昨日なにかあったの?」
「あー…まあどうでもいいじゃん。はは…」
やつれた顔のまま薄く笑い、飯田はそのまま氷川さんのところへ向かって行ってしまった。
「…飯田のやつどうしたんだろう?なあ高田?」
「………………」
高田は何も答えない。……あれ?いつもならもっと陽気に…
「高田。昨日はどうしてたんだよ。風邪か?」
「……別に。要には関係ないだろ。じゃ俺行くわ」
そう言うと、僕と目もあわせずに高田は自分の席に着いてしまった。
……なんだろう?機嫌悪いのかな今日。
474冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:05:44 ID:AhOpUdy+
そういえばいつもなら村田さんや美希と一緒に学校に来るのに今日は一人だ。
……ん!?そうだ。昨日美希と高田は同時に休んだんだ。
もしかしてそのとき二人になにかあったのか?
そうだ!なんでそんなことに気づかなかったんだ!高田は美希のことが…!
………って、でも待てよ。だからって僕に冷たくするのはなんでなんだ?
美希が僕らのことをバラしたとかか?いやだったら余計、昨日連絡がないのはおかしい。うーん…
席に着いた高田の周りに、山田や鳩山達の輪ができ始めている。ああなると僕は高田に接触できなくなる。
どうしちゃったんだろう…そうだ、美希は……

「あ、美希おはよ〜!」
「おはよー美希。昨日どうしてたの?」
戸田さん達の声が聞こえた方へ顔を向けると、丁度美希が教室に入ってくるのが見えた。
なんだか元気がない。ずっと俯いている。
「お、おはよう。」
「ん〜?どうした〜元気ないぞ〜?いつもの美希はどうした〜?」
村田さんに頬を引っ張られる美希。でもその表情は沈んだままだ。
「どしたのよ〜?昨日高田君となにかあった?」
「えっ!な、なに言ってんの!な、なにもないよ…」
「あ・や・し・い〜素直に言え〜昨日高田君とどこ行ってたの?ん?ん?」
「だから違うって!大体高田君と会ってないし……」

――ウソだ。僕には分かる。さっきから美希はチラチラ高田のほうばかり気にしてる。
高田もなんだか美希の方を気にしているような節がある。
……やっぱりあの二人、昨日何かあったんだ…っ!

「……め君、要君!」
「えっ!…あ、ああ」
秋穂に声をかけられ慌てて我に返る。
「だいじょぶ?すごい顔してたけど……」
「うん…だいじょぶだよ……」
まさか…いやそんなこと…………
「ほんとに大丈夫ですか?山下君」
いつの間にか教室に入り、僕の側に来ていた武が声をかけてきた。
「あ…武。来てたのか。昨日どうしたんだ?具合だいじょぶか?」
「…え、ええ。もう平気です。だいじょぶです」
武はなんだか挙動不審だ。やけに秋穂を気にしてるようにも見える。
そういえば秋穂達と仲良くなってから武の様子がいつもおかしいような気がする。
…まさかこの二人もなにかあったのか?秋穂も用事があるって言ってたし。

だめだ、もうなにがなんだかわかんない………
475冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:06:42 ID:AhOpUdy+
授業中も、昼休みも、二人のことが気になってしょうがなかった。
二人とも表面上なんにもなかったかのように接してるけど、よく注意してみると分かる。
高田は僕に冷たいし、美希はそんな高田を避けてるような気がする。
なんにしろ二人になにかあったことだけは確実だ。それも、結構重大なことがあったんだ。
…もうすぐ今日の授業がすべて終わる。あとは帰りのホームルームだけだ。
放課後は秋穂が家に来るとか言ってたし、やっぱ携帯で美希に聞いてみるしかない。
「……であるからして、ん?もうこんな時間か。それじゃ今日はここまで」
初老の教師の授業終了の合図と共にクラスメイト達が席を立ち始める。
すぐにポケットから携帯を取り出し、美希にメールを送る。
「昨日どうしたの?なにかあった?」
……これでいい。あとは返信を待とう。

ところがホームルームが始まっても美希からの返信は一向に来なかった。
美希の席を盗み見てみると、俯いているだけで携帯をいじっているそぶりがまるでない。
…………くそっ!美希、どうしちゃったんだよ!
「よーし。今日も気をつけて帰れよー。はい号令〜」
ホームルームが終わってしまった。みんな続々と帰る準備をして教室を出て行く。
俯いていた美希も村田さん達に促され、僕に一瞥もくれないまま教室を出て行ってしまった。
…美希、どうして…なんでなにも言ってくれないだ……
「要君、帰ろう?」
「あ、ああ。うん。」
僕も秋穂に連れられて、帰路に着く。
でも、頭の中は美希と高田のことでいっぱいだ。
「……それでね、今度…」
「………………」
「……聞いてる?要君?」
「…………うん。聞いてるよ」
ほんとは秋穂が何の話をしているかなんて全然わからない。
……美希、お願いだからなにか返信してよ。どんなことでもいいから…
「……あっ!」
ポケットの中が震えている。携帯だ。
476冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:07:30 ID:AhOpUdy+
急いでポケットから携帯を取り出し、相手先を確認する。
――美希だ。しかも電話。
「あ、あの要君……」
「ごめん!ちょっと待って!」
何か言いかけた秋穂を手で制し、通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。
「も、もしもし」
何だか声が震える。
『……もしもし。要?』
……ああ、美希だ。確かに美希の声だ。柔らかい、優しい声。
この声を聞いたのは、なんだかすごく久しぶりなような気がする。そんなはずないのに。
「うん。僕だよ。要だよ。」
『………………』
「美希、昨日どうしたの?なにがあったの?」
『………………』
「美希?」
『………………』
どうしたんだ?なんでなにも言ってくれないんだ?
「…もしかして、高田となにかあった?」
『…………っ!』
やっぱりか……
「なにがあったの?」
『………………』
「言いたくないなら、それでいいよ。とにかくよかった。声が聞けて」
『……………っ』
「別に体壊した、とかじゃないんだろ?だったらよかったよほんとに。」
『………………』
「………それじゃ」
『あっ!まって!』
「…ん?」
『…今日、要の家行ってもいい?』
477冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:08:22 ID:AhOpUdy+
え!?今日??
「今日って今から!?」
『うん。会いたいの……ダメ?』
……どうしよう。今日は、秋穂が家に来る。
そのために僕の隣で電車を待ってる秋穂に、今更家に帰れだなんて言えない。
秋穂は、自分を見つめる僕の視線に気づいたのか、ジッと僕の眼を見つめ返してくる。
その眼は何かを訴えているように見えたけど、なにを意図しているのかは、まるで読み取れなかった。
「僕が…美希の家に行くよ。それじゃだめかな?」
『………うん、わかった。それでもいいよ…』
よし、それなら秋穂との「勉強会」を早めに終わらせれば全然大丈夫だ。
「それじゃあまた後でね」
『…うん。また後で』
通話ボタンを押し、電話を切る。
あとは秋穂になんて言い訳するかだな……
「あ、秋穂。実は今日……」
「あっ!要君。電車きたよ?」
「ちょっ………」
僕の言葉を無視し、電車に乗り込む秋穂。
慌てて僕も電車に乗り込む。

電車の中はいつもと違ってすごく空いていた。
座席に座っている人もまばらだ。
「………………」
「………………」
秋穂と二人揃って空いている座席に座る。
なんだか微妙にお互いの距離が開いているような気がするけど、こっちの方がいいか。
「今日さ、早めに切り上げてほしいんだ」
「………………」
「ちょっと用事ができちゃってさ」
「……また美希?」
「…うん」
「そう……」
それっきり、僕らの会話はまるで途切れてしまった。
478冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:09:32 ID:AhOpUdy+
――お互いに黙り込んだまま、いつもの帰り道を並んで歩く。
「あ…見えてきた。ホラ、あの一軒家だよ」
なんとか空気を変えようと、見えてきた家を指差す。
秋穂がゆっくりと、俯いていた顔を上げる。
「あれが要君の家か…ここまではついていけなかったから、初めて見た」
「はは…さすがにここまでは無理だった?」
「ふふっ…ばれちゃうしね」
クスクスと秋穂が笑う。
よかった、これならだいぶ……あれ?
「……あれは…?」
よく見ると、家の前に誰か立っている。
徐々に近づいてみると、それがうちの学校の制服を着た女の子であることがわかった。
女の子もこちらに気づいたのか、少し早足で近づいてくる。
「要っ!」
「み、美希!」
な、なんで!?!!?
「ど、どうして?僕が行くって言ったのに…」
「えへへ、実は要の家のすぐ近くまで来てたんだ〜。で、驚かせようと思って!」
してやったり、といった顔で微笑む美希。でも……
「え、えっと……」
「?どしたの?……え?秋穂?」
僕の少し後ろで、黙って立っていた秋穂に気づいた美希の眼が、大きく見開かれる。
「こんばんわ……美希」
「え?……な、なんで?なんで秋穂がいるの?だって…ここ要の家……」
困惑した表情で僕と秋穂の顔を交互に見つめる美希。
やがてなにかに気づいたのか、顔を俯かせてしまう。
「そっか…そういうこと、なんだ……」
「み、美希?あの、なにか誤解して…」
「…………っ!!」
美希はそのまま踵を返すと、駅の方向へ走り出してしまった。
「美希!」
479冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:10:26 ID:AhOpUdy+
まずい!これは絶対追わないとやばい!
慌てて僕も美希のあとを追って駆け出そうとする。
「美希!待って!」
一歩を踏み出そうとした僕の手首に、冷たい感触が巻きつく。
「だめ!行かないで要君!」
振り向くと必死な形相の秋穂が僕の手首を両手でつかんでいた。
「ごめん……離してくれ!」
「だめ!…離さない!」
「……たのむよ、お願いだから…」
――そうだ、今ここで追わなかったらすべてが駄目になる。そんな予感がする。
「………………」
「……ごめん!秋穂!」
無理やり秋穂の手を振りほどき、そのまま駆け出す。
「要君っ!」
秋穂の追いすがるような声が聞こえる。
「ほんとにごめん!今度絶対お詫びするから!」
見えなくなりそうな美希の背中をおって、僕は夜の街の中を走り始めた。





「はぁはぁ……み、美希、足、はや、すぎ、るよ」
さっきから全速力で走っているのにまるで追いつけない。
陸上部に入ってたわけでもないだろうに、なんでこんなにはやいんだ?
夜の街を駆ける二人の男女。道行く人々が好奇の目で見つめてくる。
「くっそぉ!」
でもそんなのかまってられない。とにかく美希に追いつかないと。
身体のギアをマックスに入れ、全身全霊の力で加速を駆ける。

「くぅ…はぁはぁ…………や、やっと捕まえた」
どうにか、美希に追いつくことができた。
もう疲労困憊だ。また美希に走られたら絶対追いつけない。
「はぁ…はぁ……」
美希も肩で息をしている。でも、なんかまだ余力が残ってる感じだ。
もしかしたらわざと追いつかせてくれたのかもしれない。
480冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:11:37 ID:AhOpUdy+
「はぁ…んぐ、はぁ、み、美希、と、とりあえずどっか座ろう」
やばい、もう限界だ。このままじゃ倒れてしまう。
「…グスッ………うん。わかった」
コクリとうなずく美希。なんか鼻をすすってたような……
……もしかして泣いていたのかな。



「…はい。紅茶だけど、いい?」
「……うん。ありがと」
ベンチに座り、おずおずと缶紅茶を受け取る美希。その横に、僕も座る。
すぐ近くに公園があってよかった。この公園は大きいし、まだ人もたくさんいる。
ここなら変な輩に絡まれることもないだろう。
缶コーヒーの蓋を開け、一気に飲み干す。まだ息が上がってるような気がする。
最近、全然ジムにも通ってないし、トレーニングもしてないからこんな訛ってるのか。
走るくらいはしようかな……。
「………………」
隣に座る美希は紅茶に口をつけることもせず、黙ったまま、ずっと缶のふちを指でなぞっている。
「……はぁ」
空を見上げると、綺麗な星達が夜の暗闇いっぱいにひろがっていた。
ここのところずっとこんなかんじだ。雨が降ったり天気が悪くなることが全然ない。
…毎夜、この綺麗な星達が空に広がる。いいことだ。
「……秋穂とはなんにもないよ」
「………………」
「ウソじゃない。ただ勉強教えてもらおうと思っただけ」
「……勉強なら私が教えるよ」
まともに勉強なんか教えてくれたことないくせに。ふふっ…。
「とにかく、なんにもないから」
「…………ねえ、要」
「ん?」
「私の事、好き?一番、好き?」
…………………………
「好きだよ。一番好きだよ」
そうだ。僕の一番は美希だ。いつだって、そうだ。
そうだ……そうであるはずだ。
だから今一瞬頭をよぎった秋穂の微笑みは、たぶん、きっと、たんなる気の迷いだ。
「…私も要が一番だよ」
美希の暖かくて柔らかい手のひらが、僕の手の甲の上に重なってきた。
「…………………」
きっとそうだ……そうに、決まってる。
ゆっくり、美希の手を握り返す。

美希と高田のこと、秋穂のこと、今はそのどちらもどうでもいい。
ただ、もっと、ずっと、こうしていたい…………
481冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:12:17 ID:AhOpUdy+


――――チッ!まさか美希が家の前で待ち伏せしてるなんて!
要君の家にほとんど家族の人が来ないことは本間君と百桃お姉さんからの情報で知っていた。
だから今日、そろそろ勝負を仕掛けようと思ってたのに……
やっぱり忌々しい女だ。ことごとく私の邪魔をする…………!
「しかたないわね……あの子に動いてもらうしかないか」
携帯を取り出し、電話帳を開くと、ま行の人間を探す。……あった。
番号を表示し、通話ボタンを押す。数秒の待機音の後、標準よりすこしハスキーな声が聞こえてきた。
『…もしもし』
あらあら。やっぱり落ち込んでる。
「もしもし?私。庄田。で、決めてくれたかな?緑川さん?」
『………………』
長い沈黙。どうせ答えはきまってるくせに。
「私は別にいいんだけど、あなたはこのままでいいの?」
『………………』
「好きなんでしょ?高田君のこと」
『………………』
……あーじれったい!ほんと、昔の美希によく似てる。ま、だから大事にされるんだろうけど。
『もう少しだけ……時間をください』
…まあいいか。一応やってくれるようだし。
「わかったわ。でもあんまり時間はないわよ?」
『…はい。わかってます。』


あとは高田君がどう動くか、ね。どう動こうが私の有利になることに変わりはないけどね。

………さてさて、どうなることやら…ふふふ。
482 ◆SVNDcoHudE :2007/10/21(日) 18:13:06 ID:AhOpUdy+
終わりです。お疲れ様でした。
そろそろこのお話も収縮し始めるのでご容赦ください。
483名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 18:21:40 ID:rOD0VD3Y
Gj!(`・ω・´)b

庄司さん腹黒すぎだろwww
484名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 18:31:31 ID:DHv3vPHv
GJ!
要の好感度が俺の中でちょっと上がった。
そして次の策は何が来るのか、期待してます。
485名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 18:43:26 ID:GeyJeMe4
GJ!
こいつら受験間近なのにドロドロしてんなー
486名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 18:56:38 ID:pQsgHIuM
ほんとだよなw受験大丈夫なのかなww
487名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 19:21:13 ID:8etJHbYi
好きだし、毎回楽しみなんだが
固有名詞の登場人物多すぎて整理がキツイ。

美希と秋穂の過去が絡む、要視点を本編に
アナザーサイド3〜4個できそうな人数&人物関係

ところで一つ気になるんだが美希は前付き合ってた先輩と肉体関係までいったんだよな?
泣いてた描写もあったのに、やけに簡単に要に乗り換えた気が・・。
体も積極的に使って要を繋ぎとめる女かと思ったら
秋穂出てきて、「要の頭から秋穂追い出すためにここは体で要を篭絡か!」という時にせず。
高田に心揺れる描写とか、なんか浮気症とか尻軽女な印象が俺の中で出来てる
NTR心配してるのはこのせいなんだよね
なんかグラっとしたらすぐ雰囲気でHまで行きそう。(高田とのデートではくると思った)

要が一途っぽいから余計に美希のフラフラっぷりが際立つ。
488名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 19:43:22 ID:gfxARtHQ
GJなんだが、あんまり手を広げ過ぎないでくれ

色々な話を盛り込みたいのは分かるんだが、実際回しきれて無いし
正直、本編は要と美希と庄/高田だけで動いてるのが現状なわけで

まあ俺の記憶容量の問題なんだが
489名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 19:52:54 ID:nuITg5n6
要はヘタレ主人公なのかと思いきや、
良い奴過ぎて好感度上がりまくりだなw
490名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 20:13:27 ID:eHC59UpF
なんだよ要いい奴じゃんか…
ごめんよ、イライラするなんて思っちゃって
491名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 20:13:54 ID:jvTULUK4
次回辺りに寝取られキタァー(゜∀゜)ーー!!!!
になるかもしれんw すでにフラグが立っているし
492名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 20:15:00 ID:lJnaZ7TD
>>487-488
まぁまぁ、そこらへんは作者の裁量に任せようぜ
作者の思惑や考えてる展開もあるだろうしさ。
それにNTRとか今後の展開もある程度なら俺たち向けに配慮もしてくれるだろうし
>>3のテンプレもあるしね


今週のefはよい修羅場だった
ついニヤニヤしちまったよ
暇があったら後半だけでも見てみるべし
493名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 20:16:57 ID:DeT1gh1P
NTRは苦手だぜ・・・
494名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 20:18:21 ID:+SgWgeW+
配慮してくれなかったらそれはただのオナニーだしな
495名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 20:26:39 ID:DYGE7/4P
○○ガイに刃物
496名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 20:44:23 ID:zZNyhgK6
GJッス!
この複雑な関係がこれからどうなってくかwktkだwww


ってか要って一途か?
彼女じゃない女家に上げる事に疑問思っても抵抗見せなかったり、秋穂に揺れているとことか
一線引いてない時点でショージキ美希とあんま変わらん気がするよ
497名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 20:55:42 ID:jvTULUK4
これで寝取られたら要は発狂するんじゃないのか?
498名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 21:13:40 ID:T495ff9e
要はあまりにも優柔不断すぎてうざったるくなるな
499愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/21(日) 21:24:20 ID:QAUQcsfc
こんにちは。
>>310の続き投下します。
500愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/21(日) 21:25:13 ID:QAUQcsfc




『今日は楽しかった。ありがとね、遼』
『………ああ、うん』

 ここで別れなくてはいけないのが名残惜しくて、電車を一緒に降りることすら出来ない
のが悔しくて、自分が受け入れた約束であるのにそんなことを思う自分にどうしようもな
く腹が立って、僕の返事は図らずとも歯切れの悪いものなってしまった。

『………………………』
『………………………』

 微妙な沈黙が、僕らを包む。

 ――――この電車を降りたら、僕らの関係は『別になんでもない友達』に戻る。

 せめてそれまでは、そう思って僕は彼女の手を握る僕の手に、少し力を込めた。
 そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、彼女は苦笑いに似た表情を浮かべて僕の手を握
り返した。

 電車がもうすぐ、駅のホームに入っていく。
 今日の終わりは本当に、もうすぐそこまで来ていた。

 おいおい、別にこれが今生の別れでもないだろ? これからだってこんな機会は何回だっ
てあるんだし。
 そう自分に言い聞かせるが、それでも胸の痛みは引いてくれなかった。

 嫌だ、終わって欲しくない。

 今日に終わって欲しくない。

 だけどそれでも、僕の意思とは無関係に、僕らを乗せた電車はゆっくりと、ゆっくりと
減速していって、そして――――停まった。
501愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/21(日) 21:26:36 ID:QAUQcsfc

『それじゃ、バイバイ』

 荷物を持って、彼女が言った。その顔は、相変わらず優しく微笑んでいた。

『……うん、また』

 彼女の手を、離す。

 振り向きもしないで歩いていく彼女を少しの間見送って『彼女とは別の』扉から僕も電
車を降りた。

『…………………はあ』

 ホームに彼女の姿は見えなかった。この目で見送ったのだから当然のことだけれども、
それでもため息が漏れた。

 それから僕は一人で階段を上って、一人で改札を出て、一人で家路に着いた。

 クリスマスの街は色とりどりのイルミネーションや、幸せそうなカップルで満ち溢れて
いた。それらに毒づく気力もなく、僕はただ冬の星空を見ながら歩いた。

 彼女も今、この星空を見ているだろうか?

 そう思ってから、ああそういやアイツバスで帰るって言ってたっけ、と思い出し僕は力
なく笑った。

『…………オリオン座みーっけ』

 その日はやけに、星が綺麗だった。


502愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/21(日) 21:28:36 ID:QAUQcsfc



「………さん、中原さん、起きてください、中原さん」

 優しい声と体を揺さぶられる感覚に、僕は目を覚ました。

「大丈夫ですか、中原さん?」

 心配そうな顔で僕を覗き込む綾瀬さんの顔がすぐ傍にあった。何だろう、顔が濡れてい
る気がする。

「大丈夫も何も……」

 教室の中には、僕と綾瀬さんしかいなかった。

「あれ、今………」

 周りは静寂に包まれていた。

「四時間目、皆さんは今体育です」

 時計を見ると十二時ぴったり、まさに四時間目の真っ最中だった。期末テストが終わっ
て既に数日経っていて、授業は平常のものに戻っていた。

「………寝過ごしたって訳か」
「そういうわけですね」

 記憶があるのは前の授業の途中までだった。

「でも、何で綾瀬さんがここに?」

 当然の疑問が浮かんできた。僕なんて放っておけばよかったのに。

「い、いえ、その〜、休み時間も必死になって起こそうとしてたんですけど、中原さんと
てもグッスリ眠ってらして………、気付いたら授業始まっちゃってたんです」

 綾瀬さんはアハハと笑いながら言った。

「………あー、何か付き合わせちゃってゴメン」
「い、いえそんなの全然いいんです!!」

 顔を赤くして否定する綾瀬さん。
 何でかは分からないけど、やっぱり可愛いなあ。
 綾瀬さんには授業をサボらせてしまって悪いけど、この状況もさほど悪いものじゃない。
503愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/21(日) 21:29:46 ID:QAUQcsfc
「それより中原さん、大丈夫なんですか!?」

 と、綾瀬さんが僕が起きた直後の表情に戻った。

「大丈夫……ってどういうこと?」

 僕には彼女の意味するところが全く分からなかった。

「いえ、その……中原さん、ひどくうなされてたので」
「え?」

 心配そうな顔で綾瀬さんが続ける。

「休み時間までは、中原さん物凄く安らかに眠ってらしたんですけど、四時間目に入って
しばらくしたらうなされ始めて、それから………」
「それから?」

 綾瀬さんは僕の頬にそっと手を当てて、

「――――中原さん、泣いてました」
「…………あ」

 僕の頬を優しくなでる綾瀬さん。顔が濡れている気がした理由がやっと分かった。
 その雰囲気が何だか彼女に似ていて、容姿なんかは丸っきり違うのに何故だかそんな気
がして、

「何か悪い夢でも見たんですか?」

 さっきまで見ていた夢を、僕は思い出した。

 ――――何より大切だったあの女の子が、

 ――――誰より大好きだったあの女の子が、

 ――――そしてもう、僕の隣には居てくれないあの女の子が、僕の脳裏に蘇ってきた。
504愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/21(日) 21:31:00 ID:QAUQcsfc
「………………………………」
「中原さん?」

「……アハ、アハハハハハハ、全然大丈夫だよ!! いや〜何つーか、昨日テレビで深夜
にやってたホラー映画思い出しちゃって〜、それがもうすっごく怖いやつでさ〜」

 笑って誤魔化す。誤魔化そう。

「呪いのCDっていって、それ聴いた人は三日以内に死んじゃうっていうやつでね」
「中原さん……」

 立ち上がって綾瀬さんに背を向け、窓の方へと歩き出す。あまり今の表情を綾瀬さんに
見せたくなかった。

「うおー、今日は体育マラソンか〜。こりゃ参加しなくて良かったかもな〜」
「……中原さん」
「あはは、見てよ。吉本の奴、周回遅れになりそうだよ、女子にも抜かされてやんの!!」
「中原さん!!!」

 その声と同時に、後ろから軽い衝撃が走った。

「あ、綾瀬さん?」

 綾瀬さんの腕が、僕の腰に回っていた。

「……今の中原さん、凄く悲しそうです」

 詰まるところ、僕は綾瀬さんに後ろから抱きしめられているのであった。

「な、何言ってるの綾瀬さ」
「無理、しないで下さい……」

 僕を抱きしめる腕に力がこもる。静かで寒い教室の中で、綾瀬さんの息遣いとその温も
りだけが感じられた。

「あ、あ、ああ……………」

 頭の中に様々な感情が、思いが溢れ出す。

 彼女の笑顔、匂い、体温――――泣き顔、激しい自己嫌悪、喪失感、悲しみ、哀しみ、
どうしようもない程の後悔、色を失った、生きる意味を失った世界、一緒に見上げた星空、
オリオン座、白い息。

「くっ………」

 駄目だ駄目だ駄目だ、このままじゃ、もうここにはいられない。どうにかして、気持ち
を、気持ちを落ち着けないと。

「ごめん、綾瀬さん!!」

 綾瀬さんの腕を振り解いて、僕は走り出した。

「な、中原さん!!!」

 後ろから綾瀬さんの僕を呼ぶ声が聞こえた。
 それでも僕は走った。これ以上あそこにいたら、きっと僕は決壊してしまう。
505愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/21(日) 21:32:07 ID:QAUQcsfc



「はあ、はあ、はあ………」

 そこからどこをどう走ったのか分からなかったが、僕が行き着いた先は屋上だった。幸
いここに来る途中教師には見つかっていない、と思う。

 誰とも一緒に居たくなかった、一人になりたかった。

 仰向けに寝転がって空を見上げる。
 僕の気持ちとは正反対に、そいつは全くの晴天だった。こういう時の天気は土砂降り
くらいが丁度良いだろうに。

 呼吸が落ち着いてくると、だんだん思考もしっかりしてきた。
 自分がここに来るまでの経緯、綾瀬さんの体温、言葉、そして突然フラッシュバックし
て来た沢山の思い出。

「最近は、あんまりなかったんだけどな………」

 ハハハと乾いた笑い声を出す。

 何より大事なことのはずなのに、何より忘れてはいけないことのはずなのに、最近の僕
は周りの変化につられて、忘れかけてしまっていた。
 そのことにどうしようもない寂しさを、自己嫌悪を、後悔を感じる。

「………………ごめんな」

 誰に向けての謝罪なのかはハッキリしている。ただ、何についての謝罪なのか、それは
そうすべき対象が多すぎて挙げきることが出来ない。

 空は相変わらず馬鹿みたいに青い。

 あれからもうすぐ一年近くが経とうとしているのに、僕は相変わらず『そこ』で止まっ
たままだった。

506愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/10/21(日) 21:34:56 ID:QAUQcsfc
以上で今回分終了です。この辺から話が動き始めます。
ちなみに僕の頭の中では、綾瀬さんは門脇舞で再生されてます。
……どうでもいいですね、はい。
それでは次回もよろしくお願いします。
507名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 21:40:05 ID:DeT1gh1P
508名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 21:40:06 ID:p7SlmnIC
リアタイリアタイGJ!!
509名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 21:52:50 ID:0Yk5bNJ4
GJです。修羅場があればなんでもいいぜ!
510名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 22:15:58 ID:+6rjH0Mi
GJ
彼女の登場期待wktkだよ。
511名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 22:54:15 ID:KJM6PgY2
>>506
舞太キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
君とはいい酒が飲めそうだww

GJ!舞太GJ!
512名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 23:08:36 ID:GeyJeMe4
GJだが
普通体育で移動のときは友達が起こしてくれるものじゃないのか?
屋上で寝てたならまだしも教室で爆睡してたっぽいのに
513名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 23:37:18 ID:XwMQRQjl
GJ
私たちの場合、放置プレイしてたなwww
514名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 23:44:01 ID:Ey9+FPGf
綾瀬さんがそれはそれは恐ろしいプレッシャーで周囲を威嚇していたんだろう。
眠っている主人公を優しく揺り起こすことによって、ヒロインとしての不動の地位を築かんとしているわけだ。
515 ◆tVzTTTyvm. :2007/10/21(日) 23:55:23 ID:xWgA5YnC
>>470
以前チョットそれっぽいの書いたんですけどね
リオが、セツナと仲良くしてるクリスに軽い嫉妬を覚える、ってのを

ついでに少し近況報告
白き牙と1/8が途中まで書きあがってます
ただ、投下できる区切りの良い所まで後もう少し、って感じです
お待たせしてしまっててすみません
516名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 00:01:21 ID:aiRSmJA3
GJ
自分高校のとき移動教室で寝たまま放置されてた人いました
517名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 00:50:48 ID:Nm9SiyEg
>>516
>自分高校のとき移動教室で寝たまま放置されてた人いました
どう見ても学生時代の俺
まあ今でも仕事以外の友人はいませんけどね
518名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 02:09:14 ID:yCUVQ0qT
↑俺がいるのはいいとして>>515wktk
519名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 15:30:47 ID:HTEbHXzP
君が望む永遠並みの欝話を期待して全裸で待つぜ
520名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 19:15:23 ID:OcGgoeTc
最近のこのスレの勢いは異常。職人さん達、無理はしないで頑張ってください
521名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 19:30:06 ID:UlIEBDkS
>>520
わざわざageんな
5221/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/10/22(月) 21:14:20 ID:kGJqIG64


  /      /      /      /


「…………バカか、アンタは?」
「うぅ……知恵ちゃん。 そんなズバッと言わなくたって……」
 アッくんとお昼を一緒にする事も仲直りも出来ず意気消沈して仕方なく教室に戻ると、
アタシの耳に入ってきたのは知恵ちゃんの歯に衣着せぬ手痛い言葉だった。
「言いたくもなるわよ。 謝りに行って仲直りするどころか逆切れして戻ってくるなんて、
呆れてものも言えないわよ!」
「だ、だって……だって……アタシは二人っきりで食べたかったのに……」
「いーじゃんよカレシ君の、あ、振られたから元カレ君か? の、友達の一人や二人増えたって」
「だから! その友達が問題なのよ! よりによってアタシが認めたくないアッくんの趣味の――
プラモ仲間の! そんなコと一緒だなんて!」
 アタシは思わず檄昂して叫んだ。

「何? よーするにアンタ、その元カレの友達に対し嫉妬してるわけ?」
 そんなアタシの言葉に千恵ちゃんは溜息をつき口を開いた。
 アタシは千恵ちゃんの其の言葉に一瞬呆気に取られ、そして思わず声を上げる。
「はぁ?! 嫉妬?! バカ言わないでよ!
嫉妬ってのは驚異とか、じゃなきゃ羨ましいって感じさせるような相手に感じるものでしょ?!
あんな色気も無いようなチビガキに嫉妬なんてするわけないでしょ!
アッくんにプラモをやめて欲しいアタシが、プラモの事で仲良く話してるの羨ましがる訳ないでしょ!
アッくんだってあんなガキ、趣味が一緒だから一緒にいるだけなんだから!」
「って言うかさぁ、アンタ忘れてない? アンタが其の趣味を認めてあげられなかったのが原因で
こうなったって言う事」
 感情的に口を開いたアタシとは対照的に千恵ちゃんは淡々とした口調で口を開く。

「う……。 そ、そりゃそうなんだけどさぁ……」
「って言うかさぁ、あんた等は付き合ってる頃から色々問題抱えていたようにも見えたけど?」
「問題? 問題って何よ?! アタシは何時だってアッくんの事大好きで、アッくんの事考えて……」
「そう言ってる割にはいつもデート代は彼氏持ちじゃなかったっけ?」
「そんなの当然でしょ。 普通デートって言ったら彼氏が持つのがデフォでしょうが。
男の子の立場から言ったって自分が持つ事で男の子としての面目を保てるんだし。
それにアタシらは女の子はオシャレにファッションにお金がかかるんだから」
「まぁ……あながち間違ってるとは言わないけどさぁ……」
「でしょ? それにアッくんお金持ってたってどうせプラモにつぎ込んじゃうんだし、
デート代に注ぎ込んだ方がよっぽど有意義よ」
 そうよ。 アタシは何時だってアッくんの為に綺麗なカノジョでいようと頑張ってたんだから。
 その為にお金だってかけてきたんだからデート代ぐらい――。
5231/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/10/22(月) 21:15:53 ID:kGJqIG64
「あのね……。で、その彼氏持ちでアンタらがしてたデートだけどさぁ、いつも映画だったっけ?」
「そ、映画。 で、大体がホラー」
「そういや何時もホラー映画チェックしてたわね。 アンタと彼氏のどっちの趣味よ?」
「えっと強いて言えばアタシ?」
「何、其の強いて言えばってのと語尾のクエスチョンマークは」
「えーとね、ぶっちゃけアッくんホラー嫌いだしアタシもあんまし好きじゃないんだけどね」
 アタシが応えると千恵ちゃんはあからさまに疑問の表情を浮かべる。
「は? だったらなんで」
「えー、だってホラーだと遠慮なく手ぇ握ったり抱きついたり出来るし。
あとね、アッくん物凄い怖がりなのに一生懸命怖いの我慢しててね、
そんなアッくんの一生懸命さが可愛いって言うか愛しいって言うか、そんな顔が好きなの」
 言いながらアタシの脳裏にアッくんの顔がよみがえる。
 アタシの為に一生懸命になってくれる大好きなアッくん。

「素豆子……ちなみに訊くけど映画の選択、元カレ君にさせてあげたことある?」
「ないわよ。 だってアッくんに任せたら子供っぽいのやマニアックなのばっかなんだもん」
 アッくんプラモばっかやってるから当然そのプラモの基になってるアニメとか、
そんな感じのばっか選ぼうとするんだもの。
 そう言うのもひっくるめてプラモなんかやめて欲しかったのよね。
 アタシがそんな事考えながら応えると千恵ちゃんは突然黙って手招きをした。
「何? 千恵ちゃ……」
 アタシは身を乗り出すとアタシの目の前、正確にはアタシのおでこの前辺りに
親指と中指で輪ッカを作った千恵ちゃんの手が――
 次の瞬間頭蓋骨に響きそうな程の痛烈な痛みが突き抜け目の前に星が弾けた。
「?! い、いったぁ〜〜〜〜!!?」
 アタシは額に強烈なデコピンをお見舞いされたのだ。
「ち、千恵ちゃん! 何……」
「やかましい! 何よその傲慢な付き合い方は?! 趣味を認めてやらないだけじゃなくって
そんな真似までしてたのかアンタは?! それじゃ振られて当たり前だ!」
5241/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/10/22(月) 21:17:29 ID:kGJqIG64
「振られ……そうだ、アタシはアッくんに振られ……」
 今更ながらまた振られたショックが蘇ってきて、また涙が……
「黙れ! 泣くな鬱陶しい! って言うかいい加減自業自得だって自覚してんのか?!
本当にやり直したいと思ってるのか!」
 勿論やり直したいに決まってる。
「あ、あるわよぅ……。 だから、また明日にでも謝まりに……」
「本当にちゃんと謝れるの? ついでに仲直りの意味も込めて誠意の一つも見せてきたら?
例えば、映画とかに誘うとか」
「え、それってデートってこと? でも、未だ絶縁されたままなのに……」
 ――デート。 勿論したいに決まっている。
 でもより戻したわけでもないのにデートに誘う資格なんて……。
「深く考えるんじゃないの。 元から幼馴染同士だったんでしょ?
付き合う前だって映画ぐらい一緒に行ったんでしょ?」
「うん……、まぁ。 分かった。 じゃぁ仲直りの手始めに一緒に映画行こうって誘ってみる」
 そうだね。 恋人とかそうじゃないとか、そんな風に細かく考えないで誘ってみようかな……。

「あと、一応言っておくけど映画代はアンタが持って上げるのよ?」
「え?」
「何、アンタから仲直りお願いするんだから当たり前でしょ?」
「でも今月は他に欲しいのが……」
「アンタ! 本当に状況分かってるの?! それに今までだって彼氏がそう言う思いしてたのよ?!」
「わ、分かったわよ……」
 アタシはしぶしぶながらも頷く。 でも確かにコチラから歩み寄るんだからそれもそうか……。
「勿論映画の選択は元カレ君にさせてあげるのよ?」
「えー? でもそうしたらさっきも言ったけど、オタ……」
「アンタ……、本当に分かってる?」
「わ、分かったわよぅ……。 じゃぁ次の休み時間にでも……」
「待って。 アンタそれじゃまた空回りしそうだからメールにしな」
「え、でもこういう大事な事はメールより口で直接伝えた方が……」
「確かにそれが正論だけどね。 でもアンタ今までそれで散々失敗してたじゃない。
だから、今ココでメールしな」
 確かに、そうかもしれない。
 アッくんに振られたあの日から何度も口頭で言おうといつも失敗してた。
 アッくんを目の前にすると気持がはやり空回りしてしまうから――。
「うん、分かった」
 そして私は携帯を取り出しメールを打ち始めた。

To be continued.....
525名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 21:19:06 ID:kGJqIG64
とーかしゅーりょー
最近活気付いていて一読者としても嬉しい限り

転帰予報>妹属性持ちなんで雨音ちゃんに頑張ってほしいなぁ
冬の星空>主人公以外の男性キャラが深くかかわってくる展開は珍しいので、其の点が特に楽しみ
愛しさと心の壁>舞太と言われると未だに双樹が思い浮かんでしまう
526名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 21:19:20 ID:UlIEBDkS
527一万年と二千年前から愛してる:2007/10/22(月) 21:22:46 ID:rvvfLg+r
投下します
528一万年と二千年前から愛してる:2007/10/22(月) 21:23:16 ID:rvvfLg+r
「あ、優君」
下駄箱に行くと、件の幼馴染、舞香が小柄で幼い顔にいつもの優しい笑みを浮かべて寄ってきた。
「どうしたんだ?待ってたのか?もう掃除当番もとっくに終わってただろ?」
「え、うん。もう帰っちゃったと思ったけど、下駄箱見たらまだ靴があったから」
「そうか」
「そういう優君はどうしたの?何か用事でもあったの?」
「ん・・・女の子に告白されてさ」
「・・・え・・え!?」
突如凍り付いた舞香の表情
「ど、どうした?」
事実が受け入れられないとでも言いたげな表情。こんな舞香の顔は初めてだ
「あ、それ、その話、ほ、本当なの?」
「あ、ああ。俺、舞香に嘘付いた事無いだろ?」
「そ、そうだね・・あ、そうだ、あ、相手は誰なの?」
「クラスメートの大空さん。知ってるだろ?」
「そ、それで、その、何て返事したの!?」
「ん、まあ、唐突だったから返事は土日挟んで月曜まで保留にしてもらった」
「つ、つまり、まだOKしてないんだよね!?まだ付き合ってないんだね!?そうだよね!?」
やっと事実が飲み込めたようだが、今度は泣きそうな顔で何かに急き立てられるように叫ぶ舞香。
「ま、舞香、落ち着け、どうした?」
「あ、ごめんなさい。それで、優君はどう思ってるの!?大空さんの告白、受け入れちゃうの!?」
「だから保留だって。お前、何だかおかしいぞ。何かあったのか?」
「ん・・・な、何でもない。じゃ、そろそろ帰ろっか」
「ああ」






〜side舞香〜
ど、どうしよう、優君、学校で才女として有名な大空さんに告白されちゃったって・・・私、今まで
ずっと優君だけを想ってきたのに・・・幼稚園で本を読んでもらってるうちにいつの間にか芽生えた
恋心、あの事件を境に、一気に心の中で強く深く根を張ったこの気持ち。一体、どうすれば良いの?
神様、助けて、お願いです、一生分の運を使い果たしても良いですから、優君の気持ち、私に傾けて
ください。私、優君を取られたくないんです。でも、自分から告白なんて・・・だって優君って実は
結構女子に好かれてるんだよ?ただ、私がいつもそれとなく傍にいるから皆、私たち付き合ってると
思って告白しようとする子なんてほとんどいなかっただけで。私、全クラスに友達いるけど、それも
優君の事狙ってる子がいないか、それとなく探りをいれる為だったのに。ほんの一握りの親友に協力
してもらって優君が私と付き合ってるみたいな話、優君に告白しようと思ってる子に聞こえるように
してたけど、自分のクラスの中に優君を狙ってくる子がいるなんて、完全に盲点だった。クラスでは
私がいつも優君の傍にいるから、ほかの子も皆諦めるだろうって、油断してた。それに、優君の姿を
見ると、頭の中がそれだけで一杯になっちゃうから、友達とかも作れなかったし。相手があの学校の
才女じゃ絶対に勝ち目ないよ。こんな事ならもっと早く、好きだと面と向かって言えた幼い頃に告白
しとくんだった。もう、こうなったら、あさって、日曜日の夜に、恋人になれる、最後のチャンスに
好きだと言ってしまおう。ダメで元々、上手く行けば恋人になれる。どうせ、このままじゃ、優君は
大空さんに取られちゃうんだから。神様、お願いです。私に、告白する勇気と、彼の心をなびかせる
力を下さい。
529一万年と二千年前から愛してる:2007/10/22(月) 21:24:22 ID:rvvfLg+r
今日はここまでです。
改行とか、一気に読めるように色々気をつけてみました。
こんな感じでどうでしょうか?
530名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 21:30:45 ID:yWHehde6
これで改行に気をつけたとか本気で言っているのか?
531名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 21:37:47 ID:2qT5jmQ8
>>530
まてまて、問題点は具体的に指摘しようよ。
けなすだけの批評感想じゃ下手な書き手よりタチ悪いぞ?
532名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 21:52:30 ID:SYBfsumr
文章に関しては問題はない
ただ、投稿する改行がおかしい。後、投稿するならトリップを付けることをお奨めする
ちゃんとテンプレに書いてあることを守らないとダメってことですよ
533名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 22:23:33 ID:h4Ob2btn
>>529
お前はまず人間としての常識を一から学んで来い。
18歳以上でこれだとこれからの人生やってけないぞ?
534名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 22:29:35 ID:yCUVQ0qT
>>525
GJ
友達が良い奴過ぎて泣ける
535名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 22:32:24 ID:yCUVQ0qT
ごめんなさい
536名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 22:32:47 ID:kUIZNcq6
>>525
投下乙です!
しかしなんという絵に描いた様なヤな女っぷり…
稲峰ガンガレ超ガンガレ
537名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 22:38:47 ID:OmRZUjXm
こういう文章では文末には句点を入れることを徹底しましょう
また、改行はそれら記号のあとにやるようにした方がいいです
自分から見て画面収まりがいいように改行してるつもりかもしれないですが
人によってモニターの大きさが違うっていう当たり前のことくらいは気付きませんか
538名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 23:02:28 ID:KVB9REto
>>525
ずっと全裸で待ってた
やっと服が着られるぜ

>>529
好きに書いて何の問題もないと思うが、
一度に4レスくらい溜めてから投下すると話を把握しやすいんじゃない
あと読点で改行すると読みやすくなるよ
539名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 23:09:16 ID:HyAlE/bS
んじゃちょっと具体的に直してみよう。

>ど、どうしよう、優君、学校で才女として有名な大空さんに告白されちゃったって・・・私、今まで
>ずっと優君だけを想ってきたのに・・・幼稚園で本を読んでもらってるうちにいつの間にか芽生えた
>恋心、あの事件を境に、一気に心の中で強く深く根を張ったこの気持ち。一体、どうすれば良いの?
>神様、助けて、お願いです、一生分の運を使い果たしても良いですから、優君の気持ち、私に傾けて
>ください。

ポイントは、
@文章の途中で改行するのは良くない。
ウィンドウ幅に合わせているつもりだろうが、ウィンドウ幅は読み手によってマチマチ。
A句点が多いので、読点を増やして文章をいったん区切るべき。

この二点かな。ではこれで直すと↓

ど、どうしよう、優君、学校で才女として有名な大空さんに告白されちゃったって・・・。
私、今まで ずっと優君だけを想ってきたのに・・・。
幼稚園で本を読んでもらってるうちにいつの間にか芽生えた 恋心。
あの事件を境に、一気に心の中で強く深く根を張ったこの気持ち。
一体、どうすれば良いの? 神様、助けて、お願いです。
一生分の運を使い果たしても良いですから、優君の気持ち、私に傾けて ください。
540名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 23:13:24 ID:pCrd1sXH
>>525
GJ!いい友達をもって良かったね・・・( ´Д⊂ヽ
仲直りできるといいんだけど・・・

>>538
>ずっと全裸で待ってた
>やっと服が着られるぜ
じゃあ今度は俺が脱ぐターンだな。

>>539
ビックリするぐらい印象が違うね。改行は大事だわ。
541或騎士之難儀6 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/22(月) 23:51:30 ID:F4nEBrD3
投下します
542或騎士之難儀6 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/22(月) 23:52:07 ID:F4nEBrD3

<一>

 それは、八年前。

 父の没後、後一郎宛に認められた遺書にはただ、紗恵と十夜を頼む、と書かれていた。
 片や、生前に最後に聞いた言葉は、紗恵の婿と協力し、二人を守ってくれ、という言葉だった。

 それを見、聞いて、決心が新たになったというわけではない。
 騎士であれば、弱い者を守ることは義務であるいうことは、父に散々言われてきたことであったし、剣術の師にもそう教わってきた。

 ただ、父母の死に涙を見せなかった紗恵と、泣きじゃくっていた十夜。
 二人を見て、紗恵に畏れを抱き、十夜に愛おしさを感じた。

 それは、幼い頃から後一郎が見てきた二人そのままだった。
 紗恵は、どんなことにも動じず、自分のするべき役目を果たす。
 一方で、十夜は平時は気が強くても、土壇場で崩れてしまうところがあった。
 そもそも、年齢の違う者を同列に扱うのが間違いであるかもしれないが、後一郎にはそういった印象があった。

 結局のところ、十五の小僧が都廻という勤めを果たせたのは、最後の一線で彼女の存在があったからなのだろう。
 たとえ悪し様に言われ、明確な嫌悪をぶつけられたとしても、右庵にとっては、十夜は昔の幼い妹のままだった。
 彼女を守るために必死で働き、扶持を稼いできた。

 だから、追い出したいなどと考えるはずはなかった。

 だというのに。

 何故、自分は。
 紗恵と十夜を追い出したら気楽になる、などと考えてしまったのか。
543或騎士之難儀6 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/22(月) 23:53:16 ID:F4nEBrD3

<二>

 悩み事があろうと、寝て、飯を食い、仕事に出る。
 当たり前のことではあるが、右庵にとって、それらはやるべきことであり、やって当然のことであった。

 特に千里耳の下で働くようになってからは、彼女の書を都廻の詰め所に届けるという仕事は、雨だろうが雪だろうが行ってきたことなのだ。
 それこそ、病の時であろうと、怪我をしている時であろうと行ってきたことである。
 今更自分の都合でできない、などということはなかった。

 逆に言えば、役目の間や家での振舞いは変わらずとも、頭から迷いが離れるわけではなかった。

 やるべきことは粗方終わり、いつものように千里耳の言葉に従って酒場に入った時も、特に酒を飲むだけでもなく右庵は思索に耽っていた。

 寝ても覚めても、という言葉を思い出す。
 幸花に言われたあの言葉が、右庵の頭を離れなかった。

『貴方…本当は、二人を屋敷から追い出したいんじゃないのかしら』

 あの時は慌てて否定し、自分がそんなことを考えていないと自分に言い聞かせた。
 しかし。今落ち着いて考えてみると、わざわざ後ろめたく思うことはなかったのではないか、という考えが右庵の中で首を擡げていたのである。

 右庵は今年で二十二。
 騎士の、それも長男であれば嫁が決まるか決まらないか、といった年頃である。

 同じような境遇にいる者など、家にいる親や兄弟姉妹が出て行けばいいのに、と裏で言っている者は少なくなかった。
 そうすれば、嫁を貰う前に、思う存分「遊び」に興じ、羽目を外すことができるのだろう。

 勿論右庵は、彼らのように遊ぶつもりもなかった。
 楽しみと言えば、せいぜい酒を飲むことと、時たま、小久我の馨から愉快な話を聞くことぐらいであった。
 とはいえ、である。
 表で言えることではないが、一般に右庵の置かれた立場からすれば、紗恵や十夜を追い出したいと思っても不思議ではない。

 そんなことを考えると、どうしてあんなにうろたえてしまったのだろうか、などという方向に思考が向かうのである。 

 もしかしたら、本当に、姉や妹に嫌気が差してしまっているのかもしれない。
 右庵は、あの時自分が、紗恵や十夜がいなくなったら心安らかになるのではないか、と想像したことを思い出す。

 今度は自分が嫌になってしまった。
 父や母がいなくなった今、彼女らを支えるのは自分なのだ。
 それを放棄しようなど、騎士として、そもそも人間として間違っている。

 いつの間にか、また同じことを考えている、と右庵は思った。

 極論、幸花はそこまで考えて物を言ったわけではないだろう。
 だというのに、いつまで自分は悩んでいるのか、と右庵は頭を抱えるのだった。

 頭を抱えた手の間から、頼んだ料理が見えた。
 まだ冷めていないごた煮に手をつける。
 それは、紗恵の料理よりひどく味が濃かった。

 と、千里耳が珍しく真剣な顔で問いかけてきたのはそのときだった。
544或騎士之難儀6 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/22(月) 23:54:23 ID:F4nEBrD3

<三>

 彼の女性―――と言っていいかどうかは定かではないが―――は、右庵が頭の中で考えていることは常に見透かしているようであった。
 だからこそ、千里耳に神妙な顔で、少しいいか、などと聞かれた時は自分が今考えていることを聞かれるのではないか、などと右庵は考えたのだ。

 しかし、実際に聞かれたことは、全く異なることであった。

「お前は小久我の長女…幸花とやらのことを好いているのか?」
「…」

 千里耳は、一通りの食事を平らげ、今は酒だけを飲んでいるようであった。
 右庵は懐具合と食事の量を見て、まだ余裕があるということを確認してから、正直に千里耳の質問に答えた。
 
「特には」
「特には?」
「特に好きだ嫌いだ、というわけではありません。
 世話になっておりますし、馨の姉君ともあれば、滅多な付き合いはできないでしょう。
 …何故またそのようなことを?」
「何となく気になったからだが」
「…」

 千里耳が何の意図で聞いてきているのか、本当に何の意図もなく聞いているのかは、右庵に見当もつかなかった。
 普段であれば、都廻としての能力を疑われるだろうが、この相手では仕様がない。

「そこそこ器量はいいと思うのだ。乱暴に過ぎるがな」
「…私から何の言葉を引き出したいのでしょうか」

 妙に持って回った言い方が、その時に限って勘に触った。
 右庵にしては珍しく、苛立った声でそう聞き返す。
 が、千里耳は全く動じる様子もない。

「単純な話だ。
 それこそ、そろそろ嫁の一人でも見つけなければいけないのではないか?
 好いた女の一人や二人、おらんのか?
 いないのであれば、あの女でもよかろう?」
「…」

 右庵は、妙なところで自分の考えが読まれていたような気がした。
 先ほど感じた苛立ちは霧散し、代わりに、千里耳の言うままに応じてみるか、などと考えが表に出てきていた。
 そもそも、隠し立てしても意味の無い相手ではある。
 世間話なのか、それとも何か意図があってのことかはわからないが、右庵はとりあえず返答することにした。
545或騎士之難儀6 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/22(月) 23:55:31 ID:F4nEBrD3

「嫁も無く…というわけにはいかないのでしょうか、やはり」
「長男だろうが、お前は」

 本気で呆れたかのように千里耳は肩をすくめ、いつもは自分の立場にこだわっている癖に、と言葉を続けた。

「それとも本気で姉や妹の婿に家督を渡すつもりか?」
「…できるならば」

 楽でいいでしょう、という言葉は口の中に押しとどめる。
 意味は無いことではあったが、外でこういった会話をするには若干の引け目が彼にもあった。

 実際、家督を他の人間に譲ったところで、また別の面倒ごとが起きるのはほぼ間違いない。
 しかし、嫁を貰う、ということは右庵にはどうにも実感のわかないことであった。

「お前は、紗恵はともかく、妹の婚姻には乗り気ではなかったと思っていたのだが、な」
「確かにそうですが…」
「昔は懐かれていたと聞いたことがあるな」
「ええ。あの子も、昔は私といても嫌な顔をすることはありませんでした。
 …年を重ねるごとに私を毛嫌いするようになりましたが」

 右庵の言ったことは正確ではなかった。
 嫌な顔どころか、右庵には、かつては十夜に慕われている、という自覚があった。
 また、十夜が右庵のことを邪険にするようになったのは、年を重ねるごと、ではなく、ある事を契機にしてのことである。
 だがしかし、別に話の流れにおいてその辺りの真偽は重要ではないだろうと右庵は考えていた。

「十夜のことが今でも気にかかるか」
「気にかかる、というのであれば…いつでも気にかかります。
 姉様はともかく、十夜は体も弱く、要領も悪いですので。
 …私の目が節穴で、実際は違うのかもしれませんが」
「あれほど嫌われてもか?」
「…わかりません」
「ふむ」

 そこまで言って、一旦千里耳は会話を止めた。
 結局、右庵には千里耳が何を考えていたのかはわからなかった。

 酒場での食事代と酒代は、いつもより少しだけ安く済んだのだが、右庵は大して気にも留めなかった。
546或騎士之難儀6 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/22(月) 23:56:17 ID:F4nEBrD3

<四>

 酒場を出ても、千里耳の話は終わらなかった。
 丑三つ時を過ぎ、町人達の住まう通りですれ違うのは、仕入れに向かう魚屋と、仕込みを始める豆腐屋ぐらいのものである。
 静かな分、声はよく響いていた。

「なんだかんだで紗恵には世話になり、十夜のことは可愛くて仕方が無い、か」
「…」
「強く言えないのも当然と言えば当然だな」
「…」
「そして、二人のことが心配であれば他の女に気を持つ暇もないという訳だな」
「…それはどうかわかりませんが」

 右庵は、今更ながら居心地の悪さを感じていた。
 千里耳が意図的にやっているのだろうが、それでも納得できるものではない。

 と、千里耳の言葉の中に妙な言い回しがあったように、右庵には思えた。

「…千里耳様。
 私は姉様のことを…」

 右庵は、言いかけて気づく。
 こんなことは言ってもそれこそ意味のないことであるはずだった。

「なんだ?」

 あるいは、その言葉を引き出したかったのか。
 騎士姿の謎めいた美女は、先ほどまで緩んではいなかったその顔に、笑みを浮かべていた。

「…」

 右庵は、ため息をつき。

「私は姉様のことは心配したことなどございません」
「そうか?」
「…ええ。
 姉様ほどの女性に、私が心配することなどないでしょう」
「そうか?一つぐらい気にかけていることがあるのではないか?」

 鋭いのか、あるいはこちらを手玉にとって喜んでいるのか、それとも両方か。
 右庵は、心中で困った、と思った。

 紗恵は、そもそも右庵の思慮が及ぶような存在ですらなかった。
 ただ、一つだけ気にかかることはあるにはあった。
 が、それを正直に言っていいものかは、右庵にはわからなかった。

「…結局気にはかけているのだろう」
「…」
547或騎士之難儀6 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/22(月) 23:57:01 ID:F4nEBrD3

 右庵は、千里耳の言葉に答えることはなかった。
 ただ、そもそも何故自分が紗恵に嫁入りを勧めたのかを、思い出していた。

 紗恵は、ひどく世間ずれしている。
 右庵はそう考えていた。

 紗恵は確かに要領はいい。
 学問も達者であり、家事も十分にこなす。
 文書などは、右庵などよりも紗恵が書いたときの方が様になる。

 しかし、それはあくまで家の中で、の話なのである。
 右庵には、両親の死後八年、彼の姉が屋敷の外に出て、何かをしたという記憶がほとんどなかった。

 右庵が昼夜を逆転した生活を送る前、すなわち夜回りの仕事につき、千里耳の書を受け取る役目を受ける前から、紗恵は常に屋敷にいた。
 家事をし、屋敷の手入れをし、他の騎士の家との手紙のやり取りをしているばかりで、屋敷の外にはほとんど出なかったのである。

 十夜は昔から体が弱く、床にふせることも少なくなかった。
 また、父母の死とともに、使用人は去ってしまっていた。
 右庵は屋敷にいない。

 だから、紗恵は屋敷に居続けざるを得なかったのである。

 紗恵の言葉から察するに、それは決して嫌なことではなかったのかもしれない。
 しかし、二十を過ぎた女性が、外の世界を知らぬまま、屋敷に束縛されている、という事実は、右庵には不自然に思えた。
 しかも、紗恵が屋敷の中にい続けなければいけない原因の一端は、右庵にもあった。
 だからこそ、紗恵が屋敷の外の世界を知らないことは、右庵にとってひどく心苦しかったのである。

 それが、嫁入りを勧めたきっかけであった。
 もっとよい家に嫁げれば。もっとよい者達に囲まれれば。
 そう、右庵は考えたのだ。
548或騎士之難儀6 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/22(月) 23:57:34 ID:F4nEBrD3

「ほれ」

 右庵の思索は、軽やかな音とともに終わらされた。
 背中を叩かれた瞬間、右庵はおもわず体を震わせる。
 他にこんなことをする者はいない。
 慌てて千里耳を見ると、彼女は穏やかな笑みを浮かべていた。

「わかったろう?
 今はともかく、初めはそう考えていたのだ。
 姉と妹のために、と思って始めたことなのだろう?」
「…は?」

 千里耳の言っていることが、右庵にはよくわからなかった。
 目を白黒させ、間抜けな顔で首をかしげる。
 そんな右庵の様子に、千里耳は、く、と笑いを漏らした。

「初心忘れるべからず。
 下らぬことに気を囚われず、役目にも精を出せ、馬鹿者が」
「…」

 一瞬の後、右庵はあることに思い当たった。
 この、人の考えなど見透かしたかのような存在は、自分の悩みを解決するためにこのような話をしていたのだろうか。
 それは、さほど的外れではないように思えた。

 げに恐ろしきは世事に通じし人ならざる者か、と右庵は考え、また一方で、気遣いをありがたくも思った。

「何をしている。
 まだ夜は明けておらんぞ」

 千里耳はすでに、右庵の十歩ほど先まで進んでいる。
 右庵は重い刀を掴み、小走りに駆けて追いつき、頭を下げた。

「…申し訳ありません」
「とく行くぞ右庵…盗賊改方に先を越されぬうちにな」
「…そのような者達の相手をすれば、こちらの命が危うくなると思いますが」

 いつもの調子でそう言った右庵に、千里耳もまた、いつものようにうんざりとした様子で返す。

「景気付けに言ってみただけだ」
「…は」
 
 視界はいつの間にか開けていた。
 暗い夜闇の中で、それでも無数のものが見える。
 右庵は、千里耳から渡された書の内容を思い出しつつ、残りの時間でどう見回りを行うかを考えていた。 
549或騎士之難儀6 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/22(月) 23:59:38 ID:F4nEBrD3

<五>

「姉様はともかく、だそうだ。
 独りで立てるというのも考え物だな」

 夜。
 その女と会うのは、いつも夜であった。
 屋敷の庭にて、何の前触れもなく訪れる女。
 まるで獣のようだ、と思ったのは今日だけではない。

 木々の隙間からこちらを用心深く見やる獣たち。
 紗恵にとって、彼女は、そういった存在であった。
 実際、今も笑いを含んだ言葉が聞こえるだけで、顔も体も見えはしない。

「これもお前の予想通り、か?」
「…」

 からかいに来たのか、それとも律儀に報告に来たのだろうか。
 どちらでも紗恵には気に入らないことであった。

 自分の知らない弟を、あの女は知っている。
 それをまざまざと見せ付けられる形になるのだから、当然といえば当然であった。

「…しかし」

 言葉を口にすることすらも、厭わしい。
 だが、感情はそんな嫌悪よりも意地を優先した。

「右庵殿は、誰に恋心を抱いているわけでもない。
 貴様にも、小久我にも、他の女にも、増してや十夜にも」

 それは、彼は自分から離れられない、という意味を含んだ言葉だった。

「確かに、幸花とやらにそのような感情を抱いている節はなかったな。
 とはいえ、これからもそうだという保険はないだろうに。
 先も言ったが、お前の妹は随分と大事にされているぞ?」
「…そのためにあの子に暗示をかけた」

 少し時間をおいて。
 紗恵の言葉に、その者にしては珍しく、苦みばしった声が返ってくる。

「…先代も厄介な技をお前の母に教えたものだ」
「私には関係の無い話だ」

 言うと同時、紗恵は注意深く目を凝らす。
 その女を見つけたのは、木の上だった。
 女はこちらが姿を認めたと知ると、顔だけこちらに向け、言葉を投げかけてきた。

「回りくどいことをせずに、体を使って自分のものにしてしまえばいいだろう。
 奴はまだ若い。女体を知れば考えも変わると思うが」
「…」
550或騎士之難儀6 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/23(火) 00:02:10 ID:F4nEBrD3

 それは、千里耳が紗恵の弟への思いを知った時に最初に言った言葉であり、その後幾度と無く勧めてきた方法でもあった。
 だが、それは誇りが許さなかった。

 自分は選ばれるべき存在であって、選ぶ存在ではない。
 本末転倒ではある、ということは彼女自身理解していたが、先程のように、理屈や損得を誇りが上回ったのである。

「…言語道断、か。
 あれだけ弟を躾けておいて、最後の一線は自分で選ばせるとはな」

 何も答える必要はなかった。
 紗恵にとってこの女は、極力言葉を交わす必要がない相手であった。

 刃を持たずに庭に出たのは間違いだったろうか、とも紗恵は考える。
 無手で化け物相手に勝てると自惚れるほど、紗恵は間抜けではなかった。 

 が、相手の化け物は元より争いなどに全く興味はないようであった。

「ともかく、だ。
 お前も気づいているだろうが、小久我の長女がよからぬことを考えている。
 手は先に打っておけ」
「…言われるまでも無い」

 紗恵の言葉に、千里耳は、ふん、と鼻を鳴らして樹上から消え去った。
 どこへ行ったのかなど、夜目が大して利くわけでもない紗恵にはわからぬ話である。
 だが、大方右庵のところへ行ったのだろう、と紗恵は考えた。

「…」

 庭から屋敷の中に戻る前に、紗恵は思う。

 先手を打たなければ、と焦りを覚えた時点で、すでに後手に回っているのだ。

 そしてまた、こうも考えた。

 先手とは、常日頃から打っておくべきものだ、と。
551或騎士之難儀6 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/23(火) 00:03:52 ID:ziu4O2s5
以上で投下終了です
552名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 00:04:09 ID:DGBo3sy4
リアルタイムキタ━━━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━━━!!!!
超GJ
右庵が思考のドツボに嵌っていく (・∀・)ニヤニヤ
腹黒姉さん最強!!!!!!!!!!!  しかし妹に暗示まで:(;゙゚'ω゚'):ガクブル
553名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 00:06:06 ID:/ODInqyJ
一番槍GJ!

まさか十夜が右庵を嫌ってるのは紗恵の……

とりあえず、投下お疲れ様ですm(__)m
554名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 00:11:44 ID:ys+x6ANt
GJ!

これはまさかの十夜フラグ…?
555名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 00:13:59 ID:6wk/yJz/
なるほど、確かに姉は間が抜けてるなこりゃww
これじゃ肝心の「右庵が紗恵を好きになる」という事態が起こらないじゃないかww
なんか急に愛しくなってきた。腹黒でドジっ子か。
556名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 00:59:45 ID:a+C3ait2
千里耳と紗恵の関係って何? すげぇ気になる…
557名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 01:12:17 ID:2j8Ju2Zq
>「…そのためにあの子に暗示をかけた」

おおお?!いいね姉さん!
しかし右庵はつくづく先に進めない男だなw
558 ◆SVNDcoHudE :2007/10/23(火) 02:36:51 ID:1mU5m6Ux
投下します。
559冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/23(火) 02:37:44 ID:1mU5m6Ux
――――あれはいつのことだったろう。…そうだ、私が小学生にあがって、すぐの事だ。
その日、私は舞にばかり構う両親とケンカして近所の公園で夜になるのをひたすら待っていた。
当時の私は、ここにいればきっと母か父が私を探しに来てくれる、そう思っていたのだ。
子供らしい、妹に対する対抗心と親に対する独占欲。
今思えばバカらしいけど、小さい頃の私には両親がこの世界のすべてだったのだ。

日が暮れ始めると、公園で遊んでいた子供たちは少しづつ親に連れられていなくなっていく。
時計の針が16時を回ると、もう公園には子供達の姿がほとんどなくなっていた。
あとは私と、砂場で遊ぶ私と同世代くらい子供達だけになった。
しばらくすると、その砂場で遊んできた子供達も、
一人を除いて全員が親に連れられて家へ帰っていってしまった。
気づけばこの広い公園内は私と、その砂場に残された一人の男の子だけになっていた。
「…………」
「…………」
私達はお互い結構近い距離にいるにも関わらず、まるで会話をしなかった。
この頃から引っ込み思案だった私には、その子に話しかける勇気がなかったのだ。
男の子は一人で砂場で遊び、私はそれを滑り台の上から眺める。
そんな状態がしばらくの間続いた。


「……ねえ、帰らないの?」
ボーっと砂場を見ていた私に、急にその子が声をかけてきた。
目線は砂に向かったままだったけど他に人はいないし、たしかにその子の声だって分かった。
「…あ、あの、えっと……」
突然声をかけられて、思わずしどろもどろになってしまった私に男の子は続けた。
「帰らないなら、遊ぼ。僕も帰らないから」
男の子は砂場から立ち上がり、私のいる滑り台のほうへ顔を向けた。
「…………っ!」
その顔を見て、私は思わず息を飲んだ。
振り向いた男の子の顔は、そこらじゅう傷だらけだったのだ。
どんな理由で、何が原因でつけられた傷なのかはわからなかったが、
それが異常なことであるって事だけは当時の私にも理解できた。
560名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:38:38 ID:3jN85g8P
>>525
俺が一番楽しみにしてた作品キター
続き待ってるよ!!
561冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/23(火) 02:38:43 ID:1mU5m6Ux
「あ、あう……」
「………………」
困惑する私を見た男の子は、何も言わずに再び砂場のほうへ顔を向け、しゃがみこんだ。
そのまま何事もなかったかのように、黙って砂をいじり始める。
「う…うう」
正直行ってすごく怖かった。もしかして私もこの子に同じ目に合わされるんじゃないかなんて思った。
でも、友達のいなかった私に、親の助言無しでこんな風に声をかけてくれる子供は初めてだった。
その事実が私の背中を強く押した。
「…あ、あの、うん。あ、遊ぶ」
男の子はチラッと私を見ると、ニッコリと笑ってうなずいた。



ペタペタと砂を集め、山にする。そこに穴を開けトンネルを作る。
単純な遊びだけど、二人でやる砂遊びは、いつも一人であそんでいる私にとっては、
とても素晴らしい、素敵な遊びであるように思えた。

「僕ん家、おとうさんもおかあさんもケンカしてるんだ」
砂をいじり続けながら男の子がボソッとつぶやいた。
「お姉ちゃんがいつもやめてって言うんだけど全然やめてくれないんだ」
「……うん」
男の子は私と目を合わせることもなく、言葉を続ける。
「僕もやめてっていうんだけど全然駄目で、おとうさんが邪魔だって言って僕をぶつんだ」
「………………」
「僕がぶたれると、おかあさんはもっと怒っておとうさんに悪口言うの」
「………………」
「僕、それが嫌でここにいるんだ。おとうさんにもおかあさんにも仲良くしてほしいから」
「僕がいなければ、おとうさんもおかあさんもケンカしないですむとおもうから」

言葉が見つからなかった。なんて言えばいいのかわからなかった。
慰めればいいのか、励ませばいいのか。それすらもわからなかった。
「えっと…うんと」
必死に言葉を探していると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「美希ちゃ〜ん!どこにいるの〜?」
「あ、ママだ!」
私を見つけた母は、駆け足でこちらに近づいてきた。
「美希ちゃん!探したのよ!駄目でしょう。だまって出掛けちゃ!」
そう言う母の声は涙声になっていた。
「ごめんなさい、ママ」
「ほんとに……無事でよかった。さ、帰りましょう。…あら?この子は?」
562冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/23(火) 02:39:42 ID:1mU5m6Ux
母がようやく気づいたかのように、男の子に声をかける。
母には男の子の顔の傷は暗くて、よく見えていないようだった。
男の子はジッと、うらやましそうに私達を見ている。
「ぼく?お母さんはどうしたの?私達と一緒に帰る?」
「…………いいです。一人で帰れます」
そう言うと、男の子は俯いて、一人で砂をいじり始めた。
「でも、もうすぐ真っ暗になっちゃうわよ?一緒にいきましょう?」
「いいんです。だいじょぶです。一人で帰れます」
男の子は私達に見向きもせず、ひたすら砂をいじっていた。
母は困ったような顔をしていたが、やがてあきらめたように私の手を引いて歩き始めた。
「…そう、それじゃあ…くれぐれも気をつけてね。美希ちゃん。行くわよ」
「う、うん」
まだ…そうだ。まだ名前を聞いていない。このままこの子と別れるのは嫌だ。
「あ、あの!」
「……なに?」
男の子はずっと砂をいじっている。それでも勇気を振り絞って声をかける。
「私、三浦美希!みうら、みき!」
「………………!」
男の子は私の言葉に顔をあげ、大声で答えた。
「僕、山下要!やました、かなめ!また遊ぼうね!」



―――これが私と要の本当に初めての出会い。
要は私に初めて会ったのは学年が上がって同じクラスになったときだと思ってるけど、私は覚えてる。
あの寂しそうな顔を、覚えている。
あの砂遊びを、覚えている。
あの時の胸のときめきを、ずっと覚えている………
563冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/23(火) 02:40:31 ID:1mU5m6Ux


――――なんだか今日は天気が悪い。こんな曇り空、久しぶりだ。

今日もこの駅は人でいっぱいになっている。
改札で人を探すのも一苦労だ。
「う〜ん……はぁ」
でも今日はすごく気分がいい。いや、ここ最近ずっとだ。
あの夜の要の言葉……きっとこれからも忘れない。
私が一番って言ってくれた。あの言葉にウソはないように思う。
秋穂との間になにがあったのかはわからない。でもきっとだいじょうぶ。

だいじょうぶの、はずだ。

……あの日のことも、もう忘れよう。高田君もなんにも言ってこないし。
言ってこないって事は忘れてもいいことなんだ。
そう、忘れていいこと。私達にはなんにもなかった。それでいい。
誰にも知られていないし、誰かに言う必要もない。もう過去のこと。
過去は捨てたほうがいい。いままでの経験からいってもそのほうがいい。
忘れたほうがいいんだ。私と要の未来のためにも――。

「ん〜と…あっ!いたいた。おはよ〜美穂!」
改札口のすぐ側の柱に寄りかかっていた緑川美穂に向けて、声をかける。
「あっ…おはよう。美希ちゃん……」
俯いていた顔を上げて、美穂が私に答える。
なんだか元気がない。落ち込んでるようにも見える。
「どしたの〜?元気ないぞ〜?あれ?涼子は?」
いつも美穂と一緒のはずの涼子が、今日はどこにもいない。
「涼子ちゃん、今日は勉強したいから予備校行くんだって……」
「あははは…勉強したいから、学校じゃなくて予備校へ行く、か」
なんだか涼子らしい理由だ。
564冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/23(火) 02:41:28 ID:1mU5m6Ux
勉強か……そうだ。きっと要の言うとおり、要も秋穂に勉強を教わろうと思っただけだ。
特別な意味なんてなかったはずだ。…秋穂は絶対ちがう目的だったとおもうけど。
要はそのつもりだったはず。うん。そうだ。そうに決まってる。
「そっかぁ。じゃあ行こっか、美穂」
「……うん。そう、だね…行こう」
秋穂なんかに私達の関係は壊せない。秋穂がなにしようが、要はだいじょぶだ。
絶対、だいじょぶのはずだ……




「……美穂、だいじょぶ?どうしたの?」
「…えっ!あっ…だ、だいじょぶだよ。だいじょうぶ……」
全然大丈夫そうじゃない。さっきからずっとこの調子だ。
私が話を振っても美穂はほとんど反応してくれない。
まるで意識がどこか別の方向へ飛んでいるかのようだ。
ボーっとしながら、ひたすら自動人形のように歩を進めている感じ。
「…ほんとに、だいじょぶだから」
私に向かって力なく微笑む美穂。
「美穂……」

緑川美穂は、私にとって本当に大事な友人だ。
涼子や麻希と違って「作った友達」じゃない。
「切りたい」と思う人間でもない。
本当の友達……要と同じ、一緒に未来を歩きたい人間。
実際、要の事以外、大抵のことはこの子に包み隠さず話をしている。
美穂が私をどう思っているのかはわからないけど、少なくとも嫌な感情は抱いていないはず。
だから私も、美穂の要望や願いは極力叶えてあげたいって思ってる。

……美穂は、昔の私と同じタイプの人間だから。
臆病で、引っ込み思案で、人に嫌われるのが怖くて、他人の顔色ばかり伺ってしまう人間。
守ってあげたい、側にいてあげたい、そう思うタイプの人。
だからこんな美穂を見るのは嫌だ。
何かあったんなら、話してほしい。力になりたい。
565冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/23(火) 02:42:24 ID:1mU5m6Ux
「…………ねえ、美希ちゃん」
美穂がピタッと足を止める。
顔は俯いたままだ。
「ん?何?やっぱり何かあったの?」
「……………………」
美穂はそのまましばらく黙ってジッとしていた。
やがて意を決したかのように顔を上げ、口を開く。
「高田君のことどう思ってる?」
……高田君?なんで今頃そんなこと…ずっと言ってきたのに。なんでもないって。
「前にも言ったでしょ?なんとも思ってないよ」
「ほんとに…?」
「うん。良い人だとは思ってるよ。すごく面白いし」
でも、私には要がいる。高田君のことはなんでもない。
なんでもない、そう、なんでも……ない、はずだ。
「…………そっか…」
そうつぶやくと、美穂はまた俯き、考え込むような仕草をして歩き出してしまった。
「ちょ…ちょっと!美穂!」
「…………………」
美穂はどんどん進んでいく。私の存在など、ないかのように。
美穂が高田君に少し惹かれていることはわかっている。
でも美穂には鳩山君って彼氏がちゃんといるし、ただの憧れなんだって思ってた。
うちの学校で、高田君に憧れている女子は少なくないから。
だけど、もしかして美穂は本当に……
「美穂、待って!」
「…………………」
なんとか追いつき、美穂の制服の裾を捕まえる。
美穂は振り向くことなく、そのまま言葉を紡ぎ始めた。
「……私、高田君の事が好き」
「…………!!」
「だから………」
美穂が振り向き私の眼を見据える。
その眼には強い意志が宿っているように見えた。
「後悔したくない!どんな結果になっても、後悔したくないの!」
そう言うと、美穂は私の手を振りほどき、そのまま学校へ向かって走りだした。
「美穂………」
……私はそんな美穂の背中を、黙って見送ることしかできなかった。
566冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/23(火) 02:43:15 ID:1mU5m6Ux


――――――さて、結果はどうなったかな。
6限後ロッカーの整理をする振りをして、帰宅準備をしている戸田達の話に耳を傾ける。
「さっき鳩山君、美穂に呼ばれたみたいなのよ。なにかあったのかな?」
「痴情のもつれか〜?おもしろそうだなぁ」
「はぁ、山田君ってほんとそういうの好きよね……美希、あんたはどう思う?」
「えっ……う、うん。ケンカでもしたのかな?…」

……美希、動揺しまくってるのみえみえよ。
あんたとあの子はすごく仲良いし、他の連中と違ってあの子の事特別に考えてる。
そりゃ気にならないわけないわよね。

しばらく戸田達の話を聞いていると、ガラっとドアが開き、鳩山君が教室に戻ってきた。
鳩山君は随分と落ち込んでいる。……どうやら予想通りの展開になったようだ。
「おっ!鳩山!どうした?なにがあった!?」
山田君が興味津々な様子で鳩山君に真っ先に話しかける。
確かに、戸田の言うとおり、山田君はこの手の話が好きそうだ。
「おいっ一体なにがあったんだよ?話してみ?」
「…………美穂が…」
「うんうん?」
「美穂が別れてくれって……他に好きなヤツがいるからって…」
「…えっ!マジで!?」
山田君の大声に、教室中の視線が集まる。
美希も呆然とした表情で、鳩山君を見つめている。
「俺どうしたらいんだ……俺、俺…」
うずくまる鳩山君。山田君たちが慰めるように鳩山君を囲み始める。
ザワザワと教室中がうるさくなっていく。
「おい!どうしたお前ら!席に着け!帰りのホームルーム始めるぞ!」
担任の大声にもざわめきは止まない。鳩山君もへたり込んだままだ。


あらあら。受験前だってのに大変ね。ほんと、ご愁傷様。
……さてさて、高田君。驚いた顔してる場合じゃないわよ?

次からはあなたにも動いてもらわないとね……

567冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/23(火) 02:44:00 ID:1mU5m6Ux
終わりです。なんとか今日中に書けました。
>>525
>>551
GJです!
お二人の作品、待ってました!紗恵怖いよ紗恵
568名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 03:01:30 ID:Cw9Iyjru
>>567>>525>>551

神々にGJ!!!!!!

この時間に目が覚めたのは、神々降臨を感じたからなのかあ!

569名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 04:36:23 ID:f3Lv+WJa
>>567
GJといいたいんですけど、話がよく分からなくなりました。前にも言ってる人がいましたが、登場人物を減らしてはどうかと。
570名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 07:17:00 ID:1nCAWSix
鳩山アワレwwwwwwwwww
571名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 07:49:58 ID:e5+qKLgS
あれ・・・美希と要、過去フラグたってたの?

鬱感倍増したwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
572名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 10:31:13 ID:sH72eVDR
なんか後出しっぽく過去の絆話出てきたけど
美希、他の奴と付き合ってHまで済ませてるじゃん。
きれいさっぱり要の事なんか忘れてたんじゃねぇの?
573名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 10:45:50 ID:VcxOlgxg
二年で同じ委員になった辺りから、要と付き合うまで
美希の計算のような気がしてきた、考えすぎかもわからんけど。
574名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 11:21:46 ID:pPqRy0e+
いや・・・計算なわけないだろ。
前の男とヤリ飽きるぐらいなんだし、そんなこと忘れてるのが自然。

まぁ、なんだかんだいってるわけだけど初投稿って前に言ってたし、温かい目で見ていこうよ。
って、なんかえらそうでスマソ
575名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 11:32:38 ID:IfQzc8x4
しっかりとしたプロット
576名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 12:22:08 ID:2PO39qWK
最近>>3読んでないバカ多すぎじゃね?>>573の展開は全然あるだろ。
そういう伏線あるし、ありゃあくまで「要視点の話」だしな。
てかお前らほんとにちゃんと読んでるのかよ・・・登場人物だっていうほど多くもねえだろうに。
577名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 13:00:17 ID:2VSNf1ZN
同意できる批判もいくつかあるが、それを連呼したりしつこく言い続ける奴とかエスカレートしすぎてただの難癖つけにしか見えない
粘着自演にも思える
578名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 14:15:43 ID:PUgGE2Bb
>>572
高田に襲われたら、一気に他の男になびきそうな女だよな


さて、俺は鬼ごっこを待って全裸で待機
そろそろ、ゴールしていいかな?
579名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 14:53:49 ID:IfQzc8x4
>>576 がプレッシャーにならないことを祈るばかりです
580名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 14:55:51 ID:ebqhDHHi
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字       ←これと
・展開に口出しするな        ←これな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ   
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
581名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 16:33:09 ID:kFyPMA8u
展開にとかじゃなくてNTRはこのスレではNGだろ
582名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 16:41:35 ID:VUZuspi1
スルー検定三級
583うが ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:27:12 ID:RYkbkvS3
「草」の人です。コテを付ける事にしました。
新作投下します。
584「一番目の彼女」 ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:27:52 ID:RYkbkvS3
+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +



 ――モテるとは、どういう事か。

 じきに本格的な寒さを伴うであろう初冬。
 通学途中で信号待ちをしていたとき、何の脈絡も無くそんな事を考えていた。

 モテ。――異性、ときとして同性に気に入られ、惚れられる奴。
 非モテ。――not 人類。

 他人からの人気、個人的な魅力のバロメーターとしてよく見受けられるバレンタインのチョコレート。
あれなんかが良い例だと思う。
 貰える奴は鞄をチョコで破壊しかねんばかり、あるいはたった一つだけ、当人達にとって一際想いの篭
ったそれを貰う。貰えない奴は下校時刻まで粘ったが成果が出ないまま涙を流す事もしばしばだという、
そんな魔性のイベント。
 しかし、しかしである。

 モテるってのは、そんなに素晴らしい事なのか?

 しばしばそうした格差を見せ付けられる両者の間に、果たして如何ほどの違いがあると言うのか。
 この熊谷良太郎。これまで過ごした十六年の人生を顧みるに、紛う事無き非モテである。
 小中通して女子からの告白はおろか、チョコレートや交換日記など、ただの一度も体験した事は無い。
キャンプファイヤーを囲んでのフォークダンスは常に男相手。肝試し大会では参加者ではなく最初の脅か
し役。学芸会の舞台には村人Aとして臨み、修学旅行では誰より早く就寝していた。

 でも、それが何だと言う。

 それらの思い出に後悔は無い。全部が全部良かった訳ではないが、結果的に満足の行く内容で、俺も十
分に楽しめたからだ。きっと俺だけではない。俺と踊った奴や、一緒に脅かした奴。会話をした村人Bや
、起きたら顔に落書きされてた奴だって大体は同じ気持ちの筈なのだ。

 …だと言うのに、どいつもこいつも二言目にはモテたいモテたいと……。

 互いに通じ合った仲の友人達の、そこだけが理解出来ない。お前らはあれか、一日一回それを言わねば
ならないルールでも密かに作っているのか。

 何故、今の友達同士で遊ぶ関係で満足出来ないんだ。

 楽しいのなら、それで十分ではないか。女子と仲良くなる事は、女にモテるというのは、そんなに良い
事なのだろうか? 周りが皆そういう雰囲気だから、何となく自分もその場の空気に任せて青春している
風を装っているだけではないのか?
 すると、今まで自分はこの若さの波に知らず乗り遅れていたという事になるのだろうか。

 その波に乗れば俺の生活が何か、もっと別の方面から潤うのか? ……わからん。

 普段考えない様にしていた方面の問題だっただけに、いざ真面目に考えると苦悩する。

 逆に考えてみよう。周りの奴らが女子と関わろうとするのは当然の事で、俺みたいな考え方をしている
奴が異端なんだと。

 そうだ。その通りだ。だって、現に俺という奴は今まで男連中とツルんでばかり、クラスの女子達には
殆ど見向きもして来なかったではないか。そんな経験値ゼロの非モテ野郎が、どうして異性交流の素晴ら
しさについてだなんて事を考えられるだろう。
 まずは、自分自身がその状況に身を置く必要がある。その上で、ようやくモテと非モテの差異を真に理
解出来るに違いない。
585「一番目の彼女」 ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:28:30 ID:RYkbkvS3
「何でも、まずはやってみなけりゃわからん」

 青く光っていた信号機のランプは、既に点滅を繰り返し再び赤へと変わっていた。



 HR十五分前の、まだ人気の少ない教室。
 窓際、俺の後ろの席に都合良くぽつんと座っていた女子。決めた、とりあえずこいつと仲良くしてみよ
う。

「よっ、おはようさん」
「………」

 名前は確か持田。下の方は覚えていない。
 クラス内、というより学校内における交友関係ゼロ。一目置かれていると言えば聞こえは良いが、ぶっ
ちゃけてしまえば所謂ぼっち、というのが友人から聞いた話。
 何故そこまでそいつが知っていたかと言えば、「見た目が良かったんで何日か色々チェックしてた」と
の事。…だから、その熱意は一体どこから出てくるんだ。
 本人がどう思っているか、あるいは実際にどうなのかは知らないが、周囲の持田に対する認識は概ねそ
んな感じで固定されているらしい。

「……」
「……」

 しばらく待っても返事は帰って来ない。多分、今の言葉が自分に宛てられたものだなどと思っていない
のだろう。それもその筈、何しろ俺がこいつに話しかけるのはこれが初めてなのだから。

「HEY、持田ガール!」
「ひゃっ!?」

 席に座り、身体をぐるりと反転。名指しと満面の笑みでばっちりターゲットを捕捉し、粋なアクセント
を利かせて再度声を掛ける。
 対して、持田の俺への初の言葉は「ひゃっ!?」。…うむ、一応記念として覚えておこう。

「おはよう!」
「……」
「おはようっ!!」
「お、おはよう…」

 はばないすでい。今ここに俺と持田とのファーストコンタクトが成立した。
 唯一の問題はここから先の事を一切予定していなかった事だが、普段友達と喋るときにわざわざそんな
事を気にする奴は居ない。気ままに同じ時間を楽しめればそれで良いのだ。
 そう。何故なら今この瞬間をもって、俺と持田はフレンズになったのだから。

「数Tと古典のレポート貸してくんろ、持田どん」
「えっ!?」

 ゆえに物の貸し借りは基本。例えどんな親友であろうと、話をするからにはきっかけが必要だ。

「すぐ写して返すからさ、頼むよ持田どん」
「……なんで貸さないといけないの。ていうか、何よ”どん”て。勝手に妙な呼び方しないで」
「固い事言わんと、ちょいと見るだけ! 見るだけだから! 何なら俺のと見せっこしても良いから!!
 ね? ね?」
586「一番目の彼女」 ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:29:05 ID:RYkbkvS3
「ちょ…へ、へんな言い方しないでよっ!!」

 一歩間違えたら危ない人間だが、こちらとしては至って大真面目だ。大真面目に、友達とじゃれあって
いるつもりなのだ。断じてセクシャルなハラスメントを行っている訳ではない。

「お金あげるから! あげるから!!」
「やめっ、人が……わか、わかったわよ、ほら!」

 おお、意外とやってみるもんだな。

「サンキュ! 俺のも見たかったら言ってくれよな!」
「い、いい、いらないっ!」
「そう遠慮すんなよ」

 これでも授業は真剣に受けている方なのだ。成績だって悪くない。

「遠慮なんてしてない! もういいでしょ、さっさとどっか行って!!」

 どっかて。俺の席はお前様の目の前ですよ。

 どうやら向こうもすぐにその厳然たる事実に気が付いたのか、うっ、と顔を僅かに顰めると、決まりが
悪そうに窓の外へと視線を逸らした。

「ふふっ、照れ屋さんめ」
「うるさいっ! 何なのよアンタ!!」

 今はわけあって愛の探求者です。はい。



 キーンコーン

「おう持田! 飯食い行こうぜ!!」
「はぁ?」

 朝のHRから時計の長針がカッチコッチと数周して、昼休み。
 クラスメイトとのコミュニケーションタイムであるそれは、俺にとっては即ち、新たに出来た友達との
親睦を深める時間である。

「学食、お前も行くだろ?」
「……」

 がたっ、すたすた

 わざわざ席を立ってのスルーであった。

「まあ待てまあ待て持田君」

 すたすたすた

 故に、俺も当然の如く追尾。

「そりゃ確かに急っちゃ急だと我ながら思ってるけどな俺は何も他意があって誘ってるわけじゃないんだ
ただ純粋にお前と昼食を取ってみたいなと思っただけなんって聞けぇぇい!!」
「ぎゃぁぁぁっ!」

 本気の悲鳴を上げる持田。説明だけではどうにも埒が明かないので、俺が背後からいきなり奴の両目を
手で覆い隠してやったのだ。簡単に表現すれば「だぁーれだ」のポーズである。
587「一番目の彼女」 ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:29:41 ID:RYkbkvS3
 こうされては流石に向こうも立ち止まるしか手は無く、「この持田、生来目が見えぬ」とか言い出さな
い限りはこちらも安心であった。

「折角平和的な手段でいってたのを断りやがってからに、良い根性してるじゃねえの嬢ちゃん」
「やめっ…はなっ…やっ…やーーー!!」
「先生、持田さんが何言ってるのかわかりませーん!」
「やーーーーーー!!!」

 すぐ横を通り過ぎる生徒達からして見れば、俺はさぞや立派な変態だったに違いない。
 軽いパニック状態に陥ったのか、暴れるように両手をぶんぶんと振り回す持田嬢。が、俺が当たらない
ポジションをしっかり確保している為にただただ空を切るばかり。足を使う発想は出てこなかった様で、
腕の方も疲れてきたらしく次第に息が上がってきた。

「くくく…ほれほれどうした、お前が大人しく昼を一緒にすると言うのなら離してやるぞぅ」
「うぅうううう…」

 こくり

「よぉし、良いだろう。さあ、食堂へ行くぞ。それとも購買が良いか?」

 ふぅふぅと息をつきながら、持田は非常に悔しそうに頷く。時折突き刺さってきた周囲の目線を鑑みる
に、結果は辛勝と言わざるを得ない。
 まあ、そんな事も購買でパンを買ってお釣りを受け取る頃には既にどうでも良くなっているので、長い
目で見れば特にこれといった問題でも無く。

「そっちは何も買わんかったん?」
「…お弁当あるから」
「へぇー」

 教室へと帰り、少しの問答の末に互いの机と机を寄り合わせた俺と持田は、自分達の昼食を広げながら
ごく普通の会話を繰り広げていた。

「……………へぇ」
「な、なによ」

 俺の視線の先には持田の弁当。

「いや、不慣れだなと」

 忌憚無き感想に、うっ、と狼狽した様子を見せる持田。やはりこれは自分で作ってきた物なのだろう。

「卵焼きを作ろうとして崩れたスクランブルエッグもどき」
「ぅ…」
「レタスはまあ千切るだけだから良いとして、トマトは切り方が悪いのか潰れかけ」
「…」
「そしてひき肉を調理したらしき何か」
「……それは、ミートボール」

 出来ないならそれくらい冷凍食品使っておけばいいだろうに。

 一見無事に思えるご飯も、この分ではどんな塩梅かも知れた物だ。未熟者め。
 食べられないという事は無いが、正直あまり食欲はそそらない持田の弁当。今日は冷蔵庫の中がほぼ空
だったので仕方無く購買で済ませたが、習慣的に自分の弁当を作っている身としてはどうにも粗末な出来
である。
588「一番目の彼女」 ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:30:17 ID:RYkbkvS3
「最初は誰かに教わるか、作り方を調べておかなあかんてあーた」
「本で調べたわよ、悪かったわね」

 提言に対し、ぶっきらぼうに持田が答える。自分でも出来が悪さは分かっている様で、朝に引き続き、
苦々しげな表情で顔を逸らした。

「なこた言ってない。料理なんて慣れない事にはどうしようも無いし、自分で作ろうとしたのはむしろ良
い事じゃないか」

 売れ残りのコッペパンを一口食べ、そう付け加えておく。

「偉そうに、アンタだってそんなじゃない」
「ほほう、さてはお前、この俺が普段手作りの弁当だという事を知らんな? 言ってないけど」
「ふ、ふん。どうせ大した物でもないんでしょ?」

 むかっ

 持田が悔し紛れにそう言ったのは確かだろう。しかし、働き者の両親の為に中学に上がる前から必然的
に磨きを掛け続ける事になり、家事には幾らか自信を持っているこの俺が、そんな素人の言い掛かりをど
うして聞き逃せようか。
 友人同士での、「弁当のおかず交換会人気No,1」の栄光は伊達では無いのだ。

「言ったなこの野郎? なら明日お前の分まで用意してやるさ。めちゃ美味しく作ってやるから今夜はせ
いぜい布団の中でわくわくしていやがれ!」
「な、何よそれ。ていうか、なんでそうなるのよっ!」



 次の日の昼休み。

「………お、おいしい」

 本当に、思わず口から漏れたと言う風な呟き。
 俺が朝も早くから丹精を尽くして作った弁当は、どうやらこの無礼な女の舌を満足させる事に成功した
様である。

「ふふふ、そうだろうそうだろう。こっちの高野豆腐も食してみるがいい、昨日の内から仕込んでおいた
自信作だ。心して味わえ」
「うん、……ほんとだ、おいしい」

 こちらの注釈も聞きながら、持田は驚きに目を見開き、殆ど休む事無く箸を動かし続けた。

「当たり前だ、手軽さが売りな市販の冷凍食品とは訳が違う」

 言いつつ、自分もまた鯖の味噌煮をほうれん草のお浸し、そして固過ぎず、柔らか過ぎずの白米と口に
入れた。咀嚼する度に口中で鯖の風味と汁が広がり、それがお浸しの素朴な味わいと絶妙の調和を見せ、
ご飯の進む事この上無い。サブとして用意した高野豆腐と出汁巻き卵、そして白菜と胡瓜の浅漬けも良い
アクセントになっている。
 気が付く頃には、こちらとそれ程量の変わらない持田の分は残さず綺麗に食べられていた。
589「一番目の彼女」 ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:30:52 ID:RYkbkvS3
「ごちそうさま…」

 お互い作った物は弁当であるにも関わらず、自分と相手とに横たわるあまりの実力差を前に、持田は手
を合わせたまましばし呆然としている様子。

「どうだ。料理を始めたばかりの素人には、到底この良太郎様の味は真似出来まい」
「うぅ……どうしてこんなのが」
「こちとら何年も家の飯を作ってるんだ。舐めてもらっちゃ困る」

 熊谷家のお袋の味は、今や立派にその息子へと受け継がれているのだ。

「ときに持田よ、お前の方は何で昨日弁当を作って来たんだ?」
「え」

 質問に対し、若干息を詰まらせる持田。昼だったら購買や食堂で済ませれば良い訳で、何らかの心境の
変化でもあったのだろうと思った。

「それは、……どうでもいいでしょ」

 まあ、そうなのだが。そのどうでもいい話を楽しむのが友達なのであって、

「いや、折角だから続けるんなら俺も手伝ったり教えたりしたいと思ってさ」

 俺は目の前の女子にも、果たしてそれらの気持ちが伝わるか知りたかったので、いつも通りのフレンド
シップを発揮してそんな提案をしたのだが。

「………なんで?」

 当の本人は目を丸くして、それは大層意外そうな顔でこちらへ振り向いていた。

「そりゃおめぇ、どうせ手作りで食べるなら美味い方が良かろうに」
「何でアンタがそんな事をするのよ」
「んなの、俺が手伝いたいからに決まってる」
「…そ、そう」

 俺の中じゃもう友達同士なんだし。向こうがどうかは知らんけど。

 程度はあれど、仲良くなるのに関り合おうとする姿勢は大事だ。むしろこの位踏み込んで行けなければ
、個人的に友達としてカウントするには甘いと思う。

「それにレポートとかノートとか必要な時は借りたいし、これでフェアじゃね?」
「ぅ……」

 まだ頼ってくる気かよコイツ、という思考がありありと顔に浮かんでいるが気にしない。仲の良い奴は
揃って別のクラスだから、融通の利かない場合がある事も確かなのである。

「どうよ? あれだって俺に教わりゃその内すぐに覚えるぞぅ?」
「ぁ…ぅ……それは、…でも」

 あ、ぐらついてる。この女、食欲に食い付いてやがる。くく、正直者め!

「お前が作りたきゃ家庭料理も教えてやろう。なぁに、カレーやシチューや炒飯だけだのとケチな事は言
わんぜ。手軽に美味しく健康的、財布にも優しい熊谷家の秘伝を披露してやるともうふふふふ」
「ぁぁあ、ぅぅぅ…」
590「一番目の彼女」 ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:31:27 ID:RYkbkvS3
 ふーらふーら

 両手を高々と上げて催眠術でも掛ける姿勢で誘惑する俺、そして釣られる様に両手を彷徨わせ夢遊病患
者の如くあぅあぅ言っている持田。一々面白い反応をしてくれる奴だ、気に入った。

「おいしいよーとってもおいしいよーでもふとらないからへいきだよー」
「ぅうぅぅううー」


 それから放課後までの間、持田が食の誘惑の前に屈した事は言うまでも無い。



 ――で、どっちの家でする? 調理室は流石に使えんし。
 ――あたしの家で、良い。こっから、結構近いし。

 意外(?)にも、持田は自らの住居へと進んで俺を招き入れた。異性の家へお呼ばれするなど、幼稚園
以来の出来事ではなかろうか。
 そんなこんなで、あれから三日程過ぎた土曜日。俺は現在、本人による案内の下、持田家のマンション
へとやって来ていた。
 この頃になると向こうもある程度はこちらに慣れてきたのか、視界に入れば挨拶もするし、合間合間で
の下らない話にもそれなりに相槌を打ってくる。個人的には、顔見知り以上友達未満といった距離感。
 本日をもって、晴れて友達へとランクアップの予定である。

「ここ。…はい、入って」
「……」

 緊張は、一応していた。と言うより、”今更”していた。我に返ったと言っても良い。
 考えてみれば、異性の経験を持たない自分がぶっつけ本番でこれである。我が事ながら、良くぞこの短
期間でここまで関係を持って来れたものだと感心した。

 でもまあ、その為の行動だし。

 そう思うと、今度は逆に心が落ち着いて行く。冷めたのではなく、あくまでも純粋に楽しもうとする心
境への変化。友達の家へ遊びに来た、いつも通りの自分だ。

「お邪魔しまーす!」
「そんな大きな声出さなくてもいいって。誰も居ないし」

 相手の家族へきちんと挨拶が出来ないのは礼儀知らずなので、まずは元気に声を出してみる。が、その
行為は持田の苦笑気味の表情によって締められ、……何?

 ………あ、…あぁ、はいはい。

「だから料理の技術が必要な訳な」
「…まあ、ね」

 微妙そうに頷く持田。

「お父さんとお母さん、外国に住んでるから。…仕送りのお金も、最近は足りなくなってきて」

 ものの試しに自分で料理をやってみた、と。
 成る程、言われて見れば確かに。片親だとすると気にはならないだろうが、このワンルームでは、一般
的に考えて家族構成が三人以上の場合にはやや手狭に感じるだろう。
591「一番目の彼女」 ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:32:02 ID:RYkbkvS3
 しかしそれ以前に、そんな所へ男を呼ぶのは普通に考えてどうなのか。持田を我が家へ招待するのも少
々勇気が要るのに、向こうの方から知り合って間もない男子を家に入れるのである。

 ……うぅむ。

 とは言え、その我が家にしても今の時間帯は両親共に不在。どちらが状況としてまずいかとか、そんな
事を悩む位なら最初から誘ったりはしない。

「ふふん、良いだろう。ならば今日は俺が一人暮らしの頼れる味方となってやる」

 よって、俺はやはりいつも通り。至ってフレンドリーに接する事にした。

「ちょ、ちょっと…一応言っとくけど、いきなり難しいのは止めてよね」
「ふふふ、安心しろいモッチー。明日からでも実践出来る、素晴らしくリーズナブルで美味しいテクを教
えてやるとも」
「ありがと。でも勝手に人に変なあだ名付けないで」
「別に定着させようたぁ思ってねえって、…あ、それちょっと取って」
「あ、うん」

 元々下心と呼べる様な代物を持っている訳で無し、そちらはパソコンと紙媒体で既に事足りているので
ある。もっとも、それ故にこそ実物がどの程度であるのかを知りたい気持ちもあるのだが。

「…しかし、あれだな」
「な、何?」

 簡単な下ごしらえを終えて何気無く室内を見渡す俺に、持田は心持ちヒヤヒヤした様子で尋ねる。その
仕草はまさしく未知であった女子そのものだったのであるが、

「押入れの中、後でちゃんと片付けような」
「ひっ!?」

 馬鹿め、あっさり引っ掛けに乗りやがった。

 つまりは、そういう事である。
 今の便利な世の中、生活無能力者は着々と増えているとの事だが、こんな所にもまた一人。

「家事ほどやり甲斐のある事もそうは無いってのに。ったく、けしからん」
「…だって、面倒じゃないの」
「バッキャロー、それが愛着へ変わるんだよ。オラ、とっととそこへ塩胡椒を投入!」
「わ、わかった」

 フライパンとフライ返しを持つ俺の横で、持田が慌てふためきながら先程買って来た瓶を手に取り、こ
ちらへ恐る恐る近づく。

「……こう?」

 キュ、キュ…キュポッ(瓶の蓋を外す音)
 バッサァ(中身を全部入れた音)

「おっふぁ!!? ちが、…ぶぇっくし!! いっきし! …アホか貴様!?」

 バシン!

「ぃたっ!? 〜〜な、何すんのよ、痛いじゃない!!」
592「一番目の彼女」 ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:32:36 ID:RYkbkvS3
「当たり前じゃこのどアホ! こんなん食ったら死ぬわ!! 四、五振りすりゃ良いっつったろうが!」
「あんたがさっき”投入”って言ったんでしょ!?」

 その言葉がどうやったら中身丸ごとって意味になるんだ、お前はスーパーへびっくり水を買いに求める
主婦か何かか。

 さっきからほんの初歩的な事しかさせていないにも関わらず、この有様である。もしかしたらあの時の
弁当は、こいつなりの奇跡の産物だったのかも知れない。

「がーー!! しゃあねえ、ちょっと退いてろ! …っくし!!」

 隣で喚く持田を身体で押し退け、フライ返しでソテー及びフライパンにこんもり乗せられた塩胡椒を素
早く丁寧に取り除いていく。
 無論、それでも当初の目分量まで減ってくれる訳が無いので、他は全体的に薄味、横に添える千切りキ
ャベツはかなり多目にする事となった。



 てんやわんやになりつつもどうにか料理を完成させ、更におっかなびっくりの食事を終えて、壁に掛か
った時計の針が一時を少し過ぎた頃。
 今は台所の流しで二人一緒に、と言うより、俺が持田の隣で教える形で食器を洗っている。
 料理を食べる時までは何時に無く多かった向こうの口数も、片づけを始める辺りにはどうやら通常程度
までペースダウンしたらしく、シャワーで流れる水道水と、時折かちゃかちゃという食器同士が触れる以
外に音の発生源は無い。
 他に誰も居ない二人きりの室内、俺と持田との間には、いつもより少しだけ、ほんの少しだけゆったり
とした空気が生まれていた。

「……」
「どうだった。一応、お前が半分作った様なもんだぞ、一応」
「…何でわざわざ二回言うのよ」
「気にするな」

 これが言わずにいられようか。

 微妙に不服そうな顔の持田に対し、更に数段不服そうな顔を作っている俺。
 それもその筈。俺がかなり熱心に教え込んでやった、本来ならば十分家庭の味として通用するレベルだ
った料理。それがこいつの引き起こした大小様々な失敗によって、一気に学校の調理実習程度まで落ちて
しまったのだから。
 こちらの見込みが少しばかり甘かった、家事初心者は伊達ではなかったという事だろう。
 別に悪い事だとは思わない。最初は皆そんなものだ。思えば俺も、小学生の頃はあんな間違いも何度か
あったものである。

 …………いや、胡椒一瓶は流石にねえな。

「美味しかったわよ。……熊谷が作った物の方が、やっぱり良かったけど」
「あったりまえだ、これからそうなる様に頑張るから良いんだろうが」
593「一番目の彼女」 ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:33:12 ID:RYkbkvS3
「…うん」

 割にあっさりと同意する持田。俺への呼び方も普段の「ねえ」とか「アンタ」なんかでは無く、きちん
と名前に変わっている。だがしかし、どうと言う事は無い。今がそんなちょっとした切り替えに丁度良い
タイミングなだけなのだから。

 やっぱ今日は来て正解だったな。

 距離感の狭まりを肌で実感して、心の中でガッツポーズを取る。もしあの時、俺が手作り弁当に託けて
、持田へ今日の話を多少強引ながらも持ち出さなかったなら、俺の名前が呼ばれる機会はもっと後になっ
ていたのかも知れない。
 それでは些か勿体無い。だって、こいつは面白い奴なのだ。
 聞いた話では取っ付き辛いだの何だのと言われているけれど、一旦ガードを崩してやれば簡単に反応し
てくれるし、その反応の仕方もこれまた良い具合に笑わせてくれる。

 一日一ネタじゃあるまいしな。ほんとに。

 何でも器用に出来そうな見た目と口調に反して、中々抜けているのが何とも言えない。
 他の女子達がどうかまではまだわからないが、俺は少なくとも持田と一緒に居るのは楽しいと思った。
 これならあいつらの言っていた事も半分以上は理解出来る。実際に面白い相手なら、男だろうと女だろ
うと関係は無い。そんな物は俺のつまらない偏見に過ぎなかったのだ。

「おっし、これで終わり、っと。……そうそう、忘れない内に」
「? …何? ちょっと待ってよ、まだこっち洗い終わってない」

 持参したエプロンで軽く手を拭き、台所を離れる俺に持田が声を掛けるが、特に返事はしないままテー
ブルへ置いた携帯電話を手に取り、操作画面を開く。書く物を持って来て無かったので、近くにあったペ
ンとメモ帳のページを一枚拝借、そこへさらさらと記号や数字を記入していく。
 その内後ろの方から持田がやって来たので、今し方書き終えたばかりの紙片を手前に置いて見せてやっ
た。

「これ。俺の携帯の番号とメルアドな、料理とかそこらで聞きたい事でもあったらこれで」
「………」

 Oh、ジャパニーズSIKATO。

 むしろ呆然と表現した方が正しそうな、どうにも動きの止まった様子の持田さん。他ならともかく、私
何か今失礼な事でも致しましたでしょうか? Why?

「…ああ、もしかして持ってないのか?」

 どきり、という擬音がぴったりなリアクションをくれる辺り図星らしい。幼稚園児すら持っているのが
珍しくも無い今日日、中々レトロな奴である。
594「一番目の彼女」 ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:33:50 ID:RYkbkvS3
「まいいか、無くても別に困りゃしないし、学校行きゃ嫌でも会えるし」
「え」
「お?」
「…うん」 

 一瞬戸惑う様に宙を泳ぎ、結局元の位置へと垂れ下がって行く手。それでも、人差し指と中指は迷い有
り気にもぞもぞと動いている。

「……欲しいのか? 携帯」
「うん。…え、あ、べ、べっつに!」

 先生、正直は美徳だと思います。

「とりあえず、親御さんに許可取ってからなら良いんじゃないか? 何なら手伝う」
「いいっ! 要らないの!!」

 …そんな、あからさまに欲しそうな顔して言わなくても。

 しかし未成年である以上、親が両方海外に居るならそう易々と手に入る物でも無さそうな気もする。そ
こは俺個人の協力でどうにか出来る範囲からは外れているので、やはり放って置くのが無難だろう。もし
買ったならその時に色々と教えてやれば良い。

「ねえ、ちょっと聞いてるの!? 変な勘違いしないでよっ!」
「はいはい、よかよか」

 未だ墓穴を掘り続ける持田を適当にあしらいつつ、俺は手荷物(と言う程でも無いが)を纏めてさっさ
と玄関前へ。
 帰るならなるべく楽しい内が良い。

「んじゃ、また来週な。楽しかったぜモッチー!」
「るっさい! 二度と来るなっ!!」
595うが ◆yNwN3e7UGA :2007/10/23(火) 17:38:22 ID:RYkbkvS3
投下終了。こちらは一応続ける予定です。
それと今更大変申し訳無いのですが、最終更新日以降から続きがどうにも
思い浮かばないので、「草」の話はひとまずあそこで打ち切らせて頂きます。
またいつかぱっと続きが書けたときは、パート2なり入れて再び投下させて
頂きますので、どうか平にご容赦下さい。
596名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 18:07:00 ID:Cw9Iyjru
>>595

GJ!

中々に面白い主人公だ

これがどのような修羅場になるのか全裸で待ってます
597名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 18:15:17 ID:NlXc6/xL
乙です
598名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 18:27:09 ID:HST0CU2N
草打ち切りキチャッターーーーー(涙)
599名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 18:44:00 ID:ebqhDHHi
>>595
改めてうが氏GJ!!
やっぱり「草」や「Passion fruits」で思ってましたが、文体がとても読みやすいです
あと各キャラの書き方とか・・・
「草」の打ち切りは残念ですがこの「一番目の彼女」の続きも期待してます
600名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 18:44:49 ID:CMaAe9OH
グッジョ!

今からwktkが止まらない!

って、草!草!ギャァアアア
601名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 18:57:08 ID:sH72eVDR
>>580
展開に口出しというより誤字脱字に近い感覚。

漫画の1巻で夏生まれとか言ってた奴が
数巻後に「12月3日は私の誕生日でしょ」とか言う誤植。

知り合い程度の付き合いから、先輩と別れ急接近みたいな馴れ初めかとずっと思ってたら
幼少の頃から思ってて「ときめきをずっと覚えてる」

いや、でもお前、別に要と離れ離れになってるわけでもないのに、
相手ヤリ飽きるほど別の奴と付き合ってんじゃん。
ときめいた相手健在でしかも距離的には傍にいるのに他とヤリまくるってどうよ?
602名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 19:08:33 ID:xfJGM1gx
>>601
それ以上は言うな。

文庫版で修正が入る漫画家ぐらいに流してやれ
603名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 19:08:48 ID:bZFS6gsm
で?
604名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 19:26:55 ID:/FAe1T47
>>595
>「草」の話はひとまずあそこで打ち切らせて頂きます。
GYAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!俺涙目!!!!
打ち切りは悲しいが、あなたの文が好きなので、この新作を喜んで読んでいる自分もいる。
何この飴と鞭・・・。とりあえず言わせてくれ。GJ!!!!
605名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 20:12:56 ID:QYrSQpOm
>>601
お前はさぁホント素直な人間なんだな。さぞだまされやすいんだろう。
先輩の言ってたことががほんとに事実かどうかとか疑問も抱かないのか。
散々作中で書いてあるだろ。美希はすぐ人を切り捨てる人間だってさ。
てか終わってない作品に文句つけんな。最後まで読め。
606名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 20:20:53 ID:9zOj2KFi
そもそも、エロパロスレなんだから設定と矛盾するようなことがあっても
仕方ないと思うよ。俺だってキャラクタ名や張った伏線なんてすでに忘れたりするしw
607名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 21:27:28 ID:Zs474Ia7
スルーしろ
608名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 21:52:10 ID:x9DaGngy
保管庫に1/8読みに行ったら読めませんでした><
609 ◆zIIME6i97I :2007/10/23(火) 21:55:56 ID:ScMoytMt
いまさらのようですが、ノントロの続き投下します。
610ノン・トロッポ11:2007/10/23(火) 21:56:54 ID:ScMoytMt
その夜、進は暗い自室のベッドの上で、公園での出来事を何度も回想していた。
そしてそのたびに、胸が締め付けられるような高揚と困惑を味わっていた。
初めてのキス、しかも憎からず思っていた愛美からのキスは、進に性的な興奮とナルシスティックな喜びを与えた。
愛美は自分のことが好きなのだ、しかも男として、性愛の対象として。
すっかり卑屈になっていた進にとって、その思いは大きな喜びと自信を与えてくれるものだった。

明日の朝には、やはり愛美が迎えに来るだろう。そのときに告白されるかもしれない。あるいは放課後にでも。
いや、その前に自分の方から何らかの気持ちを打ち明けるべきなのだろうか。男ならそうすべきではないだろうか。
愛美のことは、もちろん嫌いではない。愛美はかわいい。そして、やさしく、自分の気持ちをわかってくれる。
進は、愛美の顔を、やわらかい唇を、そしてまだ見たことのない裸体を思い浮かべる。
恋人として、申し分はなかった。それどころか、彼女を逃しては自分は一生女と付き合うことはないのではないかとすら、進には思えた。
もし、沙織がいなければ、進に迷うことはひとつもなかっただろう。

愛美と交際することになれば、それはこれまでやってきた沙織離れの、いわば総仕上げとなるだろう。
そうなったとき、沙織との関係がどんな方向に転がるのかを考えて、進はベッドの上で丸くなった。
もしかすると、今のような冷戦状態が一生続くことになるのだろうか。
それとも、ただの幼馴染としての関係を作り直すことになるのだろうか。
それはつまり、沙織と恋人になることはもうできないということだ。
その考えに、進は胸に苦いものが浮かんでくるのを感じた。そして、自分の未練深さにあきれた。

自分のような人間と沙織が恋人になどなれないということは、進にはとっくに分かっていたはずのことだった。
沙織にふさわしいのは、あのテニス部の男のような人間で、自分のような卑屈な身体障害者ではない。
そう、なんども言い聞かせてみる。だが、胸の苦さは消えることはなかった。かえって、胸の中でその質量が増してくるように感じた。
なら、その気持ちに正直に、愛美の気持ちには応えないほうがよいのだろうか。
だがそうすると、また先ほどの回想が蘇ってきて、胸を締め付けるのだった。

そうして進は、思考と感情をぐるぐると動かし続け、やがて睡魔にとらわれて眠ってしまった。
611ノン・トロッポ11:2007/10/23(火) 21:57:54 ID:ScMoytMt
翌朝、目覚めた進は昨晩の逡巡を再開していたが、朝食をとるために入ったダイニングキッチンの光景にそれを断ち切られてしまった。
いすに腰掛けてコーヒーカップを口に運んでいる沙織の姿があったからだ。
進は、驚きと同時に、懐かしさをおぼえた。それは、沙織との関係が拗れる前でなら珍しくもない光景だった。
沙織はカップを置くと、微笑みながら「おはよう」とだけいった。
進はそのやさしい笑みに、自分の口元が緩むのを感じた。そして、「おはよう」と挨拶を返した。
この、以前ならありふれたやり取りに、進は非常な喜びと安堵を感じ、母親にからかわれるまでしばらく動くことができなかった。
そんな進の様子に、沙織はいっそうを笑みを深くした。
進が朝食をとっている間、沙織はもっぱら母親の話し相手になり、2人は挨拶以上の言葉を交わせなかった。

「今日は、その、えと、どうしたの」

朝食を食べ終えて、沙織を自分の部屋にいれた進は、椅子に座りながら、これまで距離を置いていた分いささかのぎこちなさを感じながら彼女に話しかけた。
登校するには、まだ時間があった。

「どうって、一緒に学校行こうと思って」

答えた沙織は、ちょこんとベッドに腰掛けて、相変わらず微笑んでいた。まぶしいほどの笑みだった。

「でもいいの?最近は彼氏と一緒に行ってたんじゃないの?」

「ああ、彼とはもう別れたから」

「別れたって」

進は、この前まで仲睦まじそうだった2人のことを思い出して、それを信じられない気持ちで聞いた。

「だから、前みたいにまた一緒に学校行こうね」
612ノン・トロッポ11:2007/10/23(火) 21:58:34 ID:ScMoytMt
進は、沙織の言葉に純粋な喜びを感じるが、すぐに昨晩思い悩んでいた事態を思い出して顔を暗くする。
そもそも、このままでは進と沙織、そして愛美の3人で登校することになるのだ。
沙織が愛美のことを快く思っていないのは知っていた。愛美の気持ちは分からないが、きっと沙織に対して良い気持ちを抱いてはないだろう。
その2人との登校がどういうものになるのか、進には想像もつかなかった。
ただ、朝から愛美と2人きりにならずに済んだことに、進は安堵を感じてもいた。
少なくとも、すぐに愛美に気持ちを打ち明けられたり、それに応える必要はないのだ。
そうして、1人で考えに沈む進と、それをにこやかに眺める沙織は、特に会話を交わすこともなく登校の時間を待っていた。

「じゃあ、そろそろ行こうか」

進がそういって立ち上がると、沙織も立ち上がって進に手を差し伸べた。
進が困惑を顔に出すと、沙織は明るい声でいった。

「ほら、かばん渡して」

進はそれを聞いて、やるせない気持ちになる。

「いや、だからそれはいいって。何度もいったろ?」

「かばん渡して」

「いや、だからね」

「渡して」

沙織の声のトーンが、とたんに低くなった。
進は、それに気持ちがひるみかけるのを感じる。

「だめだ」

それでも、なんとかそれだけは口に出した。
そのとたん、沙織の若干たれ気味だった目がつりあがったように、進には見えた。

「ふざけないでよ!素直に渡せばいいじゃないの!」

「じゃあ、一緒に行かない」

それを聞いた沙織は、右手を振り上げた。
613ノン・トロッポ11:2007/10/23(火) 21:59:09 ID:ScMoytMt
殴られると感じた進は、とっさに顔を伏せた。
だが、沙織のこぶしは進ではなく、部屋の壁を打ち据えた。
どんと鈍い音が響いた。それきり、部屋には、ふうふうという沙織の荒い息と時計の音だけが残った。
進は、その2つの音がシンクロしているのに気がついて、場違いにも滑稽な思いを抱いた。
それで落ち着いたつもりになった進は、なんとか声を上げることができた。

「あ、あの」

だが、その声はわずかに震えており、進は自分の情けなさに恥じた。
以前とは違うどこか質の違う沙織の激昂ぶりに、進は怯えていた。沙織が、まったく別の誰かになってしまったかのような気さえしていた。
声の震えにその怯えを感じたのか、沙織は胸を押さえて息を整えると、こわばった顔を無理やり笑顔に変えた。
その笑顔を、進は怖いと感じると同時に、いたいたしいものにも感じた。

「はは、ごめんね。ちょっといらいらしてて」

「うん、いや、別に」

進も何とか笑みを作ろうとする。

「かばんはいいからさ、一緒に行こう」

笑顔でそういう沙織の言葉に、進は頷くしかなかった。
614名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:01:44 ID:3dSb8d5d
支援
615 ◆zIIME6i97I :2007/10/23(火) 22:02:17 ID:ScMoytMt
ノントロ11話でした。

えらい久しぶりなので、いまいちの出来かもしれませんがとりあえず。
以前のようなハイスピード投下は難しいですが、まあぼちぼち行きます。
新しいネタが浮かんだので、何とかこいつは終わらせたい。
616名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:07:51 ID:fDTzzAx/
おおおおおおおおおおおおおおおノントロの作者お帰り!!!
ずっと待ってたよ!ゆっくりでいいから頑張ってな!
617名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:09:17 ID:+FKCl0Az
きゃああああ
ノントロまってたよおおおおおお
618名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:10:53 ID:Zs474Ia7
乙!
まってたぜ!!
619名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:15:41 ID:KXxYl1NU
一年間下半身全裸でまっててよかった
620名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:17:07 ID:BBHtoIr7
ノントロきたぜぇ!!!

イヤ焦りと怒りと修羅場のフラグでもうwktkだ
621名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:23:47 ID:Rs+bhzzt
uooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!
ノンロト北アあああああああああああああああああああああああ
GJ!!
622名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:26:32 ID:bZMaLHVV
我らは、待った、そして着た、読んだぞー
ノントロの作者様GJ!
623名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:29:58 ID:gy+vGdxP
待ってた甲斐があったってものだ…
GJ!
624名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:40:06 ID:ebqhDHHi
>>615
魚おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
まじでまぢでまじでまぢでまじでまぢで!!
ずっと待ってたあああああああああああああああああああああ!!
なんというかやっと待ちに待ったハンターハンターの連載が再開されたみたいだ!!
次の投下も超期待してますぜ!!!!!!!!!!!
625名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:50:05 ID:aNhCLh10
俺がこのスレの住人になったきっかけの作品がktkr
626名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:51:35 ID:2awR6E4x
夢ですか?
これは夢なんですか?

イヤッホオゥゥゥ!!
ってか沙織こえええええ(´・ω・`)
627名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:55:27 ID:IfQzc8x4
超GJ
今日は良い夢が見れそうだ
628名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:57:28 ID:2ZaY67yU
ノ、ノ、ノ、ノ、ノ
ノ、ノ、ノ、ノ、ノ
ノ、ノ、ノ、ノ、ノ
ノ、ノ、ノ、ノ、ノ
ノ、ノ、ノ、ノ、ノ
ノン・トロッポ復活
きたあああああああああああああ
ああああああああああ
629名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 22:57:38 ID:NyLkrMTh
俺もう一回ノントロ読み返してくる!
630名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 23:18:35 ID:3dSb8d5d
遅かったじゃないか…

GJ!
631名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 23:29:18 ID:UaKnJ0T6
  ,j;;;;;j,. ---一、 `  ―--‐、_ l;;;;;;
 {;;;;;;ゝ T辷iフ i    f'辷jァ  !i;;;;;   ノントロは永遠に未完……
  ヾ;;;ハ    ノ       .::!lリ;;r゙  そんなふうに考えていた時期が
   `Z;i   〈.,_..,.      ノ;;;;;;;;>  俺にもありました
   ,;ぇハ、 、_,.ー-、_',.    ,f゙: Y;;f
   ~''戈ヽ   `二´    r'´:::. `!
632名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 23:37:52 ID:6wk/yJz/
お前らこんなに潜んでたのかww
633名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 23:42:34 ID:52uGdx06
ノ・ン・ト・ロ!ノ・ン・ト・ロ!ノ・ン・ト・ロ!
634名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 23:46:14 ID:1mU5m6Ux
ああ・・・やはり神はわれわれを見捨てなかった。
さ、これに続いてどんどん他の神も投下してください!
さあ!さあ!はやく!はやく!
635名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 23:48:19 ID:q8h8Y38J
おいおいみんなずるいじゃないか俺も混ぜてくれよ
636名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 23:50:07 ID:VUZuspi1
ノントロGJ
637名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 23:52:45 ID:zWf9STO5
最近なんか栄えすぎてて逆に恐ろしくなってきた
638名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 23:59:15 ID:wX6FURdO
ノントロ再開で何が嬉しいって、今回は未登場だけど
また翠たんに出会えるってこと
あの独特のノリの美術部部長さん俺メッチャ好きやねん
639名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:25:23 ID:N+12CcHb
ついにノントロ再開か


これでようやく服を着られるんだな
640名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:28:02 ID:q1x7eZZZ
ノントロがああああああああああああああああ!!!!!!!!!
641名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:30:01 ID:RWnS7yOL
ネ申 降 臨
ノントロ帰ってキタ━━(T∀T)━━ !!

超GJ
642名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:30:10 ID:NITo2pxu
>>595
GJ!
あとPassion fruitsの続きを激しく禿しくキボンヌ!!!
643名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:30:57 ID:QKbRzi6e
ノントロだあああああ!!!!
GJ!超GJ!!
俺はずっと信じてた!
644名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:32:57 ID:vFt04dRb
きっと帰ってくると信じて待った甲斐があったよ
本当にGJです
645名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:33:32 ID:t3cuoKtt
ミスター、ツイスターの人か。おかえりなさい。
ノントロの続きはもちろんのこと、新しいネタというのも楽しみだ。
646名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:34:03 ID:AuCfGv7Y
ノントロきてるうぅぅぅぅぅ!!!
ヤバい今日はこの興奮だけで眠れなくなるかもしれん
647名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:36:22 ID:aB/BEapy
再開早々、凶暴性が増してる沙織ちゃんがすげぇw
いったい何があったんだ
648名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:36:28 ID:QKbRzi6e

興奮しすぎてsage忘れた、すまん
649名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:37:34 ID:iH2qIozC
おかえりといわざるをえない
650名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:44:09 ID:ZCRAqvvX
>>616からここまでずーっとGJレスじゃねーかw
651名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:54:04 ID:a4CM7FFH
うむうむ待ってたかいがあった
惜しみなくGJ
652名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 00:55:29 ID:9P21os+W
これでやっと服が着れる・・・・
どうにか冬は越せそうだな
653名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 01:38:37 ID:QleIszCi
わあああああああああああああ。嬉しすぎる!
おかえりなさい!
ずっと待ってました!
654名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 02:21:52 ID:l12BhWXz
作者様お帰り。

新しいネタも楽しみだが、頑張ってこいつを終わらせてくれ。
前フリでこんなwktkしたのは初めてなんだ
655名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 02:32:28 ID:1HFR6w2F
マジ最高。GJです。ずっと待ってましたとも。良かったら僕を抱いて下さい
656名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 02:50:54 ID:xgZkq3Cd
宇和あああああああああああああああああああい
いいいいいいやったああああああああああああ!

GJです。もうこれしか言葉が出ません
657名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 03:00:42 ID:zdowZ5ut
>>595
こういう話は大好きだなぁ

頑張って、GJ
658名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 03:24:52 ID:3NVwWRCX
連載打ち切り多すぎて全然覚えてねーぜちくしょうorz
659名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 04:02:21 ID:z1LMj9pK
冬の星空が好評連載中で、草が一旦打ち切りになって、
ノントロが復活して、また新しい嫉妬ssが生まれそうで、
ほんとにこのスレは活気があるな。
660名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 05:14:55 ID:9qAYe+cm
マジでノントロ待ちまくってた!
作者さん帰ってきてくれてありがとうございます!
マジで超嬉しいっす!
661名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 06:44:45 ID:21XYbyBz
>>655
苦し紛れに何言ってんだ、おまいはwwww
662名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 08:26:03 ID:u40/IRh2
>>661
苦し紛れ は意味が違うんじゃね?
どさくさ紛れ って言いたかったのか

あとノントロの人、もし良かったら僕も抱いてください
663名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 10:53:17 ID:IL36MuWC
沙織、サカー君と付き合ってたようだけど

信じていいんだよな?(貞操的な意味で)
664名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 11:53:06 ID:t3cuoKtt
そういう変に身勝手なプレッシャーをかけるのはやめろよな
まあどうみても主人公に対するあてつけで付き合ってたんだから考えにくいんじゃないか
665名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 13:16:27 ID:ylTk9ybY
策士は貞操すら主人公を追い込む道具にする事もある
まっ、作品の内容に口出しするレスは控えような?
自分の属性に合わなきゃスルーが常識
666名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 13:28:22 ID:B4RlveMf
そろそろ、次スレの季節だね
450KB過ぎてからが修羅場スレの楽しみなんだよ
久々に住人の妄想ネタで盛り上がりたいぜ
667名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 18:07:42 ID:eF+K2OsT
ノン・トロッポやべぇーーーーーーーーーーーー!!!!
wktkが止まんねぇ!!!!!!
668名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 18:10:10 ID:ukHnhqUE
ノントロか………。
まあ、おまえら落ち着けってられるか〜!!
ノントロワッショイ!!
GJ!!
669661:2007/10/24(水) 18:46:02 ID:21XYbyBz
>>662
これ書き込んだ時多分寝ぼけてたww





どさくさに紛れて何言ってんだ('A`)
670名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 19:53:39 ID:fuhGbwj3
やたら伸びてるから何かと思えば、
投下ラッシュのうえに噂のノントロが再開したのか
ともかくSS書きのみなさんGJ
671名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 21:41:03 ID:WL1x6OD4
そろそろ次スレを立てないとマズイな。
672名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 22:57:25 ID:rsNUFrLE
おれ愛娘が来たら服を着ようと思うんだ……
673名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 23:07:59 ID:NnpFm1yQ
これで1/8がきたら冬を越せるぜ
674名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 23:32:33 ID:93knZowu
七戦姫と雨の音が来るまでは………
675名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 23:39:44 ID:njAWZvLE
最近の神々の降臨率は異常
局所的集中豪雨だな
676名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 23:49:46 ID:guNsX1MV
復活率とも言えるな
677名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 23:59:07 ID:UVYEiaN/
レッドペッパーもいい所で終わったからな……
678 ◆SVNDcoHudE :2007/10/25(木) 00:55:43 ID:Ad+EhdwB
投下します
679冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/25(木) 00:57:07 ID:Ad+EhdwB
―――秋穂も美希も、僕をまじめな人間、素直な人間だというけど実際は違う。
ただ周りになにか言われるのが怖いだけだ。
人の言うことに素直にしたがって、まじめにやってれば文句を言われることはない。
そうやって問題から逃げ続ける、臆病な人間なんだ、僕は。
…それに真面目に生きてれば、父さんも母さんもいつか仲直りしてくれる、そう思っていたから。

でも、あの時、美希のために先輩の所に走ったときは違った。
周りの人間の評価なんてどうでもよかった。
ただ、美希のことだけ考えてた。そのときはそれが正しいことなんだって思った。
だから今のこういう僕の境遇には何の後悔もない。
僕のことが原因で父と母がケンカしても、そのときはどうでもよかった。
あの時の僕には美希が世界のすべてだったんだ………



「あ〜またやってるよ」
久しぶりに帰宅した姉さんが、ソファにねっころがりながら悪態をつく。
姉さんはさっきからずっとゴロゴロしながらテレビを見ている。
「ん〜?」
洗い物をしていた手を止め台所から顔を出し、テレビ画面を覗く。
画面上ではたくさんのフラッシュにたかれながら、あるタレントが記者会見を開いていた。
名前はなんだったか…確かすごく人気のある人だったはずだ。
こっからじゃあ名前も見えないし、音声もよく聞こえない。
こういうことに疎いと困るな、ほんと。
「こいつさ〜前も離婚するとかなんかで会見開いてなかった?うんざりするわね〜」
姉さんの顔もソファに隠れてよく見えない。
テーブルの上に空き缶が散乱してる所を見るに、たぶん、酔ってる。
「こういう人気者とか、自分が優秀だって理解してるやつってさ、
自分が中心じゃないと納得しないのよね」
「……どゆこと?」
「悪者になりたがらないのよ。なにかあると間接的にだけど、うまく相手のせいにするの」
「そういうやつは本物の人気者じゃないんだけどね。金メッキで作られてるようなもんよ。
ようするに、ただ自分のプライドが大事なだけの小物ね」
モゾモゾと動きながら、姉さんは続ける。
「自分は常に選ぶ側!選ばれるのなんてたくさん!なーんておもってんじゃないの〜?」
680冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/25(木) 00:58:13 ID:Ad+EhdwB
「……それって母さんのこと?」
ピクッと、姉さんが反応したのが分かった。
「…まあね、それもあるけど」
「………………」
母さんはいつも言ってた。「父さんとは世界が違う」って。
お嬢様だった母さんと、成り上がりで出世した父さん。
二人はお見合いをして、周りの色々な思惑によって結婚した。
いろんなことがあったんだろう。きっと僕等に言えない様な、なにかが。
「…でもほんとにあくどいのって、こういうのを利用する人間よね」
話題を変えるかのように、姉さんは話を続け始めた。
「こういうのを電波で流すテレビ、話題にする事務所の人間、みんなそう」
「視聴率を稼いで、話題を増やして、お金にする。あ〜やだやだ」
本当にあくどい人間……
裏でなにかをする人間、誰かを利用する人間、か。
「…じゃあ義之さんは、どうなの?」
義之さんっ、ていうのは姉さんの恋人だ。何度か家にも来たことがある。
強面だけど、暖かくて、優しい人だった。
「義之?なんで義之が出てくるのよ?」
「義之さんは雑誌記者だろ?姉さんがそういう考えなら「世界」の違う人間ってことじゃない?」
「……どうなのかな。わからない」
姉さんがソファの中で、寝返りをうったのが分かった。
「あんたに偉そうな事言ったけどさ、私にも分からないの」
ソファに埋もれて、相変わらず姉さんの顔は見えない。
「でも向こうは未来が一緒だって思ってるんじゃない?じゃなきゃプロポーズなんてしないでしょ?」
……え?
「姉さん結婚するの!?」
「まあ…ね」
「そっか……おめでとう!」
「……ありがと」
姉さんの顔はまだ見えない。だけどきっと微笑んでる。それだけは、わかった。
681冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/25(木) 00:59:45 ID:Ad+EhdwB
姉さんがいなくなる。僕を守ってくれた姉さんがいなくなる。
それは当然のことだ。僕と姉さんの未来は違うものなんだから。
じゃあ僕の未来はどこだ?誰と世界が重なるんだ?

…僕の未来は、だれと重なっていくんだろう。
美希か? それとも…秋穂か……?



―――――今日はほんとに天気が悪い。昨日よりずっと曇ってる。
相変わらずこの駅は人でいっぱいだ。人を探すのも一苦労する。
秋穂は目立たないから、余計探すのが難しい。
改札口を出て、キョロキョロと学生の群れを見回していると、
一人の女の子が、群れの中から僕の前に飛び出してきた。
「おはよう!要君!」
「え…?おはよう……?」
なんだ…?誰だこの子は?
いや、やけに元気に声をかけてきたこの女の子を、僕は確かに知っている。
でもその子はこんなに元気にあいさつしないし、何よりメガネをかけているはずだ。
「そんなに驚かなくてもいいじゃない。ただコンタクトにしただけよ?」
静かに微笑む女の子。そうだ、僕はこの微笑みを知ってる。
「あ、ああ。あき、ほ…おはよう」
びっくりした。
メガネを外しただけなのに、秋穂の印象は全然違う。
いやそれだけじゃない。細かく制服の着こなしや、化粧も変えている。
髪型だって少し野暮ったい感じだったのが、今は明るい感じに整っている。
それにこうして見るとやっぱり秋穂は可愛い。美希や戸田さん達に勝るとも劣らない。
今みたいな明るさがあるなら、きっと男にもモテる。
「あ……でも、なんで?」
「う〜ん。こっちの方が昔の私みたいかなっ、て思って」
なるほど。確かにそうだ。……ん?
「秋穂は昔からメガネかけてたじゃないか」
「えっ?…あ〜そうだったね。あははっ!」
そう笑うと、秋穂は僕の背後に回り、グイグイと背中を押してきた。
「ホラホラ!いこいこ!」
「ちょ…ちょっと、押さないで!」
……ほんとに、別人みたいだ。
682冬の星空 ◆SVNDcoHudE :2007/10/25(木) 01:01:52 ID:Ad+EhdwB
暗い空の下、いつものように秋穂と並んで通学路を歩く。
でも、いつもと違ってなんだかドキマギする。
横にいるのは確かに秋穂のはずなのに、全然違う人間と歩いてる感じだ。
「え、えっと、コ、コンタクトって今の季節乾いたりしないの?」
なんでかしらないけど声が震える。
いや理由は分かってる。緊張してるんだ、僕は。
「ん〜だいじょぶだよ。そろそろ雨が降るだろうから」
空を見上げ、手をかざす秋穂。僕もつられて顔を上げる。
たしかにすごい曇り空だ。今にも雨が降り出しそうな感じだ。
「まあ、今はだいじょぶだよ。さ、いこいこ」
僕を引きつれ、秋穂が歩き出す。
なんだか顔がにやけてしまう。
こんな暗い空なのに、気分がすがすがしい…


あの日の夜のことを、秋穂は特に言及してこなかった。
特に何事もなかったかのように毎日振舞い続けている。
僕も自分から何か言うのは気が引けて、そのままにしておいた。
何も言わないって事は、きっとそれでいいんだ。
きっと……それでいいんだ。


…だけどこの急な秋穂の変化は、やっぱりあの夜が原因になってるんじゃないだろうか。
僕の前を歩く小さな秋穂の背中は、そう言ってるように見える。
たんなる僕の自意識過剰なのかもしれないけれど…


「…実はね」
ピタッと、急に秋穂の歩みが止まった。
後ろをついていっている僕も、それで歩くのを止めざるをえなかった。
「コンタクトにしたのには、他にも理由があるの」
秋穂は振り向くことなく、言葉を続ける。
「そろそろ教えてあげようと思って。要君の知りたいこと、知らないこと、全部」
683 ◆SVNDcoHudE :2007/10/25(木) 01:04:03 ID:Ad+EhdwB
終わりです。暗喩的なネタバレを混ぜてみました。
てかこっち先に投下すべきでしたね。わかりずらくてすいません。
とにかくノントロと草の職人さんが帰ってきてくれてほんと嬉しいです。いつも楽しみにしてました。
これからもがんばってください!
684名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 03:10:51 ID:X56psjl+
阿修羅氏、保管庫更新乙です
685名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 12:11:40 ID:VqAfGJ7u
GJ!投下お疲れさまです。
阿修羅さんも素早い更新、いつもありがとうございます。
しかしみんな、大降臨祭で燃え尽きてるのかwww
686名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 12:29:24 ID:YB7kp7Ha
要優柔不断すぎ。
687名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 13:23:17 ID:Jak4A5RF
なにがGJだアホか
打ち切るなら書くな
さっさと消えろ
688名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 13:34:58 ID:X8X59m65
GJ!
689名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 15:15:53 ID:Ygl+O3v5
>>687
まあ確かに これで今まで考えなしにその場×2で書いていたことが分かったわけだが

あえて打ち切りと宣言してくれたおかげで、全裸でwktkしてたのに……な展開は予防できたから良しとしないか
690名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 16:06:29 ID:ORs/0m+s
スレの空気悪くするような発言する人もどうか消えていただきたい
691名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 16:10:53 ID:FcGzEbZC
スルー検定三級 落第
692名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 16:13:04 ID:/q7upUNN
次スレタイトル

泥棒猫に愛しい彼を奪われて三千里



の旅にて、サブマシンガンを装備した私が

うふふふふふ


がいいと思います
693名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 16:23:56 ID:TlC1jIlh
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1193296845/
次スレへGOGO! 仲良く楽しく使いましょう
694名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 16:27:02 ID:uUntmbKm
今きたがノントロキテルゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
GJ!!!!!1!!11111
695名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 16:33:17 ID:/q7upUNN
>>693に嫉妬するGJ

スレ名に勃起した
696名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 17:11:05 ID:kANd3y5Z
草打ち切りか。大風呂敷広げるだけ広げて逃亡とはさすがだ。ハンドルネームを冨樫に変えたらどうだ。
何も考えないで適当に書いてるのは最初からわかってたから、今更驚くようなことはないけどね。
ネーミングセンスは読者を意識してないのが伝わってきて最悪だわ、サンドロは腐女子臭漂うクソキャラだわで、見るに堪えなかったから打ち切り宣言ですっきりした。
次の話も行き当たりばったりで書いて行き詰って投げるんだろうから、楽しみにしてる。
それに比べてノントロは偉い。長く間が空いても絶対に一つの作品を完結させてやるって意気込みが伝わってくる。
ノントロ作者こそ本物の職人だ。久々の復活とはいえ、丁寧な心理描写は健在のようで安心。よくぞ帰ってきてくれた。万歳三唱。
あと冬の星空も期待してる。しっかり一歩先の展開見据えて書いてるの、読者はちゃんとわかってるから。
撒かれた布石ははたしてそのままの意味なのか、そうでないのか、それを含めて続きが気になる。
697名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 17:26:41 ID:jdDtfjH7
スルー検定準二級
698名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 17:31:44 ID:/ehFJQ+G
そうスルー
699名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 17:45:36 ID:3iVrwy7Y
スルーする
700名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 18:10:47 ID:riJS+AYt
こういうのってもはやテンプレだよなw
701名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 18:19:11 ID:awuIqyp/
むしろ観察対象
702名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 18:33:43 ID:ovgMwd+N
まあ本音としては嫉妬修羅場まで行って欲しかったな
703名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 18:42:34 ID:al4dXVeF
修羅場になるために俺は余所で女を作る!!
704名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 18:47:37 ID:tpx3FUSN
外道ファイターめ、言葉様の名に成敗してくれるWA
705名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 18:55:30 ID:al4dXVeF
世界以上のビッチ女なんてリアルでもいませんからね
妊娠したぐらいで刺されてたまるかとw 
カウンターのためにフタエノキワミ、アッ−!
で包丁もろとも、あのブサイク顔を粉砕してくれるわ!!
706名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 19:17:28 ID:xn3gxZ8q
個人的に前々スレで投下されてた埋めネタの続きにwktkしてる
707名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 20:15:24 ID:Fu40EXPr
タマにはカワイらしい嫉妬モノが読みたいナー。
708名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 21:16:05 ID:7xy0Myhn
>>707
YOU(ry
709名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 22:08:46 ID:qwZLrCU3
>>696は冬の星空の作者っぽいな
710名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 22:09:48 ID:ORs/0m+s
711名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 22:11:56 ID:v+z7FmBl
スルーするぜ!!


ちなみに大空翼はボールにしか興味ありません!!
712名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 00:59:02 ID:MRQd7jmf
翼君のボールに嫉妬してスポーツショップに入っては次々とサッカーボールを潰して行く女の話ください
713名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 01:30:43 ID:uXVyxbF2
>>712
ゆわっしゃぁおっ!!!!
714 ◆88FzqwpUTw :2007/10/26(金) 01:46:51 ID:ROXoFm+e
埋めネタ投下します。
715しにがみのバラード ◆88FzqwpUTw :2007/10/26(金) 01:50:09 ID:ROXoFm+e

ほれ、見ろ。やっぱり遅刻だ。
校門まではゆっくり歩こうとする真守を引っ張ってきたのだが、そこでHR開始の鐘を聞いて急ぐのを止めた。
こうなったらもう急ぐ理由はない。高校入学以来遅刻も欠席もなかったのに、もうどうせ遅刻だ。悔しいから出来るかぎり遅れてやる。
そんな捻くれた事を考えつつ、釈然としない怒りに身を焦がしながら歩を緩めたそのとき、ふと自分が何故遅刻したのか思い出す。
この釈然としない怒りの原因。全部、真守のせいだ。そう思うと、真守に対して沸々と怒りが沸き上がる。
「ねぇ、真守?」
環は緩めたついでにピタリと歩を止め、後ろの真守に振り返る。
うっ、と真守が声をつまらせた。
それもそのはず、このとき環は皆勤賞を台無しにされて心の底から怒っていた。顔は笑顔だけど、はらわたは煮えくりかえっていた。
付き合いの長い真守は、笑顔だけでは抑えきれない真の怒りを敏感に感じとったのだろう。
さすがだ。誉めてあげよう。許さないけど。
環は無言で振り被り、手に持った鞄で力いっぱい真守の右腕を叩いた。

ドカッ。

痛い、と小さく悲鳴をあげた真守は涙目で腕をさすりながら、
「ご、ごめん。悪かったよ……」
そう謝罪する。
環はふんと鼻をならした。
「本来なら、万死に値するけど、仕方ないから許してあげる。でも、今回だけだかんね」
「わ、分かった」
そう言いながら、真守はまだ痛そうに腕をさすっている。どうせ、たいして痛くないくせに。
下駄箱はやはりがらんとしていた。いつもなら、喧騒に包まれているのに、時間が時間だからか人の影さえない。
その静かな玄関には、自分の革靴の足音がびっくりするほど大きく響いた。
「静かね」
気が付くと、環はそう呟いていた。
喧騒にまみれた玄関しか知らない環にとって、この静寂はまるで別の世界に迷い込んでしまったような不思議な気持ちだった。
「この時間なら、いつもこんなものだよ」
のっそりと体を屈めて、真守は自分の革靴を下駄箱に入れる。
そして、代わりに上履きを取り出し、それを履くと屈めた体を一気にぐんと伸ばしす。
急に伸びた大きな影に、環は少しだけ驚き身を引いた。
716しにがみのバラード ◆88FzqwpUTw :2007/10/26(金) 01:54:52 ID:ROXoFm+e

「ん? どうしたの?」
わずかながら怯んだ事を不審に思ったらしい真守が、不思議そうに環を見ながら言った。
素直に、真守が大きくて驚いた、と言うのも何か悔しい。環の中ではまだ真守は小さくて泣き虫な存在なのだ。
大きくなった事に驚いた自分を、また真守が自分より遥かに大きくなった事を暗に認めたくない。
「べ、別にどうもしないわよっ!!」
変な意地のせいではからずとも、声が大きくなってしまう。
「そ、そう?」
「そうよっ!」
なおも不思議がる真守を、環は強引に黙らせる。納得したんだか、してないんだか分からない顔で真守は頷く。
そして、頷いた首を上げた時、急にあっ、と思い出したように声をあげた。
「な、何よ?」
またしても驚いてしまった環は、そんな自分を隠すように声を大きくした。
「HR」
「は?」
「HR始まっちゃう。急ごう」
何を言ってるんだ、と思う。HRなどとっくに始まっていて、自分達は遅刻者なのだ。
主に真守のせいで、自分の皆勤賞も台無しなのだ。今さら急いでもしょうがない。
もとからトロかったが、彼はそんな事さえも分からないのだろうか……。
分からないんだろうな、途端に頭が痛くなった。その痛みを押さえるように額に手を当てて環は、
「あのね、真守、」
「急ごう」
みなまで言わせず真守は、額を押さえる環の手を握った。
予想外の真守の行動、そして環の手を握った彼の手の大きさ、暖かさに環は思わずドキッとしてしまう。
だけど、そんな有り得ない感傷に浸る時間なんて、嬉しい事にまったくなく、急に駆け出した真守に引きずられるようにして、
環も走り出した。
「ちょ、ちょっと、何なのよっ!!」
たまらず非難の声をあげるも、真守はまったく聞いていなく、返事さえしない。代わりに、握られた手に力がこもった気がした。
日本人離れした長い足。大きなストライドで軽快なリズムを刻む真守の足音。
一方の環は完全にばた足で、ドタドタと重く無駄に大きな足音を立てる。
無人の廊下には、その二つの音がまるで違った楽器のように重なり響いた。
717しにがみのバラード ◆88FzqwpUTw :2007/10/26(金) 02:06:34 ID:ROXoFm+e

長い廊下を駆け抜けて、やがて階段に差し掛かると、真守は環を前にぐいと引き出して自分は立ち止まった。
勢いの止まらない環はあやうく転びそうになり、慌てて体勢を立て直す。そして後ろの真守を睨みつけ文句を言った。
「な、何なのよっ、一体!!急に走り出したと思ったら、急に止まったりして、転びそうになっちゃったじゃないっ!!」
「説明している時間はない。急ごう」
その真守の顔が、滅多に見せない真剣さを伴っていたから、環は怒りをグッと堪えて仕方なく駆け足で階段を上り始めた。
そのすぐ後から真守がついてくる。
三階で、再び廊下に出る。
かなり急いで走ったから、疲れた。環は膝に手を当てて、乱れた呼吸を正常に戻そうとする。
が、それより前に再び真守が環の手を取って走り出した。
「も、もう、何なのよっ!!」
苦しい呼吸の隙間を縫って、環は三度目の非難の声をあげた。
息も絶えだえ教室にたどりついたとき、驚いた事にまだ担任は登場していないようだった。
その証拠に、廊下にまで響く賑やかな話声はHRでは有り得ない喧騒を携えていた。
ガラガラと乱暴に開いた戸に、クラスの喧騒は一瞬静まり返ったが、そこにいるのが担任じゃないと分かると、
再びクラスは喧騒に包まれる。しかし、どうも様子がおかしい。クラスメートは皆、いやらしくにやつきつつこちらを見ている。
そして、先程とは種類の違う喧騒に包まれる。
「キャー、見て、あの二人手を繋いでるーっ!!」
「うわ、こんな朝っぱらからかよ」
「ご夫婦は今日も仲良さそうでうらやましいですな」
次々と飛び交う冷やかしの文句に、環はようやく真守と手を繋ぎっぱなしなのを気付いて、慌てて手を放した。
「見て見て、加藤さん顔真っ赤にしてる〜、か〜わいい〜」
「照れてるんだ、うぶなんだね〜」
違う。これは走ってきたからだ。じゃなきゃ、なんでよりによって真守なんかと。
そう言いたかったが、乱れた呼吸ではうまく口が開かない。方や真守はと言うと、涼しい息遣いで困ったように笑っていた。
718しにがみのバラード ◆88FzqwpUTw :2007/10/26(金) 02:09:29 ID:ROXoFm+e

あんたが誤解をときなさいよ、そんな怨念をこめて肘で真守をつつく。
すると、その意図を敏感に感じ取ったらしい真守が、驚くほど落ち着いた様子で、
それでいて環にしか聞こえないひっそりとした声で言った。
「無理だよ。それに、あんまりこっちがムキになると、むこうがおもしろがる。だから適当にあしらえばいい」
じゃあ、さっさとやれよ、と思う。しかし、真守は相変わらずの困ったような笑顔のままで何もする様子もなく、
そうこうする間に冷やかしは勢いを増していく。
「おいおい、何をこそこそ話してんだよ」
まずは、クラス一の馬鹿で、そのくせ妙にめざとい森が先陣を切り、後も続く。
「二人仲良く遅刻なんて、何やってたんだか」
「夫婦水いらずでいちゃいちゃしてたんじゃない?」
そのとき、真守がいきなり口を開いた。
「違うよ」
決して大きくはないがよく通る澄んだ声に、冷やかしに包まれた喧騒が嘘のように静まり返る。
まるで渦に飲まれるようにクラス中の関心が彼の言葉に飲み込まれ、みな息を殺して真守の次の言葉を待っているようだった。
教室中の期待と好奇が真守に集まっている。
だけど、彼はそんなものに動じる様子はまるでなく、じらすような沈黙を作り、それから、いつもの笑みを浮かべたまま、
呑気にこう言った。
「離婚届けを出しに行ってたんだ」
ドッとクラスが揺らいだ。


結局、教室の盛り上がりは真守のあの一言で最高に達したが、
後はまるで浜辺に打ち寄せた波が引くように驚くほどあっさりと静まった。
何を言われても真守は笑みを絶やさないし、おまけにそんな真守が自分の体の大きさを利用して、
環を背中に隠して環の顔をクラスメートから見えなくしてしまった。
そのため、クラスメートからは感情の起伏が激しい環の顔を見えなくなり、彼等の野次馬根性は当人達の思いの外
──主に真守のだが──寂しい反応に水をかけられた格好になった。
前言通り、真守が教室の盛り上がりをあしらって見せたのである。
719しにがみのバラード ◆88FzqwpUTw :2007/10/26(金) 02:14:10 ID:ROXoFm+e

しかし、環にはそれが真守に助けられたようで気に入らない。よりによって真守なんかに、と微かに反抗心にも似た嫉妬を覚える。
だが、よくよく考えてみれば、そもそもそんな目に会うのは真守がちんたらしていたせいなので、
別に感謝する必要もない事に気付き、ほどなくして溜飲を下げた。
すっかり沈静化したクラスの盛り上がりを背に席に向かう環と真守に、人懐っこい笑みを浮かべた男がおはようと声をかけてくる。
真守の前の席に座る中村芳樹だ。中村は椅子に前後逆に座り、真守の机に腕を置いてこう言った。
「よっ、加藤と死神さん」
「その呼び方は止めてくれないかな?」真守は苦笑しつつ、鞄を机の上に置いて自分の席に座った。
「あんまり好きじゃないんだ、その呼び名」
嘘つけ。
環は知っている。彼の携帯ストラップに描かれたキャラクターがデフォルメされた死神である事を。
本当はまんざらでもないくせに。
「何で? かっこいいじゃん、この呼び名」
小首をかしげながら、加藤もそう思うだろ、と中村は話を環に振る。
明らかに肯定を期待する中村に対し、今朝からいらつきっぱなしの環はぞんざいに言葉を返した。
「別に〜。それに、真守に死神なんて似合わないわ。せいぜい貧乏神あたりが関の山よ」
環は鞄を机の上に置いて、真守の隣の席に腰を下ろす。
「貧乏神はやだな」
真守は困ったように頬を掻きながらそう言った。その意見には中村も同意する。
「そうだよなぁ、さすがにそれは酷いよな、MVP」
中村はイタズラっぽく唇を歪め、真守の肩を叩きながら今度はまた別の呼び方で話を振る。
彼の表情に、子供のような意地悪心が出ているのが分かった。
「だから、止めてくれって」
そう言いつつ、困り果てた真守が助けを求めるように環を見てきた。
「死神」とは違い、「MVP」と呼ばれるのを真守が嫌がっている事は環もよく知っている。
が、だからと言って、助ける気はさらさらない。
他力本願な、その弱々しい態度が気に入らないのだ。男のくせに情けない、と思う。
720しにがみのバラード ◆88FzqwpUTw :2007/10/26(金) 02:16:20 ID:ROXoFm+e

援軍が来ず、孤立したと分かった軍隊のようにみるみる困窮した顔になる真守。
環はそんな真守を睨めつけ突き放すようにふんと鼻を鳴らすと、机に突っ伏し狸寝入りを決めこんだ。
「ありゃりゃ、怒らせちゃったか?まぁ、いいや、なMVP」
がははと豪快に笑う中村の声が聞こえた。
ちなみにMVPとは、先週発表されたサッカーの県大会の個人タイトルである。
その県大会に優勝したのが真守や環の通う高校であり、あろうことか真守がMVPに選ばれたのだ。
こんなでくのぼうのどこがいいのか、環にはさっぱり分からないが、とにかく真守には絶賛の嵐で、
特に地元の新聞は彼のプレースタイルをこう評して称えた。
Bエリアの死神、と。Bが何の略かは覚えていない、興味もない。
「MVPは運がよかったからだよ。実力じゃない」
腕枕に包まれた暗闇の中、今度は真守の言い訳じみた声が聞こえてくる。すかさず中村が、
「何言ってんだよ。運だけの奴が代表に選出されるわけないだろ?」
そうなのだ。困った事に真守は県大会での活躍が認められ、あろうことかU-17日本代表に選出されてしまったのだ。
先日行われた壮行試合にもちゃっかり出場したらしい。
県大会で真守がMVPを取った時は、県のサッカーレベルの低さを嘆いたけど、
代表となると国のサッカーレベルの低さに嘆かざるをえない。
いずれにしろ真守が代表に選ばれるなんて、この国のサッカー界お先真っ暗なのは間違いないだろう。
別に自分が困るわけでもないので構わないが。
「う〜ん、でも代表はやっぱりレベル高いよ。参加してみたら、一番下手だった」
当たり前だ。体をピクリと震わせた環は、闇の中で一人突っ込む。
真守が一番うまかったら、それこそ世界のサッカー界の終りだ。だいたい真守の技術はウチのサッカー部内でさえ一番じゃない。
大甘に見ても、せいぜい二番か三番程度ではないか。サッカー部マネージャーの加藤環が証言するのだからそこに間違いはない。
721しにがみのバラード ◆88FzqwpUTw :2007/10/26(金) 02:18:30 ID:ROXoFm+e

「へぇ〜、そうなんだ。日本も広いな」
「そうだね。うまい人はたくさんいるよ」
相変わらずの呑気な声を聞いたそのとき、教室の引き戸がガラガラと音を立てて開いた。
クラスのざわつきが真守と村上の会話共々一斉に止み、その静寂の中に教壇を叩くくぐもった足音が響いた。
そして、その音が止まぬ内にクラス委員長が号令を上げる。
「きりーつ」
今日も、また日常が始まる。
椅子が引きずられる音が聞こえ、次々とクラスメートが立ち上がる音を聞いた環はおもむろに立ち上がった。
722 ◆88FzqwpUTw :2007/10/26(金) 02:20:57 ID:ROXoFm+e
投下完了。
話は完成済みなので投下が楽だぁ。
推敲が大変だけど。すみかは……まぁ、近いうちに。
では、また次の埋めネタで。

723名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 03:11:12 ID:2ZtYfn8u
Bエリアって何?
724名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 04:07:21 ID:ROXoFm+e
ああ、orz
すいません。間違えてますね。
Bエリア→Vエリア
に修正してください。
本当に申し訳ないです。
725名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 04:27:00 ID:wYSBus79
わたあの見てて何故か ttp://www5c.biglobe.ne.jp/~nyu/ の2428が浮かんできた
726名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 08:21:38 ID:2ZtYfn8u
あぁボランチか
727名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 18:31:44 ID:0uxtC0aS
バイタルエリアだろ
728名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 21:48:27 ID:04RAQC16
埋めに修羅場シチュ妄想共に語るヤツいる?ノシ
729名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 22:37:25 ID:cF7oqX30
そうは言っても例えば・・・

2人で会話してるとき幼馴染の親友(可愛い。けど男)が聞いてきた。
「恋愛するとき、相手が男ってやっぱり気になる?」
「どうなんだろうね。好きになれば関係ないんじゃない?」
「いや、だからその”好きになる”前の段階で気になるかってことを聞いてるの」
「まぁ、なるんじゃない?いいじゃん、女装すれば」
「ゴメン、ウチの学校学ランじゃん。僕が男だってこと、割とみんな知ってると思うんですけど」
「それはそうだ」
ひと口ジュースを飲んで親友が続けた。
「あーぁ、恋人に彼女が出来ても、絶対後悔することはないと思ってたけど、
まさかこれほど憎らしいと思うとはね。こんなことなら強引に奪っておけばよかった」
「へー、好きな人がいたんだ」
オレがそう言うと親友は言った。
「ヒント。君のことを考えているとき、君の彼女を殺したくなります」
「お前こえーよ」
「ヒント。今、スタンガン持ってます」

なんてことがあったら絶対に好きになっちゃうだろ?
730名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 23:02:00 ID:CAwNLJIQ
準にゃんだったら・・・
731名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 23:13:43 ID:rr2SVG5K
人を選ぶ話題ですね。

ある意味埋めネタにふさわしいかもしれないが、スレタイにちなんだSSに期待してる俺ガイル
732名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 23:53:44 ID:11ZAAIFx
私は一向に構わんッッ!
733梅ネタプロット ◆tVzTTTyvm. :2007/10/27(土) 00:07:46 ID:u9YkFWBO
 と、ある国の王子様
 普通一国の王子ともなれば結婚は政治の道具――政略結婚が当たり前。
 普通の恋愛なんて望める訳も無い。
 しかしこの王子は末っ子であった為か政治の道具としての価値も薄いとされ、
お陰で普通の恋愛をする事が出来、そして好いた相手と結婚できるはずであった。
 だが不幸な事に兄たちが相次いで病気や事故により他界してしまった為に、
兄王子の婚約者――他国の姫と政略結婚せねばならなくなってしまった。
 勿論恋人との結婚など白紙にされてしまう。
 王子は必死で恋人に謝る。 そして誓う。
 ――例えキミと結婚は出来なくても心の中ではずっとキミだけを愛し続ける。
 毎日は無理だけど、でも必ず何日かに一回は逢いに行くから、と。
 しかし、時が経つにつれ王子は嫁いできた他国の姫に情が移ってしまう。
 さぁ、そうなると黙っていられないのが恋人の元婚約者、

 なんてプロットを考えてみました。
 ここで他国の姫様も恋人も女だてらに剣の腕が立ったりしたら
修羅場は必然的に血みどろになりそう

 若し書く場合連載中のどれかを完結させてからになると思います。
 って言うか書きたい職人さんいらっしゃったら是非使ってください
734名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 00:21:30 ID:hrGHv8sZ
料理と漢字が苦手な感じる妹
お兄ちゃんのために初めてのお弁当作り
出汁巻き玉子をだし巻き玉子と読めない
読めないけど出汁のエロそうな雰囲気から閃きを得る
急遽創作料理に着手
卵を割ったボールを床に置きパンティを下ろしスカートをめくる
汁を出す
キモス
735名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 00:49:19 ID:IS5Qsp7g
>>734
……修羅場と嫉妬と三角関係は何処?
736名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 03:28:05 ID:hfkkCk+S
>>729
最近同じ様なのばっかりで食傷気味なのでお前本気出していいぞ
737名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 06:02:01 ID:lhK78eSY
>>729
俺はお前が好きになったぞ

さあ、こんなスレは捨てて俺と新しいスレに行こう。
738名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 11:57:24 ID:z5g263tz
その翌日、姉は妹にいった。
「ご覧。私は昨夜、お父さんと寝ました。今夜もまた、お父さんに酒を飲ませましょう。そして、あなたが行って、いっしょに寝なさい。
そうして、私たちはお父さんによって、子孫を残しましょう」
――旧約聖書、創世記第十九章三十四節。

 誰も彼もが、いいひとでした。愛情深い、やさしいひとたちでした。そもそも、世の中に本当の悪人なんてめったにおりません。
他人によくみられたい。自分こそいい人だと思いたい。善い行いをして、良い気持ちに浸りたい。誰しも、そういう欲求を持って生まれてまいります。
汝の行為の一つ一つが、普遍の法則になるように、行為せよ。という格言は正しいと存じます。
自ら悪事を為してしまうのは止むを得ない事情があったからで、飢えをしのいだり、こころを満たしたり、生きていくために必要な行為だったのでしょう。
結局、私たち人間も畜生と一緒で、無益な殺生はやらないものです。
人間とは、そんな単純なものではない? はい。たしかにおっしゃる通りです。けれども、大抵のひとたちは簡単な生き物じゃありませんかね。
だって、自分がそうですから。性悪説より、性善説のほうが好きな人間です。
ありがたい学術書より、どうでもいいおとぎ話が読みたい。気持ちの良い意見を真と見なしたい。賢者に憧れる俗物でありたい。馬鹿正直に信じたい男です。
胡瓜から日光が取れたとしても、惚けて口を開けている人間でしかありません。
神父さま。私は、単純で、大仰な信仰を持つ、そこらの凡人でいられれば満足な人種です。
無理に難しく考えてありもしない智慧を絞るなんてのは、どうも苦手です。

739名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 11:59:15 ID:z5g263tz
 私には、娘が二人おりました。長女のさくらと、愛人との間に生まれた、紫苑という娘です。
妻を早くに亡くし、愛人にも先立たれ、私だけがおめおめと生き延びて、かわいそうな娘たちは、男手一つに育てられることになりました。
幸いにも、妻のご両親はたいへんな資産家でして、孫のために骨を折ってくれましたので、金銭的な面に関しては娘たちに苦労をかけさせずに済みました。
私もこれを期に、酒と女遊びをすっぱりと止めて、育児に専念することに決めました。
どうやら、駄目男でうだつの上がらない自分にも下らない自尊心とやらがあったようです。
お義父さんからは金銭以外の援助を辞退して、家事育児を一人で切り盛りしてやろうと、不恰好な料理、雑な掃除、下手な愛想笑いで、世の専業主婦の猿真似なりに、年長組に上がったばかりの少女たちの世話を試みました。
随分と調子のよい、自分本位な意地であります。けれども、その頃の自分は愚劣なりにも充実した毎日を過ごしていたと、全てが終わってしまった今となっても断言できましょう。
私の不器用でぐちゃぐちゃになってしまったオムライスを美味しそうに頬張り、ケチャップで口元を真っ赤にして、にっこり笑うさくらと紫苑がおります。
おねしょをして、決まり悪そうにうつむいている紫苑と、妹をしからないでと、小さな声でお願いするさくらが見えます。
幼稚園に迎えに行くと、私の姿を認めた二人が、両手を広げて駆け出します。
クリスマスでは、お家にやってきたサンタさんを目にしてはしゃぎ、一緒に歌って、みんなでケーキを食べます。サンタさんの正体は、お義父さん。私はトナカイです。
本当に、幸せな日々でした。

740名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 12:01:56 ID:z5g263tz
 父親というものをいたすようになり、生まれて初めて私はひとに必要とされました。
美奈子も、美弥も、一本芯の通った女性です。悪く言うならば、手間のかからない女でした。
私が愛した二人の女性は、たいへん尽くしてくれました。全身全霊で、文字通り死ぬほど私を愛してくれました。
けれども、彼女たちはただ与えるばかりで、何の対価も要求しません。しいていうのなら、愛してくれ。それだけです。
私は不安でした。はたして私の誠意は彼女らの示す愛情と吊り合っているのだろうか、と。
無償の愛というものは、自分から出でたそれ以外には認められないという、厄介な不信を、私は生まれながらに抱えておりました。
他人のこころはわかりません。信ずるには、なにか保障が要ります。
私は、受け取ってばかりでは、じっとして座って居られずに、居心地が悪い思いをする人間でした。
必要とされたい。安心して愛されたい。そうして、私は彼女たちに、贈り物やら、わざわざ用意した愛の言葉やら、おべっかを使います。
けれども、彼女たちは涙を流し、きちがいのように喜んで私の顔に何回も接吻すると、抱きついたまま延々と恋慕を情を披露して、一念発起の計略を清算してしまいます。
負債はますます広がってゆくばかりです。
私は愛したかった。けれども彼女たちは、愛させてくれなかった。
そのまま、美奈子と美弥は私の前から消えてしまった。
皮も、肉も、骨も、こころも、みんな土の下に埋められた。
美奈子は、強い女性でした。美弥は、慈悲深い女性でした。二人は、とてもいいひとでした。
神父さま。私は取り返しのつかない罪を犯しました。身勝手な感傷で、二人の女の生涯を、駄目にしました。
だから、せめて娘たちだけはと、精いっぱい尽くしました。出来るかぎりの愛情を注ぎました。
さくらと紫苑は、母親に似てとてもいい子です。保母さんから評判の良い、父親に似ないでとても素直で、私を労い、進んで手助けをやろうとしてくれる良く出来た娘たちです。
時々ですが、わがままも申してくれます。私は困惑しつつも、空っぽの胸が、満たされていくような気がしました。
美奈子と美弥も、こんな気持ちだったのでしょうか。

741名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 12:04:29 ID:z5g263tz
 二人が小学校へ上がると、私は職に就いて働き始めました。良く出来た子供たちなので、そのころには殆ど手間はかからなくなっておりました。
いつまでもお義父さんの助けを借りているわけにはまいりませんし、子供たちの学び舎でも、親御さん同士の貴賎というものがあるでしょうから、二人に嫌な思いをさせないよう、胸を張って自慢できるような父親にならなければいけません。
昔取った杵柄とお義父さんの口利きで、定時で退社出来る良い職場を得られました。
仕事を終え、帰りにスーパーで買い物し、夕食を作って、娘たちの帰りを待ち、親子で食卓を囲み、少し窮屈な浴槽に三人で浸かり、紫苑の勉強を見てあげて、さくらのゲームの相手をし、川の字にした布団で眠りにつく。
そんな毎日を、続けておりました。

 人間は、周囲の環境に影響されるものです。三つ子の魂百までと云いますが、私はそうは思えません。
一人の人間は、あっけないほど簡単に、変わってしまうものです。
人間動物の習性で、孤独というものが耐えられないのでしょう。周りの人間に合わせて、あたかも昔からそうであるように、自分自身を作り変えてしまいます。
じわじわと侵食は進み、とうとう疑問を持たぬほど変貌して、手遅れになってからやっと自らの異常性に気が付きます。
はじめは同僚に飲みに誘われたことでした。アルコールを断って久しく、彼の言う、上手い焼酎を飲ませてくれる居酒屋の話を聞いて、酒の味が恋しくなり、少しくらいならいいかなと、娘たちに残業があると嘘を付いて飲みに出かけました。
久方ぶりの陶酔に味をしめ、飲み屋に通う頻度は、だんだん増えていきました。
舐めるような飲み方だったのが、次には上司のお杓をいただき、さらにはジョッキを傾けるようになり、しまいに乾杯の音頭を取って、そうしてべろべろに酔っ払うまでになりました。
そのまま酩酊状態で家に帰った私は、布団を掴んで丸まって眠るさくらと紫苑の間へ、風呂にも入らずごろんと寝転がり、いびきを立てて眠るのでした。
夕食の代わりに、テーブルの上にお金を置いて行く日が増えました。さくらと紫苑が全くといって抗議しないので、私はいい気になり、夜中まで飲み歩くのでした。

742名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 12:08:13 ID:z5g263tz
 職場の女性から食事に誘われる機会も多くなりました。昔、美奈子から聞いた話では、私は女好きのする顔立ちをしているみたいです。
美奈子と美弥に操を立てて、もう二度と恋愛はするまいと誓っていた私ですが、いざ出来るとなると現金なもので、心を許したわけじゃない。
体をマッサージするようなものだ、と自分では大真面目な屁理屈を頭の中で並び立てて、スポーツ感覚で、何人かの女性と関係を持ちました。
そうして、堕落した日々を過ごしました。けれども、私は父親として恥しくない、男として充実した、幸福な毎日を送っていると、思い込んでおりました。
ある日、私は街でさくらの姿を目撃しました。娘は私に背を向けて、走り去りました。ちょうど私は、お茶酌みの女性と寄り添って、宿泊施設から出たところでした。
帰宅しても、さくらは居ません。紫苑一人が、机に向かって勉強をしています。
さくらの居場所を彼女に聞いても、わからないと答えるだけでした。
私は鞄を放り投げて、外へ駆け出します。
走りながら、携帯電話を小学校にかけます。下校時間はとうに過ぎていて、全校生徒は既に下校したとい答えが帰ってきました。
公園には、誰もいません。ホテルの付近を走り回ってもさくらの姿は見当たりません。汗だくになり、警察に連絡しようと思い立ったときに、携帯電話から着信音が鳴ります。
お義父さんの番号からでした。

743名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 12:10:52 ID:z5g263tz
以上、埋めネタ前編です。
一応、前々スレの続きです。
744名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 13:02:35 ID:ANRgmgwe
言葉にならないこのGJ
745名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 13:37:39 ID:79vr27rg
続き読みたいすぐに
746名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 13:55:36 ID:okbfgWRr
>>743
つ、続きはまだなの!?
747名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 13:59:24 ID:LqTgpmjo
前編ってことは後編があるはず!だからwktkして待ってる
748名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 17:49:27 ID:iHVHIubA
もしかして後編は次回の埋めだったりするのだろうか
749名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 18:29:25 ID:vCxYlBPd
>>748
おいおい、それじゃ拷問だよブラザー
750名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 21:56:37 ID:pc24bDiN
>>748じゃあ俺、次スレ早く埋まるように長編書くよっ!!
751名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 23:19:40 ID:h7tEw23j
【殺人】15歳高校生少女、同級生の15歳少年を監禁未遂
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news7/1193322888/
752名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 19:10:51 ID:eWzmifnH
 お義父さんに、殴られました。玄関の扉を開けるや否や、横っ面に、思い切り固めた拳を一撃喰らいました。
舌を転がしてみると、歯が一本ぐらぐらしているのがわかり、ぽたぽたと、お義父さんの拳から血が流れ、赤い雫が板張りの床に落ちます。
涙ぐんだ顔を押さえていると、お義父さんの腰にしがみついているさくらの姿が目に入って、こころが後悔の念でいっぱいになり、私は泣き崩れました。
おじいちゃんやめて、という言葉が耳に入り、私の嗚咽はますます酷くなるばかり。
三十三歳にもなってぐすぐすとすすり泣き、大の男が跪いてしわがれた老人と年端もゆかぬ小娘に許しを請う姿はさぞ滑稽だったことでしょう。
お義父さんにしてみれば、私とは一人娘の命を奪った仇でして、二度と家の敷居を跨がせないほどではありませんが、好ましくない人物だということはまず間違いないです。
けれども、お義父さんが私を罵ったり、打擲することは、今まで一度もありませんでした。
私は、初めてお義父さんにぶたれました。怒りあらわに糾弾され、剥きだしの憤り、純粋な気持ちをぶつけられました。
お義父さんは私を気にかけてくださり、私はお義父さんにお叱りの言葉をいただき、そうして、今更ながら、私たちは本当の舅と婿というものになれました。
753名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 19:12:53 ID:eWzmifnH
それから私は、今一度こころを入れ替えて、交際していた女性たちに別れを告げ、なるべく定時で帰宅するように務め、出来る限りの時間を娘たちのために使いました。
以前よりか義父母との距離は縮まり、休日や催し事で一緒に過ごす頻度も高くなって、小学校の運動会ときなどは、親ばか爺ばか二人並んでカメラを構え、一家総出でさくらと紫苑を応援しました。
二人三脚では、私はさくらと、お義父さんは紫苑と走り、二人とも勝負事に年甲斐もなくむきになってはお義母さんに叱られたものです。
美奈子と美弥を喪い、頭のどこかで自棄になっていたのかもしれません。
それまで私は自分一人でさくらと紫苑を育ててやろうと思い込んでおりましたけれども、やはり孤独というものは私みたいな軟弱な人間には耐え難いもののようで、
疲れと、誘惑が、決意という糸の綻びから入り込み、気付かぬうちに私はずるずると堕落させられてしまったのでしょう。
もう、私は一人ではありません。孫には甘いくせに、婿には怒りっぽいお義父さんと、料理の腕はいまいちだけれども、教養豊かなお義母さんが、私を助けてくださいます。
この先も幸せにやっていけると、その時期の私は感じておりました。
754名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 19:15:03 ID:eWzmifnH
 紫苑が中学へ上がったころ、二つ年上のさくらはちょうど三年生で、高校受験を控えており、毎日のように学習塾に通い、遅くまで勉強して、疲れ果てて帰宅する日々が続いておりました。
私はさくらを送り迎えするついでに、同じ塾に通うさくらの同級生も家まで送り届けており、自然、車の中で少女たちと知り合い、談笑する機会にも恵まれます。
あいにく特殊な性癖は持っておりませんが、子の親になっても若い娘に誉められるのはやはり嬉しく、少し照れくさい気持ちで、七誌さん、七誌さんと呼ぶ可愛らしい声に相槌を打ち、
さくらのパパの七誌さんはみんなが恰好いいって言ってます、という言葉に、まるで自分が少女たちのアイドルになったような気分で、心の中でひそかにほくそえんだものです。
するとどうでしょう。そんなことがしばらく続いたある日、さくらが突然、他の子の送り迎えをしなくていい、お父さんが変だから、学校でいつも恥しい思いをして困ってる、と抗議しました。
ショックでした。私は、自分が女性に好かれる人物だと思い込んでおりました。事実、もう四十近い私ですが職場でも若い娘たちに慕われ、というか、その中の三人ほどと関係しております。
身だしなみには気を遣っているほうです。髭をきちんと剃り、毛髪は未だに豊かで、首の後ろもしっかりと洗い、枕元に加齢臭など微塵もありません。
下着だって、一緒に洗わせてもらえます。
十五歳とは、難しい年頃です。思春期のさくらはまわりの目を極端に意識するようになり、昔はあんなに自慢していたパパでも、自分でもどうしてなのかわからないけれど、クラスメイトからみられたくない、と考えたのでしょう。
そのときはまだ、私はそう思っておりました。
755名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 19:19:52 ID:eWzmifnH
 違和感に気付くのが、遅すぎました。ころころと表情を変える、明るく元気な姉のさくら。落ち着いてもの静かにしている、引っ込み思案な妹の紫苑。
子離れできない馬鹿親が言うのもなんですが、二人の娘たちは成長しても父を慕い、休日の時など連れ立って遊びまわり、私たちは仲睦ましい親子として暮らしておりました。
それはある意味、同世代の親子にとっては異常ともいえる関係で、町を歩いていると警察の方々に職務質問を受けるなど、あまり愉快ではない経験もしたものです。
いくらなんでも、仲がよすぎる。もしかすると親離れ出来ていないのじゃないかと、お義父さんに相談しましたけれども、お義父さんは私の言葉に大変憤慨して、
お猪口片手にはらはらと涙を流しながら、美奈子が私に夢中で相手をしてくれなかった昔の話を交えつつ、一晩じゅう愚痴を聞かされました。
この件に関しては、お祖父ちゃんは頼りになりません。
今思えば、さくらと紫苑は一度も家に友人を連れてきたことはありませんでした。
その頃の私は、二人に友達がいないのかと心配しましたが、けしてそういうわけでもなく、こちらから友人宅へ出かけたり、遊びにいったりしており、人並みの交友関係は持っていたようです。
けれども娘たちは、私が誘うと、友人との約束を蹴ってまで私と遊ぶ時間を作ります。
普通、その年頃の子供は友達のほうを優先するものですが、さくらと紫苑は真逆でした。
彼氏が出来たという話も聞きません。恋をしている様子もありません。食卓で話すのは、私の仕事や、次の休日の予定など、どうみても健全な女子高生が父親にする話題ではありません。
いよいよおかしい。私の一人よがりかもしれないですけれども、問題はだんだん深刻になってゆきました。
756名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 19:23:48 ID:eWzmifnH
 目は口ほどにものをいう、この事実を思い知らされたのは、この日が人生で二度目です。
家族会義を開きました。食事を終えて、くつろいでいる娘たちをリビングに呼んで、私は重々しい様子を装って口を開きます。
かといって、はっきり親離れしろと一方的に言えるはずもなく、父さんのことはいいから友達を優先してくれ、もう子供じゃないのだから風呂上りに裸でうろつきまわらないでくれ、
さすがにこの年で一緒に風呂に入るのはどうかと思う、といったよくある一般常識的な訓戒を二人に述べます。
さくらはずっと私の目を見つめながら話を聞きます。紫苑はぎゅっと口を閉じたまま俯きます。
父さんも子離れできていなかったかもしれん、二人とも、いつか父さんと離れなきゃいけないのだから、一人立ちというか、親離れというか、少しは父さんを嫌がってもいいと思うんだ、
などと、しどろもどろになりつつも精いっぱい二人に語り聞かせます。
すると、さくらがすっくと立ち上がり、テーブルに手を付いて、私をにらみつけました。
お父さんなんか、大嫌い、とでも言ってくれれば御の字です。けれども、さくらは私の思惑とは裏腹に、瞳を潤ませ始め、上擦った声で、お父さんはわたしたちが嫌いなの、と尋ねました。
そうして、美奈子の面影がある美しい顔をくしゃくしゃにゆがめ、泣き喚いて、捨てないでお父さんと私にむしゃぶりつき、服を掴んだまま、機械のように延々と同じ言葉を繰り返します。
さくらの姿に触発されたのか、紫苑は目元を押さえ、普段の様子からは想像も出来ないくらい、大声でわんわんと子供のように泣き咽びます。
私はおろおろして、必死に娘たちを宥め、大丈夫だとか、捨てないからだとか、自分でも何を言っているかわからないくらい支離滅裂な慰めを申しておりましたが、
とうとう二人は私に飛びついて、そろって胸に顔を埋め、ぐすぐすと鼻水をすすりながら、抗議とも懇願とも突かないしわがれ声を繰り返しておりました。
二人の髪から香る甘いにおいに、あらためて娘たちが女性であることを認識して、かぁっと、顔に血が上るのを感じます。
私は顔を赤らめておりましたけれども、こころのどこかは冷静なままであり、先ほどまで眺めていた娘たちの表情を顧みて、頭の底に眠る、ある記憶を思い出しました。
757名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 19:32:03 ID:eWzmifnH
 目は、口ほどにものをいいます。小説なんかで、ああいう目をしていた、そういう目をしていたなどと書かれておりますが、現実では、目の色かたちから、そこまで性格に感情を読み取るなんてことは出来ません。
機械などで精密に分析したとしても、決してその人の感情を判別することなど不可能でしょう。
けれども私は実際に、そういう、感情を露にした、心臓をぎゅっと握りつぶされて、髄に千本の針を突き刺されるような瞳に遭遇したことがあります。
美奈子です。十六年前、遠い北の町へ逃げ出した私を追いかけて、教会に現れた美奈子が、身も凍るような、それでいて、不思議と引き込まれ、はちきれんばかりの愛情と憤りを感じさせるような瞳を、私に見せ付けました。
私の視覚は、ただただ美しく透き通った瞳を認識しただけでした。けれども、私の他の知覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚は、ひしひしと、私に美奈子のこころをつたえるべく、強烈に働きます。
耳鳴り、ひどく乾いた香り、苦い唾液、ぷつぷつと粟立つ肌。
第六感などといった不思議なものではなく、五感すべてが鋭く先細り、はっきりと確定した情報を、私に伝えてくるのです。
雰囲気とでもいうのでしょうか。私の体はそれを的確すぎるほど感じ取り、がくがくと震え、胸はぽぉっと熱くなり、目頭は冷え、胃袋の後ろ辺りが、ぞわぞわと脈打ちます。
唐突に、わたしのこころに愛おしさと後ろめたさが甦ってきて、気がつけば私は、雪の降るなか傘を捨てて、美奈子を抱きしめておりました。
美奈子は一言、会いたかった、と言っただけです。
けれども彼女の瞳は、それ以上のこと、私に捨てられて一人きりで過ごした日々の苦しみ、それでも私を思い切れない自分への嘆き、美弥に対する憤り、そして、狂おしく、燃え尽きんばかりの愛情を私に示していました。
さくらと紫苑の瞳は、それと同種のものです。そんなこと、あるはずない、と、必死に自分に言い聞かせますが、目を瞑ると、まざまざと二人のぎらついた瞳が眼前に現れ、ぞわぞわと肌が粟立ちます。
二人が落ち着くと、私は散文的な口調になりつつも、すこし強く言いすぎたと詫びて、この場はなんとか取り繕うことができました。
私たちは親子だ、絶対に離れることはない、と締め、改めて親子関係の絆を結び、それと同時に、自分たちは決して男女の関係にはありえないと、暗に示したつもりです。
しかし、その翌日、私はさくらに犯されました。
758名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 19:35:04 ID:eWzmifnH
以上、ご期待に沿えずごめんなさい。
埋めネタ、中編です。
759名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 20:56:28 ID:W7amoGKy
GJ!!最高です
しかしこの親父はどんだけイケメンなんだw
760名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 21:17:28 ID:dowxZ+l1
超GJ。秀逸過ぎる。
ただ、容量足りるのか?
全部見れんかったら発狂する。


次スレが子供の巣窟になってる。
761名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 21:32:09 ID:Fr9uLrMp
過去これほどまでに名無しが流したがらないが活気のある前スレがあったろうか
762名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 21:45:41 ID:zwfE2GoT
まあ、あれだ。
彼氏がいるのに彼女が学校内で他の男と付き合っていると
校内中に噂になっている場合

普通は彼氏はその彼女を振ると思うんだが
どうよ?
763名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 22:04:44 ID:yA7k4FJG
あと10kか・・・
作者さんのために残りは死守
764名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 15:36:50 ID:anohPImi
保守
765名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 19:29:34 ID:hZVyGl77
>>760
一応18禁なんだが・・・
766名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 21:29:47 ID:v5fwfQ2q
最近栄えてるな…。或騎士ノ難儀がマイフェイバリットな俺は異端なのか。
星空シリーズも女性的な群像劇の書き方でスレ的には新しいくて良いね。
767 ◆kNPkZ2h.ro :2007/10/29(月) 21:33:29 ID:vf3R92+x
埋めネタ投下します。
768 ◆kNPkZ2h.ro :2007/10/29(月) 21:34:27 ID:vf3R92+x
「女なんか嫌いだよ」
 教室のざわめきの中で、坂野正人は幼馴染みの健太に呟いた。
「随分と物騒なこと言うんだな。お前は一体誰の腹から産まれてきたつもりなんだよ」
「それとこれとは話が別だろ、健太」
「まぁ、そりゃそうだが……」
 相槌を打つように深く溜め息をつくと、それっきり二人は黙り込んでしまった。沈黙から成る消沈した空気が広がっていく。
それは、騒ぎ合っている他のクラスメートと差別化を図るかの如く二人を包み込む。
こんな状況を作ってしまったことに対して罪悪感はある。
一応に事情を知っている健太にこんな愚痴を言うのは酷なことだともわかっている。
それでも、心の奥底でたぎるドス黒い不快感を言葉に乗せて吐き出さずにはいられなかった。
「正人、お前さ――」
「ごめんね正人、遅くなって。ホームルームが伸びてね。待ったよね」
 健太の言葉を遮るように高い声が響く。聞こえてきた方に目を向けると、そこにはやはり彼女がいた。
何かを誇示するように伸ばした背筋が、女子としては高い身長を遺憾なく見せつけている。
運動部の練習によって引き締められた無駄のない手足は、外観の繊細さからは想像もつかないほどの力を有していることを正人は知っている。
そして、可愛い部類には入るであろう小顔を彩る、黒のショートヘアー。特別な感情はないが、正人は純粋にそれを綺麗だと思っている。
しかし、そのことは忘れたい過去を回帰させ、正人の胸を締め付けるに事足りるものだった。
そんな正人の胸中を知らずか、その少女は笑顔の花を満開にしている。正人が唯一気を許せる女子――幼馴染みの洋子だ。
「別に。気にするなよ」
「ありがとね。それじゃあ帰ろうか」
「あぁ。健太も一緒に帰るか」
「いや、俺は今日部活してくから。二人でお先にどうぞ」
 正人と洋子の二人それぞれに視線を送りながら、健太は両手を交差させて“×”を作って見せた。
「そうか。頑張れよ」
「今は暑いんだから、無理はしちゃ駄目よ。水分補給はマメにね」
 二人からの激励を受け、健太は口で三日月を描きながら親指を立てた。
そして椅子から立ち上がると、土色に汚れた“野球部”の文字がど真ん中に書かれた鞄を持って教室を出て行った。
その後姿を見送った後、正人も制鞄を持って洋子と目を合わせる。
「俺らも行こうぜ」
「うん。後、ちょっと……」
 洋子は急に声のボリュームを下げながら、正人を手招きした。
その小さな悪戯を思いついた子供のような仕草に頭中で疑問符が乱立しているのを感じつつ、正人は洋子の口元へゆっくりと耳を近づける。
拳一つ分ほどの距離になったのを確認して、洋子が両の掌でメガホンを作りながら囁く。

「今日も、来て」

 耳を仲介としてそのまま正人の脳内を溶かそうとしているのではないかと思えるくらい甘く囁きかけた。
実際、洋子の故意の有無に関わらず、正人はその言葉にかなり動揺させられている。
冷汗が全身から噴き出し、洋子と目を合わせるのが恐くなってしまっている。
生唾を気付かれないように嚥下しながら、震える唇から何とか言葉を搾り出す。
「一昨日……行ったばっかじゃん。そんな頻繁には不味いだろ」
「大丈夫、お母さんもお父さんも夜までは帰ってこないし」
「だけど……」
「いいの」
 洋子の確固たる口調の前に、正人は無言を貫き通す他なくなってしまった。
抵抗すべきだと心が訴えかけてはいるが、自分の指を大蛇のように絡み取ってくる洋子のしなやかな五指の感触が、僅かな理性を脆くも溶かしていく。
自身に内在するのは、負の感情のみで上塗りされた歪な感情だけである。
「正人は悪くない。全然気にしなくたっていいんだよ。安心して」
 力の籠っていない正人の掌を、洋子更に強く握ってくるのがわかる。伝わる温めりのせいで、心臓が早鐘を奏でている。
それでも、洋子の手を振り払うことは正人にはできなかった。
「あたしが、したくてやろうとしているだけだから」
 ――そして、用意された責任転換への道。その安楽が、再び正人を壊した。
「……わかった」
 正人は、洋子の手を握り返した。自堕落への承諾の証を、行動で以って示してしまったのだ。
「ありがと」
 正人の手を離した洋子の表情は、暗く湿った正人の心中とは真逆に、どこまでも白く透き通っていた。
769 ◆kNPkZ2h.ro :2007/10/29(月) 21:35:22 ID:vf3R92+x
「お邪魔します」
 抑揚のない声を携えながら、正人は洋子の部屋の扉をゆっくり開けた。視界の先には一昨日来た時と変わらない光景が広がっている。
きちんと整理整頓されている本棚には、正人が面白いと言った漫画が揃えられている。
事実、正人が持っていて洋子が持っていない漫画は一冊とてない。
このことに関して正人は、昔から他人に流されることなく自分のスタイルを一貫し続けている洋子にしては不自然だと常々思っている。
理由を聞いても「正人が面白いって言うんなら」の一点張り。
その内追及する気も失せてしまったが、今尚洋子について疑問に思っていることの一つだ。
結局幼馴染みといえども、何もかもを理解し合える訳ではないのだと結論付ける他なかった。
「そこに腰掛けて」
 苦笑しながら正人は、洋子が指差した方向へと目を向ける。
皺一つない純白のベッド。一昨日したことなど全て忘れてしまったとでも言いたげなその姿を、正人は見つめた。
途端、胸を占めていた憂鬱な気分が一気に発露し、この場に居るのが非常にいたたまれなくなってしまった。
「ちょっと、風呂借りるよ」
 上擦りそうな声を何とか制御しながら、正人は洋子と目を合わせないまま部屋を出ようとする。
幾度となく経験してきたこととは言え、やはり緊張しないなどということはありえない。
否、した方がいいのだ。しないということは、自ら非日常を日常に摩り替えたのと同義だから。
「いらないよ、お風呂なんて」
 立ち去ろうとする正人の背中に、洋子が勢い良く抱きついてきた。嫌でも押し付けられる洋子の双丘の柔らかさに当惑してしまう。
他の女子に同じことをやられていたら、まず間違いなく背筋を冷たい恐怖が駆け巡るだろう。
しかし、正人にとって洋子だけは特別な存在なのだ。幼馴染みというほどき難き関係。
そして何より、洋子は自分を貶めることはしない――そう正人は確信“させられている”。
そのことを再確認しながら、正人は洋子に目をやる。
「汚いから」
「汚くなんかないよ」
 そう言うと洋子は一層、正人の体に回している両腕の力を強めてきた。そこから伝わる、洋子の揺るぎなき意志。
しかしそれは、正人にとっては、洋子に残酷な決意を強いている自らの弱さの証明に他ならない。
洋子からの思い遣りは、正人にそれ以上の焦燥と罪悪感を与えている。
無論、今尚過去の忌まわしき記憶を清算し切れていない自分を労わろうとする洋子の気持ちを無下に扱うことなど出来る筈もなく、正人は彼女の為すがままとなっている。
それが彼女を利用した如何に卑劣な行為かは、とうの昔から重々理解しているが、それでも洋子が用意してくれている逃げ道に安堵し、甘えているのだ。
洋子を一人の個人と捉えずに、一般化することで、“女性を克服した”という改竄の下にある自己満足に浸ろうとしているのだ。
やっぱり自分は汚いと、正人は思った。その負の認識が、自己嫌悪が、正人に僅かながらの理性を取り戻させる猶予を与えた。
770 ◆kNPkZ2h.ro :2007/10/29(月) 21:36:17 ID:vf3R92+x
「ごめん、洋子。やっぱやめよう」
 自分の為に汚れ役を買って出てくれている洋子に対して余りにも失礼だとは分かっているが、それでも洋子を自分の勝手な都合で汚すよりはマシだ。
正人は絡められた洋子の両腕を解き、彼女の方へ向き直る。
そして説得――しようとしたが、洋子と目を合わせた瞬間、言葉を失ってしまった。全身が硬直し、にも関わらず震えは止まらない。
デジャヴというトラウマの喚起のきっかけが、今の正人の心を支配している。そしてその最たる起因となったのが洋子の瞳だ。
“あの時の、あの女の瞳”に酷似している。
洋子は違う、そう頭の中では理解していても、心に深く深く刻み込まれてしまっている傷は疼いてしょうがないのだ。
これはもう理性ではどうすることも出来ない本能的感覚なのだろうと、正人は恐怖に彩られた思考の中で必死に答えを捻り出した。
「痛いほど分かる。あたしには正人の気持ちが分かるよ」
 洋子が近付いてくる。ただそれだけのことが恐ろしかった。決して洋子が怖いのではない。
洋子の瞳の雰囲気から呼び起こされる忌々しい記憶が恐ろしいのだ。
自分が正当と信じ、相手が悪だと疑わない、傲慢極まりない灰色の薄汚い瞳。あの瞳が恐く、それに気圧された自分が情けなかったのだ。
洋子の瞳からそんなものを感じてしまうのは、“あの時”に植え付けられた女嫌い、もとい――女性恐怖症が原因なのだろう。

「痴漢で冤罪なんてことあったら、誰だって女の子信じられなくっちゃうよね」

 もう二年も前のことなのに、その言葉によって“あの時”の事実がリアルに正人の脳裏に再生された。
「でも、あたしだけは正人の味方だから。だから、リハビリしよう」
 あの光景を思い出すのが恐ろしく、正人は完全に思考を停止させてしまった。
そんな自分を、洋子がベッドにそっと寝かせているのを感じながら、正人は繰り返し嘆く。自分の弱さを。
771 ◆kNPkZ2h.ro :2007/10/29(月) 21:38:23 ID:vf3R92+x
嫉妬・修羅場は次回の埋めの時に。すみません…。
「両手に嫉妬の華を」は近々投下する予定です。では、埋め。
772名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 22:00:22 ID:YO0sh+AF
>>771

埋めネタGJっす

両手に嫉妬の華を共々、全裸でyktkしながら待ってます

773名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 22:17:13 ID:h5LisWgj
乙。
……なんだけど、埋めネタの後編はマジで次スレの埋めなのか。
774名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 22:17:44 ID:WPbH1dZX
>>771
GJです!トラウマ持ちの主人公ってなんかいいですねー。
両手に嫉妬の華をも期待してます!
775名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 22:57:49 ID:cpU/SLbP
>>771
こりゃまたいいねぇ。
「両手に嫉妬の華を」も心待ちにしているのでよろしくお願いします。

>>773
そうめずらしい事でもないし、まあ良いじゃないの。
気長に待っていようぜ・・・・・もちろん全裸で。
776名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 15:49:58 ID:i1vDcOFR
乙です
今499KBだから作品投下は難しいよなぁ
777名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 21:02:05 ID:c65nqJ0i
私達はまだ埋まれないのよ・・・・・・そうでしょ、お父さん?
778名無しさん@ピンキー
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