3 :
1:2007/08/15(水) 14:19:29 ID:IdwpUE5Z
前スレ995までいっちゃったので立てました。不備があったらスマネ。
キャラスレはdat落ちたから割愛したけど、載せた方が良かったろうか。
個人的には、前スレの紫桃がGodJobなので是非埋めにはGJコールをと思ったり。
ガルムスレ落ちてると思ったらPart2、立ってたのか。
唯一2まで行ってるんだよな
ジュジュもがんばって生き残ってるし
ガルムスレ1|他の俺だなんていえない空気
>ガルムスレ1|他の俺だなんていえない空気
どういう意味?
8 :
1:2007/08/16(木) 21:07:02 ID:HiFn3cqN
キャラスレ、存命中のもあったのか。スマンカッタ
フォローthx >4
このぐらい書き込んであればしばらくは落ちないか
11 :
1:2007/08/17(金) 21:18:59 ID:2LrLE4AY
>9
なんつーかもー、オーバーキルされて粉々になってしまいたいorz
ホント不備だらけでスンマセン
細かいこと気にすんなw
いつの間にか新スレになってた乙
ドロシー投下します。
エロなし、ほのぼのです。
外はとてもいい天気です。
でもそのおかげでお兄ちゃんが最近ちょっと疲れ気味。
お兄ちゃんはきこりだから、晴れてると働かなきゃ、山に行かなきゃ、って思いこんでる
みたいなんです。
時々は休んでもいいと思うのだけど。だってあんまりがんばって倒れたりしたら困るでしょう?
私はまだ小さいから働けなくて、あんまり偉そうなことは言えないけど、普通の生活ができる
くらいでいいんです。お兄ちゃんとトトがいて、あと時々はアルミラさんやレオンさん達が
遊びに来てくれる今の生活がとても気に入ってるから(二人はこの間ひっこしていきました)。
大事な人達とすごす時間が、私はなによりのぜいたくだと思っています。
毎日働いているお兄ちゃんを助けたくて少しずつ家事の手伝いをさせてもらってるけど、まだ
ぜんぜん役に立ってない気がします。
じっさい家事をしてる!って言い切れるのは洗濯物を干すくらいかな。掃除はびみょうです。
料理はまだ火を使う作業をさせてくれないし。包丁だって、この間やっと持たせてもらえる
ようになったんですよ。お兄ちゃんはなんだかちょっと心配しすぎな気がします。
だからこれから行くところはお兄ちゃんには内緒。晴れの日の、お兄ちゃんがいないとき
だけって約束だから。
あ、道の向こうから誰かきます。遠くてよく見えません。
村の人かな?誰かな?
「ドロシーじゃない」
「こんにちは」
ジュジュさんでした。
「こんな森の中で一人じゃ危ないわよ。どこに行くの?送ってってあげようか?」
ジュジュさんは基本的には親切だと思います。ただちょっと、相手をげんていするみたい…?
「ありがとう。でも平気です。ジュジュさんはどこに行くんですか?」
「あんたに聞きたいことがあってね。会いに行くところだったの。……あのさ、フィールの
ことなんだけど」
聞きにくそうなたいどに私のほうから耳を寄せました。強気なお姉さんだけど案外照れ屋な
ところがあって、そこがかわいいな、なんて私は思ってます。
どうやらジュジュさんはお兄ちゃんのことが好きみたいで、三人で一緒にいると平気なのに、
私が席をはずすととたんに会話が無くなってしまうんです。きっと何を話したらいいのか
分からないんだと思います。お兄ちゃんはどんかんで、そんな気持ちには全く気づかないし、
二人を見てるこっちは、時々口を出したくなってしまいます。
「お兄ちゃんがどうかしたんですか?」
「ん…うん、あのね。今度…お弁当作ってあげるって約束したのよ。…でさ、好き嫌いって
あるのかなぁ、と思って」
恥ずかしそうに顔を赤らめるジュジュさんは、恋する乙女って感じでとってもすてき。だけど
お兄ちゃんはどうしてこれで分からないんでしょう。
「お兄ちゃんは食べ物に好き嫌いないです」
「へぇ?じゃ、よっぽど変なもの入れなきゃ大丈夫ね?」
「はい。それにちょっとくらい失敗しても、作ってくれたことがうれしいみたいで、そういう
ことに文句を言ったりはしないです。だからがんばってください」
私はつい握りこぶしで応援してしまいました。
ジュジュさんと別れてさらに森を行きます。
あれ、また誰かきます。今度は誰かな?
「やあ」
手をあげてあいさつしてくれたのはヴィティスさんでした。
「こんにちは」
「こんにちは。一人でどこに行くのかな?いろいろと物騒な世の中だ、送って行ってあげよう」
「ありがとうございます、でも大丈夫です。ヴィティスさんはお出かけですか?」
「いや、この先に良い湧水があるらしいと聞いてね。美味しいようなら店で使うのに汲んで
行こうかと思っているんだ」
そうそう、ヴィティスさんは村でお酒を提供する仕事をしてるんです。ええと、なんて言うん
でしたっけ?マスター?そう、マスターって村の大人たちから呼ばれているのを聞いたことが
あります。かっこいいひびきです。マスター。
となりのおばさんが『うちのだんながねぇ、あそこのマスターは顔に似合わず話のわかる
やつだ。冗談もおもしろい、なんて言って、毎晩のように飲みに行くんだよ、困っちまうよ』
なんて言ってるのを聞いたことがあります。
お客さんの心をばっちりつかんでるみたいなのはさすがだなぁ、と思いました。でも、冗談を
言っているヴィティスさんって想像がつきません。どんなことを言うんでしょう?
「君の様な少女が森の中を一人歩きするのは感心しないな。フィール君は知っているのかい?」
「あ!……お兄ちゃんには内緒なんです!あの、言わないでください……」
「理由によるな。納得できれば秘密にしよう。聞かせてくれるかい?」
そう言って屈みこんできたので私はそっとこれから行く先を耳うちしました。
「ははあ、成程。あれか…。それで全部わかったよ。了解した。フィール君には言わないで
おこう」
良かったぁ!
「それでは怪我をしないよう、気を付けたまえ」
そう言うとヴィティスさんは森の奥へと消えていきました。
森の中は、あっちこっちから鳥の鳴き声が聞こえて来てとってもにぎやかです。
そんなことを思っているうちに目的地が見えてきました。
森の中の一軒家なんて、夜はこわそうだけど、とってもすてき。家の前には小さいお庭が
あって野菜を育てているんです。私もこんな家に住んでみたいなぁ。
こんなことを言ったらお兄ちゃんが悲しむから言わないけれど。
「こんにちは」
「開いているぞ。入ってくるがいい」
「おじゃまします」
ひょうじゅん的な大きさの扉を開けて中に入ると、居間の向こうにガルムさんが見えました。
ガルムさんは背が高いので、台所での作業は少しきゅうくつそうです。
「時間に正確なのは良いことだ」
手をふきながら居間にやってきました。
「教えてもらうんですから、それくらいは当然です!今日もよろしくおねがいします」
そうです。実は最近ガルムさんにお料理の手ほどきを受けていたんです。
だって、家で私がお兄ちゃんを手伝える作業ってあんまりないんですよ。ちょっぴりの
お芋をむいたりとか……みじん切りとかも危ないからってさせてくれなくって。でも回数を
こなさないと、いつまでたっても上手にならないじゃないですか。上手にならなきゃ
お兄ちゃんの役にも立たないわけで。
以前お兄ちゃんがいない時にそういう話をしたらガルムさんが
「では俺が教えてやろう」
って言ってくれたんです。
ちなみに料理のできるヴィティスさんとアルミラさんの台詞は
「保護者が止める行為をあえてさせるのはどうか」
「私は甘味系なら得意なんだがな…ドロシーが手伝いたいのはご飯の支度だろう?」
でした。
「とはいえ、芋の皮むきでも包丁を上手に扱う訓練にはなる。何事もおろそかにしないで
集中して行うことだ」
「はい!」
ガルムさんは夕飯作り――といってもまだお昼過ぎだし、ちょっと時間が早いけど――の
手伝いをさせてくれるんです。一人でやればもっと速いはずの作業も、私に指導しながら
なのでとてもゆっくりペースになっています。ちょっと申し訳ないです…。
毎回正しい包丁の持ち方の確認から始まって(細心なかたです)簡単な野菜のむき方、野菜の
下ごしらえのしかたなんかを私に説明にしながら作っていきます。その間にも世間話や
カテナの皆さんの話をしたりと、とっても楽しく時間がすぎていきます。
「ふん、小娘が弁当をな……」
「ジュジュさんお兄ちゃんのことが好きなんだと思うんです。でもお兄ちゃんにぶいから…
つい口を出したくなっちゃって」
「まぁ、そういったことは周りでやいやい言ってもしょうがない。当事者に任せて見守って
いるのが一番だな。ほら、手元が留守になっているぞ。アクが浮いている」
「あっ、はい」
「旨い料理を作るには、手間を惜しんではいかん。ちょっとした手抜きで味が落ちるからな。
そしたら苦労が水の泡だろう」
こういう言葉のはしばしにガルムさんの料理に対するこだわりが見えます。料理屋さんを
やればいいのに、とはガルムさんを知る皆が思ってることなんですけど……。
「ガルムさんは、料理を仕事にしようとは思わないんですか?」
「またその話か。この格好で接客業などできるわけなかろう」
「だって…もったいないです。こんなにおいしいお料理が出来るのに。ガルムさんがお料理を
作って運ぶのは誰かにやってもらえばいいじゃないですか」
自分で言った言葉にはっとしました。
そっか、どうしていままでそれを思いつかなかったんだろう!
「あのっ、そしたら、お客さんの相手は私がやります!まだ子供だから、もう少し大きく
なったら……だめですか?」
ガルムさんとお仕事ができたらどんなに楽しいでしょう。
「ふ……そうだな、では考えておこう」
「本当ですか!?じゃ、私、がんばって早く大きくなります!」
後から考えると、ガルムさんは私があんまり期待いっぱいの目で言うのでほかに答えようが
無かったのかもしれません。悪かったかなぁ。
「さて、あとは弱火でじっくりと煮るだけだ」
鍋の中をのぞいてフタを閉めます。
「じっくり…に、る……と。時間はどのくらいですか」
ガルムさんの話を聞きもらさないように要点はなるべくメモをとります。作るのを見てる
だけでみんな覚えられればいいんですけどね。
「そうさな…いや、時間ではない。中の塊肉に串がすっと通るまでだ」
「くし、が、とおる、ま、で……はー、書けました。ありがとうございます」
「こういう経験がそのうち役に立つ。自分で作る日が来れば思い出し、思い出しで料理をする
こともあろう。それにそのメモがあるしな」
「はい。えへへ」
「では出来上がるまでお茶でも飲むか」
そっちに座っていろと言われたので、居間に戻ってきました。本当はお茶の支度もお手伝い
するべきなのかな?でも勝手がわからないし。こういうことを聞ける人がガルムさんくらい
なので、さすがに本人には聞けません。うーん……お手伝いしましょうか、ってもっと早く
言えばよかったです。
静かだな、と思ったら今日はトトを家ににおいてきたのでした。だってトトったら、ガルム
さんに向かって犬野郎、なんて言うんです。私、はずかしいやら、申し訳ないやらで。
怒っても珍しく聞き分けがないので、罰として留守番をさせたました。白い眼を細めて窓から
私を見送っていたのでちょっとこわかったな。
大きな窓から入ってくる風がとっても気持ち良くて、ああ、なんだか……。
……はっ!いけない、いけない。寝てしまうところでした。歩いてきたので疲れたのかな。
近いようでも森の中の道は歩きにくいからガルムさんのお家までけっこう時間がかかるんです。
大きな窓からの景色でも見て…庭にはちょっとずついろいろな野菜が植えられています。季節
が終わったら違うのを育てるのだそうです。
そういえば台所の窓には小さな香草のはちがあって、あれはちょっと使うのにべんりだなぁ
って思いました。言ったら分けてくれるでしょうか?
香草を使うような料理は、あんまり…お家では…しない、けれど…………。
「ん……」
「起きたのかい?ドロシー」
お兄ちゃんだ…うん、起きなきゃ……は!ええっ?お兄ちゃん!?
「お、お兄ちゃん!?」
思わず起き上がり、自分が寝ていたのは自分のお家の長椅子の上だと知りました。
「ドロシー」
私の名前を呼ぶとお兄ちゃんは長椅子の前に膝をつきました。ああ、なんかお説教したそうな
顔をしてます。どうしよう、怒られるんだ。
「ドロシー、どうして自分が家にいるんだと思ってるんだろう?」
「う、うん」
「ガルムがわざわざ送ってきてくれたんだよ」
「はい……」
ガルムさんのお家から自分で帰ってきたのでないなら、それしかありません。
お茶を、ってところからずうっと寝てたなんて、どうしよう!面倒ばっかりかけちゃって
ガルムさんに嫌われたかもしれない。人のお家で寝ちゃうなんてどんな娘だ、って呆れた
だろうな。
「外が真っ暗になっても帰ってこない。どこに出かけた、なんて書置きもない。お兄ちゃんが
どんなに心配したかわかるかい?トトに聞いても頑として口を割らないし…」
怒ってるんじゃなくて何もなくてホッとしてるような表情に、ざいあくかんで胸がぎゅうって
痛みます。お兄ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい。
「ごめんなさい…」
「出かけるなっていうんじゃないんだよ。ただ、どこに行くのか、そういうことは僕に分かる
ようにしておいて欲しいんだ。それは分かるだろう?」
「はい、ごめんなさい…次はちゃんと言ってから行きます」
「分かってくれればいいんだ……よし!じゃ、ご飯にしようか」
お兄ちゃんは大きな手で私の頭をなでると、暗い空気をふりはらうように言いました。
「うん」
手を引かれて台所のテーブルにつくと、目の前に出てきたのはなんと昼間ガルムさんと一緒に
作った料理です。
「お兄ちゃん?これ…」
「ガルムがね、お前を送りながらおいてってくれたんだよ」
「ガルムさんが……」
「さっき味見させてもらったけどさすがに美味しいんだ。早く頂いてごらん」
向こうを見ると調理台のほうには鍋ごと(昼間さんざんあくをすくったあの鍋ごと!)置いて
あって、そのことに私の胸はさっきお兄ちゃんに注意された時よりも苦しくなりました。
まさか私が寝ちゃって味見できなかったから、鍋ごと置いてってくれたのかな。でもまさか。
もしかして最初から私たち用につくってくれたのかしら?でもでも、それに、じゃあガルム
さんは何を晩ご飯に食べるんだろう?
「ドロシー」
「えっ、なぁに?」
お兄ちゃんは頭の中がぐるぐるしてる私にしょうがないなぁ、という顔をしています。
「明日ね、ガルムの家にこの鍋を返しに行ってくれないかい?」
「え……行っていいの!?」
「うん。とっても美味しかった、僕がよろしく言ってた、って伝えてほしい」
お兄ちゃんはいたずらっぽくわらっています。
「それからおまえはガルムにちゃんとお詫びをすること」
「う、うん!もちろん!!」
それはもちろんです。迷惑かけたこと、私だってちゃんと分ってるんですから。
「それにしても、よく家に来るまで目が覚めなかったなぁ」
「それは…私もそう思うの……はずかしいね」
考えると顔が熱くなります。自分でも子供だなぁって。
こんなんじゃ、ガルムさんがお店もつとき使ってくださいなんて言えないなぁ。あーあ。
「あ、でもちゃんとトトを連れて行かないと駄目だぞ?」
「だって…ガルムさんのこと犬野郎、なんて言うんだよ?私はずかしいよ……」
思わず下を向いてしまいました。
私、間違ってないよね。
「トト、お前がドロシーと一緒にいてくれれば、僕は安心して森の中でもどこでも送り出せる
んだよ」
「ふん、そんなこと言われるまでもないわ!」
「じゃ、ガルムにあんまり失礼なことを言わないようにしろよ?恥をかくのはドロシーなんだ
からな」
「言われるまでもない。しばらく口をつぐんでいるくらい、わけないわ。おれサマはご主人
から離れているつもりはないからな」
わけないわ、ということを聞けなくて今日は留守番させられたのに、トトったら調子のいい
ことばっかり言って。
でも明日もガルムさんのところに行けるのかと思うと自然と顔が笑っちゃいます。でも
謝んなきゃっていうのがあるからちょっと緊張もするかな。
お兄ちゃんはそんな私を見てちょっとやきもちをやいたのか、こんなことを言いました。
「嬉しそうにして…おまえは本当にガルムが好きなんだね」
「うん!あのね、なんかね……大きくってすごく優しくて、それで厳しいところもあって、
お父さんってこんな感じなのかなぁ、って」
その言葉にお兄ちゃんは少しさみしそうな顔をしました。
「僕はさすがにお父さんにはなれないからね…」
「!でも、一番好きなのはお兄ちゃんだからね!!」
「ご主人、おれサマはどうなのですか?」
「もちろんトトも同じくらい大好きだよ」
お兄ちゃんはその言葉にやわらかく笑うと、冷めないうちに食べようと言って美味しそうに
食べ始めました。トトもガルムさんに文句をいいながらそれでも料理の腕前はほめています。
私も一口……美味しい!
ほお張りながらあらためて考えてみました。
アルミラさん達も好きだけど、ガルムさんは特別。なんでだろう?さっきお父さんみたいって
言ったけれど、それも本当はなんか違う気がするし…。
うーん、この気持ちをちゃんと説明できるようになるのは、もっと大きくなってからかも
しれない。
〜おしまい〜
数字入れるの忘れました。
エロなしなので暇つぶしにでも。
あと前のやつ読んでくれた方ありがとうございました。
あんな長いのを…(´д`)ウウ〜。
数字コテでもいいからつけようぜ。
遡って>15-25GJってするのメンドイ。
ドロシーとガルムって珍しい組み合わせだな。
ってゆーか、体格差最大のこのふたりでおんぶとか萌ユスw
良い朝になったよ、ありがとう!
>>27 >数字コテ
すみません気を付けます。
そのうちガルム×ドロシーを持ってきます。
読んで頂きありがとうございました。
遅ればせながらGJ!!
ガルム×ドロシーって意外な組み合わせだけど和み系でイイ
…でもエロパロ的に考えると犯罪だなw
俺は赤×桃が読みたいんだ…
フィールは主人公なのに影うすいんだぜ?
フィール物きぼん
お兄ちゃん大好きって本をドロシーに朗読してもらうか
[お兄ちゃん大好き]
お兄ちゃんの体中から、あの女の匂いがするよッ!!
おしまい
あの女についてkwsk
おっかねぇ本だなw
髪が桃色の方だと予想
アルミラ姐さんの髪も一応ピンクじゃない?
ありゃ
姐さんは薄紫だと思ってた
ピンクは淫乱
アルミラたんって呼んで冷ややかな顔をされたい
揉ませろとは言わないからアルミラの胸に手をのせてみたい
置いただけでも弾みそうな弾力のありそうな巨乳ハァハァ
>読んだだけで勃起
するような表現を誰かジュジュで頼む
揉ませろとは言えないからジュジュの胸に手をのせてみたい
置いただけでは弾みそうもない弾力のなさそうな貧乳ハァハァorz
ちょ、吹いたwww
しかしジュジュひんぬーじゃないだろ?
……ないよな?
Bくらいあるだろあれ
流れを切るようですまないが投下させていただく
アルミラ×ジュジュからフィール参加3Pを
47 :
アル×ジュ1:2007/09/06(木) 03:56:24 ID:Y44tyPwc
もう安全圏とは言えない、敵だらけの現在地。
はぐれたレオンを探すフィール達と一時的に現OZメンバーのジュジュが協力する事になって時間は経ってない。
少しでもと休憩を取る事になった。
「ンッ…」
死角になる場所を見つけたジュジュは股間を撫でる。撫でただけでも疼く体は刺激を欲していた。
「少しだけなら…バレないわよね…」
レオタードのような服の股間部分だけをめくりあげ、肉ビラの上で尖る小さな豆をジュジュは指で擦り、刺激する。
「はぁ…ン…」
絶頂を求め、ジュジュは懸命に自慰を続ける。
「アっ…!」
静かに、ジュジュは達し、内股に滴り落ちる蜜を拭う。
「大胆な奴だ。少ししか我々と離れてない場所で自慰とはな」
48 :
アル×ジュ2:2007/09/06(木) 03:58:01 ID:Y44tyPwc
ハッとして振り向くとそこにはアルミラがいた。弱みを握ったようにニヤリと不敵な笑みを浮かべて。
「な、何よ!アンタに関係ないでしょオバサン!」
嫌味を言って自分を追い返そうとするジュジュに、アルミラが近付く。
「フフッ…私がもっと気持ちよくしてやろうか?」
豊満な胸をジュジュの胸に押し付け、アルミラも己の股間部を露わにする。
「やめ…きゃっ…!」
ジュジュの服の胸元を下げ、直に乳首同士をアルミラは擦り付けた。
「ひぁっ…!ナニすんのよぉ!」尖った乳首同士が擦れて再びジュジュの体が疼く。
「現OZメンバーも快楽の前では可愛らしいものだ」
アルミラはジュジュの股間を撫で、蜜に濡れた秘所に指を入れる。
「嫌ぁ!そんなにいっぱいかき回さないでぇ!」
49 :
アル×ジュ3:2007/09/06(木) 03:59:10 ID:Y44tyPwc
グチュグチュと卑猥な音が立つようにアルミラはジュジュに愛撫する。
「ん…?この手は何だ?」
いつの間にかジュジュの手がアルミラの秘所にあった。
「仕返しよ…オバサンも濡れてるじゃない!」
自分にされたことを仕返しするようにジュジュもアルミラの秘所をかき回す。
「フッ…可愛らしい抵抗だな」
アルミラの声に甘い吐息が混じる。
彼女も興奮してるのだ。
50 :
アル×ジュ4:2007/09/06(木) 04:03:54 ID:Y44tyPwc
「ジュジュの此処は洪水だな」
「アンタ…こそっ…!」
互いに快楽を貪りながら、与え合う。
「あぁっ…ダメ…イクぅ…!」
「クッ…私もだ…ッ…!」
ビクン、と二人の体が震え、互いの指に熱い液を溢れさせる。
「はぁ…はぁ…最悪…」
女にイカされるなんて、と呟いてジュジュは床に崩れ落ちる。
「最高の間違いではないのか?」
対するアルミラは余裕で、ジュジュの愛液を舐めていた。
「あ、あのさ!そろそろ出発…」
遠慮気味なフィールが後ろ姿で言う。
「そ、そうね!」
着衣の乱れを直そうとジュジュは慌てる。
「ふむ…フィール、何故こちらを向かない?」
冷静にアルミラが問う。
「それはその…」
「聞いて…いや、見てたな?」
フィールの背中にアルミラは胸を押し付け、背後から股間のブツを掴む。
「うわぁ!」
51 :
アルジュフィ5:2007/09/06(木) 04:05:40 ID:Y44tyPwc
「やはりな」
アルミラの手で膨張し上を向いたフィールのモノが更に反応する。
「健全な男の子には刺激が強かったか…」
「最低!盗み聞き最低!」
哀れむアルミラと対照的にジュジュはフィールを罵る。
「我々も物足りない。どうだ、解消しないか?」
「ちょっ…!我々ってアタシも含めてる訳ぇ?!」
アルミラに押し倒され、ジュジュは足を開かされた。
「準備は万端だ。どちらでもすぐに入れるがいい」
愛液に濡れた秘所をアルミラは四つん這いの体勢でフィールに見せる。
「う…う…うおぉ…!」
「キャー!嫌ぁ!抜いてぇ!」
52 :
アルジュフィ6:2007/09/06(木) 04:07:36 ID:Y44tyPwc
ジュジュの秘所にフィールのモノが突き刺さる。
「…私のを舐めてもらおうか」
ジュジュの頭上に移動し、アルミラは股間を押し付けた。
「ンっ?!ん…」
ジュジュはペロペロと舌を這わし、アルミラの秘所を舐め回す。
「きゃう…!もうダメェ!」
フィールの激しい突きにジュジュの体が痙攣する。
「うっ…!」
絶頂に達したジュジュの締まりにフィールも達してしまい、中で出してしまった。
「処理…ちゃんとしなさいよね…」
荒い息を吐きながらジュジュは呟く。
「ゴ、ゴメン!」
フィールは謝り、ジュジュとの繋がりを解く。
「次は私だ」
53 :
アルジュフィ7:2007/09/06(木) 04:10:54 ID:Y44tyPwc
アルミラは四つん這いになり、股を開く。
「ジュジュに礼をしなくては」
「きゃう!」
頭を低くしてアルミラは白濁液にまみれたジュジュの秘所を舐める。
「私が綺麗にしてやろう」
「あぅ…舐めちゃだめ…!」
絡み合う二人に興奮したフィールはアルミラの秘所に挿入する。
「ふふっ…それでいい」
背後から胸を揉まれ、腰を振りながらアルミラは悶える。
「アルミラ…中気持ちよくて…我慢できない…!」
「それは光栄だ」
応じるようにアルミラも腰を振る。
「イク…!」
54 :
アルジュフィ8:2007/09/06(木) 04:12:07 ID:Y44tyPwc
アルミラの巧みな舌使いにジュジュは達した。
「うぐっ…出るっ…!」
フィールはアルミラの中で達し、精を放った。
「私も満足だ」
静かに絶頂を迎え、アルミラは妖艶に笑んだ。
「さて、出発するか」
「う、うん」
「……」
何事もなかったように淡々としたアルミラに従うしかない少年少女だった。
終わりです
お目汚しすまない
エロ文は初挑戦だがスレに貢献できたら嬉しいという衝動に駆られた…
>>55 きたああああああああああああああああああああああああああああ
テオロギアに新たなネ申が降臨した!!
フィール「神は全て倒す!」
冗談です GJ
なんというスレへの愛情だ
もっとその衝動に駆られてくれ
次の挑戦もまってるぜ
GJ!
フィールの早漏っぷりに全俺が泣いた。
こう考えるんだ、二人が名器だと!
だがアルミラ姉さん最高だGJ
アルミラさんのエロがあると聞いて飛んで来ました!!
ドロシー相手だとパンツ見ただけで射精に至ります
中身があった方がいい
ジュジュは俺の家のメイド
アルミラさんにやって欲しい
しかしメイド服を着るにはちょっと背が高すぎるか
いや、似合うだろう。
でも、アルミラさんにはメイドより御主人様をしてほしいぜ。
主人 アルミラ
執事 ヴ
メイド ジュジュ
の構成でおk
頭良いな!
料理長 ガルム
を忘れるな!
あっぷ てゅっぷ てれやっぺ
主人の椅子 俺
料理長の愛人 俺
ウホッなのか獣姦なのかどっちだ
両方だ
ふたなりか!!
待て、ペニバンという可能性もある!!
それじゃウホにならないじゃん
80 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 23:27:35 ID:WJNhKnli
アルミラ姐さんの話をキボンしながら
一回ageますよ
アルミラさんの太股を舐めて、それから
ゆっくりと上へ向かって舌を這わせていけばいい。
手も動かせ、手も。
ガルム×ドロシーで保守
※注意
>>16の続きでドロシーがお年頃になってます。あまりにも捏造なので嫌いな方はスルーしてください。
数回に分けて投下させていただきます。
84 :
84-1:2007/10/09(火) 05:54:29 ID:M2+VrhWm
「すまんな」
居間に座っているガルムにお茶を勧めるとフィールも対面に腰をおろした。
フィールはにこにこと嬉しそうにしている。
「身内が言うのもなんだけど、可愛く育ったろう?僕を生んですぐに亡くなったから覚えて
いないけれど、これを見るたびに母さんにそっくりになったなぁって思うんだ」
彼は壁に掛けてある母親の肖像画を見上げた。
額の中で色の白い小柄な少女が微笑んでいる。柔らかい眼差しは誰に向けたものだろうか。
ガルムもつられてそれに目をやり、頷いた。
「そうだな、カインの奥方によく似ている」
「だろ?完全に母さん似だよね」
ちょうど彼の妹――ドロシーと同じくらいの年齢の時に描かれた物だろう。
「ところで、今日はどうしたんだい?」
フィールはお茶を一口飲むと本題に入った。
彼と彼の妹、どちらに何の用があったのか。扉を叩く音に玄関に行った時は驚いたものだ。
何しろガルムが訪ねて来るなど滅多にない事だったから。
ガルムはしみじみとその絵を眺めると、咳払いをして話を切り出した。
「あのな、言いにくいのだが…貴様の妹に、もうあまり俺のところには来ないように言って
欲しいのだ」
「えっ…どうして?ドロシーが何か」
まさかとは思うが、彼女が何かガルムの機嫌を損ねるようなことをしたのだろうか。彼は
理由もなく『来るな』などと言う男ではない。
フィールが焦って尋ねようとするのを、手をあげ言葉を遮ってガルムはその訳を語った。
「さっき話があったが、あの娘も年頃だからな。あの性格にあの容姿では恋人に立候補したい
者も山といるだろう」
いつも穏やかで優しく、思いやりがあって、美しい。それにいざとなれば芯の強い部分も
見せる。そんな少女に懸想する者がいないとは思えない。
「うーん、まぁいるらしいけど…そんなにはいないよ。多分」
曖昧ながらも同意するのは、きっと『隣のおばさん』とやらにその手の話を聞かされている
からだろう。複雑な表情は、妹が誰かに好かれるのは嬉しいが寂しくもある、というところだ。
「まさかとは思うが、俺達のことを勘違いしてせっかくの求愛者が減ってはもったいない。
どうせなら沢山の候補者の中から好みの者を選ぶ方がいいからな」
遅きに失したかもしれないが、と彼は付け加えた。
ドロシーは昔のように頻繁にではないが、相変わらずガルムの家に通っていた。今はもう
習うと言うより二人で楽しく料理をしているだけなのだが、彼女が一人で森の中に入って
ゆくのはいつものこと。そして村の者も二人の関係を――先生と生徒だと言う事を知っている
はずだが、確かに本人達の耳に入らないだけで、色めいた噂はとっくに立っているのかも
知れなかった。
「どうだろう」
フィールはガルムの言葉に半ば納得しつつも首を傾げて反論した。
「気にしなくてもいいと思うけど……ドロシーに意中の人がいるのならともかくさ。好きな
人がいれば誤解されるのを嫌がるだろうし、心配しなくてもそれなりの行動をとると思うよ」
これにはガルムも頷いた。
「しかし出会いの機会を進んで潰すことになるのではないかと思ってな」
「でもなぁ…ドロシーが構わなければ僕は好きにさせてやりたいんだ」
彼女の意思が第一だという。だからフィールにはそれを理由にガルムのところへ行くなとは
言えないのだ。
85 :
84-2:2007/10/09(火) 06:00:51 ID:M2+VrhWm
「ドロシーはさ、ガルムのところに行くのをいつも楽しみにしてるんだよ。帰ってくると、
こんな話をしたとか、どんな料理を作ったとか。庭に赤い花が咲いていたとか、嬉しそうに
話してくれる」
「む……そうか」
自分の家でのことが二人の話題にのぼると言われガルムは戸惑った。
「一応それとなく言ってはみるけど……たぶん聞かないと思うけどなぁ、どうかなぁ」
フィールは腕組みをして首をかしげた。
「それならそれでもよい。俺とて来て欲しくないから言ってるのではないからな。…貴様の
妹は気分の良い娘だ、共に過ごすのは楽しく思っている」
この言葉はフィールにとって意外なものであった。ガルムは嫌いなもの、気に食わないこと
にははっきり言うが、好意を持ってもそれを口に出すような男ではなかったから。
「ガルムから見て、ドロシーは料理上手になった?」
「貴様、毎日彼女の作った飯を食べているのだろう。何をいまさら作り甲斐の無いことを…」
ガルムは呆れたように頭を振った。
フィールはそれに両手を振って言い訳をする。
「そりゃ美味しいと思ってるよ。だけど先生から見てどうなのかな、って」
「俺の意見も一緒だ。あれならすぐ嫁にいけるぞ」
「へぇ……」
「いや、女が料理をするべきと言っているわけではないからな。ただ適性があるというだけだ」
ガルムは出されたお茶を一息に飲むと立ちあがった。
西日が長い影をつくる頃、玄関の扉が開く音がした。
「ただいま」
いつものように片手に籠を下げてドロシーが帰ってきた。台所から顔だけを出してフィールが
声をかける。
「お帰り」
「あっ、ごめんね。すぐにご飯作るから」
慌てて居間に荷物を置く妹に、彼は微笑んだ。
「いいよ、遊びに行ってたわけじゃないんだし。休みの日くらいはお兄ちゃんがつくるから
お前はすわってな」
「そう?んー…じゃ、お願いしちゃおうかな」
そんな事を言いながらドロシーも手伝ったため、支度はあっという間に済みいつもより早い
夕食になった。
「……でね、おばさんの所に行くと話が止まらなくて本当に困っちゃう」
両親がいないのを不憫に思ってか、隣のおばさんはフィール達にとても親切にしてくれる。
特にドロシーは、本来娘が母親から習うべきことのほぼ全てを教わっているので、本当に
母親がわりと言える人なのだ。
おかげでドロシーは裁縫や編み物、機織りの技術まできっちりと身につけることが出来た。
だがおばさんは、というかそれは主婦の特性なのか、よくある話だが大変なお喋り好き
だった。彼女の口から出てくるのは根も葉もないような噂話であることも多く、しかもそれが
ご近所の事だけにあんまりな内容だと相槌を打つのも躊躇われる。特に最近はドロシーが
あまり触れたくない内容を振ってくることが多いので、さすがに辟易しているのだろう。
「おばさん噂好きだからなぁ」
フィールはしみじみと相槌を打った。
86 :
84-3:2007/10/09(火) 06:07:08 ID:M2+VrhWm
そんな風にのんびりと世間話をしながら食事を終えると、いつものようにドロシーはお湯を
沸かしてお茶の用意をした。
フィールは妹が椅子に腰掛け話が切れたのを見計らってガルムの来訪について口にする。
「今日ガルムが来たんだけどね」
「…え…?……何しに?お兄ちゃんに用があったの?それとも、私に…?」
ただ世間話をしに来るような人ではないので、何かあったのだろうかと彼女も考えた。
「うん。お前にだって。それでね、もう家には来てくれるなって」
それとなく言ってみる、という自分の台詞を彼は覚えているのかいないのか、フィールは何の
前振りもなく可愛い妹に直球を投げつけた。しかもガルムの台詞の前部分を端折っていたため
彼女は絶縁を言い渡されたような冷たさを感じたに違いない。
「えぇっ!?なんで……」
ドロシーは思わず椅子から立ち上がると、身を乗り出して兄を問い質した。それどころでは
ないのか、茶器が揺れ、お茶がこぼれたのにも構わない。
「どうして!?」
強い語調とは裏腹に今にも泣きだしそうな顔の妹に、布巾に手を伸ばしながらフィールは
それがガルムの思いやりであることを伝えた。
「なぁんだ…」
彼女はフィールの話を聞いて、拍子抜けしたような声をあげた。緊張が解けたのか、背もたれ
に体を預けるようにずるずると椅子に座る。
「そんなの、別に気にしなくていいのに……」
ドロシーは子供がするように不満げに頬を膨らませた。
「年頃、年頃って、最近そんな話ばっかりで嫌になっちゃう」
おばさんの話もそんな内容が多いと言うのだ。
ドロシーは気付いてないようだが、フィールがおばさんに聞かされた話によると、自分の事を
アピールしてくれ、という若者が結構いるらしい。おばさんもその中から選んでドロシーに
話をしているらしいが、それに彼の妹は全然興味を持たないようだ。
まぁ、フィールも自分で言えないような根性無しは妹にふさわしくないと思っているのだが。
「それってさ、ええっと…ガルムさんのひいき目だよ。だって私、誰かに告白されたことも
無いのに…いきなり結婚なんて。気が早いよ、ねぇ?」
だから今まで通りガルムのもとに通いたいと言うのだろう。
フィールはそのことについては異論など無く頷いたが、実は彼にはそんなことより気になって
いることがあった。それは決して確信的なものではなく、もしかして、という位のものだった
のだが。
「ドロシー、おまえガルムのことをどう思ってるんだい?」
「え――?」
出し抜けに聞かれ、彼の妹は目を見開いた。
「何それ…」
「何って、分かるだろう?彼のことが好きなのか、って聞いてるんだよ」
「お兄ちゃん……!」
ドロシーは椅子に座り直すと困ったような顔をした。
そう、にぶいフィールが気付く程、彼女のガルムに対する様子は変化していたらしい。いや、
もしかして兄の勘、というものかもしれないが。
「何で急にそんなこと聞くの?」
「そんな気がしたからさ」
詰問するような言い方ではないし、やさしい目をしているが彼から伝わってくる空気は厳しく、
とても冗談でごまかすことなど出来そうにない雰囲気だ。
ドロシーは答えられずに手元の茶碗を見つめている。
彼女の兄は急かすことなく答えが返ってくるのを辛抱強く待った。
「あ…あの、私」
やっと頭をあげ口を開いた妹の顔がみるみるうちに赤く染まってゆく。
彼女は口ごもりつつも、これまで誰にも話したことのない気持ちを兄に打ち明けた。
「私、ね。ガルムさんのこと、すっ、好き…なの……」
言いながら俯いてしまうその様子はなるほど恋する乙女と言えた。
フィールはさらに追及する。
「異性として、という意味だよね?」
彼としてもそこははっきりさせておかなければならない。
87 :
84-4:2007/10/09(火) 06:11:59 ID:M2+VrhWm
「うん、…そう」
消えいるような声にフィールはそっと息をついた。
「なぜ話してくれなかったんだい?」
「……」
彼女は下を向いたままで答えはない。
「僕が男だから相談しにくかった?」
相談してもらえなかった寂しさを彼の言葉に感じたのか、ドロシーは慌てて首を横に振った。
「ううん…違うの!そんなんじゃないよ」
否定するドロシーの表情が憂いを帯びているのに、さすがに兄妹だけあってピンと来たらしい。
「……もしかしてガルムに言うつもりが無かった?」
兄にずばりと言いあてられ、彼女は素直に頷いた。
しばらく視線をうろうろさせた後、だって、と兄に言い訳をする。
「言っても困らせるだけだよ。ずっと、家族みたいに接してくれてたんだよ?急にその相手
から告白なんてされたら……ガルムさん、今までみたいに相手してくれなくなるかもしれない
じゃない。そんなのって、嫌だもの…」
ガルムの性格を考えると確かにその可能性はあった。ドロシーの気持ちを拒否してなお、
二人の間に気まずさを感じさせないほどの器用さが彼にあるとは思えない。
そしてドロシーはそんなことにならないよう、彼への思いを胸に秘めておくつもりだったのだ。
「お兄ちゃんやジュジュさんみたいにお互いに気持ちがあればいいけど、ガルムさんはきっと
私のことそんな風に見れないと思う」
もじもじと指を組んだり解いたりして弱音を吐く妹を、フィールは思わず励ましそうになった。
もちろん彼としては妹の恋を応援したい。しかし、無責任な慰めなど役に立ちはしないし、
軽々しくガルムの気持ちをうけおうことも出来なかったため、出かかった言葉を飲み込むしか
なかった。
「そっか…」
「ごめんなさい」
考え込んでしまっている兄にドロシーは申し訳なさそうな顔になる。こんなことで兄に余計な
心配をかけたのが悲しいのだ。
フィールは首を横に振ると、優しくて、少し臆病な妹に微笑んだ。
「どうして謝るの。人を好きになるのは素敵な事だって知ってるだろ」
「うん…」
「ガルムがお前に好意的なのは分かるし、脈が全然ないって事はないと思うんだよ。ただ
分かってるとは思うけど、相手はカテナだ。その意味はよくよく考えて欲しいと思ってる。
何より自分のためにね。その上で、ってことなら僕は勿論ジュジュも出来る事があれば協力
するから。そんなふうに最初から諦めないで、やれるだけやってみたらいい。大体父さんや
母さんもそうだったんだから僕達だって。…そうだろ?」
その言葉にドロシーの眉が緩む。ようやく気分が前向きになったらしい。
「ドロシーはガルムのどこが好きなんだい?」
「えっと、優しくて、厳しいところもあって……」
その台詞にフィールが思わず笑みをこぼした。
「なんだかいつか聞いたような台詞だなぁ」
「それにね、ふふっ。少しかわいいところがあるの。一緒にいると穏やかな気持ちになれて、
まるで陽だまりの中にいるみたいに安心できるの」
「うーん…?かわいいガルムなんて想像がつかないな」
フィールはくすくすと笑っている。
「私たち一家って、みんな好きな人がカテナなんだね」
「そうだね。お揃いだね」
二人は励まし合うように笑った。
88 :
84-5:2007/10/09(火) 06:19:37 ID:M2+VrhWm
ガルムの家はこの日とても賑やかだった。
日はすでに傾きかけていて、木々が森の中にぽつんとある一軒家を影の中に隠そうとしている。
台所には灯りがともり、窓から見える人影が忙しそうに動いていた。
「これも持って行ってくれ」
「はい」
食器を並べながらドロシーは二人で作った料理をはどんどん運んで行く。
食堂(と呼んで差支えないだろう、大きなテーブルのある部屋)にはすでにフィールと
ジュジュが座って談笑していた。
二人には勿論ガルム達を手伝うつもりがあるのだが、いつも手出しは無用との言葉が返って
くるため、いまでは声をかけることもしない。この集まりでは調理をしなかった者が片付けを
することになっているので、まあいいか、とも思っているようだった。
「こんばんは」
玄関から聞こえた声にドロシーが扉を開けるとヴィティス、アルミラ、レオンの3人が立っていた。
「よう」
「こんばんは。どうぞ入ってください」
「フィール達はもう?」
「はい、来てますよ」
「そうか、遅くなったかな。…これをガルムに渡してやって欲しい」
そう言ってヴィティスは手にしていた瓶を差し出した。
「私からはこれだ、食後にでも出してくれ」
ヴィティスから預かったのはお酒、アルミラから預かったのは入れ物に入っている上、布で
包んであったので見えないが、おそらく菓子だと思われた。
ドロシーは頷くと3人を居間へ通し、台所のガルムへと伝える。
「お土産をいただきました。ヴィティスさんとアルミラさんからです。えっと…ここに置いて
おきますね」
「アルミラさん、これ美味しいです」
食事の量は少なめに、しかし甘いものは別腹とさっさと食後のお茶に移行しているドロシーが
うっとりと感想を言った。
「そうか?じゃあ今度作り方を教えてやろう。ガルムも一緒に作ってみるか?」
「俺は菓子作りに興味はない。そっちは貴様に任せる」
今更聞くまでもないことを、と彼は肩をすくめた。
ガルムは差し出せば食べるし嫌いではないようだが、自分で菓子を作ろうとはしなかった。
ドロシーやアルミラに言わせれば、どちらも材料を量り、混ぜ、焼いたりする料理なのだが。
「フィール君は毎日おいしい料理を食べられて幸せだな」
ヴィティスのドロシーに対する称賛を自分への厭味と受取り、ジュジュが彼を睨みつけた。
「何それ、当てつけ?あたしに喧嘩売ってんの?どーせあたしは料理へたくそよ!」
「そんなことないです!お兄ちゃんはジュジュさんの作ったもの、いつも美味しそうに食べて
ますから。もーにこにこしちゃって」
ドロシーのフォローにガルムも頷いた。
「まぁ、味がどうでも食べる者がそんな風にに喜んでくれるようなら幸せだな」
「あんたの言い方はね、なんかいちいち引っかかるのよ!……でもそうなの?あたしの料理、
好き?」
ガルムへ一瞬厳しい目を向けたがふいと隣を振り返ると彼女はフィールへ感想を求めた。
こうした些細な質問をするのにさえ頬をほんのりと染めるところが、意地っ張りな彼女の
かわいいところだ、とドロシーは思っていた。
「えっ?そりゃあ、もちろん…」
「おーおー、こんなとこでいちゃいちゃしてんじゃねぇよ」
見つめ合う二人をレオンがからかった。
この食事会、最初は一人でそれなりの料理が作れるようになったドロシーの腕前をフィールに
披露する為のものだったのだが、フィールがジュジュに声をかけ、遊びにきたアルミラ、
レオンを誘い、ではせっかくだからヴィティスも……という事で何度か集まっているうちに、
今では恒例の行事となっていた。
89 :
84-6:2007/10/09(火) 06:29:23 ID:M2+VrhWm
楽しい晩餐が終わるとドロシーが欠伸をもらしたのをきっかけにそろそろお開きに、という
事になった。
台所ではフィールとジュジュが食器を片づけている横で、レオンが鍋に残っていたものを
つまみ食いしている(ヴィティスとアルミラはお土産を持参したので免除された)。
食器を定位置に戻しながらフィールは呆れたように尋ねた。
「レオン、足りなかったのかい?」
「肉がな」
言外にあんなにおかわりしたのに、という意味が含まれているのを察してレオンは一言で
答えた。
なるほど彼は肉の部分だけを選って食べている。
「そんな食べ方してたらガルムに怒られるよ」
「向こうからは見えねぇだろ。黙っとけよ?」
鍋をのぞいたら分かると思うけど…と、フィールは言わなかった。きっとレオンはガルムに
何を言われても右から左、真面目に聞かないだろうと思ったらしい。
「それはいいけど、あんたも後片づけしなさいよ!」
ほらほら、とジュジュは脚をあげ蹴るような動作でレオンをせき立てた。
「あれ?ドロシー?」
三人が片付けを済ませて居間に戻ると、ドロシーは長椅子ですうすうと寝息をたてていた。
「良く眠ってるわ」
寝顔をのぞきこんでジュジュが微笑む。
確かに欠伸をしていたが、もう人の家で眠り込んでしまうほど子供ではない。食事中に
ヴィティスが持参した酒をみんなで頂いたのだが、そんなに飲んでいただろうか。フィールも
一応妹の様子を気にかけていたが、そんなに量を飲んだわけでなければ酔った風でもなかった
のに。
「可愛い寝顔だなぁ」
相変わらず臆面なく妹を褒める兄だった。本人が聞いたら恥ずかしがって怒っていただろう。
「長椅子に腰かけたと思ったらすぐ寝入ってしまってね。酔っていたのかな?そんなに飲んで
いる様子はなかったが…」
ヴィティスが言えば、レオンとアルミラがフィールに問いかける。
「お嬢ちゃんは酒が飲めねぇのか?」
「いや、美味しいと言っていたぞ。フィール、家では飲まないのか?」
「家にはお酒なんて置いて……あった。だけど料理用のがものがせいぜいだよ」
答えるとフィールは視線をガルムへと向けた。
「どうだろう?知ってる?」
「何故俺が?」
彼はフィールの問いに目を丸くした。家族が知らないものを、とその表情が言っている。
「うん、だからさ。料理で使うだろう?その時味見に舐めるくらいはしてるんじゃないかな、
って」
「それはあるが…どれだけ飲めるのか分かるほどの量は飲まんぞ。あくまで調味料。味見を
するだけだからな」
「それもそうか」
とりあえずもう帰らなければならないからと、フィールが声をかけた。
「ドロシー?起きて、ドロシー」
「…んん……んー…」
なんとなく返事はするものの、何度声をかけても目を覚ます気配はない。
口元を僅かに上げて幸せな夢でも見ているのだろう。
「どうしようか、置いて行くわけにもいかないし……」
フィールがそう言った瞬間、ガルム以外の者全員が共通の発想をした。
直後のわずかな目配せで互いの意思を確認し合う。
90 :
84-7:2007/10/09(火) 06:33:30 ID:M2+VrhWm
「あー……僕、ジュジュを送っていかないといけないんだ、困ったな」
「私は遅くなったが店を開けなければならない。そう表に書いておいたのでね。そう言えば
君たちこの後飲みに来ると言っていたね?」
ヴィティスが話を振ると二人が頷く。
「ああ」
「俺とアルミラ、ヴィティスは坊主の家と方向が違うからなぁ」
レオンも普段ならそんなことは気にせずに送ってやるところだが、この日は何故か言わな
かった。
皆の都合が悪い、というのを受けてジュジュが当然とばかりに提案する。
「犬っころ、あんたドロシーのこと見ててあげなさいよ。そんなに飲んでないんだし、
そのうち目を覚ますでしょ」
「まぁ別にかまわんが……では目が覚めたら送って行こう。小僧はそのまま小娘を送ったら
家に帰るといい」
また森の中に戻る手間を考えガルムはフィールに気を遣った。
フィールもさすがにそれは悪いと思ってジュジュを送ったら戻ってくると断ったが、ガルムは
彼女が目覚めるまで自分は休めるからと言う。気にするなとの重ねての申し出に結局甘える
ことにした。
「うーん、悪いけど…じゃあドロシーのことお願いしてもいいかな。朝まで起きなかったら
一人で家に帰してくれて構わないから」
こんな風に任せられるのもガルムが責任感のある男だと思うからだ。
そしてもう一つ、彼女を残していくのには皆とも共通の思惑があったのだが、それはもちろん
ガルムには内緒だった。
「さすがにそれはないんじゃないの?」
あれしか飲んでないのに、とジュジュは言ったがフィールはそれに首を振って答える。
「いや、一度寝たらなかなか起きないんだよ」
「健康な証拠だな」
ヴィティスは年頃の乙女が聞いたらがっかりするようなフォローをした。
91 :
84-8:2007/10/09(火) 06:36:09 ID:M2+VrhWm
年長組の三人は森の中を手燭を頼りに歩いていた。
夜が更け辺りはしんと静まり返っていて、自然と話し声も小さくなる。
「しっかしなぁ、今更二人きりにしたっていきなり進展するわけじゃねぇだろ?いままで
だってお嬢ちゃんはガルムんとこに通ってたんだし」
一番前を行くレオンが疑問を口にした。
「まぁな。だが彼女が奴への思いを自覚し、告げようと考えているならこれまでと違った
展開が望めるはずだ」
「フィール君にこの話を聞いた時は驚いたが……彼は人の恋愛事情に口を挟む型の人間では
ないからね」
「そーそー。それにまず自分たちを何とかしろって話だよ、ありゃ」
一通り笑ってからそれでも彼には珍しく真面目な顔になった。
「あいつの性格じゃ考えにくいが、まさか自分と同じ境遇の奴が…仲間が欲しかったのか?」
この発言にヴィティスとアルミラはそれぞれの考えを口にした。
「それは無い…と思う。もしかしたらだが、フィールは……」
アルミラが言えば、ヴィティスは意を得たりと頷く。
「私もそれを考えた。フィール君は彼女が『神々の子』ということに賭けているのではないか、
と」
「あぁん?どういうことだ?」
レオンはその意味を理解できず、二人を振り返った。
「推論を交えて話すのを許してもらえるなら……ドロシー君は生きる為に環境に合わせ、人の
形をとったのだろう。現に彼女は血のつながりのないフィール君の母親と、よく似た顔立ちに
成長している。それも無意識にか彼の妹という身分を守るためだろうが。中身がどれだけ人の
組成と同じかは分からない。しかし神々との戦いで自身の作られた理由…役目を理解し君達に
力を貸していたことを考えると…彼女が神々の子としての能力を自在に使えるなら、自分の
体を思うように変質させる事も可能なのではないだろうか」
「もっと噛み砕いて言え!」
その言葉にアルミラが言葉を添えた。
「だからな、ドロシーが望むなら…ガルムと共に生きることを望むなら、だが――カテナと
同じだけ生きる体になることも可能なのではないかと、そういう事だ」
「はーん、なるほど…だけどよ、最初のはそれこそ本能って奴だろ?自分の意志でどうこう
出来るもんかね?」
「それさ。そればかりは本人にしか分からないからな」
「フィール君もあえて聞こうとは思わないのではないかな?彼には聞きにくい事だろう。同じ
立場の者として」
「いや、あいつが考えてるのはなにより妹のことだろ。それに比べりゃ自分のことなんて
きっとどうでもいいんじゃねえか?」
「違いない」
三人はうんうんと頷いた。
92 :
84-9:2007/10/09(火) 06:42:48 ID:M2+VrhWm
「うー……ん…」
「目が覚めたか?」
もぞもぞと身動きをしたのに気づき、横の椅子に座っていたガルムが声をかけた。
まだぼんやりする頭の中で彼の言葉を繰り返し、やっとドロシーは自分が寝ていたことに
気付く。
「んん…はい……」
目をこすりながらあたりを見まわすと、彼女の為だろうか室内の灯りは抑えてあって、部屋の
隅を照らすほどではない。それでもそこには自分たち二人しかいないことに、ドロシーはすぐ
気がついた。
「あの、皆さんは…?」
「帰ったぞ。お前によろしくと言っていた」
「やだ……!」
ドロシーは小さな灯りでも分かるほどに頬を染め、寝入ってしまった己を恥じた。
「お兄ちゃんは…?」
「小娘を送っていかないと、と言っていたのでな。そのまま帰るように俺が言ったのだ。奴は
ちゃんとお前に声をかけたぞ――起きなかったがな」
「それにしたって…」
眠ってしまったのはもちろん彼女自身が悪いのだが、強引に起こしてくれれば良かったのに、
と兄を責める気持ちは消せなかった。
「俺が目を覚ましたら送っていくと言ったんだ。兄を怒るな」
「はい……ガルムさんも、済みませんでした」
どうやら自分のためにこんな夜更けまで起きていたらしい彼に謝った。椅子に座ってでは
ろくに休めなかっただろう。
下げた頭をぽんぽんと大きな手が叩いた。
「こんなのは何でもない。気にするな」
「いま時間…どのくらいですか?」
「夜明けまでまだ暫らく、といったところだな。……帰れるか?送って行こう」
言うや立ち上がる彼にドロシーは慌てた。
「あの、朝までここにいちゃいけませんか?」
こんな時間まで起きていたのに、自分を家まで送ったら彼はまた帰ってこなければならない
のだ。戻ってくる頃には夜が明けているだろう。そんな事なら朝までここで過ごして一人で
家に帰ればいいと、彼女はそう考えた。
それはあまりガルムに無理をさせたくない、という気遣いからの言葉だったのだが、彼は
頷かなかった。
「送ってゆくとお前の兄に約束したのでな、そういうわけにもいかん。今頃起きて待っている
かもしれないだろう?」
フィールは朝まで起きなければ妹を一人で帰らせるよう言っていたが、彼の性格から考えると
それでも寝ずにドロシーを待っている可能性が高い。
「俺に気を遣ってくれたのは分かっている。…すまんな」
彼女の心情を察して彼はわずかに目を細めた。
「いいえ。こちらこそこんな夜中にすみませんが、よろしくお願いします」
長椅子から脚を下ろし気を取り直して元気な声で言うと、彼女は頭を下げた。
いつまでたってもどこかよそよそしい彼の態度が寂しかったが、このくらいの距離感が自分達
には相応しいのかもしれない。
ドロシーは自分の中にある感情が心地よい諦めに満たされるのを感じた。
93 :
84-10:2007/10/09(火) 06:48:18 ID:M2+VrhWm
戸締りを確認し歩き出すガルムの後ろを、ドロシーは籠を手についてゆく。
何年も前に彼の家に通い始めた頃から変わらず、日が傾けば家に着く頃には暗くなってしまう
からと、こんな風に送ってくれた。
おかげで夜道を行くのに何の恐怖も感じない。頼りがいのある大きな背中に彼女は絶対の信頼を
置いていた。
彼の歩みがゆっくりなのは、ドロシーの歩調に合わせているからだ。
ガルムと共にいるとそうした細やかな心遣いが諸所でみられ、彼女はいつも心が温まる
ような思いでいた。
視線の先にあるのは、時折彼女に触れる大きな手。
それは昔なら何の思惑もなく繋ぐことができたものだ。ただ手を伸ばせばしっかりと握り
返してくれた。彼女を安心させるように。そして横に並んで歩いたものだ。そのうち
子供っぽいような気がしたのか、もう子供ではないのだと彼に言いたかったのか、手を
繋がなくなった。そしてガルムへの思いを自覚してからというもの、手を繋ぐのにすら
言い訳が必要になって、でも見つからなくて。ただ籠を両手でしっかり掴んで彼の背中を
眺めるばかりだった。
しかし何故だろう。このときは素直に行動を起こすことが出来た。
ドロシーは後ろから彼の手をすくうように掴むと、自分の方へと気を引くように引っ張る。
「どうした、怖いのか?」
最近では珍しい彼女の行動に足を止めガルムが問いかけた。
空を木々にふさがれた森の小道は真の暗闇で、数歩離れれば彼の持つ手燭の灯りも届かない。
それに彼女が怯えていると思ったのだろう。
ドロシーは彼のくれた理由に頷いた。
本当はガルムがいれば何も怖いものなどないと思っているのは内緒だ。
「……はい。手を繋いでいてもいいですか?」
答えが返ってくるたった一瞬の間にすら彼女は緊張したが、ああ、という声に胸を撫でおろし、
彼の横へと小走りに並ぶと再び歩きはじめる。
下草を踏む音が耳障りに感じるほど辺りはしんとしていた。
二人の間に会話は無く、彼は時々足元に注意を促すだけ。
ガルムは彼女のこういう時にやたらと喋らないところが気に入っていた。彼はどちらかと
いうと寡黙な男だったから、一緒にいる相手は沈黙を共有できる者であることを望んでいた
のだ。それでも彼女は料理する時はよく話し、笑いもする。若い娘らしく華やかな声で。
彼はドロシーに料理を教え始めた当初から、彼女が自分のペースに合わせてくれているのを
感じていたが、幼いながらもそんな気遣いをする彼女に、ガルムにしては珍しく好意をもった
ものだ。
徐々に大きな道へと出ると頭上を覆う木が両脇へと下がり、星空がひらけた。東の空は既に
明るさをにじませていて、彼が思ったより夜明けが早いらしい。
フィールの家は村でも外れの方にあるのでもうしばらく歩けば着く。
今日は家事も何もかもが半日遅くなるな、とガルムは家に帰ったら改めて睡眠をとることを
考えた。彼女の目覚めを待つ傍らでうつらうつらしていただけではやはり眠りの量も質も
足りなかったようだ。
前を向いて家に帰ってからの用事を一から考えていると、脇からぽつりと声が上がった。
「あの」
「ん?」
どことなしか元気がないような声に訝しみながら返事をする。
「どうした」
ただでさえ暗いのに背の低い彼女に俯かれてますます表情が見えない。
「いっつも迷惑かけてばっかりでごめんなさい…」
「こんなもの、迷惑のうちに入らん。これ以上の謝罪は無用だぞ」
呆れているような声。
水くさい、と彼が思っているのがドロシーにもよく分かった。それは嬉しいものだったが
ガルムの言葉に感謝しつつも彼女はつい言い訳がましく続けてしまう。慰めて欲しいわけでは
ないが、気にしないふりが出来るほど神経が太い訳でもなかった。
94 :
84-11:2007/10/09(火) 06:53:33 ID:M2+VrhWm
「だって……皆がいるのに寝入っちゃうなんて子供みたいで」
「そんなこと…俺に言わせればお前は小娘に比べてはるかに大人だぞ。まぁ、あれと比べる
のが間違っているのかも知れないが。まだ20年も生きていないと言うのに、小娘よりよほど
精神的に成熟している。自分の役割を知っていてきちんとそれを果たそうとしている。自分の
義務からひたすら自由になりたがっていた誰かとは大違いだ」
思いがけず彼から自分に対する評価――しかも好意的な――を聞き、ドロシーは目がくらむ
ような思いだった。
目元に力を入れ、唇を一文字に引き結ぶ。喜んではいけない、二人の距離が縮まった訳では
ないと、強く自分に言い聞かせる。
意識しないようにしていたが、彼女は本当はずっと、早く対等に扱ってもらえるようになりたいと
思っていたから。
大人だと彼は言った。
それは本当にそう思っているのだろう。昔に比べれば多少はと、彼女自身もそう思っている。
しかし彼女がなりたいと思うのはガルムと釣り合うくらいの女性なのだ。精神的に、彼を支え
られるほどの。
まだまだ自分の理想の女性象に届いていないと、わずかの間に喜んだり、そんな己を戒め顔を
強張らせたりしたので、ガルムは彼女がまだ落ち込んでいると思ったようだ。
「つまらないことで考え込むな」
元気をだせ、と繋いだ手を振るのが彼らしくなくて、でも言葉で慰めるのが下手な彼らしくて
可愛くて、ドロシーは思わず微笑んだ。
理性と感情のはざまで揺れていた少女の手が動く。
ガルムは不意に繋いだ腕を引かれ、彼女に耳を寄せるような姿勢になった。
内緒話でもあるのだろうかと思った瞬間、頬にやわらかな唇の感触。
突然のことに彼は驚いたが、気を許した相手に親愛の情を示されて怒る者はいない。心に
小さな火が灯るような暖かな感覚に、わずかに顔をほころばせた。
この相手といると穏やかな気持ちになれるというのはドロシーだけが感じていたことでは
ないのだ。
しかし直後の密やかな囁きが、彼女の胸にある感情が『小さな灯』などではなかったこを
彼に示した。
「好きです」
間違えようもなく耳へ響いたその言葉に、彼は目を見開いた。まっすぐにドロシーを見る目が
その台詞の意味を探る。しかし彼女の表情を見れば、どういう意味で告げたのかは聞くまでも
ないだろう。
姿勢を正しドロシーに向き直るが返す言葉が見つからなかった。
ガルムを見返す大きな瞳には挑んでくるような輝きがあり、この目を以前も見たことがあると
彼はそんな場合でも無いのに思い出していた。
あの時と同じだけの――それだけの勇気を振り絞らないと言えなかったのかもしれない。
ガルムが思い出したのは、そう、神狩と最後の戦いをしている時だった。
彼女がその能力によってフィール達を支えている間、彼等はドロシーを湧いてくる雑魚ども
から守ってやっていたのだ。その時も怖くないわけはないだろうに気丈にも喚いたりせず、
ただじっとフィール達が消えた方向を同じような目で見つめていた。
あの時ガルムはヴォロを蹴散らしながら勇気のある娘だ、という感心したのだった。
今その視線はまっすぐガルムに向かっている。
大きな目にゆらゆらと手燭の灯りを映して。
95 :
84-12:2007/10/09(火) 07:05:18 ID:M2+VrhWm
沈黙を破る様に遠くで鳥の声がした。
「ごめんなさい、急にこんなこと言って……驚いたでしょう?」
突然の告白を悔やんでいるのだろうか。口元はなんとか笑みの形を保っているが、声に余裕が
ない。
「ガルムさん、こんな時間まで起きてて大変だから……今日の約束はなしにしてください。
明日のお昼にまた、伺います」
「……」
ガルムは何か言わねばと口を開いたが、こんな時一体なんと声をかければいいのか分から
なかった。
断ればいいのか、受ければいいのか。それ以外の気の利いた言葉も出てこない。
珍しく動揺している彼にドロシーは手をちいさくあげて制した。
無理に何か言ってもらう必要はない。彼女が求めるのは――諾否はともかく――自分の思いに
対する誠実な答えだけだったのだから。
「分かってます。冗談でこんなこと言いません。私もそういうの嫌いですから……だから明日」
改めて自分の本気を伝えると、そっと繋いでいた手を離した。
彼の方を向いたまま数歩後ろに下がる。
「明日…お返事聞かせてください」
「おい――!」
言うなり彼女はガルムが何か言いかけるのも聞かず、彼に背を向けて駆けだした。
ガルムは一瞬追いかけようとしたが彼女の家はもうすぐそこ、玄関は今いる場所からも見える
位置だ。
暁の薄明かりの中でドロシーが家に入るのを見届けると、彼も踵を返した。
来た道を戻りながら我知らずため息を漏らす。
握った手は震え、瞳は潤んでいた。
彼女に触れていた手を開いて、閉じる。
掌に残るぬくもりは、彼の心に言いようのない喪失感をもたらした。
〜つづく〜
ではまた。
すっごいよかった!
>>96 くそっ、いいところで引っ張りやがって!!(*゚∀゚)=3
100 :
84-13:2007/10/10(水) 14:10:05 ID:DiRgCBcW
玄関の扉を後ろ手に締めるとそこに背中で寄りかかったまま、ドロシーは手で顔を覆うように
して床へとしゃがみ込んだ。
「言っちゃった……!!」
常に傍を離れない赤い生き物が、精一杯の勇気を振り絞った主人を讃える。
「ご主人は頑張りました、頑張りましたぞ。……しかし、本当に犬野郎でよろしいのですか?」
確認するように尋ねる。
そう、トトは以前主人に誓った通り、ずっと沈黙を守ってそばにいたのだ。
「こらっ、そういう事言わないって言ったでしょう!」
「面目ない。…あとは奴の返事次第ですな」
「うん……でも言うだけ言ったからね。ああ、心臓がどきどきしてる。飛び出してどっかに
行っちゃいそう…」
「そんな事になったら死んでしまいますな」
「トトったら!からかわないで」
服を払って立ち上がると猫を振り返りながら声をかけた。
「もう朝だけどお風呂を使ったらもう少し寝ようね」
彼女もあれでは寝足りなかったようだ。
トトは宙に浮いたまま、それには答えず不満げに漏らす。
「しかし…口付けはちともったいなかったのではありませんか?」
「ト…!しぃっ!そういう事言わないのっ!」
トトの台詞を聞かれたらと慌てて周りを見回したが、兄の姿はない。起きて待っているかも、
とガルムは言っていたがもう夜明けだ。さすがに寝ているのだろう。
「お兄ちゃんには内緒だからね?」
「もちろん心得ておりますぞ」
「まったく、いつだって返事だけはいいんだから……」
小声で話しながらドロシーは自室へと入って行った。
太陽が中天を過ぎた頃、小さく欠伸をしながらようやくドロシーは目を覚ました。
「おはようございます、ご主人」
「おはよう、トト」
「よくお休みでしたな。もうお昼をとうに過ぎていますぞ」
「えぇっ!?」
慌てて寝間着を着替え居間を通り台所に行くと、そこには食事の支度とフィールからの伝言が
残されていた。
|おはようドロシー。
|昨夜はちゃんと帰って来たようで安心したよ。送ってくれたガルムに今度きちんとお礼を
|しないといけないね。
|食事は適当にしていくから心配しないで。ドロシーもたまにはゆっくり朝を過ごすといいよ。
|では行ってきます。
「お兄ちゃんに悪いことしたなぁ」
うなだれて寝坊を反省する彼女に空飛ぶ従者はあっけらかんと言った。
「いいではありませんか。ゆっくりしろと書いてあるのですし。しかし、はっはっは。
フィールの奴、まさかご主人が昼過ぎまで寝ているとは思わなかったようですな」
「トトっ!」
自分をからかう飼い猫に、ドロシーは頬を膨らませた。
彼女は明け方寝台に入ってからも自分のしたことを思い出して、なかなか寝付けなかったのだ。
勢いで物を言うものではないなぁ、とほんの少し後悔しながらも、そうでなければきっと告白
出来なかっただろうと思い返す。その繰り返しで掛布をかぶって寝がえりを打ってばかりいた。
それについては何も言わないのがトトの優しさだろう。
この忠実な猫は主人が本当に嫌がることは絶対にしないのだ。
彼女はゆっくりその日一回目の食事をとると、その後はいつもの午後と同じように過ごした。
部屋を掃除したり、洗濯をしたり。
夕食の仕度をしていると彼女の兄はいつもより早く、日が傾き始めるころ帰宅した。
101 :
84-14:2007/10/10(水) 14:13:16 ID:DiRgCBcW
「いいさ、たまには休んだって。毎日頑張っているんだもの。お前、僕に昔言ったろう?
時々休めって。僕に比べてお前は雨だから家事を休もうなんてこともしないんだ。たまの
寝坊くらい気にしなくていいよ」
帰るなり寝坊したことを謝る妹に、フィールは優しい言葉をかけた。
「で……?」
「…?なぁに?」
「お前、結局いつまで寝てたんだい?朝まで起きなかったらとは言ったけど、ガルムに送って
もらったんだろう?」
「……けがた」
「え?」
「明け方、まで寝てたの」
目元を染め恥ずかしそうに答える妹に、フィールはさすがに驚いた。
「そんなに…よっぽど疲れてたんだね」
「ううん、お酒を飲んだからだと思う……思いたい」
「ジュジュとさ、お前は寝たらなかなか起きないんだって話をしたんだけど」
「…!確かにそうだけど、そんな話、人にしなくてもいいじゃない!お兄ちゃん、ひどい!」
「うんうん、ごめんね」
不満げな顔のドロシーに適当な返事をする。
「それじゃあガルムはそれからドロシーを送ってきてくれたのか…悪いことしたなぁ」
彼は前髪をかき上げながら、余計な気をまわしてドロシーを彼に任せたことを悔やんだ。
「でもそんな時間だったらお前、一人で帰っても良かったんじゃないか?トトもいるんだし」
「そんなの、私だってガルムさんに言ったけど!…言ったけど……お兄ちゃんに送って
行くって約束したから駄目だって」
思い出してまたも暗くなってしまった妹に、不用意な発言をしてしまったとフィールは慌てた。
「そういえば今日も行くって言ってたけど、行かなかったのかい?」
「ん。だってガルムさん眠そうだったんだもの。私を待っている間中、隣の椅子でうとうと
してただけみたいだし、無理言えないよ……」
ますます落ち込む妹にもうなんと慰めの言葉をかければいいのか分からない兄だった。
入口の扉が開き、鈴が音を立てた。
入ってきた人物に、ヴィティスは軽く眉をあげる。
「やあ、いらっしゃい。君が来るとは珍しいな…こっちにどうぞ」
身振りで示すとガルムは言われたとおり、ヴィティスの正面の席に着いた。
「何を?」
「俺は酒のことはよく分からんからな。あまり強くないものを頼む」
ヴィティスは頷くと、酒瓶が並ぶ棚から適当にガルムの希望に沿うものを選んだ。ゆっくりと
酒杯に注ぎ飲みやすいよう水で割ってやると、彼の目の前へ差し出す。
だがガルムはそれを手に取ったものの、すぐに口をつけようとはしなかった。じっと中の
液体を見つめているだけだ。
琥珀色の液体に店内を照らす灯りが小さな月のように映っていた。
「飲まねぇのか?」
その声に横を向くと、壁際にレオンがいた。
彼の存在に気づかなかったことにガルムは舌打ちをする。ぼんやりしていたところを見られた
のが嫌だったのだろうか。
顔を正面に戻すと呆れたように眉を寄せた。
「貴様、昨日も寄って行ったのだろう?毎日毎日…ほどほどにしておけ」
「おうよ。隣、座るぜ」
彼の説教を流し、レオンは自分の酒杯を持ってガルムの横へと移ってきた。
「どういう心境だ?こんなところに来るなんて」
レオンの記憶が確かならば、ガルムがこの店に来たのは開店以来のことではないか。
店主と違っていちいち理由を聞きたがるのは、彼が根っから面白いこと好きだからに違いない。
といってもガルムの来店の理由が面白いかどうかは聞かなければ分からないのだが。
「こんなところとは御挨拶だな」
ヴィティスが口をはさみながら新しい杯をレオンの前に置いてやる。催促なしでも次を出して
くるのはいつものことだからだろう。
これはいい
103 :
84-15:2007/10/10(水) 14:17:00 ID:DiRgCBcW
早速それを一口飲むと、レオンは首をかしげて尋ねた。
「なんか酒を飲みたくなるような事でもあったのか?」
「……」
ガルムはそれには答えずに酒杯に口をつけた。
甘やかで芳醇な味わいに、胸の奥へと心地よい酩酊感が広がってゆく。
「どうだ?」
「ああ、美味い」
ヴィティスの問いに頷くと素直に賞賛の意を表した。
もともと酒に酔うのは嫌いではないのだ。ただそんなに量が飲めないし、あえて飲みたいとも
思わない。そのせいでわざわざこの店に足を運ぶこともなかった。
目を閉じて余韻を味わう。
昨晩の飲み方を見るとまだまだ酒に強くなりそうな気がする、とガルムは自然とドロシーの
事を連想した。
彼女もこういう店に来るようになるのだろうか。そう、もうこういう店に来れるほどの年齢に
なったのだ。
初めて会ったときは彼の腰ほどの背丈しかなかったことを思い出す。
そんな子供が二人きりで暮らす兄を助けたいと言うのでそれならばと声をかけた。力不足を
嘆く少女につい手助けをしたくなったのはガルムの性格だ。見過ごせなかった。
共に過ごせば目の前でおさげを揺らし、くるくると動く姿は見ていて微笑ましかった。
そしていつの間にか見ていて苦笑するばかりだった、家族を思うフィールの気持ちを理解する
ことになる。
なのに、その少女から告白されてしまった。
溜息をつき何故こんなことになったのだろうと今まで過ごしてきた時間を回想する。考えても
彼女の気持ちの始まりなど、わかるはずもないというのに。
彼にしてみれば応えられる道理がないのだ。共に生きる者として寿命の違う種の相手を
どうして認められよう。
そう答えれば納得するだろうか。泣いてしまうかもしれない。いや、そんな時すらあの少女は
気を遣って無理に笑顔を見せるのだろう。
この夜が明けなければいいのに、と珍しくガルムは後ろ向きなことを思った。
「なぁ、何を考えてんのか、当ててやろうか?」
考え事をしている彼に、レオンは遠慮なく話しかけてきた。にやにやしながらの台詞は
ふざけて言っているようにしか見えない。
真剣に考えている最中にこういう態度をされると腹が立つもので、ガルムは苛立ちを隠そう
ともせず言い捨てた。
「ふん、貴様に分かるはずもない」
「さぁて……」
頬杖をつきしばらく彼を見ていたレオンがぽつりと呟く。小声だったのは、当ててやろうかと
言ったものの、自信がなかったからかも知れない。
「お嬢ちゃんに告白された、とか?」
「何?」
まさに考えていたことを指摘され、ガルムは目を見開いた。
「どうしてそれを」
「おいおい……何だ…本当に告白されたのかよ」
言い当てた方も驚いている。
104 :
84-16:2007/10/10(水) 14:18:50 ID:DiRgCBcW
ガルムは考えを巡らせた。彼女が言うはずはない。そのくらいは分かる。
と、すれば。
「まさか、貴様ら知っていたのか?」
レオンは気まずそうに鼻の頭をかいて目をそらし、ヴィティスは棚の方を向いたまま返事を
した。
「まあ、な」
「ああ」
「何故俺に隠していた!」
「はぁー?」
レオンが目を丸くすれば、ヴィティスは彼へと向き直り冷静に言い返す。
「君らしくもない…少しは考えてみたまえ。彼女の気持ちを我々が勝手に伝えられるわけが
ないだろう」
レオンが隣でその通りだと頷いている。
ガルムは言葉を飲み込んだ。
それもそうだ。第一そういう行為はガルムの最も嫌うものである。彼らはちゃんと彼の性格を
分かって行動しているのだ。
言われて納得し、よく考えずに責めたことをガルムは二人に詫びた。
「それで、どうすんだよ」
「どうもこうも……答えなど決まっている」
どの様に決まっているのか、言わなくても二人には通じたようだった。
やれやれと頭を振り、レオンがヴィティスを見る。ガルムを顎で指すような仕草をした。
「はぁ〜……こいつになんとか言ってやってくれ」
ヴィティスは腕組みをして少しの間考え込んだが、建設的な意見は見つからなかったようだ。
かえってガルムの判断に同意したともとれるような事を言う。
「どんな助言をしても、君の意思を左右するものにはならないだろう」
「左右されるつもりもないしな」
「君が既に決めたのなら我々が余計な口を挟む事ではない。しかしそれで後悔はないのか?
もう少し考えてみてはどうだ」
「俺は常に最良と思う事しか選ばない。したがってその結果がどうでも後悔することなどない。
それに――選択肢など始めから無いのだ」
ヴィティスの慎重にという意見を断じてガルムは酒杯をあおった。
「おいおい…」
横から聞いていられない、というようにレオンが口をはさんだ。
「てめえらの話を聞いてると、どうもむずむずするぜ」
彼のため息混じりの言葉にガルムは顔をそむける。
「ふん、まどろっこしいと言うのだろう…貴様にはわからんだろうな」
「あーあー、わかんねえよ。面倒なこと言ってねえでさっさとくっついちまえばいいのにって
思ってるからな」
適当にドロシーを応援してるだけのような台詞。
こういうところがあの赤いレクスに単細胞と言われる所以なのだとガルムは思った。
「少しは考えたらどうだ。彼女は人間……だぞ」
彼女の正体を知っているため、彼の言葉には言い切る強さがない。
「だーかーら!そんなことばっかり考えてるから話が進まねえんだよ。いいか?そんな心配が
必要になるのは二人が上手くいった場合だろ?」
レオンは呆れたように頭を振るとガルムに言い聞かせるように言った。
「む……まぁそうだな」
同意しつつも眉をあげるのは、指摘されるまでそのことに気付かなかったからだろう。
どうもガルムは根が真面目なせいか、付き合いを始めたらいつか必ず結婚に至るべきものだと
考えてたらしい。
そんな彼に対し、レオンは身を乗り出して言い諭した。
「とりあえず付き合ってみりゃいいんだよ。普通はお喋りをしたり、手を繋いで出かけたり、
ご飯を食べたり…はしてるか。夜を過ごして『ああ、この相手と離れたくない』とかなんとか、
そういう気持ちになって初めてその後のこと……将来を考えるんもんだ。そんなに心配しなく
ても最終的に駄目になる可能性だってあるだろ?やっぱり別れてください、ってお嬢ちゃんに
振られるかもしれねぇ。俺に言わせりゃてめえの悩みは杞憂ってやつだ」
105 :
84-17:2007/10/10(水) 14:20:27 ID:DiRgCBcW
「……」
ガルムは黙って聞いていた。反論しないところを見ると、レオンの意見は筋が通っていると
判断したようだ。
「もし添い遂げようって気になったら、いよいよその時に悩めばいいんだ。…だろ?」
「……」
ガルムは暫くの間目の前の中身が半分になった酒杯を見つめていたが、それを一息に空け、
急に立ち上がると、レオンを見下ろして苛立たしげに言った。
「俺には貴様のようないい加減な考え方は出来ん」
「へっ、そーかよ」
レオンは予想していた反応に肩をすくめた。
ガルムの悩みに悩んでいるこの姿を見たら、出た答えがどんなものであれ、誰もいい加減だ
などとは思わないだろうに。
しかしどれだけ理の通った話をしても、発言者がレオンでは素直な返事をする男ではない。
支払いをしようとするガルムに、ヴィティスは手を挙げて制した。
「今日は奢ろう。私はレオンの言う事にも一理あると思う。もう少し良く考えてみるといい」
ヴィティスに短く礼を言うと、ガルムは店を出て行った。
大きな背中を見送ってヴィティスが口の端をあげる。
「ふ…どうも見てるだけだと気を揉んでしまうな」
「けっ!ろくに助言もしないくせに良く言うよ。口が達者なんだからてめえが言やあいいのに」
「誉められているような気がしないんだが……私はどうも理屈ばかりが先行してしまうから
今のような話題には向いていないんだ。だから君に任せた」
レオンは灯りの下がっている天井を見上げた。
「は!お任せいただいてどーも。…まぁ、あれで奴の気持ちが前向きになりゃいいけどな」
「君は二人が結ばれればいいと思ってるんだな」
「今更なに言ってやがる。てめえは違うのか?……とはいえさっきのは自分で言ってて簡単に
考えすぎだとは思った。お嬢ちゃんの方はきっと先のことまで考えての告白だと思うからな」
「私もそう思う。彼女はその場の勢いでものを言うような子ではないし、一応自分が人間だと
思っているだろうから…いつか置いて行かれる事を覚悟した上でのことだろうな」
「そう、いつか……。!まさかあの野郎、それが怖いとか言うんじゃねぇよな?」
「さて…」
「お嬢ちゃんが本気なのは分かるし、ガルムだって奴には珍しくあのお嬢ちゃんをかなり気に
入ってる。俺はありだと思うんだけどよ」
「まぁ、泣かせて終わり、という結末にならないよう、祈っていようか」
彼の台詞に賛同するようにレオンは杯を掲げた。
翌日、昼も大分過ぎ、午後のお茶の時間になる頃、ようやくドロシーは支度を済ませ家を出た。
「行ってきます」
誰もいない家の中に声をかける。
歩く道々、ドロシーが横をついて歩く猫に話しかけた。
トトは日中は決して宙を泳ごうとはしない。村の誰かに見られたら騒ぎになると言う事を
ちゃんと理解しているようだ。
「ね…トト……ガルムさんの家に着いたら帰ってくれる?」
「なんですと!?それはどういう事でございますか?」
「二人で話したいから……駄目?」
「駄目などと……ぬぬ……そうせよと仰るなら従うのみ。ですが帰りはお迎えに上がっても
よろしいですな?ご主人を一人歩きさせるなとはフィールにも言われていること」
この様子では家の外で待っております、と主張しても無駄だろうと思いトトは素直に承諾した。
しかし譲れないところは譲れないとはっきりと宣言する。主人を守るのはまだ自分の役目だと
信じていた。
「うん。じゃ、いつも帰る頃に迎えに来てくれる?」
「もちろんでございます」
トトは満足そうに頷いた。
106 :
84-18:2007/10/10(水) 14:23:16 ID:DiRgCBcW
ガルムの家の周りは白い柵が囲い、畑を荒らす獣などが入ってこないようになっている。
最初の頃、ドロシーは彼は案外かわいい趣味をしていると思ったものだ。
いくらかずれて続く敷石を踏んで、玄関へとたどり着く。
ここで深呼吸するのはいつものことだが、今日は気合いが違っていた。彼女はいつもより大分、
緊張している。それでも胸に手をあて息を吸い込むと、少しかたい声で家の中の人物に声を
かけた。
「こんにちは」
ガルムが玄関の扉を開くといつものように大きな目をした少女が立っていた。
彼は体を脇へずらして彼女を通してやる。
「あのレクス…トトはどうした?」
いつも黙って主人の後をついてくる猫がいないのを不審に思ったらしい。
居間へ籠を置くと、ドロシーは彼を振り返った。
「ちゃんと…そこまで一緒に来たんですけど、帰ってもらいました」
ガルムはその理由を尋ねなかった。
「そうか」
これからの会話を他の誰かに聞かれるのはたとえあの猫でも嫌だったのだろう。
その気持ちが分かったからだ。
二人ともはなから、今日は料理などするつもりはなかった。
ドロシーの訪ねてくる時間を見越して居間にはすでにお茶の用意がしてあり、彼女に椅子を
すすめるとガルムは彼女の前に茶碗を置いてやった。
手に取り口元にもっていくと、さわやかな香気が彼女の胸を満たす。
「美味しい……」
ドロシーは一口含んで茶碗を膝の上に置く。
どうやって切り出そうと悩んでいたのも忘れて、自然に口から言葉が出てきた。
「森の中の一人暮らしは寂しくありませんか?」
「ふむ……」
彼女の問いにガルムは窓へと目を向ける。
空の青が既に薄い。
庭の向こうに見える森の木々は少しずつ色づいてきていた。一面が紅くなれば冬はすぐだろう。
「俺はやかましいのは嫌いだ」
ドロシーは頷く。それは彼といればすぐ分かることだ。
「なるべく人と関わらずに過ごしたい。ここなら周りの人間にああだこうだと言われる事も
ないからな……だが人の声のかわりに鳥のさえずりや虫の音が聞こえるから、皆が思うほど
静かでもなければ孤独を感じることもないのだ。ただ……時に周囲の音がやけに耳につく
ことがあって、そう言うときは話し相手が欲しくなる」
そこで言葉を切ると、彼は自分を見つめている少女の顔を見返した。
「お前が来てくれるからな。今はそう感じることも無くなった」
自分が話し相手になると言われて彼女はなんだか照れ臭くなり、つい下を向いてしまった。
いつも話したいことを話しているだけなのに、それで彼の心が慰められているとは思わな
かったのだ。
「ドロシーよ」
「はっ…、は、はい!」
急に、しかも名前を呼ばれたことに驚き彼女はうわずった声を上げる。
「返事を…せねばならんだろうな」
核心に触れる彼の言葉に返事が出来ず、ドロシーはただ頷いた。
「お前の気持には応えられん」
彼女は俯いたまま目をきつく瞑る。
両手に持った茶器に震えが伝わりカタカタと鳴った。
107 :
84-19:2007/10/10(水) 14:25:42 ID:DiRgCBcW
ガルムからの答えは二つに一つしかないと分かっていたはず。ドロシーはそう自分に言い
聞かせた。今更でも動揺を隠さなくてはとやっとのことで茶器を置く。
もとから諦めていたことなのに、こうして答えを出されるとどうしてこんなに悲しいのだろう。
うつむく心に違う、まだ駄目だと自分の中から声が聞こえた。
そう、やれるだけやってみればと言ったのは大好きな兄。
今にも心が折れてしまいそうだったが、自分を励ましガルムに目を向ける。
「…理由……理由を、伺ってもいいですか?」
「言っても詮無いことだ」
「でも…理由くらい、知りたいです」
ドロシーは珍しく食い下がった。
理由によっては何とかなるのではないか。足りないところを補えるのならば努力したい。そう
思うのは甘いのかもしれないが。
ガルムはいつもと様子の違う彼女に内心驚いていた。いつもならすんなりと引き下がるのに、
それほど自分に執心なのだろうかと。
今までの関係を止めたいわけでもないのに彼女を拒否するような会話を続けるのは、彼には
大変な苦痛だった。だが彼女には彼女の、自分には自分の事情があるのだと気持ちを奮い
立たせる。
「俺とお前ではあまりにも年が離れているだろう」
「えっ……?―――あの、他には……?」
彼女は聞き間違えたか、というように眉をひそめた。
「それに…何より種族が違う」
ドロシーは彼の台詞に手を唇に当ててしばらく考えこむと、確認するように彼に問いかけた。
「年下がお嫌いなんですか?私……私はガルムさんが40代でも50代でも全然構わないですが」
言外にその人柄を愛しているのだと言う。
だがいよいよ熱烈な告白にもガルムは首を縦に振らなかった。
「いや、そういう事を言いたいのではない。お前は年頃で、まだ若いのだからもっと相応しい
相手がいるだろう。周りを見てみるべきだ」
「―――!」
顔を見て言うのが辛いようで、ガルムは目を膝の上で組んだ彼女の手へとやっていた。しかし
僅かに目線をずらしただけではドロシーが身動きするのが視界に入る。
彼女は今のガルムの台詞に手で顔を覆ってしまった。
ガルムはその様子に頼むから泣くなと祈る。
自分のことなんかで悩んで欲しくなかった。他にいい人を見つけて幸せになってくれれば
どれだけ安心か。
「どうして……」
ふっ、と彼女の口から嗚咽がもれた。
「どうして、ガルムさんは…」
こらえ切れない涙が指をすり抜けて頬に流れる。
「相応しい相手って、一体誰なんですか?私が好きになった相手のことじゃ、ないんですか…。
私のこと、一体なんだと思って……若いって言うのは私がまだ子供だって意味なんでしょう?
大人だって言ったり子供だって言ったり……ガルムさんの一言で、こっちは一喜一憂してる
のに!」
これではまるで言いがかりだ。彼を詰りながらドロシーはそれを自覚していたが、止められ
なかった。
「それって結局、異性としては見れないっていう遠まわしな意志表示ですか?だったらそう
はっきり言ってくれればいいのに。私、そこまで物わかり悪くありません!」
ドロシーは感情のままに立ち上がり籠を掴むと、挨拶もしないで部屋を出て行こうとした。
「待て」
ガルムはとっさに彼女の前に立塞がる。
こんな別れ方をしては次に顔を合わせるときに気まずい思いをすると考えたのか。いや、理由
など考えているひまもない行動だったに違いない。
「すみません、退いてください…今、頭が働いてないんです」
進路を阻む彼の顔も見ないで告げる。
そのようだと思いながらガルムもおとなしく退く気はなかった。
108 :
84-20:2007/10/10(水) 14:28:04 ID:DiRgCBcW
「泣くな……泣き止むまで退く気はない」
「――今は、駄目なんです。振られたのが分かってるのに…私の気持ちに応えられないって、
それだけで十分なのに……私―――その理由に納得出来てません。失礼なこと言ったのも
分かってます。でも…だから今日は…っ」
最早自分でも訳が分からないと言った様子だ。
「っく……退いて、下さい…お願い……!」
普段が大人しいので感情が昂った時の激しさにガルムは驚いた。
しゃくりあげ、ごしごしと手の甲で涙を拭うのは本当に子供のような。
しかし、もう彼女には似合わない仕草だろう。
居間の大きな窓からは夕日が射しこみ、あたりを秋の色に染めていた。
「どうして…俺はお前を泣かせたいわけではないのだ……」
無意識に伸ばした手にはっとし、慌てて引く。
ドロシーはずっと下を向いていて気付いてはいないようだった。
「どうしたら納得する。泣き止んでくれる」
今まで聞いたことのない彼の懇願するような言葉に多少は落ち着いたのだろうか。彼女は
泣き顔のまま彼を見つめると、先程よりも少し冷静にその心情を吐露した。
「私…私は、ガルムさんの気持ちが知りたいんです。言い訳なんてしないでください!
そういう対象に見れないって言うなら、諦めます。けど……カテナだとか人間だとか…年の
ことなんか抜きにしても…私じゃ、駄目ですか……?」
ガルムはとうとう観念した。
こんな風に言われてしまっては、それ以上逃れることは出来なかった。
ため息をつき、天井を仰ぐ。
まだ悩んでいるような顔で彼女の問いに答えた。
「年頃だ、大人だと言ったのはお前があまりに無防備にしているからだ。注意を促したかった。
自分を守れるのは最後には自分しかいないのだから」
そこまで言って正面を向くと潤んだ瞳が彼を見つめていた。
どんな言葉も聞き漏らすまいとしている真剣な目。
「そして」
彼はもう一つ息をつく。
「…子供だとは――自分に言い聞かせていたのだと思う。……手を、出さないように」
その言葉に彼女の心臓が大きく跳ねた。
驚きで、籠が手から滑り落ちたのにも気がつかない。
どういう意味でいったのか取り違えないようにと追及する。
「それって、どういう…」
「どういうも何も……言葉通りだ。俺はお前が思っているほど大人でもなければ、己を律する
ことが出来るわけでもない。そうありたい、と思ってはいるがな」
彼は腕を伸ばすと慰めるように彼女の頭を撫でた。
「今までこうして頭を撫でたり、手を繋いだりしてきたが、それがやっとだった…。この間も
お前は眠ってしまったが、勝手におぶって送って行ったりしなかっただろう?女性の許可なく
その体に触れるものではないと思ったし、下手に触れて己を止める自信が無かった」
髪を撫でていた手が頬に下りてくる。
「俺はきっと…お前が他人に許さないところまで暴きたくなる」
思ってもみない彼の告白に、彼女の濡れた頬はあたりを染める夕焼けよりも赤くなった。
「だがいつか来る別れのことを思うと……。お前はまだ若く、世間を知らない。告げるべき
ではないと思った。他にもっと似合いの者がいるだろうと。お前は…?何故俺なのだ…俺より
ましな者は沢山いるだろう」
109 :
84-21:2007/10/10(水) 14:29:28 ID:DiRgCBcW
彼女は首を横に振った。
顔を逸らして至近にいる彼を見上げる。
「誰よりましとか…他の人と比べてガルムさんを好きになったわけ、じゃ…ありません」
「……」
「ガルムさんに料理を教わるようになってから、何回…このお家に来たか。ガルムさんは
ずっと私に優しくしてくれましたよね」
「それは…お前が気を使うに足る娘だったからだ。気持のいい心をした……」
その言葉にドロシーは涙を拭いながら照れ臭そうに笑った。
「沢山のいろんなことを教わりながらガルムさんと一緒に過ごした時間が、私をこうしたん
です。それでもガルムさんを好きになったのはちゃんと私の意志ですから」
「しかし…」
ドロシーはその言葉を遮る様に首を振った。
「覚悟なんかとっくに出来てるんです。だから…もし許してくれるなら、私が死ぬまでの
ガルムさんの時間を、私にください。その時が来るまで誰よりも近くにいたいんです」
これ以上ない求愛の言葉だった。
「お前は強いな。…そこまで言われても、俺はその『いつか』が怖いのだ」
思いきることは出来るだろう。
住んでいるところを離れ時間が経てば、きっと全てを過去のことと懐かしく思う事ができる。
だが、数えるほどしか生きていない少女にこうまで言われて拒めるだろうか。何より彼自身の
心に背を向けることなど出来はしない。手を伸ばせばそこにあるのだから。そして相手は
彼を望み、受け入れてくれるのだから。
「お前がカテナであればこれほど躊躇う事もなかっただろう……いや、そんなことは理由に
ならないか。どれほど年が離れ種族が違っても、心惹かれるのを止めることはできない…」
ガルムは両手で彼女の顔を包みこむ。
頬に湿り気を残す涙の跡は彼への思いからできたものだった。
「では、その時まで俺を勇気づけてくれるか。励まし続けてくれるか」
「………は…いっ……」
彼女はそう返事するのがやっとだった。
ガルムが応えてくれたという事が嬉しくて涙が後から後から溢れてくる。
「ぅ…うわぁん……っく…ふぇ…」
彼女は籠を足元に落としたまま、手で顔を覆い肩を震わせ泣きじゃくった。
ガルムは彼女を抱きかかえるとそのまま長椅子へと腰かけ、泣き続ける彼女を膝にのせ、
ずっと背中を撫でてやった。
110 :
84-21:2007/10/10(水) 14:30:49 ID:DiRgCBcW
〜つづく〜
次で終わります。
ではまた。
よかったお
これ読んでガルム×ドロシーに萌えたお
つづき!つづき!
支援
115 :
84-22:2007/10/13(土) 10:03:51 ID:nyF0R0FJ
どれだけそうしていただろうか。ドロシーはようやく泣き止むと、ガルムから体を離した。
泣き顔を見られたくないのか、目元を拭うも顔を上げようとしない。
「……すみませんでした…」
彼への気持ちに気付いてからこんなに接近したのは初めてだ。先程の自分の行動も含め、急に
恥ずかしくなって彼の膝から降りようとする。
「顔を洗って来てもいいですか…沢山泣いたから、きっとひどい顔…」
しかし彼の手はドロシーの背に回されたまま動かなかった。
「……?あの、ガルムさん?」
「すまなかったな」
「え…?」
「俺がぐだぐだ悩まなければすんだのだ。辛い思いをさせた」
ガルムの真剣な声に彼女は僅かに目を伏せた。微笑み、首を横に振って彼の言葉を否定する。
「そんなこといいんです」
背に回された腕が彼女の頭を撫でた。
「お前の泣き顔を見るのは初めて会った時以来だ…そんな顔はさせたくなかったのに」
「家では結構泣くことあるんですよ。お兄ちゃんと喧嘩して」
ふふ、とドロシーは彼の後悔を軽くするように冗談めかした。
「こっちを向け」
「…でも……」
好いた男に瞼の腫れた顔を見られるのに抵抗があって、彼女はすぐにはきかなかった。
完璧な自分ではないけれど、それでも出来るだけ状態の整った姿を見て欲しい。そう思うのは
恋する人がいる者なら誰でも一緒だ。
ガルムの指が彼女の顎に触れ、さらに顔をあげるよう促す。
ドロシーが躊躇いがちに視線を送れば、自分を見つめるガルムと目があった。
「目が真っ赤だ……」
太い指が目じりに触れる。
「もう二度と泣かせるような真似はしない」
「やだ、そんな…」
ガルムの大げさな言い方に、少女は深刻さを打ち消すように笑顔を作ろうとした。
「約束する」
彼の本気が伝わってドロシーの表情から硬い笑みが消える。
嬉しいはずなのに閉じた目が再び潤んできて、彼の手がその滴を拭った。その手を捕まえて、
しかし俯いたまま彼女は動かない。
「……」
「どうした?」
逡巡の後、もう少しの勇気を出して彼女は顔をあげた。
「あの」
「なんだ」
「…あ…私……あの…」
「?」
「では、その……約束の証を…頂いても……」
「―――!」
顔を赤らめ、再び俯く少女にガルムは目を見開いた。
彼女の求めるものが何か、ちゃんと伝わったらしい。
彼の指を頬に感じ、ドロシーは緊張から思わず目を閉じる。
ガルムは指を顎の下に回して彼女の顔をつい、とすくいあげるとその額に、前髪の上から
そっと口付けた。
それを受けたドロシーは物言いたげな表情になる。
彼女が望んでいるものはもっと確かなものだったからだ。
しかし、彼は開きかけた唇が動かぬよう人差し指で抑えると、そこにもふわりと唇を落とした。
116 :
84-23:2007/10/13(土) 10:04:35 ID:nyF0R0FJ
目を閉じたままでも彼の手にドロシーの顔がじわ、と燃えるように熱くなったのが伝わって
くる。唇を離すと彼女は耳まで赤くなった顔をガルムの胸に押しつけてきた。
「ふ…どうした?」
胸元をギュッと握りしめるのは恥ずかしさのためらしい。
「嬉しいんです……」
いじらしい台詞に、ガルムは膝の上にいる彼女を一層強く抱きしめた。
涙の跡の残る彼女の頬や、額に口付ける。
ドロシーは目を閉じ、されるままになっていた。
秋は夕暮れが早く、夜は長い。
日が完全に沈んでも室内の人影は寄り添い合いっていた。
「……んっ……ちゅっ…」
二人の口付けはやさしく触れるだけのものから、互いを求め合うものへと変わっていた。
ガルムはこれまでの時間を取り戻すかのように彼女の唇を求めた。
はじめは舌が入ってくるのに驚いたようだったが、ドロシーは抵抗せずに彼を受け入れ、その
力強さから背中へ回された腕にすっかりと体を預けてしまっている。
少女は口中で自分を求めてくるガルムにおそるおそる舌を差し出したが、やさしく、時に
激しく絡ませてきてその温かさとうっとりとするような心地よさに、気が遠くなる思いだった。
彼の唇はさらに顎から首筋へと及ぶ。
体がゆっくりと後ろに倒されたのを感じたが、少女はどう反応したらいいのか分からず睫毛を
震わせて彼にしがみついた。
下に敷かれた状態で、ただガルムの求めるままに唇を重ね合う。
「ドロシー」
髪を、頬を撫でながら時折自分の名を呼ぶ声に胸が締め付けられるようで、彼女は目を開く
ことも出来ない。
大きな手が首筋を撫でると、そのまま鎖骨のくぼみを伝って胸へと動いてゆく。
「――っ!」
他人の手が自分の体に伸びてくる感触に、ドロシーの体がすくんだ。
「…すまん」
察して手を引けば彼女は首を横に振って気にしない、との意を示した。
ガルムは耳元で囁くとまた顔を近づける。
「いかんな。つい性急に進めたくなってしまう」
「…ん……っはぁ……」
合わせる唇からため息が漏れた。
「でも…私は望まれるのが嬉しいんです。こうして…触れ合っているだけのことがどれだけ
幸せなことか…」
ガルムの手を取り頬へと抱きとると、その指先はやさしく彼女の耳から顎にかけての線を
辿っていった。
暗がりでガルムが困ったように笑う。
「参った…自分はもう少し抑えがきくと思っていたんだが」
自嘲するように言ったのは、自分に呆れながらもこれ以上我慢することを放棄したからかも
知れない。
「何のためにお前を俺から引き離そうとしたのか……どうしようもないだろう?一度好きだと
告げてしまったら、こうして欲望のままにお前を望んでしまう」
言った端から自身の言葉を覆すように指の後を舌が這い、耳朶を甘噛みする。
「…ぁっ…ん」
「俺の自制心などあって無いようなものだ」
耳元での呟きにぴくんと揺れる肩。
耳朶からさらに耳の裏へ、中へと彼女の反応を楽しんだ。
「この先を…欲しいと言えば許してくれるか」
「あの、わ…私……」
率直な言い方が彼らしかった。
117 :
84-24:2007/10/13(土) 10:05:16 ID:nyF0R0FJ
顔の横で囁かれた低い声は誘惑的で、普段ならとても口に出せないような言葉を彼女から
引き出した。
「私……知らないことはみんな…ガルムさんに、教えて…欲しいと……」
「そうか…」
彼は少しだけ口の端をあげると、その体の下に手を差し入れ彼女を抱え上げた。
「きゃっ!」
急な事に目を大きくした彼女の頬に小さく口付ける。
「ここは狭すぎる。俺の部屋に行こう」
その言葉に、しがみつくドロシーの心臓はいっそう大きく鳴った。
ガルムは居間を出ると廊下を進み、彼女を抱いたまま器用に自室への扉を開けた。
窓の位置からか、彼の寝室は居間よりも夜に近い色に染まっている。気にする間もなく暗闇に
沈んでしまうだろう。
「灯りは…無い方がいいか」
彼女が恥ずかしがるだろうと思っての呟きだったが、胸元から思いがけず否、の答えが返って
きた。意外に思いながら少女をそっと寝台に横たえる。部屋を出て行くとガルムは小さな
燭台を持って戻ってきた。
既に火は灯されて、あたりを暖かい色に染めている。
小さい灯りでもドロシーが一瞬目を細めるほど眩しく、それですっかり暗がりに目が慣れて
いたことを知った。
彼は部屋の入口に燭台を置くと、いつも自分が休む場所へと腰をおろした。
寝台に体を起こした少女と目が合う。
「ガルムさん?」
灯りに映る彼の顔が何か考え込んでいるように見えてたのだ。
ドロシーが声をかけると伸ばしたその手を不意に掴まれる。指先に口付けされ、これから
始まるであろう出来事に彼女は頬を染めた。
先程より体を固くしている少女に緊張をみたガルムは、落ち着かせるように頭をそっと撫でて
やった。
後頭部で結いあげられた薄金色の髪が、彼の目には背後の闇に透けて白く輝いているように
見えた。髪留めに指をかければ音をたてて外れ、豊かな髪がドロシーの背中を覆いつくす。
大きな手がさらさらと髪を梳くと、細い肩にかかった。滑らかな手触りのそれは上質の絹糸の
ようだ。
彼女を飾る金のふちどりのせいかいつもより随分大人びて見え、髪型が変わっただけで
これほど印象が変わるものかと、ガルムは息を呑んだ。
いつもおさげにしているか一つに纏めて結い上げているかで、そろそろ片手で足りなくなる
程の付き合いになるが彼女が髪を下ろしている姿を見るのはこれが初めてだった。
「こんなに長かったのだな」
「これでも伸びるたびに少しずつ切ってるんです」
「あの絵と、同じくらいか?」
「――!……ええ、そうです。…母とそっくりになったって、お兄ちゃんが言うので」
彼の手はドロシーの髪を弄んでいる。
「似てると…似てるのが……なんて言うか、家族の証明みたいな気がして。だって私、本当は
違うから。血が…繋がってない……きゃ…!」
寂しそうに俯く彼女の頬を大きな手がやさしく叩いた。
「ガ、ガルムさん?」
「つまらんを言うな」
そのまま耳の両側からドロシーの頭を捕まえて互いの額をくっつける。
「そんなこと誰も気にしていないだろう。アルミラも、レオンも、俺も。それにお前が一番
気にしてる小僧…フィールとて、そんな事に構わずお前に愛情を注いでいる。その位見て
いれば分かる。なのに生まれがどうだこうだと――そんな事を奴が聞いたら泣くぞ。妹に信頼
されてないのかとな」
彼女の目を見てゆっくりと言い聞かせる言葉には、若者を諭す重みがあった。
118 :
84-25:2007/10/13(土) 10:06:03 ID:nyF0R0FJ
ドロシーにもそれは分かっている。でも、やはり時々不安になることがあった。
神狩りにあう前の何も知らない頃に戻りたいとすら思ったが、それを口に出したことはない。
ガルムが言ったように、兄からの愛情を疑うようことのような気がして出来なかったのだ。
彼女の顔が僅かに歪む。
「……っ」
「泣くなよ。俺に早速誓いを破らせるつもりか?」
ドロシーはその言葉に首を振る。
勝手な言い分のようだが、彼の声はやさしかった。
涙をこらえる彼女の額にちゅっと唇を押しつけ、睫毛に滲んだ涙を袖で拭ってやる。
「気にかかることがあるなら何でも我慢せず俺に言えばいい。だから一人で悩んで、泣くな」
「はい……ごめんなさ…んっ」
彼の舌が彼女の唇を舐め、続く言葉を遮った。
謝罪を拒否する為か、少女の濡れた唇の動きに誘われたのか。
そのまま舌を差し込み深く口付ける。
重なる唇から艶めかしい音が漏れ、それに後押しをされながら、ガルムの手が彼女の背中へと
動いた。首から背の中ほどまで交差するように結ばれている紐をするりとほどくと、そこから
手を滑り込ませ、うなじに触れた指をそっと下げてゆく。大きな手を届く範囲、薄い肩から
肩甲骨の曲線をなぞって腰まで這わせていった。
素肌の上を他人の手が動く初めての感覚に、ドロシーは彼の指先が動くたび肩を縮めた。
「ん……っふ……ちゅ…」
彼女の吐息はすべてガルムが飲み込んでしまう。
ガルムは片手で彼女の体を支えながら寝台にそっと押し倒した。時折音を立てながら吸い、
絡ませ、彼の舌は飽かずに彼女の口腔を探っている。
唇を重ねながらガルムは自身の上半身を覆う衣服を後ろ手に引き抜いた。
逞しい体が露になる。
ついた筋肉の見事さは、彼が御使いであった時の名残だろうが、それとは別に今でも体を
鍛えているのかもしれない。
ガルムの頬に伸ばされた彼女の指先は冷えていて、熱くなった顔に心地良かった。
顔を離せばまっすぐ自分へと向かってくる視線に気恥ずかしさを感じて、ごまかすように
彼女の瞼へも口付ける。
「そんなに見るものではない…」
「見ていたいんです、ガルムさんを。それに、私を…私のことを全部、知って欲しい……」
だからこその灯りだと、そういう意味らしかった。
ガルムは彼女らしからぬ大胆な台詞に内心驚きながら、胸元の釦に手をかけた。
鳩尾のあたりまであるそれをゆっくりと外してゆくと白いレースが目に入る。繊細な模様が
鎖骨の下を飾っていた。その中心にも縦に小さなボタンが並び、下はどこまで続くのか、服に
隠れて終りまでは見えない。
前後を緩めた服は首筋から肩へ、下着の肩ひもごと引き下げそこを露出させた。明らかに
なった白い肌に躊躇いなく舌を這わせ、赤く目印をつけてゆく。
見える部分に行為の跡を残さないのは彼女と彼女の周囲の者達への思いやりだった。
レースが隠す胸元へと顔を寄せながら手は彼女の足元へと伸びていた。
ひらひらといつも膝の下まで隠している部分から撫で上げるように服をめくってゆく。そこ
にも上と同じ白い透かし模様が見え、釦は腰の下あたりまで途切れなく並んでいるようだった。
視線を彼女の顔に向けたまま、指先に神経を集中させる。
彼女の脚は細く、滑らかだった。
膝裏をもって腿を抱えるように足を折らせる。
「んっ……ふふっ」
「どうした」
ドロシーの口から漏れた笑い声に、脚に置いた手を動かしながら顔をあげる。
「あの…なんだかくすぐったくて……」
「くっくっ……そのうち笑ってる余裕はなくなるぞ?」
笑い含みで顔を戻すと彼女の喉を柔らかく挟むように噛んだ。胸の中心に跡を残しながら、
両の手で彼女の衣服をさらに引き下げる。
119 :
84-26:2007/10/13(土) 10:06:47 ID:nyF0R0FJ
「余裕なんか、ぁ…っ……もう、とっくに…っ」
胸を外気に晒され、彼女の肌が粟立った。形の良い胸の先端はすでに立ち上がっている。
「着痩せするたちなんだな」
「え?…っひゃ」
大きな手が胸の輪郭を指でなぞってゆくのに、ドロシーは反射的に声をあげてしまった。
腕や脚を触られるのとは違う感覚に、彼女はほんの少し怯えを見せる。
「きれいな、形のいい胸だ」
彼に褒められるのはとても嬉しいことなのだが、素直に喜びを見せるには躊躇われるところだ。
そんな事を思ったのもつかの間、次の瞬間には彼女の頭はそれどころではなくなっていた。
「ぅ…んんっ……」
胸をやさしく揉まれ、眉をひそめる。
つい、やだ、と拒否してしまいそうになるのをまとまらない意識の彼方で飲み込んだ。
華奢な彼女にしては大きめの胸。
ガルムはそこに置いた手を緊張を解くようにゆっくりと動かした。
手に余ると言う程ではないが、彼の大きな手にしっくりとくる量感が心地よかった。
表情を窺いながら指先を頂上へ近づけてゆく。徐々に固く閉じた目元が緩んで、自分の手に
慣れてきたのを確認すると、その部分を転がすように、摘み、ひねるように刺激した。
「あっ…や……!」
思わず背けた彼女の横顔は艶めいていて、美しかった。
下方から固くなった部分まで舌先でつ、となぞってやると彼女の体がひときわ大きく揺れた。
そこを舌が弄っている間も胸は大きく上下し、小さく開いた唇からは短く息が漏れる。
既に口へとその座を明け渡した手が再び大腿へと動いていた。そのまま上へ進み下着に
触れるとその上から弾力のある丘陵を揉みしだく。
彼女はそれに腿を引き付けるように身をよじった。
この辺りが弱いのか、それとも胸への刺激が堪らないのだろうか。無意識にだろうが彼女の
腰が逃げるよう浮いたのに機会を得て、そのまま下着を引き下ろした。
これで彼女を隠すものは引き下げ、めくり上げた服が留まっている腰のあたりだけになった。
全て脱がせるには、腰で結ばれた帯が邪魔になっている。飾りがついて面倒そうな結び目を、
彼は器用にほどいていった。抵抗しない彼女の足元から取り去る。
しかし服と一緒に剥ぐ予定だったの下着は腰のくびれに沿って細くなっていたため、足元から
抜いた時に残ってしまった。
白い布地からはうっすらと彼女の腰部の曲線が透けて見え、かろうじて引っかかった腰骨の
あたりから肝心な部分へと僅かな範囲を隠していた。
「細かいな」
ガルムが一直線に並んだ沢山の釦に弱音を吐いた。
「着替えるたびにこんなに釦をつけたり外したりするのか」
嘆息する彼にドロシーはまたもくすりと笑い声をもらした。
きちんと等間隔に並ぶ釦は、それだけで乙女心をくすぐる装飾になるということが分からない
ようだ。彼は釦などその機能を果たせばよいとだけ考えているに違いない。必要以上に小さな
理由も、やたらと間を詰めて並んでいる理由も言わなければ(あるいは言っても)理解
できないだろう。
「また笑ったな?」
ガルムはやさしく睨むと彼女の立ちあがっている膝に口付けた。自身の体をずらし、手を
ずらして彼女の足首を掴まえると目の前に持ち上げてその指先を口に含む。小さく奇麗な爪は、
夜目にもつやつやと輝いて、桃色の貝殻を飾っているようだった。
彼は丹念に指の一本一本を舐めると足裏から土踏まず、やわらかな踵と舌を這わせていった。
くるぶしにも吸うように口付け、ちりっというわずかな痛みと共に跡を残す。
徐々に上へと登ってくる彼の顔に不安を感じ、ドロシーは脚の付け根の影になっている部分を
白い下着で隠すように手のひらで押さえた。
ガルムの愛撫によって彼女の体の奥が熱を帯びてくる。
手で隠している胸には寂しさを感じていたが、それを察したのかどうか。彼は太腿の中ほど
まで来ると一旦顔を離し、彼女の上へと戻った。
120 :
84-27:2007/10/13(土) 10:07:22 ID:nyF0R0FJ
彼は桃色の愛らしい唇を何度もついばみながら最後の仕掛けへと指を伸ばし、片手でどんどん
釦を外していく。下を押さえる彼女の腕をよけ一番下の釦に手をかけると、下着の合わせ目が
悩ましい曲線を滑り落ち、へそから下の部分があきらかになった。
前を完全にはだけさせると再び首筋を辿って舌を下方へと移動させてゆく。両手で胸を、腿を
愛撫しながら腹部へたどり着くと、真ん中のくぼみを舌の先端でくすぐった。
「きゃ…っ…」
触られるたびにぴくんと反応するのを彼女はこらえたいようだった。跳ねる体に固さがみえる。
彼としては恥じらいに伏せた目や染まった頬にいよいよそそられ、喜びを覚えるのだが。
舌に先んじて彼の指が淡い草むらに到ると、そこは一筋一筋の細さからふかふかと心地よい
手触りがした。根元を梳くように撫でたそこにはなだらかに中心へと向かう切れ込みがあり、
彼の指は吸い込まれるように脚の間へと動いてゆく。
秘所を覆う繊毛はしっとりと濡れていたが男を迎えるにはまだ早い様子だった。
何より初めての彼女に無理をさせたくないガルムは、指の腹でそっと彼女の中を探ってみる。
「……んっ…」
彼女は秘密の場所を暴かれる恐怖と、恥ずかしさ、彼の指がもたらす言いようのない感覚に
膝を立て、僅かに開いていた太腿をこすり合わせるように閉じてしまった。
そのせいで彼の掌はすっぽりと彼女の局部に締め付けられてしまう。
指を入口にいくらか沈めたまま、溝に沿って往復するように動かすとドロシーは背を反らす
ように腰を浮かせた。
「んん……は、ぁ…」
ドロシーの表情が痛みを耐えるものになった。ぎゅっと眉をよせ、目を閉じる。
そんな彼女の唇をついばみ、吸ってと痛みから気を逸らすようにしながら、ガルムの指は
少しずつ奥を目指した。
蜜が内部を満たしている。
僅かに沈めては、ぬるりとしたそこを指でかきだすようにしながら中を広げてゆく。
そのたびに彼の腕をつかむ少女の手に力が入り、痛みを流そうとしているのが分かった。
片手は相変わらず彼女の肢体を這っているが、そんなものでは体の中心を裂いてゆく痛みを
かき消すことは出来ないらしい。
手を止め彼女に口付けると、柔らかい唇がガルムのそれを挟むように迎える。そっと触れ合う
だけのものだったが、彼女はとても嬉しそうに笑った。
そのかわいらしい表情、上気した肌に彼の本能はいよいよ強くドロシーを求めた。指が再び
動き、彼女の中をほぐしてゆく。
途中指を増やせば彼女の呼吸は乱れ、短くついている息をぐっと止めたりと、男には分から
ないが相当な痛みがあるのだと感じられた。
「あまり硬くなるな…と言っても無理か」
理性ではどうにもならない事もある。こんな時ではなおさらだ。どうしても体に力が入って
しまうのだろう。
ガルムは一旦彼女の秘所から手を離すと、脚を開くように引きよせ太腿に唇を落とした。
音を立てながら膝の方へ移っていくも、彼の手は腿の内側を撫でている。
少女がゆったりした感触に慣れ体から力が抜けるのを見ると、膝のあたりを持ち上げるように
して、彼は横に置いていた自分の体をその脚の間に移動させた。
先程の続きとばかりに細い腰に手を這わせては唇の跡を残してゆく。
「……っん…ふふっ…」
そのあたりが弱いのか、彼女はまたもくすぐったそうな笑い声をこぼした。
太腿から桃のような尻を撫で上げる。股関節の部分を彼の舌がちろちろと舐め、あるいは
ほんの少しの痛みを連れて下りていった。
彼女の体に緊張を与えながら。
彼女の体をほぐしながら。
121 :
84-28:2007/10/13(土) 10:07:53 ID:nyF0R0FJ
ドロシーは太腿の上を動く彼の手の上に、自分の掌を重ねる。大人と子供程に大きさの違う
手だったが、爪で引っ掻くようにしてガルムの注意を引いた。
「ぁ……っふ…、ガルムさん…っ」
それ以上下がったら見られるだけでも恥ずかしい、指で弄られるのが限界の所に、彼の舌が
届いてしまう。
彼女はガルムに戸惑いの目をむけた。
男女の性愛とそれに伴う行為について、基本的な知識しかないのだ。
「あのっ、それ以上、は…」
不安そうな声にもガルムはちらりと彼女を見上げただけで、そのまま茂みの中へと舌を沈めて
いった。
「や……!」
あたたかい、湿ったものが彼女の敏感な突起を刺激する。
「……っ、や、やだ…んんッ……だめ…っ!」
なんとか聞いてもらおうと声をあげるが彼の与える刺激に途切れ途切れになってしまう。脚の
間にあるガルムの頭をどけようと手をやるがあっさり捕えられ、脇に追いやられてしまった。
「…やぁ…っ…ガルムさ……」
嫌がる彼女の声を聞いてもなお彼の舌は彼女の蕾を苛んだ。唇と舌で柔らかく圧迫し、彼女の
官能を呼び覚ます。ひだの上を這い、重なった部分を丹念に愛撫し、いよいよ潤ってくる
通路の奥へと差し込む。たまらずくねる腰をしっかりと押さえながら、ぬるつく内部を舐め
あげる。
「…ん、…ふぁ……」
ガルムが口をつけた部分から時折蜜を吸う音が聞こえ、それもまた彼女を追い詰めた。
室内に満ちる色めいた空気に頭がぼうっとするのに、彼が触れる部分だけはどんどん敏感に
なっていった。
舌に少女の花弁がひくひくと震えたのを感じ、ガルムはやっとそこから顔を離した。
来た道を戻るように下腹部から胸へ、首筋へと舌の感触を覚えさせるように愛撫する。
熱をもった頬に唇を落としながら、彼は下ばきを寛げ脱ぎ捨てた。
下に敷いて引っ張らないように彼女の長い髪を脇へと避けてやる。
彼女の額に唇を落としながら、彼は立ちあがった自身をドロシーの花弁へと寄り添わせた。
先端に彼女から溢れる蜜を纏わせるように動かす。
入り口を押し込められるような感覚に、彼女は小さく肩を震わせた。
「……っ、あ……」
ガルムの肩に置かれた手が爪を立てる。きちんと摘まれた爪でも力を入れればそれなりに
食い込むし、痛いものだ。しかし彼はそれには構わず指で十分慣らしたはずの場所を少しずつ
進んでいった。
温かな体内は彼を迎えるのに不足ない状態だったが、未通の通路はやはりきつく、気を抜けば
ガルムの方が挫けてしまそうだった。
開かれた脚は彼が動くたび、痛みで反射的に閉じようとしてくる。
自分の腰を締め付けるようにしてくる太腿を、彼はやさしく撫で、さすってやった。
その意味が通じたのか彼女は脚を広げるように伸ばしたが、やはり脚の先までのかたさは
とれない。
122 :
84-29:2007/10/13(土) 10:08:41 ID:nyF0R0FJ
「は…ぁっ、ごめんなさ……」
豊かな胸を上下させながら潤んだ瞳を上にいる男に向ける。自分が爪を立てていたことにも
その時気付いたようで慌てて逞しい肩からする、と手を離した。
だがガルムはその腕を捕まえると自身の背中へと回す。
「しがみついていろ。爪だっていくら立ててもいい。その位なんでもないからな」
ガルムは微笑むと、汗で濡れた額に口付けた。
「だから、すまん…もう少し耐えてくれ」
背中に置かれた少女の腕が自分を引き寄せるのを感じた。
「ん…っ…大丈夫、です…このまま……」
痛みに耐えるドロシーのけなげな言葉に励まされ、ガルムは唇を重ねながらさらにじわじわと
彼女の中へ身を沈めていった。
最奥まで挿入すると彼は小さく息をついた。
「大丈夫か?」
「ん…っ……はい…」
涙をたたえた瞳で笑いかけてくる彼女にすぐにも衝動をぶつけたくなる、さすがにそれは
思いとどまった。
繋がったまま動かずに、少女の桃色に染まった顔中に口付ける。
「ごめんなさい」
「ん?」
「唇…切れちゃった……」
彼女の手が下唇に触れた。
言われて彼女の指ごと舐めれば確か金臭い味がする。喪失の痛みに耐えかねて歯を立てられた
らしい。
ガルムは小さく笑って鼻の頭に噛みついた。
「お前の印だと思えばいい」
目元をほんのりと染めて恥ずかしそうに男を見ると、ドロシーはにじむ血を舌で丁寧に
舐めとった。
ガルムの頬に置かれた手が顎を撫でるとそのまま下におりていき、厚い胸板の上で止まった。
「背中、痛くないですか?…ガルムさん、背が…高いから……」
彼の背を丸めるような姿勢が気になったのだろう。
「ふむ……このまま少し動いても平気か?」
彼女の体がまだ慣れていないかと気遣ったが、ドロシーはもう一度微笑み、頷いた。
ほっそりとした腰を抱くと、繋がったまま起き上がる。寝台に腰掛け、向かい合うような
形になった。
「ふぅ…」
さらに引き寄せ自分へもたせかけると、動いた時に密着した部分が擦れあい、彼女の口から
かすかな喘ぎ声がもれる。
「あっ、ん…」
ドロシーは彼の太腿へ跨るような姿勢に恥じらい下を向くことが出来なかった。せめて上半身
はと少女は横を向き彼の胸を遠ざけ距離をとろうとする。
しかしうなじから下方へと背の中心を辿ってゆく指に、たちまち体の自由を奪われてしまった。
体を反らし上を向く彼女の唇にガルムのそれが重ねられる。
「…ちゅっ……はぁ……」
何度も角度を変えてついばんでは、彼の体温がドロシーの歯の根、口蓋を撫でた。
123 :
84-30:2007/10/13(土) 10:09:12 ID:nyF0R0FJ
彼女は体の奥がまた熱をもつのを感じて、無意識に身をよじらせた。
やわらかな胸が押しつけられる感触に、ガルムの、彼女の中に入ったままの部分が一層昂る。
ちょうどいい位置にある豊かなふくらみに手をかけると、両手で外縁から頂の寸前まで、
焦らすように揉みあげた。
彼が自在に形を変えるその手触りを楽しんでいると、細い指がその手首を掴まえる。もちろん
力ではかなわないことを知っているだろう。
「あの…ガルムさ、あ……っ!」
ひたすらに避けていた先端を指先でひねられ、言葉が途切れた。
つまみ、捏ねるように刺激しながらも、彼の大きな手は周囲も抜かりなく愛撫している。
「何だ…」
低い声が彼女の耳元をくすぐった。
「ん…ふ……や、あっ……恥ずか、しい……っ」
眉をひそめ、頬を紅潮させて喘ぐドロシーの視界に、彼が口角をあげるのが見えた。
「俺も、恥ずかしい」
聞き違えたかと、耳を舐めているガルムの顔を振り返る。
驚いた顔で自分を見る少女に彼は苦笑し、ちゅっと音をたてて彼女の頬に唇を押しつけると
素直な気持ちを告白した。
「少年に戻ったみたいだ。こんなに……欲しいと思うなんてな。今はただ、この欲求に正直で
いたい」
もう一度笑うと彼女の体を抱えなおした。
「――動くぞ」
「ぁ…っああ…ッ」
再び押し倒すと、今度は衝動のままに腰を動かした。
彼女の声が貫かれる痛みから来るものか、それとも快感から来るものか、彼には判断が
つきかねていた。
しばらく繋がったままだったので大分慣れただろうと思ったが、やはり動かれるときついの
だろうか。
自分を煽る甘やかな喘ぎ声にガルムは一層強く彼女を突き上げた。彼の勢いを削ぐためか、
細い腰がしなる。抽迭を繰り返せば彼を捕まえて離さないと思えるほどに締め付けた。
ドロシーの秘所からあふれる蜜が彼の律動に合わせて淫らな音を立てる。
淫靡な空気から目を背けるように、彼女は横を向くが彼はそれを許さなかった。強引に上を
向かせて唇を貪る。舌を絡ませあい、吸って、互いの口中が互いの味で満たされる。
少女の潤んだ瞳は切なさに揺れて、大本にある感情が彼への愛であることが垣間見えた。
限界が訪れる。
体内にあるものの変化にそれを悟ったのか、彼女の腰が一瞬震えた。
細く折れそうな腰をさらに強く引き寄せると、ガルムは彼女の奥に昂りと感情を吐き出した。
124 :
84-31:2007/10/13(土) 10:10:26 ID:nyF0R0FJ
「ん……」
体がわずかに揺れてドロシーは目を開いた。
「!」
自分が裸のままガルムに寄り掛かっているのに気付き、首筋まで朱に染める。ほんの少しの間、
眠ってしまったらしい。彼が身動きしたので目を覚ましたのだろう。
彼女は体が見えるのを嫌って掛布を手繰りながら彼から身を起こした。
ガルムは彼女を追うように上半身を寝台から離すと、細い肩を抱き寄せ頬に口付ける。
「もう少し休んでいけばいい…それとも帰るなら、送っていくが」
初めての経験に疲れただろう彼女の体を思いやって勧めるが、あまり帰りが遅くなっても
家族が心配する。
「か、帰ります……もう遅いですし、お兄ちゃんが心配しますから」
「そうか」
「………」
「………?」
ところが帰ると言う割に一向に服を着けようとしない。
どうしたのだろう、と思っていると胸元で掛布を握ったまま、彼女は言いにくそうに申し出た。
「あの…むこうを向いて頂いても、いいですか?恥ずかしいので……」
「ん?ああ。そうか、すまん」
乙女の純情に気がつかなかった彼は即座に反対へ体を向けた。
さっきは見てほしいと言っていたのに、今は見られたくないと言う。いったいどういう事で
あろうか、と内心首をひねりながら。
「ドロシー!!心配したじゃないか!」
家に帰るとフィールは珍しく本気で怒っているようだった。
ガルムに送ってもらい、玄関を開けようとしたところで、後方から声をかけられた。
彼女を探して外にいたらしい。
「ご、ごめんなさい…」
「こんな夜遅くに……!ガルムと一緒ならそう言っておくように、以前注意しただろう?トトに
聞いてもそっぽを向いて答えてくれないし……」
「ふん、何も言う事はないわい」
トトは約束通りドロシーを迎えに行ったものの、二人の雰囲気を察して邪魔をしないように
帰ってしまったのだ。そういう意味では主人思いの猫である。
それについて何も語りたがらないのは、二人の中にまだ納得がいっていないからだろうか。
「でも、ガルムさんの所に行くって話はしてあったでしょう?」
「こんなに遅くなるとは言ってなかっただろう?」
言い訳する妹の言葉にも聞く耳なし、といった態度だ。
「もう子供じゃないんだから、そこまで厳しくしなくてもいいじゃない!」
「ばか!子供じゃないから心配するんだろう」
こんな夜更けに外を歩いて彼女の身に何かあったら後悔では済まない。妹があうかもしれない
どんな悪い可能性も彼は排除しておきたかったのだ。なのに本人がこれでは周りがどれだけ
気を遣っても何にもならないではないか。
そういうフィールの気持ちが手に取るように分かったが、あえてガルムはドロシーをかばった。
かばう義務があった、と言ってもいい。
「待て」
叱られる彼女を背に隠すようにして立つ。
「これは俺が怒られるべきだろう。俺が引きとめたのだ」
「ガルムはいいんだよ」
「いや、よくない。彼女の帰りが遅くなったのは俺が悪かった。謝ろう。しかし彼女のことは
これから俺が責任を持つ。彼女の兄として、保護者として知っておいてもらいたい」
125 :
84-32:2007/10/13(土) 10:11:02 ID:nyF0R0FJ
「え…責任……?」
その台詞から察するに、どうやら二人は上手く纏まってくれたらしい。しかし責任とは。
責任を取らなければならないようなことをしたと言うのだろうか。
知りたいけど知りたくない。
フィールの頭は急に回転が鈍くなったようで、ぽかんと口を開けたまま二人を交互に見た。
「え…?」
「自分のしたことは理解している。安心するがいい」
「し、したこと!?」
「やだ……!ガ、ガルムさん…!!」
ドロシーは顔から火が出るかという思いだった。
彼の服を握りしめた手まで赤い。
兄と目を合わせられないのかガルムの背に隠れたままだ。
こんな風に言われたら二人の間に何があったのか、察しがついて当然だろう。
応援していたとはいえ余りの展開の早さに、フィールは視界が傾いたように感じた。
もう少し段階的な進め方は無かったのだろうか。いや、二人が仲良くなってからの年月を
考えれば、これでちょうどいい位なのかもしれない。そう気を取り直して再び妹に目を向ける。
彼の妹はガルムの後ろで恥ずかしそうにこちらを窺っていた。
「そっか…そっかぁ……。うん、でも、良かった…良かったよ。ガルム、ドロシーをよろしく」
はは、とフィールは力なく笑い、頭を掻く。
ガルムにきちんと向き直って挨拶をすると彼も頷いた。
「任せておけ」
「あの、ありがとね、お兄ちゃん」
彼女は大きな背から顔を半分だけのぞかせて、以前受けた助言に改めて礼を言った。
「そうそう」
フィールは一瞬家を振り返り思い出したように言った。
「アルミラが来たんだよ」
「アルミラさんが?どうして?何か用事でもあったの?」
まだ照れが残っていたが、話題がそれたので彼女もあえて気にしていない風に聞き返した。
その理由に全く心当たりが無かった為、兄に用があったのだと早合点したが、フィールの
口から出た言葉は彼女を驚かせた。
「何かって…アルミラ、ドロシーと約束してたんだって言ってたぞ。でもお前は家にいないし、
いつ帰ってくるかもわからないしで……忘れてたのかい?」
「えっ?えっ?」
彼女は困惑している。いったいいつそんな約束をしたのか記憶にないらしい。
「本当…?何だろう…私、全然憶えてない……。ど、どうしようお兄ちゃん。なんの約束を
したのかアルミラさん言ってた?」
おろおろと手を彷徨わせながら兄に尋ねる。
「この間ガルムの家で集まっただろ?」
「うん」
「その時に、アルミラにあのお菓子の作り方を習うって話をしたらしいんだけど」
「そういえばそんな事を言っていたな…」
ガルムが頷きながら呟いた。
あの時彼も一緒にいたから思い出したのだろう。
「僕が片付けをしてた時だって言ってた。今日の夜に来るって約束だったからって。ドロシー、
お前……あの時やっぱり酔っ払ってたんだね」
「そのようだな。道理でなかなか目覚めなかったはずだ」
くすりと笑うその声にドロシーは頬をほんのりと染めた。
「ドロシー、あの時アルミラが何を作ってきたかは憶えてるかい?」
「もう、お兄ちゃんってば!いくらなんでもそれくらい憶えてます!」
「ごめんごめん。…それでね、ドロシーがあんまり帰ってこないものだから、『帰ってこない
ものはしょうがない。せっかく持ってきた材料をまた持って帰るのも面倒だし』って言って、
作っていってくれたんだよ。アルミラ、また改めて日を決めようって言ってたよ」
「そっかぁ…良かった」
それほど怒ってないようなアルミラの様子に、ドロシーはほっと胸を撫でおろした。
126 :
84-33:2007/10/13(土) 10:12:18 ID:nyF0R0FJ
「ガルム、わざわざドロシーを送ってきてくれたんだし、こんな夜中だけど、良かったら家で
お茶でも飲んでいかないかい?アルミラの作ってくれたお菓子を一緒に食べようよ」
「いや、遠慮する。出がけに軽くつまんで来たからな」
「そうかい?…じゃあお土産に持って帰って。二人じゃ食べきれないし」
フィールはそう言うとガルムの返事を待たずに家へ入って行った。
ドロシーが傍らにいる男を見上げて改めて声をかける。
「また今度だって…ガルムさんも一緒につくりませんか?」
彼と一緒に料理するのが大好きな少女は以前と同じ誘いをかけたが、それに対する答えも
やはり以前と一緒だった。
「いや、遠慮する」
「そうですか…」
やっぱり、と少し期待していた彼女は肩を落とした。
「作ったら俺に食べさせてくれるのだろう?」
「は、はい!」
それを楽しみにしているような言い方に、彼女は勢い込んで答えた。
こういうところは昔と変わらない。ガルムをほのぼのとした気分にさせる。しかし。
「それに」
ガルムの顔が接近し、二人の唇が重なる。
「ん…」
一瞬だけ触れ、離れたそこをガルムの指が愛おしそうになぞった。
「いまは甘いものはこれで十分」
今の彼女は立派な乙女だ。
触れた部分からうっとりと彼をとかしてゆく砂糖菓子のような娘。
再び玄関の扉を開く音がする。
顔を真っ赤に染め俯く彼女の背後で、その従者が毛という毛を逆立ててガルムを睨みつけて
いた。
〜おしまい〜
127 :
84-33:2007/10/13(土) 10:16:57 ID:nyF0R0FJ
あんまり長いのでうpろだ使うべきか悩みました。
1レスに詰め込み過ぎで読み辛くなかったでしょうか。
GJ!
丁寧な描写イイ!!
体格差テラ萌えた
>>127 神キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!
GJ!!
>>127 GJ!!!!
貴方の書くレオン×アルミラも見てみたい(´д`*)
131 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 22:24:59 ID:x+xKDE9A
すごい!兄フィールの描写は年頃の妹のいないオレにはムズいんです!
>>127 GJ!
描写がすごくいいですな。愛を感じます。
もはやエロ云々じゃなくて、SSとして良質ですな。
読んで幸せになった。
>>131 ならば年頃の姉(アルミラさん)が義弟(フィール)を美味しくいただく描写を
その場合兄さんは誰だ?レオン?
兄役はあの人でもいいんじゃないか?
えっと、ほら、ヴ……あー、なんて名前だっけ、忘れちまったわ
ウッドロウだっけ?
アルミラ、ガルムだと会話のない夫婦になりそう
>>134 や、やめろっ、俺の毎晩のオカズのネタを晒さないでくれ!!
いいシチュをおかずにしているな、ちょっと借りるぞ
アルミラさんにパイズリしてもらいたい今日この頃
ジュジュがちいさい胸で頑張ってくれたら堪りません(*´Д`)ハァハァ
アルミラさん→パイズリ
ジュジュ→足コキ
なら俺は、
アルミラさん→フェラ
ジュジュ→フェラ
だ!!
このフェラーリ好きめ
いや、
俺はフェラーリよりオメガのほうが
バセロンの方が好きだが
フェラ好き達の流れをぶっちぎりまして質問。
思いついたという段階の話をして恐縮ですが。
前スレでガルム×2Pカラーガルムって話があったのだけれどこのスレ的にどうでしょうかと。
注意書きすればおkですか?
内容は大した絡みもない予定です。
うん、全然構わないよ
過疎ってdatするより億倍マシ
ただ苦手な人がいるし、名前欄にNGワードできる語句を入れてくれ
ありがとう。
まったく具体的な事には及ばないのですが、書いてて自分でも(´д`)ウヘァな感じなので
注意書きをしっかりした上で、投下させていただきます。
その前に他のをもってきます。いつもありがとう。
ウヘァな感じにワロタ
俺だけの
ガルムたん
アッ――!!
ヴなんとか「ガルムの人気に嫉妬」
ジュジュ×フィール? 本番なし
投下します。
156 :
156-1:2007/11/12(月) 08:13:56 ID:ss9oajDr
「アルミラ!」
「ジュジュ!」
「フィール!」
フィールは湧いてくる敵を次々と弱らせてパスを出した。
あんまり周りに敵がいるものだから、ジュジュから戻ってきたパスに気付きもしない。いや、
気付いてはいるが、あえて捕りに行かないだけかもしれなかった。
「ちょっとフィール!」
「なっ、なんだい?」
雑魚どもを蹴散らし、あと斧1匹になった時、ジュジュがフィールに詰め寄った。
彼女の剣幕にフィールは思わず後ずさりする。
「何だじゃないわよ。どうしてあたしのパス受けないわけ?せっかくもうちょっとでLv.2を
出せたのに…」
確かにそんなチャンスが何回もあった。せっかく自分が協力してやってるのにLv.2が撃てない
ので、気分を害したようだ。
「ごめんよ、でもそのほうがいいかと思って。すぐそこに剣ノッポとか槍ノッポがいて
危なかったし」
それに、ジュジュのパスが受けづらかったのだが、さすがにこれは言えなかった。せっかく
レオン探しを手伝ってくれているのに失礼なことを言いたくは無かったし、キャッチの下手な
自分にも原因があるのだ。
「まて、ジュジュ」
「なによ、おばさんは関係ないわ。引っ込んでなさいよ」
アルミラは睨みつけてくる彼女にかまわず話を続けた。
「もう少し、受けやすいパスを出してやってはどうだ?こう言っては何だが、私もとりにくく
思っていた。これではいつチェインが途切れるかわからん」
「あたしが悪いっての!?」
「いや、フィールにも悪い点はある。大型の敵が来たら、必殺技に頼らずにステップで避ける
ようにしなくては駄目だ。それではいつまでたってもゲージを最大まで上げることが出来んぞ」
フィールも悪い、とちゃんと言ってくれたことに少し機嫌を直したジュジュは、今の台詞を
否定した。
「フィールがちゃんとパスを回してくれれば、ゲージはちゃんと…あたしのレクス達がいれば
すぐLv.2まで上がるわ。充分じゃない?」
アルミラは思わずテンションゲージはその上のLv.3まで上げられると言おうとした。しかし
神からの再度の支配を避けるにはそれが不可能だと気付き苦笑する。
大体フィールが装甲化できるかどうかも分からないというのに。
解放されてからこっち、昔のように冷静に考えていられない自分が不思議だった。
「ああ、そうだな…」
フィールは二人にぺこ、と頭を下げた。やはり自分が至らなかったせいだと思ったのだ。
「ごめんよジュジュ。次はちゃんと優先して受けるようにするから、また助けてくれるかい?」
「頼むわよ、本当に……気をつけてくれるなら、いいけど」
ジュジュは素直に謝る彼に驚きながら少しはパスをやさしく出したほうがいいかしら、と思い
直した。フィールはまだ初心者なんだし、と心の中で言い訳をしながら。
「では、あの残り1匹を倒すぞ」
アルミラの号令の下、3人は走り出した。
「こっちだ」
「了解だ」
言っている本人も、集合を掛ける場面か判断付きかねていた。しかし迷っている暇は無い。
さっきから前後左右からどんどんしもべが出てきてまさに混戦、囲まれては走って灯台の円の
外へ出て…の繰り返しだった。
フィールはアルミラの忠告に従って、なるべく必殺技を使わないようにしている。こういった
場面では確かにジュジュのLv.2が頼りになる(そしてそその弱ったしもべをアルミラが上手に
キャッチしてくれる)ので、先ほどアルミラから指摘された点に気をつけてパスを出していた。
157 :
156-2:2007/11/12(月) 08:15:20 ID:ss9oajDr
「ふ…あの斧が最後じゃなかったようだな」
激しい戦闘の最中に薄く笑っているアルミラに、ジュジュが怒鳴る様に声を上げた。
「ちょっと!そんなこと言ってる暇無いでしょ!? フィール!」
自分に回ってきたヴォロを、フィールへとダイレクトに弾き飛ばす。
その瞬間、ジュジュは後方から強い衝撃を受けた。
「きゃっ!」
下方から突き上げられ、ジュジュは思い切り跳ね飛ばされる。
軽い体はそれでも受け身をとろうとしたが、宙を舞う姿勢からそれは無理だと思われた。
怪我を覚悟し、ぎゅっと目を閉じる。
しかし地面に激突する瞬間、何か柔らかいものにぶつかる感触がした。それは彼女の体を
寸前で受け止めて、そのままの勢いでジュジュを足から着地させる。
驚いて目を開ければ自分を腕に抱えるようにしてフィールが立っていた。
「怪我はないね?」
「う、うん」
聞いた途端、迫る敵に気付いて放り出すように彼女を離す。
「あいつら素早く動くから気を付けて!」
そういいながらフィールは果敢に槍ノッポに突撃して行った。
彼女はぽかんとそれを見送っていたが、背後にヴォロどもが迫っているのに気付いて自身も
再び戦いへと身を躍らせる。
しかし心の中は他者に庇われたことへの戸惑いに満ちて、いつものように敵の殲滅に集中する
ことが出来なかった。
いままでそんな風にかばわれたことが無かったのだ。
彼女はなんだかそわそわと落ち着かず、つい彼の後姿を目で追えば槍ノッポに迫られているのが
見えて我に返る。
慌ててそちらに駆けて行くと、フィールの方を向いているうちにアルミラと二人で背後に
回り込み、攻撃した。
さすがに二人がかりでいけばノッポもたちまちふらふらになる。
「フィールッ!!」
「アルミラ!」
フィールは飛んできた槍ノッポをもう一度アルミラにパスで返し、自らもそこに突っ込んで
行く。
あっという間にゲージをLv.2にすると、すかさずジュジュと必殺技を放った。
「ジュジュ、さっきは大丈夫だった?」
「え?」
昇降装置を死守して一息ついていると、フィールが手をあげて彼女に近づいてきた。
「乱暴に離してしまったから心配してたんだ」
「ああ……。まさかあのくらいで怪我するわけないでしょ?…バカにしないでよ」
助けた相手に怒られてフィールは目を丸くした。それでも自分が悪かったかと素直に謝罪する。
「ごめんよ」
今までの仲間にはない反応に、ジュジュはたじろいだ。
こう下手に出られると、どう返していいのか分からなくなってしまうらしい。
「なによ、別に謝って欲しいわけじゃ……わ、わかればいいのよ…ふん」
「そうだ……ジュジュ、これ持ってて」
彼がも懐から取り出したのは、何かお守りのようなもの。
再生の護符だった。
正体を知らない彼女は両手を隠すように後ろへとまわし、顔を険しくしてフィールを非難した。
「何よそれ……あんた、神の正体を知ってるくせに神頼みしようっての?そんなもの、触り
たくもないわ」
ジュジュの中では既に、神とはカテナの自我を奪い支配するものだと認識されていたため
不愉快さを隠そうともしなかった。
158 :
156-3:2007/11/12(月) 08:16:32 ID:ss9oajDr
彼は慌ててそれを否定する。
「違うよ!これはトトがエテリアから生成してくれたお守りなんだ。一度テンションLv.を
1以上にすればゲージが消えるまで体を回復してくれる……だから」
持っていて欲しいと差し出す手に、彼女は胡散臭いものを見るような顔でフィールと再生の
護符を見比べた。そして彼の横に浮いている生き物へと目を向ける。
「ねぇ、その……猫……?じゃないわよね、空飛んでるし……なんなの?なんでエテリアから
自在に物を作れるわけ?それもこんな特殊効果がある物を」
当然の疑問だ。きっといままでこんな生き物は見たことが無かったのだろう。
「ふん、うるさいガキだ。おれサマはご主人の第一の従者。このくらいのことが出来なくては
務まらんわ。いいか?ご主人が攫われたのはお前らの責任だ。罪滅ぼしにおれサマ達に協力
するのは当然。それなのにこんな素晴らしい装備品を使わせてもらえるのだ。ありがたかろう」
トトは空中で器用にふんぞり返った。
「はは、口が悪くて変わった特技があるだけで、あとは普通の猫……なんだよ。たぶん。気に
しないで」
フィールが間を取り持つように言う。あれだけの会話で、この一人と一匹は気が合わない事を
感じとったようだ。
「おれサマの正体なぞ見た目通りのかわいい猫に決まっておる!いいからさっさと護符を
しまわんか。休んでる暇はないぞ」
「はいはい、分かったわよ。うるっさいわねぇ」
彼女は面倒くさそうに答えるとトトについては訳の分からない生き物だと言う事が分かった、
と一応の納得をして素直に胸元へと護符をしまい込んだ。
「ねぇ、あいつちょっと変わってるわよね」
全員が灯台の中央に集まり昇降装置が動きだすと、ジュジュはアルミラの傍に行き、ひっそり
と耳打ちをした。
背伸びをして話しかける様子は以前よりも親しげだ。
ほんの少しでも仲間として戦ったせいかアルミラに対する対抗意識が薄くなってきたのだろう。
「戦闘中に人のこと気にかけたり……あたしなんてこの間まで敵だったのに。なんて言うか、
果てしなくお人好しって感じ。よくあんな性格で神々を倒そうなんて思いついたわよね」
呆れて肩をすくめる彼女に、アルミラは口の端をあげた。
「ふふ……確かに変わっているな。我々はあまり仲間を庇うなんて事はしないから。そのおかげ
はか知らんが、今ではレオンも近くにいれば手を差し伸べてくれるようになったぞ」
ぱち、と片目を閉じて語る姿は彼女には珍しく悪戯っぽい仕草だった。
「しかし神々を倒そうと言うのは我々――私とレオンの都合で、フィールにとっては多分妹を
助けるついででしかなかったと思う。……さっきまではな」
ジュジュの口から明らかになった実験台にされる者たちの不幸、神々の人やカテナに対する
仕打ちに彼が憤っているのを二人は知っている。
当の本人は少し離れたところで女性達のヒソヒソ話に不思議そうな顔をしていた。まさか
自分のことを話しているとは夢にも思ってないだろう。
アルミラはちらりとジュジュを横目で見ると話を戻した。
「お前は負けず嫌いだからな」
「へ?」
「助けてくれたからって同じことをしてやる必要はないぞ。男と女では体のつくりが違うし、
ヘタに受け止めようとしたらこっちが怪我をする」
問題の場面を彼女は見ていたらしい。
「べっ、別に助けてやろうなんて思ってないわ!……だからって、か弱い女扱いされる気も
無いけど」
どうも庇われるばかり、というのが気の強い彼女には我慢できないのだ。この歳でOZの一員に
なる実力があるのだからなおさらだろう。
口を尖らせてそっぽを向く彼女にアルミラは言い添えた。
「そんなことよりちゃんと礼は言ったのか?お前、そういうの苦手だろう」
「――!」
「それとな……あいつにもう少し優しくしてやれ」
「お礼くらい言ったわよ!確か。……?言ってなかったかしら?」
159 :
156-4:2007/11/12(月) 08:18:05 ID:ss9oajDr
どうだったかしらと眉を寄せ、先程のことを思い出す。一通り考えてからやっと気付いた
ように問い返した。
「ん?なんであいつに優しくしなきゃなんないの?」
このあたしが?どうして?と思っているのが口に出さなくてもしっかりアルミラに伝わった。
「我々はお前の性格を知っているから気にならないが、フィールはあの通り素直だ。お前の
言葉をそのままの意味で受け止めるから、落ち込んでる」
「はぁ……!?」
アルミラは予想もしてなかったというジュジュの反応に苦笑した。
「そのくらい分かりなさいよ、って顔だな。お前達はまだ知り合って間が無い。お前の
言い方じゃお前が照れているのか、喜んでいるのか、本当に怒っているのかフィールには
区別がつかないんだ。もう少しその口が悪いのを直せばいいんだが」
しょうがない妹をもったような気持にアルミラは眉尻を下げる。
「余計なお世話よ!」
「相手に伝えたいことがあるなら、ちゃんと通じる言葉で言わなくては意味がない。だろう?」
「そりゃ、そうだけど……」
「ではフォローしておくことだな。しばらくは共に行動するのだし、気がかりは取り除いて
おくに限る。それにこれは今まで一緒にいたから断言するが、戦闘中助けてもらうよりも
普通に、にこやかに接してもらう方が、フィールはずっと喜ぶだろうよ」
諭すように言われ、ジュジュは渋々と頷いた。
「わかったわよ……なによ、もう……手間のかかる奴!」
「………」
どっちがと思ったがアルミラはあえて何も言わなかった。
フォローをするとは言ったものの、その性格からジュジュがなかなか行動に移せずいるうちに
三人はとうとう火神と戦った場所まで戻ってきた。
その後も戦闘を繰り返しながら先へと進んでいったが、背中へ感じるアルミラの視線に彼女は
苛立ちを感じていた。言わなきゃ言わなきゃと焦るほど態度はぎこちなくなり、なんとか隙を
見つけようとフィールを見る目は鋭さをもつ。
フィールもそんな様子のジュジュになんとなく隔意を感じてあまり彼女に話しかけようと
しなかった。
二人を見守っていたアルミラはこれでは埒が明かないとジュジュを手招きした。
「なによ」
「なによ、ではない。まったく……大体あれから意思の疎通もまともに出来てないだろう?
ほら、さっさと行ってこい!」
アルミラはそう言って彼女の肩を捕まえるとフィールの方に押し出した。
こういうお節介の仕方は今までのアルミラには無かったものだ。
「ちょ、ちょっとぉ!?」
「いいから!お前たちが戻ってくるまで私は休ませてもらう。ここはとことん腹を割って話を
して来い。年の頃だって近いんだし、お前の態度に対する誤解が解ければ話は合うと思うぞ」
「誤解って何よ」
背中を振り返って問い質す。
「お前に嫌われているっていう誤解さ。フィールは多分そう感じてるはずだ」
「えぇっ!?」
思いもしなかった可能性にジュジュは驚き、アルミラから背を押されるままフィールへと
近寄って行った。
「ねぇ……ねぇったら!」
突然声をかけられてフィールの体が一瞬硬直した。しかし振り返って彼女に微笑みかける。
「どうしたの?」
「どうって別に……ただ、ア、アルミラが――」
彼は首を傾げた。
何か用があるならアルミラは直接言ってくるだろう。
「アルミラが何か言ってたのかい?」
「うるさいわねっ!用がなきゃ話しかけて駄目って言うわけ!?」
「そんなこと言ってないよ。気に障ったなら謝るから」
ジュジュが怒ったように返すので、彼はなだめるように言った。
160 :
156-5:2007/11/12(月) 08:19:17 ID:ss9oajDr
気まずい沈黙が二人を包みこむ。
互いに口を開けば口論になると思っているのだ(原因はほとんどジュジュの方にあるのだが)。
彼女は暫くもごもごさせた後、やっとのことで口を開く。
「ア、アルミラがねぇ…うるさいのよ」
「え?」
「あんたにもう少し優しくしろって……幸せね、あんた。ママにお世話してもらって」
さすがにこの言い方には気分を害したようで、フィールは眉をしかめた。
「そういう言い方はないんじゃないかな。アルミラは面倒見がいいだけだよ」
直後、つい表情に出してしまったことを後悔する。
彼の口からため息がもれた。
「――止そう。喧嘩をしたいわけじゃないんだ。…僕が早く面倒見られないくらいになれば
いいだけの話だものね。アルミラの言ったこと、気にしないで」
彼女にどんな事を言われても、フィールはなるべく理性的でありたいと思っている。根っから
争い事が嫌いなのだ。
少しの間を置いて、向かい合っていた少女が上目づかいに彼を見た。
「……ね…」
「なんだい?」
「その……猫?どっかにやってくれない?」
「トトを?どうして」
フィールのレクスは例によって猫型となり宙を漂っていた。
「いられると不都合だからよ。決まってるでしょ」
「ふん!お前らのやり取りはかゆくて聞いてられん。おれサマはねーちゃんのところにいる」
フィールが何か言うより早くそう答えると、赤い猫はさっさと行ってしまった。
後姿を見送って、フィールはなんの為だろうとジュジュの顔を不思議そうに眺めた。
彼女は同じく去りゆくトトを見て猫は飛ばないわよね、とぶつぶつ言っていた。
目を戻すと正面にいる彼の視線とぶつかったのにまた目をそらす。
一瞬気まずそうな表情になり、だがすぐにいつもの気の強そうな、相手を見据えるような目を
するとフィールに手を差し伸べた。
「来て」
反射的に出されたフィールの手を取ると、彼女は背後のアルミラ達から遠ざかるように歩き
だした。
フィールは手を引かれるままついていったが、あたりを見回しながら訊ねる。
「ジュジュ、いったいどこまで……敵はいないのかい?大丈夫?」
「この辺りは守るまでもない場所だからヴォロ達もいないの。心配しなくても平気」
フィールに背を向けたまま彼女は返事をした。
そのまま二人はどのくらい歩いただろうか。とうにアルミラ達の姿は見えなくなっている。
距離的にはそんなに離れていないのだが、上り坂だったり下り坂だったり、右へ曲がったり
左へ曲がったりしているうちに、すっかりフィールは自分の場所が分からなくなっていた。
「このへんでいっか……。座って」
ジュジュは振り返ると彼にそう促した。
彼は黙って言われた通りにする。
この辺りはごつごつと岩のような地面が続いていて硬く、座り心地がよいとはあまり言えな
かった。
するとジュジュも当然のように彼の横に腰をおろす。
「……!」
ぴったり寄り添ってくる彼女に、フィールは顔にこそ出さなかったが内心慌てていた。
しかしジュジュはそんな彼の心情には気付かない。小さく咳払いをし、座った勢いで口を開く。
ここで黙ったらまた切っ掛けを失ってしまうと思ったのだ。
「あのね……あたしって……言い方がちょっときつい、みたいだから…」
「う、ん?」
あまりに近距離で腕と腕とが接している。
服の上から感じる彼女の感触に、心臓に落ちつけ、と念じながら彼は相槌を打った。
161 :
156-6:2007/11/12(月) 08:22:46 ID:ss9oajDr
続きを待って横顔をみつめているとその頬がほんのりと紅く染まっていった。
それを自覚しているのか、彼女は顔を抱えていた膝の中に埋めてしまう。
いつまで待ってもそのままでいるのでフィールは細い肩に手をやり顔をのぞきこんだ。
「ジュジュ?」
「きゃあっ!」
激しい反応に声をかけたほうも驚く。
「ど、どうしたの?具合でも悪いのかい?なんだか赤くなったり、顔色が……」
本気で心配している彼の鈍さに腹が立って、ジュジュは思わずフィールを詰った。
「だから、そうやってあたしの表情見てれば、本当に怒ってるかどうか分かるでしょ!?
そのくらいわかったらどうなのよ……!!あたしの言う事をそのまんまで受け取るから
傷つくのよっ!」
怒鳴られてフィールは目を丸くした。
こう勝手なことを言ってはフォローどころではない。彼をさらに落ち込ませ、あるいは
怒らせるのがせいぜいだろう。
彼女も直後にそのことに気付き、背中が冷たくなるのを感じた。
今のは違う、そういう事が言いたいのではないと説明したいが言葉が出てこない。困った
ような顔になり、それでもしどろもどろになりながら言い訳をしようとした。
「あ……っい、今のはちが……あたし……」
しかしフィールは彼女の因縁を付けているとしか思えない台詞にも怒ることはなかった。
むしろその顔は明るさを取り戻している。あの言い方でと驚くが、彼女の真意を理解したの
だろう。大変に遠まわしではあるが、自分の口の悪さを謝っているのを。
「分かったよ……いままで気付かなくて、ごめん」
「あんたと話してると疲れるわ。それといちいち謝らなくていいから」
理解を得てほっと胸を撫で下ろしながらも、つい余計な一言を言ってしまう。
やはり一朝一夕には直らなそうだ。
「僕、鈍いから……ありがとう」
「べ、別に……」
横で顔をほころばせて礼を言う彼にジュジュはぷい、と正面を向いた。
睨むように前を見ているが今はそれが照れからくる表情だと彼にも分かる。
ジュジュは再び膝を抱えるとしばらく考えごとをしていたようだが、ぽつりと独り言のように
呟いた。
「あたし……優しくしろ、なんて言われても、どうしたらいいのかよく分からないのよ……」
二の腕に顔をのせて隣にいる少年を見る。
「あたしが知ってるのは――男を慰める方法だけ」
「え――」
フィールに言ったのか、自分自身に言い聞かせたのか。
丸めていた体を起こしフィールの方へと体を傾ける。
ほっそりとした体を押しつけてくる感触に鼓動が速くなっていくのを感じ、反射的に彼は
上体を彼女から離した。
15歳の彼に異性との必要以上の接近は、うろたえと心が置き去りの反応しかできないからだ。
しかし彼女は逃げる彼の肩を支えに手をおくと、その耳元に顔を寄せる。
「ジュ、ジュジュ?」
「借りっぱなしとか、我慢できないのよ。だから……出来ること、するわ」
耳に触れる吐息に振り向く彼の唇へ、そっと自分のそれを重ねた。
「ん…っ!?」
薄い服ではないのに、肩に置かれた手から心臓へ、彼女の体温が伝わってくるような気が
した。
動悸はいよいよ激しくなってゆく。
フィールには突然の彼女の行動が理解出来なかった。
「っ……ジュジュ!?何を……!」
「言ったでしょ?あたし、慰める方法しか知らないって。……いいから大人しくしててよ」
染まった頬が愛らしく、軽く睨むような目つきで彼を見るさまは誘惑しているようだ。
もちろん彼女にその自覚は無いが。
どれだけ自分の表情が彼を揺さぶるのか気付いていないのだろう。
162 :
156-7:2007/11/12(月) 08:24:01 ID:ss9oajDr
ジュジュは動揺するフィールの体を、自分の方へ向けるようにゆっくりと押し倒した。
再度口付けながらスカーフを緩める。
舌を差し込むと彼の口内をやわやわとなぞっていった。彼のそれと執拗に絡ませる様子は
下半身の繋がりが無くても性交と言えるほど濃密なものだった。
陶然とするような快感に逆らって、ようやっとフィールが彼女の唇から逃れた。
「んん……っは、だ、駄目だ……こんなこと、好きな人とじゃなきゃ……僕なんかとしちゃ
いけない!」
彼は自分に体を密着させるように乗り上がってくる少女の肩を押さえ、諌めた。
怒鳴られたわけでもないのに彼女の体がビクンと強張る。
襟を握った力が弱くなったのに気付き、フィールは彼女を引き剥がした。しかし掴んだ
腕が、肩が震えている。その弱々しさは最前と全く様子が違っていた。
「ジュジュ?」
頭を垂れて彼の胸に手をつき、体を起こす。その彼女の仕草を見、その顔へと目を向ければ、
大きな瞳からは涙がこぼれていた。
「ど、どうしたの?」
慌てて上半身を起こした。
気が強く、およそ涙とは縁遠そうな彼女の突然の異変に焦って問いかける。
フィールにはもちろん涙の理由など、彼女の誘いを断ったことしか思い当たらなかった。だが
そんなことで、ここまで辛そうな表情になるだろうか。
「――っ!」
自分でも驚いたようだ。
唇を噛み、慌ててごしごしと目をこするが、止まらない。
フィールの服に細い腕を伝って滴が落ちた。
「ジュジュ……」
腕を伸ばすと、力の入らない手で掴まれ押し戻される。
「触んないで……。なによ、そんなの……」
彼女の声は心細そうに震えていた。
「あ、あたしだって……そんなこと…分かって、る……こんな……っく、っふ……」
フィールの言っていることは当たり前のことだ。
彼女も以前はそう思っていた。
なのに今は彼に――出会って間もない男にすら体で借りを返そうとしている。
『好きな人と』
頭を思い切り殴られたみたいな気がして、彼女は頭を振った。
今までの自分を否定されて。
ヴィティスとのことに慣れてしまっていた自分を思い出して。
いつの間にか愛のない行為がなんでもない事になっていた自分を知って驚いた。
悲しくて、可哀そうだった。
「やだ……やだぁ……ひっく…こんな、こん、なの……あたし……っ、う、わぁぁん」
顔を覆って泣き出してしまった彼女をどう扱ったらいいのか、彼には分からなかった。ただ
妹にするように細い肩を引きよせて背を撫でてやる。
彼女も力強い腕に抱きしめられて、背中に腕をまわしてしがみついた。
すでにフィールに対して意地を張っていたことも忘れている。
ジュジュは心の澱を全て流しだすように声を上げて泣いた。
彼の手はずっとジュジュの髪や背を宥めるようにさすっていて、彼女の悲しみを打ち消す
手伝いをしてくれた。
もちろん簡単に忘れられるようなことではないが、頼れる腕があるということが、彼女には
心強かった。
「っく……くすん……」
涙も落ち着き、そろそろフィールから離れるきっかけを探していたジュジュが違和感を憶えた
のはその時だった。
163 :
156-8:2007/11/12(月) 08:25:26 ID:ss9oajDr
「……」
彼の胸に押しつけていた顔を起こす。
涙で真っ赤になった目を見られるのも何とも思わなかった。
抱きついてわんわん泣いたことで、彼に対していまさら何か恥ずかしく思うこともなくなった
のだろう。
フィールの顔を覗き込むように首を傾げると、彼は赤面して横を向いてしまった。
彼女に気付かれた、という事に気付いたのだろう。
「ごめん……ちょっと……」
片手で口元を押さえながら空いた手でその肩を押し、体をずらして彼女から距離をおこうと
する。
「あの……ちょっと、離れてもらえる……?」
「どうしてよって、聞いてもいいかしら?」
「……!ごめん、あの……」
本当は聞くまでもなかった。
赤面の原因を体で感じていたからだ。ジュジュの圧し掛かるような姿勢のせいでそのおなかに
あたるのを。
自分の誘いを拒否した癖にとは思ったが、彼女は笑ったりしなかった。生き物の体は異性に
反応するように出来ているのだから。
答えを言い淀む彼に目尻に残る滴を払って少女が微笑みかけた。
「ね、やっぱりしてあげる」
まだ目を逸らしている彼の横顔を微笑ましく思いながら細い指が彼の下半身をなぞった。
服越しにもはっきりと立ちあがっているのが分かる。
「――っ!ジュ、ジュジュっ!」
フィールは焦って彼女の手を自身の下腹部から引きはがした。
ジュジュはと言えば、手首を強く握りしめられているのも気にしない。耳まで赤くなって
恥ずかしがる彼の様子を面白そうに眺めている。そんな状態になった原因は彼女が抱きついた
からだし、そういえばもともとそういう目的だった。
一通り泣いたせいかだろうか。過去のことは過去のこと、そんな風に気持ちがすっきりした
のはジュジュ自身も不思議なくらいだった。どんなに嫌な昔でもやり直すことは出来ないし
今までの経験は経験として、身についたことを活かせるならそれで借りを返せばいい。
もともと頭の切り替えが早く前向きな性格だったのも手伝って、やはり初志を貫徹することに
した。
そうと決めたらあとは困った顔で横を向いている男の抵抗を取り除くだけだ。
「離してくれない?」
彼女の言うとおりにしながらも、彼は念を押すことを忘れない。
「手は離すけど……あの、いいから、本当に……その……」
「どうして?気持いいこと嫌いなの?遠慮しなくていいんだってば」
あけすけな台詞にフィールの顔は一層赤くなった。
顔から火が出そうとはこういう状態かも知れない。
「だから……そういう事じゃないんだよ!ほっといて欲しいんだ!」
「どうして怒るわけ?あんたって変なやつね。なんでそんなに嫌がるのかしら」
彼女は理解できない、という顔つきだ。
「だって、だから……恋人でもないのに、そ、そんなことしてもらったら、後で……気まずいよ」
相変わらず横を向いたままで答える。
彼女の言葉に恥じらう様子はジュジュよりも余程乙女のようだ。
「今さらだと思わない?こんな話をした以上は事実があったって無くたってある程度は
気まずいわよ。それに……だって、どうするのよ、これ。なんとかしなきゃ困るでしょ?」
これ、と言われてフィールは手で顔を覆ってしまった。
指ささんばかりに言われて、もう聞いていられないのだろう。
そんな彼を見てジュジュもうんざりしたような顔になった。
その気になっているけど乗り気でない男を誘うのはこんなにくたびれるのかと思っているのだ。
自分は焦らされているのかもしれないとすら感じていた。
164 :
156-9:2007/11/12(月) 08:26:36 ID:ss9oajDr
「……あたしだってね、こんな話して、恥ずかしくないわけじゃないんだからね!だけど
あんなに泣いたところ見られたから、なんかもう今さらかなって……だからあんたもあたしの
前で恥ずかしがることないわ。お互いさまよ」
指の間から目をのぞかせて聞いている。
戦闘中の彼からは考えられない姿だ。
「だけど…っん」
そっぽを向いたまま、なお反論するフィールの顔から強引に手を引きはがした。自分の方を
向かせると、今度は触れるだけの口付けをする。彼の視界を塞ぎながら少女は許可も取らずに
彼の下穿きをゆるめた。
じれったいやり取りは彼女の性に合わないのだ。
「ジュジュ……!だから――」
肩に手をやったものの、フィールが少女を押しのけるより早く、細い指が彼のものに触れた。
敏感な部分を直接煽られる感覚に、彼の体が引きつる。
ジュジュにはもう問答の続きをするつもりもない。
彼の体を従わせた方が早いと判断した。
「そんなことより……どうしてこんなになっちゃったの……?教えてよ」
ねぇ、と赤い唇が動く。
年の頃より大人びた、彼女の表情が彼の本能を昂ぶらせた。
普段は理性によって包まれている、決して彼女やアルミラには決して見せない部分だ。
「ジュジュ……ッ」
「ねぇったら」
「き、君の……」
直に触れるジュジュの指が押さえつけようとしていた衝動を突き動かす。
付け根から指先でつい、となぞられただけで彼は堪らなくなった。
頂上を親指と人差し指でやさしく揉まれ、フィールの口からはため息が漏れる。彼女の肩を
押す力が弱くなった。
そんな風にされてはもう抵抗も出来ないのだろう。
ジュジュは彼の先端からにじむ粘液を指先に纏わりつかせて動かしていた。上の方だけを
嬲っていた手がその下へと下へと向い、そのまま指を輪のようにするとやさしく扱いてやる。
それはゆったりとしたものだったが、ぬるぬるとした感触が彼からわずかに残るばかりの
理性を奪った。
「……っ」
抗議をすることは出来なくてもやはり意に反して悦ばされる自分を見たくはないのか、
フィールは固く目を閉じて開かない。
彼女はその瞼に口付けると彼の顔に頬をすりよせ、囁いた。
「言ってみてよ」
「君の体が、あんまり柔らかくって……ん…っ」
「柔らかい?……どこが?」
「あ……っ……む胸、とか……?」
彼を追い詰めるジュジュは楽しそうな声をしていた。
フィールは問われるままに答えているが、自分でも何を言ってるのか分かっていなかったの
だろう。直後に自分の発言に気付き一瞬彼女を見ると恥ずかしそうに目を逸らした。
屹立した部分を細い指で慰められて、焦らされながらも導かれていくような感覚。
今の彼を支配するのは愛のない行為に対する罪悪感とそれ以上の快感だった。
「――っ」
声を上げるのを我慢する為かフィールが唇を噛んだ。
そこに隙を見つけた彼女は体を下方へと移動させ、下腹へと顔を近づける。手を添えていた
部分へ舌を這わせた。
「ジュジュ!?」
フィールもさすがにそれには驚いて声を上げたが彼女は意に介さなかった。彼に目を向けよう
ともしない。
ゆっくりと唾液を絡めながら上へのぼってゆく。途中小さく口付ける度に彼の体が揺れ、
いよいよ昂っていくのが彼女に伝わった。
165 :
156-10:2007/11/12(月) 08:30:33 ID:ss9oajDr
先端を口に含んで舌先でくすぐってやる。
さらに口中のものが硬くなるのを感じていたが、それはまだ先のことだと思っていた。
「あ、っ……だ…――ジュジュっ!」
「え?」
小さく叫ぶように呼ばれ、思わず顔をあげた。
その瞬間顔に感じた生温かい感触。
「……きゃ……!」
顔に精を放たれ、ジュジュは顔をしかめた。
目に入ったようで涙を流している。
「い、ったぁ……」
「ご、ごめん!」
フィールは大慌てで手元に落ちていたスカーフで彼女の顔を拭ってやった。
「んっ、んぅ……」
「本当に、ごめん」
彼女はその申し訳なさそうな顔に免じて許してやることにした。
「大丈夫……油断した。でも泣いてばっかりで体中の水分が無くなっちゃいそうだわ」
目尻を拭ってふー、と息をつくと再び彼のものに手を伸ばす。
一度出したせいか多少やわらかくはなっていたが、まだ元気があった。
「ちょ……ジュジュ!もういいよ!」
「もう一回だけしてあげる……なんか負けた気分がするから」
「えっ?」
問い返す声にも応えず、再び彼女は彼自身を口に含んだ。
多分その種の刺激に慣れていないからだろう。
二度目の絶頂もほどなくだった。
「――っ」
「んん……っ、ちゅ……」
彼女も今度はちゃんと彼の出したものを口で受け止めてやった。
だが飲んでやるつもりはなかったようで、やはり先程のスカーフを口に付けるとそこに口中に
満ちたものを吐き出す。
そのまま口を拭って、フィールに手渡した。
「あんた、スカーフはもう一枚持ってたでしょ?そっち巻いてなさい」
「あ、うん」
服を正しながら、いつも通りのジュジュに感心しながら頷いた。
彼の方はやはり恥ずかしいようで目を合わせようとしない。
「ね?」
「うん?」
「気持ち良かったでしょ?」
彼女の直接的な言葉を聞いていられず、彼は俯いた。
「あ、う、うん」
「どのくらい?」
「その……凄く……」
その言葉にジュジュは満足そうな顔をした。立ちあがると彼へ手を差し出す。
すっかりいい気分のようだ。
「ありがとう」
「またしてあげよっか?」
いったいどれだけ機嫌を良くしたと言いうのか。それともそれだけ慣れたという事か。
フィールは彼女の台詞に、とろうとした手を思い切り引いてしまった。
顔をぶんぶん横に振って辞退する。
「何でよ……あんたってやっぱり変な奴ね」
不思議そうな顔の少女に、彼は躊躇いのある視線を向けた。
「あのさ」
「ん?」
「そんな……誰が相手でも気にしないみたいな態度、止めた方がいいよ。僕にだってもう……
そりゃ気持ち良かったけど……こんなことしてくれなくていいんだ、ぁっつ!い、たっ」
頬をつねられて、彼は思わず声を上げた。
166 :
156-11:2007/11/12(月) 08:34:07 ID:ss9oajDr
涙をにじませながら相手を見ればまたしても険しい顔をしている。
「あんたって天然なだけかと思ったら、本当にぼけぼけしてんのね。誰でもいいわけないで
しょ!?これでも相手選んでるんだから!誰でもなんて、相手にするわけないじゃないの。
もう少し考えてものを言いなさいよね!本当に失礼な奴!!バカ!」
「ご、ごめん」
謝る彼の頬を一層引っ張る。
「たっ……!」
「ほら、さっさとついて来なさいよ。急いで妹助けなきゃいけないんでしょ!?ちんたら歩かない!」
ひどく立腹しているらしい。フィールに対する自分の態度について謝ったことなど憶えて
いないようだった。
ここまで連れてきたくせに勝手な事を言う。
頬をもったままではサクサク進めないと分かったのだろうか。
ジュジュはいい加減爪の跡のついた頬から手を離してやると、かわりに9と書いてあるスカーフを
掴みアルミラたちの元へと戻って行った。
〜おしまい〜
エロ部が……gdgd気味でスマソ。
次はがあればちゃんとやらせたいと思います。
ではまた。
ゲーム用語使いすぎ
それがなければなかなか良い
ノッポじゃなくて名前で言ってやれよ・・・
レオンがそういうならともかくフィールがノッポ呼ばわりするのは違和感
>>168 名前が長いので仲間内では呼ばないかなと思い、あの呼び方にしました。
とはいえ違和感があるような書き方をして申し訳ない。気を付けます。
変なところを指摘していただけるのはとても嬉しいです。
読んでくれてありがとう。
>>156-11でどうしようもないミスを。
『スカーフ』じゃなくてあれ『マフラー』でした。信じられません、俺orz。
11話ハードでフルボッコにされてきます。
>169
GJだよ!何気にキャラの性格上手く捉えてると思うよ!
カップル以外は憎まれ役にしちゃったり完全外野だったりと悲しい目に遭いがちだが、
ちゃんとママンもママンしてるしw
呼称はアレだな、「中型の敵」でよかったんでないかね。中型=ベラトルだし。
ママン(*´Д`)ハァハァ
ベラトル系×ママン
ありえるか?
( ゚∀゚)0彡゚ レイプ!! レイプ!!
( ゚∀゚)o彡°触手!触手!
( ゚∀゚)o彡°リンカーン!リンカーン!
( ゚∀゚)o彡°鬼畜!甘々!
矛盾してるぞw
鬼畜かつ甘い・・・どんな話なんだろ
アルミラさんなら何でもってだけじゃね?
媚薬盛って緊縛して終始愛と賛美の言葉を囁きつつ失神するまで優しく快楽責め、
とゆーよーなこじつけ案しか浮かばない>鬼畜甘甘
甘さがあったら鬼畜ではないよな
>>180 勿論それはアルミラさんが責めなんだよな?
ママンすごく冷静に責めそうだなw
それがたまらないのですよ
( ゚∀゚)o彡°甘々!甘々!
ドMの俺のためにドSのアルミラさんが(ry
187 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 12:11:44 ID:WlB9fMPo
>>183 想像したら激しく興奮してきたわけだが、責任を取ってもらおうか
>187
踏んじゃったじゃないか。マジ勘弁しろよ。
以前うっかり行って激萎えしたんだぜ。1年経っても傷が癒えないんだぜorz
石を投げりゃツンデレDQNに当たる昨今なのに、
どうしてママンをわざわざ性格改悪して貶めるのかと小一時間(ry
>>188 俺は基本的にジュジュハァハァなんだ。
すまん。
>>191 ならばジュジュを想いつつ冷徹ママンにいたぶられる流れでGO
無理矢理与えられる快感の中でジュジュを呼んじゃって
自分の気持ちに気づく鈍ちんフィールが思い浮かびました。
お、俺は間違ってますか?
>>192 あんなに優しいママンを冷徹になんて想像もつかねえョ。
どっちかって言うとアマンアマンなママンのSSキボン。
>>193 間違ってないので皆の幸せのために文章に残s(ry
文章にして後世まで残すべきだな
年上のお姉さんによるパイズリと足コキは男のロマン
保守
>>197 去年の時点では、とにかくアルミラが彼女に明白な好意を持ってるキャラの前で露骨に自虐してみせて、
そんなことないのにーと相手がもやもやして終わるシチュばっかり馬鹿の一つ覚えの如く繰り返してた。
何よりムカつくのが、ゲーム本編でフィール達に見せてるママンぶりは、全て必要に迫られての演技という設定。
彼女の心の闇wは誰にも救えないんです、救えたのは死んじゃったカインだけなんですっ!・・・だとさ。
不幸萌えというか、不毛な快楽スキーなんだろう。
興味持ったんなら行ってみれ。
>198 だな。間違えた。
ってゆーか、こんなこと書くべきじゃなかった。
今更遅いが、見て気分悪くした人スマソ
>>201 いや俺が質問したのが悪かった。
そこのSS読んだけど、どの辺が改悪かよく分からなくて。普通に普通のアルミラだよな?と。
あんまりものを考えないで読むんだけど、違和感なく読んでた自分も変な解釈してるの
かと思ったんだ。それを知りたかった。
パロディって妄想の産物だし、それが
>>201の考えるアルミラさんとは違ってたってことかな。
ちなみに俺は頭を使わないので見たままってか、ママンはゲームのまんまのママンなんだろな
と思ってる。なんかお父さんみたいな。
質問に答えてくれてありがとう。
そんなことより、>193の後フィールは許してもらえるのかな、
それともそのままアルミラさんに頂かれちゃうのかな?
何となく、襲いながら性教育も施しちゃうアルミラさんが思い浮かぶのだが
「フィール、こんな時に他の女の名を呼ぶのは感心しないな」
「だめだ、アルミラ……これ以上はっ……!」
「お前の体はそうは言っていないようだぞ、ほら」
「――っ!」
慣れた手つきで少年の下半身を慰めながら、彼女は真面目な顔で提案した。
「折角だ、この際男女の性愛についてお前にレクチャーしてやろう」
「えっ!?」
「女の扱い方は覚えておいて損はないぞ」
「ええっ!?」
「いざと言うときのために……ジュジュが好きなのだろう?」
「そう、僕……そうみたいだけど、アルミラの言うことは間違ってるよ」
「いいや、間違ってない。こういうことは年上の異性に教わるものだ。どんなふうに触れれば
効果的に相手の抵抗を削ぐことができるか、私の言う通りにやってみろ」
「で、でも、合意の上なら抵抗されないんじゃ……?」
フィールは青い顔をして首を横に振った。
それに対してアルミラはうんうんと頷いている。
「合意であっても抵抗するのが女と言う生き物だ。さ、まず私を優しく抱きしめてみろ」
「アルミラ、その前に、手を……し、下から手を離して……!」
こうですか?わかりません!!><
いやもうこれは続きを書いてくれるしか
>>187踏んじゃったじゃn
そこはアルミラの性格改悪より自分の気に入らないカプものを
日記で粘着質に叩く管理人の性格の悪さでトラウマになった俺
まあまあ・・・もう、アドレス貼った奴が悪いでFAにしようじゃないか。
気分悪いことなんて忘れちゃえよ、な?
トラウマはここで萌話して癒そうぜ。
>>204 みんなのトラウマを吹き飛ばす為にも続きをたのむ!!
ヴォロにボロボロにされる
萌えと言えばやはりドロシーのトト服につきると思う
しかしあれ背中ジッパーか?
俺が確かめてくる
中に何を着てるかも頼む
>>204の続きを。
アルミラ×フィール投下します。
注意:前編
今にも泣き出しそうなフィールの声に、アルミラはようやく彼の下半身から手を離した。
彼の足元に跪いていたのを、椅子に両手をついて立ち上がる。
「ほら……寝台にいこうか」
彼はわずかな躊躇いの後、差し出された手をとった。
廊下に足音が聞こえノックの音に返事をすると、顔をのぞかせたのはまだ若いこの家の
主だった。
「アルミラ、今いいかい?」
「ああ、なんだ?」
「あのね……あれ?レオンは?」
二人の部屋の入口に立ったまま、彼は室内を見回す。
「ヴィティスのところだ」
「またかい?ちょっと飲みすぎなんじゃないの?」
非難するような声に彼女は肩をすくめた。
その様子からすでにアルミラもレオンに同じような注意をしたことがうかがえる。
「もしかしたら酒を飲みに行ってるんじゃなくて『接客業をするヴィティス』を見物に行って
いるのかも知れんぞ」
ありえる話にフィールは小さく吹き出した。
それほど長く一緒の時間を過ごしたわけではないが、確かにヴィティスがにこやかに笑う
ところは想像がつかない。
しかし昔からの知り合いがそんなところを毎晩のように見に来ていたら、彼としては煩わしい
のではないだろうか。
「お酒なら家で飲めばいいのに……用意してあるんだよ。二人とも好きみたいだから」
「何?」
アルミラが珍しくそそられたような表情をする。
そんな彼女を微笑ましく思いながら彼は自分の用事を思い出した。
「良かったら持ってこようか?飲みながら僕の話を聞いてよ」
「……ああ、ではそうさせてもらおうかな」
ちょっと待っててね、と断ると、アルミラがまだかと思う頃に戻ってきた。
「お待たせ、肴の用意してたら時間がかかっちゃって」
盆を部屋のテーブルに置くと、彼は遠慮なく一対の椅子の片方に腰かけた。
アルミラも続いて腰を下ろす。
「肴まで」
感心したような声に、フィールは頭をかいた。
「そんな大したものではないんだけどね。……買った時に教えてもらったんだよ。ほら、僕は
まだお酒飲めないし、実際飲む人が食べてみないと……どうかなぁ。味見てくれる?」
「教わるって誰に」
「ヴィティス」
答えながら彼女の持つ酒杯へと酒を注いでやる。
「すまない」
アルミラは頂きます、と一度味を確かめるように舐めると、ひと息に杯を空にしてしまった。
口をあけて眺めている少年に気付き、言い訳をする。
「いや、のどが渇いていたから」
「アルミラ、強いんだね……」
『レオンが飲むのなら強めのほうがいいだろうな』というヴィティスの言葉を思い出し、
フィールは感心した。
「そうでもない。甘口だから飲みやすいんだ。レオンにはかなわん」
「ふぅん……そういうものなのかな?」
自分には分からない感覚に首を傾げながら、彼はもう一杯と注いでやった。
「お前も飲んでみたらどうだ。早すぎるという事はないと思うぞ?」
なみなみそそがれた酒をフィールの前に掲げて見せる。
「んー……そうだね。でもいいよ。もっと大人になって本当に飲みたくなったら二人の仲間に
入れてくれるかい?」
差し出された酒杯に首を振ると少年は一緒に用意してきたお茶に口をつけた。
「お前くらいの年頃だと、多少悪いことでも何でも試してみたくなるものだと思っていたん
だがな……冒険するのは嫌いか?」
自分の少女時代を懐かしむような顔に、フィールは頷いた。
「実はね、以前舐めてみたことがあるんだけど、あんまり美味しくないなぁって。もう少し
大人になったら味が分かるようになるかな?」
「ああ、それはあるかもしれんな。成長すれば味覚も変わる。煙草が好きになったり――」
彼女の例え話にフィールは苦虫を噛み潰したような顔になった。
「僕煙草は嫌いなんだ。あんな煙を口から吸ったり吐いたりすることの何が楽しいんだろって
思うよ」
「楽しいんじゃなくて美味しいのさ。……吸ったことが?」
「ううん、無いけど。周りの人の煙が嫌いなんだ」
とりとめのない話をしてるうちに大分経った。酒瓶の中身はそろそろ空に近くなっている。
アルミラは二人掛けの椅子に半分寝そべるような形で座り、ひじ掛けの一方に頭をのせると
もう一方に組んだ足を行儀悪く投げ出していた。
「ふふふふふ」
「アルミラ?」
辛口の干し肉の作り方について語っていたフィールは思わず彼女の名を呼んだ。
あまりにもらしくない笑い方だったからだ。
嬉しそうに目を閉じてなおも酒を口元に持ってゆく。
「ふふ……久し振りだ。こんな晴れ晴れした気分で酒を飲むのは。お前の作ってくれた肴も
美味しいし。幸せとはこういうことを言うんだろう……いい気分だ」
うっとりと言ってまたあおる。
あまりのペースの速さにフィールが思わず注意した。
「アルミラ、飲むのが速すぎるよ。もっとゆっくり飲んだら?」
「フィール」
「なに?」
「お前のおかげだ、みんな。我々が神の支配から脱することが出来たのも、こうやって
とりあえずの居場所を得て美味しく酒を飲めるのも……」
「なんだい?いきなり」
彼女のしみじみとした謝辞にフィールは恥ずかしそうに俯いた。
「別に、そんなの……僕に出来ることをしただけだし、僕だって皆の協力がなかったら
テオロギアにたどり着くことさえ出来たかどうか分からないんだ。そんな風に褒められると
困るよ」
「照れることはないさ、みんな本当のことだ。感謝してる……。お前には何でもしてやりたい
気分だ」
「気持ちだけ受け取っておくよ」
「どうだ、歌でも歌ってやろうか?」
あー、と喉に手をあてて発声練習を始める彼女にフィールは目を疑った。
こんな真夜中に歌を歌おうとは。気分がいいにもほどがある。
「アルミラ、酔ってるのかい?」
「酔ってなどいないさ」
よどみなく答えるが、言っていることが酔っ払いの決め台詞では説得力が無い。
「酔ってるよ、びっくりするなあ。……もう寝よう。これ、片付けるね」
散らかったテーブルの上を手早く盆の上にのせはじめた。
「まて、一口だけ残してもしょうがないだろう。責任もって私が始末する」
フィールの手から瓶を取り返すとすべて自身の持つ酒杯にあけてしまった。
「これでお終いか……」
ぽつりと聞こえた呟きにフィールは微笑んだ。
心底残念そうな言い方が珍しくも可愛かったのだ。
実際彼女がそんなに酒が好きだとは思っていなかった。
こんなアルミラが見られるのなら、またレオンのいない時にでも(彼がいるとアルミラが酔う
前に瓶を空にしてしまうから)お酒の用意をしようか、などと考えていると、不意に名を
呼ばれた。
「そういえば話があったんだろう?」
フィールも既に忘れていたというのに、よく憶えている。やはり本人の主張通り酔っては
いないのだろうか。
しかし今から話を始めるには時間が遅すぎた。
「いいよ、また今度で。もう今日は寝よう」
「フィール」
「何?」
まだ彼女は酒杯を傾けている。名残惜しそうに飲む様子はやはり酔っているようにしか見え
なかった。
手招きされたのに立ち上がって彼女の横へと屈みこむ。
さらなる手招きに何だい、と顔を寄せるとアルミラは彼の肩に手を回してきた。
「え?」
不思議に思う間もなく唇を押しあてられる。
温かな感触の隙間から流れてきたのは頭がくらくらするような酒精分だった。
「――!」
反射的に彼女を押し飛ばすようにして離れたが、アルミラの声は彼の反応を楽しんでいるよう
だった。
「ふふ、美味いだろう?」
「アルミラ!」
「そう怖い顔をするな」
ふざけるにもほどがある。
酔っ払い相手に怒ってもしょうがないと思いながらついフィールは顔をしかめた。
腹が立つのはあんまり驚かされたからだ。
「だから……美味いとか不味いとか、僕にはまだ分からないんだってば」
「そうか?残念だな」
彼女はくっくっとまだ笑っている。
ひじ掛けにのせていた脚を下ろし奥へ寄ると空いた座面を叩いた。
「フィール、隣に座れ」
「え?」
今度は何だと思いながらも指示通りにするあたり、彼はやはり素直だ。
「何だい?」
「いいことをしてやろう」
「……?」
眉をひそめ疑問いっぱいのフィールに何の断りもなく下ばきに手を伸ばしてきた。
「わ、――ア、アルミラ!?何する……!!」
当然その手を押さえ抵抗する少年に、彼女は逆に驚いた顔になった。
「なんだ?手を離せ」
「こっちの台詞だよ!何するのさ!!」
「フィール、落ち着け」
「僕は落ち着いてるよ!」
動揺して大きな声になるのをアルミラが諌める。
フィールは首をぶんぶんと横に振って、それどころではないという状態だ。
「声が大きいぞ」
「だって、アルミラが変なことするから……手を放してよ!」
彼の抗議にも相変わらず冷静に返してくる。その冷静さがかえって怖いとフィールは感じて
いた。
「気分がいいんだ」
「そうみたいだね。そりゃ、あんなに飲んだんだしそれは分かるけど、でも」
「嫌味をいうな――だからさ」
「だから!?」
理由にならない理由にフィールはまたも大声をあげた。
酒は人をおかしくする。
あのアルミラが何というざまだとさすがに彼も呆れた表情を隠せなかった。
酔っ払いはどうしようもないのだと再確認する。
自分はお酒を飲めない方がいいかもしれないとも。
「そういうことは、その……だから、そう、レオンにしてあげなよ!僕は遠慮します!」
「お前は生娘か――っと。これではまるで男の台詞だな」
彼の態度に嘆息し、次いで思わずもれた自身の言葉に苦笑する。
ずい、と横にいる彼に上半身を寄せ逃げ道を断つとその額に小さく口付けた。
肩を縮めるようにしている少年を見下ろし前髪を梳くと、そこにも唇を落とす。
「こういうことに興味ないのか?」
「きょ、興味、興味ってそんな」
こういうときにも適当な答えを返せない性格だ。
酔っている(ように見える)、明日覚えていないかも知れない相手にも真面目に答える。
「そりゃ……興味はあるよ。男だし。でも、恋人以外の人とそういうことするっていうのは
僕は」
「そうか。私はあまりこだわらない方でな。恋愛感情のありなしでこうした行為を割り
切れるか、と言うなら私は割り切れる方なのだろう――経験は?」
彼は顔を真っ赤にしたまま答えない。
「フィール」
重ねて問われ、少年はやけっぱちのように答えた。
「な、ないよっ」
「そうか」
満足そうに笑うとアルミラはいっそうフィールへと体を密着させた。
彼は間に腕を置いて拒否しようとしたが、柔らかな胸が押し付けられる感触に耐えられず、
その手をどけてしまう。
俯く顎に細い指がかかれば、やはり口ではどうこう言っていても好奇心が勝ったのだろう。
それ以上逃げることなくただ視線を横にずらすだけなのに、アルミラは易々と彼の唇を奪った。
「……っん……は……」
軽く舌を侵入させただけだがゆっくりと離した唇からは唾液がこぼれ、フィールの濡れた
口元に彼女はもう一度舌を這わせた。
「ん」
そのまま頬にも口付ける。
「どうかな?」
「き、気持ちいい……けど」
なかなかに葛藤があるのだろう。
少年の潔癖さと年相応の好奇心の強さに微笑みながら、アルミラは再び彼の下ばきに手を
伸ばした。
すると途端に彼の手がそれを阻む。
彼女は首をかしげた。今の様子から彼は自分を受け入れたと思ったからだ。
「どうして嫌がるんだ?」
やはり答えは返ってこない。
アルミラはため息をつくともう一度顔をよせ唇を重ねた。
彼もそれには抵抗ないのか、少し顔を引いた他はとくに逃げる様子もなく彼女の舌を受け
入れる。
フィールにゆっくり圧し掛かってゆくと、力の緩んだ手を強引にどけて彼の下半身を露わに
した。
「――ッ!」
その体勢から彼がアルミラを振りほどけないうちに、少年のむきだしになったところに手を
伸ばす。
密着する女の体にも口付けにも案外鈍いのか、それとも意志の力だとでも言うのか。
フィールのそこが意外なほど反応が薄かったのにアルミラは驚いた。経験がなければこうした
刺激には弱いものだと思っていたのだ。
それでも手を触れればたちまち屹立し、ある程度の敏感さを彼女に主張する。
彼の口を塞いだまま撫でるようにその先端を擦った。
「ん……っ」
堪らないのだろう。重ねた唇から吐息をもらし体が大きく揺れたのに、アルミラは満足した。
「ふふ」
首筋へと顔をずらしちゅっと吸いつくように唇を押しつけながら、手は根元から竿の部分へと
休むことなく動く。
始めのうちは掌全体を使って少年のものを扱いていたが、すいと彼から離れ床に膝をつくと
躊躇いなくそれを口に含んだ。
「な……ア、アルミラっ!」
驚いたのも束の間、フィールは先程とはまた違う、しかも強烈な刺激に息をのんだ。
「あ、っ……あ……!」
眉をひそめるさまから性の悦びに流されまいと抵抗する意志が見える。
「や……だ、アルミ、ラ……っ」
それでも足元に膝をついている女は手を引くということをしなかった。
ねっとりと絡みつき舌先でなぞっては輪郭に沿って舐めあげる。口全体を使い吸いつくように
して彼をさらなる高みへと追い詰めた。
間断なく襲ってくる快感の波は本心に反して彼の体を悦ばせ、声をこらえるのに唇を噛まなく
てはいけないほどだった。
くちゅくちゅと淫らな音に紛れて椅子のきしむ音がする。
直後、慣れない粘膜の感触と巧みな舌使いによって達した証が、微かな声と共にアルミラの
口へと吐き出された。
「……ュジュ……!」
彼の口から出た言葉にアルミラは一瞬動きを止めるが、白濁したものを飲み込むとさらに
先端を絞りあげるように吸った。
「ん、んっ……もう……アルミラ…ッ!」
自身から引きはがそうとするフィールの手に彼女は意外にも素直に従った。
しかし口元を拭うと体を起こし、彼の額をぴん、と指先で弾く。
「フィール、こんな時に他の女の名を呼ぶのは感心しないな」
〜つづく〜
ではまた。
アルミラ×フィールきたああああああああああああああああああああああ
待ってましたよGJ!!11!1!!!1!
GJ!!
こんないいところで続きとは、全裸待機するしかないじゃないか!!
これくらいしておけ
つ手袋
>>221 GJ!!
アルミラさんに責められるフィール(*´Д`)ハァハァ
二人使いの大きな寝台へと少年の手を引くとその重みに拒否する気配を感じ、アルミラは彼を
振り返った。
「どうした、寝台でするのが嫌なのか?」
「ち、ちが……」
彼女のあけすけな言葉を否定しつつもフィールは突っ立ったまま動こうとしない。
怖気づいたのだろうか。
「あの、レオンが……」
「――ああ!」
すでに真夜中を過ぎている。いくらなんでもそろそろ帰ってくだろう。
すっかりそのことを失念していた彼女は顔を赤らめてもじもじしている少年に、顔をよせ
囁いた。
耳朶に触れる熱い吐息に思わず彼は目をつぶる。
「じゃあお前の部屋に行こう」
「え……」
「いいだろう?」
秘密の共有を楽しく思っているような悪戯っぽい微笑み。彼女は断られることなどないと
確信しているようだ。
彼女の判断は大抵正しく、そして今回も正しかった。
フィールの寝室は家の主の部屋にしては少し狭い。
狭いと言っても先の部屋に比べればの話で、子供が使うには十分な広さだ。
アルミラとレオンが一室を借りるという話になった時に一揉めあって、それは主寝室を誰が
使うか、というものだった。
二人は自分たちは居候だしそんな広い部屋などとんでもない、フィールの使っている部屋でも、
寝られれば居間だって文句はないと遠慮したのだが、二人一室で良いというアルミラの言葉に
(フィールは二人の関係に納得しつつも驚いた顔をしていた)無理やり支度したのだ。
余っているのが主寝室と書斎だけでは他に選択肢がなかったとも言える。
自分が主寝室に移って元の部屋を空けても二人で使うにはさすがに狭いし、まさか居間に
寝起きさせるわけにはいかないからと、遠慮する彼らに強引に寝間着や部屋履きを与えて
押し込めた。
子供部屋と言ってもあつらえてある家具は大人になってからも十分使えるような物ばかりで、
それは寝台も例外ではなかった。
15歳の割に身長の高いフィールが横になってもきつさを感じることはない。
アルミラは先にその寝台へ座るとやはり隣に腰掛けるようフィールに促した。
ぎこちない動作で少年が言われた通りにすると彼女が口を開く。
「さて」
隣の肩がびくんと揺れ、膝の上で握っている手に力が入るのが分かった。
彼のあまりの緊張ぶりに上からやさしく手を包み込み、頬に口付ける。
「力を抜け……そうだ」
フィールはどうしたらいいのか分からないらしく正面を向いたまま動かない。
目は開いていても物を映していなかったのか、彼女が顔を覗き込むとわっと言ってのけ反った。
可愛らしい反応に思わず微笑む。
「ふふ……いいか、手が触れたらそっと握り返せ」
「あ……――う、うん」
「そうそう。相手が嫌がっていれば触れた瞬間にさりげなく離されるからな。まあお前の場合、
こういう状況になる相手は恋人に違いないからそう仮定しようか。こうして」
彼の手を持ち上げその指先に唇を落とす。
「キスをしてもいい」
「……」
「緊張してるな」
「うん……凄く、ドキドキしてる」
少年の視線が自分の口元にきているのが分かり、彼女はわずかな興奮に唇を舐めた。
手を下げると両手で愛おしそうに指の一本ずつに触れてゆく。
まだ少年でも男だからだろう。やわらかさの残る彼の手はアルミラのものより一回り大き
かった。
「触れ合う、と言うのは大事だ。頭を撫でられるだけでも悲しい時には慰められるし、痛い
ところにあててもらえば痛みが軽くなる。心の問題だな。特に女性は精神的な部分を重視する
から、ことに及ぶ前にはじっくりと相手に触れてやるのがいい」
そこまで言って顔を横に向けるとフィールの真剣な視線にぶつかった。
彼はたちまち頬を染める。
アルミラはそんな彼に内心ほのぼのしながら撫でていた手を本人へと押し返した。
「実践だ」
喉を鳴らすのが聞こえた。
「え……っと」
フィールは体をアルミラの方に向け、されていたように彼女の手を取った。
まるきり同じことをして返すのかと思ったら上半身をさらに寄せて薄桃色の髪に口付けてくる。
さらさらと髪を梳きながらこめかみや頬にも。
なかなかに応用がきくと感心しながら、アルミラはそれでも一言付け加えた。
「褒め言葉を口にしながらだと攻めやすい。そんなに大げさなことでなくていいんだ。そう、
間違っても絶世の美女だなんて言ってはいけない。逆に馬鹿にされたと思われるかもしれない
からな。……本当にそう思っていてもだぞ?」
フィールは自分が感じた事は素直に言ってしまうタイプだったので一応の念を押した。
「ささやかなものを連ねた方がいいと私は思う……が、どの辺までがささやかかは人それぞれ
だな」
途端に彼の手が止まり、視線が宙を泳いだ。
「難しいね……」
「それは私に褒めるべきところが一つもないということか?」
面白そうな顔にフィールはぶんぶんと首を振った。
「違うよ!そうじゃなくて……考えすぎちゃうんだ、多分」
「こんな時に褒め言葉で悩む男はいないぞ。雰囲気がぶち壊しだ」
まったくからかい甲斐がある。
笑いをこらえるのに結構な努力をしながら、彼女は少年に寄りかかった。
そろそろ沈黙が苦しくなってきたと思う頃、やっとフィールが口を開いた。
「ア、アルミラはさ」
「うん?」
「女の人の割に背が高いけど、体重はすごく軽いよね」
アルミラは天を仰いだ。
本人は褒めているつもりなのだろうか。古来から女性の体重について言及するのは禁忌だと
決まっているというのに。痩せていると褒める場合でもだ。
呆れたを通り越して我慢できないほど可笑しくなってしまい、とうとう吹き出してしまった。
彼女が肩を揺らして笑うのは本当に珍しい。
いつもより感情表現が豊かなのはやはり酒のせいだろうか。
「あぁ……まったく、お前には参るよ」
目尻に浮かぶ涙を見て彼は頬を膨らませる。
「笑わなくても」
「ほらそんな……子供みたいな反応――」
するな、と続けようとしたところ彼の顔が迫ってきた。
最初からそういう話をしていたのというのに、いきなり積極的な少年に彼女はつい顎を引いて
しまう。
反射的に閉じた瞼に湿り気を、頬に手を感じた。
瞼と言うよりまつ毛をなぞってゆくそれはちゅっと音をたて端に滲む涙まで吸い取っていく。
眼帯の上へも少年の唇を感じ、目を開けばにっこりと笑っている彼を見てアルミラは思わず
感嘆の声を上げた。
「お前……その笑顔だけで女の子の一人や二人は簡単に脱がせられるぞ」
「え?」
邪気のない、何故か安心してしまうような。
「なんでもない」
彼女はそっけなく答えると了解も取らず少年の上に腰かけた。
と言ってもまさか初心者に跨ったりはしない。足を揃えて横向きにだ。
まだ細さの残るフィールの首へ両腕を回すと胸が目の前に来たのに耐えられないのか、彼は
ふいとそっぽを向いてしまった。
それでも彼女の腰に腕を回してのっている体に安定を求める。
「どうだ、こうしてみると結構重いだろう?」
当たり障りのない話にフィールは目線だけちら、と彼女に向けた。
「そうでもないよ。だって僕より背が高いのに」
「それはまあ……なんだろう、筋肉の量が違うからかな?」
彼女は首を傾げると改めて自分の腕を眺めた。
背が高くても女の体だから肩幅も狭いし、厚みもない。フィールよりあると言えるのは身長と
胸囲くらいなものだ。
「そうかも知れないね。僕と違ってやわらかいし」
回した手や腿に感じる感触について言っているのだろう。
胸に顔をぶつけないようにか少し頭を引いて彼女を見上げる。
「触ってもいい?」
彼女は求めに応じてわずかに上半身を引いた。
フィールは首に掛けられていた腕をとると目の前に持ってきて、しみじみと眺める。
細い手首から肘へ向かって腕の内側に指先を往復させるとそこへ唇を落とした。
「やわらかくて気持ちいい……それにとても色が白いよね」
「ふふ。白いのはいいが跡が目立って困るんだ」
「跡?」
「そう、キスマークが。……つけてもいいぞ?」
彼は困ると言いながら許可を出すアルミラに不思議を覚えながら、口では違うことを言った。
「ん……つけ方知らないんだ」
特に恥ずかしくもなさそうに首を振る。彼にはあまり見栄を張りたいという欲求がないの
だろう。
「では教えてやろうか?」
「うん」
「返事ははい、だ。……先生と呼べ」
「はい、先生」
素直な返事にまたも彼女は吹き出した。
「くっくっ……どうしてそんなに素直なんだ」
お手本だ、と言ってフィールの顎を指先でついと上向けると唇をわざと外して口付ける。
そのまま耳の少し下へと吸いついた。
「は……どうだ、これがキスマークだ」
「アルミラ、でもここじゃ僕には見えないよ」
何となくほどの感触はあったのだろうか。
鏡で見てみようか、などと言いながら顔を反らして彼女の触れたあたりを指で探っている。
「ふふふ。吸えばいいんだ。こうして――っ」
人差し指をあて唇をわずかにすぼめたところに、フィールが隙ありと唇を塞いだ。
これまで学んだことを試すように舌が薄い唇を舐めてゆく。下唇から上へと移ってゆくと
中から伸びてきた彼女に絡めとられ、口中へといざなわれた。
初めて感じる他者の口の中は温かく唾液でぬるついていて、酒の気配などとうに無くなって
いるのにどうしてかまた頭がくらくらした。
何度も離れては口付ける。
アルミラの頬が上気しているのは酒のせいではないと彼にももう気が付いていた。
すっきりとした背中に手を回すと、体を後ろへ回すようにして彼女を寝台に横たえる。
わずかに朱の差した頬を指の背で撫でた。
「えっと……あの、先生。こんな感じ……で?」
「上出来だ」
にっこりと笑う彼女に安心して額へとちゅ、と唇を押しあてる。
「先に進めていい……」
真上にたれる少年の前髪をかき上げ、アルミラは許しを出した。
アルミラの着ている部屋着はゆったりとした長袖の長衣だ。
飲んでいる最中に暑くなったらしく袖はまくりあげ、胸元の釦はいくつか外されている。
横になっていても存在感のある胸に彼はそっと手を添えた。
「やわらかい……」
呟きつつ下から揉み上げる。
掌にある感触を確かめるように何度も動かしていると、薄い布の下から中央がつんと尖るのが
分かった。
そっと指先で捏ねるようにすると小さな声をあげて肩を縮める。
「ふふ……ほら、フィール。キスして……」
乞われるままに口付ける。
「あ……ん、ちゅっ……手は、休めないんだ。胸だけじゃなくて全身を撫でるくらいの勢いで
いけ」
彼の手は言われたことに忠実に動いた。
何度も唇を重ねながら服の上から手を這わせてゆく。
時折ぴくんと引きつるとそのたびにアルミラは声をもらした。
「そう、そうだ。飲みこみが早い……女の服を脱がせる前置きみたいなものだから。それに
こうされると緊張がほぐれる。いきなり剥いでは雰囲気がぶち壊しだし、抵抗される恐れも
あるから外堀は丁寧に、……っ…埋めてゆく方がいい……」
手が再び胸に戻ると彼女の声が途切れる。
フィールは頬へ耳元へと顔をずらしながらゆっくりと釦を外していった。
そこでしばし手が止まる。
「どうした?」
「あの……服は上に脱がせるの、かな」
「ああ」
アルミラは頷いた。
上でも下でも適当にすればいいようなものだが、教えると言った以上は説明するべきだろう。
彼女の服は足首まであるので、その長さゆえに迷ったのかもしれない。
「そうだな、こういう型の服なら下へと落とすのが一般的だろう。相手にばんざいさせて
脱がせるのが好きなら上からもありだが、やはり長すぎるし下へのほうが袖も脱がし易い。
この服の場合も釦を外せば簡単に下へ引っ張ることができる、が」
視界に斜めに映る彼の胸にとん、と手をつくとそのまま腰まで下げていった。
細い指を服の裾にひっかける。
「お前、先に脱がないか?私ばかり裸になるのは恥ずかしい」
「――!ああ、そっか」
恥ずかしさのかけらも感じていないような声だったが、フィールは一度体を起して上着を
頭から抜き取った。
成長途中でまだ細さの残る体。だが仕事柄筋肉は十分ついていて腹筋も引き締まっている。
「下も……脱いだ方がいいかな?」
「私はそれでも構わないが……いや、そうだな。止した方がいいかもしれない。特にやる気に
なっているときは。……乙女は夢を見ていたいものさ」
くすりと笑いをもらし、彼の下腹へと視線を送る。
赤面する彼に顔を戻し声をかけた。
「ほら、続き続き」
自分の方へと手招きする。
「……アルミラこそ雰囲気のかけらもないけど、わざとかい?」
眉尻を下げながら、切れ長の目元に唇を落とした。
公平に眼帯の上へもフィールはちゅっと口付ける。
ふふ、と笑うのが聞こえた。
少年の手が肩からそっと彼女の肌を露わにしてゆく。
手がくびれた部分に至るとアルミラはかすかに腰を浮かせて脱がせやすいよう彼に協力した。
服地が膝を越えて足元に落ち、彼女はそれをつま先で寝台の下へとすべり落とした。
フィールはぼうっと彼女の裸体を眺めている。
「どうした?」
「いや、本当に胸が大きいなぁって……ううん、違う。すごく……アルミラ、すごくきれいだ」
記憶にある限り初めて見る大人の女性の裸に、彼は感嘆の声を上げた。
目に映る体は燭台の灯で温かみのある色に染まっている。
下腹部に見える茂みがどれだけ官能的なことか。
「男の人が触りたくなるの、分かるよ」
なおも思ったままを口にする少年にアルミラはさすがに苦笑を浮かべた。
「……確かにあまり褒められると照れるな」
「茶化さないでよ。……でもなんだか……いいのかな」
「ここまで来て止める気か?それはかえって失礼だぞ」
互いに呆れたような困ったような顔をする。
「だって僕なんかがさ、その……」
「私が言い出したんだから気にすることはないさ」
横に座り込んでいる彼の手を取ると、豊かな胸の上へと導いてやる。
「――!」
布越しとは違う感触にフィールは慌てて手を引くが、彼を掴む手がそれを許さない。さらに
胸へと押しつける。
「五文字以内で感想を述べよ」
「えっ?え――……。や、やわらかい、です」
「これでも欲しくはならないか?」
否――などと、答えられるわけがなかった。
彼女の上に覆いかぶさりついばむように口付ける。
丸い球を二つのせたような胸に改めて手を置くと先端へ向かって揉みしだく。何度も繰り返し
ながらだんだんと力を込めていった。
大きさに関係あるのかは分からないが掌の動くままに形を変え、それでもやわらかく押し
返してくる体に彼は夢中になった。
アルミラの指先も少年の体を探っている。
頬の輪郭をとりながら顎へ、喉仏へとすべらせ鎖骨を指先でくすぐりながら腹筋へとたどり
着く。
「お前もいい体をしてるよ。……樵をしていて良かったな」
「どうして?」
「体力がつくから。テオロギアに向かっているときレオンも感心していたぞ。『あいつ弱音を
吐かねえな』ってな。調子に乗るからお前には言うなと言っていたが」
「言われてもそれどころじゃなかったと思うな……あの時はドロシーを助けることで頭が一杯
だったから」
彼女の手がさわさわと腰を回って背中を撫でた。
引き締まった体が掌に心地いい。
「こっちも十分魅力的だ――やっぱり筋肉の差かな」
「……さっきの体重の話?」
「そうだ……いいか?言っておくが女に体重の話を持ち出してはいかん。どんなに痩せて
いても自分の理想とか見栄とか、まあいろいろな要素が重なって口が重くなる場合が多い。
相手の気分が盛り下がる」
「アルミラも?嫌だった?」
フィールの問いに彼女は横になったまま器用に肩をすくめた。
「私はそのへんはあまり気にしないからな。ただ可笑しかっただけだ」
さっきのことを思い出してまたふふ、と笑う。
「フィール、ほら……もっとちゃんと抱きしめてくれ」
アルミラは背にまわした腕を引き寄せながら注文を出した。
立ち上がっている部分が彼女の体にあたり、気まずさに少年は再び顔を染める。
「そうやってかわいい顔をする……その表情がそそるんだって、お前、分かってないだろう」
彼女はフィールの腰から大腿を撫でながら彼の下ばきを脱がせていった。
最後にはやはり足を使って邪魔な衣服を取り除く。
普通なら行儀が悪いと思う仕草も不思議と色っぽく感じられ、身の内から湧き上がる衝動に
彼はアルミラの胸へ噛みつくような口付けをした。
心のままに両手で胸を掴み、しかし最初に言われたことを思い出して一方を腰の辺りへと回す。
白い肌はどこまでもなめらかで、ほどよく張った部分から脚の先まで何度でも手を往復させ
たくなった。
掌に収まりきらない質量をそれでもまんべんなく揉み上げる。
空いている方を舌先でちろちろと舐める。
「ぅん……あ、ぁっ……」
すぐに反応が返ってくるのが嬉しくて、花のように色づいた山の頂からその麓まで、あます
ところなく舌を這わせ、吸いついた。
「ん……ふ……悪いがもう少しかかるぞ」
少年の口と手が左右の胸を同じほどに可愛がった頃だろうか、フィールの屹立したものを
左手でもてあそびながら彼女が断りを入れてきた。
右手が彼を招き寄せ、耳元に囁く唇がかすかな風を送る。
その間も彼の手は彼女の体から離れることがなく、少年がいちいちアルミラの話をきちんと
聞いていることがうかがえた。
「いいか。唇が触れて駄目な所なんてないんだ。全身を撫でたようにキスを沢山して欲しい。
だが……あんまりきわどい所は避けるんだぞ?」
片目を閉じて見せる彼女に、フィールは返事の代わりに頬にちゅっと唇を押しあてた。
指示の通りに肩や腕、胸元から腰に至るまで、届く範囲へと顔を寄せてゆく。
しばらくしてアルミラは少年の手を自らの秘所に導いた。
茂みへと置かれればしっとりと言うのが控えめなほどの蜜の滲み具合に、フィールは胸がすう、
と大きく息をするのを感じた。
初めて触れる女の花園に緊張するのだろう。
顔を彼女に向けたままで神経を指先に集中させている。
「濡れてる……」
思わずもれた少年の呟きに、彼女は何度目か分からない注意をした。
「だからそう言うことは口に出すものじゃない。責めたいなら別だが」
「責める?」
「いや、なんでもない。もっとちゃんと触って……入口を、ゆっくり……」
言葉のままに温かく濡れた割れ目を指でなぞってみると途中繊毛の流れが切れ、ぬるついた
感触に変わった。そこがすでに彼女の体内であると気が付き、ほんの少し手を引く。それは
この行為が自分の中の彼女を、聖域を侵すような気がしての躊躇からだった。
しかし、さすがにフィールもここまで来て止めることなど出来ない。
ただ彼女に対する憧れや尊敬と、抑えられない欲望への後ろめたさに今さら揺れる自分の
弱さを内心笑うしかなかった。
「ぅん……そう、それでもう少し、上の……そうだ」
小さな突起に気付いてそっとつまむと途端にアルミラの口から嬌声がもれた。
今まで聞いていたのとは全く違った――男を悦ばせる声。
「あぁん……や……!」
溢れる蜜で指先を濡らしたまま、捏ねるように、あるいは扱くようにとさらに刺激を与える。
半ば伏せるようにしていた瞳が潤みをもって少年を見た。
「なか……中も」
物足りないのか、早く先へと進みたいのかアルミラは自身の襞を指先で開くようにして彼に
催促した。
言われるままに蜜で満たされた部分へと指を進める。
迷う心に蓋をして彼女の求めるまま、中を探るように動かした。
そこはぴっちりと閉じているが、内部を潤す液に助けられて少年の指の動きを容易にした。
どうすれば彼女は喜ぶのか。
きめ細かい肌のあちこちに口付けをしながら、フィールは彼女の声や体のわずかな動きで
それを知ろうとした。
「ん、ふっ、駄目……もっと……深く、あ……!」
短く吐息をもらすのを唇で塞ぐ。
彼女の舌がフィールを求めてくる。応えるように絡ませると、やわらかく噛みついてきた。
何故か甘い彼女との口付けは何度しても飽きるということがなかった。
フィールの指が中をかき回すたび、触れ合う大腿から彼女の脚がぴくんと揺れるのが伝わって
きて、彼の昂りを抑えきれないところまで追い詰めた。
「アルミラ、僕、もう……!」
切羽詰まったような少年の声にアルミラの手が彼の顔を撫でた。
指先が頬から顎にきてフィールの唇を求める。
触れただけで離れると彼女はそれとわかるよう膝を立てた。
彼はゆっくりと腰を進める。
口でしてもらった時とは違うが、やはりとろとろになっている部分と密着し動く感触は
堪らなく気持ちが良かった。
「そうだ……少年……」
フィールは思わず顔を上げる。
「ふふ、懐かしいだろう?」
「久し振りに……聞いた……っ」
「……もっと、あぁ……ん……突いて」
彼女の求めに応じて、といきたい所だったがフィールにはあまり余裕がなかった。
アルミラの体があまりに気持ち良かったからだ。
「あっ、あ……ぁ……ん、フィ…ル……もっと、っ!」
抗えない感触。口も、その茂みの奥も、男のものを慰め、あるいは抵抗を削ぐのにこれ以上の
ものはないとさえ感じられた。
恥ずかしさも後ろめたさも、とうに頭から消えている。
下に敷いている女の喘ぎと自分が短く息をついているのだけが聞こえ、暗闇にぽつんと見える
光を目指すように、ただそこだけを求めて彼は腰を打ちつけた。
「―――ッ!」
体の中心を駆け抜けるような快感に、彼は身を震わせた。
「もう少し」
「……え?」
肩で息をしている少年に声をかけるとアルミラはいきなり彼の腰に脚を絡めた。了解もとらず、
器用に互いの位置を交換する。
一瞬で視界が反転し、フィールは目をしばたたかせた。
アルミラは少年を見下ろし目を細める。
「もう少し、だ……私も満足させてもらうぞ」
紅い唇が微笑みの形をつくると下にいる少年に密着して何度も口付けを交わした。
彼の舌に吸いつきやわやわと噛みつけば、繋がったままの部分で彼がまた元気になったのを
感じ、その素直な反応に鼻の頭へも唇を落とした。
「若さというのは何物にも代えがたいものだ」
彼には冷やかされたとしか思えない台詞をはくと、二人分の体液でとろとろになった部分を
ゆっくりと動かし始めた。
彼女の手を付いているところ――フィールの胸も腹も――筋肉がしっかりついているせいか
頼りなさは全くない。
少年は自分に跨って上下、あるいは前後にゆったりと動く女を、波のように強弱をつけて
よせてくる快感に眉をひそめながら見上げていた。
眼前で豊満な胸がゆらゆらと揺れている。
手を伸ばし、つんと尖った所を指先で思うままに弄りまわすと、交わっている部分とは別の
刺激にアルミラは胸を突き出すように腰をくねらせた。
「うふ……ん……んっ」
少年の手が与える快感に負けないよう、中をかき回すように彼女の腰が動く。
自分の快感のみを追求するそれは、だがフィールにも同じように抽迭の悦びを与え、たまらず
彼は声をもらした。
「っ……」
彼の手が動きを止めるように大腿を抑えるがそんなことで止まりはしない。
またも自分を置いてゆきそうな少年に気付き、アルミラは手加減しないまま注文を出した。
「少年……ぁあ……っ、駄目、ダ、メだっ……まだ……」
フィールを牽制しながら確実に自分を求めるところへと押し上げる。
「あっ……や……あぁあ――!」
彼を包み込んでいる部分がいっそう締まり、支えを得ようとする手が少年の胸に爪を立てる。
アルミラの体に引きずられるように彼も再び頂点へと達し、知ったばかりの女の体に再び精を
放った。
脈打つように吐き出したそれは蜜と混じり合いわずかに接合部から溢れる。
「――っ……ふぅ……」
彼女は体を震わせた後倒れこむようにフィールの胸に伏せ、息が整うのを待った。
見れば彼の胸も大きく上下している。
ぎゅうと抱きしめてくる腕に顔をあげ、そっと唇を重ねた。
「フィール……良かった……」
「本当?僕ばっかり良くしてもらった気がするけど……」
「そんなことはないさ。私も十分気持ち良かった」
ふ、といつものように短く微笑んで少年の額に口付ける。
そのまま上にずれるように動いて繋がりを解いた。
「このまま……ここで眠っても?」
「いいよ、もちろん」
彼はこの家で誰より早く起きるから、一緒に眠っているところを見られる心配もない。
彼女が自分の寝台で寝てると知られたら、酔っ払って入ってきた、と答えればいいと思って
いた。
「ふふっ……おやすみフィール」
「うん、おやすみ」
アルミラがもぞもぞと腰に手を回してくる。
甘えるような態度は彼女らしくなく、だがそれゆえ余計に可愛かった。
フィールはもう一度おやすみ、と言って彼女の頬に唇を落とした。
「おはよう……」
朝食の支度をしていると背後から声をかけられた。
声の主はアルミラで、しかし壁に寄りかかる様子はただ事ではない。
フィールはどんな風に顔を合わせればいいのかと悶々としていたが、そんなことは気にする
までもなかったようだ。
青い顔に慌てて彼女のそばへと駆け寄る。
「具合が悪いのかい?」
「フィール……昨夜はすまなかった……反省、してる」
「お、覚えてる?」
「当たり前だ、とも言えないか。あのざまでは」
「そんなこといいよ……大丈夫かい?何か飲む?」
気遣う彼の言葉にアルミラは首を横に振った。
頭を押さえてうなり声をあげる
「駄目だ……完璧に、二日酔いだ。もう少し寝る……。お前のせいにするつもりはないが、
肴が美味かったからつい酒がすすんで……すすんで……ああ、駄目だ…。こんなことを言える
義理ではないが、昨夜のこと、レオンには黙っていてくれ」
「そ、それは勿論」
考える間もなく頭を縦に振る。
そんな話をしたら、ただでは済まないことくらいフィールにも分かっている。
一人の女性を共有してしまったことに、レオンに対しての罪悪感は消せそうもなかったが
もちろんありのままを話す事など論外だった。
「一人で酒を飲んでいたとばれたらしつこく言われるからな。あれはな、それは酒が好きで」
「そっち!?」
〜おしまい〜
それから数日後。
「フィール」
一日の仕事を終えフィールが晩御飯の支度をしているとまた声をかけられた。
「やあ、アルミラ。ご飯がもうすぐ出来るからレオンとドロシーを呼んできてくれる?」
「何を作ってるんだ?」
鍋を覗き込んでくる彼女に、フィールは鍋の中身を小皿にとって差し出す。
「普通のスープだよ。味を見てくれるかな」
「見ろと言われても私達の中ではお前がいちばん料理上手だからなあ……ん、美味しい」
「そう?なら良かった」
素直な感想に満足そうな笑みを浮かべると、彼は目の前に差し出された紙に首を傾げた。
「なんだい、これ?」
「メモだ」
「……何の?」
「読めば分かる」
「ふうん……?分かった」
アルミラの目が鋭さをもった。ぎゅ、と少年の手にメモを握らせる。
「読んだらすぐに燃やすこと」
「燃やす?どうして?」
「もし第三者に見られたら困ったことになるからさ。……分かったか?」
「う、うん……」
フィールは何度も頷いた。
一体何が書いてあるのだろうか。
「先に読んでおけ。もう少し経ってから二人を呼んでくるから」
かさかさと紙片を広げながらもう一口、とスープを口に含んだ彼は、しかし次の瞬間盛大に
吹いてしまった。
「あちっ、あ、あっつ!熱い!水!」
その内容に気を取られさらには驚かされて、それでも水を飲みながら最後まで目を通す。
飲み物を口に入れたのとは別の理由でごくりと喉を鳴らした。
|この間はすぐに眠ってしまったが、本当は行為の後にすぐ寝てしまうのは勧められない。
|前戯、後戯と言うように本当は済んだ後も言葉を交わしたり触れ合ったりするものなのだ。
|することをしたら用は無いという風に受け取られることもままある。
|酔っていたせいとは言え、最後まできちんとできなかったことが悔やまれる。次の機会が
|あったら今度は最後まで『素面で』教えてやろう。
|穴だらけの教え方、悪い見本をして悪かった。
反射的に紙切れを小さく小さく畳んではっとする。
「あ……そうだ、違う、燃やさなきゃ」
鍋の下にほんの少し差し入れただけで瞬く間に燃え上がった。
直後、賑やかな声が聞こえてきた。
「おう、今日のおかずなんだ?肉か?」
「肉、肉とうるさいな……お前は干し肉でもかじっていろ」
「お兄ちゃん、お皿並べるねー」
「ああ、うん。頼むよ」
妹の声に振り返ると、アルミラと目が合った。
彼女はいつものようにうっすらと微笑むだけだったが、その笑みの奥に二人の秘密が見えて
フィールにどっと冷や汗をかかせた。
〜おしまい〜
アルミラさんによるフィールの筆卸キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!
俺はこのSSを読むために産まれてきたに違いない、GJ!!
超GJ、アルミラさんに押し倒される少年(;´Д`)ハァハァ
GJ、アルミラ×フィール待ってましたあああああああああああああああああああ
GJ!!
アルミラさんの責めは最高だな
俺もアルミラさんに筆卸しされてえええええええええええええええええええええ
筆おろしなら俺はジュジュにお願いしたい
帰ったらアルミラが部屋にいない。レオンはどうしたんだろう。
1 気にしないで寝る
2 探しに行く 「フィール、アルミラがいねえ」
3 ドロシーのところに行く
4.ドロシーのパンツをおかずにする
そしてフィールにばれて出て行けと言われる
5.犬っころを襲う
そして逆に襲われる
6.ジュジュを襲う
そしてヴの人にばれて3P
レオンてどんだけw
・・・そーいやとんとレオン絡みのSSを見ないな。
意外に嫌われてるのか?
やっぱりゴツい野郎顔レオンなんかより、ショタ顔フィールだぜ
俺はレオンに陵辱されるアルミラママンのSSを読みたいぜ
レオンが陵辱ねえ・・・
レクスがレクスなだけに、猟奇物っぽくなりそうだな。
ヴィティス×ジュジュの何となくクリスマスぽいもの投下します。
内容:秘密結社テオロギア
注意:舞台はオズレンジャーと同じ現代
正義のマフラーな落ち、エロ薄めです。
来年になるかと思いました……。
256 :
256-1:2007/12/25(火) 02:53:03 ID:TX8b2Qb3
先日、村に新しく小さなレストランが出来た。
営業時間は昼は11時からから3時、夜は5時から10時までだ。
席数こそ少ないものの、食事の量も味も盛り付けも、そして置いてある酒の種類も、周囲の
店に比べると最上と言えるレベルの店だ。
だがしかし、実はこのレストランは秘密結社テオロギアの幹部、三神将が人間社会に潜伏する
ための隠れ蓑に使っている店であった。
もちろん村人にその事実は知られていない。
まさか彼らもこの店の店主、料理人、彼らと共に住む高校生の少女の三人が三人とも村の
子供達を狙い、果てはこの国の支配を狙う秘密結社テオロギアの手先だとは、夢にも思って
いないだろう。
この日の営業は既に終了して、厨房の片付けまでもきちんと終わっている。
二階にある住居部分では居間のソファに腰掛けて一人の少女がお茶を飲んでいた。
そこへ男が入って来る。
「おや……ガルムは?」
居間のテーブルで雑誌を読んでいる彼女に、ヴィティスが声をかけた。
ジュジュは顔を上げると廊下の方を指差した。その先にはヴィティスとガルムの部屋がある。
「あいつ、明日はクリスマスイブだから朝早く……っていうか夜中みたいな時間からケーキ
作り出すからもう寝るって。とっくに部屋に行っちゃったわ」
「ふむ……」
ガルムは仕事に熱心だ。
仕事と言うよりも魔神王陛下への忠誠心に篤いと言うのが正しいのだが、時々それが自覚なく
ずれてゆくことがある。
特に今回のように任務がうっかり彼の趣味と重なるようなことになると、必要以上に力を
入れてしまうらしい。それは彼らにとって本来の目的に添ったものでもあり、ずれたものでも
あると言えた。
今回の話も、もともと彼は嫌がっていたのだが。
「ケーキだと?何故?」
「クリスマスと言えばケーキだろう?」
ガルムの問いにヴィティスは不思議そうに答えたものだ。
この国では既に『クリスマス=ケーキ=プレゼント』の図式が成立している。
折角のイベントだ。彼としては客がこの時期望むクリスマスらしさを提供し、集客を図る
つもりだった。
チェーン店での展開を目指すほど売上を上げたいわけではなかったが、人間社会に暮らす
カモフラージュとはいえ物事はより完璧に、を常に自分に課しているヴィティスとしては店の
経営においてもそれは例外ではなかった。
「べっつにそんなのいいんじゃない。ケーキが食べたきゃケーキ屋に買いに行くわよ。……ま、
やりたいならやってみれば?味見くらいならしてあげるし」
ジュジュの投げやりな応援を受け、大人二人は真剣に24日、25日のことについて話し合った。
ヴィティスは早速彼のために製菓衛生士の免許を(正しくない手段によって)手に入れ、
ガルムは免許の存在にも考えを致すことなく、ただひたすらに試作品を作っていた。
「あんたも用がないならさっさと寝たら?あたしももう寝るし。慣れないことさせられて凄く
疲れてるのよ」
慣れないこと、と言うのは店の手伝いをさせられていることに対してだろう。
少女はここでは女子高生の身分を持っているため、『部活動をしないのならば当然だろう』と
ヴィティスに押し切られ、しぶしぶレストランの手伝いをしていた。
「私はまだ今日の売上をつけないといけないんだ」
壁際に置いてあるPCデスクに座ると早速立ち上げる。
余計な機能を極力省いてあるのか、目的のフォルダを開くまでの動作はとてもスムーズだった。
257 :
256-2:2007/12/25(火) 02:53:59 ID:TX8b2Qb3
ジュジュはそんなヴィティスの背中を見ながらうーんと両手を上にあげて伸びをする。
「ホント、学校行くの面倒なのよね。朝早いし、遠いし、あたし低血圧だし」
呟きを聞き咎め、ヴィティスが口を開いた。
「学校が遠いのは君が制服だけで高校を決めたからだろう。自分で選んだことに愚痴を言う
のはあまり褒められたことではないな」
説教は御免と少女は横を向く。
「それにしても、なんでこんな面倒なことしなきゃならないのかしら。人間に交じって暮らす
なんて……」
「魔神王陛下のご決定に不服が?」
ヴィティスは液晶画面から目を逸らさずに問いかけた。
余計な報告をされては堪らないと、少女は慌てて言い訳をした。
「べ、別にそう言うわけじゃないけど……必要があるのかしら、って」
もともと物事を深く考えない性質の彼女は言われるままに高校生として生活を始めたものの、
その身分を維持するあれやこれやの面倒にやっと疑問を持ち始めたのだろう。
「ここには大きな地下室があるだろう?」
「うん。それが何よ」
「子供を攫って一時的に隠しておくのに都合が良いと思わないか?」
「そりゃそうだけど、隠れ家なんていくらでもあるじゃない」
村にも森にも、それこそそこら中にあるのだ。
もちろんのんきな村人達は全く気が付いてないだろう。
「人間たちと接しその生態をよく知れば、攻略がた易くなると魔神王陛下はお考えなのだろう。
それにオズレンジャーのことがある。いつも敵として現れるだけの彼らだが、今日だって道で
すれ違っていたかもしれない。向こうもきっとただ人の振りをして生活しているのだろうから、
……例えば、あのオズレッドだ。君と年の頃は同じだろう?同じ学校に通っている可能性だって
ある。常にそう言うことに気を配っていれば――」
親切な説明にもあまりの長さにうんざりして口を挟んだ。
「だからって人に身をやつして、人に交じって働くなんて意味分かんないのよ。あたしたち
幹部がわざわざこんなことする必要があるのかって聞いてるの!」
話の分からない彼女にヴィティスは深くため息をついた。
どうも面倒くさいのがいや、という気持ちが話の端々からうかがえる。
「理解する必要はない。君たちはただ命令に従えばいいのだ」
「それってあんたもでしょ!?大体ねえ、いくらあたしたち三神将の中の筆頭幹部だからって、
あんたに偉そうに言われる筋合いは無いのよ。ゲゲルギアと違ってあたしたちは部下じゃなく
同僚なんだから!」
「そうは言っても今は君の保護者を兼ねているのでね。多少は偉そうにもさせてもらう」
彼が言うのは少女が高校生の身分を得た時に保護者役をしたことだろう。
人の世界に紛れて暮らす以上どんなに面倒でも、些細なことでも穴があってはならないと
いうのが彼の考えだった。
大の大人二人が無職でいるわけにもいかないからとレストランを経営しているのも、そのため
だった。
彼はPCでの作業を終えて立ち上がる。
居間の片隅に置いてあった紙袋を持つとテーブルを挟んで少女の正面に腰を下ろした。
「……何それ」
何やらごそごそと取り出したそれはまず真っ赤な色が目につく。そしてまっ白いふわふわの
毛皮のような。
「はっはぁ……あんたサンタのコスプレするのね?」
少女は納得がいったと頷いている。
確かにそういった格好の方が客(特に子供達)には受けがいい。そこまで商売っ気を出さなく
てもいいだろうとも思うが、いかにもクリスマスな雰囲気を味わえてわくわくするのも確か
だった。
「この時期だけのものだからな。お客様も喜ぶだろう」
客に対する姿勢が真剣なのは店主としては当然だが、人と敵対する立場の者としてそこまで
しなくても、と彼女は思う。
それでも口に出しては賛同の意を示した。意見するのも面倒だったのだ。
258 :
256-3:2007/12/25(火) 02:54:51 ID:TX8b2Qb3
「そうね。確かにいいんじゃない?」
「これでケーキを買う気のない男性客を取り込むぞ」
ジュジュは眉を寄せた。
どうして男性客と限定するのだろう。
嫌な予感に窺うような目つきで彼の様子を見ていると、はたして彼が広げたのは女性用の
サンタの衣装であった。
一瞬目の前が暗くなる。
「……それ……誰が着るの?」
「愚問だな。我々三人の中でこれを着られるのは一人しかいないと思わないか?」
「ば……!」
っかじゃないの、という決め台詞を最後まで言うことはできなかった。
テーブルを回って真っ赤な服を手に彼女のそばににやってきたヴィティスは強引に少女を
立たせると、衣装を細い肩のあたりに合わせる。
納得したように頷いた。
「サイズはちょうど良い」
ぽかんと口をあけている少女に一式を手渡すと早速着替えてくるように言った。
ジュジュは無理やり持たされた服を見つめて呆然としたが、受け取ってしまった服を慌てて
相手に押し返す。
ほんの少しだけ可愛いかもと思ったのは内緒だ。
「いっ、いやあよ!なんでこんな恥ずかしい真似……!」
「そんなことを言って。君、さっきこれを出した時は嬉しそうな顔をしただろう。サンタは
好きでも自分が着るのは嫌だと?勝手だな」
「勝手で結構!何とでも言えば!?」
「何とでも?ふむ……」
彼は腕を組んで窓の外を見た。といっても暗闇にぽつりぽつりと明かりがあるのしか見えない
のだが。
しばし沈思したのち、再び少女に目を向ける。
「売上が良ければアルバイト代に君が欲しいものを何でも一つ買ってあげよう。アクセサリー
でもバッグでも何でもだ。君の身分は一応高校生ということになっているし、欲しい物も沢山
あるんじゃないか?」
「えっ……?」
命令だ、の一点張りできたら断固断るつもりでいたのに取引を持ち出され、彼女は言葉を
詰まらせた。
何でも。
一瞬で欲しい物のあれこれが頭の中に浮かんでくる。さっき見ていた雑誌に素敵な服が、鞄が、
靴が、載っていた。
天秤に掛けるまでもない。たった二日の我慢で済むのだ。
何にするかは決めかねたものの、とりあえずの確認をした。厳しい目で男を見詰める。
「ぜぇーったい!に、嘘つかないでよ?」
「二言はない」
「何を買ってもガルムに文句言わせないでよ?」
「彼は自分の出す料理に満足できればそれでいいんだ。他のことにはあまり口を出さないし、
何か言われても君の小遣いで買ったと言い通せばいい」
そこまで話が決まってもまだ迷いがあるのか、手にした服を見て上目づかいに問いかけた。
「当日に着るんじゃダメ?」
「サイズが合わなかったら困るだろう」
その通りだ。
少女は今度は大人しく自室へと入っていった。
暫くして再びドアを開く音がする。
そちらに目を向けるとジュジュが隙間から顔だけを出して彼をうかがっていた。
「どうした。早く出てきたまえ」
服を着て見せるという行為に照れがあり、しかしそれを悟られるのも恥ずかしく悔しいのだ。
少女は出来るだけなんでもない風を装ってヴィティスの目の前に立って全身を晒す。
259 :
256-4:2007/12/25(火) 02:55:55 ID:TX8b2Qb3
「……」
彼の目は真剣だ。
「ど、どう?」
やや俯き、上目づかいにヴィティスを見ながら問いかける。隠しきれない心境が顔色に表れて
いる。ほんのりと染まった頬が愛らしい。
だが彼は変わらずただ睨みつけるような鋭さで彼女を見るばかりだった。
「……」
「聞いてるの?なんとか言いなさいよ」
「ふむ、――ちょっと回ってみたまえ」
手でくるんを回る仕草をする。
えー、と言いながらも彼女は素直に言われた通りにした。
赤いスカート、その縁を飾る白い毛皮が見た目に反してふんわりと軽く広がった。
ヴィティスはそれに満足そうに頷く。
「結構」
「ハイネックのは珍しいわね」
確かに女性物のサンタの衣装は肩のない、胸元が開いたワンピースの方が一般的だ。
ジュジュはバルコニーの近くまでいくと外の暗闇に室内の明かりを映し、窓ガラスを姿見の
代わりに改めて自分の恰好を眺めた。
首元に手をあてる。
そこにもやはり白がやわらかく縁取っていて顎の下をくすぐった。
肘まである手袋も、足首でくしゅっとだぶついた長靴も、今はつけてないが帽子もやはり赤く、
その際はファーが覆っている。ボレロのリボンの先と靴の先端にもそれは丸くついていた。
後ろから声がする。
窓に映ってヴィティスが自分の方を向いているのが見えた。
「胸元が開いているのもいいが冬にはやはり寒いだろうからね。肩が出るのは一緒だが、
上を羽織ればそれも見えないし」
「ふぅん……」
前を、後ろを確認しながら上の空の返事をする。
少女は膝下のスカートをつまみ、丈まで見てから納得したように言った。
「サイズは合っているみたいよ」
「そのようだな。……それによく似合っている」
「え……そ、そう……?」
満足そうな彼の声にも少しの照れを隠してそっけない返事。
きっと褒め言葉に喜べば、彼が調子に乗るに違いないと思っているのだろう。
「ボレロを外してみてくれないか?」
「えっ?」
続いての台詞に小さく心臓が鳴った。
ヴィティスが少女に向かって脚を一歩踏み出すと、何を察知したのか彼女は男の方を向いた
まま、さらに窓際へと後退する。
何となく逃げるような仕草に見えたのだろう。彼は首を傾げた。
「どうした?」
「別に……」
別にと言いながら少女の脚はなおも接近する彼を避けるように壁際を後ずさった。
「上を脱いで見せて欲しいんだが」
「……やだ」
着て見せるのが嫌だという段階はとうに過ぎている。上に羽織っているものを脱ぐだけなのに
何か気に入らないことでもあるのだろうか。ヴィティスはその理由に見当がつかなかった。
「そうか」
彼は少女の拒否に了解したともとれる呟きを発した直後、一瞬で間を詰め少女の目の前に
立った。
華奢な体を壁に挟むようにして顔の両側に手をつき檻になる。
「――!」
突然の接近に思わず肩を縮こまらせる彼女をよそに、リボンの先に揺れるファーを手にとり
尋ねた。
「これを取るだけのこと。何をそんなに嫌がる?」
260 :
256-5:2007/12/25(火) 02:56:45 ID:TX8b2Qb3
「……わかったわよ」
抵抗の無駄を悟ったのか、ジュジュはしぶしぶそれを脱いだ。
肩が露わになる。
ほっそりとした体はあくまで色が白く、縁取りの毛皮と共にクリスマスカラーの赤をひどく
際立たせていた。
だがそれは逆を返せば赤い衣装が彼女の色の白さを引き立たせるということでもあり、実際
ジュジュの肌は雪のように白かった。
眩しいものを見るようにヴィティスは目を細める。
「もう一度まわって見せてくれないか?」
「それはいや」
断られるのを予想していたのか、彼はもうまどろっこいしい真似はせず実力行使に出た。
両手で肩を掴むと強引に後ろを向かせる。
「きゃ……!」
少女の背中を見て彼は眼を丸くした。同時に何故ジュジュがあそこまで上着を脱ぐことに拒絶
の意を表していたのか理解する。
肩をしっかり掴まれながら悪態をつく少女に、ヴィティスは小さくため息をついた。
「信じらんない!ばか!すけべ!!」
「言えば上げるくらいのことはするものを」
背中の薄く開いて下着が見える部分を、彼の手がジ、と音をたてて上に閉じた。
「う、う、うるさいっ!届かないんだからしょうがないじゃないの!」
「だから言えと言っている――閉めてもきつくはないね?」
苦情を聞き流し、再度確認する。
仕事をする上で動きにくい格好は勧められない。彼は必要ならサイズの交換などという手間を
かけることも厭わなかった。
「あ――、うん。それは平気」
少し距離を開いた彼に対し手を前後左右に動かして答えた。
もともと胴体さえきつくなければ肩も空いているし、そんなに動き辛い服ではないのだ。
「ならいい……ほら」
「……?なに?」
「おいで。脱ぐんだろう?」
今度はファスナーを下げてやるということらしい。
しかし彼女としてはお願いします、などと言えるはずもなく、表情を硬くして首を横に振った。
「いい、自分でする」
「出来ないだろう」
『上げることもできなかったのに?』という彼の心の声が聞こえてくるようだが、それでも
あえて頼む気にはなれなかった。
少女は逃げるように自室へと向かう。
ドアを開ける後ろ姿にヴィティスが声をかけた。
「ジュジュ、お風呂は?」
「何時だと思ってるの?とっくに入ったわよ――おやすみ!」
「ああ、おやすみ」
彼の挨拶は勢いよく閉まるドアの音に紛れて聞こえなかったに違いない。
自身も風呂を使うと、ヴィティスは新聞とコーヒーを手に再び居間のソファに腰かけた。
人間社会に秘密結社テオロギアの足がかりを増やしてゆくため、この国で起きていることは
なるべく知っているべきだと彼は考えていた。
そういうことを一時も忘れずにいるあたりが彼を筆頭幹部たらしめるところなのだろう。
つい料理に夢中になってしまうガルムやファッション雑誌を読みふけってしまうジュジュとは、
目的と手段の境目が曖昧になってきている二人とは違うところだ。
30分も経った頃だろうか。
小さな音に新聞から顔を上げると、ジュジュの部屋のドアがわずかに開いていた。しかし
それ以上開く様子も閉じる様子もない。
訝しく思って部屋の主を呼ぶと、はたして先ほどのようにゆっくりと少女が顔をのぞかせた。
261 :
256-6:2007/12/25(火) 02:57:31 ID:TX8b2Qb3
「どうした?」
返事はないがどこか気に入らなそうな、彼を睨みつけるような顔をしている。
「……げて」
「なに?」
あまりに小さな声で聞こえない。
眉をひそめて聞き返した。
「ファスナー」
ほら見たまえ、とは彼は言わなかった。
ただ薄く笑って彼女を手招きする。
「最初からやると言ったのに」
「犬っころが起きてれば犬っころに頼んだわよ。あんたに頼むよりマシだもの」
彼女はなおもぶつぶつ言いながら背中をヴィティスへと向ける。
「絶対にあんたが上げたところまでしか下げないでよ」
「どうせ脱ぐのに?」
「あんたさぁ……少しは自分の日頃の行いを振り返ったら?信用されるわけがないって納得
出来るから!」
ヴィティスは散々な言われようにも軽く眉を上げるだけだ。
少女はもう靴も部屋履きに、手袋も外して本当にワンピースを脱ぐだけだった。あれから
ずっと届かぬ背中に手を伸ばし続けていたのだろうか。
大きな手がファスナーをゆっくりと下げてゆく。
「信用されない日頃の行い、か。何のことだろう」
「だってあん……っ!……た、ねえ……」
首筋に熱くやわらかい感触が降ってきて彼女は言葉を途切れさせた。
ちゅっと音をたて、背を覆う部分をめくるようにして唇が下へずれてゆく。
「や……!」
彼女は逃げるように身動きしたが、腰にまわされた手がそれを許さなかった。
「……から、そ、ゆうことするから、あんたに頼みたくなくなるんでしょ!?しもべ見習い
からやり直したら?」
「なるほど」
分かってやっているくせに素直に頷くのは、彼女をからかっているのだろうか。
それでも目は相変わらず真面目だ。無表情なだけかもしれない。
「女性のファスナーを下げてそれだけで済ませる男はいない。それもこんな雪のような肌を
目にしてもう一度おやすみとはとても言えないな」
開いた隙間から背中の中心にさらに口付ける。
「私を警戒するのはいいがあまり意味をなさないのではないかな。君もこれまでのことを少し
振り返ってみるといい」
ジュジュはうぅ、と唸りながら自分を抱きしめる腕を剥がそうともがいたが、びくともしな
かった。
今まで何度も繰り返されたこんな抵抗も、彼を煽るものでしかない。
男は後ろから顎を掴まえて耳の後ろへと唇を落とした。
耳朶をねぶられる感覚に彼女は小さく声を上げる。背後の男に手を伸ばすも後ろ向きにでは
力が入るはずもない。
「やぁ……めて、ってば」
「なぜ?言われたことは守っているよ」
「あんたねえ……」
顎の手を振り切り強引に振り返ればヴィティスの唇が出迎える。
「っ……ふ、ぁ……ちゅっ……」
最初は軽くついばむように、次いで深く貪るように。
少女は無理な姿勢でもなんとか彼の肩を押し退けようとしたが、胸に及んだ彼の手に抵抗する
力を奪われた。
「やだ……や……ん、ねぇ……」
ビロードの手触りとその下にあるやわらかさに、ジュジュの小さく開いた口からこぼれる
切れ切れの苦情にも彼は手の動きを止めることはなかった。
262 :
256-7:2007/12/25(火) 02:58:21 ID:TX8b2Qb3
少女は胸の上を気ままに動く手に一回り小さな手を添えると、薄皮一枚つまんでひねってやる。
これは多少効いたらしく一瞬動きが止まった。
次の喘ぎがもれる前にすかさず人間社会の常識を言う。
「高校生に手、出していいと思ってるの?こういうの淫行っていうのよ!?」
「良く勉強している」
彼女の台詞をまったく気にしていないのか、ヴィティスはうっすらと笑むと手の動きを再開
させた。
「……が、我々は彼らの法律に従っているわけではないからね。表向き、善良な市民に
見えればいいだけのこと。家の中でまでそう堅苦しく考えることはない」
わざとこうも外れた返事をするのは、いっそ見事と言えた。
どこまでも自分の都合が一番なのだ。
脚を撫でながらワンピースの裾をめくり上げる手に、ジュジュは思わず脚を閉じた。
それでも大きな掌は外から内側まで、彼女を開かせるようにのぼってゆく。行き止まりに
達すると、そこを避けて脚の付け根を関節にそって指先でくすぐった。
「ひゃあ……ん、や、くすぐった……!」
周辺を何度も往復させてから後ろへと回る。
途中キャミソールの下をくぐる様に腰を撫でられたものだから、少女は反射的に体をすくめた。
小さな尻は彼の掌に丁度いい大きさらしく、なめらかな感触を楽しむように繰り返し揉み
上げた。
ヴィティスが片手で腰を抱えていなければ、彼の愛撫で力が抜けて膝を着いてしまっていた
だろう。
再度前に回った手が今度こそやわらかく茂った部分に分け入った。
「……っ」
つい前のめりになるが他に頼るものとてなく、彼女は自身を抱える腕を握り締めた。
男の体はどこまでも力強く少女が寄りかかっても安定している。
秘裂をなぞるたび、彼の指は少女の中に沈んでいった。
ジュジュの手に力が入る様子を見計らって動かしているようだった。確かな反応を楽しんで
いるのかも知れない。
こうなってしまったらもうなし崩しだ。
力の入らない体を軽々と抱えられ、ソファに腰掛けるヴィティスに向かい合うように膝に乗せ
られる。
彼を跨るような姿勢に恥じらったのかつい膝立ちになるのを、下腹部から離れない彼の手が
あくまでやわらかく動き、脚に入る力を奪った。
ジュジュは彼の胸に寄りかかる自分に気付いて顔を上げたが、待ち伏せる男に物言う隙を吸い
取られる。
「ぅん……っ……ちゅ」
絡み合う舌が勝手に体液の交換をする。
下半身に伸びたままの彼の手の動きと共に、淫らがましい水音がやけに大きく少女の耳に
響いた。
ヴィティスは深く口付けを交わしながら細い腰をさらに引き寄せる。
彼女の蜜で潤った部分に、服の上からでもはっきりそれと分かるほど硬くなった自身を押し
つけた。
「や……」
「や、じゃないだろう」
首を振る彼女に薄く笑うと下半身を覆う真っ赤な生地をたくし上げるようにした。
しかしそれ自体とてもやわらかなため、すぐに落ちてきてしまう。
改めて触れると、その衣装自体値段にこだわらずに買ったため、とてもよい手触りと温かさが
あった。安物にはない厚みと鈍く光る様子には重厚感がある。
落ちてくるものは仕方がないと構わず彼女の下着に手をかけると、上に乗る少女が拒否とは
違う意味で首を振った。
「だめ……ふ、服……、汚れちゃう」
「汚れないようにして欲しいのか?」
263 :
256-8:2007/12/25(火) 02:59:36 ID:TX8b2Qb3
言わされるのが悔しいのか少女は唇を噛んだが、熱っぽい目で見られては、それがどういう
意味かは理解できる。
直接の愛撫を求めているのだ。
ヴィティスは再び確認することなく途中まで開いていた背中のファスナーを緩めた。
肩から袖まで脱がせてやり、残りはジュジュ自身が腰を浮かせてたのに足もとから引き抜く。
再び膝立ちになった瞬間目の前に愛らしいピンクのレースが大きく映り、彼は薄い背中に手を
回して抱き寄せた。
ゆるい曲線を描く胸元に吸いつき、目印を付ける。
背中のホックを外して肩ひもを落とせば、既に硬くなった部分が上を向いて自己を主張して
いた。
指先が胸の先端に触れる。
きゅ、とつまむようにしながらやさしく全体を揉みしだくと掌に心臓が早めのテンポで動いて
いるのが伝わってきた。
それに合わせて途切れ途切れに可愛らしい嬌声が上がる。
声を押さえようとしてるのは無意識にガルムをはばかってのことだろう。
ふくらんだ部分にじっとりと舌を這わせ先端を唇で揉むようにしてやると、こらえられない
感触にたちまち背を反らした。
「ゃあっ……!あ、ぁあん……」
指先で彼女の中を激しくかき回すとそれにもジュジュは大きく喘いだ。ヴィティスの胸に手を
付き上体を小さく震わせる。
彼は溢れる愛液に満足し下ばきを緩めると、いよいよ彼女をきつく抱きしめた。
すでにぐっしょりと濡れた下着をずらしてあてがうと、蜜の溢れる花弁と硬くそそり立った
自身、二人の接した部分が隙間なく埋まってゆくよう彼女の腰を掴んで引き下げる。
腰を掴まれているとはいえまるで自分から求めているような動きに、彼女は羞恥心から眉を
ひそめた。
二人が根元まで密着すると、彼は突き上げるように腰を動かした。
彼のもたらす快感から逃げようと腰が浮くのを下からさらに追いかけるように突く。
「んっ!ふぁ……いやぁっ……や……!」
「いいのに嫌、と言うのはまったく……不可解だ……!」
からかいに彼をうるんだ瞳で睨みつける。
心とは裏腹に感じ始めた抽迭の心地よさに、彼女の内部がきゅっと締まった。
雪のように白い体が薄桃色に染まってゆく。
首に回された手に力が入ったのを知って、彼も同じ所を求めて腰を動かした。
円を描くように、激しく突くように、より具合のいいところを探るように。
彼女は小柄で下になって動くことに辛さはなかった。
律動に合わせて漏れる少女の喘ぎが彼に凝る衝動を追いたてる。
ジュジュの奥で欲望の塊がはぜるのを、曖昧になってゆく意識の中で感じた。
264 :
256-9:2007/12/25(火) 03:00:32 ID:TX8b2Qb3
まどろみと覚醒の間を行ったり来たりしながら彼は寝台の上に体を起こした。
「夢か……」
窓の外で小鳥のさえずりが聞こえてきた。
「やあ、ヴィティス。いらっしゃい」
扉を叩くと少年はすぐに玄関に出てきた。
「こんにちは」
「入って入って。お茶入れるから」
「いや、用があって寄っただけだ。お気遣いなく」
手にした鞄からきちんとに畳まれた布を出す。
それを見てフィールは思い出したように声を上げた。
端に『9』と書かれているのが見えた。
「あぁ……マフラー?わざわざ返しに来てくれたのかい?」
「ああ。長い間借りていて済まなかった」
「いいよそんなの。夢って見ようとして見れるものでもないしね。アルミラもなかなか見れ
なかったみたいだし」
受け取りながら彼はきらきらした瞳でヴィティスを見た。
「で?どうだった?いい夢見れたかい?」
期待に満ちた質問にヴィティスは思わず質問で返しそうになった。
『フィール君、君はあんな夢を人に勧めているのかい?』と。
これをして寝ると、細かいことは覚えてないんだけどとても爽快で(変な)夢を見るんだ。
いつも同じような印象をもって目覚めるから、多分毎回同じような夢を見てると思うん
だけど。ストレス発散っていうか、とにかく凄く気持ちがいい夢だよ。
アルミラもレオンも同じことを言ってた。
目が覚めてああ、すっきりした!って思うような……でも、肝心の内容は覚えてないん
だよね。それはちょっと残念かな?
寝る時に首に巻くのは嫌かもしれないけど、よかったらヴィティスも試しに使ってみない
かい?
必ず夢を見れるってわけじゃないから、返すのはいつでも構わないよ。
確かにある意味『とても気持ちの良い』夢だったが、声を大にして人に言えるような内容では
なかった。
それをつい少年の人格を疑うようなことを言いそうになり、自制し言葉を飲み込んだ。
「……ちなみに」
「なに?」
「誰も夢の内容は憶えていないのかい?」
「ああ……うん。レオンがね、ヴォロをお手玉にした気がするって言ってた。あとアルミラが
出てきたけど変だったとも。でもやっぱりそんなには憶えてないみたい『だったような』とか
『気がする』って感じだったし。本人も結構前の話だからもう忘れてるかもしれないよ」
レオンに内容を正したい所だったが、確かに憶えていなさそうだ。
265 :
256-10:2007/12/25(火) 03:01:34 ID:TX8b2Qb3
気を取り直して改めて礼を言う。
「そうか、私もとても……気持ちのいい夢を見れたよ。長い間貸してくれてありがとう」
「そう?なら良かったけど」
マフラーを受け取りながら少年はヴィティスにも夢の内容を尋ねた。
「……」
一瞬迷ったが、やはりはっきりしたことは言わないでおくことにした。
「私もよくは憶えていないんだ。でも君たちの言うとおり、大変に良い夢だったことは確かだ。
……ところで話は変わるが、少々お願いがある」
「何だい?僕に出来ることなら」
「ちょっと調べ物をしたくてね。書斎を見せてもらっても構わないだろうか」
「もちろんだよ」
フィールの家にはカインのものかその奥方のものか分からないが、書棚に入りきらないほどの
本が溢れていて、内容も『今日の晩御飯』から『名前辞典』、『戦場で生き延びるには』など
多岐にわたるものであった。
案内され少年と帰りには声をかけて、とのやり取りをした後、ヴィティスは大まかに分類
された棚に、端から目を通していった。
やはりお茶を持ってこようかとの再度の質問にもやわらかく辞退した。
一冊の本を手に取ると、中をはらはらとめくって内容を確認する。
窓際に据えられた机にそれを置くと新たに目当ての本を指で辿って行った。
暫くして何冊かの本を持ち、台所にいる少年に声をかけた。
「フィール君」
「目当ての本はあった?」
ヴィティスは頷いて返す。
手にした本を掲げて見せた。
「借りていっても?」
「うん。どうせ読まないし、いつまででも借りてくれて構わないよ」
「ありがとう」
フィールはちらとヴィティスの持つ本に目をやり、その表題をみて不思議になった。
「内容がばらばらだね」
「それぞれに必要な情報が詰まっているんだ」
「ヴィティス、縫物もするの?趣味?」
「趣味と言うほどではない。必要があればする程度だ。一通りは出来るよ。誰に頼らなくても
いいようにね……君と一緒だ」
玄関先まで見送ると少年は声をかけた。
「また何かあったらいつでも来て。……何もなくてもさ。気軽にお茶でも飲みに来てよ」
「ありがとう。そうさせてもらうよ。君も近くまで来たら店の方に顔を出してくれ」
社交辞令以上の好意を持った誘いだったがフィールは曖昧な笑みを浮かべた。
「うん。でも……」
「うちにもお茶の用意くらいはある」
彼がまだお酒を飲めないのを察してヴィティスは助け船を出した。
途端に表情が明るくなる。
「本当?」
「昼過ぎには起きている。君ならいつでも歓迎するよ」
ヴィティスは彼には珍しく終始穏やかな顔をくずさないまま、少年の家を辞去した。
266 :
256-11:2007/12/25(火) 03:04:44 ID:TX8b2Qb3
「お、なんだ?これ」
店内に掛けてある暦を見てレオンが小さく声を上げた。
この辺りの人間が使っている標準の暦と古い暦(あるいは余所の土地で使われているもの
だろうか?)と二通り書き込まれていて、一目で違いが分かるようになっている。
新しい年を迎える日は二つとも重なっているようだった。
「初めて見たなあ。こっちの……この丸はなんだ?」
二つ目を指しての言葉にヴィティスは丁寧に説明をしてやった。
『25』という数字の上を赤丸が飾っている。
「夢にヒントを得てね。ちょっとした企画を考えたんだ」
「へぇ〜……一体何するんだ?」
「お菓子を売る」
「はぁ!?」
「のはおまけで。パーティーをする。レオンも誰かを誘って来るといい」
「何だよ、菓子って。お前が作るのか?」
訝しげな表情にヴィティスは首を横に振った。
「アルミラに頼んである」
「あぁ。あいつが作るんじゃ間違いねえな」
「その他料理はガルムに頼んである」
「へぇ〜」
興味津津という表情だ。
ガルムは相当な料理上手だから、酒を飲みながら美味いものを食べられるならこんな嬉しい
ことはないと思っているのだろう。
「この日は子供も歓迎だ。もちろん親子で来てもらっても構わない」
「なんだそりゃ?酒場なのに子供もいいって?……分かんねえな……どういう企画だよ」
「古い暦で……ここだな。暮れのこの日にはどの家でもこういう催しをしたらしい。家族で
鳥を食べたり贈り物をし合ったり、歌を歌ったり」
「初めて聞いた。でも楽しそうだな」
「まあ私もなんとなくしか知らなかったのでね、改めて文献で調べて大体こんな感じだろうと
用意したんだが、どうかな。うまく行ったら来年もやるつもりだ」
「んー……じゃ、ボウズと嬢ちゃんに声かけとくぜ。あのガキにも知らせといた方がいいか?
後からうるさそうだからな」
ぎゃあぎゃあわめくに違いないと、想像しただけでレオンはうんざりした顔になった。
「いや、ジュジュにはもう声をかけてあるんだ。当日店を手伝って貰う手筈になっている」
「手伝いだって!?よく説得したな」
心底感心したような台詞にヴィティスは肩をすくめた。
「全てその為の企画だからな」
「へ?」
「いや……その日は赤い衣装のおじいさんが贈り物をくれる、という伝説があってね」
「ふうん」
レオンはもうあまり興味なさそうだった。目が壁に貼ってあるその企画の説明文を追っている。
夢は叶えなければ意味がない。
私は赤い衣装の少女を贈り物にもらう予定だ。
そう夢を曲解し、ヴィティスは心の中で呟いた。
〜おしまい〜
成分:ジュジュの背中のファスナーを下ろしてホックを外す(*´Д`)ハァハァ。
↑っていうシチュエーションを書きたかった。言葉が足りなかったです。
ではまた。
269 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 18:11:36 ID:jbWMVlgS
ほ
270 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 20:43:28 ID:tMjk+3cx
あげ
271 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 20:43:48 ID:tMjk+3cx
あげ
272 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 23:57:16 ID:BnyM86Co
保守
273 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 01:33:13 ID:jkkp3uIB
保守ついでに
>256
GJ!
イブも当日も仕事で潰れた俺の心が癒されたぜ・・・
みんなも保守CHAINEよろしくだぜ。
>>268 いつの間にやらテオロギアに神が、GJ!!
俺、今年こそはアルミラさんと2人っきりで年を越すんだ…
俺、上のあれがちょぴり気まずいから、年が明けたら気持ちも新たにガルム×ガルム投下するんだ…
本当だろうな?
昨夜からずーっと書いてるんで午後には。
午後になったぞー
2Pカラーガルム×ガルム投下します。
注意:凌辱風味。
最初2レスだけガル×ガルでその後はガルム×ジュジュに移行。
(相変わらずV×Jがベースの話)
ガル×ガルも大した絡みというほどのものはなく本当に触りだけですが、苦手な方は
スルーを。
282 :
282-1:2008/01/01(火) 13:16:27 ID:LLnA2rJY
今日も今日とて彼はジュジュと口論しつつ任務を遂行し、テオロギアへと戻ってきた。
いつものことと苛立ちを感じながら、荒々しい足取りで自分へと割り当てられた部屋へ向かう。
幸いにも、当分三人での行動予定はない。
気持ちを切り替える為に早く眠ってしまおうと本人としては前向きに考えながら自室への扉を
開いた。
ところが明かりもついてない部屋に何者かの気配がある。
「誰だ!?」
彼は鋭く誰何した。
しかし返ってきた声はガルムの思いつく人物の誰でもなかった。
「自分の気配も分からんのか」
「何!?」
相手に敵意が無いのを感じながらも警戒を解かぬまま明かりをつける。
その人物を見たときにガルムの受けた衝撃は、筆舌に尽くしがたいものだった。
驚いた、などという言葉では到底表現できない。あまりのことにそれを隠す余裕もなかった。
それもそうだろう。目の前にいる相手は自分と瓜二つだったのだから。
しかし微妙にガルムの服とは色が違っている。
向かい合う相手のものは彼に言わせれば軽薄な、暗闇で光るのではないかというくらい明るい
緑色をしていた。
「き、貴様は……いったい……?」
「そのくらいすぐに察してもらわねば困る。神々のわざでなければなんだというのだ」
正面に立つ男がため息をついた。
それを馬鹿にされたとでも感じたのか、ガルムは怒鳴りつけるように反論する。
「そんなことは分かっている!なんの必要があって、と尋ねているのだ!!」
「分からんか……まあ、無理もないだろう」
「任務に関係があるのか?いや、しかし貴様らしもべがどれだけ精巧に作られていても、
レクスまで備えているとは聞いたことが無い……」
目の前の相手が自分と同じように頭部をレクスで覆っているのを見てガルムは唸った。
「神々を侮るな。俺を見ろ。その気になればこのように貴様そっくりの人格を持ったのもさえ
作ることが出来るのだ。……それをしないのはヴォロ達のような単純な作りのしもべを大量に
つくり、御使いの指示に従って働かせた方が面倒がないからだろう」
ちょ、本気だったのかw
大歓迎だ、ガルガルもガルジュも美味しくいただきます
レズもホモも獣も触手もSMも猟奇も食える俺は今更ながらに最強だと思う
唯一スカトロだけ無理
284 :
282-2:2008/01/01(火) 13:17:44 ID:LLnA2rJY
肝心のことを言わない相手にガルムがしびれをきらして口を開いた。
「なんの必要で、と聞いているだろうが!まさか俺の代わりに任務をこなしてくれるという
わけではあるまい」
「ふん……いや、口で言うより早いか。――おい、こっちへ来てみろ」
「……?」
敵ではないという事がはっきりしているから訝しみながらも偽物へと近寄ってゆく。
彼が他人に対してこれ以上傍へ行けば落ち着かない、という距離まで近づいた。
神々の創造物に対して敵ではないと油断した。
あっと思った時には手を掴まれ、長椅子へと押しとばされる。
突然のことに茫然となり、次いで正気に返ったガルムはこの相手を味方ではないと判断した。
この男が神の造った物だということは理解したがそれはそれ、こういう真似に出られては彼も
容赦は出来ない。
壊さぬよう、なるべく乱暴にしないようヴィティスに引き渡そうと立ちあがる。
しかし偽物は彼の肩をガッチリと捕らえると、手加減のない力で下へと組み敷いた。
「む……?ぬぅ、貴様……なんのつもりだ……!」
二人のガルムが力比べをする。
だが同じだけの力、持久力をもっていたら、どうしたって上にいるものが勝つに決まっていた。
息を切らせる彼に、そっくりのしもべが口元を上げて見せる。
「神々の気遣いだぞ。感謝するがいい。戦いを常とするならどうしたったそっちの処理も
必要になってくるからとな」
「な――!?ば、馬鹿を言うなっ!そんなもの俺には必要ないわ!戦闘によって生じた欲求
ならば、戦闘によって昇華させればいいだけのことだ!!」
男の言葉の意味を察し、珍しくガルムは狼狽した。
自らに圧し掛かる相手をなお責め立てる。
「だいたい自分そっくりの者に慰められたいなどと思う奴がいるわけないだろうが!気色の
悪い!」
上にいる男は納得したように頷いた。
「なるほど。女でないのが不満か。しかし……こうなるまでにいろいろ意見が出たらしくてな、
異性だと色に溺れて任務をおろそかにするのではないかとかな……仕方がないだろう。それに
文句を言うのは最初のうちだけだ。どこをどうされれば気持ちがいいのかは、自分が一番よく
知っている。そのために俺は造られたのだ。大人しくしていろ。天国を見せてやるぞ」
にやりと笑う相手のいっそう力が強くなった。
ガルムの腕がじりじりとさがってゆく。
「ぐ……離せ、離さんか……!」
「こちらも神命だからな、手加減はせんぞ。出来るならやってみるがいい」
「「ぬぅぅぅぅぅぅぅん!!」」
285 :
282-3:2008/01/01(火) 13:19:01 ID:LLnA2rJY
翌日。
「ヴィティス!」
朝一番に彼のもとへ行くと、そこには先客がいた。
「やあ、おはよう」
彼らの長はにこりとするでもなく普段通りの無表情で朝の挨拶をしてきた。
「ちょっと、挨拶なんてあとにしてくんない?話を逸らそうったってそうはいかないんだから。
どういうつもりであんなの用意したのか説明してみなさいよ!!」
ヴィティスがよそを向くのを、服を掴んで振り返らせる。
ガルムは少女の言葉に目を見開いた。
つまりはそういうことなのだろう。
ガルムは内心ため息をついた。
腕組みをして問いかける。
「俺もそのことで話があったのだ。どういう事だ?あれは」
「あんたも!?」
「そうだ……驚いたなんてものでは済まなかったぞ、あれは……ヴィティスの差し金か?」
「そうですってよ!信じらんないわ、ほんっと!!あんた、頭おかしいんじゃないの!?」
ジュジュは吐き捨てるように言って彼を睨みつけた。
本人は彼女の視線など全く気にしないようだ。二人からの苦情にもわずかに首を傾げただけで
ある。
「差し金などと人聞きの悪い……。君たちに気を遣ったつもりなのだが」
ガルムは嫌そうな顔で首を横に振った。
「引き取って欲しい。さすがにああまで喋られると自分でエテリアに還るまで攻撃するのは
躊躇われてな。使い道があるならそっちに回してもらっても構わん」
「あ、あたしだって!いらないんだから、あんなのどっかにやっちゃってよ!ぎゃあぎゃあ
うるさくてたまんないわ」
「……」
二人とも、元が元だからうるさいのは仕方がないのではと思ったが賢明にも口には出さな
かった。余計なことを言えばさらにうるさくなるのが目に見えていたからである。
「そうか……不評なようで残念だが、必要ないというのもは仕方がない。あれらはレクスを
備えていてもその性能は飾りのようなもの、用途から色事へと特化してあるので戦闘に使用
するのには向かないしな。……まあ、なんとか使い道を探そうか。二人とも、もう戻りたまえ。
あとで回収させる」
「早くしてよね、まったく……。あんなの部屋に置いとけないもの、気色悪い」
ガルムは全面的に彼女の言い分に同意していた。
あんなのと同じ部屋に居るのは精神衛生上良くない。しかもガルムの場合、相手は力づくで
迫ってくる。
ある種の恐怖心と偽者に力負けすることの悔しさになんとか押しのけ縛り上げてきたが、誰も
通らないのであれば部屋の外へと転がしておきたい位だった。
286 :
282-4:2008/01/01(火) 13:20:40 ID:LLnA2rJY
「あ!」
ジュジュに続いてヴィティスの前から下がろうとした時、不意に彼女が声をあげた。
行く手で立ち止まったため、ガルムは後ろ姿にぶつかってしまう。
彼女はすぐに文句を言うため、ガルムは先手を打って口を開いた。
「急に立ち止まるな――危ないだろうが」
「いちいちうるさいわねー……いいこと思いついたのよ」
「……?」
それだけでは彼女が何を言わんとしているのか察することもできずに眉を寄せる。
はたして彼女の言う『いいこと』を額面通りに受け取っていいものだろうか。だいたい誰に
とっていいことなのか。
そんなことを考えていると意外にも彼女はガルムを見上げて提案してきた。
「あんたのしもべ、あたしが貰ってあげてもいいわよ?」
「何だと?」
ガルムは眉をひそめた。
彼女が自分を嫌っていることを知っている。だから何の為にそんなことを言い出したのか、
すぐに察しがついた。
「どうせ要らないんでしょ?」
「……ふん、好きにしろ」
姿が自分とそっくりなだけのしもべだ。処分の仕方に文句など無い。
その様子に頷いてジュジュは振り返って確認をとった。
「ヴィティスも、文句ないでしょ?」
「有効利用できるなら君たちの間で好きにしてもらって構わない。……ジュジュ、君の方は
回収していいんだな?」
「ええ、すぐにでも持って行って欲しいわ」
深く考えなかったことを後ほど悔やむことになるが、このときの彼女の声に迷いはなかった。
287 :
282-5:2008/01/01(火) 13:21:52 ID:LLnA2rJY
油断した、としか言いようが無いだろう。
自慢の羽根型レクスで鬱憤を晴らした少女がそこまで近寄ったのは。
男はガルムにそっくりだった。
本人がいらないならばと憂さ晴らしに使おうともらいうけて来たのだ。
ヴィティスの許可も得た。たぶん彼にはジュジュの意図が分かっていただろう。ガルムにも。
彼は自分そっくりのしもべの末路になど興味ないに違いない。
彼女がそれを連れて行ったのは人気のない通路だった。誰かに見られたら面倒なことになると
思っていたからだ。
出来そこないの男の出来そこないのしもべ。そのまま死んでしまってもいいと思った。
ヴィティスに言えば後始末は適当にしてくれる。
なのにまさか、まだそれだけの元気があるとは思わなかったのだ。
「ざまぁないわね」
ジュジュはガルムそっくりの男を眼下に小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「どうかしら……いつもあんたが馬鹿にしていたあたしのレクス。なかなかのものでしょ。
ちょっとくらいはあたしの実力を思い知った?」
ころころと笑い声を上げる姿は人を傷つけてのものとは思えないほど嬉しそうだった。
倒れている男に意識はあるのかどうか。確認しないのは聞いていてもいなくても、どちらでも
構わないからだろう。自分の言いたいことを言えれば満足なのだ。
近寄ったついでとつま先で投げ出された腕をこつんと蹴った。
それは考えてしたのではない、無意識の行為。普段から彼を馬鹿にしているその気持ちが
ふとした拍子に表れた。
瞬間、足首をつかまれ引き倒された。
「きゃ……!?」
ジュジュはどたんと音をたてて尻もちをつく。倒れ方が悪かったせいで腰を打った。怪力で
強引に引き倒されたため捻挫でもしたのか、足首に手をあて涙を浮かべている。
「いったぁい!何すんのよ!?」
「軟弱だな」
さっきまでとは逆に今度は起き上った男が座り込む彼女を見下ろしていた。
薄く笑いながら華奢な体を床に押し付ける。腕をはがそうとする少女の手など、妨害と言う
ほどの効果も無かった。
「放しな、さい……よ……!」
大きな手で首を掴まれ弱々しく抗議の声を上げながらも、ジュジュは真上に見える男の顔が
遠くなってゆくのを感じた。
次に目を開いたとき視界に入ったのは見慣れた天井だった。
そこは自分の部屋の寝台の上。
いつの間に戻ったんだっけと思った途端声がした。
「気がついたか」
その声に最前の出来事を思い出し、体を起こす。
「や……ちょっとあんた、何でここにいるわけ?勝手に入ってこないでよ」
彼女は自分の横に椅子を置いて腰掛けている彼に、理由も聞かず拒絶の言葉を吐いた。
それに瞳の小さな目がじろりと彼女を睨む。
「部屋まで運んでやった者への感謝の言葉もないのか?」
「馬鹿言わないでよ。あんたがあたしを気絶させたんでしょう?なんでそんなのにお礼なんか
言わなきゃいけないのよ!」
勢いよく掛布を剥いで寝台から降りる。
しかしその肩を押され、再びジュジュは小さな悲鳴をあげて寝台にひっくり返った。
「まだ寝ていろ」
「あんたが出てってくれたらいくらでも寝てやるわよ。早く出て行きなさいよ。ヴィティスの
所にでも行って今後の相談でもしなさいよ」
彼はため息をついた。
少女のどこまでも自分勝手で乱暴な言葉にやれやれと首を振る。その姿は本物よりも穏やかに
さえ見えた。
288 :
282-6:2008/01/01(火) 13:23:15 ID:LLnA2rJY
「今さらだが勝手ばかり言う女だな、貴様は。あいにくそっちに用がなくてもこっちには
あるのだ」
「うるさいわね、これが普通よ!……なに?……用?」
「そうだ。自分ばかり憂さを晴らしてはいさようなら、というのは間違っていると思わないか?
俺の都合にも合わせてもらいたい。……大分痛かったぞ、先程の攻撃は」
この言葉に、偽物と侮って思って相手をしていた彼女もほんの少し気分が良くなった。眉間に
入っていた力が緩む。
もちろんさっき首を絞められたことは忘れてはいないが。
「偽物のくせにずいぶん偉そうじゃないの。でもあたしのレクスの攻撃が効いたって素直に
言うところはなかなか気に入ったわ。あんた本物と交代しちゃえば?」
可能か不可能か、考えないでも分かる提案に男は鼻をならした。
「こんななりをしていても、我々は戦闘のために造られたわけではないのだ。神命と言われ
れば異論なく従うが、今のところ俺は与えられた本来の役目にしか興味はない」
こんななり、と言うのはレクスを備えているその獣人の姿を指しているのだろう。
いったん言葉を切ると彼はジュジュを真っ直ぐに見据えたが、身動きを禁じられたように
思うほど、その視線は鋭かった。
「用というのはそのことだ。折角だから一度くらい本来の務めを果たそうかと思ってな」
「……?」
眉を寄せ意味を問う目に、男は頷きながら言葉を継いだ。
「本人にああも拒否されては諦めるしかないが、貴様はわざわざ俺をもらってくれたのだ。
役に立ってやろう。神々の意思には反するが、まぁこれきりのこと。気にはなさるまい」
口の端を僅かに上げるだけの、だが本来のガルムには見られない種類の微笑みに違和感ばかりが
強調され、ジュジュは背中を冷たい汗が流れたのにも気付かなかった。
彼女がこの男から感じたのは、分かっていてとぼけているようないやらしさ。
本人がいたら、これがあんたの本性かと問い詰めたいところだ。
しかし今はそれどころではない。
女として身の危険を感じるのは間違っていないだろう。彼は今確かにそういう意味のことを
言った。
ジュジュは寝台の上にしゃがみ込んだままじり、と後ろに下がる。わずかに顎を引いて男を
睨みつける。
そんな少女に男はわずかに目を細めた。
人を馬鹿にしたようなそれもやはり、本人とは違うねじ曲った感情をうかがわせる。
「恋人がいるらしいな」
「――!」
唐突な台詞にあれは恋人なんかじゃないと思わず言い返そうとしたが、そんなのは意味のない
ことと口を噤んだ。
この男はそんな話を持ち出していったい何を語ろうと言うのか。
少女は彼の真意を警戒したまま、痛む足首をなだめつつ寝台の向こうへと降りた。
いったい彼らは――二人に似せて造られたしもべはどこまで本物と同じ部分を持っているの
だろう。ガルムはいまだジュジュの相手がヴィティスであることを知らないようだが、やはり
知らないらしい今のこの男の言葉は、記憶もそれなりに共有していることの証明ではないのか。
自分そっくりのしもべにそれを確認せずヴィティスへ返したのは早計だったかもしれない。
こんな時だがほんの少し後悔しつつ、視線はガルムもどきから離れることはなかった。
彼女の表情は普段本物を見る時よりさらに険しい顔つきになる。
「あんたには関係ないでしょ」
「ああ、その通りだ。これは俺の都合だな。しかしこれは貴様にもいい話ではないか?男を
一人しか知らんより、二人、三人と知って経験を積んでいた方が、そいつを喜ばせることが
できる」
独り言のように言いながら、彼は寝台を迂回しジュジュに近付いていった。
「何よ、その勝手な理屈。あんなの別にそんなんじゃないし。そもそもあんたなんかお断り
なんだから!気持ち悪いこと言ってないでさっさと出て行きなさいよ!」
きっぱりと言い切り伸びてきた男の手を払う。
ささやかな抵抗に彼は眉をあげた。
「ほう……出ていかなければどうするというのだ」
289 :
282-7:2008/01/01(火) 13:23:50 ID:LLnA2rJY
「そんなの、決まってるじゃない。あたしのレクス達で今度こそコテンパンに――!」
叩きのめしてやる、と最後まで言い終えぬうちに再び男の手が伸びる。
さき程は手加減していたのか、今度は振りほどかれることなくしっかり彼女の手を掴まえると
抱えあげ、軽々と寝台に放った。
「や……」
彼女はあっけなく彼に組み敷かれ、体に感じた衝撃よりもその態勢にぎょっとして青くなった。
さすがに体格の差がありすぎて、上に乗った男をのけようとしてもびくともしない。
少女が身をよじるのを感じたのか、彼はさも面白そうに彼女を見下ろした。
「ひ弱な体で俺に抵抗する気か?無駄な事を」
「あんた……あたしの攻撃くらってたんでしょ!?なんで、そんなに…元気なのよ……っ!」
またしても首を押さえつけられ言葉が詰まる。
「体力が違う。あれしきのことでばてるほど、俺はやわではないぞ。あれだけ三人で任務を
こなして来たというのにそんな事も分かっていなかったとは。相変わらず愚かな娘だ。だから
こうして」
「……っ!」
彼女の細首を捕まえる手に、力を込める。
「痛い目を見るまで分からない。想像力のない者は悲しいな」
台詞だけ聞けば同情的だが声には嘲りの響きがあった。
言葉を交わすだけでは、姿を隠していたら、圧し掛かる相手の元にした人物がガルムだとは、
きっと誰も分からないだろう。
ジュジュに言わせれば馬鹿がつくほどの生真面目さが特徴のガルムだが、彼女を押さえつけて
いる男からはそれが微塵も感じられなかった。
「あんた、本当にあいつの……」
わずかに緩められた手にやっと疑いの声をあげるが、きつく睨みつけても彼はどこ吹く風だ。
「ふ、体つきはまだまだ小娘だが……さて、どうかな?」
長い舌が彼女の喉をちろりと撫でた。
「……!」
少女は思わず顔を背ける。
「くっくっ……いい格好だな。いつも言いたい放題言ってきた貴様が。この距離では貴様の
レクスも当たらんし、せいぜいそうやって俺を睨んでいることだ」
彼女の両腕を頭の上に追いやると、片手でそれを押さえつけ、片手は横を向く彼女の顎を
なぞった。
「止してよ!気持ち悪い……触んないで!」
「口のきき方に気をつけろ。この場を支配しているのが誰なのか、忘れないことだ」
太い指が白い胸元にある飾りに触れる。
しゃら、と音をたてて落ちるそれに構わず指はそのまま胸の中心向かって滑っていった。
「や……ぞっとする……」
少女は背中を上ってくる悪寒に肩を、掴まれた腕を震わせる。
「そうだろう。だがそれもほんのわずかの間だ」
「知らないっ、そんなこと!……あんた、こんなことして本気で……神々の命に逆らうって
いうの?」
「まだ言うか」
「あたしだってちゃんとあれに聞いたんだから!『異性に溺れない』ための自分のしもべ
なんでしょ?それなのに男のあんたが女のあたしを抱こうってわけ!?」
「そう。貴様にしてはよく出来ました、だな。愚かな頭の割によく覚えた――が、一つ貴様が
知らん事実がある。ヴィティスもわざわざ言う必要が無いと思ったのだろうがこの俺とお前の
しもべ、両方とも本物の持つ欠点を改善されていてな」
「欠点……?ガルムはともかくあたしのどこに欠点があるのよ」
言ってから気付いたように彼はくっくっと笑い声をあげた。
「そうか、こういうことを言うと貴様らが気分を害すとヴィティスは思ったのかもしれんな」
「ど、いう……こと?」
「聞け。いいか、貴様は神命をいただいても気分で行うことが多い。一方俺の本物は真面目で
融通がきかな過ぎる。そのままそっくりに造ったのでは、到底どちらも性欲処理のしもべ
としては役に立たんだろう。だから貴様のしもべは神命を守る程度には真面目に、この俺は
自分自身が相手でも気にしないくらいの……ふむ、寛容さ、とでも言えばいいのか?……を
持たされたのだ」
290 :
282-8:2008/01/01(火) 13:24:50 ID:LLnA2rJY
「それっていい加減な性格、っていうんじゃない?」
きっちり説明をするあたりは本物の持つ性格のままだがと思いながら彼女は悪態をついた。
「互いの認識の違いだな。さて、いつまでも下らない話にかかずらっているつもりはない」
うるさい少女を嘲笑すると、彼の手は一気にジュジュの服を引き下げた。
「きゃ……や…やだぁっ!止めて、やだ……見ないでよ!信じらんない……!」
「やかましいぞ。口に布でも詰めてやろうか?知ってるか、あんなものでも意外と苦しい
ものだ。これ以上喚くなら黙らせるぞ」
「……っ」
羞恥よりも激しい怒りと屈辱に、彼女は耳まで真っ赤に染まった。
口をつぐんだジュジュに顎の先から喉の下、と徐々に下へと彼の顔が移動してゆく。牙がある
からだろうか、舌の先端でちろちろと舐めるだけなのは。
それでも強弱をつけて肌の上を動くそれに体が小さく反応する。
「んっ……ゃ……」
彼女の抵抗を抑え自由にならない片手の代わりに手袋の先を口で咥えると、する、と外して
改めて彼女の素肌の上を大きな手が滑った。
「貴様の男……誰だか知らんが余程貴様に執着しているようだな」
乱暴に彼女を裏返す。
華奢な体は簡単にうつ伏せにされ、手を解放された代わりに今度は背中を抑えつけられた。
大きな指が背中の中心をなぞってゆく。
「見えない部分にこれだけ跡を付けるとは。所有印のつもりか?」
彼の言葉の通り、ジュジュの体には数えきれないくらいの口付けの跡が残っていた。
それでもそれをした人物は遠慮しているのか、衣服に隠れている部分だけだが。
「そんなんじゃないわよ……ばかっ!」
少女が手元にあった枕を後ろ手に投げつける。
それを難なく受け止めると男はうるさげに寝台の下へと放り投げた。
「ち……どうも面倒だな」
小さく呟き後ろから少女の体を起こした。
「……!放して……っ!!」
「まったく何をそんなに怯えることがある。相手が変わっても男と女、することは一緒だぞ」
もう一度ジュジュの手を掴むと前で両の手首を一つに縛り上げる。腕の中で激しく動く彼女に
余裕がなかったのか切らなければ解けないような、あまり動かすゆとりもない結び方だった。
乱暴に背を押される。
下半身を突き出すような格好にさせられて、ジュジュは心臓がきゅうと掴まれたような気が
した。
顔は熱く、しかし背中は汗のせいか冷えている。
「なにすんのよ、この変態!ほどきなさいよ!」
口では勇ましく言うが、それもほとんど恐怖から来るものだ。
手が自由にならないから不安になるのだろうか。
それとも相手がヴィティスではないからか。
あるいは――後ろから覆いかぶさるようにしてくる男が、彼の本来の人格と遠く離れている
ように感じるからか。
ジュジュは体を見られるのが嫌で少しでもと体を動かしたが、男は逃げる体を易々と掬って
自分の前へと据え直した。
力強い手が少女の足首を掴んでぴんと伸ばす。
閉じようとする体を強引に開かせ自身を脚の間に置いた。
無駄な肉の付いていない体に掌を這わせると、小さく震える体から心臓が飛び出しそうな程の
勢いで動いているのが伝わってくる。
さらに向こうへ回せば女性の象徴を形づくる部分は大きくはないもののそれでもやわらかく、
怯える様子と共に男の情欲をかきたてた。
あまりいじらないうちから中心は硬くなっていて、彼の手が少女を愛撫するための手がかりと
なった。
291 :
282-9:2008/01/01(火) 13:25:27 ID:LLnA2rJY
ジュジュは胸のぷっくりとしたところをきつく扱かれ、薄く開いた唇から思わず声をもらした。
縛られた手を強く握りしめても体の震えを止めることは叶わない。それどころか彼の手の動き
によって体の奥がじんわりと熱を持つのがわかった。
思うままならない体に唇を噛んだ。
それを感じたのだろうか、背後から感情のこもらない声がした。
「日頃の恨みと言うわけでもないが……俺は個人的な理由で女に手を上げることはせん。どれ
だけ不満があってもだ。だからこれもせっかくの機会、痛めつける替わりに貴様に許しを請う
まで女の悦びを与えてやろう」
「――ぁ、ひ、ゃ……やだ!いやぁああっ!」
宣言とともに秘所へ伸びてくる手に少女の腰が逃げる。
しかし彼は空いている腕を向こうにまわすとその華奢な体をそれ以上動かないよう固定させた。
もう一方の手は彼女の入口を焦らすようにくすぐっている。
「ん、ん……っ……あっ、ぁあ」
滲みだしている女の反応に男は牙がのぞくほど口元を歪ませた。
「死を連想するほどの恐怖をもって抱かれると反応が格段に良くなるらしいが、さて……これ
はどっちだ?それほど恐ろしい目に会わせているとも思わんが……それとも普段からこんなに
反応が良いのか?まだ軽く触れただけなのに、まるで泉のように溢れされているではないか」
笑含みの声に少女は歯を食いしばった。
涙が頬を伝う。
認めたくないのは濡れている自分か、それともこんな偽物を恐怖する自分か。
「誰か……!やだ、やだ、や……だぁ……」
「一体誰に助けを求めようと言うのだ。それにもし誰かが来たとして、こんな場面を第三者に
見られても良いのか?女のくせにそれくらいの羞恥心もないのか」
嘲笑しながら深く沈めた指がいよいよ中をかき回した。
温かな体内と、温かな粘液。
少女の体と一つになることへの誘惑が、男の心から冷静さを少しずつ奪ってゆく。
「貴様の体の方は俺を欲しがっているようだぞ、そら。……聞こえるか」
女を辱めるような台詞も本物のガルムの口からは決して出てこないものだろう。
わざと音を立てるような乱暴な動きに彼女は震える脚を閉じようとしたが、間に彼がいては
それもままならない。
「っふ、あぁん……だっ……めぇ」
すぐそこにある桃色の芽に太い指が触れると、男の性行からは考えられないようなやさしさで
そこを刺激してきた。
少女の腰が前へ逃げるたびに男の指が中をうごめく。
思わず立ち上がるのを彼女の肢体を這いまわる手が後ろから追いかけ、顎を掴む。
逃げようとする力、捕まえる力にジュジュは体を弓なりに反らした。
首筋に長い舌を這わせるとなめらかな肌にほんの僅か、牙をくい込ませた。
「んっ」
ぷつりと裂けた皮膚から丸く血が盛り上がる。
肌を裂かれる感触に少女が唇を噛んだ。
舌先で何度も丁寧に舐めとると、肩や腕にまで同じようにする。
蜜に満たされた部分と手前にある蕾を同時に刺激され、細い脚が絡みつくよう男の手を締め
付けた。
「ぁ……っあ……いゃぁ……!」
それでも快楽へ導くための動きは止まることなく、頭の奥で何かが弾けるような感覚に彼女は
縛られた腕を胸元にひきつけ体を痙攣させた。
くたくたになった体を男が後ろから支える。
「ふん……あっけないものだな。……だがもう指では物足りないだろう」
少女が青ざめるようなことを言って下ばきを寛げると、起き上がっていた少女の体を再び
前へと押し倒した。
292 :
282-10:2008/01/01(火) 13:26:20 ID:LLnA2rJY
少女の下半身をぐいと自分へ向け、いきり立ったものをすっかり開いた場所へと密着させる。
先端をほんの少し入れただけで彼女の内部がひくひくと震え、どれだけ慰めを求めているのか
を知った。
だが裏腹にジュジュの口から出るのは彼を拒否する台詞だけだ。
「――ッ!やだ……やだ、入って来ないで……抜いてぇっ!!」
「何度も言わせるな。口を閉じていろ。本当はどうして欲しいのか、貴様の体に直接聞いて
やる」
冷たく却下すると男はつき当たるまで少女の中へ進んでいった。
既に一度達した体はジュジュが言葉で表したほどの抵抗はなく、彼を根元までしっかりと
受け入れる。
「う……んっふ……やぁっ」
男はそこで小さく息をつくと途中まで引き抜きまた突いた。
「あ、ん、んんっ」
動物のように後ろから挿入し何度も突いてはそのたびに小さく声が漏れる。
だらしなく開いている口から零れる声は、徐々に抑えると言うことをしなくなっていった。
男への嫌悪より内部を彼のものが擦り出入りする感触に意識がとらわれ始めたのだろう。
彼もそれに気付き、満足そうに牙をむき出しにして笑う。
「ふん所詮は貴様もただの雌よ。そうやって最初から素直に受け入れればいいものを」
答えはなかった。
彼女の唇からは男の動きに添って声が上がり、同じ場所からだらだらと唾液が垂れて敷布に
染みを作っている。
男はその様子に満足し、わずかに体を動かしては違うところにあたるようにいよいよ硬く
なったもので内部をかき回した。
「……っ……やっ、ひぁあぁっ!」
一段と高い声で啼き、彼女が二度目の絶頂を迎えたことを知った。
昂りのため、犯す男をいっそう締め付けてくる。
「――っ!!」
さすがに彼もその感触には耐えかねたようで少女の腰を押さえる手に力を込めると、白い闇の
中に己を手放した。
「……え?きゃっ!」
肩で息をしている少女を男が振り向かせた。
振り向かせたというより正しくは強引に回転させた。つながったままでだ。
「ちょっと、あん―――」
仰向けにされ正常位の体勢になった彼女の唇にに男が舌をねじ込む。
口付けと言うような思いやりあるものではない。複製としてやはり日頃の恨みを晴らしたいの
だろうか。行為と称して彼女を苦しめているようにしか見えなかった。
男の口は少女の顔を噛みつかんばかりに開いて接した部分に牙が当たる。
彼の長い舌はジュジュの口内をおもうまま蹂躙し、舌の付け根、喉に届くほど侵していった。
「ん……んぐっ」
無理やり口で処理させられているような感覚にえずいて男の胸を叩いたが、彼はそんな抵抗を
気にする様子もなくさらにねちねちと舌を絡ませた。
苦しげな少女が目をきつく瞑った直後、男がわずかに表情を変えた。
変えたと言っても狼のようなその外見からでは目に表れるものだけで彼の様子をうかがうこと
しか出来ない。
ジュジュの手が震え、弱々しく彼の胸に置かれたのにようやく解放してやった。
「はぁ……は……はぁ……っ」
苦しそうに息を継ぎ口元を拭う彼女を、男は軽く睨むように目を細めた。
「苦し紛れに噛みついて――だが噛み千切る覚悟もないのか。どこまでも半端な小娘だ。
抵抗くらいまともにしてみるがいい。それでは誘っているのと変わらんぞ」
「……るっさい……!」
馬鹿にしたような台詞にも、言い返す余裕がないようだった。
彼女に対して全く気遣いをしていなかったのか、頬に牙が当たっていたらしく少し切れていた。
293 :
282-11:2008/01/01(火) 13:27:07 ID:LLnA2rJY
「まあ、誘われてやるとするか」
男はジュジュの頬に滲んだ血を舐めとると相変わらず縛ったままの両手を頭の上に押しのけた。
体格差から少し背を丸めるように彼女の胸に顔を寄せる。
左手を離せばさすがに殴られるからか、横になりいよいよささやかなふくらみを口と空いた
手で可愛がってやった。
先端を唇で、指でそっと挟み転がすと、わずかに腰を浮かせる。
周りも掌全体を使って揉んでやると、薄い胸の下から鼓動が伝わりその速度に男がにやりと
笑った。
彼女に沈めたままの自身を一度引き抜く。ずるりと出てきたそれはまだ硬さを保っていた。
互いの下半身にほんの少し距離を置くと、彼女は脚を体に引き寄せるようにして閉じた。
いつまでも開いていられないというのだろう。
それは男を改めて拒絶する動きだった。
だがそこまでの行動を見越していた彼は閉じた脚をそのまま彼女の腹へ押しつけるようにして、
脚の付け根へいまだ屹立したままのものを押しあてた。
自身の精と彼女の蜜にまみれているものを秘所から脚の閉じた部分へ擦りつけるように前後
させる。
ジュジュは目をきつく閉じた。それとは逆に、やはり唇は薄く開く。そこからもれるのは
彼によって乱された吐息と小さな声。
手は解放されたものの今度は脚を抱えられて、彼のものに入口をこすり上げられる。
深く入ってくるわけでもないのに、どうしてか中がきゅうきゅうと締まって体の奥が何かを
欲しがっているのを知った。
もともと紅い唇は、もう噛み過ぎて真っ赤になっている。閉ざそうとしても震えて閉じる
ことが叶わなかった。
そんな彼女に男は気付かない振りをして尋ねた。
「欲しいなら中に入れてやるが……どうする」
少女は首を横に振る。
力ない仕草が彼女の迷いを表していた。
「ふん、強情だな」
体をずらし、わずかに先端を入口へと差し入れる。
ぬちぬちとそこをかき混ぜる音が耳障りに感じるほど、彼女の神経は敏感になっていた。
「正直になってみろ、やさしくしてやるぞ」
「し、信じらんな……ばか、っ――……ちゃんと――するならちゃんとしなさいよっ!」
言うが早いか彼は少女を貫いた。
抱えていた脚を割り、腰を掴んで奥まで一気に突き上げる。
「……そっちこそ、くっ……欲しいなら、欲しいと言ったらどうだ」
「んっ……あぁ……ん、ば……」
律動に添って揺さぶられ、ついに快感が彼女を支配した。
「言えばいいんで、しょっ……やあだ、ぁっ……あぁあ、欲し……」
意地も何もなく喘ぎながらそれを口にしたジュジュに、彼は満足そうな声を上げた。
「始めからそうやって素直になっていれば……いいものを」
再びの絶頂を求め二人が互いに置いた手に力を入れた。
その時だった。
「確かに君はガルムより融通がきくようだね」
その声に少女が入口を向いた。
「え……ヴィティ……ス」
彼は腕組みをして、戸口に寄りかかるように立っている。
いつの間にそこまで入ってきたのか、全く気配がなかった。
294 :
282-12:2008/01/01(火) 13:27:48 ID:LLnA2rJY
「なるほど……ガルムから品と女性に対する思いやりを引けばこうなるのか」
興味深そうに呟く。
「ふん、寛容さを加えた、と言って欲しいものだ」
横目でヴィティスを眺めながらも男は動きを止めない。
「見物したいのか?他人の行為を眺めるなど趣味が悪いぞ」
「そうかな」
ヴィティスは肩をすくめる。
「ちょっと!ばッ……か言って、っ……な、いで、こいつ、何とかしてよ」
さっきまで彼を欲しがっていたのに、助けを求められる人物が現れた途端の彼女のこの態度。
「勝手だな」
ガルムのしもべは鼻を鳴らした。
「私が?何故」
「何故って……だ、だって……」
助けを求めるジュジュに対してヴィティスは不思議そうに首をかしげた。
逆に、それに少女が驚いた顔になる。
以前彼女がレオンと口付けをした時に自分がどれだけジュジュを責めたのか、彼は憶えて
いないのだろうか。
彼の独占欲を思えばたちまち二人を引き離してもおかしくはないというのに、ヴィティスは
入口にもたれて様子を眺めているだけだ。
「――っ、あっ、や、あぁあ……っ、ふぁ……」
見られていても遠慮なく突いてくる男に、ジュジュは肩を縮こまらせた。
かわりにかどうか、男がヴィティスに問いかける。
「部下の求めに応じてやらんのか?」
「どうしたものかな」
なおも首を傾げてこんな場面に立ち会っているとは思えないようなのんびりした答え。
少女は彼が止めてくれるとばかり思っていたのに、その気配はない。
「あんた、前、怒ってたじゃないの……ん、ぁ……あっ」
「まぁ……彼はしもべだからあれほどは気にはならない。それに君が感じているさまは傍で
見ていて興味深いものだ……。こうしてみると私も、自分では冷静でいたつもりでも当事者に
なると行為そのものに夢中になってしまうらしいな」
そんなことを言ってしみじみと最中の自分を振り返っている。
ジュジュに言わせれば彼は最中も冷静だ。
いったいどれだけ客観的に、抱かれている女の様子を見たいというのか。
行為を人に見られることがどんなに恥ずかしいか。
裸にされ、肌の上を這ってゆく指や舌。あちこちにある傷跡がヴィティスへの裏切りを示す
ようでいたたまれなかった。
決して恋人なんかではないのにどうしてこれほどにも罪悪感を感じなければならないのか。
「あッ、あ、あぁああっ!や、だぁ!!や……!」
胸の前で両手を握りしめる少女を男はまだ容赦なく貫く。
「……はっ……は……ん、ふぅ……っ、やめて……」
「さっき欲しいと言ったその口で何がいやだ。だらだらと物欲しそうに涎をたらして。その
ざまでよく大きな口を叩けるな」
嘲笑しながらそそり立ったものを根元までみっしりと埋めて、彼女の胸へ手を伸ばした。
愛らしいふくらみをつんと尖った部分まで包むように揉みあげる。
あまり目立たないようでも掌に伝わる感触はそれなりにあって、愛撫する男を満足させた。
「嬉しいだろう。貴様の貧相な体でも男を煽るには十分なようだ。俺のものが中で反応して
いるのが分かるか?」
「ヴィ……ティスが見てる……っ!」
「俺は気にならんがな。さっきより締め付けてるのは貴様、見られて興奮してるからでは
ないのか?」
彼女に言わせれば昂っているのは自分に覆いかぶさっているこの男の方だ。
繋がっているのを見せつけようとでも言うのか、男の手がジュジュの足首をつかみ持ち上げる。
「……!!やだっ、や……ゃだっ、ひぁ……んっ!」
敵わないと知りながら力が入る。桃色の爪が愛らしい、脚先がくんと丸くなった。
295 :
282-13:2008/01/01(火) 13:28:52 ID:LLnA2rJY
「聞くに堪えないな」
ため息とともに聞こえたのはレクスが何かを攻撃した音だった。
それは主に神々に逆らう人間と対峙した時に聞く――。
「ヴィティス……貴、様……」
男が驚いたような表情でゆっくりとヴィティスの方を見る。
「やはり君とガルムは違う。神々に君達を造ってもらったのは、どうやら私の失敗だった
ようだ」
少女の上に崩れ落ちる男にヴィティスはほんの少し後悔を見せた。
ジュジュはいきなり態度の変わった彼に眉をひそめた。
「なんで……急に……」
「止めさせてと言ったのは君だろう?なにをいまさら……っと、さあ早く出てきたまえ。
……いつまでも繋がっていたいと言うならそれでもいいが」
巨体のしもべを僅かに持ち上げ、彼女を急かした。
ヴィティスにとっても2メートルある体はさすがに重たいのだろう。
「ばか言わないでよ……っ」
体を離すとき、中の擦れる感覚に少女は眉をひそめた。
「どうも邪魔だな。ここでエテリアに還してしまおうか?」
「ば、っか……」
彼女がガルムもどきのいいように抱かれ足腰が立たないのを察してか、ヴィティスが寝台に
座り込んでいる少女に手を差し出した。
ジュジュは浅い呼吸の下から複雑な笑みを浮かべると、疲れからか均衡を失って彼に縋りつく。
ヴィティスは小さな子を叱るようなやさしさで彼女を睨んだ。
「やはり私の名を呼ばなかったな」
「それ、前にも言ったじゃない……」
本気だったのだろうか、『名を呼べ』とは。
からかっているのだと思っていたし、今でも彼女はそう思っている。
「彼はガルム本人ではないのだし、他の誰がいるわけでもないのに?」
「あいつそっくりのしもべにあんたが相手かって言われるのよ?勘違いされるの……そんなの、
御免だわ。言えるわけない」
もし、と。
呼んでいれば展開は変わっていたのだろうか。
ヴィティスの腕に込められた力はやわらかく、彼女を労わっているようでもあった。
しっかりと抱きしめられたまま、頭をゆるく振って慌ててその可能性を打ち消す。
あのしもべが言ったように相手が――彼が本当に恋人だったなら、躊躇いなくその名を呼んだ
だろう。
まさか、待っていたのだろうか。自分の口からその名が出るのを。
独占したいわけではないのだろうか。無理やりに抱かれて傷つく自分を見たいのか。
分からなかった。どう考えればいいのか。
彼の本心が。
「まさか……ずっと扉の外に張り付いていたんじゃないでしょうね。――あんた、本当は
あたしのこと好きなんじゃないの?」
ヴィティスはふ、と小さく笑うと少女の髪に口付けた。
「どうせ何を言っても信じないのだろう?君のしたいように解釈したまえ」
「――っそ」
力強い腕が彼女のひざの裏に回り、軽々とその体を抱えあげた。
ジュジュにはもう抵抗する気力も体力もない。ようやっと疑問を口に出す。
「何……?」
「風呂に入れてあげよう。気持ち悪いだろう」
「悪いに決まってるわ……」
「嫌がらないのか。一言の文句も出ないとは、よほど疲れたようだ」
彼は軽い布でも抱えたような身軽さで少女の部屋についている風呂へと向かった。
296 :
282-14:2008/01/01(火) 13:30:13 ID:LLnA2rJY
風呂のふちにジュジュを腰かけさせると、彼はゆっくり、深く、前の男の感触を塗り替える
ように舌を絡ませた。
彼女は応えるのも億劫でヴイティスのしたいようにさせる。
心の中に笑いがこみ上げてきた。
どうしようもなく嫉妬深い男だ。
最初から見栄を張らなければいいのに。
相手がしもべだろうとなんだろうと、結局は自分のものに手を出されるのが許せないのだから。
『私の玩具をとるな』
誰に対してもそう言えばいい。そんなことは十分分かっているし、今更気にならない。
面と向かって言われても、もういつかのように泣いたりはしないのだから。
「何か楽しいことでも?」
表情に出ていたらしく、彼が訝しんだ。
「あんたってほんと……複雑よね」
呟くと自分からヴィティスの額に口付けた。
自分に対して無茶ばかりさせる男が、何故か愛しくさえ思えたなんて本人に向かっては
とても言えず、ただ笑いかける。
彼女の性格にそぐわぬひそやかな微笑みは、見慣れないせいか寂しげなものだった。
さすがのヴィティスもそんなジュジュの心中を全て洞察出来るわけがない。
「乱れている君は美しいよ。私の前でもそんな風になってくれればいいのだが」
少女の口元を拭ってやりながら、その顔は満足そうに笑っていた。
〜おしまい〜
正月から読んでくれてる人ありがとう。ただただ感謝。
思うところがありましたらどうぞ言ってください。
今年もよろしくおねがいします。
ではまた。
>>283 いつだって本気だぜなんだぜ。
あれもこれも書くので良かったらまた読んでください。
割り込んですまんかった 楽しませてもらったよ
本物のガルムと偽者のジュジュと偽ガルムその後も気になるw
>>297 GJ!!
新年早々、こんなクオリティの高いSSに出会えるとは…
保守
>>250 レオンと言えば前スレだかにあった旧OZ3Pは良かった
カインはあれきりだったか?
奥様の名前が判らないのがネックだよなー、やっぱし。
名前だけでもついてればなあ
ここの住人で考えて名前を付ければいいんだ
せつこに1票
何でいきなり日本名なんだよw
奥さんの名前もドロシーだったら…
ああそれいいな。
そんでカインはまだ球だったころの神々の子に亡き奥さんの名前つけて
ドロシーと呼んでいたとか。3歳児フィールもそれを聞いていて覚えたとか。
大いにアリじゃね?
亡くなった奥さんの名前をつけるってのはなあ・・・
カインが死んで奥さんが生きていれば、未亡人だったのに…
その未亡人に襲い掛かるOZの野郎共VSフィールとドロシー
ママンと小娘はどっちにつくのだえ?
そりゃフィルドロ側だろ
ママンは女の味方、小娘はフィールの味方
・・・なんか、レオンがアルミラと、犬っころが小娘とタイマン張りそうだな。勿論性的な意味で。
アルミラたんって呼んで冷たい目で見られたい
なら俺は先生って呼んで手とり足とり教えてもらいたい。
なら俺はわざと無理なパスばっかり出して怒られたい
〃〃∩ _, ,_
⊂⌒( `Д´) < 少年って呼んでくれなきゃヤダヤダ!
`ヽ_つ__つ
ジタバタ
_, ,_
(`Д´ ∩ < ヤダヤダ
⊂ (
ヽ∩ つ ジタバタ
〃〃
∩
⊂⌒( _, ,_) < ヤダヤダ…
`ヽ_つ ⊂ノ
ヒック...ヒック...
∩
⊂⌒( _, ,_)
`ヽ_つ ⊂ノ zzz…
おやすみ
寝るなよw
/i,/i
ミ,,`(叉) 少年…
ノ);;/ |
\(_,,,_,,,)
わんこに言われてもwww
ガルムたんは小僧って呼んでくれなきゃヤダ(AA略)
ではジュジュには?
「フ、フィ、フィール!」とか呼ばせたい
最初どもるの
そんで怒ってないのに怒鳴ってるみたいに呼ぶの
フヒヒ フィール!
に見えた俺は死んだ方がいい
ジュジュの太股を舐め回したい
フィールになれば簡単だぜ
フィールになれば…
ジュジュのツンデレ光線を全身に浴びることが出来る
アルミラさんのエロい声を堪能しながら親しく会話が出来る
レオンがボウズと呼んでくれる
ガルムが小僧と呼んでくれる
ドロシーがお兄ちゃんと呼んでくれる
(*´Д`)ハァハァ
誰か忘れてやしませんか
忘れてた
すまんかった
カインもフィールって呼んでくれるよね
(*´Д`) 〜・ <パパだよ〜
ちょ、ヴwww
ヴ、ヴ……、ヴ?(´・ω・)
(´;ω;`)ヴボボモワッ
おまえらヴなんとかの名前くらいちゃんと覚えておいてやれよw
ヴ<何、気にすることはない
ドロシー<そうですよ、気にしない方がいいですよ
皆ちゃんとヴ……さんのこと分かってますから
341 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 11:28:18 ID:uh9F2moW
↑業者乙
343 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 13:18:11 ID:zGO099zt
こんちゃ
みなさんそんなに紫の人が嫌いですか?w
フィールきゅんとアルミラさんとジュジュがいれば十分だ
誰か男とジュジュがいれば(ry
じゃあ俺がジュジュの相手役で
生意気なジュジュのお尻をお仕置きしてあげたい
カインと奥さんのフィールができるまでの過程が見t
奥さん名前がな…
もったいないよな…
名前あったら文章も更にウヒョーwwなものになるだろうに
逆に考えるんだ(AAry
フィールというあの名前が、なぜ男性にも女性にも合いそうな名前なのかと考えるんだ
それはつまり、フィールという名前は亡くなった奥さんの名前から取った名だったんだよ!!
それでエロ書かれても困るな
どこの腐小説かっての
確かにそれは嫌だ
じゃあ奥さんの名前はドロシーで
>>355 _,,_ パーン
(‘д‘)
⊂彡☆))Д´)
いっそのこと
「 」
で表現してはどうか
各々好きな名前いれんの
ムーミンみたいにカインにママとか呼ばせるとか
フィールいないかもしんないけど
フィールが産まれたあとならママ呼びもいいかも
しかしフィールいない段階でママ呼びは、もはや幼児プレイ
カインが一気に変態くさいなw
カインならおk
カインは変態なのかw
変態でおk
まぁカインだからな
ガルム=フィール>レオン> 越えられない壁 >ヴィティス=カイン
こんな感じか?ケモナーが多い……のか?
多いってほどでもないような
アルミラさんの「少年」でハァハァしたいのに、このゲーム中古でも2000円以上しやがる
ちくしょー
「少年」のために2000円出しても買う価値はあるぞ
368 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 13:42:54 ID:eB5c7RhN
トトの擬人化あり?
投下前に注意書きさえあれば、大抵のものは大丈夫かと
ありがとう
擬人化されたトトはツンデレな男の子ですか?
それともツンデレな女の子ですか?
ヒゲの生えた渋いオッサンなんじゃあ…
トトはふたなr(ry
髭のおっさん良いな
顎髭?
ちょび髭?
もみあげからもじゃー?
イヤミ?
どれよ
渋い感じなら何でもいいよ
その渋い親父が誰にセクハラするのか早く知りたいです
>>84ガルドロの続きフィール×ジュジュを何回かに分けて投下します。
380 :
380-1:2008/03/12(水) 02:18:55 ID:1eevmUXq
ジュジュはこの部屋に来るといつも最初に本棚をのぞく。
特に本が好きだという話は聞いていないので、何となくしている行為なのだろう。
フィールを振り返って読んでもいいかと許可を求める。いつものことだ。
いつも途中になるので良かったら貸すよと言うのだが彼女は興味なさそうに断るばかりだった。
間を置いて何度か同じ本を手に取ることもあり、もしかして以前読んだのを覚えていないの
だろうかと、隣からちらと覗くと途中の頁から読み始めたりする。やはりそれなりに興味の
ある本をちゃんと選んでいることをうかがわせた。
父の書斎にあったものをやはりフィールが興味あるものだけ読んでは並べているので、一応
そこにある本の内容はおおよそ知っている。
たまに全く笑いの要素のない本で彼女が笑っていることがあって、それが彼には不思議だった。
「その本面白い?」
「うん……」
返事はするが上の空。
フィールに背中を預けて真剣に頁を送っている。
一緒にいるだけで幸せと言えば幸せだが、ちょっとくらいの会話はしたい。読書の邪魔を
したくはないが話しかけようか、かけまいか、天井を眺めて考えていると後ろから声がした。
「ね……フィール。あたしが本読んでるとつまんない?」
「うん」
正直に答える。
少女の笑い声に合わせて背の接している部分が揺れた。
「あんたって本当に素直ね」
なんだか子供扱いのような台詞に彼は頬を染めた。
「きみがいればそれだけでいい、って言いたいところだけどせっかく一緒にいるんだし。
構って欲しいなんて子供みたいだと自分でも思うんだけど」
「なに言ってんのよ」
心地よい重みと共に後ろから腕が回される。
彼女のやわらかい部分を肩のあたりに感じてフィールは思わず目をつぶった。顎の下にある
細い手首をそっと握ると、大きくため息をつく。
少女の自分を挑発するような態度にめまいがした。
フィールは振り返ると自分から改めて彼女の腰に手を回した。
相変わらず折れそうなほど細い。
「ジュジュ」
囁きと共に抱き締める腕に力を込めた。
それは彼女に対する意思表示だ。伺いを立てると言う意味も込めている。
その腕で――後ろに回された手で背中の釦を外したいと。
すぐそこにある寝台ですべてを自分の前に晒してほしいと。
年頃の少年が持つ当然の欲求だった。
彼女は顔を上げるとフィールの頬に手を添える。
紅いやわらかそうな唇が恋人を求める形になり、少年は自身のそれで応じた。
互いの温かな感触を確かめるために何度も離れてはまた口付けた。
少年の腕が彼女の背を上ってゆくのは当然だし、もう一方の手が彼女の体の上を移動して
いったのもまた当然と言えた。
フィールの手が肩の上を通って顎、首筋を撫でてゆく。
胸の上まで移動したとき少女がほんの少し体を引くのを感じた。だがそれには気付かぬふりを
してそっと指先に力を入れる。すると心地よい弾力が彼を押し返してきた。
もう一度同じ感覚を味わいたくて空いてる方の手で彼女が逃げないよう引き寄せると、少女の
手が自身の胸にのっている手を掴みそれを下へとよける。
「ん……まって、フィール。駄目、もっと……キスだけ、して……」
彼女の方から積極的に舌を差し入れる。
フィールは大人しく掴まえられた手も少女の腰へと回した。
だが自分が求めるのは唇だけと彼を拒否したことが――鈍感な風を装って彼の真意に気付か
ないふりをしたことがジュジュには後ろめたかった。
ごまかそうという気持ちから熱い口付けを繰り返したが、それがかえって少年の欲望を煽る
とは彼女は思ってもみなかった。
381 :
380-2:2008/03/12(水) 02:19:46 ID:1eevmUXq
明け方からの雨が昼過ぎには小降りにかわり、見上げれば雲間から光をのぞかせるところも
出てきた。
空気は湿気を含んで重たげだ。洗濯物を乾かすのもままならない天気はつまらない。
それでも地面をまんべんなく覆う雨水が青空を映し始めると、歩くには鬱陶しいだけの
水たまりもなんだか嬉しいものに感じられた。
ぱらぱらと窓をたたく音が徐々にゆっくりになってゆく。その内側で二人はいつものように
向かい合ってお茶を飲んでいた。
「雨止みそうですね。明日は晴れるといいんですけど」
家事を引き受ける者としてはやはり晴天が望ましいのだろう。
「夜から降りだして朝には止んじゃえば気にならないのに。雨の日はお兄ちゃん、ちょっと
だけそわそわしてるんです」
「山にいけなくなるからか?」
「いえ……雨で仕事がお休みだとジュジュさんが来るから。突然天気が崩れた時とか、遊びに
来る約束が無いことの方が多いんです。だから雨でも向こうの都合で来ない時もあって。
今日は来るかな、お茶の用意しておこうかな、ってうろうろ落ち着かなくなって可愛いん
ですよ」
いつまでも初々しい彼女の兄に頬を緩めながら、さりげなくきっかけを探していたガルムが
ついでと口を開いた。
「そういえば……先日小僧に会った」
「お兄ちゃんと?何にも言ってませんでしたけど……いつですか?」
「いや、特にどうと言うような話をしたわけではない。会ったのも偶然だ。ただ……」
「ただ?」
不思議そうに首を傾げる彼女に咳払いをして答える。
一度目を逸らしたのは照れたせいだろう。
「いや……お前をここに泊める許しを得た」
「え……?」
数秒の間をおいてドロシーの顔が頬から首までほんのりと染まっていった。その速度が意味を
反芻し、理解するまでにかかった時間だろうか。
耳まで真っ赤にしてやっと彼の顔を凝視していることに気付き、慌てて視線を目の前の茶器
へと移動させた。
砂糖も何も入っていない茶碗を匙で意味もなくかき回す。
万事において堅いガルムの性格を知っているせいか、そういえば彼の家に泊まりたいと考えた
ことが一度もなかったことにと、ドロシーははっとした。
二人は恋人同士、今まで彼女にそういう発想がなかったことの方がある意味おかしかったの
かも知れない。
「どうする」
もちろん泊っていかないかという意味だが嬉しくも恥ずかしいこの申し出を、ドロシーは
断るほかなかった。
「あ……りがとうございます。でもあの、私、何の用意もしていないし、今日は……ごめん
なさい」
「あぁ、そうか。そうだな」
諾否を聞いたことで一応の緊張が解けたのか、ガルムは静かに、だが少女にもそれと分かる
ほど大きく息をついた。
気にすることはないと言うように彼女に微笑みかける。
「女性にはいろいろあるか。男のように身一つで、と言うわけにいかんのは大変だな」
朝の身だしなみ一つとっても何の準備もなしでは落ち着かないだろう。
そんな彼の思いやりが伝わってきて、ドロシーはほんの少しだけ誘いを断ったことを後悔した。
「すみません。でも……嬉しかったです」
「いや、いいさ。また今度」
「はい」
下心を感じさせない大人の態度に彼女は嬉しそうに微笑むと今度は素直に返事をした。
382 :
380-3:2008/03/12(水) 02:20:36 ID:1eevmUXq
玄関の鍵を締め居間をのぞくと兄が長椅子に横になっていた。
することがないのか、そんなふうにぐうたらしているのは珍しい。
「ただいま」
「……ん……ああ、おかえり。……ガルムは?」
「いっつも同じこと聞くのね。もう帰ったよ」
「いっつも同じこと聞くのはね、たまにはガルムも家でお茶を飲んで行けばいいのにって
思ってるからさ」
フィールとしてはいつも暗くなってから妹を家に送ってきてくれるガルムにお茶の一つも
出したいのだが、ドロシーに声をかけさせてもなかなか寄っていってはくれなかった。
「お兄ちゃんこそジュジュさんは?今日は来なかったの?」
「……」
ちら、と彼が妹を横目で見る。
はっきり言わないところを見るとフィールは突然の休日を一人で過ごしたらしい。
ドロシーは気を遣って話題を変えた。
「そ、そう言えば今日聞いたんだけど。お兄ちゃん、ガルムさんに会ったって本当?」
「あー……」
うつ伏せに腕を枕にしていたのをごろりと仰向けに向き直る。
木目の美しい天井を見つめて腕組みをした。
「いつだったかなぁ。十日は経っていないと思うけど……なに?ガルムに聞いたの?」
「そうだけど――あっ!お兄ちゃんお酒なんか飲んでる!」
テーブルの上を見てドロシーが声を上げる。
お茶を飲んでいるものだとばっかり思っていたのだ。
「僕だってお酒を飲みたい時くらいあるさ。それこそもう子供じゃないんだし。折角の休み
なんだ、少しくらいいいだろう?」
妹の声にフィールは言い訳がましいことを言った。
「別に駄目とは言ってないじゃないよ。……でも飲み過ぎないでね」
「お前じゃあるまいし自分の酒量くらい分かってるさ」
これは以前ガルムの家で酔って寝てしまったことに対するあてこすりだろう。
ドロシーは頬を膨らませた。
「もう、お兄ちゃんてばお酒って言ったらいつまでもおんなじ話ばっかりして。こっちは
真面目に心配してるんだからね!」
「ははは、ごめんごめん。もう言わないよ」
「もう……絶対だよ?約束だからね?」
「はいはい……。で、なんだっけ。えっと……ガルムに会った話だよね」
「うん」
「特にお前に言うほどの話をしたわけじゃないから忘れてたんだよ」
「そういうことでも教えて欲しかったの。次は教えてね」
「分かったよ。恋する乙女は知りたがりだな」
「お兄ちゃん!」
「あーわかった。ごめんってば。もう言わない」
珍しく妹をからかうようなことばかり言う。笑ってはいるが何か苛々することでもあったの
だろうか。今朝は用事もないと言っていたし、ジュジュも来なかったのでは一日家にいて
なにか不都合があったとは思えないのに。
だが確かに普段と違う様子の兄にドロシーは少し心配になった。
「良かったじゃないか。泊まりがけで会えれば二人ともゆっくりできるだろう?ガルムも
わざわざお前を送ってこなくて済むし」
「う、うん」
「嬉しかっただろ」
「うん」
ドロシーは恥ずかしそうに、だが確かに幸せそうに頷き、頬がまたほわ、と染まった。
「僕もね、嬉しかった」
兄の台詞に妹がきょとんとした顔になる。
「まさかあんなことを断られるとは思わなかったけどね。……ほら、僕はお前と年が3つしか
変わらないし、ガルムは僕より大分大人だろう?」
「うん」
383 :
380-4:2008/03/12(水) 02:21:17 ID:1eevmUXq
それは否定しようのない事実だ。
実際何かあるとフィールはまずガルムに相談することが多い。あるいはヴィティスか。
彼らの助言には経験によって裏打ちされた確かな重みがあった。
「それでも僕のことを年下だって侮らずにお前の保護者と認識してくれてる。嬉しいよ。
当然とは思わないけれどいちいちそうやって断りを入れてくれるのがね。呼び方はいつまでも
小僧、だけど」
再び楽しそうに笑い声を上げる。
だが出会ったころからのガルムの呼びかけにすっかり慣れてしまって、今さら名前で呼ばれ
たら落ち着かないことだろう。
恋人の家に泊まる、という話でドロシーも以前から考えていたことを口にした。
「私もね、ジュジュさんにまた泊まりに来て欲しいなって思ってたの。前の時から大分経つ
でしょう?今度会った時に伝えておいてくれない?ジュジュさんと色々お話したいの」
「それを言ったら僕だってガルムにちょっと……話したいことがあるんだよ。この間会った
時に直接言えば良かったんだけど忘れててさ。お前から都合のいい時を聞いておいてくれない
かな」
「なあに?相談ごと?」
「……うん、まあそんなものだよ」
自分に言えないような話なのか歯切れの悪い言い方だった。
今日でなければ最近の出来事だろうか。思い当たることはない。さっきの態度といい、本当に
何かあったのだろうか。
それでもドロシーは心配を顔に出さないよう兄に頷いて返した。
「うん。伝えておくね」
普段は彼らの家に寄り付かないガルムも、相談があると言えばきっとすぐに来てくれるだろう。
ぶっきらぼうなようだが思いやりのある男なのだ。
木々の間をゆくと斧を木に打ちつける音が聞こえてくる。耳に心地よく感じるのは、一定の
間隔で響いてくるからだろう。
音の発信源に近づくにつれて鳥の鳴き声が少なくなる。
あたりに視線を巡らせると目当ての人物がこちらに背を向けて木を切っている。
彼は斧を構えた少年に声をかけた。
「小僧」
「わっ!」
いきなり声をかけられて、思わず斧を振る手がぶれた。
狙いを定めていたところからずれ、幹に斜めに突き刺さる。変に力が入ってしまったためか
ぴたりと嵌まってしまった。
あまりに驚いたからだろう。少年は恐ろしいものを見るようにゆっくりと振り返った。
「なんだ……ガルムかぁ……脅かさないでよ」
「すまん、そんなに驚くとは思わなかった」
「足音がしなかったからさ。ああ、驚いた」
木に向き直って斧に手をかけると思いのほかしっかりと刃が入り込んでいて、なかなか抜け
なかった。
「俺がやってやろうか?」
「ん……ありがと、大丈……夫……っ!」
さすがに樵を生業にしているだけあって人の手を借りようとはしなかった。なんとか斧を抜き
取るとその大木に刃を下にして立て掛ける。
「ふぅ」
一息ついてフィールは改めてガルムに向き直った。
「どうしたんだい?こんな所に」
「どうしたではない。話があると言ったのは貴様だろうが」
「あぁ……!そっか。それでわざわざ来てくれたのかい?なんだか悪かったなあ」
耳の後ろをかきながら恐縮する。
わざわざと言う意味ではフィールの家に来てもらうのも手間は一緒なのだが、こんな森の中
ではお茶も出せない。
話を聞いてもらうのに何の仕度もできなかったことを彼は申し訳なく思った。
384 :
380-5:2008/03/12(水) 02:22:05 ID:1eevmUXq
それを察してガルムは手を上げる。
「気にしなくていい。散歩のついでだ」
「でもよくこの場所が分かったね」
「大体の場所は彼女に聞いていたからな。いいからほら、座れ。休憩にしろ」
彼女というのはドロシーのことだ。
強引にフィールを座らせると、彼が手に持った包みから出したのは小さな器に入れた軽食の
数々だった。
日が暮れるにはまだ大分あるが、体力勝負の仕事だけに腹が減っていると思ったのだろう。
女性が好んで食べるようなものではなく腹にたまるような内容だった。
思わずフィールが声を上げる。
「うわぁ、美味しそう」
「感想は食べてから言うものだ」
包んできた布を畳みながらガルムは口うるさく言った。
「本当は僕がガルムの家に行くのが当然なんだけど」
「仕事が終わった後、夜中に彼女を家に一人残すわけにはいかんからな。……聞かせられない
話なのだろう?」
「んー……うん……分かる?」
ちら、と少年の目がガルムをうかがった。
「まあ、その位はな。兄が話してくれないと大分心配そうな様子だったぞ。話せないなら
あまり表情に出すものではない。それも思いやりだ」
「うん。そうだよね……ごめん。気を付けるよ」
フィールはガルムの差し出した料理に手を出した。
パンで鶏肉を巻いたもので甘辛く煮て汁けを切ってあったが、口に入れると肉汁がじゅっと
広がった。
良く噛み飲み込んでから再び口を開く。
「ガルム……あのさ、ドロシーのことなんだけど」
「なんだ?」
「将来的にどうするつもりなのかな」
フィールの問いかけにガルムは自らも料理を口に運ぶ途中、一瞬その手の動きを止めた。だが
答えを考えているのか決して急いではいない速さで咀嚼するとごくんと飲み込み、恋人の兄を
正面に見据えて口を開いた。
「無論責任はとるぞ。どうする、と言うのが結婚するのかと言う意味ならば、する、と答え
よう。彼女のことに心配はいらん」
「違うよ、ドロシーに対する扱いに不安を感じてるわけじゃないんだ。ガルムがドロシーの
ことを大事にしてくれてるって言うのはよく分かってるからね」
「ではどういう意味だ?」
「異種族であるってことについて」
「む……」
「僕たち人間とカテナは寿命が違うだろう。ドロシーはもしかしてそうじゃない可能性も
あるけど」
反応をうかがうような視線にガルムはあっさりと首を振った。
「わずかな可能性に賭けるのは止した方がいい。いつだって悪い方に考えていた方が落胆は
少ないからな。俺はそれについてはもう……諦めている」
「諦める……」
フィールは彼の言ったことをよく理解するよう口の中で繰り返しながら眉を寄せた。
「表現としてはこれ以上ないくらい後ろ向きだが、実際俺にはどうにも出来んからな。ほんの
少しの可能性に賭ける気もないし、彼女とて自分でどうこう出来ないことを期待されても
辛いだけだろう」
「出来ないかな」
「そう思っていた方がいい。彼女のためにも、自分のためにも。それにそう考えていたほうが
一緒にいる時間を大事に出来るだろう?」
「そうだね……うん。その方が前向きだね」
「そういう貴様はどうなのだ。小娘とはどうなっている」
ガルムは腕を組み改めてフィールに目を向けた。
料理に伸ばしかけていた手がぴくんと反応する。
「話があると聞いたが……そのことか?」
385 :
380-6:2008/03/12(水) 02:25:57 ID:1eevmUXq
「あ、あのさ」
そこで言葉を切るとフィールは喉を鳴らした。
一大決心と言った様子にガルムもつられて緊張し居住まいを正す。
これほど思いつめている(様に見える)少年に、真剣な顔で次の台詞を待っているとはたして、
フィールの悩みは全く予想外のものであった。
いや、方向としては合っていたと言えるだろう。
少年は膝の上に置いた手を握り締めた。
「あの、お、お……女の子がさ、し……たくないのって、どうしてだと思う……?」
一瞬と言うには長すぎる沈黙。
フィールは相当思いつめているようで、恥ずかしさから顔を耳まで真っ赤に染めながらも
ガルムから目を逸らさなかった。
そのガルムはというと今の台詞ははたして聞き違いだろうか、と眉をよせやはり正面にいる
相手を凝視する。
「――なんだと?もう一度言ってみろ」
暫く見つめあった後にやっとガルムは聞き返した。
「なんだって……だから、言った通りの意味だよ。どうしてだろう。ガルムには分かる?」
内容は全く具体的なものではなかったが、言いたいことは分かる。
重ねての言葉にフィールが真剣に悩んでいることを察すると、若者らしい悩みにガルムは頬が
緩むのを感じた。
だが同時に不安を覚えたことも確かだ。
性に関してもっとも貪欲になる時期だから仕方がないとはいえ、女性には女性の事情がある。
特に男には話しにくいこともあるだろう。
それが分からないような男ではないとも思ったが、ガルムは諭すように言った。
「小僧、まさか貴様はしないとは思うが……相手に自分の欲望を押しつけてはいかん。それに
女性には色々と都合があるのだ。体調によって情緒不安定にもなるようだし――とにかく
相手が駄目だと言うなら潔く引き下がるべきだろう。体のつながりが男女のすべてではない」
「ち、違う」
フィールはぶんぶんと首を横に振った。
「違うんだ。そうじゃなくって……あの」
そこまで言いかけ残っているほんの少しの躊躇いから、視線を並べてある料理に向けた。
「ずっとなんだよ」
ガルムは先程よりも深く眉間にしわを寄せ、直後、少年が本当に言いたいことを察して目を
見開いた。
「なんだと?」
小僧と小娘――ジュジュの、二人の仲睦まじい様子からは考えてもみなかった事態にまさかと
驚きを隠せない。
「あの、びっくりしたかもしれないけど僕達……まだ、その……ないんだよ」
「何故――」
「分からない」
フィールは哀しげに目を伏せ再び首を振る。
だからそれを相談したいのだろう。自分だけで考えるには彼もそろそろ限界なのだ。
「僕はそりゃ、好きな子と……ジュジュと抱きあいたいって思うんだけど。そういうこと、
彼女は思わないのかな?どう思う?したいって思うのは普通だよね?」
「ああ。好きな異性には持って然るべき感情だ。相手にそれを押しつけなければな」
「まさかそんなことはしないけどさ。だからね、どうしたらいいのか分からなくて。解決策が
見当たらないっていうか……彼女、理由を言ってくれないんだよ」
暗い顔の少年に、ガルムは大人として違った方向で感心していた。
「よくまあ何年も耐えてきたものだ」
彼は嫌がる恋人に無体なまねをするような男ではないとガルムは知っていた。
それでも彼らの付き合いの長さを考え年頃の若者の好奇心、性欲を思うと、これまでよく我慢
してきたものだと感心した。
「大袈裟だよ。ただ……内容が内容だけに誰かに相談もし辛くてさ。最初は女同士と思って
アルミラに聞こうかとしたんだけど、僕にも理由を言ってくれないことを勝手に話されるのは
ジュジュが傷つくかなって。同性だからこそ言いたくないことってあるかもしれないし。
だから僕の立場ならどうするべきか……ガルムなら大人だし客観的な意見を聞かせてくれる
かと思ったんだ」
386 :
380-7:2008/03/12(水) 02:39:49 ID:1eevmUXq
「ふむ……」
まさかこの二人がいまだ清い関係だったとは誰も気付いていないだろう。気付かせないほど
周囲の者の目に二人は仲良く映り、あの勝手な少女をしてたいした喧嘩の話も聞かずにきた
のだ。
二人はすっかり黙り込んでしまった。
フィールなど切りかけの木があるのも忘れているかもしれない。
「貴様を拒否するのに考えられる理由か……」
「うん。分かる?」
「例えば過去に何か……」
「え?」
「いや、もしかして以前そういう関係のことで嫌な思いをしたことがあるのではないか?
なにか心に傷を負うような。それが原因で今一歩踏み切れないとか」
「――!!」
ガルムの推測に、少年は息をのんだ。
必死に今までのジュジュの様子を思い出せるだけ思い返す。
初めて手をつないだ時のこと。思った以上に華奢な体を抱きしめたときのこと。
それにそれ以上のことをしようとしてかわされたときのことを。
「どうだろう、分からない。そんな感じはしなかった……と思うけど」
フィールは髪を手でがしがしとかき回した。どれだけ考えても思い出せる場面には限界がある。
それよりなにより。
「もしかして僕、鈍いから……彼女の様子に気付かなかっただけかも知れない」
うなだれる彼をガルムは励ました。
「想像で落ち込むな。そう決まったわけではない。早計だぞ。他の可能性としてあるいは」
「……あるいは?」
「自分の体形などが原因で、もう少しやせたら、と考えているとかか?」
「もう少し?もう少しったってもう四年目になるんだよ!?」
「女性は見目好い姿になるためなら、多少の無理は通すからな。この場合、通される無理は
貴様だということになる」
「でも彼女、全然太ってないよ。それどころかもう少し太ってもいいくらいだ」
「彼女らにとって重要なのは『自分が』満足するかどうかなのだ。人の意見など参考にしか
ならん。あとは……」
「そういうものなのかなあ……でも、四年だよ?えー……ごめん、あとは?」
「ふむ。ただ単純に怖いだけであるとか」
「怖い?」
「そうだ……女性というのは男を受け入れる側のせいか、初めての時というのは人によっては
そうとう怖いものらしいぞ」
フィールは目を丸くした。
恋人と抱き合うのがどうして怖いのだろうと思ったに違いない。
「怖がるなんてどうして……何が怖いっていうんだろう。そんなこと、考えたこともなかった」
「だろう?まあ、その辺は性格にもよるのかもしれん。個人差はあれかなりの痛みを伴うよう
だし、俺達にはどうしても理解できない部分もある。これは仕方がないことだ。性差による
ものだから。だがもしこれが理由なら貴様の努力でどうにかなるのではないか?」
「どうにかって言われても……なだめながら……ってこと?」
やはり初心者ゆえか、怖がるものをどうして扱ったらよいのか見当が付かないらしい。
「大体さ」
「うん?」
「そんな状況になったら……多分ジュジュの様子にかまってる余裕ないと思う……」
ガルムは唸った。
確かにありえることだ。
大体彼女が恋人を拒否する原因がガルムの言う心の傷だった場合、下手に手を出せば二人の
中に亀裂が生じる可能性もある。
「やはり本人に理由を聞かせてもらうのが一番だろう。ここでどうこう言ってもそれが分から
なければ対策のとりようがない」
「やっぱりそうだよね。でもさ、教えてくれないんだよ」
387 :
380-8:2008/03/12(水) 02:44:14 ID:1eevmUXq
再びの沈黙。
二人ともすっかり手が止まっている。
フィールがぽつりと言った。
「ガルムの時はそんなことなかった?」
「――随分答えにくいことを聞く」
確かに大胆な質問だった。
それだけ精神的に余裕がなくなっているということだろう。
ガルムの妙な表情にフィールも気まずくなったのか、焦ってつけ加えた。
「あのね!僕だって今の質問はすごく勇気を出してしたんだよ。妹のことだもの、あんまり
具体的なことは知りたくないしね。ほら……気まずいだろう?」
やはりさんざん迷った末の言葉だったらしい。
ガルムは軽くため息をついた。
「俺の時は……」
ここまで悩んでいるのだからとこの際恥ずかしさを脇に追いやって、少年の知りたいだろう
ことを考え考えしながら口に出した。
「そうだな。拒否、というほどの抵抗はなかった。ただ――恥ずかしそうに笑って――受け
入れてくれた。貴様も思ったかも知れんが、自分でも求めるには早すぎると……今でもあれは
早すぎだったと思う。しかしどうしても彼女が欲しくなってな。もちろん拒絶されたら止す
つもりだったし、その自信もあった。だが彼女は……」
「嬉しかったんじゃないかな。好きな人に求められたんだもの」
「ふ……だといいがな。本当は断れなかったというのでなければいいが。あの時は俺もだが、
彼女は相当緊張していた」
「ガルムも?緊張したの?」
当然経験があるものと思って話を聞いていたフィールは思わず問いかけた。
「するに決まっている。惚れた女を初めて抱くんだ、当然だろう」
聞くまでもないと反射的に答えたがあまりにあからさまな自分に慌て、ガルムは咳払いをした。
「どれだけ経験があるかなど関係ないだろうな、その辺は。相手を真面目に想っている者なら
皆同じなのではないか?緊張もするがそれ以上の喜びがある。……彼女は辛そうだったが、
それでも俺に応えようと耐えてくれて――それがたまらなく愛おしかった」
自分が聞きたがったことでも初めは気まずかったはずなのに、いつの間にか二人の間に確かに
愛があるのを感じて少年の顔からは力が抜け、穏やかな表情をしていた。
「ドロシーはガルムのことが本当に好きなんだね」
「俺も同じだけ……いや、それ以上の気持ちで彼女を想っているぞ」
「うん、分かるよ。ドロシーもきっとね。家でガルムのことを話してる時のドロシー、本当に
幸せそうだもの」
「む、そうか……」
そしてまた暫くの沈黙があった。
「ねえガルム」
「なんだ?ほら、せっかく作ってきたんだ、もっと食べんか」
向かいに座る少年に勧めながら自らも口に運ぶ。
「ありがと。……あのさ、さっきの話からすると、ジュジュってもしかしてさ……」
ガルムは黙って次の言葉を待った。
フィールの声は珍しく不安げだった。
普段から断言する強さ、押しつけがましさはないが、大丈夫かと声をかけたくなるような
気弱さを感じる。
「ジュジュは僕のこと本当はそんなに好きじゃないのかな」
吹き出しそうになったのかぐふっと妙な音がした。
ガルムは咀嚼していたものを慌てて飲み込み、余程苦しかったのか胸を叩いている。
少年はそれを見てお茶を差し出した。
「大丈夫かい!?」
「ごほっ……大丈夫かだと?それはこっちの台詞だ。どういう考え方をするとそうなるのだ。
全く少し考えていたかと思えば愚にもつかない事ばかり言いおって」
ひったくるようにお茶を受け取り喉に流し込むと、それでやっと人心地が付いたのかガルムは
ふう、と息をついた。
388 :
380-9:2008/03/12(水) 02:51:34 ID:1eevmUXq
「いいか、OZとして一緒にいた俺に言わせればな、あの娘がそんな半端な気持ちであれほど
他人に懐くわけがない。貴様らを知る者に聞いたら笑われるぞ。大体あの娘の貴様に対する
恋心、傍で見ていれば分かりすぎるくらいだった。もっと隠せと言いたくなるほどにな」
「え……本当?いつから……僕、全然気付かなかったけど」
「だから貴様は鈍いと言うのだ。まったく……良くそれで付き合いが始まったと思うぞ」
「はは……ねえ。本当だよね」
自棄になっているのか、彼の言い方はまるでひとごとだった。
「立ち入ったことを聞くが、それこそ泊まりに来たりもするのだろう?」
「来るよ。ドロシーの部屋にね……もうひとつ頂きます」
「ああ、たんと食え。全部食っても構わんぞ。何故彼女の部屋に……いつもか?」
「うん。泊まりに来た時は絶対僕の部屋には来ないね」
少年は眉をよせた。
この少年は負の感情を表に現すことは滅多にしない。ここまでつまらなそうな顔をするのは
とても珍しいことだった。
ガルムは再び思考を巡らせる。
恋人の家に行ってその妹の部屋に泊まるなどということがあるのだろうか。いや、少女二人は
結構気が合うようだから別段おかしなことではない。
だが絶対入らないというのはやはりそういう雰囲気になるのを避けるためだろうか。それに
してはあからさま過ぎる。
それともドロシーに遠慮があるからか、もっと単純にドロシーと話をしたいだけなのか。
話を聞いているだけではガルムにはどれも判断がつかなかった。
OZだった頃のジュジュはあまり周りに遠慮をするような性格ではなかったのだが。
「彼女に……ドロシーに聞いてもらってはどうだ」
「えぇっ!?そ、それはちょっと……」
まさか彼女との男女の付き合いについて悩んでいるのだなんて妹に言えるわけがない。
案外照れもせずに真面目な意見を聞かせてくれるかも知れないが、それはそれでショックと
いうものだ。
恋人が出来た今でさえ何も知らないような少女でいて欲しいと思う。それが兄の我儘に過ぎ
ないと分かってはいる。分かってはいるが、それでもそんな話を振る気にはなれなかった。
へどもどと断る少年にガルムは頭を振った。
「この手の話は俺向きではない……わかるだろう。すまんが具体的な助言が出来る自信がない。
俺にとって女心とはこの世で最も理解が及ばないものだ。レオンかヴィティスに相談した方が
いいかもしれん」
「……」
「聞き辛いなら俺から言ってやってもいいが」
少年の気持ちを慮ってガルムが世話を焼いた。
「ううん、いいよ。もう少しガルムの言ってくれたことを考えてみる。出口が見えないよう
だったら自分で行くから……ありがとう」
「礼などはいい。力になれなくてすまんな」
「ううん、十分参考になったよ。ありがとう」
ガルムが立ち去った後、フィールは再び先程の木に取り掛かった。
しかし心はジュジュのこと、ガルムの話してくれたことを思い出すばかりで一向に作業に
身が入らなかった。
普段の倍も時間をかけて木を切り倒すと余計な枝を払って丸太の状態にする。
その上にどっかと腰を下ろすと彼は空を仰いだ。
空は透き通るように薄く、雲は見えずどこまでも高い。
お茶を飲んだばかりだったがフィールは大分長いことそのままの姿勢でいた。そして一休みと
言うには長すぎる程ぼんやりした後、彼は斧を持って立ち上がった。
〜つづく〜
ではまた。
おつ!
ガルム好きだから嬉しいわぁ、こういう雰囲気のガルム
>>389 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
続きはまだかああああああああああああああああああああああああ
注意:男同士の同衾表現あり(雑魚寝)
394 :
380-10:2008/03/15(土) 01:33:27 ID:wttH9oLM
「ただいま」
玄関を開き声をかけたものの、ドロシーはまだ帰っていないようで中からの返事はなかった。
今日はどちらに行く日だったかと今朝の会話を思い浮かべる。
だが肝心の記憶に届かないうちにどこにいるのかを気が付いた。
「そうだ、さっきまで僕がガルムと会ってたんだから、今日はおばさんのところだよなあ」
妹はきっとおばさんの止まらぬ世間話の犠牲になっているのだろう。
フィールはそっかそっかと呟きながら手洗いへと向かった。
水差しから桶に水を汲み日中の汗と埃を落とすのにざぶざぶと顔を洗った。水を捨ててもう
一度新しい水で顔をすすぐ。さっぱりして布で顔を拭いながら台所へと向かった。
料理用に汲み置きしてある水を大甕から柄杓ですくって直接水を飲む。それはまだ小さい頃、
妹に行儀が悪いことだからやっては駄目だよと教えたことだったがこの家には今は自分たち
二人しかいない。わざわざ椀を出すのが面倒だった。
もちろん妹に見つかったら怒られるだろう。
「お兄ちゃん」
「……!」
柄杓を持ったままふう、と一息つくと後ろから声がして飛び上った。
「お、お帰り!ドロシー」
叱られるかと振り返ると肝心の場面は見ていなかったようだ。
ただいま、と笑顔で台所に入ってきたのにフィールは胸を撫で下ろした。
フィールは甕に蓋をしその上に柄杓を渡して元通りに片づける。
台所の隅に置いてある箒と塵取りを持ってきて竈の前にしゃがみ込むと、中にたまった灰を
丁寧にかき出し始めた。
妹に背を向けたまま話を再開する。
「いつの間に帰ってたんだい?」
「さっきだよ。ただいまって言ったのきこえなかった?」
後ろでかたんと鳴ったのはドロシーが椅子に腰かけた音だろう。
「そっか全然気付かなかったよ」
「そんなことよりお兄ちゃん、ガルムさんに会った?今日行くって言ってたけど」
「あぁ、うん。差し入れまでもらっちゃってさ、なんだかかえって悪かったよ」
好意でしてくれたとは言えガルムに手間をかけたことが申し訳なく、今さらにフィールは
自分の頼み方のまずさを悔やんだ。
始めから日時を指定して都合を聞けばよかったのだ。
ドロシーは黙りこんでしまった兄の背中をじっと眺めていた。
彼女が家族だからかなと思うのはこんな時だ。口には出さなくても兄が何を考えているのかが、
何となく分かるのだ。
「なんだい?」
視線を感じたのか、フィールは掃除を終え立ち上がると自分を見つめている妹を振り返った。
「ううん、なんか今朝よりすっきりした顔してるなあって。ガルムさんとお話しして、悩み
ごとは解決したの?」
家族に心配をかけるなというガルムの台詞を思い出し、彼は妹の頭を撫でた。
「ごめん、心配掛けたみたいで」
済まなそうな顔の兄に、ドロシーはううんと首を横に振った。
「お兄ちゃんが元気になったならいいの。よーし、じゃあすぐご飯の仕度するね。そっちに
行ってて」
フィールの背中を居間に向かって押してやると早速腕まくりをして床に置いてある籠から
野菜を選び始めた。
居間の椅子に腰を下ろすと台所から鼻歌が聞こえてくる。兄の心配事が無くなったのがよほど
嬉しいのだろう。
フィールは頬を掻いた。
我がことのように心配したり喜んだりしてくれる妹に胸が温かくなった。そしてこの間の
彼女に対する態度を思い出し、フィールは自分の気遣いのなさにいよいよ落ち込んだ。
395 :
380-11:2008/03/15(土) 01:34:11 ID:wttH9oLM
ドロシーとのことに悩んで行ったのがきっかけで、ガルムは時々ヴィティスの店に飲みに行く
ようになっていた。
あの時座った席が指定の位置になりつつある。
酒量をわきまえているのだろう。彼は決して深酒などせず、いつもゆっくり二、三杯飲んだら
すっと帰る。店にとってはとても行儀のいい客だ。
ガルムが考え事をしている時はヴィティスもあえて話しかけるようなことはせずに、少し
離れた位置で棚にずらりと並ぶ酒瓶を拭くなどしていた。
この日も彼は静かに飲んでいるガルムの邪魔にならないように仕事をしていたのだが。
「ヴィティス」
「なんだ」
「OZであった時分のことを覚えているか?」
ふむ、とヴィティスは少し考える表情になった。手にしていた瓶をそっと棚に戻す。
「印象深いことなら多少は。――何か気にかかることでも?」
ただ昔の話をしたいというのではないだろうとヴィティスはそこまで洞察した。
御使いの当時行ってきたことは皆、あのレオンですらあまり語りたがらないのだ。それぞれが
今まで避けていた話題に突然ガルムが言及したので、ヴィティスの目が鋭さをもった。
「当時小娘に何か変わった様子はなかったか?」
ガルムの質問にヴィティスは眉をあげた。
生真面目な彼のことだから神がどうとか、御使いとして行ってきたことが悔やまれるだとか、
そういう話を振ってくると思ったのだ。
「ジュジュ……?珍しいな」
わざわざ彼女の話をすることが、だ。
「俺はあの頃小娘に対して無関心だったからな」
この言葉には少し語弊があるだろう。
無関心だったのではなく無関心であろうとしたのだ。
会話をすればかみ合わず、彼女の行為を耳にすればそれにも異を唱えたくなる。それは彼女に
しても同じだったようで寄ると触ると喧嘩ばかり。関わらないようにするのがガルムにとって
最も精神的に負担の少ない方法だった。
「変わった様子と言っても……。彼女は短気ですぐ苛立ったり怒ったりしていただろう?
感情の起伏が激しくて多少おかしな所があっても気がつかなかったと思う。特に何かあったと
いう話も聞いていないが」
「そうか。ならいい」
ガルムはそっとため息をつく。
難儀なことだと思った。『情を交わす』と言うが、フィールとジュジュの場合はそれが未だに
精神的な部分に止まっているのだ。交際期間の長さを思うと同じ男として気の毒になる。
――僕はそりゃ、好きな子と……ジュジュと抱きあいたいって思うんだけど。そういうこと、
彼女は思わないのかな?』
少年の主張はもっともなこと。
それともそんな気持ちが分からぬほど、彼女はまだ子供なのだろうか。
だが過去に手掛かりがないのなら、本人に理由を聞くほかない。
我ながらお節介とは思いつつ、このことは今度会った時に知らせておこうと考えていると
目の前の男が相変わらずの無表情で訊ねてきた。
「どうして急にそんなことを。ジュジュがまた何かしたのか?」
「いや、小僧がな……――っと」
ガルムは慌てて口元を押さえた。ごほんと咳払いをする。
考え事をしながら話をするものではない。うっかり反射的に答えてしまうところだったと彼は
自分に呆れた。フィールが信頼して相談してくれたのを裏切るような真似はしたくなかった。
右手で頬から顎を撫でながらフォローを入れる。
「余計なことを言うところだった。奴の個人的なことだから勝手に話すわけにもいかん。今の
質問は忘れてくれればありがたい」
ガルムの要請にヴィティスはほんの少し口元を上げる。言われるまでもないと笑っているよう
でもあった。
「仕事柄、客の話を忘れるのには慣れている」
「すまんな」
396 :
380-12:2008/03/15(土) 01:34:49 ID:wttH9oLM
話を切り上げるように酒杯を空けるとガルムは二杯目を求めた。
「そう言えば今日はレオンは休みか?」
窓の外を見て思い出したように尋ねる。
窓の真下がレオンの指定席だった。
店主はお代わりを注いでやりながら時計に目を向ける。
「さて……まだ時間が早いからね。これから来るかも知れないし、今日はもう来ないかも
知れない。それにしても休み、とは」
ガルムの台詞に苦笑する。
「俺がここに来て奴に会わない日はないからな。そうも言いたくなる」
「気持は分かる。彼はいいお客様だよ。季節ごとに皆勤賞を設けたら一回や二回では済まない
程通ってもらっている」
「それはまた随分だな。アルミラは何も言わないのか?」
そんなに頻繁に家を空けていたら普通の恋人同士だったら喧嘩になってもおかしくない。
「彼女は放任主義なんだろう。まあレオンも大人だからね」
「年齢的にはな」
相変わらずガルムのレオンに対する評価は厳しい。
珍しくヴィティスの目元にやわらかい微笑みが浮かんだ。
「あまり激しいやり取りは遠慮してくれたまえ。せめて他にお客がいる時は」
「気をつけよう……が、余計な事を言うのはもっぱら奴の方だぞ」
奴に言え、と肩をすくめれば背後で鈴の音が聞こえた。
扉の硝子越しに見える影でヴィティスにはそれが誰だか分かったのだろう。
「よぉ、なんだ?今日は暇みてえだな……お?ガルム!てめえ最近よく来るじゃねえか!」
当然のように隣に腰掛ける男にガルムは深々とため息をついた。
貴様に比べれば来ているうちにも入らん。
そう嫌味を言いたくなったがこれも言いあいの種になるかと出かかった言葉を飲み込んだ。
ただ一つ問題があるとすれば一人が我慢しても、もう一人がやり合うのを楽しむがごとく
言いたい放題なことだった。
大抵レオンが真面目な話にちゃちゃを入れてガルムを怒らせるのだ。
雑談に加わりながら何気なく時計に目を向け、店主は今日は一体いつまで穏やかな会話が
続くだろうかと予想した。
それは二人がそろった時の、そして他にお客がいない時のヴィティスの密かな楽しみだった。
「あれ……?誰か来たよ?おばさんかなあ」
「いくらなんでもこんな夜中にはこないよ。いいよ、僕が出るから……誰だろう」
玄関の方から乱暴に呼び鈴を鳴らす音が聞こえ、フィールはドロシーを制して立ち上がった。
近所の人かと予想したが、今までこんな非常識な時間に訪ねて来たことはない。
不審に思いつつそれでも音の様子から急ぎの用かと早足で玄関に向かう。
すると扉の外にいたのはとても見慣れた顔だった。
「よぉ!」
「レオン!……それにヴィティスまで。二人とも、こんな時間にいったいどうしたんだい?」
当然の質問にレオンはいつものようにほんの少しだけ顎を反らし、今は大分近くなった
フィールににやりと笑ってみせた。
その横にはヴィティスがいる。
彼がフィールに対する時はその向こうに懐かしい友人を思い出すのか、いつもやわらかな
(とフィールは感じている)表情だ。ふとした拍子に見せる少年の言動に父親と似ている
ところを見つけては親しみを感じているのかも知れなかった。
レオンはともかくヴィティスは相手の都合も聞かずに遊びに来たりはしない。
突然の訪問に驚きを隠せないフィールをよそに、彼らは回りくどい説明を抜きにして本題に
入った。
「てめえ、相談事ならガルムなんかじゃなく俺にしやがれ。あんな奴よりよっぽど役に立つ
助言をしてやるのによ」
要約すれば『みずくさい』の一言に収まるだろう。
397 :
380-13:2008/03/15(土) 01:35:42 ID:wttH9oLM
レオンがフィールの肩を勢いよく叩いた。本人は大分手加減したのだろうが、あまりの力に
少年はよろめいた。
「ガルムから君がとても悩んでいると聞いたのでね。横から口を出してもいいものかとも
思ったのだが……」
「悪りぃな。ちいとばかり奴から話を聞いちまったんだよ」
「……え――?」
この間の今日でガルムから聞いたと言うなら内容は一つしかない。
フィールは自分の顔が恥ずかしさからかっと熱くなるのがわかった。背中にもじっとりと汗を
感じる。鏡がなくては見えないが多分真っ赤になっているだろう。
二人をまともに見ることが出来ず、答えに迷いながら目を伏せる。
少年が気まずく思っているのに気付かない振りをしてくれたのか、二人は彼の様子に構う
ことなく言い合いを始めていた。
「無理やり聞きだした、の間違いではないか?」
ヴィティスが訂正する。
「いちいちうるせえな。ちょっと聞かれて話しちまうってことは自分で解決出来る自信が無い
からだろ?」
「まあ確かに。そうとも言えるな」
「大体てめえも一緒に聞いてたくせに自分ばっかり棚に上がりやがって」
「君がおかしな解釈でフィール君を困らせる気がしたのでね。念のためついて来ただけだ。
ガルムからもよくよく君を見ていて欲しいと頼まれたし」
「てめえ、喧嘩売ってんのかよ」
これには答えずヴィティスはフィールに手にしていた包みを差し出した。
「例によって例の如く酒だ。君は全然うちに来てくれないからね。ガルムの家に行ったとき
くらいしか飲む機会もないだろう。ドロシー君がいては夜中に家を空けるわけにも行かない
だろうし」
「そうそう。男同士腹を割って話をするにはやっぱ酒だろ?」
「……」
当の本人の意見は一言も聞かずに、自分たちは相談を受けに来たのだと、そういうことだった。
ガルムの人柄は知っている。多分彼も強引に聞きだされたのだ。この二人に両脇から追及
されたのでは逃げるのは大変だっただろう。
フィールは二人を前に困ったような笑みを浮かべながら、今頃後悔しているであろうガルムの
心中を思いやった。
「あれ?こんばんは。……なぁんだ、お二人だったんですか。村の方で何かあったのかと
思ってちょっと緊張しちゃいました」
にっこりと微笑むドロシーにヴィティスも愛想ではない笑顔で返し、レオンも彼らしい元気の
良さで返事をした。
「やあ、こんばんは。夜遅くにすまないがお邪魔するよ」
「うっす、久し振りだな。ちょっとボウズと話があってな。邪魔するぜ」
「どうぞごゆっくり。後でお茶お持ちしますね」
ドロシーは何故か居間ではなくフィールの部屋に向う彼らの後ろ姿に声をかけた。
「お気遣いは無用だ。これがあるから」
ヴィティスが手にした酒瓶を掲げて見せると少女はわかりましたと頷いた。
ドロシーが何かつまむものをと思って台所に向かうと、そこではすでにフィールが何やら
やっていた。肴の用意でもしているのだろう。
こういう時あるものでささっと料理してしまう兄が少し妬ましく感じる。
経験値が違うから仕方が無いとはいえ、兄にお客さんが来ているときのつまみの用意くらいは
自分がしてやりたかったのだ。
控え目に申し出る。
「手伝う?」
「大丈夫。遅くなるかも――っていうか多分遅くなるだろうからお前は先に寝てていいよ」
「そう……?」
背を向けたまま答えたが立ち去る気配のない妹にフィールが振り返った。
彼女は何故か眉をよせ沈んだ顔をしている。
398 :
380-14:2008/03/15(土) 01:36:17 ID:wttH9oLM
「どうしたの?」
「ううん、なんか……この間ガルムさんと話したこと私には話してくれなかったでしょ?
レオンさんとヴィティスさん、そのことで来たのかなって。悩み事、解決してなかったの?
それなら言ってくれればいいのに……私だって話を聞くくらいは出来るのに。私だって……」
一番近くにいるのに兄の役にも立てないのが辛いのだ。
だがまさか妹に男女の付き合いがどうのとそんな話を出来るわけがない。
妹の優しさに感謝しながらも彼は言葉を濁した。
「そんな大したことじゃないんだ。ガルムに話したら自分じゃあんまり参考になるような
意見を言えないって。それで気を遣ってくれたみたいでさ。二人が来たのはいきなりだった
からちょっと驚いたけど」
「きっとガルムさんのお話聞いてすぐにレオンさんが『じゃ、今からいってみるか』って
来たんだと思うな。レオンさん、行動早いから。ヴィティスさんはそれが心配でついて来たん
じゃない?」
レオンを見ておくようガルムに頼まれた言っていたのを思い出しフィールは小さく吹き出した。
少年の部屋でレオンとヴィティスはいつになく真剣な顔でフィールの話を聞いていた。
二人があまりにまっすぐ自分を見つめてくるので、事情を話しながら彼の視線はどんどん
下がっていき、最後には時々上目づかいに二人の反応を見るだけになった。
「――というわけ……なんだけど」
本人から改めて話を聞き、二人はフィールの気の長さに再び呆れ、あるいは感心した。
「ふむ……」
「それで一人で悶々と悩んでたのかよ」
「うん……ごめん」
レオンは顔の前で手を振った。
「別に謝ってほしいわけじゃねえよ。ただ俺達がいるんだから、たまには思い出せって話だ。
おい、飲んでんのか?」
「う、うん」
「君には少し強いかもしれないな」
フィールがちびちびとやっている様子にヴィティスが自身も口に含みながら言ったが、確かに
水で割った状態でもそれはいつも皆と飲むものより強かった。
「もっとぐーっといけよ。ぐーっと」
「うわ……」
レオンの言うように思い切って酒を流し込むと、喉が焼けるような感覚に思わず目を閉じる。
「美味しいだろう。普段は果実酒しか持っていかないから……これは麦で出来てるんだが、
この辺りではあまり作ってないらしくて貴重なんだ。たった三本しか入らなくてね」
「うち二本は俺が飲んだ」
得意げに笑うレオンへ嘆かわしいというようにヴィティスは頭を振った。
「君は美味い酒を見つける天才だよ」
「てめえのしまい方が悪いんだろ?ズラッと並ぶ瓶の後ろにもったいぶってちょこっとだけ
のぞくように置いてあるんだ。気にすんなって方が無理だ、なぁ」
後半はフィールへの台詞だ。
何と言っていいか分からず彼はあいまいに微笑む。
「はは……」
「そうやってすぐ話がそれる。フィール君の話を聞きに来たんだろうに」
「おお、それそれ。そうだったぜ」
「一体どういうつもりだろう……彼女が君に恋い焦がれていたのは周知の通りだが」
ガルムと同じことを言われフィールは眉を上げた。
自信過剰ではない彼はガルムの言葉を話半分に受け取っていたものの、それが事実だとしたら
ジュジュが彼を受け入れない理由がますます分からない。
「お付き合い、と言うのを始めれば遅かれ早かれそういう展開になると分かっているだろうに」
「だよね……」
「だよなあ。その状態で何年もお預けってのは辛いぜ」
399 :
380-15:2008/03/15(土) 01:36:49 ID:wttH9oLM
「あのさ、僕、本当はずっと気になってたんだけど」
「なんだよ」
「彼女さ、人間の年で言ったら十四か十五くらいじゃない」
「ふむ。確かにそのくらいだな。それが何か?」
「あの……体は、その……大丈夫……なのかな」
「はぁ?」
聞き返すレオンをヴィティスが制した。
フィールの言わんとしていることが彼には理解できたようだ。
「我々カテナも寿命と身体的な成長を比較すれば君たち人間と変わらない。もう百と数十年
生きてるだろうが彼女ほどの年齢になればもう子供だって産めるはずだ」
「そっか」
自分を『受け入れたくない』ではなく『受け入れられない』可能性に気付いてから、自分が
無理を言っていたのかもと不安になっていたため、ほっと息をついた。
「僕はこの通りそれなりに大きくなったけど、彼女は違うだろう?その辺が問題なのかなとも
思ったんだけど違うならいいんだ。ただ……」
「なんだよ」
「彼女、あんまり若いままだから、時々悪いことをしてる気分になる」
頬をかきながら告白する少年に二人は笑い声を上げた。
ひとしきり笑ったあとレオンが漬物に手を伸ばしながらずばりと聞いてきた。
「で?お前ら実際にはどこまで進んでんだよ」
「え――」
「止したまえ。我々が知る必要はないだろう」
「ばっか、はっきり言って好奇心だよ。ってか真面目な話、どこまでなら許してくれんだ?」
「え……っと」
今さらながら、そこまで具体的に答えていいものかと言い淀むフィールにさらに押してくる。
「今さらからかったりしねえから言ってみろよ。もしかしてそこに手掛かりがあるのかも
知れねえだろ」
一般的な手順を踏んでいたつもりの少年は、レオンの台詞にどきりとした。
自分がなにか変なことをしていたかもしれないと、この時初めて気付いたのだ。しかし変な
ことといっても、まだ服を脱がせる段階にも至っていない。
心当たりがなかった。
それとも体を触られるのすら嫌だったのだろうか、いや、そんなそぶりは見えなかったがと
無意識にレオンを凝視しながらフィールは頭を高速回転させた。
「口付けは?」
「は?」
横からの声に思考を停止しつつも乗り気でなかったはずのヴィティスが具体的なことを聞いて
きたのに、少年の目が点になった。
案外他人の恋愛事情に興味があるのだろうか。
レオンも横から口を挟む。
「いくらなんでもそれはいけるだろ」
「それは……普通に」
「ほらみろ」
ヴィティスはレオンを無視して話を続けた。
「そうか……その先は?」
「だからその……途中まで、しか……」
それだけ言うとフィールは恥ずかしさを飲み込むように酒杯をひと息に空けた。勢いだけで
飲んだのか酒の強さに軽くむせる。
それを見てヴィティスが水差しを寄せてやった。
「もっと薄くして飲めばいい」
「うん」
「よくそれで我慢出来るもんだ。それで?駄目だって言われて大人しく引き下がるのか?」
「だって彼女が嫌がるのを無理やりに進めるのも、さ。理由も分からないのに強引になんて
そんなこと出来ないよ」
400 :
380-16:2008/03/15(土) 01:37:54 ID:wttH9oLM
ヴィティスが顎を撫でながら他の可能性を示した。
「案外押し倒されるのを待っているのでは?彼女は天の邪鬼だから……」
「おぉ、ありえるな。もっと男らしく強引にせめてよ!ってか」
茶化すレオンにヴィティスが眉を寄せた。
「それを男らしいということについては異論があるな」
「だから……そんな感じじゃないんだよ。真剣に避けられるっていうか、嫌がってる」
「だってお前らもう付き合って何年経つ?三……四年くらいか?」
「うん、四年。四年になるけど……長さじゃないんだよ。きっと」
大きくため息をつくとフィールはテーブルに突っ伏した。
うっかりか故意にかゴン、という結構な音が響く。
「フィール君、大丈夫か」
「もう酔ったのかよ。はえーぞ」
少年は額をぶつけたままの状態で首を振った。そのままテーブルに右頬をぺったりと載せて
話を続ける。顔を上げる元気もないのだろうか。
「違う……なんか情けなくなってさ。もう四年目なのに……」
「なのに?」
「どうして嫌なのか理由を言ってくれないのはさ、僕を信用してないからじゃないのかな。
だってこれって二人の問題だろう?なのにどんなに根気よく尋ねても聞かせてくれないんだよ」
二人の、ではなく明らかにジュジュの方に問題があるとレオン、ヴィティスは判断したが
黙っていた。
フィールがぼそぼそと本音を語るのに真剣に耳を傾ける。
「こういうのって時間がすべてじゃないとは思う……でも僕たちの間にはそれなりに築いて
きたものがあると思ってたんだ。気持はちゃんと通じてるんだって。だけどそうじゃなかった
のかな、彼女にとって僕はまだ全部を話すには物足りない、頼りない存在なんだなって……」
「周りから見れば特に落ち度はないように感じるが。それに君は年の割にしっかりしていて
頼りないなどということはないと思う」
「だよなあ。何が不満なんだか。だいたいあのガキ、元が我儘だから何が気に食わないって
言っても、あーまたなんか言ってら、くらいにしか思わねえんだよな」
「レオン、そんな言い方はないよ。我儘っていうほど勝手じゃないし」
フィールの台詞に顔を見合わせた二人は『痘痕もえくぼ』という言葉を思い浮かべた。
「なんだ?俺達はのろけを聞かされに来たのか?」
「そういちいち冷やかすな」
「もう何とでも言ってよ……」
すっかり元気の無くなってしまったフィールの頭を軽く叩くと、今度はレオンはその恋人に
ついての感想を言った。
「あのガキもなあ、普段は余計なほどにはっきりものを言うくせに、どうしてこういう問題
だけ言葉を濁すんだ?問題があるならいつもみたいに言やあいいんだよ。何考えてんだか」
「まったくだ。嫌がるだけでは彼女にとっても解決にならないだろうに」
「複雑な乙女心ってやつか?」
「さて、そんなものを持ち出されたら我々男にはしつこく追及も出来ないだろうよ」
お手上げというようにヴィティスは肩をすくめた。
「だいたいよ……おいボウズ。聞いてんのかよ」
「フィール君?」
そう言えばさっきから彼は発言をしていなかった。ヴィティスがそっと肩を揺すったが
反応がない。
のぞき込むとテーブルに顔をのせたまますうすうと寝息を立てていた。
「眠ってしまったようだ」
「いちいち言わなくても見りゃわかる。ったくしょうがねえな」
レオンがフィールの頭をつつく。
酒に酔っていたのかやはり目を覚ます気配はなく、むにゃむにゃと口を動かしただけだった。
「結構考え込む奴だからな。もうちっと早く俺達に話せば良かったのに。人に話すだけでも
気が楽になるからな。忍耐強いのも善し悪しだぜ」
「ガルムも言っていたが内容が内容だけに、なかなか話し辛かったのだろう」
「おまけに相手があれだからなあ」
「ああ、彼女ではな。フィール君が気を使っても使っただけ安心してしまうんじゃないか」
「フィールも気にしてないみたいだからいっか、って感じだろ?」
401 :
380-17:2008/03/15(土) 01:38:23 ID:wttH9oLM
「ジュジュは人には乙女心が分からない奴、と言って眉を吊り上げるのに……」
「自分こそ男心が分かってねーよな。こいつも遠慮してねえで一度ガツーンと言っちまえば
いいんだよ。てめーとやりたいんだよって」
あからさまな物言いに、ヴィティスは首を振った。
「そんなことを言ったら可哀想に、平手打ちを食らってお終いだ」
もちろんジュジュの気性を考えたらそれだけで済まないだろうことは明白だ。
レオンの指がまた少年の頭をつつく。
「んー……」
「良く寝てら。誰の為に来たんだか……本人が最初に撃沈してりゃ世話ないぜ」
「彼には強すぎたんだろう。君がこんなのを選ぶから」
「俺のせいかよ!」
反射的に言い返すと、うう、と下から唸り声がした。顔をしかめているのは夢の中でも彼女の
ことを悩んでいるからかも知れない。
それを見てレオンがフィールの横に顔をよせた。暗示をかけるよう耳元で囁く。
「もうちょい強引にいったらどうだ?あのガキだって初めてだろうし上手に流せるとは思え
ねえ。本気で嫌がってたとしても押し倒したらわけが分からないうちに受け入れてくれるかも
知れないんじゃないか」
「うう……さい……」
フィールは耳元で喋る男にしかめっ面になった。
「うるさいと言ってるぞ」
「るせえ!だから分かってるっての」
目を閉じ酒杯を傾ける男にレオンがかみついた。
「てめえはガルムの時といい、人の意見に文句ばっかり言いやがって」
「そうでもない。ただ、理由が分からなくて手を出しかねているのにそれを強引に持っていく
なんて、普通の彼なら絶対にしないだろう」
「俺だってそうは思うぜ。しかし……」
ちら、と見るとフィールはさっきより大分落ち着いた表情で寝息を立てていた。
「いつまで『普通で』いられるやら」
「まったく……」
既に手酌でやっていた二人は最後に残った分を公平に注いで飲み干した。
フィールの悩みを肴に飲みに来たようなものだ。しかし本人が眠ってしまった以上はいても
仕方がない。
「そろそろ失礼しようか」
ヴィティスが立ち上がるとレオンが声をかけた。
「ちょっと待て」
「なんだ」
「こいつはこうだしお嬢ちゃんもとっくに寝ちまってる。俺達が外に出たら誰が戸締まり
すんだよ」
「仕方がない、彼を起こせば……」
「起きると思うか?」
「……」
二人の視線がフィールに注がれる。
起きないだろう。よく眠っている。
ではどうすると言うのか。ヴィティスが目で問うと問題ないと親指で件の部屋を指した。
「居間で雑魚寝させてもらおうぜ。問題は長椅子が一つしかないってことだが、さて。いざ
勝負――」
「居間で寝ているのを見たらドロシー君が驚くのでは?」
「そりゃあ……驚くに決まってる。いっちいちうるせえな。じゃあ一体どうしろって?」
駄目を出すヴィティスに対し苛立たしげに頭をかくと、レオンはあ、と声を上げた。
「そうだ!主寝室あるだろ。あそこ使わしてもらうか」
彼の言葉にヴィティスは疑わしげな顔になった。
「――掃除してあるのかい?」
「人んちで失礼なこと聞いてんじゃねえよ。俺の部屋じゃねえんだ、きれいになってる筈。
テオロギアから帰ってきた時も、掛布一枚剥いだだけで使えたからな――行くぞ」
402 :
380-18:2008/03/15(土) 01:38:50 ID:wttH9oLM
「レオン、待て」
ヴィティスが眠ってしまっている少年を顎で示した。
「ああ……っと。まったく、世話が焼ける……」
それでもフィール横抱きにし、軽々と部屋にある寝台へ運んでやる。
「……っこらせっと」
レオンにしてはそっと寝かせてやると下の方ではヴィティスが少年の靴を脱がせていた。
きちんと足元にそろえるあたり性格が出ている。
本人はすうすうと寝息を立ててまったく気付く様子はない。
レオンの方も乱暴に、それでもちゃんとフィールの頭が隠れるまで毛布をかけてから改めて
ヴィティスを促した。
「ほら、ここなら二人で寝ても余裕だろ?」
大きな寝台を前にレオンが何故か自慢げに隣を見た。
「確かに掃除が行き届いている。住人の性格が出ているね」
レオンは内心まだ言ってんのかと思ったがそれも性格と諦めた。それより当面の問題がある。
「ヴィティス」
「なんだ」
彼はさっそく掛布を剥いでいた。埃が立たないようにそうっとだ。
「てめえ寝ぞう悪いか?」
「それほどひどく動くことはないと思うが。枕に足をのせていたこともないし」
「ならいいけどよ――寝ぼけて抱きつくなよ?」
「それは君だろう。私は独り寝には慣れているからね」
上着を脱いでさっさと寝台にもぐり込みながらヴィティスが言い返した。
「ばっ……」
今さらアルミラとのことを冷やかされるとは思っておらずレオンは一瞬言葉に詰まった。
「あんまりこちらに寄ってこないように」
「お互いさまだっての!」
レオンは窮屈な格好で寝るのが嫌なのか下穿きだけの姿になってからヴィティスの隣に、
それも大分離れて横になった。
男二人、一つの寝台に寝るのは結構抵抗があるようで、うっかりすれば床に落ちると言うほど
二人は端に寝ている。間にもう一人くらいは入れそうだった。
真っ暗な天井を見上げてレオンが口を開いた。
「お嬢ちゃんに間に入ってもらえば良かったな」
能天気な台詞にヴィティスはため息をつく。
「あまり品のないことを言うな」
「あー?」
横にいる男に視線を向けた直後、レオンは逆に半ば怒鳴るようにヴィティスを非難した。
「品がない発想をするのはてめえじゃねえか!俺はそんなこと考えてねえ!」
「うるさい。夜中なのだから静かにしたまえ」
すぐ隣で、しかも時間帯を考えない声で話されたからだろう。うんざりしたように言うと
ヴィティスはさっさと向こうを向いてしまった。
「〜〜〜!勝手な奴だぜ」
これがその夜の会話の締めくくりだった。
彼が目を覚ました時、室内の明るさに反射的に窓の外を見た。徐々に日が短くなってきたとは
いえ、まだまだ日の出は早い。
窓枠の作る影で太陽の高さを知るとフィールはぴしゃりと顔に手を当てた。
「……!寝坊したー!」
すでに寝間着を脱いで身支度を整えたドロシーは顔を洗いに行く途中台所の方で物音がする
のを聞いた。詳しく言うなら割れものを乱暴に積んでいるような音だ。
403 :
380-19:2008/03/15(土) 01:40:03 ID:wttH9oLM
★19
「お兄ちゃん?」
どうかしたのかと部屋の向こうにいる兄に声をかける。すると台所をのぞくまでもなく彼が
飛び出してきた。
「あ、お兄ちゃ……ふぁあ……お兄ちゃんおはよう。今の音なに?」
「ドロシーごめん!寝過ごしちゃったんだ。もう行くよ。ご飯食べたままになってるから
片付けておいて!」
「えっ?あれ?じゃあ二人はどうしたの?お昼は?」
「持った。レオンとヴィティスは起きたらいなかったから帰ったんだと思う、じゃあね!」
「う、うん、いってらっしゃい!」
ばたばたと慌ただしく出ていく兄に何故だか自分も焦って声をかけると、ドロシーは朝食の
仕度を始めた。
スープの入った鍋を火にかけ時々かき混ぜながら手早くパンを焼く。蜂蜜やガルムにもらった
ジャムをテーブルに並べながらふと首を傾げた。
「お兄ちゃんが寝てたのにどうやって戸締まりしていったのかな……?」
先に帰ったらしいと言っていたが、まさか鍵をかけないで出て行ったとは考えられない。
ヴィティスの存在がその可能性を否定するのだ。
「……ま、いっか。あとでお兄ちゃんに聞いてみようっと」
するとはたして、すでにこの家には自分とトト以外誰もいないと思っていたのに後ろから声を
かけられ、ドロシーは文字通り飛びあがった。
「ドロシー君!」
「きゃあ――っ!?」
反射的におたまを握りしめ後ろを振り返ると台所の入口にヴィティスが立っていた。しかし
なんだか様子がおかしい。そわそわと落ち着かなげだ。
「え?え?ヴィティスさん?お帰りになったんじゃ……どこにいらしたんですか?レオン
さんは?」
「いや、昨夜フィール君が先に眠ってしまって。我々が出て行くと戸締まりが出来ないのでね。
事後承諾になってすまないが主寝室を使わせてもらったんだ。勝手なまねをしたことは重ねて
謝るが、これから酒屋が来ることになってる……というかもう店の前で待っているかも知れ
ない。申し訳ないがこれで失礼する」
手を上げると言うだけ言って玄関に向かう。
ドロシーは慌てて台所から顔を出し彼の背中に声をかけた。
「でもご飯……朝ご飯すぐご用意できますから――」
食べていってくださいと勧めるとヴィティスは扉の取っ手に手をかけながら申し訳なさそうに
首を振った。
「本当に時間がないんだ。あの酒屋はこの村ではうちしか取引がないんだが、短気と言うか
商売っ気がないと言うかやる気がないと言うか、ちょっと時間がずれると帰ってしまうんだよ」
相当焦っているらしく話す必要のないことまで言っている。
「今日のところはレオンに任せるから始末は彼にやらせてくれ。騒がせてすまないがこの埋め
合わせはまた!」
最後にそれだけ言うとヴィティスは明らかに寝起きと分かる姿で飛び出していった。
髪はぼさぼさ、上着は手に掴んだまま。
「あんなに慌ててるヴィティスさん初めて見た……」
ドロシーは彼の後姿にぽつりともらした。
〜つづく〜
失敗しました。
ではまた。
いつもの至高神の人、いつもながらGodJobです。
気になったんだけど、このお話はヴの人と小娘の連作と設定共有してるのかな?
そうだとしたら流石にヴの人ふてぶてし過ぎ…奴らしくてイイ!気もするけど。
>>405,
>>406 いつも好き勝手させていただきありがとうございます。
これはヴィティス×ジュジュとは別の話です。説明が足りず申し訳ない。
>>16->>84-
>>380で連作です。ガルム×ドロシー、フィール×ジュジュで王道いってみようという(一つ目は違うけど)。
本音を言えばどこまで俺ターンしてていいのか悩んでます。まだ書いてもいい?
408 :
404:2008/03/16(日) 01:37:19 ID:Axj7HTzm
説明してくれてさんきゅーなんだぜ。
(てことはフィールも姐さんに初物食われたりはしてないはぢめて同士!?
ここは是非とも続けて欲しいんだぜ。
っていうか、OZプレイヤーならステージ終わりまでずっと俺のターンを躊躇っちゃ駄目なんだぜ?
あ、ちがう。俺は405だった。何やってんだorz
410 :
380-20:2008/03/18(火) 01:47:34 ID:KiOZ2HCM
「あんたいいもの見たわねー」
「レオンさんも同じこと言ってました」
布団の上でジュジュは枕を抱えて寝ころんでいた。
その姿を想像してくすくすと笑い声をもらす。
「寝ぐせで頭が爆発したヴィティスかぁ……あたしも見たかったな」
「そこまではひどくなかったですよ」
ジュジュの表現がおかしくてドロシーもふふ、と微笑んだ。
「それにしても酒屋が来るから帰る、なんてあいつも仕事熱心ねえ。前も趣味の延長なんか
じゃなく、ちゃんと利益を増やしていっていずれ大きくしたいとか言ってたし」
「じゃあヴィティスさん、ずっとここに住む予定なんでしょうか」
ドロシーが嬉しそうに尋ねると、それにはジュジュもはっきりした回答を避けた。
「それはどうかしら。なんて言ってもあたし達はカテナだし……村の人たちはそれを知って
いて来てくれてるけど人間達の中に年を取らない奴が混ざってたら、いつか居づらくなるとは
思う。あいつがどういうつもりかあたしには分からないわ」
そこで言葉を切りると起き上がり、やはり横になって自分を見ている少女に問いかけた。
「ね、ドロシー。そっちに行ってもいい?」
返事のかわりに寝台の奥に寄って場所を空ける。
ジュジュは枕を抱いてドロシーの横にもぐり込んだ。主寝室と違って一人用の寝台だったが
女の子が二人並んでもそれほど狭くはなかった。
肩まで掛布をかけてから隣にある顔を見る。
「ねえ、あんた達さ。この先どうすんの?結婚……とか、するの?」
「え……」
突然の質問に言葉を詰まらせる。
結婚、という現実的な響きにふと自分のその時の様子を想像したのか、ドロシーは視線を
泳がせた後、我に返って掛布を引きかぶった。
ジュジュはそれを掴んで答えを聞き出そうとする。
「ほら、恥ずかしがんないで答えなさいよ」
「ジュジュさん!だっていきなりそんなこと聞くから……想像しちゃったじゃないですか」
引っ張られるまま掛布から顔の上半分だけ出してジュジュに目を向ける。
責めるような台詞にジュジュは首を傾げた。
「なんでよ。いいじゃない、想像するくらい」
「わ、私は、その……ガルムさんがするって言うなら、その……」
つっかえつっかえ言葉にしながらドロシーは脚をぱたぱたさせた。
「なあにそれ、主体性のない答えねえ。好きなら結婚したいって言えばいいじゃないの。
ガルムに言っちゃうわよ?ドロシーはする気がないみたいだって」
「意地悪言わないでください!もう…。そりゃあ、結婚なんてガルムさんがしてくれるなら
したいに決まってます。だってそうしたら一生そばにいられるんですよ?」
「ほらみなさい。最初から素直にそう言えばいいのに」
「そういうジュジュさんはどうなんですか?」
切り返されるとは思わずジュジュは口の中でなにやらもごもごと呟いた。
「あ、あたしは――フィールといられれば形にはこだわらないわ。結婚とかそういう手続きは
別にしなくてもいいの」
「そうなんですか?」
「うん」
「でもお兄ちゃんがそれ聞いたら泣いちゃうかも」
「まっさかあ!」
大の男が泣くかもなんて大袈裟な台詞にジュジュは笑って見せた。だがドロシーは真剣だ。
仰向けになっていたのを寝がえりをうちながらジュジュの横にぴったりとくっつく。
「お兄ちゃん、ジュジュさんのこと本当に好きみたいで……好きなら結婚するのが当たり前
だってきっと思ってますよ」
「そうかな」
「妹が言うんですから間違いないです。だからお兄ちゃんが申し込んだら……出来たらで
良いんですけど、受けてあげて欲しいです。形にこだわらないなら、結婚したっていいんで
しょう?」
「うーん……」
411 :
380-21:2008/03/18(火) 01:48:17 ID:KiOZ2HCM
ここであっさり了解を得られないのがドロシーは不思議だった。形にはこだわらないと言って
いるが、彼女の場合『結婚しないこと』にこだわっているように感じる。
胸にかすめる不安を隠して重ねて言った。
「ジュジュさん」
「分かったわよ。申し込まれたら、ね。考えてみる」
「お兄ちゃんのこと、よろしくお願いします」
「やだ、あんた気が早いわよ」
「だってお兄ちゃん基本的にぼんやりだから心配で」
兄の頼りない部分をアピールしてみせる。
「それには同意するけどね……ほら、もう寝ましょ」
「はぁい。おやすみなさい」
「ふふ。おやすみ」
就寝の挨拶を交わし、ドロシーは枕もとにある燭台の火を消した。
「ジュジュさん、ジュジュさん起きてください」
「おは、よー……」
声をかけるだけでは目を覚まさず、体を揺さぶられてやっとジュジュは反応した。
目を向けるとすぐそこにドロシーの顔がある。
「朝ごはんにしましょう?」
「ふぁ……ごめん、すぐ仕度するから待ってて」
欠伸をするとジュジュはいそいで身支度をし台所に向かった。
「一人でいつまでも寝ててごめんねー。片付けはあたしがするから」
もう朝食の支度は終わっていてドロシーは丁度お茶を淹れているところだった。自身も椅子を
引きながらジュジュに着席を促す。
「気にしないでください。そのかわりいつもと同じ内容ですけどいいですか?」
朝食にあまり贅沢なことはできない。
スープとパンとそれに付けるジャム、あとは果物が季節によって変わるくらいだが、それでも
パンは焼きたてだしジャムも何種類からか選べる。
変わり映えがないとドロシーは言うがジュジュは全く気にならなかった。
「あんた料理上手だもの、出てくるものに文句なんてないわ。いつも楽しみにしてるんだから。
じゃ、遠慮なく。頂きます」
食事前の挨拶をして早速パンを手にジャムを塗る。この秋は試しにいろいろな果物で作って
みたと言っていたが、ガルムにもらったのはどれだろうか。
「そうですか?このくらいじゃ誰が作っても同じな気がしますけど……私は今晩の方が楽しみ
です。お洗濯なんか早く終わらせますから、午後のお茶を飲んだら出られるようにしましょう」
「分かったわ」
「今日はジュジュさんも一緒に作りましょうね」
愛想良く返事するも次の楽しそうに微笑むドロシーの台詞に、ジュジュはぎくりと動きを
止めた。上目づかいに彼女の様子を伺って、確認する。
「え……あたしが?手伝うの?」
「ええ、せっかく早く行くんですから一緒にお料理しましょう。楽しいですよ?」
「でも……」
きっとガルムは嫌がるだろう。想像して彼女の方も嫌そうな顔になる。
ガルムやドロシーほど料理上手ではないのだ。自分が横からあれやこれや言われてはいはいと
返事が出来る性格でないのも分かっている。彼に何か言われたらすぐに喧嘩腰になってしまう
に違いない。
容易に想像できるその光景と仲裁役になるだろうドロシーの気持ちを思って首を横に振った。
面倒なことになると分かっていて積極的に手を出したいとは思えなかった。
「止めとく」
年が近いドロシーとあれこれ話をしながら食事をするのが、フィールの家に泊まりに来た時の
彼女の楽しみだった。もちろん仕事に行っているフィールと外でお弁当を食べるのもいいの
だが、やはり女は女同士。きゃあきゃあ恋人の話をしながら食事をするのはまた特別な時間
だった。
412 :
380-22:2008/03/18(火) 01:48:44 ID:KiOZ2HCM
フィールは緑の頃に比べて大分見通しの良くなった道をガルムの家目指して急いでいた。
といっても心なしか早足になっている程度だ。森の中は道があると言ってもところどころ木の
根が張り出していて、むやみに走ると容易に転んでしまう。
子供の頃にやはり森で仕事をする父に駆け寄っては転んだ経験が、彼を慎重にしていた。
「皆もう来てるかなあ」
集まりの日はいつもより早めに仕事を切り上げる。それでも一度帰宅し汗を流してから来る
のでどうしても遅くなってしまうのだ。
森の奥へと続くこの道はガルムの家の横を通るようになっている。ふと目を向けると窓際に
いるアルミラと目が合った。ということはレオンもヴィティスもすでに来ているのだろう。
手を振るとアルミラは微笑んで硝子の向こうで何やら口を動かした。もちろん声は聞こえない。
一旦立ち止まったが、ぱくぱくと繰り返されてもどうにも分からず彼は首を傾げた。
駄目かというように首を振って彼女は窓際から離れる。
何を言いたかったのだろうと首をひねりながら玄関の扉に手をかけると、彼が取っ手を引く
より早く開いてアルミラが出てきた。
わざわざ出迎えに来たのだろうか。
「やあ、アルミラ。さっきのなんて言ってたんだい?皆は――」
「フィール。いいからちょっとこっちへ来い」
もしかして冗談をしていたのかとも思ったが、真剣な声で言うと彼女は家の裏手を指した。
「……?なんだい?」
「お前」
「うん?」
大人しく後をついて行くと、アルミラは振り返らずに要件に入った。
「ジュジュとまだなんだって?」
アルミラはそのまま少年の返事を待ったが肯定も否定も返っては来ない。しびれを切らして
後ろを向くとフィールは地面に突っ伏していた。しかも地面を見つめたまま動かない。
「どうしたフィール。そんな所に手をつくと汚れるぞ」
ほら、と手を貸して立たせてやったが彼はアルミラと目を合わせることが出来なかった。
ガルムにしか相談していないのに、これでジュジュ以外のカテナ全員に自分がうじうじと
悩んでいるのを知られてしまったことになる。
フィールは穴があったら入りたいとはこういうことなのだとしみじみ思った。
それでもガルムも他の三人も責める気にならないのは、真剣に自分を気の毒だと思ってくれて
いるのが表情で伝わってくるからだ。彼等の助言はありがたいし、わざわざ話を聞きに来て
くれるのもありがたかった。
でもやはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「どう……ど、どうしてそれ……レオン……?」
思い切り下を向いたまま彼は情報源を尋ねた。それを聞いて特にどうするつもりもなかったが、
アルミラの話の入り方に動揺して落ち着くまでの時間稼ぎがしたかった。
「しかないだろう。それよりお前、大丈夫か?」
「大丈夫って?」
「ジュジュとは上手くいってるのか?」
心配そうな彼女にようやく前を見てフィールは照れくさそうに頭をかいた。
「うん、とりあえず仲良くやってるよ。時々……その、辛いけど、でも大丈夫」
ジュジュの立場を悪くしないようにかフィールは見栄を張って答える。
相当我慢してますとは、もう限界ですとはとても言えなかった。それは自分にまだ彼女を待つ
余裕があると感じていたせいでもあった。
だが後にフィールは自分の忍耐力を過信していたのだと知ることになる。
「全く気が付かなかった。とっくにそういう関係になっていると思っていたからな。いつも
仲が良さそうにしていたし、精神的にも肉体的にも充実した日々を送っているものだと……」
その言葉にフィールは妹のことを思い出した。
多分ドロシーにもそう思われている。いや思われていた、だろうか。最近ついに悩み事を
抱えているのがばれてしまったのではあるが。内容が知られてないのが救いだ。
すっかり仲良くなったガルム達に比べて僕達はあれからなんの進展もないと、フィールは深々
ため息をついた。
413 :
380-23:2008/03/18(火) 01:49:09 ID:KiOZ2HCM
あれはドロシーにガルムに対する気持ちを聞いた時だった。
「お兄ちゃんやジュジュさんみたいにお互いに気持ちがあればいいけど、ガルムさんはきっと
私のことそんな風に見れないと思う」
あの後ドロシーとガルムの二人はなんとか『お付き合い』をするようになった。
二人は少し年が離れているけれど、お互いにあまり浮ついたところがなく落ち着いた雰囲気が
とてもお似合いだと僕は思っている。
なりゆきを傍で見ているこっちは結構はらはらしたものだけれど、それを彼女に言ったら
僕たちの方がよっぽど見ていてやきもきしてた、と断言された。
どうも僕のジュジュに対する思いが恋であることに気付く以前から、彼女は僕のことを気に
していたらしい。
僕は当時そんなことには全く気が付かず、それがじれったかったとそういうニュアンスの
ことを言っていた。
「お兄ちゃんは鈍いよ。ジュジュさんが一生懸命なのにぽやーっとして、こっちがいたたまれ
なくなったんだから」
それはだって仕方がない……と、思う。そぶりで気付かないのかなんて言われても困るんだ。
僕だって自分がほんのちょっと鈍いことくらい分かってるんだから。それに結果的に両想いに
なれたのだしいいじゃないかと思うんだけれど。
そう言ったらそういう問題じゃないと怒られた。
その後お兄ちゃん達はいいね、と続くんだけど僕に言わせればドロシーたちの方がよほど
羨ましい。
何がかって言うとそれはあまりに直接的で言いにくかった。もちろん誰かに言うような事では
ないからと誰にも事情を話していなかったから仕方がないのだけれど。
ドロシーたちでさえ既に体を許し合っているのに(あまり身内のこういうことは考えたくは
ないものだ。落ち込むというか寂しいというか恥ずかしいというか)、僕たちはまだ一線を
越えてはいなかった。
もちろん体の関係があればいいってものではないと理解している。
でも僕ももう結婚だって出来るような年だし、男だったら彼女を抱きたいっていうのは自然な
感情だとおもう。女の子もそうだと思っていたけれど違うのだろうか。
二人きりの時そういう雰囲気になるとジュジュは表情を硬くする。
ぎこちなくなるのが嫌で、わざと冗談をいったりして場を和ませたり話題を変えたりするんだ
けど、いつまでそんな状態が続くんだろう……いつになったら僕を受け入れてくれるんだろう。
一度思い切って聞いてみたことがあるけど(あれはかなり勇気がいった)、直接的な表現が
悪かったのかな。
ぎゅうと抱きしめてキスをして……キスは彼女も嫌がらないんだ。
『君を抱きたい』って言ったら首を横に振られた。でも嫌なのかと尋ねると、また同じように
首を振るんだ。
したくないけど嫌ではないと言う。
どうしたらしてもいいって気持になるのか皆目見当がつかない。
二人でいるとどうしても――僕としてはとても当然のことだが彼女が可愛くて――体が反応
してしまうことがある。
で、気まずいのでジュジュに悟られないようにと何かと気を遣う。用を足しに行ってくる、
なんてその場を離れたり。ばれてるだろうなって時もあるけど、向こうもそういう雰囲気に
ならないようあえて触れてこないから、いっそう恥ずかしい。
もちろん体を許してくれないから別れようとかは全く考えていない。
だけどどうして嫌なのか、理由を全然言ってくれないのが結構堪えるんだ。……僕って本当は
頼りにされてないんだろうか。それともまさか体目当てとか思われてるのかな。
時々彼女のあまりの可愛さに我慢が出来なくなって押し倒したい、無理やりにでも抱きたい
って思う時もあるけど、まさかそんなことは出来ないし。
とにかく僕も相当我慢している。
彼女を想って一人でするのは抵抗ないけど、相手が手を出せる距離にいてちゃんと恋人だって
いうのははっきり言って生殺しだ。
ジュジュにはこういう男の気持ちが分からないんだろうな。
僕が彼女の気持ちを理解できないように。
414 :
380-24:2008/03/18(火) 01:49:48 ID:KiOZ2HCM
「……ィール。フィール!」
ぼんやり考えていると声が聞こえて慌てて返事をする。
「ご、ごめん。なに?」
「相当に思いつめているようだな」
「別にそのことを考えてたわけじゃ――」
図星を指されたものの肯定するのは恥ずかしくてごまかした。
その顔を両手で挟み自分の方を向かせると、アルミラは彼の頭をよしよしと撫でた。
どうやら慰めているらしい。
「やれやれ。なにか原因がなきゃそこまで拒絶されないんじゃないか。本当に心当たりはない
のか?」
「ないんだってば。僕は何もしてないよ。……させてくれないしね」
お手上げだと彼は両手を上げる。
半ば諦めたような態度にアルミラは新しい可能性を示した。
「ふ……ん。……そうだ。あれじゃないか?ほら、人間は時々そういうことをするだろう」
「え?なに?」
「結婚するまで純潔を守るとかそういう奴だ」
それは考えていなかった。
「あ……」
アルミラは不思議そうに首を傾げる。
「しかしな、なんだあれは。私にはまったく理解できない。なにか?自分に対して責任を
取ってくれる者にのみに身を任せると言うことか?言いたいことはわかる。だが結婚してから
相性が悪かったらどうするつもりなのだろう。大事だぞ、体の相性というのも」
人間との文化の違いについての質問でもあり未経験のフィールに対して言い聞かせているよう
でもあった。
「それはえっと……多分子供のことを考えてるんじゃないかな。ほら、その出来たら困る……
っていうか、それ自体は良いことなんだけど未婚の二人じゃ親も驚くだろう?」
「ははあ。カテナにはない考え方だな。カテナは出生率が低いからそんな心配をする者は
いない。妊娠が分かったら皆喜ぶし、大事にする。婚姻しないまま子を持つ恋人達も普通に
いたものだ……なるほど。種族の違いだな」
アルミラは納得がいったと頷いた。
「それにさ、体の相性って言うけど経験がなければそんなの分からないと思うし……やっぱり
気持ちが大事なんじゃないかな」
「それは勿論だが……よし、折角だ。お前皆とどんな話をしたのかかいつまんで言ってみろ。
女の視点でなにか気付くことがあるかもしれない」
「え?え――……」
しどろもどろになりながら結局またも問われるままに話してしまうフィールだった。
「なるほど。皆いろいろ気付くものだ。ジュジュならどれも可能性がありそうだな」
「僕もそう思うんだけど、それ、本人に聞いても大丈夫かな……?」
「あれこれ聞いても押し黙って答えなくなりそうな気がするが」
「……僕もそう思う……」
二人は揃って頭を振った。
一通り話すうちにあたりは徐々に暗くなってきていた。日は完全に山の影に隠れ、まだ夕焼け
色ではあるものの東の空からはすでに夜が押し寄せてきている。
玄関の方でアルミラを呼ぶ声がした。
レオンだ。
出たきり戻ってこない彼女を探しに来たのだろう。だが森の方を覗いているのか
声は遠ざかってゆく。
返事をしない彼女の代わりにフィールが応えようと口を開くと、アルミラがそれを制した。
待て、アルミラの手が彼の口を塞ぐ。
「な、フィール」
「うん?」
「私が相手をしてやろうか」
フィールは口をゆっくりと閉じた。眉も正面の相手を凝視するようによっていく。結果彼の
表情は険しいものになった。第三者が見たら睨んでいると思っただろう。
415 :
380-25:2008/03/18(火) 01:50:26 ID:KiOZ2HCM
話の展開が時々唐突なのは分かってやっているのだろうか。彼女のことだから普通に順序
立てて話す事など造作もないはずなのだが。予想される反応は同じだからと途中を省いただけ
かも知れない。
怒ったような叱るような表情でアルミラを見返して――相変わらず平然としているが冗談を
言う時はちゃんとそういう顔をしたらどうだろうと彼は思った――フィールは嘆息した。
横を向いてぼそぼそと答える。
「僕、そういう冗談好きじゃない」
「本気だぞ」
「そんなことばっかり言ってると怒るよ?分かってるくせに。誰でもいいんじゃないんだよ。
彼女が好きだから……!」
拒否する場合でも大抵の男は誘われた瞬間喜びが表情をよぎるものだが、少年の顔はあくまで
悪質な冗談を怒るものであり、それにほんのわずか苛立ちが混ざったものだった。
フィールの拒絶にアルミラはひっそりと微笑む。彼を試したのだ。
この問題に関しては相談を受けた者の誰もが後から自分の行動は要らぬ世話だったかもと
感じていた。
アルミラも本当のことを言えば興味半分、心配半分だったのだが、彼の意志がまっすぐ恋人
だけに向かっていることを知って、改めて、ならば一肌脱いでやろうという気になった。
フィールが恋人の気持ちを重んじるというなら、相手にもそれなりの誠意を求めるべきだろう。
少なくとも一方だけが我慢を強いられるという関係は傍で見ていても気の毒だし、納得が
いかない。
「お前、くらくらしないか?頭に血が上って顔が真っ赤だ。お湯が沸かせそうだぞ?」
「あのね……!」
アルミラの手がフィールの肩を叩いた。
「主張する時は最後まではっきり言うものだ」
「だから、か、か……ジュジュとしかしたくないんだよ」
「良く出来ました」
あくまで真面目に答える彼をからかってもう一度頭を撫でてやる。そのまま抱えるように引き
寄せるとフィールの耳元で囁いた。
「ガルムには私がジュジュにあれこれ聞くのは良くないだろうと言ったそうだが、こうなって
しまった以上知らんふりもしていられん。お前さえよければそれとなく水を向けてみようかと
思うんだが、どうだ?」
どうする、と笑ってみせる彼女にいくらか迷いを見せたものの、最後はアルミラなら下手な
尋ね方はしないだろうとお願いすることにした。
彼女のことだ、搦め手から問うてくれるに違いない。そんな期待もあった。
「それじゃあお願いします」
「任せろ」
アルミラはしっかりと請け負って豊かな胸を叩いた。
「じゃ、行くか。レオンがお前の家にたどり着く前に声をかけてやらないと」
「はは。そうだね。どこまで行ったんだろう」
アルミラを呼ばわりながらだんだん小さくなっていったレオンの声に、いったい森のどこまで
探しに行ったのか。そう言って二人は声をあげて笑った。
「お、なんだお前ら」
居間に入るとそこにはレオンがいた。
ヴィティスも椅子にゆったりと腰かけて本を読んでいたがレオンの声に顔を上げた。
「あれ、レオン」
顔を見合わせ訝る少年とアルミラに器用に片方だけ眉をあげて質してくる。
「どこにいたんだよ」
「それはこっちの台詞だ。お前こそ森の中まで探しに行ったのかと思ったぞ」
つまらん、と呟く彼女にレオンは当然の文句を言った。
「気付いてたんなら返事しやがれ。ボウズ、お前もだ」
「ごめんよ。裏の方でちょっと話をしてたんだ」
416 :
380-26:2008/03/18(火) 01:50:58 ID:KiOZ2HCM
少年の意味深な表情にピンと来たらしい。
表情の険をとるとレオンは頷き顎を撫でた。
「はっはあ……あれか?」
「うん。あのことで」
「それじゃ仕方ねえか。勘弁してやらあ。で?あの後どう――」
「「レオン。あまり詮索するな」」
続けてあれから進展はあったのかと言いかけたが途端に後ろと正面とから同時に言われ、開き
かけた口を名残惜しそうに閉じた。
「極めて個人的なことだ。彼が語る前に口に出すのは止した方がいい」
「ヴィティスの言う通りだ。だいたいお前は周りに構わなすぎる」
ヴィティスが冷たい目で見れば、アルミラは顎で台所を示した。
台所には当のジュジュがいる。万一漏れ聞こえでもしたら、二人の関係が知れていることに
彼女はどれだけ怒ることか。フィールとの関係が危うくなるのも目に見えている。
「皆でやいやい言われたら恥ずかしいだろうが。まったくお前はデリカシーがないな」
「恥ずかしいかぁ?皆知ってんだし今さらだろ」
「そう言う問題ではない。いいか、お前はな」
いつしかアルミラの説教が始まっている。
以前も見た光景にフィールは口元を震わせた。
成長がないというのではなく初めて会った時と変わらない二人がおかしくも嬉しかった。
それにしても人のことは言えないがこれで恋人同士というのだから、二人きりの時はいったい
どんな風に過ごしているのだろう。
ジュジュに合わせてまったりしたペースの付き合いをしてきたが、フィールはここにきて
ようやく他人の付き合いの様子というものを気にするようになった。
「こんばんは、ヴィティス」
フィールに挨拶を返すとヴィティスは向かいの椅子を勧めた。
彼が腰を下ろすのを待って先日の非礼を詫びた。
「この間は失礼したね。押しかけて行ったのにろくに挨拶もしないで帰ったから謝ろうと
思っていたんだ。あと開いている部屋を勝手に借りたことも、すまなかった」
フィールは首を振った。
「ドロシーからも話は聞いたし、そんなに謝らないでよ。そもそも最初につぶれた僕が
悪かったんだ。酔いつぶれるほど飲むなんて、まだまだだよね」
修行が足りないなあと笑う彼を見て、ヴィティスと説教をしながら話を聞いていたらしい
アルミラがレオンに目を向けた。
「つぶれるほど飲むのがまだまだならレオンなどまだまだまだまだまだまだだ」
「まったくだ。いい歳をしてな」
「……てめえら!そろいもそろっていい度胸じゃねえか。俺に喧嘩売ってんだな?」
レオンは拳をならして面白そうにヴィティスを睨んだ。
「そう言えばジュジュはもう来てるんだよね?」
「おう。今奥で――」
フィールが思い出したように言うと、怒っていた筈のレオンが反射的に答えた。それと同時に
台所の方で大きな声がした。
「そんなこと言うなら自分でやったらどうなのよっ!」
ジュジュの声だ。
四人はなんとも言えない顔で声のした方を見た。
台所へ続く扉は締まっている。結構な厚みがあるせいか続く会話は聞こえなかった。
皆は顔を見合わせる。
ヴィティスはどうしようという顔で固まってるフィールに肩をすくめてみせた。
「あの通りだ」
「け……喧嘩してるの?」
「いや。喧嘩とまではいかないだろう。今までは大人しく作業をしていたようだし……が、
ドロシー君は大変だろうな」
「我々なら喧嘩させておくところだが、な」
簡単に想像できる三人の料理風景にドロシーの気苦労を思って四人は沈黙した。
417 :
380-27:2008/03/18(火) 01:51:38 ID:KiOZ2HCM
「おい、小僧はまだ来てないのか?」
先にそんな声が聞こえ、続いてガルムが台所から出てきた。
そう言えば居間に来たきり皆と話を始めてしまい、まだ彼に挨拶もしていなかった。
フィールは小さく手をあげる。
「む……来ていたのか」
「ごめんよ。さっき着いたんだ。お邪魔してます」
「挨拶は後だ。ちょっとこっちへ来い」
ガルムはフィールの顔を認めた途端、彼の腕を引っ張り廊下に連れ出した。廊下の奥、寝室の
前ほどまで来てフィールを振り返ると強く肩を掴んだ。
何故か険しい目つきのガルムに少年は目をしばたたかせる。
「どうしたんだい?」
何か怒らせるようなことをしただろうか、それとも妹のことで話があるのだろうか。冗談を
言う顔でないのは分かる。
普段から大人の威厳を漂わせている彼に薄暗がりでこんな顔をされるとますます迫力があった。
肩に置かれた手にぐっと力が入ったのにこれは前者だ、とフィールは思わず肩を縮こまらせ
理由は分からないものの怒られる覚悟をした。
だがガルムの語ったのはまったくフィールには罪のない事だった。
「済まなかった!」
「えっ?」
「あの二人、家に押しかけて行っただろう?貴様に無断で話を……この通り、詫びる」
「いや、そんな……待って待って!」
生真面目に頭を下げようとするのを下げる額に手をあてて押し返した。失礼と言えばこれも
失礼な話だが、フィールとしては彼に謝って貰うつもりはこれっぽっちもなかったのだ。
「ガルムは悪くないよ。言いふらすつもりだったとも思ってない。ちょっと恥ずかしかった
けどそれだけだし、二人の話も参考になったから。大丈夫、気にしないで」
「そ、そうか。ならいいんだが……」
「それよりさっきジュジュの声が聞こえたけど何かあったの?」
「ああ……あれも俺が悪いんだ。済まん。口出しし過ぎてな。頑張ってるというのは分かって
たんだが、つい」
自分でも大人げなかったと思っているのかガルムはばつが悪そうにむう、と口元を撫でた。
「そっか。それなら良かった」
フィールはほっと胸を撫で下ろした。
本気でやりあったのではないようだし、いつものようにジュジュが無茶を言ったわけでも
ないと知って彼は安心した。
「も……なにこれ、信じらんない……」
見るも無残な卵焼きを前にジュジュがうなだれている。
ガルムに有無を言わさず作らされたのだが、一つ作っただけで『……もういい、後は二人で
作るから貴様は洗い物でもしていろ』と言われたのだ。
教えを乞うたなら容赦なく特訓してくれたのだろうが今回は人に出すものを作るのだ。出来
そこないになると分かっていて任せておけるはずがなかった。
彼女もいつもみたいにあんたが作れって言ったくせに、と突っかかる気も起きない。大人しく
ガルムに従うしか無いような出来だった。
珍しく言う通りにしていると後ろで『時々小僧に弁当を作って行ったりすると聞いたが』とか
『いやはや……』などと呟くのが聞こえて遠回しな感想に少しずつ苛々を募らせた。
気にしない、と自分に心の中で語りかけドロシーもいるしと我慢していると、彼はジュジュの
手際の悪さが目につくのか洗い物の仕方にまで口を出してきた。
それでとうとう爆発してしまったのだ。
「ジュジュさん……ガルムさん!ちょっと言い過ぎです……!」
ジュジュの怒鳴り声にドロシーがおろおろしながらガルムを諌めた。ガルムも確かに言い過ぎ
たと思ったのか一言済まん、と謝った。
素直に謝ってきた相手にぷりぷりしているのも子供っぽくて、口ではもういいわよと許したが
所詮ふりはふり。料理の腕前がいまいちなことについては皆知っているし、本人だって気に
していたから断ったのにやれと言うから仕方がなく、それでも真剣に作ったものにため息を
つかれては、腹も立とうというものだ。
418 :
380-28:2008/03/18(火) 01:52:24 ID:KiOZ2HCM
二人が使った調理器具を今度は嫌味なくらい念入りに洗いながら、フィールのことを考えたり
意識を楽しいこと好きなものに向けて、心を静める努力をした。
晩餐が始まるころには大分気分も直ってきたというのに彼女の目の前にあるのはこれだ。
テーブルの真ん中にはガルムとドロシーの作った料理が所狭しと並べられているのに。さあ
どうぞと食べられるのを待っているのに。
風船がしぼんで地に落ちたようながっかり感だった。
自分の作ったあれを誰が食べるのかなんて考えてもいなかったのだ。
もちろんこんな形の崩れた内臓がはみ出したようなものを人に食べさせられるわけがないし、
自分で食べるのは当然だと思う。だが周りを見るとどうだ。
皆の前にあるのは形の整った焼き色も美しい出来のもの。
ふわふわの卵に包まれて中に小さく切った野菜が入っているのが見える。中に入れる野菜は
濃いめのスープで煮てあって、そのスープも昨日の夜から仕込んだとガルムは言っていた。
見比べるとどうしたって惨めになるし周りもそうなのだろう。ジュジュの前に置かれた料理に
ついて、レオンですら何も言わなかった。
そこまでなのか、と誰も一言もないのに彼女は一層衝撃を受けた。
だからと言って捨てるわけにもいかない。小さくため息をつきながら黄色いかたまりに匙を
入れようとした。
するとひょいと横から手が伸びて皿が入れ替わった。
フィールだ。
「えっ……フィール?」
「彼女の手料理を食べるのは恋人の特権だよ」
笑ってジュジュに片目をつぶって見せた。
ドロシーは微笑んでいる。アルミラもヴィティスも。ガルムは甘いな、と呆れたように少年を
眺め、レオンはひゅうと口笛を吹いた。
フィールは周囲の様子に頓着なく卵焼きを口にする。
しんと皆が見守る中もぐもぐと良く噛み飲み込むといつものように恋人に笑顔を向けた。
「形はあれだけどおいしいよ。気にすることないよ」
だって材料は一緒だもの――とジュジュは言わなかった。焦げさえ気をつければそれは同じ
味になる。分かっていても自分の作ったものを美味しそうに食べてくれる恋人にほっとした。
申し訳なさと嬉しさでなんだか切なくなった。
「ごめんね」
フィールに体を寄せると小声で感謝の意味を込めて謝った。
「美味しいってば。どうして謝るんだい?」
本当に気にしていないのか彼はきょとんとした顔で聞き返した。
大皿の料理が一皿また一皿と無くなっていく。
すでにこの集まりで習慣となっている酒も数本ある瓶がすべて空になった。
ドロシーはあれ以来本当に気をつけているようで、勧められても決して三杯以上飲むことは
なかった。
「ごちそうさま」
食事が終わりお茶を頂きながらひとしきり談笑すると誰ともなくそう言って食器を片づけ
始める。そこまでは各々でやることになっていて、あとは当番の仕事、調理をしなかった者の
出番だ。
ジュジュも一通り台所に運ぶとそのまま出ていこうとした。今日は片付けをしなくて良いのだ。
しかし立ち去る背中に声をかけられた。
「ジュジュ」
「なによ」
「お前も来い。片付けを手伝え」
「えー!?なんでよ!あたし、洗い物したり二人をちゃんと手伝ったわよ?何で片付けまで
しなきゃなんないわけ?」
419 :
380-29:2008/03/18(火) 01:52:52 ID:KiOZ2HCM
『片付けをしない権利』を言いたてるとアルミラはジュジュにそっと顔をよせた。
「男だけで大事な話があると言っていたんだ。お前、ちょっと気をきかせてやれ」
これは勿論言い訳だ。アルミラが目的を達成させるためには男は邪魔なのだ。彼らにはすでに
言い含めてある。
最後のひそひそ話以外を聞いていたドロシーが当然のように手伝いを申し出た。
「なにそれ、それじゃルール違反でしょ!?なんであたしが……!」
ジュジュはなおもぶつくさ言っている。
「お前な、ちょっとはドロシーを見習ったらどうだ」
往生際の悪い少女にアルミラはやれやれと首を振った。
当のドロシーは聞こえないふりで食器を洗うため、桶に水を移している。
「そんなこと言ってさ、じゃああたしたちが同じこと言ったら男共で片付けしてくれるって
わけ?ちょっと勝手なんじゃない?」
「やってもらうんじゃなくてやらせればいいのさ」
アルミラは分かるか、と目を細めた。
「じゃあこの次は絶対あいつらにやらせてよね。もう……」
ジュジュはアルミラから確約を得ると口をとがらせつつ袖をまくり上げた。
それぞれ洗い物をしながら、食器を拭きながら世間話をしていると、途中ガルムがドロシーを
呼びに来た。
彼女は少し迷うそぶりを見せたが一言謝って場を離れた。
ドロシーが出ていくとジュジュはますます納得いかなそうに眉をしかめる。
「なんかあたしばっかり損してる気がする」
「まあまあ」
もちろん適当な理由をつけて彼女を連れ出すようガルムに言っておいたのもアルミラだ。
「ジュジュ」
うまくドロシーを居間に向かわせ二人きりになると、彼女はやっと口を開いた。
ここから先の話はドロシーには聞かせたくなかった。
「なによ」
「フィールとは上手くやってるか?」
ジュジュの手元で器ががしゃんと音を立てた。
「な、なによいきなり……別に、いつも通りだけど?」
突然の質問に、少女は気味悪そうにアルミラを見た。普段の彼女はこんな挨拶程度のことも
口にしないので相当驚いている。
「さっきの見てれば分かるでしょ?あたし達、自慢じゃないけど仲良いんだから」
いかにも自慢そうに言う。
「なに……いくら好きだと言っても相手をするのが面倒なこともあるだろうと思ってな」
「面倒って?」
アルミラは辺りを憚るよう少女に寄り添うと言葉を継いだ。
「時々面倒くさくはならないか?こっちにその気がないのに押し倒してきたり」
「な――」
「レオンはああだろう?自分が構って欲しい時はあまりこちらの気持ちを考えないで迫って
くるから、たまに殴ってやりたくなる」
なんだか身内の体験談を聞かされてるような居辛さを覚え、ジュジュは真っ赤な顔でそっぽを
向いた。
「あんた、人にそんなこと話して恥ずかしくないの!?」
「恥ずかしいか?こういう話もたまにはいいだろう。……フィールはそういうことはないか?」
「ばか言わないで。するわけないでしょ!?あいつは――」
言いかけてジュジュははっとした。
フィールは嫌だと言えば、態度で示せば手を放してくれるが、それが当然のことと慣れ過ぎて
いたのかもしれない。普通はそう簡単に止めてくれないのかもしれないと。
罪悪感で一瞬顔つきが暗くなったが、気のせいだというようにアルミラに得意げに笑って
みせた。
「あいつはレオンとは違うのよ。あたしの気持ちを無視したりしないわ」
「そうか。私の場合はいいだろいいだろと言いながら圧し掛かってくるばかりだからな」
「なにそれ!最低!」
420 :
380-30:2008/03/18(火) 01:53:37 ID:KiOZ2HCM
自分勝手な行動が聞いていて腹立たしいのか、ジュジュの茶碗を洗う手つきは荒々しい。
彼女の反応に手ごたえを感じつつアルミラはそこまでは思わないんだ、と答えた。
「何と言うか……そんなに私のことが好きなのかと思ったり、したいだけかと勘繰ったり。
求められること自体は基本的に嬉しいんだがな」
「なに甘いこと言ってんのよ、嫌な時は嫌ってはっきり言わなきゃだめじゃない!」
「まあ、男女の間、問題の答えは二通りではないからな。そう言う時は折衷案だ」
「折衷案?」
いつまでも同じ食器を洗っているので横からそれを取り上げると、アルミラは布巾を置いて
すすぎを始めた。
「そう、歩み寄りだ。自分はしたくない、相手はしたい。お互いが自分の意見を通そうと
すると喧嘩にしかならないだろう?だから自分も少し我慢して、相手にも少し我慢してもらう
んだ」
「どういうことよ」
ジュジュは遠まわしな表現は言うのも意味を理解するのも得意ではない。
アルミラはほんの少し間を置くと、腰を屈め少女に耳打ちした。
「終わったぞ」
片付けを終えアルミラとジュジュが手を拭きながら台所から出てくると、皆が口々に労った。
その際ジュジュが妙に険しい顔で自分を見詰めているのが分かったが、その表情から話し
かければ喧嘩になるに違いないと分かっていたためレオンはあえて気付かない振りをした。
帰り支度をして表に出ると皆は改めてガルムに礼を言い、おやすみと声を掛け合ってそれぞれ
森へと足を向けた。
去り際、アルミラがフィールに意味深な視線を送ったのにジュジュは気付かなかった。
ガルムと並んで皆を見送っているドロシーを振り返り、ジュジュが不思議そうな顔をした。
自分を促す恋人にも同じ視線を向ける。
「さ、帰ろう」
「え……ドロシーは?」
「今日はガルムの家に泊ってくんだってさ」
ジュジュは目を見開いた。
「あ……へ、へぇ……いいじゃない。あの二人、うまくいってるのね」
こういう話になるとどうしたって自分達のことを連想してしまうのだろう。いくらか硬い
笑顔で答えるとガルム達に向き直り改めて手を振った。
二人はいい加減歩きなれた道を手をつないで進んだ。
「アルミラと何を話してたんだい?」
「ん?うーん……っと、内緒」
ちらと隣の男に目をやると相手もこっちを見ていた。彼の表情にあるのは純粋な好奇心だ。
「どうして?」
「途中『最低!』って声がしたからさ。いや、そこしか聞こえなかったんだけどね」
正面へ顔を戻し言い訳がましく付け加える。
「何がだろうと思って。もしかして僕のこと?」
「ばか」
ジュジュの手がフィールの肩を叩いた。
「そりゃお互いか……彼氏の話くらいするわよ。最低って言ってたのはレオンのこと。あいつ
どうしようもない男だわ。あんたがそんなんじゃなくて良かったって思った」
「そっか。……レオンがどうかしたの?」
「だーめ。女同士の話よ、内緒って言ったでしょ。あんまり突っ込んだこと聞かないで」
ぷい、と反対側へ顔を向け、これ以上なにも聞かないでと態度で示した。
フィールは自分の家とジュジュの家へ向う分かれ道で立ち止まった。いつもはここから左を
進んでジュジュを送ってゆくのだが。
握る手にほんの少し力を込める。
「お茶でも飲んでく?」
〜つづく〜
>>408 ありがとう。ではぼちぼちやらせていただきます。
次からエロ入ります。
GJ!!
これはエロにも期待できますな(;´Д`)
テオロギアに新たなネ申が降臨した…
フィールがんばれ
神がんばれ
425 :
380-31:2008/03/21(金) 00:14:21 ID:5Gn8JYj9
こんな時間にこの誘い、それこそ遠まわしに泊ってけと言っているようなものだ。
うん、あるいはやめておく。
いずれ一言で済むはずの答えを得るのに短くはない間があり、彼はやはり断られるのだろうと
思った。答えるまでの間が断りの言葉を探すために必要な時間なのだと。
だが意外にも彼女の口から出たのは承諾の意だった。
「えっ?……い、いいの?」
「うん」
驚いてもう一度確認するとジュジュはこくんと頷いた。
今日はドロシーがいないということをちゃんと分かって返事しているのだろうか。
彼女がどういうつもりで頷いたのか真意が読めず、誘ったフィールの方が困惑した。
「お邪魔しまーす」
「どうぞ」
居間に向かいながら後ろに言葉を返す。
勝手知ったるとジュジュはフィールの外套を受け取ると洋服掛けに掛けてやった。
「暖まるまで少し待ってて」
暖炉に火を入れるとフィールは台所へ行った。
少しして彼が盆を手に戻るとジュジュが暖炉の前にしゃがみ込んで手をかざしている。
テーブルの上に盆を置いてフィールが声をかけた。
「そこ、いいかな?」
どいてもらうと暖炉の前に長椅子をずらし、部屋の隅にある小さなテーブルをその横に置く。
手の届く位置にお茶と菓子とを並べて二人並んで座った。
「ジュジュ」
フィールは長椅子の上に畳んであった膝掛けを、ジュジュにかけてやった。
膝から下は素足で後は足首丈の靴下だ。さすがにこの時期暖炉の前にいても肌寒いだろう。
「少しはましかな」
「うん。ありがと」
フィールの気遣いに彼女は素直に礼を言った。
お茶を両手で包むように持ちジュジュはあったまるわね、と言って微笑む。
ぱちぱちと踊る火が寒い夜に心まで温めてくれるようだった。
それから二人は他愛もないことを語りあった。
ドロシーのこと、ガルムのこと、他の皆のこと。話が再びアルミラとの会話に及ぶと彼女は
口元をむにむにと動かし、なんとも言えない表情をした。
「内緒だってば」
ほんのり頬を染め、さっきと同じように答える。
しばらくして雨が窓を叩く音が聞こえてきた。
降っては止んで、また降って。途中嵐のように風が強くなった。ごう、と吹く風が家を揺らす。
そのせいか家の中が急に冷え込んできたが二人で寄り添っていればそれも気にならなかった。
「明日も降るのかなあ」
「本降りになったら昼までゆっくりしていったらいいよ」
フィールはにっこり笑った。
彼の笑顔はいつもやさしくて温かい。見るだけで心が穏やかになる気がして、ジュジュは彼の
微笑んだ顔が何より好きだった。
426 :
380-32:2008/03/21(金) 00:17:32 ID:5Gn8JYj9
他愛もない話を朝まで、という誘いもとても魅力的で、思わずえへへへ、とおかしな笑い声を
もらした。
「ね、帰りにさ」
すぐそこにあるフィールの顔を見上げる。
「うん?」
肩に頭をもたせかけているせいか彼の声は頭に直接響いてくるようだった。
「ドロシー、すっごい嬉しそうだったわね」
そう言うジュジュの方こそ嬉しそうな顔をしている。
フィールは可愛いなあとしみじみそれを見ながら頷いた。
「そうだね。ガルムの家に泊まるの初めてだから」
「へー、そうなんだ。でももう一年近く経つもの、ちょうどいい頃合いだったんじゃない?
……それよりあんたよく許したわね。そっちの方が驚きだわ」
「どうして?ドロシーとガルムがいいって言うなら僕が口を出すことじゃないもの。一緒に
住みます、なんて言われたらさすがにすぐにうんとは言えないけど」
正直な気持ちをもらす彼をジュジュは冷やかした。
「あはは。取られちゃうみたいで寂しいんだ。でもドロシー可愛いもんね。あんたの気持ち、
わかるわー」
ジュジュは大いに笑い、目尻に滲む涙を拭う。そしてふと暖炉へ目をやって彼女には珍しく
穏やかな笑みを浮かべた。
ほう、と息をついて呟く。
「いいなあ。ああいうの」
「え?」
フィールが眉を上げたのであんたはそう思わないの、とジュジュは不思議そうに言った。
「なんかほのぼのしてるわよね、あの二人って。ガルムなんてあたしには説教ばっかりの
くせにドロシーには違うもの」
不満そうに頬を膨らます。自分の態度を省みる気はないらしい。
息を送って熱いお茶を冷ます仕草、その表情もとがらせた唇も、左側に感じるわずかな重みも
なにもかもが彼の目には可愛く愛おしかった。
小声で名を呼んでみる。
「なーに?……ふふっ」
ほんの少し見つめあった後、どちらからともなく口付けた。ちゅっと吸うように、何度も舌を
絡ませる。
フィールはゆっくりお茶を脇にあるテーブルに置くとジュジュの手からもそれを奪い、そっと
その隣に置いた。手を回していよいよしっかりと彼女を抱きしめる。
心の中にちりちりと負の感情がくすぶるのを感じた。口付けを交わしながら心の中が騒がしく、
落ち着かなくなる。
きっかけは本当に些細なものだったが、彼の心に生まれたざわめきはいつの間にか先に家を
揺らした風よりも大きな嵐になっていた。
満足した少女が顔を離そうとするのを彼は顎に手を添え離さなかった。
ジュジュが横に顔を逸らしてもそれを追う様にしてさらに彼女の中に侵入する。
物足りないからではないのだが、出どころの分からない苛立ちに襲われてフィールは逃げる
体を長椅子の上に押し倒した。彼女を下に敷いてなおも貪るように唇を重ねる。
「っふ……んんっ……!」
ジュジュはすでに避けるなどという遠まわしなものではなく、少年の胸を押し、止めるよう
意思表示をしていたがフィールはそんなことには構わなかった。
細い手首を掴み両脇に追いやるとその時やっと顔をあげた。
427 :
380-33:2008/03/21(金) 00:18:51 ID:5Gn8JYj9
***
「――ッ!」
瞬間、彼はドロシーをぎゅうと抱き締めた。
しばらくそのままの体勢でいたが落着きを取り戻すとガルムは少女にそっと唇を落とした。
ガルムの口付けは逞しい外見からは想像できないほどやさしい。理性など蕩けてしまいそうな
ほどに。
「ドロシー」
「……?」
「お前はこうして抱きあうのは怖いか?」
ガルムは下で切なげな顔をしている少女に問いかけた。
「んっ」
男が出てゆく感触に思わず眉をひそめる。
互いの顔が目に映るほどに離れると、太い指が彼女の熱をもった頬を撫でた。
「……初めての時よりは大分平気です。あの時はすごく怖くて緊張しましたから。でも……」
答えたとおり、抱きしめられても前ほど緊張しなくなってきた。相変わらず心臓は忙しく動く
ものの、ドロシーは安心して彼に体を預けていられるようになっている。
「でも?なんだ」
「だんだん、ガルムさんとこうしてるのが気持ちいいってこと、知り始めたから。それが……
今は少し、怖いです」
「何故だ。未知の事柄に対して恐れを持つのは分かるが、知ってしまえばもう怖がる理由が
ないだろう」
理屈でものを言う男にふるふると首を振った。
「違うんです。なんて言うか――気持ち良くなっていくのが、まるで知らないところに連れて
いかれるみたいで不安なんです。それが、なんだか怖いなあって。やだ……私、なに言って
るんでしょう」
自身のあけすけな感想に気付き、ドロシーは恥ずかしくなって手で顔を覆った。
「いや」
ぎゅうと握ってくる手をやさしく握り返すと、薄金色の髪の散った額に口付けた。
「お前の言いたいこと、何となくはわかる」
「そうか……怖いか……。それを知る者は皆、相手をそこに連れて行きたいと思っているのに。
――顔が真っ赤だぞ」
「え……」
言われて少女は慌てて掌で頬を抑えた。
遠慮深く上にいる男を見上げる。
「あの、それってガルムさんも……?」
「もちろんそうだ。が……まあ焦ることはすまい。そのうちにな」
互いに生まれたままの姿で口付けを交わす。
やさしくからみついてくる舌にガルムは一年前に比べて大分自分に慣れた少女を嬉しく思い、
同時にその兄を思い出して彼の立場に深く同情した。
***
428 :
380-34:2008/03/21(金) 00:19:26 ID:5Gn8JYj9
少女は自分を押し倒している男から自身に対する抑えきれない感情と、冬の外気のような
冷たさを感じ取った。
抵抗を許さず、それでいてあくまでやさしく自分を求めてくる彼に戸惑いを隠せない。
やっと唇を解放されて窺うように名を呼んだ。
「あ、あ……フィール?」
「なんだい?」
首筋への口付けにジュジュの肩が小さく動いた。
少年の手が髪を後ろへ梳くといつも桃色の流れに隠れている部分が表れる。彼はそこへも唇を
落とし控え目に跡を残した。
「んっ……」
「ジュジュの耳たぶ、やわらかいね」
彼女はそれこそ耳まで真っ赤にして目を逸らした。
「な、なに言ってんのよ。あんた今日はなんか変……らしくない」
「僕らしいって?」
少女の前髪を横によけそこにもちゅっと唇を押しつける。
ジュジュは思わず目をつぶったが、離れると再度の口付けを避けるよう横を向いた。
「らしいっていうか、いつもはあたしが嫌がることしないじゃない」
「キスされるの嫌だった?」
真上でフィールは不思議そうに首を傾げた。
「そうじゃなくって……」
「そうじゃないって、じゃあ何が嫌?たまに自分の気持ちを優先させるくらいも駄目なの?」
「――!!」
哀しげな目をして自分を責めるフィールに少女はぎくりとなった。
確かにいつでも彼は自分の意思を尊重してくれた。いい雰囲気になった時も強引なことはせず
手を引いてくれていた。
さっきアルミラと話した時にそれがどういうことか気付いたばかりだった。
「いつもどんなに君を抱きたいと思ってるか……」
いつの間にか少女の両手は上に追いやられていた。
彼女を戒める手に力がこもる。
ジュジュは答えなかった。答えられなかったのだ。男が女に情欲を感じ、それを抑えるのが
どれほど辛いか知らなかったから。
フィールの奥にずっと隠されていた男の本能を、それが愛だと分かってそれでも今の彼女には
受け入れるという選択肢がなかった。
求められる喜びはとても大きなものだったが、この状況から逃れられるだろうかというそれ
以上の不安によって顔が暗くなる。
ジュジュの表情に寂しげに微笑むと彼は再び彼女に近づいた。
「そんな顔して……僕のこと、本当はあまり好きじゃない?」
頬と頬が触れんばかりの距離。
少年の囁く声はどこまでもやわらかな響きを持っていた。
腰のあたり、裾からそっと入ってくる男の手に体を強張らせながらぎこちない笑顔で答える。
「そんなわけないじゃない。あんたのことは誰より大事に思ってるわ。分かってるくせに」
「そうだね。ごめんね……意地の悪いこと聞いて。じゃあさ、結婚するまでしたくないとか
そういう理由があるのかな」
「フィール!」
正面向いて聞かれるのはこんなに恥ずかしいものなのだと、ジュジュはこのとき思い知った。
元々遠回りな表現をしない彼ではあるが、内容がこれほどあからさまでもそれを通すとは
思わなかった。
普段のフィールなら照れたり言いにくそうにぽつぽつと言葉を紡ぐのがせいぜいだろう。
「違うよね。それなら僕に言ってくれる筈だもの。そうだろう」
「そりゃそうよ。ねぇ、あたしは……っ!やだ、きゃ……」
フィールの指先が脇を撫でるとくすぐったそうに腰を動かした。
「くすぐったかったかな?――なんかすごく緊張してるからさ。じゃあ、誰かに触られて嫌な
思いをしたことがあるとか?」
429 :
380-35:2008/03/21(金) 00:20:28 ID:5Gn8JYj9
重ねての問いかけにいっそう胸が大きく上下した。
普段の彼ならこんな問い方はしなかっただろう。
心に傷を持っていそうなら、それが想像に過ぎなくてもこれほど無造作な質問をするような
思いやりのない男ではない。
心臓が引き絞られているような気がして背中が汗で冷たくなった。
彼女の目には、フィールは怒っているようにしか見えなかった。
ジュジュはますます焦って彼をなだめようとする。
「そんなの無いわ。フィール!待って、話を聞い――っ、ん……んうっ」
様子のおかしな彼に少女は懸命に話しかけようとしたが再び口を塞がれる。
胃が熱くなるほどの緊張と激しい口付け。合間に息をするのがやっとだった。抗う力も徐々に
弱くなる。
それを知ってか知らずか彼は独り言のように言った。
「僕がどれだけ我慢してたのか、分からなかったんだろうね」
フィールの手が背中に回り冷たくなった肌を撫でる。
「や……待って……フィール、ねえ、フィール……!」
彼は少女の言葉には答えず指先に触れる部分に呟きをもらした。
「背中までこんなに冷えて。雨のせい?それとも――。すべすべして、陶器みたいだ。色も
きっと、以前のまま白いんだろうね」
彼女がOZだった頃を思い出しての話だろう。あの頃の彼女はどこそこむき出しの格好だった。
「脱がせるよ」
ジュジュが弱々しく首を振ったのは見えていなかったのか無視しただけなのか。
短く宣言するとジュジュの青ざめおびえた表情には目もくれず、額から瞼へ頬へと下りながら
唇を落としていった。
「フィール……や、だぁ……」
きつく瞑った目の端に涙が盛り上がる。
ついでのようにその塩気のある水を吸い取ると、背中に侵入した手が下へ戻って裾をまくり
あげた。
少年のものというにはもう大きすぎる手が強引に、そして一気に彼女の衣服を上へずらす。
頭の上で彼女の手首を戒めている部分に引っ掛かり、彼はそこで手を止めた。
ジュジュはフィールの視線からどうにか逃げようと身をよじり、その拍子にかろうじて脚に
引っかかっていた膝掛けが床へ落ちた。
少年は彼女のするに任せ、うつ伏せになり露わになった胸を隠すのを許した。
手を放してやれば手首に服を絡ませたまま胸元で腕を抱えるようにする。丸く身を縮めると
髪がうなじから耳の下へ流れた。
やはり真っ白な背中が目に眩しい。
「きれいな体だね。それにこんなに細いのに、やわらかい」
肩から肩甲骨のあたりまで感動をもらしながら撫でまわした。辺りへも軽く触れるだけの
口付けを繰り返す。
くすぐったいのか拒絶のための反応か、薄い肩がまたも小さく揺れた。
胸に引きつけていた腕が緩んだのを察知して、フィールは脇から手を彼女の前へと滑り込ま
せた。
「やっ!」
初めて直接触れた彼女の胸に不思議なほど高揚し、少女の肩口に歯を立てながらやさしく
揉みしだいた。強くするのは躊躇われる感触だった。
丁度良く掌におさまる量感がなんとも言えない心地よさを感じさせ、フィールはそれの存在を
確かめるように何度も何度も中心に向かって柔肉を絞らせた。
「ぁ……っあ……やぁ……」
徐々に主張し始めた部分を指先で捏ねると彼女の唇から切なげな音がもれ、いつもは聞けない
ジュジュの色っぽい吐息にフィールは硬くなった頂を直接舌にのせたくなった。
肩の向こうに手を置き彼女の体を振り向かせると、意外なほど抵抗がなくあっさりと二つの
ふくらみを少年の目に晒した。
なんとなく懐かしさを感じるような、そしてそれ以上に彼の衝動を追いたてるかたちがそこ
にはあった。
つんと上を向いた部分は花のように可憐な色をしている。
先に触れた部分を今度は視線でも愛しながら麓からそっと指先で辿った。
430 :
380-36:2008/03/21(金) 00:22:16 ID:5Gn8JYj9
少女の胸が早い間隔で上下しているのにフィールは始め気付かなかった。
尖った先端をきゅっとつまんだ途端体全体がびくんと大きく揺れ、その時やっと彼は少女の
顔を見た。
無意識のうちにそちらを見ないように避けていたのかどうか。
彼女が唇を噛み、声を殺して泣いているのにこの時ようやく気が付いた。
「あ……」
一瞬で自分がしていたことを自覚し、反射的に彼女から体を起こす。
「――ご、ごめん……僕……!!」
すん、と弱々しくしゃくりあげている少女に今までにないほど自分の行為を悔やんだ。
手首で服が絡まったまま顔を覆い、腕で前を閉じるように体を隠す。それ以上の行動に出られ
ないほどフィールに怯えているようだった。
「ジュジュ……」
手を伸ばし、だが数瞬躊躇った後、脇に掛けてあった彼女の外套を掴み肌が見えないように
かけてやった。
そのまま横から抱えあげ居間を出る。
腕に感じる体重は羽根のように軽く、それがよりフィールの心に重くのしかかった。
こんなに小さな少女を力づくで抱こうとしていたのだ。
それも苛立ちに任せて。
いつもなら激しく抵抗するだろう勝気な少女がただ声をこらえ、肩を震わせている。
いきなりの乱暴な行為はフィールに裏切られたように感じただろう。
自室へ入ると、フィールは自分の寝台に彼女をそっと横たえた。
脱がせた服をきちんと着せ直してやりたかったが、手を触れられるのも今は嫌だろう。
彼女の気持ちを慮り外套の上からさらに掛布をかけるだけにして、すすり泣く少女に声を
かけた。
「本当にごめん。謝って済むことじゃないけど……」
当然返事はない。
髪に触れようとして、それも思いとどまった。
あまりの罪悪感にいっそのこと罵倒して欲しいくらいだった。だがそれすら今は叶わない。
入口に向かい、扉のところで振り返る。
「僕は居間で寝るから……。明日の朝、送って行くよ」
やはり返ってくる言葉はなかった。
長椅子に腰掛け横にあったお茶碗に口を付ける。お茶はすっかり冷めてしまっていて、彼に
時間の経過を感じさせた。
これを手渡した時はにこにこと笑っていた。
なのに何故あんなことをしてしまったのか。
抱きあげても抵抗しようともしなかった。何をしても意味がないと敵わないからと諦めて
いたのかも知れない。
「僕は……」
がしゃんと受け皿に叩きつけるように茶碗を置く。
組んだ両手を杖に顎を支え、自分の行動を反芻した。
愛を置き去りにした苛立ちまぎれの行為。
彼女を一方的に責めるような台詞。
何がそのきっかけになったのかフィールには分かっていた。こんなに簡単に振り返れること
なのに、何故あの時気付こうとしなかったのか。
「なんてばかなことを――」
彼は両手で顔を覆ったまま膝の上に力なく伏せた。
431 :
380-37:2008/03/21(金) 00:34:53 ID:5Gn8JYj9
昨夜の雨の名残はなく、頭上には青い空だけが広がっている。
心の中に雨雲のようにぐずぐずとしたものを抱えて少女は歩いていた。
夜通し泣いていたから瞼が重たくて、そのせいで顔をあげたくなかったのか下ばかり見ていた。
目に力を込めているものの今でも油断するとじわ、と涙が滲んでくる。
「ジュジュさん」
正面からの声に顔を上げると道の向こうからドロシーが駆け寄ってくるところだった。
「あ……」
慌てて目をこすり涙をごまかす。
「おはよ」
「おはようございます。ジュジュさん、昨夜はうちに泊まったんですか?」
「え……ああ、うん。ちょっと寄ってくだけのつもりだったんだけど、ガルムのとこでお酒
飲んでたせいかいつの間にか眠っちゃってね。起きた時驚いたわ」
あはは、と手を振ってジュジュは大袈裟に笑ってみせた。泣きはらした顔が見えないように
さりげなく横を向いて視線を合わせないようにする。
「フィールが運んでくれたみたいなんだけど、ベッド占領しちゃってさ。起きたらあいつは
居間で寝てたし……悪かったわ。風邪引かないといいんだけど」
「大丈夫ですよ。お兄ちゃん体は丈夫ですから」
「だといいんだけど。季節の変わり目だから体調崩しやすいだろうし。あいつに――いろいろ
ごめんねって言っておいてくれる?」
「分かりました」
ジュジュの言い回しに引っかかるものを感じたがそれが何かは分からなかったため、彼女は
心の中で首を傾げただけだった。
「それよりあんた、なんでこんなに早く帰ってきちゃったの?もっとゆっくりしてくれば
良かったのに」
ドロシーは照れ笑いを浮かべると頭をかいた。
「ガルムさんにもそう言われたんですけど……朝ごはんも一緒に食べたし、あんまりのんびり
してると家のこと出来なくなっちゃうから。午後はお隣に行くことになってるんです」
「そんなの断っちゃえばよかったのに……ま、しょうがないか。気をつけて帰んなさいね」
二人は手を振って別れ、ジュジュはドロシーの後姿を見えなくなるまで眺めていた。
彼女の軽やかな足取りにぽつりともらす。
「あたし達と何が違うんだろ……なんで……」
ドロシーが家に帰ると奥から声だけが返ってきた。
「お帰り。早かったじゃないか」
「うん。今ねえ」
「うん?」
「そこでジュジュさんに会ったよ」
フィールは台所にいたらしい。がたがたと物音をたて何かにぶつかりながら転げるようにして
出てきた。
「ものすごい音がしたけど大丈夫?」
「ああ、大丈夫。大丈夫だよ。それよりジュジュは……彼女、何か言ってたかい?」
兄の問いに、顎に指をあてて目は余所を向いて先程のやりとりを思い出した。
「えっとね……ベッドを取っちゃってごめんねって謝ってたよ。それでお兄ちゃんが風邪
引かないといいんだけどって心配してた」
「そっか。じゃあ、その……怒ってるとか……泣いたりとか……そんな様子はなかった?」
「やだ……お兄ちゃん、まさかジュジュさんを泣かせるようなことしたの!?」
ドロシーは詳しい事情も聞かないうちから非難するような目で兄を見やった。
図星をさされ、フィールはうっと詰まり横を向く。
「お兄ちゃんが悪いんでしょ?」
半ば詰問するような妹の言葉にフィールは逆らえなかった。
そうっと顔をドロシーに戻すと恐る恐る頷く。
「もう……いったい何をしたの?」
「……取り返しのつかないこと」
沈んだ顔でそれだけ言って彼は自室へと足を向けた。
何をしたのかは知らないが、がっくりと肩を落としとぼとぼ歩く姿で海よりも深く反省して
いるのが分かり、ドロシーもそれ以上の追及はしなかった。
432 :
380-38:2008/03/21(金) 00:35:33 ID:5Gn8JYj9
ガルムはちょうど庭に出ていた。
植えてある花や野菜の様子を見ては水をくれたり雑草を取ったりしている。
「ねえ、ちょっと、犬っコロ!」
怒鳴るように呼びかけられゆっくり振り向くと、庭と森とを区切る柵の向こうに彼女は立って
いた。
彼は花壇や畑を大きく避けて柵へと近づく。
「……何の用だ」
「あんたにちょっと聞きたいことがあって……」
ジュジュの台詞に眉を上げる。
「なんだ?料理のことか?」
彼女の聞きたいことを先回りして考えても、とりあえず卵焼きが下手くそなことくらいしか
思い当らなかった。
それにしてもと顔を見る。何があったのか大分泣いたのだろう。瞼が腫れている。こんな顔で
人の家を尋ねてくるとは余程の用事だろうか。
「ちっ、違うわよ。あんなの別に何回かやれば上手にできるようになるもの。そうじゃなくて
……ドロシーのこと」
ガルムは肩で大きく息をした。
「今度は貴様か」
「え?」
訝しげに聞き返す彼女にガルムは背を向けた。
「いや、こっちの話だ――来い。突っ立って話をするのもなんだ、茶くらい出してやる」
早まったかもしれないとジュジュは自分の迂闊さが恨めしくなった。
人間の恋人を持つ者同士、標となるものを自分に示してくれるかと、ついドロシーが通って
来た道を逆に辿ってしまったのだ。
それでも歩きながらよくよく考えた。
こんな泣き顔だし、あんな奴を頼りにはしたくない。
だが昨晩のことを考えると、どうしても誰かに自分が心に抱えているものを相談したかった。
そしてその相手は立場からガルム以外にいなかったのだ。
丁度良くというかガルムが外に出ているのを見てジュジュは覚悟を決めた。
そう、遅かれ早かれ彼に話すことになっていただろうとジュジュは自分に言い聞かせた。
こう改まって二人だけで話をするのは初めてかも知れない。
テーブルに向かい合わせに座ってジュジュは少し緊張していた。
ガルムが自分をきちんと客として扱ってくれることにも、これから自分が尋ねることにも。
目の前には言われたとおり熱いお茶が置かれている。
だが彼女は一言礼を言うとお茶に口をつけるより前に本題に入った。
「あのさ、犬っコロはさ。どうしてドロシーと付き合うことにしたの?」
ガルムは二度目のため息をつくと腕組みを解いてとんとん、とテーブルを指先で叩いた。
「貴様。いい加減その言葉づかいを直したらどうなのだ」
「うるさいわね。あんたには関係ないでしょ」
むっと眉をよせいつものようにジュジュは言い返した。
だがガルムもいつもならここで諦めるはずが、今回はさらに厳しい表情になった。
「貴様、一体何をしにここに来た」
「え?」
「俺に聞きたいことがあったからだろう。人にものを尋ねるというのにそんな態度があるか!」
「――!」
久し振りに怒鳴られて思わず少女の肩が縮こまった。
「確かに貴様が無礼者でも俺には関係ない。ただ苦々しく思うだけだ。だがな、俺はこういう
言い方は好きではないのだが――貴様が礼儀をわきまえていなければお前と一緒にいる者も
恥をかくのだぞ。他者に笑われるということだ。いいのか、小僧がそんな目にあっても」
ぐっと詰まってガルムを睨みつける。
ややあって彼女は言いなおした。
「ガ、ガルムはどうしてドロシーと付き合うことにしたの?」
433 :
380-39:2008/03/21(金) 00:36:29 ID:5Gn8JYj9
謝りこそしなかったものの、彼女にしては珍しいくらい素直にガルムの言うことをきいた。
ガルムはやれやれとその態度に内心肩をすくめる。
「何故そんなことを聞く」
「あのさ……あたし達って、フィールやドロシーより10倍も長生きするじゃない。あんたは
そのことで悩んだりしない?ドロシーと付き合う時考えなかった?」
こんな質問ではフィールのことで悩んでいるのが丸見えだ。
気弱なことを訊いている、さらにはそれが自分らしくないことも分かっているのだろう。
もじもじと握り締めた手を組みかえ、恥ずかしいのを隠すためかきっと険しい顔でガルムを
見る。だがこんなに顔を真っ赤にしていてはごまかせるものもごまかせない。
少女のらしくない態度にガルムは思わず吹き出しそうになったが、本気の相手を馬鹿にする
ようだったから慌てて咳払いをした。
少女の目を見て真面目に答えてやる。
「もちろんさんざん考えたし、今もふとした時に考えてしまう。それはやはりどうしようも
ないことだ。楽しいことばかり考えて生きていけるものではないからな。そういう時は、こう
……無理やりに意識を余所に向けるようにしている」
そう言って両手を平行にあげ、振ってみせた。
だが意識を無理やりにという話にジュジュは懐疑的な表情になった。
「でも時間が経てばまた考えちゃうでしょ?あたし達の場合、普通にいけば相手が先に死ぬ
って分かってるんだから……解決のしようがないんだもの」
「まだ一生の半分も過ぎていないが、すべての物事がすっきり解決するものではないと俺は
知っているからな」
「そんなのあたしだって知ってるわよ!」
欲しかった答えからずれていることだけは分かったのでジュジュは不満げに眉を寄せた。
「あんたはおっさんだからそうやってゆったり構えていられるんだわ。なんでも分かってる
ような顔して……」
「なに?」
ガルムは眉を上げる。
今の台詞には嫌味の他にほんの少し嫉視が込められていたからだ。
「いいわよ、あんたは。だってドロシーは大分年下で、あんたと並んで、あんたを追い越して
おばあさんになって……それまでまだまだ時間があるもの。それに比べてあたしなんて初めて
会った時は年の頃だってそんなに変わんなかったのに、たった数年でこんなに……!」
ジュジュはテーブルの上に置いた手を強く握り締めた。
口に出せば出すほど現実が近寄ってきて不安になってくる。
「あたしのことを置いてフィールは一人でどんどん大人になっちゃうんだから!あたしなんて
全然変わってないのに。十年経ったら、二十年経ったらって考えちゃうのよ。自分だけ歳を
とってじいさんになって!私を置いて!!」
ジュジュはほとんど泣きそうだった。ガルムの前だというのに虚勢を張る余裕もない。
フィールを失う時の恐怖を思うとそれどころではないのだろう。瞳が潤んでいる。
「嫌……そんなの嫌なのよ……!怖くて考えたくないの!」
かなり悩んでいたのだろう。
瞼の腫れの原因もそれだろうかとガルムは思った。だが余計なことは言わない。ただこの娘も
表に出さないだけで種族の違いに深く悩んでいたのかと、始めて彼女に対し仲間意識のような
ものを感じた。
ガルムは小さく息を吐くと窓の外へ目をやった。
「あのな、俺は彼女に言われたんだ」
「え……?ドロシーに?」
「そう、彼女が言ったんだ、自分が死ぬまで誰よりそばにいたいと。置いて行かれるのは俺の
方だ、第三者が聞けば彼女は勝手と思うかも知れん」
「そんなの、他の奴等には関係ないわ。二人が納得していればいいんだもの」
「そうだな。俺もそう思う。……初めて彼女に思いを告げられた時――」
ジュジュはガルムの突然の話に目を見開いた。
彼は自分からこんなことを告白する人間ではない。問われても固く口を噤んでふいと反対側を
向いてしまうような男なのに。
434 :
380-40:2008/03/21(金) 00:37:30 ID:5Gn8JYj9
「俺は驚いた。一晩考えたが断った」
「えっ……?」
そんな話は聞いていなかった。
ジュジュはなにもかも終わった後にドロシーから直接事情を聞いたのだが、その時まで彼女が
ガルムを好きなことも知らなかった。
思慮深い少女だ。それに口も堅い。
余計なことを言うとガルムが周りにいろいろ言われるのが分かっていたからだろう。
現にジュジュは苦情めいたことを言った。
「あんた、あんな可愛い子に告白されて普通断る?」
「だからだ」
「え?」
「考えても見ろ。俺なんか年が離れていれば種族も違う、子供だって得ることが叶わない。
そんな男より村の男でも何でも、フィールが納得するような人間の恋人を作った方がいいに
決まっている」
「そりゃ……そうかもしれないけどさ。ドロシーの気持ちってものがあるでしょ?」
ガルムは頷いた。
「だが、結局はこうなった。俺は言い訳を探して彼女を諦めなくて済んだし彼女も喜んで
くれた」
泣き顔もどこへやら。ジュジュはすっかりガルムの話に夢中だった。
興味津津、身を乗り出して問いただす。
「えっ?じゃ、もしかしてあんたもドロシーのこと好きだったの?」
「そういうことをはっきり聞くものではない。が……まあ、そういうことだ」
ガルムはあまりに直接的な質問に顔をしかめた。
「彼女が同じカテナならこんなに悩まずに済んだのに、とも思ったしな」
「あんたでもそんなこと考えるんだ」
「だからそう言っているだろう。貴様、ちゃんと人の話を聞いているのか?」
やれやれと頭を振った。
さすがに喉の乾きを感じて目の前の茶碗に口をつける。
「相手が死んだ時にやるだけのことをやってきたから満足だと、そう強がりでも言えるように
過ごしたいと思った。やってやれば良かったなんて泣き言を言うのは御免だからな。相手が
言うのも聞きたくはない」
ジュジュが頷く。
今、彼を見る目に侮りはない。同じ立場の者の話として真剣な眼差しで聞いていた。
「時を逃さず――やるべきこと、やれることはやっておけ。どうしたって後悔するに決まって
いるのだから。出会わなければ良かったと思うことだってあるかも知れん。だがそれも時間が
経てば懐かしい思い出になる。俺は……そう思っている」
「そう……そうね」
「幸い一緒にいる時は相手のことだけを考えていられる。離れていても楽しいことや面白い
ことがあったら彼女にも知らせてやりたいと思う。初めに比べれば暗くなることは大分少なく
なった」
ここにきてまたジュジュの顔が暗くなる。
「あたしは何年経っても変わんないわ。同じように考えて怖くなる。あんたとどこが違うん
だろ……」
「あのな、俺と貴様、違うとすれば心構えではないのか」
「え?」
ガルムはこんなことまで言わなければならないのかと深々ため息をついた。
「貴様な、好いた男の気持ちも少しは考えてやれ。――多分向こうも我々と逆の立場から同じ
理由で悩んでいるのだぞ。相手がそんな後ろ向きで付き合いを続けてゆけると思うか。貴様、
小僧が同じことをぐずぐずと悩んで暗い顔をしていたらどう思う」
「あ……」
「自分ばかりが辛いのではないということをそろそろ知っておけ。この世に生きる者は誰
だって、心中するのでもなければ必ずどちらかが置いて行き、置いて行かれる立場になるのだ。
それが我々の場合はカテナであるという理由だけでほんの少し残される方になる可能性が高い、
それだけのこと。――それもどうなるか分からない未来の話だ」
435 :
380-41:2008/03/21(金) 00:52:35 ID:5Gn8JYj9
「……そっか……」
そうね、そうよねとガルムの言葉に頷く。
どうやら自分の言ったことが相手の心に響いたらしい。ガルムは胸をなでおろした。
それこそさんざん悩んでいるフィールのためにも彼女には気持を前向きに持っていって
欲しかった。
「参考になったか?」
「うん。ありがと」
素直な言葉にガルムは眉を上げた。
彼女は自身の変化に気付いてはいないようだ。
立ち上がるとさらに言葉を添える。
「朝っぱらから悪かったわね」
「そんなのは構わん」
自身も立ち上がるとジュジュを見送るのに玄関へ向かった。
思いつきから少女の後ろ姿に声をかける。
「おい」
「なによ」
「真面目に習うつもりがあるなら料理を教えてやるぞ」
ガルムの言葉にジュジュはべえー、と舌を出した。
「あんたの教え方じゃスパルタに決まってるわ。フィールだって料理は上手だし、やさしく
教えてくれるもの。教わるんならフィールに教わるわよ。あんたはドロシーの相手だけして
なさいよ」
「貴様は真剣に覚える気がないんだろう。だから何年経っても――」
「あー、もう!お説教はいいってば」
少女はうんざりしたようにガルムの話を遮った。
「もう二度とあんた達の仕事に手出さないから、それでいいでしょ?……じゃ、お茶ごちそう
さま。ドロシーによろしくね」
ひらりと手を上げるとジュジュは振り返らずに森の中へと入って行った。
来た時に比べ大分明るい顔になっていたことに安堵し、ガルムは玄関の扉を閉めた。
「誰でも同じことで悩むものだ」
朝から肩のこる話をした。
うーんと伸びをして台所に向かう。
それにしても昨日何かあったのか。あるいは小僧がなにかしたのか。
彼女が来た時の泣きはらした顔を思い出した。だが普段の様子を知っている彼は、まさか
フィールがジュジュに対して無体な真似をしたとは思いもしない。
「それにしても……」
おっさんとは。
「そうか、俺は……」
おっさんと言われる年か。
ガルムは自分がおっさんという言葉に傷ついていることに気が付いた。
そしてそれは己がおっさんだと自覚しているからだと知り、さらに深く傷ついた。
〜つづく〜
嘘付きました。エロまでたどりつきませんでしたorz
ではまた。
神様ありがとう。
続き期待して待ってるお。
ガルムがいわいいんだが
嫁に貰って良いですか
>>436 GJ、俺は引き続き全裸で待ってるぞ!!
いつもGJです
続きも楽しみに待ってます
これはwktkせざるを得ない
442 :
380-42:2008/03/24(月) 00:56:53 ID:B/YJtT8C
フィールは寝台の上でぼんやりしていた。
いつでも眠れるよう燭台の灯りも消して暗くて見えない天井を見上げている。
時々はあ、とため息をついては寝がえりをうった。
もう十日ほども経つがあれ以来ジュジュと会っていない。
晴れの日が続いたせいか彼女がこの家に来ることはなかったし、フィールもどんな顔をして
会えばいいのか、何と謝ればいいのか考えつかなかった。
もちろんすぐに謝らなきゃとは思った。だが会いに行っても出て来てくれないかもしれない。
きっと自分の顔を見るのも嫌だろう。そう思うと勇気を出せず、そのうち日が経ってますます
会いにくくなった。
だが会わなければ忘れられるかと言えばそんなはずもなく、日中はがむしゃらに仕事をして、
それでもやはり夜寝る前にはこうして必ず思い出してしまうのだった。
大事に大事にして来たのにあんな風に怯えさせて。震えて泣いていた。
そんなつもりはなかったのだと言っても信じてはくれないだろう。
何も言わないで帰ってしまったのも当たり前だ。
朝、きちんと謝って送って行きたかったけど――。
ガルムに自分の気持ちを押しつけては駄目だと言われたばかりだったのに。
調子に乗っていたわけではないと思う。
「だってあんなこと言うから……」
言い訳がましい言葉が口をついて出てきた。
壁の方にごろんと寝がえりをうつ。
いいなあ、なんて。
どっちが?ガルムが?ドロシーが?それとも二人の関係が?
人を羨むなんて自分では物足りないということなのだろうか。
あんな風に互いのことを理解し合って――心も身体も――それがうらやましいのだとしたら、
それは自分の責任ではない。
だからあの時、彼女が歩み寄るべきじゃないかと、彼女のせいだと思った。我慢を強いられて
いるのはこちらなのだから。皆も言っていたではないか。よく耐えられるなと。
そんな気持ちが頭をよぎり苛立ちからくる冷たい怒りが心に満ちた。
それでも少しは理性が残っていたと思った。彼女に気付かれないように、苛々を押さえようと
したのに、出来なかった。
無理やり口付けて、首へ、うなじへ、それに……普段服の下に隠された部分へも。
あんなに嫌がっていたのに彼女の意思を無視して強引に服を脱がせた。
綺麗でなめらかな肌、薄い体。
肩から背中、胸から腰をゆるやかに結ぶ曲線がとても扇情的だった。
抵抗する姿さえ色っぽかった。
自分を振りほどこうとする力はあまりに弱く、これで敵うと思ってるのだろうかと笑いさえ
こみ上げてきた。
自分を好きだと言っておきながらなお拒もうとする彼女のすべてを征服したくなった。
あんなに嫌がっていたのに。彼女は本気で掴む腕を振りほどこうとしていた。
「――っ!」
問題の場面を思い出し、体が反応しそうになるのを感じて枕に頭を押し付けた。
無理に意識を逸らさなければ無意識に手を下半身へのばしてしまう。忘れたいはずの自分の
行為を、彼女の姿を慰めに使ってしまう。
しかし良心の呵責がそれを許さなかった。
「駄目だなぁ……」
意気地のない自分が嫌になって独り言ちる。
彼女がどんな態度をとっても自分がしなければならないことは一つだけ、誠意を尽くして謝る
しかない。許してくれるまで何度でも、何と罵られても。
やるべきことが分かっているのに行動に移せない自分に腹が立った。
443 :
380-43:2008/03/24(月) 00:57:37 ID:B/YJtT8C
こんな風に毎日自分の心に問いかけては、謝りに行けない己に絶望し、消せるわけがない
出来事に悶々としていた。
ため息をついては寝がえりをうつ。それを繰り返しているだけだが頭の中は忙しかった。
だからその時も音がしたことに最初は気付かなかった。
もう一度こん、となる
フィールは今度こそそれに気付くと物音に体を緊張させて辺りに目を向けた。発信源が家の
中か外からかと耳をそばだてると今度はこんこん、と二度なった。
窓だ。
外に誰かがいる。
フィールははっとして寝台に体を起こした。
盗賊だったらと見えない室内を見回してもとりあえずの武器になるものは置いていなかった。
いざとなったら大声でトトを呼べば何とかなるだろうか。
そんなことを考えながら静かに寝台を降り窓際へ近づいた。
窓には薄手の布と厚手の布とを、目隠し用につけてある。朝日が昇ったら目覚めるようにと
厚手の布は窓の脇にくくってある。
外から見えないようにそうっと目をやると、途端目の前に手が浮かび上がった。
その手は今度はかなり強く窓を叩いた。硝子が揺れ、音が辺りに響く。続いて聞こえた声に
彼は驚きより先にめまいを覚えた。
「ねえ、フィール。フィールってば!……いないの?」
彼女にとってはささやくような声でも夜の静謐の中では窓越しにもはっきり聞きとれる。
フィールは慌てて窓を開けると声を抑えるのも忘れて彼女を叱りつけた。
「ジュジュ!君……こんな夜中に――まさか一人で来たんじゃないよね!?」
「え……もちろん一人だけど?誰と来いってのよ」
言外に見りゃわかるでしょと言っている。
悪びれるところのない少女にフィールは目を怒らせた。
「ばかっ!危ないじゃないか!」
「あー!」
掌をぽんと叩く。やっと意味が分かったとそんな顔だ。
「そっか。ごめんね。心配……した?」
あっけらかんと言って頭をかくと気まずそうにフィールの表情をうかがった。
フィールは窓枠に手をかけ身を乗り出した。
窓の下にいる少女に厳しく言い聞かせる。
「あれほど!何度も!言ったのに……!以前、夜の森は一人歩きしないって約束しただろう。
君って人は……」
「なによ、もう。そんなに怒らなくても」
せっかく会いに来たのにいきなり怒られたものだから少女は頬を膨らませた。
「怒ってるんじゃないよ。まったく、一瞬で僕がどんなに冷や汗かいたか教えてあげたいよ」
顔を押さえて嘆く様子はジュジュには大袈裟にしか思えなかったが、彼の言葉は訪問の理由を
考えるといいきっかけでもあった。
少し俯いて呟く。別に彼に聞こえなくても良かった。
「……教えてもらおうかな」
「え?なに」
「ううん、なんでもない。ちょっとそこどいて」
室内のフィールに持っていた手燭を押し付けほらほらと手を振る。
彼が黙って言う通りにすると窓枠を乗り越え部屋に入り込んだ。
「お邪魔しまーす」
テーブルに預かった灯りを置いて振り返る。
「ジ、ジュジュそんな、げん……」
ジュジュの格好に気付いたフィールがそんなところからじゃなく玄関へ、と言いかけたが
言い終わる前にはもう彼女は室内にいた。
裾がまくれるのにも構わず(多少は気を使ったようだが)脚を上げる姿は見ている方が隠せと
言いたくなるようなものだった。
444 :
380-44:2008/03/24(月) 00:58:20 ID:B/YJtT8C
ジュジュは部屋の真ん中に立つと小さな炎が暖かく照らす室内を見回して、それから彼に
注文を出した。
「こっち来て」
窓の傍から離れない男に手招きする。
「……うん」
そっと窓を閉め自分の正面に来るとさらに後ろを向くように言った。
フィールが言うとおり自分に背中を向けるとジュジュはぎゅう、と後ろから彼を抱きしめた。
「ジュジュ?」
「この間はごめんね」
「――!」
彼は一瞬硬直した。
まさか、少女に謝られるとは思っていなかったのだ。
慌てて首を振る。
あんなことになったのは誰が考えたって彼女のせいではない。
責めるように気持ちをぶつけたのも、嫌がる相手に対し力ずくで無理やり行為に及ぼうと
したのも自分だ。
「違うよ。あれは……あれは僕が駄目だったんだ。ごめんよ……謝って済むことじゃないけど。
君が嫌がっているの分かってて、力じゃ君は僕に敵うわけないって分かってたのに、僕は――」
腰にまわされた小さな手に自分の大きな手を重ねた。
「ううん」
否定の言葉と共に背中に当たるジュジュの頭が横に振られるのが分かった。
「真面目な話するから、聞いてて」
「え……」
改まった言い方に後ろを振り返る。すると間髪入れずに下から声が上がった。
「こっち見ないで!……そう、そのままで。見つめ合ってたらこんな話出来ないんだから」
すう、と大きく息をして、頭と呼吸を落ちつけてから彼女は話し始めた。
「あのね。最初に謝るね。四年も付き合ってきたのにずっと、その……しなくて。嫌がってて
ごめんなさい」
「別にそんなの謝ること――」
「黙って聞いててってば!」
謝罪の続きをしようとする彼を遮って口を閉ざすよう強要した。
「あ、うん……」
「あんたのことはちゃんと好き。これは本当。初めて会った時のこと憶えてる?あたし随分
ひどいこと言ったけど、あの時からずっとあんたのこと気になってた。それで……色々あって
あんたと付き合うことになって。あたし舞い上がっちゃうくらい嬉しかった」
その時のことを今でも良く憶えているのだろう。彼女はとても幸せそうに微笑んだ。
「あんたはぽーっとしてるし鈍いけど、一緒にいると他に何にも要らなくなるの。一緒に
散歩したり、ご飯食べたり。そんな些細なことが楽しかった。あたしらしくないなって自分
でも思うけど、穏やかな毎日を重ねていけるのが嬉しかった。それだけで満足しちゃうくらい。
あえて深い関係にならなくても、いいかなって……」
「ジュジュ?」
だんだん小さくなる声にフィールは前を向いたまま呼びかけた。
少女の息をつくのが聞こえる。気持ちが高ぶってきたのか吸って吐くその音は震えていた。
「あたしの性格知ってるでしょ?欲張りなのよ。自分が好きなもので手が届くものはなん
だって自分の物にしたい――でもあんただけは駄目だった。好きだから」
「……」
フィールは唇を噛んだ。
彼女がこんなに赤裸々に自分の心情を告げるのはこれが初めてだった。
恋人の性格を理解したつもりでいたが、そうではなかったのだと思い知らされた。
「あんたのこと本当に、馬鹿みたいに好きだから、これ以上近寄ったらあんたなしじゃいられ
なくなっちゃうって。でも、だから……最後までするの、怖くて……」
言いたいことを上手く言葉に出来ないのか途切れ途切れになった。
「だ、だめ……や、やっぱり上手く言えな……」
体も小さく震えているのが伝わってくる。
心細いのかさらに彼女の腕は強くフィールを抱き締めた。
445 :
380-45:2008/03/24(月) 00:58:54 ID:B/YJtT8C
「僕も好きだよ」
フィールはそこまで聞くと彼女の言いつけを破って振り返り少女を引き寄せた。
ジュジュは思わず顔を上げる。彼の真摯な瞳にぶつかってすぐに目を逸らした。
「怖かったの?ずっと」
「……っ」
少女は彼の問いにただ頷く。
『好きだよ』
今まで何度言われたか知れない台詞にジュジュは目頭が熱くなった。
彼に悟られないようさりげなく下を向く。
今日は普段どんなことを考えてどんな風に感じているのかみんな正直に言うつもりだったのに、
やはりちゃんと言えなかった。
彼を思うだけで心が春のような暖かさに満たされること。
気持はとても真剣なものなのに心にずしりと重くなるようなものではなく、ふわふわと脚が
地についていないような心地になること。
こんな性格の自分が彼のためになるなら、喜んでくれるなら何をおいてもしてあげたいと思う
こと。それに。
フィールの気持に感謝し――逃げ出したくなることを。
時々叫びたくなる。怖い、恐ろしいと。
彼のいなくなる瞬間が。
この気持ちに終りが来る時が。
そしていっそのことと思ってしまう。この不安を早く手放してしまいたいと。
だがそれと同じくらい強い気持ちで思うのだ。最後まで離れたくないと。
ドロシーがガルムに言ったように、彼に終わりの来る時傍らにいるのは自分でありたいかった。
相反する二つの気持に心が押しつぶされそうで、出会った時より広さを増した胸にしがみつき、
そこに顔を押しつけて目をぎゅっとつぶる。
瞼の裏に浮かんでくるのは片思いというものを自覚した時のこと。あの時はただ浮かれて
いた――と思う。
告げたい、愛されたい、でも断られたら。
人々が普通に経験する感情に、それだけで頭が一杯になっていた。
一時は常に傍にいるドロシーにさえ嫉妬した。考えられないことにアルミラに相談したりも
した。
それがどうだろう。
こうして想いが通じたら片思いの時より臆病になってしまった気がする。
何年も触れ合うのは唇のみで一線を越えられずにいる。
踏み切れないのは自分。
フィールは待ってくれている。健康な男子だもの、いつまでも拒否していたら振られるかも
知れない。その位は分かる。
それでも――それでもだ。
そこを超えたときの自分に自信がなかった。
ガルムが言っていたとおり。
一度は手に入れたもの。失うのが怖いから、いっそのこと手に入らなければ良かったのにと
彼を恨んだこともあった。
彼を殺してしまうかもしれない。
それは直感だった。
いつだっただろう、付き合い始めたばかりの頃だ。やはり手をつないで談笑しながら歩いて
いた時にふと心に差した影。
顔はフィールとの会話に笑っていたが、心臓はそれまでにないほど早鐘を打っていた。
446 :
380-46:2008/03/24(月) 00:59:21 ID:B/YJtT8C
彼を完全に手に入れてしまったら、自分が完全に彼のものになってしまったら、それなしで
生きてゆくことは出来ないだろう。
人間とカテナがどれだけ違うかと言えば、自分がようやく大人の女になる頃、かれは寿命を
迎える。その時を恐れながら、日々の小さな出来事に感謝して生きてゆくのかと、それが
自分に出来るのかと問えば答えは否だ。
彼がいなくなった後どうやって何百年も生きてゆくのか。
遠い未来に来る別れをただ待つのが恐ろしく、いっそのことと自分の手で彼の命を断ち切って
しまいたくなる。
だから、こんな風に自分を怯えさせる存在はいなくなってしまえばいい。そう思って衝動的に
やってしまうかもしれない。もともと我慢のきかない性格ということは自覚しているのだ。
自分のすべてを受け入れて欲しいし、相手のすべてを手に入れたい。
それは誰だって持っている欲求だ。
ただ、身も心も愛し合った後、その時どうなるのか。
より深い愛に気付くのか。
絶望を知るのか。
その状況になってみなければ分からないことに、いくら無謀な彼女でも賭けられるわけがない。
常に正と負にぶれる自分の本心をもう何年も、ジュジュにしてはこれ以上ないほどの自制心を
発揮して抑え込んでいたのだった。
「あた……あたし、も……好き」
こみあげてくる嗚咽を必死に抑えながら少年の言葉に答えた。
フィールの手がジュジュの髪をさらさらと梳いた。
こういう時はいつも黙って抱きしめていてくれる。それが彼女には嬉しく、申し訳なかった。
そしてそんな彼が好きなんだとしみじみ感じて口が開いた。
「フィール……あたし、あんたを殺しちゃうかもしれない」
顔を押しつけてる部分が上下し大きく息を吸ったのが分かった。
潤んだ瞳で見上げれば、驚きに目を見開いた彼と目が合う。
「ジュジュ?それってどういう……」
「お願い……あたしがあんたのことをその位好きってこと、知ってて」
小さな手でフィールの頬を両側から包み込む。引き寄せれば素直に腰をかがめてきたので額に
ちゅっと口付けた。
涙の粒が重みに耐えきれず目の端からこぼれる。
彼は何も言わず少女の濡れた頬を拭った。
「あんたのことを考えてるとそれだけで頭がいっぱいになっちゃうの。でもあたしはそれが
怖い。あんた無しで生きていけなくなっちゃったら、そうなるのが怖いの。だから」
「だから……?」
ジュジュは彼の胸にしがみついた。
ありのまま話ているとやはり自分は異常なのだと思う。
逃げないでほしかった。彼に縋りたかった。
「そう。分かんない。分かんないけど……あんたのこと殺そうとするかも知れないって。
あたしも本当は、あんたの全部が欲しいし、あたしの全部をあげたいの。でも、そしたらどう
なっちゃうか分かんないから。本当はあたしだって」
ひっく、としゃくりあげる。
「あ、あたしだって……ガルムやドロシーみたいに……なりたい、のに……」
「ジュ――」
フィールの口を塞いでちゅ、と吸った後、顎の先端へも唇を落とす。
彼はほんの少年だった数年前よりも大分がっしりと線が太く男らしくなっていた。
それに比べてちっとも変化のない少女は少年――もう青年と言うのが相応しいだろう――の
手を己の胸へ導いた。
かつて彼の手が伸び、拒否した場所へ。
やわらかい感触の下からジュジュの鼓動が伝わってくる。そこは壊れてしまわないか心配に
なる程の速さで脈打っていた。
447 :
380-47:2008/03/24(月) 00:59:47 ID:B/YJtT8C
少女の顎をつたってフィールの手の甲に滴が落ちた。
「本当は求められるたびに嬉しかった。あんたはいつも真剣で、その気持ちを疑うことなんて
一度もなかったもの。でもね、それでもやっぱり怖かった。あの二人みたいに乗り越えられ
なかった……臆病なんだわ。だから自分の気持ちばっかり大事にして、あんたの気持ちを
思いやることが出来なかったの」
そして彼女はもう一度ごめんなさい、と言った。
「本当はどうして受け入れられないのか分かってほしくて、でも……知られたくなくて。
これじゃ振られちゃうとも思ったわ。そんなことになるなら全部打ち明けてしまえばいいとも」
フィールは少女から手を取り戻し頬に手を添える。俯く顔をそっと自分の方へ向けた。
ジュジュは逆らわなかった。
「今まで、ずっと――?」
目に涙をたたえたまま自嘲気味の笑顔を浮かべる。
「――こんなことを何年もぐずぐず考えてたの。何も言わないで相手に我慢を強いて……
今さらながらあんたに酷いことをしたと思う――こんなののどこがいいのかまったく理解に
苦しむわ。それとも……もう、やめちゃおっか……」
付き合いを続けるのを、だ。
こんなのというのがジュジュ自身を指していることに、フィールはとんでもないと首を振った。
「どこがなんてそんな……そんな所も含めてきみのことを大事に思ってるんだ。うまく言え
ないけど……きみの笑顔が好きだよ」
ジュジュは下を向いてしまった。
泣いていたのとは別の理由で頬がさらに赤くなる。
彼女の変化に気付かぬままフィールは正面の空間を見つめ、彼女に対して思うままを言葉に
した。
こういう時の彼は照れるということをしない。聞いている方が恥ずかしくなることがしばしば
だった。
「いつも元気がいいし、でも落ち込むときも半端じゃないけどね。そこも好きだ。時々口を
とがらせて拗ねた表情をするけど、それだって僕には愛おしい」
「ばかなことばっかり言って……」
フィールの言葉にそれこそ照れた少女が脇腹をつねった。
「いたた……僕は本気だよ」
自分はジュジュが好きなのだと、自分を否定することはないのだと言いたかった。
「……ん」
フィールの真面目な声に頷いて、やっぱり悪かったとつねった所を撫でた。
彼女にも分かっていた。フィールは上っ面の褒め言葉なんか口にしない。真実感じたこと
だけを言う。
馬鹿正直ねとよく言ったものだ。
「きみの我儘も僕にとっては可愛いものでしかないんだ……時々度を超す時もあるけど。年々
少なくなってるし」
「なにそれ、褒めてるの?」
正直すぎる言葉に重苦しい雰囲気から一転、思わず吹き出してジュジュは彼を見上げた。
「もちろんさ」
心外そうに答え、フィールはさらに続けた。
「だから……自分のことをそんな風に言わないで。今度のことだって、打ち明けてくれたじゃ
ないか。僕には言えないことだってあるだろうけど、悩んでいることがあったら相談して
欲しい。だから……これからも」
「これから……?」
「うん。やめちゃうなんて言わないでよろしく――してくれる?」
「〜〜〜っ!」
にっこり微笑むフィールにジュジュは顔をくしゃくしゃにした。
あんな異常とさえいえるような気持ちを告白したのに、彼は応えてくれた。受け止めてくれた。
そう言ってくれたらいいと願っていたその通りに。
小さく口を開けて、ぱくぱくと動かした後また閉じる。
感極まって声が出なかった。
448 :
380-48:2008/03/24(月) 01:00:19 ID:B/YJtT8C
「ねえ」
ますます自分を強く抱き締めるジュジュに返事を催促する。
「……する……して。あたしの方こそ……これから、もお願い、します」
「うん……良かった」
フィールは彼女が自分に向けてくれる気持ちを同じだけ、いや、それ以上返すように強く強く
抱き締めた。
少しして腕の中の少女が身じろぎした。
フィールは腕の力を緩めて解放してやる。
ジュジュは両手を自分の頬にあてて深呼吸をした。大分落着きを取り戻したようだ。
「やっぱりなあ」
「ん?」
「泣いちゃった。この間から泣いてばっかり……もう、いつもはこんなじゃないのに」
泣いてばかりいる自分が弱々しい女の子のようで本意ではないらしい。
目元をこすっている。
「たまにはいいさ。いつも強気なくらいだもの」
「なによ、もうっ!」
手を振り上げる彼女にフィールは笑いながら身をかわした。
二人を包む空気がすっかり柔らかくなった。
「ねえ、ジュジュ……」
「なぁに?」
「このためにわざわざ来てくれたの……嬉しいけど本当に心配なんだよ。もうレクスだって
ないんだ。何かあったらさ。……さっき窓の外に声を聞いた時は心臓が止まるかと思った」
「うん……ごめんね?」
素直に謝るあたり本気でジュジュのおとないに焦ったのが伝わったとわかる。
「いくらあたしだって本当ならこんな時間に訪ねてきたりしないわ。面倒くさい。ただ今回
はね、あんたに話そうって決めたらいてもたってもいられなくなっちゃってさ。時間を置くと
やっぱり話すの止そうかなって迷うだろうし。それに、ね」
「うん?」
フィールはひとまず安心した。真夜中の訪問は彼女自身もあまり好きではないらしいことに。
それならあまりくどくど言わなくても進んで無茶をしたりしないだろう。
「夜の方がいいと思って……ついでだし……ううん、ついでって言うんでもないけど……
だから……」
はっきり言わない彼女の説明をフィールはじっと待った。
それに気付きジュジュは困ったように笑うと彼の胸元をつかんで自分の方に引き寄せた。
耳元でなにやら囁く。
微かな音がフィールの耳に届いた。
「え……?」
「もう一回言ってくれる?」
思わず頼むとすでに一歩離れていた少女がぷいと横を向いた。
「き、聞き返さないでよっ。二回も言えないわ!」
怒ったように言う。いつもの彼女だ。
「え……でも、だって……」
ジュジュはそっぽを向いたままぎゅっと自分の腕を抱きしめている。頬が赤い。
「だって……そんな」
聞き返すなと言われてはっきり口に出来ずフィールは顔じゅうに疑問符を浮かべている。
いきなりあんなことを言われたら確認したくもなるというものだ。
『この間の続き、しよ。もう嫌がんないから』
フィールは彼女の誘いを手放しで喜んだりしなかった。かえって胸が痛んだ。
きっとこの間のことを自分が我慢させていたせいだと気にしているのだろう。
449 :
380-49:2008/03/24(月) 01:00:53 ID:B/YJtT8C
彼は少女の申し出に頭を振った。
「ジュジュ……いいんだよ、そんな無理しなくても。理由を話してくれただろう?僕は――」
まだ待てるよとそう言いかけて、だがその言葉は遮られた。
ぴしゃんと頬を叩くように両手で挟まれる。
少し下にある彼女の顔は少し怒っているようだった。
「あんたさ、あたしが冗談で言ってると思ってる?」
「う、ううん」
顔を挟まれ不自由ながらゆるゆると首を振る。
「じゃあ、この間のこと、気にして言ってると思ってるの?」
「……うん」
いたたまれなさに目を伏せる。
途端に頬にある手がそこの肉をぎゅうと掴んだ。
「ひ、ひたひよ……!」
不自由な口で抗議の声を上げる。
実力で引き剥がさないのは彼女の言った通り、この間自分がしたことに罪悪感をもっている
からだ。
およそ容赦と言うものがない力の入れようだった。
だがジュジュには手加減する理由がない。
こんな場面であんな台詞を言った女に念を押す、それがなんとも無粋で腹立たしかった。
最後に思い切り強く左右に引っ張って手を離した。
「あんたって本当に鈍いわね!ちゃんと人の話聞いてたの?」
「ってて……聞いてたけど……?」
顔を解放されて痛みを和らげようと撫でながらジュジュを見た。
「あれは本当に無理やりだったわ、それは確かにあんたが悪い。でもね、そんなことになる
原因を作ったのはあたしだし、言ったでしょ?――ぜ、全部あげたかっ……って」
途中までは確かに怒っていた目が恥ずかしげに視線をずらす。
「――!やだ、もう、ばかっ!!こんなこと何度も言わせないでよ!」
またも自分らしくない態度に照れてジュジュは拳を振り上げた。
咄嗟に目を閉じたがいつまでたっても手は降ってこない。
そっと相手をうかがうと、ジュジュは数歩離れたテーブルの側に立っていて、そこには彼女の
持ってきた手燭が置いてあった。
寝るつもりだったから部屋の燭台はすでに消してあって、今はそれだけが室内を照らしている。
「ジュジュ……」
少女はそれを持つとちらとフィールに目をやった。怒ったように照れたように頬を染めたまま。
彼女が手燭のかさを持ち上げてふう、と火を吹き消すとあたりは闇に落ちた。
いきなりのことに目が慣れず彼女がどこにいるのか見えない。
「ジュジュ?」
まだそこにいるのかと思いそれでも深夜のこと、小さな声で名前を呼ぶ。見えるわけでもない
周囲に視線を泳がせると、そっと手を握ってくる温かいものがあった。
それを握り返し引き寄せる。
力のままにとん、と彼女の体が腕の中におさまった。
フィールはしばらくそのままでいたが、いつまで経っても胸の動悸は治まりそうになかった。
それどころか早くなる一方だ。
手を引かれるまま、自分の胸に顔を埋めた少女もそうなのだろうか。
どんなに緊張してるのか、心臓の音が彼女にすっかり伝わっているだろう。
「あの……本当に……?」
この状況で何といっていいか分からず、叱られたにもかかわらず彼は問いを重ねた。
「ん……」
ジュジュは広い胸に抱かれながら、結局自分は誰かに背中を押して欲しかったのだと気が
付いた。
堂々めぐりの思考を断ち切って、出来ることはやってみろと誰かに言われたかったのだ。
450 :
380-50:2008/03/24(月) 01:02:07 ID:B/YJtT8C
『どうしたって後悔するに決まっている』
ガルムの言葉は彼女にとって青天の霹靂だった。
同じことを考えていたというのに、だからこそ行動するのだと彼は言い、ジュジュはだから
何もしたくないのだと思っていた。
思い悩む彼女にとって彼の話は天啓と言っても過言ではなかった。
ジュジュの最も欲しい言葉を言ってくれたのが、彼女が最も苦手にする相手だったというのは
不思議なものだ。
小さな小川の前で足踏みしてしまうような心もとなさ。
渡った後に見える風景を見てみたくて、でも長い間、そのたった一歩が踏み出せなかった。
フィールと一緒に季節を歩んで行きたかった。
一歩。
たった一歩踏み出せば景色も変わり、季節も夏に変わるだろう。
ゆったり移ろいゆく季節を――緑の眩しい夏も、実り豊かな秋も。そして、厳しく悲しい色を
した冬も――共に眺めると、心に決めたのだ。
衝動に流されそうになっても来た道を振り返れば今までの思い出が見えるはず。
フィールは彼女の耳元に顔をよせ、さらに言葉を継いだ。
「こんな……途中で止めてって言われても、聞けないよ?――それでも?」
少女はただこくんと頷いた。
フィールの手が動く。
互いが見えないから、囁く声、触れる感覚だけが相手を知る手がかりだった。
指先が少女の頬に触れ、顎の輪郭を下へと辿ってゆく。顔を上向けるとそこに唇を落とした。
そっと触れ、離れる。何度も何度も、角度を変えてはただ触れるだけのひそやかな口付け。
体を離すとフィールはため息とともに呟いた。
「キスするだけでこんなにどきどきするなんて……」
「うん……緊張、する」
心臓が壊れそうなほどの鼓動はまるで初めて手をつないだ時のような。
もう一度かたく抱き合う。
はあ、とフィールが息をつくのがやけに大きく聞こえた。
〜つづく〜
ではまた。
GJ!
続きにも超期待!
GJ、ジュジュの純情っぷりがたまらねええええええええええええええええええええ
ジュジュかわゆす。。。
続き期待して待ってます!!
ジュジュ可愛すぎだ…
そしてフィールが超いい男すぎてたまらん
描写が丁寧ですごい。wktkが止まらない
457 :
380-51:2008/03/27(木) 08:21:35 ID:JgIqyBWa
そっとジュジュの上着に手をかける。
今日はそんなに寒くないせいか、こんな夜中に出歩いていたというのに薄手のシャツをさっと
羽織っただけの姿だった。
前も止めないでいたから左右の合わせの部分を持って後ろへと脱がせ足元に落とした。
腰に手を回しぐいと抱きよせて首の後ろに手を添える。
噛みつくように唇を重ねると彼の舌は先程とは別人のように激しく彼女の口腔を蹂躙した。
ジュジュもフィールの首に腕を絡める。
唇も身体も接していて、なお近づきたいという気持ちがそうさせるのかもしれない。
彼の指が一つ一つ背中の釦を外していくのが分かったが、自分で言ったとおり抵抗する気は
なかった。
今度は前へと袖を抜かれるのに従っい素直に腕を下ろす。
ひとつながりの服がわずかな衣擦れの音とともにジュジュの体から落ちた。
ひらりと手に触れるのは柔らかな布地。
下着姿になったのを知るとフィールはジュジュの手を引いた。数歩も離れていない寝台に
隣どうしに腰掛ける。
だが座ったと思う間もなく彼の手が少女を寝台に押し倒した。
「……!」
いきなりすぎる恋人の動作にジュジュの肩が緊張で硬くなる。
顔中に口付けをされてもどういう反応をすればいいのか分からずなすがままだ。
空いている自分の両手のやり場にも困った。彼の背に回していいのかどうか。服を脱ぐなら
邪魔になるだろうと余計な気をまわし、結局体の脇に投げ出している。
下着を残すのみの格好でも予め灯りを消していたおかげでそれほど恥ずかしくはなかった。
ただ薄い布一枚隔てただけで体を触られるのにはさすがに無心ではいられない。くすぐったい
ような、気持ちいいような。
眉をひそめながら笑みをこらえる自分に、初めての行為とはもっとおごそかで神聖なものでは
なかったかしらと内心首を傾げた。
そんな気持ちになるのも彼女の照れの表れだろう。
体ごと壁の方に移動させられて慌ててジュジュは声を上げた。
「待って……靴……」
脱がなきゃと続く彼女の台詞を聞くより早くフィールが少女の脚をとった。靴を脱がせると
これも寝台の下に落とす。
顔はジュジュに向けたまま、彼は脚にある手を滑らせた。肌の感触を楽しむように往復させる。
自分の方に持ってくると足の甲にそっと口付けた。
「可愛い」
「や……ばか……見えないくせに」
脚を持ち上げられてつい内股になる。
「褒めれば何でも喜ぶと思ってるんでしょ。あたしだってそんなに単純じゃないんだからね」
「どうして?可愛いのに。夏に靴を履いてなかったことがあったよね?」
「ああ……」
言われて少女は思い出した。
ドロシーが草履の編み方習ったんですよ、と皆に編んであげていたのを。
端切れを使って作るのだが、彼女から桃色系で統一した女の子らしいのを一足もらったのだ。
とても気に入ってこの夏はしょっちゅうそれを履いていた。
「あの時から可愛い甲だなあって思ってたんだよね」
「ほ、ほんとに?」
可愛い足の甲なんて表現を聞いたのは初めてだったから思わず聞き返した。
「うん。ずっとキスしたいなって思ってた」
「な……!」
「白くて、小さくて……爪だって花が咲いてるみたいだもの。自分じゃ分からないのかも
知れないけど、凄く色っぽいよ」
ジュジュは返事が出来なかった。
女を主張しつつも自分は色気方面にはどうも強くないと思っていた。だが彼にはそれでも
感じるものがあるらしい。
458 :
380-52:2008/03/27(木) 08:22:16 ID:JgIqyBWa
改めて自分が好きな男を不思議に思った。
一体どんな顔でそんな台詞を言うのだろう。
フィールに褒められるのは慣れているが、こんな色めいたことを言われたことはなかったので
少しだけ灯りを消したことを後悔した。
彼は押し黙った少女の足元に再び顔を落とした。
食むような口付けに交じって時々舌が肌を撫でる。その度に脚がぴくんと動いてジュジュの
体から力が抜けていった。
ほとんど裸の肩を、指先でかすかになぞりながら下着を脱がせてゆく。胸には触らず背中の
方から引きずる様に臀部を通って足元に抜いた。返す手で腰のあたりを撫でつつ最後の一枚に
指をかける。それも彼女が反応を返す前に奪ってしまった。
ジュジュの体に手を伸ばせばもう感じるのはきめ細かい素肌しかない。自分と彼女とを隔てる
ものが何もなくなるとフィールは改めて少女の首筋に顔をよせた。
「いい匂いがする……」
肩口に顔をうずめて気持ち良さそうに言う。
腰から脇の線を暗闇に描きそのまま胸へ手をすべらせる。やわらかく盛り上がっている方へ
動かすと少女が肩を縮こまらせ、声を出すのをこらえるためか唇を噛んだ。
中心へ向かって何度もやさしく揉み上げる。
少女の口元は彼の手の動きにだんだんと開いていったが、硬くなった部分を舌で愛撫されるに
至ってはついに嬌声をもらした。
「あ……っん、あぁ……やぁっ……」
嫌と言われてもこんな気持ちのいいところをそうやすやすと解放するわけもなく、ジュジュの
反応に手応えを感じながらフィールは周囲にも舌を這わせていった。
晩秋というより初冬という表現の方がぴったりくるこの時期、暖房のない部屋で裸同然の姿を
晒すのはさすがに無理があったようだ。
ジュジュはフィールから与えられるむずむずした感触と空気の冷たさに身震いした。
「フィール、ねえ……寒い」
頭の上の声にやっと彼は室内の温度に思いをいたした。彼自身は寒さに気付いていなかった
らしい。
上体を起こして上に着ていたものを脱ぐと自分ごと彼女を掛け布で包み込んだ。
ジュジュの腕を取って自分の首へ絡ませる。
「これならちょっとは暖かいかな?」
「うん」
フィールの体温が心地よくて少女はほっと返事をした。
ジュジュは上にいる男の首を引き寄せ唇を押しつけた。今度は積極的に彼女の舌がフィールの
唇を割って入ってゆく。
彼はジュジュの舌が動くに任せ、自身は手を下の方へと伸ばした。
細い腿を撫で外側から内側へ、そして徐々にきわどい部分へと近づいてゆく。
「ぁ……」
それを察してかジュジュが唇を離した。
ふわと顎に髪が触れ、少女の顔が俯いた。
往復する掌は冷えた脚を温めるようにやさしく大きくて確実な力があった。無意識に閉じよう
とするのをそれと分からぬさり気なさで押しとどめている。
秘裂に指を忍ばせるとまずさわさわと手に触れるものがあった。手を少し動かせばそれ自体
うっすらと湿りを帯びているのが分かる。そこをさらに分け入ってまだ誰も迎えたことのない
部分へ指を沈める。
「……」
閉じた処は周囲のそれより大分潤んでいたが、女性の反応としてこれで十分なのかフィール
には見当もつかなかった。
少女の脚が折れたのが分かった。そこを深く深くと撫でるたびに彼女の呼吸がだんだんと荒く、
早くなってゆく。
「痛い……?」
「ん……ううん……大丈、夫」
手を止め問いかけるが少女はさらに続けるように言ってフィールの背をとんと叩いた。
459 :
380-53:2008/03/27(木) 08:23:22 ID:JgIqyBWa
なんとか痛みから彼女の気を逸らそうと、胸に顔をよせ尖った部分を柔らかく噛んだ。
甘やかな感覚が背を走りジュジュは腰をくねらせる。
フィールは空いている手で細い腰をしっかり掴まえると、頂を唇でやわやわと挟み刺激した。
「っ……あぁっ……やだ、やだ……」
つんと上を向いたところを舌で弾いては辺りの白いふくらみにもそっと歯を立てる。
ちゅ、と吸いついてあたりにも赤く跡を残した。
ジュジュが自分の愛撫に敏感に反応しているのを感じると、局部にやっていた手を今度はつ、
と上の方にずらした。
襞の始まりの部分にある小さな芽を指の腹でくすぐる。
「……!」
途端に小さな手が彼の頭にすがりついた。他に力の持って行き場がないのかフィールの指が
突起を内側からそっと押し上げ、捏ねるたびにジュジュは切れ切れの声を唇からもらし銀糸の
髪を細い指に絡ませた。
「あっ、ぁ……あ……やぁっ……ん」
フィールの息もだんだんあがってきている。
やはり昂っているのだろう。
すでに彼女を欲しがっている自身に落ち着けと言い聞かせながら、フィールは秘密の場所に
再び手を這わせた。
差し込んだ指先には先程よりも蜜が溢れて来ているのが分かる。だが焦れる思いをぶつける
にはまだ痛むだろう。
さらにじりじりと中をほぐすように分け入っていった。
「ひゃぁ……っ」
受け流そうという無意識の動きで少女の腰がぐんと逸れる。大腿が彼の腰を締め付けた。
「あ、ぁあ……っ……待って、待って……」
胸を差し出すような姿勢に先端を強く吸うと、彼女は頭を振ってフィールの行為に手加減を
求めた。
なんとか指が奥まで入るとさらにやさしくかき回す。ぬるぬるしたものが指に纏わりつくのに
心強さを覚え、そっと指を増やした。
見えなくて幸いだったかもしれない。
闇の中に少女の裸身を思い描いただけでこんなにも体の中心が熱を持つ。
フィールは手早く下ばきを脱いだ。
吐息が聞こえ、力を抜いたような様子にフィールは問いかけた。
「痛む……?」
「う、ん……でも……さっきよりは、平気だから……や、うんっ……」
少年の手が中で動くのにぴくんと体が反応する。
襞を広げられ羞恥と秘所を弄られる感覚に自然と脚を閉じたくなる。
それをようやく我慢していると指よりも熱く大きなものがそこに押しあてられるのを感じた。
「いい、かな」
「うん……」
緊張で胸がさっきよりも大きく上下する。
「怖い?」
「ん……」
フィールの手がジュジュの頬を撫でた。
少女はそれに自分の手を重ねるといとおしむように頬ずりする。
「でも、大丈夫……きて」
相手を力づけるような彼女の言葉に胸が熱くなった。
唇をそっとついばむ。
「好きだよ」
ジュジュはその言葉にただ微笑んだだけだったがそれは確かにフィールに伝わっていた。
しっとりと濡れそぼった場所。先端が触れただけでもその先に待っているのが楽園だと分かる。
何より彼女が受け入れてくれたのを全身で感じたくて、フィールは彼女の腰をしっかり抱える
と硬くなったものを出来る限りの慎重さで進めていった。
「――っ!」
痛みのせいか少女の脚に力が入る。
彼が身動きするたびに腰をぎゅうと締め付けてくるのだ。初めて男を迎え入れるというのは
ガルムが言っていたように余程辛いものらしい。
460 :
380-54:2008/03/27(木) 08:24:47 ID:JgIqyBWa
だがそれはフィールにとっても同じだった。
同じく経験のない彼はこれほど女性の部分がきついとは思っていなかったのだ。
彼の愛撫に反応してはいても、他者の侵入をなお拒む頑なな合わせ目。指でほぐし探った時は
これほど狭いとは感じなかった。ただまだ閉じた部分だからと思っただけだ。
力を抜いてくれれば少しは楽になるかといったん動きを止めて少女の体をやさしく撫でてやる。
「ひゃ……!」
背中に指を這わせるとびくんと大袈裟なまでにジュジュの上体が横を向いた。
「や、ぁん……そこ、くすぐった……やだ……」
彼女は半ば笑いをこらえるような声でフィールを制止しようとしたが彼の手は止まらない。
目の前にきた肩に、腕に今度は舌を這わせながら胸を揉み上げた。
横になった柔肉を上へ持ち上げるように、こりこりと先端を指で扱きながら揉みしだく。
耐えられないのか再び寝台に仰向けになったのにもう一度自身を推し進めた。
途端に返ってきていた反応がなくなり、再び闇に聞こえるのは互いのつく息だけになった。
腰をジュジュのそれに近づける度に細い腰に、脚に、そして呼吸にまで力が入っているのを
感じる。
「う、んん……」
「ジュジュ……」
自身はもっと先へ、先へと行きたがっている。女の奥を求めている。
そろりともう一度少女の腰を引き寄せるようにする。
「……っ!」
ふと少女の唇に舌を這わせると硬く引き結んでやはり力が入っている。
だがそれは声を上げるのを我慢するためではないのだ。
フィールは動くのをやめ下にいる少女の髪を撫でた。
唇を噛んで痛みをこらえる少女の姿に、フィールはもう自分がそんなに急いでいないことに
気付いた。
汗の浮かぶ額に口付けるとそっと繋がりを解く。
「フィール……?んっ、なに……?」
離れた彼を不審に思ったジュジュが目をうっすらと開くと、閉ざすようにと彼は瞼にも唇を
押しつけた。
やさしい声が響く。
「止そう」
意味が分からなかった。
「え……なにそれ……どういう意味?」
「少しずつ慣れていければそのうち何とかなると思うから」
「止めるの……?あたしが痛がるから?べ、別にそんなの少しくらい平気――」
あくまで強がりを言う口を直接自分のそれで塞ぐとフィールは満足そうに微笑んだ。
ぎゅっと抱きしめどこか不安がっている様子の彼女に囁きかける。
「ごめんね。無理言って」
「違うわ。あんたは悪くない。だって……!」
続く声には元気がなかった。
相当責任を感じているのだろうか。だが彼女には初めてのしかも体内を裂かれるような痛み、
我慢するのもあれが精いっぱいだった。
「ずっと待たせてたのはあたしだもの……」
「それを言ったら許してくれるまで待ってたのは僕自身の判断だよ。――なんて、強引なこと
した時もあったからあんまり偉そうなことは言えないけど」
「遠慮しなくてもいいって言ってるじゃない」
「遠慮じゃないんだ。ただ、きみが僕を受け入れるつもりがあるって分かったら、なんだか
安心しちゃって。気が済んだっていうか、それならゆっくりでもいいなって思ったんだ。自分
勝手だろう?」
「途中で止めないよっていったくせに……」
フィールの自分を思うやさしさを知りながらつい責めてしまう。
彼は意気地なし、ともとれる少女の台詞を気にすることなく笑って答えた。
「ごめんね、嘘付いて」
「……あと四年かかってもいいの?」
ジュジュは痛みに耐える気満々だったのか、途中で彼が止めたのに拗ねたらしくこんなことを
言う。
461 :
380-55:2008/03/27(木) 08:25:31 ID:JgIqyBWa
さすがにフィールもうっと詰まった。まさかこの上四年も待てるわけがない。
「そ、それはちょっと……でも、痛がるのを無理やりするのもね」
「本当に?ちょっとずつでもいいの?」
「うん、ちょっとずつ。いつかちゃんと出来たらいいね」
今度はジュジュの方から彼の背に腕を回してきた。
厚い胸に顔を押しつけるように強く、強く抱きしめる。
「フィール……」
「なに?」
「好き」
少女の唇からフィールの胸に直接甘い響きが沁み込んできた。
たった二文字の言葉がどんなに彼を喜ばせるのか、この少女は知らないのだ。
ジュジュの頭を抱える手に力が入る。
誰よりも純粋な少女。
可愛い彼女。
四年をかけてついに不安の何もかもを打ち明けてくれた。
嬉しさと切なさがないまぜになったこの気持ちをそのまま解放したら、きっと泣いてしまう
だろう。
それに気付かれたくなくて彼は少女が上を向かないように、顔を見られないようにといよいよ
抱きよせた。
「フィール」
しばらくして下から声が上がった。
「うん?」
「ね、ちょっと離して」
彼の腕をぽんぽんと叩く。
「――ああ。ごめんよ」
寝台の上、フィールが上から退いて隣どうしになるとジュジュはすぐそこにある手を取った。
両手で握り締めて自分の顔へ持ってゆくと大きな手の甲に頬ずりをする。昔より硬く大きく
なった手に男らしさを感じた。
「フィール。あのね、お願いがあるんだけど……」
「なんだい?」
「いいよって言って?」
「えっ?」
彼は眉を上げた。
「先にいいよって言って」
「でも話を聞かないことには……」
無茶な内容だっら困ると思ったのだが暗闇の中で待っていても説明はなく、彼女の予想どおり
フィールはすぐに降参した。
「分かった。いいよ――でお願いって?」
「あのね、あたし本当に悪かったと思ってるのよ。ずっと、その……あんたを待たせてたこと。
やっと、ってなっても痛がってこの通りだし。だからね」
そこでわずかに言い淀む。
「あの……だから……」
「うん」
「だから……その……」
「うん」
「き、キスしてもいい?」
今さら尋ねることでもないだろう。
フィールも首を傾げたがただうん、とだけ返事をした。
彼の手を離すとしっかり筋肉の付いた肩に手をまわす。そこを支えにして自分の体を彼の上に
持っていった。脚で彼の腰を挟むように中腰の体勢を維持する。
「んしょ……ね、黙っててね?」
「分かった」
462 :
380-56:2008/03/27(木) 08:25:59 ID:JgIqyBWa
「嫌がらないでね?」
「……?うん」
口付けを嫌がるわけがない。
フィールには彼女の言うことがやはりよく理解出来なかった。ただ、黙っていること、嫌がら
ないこと。それだけをとにかく守ればいいかと判断し、意味が分からないながらも再度頷く。
ジュジュはそっと彼に唇を落とした。
小さな舌が入口を舐めて、入ってくる。
舌を絡ませるのはもちろん初めてではない。だが何故かぎこちない動きにフィールの方が
緊張した。
彼女の頬に手をやれば恥ずかしがっているのか、見えないながらもその熱さでそこが真っ赤に
なっていることが容易に想像できた。
ジュジュの手は肩から下へと移動しすべすべと引き締まった体を撫でた。
時々微妙な力加減で引っ掻くようにされるのがとてもくすぐったく、我慢しても肩が震えて
しまう。
さっきの彼女もそうだったのだろうかとフィールは眉をひそめながら少女の口付けを受けて
いた。
すると少女の指先が下半身に及んだ。
股関節を回り込んで下から男の証をそっと撫で上げる。
「ジュ……ッ」
黙っているようにとの約束にも、彼女の行動に驚いて思わず名を呼びそうになった。だが
それすら飲み込まれ、さっきよりも貪欲に求めるような口付けをされる。
ややあって顔を離すと彼女はフィールを責めるように言った。
「黙っててって……言ったでしょ……?」
「でも……!」
「駄目」
ちゅっともう一度触れるだけの口付けをして再度フィールの口を塞ぐ。
小さな舌が生き物のように口腔を撫でまわし、歯の付け根をそろそろとなぞって行くのは
たまらなかった。うっとりと目をつぶる。
ジュジュの手は変わらず彼の下半身に添えてある。
嫌がるなと言われ発言は駄目と言われ、どうしていいか分からないままフィールは少女の肩に
腕を回した。
時間がたって落ち着いてきていた部分は彼女の手によってすぐに硬さを取り戻していた。
ほんの少し撫でただけで立ち上がったものに彼女はため息をもらす。
「なんか……こんなにすぐ硬くなるんだ」
「き、君が触るからだよ」
フィールにはジュジュが、ジュジュにはフィールが緊張しているのが分かった。
「ジュジュ?」
「黙っててってば!」
上にいる少女が後ずさるのを感じてフィールは声をかけた。が、途端にまた怒られて手で口を
覆う。
「なんだろ、これ……不思議ね……」
小声で感想をもらしながらジュジュの手が彼のものを撫でさすってくる。上を向いた先端を
指先が挟むように刺激した。
「――!」
「上の方、の感触とか……」
フィールは赤面した。
暗闇で良かったとしみじみ思った。
こんなことを言われて俯いて顔を両手で覆っている姿なんて、とても見せられない。
下半身の状態を口にされるのがこんなに恥ずかしいものだとは思わなかった。
ジュジュは珍しいのか(それはそうだろう)そんな風にしばらくそれを撫でたりつついたり
いじっていたが、両手で竿の部分を持つと小声で何か言った。
彼の耳にはどきどきする、と言ったように聞こえた。
鼓動が彼女に聞こえないのにほっとしながら心の中でそれは僕の台詞だよと返した。
463 :
380-57:2008/03/27(木) 08:26:26 ID:JgIqyBWa
ちゅっと先端に少女の唇を感じて、そんなところにまでとくすぐったい気持ちになる。
さらに繰り返し触れるだけの口付けを受け、フィールは硬くなった部分がじわじわ熱を持つ
のを感じた。
さすがにこのままではまずいと、少女にもういいよと口を開きかけた瞬間、自身が熱い粘膜に
覆われるのを感じて予定とは違う声が出た。
「――っ!ジュジュッ!?」
フィールは息をのんだ。
あまりの快楽に一瞬頭を茫漠とさせたが少女の予想外の行為にそれは瞬く間に吹っ飛んだ。
肩を掴み反射的に彼女の体を引き剥がした。
「ぷぁ……しいっ!お、大声出さないでよ!聞こえちゃうじゃない」
きょろきょろと暗くて見えもしないのに周囲に目を向ける。
「だ、だって何、何す、ジュジュ……君……!」
狼狽する恋人にジュジュは顔を寄せ責めるように囁いた。
「黙っててって言ったでしょ?」
フィールは耳元で聞こえる密やかな声に息をのむ。
「でも、何……」
「この状況でいちいち口に出さなきゃ分かんない?」
「や、分かるけど、だから――」
「分かってるんなら黙ってて。あんた今までずっと待っててくれてたでしょ?……だから、
っていうんじゃないけど、その……お礼っていうか、お詫びっていうか……と、とにかく
じっとしてて!」
言い返す彼にジュジュは畳みかけるように言った。だがやはり最後の方はしどろもどろだ。
「でも……」
「大体あんたばっかり頑張るのっておかしいでしょ?不公平っていうか……あたしだって少し
くらいあんたにしてあげたいの」
「でも……」
「でも、でも、ってうるさいのよ!」
「ご、ごめ、んっ!」
小声で怒鳴るとフィールの脇から枕を取り上げ顔に投げつけた。
腕を取られるのもものともせず、両手でぐいぐいと枕ごとフィールの上体を寝台に押し倒す。
「そんなに気にされるとこっちが恥ずかしいのよ!それに……さ、最初に言っとくけど、
あたしだって初めてだし、上手に出来なくても……っていうか出来ないかも……っていうか
だから、あの……気持ち良くしてあげられなかったら、その……ごめんね?」
何しろ初めてなのだ。こんなに前置きが長くてあまり期待されても困る。
ジュジュとしてはやはり彼が気持ち良くなるまで――いわゆる射精する状態まで持っていきた
かったが経験も無ければ知識もほとんどない。
なにもかも恋人の反応を見ながら手探りでするしかないのだ。
しつこいくらいに念を押した。
「うん……分かった。それじゃ……」
枕の下で寝そべったままフィールが了承するのを聞いて、ジュジュは再びさっきの位置まで
体を戻した。
相変わらず上を向いたままのものに手を添えると、彼が喉を鳴らすのが聞こえた。だがそれも
もう薄布の向こうのように曖昧だ。
ジュジュは意識を手の中のものに集中させた。
改めていきり立ったものにちゅ、と唇を落としながら彼女は脳裏にアルミラとの会話を思い
出した。
何故か二人で食事の片づけをするはめになった時のことだ。
あの時のアルミラはいつもより干渉的というか確かにいつもと違っていた。
だがそのおかげでフィールに少しはしてやれることが出来たのだと思うと、あの時片付けを
手伝っていて良かったとも思う。
「く、口で!?」
アルミラの台詞に二の句が告げなかった。混乱する頭で何故こんな話になったのだろうかと
考えたが思い出せない。
当のアルミラはジュジュの驚愕も意に介さず平然と頷いた。
464 :
380-58:2008/03/27(木) 08:26:53 ID:JgIqyBWa
「体を重ねるほどの面倒もないし後始末も楽だ」
「なんでそこまでしてやんなきゃなんないわけ?そんなの我慢させればいいじゃない」
つい責める口調になるのは仕方がないだろう。
今までが今までのせいか彼女には性欲というものにあまり理解があるとは言えなかった。
もともと潔癖なところのある少女だ。レオンの言動からは男の自分勝手さ、いやらしさしか
感じ取れず不快にしか思われないらしい。
アルミラはそれに気付かないふりをして話を続けた。異性と体を重ねたことの無い相手にその
幸福感を説いても無駄なのだ。性交とは互いの体温を与えあう愛情表現であり、同時に体を
貫くような快感を得る行為でもある。だがまだそれをしたことのない少女にはどこか不潔な
行為と捉えられているのだろう。
知っていれば、レオンがアルミラを求めるのにも納得するはずだ。
「それもそうなんだが……あんまり断るのもな。俺のこと好きじゃないのかなんて言われたり
するし」
躊躇するアルミラにジュジュはため息をついた。
いい歳をしてなにを子供のようなことを気にしているのかと思ったらしい。
「そうだって言っときゃいいじゃない」
ジュジュの断じるような言い方にアルミラは片眉をあげ、片眉をさげるという微妙な表情に
なった。
「お前の言うことはどうも極端だな。そりゃああんまりしつこいと殴ったりはするが……」
「でしょ?」
ほらね、と横目でアルミラを見る。
「まあな、鬱陶しいのは嫌いだ。だが相手がこっちの気持ちに不安を感じてるなら取り除いて
やるべきだとは思わないか?」
「でも……だってそんなこと、いちいち言わなくても分かるでしょ?昨日今日の付き合いじゃ
ないんだから」
「そうは言っても、お前だって時々は行動で示してもらわなきゃ不安になるだろう。これだけ
好きなんだから口に出さなくても伝わってるはずだと思うのは、相手に対する甘えだぞ」
「えー……」
確かに自分でもそう思うかも知れない。
もっともだとは思いつつ、素直でない彼女は言い聞かせるようなアルミラの言い方に不平
たらたらという顔になった。
「そして時には愛の言葉を百万言連ねられるよりもただ手を握られただけで愛されていると
実感したりする」
「ふぅん……?」
話が飛んだ気がしてジュジュは洗い物をする手を止めた。
頭の中で会話の流れを思いだす。が、やはり話の展開が不自然でアルミラの言うことがよく
分からない。
少女は顔をしかめてはっきり言うよう要請した。
「周りくどい言い方するわね。つまり何が言いたいわけ?」
「言葉で表すのは容易いということさ。何とでも言えるからな。真実気持ちを伝わるかは
態度で示してこそだと思う。それに……そうだな。なんでいちいち相手をするのかというと
多分……私はその時のレオンの顔が好きなんだと思う」
「どういうこと?」
アルミラは悪戯っぽい顔になった。目を細めて口の端を上げる。
嬉しそうともとれる表情にジュジュは驚きを隠せなかった。アルミラの女らしい(気がする)
笑顔を見たのは初めてだったからだろう。
「凄く気持ち良さそうな顔になるんだ。普段馬鹿ばっかりいってるのとは違って息を詰めて、
切なそうに眉をひそめる。女の子みたいに頬を染めるのもいい」
うっとりと語るアルミラにジュジュはうへえと舌を出した。
「ほ、頬を染める!?なにそれ。それって聞いてて気持ち悪いんだけど……」
「他人が聞いたらそうだろうが、自分の恋人だったらどうだ。よくしてやりたいと思うだろう?」
「……」
「沈黙は肯定と受け止めるぞ?」
「そ、いうわけじゃ……」
慌てて弁解しようとする少女にアルミラが笑いかけた。
口腔性交の何がいいのか。
分からないだろうことをほんの少しだけ具体的に、興味を持つように話して聞かせた。
465 :
380-59:2008/03/27(木) 08:29:57 ID:JgIqyBWa
「ふふっ。まあ聞け。口でしてやってるとな、相手の顔を見ながら口や舌の動きを加減出来て
それがいい。先端を強く吸ったり、舐めたり――普通女は抱かれるというが、そうしている
時は自分がレオンを抱いてると実感する。あいつの快感を支配するのはこっちだとな。焦らす
のも追い詰めるのもこちらの思うがままなんだ。楽しいとは思わないか?」
「……全然……」
あまりにあけすけな話に頬を染めて否定した。
だがジュジュも年頃、多少は興味あるのか声には言い切る強さがない。
アルミラは内心にやりと笑みを浮かべ、それでも表面上は思い出すレオンの様子にうっとりと
話しを続けた。
「焦れったそうな顔でもったいぶるなと急かされるのが好きだ。抱き合う時は大抵あいつの
好きなようにされるからな、たまに仕返しの意味も込めて口でしてやることにしてる」
「でもあんなの口にするの気持ち悪くない?」
「そういう意見が多いのも分かってる。だからこそ男は恋人にされると嬉しいものだし……ま、
お前の場合はフィールと喧嘩した時にでもしてやるんだな。好きな女が口で奉仕してくれたら
どれだけお前が悪くても怒りを忘れて陶然とするぞ」
「しないわよ!」
「しないのか?」
少女が勢い込んで否定するのに対し、アルミラが意外そうに眉を上げた。
「ち、違う!喧嘩をしないって言いたかったの。あたし達、仲が良いって言ったでしょ?」
喧嘩をしたわけではないが結局アルミラの言った通りの展開になってしまったと、ジュジュは
少し自己嫌悪に陥った。
だがそれならそれであとは自分が頑張るのみ。
顔を傾け張った部分から下へちろちろと舌を移動させながら、絶対に気持ち良くしてやるん
だからと乙女のものとは言い難い決意で手の中の見えないものに視線を集中させた。
柔らかいと言えば柔らかいし、硬いと言えば硬い。そんな不思議なものに少女は懸命に舌で
愛撫を施した。
本人はこれでいいのだろうかと半信半疑、聞きかじった程度の知識で唇を使っている。
それでも付け根の方から舐め上げたり、唇をすぼめ先端を唾液を絡ませて扱くようにすると
彼の体が動き、頭の上から息をつくのが聞こえてきて自分の行為に感じるものがあるんだと
窺わせた。
不思議と言えばこれも不思議なものだが、アルミラの話を聞いた時に思ったよりも、気持ち
悪いとかそういう感想はなかった。それどころか自分の動きに敏く反応するフィールを感じて
可愛いものとさえ思えた。
だからだろうか、一度下まで口をすべらせた時、そこにあるものの扱いに迷い、判断を下す
までもあっという間だった。
屹立したものの両脇にあるもの、中心に立ちあがったものに比べてやわらかいそれも構って
やるべきかなのかとジュジュは一瞬躊躇した。
だが変に前向きな少女はそれを口で愛撫するのに大分抵抗が無くなっていたのも手伝って、
しておけば問題ないかとそこへも舌を這わせた。
そしてその感触に一瞬目を見開いた。
手で触れたのよりも舌には硬く感じる。
唇でそっと圧力をかけると堪らないのかフィールの口からため息がもれた。
手で口で慰めながらそこを覆う繊毛を煩わしく感じたが、気持ち良さそうな反応が返って
くるとそれも些細なことに思われた。
左右両方に同じようにやさしくしながら彼女の口は再び中心のものへ移動した。
頂点から脇から舌を絡ませては唇全体を使って包むように上下させる。その度塗り広げられる
唾液が潤滑を助けフィールの受ける悦びを増幅させた。
唇をすぼめたり形に添って舌をなぞらせるとフィールはその都度ぴく、と脚を揺らす。
反射的な動きはジュジュの愛撫に我慢が出来ないからだろうが、アルミラの言っていた通り
灯りが点いていたら、きっと彼の気持ち良さそうな表情が見えただろう。
真っ暗にしたのをほんの少し後悔しながら掌は両脇のものをそっと撫でさすり、舌はますます
懸命に彼の剛直に絡ませた。
すでに唾液でとろとろになったそれは、ジュジュが頭を上下に動かすたびに力強さを増した。
時折声をもらすだけだったフィールが少女の肩を掴む。
466 :
380-60:2008/03/27(木) 08:30:53 ID:JgIqyBWa
いつの間に上体を起こしていたのか、彼は快感の淵に沈みそうになりながら声を絞り出した。
「ジュジュ……もう……も、いい……っ!」
「……?」
もういいと言われても口中に感じるものはまだまだ硬くなりそうな気配がして、見えない彼に
目線を向けてもジュジュは動きを止めずに次の台詞を待った。
だが続く言葉はなく、ただフィールの少女の肩を掴む手に力が入った。
引き離そうとしたのか、それとも。
口に含んでいた怒張が一気に硬さを増し、ジュジュは突然の変化に目を見開き固まった。
「――っ!」
フィールが息を詰めたのが分かった。
ジュジュはアルミラが言ってたのってこれかあ、などと半ば麻痺した頭でぼんやりと思い出す。
そして次の瞬間、口中に熱いものが迸った。
途端に正気に返り、どくどくと脈打つように自分の中を満たされて少女は思わずぎゅっと目を
つぶる。
「ン……んんっ……」
フィールから少し顔を離すと少女は胸元に手をあてて彼の欲望を飲み下した。
感想を言いようのない味だと眉をしかめながら、もう一度彼のものに口付ける。
すこし柔らかくなった先端に唇を押しあて残りまでさらうようにちゅっとそこを吸った。
それからジュジュはようやく顔を上げた。ふう、と息をはいて寝台の上に座り込む。
「ね、どうだった?……気持ち良く、出来た……?」
首を傾げ見えない相手を直視した。暗くなければこれほど大胆ではいられないだろう。
力強い腕が回ってジュジュを抱きしめた。
「頭……真っ白になったよ。僕のために頑張ってるのが伝わって来たし、だから余計に気持ち
良かった。こんなの感覚初めて……ごめんね」
「……?何が?」
「その……出したの飲んでくれたから。無理しなくても良かったのに」
申し訳なさそうな声にもジュジュはあっけらかんと答えた。
「そんなの、あたし言ったじゃない。『全部が』欲しいって。だから、いいの」
欲張りだって言ったでしょ、と微笑んでフィールの頬に口付けると彼の体に寄りかかった。
ふあぁと欠伸をするのが聞こえてフィールは横を向いた。
「ジュジュ?」
ジュジュは彼の隣に横になった。もそもそと掛布を引き上げもぐり込む。
「何だか疲れちゃった……あたし寝るね。ね、このままここで寝てもいいんでしょ?」
「もちろん」
「朝、起こしてね。多分あんたの方が早起きだから」
「分かったよ」
「ドロシーが起きるより先に帰るからよろしくね」
「そんなに早くかい?」
フィールは眉を上げた。
彼女は普段から朝が遅い方だったから無理だと思ったのかもしれない。自分で寝起きが悪い
とも言っていたはずだ。
「だっていきなりあたしが泊ってたらびっくりするでしょ?それにやっぱり……どうしてとか
思われたら恥ずかしいし……」
その気持ちは分かる。
「ああ……わかったよ。じゃ早く寝て、早く起きよう」
「なんだかすごく疲れちゃったわ。慣れないことしたからかしら。ふあぁっ……もーだめ。
あたし寝るね。おやすみ」
「うん、おやすみ」
言うだけ言って目を閉じた少女にフィールはそっと微笑む。
間もなくやわらかな寝息が聞こえてきた。
すうすうと眠る少女の手は掛布の下で彼の手を握っていた。
〜おしまい〜
これ寸止めだよなあって後から気付きました。ごめんなさい。これは最初に書くべきでした。
後日、その後話(無事挿入編)を持ってきます。
ではまた。
もうジュジュのフェラだけで全俺が興奮していますGJ(*´Д`)ハァハァ
GJ!!!!
ジュジュもいいが、アルミラ姐さんのフェラも想像したら大興奮したwww
>>467 /j^i
./ ;!
/ /__,,..
/ `(_t_,__〕
/ '(_t_,__〕 Good Job!!
/ {_i_,__〕
/ ノ {_i__〉
/ _,..-'"
/
>>457-467 フェラキタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!
超GJ、挿入本番編にも期待しているぜ
_ ∩
( ゚∀゚)彡 ジュジュ!! ジュジュ!!
( ⊂彡
| |
し ⌒J
ジュジュは俺の嫁
475 :
475-1:2008/04/05(土) 15:57:42 ID:OFPJUoSx
――いつかちゃんと出来たらいいね。
初めてちゃんと向き合って体を重ねた時にフィールの言った台詞だった。
そしてその『いつか』は案外すぐに来た。
白い体を小さな灯に照らされ、それだけではない理由で少女の体は桃色に染まっていた。
細い脚を折り曲げて恋人の背中にしがみつく。
男の方はというとやはり下に敷いている彼女の腰を抱え、急く自分を抑えながら彼女の奥へ
たどり着いた。
フィールは最奥であると確認するようにさらにぐっと腰を押しつける。
そうなってしまえばもうとりでの役目は終わりだ。
蜜で充分潤った場所は彼を心地よい温もりでもって圧迫してきて、つい自身をさらなる高み
へと押し上げたくなる。だが未だ痛みに眉をひそめているジュジュを見ると強引に動こうと
いう気にならなかった。
「ジュジュ」
「なに……いった……!」
破瓜の痛みに、目尻に涙を滲ませながら応える。
フィールは塩気のある水を吸い取ると気を紛らわせるように少女の顔中に唇を落とした。
「は、ぁ……」
肩で息をつくジュジュにフィールは囁いた。
「分かる?奥まで……入ったの」
***
大きなテーブルを囲んでの食事風景はもうお馴染みのものだ。
レオンとガルムの喧嘩のような言い合いやそれに口を挟むヴィティス。
アルミラはドロシーとお菓子の話をしている。
そして彼は隣に座っている少女と料理についての感想を言いあっていた。
「あたしもう少し辛めがいいなあ」
「ジュジュは辛いのが好きだから……でもこのくらいで丁度いいと思うよ。君の好みに合わせ
たら、きっと皆食べられない」
「そう?それほどでもないと思うけど……それじゃ今度から香辛料別に用意してもらおっかな」
「それは止めた方が……」
なんでも辛くすればいいというものではない。
折角味付けの細かい所まで気を配って作られた料理なのに、やたらと香辛料をかけて食べたら
きっと作った方も気分が悪いだろう。
そう思ってフィールはやんわりとジュジュの希望をおしとどめた。
互いになんでもない風を装って話してはいるが、内心は緊張していた。
この間フィールの家であったこと、その続きを今日することになると知っているからだ。
しかし少女は何も言わないし、彼もまだジュジュに家に来るよう誘ってもいない。それでも
そうなるんだろうな、そうするんだと二人は今晩二度目の機会を得るだろうことに、何の
疑問も持たなかった。
帰りはやはりこの間のようにガルムと一緒に皆を見送るドロシー。
フィールとジュジュも前回と同じようにガルム達に礼を言うと手を振って別れた。
途中分かれ道に差しかかったがフィールは何を言うでもなく、まっすぐ前を向いたまま繋いだ
手をぎゅっと握り締めた。
頬がわずかに上気している。
彼の意思表示に微笑むと、ジュジュはお返しと言わんばかりに彼の腕に自分の腕を絡ませ、
迷いなくフィールの家への道を進んだ。
476 :
475-2:2008/04/05(土) 15:58:32 ID:OFPJUoSx
居間で外套を脱ぐとフィールは少女を振り返った。彼女の外套もついでに掛けてやる。季節は
すっかり冬になっており、上着もこの間来ていたものより厚く重たかった。
「え……っと……ちょっと待ってて、お茶入れるね」
「うん、ありがと」
暖炉に火を入れてからのいつものやりとり。
いつもと違うのはこの後の台詞だった。
台所に向かいながら顔だけを彼女に向ける。
「それと……お風呂、使うよね……?」
さりげなくと思っているのだろうが意識しているのが丸見えだ。表情を隠すのはあまり得意
ではないらしい。
「あ……うん」
ジュジュは長椅子に腰かけながら答えた。
彼女もフィールと同じ心境のようで、髪を撫でつけながら染まった頬を隠している。
「熱いから気をつけて」
「ん、ありがと」
お茶を受け取り並んで座っても、雨の夜を思い出して彼を怖いと思うことはなかった。
ジュジュを押し倒した時の彼は嫌がる彼女の言葉が耳には入っても、頭にまで入っていない
感じでそれが知らない男のようで恐ろしかった。
だがもうそんなことはないのだ。
互いが何を求め、何を拒否していたのか知っているから彼も少女を怯えさせるようなことは
しないし、彼女ももう心細く思うこともなかった。
「ふふっ」
「……?なんだい?」
「なんでもないわ」
ただ目があっただけで笑顔になれることの素晴らしさ。
不思議そうな顔をする彼にジュジュは内緒、と片目をつぶって見せた。
「ジュジュ?」
汗を流し居間に戻ると少女の姿はなかった。
室内を動くのは暖炉の火が揺れて作る影だけで、辺りを見回してもやはり気配はない。
となれば彼女のいる場所は一つだ。見れば部屋の入口に置いてある個室用の燭台が一つ消えて
いる。
フィールは火の始末をすると自室へと足を向けた。
ぱらぱらと頁をめくる手が止まった。
「懐かしいなあ」
フィールの部屋には小さなテーブルと椅子が置いてある。
本棚の前で一冊を選ぶとジュジュはそこに腰かけもう一度頁を送り始めた。
懐かしい本だと少女は微笑みを浮かべながらその時のことを思い出していた。大分前に一度
借りたことがあった。
いつものように山で木を切っている彼のもとに行くと、フィールが居るはずの場所に斧だけが
立て掛けてあって肝心の本人の姿がなかった。呼ばわってみると藪の中から草を山盛り抱えて
出てきたのだが、驚いて尋ねると山菜だと言った。
そう、季節は春だった。
沢山採れたから今日は家で晩ご飯食べて行きなよ、なんてあんまり嬉しそうに言うから自分も
一緒に探したいと伝えたら数日後。何と鈍いことか山菜についての本を貸してくれたのだ。
もちろんその時は礼を言って受け取ったが字を見て種類を覚えられるはずもなく、元々それ
自体に興味があったわけでもないので結局読んだふりをして返したのだった。
もう少し素直だったらあの場で『フィールに教えてほしい』と言えただろう。
自分のいざという時の勇気のなさに笑いがこみ上げてくる。
くすくすと笑っていると、突然テーブルに置いた手に大きな手が重なった。
驚いて振り返る。
「フィール!」
477 :
475-3:2008/04/05(土) 15:59:14 ID:OFPJUoSx
「向こうにいないからびっくりしたよ……何読んでるの?」
上から覆いかぶさるように覗き込んでくる。
「これ」
ぱたんと閉じて表紙を見せてやると彼はああ、と頷いた。
「……?面白いかい?それ」
肩の揺れで笑っていたのが分かったのだろう。不思議そうな顔をしている。
「前に貸してくれたでしょ?懐かしくって。ね、春になったら皆で山菜摘みに行かない?」
「いいね。ドロシーが喜ぶよ」
「でしょ?いつもみたいに二人に料理してもらってさー」
本で口を隠すようにして笑う。
「その時また読ませて。今見たら書いてあることあんまり覚えてなかったから」
ジュジュは立ち上がると本棚に本を戻した。
全体を眺めてしみじみともらす。
「ここにある本も一通り読んじゃったなあ。途中までしか読んでないのもあるけど」
「そうだね」
それだけこの家に通ったということだろう。
棚にかけた手をフィールが後ろからさらった。
指先に、甲に唇を落とす。
くすぐったい感触に笑みをこぼすとジュジュは彼へ向き直った。自分の目線よりまだ上にある
フィールの首へ手を伸ばす。自分の方へ引き寄せて頬にちゅっと口付けると照れくさそうに
目を伏せた。
「ジュジュ、お願いがあるんだけど」
「なぁに?」
「灯り、点けててもいいかな」
「えっ……」
「駄目、かな」
フィールの困るのはこういうところだ。こう控え目に伺いを立てられると、断固として拒否、
というのがし辛くなる。
現にジュジュはえー、とかでも……と彼の意見をすぐに却下出来ず迷いを見せている。
女心として痛みに顔をゆがめる所なんて見せたくはない。
だがじっと見つめられ、ついには了承してしまうのだった。
「でも……あたし、多分しかめっ面してるわよ?そんなの見たくないでしょ……?」
言い訳がましく一言添える。
それじゃ止めようという気になってくれればありがたかったが、やはりそうはならなかった。
「僕はその……君の表情を見ていたいんだ」
フィールがはは、と頬を赤く染め恥ずかしそうに頭をかくに至っては、願いを無視することは
出来ないと諦めた。
「……いいけど……あんまり見ないでね」
気乗り薄だと分かる承諾の言葉。
彼女の頭には恥ずかしいから嫌だなという気持ちしかない。
だがフィールはそれに気付かない振りをしたのかにっこりと笑って頷いた。
「分かったよ」
うそつき。
ジュジュは心の中で呟いた。
寝台の上で二人は見つめあう。
「うー……やっぱり緊張する」
「僕だって」
服に手をかけられ丁寧に脱がされながらジュジュは小声でもらした。それにフィールも同意
する。
風呂を上がったばかりの彼の指先は温かかった。すでに時間が経って冷め始めている少女には
それがとても心地良い。
478 :
475-4:2008/04/05(土) 15:59:51 ID:OFPJUoSx
すっかり脱がせてしまうと彼の視線が胸元を隠すジュジュの体の上をなぞる。
「本当にきれいな体……」
「やだ、そういうこと言わないで。恥ずかしくっていらんないわ」
裸のまま抱きあうのにも少しは慣れた。だが相手にすべてが見えてしまうというのはやはり
落ち着かない。
アルミラ達に比べて凹凸のない体に臆面なく褒め言葉を口にされるのも面映ゆかった。
照れをごまかして怒る少女に彼は口元をゆるめる。
そっと腰のあたりに触れると少し冷たいのが分かった。
「お風呂出るの遅かったかな。ごめんよ。体、大分冷えちゃったみたいだ」
「平気。その分あんたが温かくて気持ちいいもの」
ジュジュの言葉に裸の体をぎゅっと抱きしめた。
「温かい?」
「あったかいあったかい。すごーく、気持ち良いわ」
少女は彼の胸元に顔をよせ、薄い布地越しに伝わってくる温もりに喜色を表した。
「僕は自分がまだ火照ってるせいか逆に君の冷たさが気持ち良いよ」
「そう?でも……」
「うん?」
「あたし、きっとすぐ熱くなっちゃうわ」
今の気持ちを表す正直な言葉にフィールは指の背で彼女の頬を撫でた。
確かに、熱い。
少女の頬に手を添えて上を向かせる。
視線を肩のあたりに向けると胸を隠す腕の隙間から可愛らしいふくらみが見え、ただでさえ
いつもより早くなっている鼓動はいっそうせわしなくなった。
ジュジュの体をそっと向こうに押し倒す。
唇を重ねながらフィールは自身も身に着けているものを脱ぎ、すっかり裸になった。
後で脱ぐのが煩わしかったのかもしれない。
この間のように掛け布を引っ張り互いの腰まで見えないようにする。
少女への思いやりであり自分のあからさまな部分を見えないようにしたかった。
脇から手を忍ばせると彼女はあっさりと胸から腕をよけた。
耳にやさしく噛みついては唇で揉む。舌が中を舐めると少女が笑い声を上げた。
「……っ、ふふっ……そんなとこ、や、くすぐった……」
同時に両手で胸を揉まれ、もじもじと腰をくねらせた。
「やだ、やだ、や……」
つんと上を向いた部分を避けて周囲を丹念にほぐしてゆく。
フィールは首筋を伝って徐々に顔を手の方へと持っていった。
小さな灯りに照らされた体に少しずつ跡をつけてゆく。首筋から肩へ、硬い鎖骨の上へも。
彼はふわりと鼻腔をくすぐる甘い香りにうっとりしながら胸元へとたどり着いた。
舌でもそこを揉むように、口付けを繰り返しながら頂上へ向かう。
「あっ……」
先端を啄ばむと、極めてささやかな動きだったにもかかわらず彼女の体が小さく跳ねた。
そっとそこを口に含み舌先で捏ね、唾液を絡ませては唇でやさしく扱いた。
もう片方は指先で摘まんだり弾いたり。
すると鼻を抜けるような吐息が聞こえるようになって、フィールはそれが徐々に大きなものへ
変わるまで左右の胸を愛撫した。
「……っ……ね、……フィール」
「うん……?」
真っ白な肌へしるしをつける合間に返事をする。
「何か話して……?」
無言で少女の体を愛撫しつづける彼に吐息交じりの声が言った。
「何かって?」
ようやく顔をあげてジュジュの目を見る。
「なんでもいい……黙っていられると、どうしたらいいのか分からなくなるから」
緊張で何も分からなかった前回とは違う。しんとしているとほんの少しの余裕から自分の
様子にも敏くなっていて、それが彼女に身の置き所のなさを味わわせていた。
479 :
475-5:2008/04/05(土) 16:00:26 ID:OFPJUoSx
彼の唇に、手の動きに、自分が女として反応しているのが分かる。
指先に口付けられるだけで体の奥がきゅんと熱くなってくる。
それをごまかしたいのだ。
意識的に理解していなくても百と何十年も生きてきて未だ初めての感覚が存在するのだと、
そしてそれが自分の中から溢れて来るものだというのが彼女は怖かった。
フィールにそこまで分かるはずがない。
少女の台詞にも内心首を傾げたが、ぐいと前にくると一瞬躊躇いの表情を見せてから少女に
耳打ちした。
「全身で君を感じていたいんだ。ほんのちょっとの動きも、小さな声にも気付きたい」
フィールの告白にジュジュは目を見開いた。
彼は頬を赤くして目を伏せているが少女もつられて顔を真っ赤に染める。
そんな風に言われては強制も出来ないのだろう。黙りこんでしまった。
大腿を抱えて膝を立てられると少女は顎を引いて目を閉じた。
彼の掌が腰から真っ白な丘陵へ、そして腿から下へやさしく刺激しながら下りて行った。
やはり少し冷たい脚に体温を与えながら下半身を這う。
その間もあかずジュジュの体に口付けの跡を残した。
両手が再び上にきて柔肉を揉み上げると、腰が浮くほどの力に、抱えられた少女の脚が掛布の
下で宙を彷徨った。
伸びてしまった脚のため、体の均衡を取るのに彼女はフィールの頭を抱えるように腕を回した。
彼は引き寄せられるまま少女の頬を舐め、甘噛みする。
「やだ……ふふ……――ッ!」
くすぐったそうな笑い声にまぎれて彼の手が脚の付け根へ及んだ。
途端に息を止めるのは自分でもあまり触れないところを弄られる、慣れない感覚のせいだろう。
だがすぐにふう、と息をはいて体から力を抜くよう努めた。
無意識に入る力は抜こうと思って抜けるものでもないのだが、それはフィールに伝わった
らしい。
「辛かったら言ってね」
「大丈夫……この間よりは……」
相変わらず不安もあるだろうに気丈に笑ってみせる。
ぎこちなく口元をほころばせる少女があまりにけなげで、フィールはすぐにでも彼女を自分の
ものにしたくなった。
気の強い彼女の、いつもに比べて可憐な表情が彼の本能を刺激した。
一度静かに息をするともどかしさを抑えて改めて彼女の花弁へと指先をしのばせた。
「ぁ……」
繊毛の間を通って中を目指すと少女の唇から小さく声がもれた。
触れた感触もそれに伴う彼女の反応も、先日に比べるとやわらかくなっているようだ。
奥へと進み指を増やすたびに少女は切なげに眉をひそめる。内壁に触れ蠢くものの存在に
慣れないのだろう。
頬を上気させ汗をにじませる彼女の表情はこれ以上ないほど女だった。
そっと指を抜いて代わりのものをあてがう。
それはぐっと上を向いてあるべき場所を求めていた。
すでに蜜で満たされやわらかな部分に少年の一部がゆっくりと沈んでゆく。
この場所をほぐすのは二度目だがじっくり慣らした筈のそこは、それでもやはり完全に開く
というところまではいかなかったらしい。
「ん……」
フィールの肩に置かれた手、その指先が少しずつ食い込んでゆく。
「大丈夫、かい?」
ぬるりと先端に感じるもの。それは彼にとっては蕩けるように気持ちのいい感触だが、自分の
欲望に流されるということはなく、ジュジュが辛くないようにひたすら気を遣っていた。
「大丈夫……多分、だけど。頑張れると思う……」
痛みに顔をしかめながらも笑いかけてくる少女に、フィールはさらに彼女の奥を目指した。
480 :
475-6:2008/04/05(土) 16:00:58 ID:OFPJUoSx
***
少女を抱きしめると全身しっとりと汗をかいている。
「奥まで?うん、分かる……だってフィールの顔がこんなに近いんだもん」
「そうだね……ジュジュの中、すごく温かいよ」
「そう……?」
嬉しそうに目を細める恋人に、ジュジュは恥ずかしくなって目を逸らした。
「君は?まだ大分痛む?」
「う……ん、動かなければ大丈夫みたい。それよりもなんかね」
「うん?」
「なんか……中にいる!って感じがする……」
「え?……あ……」
少女の言葉に彼は赤面した。
自分の発言に気付いたジュジュが焦って問いかける。
「あ、はは……なに言ってんだろ、あたし……。ごめんね、フィールは?どんな感じ?」
「すごく気持ちいいよ。こうしてるだけでね、堪らなくなる。でもこれって好きな子とする
からなんだろうなあ」
しみじみと呟く。後半は独り言のようだ。
無意識の告白にジュジュは耳まで真っ赤になった。
そのまましばらくして、フィールが遠慮がちに言った。
「えっと……もう、動いてもいいかな?」
「あ……ん……うん。でもゆっくり、ね?」
挿入時の痛みに対する恐怖のためかフィールの乞いに彼女はぎこちなく頷いた。
ジュジュの気持ちを察して少年はそっと体を引いた。そしてまた腰を寄せる。
何度かそれを繰り返し、もう一度恋人に問いかけた。
「痛む?」
彼の問いに少女は目をぱちくりさせた。拍子抜けしたような表情で首を振る。
「ううん、全然……なんか最初だけだったみたい。なんでだろ……今は全然平気。だから……
あの、もっと動いてもいいよ」
辛いようならここまでにしようと思っていたが、ジュジュは無理をしている様ではなかった。
再び抽迭を開始する。
蜜で満たされた内部は初めて故のきつさか、より彼のものを締め付けた。だがそれは快感に
導く為のものでしかなく、徐々に彼は生き物の本能に従う一匹の雄になっていった。
「……ぁあ……っ……」
痛みはなくても体内を出入りする感覚に緊張するのか、フィールが腰を打ちつけるたびに細い
体がしなった。ジュジュの手が彼の首の後ろへと回り二人の体はますます密着した。
そのせいで身動きするたびに少女の胸が彼の体をかすめた。
「ん……やぁっ……」
つんと尖った所がこすれてジュジュは顔を赤らめる。
フィールと違って挿入にまだ違和感しかない彼女には、何度も愛撫されてきた胸への刺激の
方が余程気持ち良く、敏感になっていた。
「――っ、ごめん、ジュジュ……!」
切羽詰まったような声と共に少年が体を引いた。昂りを抑えきれなくなったのだろう。
だが少女は首を振るとフィールの動きに逆らって彼を引き寄せようとした。
「駄目だ……」
「大丈夫……大丈夫だから、そのまま……しても」
「え――で、でも」
「あたしは駄目だったらそう言うわ。だから」
息を弾ませての囁きに彼は迷いを捨て、もう一度奥まで彼女を貫く。
両脇にある細い脚に力が入るのが分かった。
「……ッ!」
突き上げる先端からジュジュの中へ熱の塊を注ぎ込んだ。
481 :
475-7:2008/04/05(土) 16:01:29 ID:OFPJUoSx
フィールは少女の肩口に顔を埋め体全体で息をしていた。とんとんと叩かれ横を向くと恋人が
嬉しそうに微笑んでいる。
フィールも照れくさそうに笑い返した。
桃色の頬にちゅっと唇を押しつける。
「ジュジュ、この間も言ったけど……すごく……気持ち良かった」
「……やっと、あたし……」
弱く頭を振る少女。残りは言葉にならなかった。
少年を受け入れられたのが余程嬉しかったのだろうが、それは彼にとっても同じ気持ちだった。
数年越しの思いが叶ったのだから。
体の繋がりが全てではないと頭では理解していても、やはり性欲は生き物の本能、その根源に
あるものだ。特定の相手がいるのに我慢するのは辛いし、我慢させるのは相手に対して申し訳
ないことだった。
「うぅー……」
少女がごしごしと手の甲で涙を拭う。
その手を除けるとフィールの舌がぺろ、と目尻を舐めた。
「ジュジュ」
「ん、んぅ……ちゅっ……」
舌を絡め合い上も下も繋がって、二人は今までにない一体感を得た。
体だけではなく、心だけでもない。両方が同じだけ満たされている。
感慨深げにフィールが口を開いた。
「ジュジュの中にいると本当に気持ちいい」
「あんただって。中にいるのが良く分かるわ。でも、なんか変な感じがする」
「変?嫌?」
心配そうな顔になる。
「ばかね!あんたってすぐそっちに考えるんだから――って……そっか。それ、あたしに気を
遣ってるからだよね」
呟いて少年の頬にそっと口付けると、両手でフィールの顔を包み込んだ。
額と額をくっつけて至近距離にいる相手を見つめる。
「……ごめんね」
「その話はもうお終いだってば、この状況でいまさらどうこう言う気はないよ。それより」
「なに?」
「もう一度動いても……平気?」
あくまで伺いを立てることをやめない。
気を使ってくれるのは嬉しいが、もう少し勝手を言ってもいいのにとジュジュはおかしく
なった。
「いいよ」
不安そうな顔で自分を見るフィールに改めて少女は頷いた。
「痛くないって言ったでしょ?それは本当だから。フィールの好きにしていいから……」
「でも変な感じがするんでしょ?」
「それは仕方ないわ。だって、はっ、はじめて、したんだから……って何言わせるのよ!
あんたのペースにはまると変なこと口走っちゃうから嫌なのよ!」
大体さ、と困り顔の恋人をやさしく睨む。
「いいわよね、男って。痛くないんでしょ?」
口をもごもごさせ何と答えれば良いのか分からない彼にジュジュは片目をつぶって見せた。
「でもね。こうして抱きあってるだけですっごく気持ちいいんだから。だからあたしはそれで
いいの」
ジュジュにとっては彼が自分で気持ち良くなってくれたと、それだけで十分幸せだった。
「あたしが動こうか?」
痛みがなければ恐れるものはないらしい。
一方的にされても相手が気持いいと確認済みだったジュジュの提案に、だがフィールは頷かな
かった。
曰くまだ慣れてないし、自分でしてみたい。
「……っ、ん、……あ」
喉のあたりにそっと噛みつきながら胸を揉みしだく。
掌でさまざまにもてあそべるというほど大きくはないのに、そこはフィールを魅了して止まな
かった。
482 :
475-8:2008/04/05(土) 16:02:13 ID:OFPJUoSx
さっきと同じように正面から抱きあったままほっそりした体に手を這わせる。
それに敏に反応し喘ぐ少女に彼は囁いた。
「なんで……そんなに色っぽいの……?」
口が胸に吸いつくと手は背中に回る。
「――!ばかっ、なに変な、こと……やぁっ、ふ……ぁあん」
背筋をまっすぐ辿ればそのぞくぞくと上ってくる感触にジュジュは切なげに啼いた。
そこからすっと下へ続く割れ目へ指の先を伸ばす。
「ん、……そこ、そ……な」
菊門の上を通るとたまらず少女の腰が浮いた。
遠慮のない手が一度は繋がった場所へ再び侵入する。その上の肉芽を中と一緒に刺激すると
入口が小さく震えた。
弱々しく指を締め付けるのに高揚し、それでも少しの間その感触を楽しんでから彼は硬く
滾ったものを彼女の秘所に押しあてた。
「……っ……!」
ジュジュはやはり小さく声を上げたものの、今度はすんなりと奥まで入った。
痛みもだんだんなくなっている様子に安堵しながら、フィールは今度こそ断りを入れずに腰を
動かした。
「ん……フィー、ル……ッ!」
快感に頭を支配されそうになる。
頬を染めた少女が眉をひそめるのを下の景色に見ながら、これはたしかに皆に同情されるわけ
だなあ、などとぼんやり考えた。
まるで脳が働いていないようだが、それほど気持ちが良かったのだ。
「――!」
ほどなく彼は二度目の絶頂を迎えた。
「ふぅ……」
「大丈夫?」
額に汗を滲ませ大きく息をつく彼にジュジュが声を掛けた。
「ああ……うん。ありがとう。全然大丈夫だよ。ただ、気持ちがいいんだ。気持ち良すぎて
疲れるっていうか……はは」
乾いた笑いは性欲を解放させた自分への照れから来るものだろう。
息を切らしながらも彼は少女の頬に触れた。
それは愛おしそうに何度も頬を撫でるとふっくりとした唇に及んだ。
「……?フィール?」
紅く濡れて艶やかな、普段は色気のいの字も出てこないような場所だ。それが今はこんなにも
自分を誘惑してやまない。
不思議に思って輪郭をなぞると中から舌が伸びてきた。
ジュジュとしては口元をうろうろしているのでつい舐めてしまったのだろう。ついでという
ように噛みついてくる。
人差し指の根元まで咥えて始めは舌先でちろちろと、次いで舌全体を使って彼を包み込む
ように動かした。
「ん……んんっ……」
唾液を絡ませ唇と舌を使って押し出してはまた引き込んで、器用にしゃぶっている。
奥の方にあたって苦しいのか、もらした吐息が濡れた指にあたってくすぐったかった。
「……」
フィールは指を抜くと今度は中指を差し出した。舐めて欲しいわけではなく、単純に彼女が
どうするのかが見たかった。
すると苦しそうにしていたにも関わらず再び目の前の指を口に入れる。
薬指、小指と最後まで、指の股まで愛撫してから少女ははあ、と体を起こした。
唇を尖らせて彼を見やる。
何故かご機嫌が悪くなったようだ。
上目づかいにフィールを睨みつける。
「どうして?」
「え?」
483 :
475-9:2008/04/05(土) 16:02:43 ID:OFPJUoSx
彼は意味が分からず聞き返した。
「指……」
どうやら好きで舐めたわけではなかったらしい。
フィールが舐めてと言わんばかりに出すからしたのだとそう言いたかったのだろう。
確かに苦しげにしていたが、彼の目には今の行為がそれほど嫌そうには映らなかった。
それよりなにより。
大きな手が彼女の頭を撫でた。さらさらと髪を梳く。
「ごめん。舐めてるジュジュがあんまり色っぽかったからつい……」
だからどうしてこういうことをさらっと言うのだろう。
ジュジュは口を尖らせて言い返した。
「あたしに言わせればあんたの方がよっぽど色っぽいわ。何よ、ほっぺたバラ色にしちゃって
さ!」
「そんなことないと思うけど……」
首を傾げながら口元は弧を描いている。
フィールは自分の付けた口付けの跡を嬉しそうに指先でなぞった。
「こんなにいっぱいキスしたのに、まだ足りないよ」
耳の下あたりに手が行くと少女が眉を寄せた。
「そんなとこにも?えー……見えちゃうかなぁ」
「ごめん……」
隠せるかと心配する少女にフィールは申し訳なさそうな顔になった。ジュジュが指先でなぞる
のに彼も手を添える。
「ずっとこんな風に、自分ものみたいにしたかったんだ」
「――!」
「あんまり嬉しくって……配慮が足りなかったよ。ごめんね」
「ばか!」
険しい顔になった少女に思わず目をつぶる。
やっぱり怒られた。
そう思ったが彼女の言いたいことはフィールの予想とは違っていた。
「そんなこと言われたら怒れるわけないでしょ?」
ぷいと横を向いてそれから視線だけを彼に送る。
「いいのよ、別に。……だってあたし、あんたのものだもの。少しくらい目印つけたって……」
「ジュジュ……」
およそ自分は自分、という考え方の恋人がそんな風に言ってくれるとは思わず、フィールは
感動で名を口にすることしか出来なかった。
それだけ自分を好いてくれているというのが分かったからだ。
「僕、君の――」
「止めて!余計なこと言わないで!あんたいちいち大袈裟なのよ。その代り、あんただって
あたしのものなんだからね。それはちゃんと覚えておいてよ?忘れたら許さないんだから!」
大層な剣幕にフィールはたじたじとなった。
こんな風に言われては出かかっていた言葉も飲み込むしかない。
代わりに違うことを言ってみた。
「ジュジュ」
「ん……?」
二回もしてさすがに疲れただろうと思っているとはたして、フィールの言葉は少女を驚かせた。
「もう一回、してもいい?」
「あ……えっ?……ええっと」
今度はジュジュの方がたじろいだ。
痛くないからとは言ったものの、彼女が一瞬悩んだのは彼の台詞が愛から来るものか、治まり
のつかぬ性欲からくるものか判断が付きかねたからだった。
〜おしまい〜
最近書き込みがなかったのは、皆さん容量を気にして下さってのことでしょうか。
申し訳ない&お気遣いありがとうございました。
指チュパとは実にけしからんなGJ!!
えっろおおぉおぉぉおおおお
フィール元気だなww
GJ!2人がもっと好きになった
神キテタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!
そろそろ容量越えだったのか
「皆、いつも俺達OZレンジャーを応援してくれてサンキューな」
「君たちに感謝して、スレを埋めつつも私たちOZレンジャーが何でも君たちの質問に答えるわ!」
「な、なんでも、聞いてね……」
「フィール、声が小さいぞ」
「ト、トト……。うん……、ごめん……」
「じゃ、最初のお葉書から行くぜ。
>>317さんからのお便りだ。えーっと、なになに?
『アルミラさんに少年って呼ばれたい』だってよ」
「………………」
「却下」
「ちょ、アルミラ。せっかくのハガキ投げ捨てるなよ、失礼だろうが!」
「大体なんだ?これは。質問にもなっていないではないか。次だ。レオン、次を読め」
「お前、素が出てるぞ。気ぃつけろよ」
「ほらフィール!こういう時はお前がフォローしないといかんだろうが!チームワークが
悪いぞ」
「あぁ……うん、ごめん。これ読めばいいの?」
「先に名前を言えよ?」
「分かったよ。えぇと、ペンネーム
>>213さんからです。ドロシーは……え!?……ド、ドロシー!?
なになに――ドロシーは『ドロシーの大冒険』でのトトの衣装の時、中に何を着ているんですか?」
「なんだぁ?こいつ変態だな」
「それは言い過ぎじゃない?彼女が中に着てるのはごく普通の下着だと思うけど……フィール、
あなた知ってる?」
「フィール?どうした、様子がおかしいぞ?」
「そう言えば以前……変な人が木の蔭から覗いてるってすごく不安がってた時があったんだ。
一度なんて泣きながら家に帰ってきてさ、中に何着てるの?って目の前にやって来たって……」
「まあ……物騒ね。ストーカーってやつかしら。それでドロシーは大丈夫だったの?」
「うん、反射的に籠で殴っちゃって、それ以来姿を見せないって言ってたけど、こいつかも
しれない」
「おいおい……そんなことがあったなら一言言えよな。村の子供達の未来を守るのが俺達OZ
レンジャーの使命なんだ。今度そいつが現れたらコテンパンにのしてやるよ」
「そうよ、まかせておいて!」
「ありがとう二人共!」
「大変よ二人とも。思ったより容量が残ってなかったみたい。もう最後の挨拶をしなきゃ」
「おっと、そりゃまいったな。皆の疑問、少しは解けたかな?」
「……(二人分じゃ解けるも何も……)」
「フィール、今余計なことを考えただろう」
「う、ううん、考えてないよ?」
「次のスレ埋め質問コーナーでは、なんと秘密結社テオロギアの面々が質問に答えてくれるぞ」
「それまでに聞きたいことのある皆、ハガキに書いてこちら(
>>489)の宛先までどしどし応募してね!
「それじゃー皆、これからも俺達の活躍、応援してくれよな!」