【MH】モンスターハンターでエロパロ 5匹目【モンハン】
要領限界みたいだったので(俺だけか?
立てました。
ちなみに少しだけ変更点あるのでよろしく頼む。
前スレのDATが欲しいです。
5 :
前スレ884:2007/07/05(木) 08:45:18 ID:SnYbujaC
>>1乙
うん、ごめん
厨臭いのはマジでわざと。超絶美形のやつはただのギャグキャラ。
スパロボMXは知らんけど天地なんたらは大魔王様の技を意識してる。
邪鬼眼スレは未見だが存在は知ってる。
たまにはこんなのも許されるんじゃないかなと思って書いたけど、
今思えばちょっとふざけすぎた。あんまり好き勝手にやるべきじゃなかったね。
もうあんなのは書かないから許してください。
じゃあ続きのSS投下する。
最後のひとりまで掃除し終えたことを確認して、ラージャンは勝ち鬨を上げた。
そこに、一瞬の些細な――本当に些細な油断があったのだろう。
だからこそ、ラージャンは、どこかから投げつけられた拳ほどの大きさの玉に気付くのが遅れた。
玉が地面に衝突して割れるのと、まばゆい閃光が洞窟内を埋め尽くす。
真夜中を真昼のように変えるほどの光を直視したラージャンの視界は、その瞬間、黒く塗り潰された。
初めて、ラージャンが悲鳴を上げた。眼球に異常を感じ、腕で目をしきりにこする。
なにが起こったのか分かっていないのだ。
と、ラージャンは動きを止めた。
一時的に視覚を失った五感のうち、問題なく機能している嗅覚と聴覚が、何者かの存在を察知したのだ。
その者は、どうやら目の前に立っているようだった。
だが、いったい何者だというのか。ラージャンには不思議だった。
この存在感は、人間のものだ。……人間だと? 人間は皆殺しにしたはずだ。
あのちっぽけな槍を使う男は踏み潰してやった。
あのうるさいハエのような女は吹き飛ばしてやった。
あのくだらない男は消してやった。
今日の侵入者のなかでの人間は、あの三人だけですべてだったはずだ。
戦っているうちに新たな愚か者がやってきたというのだろうか。
ラージャンは知らなかった。おのれの縄張りにやってきた人間が三人組ではなく、四人組だったということを知らなかった。
四人目の存在など、最初から眼中になかったのだから。
キオは、全身をカタカタと震わせ、泣きながらフロストエッジを構えた。
だが、斬りかかったりはしない。できない。
怖くなって逃げ出して、しかし仲間を置いて逃げ出したことも怖くなってここに戻った。
すると全員、死んでいた。
油断している隙をついて、閃光玉でラージャンの視覚を奪ったところまではよかったが、ここからどうしろというのだろう。
相手はラージャンだ。
その一撃は、上位ハンターの防具でさえ、ぼろ雑巾のように引き千切る。
歴戦の勇士の武器でさえ、そう簡単に致命傷を与えることはできない。
だというのに、キオの装備はフロストエッジとガレオスシリーズだ。
貧弱であるにもほどがある。
キオの実力を考えれば、ババコンガが相手だったとしても、十分なものではない。
(――なにをやっているんだ、キオ! 死にたいのか!)
キオは自分で自分の正気を疑った。いったいどうしてこんな化け物の前に立っているのだ。
貴族の坊ちゃんの分際で、まさか本物のモンスターハンターを気取るのか。そんな馬鹿な。
こんなこと、しょせんはお遊びだ。金持ちの息子の、いっときの道楽だ。
そんなつもりはなかったが、どうしたってそう見られてしまうことは分かっていた。
だが、だからどうしたというのだろう。
そうだとしても、たとえ今だけだとしても、キオはモンスターハンターなのだから。
跳びあがり、体重をこめて真上から垂直に振り下ろした剣撃には、
ラージャンの脳天をかち割る勢いがあったが、勢いだけだった。たやすくかわされた。
視力がなくとも抜群の大六感があるのだ。
たてがみにも似た金毛を逆立たせ、ラージャンが猛る。
ぶん、と風を唸らせた巨腕を、キオは寸前で頭を下げてやり過ごした。背中を冷や汗がどっと濡らす。
どうということはない拳に当たっただけで即死するという現実を、いまさらながらに思い知った。
次元が違うとは、このことだ。
おのれの命など芥子粒ほどのものでしかなく、風前のともし火でしかない。
キオは生きた心地のしない思いをしながら、蟷螂の斧のごとき片手剣で勝ち目のない戦いを挑んでいるのに対し、
怪力無双のラージャンは、飛竜をも葬る鉄拳を適当に振るだけでいいのだ。
防御は無意味。黄金の拳は、小さな盾など紙のように突き破る。
これは勝負などではない。
そう、だから、嗅覚と聴覚、あとは鋭敏なカンのみを頼りに拳を撃ちこむラージャンの心には、余裕があった。
空間ごと粉砕する勢いの拳が縦横無尽に走り、嵐を生む。
暴風域の真っ只中にキオはいた。泣きながら、致死の一撃をすべて紙一重で避けていた。
異常な興奮状態は脳内麻薬の分泌を促進して、それがキオの動体視力を高めていたのだ。
でなければ、新米ハンターなど最初の一瞬で屍となって転がっただろう。
ラージャンの心に疑問が生まれた。
いったいなんだ、この人間は。どうして当たらない? どうして戦う?
キオの心には怒りがあった。
ルーシュとバットンとカエデは、短い間の付き合いだったが、それでもモンスターハンターとしてパーティを組んだ仲間だった。
彼らにとっては、自分などただのお荷物だったのだろう。それくらいは分かっている。
だが仲間だった。
仲間を殺されて平気な人間など、いるわけがない。
キオの心に怒りの炎が燃えていた。それは戦い続けるにつれ、ますます大きく燃え盛る。
「うおおおっ!」
フロストエッジが横に走った。それはラージャンが胸を反らしたため外れたが、驚いたのは、ラージャンだった。
どうして避けたりしたのだろう? こんな蚊トンボのごときやからの剣など、当たったところでどうということはない。そういう確信があった。
だがならばなぜ避けたのか。そういえば最初のから竹割りも避けていた。どうしてだ。
それは直感があったからだ。なにかがまずい、と。
ラージャンは思い至った。
この人間はたいした人間ではないが……しかし、なにかまずいと思わせるほどの覚悟があるッ!
視力が回復するまで、いましばらくの時間がかかる。
そのあとならば、人間などどうとでも料理できるという確信があった。
正確無比に剛力無比の拳を食らわせ、片付けてやる。
――だが!
分かる!
それでは遅いッ!
この人間は!
今! 息の根を絶つ! 時間はないッ!
なにを思ったか、ラージャンは拳を振り上げると、そのまま真下の地面に向けて振り下ろした。
大地にめり込んだ拳が足元を揺るがす。
局所的な地震によって思わずたたらを踏んだキオの顔面に、鉄をも貫く拳が迫る。
それをもキオはかわしてみせた。みずから膝を折って体勢を崩すことによって、死を免れることに成功したのだ。
倒れ伏すように低い姿勢となったキオはそのまま転がるようにラージャンのふところに入り込み、
股下を潜り抜けて背後に回ると、今度こそ必殺の間合いでフロストエッジを一閃した。
――気を練るためには呼吸を整える必要がある。全身に張り巡らされた血管のなかを血流に乗せて気を運ぶ。
そうして体力を高め、気力を高める。ゆえに血流が止まれば気は乱れ、肉体は本来の姿に戻るのだ。
キオの武器はフロストエッジ。氷の刃。
氷は水を凍らせる。液体を凍らせる。
血液とはすなわち液体。
気によって絶対の強さを誇るラージャンの弱点は、血を凍らせる氷だった。
地獄の底から轟くような絶叫。
尻尾を根元から切断されたラージャンは、叫びながら、自分から力が失われていくことに気付く。
呼吸が乱れ、気の練りが大きく損なわれたのだ。
もはやラージャンの姿は金獅子ではない。
狙ってこれをやったわけではなかったが、思わぬ成果にキオは驚き、勇気を振り絞ってここぞとばかりに攻勢に出た。
今度はキオに油断があった。
ラージャンの視力はすでに回復しつつあったのだ。
気の力が激減したとはいえ、もともとけた違いの地力を持つラージャンだ。
振るわれたフロストエッジを、振り向きざま、裏拳で飴細工のように叩き折った。
唯一の武器をあっけなく失い、キオの戦意は著しく殺がれた。こうなると、もう優勢でもなんでもない。
閃光玉によるアドバンテージは消え、小さな武器すらなくなった。
逃げ出すこともできない。背中を見せた瞬間に殺される。
死。
死、あるのみ。
甲冑の足元から水が流れる。温かい湯気を放つ水だ。失禁したのだった。
軽く頭を振ったラージャンが大きく吼えると、キオは白目を剥いて気絶した。
目を覚ましたあとも、キオの意識はしばらく曖昧だった。
――いったいどこなのだ、ここは?
周囲を硬い石の壁で囲まれた、小さな小部屋のような場所だ。
調度品のようなものはまるでないが、尻に乱暴な心地を伝えてくる藁のベッドが、奇妙な生活感を演出している。
それにしても温かい部屋だ。我慢できないほど暑いというわけではないが、素肌にじわりと汗が浮かぶ。
――どうしてこんなところにいる?
キオ・マロウは貴族の息子で、豪華な屋敷に暮らしているはずだ。
何十人もの執事や侍女はどこへ行った? 腹が減ったぞ、食事はまだか。
そうだ、今日は狩りへ行く日じゃないか。火山へ……バサルモスを……。
すべての記憶がはっきりと覚醒した。
と同時に、
「やっと目を覚ましたか……まったく貧弱な人間めが」
侮蔑たっぷりに、あざけるような声がした。よく通る低音のハスキーボイス。
ぎょっとして唯一の出入り口を見ると、大きく暗い穴の向こうから人影が現れた。
女だ。年ごろは、おそらく二十代半ばか。
ややクセの強い濡れ羽色の黒髪は短く乱暴に切っている。
かんばせは、およそかわいらしいと呼べるようなものではないが、代わりに凛々しく整っていている。
三角の双眸や、横一文字にしっかりと引き結ばれた唇からは、秘められし強い意思が感じられた。
一糸纏わぬ褐色の長身は、大きく実った乳房やくびれた腰、すらりと長い脚が完璧に調和して、見事なプロポーションとなっている。
全身は鍛え上げられていて、光沢を放つ筋肉が輝くようだ。
それでも女性的な柔らかさが失われていない、不可思議な肉体だった。
そう、褐色の女性は裸だった。
乳房の先端の乳首も、やや陰毛の濃い秘部も、キオの目にさらしてしまっている。
だからといって恥じ入る様子など微塵もないこの女性の雰囲気は、まるで大戦士のようだった。
獣のようにしなやかな体躯の、野性的な美貌の女性は、キオにとって知らぬ顔だ。
「あっ、あなたは?」
なぜ、こちらが目をそらさなければいけないんだ? などと思いつつ、女体を直視できないキオが言った。
女は、ふん、と鼻を鳴らした。
「ここの主人だ」
「主人? こんなところの?」
「こんなところとは、なんだ。おまえはひとの家を馬鹿にする気か」
粗野な口調で、真面目に言う。
これにはキオも呆れてしまった。
「家って……こんなモンスターばっかりの危険なところが? あっ、そうだ!」
そうなのだった。訊かなければいけないことがある。あのラージャンはどこに行ったのか。まだ近くにいるのではないのか?
キオは女に目を向けて、それからまた真っ赤になって弾かれるように目をそらしてから、
「と、とりあえず、服を着てくれませんか」
「あのゴチャゴチャとしたもののことか? やなこった。それに、おまえだって着ていないぞ」
えっ、と思って自分の体を見れば、なるほど、キオは素っ裸だった。
ガレオスシリーズはなくなってしまっている。だから藁が尻に痛かったわけだ。
キオの素顔は、あまり貴族らしくは見えなかった。金髪だけが豪奢だが、あとは凡庸だ。
まだ十八歳なのだからどこか頼りなさげだが、柔弱な女顔というわけでもなかった。
わずかに見え隠れする精悍なところは、将来のしっかりとした成長を予感させた。
白い肌には頼りなさがあるが、モンスターハンターとしての生活が、肉体を徐々に鍛えつつある。
割れた腹筋や背中の筋肉などがその証だ。
しかしどうして裸なのか。
「脱がせたぞ。小便まみれで、あたしの寝床に入ってもらっちゃ困るからな」
そうだった。あのとき、最後の瞬間、無様に失禁したのだった。
思い出して、しかもそれを女性に知られたという恥ずかしさのため、キオは穴があるなら入りたくなった。
「す、すみません……じゃあ、なにか代わりに着るものをくれませんか」
「ないよ、そんなもん」
「ない、って。じゃあ、ずっと裸で生活してるっていうんですか?」
「まあ、そうだな」
まるでそれが当然だといわんばかりにうなずく女。
この女は尋常の人間ではない、ということをキオは悟った。
もしや、蛮族か。
彼らは裸族とも呼ばれる。服を着るという分化というものがほとんどなく、太陽の下に男も女も乳房やペニスをさらして生きているからだ。
それだけならば、問題はない。
キオのような文化人にとっての問題は、彼らがとても野蛮で傍若無人だということだ。
木々が生い茂る密林の奥地などの未開の地からやってきて、村などを襲い、食料や女などをさらっていくことがある。
キオにとっての蛮族というものは、およそ人と呼べるようなものではなく、鬼にも似た存在だった。
食人の風習があるものだと信じていた。
それは偏見でしかないが、しかしキオの国の人間の大部分の蛮族への認識は、似たようなものだ。
だからキオは、女が蛮族の一味ではないかと思って、肝を冷やした。
――まさか蛮族に捕まってしまったのだろうか?
だとしたら命はない。全身の皮を剥がれ、熱せられた鉄板の上に生きたまま放り出され、
死の瞬間までを見世物として楽しまれたあとに、彼らの宴のメインディッシュとされてしまうだろう。
モンスターにただ殺されるよりもよほど恐ろしい想像に、キオの若い心は震えた。
「こ、殺さないで……」
「駄目だね。殺すね」
女は、はっきりと言った。もう確実だった。女は蛮族だ。
「よくもこのあたしの自慢の尻尾を。ぜったいに許さん」
「へ?」
尻尾? 尻尾がどうしたというのだ?
「ほら、見ろ。こんなありさまだ。情けない」
女がこちらに尻を向けた。キオは思わず見てしまって、驚いた。
尻の割れ目の上の方から、ふさふさとした短いものが垂れ下がっているではないか。
「なっ、なんですか、それは」
「おまえが斬り飛ばしたからこうなったんだろ、ボケッ。おかげで姿までこんなふうに変わっちまった。まるで人間だろう、これって」
ため息をつきながら振りかえる女の、頭に生えているものが、キオの度肝を抜いた。
どうして最初に気付かなかったのか。
それは黄金に輝く角だった。牛の持つそれのようにとても小ぶりだが、たしかに二本の角が頭の左右から生えている。
「まさか、あなたは……」
そんな馬鹿な、とは思いつつも、しかしそうとしか考えられないことだった。
自分が尻尾を斬った、頭に角を持つ者といえば、心当たりはひとつしかない。
いったい、本当にそんなことがあるというのか。
女の正体が、あの金獅子ラージャンだというのか。
「あなたが、ラージャン?」
「らーじゃん? いや、知らんが。人間はあたしのことをそう呼ぶのか?」
「そうです。……あなたが本当に、そうなのだとしたら」
「疑るか」
射抜かれるような視線に、キオは慌てて首を横に振った。
「そうではなくて、とんでもないことだから、信じられなくて」
「ふん……まあ、たしかに、それはそうだ。
あたしとて初めてのことだし、こんなことがあるとは聞いたこともない。物分かりの悪い人間なら、なおさらか」
「物分かりが悪い、って」
まさか獣にそのようなことを言われるとは思ってもみなかったキオは、ついそう言ってしまった。
口答えは危険だと感じて、すぐに口を閉ざしたが。
しっかりと聞いていた女は、あからさまな嘲笑を浮かべた。
「人間は頭が悪い。弱いくせに、死ぬようなところにわざわざ行く。あたしのところにやってくる。
あたしに勝てると思って戦いを挑む。本当に頭が悪い」
今までに倒し、殺したモンスターハンターたちのことを言っているのか。
「さっきの三人もそうだ。弱い。くだらん。弱くてくだらん。人間は、みんなそうだ」
「く、くだらないとはなんだっ!」
キオは立ち上がって語気を荒げた。
「人間の命がくだらないなんて、そんなことがあるものか! 人間は、あなたが思ってるような弱い生き物じゃない!」
「ふん」
常人の反応速度を凌駕する速度で間を詰めた女の拳が、キオの腹部にめり込んだ。
「ぐえっ……」
くの字に折れたまま膝をつき、藁のベッドに胃の中身をぶちまける。
「なんだ。やっぱり、弱いじゃねえか」
意識が朦朧として、なにがどうなったのか鮮明ではないキオの上から、声が降ってくる。
「弱いから群れるんだろ。みとめろよ、下等生物。……それにしても、けっきょく汚しやがったな。クソめが……まあ、いい」
「う、ううっ」
キオの金髪が鷲掴みにされる。
「おまえのようなやつに大事な尻尾を斬られたかと思うと、自分が嫌になる」
しゃがみこんだ女の顔が、間近で言った。
「しばらくすれば元のように生えるだろう。そうすりゃ、きっと元の姿に戻るはずだ。
とはいえ、それまであたしはこんな姿で生活しなけりゃならん。もともとの力の半分も出せないから不便だ。
あたしの言いたいこと、分かるか?」
分からなかった。この女はなにが言いたいのか。
「おまえがあたしの身の回りの世話をするんだよ」
「えっ」
「えっ、じゃねえよ」
女はキオのひたいを指で小突いた。悲鳴が上がる。リンゴを砕くような威力だった。
「今すぐ殺したっていいんだが、あたしは利用できるものは利用する」
「ふ、ふざけるな……!」
耐え忍んでいたキオの拳が、女の顎を真下から襲った。
「まずは、そうだなあ」
なんの痛痒も感じていない様子の女が、キオのほおを平手で打つ。首がもげるのではないかと思う威力。
一瞬、意識が飛んだ。
「最近はイライラすることが多くてな。すっきりさせてもらうぜ」
どん、とキオを押し倒すと、舌なめずりしつつキオの股間に手を伸ばす。
「ううっ!?」
男にとって急所であるそこを遠慮なく掴まれて、キオは呻き声を上げた。
「な、なにをするんだっ!? やめろおっ!」
「やめろ? 嘘をつけ。こんなに大きくしてるじゃねえか」
そう、キオの股間のものは女に握られながらすでに充血して大きく張れあがり、ビクンビクンと脈動していた。
「最初から勃起してやがったくせによ。童貞のエロガキめが」
「ど、どうして」
「においで分かるぜ。童貞くさいんだよ、おまえは」
図星だった。キオはまだ女を知らなかった。
だから、じつは女の裸を見たときから、ペニスは硬くそそり立っていたのだ。
それに気付く暇もなかったが。
初めて見る異性の裸。初めて他人にペニスを触られる刺激。
それらが異様な興奮を生み、まだ明確な愛撫もないというのに、ただ触られただけで哀れな童貞少年はあっけなく達した。
腰を引きつらせ、足を伸ばし、食いしばった歯の奥から呻きが漏れる。
何度も何度も打ち震えるペニスが大量の精液を吐き散らし、キオの体だけでなく、女の褐色の肌にまで白い彩りを加えてしまう。
汚されて激昂するかと思われた女だが、自身の胸に付着した精液を指ですくって舐めとると、機嫌をよくしたのか淫靡に笑った。
「濃いな。それに、萎えないのか。いいぜ。これなら、まあまあ、いけるだろ」
肩で息をしているキオは、ペニスの上に腰を落とされそうになっていることに気付いて慌てた。
「まっ、待ってくれ!」
「あん? なんだよ」
「そんな……こんな、いきなり」
いきなりの初体験。なんのロマンスもない、現実感の欠片もない。
「文句あんのか」
「こういうことは、その、好きなひと同士がやることであって。崇高なことなのに」
「馬鹿か? ただの交尾だろ。ガキを作るか気持ちよくなるか、どっちかできればそれでいい」
ラージャンのように、愛情や友情といった感情を理解しない孤独の獣にとって、セックスとはつまりその程度のことでしかない。
「だ、だったら、せめてあなたの名前を」
「名前? そんなもの、わるわけないだろ」
その戦闘本能の塊のような生態に反して、ラージャンの知能は高く、さまざまなものをきちんと認識することができる。
たとえば、人間を人間だと認識できる。
だが、自分の名前は不要だ。名前を呼ばれることがないから、必要ない。
両親の顔すら知らず、独力のみで成長するラージャンにとって、それが普通だ。
「だったら、俺があなたの名前をつける」
「おまえが?」
キオはうなずいた。
どうやらここでどうしても、本意ではない行為に及ばなければならないようだ。
ならば、せめて、相手の名前ぐらいは知っておきたい。そういう思いからの言葉だった。
「ラージャ、っていうのは……」
「いいんじゃねえの」
女は――ラージャはそっけなく応えたが、悪い気はしていなかった。
名前があるというのは、悪い気がしない。
それに、誰かとこんなに長く話したのも、思えば初めてのことだ。
人間に限らず、出会ってから会話するほど生きているやつがいなかったから。
まあ、悪い気はしなかった。
「おまえの名前は? あるんだろ」
「キオ。キオ・マロウ」
「キオ、ね。ま、覚えておいてやるよ」
そう言って、ラージャは前触れもなしに腰を落とした。
あまりにも唐突で乱暴で遠慮のない、童貞喪失。
ペニスという敏感な部分が柔らかく湿った肉の壁に締め付けられる感触は、キオを驚愕させた。
ラージャの膣の圧力はかなりのもので、キオはペニスに痛みすら感じるほどだったが、それでもラージャは遠慮なしに動く。
「なかなか……やっぱりいいぜ、おまえっ。下等生物のくせにっ」
腰を上げたり下げたり、その単調な動きのたびに、豊かな胸が揺れ動く。
ラージャの楽しげな様子に対して、悲鳴を漏らすのは男のキオのほうだ。
「も、もっとゆっくり……!」
「やだね」
残酷な宣言。
さっき童貞を失ったばかりの少年にはあまりに激しすぎる性行為は、しばらくは拷問のようだったが、なれてくると順調に快感を生み出し始めた。
甘美な性感が生まれたかとおもえば、終局はすぐさまやってきた。
「も、もう出ますっ」
「はあ!? アホかっ。あたしより先にイッたら殺すぞボケがっ」
「そんな!」
冗談ではないことは分かるキオは、必死になる。
泣きそうになりながら、下半身を怒涛のように攻め立てる快感を少しでも遠ざけるため、歯を食いしばって尻の穴に力を入れた。
が、そんな懸命の努力も、この未知の圧倒的な悦楽の前では無駄でしかない。
二度目の絶頂はすぐにやってきた。
「うああっ!」
ラージャの内部で、ペニスが弾けた。子宮に届く勢いで白濁の汁がほとばしる。
熱いものをじかに感じてラージャは昂ぶったが、それまでだった。
荒々しい舌打ち。
「……ッ、この早漏が。なんの役にも立ちゃしねえっ」
「すいません……」
なんという情けなさか。キオの目じりから涙がこぼれた。
女性を満足させることもできずにひとりで勝手に達してしまうなど、男として失格だ。
だが、あることに気付いたラージャは目を細めた。
「ほう、まだ硬いぜ。なるほど、持続力はあるようだ。これならまだやれるよな」
ぐちゃっ、と淫らな水音――ラージャが腰を持ち上げ、再びピストン運動を始めたのだ。
「も、もう終わったんじゃっ?」
「馬鹿を言え。まだあたしはイッてないんだ……満足するまでやるぜ」
キオの顔が青くなった。
ラージャの腰が上がるたびにあらわになるペニスは、白濁と愛液が絡み合って泡だらけになっている。
そのおかげで動きやすくなり、ふたりはますますの快楽を得る。
室内の温度と激しい運動のせいで汗だくになったふたり。
汗を散らしながら上下に揺れるラージャの肉体は、淫靡な輝きを放っている。
頭の奥が甘く痺れてきたキオは、そんな妖しい美女の痴態を呆けたように見つめながら、自身も浅ましく腰を動かし始めたのだった。
《黄昏の死天使》という名で通った上位ハンターたちが、たかがバサルモスの討伐クエストで失踪するという事件は、
しばらくのあいだハンターたちを騒がせたが、一月もすると徐々に人々の記憶から薄れていった。
同時に消えたマロウ家の息子については大規模な捜索隊が組まれたが、
死体すら見つからないありさまに、屋敷の住人は多いに悲しんだ。
が、二ヶ月も経ってからひょっこりと姿を現し、素性の知れない粗雑な身なりの女を婚約者だと言って連れてきたうえ、
貴族をやめてモンスターハンターとして生きるだとかほざいたため、ものすごい勢いで父親に殴られた。
婚約者だという謎の美女からも「勝手に決めんなボケッ」と言われて殴られた。
それでも彼は幸せそうだったので、まあ、べつにいいのだろう。
14 :
前スレ884:2007/07/05(木) 09:02:00 ID:SnYbujaC
投下終了。これで終わり。
急ごしらえで書いたけど、とりあえず書きたいことは書いた。
村クエでラージャン2頭にぼろ雑巾にされた後に書いたからラージャンが異様なほど強いぜ。
前スレで気分を害した人、ほんとごめんね。
とりあえずお疲れ。
厨臭い表現については気をつけるしかねーさー。
ふと気づいた。書きかけてるアレ、厨臭いかもしんないからやめとこ、
って思ったらそもそも必殺とか無いしランポスに餌付けしようとして
ボッコボコにされるような子だから大丈夫なのか。
超絶美形主人公ってダークシュナイダーか?
17 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 12:43:18 ID:YIJf09kh
ここでBGロード中
ジー ジコジコ ジー
わざと厨臭くしてるのは面白い限り許す
ラー娘のグレ具合GJ!!
>15
グダグダ悩むくらいなら書け
書いてから出すかどうか判断汁
>16
よう俺
>>1乙ガレオス
前スレ
>>778 俺らには謝らなくてもいいが、前スレの
>>902には謝っておけよ。承諾なしにネタ使ったんだから。
ノリと勢いで書いていいのは自分のネタだけだぜ。
>>14 前半最後の流れ。
死を覚悟して突撃すると見せかけて逃げたのなら笑えたかもしれないが、逃げる覚悟を決めて逃げたらギャグにならん。
せめて負け惜しみぐらい言わせればよかったかもね。
後半は戦闘とエロはよかったよ。次があるなら期待してる。
>>14 ラージャン娘と貴族の坊ちゃん良かったよ。萌えた。
擬人化後もいかにもラージャンらしいのがいい。
>>20 「あるぜ!」
「たったひとつだけ 策はある!」
「なにっ!?どんな策だ!」
「逃げ
るん
だよォォォーーッ!」
逃げる覚悟も大切だw
>>18 把握した、頑張るぜ
村の名前間違えたのに今頃気づいたけどな!
24 :
20:2007/07/05(木) 20:29:29 ID:Sw1tdQhl
26 :
「引退の理由」:2007/07/06(金) 19:54:04 ID:KXEeYUMb
はーはっはっはっ
見よ!!
この弾けんばかりの筋肉!!!!
美しくかつ繊細にして大胆な我が筋肉!!
これを美しいと言わずして何を美しいというだろう!
いや、これはもはや「美」そのものだと言っても過言ではない!!
そうだ!そうだったのか!
やはり我輩は素晴らしい!!
神様も罪なものを創ったものだ!!
……いや、まてよ?
我輩は世界一、いや宇宙一美しい!
…つまり、「神」より美しい!!
我輩より劣る者に、我輩の超絶な美を創る事は出来ないはずだ!!
ということは…
な、なんて事だ!!
我輩が、我輩が「神」だったなんて…
こ、こうしちゃいられない!
そうとわかった以上、下界の者共に我輩の「美」をもって幸福を与えてこなければ!!
はーはっはっはっ!
町の者どもは、我輩が美し過ぎて直視できないようだな!!
下々の者は飾り立てる為に服などを着ているが、我輩のレベルにまでなるとそんな布キレはただ我輩の「美」を霞ませるものでしかないのだ!
やはり我輩が一番輝くのは生まれたままの姿!!
これこそがビューティ&ナチュラァアアアール!!!!
そうだ、モンスター共も我輩のこの美しさを見れば、心が洗われ穏やかになるのではないか!?
よし、早速出発だ!!
おぉ!ランポス共が我輩の美しさに惹かれて集まってきたぞ!!
やはりモンスターは正直だ!
さぁ!!存分に我輩の美を堪能するがよい!!
…ぬ?恐れ多いぞ貴様ら!
いくら我輩が美しいと言っても、貴様らが触れて良いような存在ではないのだ!!
もっと離れんか!!!!
バッ!!
ザシュッ
ガリッ
ザクッ
ぎょへぇええええええ!!!!
あの教官が爆睡し過ぎで脳みそバグッて、こんな風に怪我して引退。
とかだったらアレだなぁと思って書いた。
今は反省している。
きょ、教官・・・そんな理由で引退して日がな一日のんびりしてるわけですか・・・
ところで教官の笑い方ってヌハハハハとかじゃなかったっけ?
あの教官は、正直ハートマン軍曹の次くらいに言語センスを見習いたい人だ
教官は素手でイヤンクックを屠ることが出来るらしい
つまり、ゴールデンフィンガー教官ってことか……
一瞬シャイニングフィンガーかと思ったw
教官はガンダムファイターかよwww
てな
age
教官の対飛龍・古龍の超絶テクはその筋にはかなり有名
ラオシャンロン相手に繰り出した、『奥義・全身バイブ』は凄まじいの一言だったよな…
でも人間相手には早漏なんだ
天は二物を与えずとはよく言ったものだよ
SS書いた。投下する。
エキヌの森の奥深くには、住む者が絶えて久しい古城がある。
何百年もの昔、その城には付近を治める領主とその一族が暮らしていたというが、彼らの姿はすでにない。
一夜にして忽然と消え去った貴族の行方を知る者はもはやいないが、ただ主を失った城のみが静かにたたずみ、長い孤独の月日を過ごしていた。
だが、今夜、空恐ろしいほどの満月が冴え渡る晩、城に足を踏み入れた者がいる。
その男の名を、ゲイル・リズモリといった。
ゲイルはモンスターハンターだ。それも、ギルドに所属していない流れのモンスターハンターだった。
百九十センチにも達する長身を、角竜ディアブロスの鱗や甲殻から作られた厳つい鎧で隙間なく覆っている。
背に負う身の丈ほどの大剣によって、数多の飛竜を屠ってきた。
驚くべきことに、歴戦の勇者の顔立ちは人間の髑髏そのものだ。
もちろん、それはそのような外見の兜をつけているというだけのことなのだが。
スカルフェイスというこの防具は、実際に死者の頭蓋骨を用いて作られている禍禍しい防具であり、好んで身につける者は少ない。
ハンターの多くは縁起を大事にするからだ。 倒したモンスターの素材で作った武具は誇りだが、倒れた人間の遺骸を身につけるというのは、あまり受け入れられないことであるらしい。
恐ろしげな髑髏面のゲイルは、扉が半壊した正面玄関から堂々と城に入ると、ランタンに灯をつけてあたりを見まわした。
もちろん、ゲイル以外には誰もいない、無人の城だ。
しかし、まさかこの城が過ぎ去りし日々を忘れたくないとでも思ったのだろうか。大理石の床や絨毯には塵のひとつすら積もってはおらず、かび臭い空気もない。
こんなことが、あるはずはない。
当然、途方もない年月のあいだ放置された城の内装は朽ち果てかけ、埃が山のように積もっているはずだ。そう思っていたゲイルの、髑髏面の奥の眉が、訝しげにひそめられた。
と、突如として頭上の巨大なシャンデリアや壁の燭台に火が灯り、玄関ホールの全貌を照らし出した。
ぎょっとしてカンテラを放り投げ、咄嗟に背中の大剣の柄に手を伸ばす。
十秒、二十秒と経過しても、いっこうになんらかのことが起こる様子はない。
ばっちこーい
だが俺は仕事だ\(^o^)/
休憩の時ゆっくり読むか
いや、わずかにだが、先ほどまではなかった音が聞こえる――これは、そう、ピアノが奏でる音楽だ。
どうやら、二階から聞こえるようだ。
ゲイルは腕を戻し、そちらに向かった。
二階の奥に進むにつれて、音が鮮明に聞こえるようになる。
なんという、暗く、悲しく、絶望と狂気に満ちた、救いがたい暗黒の旋律だろうか。
まるで誘われるかのようにその部屋の前にたどり着いたゲイルは、迷わず扉を開け放つ。 窓から月明かりが差し込むだけの薄暗い部屋の中央には、大きなピアノが置かれていた。
椅子に腰掛けた人物は、ゲイルの登場に動じることもなく、いまだにあの暗黒のメロディを奏でている。真っ黒いローブを着て、やはり真っ黒いつば広のトンガリ帽子をかぶった、黒い風体。
やがて、最後に大きく鍵盤が叩かれると、演奏は終了した。ゲイルはそれをずっと黙って待ちつづけていた。
「おまえは、何者だ」
ゲイルが尋ねた。すると、黒い者は小さく笑った。
「――ここはわたしの家であって、おぬしの家ではないのだが、それは普通はこの家の者が言うべき台詞であって、ならばおぬしがわたしなのか?」
異様に遠まわしというか、分かりにくい台詞だった。ただ声質から、人物の正体が女であることが知れた。男を誘うような、低音のハスキーな声。
「おまえの家だと? ここは誰も住んでいない、無人の城だと聞いていたのだが」
「無人は人のなきこと。しかしわたしはここにいる。なれど無人。ならばわたしは人ではない? それならば我が家が無人であることも道理やも。しかりしかり」
「……わけのわからんことを」
苛立たしげにそう言うと、人影はまた小さく笑った。
「すまぬ、すまぬ。客人は久しぶりゆえにな、いささか戯れが過ぎたようだわ」
するっ……と、衣擦れの音を立てながら人影が立ち上がった。
おそらくは二十代後半の、妖艶な美女。
あらわとなった顔立ちは、整いすぎているほど整っている。
濃い影のような黒髪が真っ直ぐ腰のあたりまでも伸び、分厚いローブの上からでもそうと分かるほどの肉感的な肢体は、あらゆる男を魅了するだろう。露出した首筋や顔、そして手の肌の色は透き通るように白い。
ただ、恐ろしいほどの美女の双眸が死魚のそれのごとく昏く、一切の光を宿していないのは、どういうわけか。
魔女。
ゲイルが眼前の女の容貌に対して抱いた、最初の言葉だ。女の格好は、まさしく童話や伝説に登場する邪悪な魔女のいでたちそのものだった。
ほとんど黒と白の色素のみで構成された女の、唯一の赤が――血溜まりのような紅の唇が、完璧な弧を描く。
「ようこそいらっしゃった、客人よ。して、ご用向きは?」
「……黒龍ミラボレアス」
ぼそりと呟くようにゲイルは言った。
「知っているか」
「知らぬ者とてなかろうよ。ああ、恐ろしきその名……耳にしただけで心も凍る」
女は、両腕で自分を抱くようにして震えてみせる。くっ、くっ、と笑いながら。
ゲイルはそれを相手にせず、続けた。
「ミラボレアスがこの城を根城にしていると噂に聞き、やってきた」
「ほう、なるほど。だが無駄足であったな。ご覧の通り、わたしのほかにはコウモリやネズミしかおらぬ、つまらぬ城よ」
「……そのようだ」
うなずき、ゲイルはきびすを返した。目当ての獲物がいないのなら、長居は無用と思ったのだ。
「待たれよ、客人」
背に声をかけられて、振り向く。
「ミラボレアスに相対して如何とする?」
「知れたこと。……彼奴の血の最後の一滴までも滅ぼし尽くす」
揺るぎない怨念のこもった言葉を聞いて、魔女の表情が変わった。
「滅ぼすだと……? ミラボレアスを? はっはっは! 面白いことを言う! ひひっ! くひひひひっ! ひーひひひ!」
腹を抱えて笑い出す魔女の吊り上がった唇には、その歪んだ瞳には、濃密な狂気が含まれている。
ゲイルは、その狂態を黙って見つめていた。
不意に、魔女は笑うのをやめた。
「知っているか。黒龍は他の蒙昧な龍どもとは格が違う。人語を解し、人の姿にも化けるのだ」
「……それがどうした」
「わたしが、その黒龍の化身だと言ったら?」
直後、床を砕く勢いで踏み出しつつ、ゲイルが大剣の柄を握った。
ごうっ、と剣風が唸る。
上段から垂直に斬り下ろす斬撃は、魔女の頭頂から股間までを一太刀で両断する――いや、できなかった。
魔女がいつのまにか手にしていた杖によって、苛烈の一撃は受け止められていた。
大剣の凶悪な重量は切れ味を増幅させ、飛竜の肉体さえも切り裂くのだが、それをただの長い木の枝にしか見えない杖と細腕で受けてみせたのだ。
鋼の筋肉が生み出す剛力が超重量を押しているというのに、魔女は微動だにしない。
「なぜ斬れん……!」
「まこと。柔い杖と女の腕だというのにな」
ゲイルの驚愕に、魔女は薄ら笑いで応えた。そして腕を伸ばし、スカルフェイスのひたいを指で小突く。
それだけだというのに、巨体が大きく後方に吹き飛ぶ。
髑髏面が粉々に砕け散った。
すぐさま体勢を立て直したゲイルの素顔は、くすんだ色の金髪を短く刈り上げたこわもての面構え。
それだけならばいいのだが、顔面の右半分は醜く焼け爛れ、瞳は白く濁っている。三十過ぎの男の精悍な面構えを、無残なものとしていた。
「ほう、伊達ではないか。なぜ隠す?」
「隠しているのではない……閉じ込めているのだ。溢れ出す怒りをな」
「なるほど。楽しい男よ」
杖を振れば、炎が生まれた。それは魔女の周りをゆっくりと漂う。
「ところで、なぜわたしの命を狙う」
「……十年前。ディミナの村。……覚えはあるか」
「うん? 知らぬな。わたしが滅ぼした地のひとつやもしれぬが。そんなものは夜空の星屑の数ほどもあるのでな……いちいち覚えてはおれぬ。いずれつまらぬ地であろう」
「そうか」
短い言葉のなかに、千の罵倒や怨嗟よりもはるかに鮮烈で、深く凝り固まった憤怒があった。
大剣を握る手に、万力のごとき力がこもる。
「龍殺しか」
感慨深げに魔女が言った。
そう、ゲイルが振るう大剣の名を、ドラゴンキラーという。その名の通り、龍に対して抜群の殺傷能力を持つとされる、伝説の龍殺しの武器のひとつだ。
「よかろう。そのなまくらの切れ味いかほどのものか、とくと拝見してやろう」
魔女が再び杖を振ると、炎が生き物のごとくうねり、ゲイルを襲う。
視界を埋め尽くし、猛烈な勢いで迫った炎を、ゲイルは剣の腹を横殴りに叩きつけて吹き飛ばした。
すると、魔女の姿が消えている。どこへ行ったのか。
――窓の外から凄まじい音が聞こえた。地獄の底でも聞けそうもない、圧倒的な負の咆哮。
ゲイルにとっては、嫌というほど聞き覚えのある声だった。
今でも毎夜のように夢に見る、故郷での平和な月日。夢が終わるころになると空からあの叫びが轟き、炎と血に染まった村のなかで絶叫しつつ目を覚ます。
ゲイルは窓に向かって疾走した。
ガラスを突き破り、二階からの高さをものともせずに着地したのは、城の中庭だ。
顔を上げてみれば、視線の先にはとてつもなく恐ろしいものがいた。
これほどまでにおぞましい容貌の怪物が、果たして他に存在するだろうか。
強靭な四本の足で支えるのは、すべてが漆黒に染まった長大な体躯。大きく広がった一対の翼と、ナイフのような牙がずらりと並んだ口腔。悪意に満ちた瞳は、爛々と光を放っている。
世界最大最強の邪悪生命体――黒龍ミラボレアス。
その存在は伝説として広く知られ、子供たちのわらべ歌にもなっているほどだ。
ミラボレアス。その名は宿命を意味し、その名は避けられぬ死を意味する。
破壊と殺戮の限りを尽くし、この世を阿鼻叫喚が渦巻く地獄に変えるためだけに生まれてきたというこの邪龍は、だが、実際にその実在が証明されたことはない。
多くの国が討伐隊を組織して立ち向かったという。多くの強きモンスターハンターたちが挑んだという。
だが彼らのうちの誰も、ミラボレアスの実在を語ることはなかった。
彼らが生きて戻ることはなかったからだ。
それこそが、黒龍の存在の証明だという声もあるのだが。
が、ゲイルは知っていた。少なくともゲイルだけは、それを疑ったことなどなかった。十年前のあの日から、ミラボレアスを追いつづけてきたのだから。
――真正面からの咆哮。
この世のものとは思えない、底知れぬ邪悪な殺意がゲイルの全身を打ち据える。常人ならば一瞬にして魂まで木っ端微塵にされるところを、ゲイルは堪えた。
そして剣を構えた。
復讐心だ。憎悪と憤怒がゲイルの心を支えていた。
ミラボレアスの長い首が鞭のようにしなったかと思うと、ゲイルを丸呑みにする勢いで伸びる。噛みつかれてしまえば、いかにディアブロスのS型装備といえども、卵の殻のように割られるだろう。
それを横に転がってかわし、剣を横に薙ぐ。龍殺しの刃はミラボレアスの頬を裂いたが、浅い。わずかに血が流れただけだ。
ミラボレアスはあざ笑うように目を細めると、右の前足を持ち上げた。振り下ろすと地響きを起こし、またも転がって避けたゲイルの足元を揺らす。
黒龍の動きは素早くない。むしろ、どちらかといえば鈍重だ。
だがとてつもなく長い巨躯そのものが武器となり、ゲイルを追い詰めていた。
動く壁のように迫る胴体。背後には、壁。
敵は蛇のように這っているから、腹の下を潜り抜けることはできない。飛び越えることも、もちろん不可能。
万事休すかと思われたが、ゲイルはなんと壁に向かって剣を叩きつけた。砕ける壁に突き刺さったドラゴンキラー。そこを支点として駆け上がり、さらに壁を蹴ったと同時に、ミラボレアスの胴が激突した。
ゲイルはミラボレアスの背に乗っている。装備の重さを感じさせない、軽業師のような体術だ。
振り上げた剣を渾身の力で振り下ろすと、黒龍の背の鱗が爆ぜて血が噴き出た。
これはさすがに効いたらしい。怒声を上げ、ミラボレアスは体を揺すった。ゲイルを振り落とそうというのだ。
むろん、素直に落とされてやるはずがない。
傷口に、さらにドラゴンキラーを深く突き刺し、楔のように打ち込んだ。ドス黒い血がゲイルの全身を汚す。
ミラボレアスは何度も何度も壁に体を打ちつけ、そのたびに激震したが、それでもゲイルは剣の柄を手放さなかった。ぎちぎちと龍の体の奥深くに剣先が進むのを感じるたび、歓喜していた。
と、ミラボレアスはついに最後の手段に出た。
長い首で背後にぐるりと振り向き、ゲイルを見つけると大口を開けたのだ。
噛みつこうというのではない。届く距離ではない。
黒龍の口腔に、紅蓮の炎が生まれていた。
ゲイルの背中を冷や汗が濡らす。絶対的な危機を感じ取った戦士の反応は素早かった。回避は間に合わぬと見るやいなやドラゴンキラーの影に隠れ、大剣をそのまま盾として利用する。
それがいけなかった。受けてはならなかったのだ。リオレウスのブレスやモノブロスの突進などと同じように考えてはならない攻撃だったのだ。
どんなモンスターのブレスよりも強烈な、ミラボレアスの大火球。その威力は、小規模の隕石の衝突にも匹敵する。直撃すれば、人間など塵ひとつすら残さない。
そんなものを自分の背中に向けて飛ばすのだから、ミラボレアスもできればやりたくなかったというわけだ。
とてつもない熱量の火球が吐き出され、ゲイルをゴミのように弾き飛ばす。
ドラゴンキラーの刀身は辛うじて無事だが、鎧を着ているとはいえただの人間であるゲイルはそうもいかない。爆発によって空中に投げ出されたときにはすでに、凄まじい衝撃と灼熱が彼の意識を奪っていた。
これでも黒龍にしてみれば、ずいぶんと加減した威力なのだから恐ろしい。
仮に、獲物を捨てて飛び降りれば、無事に助かったことだろう。が、それは唯一の武器を手放すということを意味し、さらには死を意味する。
どちらにしても、ゲイルが窮地に陥るという展開に変わりはなかった。
ゲイルの意識はすぐさま覚醒したが、乱暴な着地によって右足の骨に亀裂が走る。
くずおれる体を無理やりに走らせようとしたが、歩くこともままならないところを次なる火球が襲う。
左足の力だけで横に跳び、回避したはいいものの、爆風が全身を殴打した。
激痛に呻き声を漏らし、それでも戦おうと芋虫のように這いずるゲイルの背を、ミラボレアスの巨大な足が踏みつけた。
ディアブロメイルSがハンマーで叩かれた氷のように砕け散り、背骨が軋む。
とはいえ、黒龍の破壊的な重量が本当に加わっているのであれば、こんな程度ですむはずがない。すでにゲイルは死んでいるのが自然だ。
……もてあそんでいる。
そう悟って、ゲイルは凄まじい音の歯軋りをした。
あとほんの少し、ほんの少しの力加減で、ゲイルを殺すことができるというのに。
「殺さぬように蟻を踏むというのも、これがなかなか難しい」
ミラボレアスは、いつのまにか龍の姿であることをやめていた。その長い脚でゲイルを踏みにじっていることは変わらなかったが。
ゲイルの決死の思いでの攻撃が、黒龍になんらかの影響を与えたようには見えなかった。
「もう終わりか、龍殺し。ならば、少し趣向を変えて楽しむとしよう」
魔女ミラボレアスはそう言うと、ゲイルのわき腹をつま先で持ち上げ、仰向けに転がした。
動けないゲイルは目を見張る。
あの黒衣を脱ぎ捨て、ミラボレアスは一糸纏わぬ姿となっていた。やはりローブの上からでも予想できた通り、世のすべての男を魅了する体つきをしている。
豊満な乳房と桃のような尻は、すべての女の嫉妬と男の欲情を集めるだろう。
「なんのつもりだ」
「ふふ。野暮なことを言うな。わたしとおぬし……男と女で楽しもうではないか」
「なに……!?」
上半身だけでも起き上がろうとしたが、できない。それどころか指の一本でさえも動かすことができない。
ミラボレアスは四つん這いとなってゲイルの下半身に狙いを定める。
剣の柄を握る手はまるで別人のもののようで、なれた手つきでベルトを外されズボンを下ろされても、なんの抵抗もできなかった。
「無駄だ。我が魔力はおぬしの肉体を産毛の先まで掌握した。もはやおぬしにできることといえば――」
細い指先が、剥き出しとなったゲイルの性器に伸びる。
特別な技巧もなく、ただ柔らかく握られただけだというのに、ゲイルの全身を強い電流のような快感が襲った。
「――こうしていちもつをいきり立たせ、わたしを楽しませることぐらいのものよ」
「馬鹿な!」
どんな痛みや仕打ちも堪えられるつもりであったゲイルが、初めて悲鳴を上げた。
腕の一本や二本を失うことなど覚悟の上だ。黒龍を殺せるなら、その程度の代償は支払おう。たとえ殺されたとて、地獄から恨み言を連ね続けるつもりだった。
だが、まさか、この龍は、これから自分と交わろうというのか。
憎い怨敵と体を繋げる……それはゲイルの心をズタズタに引き裂く行為だ。
「やめろっ」
「口ではそう言っていても、体のほうは素直なものよな」
刺激されたペニスは、ゲイルの意思などまったく無視して、硬くそそり立っている。素晴らしい逞しさで天を向いた剛直を見て、ミラボレアスは舌なめずりした。
鼻の先がペニスに触れそうになるほど顔を寄せ、においを嗅ぐ。
「臭いがきついな。まともに風呂も入っていないか。だがこれぞ男の臭い……」
うっとりとした表情で、なんのためらいもなくペニスを根元までくわえ込んだ。
性器の全体を包み込む、ねっとりとした柔らかな温かさは、ゲイルを思わず呻かせる。
ミラボレアスの口技は巧みだった。その蛇のように細い舌で裏筋やカリ首をなぞり、突つき、舐めまわす。鈴口を舌先で強く刺激し、亀頭に歯を当てる。
邪淫の技の数々に、ゲイルの我慢はあっというまに屈服した。
腰が軽く跳ね、脈動したペニスの先端から精液が溢れ出る。白濁した欲望の塊を、ミラボレアスはすべてノドの奥で受け止めてみせた。
「……んん、んんく、うんっ……ふむう。うふふふ、濃いな……」
時間をかけて味わうように飲み込み、満足そうに笑う。
ゲイルは荒い息を繰り返しながら、堪えがたい屈辱を、そして怒りを感じていた。
殺意の視線で射抜かれても、魔女が動じることはない。むしろ、それを楽しみにしているようだ。
「悔しかろう、憎かろう。それでいい。それこそが我が滋養よ」
「……それが、それが理由か……」
「うん?」
「俺の村を滅ぼしたのは、俺のような者をこしらえるための……?」
「いいや。おぬしのような者が現れることは楽しいが、それを狙っているわけではない。わたしはただ壊したいから壊す。殺したいから殺す。それだけのことよ」
一度目の放出を終えても萎える様子を見せないペニスの上にまたがると、月光に照らされるミラボレアスは恍惚とした表情で、おのれの秘所にペニスをあてがう。
「滅びこそが我が喜び。死にゆくものこそ美しい。――理由など、それだけなのだ」
そう言って腰を落とし、ミラボレアスはゲイルの肉棒を受け入れた。
悲鳴が出そうになるほどの快楽を感じ、女の体内でペニスが反射的にビクンと跳ねる。
すでに黒い陰毛にいたるまでたっぷりと湿っているそこは、強すぎも弱すぎもしない絶妙の圧力でゲイルのものを包み込んだ。
微細な突起が並ぶ肉の壁は、まるで意思でもあるかのように蠢き、男のものに絡み付く。
ミラボレアスの膣の内部は、人間の女のそれとはまったく比べ物にならなかった。
ゲイルとて性体験の数はそれなりにあり、かつては妻としてともに夜を過ごした女性がいたが、これほどまでの快感を得たことはない。
「わたしのなかは具合がよかろう。人間のものとは、できが違うぞ」
嘲笑するように言い、腰を上げては落としていく。
凶悪なまでの快楽に、ゲイルの意識は完全に翻弄されていた。
「ああ、んんっ……あんっ、んはあ……」
上下運動のたびにミラボレアスの乳房が大きく揺れ、悩ましい喘ぎ声が夜空の下に響き渡る。
「なかなかのものを持っている……んふん、まったく、いい拾い物をしたっ……」
激しく腰をうねらせ、グラインドさせる淫靡な動きは、ゲイルをたやすく絶頂に導きつつあった。
どれだけ憎い相手であろうとも、殺したいと願う相手であろうとも、繋がってしまえば男と女という関係でしかない。
射精するときになっても、ゲイルは血涙を流す思いでミラボレアスを睨みつける。それが精一杯の抵抗だった。
どくん、どくんと膣の奥に噴き出す白いマグマを感じ、ミラボレアスは腕を回して自分を抱く。
「うふん……いいぞっ。おぬしの怒りが……悲しみがッ、憎悪と苦悶が……恐怖と絶望が、わたしのなかに注がれておるようだわ……んんふふふはははは」
ひとりで官能の世界にどっぷりと浸かり、魔女は哄笑した。蕩けたような視線はどこに向けられているのか。
ミラボレアスにとっては、ゲイルが内に秘めた激情とて、見世物のごときものに過ぎないのだ。楽しみ、もてあそび、壊すだけのものでしかないのだ。
「もっとだ……もっと味わわせるがいい。おぬしの精も根もすべてしゃぶり尽くし、味わい尽くしたのちに……その命を貰いうけよう」
と宣言してから、秘穴でペニスを揉みくちゃにしていく。ペニスの尿道に残る精液を搾り出すように肉の穴は動いていた。
いまだに硬いままのペニスが、ミラボレアスの内部をかき回す。
いったいどれほどの時間、ふたりはそうして結合していたのだろうか。ゲイルは数え切れないほど射精し、男と女の性器の合わさるところは、泡立った精液に染まっていた。
その果てに、底無しの性欲を持つミラボレアスにも、やっと最初の快楽の頂点がおとずれる。
「んっ、んああああ――ッ」
ひときわ甲高い声を上げ、弓なりに仰け反ると、ミラボレアスはついに達した。
それと同時にゲイルのペニスも絶頂に至ったが、跳ねる肉棒からはもうなにも飛び出さない。すでに精液を撃ち出し尽くした後だったのだ。
快感の余韻をじっくりと楽しむかのように目を瞑るミラボレアス。
そこに、唯一の勝機があった。
強い官能の爆発は、魔女の魔力の操作にも影響を及ぼしていたのだ。
そのとき、ゲイルの右手に力がこもったことに気付けなければ、その時点で魔女の命運は絶たれていただろう。
無理な姿勢から片腕で大剣を持ち上げ、そのまま振るうという荒業。あまりの過負荷に筋肉が断絶することも意に介さず、ゲイルはミラボレアスの胴体を両断するつもりでドラゴンキラーを薙いだ。
そう簡単に殺される魔女ではない。すんでのところで後ろに跳び、距離をとる。
「ふん。まだそんな力が残っていたとはな。驚いたぞ」
だが、もはや龍殺しの戦士の命運は尽きた。今の攻撃が最大の好機だったというのに。
「その体でなにができるのか、見せてもらおうではないか」
余裕たっぷりの態度で言う。目の前の戦士は片足が使い物にならず、剣を杖の代わりにして立っているだけでやっとというありさまだった。
黒龍の身と化すまでもない。もてあそび、なぶり殺しにしてくれる。ミラボレアスは残酷な殺意に胸を躍らせた。
ゲイルは、獣のように息を荒げながら、呟いた。
「……美しくなど、ない」
「なに?」
「おまえは、滅びるものこそが、死にゆくものこそが美しいと言ったが……おまえはちっとも美しくなどないな」
「なにを――」
なにを言っている、と言おうとして、ミラボレアスは言えなかった。
体の奥から逆流してきた熱いものが、その口を塞いだからだ。
驚愕の表情で腹部を見れば、そこには横一文字に傷が刻まれ、黒々とした血液と大腸や小腸などの臓腑が零れ落ちていた。
ドラゴンキラーの切っ先は、たしかに魔女の体に届いていたのだ。
「ばっ……馬鹿な」
愕然とするミラボレアス。
龍殺しの武器による傷は、ずば抜けた体力を持つ黒龍にとっても恐ろしいダメージとなる。眠るだけでほとんどの傷を治癒してしまうという、龍種の優れた再生能力を、根本から破壊して殺傷するのだ。
龍の巨体であればたいしたことはないような傷でも、小さな人間の体にとっては、致命傷となる。
「こんな、こんなことが……このわたしが人間ごときに……!」
溢れ出る血潮が、言葉の響きを不明瞭なものにしている。
全身を襲う激痛と、容赦なく流れ出ていく命の水。
死の恐怖というものは、ミラボレアスにとってはもっとも縁遠い感情だ。それはつねにみずからが一方的に他者に与えるものであって、けっして与えられるはずはなかった。
が、今まさに、ミラボレアスは殺されようとしていた。
ただの人間が振るう、粗野な武器によって。
ゲイルの口の端に凄絶な笑みが刻まれる。
「命運が尽きたようだな、ミラボレアス!」
「ほざけっ、虫けら!」
最後に残ったわずかな体力を振り絞り、ゲイルは左足のみで猛然と地を蹴った。
気合の声と共に、ミラボレアスの正中線めがけてドラゴンキラーを振り下ろす。
空間を両断するような一閃は、しかしまたもや魔女の腕に止められていた。
「たわけが……図に乗りおって。忘れたのか! わたしは、斬れぬっ!」
剣を掴むように伸ばした腕が、ドラゴンキラーの動きを中空で停止させている。
不可視の魔力に捕らえられ、やはり微動だにできない大剣――
いや。
「馬鹿なっ」
剣が、押し進んだ。ゆっくりとした動きだが、確実に振り下ろされていく。
「馬鹿な、馬鹿な、こんな馬鹿なっ」
美貌が焦燥と恐怖で歪む。初めて見せる必死の形相で、腹の傷の痛みも忘れたかのように腕に力をこめ、刃を押し戻そうとする。
ごばっ、と、魔女が口から大量の血反吐を吐いた。瀕死でありながら力を使いすぎたのだ。
途端に魔力の拘束がゆるみ、大剣は最大の速度で上から下に真っ直ぐ落ちた。
ミラボレアスの親指と人差し指のあいだを通って腕を半ばまでふたつに割り、肩から進入して胴体の中心近くにまで食いこんだ、龍殺しの大剣。
手負いの魔女は凄まじい怨嗟の絶叫を上げ、魔力を用いてドラゴンキラーごとゲイルの体を弾き飛ばす。その足元には異様な量の血が流れ、絨毯のように広がっていた。
「お、おのれ……おのれおのれおのれ……ゆるさぬ、ゆるさぬぞ……!」
凍えるような憎悪が、煮えたぎるような殺意が、嵐のように渦を巻く。
これほどの傷を受けても、まだ生きるというのか。
すでに死に絶えていてもおかしくはないほどのありさまだというのに、むしろますますその邪気を増大させている。
いや、それが死に際の一瞬の足掻きなのだと――ろうそくが燃え尽きる寸前に放つ最後の輝きなのだと、ゲイルは気付いていた。
が、当然、このまま時間にまかせるつもりはない。
油断なく大剣を構え、とどめの一撃のために息を整える。右足の痛みを堪えれば、なんとかまともに立つこともできた。
「あーら、あらあらあら。これは大変なことになっちゃってるわねえ」
そう言ったのが誰なのか、ゲイルには分からなかった。もちろん自分ではないし、眼前の魔女でもない。
ミラボレアスのほうは、その第三者の正体に心当たりがあるようだ。
「おっ、お姉さま……!」
「たまに遊びにきてみれば、なんだかすごいことになってるじゃないの」
ミラボレアスの横手の、なにもない空間から浮かび上がるように、声の主は姿を現した。
女だ。紅いローブをまとった凄艶の女。
似ている――と、それがゲイルの、その人物に対しての第一印象だった。
そう、ミラボレアスととてもよく似ている。顔のつくりや肉感的な体つきなど、まさに双子のようにそっくりだ。
違うのは、ミラボレアスが黒髪や黒瞳であったのに対し、その女は血のように紅い髪や瞳の持ち主であるということだ。髪の長さもミラボレアスとは対照的に、短く切ってショートヘアにしている。
紅いローブとつばの広いトンガリ帽子を身につけている風体は、ミラボレアスが黒い魔女ならば、こちらは紅い魔女といったところか。
「お馬鹿さんねえ、ボレアス。人間が相手だからって油断するから、そういうことになるのよ。不様よねえ、情けないわよねえ! あははは!」
小馬鹿にするように、紅い女は言った。その口調や態度は、ミラボレアスを心配しているふうではない。
ミラボレアスは地に膝をつき、みずからの血と臓腑の海に倒れ伏す。ついに生命力が底をついたのだ。
「申し訳……ありません……おねえ、さま……」
黒龍は閉じていく瞳から涙を流しつつ、蚊の鳴くような声で呟いた。
そして、全身から力を失う。
紅い女は、最後まで、手を差し伸べようともしなかった。ただじっと見ていただけだ。
「あら? ボレアス? ……ボレアス? あら、やだ! 死んだの!?」
ミラボレアスの生命活動が完全に停止すると、女はいまさら驚きの声を上げた。かといって悲しむようではなく、面白がっているようだ。
「あらあらホントに死んじゃった。まったく、しょうがない子ねえ、ボレアス。でも、安心して。あなたの美しい体は、その魂は、誰にもくれてやりはしない。わたしの胎内で永遠に生き続けるのよ」
と、言うやいなや女の口が耳元まで――それどころか首の根元まで裂け、体の奥から飛び出た異様に長い舌がミラボレアスを絡めとる。
そこからの光景は、ゲイルの想像を絶していた。
蛇体のような舌が、ミラボレアスの死体を牙が並ぶ異形の口元まで運ぶと、頭から噛み砕き、胸の悪くなる音を立てながら咀嚼していく。血も肉も骨も飲み込んでいく。
いったい、自分と同程度の質量をどこに取りこんでいるというのか。腹が膨れるわけでもない。常識を無視している。
ほんの十秒もかけずに食事を終えた紅の女は、元通りになった口で笑った。
「これでいいわ。肉も霊も魂も、わたしと完全にひとつになった……あははは!」
恐ろしい――あまりにも恐ろしい光景に寒気を感じながら、ゲイルはドラゴンキラーの切っ先を紅の女に向ける。
「貴様は、何者だ」
「わたし? わたしの名はミラバルカン。ミラ三姉妹の次女よ、龍殺しの剣士さま」
「ミラ三姉妹……だと?」
「そう。あなたが殺したボレアスは三女。わたしの実の妹」
ゲイルの胸中を困惑が襲う。
ミラ三姉妹。三姉妹というからには、三女ミラボレアス、次女ミラバルカンと、あともうひとり、長女が存在するのだろう。
黒龍ミラボレアスの上に、まだふたりも同じような怪物がいるというのか。
だが……かといって絶望はしなかった。
初対面でも分かることがある。それは、目の前のミラバルカンもまた、あのミラボレアスと同じく、邪悪な悪魔のごとき生物だということだ。
直接の恨みはないが、生かしておく理由もない。
殺す。
「まだよ」
斬りかかろうとしたゲイルを片手で制し、ミラバルカンは言った。
「そんなにがっつかなくても、ちゃあんとお相手してさしあげるわよ、剣士さま。でも、今は駄目。傷つき、今にも倒れそうなあなたを食べても、ちっとも面白くないのだものね」
そしてどこからか杖を取り出すと、それを優雅に一振りする。
「そうねえ。わたしのお城にいらっしゃいな。西シュレイド王国の北東、ガナプのお城に……。んふ、股を濡らして待っているわよ」
そう言い終えると、紅衣の魔女は艶然とほほ笑みながら、透けるように消えていった。
夜空の下に残されたのは、ゲイルひとり。
「見逃されたということか」
立ち去ろうとするミラバルカンに、制止など無視して斬りかかることもできたが、もしもそうしていたならば、今ごろはこうして生きていなかっただろう。
ミラバルカンがその気になれば、ほとんど立って歩くことで精一杯となっている自分など、一瞬で殺せたはずなのだ。
いや、万全の状態で戦いを挑んだとしても、果たしてまともにやりあえたかどうか。
長年の戦いで磨かれた戦士としての感覚が、絶対的な危険を告げていた。
ミラボレアスと同じく邪悪でありながら、さらにおぞましい深遠の闇を感じさせる魔女……新たな敵、ミラバルカン。その上に位置する長女の存在。
――力が足りない。
ゲイルの拳が強く握られる。
恐るべき暗黒の龍どもと戦うには、おのれの力はまったく足りていないということを自覚した。
仇敵ミラボレアスを辛くも葬ったものの、あれは敵の油断につけこんだ奇襲でしかない。運がよかったというだけだ。奇跡は二度も続かない。
特に、あのミラバルカンに同じような手段は絶対に通用しないだろう。
強くならなければいけない。
強く、もっと強く。ひたすら強く。
神も悪魔も打ち倒すほどに、途方もなく強くならなければ。
ゲイルはドラゴンキラーを背負いなおし、重い足どりをゆっくりと進めた。
目指すはシュレイド王国。――まだ、立ち止まれない。
投下終了。
最初の書き込みの直後に連投規制されて焦った。
なんかビッチばっかり書いてる気がする。でも悪女好きだし別にいいや。
実は無印からのファンなのにこくるーと戦ったことない。(動画は見たことあるが)
ハンター大全も読んでない。
だから変なとことかあると思う。ごめん。
過去スレで黒龍の容姿のイメージが魔女だとかいうレスがあったのを見てプロット作った。
ボレアス→冷酷で尊大な自信家
バルカン→残虐で奔放
ルーツ→慈悲深く聡明(身内に対しては)
そんなかんじ。
普通の萌のほうが受けがいいんだろうけど、そういうの書けない(´・ω・`)
携帯からでもスラスラ読める軽いやつが求められてんのかな。台本形式とか。
よくわからん。
(台本形式だろうと、小説形式だろうと)エロければよかろうなのだ
GJ!
黒龍と言う狂気が伝わって来るよ。
萌えとかは無視して書きたい物を書けば良い。新ジャンルを作るぐらいの気迫で。
台本はエロパロ板では基本的に有り得ない。叩かれても褒められない。
乙であります! 楽しませて頂きましたですよ!
ベルセルクみたいなダーク系の雰囲気が黒竜のそれに相まっていい感じ。
「滅びこそが我が喜び〜 はDQ3の大魔王様だよね?名台詞だ。男魔王が言うと貫禄あるし、
魔女が言うと倒錯した(エロさが滲み出てる)感じで良いなぁ。
個人的な好みでいうと小説風がしっくりくるけど、台詞ばかりの台本みたいなものも嫌いじゃない。
小便臭い小娘、行き遅れの年増どちらでもOKだし、エロなし、微エロ、ドエロどれも好き。
軽いノリのコメディも好きだし、ドロドロした人間ドラマでも昼メロちっくな恋愛ものでもよいし、
厨臭かろうが重厚な物語だろうが何でもバッチ来い!・・・オレは節操なさすぎなのか?
そんなわけでこのままのノリで突っ走って頂きたい。
もちろん三姉妹全員が書かれると期待してよいのだろうね?ね?
51 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 16:06:41 ID:3GUz11MU
こんなに長い後書きは初めて見ました
そうか?この程度なら許容範囲内だろう
53 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 17:12:52 ID:BzEledO4
>>47 GJ!
続きが非常に気になる。
書き方…読みづらいとはあまり感じなかったけど?
悪女キャラ好き? …センセ、どんどんやってくださいw
今思ったんだが、人×龍(そのまま)って無くね?
読んでて1番おっきすると思うんだが。
>>55 そこは俺異端? と聞くべきだ
そして、たぶん自分で書くのが早いと思う
>>55 人×龍(そのまま)は確かにないな
人×竜(そのまま)なら前スレでフルフルネタで盛り上がってなかったか?
ランポスにやられちゃうって話もあったような気がするが。
わんこサイズのテオと♀ハンターの獣姦とかなら思いつくが、自分で書いた方が早いのは確かw
>>47の再投下まで、場繋ぎのSS投下します。
とりあえず、前半だけを。続きは夜にでも投下する予定。
ダーク物が苦手な人はスルー推奨。
「…受注できるクエストはあるか?」
男はハンターズギルドの受付嬢に尋ねた。
「一つだけ。炎妃龍と雌火龍の同時討伐。」
「何?」
長くハンターをやっているが、そんなクエストは聞いた事もない。
獰猛な飛龍の雌として畏怖される、リオレイア。そして、強大な力をもつ古龍種のナナ・テスカトリ。
その二頭を同時討伐だと?
「…面白い。」
「ちょっ…受ける気!?いくらあんたでも、このクエストはヤバいわ!やめておいた方が…」
「私が心配か?」
「そっ…そんな事…」
「…気にするな。たかが一ハンターだろう。それに…死にはしないさ。」
片目を潰した、隻眼の男。深い左目の傷は、幼い頃、ランポスに付けられた。
灰色の頭髪を長く伸ばし、それを隠してはいるが、その傷は一生癒えることはない。
彼は貴族の生まれだった。当然父はハンターではなかった。
だから、突然のランポスの襲来に、父は彼を庇うしか出来ず、そして、その爪の前に引き裂かれ、肉を貪られた。
休暇中だった。密林の別荘に、二泊三日の家族旅行。ほんの些細な楽しみの途中に、それは訪れた。
それは、単に運が悪かっだけかもしれない。けれど、彼はそんな事はどうでもよかった。
ただ、家族を失ったという事実を受け止めるだけで精一杯で、他の事は一つしか頭に入らない。強くなるという、事しか。
ひたすらに力を求め、自分を保護してくれたギルドナイトに剣を習い、ハンターになった。
自分のような子供を作りたくない。なんて、綺麗な理由じゃない。
…殺したかった。自分を傷つけ、父を、母を奪ったモンスターを。
全てのモンスターを、彼は恨み、憎んでいた。
標的外でも、視界に入ったモンスターは例外なく斬り殺す。無抵抗のアプケロスさえ、彼は残忍に命の芽を摘んだ。
彼の名は、グレイ。生まれつきの灰色の頭髪から、彼の父親はそう名づけた。
『復讐者』。ギルドではそんな通り名で噂される。彼の所業は良くも悪くも話題となった。
狙った標的は必ず殺す。グレイの腕は確かだった。
モンスターの命を命と思わない、彼の残忍さを批評するハンターも居た。
そんな奴は、大抵が飛龍に屠られる。グレイは、奴らを愚かだと思った。
…殺せばいい。モンスターは、人間を殺す。躊躇う必要なんて、何処にある?
それはとても利己的でとても残忍で残虐で、そして正論だった。
「…行ってくる。」
簡素な挨拶を済ませ、グレイはクエストへと旅立った。
場所は、塔。その最上階に、二頭は居る。
普通はおかしいことだ。それがどちらかの龍の縄張りなら、追い出すか、殺すかするはずなのに。
グレイの頭をふとそんな疑問が過ぎったが、次の瞬間にはその問いに答えを出していた。
どうでもいい。どうせ殺すのだ、そんなことは問題にもならない。
途中にいるモンスターを全て斬り殺した片手剣、蒼鬼には刃こぼれ一つない。
蒼鬼を握る手に力を込め、グレイは塔を登りきり、そして、驚きに目を見開いた。
「あっ…あぅっ…ん…レイア…そこ…もっと舐めてください…」
「んふ…ナナはここ、大好きだね…」
何だ。自分は今、何を見ている?全裸の藍い髪の美女と、同じく全裸の緑の髪の美女が絡み合っている。
否、正確には髪が緑の方の女が、藍い髪の女の女性器に舌を這わせている。
「はぁあんっ!…やぁ…クリ…噛んじゃっ、!…だめ、ですわっ…!」
「あれぇ?そう言う割には、お汁が止まらないんだけど?」
「いやぁっ…それは…っ…言わないでくださいまし…っ…」
「んふっ…こんなにびちゃびちゃに濡らして…ナナはいやらしい子だね?」
「んぁあっ…!はっ、あっ!そん、な…こと…」
目の前で行われる淫行に、グレイは見入っていた。
…手に込められた力が、抜けるのにも気づかずに。
カシャーン、と、地に着いた蒼鬼は金属特有の音を立てた。
「!!」
グレイは突然の音に体を強張らせる。
「な…誰かいるの!?」
緑の髪の女はキッと塔を睨む。
藍い髪の子は怯えたようにその後ろに隠れていた。
「…」
グレイは潔く女の前に姿を現し、腕を上げた。
危害を加えない、の意。落ちた蒼鬼は、手の届かない場所へ足払う。
緑の髪の女は、それでも警戒を解こうとはしなかった。
「なんでハンターがここにいる?」
「…それを言うなら、君達もだ。こんな場所で何をしている?
ここには炎妃龍と雌火龍が住み着いているんだぞ。そんな危険な場所で…」
グレイがそういうと、二人は顔を見合わせた。
「…それ、私たちのことだけど。」
「………は?」
いけない。とても間抜けな声が出てしまった。
こほん、と咳払いをして、状況を整理する。
まず、自分は飛龍を討伐に来たはずで。
しかして、塔には龍の姿は見えず、代わりに女の子が二人いて。とても美しくて、エッチを……それはどうでもいい。
そして、その女の子は自分達を飛龍だと言い放った。
「馬鹿な。」
自然と紡がれる言葉。しかし、緑の髪の女はそれがお気に召さないようだった。
「ふーん、信じられないみたいね。それなら、証拠みせてあげる。」
言い終えると同時に、少女の肉体に変化が起こった。猛々しい緑の炎に包まれながら、徐々に体が巨大化していく。
骨格が変わっていくのが、目に見えてに分かった。そして…、一瞬の閃光の後、少女は巨大な雌火龍となった。
「…!!」
グレイは自身の一つしかない目を疑った。
ありえるはずがない、こんなこと。
少女が、雌火龍に?いや、雌火龍が少女に?
頭がぐちゃぐちゃだ。
なにも考えられない頭の片隅で、グレイは殆ど条件反射で体に指令を出した。
瞬間、グレイは蒼鬼を手に取り、雌火龍に切りかかっていた。
そして、咆哮、炎。グレイは焼け焦げる熱さを全身に感じ、気を失った。
67 :
34:2007/07/08(日) 12:05:39 ID:3winotTH
感想ありがと。うれしい。
ゾーマの台詞ってのはそのとおり。完成された悪の台詞。
雰囲気がベルセルクっぽいってのも、そうイメージして書いた。
それが伝わるってのはマジでSS書き冥利に尽きる
でも続きとかないんじゃないかな。たぶん。これ短編だし
上のラージャン娘SSにしても黒龍SSにしても、勢いだけで書いたわけだし
五日ぐらいでガリガリ書いたから疲れた。ちょっと休むつもり。
グダグダ後書きするのは俺の癖だ。うっとうしくてすまん。
SS書きならSSだけで語ろうとは思うんだけどね。なかなかね。ぐへえ。
あのような引きで続かないだと?
俺のwktkをどうしてくれる気だ!
お願いします続いて下さい。
69 :
34:2007/07/08(日) 13:04:24 ID:3winotTH
だって続いたとしてもバルカンが股を濡らして待ってるだけだよ
そんでルーツは
「我が妹を亡き者とした悪しき種族……人間を……皆殺しにします」
とか言うんだよ
でもなんかいろいろとあってルーツとは和解して主人公といい仲になって
そこをバルカンがあざ笑い、
「かわいそうなお姉さま。人間なんかにおぼれてしまったのね。――さようなら、お姉さま」
とか言ってルーツを後ろから殺します。
ラスボスはバルカン。
いや、ボレアスと融合して昇華した最高邪悪超神龍ミラバルアス。
そんだけ。
どんだけー
ごめん寝る
70 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 13:48:28 ID:wdv7TN8p
色々とうぜえ
龍姦マダー?
女ハンターが龍(或いは竜)に無理矢理犯されるのが良い。
しかし、かなり人を選びそうな感じだ…
>>55だが、人×龍(そのまま)って書くのが難しいってレベルじゃねぇ。
そもそもシチュが浮かんでこない。
>>71を見て自分が異端中の異端なんだなぁと確信した。
男ハンター×龍♀なんて人選ぶとかそんなチャチなもんじゃないし。
男×アイルー♀ならイケる俺はまだ正常だな
75 :
4スレの778:2007/07/08(日) 20:35:40 ID:mhBtNr6L
ようやく規制解除&仕事から解放でカキコできる……。
前スレの
>>902のフルフルハーフの話だけど、あれはスレの流れから
902がネタ交じりにお題投下してくれたようなモノだと認識してた。
が、そうではなくて当方が勝手に902のネタを横取りしただけだった
のかもしれない。
>>20で指摘されるまで思ってもみなかった。
もし前スレの902に不快な思いをさせていたのなら本当に申し訳ない。
この場をお借りして素直に謝罪させて頂きます。大変失礼しました。
2chにネタだけ書く時点で
どう使ってもいいものだと俺も思ったけどな。
ランゴスタ2匹に延々と麻痺レイプされた娘を見て何かが閃いた
けど、それを文章にする文才が無い事に気が付いた。
いやさ、クックソロ頑張るぞー!ってな元気っ娘がクックに出会う前に後ろから襲い掛かってきたランゴスタに襲われて朦朧とした意識の中で訳も分からず助けを求めても誰も来ない絶望と悲しみの中で自分の中にランゴスタが卵を産み付けていやぁぁぁぁ
俺なんか、(メインキャラは男だけど)サブで女キャラ使ってる時に
ババコンガの青ブレスをうっかり喰らって眠らされたりすると、
なんかレイプされそうだとかいう連想になってしまって土器土器する。
男キャラが寝た時は「さっさと起きろよコノヤロー」くらいしか思わんのに
>>72 自分が異端中の異端なんだなぁと確信した。
……よう俺
マテ。キミタチホントに♀竜を犯したいのかね?
巨大な爬虫類に欲情するというのかね!?
なんてツワモノ揃いなんだ・・・
俺も♀竜に情欲しましたがなにか?
リオレイアと闘ってる最中に、
「ほらどうした?まだシッポがちぎれただけだぞ?かかってこい!
ブレスを吐け!体当たりをしろ!急加速カーブの途中で止まってサマソを出せ!
さぁ狩りはこれからだ!お楽しみはこれからだ!ハリー!ハリーハリーハリー!」
と考えている私もツワモノか?(汗)
じゃあみんなでやってるときに
「戦うと元気になるなぁ!ローラ。死と隣り合わせだからこそ生きることを実感できる」とか「戦いを純粋に楽しむ者こそ!」
と叫んでる俺は基地外だな
欲情するかどうかはともかく、ティガをシビレ罠にかけた時の動作が
バックからガンガン犯されて必死に身悶えしてるみたいだと思った事ならある
草いな
もう夏か
大人なエロパロ板ってどんなんだろうな…
前回ロストしてしまった近くにまで、ようやっと復帰
キリがいいところまで書けたのでこのタイミングで投下します
ロスト怖い
マジで怖い
エロ戦闘抜きで、どこまで面白いかわかりませんが、
ナナたんは幼な妻(仮改め、
炎妃龍とハニー・ザ・ホルン
一話 前半。どうぞ。
オアシス傍の、名もなき、砂漠の町。
ひそひそひそひそひそひそ
石造りの、背の低い町並みは、
規模にしては大きめの防壁に取り囲まれ、
ひそひそひそひそひそひそ
入り組んだ路地の置くは、日陰に恵まれて多少はすごしやすい
ひそひそひそひそひそひそ
ターバンやらなんやらで、顔を覆った人間ばかりだ。
人のごった返す、町外れの市場。
柱を立て、布を張っただけの簡易なテントに、
適当な台と、砂漠を越えて運ばれてきた、無数の商品が並べられていた。
俺が立っているのは、西方から運ばれて来た衣服の店。
周りに目を向ける。
ざわ …… ざわ ざわ
俺の周囲、俺を見ていた連中から、
あからさまに視線をそらされ、俺は鼻を鳴らした。
何だよ。どいつもコイツも、文句があるなら堂々と言いにきやがれ。
さっき、工房に行って来る最中も、ずっとこうだった。
ちらりと、木造の、屋台に視線を向ける。
店主が、だらだらと汗をかきまくりつつ、愛想笑いを浮かべていた。
なんだ。コイツは。
俺は商品を受け取り、現金を払う。
その拍子に、店先に置かれていた鏡に、俺の姿が写っているのが見えた。
俺はあわてて兜を脱いだ。
「あ、ありがとう、ございま、ました……!」
俺が顔を出したせいか、どうにかきれぎれだが言葉を吐いた店主に頷きを返してやりつつ、
俺は、俺に向けてスティールランスのシールドを構える、町の衛兵の前を
「ああいや、旅の連れがね。服をぼろぼろにしてしまいましてね?」
などと言わなくてもいい事を言いながら、町の外にでて、猛ダッシュをかけた。
ああ。うん。ちなみに今現在の俺の装備を言っておこう。
神龍木で作った笛と、オウビートと呼ばれている虫の甲殻と翅を使った防具一式である
ははは理解したな?
ついでに、俺の持っているものも言っておこう。
・服、女物一着(下着込み。
・女ハンター用防具一式。
・子供用一着(下着込み。
どうみても不審人物です本当にありがとうございましたぁっ!
<ハニー・ザ・ホルンと炎妃龍>
砂を踏む、重い足音が一つ。軽い足音が二つ。
俺が一歩を進むたびに、三回。歩幅の都合で、二人合わせると俺に対し1対3の割合になる。
あれから、一日。昼は休み、夜だけ歩いた。
幸いにして、次の朝日が出る頃、目的の場所が見えてきた。
地平線の向こう、点も同然に在るは、大きな白の岩壁。……街だ。
砂漠に出るハンターたちの拠点として使われる場所で、
田舎ゆえ、購入できる装備品は大したものを期待できないが、
道具ならば、かなりの水準で揃えられる。
あの、巨大なテオ・テスカトル。
【炎龍帝】に、再度、補足される前にたどり着けたのは僥倖だった。
俺がよし。と声に出して頷く。と、
「……具体的には、どうするつもりだ?」
掛けられた、ハスキーな声に、俺は立ち止まって、後ろを振り返った。
声の持ち主は首をかしげ、深い紫の、つりあがった瞳の上、眉の間に、皺を、ほんの少しだけよせて、
白い頬の横を、僅か紫がかった黒髪が流れ落ち、毛布を裂いただけの外套を纏った肩に乗っている。
酷く、美しい少女が、俺を睨んでいた。見た目は十代の後半、実際の年齢は不明。
その隣には、そっくりの顔立ちをした、幾らか幼い少女が、年上の少女を、紅い瞳で見上げていた
共に外套だけの姿で、体は、俺の要望によりしっかりと隠されているが、
裾からは細い太ももがのぞき、膝からしたに巻きつけられた毛皮が見える。
何より目を引くのが、もみ上げの後ろから突き出た耳。
紫色の毛に覆われた、ふさふさの耳と、ふわふわの耳。
今も、暑いのかそうでないのか、頻繁に、仰ぐようにして、動かされている。
彼女達は、人の姿をしているが、人間ではない。
炎妃龍。ナナ・テスカトリ。
その、母娘だった。
俺は、彼女達に向け、首をかしげた。
「何が?」
俺の間抜けな顔を見て、母親ナナ・テスカトリは、呆れ気味の声をかけてきた。
「……聞くが、貴様、何も、考えなしに、私達を助ける、と言ったのか……?
何か、考えがあるの……だろう?」
最後の問いは不安げなものだった。
……。
おお。
「……すまん……説明してなかった」
最後の頃には、俺の考え、言わずとも皆、理解してくれてたからな。
……悪い癖が付いちまった。
俺は、ぽりぽりと、頬をかきながら、クァタトレイナ。母親ナナ・テスカトリに視線を向けた。
「なぁ、ひとつ聞くけどさ」
大体、予想はついてはいるんだが。
「……お前等は、飛べるか? そして、飛べたとして、……アイツより、早いか?」
「……私の翼は、……どうにか、滑空出来るぐらいしか癒えていない……」
レナは眉尻を上げ、悔しそうに、声を唇から滑り出す。
俺も思い出した。
……クァタトレイナの左の翼はヘヴィーガンナーが拡散弾で。
右の翼は突き上げと砲撃で、ガンランサーがズタズタにした筈だった。
俺は、片手剣使いと一緒に、クァタトレイナの元に向かおうとするテオ・テスカトルを足止めしてた。
――うわっちゃぁ。
思い出して、顔をしかめちまった。
それを見て、瞳を細めたレナが、不機嫌そうな顔のままつぶやく。
「……気にしたければ、気にしろ。結果は変わらないのだからな」
俺は、苦笑する。
「気遣いをありがとう、な」
「……ふん」
レナは鼻を鳴らして、続ける。
「ヒアペレイアは、まだ飛べないし、」
レナを見上げていたヒアペレイア――娘ナナ・テスカトリの顔が、申し訳なさそうに下げられる。
「ごめんなさい……」
外套の下に在る細い肩に、レナが掌を置いた。
「お前が悪いわけではない。気にするな。……私が完全だったとしても、向こうの方が早いのだろうからな」
俺もうむうむと頷いた。
予想通り。だし、な。
イニチシアティブを握れるのは、向こうだけ、ということだ。
「……確認しとく。何処に逃げたか、ごまかす。というのは通用しないのな?」
「……私達と、炎王達が、どうやって出会うと思う?」
「いや、しらねぇけど」
「その気になれば、この砂漠全域、私達をかぎ分けられるだろうさ」
「……そんなに鼻、いいのか? 猫っぽいのにな……」
「残念だろうが、目もいいぞ?」
皮肉げな、からかうような声に、俺も笑う
「口の中でコヤシ玉爆発させといて大正解だったな」
……だが、いつまでも持つわけではない。
消臭玉、ずっと投げ続けてるわけにも行かないだろうし。
なら、結論は一つだった。
「最終的には、ぶっ倒すしかねぇな……息の根を止めるか、再起不能にするか」
「……どうやって、だ?」
「正面切って。だ。ただ、俺一人じゃ、ちとキツいから……」
瞳が細くなるのを感じた。
思考に砥石を研ぎあてて、俺は、純粋に、どうすれば効率よく殺せるを、考える。
「……何人か、優秀なハンターを確保して、攻城兵器のある街に立てこもって……
その両方を満たす街に、いくつか心当たりが在るから。……そこを目指す。
目指して、たどり着いたら、……一戦でしとめる。続くと厄介だ」
言い切ると、僅か息を呑む音が聞こえた。
音の主はレナ。
「なんだよ?」
ヒアも、俺と同じ、不審げな顔をして、レナを見ていた。
「……いや、なんでもない……」
そか。
うーむ???
「……しっかりしてくれよ」
「……ああ」
首を振ったレナが、頷いた。
一瞬だけ、唇を吊り上げる自嘲の薄い笑みを浮かべていたが、
俺の視線に気付いていたのか、直ぐに、元の無表情な顔に戻る。
「……なんでもない」
そう、俺の目をまっすぐ見て、言い切った。
……なら、そういうことにしておこう。
思考を意図的に切り替える。
――しっかしやっぱり俺、駄目人間だわ
あんだけヘコんでたってのに、モンスターと戦うことになった時点で、もうやる気になってやがる……。
気をつけなければいけない。
俺の目的は、あくまで逃がすこと。
俺は、もう、絶対に、気を取られては、いけない。
「……何か、提案とか、疑問点とか、他に方策のあてとか、あるか?」
「……いや……」
最後に、レナに問うた。
優先順位を、絶対に。
絶対に、忘れない。
それは、自分の愚行で、自分の全てを失った、自分の心の空虚が求めるゆえに。
俺は、彼女達を守りたい。
ただ自分の為に。
……って最悪だな俺。どれだけ自己中心的やねん。
レナは、沈黙し、それから俺を見た。
瞳が細められている。
「……だから、なんだよ?」
何かある顔だよな。それは。
「……何も」
だが、レナは首を振る。
その後、ヒアを見た。
「……お母さん……?」
「……おい?」
か細いヒアの声と俺の声。
「……。なにも、ない。さ」
だが、レナは何も言わない。
「……そ、か。……ないなら、いい」
「……ああ」
レナの後ろ、俺にしか見えない顔で、眉を下げ、ヒアが俺を上目遣いで見ていた。。
俺は、一度だけ、視線を合わせ、頷いた。
……レナ以外に頼れる者は俺だけだろうしな、
レナは、街を見ていて、気付かなかった。
……コイツ、考え事をするとき、その対象を、ずっと見る癖があるよな。
街の傍、岩の陰で、二人を待機させた。
で、冒頭に戻る!
ざっしゅ。
砂を蹴って、着地。
町から、僅かはなれた、岩の陰に、半ば呆れたような顔をしたレナと、感心したような顔のヒア。
強壮&強化付きな、超高速で戻ってきた俺に向けて、
元の調子に戻ったレナが、耳を下げながら、片頬を引きつらせつつ
「……まるでゴキ、」
言うなせめてカンタロスにしてくれ
「何、やってきたの?」
と、小首をかしげ、ふわふわの耳をぱたぱたさせつつ、ヒア。
お前な。俺を殺す気か?
さわりたいわ!
ともかく。俺の手に持っているものを見ている。
俺は、それを突き出した。
「服を、用意してきた」
折りたたまれた、衣服。
二人はそれを見て、ん? という顔をする。
レナが、小首をかしげた。
拍子にはらりと、頬に流麗なもみ上げが落ちる。
「そんなものの為に、わざわざ一人で行ってきたのか?」
瞳を細め、語尾は上がる。本気でいぶかしんでいる顔だ。
「……あのな。おい。その格好のまま町に入れるはずないだろうが」
「駄目なのか?」
駄目にきまっとるわい。
「……というか、何故、そんだけ俺達の言語話せるのにこんなクリティカルな情報を知らないんだよ」
言うと、当然ながら、レナは眉の間に皺を寄せる、不機嫌そうな顔をした。
というか、まぁ、俺と会ってから、常に不機嫌なのだが。
「悪かったな……。私は、人間を、ハンターしか見たことがないのだ」
ちょっと待て。
「……すっぽんぽんのハンターを、か?」
「アレは、甲殻の代わりだと思っていた……。以前、街の上を飛んだとき、
服を着ていない人間も見たしな」
「居ねぇよそんな人間」
俺が首をゆっくりと振っていると、更に不機嫌になったのか。
「逆に言うが、貴様は、私達の事を、どれだけ知っている?」
――マジごめんなさい。
「……んじゃ一応、言っておく。人間は、素っ裸で居る状態を恥ずかしい。と認識する」
「……難儀な生き物だ……」
どっちがだ。
「……いいから、これ、着てくれ。あの街に俺の荷物が置いて在るんだ。
打ち合わせしただろ? 今日はあの街で宿泊して、旅の準備して、明日には発つぞ。
ほれ、来てくれ。……今更だが、俺後ろを向いてるからさ」
散々眼福させてもらっといて、本当に今更だ。
俺は、衣服を押し付ける。
レナが細く白い腕でそれを受け取り、そして、その小さな顔をゆがめた。
鼻を、服につけ、一瞬うごめかせると、俺を睨み付けた。
「……これは、貴様……?」
顔をしかめたレナが、次の言葉をつむぐ前に言う。
「何があろうと、お前さんらにはそれを着てもらう。お前には、その必要性がわかる筈だ。
モンスターの甲殻を加工して作ったものだ。……お前さんらの甲殻と、同じぐらいには役に立つ。
たとえ、不快でも、お前さんらは絶対に着なければならない、いや、着る。
そうだろ?」
一瞬、何かを言い返そうとしたレナだったが、
仕方ない。と言わんばかりに、やがて頷いた。
俺は後ろを向いた。
10分経過。
「……ハンター、」
「……なんだよ」
声を掛けられて振り向く。
「……こう、で、いいのか?」
そこにはぱんつをヒアの頭にかぶせたレナが居た。
「駄目すぎるわ!?」
10分かけてそれかよ!
俺が叫ぶと、レナは狼狽したようにヒアの頭を、正確には頭に被せられた布を見る。
「だ、だが、大きさは丁度いいような……?」
いや確かにそうだがな。
はい、そこ、そこの君。ヒア。ぱんつかぶった頭抑えないの。
「……っ」
耳を震わせて、哀願する様な顔をこっちに向けたって、駄目……駄目だっつの。
気に入ったのかおい?
気に入るなよ……。
と、俺が気を取られているうちに。
「……ふむ……これは……人間の感覚というのも、……なかなか悪くはない……と思うのだが……」
そっちを見た。
レナがバトルフォールドを首に巻いていた。
「それも鬣じゃねぇよ!?」
ヒアの頭のぱんつを剥ぎ取りながらいうと、娘の表情にか、俺の言動にか、
不満げな顔を、レナが此方に向けてきた。紫の瞳が鋭く細められる。
「……いちいち本当に五月蝿いな貴様は。ならば、貴様が私達に付けてみせろ。
そもそも、私達は、そんなもの、纏いたくはないのだ」
俺は沈黙した。
……。
ごくり。
あ。いや、ごふんごふん。
マジ?
俺は、レナとヒアの足元に片膝をついて、マーノをはずして、ぱんつ二枚握り締めていた。
ちょっと緊張気味だ。
何せぱんつ握り締めて、裸の少女二人の前にひざまづいているのである。
コイツ等はいいとして、他の人間に見られたら俺はきっと
プォオオオオーーーーーーン!!
__________
/━━━━━━━━━ \
|┃| ̄ ̄|. 〇 〇 [ポッケ]┃|
|┃| ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|┃|
|┃|__||______|┃| 人生オワタ
|┃ JR ┃|
|┗━━━━━━━━━┛| \(^o^)/ ミ
| ━━ ━━ ━━. | ( ) ミ
| [ポッケ.光速] | └└ ミ
| \(^o^)/ .|
| 〇 ━━━ 〇 | . ┌────────────
|___________|. │
│ │[=.=]| | │
└─────────┘ │
/ \ │
だしな。
「えー。人間が触っても、いいのか?」
すこし、気になったので、そう、裸身を見上げながら言うと、
レナは、にが虫を噛み潰したような顔をする。
「……3度目は、言わん。噛み付くぞ?
貴様は私達に与える者、私たちは貴様に与えられる者だ」
歯を食いしばって、耐えるように言われた言葉に、俺は黙った。
「ヒア、少し、足あげてくれ」
もはや、言葉は交わさず、白い足首に手を伸ばす。
本当に細いそれを、布切れに通し、反対側の足も。通す。
「ん……」
この年代の子供の頃、特有の、細長い太ももや、薄い肉の尻にふれると、
ヒアがくすぐったそうに、耳をぱたぱたさせる。腰まで上げて、履かせる。
人間の体温より、高いのだろう、柔らかな肌に、指先が触れると熱い
「っ……」
あげ終える。
眼前には、白い布に包まれたゆるやかなラインを描く丘が
「あ……」
変な声を上げるな。
……いかん。変な気分になってきた。
ええい、子供に服着せてるだけだぞ!
俺は巨乳好き巨乳好き巨乳好き巨乳好きー!
「……しかし……」
「な、なんでしょうか!?」
俺が思わず上ずった声を上げると、レナが一瞬だけ首をかしげた。
ヒアを見ながら目を細めている。
「……? ……いや、薄いな。と思ったのだ。私達は追われる身なのだぞ?」
ヒアもハンターの装備がいいか? でも、
「子供用サイズは無いからな」
ちょっと、一工夫入れた。
「心配は要らん。このぱんつはただのぱんつだが……」
俺は別のところから、やや厚手の白い、ぱんつ……つか……キリンの皮で作られたパンツを取り出す
オーダーしたサイズ小さめなキリンのレガースだ。
……。
頼んだとき、ものすげー変な目で見られた。
て。
これもハンター装備だな。むしろ強力なものか。
どうみても下着なんだけどな。
「こっちを上にはいてもらうさ。キリン革の防具は、お前さんらの甲殻なみには丈夫なんだぜ?」
あと、胸当てもキリン装備だ。
俺、男かつカリピストなんで、キリンの材料はまったく使ってなかったのが幸いだった。
そのまま、変な気分に……なって、なってないぞ俺。
ともかく! 最後、靴下を太ももまで上げてやる。
ヒアに、一通り、服を着せ終えると、
「……ふむ」
石のでっぱりに腰掛けたレナが、俺に向け、片足を伸ばしていた。
ええい。堂々しすぎだわ! 見えとるやないかいいろいろと!
「……早くしろ」
はいごめんなさい。
足の毛皮をはがすと、白い肌が目に映る。
つややかな爪の生えるつま先に、白い布を通した。
「足持ち上げて」
声と共に、太ももまでが持ち上げられ、俺は、半ば抱きつくような形で、腰まで上げる。
何やってんだろうな。
更に、キリンレガースを履かせ、ふくらはぎの固定具を止める。
両手を。ほら。ってな感じで上げたレナ。
薄い、けれど女性の曲線を、しっかりと持っている胸が、当然のごとく突き出される。
なるべく見ないようにして、後ろに回り、胸当てを着けて、
「おおう」
「……どうした?」
「いいやなんでもあーりません!」
柔らかな胸に指先が触ってしまっても無反応。
ちょっと残念に感じつつも、ともかく、わき腹のファスナーをあげてやる。
「んむ。OKだろ」
俺は、正面に回ると、頷いた。
服自体は基本的にレナはハンターの防具。ヒアは普通の旅装。
レナは、角の痕がかなり邪魔になるので、守護のピアスで済ませた。
フルフルの胴体防具と、キリンのアームとレガース、腰にはバトルSフォールド。
……品揃えがバラバラなのはしょうがない。
この街にあった品物で最高なものと、あとはヒア用のキリン防具に使った材料の中途半端なあまりだけだからだ。
レナは麻で作られた、薄い砂色のワンピースだ。下にはオーダーのキリン一式、
頭だけ、角が生えかけているので、ハイメタキャップを額当てとして乗せてある。
二人とも、外套は共通で、肩周りにボーン風なショートマントを付け、腰を絞り、
裾をスカート状に、僅か膨らませたロングな、サイズ違いの薄いコート状のものを着ている。
砂漠では、マントだけは欠かせない。
着ていると熱いのだが、それは仕方がない。俺も、鎧の外に纏っている。
昼は絶望的な日差しから肌を、夜は凍るような寒さから身を守ってくれるから、だ。
得に昼は大事。
……こいつらなら、日差しは大丈夫かもしれないが。
他の人間に不自然に思われないためだけにでも、つけておいた方がいいだろう。
ヒアが自分の姿を見下ろしている姿は、少し、嬉しそうに見える。
俺は、右の人差し指をつきつけた。ヒアが見たのを確認し、ぐるり。と一回まわすと、
少女がくるり。と回ってスカートと外套の裾が翻る。
左から額をべきっ。と強く叩かれながらも、俺は思う。
ドドブランゴとキリンよ、ありがとうさようなら。
二人は落ちつかなげに自分の服装を見下ろしたり、お互いの格好を見て、
苦笑いを浮かべている。
強い日差しを受け、眩いばかりにエンジェルハイロウを見せる黒髪は、二人ともそっくりで、
髪型は、前髪をわずかカールさせ、背中、腰まで流している、曰く。ナナストレートと言われるそれ。
紫がかった黒と、砂漠の太陽を受けたら、火膨れさえ起こしてしまいそうな白い肌のコントラストが美しい。
……。
「……なんだ。じろじろ見て」
「いや……、」
俺は苦笑しながら一瞬、言うかどうか迷ったものの
「あんた達、人間としてみると、物凄く綺麗だからな」
一瞬、レナが硬直するが、
「ふん……どうでもいい話だ」
次の瞬間には鼻で笑われた。
「人間の顔は……解らない、から……な。
人間で在ることが不快である以上……どう言われても不快にしか……。……なら、ない」
言いながら、レナは、裸の膝を、熱されているはずの砂へ、無造作に付くと、
膝立ちで、ヒアのぷにぷにした頬を後ろから引っ張った。
「ぬ、おひゃあさぬ」
「……この子は、……確かに可愛い、がな…………。人間の姿をしていようと、子供は、やはり、な」
親馬鹿だな。いや、馬鹿親か
俺は笑った。
「俺もそう思うさ」
元馬鹿親としては、な。
いかん。ものすごいドレスとか、フリルつきとか、逆にキリンやらボーンのみやらの格好も……
いやいや、旅暮らしは決定済みだからなぁ……
うおおおおおおおおおお
「おひゃああん、ははして……」
「ん? ……ああ。すまない。ついな」
「……おかあさん。あの、なんで、この人、地面転がってるの……?」
「……さあ。私に人間の事を聞かないでくれ。なにか深い理由が在るのだろうとしか言えないからな」
俺は立ち上がって、咳払いして、砂を払う。
レナの生暖かい視線と、ヒアの純粋な好奇心が痛かった。
「……行くぞ」
一歩を踏み出すと、二人は、もはや躊躇なく俺の後に続いてくれた。
だが、俺は後ろを振り返った。
何だよ。といわんばかりに、俺を見ている二人に一言。
「耳はしまってくれ」
ばさり。と、もみ上げの中に四枚のナナ耳がしまわれる。
胸を張って、衛兵の前を通った。
太陽が高い位置に上り始めた。
さっきよりも、市場は人の密度が増している。
マントの谷には、布の巻かれた頭・頭・頭。
砂漠の旅は夜に行われることが多い故、昼間は、旅人は町で休んでいるからだ。
砂漠に出る、もしくは砂漠から帰っていくハンターたち。
砂漠を越えて品物を輸送するキャラバン。
彼等に宿を提供し、品物を売り、そして買う、この街の住人たち。
市場の中央、小さな出張集会所の前で、小さめドスガレオスを捕獲したハンターたちが、
街の役人へ自分達の活躍を語っていた。
活気あるやり取りのなか、強引な客引きの声や、彼等の隙間を歩くスリを、俺は視界の端に捕らえている。
……一応、念のため。
「レナ」
「なんだ」
「ヒアの手を握っていろ」
「……解った」
「ヒア、レナにひっついてろ」
俺はつぶやきながら、歩く速度を緩めた。
一旦、後ろを振り返る。
ヒアの手を握ったレナが、嫌そうな顔をしながらも、ヒアを間に挟んで、俺との距離を、
直ぐ触れられるぐらいにまでは狭める。
俺の視線に気付いたのか、顔を背けた。
幸い、雑多なものがあふれる場所だ。それほど、レナとヒアも目立ちはしない。
俺は、兜をかぶりなおした。蒸れるが仕方がない。オウビートって迫力在るおかげで歩きやすいしな。
多少、二人の美しさに目とられられた男の視線が追いかけるが、二人は気にも止めはしない。
「……くさい……」
ヒアがレナと、俺にしか聞こえない声でつぶやいた。
くぐもって聞こえるのは、袖口でも口に当てているのだろう。
「……人間が多すぎるから、な」
同じように幾らかにごったレナの言葉にこくり
「……わるい。我慢してくれ」
俺の言葉に、……こくり。と、幾らか躊躇の後、それでも素直に頷いた。
……ような動きを感じた。
腰のアイテムポーチからしなびた落陽草と素材玉を出し、歩きながら合成。
数歩前に投げ、ヒアが通るタイミングで、効果を出してやる
背中に掛かる、クリアな声。
「……あり、がとう……」
顰められている顔は、きっと緩やかなものになっているだろう。
「どういたしまして」
正面切って顔を見せても、オウビートな俺は怖いだけだろうから、声に笑みを乗せた。
歩きながら、もう一つを作り、右手に乗せて肩の外、どう? といわんばかりに上下させる。
「……私にまわすぐらいなら、全てヒアペレイアに」
「あいよ」
てな事をやりながら、俺は、二人を連れたまま、一通り市場を巡って買い物をする。
「……悪いが、レナには完全に、ヒアにもそれなりに荷物を持ってもらう
道具の数を揃えられるなら、そっちの方が良いからな」
幸いにして、二人とも、細い体躯ながら、体力、筋力ともに、俺よりも有るくらいだ。
二人とも、直ぐに頷いてくれた。
だから俺は、かなり買い込んだ。
素材玉 ハチミツ 爆薬 ハチミツ 各種タル ハチミツ 音爆弾 ハチミツ 砥石 ハチミツ
「待て」
こんがり肉 ハチミツ ネット ハチミツ トラップツール ハチミツ コールド&ホットドリンク ハチミツ
「あ、あの、」
ゲネポスの牙は一杯あるからその分でハチミツ
「おい、聞いているのか?」
ブーメランもフルに有るからその分でハチミツ
「……あ……」
カクサンデメキンは使ってないからその分でハチミツ
「お、お母さん!」
「次は、ハチミツと、ハチミツに、ハチミツだろ? あとは――」
俺が8件目の屋台で、ドスビスカスハチミツの品質がどうか、瓶とにらめっこしていると
「待て! 待て待て待て待て待て待て待て待て! ちょっと待て! 全力で待て!」
後ろから絶叫が叩きつけられた
「な、何だよ。……え? 俺、何か変なことしたか?」
「変な事しかしていないだろうが貴様!?」
俺は後ろを振り返る。
ハチミツの瓶を抱えたレナとヒアが居た。
琥珀色が美しい。
レナはなんでだか俺を睨みつけていた。
「あのな……? 私は、必要だから、荷物を持つ。と言ったのだ。
……だが、こんなに、これは、必要、か……?」
お前さんは何を言っているんだ
「……必要だろう?」
「こ、この、液体が、か……?」
言って、レナは胸に抱えたハチミツに視線を落とす。
「必要だろう」
「……こんなに必要、……なの、か?」
「必要だ」
「そ、そうか……?」
「あのな」
俺のつぶやき、言いかけると、レナが何度も頷いた。、
「待った。ああいや、わかった。解った。……解った。……解ったからな?」
そうか。解ってくれたか。
「……だ、だが、な。他に持つべきものも在るのだろう? このままでは、私達はハチミツに埋もれてしまう。
そろそろ、他の準備をしない、か……?」
なぜか狼狽し、視線を左右にさまよわせ、抱きついているヒアを、
何かから守るようにして、レナが問うて来る。
だが、俺は意味がわからなかった。ハチミツに埋もれるって、それは幸せだろう。
何の不満が在るのだろうか。
俺はふと視線を感じて、周りを見回した。
人垣が出来ていて、俺達の周囲だけ、ぽっかりと空間が出来ていた。
俺が視線を向けると、先ほどと同じように、あからさまに視線をそらされた。
……。
俺はおもむろに、代金未払いドスビスカスハチミツを返すと、
つかつかと、おもむろにレナとヒアに近寄り、二人の右手と左手を取る。
「お、おい」
「あ、あの」
声を詰まらせ狼狽するが、その狼狽ゆえに、二人は抵抗しない。
直後、俺は猛烈にダッシュをかけた。
またやっちまった!
たどり着いたのは、市場の端。
人通りがいくらか疎らになり始めた、石造りの通り。
俺の後ろで、疲労というよりも驚きでもって、レナとヒアが息をついていた。
俺も、蒸す兜を脱ぐ。
「き、貴様、な……」
「い、いやすまん。そ、その、うん。いつもの事なんだ」
まぁ、なんだ。
その、つい、ああなっちまうというか。
アレだ。
うん。ハンターにハチミツは必要不可欠であるが故、
根っこがハンターである俺には、ハチミツをついつい溜め込んでしまうのだ。
うん。そう言うことにしておこう。
以前ココット村って場所に逗留した時など、1ページ全部ハチミツで埋めたっけなぁ……
ハチミツが、
こう、
ずらーっとならんで
ああ……
あの時は、幸せだった……
あそこに住もうとしたんだけど、仲間に引っ張り出されてなぁ。
はっはっは。
「はっはっは。蜂蜜は魔性の存在だよなぁ……」
「貴様は異常な存在だがなぁ……」
そんなに地の底から響くような声で言わないでもらいたい。
「ハニー・ザ・ホルンは伊達じゃない! ……駄目な方向にな!」
叫びに返された、殺意さえこめた視線を受け、俺は目をそらした。
目をそらした先、俺が手を突いているのは、
白い砂岩の建物が並ぶ中、明らかーに浮いている、
黒の岩石と、黒鎧竜の外殻でもって作られた建物の外壁だ。
どっしりとした外壁の迫力は、要塞をも思わせる。
ここは、俺が懇意にしている宿だ。
この街に、ハンターOK……つまり、危険物持込OKな宿は二つしかない。
一つは、ギルド直轄の宿。やや大きめかつ値段も安い。
ただし、俺はギルドが苦手だ。
一つは、ここ。
ぶっちゃけ値段ものすご高い。
「で……ここは、何処だ?」
レナがその、黒い建物を見上げる。
「宿だ」
「ヤド?」
ヒアが首をかしげて聞いてくる。
はらり、と髪の毛が肩から落ちて――
「耳見えてるぞ。」
ぱさり。
「ええと、だな。ヤドっつーのは、お金――代価を払って利用する、一時的な巣のことだ。
だから、ほら、町の中に入るとき言っただろ? 俺の荷物が、ここに置いてあるんだ」
たいした量ではないのだが。
ふぅん。と、よくわかっていない感じに、ヒアがうなずく。
俺は、無言のまま、わずかに微笑み、黒檀で作られた重厚な扉を開く。
頬にあたるのは、涼しい空気
一歩を踏み出せば、板造りの床がきしむ。
店内には重厚なつくりの丸テーブルがいくつか並び、昼間だというのに、窓の少ない店内は、
小さな、趣味のいいランプの明かりに照らされて、紅い
店内は涼しかった。
客は、少なくとも見える範囲には居ない。
「これは……」
俺の後ろ、入ってきたレナが小さくつぶやく。
涼しさのこと、だよな?
「……あれか」
あれだな。
俺とレナの視線の先、黒壁に突き刺さっているものがある。
ランプの灯りを受けて、なお冷たく輝く、無数の板を扇状に張り合わせたように見える、巨大な刃。
大剣 ダオラ=デグニダル。
昼間の間、この宿では冷房代わりとして使われているものだ。
「趣味が悪いな……」
「お前さんらからすれば、そうなのかもな」
つぶやきながら、さらに一歩前へ、
並んだテーブルの向こう、これまた木製のカウンターがあり、
カウンターの奥で、30がらみの女が、日に焼け、しなやかな筋肉のついた腕で、グラスを磨いていた。
見た目は俺とそれほど変わらない。二十台の後半。
すらりとした長身の上、面長の顔立ちを奥のテーブルに向けていた。
奥に居る客とでも話しているのだろう。
ケルビの尻尾の様に束ねられた明るい茶色の髪が、こちらに向いていた。
「いらっしゃいませ――」
扉につけられていた、甲殻のベルの音が響き、こちらにその鳶色の瞳を向けた。
「何。ハニー? あらら?」
俺はしかめっ面をした。だからその名前で呼ぶなと。
俺であることを確認すると、商売用の静かな微笑みから、親愛の深い笑みに変えて、
「おかえ――ら?」
言いかけて止まる。
表情が、更に変わる。
おい。
なんだそのにまーっとした笑みは
「お帰りだろう? ピタフ」
俺は、不機嫌な顔を作って、カウンターに、ピタフという、この店の女店主に近寄る。
「ええ、お帰りなさい。ハニー……で、」
ピタフは俺の後ろに続く二人に視線を向けて、
「今にも自殺しそうな顔で出てったと思ったら、まーったかわいい娘たち連れてきて。
いったい、どこからさらって来たのかな?」
「攫ってねぇよ」
てか自殺しそうな顔て。
ンな顔してたか?
……してたか。
「……ちょっと、厄介ごとに巻き込まれてな。ええと、とりあえずメシ。肉多めで三人……四人前で」
どたばたしている(主に俺が)うち結構な時間が経っていた。
ちょこっとばかし早い昼飯だが、……腹へったしな。
「解った。待ってて」
言って、俺は最も奥のテーブルに向かう。
足音が、俺を付いてきて、途中でとまった。
まぁ、なぁ。立ち止まるのも仕方あるまい。
俺はとりあえず無視して、奥のテーブルに着くと、イスに座る。
視線を、途中の通路に向けた。
俺の後ろをついてきたはずのレナとヒアが、途中で身をすくめている。
その、二人の視線の先、一つのテーブルに三つの影がある。てか、影つーかなんつーか。
それは三人のハンターだ。
ゲリョス皮を使った鎧に身を包み、激槌オンスロートを背負った男(?と
キリン革を使った防具に身を包み、ミラバスターを背負った男(確定 と、
死神の姿を模した防具にもを包み、ヴォルカニック=ロックを背負った男(? だ。
三人に視線を向け、硬直していた二人だったが、
やがて、俺に向けてどたどたと走ってくると、レナは俺の襟首(というか胸部装甲の出っ張り)をつかみ、
ヒアはそのレナの腰に抱きついている。割かし本気で泣きそうだ。
「お、おかあさ〜ん!」
「だ、大丈夫だ、私がついている!」
何を大げさな。
俺の首をがくがくと揺らしながら、レナが言う。
「あ、あれは何だ!?」
指差すな。あと首揺らすのもやめろ
「みみりりゃゃわわかかるるだだろろハハンンタタ――だだよよ」
「ハンター?! あれもか!?」
「いいややつつららだだぜぜ?」
なぜか常に防具脱がないけどな。
「ハニー殿」
くぐもった声。
いつの間にか、レナとヒアの後ろに回りこんでいたデスロッカーが、
俺に向けて声をかけいた。
「「キャっ」」
その声にあわてて振り向くレナとヒア。
眼前に突き出された髑髏に、二人は、もんどりうってバランスを崩した。
とっさにヒアを抱き、支えようとして、当然自分もバランスを崩しているので不可能だったレナが、
むしろヒアを引き込む感じで俺のほうに、崩れ落ちてくる。
あーあ……
軽い衝撃。
椅子の上に座っていた俺のひざの上、レナの尻が来ていた。
バランスを崩しそうだったので、手を出して支えてやる。
流麗な髪の毛が一本、口の中に入ったので、静かに指を伸ばして出す。
レナはヒアを守るように腕に抱き、デスギアロッカーに半身が向け、たぶん睨み付けている。(俺の膝上で
ヒアは俺の方を見て、デスギアロッカーを指差すと、半泣きでがくがくと震えている。(レナの膝上で
いつの間にかデスギアロッカーの後ろに並んでいたキリンガイとゲリョスナイトが
それぞれデスロッカーの肩に手を置き
「漆黒」
「仮面仮面」
ぺたり、とデスロッカーが髑髏に手を当てた。
「おお、これは失礼。美しいお嬢さん方」
でも外さない。
髑髏が首をかしげる。
「お邪魔でしたかな。ハニー・ザ・ホルン。この街を発つ前に、あなたに御礼を、とお待ち申し上げていたのですが」
お前さんもそう呼ぶのな……
というか、また律儀だな。
「……そりゃ、残念だ」
「ありがとうございます」
俺とデスロッカーの会話に、レナが、ヒアを抱きかかえたまま此方を向いて、
紫の瞳を、刺さるのではないか。というほど鋭くし、にらみつけてきた。
「ハンター。知り合いか?」
「おお、これは失敬。自己紹介がまだでしたな。おい」
言って、デスロッカーが後ろの二人に振り向き、
後ろの二人がうなずいた。
俺のひざの上、二人がおびえたように身をすくめる。
俺は頬を引きつらせた。
あれ、やるのか。
じゃじじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃ!
ずがががががががががががが!
頭を壮絶な速度で前後に揺らしながら、
ヴォルカニック=ロックをすさまじい勢いでかき鳴らすデスロッカー。
旋律とさえいえない、それは騒音だ。
じゃんじゃかじゃかじゃか、じゃんじゃかじゃかじゃか
「あっなったのなまえをおっしえてくっださーい!」
甲高い、擦り切れる寸前の声で叫ぶデスギアロッカー。
その後ろでキリンガイがミラバスターを掲げ、叫ぶ。
「私の名前はキリン・ザ・ハンマー!」
更にゲリョスナイトが激槌オンスロートを掲げて、くぐもった声で叫ぶ。
「私の名前はゲリョス・ザ・ハンマー!」
デスロッカーが激音を撒き散らしながら叫ぶ。
「そして私が『漆黒の――
ミナミハルオでございま『『ハンムアアアアア!!!』』」
デスロッカーの後頭部にハンマーが叩き込まれる。
デスロッカーは地面にたたきつけられた。
後ろの二人がレナとヒアを見る。
二人は硬直している。
そのまま五分ぐらい経過して、デスロッカーが起き上がった。
じっとレナとヒアを見ている。
誰かなんか言ってくれ。
厨房から、何か焼く音が聞こえていた。
誰かなんか言ってくえー!!!!
「成程!」
レナがいきなり叫んだ。
何、その反応
「貴様等はゲイニンなのだな!?」
なんでやねん!?
目の前の三人が足を上げて綺麗にずっこける。
「お、おかあさん、ゲイニンってなあに?」
上を見上げるようにして、額越し、レナの顔を見るヒアに、レナは視線を合わせた。
「姉から聞いたことがある。人間には奇行を見せることによって日々の食事を得る者達が居る、とな」
間違っていないが間違っとるわ!
ていうか姉とか居るのか。
レナのセリフに、キリンガイとゲリョスナイトが、
床の上、顔をたたきつけているデスギアロッカーの肩をたたく。
「お、おい! 漆黒の! 壮絶な誤解を受けているぞ!?」
それも仕方ないような気がするがなぁ。
「く、これも、私たちの無能の証明……今は甘んじるしかない」
その三人のやり取りを聞いて、なんどもとうなずくヒアを抱いたまま、レナはこちらを見て、
「……ハンター、……知り合い、か……?」
なんでそんな嫌そうな顔をするんだよ。
「え、ええと、知り合いつーか何つーか……ええと、お前さん等んとこに行く前に、ちょっと共闘してな
なんか大量のダイミョウザザミがこの街に向かってきたからさ」
レナは俺の言葉に、僅か首をかしげ、つぶやいた。
「……成程。ゲイニン兼ハンターなのか」
立ち上がりかけていた三人がまたずっこける。
もういいや。
「ああ。かなり腕のいいゲイニン兼ハンターだ」
「ハニー殿!?」
ハニーって呼んだ仕返しだ。
ともかく、ダイミョウザザミ、その数、数百はあっただろうか。
今考えると、ありゃ<炎龍帝>から逃げてきてたんじゃないかね。
殻がないのもいっぱい居た。
「なぜか私たちだけ孤立しましてな
ハニー殿が救援に来てくれれなければどうなっていたところか」
そりゃデスロッカーとキリンガイとゲリョスナイトが揃ってれば、仮面オウビートでもなければ近づけねぇよ。
「そんな大げさなもんじゃないって。俺は後ろで笛吹いてただけだ」
っても、こいつらだけで100は潰してたんだけどな。
俺のしたことといえば、冗談抜きで、粉塵使って、砥石を渡して、後ろで笛吹いてただけだ。
それで十分だった。
気がつけば、200近い数を、屠っていた。
屠れるだけの能力を、こいつ等はもっていた。
残念というのは、そういうことだ。
こいつらは、貴族のお抱えハンターだが、一応ギルドには所属していて、
貴族がギルドに依頼し、それをこいつ等が直後に受ける。
という形で貴族の好き勝手にモンスターを狩っているらしい。
ギルド的にはマージン取れるんでOKだろうしな。
そこまで言うと、
「……成程、な」
三人に視線を向けたレナがつぶやく。
「はい。ご理解いただけて幸いです。ですが、申し訳ありませんでした」
言動はアレだが素直でいい奴らなんだ。
レナがゆらゆらと首を振る。
「私たちは苦痛を受けた。だが、実害はない。貴様等は、貴様らの糧を得る為の行動をしただけだ
それを、責めても仕方がない……いいな、ヒアペレイア?」
うなずくヒア。
「おお、ありがとうございます!」
喜んだ声で三人。
分かり合ったような気がするけど、分かり合ったような気がするだけだな。
「それでは、ハニー・ザ・ホルン。私たちはこれで」
「あ、……あ〜。生きてれば、また会おう」
「お嬢さん方、大変失礼いたしました」
「いや、いい」
「我が主に貴方のことはお話しておきます、近くにいらっしゃった時は、是非お立ち寄りを」
手を振り、外に出て行く三人にあわせ、ヒアも笑顔になって手を振る。
「ばいばい、ゲイニンハンター!」
三人はずっこけた。
「ふぅ……」
「はぁ……」
俺たちはそれぞれ別種のため息を吐いた。
疲れたよもう。
目の前で、レナとヒアも疲れたような顔をしている。
……。
「いつまで乗ってるんだ……?」
「……何にだ?」
レナがいぶかしげな俺に顔を向ける。
おいおい。
「俺の膝の上」
レナは俺を見て、
「……は?」
次にヒアを見て、
「あ……」
更にその下を見て。
「あ、あ、あ、あ、あ…… っ――」
奇声を上げたレナは、ヒアを床に立たせると、自分も立ち上がった。
……あー。なんか顔に怒りが漲ってるなぁ。
「貴様……!」
パンチぐらい、来る、かな?
「あ、あの、やさしくしてね?」
媚びて見上げつつ頬に手を当てくねくねしてみせる。
すると、怒りだけでなく、レナの額に血管が浮いた。
ああいかん精神的ダメージでもって怒り蓄積値が溜まり易くなっている!?
……自業自得だが。
で、こぶしを丸めてひっかくような、所謂猫パンチ!
レナの一撃が俺の額に直撃する
こん。と
やさしく。
「あれ?」
俺が額を押さえつつ、首をかしげると、レナは不機嫌そうに俺を睨んだ。
ああ、例によって眉間に皺が。勿体無い。
「なんだ……!?」
「あ、あいや、なんか火力が弱かったような……?」
「全力で殴ったほうが良かったのか!?」
ええ何でそっちを怒るの!?
「あ、あいや、うーむ。いや、そうでなくてな。だから、俺が、膝の上? 平気?」
だんだん怒りのオーラが増してくるのでカタコトになってしまった。
「平気ではない……!」
言いながら、ふん。と鼻を鳴らす。
「だが、バランスを崩したのは私だ……」
そういって、顔を背けた。
俺は沈黙した。
しばし考えて。
「つまり、不快を覚えた。我慢出来なさそうだった。でも不快を覚えた原因は自分にあるから、
ペチリとやっただけですましたと? 難儀な性格だなぁ……」
「解説するな!」
俺がしみじみというと、レナは、叫ぶ。
ヒアがくすり、と笑った。
足音。
俺たちは口をつぐむと、そちらを見た。
苦笑したピタフが、手に皿と、鉄板をもって、此方に歩いてきていた。
「大騒ぎしすぎじゃない?」
「悪い」
苦笑と共に、手に持った鉄板を、テーブルの上におく。
強く熱された鉄板の上、肉からあふれ出した油がはねている。
沿いつけられた小さな器には、魚竜のキモをベースにした、茶色のソース。
肉は、本当に山の様に積まれていた。
その隣、ゆでられたポテトやら、ブロッコリーやら、この辺りでは高い野菜が惜しげもなく乗せられている。
どん、と更に、パンが山盛り盛られた籠、フライの類の付け合せ、ドレッシングがかかったサラダのボウル。
コンソメに、丁寧に面取りされた野菜を浮かべたスープ。
どん。とおかれていたのは、木製で出来た、、薄いタルのような、オヒツ。だかなんだかで、
鍋で炊かれたライスが、たっぷりと盛られている。
「じゃ、ごゆっくり」
言って、ピタフが離れる。
実際の所、この店、ハンターよりも、一般の客のが多い。
ウリはこの、やたらうまそうなメシにある。
そもそも、この宿に来るハンターは、もぐりか、ギルドが嫌いか、後ろ暗いところがあるか、
このメシのファンか、もうひとつ、か。だ。
すごいぞ。ここは。
駆け出しハンターにそのメシただ同然で食わせたりもしてる。
値段は、基本的に安い。
良心的?
そうだな。ある意味じゃ。
金持ってる奴からは遠慮なくボるんだコイツ。
取れる相手からとってるので、安く出来る、のだ。
まぁ、ボられても平気な相手だろうから、ボるんだろうが。
おれはボられる方だ。
……この数年、追ってばかりいたので、素材一切使ってないから、なぁ。
まぁ、何処かの王族が召抱えてもおかしくない腕だ。
所詮はハンターでしかない俺が食えるだけでも感謝せねば。
いやまじでまじで。
昔は食い放題だったんだがな。
思考から戻る。荒い息が聞こえていた。俺は振り返る。
レナとヒアの、紫と赤に彩られた虹彩が、暗闇から出てきた猫の様に細く、小さくなっていた。
まさに、肉食獣のそれ、とでも言うべきか。
ていうかヒア、唇の端からたれてるのは何ですか。よだれですかおい。
「ハン、ター……」
うつろとさえ表現できるような、レナの細い声。
唇の端を、手の甲でぬぐいながら、紫の瞳が俺を見ていた。
ってお前もか。
「これ……」
「メシ。食事。エサ。なんでもいいけど。俺たちの食うもの」
「これ、わたしたち、たべて、いい?」
「い、い、の?」
なんで片言になっていますか。
俺は苦笑する。
「良いぜ? ただし、ちょっと待て。というか、イスに座れ」
指を指すと二人は座る。
俺は両手のマーノをはずすと、ピタフが丁寧にも持ってきてくれたナプキンを取る。
俺に視線を合わせているレナと、肉から俺に移したヒアの後ろに回ると。
その首に、ナプキンを巻いてやる。
マナー違反だけどな。
「はい。手袋外して、イスに座って」
素直に従う二人。きらきらと、目を輝かせて、俺を見上げてくる。
まるで、食事前に待てといわれた犬のようで、
いかん、ペットみたいでかわいいなぁ。
と、思った俺は既に終わってるな。
「あい、食って良いぜ」
二人がおもむろに手を伸ばす。
いまだ油のはねる鉄板に、白い指が押し付けられる。
次の瞬間には、手の中に有った肉が、二人の小さな口の中、一瞬で押し込められ、咀嚼されていた。
早!
というか!
素手でつかんでる!?
「ちょっと待てええええええ!?」
俺の声に、びくん。と震える二人。一瞬だけ、驚きに目を見開いていたが、
次の瞬間には、レナが毅然とした瞳で、俺を見てくる。
「なんだハンター。貴様が食っていいと言ったのではないか」
口べたべたで言うから迫力ないことおびただしい。
「言ったけど、食い方があるんだよ」
俺の言葉に、むっ。とレナが顔をしかめる。
「ならば、先に言うのが筋というものだろう」
ぐあっ、正論過ぎて言いかえせん……!
あああ、だからヒア、巨大なブロックを素手で持ってかぶりつくのはやめなさい!
「悪かった。悪かったよ。じゃぁ、食い方教える。教えるから……」
不承不承、肉を下ろした二人は、くちから手からべたべただ。
つーかナプキンつけることまではやってたってのに、何やってんだかな俺は……
俺は、手ぬぐいを手に取ると、
「ちょっと、口と手、拭くから、出せ」
素直に、4本の手が突き出される。
油にまみれた、白い手を取る。細い指と、その股の間に布をくぐらせる。
「……ん」
じっと、そのままでいる二人は、
「……む」
気持ちよさそうに見えて、俺は少しうれしくなり、
今度は、一枚一枚、桜色の小さな爪を、丁寧に磨いていく事にした。
ふと、思いついて、ポーチから薬液を取り出す。
取り出した別の乾いた布に、一滴たらして、爪をつやつやに仕上げてやる。
「ほら。元がいいから。綺麗になった。あんまり汚さんほうがいいな。もったいない」
いくらか、ばつが悪そうに、レナが呟く
「……誰のせいで」
俺のせいだな。
「だからまぁ、綺麗な食い方も教えるよ。……その前に口出せ。いや、出さんでいい」
俺は立ち上がると、手ぬぐいの方を折りなおして、二人に近寄る。
「ま、待て」
「待たんね。せっかく綺麗な顔……」
人間のはわかんないんだっけか。
「ともかく、顔が汚いままというのはもったいない。もとい問題だ。つか、お前さんも気分が悪いだろ」
適当なことを適当に言いつつ、布を顔に近づける。
細い眉を顰めるが、抵抗はそれだけで、
俺が、その白い頬にべっとりと張り付いた、肉汁と油の入り混じった汚れを擦りはじめると、
レナは不承不承といったかんじに目を瞑った。
傷つくもんでもないと思うが、頬を静かに拭ってやる
最後に、赤い唇の微かな皺にそって、先を細くした布の端で擦ると、
「んむ。OK」
無表情に俺を見てくるレナから視線をそらして、ヒアを見た。
「ん〜」
こっちは、既に目を瞑っているのだから楽なもんだ。
細い顎から首、薄い赤の唇に、鼻の頭にまで、油が飛び散っていた。
すべすべした肌に布を滑らせ、油が残らないよう、汚れを取ったやる。
ドサクサに紛れ、瞼と、小鼻、おでこと、生え始めの角まで拭いたぜい。
「うよし。OKOK完璧完璧」
「……貴様は、」
いつのまにか、俺の顔を、レナがじっと見ていた。
なんだよ。
「貴様は、ずいぶんと嬉しそうに、私達に傅くのだな」
……は?
いつ・く 【▽斎く/▼傅く】
(動カ四)
(1)心身の汚れを去り神に仕える。《斎》
「此の三柱の神は、胸形君等の以ち―・く三前の大神なり/古龍記(上)」
(2)神に仕えるような気持ちで大事に世話をする。《傅》
「海神(わたつみ)の神の命のみくしげに貯ひ置きて―・くとふ玉にまさりて/万龍集 4220」
おいこらせめて世話とか言え!
俺は、幾らかの気恥ずかしさを感じ、ごまかすように頬を掻いた。
「そんな、嬉そうな顔してたかね?」
人間の顔、わからんのじゃなかったか。
「随分と、な」
そうかい。
って、よく見ると、なんだよ。なんでうっすらと笑ってんだよ。
「……なに。貴様が、私達を、甲斐甲斐しく、そしてせせこましく世話する様は、
なかなか似合っていて、見ていて愉快だったのでな? ハンター……ハンター?」
二回言うな。
自分の言葉に、一瞬だけ、目を細め、そのまま、レナが一度うなずく。
「うむ。いいだろう」
何がだよ。
「貴様は、その顔がいい。と言ったのだ」
「は、はい?」
俺はいくらか動揺しつつ、首を傾げてしまった。
って何首かしげてんだ。来年三十路だぞ俺。
俺から、レナが唇の笑みはそれまま、視線をそらす。
「……私達の世話は、貴様の喪失を、どうやらいくらかでも安らがせるようだからな?
どうせならば、そうしていろ、と、そう言っただけの事だ」
そして、小さなつぶやきが、どこか不安げに。
「見ていて、愉快だしな」
問いかけるように。目線を合わせず、告げられる
最後は、本当に、細く、
「私達で、娘の代わりになるならば、な……」
不意打ちで一言。
「……あ……」
瞬間、心臓の鼓動が、一度、強く全身へと響き、俺は息を詰まらせる。
ゆがみそうになる顔に、気弱げな笑みを浮かべるのが精一杯だ。
唇の端から、呼気が漏れる。どうにか、苦痛の表情を浮かべずに耐え切れたか。
俺が、沈黙してしまったせいだろう
「……おい?」
レナは、眉を寄せて困惑を表し、ほんの僅かに、
動揺した様子で、伺うように、首をかしげ、見上げてくる。
「……今のは、そんなに、不快になる言葉だった、か……?」
俺は慌てて首を振る。
「いや、その、なんだ」
レナと同じような顔で俺を見上げるヒアに、一瞬だけ視線を向けて、
「確かに今、俺、お前さんらを、身代わりにしてた。無意識のうちに。
俺は、ものすごく楽しくてさ、……すまん
調子に、乗りすぎていた」
「は?」
「いや、だからすまん。馴れ馴れしすぎた」
「はぁ?」
俺の言葉に、レナは俺を見て、頬を引きつらせて、目は唖然と点に。
信じられない。と言わんばかりに首を振る。
「……ちょっと待て、いろいろと待て、ものすごく待て……」
なんだよ
「私は、今、そうしていろ。と言ったの、だな?」
レナはヒアを見て、
「言ったな? 私はちゃんと言ったな?」
顔を引きつらせているヒアが、レナにうなずく。
そうかそうか。とレナは何度もうなずいて、やがて俺を見て。
「馬鹿か貴様?」
その後、ため息を吐き、言い聞かせるように、子供に説教するように。一言一言、
「いいか? 私達は、貴様に、与えられている身だ。
故に私達は、貴様の心が安らぐように振舞うべきだ。
貴様は、それを求めているのだから。でなければ、貴様が私達を助ける価値などない」
そう、俺を、にらみさえしながら言ってくる。
ああ、そういう、事か。
難儀な性格だな。
……お互いに。
とりあえず、はっきりさせておくべき点が一つある。
「それは違う。俺は、お前さんらが、あのままどうこうなっちまうのが、嫌だっただけだ。
別に、んなこと求めている。つーわけじゃ、ないさ。
逆に聞くけど、俺にできるか? さっきの<べき>って、そう言うことだろ」
だが、断定するように言ったのが悪かったのか、まるで挑発する様に皮肉げな笑みを浮かべ、レナが言う。
「出来る、と言ったら?」
出来るもんかよ。
「あのな。お前さんは、俺がお前さんらを、」
言葉が、切れてしまう。
俺は、どうしようとしていた? 何をした?
入り混じって、言葉が出ない。
「俺を……」
俺は、息を吸う。思考を、いったん整える。
「俺を、癒す道具に使ってもかまわないと? そう言うのか?」
「言うさ」
「無理だ。お前の、お前等の、大切な相手を、奪った俺を……
……俺だったら、そんなことは出来ない」
反発が何処から生まれてきたかも解らないまま、俺は、レナをにらんでいた。
ヒアが、俺を見て、僅か震える。
レナは、だまって、俺の言葉が終わるまで、俺の瞳を、じっと見ていた。
紫色の瞳に俺のシルエットが移りこんでいるのが見える。
その、瞳の中の影が、僅か、ゆれたように見えた。
「――」
その直後、レナは、皮肉げな笑みに顔を切り替える。
紫の瞳が俺を見透かすように細められ、次に、震えるヒアに向けられる。
いとおしげに、自分とそっくりな、紫がかった黒髪を撫でた。
「……貴様が、私の感情を……いや、恨みを理解し、私の殺意を受け入れようとした様に」
今度は、見透かすように狭まる瞳と、淡々とした呟きが帰ってくる。
「私は、貴様の喪失を、いくらかは理解できているつもりだ」
どうだ? と言わんばかりに首が傾げられる。
……。
マジかよ。
本気かよ
その喪失と殺意を生み出したのは、俺だぜ?
俺は無言でそう、主張しているつもりの視線をレナに向ける。
だが、レナは無視し、そのまま、ぽん。と、軽く、身をすくめたヒアの細い肩に白い手を置く。
「む。そうだな。そうすれば、この子を、より守る気が沸くだろうしな」
あ。と呟いたヒアも、レナの顔を見て、怯えた顔のまま、それでも薄く笑い。
「ん。そうすれば……お母、さん、助けてくれるんでしょ……?」
そんなことを、俺に対して言った。
レナが、その声に、ヒアに見えない位置で、僅か、目を見開いて驚いたような顔をして、
次に浮かべたのはうっすらと、唇をゆがめ、眉を顰める、
嬉しそうな、それでいて、申し訳なさそうな、そんな表情だ。
ぐ……
まいったなあああああ……
もう……
「あ、ああいや……解った」
俺は、どうにか呟く。
「何をだ?」
レナが、薄笑いを浮かべながら。問う。
俺は、ええと、そうだな。
ギルドナイトスーツでもありゃぁ良いんだけどな。
「あいや、」
何故か、きょろきょろと辺りを見回した後、俺はその場で頭を下げた。
「どうかお前さん達に、傅かせてもらえれば幸いだ」
いや、
「どうか、貴方達の世話を、俺にさせて欲しい」
俺の言葉に、ふむ。
と、レナは鷹揚にうなずいた。
「いいだろう。許す」
言って、薄笑いを、ほんの紙一枚分、吊り上げた。
「ふむ。世話の焼ける。……貴様の精神の卑屈さは軽蔑に価するぞ」
ほっとけ。いくらでも軽蔑なんてさてもいいsな
が、真剣な顔で、音がすっかり消えた鉄板に視線を向けた。
「……さて、と。ハンター。ならば食い方を教えてもらおう」
「ってそこまで戻るのかよ!?」
……。
いかん、思わず突っ込んでしまった。
乗っときゃあいいのに。
レナが片瞳を顰めながら俺を見上げる。目は、貴様せっかく話を戻したのに! とか言っていた。
わるい。
すまん。
ごめんなさい。
と、左手の甲に何かの触れる感触。
視線を向けると、俺がぴかぴかに磨いた人差し指が、手の甲に触れていた。
指をたどれば、何故か満面の笑みを浮かべたヒアが、
「あのね、あのね」
なんだよ。
「きさまは、ずいぶんと嬉しそうに、わたし達にいつくのだな!」
「いやそこに戻るなあっ!?」
「きゃーーーーーー!!!」
期待されているであろうツッコミを入れると、ヒアは嬉しそうにはしゃぐ。
こいつはあああ……
ったく。
父親殺した相手を気遣わさせるって……
俺はどれだけ、
……もういいや。
ため息を、つこうとして、少しだけ息を吐き出しただけで止める。
これ以上、ロクでもないことを考えるのはやめとこう。いい加減気がめいってくる。
だが、俺の気の滅入りなど、どうでもいい。
精々傅かさせてもらおう。
うむ。
「……じゃぁ、まぁ、いいか。説明するぞ」
俺は、沿いつけられてきた細い籠から、ナイフとフォークを取り出す。
金属製の輝きに両手の人差し指を添える。持った俺が、籠をあごで杓ってみせると、
二人は、同じようにして、おずおずと、食いしん坊セットを持つ。
一瞬、視線を、入り口、というか、カウンターの側に戻して耳を澄ませる。
聞こえてくるのはものを焼く音だ。
大丈夫、かね。
「お前さんらみたく、俺たちには、爪も牙もないから、これがその代わりだ」
とりあえず、重要なポイントとして取り皿にライスを盛っておく
俺はナイフを肉に滑らせる。
赤い切り口から覗く断面から、まだ暖かい肉汁があふれ出てきた。
「塩コショウはしてあるから、このままでもうまいっちゃーうまいんだが」
俺は、沿いつけのソースを肉の上に流した。赤茶けた液体が、
油と入り混じりながら広がって、ランプの明かりを跳ね返してブラウンに輝く。。
そのまま、二度ナイフを走らせると、一口サイズにカット
「あとは、まぁ、俺たちは、手で持つ事を汚いと、……さっきも言ったか?
だから、」
フォークでぶっさす。で。
「後は、こう」
くった。
口の中にほおりこんで、噛む。
東方から流れてきた、しょっぱい豆のソースをベースに、魚竜のキモと、
香辛料でもってコクと辛味をたっぷりともちつつも、ハチミツで甘さとまろやかさを出したソースが、
肉を一口噛むごとに、質のいい油や肉汁と絡み合って、舌の上で暴れる。
肉はいいところを使っていて、ただ油が多いというだけではなく、
みっしりと詰まっている割に繊維は繊細で、歯応えが心地いい。
すかさず、ライスを、フォークですくうと口の中に。
肉汁、ソース、油が、粒のたったライスから染み出てきた甘さと混じって、とろける。
飲み込む。
口からビームが出てメゼポルタを破壊しそうな味だった!
「あの、お母さん」
「言うなヒアペレイア」
「あのね。わたし思うんだけど」
「言ってやるなヒアペレイア」
「でも、変なポーズで、光って」
「ヒアペレイア」
「……うん」
俺は俺を眼の端で見ながらひそひそしている二人に視線を向ける。
なんだというのだ。これはハンターの神聖なる儀式だと言うのに。
まったくもう。
良いから食えよ。冷めちまうだろ? 勿体無い
「誰のせいだ」
俺のせいだ。
ごめん。俺が下げた頭の前、肉にナイフを押し当て、そして押すレナ。
同じようにしているヒア。
ぎゅむううう。と、肉が圧迫されて、肉汁が飛び出る。
二人は悲しそうにこちらを見た。
キレテナーイ
「ああいや、だから、押したって切れないって、それは摩擦で切るんだから、引くかどうかしないと」
二人はナイフを空中に持ち上げた。
肉は当然のごとく切れてない。
「……。」
「……。」
「だから悲しそうな顔をするな! ええいそっちに引いてどうする!? いいか、こうだこう!」
俺は肉にナイフを当て、少しずつ、押し付けながら手前に引いて、
摩擦を利用してすっぱり切る。
ヒアは同じようにナイフを当て、力を入れて、手前に引いた。
摩擦が強すぎて肉が引っ張られた。
レナは同じようにナイフをあて、力を入れて、手前に引いた。
ナイフが折れた。
「おい……」
おおいー!?
嘘!? 簡単に折れる代物じゃねーぞ!?
力入れすぎだろ。と言おうとしたところ、
こめかみに、一滴汗を浮かべたレナと、瞳を僅か潤ませたヒアが顔を見合わせてうなずきあう。
……なんだ?
二人は、おもむろに同じ肉をフォークでぶっさし、
ぶちぃ! ギギギギ! ばちっ! べちゃ!
別のベクトルに、引っ張りあって、肉を引きちぎる。
おい!?
細い筋が糸を引いて、肉同士が引き剥がされ、その巻き添えを食らったソースが俺の顔から胸部装甲にかかる。
俺は、ゆっくりとナプキンを手に取り、顔を拭いて、装甲を拭いた。
いや、胸部装甲はいいんだ。こんなん拭けば落ちるし。顔も洗えばいいし、両方、もともと傷だらけだし。
ただなぁ。
俺のほうをしまった。と、瞳を開いて、驚きと焦りを宿し、
いくらか申し訳なさそうに見る二人を見て、俺は苦笑する。
「え、ええと、その、こ、この道具……あ、扱いが難しいね。ね? お母さん?」
「あ、ああ。そ、そうだな。うむ。貴様等が使う道具は、もっと鋭いではないか」
「おこりゃあしないさ。俺が悪い。誰だって、最初はそんなもんさ」
二人は、俺の言葉に、顔を見合わせた後、幾らか肩を落としたり、視線をそらしたりする。
「だから、いいさ。俺だって、最初から扱いが上手かったわけじゃない」
だがしかし、どうしたものか。
「地道に練習、するかね。これからも、多々、人間の場所で食うことになるんだ「……あ。」しなんだよ」
なに? 何でまた急に思いついたかのように手を打ち合わせた後、満面の笑み浮かべて俺を見てるの?
俺、その満面の笑みが怖くなってきたんですけど。
何。何なの!?
「あのね。ハニー。あ、ハニーって、呼んで良いよね?」
お前もか……
「……一応、俺、名前、名乗ったよ……な?」
「長くて、呼びにくいんだもん」
……。
何でも良いけどさもう。
で、何?
「私達に、いつくの、楽しいんだよね?」
「……確かにそう言ったが……」
傅くの意味解ってるのか?
満面の笑みを、ヒアは更に深めた。
にたり。という効果音が聞こえたのは俺の幻聴であってほしい。
ヒアは、俺を見て、おっとりした、子供の、甘えたような声とは違う、レナそっくりの凛とした声で
「食べさせて」
あに?
俺は、引きつった半笑いで、ヒアを見る。
レナも、驚きに、切れ長の瞳を丸くしてレナを見ていた。
俺は、首を振りつつ、
「ええと、あえて抵抗する為に解っていながらも聞くが、……何を?」
更に、ヒアの笑みが深まる。
「わたし達に、この肉を、あなたが、食べさせて」
俺はレナを見た。
レナは俺を見た。
紫の瞳が
こっちみるな!
って目で言ってたので、俺は視線をヒアに戻した。
ヒアは既にレナを見上げていた。
「ね、お母さん? いい、でしょう?」
かけられたヒアの声に、身を震わせ、びっくりしたような声を上げるレナ。
「あ……」
レナが困ったように俺を見た。
いやこっちみられても困る!
「ね? いい、でしょう?」
その戸惑いを無視して、ヒアが押す。
「……ね……?」
瞳を細めて、微笑みを浮かべ、媚びるように、何か、いけない事にでも誘うように、
小さな声で、僅か、首を傾げて見せた。
鋭い顎へ、細い、ヒアの指が、伸ばされて、触れる。
「…………、」
レナの瞳孔が僅か狭まったのは気のせいか。
レナは、ヒアの指が触れると、ゆっくりとうなずいた。
おずおずと、薄くうなずき、定まらないまま、覚悟を強いられたかのように、俺を見た。
なんだ、これ。
俺は一瞬沈黙する。
いつのまにか、背筋に汗が吹き出た。何を言ったらいいかわからない。
「あー……」
俺は何も思いつかないまま、何かを言おうとして、口を開き、此方に振り向いたヒアを見て、閉じた。
普通の微笑みなのに、俺が覚えたのは、至近距離で、龍達に見つかった時の、あの悪寒。
「あなたに、世話、させてあげる、ね……?」
誘うよう、少女が、ゆっくりと、首をかしげる。
黒髪がはらり、と、頬と肩に落ちる。
「……嫌?」
ヒアの声。
疑問系だけれど、そんなことは、ないだろう。と、確信に満ちた笑み。
何その自信は!
ええと。
嫌ってあーたそれ以前に、だな。
その、媚びたように見上げるの止めて下さい。
と、というか、待て。
待て待て。
な、何考えてんだ!?
い、いや? お、おかしくはない、か?
こ、ここで、俺が食べさせる流れは、別に、普通か?
では何? こ、この額から流れ落ちる汗は何!?
「どうしたの?」
俺の狼狽さえも楽しむように、微笑みのまま、からかう響きの入った声。
……まさか解っててやってるのか。
「……解った。解った」
次に出たのは苦笑だ。
……別に、悪い事、するわけじゃないし、な。
食わせるぐらいがなんぼのもんじゃ
まだ、心はざわついたままだったが。
まったく。
情けない男だな俺は。
俺はナイフを手に取った。すぐさま肉の上を走らせる。
鋭い切り口から、肉汁が流れ落ちて、ぬるくなり始めた鉄板に広がる。
フォークで刺すと、浮き出る油の珠が少しづつ大きくなっていく。
一瞬、二人にちらりと視線を向け、笑みをうかべっぱなしのヒアと、困った顔で俺を見るレナを見比べ、
「ええと、」
額から、更にもう一滴、汗を流しながら、俺は肉の刺さったフォークを、
ヒアの、猫を思わせるように曲げられた唇の前にもって行く。
その薄い唇が開かれる前に、俺は、多少声を引きつらせながらも一言。
「あーん」
俺の目の前の二人は、暫く沈黙し、同時に首をかしげた。
「「あ゛ーん?」」
言葉の意味が解らないのは解ったけれど、
なんでそんな因縁つけるみたいな口調なんだよ。
「ええと、これは、だな。人間が、相手に物を食べさせる時にする、礼儀? 儀式?
みたいな、もんだ。ほら、あーん。と言葉にすると、口が開いて物を入れやすいだろ?」
嘘というわけではないし、な。
俺が間抜けに口を開いてみせると、成程。と、うなずく少女達。
再び一言。
「あーん」
「あーん」
小さな口腔が開かれて、俺はその中に、肉をほおり込んだ。
……ああ、何やってるんだかね俺は。
唇が閉じられて、細い顎が動く、一瞬だけ赤い瞳が見開かれて、閉じる。
次に、あどけない顔へと微笑みが刻まれ、身をすくめて、振るわせる。
飲み込んだあとに、開かれた瞳は、まるで溶けたように潤んで、ヒアは熱い吐息を、薄く吐いた。
……あ、いや、む……。
俺は、再び、肉を突き刺し、今度はレナの口元に持っていく。
「あーん」
「ま、待て。待て、……」
レナは狼狽して首を振った。俺を困惑した顔で見て、
「そ、それを、私もしなければ、駄目、か?」
懇願するように言われてもな。
俺はヒアへと視線を向けた
にこにこと、俺とレナへ満面の笑みを向けていた
それは、純粋に嬉しそうな子供の笑みであるはずなのだが、
後ろからはにたにたと効果音が聞こえてくるような気がする。
う、と引きつった響きの声を上げるレナ
きらきらきらきら。何かを期待した瞳が俺たちを見上げてくる
つかそんなに母親が狼狽する姿や、三十路前のおっさんが半笑いの諦めを浮かべた顔が好きか。
レナを見た。
「俺は、別にやらなくてもかまわない。だが――」
俺は瞳に力を入れて、真剣な、ハンターとしての顔を浮かべてみせる。
覚悟を決めろ……!
フォークを少しだけ前へと動かした。
「あーんッ……!」
レナに浮かんだのはあきらめにも似た表情だ。
もはや、そうするしかない。という悲壮な決意と、悲しげな微笑、だ。
レナは口を、気合とともに開いた。
「あーん……!」
本気で何やってんだろな俺ら。
肉を刺したフォークが、紅い唇の中に消える。金属に硬質な何かが触れた事を確かめると、引き抜いた。
唾液に覆われた銀が、ランプの明かりを照り返す。
レナは肉をかみ締めると、ヒアと全く同じ動作で瞳を見開いた。
しだいに、険も緊張も取れて、マジで幸せそうな表情へとシフトした。
これは……やはり……
俺は再び、ナイフを走らせ、肉を着ると、
「あーん」
もはや躊躇なく開れたヒアの口へ入れる。幸せそうな表情
すぱり。
レナの口元へもって行くと、幾らかの躊躇の後、それでも素直にレナが口を開いた。
「あーん」
ぱくり。幸せそうな(以下略
……。
俺はナイフを走らせーの、もはやクックか何かの雛の様に口を開いてくる二人へ
親レイアの気持ちで次々と肉をほおりこんで行く
そのほか、肉と一緒にパンとライスを入れてやったり、
唇が汚れたら拭いてやったり、
嫌がるヒアへ、レナに口を押さえさせて野菜を食わせたりーの、
ええいこうなったら水も飲ませたるわ!
ふはは!
ほおらまた肉! パン! ライスライス! 肉肉!! はい野菜も食べなさーい!!
……。
つか、なんだね。
俺、最悪だ。
本当に最悪だ。
いや、その何だ。
楽しすぎるぞコレェェェェ!!
餌付けさいこおおおおおおおお!!
たぁぁのおしいいいいいいい!!!!
駄目すぎる。
どのくらい俺が駄目すぎるかというと、だ。
それぞれイスに奥深く腰掛け、ぐったりと、ぷっくり膨れた腹を押さえる二人を、
ものすげーにこにこしながら見つめていて、
さて、俺も食うか。という段になって、
「あ゛。」
俺が変な声を上げたので、瞳を閉じた二人がこちらを見た。
俺たち三人の視線の先、もはやソースと油のほかは、つけ合わせで盛られてきた野菜の欠片が、
いくつか転がっているだけの鉄板があった。
すっかり、全部食わせてしまうまで、自分が食うことを忘れていたぐらいには、だ。
オヒツも空。パン籠も空。サラダボウルも空。スープ皿も空。すげぇなおい。
あれ4人前はあったぞ。
俺はがっくし肩を落とした
「お前さんらが、その、あんまりにもかわいく食べまくるんで……く……」
首を振りながら多少恨めしげに言った。
実際のところ、自業自得なんだがな。
二人の顔が幾らか後ろめたさをおびたものになる
何かを言おうとして、口をパクパクさせる二人が、声を出す前に肩をすくめて見せる。
「いや、いい、アレだ。お前等、腹へってたんだろ?
炎龍帝に追われて、ロクに食事も出来なかったんじゃないか?」
レナが、一瞬の沈黙の後、首を縦に振った。
「すまん」
「だから良いって、また頼めばいいんだし、な。 ……ん?」
笑みを向けた先、例によってヒアの満面の笑みがある。
俺は頬を緩めたまま、首をかしげた。
あの、ヒアさん?
いつの間に、フォークを手にとって、ブロッコリーをぶっさしてるんですか?
ていうか、それをどうするつもりですか?
「あーんっ!」
そうだよなそりゃそうだよなそう来るよな!!
だがな! こちとら来年三十路のおっさんだ! はいそうですかとできるかそんな恥ずかしいこと!
俺の唇が半笑いのまま固定されているというのに、ぎゅっぎゅっとブロッコリーが押し付けられる。
ざらざらとしたもろい感触が唇に当たる。ぼろぼろこぼれる、あのつぶつぶだ。
「うー……」
な、泣きそうな顔をしても駄目なんだからね!
だ、駄目……駄目!
お、俺……
だ、だ…
「う……」
ぐ、ぐぐぐっぐ……!!
俺が圧力に負け、唇を開きそうになった瞬間
「待て、ヒアペレイア」
ヒアの白い小さな手を、同じように白いレナの手が包み込んで引いた。
唇からブロッコリーが離れる。
うおっしゃ超ナイスタイミングそうだレナお前からも何か言ってやれ!
「これをつけるのを忘れている」
レナはヒアの手を持ったまま、鉄板の上、飛び散ったソースにブロッコリーを押し付けた。
裏切り者ー!!!
俺の口の前にまで持ってくる。
ヒアは引き続き泣きそうな顔
レナは鋭い瞳で、俺を睨みつけてくる。私の娘の手からは食えないのか。と言った表情。
え、ええー!?
は、針のむしろですか!?
ちょ、ちょっと待て。
俺。
こ、このままだと駄目だ。
よく解らないが壮絶に駄目だ。
……待て。
待て待て!!
というか、このままだと損じゃね?
美少女二人からあーんって、おい。
めちゃくちゃおいしくね!?
い、いや、駄目、駄目だ!?
待て俺、俺はいったいなんだ!?
ハンターだ!
しかもタダのハンターじゃない!!
無間にて
無数の龍を狩り、
無残に骨山を築いて、
無限な血川を流した
無情な戦鬼!
よっしテンション回復完了!!
うおおお俺かっけー!!
そうだ!
俺は――
【ハニー・ザ・ホルン】だぞ!?
……。
あれ? ……か、かっこ悪い……?
い、いや今はそんな事はどうでもいい!
そ、それが!
謳われた一人である俺が!
い、いかに見た目美少女だからといって!
ナナ・テスカトリの、手から……
手、手から……
二人を見た。
ヒアの瞳が潤んでいた。瞳が、涙をこぼすのを、こらえるように、細められる
レナの顔が、僅か、ほんの僅か、悲しそうに歪んだ。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
|
____.____ |
| | | |
|⌒ ))_| ∧_∧._」..__|/;/ あぼ━━━━━━━━━━━━━━━━ん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
|(≡三(_|( `Д´)__( 三三三三三三三 <ハンターのプライド>
| )) |( 二⊃´ノ| |ヾ\↑徹甲弾速射
 ̄ ̄ ̄ ̄' ̄ ̄ ̄ ̄ |↑ ラージャンデグ
↑海賊装備(ボマースキル)
「あ、あーん……」
俺は、大きく口を開いた。
って、あ、あれ?
「よし」
「ふむ」
あの、ヒアさん、なんでいつの間に満面の笑み? 涙は? つーかガッツポーズ?
レナ? クァタトレイナ? なんでうっすらしてやったりな笑みを浮かべているの?
……。
ま、まさか
(にたにた)
(にやにや)
……。
/ ̄⌒⌒ヽ
| / ̄ ̄ ̄ヽ
| | / \|
.| | ´ ` |
(6 つ / ちくしょう・・・
.| / /⌒⌒ヽ
| \  ̄ ノ
| / ̄
__,冖__ ,、 __冖__ / // ,. - ―- 、
`,-. -、'ヽ' └ァ --'、 〔/ / _/ ヽ
ヽ_'_ノ)_ノ `r=_ノ / / ,.フ^''''ー- j
__,冖__ ,、 ,へ / ,ィ / \
`,-. -、'ヽ' く <´ 7_// / _/^ 、`、
ヽ_'_ノ)_ノ \> / / / _ 、,.;j ヽ|
n 「 | /. | -'''" =-{_ヽ{
ll || .,ヘ / ,-、 | ,r' / ̄''''‐-..,フ!
ll ヽ二ノ__ { / ハ `l/ i' i _ `ヽ
l| _| ゙っ  ̄フ.rソ i' l r' ,..二''ァ ,ノ
|l (,・_,゙> / { ' ノ l /''"´ 〈/ /
ll __,冖__ ,、 > >-' ;: | ! i {
l| `,-. -、'ヽ' \ l l ;. l | | !
|l ヽ_'_ノ)_ノ トー-. !. ; |. | ,. -、,...、| :l
ll __,冖__ ,、 |\/ l ; l i i | l
ll `,-. -、'ヽ' iヾ l l ;: l | { j {
|l ヽ_'_ノ)_ノ { |. ゝ ;:i' `''''ー‐-' }
. n. n. n l | ::. \ ヽ、__ ノ
|! |! |! l | ::. `ー-`ニ''ブ
o o o ,へ l : |
/ ヽ :
俺の口の中に、ブロッコリーが飛び込んだ。
いや、野菜も十分うまいけどな。
俺が、少しの嬉しさと、かなりの恥ずかしさと、
あまりの悔しさに、顔を紅くし(三十路だろうがするわ
表情をゆがめているのを見た、レナが鼻で笑い、ヒアの瞳が強烈に光った。
お、おい?
二人は完全にシンクロした動作で、次に転がっているポテトの欠片にフォークを突き刺した。
にたにたと、完全におんなじ表情を浮かべ、俺の口元へと持ってくる。
「「あ〜ん?」」
にやにやと笑いながら、疑問系でつぶやきやがったはははこいつらめ。
こんちくしょう。うれしはずかしウフフアハハ展開かッ!?
いや、うむ。
そ、その、それも気分は悪くない。にやにや笑いさえ、壮絶に悪くはないので、うむ。
い、いや、むしろ、……そ、その、これも、いい?
「ごほん」
俺は、一回、咳払いをして、
「あ〜ん」
口を再び開いた。
口の中にフォークが突っ込まれて、俺は口を閉じた。
薄く笑っている二人が、フォークを引き抜こうとしたところで、
「おやおや、お邪魔、だったかな?」
ピタフのからかうような声。
や、やばい!?
こ、コレはよく解らんが見られるとヤバい!?
俺は慌てて後ろを振り向いた。
フォークを口の中に入れたままで。だ。
「「「あ。」」」
間抜けな響きの三重奏。
暫くお待ちください。
回復薬グレートに感謝しながら、俺は荒い息を付いていた。
時折、ハンター課業をしていると思うことがある。
この世界は、おかしいのじゃないか。と。
たとえば、この回復薬。
液体を飲むことによって、傷を治療するわけだが、この止血の早さは異常だ。
どういう仕組みで、こうなっているかは解らない。
そもそも、ハチミツと、薬草とアオキノコをぐちゃぐちゃに混ぜれば、こんな効果が出る。
というのは、なんかこう、違和感を覚えるわけで。
つまり。さすがハチミツ。至高の物体だな!
……あれ?
ええと、論点がずれたが、何をいいたいかというと、だ。
世界がおかしくてよかった。
本当に良かった。
がくがくと震える俺の目の前には、本気で泣きそうなヒア。
レナは幾らか後ろめたそうに、血の付いたフォークをナプキンで拭いていた。
俺は視線を横に居る主原因へと向ける。
急にびくりとして、愛想笑いを浮かべるピタフ
「……そっちだって、そんな大仰な動作で驚かなくたっていいでしょ?
そんなに悪いこと、してたわけじゃないんだから」
それはそうなんだがな!
口の中、血の味しかしねぇぞ!
「ごめんごめん」
言いながら、ピタフはテーブルの上に皿をおいた。
乗っているのは、いまだ湯気を立てるパンケーキの山。
プレーンなものと、ドライフルーツをみじんに切って入れたもの。
粉砂糖が、更にその半分に振ってあり、バター皿と、ハチミツのポットがおいてある。
気が利くな。
目の前に、その皿が置かれると、レナとヒアの視線が集中した。
まだ食う気なのか……
俺は苦笑しながら、小ぶりのナイフとフォークの入ったかごを二人の前へと置いた。
物音。
隣のテーブルに、ピタフが腰をかけていた。
「いいのかお前。店主がテーブルに座って?」
「どうせ、夕飯までお客さん来ないからね、……ハニー?」
「なんだよ」
「なに。どうしたの? エラく、野生的なお姫様と王女様、さらってきたじゃない」
「上手いたとえだな」
俺たちの視線は、フォークとナイフを握り締め、
すさまじい勢いでばくばくとパンケーキをほおばる二人に。
「――」
一瞬、息をつまらせる俺。
こいつ等、5年前のナナ・テスカトリですとか言う訳にもいかんし、どうしたものか。
「ええと、だな」
不穏な話になってきたのに気付いたのか、レナが顔を上げた。ほおにケーキのクズがくっついている。
ヒアはその隣でばくばくとパンケーキを食ってるっつーか食いすぎだ。
俺は手を伸ばして、レナのほおに付いたパンケーキクズをつまむと、口に入れた。
「どのくらいまでいいよ?」
ついでに、そう問うた。
「……。貴様……な。……貴様に任せる。貴様の方が、現状では的確な判断が出来るだろう。違うか?」
そう、だな。
俺はピタフに視線を戻した。
「【炎龍帝】って、知ってるか?」
ピタフが片方の目を細めた。思考の一瞬に、鋭い光が瞳に宿る。
「ええと」
俺が、その顔を見ていることに気付くと、慌てて目元をこする。
自分のマジ顔が嫌いなんだよな。コイツ。
ピタフはぽんっ。とわざとらしい動作で、手のひらを叩き合わせて。
「あのやたらデカいって話の、テオ・テスカトル? ハニー、知らないの?
ああ、そっか。東方に行ってたんだもんね」
わざとらしいけどまぁいいや。
俺はうなずいてみせる。
「んーっとね、火山の方でこの2−3年暴れてたって話なんだけど、
そーいえば、なんか、こっちに来てる、とかは聞いたかな? 何。どうしたの?」
「追われてるんだ」
俺の言葉に、はぁ? とあきれたような顔を浮かべるヒアペ。苦笑しながら、
「テオが、人間を、ねぇ? 何やったの?」
「俺は、口の中にコヤシ玉をブチ込んだ」
言うとヒアペがふきだした。
「最高。なるほど。貴方は、ね?」
視線の先には、眉を顰めて沈黙してるレナと、パンケーキを食いまくってるヒアってまだくっとるのか!?
レナを含む三人の視線が集中して、
ヒアペは、え? と首をかしげた。
頬にパンケーキがくっついているわ、べたべただわでああもうお前さんは!
俺が手を伸ばそうとする。
だが、その前に、さっ、と布巾を持った手が滑り込んだ。
「か、」
「か?」
「かわいい……」
ぼそりとつぶやくなピタフ。
「えいや、だって、ほら、うちの子男の子だし。超クソガキでかわいくないし。ああもう、娘も産んどけばよかった」
言いながら、視線は、ピタフをじっとみるレナへ。
視線が会うとレナは身を引いた。
かまわず、ほぅ、と深く息をはくピタフ
「この子も綺麗〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ……名前、名前!! ハニー! 名前!!」
単語でしゃべるな俺を揺らすな
お前ももうすぐ三十路だろ!
ピタフのはしゃぐ顔は、下手するとレナのすまし顔より若く見えるが
「本人に聞け」
俺はレナを見た。たぶん、横でピタフも見ている。
レナは、きょとんとしていたが、やがて、幾らか、何故か憮然とした表情で
「……私は、クァタトレィナ、だ。この子は、ヒアペレイア」
ふんふんとうなずくピタフ。
「古代シュレイド語なんて、洒落てるね」
そうなのか?
「うん。……お姉さんがクァタトレィナ。妹さんがヒアペレイア、ね?
「いや、違う」
レナが首を振った。
「あら?」
あ、やば、え、
だが、俺が何かを言う前に、レナが唇を開いた。
「この子は、私の娘だ」
言って再びばくばくと食いっぱなしのヒアの肩へと手を置くレナ
「……。」
「……。」
「……何かマズい事を言ったか?」
首をかしげるレナ。
そりゃお前、十代後半の母親が十代前半の娘を持ってたらマズすぎだろ
「……ふぅん?」
ピタフは小さくつぶやくと、沈黙の後、――頷いた。
な、何!? その頷きは、めちゃくちゃ怖いんですけど。
好奇心ばりばりの瞳で俺を見ないでくれよ。
つーか何!? そこは痛々しげな瞳じゃないの!?
俺は慌てた。
「あ、あーっと、えーと! だな! こ、これは!」
「聞かないよ」
「……え?」
静かな笑みに、表情を変えて、一言。
「聞かないほうが、いいんでしょう?」
いや、そうだがな。
俺は沈黙する。
……聞かない。と言ったのだから、それでいい、だろうか。
余計な思考はやめた。
必要なのは、そうじゃない。
「……成程、炎龍帝に追われている、ね?」
仕切りなおしたように頷くピタフ。
ピタフは、一度目を瞑って開く。
開いた時には、ハンターの……昔、俺と、ヘヴィーガンナーと、一緒に戦っていた頃の顔になっていた。
笑みからはすっかり、昔の険が取れていたが。
「いい、情報があるけれど?」
「ああ、正直期待していた」
俺も笑みを向けた。
必要なのは、こちらなのだから。
「高いよ」
俺は懐から、霞龍の宝玉を出した。投げれば受け取る。
綺麗な口笛。
「足らんか?」
横に揺れる、ケルビテールが帰ってきた。
たとえばハンター相手とか、コイツのような、ハンター相手のルートを
持っている相手には、同価の宝石よりも遥かに価値のあるものになる。
特に、逆鱗でねー!! とか叫ぶ相手には、な。
レア素材、奴を追い続けたこの10年は、凄まじい勢いで出続けた。
俺は、割かし素材のヌルい、笛を一式そろえたら、後は素材いらなかったし、
防具はもともとかなりの量を持ってたので、ほぼ無意味だったのだが。
なんでだろうな。
ともかく。代価は払った。
俺はどうだ。と言わんばかりに首をかしげる。
ピタフは、唇を開いた。
「んとね。ギルド、今、割かし本気で、<炎龍帝>を殺す気らしいよ。
討伐隊を組織してるってうわさがある」
またいきなりだな。
しかも、えらく、都合のいい話だが……
「でもないよ。炎龍帝、近頃、扱いはラオシェン並みだしね」
天災級、ってか?
「<機械仕掛けの業火>も動いてるんだって」
テスカ殺しで有名なハンターの名前を、ピタフは上げた。
俺は目を見開いた。
それは、100近い数のテスカを屠って来たという話の、ガンランサーの二つ名だ
そもそも、ギルドの中枢近くに居る、ハンター。というよりも、
ギルドの執行部に近い存在だとかなんとかかんとか。
いや、俺の所属していた派閥とは別だったので、なんともいえないのだが。
ともかく、そりゃ、大きな情報だ。
手間が省ける。
しばし、考える。
「俺たちが追われてるって情報、いくらかで下取ってくれ」
つまり、流してくれって事だ。
ピタフは頷いた。
料金は、十分なものを払ってある。
ふむ。
考える。
俺が、――ハニー・ザ・ホルンが、炎龍帝に追われている。という情報を流し、上手く立ち回れば、
だいぶ楽に事体を運べるだろう。
結論として、俺は、炎龍帝をしとめなければならないのだから。
たとえば、だ。
俺たちの逃げるルート上に、迎撃の用意をしてもらう。とか。
そうして、それだけの事が出来る程度には、俺の名前は売れている。
俺たち自身が、炎龍帝の行動を縛り、ギルドの協力を得られる、一種の切り札になるとも言える。
俺の目の前に居るコイツには、それが出来る。
ただの女に、ハンターの宿の経営が、勤まるわけがない。という事だ。
ここに来るハンターの理由の、最後の一つがこれ、だ。
ギルドの近くでは、ギルド深部の情報が手に入らないと、そういうことだ。
「解った。やっとくから、がんばってね」
お気楽な。
適当にのたまったピタフは、首をかしげる。
「でも、連絡しなくていいの?」
ヘビガン片手ガンスにか?
「新婚を巻き込むわけにも行かないしな……」
苦笑しながら言う。
当然、子持ちでとっくの昔に引退した、俺の目の前の女ハンターも巻き込めないよなぁ。
戦力的には非常にもったいない話だが。
「どうにかするさ」
ギルドに出頭出来れば話が早いのだが、……。
ネックは、実際に追われている、レナとヒアだ。
お前、何で追われてるって聞かれたら、どう答えりゃいいのだか。
適当なごまかしは、効かないだろうし。
ナナ・テスカトリです。というか?
冗談。
そんな事を言ったのなら、二人がどうなるかわからない。
最悪、狩られるかもしれない。
二人を投げ出したのなら、本末転倒だ。
だが、戦力は、俺一人では足らず。
……。
あんまり、使いたくない手段なんだが、仕方がない、か。
俺はピタフを、真剣な顔で見た。
「もう一つ、頼み聞いてくれないか?」
「何?」
雰囲気を落として、ハンターとしての顔で、聞いてきてくれるピタフ。
さて、ここが大事だ。
一発で決めねばならない。
俺は咳払いを一つ。
大事なのは第一印象。
無理を言うのだ。
なるべく、なるべく、笑顔で笑顔で。
どうせなら、そうだな。思わず頷いてしまうような顔がいい。
一瞬、ヒアの満面の笑みを思い浮かべ、それに、可能な限り自分の顔を近づけたつもりで一言。
「超滅売って♪」
ピタフは満面の笑みで一言
「超キモ死んで♪」
ひでぇ。
ピタフは、笑みを消すとため息を吐く。
「どっちが? あのね。いきなり何言うかと思ったら、あんな気持ちの悪い顔で……」
しみじみと人の笑顔を気持ち悪いとか言うなよな……
「まぁまぁ。事実なんだから」
なだめるように手のひらを向けてくるピタフ。
なだめてねぇけどな!
「……チョウメツとは?」
疑問の響き。俺は、不思議そうなレナを見る。
「武器、の名前かね」
俺は、入り口近くの、ダオラ=デグダニルを指差して、
「あんな感じのデカい剣さ。真の意味での龍殺し。そういう大剣があるんだ。ほら」
ぱくぱく。と口を、おまえさんとかの、と動かして
「角折れるような、あの手のヤツさ」
レナは成程。と頷いた。不機嫌そうな顔で、だ。
ただ、その他は何も言葉にはせず、同じく疑問の声で。
「では、チョウキモとは?」
レナはピタフを見た。
いや聞くなよ。
ピタフはにこにこと。
「超気持ち悪い。を、チョウメツにあわせてごろ良く略しただけ」
「超気持ち悪い?」
だから聞くな
「ええと、ハニー、さっきの顔、変な顔で、みてらんなかったでしょ? 気持ち悪かったでしょ?
思わず顔を背けたくなるような。で、超は、ものすごくって意味」
解説された!
い、いじめだいじめだ。
俺を無視してふむと納得したように頷くレナ。
「ああ。成程。生理的嫌悪感を強く覚えたという事か」
その表現は最悪だろ!?
つぶやいたレナは、ピタフに微笑を向けた。
「ふむ。面白いことを考えるな、貴様は」
おもしろくないっつうの!?
なんども感心したように頷くレナは、次に俺を真正面から見た。
「……確かに私も、あの表情は超気持ち悪かった。最悪だ死ねハニー・ザ・ホルン」
お前な!
正面切って言うか!?
というかお前までハニー呼ばわりかあ!
「どのくらい? ゲリョスぐらいは気持ち悪かった?」
楽しそうに聞くピタフ。
お前等なぁ!?
「フルフル並みだな? 紅い、首の伸びる方、な」
ひど!?
「ああ。でしょでしょー」
でしょでしょじゃねーよ!!!
……くそ。おっさんをいじめて何が楽しいんだ
俺がテーブルの隅を指でこねくり回しながらいじけていると、
その手の甲を、細い指がつっついた。
……。
何?
「わたしは、あれくらいなら、ぎりぎりで大丈夫だよ?」
「フォローになってねえよ!」
俺がつっこむと、ヒアとピタフが大爆笑する。
レナまで吹き出した。
まったく。
……俺も大爆笑してるんだがな
本題がどっかいっちまったよ。
そのまま、ひとしきり、笑いが収まるのを待つ。
………。
……。
…。
よし、収まったかな?
俺は咳払いをする。
沈黙し、俺に視線が集まるのを確認した後。
俺は、まじめな顔をして、
「いいか?」
こくこくこく。
それを頷く三人に向け、
「天然赤フルフェイクーーーーーーーー!!!」
/\___/ヽ
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. |(●), 、(●)、.:| +
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
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,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
机につっぷし、ぜはーぜはー、荒い息をつくピタフ。
どうにか支えあって崩れ落ちるのを耐えているレナとヒア
「き、貴様な……」
睨み付けてくる顔に満面の笑み
「ぷ……ぐっ……」
「お、お母さ、」
心配げな顔に満面の笑み
「〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「あ、あ、あ……は、はにー、そ、それは、ひ、卑怯」
苦しげな顔に満面の笑み!!!
ふはは苦しめ苦しめ仕返しだおら
床に崩れ落ちたピタフと、
イスから落ちて、テーブルにつっぷす二人を放置して
俺はハチミツ入りの紅茶を、勝手に厨房に行って、淹れてきた。
テーブルに腰掛け、優雅に一口
「……うーむ……ぐぅっと・はにー・ていすてぃぃ……」
小さく、けれど聞こえるようにつぶやくと、
レナとヒアの声が引きつりを通り越して、のどの震える、ようやく空気を吸い込む音になってきた。
うむ。いい加減やばいか?
「な、っ……っは……にが……て、テイ……ッ スティ、よ……」
息も絶え絶えなピタフが、息をつきながら恨めしげに言ってくる。
「こ、殺す気……?」
肌が上気し、苦しそうでとてもエロい
GJ俺。
「んじゃ、マジメな話を出来るか?」
「で、でき……」
拭き出しそうになって、首を振るピタフ。
しかし流石だな。まだレナとヒアはテーブルに突っ伏しているというのに。
「……ふぅ……お、OK。だ、大丈夫……」
ピタフは、まだ、ひくひくと震えているが、かまわず、俺はまじめな顔をした。
「駄目、か?」
「駄目って言うか、」
ようやく、笑いが収まったピタフが、首を振った。
「私は、いいよ? うん。貴方が生き残る可能性が上がるなら、ね。
でも、ハニー、使えないでしょ大剣?」
その通りではあるんだが。
「なら、どうして? 角折りならゴリ子つかえばいいじゃない」
いやまぁ、確かに直したけどさ。
ピタフの疑問に答えたのは、ふん、という、鼻で笑う音だ
俺はそちらをみる。
白い肌を真っ赤に上気させ、床に倒れたヒアを引き起こしたレナが、
ぐったりした娘を膝の上に乗せ、軽く抱き寄せながら、俺を見ていた。
「……わ、私が、そ、そのチョウメツとやらを、つ、使えばいいのだな?」
笑み交じりの声。
皮肉じゃなくて笑いに耐えてるからだが。
話が早くて助かる。
こいつら、身体能力、この姿でも人間より上っぽいんだよな。
戦闘のカンも、戦闘経験も十分にある。やりあった俺が言うから間違いない。
人間の体の使い方も解っているのなら、あとは武器を使ってもらえばいいだけのこと。
大剣は、とりあえず使うだけなら、扱いは単純だしな。
本来、レナ自身も守る対象ではあるのだが、
炎龍帝は、別にレナを殺すつもりは無いだろうしな。
少なくとも、現状では。
「別に、超滅でなくてもいいんだがな。テオ相手なら、一番だろ?」
片目を細める思考の顔をしていたピタフは、やがてふっ、と、静かに笑った。
「……それなら、わかった。妥当、かな。確かに、有効そう」
ふむ?
……。
妥当、に有効、ね。
俺がじっと、ピタフを見ると、
「なにかな?」
首をかしげる
……まぁ、聞かないつってくれてるんだから、それでいいか。
俺は頷いた。
「そうそう、細かいことは気にしない!」
今のは口に出してないぞ……
「もう、ハニーは細かいこと気にするんだから、そんなんじゃ貸してあげないよ」
悪かったな。
……ん?
「……買うって言ったつもりだったんだが」
「返してね」
当然でしょう? と言わんばかりに笑みも来た。
「それくらいしか、手伝わせてくれないでしょう?
まったく、自分のときだけ遠慮して」
起こったように、立ち上がると腰に手を当て、胸をぽんとはたいて。
「まだまだ、私現役なんだよ?」
知ってるよ。
つーかキリサキぶんまわして大量発生したザザミ屠りまくってたしな
「だけど、ダメだって」
俺は、僅かな怒りさえ感じてそう言う。
同時に、このかつての仲間の気遣いが嬉しかった。
だからこそ、俺は、少なくとも、コイツを巻き込みたくなかったのだ。
たぶん頼めば付いてくる。それこそ、子供を連れて。
そりゃダメだろ。
……本当に最悪だぜ?
ハンターが子持ちになるのは、
逆、か。
子持ちが、ハンターなんぞ。
「しょうがないだろうが、絶対に、なんかあったら後悔するなんてもんじゃない。
優先順位を間違えるなよ」
俺はほおをぽりぽりと掻いて
「大体、ベタすぎるだろその言動は」
照れるだろ。
「私はそう言うのが好きだよ。結構ね」
か。
ありがたい、話だ。
だが、今のやり取りで、線引きは終わった。
「待ってて、今、もって来る」
幾らか残念そうに言ったピタフが、テーブルを離れ、フローリングの床に足音を立てる
俺は、その姿を見送って、息を吐いた。
「……あれも、ハンター、なのか?」
けだるげなレナの声。
「元、な。昔、組んでた」
しかも二回ほど。
「つまり、優先順位は、私達より、あの女の方が、上なのだな?」
皮肉げな声。
俺は、あわててレナを見る
声とは裏腹に、その表情は穏やかなものだった。
……おんや?
俺が慌てていたせいだろう、レナは苦笑し、
「別に責めているわけではない」
まぁ、それは顔を見れば解るんだが。
じゃぁ、なんだよ
薄く笑んで首を振るレナ
……気になるだろうが、
レナは沈黙し、
「ハニー・ザ・ホルン」
なんだよ。
「この子は、かわいいか?」
言って、いつのまにか胸に抱きかかえて、ぐったりしているヒアのほおをつついた。
ヒアが、薄く、瞳を開け、首をかしげる。
ヒアの顔が、幾らか不安げに見え、此方に、一度、視線をよこし、レナに気付かれないうち、戻した。
大丈夫。
俺はお前さん等を守るよ。
しかし、また、いきなりだな。
ふーむ。
どういう意図だ? いや、変に勘ぐるのは悪い癖か。
ただ事実を答えるべき、か。
「かわいい、と思うぜ? 見た目的にも、中身も」
俺が言うと、一瞬だけ、ヒアのナナストレートの中から、耳が跳ねて見えた。
生きていれば、俺の娘もこのくらいにはなっていた、だろうか? とも思ったが、それは言え――
つい、瞳を細めてしまった。レナが目ざとく俺を見て
「今、何を思った?」
息を、吸い込んで、
「全部言え」
マジかよ。
痛いんだがな。
一瞬、心臓が強く鼓動を立てる。
口の中に、苦い味が広がる。
けれど、要求されたのだ。答えよう。
「俺の娘も、……生きていれば、このくらいになっていた、かな。とも、思っているさ」
見た目は、ぜんぜん違うけれど、な。
俺の言葉に、レナは頷いた。
俺を、見て、
満足げに、もう一度うなづいた。
「貴様は、」
何? まだ何かあんの?
「貴様は、信用に価する。ハニー・ザ・ホルン」
……。
うっすらと、
そう、俺に、レナから、微笑みが向けられた。
俺は息を呑む。
「初めて、見た」
今のつぶやきは、レナのものだ。
俺の声じゃない。
俺も俺への微笑みは始めて見たが、そうでないな。
何を、初めて見たというのだろう?
けれど、レナの、淡々としたつぶやきに、俺は思ったことを答えなかった。
微笑みと同時、幾らか、悔しそうな顔を、していたから、だ。
あまり、見ていたい顔ではなかった。
俺の口は、半ば勝手に軽口を紡ぐ。
「おや? 今まで、信用されてなかったの、俺?
あんだけ守る守る言ってたのに。本気でプラン立ててたのに」
俺は皮肉げに言う。
一瞬だけ、面食らったような顔をしていたレナから、かえってきたのは皮肉げな笑み。
「当然だろう?」
当然だな。
「人間如きが傲慢な事だ」
でも、その人間如きを、それでもお前さんは信用してくれるのか。
「ふっふっふ。信用させといて、売っぱらうつもりかもな?
ほおら新種のゲイニン、ナナ・テスカトリ娘ですって言えば大もうけ
はっはっは、人間はロクでもないからな。
そうなったなら、炎龍帝に蹂躙されるより、よっぽどひどい目にあうぜ?」
「私ならば、そんなもの苦痛にもならない」
ヒアに、レナは優しげな瞳を向けて、ぷくぷくの、ほおをつつく。
首を、緩やかに振って嫌がる顔を見て、嬉しそうに、笑い。
「この子に、出来るものならばやってみせろ」
そんなことつぶやかれたら降参するしかない。
俺は手を上げる。
口を開こうとすると、レナがこちらを見て、けん制するような鋭い声をかぶせた
「勘違いはするな。貴様を許すつもりなどないのだから」
ああ。解ってる。
……
って、うーむ。
む?
妙な、疑問を感じる。
というか、不安?
臆病?
俺の足元が、崩れてしまいそうだ。
なんだろう、これ。
崩れそうな。
確かに、俺だって、10年経って、あの龍を許せなかった。
つーか、結局、追い回して殺したわけだが……
なのに、
平気、なのか?
そもそも、俺を前にして、笑っている。
それが、平気、なのか?
最初に、レナから覚えていたあの、モンスターの、敵意が
あの、物理的な感覚さえ伴う重圧が、
演奏するとき、
笛を吹くとき、
殴ったとき、
増して行く敵意が、
今はもう、すっかり消えている。
俺を許しては居ない。
けれど、俺に対しての敵意もない。
ならば、それは何故だ?
何故、許せる?
俺の、妄想ではない筈だ。
少なくとも、モンスターについてなら、俺の感は頼りになる……筈だと思うんだが。
空虚を埋める何かを、得られるかもしれないと、そんな期待を僅かに抱いて、
俺は、それを問おうとした。
何故か、額に汗して、震えながら。
「なぁ……」
「……おい」
俺が口を開こうとしたのと、向こうも同じタイミングで、声を掛けた。
俺が、先に言ってくれと手を差し出すのと、
貴様が先に言え、と、レナがあごをしゃくるのまで、同時。
「……。」
「……。」
「……ええと、だな」
「……む、その、だな」
「何」
「まず、手を下ろせ」
「おお!」
俺は手を下ろした
……。
「先に言え。ハニー・ザ・ホルン」
「ええと、」
「たっだいまーーーー!!! かあちゃんめしー!!!!!! めっしめっしめっしめっし腹減ったー!!!」
俺が口を開こうとした直後、ばたん! と
やたら重い筈の、黒檀の扉が勢い良く開かれ、俺達はそちらを見た。
わけのわからん歌にわけのわからん節をつけて歌いながら、黒い短髪の少年が、
日に焼けた肌に汗の珠を浮かべながら、入り口から飛び込んできていた。
年齢は、まだ7−8歳ぐらいか。
瞳は、思考の輝きを宿して、キラキラと輝いている。
「あれ? かあちゃんー? めしー! めしどこめしなにめしはどこー」
その少年は歌いながら、入り口からは死角の、俺達の居るスペースを、角から顔を出して覗き込んだ。
「あ。」
大きく、ピタフそっくりの、鳶色の瞳を見開いた少年に、
俺は軽く、手を上げて見せた。
「よ。スィフ」
質問はお預けだな。
小さな空気の動きは、レナの頷きだろう。
俺の顔を見て、目を丸くしていた少年は、やがて顔に満面の喜色を浮かべる。
だが、すぐに首を振って、その喜びの表情を隠すと、俺へと人差し指を突きつけた
「そ、そんな! デ、デスオウビート! お、おまえはおれがおとといたおしたはずだ!!」
棒読みで叫びを上げるスィフ。
俺とレナとヒアはフリーズしている。
まぁ当然だろう。
この二人はとりあえずおいておいて。
俺はおもむろに、傍らにあったオウビートSカブトをかぶると、ピタフの息子に指を突きつけた。
叫ぶ。
「ふぅははははぁ! ざぁんねぇんだぁったなぁぁぁオウビートレッドオオオオオ!
あぁくぅはぁなぁんどでもよみがえるのだああああ!!」
CVは若本でお願いします。
「な、なにぃ! だが、こんどこそおれたちおうびーとれんじゃーがふるぼっこにしてやる
あとにおつでくえすとしっぱいだ!」
「無理だな! 俺は何度でもよみがえる! 何せ悪役が居ないと正義の味方は商売成り立たないからな!!」
「こ、こどものゆめをこわすなんて、なんてあくぎゃくひどうなんだデスオウビート!?」
スィフは、叫んだ後、辺りをきょろきょろと見回して、その後、外へと飛び出し、
「で、です? お、れっど? え? え? え?」
はっはっは。
流石のレナが混乱し、俺のほうをすがるように見てきた。
<オウビートレンジャー>
世界的に有名な子供向け物語である。
ファンの3割はハンターだったり、1割は大きなお友達だったりするのだが。
内容は単純。
世界征服をたくらむ悪の組織、シェンガー(シェンガオレンはシェンガーの移動要塞なのだ!)に改造された、
4人の元ハンターが、シェンガーに対する復讐のため、戦いを決意する。という物語だ。
でもって、デスオウビートというのが、5人目の、脳みそまで改造された元ハンターである。
やたら人気の悪役で、
スィフやら近所の悪ガキ共やら相手に
デスオウビート役やってやったら大喜びだったのである。
え? 何? お前も詳しいなってか?
何せ、ライターがウチのガンランサーだからな。
スィフが飛び込んできた。
両手で三本の木の枝を抱えている。
そのうち、木の枝を、俺に二本、差し出し。俺は受け取った。
「ええいー!!」
で、おもむろにちゃんばらを始める俺達。
とりあえず、俺が押す。まぁ悪役は最初有利だからな。
「ふははは!! どうしたオウビートレッド! 仲間が居なければその程度か!?
所詮貴様等は寄生の集まりなのだ!! そのままくたばるがいい!!」
ぱんぱんぱんぱん
「うるさい! たたかいはかずだ!
そろせんでいっぴきおおかみをきどってたところでしょせんはただたんにともだちがいないだけだ!」
がきんがきんがきんがきん
「うわあー」
解りやすくスィフの剣が吹っ飛び、スィフがしりもちをつく。
「ふっふっふ……さぁ、覚悟は、いいか?」
俺はじりじりと近寄る。
「く、くそう……」
負ける演技をしているスィフ。
だが、突然、俺の後ろを指差した。
「あ…ああ、あああ!」
「ふっふっふ、もうその手は食わないぞオウビートレッド!
あの時は股間蹴りくらってマジ悶絶したからな……」
ハンターだけに、やることはホントに卑怯なのだオウビートレンジャー。
つかマジで前回蹴りやがって。
だが、良く見ると、スィフの顔には、演技の驚きでなく、本気の恐怖があった。
……。
「ふ。俺も堕ちたものだ。人間の殺気に反応出来なくなっているとは、な。
うむ。またカンを取り戻さねば、これからの旅、危険かもしれないな? ピタフ」
「他に、言うこと、ある?」
俺はおそるおそる後ろを振り返った。
「ハニー? あのね? ――他のお客さんも来てるんだけれど?」
そこには、呆れ顔のレナと、わくわく。という顔をして俺を見ているヒアと、
入り口で困惑しながら俺を見る、近所のおばちゃんやら、おっさんやらと、
満面の笑みを浮かべたピタフと、俺に迫る超滅一門の切り上げがあった。
「う、うわあなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」」
I CAN FRY!
ああ。
空を飛べるのは、龍と鳥だけじゃないんだね?
人って、
飛べるんだね?
とりあえず、前半は以上です
>>91で、<ハニー・ザ・ホルンと炎妃龍>となっていますが、
<炎妃龍とハニー・ザ・ホルン>が正式タイトルです
お間違えのない様に特にお前だお前!
>>88 orz
次から多少は盛り上がる予定です。
7月中に投下したいと思っておりますが、気を長くしてお待ちください
エロもちゃんとあります
プルプル
. . . .. .. し バンバン
::(;つ )ノシ て
つハチミツ
長杉
しかも1体のナナの呼び方が2通りある上に句読点の使いすぎで見づら過ぎる
確かに
>>89-160ってのはやりすぎかも知れんなww
しかし、それでも内容は十二分に面白かったんだぜ?
長さの問題を除けば文句なしの出来だと思う。
次も期待している。
>>161 ハチミツやんよ。
べ、別に面白い訳じゃないんだから!ただハチミツが好きなだけなんだからねっ!
>>161 乙。
後半が楽しみ。
改行の間隔は演出なのかも知れんが冗長になっているかも。
投下分量に関してはこのままでもいいかと。全部投下されたら結局変わらんし。
ナナたんかわいいし戦闘も楽しみだ。完結後にはGJを贈れることを願う。
>>161 乙。
後半がめっちゃ楽しみです。
ただわがままかもしれないけど短くてもいいから頻繁の更新
を我は望みます。
好き嫌い分かれる文かも知れないけど自分は好きだな。
街の描写とかに空気感があってすごくいい。
ダオラ大剣が冷房のかわりってのにうけた
てかこの主人公の周囲って愉快な人ばっかりなのな
副業に何やってんだガンランサーw
ハチミツ男待ってました
最近音沙汰無かったから心配してたよ
後半頑張ってください
ふー読み終えた。
>>161超滅GJ!レナもヒアもかわいいし、日常の親子生活みたいな感じで、とてもほのぼの出来た。
物語もとても俺好みだし、自分にとって最高に名作。
だけど少し読むのに時間かかるから、今の半分位の長さにしてもらえたらうれしい。その方が投下待ち時間早くなるし、ストーリーも忘れずにすむ。
次の投下までずっとwktkして待ってる。
GJ!面白かったよ〜
後半が楽しみ〜
( ^ω^)…
この特徴的な日本語の使い方。間違いない、
>>168はYTR
SS書いたので投下する
175 :
クック先生:2007/07/11(水) 08:36:08 ID:+ANTI4ow
マルコ・イーノという少年がモンスターハンターとなってから、ちょうど二年ほど経っていた。
死と隣り合わせの危機も日常茶飯事という、十八歳の少年にはあまりにも過酷な職業だが、それでもマルコは幼いころからモンスターハンターに憧れていた。
理由は、かっこいいからだ。
凶悪で圧倒的な力を持つモンスターの魔の手から、か弱い人々を守るために戦う、正義のヒーロー。
どんな相手にも恐れることなく立ち向かい、強力でかっこいい武器を自在に操って、巨大な飛竜を――すなわち悪を倒す。
これだ、とマルコはいつも思う。これこそがモンスターハンターの集う場所だ。英雄たちが羽を休め、英気を養うための酒場だ。
「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」
向かった先のカウンターで、受付嬢がにこやかな営業スマイルを浮かべながら言った。
「飛竜の討伐依頼はあるかな」
「……飛竜の?」
受付嬢の営業スマイルが曇る。その視線はマルコの風体を上から下まで一瞬で眺めていた。
モンスターハンターこそは英雄だ。
ついにハンターとなったからには、マルコは真の英雄になりたかった。なるつもりでいた。
が、現実とは厳しいもので、望む者に才覚が与えられるとは限らない。
マルコは凡人だった。いや、もっと正確な評価を下すならば、無能だといえた。キノコを採集しに行けばアプトノスが振りまわす尻尾に当たって昏倒するし、ファンゴの群れに追いかけられて崖から落ちる。
一週間前の、ドスランポスの討伐依頼を受けたときなど、閃光玉をありったけ使い、限界まで持ちこんだ回復薬と回復薬グレートを使いきり、二回もアイルーたちの世話になったあげく、ようやく退治することができた。
マルコにはモンスターハンターとしての――戦士としての才能がない。それが、彼を知る者すべての意見だった。
が、不幸なことに、マルコ本人がその事実に気付くことはなかった。おのれはいずれ英雄になる男だと信じて疑わなかったのだ。ほかのハンターから才能の乏しさを指摘されても、笑い飛ばしていた。
幸福とは、不幸を自覚していない状態のことを言う。マルコは幸福だった。
今日もマルコは意気揚々と、ハンターズギルドが運営する酒場を訪れる。
店内にごった返しているのは、男も女も老いも若きも関係なく、みなモンスターハンターばかりだ。誰も彼もが浮かれ騒ぎ、水のように酒を飲み、大盛りの美味そうな料理を豪快にかきこんでいる。
176 :
クック先生:2007/07/11(水) 08:36:57 ID:+ANTI4ow
短めの黒髪と、茶色い瞳。顔立ちは、まあ、それなりだ。少なくとも頼りない女顔ではない。体つきは小柄だが、鍛えられてはいる。装備は、チェーンシリーズの防具と、背中に負った大剣バスターソード。
貧弱だ。駆け出しのハンターだと一目で分かる。
こんな男に飛竜の討伐依頼など受けさせて大丈夫なのだろうか? 飛竜というのは、数多の種族に分かれているが、例外なくずば抜けた生命力と戦闘能力を持つ、強力なモンスターだ。
大きな危険は当たり前の業界だが、だからといって自分が紹介した依頼で人が死ぬのは気分が悪いものだった。
「飛竜の討伐依頼……ああ、ありますね。カザンカ村の牧場主さんが、付近に巣を作ったイャンクックを退治してほしいと」
「イャンクックぅ?」
「ご不満ですか?」
「おおいに不満だね。イャンクックってあれだろ、大怪鳥だろ。鳥なんて飛竜じゃないよ。そんなのを倒したって、ちっともかっこよくないじゃないか」
肩をすくめてやれやれとほざいている若者に、受付嬢は拳を叩きこんでやりたくなったが、すんでのところで思いとどまることに成功した。
「まあ、とにかくほかの依頼を出してくれ。そうだな……ディアブロスとか、グラビモスあたりの討伐がいいな。古龍とやらが相手だと、もっといい」
「は、はあ」
マルコが挙げてみせたディアブロスやグラビモスといった飛竜は、どちらも実力のあるハンターでさえてこずる強敵だ。とくに、古龍とは、どうしようもない天災として扱われるほどの脅威の塊。
間違っても、マルコのような明らかな新人ハンターが立ち向かっていい相手ではない。
「失礼ですが、あなたのハンターランクは?」
「《ルーキー》だ」
ふんぞりかえるような勢いで応えられて、受付嬢は頭を抱えたくなった。
この少年、いったいどこからそんなに根拠のない自信が出てくるのだろうか。
「おいおい、まともに相手をするのはやめとけよ、嬢ちゃん」
と、バサルモスの防具をつけた男が笑う。アイアンストライク改を扱うハンマー使いである彼の顔は赤く、酒に酔っているようだ。
「この街にきて日が浅いあんたは知らんのだろうが、そいつは有名でな。できそこないのマルコっていうんだ。ランポスを相手に泣き出すような腰抜けさ」
「なんだと!」
顔を赤くして睨みつけるのは、図星をつかれたからだろう。
177 :
クック先生:2007/07/11(水) 08:38:23 ID:+ANTI4ow
「やめんか。くだらん」
静かにはっきりとそう言ったのは、ひとりでテーブルに着いて、ファンゴのステーキを黙々と口に運んでいた老人だ。マルコとは顔なじみの、熟練のモンスターハンターだった。
老ハンターの全身の肌は真っ黒に日焼けしていて、左目は切り傷で塞がれていた。イーオスシリーズの防具を身につけ、かたわらにはバストンメイジというヘヴィボウガンを立てかけている。
ハンマー使いが老ハンターに軽く声をかけた。
「おい、爺さん。こいつをあんたの狩りに連れていったらどうだ?」
「……おれがいっしょにメシを食うのも、狩り場に連れていくのも、仲間だけだ」
マルコは仲間ではない、同業者ではない、ということだった。
若い新人ハンターは、悔しさに拳を握る。
こいつらはなにも分かっていない! モンスターハンターをなんだと思っているんだ!
モンスターハンターとは、かっこいい英雄だ。悪の飛竜を成敗して、世界を平和にすることが義務だ。
飛竜を相手にするような危険な依頼を受けずとも、キノコを採集するだとかハチミツや薬草を集めるだとか、危険の少ない依頼は山ほどある。
だがそれでもハンターたちが飛竜を倒しに向かうのは、報酬の大きさよりも、彼らが英雄だからだ。と、マルコは信じていた。
おのれもまた英雄にならなければならない。そのためには、もっともっと多くの強いモンスターどもを成敗しなければならない。だというのに、こいつらはなにも分かっていない!
仲間ではないだと!? それはそうだ! 腰抜けの老人め! おおかた、新たな英雄の出現を妬んでの台詞だろう。老人は若者に嫉妬するものだ。
「もういい。ディアブロスの討伐をさせてくれ」
「やめておけ、マルコ。おまえにディアブロスの討伐なんぞ無理だ」
「なんだよ、爺さん! やってみなくちゃ分からねえだろ!」
「がたがたぬかすな。そんなに飛竜と戦いたいなら、まずはイャンクックを倒してみるんだな」
「はあ!? 鳥なんて倒してもかっこよくねーし!」
「……小僧。いいことを教えてやる。昔、おれの息子もな、同じようなことを言って死んだ」
重々しい響きの台詞を、やはり黙々とステーキを食しながら言う。
「イャンクックやドスガレオスの相手なんぞつまらん、リオレウスと戦いたいんだ、ってな。あんまりうるさいもんだから狩りに連れていってやったら、戦いの最中に泣き喚いて逃げ出して、後ろからブレスを吐かれて焼け死んだよ」
マルコは、そして話を聞いていた受付嬢やハンマー使いも言葉を失った。
老ハンターは表情を強張らせているマルコを横目で見て、
「だからな、マルコ。年寄りの言うことは聞け。まずはイャンクックを倒してみろ」
「……あ、ああ……分かったよ」
「いい子だ」
にやりと笑い、ステーキの最後の一口をほお張った。
178 :
クック先生:2007/07/11(水) 08:38:58 ID:+ANTI4ow
狩り場の宿営地に到着すると、マルコはさっそく駆け出した。たかがイャンクックの討伐などで時間をかけてはいられない。英雄になるという宿願に向けて、やるべきことは山積みなのだ。
イャンクックと戦うのは――というか、飛竜に匹敵するモンスターと戦うのはこれが初めてのことだったが、不安はまったくなかった。
イャンクックは大怪鳥とも呼ばれ、その名の通りに巨大な鳥のような姿のモンスターだという。とはいえ最初からそうだったのではなく、種族として退化し始めたのでそうなってしまったという話だ。
だから純粋な飛竜――たとえばあの火竜リオレウスや一角竜モノブロスなどと比べるとあまりにも貧弱で、歴戦のハンターたちにかかれば、三分もかからずに倒されてしまうのだそうだ。目を瞑っていても勝てると豪語する者までいる。
そんなもの、もはや飛竜でもなんでもない。そんな雑魚をたとえ百匹倒したとしても、英雄になることはできない。
やはり、伝説の古龍を――クシャルダオラやラオシャンロンのような、圧倒的なものを倒さなければ。そのためには、もう、ギルドに頼っていてはいけないのかもしれない。
そうだ、そうしよう。なぜ今まで気付けなかったのだろう。なにもギルドが斡旋する依頼だけを受ける必要はないのだ。みずからの足で自由に世界を渡り歩き、悪のモンスターを探しては倒していけばいい。
シンプルで、それでいて抜群の名案と思える答えに行き着くと、足取りもずいぶんと軽やかになった。
そうやって歩く、森と丘の空気は、いつもよりも清々しく感じられた。
豊かな自然が生い茂るこの狩り場には、さまざまなモンスターが生息している。温厚な草食のアプトノスがいれば、凶暴な肉食のランポスもいる。イャンクックのように大型のモンスターも出没する。
宿営地を出立してすぐのところで、アプノトスの群れがのんびりと雑草を食していた。その横を黙って通りすぎる。
生肉を焼いて食べたいときには殺すが、今はべつに腹を空かしてはいなかった。
その次に、五匹のランポスが見えてくる。ランポスたちは草むらの影からマルコを発見すると甲高い声で鳴き、仲間を集めて襲いかかってきた。
ランポスのことは見逃さない。どう猛な肉食のモンスターだからだ。生かしておけば人里の家畜や人間を襲う。悪のモンスターだ。
マルコは抜刀した大剣で一匹のランポスを垂直に斬り伏せると、次の一匹に向き直って剣を振り上げる。
が、重量のせいで動作はのろくなり、せっかく振り下ろしても、頭がよく俊敏なランポスはこれをかわしてしまう。倒せたのは最初の一匹だけだ。
とびかかったランポスが、その足の爪でマルコの頭部を蹴り飛ばした。兜のおかげで怪我はなかったが、大きく吹き飛び、脳みそが揺れる。
ふらふらとしながら立ち上がると、三匹のランポスに取り囲まれていた。
「えっ?」
周囲を見回し、間抜けな声が口から出る。
背後からの一撃。跳びかかられ、肩を噛まれていた。鎧が守ってくれてはいるが、恐怖はある。
「やっ、やめろ!」
慌てて振りほどこうとしているところに、二匹のランポスがその爪牙を向ける。ほおを薄く切り裂かれ、腹部に頭突きをしかけられ、マルコは転倒した。
うつ伏せの状態から起き上がろうとしたが、できなかった。腕を、足を、背中を、頭を、ランポスに噛み付かれたり踏みつけられたりして、体の自由を完全に奪われている。
「えっ、えっ?」
なにがなんだか分からなかった。いったいこれはどういう状況なんだ?
仕方なくイャンクックを討伐するためにやってきて……ランポスは悪のモンスターだし、今までに何匹か倒していたから安心していて……これは?
新たに現れた一匹のランポスが悠然と進み出てくるのが見えた。威嚇するように、いや、あざ笑うように目を細め、天に向かって甲高く吼えると、マルコの首筋に噛みつく。
首は急所だ。そこは堅牢な甲冑や兜に守られていない。
マルコの背中を、冷や汗が濡らした。とてつもない恐怖が襲ってきた。
殺される! ――それは間違いのない確信だ。
「やっ、やめっ」
ランポスの鋭い牙が、首の肉に深く食い込む!
「やめてくれえええええっ!」
涙を流しながらマルコは叫んだ。甲冑の股間から、湯気の出る温かい水が流れ出す。あまりの恐怖に失禁していた。
そんな情けない姿での必死の願いが、ランポスに届いたとでもいうのだろうか。
そのランポスはマルコの首からクチバシを離すと、頭上を仰ぎ見た。
上空から、翼を持つ巨大な影が舞い降りようとしている。
ランポスたちは、それに向かって吼え始めた。ぎゃあぎゃあと鳴く彼らをまったく無視するように、それは大地に降り立った。
179 :
クック先生:2007/07/11(水) 08:40:12 ID:+ANTI4ow
――でかい。それがマルコの、その生物に対しての第一印象だった。
赤い鱗や甲殻に包まれた肉体、たくましい翼、長い尻尾。
大怪鳥、イャンクック。
なるほど、その頭部を飾る大きなクチバシは、竜というよりは鳥のようだった。
思わぬ大物の出現に、ランポスたちは一斉にそちらを向いた。マルコのことなど忘れたように放り捨てて、イャンクックに襲いかかる。
ランポスは縄張り意識が強く、敵はけっして見逃さないのだ。
おのれに殺到するランポスたちを見て、イャンクックはなにを思ったのだろうか。少なくとも、好意的なものは感じなかったのだろう。
折りたたまれていた耳を扇のように広げて奇声を発すると、最初のランポスに噛みついた。悲鳴を上げてもがくランポスは、巨大なクチバシで木の実のように噛み砕かれ、力を失う。
その隙にほかのランポスがイャンクックの背中と翼、そして足首に噛みつくが、たやすく振りほどかれ、圧倒的な重量に踏み潰されて絶命した。
最後に残ったランポスは、かなわないとみていさぎよく逃げ出す。それをイャンクックは追わなかった。見逃し、勝ち鬨のように声を上げただけだった。
マルコは、それを唖然として見届けていた。
なんという強さ。イャンクックの、なんという圧倒的な実力。おのれがあれほど苦戦し、あやうく命まで奪われそうになっていたランポスたちを、まったくよせつけずに一蹴し、見逃すほどの余裕まである。
マルコはこのとき初めて気付いた。
イャンクックは飛竜ではないが、ただの鳥というわけでもでもない――大怪鳥なのだ、と。
こみあげてくる吐き気を我慢して、剣を握る。バスターソードの刀身は小刻みに震えていた。
恐ろしい……あまりにも恐ろしい相手だ。先ほどまでしょせんは鳥だと馬鹿にしていたその姿が、山のように巨大に見える。
イャンクックが、マルコに気付いて唸り声を上げた。それは威嚇だったのかもしれない。だがくぐもった笑い声のようにも聞こえ、マルコの怒りに火をつけた。
ランポスごときに敗れ、小便を漏らしながら泣き喚いて命乞いをしていた英雄志望のハンターを、その不様なありさまを嘲笑しているように感じたのだ。
「おっ、俺を、笑うなーっ!」
大剣を背に、イャンクックの真正面へ猛然と駆け出す。
(おまえなんかに負けてたまるか! なめられてたまるか!)
マルコは飛竜どもを一匹残らず倒して、世界を平和にしなければいけなかった。かっこいいモンスターハンターとして、英雄にならなければならなかった。だというのに、イャンクックごときに負けるわけにはいかなかった!
「うぅああああっ!」
斬り下ろした一撃は、イャンクックにかすりもしなかった。勢いだけの愚直な太刀筋はたやすく読まれ、首を曲げられてかわされたのだ。
(ちくしょう、まだだぁっ!)
地にめり込んだ刃を無理やりに引っこ抜き、低く草を刈るように薙ぎ払う。狙うは足だ。足を傷つければ機動性を失い、どんな獲物も弱るはずだ。
剣を振るというよりは剣に振りまわされるような一撃は、硬い手応えをもたらしたのみに終わった。まるで岩を斬りつけたような感触と音だ、と思うと同時に、しびれた手はマルコの意思とは関係なく、重い剣を手放している。
イャンクックの足元で、マルコはあの踏み潰されたランポスたちのことを思い出した。
「ひっ、ひいいいっ!」
早く逃げ出さなければ殺される! ――恐怖にかられて転げるようにイャンクックから離れたマルコのわき腹を、鞭のようにしなった尻尾が横殴りにする。その場で回転したイャンクックが繰り出した、強力な攻撃だ。
肺の空気をすべて押し出され、凄まじい痛みを感じ、マルコはわき腹を押さえながらその場にうずくまる。
「うっ……ううううっ……」
あまりにも無防備なその背後を、イャンクックの突進が襲った。
180 :
クック先生:2007/07/11(水) 08:41:23 ID:+ANTI4ow
マルコの目が覚めたのは、宿営地に転がされてからのことだった。
尻を突き出すような不様な格好でいるのは、アイルーに助けられ、荷車から乱暴に下ろされたからだろう。
彼らは倒れたハンターを見つけると、こうして宿営地まで連れて帰ってくれる。マルコも今までに何度も世話になってきた。武器も拾っておいてくれていて、大剣バスターソードは手が届くところに放置されている。
「負けたのかよ……」
そして、見逃された。イャンクックは肉食ではないということがマルコの命を救っていた。これで相手がリオレウスやリオレイアなどであったなら、間違いなく食われていただろう。
「う、うううっ……おぅげええええっ」
安堵と、寒気がする恐怖に襲われて、マルコは胃の中身を地面にぶちまけた。
助かったのは、運がよかったからだ。
いくらイャンクックが人を食べないとはいえ、あの尾やクチバシの一撃に当たれば、人間のように脆い生き物など死んでしまう可能性は十分に考えられる。
そう、マルコがこうして生きているのは、運がよかったというだけのことなのだ。
「ひい……ふぐおお……」
嘔吐したものと尿の臭いが混ざって、ひどい臭いがたちこめていた。
やがて、マルコは立ち上がった。
勝たなければ。
あのイャンクックに勝たなければ、英雄になれない。
だがどうやって勝てばいい? まったく歯が立たなかったというのに。
マルコは考えた。
――そういえば、支給品を見ていなかった。マルコはふらふらとしながら支給品箱に向かい、中身を確認する。
大きな箱の中身は、この狩り場の地図と、携帯するための砥石や食料、応急用の回復薬、そして音爆弾に閃光玉。小タル爆弾や、巨大モンスターを捕獲するためのシビレ罠や睡眠玉もある。
しかし、音爆弾や小タル爆弾、シビレ罠はあまり役に立たないだろう。あの大怪鳥に対しては非力な武器だ。特に音爆弾など、どうやって活用すればいいというのか。大きな音で驚くのは、臆病なウサギぐらいのものだ。
まあ、ないよりはあったほうがいいかもしれない。
マルコはそれらをポーチの中にすべてつっこみ、バスターソードを砥石で丹念に整備すると、さっそく駆け出した。
ハンターが受ける依頼には制限時間がもうけられている。
依頼人は急いでいるので、いつまでもだらだらと時間をかけるわけにはいかないし、最初に受注したハンターでは達成できないと分かったなら、すぐさまほかのハンターに依頼を回すことができるからだ。
こういう、飛竜のような強敵を討伐するクエストの場合、今回のように五十時間ほどの制限時間がある。それまでに倒さなければいけない。
すでに五時間ほど経っているが、まだまだ時間には余裕があるので、こちらは問題ない。
ただ、あと二回、アイルーの世話になると、この依頼は諦めたほうがいいだろう。ギルドではそう推奨している。
三度も倒れるようなら、それは実力が足らないのだと。みずから死に急ぐ必要はない、いさぎよく諦めることも肝心だと。
これには多くのハンターがうなずき、したがっている。
が、諦めるのは、いやだ。
マルコは命がある限り戦うつもりだった。しかし三度も負けるということは、明らかな実力不足を示す。それは英雄を目指す少年にとっては屈辱的すぎる。
次はない。ぜったいに、もう負けずに、倒してやる。
固く誓ったマルコの眼前に、イャンクックが姿を現したのは、森のなかの水のみ場でのことだった。
池の水をクチバシですくって飲んでいるイャンクックの後ろから、そうっと近づいていく。大剣はまだ構えない。代わりにペイントボールを手に持っている。
この狩り場を走り回り、三時間もかかってようやく見つけたのだ。もう探し回るつもりはなかった。逃げ出されてもいいように、準備は怠らない。
狩りの邪魔をする、ほかのモンスター……ファンゴや野生のアイルーの姿が見えないのは幸いだった。イャンクックという大きなモンスターがいるせいかもしれない。
慎重に歩みを進めるマルコ。あと少しで、ペイントボールを当てられる位置に近づける。 思わずほくそ笑んだマルコは、次の瞬間、イャンクックが唐突に振り向いたことに目を剥いた。
181 :
クック先生:2007/07/11(水) 08:41:57 ID:+ANTI4ow
「えっ!?」
――まさか、こんな小さな足音を聴き取ったというのか!?
驚愕はマルコの体の動きを鈍らせ、対応を遅らせる。その隙は、見逃されなかった。
真正面から突撃されて、マルコの小柄な体躯は軽々と弾き飛ばされる。ゴミのように転がったマルコがなんとか起きあがってみれば、イャンクックはすでに体勢を立て直し、次の動作に移っていた。
クチバシでの連続の突つき!
「うわあっ!」
咄嗟に大剣を盾のように構え、これを受ける。鋼鉄が打ち合うような音が響き、衝撃に腕が痛む。
それだけではなかった。
イャンクックが首を大きく後ろに反らすと、その口腔に炎が生まれていた。
吐き出された炎の塊は、大剣とその後ろに隠れているマルコを包むように燃え盛る。
「ひあああっ!」
髪や肉が焼ける臭いに半狂乱になり、マルコは剣を放り投げて逃げ出した。
死ぬ! 死ぬ! 殺される! あんなやつに勝てるわけがない!
四つん這いで、もがくように敗走する、新人ハンター。その脳裏に、つい先ほどの体験がよぎる。
背後から尻尾の一撃をまともに食らい、悶絶しているところにとどめを刺された。
あの恐怖がよみがえる。
「ひっ、ひいいっ!」
目を瞑り、次の瞬間にやってくると思われる激痛を想像して、マルコはうずくまった。(死にたくない! 死にたくない! 痛いのは恐い! 死ぬのも恐い! 恐い恐い恐い!)
恐怖――ひたすら圧倒的な恐怖が、マルコの心身を打ちのめす。
が、いくら待っても、予想された追撃はやってこなかった。
イャンクックは、どこかに飛び去っていってくれたのだろうか? いや、背後にはまだ気配がある。
「もう恐がる必要はありませんよ」
背後から優しい響きの声をかけられて、マルコは驚き、振り向いた。
視線の先には、絶世の美女が立っている。年齢は二十代半ばか。波打つ赤毛を長く伸ばし、整った顔立ちには柔和な笑顔を浮かべている。肉付きのいい、魅惑的な乳房と尻の持ち主。
謎の美女は一糸まとわぬ裸体だった。
――いったい誰なのだ、この美女は。どうしてハンターの狩り場に女性がひとりで、それも素っ裸で立っている? ハダカ、どうして?
驚きのあまり言葉を失って硬直しているマルコを放っておいて、赤毛の美女はため息をついた。
「普通のハンターが相手なら、こちらとて手加減はできませんでしたが……あなたはどうやら、とても弱いのですね。ランポスに負けるのも無理はないほどに」
「なっ、なんだって!?」
「本当のことでしょう。私がたまたまあの場に降りなかったら、あなたは死んでいたのですよ」
マルコは言い返すことができなかった。たしかに、あの危機から逃れることができたのは、イャンクックがたまたま飛来したためだろう。
――美女の言葉には奇妙なところがあった。
「それじゃあ、まるであんたがイャンクックみたいじゃないか」
「ええ、そうです」
「はあ?」
マルコはぽかんと口を開けた。どう見てもただの人間でしかない目の前の女が、ふざけている様子もなくうなずいたのだから。
もしかすると物狂いだろうか? ならば、こんなところを恥ずかしげもなく裸体で歩き回っている理由にも合点がいく。
182 :
クック先生:2007/07/11(水) 08:42:50 ID:+ANTI4ow
「あんたは頭がおかしいのか?」
「……では、証拠をお見せましょう」
女は両手で両耳を塞いだ。すると、手を離した次の瞬間、女の耳は大きく扇状に広がる異形と化したのだ。それには見覚えがあった。イャンクックが持つ、あの特徴的な耳だ。
マルコが腰を抜かさなかったのは、ほとんど奇跡に近いだろう。
「これで分かりましたか? 私はイャンクックなのです」
「で、でも、なんで……」
「さあ? 人間の姿をまねることができる私は、どうやら仲間たちとは違うようなのですが、詳しくは分かりません」
イャンクックだと名乗る女は、そう言うとまた耳に触れる。するとそこは人間のものになった。
「若者よ。今すぐここを去りなさい。そうすれば危害は加えません」
「そっ、そうはいくか! こっちにだって、事情があるんだ!」
精一杯の勇気を振り絞って言った。やけくそだった。
女はは首をかしげる。
「事情?」
「俺はモンスターハンターだ。おまえみたいな悪のモンスターを倒すのが仕事だ!」
「悪……ですか……」
女はまた嘆息して、呆れるように眉根を寄せた。
「まあ、それはいいでしょう。あなたたちにも私を排除しなければならない理由があり、だからこそあなたがここにやってきたのでしょうから。ですが、その程度の力で私を倒そうなどとは、片腹痛いことですよ」
「なんだと」
「まず、武器の扱いからして駄目でしょう」
と言って、女は足元に転がっているマルコのバスターソードを指差した。
「振っているのではなく振りまわされるような武器を持って戦場にやってくるなど、愚かとしか言いようがありません。もっと扱いやすく、信頼できる武器を持つべきです」
「う、うまく扱えてないことぐらい分かってる。だけど……」
「だけど?」
「そ、その剣が一番かっこよかったんだよっ」
マルコの腕力を考慮すると、ライトボウガンや片手剣のような軽い武器が最適だ。だがマルコはそれらを使いたくなかった。
そんな、小さくて女々しい武器を使うことなど、英雄となる男としてのプライドが許さなかったのだ。
大剣こそはモンスターハンターの武器だ。とてつもない重量の刃物を振りまわし、巨大なモンスターをばっさりと斬り捨てる。強力で豪快な、まさしく英雄の武器。
まさに、かっこいい!
「俺は、英雄になりたい……だから、でっかくてかっこいい武器を使いたいんだよ」
「馬鹿ですね」
「ちがう!」
「いいえ。外見ばかりにこだわって、命を失う危険を冒すのは、馬鹿です」
外見ばかり……と、はっきりと言われたのは、初めてのことだった。
馬鹿だと言われたことは何度もある。ただ、今までと違うのは、女の言葉と表情には、なぜか怒りのような響きがあったことだ。
どうして怒るのだろう? マルコには分からなかった。
「あんたには、関係ないだろ」
「……ええ。関係ありません。ですけど、あなたのために言っているのです」
「俺のため? モンスターに教わることなんてないぞっ」
「そうでしょうか? いろいろとあると思いますよ。モンスターについても詳しくないようですし。あなた、はじめに私の足を狙って斬ったでしょう」
初対面でのことを言っているのだろう。たしかに、あのときは、足を斬ろうとして、そして見事に剣を弾かれた。
「足を狙って獲物の動きを鈍らせるのは、基本だろ」
勝負の鉄則といってもいいことだった。そんなことも知らないのか、と、マルコは女を馬鹿にするように鼻を鳴らす。
「そうですね。ですが、それは可能ならばそうすればいいというだけのこと。あなたでは、あなたの剣では私の足を傷つけることは難しいのですよ」
「どうして?」
「私の体を思い出してみなさい。大きかったでしょう」
たしかに、大きかった。
だからどうしたのだ? と言おうとして、マルコははっとした。
あの巨体を支えるための足なのだ。当然、硬く、強靭にできているはずだ。バスターソードの切れ味は、あまり優れているとはいえない。しかもマルコの膂力では、大剣の攻撃力を最大に活かすこともできない。
「そっ、そうか。そういうことか」
「分かっていただけたようですね。そして、もうひとつ。私の背後から忍び寄ろうとしていましたが……本当に気付かれないと思っていたのですか?」
「どういうことだよ?」
「耳がいいのですよ、私は」
マルコはまたおのれの過ちに気付いた。
イャンクックの大きな特徴のひとつ、あの大きな耳は、周囲の音をよく聴くために発達しているのだ。人間が足音を消そうと頑張ったところで、無駄な努力でしかない。
183 :
クック先生:2007/07/11(水) 08:44:20 ID:+ANTI4ow
「ちくしょう、そういうことか!」
悔しかった。してやられたと思った。イャンクックに完敗した。リオレウスでもモノブロスでもなく、ただのイャンクックに! 力も、知能も、まったく及ばなかった!
酒場の連中め、なにが「イャンクック程度なら目を瞑っていても勝てる」だ! 見栄を張った嘘もたいがいにするといい!
イャンクックは、こんなに、こんなにも、
「強い……」
マルコは愕然として両手両足を地につけ、うなだれた。
英雄への道が、数多の飛竜を打ち倒す正義の味方としての道が、最初の一歩を踏み出したところで崩れ落ちていった。
イャンクックも倒せないで、なにがグラビモスを倒す、だ。なにが古龍を倒す、だ。
笑い話でしかない。
あまりにも滑稽で、あまりにも馬鹿らしい、道化のくだらない笑い話。
マルコは泣いた。泣いて、泣いて、泣きまくった。鼻水を垂らして泣き続けた。
やっと泣き終わったころ、女が静かに口を開いた。
「あなたはあまりにも弱く、無知なのです。……学びなさい。おのれの弱さを。そして去りなさい。二度と私や仲間たちと戦おうと思ってはいけません」
そして、きびすを返す。どこかへ去ろうというのだ。
気付けば、マルコは女の足元にすがりついていた。
「まっま、待って、待ってくでよおっ」
「……どうしたのですか」
「お、おれっ、俺は、強くなりたいんだよぉっ……つよ、つよくっ」
「どうして?」
「つよくな、なって、みんなを、まもっ、ま、守るんだ」
マルコの両親は、マルコが幼いころに死んだ。飛龍に襲われて、息子の目の前で死んだ。その日からマルコは飛龍を恐れるようになって、憎むようになった。
マルコにとっての飛竜とは、大事な肉親の命を奪った悪のモンスター。
悪を倒すのは、いつだって正義の英雄だ。
だからマルコは、自分のような境遇の者を増やさないためにも、モンスターハンターにならなければいけなかった。
「つよくなって、みんな、守るからっ……守りたいがらあっ」
「……私に、どうしろと?」
「教えてくれよおっ、強くなる方法を、教えてくでよおっ」
この女性からいろいろなことを学べば、きっと強くなれるに違いない。そう信じたマルコは女の足に抱きついて、ひたすら泣き喚く。
なんとう、不様で、みっともない姿だろう。百年の恋も冷めるようなありさまだ。とても、もうすぐ二十歳になる少年のすることではない。
いったいどれほどの時間、そうしていただろうか。
「仕方がありませんね」
観念したように女が言った。
マルコの表情が、ぱっと明るくなる。
「あなたの名前は、なんというのですか?」
「ま、マルコ。マルコ・イーノ」
女は、その頭を優しく撫でた。
「マルコ。私にできることなら、いたしましょう」
「ほ、ほんとうがよぉ。やったあっ」
喜ぶマルコ。
にこりと笑う女。
こうして、マルコはイャンクックに弟子入りしたのだった。
投下終了。
続きはそのうちに。
>>184 GJ。
俺も教官にはお世話になったよ。
これはいい鳴海孝之
>>184GJ!
英雄を目指す新人ハンター視点のSSってあんまりないよな。
以前のスレはどうだかしらないが。
純情なマルコ少年の成長とアダルティなクック先生のはちみつ授業に期待すること大である!
GJ!
女教師イャンクックキタコレ!
というか何故今まで居なかったんだ先生擬人化
>>184 GJ。続きwktk
でも、頭の中はあの"らじお"の先生のイメージが居座ってるんだ…orz
ちょwww
俺も今から裸でクック先生に立ち回り教わってくるwww
気を抜くとあっさり殺られるからなあクック先生。
ともあれGJ!イイヨイイヨー
ノーモーション突進使う奴は全員氏ね
新米ハンターなら、誰でもクック先生に対飛竜戦での立ち回りを叩き込まれることになるからなぁ……。
先生に勝てなくて投げ出そうとしたあの頃が懐かしいぜ。
主人公がド厨房で某RPGの主人公を思い出したw
最終的には「英雄なんてやめてやる!」とかいいだしたりしてwww
日本語でおk
それなんて英雄二世?
そういうキャラなんだろうが見てて胸糞悪くなるくらいの主人公だなw
これから成長していくんだろうけど。
しかし、この作品オチがひどく気になる。
>>195 バカ○ルか。その台詞聞いた時、英雄やめるも何もお前英雄じゃないだろって思ったな。懐かしいぜ。
198 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 02:57:11 ID:+o4YcebK
>184
GJ。
でもメタルギアのザ・ボスを連想していまから泣けてくる罠。
すべてを教え終えたあと、
「あなたには私のすべてを教えました。もうあなたにあげられるのは、私自身だけです」
とか言われたら……
以前、人様のネタを横取り云々で失敗したので、今回はあえて
先に聞いておきたいのだが……。
>>77の
『クックソロ頑張るぞー!ってな元気っ娘がクックに出会う前に後ろから
襲い掛かってきたランゴスタに襲われて朦朧とした意識の中で訳も
分からず助けを求めても誰も来ない絶望と悲しみの中で自分の中に
ランゴスタが卵を産み付けていやぁぁぁぁ』
……ってネタ、お題としてお借りしても良いだろうか?
ちょっとグロ入ったダーク系(?)のSSに挑戦してみたいのだが……
どんなものだろう?
>>199 別に良いんじゃないか?
と、無責任なことを言ってみる。
誰かがOKだっていってもトリつけてるわけでもないだろうから本人だって名乗ってもウソかもしれんし。
ネタ投下した本人が今でもスレ見てるかどうかわからんから何ともいえんな。
スレに投下された時点で著作権云々は放棄したようなもんじゃねーの?って気はするけどなー。
でも
>>20みたいなマナーだなんだってうるさい奴もいるしな。叩かれるのがいやなら避けたほうが無難じゃね?
>>199 携帯からだけど、別に使っても構わんぜ
でも、「クック?目を瞑ってても倒せるわよ」なキリン装備の女の子がクックと戦ってる時に死角からランゴスタに麻痺毒を打ち込まれてクックに弄ばれつつ繁殖期だったので発情したクックが無理やりひぎぃぃぃ
てのも捨てがたくない?ない?
>>199 問題無いだろうと思う
村の雪山フルフルクエで
ランゴちくっ→麻痺→フルフルコンデンサ始動→ブレス3ヒットらめぇぇぇ!
を一クエで三回も食らった
キャラはその時フル金ぴか装備の♀だったがな…
205 :
20:2007/07/12(木) 14:58:39 ID:RJojqWx/
>>201 別にマナー云々言うつもりはないがなー。
ここに限らず雑談やシチュネタを元に書かれることって多いし。
それに対して使うんなら感謝の言葉は言っといた方がいいんじゃねぇの?とは思うけど、当然それを強制する気もないし。
ただ前スレは902が書くかもしれなかったのに、断りなく778が書いちゃったからそれはやりすぎじゃねぇ?ってだけ。
まぁ、スルーするのが一番だったんだろうけどねw
蛇足だが著作権は投下した後に発生するし、著作権云々の所は思ってても書き込みしない方がいいぜ。
匿名性の高い掲示板の2chに書き込んだ時点で著作権なんて放棄したようなもんだろ
スレ違いになるから議論する気はないけどネタを投下した奴と職人の間の問題だろ。
本人同士で話をすればよいことで赤の他人が口出しすることじゃないと思うけどなー。
だれが本人で誰が他人なのかしらねーけどさ。
ここにネタを書き込んだ時点で「俺書けないから誰か書いてくんない?」といってるものと思ってんの俺だけ?
>>208 よう俺
書く能力が全く無い訳じゃ無いけど、上手く調理出来るか不安だったり時間が無かったりなんだよな
ウザがられてるだろうし、これで最後。作品投下にwktkもしたいし。
他人が投下したネタを使うことは、問題だとは思ってないからな。
ただ、俺には902がネタだけの投下に見えなかったから778にレスしたんだ。
けど
>>207の言う通りだからスルーしときゃ良かったんだけどな。
スルー出来なかった俺が悪いのさ。
>>206 スレ違いも甚だしいが…。
「2chに書き込んだ時点で著作権なんて放棄したようなもんだろ」なんてあなたが思ってても本人がどう思っているかは分りませんよね?
って、書けばいいのか?w
そのあたりの著作権がどういう扱いなのかはググれば出てくるから、興味あるなら調べてみるのも一興かと。
あれ?
スイカバーって超滅一門の事だっけ?
出先で攻略本が無くて確かめられない……
>ハチミツの人
どこかで読んだ芸風だなーと思いつつ『ミナミハルオ』『口からビーム〜親子の会話』『ラージャンデグでプライド爆砕』『リアル赤フルフェイク〜ていすてぃぃ』で笑い死んだ。
えー、『ヘルスカンクマッドジャイロ』とか『ED性病男爵』とか言う単語を聞いた事がありますか?
それと、もしこんだけの大作がまだ続くならtxtでまとめてうpった方が読みやすいと思うが。
SSらしきものが出来つつある。投下するわ
※諸注意
・改行とか行数の具合わからね。見づらきゃスマン
・ぶっちゃけPSP版しかやってね。その上資料もナシ。設定間違ってそうな予感
・半端に一人称、ギャグ混じり
・長い。その上エロはまだ
以上、許せるなら読んでやってくれ。駄目ならスルーで
ポッケ村へ派遣されて早幾年月か。いや、一年と経っていないけど。
私は十代の終わりにハンターと呼ばれる職に就き、今や二十代の半ばに差し掛かろうとしている者だ。
詳しい歳とハンターランクはきかないで欲しい。
まあ色々と物思う年頃、と言うやつだと思ってくれると話が早い。
ある日私は思った。
ハンターにとっての贅沢とはなんだろうか。
希少な素材を使った装備を作ること、すっぱり一シーズン休んでみること、円盤石にフエールピッケルを使ってみること。
私にはしっくりこない答えしか思い浮かばず、同業の身内に尋ねてみた。
「美味い物食って寝ることだろ。生きてるって良いなーなんて思えるぞ」
そんな単純極まりない答えが返ってきたけれど、それは単純なだけに真理かもしれない。
感心した私は、さっそくそれを実行してみることにした。
とはいえ、実は美味しい物は毎日のように食べている。雇っているアイルーコック達は実に良い仕事をしてくれている。たまのハズレが恐ろしいが。
家で美味しい物を食べてゴロゴロするのは贅沢かもしれない。けれど心惹かれるかといえばあんまりだ。
また身内に尋ねようと思ったが、彼はなにがしかの約束があるとかで、もう出掛けたのを思い出した。仕方ない。部屋の整頓でもしながら考えよう。
…ハチミツは十分。肉が少なくなってきた。麻痺牙少なめ、買ってもいいか。
意外とゲネポスの上鱗を持ってない。ゲネポス素材といえばブランゴの渋い色の装備組みたいから必要だったか、などと思いを巡らせる。
……いかんな。いつの間にか、思考は素材獲得のために依頼を受けるかどうかに移っていた。
いやいや、今回は贅沢を実行してみると決めたんだ。
贅沢と言えば、前の村にいた頃のこと。食道楽を極めた貴婦人とやらから食材を持って来いと、あれやこれやの依頼があったのを思い出した。
ガレオスのキモの収集やら、竜の卵の運搬やら、ガノトトスの捕獲やら、飼い犬のために特産キノコを大量採集やら、本当にろくでもなかった。
特にあの頃、一身上の都合で捕獲と言うものが苦手で仕方なく、ぐったりと動かなくなった飛竜の横で何度膝をついたことか。
嫌な仕事内容諸々はともかく、あれらの食材は結局美味しいものだったのだろうか。
気になる。アレだけ採って(捕って)おきながら、自分で食べた事がないのも考えてみれば変な話だ。
決めた。美食食材だというアレらをとって食う。
調味料を適当に持って行けば、ソコソコ食える味になるだろうよ。
ついでにゲネポスの鱗なんかを剥ぐのも良いな。
有難いことに、今や生活はカツカツでもない。
納品すれば良い金になるだろうブツも遠慮なく食ってやる。
ガノトトスだけは金積まれたって勘弁してもらいたいが。
生活に潤いがあるのも、何かと世話を焼いてくれている身内のお陰だな。
有難や、有難や。
目標は決まった。ガレオスのキモや草食竜の卵が主な目当てだから、目的地は砂漠だ。
討伐目標がある依頼は気忙しいし、何より依頼の片手間にする贅沢ってものはいただけない。
砂漠の素材採取ツアーに参加しよう。そうしよう。
そうと決まればツアーの内容を詳しく訊きに行かねばなるまい。
参加したことが有るにはあるが、忘れてしまっていては無いのも同じだからな。
そんなこんなで集会所に来てみると、あんまり会いたくないヤツがいた。
今日は赤フルフル素材のフードを被っていたが、私には見慣れた口元でヤツだと丸解りだ。
幸い今の私の格好は、アイルーの顔を模した被りものに、なんだかムーディなパジャマ……もとい砂竜の素材を使ったローブ一式。
遠目で私だとは絶対にバレるまい。多分。
貼り出された依頼書をぼんやりと眺めているヤツには構わず、ギルドの受付嬢に声をかける。
ニヤリと笑みを浮かべた猫面に対してノーリアクションの受付嬢は、淡々とツアーの概要を教えてくれた。
夜で大きな蟹が出ますか。
砂漠の夜は寒いけれど、あの降る様な星空を観るのは魅力的だ。
しかし蟹か。苦手ではないが、どう考えてもあのサイズは食べ過ぎになる。
受付嬢にツアー開始時間まで参加を保留しておく旨を伝え、その場を離れた。
目を移せば赤フルフードのヤツはまだ依頼書を見ている。
てっきり身内の今日の約束とやらは、ヤツが相手だと思ったのにな。
ヤツとは二年近く前からの腐れ縁で、私の身内がヤツの保護者を務めている。
とはいえ、ヤツが私の親戚だとか言う話ではなく、身内がヤツを拾って世話をしてやっているだけだ。ヤツがハンターになったのも身内の紹介からだった。
ハンターとしてのヤツは戦力は申し分ない。むしろ実力は私などより格段に上だろう。
だが一部素行がよろしくないのも含め、対人関係に難がある上、あまり大っぴらに言えないあだ名が二つある。
あだ名のことを語るのは今度に回そう。
正直ヤツに積極的に関わるのは気が進まないが、保護者の居ない状態のコイツを野放しにするのはもっと気が退ける。
世話好きで人望ある身内の株を、ヤツが引き下げやしないかと少し心配なくらいだ。
仕方ない。今夜はヤツと蟹食いに行こう。大食漢二人ならきっと良い分量だ。
決めた。決めたなら即実行に移そう。
まだ依頼書を眺めている赤フルフードの肩をポンと叩き、振り向くヤツに『ヨッス』とばかりに右手を立てて挨拶する。
無表情だった口元が少しねじ曲げられ、その後ギタリと邪悪な笑みを浮かべた。
ノコギリみたいな歯が並ぶその禍々しさは、気の弱い方にはお勧めできない一品だ。
次いで押し殺した低い声が飛んで来る。
「どこの変態だと思いきゃ、テメェか。カエルもどき」
ヤツは実に口が悪い。顔を合わす度に殺す殺す喚く癖があるくらい。
カエルもどきとは私の事。出会った頃からこれだ。
どうやら緑色に染めた髪が由来らしいが、今その髪は出てないのによく誰か判ったものだな。
素直にその旨を丁寧に言ってやると、小さく鼻を鳴らすのが聞こえた。
当たり前だという態度がまたいちいちあれだが、腹を立ててもきりがないので話を切り出すことにした。
「時に貴方、私と夜の砂漠に行 か な い か 」
見えちゃいないが、フードの奥でヤツのギラつく目が訝しげに半眼になるのがわかる。
一拍置いて、聞こえた返事は。
「あぁん?」
言外に「あに言ってんだテメェ、頭沸いてんじゃねぇのか」と言わんばかりだ。
普段ガン飛ばしあってる仲だから、この反応は予想の範疇だ。私の説明がまだだからな。
「実はだね。独りで砂漠に美味い物食い倒れツアーに行こうと思ったんだけど、今砂漠には蟹が出るらしいんだ」
片手でハサミを作って、チョキチョキさせながら言う。
私だって無駄に怒りたくはない。道化を演じてやろうじゃないか。
「赤い方?」
真っ先に食い付くのは蟹のとこかい。
「砂漠に青いのは出ないんでないかな」
だいたい青い方はこうだろ、と両腕を挙げて手首を前に倒す。
猫面でこのポーズは子どもを脅してるようだなと、ふと思った。
ヤツと私では、あちらの方が少しだけ背が高いけど。
「……馬っ鹿じゃねぇの」
ぷ。って笑うな。指差すな。
「蟹が出るのは良いんだ。今更どうってことはない」
ハンターにしては決して強くないと自覚する私でも、盾蟹という生き物はなんだか相性が良いせいか苦手ではない。むしろカニミソ寄越せの対象だ。
見えない目線で話の続きが促される。
「蟹はご存知のとおり、実に大きい。そして食い倒れツアーをやるからには蟹を食うことは避けては通れない」
私は力強く握り拳を作り、言い切った。
「貴方(の胃袋の協力)が必要だ」
猫面被ったままで仁王立ちする私の前で、赤フルフードのヤツは無言だ。
何だろう、この空気。もしかしてものすごく呆れられているのだろうか。
「カエルもどきよ、テメェは今まさに増え行くテメェの生き恥を消すために、ここで俺に殺された方が良いんじゃねぇか」
「うわ、アホのくせに小難しい言葉憶えてる」
さすがに腹立たしいので、聞こえない程度に小さく文句を言ってやった。
「聞こえるように言ってんだろ!こんド畜生があぁっ!」
叫ぶなうるさい。ギラつく熱視線が、いっそ見えるんじゃないかって勢いだ。
「その首食い千切ってやらぁ」
「お断りだって言ってます」
赤フルフードと猫面のガンの飛ばし合いは、受付嬢や他の方々に華麗に放置されながら暫く続いた。
いや、こんな流れにするはずじゃなかったんだ。どうにも負けず嫌い根性が抜けなくていけない。
くっつけんばかりだった猫面の鼻を引っ込めて、説得を続けることにしよう。
「何も貴方への利点は、蟹肉ばかりではありませんよ。草食竜の卵や砂竜のキモも山分けします」
「……俺を食い物で釣る気かよ」
返すまでのその微妙な間。ここぞとばかりに猫面を近付け声を潜める。
「貴方のお好きなガレオス素材は、全て貴方に。そして貴方のお好きな例のブツも付けると言ったら?」
フードの奥から唸り声が響く。悩んでる悩んでる。
いつもは耳障りな歯ぎしりも、今は高笑いしたいほどに心地よい。
寄せた猫面の耳を引っ張られた。そこに耳打ちしても意味はないからな。
「乗ってやろうじゃねぇか、テメェの馬鹿馬鹿しい道楽に」
難しい言葉を使うようになるのは、身内の教育の賜と少し誇らしい。アホに馬鹿馬鹿しいと言われるのは聞き逃してやろう。
「出発前に依頼書を貼りますのでご覧あれ。基本的には採取ツアーですから、貴方は素材を採るのに適した装備で構いません」
耳を引っ張られたためにずれた猫面の位置を直しながら、必要事項を伝える。
面倒くさげに手を振り応え、去ろうとする背中に忘れていた一言を放り投げた。
「夜間ですから、ホットドリンクお忘れなくー」
「テメェはアイツかぁっ!!」
身内もよくこんな諸注意を言っているようだ。実にあの人らしい。
自宅に戻る道すがら私はふと我に返った。
説得の末にヤツを『贅沢』に同行させることに成功したが、そこまで必死になることだったのか。
ヤツを放っておいても、依頼書を読むのに没頭していたかもしれない。
ハンターに成り立ての頃の素行は酷いものだったが、最近案外大人しいらしいし。
私への態度は今もアレだが、恨まれるだけのことをやらかしたのは事実だから仕方ない。
ヤツと出逢った頃、私は実に荒んでいてヤツを半殺しの目に遭わせた。
それなりに事情もあったのだが、基本的に八つ当たりが元だったソレは、ヤツの心に深く復讐を誓わせたようだ。
討伐依頼などで一緒になった時は大剣振り振り嬉しげに追っ掛けて来たり、手が滑ったふりして斬りかかってきたり。
休憩中、いつの間にか後ろに回り込まれていて、耳元で殺してやるだの囁かれるのもよくあること。
そうでなくても、兜の中の燃え盛る黒い双眸から暑苦しい視線が絶え間なく付きまとう。
いろんなヤバさ溢れるその態度が、同行したハンター面々のヤツへの評価を悪い方へと押していく。
そんなヤツと二人で出掛けるのは酔狂としか言い様がない。
ともかく今夜砂漠の闇に葬られてしまわないように、手を打っておかねば。自宅の戸を開きながら、どうしたものかと考えた。
ヤツの悪評といえばこんなのもある。
いつだったかヤツと私は身内に連れられ、食事を取りに酒場にいった時のことだ。
仮面ぽい頭防具を愛用するヤツだが、さすがに食事の場ではそんなものは外すもの。
つり上がる目尻と眉尻は、常に怒っているような表情を持っている。
よく見れば黒目がちなくせに目付きが悪いというのは、有り得るものかと感心したものだ。
その目付きの悪さに拍車をかけるのが右目蓋から頬にかけての刀傷、かなり人相が悪い。付けたのは私だが。
人相が悪いけれども、黙っていれば不味い顔でもない。むしろ無駄に美形だった。
話を戻せばそこは酒の席だった。やや野性的過ぎる美形(ヤツ)に声をかけてきた物好きが出るのも無理からぬこと。
その顔に騙されて付き合えと絡む酔っ払いに、暫くは面倒くさげに「失せろ」だの「黙れ」だの不機嫌に唸りつつ返していたヤツだが、首に腕を回されしなだれかかられた時点でブチ切れたらしい。
絡んだ腕をむしり取り、相手を床に放り捨て睨み付けた。十分乱暴だがそこまではまだ良かった。
「鱗も尻尾もねぇヤツなんざ興味ねぇ!親選ぶ時点からやり直して来やがれ畜生がっ」
大衆の面前でこれを叫びやがった。
間の悪い事に、ざわめきの隙間を見事に貫いてしまったのだから始末におえない。
「何さこの変態っ」
泣きっ面も激しい酔っ払いの捨て台詞もまた当然か。
その日からヤツには『ドラゴンファッカー?』のあだ名がついた。
また別の日、その場には私は居なかったからまた聞きだが、こんな話もある。
ある飛竜の狩猟依頼を身内とヤツとあと二人の男性ハンターで請け、捕獲という形で達成したそうだ。
捕獲した飛竜をギルドの者が回収に来るのを待つ間、野郎共の雑談が繰り広げられた。
話題は何だか卑猥な内容だったらしいが、そこは詳しく聞いていない。
まあそんな話が進む中、ふとヤツに水が向けられた。
「そういやあんたって童貞?」
その話題を振ったハンターは、先日の酒場での話を知っていた。ヤツは見た目二十歳そこそこだが、鱗も尻尾もない人間の女に興味がないなら抱いたこともないのかと。
ヤツは暫く無表情だったそうだ。大方『童貞』の意味を知らず反応の仕方がわからなかったのだろう。
身内からの耳打ちの後、ヤツの表情は不機嫌そうなものに変わり、そして言った。
「シッケイな。生殖の経験くらいあるぜ。相手が孕んだかは知らねぇがな」
誰もソコまで訊いてないよという空気の発生する中、ヤツはさらに続けたそうだ。
「……ヒトの女には確かにしたことねぇな、ああ」
場の空気は確実に凍りついたと身内は後に語る。
数日の後、彼には新たなあだ名が付いた。
その名は『竜食い(性的な意味で)』。
最近にはそのネタをさらにつついた輩がいたそうで、どの竜とヤったのかを訊いたそうだ。
ヤツも言わなきゃ良いのに、馬鹿正直に「水ん中に居るアレ」と答えた。
ヤツのあだ名が増える日は近いらしい。
ヤツが物を知らないのも言葉が汚いのも、保護者たる身内は全て「野性児だったから」という説明で済ませているが、その性癖辺りの言い訳には悩んでいるそうだ。
品のない話が続いて申し訳ない。
そんな悪評山盛り、私の敵とも言えるヤツだが、私はそんなにヤツが嫌いでもない。
身内とヤツの師弟か親子のような関係が見ていて微笑ましいし、日々少しずつ見られる成長も好ましい。
経験や知識を得たヤツがハンターとしてどこまで行くのか、見届けたくもある。
そのためには二重の意味で、殺されてやる訳にはいかない。
『今夜はヤツと砂漠に行きます。私に何かあったら、ヤツの毒牙にかかったものと思ってくださいな』
そんな手紙を書いて、雇っているアイルーに身内宅へと届けて貰うことにした。
釘さえ刺しておけば、人目のない二人きりの状況といえ、ヤツも迂濶には手出しはするまい。
そろそろ出掛ける準備もしなければ。
青々とした装備に身を包み再び集会所を訪れた私の目に入ったのは、これまた青い塊が依頼書を眺める姿だった。
遠い昔を揺り起こすようなこの香り、メルホアシリーズを着て来たか。背に負うのは鬼神斬破刀、蟹や砂竜相手には良いものだ。
受付嬢から依頼書を受け取り、ヤツの横から壁に貼り付ける。
ヤツの帽子から長々と垂れた藍色だか紺色だか、珍しい色合いの髪が実に鬱陶しい。
ああ切ってやりたい。もしくはくくりたい。だが、その長さの訳も知っているから我慢。
こちらを横目でギラリと見た後、なんだか不機嫌そうに鼻を鳴らす。
私が貼ったばかりの依頼書をむしり取り、受付にタシンと突き出した。参加申し込みくらい、もう少し愛想よくできないものか。
のしのしとこちらに向かって来たヤツは、忌忌しげに私の頭を指差した。
「なんだよ、その馬鹿みたいな羽根ついた帽子は。オツムの軽いテメェにゃ似合いかもしんねぇがな」
映えあるギルドナイトの衣装に向かって、とんだ暴言だ。やたらにメルヘンな格好したヤツに言われる筋合いもない。
「似合うかい?それは有難う」
ニヤリと笑ってやると、ますます不機嫌な顔になったが無視しておこう。
じゃれてないで、そろそろ出発しなくては。
「砥石・食料・薬にホットドリンクは持ったかな。準備がよければもう行こう」
努めて、身内の言い方を真似てみる。
不機嫌が更に増したらしいヤツは、低く小さく応と言った。
「…んだよ、保護者面すんなっての。つかメルホアじゃねぇのかよ」
よく判らない独り言を耳にしながら、私は自分の武器を背に負うた。
得物は黒鍋【真好吃】、これほど今回の『贅沢』に持って行くのにふさわしい装備もあるまいて。衣装との相性がアレだとは思うが。
ベースキャンプに着いてなお、不機嫌そうな歯ぎしりが隣から聞こえてくるのにはうんざりした。
そろそろ機嫌の回復を計らねば、ヤツのぶちギレついでに命の危機に陥りかねない。
ヤツの肩を軽く叩き振り向かせ、その鼻先に掌に乗せた例のブツを突き出した。
振り向いた瞬間には不審と苛立ちに彩られていたその顔は、例のブツを目にすると眉間のシワを消した。顔側面の髪が少し揺れている。
私の掌の上にあり、ヤツが凝視するものは、むちむちと肉付きの良いカエルだった。
ちゅく……じゅば、ちゃむ……ずずっ
こんな音だけ抜き出せば、舌を絡めた深いキスのようだなと場違いな事を考える。
ブチッゴリ。ベキバキゴリンッなんて言う音も混じるが、まあそれは置いておこう。
見ないようにしている背後では、ヤツが溢れる喜色を隠さずカエルをむさぼっている。
カエルもどきとヤツに呼ばれる身としては、微妙に背筋の寒くなる事態だが、機嫌を直すためだ。仕方ない。
暫く後、ヤツが満足げな息を吐くのが聞こえた。
振り向くと、片手を名残惜しげにねぶりつつ、もう片手で帽子をとって自分を扇ぐヤツの姿があった。
帽子に押さえつけられていたそれが、髪を割って出てハタハタと夜風を泳ぐようにそよぐ。
耳の位置からヒレ状の物を生やしたヤツはヒトデナシ。
本性はカエル大好きな元ガノトトスだ。
今を遡ること二年ほど前、私は某貴婦人から水竜捕獲の依頼を請けていた。
前にも言ったかもしれないが、捕獲依頼は苦手だったため身内にサポートとして同行してもらった。
どんな装備で向かったのかはあまり憶えていないが、得物が鉄刀【神楽】だったことだけは確かだ。
ガノトトスの討伐依頼は何度かこなしていて、奴らの習性はあらかた憶えていた。
ガノトトスという生き物は変な性格だと思う。水の中に棲むくせに陸上生物を襲う。
水鉄砲のような技を持っているくせに、水中から鳥だの虫だのを撃ち落としたところは見たこともない。
でかい図体に似合わず小さなカエルに喜々として喰らい付く。
ジャングルの川辺、カエルで釣り上げたその巨体は、今まで見たどのガノトトスより大きくて綺麗に見えたものだ。
切り付けては離れるのが、大剣での戦い方だった。何せ重い武器だ。動きも鈍くならざるをえない。
大剣と刀の使い方を混ぜ過ぎていた気がしないでもないが。
水中へ帰るヤツに爆音を投げ付け、怒って飛び出したところへ刀を抜いて走り寄った。切っ先が地を擦る感触が腕に伝わる。
ヤツは目測を見誤ったらしい。私の体をかすりもせず、牙の列を抱える大口がごうと通り過ぎた。
隙だらけのその頭部を、地面から弧を描く刀の先が切り上げた。
何色とも言い難い右目を潰してやろうと思ったのだが、私も目測を誤ったのか、傷はあからさまに浅かった。
上等だ、なます切りにしてやる。
何度も切り掛かる内に半ば依頼を忘れかけていた。
捕獲が苦手な一番の理由は、竜共を殺したい欲求に勝ち難いからだ。
たかる虫ごと私を撥ね跳ばした尾の一撃で、意識も飛びかける。
ここで私は死ぬか。いや、こいつを殺そう。
捕まえてもどうせ刺し身にされて死ぬ。遅いか早いかなら早い方がいいはずだ。そうだ、魚はしめて暫く経った方が旨いに決まってる。
心の中で殺す言い訳を考えて、起き上がった。
どこを見ているんだか判らない魚眼を睨み付け、比較的柔らかな腹を裂くのを想像してみた。
水竜も臓(わた)は温かいのだろうか。
この得物でも水竜の三枚おろしは無理だろうか。兜割りくらいはなんとかなるかもしれない。
ああ、直にそうしてやるとも。殺して殺してバラして試してくれよう。
吐かれた刃のような水束を避けて、なお迫る。
今その首を切り落とせば、噴き上がるのは水か血か。殺せば判る。斬れば判る。
殺意に染まりきった私の理性を呼び戻したのは、肩に受けた小さな刺激。何かのつぶてを受けたようだ。
水竜との距離をとってから小さく振り返ると、別所で待っていたはずの身内が物陰から覗いていた。
心配させてしまったのだろう。
またガノトトスが川に飛び込む音を聞きながら、依頼を果たすと改めて心に決めた。
決意したものの、結果といえば、まあ失敗だった。
ヒレのしょげた竜を落とし穴に誘いこめたというのに、手投げの麻酔玉を全部外したからだ。
捕獲が苦手な理由の二番がこれのせいだった。
落とし穴からジタバタと這い出しそうな水竜に背を向けて走った。
この事態に備えて身内に同行を頼んだのだ。
捕獲用麻酔玉は尽きたが、ボウガンで打ち出す麻酔弾ならまだある。そして身内はそれを外さないだろう。
後ろから水竜の高い鳴き声が追い掛けてくるのを感じつつ、私はその場を離脱した。
身内と落ち合い、荒い息のまま失敗した旨を伝えると、身内は苦笑いしながら、お疲れ様と頭を撫でてくれた。
後は任せて休んでおけという言葉に甘えて、その場で待つことにする。
一緒に行って、また殺したくなってもなんだと思ったからだ。
程無くして身内が戻って来たが、何かを背負っていた。
地面に降ろしたそれは血まみれ傷だらけ、おまけに素っ裸でびしょ濡れの男だった。
水竜捕獲どころでなくなったと身内が言う。何処から人が紛れこんだのかは知らないが、全くだ。
意識の無い男を二人でキャンプまで運び、ギルドの迎えを待った。
さすがに素っ裸はかわいそうだろうと思い、自分の腰防具(思い出した、あれは雌火竜の鱗で出来たものだった)をかけてやろうとしたが、身内に止められた。
素肌に、編んだ鎖は凶器だと。そういえば花弁状の板金の下は鎖帷子だ。
身内が男にフルフル素材の腰防具をかけてやるのを見つつ、思った。
結局また捕獲依頼は失敗だったなと。
この時拾った男を身内が保護したと知ったのは六十日ほど後のこと。ハンターになったばかりのヤツが酒場で私を見つけ、噛みついて来た時だ。
男はあの時のガノトトスが変じた者だと知ったのは、ポッケ村に派遣されたばかりの頃か。
丁度私の荒みが完全におさまった頃だ。
長い間、ヤツの執着の理由に気付かなかった私は、てっきりヤツは危ない人だと思っていたものだ。
いろいろ勘違いしたのも良い思い出かもしれない。いや、今もヤツの言動が危ないのは確かだけれど。
思い出に浸るのはメルホア装備の香りのせいか。
遠い目になっていた自分自身に気付いたのは、ヤツの視線が変なものを見るそれになっていたからだ。
「メルホアねぇ……」
呟きに反応するように、ヤツのヒレがピリッと動く。
耳ではないらしいが、それに似た感覚器官としての働きがあるそうな。
いつの間にやらヤツの髪が、後ろで一つに結わえられていた。
長い髪も頭部をすっぽり覆う防具も、ヤツのヒレだの凶悪な表情だのを隠すためにある。
人目を憚ることない二人きりの今、ヤツはそれを丸出しにしているわけだ。
ヤツの腹ごしらえや準備は終わったのだから、そろそろ『贅沢』を開始しよう。
「ホットドリンクを飲もう。蟹を探しつつトカゲを散らそうじゃないか」
キャンプで見上げた夜空も、期待した通りに美しい。この『贅沢』が良い時間になることを祈ろう。
投下終了。
あと2回くらいかかりそうだ。長ぇ
軽妙な文章がすごくいい味だな。今後に期待!
凶悪面のメルホア装備にわろた。まあ素材ツアー向きの防具つったらそれだろうけど。
雌火竜防具のくだりに来るまで「?」と思ってたけど、
この語り手は女性ハンターなのか。
なんだか面白そうですよ?
レイプップされたハンターがリオハート&ハートが連れて来た奴に助けてもらうって思いついた
需要ある?
>>230 俺の野菜生活100を返してもらおうか。
飲みながら開いて噴出したじゃねーかorz
>>231 >リオハート&ハートが連れて来た奴
人(♀)×(龍(♀)+α)ktkr!!
234 :
前スレ778:2007/07/13(金) 15:07:23 ID:K+NjC000
ここ数日、読みごたえのあるSS投下が続いてうれしい悲鳴だな。
この調子で盛り上がってくれるといいねぇ。
で、
>>203が
>>77を投下したその人だと信じてレス。
ありがとう、思い通りに話が作れたら投下させて貰うかもしれない。
当方は
>>77のネタが「虫だからおぞましいエログロが書けるかも」と
創作意欲が湧いたのであって、発情した巨大爬虫類に犯られる(あるいは犯る)
という本物のドラゴンファッカーな話は今のところ興味がないんだ、スマン。
そっちの方が需要があるのかもしれないが……他の職人に任せたいw
ちなみに、もしキリン装備の女の子が犯られちゃうなら、相手はクックではなく、
発情した雄キリンに同種と誤解されて……という方がよくないかな? かな?
「……だっ……ダメェッ! そ、そんな大きいの……壊れちゃうよぉッ!」
……みたいに文字通り「馬並の」モノであんなコトやこんなコト、とか……?
>>234 その後その♀ハンターが孕んでしまい、父親に『認知』させるために雪山へ上る
そんなネタが浮かんできt
むしろキリンフル装備の男ハンターの「オレサマ馬並みなんだぜ感」は異常
フルフルの男装備は、素材の姿がアレな割には
どれも意外と真面目にかっこいいと思うんだが
>>227 GJ!
かえる出したときのガノトトスにちょっと萌え
>>230 家帰って攻略本見て確認した
スイカバーだった
その武器は
切れ味緑
威力1200 氷属性700ぐらいっぽいな。
>>237 スイカバーtueeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!
文字通りモンスターファック。生暖かく笑って許してw
鮮やかなオレンジ色のトサカを持つランポス種のリーダードスランポスが繁殖期の密林を疾風の如く駆け抜ける。
初めての巡回に張り切る彼女は半年前に孵化したばかり。本来ならまだ親の庇護のもと、群れの一員として生きる
ための知恵を身につける年頃の子供だ。
群れを統べるにはあまりにも幼く、経験も乏しい彼女が座についたのには事情があった。
このところ近隣のドスランポスが首をもがれ殺されるという深刻な異常事態が頻発していたのだ。
彼女の母でもあった群れの前リーダーも、昨日の夜半過ぎに体中の骨を砕かれ、真紅の爪は根こそぎもがれ、身体の至る所
生皮を剥がれるという残虐非道の限りを尽くされた首無し屍体となって洞窟前の浜辺に転がった。
周囲には殻を叩き割られたヤオザミが数匹。
そんな野蛮な行いをしてまわる狂獣の正体は分かっている。彼女達の暮らすこの密林から森丘を越えて、
雪山に至る道の途中にある、湯の泉が沸く辺りを縄張りにするヒトと呼ばれる種族の調達係、
通称ハンターと呼ばれる奴らだ。
巡回に出る前に彼女は祖母にあたる最古参の老ランポスに注意を受けていた。
ハンターを見つけても間違えても戦おうと思ってはいけないよ。今のお前では到底敵う相手ではないから。
奴らは非常に残忍だ、飛竜古龍はおろか身を護るための牙や爪を持たぬモスやアプトノスまでそれこそ文字通り
根絶やしにしていく。
今や私達の群れのリーダーはお前しかいない。よくよく注意して、生きて帰って来るんだよ。
だから、彼女はハンターの気配を感じたら即座に逃げるつもりだった。
まさか、よく飛竜が休眠を取る広場を抜けた洞窟の出口にハンターが罠を仕掛けていて、訳の判らないうちに
生け捕りにされるなんて想像もしていなかった。
「チェッ、クソ。ナンダヨコノサイズ。サイショウキンカンコウシンカヨ」
最近いろいろSSが投下されているので、自分も書いてみた。
いろいろとご都合主義が目立つと思うし、設定に穴が多いので
そういうのが駄目な人はスルーでお願いします。
ちなみにリオレイア希少種の擬人化ものです。
241 :
金色の飛竜:2007/07/13(金) 21:34:34 ID:A2sHtm+2
ハンターが決める覚悟には2種類ある。
と、いわゆるベテランのハンターたちは言う。
一つは自分がモンスターの命を狩ると決める覚悟。
人間とモンスターとの間には、比較する意味が無いほどの能力の差がある。
しかし如何に差があるとはいえ、命のいう基準で見た場合先に奪った方が勝つわけだ。
つまり狩る側に回ってしまう事が生き残る上で重要になってくるため、
何が何でも狩るという気持ちを持つことが必要だ、というわけである。
そしてもう一つの覚悟というのが、納得しにくいのであるが『狩られる覚悟』を決める事らしい。
ハンター稼業というのは、いつ死んでも不思議ではない過酷な生業である。
その最たるものが大型モンスターと人間の戦いである。命の危機に陥る事など数えだしたらきりが無い。
どんなに綿密に作戦を練っても、ほんの小さな不確定要素のため窮地に陥る事などざらである。
そのような事態になってしまった場合、自分がモンスターに殺されると考える事で、
逆に殺されないためにはどうすればいいのか直感で気づくようになる。そうすると返って冷静になれるそうだ。
言い方や例えの違いはあるとはいえ、熟練者の域まで達した彼らが言うのだから間違ってはいないのだろう。
しかし、言っている事が正しいという事と、それを実践出来るということは別の問題ではないだろうか?
実際そうなってしまったら、人間は絶対に現実逃避をすると思う。
俺だったら例えば、仕事が終わったらどの猫飯食おうか、とか、次はどの武器を強化しよう、とか、
明日はどの猫を解雇するふりをしようとか……まぁそんな所を思うだろう。というか既に思っていた。
「ギシャアァアァァァアァァァッ!!!!!!」
何故なら逃げる事のできない場所で、怒りの咆哮を轟かせて俺を狙っている飛竜が目の前にいるのだから。
242 :
金色の飛竜:2007/07/13(金) 21:36:11 ID:A2sHtm+2
事の始まりは数日前に遡る。
「そこのお兄さんや、今日は珍しいものを手に入れたから見ていかんかね」
ポッケ村にやってくる行商ばぁちゃんが、クエストを終えたばかりの俺ことラウルに声をかけてきたのである。
「おう、ばーさんか。で、今日はどんな物が買えるだい?」
「まぁまぁ、こいつを見てくれよ」
そう言うと、背負っている荷物の中から一冊の本を手渡したのである。
「ん〜と………『あなたのお家をもっと快適に!! 今流行の家具一覧カタログ!!』……何だこれ?」
「これはね、ドンドルマやミナガルデで人気の家具の紹介をしている本さ。
これに載っている家具を注文すると、自分の家の家具が流行の最先端を捉える家具に早代わりさ」
ばーさんの話を要約すると、ハンターが武器や防具だけにお金を注ぎ込む時代は終わったそうである。
これからは自分の家にお金を使うのが当たり前になるのだそうだ。
現に都会の方では随分浸透しているらしい。それがポッケ村のような田舎にもそのうちやって来る、
だからお前も流行に乗ってみろと。ついでにもっとお金を使ってくれ……ということなのだそうだ。
「ほら、このベッドなんかかなり良い商品だと思うよ?」
そういって指差した先には「女性が結婚したいと思う男性の家にある家具第1位!!」という怪しげな広告が載っていた。
しかもご丁寧に、このベッドのおかげでゴールインしましたみたいなカップルの体験談が載ってるし。
おかげで怪しさが更に倍増。
「しかも今なら家のリフォームまでしてくれる。このチャンスを逃す術はないと思うけど? どうだい?」
熱いセールストークを続けるばーさんの話を聞き流しながら、俺はもう一度カタログに目を通して見た。
ベッドは今使っている物よりもかなり大きい。怪しげな広告の通り二人で使ってもまだまだ余裕がある。
当然ながら一人で使う分には大きすぎる。うん、×ボタン転がり2回分ぐらいは有りそうだ。
その他オプションとして家のリフォームが行われる。
部屋数及び一部屋辺りの面積の増加及び各部屋への型落ちとはいえ家具の完備はもちろんのこと、
キッチンや風呂といった箇所までより快適に使えるようになるらしい。
それらの諸経費が全部込みで…………500000Z!?
俺にとっては決して払えない金額ではない。というか貯めてきた分を使えば一括で購入することが出来る。
しかし、それを購入すれば貯金は一気に無くなるだろう。
何よりも一緒に使うような相手がいない、ということが購入する意欲を無くしている要因になっていた。
243 :
金色の飛竜:2007/07/13(金) 21:37:03 ID:A2sHtm+2
「ん〜……やっぱり悪いけど金が無いから購入は辞めておくよ」
内心の葛藤は表に出さず、一応嘘ではない理由でばーさんから購入を断ろうとした。
「そうかいそうかい、お金が無いのかい」
俺の言葉を聞いたばーさんの目が変わった。マズイ、あれは肉食獣が獲物を見つけた時の目だ。
「でもそれだけじゃないみたいだね〜。もしかして……使う相手がいないからじゃないのかい?」
どうやら俺の考えていたことは見事に当てられてしまったようだ。
「何のことですか? 俺はお金が無いと言っただけで」
「こういう商品を断る人は、ほとんどがお金が無いと言うけれど、
それは大体建前で本音は使う相手がいないからって言うんだよ」
どうやら包囲網が狭められ始めたようだ。なんとか脱出できそうな言い訳を考える。
@ 実は幼馴染の女友達が……周りに女友達がいないから却下。
A 仕事仲間に実は相手が……ほとんどいない上にパーティー組む奴は男だらけ。やっぱり却下。
B 実はお手伝いさんとの禁断の恋に……どうみても猫です。出直しましょう。
どれも役に立たねぇ!! それでも更に使えそうな言い訳を考えていたら
「しかし本当にハンターの男たちはそういうのにうといんだねぇ〜」
なんかばーさんが哀れむような視線で俺を見ていた。そう言われるとなんか申し訳ないような気もしてきた。
何か言おうと思って口を開きかけたのだが、
「やっぱりアレかい? あんたも人間の女じゃ立たない方の男なのかい?」
は? なんかこのばーさん、今ものすごい事言いませんでしたか?
「男性のハンターは仕事の危険さが快感に変わってしまい、モンスター相手じゃないと立たないっていうけれど、
あんたもその口だったのか……それはすまんことをしたの〜。
それではこのカタログより『飛竜交尾大全』でも持って来た方が良かったかの〜」
ちょっとマテ!? 今このばーさんは俺の事を竜姦野郎〈ドラゴンファッカー〉に認定しやがった!!
気が付くと高い崖に囲まれた、知らない浜辺にいた。
波打ち際には、どうやったらこんな風に育つのか見当も付かない奇妙な姿の、一枚だけ白い葉を広げた大きな木。
逃げようと起き上がってまた盛大に浜に突っ伏した。
脚が思うように動かない。見れば脚に枯れ草が絡まっている。
なんでこんなのが脚に。
何とかして振りほどこうともがいても、枯れ草はしっかり食い込んだまま一向に解ける様子がない。
おかしい、何か変だ、誰が来て。助けて。
彼女は仲間を呼んだ。
すると、平になった木の幹で何かがムクリと動いた。
お願い、この枯れ草を噛み切って。
そう叫んだ彼女の舌が凍り付いた。
そこにいたのは巨大な骨の塊を担いだヒト…ハンターだった。
「チクショウ、ギルドノサテイニンメ。コノサイズデハアタマハトレナイダトォ?トウブニキズヲツケルノハダメ、
チイサクテモダメ、ヤロウドモ、ドウヤリャドスランポスノアタマヲヨコスンダヨ」
ハンターが彼女の柔らかい腹を蹴る。
肺の空気を強制的に吐き出させる衝撃に苦悶のうめき声をあげた。
痛いっ。
「アァ?ナンダオマエ?イイコエデナキヤガッテ。コチトラシュウカイジョトフィールドノオウフクデ
シバラクオンナヒデリナンダヨ、コンドヘンナコエダシタラケツアナニブチコムゾコノヤロウ」」
ハンターが彼女の尾を持ち上げた。
「アァ?オマエメスカァ。ハハ、イッチョマエニハツジョウシテヤガル」
この繁殖の時期だけ剥き出しになる生殖孔を指でなぞられた瞬間、痺れたような刺激が背筋を走り、
そこが開いてなにか溢れ出した。
…いや、なにいまの……!
本来なら牡の舌が触れることで起こる繁殖期の雌ならごく当たり前の反応だ。それがハンターに囚われるという恐怖で
心拍数があがっているところに、性的な刺激を受けた身体が交尾と認識したのだ。
「オゥオゥ、イッチョマエニカンジテヤガル」
ヌプ、奇妙な音と共に何かが膣に入り込んできた。
ひっ……!
痛みはなかった。穿たれたところが鼓動にあわせてズク、ズクと疼く。
いや、これ気持ち悪い…ヘンな事されてる。いやっ、いやっ誰か助けて……。
「アアヤベェ、タッテキチマッタヨ」
しばらくの間、怯えた声で鳴く彼女の生殖器を指で弄んでいたハンターが、やおら息を荒げて立ち上がり、腰の皮を捌いた。
「…テメェガワリィンダカラナ」
いくら幼くても雌だ。牙獣種に近い生物の腿の間から生えた隆々とした臓器のようなものがなんなのか悟って青ざめた。
このハンター、私と交尾を……!
ハンターの掌が泣き叫ぶ彼女の腰を掴んで一気に引き寄せる。
いやあああぁぁぁっ誰か来てえっ!助けておばあちゃんおばあちゃぁあああん!
ズンッ。
ハンターの巨大な性器が小柄な彼女の膣を容赦なく引き裂いた。
目の眩むような痛みと膣内を擦り上げ圧迫する硬い太いモノの存在が犯されている現実を突き付ける。
彼女は大粒の涙を零し暴れ狂った。
やめて抜いて抜いてえぇっ!ハンターの卵なんか産みたくないぃっ産みたくないよぉぉぉっ!!
「ウオッ…イイゾ、コノクソトカゲメ、モッ…タマラネェ、ウッ……デルッ…!」
ハンターが更に腰を密着させた。
ドプッ、ゴプッ、グプリ。一層深く捩込まれたモノがびくびく痙攣する。
胎内で迸しるハンターの体液。
ああ…できちゃう……ハンターの卵できちゃう……。
愕然とする彼女から生殖器を抜こうとせず再び抽迭を繰り返すハンター。
中で萎えたはずのものが硬く漲り始めたのを感じて彼女は絶望の悲鳴を上げた。
終
246 :
金色の飛竜:2007/07/13(金) 21:42:41 ID:A2sHtm+2
「待てばーさん! 勝手に話を進めないでくれ!! 俺はいたって正常だ!!!」
「いやいや、自分のことを卑下するものじゃないよ。若いうちは何事も経験だよ。
あたしゃあんたの生き様をしっかりと焼き付けさせてもらうよ」
ばーさんはどこか遠くを見つめるような、それでいて哀愁を感じさせる眼差しを俺に向けていた。
多分頭の中では、スコープモードでじっくりと飛竜を眺めてハァハァいっている俺や、
ティガレックスが罠に嵌った姿がたまんねぇぜ!! とか言って暴走する俺や、
ナナは俺の嫁だ!!テオなんかに犯せるかよ!! とか言って突っ込んでいく俺が映し出されているに違いない。
なんかそう考えたら急に腹が立ってきた。この誤解を解くにはどうしたらいいだろうか?
最も楽なのは風評被害を防ぐ為にも、このばーさんを亡き者にすることだろう。
しかしそれはいろいろマズイので魅力的ではあるが却下しよう。
そうなると現実的な案としては、俺が普通の女性と恋愛関係になっているという事を示すということが挙げられる。
しか生半可な言い訳は通用しないだろう。こうなれば信頼度を増すために、あのベッドを購入した方が良いのかもしれない。
日々細々と暮らすハンターにとって、高過ぎる買い物であるが背に腹は変えられん。善は急げだ。
「嫌だなぁ〜ばーさん。俺にはそんな趣味ないよ。それに、俺には将来を誓い合った相手がいるんだ。
たまたま彼女が都会の方に出ているから俺に女っ気が無いわけで、至って俺は普通だよ。
そういうわけで彼女の為にもあのベッドを購入したいんだけど」
「おおっ! そうかそうか、あたしゃあんたが普通だと信じていたよ。
それじゃあベッド及び家のリフォームは契約成立だね。すぐに手配しておくよ」
俺の声を聞いてばーさんがうれしそうに頷く。
その切り替わりの速さから、案外こちらをだます為に演技していたのかもしれない。
商談を手早く切り上げると、ばーさんは笑顔で手配とやらをしに行商人組合の本拠地へ向かって歩き出した。
そして一人その場に取り残された俺は空を見上げた。
「………空って何で青いんだろう?………」
疲れたように呟く俺の声は、誰に答えられるでもなく、爽やかな青空の下で吹き抜ける風に消されてしまった。
結局ばーさんに上手く嵌められてしまったのだろう。
「………儲かる仕事でも探そう………」
かくして俺の手元には商談成立の証である一枚の証明書だけが残ったのである。
248 :
金色の飛竜:2007/07/13(金) 21:44:30 ID:A2sHtm+2
そういうわけで俺は、今までに無いほど仕事をせざるを得ない状況に陥ってしまったわけである。
ところがこういう場合に限って割りの良い仕事が入ってこない。
あるのは大して金にならないような仕事か、またはリスクの割りに報酬が良くないようなものばかりだ。
「……ったく、何でこんな時に限って仕事が無いんだよ!?」
「そうは言っても旦那さん、仕事に愚痴を言ったって何も始まらないと思うニャ」
飯を食いながら悪態をついていたのだが、ネコ達が思った以上にまともな意見を言ってくる。
実際の所、蓄えが少なくなったとはいえ、ゼロになったわけではないから、
明日の暮らしに困るようなことは今の所無い。
しかし一気に金を使ってしまった反動で、その使った分を少しでも戻さないと、
何か大事な物が次々となくなるというような不安に駆られてしまっているのである。
「やっぱり俺には高い買い物だったか?」
この状況になってしまった行動を後悔した。ちなみに我が家はすでにリフォーム済みである。
一人のハンターと雇っているアイルーだけで暮らすには広すぎる程である。
「そんなことことないニャ! 旦那さんはとても良い買い物をしたニャ! そこは胸を張って良いことニャ!」
ネコ達が予想も出来なかった賛同の言葉をかけてくれる。
更には他のアイルーたちも同じような言葉を口にしている。
「………お前たち………」
不覚にも目頭が熱くなってしまった。他のハンター仲間からは、馬鹿過ぎて寧ろ尊敬に値するとか言われてしまった。
そいつらに比べると、こいつらはなんてご主人様思いのネコなんだろう。
今日は好きなだけマタタビでも奮発してやろうか? そんなことを考えていたが、
「ボクたちのためにこんなに家を大きくしてくれて嬉しいニャ!!」
「キッチンが改良されたから、今まで以上に過激な料理が作れるニャ!!」
「家の中でマタタビの栽培をするニャ!!」
「タル爆弾の性能強化実験が出来るニャ!!」
「アイルーが家を持つ時代が来たニャ!!」
訂正。所詮はネコでした。別の意味で目頭が熱くなりそうでした。あと俺の中で何かが切れました。
「? 旦那さん? どうしたニャ……?」
どうやら俺の出す気配が変わったのに気づいたようである。
そんなアイルーたちの質問に答えず、俺はアイテムボックスの中からある物を取り出した。
「そっ!? それは!?」
そう、取り出したのはネコたちが愛してやまないマタタビであった。
しかも彼らが入手していた極上物の一品である。そして俺は笑顔でそのマタタビを
「「「「「あ゛にゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ!?!?!?!?!?」」」」」
アイルーたちの前で踏み潰してやりました。こう、アクションの悔しがる並にげしげしと。
「見たかっ! これが人間の本気ってやつだっ!!」
思いっきりストレス発散になりました。今日も一日頑張れそうです。
そして俺は何か良い仕事が無いかと集会所へ向かうことにした。
ちなみにキッチンの方から、この世の終わりだニャ〜とか、やっぱり神はいないんだニャ〜とか、
これが最後の希望だったんだニャ〜とか、なんだか絶望に溢れる言葉が聞こえたが気のせいだろう。多分。
249 :
金色の飛竜:2007/07/13(金) 21:45:40 ID:A2sHtm+2
アイルーたちの嘆きを背に集会所に来たものの、今日もこれといった仕事が有りそうにない。
「今日も割りに合わない仕事しかないな……」
目ぼしい仕事がなさそうなので、適当に受注しようかと考えた時に、ある一枚の依頼書が目に留まった。
「……日時指定、受注者は依頼日時に師弟の場所まで来られたし。報酬は……10万Z!?」
依頼としては怪しい匂いが漂うものであるため、普段ならば受注しようと思わないだろう。
しかしながら現在は普段とは違うのである。何より相場の最高金額の優に三倍は報酬が出る依頼である。
まさしくハイリスク・ハイリターンというやつだ。まぁ何とかなるだろう。
そう思って俺はその依頼書を手に受付へと向かったのである。
そういうわけで、指定日時に来るように言われた場所に向かった。辿り着いた先は未開の土地にある、
古塔のベースキャンプであった。そこには全身黒ずくめの男たちがいた。どうやら今回の依頼人らしい。
「クエストの依頼を受けたハンターだな。それでは内容を説明しよう」
そのうちの一人が話しを始めた。ここにいる黒服たちは依頼人の代理であるらしい。
そして今回の依頼内容とは、とある美食家の貴族と大商人の共同の依頼で、
飛竜の卵を納品するというものであった。何でも普通種の卵ではなく亜種の卵が食べてみたいということらしい。
話が終わったので俺は古塔の頂上へと向かうことにした。
「しかし、金持ちの考える事ってのは良く分からんな」
そう言いながら、飛び掛ってきたギアノスを切り倒した。
ちなみに今は、長い間使っている愛刀のクイーンレイピアを装備している。
古塔のモンスターはギアノス、ガブラス、チャチャブー、あとは大雷光虫ぐらいしかいない。
そのため進むだけなら苦労はしない。本来なら倒さずとも行くことはできるが、
物を運搬することを考えると殲滅していく必要があるので丁寧に相手をしているのである。
そうこうしながら古塔の頂上までやってきた。
「話によると、確かガレキの中に巣が有るって言ってたよな……」
依頼人の話通り、崩れた外壁のガレキの辺りを探すと、確かに二つ程飛竜の卵があった。
俺はそのうち手始めに大きい方を持ち帰ろうとした。
「っ!? 重っ!?」
ところがこの卵、とんでもなく重い。多分ハンターが運搬する物の中でも、特に重い方じゃないだろうか。
しかし落とすわけにもいかないので、つらい思いをしながらも、今まで登って来た道を戻り始めた。
俺がモンスターを倒しながら進んだため、下りの負担は多少は軽減した。
しかしあくまで多少であって、この卵の重さを考えれば足し引きゼロになるのではないだろうか?
そんな事を考えながら塔を下っていったのである。
250 :
金色の飛竜:2007/07/13(金) 21:46:28 ID:A2sHtm+2
なんとかベースキャンプに戻ったのだが、そこで問題が発生したのであった。
なんと依頼人の連中が、俺の持ち帰った卵に対して難癖を付け出したのである。
色が変だとか、重すぎるとか、形がおかしいとか。
そこまでは俺も我慢ができたのだが、連中は更に最初に提示した金額を引き下げて来たのである。
これには依頼人第一主義の俺も堪忍袋の緒が切れた。
「上等だ! そこまで言われたらこっちもやってられねぇ!! この依頼キャンセルさせてもらう!!」
最早売り言葉に買い言葉な状態となり、俺はその卵を持ち上げ、今戻ってきたばかりの道をもう一度歩き出した。
「…………あの値段でも我慢するべきだったんだろうか?」
卵を持ち運びながら頂上を目指す道の途中で、俺は少し後悔の念に駆られていた。
「最初の四分の一の報酬になったとは言え、それでも十分に大金だよな……
いや、俺は俺の信念によって行動したんだ! そこに後悔はない!!」
自分を納得させるように強く言い切る。とりあえず塔の中腹まで来たところで、
ふと手の中の物体に違和感を覚える。卵が微かに動いたような気がするのだ。
注意深く観察して見ると確かに震えている。
なんだか不吉な気がするので、疲れた体に鞭を打って頂上を目指す足を速めることにした。
スタミナも大分無くなっていたが、そこは気合とか根性とかを振り絞って、頂上に一歩一歩近づいてゆく。
戻ってきた時と同様に、道には俺が倒してきたモンスターの屍が転がったままであった。
普通ならモンスターと呼べないような小さな野生動物たちが集まってくるはずなのだが、
ここにくるまでの道中、そのような光景はどこにも見られていなかった。
そしてようやく頂上の卵が置いてあった場所まで辿り着く事ができたのである。これでやっと腕の重さから解放される。
俺がひしひしとその事実に感銘を受けていたその時、ピシッ、と腕の中から何か硬い物にヒビが入ったような音が聞こえた。
驚いた俺がもう一度腕の中を見ると、卵に一筋のヒビが入っていた。さらに音と共に筋の数が増えていく。
そして卵の上部のカラが完全に割れてしまったのである。そしてその卵から
「ピギャァァァァァァ!」
完璧に固まってしまった俺の視線の先には、
「……これ、なんかタチの悪い冗談だよな…………?」
淡い桜色の生まれたての飛竜が、
「キュウッ?」
頭を出していたのである。
251 :
金色の飛竜:2007/07/13(金) 21:47:09 ID:A2sHtm+2
よし、落ち着いて状況を整理してみよう。
まず飛竜の卵を運搬していたが、依頼人との間にトラブルが発生。
この依頼は白紙になり、俺はその卵を破棄するのも勿体無いと考えたので、
元の巣に戻すためもう一度塔を登るハメになってしまった。
それで俺はなんとか頂上まで辿り着いたものの、運が良いのか悪いのか、
卵が俺の腕の中で孵化するという異常事態が発生した。
卵から孵ったのはリオレイア亜種だった。そして俺は生まれたばかり桜色の飛竜と見詰め合っているのである。
「そうか〜お前が入っていたから卵があんなに重かったのか〜」
なんだかあまりにも突飛な事態のせいで、理不尽さに対しての怒りを通り越して、
諦めに似たような感情が飛来してしまったようだった。
それはそうだろう。こんなの酒に酔ったハンターの与太話ぐらいでしか聞かない様な展開だ。
オチとしてはあまりにも笑えない。
俺のため息交じりの呟きに対し、腕のなかの子竜は一鳴きして首をかしげるような動きをした。
いつまでもこの卵だった物を持つ意味は無い。俺はそう判断すると、もう一つの卵の傍に子竜を下ろしてやった。
子竜は周りの景色が珍しいのか、辺りを見回したり、転がってみたり、鳴き声を挙げてみたりしている。
こいつら飛竜も小さい頃はこんなに可愛いのに、成長したらあんなにでかくなるんだよな。
ということは案外、この子竜と俺が命のやり取りをする可能性もあるわけだ。
ならば今のうちに危険因子は排除した方が良いのだろうか?
依頼内容のモンスター以外でも、討伐した個体によっては追加報酬が出ることもある。
ここでこの子竜を殺せば、正式な報酬程ではないにせよ、いくらかは貰えるだろう。
しかし、俺はそんな考えを苦笑と共に打ち消した。
「甘い考えって言われるかもしれないけど、お前みたいなチビを殺してしまうほど落ちぶれてはいないよ」
子竜の頭を撫でながら言い聞かせるように言った。
金が入らないのは正直つらいが、他にも探せばいくらでも仕事はあるだろう。
そろそろベースキャンプに帰還しようと思い、子竜に背を向けて歩き出す。
歩き出してふと後ろを振り返ると、何故か子竜がついて来ていた。
252 :
金色の飛竜:2007/07/13(金) 21:47:47 ID:A2sHtm+2
「おいおい、俺についてきたら駄目だろ」
俺はそう言って子竜の首根っこを掴むと、元いた巣の中に下ろしてやった。
そしてまた歩き出したが、数歩進んだところで後ろを振り返る。やはり子竜はついて来ていた。
俺は無言で同じように持ち上げて巣の中に戻してやった。
とてとて(子竜の足音)→ひょい(首根っこを掴む)→ぽい(巣に返す)→とてとて→ひょい→ぽい→………
「だから! オマエの場所はそこなんだって!!」
何度やっても付いてくる子竜に俺は根負け寸前だった。
しかもこの子竜はうれしそうに俺に擦り寄ってくる。どうやら俺を敵だと認識していないらしい。
「………もしかして俺、懐かれてる?」
そういえば以前文献で読んだ事がある。飛竜は生まれて一番最初に目にした動くものに良く懐くと。
そう考えれば、何故俺について来ようとするのか納得がいく。
納得はいくが、普通の依頼ではありえない事の大安売りにいい加減頭が痛くなってきた。
「キュウッキュウッ」
俺の悩みをよそに子竜が鳴きだした。更に俺に甘噛みしている。もしかして腹が減っているんだろうか。
試しにアイテムポーチの中から生肉を取り出し、剥ぎ取りナイフで小さく切って口元に持っていってみる。
すると一口で食べてしまった。なんだ飛竜を餌付けしているようでおもしろいかもしれない。
肉を切っては食べさせるという行為を繰り返し、肉がなくなると同時に満腹になった子竜は眠り始めた。
起こさないようにそっと持ち上げ、そのまま巣の中に返してやると、俺は今度こそ帰還するために歩き出した。
しかし、頂上の中央部に来た所で、俺のハンターとしての感が何かを微かに捉えた。
「これは………血の匂いか!?」
ほんの微かではあるが、ハンターに馴染みの深い匂いを感じ取った。
そして俺は重大な事を見落としていた事に気づいた。俺が切り倒したモンスターの屍が何故そのままだったかということだ。
つまり、それらを食料とする肉食獣が出てこられない理由がこの塔には存在していたのである。
「ッ!!」
俺の中の感が告げる。何かがこの場所にやって来ると。
そしてそれは雲を突き抜けて俺の前に姿を現したのである。
そして俺はその存在を確認した瞬間、思わず呟いていた。
依頼内容では亜種って話だったよな……と。
「依頼人さんよぉ、確かに亜種って言えばそうだけど、こいつは……」
「ギシャアァアァァァアァァァッ!!!!!!」
俺の目の前に怒りの咆哮を轟かせる、
「……希少種って言うんだよ」
金色の月の異名を持つ飛竜の女王が舞い降りたのである。
253 :
金色の飛竜:2007/07/13(金) 21:50:46 ID:A2sHtm+2
とりあえずキリがいい所まで投下させていただきました。
続きはその内ということで・・・。
>>239氏 投下の最中に書き込んでしまい申し訳ありませんでした。
次回はこのような失敗しないように書き込ませていただきます。
ここで切るかー……
二人ともGJ!!
二人ともGJ!
というかネタもある意味タイミング良いな!
>>239 ほんまにドラゴンファッカーが出るとは思わなかった
貴方の趣味に完敗
>>240 途中だからなんともいえないが面白そうだ
期待してるぜ
>>253 GJ!
一つ思ったんだが、
>そして俺は重大な事を見落としていた事に気づいた。俺が切り倒したモンスターの屍が何故そのままだったかということだ。
つまり、それらを食料とする肉食獣が出てこられない理由がこの塔には存在していたのである。
その屍にはギアノスも含まれてるよな?
ってことは肉食獣出てきてない?細かくてスマソ
きっと大人しい草食のギアノスだったんだよ
オレ、このスレで出てるドラゴンファック系SSの要望って
てっきりネタかと思ってたんだが……人間の欲望には限りがないぜ。
ゲーム画面内のモンスター共にこんな欲望の目を向けている奴が
本当に居たとは……世の中広いぜ……。
WGJ!
…ダメだ、どすらんぽっぽはどうしても擬人化しちまう
チビハートはそのままなのに…orz
つか、目がくりくりしてて翼膜がまだ小さくて頭が全体的に丸みを帯びてる生まれてリオハート誰か絵うpキボン
山菜じいさん×ミラボレアスのどらごんふぁっくで。
山菜爺さんsugeeeee!
>>260 とりあえず、モンハン(どれでも)を起動してギャラリーの「リオレイアの生態」を再生すると幸せになれるかもよ
ロリレイア(*´Д`)イイ
>>263 待て、それはショタレウスだっ!
と言うかその手があったなそう言えば
トン
あのムービーの幼竜って全部メスだよな
何か見分ける方法でもあるのか?>>リオレイアの生態
前スレで寸止めで終わっていたやつがまとまったので今更ですが投下します。エロ初挑戦なのでまだまだ未熟ですが読んでもらえたら幸いです。
重なる唇……そこから伝わる暖かみ……ランドの理性はすでに限界近くだった……
「ん……」
ゆっくりとリンが離れる……二人の間には一本の唾液の糸……
そしてゆっくりとリンはランドの下半身に手をやる……
「り、リン!そ、そこは!」
インナー越しでも判る膨張したランドのソコに白く綺麗な手を沿えるリン
「あぅ……ふぁ……」
彼女が撫でる度に男とは思えない弱々しい声を出すランド
リンにとってはそんなランドの反応が愛しくなって
(もっと……もっとランドさんを気持ち良くさせたい…)
そう思ったときには既に彼女の手はランドのインナーをつかんで下ろしていた。
「リン!だ、ダメだ。」
言葉は抵抗しているが体は彼女のなすがままだった…
そしてインナーを脱がされ産まれたばかりの赤ん坊と同じ姿をランドはさらしていた。
ただ、あの時とは違うのは逞しくなった体つきと…欲望に膨張した男根だった。
(これがランドさんの……凄くおおきいです……)
初めて見る目の前にそそり立つランドのソレに驚きを隠せないリンだが手にとると優しくキスをした。
つぎの瞬間ビクッとランドのソレは脈打つ…そしてリンはおもいきって口に頬張った。
「っ〜〜?!」
その瞬間ランドの全身に今まで感じた事のない快感を襲う。
彼女の舌と唾液がランドのソレをつつみこむ
「り、リン……」
か弱い声をあげながら彼女の方を見ると顔を赤く染めながらランドの肉棒を頬張りながら上目で見るリンの姿があった。
ランドの目に写る彼女はとても美しくとても妖艶でランドの股間を熱くさせた
そして首を上下に動かすリン。そのたびにランドの肉棒に彼女の唇と舌による摩擦でランドは限界がきていた。
「り、リン…それいじょうすると…ああぁ!!」
次の瞬間リンの口の中で激しく脈動しながら精を吐き出すランドの男根
その勢いと量に口の中では収まりきれずリンの顔に精液が掛ってしまった。
(これがランドさんの…熱い…それに凄くネバネバしてる…)
今まで感じたことのなかった射精感にランドは頭がぼんやりとなっていた
リンは粘りけのある精液を少しずつ飲み込む。すこしばかり苦しそうな顔をしたリンの表情ランドの目に写った。
「な、何してんだよ!」
まさか自分の精液を飲んでいるとは夢にまで思わなかったランドはすぐにやめさせようとしたがすでにリンは飲み干していた……
「ご、ごめんなさい……その…吐き出すのは失礼だとおもって……」
物凄く申し訳なさそうな顔をするリン
「いや、俺のほうこそいきなりだしちゃって……その、あまりにも気持ち良かったから我慢できなくて…と、とりあえず…」
そういってリンの顔にかけてしまった精液を拭き取ってあげた。そこには頬を赤らめ嬉しそうな彼女がいて
「本当ですか?嬉しい…痛かったらどうしようかと思って…」
その嬉しそうな顔がランドの心をまた熱くさせる。かわいい……素直にそう感じた……そしてランドはリンを押し倒して唇を重ねていた…
「んん……ん…」
少し驚いたリンだったがすぐにランドを受け入れた。今度は逆にランドの手がリンの秘部にあてがわれる……
「ひゃぅ!」
かわいらしい悲鳴が木霊した。彼女の秘部は既に男を受け入れる準備がととのっていた。ランドの男根もさっきイッたばかりなのに大きくなっていた。
ランドはリンのパンツに手をやるとゆっくりと脱がしてあげた。
脱がし終えるとリンはゆっくりと足を開く…まるでランドを誘うかの様に…
ランドの目に映るのはあらわになったリンの秘部…ランドにとっては愛らしく神聖なものに見えた。
「来て…ください…」
上気した瞳を潤わせながら彼女は言った。その言葉はランドの理性を打消し本能が彼を支配する。
ランドはリンに股がると膨張した肉棒を彼女の秘部にあてがう…もう遮るものはない……
ゆっくりと入口を押し広げリンの中へ入っていく…
途中何かを突き破る感触がしてリンが苦悶の表情を浮かべていた
「大丈夫か?」
彼女の苦しそうな表情をみてランドは尋ねる
「私は…大…丈夫ですから続けてください」
そしてランドはまた彼女の中へ進んでた…
(凄く気持ちいい…)
自らの肉棒を彼女の中へ納めたランドはそう思った。
彼女の中はとても熱く、肉棒をきつく締め付けられる感覚がするほどだ
(ランドさんのが私のなかにはいってる……凄く暖かい…)
リンもまた自らの中にはいってるランドの熱い肉棒を感じとっていた。胸の高鳴りがとまらない……彼とひとつになっている喜びでいっぱいだった。
「動かすよ…」
ランドはリンの中に納まる肉棒を半分だしてはまた彼女の中へ入れる
「あ……」
彼女から甘い声が漏る……
そしてランドは一定のリズムで腰を動かす……
ただそれだけなのに、異常なまでに気持ちいい…さっき口でしてもらったのよりも快感だった。
「あん、あ、あぅん……」
ランドが突く度に甘く淫らな声をあげるリン…自分の秘部を押し広げられ入ってくる肉棒との摩擦が全身に駆け巡る
肌と肌のぶつかりあう音とリンのあえぎ声が部屋に響く…
「リン…そろそろ…イキそうだ」
激しい摩擦に限界が近きいっそう腰激しく振る
「私の中に…いっぱい…いっぱいだしてください」
リンもまた限界が近付きランドの背中に腕を絡ませよりいっそう淫らな声をあげる。次の瞬間彼の肉棒が脈動し自らのなかで何かが爆発したような感覚にリンは意識が真っ白になり…
ランドも射精感の気持ち良さに力が抜け彼女を抱き締めながら夢の世界へと誘われていった…
朝の肌寒い空気がランドの目を醒まさせる……
(朝か……)
そう思いながら体を起こすが彼女の姿がない……
(もう……帰ったんだな……)
何故か心が悲しくなった……ただ彼女は恩返しをしただけだから当然だよな……そう自分にいいきかせ悲しみを誤魔化す……
またいつも通りの日常が始まるだけさ、お腹もへったし台所からいいにおいがするし朝御飯でも…………あれ?なんで台所から料理のにおいが?アイルーは雇ってないぞ?
すぐさま台所へ入るとそこにはテーブルに料理を並べるリンの姿があった。
「あ、ランドさんおはようございます。丁度朝御飯ができた所ですよ」
優しい微笑みを浮かべランドの目覚めを迎えるリン
「え?な、なんで?あれ?なんで?帰ったんじゃなかったの?」
驚きを隠せないランドの質問に彼女は顔を赤くしながら答えた
「えっと……お母さんから命の恩人には必ず恩返ししろって…あと……え、えっちな事をしたらその人と一緒に暮らせって言われてるんです」
恥ずかしいのか耳まで真っ赤になりもじもじしていた。
なんだかこっちまで恥ずかしくなってくる……
「あの……やっぱり迷惑ですか?」
彼女の悲しそうな表情がランドの瞳に写って……気付いた時には彼女を抱き締めていた…
「そんな事ないよ……もう、山に帰ったかと思ってたから…だから今リンがここにいることが凄く嬉しいよ。あの時には言えなかったけど俺もリンの事が好きだ…一緒にいてほしい」
その瞬間悲しそうな彼女の顔はとても嬉しそうな表情に変わった。その顔は今までで見た中でも一番幸せそうで…
「ふつつかものですが宜しくお願いします。」
そして一番可愛かった。
「俺の方こそよろしくな」
二人の唇が重なりあった
それはとても暖かく幸せなものだと二人は感じていた。
終
>>272 完結乙&GJ!
初エロだったそうだけど、ほとんど違和感なく読めたよ。
そういえば、前スレから結構な数が未完のまま持ち越し(?)になってるんだよなぁ…
前スレ「飛竜の主人」書いてるヒト、個人的に超応援してるから頑張って。
>>272完結おめ!超GJ!
ちょっくら雪山で怪我してるキリンの子探してくる。大人なら麒麟王作るのに必要だから討伐するけど。
メスとは限らんぞ
ショタまでならウェルカム
女ハンター×キリン擬人化ショタとな?
>>277 別に構わんが、キリン♂装備を思い出して見ろ。
279 :
174:2007/07/15(日) 11:49:51 ID:ADrVNwt1
続き書けたので投下する
>>175で壮大な失敗をかましたけど今回は大丈夫だぜ そのはずだぜ
280 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:50:21 ID:ADrVNwt1
森のなかをふたりで歩いていると、マルコが思いついたように言った。
「俺、あんたのこと、先生って呼ぶよ。じゃなくて、呼びます」
言葉と態度を直そうとしているのは、彼なりに、師弟の礼について思うところがあるからだ。ものを教わるなら、それなりの礼儀を尽くさなければならない。その程度の常識は持ち合わせていた。
「せんせい、ですか?」
「ああ! 師匠ってこと、です!」
女は困ったようにほほ笑む。マルコはそれに気付かないのか、異様に気をよくしていた。
「先生の名前、なんて呼べばいいのかな」
「あなたたちが、私たちの一族をイャンクックと呼んでいるのは知っています。それでいいでしょう」
「いや、先生はただのイャンクックなんかじゃないし、それってつまり、俺のことを人間って呼ぶようなものだろ。やっぱり名前には個性があったほうがいいよ」
そう言って考えたすえに、マルコの頭がひねり出したのは、
「クック……そうだ、クック先生っていうのは、どう、ですか!?」
「ええ。いい名前をありがとう」
安直な――と思わないでもないクックだったが、輝くような目で言われると、そんなことを言う気は起こらなかった。
……それにしても、澄んだ瞳をしている少年なのだ。
「あ、あのさ、それでさあ、クック先生」
「はい?」
「そのままだとやばいから、その、服を着てほしいんだけど……」
クックはまだ裸のままだった。当然、豊かな乳房も丸い尻も、赤い陰毛が生えた秘部も丸見えとなっているわけだ。
最初の驚愕から立ち直って、そういうことに気を回す余裕が出てくると、マルコのような初心な少年には刺激が強すぎる格好だった。しかもマルコは童貞なのだ。ズボンの奥のペニスは硬くなっていた。
みなまで言われずともそのことを悟ったクックは、うなずくと、森の奥のほうに歩き出す。
「どこに行くんですか、先生」
「メラルーたちの住家に」
「メラルーの?」
メラルーとは、ハンターたちから親の仇のように憎まれている、二足歩行の黒猫のようなモンスターだ。アイルーと同じような姿の種族だが、人里できちんと働いて収入を得ている彼らとは違い、人間の持ち物を盗んでは売りさばいている。
「あそこには、人間の品が集まっています。きっと人間の衣服もあるでしょうから」
「そうか。やっぱり頭がいいなあ、先生は」
メラルーたちが集まる小さな集落は、森のもっとも奥深いところにひっそりと佇んでいた。
クックは一匹のメラルーの前にしゃがみこむ。
「メラルーよ。私のこの姿に合う衣服はありませんか? それと、そこの彼に武器を」
にゃあ、と返事をして、メラルーはどこかへ走っていった。しばらくすると戻ってきて、衣服と武器だと分かるものをクックに手渡す。
クックは柔らかくほほ笑んで、そのメラルーの頭を撫でてやった。
「いつもありがとう。お礼はきちんとしますからね」
メラルーはまた、にゃあ、と鳴いた。
用を済ませて、里を出ると、クックはすぐに手に入れたものに袖を通した。初めての経験なので少しとまどったが、意外と簡単に着ることができた。
そうやって身なりを整えると、クックはまるで学者のようだ。紫色の、簡素な造りだが美しい衣服。よくもまあこんな上等なものを盗んできたものだと、マルコは感心してしまった。
マルコに渡された新たな武器は、片手剣のアサシンカリンガだった。バスターソードに比べれば攻撃力は格段に落ちるものの、鋭い切れ味を誇り、軽くて扱いやすい。
「片手剣かあ……うまく使えるかなあ」
「きっとできると思いますよ」
「そっ、そうかなあ?」
照れながら、さっそく剣を振り回している。それにしても純粋で単純な少年だった。
「それにしても、なんか複雑だなあ。あいつらにはいつも盗まれてばかりだから……感謝するのもなんだかなあ」
集団で襲いかかられ、回復薬や閃光玉などを根こそぎ盗まれて、泣く思いをしたことは何度もある。マルコにとっては憎んでも憎みきれないやつらなのだ。
「今度からはマタタビを持っておきなさい。そうすれば、彼らはそれだけを盗みますから」
「そうなんですか?」
「ええ。彼らは猫です。猫はマタタビに目がありませんからね」
「へえ! 知らなかった」
感心して、クックへの尊敬をますます高めるマルコだった。
281 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:50:51 ID:ADrVNwt1
弟子入りしたといっても、クックはイャンクック――つまり飛竜なので、マルコの剣の扱い方や体さばきに口を出すことはあまりできない。だがその代わり、モンスターの生態やこのあたりの地理についてとても詳しい。
ランポスがどのようにして狩りを行うのかということや、ランゴスタが集まる場所、特産キノコがよく採れる場所、飛竜が寝床としている洞窟など、クックは自分の知識をマルコにすべて伝えていった。
特に、今はリオレウスとリオレイアが巣にしているという場所についての情報は有益だった。つがいの火竜は恐ろしい強敵だ。知っていれば、間違って近づくことはない。
マルコが今まで無能だった理由は、戦闘の拙さよりも、無知によるところが大きい。ひたすらモンスターを倒すことばかりを考え、勉強は英雄には不要だと信じていたのだ。
だが、膂力さえあればそれでいいと考えることをやめたマルコは、クックの話を素直に聞いた。そして綿が水を吸うように、その知識を吸収していった。
木漏れ日が降り注ぐ森の水のみ場で、クックの授業が行われている。
――マルコはファンゴに対して真正面から斬りかかり、いつも返り討ちにされていた。
「ファンゴの突進はとても強力ですが、その勢いゆえに軌道が単調になりがちです。動きをよく見極めたなら、たやすく避け、足を止めたところに攻撃することができます」
ランゴスタの羽や甲殻を集めようと思って倒しても、バラバラに破壊して素材を駄目にしてしまう。
「彼らは強い衝撃に脆いのです。毒を使って仕留めれば、問題ないでしょう」
よく傷つくので、回復薬がすぐなくなってしまう。
「アオキノコと薬草を調合なさい。薬草もアオキノコも地面に生えています。アオキノコは、モスの背中に生えていることもありますね。そうやって作った薬にハチミツを加えれば、さらによく効く薬になるでしょう。ハチミツは、もちろん、蜂の巣から採れますよ」
「なっ、なるほど」
マルコはひたすら感心して、一所懸命にクックの授業を受けつづけた。
「でも、なんで先生が、回復薬の作り方なんて知ってるんですか?」
「それは、私が先生だからです」
すました顔で言われて、マルコは「はあ」と応えるしかなかった。
「――というのは、冗談ですが。むかし、こうして人間の姿をしているときに、たまたま出会った親切なハンターから教わったのですよ」
そう言って、むかしのことを思い出すように遠い目をしたとき、その表情がなぜか寂しげに陰ったが、マルコはわけを訊こうとは思わなかった。人の大事な部分を無遠慮に探るような行為は、恥ずべきことだと思ったからだ。
「さあ、今日の授業はこれぐらいでいいでしょう」
いつのまにか、あたりは暗くなり始めていた。夜になれば、狩り場にはいろいろと危険が増える。夜行性のモンスターの行動が活発になり、昼にも増して狂暴化するし、足元も定かではなくなるからだ。
「私は巣に戻ろうと思いますが……」
「えっ」
「……どうしました?」
マルコが残念そうな声を上げたので、怪訝そうにクックは言った。
「いや、先生、もう行っちまうのかなって、思ったんです」
「まあ」
恥ずかしそうにうつむいたマルコを見て、クックは好ましい感情を覚えた。
まるで、親鳥を慕う小鳥のようだ。
「明日もちゃんと会えますよ」
「そうだけど……先生、ベースキャンプで俺といっしょに寝てくれないかな?」
マルコにとっては、一世一代の告白のような、思いきった発言だった。女性を、それもこんなとびきりの美人を自分の寝床に誘うなど、人生で初めてのことだったのだ。
「かまいませんよ」
クックはほほ笑み、あっさりと了承してしまった。そのことを後悔したのは、マルコのほうだった。
282 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:51:25 ID:ADrVNwt1
――眠れない。
鎧を脱ぎ捨てインナーのみになり、地面に布を敷いて眠るマルコは、背後のベッドですやすやと寝ているはずのクックの存在を感じていた。
昼間、始めて人間の姿を見せたときの、あの素晴らしい裸体が脳裏に焼きついて離れない。目を閉じれば、目蓋の裏にあの妖艶な肢体が鮮明に浮かぶ。
異性の裸に免疫などあるはずもないマルコの股間は大きくテントを張り、とても眠れるような状態ではなくなってしまっていた。
こんなことなら欲を出さずに巣に帰ってもらっていればよかった、と後悔してももう遅い。どうしても間近にいるクックのことを意識してしまい、若い性器に血が集まってしまうのだ。すでにそこはパンツの上からでも分かるほど大きく硬くなっている。
――仕方がない。と、決心して、マルコは静かに音を立てないよう立ち上がると、天幕の裏手に広がる池に向かった。
ここではよく魚が釣れる。黄金魚は驚くほどの値段で売れたものだ。
そんなことを思い出しながら、橋に腰掛けると、パンツのジッパーを下ろし、ペニスを取り出した。窮屈なところから解き放たれて嬉しいのか、勃起した肉棒はぶるりと震える。
赤黒く充血したグロテスクなペニスを握り、擦った。とりあえず、こうして一回は射精しておかないと、眠れる気がしなかったからだ。
「苦しいのですか?」
背後から問われて、マルコは心臓が飛び出そうな驚きを味わった。
「せっ、先生!?」
振り向けば、息が届きそうなほどの間近に、いつのまにかクックが立っている。
「お手伝いしましょう」
そう言ってしゃがむと、後ろから抱くように手を伸ばし、マルコのペニスを握った。
「ちょっ、先生、なにをっ」
あまりのことに、マルコは悲鳴を上げる。自慰行為を見られたことと、さらに初めて他人にペニスを触られるという羞恥心によって、顔が真っ赤に染まっていた。
いきり立ったペニスを上下に優しく擦られてしまうと、マルコの我慢など薄氷のようなものだ。歯を食いしばって尻の穴に力を入れても、どうしようもない。
「先生、俺、もうっ……」
「我慢しなくてもいいのですよ」
耳元で優しくそう言われたとき、ついにマルコは射精した。
ペニスが熱く脈打ち、精液が尿道の出口から勢いよく噴出していく。その最中にもクックは肉棒を、そして縮んだ袋の裏側を愛撫しつづけ、精液が残らず吐き出されるようにと手助けしていた。
池には、大量の白濁の汁が浮いている。
「楽になりましたか?」
「……は、はい……」
クックの顔をまともに見れず、うつむいたままマルコは答えた。あれほど盛っていた股間のものは、とりあえず欲望を吐き出したので落ちついている。これで今夜は眠れそうだ。
背後で、クックは立ちあがったようだ。
「では、おやすみなさい」
ひとり残されたマルコは、しばし呆然としていた。
そのうち、のろのろとペニスをしまいこむと、夢遊病者のように寝床に帰っていった。
283 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:51:57 ID:ADrVNwt1
いったい、昨夜のアレはなんだったのだろう。
ぼんやりと思いながら、マルコは剣を振る。
一匹のランポスが首を横から切り裂かれて悲鳴を上げ、倒れた。
片手剣は、マルコが扱うには最適の武器だった。武器の軽さと小柄な体を活かして自由に動き回り、敵の急所に最適の一撃を繰り出すことができる。
振り向きざまの一閃で、背後から襲いかかってきたランポスの首を斬り飛ばすと、マルコはようやく安堵して、ふう、と息を漏らした。
その周囲には、三匹のランポスが屍となって転がっている。みな、首を斬られ、一撃で葬られていた。
マルコは、近くから一部始終を見届けていたクックのほうに向き直る。
「どうですか、先生?」
「ええ、たいしたものです。見違えましたね」
「凄いよ! 武器を変えるだけで、こんなに強くなれるなんて」
今までさんざんてこずり、昨日などはあやうく殺されかけていたランポスたちを、さほどの苦もなく倒せるようになっていた。確実に実力が上がっているのだ。
「これなら、ドスランポスだって楽勝かも」
「――マルコ、後ろです」
「えっ?」
突如として、背後の茂みからランポスが飛び出した。
押し倒される瞬間、咄嗟にアサシンカリンガを抜き放ち、腹部に突き刺していなかったら、死んでいたのはマルコのほうだっただろう。
「びっ、びっくりしたあ」
立ち上がったマルコの体には、たっぷりと返り血がかかっていた。
クックの目つきが厳しくなる。
「敵の姿が見えなくなっても、油断してはいけません。一瞬の気持ちのゆるみが死を招くのですよ」
マルコはうなずき、アサシンカリンガを腰にさした。
沈んだため息が漏れる。
「やっぱり、俺にはまだドスランポスは早いかなあ。前に倒したのだって、まぐれかも」
「そうかもしれません」
クックの言葉には容赦がなかった。が、情けがないわけでもなかった。
「そうでないかもしれません。……どちらにしても、つねに努力しなさい、マルコ。強くなりたいのでしょう」
クックは薄い笑みを浮かべて、手を伸ばすと、マルコの頬を撫でた。
白く、芸術品のように繊細な指を自分の肌に感じると、それだけで、マルコは夢見心地になってしまう。これが昨夜、本当におのれの醜悪なペニスを握ってくれたのかと疑ってしまう。
「先生、あのさ……昨日の夜のことなんだけど」
「どうかしましたか?」
「いや、その、あれはどうして」
どうして、あんなことをしてくれたのか。ただの小僧の滑稽な自慰を、どうして手伝ってくれたりなどしたのか。
「溜まったままでは、辛いでしょう?」
「それは、そうですけど」
「また辛くなったら、私に言いなさい。いつでも手伝ってさしあげますから」
また、あんなことを? いつでも? ――そう思うだけで、マルコは頭から湯気が出そうになり、そして、股間は痛いほど膨張した。
「だっ、だったら、そのっ」
「はい?」
「いっ……今、ここで……」
恥知らずな願いを口にするのに、マルコは一生分の勇気を必要とした。が、なんとか言葉にすることができた。
284 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:52:27 ID:ADrVNwt1
クックが、そんな初心な少年の熱い欲望をあざ笑うようなことは、もちろんなかった。
「ふふっ……。いいですよ。さあ、そこに腰掛けて、楽にして」
言われるがままに岩の上に座るマルコ。クックはその前にひざまずくと、マルコの股を開かせ、防具やベルトなどを取り外しにかかる。
ジッパーを下ろしてやると、すでに硬くなっていたペニスが元気よく飛び出た。
マルコの胸は、淫らな期待に高鳴っている。この極上の美女が、いったいこれからどんなことをしてくれるのだろう? 昨夜のように手で射精に導いてくれるのだろうか。
そうではなかった。クックはペニスを手で握ると、汗や尿や精液で汚れているペニスを、なんのためらいもなく口に含んだのだ。
柔らかい唇と、温かな口内の感触が、敏感な性器を丸ごと包む。
「うっ、うあ、先生っ」
クックの性技は巧みだった。カリ首や裏筋を舌でなぞったり、亀頭を歯で刺激したりもした。そんなことをされるたび、マルコはいちいち悲鳴を上げる。
「せっ、先生、先生……っ!」
「どうしました?」
ペニスから口を離して、クックは上目使いでマルコを見上げた。口調とには、からかうような響きがある。
「やめたほうがいいのですか?」
「そっ、そんな」
「続けてほしい?」
「……は、はい」
「聞こえませんよ。男の子でしょう。はっきり言いなさい」
「つっ、続けてください! もっとして!」
からかわれていると知ってはいても、快楽への誘いに抗えるはずもなかった。
クックは、くすりと笑った。
「よく言えましたね。――では」
なんと、着ていた服をはだけさせると、その胸を露出させたのだ。なにをするつもりなのかと、つばを飲み込むマルコ。
クックはその豊満な胸で、マルコのペニスを両側から挟み込んでしまった。
柔軟な肉の塊に押しつぶされる感触――そして、わずかに突き出た亀頭を、クックの舌に責められるという、二重の衝撃が、マルコの思考をたやすく快感で埋め尽くす。
そのとき、ペニスの先端を未知の衝撃が襲った。
「くうっ!?」
鈴口から無理やりに進入した舌の先端が、尿道に押し入ったのだ。
「あっ、先生、そこはっ――っ、はぐぅっ!」
「まあ。まるで女の子のようですよ」
意地悪く笑われて、マルコは顔から火が出そうな思いをした。
「ここを責められるのは嫌ですか?」
「嫌、っていうか……変な感じです」
「そうですか。では、こちらはどうでしょう」
返事をする暇もなかった。クックの手がマルコの尻のほうに伸びて、人差し指と中指がアナルに突き刺さったのだ。
「んぐふううっ!?」
敏感な部分を乱暴に犯され、マルコは目を見開いて本物の悲鳴を上げた。
細い指先が、アナルの奥で妖しく蠢いている。それは苦痛をもたらしていたが、同時に少しの甘美な悦楽をも生み出していた。が、おぞましいことに変わりはない。
「やっ、やめっ! やめろっ……」
「やめろ? やめてください、でしょう?」
冷ややかに言って、クックは作業を開始した。拷問という名の作業を。
尿道を舌で責め、アナルの奥を指で責める。
マルコは堪えようとした。さすがに、ここまでされて素直に従うというのは、男としてのプライドが許さなかった。
なんだ、こんなもの。今までこれよりも痛いことなんていくらでもあったはずだ。
堪えられるはずだ。
堪えられる。
堪えられ……
「はひっ! はひいっ! やめっ、やめてください! やめてください先生ぇっ!」
堪えようのない苦痛が、マルコのプライドをたやすくズタズタにしてしまった。もはや少年の心は完全に屈服してしまったのだ。
285 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:53:22 ID:ADrVNwt1
クックは満足げにうなずくと、
「では、そろそろ終わらせてさしあげます」
「えっ」
今までよりもさらに深く、ペニスの内部に舌が突き刺さった。
アナルの奥で指が曲がり、ペニスの裏側の前立腺を押しつぶした。
「んくあああっ!?」
精を放ったという実感さえもない、突然の射精。
精液はすべてクックに飲み込まれていく。その間ずっと、マルコは射精の余韻を感じながら、涙で滲んだ目を空に向けていた。
ずぽん、と、はしたない音を立てて、アナルから指が引きぬかれる。
全身から力が抜けていくような気持ちを味わいながら、マルコはどさりと倒れた。
虚ろな目をして、息を荒げている少年の頭を、クックは優しく撫でてやる。
「ごめんなさい。あなたがあまりにもかわいらしかったものだから、少し意地悪をしてしまいました。……それにしても、恥ずかしい果て方でしたね」
マルコは、クックの顔をまともに見ることができなかった。今の行為で彼女のことを嫌うようなことは絶対にないが、恥ずかしさだけはどうしようもなかった。今だけは、その美しい顔を見ることができなかった。
――と、ふたりの周囲が暗くかげった。頭上から、巨大な影が落ちたのだ。
マルコが空を見上げると、天空を飛翔する生物がいた。逆行のせいでシルエットのみしか見えないが、その特徴的なフォルムには見覚えがある。
今までに、何度か他のハンターと組んで卵の運搬をしたとき、運悪く出くわしたことがあったのだ。
あれはおそらく火竜リオレウス――いや、
「……リオレイア?」
と言ったとき、視界が赤く染まった。
「うわっ!?」
なにごとかと思い、目をこする。異常を感じたのは右目だけだ。
ぬぐった右の手の甲についていたのは、血だった。落ちてきた血が目を潰したのだ。
あたりをよく観察してみれば、点々と血の跡がある。
どうして落ちてきたのかなど、考えるまでもない。
「あのレイア、怪我してるのか」
水筒の水で血を洗い落とすと、マルコはリオレイアが飛び去っていく方角を見ながら、衣服を正して防具をつけた。
「先生、あの方向って……」
「ええ。彼女は傷ついています。巣に戻り、体力を回復するつもりなのでしょう」
クックの表情には、真剣味がある。
あのリオレイアの巣とは、地図のほぼ中心に位置する洞穴だ。飛竜はよくあそこに巣を作る。広くて住みやすいうえに、風雨をしのげて、天井に空いた穴から出入りすることも簡単だからだ。
そして、生態系の頂点に君臨しているはずの飛竜が、なぜ巣に逃げ戻らなければならないほど消耗しているのかといえば、その答えは限られてくる。
鼻をつくペイントボールのにおい。
「俺以外のハンターが、狩りにやってきたっていうのか?」
リオレイアを――それだけでなく、おそらくはリオレウスまで。つがいの飛竜を狩るとなれば、そうとうな実力を持つハンターたちのパーティだろう。
「また、ハンターが……」
深く沈んだようなクックの声。
マルコは胸が痛んだ。どうしてなのかは分からなかったが。ただ、この美人の悲しむ顔は見たくないと、そう思った。
「先生……俺、どうしたらいいだろう」
「分かりません。それは私にも分かりません。……どうしようもないことなのです、きっと」
クックは、リオレイアの巣がある方向に目をやった。悲痛な感情が表情に表れていた。
「あの夫婦は、最近になって卵を産みました。ですが、もう」
「卵、って……そんな」
マルコは愕然とした。卵だと。飛竜の卵。成長して飛竜となる卵。だが、今、親であるリオレイアは狩られようとしている。おそらくはリオレウスも。そうすれば卵はどうなる。育ててくれる両親を失った卵は。
「俺、助けてくる」
決意を秘めてマルコは言った。
「ハンターに事情を話して、レウスもレイアも助けてくるよ。待ってて、先生」
「マルコ? やめなさい、危険――」
その言葉を最後まで聞かずに、マルコは駆け出した。
「あの卵は、俺なんだっ」
叫ぶ。そして、走る。
クックは、小さくなっていく少年の背を見守ることしかできなかった。
286 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:55:38 ID:ADrVNwt1
洞穴の中央に、桜色のリオレイアが冷たくなって転がっていた。
無残にも切り刻まれ、全身からおびただしい量の血を流して、倒れていた。
険しい崖をなんとか登り、息を切らしてたどり着いたときには、もうすでに、そうなっていた。
絶望するマルコの視線の先で、リオレイアの死体に腰掛ける者がいた。
まだ十五歳ほどの少女だ。顔立ちからして、東の国の人間だろうか。整った幼い相貌に、なにかを面白がるような笑みを浮かべている。とても美しい。黒髪は、自分で切ったのか、適当な長さで揺れていた。
ハンターだ。それも、尋常の者ではないことを、マルコは一目で理解した。華奢に見える体つきから判断してはいけない。
身にまとう漆黒の鎧と、彼女自身から立ち上るようなドス黒い鬼気は、遠く離れたここからでも肌寒さを覚える。
「ねえ、レティシア。この仕事って、もう終わりだったっけ」
少女は、目の前に立っている女ハンターに声をかけた。甘ったるい、妖しい響きの声。
「まだだ。獲物はつがいだからな。リオレウスが残っている」
答えたのは、女の硬質な声だった。レティシアと呼ばれたこちらは、兜を着けているために素顔は分からないが、仕草や声質から几帳面な性格をうかがわせる。おそらく、黒髪の少女よりも一回りは年上だろう。
装備は、グラビドSシリーズの防具と、竜騎槍ゲイボルグ……重装甲のランサーだ。
「リオレイアを倒したからには、それを感じてここにやってくるだろう。そこを叩く」
「ふうん。めんどくさ」
どうやら、彼女らはふたりだけのようだった。ほかに仲間がいるのかもしれないが、少なくともこのあたりにはいないようだ。ということは、たったふたりでリオレイアを――それも、より強いとされる桜色の亜種を倒したということか。かなりの実力者だ。
進み出ようとしたマルコは、しかし立ち止まって、岩陰に隠れた。なぜそうしてしまったのかは分からない。ただ、とてつもなく危険な予感がしていた。
そのとき、雄々しい咆哮が洞穴中に響き渡り、天井からリオレウスが降下してきたが、マルコの直感が危惧したものとは果たしてそれだったのだろうか?
ドス黒い鎧の少女が、ゆっくりと立ち上がった。どう猛で強力な飛竜、火竜リオレウスをこれから相手にしようというのに、その表情や仕草には少しの不安も見られない。
少女は、背負った獲物を鞘から抜き放った。太刀だ。長大な刀身は、黒と緑に彩られている。その名も黒刀【参ノ型】。巨大昆虫の貴重な素材から作られていて、羽のような軽さと想像を絶する切れ味を誇る逸品だ。
レティシアも盾と槍を構え、戦闘体勢に入る。
地に降り立ったリオレウスの、怒りに満ちて輝く双眸が、屍となったリオレイアに向けられる。
轟く雄叫びを聞き、マルコは我が耳と感覚を疑った。
これは……感情だ。とてつもなく深い感情が、リオレウスの口から咆哮となってほとばしっている。なんという、悲しみと、怒りと、憎しみ。それは物理的な圧迫感と化して、対峙してすらいないマルコの心身を打ちのめす。
まさか飛竜が、連れ合いの死を嘆いているとでもいうのか。……いや、マルコには、もう、そうとしか考えられなかった。
「うっさいなあ」
そう言いながら、うっとうしそうに顔をしかめると、耳を叩いて、黒い少女が走った。そして、太刀を振った。
リオレウスの鼻先をかすめた剣先が、ぱっと赤い華を咲かせる。
痛みと憤怒による怒号が上がった。
次の瞬間、リオレウスが叫んだ隙にその首の下に潜り込んだ少女は、下から上に剣を一閃。残像が見えるほどの速度での切り上げが、リオレウスの太い首を両断した。
まず、怒りの形相の顔が首ごと落ち、その後、遅れて胴体がくずおれる。血が噴き出たのは、さらにその後だ。
――えっ、とマルコが思ったときには、すでに終わってしまっていた。ランサーの出番は皆無の早業。
黒刀の凄まじい切れ味もさることながら、少女の腕前も圧倒的だ。硬い鱗や強靭な筋肉などで守られた飛竜の首を、まさか一撃で断ち切るとは。たとえ同じ武器を使ったとしても、マルコなどでは絶対に不可能な芸当だった。
287 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:56:39 ID:ADrVNwt1
少女は、自分が落とした首をしばらく見下ろしていたが、不思議そうに首をかしげて、黒刀を振り上げた。
そしてそのまま、突き刺す。右の目から進入した刃が左目から突き抜けても、もはやリオレウスはなにも語らない。怒ることも、無念の涙を流すことも、ない。
「あれっ。もう壊れちゃったよ。さっきまで動いてたのに。……ねえ、どこに命が入ってたのかなあ、これ」
勝利を誇ることも、飛竜の死をあざ笑うようなこともない。
ただ不思議そうに死体を眺め、言った。
それが、彼女が命というものをどう思っているのか、なによりも雄弁に物語っていた。
「くだらん」
レティシアが吐き捨てる。その声には、黒い少女に対する嫌悪感が滲んでいる。
少女は聞いていないようだった。
「ま、どうでもいいか。終わった終わった。……それにしても暑いねえ、ここ。汗かいちゃったよ」
そう言うと、なんと、おもむろに鎧を脱ぎ始めた。同姓の視線しかないと思っているとはいえ、大胆なことだ。
胴、腕、腰の防具や、インナーを乱暴に放り投げ、大きく伸びをする。
「あー、すっきりした」
マルコは驚いた。上半身だけ裸となって、病的に白い肌をさらした少女の胸には、少しの膨らみもない。成長が乏しいとかいう問題ではないようだった。
そう、少女は、じつは少年だった。遠目だとはいえ、まったくそうは見えなかったが。
「ねえ、レティシアも脱ぎなよ。気持ちいいよ」
「……断る。ランポスが集まってくるかもしれないし、装備を外すのは危険だ」
「いいから、脱ぎなって」
レティシアは、なにか反論しようと口を開いた。が、その前に、
「脱ぎなよ」
すすめているのではなく、命令だった。
びくっ……と、レティシアは体を震わせる。それからためらいがちに、のろのろと鎧を脱ぎ去っていく。
インナーのみの姿となったレティシアは、褐色の肌と長い銀髪が特徴的な、肉感的な体つきの美女だった。クックよりも胸がやや小さいが、その代わりに全体が引き締まっていて無駄がない。切れ長の瞳に灯った光と、引き結ばれた唇が、性格を現している。
「よしよし。そこに手をついて、尻をこっちに突き出して」
少年は無邪気に言ったが、それの意味するところは明らかだ。
が、レティシアは素直に従った。ただ、その唇は噛み締められ、悔しさを堪えているようだ。
美麗のランサーがリオレウスの頭に両手をつき、尻を高々と掲げると、少年は自分の股間に手をやって、すでに勃起しているペニスを取り出す。年齢と、愛らしい外見には似つかわしくないほど、凶悪な容貌の性器だった。
そして、下着を下ろして秘部を露出させると、まだ濡れてもいないそこへ、愛撫もなしに侵入した。
「……っぁ、かっ……ふ……!」
押し殺した悲鳴。
無理な挿入が膣に苦痛をもたらす。快感などあるはずがない。
それでも少年は、自分勝手に動き続けた。少年にしても、たいした快楽は得られていないはずだ。動きも自在というわけにはいかない。だから彼は言った。
「もうちょっと濡らしてよ。気持ちよくないじゃん」
無理な注文だった。女が濡れるのは、気分がよくなるからだ。野外――それも飛竜の死体の上で年下の少年に犯されているという、こんな最悪の状況で、どうやって濡れろというのか。
レティシアは、痛みを堪えながら振り向いて、背後の少年を睨みつける。彼女の精一杯の憎悪で射抜かれても、少年はまったく動じた様子を見せなかった。
「ほら、さっさとしてよね」
ぱあん、と、軽い音。まるで革と革を打ち合せたようだった。
少年が、レティシアの尻を平手で打ったのだ。
「――っ!」
目を剥くレティシア。その尻に、次々と容赦のない平手打ちが飛ぶ。
「っあ、あ、ぐっ! ふぐっ!」
食いしばった歯の奥から、悲鳴が漏れる。
288 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:57:08 ID:ADrVNwt1
手加減のない暴力を受けて、レティシアの尻は真っ赤に染まりつつあった。
そして同時に、膣の内部が湿り気を帯びつつある。
「やあ、濡れてきた、濡れてきた。やっぱりレティシアにはこうするのが一番だね」
「……くぅっ……」
レティシアの瞳に涙が浮かぶ。尻の痛みよりも、屈辱が彼女の心を傷つけていた。
ぱあんっ! と、ひときわ大きく尻が打たれる。
「んぐふぅっ!」
少年は知っていた。こうして屈辱を与えれば与えるほど、レティシアの肉体は喜び、背徳的な快楽を求めて燃え上がるのだということを。そのあたりを心得たうえでの仕打ちだった。
「ところでさあ」
にやりと、少年は笑う。
その瞳を向けられて、マルコは跳び上がりそうなほど驚いた。
「そこのキミ。いつまでもそんなところにいないでさ、こっちにおいでよ」
まさか、自分のことを言っているのか。気付いていたのか。いったい、いつから?
疑問に思いながら、マルコは彼らに姿を見せた。情事の最中に呼ばれるとは予想外だったし、気まずいので出て行きたくはなかったのだが、少年の声には有無を言わさぬものがあったのだ。
「なっ……」
マルコよりもよほど驚いたのは、レティシアだ。目を丸くして、口をぽかんと開けている。
少年は、彼女の耳元で優しく告げてやった。
「ほら。彼にも見てもらいなよ。レティシアの、すっごくいやらしいところをさ」
「いっ――」
褐色の体が、恐怖によってガタガタと震えた。歯がカチカチと鳴った。
「いやだああああっ! 見ないでくれっ、やめっ、やめてえええっ!」
「あははははは!」
子供のようのに泣きじゃくるレティシアの頭を、伸ばした手で押さえつけると、少年は楽しげに哄笑しつつ、今まで以上に激しく腰を振った。
隠しようのない淫らな水音が、ふたりの結合部から聞こえている。レティシアは、もうはっきりと悦楽を感じていた。淫らな姿を他人に見られることに興奮していたのだ。
「見ないで! 見ないでよおっ! ゆるっ、許してえっ! ぅぐあああっ!」
「あはっ、あははっ! あははは! うはっ、たのしーっ!」
狂乱する少年と美女の痴態を、マルコは呆然としながら見ていた。
ずっと、終わるまで。止めるという選択肢すら思い浮かばないほど、呆けたように。
「ひっ、ぎっ……い、いくっ、イぐぅうッ! いやああだああああ――ッ!」
レティシアの絶叫。
跳ね回っていた体が弓なりに仰け反って、力を失い、突っ伏した。
射精した少年が腰を引いてペニスを抜くと、レティシアの秘部からは白濁とした液が、だらりと糸を引いて垂れ落ちる。
突き出した尻も、ぴんと伸ばした長い脚も、大切な秘所も、ピクピクと情けなく痙攣していた。美貌はだらしなく崩れ、大きく開けた口から犬のように舌を突き出している。蕩けた瞳からは涙が零れていた。
「……うっ、あうっ……」
「はいはい、休憩は後にしてね。先にボクのを綺麗にしてよ」
「はぅ……ごっ、ごしゅ……さまぁ……」
髪を掴まれて股間の前に立たされて、少年の精液と自分の愛液が絡みついたペニスを舐めさせられているレティシアの瞳は、明らかに恍惚としていた。
「で、キミは誰なわけ? ハンター?」
そう尋ねられてから答えるまでに、マルコはしばらくの時間を必要とした。
異様な雰囲気の持ち主だった。近づいてみると、嫌でも分かる。なんとも禍禍しく毒々しい、人とは思えないほどの邪悪な鬼気をまとっているのだ。
身につけた防具が、暗黒の呪物とされるブラックシリーズだからだろうか?
強さもそうだが、それ以外のところも人間離れしている。
怖気もふるうような美しさが、余計にそう思わせるのかもしれない。
「あっ、ああ、そうだ」
「ふうん。どうしてここに?」
「き、傷ついたレイアを見たからさ」
少年は、きょとんとした。
「だから?」
「……この夫婦は、卵を産んでたんだ」
「へえ」
「だからさ、このレウスとレイアは、その卵の両親なんだよ」
「ふんふん。だから?」
少年は、レティシアの髪を掴むと股間から引き剥がして、ゴミのように放った。全力を使い果たしていた彼女は、受け身もとれずにその場に転がる。
マルコはそのことについても文句を言いたくなったが、とりあえず後回しにした。
「だから! 親がいなくなったら、あの卵は誰が育てるんだよ!」
「誰も育てないんじゃないの」
ペニスをしまいこみながら、答えた。そっけない言葉だった。平然としていた。
289 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:58:10 ID:ADrVNwt1
「死んじまうんだぞ!?」
「死ねばいいじゃん」
「なっ――」
絶句するマルコ。
そして、少年の瞳の暗さに、底知れない闇のような暗さに、ようやく気付く。
皮肉で言っているのだとか、あざ笑っているのだとか、そういう低い次元での台詞ではなかった。本当にそうだとしか思えていないのだ、この少年は。
「生きれば生きる。死ねば死ぬ。それでいいじゃん。死ぬなら死ねばいいんだよ」
「ふっ、ふざけるなあ!」
マルコは、勢いよく地を蹴って、少年に殴りかかった。両者が武器を手にとっていない、素手での殴り合いならば、自分にも勝機はある。彼はそう考えていた。
――そんな甘い考えなど、瞬時にして破壊されたが。
少年の顔面をとらえるはずだった拳が空を切った次の瞬間、マルコは仰向けに倒れて天井を見ていた。
「あれ?」
間抜けな声が漏れる。
どこからか、声がした。
「べつに、キミがどう思ったって、ボクにはどうでもいいんだけどね」
「ぐふうっ!?」
腹を足蹴にされて、肺の中の空気が押し出される。
その足をどけようと思って掴んでも、ビクともしない。
踏む力が強くなる。
「……っ、ぐうっ!」
じたばたと暴れるマルコを見下ろす少年の目の色は、どこまでも冷ややかだった。
「あっ、そうだ。いいこと思いついた」
楽しげに笑って、今までとは比べ物にならない力を足に加える。
「あげえっ」
潰れたカエルのような悲鳴を上げ、のたうち回るマルコ。
少年は、岩肌の壁の一角に目をつけた。棚のようになっていて、飛竜が卵を産み落とす場所だ。そこに歩いていって、登ってみれば、何個もの白くて丸い、大きなものが見つかった。
もう、彼がなにをしようとしているのか、マルコには分かっていた。呼吸さえもままならない状態で、叫ぼうとした。
「とりゃ」
気の抜けるような掛け声と共に、黒刀が振られた。
殻が砕け、中身が飛び散る。一個も残さず卵は割られた。
「やめろおおおっ!」
遅かった。マルコの声は、あまりにも遅かった。しかしたとえもっと早くに叫べていたとしても、少年が止まることは、きっとなかった。だから、マルコの行為はあまりにも無駄でしかなかったのだろう。
290 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:58:39 ID:ADrVNwt1
少年は、不満げに口を尖らせる。
「なんだよ、みっともないなあ。こうすれば、キミも踏ん切りがつくと思ったのに」
「ふざけるな……! おまえ、おまえっ!」
「怒らなくたっていいじゃん。よく考えてみなよ。こいつら、大人になったら、人を襲うんだよ。害獣なんだよ。今のうちに殺しておいて、なにが悪いの?」
マルコは反論しようとした。が、はっとして、できなかった。
それは、自分の考えではなかったのか。
正義の英雄として、悪の飛竜を倒す。それがおのれの望みではなかったのか。
モンスターどもなら、いくら死んでもいいと思っていたのではなかったのか。
絶望して動こうとしないマルコのことを、少年はしばらく見つめていた。
「アキラっていうんだ」
「……え?」
「ボクの名前。アキラって呼んでよ」
アキラはにっこりとほほ笑んだ。高台から飛び降りると、放り捨てていた自分の鎧を手にとり、着用する。
「こっちは、レティシア。ほら、挨拶して」
レティシアはそれなりに回復したのか、緩慢な手つきで鎧を着ている最中だった。
マルコの視線を受けると、先ほどのことを思い出したのだろう。気恥ずかしげに頬を赤く染め、顔を背ける。
「レティシア・レッドフィールドだ」
「大事なところが抜けてるよ」
「……ッ、貴様、ふざけるな……!」
眼光には、少し力がない。彼女とて、この魔少年には逆らえないということを、本能では理解しているのだろう。わずかな理性が、無駄な抵抗を続けているだけだ。
だから、あっというまに屈服して、恥知らずな言葉を並べ始めた。
「私は、アキラさまの……忠実な、性欲処理用、めっ、メス奴隷の、レティシア・レッドフィールドですっ……! このい、いんら、淫乱……な体をお気に召しましたら、どうか、おっ、お好きな、ように……うああああっ……」
台詞を最後まで言い終えることなく、レティシアは泣き崩れてしまった。彼女の誇り高い魂は、無慈悲に踏みにじられることに耐えきれなかったのだ。
「駄目だなあ。街に帰ったらお仕置きして、しつけなくちゃね。今日はその大きな胸を、たっぷりと拷問してあげる。いつもみたく喜ぶだけかもしれないけどさあ」
「うえ、うえええっ、ふぐええええっ……いやっ、いやだっ、許してえっ……」
ぼろぼろと涙を零すレティシアの姿は哀れだったが、彼女の股が新たな愛液で濡れ始めていると知ったなら、誰もが軽蔑の視線を向けることだろう。
アキラは呆れたように肩をすくめた。
「騎士の娘のくせに、だらしがないよねえ。お父さんが見たら、なんて言うかなあ」
「いっ、いわ、言わないでぇっ、えぐううっ」
「はいはい。――ねえ。キミの名前は、なんていうの?」
「マルコ・イーノ」
と、呟いた声は、アキラの耳に届かないほど、か細かった。
「聞こえないよ。まあ、いいや。次に会ったら、聞かせてよ」
きびすを返し、ひらひらと手を振る。この洞穴から出た瞬間に、マルコのことを忘れていそうな様子だった。
涙を手で拭いながら、レティシアが続く。
そうして、ふたりが去っていくと、マルコだけが残った。
いや、リオレウスとリオレイア、そしてまだ産まれてもいない卵の中身の赤子たちがいたが、彼らはもうなにも言えないし、なにもできないのだ。
なにかができるはずのマルコとて、なにもしないでぼんやりと天井を見ているありさまだった。
――モンスターハンターとは、いったい、なんなのだろう。
正義の英雄ではなかったのだろうか。
強くて、かっこいい、正義の英雄ではなかったのだろうか。
ならば、あのアキラというモンスターハンターは、まさに強くてかっこいい、理想のモンスターハンターではないのか。
……だが、その強くてかっこいい英雄が、仲のいい夫婦を殺し、卵を壊し、悲劇を作り出した。悲劇を生むのは悪の仕業だ。アキラは悪なのだろうか。そうなのだろう。
だがアキラがやったことは、モンスターハンターなら誰でもやっているようなことだ。依頼を受けてモンスターを狩るのだから。ただの仕事だ。
すべてのモンスターハンターが悪なのか。そうでもないはずだ。マルコの親を殺した飛竜のように、人に害をなすモンスターを狩り、多くの人々から喜ばれているはずだ。それは正義だろう。
……正義? なにが?
……正義とは、悪とは……モンスターハンターとは、いったい?
291 :
クック先生:2007/07/15(日) 11:59:10 ID:ADrVNwt1
近づいてくる規則的な足音が聞こえていたが、マルコは動こうとしなかった。
「クック先生……正義って、あるんですか」
ぼそりと、呟く。
「あなたは、正義を信じていたのではないのですか?」
クックの声は、静かだった。
「……もう、分かりません。ハンターが正義で、モンスターが悪だと思ってた。けど、あれは、あいつは、正義なんかじゃなかった。強かったのに、かっこよかったのに。ハンターは、正義じゃないのかなあ……」
気を抜けば泣いてしまいそうだった。失望が、マルコの心身から力を奪っていた。
「本質的に、なにが正義で、なにが悪なのか……我々の手の内に、その答えはありません。おそらくは、造物主ミラルーツの――あなたたちがいうところの、神のみぞ知るものなのでしょう」
クックは座ると、マルコの頭を太ももの上に乗せてやった。
マルコが見上げたクックの表情は、どこまでも優しく、膝枕の感触は柔らかい。
「我々の次元での正義や悪というものは、主観によって変わるものなのです。あなたたちから見れば、私たちこそ悪なのでしょう。ですが、私たちから見ると、あなたたちが悪に見える。一方的な決めつけなのですよ」
「そんな」
今まで信じていたものが壊されるような気分だった。
そんなころころと変わるようなものが正義だとは。正義はひとつの絶対不変のものではないのか。
では、それでは、
「正義は……まぼろしなんですか?」
クックは困ったように、どこか寂しげに、首を横に振った。
「分かりません。それはきっと、あなたが自分で答えを見つけなければいけないのです。……不出来な先生でごめんなさい」
「いや、先生は悪くないです。……きっと、悪いのは俺だったんだ」
ものごとを深く考えようとせず、ただ闇雲に突っ走って、まわりを見ようともしなかったおのれこそが。英雄だと正義だと、おのれの不幸を着飾るように、外見ばかりを求めていた愚かさこそが。
なにも考えようとしていなかった。
それが悔しくて悔しくて、涙が溢れそうだったが、堪えた。唇を、血が出るほど噛み締めた。
「……マルコ。彼らの死体がどうなるか、考えたことはありますか」
「レウスとレイアの?」
「ええ。そして、それだけではなく、すべての我々の死体です」
そんなこと、マルコは考えたこともない。素直に首を振った。
「彼らの死体はやがて腐り、土に還ります。それが肥料となって多くの草木を生やし、それを餌にする草食の者たちが集まれば、さらに彼らを食べる肉食の者たちが集まる。彼らの糞が土を豊かにして、また草木を生やす。――分かりますか?」
「えっと……堂々巡りしてるってこと?」
クックは、満足げにうなずき、ほほ笑んだ。
「そう。すべては循環しているのです。まるでひとつの大きな輪のように」
「……でも、だとしたら、ハンターはそれを壊してるんじゃないですか。飛竜や他のモンスターを殺して、輪を崩してる」
「その心配は無用です。あなたたちを管理してる――そう、たしか、ギルドとかいいましたか。彼らとて、生態系を崩して我々がいなくなることは望みませんから。各地の状況をつねに監視して、管理しているのですよ」
マルコは、そんなことも知らなかった。ただ依頼があればモンスターを殺しに出かけるのがハンターで、ギルドはその依頼を斡旋しているだけだと思っていた。
「ハンターが殺す飛竜の数は厳しく管理されていますから、全体的に見ればたいした影響はありません。なにより、あなたたちは無意味に飛竜を殺すのではなく、生活のためのことなのですから、そこに文句を言う資格は誰にもないのです」
それは、たしかにそうだ。食べていくために殺す。結局、生き物とはそうして生きていくしかない。だから、ハンターの活動が間違っているということはない。
「そして、あなたたちが殺した飛竜は、ほかの種族の糧となる。……あなたたちもまた、世界という大きな輪に加わっている仲間なのです」
「仲間……」
「ええ」
悔しさからではない涙が流れた。
ハンターも、世界の一員だと知って、嬉しかった。
英雄だと信じていたハンターになったときも、これほど嬉しくはなかったのに。
急に、自分がモンスターハンターだということが誇らしくなってきて、マルコは泣いた。
まったくよく泣くもんだ、情けないもんだと自覚しながら、どうしても止められない涙だった。
292 :
クック先生:2007/07/15(日) 12:00:40 ID:ADrVNwt1
そうして、しばらく時間が過ぎた。
「先生、ありがとうございました。俺、ちょっとだけど、ものを知ったような気がします」
しっかりと立って、マルコは言った。
「そうですか。少しはお役に立てたようですね」
「少しじゃないです。すごく助かりました」
ニカッと笑う。
が、クックのほうは、どこか表情が沈んでいる。
「どうしたんですか、先生?」
「……マルコ。最後に教えなければいけないことがあります」
「最後って……」
「はい。最後なのです。――マルコ。あなたはどうして、ここにやってきたのですか」
マルコは、答えようとして、できなかった。
ここにやってきたのは、ハンターとして、モンスターを狩るためだ。
イャンクックを――すなわち、目の前のクックを殺すためにやってきた。
だが。
「俺が受けた依頼は、このあたりに住みついたイャンクックを殺すことだった。けど、そんなこと、できるわけがない」
短い時間だったが、クックからはさまざまなことを教わった。ハンターとして生きていくためには必要な智恵を、心構えを……そして、甘い快楽も。
「もういいんだ。失敗したことにして、俺は帰ります。笑われたってかまわない」
「ありがとう……ですが、それでは駄目なのですよ、マルコ。あなたは私を狩らねばなりません」
「先生!? そんなことを言うのはやめてください!」
「あなたが帰れば他のハンターがやってくるというだけのこと。どのみち、同じことなのです」
そうだ。依頼主がいる限りは、何人のハンターが失敗しようとも、依頼がある。次のハンターがやってくる。それだけのことだ。結果は変わらない。イャンクックが狩られるという結果には、なんの変わりもないことだ。
「そんな。……いや、そうだよ、先生は人間に化けられる。逃げるのは簡単じゃないですか」
名案のように思えた。
しかしクックは首を横に振った。柔らかな微笑が、寂しげに見えた。
「私はここで生まれました。子育てのために他の地で暮らしていましたが、やはり生地が恋しくなって、戻ってきたのです。もうここから動きたくはありません。それが死を招くというのなら、それも運命なのでしょう」
あまりにも、悲痛な決意。死をも受け入れるという、悲しく硬い意思。
マルコは、やめてくれ、そんなことを言わないでくれ、と言おうとした。
「勘違いしないでください、マルコ。私とて死を望んでいるわけではありません。……ただ、疲れました。子供はみんな死んでしまって、大切なあのひとも死んでしまって、私だけがどうして生きているんだろう、って、悲しく、なって」
一筋の涙が零れる。泣くことなど知らぬ気丈な女性だと思っていたマルコは、驚いた。胸が痛くなった。
子供と、誰だかは知らないが、あのひとというのは、このイャンクックにとって本当に、自分の半身のように大切な存在だったのだろう。
「……だから、マルコ。私は抵抗はしますが、死んでもかまわないと思っています。そして、できるなら、あなたに殺されてしまいたいとも」
「無理だ! できるわけないだろ!」
「いいえ、できます。できなければいけません。仕事を引き受けたのなら、きちんと最後までやり遂げなさい。男の子でしょう」
涙はすでに跡もない。瞳に力強い光を宿し、クックは凛とした態度で言う。
その全身が、まばゆい赤光に包まれる。
「先に言った通り、これが最後の授業です。本当の戦いというものを、教えましょう」
大怪鳥イャンクックが、三たび、マルコの眼前に姿を現した。
もはや人の言葉は語らない。それどころか、威嚇の咆哮さえ上げない。
――口で語るな、力で語れ。
イャンクックは、そう言っているかのようだった。
「くっ……!」
アサシンカリンガを抜き放って、マルコは泣いた。いや、吼えた。
「くっそおおおおおっ!」
地面を勢いよく蹴り飛ばす。
イャンクックが吐き出す火の塊を、左右に跳んでかわしていく。
ようやく懐に入り込めるかというときに、イャンクックがその場で回転した。
鞭のようにしなった尻尾が、マルコに襲いかかる。
マルコは後退も防御もせず、前方に跳びこむことによってこれを避けた。
293 :
クック先生:2007/07/15(日) 12:01:55 ID:ADrVNwt1
一閃。
アサシンカリンガの鋭利な刀身が、イャンクックの翼膜を切り裂く。が、薄い。不安定な体勢からの一撃だったからだ。
マルコは慌てず、イャンクックの胴体の下に潜り込むと、腹部を縦に斬った。頑丈な甲殻や鱗によって守られていない、柔らかな腹部は、多くのモンスターに共通する弱点だ。
真っ赤な血が噴き出て、さすがのイャンクックの口からも悲鳴が上がる。
足で踏み潰そうとしたときには、マルコはイャンクックの背後へと移動していた。
飛竜の攻撃は、ちっぽけな人間にとってはどれもが危険な痛打となる。だからけっして無茶はせず、つねに安全を確かめながらの一撃離脱の戦法が基本。
すべて、クックから教わったことだった。
尻尾を斬りつけるマルコの顔には、最初から変わらない怒りの表情が貼りついている。
なにに対しての怒りなのか、マルコ自身にも分からなかった。
それはクックの決意を変えられないおのれに対しての怒りでもあったし、勝手に死を受け入れてしまったクックに対しての怒りでもあり、この世界自体への怒りでもあった。
とにかくマルコは怒っていた。とてつもなく怒っていた。
怒って怒って怒って、それでも怒り足りないほど怒っていた。
ふたりは、戦い続けた。十分、二十分、三十分と。
熟練のハンターが見ていれば、なんともみっともない戦いだと評価しただろう。マルコの戦いぶりは、少しはマシになっていたとはいえ、まだまだ未熟だ。
が、この戦いをあざ笑うハンターは、すでに過去の熱き日々を忘れてしまっている。
必死になってイャンクックと激戦を繰り広げたことが、どんな一流ハンターにもあるのだから。
イャンクックは、一瞬たりとも油断をせず、完全に相手を殺すつもりで戦っていた。だからマルコも本気にならざるをえない。
殺すか殺されるか、それが戦いだ。どちらかが死ぬことによってでしか終わらない。それこそが彼女の教えたいことだった。
「うおおおっ!」
激烈の斬撃が、上から下に振り下ろされる。イャンクックの翼に、新たな傷が刻まれる。
マルコも、軽くはない傷を負っている。腕からは血が流れ、酷使し続けている足にはもうあまり力が入らない。消耗していた。だがそれは相手とて同じことだと、勇気を振り絞って体を動かす。
旋回した巨体が、真正面から突撃してきた。圧迫感が恐ろしかったが、冷静に動きを見極めれば、こういう単調な動きの攻撃は避けやすい。軽く横に動いてかわした。
相手の動きをよく見て、特徴を観察し、弱点を見つけ出す。それが飛竜との戦いでは必要となってくる。
マルコはポーチから拳大の玉を取り出し、体勢を崩したイャンクックめがけて放り投げた。
耳をつんざく、甲高い破裂音。音爆弾が発生させた、強烈な高音だ。
294 :
クック先生:2007/07/15(日) 12:03:10 ID:ADrVNwt1
マルコは耳を塞いでいたので問題ない。だがイャンクックのほうは全身を限界まで伸ばし、異様に驚いたようだった。
イャンクックの長所、あの抜群の聴力は、そのまま最大の弱点ともなる。よく聞こえすぎるのだ。自然界ではありえないほどの轟音、爆音こそが、大怪鳥のもっとも苦手とするものだった。
――イャンクックは、しばらくすべてを忘れるほどの衝撃を受けたが、頭をふらつかせながらも振りかえった。双眸が、真正面の人間の姿をとらえる。
クチバシから火を溢れさせ、怒り狂っていた。そして猛烈な勢いで駆け抜け、体当たりを食らわせようとした。
もし、イャンクックの思考が怒りに支配されておらず、冷静であったなら、どうして先ほどの致命的な隙の最中に攻撃されなかったのか、怪訝に思ったことだろう。
イャンクックは、最初、なにかに躓いたと思った。だからといって焦る必要などないが、どうやらこれは違うようだった。
痺れる。地を踏んだ足から伝った痺れが全身に通い、巨躯の動きを封じ込める。
シビレ罠。マルコがポーチに詰め込んでいた支給品のひとつだった。
マルコは赤い玉を手にとると、イャンクックに投げつける。
玉が体に当たって破裂すると、怪しげな煙が噴き出て、思わず吸いこんでしまった。同時に、急激な睡魔に襲われる。これも支給品のひとつ。モンスターを捕獲するための睡眠玉だ。
一個目をなんとか堪え、意識を保とうと懸命に努力していたイャンクックだが、二個目を投げつけられると、ついに眠気に屈服し、安らかな寝息を立て始めた。
マルコはしばらく様子を見守っていたが、完全に捕獲に成功したと確認すると、ようやく安堵のため息をついて、その場に力なくへたりこんだ。
295 :
クック先生:2007/07/15(日) 12:03:42 ID:ADrVNwt1
目が覚めたクックが最初に見たのは、見知らぬ天井だった。
「――ここは」
はっとして半身を起こすと、自分は人間用のベッドに寝かされているのだと気付く。見れば、かたわらの椅子に座ったマルコが、ベッドに突っ伏して眠っていた。
眠っている自分を見守っているうちに、いつのまにか眠ってしまったのだろう。なんともほほえましい。
……しかし、なぜ自分は人間の姿をしているのだろうか。記憶がたしかなら、最後の瞬間まで怪鳥の姿でいたはずだが。
「あっ。目が覚めたんですか、先生」
「ええ。……マルコ。よだれが垂れていますよ」
「うわ」
慌てて口元を拭う。
クックは、そんなマルコの様子を見ながら、小さく言った。
「私は、負けたのですね」
マルコは、ややためらいがちにうなずく。
「先生は強かった。……変な話だけど、勝てたのは、先生のおかげです。先生がいろいろと教えてくれていなかったら、絶対、何百年かかっても勝てていなかった」
「……そうですか。私は、いい生徒を持ったようです」
そう言って、あたりを見まわす。小さく、質素な部屋だった。このベッドとて、とても上等な代物だとはいえない。それでも精一杯の努力をして掃除したような形跡はあったが。
「ここは?」
「ギルドで借りてる、俺の部屋です。ごめんなさい、こんな部屋で」
「いえ、気にすることはありません。――しかし、マルコ。どうして私を連れて帰ったりしたのですか」
マルコに対して怒りを感じていたり、咎めるようではなかったが、真面目な返答しか許さないという雰囲気があった。
「こうするのが一番だと思ったから」
向けられた視線を真っ直ぐに見つめ返しながら、マルコはしっかりと言った。
「先生を殺すことなんてできるわけがない。したくない。けど、俺が逃げ帰っても、先生は誰かに狩られる。だから戦った。戦って、眠らせて、連れて帰るのが一番だと思ったんです」
「……あそこで死にたいという、私の意思を無視してでも?」
「はい。先生には、死んでほしくない」
「我が侭な……」
「先生こそ」
ふたりは、長い間にらみ合っていた。
が、やがてクックが諦めたように微笑した。
「やはり、優しいのですね、あなたは。生徒にしてほしいと言ってきたときから、そう感じていました。……ただ甘いだけなのと、優しいのとは違う。あなたは優しく、強い。だから私は、あなたにあの人の面影を見たのでしょう」
「先生?」
「……分かりました、マルコ。もう、あんなことは言いません。あなたの言う通りに生きましょう」
「やった!」
マルコは喝采を上げ、小さな子供のように飛び上がって喜んだ。
そんな様子を見守っていたクックだが、ふと思い出して首をかしげる。
「そういえば、私はどうして人間の姿でいるのですか?」
「ああ、それは、先生にこれを食べさせたからです」
と言ってマルコが懐から取り出したのは、なんとも怪しく毒々しい赤色のキノコ。臭いも怪しげだ。すべてが怪しげだ。クックの顔も引きつった。
「うっ……ま、マルコ、それはっ……!?」
「ドキドキノコ。知らないかな。食べるとなにが起こるか分からない不思議なキノコ。先生を本当の姿のまま連れて帰ったら、いろいろと厄介な問題があるから、どうにかして人間の姿にしようと思って」
「それで……それを、わ、私に?」
「はい。口の中に放りこんで。いやあ、いろいろと考えてみたんだけどみんな駄目で、最後に試してみたこれが大当たりで本当によかった。狩り場で助けた人だって説明すれば、ここまで先生を運ぶのも簡単だったし」
「そっ、そうですか」
口に手を当て、思わず胃の中身を戻しそうになってしまうところを堪えるクック。
マルコが持っているドキドキノコは、尋常のドキドキノコではない。行商人の老婆が格安で売っていた、通常の三倍の威力があるとされるドキドキノコだ。着色料は水性なので洗えば落ちる。
「ま、まあ、よしといたしましょう」
当分はキノコを見たくもなくなったクックは、咳払いをひとつした。
急に真面目な顔つきになる。
「マルコ。あなたは我が侭を通したのですから、私の我が侭も聞いていただきますよ」
「なんだって聞きます」
「よろしい。――では、私をしばらくここに置いていただけますか」
ちょっと無理なことも予想していたマルコは、拍子抜けしてしまった。
296 :
クック先生:2007/07/15(日) 12:05:03 ID:ADrVNwt1
「なんだ、そんなことですか。こんなところでよかったら、いつまででもいてください」
「よかった。……それでは、もうひとつ」
なんですか、と言おうとして、マルコは目を剥いた。
いきなりクックが服を脱いで、裸体をあらわにしようとしたからだ。
「マルコ。勝者の特権です。私を好きなようにしなさい」
「ちょっ、先生!?」
「嫌ですか? 私の体は、気に入りませんか?」
そんなわけはない。白く輝くような極上の女体だ。見ているだけで頭がどうにかなりそうなほどだ。そもそも、マルコはクックに好意を抱いている。
「そうじゃなくて……その、なんていうか、いきなりすぎて」
「あのですね、マルコ」
ずいっ、と迫ったクックは、眉間にかわいらしくしわを寄せていた。
「私はあなたの猛りを静めてあげていたのですよ?」
「あ、はい。ありがとうございました」
「どういたしまして。ところがあなたは私になにもしていないのです」
そういえば、そうだ。マルコが勃起するとクックが射精させてやる。それだけだった。一方的な行為だったので、マルコがクックに快楽を与えたことはない。
クックはそれが不満のようだった。
「世の中はギブアンドテイクです。持ちつ持たれつです。分かりますか?」
「はっ、はい、なんとか」
「もう私は我慢できません。欲求不満です。濡れ濡れです。ぜったいに犯してもらいます」
「ええーっ!?」
抗議の悲鳴は、聞き届けられなかった。
素早く伸びてきた腕に頭を掴まれ、マルコは柔らかな乳房に顔面を押し付けられる。
赤熱する思考。
理性など砕け散って、マルコは本能のままに生きる獣となった。
豊満なバストの先端を執拗に舐め、味わい、手に余る大きさのそれを好き放題に揉んだ。
「んっ……」
小さな喘ぎ。技巧もなにもないその愛撫に、クックは快感を覚えていた。
満足するまで続けてから、顔を上げてみれば、視線が間近で合う。
ふたりは自然と口付けを交わしていた。甘く、熱烈な、貪るようなキス。
「先生、俺、もう……」
口を離して、荒い息を吐くマルコが言った。クックはなにも言わずに、ただうなずく。その瞳は欲情に蕩けていた。
衣服を脱ぎ捨てたマルコのペニスは、すでに雄々しくいきり立っている。クックの秘所も、たっぷりと濡れている。すでに準備は整っていた。
仰向けになって股を開いているクックに、マルコは重なるようにして覆い被さり――そして、繋がった。
「あはっ、どうですか、マルコ。んんっ、私の、中はっ」
「凄いですっ……、くうっ、ヌルヌルしてて、温かくてっ、お、俺、もうっ」
性行為は今回が初めての少年にしては、ここまでは上手くやったといえるだろう。が、童貞を失ったばかりの少年が、クックの膣の素晴らしさに耐えられるのかといえば、そんなはずはなかった。
「うっ!」
満足に腰を振ることすらできず、たちまち射精してしまう。ビクンビクンと脈動して、精液を吐き散らす。
「あ……」
体内に白いマグマの熱を感じて、わずかに悲しげに、クックがそんな声を漏らした。
もう終わってしまった。射精して興奮が静まれば、ペニスは萎え、それでセックスは終わる。昂ぶった女だけが残されて。
マルコは、悔しかった。こんなに情けないことはないと思った。が、すぐに気付いた。おのれの股間は、まだ硬いのだということに。いや、それどころか、先ほどよりもますます熱と硬度を増し、女の中で鋼鉄のような肉棒に成長している。
「ああ、すごい……マルコ……」
うっとりとしたクックが言った。発情した女の顔だった。
気をとりなおして、マルコは今度こそ力強く腰を振った。犬のように浅ましく。やはり技術などありはしない単純な攻めだったが、今のクックはそれこそを求めていた。
「ふあっ……あ、あんっ! いいですよ、その調子っ!」
一度、先に欲望を放出しておいたおかげで、すぐに達する気配はない。しかも、精液と愛液が滑りをよくして、行為を助けている。これならクックを満足させられるかも、と、クックは思った。
しかし、クックの膣の内壁のヒダが、締め付けが、容赦なく少年のペニスを絶頂へと導いていく。
297 :
クック先生:2007/07/15(日) 12:05:45 ID:ADrVNwt1
「くうっ」
先ほど射精したばかりだというのに、このままでは二度目も時間の問題だ。かといって動くことをためらっていては、クックを気持ちよくさせることなどできない。
どうにかして、ペニス以外のものを使って、クックに快楽を与えなければ。
だが、どうすればいいのだろう? 汗だくになりながらマルコは考える。
そして、ひらめいた。この人間の姿と、あの飛竜の姿――どちらも同じ人物であることに変わりがないならば、あそこを責めればいいはずだ。
「んっ、マルコ?」
訝しげに、クックはマルコの名を呼んだ。顔を寄せてきたので、キスをされるのかと思えば、マルコはそのままクックの顔の横に――
「んひいいいいっ!?」
耳に強烈な電流を流されたように感じて、クックは正真正銘の悲鳴を上げた。
「まっ、マルコっ。なにを……」
「やっぱり、先生は耳が弱いんですね」
イャンクックの最大の弱点は、耳だ。マルコはそこを甘噛みしたのだ。たったそれだけのことで、あの悲鳴だ。
最大の弱点を見抜かれて、クックはあからさまに狼狽した。目に涙まで浮かべている。
「やっ、やめっ、そこ、ほんとに駄目っ」
「……かわいいですよ、先生。今からたっぷり耳を苛めてあげますから」
にやり。マルコの笑みは悪魔のようだった。クックの顔が、さっと青ざめる。
「いっ、いやっだめだめ、うああああ――ッ!?」
今度は少し強く噛まれて、あられもなく絶叫した。赤い髪が振り乱れる。
マルコの歯の先が耳の肉にたやすく食い込み、クックの性感を痛打していた。
「んぎっ、んっ、ひう、あふうっ、やだっ、ふぐうううっ!」
舐められるだけで体が跳ね、千切れそうなほど噛まれると、意識がどこかに飛びそうだ。
年下の少年に完全に翻弄され、涙とよだれを撒き散らしながら、はしたなく泣き叫んだ。
「うぁうっ」
ぷしゃあっ、と、秘所から黄色い水が噴出して、結合部を濡らす。
「先生、漏らしたんですね」
「ごっ、ごめんなさい、マルコ……」
「いいんですよ、べつに」
と言いながら、耳の穴の奥に舌を突き刺す。
「……ッ、かはっ……」
声もなく、クックは舌を突き出して悶絶した。また尿が漏れる。
298 :
クック先生:2007/07/15(日) 12:06:32 ID:ADrVNwt1
「うわ、すごっ。先生、漏らすクセでもあるんじゃ?」
「っ……! そんなのありません! きっ、きらいですっ。意地悪する子は嫌い!」
真っ赤になってそっぽを向くが、マルコにはすべてお見通しだった。
「先生。俺のこと、嫌いになったんですか?」
「そうですっ」
「……本当に?」
赤子をあやすように頬を撫でられ、クックは泣きそうな顔になった。
「ひどい。ひどすぎます。……分かっているくせに……」
もはやクックの心は完全にマルコのものになっていたのだ。
そうやっている間にも、ずっと腰は振られ続けている。じゅぷじゅぷと水音が鳴って、淫靡な空気が部屋を埋め尽くしていた。
マルコにも、限界が訪れようとしていた。
「先生、俺、もうそろそろ、またっ」
「は、はひ、出してっ。また出してください、おねがい、マルコっ」
肉と肉が打ち合い、そして――
「あ、いっ、イきます、私またイくっ」
敏感な耳を責められ、すでに何度も何度も果てていたクックが、叫ぶ。両足は浅ましくマルコの腰に回り、しっかりと捕らえて離さない。
「あ、あっ、イくいくいくイク、ひっ、イっくうううう――ッ!」
「ぅううっ!」
マルコはクックの腰をしっかりと掴み、精を放った。背中に回されたクックの腕が、爪で肉を引っかいたが、それを気にする余裕もないほどの圧倒的な快感だった。
二度目の放出は、一度目よりもむしろ勢いよく、クックの膣を蹂躙していく。
力を使い果たしたマルコは、そのままクックの胸に倒れた。
しばらく、時間が止まったように静かになる。
「先生……」
「ん、マルコ……」
白い指先が、黒髪を撫でる。
ふたりは心地いい疲労感に包まれながら、くすりと笑った。
クックの目に映る少年は、今までよりもずっと逞しいように思われた。
イャンクックを倒したことで、ハンターとしての実力を確かめられたからだろうか。初体験をすませ、女を屈服させたことから、自信がついたのだろうか。
そのどちらもが、今のマルコを強くしているのだろう。
「ねえ、マルコ」
「はい」
「愛していますよ」
少年のことがたまらなく愛しくなって、身も心もささげたくなって、クックは言った。
マルコの返事は、もちろん、決まっていた。
299 :
クック先生:2007/07/15(日) 12:07:45 ID:ADrVNwt1
マルコが酒場を訪れてみると、入り口の前に、あの隻眼の老ハンターが立っていた。
「……イャンクックを倒したか」
「ああ」
「強かったか?」
「そりゃあもう」
なぜか、胸を張って、そう答えることができた。
老人は、寡黙な男だった。多くは語らず、ただ愚直にモンスターハンターとして生きてきた男だった。ひとりのときも、仲間がいるときも、モンスターハンターだった。
だから、こういうときになんと言えばいいのか、誰よりも知っていた。
男が仕事を無事に果たして帰ってきたとき、かける言葉はたったひとつだ。
「よくやった」
ぽん、とマルコの肩に手を乗せる。
「さあ、腹がへったろう。メシを食おう。ここのステーキは絶品だ」
マルコは、胸の奥からこみあげてくるものを感じて、瞳が潤んだが、どうにか涙を堪えることに成功した。
大きくうなずき、ステーキを腹いっぱいになるまで食べようと決意した。
300 :
クック先生:2007/07/15(日) 12:15:07 ID:ADrVNwt1
投下終了。クック先生の話はこれで完結。
疲れた ラー娘の二倍くらいは書いたかな、たぶん
ちょい疲れたわ
そんで主人公がうざくてうざくてしょーがなくてやる気も失せそうになったわ
胸糞悪くなったでしょ。俺もです。げへへ。狙い通りといえばそのとおりなんだが。
ガチマゾランサーは書いてて楽しかった。
↓で
>>175の修正をしとこうと思う。なんか文の順序がめちゃくちゃになったから。
マルコ・イーノという少年がモンスターハンターとなってから、ちょうど二年ほど経っていた。
死と隣り合わせの危機も日常茶飯事という、十八歳の少年にはあまりにも過酷な職業だが、それでもマルコは幼いころからモンスターハンターに憧れていた。
理由は、かっこいいからだ。
凶悪で圧倒的な力を持つモンスターの魔の手から、か弱い人々を守るために戦う、正義のヒーロー。
どんな相手にも恐れることなく立ち向かい、強力でかっこいい武器を自在に操って、巨大な飛竜を――すなわち悪を倒す。
モンスターハンターこそは英雄だ。
ついにハンターとなったからには、マルコは真の英雄になりたかった。なるつもりでいた。
が、現実とは厳しいもので、望む者に才覚が与えられるとは限らない。
マルコは凡人だった。いや、もっと正確な評価を下すならば、無能だといえた。キノコを採集しに行けばアプトノスが振りまわす尻尾に当たって昏倒するし、ファンゴの群れに追いかけられて崖から落ちる。
一週間前の、ドスランポスの討伐依頼を受けたときなど、閃光玉をありったけ使い、限界まで持ちこんだ回復薬と回復薬グレートを使いきり、二回もアイルーたちの世話になったあげく、ようやく退治することができた。
マルコにはモンスターハンターとしての――戦士としての才能がない。それが、彼を知る者すべての意見だった。
が、不幸なことに、マルコ本人がその事実に気付くことはなかった。おのれはいずれ英雄になる男だと信じて疑わなかったのだ。ほかのハンターから才能の乏しさを指摘されても、笑い飛ばしていた。
幸福とは、不幸を自覚していない状態のことを言う。マルコは幸福だった。
今日もマルコは意気揚々と、ハンターズギルドが運営する酒場を訪れる。
店内にごった返しているのは、男も女も老いも若きも関係なく、みなモンスターハンターばかりだ。誰も彼もが浮かれ騒ぎ、水のように酒を飲み、大盛りの美味そうな料理を豪快にかきこんでいる。
これだ、とマルコはいつも思う。これこそがモンスターハンターの集う場所だ。英雄たちが羽を休め、英気を養うための酒場だ。
「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」
向かった先のカウンターで、受付嬢がにこやかな営業スマイルを浮かべながら言った。
「飛竜の討伐依頼はあるかな」
「……飛竜の?」
受付嬢の営業スマイルが曇る。その視線はマルコの風体を上から下まで一瞬で眺めていた。
gj!
ちょっと「マルコ・ポール」ってキャラ作って、クック先生に突撃してくる
何か別の物混ざってるぞwwww
>>300GJ!
「強くなったな、最後の授業だ、私を倒しなさい」系の話で終わるのかと
思ってたら予想通りで悲しくなったけど最後はハッピーエンドでよかったぜ。
鬱系の話は好きじゃないんだがそう思わせてのサプライズもよかった。
それにしても・・・
マルコとクック先生の声が某アニメの生徒と先生の声で脳内再生されちまう。
そんな状態で読み進めると・・・うひぃ〜失禁先生がエロすぎだぜ!ハァハァ・・・
最近盛況でハァハァが止まらん。堪らんね
皆様GJ!
>>174 耳攻めエロイよ耳攻め
クック先生に音爆は定石なんだが、耳をポトリと落とされた事を思い出して、ちょっと吹いた。
>>300 今までずっと読ませてもらってましたぜ。GJにも程がある。
次回作にも激しく期待。
…と、皆さんが感動してる中少し申し訳ない気もするが相も変わらずクオリティの低い作品を投下。
苦情は後から徹底的に受け付ける。
苦情の後は引き続きクック先生の感動についての語りをどうぞ
朝というのはいつも爽やかでなければならない。
起きた時一番最初に抱いた感情は、間違いなくその1日の間は引きずりまわされるからだ。
この日もジュリオの目覚めは実に快適な目覚めだった。
心地よい朝日が差し込む中目を覚まし、朝食を取り、歯を磨いてから着替えて農場へ。
問題はここで発生した。
「…………いったい、何が………」
農場に到着したジュリオの視界にうつったのは、倒れているエメラとルヴィ、そして荒れに荒れた農場、あとじじいだった
「二人とも、どうしたんですか!?」
「ああ、その二人じゃがどうやらケンカをして疲れ果てたようじゃぞ。そっとしといた方がええ」
「そうですか…。…それにしても、凄い荒れっぷりだな……」
「大暴れじゃったからな、二人とも」
「そうだったんですか…。………ところで…」
「ん?」
「そろそろツッコんでいいですか?」
「何に?」
「……つまり、エメラさんに会いにきたらルヴィさんとエメラさんがケンカをしていた、と…」
「うむ。というかルヴィというのか、あの娘っ子」
そのじじいは紛れもなく、以前に意味もなくポッケ農場にやって来たエメラの祖父だった。
相変わらず飄々としてつかみ所がないというかなんというか、ただのアホというか……といった感じである。
「…なぜ二人を止めなかったので?」
「おもしろかったから」
「はい?」
「わしゃ血気盛んな若者の戦いを見るのが好きなんじゃ。モンスターだった頃はよく若いのと手合わせしたもんじゃよ。それにかわいいエメラがどれほど強くなったのかもひでぶ!」
じじいが喋ってる最中に飛んできたのは、ジュリオの強烈な右ストレートだった。
かつてガノトトスだったことが信じられないくらいに吹き飛ぶじじい。
「な…なぜ殴るんじゃ!?」
「え? あ、すみません! なんだか殴らなきゃいけないような気がして……」
が、じじいを殴るよりも率先せねばならないことがあるのはジュリオ自身もわかっていた。
「……さて、この農場の有様……どうしようか……」
農場の荒れっぷりは惨たるものだった。
黒いかけらが取れる巨大な剣のある洞窟…先日、ルヴィが天井に張り付いていた洞窟は入り口が崩れて入れなくなっており、
アイテムボックスの近くにいたポポは逃げ出し、釣り用の桟橋は壊れ、採掘場のハシゴまでもが壊れている。
ついでに、そこらで猫が転がっている。
「ついで!? ひ…ひどいニャ!」
「あ、キミ達は無事だったんだね!」
「あ、ああ無事だニャ!」
「…見てわかると思うんだけどさ」
「ああ、酷い有様ニャ……」
「……他のみんなも一緒に、手伝ってくれるかな?」
「もちろんだニャ! それじゃあ早速作業に取り掛かるニャ! やろーども、あつまれだニャーー!!」
その言葉で農場で倒れていたアイルーたちが続々と集まってくる。
…とはいっても、今のアイルーを合わせて5匹しかいないが。
(ジュリオの旦那は僕達に気づいてくれたニャ…。ジュリオの旦那のためにも、がんばるニャ!)
だが彼らは気づいていない。
ジュリオが農場に入ったばっかの時、彼らを発見しなかったというだけで十分にひどいということに。
「そっち運んでー! あ、そこ大タル爆弾仕掛けたから危ないよ!」
洞窟の前の小さな瓦礫を運び出し、大きな瓦礫は大タル爆弾で破壊する。
なぜ真っ先に洞窟の瓦礫をどかしているのか?
それはもちろん……
「たすけてニャ〜……」
「もう少しだから待ってて!」
洞窟の中のアイルーを助け出すためである。そう、前回ルヴィに食われかけたアイルーだ。
アイルー5匹という人(?)手は意外と役に立つものだった。
作業は順調にはかどり、瓦礫も残すところあと少しとなっていた。
「…大きい瓦礫だね」
「どうするニャ? これを爆破したら、中のアイルーまで巻き込まれる可能性があるニャ」
「爆破しよう」
「え?」
「大タル爆弾設置するからちょっとどいてね」
「ちょ…ちょっと待つニャ!」
ジュリオと一緒に作業をしていたアイルーの顔に、明らかな焦りの色が浮かぶ。
「どうしたの?」
「だからここで爆破なんてしたら中のやつが…」
「平気でしょ、アイルーだし」
「………………」
(ジュリオの旦那って結構腹黒いのニャ……)
「いや〜、ちょっと黒コゲになったけど助かったニャ!」
瓦礫を爆破し、無事に中から脱出したアイルーが言う。
とはいえ、爆破のせいで黒コゲになったのでどちらかというとメラルーに見えるが。
「うん、それじゃあ作業を手伝ってくれるかな?」
「ニャ? …ああ、これは酷いニャ……」
ずっと瓦礫に埋もれていた彼は農場の状態を知らなかったが、一目見て即座に把握した。
「それじゃあ、ボクはハシゴを直してくるのニャ!」
「うん、頼むよ」
ジュリオはアイルーがハシゴを直しに行ったのを確認すると、桟橋に向かった。
正直言って、今のところここが一番損壊しているからだ。もはや桟橋は2歩も歩けないような状態になっている。
と、ジュリオが桟橋に向かおうとすると、桟橋で作業をしているアイルーが突如として叫んだ。
「ニャアアアア!? ニャ……ニャんぞこれーーー!?」
「ど……どうしたの!?」
「あ、あれ……一体何だニャ!?」
アイルーが指差した方向を見てみると………
そこには元気に泳ぎ回るじじいの姿が!
「………ねぇ、キミ」
「何ニャ?」
「ちょっと僕の家のアイテムボックスのボウガンと雷撃弾を取ってきてくれないかな?」
水は電気をよく通す。その後、アイルーの持ってきたボウガンにより、じじいがどうなったかは言うまでもない。
水死体のようにぷかぷかと浮かんでいたじじいを引き上げ、アイテムボックスに放り込むと作業は再び開始した。
「さあ、邪魔者も消えたところで僕も引き続き作業を…」
「何してるん? ダーリン♪」
「!?」
いきなりジュリオに抱きついてきたのは赤髪の少女。そう、ルヴィである。
なんだか前にも似たようなシチュエーションがあった気もするが全くもって気のせいである。
「い…いつ起きたんですか!?」
「愛しいダーリンの声がする時ならウチはいつでも起きるわ♪」
「とにかく離れてください!」
ルヴィをやっとのことで引き離すと、ジュリオは言った。
「そんで、何してるん?」
「見てのとおり、農場がこんな有様になったのでみんなであちこちを直してるんですよ…」
罪悪感の欠片も見せずに言うルヴィ(本当に罪悪感がないのかどうかは不明だが)にジュリオが
半ばあきれた感じで答える。
「…なぜ、農場をこんな状態に?」
「あの女とダーリンの取り合いをしてたらいつの間にかこうなったんや」
「取り合い…? 何だかよくわかりませんが、やはりエメラさんのお爺さんの言うとおり二人のケンカが原因か…」
「そや、手伝うから後でご褒美にデートしてーな!」
「……ルヴィさん、全く反省してないでしょう?」
「何を?」
「………もういいです…」
しかし、新たに人間が一人加わったために、作業は一気にはかどった。
ハシゴの修理も終わり、逃げ出したポポも無事に連れ戻すことができた。あとは桟橋を少し直すだけだ。
「ようやく農場も元通りになるね…」
「苦労したニャ、まったく…」
「あはは、カンニンな〜」
ようやく自分のやったことを自覚したルヴィが軽く謝る。
「……よし、終わりだ!!」
「やったニャーーーー!!」
ついにポッケ農場が元の状態に戻り、その場にいた全員がおおいに喜んだ。
じじいもまた然りである。
「………いつの間に起きたんですか」
「わしは滅びぬ。何度でも蘇るわい」
「そうですか…」
もうどうにでもすればいいといった感じで言うと、ジュリオは家に帰ろうとした。
………が。
後ろから、何者かの手がぬぅっと伸びてきたかと思うと、首根っこを掴まれた。
「……ルヴィさん…? どうしたんですか…?」
「いや…あの女はまだ寝とるし、今のうちにダーリンを………」
「な、何ですか? 不気味な笑みを浮かべないでください!」
「いただきます」
「うわあああああああああああ!?」
その時、ジュリオの悲鳴に反応した物体があった。
ぴくりと動いたのはエメラの耳。
エメラは素早く起き上がると、ルヴィの方をきっ、と睨んだ。
「おい、何をしている!?」
「何って……今からダーリンとくんずほぐれつしようと……」
「く…くんず……!? だ……駄目だ駄目だ!!」
「……あれ? こんな展開、どこかで………」
ジュリオはこの時、内心嫌な予感はしていた。
だが、残念なことにその嫌な予感は見事に的中してしまうのだった。
「上等や、そんならダーリン争奪戦第2回戦といこか!!」
「そ……そいつはどうでもいいが、貴様だけは倒す!!!」
今ここに、再び女の戦いが始まった。
迸る雷撃
壊されるハシゴ
「ああああああああああ!!!」
輝く翠髪
崩れる洞窟
「ちょっと二人とも落ち着いて!!」
破壊される桟橋
吹き飛ぶじじい
「お爺さーーーーーーん!?」
こうして、作業は再び振り出しに戻ったのだった………
「ニャ?」
「どうしたニャ?」
「いや、今じじいが空を飛んでたような…」
「またかニャ? もしかしてクスリでもやってるのかニャ?」
「まさか!冗談はよすニャ!」
「じゃあやっぱり気のせいニャ! あまりふざけたことを言うもんじゃないニャ!」
「…そうニャね!」
「そうニャ!」
「「ニャッハッハッハッハッ!!」」
ジュリオの日記
〜○月×日 △曜日〜
今日、ようやく再び二人に壊された農場の修理が終わった。
これからはあの二人が同時に農場にいる状態を作らないようにしなければ。
そういえば、最近ポッケ村では2度にわたって空を飛ぶ人型の何かが目撃されたらしい。
新種のモンスターの可能性もあり、注目を集めてるそうだ。
一体、何なんだろう?
うん、好きなんだよじじい。
なんか意味がなくても出したかったんだ、じじい。
多分次回あたりシリアスパート突入。
それではクック先生への賛美の言葉をどうぞ
>>308 夜中に来てみれば一番乗り(?)GJ!
あなたの書くツンツンガノトトスが好きです。(最近ちと影薄い気もするけれど)
腹黒化の進む主人公の、じじいと猫へのひどい仕打ちにワロス
シリアス展開がどんな話となるのか、ワクテカして待ってます
クック先生GJ!!
予想外ENDとは貴様もしかしなくてもプロだな?
てことで俺もマルコ・ポーロを作ってボーンブレイドで上位青クックに突撃してきます。防具はまふもふあたりで。
sage忘れさんGJ!エメラの影が薄いが次辺りから活躍を祈りたい。
シリアスパートか・・・・鬱ENDだけは勘弁してやってください。
そしてルビィ可愛いよルビィ。いろいろ俺のツボを突いてる。
>>300 GJなんだが…レティシアがあまりにも可哀想で
個人的には少々後味が悪かった…
初期のマルコのような『力のない馬鹿』なら可愛げがあるが
アキラのような『強さも権力もある馬鹿』は救えないよなぁ…
続編があるなら『没落したアキラ』や『調子に乗って
紅龍や祖龍に消し炭にされるアキラ』の話とかを希望www
寧ろ成長したマルコの後日談をキボンだ
その際アキラは是非格下モンスにハメ殺しの方向でw
萌えドラスレ常連の俺がきましたよ
多分、アキラって畳の上では死ねないな。
それもあきらかにヤバイ状況で無用の喧嘩売って最後のときに
「やっぱりこういう最後か」とか「覚悟は出来ていたさ」とか
達観しながら死ぬのではなくてやばくなった途端に見苦しく泣き喚くタイプだ。
>>321のケースだと
仮に人に助けを求めようにも「ソイツらは責任持ってテメーで片付けろ!」とか
「サーセンwwフヒヒヒwww」とかってあっさり見捨てられそう。
皆がアキラ嫌ってる状況で彼の改心が見たいと思う俺異端?
しかしクック先生はエロいし考えさせられるしで非常にGJ
>>324 確かにそういうのも見てみたい
レティシアが一番幸せになれる展開っぽいしな
GJです。
今リオハート擬人化書いてるんだがやっぱり長いよりは短いほうがいいのかな?
あと性格はババアかおしとやかを考えてるんだがどっちがいいんだろうか
>>SAGEの人
爺と主人公の漫才がメインになってるな
おもいきし稲荷ずし吹いたがな!
キーボードにご飯粒が挟まって大変なことに……
>クックの人
実はアキラは時間によって女の子と男の子の体を行き来するタイプの両性具有で
男の子のときはSの女の子のときはMとすればモンスターハンター関係ないな
>>326
貴方の好きな長さで好きな性格で描けばリビドーがこもっていいものになるんじゃないかな? かな?
我も我もと馳せ参じ。続きを投下しに来てみた。
※諸注意
・グロではないけど色々食う。そして味等ややデタラメ
・宣言した回数で収めるためにアホほど長い
・エロはまだ。展開は強引
・設定間違ってたらすまね
以上が許せる方はご覧あれ。駄目ならスルー頼みます。
ヤツが何も言わないのを良いことに、蟹の居なさそうな、かつゲネポスの居そうな場所を選んで進んだ。
今の私は、この青い装備に秘められた力のお陰で解体名人の名を欲しいままにしている。
鍋底で撲殺し皮を剥いだトカゲの口をこじ開けて、嬉しげに牙をもぐ私の様を見ていたヤツは、小さくぼやいた。
「えげつねえ……」
あの時ヤツを殺してしまっていたならば、やっぱりこんな風にほくほくとアレコレ剥いだのだろう。
あの時ほどに、竜を殺すことに執着はない。今嬉しげなのは、純然たる物欲の故にだ。誤解して欲しくはないな。
などと思いつつ、ヤツを刺激しかねないので口にはしない。
良い具合に皮がとれたなと満足したのは、岩壁に囲まれたオアシスのゲネポスを粗方解体した後のこと。
いい加減、真面目に蟹を探すことにしよう。
鍋を地面に突き立て、杖代わりにもたれつつ、千里眼の薬を飲んだ。
一度に広がる知覚の網。周りの空気全てに自分が触れているような独特の感覚はなかなかに快い。
その網に引っ掛かる、大きな生き物の気配。なんだ、こんな近くに来ていたのか。
「来たぜ」
無感情な低い声が告げると同時、ヤツは刀を抜いた。
こちらも準備ってものがあるんだ。ペイントボールの用意を確認しつつ、強走薬を飲む。
「御馳走が向こうから来るなんて、気前のいいことだね」
体に精気が満ち渡る。ああ、ごはんの前に薬漬けってのもなんだかな。
呑気に考えつつ、得物を地面から引き抜いた。
打撃や雷に弱い蟹が、黒鍋【真好吃】と鬼神斬破刀の前に倒れ伏すのは実に早かった。
あんまり大きくない蟹だったから、強さもそれなりだったのだろう。
最中、蟹泡食らって吹っ飛んだヤツが変な笑い声あげ出したのはどうしようかと思ったものだが。
ペイントボールも千里眼の薬も強走薬も、もしかして要らなかったろうか。
ベコベコに砕けた殻によじ登り、解体を始める前にあることに気付いた。
「しまったなあ……」
滅多刺しの結果、蟹の血まみれになっているヤツが、何がだという目を向けてきた。
「いや、ほら。砂を食むのを見守っていたら真珠のポロリがあったかもしれないかなと」
絶対欲しいわけでもないが納品すれば、まあまあの見返りがあるものだ。
水辺の方へ歩き出したヤツが、つまらなさそうに肩をすくめた。
「食えねぇもんだろーが。気にすんな」
それもそうだ。
たまにはマトモな事を言うと感心していると、ヤツは水で蟹の血を落とし始めた。
乾くと臭いそうだものな、あれ。
蟹の身を剥き剥き、どう料理したものかと思いを巡らせる。
出汁を煮たたせた鍋でのしゃぶしゃぶもいい。茹でるだけでも十分いける。ミソはどう食うおうか……。
妙な物音に、またヤツの方に視線を移すと刀を研いでいた。意外とマメだ。
自分で蟹の素材を剥ぐのを忘れてないかとは思うが。
私も鍋を洗っておこう。蟹の身剥いてから。
「ところで、だね」
刀を納めてこちらに向かうヤツに声をかけてみた。
「蟹の食べ方、どんなのがいいと思うかな」
身を磨り潰し団子状にして蒸すのも捨てがたい。
ヤツは蟹を見、私を見、ニタリと笑った。
「新鮮なんだぜ、生に決まってんだろ」
こいつ、天才かもしれない。
甘くてジューシィ、コクがあってまろやかな舌触り。
ああ肉でも魚でもないもの最高。
生きてて良かったとバリバリに実感中です。有難う、身内よ。
やや恍惚となっている自覚はある。こちらと同じく生蟹を食らうヤツが、チラチラと見てくるのはそのせいかもしれない。
脚の一本の爪先に殻ごとかじりつき、噛み砕く無表情をこちらもチラリと伺ってみる。
歯丈夫だな、おい。
殻を吐き出したヤツの動きがピタリと止まった。やたらに真面目な顔になっているのは何事か。
ただそのヒレだけが、葉に止まった時の蝶の翅のように、ゆっくり羽ばたきに似た動きを見せている。
ヤツは目蓋を閉じた。口元も先程の面影がないほど、大人しく閉じられていた。
左右対称的な顔が、作り物めいて見えて私はなんだか固唾を飲んだ。
右目蓋から走る傷が、これが生き物の顔だった事を思い出させた。
ヤツはおもむろに目を開いた。口角がキリキリとひかれ、のこぎりみたいな歯が剥き出しにされていく。
ギラつく視線が私を捉えて、ヤツは邪悪さ滴る笑みを浮かべた。
「そういや、二人っきりだよな」
その声の響きには実に嬉しそうな色がある。やっぱりその方向で来たか。気付くの遅いけど。
「つまりはアレだ。ここで俺がテメェを殺すにはなんの支障もねぇってことだな」
ご丁寧に悪者そのものな笑いが、喉の奥から聞こえる。鍋やら蟹やら、剥ぎ取り用小刀も押し退け迫ってきた。
その笑い声、どっちがカエルだよこの野郎。がっつき過ぎだ。
ここで引いたら本気で食われそうな気すらする。出来る限り平静を装い、その目を睨む。
たぎる闇とでも言おうか、蟹の食い方の相談をした相手とは別者のようだ。
「私の身に何かあれば、それは貴方のせいだろうという手紙を我らの保護者に出している」
そう、手は打って来ているのだ。恐れることはない。
「つまり本当に貴方に非がなくとも、私が無事に帰らなければ貴方もただでは済まない。そういうことさ」
飽くまでも静かな声で言い切れた。
ヤツの顔があからさまに不機嫌に彩られる。落胆の色が隠せない辺り、まだ可愛げがあるとも言える。
舌打ちしつつ、ヤツはまた蟹脚をむさぼり始めた。今度はあまり殻を吐き出さない。
ゴリンボリンペキベキゴキリ
愉快な音を立てやがるヤツを放っておいて、私は鍋を洗うことにした。
蟹やゲネポスの体液が少し染みた鍋を洗い終えたところで、オアシスを覗きこんでみた。
何かの魚影が見える。
ふと思い付いて、周りを見回した。剥ぎ取り用の小刀は……あった。拾ったそれを手に、目線を地面に向けて歩く。
身内から聞いた話を思い出したのだ。食べられるサボテンがあると。なんでもそれは、葉が平べったくて針が少ないらしい。
程無くして、地面に丸平べったく生えているサボテンを見つけた。針も少ない。
更に周りをよく探すと、同じ品種であろうサボテンの切り取られた株を見つけた。
まあ多分これなんだろう。
少し切ってみて刃に滴る汁を舐めてみた。苦い。
ひたすら苦い。軽く吐き気がこみあげるくらい。
慌てて口の中の唾やら何やらを吐き捨てた。
荒く息を吐いてから顔を上げた先に、呆れ顔のヤツが居た。全部見られていたのか。
「毒有るかもしれねぇとか思えよ、テメェは馬鹿か」
全くに否定できないのが悔しい。
「あたったなら、貴方に連れ帰って貰いましょうとも」
負け惜しみのように無理して笑ってやった。まだ胸が悪い。怪訝な顔をするヤツに続けて言う。
「貴方のせいでなくても、貴方のせいだってことになる手紙を書いてたのをお忘れかな」
ヤツの目が丸くなった。可愛いもんだ。
「うわ、えげつねぇ……」
人生何事も経験すべしだよ、うん。
口をゆすいでうがいをし、多少すっきりしたところでつい呟いた。
「まだ食べ足りないな」
「蟹もうあんまりねぇぞー」
見た目は中背中肉ただの成人男性のくせに、よくそれだけ食べられるものだ。呆れを通り越して羨ましい。
苦味の残る口でカニミソを食べるのは勿体無くて嫌だ。とりあえず、蜂蜜入り回復薬でも飲んでみるか。
荷物をもそもそとあさっていると、ヤツに背中をつつかれた。
「なぁに」と振り返ると、変な顔をされる。私の顔に何か付いてたりするのか。
ヤツは眉間にシワを寄せた後、低い声でぼそっと呟いた。
「クチ開けろ」
今のところヤツの目付きはヤバげでない。大人しく言われたままに従う。大口開けるのも気恥ずかしいので、少しだけ。
「あーもう、開けろっつわれて、そんだけしか開けねぇ奴があるかってのこん畜生が」
ぶつくさ言いつつ、何か冷やっこいものを唇に押し付けられ、反射的に口が開いた。
押し付けられた物は、そのまま口の中へ押し込まれる。
舌の上で溶けるそれは、甘さと酸っぱさを兼ね備えた果実の味。このつぶつぶ感は氷結晶イチゴか。
寒いのによくこんなもの持ってたなと思いながらモゴモゴと口の中で転がしていると、物言いたげなヤツと目が合った。なにさ。
イチゴを片頬に寄せて、一応礼を言ってみた。
「ありがほぅ」
「口に物詰めたまま喋んな。ゆっくり食ってろ」
このやろ、絶対いつも身内に言われてること言ったな。
とはいえ、勝ち誇った顔で言うでもなく面倒くさげに目を逸らし、また蟹を食べ始めた。
私の分は残さないつもりか。
言われた通りにゆっくりとイチゴを食べ終えて、さて蟹をと見ると、けぷっと小さくおくびを漏らす元ガノトトスが一匹。見事な完食だった。
ミソまで食い尽くしてあるのを見て、少し泣きたくなったが、これは元々本命ではなかった物。諦めよう。
剥いだ蟹の爪だの堅殻などをまとめて、背負おうかと思ってから止めた。
もう一度ここに戻って来ようと考えたからだ。その旨ヤツに伝えようと声をかけた。
「そろそろガレオスの肝や草食竜の卵を獲りに行こうと思うのだけれど」
ヤツのヒレがヒコヒコ動く。アレに何かしらの意味はあるのだろうか。
「獲ったそれらは、またここで食べたいんだ。いいかな」
メルヘンな格好したヤツは、ぶっきらぼうに好きにしろと呟いた。
ヤツはいつもほど殺す殺す言わないし、食べ物で釣るのは案外いい手段なのかもしれない。
「なら素材などはここに置いて、肝から獲りに行こうか」
ヤツの袖を引っ張りつつ言ったら、すごく嫌そうに振り払われた。嫌そうなのを見るのも楽しいかもしれない。
「気安く触ってんなっつぅの。つーかなんだ、蟹の脚食い損ねたから俺の腕でも喰う気か」
人が集中してる間に後ろでブツブツ言われるのは実に鬱陶しいが、ヤツがぶちギレする気配は無いから良し。
砂竜が砂の中を泳ぐ音に耳を澄ませ、叩き出してやろうと鍋を構えている最中だ。
目を閉じているというのに、クリアに見えるような感覚があるのが不思議だった。加えて妙に心が踊るのを感じる。
こんなに楽しいのは、私がこの『贅沢』をいたく気に入ったということなのだろうか。
折よくガレオスが寄ってくる。
さあ来い、殺して剥いで食らってくれるわ。
自分の中に生まれた狂暴さにも疑問が湧くが、それとは無関係に体が動く。
身を捻りバネを効かせた一撃で砂面を叩けば、伝わる振動に驚いた砂竜が跳ね上がる。
そういえばこれも魚竜、鱗も尻尾もヒレもある。ヤツの好みの範疇には入るのだろうか。
どうせ食うから関係ないか。
ビッタビッタと跳ねる砂竜に、抜刀したヤツが迫る。口元が嬉しげにニタついているのが見えた。
やっぱり好みなのか?
砂竜を叩き出すには音爆弾を投げ付けるのもいいけれど、いつかにそれを使った時、近くに居たヤツが軽く硬直した。
その後、イャンクックのごとくぶちギレやがって、うっかり噛まれかけたことがある。
ヤツは水竜の時みたいに飛び跳ねはしないけれど、大音は嫌いみたいだ。
砂竜の桃色っぽいヒレを切り取りながら、そんなことを思い出す。
メルホア装備のこの香りは怖いな。ヤツが近くに居るだけでいちいち思い出に浸る勢いだ。
魚竜の腹を裂き、肝を取り出しているヤツを横目で見た。そのまま食いそうな目をしてやがる。
「貴方にとって、ガレオスは魅力的なのかい」
肝は私も食べるんだ。それは譲れない。何とか気を逸らそう。
「あぁん?」
意味がわからないという表情がこちらを向いた。
「ガノトトスと同じ魚竜種だ。貴方にとって異性の範疇に入ったりするのかい、ガレオスは」
剥ぎ取った桃色のヒレは約束通りにヤツに押し付ける。
それを受け取りつつ、ヤツの目は泳ぐ。言葉の意味を考えているんだろう。
今の内とばかりに、ヤツの手から肝をそっと奪い取る。
「異性っつったら、俺から見りゃ女のことか」
うんと頷いて見せると、ヤツは軽く唸った。
「雌火竜やらナナなんとかやら、黒い二本角とかカエルもどきも女っちゃあそうだろ。知らねぇが猫共にも女は居るだろうしな」
飛竜と獣人に挟まれて言われた私の位置付けってどうなんだ、それ。
簡単な言葉を選ばなければ、言いたいことは伝わらなさそうだ。
「ガノトトスの頃には、繁殖期にこれなら子どもを作りたいって相手が居たんだろう。ガレオスはそういう対象にはならないのかってことさ」
ヤツの眉尻がいつもより高い位置に跳ねる。顔は無表情だが、ゆっくりめの歯ぎしりと、細かに動くヒレが何かを考えているだろう事を伝えてくる。
そんな様子を見守りながら、肝の食べ方を考えていると、ヤツが急に驚きの表情を浮かべ、その後視線を逸らせた。
身内は日々こういう反応を見守っているのだろうか。楽しそうだ。
「カエルもどきよ、テメェは……」
横目でこちらを窺いながら、低い声を出している。考えながら喋っている様子だから、静かに聴いてやろう。
「ええと、あの白い毛むくじゃら。ブランゴだっけか。あれと交尾しようって思ったことあるか」
急にとんでもないこと言いやがる。この(偽)ドラゴンファッカーめが。
「一片たりともございません」
それはもう即答してやった。ヒトの尊厳に懸けて、そういう異常性は持ち合わせていないつもりだ。
「俺もそういうこった」
なるほど。
砂竜を数尾狩った後、私は一足先にオアシスに引き上げることにした。
草食竜の巣はオアシスから近い。そちらを中継地点にして行っても良いだろう。
ヤツは採掘に行くそうだ。メルヘンな格好でそれは似合わない気もするが、いちゃもんつける意味もないので黙っておく。
途中ミミズとカエルを捕まえてみた。カエルって美味しいんだろうか。
オアシスに帰り着き、また荷を降ろす。といっても今回はガレオスの肝とカエルだけだが。
ミミズは携帯用の釣り針に刺して、水面に投げる。
ハリマグロでも釣れたら御の字だ。
釣果は大食いマグロが一尾のみ。食いではありそうだから良しとする。
どう食べよう。刺し身も良いし、たたきもいい。肝と一緒に煮るのもありか。
うん、出汁とって肝と煮よう。せっかくアイルーに削り節分けて貰ったんだもの。使わない手はない。
火を起こして鍋に湯を沸かす間、何か野菜っぽいものが欲しいと思った。
いくらオアシスといえ、ここは砂漠のど真ん中。それっぽいものは生えているわけがない。
なんとなく目が行くのは先ほどのサボテンの方だった。
再度歩み寄り、もう一方の切り取られた株と同じく、根の上でスパリと切ってみた。
食べ方はどんなものだっけか、たしかステーキにとか言っていたような。
よく水にさらして苦味を抜いて、熱を加えて塩でも振れば食べられるものかもしれない。
起こした火で、少し肉厚な葉を焙ってみると青臭い匂いがした。美味しそうでもない。
身内も美味しいとは言ってなかったか。
外皮を削ぎ落とし、一口かじった。やっぱり苦い。
食感はサクリとクニャリの中間、あとはとことんに苦い。
あまり噛まずに飲み込んでみたものの、突き上げる吐き気にあっさり嘔吐してしまった。
ひとしきり吐き終えて思ったのは、鍋に突っ込まなくて良かったという事だ。
ついでにヤツが居る時でなくて良かった。見られてたら絶対に馬鹿にされる。一度で懲りておけば良かったか。
吐いたものは離れた所に埋め、また口をすすぎ小刀も洗った。
気を取り直し、調理を再開することにする。うん、美味しいのを作ってやりましょうぞ。
マグロを捌く内に、変に興が乗ってきた。さて私はこんなにも解体好きだったか。
知らずに鼻歌なんぞを歌っていた。むしろ歌ってやろうじゃないか。
今日は持ってきてないが、カリカリピーを愛用しつつある者の肺活量は並じゃない。
ぶつ切りにした肝と、つみれと化したマグロをだし汁に投下しながらも。
月下に響けと喉を震わせ、私は歌う。何か呼び寄せるかも知れないなんて、どうでも良かった。
風向きが変わり、運ばれてきた香りで無駄に切なくなる元凶が近付いて来るのがわかった。
足音が重い。何か抱えて来たのだろう。
それが何だか判りはしないが、出迎えてやるのも悪くない。
火加減を見て、少し目を離しても大丈夫だろうと判断し、ヤツの元へ向かうべく立ち上がった。
やや浮遊感があり、踊るような足取りでヤツへと歩み寄る。
シタッタタタタ、タタタンタンタ
ブーツの下の不確かな砂面の硬さすらおかしくてたまらない。
青白い月明かりの下、メルヘンな格好でのっしのっし歩くヤツがおかしくてたまらない。
勝手に口角が吊り上がる。吐く息がみんな笑いになるのがわかるが、止められやしない。
このまま飛び付いてやりたい気分だ。卵を運ぶハンターに飛びかかるゲネポス辺りの気持ちが、今ならわかるかもしれない。
ヤツがぎょっとした顔で立ち止まった。草食竜の卵を抱えて来たのか。
私はどんな笑みでヤツを見ているんだろう。何故だか無性に蹴倒してやりたい。
私のクスクス笑いだけが場に満ちる。それすらおかしく、どこか幸せだ。
そんな時、笑い声以外の音が耳に届いた。このギャアギャアいうのは、黄色いトカゲ、麻痺牙ゲネポス共か。
私が呼び寄せたのか、たまたま来たのか、何にせよ出迎えてやるのも悪くない。千客万来楽しいじゃないか。
鍋は向こうで火にかけている。ヤツは卵で手が塞がっている。でも人手と武器は一組在るよな。
「一寸拝借するよ」
ヤツの背負った刀の柄に手をかけると、少し嫌そうな顔をされた気がする。
自分の武器が他人に触れられるのを嫌う人は少なくない。
そうなのだとしたら本性は竜なのに、ヤツも人間くさくなったものだ。
承諾を得ぬまま抜き放ち、構えてトカゲに駆け寄った。
切っ先が砂の上に線を引く。
場所も状況も全然別なのに、いつかのようじゃないか。愉快なものだ。私は大声で笑った。
ご大層な衣装に身を包み、長大な刀に振り回されるようなよろめく足取りで、何をやっているのやら。砂漠に道化をやりに来たのか。
トカゲ共の縦長の瞳が私を捉えた。そうだ、私だけを観なさいな。
嬉しい可笑しい憎らしい。
不意にいろんな感情が立て続けに沸き出した。
それは水を沸騰させた鍋の底から上がる泡のよう。浮かんで消えるが絶え間ない。
何もが可笑しくて仕方ないのに、トカゲに対して抱くのはただ純粋な殺意だった。
私は、自分の顔から自然と笑みが剥げ落ちる瞬間というものを自覚した。
「洗って返した方が良いかい」
トカゲ共を切り伏せた後、小石や枝で卵を地面に固定しようとしている背中に声をかけた。
返り血を浴びずに済ませれば良かった、なんて思いながら、鉄臭い匂いさえも心をくすぐるのを感じる。
「どーでもいい。その辺置いとけ。テメェの鍋はどうしたよ」
勝手に刀を使われたのに、怒ってはいないようだ。
言われて鍋を火に架けっぱなしだと思い出した。煮えすぎてなきゃいいけれど。
有難うという言葉と刀を置いて、火の元へ戻る。
さて鍋の中味はと言うと、良い感じに煮えていた。味が薄めかもしれない。少し塩を振り、もう火から降ろそう。
「ごはんできたよー」
少し離れた位置で、卵の固定を頑張っているヤツに声をかける。
こんな砂地じゃ、適当に地面掘れば転がらなくないかい?
結局ヤツは卵を抱えてのしのしやって来て、自分のあぐらの上に卵を乗せた。
孵そうとしてるみたいに見えて、実に可笑しい。
笑いを噛み殺すのに苦労しながら小さな穴を掘ってやり、ここに置いては如何と言うと素直に従い、なんだか感心したような顔をした。
この元ガノトトス、アホだ。
魚竜のキモと草食竜の卵、前者は既に調理済みであとは食べるだけだ。一方草食竜の卵はまだとってきた丸のまま。
どうしようかと訊いてみたら。
「新鮮なんだぜ、生に決(ry」
こいつ、知ってたけどやっぱりアホだ。
私は吹き出さなかった自分を誉めたい。
呆れはしたものの、獲ってきた者の意見は尊重してやろう。ある意味微笑ましいやつめ。
生卵を飲む自体にはそんなに抵抗もない。
問題はいかにこの卵の形を崩さず殻を破るかだ。中身をこぼしてしまっては意味がない。刀で突くんじゃ少し大げさか。
「ヒビを入れず、殻に穴をうがつ自信はあるかな」
挑むように言ったつもりは無かったのに、ヤツの目に闘志の炎が灯るのが見えた。
「舐めんなよ、カエルもどきが……」
ヤツは帽子をむしり取るように脱ぎ、水辺に歩いて行った。
何をする気だろうと見ていたら、屈みこんで水面に顔を浸けた。
そのまま停止する事暫し。
顔から水を滴らせたまま、こっちに足早に戻ってきた。ギラつく目が光らんばかりで、ギリギリ歯ぎしりが聞こえる。
無言のまま、手を振る仕草で私を退かせて、ヤツは卵の尖り気味の部分に顔を寄せる。
スビシャッ
微妙に聞き覚えのある音の後、ヤツが卵の天辺に指をかけると、そこは元々蓋だったかのように外れた。
滑らかな断面は、何がそうさせたのか。
「綺麗なもんだ。何をしたんだい」
横からその切断面を指でなぞり訊いてみた。
すいと表情を引っ込めたヤツは、濡れた前髪を後ろに撫でつけつつ答える。
「昔、テメェにかすりもしなかったちゃちな水鉄砲だ」
当たらなくて良かった。本当に。今更ながらそら恐ろしいものだ。
スパーンと自分の首が飛ぶ図を想像すると、可笑しいものがあるけれど。
しかしそんな真似までできるのか。人の形をしていても、竜は竜ということなんだろう。
竜は竜の心を持つ。人のそれとは形が違う。
濡れて輝きを増す、ヤツの前髪をぼんやり見ながらそんなことを考えた。
「おい。卵、食わねぇのか」
全くメルホアシリーズの香りというやつは、人を物思いに引きずり込み過ぎだ。
「いや、いただきますってば」
どんな物かと覗き込めば、ごく普通に大きいだけの卵だった。
黄身が変な色をしていたりしないし、ましてや草食竜に成りかけてもない。
「小さなアプケロス入ってたら、どうしようかと思ってた」
つい口に出したらしい。そんなもの入ってたら、笑うしかないな。
「ならソレを食えば良いだけだろうが」
ニヤリとしながらヤツは言う。無論生で、なんだろう。
幼アプケロスは柔らかかったりするのかも知れない。甲羅部分もぷにぷにと。
殻の縁に口を付け、卵を少しずつ傾ける。ズッシリと重いので、持ち上げてあおろうと言う気は起こらない。
白身をすすってみたが、粘度の高いそれは、なかなか口の中に収まってくれなかった。
おたまか何かを持って来るべきだったか。
一旦諦めて口を離し、卵の傾きも直した。
鍋の中味を空けたらどうにかなるかも、などと考えていると、ヤツが卵を持ち上げた。
なんだと目をやれば、ヤツの口が無い耳の辺りまで裂けている。
のこぎりのみたいな歯が並ぶ、冗談のような大口を開けたヤツは、そこへ向かって卵を傾けた。
ぬる、んっ……と透明な糸を引きながら、白身は黄身をくるんでヤツの口の中へ滑り落ちる。
前にドス大食いマグロを頭から丸かじりしてたっけ、などとどうでも良いことを思い出す間に、口は閉じられていた。
「あ」
ころりと転がされた卵の殻。当然空だ。
どういう構造なのか、閉じてしまえば薄い唇がついた普通の口に見える。
ヤツの口の咀嚼するような動きを、またぼんやりと私は見つめた。
「あ」
小さく喉を動かしているのも見える。
……全部食べて良いって、誰が言ったよ。
恨みがましい目をしているだろう、今の私は。まだヤツの咀嚼するような動きなどは続いている。
ふと気付いた。ニタつく目でヤツが私を見ていた事を。
「あんまりじゃないかっ」
まだ口をモグモグさせているヤツの胸ぐらを掴み、睨みつけた。ヤツの目は益々面白そうな光を宿す。
殺す殺す言わないと思ったら、こんな方向で嫌がらせなんて。
ガンつけてみるが、相手がニタついている分、威嚇の意味はほとんど成さないだろう。
また気付いた。私の左頬に添えられてるメルホアラーマに包まれたこの手はなんのつもりだ。
目尻のホクロやら、唇の端やらの形をなぞるような動きをしている。
その手を逃れようと顔をそむけてやった。
視界の端っこでヤツの口の隅が持ち上がるのが判る。
ちょっと待て。人間男性2年生のあの竜の嫌がらせにしては、手段が妙だ。
考えに入る間もなく顎を掴まれた。次いで顔の線を辿るようだった手がそのまま滑り、額を押さえて顔を上向かされる。
ニヤつく目付きの悪い顔がかつてない近さにある。いっそ気絶したいものだ。
今度は睨みをそらさないでいてやろうとすると、焦点の合わない位置までニヤついた目が近付いた。
唇への冷たい感触に、うっかり顎が開く。次いで差し込まれる冷たいものは、ぬめりと濃厚な味にまみれていた。
もう泣けばいいのか、この状況。
久しぶりのべろちゅうは人間2年目の元ガノトトスに、溶き玉子流し込まれるものでした。
笑えばいいのか。口がコレでなきゃ笑えそうなのに。
そう、現在進行形で流し込まれている生卵。これを飲めと?
……どうしてくれよう、この魚竜。
「結構いけるな、これ」
生卵を流し込み終えたヤツは、口の周りを拭いながら言いやがった。
絶対卵の味のことだ。
「ノーコメントとさせていただくよ」
込み上げるいろんなものを抑えつつ、辛うじてそれだけ言った。味はともかく調理方法(?)が論外だ。
ヤツは、卵を独り占めされるかと怒る私の姿が見たかっただけだろう。
始めから分けてくれるつもりはあったのだ。むしろ、卵に苦戦していた私への手助けのつもりかもしれない。
ただその手段がヒトにとっては、かなりヤラシイということを知らないだけで。
怪訝そうな顔をするヤツが憎たらしい。
ちょっと舞い上がった自分が可笑しくて堪らない。
くそう。
普段殺す殺す言ってくるヤツにしては、今夜は異様な程に良心的なのだ。
多少の茶目っ気には目瞑るのが良いんだろう。
許しがたいがな。
「そう、ごはんだったね」
まだ冷めていないその鍋物に目をやりつつ、これは普通に食べようと心に誓う。
荷から小さな椀を二つ取り出し、片方をヤツに渡した。肝も二人で山分けという約束だから、それは守るとも。
小さな木製の匙も渡し、私は菜箸でヤツの椀に出汁の滴るつみれだの肝だのを突っ込んでやる。
匙を握り持つ辺り、幼児のようだ。
ヤツの家のアイルーには、ヤツに食事の仕方くらい仕込んで欲しいものだと思う。
まだフォークとナイフを使うのは苦手らしいし、手掴み犬食い当たり前っていうのもどうなのか。
自分の分も椀に盛り、ふと目を上げると、ヤツはまだ食事に口をつけずに待っていた。
意外だ。
妙にキラキラした目を向けられるのも落ち着かない。
「なにかな」
この間の意味がわからず、問うてみた。
「ええと、なんだっけか」
椀と匙を置き、ヤツの目が泳ぐ。が、直ぐに嬉しげにきらめいた。
「イタダキマス」
そういうや否や、椀と匙をひっつかみ、ヤツは煮物をかっ込みだした。
前言撤回。誰だか知らないけどいい教育してるじゃないか。可愛いな、くそ。
私は知らずににやけたまま、椀に口をつけた。
ぷりっとモチモチ、なんだか粘るようでいて溶けるような舌触り。
肝の味は淡白かつ癖が少なく、悪くない。味より食感の独特さが珍味の由来か。
「んめー」と鳴きつつ、匙で鍋から具を掬い出しているヤツを微笑ましいと思う。
行儀は悪いが、ヒトも二歳にならないうちじゃ食器の扱いもままならないものだ。
酷く悲しいことを思い出し、幸福感が吹っ飛んだ。
鼻の奥に込み上げる涙の味を堪えて、椀の中身をあおる。
過ぎたこと。世の中に珍しいことでない。何かが生き残るためにしたこと。
そこへ弱いものにとっての悲劇が生まれるのは、きっと仕方のないことだ。
新緑のような鮮やかな目を持つ愛しい子はもういない。
死に目にあえず、その死体すら小さな手しか残らなかった。
指差す事を覚え、匙を使って食事ができて、何かに掴まり自身を立ち上がらせる力をつけたあの手。
最後にあの手に握られたのは、熱にうかされあの子が苦しんでいた時だった。
あの手を放さずにいたら、私はあの子と同じ胃に収まって死ねたのだろうか。
なんだろう、メルホアの香りの効果はこんなにも強烈だったか?
嗚咽を上げるのだけはどうにか押さえつけ、食器を置いて水辺へ早足で向かう。
羽根付き帽子を放り投げ、屈み水面に顔を叩き付けた。
今夜は変だ。自分の中で整理をつけたはずの感情や記憶がぶり返してくる。
水中で目を開いたまま、私は考えた。
そういえば今のこの格好、さっきのヤツにそっくりかもしれない。
水を吸って吹いてみようか?
自分の想像に私は笑いを吹き出した。
うん、大丈夫。もう平気でいられる。
先程のヤツよろしく、帽子を振り振り濡れた髪を後ろに撫で付けながら戻った私は、鍋をあおるヤツの姿を見た。
どんだけ食うんだよ、お前は。腹立たしくも可笑しい。
また溢れてきた幸福感に、ついにやけてしまう。
「急にあにやってんだ?喉でもつめたかと思ったぜ」
鍋を降ろして満足げな顔をしつつ言うのはいいが、私の鍋に口つけやがったな。
「まあそんなところさ。気にしてくれたのかい」
からかう色を声に含めて返してやった。
ヤツは少し眉をしかめた。そして神妙な声を出す。
「さすがにメシを喉につめたのまで俺のせいにされちゃ、かなわねぇなとか、そーいうこと考えてた」
そっちかい。
「あ、そうそう。もう一つ」
竜に人を気遣うことを求めちゃいない。実際、気にして寄ってこられたら立ち直れたか怪しいものだ。
「なんだい」
「ゴチソウサマデシタ」
身内よ、竜がイイコに育ちつつありますね。
「もう少しばっかり食い足りねぇなあ……」
ヤツのぼやきは流石に耳を疑わせた。
多分来る前にアイルーの飯食って、来たばかりでカエル一匹食って、盾蟹ほぼ丸一杯食って、草食竜の卵一個の大半を飲み、大食いマグロと砂竜の肝の煮物をかっ喰らっといて。
まだ食えるのか。どこに入ってるんだ。エネルギー効率悪いんじゃないのか、この体。
今度からよく噛んで食べるように勧めてみようか。いや、ゆっくり食べろという指導は、既に入っているのか。
呆れるのも忘れて、私はまた笑う。
そういえばカエルを獲ってきていた。大きいものでもないけれど、まあ腹の足しにはなるだろう。
宙を見つめ、ヒレをはためかせているヤツに袋から引っ張り出したカエル片手に歩み寄る。
「こんなモノがあるのだけれど」
ぷらんと片足で吊られたカエルの姿を捉えたヤツの目は、薄暗い中ギラリと輝いた。
伸びる手から、カエルを遠ざける。タダではやらん。知りたいことがあるんだ。
少し不機嫌な色を出したヤツの顔に、ニヤリという笑みを向けてやる。
「カエルって、美味しいのかな」
さすがに自分でコレにかぶり付く気は起きないが。
「当然だ。でなかったら、コレで俺らは釣られねぇぜ」
なるほど。
クレクレと伸ばされるヤツの手にカエルを引き渡してやった。
「いや、もしかするとアイルーに対するマタタビみたいなものかなと」
ヤツが不思議そうな顔でこちらを向く。既に食い付いていたらしく、口からカエルの脚がはみ出ていた。
「アイルーはマタタビを食べるわけじゃない。香りでうっとりするものなんだ」
ヤツはカエルをゴリメキチャムチャムと食べながら、話を聞いているらしい。
「うっとりっていっても、それは何しか性的興奮からくるものだとかで、子アイルーはマタタビに興味ないそうだね」
「ありゃ、そんなんじゃねえな」
口の周りをぐるっと舐めまわし、ヤツが答えた。
手にはカエルの後ろ脚。何を思ったのかそれを私に突き付けてきた。
「食うか?うまいぞ」
勿論生で、か。
ジーッとヤツが見詰める中、受け取ってしまったそれを観る。
食い千切られたカエルの後ろ脚、当然生だ。時折ピクッと動く。
「ヒトには炙った方が旨いかもな」
いろいろそれ以前の問題な気もする。
恐る恐る、食い千切られた部分からそれを口に含む。
またピクッと震えた。少し舐めてみると、ヒンヤリと柔らかな感触が伝わってきた。
カエルだものな。
思い切って噛み千切ると、案外臭みのない肉の甘さが口の中に広がる。
残る脚部を片手に、もう片手は口元に。よく噛んで飲み込む段で気が付いた。
「鳥肉に似ているね。割といけるかも」
だろ?と眉を上げるヤツへ、残るカエル脚を返してやった。
それは嬉しげにカエルの脚を食むヤツに向かって、前々からの疑問をぶつけてみる。
「ところで、私は何故にカエルもどきと呼ばれるのだろうか」
ヤツの表情が失せ、ヒレがはためく。これも考え中の顔だろうか。
クキペキプチリ、コリチムチュ……ごくり
「喋らせるなら食い物出すなよ、畜生が」
咀嚼と飲み込みをすませてから喋り始めた。変なところで行儀良いな。
「それは済まない」
ふん、と鼻を鳴らしてからヤツは眉間にしわを寄せた。
「鱗も尻尾も無い、脚は四本。ついでに緑色」
ヤツの指が私の染めた髪を指す。
「それにテメェは歌うからな」
「……カエルの鳴くのって、雄じゃないかい?」
「食うのにそんなの気にしたことねぇよ」
納得いくようないかないような。やっぱりいかない。
私はなおも食い下がる。
「なら、『もどき』って何さ。『カエル』だけじゃ駄目とも思えないな」
ヤツは面倒くさげに目をそらす。
「知るか。思え」
そらした視線な先に回りこんでみると、ガンを飛ばされた。唸ってやがる。
その眼光に真っ正面から応えながら私は言った。
「カエルみたいに美味しそうじゃないからかと思ってた」
食えないやつだと思われてみたいものだ。
一瞬、ヤツが変な顔をした。
人間の悲しげな表情に似ていたが、ヤツがどんなつもりで浮かべたのかはわからない。
「忌忌しいほどに旨そうだよ、テメェは」
ヤツの歯ぎしりも聞こえている。そんなにこの話題は嫌なんだろうか。
「特にその首根っこにかじりついてやるのを何度夢見たことか」
「嫌な夢見ないで貰いたい」
この話題は危険だ。ヤツがうっかりその気になりかねない。
先にヤツが目をそらす。また無表情な顔に、ヒレだけが羽ばたくような動きをしている。
「……初めて見た時のテメェの目がな、アレに似てた」
何かを探すように、ヤツの目線がさ迷った。
「アレはなんだったんだろうな」
探し物は言葉だったらしい。また唸りながらヤツは言葉を接いだ。
「アレは、夜だけ、水の上に張り付いてるもんだ。平べったくて、青いっつうか白いっつうか。触ってみたくても通り抜けちまって消える」
ヤツがガノトトスの時に見たものなのだろう、アレとやらは。私には何のことだか見当もつかないが。
「アレが熱いのか冷たいのかもわからねぇ。ただアレはひどく……」
そこでヤツは黙りこくった。ただ歯ぎしりのみが聞こえる。
そんなとこで切られたら、気にしろと言っているようなものだ。
「今は似てないのかい」
気にはなるが、話題を流してやろう。私とて大人だからな。
ヤツがこちらへ向き直る。その目がえらく剣呑な光を放っているのは、何故だろう。
「似てねぇのがほとんどだな。さっきのトカゲを斬りに行った時なんぞは似てたが」
あの状況で私の目を見てる余裕なんてあったのかよ、こいつ。
「人が、会った時を再現しようって苦労してんのを全部お釈迦にしといてくれて、……なんでトカゲにそんな目すんだっ!」
わめくな。うるさい。
でも難しい言葉が出てる。えらい。
「で。その目がどうか?」
変なところでヘソを曲げられては、話題が進みやしない。
また暫く歯ぎしりの音が響いた後、ヤツは低い声を出した。
「あんな目、カエルにゃねぇんだよ」
言い捨てるように、ヤツは立ち上がって歩き出した。
鍋や食器を洗う私から少し離れた位置で、ヤツが歯を磨いている。私も後でやるか。
身内の教育は大したものだと感心することしきり。
身内に子育て経験があったのだろうかと考え、思い至った先にあったのは私の世話だ。
身内と私は八歳違うから、子育て予習にはなったかもしれない。思えばニ歳くらいから世話になりはじめたんだった。
身内の世話好きなところは、弟妹を持っていたことが由来なのだろうか。
ふと思いついてしまった。身内が保護し、あれこれと世話をするヤツの見た目は、丁度私と同じ年頃。
身内の弟が亡くなった年頃と同じなんだと。
あの人の方が六つも歳上だったのに、今や私の方が上になっていく。
考えたくない。
深い柔和な緑の目が愛しかった。最後に見たのは、悲壮な覚悟が浮かんだそれだった。
考えたくない。
亡くした者だけを思うのは止めたはずだ。無くした物を惜しむのは意味がないと割り切ったはずだ。
水面に再び顔を叩き付ける。煮物の屑が舞っているのが見えたけれど、気にするどころでなかった。
少し頭が冷えた。
顔を上げるとヤツが怪訝な顔をしてこちらの様子を窺っている。
「今度は喉つめたわけじゃねぇよな」
当たり前だ。
「そうではないけれど、多分貴方のせい」
「なんでだよっ!?」
だまらっしゃい、このメルホアの香り漂わせる竜め。
実際にガノトトスが良い匂いのする魚竜なら、香料にしようとかで乱獲されたりするんだろうか。乱獲は無理か。
そんな考えが可笑しく思えて、クスクスと声が漏れる。不機嫌そうな気配が漂ってくるけれど気にしない。
顔から水を滴らせたまま、水辺を少し移動した。洗い物は済んだ。私も歯を磨こう。
今回は投下終了。
長過ぎるから、やっぱりあともう2回に分けるわ。
自分で言ったことを守れないヤツですまん。
乙。
少しずつ登場人物たちのあれこれが明らかになって楽しみ。
次回以降に期待wktk
>>324 でもそれには没落して落ちる所まで落ちなきゃ無理そう。
しかも見た所挫折には無茶苦茶弱そうだから
自暴自棄になってそのままアウトローになる可能性のが大きいのでは?
>>330 乙。
確かに新鮮な蟹の身は甘い。
だが死ぬと劣化も早いので蕁麻疹とか腹痛の
元にもなりかねんから注意しようw
あと甲羅酒は何人分だろ?・・・にしても確かによく食うw
乙
読んでたらモンスター食いたくなってきたじゃないかw
クック先生のアキラタン大人気だなw アキラタンの活躍と没落?の場面を
見るためにもクック先生の授業の続きを希望したいのですが!
エロパロ板であってもエロがなくても良いので、ジジィみたいなキャラが
好き放題やる話もオレは好きだ。もっとガンガンやってくれ。
どことなくツンデレ臭のする♂ガノトトスも萌え系に思えるが、語り部である
緑髪のカエルモドキさんこと「私」も気になる……。
皆GJ。続編を(完結した話もあるが)強く希望する! wktkしながら
待ってるぜ!
ハミ痛の攻略本出てスレもさらに加速してきました
珍味さんイイよ、珍味さん。
先が気になる…
珍味さんになんだか萌へた
ガノトトスの方の話、最初らへんをちゃんと読んでなかったから
主人公男だと思ってたw
感想ありがd
アキラがめちゃくちゃ嫌われててワロタww
最初に書いた厨キャラのルーシェだかルーシュだかとは違って気に入ってたのにw
性格がぶっ飛んでるから好きよ。書きやすいし。男の中ではゲイルと同じくらい書きやすい。
マルコとかキオみたいなのは書きにくいのよね。下手に常識的な性格だと。
死に際は・・・どうだろ。畳の上では死ねないやつだ。
死亡フラグ立ってるようだけど、自分の命の価値さえも理解してないやつだからなあ
たぶん、致命傷とか受けても平然として死にます。改心とかもない。
そもそも悪人じゃないっぽいような気さえする。
レティシアは最後までメス奴隷。カワイソス。でも彼女はドMだからあれで幸せなのでした。
なんか長文になった ごめん
次はクソ生意気な女ハンターがアイルーの群れに捕まってブルファンゴに犯されるとか
そういうハートフルなストーリーを書いて住人の心を和ませたいです。
何処がハートフルなんだwwwwww
356 :
前スレ778:2007/07/17(火) 10:34:46 ID:Pq1WgqYb
新ジャンル『ハートフル・アクションバイオイレンス・モンスターファック・コメディ』
クック先生の人先生(ややこしい)の次回作に御期待下さい!
話は変わるが
>>273 「うれしいこといってくれるじゃないの。とことん喜ばせてやるからな」
……と言いたいところだが、まだ少し時間がほしい。次回投稿分の最後がどうにも
気に入らず、打っては消してを繰り返している状態。今しばらくお待ち下さい。
SSの掛け持ちは苦しいかも……ランゴネタは少し様子見して後回しにしよう……。
>>345 なんだろう。個人的にすごく好きな文章構成なんだ。
淡々としているようで面白くて、テンポがいいっつーのかな。
続きに激しく期待している。
>>354 幸せだって言うならそれ相応の描写をしてくれよ…
プライド砕かれてマジ泣きしてるのに
「あれで幸せなのでした」って言われても
イマイチ納得出来ねぇよ…
>>354 >致命傷とか受けても平然として死にます。改心とかもない
確かに強敵相手だとこれだけ強い奴なら悪くないと納得して逝きそうな感じもする。
でも結構単純そうだからむしろ雑魚モンスターや盗賊相手に油断して
簡単に罠に嵌められて何が起こったのかも分からない内にあっさり逝きそう。
土日祝日は色々やる事あるんで平日にしか2ch見ない俺だが
一気に4つも読めて俺様大満足。
簡単に応援の言葉だけ…
>>真性ドラゴンファッカーの人
100%中の100%ドラゴンファックをマジで文章にするとは恐れ入ります。
鬼畜なヒトもいいものですね
>>金竜の人
子レイアテラカワユス。母親が擬人化してくれる後編?期待してます。
>>クック先生の人
レティシアの日常が凄く気になったなんてそn
貴族なのにドMって凄いツボです
>>sage忘れの人
爺爆笑。なんだあの爺の可愛さ。
これから一転シリアスらしいですが、更に擬人娘追加して取り合いシリアスとかじゃないですよn(ry
>>奇食の人
貴方の文体が最高に大好きです。
今後二人がどう動くか期待。
361 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 14:23:49 ID:6psA6a5+
前スレで71と名乗ってSSを書いていた者です。
いろいろあって投下するのが遅れてしまいました。
続きを投下します。
話を知らない人は前スレでも見てください
362 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 14:24:42 ID:6psA6a5+
ラルクをともに集会場を訪れたイレーネは真っ先に危険な依頼はないかと、受付に訊く。
「リオレウスとリオレイアの狩猟があります」
毎回妙なリクエストをしてくるイレーネを奇妙に思いながら受付のスタッフは現在まわってきている依頼の中で最も危険であろうものをイレーネとラルクに提示した。
いつも通り二人は契約金を支払い、依頼を受ける。
ラルク達が契約金を支払った直後、近くにいた年端もいかない一人の黒髪の幼女がラルク達に近づく。
「い、依頼を受けてくれるの?」
幼女はどこか震えた声で訊ねてきた。
「君が依頼人?」
ラルクの質問に対し暗い顔をした幼女は「うん」と答えた。
「あのね…、私、4日前にパパやママと一緒に森と丘にピクニックに行ったの。飛竜が絶対来ない所を移動していたら…、う…パパとママ、空から来たリオレウスとリオレイアにね…食べられ…ちゃったの…。お願いっ…パパとママの仇を討って!」
「任せろ。お前は集会場か何処かで良い報せを気長に待てばいい」
イレーネは幼女に微笑んで頭を撫でながら幼女を安心させる為の言葉をかける。
泣いている依頼人自身から詳しい事情等を聞いたあと二人は森と丘へ向かう。
その光景を見ている者達がいた。
前にイレーネに殴り飛ばされたダルガともう一人ヴォルレドの隣にいたゲイムルである。
「あの女!あの時の!」
「よせ、絡んでも前の時みたく、また返り討ちにあうぜ」
イレーネに喧嘩を売りに行こうとするダルガをゲイムルは制す。
「ち、だがいずれあの時俺を殴り飛ばしたことを後悔させてやる」
ダルガはそう憎々しげに吐き捨てた…。
「今回は今までの依頼とは比べ物にならない程、困難なものになりそうだな」
森と丘に着いた直後にイレーネはそう呟く。
「ああ、とりあえずリオレウスとリオレイアを探そう」
二人はとりあえずリオレウスとリオレイアを探すことにした。
火竜は雄と雌それぞれが別の飛竜として扱われており、赤い体をしている雄の火竜リオレウスは空中からの強襲を、緑色の体をしている雌の火竜リオレイアは地上戦を得意としている。
363 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 14:25:24 ID:6psA6a5+
二人がリオレウスとリオレイアを探し始めて20分も経たない内に雌火竜リオレイアと遭遇する。
リオレイアは咆哮をあげ、二人のいる方向に突っ込む。
リオレイアの突進をよけたあと、ラルクとイレーネはそれぞれ武器を構え、リオレイアは二人のいる方向を向いて左右中央にそれぞれにブレスを放つ。
それをかわしながら接近してきたラルク達をリオレイアは長くて棘のある尻尾で薙ぎ払おうとするが二人はそれを咄嗟に防ぎ、ラルクはハイフロストエッジでリオレイアの足を斬りつけ、イレーネもブレイズブレイド改でリオレイアの左の方の翼爪にダメージを与える。
リオレイアは翼で風圧を起こして後方に跳んで距離を取り、再び突っ込む。
風圧で怯んでいたが、イレーネは咄嗟にそれを回避し、ラルクもなんとか盾で受け流す。
二人いるの方向に向き直ったリオレイアにイレーネはブレイズブレイド改でついさっきダメージを与えた左の翼爪を斬り付け、翼爪を切り落とす。
ラルクは翼爪を切り落とされ怯んだリオレイアの腹の下に潜り込み、ハイフロストエッジで腹を切り上げる。
切り上げられた腹から少量の血が垂れる。
腹を斬られたリオレイアは咆哮をあげて怒り、2歩後退して姿勢を低くする。
ラルクは急いで回避行動をとる。
次の瞬間、リオレイアは大きくバク転して着地する。
その際、尻尾が地面を大きく抉り取る。
あれを人間がまともに食らえばどんな防具を着ていても重傷は免れない。
ラルクはハイフロストエッジでリオレイアの足を再び斬り付け、リオレイアを転倒させた。
「今だ!イレーネ!」
「人間ごときが私に命令するな!」
ラルクはハイフロストエッジでリオレイアの顎に攻撃を加え、イレーネもラルクの指示に文句を言いながらブレイズブレイド改で転倒しているリオレイアの尻尾を切り落とす。
リオレイアはなんとか立ち上がり、さっきの技の構えをとる。
ラルクとイレーネは素早くそれを回避し、リオレイアが着地した瞬間を狙って二人は再び攻撃を加えようとするがリオレイアは着地した瞬間、構えずにもう一回バク転する。
「ぐッ」
ラルクとイレーネは咄嗟に避けるが完全には対応しきれず、リオレイアが着地した際の衝撃で吹き飛ばされてしまう。
リオレイアはその隙を逃さずイレーネの方にブレスを放つがイレーネは素早く起き上がり、咄嗟にそれを防ぐ。
少しでも動作が遅れていたら間違いなく死んでいただろう。
364 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 14:27:33 ID:6psA6a5+
その直後にラルクも立ち上がる。
リオレイアはラルクの方に突っ込んできた。
ラルクはそれを回避し、イレーネと共にリオレイアの両足にそれぞれ攻撃を加えてリオレイアを再び転倒させ、
立ち上がろうとするリオレイアにラルクはハイフロストエッジでリオレイアの頭を数回切りつけ、頭部の甲殻を破壊してからその頭部にハイフロストエッジを突き立て……。
「まずは1頭だな」
「ああ、だが、これと同じあるいはそれ以上の強さを持つ奴を少なくともあと2頭は相手しなければならないと思うといささか面倒だ」
「受けたんだから、文句をいうな」
そんな会話を交わしながら、二人はリオレイアから鱗や甲殻などを剥ぎ取っていく。
二人は剥ぎ取りを済ませ、リオレウスを探していると突如どこからともなく大きな液体の塊がとんできた。
「くっ」
二人はそれを回避し、辺りを見回すが何もいない。
だが、二人は警戒を解かず、武器をいつでも構えられるようにしながら相手の出方を見る。
「リオレウスよりこっちが先になったか」
「そのようだな。だが返って都合がいいかもしれん」
二人は確信していた。リオレウスとリオレイアより強力な何かがいることを。
リオレウスとリオレイアだけに限らず、縄張りを持って暮らしている全生命体が縄張りから遠く離れた所でしかも絶対に現れないであろう場所で見つかった理由は一つしかない。
リオレウスとリオレイアより強い何かがリオレウスとリオレイアを本来の縄張りから追い出したのだ。
ラルクはプロのハンターとしての経験から、イレーネは覇竜アカムトルムだった頃にそれを頻繁に行っていた事から、依頼人の証言を聞いた時点でそう確信していた。
「こいつをどうにかしないとまた同じような事が起きるかもしれない」
ラルクがそう言った直後、あの液体の塊がとんできた。
二人はそれをかわし、液体の塊がとんできた方向にラルクはペイントボールを投げつける。
ペイントボールが何かに命中した次の瞬間、徐々にステルスが解けてカメレオンのような紫色の体をした1体の龍が姿を現す。
365 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 14:28:37 ID:6psA6a5+
「油断するなよ」
「わかっている」
ラルクとイレーネはそれぞれ武器を構え、紫色の龍と対峙する。
紫色の龍はラルクとイレーネに急接近し、前足で薙ぎ払おうとする。
二人はそれを回避し、二手に分かれて別方向から紫色の龍に斬撃を食らわせようとするが紫色の龍は後方に低空飛行してそれを回避し、姿を隠す。
その際に毒が撒かれてその毒を受けた芝などは一瞬にして全て腐り、紫色の龍の体に付いていたペイントが消える。
毒を吸ってしまった二人は解毒薬を飲むが一本では足りず、もう一本飲む。
解毒薬を2本飲んで解毒し終えたのもつかの間、再び液体の塊が二人の方向にとんでくる。
それをかわした直後の二人の目の前に紫色の龍が突如現れ、前足でイレーネを薙ぎ払い、鞭のような舌でラルクを攻撃する。
「がはっ!」
「ぐあ!」
紫色の龍の攻撃に二人はそれぞれ吹っ飛ばされ、二人が立ち上がる前に紫色の龍は再び姿を隠す。
「こいつ、予想以上の化物だ」
「そんな事、言われなくても理解できるッ」
そう短い会話を交わしながら、ラルクとイレーネはなんとか立ち上がるがその直後を狙って紫色の龍がステルスを解きながら強襲する。
二人はそれを咄嗟に防ぎ、反撃するが紫色の龍は後方にジャンプしてそれをかわす。
ラルクとイレーネは追撃して斬りかかるが紫色の龍は尻尾でとてつもない風圧を起こし、風圧で怯んだ二人に霧状のブレスを吐く。
それをまともに受けてしまったラルクとイレーネは全身に物凄い疲労を感じ、地面に倒れる。
二人は立ち上がろうとするが身体に全く力が入らない。
イレーネは今の自分の身体を忌々しく思った。
本来の姿なら少してこずる程度であの龍を楽に倒せただろう。
今の自分の無力さを実感しながらイレーネは気を失った…。
紫色の龍が止めを刺そうと倒れているラルク達の方に歩み寄ると突如として二人のハンターが倒れているラルク達と紫色の龍の間に割って入り、一人が狩猟笛ゴルトリコーダーで紫色の龍の頭を目掛けて攻撃する。
本来なら紫色の龍はその攻撃を容易にかわせただろう。
しかし勝利を確信し、油断しきっていた紫色の龍は不意を突かれてしまい頭部に強い衝撃を受けてめまいに襲われ、頭の角を壊された。
紫色の龍がめまいで動けないうちに二人のハンターは壊れた紫色の龍の角を回収し、ラルクとイレーネを背負ってベースキャンプまで逃げる。
366 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 14:29:41 ID:6psA6a5+
それぞれラルクとイレーネを背負い二人のハンターは何とか紫色の龍から逃げ切り、ベースキャンプまでたどり着き、二人をベースキャンプのベッドに寝かせた。
しばらくしてイレーネは目を覚ましベッドから起き上がる。
「よう」
イレーネが声の方を向くとダルガ同様にあの時の火山で自分と交戦した女性のハンターともう一人ガンランスを装備した男性のハンターがいた。
声をかけたのは男性の方だ。
「ここはベースキャンプだな。助けてくれて礼をいう。それとひとつ聞きたいのだが」
「何でしょうか」
「カメレオンのような紫の龍と遭遇しなかったか」
イレーネが二人にそう訊くと、
「はい。というよりもあなた方がその龍に殺されかけたところを助けたというのが正しいです」
女性のハンターがそう答える。
ちょうどその時、ラルクが目を覚ます。
「起きたみたいですね」
「ガーネットか。お前達が俺たちを助けたのか?」
「ここにいる俺らじゃなかったら、誰がテメーらを助けたんだよ」
男性のツッコミのような答えにラルクは「すまんすまん」と軽く笑う。
「おっと、そこの美人には自己紹介がまだだったな。俺はグドレ・ギルテインだ」
「わたくしはキエラ・ガーネットといいます。」
キエラ達はイレーネに自己紹介し、イレーネも二人に自己紹介した。
イレーネが紫色の龍について話したあと、グドレが「今この場にいる四人であの龍に挑んだら勝てると思うか?」という問いにラルクは無理だろうと答えた。
「戦えば勝てるだろうがあの龍は姿を完全に隠せることから傷を負ったら傷が癒えるまで身を隠すタイプだ。それにバサルモスとは違い殺気や気配を消すのも得意みたいだしな。本来受けている依頼を達成させたら、紫の龍の事をギルドと古龍観測局や依頼人に報告するつもりだ」
「本来受けている依頼はなんですか?」
「リオレウスとリオレイアの狩猟だ。リオレイアは既に狩猟済みだ」
キエラの質問にイレーネが答える。
「なら、あなた方が今受けている依頼はもう終わりですね」
キエラの言葉に「どういう事だ?」とラルクが尋ねると、
367 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 14:30:50 ID:6psA6a5+
「あなた方があの龍に殺されようとしているあの場に居合わせる前にリオレウスの死骸を見つけました。おそらくはあの龍にやられたのでしょう」
「それは本当か!?」
「嘘言ってどうすんだよ。テメーを貶めて喜ぶのはヴォルレドくらいのもんだろ」
ラルクの確認にグドレがそう答える。
ラルクとイレーネはキエラから紫色の龍がいた証拠品としてその壊れた角を受け取り、集会場に戻ることにした。
集会場に戻ってきたラルクとイレーネは真っ先に依頼人である幼女に森と丘での事の一部始終とリオレウスとリオレイアが紫色の龍に自らの本来の縄張りを追い出されたであろう事を報告する。
「つまり…」
「つまり、元を辿ればそいつがお前の両親を殺した元凶ということだ」
最後にイレーネが結論を言う。
「じゃあ…依頼内容を変えなきゃいけないの?」
「一応、そういう事になるな」
「えっと…リオレウスとリオレイアは…討伐したんだよね。…報酬とかは…?」
幼女はおどおどした様子で訊ねるがラルクは「失敗したようなものだからいらない」と答えてイレーネと共に古龍観測局に紫色の龍の事を報告し、証拠品であるその壊れた角を提出したあとで幼女が依頼内容を変更するのを見届てから集会場を出て行った。
368 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 14:40:22 ID:6psA6a5+
紫色の龍はなんだかわかると思います。
次はいつになるかわかりません。
気長に待っていてください。
補足
自分が書いているSSの世界ではっきりと確認されている古龍は通常のラオシャンロンのみで、
ミラボレアスは伝承でのみ知られており、他の古龍はほとんど確認されていません。
>>368 良く分からない正体不明の生き物ってのがが古龍の枠決めだっだよね、全然オーケーですよ
そして続きうp乙ガレオス
最近話の中のハンターの武器が設定無視しすぎな気がする
ちょっと強い程度のハンターが普通にミラ武器持ってたりゴルト持ってたり。
逆にハンターは強いのに武器が弱かったり
レベルに合った武器って考えるの難しそうな気もする。
特に自分の使用武器でないやつとか。
お話の中だけでも使ってみたい武器とか、あんじゃね?
このスレッドで確認した武器一覧
・フロストエッジ
・シャイニングフィンガー
・ドラゴンキラー
・蒼鬼
・宿神
・スティールランス
・ダオラ=デグニダル
・オンスロート
・ミラバスター
・ヴォルカニック=ロック
・食いしん坊セット
・ラージャンデグ
・アイアンストライク改
・バストンメイジ
・バスターソード
・超滅一門
・鬼神斬破刀
・黒鍋【真好吃】
・スイカバー
・大骨塊?
・クィーンレイピア
・アサシンカリンガ
・ゲイボルグ
・黒刀【参ノ型】
・超乙一門
・雷撃弾装填可能なボウガン
・ブレイズブレイド改
・ハイフロストエッジ
・ゴルトリコーダー
人気なのは片手剣大剣狩猟笛辺りか
前の方だと双剣が多かったな
別に多くもないような
>>371 でもそれで世界観ぶっ壊すのはどうかと
wikiでも見たらそれくらいわかるだろうし
最強クラスの武器持って古龍とバトルはゲームじゃあ普通だが、物語にするんだったらゲーム基準はなぁ
勇者様じゃなくてハンターなんだから
やっぱり超強武器や伝説武器多いなぁ
スイカバーとか蒼鬼とかミラバスとか
鉱石さえあれば作れるオンスロートとかはまだ良いにしても、
伝説の黒龍討伐が必要不可欠なミラ武器や
金火竜素材が必要なゴルトとか、ちょっと無理がありすぎる気がする
なるほど、物語には説得力も必要ってことか
ノ 実は我もそのことを感じていました。
どちらかというよ武器より頭脳や道具、(ハントの)スキルなんかを
優先したほうがリアルのようなきがします。
流れにビクつきつつも、我投下へ馳せ参ず。
※諸注意
・湿っぽい話が入る。残念ながらそこは濡れ場という意味でない。
・強引&むず痒い展開
・馬鹿エロ。人♀×擬人化♂。ただし本番はまだ
・長い
以上を許すって方はご覧あれ。ダメならスルー頼みます。
「さっきから気になってたんだが、ソレなんだ?汚れじゃねぇよな」
ヤツが顎をしゃくった先にあるのは、グラブを外した私の右手。
「これかな」
甲から腕にかけての位置にある刺青を指して訊いた。
翼のある魚が三日月型に跳ねる図柄だ。
ヤツが頷くのを見て、少しそこを撫でてみた。
「これはだね、刺青ってものだよ。消えないように、皮膚の下に塗料を入れて模様を描くんだ」
ヤツのヒレがはためいている。多分沢山の疑問が脳裏を飛び交っているのだろう。
「装飾目的や、マジナイのため、あるいは罪人の印なんかに使われるらしいね」
「テメェはどれだよ」
ヤツめ、その目が言ってるぞ。絶対最後のだろって。
「私の故郷では、結婚する者同士で同じ刺青を左右逆の位置に入れる習慣があったんだ」
私の右手、あの人の左手。お互いよく口付けあったものだなんて思い出す。
「結婚……」
ヤツの目がまた泳ぐ。この言葉は知っていたろうか。ハンター生活ではあんまり縁がないものな。
「番(つがい)になるって事だよ。基本的に、一生一緒に暮らす約束だ」
いつか死に別れるにしても、そうありたかったものだ。
「ヒトにはそんなもんがあるのか」
ガノトトスはシーズン毎に相手が違いそうだものな。
何故だかキリキリと歯ぎしりしつつ、ヤツが思わぬ食付きをみせた。
「で、テメェの番ってのはどうしたよ?子どもとか作ってねぇのか」
現状を見て分かって欲しいものだと自分勝手な思いが湧く。人間ニ年目のガノトトスには無理か。
「それともナニか、テメェの番って野郎はまさか……」
ヤツは目を細めつつ、私達の保護者の名を出した。
なるほど、いつも一緒にいるって言えばそうかもしれない。
「当たらずとも遠からずってやつだな。その弟だった」
弟、同じ親から生まれた年下の男のことだ。身内は私の義兄にあたる。
ヤツはキーリキーリと歯ぎしりを続けたまま、また「で?」と言った。
「子どもは二人出来た。上の子は娘で、目が夫似でとても綺麗な緑色」
翠ガノトトスの鱗みたいだよと言ってみたのに、ヤツからの返事は歯ぎしりのみだ。
「もうすぐ二歳になるんだけど、『ゴハン食べる』とか喋るようになってきてさ。もうすごく可愛いの」
なんて虚しいんだろう。
「食器の使い方なんか、まだ貴方と良い勝負だな。よくこぼすし、焦れると手掴みしてしまったり」
ヤツの歯ぎしりが止んでいる。変な目で見ないで欲しいものだ。
「夏の夜に熱を出してね。私が山に薬草採りに行ってる間に、何かに食べられた」
誰も居なくなった血生臭い村に、残っていたあの子は小さな手だけ。千切れた手の主が実は生きてたなんて、お話の中だけだ。
「夫……番の男の方のことね。夫はその時、町に行ってたんだ」
故郷はポッケ村に似た山奥の寒い村だったが、あれより更にひなびていた。
田舎の村には商店というものがなく、日用品の買い出しなども大変だ。
「村の人は皆食べられちゃって、私は一人きり。だから私は夫の帰りを待った」
他に出来ることなんて、何も無かった。精々、村人だった食べ残しを埋めて回ることくらい。
「夫は帰って来たんだけれど、自分はもうすぐ死んでしまうから一緒にいられないなんて言うんだ」
いっそ死にたい気持ちだったのは、私の方かもしれない。
誰だよ、シャイニングフィンガーなんて書いたのwww
割り切ったと思った記憶なのに、何でこんなに涙が出るのやら。
まったくメルホアめ。
「フルフルって知ってるだろ、貴方が昼間被ってたやつの材料」
ヤツがヒレだけパタつかせている。
こいつがガノトトスで良かった。
同情なんかされたら、うっかり死にそうな絶望感がある。
「夫は町からの帰りに、あれに遇ってしまったらしい。それで卵を産み付けられちゃったと」
卵が孵れば、産み付けられた体は生きながらに内側から食い荒される。えげつない生態だ。
「夫は自分からフルフルが出てくる前に、自分ごと殺すって決めてたんだ」
夫は一人で去って行った。
「自分は死ぬのに、私には生きろって言うんだ。フルフルを殺すのだって、私には少しでも安全に生きて欲しいから」
せめて死に目に、あいたかったものだ。
「子どもは」
私の嗚咽が漏れるなか、ヤツがポツリと呟く。
「二人、居たんじゃねぇのか。下のはどうした」
私は鼻をすすり、しゃっくりを飲み込んだ。
「暫くして、私達の保護者が来て、私を保護してった。夫に頼まれたらしいね」
既にハンターとして暮らしていた身内は、夫の死をみとってから村に来たそうだ。
最期は嫁より兄かと少し妬いたのは秘密だ。
「私は町に連れていかれて、一つの季節の間くらいかな。ぼんやりしたり泣いたりして過ごしてた」
ヤツは、なかなか出てこない下の子の話題を黙って待っている。これは雰囲気で察しているのだろうか。
「ある日、お腹から血の塊みたいなのが出た。それが二人目の子」
「子に成り損ねたのか」
流産というものだ。出来てた事にすら気付かなかった。
「まあそんな風に、よくある話だよ」
家族を亡くしてハンターになるなんて、別に珍しくもない。悲しいことに変わりはないけれど、割り切ったはずだ。
またヤツが言う。「で?」と。
なんだよ、その食い付きは。話題に困ってるとかじゃないだろうな、この竜め。
「ハンターになったよ。元々猟師だから、山やら薮を歩くのは得意だったし、獣の気配を読むのもできたからね」
身内の勧めなのはヤツと一緒だ。
「ハンターになって物を知る内に、だんだん竜が許せなくなってきた」
村を襲ったのは多分ギアノスだとか、ああいうトカゲの類だろう。
「自分が無くしたものに納得がいってなかったって言うのかな。一時期の私は竜と見れば殺しにかかってた」
ただの八つ当たり。無関係な竜を殺したところで、夫も子どもも故郷も両親もかえってくるわけもない。
「そういう頃に貴方と戦った」
今は納得しているつもりだ。竜とてただ生きて命を繋いでいきたいのだと。
けれどヒトもまた生きたい。だからハンターの仕事があるわけだ。
「私の目に貴方が見たのは、殺意と言うものかもしれない」
私の感情が動く時の目の色は、冬の夜空に燃える白い星だとか、えらく詩的な例えをされたことがあるのを思い出す。
「もう、竜を殺さければ気がすまないなんてこともない。貴方には余計にそう思うよ」
出来れば、ヒトの形をしたものを殺したくはない。
そんな思いからか、今の姿のヤツに殺意の欠片も湧かない。
「アレに似た目を見るのは、もう諦めろってのか」
低い声でヤツが言う。
「つまりはそう」
またギリギリと音がした。不機嫌になられたって困る。
顔を洗って鼻をかみ、グラブを付け直した。落ちてしまっていた羽付き帽子も拾い上げ、砂を払って被り直す。
努めて気を落ち着け、そろそろ荷物をまとめるかなと考えていると、視界の隅っこにヒレのはためきが見えた。
歯ぎしりもなく静かにしてると思ったら、何か考え中なんだろうか。
あれに触ってみたいという欲がちらりと生まれたが、感覚器官なら当然嫌がられるだろう。
ヤツは基本的に、他人に触れられるのが好きでないらしい。
でもさすが元ガノトトス、ヒレは細工物のように綺麗だった。
ヤツがチラチラとこちらの様子を窺っている。なんだろう。
「あのな。やってみてぇことがあるんだが」
何故に声をひそめるんだ。誰に聞かれるわけでなし。だいたい、このタイミングで何をしたいんだか。
「どうも大っぴらにするもんじゃないらしいが、やってみてもいいか?」
確かに二人きりじゃ、大っぴらではないな。
それより、大っぴらがどうとか気にしたり、了解を得ようとしたりするヤツだったのかと意外に思う。
ここで「うん」と言ってガブッと噛まれる可能性もある。釘は刺しておこう。
「血が出そうにないことなら、構わないよ」
「そうか」
いそいそと近寄ってくるメルヘンな格好が妙に可笑しい。さてヤツは、どこでどんなネタを拾って来たのやら。
ヤツが近寄って来て、何をするのかと思えば、力の限りに抱き締められた。
というか、絞められたに近い。
「痛いって痛いって折れる割れる止めれっ!」
言葉が出なけりゃ、そのまま死んだかもという勢いだった。
ヤツはというと、目を丸くしている。こっちがそんな顔したいわ。
元魚竜には、抱擁なんて習慣はそりゃなかろうな。それもそれだが、自分から触れるのは構わないのかい。
「行為自体は嫌ではないんだ。力の入れ方とか見本を示してみるから、動かないように」
ヤツは大人しく言うことに従う様子だ。神妙な面しやがって。
ヤツの首の後ろにやんわりと腕を回し、抱き寄せた。肩に顎をのせて、胸と胸を合わせる。
「したかったのはこういう事でいいのかな」
低い声で肯定の言葉が出された。
「じゃあ痛くない程度に、やってみたまえよ」
寄せた体をひっぺがして言うと、早速抱き寄せられた。どこで憶えてきたんだ、これが大っぴらでないっての。
妙に上機嫌でヤツの首が私の肩に乗る。ヒレが頬に擦り付けられて気付いた。
このヒレ、縁に棘あるじゃないか。そんな危険なモノ擦り付けんな。
しかし感触自体は悪くないので、背中に腕を回して抱き締め返してやる。
くそ。なんか微妙にムラッとした。人恋しい時にこれはまずい。
ヤツはといえば、なんだかきゅぅーる……と変な音を出している。どこから出てる音なんだ、それは。
「いいな、コレ」
鼻先を首筋に擦り付けるのも勘弁してくれ。ヘンな気分になるって。
前にもこんなことがあった。
あれはまだココット村に居て、私がヤツを竜と知らなかった頃だ。
身内と私とヤツで、一対の火竜の討伐に沼地へと向かった時か。
ベースキャンプの近くで雌火竜と交戦した。
私がまともに尾の一撃をくらい、毒と打撃に朦朧としている中、雌火竜の息に炎が混じるのが見えた気がする。
まだ体がいうことを聞かず、これはネコタクの世話になるかと観念した瞬間だった。
人は飛べるらしい。というか、飛ばされた。ヤツの大剣の一撃によってだ。
手段は荒っぽいが助かったことには感謝しつつ、ベースキャンプへと離脱した。
体制を立て直さないまま戦線に復帰しても、足手まといにしかなりえない。
キャンプのベッドにて、毒にうかされうんうん唸っていると、なにかが上から降ってきた。
「ぐえ」
可愛い悲鳴なんぞ上げてる余裕はなかった。降ってきたのは甲冑着き成人男性だ。
退けないと圧死する。
なんでこんなのが降ってくるんだと考えている耳に、ニャーニャー遠ざかる声が聞こえた。ネコタクが荷を降ろしていったのか。
じゃあ、これはいつものヤツか。ヤツだ。
身内がまだ無事なことに安堵しつつ、ヤツを寝台の隅に転がす。
何故か眉の端にピアスを付けていたヤツは、禍々しいほどに凶悪な人相と化していたが、この際それはどうでもいい。
私もヤツも、もう少し休まなければ。
少し意識が飛んでいたらしい。なにか音が聞こえる。ついでにうなじ辺りが変に寒い。
ぼんやりしたまま、音に耳を澄ませた。
「……毒なんぞ入れやがってクソが。俺が食うとき不味くなってたらどうしてくれんだ、あんの馬鹿火竜が」
なんだ、ヤツの独り言か。
「にしても旨そうな首しやがって。あー、クソ、畜生。いっそ噛むか?」
何だか後ろで不穏なこと言ってる。息が荒いのは怪我のせいだけなのか、おい。
「いや噛むのは不味いな。もうちっとばかり舐めといても減るもんじゃねぇだろ」
人が寝てるふりを続けているのを良いことに、本当に舐めてきやがった。
というか、さっきも舐めてたってことだな。
命の危機は逃れたのに、これはこんなところでまさかの貞操の危機ですか。
ヤツの顔が良いからって、それはさすがに如何なものか。
「堪んねぇな……やっぱりやるか。殺すか。そんで食おう」
首にかかる荒い吐息が恐すぎる。何なんだ、この人。ハンター生活を始めてからかつてない危機に、身動きもできず声もなく、ただ助けが来ることを何かに祈った。
それは通じた。
「そろそろ起きれるかー……って、なにやってんだ。おまえ」
素敵なタイミングで身内が戻ってきてくれた。
おかげでヤツは悪態を吐きつつも、私からあっさり離れていった。
正直始めの頃、ヤツは私におかしな惚れ方をしているんだと勘違いしていた。
まさか、ガノトトスが復讐を果たすために人になって追ってくるなんて、夢にも思わなかったから。
これまでの人生で、あんな風な感情のぶつけ方をされたこともなければ、追いかけ回されたこともなかった。
わけの判らないヤツという狂暴な生き物に戸惑い、そのうち興味を引かれ、気付けば少し惚れていた。
我ながら病気か何かのようだ。
初めてあの無駄に美形な顔を見て、ドンびきした。
こいつはきっと元々ナルシストで、女に手酷く振られて変になった人に違いないと想像したものだ。
ガノトトスだと知って絶望した。
竜が人に惚れることなどあり得ない。
というか、常々言われた「食ってやる」は性的な意味じゃない方かよ。
無駄にときめいた私の心をどうしてくれる。
ヤツは竜で、私に対して思うことは美味しそうとか殺してやりたいとか。
人がモスかカンタロスを目の前にした時みたいなものだろうか。
私はといえば、ヤツの狂気的な言動も、たまに見せる幼児みたいな面も、日々賢く成り行くところも好きだ。
ああ、認めてやる。好きだ。
うっかり好きになったものだから、ヤツが何気なく起こすことに興奮を覚えることもある。残念ながら性的な意味でだ。
メルホアシリーズに抱き着かれちゃ、そりゃ物思いに沈む危険性もかなり高いだろうな。油断していた。
ヒトとしての感覚や感触が、ヤツにとっては珍しいだけのこと。その内抱擁にも飽きるはず。
……と思ってるのに、首を舐めるな口つけるな。
「何をされてますかね」
低く圧し殺した声で言ったのに、ヤツは悪びれなく答えた。
「口に肌が触れるのは気持ちいいって聞いてたが、ホントなんだな」
竜にそんなコト吹き込んだの誰だっ!唇で首食むなっ!
「さすがにそういうことは、お受け致しかねます」
いい加減、帽子がずり落ちそうだ。
くそう。こちとら生娘じゃないんだ。好きな男にコンナコトされて平静でいろってのか。
「なんでだよ」
少し不貞腐れた色を声に含ませてヤツは訊く。
気持ちイイからだよ、このアホ竜め。
「貴方が今なさるそれは、性的なことだからね。そういうのは番でするものだ」
不満げに鼻を鳴らしても知らん。
ヤツは鱗と尻尾のないのには勃たん男だ(多分)。ヒトの姿をしていても、番にはなりようがない。
むしろ向こうはこちらを食い物としか見ていない。
なんでこんな生き物に惚れたのやら。
普段ならもう少し、幼児をあしらうように対応できたと思うのだが、どうにも今夜は駄目だ。
つい先程家族との別離を思い出して、大泣きしたところだというのに、何故に今、ヤツにやらしい気分にさせられにゃならんのか。
しかもヤツにその気なんぞこれっぽっちもない。カニミソ賭けても良いくらい確かだ。
冗談じゃない。幸せかもなんて思っている場合でもない。そうだ、冗談ではない。
とりあえず、この体勢をどうにかしなくては。
回した腕を解き、距離を取れるようヤツの胸を押した。
……微動だにしないのはどういう仕様だろうか。仕方ない、無理矢理にでも引き剥がすことにしよう。
片足を上げ、思い切りヤツの足へと踏み下ろす。
何処にどのようにだか知らないが、老山龍の蒼い甲殻が使われたこのブーツの踏み付けは、そんなにヤワなものではないはずだ。
……そのはずだったのに、うっかりヤツの靴のベルト部分を踏んだらしい。
威力が随分削がれてしまって、ヤツの拘束を逃れる助けにはならなかった。
間近から低い声がする。近すぎて響きが違う気すらした。
「あにすんだテメェ」
ドス利かすな。自業自得だ。
「それはこちらが言いたいものだよ」
無駄な抵抗かもしれないが、ヤツの胸をぐいぐい押しながら答える。
「要求がありゃ、まず言葉にして伝えるってのが人としての筋だろが」
ヤツの顔は見えないが、あからさまに気分を害されたという空気を醸し出している。
竜に人の道の筋を説かれた。うわぁ……私が人として終わりそうだ。
「貴方にその気が無いとしても、性的な行為をされるような間柄ではないのですから、首を舐められるだの口を付けられるだのは、非常に迷惑です。止めてください」
きっぱり言ってやった。しかし押してるのにちっとも動かないな、この野郎。
ヒレがはためく気配のあと、ヤツが感情を込めない声で言った。
「なら、これは続けて良いってことだな」
ヤツが腕の力を少し強めて、すぐ元に戻した。
確かに抱擁については駄目と言わなかったとも。ぐうの音も出ない。
ヤツの腕の中で私は唸る。疲れたから胸を押すのは止めた。いつまでコレを続けてつっ立つ気なんだろう。
正直この状態だって私には毒だ。じりじりと体に熱が満ちるのを自覚する。
ヤツはといえば、顎を私の肩に乗せ何を言うでもなく歯ぎしりもせずに、それは静かにしている。
解放してくれる気配もないのでは、それもあまり良いことではない。
「何を考えているのだね」
現状は打破されなくてはならない。鳴かぬなら、鳴かせてみせようガノトトス。
いい加減、理性の擦り減り具合が不味いのだ。
ん、と気のない声が上がる。耳からでなく、体を伝って音を感じるのがまた私の熱を押し上げる。
「テメェに伝えてやる義理もねぇ」
「人をふん捕まえておいていう台詞かな、それは」
相手は体温が低めらしいのに、触れているところから熱が湧くような気すらしてくる。
「放せとは言わなかったよな」
静かなヤツの声なんて聞きたくもない。いっそいつもみたいにわめけばいいのに。
「なら放せ」
意外にもあっさりと、ヤツ腕は解かれた。その表情は心情の読み取れないものだ。
いろいろ疲れたので、ヤツから少し離れたところで腰を降ろした。
ヤツもその場で膝を立てて座り込む。
「嫌じゃねぇって言ったぜ。さっき」
一瞬何のことだかわからなかった。思い返せば、抱擁については確かに嫌じゃないと言っていたか。
どことなく気まずく思い、羽根付き帽子を被り直した。
飛竜との戦闘でも落ちないのは伊達でないな、これ。さっき落としたけど。
「嫌じゃねぇなら、なんで駄目なんだ」
訊いてくれるなとは思う。服の下の体がいろいろと、えらいえろいことになるからです、とは言えるわけもない。
「ヒトにはいろいろとあるのだよ」
普段のどす黒さは何処に失せたんだ。口癖の殺すは忘れたのか。
いたたまれない気持ちで、ヤツから目をそらした。
ギラつきのない、剣呑さもないくせに、変に刺さるような視線を向けられているのがわかる。
「よくはわからねぇが……」
ヤツにはもういっそ口をきかないで欲しいくらいだ。何かが崩れてしまいそうなのが恐ろしい。
「テメェのその言い方、ズルいんじゃねぇのか」
普段アホのくせに。魚竜のくせに。ヒトみたいな口をきくな。
無視していたら、竜がため息をつきやがった。
「拗ねてんのか」
お前と一緒にすんな。黙れ。
ヤツが焦れたように唸りつつ、頭をガシガシと掻いているのが、見えないけれど見える。
歯ぎしりも聞こえてきた。いつもらしくなって来たじゃないか。
どうせ眉間にきっついシワ寄せてるんだろう。のこぎりみたいな歯を剥き出しにしてるんだろう。
手にとるように分かるとも。
「テメェは俺にどうしろっつーんだっ!クソがぁっ!!」
ほらキレた。
それまで無言で目をそらしていた私は、そこでやっとヤツの方をみた。
私が暫くヤツを見つめ、ヤツも唸り、歯ぎしりしながら前のめりに私を見る。
私は口を開いて、シンプルな要求を突き付けた。
「黙れ。触るな。今直ぐ帰れ」
それを聴いたヤツの顔は酷いものだった。よろめくように、後ろに手をつく。
それは人だと泣きそうな顔というものだが、ヤツにとっては何だろう。同じなのだろうか。
なんだよ。状況としては調子に乗ってエロいことして怒られました、だろうが。
何で私の方までこんなに胸が突かれるような思いをしなきゃならないんだ。
「ああ、もう」
自分で何がしたいのか、されたいのかはわかっている。ただ認めたく無かっただけだ。
私は立ち上がって、ヤツの元へと歩み寄った。
ヤツの虚ろな目がのろのろと私を追う。
自分が八つ当たりで殺しかけた竜。自分を殺しに来た相手。そんなモノに恋する自分の狂気を認めてやる。
食われてやってもいいだとか、殺されてもいいだとか、犯されてもいいだとか思ったことも認めてやる。
相手が竜だからと諦めたいあまり、ヤツのヒトとしてまだ幼い人格を尊重してないっぽいことも認めてやる。
ヤツを好きなのか。困ったことに大好きだ。
ヤツの前に立ち、その目を覗き込む。浮かぶ色は不安か戸惑いか。
先程見事に裂けていたはずの両頬を、青いグラブのままの手で包む。
手も目線も外さずに、ヤツの膝の間に膝をついた。
すがるような目をされて、もう一度「ああ、もう」と言葉が漏れてしまった。
口に肌が当たるのが気持ちいいと知っているはずのヤツは、唇同士がくっついた時にはどう感じたんだろうか。
今度は生卵抜きでもう一度試してやろう。
まさか噛みつかれやしないだろうなと少し不安が胸をよぎりつつ、それでもいいやと唇に口付けた。
ヤツは目を閉じることすら知らない。
くっつけたヤツの唇は、薄いけれど一応柔らかい。先程も感じたが微妙にひんやりしている。
口内も探ってみたいが、今はまだいい。自分の目蓋の向こうで、ヤツはまた目を丸くしているだろう。
半端にヤツの腕が上がってきているのもわかるが、それの動きの意図はよくわからない。
顔を離して目を開くと、視線がかち合った。物言いたげな目をしていると思った後、ふと気付いて言った。
「話していい。触れていい。帰るな。ここにいて」
ヤツは小さく息を吐き、おずおずと私の背中に腕を回した。抱き癖ついた子どもかよ、まったくもう。
間近でヤツは何かブツブツ言っている。不貞腐れというより、その声は不思議そうだ。
「あんだよ、黙れとか喋れとか。わっけわかんねぇ」
本当にその通り。私も大人面しておいて、全くなっちゃいない。
なおも何か言いたげなその口を、なだめるように塞いでやる。
やんわりと下唇を食み、舐め吸って離そうとすると、上唇を食み返された。
飲み込み早いな、ヤツめ。いや、そういえばただの生卵口移しといえ、一応べろちゅうかましてきやがったんだ、こいつ。
ちゅっと軽い音を立てて、ヤツの口が離れた。噛まれてないな、良かった。
「指摘を受けないうちに言っておこうか」
私は熱を乗せた言葉を吐いた。
「首に口を付けるのより、口同士をくっつけるのが順序としては前なんだ」
ヤツが「で?」と呟く。
「順序を踏まえていけば、首にするのだって受け入れよう。貴方さえよければね」
本当はもっと先まで望んでいるけれど、鱗と尻尾のない我が身では多くは期待できないか。
ヤツの喜色溢れる顔が愛しいと思う。口元からのぞくギザギザの歯のせいで、悪気ないはずの笑顔も凶悪だけどな。
ヤツは、おおっぴらにはできないことを、何故私としようとしたのか。自分が気持ちよくなる事を何故私でしたのか。
私が相手なら許可を得られると思ったのだろうか。それとも私で気持ちいい思いをしたかったのか。
都合の良い方に解釈してしまいたいものだ。
もう一度唇同士をくっつけて、今度はヤツの唇の間を舐めてやる。
ヤツが少し頭を引いた分、空いた隙間で「噛まないでくれたまえよ」と言ってみた。
同意を得もしないうちに、また口付け唇に舌を割り入れる。
噛まれないとしても、あの歯が怖いな。切れやしないのか?
そろそろと舌で歯の背をなぞる。
ヤツの口が歯で傷まみれとは聞いたこともないし、現状血の気配もない。
まあ大丈夫だろう、多分。覚悟を決めて、顎の内側に舌を進めた。
口の中ですらひんやり気味だ。自分ばかりが熱を上げているみたいで、少し腹立たしい。
ヤツめ、ヒレをピリピリさせてんじゃない。なんなんだ、その反応は。
自分で理不尽だと分かっている僅かな怒気のままに、ヤツの舌を絡めとる。
驚いたヤツが身を引いたって、放してはやらん。既に片手は後ろ頭を固定しているのだよ。
こう、逃げても無駄だ、と追い詰める時の心理状態は結構楽しいものがある。ヤな言い方だが、ハンターなら割と馴染んだ感覚だろう。
息継ぎなどは手加減しているものの、気付けば地面に座るヤツの体の上にのしかかる格好になっていた。
半ば私の理性のたがが飛んでいたのは否定できない。
すっかりとろけたヤツの目を見て、ようやくその口を離してやった。
息を整えつつ、ヤツの口の周りを拭ってやる。
どちらのものだか判らない涎まみれで、自分の没頭具合が見てとれるそれは少し恥ずかしい。
ヤツは焦点の定まらない目をしたまま、切れ切れに言った。
「……さっきも、思ったが。……結構、いけるな、これ」
さっきって、まさか卵の時か?味の話だとばっかり思ってたぞ、おい。
案外私は、悲観的にならなくても良かったのかもしれない。
背中と腰に回されたヤツの手も愛しい。勘違いでも、もう構うものか。
もっとヤツの冷やっこさを味わおうと身を擦り寄せて、何か違和感を覚えた。
腹の辺りにナニかがあたる。これは……。
予想はつくけれど、有り得ない。
思わず身を離して、ヤツの顔をマジマジと見た。
ヤツはイャンクックみたいな顔をしていた。言うなら、少し驚いたような、きょとんとした顔だ。
視線はそのまま、片手を件のブツへと伸ばし、形を探るように擦ってみた。
ヤツの眉間がきゅーっと寄る。
暫く二人とも無言だった。私の手だけが忙しく、ヤツのそれを服の上から触りたくる。
おもむろにヤツが口を開く。低く掠れた声で、妙に申し訳なさそうに言った。
「ソコ、あんまし触るとなんか出るぜ?」
そんなこと知っとるわ。色っぽい声でアホなこと言うな。
……いや待て。出るのか?
というか、それ以前に勃つんだな、ソコ。
思えばヤツは中身はともかく、外見的にはしっかり成人男性だ。
本人の趣向や性癖とは別に、それなりの機能を有していても不思議でないだろう。
なら今までソコに関して、どうしていたというのだろう。
聞くところによれば、ヤツはヒトの女とはそんな関係になったことは無いらしいし。
待てよ、ヒトの『女』とは、か。
稲妻のように閃いた。
赤褌眩しいボーンシリーズを纏った身内が、異様に男前に言うのだ。
「いいのかい、俺は竜だって平気でくっちまう男なんだぜ」
いいわけあるかぁあっ!嫌だ。嫌すぎる上に身内に対して失礼極まりない。鳥肌立ちそう。
いや、でも、まさか。
人間、結構器用なものだ。
頭は混乱しつつ色々と考えているというのに、手は休みなく動けるんだから。
こんな時まで物思いか、メルホアめ。
「なんでそんなに物騒な顔してんだ……?」
ホントはさわんの嫌なのか?俺はイイんだが。とかボソボソ言っているのが聞こえる。
嫌という訳でもないが。そうかイイのか。
「すまない、ただのでたらめな悋気だ」
笑えない妄想が顔に出ていたのが少し悔しい。
実際のところは自分でどうにかしてたんだろう。そう思おう。
「りんきってなんだよ、それ」
ヤツは訊いた後に、ギリッと歯を食い縛った。実は余裕がないのかもしれない。
「帰ったら辞書ひいてみなよ。役に立たない知識が一つ増えるから」
ヤツは字を読むのがまだ得意ではない。まあ勉強にはなるだろうか。
さて、どうしたものだろう。背筋にゾクゾクしたものを感じつつ、手を止める。ヤツがゆるゆると息を吐くのが聞こえた。
実のところ、する方はそんなに得意でないというか、ほとんどしたことがない。
手管を知らないわけでもないが、実践はない。為せば成るだろうがな。
今度は顔には出さないように注意していたものの、考えあぐねていた。お陰で少し、下手を打つ。
「どうされたい?」
いや、人間童貞に訊いてどうするんだ。
ヤツはまばたき一つ、ヒレをハタと一振り、やたらに澄んだ瞳で言い放つ。
「テメェはどうしたい?」
ヤツは、ガノトトスからマグロにクラスチェンジする気か。
そういえばガノトトスだ。これも珍味のうちなんだった。
ヤツの刺し身を食べるのは嫌だが、別な意味で食べるのは本望だ。
ああ、そうか。うん、殺さないけど剥いで食ってやろう。
知らずに口角が上がり、喉の奥から笑いが漏れる。
片手で帽子を被り直し、気付けば舌舐りをしている始末。浅ましさ丸出しだが見てるのはどうせヤツだけだ。
小さく宣言しておこう。
「貴方と交わってみたいと思うんだ」
ヤツも小さく応と言った。
なら遠慮なく食ってやるさ。勿論生で、な。
無表情にヒレをパタつかせているヤツに軽く抱き付き、腰に腕を回した。
耳打ちしたいところだけれど、耳がわからないからヒレに向かって囁く。
「四つ数えてみなよ。そこに驚愕が待っている」
「あぁん?」
ヤツはうろんげな顔を見せ、囁かれた方のヒレをピリピリ振るわせた後、素直にそれに従う。
「いちにーさんし?」
スルッとな。
「あんだよ?」
「何だか寒くはないかい。特に脚とか」
まだ分かっていないヤツに向かって、剥ぎ取ったヤツの青スボンその他諸々・メルホアライースを振ってみる。実は下着も入ってたりして。
ヤツの顔は、驚愕、青ざめ、紅潮と見事な変化を見せた。顔色の変化は割と普通なのな。
「お忘れか。今の私は解体名人、剥ぎ取りなぞ朝飯前よ!」
つい調子に乗ってフハハハと高笑いが出てしまう。あ、もう晩飯後だっけ。うん?それはやっぱり朝飯前でいいのか?
正直こんな事のために解体名人になったんじゃないけれど、我ながら自分の下品さにびっくりだ。
「……ち、ち、ち」
口をパクパクさせているヤツの言いたい事を予想してみる。
「ちょっと待て?それならちょっとしか待たないけれど、いいのかな」
「だいぶ待てっ!なんだそりゃっ!?」
ギザ歯を剥き出しにして怒鳴らなくてもいいじゃないか。知ってたけれどうるさいヤツだな。
でもまあ、ちょっと情緒は無かったかもしれない。
「俺の方にだって心の準備とか言うもんがあるっての!てめっ、なんつう……」
それは確かにごもっとも。ヤツはつり上がる目尻をほんのり赤らめているが、やたらに可愛い。
そちらに構っていると朝が来そうなので、下の方のヤツに目をやった。
「……ソコに小さなガノトトスが生えてたり、鱗まみれの二股なのが付いてたりしたら、ちょっとどうしようと思ったけど、どうにも普通っぽくて安心したよ」
薄暗い中での第一印象を本人に報告すると、何故かヤツは脱力しきったような声を出す。
「テメェ、俺をなんだと思ってるんだよ……」
そうはおっしゃいましても。私は羽付き帽子をとって、暫く考えるフリをしてから言ってやった。
「元魚竜のヒト」
本当はもう、ヤツがなんだって構わないと思っている。
小さなガノトトスがキューと鳴いてようが、鱗だらけのが付いてようが、やってやるだけのこと。
そういえば初めて会った時素っ裸をチラ見したが、そんな愉快なブツが付いてたら気付いたはずか。
仮に今ここでヤツが巨体を誇る水竜・ガノトトスに戻っても、がっつり食ってやる覚悟くらいある。
そんな私の覚悟もよそに、ヤツは少ししょげていた。おや。
びっくりし過ぎたんだろうか。
疑問を込めた視線をヤツに送ると、舌打ちされた。
「あんなひっぺがし方と発言内容で、萎えるなって方が無理あらぁ」
そんな忌忌しげな目付きと歯ぎしりは止めて欲しいものだ。私にだって事情ってものがあるんだ。
「うん、すまない。でも本当に小さなガノトトスの可能性も心配してたから、前開けると同時にガブッ。とかだと怖いなって思って」
「だからそのガノトトス説は捨てろって!水竜全体馬鹿にしてんのかよ!」
これ以上この話題を引っ張ったら、ヤツに噛まれそうだ。
ソコがアレでも可愛いと思うが。違って良かったけど。
「それはともかく、メルホアライース返せ」
すっかり半眼になったヤツが言う。もしかして恥ずかしいのだろうか。
「正直、尻丸出しで砂地に座んのは冷てぇし痛ぇよ。前は開けとくから、とりあえず返せ」
いまいちウケが悪かったか、剥ぎ取りは。ヤツが前を寛げたまま座り直すのを見て思った。
戯言もほどほどにしておこう。本当に朝が来てしまう。
ヤツに自身に手を伸ばしかけ、ふと手を止めた。
「グラブはめたままと素手と、どちらがいいかな」
ヤツは私の顔を見、私の手に目を落とし、ニヤリと笑って言った。
「新鮮かどうかは知らねぇが、生がいいに決まってるぜ」
こいつもその言い回し好きだな。私も好きになりそうだが。いそいそと青いグラブを外し、改めてヤツに左手を伸ばした。
さすがに、こんなところはひんやりしてないんだなと考えつつ、少し撫でてから掴んでみる。
「こういうことは慣れてないんだ。加減が判らないから痛かったら言って欲しいな」
「さっき散々いじくりまわしといて、今更それか」
一々ごもっとも。でも正直も美徳だと思うぞ、私は。
やんわり掴んだまま、手を動かし始めてみた。
「ソレもソレで悪かねぇが、もちっとばかり強めでもいい」
物慣れない手つきを楽しむという余裕はヤツにはないらしい。いや、ヤツがそんな楽しみ方を知っていたって嫌だが。
こんな時はどこに目線をやればいいのやら。手の中のぬくい脈動を伝えるソコを凝視するのも気がひける。
掴む力を強めてみると「痛ぇよ」とドスのきいた声がした。
難しいものだ。
ならどうしたものか。またやんわり掴みつつ、同僚女性との酒の席で仕入れた知識でも試してみようかと考えていたら、ヤツがまた声をかけてきた。
「空いてる方の手ぇかせ」
言われたままに右手を差し出すと、ヤツは自分の手袋を口で引っ張り取って、素手で私の手首を迎えた。
脱ぎたてひんやりしっとりのその手は、私の脈でも探るかのようにじわりと力を込めてくる。
「加減はこれくらいなら痛かない」
そういうことか。
ヤツから伝わる力加減を写しつつ、ヤツを掴んだ左手を上下させる。
しょげてた状態から立ち直ってきたから、これで良いんだろう。
一方、私の右手首はヤツの親指にやんわりと擦りたてられ、刺青の入った辺りを他の指が撫でられていた。
それが酷く卑猥な手付きに思えて、既にぐちゃぐちゃのドロドロ状態の下着の中で更に潤いが増すのを感じる。下着の外まで染みてそうだな、くそう。
「……自分でするのと違って、随分イイもんだな、こりゃ」
それは何より。頭の中の赤褌ボーンシリーズ着た身内が消えるのに安堵した。
「貴方でもそういうことするんだね」
本性が竜だと知ってから、そういう欲とは無縁そうだと思い込んでいたものだ。今日までは。
ヤツはうむと唸り、低い声で独り言のように呟く。
「万年繁殖期のヒトの体ってのは、厄介なもんだって思ってたな」
その気は無くても反応するものらしいしな、ソコ。殿方の皆様も大変だ。
「しかしだ、テメェに触るのも触られんのもこんなにイイなら、ヒトの体も悪かない」
ニタリと笑う顔がかつてないやらしさを纏っている。もう辛抱堪るかっての、このアホ正直者め。
込み上げる愛しさだとか愛欲だとか、それらの勢いのままに、掴んだソコに口付けた。頭上で変な声が聞こえるが、この際無視だ。
先端に小さく吸い付く口付けを繰り返した後、全体に舌を擦り付ける。
つやつやなところもあり、柔らかく弾力があって変に硬い。味は青臭いやら苦みがあるやら、お世辞にも良いとは言い難いな。
「いきなり何すんだよ……」
掠れた声で、まさか食う気じゃなかろうなと訊かれたが、とりあえず止められる気配はない。
食う気満々だとも。こういうのは初めてだが、なんとか成そう。
「噛みつきはしないよ。優しくする努力はするとも」
脈打ち体積を増した感のあるソコへ向かって囁く。頭上から、どこに話かけてやがるというぼやきが聞こえたが、それも無視でいい。
女は度胸だ。私は意を決して大きく顎を開いた。
砂地に膝を立てて座るヤツの脚の間に顔を埋め、歯を立てないように気をつけながら、口に含んだ。
ヤツと私の基本的な体温の差だろうか、口の中で感じるソコはやはりひんやり気味に思える。
迎えたからには丁寧におもてなしだ。
ちゅく……じゅば、ちゃむ……ずずっ
キャンプでヤツがカエルをむさぼっていた時とそっくりな音を立てていると気付いた。ヤツはそんなことには気付くまいな。
混じる音は骨を噛み砕く音でなく、私とヤツの吐息と、体をもじつかせている私からの衣擦れ。
服の内に篭る熱に、変な浮遊感、ヤツからはろくに愛撫もうけていないのに、私の体は昂りきっている。
抱きつかれた辺りからずっと熱は高まって来ていた。思い返せば深い口付け辺りで準備は完了していたような気もする。
口でなく違う場所に迎えれば良かったと考えつつ、食い縛った歯の間から荒い息を吐くヤツの様子を窺った。
眉根の寄せ具合とか、艶っぽいイイ顔してやがるなヤツめ。
得た知識が無駄でもなかったことに満足し、先端の方にある孔を舌でこじってやると同時にヤツは達した。
今回の投下終了。
あと1回で終わりだが、また近いうちに。
では何事もなく武器話をどうぞ
GJにしてグッドエロス
おお!この話好きなんでwktkしながら待ってたよ。
いや、竜相手ならではのエロさがあってなんともイイなー。
そして剥ぎ取り名人にクソワロタ。(そこでそう来るか!)
次で終わりってのが名残惜しくもあるけど楽しみにしてる。
畜生、wktkしすぎてもう一週間は寝不足だぜGJ!
ところで珍味の人の主人公は少しハスキー気味で軟質な、シルク繊維に喩えられそうな声で脳内再生されてるんだ
誰か心当たりの声優は無いだろうか?
シュールな感じだけど、無限大のラブが伝わってきた。
最終回待ってますぜ。
話は変わるがこのSS見て食ってみたい物がわんさか出てきた。
ラオシャンロン丸焼き、ガノトトスの活け作り、フルフルの中落ちと卵、ダイミョウザザミ蟹鍋、イャンクックの焼き鳥、ババコンガオナラ風味、etc
さてとゆっくり完食してきますね。
フルフルは幼生だと食えるんだっけ。珍味みたいだが。
姉さん何気に素敵な男前っぷりだな
口の悪さは変わらずとも素直で優しくなってゆくガノも微笑ましい
あとマグロにクラスチェンジでフイタ
寝るのを忘れて読み耽ってしまったこの作品にGJを贈ろう
自分もフルフルベビーとフルベビアイスの味が以前から気になって仕方ないんだが
あれは雪山産だからこの話の中で食わないのが残念だったw
そういやトレジャーハンターだと、クックやドスギアやババコンガやザザミ等からも
食えるらしいアイテムが剥ぎ取りできるな。
402 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 06:07:03 ID:OYTnIhTq
小さなガノトトスwwwwwwwww
やばい萌えた。
終りが来るのが名残惜しい。
あと今回スレ消費早いな
珍味さんイイよイイよー!
最後にも期待。
小さなガノトトスにクソワロタ
GJ!奇食さんがハッピーエンド迎えるの期待してるぜ
赤ふんボーンシリーズでしばらく悶えた。やめでぐれ……腹が、腹がぁ……
あと少々亀気味だがアキラぶっ殺す。むしろ殺させてくれ。
アキラ好きな俺は異端ですか
珍味先生GJ!
淡々と進んでいく話の中、急にエロースな展開がはじまると、すごく惹きつけられるモノがある。
>>397 昨日見たガンダムWのせいかも知れんが、"ノイン"がそのまま重なって見えちまうw
妙に丁寧口調だし、自潮癖っぽいトコあるし…あー、声は確か横山智佐…?
珍味姉さん、ガノトトスの白子ゲッ〜ット!
悲惨な過去を語ってるのに全編軽快さを失わないとか
コメディタッチなのにちゃんとエロいとかスゲェ。
参考までに、話の中で使用する装備に関してだが
・古龍素材を必要とするものは控える
・段階的に集会所下位後半〜上位序盤のもの(使える者はごく少数)
モンスターの強さについては
・古龍は天災クラスのどうしようもない存在(討伐はほぼ不可、撃退は可)
・その他飛竜、牙獣はほぼゲームの強さと習性(劇中ややオリ要素あり)
この位ならOKかね? 無論これは自分の話の基準にするのであって、他の作者氏に求めているわけではないのであしからず
411 :
410:2007/07/18(水) 13:24:31 ID:izHf3nr9
×(使える者はごく少数)
○(上位装備を使える者はごく少数)
>>410 話のありようでいくらでも変わるんじゃない、その辺りは?
プレイヤーのスキルが高くて装備も古龍から剥ぎ取りまくりで何でも狩れちゃう超ハンターが主役でも、
物語に説得力さえあれば誰も文句いわないんじゃないかな。
ゲームシステムそのまんまSSにもってくると変になりそうだけどね。飛竜すら気絶させるような一撃で
仲間をぶん殴っても無傷とか、手持ちの生肉がどれだけ季節がめぐっても腐ることがないとか、
期間中は街に襲来する古龍がアホみたいにたくさんいるとか……。
そういうどうしようもなさそうな面は職人側でどう料理しても良いと思う。
>>410 ぶっちゃけると、すきにしろとしか言えん。
大長老直轄とか孤高であり生きた伝説とも呼ばれる〜〜みたいなハンター主人公なら古竜フルでもいいんじゃない?
そのへん「ゲーム内感覚より設定を重視しては」「超レア設定の武器が大安売りされてると萎える」
って意見もすごくわかるんだけど、そういう事言い過ぎると職人さんがやりにくくなるしなあ。
ゲーム中でプレイヤーが体感してる尺度やセオリーみたいなものから説明なしに文中設定が離れすぎてると、
自分はちょっと気になるし。
「このモンスターとこの武器系統で戦うなら、普通は○○じゃなくて□□使うんじゃね?」とか。
(外れてる理由が話の中で語られていれば何も問題ないんだけど)
「設定的には超レアなモンスターが素材になってるから普通に作品に出て来るのはおかしい」
てな事を言いだすと、萌え的には大人気のキリン女装備あたりは
封印確定装備の筆頭に上がってしまいそうな気もしなくもない。
アキラは悪役だから嫌うのは仕方ないけどさ
作者が見てるとわかってる場所で堂堂と好き勝手にボロカス言いまくるってのはどうなのよ
仮にも他人が作ったキャラなんだぞ?
頭おかしいんじゃねえの
>>413辺りがなるほどと思う。
あと○○家に代々伝わる〜とかいうのは無理あるかな?
小説の世界にゲームの価値観を丸ごと持ってくる、なんて無理を作者様に押し付けるのはイケナイんだぜ。
>>416をゲームの中の価値観で考えると「レア度高い物はトレードできないだろ・・・ゲーム内的に考えて」になる。
つまり何を言いたいかと言うと初心者のキリン装備っ娘がメラルーに褌盗まれてオロオロしてる所に通りがかった発情してるコンガに押し倒されてあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛
そんな中、仕事の暇時間に書き上げたSSを投下。
正確には途中なんで『書き上げた』訳じゃないんだが……
・強引。最後ちょっと無理やりすぎる。和姦スキーの妥協と考えてくれると嬉しい。
・でも強姦。ついでにいうと処女。
・前編。
・文章力は無いです……
と言う所で、許容できる人は読んで下さると幸い。
「さてと……今度こそ、きちっと討伐してやらなきゃね。」
私――本名はイーグレット=カジェスティとちょっと長いから、イグで通している――は、雪山のベースキャンプにたどり着くや否や意思を言葉として吐き出した。
今、私はドドブランゴの討伐依頼を受け、一人雪山のベースキャンプに荷物を下ろしていた。……訂正。支給品を持ってきてくれて、帰りや気絶させられた時に助けてくれるアイルーたちも一緒だった。
「今度はだいじょぶニャー? 装備はどんどん厚くなってるみたいだけど、心配だニャー……」
う、ちょっと痛い所を突かれてしまった。……そう、彼らが『今度は』と前置きして心配するには理由がある。
すでに私はこのドドブランゴ討伐の依頼を2度に渡って失敗していたのだ。……それも、屈辱的な失敗を。
「任せてよ! 今回のザザミ装備は堅さが取り得なんだから、今度こそ1回も君たちのお世話にならずに帰ってくるよ!」
「……前も似たような事を言ってたニャー……」
胸を張って装備の自慢をする私に浴びせられたのは、アイルーたちの呆れた声。思わず感情的に背中の斬破刀に手が伸びかけるが、ここは我慢。
現実、彼らの言う通りであり……敗北を喫してしまった事はぬぐい様のない事実であるのだから。
私はこの場にそのままとどまり、彼らに心の傷を抉られる事は決して精神的に良くないと思ってベースキャンプの外に飛び出す。
「わ、私もう行くから。待っててよね、ちゃんと雪獅子の牙とか持ってくるから!」
出発前に道具は確認しているし、すでに3度目。何が支給品として贈られるか、という事も把握している。
とかく雪山は酷く寒い。そりゃ麓は暖かくポポも呑気に草を食む様子すら見られるが、山頂に行けば常時吹雪と思って間違いないのだ。
だからこそ、私は早速ここでポケットからホットドリンクの入った特性の水筒を開けて四分の一ほどを一気に飲み干す。
……早速体が温まってきた。まだ平地に近いここではうっすら汗ばむが、これを飲まないと山に登ると凍えてしまう。
私は飲んだ分、支給品からホットドリンクを補充して、満タンになった水筒を背中のサックに直した。これで、30分は持つはずだ。
あとは、予め焼いておいたこんがり肉を取り出して食べる。ついでに支給品から携帯食料を始めとする雑貨を取り出しサックに詰め込んだ。
腹八分目が丁度いい、とは誰の言葉か。とりあえずハンターではない者の言葉だろう。
ハンターはとにかく腹が減る。そりゃ、常に集中していないといつ襲われるかわからないのだから緊張しつづけるわけだし。
それに、何といっても装備と拾ったものの重さ。おなか一杯食べていても、担いで歩いているだけで直ぐにおなかが鳴ってしまうのだ。
だから私はキャンプで出発前に、まず肉を食う。ここに移動するだけで消化された胃を膨らませるのだ。これで、持続力が上がる。
「ふぅ、じゃ、改めて行ってきまーす!」
そこまでして準備を完了したと判断し、私は動物避けの細い崖と岩に挟まれた道から山の麓へ降りていく。
……ほんの少し。時間にして3分足らずで直ぐに麓の広い敷地にたどり着いた。
「相変わらず風光明媚よねぇ、ここ。」
独り言が多いのは昔からの癖。なんとなく、ヒトの言葉を耳から聞いていないと安心できないのだ。流石に隠れている時にはやらないが、こんな場所ではその分多くなる。
そんな場所で流れる水の音と穏やかに鳴くポポの声を聞きながら、私は初めての敗北に意識を移していった……。
* * *
「くっそー! なんだってのよ、あの動き!」
既に2度目になる、アイルーたちの救出を受けてベースキャンプに転がされて意識を取り戻した私は、思い切り悪態を突いて近くの岩を蹴り飛ばした。
自慢になるが、私はコイツとの戦闘まで1度もネコタクのお世話になる事はなかった。
ハンターになって訓練を受け。初めてポッケ村の村長から依頼を受けて行ったギアノスやブランゴ退治もほぼ無傷で終わらせた。
……ポポノタン集めのときに見かけたあの竜にだけは、尻尾巻いて逃げたけどね。あんなの、一人で倒せる相手じゃないでしょ。
村長から認められ、ちょっと上位の依頼も受けれるようになった。そうして戦ったドスと名前のつく中型や大型の獣相手にも、若干の傷で勝利できた。
そりゃー、イャンクックを初めて見たときはビビったけど、所詮大きな鳥。『先生』とか言われてるらしいけど、私にとっちゃいいカモだった。
ババコンガはとにかく臭かったなー。あいつ、糞なんて投げてきやがって。あれが私の人生初ダイビング避けだったっけ。
……おっと、話が脱線した。
とにかく、資質でもあったのか運が良かったのか、繰り返すが私は今まで1度たりとてネコタクに転がされたりしなかったのだ。
それがここに来て、2度目の経験を味わった。
「あと1回気絶させられたら、そのまま村に連れ帰らせてもらうニャー……だから、気をつけてニャー?」
そういう依頼だから、仕方がない。わかってるよ、と軽く応えて私はベースキャンプから再度飛び出していった。
手に持つクックツインズは、ドドブランゴが火に弱いって話を聞いて作った双剣。最初は片手剣を使っていた私だけれど、次第に双剣に獲物が移行していたのだ。
だって、食らわずに避ければいいだけだもの。という理由で。……今まで出会ったモンスターが、みんな直線的な動きしかしなかったからだ。
防具だって同じ理由でハンター装備。ハンターらしいし、何よりこの装備してるとヤツが何処にいるかよくわかる。
なんか、気配を察知できるっていうのかな?他の装備だとこの感覚はなかったんで、この鎧を愛用していた。
「ぴょんぴょん飛び跳ねたり地面に潜ったり……あー、鬱陶しいっ!」
残り少ないホットドリンクを飲み干してしまい、あとは短期決戦を挑むしかない、と覚悟を決めて洞窟に潜る。
今ヤツは……うん、丸く雪崩があったみたいに抉れた山の中腹にいるみたいだった。なんとなく、ヤツが外を向いていそうな気もする。
だから私は急いで洞窟を通り抜け、雪原に飛び出す。……勘は的中。ヤツは尻尾を揺らしながら手足を使って悠々と歩いていた。
卑怯だとは思うが、私はヤツの背中めがけて雪原を駆ける。腰からクックツインズを抜き、一気に斬りかかった。
悲鳴。どうやら私の一撃はヤツの尻尾を切り落としたらしい。
ふふん、どうだ。これが私の実力なんだ。ここからずっと私のターンで行かせてもらう!
目を見開き、いわゆる『鬼人化』という双剣専用の技術を使い一気に10回にも及ぶ斬撃を繰り出した。
流石にこの攻撃は堪えたのか、ヤツは更なる悲鳴をあげて後ろに飛びずさった。
「さぁ、今までの分まとめて返して上げるんだからね!」
『鬼人化』すると確かに力や速度は上がるが、下手に使いすぎると身動き取れないほどスタミナを消費してしまう。
アマチュアならそれでもやりつづけようとするだろうが、私はいっぱしのハンター。そんな愚は犯さないで直ぐに『鬼人化』をやめて双剣を構えた。
「グォァーーーー!!」
ドドブランゴの咆哮。初めてきいたそれは確かに驚くほどの大音量ではあったが、堪えきれぬほどではない。むしろ、隙を見せたと思ってヤツに突進しようとした、その瞬間。
「くあっ!?」
背中からの衝撃に、私は雪原に両手をついて後ろを振り返った。見れば、1匹のブランゴが体当たりを仕掛けてきたらしかった。
鬱陶しい雑魚は先に退治しておいたはず……と悩むが、見れば他に2匹のブランゴがこちらに迫っていた。
慌てて立ち上がり横に避け、考える。――中でも一番無難な堪えは、さっきの咆哮で仲間を呼んだんだろう、という事だった。
確実ではないが、確かめるような余裕はない。仕方ないので、4対1という劣勢で戦闘を再開する事にした。
……だが、やはり考えは甘かった。
ドドブランゴが何処にいるかは判る。だが、その気配の大きさに隠れて3匹のブランゴが何処にいるかまったく判らないのだ。
大ぶりなドドブランゴのラリアットを避けようとした所を、ブランゴに押し戻されて吹き飛ばされる。
何とか起き上がって反撃しようとしたが、ヤツに攻撃をいれようとするといいタイミングでブランゴが横から体当たりを仕掛けてくるのだ。
「ちょ、不味っ……!」
悔しいが、此処で負ける訳には行かない。こんな所で気絶すると、ネコタクが迎えにきてくれる前に凍死してしまう可能性があるからだ。
既に逃げる選択肢しか考えつかなかった私はクックツインズをそれぞれ迫ってきた2匹のブランゴの脳天にプレゼントすると、そのまま細い道へ逃げ出す。
武器を失うのは惜しいが、それ以上に命の方が大切だったのだ。お陰で、ブランゴは逃げ出し私は安全に山の西側へ退避できた。
「……後でアイルーたちに頼んで、クックツインズ探してもらお……痛っ」
一息ついて、まだ雪の吹く西側の斜面を下りていく。過去、ベースキャンプがあった場所であろう残骸を左に見ながら道を下ると、そこは麓への近道だったはずと記憶していた。
そこで気づいた、胸の装甲が完全に破損して、中に仕込んだ鉄の破片が乳房に少し刺さっていたのだ。
変な場所に傷が出来た……と顔をしかめ、胸から砕けた鉄板を取り出し道に捨てる。バランスが崩れたせいか、ヤツの気配がわからなくなった。
まぁ、さっきまで東側にいたんだ。大丈夫だろう。……にしても、悔しい。
どうやって復讐してやるか。そんな事を考えながらさらに細い道を下ると、空気が変わった。やっと麓にたどり着いたのだ……
安心の余り、少し駆け足になる。あとはそこの崖を上手に飛び降りれば、ベースキャンプまで後少し。今回は村長に謝り、すぐやり直しさせてもらおう。
そう考えていた矢先で、目の前にヤツが降ってきた。
「な、なっ…!?」
あまりの事態に困惑する。後少しだというのに、ヤツめ。尻尾を切られた腹いせにか私を此処まで追いかけてきたのだろうか。
武器はない。防具もない。体力も残っていなければ、後ろに引き返す手は考えられない。
あるのは、あいつの体をすり抜けて逃げ出すという手だけだった。覚悟を決めるしかない……そう考えた矢先、ドドブランゴはこんな薄い雪の中に潜り始めた。
焦ってしまう。まだこの攻撃は1度しか見ておらず……故に、どこから出てくるか判らない。
考えてみれば左右の岸壁にも雪の層がある。もしかしてそこから飛び出してくるかもしれないし、足音に反応して飛び出して
考えられたのは、そこまでだった。その時には私はもう、大地から飛び出してくるドドブランゴに弾き飛ばされ、空中に投げ出されていたのだから――。
* * *
「……っ……ぁ……?」
幸か不幸か私は気絶する事だけは回避していた。雪が厚い場所に落ちたせいもあるだろうが……なんにせよ、体は動かない。
はぁ、後少しって所で負けちゃった……私の人生初黒星め、次は逆転勝利してあげるんだから。とにかく、ネコタクを待って……
……あれ?なんで、アイルーたちが助けにきてくれないんだろうか。
わずかに動く腕でふと腰を探ってみると……げげ、照明弾が無い。気絶して地面に倒れると自動的に発射されてアイルーたちに危機を知らせる、それの最後の1個が消えていた。
恐らく、あの後ろからブランゴがぶつかってきた時にでも落としてしまったんだろう。…大失敗。
という事は……依頼期限である50時間経過まで、アイルーたちは着てくれない、という事だ。
時間は……確か、あと10時間程度?……そんな長い間、ここに寝ていないと行けないのか。ちょっと絶望。
そこまで考えて、ふと、気づいた。……うっすら目を開けると……
「う、うわっ!?」
ドドブランゴが、近くにいた。だが、少し様子がおかしい。私を襲って食うでもなく、雑魚ブランゴを呼ぶでもなく。
うつぶせに倒れて身悶えするだけの私に近寄り、じーっと見ているだけだった。
逆に、気持ち悪い。そのせいで悲鳴のような声が出た。ドドブランゴのほうも驚いたのか、少し顔を遠ざける。
「な、何見てるのよ……っ」
まだ体は思うように動かない。だが、モンスター相手におとなしくするなんてのも無理。
精一杯の虚勢を張り、相手を威嚇しようとしたのだが……そこで、驚くべき行動を取られてしまった。
ドドブランゴが腕を振り上げ……その大きな手で、私の乳房を掴んできたのだ。
「んっ、ぅ……!?」
心が怯えていた私は、突然の行為に鼻にかかるような声を漏らしてしまう。
吃驚していた。モンスターがまさか、こんな行為をしてくるとは思いもしなかったから。だから、動きが止まっていた私に気をよくしたのか、今度は両手を持って胸に触れてくる。
「い……っ!っは、な、何……っ!?」
よくもそんな大きな手で、そんな繊細な触り方が出来るものだ。――妙に冷静になっていた心の一部がそう考えつつ、私は喘ぐような声を漏らす。
確かに胸のサイズには自信はあったが、まさかドドブランゴ相手に触られる事になるとは。というか、相手からすると十分小さいだろうに。
それでも、何も言わずにただ乳房を揉み捏ねる動きに、私は次第にホットドリンクを飲んでいたかのように体に熱を帯びていた。
ふと、乳房を攻められながら下を見ると……そこには、ドドブランゴの勃起した男性器が聳え立っているのが見えた。
まさか、こいつ……私相手に欲情している……!?
心はそれを否定するが、この状況では認めざるを得ない。殺すでもなく、ただ私を攻め。さらに接合の準備まで整えているのだから。
「い、嫌……嫌っ!?」
再び心に恐怖が走る。冗談ではない。これまで20年護り続けた処女が、こんな人間ではない相手に散らされていいはずがない。
それだというのに、私の体は胸への愛撫だけで高まり、秘所は潤いを持たせてしまっていた。
顔も熱を帯び、風を涼しく心地よく感じる。――私の馬鹿。何で、モンスター相手に発情しちゃってるのよ!
「ん、あ、ぐっ……」
全身の力が抜けていき、最初は逃げようとよじっていた体も動きを止める。すると、ドドブランゴも胸への愛撫を止めた。
……悔しい。今、きっと自分は蕩けた顔で寝そべっているはずだ。以前、一人で慰めていたのを友人(♀)に見つかった時、言われたのだ。
気持ちいいのが凄く顔に出やすいんだね、と。慰めになってない! と、あの時は烈火の如く怒りに燃えたが、だとすると、今もそうなのだろう。
逃げたい、逃げよう。そう考えるが、体はまったく意思の通りに動いてくれない。ただ全身がかすかに震えるだけだった。
ドドブランゴはそこでさらに驚くべき行動にでる。……なんと、私の衣類を脱がそうとしたのだ。
結果だけを言うと、結局フォールドの嵌めベルトが理解できなかったらしく、メイルと同じようにその腕で砕かれ、破壊されてしまったが。
それでもインナーを破いたりせず、持ち上げて乳房を露出し、引き下ろして股間をさらしただけで済んだ。
「い、一体……何、あんた、何なのよ……ぉ……」
逆に怖かった。変に理性的に動くから。泣くような声で疑問の言葉を投げるが…やはり、返事をしようとしない。
ただドドブランゴは脚を開かせようとし……ジョーツがひっかかり、広げきれないのに腹を立てて、結局それを破り捨てただけだった。
顔は蕩けつつ涙を流し、乳房も露出させてショーツの残骸を両太ももに残し、私はドドブランゴ相手に脚を開いていた。
泣くしかない。逆に笑えるかもしれない。心は何度も嫌だと、逃げようと思っているのに体は望んでいるのだ。
私……こんな淫乱じゃない……はずなのに……
ドドブランゴが両手を私の頭の横におき、何度も挿入しようと腰をグラインドさせる。それがまた、私の体をくすぶらせた。
童貞なのか、ずっと股から臍にかけてをペニスでこするだけ。向こうもじれったいのか、鼻息荒く腰を動かす。
にちゃにちゃと、ドドブランゴの先走りの液と私の愛液が混ざり、いやらしい音が周囲に響く。
聞く者はいないのに、それに顔が更に赤くなって液を多く分泌させてしまった。
「んっ……っひ、ぅっ……」
悔しいが、認める。私は既に喘ぐ声を漏らしていた。気持ちよさのせいで。数十分も、ただ胸を触られ秘所を擦られただけで、満足できていなかったからだ。
ドドブランゴの方も気持ちよさそうではあるが、どこか不満そうな顔をしていた。……何故そんな事が判ったかは不明だが。
とにかく、そんなじれったい時間が過ぎ……ついに、ドドブランゴも我慢の限界に達したのか、私の体をうつぶせに転がした。
「っぅ、冷たっ……」
少しならば身動きの取れるようになった体だが、もう逃げる気力は消えうせてしまっていた。
尻を捕まれ、持ち上げられる。……頭に、猿同士の交尾の場面が浮かび上がった。
……あぁ、人間もサルで、ドドブランゴもサルだから、発情したっていうのかな?……ありえない。
「痛ぅぁぁぁっっっ!!!」
余計な事など、その一撃で頭の中から消し飛んでしまった。
我慢の出来なくなったドドブランゴは、既に前戯が済んだような状況になっているとはいえ、処女の膣に一気にその肉棒を突き入れてきたのだ。
痛いなんてもんじゃない。あのドドブランゴにやられたタックルなんて目じゃない。これはきっと、リオレウスのタックルを食らうより痛い。
「っきぃっ!?っひ、痛っ!!い、あっっ!!!」
そんな事も吹き飛ぶくらいに痛い。そもそも相手も理性がないケダモノなんだ。こっちの体の都合など考えず、ただ自身が気持ちよくなるように腰を動かす。
泣き叫びながら、私は動かない体を前後に揺らしながらドドブランゴを受け止めていた。
……やがて、ドドブランゴは限界に達したのか。激しく腰を突き入れたかと思うと……膣の最奥で、中に精を吐き出してきた。
「あ、あぁっ……い、いや……ぁぁっ……」
感覚で、理解できた。ドドブランゴの精液が私の子宮に注がれているという事実が。辛い、と思ったが……これで、終わったと少し安心もできた。
だが、そんな安心は直ぐに打ち消される。ドドブランゴはそのまま、再び腰のグラインドを開始してきたからだ。
「っひ、ぇ、ぁぁっ……!?」
純粋に、快感だけによる喘ぎが口から漏れた。驚くくらい、その、肉棒が体を抉る感触が気持ちよかったせいだ。
異常だとも思っていた。さっきまであんなに痛かったそこが、まったく痛みなど感じさせなくなっていたからだ。
「ん、んんぁぁぅ!っひ、いん!ん!んんっ!!」
怖い、と一瞬考えたが……やはり、そんな小さな考えもすぐに快楽の波に飲まれて消えていった。
指では感じる事のできない体の中を、ドドブランゴのペニスがどんどん抉り、私に快楽を刻み込んでくる。
次第に、私の腰は意思から離れて相手の動きに合わせてくねりはじめていた。するとドドブランゴもより快感を感じたのか、激しい動きで私を攻めたてて行く。
「っひ!っひっぁぁっ!っふ、いぅん!んっ、ぐ、ぁ、いいっ…!!いいっ!ぁっ!!」
まるで私もケダモノになったかのように、やがて行為に没頭していった。
自分から腰を動かし、汗を散らし。背後位なので動ける範囲は少なかったが……その時は、まるで愛し合う二人であるかのように、私はドドブランゴに快感を与えるために腰を動かしていた。
やがて、再びドドブランゴに限界が訪れ…我慢もなく、私の子宮に更に精液を注いでくる。
「い……ぁ、ぃっ!い…っく、イク…ぅっ!!!」
どぶっ、と体内から粘っこい音が伝わり、その音に脳をかき混ぜられながら、私ははじめての絶頂に達し、意識を手放した……。
* * *
「あの時は辛かった……」
後で知って安心した事として、ドドブランゴのペニスサイズに関する事がある。
類人猿に分類されるドドブランゴのペニスサイズは体格に反して小さく、キングサイズのドドブランゴでも大人の男性の腕ほどのサイズなのだそうだ。
あの時のドドブランゴのサイズは私の報告から最小認定されている。つまり、そんな大きいものではないのだろう。
ともかく、はぁ、と今でもたまに思い出して苦悩する。アレから私の人生は大きく道をそれたんだと思う。
いや、大筋は変わってはいないのだが。……ハンターは天職だと思うし、やめる気などさらさら無い。
……だが。やはり、道をそれたのだ。
「変に紳士的っていうか……よくわからないヤツだけど……」
あの後、私はベースキャンプ近くの湖のほとりで発見されたらしい。
鎧も砕かれて、恐らく負けただけだと処理されたようだ。……現場に、ドドブランゴの姿は影もなかったのだから。
詳しい事は判らないが、どうやらアイツが私が気絶したのを見て、あの場に放置したんだろう、と私は考えていた。
何故なら、それは2回目の敗北に意識のあるまま、同じ事をされたのだから。
427 :
418:2007/07/18(水) 16:47:42 ID:1FJ3GRYe
以上となります。
自己反省として、ちょっと改行が少なく読みづらい気がしてます。
申し訳ない。次書く時はもっと読みやすいように考えてみます。
以下何事も無かったかのようにハンターの装備談義をどうぞ
武器防具なんざ、書き手が好きなもん装備させてりゃいい。
この作品のハンターの強さじゃ設定的にも希少種装備は不自然?黒龍装備なんてありえない?
二次創作のスレで何言ってんだか。擬人化と一緒でそれもひっくるめてそういう設定、くらいに思っといたほうが楽だぜ。
429 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 16:55:20 ID:OYTnIhTq
>>427 GJ!!
だが卑屈すぎると逆にアレなんだぜ
>>427 イィィィィィィィヤッホゥゥゥゥゥゥッゥゥゥゥ!!!
久しぶりのエロエロに俺の赤フルフルが戦闘態勢だZE!
>>429 あ、いえ。単純にコピペ終了してざっと見て、右端から折り返してるのが気になっただけです。
環境の問題なんで、どれくらいで改行すればいいかちょとわからないんで、他の人の文章読んでから次のはもっと読みやすいのにしたいなぁ、と思っただけです。
卑屈っぽく取れたらすいません。
>>428 二次創作だからこそ設定を考えるべきだろ
DQの二次創作で戦士が普通にはぐれメタルの剣を持っている事に違和感が無いと思うか?
見ていてポカーンってなるのは流石に考え物
>>432 その例えなら、書き手がそういう風に設定したんなら俺は別に違和感ない。
その戦士が歴戦の戦士なのか、それとも駆け出しのひよっ子なのか判断できないし。
逆に聞きたいんだが
>>375で挙げられているゴルトだが、「このハンターは希少種を狩猟しまくってゴルトリコーダーを手に入れました」って設定があったらいいのか?
それとも、そういう設定があっても「モンハンの設定上、希少種が狩猟しまくれるわけない」って事になるのか?
>>433 すまない例えるにしても言葉が足りなかったな
ゴルトに関しては討伐するのと素材集めは全く別のものと思うんだ
討伐となると対象の体はずたずたになってるだろうから有効活用出来る部分は少ないだろうし
専門のハンターなら生態を完全把握して無力化した状態で始末
んで鱗から骨まで全部捌いてウマーって感じで
全部自分一人でやる理由もないんだから専門のハンターと取引して素材を入手するって手段もあるんじゃないのかね?
飛竜種や牙獣種にしても大きさ考えると一匹で十分素材は入ると考えてる
435 :
434:2007/07/18(水) 20:06:09 ID:xP7YGICm
まあでもこんな考え方しなくてもサクラリコーダーくらいにしたらもっと簡単に落ち着くけどね
これだと結局希少種の乱獲ありそうだし
書いた本人が言うのも何だがんなもん深く考えずに妥協した方が楽しめるよね
>>427 GJ!普通の元気娘って感じが可愛い。
女の子のザザミ装備はいいものだ
この流れから行くと後編がどうなるか実に楽しみなんだぜ
>>434 結局、モンハンに限らず二次創作は原作の設定に沿ってないと嫌だってタイプか?
ならこれで最後。自己完結もしてるっぽいし。
正直、そこまで考え付くなら、作品内では書かれてないけどこういうことなんだろなー、って自分の脳内補完で済ませとけばいいんじゃねぇの?
いや、駆け出しハンターが説明もなく黒龍装備とかならつっこんでいいと思うけど、
書き手にお前さんが考えるような細かいとこまで描写しろっていう訳にもいかんでしょ。
こっちみんな!
ごめん誤爆
440 :
418:2007/07/18(水) 20:40:44 ID:BsbbHRvT
うす。仕事場から帰ってきました。
流石に仕事が暇だからと会社でエロSS書く自分はどうなのかと悩みつつ。
否定的な意見がないようですので後編がんばります。たぶん明日の同じ時間くらいに。
所でバッドエンドとグッドエンドは皆さんどちらが好みでしょーか。
頭の中で最後付近までは出来てるんですが、オチに悩んでます。
グッドバッド両方書く
バットエンド希望。
俺はグッドエンドがいい。
バッドグッドエンド両方をだね
グッドエンドがいい。
どうでもいい話だが、ヒトの乳ってものが発達したのは、ヒトが直立するようになって目線が高くなったからだとかな。
成熟の目印であるはずの肉付きのいいおけつが、目線より随分低い位置にある。コイツは分かりにくいなぁと。
女の体の成熟した印ってのをもっと高い位置に付けて分かりやすくしなきゃ!ってんで、乳は尻に似た姿へと膨れていったそうな。
個人的は小さい胸も好きだ
446 :
前スレ778:2007/07/19(木) 00:46:00 ID:aSEfWzH8
ようやく打ち上がったんで前スレより続いているSSを投下。
今回は文面の都合(文字数が多すぎるとか)で投下話数が
多少増減するかもしれない。だが私はあやまらない。
以下10レス前後頂戴する。
『……交尾、するか……?』
彼女が繰り返し問いかけてきたが、そこには彼女自身の願望が込められていた、
と言ったら笑われるだろうか? 彼女の方がオレを誘いたがっていた、などと思
うのはある種の自惚れであろうか……?
どちらにせよ、その時のオレにはそう聞こえたし、それを嬉しく感じていたこ
とも認める。だが、それでもオレは欲望に抗った。ここで刹那的な肉欲に流され
たら、双方にとって悲劇的な結末を迎えるであろう強い予感があったのだ……。
オレは深呼吸をし、ゆっくり立ち上がって彼女の顔を正面から見た。人間の成
人女性の平均に比べるとやや長身の彼女だが、それでもオレの方が上背が(彼女
が変身する前なら)あった。彼女はオレの目を見上げるように静かに視線を受け
止め、オレが彼女の身体を下側から順に見上げていったのとは逆に、オレの顔か
ら首筋、胸、腹へと徐々に視線を下げて行く。
オレは彼女に対して欲情などしていないと口にしてはいたが、言葉とは裏腹に
男のシンボルが強く脈打ち、淫らな肉の期待に震えていることを強く意識してい
たため、彼女の視線がそこに降りていくのを見て恥ずかしくなった。パンツも脱
いでしまっていたので、文字通り全裸であったこともある。多分、今のオレは耳
まで赤くなっているに違いない。
「だ、ダメだ! 見るな……!」
誓って言うが、オレは彼女の視線が下に向くのを止めたかっただけだ。思わず
手を伸ばし、右手は彼女のほっそりした顎を、左手は彼女の肩を掴んでいた。彼
女の肌に触れたいという気持ちが皆無であったかと問われたら……実はかなり怪
しい気もするが、それ以上の意図はなかったのだ。
少なくとも、彼女の方からオレに触れてくるまでは。
『……羽ナシ……オマエ、身体……きれい……』
「飛竜」である彼女が人間の裸の肉体を目の当たりにしたら、刺激されるのは
食欲であるとオレは信じて疑わなかった。しかしどうだ、実際に彼女が刺激され
たのは、まぎれもない性欲の方ではないか。
もしかすると、オレがそうとは知らずに行っていたらしい「飛竜」の求愛行動
――雄が暴力で雌を屈服させ、その後に食肉を与えるという謎に満ちた行為――
が、異種族のオレを性の対象と誤解させる一因になっているのかもしれないが。
だが何にせよ、彼女はオレが自分に触れたことを問いへの答えだと思ったに違
いない。彼女の方から歩み寄り、掌でオレの胸や腹を優しいといってもよい手付
きでそっと撫でる……そしてそのまま身体を預けてきたのだ。
「ッ……!」
オレに寄り掛かるように、ほっそりとした肢体を押し付けるようにしてきた彼
女の髪が首筋をくすぐり、その熱い吐息が胸板に吹き掛けられた途端、ただでさ
え抑えの効かなくなりつつある欲望が暴走し、理性が崩壊しそうになった。
『……羽ナシ……身体、くっつく、気持ちいい……』
彼女はオレの肌の感触が気に入りでもしたのか、小動物が信頼しきった飼い主
に甘えるかのように左右の頬を何度も擦り付け、ますます身体を押し付けてくる。
オレの腹の辺りで丸い二つの肉感的な「何か」が押しつけられ、柔らかく形を変
えているのを感じると、オレはほとんど泣きそうになっていた。
どちらかというと淫蕩な肉欲というよりは健全なスキンシップによる心地よさ、
「飛竜」にとっては初めてであろう他者との触れあいによる快適さを求める行為
であったのかもしれないが、己の行為がどれだけ男の性を刺激する過激な接触で
あるのか、おそらく彼女自身は気付いてはいまい(そしてそれがまた恐ろしい)。
「う、うぅっ……な、なぜ神はオレにこのような苦行を……!」
ロクに信じてもおらず、日頃祈りの一つも捧げない神に文句を言いつつも、オ
レは痩せ我慢を続けた。だがそんな苦悩など微塵も感じていないらしい彼女は、
己の欲望に正直だった。正直すぎた。オレが全身を硬直させて目を白黒させてい
る間にも、人間を堕落させようと恐るべき雌火竜の攻撃は続いたのだ。
『羽ナシ……固い……熱い……』
川辺の冷たい外気に晒されつつ疼く欲望にそそり立っていた肉茎に、彼女の柔
らかな肉体――川の水に濡れているにもかかわらず、熱く、吸い付くような肌の
感触――が押し付けられた途端、思わず腰を引いてしまう程の甘い痺れが背筋を
這い上がり……オレはまるで初心な女の子のように喘いだ。
「あ……あぁ……うくッ……!」
歯を食いしばり息を整えようとするが、彼女がモゾモゾと身動きする度に肌と
肌が擦れ、官能が高められてしまう。人間的な思考、理性が揺らいでいき、ただ
目の前の女が欲しい、という根源的な欲望に精神が塗りつぶされようとしている。
早鐘のように打つ鼓動が耳の中でうるさく、考えるという行為の邪魔をする。己
の心臓ですら主人を裏切って誘惑に身を任せろと囁いてくるかのようで、オレの
我慢も限界に達しようとしていた。
「ま、待て……ダメだ、落ち着け……!」
果たして、オレの台詞は自分と彼女のどちらに対してのものであったのか。
口では拒否しながらも、オレは彼女を押し退けようとはしなかった。それどこ
ろか、震える両手は知らない内に彼女を抱き締めようとその背中に伸ばされ、寸
での所でそれに気付き、慌てて手を引っ込めるということをすでに数回繰り替え
していた。
『……羽ナシ……交尾……私、熱い……交尾……交尾、したい……』
「……ッ!」
ちょっと想像してみてもらいたい。目の前に野性的な瞳の輝きを持つ全裸の美
女が居て、その女の顔がモロに自分の好みで、身体の方も文句のつけようがない
素晴らしいものであったとしよう。同じように全裸である自分に女の方から抱き
着いてきて散々誘惑された挙げ句、下から見上げるようにして「抱いて」などと
言われたら……これを断ることがどれだけ苦痛であるか、健康な肉体を持つ男性
諸氏には今さら説明するまでもないだろう。この時のオレが置かれた状況とは、
まさにそういうものであったのだ……。
と、その瞬間、ある異変が――果たしてこの異変が起きなかったら、オレは一
体どうしていたのか。それはまさに神のみぞ知る、といったところだ――オレと
彼女を襲った。
突然、空気を打つ力強い羽ばたきの音が川辺に木霊し、派手に砂ぼこりをまき
散らしながら別の「飛竜」が飛来したのだ。
「飛竜」は大柄で、全身から凶暴な雰囲気を発しているように思えた。月明か
りが逆光となって顔は見えなかったが、口元の辺りで炎をまとった息吹きが渦を
巻き、その正体が火竜の眷属であることを物語っていた。
「……リオレウス……!」
ゆっくりと地に降り立った「飛竜」の姿は、腕の代わりに一対の翼と足の巨大
なカギ爪、長い尾を生やした大柄な異形の人間の男であり、自ら吐いた炎の息に
照らされた顔は深紅のウロコに被われ、狂気を孕んだ眼光と憎悪に歪んだ口元、
剥き出しの乱杭歯のせいで見るも恐ろしいものになっていた。とてもではないが
好意的な意図の来訪とは思えなかった。
雄火竜は寄り添うように立っていたオレと彼女の方を睨みつけてくると、逞し
い胸がさらに膨れ上がるほど深く息を吸い込み始めた。
「ヤバッ……!」
オレは慌てて耳を塞ごうとしたが間に合わず、雄火竜の凄まじい咆哮をモロに
浴びせられるはめになった。ほとんど物理的な圧力を持っているように感じる程
の大声量は、川向かいの崖や固い石畳に反射してさらにその威力を増していた。
ハンターたちが「飛竜」種と戦う際、ある意味でもっとも恐れられているのが、
このバインド・ボイスと呼ばれる雄叫びだった。当の「飛竜」たちにとっては単
なる威嚇や、挑戦を意味する程度のものでしかないのかもしれない。
しかしそれを聞かされる側からしてみればたまったものではなく、耳をつんざ
き鼓膜を破るほどのその咆哮を至近で叩き付けられると、激しい頭痛と本能的な
恐怖で金縛りにあったかのように身がすくんでしまうのだ。
大の大人であっても「飛竜」の咆哮を耳にして失禁してしまった、という者は
実は少なくない。女子供や老人ならショックで心臓が止まりかねないだろう。
ベテランハンターの中にはこの咆哮の克服のためだけに、高い金を払って特製の
耳栓を用意する者も居る位なのだ……。
雄火竜の雄叫びが雷鳴の如く轟き、耳の奥、頭の中を直接ハンマーで殴られた
かのような衝撃でオレはひっくり返りそうになり、苦痛に呻いてヒザをつかずに
いるのがやっとだった。両耳を塞ぎ、何とか雄火竜の正面から逃れようとフラつ
く足を無理に動かしたのだが、痛みと混乱で自分がどこに向かっているのかも判
らない有り様だった。
彼女、雌火竜の方は何時の間にか戦闘形態に変身を終えており、翼となった両
腕を広げながら新たな「飛竜」を威嚇していたが、次の瞬間、猛烈な勢いで突進
してきた赤いウロコの雄火竜の体当たりを避け切れず、背後に居たオレを巻き込
んで吹っ飛ばされた。
「がぼっ……ごぼッ……げほッげほッ……!」
飛ばされた先が用水路の方だったのは不幸中の幸いだった。これが石畳の上や
岩場であったら、この一撃で鎧を着ていないオレは昏倒、悪くすれば死んでいた
だろう。水中に没し空気を求めて喘いでいたが、すぐに立ち上がって息ができる
ようになった。これは裸で防具の重さがなかったからだが、こうした偶然や幸運
は(護符があろうと)そう何度も続くまい。
まだ耳の奥に鋭い痛みが残ってはいたが気にしてはいられない。岸に突き立て
ておいた愛剣の姿を求めて周囲を見渡し、位置を確認するとオレは走り出した。
『私、狩り場! オマエ、出て行け!』
駆けながら横目で見ると、彼女は体躯が自分の倍くらいはある雄火竜と川中で
対峙していた。彼女の動きは機敏で、雄火竜に捕まらないように翼を使いながら
水面上を後退し、足のカギ爪を振りかざしている。雄火竜はそんな彼女に向かっ
てしゃにむに突進を繰り返し、いらただしげに猛り狂っている。
『メス! メス! オマエ、オレのモノ! オレと交尾だ! オレと交合しろ!』
『オマエ、キライ! キライ! あっち行け!』
密林に雄火竜が姿を現すことは珍しい。雌火竜より大柄な身体と大きな翼の持
ち主であるリオレウスたちは、木々が密集しすぎた場所や狭い洞窟の奥など、飛
び回るのに支障がある場所を嫌うのだ。
それが一体、何故こんな場所にやって来たのかと思ったが……考えてみれば今
は繁殖期のまっただ中だ。雄は雌の姿を求め文字通り飛び回っているに違いない。
ようはあのリオレウスは女が欲しくてトチ狂ったスケベ野郎ってコトだが、彼
女の方にその気は無いのか、隙あらばカギ爪を突き立てようという勢いで激しく
拒絶している。先はオレにあれほど「交尾交尾」と繰り返し言っていたコトと比
べるに、随分と待遇と態度に差がある気がする。
もしかすると彼女は、今ではオレに敵意どころか並々ならぬ好意を持っている
のでは……? などと愚にもつかぬコトを一瞬思って笑みが浮かんだが、そのお
かげでオレは事態に対処すべく冷静に考える余裕を持つことができた。
雄火竜は己の欲望を満たすためにやって来たが、雌火竜の方はその気がない。
だから「飛竜」同士の凄まじい決闘が行われることになるのだが、見た限りでは
雄の方が有利なようだ。彼女は素晴らしく身が軽く、一見雄火竜を翻弄している
かのように見えないこともないが、その実、体力の絶対的な差が現れ始めており、
徐々に追い詰められていた。
このままでは彼女は体力勝負で押し切られ、組み伏せられて敗北を喫すること
になるだろう。そしてその後は……雄火竜は食肉……この場合、もっとも近い場
所で手に入る肉と言えば……そう、オレだ。オレを殺して(あるいは生きたまま)
食肉として彼女の前に突き出し、彼女と交尾をしようとすることになるのだろう。
「クソッ……人妻との浮気の現場に怒鳴り込んできた旦那にブッ殺された挙げ句、
ベッドイン前の軽いオードブル代わりってか? 冗談キツイぜ……」
彼女と飛来した雄火竜とがグルになっていたのならともかく、そういうことは
ないのだから事実とは違うのだが、結果としては「飛竜」の美人局(つつもたせ)
にひっかかったようなもの。そして巻き上げられるのは金銭ではなく、一つしか
ない命だというのだから酷い話もあったものだ。
愛剣を手にすることができたオレが嬉しくない未来を想像している内に、彼女
の悲鳴と雄火竜の勝利を確信した笑い声が上がった。
『……は、離せッ! オマエ、キライ! キライ! キライ……!』
『ウハハハハハッ! メス! メス! まぐわる! 交尾する!』
彼女は浅瀬で組み敷かれ、雄火竜にのしかかられていた。
雄火竜は戦闘形態を解いて両腕が人間と変わらぬそれになっており、太い指で
彼女の翼爪の部分――変身前なら掌から手首の辺り――を押さえ込み、足が動か
せないように彼女の大腿部の上に腰を降ろしている。
『ヤダ! ヤダ! キライ! キライ! オマエ、イヤ! 交尾、イヤ……!』
『オマエ、オレのモノ! オレ、オマエの上乗る! まぐわる!』
彼女は必死で抵抗を試みていたが、こうまで完全に押さえ込まれてしまうと純
粋な筋力差はいかんともし難く、形勢の逆転は不可能に見えた。それでも彼女は
必死に身を振りほどこうと足掻き、牙を剥いて威嚇を繰り返している。だが勝利
に酔った雄火竜にはそんな彼女の抵抗すら心地よいものなのか、吠えるように短
く笑うだけだった。
『オマエ、オレと交尾、タマゴ産む、タマゴから子供出る。オレ、子供喰らう!』
雄火竜は狂気めいたことを口走りながら彼女の首筋に噛み付いた。オレの居る
場からでも牙が甲殻やウロコを喰い破り、皮膚と肉を裂く音が聞こえてくるほど
の深手だった。赤い鮮血が川の水に混じり、ゆっくり拡がりながら流れていく。
『い、痛い……! イヤ! イヤ! 離せ……!』
何故、「飛竜」種が強い独立独歩の精神を持ち、群れを造らず孤独な存在であ
り続けようとするのかが今判った。
子を成すために交尾をするとしても、雄の「飛竜」は子を育てたいとか、後の
世に自分の血を残したいなどとは微塵も考えておらず、ただひたすらに己自身の
欲望を満たすことしか頭にない。産まれた子供は無力な獲物、食べ物程度にしか
思っていないのだ。
だが母体はそうではないのかも知れない。身の危険を感じた子が本能的に親元
を離れるのか、それとも母親が早々に子を追い出すのかは知らないが、少なくと
も腹を痛めて産卵したのは、我が子を父親に喰い殺させるためではないはずだ。
そしてそんな実情があるから、発情期の雌雄間ですら「飛竜」種は戦うのだ。
雄は雌を暴力で屈服させ、無力化した上で交尾に及ぶ。事実上の強姦だ。「飛竜」
同士の戦いは凄まじい殺し合いだから、雌は死の寸前まで痛めつけられる。そこ
で失った血を取り戻させるために食肉が必要になるというワケだ。
あまりと言えばあまりにも凄惨な「飛竜」の生態に、オレは胸が悪くなる思い
だった。血も涙もない怪物、という言葉は、まさに「飛竜」種の雄のためにある
ような言葉だった。
オレがそんなコトを考えている内に、雄火竜は長い舌を伸ばして彼女の首筋に
押し付け、傷口から流れ出る血をすすりだした。まるで彼女の血と苦痛が上質な
ワインでもあるかのように咽を鳴らして味わい、堪能していた。
同種族間の自然な営み、子を成すための行為なのだと判っていても、おぞまし
くも痛々しい光景にオレは目を背けずにはいられなかった。彼女の声からはすで
に力が失われており、目には大粒の涙が浮かんでいたのである……。
『イヤ……イヤ……イヤ……』
本来ならオレはこの時、迷わずに逃げ出すべきであった。2頭の凶暴な火竜が
取っ組み合いをしている現場に居合わすようなことになった場合、まともな精神
の持ち主なら一目散に逃げだしているはずだ。雌雄間での決着が付き、次に狙わ
れるのは間違いなく自分だと判っているのなら尚更のことだった。
しかし……オレは逃げ出すことができないでいた。彼女の目から大粒の涙がこ
ぼれ落ちた時、オレの中で何かが膨れ上がり、弾け飛んだ。
それは怒り。複雑な愛憎の入り交じった、だが純粋な怒りだった。
半日かけて死闘を演じ、言葉が通じることが判ってからは友情に近い信頼関係
を築けそうな所まで辿り着き、最後の最後には誤解から生じた事態とはいえ情を
通じる寸前までいった女――この時はすでに雌という言葉を使うのは彼女に失礼
な気がしていた――をオレから奪い、傷つけ、泣かした雄火竜への怒り。
そして何より、彼女に惹かれていながらもそれを認めようとせず、いざという
時には守ってやることもできないくせに信頼だけは欲し、それが勝ち取れず、彼
女が勝ち目のない戦いに一人で身を投じて身の破滅を招いたコトに拗ねた挙げ句、
「人間としてはそれが当然」などと賢し気な言葉で自身を偽り逃げ出そうという
情けない男、卑怯で矮小な自分自身に対する怒りだった。
認めろ。彼女に惹かれていることを認めるのだ。そして自分にとって大切な存
在……惚れた女が他の男に乱暴されているのを黙って見過ごしてよいのか……?
「……いいワケあるか、このヘタレ!」
オレは後先かえりみず、愛用の大剣を手に走りだしていた。
頭の片隅にある冷静な部分が「バカ、やめろ、とっととこの場から逃げろ!」
と警告を発したが、心の奥底からマグマのように沸き上がる熱い怒りがそれを飲
み込んでしまい、憎むべき敵、暴虐な雄火竜の血を求めてオレは吠えていた。
「彼女を離せ、トカゲ野郎! オレが相手になってやる!」
王宮に仕える騎士が決闘を申し込むが如き堂々たる挑戦の叫びではあったが、
昨日までのオレが「飛竜」相手にそんなマネをする奴を見たら、完全に狂ってい
るか本物の馬鹿だとでも思ったことだろう。だが今のオレは自身の卑小さ、彼女
を裏切り逃げようとしたことを恥じる気持ちでいっぱいで、それら全てを雄火竜
と共に打ち砕いてしまいたかったのだ。決して自暴自棄になったワケでも、恐怖
で頭がおかしくなったワケでもない……はずだ。
とは言うものの、ハンターとして培ってきた経験と本能は、裸のまま「飛竜」
と交戦することを全力で避けたがっていた。
準備万端の状態であったとしても、対「飛竜」戦では叩いては逃げ、逃げては
叩くをしつこく繰り返すことで獲物の疲弊と焦りを誘う。そうやって少しずつ力
を奪っていき、最後には寝込みを襲ったり罠をしかけたりして仕留めるのだ。
つまり今オレがやっているように不意を突くこともせず、正面から堂々と名乗
りを上げた上、素っ裸に大剣一本という状況で向かっていくのでは殺して欲しい
と言っているようなもの、自殺行為に等しい愚行だった。
そうと判ってはいても……すでに名乗りを上げてしまったのだから仕方がない。
彼女にまたがるようにしている雄火竜の前に立ちはだかったオレは、剣を背負う
ための皮ヒモの位置を調整しつつ相手の出方を待った。
『……キサマ、しゃべれるのか? 羽ナシ……ではないのか……!?』
どうやら、人間の言葉が通じるのは彼女だけではなかったらしい。
オレ自身、前触れもなしに突然連中の言葉が判るようになったのも謎なのだが、
どうして今日は出会う「飛竜」の方でも、ことごとく人間の言葉を解する者ばか
りなのだろう? と驚き不思議に思ったが、雄火竜の受けたショックも相当なも
のであったらしい。口をポカンと開けオレを凝視している。オレは言い放った。
「羽ナシがしゃべれたらどうだってんだ、え? 女をいたぶるしか能の無い変態
野郎め。火竜の雄ってなぁとんだ臆病な腰抜けだな。女を殴ることはできても
羽ナシと戦う勇気すら出てこないとはな! さぁ来いよ、トカゲ野郎!」
人間の言葉を理解できないのなら何を言っても侮辱されたことにも気づくまい
が、この雄火竜はオレの言葉を聞き分けている。「飛竜」の持つ価値観では理解
し難い罵倒が含まれていたかも知れないが、少なくとも面と向かってコケにされ
たことだけは判ったようだ。
『……ト、トカゲだと!? キ、キサマ……オレがあんなチビだと言うのか!
あんな無力な獲物と同じだと抜かすか! 羽ナシめ、許さんぞッ……!』
片言めいた、短い単語でしかしゃべれないのだとばかりと思っていたが、意外
にも雄火竜はちゃんとした会話ができるらしい。彼女に対しては欲望剥き出しの
ケダモノのようだったので、てっきり知能のほども知れたものだと思っていたの
だが……怒りを覚えると冷静になるタイプなのか? 実にらしくない話だ。
まぁ、それはともかく冷静になられるとそれはそれで危険な気がする。ここは
あえて怒りを煽ってモノを考えられなくしてやろう。注意をこちらに向けさせ、
この場から引き離して彼女が逃げ出す時間を稼ぐのだ。
「そんなにトカゲって呼ばれるのがお気に召したか? なら好きなだけ聞かせて
やるよ! やーい、トカゲトカゲトカゲトカゲトカゲトカゲーッ!」
『キッ、キサマーッ!』
まるで子供の口喧嘩のレベルだが、この雄火竜にとってはどうにも許せぬ屈辱
であったらしい。吠えると同時に戦闘形態に変身し、彼女の上から身を起こして
オレに突進してきた。まずは狙い通りだった。
銀色の月光の下、密林に眠る古代遺跡の用水路にて雄火竜との死闘が始まった。
雄火竜リオレウスを狩る時に気をつけることは、まず第一にズバ抜けた突進力
である。何の予備動作もなしに加速してくるこの体当たりをまともに喰らったら、
最高級の防具で身を固めていても無事では済まない。ましてや今のオレときたら
ベルトを腰に巻いただけの素っ裸、一発で昇天間違いなしである。
オレは慌てず騒がず、努めて冷静になろうとし、逃げ出したくなるのを堪えて
正面で待ち受ける。可能な限り引き付けておき、横っ跳びでかわす。雄火竜は突
進の勢いを殺せず石畳の上を滑り、鎮座していた石の柱に頭から突っ込みそうに
なってたたらを踏んだが、強靱な足腰が身体を支え、転倒と追突をまぬがれた。
オレはその間に体勢を立て直し、少しでも彼女から離れようと移動している。
視界の隅で、彼女が弱々しく起き上がろうとしているのが確認できた。
「そらそら、どうしたトカゲ野郎! 鬼さんこちら、っとくらぁ!」
『羽ナシめ! 逃げるな! 戦え!』
「ケッ、笑わすな! オマエみたいなトカゲなんぞ、弱すぎて相手にもなるか!」
『い、言わせておけば……!』
口では軽薄に罵倒しているものの、オレは内心焦りだしていた。雄火竜の爆発
的な速度は、そう何度もかわせるものではないと判っていたからだ。このままで
はジリ貧だ。逃げ回っていた彼女が捕まってしまったように、いずれオレも同じ
運命を辿ることになるだろう。もっともあの勢いで吹っ飛ばされたら、おそらく
苦痛は一瞬のこと。生きたまま臓物を貪り喰われることになるのではないか、と
いう心配をする必要だけはなさそうだ……。
「そら来いよ、トカゲ。そんなトロい動きじゃハエが止まるぜ!」
彼女が起きて逃げだせるようになるまで、まだしばらくはかかりそうに思えた。
雄火竜の注意を引き付けたまま少しずつ木立の方に移動していき、彼女が逃げ出
すのが見えたら、オレも回れ右して密生した木立に飛び込み本格的に逃走に入る、
これがこの場で考えられる限りの作戦だった。
かなり行き当たりばったりの計画ではあったが、道具らしい道具もないのでは
他にしようもない。そこまで考えて、オレは狩猟用の小道具を詰め込んである背
負い袋の存在を思い出した。
荷の中には何があった? ……そうだ、閃光玉があったはず……他には何が残
ってたっけかな……?
周囲を素早く観察し、鎧や衣服と共に放り出してある袋を見つける。雄火竜の
攻撃を避けつつそちら側に移動できないかと考え、飛び出す機会を伺っていたが、
荷のそばに近寄るということは、まだ逃げだせないでいる彼女のそばに逆戻りす
ることでもある。悩みどころであった。
と、そこで雄火竜は妙なことを始めた。その場に留まり、足のカギ爪で大地を
削りながら低く唸りを上げだしたのだ。吐息に炎が混じり、目だけが憎々し気に
オレをねめつける……火竜が独特の怒りのダンスだった。
火竜に限らず、「飛竜」たちは種によにって独特のクセというか、状況に応じ
て様々な動作を見せることがある。今目にしているこの怒りのダンスは火竜独自
のもので、雄火竜の内包する怒りが頂点に達しようとしていることが判った。
「うへェ……こりゃ……ち、ちょいとばかり調子に乗りすぎた……かな?」
オレはやや逃げ腰になりつつも、その隙に滑らかな石畳の上を素早く横切って
背負い袋を拾い上げるが早いか、慌てて口を開いて中身を確かめた。
しかし、あてにしていた残り1つの閃光玉以外ロクな物が残っていなかった。
ペイントボールが3つ、捕獲用麻酔玉が2つ、ツタの葉が2束、砥石が数個、
素材玉、マヒダケ、角笛が1つずつ。光蟲を探していて見つかった米虫が数匹に
釣りバッタ数匹、それに小型の竜骨が2本ばかり……あとは鎧の留め金にぶら下
げていた肉焼きセット一式にボロいピッケルが1本、腰の皮ベルトのホルスター
に納められた回復薬が2本、ハチミツ入りの特製のやつが1本、という悲惨な有
り様だった。
「ち、畜生! オレの馬鹿! せめてタル爆弾とか残しとけよッ……!」
数時間前の自分を罵ったところで得るものもなく、何とか手持ちのブツだけで
勝負をするしかなかった。
「……特製の大タル爆弾とまでいかなくても……痺れ罠、いや、せめて痺れ投げ
ナイフくらいあれば……いやいや、贅沢はいわん、閃光玉があと一個……」
無いものねだりをするのは人の性だ。しかし、文字通り裸で「飛竜」と対峙し
てるんだから、これくらいは許されるはず。同業者ならきっと今のオレのおかれ
た絶望的な境遇に同情してくれるに違いない……。
ともあれ、オレは袋を背負っていつでも中身が取りだせるようにすると、腰の
ベルトから特製の回復薬が入った鉄の小瓶を抜き出し、首の傷口を押さえながら
半身を起こしていた雌火竜に向けて放ってやった。瓶は澄んだ金属音を立てて石
畳の上、彼女が横たわっていた浅瀬の中に転がる。
「傷に効く薬が入ってる、栓を抜いて中身の半分を傷口に擦り付けるんだ。それ
で血が止まるはずだ! 残りの半分は苦いが飲み込め、少しは楽になる!」
彼女は頸動脈から流れ出る鮮血で全身をまだらに染め、その姿は痛々しいこと
この上なかったが動きはしっかりしていた。瓶に手を伸ばし拾い上げ……そこで
戸惑ったように動きを止めた。
『……クスリ? セン? 何だ?』
『飛竜』に道具の説明をいちいちしていたら、いくら時間があっても足りない
ということにオレは気付いた。どう言えば判ってもらえるか考えようとしたが、
そこへ雄火竜が再び突進してきたので、オレは大慌てで背負った大剣を楯のよう
にかかげ、刀身に身を隠すようにして衝撃に身構えた。
怒りに燃える雄火竜の口元から炎の尾がたなびき、その身体が深紅の巨大な砲
弾のように突っ込んでくるのを目にした時、とてもではないが避けきれる速さで
はないと咄嗟に判断したからだ。
「瓶の……首を引っこ抜いて血をすすれ! 少し苦いが吐き出すな! 半分は
傷口にかけろ、肉を喰わなくてもそれで血を止め……ぐぅッ!」
オレが最後まで言い終わる前に雄火竜の鉄より硬い甲殻と大剣の刀身が激しく
ぶつかり、擦れて耳障りな音と共に火花を散らす。
「飛竜」に判り易い表現を選んだつもりで叫んだが、彼女がそれを理解したか
どうか確かめている余裕は無かった。舌を噛まないよう、歯を食いしばるのに忙
しかったからだ。
ランス――見るからにゴツイ、対「飛竜」用の騎兵槍――と合わせて使う分厚
い大楯ならともかく、それ意外の武装で正面から「飛竜」の突進を受け止めよう
とするのは上策とは言えない。仮に最後まで突進に引き倒されずに支えることが
できたとしても、その後は純粋な力比べとなる。そして結局は圧倒的な筋力差に
より武装と地べたの間で押しつぶされるのがオチなのだ。
「……の、野郎ッ……!」
だから足を踏み変えて上半身を捻り、雄火竜の突進の勢いを流そうと試みる。
しかし普段なら何とかこなせたであろうこの回避行動も、裸、裸足では上手く
いかなかった。雄火竜の怪力は想像を遥かに越え、体当たりの衝撃で刀身を後ろ
から押えていた左腕の骨にヒビが入るのが判った。石畳の上で踏ん張った足のウ
ラの皮が破れ、自らの血で滑ってヒザが落ちる。
受け流すというより巻き込まれる、といった方が正しい勢いでオレの身体は宙
に投げ出され、きりもみをうって背中から石畳の上に叩き付けられた。
「……ッッ……!」
不格好ではあったが何とか受け身を取れたし、背負い袋があったおかげで最悪
の事態は免れた。それでも肺の中の空気が全て強制的に吐き出され、苦痛のあま
り目の前が暗くなる。
『羽ナシ! 立て! くるぞ!』
彼女が警告の叫びを発してくれなければ、オレの一生はココで幕を閉じたこと
だろう。忘却の闇に沈みかけた意識が浮上し、何とか失神を免れる。
だがこの時オレが覚えたのは、死を直前にした焦燥感ではなく、奇妙で強烈な
違和感。「飛竜」の言葉や会話のあり方について、何か大きな問題、疑問にブチ
当たった気がしたのだ。
「飛竜」種の会話……それは目を見開いたり、眉を寄せたりという表情の変化、
あるいは首をかしげる、尻尾の角度を変えるなどの身振りで意志を伝え、身体か
ら発せられる臭気や唸り声の違いによって感情を察知するなど極めて原始的な、
言ってみれば動物的なやり取りだ。本当の意味での言語とは呼べないようなもの
なのだ。
つまり互いに詳細な意志を疎通させたいのなら、常に相手を視界に捉えていな
ければならず、視覚、聴覚、嗅覚、場合によっては触覚、味覚と五感の全てを駆
使しなければ会話は成立しない。どれが欠けても、正確な意味は伝わらないとい
うような不完全な言葉なのである。
にもかかわらず、オレは彼女の意志、警告の意味を正確に理解できた。何故?
どうして半ば意識を失い、彼女の姿を見ることもなく、声も聞こえないような状
況で彼女の言葉が理解できたのだろう……? 言葉? 言葉だったのか? アレ
は言葉というより、彼女の声、思いが直接……。
『羽ナシ! 起きろ! 何してる!?』
ぼんやり物思いに耽っていたオレは、再び彼女の『声』によって覚醒した。
体中が悲鳴を上げていたが、本能がすぐに立ち上がって次の攻撃に備えるよう
四肢に命令する。そうしなければ死ぬ。間違いなく殺される。オレは声も絶え絶
えに喘ぎながら、愛剣を杖代わりに立ち上がろうともがいた。
オレが考えごとをしていたのはほんの一瞬の間のコトだったのかもしれないが、
この一瞬は高くついた。火竜がその名を冠するに至った炎の息吹、口腔から放た
れる火の玉の輝きが夜の闇を切り裂いたのだ。
オレは恐怖で身をこわばらせ、迫り来る死の予感に凍りついた。