嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その36

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSSを扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1178928067/

■まとめサイト
2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html

■避難所
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二人目の子
http://www2.atchs.jp/dorobouneko/
2名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 22:57:16 ID:URDcIW0H
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第19章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1179756241/l50
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板 その2
http://book4.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1172035731/
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレin角煮板3rd
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1176121368/
誘導用
【モテモテ】ハーレムな小説を書くスレ【エロエロ】8P
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1174204650/
ヤンデレの小説を書こう!Part7
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1180240137/
ほのぼの純愛 9スレ目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171372657/
●●寝取り・寝取られ総合スレ4●●
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1164867401/
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179863962/

3名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 22:58:33 ID:URDcIW0H
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
4名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 23:00:02 ID:URDcIW0H
現在は避難所にも幾つかのスレが立てられているようなので、そちらにも足を運ばれてはどうでしょうか?
5名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 23:08:16 ID:kMVEIHwx

      //      ,.へ          ー‐-、` 、:.:.::/  \ \
__ _,. ‐'´/      /                ヽ/ k'^ヽ、   ヽ ',
`ヽ、__/     /  / / / /            ヽ ∨ !:.:.:.:.:.ヽ、  ', !
     / /  /  ,' / / / /  , ヘ、       ',   |:.:.:.:.:.:.:.:ヽ、 ', |
.    / /  /   l ,' | i_!__| |  | |__|_| !  |  i | ト、:.:.:.:.:.::.:|  | そ、そ、その他のSSスレに
    /|イ  /   ' | !  ィ'∧ハ∧!  |,ハト、ノノ`ヽ  ,' | ,' \:.:.::.:.::|  |行っちゃダメだよ・・  
   ,'  |   !  | .| |  N,r‐=ト    斤―-、 / / N   ヽ、:.:|  |そんなことしたら・・  
   /  '., ト、 l  | ト、 〈 ヒ′;;|     ヒ′;;}ヾ//  !      ー'  |
.  /    ヽ|. \ト, |  ヽ| 辷_.リ     辷_.ソ 7  ∧         | あなたを・・・・して
 /         | |   ', ::::::::::::  ′  ::::::::::: /  ,'  ',        |
./           /レ∧   ト、 ::::::  - ―  ::::: /   ,   !           |私も・・ぬから・・
       /  / ',   ! > 、     ,. イ   l    !           |
      /   , '   !  |  _├`-ー- ´┤_ |  |   |         |
    /   /    l   l'´r'::::::::::::::::::::::/ `|   |    !           ',
   /   /   _,.-¬   | ヽ_, -‐- 、_/  |   ト、_  ',         ヽ
 /   /   ,rヘ ', !   !   ', ,r' ミリ /   |   |/ /ヽ、ヽ
/     /   | ヾ\∨  ,'   丶  /    |   レ' , ' |  \
   /    | \/   i    ,=∨=、,,  |  |/ |   \
 /      |  ,'   | ,..='",.=q=、、゛'' 、!  i|    !     \
/          |   !,ヘ、 ト!",.イ( /ハト、))\ リ  |.   l      ヽ、
            !  . リ ヽ !イ   ー7,':||:i |ー'、 / | ∧!  |        ' ,
        ̄二ニ=.、,  丶、  _____
6名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 01:11:33 ID:z3Gkcb+W
>>1
7名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 08:13:31 ID:vwbtQOlg
まとめサイトだけみてたんだが…前スレでなんかあったのか?
8名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 10:41:57 ID:4KSJbTJz
前スレはまだ見れるから見てくれば?
9名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 13:45:30 ID:/a9VvnOZ
>>1が早漏君すぎただけ
10名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 11:35:53 ID:2TjrrDJJ
保守
11名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 12:05:22 ID:/uYUYFwp
名無し君・・・私まだ埋まってないよ?
それなのになんであんなに早くあの子のとこに行っちゃったの?
名無し君が行っちゃってから変な子が来るの・・・
私はもう終わったんだって、必要ないんだって・・・
でも私待ってるから・・・ずっとずっと名無し君が戻ってくるの待ってるから!!
12名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 14:03:27 ID:xbmt9eJL
あげとくぜ。
遅まきながら乙。
13名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 18:52:11 ID:qAN8Qs/c
まとめ管理人さんメール!みているか?荒らしが現れ住民は二つに引き裂かれた。
こんな時こそあなたが更新することで修羅場スレを守るんだ!
14名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 19:24:46 ID:Yne5xqXE
二つって?
15猫泥棒 ◆wvo7w.Uzxk :2007/06/11(月) 19:43:06 ID:DXrwFBhM
投下します
16お願い、愛して! 10 ◆wvo7w.Uzxk :2007/06/11(月) 19:48:00 ID:DXrwFBhM


――口に何かやわらかいものが触れた。

それが朝生の唇であることに気づいた瞬間、あまりの当惑に頭が真っ白になる。
本意でない初めてのキスは幸福や愛しさなんてなくて。唇の柔らかさや暖かさを感じる余裕もなくて。
なぜか、激しい焦燥感と喪失感に襲われただけだった。
「っ……凪!!」
その焦燥感が命じる通り、すぐに両手で朝生の肩を掴んで引き離す。
慌てふためく俺とは対照的に、朝生は艶やかな笑みを浮かべてクスクスと笑い始めた。
「今、凪って名前で呼んでくれましたね、先輩……。
 はぁぁ、やりました、やっと呼んでくれた」
「あ……。い、いや! そんなことより、何でこんなことっ」

俺はただ、朝生に「白河先輩のことで相談がある」って言われたから、あいつを置いてまで屋上に来たのに。
最近、瑞奈がクラスで孤立しているという噂も聞いてたから余計に気になったし、それに夏休み前のこともある。
そして、なんといっても俺自身瑞奈にはちょっとした違和感を感じていた。
自意識過剰かもしれないが、俺に嫌われたくないあまり必死になっているように見えたのだ。
全てはそんな瑞奈を心配する想いで来たはずなのに――それが、何でこんなことに?

「ふふ……何でって、先輩が私に顔を寄せてくれたんじゃないですかぁ」
「な……! だ、だいたい、お前風邪なんだろ!?
 それでふらついたから支えてやったのに……まさか、嘘だったのか?」
「そんな、先輩に嘘なんかつきませんよ。本当にフラッとキちゃったんです。
 ……なんなら触ってみます? はい、おでこ」
そう言って、朝生は俺を甘く見つめながら前髪を掻きあげた。
その仕草と覗かれる額が妙な色情を感じさせて、ドキドキと心臓が騒ぎ出す。
――ドキドキ……? 俺が、瑞奈以外の人間に?
「先輩……? …………ほら」
反応できないでいる俺に業を煮やしたのか、俺の手首をとると、自分の額へと持っていく朝生。
ぴったりと朝生の額に手が合わさると、朝生の言ったことが本当だということが分かる。
熱い。素人が触っても、これが平熱でないことが分かる熱さだ。
立っているのも辛いはずなのに、凪はうっとりとした表情を浮かべると、掴んでいた手を俺の手と重ねた。

「あぁ……先輩の手……先輩の体温だぁ……。
 ん……はぁ……昨日といっしょ……じんじんってしちゃいます」



――誰だ?
17名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 19:48:39 ID:nU8pH0Ng
hoshu
18名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 19:51:36 ID:HInxbsGe

嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その36
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1181534905/
19お願い、愛して! 10 ◆wvo7w.Uzxk :2007/06/11(月) 19:52:29 ID:DXrwFBhM

魅惑的な声色と、妖艶な微笑。そして積極的なアプローチ。
そのいずれも、昨日までの凪からは想像もつかないものだ。
これじゃまるで目の前にいるのが朝生じゃない誰かのような――。
いや……だけど、この雰囲気は……。
「んふふ……せんぱぁい……」
この危うさは、昨日自殺しようとした朝生に似通うものがあるかもしれない。
だとしたら、どうしてまた「この」朝生が出てきたんだ。
あの時は、俺たちがそうだったように、あまりの辛さに感情が爆発した、
ただの一時的な二重人格みたいなものだと思っていたけれど……違うのか?
……やめだ。そんなこと、いくら考えても朝生にしか分かるはずない。

――それより、今は。


「……なぁ。俺をここに呼んだのは、その……キスをするため?」
俺がそれを尋ねると、朝生の手がぴくっと反応した。
「そんなに白河先輩のことが気になります?」
「気になるのは当たり前だけど、そもそもそのために屋上に来たんだろ。
 ……それとも俺をここに呼び出すための口実だったのか?」
「言ったはずじゃないですか……先輩に嘘なんかつきません。
 もちろん、白河先輩とあなたとのことでお話があったからですよ」
単刀直入に言わせてもらいます、と朝生が付け加える。
うっすらと浮かべていた笑みも消えて、真っ直ぐに俺を突き刺す視線。
気付けば俺の手は朝生の手に握られたまま、額から離されている。
さっきまでの甘い空気が嘘のように、張りつめた沈黙が流れる。
そんな中、俺は続きを催促するように朝生を見つめ返した。

「白河先輩とは、距離を置いてください」

もしかしたら、その答えを予想していたのかも知れない。
だからすぐに答えることができたんだと思う。

「それはできない」

また、朝生の手がぴくっと動いた。

「理由も……訊かないんですね」
「思い当たることが多すぎるからな」

まずは夏休み前。俺が瑞奈に嫌われてることを知って、避けだした頃だ。
あの時から、瑞奈はクラスでの様子がおかしくなった。
そして二学期。俺は「僕」を捨てて瑞奈を迎えに行った。
それから更に瑞奈はクラスから孤立してしまった。
薄々感ずいてはいたけど、これはきっと全部俺のせいだ。
だけどその原因に確信を持てなかったから、それを理由に逃げていた。
20お願い、愛して! 10 ◆wvo7w.Uzxk :2007/06/11(月) 19:55:25 ID:DXrwFBhM

「だったら……あなたのためにも、白河先輩のためにも、距離をおくべきです」
「瑞奈は幼い頃、ずっと人に避けられてきたんだぞ……
 それなのに俺まで避けたりしたら、また瑞奈を傷つけることになってしまう」
そうだ。誰かに嫌われるのを恐れてるあいつを、もう避けたりしない。

「そうして、白河先輩がクラスで完全に一人になっちゃったら……
 先輩はどうやって責任を取るつもりですか?」
「俺も孤立するよ。……もともと瑞奈のために媚を売っていたようなもんだ。
 あいつが昔のように孤立するなら、俺も昔に戻ればいい」
それを言った途端、手に熱と圧力が伝わる。
朝生の手に力がこもったせいだ。
「……二学期に入ってから、急に先輩が変わっていたのも瑞奈さんのためなんですよね……」
短く一言だけ、同意の返事を返す。

…………。
………………。

「どうして、あなたはっ! あの人のためにそこまでするんですか!?」
今日になって、初めて取り乱したように叫ぶ朝生。
その表情には疑問よりも怒りが色濃くにじんでいた。
「いえ……分かってます……白河先輩のこと、好きなんですもんね」
「………………」

胸が、ずきんと痛む。

「でも、ダメですよ。先輩がいくら白河先輩を愛していても……」
「言うなよ……そんなの分かってる」
「分かってませんっ! あの人は……白河先輩は、そんな先輩の想いにすら……っ!」

「分かってるっ!!!」

俺は、締めつけられる胸の痛みに堪えきれず、大声を張り上げた。
それに朝生は目を見開いて驚くと、萎縮したように押し黙る。
――怒鳴るつもりはなかった。
謝ろうかと口を開くが、出た言葉は謝罪なんかじゃなかった。
「あいつは、俺の想いには応えてくれない……分かってるよ
 嫌われてる俺なんかがいくら好きでいても、無駄ってことぐらい」
「…………え?」
違う。何を言ってるんだ、俺は。
こんなことを朝生に言ってどうするつもりだ。瑞奈の、たった一人の本当の親友なんだぞ。
二人を気まずくさせるだけっていうのに。
……最低だ。

朝生の表情が、髪と曇天の陰に隠れて見えなくなる。
「……先輩。先輩はいつ、自分が白河先輩に嫌われてることを知ったんですか?」
問い詰めるような朝生の口調には有無を言わさない気迫があった。
それに気圧されてしまうが、それでも――。
「ごめん、紛らわしかったな。別に瑞奈から直接聞いたわけでもないし、
 俺が勝手にそうじゃないかって思ってるだけなんだ。はは……」
嘘をついてでも、二人の仲を壊しちゃいけない。孤立した瑞奈にはきっと朝生が必要なのだから。
悲しいけれど……瑞奈にとって、朝生は俺じゃ代えられない大切な友達だ。

21お願い、愛して! 10 ◆wvo7w.Uzxk :2007/06/11(月) 19:58:49 ID:DXrwFBhM

「それでは質問を変えます。嫌われてると思っているのに、
 それでもまだあの人を好きでいるつもりですか?
 いくら想い続けても、どうしても報われない想いもあるんですよ……?」
最後、声が僅かに憂いの色を帯びていたことに気付く。
その言葉は経験したことのある者だけの重さを伴っていた。

朝生に心配までされているのに、結局俺は瑞奈を諦められない。
ダイエットして、髪を切って、コンタクトにしたのは――紛れもなく瑞奈に振り向いてほしいからだ。
俺がもう少しマシな男になれば、瑞奈も俺のこと見直してくれるかも知れない。そんな下心があったからだ。
本当は今だって、少しは見直してくれたんじゃないかって、淡い希望に縋り続けてる。
俺たちはどんな傷も舐めあって生きてきた。一人じゃ耐えられなかったから、依存し合うしかなかったから。
……嫌いなんて言われても、今更この依存をどうにかできるわけないんだ。

「……ありがとな、こんなやつの心配してくれて」
刹那――俺の手が痛いぐらいに握り潰された。

「お礼じゃなくて返事が聞きたいんです、私はっ!!!」
「っ……朝生……?」


「先輩はあの女に嫌われているんですよ! 脈なんて全然ないんですよ!?
 それをいつまでも女々しく想いつづけるだなんて、どうかしています!
 無駄ですっ、迷惑ですっ、キモいだけですそんなの!!
 一途なのは結構ですけど、それをあの女は知りもしませんっ! いいえ、知ろうともしませんっ!!
 ちょっと容姿が良いだけのそんな鈍感女のどこがいいんです? 大体あの女は貴方を振り回しているだけじゃないですかっ!?
 先輩の優しさに甘えるだけ甘えておいて、その幸福が当然だと思っているからちょっと貴方がいなくなっただけでウダウダウダウダ……
 自分に向けられている愛を、自分がどれだけ恵まれているのかを、全部ぜんぶ無駄にしてしまうあんなクズ女のどこがっっ!!!」


全てを言い終えた朝生は、はぁはぁと肩で息をする。
俺はといえば、言葉が出なかった。それぐらい信じられなかったのだ。
朝生が親友であるはずの瑞奈を貶めていることが。その表情が憎悪で歪められていることが。
信じられないあまり、しばらく茫然自失してしまう。

「気付いているかも知れませんが、私はあなたを愛しています。この世界の誰よりも大好きです。
 スキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでドウシヨウモないぐらい……。
 私ならあなたの想いにあんな女の何倍も何十倍も何百倍も応えることができるんです。
 先輩……もう苦しまないでください。愛なら、私がいくらでも差し上げます。
 だから――――お願いします、私を愛してください」

22お願い、愛して! 10 ◆wvo7w.Uzxk :2007/06/11(月) 20:02:14 ID:DXrwFBhM

告白の返事を待つ彼女の目は、いつもの弱気な朝生の目になっていた。
受け入れられるかどうか不安で、緊張に体が硬くなっているのが分かる。
俺は自分を落ち着けるために、ゆっくりと息を吐いた。

――だけど結局感情を抑えることはできなかった。


「なんだよ、それ……」
「…………え?」
ずっと握られていた自分の手を、朝生から強引に振りほどく。
「あぅっ……」
「俺はお前がクズ女呼ばわりする瑞奈に焦がれてるっていうのに。
 そんな俺にお前は告白するのか?」
「え、あ……え?」
激情が堰を切るように言葉になって流れていく。
俺は困惑する朝生を睨みつけ、続けた。
「勘違いしているようだけど、俺は瑞奈に振り回されてると思ったことなんて一度もない。
 あいつと一緒にいて、想い続けることが苦しいと思ったことなんて一度もない。
 俺とあいつのことなんて何も知らないくせに……分かった風にあいつを語るなよ」

「あ、あぁ……ごめ、なさっ……。で、でも……違うんです……私が、私が言いたかったのは……」
分かってる。
朝生は本当に俺を心配してくれて、勇気を持って告白までしてくれた。それは純粋に嬉しくもある。
想いを寄せる相手に拒絶されるのが、どれだけ辛いかも知っている。
でも、明らかな憎悪を持って瑞奈を嘲ったことが、俺には何より許せなかった。

「……俺はお前を愛せない。
 お前が瑞奈を憎むなら、俺たちの関係も終わりだ」

辺りが、一層暗くなり始めた。
ポツポツと、屋上に小さくて黒いシミができていく。

「オワ、リ……先輩と、もう……話せなくなるんですか……?
 そんな……ア、ああぁぁァァァ……やだ、イヤ……ヤです、そんなの……。
 ゴメンなさい、違うんです……ゴメンなさい、許してください……。
 もう欲張ったりしません、憎んだりしません、何でも言うこと聞きますからぁ」
穏やかだった雨は、すぐに変化を遂げる。
激しい風に運ばれて数多の雨が無情に体を打ちつけ始めた。
一瞬で強雨へと変わる雨に、体中の熱が奪われるような錯覚に陥ってしまう。



「…………ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――――」

23お願い、愛して! 10 ◆wvo7w.Uzxk :2007/06/11(月) 20:04:57 ID:DXrwFBhM

俯き、震えながら自分を抱いて、うわ言のように謝り続ける朝生。
その様子があまりに悲愴だったから、強烈な罪悪感に襲われた。
たった一度でも優しく抱きしめてあげようとするのを、それでも感情が拒否する。
朝生は、今朝までは確かに俺たちの同士だったというのに……。

……雨で垂れ下がった髪が朝生の顔を見えなくさせていた。
だから朝生の風邪が酷くなっていることに、彼女が倒れるまで気付けなかったんだ。





…………。
………………。





それから、俺は朝生を保健室までおぶっていった。

幸い中に他の生徒はおらず、保険医の先生も暇していたようですぐに診てもらえた。
朝生は予想通り相当な高熱で、意識が戻るまでベッドで寝かせて早退させるとのことだった。
一時間ほど朝生の横で看病をしていたが、容態も落ち着いたのでクラスに戻るよう先生に勧められた。
俺はこのまま授業を受けられる気分じゃなくて、具合が悪いということで早退の許しをもらい、帰宅することにした。


24お願い、愛して! 10 ◆wvo7w.Uzxk :2007/06/11(月) 20:09:10 ID:DXrwFBhM

「………………」
薄手の制服が肌に張り付いて、気持ちが悪い。
一向に弱まる気配のない強雨に溜息ばかりが出てきてしまう。
こう寒い上に湿っぽい雨の中にいると、いつまでも鬱々とした気分は晴れない。

『もうお母様に愛してもらわなくてもいい、他の誰からも必要とされなくてもいいの……!
 ただ……あなただけいてくれたら、それで私は満たされるのに……っ』
俺が保健室を出る間際、目を覚ました朝生に言われた言葉だ。

――朝生 凪。
色々な闇を抱えた俺たちの同士。だった、とは……ならないことを願う。
もしかしたら俺は、あの子の傷痕を共有するどころか、広げてしまったんじゃないだろうか。
朝生に瑞奈を罵られた時、あの時は何も知らないくせにと思ってしまった。
だけど、朝生のことを何も知らないのは俺も同じなんだ。
俺たちと同じだからと分かったふりをしていても、当たり前だけど俺たちと朝生の事情は似て異なるもの。
……昨日の自殺しようとしていた時に、俺は朝生の苦しみを聞きだすべきだったんじゃないか。
そうすれば……朝生の気持ちを理解していれば……こんなことにはならなかったかも知れない……。

「……くそっ」
何をウダウダ後悔してるんだ、俺は。
過ぎてしまったことを後悔しても何も変わらないことは、ずっと昔に思い知ったことなのに。
過去にいつまでも悩むより、これからどうするかを考えた方がよっぽど建設的だ。
……もしかしたら明日には朝生もいつも通りの姿を見せてくれるかも知れないし。
いや、先に俺がいつも通りでいなくちゃいけない。
そうすれば、きっと瑞奈も大事な親友を失わずにすむ。

だけど、雨で陰鬱になった心がそれを否定しようとする。あの関係はもう二度と帰ってこない、と。
一瞬でもそんな愚かしいことを考えた自分を叱責したとき――。
ようやく見慣れた自分の家が見えてきた。


「キョータくん……」


見えてきたのは、俺の家だけじゃない。
完全に濡れて天気のせいか黒ずんで見える亜麻色の長い髪と、俺を真っ直ぐに見つめる輝きを失った瞳。
ところどころ透けている荒れた衣服と、そこから覗かれる血の気のひいた病的なほど白く美しい肢体。
目の前にいる少女は、どんなときも二人だった愛しい幼馴染で間違いない。
だけど――どうして……?
今はまだ、授業が行われている最中のはずなのに。

改めて瑞奈を見つめて、その異常性に気付く。
濡れていないところがどこもない。もしかしたら手もふやけているかもしれない。
ぐしゅぐしゅのずぶ濡れ。まさにそんな状態だった。
いくら雨が強いといっても、短時間でこれほど悲惨な状態にはならない。

――こんな雨の中、ずっと俺の家の前で待ち伏せていたのだろうか。

瑞奈は、そんな疑問にはまるでお構いなしに俺に駆け寄ってきた。
そしてよどんだ瞳で俺を捉えて、薄紫の唇で言葉を紡ぐ――。




「えへ……おかえり、キョータくん」

25猫泥棒 ◆wvo7w.Uzxk :2007/06/11(月) 20:21:45 ID:DXrwFBhM
今回はちょっと長めにここまで。
幼馴染が有利でもいいじゃん、ってことで書いた話なので
今回は書いててかなり楽しかったです。

次回は板的にもピンクな展開になる予定。
26名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 20:26:08 ID:/uYUYFwp
>>25
猫泥棒さんGJです!!
朝生に対する京太のあまりの男っぷりに惚れた!
どうかこんな真面目な主人公にハッピーエンドが来ますように・・・
27名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 20:43:49 ID:geYaKmRa
リアルタイムGJ!
28名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 20:57:30 ID:qRFvcEE9
>>25
おまえかー
うちの猫パクった奴は
29名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 23:34:02 ID:BukRuxb7
読んでいて切なくなったGJ

でも、この嫉妬スレの属性上・・HAPPYENDはありえないんだろうな・・
一度、欝ENDモノを読んでしまうとその物語の登場人物の幸福を願わずにはいられないな
30名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 00:30:00 ID:8Mifl5sa
GJ!
楽しみにしてかいがあったぜ

Happy Endは無いと分かっている
が、それでも瑞奈との幸せを願ってしまう俺がいる
31名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 08:43:52 ID:bOjtvFVv
>happyendはない

何だそれ。
お前らの勝手な思い込みを作者さんに押し付けるなよ。
32名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 09:18:39 ID:KCtpy1Vf
そうだよね
別にハッピーエンドでもいいよね
修羅場とグロ原理主義は別だし
33名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 09:31:29 ID:KIKEJDFy
いい加減に血塗れ展開は飽きてきたな・・
34名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 10:17:49 ID:HBuIPhPI
確かに全滅エンドとか見てると「お前ただ殺したいだけだろ」って思う時がある
特に普通の学園モノとかでの殺人は違和感
35名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 10:48:03 ID:KCtpy1Vf
作者の嗜好と言うより、一部の自己主張が激しい人間が趣味を押し付けてるだけなんだろうけどね
死ななきゃ修羅場じゃない! バッドエンドじゃなきゃ修羅場じゃない! 他所へ行け! みたいな
作者の人には無理させず、書きたいものを書ける環境を作りたい
修羅場を乗り越えて幸せになるカタルシスだってあるんだ!
36名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 11:06:42 ID:w5pA92ZE
作者が血塗れを書きたければ書けばいい
ハッピーエンドを書きたければ書けばいい
住人はそれに対して気に入らなければならスルー、気に入ればGJ
それだけのことだと思うが

37名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 12:39:49 ID:WDSJ7Qiq
>>33-34
まだEDにも行ってないんだしそういうのはやめようぜ?
飽きたならもう修羅場は卒業の時かもしれないしね

>>36
まったくもって同意であります。
結局はそこに落ち着く。
38名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 13:34:53 ID:Zo3XVSUd
てか、普通に流しておけばいいのにレスしてスレの空気を悪くしてどうするの?
そこは適当に合わせておけばいいじゃないか・・

>>作者が血塗れを書きたければ書けばいい
>>ハッピーエンドを書きたければ書けばいい
>>住人はそれに対して気に入らなければならスルー、気に入ればGJ

↑のことは誰でもわかっているんだから\\
39名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 16:45:24 ID:ru+a6vNe
だねぇ
荒らしをスルーできない奴が一番の荒らしだというのに
40名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 17:02:43 ID:/5HlDq0N
以下永遠に「おまえもスルーできてないだろ」のループ
41名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 19:23:52 ID:U823GkuC
おま(ry
42名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 19:32:19 ID:SfuuuRJE
おま(ry
43名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 19:59:04 ID:9yzwSTh9
自治厨が一番タチ悪いw
44名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 20:37:58 ID:sSpgwNos
一番も何もねえだろ
みんな失せればいいのに
451/2:2007/06/12(火) 20:51:14 ID:Pyzw4gis
「皆さーん、病んでますかー!!」
「それでは早速、いってみよ〜!!」
「ハイ!」
「1・2・3・ヤン!!!」

「キモ姉キモ妹」「ほのぼの純愛」
「嫉妬に修羅場に三角関係」

ドキドキ 止まらない

「依存」「空鍋」「包丁一閃」
「お兄ちゃんどいてそいつ殺せない!」

ズキズキ 恋わずらい
多分……

ピタッと指が 触れるたび
胸が 子宮が 疼くのよ

ワ・タ・シ・ダ・ケ・ミ・テ
カイカン 愛の拉致監禁

I Want You

熱い私の処女を今すぐ奪ってよ

誘って 触って 一服盛って 押し倒して

心も 身体も 全部わたしだけのもの

眠らせないの セツナイ刺激 All Night Long

kill the rival

きっと報われる 素敵な私 女の子

声も吐息も視線も
生殺与奪も わたし次第

愛しております
前世から 来世も 未来永劫!!

「好きだよ。……大好き!」

ヤンデレヒロイン!
462/2:2007/06/12(火) 20:52:51 ID:Pyzw4gis
「泥棒猫、殺してやるぅぅぅぅっっっ!!」

「ヤンデレヒロイン! ヤンデレヒロイン!」
「雌豚屠殺 ヤンデレヒロイン!!」

「ヤンデレヒロイン! ヤンデレヒロイン!」
「幼さんハンバーグ ヤンデレヒロイン!!」

「ヤンデレヒロイン! ヤンデレヒロイン!」
「姉妹母従姉妹(アネウトハハイトコ) ヤンデレヒロイン!!」

「ヤンデレヒロイン! ヤンデレヒロイン!」
「貴方に依存 ヤンデレヒロイン!!」

「ヤンデレヒロイン! ヤンデレヒロイン!」
「SHUFFLE!スクデイ ヤンデレヒロイン!!」

「ヤンデレヒロイン! ヤンデレヒロイン!」
「流鏑馬一発 ヤンデレヒロイン!!」

「ヤンデレヒロイン! ヤンデレヒロイン!」
「ヤンデレヒロイン! ヤンデレヒロイン!」
「ヤンデレヒロイン! ヤンデレヒロイン!」

「ヤンデレヒロイン! ヤンデレヒロイン!」

「最後にもいっちょー、ハイ!」
「ヤンデレヒロイン!」
47名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 21:09:47 ID:WDSJ7Qiq
>>46
これを歌ってニコニコにうpしたら褒め称えるわ
48名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 21:27:36 ID:7A8hedAr
>>46
コーヒー吹いただろうがw
でもたまにはこういうノリも嫌いじゃ無いぜ?
49名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 22:48:11 ID:8iTggb3J
>>46
お、俺のキーボードー!!
50名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 23:55:22 ID:HEiDwzFa
>>46
ハンバーグ食ってた俺に謝れっ!!
51名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 01:12:51 ID:e/aE7mcV
>>46
「泥棒猫、殺してやるぅぅぅぅっっっ!!」 に爆笑。
52名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 11:57:05 ID:fdOHyjRw
>>46
巫女みこナース聞きながら読んでみたら
歌詞がぴったりあっててワロタwwwwwwwwwwww
53名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 17:30:16 ID:6lv75vWL
>>46の人気に嫉妬
54名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 18:19:12 ID:LSucCtZQ
にげてー!46にげてー!
55名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 18:53:07 ID:N77bDIzf
新ジャンル「ヤンデレミュウツー」
http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1181655258/

くやしぃ…ミュウツーに萌えるなんて…
56名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 21:59:27 ID:2XQ6HobB
>>55
ミュウツーに萌えるなんて馬鹿じゃねーのww








ミュウツー可愛いよミュウツー(´Д`;)ハアハア
57名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 23:16:53 ID:LypdyGUp
やはり、ツンデレの嫉妬は萌える・・・・
パルフェをプレイしていたらそう思えてきたので・・
誰かツンデレの嫉妬SSプロットネタとかないか?
58名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 23:39:48 ID:DzXCnDvw
自分で書かんか馬鹿者!
59名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 23:52:05 ID:d1D6/ldt
>>57
そうなんだよな。
気の強い娘スレとかボーイッシュスレとか、
安定しないところがメインだからなかなか無いんだよな、ツンデレ嫉妬。
ものっそい簡易な物なら作れる、しかも内容イマイチな。
60名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 01:38:49 ID:PQL7GHrk
ツンデレの嫉妬っていうと…
初期状態はは主人公のことを好きじゃないと周囲及び主人公には思われてて(ただ仲のいい女友達にはバレバレな可能性あり)
主人公が他の女と仲良さそうにしてると「ふーん、仲いいのねぇ」みたいにネチネチ来る感じのイメージだな
なんというか涼宮ハルヒに近いモノを感じる

そっからどうデレに繋げるのかはSS書く人の技量次第というか
61名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 01:52:41 ID:vLxvXtwJ
スレ違いだけど、ハルヒのSSはそういうの多くて面白いぞ。
http://red.ribbon.to/~eroparo/ranobe8.html
最近ここを読み耽っている。
どぎつい修羅場とはいかないけどね。
62名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 02:13:11 ID:LBzZ6anw
そういえば最近忙しくて某ヤンデレハルヒのサイトに行ってないなぁ……
今から行ってももうだいぶ進んじゃってそうだしなぁ
63名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 02:40:34 ID:Ol4aMajF
>>60
む…そういう物なんですか…知らんかった。
じゃあ今から投下するプロットは一体

[未来の光と過去の陰]仮

夜は何かと物騒だというビル街、普段こんな時間に外出などしないのに、
なぜかその日に限って口寂しくなった主人公A(大学生)は
コンビニに酒とつまみを買いに来ていた。
途中のビルの影、女の喘ぎ声と複数の男の下卑た声、
関わらぬ方が良いと思い避けて通ろうとしたが、
バイクと歩道で衝突しそうになり、間一髪で回避。
しかし運悪く影の中でうごめいていた男達とぶつかり、
性行の邪魔をされ頭に血が上った男達と乱闘となり…
一人で全員、七人を倒した。
事後処理に困っているとき後ろから声をかけられた
「私の客に何してるのよ!」
それが彼女との出会いだった。
「彼奴等の代わりにあんたが金払いなさいよ?」
言動から取るに、
彼女は七人まとめて援交していたらしい。
課せられた金額は24万、バイトと仕送りで生計をたてている学生に
そんな金あるはずがない。
その事を伝えると彼女は
「暫く私の男になること」を代わりの条件として課した。
64名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 02:43:11 ID:Ol4aMajF
顔が良いから、ただそれだけの理由。
しかし違法とはいえ、営業妨害に代わりはなく、
正当防衛とはいえ、暴行には代わり無く、
できるだけこの件を表沙汰にしたくないAは
彼女の条件を飲んだ。

住んでいる世界が違うためか、様々な面でかみ合わない事が多く、
その度彼女は怒っていた。
だが少しは会話になるときもある。
音楽の話、近況報告、好きな食べ物…互いの距離は少しづつ縮まっていった。
いつも通り恋人、というより主従関係感覚で
貢がされたり貢がされたりしていたある日、彼女の過去
「昔、陵辱されて、その時から援交を始めた」
という事を知る。
それまで最低な友達という視点で見ていたAだが、この日から彼女は
「心に傷を負った哀れな子」と同情すべき対象となった。
翌日からAは彼女にできるだけ優しく接するようになった。
家庭があれており、まともに優しさに触れた事のない彼女、
どう対応したら良いかわからず、最初は困惑し拒絶するだけだったが、
拒まれても温もりを与え続けてくれるAに次第に心を開いていき…

そんな最中、Aは大学で一人の女性と知り合う。
お互い馬が合い、互いをもっと知りたいという気持ちは
いつしか恋愛感情に発展し…
65名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 02:46:16 ID:Ol4aMajF
自分の恋心に気づいたAは密かに貯めていたバイト代を手に、
彼女の元へ。
「大学である女性を好きになってしまったから、
 一緒に居るところを見られて誤解されたら困る
 これでもう俺を解放してくれ」
そう言いながら札束を突き出した。
「せ、清々するわ、もうあんたと…
 か、かわらなくて…いいと思うと…」
そういって金をひったくる。
良かった、これで終止符を打てると安堵し顔を見上げた先には…
言葉とは裏腹に
驚愕、哀しみ、そして

   
   怒り狂った彼女の顔があった。

66名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 02:47:31 ID:Ol4aMajF
制作時間20分 編集無し
蛮行の果てがこれです。
こんなんプロットじゃねぇよ!

すみませんでした。肝心なツンデレの部分、
中心部に相当省略して入れてしまいました。
やはり単発ホモネタ野郎にはこれが限界か…!
67名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 08:53:57 ID:dL/1d0CG
敢えて内容には触れないが、
後にダラダラ卑下言い訳するくらいなら最初から書くな
68名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 09:13:38 ID:Ycc17DA2
ツンデレの嫉妬は難しいよ・・・
どういう風に物語を展開していいかさっぱりとわからん。

とりあえず、プロットもどきを投下すると

1・電車に乗っている時にツンデレからこの人は痴漢よと誤解される
  主人公は潔癖の証拠を突き付けて解放されるが・・両者の仲はこの事がきっかけに険悪化する

2・それから、1週間後に自分のアパートに引っ越しきたのはツンデレ・・
  隣に引越しの挨拶をして来たときに最悪な再開を果たす。



3・以降はどういう風に展開していいのかわからんが
とりあえず、序章だけ考えてみたが・・どうよ? 

どうやって、嫉妬するまでの仲に進展させるのか難しいんだよな。ツンデレは
69名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 11:23:54 ID:cc5ABl3I
ヒロインAはツンデレかつ幼馴染で主人公に好意がうまく伝えられない。
なので自分の性格上、そこまで仲良くなれる自信がなく
自分の働いている喫茶店に彼がコーヒーを飲みに来てくれる時間、二人っきりで話すことだけを楽しみにしていた。
だがある日いつもの時間にその彼が女を連れて入ってきて…
自分の大切にしてきた時間が壊れたことを知った彼女は…

ここまで考えて眠くなったから寝た。昨日
70名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 14:20:01 ID:KkKFNDtE
71名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 15:22:23 ID:icOifdpz
ツンデレの嫉妬って言ったら
「恋人でもない男が他の女と仲良くしてるのを見て、怒る筋合いが無いのに怒る」
これしかない
72名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 15:30:28 ID:Vu/HO+VM
なるほど。
簡潔だが秀逸だ。
73名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 16:46:06 ID:zth2euyH
そして何故怒るのか分からない主人公。
74名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 17:41:28 ID:rIv3L5Wn
>>70
>喜怒哀楽とともに、誰しも無縁ではいられない感情「嫉妬」。
>時に可愛らしくさえある女性のねたみに対し、本当に恐ろしいのは男たちのそねみである。
どう見ても(ry

>>73
そして分かってくれない男に対して狂っていく女
75名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 17:46:59 ID:xUfKS1mz
>>68の続きを考えてみた。

顔を合わせれば喧嘩ばかりだが、共に過ごすうちに主人公が痴漢なんかするはずない
イイ奴だと分かってきたツンデレ。でも第一印象が悪くて素直になれない。

後日主人公は、同じ学校の女生徒が痴漢に遭っている所を助けて犯人を捕まえる。
実は登校に使う路線の常習犯で、ツンデレに冤罪くらったのもコイツのせいだった。

これをきっかけに素直に謝ってデレになろうと思ったツンデレだが、主人公が助けた
女生徒といい雰囲気なのを見て、結局ツンな態度を取ってしまう。
もちろん、内心に嫉妬の炎を揺らめかせながら。



・・・ベタな展開でスマンが、個人的にはこういうのが好きだ。
76名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 18:39:44 ID:jIWB0cdO
続きの続き

真犯人が鉄道警察官に連行されるのを遠くからみたツンデレ。
「あ、やっぱり犯人は違う人だったんだ。早くあいつに謝らないと」
たったった。

逮捕現場。主人公と被害にあった女性。
「ほんとうに、ありがとうございます。わたし、触られてると怖くなって
なにも言えなくなってしまうんです、グスッ」
「痴漢されるてると声もでなくなるっていうし。怖かったんだね。もう大丈夫だよヨシヨシ」
「あ、ありがとうございます。こわかったよー。フエーン」
「……へえ、じゃあ声をだして捕まえたわたしは怖くなかったとでも?」
口角と片眉が不自然にぴくぴく動いているツンデレ。
「え、あ、おはよう、いや、その…」
「……勇気をだしたのに、あなたはおとなしく触られてろと」
「なにもそこまで言っ」
「ふん、なによ。いいわよね、かわいい娘は。痴漢を捕まえてくれる男がいて。
どうせ私なんか、冤罪でっちあげることしか能がないわよ。わるうござんしたねっ」
走り去るツンデレにうっすらと涙が。

これを誰か三角関係までもっていってくれ〜
77名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 21:26:17 ID:1I703Aw2
面白そうな展開になってまいりました!
78名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 22:07:12 ID:udvuH/jR
ツンデレの涙に気づず、しかし遣る瀬無い気持ちで走り去るツンデレを見る主人公。
「はあ…本当、うまくいかないなあ…」
呟いた主人公に、泣いていた女生徒が顔を上げる。
すでに、その瞳に涙はない。
「……?あの人は…私と同じ学校みたいでした、けど…」
「ああ、実は。なんと言うか、恥ずかしい話なんだけど…」
それまでの経緯を話す主人公。
聞いて、徐々に少女の表情が険しくなっていく。
それは、先ほどまでの泣いていた少女とは別人のような顔。
「……見下げ果てた方ですね。
 無辜の他人を犯罪者扱いしたというのに、全く反省している様子もありません」
「いや、彼女も悪い子じゃないと思うんだけどね」
「…え?」
「ほら、自分の身に危険が迫ったんだし。
 仕方ないことだったとは思うよ」
「……お優しいのですね」
微笑む主人公に、そう小声で返す女生徒。
だが主人公はその声に気づかない。
「ん?
 どうしたの?」
「いえ。
 宜しければ、この後お茶などいかがでしょうか」
「え?でも」
「お礼だと、思っていただければ」
微笑む女生徒。
しかし、その目には情欲が浮かんでいた。

ついワクワクしてやった。後悔は(ry
女生徒が突然変貌したのはお約束だと思って(ry
79名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 23:53:53 ID:WJYtGeaU
つかさ。
こんなこと言ったら怒られるかもしらんけど、まとめの『両手に嫉妬の花束を』って作品にこのツンデレみたいなキャラがいるんだけど……。
80名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 00:03:57 ID:aurYgxR3
>>78
憎い!続きを書ける文才の無い自分が憎い!
81 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/15(金) 00:44:09 ID:oZD+QtcY
投下します。
82名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 00:45:10 ID:8QX8TMJl
現在の小説や漫画はすべて既存の物の焼き直しだってあさり先生が言ってた。
ようはどんな新しい切り口で話を魅せていくのかが大切なんだぜ。
83すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/15(金) 00:45:40 ID:oZD+QtcY
「何で、お前がその鍵を持っているんだ?」
「え?ああ、これの事ですか」そう言いつつ、澄香は右手を持ち上げる。「玄関の花瓶の下にあったのを拝借したんです」
まるで自分のモノを取りあげただけなのに、と言うような平然とした口調だった。
しかし、それは信じられない光景であり、翔は目を剥いた。
何故、澄香が鍵の隠し場所を知っている?家政婦と翔以外に、それを知る者はいないはずだ。なのに、何故?
疑問が次から次に噴出し、渦を巻く。
「それにしても、驚きましたよ。帰ってきたら、二階から物音がするんだもん。泥棒さんかなって、すごく怖かったんですよ。
でも、センパイでよかったです」
澄香は、無邪気に白い歯を見せて笑みをつくった。まるで、子供のように無邪気な澄香の笑顔。しかし、その子供のような無邪気さが、
翔の背中に冷たいなにかを走らせる。そのなにかに撫でられた肌から、次々に鳥肌が立ち、それが全身に広がる頃には、恐怖が、
胸を蝕んでいた。
子供は、時折大人が唖然とするような残酷な事を、平気でやるのだ。それは、無邪気の仮面の下で、正常と異常の区別がついていないから。
好奇心を抑える術をまだ知らないから。
澄香も同じに思えた。彼女も正常と異常の区別がついていないのだ。
翔は思わず澄香から目を反らした。
ジワジワと心を浸食する恐怖に、仔猫のように震えながらも、必死で平静を保とうとする。しかし、
それは押し寄せる波を両手だけでは防げないのと同じ事で、心が恐怖に侵され続け、やがて飲み込まれ体が大きく震え出した。
翔は肩を抱きながら、体を丸めた。カタカタと歯がなる。
「センパイ、大丈夫ですかっ!!」
いつの間にか駆け寄ってきたらしい澄香の心配そうな声が、すぐ上から聞こえた。彼女が近くにいる。その事実が、翔の心をよりいっそう冷たくする。
「センパイ、震えてる……」
今度は同情したような声だった。
しかし、騙されてはいけない。澄香は、自分をどこか遠くへ連れ去ろうとしているのだ。
84すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/15(金) 00:47:11 ID:oZD+QtcY

「かわいそう……。センパイ、寂しいんですね」
甘い言葉に乗ってはいけない。耳を傾けてはいけない。そして、翔は、耳をふさいだ。 「……でも、大丈夫です──」
澄香がしゃがむのが、気配で分かった。いよいよだとばかりに翔は身を固くし、恐怖の大波を堪えようと歯をくいしばった。
しかし、恐怖の大波はいつまでたってもやってこなかった。代わりに、天使の安らぎが翔を包みこんだ。
「──私が、センパイの側にいますから」
頭が何か柔らかくて暖かいものにくるまれた。それが、澄香の体であると認識するまでしばらくかかり、また認識した途端に、
胸に巣食った恐怖が、波が引くように小さな余韻を残して消えていく。後に残ったのは、涙が出るほど暖かな安らぎであった。
澄香が恐怖の原因なのは、頭では分かっている。しかし、分かっていても、彼女に抱かれていると、不思議と心が落ち着いてく。
次第に頭が、冷静な思考を、気だるい眠気を取り戻していく。
静かな胸の鼓動が、耳に心地いい。
ぺったんこだが、彼女の体からは女性の暖かさ、柔らかさを感じる。
ミルクのように甘い澄香の匂いが、鼻孔をやんわりと擽る。
全てが、乾いた翔の心に、潤いをもたせる。
その中で、やがて平静を取り戻した翔は、そして気付いてしまった。
澄香の体から、微かに香るインクの匂いに。
瞬間、頭の中で今日の出来事がフラッシュバックする。バラバラの記憶のピースが、各々に意思を持ち、一つの事実を頭の中で作り上げていく。
散らかるアルバム、塗り潰された顔、家に侵入した澄香、そして、微かに香るインクの匂い。
それらが導く、完成図。それは、あってはならない事実だった。
体を覆う安堵感が、急速にその暖かみを失っていく。心の彼岸が、再び訪れた恐怖という名の荒波に飲み込まれていく。
翔は慌てて澄香の体を、自分から引き剥がした。突然の事に、澄香は驚いた顔をしたが、構っている余裕はない。そして、
すがるような気持ちで澄香の瞳を見据え、
「澄香が、やったのか?」
85すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/15(金) 00:49:08 ID:oZD+QtcY

キョトンとした顔をする澄香。
「えっ?」
「なぁ、お前じゃないよな? こんな事したりしないよな?」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
意味が分からないといった体裁で、澄香の真意を探るような目が、翔を舐め回す。全身をはいずり回った澄香の視線はある一点、
すなわち翔の胸に抱えられたアルバムで静止した。途端に、腑に落ちたと言わんばかりに目を細める澄香。
「ああ、それの事ですか」
「……やっぱり、澄香なんだな」
愕然とした気持ちを隠せず、翔の声は震えていた。本当は、嘘でも、否定してほしかった。
「どうして、こんな事を、するんだよ。何が、したいんだよ……」
澄香のしたい事が、して欲しい事が分からない。いや、もう既に澄香の行動が、翔の理解を超えつつあった。
何故、こんな事をするのか? 澄香に何かメリットがあるのか?悪戯にしては度か過ぎているし、第一笑えない。もう、ジョークではすまされない。
その疑問に、澄香が答えを提示する。
「だって──」
彼女は無邪気な笑みを浮かべて、事も無げに、サラッと言いのけた。
「──必要ないでしょ?」
「えっ……?」
「女の子の写真なんて、必要ないんですよ。だって、センパイには私がいるんだもん」
何を、言ってるんだ……?
「センパイは私だけを見て、私だけを好きでいてくれればそれでいいんです。他の女なんて、全部豚なんだから」
言いつつ、澄香は再び翔の頭を抱えこんで、
「私はセンパイのためなら、何でもします。言ってくれれば、エッチだっていつでもしてあげます。だからね、
センパイは他の女なんか見る必要なんてないんですよ」
後頭部に回された彼女の腕に力が篭った。
「大丈夫。怖がらないで。センパイは私が守ってあげるから」
まるで赤子をあやすように、優しく頭を撫でる澄香。
狂ってるとしか思えなかった。
86 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/15(金) 00:50:12 ID:oZD+QtcY
投下終了です。
87名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 00:59:21 ID:8QX8TMJl
>>86
割り込んでしまった・・・orz
投下乙です
周りのヒロインが全て狂ってるせいで逃げ場所の無い翔カワイソス
ここはもう由美さんに逃げるしか・・・
88名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 01:37:46 ID:Uv93BOEP
>>86
うほっ!なんかもうストーカーの領域超えてやがる。

>>87
…その選択肢が何を意味しているのか分かってるのか?

鋸、ヘルダイブ万々歳じゃねぇかこんちくしょうw
89名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 02:21:54 ID:dSIg7qJ8
取り合えず由美さんには今のうちに逃げといてほしいw
澄香の目がどんなもんだったか思い浮かんで興奮しますた
90名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 02:37:58 ID:EOYR5mLU
最近このスレやキモ姉妹スレ読んでると非エロでもガチで勃起しちゃうから困る。
91名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 05:24:37 ID:xbx7ByY5
ガチガチに勃起か
若くてよいな

俺なんか中折れで
92名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 10:54:10 ID:4lL6fAZr
↑のツンデレのプロットについて

そのツンデレ少女は金髪でツインテールが望ましい・・
これこそ、ツンデレ少女って感じがするw
93嬢 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/15(金) 16:57:39 ID:ND7rl/g9
投下します。鳥付き長文はじめてなので見難い点あるかもしれません。
94淑女協定 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/15(金) 16:59:01 ID:ND7rl/g9
「あら、負け組みサラリーマンにしたら、お早い帰宅ね」
マンションの玄関でばったり会った晶はエレベーターを待つ間、呟くように、でも僕にはっきり聞こえるように言った。
「まあ貧乏暇無しってのは嘘だってことだな。貧乏暇ばっかりってことだ」
晶の言外の意図をあえて無視しておちゃらける。
実際、同い年なのに会社を立ち上げて小さいながらも社長をやっている晶に比べたら負け組みと呼ばれてもしかたない。
チンと音をたてて1Fに降りてきたエレベーターに乗り込み最上階である12階のボタンを押す。
静かに上昇を続けるエレベーターに2人。沈黙を破ったのはまたも晶だった。
「ねえ」
「ん?」
「明日、よね?」
「今日じゃねけりゃ明日だろ」
できるなら会いたくなかったが、会ったんだからしょうがない。今日じゃないのだ。
視線の持って行き場がなく、階数表示パネルを見上げる。チンと再び鳴ったエレベーターは12階で止まった。
「じゃ、わたし、こっちだから」
自宅の1201号室に向かう晶。僕は隣室である1202号室の鍵をポケットからとりだす。
「明日ね」
そう言うと晶はさっさと扉を開くと中に消えた。鍵穴に鍵を差し込む前に深呼吸をする。今までのことは忘れよう。
95淑女協定 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/15(金) 16:59:50 ID:ND7rl/g9
「ただいま」
玄関を開けると、奥からいい匂いが漂ってきた。
「おかえり〜」
スリッパをぺたぺた言わせてこちらにやってくる妙子はエプロン姿で、晩御飯をつくっていたことがわかる。
「お仕事お疲れ様。ご飯、もうちょっと待っててね」
何も言わず僕のかばんをもって、上着を脱がせてくれる妙子。そんな彼女に僕はふっと唇を重ねる。
「こ、こら、そんなの反則だぞ。もっと、ちゃんと…」
「ちゃんと?」
片手で細い腰を抱き寄せ、もっと深くキスをする。
最初はびくっとしていた妙子も僕の首に両手をまわし、次第に舌を絡ませるように動きをあわせる。
この何度やっても初々しい妙子の反応がたまらなく好きだった。
たっぷり5分。僕達は玄関で抱き合い、キスをした。1日ぶりだった。
空いた時間を取り戻すかのようなキスが終わったとき、妙子はへたりこむ。
「妙子……」
「……」
「口の中が味噌汁くさい」
「!」
顔を真っ赤にした妙子が、僕のかばんで顔をなぐりつけてきた。

「いいお湯だったよ」
頭をタオルで拭きながら、リビングに戻るとテーブルにはいつもながら2人では食べられないほどの料理が並んでいた。
炊き込みご飯。味噌汁。焼魚。おひたし。煮物。てんぷら。サイコロステーキ。
成人男性の1日のバランスのいい栄養と摂取カロリーがここにある物だけで満たせそうだ。
妙子が鼻歌まじりにお茶を入れた湯のみをさしだす。
「どうせあっちではお店で作ったものばかりでしょ。それじゃ体壊しちゃうぞ。さ、食べて食べて」
受け取ったお茶を飲みながら、こっちのほうも体壊しそうだなと思ってしまった。
実際、妙子のつくった料理はおいしいからまたやっかいなのだ。気づいたら食べてしまっている。
こりゃあっちの運動を頑張れってことか?
そんなことが顔にでたのだろうか。妙子ははずかしそうにうつむき、小さくそうだよと言った。
96淑女協定 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/15(金) 17:01:32 ID:ND7rl/g9
結局あれほどあった料理をほとんどたいらげてしまった。さすがに胃が重くて体が動かない。ベットに横になって目をつぶり体を休める。
どうしてこうなったんだろうか? そもそも何が悪かったんだろうか? それはわかってる。僕の優柔不断が招いた結果だ。
でも、でも、僕はどちらを選ぶなんてことできない。泣いてる顔なんてみたくないよ。それがエゴだなんてわかってる。
淑女協定。1日置きに僕の彼女は交代で変わる。その場しのぎ。まるで将来がみえないこの提案に、僕は賛成した。
二人がいいっていうから。どこまでもダメな奴。自分の意見がまるでない。それでもこんな僕を受け入れてくれる女性を、
やはり一人だけ選ぶなんてことはできなかった。
「ねむっちゃったの?」
お風呂上りでパジャマに着替えた妙子が寝室に入ってきた。
そうだね、こんな僕を好きだっていってくれる妙子を裏切ることなんてできないよね。
「ちゃんと起きてるよ。妙子の作った味噌汁がおいしかったなって思い出しただけ」
「んもう」
軽口をたたく僕の横に座る彼女。横になってる僕の髪を指で優しく梳きはじめる。いいよ、という合図。
僕も手をのばしてまだ半乾きの妙子の髪を触る。
いつもは後ろで二つにしばっている彼女だが、唯一この時間だけ髪をほどいている。
肩まであるそれを優しくなでると彼女はくすぐったそうに笑う。
僕に覆いかぶさって口付けをする前に一言「会えない1日が長かったんだぞ」と彼女は言った。僕もだよ、妙子。
「ん、んむ、チュ」
僕が舌で彼女の歯列をなぞっている間、彼女は僕の上着のボタンをはずし、ズボンとパンツを脱がした。
かろうじて両腕にパジャマの袖が通っているだけの姿。
ひんやりとした指が僕の下腹部をさすり、まだ臨戦状態じゃないものを弄ぶ。
「口で、しようか?」
部屋は薄明かりなので彼女の表情までははっきりわからないけど、きっと言葉にするのも勇気がいったのだろう。
顔をさするとかなりの熱をもっていた。
「口ですると、キスできなくなるから、妙子が脱いで興奮させてよ」
97淑女協定 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/15(金) 17:03:20 ID:ND7rl/g9
妙子の口というのもとても魅力的だけど、今日はずっとキスをしていた気分だ。
やんわりと注文すると、しょうがないなあといった風にベットの横に立ち、あっさりとパジャマを脱いでいく。
もうちょっと脱ぎにタメがあればなあ。
薄明かりの中、衣擦れの音が部屋に響く。体を重ねるようになって初めのうちは、部屋が真っ暗の中でしか事を行おうとはしなかった。
自分の体に自信がないからだろう。そりゃ、モデルさん達と較べれば数値的に劣っているかもしれないけど、
抱いたときにすっぽり僕の中に収まる彼女の体が大好きだ。
小さいと気にする胸も、きっと垂れることもないだろうし、大きいと嘆くお尻も、めちゃくちゃHだとわかってないだけだ。
なにより彼女の中に入ると安心するのだ。それだけは譲れない事実。
「どう?」
脱いだパジャマを畳んでベッド脇に置いた彼女は振り向いてこちらを見る。右腕で乳房を隠し、左手で股間を隠していた。
ストリップとしては不合格だな。彼女の細い左手を掴み、僕の下に組み敷く。
「あんなことやこんなことをしてるのに、まだ恥ずかしがってるの?」
耳元で囁くと、彼女はいやいやをして逃れようとする。
「いや、だめっ」
「だめなもんか」
耳の穴に舌をいれて、右手で乳首をやさしくはじく。弱いところはわかってるんだ。
やわらかいものを僕の唾でなぶり、手で揉み、指でほじる。
「ふわっ。あ、や、や、いっ」
「しー。声が大きい。もうしてあげないよ」
自制できないほどの大声。自分が女性を快楽に導いているという興奮。彼女の股間も潤い、迎える準備を整えていた。
「ゴム、妙子がつけて」
SEX中はゴムを必ず着用すること。淑女協定の中の一つ。用意したゴムを妙子にわたす。肩で息をしている妙子はゆっくりと起き上がり
袋を破って中からピンクの薄地を取り出す。精液だまりを指でつまんでてきぱき僕のに装着するのを上から眺める。だいぶ慣れたようだ。
裸がみられるのは恥ずかしいのに、僕のを見るのは恥ずかしくないのかと思ってしまう。そんなものか。
妙子が帽子をかぶった僕のにちゅっとすると仰向けになり「いいよ」と言った。
そうだ、と僕は思いつき彼女の右手を僕の股間に導く。
「なに?」
「いいから。入るところを妙子にも見て欲しいんだ」
妙子の手が添えられたモノが狙いを定めて貫く。
98淑女協定 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/15(金) 17:04:38 ID:ND7rl/g9
「あ、ああああ、ふあああ」
たまらず嬌声をあげる妙子。
「触ってごらん、ほら、妙子の中にはいっていくよ」
僕のモノがどんどんと埋まっていく。く、きつい。温かく、ぐにょぐにょとして僕のを締め付ける妙子の膣内。
「い、い、いいいいいっ」
歯をくいしばり、シーツを掴む妙子。そんな姿が愛しくなりおでこに汗ではりついた髪を払い舌をはわす僕。
このままずっと妙子の中にいたいんだけど、狭くて、気持ちよくてとてもじっくり味わうことはできそうにない。
「ごめん、妙子、もちそうにない。動くよ」
「きてっ、きてっ、あ、いいいい」
その時、ドンと大きく壁が叩かれた。あちゃあ。絶対隣が妙子の声がうるさいから叩いたんだよ。
「妙子、おい、妙子、声小さく、静かにしよう? 隣に迷惑だって」
「あ、あ、べつに、い、い、いいでしょ、せっかく、きも、きもち、いいし、あ、あああああ」
だめだ、全然聞いてない。いつもは本当におとなしい妙子だけど、あえぎ声になると人一倍大きい。
普段を知ってる僕からすればなんか無理矢理声だしてる感じがするけど、そこもまたかわいいんだ。
しかしここは早く妙子にイってもらって静かにしてもらおう。
「だめ、だめ、いっちゃう、いっちゃうううう」
それから10分後、満足した妙子は僕の横で静かに寝息をたてている。隣には悪いことしたなあ。

朝。出勤前に玄関で妙子に見送られる。
「いってくるね」
「……また、明日だね」
「すぐだよ」
朝の出勤前、玄関をあけたらまた明日まで僕達は恋人同士じゃなくなる。
「いってきます」
99淑女協定 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/15(金) 17:05:23 ID:ND7rl/g9
エレベーターを待っている間に、晶がやってきた。
「おはようございます」
隣としては挨拶をするのが常識だろう。
「今日ね」
「ああ」
腕にだきつく晶。昨日はつけてなかったシャネルの香水が鼻をくすぐる。
「通勤と会社の時間でくっつくのは協定違反じゃないのか?」
「いいのよ。深夜、うちの隣室のアヘ声で全然眠れなかったんだから。壁叩いてもちっとも静まらないし、いい加減こっちは欲求不満よ。ほら」
紺のタイトスカートをめくると、パンツではなくそこには濡れた陰毛が。
「おい、馬鹿、やめろって」
かばんでとりあえず股間を隠そうとするが、そんなことは意にも介さない晶は堂々と、
「昨晩、あなた達がどんなプレイをしたか知らないけどそれよりも数倍すごいことするわよ。いいわね!」
と高らかに宣言して、ノーパンのままエレベーターに乗り込んだのだった。

淑女協定 完
100嬢 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/15(金) 17:08:07 ID:ND7rl/g9
投下終わります。

直接的な嫉妬や修羅場ではないですが、2人の女性の心理でにやにやしていただいたら
作者としては本望です。
101名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 17:39:33 ID:u1ufN+v1
乙とGJ
102名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 17:44:09 ID:tvY0SlH7
>>100
え、完ってこんな良いところで終わりなの!?
大人の恋愛も良い物だ・・・
是非続いて欲しいです。
103名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 18:13:22 ID:R741P/gJ
嫉妬NEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!!!!!



まぁおもしろかったんだけどね
やっぱり嫉妬成分がないとね…
104名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 20:08:40 ID:UsmMpE8E
嫉妬は読み取れるだろ?修羅場は協定が結ばれる前にあったのだろうけど
105名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 21:39:58 ID:dA3/bDlh
>>100
ああ、修羅場なしもいいものだ。最近血生臭いのばっかり読んでるから心が洗われる。
>>86
これに至ってはもう由美より警察だろう。
ともあれ二人ともgj。
106名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 21:53:03 ID:U9bv7ad8
>>100乙&GJ!
ただ、もしかしたら修羅場スレよりハーレムスレ向きかもしれない。
107名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 22:39:33 ID:PrUvd/Z4
>>103
壁を叩いても
ここから何も想像できんのか?
108名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 22:53:25 ID:R741P/gJ
>>104>>107
まぁ確かにあるっちゃああるな
今までこのスレの作品を読みすぎて、耐性ついちまったなぁ…
初めてここに来た時は読んでるときすごい腹のあたりがゾクゾクしてたw
109名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 23:21:09 ID:CedbeTAO
>>100氏投下乙です。

……で、ヒロインの名前から「センチメンタルグラフィティ」を連想してしまった自分はダメ人間決定ですか?
110名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 00:42:14 ID:PDsXiOKH
こういうののほうが腹のあたりがゾクゾクしてくるよ
111嬢 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/16(土) 00:59:52 ID:eX9KTDtN
投下します 連続になってしまい申しわけありません
「隣で何をしていたか」です
112淑女協定appendex 明日 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/16(土) 01:01:14 ID:eX9KTDtN
「明日ね」
そう言ってうちに帰った私は、ヒールを脱ぎ捨て、リビングのソファの上に倒れこんだ。1日おきにしか家には帰らないのに何故か今日は帰ってきてしまった。
会うつもりはなかったのだ。「今日じゃなけりゃ明日だろ」そう言ったわたしの彼は、昨日ここの玄関から一緒にでていった彼は、隣のうちに帰っていった。
今日、わたしの彼は世界中どこを探してもいない。彼のドッペルゲンガーが隣にいるだけ。
明日になれば私に惜しみない愛を注いでくれるのに、昨日あんなに愛し合ったのに、今日わたしがどんなに泣いてすがっても抱いてくれないんだ。
明日、彼女がどんなに泣いてすがってもわたしが彼を抱かせてあげないように。
その残酷な事実が、胸の中で嵐となって吹き荒れる。
一日おきの恋人。馬鹿げた協定。あの時、彼がわたしから去ろうとしていたから? そうよ、彼のいない人生なんて考えられない。去って、捨てられて、辛い思いをするのは嫌。
わたしは彼の傍にずっといたいの。たとえそれが人生の半分でもいい。残りの人生なんて捨ててやるわ!
たまらない。
許さない。
殺したい。
死にたい。
暴れたい。
犯したい。
こんな世界なくなればいい! 今日の世界は、でたらめで、醜く、汚い。だめ、それじゃだめ。それでは甘く、美しく、ふるえるような明日の世界がなくなってしまうということ。
あんな女死んでしまえばいい! 今日のあいつは、わたしから彼をとりあげるただの邪魔者。だめ、それじゃだめ。それでは明日の、みじめで、何の才能もない、嫉妬の炎で身を焦がすあいつを想像して絶頂にいけないではないか。
ああ、今日なんて終わってしまって、はやく、はやく明日になればいいのに。東のほうにいけば早く太陽がのぼるかな。ここじゃない、どこかへいきたい。
外にでて、下にいこうとしても、見えるのは1202号室の扉。あれから彼は、一体なにをしてるんだろうか。
知りたい。知りたくないのに、知りたい。知れば必ず後悔するのに、知りたい。わたし以外の女にどんな話をするのだろうか。どんなものを食べているんだろうか。どんな顔をして……
扉に耳をあてる。そんなことをして何になるというのだ。わかっている。こうやって数え切れない夜を過ごしているから。そしていつも、扉の冷たさが耳から伝わりやがて心臓まで届く。
寝よう。彼の匂いが残るシーツにくるまって眠るのだ。明日になれば、彼に会える。わたしだけに笑ってくれる。やさしく頭をなでてくれる。体が壊れるくらい抱いてくれる。
それだけを夢みて、今日という日を呪いながら眠るのだ。そうやってわたしは残酷な夜をやり過ごしてきたのだから。
113淑女協定appendix 明日 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/16(土) 01:04:12 ID:eX9KTDtN
中途半端に眠ってしまったので、目が覚めてしまった。明日には、なってない。次の日の朝、彼が家の玄関をでたら交代するという取り決め。
今起きても冷たい夜が続いているだけ。だめだ、気になってしまう。隣が。どうなっているか。覗きたい。聞きたい。暴きたい。
耳を壁にあてるだけじゃだめだ。コップ。そうだ、コップを壁にあてればいいとどっかで読んだ。キッチンから持ってきたグラスを使い、耳をそばだてる。
「あ、ああああ、ふあああ」
突きつけられる事実。今まで頭で理解しようとがんばってできないこと。
彼はわたしといない時に、他の女を抱いている。
「い、い、いいいいいっ」
歓喜の声が、だんだん大きくなっている。いいなあ。彼に抱かれてるんだ。右手はコップをもってるから、左指をなめる。
彼の指だと思う。言い聞かせる。そっと秘所の中で一番敏感な芽を摘む。「ぁ」わたしの指は彼の指だ。
「きてっ、きてっ、あ、いいいい」
せっかく気分が盛り上がってるのに邪魔するな! わたしは手近にあった目覚まし時計を隣室の壁に向かって投げつける。
ドンっと音がして隣は静かになった。もう一度集中する。コップを放り投げ、右手で自分の胸を揉む。これも彼の指。
彼はわたしの乳首をはじくように扱うのが好きだ。彼の指…
「だめ、だめ、いっちゃう、いっちゃうううう」
コップなんか使わなくてもはっきり届く女の声。それは、どんなにがんばってもわたしの指は彼の指ではないということをわからせたし、どんなに彼の匂いにくるまれようとも彼の体温を感じられないということもわからせた。
でも、でも、もう少しで、あと少しでイけそうな…… 涙がでてきてもかまわず芽を摘み、胸を揉みしだく。

わたしはようやく訪れた明日がくるまでずっと絶頂にたどり着けないオナニーをしていた。
114嬢 ◆zR/LhJxu0Q :2007/06/16(土) 01:08:47 ID:eX9KTDtN
投下終わりです
他の人とかぶらないよう、かぶらないよう作ってたらこんなんになってしまいました。
以前、修羅場った女達が男を刺殺してしまい、あまつさえ
ちんぽの奪い合いで女達も殺しあうというしょうもない話が浮かんで以来
直接的な修羅場はかけません。読むのは大好きです。

登場人物がセンチ 正解です
115名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 02:14:57 ID:wMtaAbQ1
ぬおお、センチか! 長崎と青森か!
そうと分かったら俄然萌えちまった。

つーかあの主人公なら普通に12股やっていそうですね。
116名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 02:31:27 ID:DCPh7Zfh
>>114
元ネタはわからんけどGJ!
たまにはこういう直接的なエロがあってこそエロパロですよね。
117名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 03:22:57 ID:ApR0sjbc
なんという独白、読んだだけで身が震えてしまった・・・
ところでこれは続くのかな?てか続いて欲しいな
118名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 05:54:27 ID:9UQk6FMw
野暮は承知ですが・・・

ここの玄関を彼が出て行ったのは今朝ですね。
昨晩、彼は家にいたはずです.
明日の朝、となりの玄関を出た瞬間に彼は自分のもの。

なにが言いたいかというと




GJ !!!
119名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 16:40:19 ID:tNE/HWkr
>>114
えろい。GJ
120トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/06/16(土) 22:12:01 ID:FGza9gs8
では投下致します
121桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/06/16(土) 22:15:30 ID:FGza9gs8
 第4話『自分の胸に聞いてください』

「カレーの極意とは徹底された分量と希少な食材と共にある」

 カレー専門店オレンジの店長である東山田国照によるウエイトレスの仕事の説明は難解であった。
常識外れた言動や必ず暴走するカレーへの情熱のおかげで本来のホールスタッフやウエイトレスの
仕事にカレーの極意を熱論しても何の意味はなかった。
そうとは知らずに刹那は頑張って店長の言葉をメモ帳に書き込んでいるが。
 やめておけ。徒労に終わるだけだぞ。

「カズキがチンピラもどきにやられてしまったおかげで今日は店始まって以来の危機が訪れてしまった。
彼の代わりは容易ではない。それでも、カズキの代わりに仕事をやるというのかねセツナ?」
「はい。やります。やらせてくださいっっ!!」
「その意気込み……その意志。ワタシの爺さんが病人のフリをして毎日毎日病院に通って
ナースのおしりを触りに行くという偉業を成し遂げた時を思い出してしまう。
存分に頑張りたまえ。効率よく仕事をこなすことができたら、正レギュラーの昇進は考えてやるぞよ!!」

 刹那はあくまでも俺の臨時なんですけど。クソ店長よ……。

 ヤンキーに絡まれていた俺は目論みどおりに誰かが警察を呼んでいてくれたおかげであっさりと彼らはお縄に付いた。
 交番で警察官から事情聴取で時間を取られ。その後、病院へと強制的にタクシーで運ばれた。
 ある程度の打撲と打ち身が体のあちこちにあるが、検査の結果はどこも異常なし。
 医者からは絶対に安静でいるように診断されて、痛み止めの薬を貰っている間に陽は暮れてしまっていた。

 俺はうっかりと店長に連絡するのを忘れていたのでバイト先に着いた途端に店長はブチ切れた。
 仕事をやろうとしても、顔に紫色の仇が腫れている状態では接客の仕事は出来るはずがない。
 そこで付き添ってくれていた刹那がカズ君がこんな酷い目に遭わせたのは私のせいだからと
 俺の代わりに仕事をすると言い出した。別に深刻な状況でもないために刹那の申し出を丁重に断ろうとしたが、

 刹那は頑固に己の主張を貫き通した。
 店長は今日一日だけならとOKのサインを貰って、現在に至る。

「い、い、いらしゃしませっっ!!」

 緊張で強ばった刹那の声が店内に響き渡った。店長の意味不明な会話の後に俺がウエイトレスの仕事を適当に彼女に叩き込んだ。
 ほんの30分ぐらいでは何も覚えきれるはずもないが、必死に頑張ろうとする健気な姿にお客さま一同は暖かな目で見守っている。
 俺は調理場に引っ込んで店長の尻に蹴りを入れていた。
 目を離すと変な事をやってしまう未確認物体の監視は思っている以上に神経を使う。

「カズキっっ!! ワタシに恨みでもあるのですか!!」
「恨みはない。ただ、調理マニュアルのないようなことをやるな!! 何でオーダーされたカレーをレトルトでお湯で温めたモノで出すんだよ」
「それはスリルとサスペンスを味わうことでワタシが作るカレーがより深みに上り詰めることができるからですぞぉぉ」

 その発言の後に俺のコークスクリュパンチが二回も店長の顔面に炸裂したのは言うまでもない。
 相変わらず、この店長は自分の奇抜な行動が売り上げにどう響くのかと理解してないらしい。

 俺がアルバイトを始めた当初は飲食店の常識の範疇を超えているカレーが
 お客さまの口の中に運ばれていることはしばしばあった。
 知らぬが仏という言葉がこれ程似合う事態に遭遇するのは生まれて始めてである。

「……わ、ワタシを殴ったのね? パパにも殴られたことがないのにっっ!!」
「口はいいからさっさと体を動かせろっっ!!」
 勢い良く腰の回転が利いた回し蹴りが店長の尻に豪勢な音と共に炸裂した。
122桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/06/16(土) 22:18:13 ID:FGza9gs8
★一方、刹那は? 

 私は焦っていた。
 従業員の脱衣室のロッカーに少なめの荷物を入れてから、思わず嘆息を吐いた。
 大好きな幼馴染を傷つけた罪は悠久の日々を過ぎ去っても消えることはないが、
 彼の食費を繋いでいるこのアルバイトが出来ない状況を作り出した責任は私にあります。
 カズ君の怪我が癒されるまでは私がカレー専門店オレンジのウエイトレスとして仕事を最後までやり抜くことにしましょう。
 この店の頭のネジが一本外れた店長が今日からこのコスチュームが正式な制服だと興奮気味に言われてしまいましたが……。

(これ、本当に着るの?)
 渡されたのはメイド服。フワフワしている白いフリルに膝上までしかないスカ−トの丈。
(一体、あの店長さんはどこで手に入れたんでしょうか?)
 だが、店長がこれを正式に制服だと決めた以上は臨時の従業員である私は大人しく従うしかないでしょうね。
 ここで拒否の意志を示すとカズ君にいろいろと迷惑をかけるかもしれない。
 私は勇気を振り絞って身に付けている衣服を脱ぎ捨てた。
 メイド服に着替えるのは照れ恥ずかしさと羞恥を感じてしまうが、これもカズ君のためなら私は頑張って耐えてみせます。
 それがカズ君との幼馴染の関係を取り戻すためなら。なんでもしますから。

 生まれて初めてメイドの服というものを着て、人前に出るのは顔から火が出るぐらいに恥ずかしかった。
 更に私は人見知りが激しくて、接客の仕事が出来るのか不安で一杯であった。胸の中を締め付けるぐらいの緊張感が私を襲う。
 そんな時に私の背中に優しく力強く叩かれた。
「大丈夫か」
「カ、カズ君っっ!?」
「ウエイトレスの制服はそれしかなかったの? 
 カレー専門店で制服がメイド服って……。
 あのクソ店長が集めている制服コレクションだから、今日は大人しく頑張って仕事に励んでくれ」
「う、うん……」
「それに、そのメイド服は似合っているぞ」
「あ、ありがとう。カズ君」
 カズ君の下手なお世辞の言葉でも私は顔が朱に染まっていく。
 彼の言葉はいつも私に勇気をくれます。本当に変わらない幼馴染の背中を見送ると私は両手の拳を握って。
「カズ君のヘルプを私が絶対にやり遂げてみせます!!」
 怯えている自分に喝を入れて、私は戦場へ駆け出した。

 店長やカズ君が教えてくれた接客マニュアル通りに私は接客に専念していた。
 夕食の忙しい時間にお客さまがやってくるが……私は曖昧な笑顔を作って対応した。
 オーダーを頂くと厨房に居るカズ君に伝えて、店長さんの尻をサンダーキックで叩きつける光景が見えたけど、

 それは見なかったことにしましょうね……。そして、食べ終わったお客さまがレジに向かうと私は急いでレジで清算致します。
 初めてのレジに戸惑うことはありましたが、適当にボタンを押しておつりを渡せば問題ありません。
 (精算する時は絶対に合わないかもしれませんが)
 カレー専門店のオレンジの仕事に慣れてきて、気が抜けてきた頃にドアに飾られている鈴の音が鳴りました。
 入ってきたのは、可愛らしい女子高校生です。小柄な身体に童顔せいなのか小学生みたいに見える女の子。

「いらしゃいませ……お客さま」
「あれ? お兄ちゃんは? てか、また新しい人を雇ったかな?」
「え〜と……とりあえず、お好きな席に座ってください。メニューが決まり次第に御呼びください」
「じゃあ、いつものお願いします」

「あ、あのいつものってなんですか?」
「雪菜がいつものと頼めば、いつものだよ。メイド服のお姉さん」
「あの私は幼馴染が私のせいで怪我したので、そのヘルプとして今日は働いているんです。
 お客さまのご注文している品がわからないので教えて頂けませんか?」
「あ、あ、あの笑わない?」
 目の前の少女が恥ずかしそうにして、私の耳に小声で囁いてきた。

「カ、カレーライス 極甘でお願いします」
「はい!! わかりました」
123桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/06/16(土) 22:20:04 ID:FGza9gs8
「後、お兄ちゃんが厨房にいるなら来るように言ってもらえないでしょうか」
「お兄ちゃんというのは店長さんのことなんですか? お兄ちゃん想いなんですね」
「ち、違うよっっ!! 雪菜が言っているお兄ちゃんはいつもウエイターで働いている
 カレー専門オレンジの黒幕の人の方だよ。あの変態さんと一緒にしないで」
 今、店内にいるのは店長さんとカズ君と私だけ。
 つまり、店長がお兄ちゃんではないとすると……カズ君がお兄ちゃんってことかな?

(カズ君とこの女子高生さんがどういう関係なのか気になるよぉ〜)

 私は適当に相鎚を打って、傷心した足取りで厨房に向かった。
 厨房は春の過ごしやすい季節にもかかわらずにここは真夏の熱風のように燃え盛っていた。
 ってか、実際に燃えていた。
「カズキっっ!! カレー専門店オレンジは燃えているか?」
「これが幻覚じゃあなければ、厨房の火の不始末で燃えているな」
「ええっっ!! これなんで燃えているの? どうして、カズ君と店長さんは落ち着いているの!?」
 カレー鍋の底から溢れだした炎が天井という高みまで上り詰めて、壁は真っ黒に焦げ始めている。
 私は目を丸くしてその光景を茫然と見つめていた。
「まあ、刹那……落ち着け。あれはこのクソ店長が火災保険を騙し取るために小火を出したように見せかけた偽装工作だ。
 店長の財布の懐が寂しい時に使う手段だが、保険会社には簡単に見抜かれるんだけど。
 あんまり、気にしないで」
「おおおっ!! カズキっ!! てめえが主犯だろゴラァ!! 
 犯行計画を立てたのは貴様だ。仲良く牢獄パラダイスで懲役10年コ−スを受けようぜっ!!」

「思いつきの犯行計画を冗談で言っただけじゃあ罪に問えませんからぁぁ!!」
 カズ君が放った回し蹴りが店長さんの背中に豪勢な音と共に炸裂した。
 気味の悪い悲鳴を上げて、店長さんは厨房の濡れている床に倒れ尽くして起き上がる気配はなかった。
「で、厨房に来たってことはオーダーでも入ったのか?」
「ううん。違うの。お客さまがお兄ちゃんを連れてこいと言っているんです」

「ああ……雪菜が学校帰りに寄ってきたのか。うん。顔を出してくる」
「カズ君?」
「んっ?」
「お兄ちゃんって……どういうことですか? 私にわかるように言ってくれないかな?」 
 私は出来るだけ怒りを表に出さないように穏やかな微笑を浮かべた。
124桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/06/16(土) 22:23:08 ID:FGza9gs8
★一樹視点

 幼馴染に胸倉を掴まれて黒いオーラーに隠された激しい殺気に圧されてから。
 無言で刹那から頬にビンタをお見舞いされた俺は叩かれた右の顔を押えながら、妹分の元へ歩いていた。

「今日もお兄ちゃんの奢りでカレーをご馳走になりにきましたぁ!!」
「来たか。俺の少ない給料から毎日のようにカレーを大盛りで頼んでくる疫病神が」

「そんな……疫病神なんてひどいよぉ〜。雪菜はこう見えても、カレー専門店オレンジのマスコットキャラクターだもん。
 ほらっ、招き猫ならぬ招き雪菜だよ。雪菜がいるだけでお客がいない時間に比べると格段に増えているはずだよ」

「そりゃ、雪菜が来る時間はウチがもっとも忙しい時間で混んでいるからだよ。
 決して、雪菜のおかげで客は増えてませんから!!」

「お世辞でも雪菜ちゃんのおかげでこの店は救われているんだ。
 そう、砂漠にある救いのオアシスのような存在っ!! 
 思わず、求婚したくなるぜって感じに言ってくれても罰は当たらないはずだよ」
「お前は本当にそんなことを言って欲しいのか?」
「飾った言葉よりも気持ちを込めた言葉の方が何倍も嬉しくなるよ」
「そうか……」

 雪菜のハイテンションに付いて行ける人間は桜荘でも美耶子以外にいないだろうと思いつつ、
 こいつが頼んであろうカレーライス極甘味が来ることを早急に望んだ。カレーを食べてたら、少しぐらいは大人しくなるはずだ。
「そういえば、お兄ちゃんの顔が痣だらけなんだけど。どうかしたの?」
「その辺の道端で派手に転んだんだ」
「もう、お兄ちゃんは少し運動神経が鈍いんだから。少しは気を付けてよね。
 もし、お兄ちゃんに何かがあったら一生傍に居て面倒みてあげるんだから」
「そ、それはありがとうな」

 雪菜が心配そうな顔に俺は少しだけ胸が暖かくなった。
 普段は意地っ張りで本音は誰にも明かさないような性格をしているのに、
 誰かが傷ついてたりすると何振り構わずに気遣ってくれる優しい女の子。

 出会った頃と比べれば、他人に壁を作っていた雪菜はここ1年ぐらいですっかりと良い方向へ変わっていた。
 まあ、幼馴染を助けるために暴漢と戦ったと正直に話せば、違う意味で雪菜が怒り狂うことは目に見えているので
 余計なトラブルの種は回避するに限る。

「そうだ。今日の学校の帰りに美耶子さんと会ったんだけど、一緒にオレンジに行かないって誘ったんだけど……
 『残念ながら今日は外せない用事があるので、今日はご遠慮しますが……
 今度、私が来る時は店を閉める準備と縄と遺書を用意してくださいね 』って伝言しておいてって頼まれたんだけど……」
「悪夢だ。あの悪魔は人の不幸を喜びと快楽で感じてやがる」
「頑張れ男の子」
 あの悪魔による俺のバイト先を訪問されるってことは誰かの血の雨が降り注ぎ、誰かの不幸が同時に起こることを意味している。
 雪菜は同情するかのように俺の肩に優しく手を置いて励ましてくれる。
 が、その程度では未来に起きるであろう嵐に巻き込まれて船は沈没する。絶対にな。

「お、お客さま……カレーライス 極甘味をお持ち致しました」
 雪菜が注文したカレーをメイド服に身に纏った幼馴染が乱暴にテーブルの上に置いた。
「では。お客さま。ごゆっくりしてください」
 一礼してから、厨房の方向に歩いて、更に刹那が振り返って。
俺に鋭い視線を突き付けてから刺々しく言った。
「カズ君もごゆっくりしてくださいね……!!」
 カレー専門店オレンジの雰囲気を絶対零度化するような冷笑を浮かべているが、目は全然笑っていなかったりする。
 刹那はツインテ−ルの髪を揺らしながら、厨房の方に去っていた。

「お兄ちゃん……カズ君ってどういうことかな? とりあえず、話すまでは帰らないからね」
 刹那に負けない程の殺気を俺に圧し当てるように雪菜は表情をひきつらせていた。
 いろんな意味で俺はピンチだな。
125トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/06/16(土) 22:24:01 ID:FGza9gs8
投下終了です。
126名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 22:53:00 ID:BPBS2cAV
>>125GJ
トライデントさんの作品はストーリーが面白いですね。
雪桜の舞う頃にanotherの続きも楽しみに待ってます。
127名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 23:13:42 ID:SnycBwh3
>>125
GJ

トライデントさんは重くて暗い話を
パロネタを混ぜてコミカルに表現してくれるから、
大好き
128名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 23:17:06 ID:ApR0sjbc
>>125
極甘のカレーライス・・・ゴクリ
それはともかく久々の投下乙です
129名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 04:09:28 ID:VOmwguyf
>>125
偽装小火ワロタwwwww
このスレじゃパロコメなんて見かけないからな。貴重だ。
期待しちょりますぞ。
130緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/06/17(日) 13:25:18 ID:8lkHkqDV
投下します
131七戦姫 11話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/17(日) 13:26:02 ID:8lkHkqDV

 第1試合『奴隷から』

 * * * * *
 
 ある“里”があった。
 もとは国内でもありふれた製鉄の里だったが、
 採掘場が遠いこともあり、取り分を余所に奪われてからは衰退の一途を辿った里。
 
 普通の里なら、廃れていく過程で人も弱る。
 食べるものも足らず、他の里とも隔離された環境であれば、まともな人間が育つ方が稀である。
 案の定その里も、大半の住人は痩せ細り、常に異臭を放っていた。
 
 しかしその中で、ごく一部の住人は、立派な体を保ち、身なりも整えられていた。
 彼らのもとには常に食料があり、道具があり、――武器があった。
 
 よくある話だった。
 痩せた里の住人が、武器を持ち、里や行商人を襲って食料や金品を奪う。
 山賊化。
 栄えない国ではよくあること。
 よくあることなので、国も対応に苦慮していた。
 
 しかし、その里は、早い時期に取り潰された。
 
 理由は簡単。
 主国の行商人に手を出したのだ。
 優れた山賊は、主国の者には手を出さない。
 満たされつつも貪欲な大国は、己に害を為された場合は示威も兼ねて簡単に手を出してくる。
 そこが属国の領内とあらば、軍を動かすことに躊躇はない。
 練兵のような感覚で、山賊狩りが行われる。
 故に、それを理解している山賊たちは、主国の人間には手を出さない。
 しかし、生まれて日の浅い山賊たちはそれがわからず、主国の者にも手を出してしまう。
 
 派遣された討伐隊に、山賊と里の住人はほとんど殺され、里は一夜で壊滅した。
 
 ここまでも、よくある話。
 
 ただ、一人の女性が、保護され、属国のいち貴族にその身を預けられることになったのは。
 例のない話であったため、少なからず注目を浴びることになった。
 
 壊滅させられた里の中で。
 ひとり、抵抗しなかった女性。
 その潔さに感服した主国の騎士が、彼女の安全を確約した。
 女性は属国の貴族に手厚く保護され。
 
 やがて、二人の娘を産んだ。


132七戦姫 11話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/17(日) 13:26:44 ID:8lkHkqDV

 姉の名はイクハ。妹の名はユナハ。
 
 名目上は、貴族傍系の娘として。
 実質は、他の貴族子弟の奴隷として。
 
 娘二人は、育てられた。
 
 
 * * * * *
 
 
「とうとう、明日ね」
「……うん。……姉さん、その、」
 
 大会前夜。部屋でふたり。
 イクハとユナハは、顔を合わさず、別の方向を向いたまま、話していた。
 イクハの表情は平常そのもの。
 それに対して、ユナハはといえば。
 どことなく落ち着かず、視線も揺れに揺れて忙しなかった。
 
「ユナハ、やっぱり――」
「わ、わたしと姉さんも、た、戦うんだよね?」
「…………ええ。当たり前よ」
「で、でも、クチナ様が“殺しちゃ駄目”って言ってたから、その、いつもの模擬戦と同じだよね?」
 
 ユナハの言葉に、イクハは大きな溜息を吐いた。
 
「……あのね、ユナハ。この大会の目的は、あくまで主国の貴族を楽しませる為よ。
 それなのに、中身がお遊戯みたいな戦いだったら、下手すれば没収試合になりかねない。
 ――ユナハは、クチナ様を盗られちゃってもいいの?」
 
「で、でも! だからって! 姉さんと本気で戦うなんて……!」
「なによ、実戦さながらの試合だってよくやってるじゃない。そんなに怯えること――」
「だって! わたし、きっと、手加減できない!
 余計なこと考えながら戦うなんて、できないもん!
 姉さんとの試合だって、模造槍を使ってたからできたんだもん! 鉄槍で姉さんのことを突くなんて、わたしには、無理だよ!
 きっと失敗して、姉さんに大怪我させちゃうに決まってる!」
 
 ユナハの叫びが部屋に響く。
 その声は震えていて、瞳は微かに潤んでいた。
 
「……随分な言い草ね。あのさユナハ。私が今まで、あんたの槍を喰らったことがあった?
 というか、そもそも、私に勝てるつもりでいるの? 十年早いわよ」
 
 イクハの声は半ば呆れてはいたが。
 隠しきれない、憤りが紛れていた。
 それに気付かないユナハは、そのまま、
 
「……私が、負けるなら、それで、いい。姉さんになら――」


133七戦姫 11話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/17(日) 13:27:46 ID:8lkHkqDV

「――ユナハ!」
 
 がたん、と大きな音が響く。
 
 イクハがユナハの寝間着を掴み、そのまま床に押し倒していた。
 
 
「あんたの、クチナ様への想いは、その程度なの!?」
 
 
 その叫びは。
 心から絞り出されたかの如く。
 苦しげに、吐き出されたものだった。
 
 ユナハの顔がくしゃりと歪む。
 
「――私は、誰にも、負けたくない!
 姉さんにだって、誰にだって、クチナ様を渡したくない!
 でも、でも――」
 
「だめ。それ以上言ったら怒るよ、ユナハ」
 
 
「――姉さんのことも、大事なんだもん!」
 
 
「ユナハ!」
 
 がつん、と床に拳が叩き込まれる。
 ユナハの顔の真横に、イクハが拳を打ち下ろしていた。
 突き出された手は震えている。
 イクハは数秒だけ逡巡し、そして、意を決したかのように口を開いた。
 
 
「私が勝ったら。
 ――クチナ様のそばに、アンタは置かせないよ」
 
 
 その言葉は。
 ユナハにとっては完全に想定外だったようで。
 ぽかん、と間抜けそうに口を開いて姉を見つめていた。


134七戦姫 11話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/17(日) 13:28:26 ID:8lkHkqDV

「ね、姉さん、なに、いって、るの?
 じ、じ、じょうだん、だよ、ね……?」
「冗談じゃない。本気よ。
 私が、クチナ様を手に入れたら、ユナハは、さよならよ」
「う、嘘、うそ、嘘、うそ、だよね?」
「嘘じゃない。クチナ様は、私だけのものに――」
 
「嫌だっ! 姉さんは、姉さんだけは!
 ――私の、味方、してくれるん、でしょ……!?」
 
「それは、昔の話。
 もう、ユナハのお守りは疲れたから。
 ――だから、明日から、私はユナハの、敵になる」
 
 
 
 
 
 あとは、何を話したのか覚えていない。
 ただ、イクハはぼんやりと。
 赤く晴れた頬をさすりながら、床に座り込んでいた。
 
 
 * * * * *
 
 
 大会には、多くの観客が押し寄せていた。
 
 それもそうだろう。
 一国の王子の妃を、武術大会で決めようというのだから。
 そんな前代未聞な見せ物を是非とも見ようと、各国から物好きたちが集まってきていた。
 
 主国の貴族も、多数が訪れていた。
 
 あろうことか、主国王の弟までも特等席に訪れていて、開会式では主賓として挨拶をしていた。
 この大会がどれだけ特別なものであるか、それだけでもよくわかる。
 
 闘技場は、基本的には石造り。
 踏みしめやすいように荒く削られた石床を舞台に、磨かれた彫刻で装飾されている。
 広めに作られた舞台は、どんなに大振りな武器を使おうとも問題ないほどである。
 そこに、八人の妃志願者が、整列していた。
 
 大会の主催者であり、“賞品”の実の父でもあるメイラ王が。
 少女たちを一人ずつ、呼び始める。


135七戦姫 11話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/17(日) 13:29:18 ID:8lkHkqDV

 紹介されるのは、観客にも印象づけられやすいように、プロフィールと名前だけ。
 少女たちは呼ばれたら己の武器を掲げ、参戦の意を示す流れとなっていた。
 
 
「“竜騎士”ケスク」
 貴族の礼服に身を包んだ少女が、大剣をゆっくり天に向けた。
 剣は大会のために鋭く磨き抜かれ、遠目からでもその切れ味がよくわかる出来だった。
 
「“闘技場王者”サラサ」
 新調された白い布を体に巻き付けた少女が、拳を天に突き上げた。
 自分が使うのはこれひとつ、という気迫が、会場全体に広がった。
 
「“近衛隊隊長”イクハ」
 隊長服に身を包んだ少女が、木製の棒を静かに掲げた。
 その目が一瞬隣の少女へと向けられたが、気付いた者はいなかった。
 
「“槍使い”ユナハ」
 貴族の平服に身を包んだ少女が、巨大な剛槍を天に向かって突き上げた。
 その表情は厳しく、絶対に横を見ないという気迫が満ちていた。
 
「“傭兵”ヘイカ」
 年端もいかない少女が、“刀”を頭上に掲げてみせた。
 その体には傷ひとつなく、万全の状態であることが見て取れた。
 
「“暗殺者”ツノニ」
 メイド服に身を包んだ少女が、じゃらじゃらと大小数えきれない刃物を取り出した。
 会場にどよめきが走るが、少女は何処吹く風と微笑を浮かべていた。
 
「“竜人”ヌエ」
「……? はーい!」
 平素なシャツを着た少女が、きょろきょろと辺りを見回した後、元気よく手を挙げた。
 そして、クチナの方へと向き、そちらに一生懸命手を振ってみせた。
 
「“冒険者”イナバ」
 ヘイカに負けず劣らず幼い少女が、ゆっくりと掲げたのは“鞭”だった。
 丸められていて正確な長さはわからないが、それでも女の子が使うのは難しそうな大きさである。
 少女はフリル付きの黒いドレスに身を包み、可愛い仕草で武器を掲げていた。
 
 
 出場者の紹介が終わり、続いて、対戦の組み合わせが発表される。
 これには観客だけではなく、少女たちも真剣な表情で発表を待った。
 主催者すら知らない組み合わせは、主国の貴族達で構成された臨時の運営委員会により決められていた。


136七戦姫 11話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/17(日) 13:30:03 ID:8lkHkqDV

 一回戦第1試合
“闘技場王者”サラサ 対 “近衛隊隊長”イクハ
 
 一回戦第2試合
“暗殺者”ツノニ 対 “竜人”ヌエ
 
 一回戦第3試合
“槍使い”ユナハ 対 “傭兵”ヘイカ
 
 一回戦第4試合
“竜騎士”ケスク 対 “冒険者”イナバ
 
 
 * * * * *
 
 
 対戦表を見て、イクハは内心で安堵の溜息を吐いた。
 自分とユナハが戦うとしたら、決勝戦となる。
 初戦ならともかく、二戦勝ち抜いた後なら、ユナハの迷いも綺麗に断ち切られているだろう。
 それならば、何の遠慮もなく、戦える。
 
(……それに、クチナ様の言葉もある。
 よほどのことがない限り、ユナハが危険な目に遭うことはないわよね)
 
 2週間前、クチナの寝室にて起こった騒動。
 その締めくくりとなった、彼の言葉。
 
 
『もし、この中の誰かが試合の中で殺されたら。
 
 ――僕は、舌を噛んで死ぬからね』
 
 
 クチナ王子は、見かけ通りの人間だ。
 剛胆さなど欠片も持ち合わせておらず、いつも弱々しく震えている。
 だというのに、人並みに正義感や義侠心を持ち合わせているものだから、いつも自分で自分をすり減らしている。
 そんな彼が、本当に舌を噛んで死ねるとは思えない。
 おそらく、決心して舌を浅く噛んで、その痛みに怯えて止めてしまうだろう。
 
 でも、彼の想いは、きっとあの場にいた全員に伝わった。
 
 自分で死ぬ度胸すらない虚弱な王子が。
 精一杯の虚勢を張って、宣言した。
 彼のことを想っている者ならば、その言葉を無視することはできないだろう。
 
 少なくとも、自分とユナハ、ケスクとツノニは、彼の言葉を守るだろう。
 あとの3人はよく知らないので断言はできないが、
 それでも重要な“賞品”の言葉だ。そうそう無視はできないと思われる。


137七戦姫 11話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/17(日) 13:30:44 ID:8lkHkqDV

 そして、相手を殺さない戦い方なら。
 認めたくないが、ユナハは、最強だ。
 
 妹の剛力は天性のものだ。
 誰にも真似ることはできないし、抑えることすら困難だろう。
 この前、ヘイカとやらに極められて動きを封じられてしまったが、
 一度喰らった技を何度も喰らうほど、ユナハは愚かではない。
 
 ならば、あとは力勝負。
 どんな小技も力でねじ伏せ、勝利する。
 
 致命傷を禁じられた、温い攻撃で。
 ユナハを止めることは、不可能だ。
 
 とはいえ、あの場にいなかった八人目が、ユナハと同じブロックにいるのは気になるが。
 ……まあ、ケスクが初戦の相手なので、それほど心配する必要はないかもしれない。
 決勝戦は、きっとユナハと戦うことになるだろう。
 
 となると、問題はイクハ自身になるが。
 
(――殺さず制する戦いなら。ユナハ以外は確実に倒せるわ)
 
 ユナハに剛力というアドバンテージがあるように。
 イクハも、ある“天性の能力”を持っている。
 それを活かした杖術は、非殺傷戦なら誰にも負けない。
 相手がユナハであっても、重傷を覚悟すれば、抑え込める自信があった。
 
 とはいえ、油断は禁物である。
 いくらクチナ王子に相手の殺害を禁じられたとはいえ。
 揃った八人は達人揃い。ふとした拍子に、相手に致命傷を与えてしまうかもしれない。
 特に、イクハの初戦の相手、サラサは。
 拳の一撃で、相手の頭を破裂させるほどの強打者だ。
 ひとつ間違えば、イクハが殺されてしまう可能性も高い。
 
(……あんなこと言った手前、私が死んだらクチナ様は苦しむわよねえ)
 
 なればこそ、自分も決して死ぬわけにはいかない。
 相手が手加減してくれることなど期待せずに、全力をもって試合に当たろう。


138七戦姫 11話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/17(日) 13:31:38 ID:8lkHkqDV

 イクハは、クチナに感謝している。
 
 自分を近衛隊に引き上げてくれ、ユナハを傍に置いてくれた。
 彼がいなければ、自分たち姉妹は、貴族子弟の奴隷として惨めな一生を過ごしていただろう。
 そんな自分たちを取り立ててくれ、あまつさえ今でも守ってくれている。
 
 だから。
 その恩には、絶対に報いるつもりだった。
 
 彼を決して悲しませない。
 絶対に死なず、絶対に殺さない。
 死力を尽くし、妹に発破をかけて、大会を盛り上げて。
 そして、彼の傍には“今度こそ”自分が居るようになり。
 ――命も心も、一生かけて守ってみせる。
 
 
 そう、決意したイクハの耳に。
 
 運営委員からの、言葉が、届いた。
 
 
 
「大会の日程は明日より一日おきに一戦となります。
 試合開始時刻は正午。時間制限は無しとします。
 
 なお、勝敗についてですが――」
 
 
 イクハは既に決心していた。
 自分が絶対に勝ち残ると。
 クチナの心を傷つけないように、誰も殺さないと。
 
 なのに。
 
 
 
「――対戦相手の“死”をもって勝利とすることが、我々運営委員会の協議により、決定されました。
 命をかけて王子の妃を望む者にのみ、出場資格が与えられます」
 
 
 
「…………え?」
 
 ぽつり、と。
 漏れた声は、誰のものだったのか。


139緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/06/17(日) 13:32:45 ID:8lkHkqDV
ようやく本戦開始です
組み合わせについては残念ながら正解された方はいませんでしたが、
その予想にはこちらもなるほどと思わされるものもありました。
流石は修羅場スレ。修羅場魂は皆一緒ということですね。

本戦からは、だいたい4〜5話で一戦のペースで進むと思います。
戦いの前に個人の話を差し込みつつ、後半はガチの殺し合いで。
今までは大まかな紹介話だったので、ようやく個人の深いところまで話を進められます。うああ長かった……。

まずはイクハ対サラサ。
はたしてどちらが勝ち残るのか、乞うご期待。
140リボンの剣士 最終話C  ◆YH6IINt2zM :2007/06/17(日) 14:23:13 ID:HcCBT6yf
投下します。
141リボンの剣士 最終話C  ◆YH6IINt2zM :2007/06/17(日) 14:24:11 ID:HcCBT6yf
「ああ、ここには居ないと言っても、別の救急車に乗っているだけですから」
「……」
今の意味有り気な溜息は何だったのか、という思いが、こちらの口からも溜息になって漏れてしまう。
「救急車? 二人は怪我をしてたのか?」
「いえ……」
ばつの悪そうに目を逸らす屋聞。
「何でも、新城先輩は性的な暴行を受けたそうで……」
「……!!」
体に震えが来た。静電気が走るような、ピリピリとした痛みが全身を巡っている。
「まずはそれに対する然るべき手当てを……」
そうだ。明日香は、明日香は……!
「うっ!?」
両肩に屋聞の手が置かれていた。背中が、何かにぶつかった様に痛い。
「急に起き上がろうとしないで下さい」
……どうやら、取り乱して起き上がろうとした所を押さえられたようだ。
「色々と思うところはあるでしょうが、今は自分の身を案じていた方が良いです」
そんなことを言われても、思わずにはいられないじゃないか。
俺はいいんだ。これくらいで死にやしないし、怪我が治ればそれで良しだ。
だが、明日香は、木場は、これからどうなるんだ――?

救急車が病院に着き、すぐに俺は治療室に運ばれた。
既にいた医師の元に、俺は寝かされたまま一気に移動。
胸に巻かれた布がべりべりと剥がされ、傷が露になった。
「この傷は一体……?」
医師の質問に、刀でうっかり刺してしまった、と答えようとした時、

「自分を包丁で刺して死のうとしたそうです!」

屋聞が、ちょうど遮るタイミングで強く答えた。
おいちょっと待て。何でお前が代わりに言ってるんだ。
医師が傷の周りをさする。うんうんと首を振り、話を呑み込んだ様子だ。
「あー。ああ〜、駄目だねぇ。クリスマスに一人で早まっちゃったのか」
「はい。先輩はいつも孤独で……」
……人を勝手に自殺未遂者に仕立て上げるな。
「おい屋もっほゴホッ!」
口を開いた直後に、腹に痛みが。咳に連動して傷が痛む。
屋聞の奴、人の腹を殴りやがった。

傷に何か薬を塗られ、柔らかい包帯が巻かれた。
それから、治療室から病練の一室へ運ばれ、医師はすぐ引き返した。
そして残ったのは俺と屋聞。
142リボンの剣士 最終話C  ◆YH6IINt2zM :2007/06/17(日) 14:25:15 ID:HcCBT6yf
「先輩、大声を出しては駄目じゃないですか。傷に障ります」
「お前が殴ったんだろうがっ!」
うっ、痛ててて……。
本当に傷にきてしまった。

「……先輩のことを“クリスマスイブに一人でいる寂しさに耐え切れず早まった真似をしてしまった痛い人”のように仕立てたことは謝ります」
追い討ちに容赦がない。
「しかし、そうでもしないと選択肢が潰れてしまうもので」
「選択肢とな」
「はい」
屋聞は、部屋の隅にある椅子を俺のベッドの側に持ってきて、そこに座った。

「先輩はこのまま怪我人として治療を受けるだけですが、新城先輩と木場先輩は異なります」
「そうだ。明日香と木場、二人はどうなるんだ?」
結局あの殺し合い自体を回避することは出来たようだが……。
「そこが問題、というわけです」
このまま全てうまく行くのだろうか? 屋聞はおそらく先に気付いていたのだろう。
俺もわかってきたが、行かない、と思える点が多くある。
「新城先輩は、性的暴行に対する治療のために別室に行きました」
『つまり……』
俺と屋聞の声が重なった。
「事件は実際に起きたことであり、その主犯が木場先輩であることも間違いないようです。」
「ああ……」

包帯がきつい訳でもないのに、胸が苦しい。
始めに聞いたときから、判っていた事じゃないか。
明日香が、そんな嘘をつくはずがない。木場の陰謀であったのも、本当だったのか。
木場はどうしてそんなことを……。明日香を傷付けて、それで俺がいい思いをするわけがないのに。
誰も喜ばない、最悪の手段だ。
今まで付き合ってきたという男たちも、その方法で? 俺への態度も、全て打算だったのか?
だが俺の中には、木場の優しさが記憶に残っている。
100%、計算のみではなかったはずなんだ。
むしろ、何で木場の中にそういう嫌な心が存在していたのか、それに委ねなければならなかったのか。
「……くっ」
泣けてくる。

「新城先輩のこと、やはりショックですか」
「……」
「……」
返事をしなかったが、屋聞はハンカチを俺の手に渡した。
明日香……。
もう、レイプされただとか、そんなことに考えを巡らせたくない。
どんな状況だったかなんて想像したくもない。だが事件として明らかになる以上、その実態が他人に知られ――。
143リボンの剣士 最終話C  ◆YH6IINt2zM :2007/06/17(日) 14:26:05 ID:HcCBT6yf
「……畜生っ!」

気付けば、手に持ったハンカチを力任せに投げていた。しかも、屋聞の顔に当たってしまった。
「あ……」
「お気になさらず」
屋聞はハンカチをポケットに収める。
「お零れすらも貰えないとは……」
「お零れ?」
「いえ、ただ先輩の涙だけでも……あ、いや、何でも、深い意味はありません」
何を言ってるのかよく分からなかった。時々見せる、この不自然な動揺は何なんだ。

涙は一旦止まったものの、沈んでいく気持ちは全く上向かない。
仮に明日香ではない、他のクラスメイトだったら、こんな気持ちになっただろうか。
俺は今まで、明日香には明るい道を進んでもらい、自分は日陰者で十分だと思っていた。

今回のレイプが最悪なのは言うまでもないが、もし、これが彼氏だったら?
自分以外の男と明るい道を並んで歩いていて、それでもいいのか。「いい」と言いたくない。
何処かしら心の中で明日香は俺のもの、と思っていたんだ。
俺にもそういう気持ちがある。たまたま引き金もなかったから、欲望として膨れ上がらなかった、というだけだ。
それなら、木場が押さえ切れなかったのは、何か留めていたものが外されたから。
……悪魔が本当にいたとして、そいつが気まぐれに木場に囁きかけた、という話ならどれだけ簡単か。外れた原因は他人。きっと俺だ。

「屋聞」
「はい」
「これから、どうしたらいいんだ?」
俺は誰に何をしたらいいのだろうか。少なくとも、何もせずに怪我だけ治して学校に通うだけ、ではいられない。
「それは、先ほど述べた選択肢の話に戻りますね」
「選択肢……。まだ先を選ぶ余地があるのか」
屋聞が俺の傷を勝手に自殺未遂扱いにして潰れるのを避けた、みたいな事を言っていたが、それによってどう変わったんだか。
「ありますとも。ただし後戻りは出来ませんので慎重に」
「人生の選択肢で後戻り出来る方が珍しい」
明日香も木場も、自分がどうなったって後悔しないと誓って道を選んだんだ。俺だけ安全な道を行くことなど出来ない。
144リボンの剣士 最終話C  ◆YH6IINt2zM :2007/06/17(日) 14:27:51 ID:HcCBT6yf
「……えー、まず前提というか、現在の状況ですが、新城先輩への暴行事件はじきに明らかになるでしょう」
「ああ」
「木場先輩がその主犯として罪に問われるのはどうしようもありません」
「……」
「ただ、新城先輩も、日本刀を持ち出し木場先輩を斬ろうとした、ですよね?」
黙って頷いた。これは明日香自身の口から聞いている。
「したがって、新城先輩も殺人未遂の罪を犯していることになります」
「……」
そうか……いくら止めたとはいえ、殺そうとして刀を振り回した事実がもう、どうしようもないのか……。
「このまま事件の全貌が明らかになれば、二人とも逮捕です」
「……俺は?」
「罪に問われることはありません。せいぜい病院に叱られる位でしょう」
「……」
駄目だ。最悪の事態は回避できても、俺だけ無罪でお咎めなし。
「先輩? ここからですよ。選択肢が出てくるのは」
だんだん重くなってきた頭を上げて、屋聞を見る。

「実は病院側も、把握しているのは暴行事件だけで、新城先輩の殺人未遂事件にはまだ着手どころか、見えてもいません」
「何?」
「日本刀は救急隊が来る前に自分がこっそり隠しておいたのですよ。しかも現場は何の調査もなく放置状態です」
「……なんて奴」
あの場においていきなり出てきただけなのに、そんな所まで計算していたとは。こいつにとって事件は掌の上で起きているかのような小さい事なのか。
「先輩の選択肢は二つ。殺人未遂を明らかにするか、揉み消すか」
……遂に来た。
明らかにした場合、屋聞が言ったように、二人とも逮捕。
揉み消した場合、明日香の罪は無いことになり、木場だけ捕まる。
つまりこの選択肢は、俺自身ではなく、明日香の運命を決めるもの。

……。

…………。

………………。
145リボンの剣士 最終話C  ◆YH6IINt2zM :2007/06/17(日) 14:29:01 ID:HcCBT6yf
「揉み消してしまえば、明日香は罪に問われないんだな?」
「はい。暴行事件の被害者として調べられますが、それだけです」
人として間違っていることはわかっている。
「俺は、可能なら、いや不可能でも、明日香だけでも助けたい」
助けるとはどういう意味か、何をもって救いとするのか。
俺は神様じゃないんだ。人間、それもかなり弱い部類だ。そんなことは知らん。
「それでは」
「方法があるなら、何だってやる」
目的の為なら、手段を選ばず。安全な、綺麗な道を行く気なんてないんだ。
明日香、木場が背負った覚悟……せめて俺も同じようなものを背負えなければ、争った二人は何だったのか。
命まで賭けて得ようとしたのが、自分だけお咎め無しでのうのうと暮らすような小物では、それこそ何も救われない。

「……わかりました。と言っても、特に先輩がすることは無いんですがね。即入院ですから」
一つ忘れていた。揉み消すにしても、屋聞は事の真相を知ってるわけで、こいつはずっと黙ったままでいるのだろうか?

「自分が現場の片付けと、二人の口止めをさりげなくやっておきます」
「お前がやるのか」
「先輩には出来ないでしょう。……そうそう、やっておく代わりに、条件をつけます」
「条件……」

今更怯えなどはしない。後悔もしない。来るなら来いだ。

「はい、その条件はですね――――」


*     *     *     *     *
146リボンの剣士 最終話C  ◆YH6IINt2zM :2007/06/17(日) 14:30:08 ID:HcCBT6yf
微妙にすっきりしない気分だった。
結果だけ言えば、レイプを企んだ木場と、実行したヤツが捕まっただけ。
あの事件の次の日、あたしの携帯に脅迫? らしき電話が来て、警察と一緒に先に待ち伏せして、ノコノコ出てきた男たちを逮捕。すごくあっけなかった。
写真やネガも押収されて、そのチェックまでされたのはホント勘弁して欲しかったけど、人志がその場にいなかっただけまだ良かった。

で、すっきりしないのは、ここで一件落着、みたいな空気になってること。
あたしが木場を殺そうとしたことについては何も言われなかった。
どんな処分を受けたって後悔しない気でいたのに、実際には何の処分も受けずに終わったのが肩透かしって言うか。
警察に何か言おうとする時に限って、あの新聞部が邪魔してくるし……。
どういうわけだか知らないけど、レイプ陰謀事件として今回の件は片付けられた。
調査も、年が明けて新学期が始まる直前に終了。人志もほぼ同じタイミングで退院して、あたしと人志は普通に学校に行けるようになった。
木場さんは、捕まった後はそれ相応の施設に送られるらしいわ。ただ、学校には「家庭の事情で転校」と伝えるんだってさ。
あたしがバラしちゃえば無意味になるのに、何でそんな処理をするのよ。
まるで木場の陰謀の上から誰かがより大きな陰謀を被せたようなやり方ね。

まあとにかく、木場さんは居なくなったし、人志の身が安全になったのが何よりだわ。
いつもの生活が戻ってくる。
……あーでも、人志はレイプされたあたしのこと好きってくれるかな……。

喜んだのもつかの間の出来事。
始業式が終わって、ホームルーム後の教室に、ヤツが現れた。
「では先輩、行きましょう」
「ああ……」
新聞部が、いきなり人志を連れて行こうとする。
「人志?」
今日は、人志と一緒に帰るつもりでいたのに。
「あ、新城先輩はご存知ではなかったのですか」
嫌味と余裕がありありと見える新聞部。この態度がムカつく。

「伊星先輩は、本日付で新聞部員になったのです」
「な……何よそれは!」
そんなの知らないわよ。何で人志が、新聞部に入らなきゃ行けないのよ!
「人志!」
びくっ、と人志は震えた。
「どういうことよ」
「それは……」
口篭ってはっきり答えが返ってこない。木場さんに絆されかけた時のようでもどかしい。
147リボンの剣士 最終話C  ◆YH6IINt2zM :2007/06/17(日) 14:31:11 ID:HcCBT6yf
「まあまあ、伊星先輩を責めないで下さい」
新聞部が割ってはいって、人志を後ろに押した。
あたしと距離をとらせて、何がしたいのよ。

「これには、浅からぬ事情があるのです」
「答えになってないわよ!」
片耳をふさいで上半身をわざとらしく逸らす新聞部。
「……こちらから言えることは、この展開は、伊星先輩が心から望んだものではない、それだけです」
だから、答えになってない。何で人志は望んでないのに入ることになったの。
「部室へ行きましょう。新入部員歓迎会くらいはしてあげます」
「……」
教室を出る新聞部についていく人志。まるで機械を見ているよう。
本当に、人志は行っちゃった……。
「ちょっと、明日香……」
後ろから恵の声。
「わかってるわ」
まだ決着はついていない。あたしは竹刀を強く握り締める。
「持って行かれたなら、取り返すだけよ」


「でぇぃっ!!」
新聞部部室のドアを思いっきり蹴破って、窓際まで吹っ飛ばした。
「ちょ、ドアは開けるものですよ!?」
室内には、パソコンの前に座る新聞部こと屋聞、すぐ脇に立つ人志、他に三人くらいの部員がいる。
あたしの目的は一つ。人志を取り返すこと。
人志は、心から望まなくても深い事情があったから新聞部に入った。
これはどういう意味かって言ったら、そう、新聞部に弱みを握られた以外にない。
だからあたしは、人志を取り戻すと同時に、弱みも叩き潰す。
二度と人志を弱みで言いなりにさせないよう、徹底的にね。
竹刀の先を、屋聞の喉笛に押し当てる。
「人志を返してもらうわよ」
「い……嫌ですねぇ、暴力に訴えてくるなんて」
「それが嫌ならどうすればいいか、分かるでしょ?」
逆に脅しを掛けてやるわ。自分の身が可愛いなら人志を返しなさいと。
「はい。参りました」
「はっ?」
あっさりと、屋聞は両手を上げた。
148リボンの剣士 最終話C  ◆YH6IINt2zM :2007/06/17(日) 14:32:45 ID:HcCBT6yf
「新聞部入部の件は、破棄します」
何なのよ。さっきはあれだけふてぶてしかったのに、今になって簡単に降参するなんて。
「じゃあ、どんな弱みを握って人志を入れようとしたのよ」
「弱み……まあ弱みと言えば弱みですね。ですが、物的に存在するものではありませんし、こちらも放棄します」
? 意味が分からないわ。初めから、握っていた弱みなんてなかったってこと?
なら人志が従う訳ないし……あ!
「ホラ吹いたのね」
「ちちち違います違います! 事情は本人から聞いて下さい! とにかく金輪際、伊星先輩の自由は侵害しませんから! というか伊星先輩をさっさと持ち帰ってください!」
言ってることがまるで噛み合ってないし。本人はパソコンいじってるし……。
「まあいいわ」
大丈夫そうになったみたいだし、竹刀を引っ込める。
「人志、帰るわよ」
「ああ」
パソコンから手を放した人志は、妙に汗をたらしながら鞄を持った。
「屋聞、すまない」
「いいえ。予想したとおりになっただけですから」
「いや、そうじゃなくて……」
人志が指差したパソコンのモニターに、なんか青い髪の子の絵がずらりと並んでいる。
「せ、先輩! なんて事を!」
「じゃあ、俺は帰る」
慌ててキーボードを叩く屋聞を尻目に、人志は部室を飛び出した。
「あ、待ってよ!」
あたしも後を追いかける。
部室からは、「データがー!」「オワター!」「コナター!」と悲鳴が上がっていた。
149リボンの剣士 最終話C  ◆YH6IINt2zM :2007/06/17(日) 14:33:57 ID:HcCBT6yf
「……で、結局新聞屋に何て言われたの?」
正午の帰り道、人志と並んで歩くのは、そう昔のことじゃないけど、すごく久しぶりのような気がする。
でもこれからは、いつも通り、こんな風に一緒に帰ることができるわよね。

「……」
「だんまりなの?」
「……」

人志はやっぱり話してくれない。

「ま、いつか言える時に言ってくれればいいから」
あたしも、何もかもを無理やり聞き出さないほうが良いって分かってきた。
今無理するより、言ってもいいと思えるような関係を作って保ったほうがいいみたい。

それと。
……あの女に言われたこと、引きずってるわけじゃないけど……。

「人志」
「ん?」
人志がこっちを向いたその瞬間に、一気に顔を近づけて、

「んっ……」
「……」

ほら、あんまり言葉だけってのは好きじゃないし、こう、口で伝えるなら、こういうのもありでしょ?

「……彼女に、して」

「――」

人志も、言葉じゃなくて、両腕であたしを体ごと、受け止めてくれた……。


(おしまい)
150リボンの剣士 最終話C  ◆YH6IINt2zM :2007/06/17(日) 14:35:01 ID:HcCBT6yf
以上、Cルート最終回でした。
これにて、リボンの剣士は本編外伝含めて完結です。
一年以上かかっても終わらせられたのは、スレ住人の皆様と、
まとめサイト管理人の阿修羅様のおかげであります。
本当にありがとうございました。
151名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 14:35:06 ID:AjoPdGca
連続で神降臨 GJ!!1!!
152名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 14:41:59 ID:VOmwguyf
>>150
ハッピーエンド…なのか…?
レイプ前の分岐は無し…

うおぉぉぁぁぁっ!
   G  J  !
153名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 15:01:05 ID:C9zfU0+P
>>139
冒険者で鞭使いですか。
今年、新作のロケを始めるらしいからなぁ・・・・

とにかく Good Job !!

>>150
完結!!Great Job !!
154名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 15:40:40 ID:s9FtoCrf
>>150
木場報われないヤツ…orz

何はともあれ完結乙です。
155名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 17:09:31 ID:qNL3gIdJ
>>150
とにかくGJJJJJ!!
もう連載されて1年以上たつのか・・・次回作も期待してますよ!!

>>152
レイプされてもこれからがあるじゃないか
156名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 20:16:30 ID:4iduhAVB
最後らき☆すたウィルス踏んでったのかwwナンテ\(=ω=.)/コナタイ
157名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 21:28:43 ID:QMeGN6lF
>>139
GJ!
そして主国のやつら氏ね

>>150
GJ!
お疲れ様でした。
158名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 21:32:13 ID:4u5ll/S6
>>150
乙!超乙!
主人公はどんなに善人でもヘタレじゃハッピーエンドにはならないんですね。・゚・(ノД`)・゚・。
159名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 22:14:11 ID:YX3r5XcD
>>139
GJ!
七人が苦悶するネタが増えて俺うれしいよ

>>150
GJ!
お疲れ様
160名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 22:18:06 ID:1bYvO0qj
>>150超GJ
完結ご苦労様です。
屋聞、最初あまり好きではなかったけど終盤になって大好きになった。
人志も屋聞も家庭環境最悪だから、家出して親友兼同類として同棲すればいいよ、もう。そして、明日香に屋聞の性別がバレて更なる修羅場へ…。
冗談はともかく屋聞は人志にとって数少ない親友兼理解者になってほしい。
161名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 23:09:33 ID:Fw8N7h5X
なんという投下ラッシュ…
心の中で拍手とグミを送るよ
162名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 23:27:55 ID:Y2il61EH
かなりお偉いさんの娘で主国最強ランクであろう竜騎士が出てるのに強制殺し合いって良いのカー?

お祭りついでに竜騎士を謀殺しとけってんなら納得だが… 他は死んでも主国から見たらどうでもいい奴らだし。
そこだけ凄く気になった
163名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 23:40:33 ID:vcF4yvLU
ちゃんと伏線はってるよね。

ネキツだっけ、闘技場の主が奴隷を出すときに、それっぽいこと言ってた。
164名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 23:48:34 ID:bUWxJsxw
>>162
あ 俺も。
さすがにケスクが公に命かけるのはマズイだろ。
いくら『常識的に考えて最強』の竜騎士サマでも。
そこんとこ説明してくれると嬉しい。
ともあれ遅ればせながら、gj!
>>150
リボンの剣士の人もお疲れさま。明日菜がレイプされた時に読むの止めちゃったけど、きちんと完結させてくれたのは嬉しかった。
165名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 00:15:32 ID:+fi1YRgS
>>164
登場人物、しかもヒロインの名前を間違えるっていうのは、
作者にとって非常に失礼なことだから気をつけろ。
166名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 00:22:30 ID:8Fu3GG1B
>>139
GJ!
主国マジ視ね。続きがdでもなく気になるぜ!!

>>150
GJ!
本当にお疲れ様です
長い間楽しませてくれてありがとうございました!!
167164:2007/06/18(月) 01:01:30 ID:i7+51J5X
>>164
げ、ホントだ。明日香の名前間違えてる。
ごめんなさい! うろ覚えで書くもんじゃないね。
>>165
ご指摘感謝。
168名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 01:11:55 ID:6Qkh4QJt
ケスクから、ほのかな死亡臭がするのは気のせいだ、絶対気のせいだ
169名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 01:23:02 ID:yc81CB2Y
>>150
長期に渡る連載おつかれさまでした。
明日香がレイプされたときは読んでて辛くてマジでトラウマになったが…
最後はハッピーエンド(?しかし木場は…)になってよかったよ。
ひとしが超人だったらまた違う展開だったんだろうか。
170名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 01:48:28 ID:LM5PcsYZ
俺はNTRと非処女が出てきた時点でその作品読むのやめてるおw
171名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 02:03:47 ID:EPyeR9Uo
>>139
全員死にそうで恐ろしい。

>>150
長期連載乙でした。
172名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 02:47:47 ID:QJpgp3jb
>>170
俺もww
173名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 07:38:21 ID:joVEHegM
>>170
お母さんが出てきた時点でアウトじゃないか
174名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 08:44:24 ID:Zi/gKbVl
>>173
その発想は無かったわ
175名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 17:30:25 ID:ti7nL92a
おうお前等。


モー娘の辻がいい感じにアレらしいぞ?
176名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 18:11:20 ID:xv4iEPs3
>>175
ん?
177名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 18:13:51 ID:Zi/gKbVl
>>175
流石にそれは本スレでやってくれ
178名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 18:21:52 ID:EPyeR9Uo
本スレでも扱いかねる。どこかよそでやってくれ
179名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 18:26:00 ID:eukk+n+P
モ娘板で
180名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 18:28:39 ID:Zi/gKbVl
>>179
それだ!
181名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 18:34:29 ID:WTs4HNks
彼氏にいもしない女の影をつくりそれに嫉妬したり
夢で彼氏が誰か別の女と喋ってたりすると、起きて夜泣きするヒロインか…

個人的に書いてみたいけど、投下するのはここでいいのか?w
ヤンデレでもなさそうだし、ヒステリーかメンヘルスレになりそうだね。
もしくは単なるうざい女。
182名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 18:36:43 ID:c3lcERgK
・・・多分ここでいいんじゃないか? いまいち分からんが。
183名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 19:05:23 ID:Zi/gKbVl
>>181
それは最後の2行の通りだな
ヤキモチとか嫉妬ではなく精神的な病気だわ
184名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 19:19:30 ID:jri6xXYB
相手が生身ならこのスレっぽいが……。
勘違い系の嫉妬はともかく、完全シャドーだと違うかなあ……。
185名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 20:02:02 ID:WTs4HNks
ようはメンヘル彼女に対抗して一見まともそうな浮気相手をだして
修羅場にすればスレ違いじゃない。そこに気づきました。
186名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 20:29:40 ID:jri6xXYB
楽しみに待ってるぜ。
187名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 01:29:46 ID:QgjqhEjB
これは嫉妬のせいでヤンデレ化したのかな?
ttp://wktk.vip2ch.com/vipper34686.gif
188名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 01:38:36 ID:/9vdGcgs
>>187
それはタマ姉にタカ坊寝取られてヤンデレ化と取っていいと思うぞ
他にもそれの保管庫には
いいんちょにタカ坊寝とられ→このみ、郁乃に「なんでなんでなんで(ry」と問い詰め→郁乃「とろいのがいけないのよ、プッw」
→郁乃バラバラに解体される って流れのCGがあったような気がする
189名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 02:02:24 ID:oD2nmlsp
>>187
二次創作的な、改悪画像郡の一部だから気にするな。

それが置いてある保管庫も原作の面影がないゲテモノしかないんだぜ?
190 ◆BEd.go8JjU :2007/06/19(火) 10:18:43 ID:KaofeyaM
はじめまして
投下します。
191結衣の想い ◆BEd.go8JjU :2007/06/19(火) 10:23:36 ID:KaofeyaM
「オッス、久し振りだな。」
そこにあらわれた男は背は高く顔つきは人懐こそうな感じですごく優しそうな人がいました。
「えッ…。」突然のことに目を円くしていると
「なんだ、忘れてるのかぁ。ほらほら3才の時まで愛し合った仲やん。」
「えっ ?ええ――ッ!」愛し合ったなんて、さらりと言う彼に驚きました。耳まで熱くなります私は慌ててると
「あははっ、3才やぞ。かわいいな。結衣はお前はズッートそのままでおりや。
あっ奈緒さ〜ん。何時見てもすごく綺麗ですね。それと今日からお世話なります。」
彼深々と頭を下げてる彼はお母さんとは知り合いみたいです。
「あら、嬉しいこと言うわね、本当しゅうちゃんは口が上手だわ。」
「あはは、本当ですよ、なんなら僕の部屋は奈緒さんの部屋でもいいですよ…。なんちゃってあはは。」
何ですかこの軽い男は?訳が解りません「ちょと、お母さん、どう言うこと?聞いてないよ。」
あわててお母さんに問詰めました。「あら、言って無かったかな?結衣が部屋に籠っているからじゃないの?」
うぐっ…たしかに私は奥手のせいでちょとこもりぎみかも知れないけど…
ちゃんとお手伝いも学業もおろそかにはしてません。大体、お母さんの帰りが遅いのだって理由と思います。
「おぉ、聞いてなかったのかぁ、俺スゲー楽しみにしてたぜ。結衣と一緒に学校行けるって。」
なっなんですか?この男は?いきなりいしょに手を繋いで、学校に行くってことですか?
なっ、なにおぅ、生意気に本当にキザな男です。
192結衣の想い ◆BEd.go8JjU :2007/06/19(火) 10:28:53 ID:KaofeyaM
あっ思い出しました。いとこの山崎修一、確かに小さい時はいつも一緒にいたような。
引越ししてから全然交流がなかったけど、
「えぇー、一緒の学校行くの?こいつと?」嫌がる私に
「あはは、こいつとはひどいなぁ、昔みたいに修ちゃんって言うてや。
まぁな確かにいきなり自分のテリトリーにズカズカ入って来た訳やから怒るのは解る。」
うんうんと頷く彼。
「3ヶ月や、3ヶ月辛抱してくれや。あと3ヶ月で保険金が降りるしそしたら出て行くし、な。」
えっ保険金って言ってることかわかりません?
「結衣が修学旅行でオーストラリアに一週間ぐらい行ってたときに修ちゃんの家とご両親が亡くなったのよ。火事でね…。」
気まずい空気が流れました。色々事情がある見たい。
最初に口を開いたのは修一君でした。なぜか服を脱ぎだしながら
「俺のために泣いてくれてるのか。うう、ありがとう。奈緒さん俺は体でしか払えないけど一生懸命がん…」
ガッ!!
思い切り人を殴ったのは初めてでした。どうして先に手が出たか分かりません。
その後お母さんに凄く怒られました男の人の口で言うことを真に受けたら駄目らしいです。
お母さんも苦労したみたいです。
修一君と初めて一緒に御飯を食べる時のことです、晩御飯はいつも私が作ってます。
お母さんはお店をやってるので家でまでやりたくないと言って全然しないのが1つの理由です。
「結衣が毎日御飯作ってるんかぁ、スゲーな。」
いつも当たり前のように作り一人で食べてた為、一緒に食べてくれる人がいて、そしてなにより褒めてくれるのは嬉しくって、実はいつもより頑張っちゃいました。
「簡単にし作らないわよ、急に一人分増えたし。」
「すまんの〜。急の客にも対応するそのキャパシティーはもはやベテランの域やな。しかも簡単に作ってこの質と量!余は満足じゃ。」
ちょと大袈裟だけど、嬉しかったです。「ただいま〜疲れだ〜。」お母さんが帰って来ました。
「お帰りなさい。御飯いる?」
「今日はいいわ。お風呂に入ってから事務仕事するから、先寝てていいわよ。」
お母さんは仕事が好きでいつもこんな感じです。
「奈緒さん。お疲れ様です。いつでも俺のこと頼りして下さい。なんならおせっ、お背中でも流し・・」
メゴッ!
私の一撃で修一君の顔にお玉がめり込みました。
193結衣の想い ◆BEd.go8JjU :2007/06/19(火) 10:31:52 ID:KaofeyaM
その後で、ちゃんと謝りました。修一君はすぐに許してくれました。
ちょとスケベさんですけど凄く優しい人で良かったです。打たれ強いし、しかしお玉って結構硬いんだと思いました。
「いやいや、こんなにおいしいなんて、ビックリやわ。まさか東京で京風料理食べれるなんて。うどんが墨汁に漬って出てくるって聞いていたし。これホンマに旨いわ。」
凄く嬉しいけど食べるか喋るかどっちかにして欲しいです。
「いや〜結衣はスゲーわ。これなら毎日食べても飽きひんわ。」
さっきはカッとなってしまいましたけど仲直りが出来てよったです。
「あっー、旨かったぁごっそうさんでした!
何だか力も沸いてきたし、ハッスルしたくなってきたぜ。」よく解らないことを言って、一人でそわそわしている修一君が何かを訴えてる様な目で私の様子を見ています。
「ええッーと、ソロソロお風呂に行こうかな〜・・・・」
私は洗い物をしていましたので適当に返事をしました。
「行ってらっしゃい。」
修一君は少し興奮してるようでした
「結衣がそこまで行けと言うなら仕方がない。俺のことはパパと言ってもいいからな。」
言っていることが分かりませんでした。暫くすると上半身裸の修一君が慌てて駆け寄って来ました。
格好が格好なだけに、ドキドキしてしまいます。
「大変だ!奈緒さんが居ないんだ!お風呂でバッタリ!イヤーンイベントが!」
ガッ!!
力の限り殴ってしまいました。でもいいはずです変態には。
これは天誅です
194結衣の想い ◆BEd.go8JjU :2007/06/19(火) 10:36:09 ID:KaofeyaM
本当にこの変態はには困ります。いい加減にしてほしいです。奈緒さん奈緒さんって
「お母さんはお風呂に行くと言ったけど、いつも銭湯に行くの。
だからあなたの考えてる様なイベントはありません!」
修一君は膝をつきガッカリしてました。
私のことは全然・・
「どうして奈緒さんって、ばっかり・・・。」
「えっ・。」
私何言ってるんだろう、何故か自分でもよくわからないことを言ってしまって、少し戸惑います。
「えーと、ゴメン。聞こえなかった・・なんて言うたん・・かな?」
聞こえてなかったんだ良かったと、思いました。
「何でもない。」
私はイライラしてしまい洗い物も終わったのでとっと部屋に戻ることにしました。その時修一君とすれちがう時に何とも言えない甘い匂いと上半身裸のせいもあり凄くドキドキが止まりませんでした。それは、部屋に戻っても収まりませんでした。
195結衣の想い ◆BEd.go8JjU :2007/06/19(火) 10:54:18 ID:KaofeyaM
規制かかりましたので投下終りです
196名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 16:34:03 ID:oeLd/bqZ
>>188
それどこ?
197名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 16:47:29 ID:4FZZq2K+
>>195
GJ!
ちゃんと校正をしよう!
投下の前に誰かに読んでもらって意見を聞こう!
198名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 17:02:08 ID:1OZrAkfM
>>195
GJ
>>197
ヤンデレSSなんて恥ずかしくて人に見せられるかw
199名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 17:21:19 ID:LSH3k5Mi
>>197
こんなん誰に読んでもらうのよ・・・
200名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 18:08:08 ID:QVX23ui2
>>199
漏れはいつもチャットしてるネット友達に読んでもらってから
ここに投下してる
201名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 20:54:50 ID:ixtOdPBU
実はネットの中でのみ俺っ子だった清楚系クーデレチャット友達と
パソコンにスパイウェアを仕掛けて>>200の性癖を知り尽くしたヤンデレストーカーが対峙する急展開はまだかい?
202 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/19(火) 22:01:10 ID:WzPYvXnn
忘れられた頃にふらりと投下。1話と2話は前スレにいます。
203彼女の目はつぶら 第3話 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/19(火) 22:03:13 ID:WzPYvXnn
「あー、やっぱ一年じゃ全然変わってないなー!」
浦島太郎になり損ねたのはちょっと残念だったような気もしないでもない。
一年ぶり(のはず。眠っていたからあんまり実感ないけど)の大学はあまり変化がなかった。
初夏の暑さを感じつつ、無駄に広い構内を歩く。
「あ、この猫まだいたんだ。」
いつもお弁当の残りを上げていた猫が、ベンチの上にいた。
「おいでおいで。あれ?おーい。」
呼んでも、その子は寄ってきてくれなかった。
流石に私のこと忘れてるのかな?変なことで、時間の経過を感じた気がする。


起き上がった後の私は、一通りの検査を受けた後は特にリハビリをすることもなく。
あれよあれよという間に退院の準備をすることになった。
かっちゃんの部屋を訪れたり、父さんと一緒にかっちゃんを飲み屋に連れてったり、
売店で数時間立ち読みしてたりしたわけで、私の体に異常その他がないことは誰の眼から見てもはっきりとしていた。
愛しい人と離れ離れになるのは悲しいけど、
どの道うちの大学とかっちゃんの病院は学部違いでしかないので何かにつけて突入しに行くのは簡単だし。
無軌道な父さんをほっぽいて、これ以上家が滅茶苦茶になるのも悲しいので、
私は大人しく、晴れてシャバに戻ることにしたのでありました。


そんなわけで私はこうして学業の場に戻ってきたわけだけど、
張り切って家を出たから、二時限目の始まりまではまだ時間がある。
中途半端な時間のせいで、人もまばらだ。
暇が出来ちゃったな、と思いながら、眠気覚ましに背伸びをする。
「んー…」
「ああー!!せんぱーい!!」
後ろから大きな声が聞こえてきて、ふと振り向くと、
たったっ、と小気味いい駆け足で良く知った顔の男の子が近づいてくる。
「おお、正太郎くん。」
「先輩!治ったんですね!!よかったーーー!!ずっと心配してたんですよ!
お見舞いに行っても先輩は眠り続けてるだけで、このまま二度と目を覚ましてくれないんじゃないかって!」
204彼女の目はつぶら 第3話 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/19(火) 22:06:38 ID:WzPYvXnn
彼の名前は鹿島正太郎くん。研究室のかわいい後輩だ。
背は平均よりは低めって感じだけど、体育会系で結構鍛えてるので小鹿のように機敏な動きを見せる。
その正太郎くんは今、私の腕をとりぶんぶん振り回している
元気な子だなぁ。前からそうだったけど、今は感動のせいか目を潤ませながら必死で語ってくる。
「ごめんね、心配かけて。バタバタしてて、みんなに連絡すること忘れてたよ。」
「いいんですよ。そんなこと!」
正太郎くんは否定してくれたけど、本当にひどいことをしたと思ってる。
私のことを心配してくれた人が何人もいるっていうのはありがたいことだ。ちゃんと連絡しておかなくちゃ、と思う。
「私の入院中何があったかとかいろいろ聞きたいし、研究室で話そっか?」
「そうですね。みんな先輩の顔みたいと思いますし。」
振り回していた私の手を離して、正太郎くんは研究棟に向かいだす。
私も付いていこうとしていたけど、突然、彼の足が止まった。
「そういえば…僕はもう3年なんですけど、先輩はどうなるんッスか?」
申し訳なさそうに顔をしかめて、聞いてくる。
「うーん、休学扱いになるのかな?単位は多めにとってたんだけどね。その辺はこれから聞きに行くよ。」
「そうですか。何事もなく済んだらいいですね。」
「うん。あ、素子ちゃんだ。」
「え?ああ、本当だ。」
正太郎くんの後ろから、同じく後輩の桐絵素子ちゃんが歩いてくるのが見える。
いまどき珍しい正統派おかっぱのかわいくてちっちゃくて大人しい子。
実は目の前にいる正太郎くんの彼女なのだ。二人でいちゃいちゃしているところを良く見かけていた。
身長的にもぴったりって感じのかわいいカップルで、見ていて微笑ましくなる。

が、今日のあたしは何故か二人にいたずらしてやりたい気分になっていた。
かわいい素子ちゃんには、たった一つだけ欠点があるのだ。
人なら誰しでも持つ『ある感情』があまりに大きすぎるという欠点が。
205彼女の目はつぶら 第3話 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/19(火) 22:08:48 ID:WzPYvXnn
あたしの目の前に、その起爆装置はある。今にも彼女の元に走り寄っていきそうな正太郎くん。
その後ろ姿に、あたしは突進して、抱きつく。
「ごめんね正くん、1年も待たせちゃって。あたしがいない間、寂しかったよね?
『素子の貧乳じゃ満足できないんだ』ってあたしの胸にむしゃぶりついてきてたもんね。
これからは、ずっと堪能させてあげるからねっ。」
「せせせせせせ先輩ッ?急に何をッ!?」
はがいじめに近い感じで抱きついてる彼の体が、猛烈な勢いでばたばたと暴れだす。
ぎゅうっと胸を押し付けるようにさらに抱きしめて、ちらっと素子ちゃんの方を見ると。
想像したとおりの顔が、そこにあった。
くわっと目を見開き、あたし達の方を凝視している彼女。
口元はぐっと閉じられているが、手はプルプルと震えだしている。

そう。彼女は、とてもとても嫉妬深いのだ。

「違うんだ素子!これはいわゆる誤解で!先輩は事故が脳で!僕の人生に一転の曇りも!」
その表情を見た正太郎くんは、全力で今の状況を否定する言葉を投げかけている。
全力の余り内容が支離滅裂になってきちゃってるけど。
当然そんな言い訳は彼女には通用しない。
彼女はあたし達の方を睨んだまま、かばんに手を突っ込んで、中から…
裁縫バサミを取り出した。何でそんなもの持ってるかという疑問は尽きないが、
それよりも!さぁ、勝負はここから、レディ、ファイト!
「逃げましょうダーリン!怖い般若からの愛の逃避行よーーー!!」
「何でこんなことになるんだーーーーー!?」
あたしは正太郎くんの手を握り、素子ちゃんとは逆の方向に逃げ出す。
ちらっと振り返ると、素子ちゃんは当然追いかけてきていた。
走ることをせずに、凄まじい速さで足を動かして「歩いてくる」。ほとばしる殺気。
こうして、追いつかれたら殺される、スリル満点のおいかけっこが始まったのだった。


「わーどいてどいてどいて!あ、お久しぶりです教授ー」
「はぁ、はぁ、先輩!逃げても無理ですって!ふっ、ふっ、い、今なら土下座すれば素子も許して」
「いやー無理でしょ。後ろ見て。」
「も、もとこー!!??包丁なんてどこから!!??」


「せ、せんぴゃい…も、もう、げふっ、無、理」
「頑張って!追いつかれたら死ぬよ!ほら足にエアーサロンパスしたげるから」
「冷て、って、こん、な、もん、ど、どこから」
「さっき柔道部の部室を駆け抜けた時に拾った。やべっ!前方に敵(素子)!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

206彼女の目はつぶら 第3話 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/19(火) 22:10:58 ID:WzPYvXnn


「ふー、何とかまいたのかな?」
見上げると、お日様は真上に来ている。一体何時間逃げ回ったことになるんだろう?
3時間、ってとこかな?それだけ走った割には、私はあまり疲れていなかった。
フェンスから身を乗り出して、辺りを見渡す。
研究棟の屋上から見える風景の中には、追跡者の姿はない。
少し安心して振り返ると、正太郎くんが大の字になってぶっ倒れていた。
「おかしい…だろ…なんで陸上やってた俺がこうで…ぜえ、ぜぇ、先輩は、息も切らして…ないんスか…」
息も切れ切れに、文句を言ってくる。
確かに、変だなぁ。私はこんな体力派じゃなかった気がする?
少し考えてみる。が、吹き抜ける風が気持ちよくて、すぐにどうでも良くなった。

「あー!ひどい目に会ったっ!!」
正太郎くんが、だんっと勢いをつけて立ち上がる。流石、鍛えられてる心肺機能。もう復活したみたいだ。
「ごめんねー。なんかちょっといたずらしたくなっちゃって。」
「なっちゃって、じゃないッスよ…先輩、ちょっと性格変わりました?」
「うん?そうかな?」
フェンスに背中をあずけて、もう一回考えてみる。私は、変わったんだろうか。
「昔は、素子ほどじゃなかったけど、どっちかというとあんまり喋らない、大人しい人だったように思うんスけどね。
こんないたずらして楽しんじゃうようなタイプじゃなかったような。」
「そうだったかな。昔の私がどうだったかって、うまく思い出せないんだよね。」
そう、オモイダセナイ。
1人で本を読んでる方が好きな私もいるし、あの人と一緒に走り回っているのが楽しいあたしもいるような気がする。
考えると頭の奥の方が痛くなってきそうなので、無理やり話題を変えることにした。
「でもさ、君も結構楽しんでたでしょ?」
「うーん、まぁ、ちょっとだけは。
あんなに必死になってくれるってことは、それだけ俺のこと好きでいてくれてるってことですし。」
言いながら、すたすたと私の隣まで歩いてきて、がしゃんとフェンスにもたれかかる。
「でもさ、ちょっと怖くない?あれじゃ本当に浮気した時には必ず殺されるよ?
必ず殺すと書いて必殺。絶対生き残れない。」
「俺は浮気なんかしません。死ぬまで素子一筋です!」
下を歩く人たちに宣言するように、叫ぶ。おいおい、かっこいいな。
「おー、愛してるねー♪」
「ま、まぁ、愛してますよ?あいつになら、例え殺されたって」
207彼女の目はつぶら 第3話 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/19(火) 22:14:55 ID:WzPYvXnn

がちゃんがしゃーん

彼の愛の深さを語る言葉は、突然の轟音で中断された。
驚いて振り返ると、そこには、素子ちゃんが立っていた。
ヤバい!殺される!?前門の鬼、後門の青空。殺されるか、飛び降りるかしか選択肢がないかも。
私が(おそらく横に立っている彼も)死を覚悟していると、
素子ちゃんはつっと一筋涙を流して、私たちの方に突進してきた。
どーんと正太郎君にぶつかって、フェンスに二人が突っ込む。
ああ、そのまま彼を突き落とすつもりなのかな、と思っていたら。

「正太郎君…私のこと愛してるって、ほんと?」
「あ、ああ。神にでも仏にでもアッラーにでも誓って、本当だ!」
「嬉しい…。」
「ごめんな素子、変な誤解させちゃって。俺が好きなのは、お前だけだから。」
「…うん…私も…。」

と、思いがけずすっごいラブラブした会話をしだした。
あっけに取られて見ている私の前で、サイズぴったりの二人は抱き合ってちゅーまでしやがりだした。

何でこんな状況になってるかっていうと、多分さっきの正太郎君の愛の宣告を素子ちゃんも聞いてたんだろうな、
と1人で納得する。何にせよ、命の危機が去ってよかった。
それにしても、ラブラブしてるなー。羨ましい。
このまま二人で文字通りアオカンに突入しちゃったりするのだろうか?
いいなぁ。私も、かっちゃんとあんな関係にいつかなりたいと思う。
そう思い立ったら、何だか無性にあの人に会いたくなってきた。
バカップルをこれ以上見るのも午後の講義に出るのも切り上げて、医学部にでも行きますか!
そうして、二人から離れていこうとして。
私は見つけてしまった。さっきの轟音の正体を。

床に無造作に落ちている、大木でも切り倒せそうな斧と、ごっついチェーンソー。

正太郎くんの真実の愛を聞いて、素子ちゃんがとっさに落とした武器。
彼女は、これを片手に一つずつ持ってたの?
ゴクッ。唾を飲み込んで思わず素子ちゃんたちの方を振り返ると、
彼女は舌を恋人と絡ませながら、目だけを私の方に向けた。
言葉を発さなくても伝わる、「次やったらバラバラの肉塊にするぞ」という、意思。

人間って怖いんだよ、だから、あんまり無茶なことはするな、あたし。
私は、自分で自分にそう忠告していた。
208 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/19(火) 22:17:19 ID:WzPYvXnn
今回はここで終わり。偽装嫉妬、とでも呼ぶべき展開いかがだったでしょうか。
実はまだヒロイン登場しきってなくてでもいっちょまえに伏線とか貼りたくなっちゃって、
長編の難しさを実感しているところです。何とか完結まで持ってくぞー。
では次回も◆WIhkQEicx2と嫉妬地獄に付き合ってもらう!
209名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 22:14:30 ID:uhl2a1Le
あれ?
210名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 22:55:23 ID:dIlZ94sI
速さが足りない
211 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/20(水) 23:10:53 ID:RAhFwtBx
久しぶりに投下します
212 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/20(水) 23:12:03 ID:RAhFwtBx

頭がおかしくなりそうだ。頭の中に浮かぶ脳が、グシャグシャにかきまわされたような嫌な感覚。頭痛とも吐気とも違うそれは、
確実に翔を狂気の世界へと誘(いざな)っている。
限界が、手の届くところにある。それは柔らかい皮一枚に覆われ、少し手を伸ばせば簡単に突き破ってしまうほど危うい。そして、
おそらくその薄皮一枚の向こうは、異常の世界。いわば翔は狂気と正気の境界線に立っているのだ。
憑き物が墜ちるように肩の力が抜けていく。頭が、体が感覚を失った。もう何も感じない、感じられない。
まるで自分が自分ではなくなったようだ。
ふいに、絡み付いた澄香の腕がほどかれた。見ると、澄香はその場に座り込み、恥ずかしそうな上目遣いで、
「これから、どうします?」
その瞳は、期待でうるんでいた。
「あの、もう付き合って一週間ですし……」ほんのりと頬が朱に染まり、吐息が妙に熱っぽい。
「だから、その、そろそろしたいなぁって、」
「……今日は、帰ってくれないか」
「え……?」
「今日は、帰ってくれ」
「そ、そんな、まだ会って一時間もたってないで──」
「──帰れっ!!」
ビクっと、澄香の体が震えた。その瞳は、世界でもっとも信じられないモノを見たように、大きく開かれていた。
「頼むよ。今日は、もう、無理、なんだよ」
翔の体が、ふるふると細かく震える。やがて、唐突に首がガクッと折れた。
「お願い、だから。もう、限界だから」
限界の先に広がる狂気の世界で、悪魔が手招きしている。足先が境界線を超えてしまっている。そこを超えてはいけない。
何とかしないといけない。狂いたくはない。
忘れていた泣き方が蘇り、ひとりでに波が溢れ落ちた。
「帰れ。帰れよ。頼むから、一人に、してくれ」
213すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/20(水) 23:14:36 ID:RAhFwtBx
しゃくりあげるような吐息に乗せて、何かを口にしようとする。しかし、そこから先は、言葉にならなかった。
混乱した頭が、より深い混沌へとさ迷い行く。
とにかく、今日は、いろいろな事がありすぎた。
ただでさえ学校で拷問のような一日を過ごし、精神が疲弊しきっていたのだ。それなのに、さらに追い討ちをかけるような驚愕と恐怖に、
自分を見失ってしまった。
もう何もかもが煩わしくて、早く、一人になりたくて、澄香が邪魔だった。心の底からそう思う。同時に、もしも、
澄香が今の翔の気持ちをくみとってくれなかったら。そこには、おそらく破滅が待っている事を、翔は本能的に理解していた。
「……分かりました」
しばらくだんまりだった澄香が、ようやく口にした言葉は、翔にとってまさに僥幸だった。その僥幸に導かれるように顔をあげると、
仕方なさそうに笑う澄香がいた。
「今日は、帰りますね。センパイ、疲れてるみたいですし……」
残念そうに言いつつ、澄香が立ち上がる。
「鍵、ここに置いて行きますから」
カタリとテーブルの上に鍵がおかれた。
「後でメールします。絶対に返事下さいね。それじゃあセンパイ、また明日」
澄香は部屋の敷居を跨いで、廊下に出ると、翔に向かい頭を下げた。短い髪が揺らいで、顔を影の中にすっかり覆い隠し、
やがて上げられた顔は少し寂しそうだった。しかし、そんな事はもう気にもならなかった。
規則正しい澄香の足音が、階段を叩く頃、突然押し寄せた激情に耐えきれず、翔は嗚咽をもらしていた。
214すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/20(水) 23:17:26 ID:RAhFwtBx

それからひと眠りすると、いつの間にか頭が平静さを取り戻していた。全てが喉もとを過ぎて、落ち着いた気分である。
あらゆる感覚が体に廻帰し、ようやく正常になったようだ。その証拠に、あの時、身近に感じた異常の世界は、もう遥か彼方である。
時刻は七時を回っていた。澄香が帰ってから眠ったので、だいたい三時間ほど寝ていた事になる。
窓から見える東の空に、紺の空とそれより少しだけ色の薄い雲が漂っている。ずいぶんと雲が厚い。明日は雨かもしれないと思った。
ベッドから降り、立ち上がると体をうんと伸ばした。寝ている間に懲り固まった筋肉が、ほぐれていくのを感じる。しかし、その心地よさも、
体を丸めると途端に霧散し、逆に体が縮むような窮屈感にさいなまれた。
さて、今度は体を丸めたまま再びベッドに腰を落とす。ふと目についたテーブルには、出しっぱなしのアルバムが散らばっていた。
その瞬間、翔は小さな舌打ちとともに、ほぞを噛んだ。それは、もう思い出したくない記憶として、頭の隅に置かれている。
だから見たくは、思い出したくはなかった。
中学の頃の卒業アルバムは、もう見れたものではなくなっている。そして、おそらくここに散らばる残りのアルバムの大切な思い出も、
澄香の狂気で真っ黒に塗り潰されてしまっているのだろう。
その事に、激しい憤りを感じる。しかし、不思議とその怒りの温度は高くなかった。むしろ、氷のように冷たく、怒りとはまた別の感情の胎動を感じている。
溜め息をひとつつくと、怒りはすぐに深い悲しみへと変わっていった。胎動する感情の正体は、これだったのだ。
「何で、こんな事を……」
閉じられたアルバムを前に、翔は両手で顔を覆い隠し、そう呟いた。薄い闇の中では、その呟きさえもすぐに消えた。
だが、悲しみが消える事はなかった。
215 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/20(水) 23:19:20 ID:RAhFwtBx
>>170
>>172
……orz
ともあれ投下完了です
216名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 23:59:04 ID:w8ahh56N
>>215
俺、人の命もそれなりに大事だと思うけどさ。
ある意味『思い出』はそれ以上に大切だと思うのよ。
取り返しつかないのは人命と一緒だけど、思い出はなくなっても明日から生きていかなきゃいけないじゃないか。
絶対戻ってこないの自覚しながら生活するハメになる。
ある意味自分が死んだほうがマシ。
だから写真とか傷つけられたり、家に火かけられたりするのは無茶苦茶腹たつ。
今回の澄香はちょっと許せん。かなり痛い目にあってもらえないと、溜飲が下がりそうにない。
翔はどう決着をつけるのか楽しみにさせていただきます。gjでした。
217名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 00:21:58 ID:9QE4+Bwj
>>216
あんた、熱いな・・・
218名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 00:22:01 ID:DTPyZjIL
>リボンの剣士
完結お疲れ様GJでした
しかも他の作品に手を出す事無くコレだけの期間を一本の作品で通したのもお見事でした
個人的には途中色々引っ掻き回してくれつつも最後には影の功労者として物語の収束に頑張ってくれた屋聞菫にエールを贈りたいです

>七戦姫
読んでて色々な意味で心臓の動機が激しくなる展開流石で今回もGJです
九十九共々楽しみにしてます でも密かに「うらぎりコウモリ」の続きもいつか読みたかったりします

>お願い愛して
すれ違う気持、交差する謀略、病んでいく心……まさに修羅場や流血期待させる見事な展開
連載再開後も定期的な投下は嬉しい限りですGJ

>すみか
定期的に投下してくれるのは嬉しいし期待も高まります
主人公可哀相と思う反面ヒロインたちの兇気がたまりませんGJ

では自分も投下イきます
2191/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/06/21(木) 00:23:08 ID:DTPyZjIL


  /      /      /      /


 今朝の目覚めは昨日にもまして、いや今まで生きてきた中で最悪と言えるほど。
 昨日の事が悪い夢のように思えてならない。
 <一度距離をおこう>
 昨日アッくんから言われた言葉が脳裏に蘇がえるたびに胸に引き裂かれるような痛みが疾る。
 実は昨日一日の間にあったことが全て夢だったんじゃないか――そうだったら良いのに……。
 そんな現実逃避的な考えすら浮かぶ。
 でも、テレビや新聞の日付が告げる日時が無残にも突きつけてくる。
 昨日の出来事が悪い夢などではなく現実だと――。

 そんな精神状態だから朝食もロクに喉を通らず力の入らない体を引き摺るように学校へ向かう。
 結局昨日も朝会ったっきり学校でも終わった後も会っていない。
 このまま歩みを進めれば途中の路でアッくんに出会うだろうけど、でも……。
 正直このまま会うのが気不味いを通り越して怖い。
 アタシはアッくんにどんな顔して会えばいいの……。
 このまま引き返して学校を休んでしまいたいぐらい……。
 そんな事考えながら歩いてたアタシは――。

「スズ! おい大丈夫か?!
 考えながら歩いてたアタシは強く腕をつかまれた感触と其の声に現実に引き戻された。
「気をつけろよ。 お前今赤信号なのに渡ろうとしてたぞ」
「アッくん……。 私の事心配してくれるの……?」
 アタシは声の主――アッくんの顔を見ながら口を開いた。
「当たり前だろ?」
 そう言ってアッくんはアタシに優しく微笑みかけてくれた。
 昔から変わらない優しい笑顔で……。
 そうよアッくんはいつだってアタシのことを見つめてくれた。 何時だって心配してくれてた。
 今だってこうして優しい言葉を掛けてくれる。
 そうよ。 って事はやっぱり昨日のは何かの間違い――。
「心配するのは当たり前じゃないか。 だってお前は――」
 そうよ。 アタシはアッくんにとって最愛の彼女――。
「――お前は俺の大切な幼馴染じゃないか」

 ――え? い、今なんて? た、確かにアタシ達は幼馴染で……、で、でもそれ以上に恋人同士……。

「あ、ホラ信号青になったぜ。 さっさと渡っちまおうぜ。 もたもたしてるとまた赤になっちまう」
 そう言ってアッくんに私は背中を軽く叩かれ促され横断歩道を渡った。
 その時いつもだったら手を握って引いてくれるのに、でも――。
「じゃぁな。 もう横断歩道でボーっとなんかするなよ?」
 そしてアッくんは手をひらひら振りながら行ってしまった。
 ――結局其の手はアタシのてを握ってくれる事なく――

 <――幼馴染じゃないか>
 や、やっぱり昨日のあれは悪夢なんかじゃなく現実……。
 アッくんにとってアタシはもう本当に……

 彼女じゃなくなってしまったんだ――。
2201/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/06/21(木) 00:24:31 ID:DTPyZjIL


  /      /      /      /


「すぅー……っ、はぁーー……」
 時間は昼休み。 今私は熱矢先輩の教室の前にいる。
 其の目的は一つ。 お昼をご一緒させてもらおうと。
 正直言うと以前にもこうして何度も教室の前まで来た事があった。
 だけど切り出せなかった。 何故なら熱矢先輩の隣にはいつもあの女がいたから……。

 でも、今熱矢先輩の隣にあの女はいない、筈――。
 だから、思い切って今度こそ誘おう。 そして言うんだ。
 ――先輩、若しよろしければお昼ご一緒させてもらっても良いですか? って。

 私は面を上げ扉を見つめる。 何も難しい事は無い。
 扉を開けて、そしたら次に熱矢先輩の姿を見つけて、それで話し掛ければいいんだ。
 そして私は意を決して扉に手を伸ばそうと、其の瞬間……。

「よう。 誰かと思えば稲峰じゃないか」
 私が手を掛けるより先に扉が開きそして現れ口を開いたのは熱矢先輩だった。
 不意を疲れた形の私は思わずその場で硬直してしまった。
「あ、は、はい……! あ、あの、せ、せ、せ……!」
 ど、どうしよう。 あんなに何度も心の中で反芻した言葉なのに出てこない。
 心臓の鼓動だけが私の意思に反してドンドン早まっていく。
 言わなきゃ。 言わなきゃ。 言わなきゃ。 言わなきゃ。 言わなきゃ。 言わな……。
 そう思いながらも言葉が出てこず固まってると――。

「こんな時間にって事は、若しかして昼飯に誘いにきてくれたのか?」
 私は熱矢先輩の言葉に只無言でぶんぶんと首を縦に振った。
「そうか。 じゃぁ天気も良いことだし屋上にでも行こうか?」
「は、はい! よ、喜んでご一緒させて頂きます!」
 熱矢先輩の言葉に私は反射的に答え――しかしその声は緊張と驚きと喜びで、
多分ひっくり返ってたと思う。
 普段なら恥かしさで卒倒してしまいそうだったけど、
でも私の心の中はそれ以上に嬉しさで一杯だった。

 熱矢先輩の後をついて歩く私の胸は喜びと期待で満たされていた。
 ああ、良かった。 やっぱり勇気を振り絞って誘いに行ってよかった。
 高鳴る鼓動に任せ軽やかにスキップでもしたいぐらい。
 でも抑えなきゃ。 あんまりあからさまにはしゃいだらおかしいしみっともないもんね。
2211/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/06/21(木) 00:25:19 ID:DTPyZjIL
 そして屋上に到着してのランチタイム。
 夢にまで見た大好きなヒトと二人で一緒に食べるお昼は予想通り楽しかった。 けど――。
 なんだろう?
 楽しそうに私の話に相手してくれる熱矢先輩だけど何か隠してるような、或いは――。

「熱矢先輩。 何か隠してませんか? いえ、何か話したいことが有るんじゃないですか?
あ、いえ私の勘違いだったらスミマセン」
 私がそう言うと熱矢先輩の顔は驚きに、そして微笑みに。
 でも其の微笑みはどこかすまなさそうなものだった。

「勘が良いんだな……。 うん、実は話したいことが……いや、やっぱりいい――」
「あのヒトの事だからですか?」
 私がそう言うと熱矢先輩は驚いた貌をみせた。
「……本当に勘が良いんだな。 うん、お前の考えてる通りなんだけど、その……」
「私の事を気にしてくれてるのなら、大丈夫です。 確かに先日あんな告白しちゃいましたが、
でも本当に付き合って欲しいとかそんなつもりは全然有りませんから。
強がりとかそんなんじゃなくて今のままの同好の士としての関係が心地良いんです。
だから本当に気にしないで下さい」
 そう言って私は笑って見せた。

 ――今言った言葉、勿論本心ではなく、さりとて全て嘘ってわけでもない。
 確かに本心じゃ恋人同士になれたらとも思うけど、でも今の関係が心地良いのもまた事実。
 恋人同士の関係を望み、告白し、迫って、それで今の関係を失ってしまっては元も子もないから。

「ですから、若しよければ話してください。ただ話すだけでも楽になれる場合もあります。
もっとも私なんかじゃ相談相手として不足かもしれませんけど……」
「いや、そんなことないよ。 じゃぁ……聞いてもらってもいいか?
愚痴みたいで聞き苦しいと思うけど……」
「はい! 私なんかでよければ! あ、勿論ココで聞いたことは決して他言はしませんから」
 そう言って私が微笑みかけると熱矢先輩も連られるように、安心したように微笑んでくれた。

 そして熱矢先輩は話してくれた。
 あの女と恋人同士という関係を清算したものの、それでも未だ心の中に未練が残っていること。
 平静を装って距離を保って話したものの、本心では和解を持ち出したくなる気持を抑えてる事。
 コレでよかったのだろうかと本当は弱気な事――。

 正直言えば熱矢先輩の心の中に未だあの女が住み続けてる事は気分のいいものじゃ無い。
 熱矢先輩が必死で距離を保とうとしつつも未だあの女を気にしてるのも正直妬ける。
 でもココで私がすべき事は間違っても其の事に対する不快感や嫉妬を露わにする事じゃない。
 熱矢先輩の話に真摯に耳を傾け、そして熱矢先輩の心を楽にしてあげる事。
 熱矢先輩にはいつも笑顔でいて欲しいし、そのために私は出来る限りの事をしたかったから。
 そう。 私はあの女とは違うのだから――。

 そして一通り話し終わった頃には熱矢先輩はどこかすっきりした貌をしてた。
 その貌を見て私は確信できる。
 私のしてる事は決して間違っていないんだと――。
222名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 00:26:28 ID:DTPyZjIL
投下終了です
223名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 00:45:52 ID:T4AxHVKe
キター!GJです!
ヒロインの感情の表現がうまいのでかなり続きも楽しみにしてます
224名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 02:23:24 ID:9TTrg3Bb
GJ!
レポート処理で寝れない俺にどす黒い風が吹き込んだ…!
225名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 05:32:34 ID:6DpUR+vw
>>216
写真は思い出を記録してそ、の時にしか撮れないから大切だし、それを滅茶苦茶にされるのが許せないと思うのはわかるけど、写真がなくなったから思い出が消えてしまったり死んだ方がマシとは安い思い出だな
ちゃんとネガ取っとけよ
卒業アルバムは注文した写真屋が在庫を保管してる場合があるから早まるなよ
別にアンタを心配してるわけじゃないんだからね!
これぐらいで死なれたら目覚めが悪いっての
226名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 10:13:37 ID:T4AxHVKe
職人さんは読者の意見に流される必要はない。
というのを前提において話すけど…

俺も大抵の事は許せるけど思い出の品を壊されたらかなり怒るな、
「思い」が詰まった物はどんな高額の物より大切にもなるもんだ
だからネガがあるからいいとかじゃなく、その澄香のとった行動が許せない
そもそもネガなんて取ってないのが普通だろうし…。
227名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 12:08:21 ID:9v0Te5DR
でも澄香に思い出の大切さを理解しろと言うのも酷な話だよねぇ。
名字の一件からも分かるけど、彼女の過去なんてトラウマ満載の悪夢に他ならないんだから。
彼女にとっては過去なんてものは、今を壊すだけの唾棄するべきものなのかも。
うん、いい感じに狂ってるねGJ!
228名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 12:15:24 ID:Dho1PIQb
嫉妬スレはどうしてBADENDの結末しか用意されてないんだ
せめて、癒される恋物語が読みたいぜ
229名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 12:38:37 ID:munLuJ5/
つ 鏡 -涼編- 沃野 
230名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 15:52:15 ID:JTYM6vh+
やや地獄な彼女とか、君という華とか、赤い瞳と栗色の髪とか、転帰予報とか、
途中で投げ出された作品ってかなり多いよな。

そりゃ作者様にも都合があることはわかるさ。だけど間が空くなら現状報告してほしいし、
未完で終わらせるならその事を言ってほしい。別の人が続きを書くかもしれんから。それが嫌なら予め言えばいいし。
何だか最近未完なのか休止なのかわからん作品が多すぎ。
231名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 16:15:28 ID:7lIVAyKs
>>230
確かに、3ヶ月くらい間が空くなら何か言ってくれるといいかもしれんね。
書くのは作者さんの自由なのはあるけど、書き始めたことに対する責任みたいなのはあるべきだと思う。
別に未完だからって慰謝料払えなんて誰も言わないし。


>>216
好き勝手やったことに対する報いを受けるのは、嫉妬に限らず物語で一番おいしいところだからな。
澄香が痛い目を見る時の逆風っぷりが、俺も今から楽しみだ。
232名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 16:16:15 ID:rIBSEAsM
>>230
転機投げ出しなんて言わないでェー!
233名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 17:18:34 ID:V3YdM0CY
>>215
GJです。
これだけ登場人物の心情を掘り下げられてるSSを見るのは始めてかも・・・
翔の葛藤や、澄香の苦悩が(良い意味で)痛いほど伝わってくる
もう頑張って下さいとしか言えません!

>>222
死亡フラグばら撒きキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
これはもう主人公駄目かも分からんね
234名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 18:40:06 ID:Ok5I6wGg
>>232
転帰は休止宣言があったから復帰するまで待つのだ。
235名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 20:09:21 ID:WGK34Ct2
>>230
山本君とお姉さんは入らないのか?
俺はずっと全裸のままだよ・・いい加減に服を着させてくれ
236名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 20:27:58 ID:JTYM6vh+
>>235
あれはある程度、第1部、第2部という風にして完結してるから。
作者のホームページもあるし、様子を見る事もできる。
237名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 20:31:49 ID:WGK34Ct2
>>236
えっ? ホームページなんてあるのか?
初耳だよ
238名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 20:33:10 ID:JTYM6vh+
ttp://nuclear.gn.to/index.htm
ここ。修羅場検定なるものもある。行ってこい。
239名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 20:42:01 ID:M2TsZBAp
作者さん達のホムペやブログは
まとめからかなりの数リンクされてるんだけど
皆あんまり知らないんだな
240 ◆y5NFvYuES6 :2007/06/21(木) 22:11:37 ID:iVIjiel6
お久しぶりです。
投下します。
241赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/06/21(木) 22:12:33 ID:iVIjiel6
窓からは太陽が覗き、気持ちのいい日差しの中、俺は目を覚ました。
だが俺の目覚めは気持ちのいいものではなかった。
「…あったま…いた……。」
頭を内側からガンガンと叩かれているかのような鈍い痛みが走る。
昨日おばさんに無理矢理飲まされたせいで二日酔いになったようだ。
「…最悪の気分だ…。」
痛む頭を抱え、ふと気づく。
「……あれ?今何時だ…?」
悪い予感が頭を過ぎる。
「まさか……!!!」
俺は慌てて携帯を探すが、いつも置いてある枕元にはなく。
部屋を見回して見ても携帯の影すらなかった。
「と、とりあえず時計見ないと!」
時間が惜しかった俺は携帯を諦め、バタバタと騒がしい音を立てながら居間へと降りる。

「い、今何時!!」
居間に居るおばさんと若菜の返事も待たず、壁に掛けてある時計を見る。

時計の針は10時を過ぎていた。

「ちーちゃんおはよぉ〜♪」
呆然とする俺に構わず、若菜は能天気な声をあげる。
ニコニコと、朝という時間に相応しいすがすがしいまでの笑みを浮かべながら。
「ちか君どうしたの?」
そんな若菜とは対照的に、心配そうな声色のおばさんが俺の顔を覗き込む。

胃の辺りが熱い。
心臓が鷲掴みされたかのように胸が痛む。
不快感が押し寄せて、冷や汗が全身から滲み出て更に不快感が俺を包む。
焦りと後悔、今の俺の心にはそれしかなかった。
当然おばさんの声など全く聞こえている余裕などなく、おばさんは益々心配そうな表情を見せる。
242赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/06/21(木) 22:14:27 ID:iVIjiel6
「ねえちーちゃん、どうしてそんな顔してるの?」
腕に細い腕が絡みつく。
きつく、まるで縛り付けているかのようなその感触に不快感を感じる。
だがそのお陰かどうかはわからないが、心配そうに見つめるおばさん。
腕に絡み付いてねっとりとした視線で見上げる若菜に気づくことが出来た。
「ちーちゃんにそんな顔似合わないよ。
 ね、今日一緒にどっか行こう。」
若菜はいつもの花が咲いたような笑みを向けるが、今日は何故か違和感を感じた。
何かはわからない。けど…いつもの若菜とは思えないモノを纏っているような…気がした。
その違和感のせいか、俺の不快感は更に増す。
「…悪い。今日は無理だって言ったよな。」
昨日確かに言った筈、なのに何故若菜はまた誘うのだろう。
すると、若菜はいつもとは違い笑顔を崩さずにこう言った。
「どうして? だって、今日はもう、約束無くなっちゃったんでしょ?」
その言葉に、俺は固まってしまった。
何故若菜がそんな事を知っているのかという疑問を抱きはしたが、若菜の言葉で自分のした事を思い出してしまったからだ。
約束を破る。最低な事だ…。
固まり、黙ったままの俺に更に追い討ちを掛けるかのように若菜は言葉を続ける。
「約束破るなんて最低だよね。
 知ってる?あおちゃんって約束破るようないい加減な人は嫌いなんだよ。
 きっとすごく怒ってるよね。顔合わせられないよね。」
時折クスクスと笑いながら無邪気に俺の心を突き刺す。
若菜の言う通り、俺は葵さんと顔を合わす資格もない…。
胃がまた熱く、痛みを伴いながら俺の心を深い後悔へと落とす。
「だから今日は私に付き合ってくれても、いいよね?」
若菜は満面の笑みを浮かべ、期待と確信に満ちた瞳で俺の顔を覗き込む。
その瞳を見ていると、付き合ってもいいのかもしれない…と、すがる様な感情に心が動かされそうになる。
でもそれじゃあ葵さんとは本当に終わってしまうかもしれない。
…約束を破ったんだ、もう何をしてもダメなのだろうか…。
あの優しい葵さんだって人間だ。俺みたいな奴とはもう……。

――あの清楚な微笑みが頭を掠める。
243赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/06/21(木) 22:16:02 ID:iVIjiel6
「…わかってる…。でも俺は……。」

葵さんに会いたい。
会って、謝りたい。
あの人の笑顔をまた見たい。
その気持ちを自覚したら、もうやる事は決まったも同然だ。

「ちーちゃん?」
さっきから腕に、心に絡みつく細い腕をそっと取り払い、若菜に向き合う。
「ごめん、今日も行けない。やる事が出来たから。」
そして目の前の相手の言葉を待たず、居間を後にする。
話せばきっと若菜のペースになるだろう。それに今の若菜は見ていたくなかった…。
ずっと昔に見たことのあるような……そう、アイツを髣髴とさせるあの雰囲気…。
多分あれがさっきまで俺に不快感を与えていた原因だと思う。
だから一刻も早く若菜から離れたかった…。
何が起こるかわからなかったし、なにより葵さんと会えなくなるような気がした。

しばらく呆然としていた若菜だったが、慌てたように俺の後についてきた。
「え……。ね、ねぇ、どこ行くの?」
若菜は俺の心情を伺うかのようにパタパタと栗色の髪を揺らしながら俺の顔を覗き込む。
その表情は先程とは打って変わって曇り、不安な胸の内が手に取るようにわかる。
そんな若菜を見るとほんの少しだけ胸が痛むが、今の俺の心は葵さんが優先だ。
何も答えず、階段を上り先程まで俺が睡眠を貪っていた部屋の襖を開ける。

まずは携帯を探そう。
ない、なんて事はないんだ。
そう思い立ち、机、布団の下、旅行鞄の中、ゴミ箱、押入れ…。
色々な場所を探したが、結局見つかる事はなかった。
机とクーラーしかないこの殺風景な部屋には無い、ということか…。
俺は苛立つ心を抑えるかのように軽く溜息を吐き出す。
気を取り直し、旅行鞄から服を取り出し、部屋には入らずずっと視線を投げかけていた若菜を遮るように襖を閉める。
244赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/06/21(木) 22:17:51 ID:iVIjiel6
着替えを終え、出かける準備の整った俺は意気込んで襖を開ける。
「………。」
若菜は何も言わず、どこか遠い場所を見ているかのような瞳で俺に目を向ける。
その瞳に意気込んだばかりの心が萎えていく。
「…じゃあ、俺行くから。」
これ以上あの瞳に晒されるのを本能的に嫌ったのかもしれない。
そう、口から自然と出た言葉は俺を突き動かした。
若菜から逃げるように階段を下り、居間に居るおばさんに「いってきます、さっきはごめんなさい。」と言い。
そのまま玄関の戸を開く。

俺の心などお構いなしに容赦なく照りつける太陽。
この暑さに俺は勝てるのか…?
…いや、葵さんに謝る為なら何にだって負けはしない!
拳を握り締め、全速力で駆けていく。
当然この暑さだ、汗は額を流れ、頬を撫でる。
肌と服が擦れ、その内に擦れる事もなくべっとりとへばり付く。
だがそんなのに構う事なく、駆ける。
走って走って走って走って走った―――。

肩を上下させ、乱れた呼吸を繰り返す。
待ち合わせ場所だったバス停――。
当然葵さんは居ない。無人の、がらんとしたいつものバス停だ。
「…家の場所とか知ってたらよかったんだけどな。」
自嘲気味にそう呟くと、屋根があるにも関わらず、太陽に照り付けられている熱くなったベンチに腰掛ける。
「まあ、屋根があるんだ、なんとかなるだろ。」
憎らしいほどに照りつける太陽は屋根で遮られ、安堵の混じった声色で呟く。

葵さんが来るまでここで待つ―――。
それが、俺が葵さんに出来る誠意の表し方だと、その時は思っていた。


外の暑さなど感じさせないクーラーのきいた居間で、心配そうな声が響く。
「どうしたのかしらちかくん…。もしかして何か約束でもあったのかしら?」
「……。」
その問いに栗色の髪の少女は答えない。
「…なんか悪い事しちゃったわね。昨日羽目を外さなかったらちゃんと起こしてあげられたんだけど…。」
溜息交じりのその声には少年に対する申し訳なさが滲み出ていた。
「……。」
それでも栗色の髪の少女は答えない。
どこか遠い目をしながら……唇を噛み締めた。
その手には少女の物とは思えないストラップのついた携帯が握られていた――。
245 ◆y5NFvYuES6 :2007/06/21(木) 22:19:01 ID:iVIjiel6
投下終了です。
大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
それでは、また…。
246名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 23:05:38 ID:msKvJ/G7
GJ! お待ちしておりました。
これはそろそろ葵の身が危ないか…
247名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 23:06:02 ID:5ICcSUrp
>>245が神すぎてGJ以外に褒め称える言葉がなかなか出て来ない。とりあえずGodJob とだけ言ってみる。
人間、感動すると何も言葉に言い表せられないって本当なんだな……。改めて実感した。
248名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 23:38:01 ID:W8GBqwmz
>>245
(*^ー゚)b グッジョブ!!
若菜に心惹かれる俺は、もう戻って来れないのでしょうか? (´・ω・`)
249名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 01:41:41 ID:+eKaGNax
>>248
大丈夫、俺は澄香が好きだし
250名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 01:47:09 ID:JU0WW5X1
みんなが全裸状態に耐えられなくなってきたところで颯爽とSSを投下する作者様

な、なんという焦らしテクニック
251名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 20:28:26 ID:5Xza4j9Y
なかなかいい嫉妬だぜ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm491408
252名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 20:50:09 ID:O61sKi6Z
youtubeかニコニコスレで嫉妬・修羅場・三角関係のスレを立てるのも面白いな・・
即効にダ・カーポとSHUFFLEとGiFTがうpされそうw
253名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 22:14:46 ID:08bpeaHj
>>252
ダ・カーポにも重い修羅場があるの?
254名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 22:42:41 ID:O61sKi6Z
あれはいろいろと話題になっていたじゃん
音夢とさくらのガチ対決で純一がヘタレ風景していた修羅場が・・・
255名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 22:44:11 ID:8q8RcVrz
ニコニコには「こいつ明らかにこのスレの住人だろ」って動画がいくつかあったな・・・・・・
256名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 13:54:13 ID:+0797xLV
それにしても、一気に過疎ってしまいましたね・・
257名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 14:07:52 ID:esqUUxhv
変なのが湧くよりはましだろ。多少ペースが落ちたぐらい気にスンナ
258名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 14:10:10 ID:VgH0PwX0
SSスレにはよくあること
259名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 14:36:40 ID:mbDd28N1
ROM専の時代は終わったな
これからは自分で創作していかないと
260名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 17:53:28 ID:+0797xLV
創作活動に必要なモノ

・リアルな修羅場を体験したことがある

とりあえず、彼女の親友から告白を受けて・・修羅場勃発経験ぐらいは
誰だってあるはずさ
261名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 18:10:57 ID:f5Nnixjd
個人的に、男←男装の親友(女)←幼馴染(女) とか大好物です、はい
262名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 18:12:03 ID:gOlv68BP
>修羅場勃発経験
が修羅場勃起経験に見えてしまった
修羅場にあって興奮のあまり勃起する事かと……
263名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 18:25:40 ID:w56GJ9Pm
>>261
あれな・・・。結局上手くいかなかったな。
264名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 19:04:03 ID:TQxPsLMn
     


  兄→     俺    ←妹



          ↑
         妹の親友

みたいな修羅場こそが勃起するに相応しい
265名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 19:13:13 ID:EK5b+4hL
アッー!
266名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 19:42:36 ID:WgdcwN4E
>>264
それって実は「俺」が弟のこと妹だって思い込んでるってオチで親友も男なんだろ?
全員男の修羅場か・・マニアックだな
267名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 21:10:52 ID:g6YJ5Bsw

      保志
      ↓
   若本→俺→×姉→妹 
      ↑
     田代

かなり嫌な相姦図。
268名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 21:25:23 ID:gycnOckP
もう妹とか姉とか飽きた
269名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 21:33:56 ID:0wmbtURq
>>268
つ[いとこ][はとこ]
270名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 22:20:31 ID:fU1Mh1HY
       セル&フリーザー&ブルー将軍
            ↓

        
      キラ → 俺  ←  アスラン

            ↑
            嫉
            妬
            す
            る
            腐
            女
            子
271名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 22:24:43 ID:EK5b+4hL
>>270オワタ\(^o^)/
272名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 23:17:54 ID:f5Nnixjd
>>267
>>270
あまりにもネタ過ぎる物はやめようぜ
273名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 23:55:08 ID:fU1Mh1HY
さてと皆はスクールデイズまでこんな寂れた流れも結構いいかもしれない・・
俺はアニメよりもラジオの方がちょっと楽しみwwww
274名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 01:52:15 ID:tkWOzuCp
こういう時こそまとめサイトで過去の作品を読み直す(*´д`*)
阿修羅様忙しい中ありがとう(*_ _)人
275名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 12:19:40 ID:jxER74i8
スクールデイズ楽しみだな
276名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 12:42:33 ID:RYwPACgV
それまでは死ね無いな
277名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 15:24:04 ID:tkWOzuCp
あまり期待しすぎるとアレだった時に泣けるからなぁ・・・
まぁシャッフルのおかげでそういう展開がテレビでありってのは
分かってるから希望は持っちゃうけど (´・ω・`)
278名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 16:15:10 ID:A8jYfbp2
>>277
製作側も、スクイズをアニメ化するにあたって
視聴者が何を求めているのかをじっくりと検討した、と思いたいな・・・
279名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 16:18:49 ID:HnOeZGPt
>>278
「みんなの誠」エンドから、話を「鮮血の結末」に持ってくる展開を激しく希望
280名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 16:23:00 ID:92pczLOM
いきなりフォーク?ダンス。(てかダンスだったか?)
それからジオンの残光のように場面を最初に。
281名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 17:11:57 ID:16eLeimH
とりあえず言葉レイプはマジで嫌だ
282名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 17:43:21 ID:RYwPACgV
二人の恋人ENDが一番ええよ
283名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 17:59:36 ID:YO1YS7U9
一番初めに到達したのが鮮血の結末ENDだった俺が来ました。
284名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 18:51:04 ID:/qIq6uA6
一番初めに到達したのがバグで強制終了の俺も来ました。
285名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 22:50:27 ID:hRoLkwmk
スクールデイズやってないオレも来ました
286名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 00:18:52 ID:47yS0EDn
それ何?な俺も来ました。
287名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 00:49:07 ID:j51uUFcR
体験版だけやって、確かにフルアニメーションだったけど、口パクシーンは多いわ
キャラが明後日の方向見たまま喋るわ、ダメじゃんこれと見捨てた。
まさかこんなに人気が出るとは思わんかった。
288名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 01:03:01 ID:+9Cosn7A
>>287
大事なのは映像じゃない。

    内容だよ

289名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 01:05:02 ID:oIWS7W7O
>>279
鮮血より永遠の方がいい俺参上。


狂う過程は確かに鮮血の方がいいし、言葉様が究極狂ってる感じがする。
だけどやっぱり永遠の方がセリフとか行動がゾクゾクくるんだよ。

私、誠くんが居ないと生きていけないんですよ。とかマジで声聞いた瞬間背筋がゾクゾクきた。
290転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/06/25(月) 01:36:21 ID:Mg7kKKav
投下しに来ました。
291転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/06/25(月) 01:37:43 ID:Mg7kKKav
 ―――side 晴香―――


 私はあいつが憎かった。


 突然やってきた新しい家族。
 同年代の男の子。
 私は自分と同じ年頃の男の子が嫌いだった。
 あいつらは昔から何かと私に嫌がらせをしてくる。
 私の大嫌いな虫を近づけてくるし、隙を見せればからかわれるし、つまらないことでちょっかいをかけてくるし、
 膨らみ始めた胸をじろじろと見る。
 自分が嫌われていることも知らないで私に付きまとってくる奴らのことが、私は大嫌いだった。
 そんな私の前にあいつは現れた。
 しかも、あいつの隣で、私達の前で、父さんはこんなことを言った。
「今日から同じ屋根の下で過ごすことになった。仲良くしてあげて欲しい」と………

 私はファザコンだった。
 母さんが死んでから父さんは私達を人一倍甘やかすようになり、私はそんな父さんに甘えるのが大好きだった。
 父さんは何も言わなくても私がどうして欲しいかを良くわかっていたし、私のワガママだってよく聞いてくれた。
 私が困っているときはいつだって助けに来てくれた。
 意地悪ばかりする同年代の少年よりも私は父さんが大好きだった。
 だから私は父さんの言うことにはいつだって喜んで賛成していた。
 父さんの言うことはいつだって正義だった。

 その父さんの口から出た言葉は絶対のはず………。
 けれど、私には許せなかった。
 自分の家に“男の子”がいることが。
 その場は何とか取り繕ったものの、あいつの姿が見えない時に私はすぐさま父さんに意見した。
「私は嫌。あいつを今すぐ家から追い出してよ」
 私には自信があった。
 父さんはいつだって最後には私のワガママを聞き入れてくれたから。
 けれど、その日の父さんはいつまで経っても首を縦に振らない。
 私がしつこく懇願すると、父さんは珍しく私を強く叱った。
 そう、父さんに叱られた。
 その出来事は私にとって衝撃だった。

 父さんは私よりもあいつの方が大切なの?

 胸を覆う昏い曇り空。
 何よりも私達を一番に考えてくれた父さんが私よりもあいつを選んだ。
 父さんをあいつに取られてしまう。

 そして私は薄々気付いていた。
 父さんは本当は男の子が欲しかったってことを………。


292転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/06/25(月) 01:39:12 ID:Mg7kKKav
 あいつがやってきてから数日。
 ふとした機会に雨音があいつと言葉を交わし始めた。
 まだ一言、二言。
 しかし、その光景は私の心を乱し、焦燥感を募らせる。
 家族を汚された。
 一点のシミだった汚れが縦横無尽に手を広げ、次第に真っ白だった私の家族を侵食してゆき、
 その穢れが妹のすぐ目の前にまで及んでいる。
 早く手を打たなければ手遅れになる。
 けれど、父さんの言うことは聞かなければならない。
 どうすればいい?
 どうしようもない。
 あいつが笑顔をみせるたび、私の不満が膨れ上がってゆく。
 苛々する。
 まるで、ゴキブリが家の中を我が顔して這い回っている気分。
 どうしてこの家の娘である私がこんな思いをしなければならないの?
 あいつがやってきてから父さんは仕事を増やし、なかなか家に帰ってこなれなくなった。
 それなのにあいつは家に残って、生活を営んでいる。
 居るはずの人が居なくて、居なくてもいい奴が居る。
 母さんを奪われた私達から父さんまで奪おうとしているあいつが憎い。
 だから、父さんが出張に出かけた日、私はあいつに言ってやったのだ。

「どうしてまだここにいるの? ここはお前の家じゃないのに」

 その瞬間のあいつの顔は傑作モノだった。
 谷底に突き落とされる者がみせる、哀れなまでの足場への執着。
 あいつの絶望の表情。
 それを視界に捉えた刹那、昏い快感が背筋を駆け抜けてゆく。
 あいつの瞳が映し出すのは澱んだ輝き。
 たった一言で、もうあいつは死に体だ。
 後はトドメを刺してあげるだけ。
 ならば、決定的なものを与えてあげよう。
 たった一つの逃げ道を塞いで、終わらせてあげる。

「あいつがいなくなればおとーさんは帰ってくるよ。だからね雨音ちゃん、手伝って」

 まだ幼い雨音を篭絡するのは簡単だった。
 父さんのいない不安を煽ってやるだけですぐにこちら側についた。
 これで天野家にあいつの味方はいなくなった。
 後は、あいつが自分から出て行くのを待つだけ。

 私達はあいつを無視して待つことにした。
 けれど、あいつは出て行こうとはしない。

 仕方ないから、あいつのことを散々罵ってやった。
 けれど、あいつは出て行こうとはしない。

 それならばと、身体に解らせてあげることにした。
 けれど、あいつは出て行こうとはしない。

 本当にあいつはゴキブリだった。
 あいつはいつもギリギリのところで踏みとどまる。
 いつも、もうこれで―――と思わせておいて必ず蘇ってくる。

 私は躍起になってあいつを痛めつけた。
 あいつが誰かに告げ口しないことは良く分かっていたから。
 それに、私はもう一度あいつが絶望する顔が見たかった。
 あいつにはそれがお似合いだ。


293転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/06/25(月) 01:40:40 ID:Mg7kKKav
 中学に入ったある日。
 少し調子の悪い日が続いた。
 いつもなら学校を休むところだけれど、ちょうどそのときはテスト前。
 さらに運の悪いことに雨音は小学六年生、修学旅行で家にいなかった。
 学校では成績優秀な優等生を装っていた私は多少の無理を押して学校に通った。
 あいつの前で弱った姿なんて見せられない。
 そんなのは私のプライドが許さない。
 作り笑いを貼り付けて何とか乗り切った学校、心配する友人達と笑顔で別れ家にたどり着いた途端に眩暈がした。
 突然、眩む視界。
 全身を貫く寒気と共に、急激な気だるさに囚われる。
 私はぶっ倒れた。
 風邪だった。

 気が付くと氷枕を頭に下に敷かれ、冷たいタオルを額に乗せた状態で私は自分の部屋で寝かされていた。
 窓の外は真っ暗。
 どれだけの時間が経っているのか良く分からない。
 今、この家には私とあいつしかいない。
 つまり私がこの状態であるということはあいつの仕業としか考えられない。

 あいつはバカだ。
 私があいつだったら絶対に私を助けたりはしない。
 私があいつだったら高熱に苛まれ、もがき苦しむ私を笑顔で眺めているだろう。
 それなのにあいつはそれをしようとはしない。

 私はいったい何をしてるんだろう。
 あいつに弱みを見せないために無理してがんばって、
 その挙句、あいつに助けてもらっている。
 熱は37〜39度の間を行ったりきたり。
 病原菌が入り込んだのか関節がジクジク痛む。
 喉が痛くて堰が止まらない。
 身体の芯が震えるのはきっと寒さのせいだけじゃない。
 こんなに苦しいのに私は部屋に独りぼっち。
 ――誰か助けて欲しい。
 病原菌に蝕まれた肉体はそう叫ぶ。
 誰かって誰?
 今この家に居るのは?
 ――あいつ、あいつにだけは助けられたくない。
 私の意地が踏みとどまる。
 肉体と精神の要求の狭間。
 矛盾を抱えた心が行き場を無くして、悲鳴を上げる。

 頬が濡れている。
 私は部屋で独り涙を流していた。
294転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/06/25(月) 01:41:26 ID:Mg7kKKav
 ―――二度、ドアを叩く音。
 誰かなんて考える必要も無いのに、惚けた頭では反応できなかった。
 そして、無抵抗のまま私の部屋のドアは開かれてしまう。
「晴香さん?」
 あいつは申し訳程度にドアの隙間から顔を覗かせて、こちらの様子を窺う。
「よかった―――寝てるみたいだ」
 横たわったまま動けないでいる私を見てあいつは勘違いをしたようだ。
 私の了解も得ないまま、あいつはズカズカと私の部屋に入り込んでくる。
 その足音は不快ではあったが、今は焦りのほうが勝っていて、
 あいつの足音が近づくたびに『あっち行け!』と叫びだしそうになる。
 やがて、あいつの足音が私の耳元へとたどり着く。
 私が目を瞑り寝たふりを通していると、あいつは私の汗と涙を拭い、
 タオルの水を取り替えて私の額にそっと置いた。
「早く良くなってくださいね」
 あいつの口から出た言葉はありきたりな言葉だった。
 まるでブラウン管や液晶越しに見るような、当たり前の言葉。
 けれどそれが、たまらなく―――で……。
「………ヒッ………ヒッ………」
 必死に堪えていたものが溢れ出し、私は息をしゃくりあげていた。
 あいつの目の前で私は泣いてしまった。
 憎むべき相手の前で、弱い自分を曝け出している。
 でもそれは、それだけは許されない。
「出て行きなさい!」
 私は唖然としたあいつの顔に叩きつけるように言い放つ。
「でも……」
「出て行ってよ!!」
 弱っている為が私の声には迫力があまり無い。
「大体誰がこの部屋に入っていいって許可したの? こっちが病気で弱ってるからって甘く見てない?」
「僕はただ……晴香さんが苦しそうにしていたから……」
「そうやって優しい振りをするのも大変ね。
 どうせ、御機嫌取りでしょ。ここ以外に行く所が無いから、そうやって媚びへつらってる」
「僕は、晴香さんが心配で―――」
「うるさい。本当の兄弟じゃないくせに……」
 何気ない一言。
 けれど、その一言があいつの胸を深々と穿っていた。
 二度目のあいつの絶望の表情。
 けれど、少しも楽しくなんてなかった。
 在ったのは胸糞悪い吐き気だけ。
「何かあったら、すぐに呼んでください……」
 あいつは振り返りもせずにトボトボと部屋を出てゆく。
 あいつのいない部屋、独りぼっちの部屋、妙に空虚な部屋で私は無理やり目を閉じる。
 それからどれくらいの時間が経ったか分からない。
 まだ満足には働いていない聴覚が何かの物音を拾い、半分眠っていたはずの意識が覚める。
 じんわりと広がる心地よい冷たさ。
 氷とタオルは新しい物と取り替えられていて、
 机の上にはペットボトルに入った水と薬と魔法瓶に入ったおかゆ、そしてメモが用意されていた。
『先に眠ります。体調が悪くなったらいつでも呼んでください』
 時刻は午前4時。
 私はメモを破り捨てた。



 数日後、あいつが風邪で倒れた。
 私の方はすっかり治っていたけれど、看病したりはしなかった。
 もちろん帰ってきた雨音もあいつを助けなかった。


295転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/06/25(月) 01:42:38 ID:Mg7kKKav
 私が高校受験に向けて本格的に勉強を始めた頃。
 その夜は布団に入っても寝付けなかった。
 寝るタイミングを外したとでも言うのだろうか?
 妙な胸騒ぎがした。
 お茶でも飲んで気分を変えようと、私は台所へ向かう。
 階段を静かに降りて台所へ入る間際、人の気配を感じた。
 父さんの趣味で作った書斎。
 今はもう使われていないはずの扉の隙間から淡い光が漏れていた。
 私は誘われるようにその光に手を伸ばし、自分の目を疑った。
 書斎を照らす、オレンジ色のランプの光。
 暖かな陽だまりのような部屋の中、二つの影が優しい時間を過ごしている。
 私はまるで夢でも見ているような幻想的なその光景を食い入るようにして眺めていた。
「そういえば、雨音ちゃんは彼氏とかいる?」
「え?」
「いや、僕の友達が雨音ちゃんと付き合いたいって言ってたからさ」
「………そうですか。私、そういうのには興味ありませんから………」
「そうなの? もったいないと思うな。雨音ちゃんは元がいいんだから、男子なんかは放って置かないでしょ?」
「そんなことありません。私、無愛想ですから」
「大丈夫。雨音ちゃんは可愛いんだから、自信を持っていいと思うよ」
「私が……可愛い……」
 あいつの隣であの雨音が女の子の顔をしていた。
 異性に興味なんて無かった妹があいつの前で頬を染めていた。
 そして、私は聞いてしまう。

「ば、バカなこと言わないでください……に、にぃさん……」

 不慣れなのが一目でわかる。
 それでも不器用な性格の雨音がやっとの想いで紡いだ妹の誓い。

 たった扉一つ向こう側、
 その空間に3年前に在るべきだった姿が横たわっている。
 あの二人は出会った頃に戻っている。
 もう一度、やり直そうとしている。
 でも、そこに私の姿が無い。

 私を隔てる扉はたった一枚。
 ほんの一瞬だけ、あいつが雨音と親しそうに話している姿を羨まし―――

 嘘だ!!
 そんな事はありえない!!
 違う!!
 断じて違う!!
 どうして私があの二人を羨む!?
 私が感じなければならないのは怒りだ!!
 雨音は私を裏切った!!
 あいつは私を出し抜いた!!
 だから私は怒っている!! 怒っていなければならない!! 怒っているはずだ!!
 私は胸の内を怒りに塗り替え、書斎の扉に手を掛ける。
「ねぇ―――いったい何しているの?」
 私が書斎に入ると、二人の間の和やかな空気が凍りつく。
 私が壊してやった。
 いい気味だ!!
 自分にそう言い聞かせて、私は二人に圧力をかける。
 反撃もしてこないでヘラヘラ笑っている臆病者と今まで従属してきた妹だ。
 すぐに屈するはず。
 けれど、今日の雨音はあいつの傍から離れようとしない。
 不愉快だ。
 必死にしがみついてくる雨音が私に向かって叫ぶ。
「姉さんもう止めようよ! 本当は姉さんだって、もうこんなことしたくないんでしょ!!」
296転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/06/25(月) 01:43:53 ID:Mg7kKKav
 視界が脈を打った。
 その一言は私の精神を貫いて、心の弱さを暴き出しそうになる。

 私だって、出来るものなら………。

 うるさい!! 出てくるな!!
 これが私の望んでいることだ!!
 雨音に何がわかる!!
 雨音の両手だってあいつの血で汚れているくせに。
 それなのに、
 どうしてあいつの傍であんなに幸せそうな顔が出来るの?
 どうしてあいつに許してもらう事が出来たの?
 どうして?
 教えて!
 教えなさい!!
 そうしたら………私だって………。

 あいつはバカだ。
 バカだから―――私だって受け入れてくれるかもしれない。

 ちゃんと分かってる。あいつが優しい奴だって事は……。
 けれど、これは私が始めてしまったこと。
 だから、もう後には引き返せない。
 それにもうあいつには数え切れ無いほどの傷痕を残している。
 許してくれる訳が無い。

 ―――でも、雨音はあいつの傍にいる。

 黙れ!!
 それが何だというのだ。
 期待なんかしたって、裏切られるに決まってる。
 羨んだ所で、手が届くはずも無い。
 だから、壊してやる!
 手に入らないなら壊してやる!
 でないと私は自分を保てなくなる!
 あいつと雨音のか細い絆。
 まだ生まれたばかりのそれが、姉妹の絆に敵うはずが無い。
 私があいつを追い出して家族を守るんだ!
 私があの二人の間を引き裂いてやれば元通りだ!
 私が壊してやる!
 私が兄妹を壊してやる!
 私が! 私が!! 私が!!!

 私は、本当は―――

 顔を上げると二人はお互いを支えあうようにして、こちらを見ていた。
 ただそれだけなのに、私はそれがどうしても許せなくて―――。


 キレた。

 
 喚き散らした。
 

 そして、目の前が真っ白。
 視界に映っている世界を脳味噌が認識出来ない。
 キーンと耳鳴りがする。
 私、なにしてたんだっけ?
297転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/06/25(月) 01:45:30 ID:Mg7kKKav
 頬が熱い。
 私……もしかして、ぶたれた?
「―――いい加減にしてください。
 僕に言うのはかまいません。でも、雨音ちゃんにだけは、その言葉は使わないで………」
 混濁する意識。
 雨音? 私、何を言ったんだっけ?
 そして、歪んだ視界の端に掌が映る。
 もう一度、ぶたれる? あいつに?
 咄嗟にその覚悟をする。
 それはつまり、いつかこういった事態になるかもしれないと心のどこかで思っていたから。

 ―――けれど、いつまで経っても来るべき衝撃が来ない。

 代わりにあったのは、火照った頬に触れる優しい感触。
 文字通り血塗れたあいつの手。
 けれど、気持ち悪いなんてこれっぽっちも思わなくて………。
「ごめんなさい、痛かったよね……」
 開口一番にあいつはそう言った。

 やっぱりあいつはバカだ。

 遅い。
 今頃になって手を差し伸べてくる。
 私があいつに安らぎを与えられている。
 それは私にとって最大の屈辱。
 それなのにあいつの掌を私は拒めない。
 温かい。
 嬉しい。
 手放したくない。
 ずっと、こうしていて―――

 違う!
           違わない。

 嘘だ!
           嘘じゃない。

 止めて!
           止めないで。

 認めたくない!
           じゃあ、どうしたいの?


 ―――雨音にするみたいに優しくして欲しい―――
 
298転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/06/25(月) 01:46:12 ID:Mg7kKKav
 動悸が止まらない…。
 つまりはそういうことらしい。
 いいだろう。
 認めてあげる。
 この勝負はあいつの勝ち。
 あいつのバカは私を狂わせる。
 これが恋愛感情というのならそれでも構わない。
 それならば、こちらにだって考えがある。

 私を狂わせたのは他でもないあいつ。

 だから、責任を取ってもらうからね。
「八雲ちゃん」
299転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/06/25(月) 01:46:59 ID:Mg7kKKav
 ここまでです。

 妹編と重なる部分はかなり説明を端折っていますので、
 阿修羅氏のまとめサイトを活用していただけると助かります。
 次回も晴香視点です。

 相変わらず忙しいままなので、更新は遅くなってしまいます。
 本当に申し訳ありません。
300名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 01:47:52 ID:Y09JfPfY
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
惜しみなくGJ
301名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 01:53:38 ID:MmhTxF4D
とりあえずいまさらだよ姉さん…ときっぱり振ってほしいぜ!
302名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 02:07:16 ID:8VIgLkv3
姉うぜぇわ、普通にボコボコにしてやれと思ってしまった…
でもGJ、続きに期待
303名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 02:24:29 ID:ecl3AyPC
GJ!!一番続きが気になる作品投下されてた!

それと…なにこの自己中女、ホントウザイわ
雨音にはマジで頑張ってほしい
こんな腐れ女、名前すら覚えられんわ
姉は鼻の穴に耳かきの棒つっこんで死ね
304名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 02:26:08 ID:oB9SU5U1
姉も妹も大好きだよ!
皆が幸せになれる結末ならいいな!
305名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 02:37:01 ID:xNUlHGYe
この姉、今後は修羅場で残酷に殺されることがあっても、
少なくともこの主人公に徹底的に報復されることはないんだろうな。
主人公、このDQN女を殺っちまえ!
306名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 02:44:55 ID:SufRsurR
そんなこと言う前にさげろ
307名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 03:04:04 ID:MmhTxF4D
姉への総攻撃にワロタ

同級生娘には頑張って欲しい
308名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 04:02:56 ID:KTklP6J7
>>299乙&GJ!
壊れかけた家族の絆がこのままぶっ壊れるのか
それとも再びくっつくのか、続きが気になる。

あと避難所に修羅サンタの新作来てるね。
こっちもGJ!
309名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 04:48:18 ID:7cIorg/3
>>290-299
まってて良かった!待ってて良かった!!

ありがとう・・・・そしてお疲れ様、良かったよ




じゃあ人気のない姉様はぼくが貰って行きますね^^
310名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 05:35:14 ID:hNkCl5O1
姉妹を性奴隷に、と言うオチになる予定なので無問題
311名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 06:36:09 ID:XwyjLgJz
姉への総攻撃は止めろよ。
もし姉がメインヒロインならやや地獄みたく作者来づらくなるだろうが。




まあ、現在の展開を見ればまったく反省してない可能性が高いし、叩かれるのも当然っちゃ当然だが。
共犯の妹が距離置かれても無理がない反応に対し、主犯の姉は弟が悪いって態度だからな。
312名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 06:41:37 ID:c7qwM241
待ってました!
晴香姉さん意地ばかり張ってると本当に八雲取られちゃうよ。
職人さんに惜しみ無いGJを!
313名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 06:45:29 ID:c7qwM241
興奮のあまりageてしまった。すまん。
314名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 07:55:56 ID:qNWnspgN
一時の感情に流された日和見なレスでは後の大局を見誤る。

むしろ、ここからの晴香の心理をいかに上手く料理するのか。
それを楽しみにしようじゃないか。
315名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 08:10:21 ID:uRx9Rg55
姉イイネ!ツンデレっぷりがすばらすぃ。でもこの作品八雲に一番萌えるね。
316名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 09:04:38 ID:K7dVBUfg
姉スキーの俺は問答無用で晴香派であり今後も晴香ガンガレなのである
317名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 09:42:54 ID:OyFAu10a
バカだなお前ら
自分が付けてしまった傷を生涯かけて癒すのがいいんじゃあないか…
318名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 14:34:54 ID:8SlR7Frm
なんか、転帰予報を初めて見た人の感想多いよな?
まとめサイトで1話から見た方が良いぞ、晴香がなんだかDQN扱いされてて驚いた
319名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 15:00:28 ID:x2XEGZkS
転帰予報の初期の当初の晴香姉は弟にデレデレしていたような記憶がある
まあ、伏線は1話から張られていたんだから騒ぐ奴はどうかしていると思うんだが・・
俺は嫌われていた主人公がどうやって姉と妹を仲良くなる経緯をちゃんとやってくれているので
次回が気になって仕方がないですよ
320名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 16:00:06 ID:V+ztHWyb
暴姉殺すにゃ刃物はいらぬ
弟LOVEでブレインウォッシュ
321名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 16:28:35 ID:lPrlzBz7
ここって基本的に男に女が複数って感じですか?
女を取り合う男、のような逆バージョンはスレ違いでしょうか
322名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 16:33:10 ID:RQPdr+Ba
>>321
スレの定義という点ではスレ違いではないが
需要は期待しないほうがいいと思う
323名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 17:08:37 ID:YZpOzTue
>>321
その設定で投下するなら注意書きをしてくれ
スルーするから
324名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 17:20:59 ID:XwyjLgJz
>>318
俺は最初から見てたが、次第に嫌いになったってタイプかな。主犯だし。
325名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 19:15:33 ID:X3wQUQo8
>>321
寝取られスレでやった方がお前さんにとってもこのスレにとってもいいと思う
326名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 19:37:35 ID:nwvTPD2I
嫌いになったのはわかったからそれをいちいち喚くな
327名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 19:57:33 ID:GJ3YxgIc
>>298
やばい・・・晴香に殺意がとまらねえ・・
もし俺が主人公ならぶん殴ってただろうな・・・
328名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 20:41:12 ID:jPELhNRA
ツンデレ属性の晴香に萌える・・
一体どうやってデレモードになったのか・・気になる・・

329名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 20:47:11 ID:gBSaJies
ツンってレベルじゃねぇよw
330名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 20:53:27 ID:8SlR7Frm
お前ら、まとめサイトで1話から見てこいよwww
デレデレ晴香なのに、過去話が投入されただけでDQN扱いとかカワイソスwww
まぁ、妹の方が萌えるけどね^^
331名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 22:00:08 ID:+9Cosn7A
何故だろう。雨音のスカートに
どんな切れ込みを入れられたかが一番気になる俺…
332名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 22:06:25 ID:c7qwM241
いいじゃん、晴香姉さん。
堕ちかけた正義ヒロインの悪あがき見てるみたいで楽しいぜ。
まあそれも、雨音ちゃんが三馬身くらい離してるから言えるワケですが。
ヒロイン一人しかいなかったら、間違いなく俺もアンチ化してたろうな。
333名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 22:10:53 ID:HUeXTbLU
ここってフタナリあり?
334名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 22:11:25 ID:8SlR7Frm
そもそも嫉妬ヒロインはこのスレでは歓迎のはずなのに、何故か晴香姉は批難・・・
九十九が投下されても、流タソが批難浴びそうな勢いだなw
335名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 22:21:29 ID:jPELhNRA
転帰予報が投稿された途端にレス数が限りなく盛り上がっている
お前ら、飢えていたんだな・・w 俺も転帰予報は待っていた信者だったが
最近の過疎で嫉妬成分が飢えていた・・
飢餓状態のピラニアに餌を与えるとこんな感じになるんだろうな
336名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 23:50:35 ID:pb+WfUJw
姉攻撃してるのは妹か他キャラが好きだからなんだぜ

待ち遠しかったからこそのレス
337 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/26(火) 00:11:46 ID:ezcUyCIT
投下します。
338すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/26(火) 00:13:25 ID:ezcUyCIT

翌日、目覚まし時計のやかましい音に叩き起こされた。ガチャンと時計を乱暴に叩き、その口を黙らせると、ムクリと起き上がり、
寝惚け眼を擦りつつ、欠伸を一つ。ベッド脇の窓の外から、ポツポツとおとなしい雨音が聞こえている。体を捻りカーテンを開けると、
見慣れた街並みが淀んだ空の色とあいなって、湿って見えた。
灰色の空は、何だか気持ちが悪い。そのうえ、雨か、と思うと少し憂鬱にもなる。
そんな憂鬱を引きずりつつも、いつまでもベッドの上にいるわけにはいかないので、充電していた携帯を抜き取り、
ひとまず立ち上がる準備をする。立ち上がるためには、覚悟が必要で、その覚悟を充電するにはそれなりの時間が必要で、
だからあくまで準備だ。そして、ぼけっとしたまま何気なく携帯を開いたそのとき、
ビリビリと、
夜中は、サイレントモードに設定していた携帯が震動した。どうやら、寝ている間にメールか、着信があったらしい。考えてみれば、
昨日は普段よりずいぶんと早く就寝したので、それを知らない誰かが普段の調子でメールなり、電話なりをかけてきたのだろう。
昨日の明日だけに、おおかた森あたりの程度の低い冷やかしに違いない。そう、だいたいの当たりをつけて、翔は画面に目を落とし、
そして、戦慄した。
画面にはこんな表示があった。

新着メール、500件。
不在着信、100件。

体の芯が凍えるような錯覚が、脳髄を駆け抜け、寝惚けた頭がいきなり冴えわたった。それとほぼ同時に芯から広がる寒気に震え、
思わず携帯をベッドの上に落としてしまった。しかし、そんな事は気にもならない。翔の思考は、その寒気が孕んだ真実へと、
なすすべなく吸い込まれていく。
考える
339すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/26(火) 00:14:46 ID:ezcUyCIT

翔が寝床についた時間が夜十時。それから約九時間。その間にメールと着信が約六百件もあったというのか。いや、ありえない。
そんな事ありえるわけがない。見間違いではないのか。そうだ、そうに決まっている。
混乱しかけた頭をかろうじて立て直し、落とした携帯を拾いあげて、翔は再び画面に目を落とす。
新着メール、500件。
不在着信、100件。
見間違いではなかった。
その事実に、慄然とする。
それでも同時に、頭の冷静な部分が犯人の割り出しにかかっていた。いったい誰が、こんな事を。大久保?都築?森?それとも──。
──その思考を遮るように、携帯が再び震えだした。見ると、ランプが緑色に発光している。着信だ。
画面に目を落とす。ディスプレイには着信相手の番号と、登録しておいた名前が写し出されていた。

「水樹澄香」。

ゾッとした。その寒気に押されるように、突然頭の中に浮かび上がる嫌な予感。
──未読メールも、不在着信も全て澄香のものなのでは?
ありえない。
翔はかぶりをふって、その予感を追い払おうとする。
それは、ほとんど悪夢だ。ありえない。だいたい澄香はそんな事をして何の得があるというのだ。大丈夫、ありえない。
そんな予感が現実になるなんて、絶対にありえない。そう、心にいい聞かせる。
しかし、それでも、その予感は思考を侵食していく。最近、見た澄香の狂気。その記憶が、予感の侵食を手助けしているのだ。
着信は十五秒ほどで留守電に入り、そしてプツリとあっけなく切れた。画面は通常画面に戻ったが、不在着信は表示限界を超えていて、
カウンターはもう増えなかった。
その瞬間に、翔は弾かれたようにカーソルを不在着信に合わせる。そして一つ息をつく。予感の正体。闇の向こうに転がる事実が、
あと一押しで目の前に姿を見せるのだ。そう思うと指が震える。たっぷりの時間を費やし覚悟を決めて、翔は指に力をこめた。
340すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/26(火) 00:17:35 ID:ezcUyCIT

途端に画面が暗転し、写し出される五件の不在着信。その全ての差し出し人が、澄香だった。
嫌な予感。ありえない予感が、ゆっくりと現実味を帯ていく。
それでもその予感を否定したくて、震えたままの指で、下ボタンを押した。
ひとつ画面が繰り上がる。
そのスペースに浮かび上がった名前も、やはり「水樹澄香」だった。
今度はめちゃくちゃに連続で下ボタンを押す。画面はリフトのように次々と上へと流れていくのに、水樹澄香の名前は一向に消えない。
上に上がった分、下からは水樹澄香の名前が現れるのだ。三十件過ぎたところで、耐えきれなくなって、翔は悲鳴と共に、
携帯を全力で投げ捨てた。携帯は正面の壁に、豪快に激突し、派手な音と共にコナゴナになった。
花火が消えた後、残るのはいつも静寂と寂廖だ。その静けさの中で、雨の音がやけにうるさかった。
ガクガクと体が震える。
たった今、ありえない予感が、悪夢が、現実へと昇華してしまったのだ。いや、実際のところ、それは分かっていない。
不在着信を三十件開いただけで、残りの着信履歴も、まるまる五百件の新着メールも確認したわけではない。しかし、それでも確信はある。あれは、間違いなく全て澄香からだ。
恩人である由美を邪険に扱ったり、勝手に翔の家に忍びこんだり、アルバムをしかも女性の顔だけを黒く塗り潰したりと、翔に確信させるだけの材料は、もう揃っている。「狂っている」。それだけで、全ての説明がついてしまうのだ。
その現実のおぞましさ、異常さに、翔は頭を抱えた。脳がぐしゅぐしゅに侵されていく。どこかへ消えたはずの異常の世界が、
再び目の前まで迫っている。翔を誘う悪魔は、澄香の形をしていた。
341すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/26(火) 00:19:26 ID:ezcUyCIT

逃げ場所が欲しい。
震える体を押さえ付けて、そう願う。
ここではないどこかへ。異常の世界とは無縁な、平穏な場所へ。もしくは異常の届かない騒がしい日常の溢れた場所へ。心の底からそう願う。
しかし、そんな場所はどこにある?
家?
ありえない。ここは孤独と記憶の廃墟だ。
しかし、それ以外にどこがある?
学校?
そうだ、学校だ。
学校には、たくさんの友達がいる。青木も大久保も寺田も本田も森もいる。あそこならいつもの喧騒が、恐怖の足跡全てを、
まるでさざ波のように洗い流してくれるはずだ。

──学校へ行こう。
342 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/26(火) 00:21:07 ID:ezcUyCIT


投下完了です。
続きは水曜か木曜に投下します。
343名無しさん@ピンキー:2007/06/26(火) 01:18:31 ID:G1ipx9lJ
>>342
GJ
お前さんをずっと待ってたんだぜ

そしてこれからもずっと待ってるんだぜ
344名無しさん@ピンキー:2007/06/26(火) 03:41:40 ID:eCE1jKY8
雨の音まだー
345名無しさん@ピンキー:2007/06/26(火) 03:54:24 ID:IBpyadqf
なんという恐怖による錯乱っぷり
このままでは主人公は間違いなく鬼隠し編の圭一と化す
346名無しさん@ピンキー:2007/06/26(火) 07:17:46 ID:YWMF6qzy
>>345
誰だよw むしろ俺は最初の携帯とメールでリーダー伝の校長思い出した。


しかし、父親にレイプ孕ませの過去を持つと聞くと、
最後には主人公と幸せに結ばれて欲しいとは思うんだよな。
347名無しさん@ピンキー:2007/06/26(火) 07:19:05 ID:YWMF6qzy
>>330
いや、それは知ってるんだよ。最初から見てた人も大勢いるだろう。
だが、最初に萌えても回想を見た後だとそれが白々しく見えるって事だろ。
348名無しさん@ピンキー:2007/06/26(火) 18:46:38 ID:ww0w2lbE
あげ
349名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 00:33:49 ID:gCcozg84
>>299
スーパーロボット系の敵役みたいな口調だな、姉さんww「もうあいつは死に体だ」とかww
今まで妹の方がクローズアップされてて目だってなかったが、姉ちゃんの方もかなり好きになった
350名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 03:12:58 ID:QHIgspQu
さて、じっくりと神を待とうジャマイカ
351名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 14:12:42 ID:eLHK8YuL
嫉妬に該当すりゃ他スレから無断天才OK?
352名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 14:24:02 ID:MxdmV+wq
ダメ
誘導すればいいだけのこと
353名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 14:28:15 ID:PdAHz7WA
>>352
「無断転載」って言ってる時点で察しようぜ?
354名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 14:35:23 ID:yyLVEtyP
SSの無断転載とかw
ゆとり脳にはついていけないわw
355名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 20:55:19 ID:UWgfsCPO
他の関連スレは盛り上がっているのにここだけは盛り上がる気配を見せないなww
356名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 21:10:26 ID:PCE8CUbR
ていうか元々マイナー属性のスレなんだからこんなモンで良いんだけどな。普通。
アホが入ってこないようになっただけ重畳、重畳。
357名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 23:59:54 ID:2JNtIbU4
>>356 確かにマイナーだよなww
俺の周りの奴と趣味が合わない
358名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 01:28:19 ID:SJAlZa57
女の子に挟まれたい、嫉妬されたいってのはオタ男の普遍的な願望だと思うんだが、違うのか?
キツイ修羅場が好みとなると偏ってるかもしれんが。
359名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 01:39:35 ID:CqsUvYUS
普通だとハーレムの方にいっちゃうんじゃないか。
360名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 03:16:40 ID:Ji/2j9tv
最近は荒らしに埋められてたけどまだ前スレ残ってるから
梅ネタ連載の再開を希望したい
361名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 17:48:09 ID:SozPYFIc
>>360
そっかぁ・・・あの子まだ埋まってなかったんだ・・・・・・
でも安心して、すぐにあんな子埋めちゃうからね♪
362トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/06/28(木) 21:30:06 ID:ORF6gsu4
では投下致します
363雪桜の舞う時に ◆J7GMgIOEyA :2007/06/28(木) 21:33:05 ID:ORF6gsu4
アナザー2『夏休み』

 終業式が終わってから学生にとって唯一の楽しみである夏休みがやってくる。
俺こと桧山剛は親友である内山田の助けを借りて、何とか赤点ギリギリの成績で地獄の補習をパスすることに成功した。
これで何のお咎めもなしに夏休みを迎えることができる。思わず、歓喜の声だってあげてしまいそうになる。
ただ、学校の帰路に着いている途中なので、そんなことをやってしまえば、周囲の人間から
冷たい視線を浴びられるので遠慮させてもらうが。

ただ、胸の内に僅かな不安と杞憂があるの事実であって、あの猫耳装備搭載した雪桜さんの悲しみに満ちた顔が脳裏に浮かんだ。
 殺人犯赤坂尚志の娘である彼女……俺の立場から見ると最愛の家族を奪った憎き男の娘だ。
罪もない子供たちが彼の手によって殺されている。悲惨な殺人現場を思い出すだけで吐き気と震えが止まらない。

あの事件を境に俺の家族は離散することはなかったが、家族同士の交流はなくなった。両親は仕事に没頭して家に帰ってこなくなり、
独りぼっちになった俺は美味しくない食事を食べる日々。

彩花がいなくなったことがきっかけで俺は変わってしまった。
笑うことが少なくなったり、周囲から離れるように孤独になっていた。
そんな変わってしまった俺から逃げた友人は数えきれない程にたくさんいる。

だが、ちゃんと離れずに俺の傍に居てくれた友人がいたおかげで俺はグレて不良行為をする馬鹿な真似だけはしなかったかもしれない。
 彩花が亡くなってから、数年。

 その過去の全てを忘却して無かったことにすることができない。
だから、雪桜さんが殺人犯の娘だと判明した途端に俺は彼女に
自分の憎悪を向けるのを恐れて、彼女に別れを告げたはずだった。

『好きです。桧山さんのことを心から愛しています』
 猫耳搭載装備で言われてもこっちは困る。てか、学年の生徒たちの前で告白はやめてもらいたい。
虎と俺と雪桜さんの三角関係って噂されるだろうに。

急遽結成された雪桜親衛隊、通称NNY(ねこねこ雪桜さん)が俺を危険人物として学園中に指名手配されているので、
どこぞのエロゲーの主人公のように命の危険に晒されている。

 とはいえ。もう、夏休みに突入するのでこの案件で俺の胃炎が痛むことはないだろう。
 餓えた虎の餌を作る以外はな。

 俺の家の前で待ち伏せしているのは虎こと東大寺瑠依が不機嫌そうな顔で俺の帰りを待っていた。
それは標的を見つけた獲物を狩るような野性的な瞳で彼女は吠えた。

「剛君。帰ってくるのが遅いよ!! お腹空いたんだから、さっさと作ってよ!!」

 それ以外に俺に言うことないのか虎よ。
364雪桜の舞う時に ◆J7GMgIOEyA :2007/06/28(木) 21:36:00 ID:ORF6gsu4
 素麺ってのは夏の季節に最も売れる商品の一つだ。
食べるときは冷たくて夏バテしている人にとっては食べやすいんだが……
この季節に素麺を作る側にとってはとにかく暑い。暑くて調理場を抜け出したくなるんだよ。

湯気が出る熱湯に素麺の束を入れて、茹で上がる前に生姜やねぎを切り、つゆを用意しておく。
その間に熱気が狭い台所に充満して、体中から発汗して気持ち悪くなる。
作業を中断してお風呂に入りたい欲求に襲われるが餓えた虎母娘を野放しすれば、近所の皆様に迷惑がかかるのでそれはできない。

 ゆえに俺は夏休みという平穏な日々などはなくて、常に緊張と生死の境界線を跨ぐ者の日々が待っているのだ。

「剛君。お母さんが竹を割って、ちゃんと流れ素麺を作る準備できたって」
「なあ。瑠依。夏だから素麺ってのは理解できるんだけど、流れ素麺ってオイオイ」
「そんなこと知らないわよ。お母さんの趣味なんだからちゃんと付き合わないと」

 普段は台所に出入りしてこない虎が虎の母親である由希子さんの伝言を伝えに侵入してきた。
ちなみに由希子さんってのは若造りで未亡人。一人娘を養うために仕事をして生活を支えるために常日頃から頑張っている。

と、俺は擁護してみる。真実は娘を放任するのは日本の伝統だと主張したり、
学校の給食費を払わずに踏み倒すなどと言う伝説を達成している。
すなわち、あの虎の母親が常人であるはずがないということを改めて俺は認識した。

「もうすぐ、茹で上がるから庭で待ってろと伝えてくれ」
「夏はやっぱり〜赤い素麺だよ〜」

 ざるに移し代えた素麺の色は正に鮮血の光沢を出していた。
 製造元は絶対に人の血を混入していても俺は驚かないけどね。

 ざるの中に氷をたくさん入れて、赤い素麺を庭に持ってゆくと驚愕する光景がそこに在った。
竹で組み立てられた器材が見事に完成していた。ホースで流れやすくするように水を思う存分に使っていた。
(ちなみにうちの水道代は返せよ虎母娘)
「夏のお約束。赤い素麺を流して流しましょう!!」
「由希子さん……どうして真っ昼間からいるのかという疑問を聞かないでおくが」
「少年は大志を抱け!! そして、少女は男を犯せ!! 
ってなわけで剛君は女の子の行動にいちいち素朴な疑問ばっかり聞いていると鋸で首を切られるわよ」

「ご忠告ありがとうございます。てか、二度と由希子さんの仕事状況に口ださねぇ」

 毎日遊んでいる由希子さんがどうやって生計を立てているのかというシリ−ズの最大の謎の一つに追求したかったが……。
これ以上踏み込めば余裕で死ねる。

「じゃあ、瑠依ちゃんと剛君は食べる方ね。私は赤い素麺を流す方が大好きだから。どんどん流す。流して流して流しまくるわ」
「うん。ありがとう。お母さん。瑠依大感激だよ」

 虎は戦闘態勢に入ると持っている箸とお皿が素早く動いた。餓えた虎は獲物を仕留めるために常に全力を尽くす。
半分やる気がなかった俺のとこに赤い素麺が来る前に箸で素麺をお皿の方に入れてから、喰う!! 
喰う速さは赤い素麺を噛むことなく飲み込んだ。

「さすがは私の娘。素晴らしい食べ方ね。じゃあ、どんどん流すわよ」
「どんどん、来い!!」
 虎が吠えた。自分の獲物を奪う相手を威嚇するように。更に流れて来る赤い素麺を執念だけで瑠依は食べてゆく。
ちなみに俺のところには赤い素麺が流し終わってしまうまで。来ることはなかった。
 結論。俺、昼食抜きです。
 ぐすん。
365雪桜の舞う時に ◆J7GMgIOEyA :2007/06/28(木) 21:38:15 ID:ORF6gsu4
 暑い日差しから避けるために家の中で冷房を入れて、由希子さんが差し入れに持ってきたスイカを二人で喰い散らかしていた。
由希子さんは赤い素麺を流しまくったことに満足して、仕事に行ってくると出掛けた。
今、家にいるのは俺と虎だけである。
「剛君。明日から夏休みだよね。今度はどこに遊びに行こうか?」
「さあな。どうせ、毎日のように俺の家に遊びに来るんだろ」
「当たり前じゃない。剛君とは毎日会わないと気が狂うわ」
「そうですか……」
 毎年の夏休みは虎が我が家の主人のように入り浸っている。
由希子さんから世話をよろしくと頼まれているので安易に断ることが出来ない。
なので今年も一人暮らしの自由を満喫できずに虎と共に長い夏休みを過ごす。もう、毎年恒例の行事の一つだと言えるであろう。
「それにしても、今日の瑠依はいつもと比べて何だか楽しそうだな」
「えっ? わかる 」
「なんかいいことがあったのか?」
「だって、剛君があの泥棒猫の告白を受けずに夏休みを迎えたからかな?」
「泥棒猫って雪桜さん?」
「私がせっかく彼女役を引き受けて泥棒猫を剛君から諦めさせようとしたのに。
あの女。猫だか犬だかわからないけど、変なコスプレ姿で剛君の気を引こうなんて許さないわ」
 告白された出来事を思い出しているのか勝手に憤慨している虎に俺は嘆息を吐いた。
「雪桜さんの告白の返事をしたくても、本人があの日からずっと学園を休んでいるからな。会いたくても会えん」
「会・わ・な・く・て・い・い・の・!!
 泥棒猫は彩花ちゃんを殺した男の娘なのよ。
私だって妹のように可愛がっていたんだから。尚更泥棒猫が憎くてたまらないわよ」
 果てしない憎悪の表情を浮かべる瑠依に俺はただ首を頷かせて彼女の言葉に同意した。
少なくても、雪桜さんにもう二度と仲良くしないという箇所だけだが。
別に憎悪を向けられるまでの感情までは沸いてこない。これは被害者家族の感情としては異常なのだろうか?
「剛君には私がいるんだから。他の女に優しくしちゃダメだよ」
「瑠依に優しく接したことはないんだけどな」
「なんですとっ!?」
 某徳川の生類憐れみの令が桧山家に発動している以上は虎の扱いを人間レベルとしている。
本来ならタダ飯喰らいの虎に一人でサバイバル生活が出来るように徹底的に仕込んでいますよ。マジでw
「さてと夕食の買物に出掛けてくるけど……瑠依はどうする?」
「お腹一杯になっちゃったからちょっとだけ寝る」
「食べてばっかりですぐに寝ると太るぞ」
「大丈夫だもん……。ということで剛君のベットでお昼寝してくる〜」
 虎の尻尾が嬉しそうに左右に振って部屋から出て行く姿を見送ると俺はやれやれと嘆息を吐いた。
 台所の後片付けを終わらせてから、夏の一番暑い時間帯に俺は暗澹たる気分で外へと出掛けた。
366トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/06/28(木) 21:42:17 ID:ORF6gsu4
投下終了です。

久々の雪桜の舞う時にを書き込みを致しました。
この作品の時系列は第15話で桧山剛が雪桜さんのお見舞いに行かなかった場合の
アナザーストーリーとなっています。監禁生活がなかった場合の二人の恋愛物語を楽しみに待ってください

桜荘にようこそは今週中にうpする予定です・・。
それでは。
367名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 21:53:44 ID:HtKzFWXB
>>366
GJ!!
本編以外は前スレとか避難所に投下してくれるとうれしいのですが・・・
368名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 22:04:16 ID:TQN+d+gc
待ってました。これからも頑張って下さい。去年の9月はスレ(2ちゃんねる)の存在を知らなかったから毎月まとめが更新するまでwktkしながら雪桜さんを待ってました。
369名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 23:51:51 ID:4lowkAer
>>366
(*^ー゚)b グッジョブ!!
桜荘のほうも期待してます
370名無しさん@ピンキー:2007/06/29(金) 17:48:28 ID:ceTbT/QT
そういやアップルって長い間使ってると嫉妬するらしいよ
他のに変えようと思った瞬間フリーズとかするらしい
371名無しさん@ピンキー:2007/06/29(金) 18:13:32 ID:DIxIUTpW
>>370
九十九まだかなぁ…
372名無しさん@ピンキー:2007/06/29(金) 21:08:17 ID:ivgF4yAz
>>366
とりあえず、雪桜さんは俺が頂いた!!!!
373名無しさん@ピンキー:2007/06/29(金) 22:02:22 ID:QJqyOA5r
その「俺の嫁宣言」ネタは荒れのもとになるから控えた方がいいよ
374名無しさん@ピンキー:2007/06/29(金) 22:53:44 ID:uMQgWEw3
嫉妬ネットワークとか結成している作者達が痛いと思ったのは俺だけか?
375名無しさん@ピンキー:2007/06/29(金) 23:03:54 ID:bgv938J5
それは、ここの話題じゃないな。
376名無しさん@ピンキー:2007/06/29(金) 23:36:39 ID:ig455N3n
>>374電撃ネットワークと混同して、
観客を斬ったり刺したりする美女軍団かと妄想してしまった。
377リクエスト王者:2007/06/29(金) 23:47:47 ID:iDuecBGy
リクエスト。
オープンな性格で新たな価値観を見出させようとする西洋美女。

純日本的でおしとやかであるが他の価値観を認めない大和撫子。

女性本来の身体の魅力で主人公を溺れさせようとする黒人美女。

世界規模の修羅場だと思うのですがどうでしょうか?主人公は日本人ですね。

378名無しさん@ピンキー:2007/06/29(金) 23:52:48 ID:K4ONv+YO
>>376
ぶっちゃけ、ヒロイン同士で殺しあっているからな・・別に嘘ではないかもね
379名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 00:09:03 ID:XBDs4GzX
なぁ、未婚で童貞の学生なのに十も離れていない娘がいるのってそんなにおかしなことなのか?
380名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 00:10:24 ID:bMhwUAao
>>377
その内容にするなら俺だったら…

肩までの綺麗な金髪と、大きくて澄んだ青い瞳を併せ持つ
活発で明るい美少女。

腰まで伸びた黒髪に、細くしなやかな手足と長身と
純和風な大和撫子のイメージを兼ね備えたおしとやかお嬢様。
だが何かと主人公にきつく当たる。

……スポーツ美少女…?日焼け…?

世界を股にかけた嫉妬自体きついと思う。何故かって?
萌と嫉妬は日本特有の文化だからさ。
381名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 00:26:11 ID:7iVbarJr
壊れやすいのはツンデレ少女だな・・
常日頃からツンツンして主人公の好感度が悪くなるとは知らずにいつまでもツンツンしていると
泥棒猫が現れて、あっさりと主人公と恋仲に・・。
その事実を知ってから壊れるツンデレ少女は・・・・ヤンデレの道に突き走るとw
382名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 00:48:35 ID:U0Ajn9iR
>>379
とても・・・ど真ん中です・・・
383名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 00:49:30 ID:eQhRXoDp
      /
     /
     /     な   く  .い  き
    l
    l      あ  れ  っ  が
    |       。
    l          る  て  る
    |
    \    ____     に
     ,.>‐'::::::::::, - ,;::::::,ニ、'‐-::、       ./
   ,.;'"::::::::::::::::/‐- 、l/   ';:::::::::\     /
  /::::::::::::,;::::::/  .( ・)| |--- .|:::::::::::::\_/
/:::::::::::::::/:|-'へ、/⌒,.!、`ヽ ./ ̄\:::::::::l
:::::::::::/ し'    ' ‐-イ::::::::)‐'"    \:::|
:::::::::/    ̄  ̄ ' -  '‐r''" ' ̄ ̄ ̄  ',:!
:::::::/  ∧ー――-   .|   ――∧-  l|
:::::::|  し'     _    |   ー- し'_  l|
:::::::l  ―― '´  ,r ┬个┬-、     ./
::::::::l    -‐='"┴┴┴┴ ┴=:、   /
::::::::' 、                 ̄ /   ,
\::::::\___________/  / |
  >------------r―-:、------ゝ、  し'
/::::::::::::::::::;;-‐'"´ ̄ト‐┬‐l ̄\:::::::::::\
::::::::::::::::::::/      ヽ -‐'   `:,:::::::::::l
384名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 00:50:58 ID:wzIVlKva
嫉妬は他の国のほうがすごいとおもうが。
385名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 01:06:24 ID:43qFrhu1
>>384
外国のと日本の嫉妬では基本的にベクトルが違う様な気がする
上手く言えないが、日本のは内に秘めるというか怨念めいてるというか…
386名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 01:14:11 ID:eQhRXoDp
失われた大和撫子の嫉妬なら外国に対抗できるはず
387名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 02:04:12 ID:HQyGsCIo
リクエスト
ツンデレの女医がヒロインで主人公が来ると嫌々仕事やってるんだけど、内心喜んでて、主人公に触った器具を持ち帰って集めてるみたいな話とかどう?このスレ的には

日本語が変でごめんねm(__)m
…これってスレ違い?スレ違いだったらごめん。
388名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 02:52:52 ID:eQhRXoDp
>>387
その構図だと泥棒猫は看護婦だな
389名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 02:52:59 ID:s+p7N7Ed
節子・・・それ、嫉妬関係ない、スレ違いや
390名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 08:40:03 ID:CmI/7YcF
ちゅうか、リクエストは止めろ
最初っから他力本願かよ
プロットならともかく
391名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 08:55:57 ID:d52wy5dN
錬金術師とホムンクルスでの嫉妬というのはどうだろう
錬金術師(女)は研究の結果としてホムンクルスを作る
当然女性型でエロス可能で活動源は性的なもの

ラブラブだった彼氏がホムンクルスとエロスするようになって錬金術師暴走開始
それを受けてホムンクルスも暴走開始
そして起きる修羅場
錬金術師は「相手は物だから壊してもいいや」で
ホムンクルスは「壊れれば修理すればいい。死ぬ?なんですかそれ」という考えだから
二人とも容赦のかけらも無し
錬「私が作ったモノのくせに私の彼を取るんじゃないわよ」
ホ「作っていただいたのは感謝します。おかげで彼と出会えましたから。しかしもうあなたは用済みです」
錬「塵は塵に、灰は灰に、土くれは土くれに返れ!」
ホ「障害物は廃棄します!」

べつに科学者とクローンでも魔法使いと精霊でも可
392名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 10:13:53 ID:ZipwsxRQ
嫉妬や修羅場という小さな宇宙に懸ける俺らの情熱は無限大
393名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 10:15:39 ID:ZipwsxRQ
バカなこと言ってあげてスマン
394名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 10:18:47 ID:RGfDjGSN
いやいいこと言った
395名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 11:29:56 ID:eGpLl2YC
俺がエロビデオを鑑賞中におかんが部屋に踏み込んできたってのは
この修羅場の趣旨に合うのかな・・・? いろんな意味で修羅場
396緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/06/30(土) 13:51:01 ID:VYhfrx3z
短編投下します
397ひとり多い ◆gPbPvQ478E :2007/06/30(土) 13:52:54 ID:VYhfrx3z

「おはよう!」
 
 今日の天気を表すような底抜けに明るい声に続いて、背中をばしんと叩かれる。
 驚いて振り返ると、そこには見覚えのある顔がひとつ。
 
「朝から暗い空気背負っちゃって。
 相変わらず司郎は元気ないなあ!
 わたしの、すこし分けてあげよっか?」
 
 すらりと伸びた手足。
 激しく自己主張する胸と腰。
 こちらを見上げる切れ長の瞳は蒼く輝き、
 流れるセミロングは太陽にも負けない黄金色。
 正常な青少年ならまず間違いなく“ヤリたい”と思ってしまう外見。
 かくいう僕も、幾度となく自慰のオカズにしていたりする。……まあそれはそれとして。
 
 そんな美少女が、僕に対して気さくな態度で。
 朝の挨拶を、投げかけてきた。
 それに対して、僕は。
 
「…………ぉ……ょぅ」
 
 唇をモゴモゴ動かして、そのまま少女から離れようとした。
 
「司郎は今日、3限からだっけ。
 まだ少し時間あるよね? ちょっとお茶しない?
 この前借りたレポートなくしちゃったお詫びに、わたしが奢るからさ!」
 
 別にいいよ、と言おうとしたが、
 慌てて口を塞ぎ、僕は努めて彼女を無視する。
 
 今は駄目だ。
 彼女に大きな話しかけてはいけない。
 ここは大学の講義棟のすぐ近く。
 昼休み前とはいえ、まわりにたくさん人がいる。
 
「ほらほら、行こうよ!」
 
 ぐい、と腕を抱え込まれる。
 二の腕に柔らかい感触。
 しっとりマシュマロのようなそれに、思わず抵抗する力が失せてしまう。
 そのままずるずると引きずられていく。
 行き先はおそらく、大学近くの喫茶店。
 彼女はいつも、僕をそこに連れ込んでいく。今日も、きっとそうなのだろう。
 
 ――あそこなら、人も少ないから。


398ひとり多い ◆gPbPvQ478E :2007/06/30(土) 13:53:38 ID:VYhfrx3z

 城井珠希(しろい たまき)
 両親は国際結婚の日米ハーフ。
 一見遊んでいそうに見えるが、妙に貞操観念が強く、悪い噂はとんと聞かない。
 ひょっとしたら処女かもしれない。
 
 僕が、彼女について知っているのはその程度。
 
 知り合ったのは、大学に入ってから。
 彼女の方から話しかけてきて、そのまま何故か僕に積極的に構うようになった。
 
 僕は、自他共に認める“つまらない”人間である。
 趣味無し、金無し、体力無し、友達無し、会話無し。
 人と話しても7秒以上保つことなど滅多にない。
 そんな僕に、何故か彼女は積極的にアタックしてくる。
 
 信じられなかった。
 だから。
 僕は彼女を無視している。
 
 それでも彼女は挫けることなく。
 毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日馬鹿のひとつ覚えのように話しかけてくる。
 
 これはもう、人付き合いのほとんどない僕にだって、おぼろげながら理解できる。
 
 
 ――城井珠希は、僕のことを好いている。
 
 
 これが現実だったら、どんなに幸せなことだろうか。
 
 
 
 
 
 喫茶店で珠希にひたすら中身のない話を押しつけられた後。
 紅茶とケーキで栄養補給したはずなのに、何故かふらつく足取りで。
 僕は講義のある教室へと向かっていた。
 
 講義棟の一番奥。
 教室の前から6列目。
 僕以外誰もいない列に座る。
 熱心な人はもっと前に座るし、やる気のない人はもっと後ろに座る。
 
 周りに人が座ってない、ぽっかり浮いた教室の孤島。
 ある人が“根暗ゾーン”と呼んでいたそうだ。あながち間違いでないのかもしれない。


399ひとり多い ◆gPbPvQ478E :2007/06/30(土) 13:54:24 ID:VYhfrx3z

 そんな根暗ゾーンに、一人の乱入者が押し入ってきた。
 すとん、と僕の隣の席に腰を下ろしたのは、こちらも見覚えのある少女だった。
 
「こんにちは」
 
 挨拶に添えられたのは、穏やかな笑顔。
 流れる翠の黒髪は、触れたら濡れて溶けてしまいそうな美しさ。
 今日は気温もそれなりに高いのに、長袖ロングスカートで汗ひとつかいていない。
 背筋は真っ直ぐ伸びており、とても“きれい”な女の子だ。
 
 そんな子が、隣に座り、挨拶してきたので。
 
「…………」
 
 僕は無言でノートに視線を落とした。
 無視。
 隣の少女は、少しだけ悲しそうな溜息を吐いた後、気を取り直して授業の準備を始めた。
 
「……あっ」
 
 ふと、隣から息を呑む気配が伝わった。
 何とはなしに目を向けると、バインダーを開いて固まる少女。
 顔を上げた少女の視線は彷徨い――僕のと重なった。
 
「……資料を忘れてしまいました」
 
 助けを乞うような目で、呟いてきた。
 手元に視線を落とす。
 そこには、色々なプリントの挟まった僕のノート。
 その中に、きっと彼女が欲しているものも含まれるだろう。
 
「…………っ……」
 
 数瞬、逡巡する。
 やがて、ゆっくりとノートを開き、資料を探し出す。
 はたして、目当てのものはすぐに見つかった。
 僕はそれを、無言で机の上に広げる。
 位置は、僕のノートの真横。右手寄りの方向だ。
 隣の机にはみ出してしまっているが、誰かが文句を言わない限りは大丈夫だろう。
 
 これくらいなら。
 きっと、大丈夫。
 
 右隣の少女は、嬉しそうに微笑んだ。
 僕はその笑顔を直視せず、視線は手元に落としたまま。


400ひとり多い ◆gPbPvQ478E :2007/06/30(土) 13:55:08 ID:VYhfrx3z

 竹月天花(たけつき あまか)
 純国産のお嬢様。
 とても真面目で誠実な、いまどき珍しい人格の持ち主である。
 まず間違いなく処女だろう。
 
 僕が彼女について知っているのはその程度。
 
 知り合ったきっかけは忘れてしまったが、彼女とはよく講義で一緒になる。
 そして何故か、根暗ゾーンをかいくぐり、僕の隣に座ってくる。
 時折チラチラと向けてくる視線や、語りかけてくるときの甘い声色。
 
 信じられなかった。
 だから。
 僕は彼女に対して素っ気なく振る舞う。
 
 それでも彼女は挫けることなく。
 毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日馬鹿のひとつ覚えのように隣に座ってくる。
 
 これはもう、人付き合いのほとんどない僕にだって、おぼろげながら理解できる。
 
 
 ――竹月天花は、僕のことを好いている。
 
 
 これが現実だったら、どんなに幸せなことだろうか。
 
 
 
 
 
 今日の講義も全て終わり、帰りの電車に三十分ほど揺られた後。
 自宅の最寄り駅に到着した頃には、既に日は落ちかけていた。
 駅前は、帰宅途中の学生軍団や買い物部隊の主婦たちでごった返していた。
 隙間を探すのが難しい、ヒトの群れ。
 それをぼんやりと眺めていると。どこか落ち着いた気分になる。
 
 ――僕は、人混みが好きだ。
 
 たくさんの中に紛れられるから。
 ひとつくらい混じっても、大差ないから。
 
 川を上る鮭のようなヒトを見るのは、唯一の心の清涼剤。
 この瞬間、僕は日々の疲れから解放され、救われた気分になる。
 
 ああ、ヒトがいっぱいいるなあ、と


401ひとり多い ◆gPbPvQ478E :2007/06/30(土) 13:55:53 ID:VYhfrx3z

 そんな風に。
 心休まる時間を堪能していた僕の視界に。
 一人の少女が、映った。
 
 まずい、と思って身を隠そうとしたが。
 その前に向こうに発見されたようで、ずんずんとこちらに近付いてくる。
 
「やあ! 今帰り? 奇遇だね!」
 
 腕や顔は黒く日焼けしているが、胸元は妙に白い、典型的な“部活焼け”。
 小柄ながらも活力に溢れた肢体には、そそる男も多いだろう。
 髪はベリーショートに軽く色を付けている。
 ホットパンツから伸びる生足には、思わず生唾を飲み込んでしまいそうになる。
 
 そんな、いかにも青春を謳歌していそうな少女が、僕に擦り寄り、話しかけてきたので。
 
「……………………」
 
 僕はそっぽを向き、離れようとした。
 
「――もう! なんで逃げるかな!」
 
 ぐい、と腕を掴まれた。
 二の腕に押しつけられた柔らかさは、昼前に味わったそれより数段弱いが、それでもドキリとさせられる。
 
「違う大学になっちゃってあんまし会えないんだから、もっと構ってよー。
 アタシ、寂しくて死んじゃいそうー」
「…………」
「構ってくれないのなら、こっちからくっついちゃうもんー」
「…………」
「もう、こんなに可愛い彼女が甘えてるのに、その態度はいかんわよー」
 
 彼女じゃないだろ、と言いたくなってしまうが、必死に抑えて無言を保つ。
 会話をする必要はない。
 放っておけばそのうち黙る。
 黙らなければ逃げればいい。
 
 話さなければ、それでいいのだ。
 彼女の方を向き、声を出し、体を動かす。
 そういったことさえしなければ、きっと大丈夫に違いない。
 
 自分にそう言い聞かせて、僕はとにかく無言を貫いた。


402ひとり多い ◆gPbPvQ478E :2007/06/30(土) 13:56:42 ID:VYhfrx3z

 雪野きつね(ゆきの きつね)
 同じ高校に通っていた幼馴染み。
 趣味はソフトボールで、大学に入ってもソフト部に入部する、典型的な体育会系。
 体格は小柄ながらも、引き締まった足首は、妙なエロさを感じさせる。
 
 僕が彼女について知っているのはその程度。

 近所同士だが、高校卒業直前まで、互いが近くに住んでいたことを気付けなかった。
 知り合ってからは、なにかと僕に話しかけてくるようになった。
 遊びや食事の誘いなどしょっちゅうで、街で会うたびにくっついてくる。
 充実した人生を送っているのに、何故か僕なんかのことを構いたがるのだ。
 
 信じられなかった。
 だから。
 僕は、彼女をいない者として扱った。
 
 それでも彼女は挫けることなく。
 毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日馬鹿のひとつ覚えのように擦り寄ってくる。
 
 これはもう、人付き合いのほとんどない僕にだって、おぼろげながら理解できる。
 
 
 ――雪野きつねは、僕のことを好いている。
 
 
 これが現実だったら、どんなに幸せなことだろうか。
 
 
 
 
 
 城井珠希。
 竹月天花。
 雪野きつね。
 
 僕のことを好いているであろう三人。
 
 こんな幸運、一生どころか何度転生したとしても、今だけだ。
 おそらく今の僕には、泥酔した恋愛の神が間違えて宿っているとしか思えない。
 このチャンスを活かせば、きっと僕は、誰もが羨むようなハイレベルの彼女を手に入れることができる。
 
 でも。
 
 ――誰が“当たり”なのか、わからない。


403ひとり多い ◆gPbPvQ478E :2007/06/30(土) 13:57:33 ID:VYhfrx3z

 僕は、少しおかしいのだ。
 人付き合いが苦手だとか、そういった意味ではない。
 そもそも僕が人に話しかけられなくなったのには、原因がある。
 そしてそれは今もなお、僕を縛り付けて動けなくさせる。
 
 
 僕の周りは、常に“一人”多いのだ。
 
 
 家族は、いつの間にか兄や妹が一人増えている。
 クラスメートは、常に名簿の数より一人多い。
 親戚の集まりに参加すると、いつの間にか親の兄弟が増えてしまう。
 
 僕は常に、人を一人多く数えてしまい、
 それが現実に存在するかの如く、認識してしまうのだ。
 
 いないはずの人間に話しかけ、周囲の人には気味悪がられる。
 カウンセリングや精神科にも通ったが、治る見通しは全く持てず、今は落ち着く薬を貰うだけだ。
 その瞬間に話している相手が、実は存在しない人間かもしれない。
 それは、僕にとって酷いストレスとなり。
 いつしか僕は、ヒトを避けるようになっていた。
 
 この、“一人多くなる”という誤認知は、どうやらルールが存在するらしい。
 
 
 まず、あるカテゴリーに分けられる集団から、架空の人間を作り出す。
 次いで、一人多くなったら、その集団からはそれ以上増えない。
 そして、増えた瞬間から、僕の中でその存在は現実となり、如何なる方法でも区別できない。
 
 
 特に、最後のルールが厄介だった。
 例えば携帯の着信履歴や物のやりとりなど、形に残る証拠があれば、比較的容易に認知の狂いを発見できるはずだ。
 カウンセラーも、周囲の物を注意深く見てみるといい、などと言っていた。
 しかし、僕にとっては、“絶対に存在しているはず”なのだ。
 そういった物的証拠を見ても、“それが無いなんて信じられない”のだ。
 
 だから、僕の周りには常に一人。
“存在しないはずのヒト”が存在するのだ。


404ひとり多い ◆gPbPvQ478E :2007/06/30(土) 13:59:22 ID:VYhfrx3z

 そして。
“僕を好いている女性”というカテゴリーで。
 きっと、一人増えている。
 全員が偽物だったら、ある意味気は楽かもしれないが、
 存在しない人間だけでカテゴリーが作られることはないようなので、
 少なくとも一人は、僕のことを好いている女性が存在するということになる。
 ……なんて勿体ないんだろう。
 三人が三人、どれをとってもレベルの高い美少女ばかり。
 悔しすぎて涙がこぼれそうになってしまう。
 彼女たちとの記憶は少なからず存在するが、そのうちひとつは僕の頭の中で勝手に作られたものなのだ。
 たとえ彼女ができたとしても、それが架空の人物だったら、誰もいない空間に向かって話しかけることになる。
 最悪、一人でホテルに入って、ベッドの上で独り腰を振る羽目になる。
 
 それが怖いから。
 僕は、城井珠希、竹月天花、雪野きつねの三人には、決して近付こうとせず、不当な期待は抱かないことにした。
 
 ひとり多い限り、きっと僕は、大きな声で話しかけることはできない。
 せいぜい、人気のない場所で、小さな声でぼそぼそ会話するのが限界だ。
 こんなつまらない男、普通ならすぐに飽きて離れてしまう。
 しかし、彼女たちは、こんな僕に呆れもせずに、ずっとこちらを気に掛けてくれる。
 
 彼女たちは、一体どれだけ、僕のことが好きなのか。
 
 でも。
 ひとり多いから。
 
 僕は、このまま、彼女たちを避け続けるだろう。
 
 彼女たちが、どんなに僕のことを好こうとも。

405緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/06/30(土) 14:00:13 ID:VYhfrx3z
ついカッとなって>>380氏の設定を元にを書いてしまいました。
今は反省してます。ちなみに続きません。すみませんorz
というか書いてみたら全然別物というか、結構黒いですねコレ……。

七戦姫と九十九は、二週間くらい後になりそうですorz
もうしばらく待っていただけると幸いです
406名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 14:03:39 ID:RGfDjGSN
お疲れ様です。
緑猫氏の作品何時も心待ちにしています。
無理をなさらないように頑張って下さい。
407名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 14:04:18 ID:O4iKu+jn
構想はいいと思うんだけどサ・・・嫉妬・三角関係・修羅場、ないよね・・・?
408名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 14:47:41 ID:uQFAnDcH
短編なんだし仕方ないだろ
409名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 16:07:37 ID:wYR9qq2i
想像の余地を自分の脳内であれこれ楽しむのもアリでしょう。
言いたい事もわかるけどさ。
410名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 16:17:25 ID:CmI/7YcF
これだけではハーレムスレ向けだと思うます。
早急に続きを書いて嫉妬修羅場にすべくです。
411名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 16:24:24 ID:GNZKmQeE
どれが当たりか分からないなら
全員と付き合ってみればいいじゃない
と主人公が開き直れば修羅場への道が
412名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 16:41:56 ID:lpU2uf6v
誰か一人とつきあう

残ったどちらかが病み、つきあってる女をいないものとして扱う

つきあっている女が「当たり」と勘違い

その後色々修羅場があって、一番安心できる三人目を選ぶがそれが「当たり」

これならスレ違いじゃない?
413名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 17:12:08 ID:U0Ajn9iR
定期的にageる人がいるけど何で?
414名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 18:07:01 ID:0kOY1Z9R
嫉妬:七つの大罪の一つ。象徴する悪魔(怪物)はリヴァイアサン。
415名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 18:55:32 ID:XBDs4GzX
>>414
デジモンの設定だと思っていたら、本当の設定だったのか。
昔、七つの大罪をネタに修羅場嫉妬三角関係を書こうとしてなかったっけ?
416名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 19:01:11 ID:W41XJjLK
そいやハガレンって七つの大罪だよな
417名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 19:29:07 ID:+Q9juEUX
リヴァイアサンといえばあのキモウトを思い出すな


いやっ…絶対に話さないっ…

永遠にっ…!
418名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 20:01:45 ID:0kOY1Z9R
>>415
サブカルからだとデジモンとリボーンのどっちを思い浮かべるかでどのような人物か見えてくる。
419名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 20:04:06 ID:0kOY1Z9R
ちなみに七つの大罪の嫉妬を象徴する動物は蛇。

さらにリヴァイアサンは番になって増えないように雄が殺されたため雌しかいない。
420名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 20:51:49 ID:MS+ERINT
阿修羅さん更新お疲れ様です(*_ _)人
421名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 21:06:26 ID:qXl0K/LI
リヴァイアサンっていうとホラー映画のヘルレイザー思い出す。
リヴァイアサンのチンコが頭に突き刺さってるキャラがいたな。
422名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 21:28:38 ID:XsFf+gXM
リヴァイアサンとなんとなく音が似てる無限のリヴァイアスを思い出したぜ。
あれこそ嫉妬、鬱の世界
423名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 02:12:50 ID:upouD9OM
リヴァイアサンと聞いてファイナルファンタジーIVを思い出した俺は三十路
424名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 02:52:39 ID:3WbqzRqC
>>423
案ずるな、ゆとりの僕も同じ物を連想したよ
425名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 03:38:19 ID:7YRtopF/
リヴァイアサンと聞いて鈍速超誘導核ミサイルを思い出した俺。
マイノリティー!!
426名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 04:08:25 ID:qCz0DpRT
俺は遊戯王のなんか漁師っぽいやつをおもいだした。
427名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 04:21:57 ID:WGvjJRbj
俺はMTGを思い出した。10/10のやつ。
>>405
乙です。これ嗜好を変えれば結構こわいサイコホラーものになる予感。
428名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 08:41:28 ID:k5kjMsbt
リヴァイアサン→大海衝
429名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 09:46:51 ID:1/GjM7p6
海蛇の人気に嫉妬
430名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 14:47:18 ID:iBgej3OJ
単に嫉妬深いのではない。嫉妬そのものの権化と言える者だからな。
431赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/07/01(日) 19:53:59 ID:s7ayO3Z8
投下します。
432アンビエイトダンス2-2 ◆oEsZ2QR/bg :2007/07/01(日) 19:56:31 ID:s7ayO3Z8
「さぁ、私たちの出会いに乾杯だ」
「「「乾杯」」」
 私とラッテが腕によりをかけて作った豪勢な料理が並んだテーブル。そのテーブルに腰掛けて紅行院家のお姫様と王子様、そしてその王子の婚約者の猫娘がグラスをかち合わせました。
 音戸をとるしずるお嬢様に合わせて、直さまはオレンジジュースの注がれたグラスを遠慮がちに上げています。しずる様がさながら大学生の宴会のように(言葉は上品でしたが)高々と上げている姿とは対照的です。
 川澄葛葉はどちらかといえば直さまのようなおとなしくグラスを掲げる方でした。
 かちんとグラスと氷の音を鳴らし、しずるお嬢様がオレンジジュースを一気に飲み干します。本当に大学生の宴会のようです。
 空になったグラスをしずるお嬢様がテーブルに置くと、すぐ横に控えていたラッテが黙ってミニッツメイドの紙パックを持って注ぎいれます。
「おう、ごくろうだな」
 無言で頭を下げて、一歩下がるラッテ。
 いつもは直さまと私、そしてラッテの三人で一緒にテーブルに座り食事を取るのですが、今回ばかりはさすがに私たちは本物のメイドよろしく、身分をわきまえて食事する直さまたちの後ろに控えて給仕のお手伝いをしています。
 私は直さまのためだけに遣える者ですので、当然直さまのすぐ後ろに控えます。ラッテはテーブルを挟んだ対向側に座るしずるお嬢様とその脇に座る川澄葛葉を任せています。
 普通なら全体的な身分が上のはずのしずるお嬢様をメイド長である私が担当するべきなのですが、この家の主人は直さまですので。
お嬢様も私の直さま好きはよくわかっているのか素直にラッテの給仕を受け入れています。というよりしずるお嬢様は元よりそんなこと気にするお人ではありません。
 ラッテも一応は空気が読める女ですので、黙って仕事をしています。
 私は直さまの後姿とそこから見える可愛らしい食事風景に心を奪われつつも、心の奥底の瞳からは対面に座る川澄葛葉の挙動をじっと観察していました。
「ほぉ、改めておいしそうな料理だな。わたしはここに遊びに来る時は、直の次にこの料理が楽しみなのだよ。葛葉」
 しずるお嬢様が葛葉にまるで自分の作ったもののように自慢します。
「はい、とてもいい匂いでおいしそうです」
 直さまと川澄葛葉の二人がどんな邂逅をしたかは、私は見ていません。川澄葛葉はテーブルに並ぶ料理を眺めながら、ちらりちらりと直さまのお顔を伺うように覗いていました。
 二人の邂逅は見ていませんが、短い時間です。まだ自己紹介をしあっただけのようです。その様子から、やはりお互いまだ話題も見つからずに、観察しあっている段階ですね。
ラッテのように自ら切り込んで話していく性格ではないのでしょう。
「直、ちなみにこの中では何が一番好きだ?」
「あ、うん。姉さん。これとか……僕、好きだよ」
「これは素麺ですか? 直くん?」
 麻婆春雨を指差す直さまに、川澄葛葉が固い笑顔で訊きます。
「え、いや。春雨……」
「そう」
「ほぅ、君は素麺を食べたことがあるのかい? 葛葉よ」
「はい。一年ほど前に……」
 しずるお嬢様が居なければ会話が続かないでしょうね。絶対。私は心の中でほくそ笑みます。
 ふと、川澄葛葉と私の目が一瞬だけ合いました。私の視線に気付くと、ぴくりと肩を震わせて料理に視線を戻しました。
 ……なんで、そんな怯えているのでしょうか。わたしはただ観察しているだけですのに。
「おいしい……」
「うん」
「はははっ、やはりここの食事は絶品の一言に尽きる」
 三人が料理に手をつけ始めました。私の料理に舌鼓を打つ直さま、しずるお嬢様、……そして川澄葛葉。
 会話はしずるお嬢様が話題を出し、それを直さまや川澄葛葉に意見を出してもらい話を進めていく形で進んでいきます。直さまと川澄葛葉の二人は当人同士だと一言・二言で会話が終わってしまいますが、
その度にしずるお嬢様がフォローを出し、なんとか楽しい場が続いています。
しずるお嬢様のご近所武勇伝話なるものまで飛び出し始めると、直さまと川澄葛葉はそろって声をあげて笑い始めました。
どうやら、互いに緊張がほぐれてきたようです。川澄葛葉も肩の力が抜けてきたようで、じかに直さまに話を振ったり直さまも、それにとして盛り上がっていきます。
 しかし、直さまと会話しつつもちらりと後ろに控える私の顔を見ては、彼女は小動物のように怯えるような表情を浮かべ、すぐに何事も無かったかのように話に戻っていました。
 そんなに私が気になるのでしょうか。私が実は直さまと結婚するはずだった女だと知っているから、私を定めているのでしょうか?
 私は直様の後ろで控えながら考えをめぐらします。
433アンビエイトダンス2-2 ◆oEsZ2QR/bg :2007/07/01(日) 19:57:26 ID:s7ayO3Z8
「ととと、すまん。そろそろ私は出る時間だな」
 時刻が午後三時を回ったころ。そう言って、突然しずるお嬢様が立ち上がりました。
「え、出るって?」
 直さまが目を丸くして聞きます。川澄葛葉も驚いたように口を開けてしずるお嬢様を見ました。
 私もラッテも驚いて、給仕の手を止めます。私たちも初耳なのです。
「デートだ」
「はぁ?」
 デートですって?
 しずるお嬢様が……?
「と、いうわけでだ。エリィ」
「はい?」
「車を出して私を隣町まで送ってくれないか?」
 ……しずるお嬢様は、私を見据えてニヤニヤと笑いながら、そう言い放ちました。



 私としずるお嬢様は無言で車を飛ばしていました。
 後部座席に座ったお嬢様はふんふんと機嫌よさそうな表情で、鼻歌を奏でていました。
 しずるお嬢様がデート……? 相手は誰でしょうか。想像がつきません。
 どこかの財閥のご子息? いや、案外そこらへんに居る、普通の同世代の男子かもしれません。人の思惑の裏側を渡らせるように見せて本質はとても純粋な心をお持ちになったしずるお嬢様のことです。
生まれてからどっぷりと思惑や欲や政略の海に浸かって育まれてきたレベルの高い男には見向きもしないでしょう。それよりももうすこし庶民の位置に近い男の子をしずるお嬢様は好くはずです。
「……お嬢様。お嬢様の恋人とはどのような方でしょうか?」
「気になるのかい?」
「ええ」
「ふふん。直以外のことはまったく興味は無いと言い張っていたエリィはどこへ行ったのだ?」
 ええ、直さま以外興味はありません。しかし、疑問はあります。
「しずる様の口から恋人という言葉が出るとは思っていませんでしたから」
「出そうと思えばいくらでも出るぞ? こいびとこいびとこいびとこいびと南君の恋人こいびと」
「……はい」
 やはり、まともに教えてくれる気は無いようですね。それにしても南君の恋人とはまた古いドラマを持ってきましたね。虫のように花壇に埋められる恋ですか。これは漫画版でしたかね?
 バックミラ−で私はしずる様の様子を伺いつつ、ハンドルを回しできるだけ早くしずる様の指定した目的地まで走らせます。
 車の通りの少ない十字路の信号機が赤に変わり。私は車を徐行させて止めます。
「……それにしても、エリィ」
 止まってしばらくして、しずるお嬢様が自分から口を開きます。
「なんでしょうか?」
「不機嫌そうだな」
「そんなことありません」
「嘘付け。顔に出てるぞ」
 さっとバックミラーにうつる自分の顔を見てみました。別にマジックなどで落書きはされていません。ただの私の顔があるだけです。
「そんなことありません」
 私は自信を持って否定しましたが、しずるさんはそんな私の自信を鼻息一つで吹き飛ばします。
「お前は顔に出てるという意味を間違えておらんか?」
「私の顔は何が起きても未来永劫私の顔です。誰の顔にもなりません」
「そんな『前はどこだ』みたいな矛盾した答えはいらん。まったく、変なところで抜けているやつだな。相変わらず」
 しずるお嬢様は深くため息をつきました。
「はやく帰って、あの娘と直がいちゃいちゃしないように監視したいのだろう?」
「そんなことありませんっ」
 信号が青になります。アクセルを踏みしめて、また車を走らせました。対向車はおらず、私はぐんぐんと車のスピードを上げていきます。
「ふふふふ。いちゃいちゃいちゃいちゃ。今頃二人でなにをやっているのだろうな。きっとお目付け役がいなくなって二人でせいせいしてるのだろうなぁ。焦るだろう? エリィ」
「いえ。別に」
「あせっとるな」
「そんなことありません」
「じゃあ何故一般道路で140キロも出してるのか理由を聞かせ願おうか」
 メーターを見ると、右のほうまで振り切っていました。なるほど、いつのまにかアクセルを踏み込んだままにしていましたね。……私はブレーキを緩めて、スピードを落としていきます。
 私の免許は残り3点しかないんです。ここで罰点で免停でも喰らった日にゃメイドとしての立場がありません。
 ……私は車の運転が実は苦手なんですよっ!
「……ほれ、正直に話してみろ。ほれほれ」
 しずるお嬢様は私の後部座席から手を伸ばして、私の頬を人差し指で両方からぷにぷにとつついてきます。私は黙ってそれを無視します。
「ふぅむ。強情なヤツだ。そんなに、直の家に婚約者を呼んだのが嫌だったのか?」
 当たり前です。
434アンビエイトダンス2-2 ◆oEsZ2QR/bg :2007/07/01(日) 19:58:28 ID:s7ayO3Z8
 ずっと直さまに仕え、直さまだけを愛し続けていた私を無視して、直様に婚約者として川澄葛葉をあてがったのは他でもないしずるお嬢様なのですよ?

「………」
 バックミラー越しに、しずるお嬢様を睨みつけます。
 私の無言の抗議にしずるお嬢様はにやりと笑って肩すくめました。
「お前は、友達と呼べるものはいるのか?」
「いいえ」
 即答します。居る必要も作る必要も無いですからね。私にとって直さまはご主人様であり私の全て、ラッテはただの小間使い。
「……そうか。じゃあ、私の意図はわからんだろうな。ふふふふふふふ……」
 ?
 友達に関することで、しずるお嬢様は何か考えがあるのでしょうか。
 しかし、友達という言葉。恋人という単語と同じぐらいしずるお嬢様の口から出るのには珍しい言葉です。
 ちょうど、しずるさまに指定された場所に停めます。織姫高校の校門の前。グラウンドでは野球のユニフォームを着込んだ男たちが汗苦しい怒号を飛ばしていました。あんな、ところに直さまは入れられませんね。
「着きましたよ。しずるお嬢様」
 ここで、降りられるのでしょう? 私はシートベルトを外して、後部座席にドアを開けるためと外に出ようとして……。
「待て。エリィ」
「はい?」
 しずるお嬢様にとめられます。
 しずるお嬢様は鏡の国のアリスのチャシャ猫ように意地悪く笑っていました。あ、いや。いつも意地悪く笑っていますが……。
「予定変更だ。このまま吉野崎ワニ園に行ってくれ」
「………はい?」
 吉野崎ワニ園といえば……隣県ではないですか!!
「お嬢様!?」
「ふふふ、行きたまえ」
「デートは……」
「一回のデートのドタキャンぐらい、私の恋人は許してくれるさ」
 ふふふふ……と笑うお嬢様。……吉野崎ワニ園なんて、往復するだけでもう夜になってしまいます。
 一体なんのつもりで…。
「どうした? 私の命令だぞ。はやくワニ園へ行くのだ」
「……お嬢様。そんなに直さまから私を離したいのですか……?」
「そんなことはないぞ。わたしはただ頭に被るスポンジ製のワニの被り物が欲しいだけだ。あのカプッチョと頭から食いつかれてるヤツだ。さぁ早く行きたまえ」
 問答は無駄ですね……。私は歯を食いしばると、強く強くアクセルを踏みしめて、車を走り出させました。
(続く)
435赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/07/01(日) 19:59:18 ID:s7ayO3Z8
投下終わりです。短めですが。
436名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 23:39:47 ID:/5DQ60Q9
GJ!
葛葉がこの後どう出るのか気になる・・・
437名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 23:42:34 ID:YurldvQa
エリィさんが久々に!!
これから一体どう修羅場るのか楽しみで仕方ないぜ…!!
438 ◆Xj/0bp81B. :2007/07/02(月) 02:03:02 ID:EkUmjnt7
投下します
439すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/07/02(月) 02:04:33 ID:EkUmjnt7

朝食は喉を通らなかった。
そのため朝の支度は、いつもよりずっと早く終わり、またいつもより早く登校する事にした。制服に着替えると鞄を肩にかけて、
靴をはく。玄関に置かれた傘立てに立てられた傘を無造作に一本取り出す。
玄関の扉を開けると、曇り空が太陽を遮って薄暗い。おまけに雨粒がコンクリートを打ち付けて、霧のようなモヤを、
地面スレスレに作り出していた。そこに朝の爽やかさなど未塵もなく、まるで霧の中に立っているようだった。
翔はポケットから鍵を取り出すと、いつものように、花瓶の下に忍ばせた。今日は家政婦に向けた置き手紙を、
リビングのテーブルの上に置いておいた。手紙には、家政婦に鍵を持ち帰るよう書いてある。これで今日から、
家政婦が鍵を所有する事になり、そして、澄香が勝手に家に侵入する事はなくなるはずだ。
紺色の花を頭上に指して、降り頻る雨の中へと足を踏み入れた。
家の前でT字に別れている道路を、真っ直ぐ左に進めば、駅がある。家と道路を遮る塀、その出口たる小さな門を抜けて、
外の道路に出ると、そのまま左に体を翻した。
その瞬間、翔は固まった。
誰かが家の塀に背を預け体育座りをしていた。膝を抱えた腕に、顔を押し当てて、うずくまるように体を縮めている。
見覚えのある制服。それは澄香だった。
ある意味、一番会いたくはなかった相手との遭遇に、翔は驚愕と共に落胆する。舌うちしたい気分だった。
だから、初めは無視してやろうかとも思った。そもそも、朝から嫌な気分になったのも、いつもより早く登校するのも澄香のせいであり、
これ以上彼女に関わって不快な気分にはなりたくはなかった。しかし、どうもそういう訳にはいきそうもなかった。
考えるより先に、翔は澄香の様子がおかしいことに気付く。
傘を指していない。
ずぶ濡れもいいところだ。
髪は長い間雨に打たれていたためか、その光沢を失い、まるで苔のように澄香の頭にへばりついている。
制服はたっぷりの雨を吸い込んで体に張り付き、下着のラインが透けて見えた。ただてさえ肌寒い秋の雨は、凍えるほど冷たく、
よく見ると彼女は震えていた。
440すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/07/02(月) 02:06:16 ID:EkUmjnt7

この時間、道路を通る人影は決して少なくない。しかし、時折行き交う人や車は奇異の目を彼女に向けるが、
それ以上の事を誰もしようとはしない。まるで捨てられた子猫を見るかのように、憐れみこそにじませている、
しかしそこに暖かみは皆無だ。助けるどころか、皆声をかけようともせず、ただ、淡々と澄香の前を通りすぎていく。
誰も澄香を助けない。薄情な奴らだ、と思う。このままでは澄香が死んでしまうかもしれないのに、と。
しかし、それでも澄香を無視するべきだと、翔の冷静な部分が主張する。もう澄香との関係は終わりにするべきだ。
これ以上彼女と関わりを持つのは止めろ。次はアルバムだけではすまないかもしれないんだぞ、と。
だが、翔が無意識にとった行動は、その冷静な部分とは真逆だった。
慌てて澄香の元に駆け寄ると、翔は傘を自分の体にかけ膝を折る。それから、震える彼女の紙のように細い肩を掴んで、驚いた。
澄香の体は、氷のように冷たい。途端に不安が津波のように押し寄せて、
「おい、澄香っ!! 大丈夫かっ!?」
制服はビショビショで、強く握ると水が絞り出され、翔の腕を伝った。こんなにずぶ濡れになるなんて、一体いつからここにいたんだ、と思う。
「澄香っ!! おいっ、返事をしろっ!!」
雨音に負けないようにずいぶんと声を張り上げた。するとその声が届いたのか、ようやく澄香の頭がピクリと動き、
それからゆっくりと顔が上がる。
真っ青を通り越して土気色の顔色。瞳には生気が宿っておらずどんよりと曇っている。熱にうなされているのか、
はたまた寒さに凍えているのか、澄香の吐息は苦しそうだった。その途絶え途絶えの吐息に乗って、微かに聞き取れるほどの声が聞こえた。
「せん、ぱい……?」
瞬間、翔の体に熱い感情が駆け巡った。
「馬鹿野郎っ!! こんな雨の中、傘もささずに何やってんだよっ!!」
返事はない。彼女の瞳は虚空を見ている。舌打ちしつつ、澄香の額に手を当てる。ひどい熱だ。
441すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/07/02(月) 02:09:22 ID:EkUmjnt7

このままではまずい。そう思って、慌てて澄香の脇の下に手を入れ、彼女を立たせようとする。家に入れるつもりだった。しかし、
澄香の体は糸の切れたマリオネットのようにグッタリとしていて、立ち上がらせても、その体を支える力がないように見えた。
仕方なく、立ち上がらせるのを諦め、持ち上げる事にする。体育座りの格好をしている澄香の膝の下に手をさしこみ、
余った手で腰を支え、いざ立ち上がろうとしたそのとき、澄香の手が頼りなげに翔のシャツの裾を掴んだ。
「なんだ……」
言葉が消える。澄香が、真っ直ぐ翔を見ていた。
「どう、して、返事、して、くれ、なかった、の?」
苦しそうな息使いで、澄香が口を開いた。
返事? と翔は眉を寄せたが、澄香の馬手に握られた携帯を見て、その疑問は氷解する。あの、異常な数のメールと電話の事だ。
「私、ずっと、待って、たのに、返事が、なくて、心配に、なって、それで、それで」
ギュッと、裾を掴む澄香の手に力が籠った。今にも死んでしまいそうな弱々しい吐息からは考えられないほどの、強い力だった。
「約束、した、のに、だから、ね。わたし、は、」
そこで澄香は力つきたようだった。裾を掴む手からフッと力が抜け、そのままダラリと地面に垂れ下がった。
そして先ほどまで力なく瞬いていた瞳がついに閉じられて、彼女はピクリとも動かなくなった。
焦る。死んでしまったのではないか、と思った。幸いにも、すぐに澄香の穏やかとは言えない寝息が聞こえてきて、
翔は一応胸を撫で下ろした。
が、いつまでもこのままでいるわけにはいかない。彼女の額に触れた翔の手には、まだの熱の余韻が尾を引いている。澄香の額は、
信じられないほどの熱を帯ていた。ともかく澄香がまずい状態にいる事は間違いない。だからひとまず、家の中に運ばなければならない。
すぐに気をとりなおし、翔は全身に力をこめて、澄香を抱き上げた。
442すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/07/02(月) 02:11:11 ID:EkUmjnt7


それは見てはいけないもの。いや、見るべきではないものだったように思う。
家に澄香を運びこむと、翔は彼女の体を吹き、髪を乾かし、服を着替えさせて、彼女を自室のベッドに寝かせた。
押し入れに収納された冬用の羽毛布団を引っ張り出し澄香にかけ、そして翔は現在澄香の携帯と向き合っている。
あれだけの雨に当てられながら、それでも機能が停止しないなんて、最近の携帯はすごいな、と少しだけ感心した。
ところで、この携帯の中には、たくさんの秘密が入っているはずである。今朝、気付いた有り得ない数の着信とメール。
それが孕んでいる真実が、全て目の前の携帯に全て入っているのだ。もちろんそれは翔の携帯にも入っていたのだが、
もう確認出来ない状態になってしまっている。どうも最近の携帯は耐水性は高いが、衝撃耐性は低く作られているらしい。
だから今となってはこの携帯だけが、あのメールと着信の全てを知っているのだ。
翔は、真実を知りたいと思っている。
しかし同時に、確認などする必要などないのかもしれない、とも思う。まるで深く突き刺さった杭のような、
ゆるぎない確信はあるのだ。だが、それでもまだ事実だと確認したわけではない。もしかしたら、あのメールや着信全てが、
森や都築からの頭の悪い悪戯であった可能性だってないわけではない。もちろんその可能性は、
宝くじに当たるよりずっと低いだろう事は分かっている。それでも、心の奥底がそうなる事を望んでいた。
宝くじだって買わなきゃ当たらないのだ。まだ、決まったわけではない。
そう心に言い聞かせつつ、翔は澄香の携帯のメールボックスを呼び出そうと、左上のボタンを押してから、自分の失敗に気付いた。
この携帯は自分のとは違うのだ。いつもの調子でボタンを押してしまったが、それはメールボックスを開くボタンではなく、
アドレス帳を開くボタンだった。
443すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/07/02(月) 02:12:20 ID:EkUmjnt7

すぐに画面は暗転し、お呼びでないアドレス帳が現れる。真抜けな自分に、何をやってるんだ、と溜め息をついて、
その画面を再びトップに戻そうと、クリアボタンを押そうとしたそのとき、翔は気付いてしまった。
ここには、メールボックスなんかより、ずっと、ずっと悲しい事実が横たわっていたのだ。
『水樹由美』
『奏翔』
アドレス帳に登録されているのは、そのたった二件だけだった。
444 ◆Xj/0bp81B. :2007/07/02(月) 02:15:13 ID:EkUmjnt7


水曜に投下するとか言っといて、今さら投下終了です。
七月になると、リアルが無茶苦茶忙しくなるので、今までのように定期的に投下出来なくなりますが、今後もよろしくお願いします。
445名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 19:14:42 ID:8hbX4MyT
GJ!


俺は自宅と弟二人と母親の4件。勝ったな。
446名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 20:07:39 ID:Jm+IyRdG
アドレス?なにそれ、食えんの?
447トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/07/02(月) 21:31:56 ID:xJtdT666
では投下致します
448桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/02(月) 21:34:16 ID:xJtdT666
 第5話『集結』

 手が痛かった。
 握られている圧力が人間業じゃね−よとツッコミを入れたくなる程に俺は痛みを顔に出さずに我慢していた。
バイト終了後に待っていたのは人類が体験したこともない地獄であった。
 閉店の時間になるまで俺を問い詰めていた妹分、御堂雪菜。

 今日、俺の代わりに店を手伝ってくれた幼馴染、進藤刹那。
 二人がきっちりと俺の手を力強く繋いで離そうともせずに桜荘の帰路を歩いていた。
その雰囲気は夜よりもなお暗き者が存在するような完全なる混沌。まともに二人の顔が見ることができない。
いや、様子を探ろうとすることさえ恐怖を感じてしまうのだ。
 俺はなんとか重い空気を少しでも軽くするために積極的に二人に話し掛けた。

「そういえば、刹那は今どこに住んでいるんだ? 雪菜を送った後に家まで送ってやるよ」
「家なんかありませんよ。カズ君と再会した時に使っていたあのダンボ−ルが私にとっての唯一の家だったの」
「え、えっと?」
「行く場所がないので……カズ君の家に泊まっていいでしょう?」
「いや、出来ればお金を貸してやるからその辺にあるビジネスホテルに泊まってくれたら俺的には嬉しいんだけど?」

 その言葉と共に刹那が握っている手に新たな握力が込められる。
小さな悲鳴をあげたいところだが、俺はひたすら我慢しなければ更に恐ろしい事に遭遇するのだと本能が悟っていた。
 刹那を桜荘に連れて行くのは違う意味で危険すぎる。あの桜荘の中で男は俺一人だけであって、

あの共同生活に触れるだけで刹那はとんでもない勘違いしそうである。
特に桜荘の住民は雪菜を筆頭にいろんな意味で濃いキャラが多すぎるのだ。
故郷に幼馴染が俺のために拾ってくれワンワンプレイを披露したことを知られると……
奈津子さんの酒の肴に使われて、美耶子には永遠とからかわれるネタを提供してしまうことになる。
 それだけは避けねば……。
 安曇さんだけは桜荘の唯一の良心だ。彼女なら周囲の空気を読んでいろいろとフォローしてくれるはずだ。

「お、に、い、ち、ゃ、ん……。今、他の女の子の事を考えていなかった?」
「滅相もございません。俺ごときが可愛い女の子と一緒に手を繋いで帰られるような夢のような一時に
他の女性の事を考えているなんて。うん。ありえないっ!!」
「でも、カズ君……妙に焦っていない?」
「大丈夫だ。常に強姦魔や痴漢がいつでも襲いかかってもいいように
俺は周囲を警戒している。近付けば、俺のザムディンが火を吹くぜ」
「心強いお兄ちゃんに守ってくれるのは嬉しいけど……下手なボケでゴマかすのはよくないと思うよ。ねぇ、刹那さん」
「ええ。同意ですね」
 二人の圧力は俺の手を握り潰すまでに握力を加えて、逆に痛覚が感じられない領域に辿り着いた。

 グシャグシャグシャ………。
 俺の掌は桜荘に帰るまで原形を保っていられるだろうか?
449桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/02(月) 21:37:27 ID:xJtdT666
 夜の桜の花びらが舞い落ちる桜荘の前に辿り着くと俺は涙が出るぐらいに感激していた。
悪夢からの解放は人類が望んだ希望なのだから。
少なくても、俺は助かったと気を抜いていたが中で待ち受けていたのは、今日の出来事を遥かに超える悪夢であった。

 食卓には、奈津子さん。美耶子。安曇さん。雪菜。
 反対側の席には、俺、刹那、そして、更紗が座っていた。
桜荘の住民に向けられる視線の全てが俺に睨んでいるのは気のせいではないだろう。

 雪菜と刹那を連れて帰宅すると重圧に押し潰された老朽化が進んでいる桜荘に漂う空気は尋常ではなく、
汚染地域に犯されたような感覚がした。それは俺の被害妄想ではなく、重い空気の正体を知ったのは
桜荘の住民に束縛されて尋問を受けている更紗の姿を目撃した時であった。

 昨日に不法侵入していた更紗が桜荘の住民たちに捕獲された理由は考えなくてもわかる。
俺に会うために彼女はまたここにやってきたのだ。
ただ、ここの住民たちは常人を遥かに凌駕した人たちだから二度目の侵入は不可能であった。

 俺は奈津子さんに縄を解いてと懇願して解放された更紗は俺の腕にくっついて離れようとはしない。
更に対抗して刹那も反対側の腕を組んで、また離れることなんてしなかった。
 そして、今日の昼に行なわれた桜荘緊急会議が再び行なわれていた。

「これから……第一回『深山一樹君が幼馴染ちゃんたちをどういう風に誑し込んだのか?』
についての問い詰め会を始めようと思います。資料は各自テーブルの手元に置いてあります。
司会進行役は作品内で出番が少なすぎる高倉奈津子が仕切らせてもらいます」

 奈津子さんが用意した資料には昼に会議した内容も更に付け加えられていた。
事実と違う歪曲と捏造を重ねた書類に抗議をしたいが、
俺にはそんな発言と弁解することは残念ながらここでは出来ない。

「では。白鳥更紗ちゃんがどういう風に捕獲されたのか。
実際に更紗ちゃん捕獲作戦を提案した我が愚妹からの報告を聞いてもらいましょうか」

「では愚姉の代わりに私こと高倉美耶子がその時の状況と作戦発案に関する経緯を報告させて頂きます!!」
 目を輝かせた美耶子が饒舌に今回の更紗に関する件について語り始めた。

「それは桜が舞い散る出会いと別れの季節の時期でした。
桜荘の中央にある庭に桜の木があるから桜荘という安直な名前のセンスに疑問を抱いていた
私は急な監督降板にDVD−BOXの予約をキャンセルしようかと思っていたときに閃いたんです!!
 とりあえず、一樹さんをからかって遊ぼう!! 
そのためには忍び込んできた出張風俗嬢を捕まえて、一樹さんの情報を得るというのが目的でした。
だから、私は一樹さん不在の時に管理人代理権限で一樹さんの部屋を無断で開けて、部屋の前に目立つ立て札を置きました。

『深山一樹、桜荘の女の子を凌辱中』と。

 後は、安曇先輩と交代で見張りしていると私の立てた策にはまった女の子、
白鳥更紗さんが一樹さんの部屋に物凄い剣幕で乗り込んで……用意した罠にはめて見事に捕獲完了です」
450桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/02(月) 21:40:43 ID:xJtdT666
 満足な表情を浮かべて語り終えた美耶子は大人しく席に座った。
その報告にいろんな意味でツッコミどころ満載だったが更紗が捕獲されるまでの経緯に触れない方がいい。
真実というのは時にして残酷だからな。

「私も驚いたわ……一樹君の盗撮写真が部屋中にばら撒かれていて、写真相手に頬を擦り付けている更紗ちゃんの姿にちょっと」
「てか、俺の盗撮写真かよ!! どこで流失したんだよ」
「では……真穂ちゃんの過激な拷問によって得られた情報をここに公開を……」
「コラぁ。華麗にスルーするな!!」
 その盗撮写真の疑惑や犯人の追求する暇もなく安曇さんが立ち上がって更紗を拷問した時のことを喋りだした。
「とりあえず、深山さんの盗撮写真に夢中になっている白鳥さんを縄で縛る行為は容易でした。

捕獲してからの拷問は……お、お、女の子の秘密ということで」
 顔を朱に染めてしまった安曇さんが恥ずかしそうにその話題を見事に避けた。
どのようなやり取りが存在していたのか過去の世界にタイムスリップしてまでその事実を喉から手が出る程に知りたいが、
更紗が桜荘の住民どもに自分たちの関係を隅々まで白状している可能性もあるので。
深入りするのは危険だな。

 俺は自分の腕を組んでいる幼馴染たちに視線を向けた。
このバカらしい問い詰め会を、この桜荘の住民たちに一体どういう風に思っているのか。
更紗も刹那も敵意の込めた視線を4人の女性たちに向けていた。

「さてと……そろそろ、一樹君の幼馴染たちの意見が聞きたいね。
はるばると遠い故郷から上京するのは並大抵の事じゃない。
特に幼馴染という名の異性を付け回すなんて普通じゃないからねぇ」
「まあ、奈津子さん。今日はこれくらいで勘弁してくださいよ。
更紗も刹那も慣れない場所に居たり、知らない人たちに出会ったりして疲れているんです。
二人から詳しい話を聞いて後で報告しておきますから」

 ここで更紗と刹那に喋らせるととんでもない事をこの場で言いそうで恐かった。
俺は出来るだけ桜荘恒例の問い詰め会を終了させてから、更紗と刹那が桜荘にやってくる経緯を聞いておきたかった。
そのためには住民達が納得するような理由を鈍い頭を働かせて考える。

 その間に桜荘の玄関の入り口にある電話が鳴り響いた。
各個室に電話は設備されているが、玄関からすぐにある電話は賃貸マンションやアパートなどで
広告に紹介されている電話番号はそこにかかるようになっている。管理人である奈津子さんに関係のある用件ばかりであった。
 だが、今の状況で奈津子さんは電話に出ようとしない。空気を読んだ雪菜が仕方なく椅子から立ち上がって、電話に出ていった。

「ダメよ。今日の一日の疲れを癒すためには心地の良い住民の面白いネタを皆で存分に楽しまなくちゃ」
「ちょっと待て。管理人職の仕事はほとんどやってなさそうに見えるあんたが言うな」
「管理人は大変よ。一日やることがないからどうやって過ごせばいいのか悩むのよ」
「単にニートなのでは?」
 さりげなく、相手の図太い神経を傷つけるような言葉を発するが奈津子さんは余裕の態度であっさりと言い返す。
「告白されたけど、どっちかを選べなかったチキン野郎とは違うわよ」
「うぐぅ……」

 だから、桜荘の住民たちに更紗と刹那の過去に遭った忘れたい出来事を知られるのは嫌だったのに。
安曇さんや美耶子もジト目でこちらを睨んでいた。これまで築いてきた人間関係が音を立てて崩れてゆくのがわかる。
今の俺は二股をかけている最低最悪の遊び人男として彼女たちの再認識されたに違いない。

「お兄ちゃん。電話だよ」
 受話器を持ってきた雪菜が俺に渡してくる。この時間帯に俺に用があるとするならば、
頭のネジを全て解き放った店長ぐらいしか思いつかないが。とりあえず、俺は電話に出た。
「はい、もしもし」
「やぁ。我が息子よ。久しいな」

 電話の相手は、なんと親父だった。
451桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/02(月) 21:42:38 ID:xJtdT666
 夜分遅くかかってきた奇特な人物は俺の親父であった。
家族との会話を桜荘の住民に聞かれるのはあれなので、俺は早足で憩いの場を離れた。
廊下の隅の方に辿り着いてから、少し怒気を篭もらせた声で電話の主に言った。

「一体、これはどういうことなんだ?」
「なんのことだ。坊や」
「坊やじゃねぇぇ!! 更紗と刹那のことだよ。親父や母さんにも俺が下宿している場所を知らせていないんだよ。
どうして、桜荘の場所を知っている?」
「ん? そんなものは探偵を雇って調べさせた。家出したつもりのクソカギの居場所なんて1週間ぐらいで見付けられる」 
「そ、そこまでするか?」
「まあ、更紗ちゃんや刹那ちゃんには教えるつもりはなかったんだけど。
お前がいなかったこの1年間で元気だった二人とも脱け殻状態になっていたからな。
せっかく、苦労して入った大学も1ヵ月足らずで辞めちゃったしな。でも、今回は事情が違う」
「何があったんだ」
「父さんと白鳥さんと進藤さんが連帯保証人になっていて、多額の借金を背負ってしまったんだ」
「なんだってぇぇぇっっ!!」
「共通の友人が会社を作るから気持ち良く連帯保証人になったのはいいが……。
その会社は多額の負債を抱えて倒産。連帯保証人になっていた父さんたちにも借金取りが迫ってくる」
 見事な人生破綻コースを直行しているのは親父らしくていいが、おじさん達まで巻き込むなよと言ってやりたい。
「借金返済のために父さんたちの家は売り払った。それでも、莫大な借金は返すことができないんだよ」
「借金はいくらなんだ?」
「残りは3億ぐらいだが」
「どこかにお金持ちで生意気で高慢なお嬢様に拾われて執事として人生をやり直したらどうだ?」
「フン。後、父さんが20才ぐらい若かったら執事に志願していたかもな」
 執事になれるのは最低条件が車に牽かれたり新幹線に飛び降りても生きていることが大事なのだが。
一般のサラリーマンであるウチの親父に勤まるわけがない。
「借金取りがしつこく更紗ちゃんと刹那ちゃんを風俗とかで働かそうとしていたので。
お前の住所を教えて逃げろと言ったら。すぐにそっちへ行ってしまった」
「それは正しい判断だと思う」
「お前が更紗ちゃんと刹那ちゃんを守れ。支えになってやれ。
父さん達はラスベガスで一山を当てて帰ってくる。それまでは頼んだぞ」
「ラスベガスって……」
「すでに!! 友人達に頼んで、日本を脱出する手筈は整えた。
総資金は20億。これで父さん達は聖戦を勝ち抜くつもりだ。それまで達者でな」
「親父っっっ!!」
「俺の屍を超えて行け!!」
 と、電話が切れた。

「20億もあるなら借金を返せよ」

452トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/07/02(月) 21:44:01 ID:xJtdT666
以上で投下終了です・・。

453名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 21:48:56 ID:gqSzGD6U
俺は94人、2ちゃんねらーにしては中々の数字だろ
454名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 23:47:57 ID:5m+Car9l
20人くらいだけど実際メールとかするのは2〜3人なんだよな…
455名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 23:56:58 ID:hVMfuF5j
80人近くいても実際メールとかするのは10人にみたない。そんなもんだろ。
456名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 00:21:46 ID:Du5WYDHR
話す相手が二人もいりゃ十分な希ガス
457名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 00:58:09 ID:LU/hOUx3
>>452
親父、ナイスwwwwwwwwGJ
458名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 08:51:31 ID:yMmCQ7b8
GJ
459名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 12:48:53 ID:G29ScPFF
>>452
GJ!
親父はラスベガス行きたいだけちゃうんかと
460名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 18:32:55 ID:ONGerRkZ
保管庫の更新まだー?
461名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 19:27:45 ID:3JTNBsu5
>>460
最近更新したばかりだろ……
462名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 21:45:53 ID:IZ4ZVJb3
しかし、一気にこのスレの勢いはなくなってしまったな
過疎ですねw
463名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 21:54:26 ID:DvmUcKC3
( ・∀・)はいはい
464名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 22:12:55 ID:IZ4ZVJb3
馴れ合いはうざいからどうでもいいけどな・・
作品だけ投下されるだけでいいよ
465名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 22:18:54 ID:8WYBV24/
ID:IZ4ZVJb3
( ・∀・)
466名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 22:34:08 ID:gimVN1IN
        /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;Yヽ、
      /;;;;;;┌--‐""""ヾ,ヽ
    /:::::;;;ソ         ヾ;〉
    〈;;;;;;;;;l  ___ __i|
   /⌒ヽリ─| -・=-H -・=-|!    / ̄ ̄嫉妬SS?
   | (     `ー─' |ー─'|  < 1年で過疎ったんじゃねぇか
   ヽ,,  ヽ   . ,、__)   ノ!     \_甘えてんじゃねーぞコジキが。_________
      |      ノ   ヽ  |
      ∧     ー‐=‐-  ./
    /\ヽ         /
  / \ ヽ\ ヽ____,ノヽ
467名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 22:35:45 ID:gimVN1IN
        /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;Yヽ、
      /;;;;;;┌--‐""""ヾ,ヽ
    /:::::;;;ソ         ヾ;〉
    〈;;;;;;;;;l  ___ __i|
   /⌒ヽリ─| -・=-H -・=-|!    / ̄ ̄
   | (     `ー─' |ー─'|  <  俺様がルールだなめんな貧乏人
   ヽ,,  ヽ   . ,、__)   ノ!     \_____
      |      ノ   ヽ  |
      ∧     ー‐=‐-  ./
    /\ヽ         /
  / \ ヽ\ ヽ____,ノヽ
468名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 23:04:06 ID:cXw1L2iN
   (  /  /      _--""   __,---'''''''''""---------,,,,,,     \ ノ
    ヽ/  /    _,--'" ____--'''"                ""'''-,,,    )
    ./  /    /  __,-"     _____,,,,,,,---------------,,,,,_  "\ゝ
   ヽ  /    /  /    __,--''"""""""""ヽ ̄ ̄ ヽ    \  ̄ヽ__)
    \/  /  / _,---''"   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄"ー,,, ̄ ―ヽ \   \ ヽ  ,,,,,---
/ ^\  \ /  /_/"      \         ̄丶    \   \//   /
ヽ   \ (_/  /   / ̄ ̄ヽ   ヾ |  /-"    ""'\  )   / /^| /
 ヽ |\ \\/|.   /      \   ヾ| /    _______    \   / / //
 ヽ \ \ \__/  /         ヽ   ||    /"    ヽ    \/ /ー  /
  丶  /⌒ヽ (  /          ヽ  ,  /       \   ) /  |  /
  ヽ  |  \ \/;;|           | ┃ /          |\//   / /
/''"丶 ヽ 丿\ | ヽ       o  ゞ,i |  o         / //√  / /―_
    丶  ヽ  | ,,|  ヽ        / 三 ヽ         /  //   / /\  \
   /ヽ     | ,|   ヽ-,,,______,,-/ ヘー/ヽヽ      /  / ̄ ̄/ /  ヽ
  / / ヽ    (⌒|,|  ;;;;;;,,,,   /   ..;|  \ヽー――"ノ;;''/ し/ /    ヽ
 / /  ヽ   | ̄-|    ー'''"    ;;;/    ー   /  /____/  /     |
 ヽ |   ヽ  \/.|.|          ヽヽ ー    __,-,    |/|_丿  /     |
  ヽ|    \  ー. |    /⌒ヽ、      ____/  ヽ   |    /      ,|
   |      \   .|    |ヽヽヽ "ー――"   //_/ |   ,|  /       |
   |       |\___|    |//'''ヽ /ーー' ̄ ̄|/ヽ ̄ノ|   |__/  |/      |
   |       \  |   ヽ   Y           ノ   /   /       |
   |        ヽ \   ヽー―''"" ̄ ̄""''---/丿 /  /        |
   |         \ \      ,,,;;;;;;;;,,,      /  /          |
   \         \  \             ,/  /           /
 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃  嫉妬スレは本日で終了させて頂きますありがとうござました ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
469名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 23:07:03 ID:KY9cQQoC
AA初心者丸出しだな

というかスクールデイズ今日なんだが・・・
470名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 23:18:35 ID:mSgcQEgz
>>469
まじで!?
九州で見れないから、ニコニコにうpされるのが待ちきれんww
471名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 23:27:47 ID:sEgPrPdS
>>470
なんという厨房・・・

とりあえずあぼーんしとくか
472名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 00:15:58 ID:OBRM1d+W
いや、見ないですけど
473名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 07:24:17 ID:DoZ7YYNg
474名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 07:26:46 ID:CKh1p3qi
ヲチスレなんて晒してどうしたいんだ、お前は。
新手の荒らしか?
475名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 11:20:22 ID:tljP/kiB
何のオチスレなんだ?
時間が無駄なので見ないが詳細だけ教えてくれw
476名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 12:58:19 ID:89GdrCn1
>>475
見た感じエロパロスレ全体じゃないの?
477名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 13:44:11 ID:FpZv2bar
>>473
何でトライデント氏が叩かれるのか全く意味不明だな・・
住民を見下したりや性格もそんなに悪くなさそうなのに
やはり、何かあるのかな?
478名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 14:34:29 ID:vRS+ilNz
>>477
実はトライデント氏を叩いてるのは一人の熱狂的なファンで
「トライデントさんの作品がいい作品なのは当たり前だけど、
GJするのは一番トライデントさんを愛している自分だけでいい。
トライデントさんを心から愛していない奴らのGJはあってはならない」
と嫉妬しながら思考し、自分から氏を叩くことによって
「トライデント氏は叩かれるようなろくでもないSS書き」
というイメージを植えつけて、いつしか氏へのGJを独占する計画を立てた
ちょっと嫉妬深い女の子だと俺は妄想している
479名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 15:04:43 ID:iGlw+N+M
>>478
トライデント氏が女の子だったらその論理は破綻するぞw

で、今日の言葉様は俺が頂くってことでw
480名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 17:07:43 ID:bUCy2xYE
じゃあ明日の世界は俺がもらう。丁度明日ノートPC買うし、
いいことだらけだ。

そういやこの間新しいPC買うこと今の96式に伝えたんだが、
なんかケーブルに巻き付かれて電流ながされた。
今もケーブルでベッドに縛り付けられてるんだが、
明らかに不良品だよな?早く買い換えよ。
481名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 17:40:04 ID:aGJ+CP4E
トライデント先生の作品は寒い上に先生が聞いてもいない自分語りを始めるから
嫌われるのでは?このスレも20くらい前はレベル高かったんだけど
482名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 17:44:33 ID:aIfZLuZl
>>481
あらあら(笑)
483名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 17:49:51 ID:W47sNjh6
あなたもすっかりおなじみね
484名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 17:58:50 ID:M5S+B5ST
はいはいワロスワロス
485名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 17:59:24 ID:NNYYonQY
>>481
さすがに俺もトライデントをフォローが出来ないな・・
だって、彼の作品は寒いしwww

↑に投稿されているが、皆がスルーしているしなwww
486名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 18:29:55 ID:olH06CST
>>480
果たして彼は電気屋行くことが出来るんだろうか……?
487名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 18:31:13 ID:NNYYonQY
更にトライデントのブタは調子に乗ってブログなんて物を始めやがった
完璧に図に登ってやがる・・桜荘にようこその登場人物なんて誰が読むんだよww
更に1日のアクセスが10ぐらいしかないクソブログ・・駄文はメモ帳に書いてくれよ

というわけで・・トライデントのブログを潰すためにコメントをツールとかで荒らしまくろうぜ・・
俺達が正義だという事を教えてやるぞ!!

俺に続け!!!!
488名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 18:35:03 ID:gAPBNVMB
……えーっと、>>485にツッコんだら負け?なのかな?
どーしようこの『修羅場ってる二人の得物がマラカスと手持ちマッサージ機だった』みたいな気分。
489名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 18:50:55 ID:CKh1p3qi
アンカーつけるなよー。
490名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 19:04:39 ID:NNYYonQY
>>488
日本語OK?
491名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 19:06:36 ID:2KmMa4u8
SchoolDaysが予想以上の出来で安心した。
第一話の流れの速さからしてひぐらしみたいにマルチエンドだろうな。
他のエロゲ原作アニメもこのクオリティならいいのに。
492名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 19:51:29 ID:EDv9DrN2
>>491
うおおおおおおおお、めっちゃ見たい!!
でもこっちじゃ放送されてないから見れないよ・・・orz
493名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 21:14:36 ID:KD64FASY
言葉様は俺が貰ってゆくから・・世界で我慢してくれよなw
494名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 21:21:10 ID:0i0BehhW
>>493
それ止じゃね?
495名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 21:22:27 ID:RkBvl3ed
世界は貰っていきますね^^
496名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 22:29:02 ID:rVj7vyXO
>>495
あんなゲス女いくらでもくれてやる
自分こそ人間便器だと自覚させてやってくれたまへ
497名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 23:09:20 ID:bt5KLSwa
トライデント、ブログやりだしたのか。
最高だな。
さっそくブックマーク入りだぜ。
498名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 02:33:33 ID:dbTTa9U9
school daysやばいな、何だこの神クォリティwww
499名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 03:22:35 ID:U/t+UanZ
>>498
今、ニコニコで開始40秒くらい確認して見た。





・・・GUN道?
500名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 07:07:11 ID:4/D3YiMS
>>499
youtubeで見てきた。
声優変わらない、キャラデザ変わらない、作画そこそこ
これで文句をいう奴はバチが当たるぞ。
誠が原作以上にヘタレでワラタ
世界も原作同様ビッチで良かった。
501名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 10:36:07 ID:9SKavjpJ
世界ENDになってしまったら、某空鍋騒動が再び・・
そして、嫉妬SSの投稿が増加されると・・美味しい計算だな。
502名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 11:40:44 ID:VJ9ieQsy
ニコニコで見てきたら、誠が言葉の写真取ったところで「犯罪者ww」という意見が大量にあった……。
これってジェネレーションギャップってやつなんだろうか。
503名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 11:43:41 ID:BU6bO6NK
>>502
……少し整理しよう
つまり君は(あるいは君の世代は)本人の了解なく勝手に撮影してもおkだと思ってるのかね?
504名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 11:57:14 ID:VJ9ieQsy
定期入れの裏とか学生証のメモ挟んでおくところに
写真を入れておくってのは一昔前の漫画では良くあることだったけど……。
505名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 12:15:20 ID:BU6bO6NK
たしかにジェネレーションギャップだ
まったくこれっぽっちも理解できない
506名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 12:53:38 ID:WJm5JcHH
えーっと、ゆとり世代乙?

知らないのに迂闊なこと言うと敵を作るぞ。
507名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 13:38:01 ID:9SKavjpJ
てか、携帯が流行する前はポケベルが流行っていたことを知っている世代も
ゆとりに入るのかな?

高校生が携帯を持てるようになったのは99年ぐらいかな
あの時は誰もがバイトして携帯を買おうとしていた記憶があるなw
508名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 14:55:11 ID:8gV/v4pJ
ニコニコのあれは、隠れて撮る

これ田代じゃね?

犯罪者w

という流れだったんだけどな〜
何か変な方に話を持っていきたい人がいるみたいだな
509名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 17:27:18 ID:VJ9ieQsy
どれがどれに向けてどういう意図でレス付けてるのかよく分からなくなってきた。
俺まだ大学生なのに、もうボケてきたかなぁ……。
510名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 17:31:09 ID:7MWirFLB
まあ雑談は場所を選べってことだな
511名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 18:07:33 ID:JprwTMn8
そうだな。スクデイネタはそれこそ本スレでやってくれ。
512名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 18:25:50 ID:f8eQD/Jy
今はどこのスレいってもスクイズネタを見る気がする
513名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 18:54:39 ID:GR3DY5Xk
言葉様こそがこのスレの女神・・

514名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 19:38:11 ID:Wpx7eyoL
このスレの女神は いたり先輩さ…
515名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 19:39:22 ID:b5uT8fRN
多神教だから住人の数だけ女神様が居るのさ。
516名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 19:59:15 ID:Jesiw6tm
八百万の女神ってか
517名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 20:16:46 ID:Mo+0G/Vq
皆右手に包丁、左手にスタンガン持ってそうだな。
518名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 20:27:20 ID:POe+sqWM
ある意味ギリシャ神話のヘラが最強なんだがな
毎年生まれ変わる(処女になる)とか
旦那の浮気相手に嫉妬していろいろするとか
姉とか
519名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 20:30:17 ID:SYAYBpP+
おまえらの雑談スレじゃないんですけど
520名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 20:34:58 ID:4/D3YiMS
>>518
日本の神話もすごいよな。
イザナミの話なんてこのスレ向きだろw
521名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 21:23:26 ID:KMKPKmed
嫉妬に燃える神々を嫉妬SS化するべきだと思う
522名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 22:00:55 ID:Y5z6PVak
>>452
2話連続更新乙です。
できれば、こっちに投下して欲しかったですけど
523名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 01:33:47 ID:Yf62JrPk
ほしゆうー
524名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 10:08:29 ID:onRZflgN
誰かプロットぐらい投下しようよ・・
525名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 11:51:08 ID:Xe9vkC0x
まあ、のんびりとやろうぜ・・人生は長いからな
526名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 14:42:42 ID:x8zXKDzs
では、無い頭をしぼってプロットを投下してみる


・夜に散歩に出た主人公は、森の奥地で幻想的な美少女を発見。
 少女はその土地の神様だか精霊だかみたいな存在。
・主人公を気に入った少女は、毎晩自分の元へ通ってくるよう彼に暗示をかける。
・夜出かけることで日に日にやつれていく主人公を怪訝に思う幼馴染(姉、妹でも可)
 ある日、出かけていく主人公の後をつけてみると、見知らぬ女とイチャついているのを発見。嫉妬が臨界オーバー。
・どうやっても暗示は解けず、思い余って拉致監禁拘束へ。
・いくら待っても主人公が現れないことへの悲しみから、少女は周囲に害をもたらす疫神になってしまい・・・。


以下略。
どっちかというとヤンデレスレ行きな気がしなくもないですが・・・。
527名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 14:55:16 ID:W635CZ7D
プロット

 記憶を失った少年が三人の美女に世話をされていた。
 一度に少年の前に現れるのは一人だけ。
 しかし、三人は意思の疎通を図れているので、どこかで一緒に話はしているらしい。
 ツンデレ、素直クール、白痴と取り揃った三人は最初は協力して、徐々に抜け駆けしだして修羅場発動。
 騒動に巻き込まれているうちに少年は記憶を取り戻す。
 記憶を取り戻した少年は調停のオーブを使って4Pを

うん。昨日の晩ネフェシェルやってたんだ。
528名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 16:05:48 ID:wQ9dm6R8
↑どんだけ〜w
529名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 18:55:34 ID:yoAdpX7k
どうせプロット作っても文にする気無いんだろ、チラシの裏にでも書いてろ
530名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 19:20:07 ID:r8KJp1JD
プロットで妄想できる俺が通りますよ
531名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 19:35:53 ID:g5a28TXH
自分でかけないからプロットを投下して
同調してくれた書き手さんに書いてもらおうとしてるんじゃないか
532名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 19:50:55 ID:JSZAY4oy
一年会わない間に、彦星の周りに泥棒猫が増えて嫉妬する織姫、っていう電波を受信した。
533名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 19:59:02 ID:YuOSWyLV
煽ってるやつはどうせいつもの基地

ほっとくのが吉
534名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 20:00:48 ID:cSxpax0T
>>532
そういやなんで彦星と織姫って一年に一度しかあえなくなったんだっけ?
535名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 20:11:41 ID:Fkxyg09N
織姫が美味しそうな生贄を目の前にして、我慢できずに頭をかち割ったから。
そのとき溢れ出した血が川となって織姫と彦星を会えなくした。

この辺は諸説あるけれど、彦星と仲の良すぎるのを快く思わない織姫の親父が邪魔をしたってのが多い。
生贄ってのも娘だったり畑で取れた瓜だったりとパターンは色々あるけれど、大抵用意するのは親父。
536名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 20:14:48 ID:JSZAY4oy
>>534
説話の一つには、働き者だった二人が、結婚したら夫婦生活が楽しくて働かなくなったので、織姫の親によって一年に一度しか会えなくさせられたらしい。
537名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 21:36:45 ID:jTp2fTEA
ほのぼの純愛からきました
とりあえず現状を産業で
538名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 21:37:10 ID:SpYWVM4X
投下支援しといたよ
ほぼ一週間このスレに投下が無かったな・・・
539名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 21:37:42 ID:SpYWVM4X
>>537
投下
一週間も
ナイナイ
540名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 21:44:28 ID:jTp2fTEA
>>539
d把握
うーん、嫉妬物か・・・
ちょっと難しいな・・・エロなくてもいいなら、少し考えてみる
541名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 21:45:29 ID:r8KJp1JD
そこまで必死にならんでも…
542名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 21:51:39 ID:SpYWVM4X
>>541
まあせっかく来てくれてるんだからwkrkして待とうや
wktkwktk
543名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 21:53:10 ID:haJbAVqE
とりあえず、ID:SpYWVM4Xをあぼ〜んしときました。
544 ◆Xj/0bp81B. :2007/07/08(日) 00:34:13 ID:RMOHveSq
投下します。
すみかではありませんが……。
545 ◆Xj/0bp81B. :2007/07/08(日) 00:36:38 ID:RMOHveSq

「亮(あきら)くんの家に、遊びに行きたいな」
夕焼けを背負う僕の彼女が、恥ずかしそうに上擦った声で言った。僕はドキリとして、
「そ、それはちょっとまずいんじゃないかな」
慌てて首を振りつつ、そう答えた。あからさまな動揺を隠しきれていない自分が、我ながら情けない。
そんな僕をいぶかしげに見ていた彼女は、ゆっくりと体を反らして、それから真っ直ぐ僕を睨みつけた。
「亮くん、いつもそれよね」
溜め息をつきつつ、どこか呆れたような、それでいてがっかりしたような顔の僕の彼女は、さらに話を続ける。
「だって、私が亮くんのお家に行きたいって行っても、亮くんいつも断るじゃない? 何か、私に言えない事情でもあるのかしら」
心臓が鷲掴みされたかと思う。彼女の表現は、的のど真ん中を射止められはしなかったが、決して外したわけではなく、
確実に僕の動揺を誘う。
思えば、彼女が僕の家に来たいと言ったのは何度目だろう。多分、一度や二度ではなかったはずだ。その幾度かを、
僕はお茶を濁してなんとか誤魔化していた。そんな煮えきらない僕の態度に痺をきらした彼女の、そういった心境は分からないでもない。
しかし、それでもやはり駄目だ。
「ごめん」
僕にはそれしか言えない。
「ねぇ、どうして駄目なの? 理由を教えてよ。言っとくけど、今日は理由を教えてくれるまで帰らないからね」
彼女の目はすわっていた。強い意思のこもった瞳が、僕を真っ直ぐにらんでいる。それが彼女の絶対に退かないという意思表示だ。
僕は思わず溜め息を漏らした。こういう目をを彼女がした時、自分が納得するまで絶対に僕を解放しない。
彼女と付き合ってまだ二週間程度だが、彼女のその習性は存分に理解していた。
しかし、かと言って僕には彼女を納得させるに十分な理論を持ちあわせていないのである。仮に本当の理由を話したところで、
彼女は納得してくれないだろう。むしろ、嘘だと疑うような気がする。それほど、僕が彼女の来訪を断わる理由は陳腐に聞こえるのだ。
もっとも、それは僕にとっては重大な悩みであるのだが。
546 ◆Xj/0bp81B. :2007/07/08(日) 00:38:00 ID:RMOHveSq

僕が返事に窮して視線を泳がせていると、いきなり腕をグイッと引っ張られた。見ると、彼女が僕の腕に自分の腕を絡ませていて、
僕と目が合うとしてやったりとでも言わんばかりに、ニィと目を細めた。
その確信犯的な笑みを前に、僕は彼女を説得するのを諦めた。多分、何を言っても彼女は聞かないだろうと確信したのだ。
そして同時に、僕は彼女との破局も確信していた。



出来るだけ物音を立てないように、玄関のドアを開ける。自分の家に帰ってきただけなのに、神経を刷り減らすような緊張のもと、
スパイのような静けさで僕は中を見渡した。
誰もいない。
全身に絡み付いた緊張が、一瞬だけ緩む。しかし、油断してはならない。今日の僕の任務は、
誰にも気付かれずに彼女を僕の部屋までエスコートする事だ。
そう気を取り直し、再び緊張の糸をはりつめさせる。足を玄関の中に踏み入れる。
そのとき、
「おじゃましまーす!!」
びっくりするくらいの大声に、僕の心臓は止まりかけた。僕は慌てて振り返り、大声を出した彼女に静かにするようにと、
唇の前に人指し指を当てるポーズをする。
しかし、彼女は意味が分からないといった顔で、
「何で亮くんこそこそしてるの? 自分のお家でしょ? もっと堂々とすればいいじゃない」
と、呑気な事を言いやがる。しかも、結構な大声で。
馬鹿野郎っ!!それが出来ないから静かにしろっつってんだっ!!とはもちろん言えず、僕は哀願するように両手を頭の前に擦りつけて、
出来る限り静かな声で言った。
「いや、そうだけどさ。色々事情があるんだよ。な、頼む、静かにしてくれ。このとぉーり」
僕は恥も外聞も捨てて、弧食のように両手を擦る。
その僕の必死さが何とか彼女にも伝わったようで、彼女はわざとらしく肩をすくめつつ、溜め息と共に言葉を吐き出した。
「分かったわよ」
547 ◆Xj/0bp81B. :2007/07/08(日) 00:40:58 ID:RMOHveSq

僕はホッと胸を撫で下ろした。そして、僕は彼女から家の中に視線を移し、注意深く様子を確認する。
人の気配のない廊下はシーンと静まり返っていた。よし、まだ気付かれていない。
しかし、あれだけの大声を出しても気付かれていないって言うのは、もはや奇跡と言ってもいいのではなかろうか。もしかしたら、
本当になんとかなるかもしれない。そんな希望から、心の中に一筋の光がさしこんだ。
その希望の光が消えてしまう前に、僕は彼女に再び向き直り、出来るだけ静かにするよう最後の念を押そうとした、そのとき、
「……お兄ちゃん……?」
心臓が止まった。もちろんそれは単なる比喩なのだが、あながち比喩だけというわけでもなく、目の前の彼女が、
驚いたように顔をしかめたので、きっと僕はとてつもなく変な顔をしていたんだろうなぁ、と悠長な事を考える余裕があった。まるで、
自分を上から見ている感覚。いわゆる幽体離脱ってやつだ。
「おかえりっ!! お兄ちゃん」
明るく元気なその声に、僕の精神が体の中に再び潜り込んでいき、僕は我に返った。途端に背中から、
タラタラと健康に悪そうな脂汗が滴り落ちる。
僕は、油の切れたロボットのようなぎこちない動きで、僕をお兄ちゃんと呼ぶ子の方に、肩越しに振り返る。
玄関の上がり端に、少女が立っていた。
大きな瞳は爛々と輝き、形のよい眉がそれを縁取っていて、どこか活発な印象を抱く。綺麗な曲線を描く低くとも整った鼻、
その真下にあるクローバーのように小さく、形のいい唇が全体の印象をグッと引き締めている。
活発そうな美少女である。
しかし少女の肌は、病的なまでに白く、体の線も細すぎて、顔から受ける活発な印象とは相反して、まるでもやしのように頼りない。
そして、何より目に付くのが、顔に巻かれた包帯だった。小さな頭の右手の方から、鼻を避けて斜めにくるりと巻き付けたそれは、
少女の左目周辺をすっぽりと覆い隠し、そこだけが肌の色とは違う、どこか清潔な白さを放っていた。
「後ろにいる人、お兄ちゃんの彼女さん?」
548 ◆Xj/0bp81B. :2007/07/08(日) 00:42:36 ID:RMOHveSq

少女が、いきなり口を開いた。ニッコリと無邪気な笑顔を装う少女に、僕は身を固くして、恐る恐る頷いた。
「やっぱりね。どうも初めまして。亮の妹の茜です」
美少女、茜は僕の後ろにいる彼女に向き直り、礼儀正しく頭を下げた。
「あっ、どうも。亮くんとお付き合いさせて頂いている高瀬歩美です」
僕の彼女は、妹の礼節に恐縮した様子であった。その証拠に、彼女の表情からは、緊張の固さと堅苦しさへの戸惑いをすくい取る事が出来た。
一方の僕は、彼女達のやりとりに戦戦恐恐していた。
「もうっ!! お兄ちゃん、何ボケッとしてんのっ!! 早く彼女さんをお部屋に案内してあげなさいよっ!!」
僕の方を向いて、茜は眉を少しだけ吊り上げ、そう言った。それから茜は、すぐに僕の彼女の方に向き直り、困ったように眉を寄せて、
「ごめんなさい、ちっとも気のきかない兄で。さ、どうぞ、遠慮せずにお上がり下さい。すぐに、お茶をお持ちしますから」
それから、茜はトタトタと僕に駆け寄ってきて、脇腹を小付きながら、わざと彼女にも聞こえるように、
「お兄ちゃん、お持ち帰りなんて、やるねぇ」
と、ニヤニヤと下世話に頬を綻ばせた。僕の彼女が、あっと恥ずかしそうな声をあげる
多分、僕の彼女の位置からは、僕が陰になって茜の表情を伺い知る事はできなかっただろう。いや、もし見えていたとしても、
何ら不思議には思わなかったかもしれない。
だけど、僕には分かった。
茜の目は、笑っていなかった。
549 ◆Xj/0bp81B. :2007/07/08(日) 00:47:18 ID:RMOHveSq
投下終了です。
これは今年の五月くらいからチマチマ書き止めていたやつで、本当は全部完成させてから、八月くらいに一気に投下しようと思っていたのですが、
筆が進まない上に、執筆する時間が中々取れなくて「すみか」が全然書けていません。
だから、いわば時間稼ぎの投下です。

あと一週間後には、すみかの続きを投下します。
多分……。
550名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 01:10:13 ID:k0DzKGSG
>>549
gjです。
無理せず自分のペースで行くのが一番だとおもいますぜ?
551名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 01:21:08 ID:PHr8gZeQ
>>549いつも乙です。

確かに最近は投下が無くて「〇〇マダー?」状態だけど、
そんな状況だからこそ、書き手自身が納得いく作品が読みたい。
締め切りがあるわけでもお金が出るわけでもないし、
書き手さんはマイペースで頑張って下さいな。
552名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 01:27:01 ID:F4XHuU44
>>550-551
お前らいいやつだな
553名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 03:36:38 ID:Sv2bRwMQ
GJ
いきなり修羅場が発生しそうでwktkだよ
554名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 07:45:20 ID:KYrqo9q4
>>526
密リターンズの探偵編を思い出した。あれ、原作スキーには割と評判悪いけど、ヤンデレだと考えると結構いい感じだよねw
555名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 13:01:19 ID:sDhFMY7V
>>549
だんだん衰退してきてるスレだから投下してくれるのはうれしいよ・・・
GJ!!
556名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 13:21:53 ID:D0RSFBpp
何で衰退するはめになったんだろうね
557名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 14:12:48 ID:m1+H7nC/
m9(・∀・)
558名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 14:48:43 ID:5/pocnGS
>>556-557
ワロタw
559名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 14:49:50 ID:fZ/9jZ6w
>>556
衰退じゃないよ。
普通にヤンデレスレやらキモ姉スレやらそっちが立ちあがったんで
分散化されただけだよ。
560名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 15:02:05 ID:JLv/+RFX
嫉妬のレベルが上って展開として刺したりするシーンがある→ヤンデレへ
嫉妬するのが近親→姉妹スレへ
適度な嫉妬のある純愛物・・・・→ほのぼの純愛スレへ

で、ここでは何をかけばいいの?w
561名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 15:27:33 ID:q8Akrs2P
言葉様のような天然培養のお嬢様がま(ryのようなヘタレに恋をするわけなのだが・・
その男はあっさりと捨てられてるような話でも書いたら?
562名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 15:36:23 ID:PFBJzJt8
うーん?それは嫉妬とか三角関係はどうなるんだ?
男が嫉妬する側か?
563名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 18:20:39 ID:a0xC2c2O
>>560
嫉妬のレベルが通常より高いが特に病むというわけでもなく近親者でもない女性との恋、のスレ
564名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 18:21:26 ID:BGgPAX2g
>>560
オールマイティ
嫉妬・三角関係・修羅場が含まれる全てのSSをカバーするのがこのスレ
565名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 18:48:39 ID:Bpz/VTMm
つまり器用貧乏なスレってことですね
566名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 19:00:23 ID:p8okpkS/
>>560
ほのぼの純愛はVIP発祥だからな・・・、あまりお勧めしない
567名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 19:07:55 ID:sDhFMY7V
>>566
それでもなかなか質がいいと思うよVIPとしては
568名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 19:09:34 ID:c7ppdZqg
>>566
そのお勧めじゃないスレにまで職人の助けを求めに行ったこのスレって一体・・・
569名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 19:14:05 ID:yTTjRqHy
>>568
てかさ…あんなAA貼ってる事に悪意を感じるのは俺だけかね?
俺はまったりやってきゃいいと思うけどね
570名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 19:16:06 ID:yTTjRqHy
ごめん…ageちまった
571名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 19:19:01 ID:c7ppdZqg
いや、職人不足っつーんならたまにageるぐらいで丁度いいんじゃないか?

>>569
まあニダだったしなw

でもどういうのを投下すればいいのかわかりづらいのは事実だと思う
嫉妬を思いっきり出したらヤンデレとかキモ姉の方が食いつきよさそうだしね
572名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 19:20:33 ID:/kk3z3fv
まぁ、阿修羅さんが保管してるまとめサイトがあるんだし
投下が無い時は過去の作品でマッタリ
573名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 19:22:54 ID:Q/YrA/+K
>>569
他スレにここの事情や話題を持ち込むのは
スレ違いだろうしなあ。
逆もそうだろうし。
574名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 22:19:57 ID:sDhFMY7V
しかしまさかこのスレが支援以来するとは・・・
ちょっと前じゃありえなかったなww
575名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 22:21:44 ID:LAFgO9Nl
        <ゝ -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、;⌒ヽ__
       //         <::::::/
       レ//, // i ヘ ヾ 、  、 ヽ>嫉妬されるよりも嫉妬したいぜマジでw
        〃 {_{レヘノ iルリル| l │ i||ちょっとドジっ子で頼りない私だけど
       .レ!小l●    ● 从 |、||悲しみの天使 まだ迷うけれど
.        ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ| |彼の足跡を追い続けていたい!!
.     /⌒ヽ. |ヘ   ゝ._)   j /⌒i |
     \.   | l>,、 __, イァ/  /| |
       \ | |::::ミ(二)彡::/  ∧|  |
         ヽV( 二二二 (  /:::::ノ ノノ
576名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 23:52:08 ID:YPF3joz3
メモ帳漁ってたら、SS書こうとしたが冒頭部だけ書いて限界を感じて何ヶ月も放置プレイにしてたものを見つけた。





「お願いです……捨てないで下さい。二番でも三番でも何番でも構いません。ですから、どうかあなたの傍に居させて下さい……」
 俺の前で跪いている水島可憐(みずしま かれん)が涙で頬を濡らしながら、必死に欲しい物を親に強請っているガキのような潤んだ瞳で見上げてくる。正直鬱陶しい。
 世の男が皆泣き落としなんかに引っ掛かるとでも思っているのかね。ムカつくな。
「どうして!? 君はまたボクに嘘をついたのか? 昨日言った『元彼女とは別れた』という言葉は偽りだったというのか!」
 可憐の物分りの悪さに頭を抱える暇も与えず、俺の隣で笹谷亜子(ささや あこ)が電車内で傍若無人に騒音を撒き散らす女子高生集団のような耳障りな声で喚いてきやがった。
 そんな耳元でぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃねぇ。鼓膜が破けるだろうが、クソが。
「亜子ちゃん、誤解だよ。僕は水島さんとは先日別れて……」
「そんな……! どうして”水島さん”なんて他人行儀な呼び方をするんですか!? ちゃんと”可憐ちゃん”って言って下さい! あの日ベッドの上で優しく囁いてくれた時のように……!」
 チッ、可憐の奴、余計なことを! そんなこと言いやがるから、亜子が怒りに肩震わしちまってるじゃねぇか。
 これをどう鎮めるつもりだ? どうせ俺に一任するつもりなんだろうな。
 付き合っていた時もお前は俺の背中を追ってくるだけだったからな。
 俺に意思決定を委ねて、常にそれが正しいと信じて行動していたよな。
 言っておくが、主人の後をつけるだけなら馬鹿な犬にだってできるんだぜ?
「君……! こんな女と寝たのか!? 君はボクの前で笑顔を取繕っておきながら裏ではそんな行為に及んでいたのか! どうしてだ!? ボクは君の為なら何だってする覚悟だというのに、そのボクとじゃなく何でそんな女なんかと……!」
 はぁ……面倒だな。一度怒った亜子は中々収まってくれない。
 特に女絡みのトラブルだとこいつはいつも以上に声を荒げヒステリックに自分がどれだけ俺のことを愛しているだとかを叫んでくる。
 何だ、お前は大声出さないと他人に意見を伝えることができないのか? もうちょっと落ち着けってんだよ。
 せっかく「好き」って言ってくれるなら、もっとムードを大事にして欲しいね。

 ――まぁそれにしても、どうして可憐と亜子はどちらも人の話を聞こうとしないのかね。




うん、「優柔」のゆう君が大好きなんだ……
577名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 23:53:16 ID:YPF3joz3
sage忘れた……




先輩に刺されてくる……
578名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 00:43:51 ID:pMSXuSn0
>>577
おまえだけに良いカッコさせるかよ
579名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 01:51:06 ID:z6QegtOo
>>577
主人公いらつきすぎwww

何があったんだよw
580 ◆Xj/0bp81B. :2007/07/09(月) 03:24:02 ID:Lk4mYvcy
投下します。
581すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/07/09(月) 03:30:00 ID:Lk4mYvcy

澄香が見る悪夢といえば、昔から決まっていた。それは過去の記憶の回忌。以前住んでいたマンションの一室での一夜の事。
あの男が図う図うしくも夢の中にまで出てきて、澄香をボロボロに汚すのだ。痛くて怖くて、体中が悲鳴を上げて、
頭がグシャグシャになって、狂う寸前で目が覚めて、そして絶望する。現実が、悪夢と地続きである事に。
しかし、そんな悪夢はもう見なくなった。
澄香の中で、悪夢の形が変わっていたのだ。もう過去の記憶が蘇る事はない。あの男も出てこない。
だけど、代わりに見る悪夢は、ある意味それ以上に地獄だった。
それは最愛の翔に自分が捨てられて、再び独りに戻ってしまう夢。夢の中で誰かが、翔をさらっていくのだ。
そんな過去の記憶の回忌とは違う悪夢を見初めたのは、あの女が澄香の前に現れてから。そして、夢の中で翔を奪っていくのは、
澄香を体育倉庫に呼び出したあの女だった。
あの女が、我がもの顔で翔の横に居座り、当たり前のように手を繋いだり、キスしたり、あまつさえはセックスまでして、
澄香から翔を盗んでいく。その目の前で繰り広げられる痴態に耐えきれなくて、必死に自分の存在を訴えても、翔は澄香を見てくれない。
何も出来ない。泣こうがわめこうが、叫びは翔に届かない。
いつもは翔とお弁当を食べていた昼休みも、ふと気付けば独りに逆戻りしている。昔は何とも思わなかったのに、
もうその寂しさに耐えきれなかった。寂しくて、悔しくて、そしてそのときは目が覚めた。はね起きて、全てが夢であった事に安心した。
だけど、それからというもの、同じ悪夢を毎日見るようになった。毎日毎日、あの女が翔を奪っていく夢を見るのは、拷問以外の何物でもなく、いつしか寝るのが怖くなった。
582すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/07/09(月) 03:32:54 ID:Lk4mYvcy

しかし、ある時を境にあの女は出てこなくなった。悪夢の中に現れたのは別の女だったのだ。
信じられなかった。澄香から翔を奪っていったのは、叔母である水樹由美だったのだ。ずっとずっと信じてた由美が、
姪の恋人を寝取っていく。
──お願い、捨てないで。
必死に叫んでも、翔はもう澄香を見てくれない。彼は由美しか見ていない。そして、澄香はそのときの由美の顔を見て、
恐怖する。翔を見つめるその顔は、澄香が見た事のない「女」の顔だった。
今まで気付かなかった。由美が、あんなに魅力的な女だったなんて、自分なんかよりずっとずっといい女だったなんて。
しかし、そんな由美も、最近は夢の中に現れなくなった。悪夢を見なくなったわけではない。ただ単に、
女が誰か分からなくなったのだ。
最近では、年上、年下、綺麗、可愛いい、そんな様々な形容詞にピッタリ合う女が、悪夢を見る度、まるでサイコロの目のように、
コロコロ変わっていく。変わらないのは、必ずその誰かが澄香から翔を奪っていき、胸が締め付けられるような寂しさで目を覚ます事だった。
そして、今回の女は、少し年上の優しそうな女性だった。柔らかく涼しげな顔立ちに微笑みを携えて、
彼女は見慣れた教室の一角で翔と話している。
──やめてよ。
そんな叫びも彼等には聞こえない。
楽しそうに、彼等は談笑し続ける。やがて、女が恥ずかしそうに、翔の肩に頭を預けた。そして、二人は見つめあい、
次第に顔の距離が近付いていく。
──やめてっ!!!
何なの? あの女は。どうして私の場所を取るの?
どす黒い感情が、胸の中で渦をまく。
583すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/07/09(月) 03:34:13 ID:Lk4mYvcy

許せなかった。あの名前も顔も知らない女が。
許せなかった。馴れ馴れしく翔に触るあの女が。
そして、何より許せなかったのは、楽しそうに女と言葉を交す翔だった。
声にならないのは分かっている。翔に聞こえないのは分かっている。ここは夢の中なのだ。
だけど、叫ばずにはいられなかった。


──私の前で、そんな楽しそうな顔してくれた事ないじゃないっ!!!


584 ◆Xj/0bp81B. :2007/07/09(月) 03:37:45 ID:Lk4mYvcy

投下完了です。
何とか書き上がりました。短いですが……。
ただ、推敲不足なので、誤字脱字があるかもしれませんが、そのときは指摘して下さい。
続きは書き上がり次第投下します。
585名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 03:40:01 ID:MM/D8X7f
リアルタイムGJ!!
続きにwktk
586名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 05:10:41 ID:Eq+STOKp
GJ!


何かすみかって全てを他人のせいにするって感があるな。
ヤンデレっていうよりメンヘラっぽい。
587名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 12:44:08 ID:ps+4AGWH
>>586
どれだけタチの悪いメンヘラでも修羅場は形成できる。スレ的にはそんな間違ってない。





オ レ は 嫌 い だ け ど
588名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 12:45:20 ID:ps+4AGWH
下げ忘れた
589名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 13:06:55 ID:kRznba+Y
(´;ω;`)すみかかわいそう
590名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 13:20:16 ID:Y/jhanjp
GJ
正直翔はすみかと付き合う覚悟が出来てない感じがしてたけど今後どうなっていくのか楽しみです
591名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 17:52:59 ID:9iI197qb
こりゃ、鮮血が来るかもな・・
592名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 18:08:29 ID:lkIifRi4
投下支援しようと思って色々アイディア捻ってるんだけど
どうも、ヤンデレになってしまう・・・
そんな俺は根っからのヤンデレズキー・・・orz
593名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 19:39:17 ID:9iI197qb
>>592
投下しても、俺達は飢えているので喰い付きますよww
594名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 21:00:17 ID:Ybi/7lN8
ヤンデレでいいならちょっと書いてくる
595名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 21:32:17 ID:Eq+STOKp
>>592
心配しなくても大丈夫!
ヤンデレを書こうと思ったところで大抵ただの電波になるから。
596名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 22:13:23 ID:VItZtUXo
ここってエロなしOK?
597名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 22:15:12 ID:rGmh9XRB
>>592
上に書いてあるように嫉妬・三角関係・修羅場があるならokかと
てかwktkしてます!
598名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 23:04:40 ID:sckwmXXp
エロ無し?
嫉妬や三角関係があれば全然OK
599名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 23:59:29 ID:xolE50VH
エロ描写のないノントロや二等辺な三角関係を全裸で待ち続ける俺が通りますよ。
無題やひとり、BLOOD、etc、etcなどの新旧の未完作品を読むと続きが気になって仕方ない。
600名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 02:36:56 ID:hnh8A/yO
初めて書き込みします。
私は結婚して2年目。
平日は仕事で休みは土日。
いつもは洗濯や掃除をまとめて土日にするのですが、
今日はなんだか気が進まず、昼寝したりボーッとしたり。
夫もいつまでも起きてこないので、気にせずまったりと過ごしていました。
正午くらいに、インターホンが鳴り、モニターを見ると
知らない女の人が。30〜40台の女性です。
何かの集金?夫の知り合い?
夫は起きてこないので、確かめることも出来ず、
とりあえず私もパジャマのだらしない格好のままだったので、
応答せずにいると、階段を降りて帰って行く音が聞こえました。
すると3分後、またインターホンが鳴りました。
同じ女性でした。
気味が悪いのでやはり返事をせずにいると、また帰って行きました。
夕方になり、晩ご飯の材料を調達するため外にでようと玄関のドアを開け、
鍵をしめようとすると、郵便受けに、透明のセロハンにくるまれた
一輪の花がささっているのを見つけました。少しぐったりしている花でした
その花が菊の花であり、仏花であることに気がつき、
徐々に事の重大さを理解し、怖くなりました。
どうして!?なんで!?とパニックになっているうちに、
昼に尋ねて来た女性のことを思い出しました。
彼女は誰なのでしょう。
そして彼女は、何故知っているの!!??
それから一歩も外に出られず、今も一人、恐ろしさで動けずにいます。
601名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 11:18:44 ID:ON6tybXi
>>600
うーん、、ちょっと思考が飛んでる気がするなァ・・・
ただの被害妄想にしか見えない
実害がないなら「最初は子供のいたずらかと思った」程度だと思う
602名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 11:28:51 ID:EiXqQUrq
京都弁のヤンデレキャラっていいよな
603名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 11:29:03 ID:pWuLZUKg
>>600はSSじゃないの?
従ってこのスレ的にはその思考で正解?
あ、でも30〜40代ってのはちょっと高年齢すぎるかも……
604名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 12:30:45 ID:ZBu/ryCZ
SSでその思考は正解かもしれないけど細かい描写がちょっと大雑把すぎるんじゃないかという指摘だろう

朝は居留守使ってでなかった
3分後来たら気持ち悪い・・・

急ぎの用事だったらそれぐらいするんじゃないか?
一度帰ったのは携帯で会社に連絡とか
若干被害妄想気味な感じは否めない
605名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 14:33:34 ID:GqjBYPMn
http://guideline.livedoor.biz/archives/50928234.html
↑このスレからのコピペだろ
606名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 14:37:11 ID:SuGELr4L
じわじわ・・・来るか?

被害妄想にしか見えんが・・・
607名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 19:21:37 ID:VCkDniqL
激しくスレ違いだが要はその妻が夫を殺してたんだろ
>夫もいつまでも起きてこない
>そして彼女は、何故知っているの!!??
>今も一人、恐ろしさで動けず
スレ汚しスマソ
608名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 21:01:28 ID:VbTiUr1K
誰が投稿してくれ・・俺は飢えてる
609名無しさん@ピンキー :2007/07/10(火) 21:22:51 ID:PJWtJIrt
ミスタープレイボーイ〜ツイスター〜ノントロの時期が一番スレが輝いてたな。
610名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 21:50:15 ID:28Jfs356
>>609
全部、同じ作者だからwww
しかし、ノントロが再び投下されたらすごい反響がありそうだな。
まぁ俺は全ての未完作品を待ち続けるけど
611名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 22:13:21 ID:9hVyJK2A
「押しかけ三角、また来て修羅場」を何度も読み返しつつ、次の投下を待ち続ける。
催促はしない。ただ待ち続けるだけである。
612名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 22:14:25 ID:vFa4SPmi
ブラッドマリーと山本君の姉さんは俺が生きてるうちに必ず完結させて欲しいな
613名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 22:21:18 ID:FhOsw+Pc
首がツイスター
614名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 22:45:19 ID:uXFBZa1e
ロボ氏はもう来ないのだろうか
花束の続きが気になるんだが
615千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/07/10(火) 23:45:30 ID:TqJ9Xigf
【六】


『京の櫻も、こんな風に美しかった。きみにも見せてあげたいよ。あれを見れば、今みたいに泣くこともないだろう。
だから微笑っておくれ、瑠璃姫。可愛い御顔が台無しだ』


櫻が、舞っている。
力強さ、躍動感。
その総てが混在し、咲き誇る薄い花びらと同じ隆盛を誇る藤原家。
京で権力を思うままに振るい、もはやこの地上に双ぶ者がないほどの栄華を掌中に納めていた。
そのせいか、藤原家の後釜を狙う者、取り入ろうとする者、隙を見て権力を奪い去ろうとする者…
その名の下には、人の面で醜さを隠した悪鬼たちが砂のように跋扈していた。

だが、都の―――万別の欲望が練り上げ、怨念にまで昇華させたはずの空は、それでも蒼かったらしい。
人々の淀みなど夢幻が如く見下ろし、己の歩みでどこまでも流れていく層雲たちは哂っているのだろうか?
宮中ですれ違う者は互いの牙を唇の裏に隠し、笑顔で杯を交わす兄弟は野望という毒蟲を舌根に飼っていることを。


――――――。


はらり。
一片、薄紅色が零れる。

頬を撫でる母の指先のような春の風が、駆け抜けた。
矢張り流れる春風も、人の事情など知らずに思うがまま。

あたしは満開の花がその風で散ってしまわなかったことにほっと胸を撫で下ろすと、反対に冷えて沈んだ胸を掻き抱く。
とても満たされているはずなのに、なぜか心には大きな風穴が開いている。

咲き誇るほど歪み、崩れていく大きな土台。
見れば見るほど、叶えば叶うほど、腐臭を強くする夢。
手を伸ばせば離れ、触れれば折れる現実絵。
渦を巻く純粋な頃の夢。
人々の最初(おさな)き頃の願いは、黒く澱んでしまった。

そう。
今も青空が装う白い雲のように流れるまま京から逃れてきた一人の青年は、とても優しかった。

『瑠璃姫、これで涙をお拭きなさい。こんなに綺麗で風にも怯まなかった櫻が、散ってしまうよ。
 可愛らしい娘が何時までも泣き腫らしていれば、花だって微笑っていられない』

一斉に咲いた花を櫻の笑顔に喩えるその人は、とても美しい。
中央貴族の出身であるにもかかわらず、政争に破れてこの地までやってきた。
柔和で触れる指先はとても繊細なのに、体つきは屈強で男性的な色気を放っている。
笑顔のたびに綻ぶ口元、細められるたびに安らぎという焔を翳す瞳は、どこまでも澄んでいた。
616千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/07/10(火) 23:46:21 ID:TqJ9Xigf
彼のほうがあたしなんかよりずっと、見事に開いた花々に相応しい。

そんな、見る者を自然と惹きつけてあっと言う間に取り込んでしまうような男性。
彼は、あたしの婚約者だった。


『だって、あたしは、姉さんみたいに綺麗じゃないし、身体だって…』

ぽん、と。
頭に置かれた手のひらはとても温かく、大きい。
涙でゆがんだ世界の真ん中に、彼がいる。
凛々しい眉毛を少し困ったように下げ、厚い唇を緩ませて。

『だって、だって、あたしは…』

彼の顔を見ていると、割れそうな心にもっと大きな亀裂が生じる。
優しさに触れ、その温情を胸の中で感じるたびに、溝は深く大きく広がっていく。

“相応しくない”

そう思ったのは何時のことだろうか。
頭に姉の姿が浮かぶたびに、心の温度は下がっていく。
だが、同時に思ってしまう。

『瑠璃姫。わたしの瑠璃姫。きみは美しい。他人の姿に自分を重ねて、小さき胸を軋ませているきみは、どうしようもなく美しい。
 微笑っておくれ、瑠璃姫。その美しさは果敢ない。見るほどにわたしは不安になってしまう。
 いつか、この花のように散ってしまうのではないかと…』

遠い目をしながら、しなやかな枝先に視線を移す彼を見て、直感的に悟った。
いずれ彼はどこかに行ってしまうだろう、と。
眩しすぎる笑顔のまま暁光に包まれて、どうしようもなく遠い場所へ。
燃え上がる紅に身を染め、時折こちらを振り返りながら薄く微笑む。

伸びた影は笑う。
すまない、瑠璃姫と。
曇る青空は泣く。
君じゃない、瑠璃姫と。



櫻の花弁が一片、二片、散った。

まるであたしの心を見透かすように、涙の裏に隠した泥をあざ笑うように、ゆっくりと地面に吸い込まれる。

かたん―――

617千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/07/10(火) 23:46:58 ID:TqJ9Xigf

土色と交わった薄紅から視線を移すと、そこには見知った人物が立っていた。
踝まで伸ばされた墨のように深く、それで月光のように静かに流れる黒髪。
覗き込めば吸い込まれ、永久にその輝きに囚われてしいそうな瞳。
目前に広がる櫻の花々。
その一片を貼り付けて、赤く染め上げたような唇は静謐な色気を放っている。

完璧。

そう評されるのがもっとも相応しい美貌を持った女性――――――

『鬼灯姫』
『お姉さま』

ほぼ同時に重なる声色が示すとおり、その人はあたしの最愛で、最妬の姉であった。

『瑠璃、こんなところにいたの?お父様が探していますよ。すぐに部屋へ向かいなさい』

その声は鈴が鳴るように流麗で、その場の空気を塗り替えてしまう。

『でも、今は時春様が…』
『お父様の命令と、あなたの事情、どちらが大切なの?』

ぴしゃりと蓋をするように言葉尻を閉めると、美しい人はしゃなりと歩みだす。
あたしを射抜く瞳の色、浮き上がってそのまま絵になってしまいそうな居住まい。
どうあがいても届かない。
部屋の隅で震えることしかできないあたしには、たとえ千歳経ようとも。

『あら…』

風がざわめくと、通り雨のように桜色が一斉に舞い落ちる。
静かに泣き叫ぶような残響を置いて、青空へ向けて彼らは飛び立っていく。
偶然にも頬に降り立った一片を白魚のような指で絡めとると、姉は艶やかな吐息に乗せてそれを見送った。

『あなた独りだけ取り残されたら、気の毒だものね…』

桃色に乗った桜色は、遠くを目指して流れゆく。
そんな視線の先、魅せられた人がいた。

『瑠璃、早くお行きなさい。時春様にも迷惑がかかるわ』

吐息に乗った言葉は柔らかに耳朶を撫でる。
春風に混ざる仄かな香が鼻腔をくすぐると、姉は去っていく。
“あたし”の時春様に、媚を含んだ不快な視線を残して。


618千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/07/10(火) 23:47:46 ID:TqJ9Xigf
*   *   *   *   *   *   *   *   *


目の前の女の子。
太陽の光を受けてしっとりと輝く白い肌に健康的な肉付きの体、そして黒目がちの大きな瞳。
側頭部から垂れ下がったツインテールは…
とても見覚えがあるのに、記憶のかけらを拾い集めるたびに頭のレンズが焦点を見失う。

――――――頭痛。

やがてぼけたレンズはどこまでも歪んでゆき、纏まりかけた思考は靄となって四散してしまう。

「――――――え?」

少女の顔から、感情が抜け落ちた。
まばゆいばかりの微笑は消え去り、代わりに崩れ落ちそうな不安が広がっていく。

「時春ちゃん、何言ってるの?おかしいよ。あたし、あたしだよ、瑠璃だよっ!!幼馴染で最愛の彼女で、ずっとむかs―――――」
「ごめん、きみのことがわからない。それに、俺の想い人は鬼灯、ただひとりのはず…」
「そ、ん…な…」

俺は正しいことを言っているはず。
間違いがない。それよりも、鬼灯はどこだ?
いつも一緒にいるはずなのに、どうして彼女の温もりがない?

「鬼灯はどこだ?彼女がいないと、俺は…」

頭の裏にこびり付いたまま離れない彼女の声。
俺はもう、“千歳の誓い”を違えることができない。
暗い谷底で打ち震える彼女を、捨て置くことはもうできない!!

「鬼灯!!鬼灯はっ…??」

―――――衝撃。

目も前が歪んだかと思うと、足元が泥に嵌った様に緩み、ハンマーにでも殴られたように体が舞う。

転んだ。
転げ落ちた。

見えない衝撃に全身を撃たれ、汗で体に張り付いたシーツを引き裂きながら、俺は地面に転がる。
冷えたフローリングに頭を打ち付け、俺は骨から脳へ伝わる痺れによってようやく我を取り戻した。
しかし冷静とは程遠い。
飴色の思考だけが目前を示している。
おかしい。
とにかくおかしいことが多すぎる。
自分がこうやって散らばっていることすら疑問の範疇で、下唇をかみ締めながら俺を見下ろす少女の姿も何故かばかばかしい。
どうして、なぜ?
己に問うたびに回答が遠ざかる。

619千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/07/10(火) 23:48:42 ID:TqJ9Xigf

「冗談、でしょ?…時春ちゃん…また、いつもの、悪い、嘘だよね?…」

手加減できないから、ちゃんと本当のこと言ってよ。と、ツインテールの少女が零す。
側頭部から垂れ下がった髪は彼女の表情を覆い隠し、差し込む陽光を闇に閉ざすかのように冥い。
握り締められた拳、折れそうなほど細く白い腕には生々しい包帯。
見覚えがありすぎる。
知りすぎているだけに、霧が深く光を閉ざす。
薄い唇の味、柔らかな太股の感触、腕枕で弄んだ黒髪の皇かさは…

「鬼灯、鬼灯だ。君がわからない。俺は、時春?ふじわらのときはる?じゃあどうして?どうして私はここにいるのだ?
 莫迦な、赤に消えたはず。私は紅に喰われたはずだ。なのにどうして私は…」

口が意味不明な語句を零す。
己の支配すら失った俺は、頭を抱えて唸ることしかできない。
白い病室と交互に頭の中で混ざり合う、どこまでも赤い風景。
熱い。
体が熱い。
燃えるように、胸と頭が熱い。
だが迷走する意思とは反対に、体はどこか知らない場所に向かって走り出す。

もう、押さえることができないのだ。
夢と現実、過去と今が混ざりあったこの俺には。












目の前で起きている光景を信じることができない。
手に入れた。自分は確かに手に入れた。そして、受けた。愛を受けたのだ。
自分は間違いなく彼の愛を受けた。千年前に手に入らなかった真実も、思い焦がれあこがれ続けた理想も、彼に抱かれることによって、獲た。
なのに、どうしてここまで来て調律が狂う?
鬼の刻印を使って確かに彼を縛り付けたはずなのに。
敗れ得ぬ理で彼を縫い付けたはずなのに、どうして彼はこうも云ってはならないことを容易く口にする?
こんなに好きなのに、身が焦げ付くほど、鬼に心を売ってまでも彼を愛しているのに!!
どうして届かないのだろう。
どうしてあたしの思いにいつも中途半端なの?
結局何も手に入らない。
生まれ変わって幸せな環境を手に入れ、光に満ちた世界を手に入れた。
美しくなった、可愛くなった。
でも―――――

どうして一番大好きな人はあたしのことを愛してくれないのだろう。
どうして一番大好きな人は最後の最後にあたしをうらぎるのだろう。

鬼灯?“私の想い人は鬼灯”?
そんな莫迦な、有り得ない。如何に?

620千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/07/10(火) 23:50:19 ID:TqJ9Xigf
とうとう刻印に送り込む意思でも制御できなくなった時春ちゃんは、あたしの目の前から走り去った。
熱に浮かされたような瞳と、知らない未開を掻き分ける赤子のように。

追う気にもなれなかった。
こんなにあたしは時春ちゃんのことを想っているのに、こんなにも“時春”様を想っているのに、結局彼には届かない。
そう考えると、鬼灯と時春ちゃんへの怒りよりも強い悲しみが、津波のように押し寄せる。

いつか櫻が散ると同時に、あたしの目の前から彼が消えたことを思い出した。
微笑んでいられなくなった桜は、蒼く地面に堕ちていくしかない。
これから訪れる新しい季節、時代のために。

結局あたしは自分自身という殻を脱ぎ捨てることができなかったのだろう。
煮えた油のような感情を胸に抱いている内は、彼を上手に愛することなんてできなかったのだ。
たとえ何度生まれ変わろうと、何度彼と回り逢おうと、あたしがあたしでいる以上、同じように接することしかできない。
醜い劣等感を覆い隠すように、胸の炎に身を任せ、ただ嫉妬と独占欲を燃え上がらせる日々。
彼がいないと不安になり、突然疼きだす体。

離れていくのは、きっと道理なのだろう。
結局あたしは縛り付けることでしか彼を愛せない。
虚勢を張って自分の弱さを覆い隠すことでしかキモチを表現できないのだ。

そう考えると灰になった花びらに、冷たい雨が零れ落ちる。
しっとりと心を這うように、開いた隙間を流れるように、悲哀が体を満たしていく。
もう、辞めよう。
悲しすぎる輪廻から離れよう。
もういっそ、こんな悲劇しか踏めぬ靴と、空虚しか得られないドレスなら、脱ぎ捨ててしまおう。

あたしは目蓋を閉じて―――――

浮かんだ鬼の表情に支配を奪われた。

“なぜ、諦める”

どくん…脈打つ。

“時春様は、あたしの婚約者なのに”

熱い。身体が熱い。冷えたはずの胸に、溶岩が滾る。

“確かに、時春様はあたしに優しくしてくれたのに”

……少しずつ燃え広がる炎の端くれ。痛いくらいに喉を涸れさせる。

“諦める必要なんてない。増してや悲しみに埋もれることなどない”

そう、そうだよ。この熱さに身を任せていると、とても心地がいいんだ。
621千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/07/10(火) 23:50:52 ID:TqJ9Xigf

“瑠璃、忘れるな。お前が瑠璃姫である以上、お前はお前、あたしはあたし”

うん、あたし、瑠璃、瑠璃■…

“彼を手に入れるまで。何度でも、たとえ万年経ようとも生まれ変わると誓ったはず”

突然視界が回りだす。あふれる感情と一緒に脳を叩く声に身を任せると、急に身体が羽のように軽くなる。

“思い出せ。お前の前から姿を消すときの表情を。あんなにも長い彼の不在を、お前はどういう風に孤独を生きた”

つらいはずなのに、胸はすっきりとしている。やることはひとつ。決まっている。
否、決まっていた。

“思い出したくはないだろう。繰り返したくはないだろう。遠い千年を超える孤独を、もう一度繰り返すなど!!”

もういや、独りはいや、愛されないのもいや、あたしの前から彼がいなくなるのもいや。
彼が他の人に目を向けるのも、知らない誰かに優しくするのも、あの女を愛するのも―――――!!!

“認めない、認めなどしない。原初より定められし調べ。予定された未来。かならずあたしたちは手に入れる。絶対、絶対に”

そう、まずは邪魔するあの女を消しに行こう……―――――。





誰もいなくなった白い病室。

吹き付けられる初夏の風。

誰もいないはずなのに空気が熱い。
誰も知らないはずなのに澱んでいる。

ぐちゃぐちゃにされた備品を残して、

黒い風が吹き荒ぶ。

622 ◆pmLYRh7rmU :2007/07/10(火) 23:52:07 ID:TqJ9Xigf

すんごくお久しぶりです。
きっと皆さんお忘れになっているかと思いますが…次こそ最後です。
623名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 00:10:23 ID:DaGlKylJ
GJ
624名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 00:25:35 ID:dCSitLmf
>>622
お帰りー
ずっと待ってたよー
625名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 00:44:27 ID:W8zGd28Y
>>622超GJ
待ってました。待ち続けて本当に良かったよ。
626名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 02:28:43 ID:/1Jg4Wow
>>622乙&GJ!
密かに完結を待ち望んでいた作品なんで再会はマジ嬉しいよ。
627名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 07:58:50 ID:Z1f/E8/2
>>622
ついにキターーーーー!
超GJっす!!
こういう風に投下を再開してくれるのはメッチャ嬉しい!
628トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/07/11(水) 20:02:05 ID:69pT9uG3
では投下致します
629桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/11(水) 20:05:50 ID:69pT9uG3
 第6話『いちおう、初夜なのか?」

「反対!! 反対!! 反対!!」
「反対!! 反対!! 反対!!」
「反対ですぅ!! 絶対に反対!!」
 桜荘の住民である雪菜、安曇さん、美耶子が盛大に反対コールを繰り返していた。
 先程の電話の内容は皆に伝えて、俺の部屋に3人で暮らすという胸が痛む決断を発表した結果、
 桜荘の住民からブーイングが起きた。刹那と更紗は白い頬を真っ赤に染めていたが、一緒に暮らすことには同意しているのであろうか?

「お兄ちゃん。酷い。酷いよぉ。雪菜だってお兄ちゃんの部屋に一緒に住みたいと思っているよ。

 でも、お兄ちゃんの部屋にお泊りするのはダメで言っているのに。どうして、その人たちならいいの?」
 妹分の雪菜が切ない声で訴え始めていた。普段なら見せることのない表情に俺は動揺を覚えるが事情が事情なので仕方ないのである。

「私は若い男女が一つ屋根の下で暮らすってことは……えええっっと?」

 安曇さんはそれから先の事が言えずにモジモジと様子を伺っていた。
 この桜荘の唯一の良識人は男女関係に関する免疫はほとんどない。
「幼馴染たちと久しぶりの再会。燃え上がる男の欲望と限度のない性欲。
 更紗さんと刹那さんを性奴隷にする今夜は喘ぎ声が桜荘に響き渡ることになります。
 私はまだまだ大人の階段に登れない聖少女なので早めに寝ようと思います。途中で起きるのは嫌なので、
 睡眠薬は取説に書かれている量の倍以上は飲んでおきます。ああ、一樹さんのキチク!!」

 美耶子はもう以下略で。

「まともな心理描写もどきが省かれるなんて酷い」
 今の会話を華麗にスルーすることにして。桜荘の支配者、
  いや、管理人は反対も賛成もすることなく、ただ不気味に静かであった。
  何かを企んでいるような笑みを浮かべて、奈津子さんは言った。

「一樹君が童貞卒業するから……明日はお赤飯かしら」

 童貞という言葉に思い切り強調してくれた奈津子さんを半眼で軽く睨んだ。
 男という生物はそういうくだらない事に意味のわからんプライドを持つものだ。
「とりあえず、誤解しないでください。少なくても、更紗と刹那が働く場所を探して、
 一人で暮らせる場所を見付けるまでは俺の部屋で暮らすってことです。半同棲とかそういうのじゃあないですよ」
 憩いの場に集まっている桜荘の住民達に俺は淡々と熱弁を振るう。
 思い込みが激しくて暴走しやすいこの人たちにはちゃんとブレーキで止めておく必要がある。
 だが、思わなかったところから声が上がってきた。

「ええっっ!? カズちゃんと一緒に暮らせると思っていたのに」
「カズ君。私達とたくさん寝たことがあるのに。どうして、そんなことを言うかな?」
 幼馴染方面から苦情と抗議に反論したかったが、時はすでに遅かった。
 桜荘住民サイドが顔をひきつらせていた。女性数人で冷笑を浮かべている姿は想像を絶するに恐ろしいものであった。
 背中に冷たい汗が流れてゆくのがわかる。

(ようするにどちらの顔を立てても俺は破滅エンド一直線なわけか)

 本音を言えば、この憩いの部屋と名付けられている魔の領域から逃げ出したい。
 どうして、桜荘には男の入居者がいないのかと空の彼方にいる神様という者に問い詰めてやりたい。
 そうすれば、この恐怖と心労を平等に負担してくれるはずだ。

  現実逃避している間に時間は過ぎて行く。時計を見るとそろそろ柔らかくて暖かい布団の中に就寝する時間が近付いていた。
  今日はヤンキーどもに暴行を受けたから、痛み止めを飲んでさっさと寝ようと思っていたが。予定が大幅に狂っている。
630桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/11(水) 20:06:40 ID:69pT9uG3
「そろそろ寝ようか?」
「あん?」
 奈津子さん以外の女性たちが物凄い形相でこちらを睨んでいた。
「そんなことをしても決定は覆らない。明日は早いんだから。マジで寝たいとヤバイんだからな」
 カレー専門店オレンジという店に働くだけで常人に信じられない体力を消費する。
店長の奇抜な行動を監視しながらお客の相手にするのは疲れるのだ。
特にゴキ○リなどカレーに入れた時は笑顔でそのカレーをお客に差し出す辛さは胃が痛くなるぐらいだ。
「というわけで更紗も刹那もさっさと俺の部屋に行くぞ」
 二人の細くてかよわい腕を問答無用に引っ張って俺は自分の部屋に戻る。
雪菜、安曇さん、美耶子が送る冷たい視線を俺はあえて無視して憩いの部屋を出た。
631桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/11(水) 20:09:11 ID:69pT9uG3
 畳6丈ぐらいの部屋に荷物と家具が置いてあるおかげでやっと一人が寝れるスペ−スがあるかどうかだ。
ロクに部屋を掃除していなかったのであちこちに汚れや埃が溜まっている。
男の一人暮らしを象徴している自分の部屋を興味津々に更紗と刹那は周囲を観察していた。
「ここがカズちゃんがいつも寝起きしている部屋なんだよね?」
「1年前からな」

 俺は機械的な口調で返事してから、思わず嘆息する。
幼馴染二人を泊めるという暴挙に出たのは親が連帯保証人になって多額の借金を背負ったおかげで家まで売ってしまったことだ。
あのクソ親父から聞いたことを推測すると俺が更紗が刹那が住んでいた家はなく、
こちらにやってきた理由は借金取りから二人を逃がすために俺の住所を教えたということだ。
つまり、更紗と刹那は家亡き子状態に陥っているってこと。
 正直、俺の心情では二人に二度と出会うつもりはなかったのだ。
こうして、自分の部屋に泊めてしまうのだって感情的に納得できているわけもない。
1年前の告白を断ったことで更紗と刹那を傷つけてしまったことは確かなのだ。
 二人が自分のことを好きだと言う気持ちを今も純粋に想い続けている。
という自惚れを俺は抱いていない。
1年もあれば、桜荘の住民達のような素敵な出会いだってたくさんあるのだ。
特に昔のクラス、高校でも評判の良かった可愛い更紗と刹那なら。尚更ね。
 俺は押し入れにしまっている布団をひいてから、枕を置く。これで就寝する準備は整った。


「じゃあ、俺は廊下で寝るから」
「ええっ……!? カズ君。ちょっと待ってください」
「どうして、カズちゃんが廊下で寝なくちゃいけないの?」
「男は紳士であれ。
 年頃の若い女の子と一緒の部屋に寝るなんて俺の性根が許さない」
「ちょっと……カズちゃん。私たちは幼馴染なんだよ。
お風呂だって一緒に入ったり、3人で一緒のお布団で寝たこともあったでしょ」
「そ、そうだよ。カズ君」
「って、それは全部子供の頃の事じゃん」
 幼い頃は俺や更紗や刹那の両親が共働きで夜遅くに帰ってくる時に3人で共同生活もどきを送っていたが。
それは子供の頃のことだ。
今は俺と更紗と刹那は男と女なのだ。
嫁入り前の女性がオオカミに変化する男と一緒にいるわけにはいかない。
「……やだ」
「更紗?」
「カズちゃんと一緒に寝られないなんて嫌だよ」
「嫌だよと言われても。これだけはどうにもできないことなんだ」 
 更紗の唇を尖らせて拗ねていた。聞き分けのない甘えん坊の暴君が無理矢理でも俺と一緒に寝る主張を通そうとする。
更紗には昔から俺の事に関しては最後まで譲らない頑固者だった。
「でも、更紗ちゃん。あの布団だと二人しか寝れないと思うよ」
「刹那ちゃんは冷たい廊下の上で一人で寂しく寝たらいいんだよ」
「むぅっ……更紗ちゃん酷い。そんなことを言う人はカズ君は一緒に寝てたりしませんよっ!!」
「カズちゃんは私のことが大好きだから今日だけじゃなくて。明日からもずっとずっと一緒に寝てくれるよぉ」
632桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/11(水) 20:10:41 ID:69pT9uG3
「何を根拠に言っているのかな? か、カズ君は……私と寝るんだから!!」
 女の醜い戦いの一部始終を他人事のように俺は茫然と口を挟めずに見ていた。
親友同士であったはずの更紗と刹那が1年前とそう大差ないように口喧嘩をしている。
親友と呼べる者がいない俺にとっては彼女たちの強く結ばれていた友情に憧れたりしていたが。
あの出来事を境に粉々に壊れてしまっていた。その張本人は俺だ。
俺が幼馴染の関係の維持を望んでしまったから二人の友情は絶縁状態になったんだ。
 それは後悔。
 悲しんでいる更紗と刹那の姿を見たくないから、現実を逃避した自分の弱さ。
逃げても追いかけてくる過去。それは月日が経つほどに重くのしかかる罪であり、罰でもあった。
 だったら、自分に出来ることは一つ。

 流れに身を任せよう。

「二人とも喧嘩はダメだよ。ここは一緒に3人で仲良く寝よう。
そうしないといつまでも更紗と刹那も朝まで生ケンカをやっていることだしね」
「さすがはカズちゃん。話がよくわかる」
「カズ君と更紗ちゃんと寝るなんて小学生の頃以来だね」

「あれ?」
 あのそこは修羅場的な要素を含んでいる場合は『どうして、そんな女と一緒に寝ないといけないのよ』とか、
『あの人と一緒に寝るぐらいなら他の場所で寝るわよ』といった展開になるのでは?
 更紗と刹那は先程の口喧嘩の剣幕が嘘のように打ち解け合っていた。
それも過去の光景だった俺が嫉妬するぐらい仲の良かった二人に戻っていた。
「逃がしませんからねカズちゃん」
 俺の右腕をしっかりと更紗に掴まれて、
「毎晩、幼馴染の私たちと寝ましょうね。カズ君」
 更に左腕を刹那に掴まれて、布団の上に倒れるようにダイブする。

 もしかして、俺は……ハメられたのか?

 その晩。
 狭い布団の中で天国のような地獄を味わった。女の子二人に抱き付かれると男の煩悩が覚醒しそうになっていたが、
二人の幸せそうな寝顔を見ていると自然と穏やかな気持ちになってゆく。
温かな気持ちに満たされた時に見る夢は


 予兆であった。

 それは、桜荘に住んでいる者にとってやがて訪れるであろう。
 
 桜の……。
633トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/07/11(水) 20:11:49 ID:69pT9uG3
以上で投下終了です。

634名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 20:26:15 ID:ad+tJEXX
GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
635名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 20:33:07 ID:W8zGd28Y
GJ!そして乙彼
人数が多いと大変でしょうけど、頑張って下さい。
636名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 22:08:42 ID:Mi6+QHlE
前レスにあった京都弁ヤンデレ、書いてみようかな…
637名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 23:52:37 ID:QLlKRYCs
カズちゃんは、幼なじみを手酷く振っといて何を格好つけてるんだ?
この男のどこにもてる要素があるのかわからん。
638名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 00:42:02 ID:CLBh/2+1
 なんか書こうと思うんだけど、正直ネタが思いつかなくなってしまって困ってるんだぜ。
どんな内容を読みたいとかそういう希望ある人いたら、ちょっと頑張ってみようと思っている。
という事でちょっと募集。
639名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 01:10:39 ID:ZSTF88qM
普段はものすごく大人しくていい娘が、嫉妬に狂う様はとても愉快だ。
幼い頃から長年、想い続けて来た相手(幼なじみ、兄、弟)に関係が近すぎるということで恋仲になるのを拒まれ、パッと出た泥棒猫に一瞬で奪われる様は笑いが止まらない。

家族で、異性を意識しないのは血が繋がっているからということではなくて関係が近すぎるかららしい。だから幼なじみや親友もこれに当てはまりやすいらしいよ。
640名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 01:58:48 ID:iZvSA1Id
別にどうって事ない情報だが
ツンデレ大全出した出版社が
8月にヤンデレ大全出すそうな・・・そんだけ
641名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 02:38:13 ID:qWn/rH6J
ヤンデレもミーハーに群がられてツンデレの如く腐っていくのだろうか
642名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 03:42:49 ID:Jw1rRfTT
つーか、大全とかってあるけどうすっぺら〜い情報しか
なかったって話だったような。
643名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 06:00:14 ID:Xsv85w4Z
そもそもイメージは本にするものではない
644名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 07:52:30 ID:9KIg5sU3
嫁さんもしくは彼女vs上司もしくは同僚の嫉妬とか。仕事中はやはり上司には逆らえないのはいいことにベタベタする感じで、それに気付いた嫁の嫉妬
今の俺がそんな感じ、解決策も兼ねてもうどうしたらいいのか…
645名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 09:41:06 ID:of4eaXmJ
>>637
いい奴としてもクズとしても中途半端で感情移入しにくいのはあるな。
だから時々真っ当なこと言っても「ハァ?」となりやすいし。

まぁ、ギャルゲ主人公的ではあるが。
646名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 09:53:16 ID:lTWdRJXk
エロが濃い作品、他のヒロインに精神的な攻撃(集団による苛めなど)をしている作品、他のヒロインを輪姦させてる作品ってある?
ほとんどのSSが数行程度のエロ、自ら刃物を取って殺傷、エロはあくまで男一人とのみってので毛色が違う奴が読んで見たくなって。
647名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 10:21:11 ID:Zl1XmLUb
>>637
いや、単純に面白くないからね・・
このスレじゃあ全く無視されているんだからスルーしろよ
648名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 10:41:29 ID:dcotpU/2
>>646
リボンの剣士は??
649名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 14:19:20 ID:q7Ur6odq
絶望した!嫉妬が渦巻く社会に絶望した!
650名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 18:44:55 ID:mw/wUcAu
黄金期を再び来るんだろうかと・・
651名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 19:24:46 ID:pc4FZGRt
>>650
日本語でおk
652名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 21:39:23 ID:iROUs44R
・・の人
653名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 21:56:55 ID:AtJd+OPa
いや、それは違うだろw
654名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 22:21:06 ID:G35+p7We
才能のない作家に引導を渡すのが俺達の批評家の役目だと思わないか?
655名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 22:26:33 ID:NyxrcLvV
思わない
656名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 22:35:25 ID:G35+p7We

    ∧_∧ ・・・・・・・・・・・・・
    < `Д´ >     ∧_∧
   /    \    < `Д´ >  ・・・・・・・・・・・・・
__| |     | |_   /    ヽ、
||\  ̄ ̄ ̄ ̄   / |   | |
||\\        (⌒\|__./ ./       このスレッドは    
||  \\       ~\_____ノ|           おはようから、おやすみまで、暮らしを邪魔する在日
.    \\ ________\        捏造一筋、チョン日新聞
.     \||      ____||    /    お口の悪臭 キムチ
.       || ̄ ̄ ̄|\____\ /    あしたのゴミ 捨民党
.       ||     | |======== |        The fabrications are infinite, 韓国政府
           _|  |oo======= | \     Drive your delusions, ヒュソダイ自動車
           |\\|_____|\ \   Shift the past, シンスゴ
           | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|     犬を、おいしく、楽しく、COREAN FOODS
           | |  生野キムチ.  |     Inspire the anti-Japanese, プロ市民(サヨ)
                            爆発一番 ハム日新聞
                            拉致ひとすじ 金正日
                            妄想 ふくらまそう 民口寸
                            淫らな明日のために 従軍慰安婦
                            黄色いエラ 街宣ウヨ(ジサクジエン)
                            犯行は計画的に ほのぼのレイプ
                            歴史をクリエイトする 朝魚羊総連
                            電波も全開に コリア 観光局
                            悪名世界一への挑戦 しG電気
                         ご覧のキムチ野郎の抵抗でお送りします。
657名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 23:41:09 ID:iL2/LhjN
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm288849

やはり、言葉様のようなヒロインをどんどんと嫉妬スレSSで量産するべきかと
それにしても、この歌を聴くと切なくなる
658押しかけ三角、また来て修羅場 ◆8uWzk8Gyx6 :2007/07/13(金) 06:37:29 ID:iaEM0AGT
>>611  あなたには負けた。 第4話を投下する。
 ……待つ女は時として修羅場より怖いよ
659押しかけ三角、また来て修羅場 ◆8uWzk8Gyx6 :2007/07/13(金) 06:43:21 ID:iaEM0AGT
第4話 「愛情×弁当+金髪=修羅場」
 
 早朝、ランニングを終えて俺は庭にいた。ただし全身を緊張させてだ。
 目の前には、俺の祖父が胴着と袴を着て、普通に立っている。
 俺は入院でなまった分を取り戻すつもりで全力で蹴りを放った。
 なのに祖父は、最小限の動きでゆうゆうと俺の攻撃をさばいた。
 吹けば飛ぶような痩躯なのに、こゆるぎもせずに立っている。
 間髪入れず正拳を放ってみるが、これも不発。お返しに裏拳が飛んできて、必死に避ける。
 ローキックで牽制しても無効。この時点で詰んでいたが、じいさんは容赦なく足を払い、俺の伸びた腕をとった。
 むしろ爽快と言えるほど庭の景色が一回転し、体に染みついた受け身を必死に駆使した。
 背中に衝撃が来て、息が詰まった。呼吸が出来なくなる地獄の苦しみがやってきて、必死にあえいで息をした。
「まあ、今朝はこれぐらいかな」
「悠ちゃん、落ち着いたらあがって朝ご飯食べなさい」
 じいさんは、あえぐ俺の方を振り向きもせずに、縁側から部屋にあがると律儀に手を洗い、飯を食い始めた。
 もう七十に手が届く年なのに顔はつややかで歯も揃っているから年齢より若く見える。
 ただし年相応のごま塩頭と胴着と袴という和装により、威厳は損なわれていない。俺にはまだ恐いじいさんだった。
 ばあさんも特に心配する風も無く、湯飲みに茶を注いだ。
 こちらは綺麗な白髪の下に優しい目をたたえ、やや小太り気味の、典型的なやさしい祖母だ。
 外見を裏切ることのないこの優しい祖母に、俺は何から何まで面倒を見てもらっている。
 駆け寄ってきたクロエが、心配そうに俺の背中をさすった。
「クロエさんや、そんなことせんでも悠はだいじょうぶだよ。病み上がりには手加減ぐらいはしとるよ」
 じいさんは、そういうとうまそうに茶をすすった。
 数分してようやく俺は息が楽になり、クロエとともに部屋にあがった。
 汚れた手を洗って、ちゃぶ台の前に座る。クロエも並んで座った。
 箸にはまだ手をつけない。ありがとうございましたと礼をして、講評を待つ。
「技が荒れておる。が、ちょっとましだな。……クロエさんに感謝しとけ」
「……じいちゃん、よくわからない」
「あほ、細かい説明なぞできるか。ただな、技の悪い危なさが減っておる。それがクロエさんに通じておる感じだな」
「?? そんなもんなのかな?」
「拳や技は、鍛錬と心を刹那に映す鏡よ。恐れも焦りも怒りも愛も技と拳でわかる。悠の段階ではなおさらそうだ。
だから武道は心技体の3つが重要というわけよ」
 いつもながらじいさんの言葉はわからない。だが不快なわからなさではない。
「考えても無駄だ。はよう飯を食え」
「そうよ、食べちゃいなさい。学校に遅れるわよ」
 だが食べ始めた俺を見ながら、クロエは箸をとらなかった。むしろじいさんの方を真剣にみていた。
「マスター、質問があります」
 クロエはじいさんをマスターと呼ぶ。達人という意味らしい。
660押しかけ三角、また来て修羅場 ◆8uWzk8Gyx6 :2007/07/13(金) 06:46:07 ID:iaEM0AGT
「なんだい、クロエさんや」
「ドージョーをつかわず、庭でケイコするのは、やはりジュージュツのゴクーイなのですか?」
「うむ、良い質問だ。クロエさん、敵はいつでも道場に乗り込んでくると思うかい? そうではないな。
歩いていても飯を食っていても来るときはくる。そのとき場所は選べない。
だから道場では無くこの庭で行い、常在戦場の……オールタイムオンバトルフィールドの心構えを養うのよ。おわかりかな?」
「all time on battle field……オオ、イエス、アイ、シー! イエス、イエス! マスター、クロエは感動しました」
「なぁ、ばあちゃん。確か道場って借金のかたにとられてしまったんだろ?」
「そうよ! おじいさん、稽古は厳しすぎるわ、気に入らないお弟子は取らないわでお弟子さんみんな逃げちゃって。
おまけにやけを起こして大酒のむから、借金とりがうちに押し寄せたのよ。
仕方がないから道場とあたしの婚礼祝いの着物を売ったのよ、ほんとにもう」
 ガハハと笑うじいさんと、感動で目を潤ませるクロエを尻目に、俺とばあちゃんは茶を飲んだ。
 ま、現実なんてこんなもんだ。
「やはりイッシソデーンのブドーなのですね。すごいです」
 単に柔道や空手の試合では使えない技が多く、部外者が苦労して学ぶほどの流派では無いだけのことだ。
「ワハハハハ、どうだ、柴崎流柔術はすごいだろう。ワハハハハ」
 そのとき呼び鈴が響いた。
「あらあら、こんなに朝早くどなたかしら?」
 ばあさんがパタパタと玄関に出て行き、戻ってきた。
「悠、学校のお友達よ。女の子。悠もなかなかやるわね」
 クロエの眉がピクリとあがった。

「おはよう! 一緒に学校に行かない?」
そこにいたのは、間違いようもなく、朝にふさわしい笑顔を浮かべた高村文華だった。
「えーと、いいんちょ。家はどっちでしたっけ?」
「近くだから気にしないで。それより一緒に行こう」
 だが近くというには、息は弾んでいる。門に立てかけた自転車もみえる。
「高村サン。無理はしない方が良い。ユウは私が責任もって世話をするから」
 仏頂面になったクロエがすかさず攻撃。
「ごめんね、マクフライさん。でも私、柴崎君のことは人任せにはしたくないの」
 だが反撃は一枚上手で、クロエの雰囲気が剣呑なものになった。
「……あのなぁ!」
 前回の騒動に懲りていたので抗議しようとしたが、高村さんが先手を打った。
「大丈夫よ。もう喧嘩はしないわ。ね、マクフライさん?」
「……う……うん」
 高村さんの笑顔に、クロエはしぶしぶ頷く
「でもなぁ……」
 そのとたん、高村さんが肩を落としてうなだれる。
「ごめん、迷惑なのは、わかっている。でも……でも……」
 体が震え、土間にしずくが垂れるのを見て、俺は慌てた。
 女の子を泣かせたなんて知られたら、たぶんじいさんに死ぬほどしごかれるだろう。
 鬼と化したじいさんは、さすがに勘弁したい。
「わかった、わかったからさ。いいよ、一緒にいこう」
「ほんと! うれしいな!」
 高村さんがあげた顔に、涙の跡は無かった。
 やられた!
「くっ、ユウの優しさにつけ込むとは卑怯な」
 クロエの歯がみもどこ吹く風で高村さんは笑う。
「いいじゃない。私も柴崎君の側にもっと長くいたいし」
661押しかけ三角、また来て修羅場 ◆8uWzk8Gyx6 :2007/07/13(金) 06:54:09 ID:iaEM0AGT
 玄関を出ると、クロエが俺の右手にしがみついた。
 それをみて、高村さんも俺の左手をとった。そしてうむを言わさず手をつなぎ、俺の腕を抱え込む。
 腕が柔らかな感触に埋まるどころか、なにか独特の堅さのある突起までにふれた。まるで乳首のように。
 ……乳首? さらに、歩くたびに俺の手の甲が彼女の……股間というか……に触れている。
 当の高村さん本人は全然気にしていないようで、俺が休んでいた間の学校の出来事をしゃべっている。
 クロエは不機嫌に黙っていた。
 さすがにかなり左手が気になり、俺は少し左手を抜こうとしたが、手はがっちりと固定されている。
「あの、いいんちょ?」
「なに? 柴崎君」
 一転の曇りもない晴れやかな笑顔を浮かべられて、俺は左手の事を言う気を無くした。
 俺は早く学校につくことを心の底から願った。
 世の中にはバラ色の地獄があることを、俺は思い知った。きっと生涯忘れないだろう。

 俺にとって授業は、心休まる時間だった。
 たとえ教師が退屈な話をしていようと、それで悪いことは起きないからだ。
 しかし無情にも昼休み開始のチャイムがなり、律儀な教師は話を中止して、小テストの予定を告げた。
 周囲はいきなりの告知にわき上がったが、授業中試験に出す部分を教師はさらりと告げている。
 俺はノートして、かつ集中して聞いていたので概要はつかめていた。
 帰宅後、ノートを見返して問題集で練習問題をこなせばいいと目算をつけ、教材とノートを閉まった。
 そしてパンとコーヒーをカバンから取り出す。
 自転車旅行用の地図を取り出そうかと考えて止めた。クロエに邪魔されるだろうからだ。
 そのクロエがやってきて、前席の椅子を反転させ、俺の正面に座る。去っていく席の持ち主に笑顔で手を振っていた。
すでに取引は済ませていたようだ。
 クロエは笑顔をおさめると、嘆きや怨嗟の声が満ちる周囲を見回しながら語りだした。
「理解度確認テストのようだが、ユウは自信がありそうだな?」
「あの先生は大事なことを平板に語る。ちゃんと集中して聞いていれば、それほど難しいことは要求していないよ」
「さすがだな、ユウは。私は日本語が分からないところがあった。すまないが教えて欲しい」
「オッケー。……でも、クーは授業についていけているだけですごいとおもう。
カリキュラムが相当違い、異国語というハンディキャップ付きでそれならたいしたものだ」
「ふふん、ユウには悪いが、日本語は私にとって異国語ではない。いや、日本も異国ではない」
 瞳をきらめかせ、右手の人差し指をたてて、クーは顔をよせた。
「第二の母国だと思っている。もちろん、私はアメリカを愛しているが、ユウの愛するものを私も愛したい」
「……そう真っ向正面から言われると照れる」
「国際結婚というものは難しいものだ。それぞれの宗教、それぞれの常識、それぞれの文化。
理解を怠っていては、破局に至ってしまう。だから私は日本を学び、愛する。ユウを愛するため、そして助けるために」
 その言葉をまったく頬を染めず目を逸らさず、クーは宣言するがごとくに厳かに語った。
 かえって俺のほうが、照れた。どうしようもなく頬が、そして顔全体が熱くなる。息がつまり鼓動が早くなった。
「ユウ、なぜ顔を赤くする?」
「……き、気にするな」
 首をかしげるクーをみて、さらにどうしようもなくなり、パックコーヒーを手につかんで開封しようとした。
 だが、突然後ろから伸びてきた細い手が俺のコーヒーを奪い去った。
 同時にクロエの顔が険しくなる。
「柴崎君、いつもこんなんじゃ、体に悪いよ?」
 体をひねって後ろをみると、にこにこした高村さんが俺のコーヒーを持って立っていた。
「いいんちょ! ……しかしそれは俺の昼飯で」
「大丈夫だよ。もっとおいしいものをあげるから」
662押しかけ三角、また来て修羅場 ◆8uWzk8Gyx6 :2007/07/13(金) 07:00:12 ID:iaEM0AGT
 そういうと高村さんは、椅子を俺の机の左側にもってきて座った。ちょうど3人で俺の机を囲む形になる。
 そして持っていた美しい風呂敷に包まれたものを机の上に載せた。
 高村さんがそっとひっぱると風呂敷はさらりと解け、綺麗な二段重ねの重箱が現れる。
 そして彼女が蓋を開けると、中には色とりどりのおかずが詰まっていた。
 出汁巻き卵、きんぴらごぼう、煮豆に、焼き鮭、ミートボール、鳥の唐揚げ、etc。
 さらに上段をずらすと、下段には俵むすびが整然と並べられ、漬け物がその周りを彩っていた。
「……す、すごいな」
「……オオ、カイセキデイッシュ! ワンダフォ……」
 俺と共にのぞき込んでいたクロエが思わず賛辞を口走りかけ、あわてて止めた。
 高村さんの手が素早くのびて、俺のパンも取り上げた。
「柴崎君、見ていればいっつもいっつもパンとコーヒーばっかりじゃない。ちゃんと栄養バランス考えている?」
「あー、栄養バランス……」
 まるで母親のように俺を軽く睨んでいる高村さんの言葉に、俺は言い淀んだ。
 心が不健康なので、肉体の健康にあまり興味はありませんなどと言えるような雰囲気がなかったからだ。
「柴崎君は病気持ちなんだから、ちゃんとバランス良く食べなきゃ駄目。迷惑もかけたし、これお詫びだから」
「え? あ、ああ、ありがとう……」
 礼を述べながら俺は横目でクロエをちらっと見た。途端にアイスブルーの視線が突き刺さり、あわてて目を元に戻した。
「大丈夫よ、クロエさんも一緒にどうぞ」
「ありがとう。しかし私は高村さんにご馳走になる理由がない」
 俺の視線を読んでか、にこやかに招待する高村さんに対して、クロエは背筋を伸ばし、まるで弁当を見ないようにするかのごとく瞳を閉じた。
「あら、そんな堅苦しいこと考えないでほしいな。日本の文化を味わって欲しいんだけど?」
「文化?」
 余裕を持ってほほえむ高村さんを、クロエはきょとんと見た
「そう。クロエさんにもあるでしょう? 故郷の懐かしい味とか、どんなに国際化が進んでも、人が捨てることの出来ない大切なもの。
でも他人にはなかなか理解できないもの」
「何がいいたい?」
「国際結婚って難しいわよね。そんなに簡単に外国人を理解できたら苦労しないと思うの。
だからね、まずは五感で私達の文化を味わって欲しいのよ。……これね、全部、私が作ったのよ?」
 敵意を露わにしていたクロエが、その言葉に驚きの表情をする。
「愛のこもった料理はね、心を癒すんだよ。私ね、柴崎君にはこういうものが足りないと思うの。今から理解してちゃ遅いと思うなぁ。
でも私なら、柴崎君を助けて上げられるけどね」
 高村さんは相変わらずいつもと同じようににこにこと微笑んでいた。
 しかし俺にはその顔に何か黒いものを感じて、背中に冷や汗をかいていた
 気がつくと、周囲の視線が集まってきていた。ここ最近、視線を集めてばかりいるような気がする。
 突然、俺の腹が無遠慮に鳴り響いた。匂いだけ嗅がされて、お預けだったからかも知れない。
「ごめんごめん。さ、柴崎君、食べよ」
 そういうと高村さんは、箸を取り出し、下段の俵結びを箸でつまんだ。そして……
「柴崎君、はい、あーん」
 その瞬間、高村さんを除く教室中すべての人間が凍り付いた。
663押しかけ三角、また来て修羅場 ◆8uWzk8Gyx6 :2007/07/13(金) 07:03:13 ID:iaEM0AGT
「……あの、いいんちょ?」
「ごめんねぇ、お箸忘れちゃったんだ」
 てへぇとか言って舌を少し出して、彼女は自らの頭をこづく。。
 狙っていたな、そう確信はあったが、弁当をもらう以上、言うわけにもいかない。
 追いつめられてクロエの方を見ると、立ち上がって歩き去って行くところだった。
「クー!」
「駄目だよ。ご飯中によそ見したら!」
 叫んだ俺の口に最適のタイミングで俵にぎりがつっこまれる。
 思わず咀嚼し、舌の上にあふれ出る美味を味わってしまう。絶妙の味というべきだった。
 旨さのあまりに無意識で飲み込み、ほっとため息をついた。
「じゃあ、次はぁ」
「あ、いや、いいんちょ! 箸をね……」
「量があるから食べる時間がなくなっちゃうよ。大丈夫、ちゃんと食べさせてあげるから」
 高村さんは俺の言葉をするりと聞き流して、上段から唐揚げをつまんだ。
 そして箸と共に唐揚げを口の前に差し出す。
 さすがに今回は俺も口を開けない。
 しかし、唐揚げも俺の口の直前で静止した。高村さんは、笑顔のまま。
 そのまま長い長い時間が過ぎる。教室を静寂が覆い、誰かが唾を飲み込んだ。
 グラウンドで歓声があがり、他教室のざわめきが流れる。
 風が吹き込んでカーテンを揺らし、窓から見える青空を雲が流れていった。
「いいんちょ?」
「あーん」
 俺の額に汗がにじみ、右目の側を滑り降りた。
 教室の中では誰も声をあげず、一心に俺達を見つめている。
 鼓動が徐々に早くなり、自らの呼吸音が脳裏に響いた。
 高村さんは、彫像のように微動だにしなかった。
 慈母のような笑顔を浮かべ、唐揚げを差し出している。
 息が詰まりそうになって、俺は思いっきりため息をついた。
「……いんんちょには負けたよ」
「あーん」
 ついに俺は根負けして口をあけた。
 笑顔をさらに輝かして、高村さんは唐揚げを俺の口に入れる。
「どう? 口に合うかな?」
 高村さんにはクロエが立ち去ったことも、唐揚げを長時間突きつけていたことも無かったかのようだった。
 ただどこかまぶしい笑顔を浮かべ、料理を箸でつまんでは、俺の口に放り込んでいった。
「……と、とても美味しいです」
 それ以上、何を答えていいのか、俺はわからなかった。
 やがて弁当は空になり、俺の腹は満ちた。しかし出ていったクロエが戻ってこず、俺は不安になった。
664押しかけ三角、また来て修羅場 ◆8uWzk8Gyx6 :2007/07/13(金) 07:06:28 ID:iaEM0AGT
 そしてその日の放課後、クロエは先に帰ってしまった。
 高村さんは、帰り道もすごく上機嫌であれこれと話しかけてきた。
 つかまれた左腕は朝以上に彼女に抱きしめられ、高村さんの微妙な部分に押し当てられていた。
 そして、俺の家の前でだめ押しがあった。
 門の前で彼女は俺の前に回り込むと、唐突に言った。
「悪いんだけど、今日のお弁当のお礼が欲しいな」
「あ? ああ、……遅くなってごめん。おいしかった、本当にありがとう」
 丁寧に頭を下げて謝意を表す。いろいろとあったが、弁当に込められていた労力が大変なものということは良く理解できた。
 俺みたいな人間には過ぎたもてなしだと思う。おいしかったから、感謝も心からできた。
 そう思っていたのだが、頭をあげた時、彼女はやや不満そうだった。
「そういうことじゃないの」
「はぁ。なにか俺、間違ってた?」
 高村さんは顎に人差し指をあてて視線を空にさまよわせ、何かを思案したようだった。
 やがて、両手を胸の前で組んで、俺を見据えた。
「じゃね、目を閉じてくれる?」
 疑問が浮かぶが、俺は言うとおり目を閉じた。
「……ごめんね、ちょっとかがんでくれる?」
 なんなのだろうと思いながら、少し膝を曲げた。
「じゃあ、いいと言うまで目を開けちゃ駄目だよ」
 ま、いたずらかもしれないが、好きにしてくれ、俺はそう思って待った。
 突然首に腕らしきものが巻き付き、唇に柔らかいものが重なった。
 思わず目を開けると、目を閉じた高村さんが信じられないほどの近距離にいた。
 二回目のキスのはずだが、今回の方が大きくうろたえた。パニックになって硬直していたといってもいい。
 口内に進入してくるぬるついたものに口の中も歯も舌も全て舐められる。
 身体をこすりつけるかのように密着させ、柔らかい二つのものが意志をもって押しつけられ、中心の固いものが俺の胸を突いていた。 
 足までもが絡ませられて、まるで捕まえるかのように彼女は俺を抱きしめていた。
 わき出る唾液を彼女は一切躊躇無く音をたてて吸いあげて、俺の舌を自らの舌でもてあそんだ。
 小さな声を上げながら、彼女は俺を全て吸い尽くしねぶり尽くそうとするかの如く、口をむさぼった。
 やがて彼女が唇を離したが、俺を抱く手は緩めなかった。
「……い、いいんちょ」
「文華(あやか)」
「え?」
「文華。名前で呼んで」
「……あやか、さん」
「もう。……ま、いいけどね」
 不思議なことに日本人相手だとファーストネーム呼び捨ては抵抗があった。高村さんが少し残念そうな顔をする。
 それはともかくとして話を戻すことにする。どうも俺は高村さんには引きずられる傾向があると思った。
「と、とにかく、家の前だからさ」
 路地とはいえ人通りはある。家の前で抱き合ってディープキスしているところを見られて辺り一帯の噂になるのは嫌だ。
「ふーん、それもそうね。じゃ、私の家に行こうか?」
「はぁ?」
「だって、その家にはクロエさんがいるでしょ?」
「あのなぁ」
「柴崎……悠君、家に帰したくないなぁ。クロエさん可愛いから、私、いつも心配なんだよ」
 少し呆れていた俺を抱く高村さんの腕に力がこもった。
「私の家に来てくれたら、いっぱい歓迎するのになぁ」
「クーとは……そのキスだけだし、そういう関係とは言い難いし……あの? ひょっとして離す気、無い?」
 なぜか浮気を責められているような錯覚に陥り、言い訳をしてしまってから、ふと我に返った。
 高村さんが近すぎて、どうも思考が鈍っている。おかげで訳のわからない状況で変な会話をかわしている。
665押しかけ三角、また来て修羅場 ◆8uWzk8Gyx6 :2007/07/13(金) 07:08:36 ID:iaEM0AGT
「今日、私の家に寄ってくれるといいことがあるよ」
「いや、だからね?」
「もうクロエさんに思わせぶりなこと、しちゃだめ。ちゃんと振ってあげるほうがクロエさんのためなんだよ?」
「……いいんちょ!」
「あれ、悠君は自分がまともな人間だと思っているの?」
 クロエを袖にしろというとんでもない言葉が出て、思わず声をあげる俺をみて、高村さんは突然笑いに黒いものをにじませた。目から明るい光が消える。
「そんな勘違いしてるなんて、悠君はうぬぼれてるんじゃない?」
 その言葉が俺の胸に刺さる。
「悠君は壊れているんだから、私で我慢しておきなさい。私ならもう汚れているから、悠君が何しても平気」
 高村さんの文句が蛇のように耳から入り込み、俺の心に巻き付いた。
「でもクロエさんは、まっすぐで健気でいい人なんだから、悠君とつきあったら彼女の心を傷つけちゃうよぉ?」
 クスクスと暗い目をして彼女はおかしくもなさそうなのに笑った。
「あんないい子に、こわれた悠君がこれから発作を起こすたびに、世話をさせるの? それで昔の傷をえぐるの?」
 その指摘は俺の心の奥底を打ちのめした。
「そうだよ。悠君が近くにいると彼女を傷つけて壊しちゃうんだよ? ね、だから私が悠君を引き受けてあげる」
 心の中がスープのように煮えている俺を見越して、彼女はうつろな笑いを顔に刻む。
「私はね、もう壊れちゃって、悠君のものになることだけで生き残ってるの。……愛してるとかじゃないの。私は悠君のものになるしかないの」
「……文華……」
「三匹の野獣を倒した猛獣は、野獣たちがなぶっていた哀れな獲物を自分のものにするのよ。でないと獲物が捨てられて腐っちゃうから可哀想でしょ?」
「……そういうつもりじゃない。そういうんじゃないんだ……」
「じゃあ、レイプされかけた馬鹿な小娘を嘲笑うために助けたの?」
「違う!」
「違わないよ。あんな告白したんだから、振られたら、晒し者なんだから」
「それは……」
「でもいいんだよ。振られても私、待つから。悠君の帰る場所はね、ここ」
 そういうと高村さんは、その胸に俺を抱え込んだ。柔らかい肉と甘い体臭が俺を包み、なぜか不思議な安らぎを覚える。
「……おかえり、悠君」
 俺を胸に抱く高村さんの手が優しく頭を、背中をさする。高村さんの鼓動がとくとくと俺に伝わった。

666押しかけ三角、また来て修羅場 ◆8uWzk8Gyx6 :2007/07/13(金) 07:12:47 ID:iaEM0AGT
 ぐいと突然、恐ろしい力で襟首を引かれて、俺は高村さんから引き離された。
 驚いた顔をしていた高村さんは、しかしすぐ不敵に笑った。
「売女! 身体を使って惑わすなどと、汚らわしい!」
「クー!」
 それは怒りで全身を満たしたクロエだった。家に一旦帰っていたようでTシャツにジーンズの私服だった
「ふふ、なんのこと? 私は柴崎君を慰めて癒してあげてただけ。変な想像をするほうがいやらしいよ?」
 敵意で目を光らせながら、高村さんは嘲笑った。
「帰れ! ユウに近づくな!」
「はいはい。今日はもう帰るわよ。……柴崎君、私の言ったことよく考えてね」
 しょーがないという感じで肩をすくめると、高村さんは門に立てかけてあった自転車を起こした。
「早く帰れ!」
 凄い剣幕でクロエがどなると、高村さんは、鍵を外して乗った。
「じゃあね、柴崎君。また明日!」
 そして悠然と手を振りながら、自転車で去っていった。
 彼女が見えなくなると、クロエは俺の方を向いた。そのアイスブルーの瞳は既にうるんでいて、そしていくつもの雫をこぼしはじめる。
 クロエは無言で俺の脇を通り抜け、家に入っていった。
 俺はとぼとぼと家に戻った。自分で自分が嫌になっていたからだ。
 もちろんながらじいさんとばあさんにクロエが泣いた理由を尋ねられ、言いあぐねているとじいさんにしごかれまくった。
 だが、それよりももっとこたえたのは、それ以後クロエが部屋から出てこないことだった。
 俺は高村さんの言葉を思い出していた。
 俺とつきあったらクロエを傷つける。その言葉が俺を重く苛んだ。ベッドの中で夜中までそれを考え続け、ようやく俺の心は固まった。
 クロエに別れを告げよう。恨まれても憎まれてもその方が良い。
 その結論が出たところで、眠気がおそった。
 明日、言おう。
 その思考を最後に、俺の意識は暗黒に墜ちた。

 第4話 終

 以上投下終了
 負けたけど、すがすがしい負けでした。
667名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 07:13:51 ID:mHxs94qY
GJ!
最高先が気になる
668名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 07:17:18 ID:zuncnsqL
超GJです!!
投下復活キターーーーーー!!!!!!!!!
好きな作品の一つだったのでメッチャウレシス!!
待ってた甲斐があった!!
669名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 08:25:45 ID:X+ObxhnO
あれ?まだ寝ぼけているのかな?ちゃんと起きないと……

押しかけ三角の続きがキテル!しかも夢じゃないぞー!
670名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 09:21:33 ID:mEZWgcBz
なんということだ、神作品が帰ってきたので窓を開けて新鮮な空気で深呼吸してから読もうとしたら雨が降ってたよorz

なんにせよ超GJ!!!!!!!!!!
671名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 10:36:11 ID:7jfFLxBr
女のネチネチとした攻撃 見せしめや牽制の仕方が、堪りません。男には出来ないこの感じがなんともまた
GJ!!
住民の皆さん、てっきり、言葉様に連れて逝かれたもんだと、思っていたので、喜びも一入も二入も、って、あっ、鋸が…
672名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 13:11:42 ID:puKzuLAc
これは実にいいねちっこさ
673名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 14:45:51 ID:ZFp1UpBa
まったく人の痛い所をついて洗脳しようとするなんて最悪な女だな・・・・

クーがんばれ・・・
674名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 17:05:51 ID:cVFwrEas
ネットサーフィンしてたらいいもん見つけた
http://kanasoku.blog82.fc2.com/blog-entry-1204.html
675名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 18:08:02 ID:UDKEC7VB
>>666
まあ、なんだ。その……ありがとう。


俺的には高村さんの依存っぷりに萌えた。
次の日、悠はいったいどんな目に会うのだろう……


676名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 18:50:32 ID:0JD1WBxu
なあ、http://same.u.la/test/r.so/wwwww.2ch.net/news4vip/1184235343/1-
こんな姉って実際いるの?
677名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 19:58:26 ID:lEf5sX7A
>>673

まぁまぁ、
そういう黒さもある意味で魅力だと思うぞ。

しかし、ここまで純粋路線のクーが
今後どうなるかも凄く気になる。

ともあれ、作者様乙です!!
678名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 20:39:45 ID:BndjoNWg
ひゃっほー!!!!!!!!!
潜伏してたかいがあったぜ!!
ばっちこーい
679名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 22:50:47 ID:Y3G14hig
しかし、ここの住人の書き込みは減ってしまったよな
680名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 23:21:46 ID:OR8TW+ji
↑お前ちっとも成長しないよな、いつまでもいつまでも幼稚にしがみついてさ
681名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 01:27:56 ID:/PAuk2Dr
ぐわあああああああ今読み直すと合鍵の完成度に脳みそタイフーンぺえええええ
682名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 17:03:31 ID:ZFWlpU6I
俺も嫉妬スレが卒業しなきゃいけない時がやってきたのかな・・。
ありがとう嫉妬スレSS ・・そして、さようなら・・

683名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 18:01:58 ID:Z1eqt7Gv
>>682
何があった
684名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 18:08:06 ID:7j8pOPlx
>>682
非常に言いにくいんだがな・・・
お前、出席日数が少したりなくてな・・・残念だが
その・・・留年だ
685名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 18:09:50 ID:nkbRmimT
後期の実験落とすと留年の俺が通りますよ
686名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 18:16:54 ID:F/qxu0yS
>>682
お前、現国の単位足りて無いじゃんかwww
687名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 18:35:16 ID:/I2bdSPQ
その話題はリアルで出席日数が危ない俺には痛すぎるからやめろ…
688名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 18:46:56 ID:kTLC+HzJ
ていうかいつもの日本語お化け(笑)だろ
689名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 19:35:03 ID:+KsRMNTI
全然出席してないのに代返のお陰で単位は安泰です。
ウマウマ
690名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 19:49:08 ID:/PAuk2Dr
>>689
うおおおわああああ
死んでしまえええええええ
691名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 20:33:50 ID:bFMkbCk/
>>688
だから皮肉で>>686が言ってるよ
692名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 21:35:45 ID:jE4Xusrs
久々に見たら押しかけ三角、また来て修羅場が投下されてるぅぅぅぅぅぅ。
GJアンド乙です。
693名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 22:32:40 ID:4KJKjtDz
最近「千歳の華」や「押しかけ三角」が帰ってきてくれて嬉しい限り
個人的にはクー応援してます クーガンガレ

じゃ、投下イきます
6941/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/07/14(土) 22:34:30 ID:4KJKjtDz


  /      /      /      /


「あんたねぇ……、いい加減泣き止みなさいよ。 昨日は抜け殻みたいで、
今日は今日で泣きっぱなしで」
「だって……アッくんが、アッくんがぁ……!」
 学校での休み時間アタシは泣き通しだった。
 アッくんに別れを突きつけられた事が辛くて……。
 そしてそんなアタシの泣き言に向かい合ってくれてるのは中学以来の親友の葛原 千恵ちゃん
「だったらサッサト仲直りしなさいよ」
「アタシだってしたいわよ! でもどうやったらいいの分かんないんだもの!!
だって今まで喧嘩した時だってアッくんから謝ってくれて仲直りばっかりだったし……」
 そう、今までアタシから謝った事は無かったのだ。
 だから、本当にどうしていいか分からないの……。

 そんなアタシの言葉に千恵ちゃんは溜息をついて口を開く。
「んなもの一言『ゴメンナサイ』って謝りゃ済むじゃないのよ」
「謝る……? それってアッくんの趣味を認めろってこと……?
駄目よ! そんなの駄目!」
「プラモぐらい好きに作らせて上げりゃいいじゃないのよ……」
「プラモぐらい?! 千恵ちゃんは他人事だからそんな事言えるのよ!
プラモなんてガキやオタクのやることじゃない!
彼氏がそんな事やってるのなんて許せるわけ無いじゃない!」 
「それで彼氏がオタクなのが許せない、ってか。 それでそれが許せないばっかりに素豆子、
アンタは彼氏と破局に終わってもいいわけだ」
「破局になってよいわけが無いじゃない!」
「だったら、さっきも言ったように謝っちゃいなさい」
「でも……」
「あぁ、もう! でもじゃない! このまま破局で終わりたくないんでしょ?!
だったら四の五の考えずに『ゴメンナサイ』って謝って来い! 解かった?!」


6951/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/07/14(土) 22:35:44 ID:4KJKjtDz
 そして授業を挟んで次の休み時間、アタシは千恵ちゃんに発破をかけられた事もあって
アッくんの教室前に来てた。
 中学の頃から千恵ちゃんはいつもアタシの相談に乗ってくれたし力になってくれた。
 裏表が無くて歯に衣着せぬ物言いで、そのせいで衝突した事もあるけど、
でもそんな所もまた魅力な大切な親友。
 だからとりあえずはそんな千恵ちゃんの言う通りにしてみよう。

「スズ?」
 扉を前にそんな事考えていたらアッくんが扉を開け目の前に立っていた。
「ア、アッくん、あ、あのね……」
 言うんだ、言わなきゃ。 『ゴメンナサイ』って。
 本音を言えば謝る事に抵抗が無いわけじゃないけど、
でもそうしなければ方向はもっと悪くなってしまう。
 だから千恵ちゃんが言ってたように四の五の言わず謝ろう。
「アッくん。 その、ゴ、ゴ、ゴ……」
 それなのに『ゴメンナサイ』の一言が喉に引っ掛かってるみたいに出てこなくって……。
「ゴハン一緒に食べない?!」
 ……って何言ってるのよアタシィィィ?!
「ゴハン、って昼飯に誘いにきてくれたのか? ありがとうな。 じゃぁ昼休みに、
そうだな屋上で良いか?」
 でも返ってきた言葉に私は胸を撫で下ろす。
「う、うん。 じゃぁお昼に屋上でね」



「――で、それってよーするにちゃんと謝ってこなかったってことよね?」
「う、うん。 まぁそうなんだけど……。 ってそんな風に溜息付かないでよぉ」
「溜息も出るわよ。 あんた本当に彼と仲直りする気あるの?」
「あるわよ! だ、だからねお昼食べる時に今度こそちゃんと言うの!『ゴメンナサイ』って」
「はいはい。 じゃぁ頑張ってきてね」


6961/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/07/14(土) 22:36:52 ID:4KJKjtDz
 そしてお昼時私は約束どおり屋上へ向かうと――
「ア、アッくん! ど、どう言う事よ?!」
 私が思わず声を荒げてしまったのは、そこにアッくんだけじゃなくあの例鬱陶しい後輩もいたから。
「どういう、ってメシは皆で食ったほうが美味いだろうからさ。
それに今日は元から稲峰と一緒に喰う約束だったし」
「皆で、ってそれは時と場合と相手によりけりでしょ?!
アタシはアッくんと二人っきりで食べたかったのよ!
だからこの子はジャマなの! 帰ってもらってよ!」
「スズ! 言いすぎだぞ!」
「言い過ぎじゃないわよ! 二人っきりでって思うのも望むのも当然でしょ!
だってアタシ達は――」
「幼馴染だろ」
 遮るように言い放たれたアッくんの言葉にアタシは言葉を失った。
「幼馴染同士でそこまで言われる筋合いは無いはずだぞ」
 ――幼馴染。 其の言葉が否応なく胸に突き刺さる。
アタシとはもう恋人同士じゃないんだと。 そう突きつけられた其の言葉に胸が痛くなる。

「……ズ、おいスズ」
「……え? あ……」
 消沈し放心しかかってたアタシはアッくんの言葉に引き戻される。
「悪い。 チョット言い方がキツかった」
「あ、ううん。 アタシの方こそ……」
 確かにアタシはアッくんにとっての彼女じゃなくなってしまったけど、
でもこうして気に掛けてくれる。
 そうだ。 確かに恋人関係の解消を告げられたけど、でも嫌われたわけじゃない、んだよね?
 だから……、そう、だからこそ今のうちに謝ればきっと取り返しがつく。
 うん、『ゴメンナサイ』って謝ろう。

「じゃぁ気を取り直して三人でメシにしようぜ」
 アッくんの言葉に頷きアタシは頷き座ってお弁当を広げようと――え? 三人?
「三人って、この女もアタシ達とお昼ご飯を一緒にとるってこと?!」
「あぁ、さっきも言ったろ? あと、この女、なんて言い方するなよ。 お前は俺の大切な幼馴染だが、
稲峰だって俺にとって同じく大切な後輩で親友なんだ」
「同じ?! 同じじゃないわよ! 同じにしないでよ! アタシとそんなウザい後輩を!」
「スズ! だからそんな言い方止めろ」
「だって! だって、だって、さっきも言ったようにアタシは二人っきりがいいの!」
 アタシは思わず感情のままに叫んでしまった。

「わかったよ……」
 暫しの沈黙の後アッくんは口を開いた。
「わかったよスズ。 じゃぁもう三人で食おう何て言わないよ」
 そう言ってアッくんは立ち上がりあの後輩の手を引いて――。
「じゃあなスズ。 わざわざ来てもらったのに悪かったな」
「え? ちょ、ちょっとアッくん……」
 しまった……! あ、アタシは何てことを……。
 後悔の気持がこみ上げ膝から力が抜けていく。 追いすがろうとするも力が入らず……。
「ああぁぁぁぁぁ……!!」
 一人残されたアタシの口からは只々悔恨の嗚咽だけが零れた。
6971/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/07/14(土) 22:37:56 ID:4KJKjtDz


  /      /      /      /


 言ってくれるわ、あの女……! 人のことジャマとか、ウザいとか……!
 挙句、同じにしないでェ?!
 コッチこそアンタみたいに我儘で思いやりに欠ける女なんかと一緒にされたくないわよ!
 でもそんな事は口に出さない。 そんなこと言ったら先輩が悲しむから。
 悔しいけどあの女と先輩の仲の深さは知ってるから。
 でも私の胸中にあったのはあの女に対する不快感だけじゃなく――
 そう、熱矢先輩があの女の無神経な罵倒からは私を庇ってくれた。
 あの女を咎めてくれた時は、口には出さないけど胸がすく思いすらあった。
 私の手を引いてくれた時はドキッとしたし、胸の鼓動の高鳴りは未だ収まりきっていないまま。
 それに、それってば、つまり……私を……。
 そう思いながら熱矢先輩の顔を見ると――

「せ、先輩?! だ、大丈夫ですか?!」
 私は思わず声を上げてしまった。 だって熱矢先輩は今にも泣き出しそうな顔をしてたから。
「ごめんな、稲峰……。 お前にも嫌な思いさせちまって……」
「い、いえ気になさらないで下さい。 私なら大丈夫ですから。 それより……、いえ、何でも……」
 聞きたかった。 何であの女と私とを一緒にお昼をだなんて思ったのか。
 でもこんな沈んだ貌の先輩にそんな事訊いて良いものか……。
「スズに……分かって欲しかったんだ。 三人で一緒に食えば、俺と稲峰の姿を見れば……。
そうすれば……俺がどれだけプラモデルを好きかって事も、そして其の事を分かり合ええたら、
楽しさを共有出来きたら……、そう言ったことをスズにも分かってもらおうと思ったのに……。
それなのに……結果はこんな事になっちまって、お前にまで嫌な思いさせちまって……
ゴメン……」
「い、いえ本当に私なら大丈夫ですから……」
 そういう……事でしたか……。
 やっぱり先輩はあの女と仲直りしたいんだ……。
 あの女が先輩の幼……馴染だから。 初恋……の相手だから。 重ねてきた年月があるから……。

 ――妬ましい――!

 熱矢先輩にあれだけの仕打ちをしでかしときながら、それなのに未だ心を占めてるなんて……!

「稲峰……本当にゴメン」
「え……? あ……!」
 熱矢先輩の声に現実に引き戻される。 しまった、感情が面に出てしまってた。
 そのせいで、熱矢先輩にまた心配掛けさせてしまった。
「あ……、だ、大丈夫です! 本当全然気にしてませんから!」
 あの女のせいで心を痛めてる熱矢先輩に私まで負担掛けるような真似してどうするのよ。
「お腹空いてたからこんな貌になっちゃってただけです」
 私はおどけて両手の人差指で目の端を吊り上げて見せた。
 そんな私の仕草に熱矢先輩の顔からくすりと笑みが零れる。
「そういや、メシ喰おうとしてた所だったんだよな」
「ハイ。 じゃぁ場所は、中庭にします? あそこも日当たり良くて気持ちイイですし」
 私がそう言って笑いかけると熱矢先輩も微笑を返してくれた。

 妬ましい気持も、不満も、苛立ちも、確かに心の中にはあるけど……。
 でも今はこの現状のままで満足しておこう。
 熱矢先輩が私の微笑みに応えてくれる。
 熱矢先輩が微笑んでくれる――それだけで私は十分幸せを感じられるのだから。
698名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 22:39:41 ID:4KJKjtDz
投下完了です
699名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 22:53:47 ID:bFMkbCk/
>>698
嫉妬!嫉妬!キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
なんという正統系の嫉妬・修羅場、胸が高鳴りっぱなしだぜ!
このままどんどん突き抜けちゃっててください、応援してますぜ!
700名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 22:56:50 ID:u0sUGqxY
>>698
いやぁ、どーしよもないですねスズ。
これで稲峰に矛先向けるならマジで同情の余地なしかな。GJでした。
最近定期的な投下が増えてきて嬉しい限り。
701名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 01:28:12 ID:1rerJ41S
>>698
GJ!ついに盛り上がってきたぁ!
とりあえずスズには頑張って頑張って頑張り抜いた上で捨てられてほしい
702名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 01:53:54 ID:3AAstn6M
GJ
なんだか最近グッジョ分が足りない気がするぜ・・・
703名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 02:17:35 ID:keI4sjmY
>>698

超GJっ!
稲崎の静かなる反撃に期待に胸躍らせてます
704名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 02:23:51 ID:keI4sjmY
>>703

間違えた、稲峰だったort
705名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 02:26:34 ID:IJ0NmsDO
>>698さんGJです!
スズとは別れろ派が多いみたいだけど、
俺は許したい人と許せない行為の間でもがいてるスズを密かに応援してたりする。

>>702一時期GJってだけ書いて作者自演を装う荒らしがあって、
その影響でGJの他に何か長文を入れなきゃいけないみたいな空気になって、
それで気軽にGJしにくくなってるんだと思う。
706名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 02:29:59 ID:8pD3RMpJ
>>698
GJです!
しかしスズは不人気だな。俺は好きなんだがこういう娘…。
707名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 02:46:32 ID:rqHTLBzj
なあ、すぐ上の書き込みって何が書いてあるんだ?
あぼーんになってるんだけれど、怖いから確認できないぜ。
708名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 03:40:57 ID:n9ElrvfV
投下乙であります!
稲峰かわいいよ稲峰…
プラモ少女の今後に期待。
709名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 03:52:35 ID:8pD3RMpJ
GJです
710名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 12:52:37 ID:ePuuUHMR
雨の音が復帰祭りに乗じて連載再会してくれないかとwktkしてる
711名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 15:21:56 ID:pJ/L+/bP
俺は赤い瞳と栗色の髪の続きをwktkしとります
投下してくれたらいいなぁ
712名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 15:40:45 ID:7hB2ZszC
たぬきなべとかも・・・、雨の音は無論だけれど
713名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 16:05:37 ID:uLqIFv9r
……くそ、おまいらのせいで読みたくなってきた。
メメントモリ聞きながらまとめ逝ってくる
714名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 18:35:58 ID:tzt1QAgH
雨の音はタザリアとすげーダブる。
好みな設定なのにどっちもほぼ休止という生殺しでキツイぜ。
715名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 19:17:32 ID:JQfE7u7v
>>698
GJ
716名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 20:39:51 ID:Bjc4nTxa
ノントロも復活しないかな
717名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 21:25:29 ID:HZ76UTay
ちゅうかみんなも読み専にばかり固着しないで、いっぺんくらい書いてみようぜ!
718名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 21:27:06 ID:rqHTLBzj
書いても黒歴史フォルダに封印される文章が増えるだけなんだよな。
719名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 22:12:54 ID:n9ElrvfV
以前名無しで単発何回か書いたけど、投下してもほとんど反応がない上にすぐに
人気連載作品の投下があって「GJ」や「投下乙」のレスが一個も貰えなかったことが
一度ならずあった私が来ましたよ。

まあ、それでも懲りずにプロットだけは暖めている自分がいるわけだが。
720名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 22:25:12 ID:leIdvg/h
最近ちょっと殺伐としすぎてるので癒されるのが読みたいなあと思い
>>229の薦めで沃野を読んでみたけどとんでもないBADENDだったw
721名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 22:27:42 ID:MXmNuPcV
癒されるねぇ…このスレの範囲だったら焼きもちレベルの嫉妬とか?
722名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 22:38:27 ID:XUM6p4fv
沃野がバッドエンド?
723名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 23:04:24 ID:TrpYpKGT
グッドエンドの間違いじゃね?
>>720
血塗れ竜と食人姫もかなりお薦め。
724名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 23:30:22 ID:JPqzxXBr
>血塗れ竜
癒されたいんだったら外伝を読むべき
本編もべらぼうに面白いが、トラウマになりそうなほどショッキング(勿論褒め言葉

ほかにほのぼのエンドや四方丸く収まるエンディングが読みたいんだったら
煌く空、想いの果て
うじひめっ!
Bloody Mary
ミスタープレイボーイ
山本くんとお姉さん
振り向けばそこに…
とかがお薦め
ただし分岐に注意 分かれ道の先はグッドもあるけどバッドもあるから
725名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 23:32:55 ID:BFdD7zW9
血塗れ竜は最後の十数行を無かった事にすればいいんじゃね
いやそれでもかなりショッキングですけど
726名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 00:02:06 ID:B6VDStEo
正直レイプでさえなければ、キャラが死んでも俺的にはBADではない
727名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 00:23:03 ID:fRKQ/8P3
個人的に気になるんだが、血塗れ竜の外伝って完結?
あれを見る限り、まだまだ続きそうなんだが……
728名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 00:47:50 ID:947/Qd2F
作者本人次第だろうなあ
729名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 00:54:57 ID:fRKQ/8P3
そうか……自分は続編が出るのを期待して待ち続けるぜ。
730名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 01:02:15 ID:947/Qd2F
(・∀・)人(・∀・)ナカーマ

おれも一緒に待つぜ
731名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 01:16:37 ID:hQwabh5G
てか、全裸で待つ作品多すぎだろww
732名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 01:29:12 ID:tqzOgIXs
ぶっちゃけ潜伏してる奴大杉ワロタwwwww
733名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 01:42:17 ID:hQwabh5G
個人的には
両手に嫉妬の華を
山本くんとお姉さん
転帰予報
桜荘へようこそ

全裸で待っていますが・・続きが気になって仕方ない
734名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 01:56:34 ID:Chx24S/A
俺はこのスレのROMの多さにびっくりだぜ
735名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 02:13:40 ID:yFzqbdNC
不義理チョコのパラレルのやつも待ってたりします
736名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 02:27:31 ID:szp1i6ZN
みんなここが好きなんだな
737名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 03:27:45 ID:ycNdzlkW
雨の音まだー
738名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 04:00:54 ID:WMz3JwvJ
俺はキャラが死んだらバッドエンドだと思ってるから
ここの作品はほとんどバッドエンドwまあ面白いからいいんだが
たまに他のスレに癒しを求めにいくな
739名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 04:10:06 ID:bgiQ9bJb
漏れは赤色の続きをいつまでも待ってる信じてる…
740名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 04:17:38 ID:WMGCo1qx
ノントロ
741名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 04:27:10 ID:RNsXBJOc
雑談自重
742名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 05:11:08 ID:cTj3srGj
今は需要に供給が追いついていない感じだね
743名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 07:44:26 ID:cl9NjQOn
>>733
あんたとは美味い酒が飲めそうだ…
744名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 08:42:19 ID:Eez25/bC
華を! 華を!
出来れば花束で!!


ソロソロフクキナイトカゼヒイチマウ
745名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 08:43:01 ID:YZst0K4d
やや地獄な〜は一体どうしたんだ?
叩かれたショックで筆を折ったとか?別に作者や作品自体を叩いてはいないのに。
746名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 09:30:03 ID:KxWR1Q/4
嫉妬プログラムの続きが見たいでゴワス
747名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 10:32:05 ID:eCjMetHc
地震がキタァー(゜∀゜)ーー!!!!
これは海外出張するする彼を逃がさないために
泥棒猫が起こした地震なのよ!!
748名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 10:49:16 ID:1W5iVgib
不謹慎な奴もいるな・・・
人の心が判らないニートだな
749名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 10:49:55 ID:WMGCo1qx
あの揺れ方なら大丈夫じゃね
750名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 10:55:43 ID:8nVbL+jp
螢火・・・
751名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 12:56:16 ID:0Mu+tG8l
752名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 23:10:35 ID:SI1G+8mJ
>>751
業者
753名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 11:51:42 ID:K0MI+w0d
盛り上がりが足らん!!
754名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 12:02:55 ID:zNDN6rVj
いつものこと
755名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 13:03:51 ID:4iy0ZDvW
ぶらっどまりぃ読み返したの今日で24回目か・・・
756名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 13:35:48 ID:IdNbVvaP
どうでもいいが、絶望先生にひきこもり少女とストーカー少女がいたのに吹いた
ストーカーのことをディープラブなんですって意味わからん
757名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 15:20:12 ID:Oi94Ve3J
ストーカーって用語は日本でははここ10年来の新参でね
昔から好きな人の後を付ける『付け回し』はあったんだよ

 ラブコメでも普通に使われてた手法であって『違法』では
無かった むしろ嫉妬深さや独占欲に三角関係を暗示する
ライトサイドに近いシチュエーションであったのだ

 そいつが一気にストーカーでネガティブなイメージに統一
ドラマ脚本家にとってみりゃあこりゃあ何の冗談だ、ってね
758名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 16:29:15 ID:5mVL124g
>>698
あーイライラする
かわいそうと思ったたがプラモ否定をガキのやることとか言った事でまたイライラするぜー
ここまで読み手の感情を操れる作者さんもすごいと思う
759名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 17:05:14 ID:0Q01KSP/
>>758
こういう話でこういうキャラなんだと納得して楽しめないで
ストレス溜めて感情撒き散らすような人が
成人板来ていい大人とはとても思えない
760名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 17:20:59 ID:VE+IeNks
他人の意見にわざわざ噛み付く方がよっぽどアレ
761名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 17:23:02 ID:kcyQCKOQ
スレで修羅場展開されてもw
762名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 17:26:05 ID:pDxiA1t7
>>758
なんだこのバカは?

「1/8スケールのHeart→Hate」は趣味を理解してもらえない恋人を持った男の話なわけで

小説内のキャラクターの価値観が作者の価値観てわけじゃないくらい大人なら理解できないもんかね?。
プラモ、ゲーム、漫画あたりをガキの趣味と考える人は珍しくないし奇抜な設定というわけでもない。

逆にこんな事でイライラできる>>758のような読み手の方がすごいし、珍しい。
763759:2007/07/17(火) 17:38:08 ID:0Q01KSP/
俺が言うのもアレだが
>>読み手の感情を操れる作者さんもすごいと思う
って言ってるんだから物語だと判っていて
その考えは許せんって言ってるんだと思うよ?
1行目と3行目以外は同意
764名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 17:42:49 ID:2nuQBsUA
ヒトゴロシお姉ちゃんに惚れこんで、続きを待ち望んでる人間って俺だけなんかなぁ・・・
765名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 17:49:43 ID:X5kdYEua
>>764
そんなわけないだろう、同志よ。
766名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 17:56:55 ID:dJ/x5phw
作られた命を待ちつづけている俺は間違いなく異端。
雪奈かわいいよ雪奈…
767名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 18:05:06 ID:A/7HuRix
なんかこの間の勘違い野郎と同じ匂いが

あれ、ここだっけわかんなくなった
768名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 20:16:34 ID:YhgM23qn
お前らそろそろ雑談は控えめにしとけよ、いい加減
769トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/07/17(火) 21:27:52 ID:mA4S5vy1
では投下致します
770桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/17(火) 21:30:57 ID:mA4S5vy1
 第7話『さくら』

 朝がやってきた。眩しい朝日がカーテンの隙間から入ってくる。
更に鳥たちの鳴く声が響き渡り、寝呆けている俺の頭の回転が少しでも動きだそうとしていた。
腕や肩に何者かが乗っているような重量を感じたのは目蓋を開けて、
すぐに入ってきた二人の少女が寝息を立てて、昨日まで日常が違っていることを思い出した。

 幼馴染という赤い糸よりも深く繋がっている腐れ縁のおかげで
白鳥更紗と進藤刹那はとある事情で強制的にこの俺の部屋で同棲生活を送ることになったのは昨日ことだ。
親父とおじさんたちがタチの悪そうな友人の連帯保証人になったおかげで多額の借金を背負い、
何故か借金金額よりも多い資産でラスベガスに旅立ったという人様に
最初から最後まで正直に話すと正気を疑われるような事が起因になっている。

 俺も首を傾げたくなる唐突な出来事のおかげで断るはずだった幼馴染の同居を認めなきゃいけない状況に陥った。
かよわい女の子が家亡き子状態にしておくのは危険だ。
昨日、刹那がこの街の不良たちに囲まれたばかりだ。
だから、更紗と刹那の距離をある程度離して俺の目が届く範囲に彼女たちの住居を探さないと行けない。

 その前に現在における最強敵対勢力の猛攻をどうやって防ぐか。
もう、この先の事を考えると胃が痛くなりそうだ。
 起き上がろうとすると更紗と刹那が掴んでいる俺の腕を身動きできなかった。

更に絡み合うように俺の足と彼女たちの足が重なっていた。
女の子特有の肌の温かさと柔らかな感触を感じながら、嫌な予感が脳裏をよぎった。

(そ、そうだ……。雪菜がいつものように起こしに来るんだ)

 一応、妹分である彼女にこの光景を目撃すると兄として威厳が失われるどころか。
あっという間に桜荘の住民に知らせる可能性がある。
昨日、更紗が桜荘に不法侵入したおかげで二人の印象が悪くなったり、俺に対する冷たい眼差しを向けられていた。
人間関係なんて一度拗れてしまうと後で必ず厄介な問題として転化する。
 だが、現実というものは常に最悪な事態を無理矢理に選択させられるのがお約束らしい。

「お兄ちゃん、起きろぉぉぉぉぉ!!」
 いつものように雪菜が元気よく俺の部屋のドアをノックなしにぶち開けた。

「もう、さっさと起きないと……えっ」
「お、おはよう。雪菜」
「こ、こ、こ、これはどういうことなの!?」
 般若のような形相を浮かべて、怒気を篭もらせた声で雪菜は寝ている俺の髪を数十本ぐらい抜けそうな勢いで掴んでいた。

「ふ、ふ、不潔だよぉぉぉぉ!! お、お兄ちゃんのバカぁぁ!! 真穂さんに言い付けてやるぅぅぅ!! うぇぇんん!!」
「あぎゃっっ!!」 
 俺は間抜けな声を挙げて、将来のハゲにならないことを密かに祈っていた。
飛び出した雪菜の悲鳴に似た泣き声のおかげでこの同衾事実は桜荘の住民たちに知られてしまったことであろう。
「う〜ん……カズちゃん。えへへへ」
「もう、カズ君ったら甘えん坊さんだね。うふふふ」


 お、女を殴りたいと本気で思ったのは生まれて初めてだ……。
771名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 21:33:01 ID:7Z61Chgl
雑談ぐらいいじゃないか、エロパロだもの・・・あれ?だから駄目なのか?
772桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/17(火) 21:34:15 ID:mA4S5vy1
 その後の朝食会の雰囲気は俺が桜荘に来てから……最悪な居心地であった。
更紗と刹那の朝食分は安曇さんは何事もなく用意してくれたのだが。肝心な俺の朝食は。
「あ、あのこれは?」
「どうしたんですか? 深山さん」
「何で俺だけ朝食が冷飯と海苔だけなんだ?」

「私が毎朝早く作った朝食のメニューに文句があるんですか?」

 普段、大人しくて桜荘の唯一の聖人だと思っていた安曇さんの背後から黒い殺気のオーラーを発していた。
原因は朝の両手に花状態が原因であろう。
少なくても、桜荘で唯一の男性である俺は普段から硬派を気取っていたので、
今回の件からすると女性陣からすれば裏切りに近い行為だった。
冬眠していたオオカミという男の本性が目覚めたと住民たちは警戒しているかもしれない。
だが、この有様はあんまりである。

「せ、せめて、温かなお味噌汁を……」
「ぷっぷっぷんんん……。深山さんに相応しいたっぷり健康栄養満点の青汁を用意しておきますから。
ちゃんと残さずに飲んでくださいね。少しでも残していたら、当分の間は覚悟してくだい」

 勢い良くテーブルに叩き付けられたのは青く草色に濁った液体が入ったジョッキであった。
冷笑を浮かべて安曇さんが威嚇するように睨みながら自分の席に戻っていた。
 新たな修羅がここに誕生した。彼女の名前は最後の女戦士……。いや、そんなボケをかましている余裕は俺にはなかった。

「お兄ちゃん……雪菜に教えてくれるかな? どうして、更紗さんと刹那さんと一緒に寝ていたの? 
幼馴染の関係だとはいえ年頃の男の子と女の子が一緒のお布団に寝ているのは教育に悪いと思うんだけど」
「い、い、い、いや。お兄ちゃんも本当は一緒に寝ようと思ったわけじゃないんだけど。
更紗と刹那の友情タッグの陰謀に見事にはめられてしまって……。うっ。ごめん」

 圧倒的な迫力に圧されて、年下の妹分の雪菜に平謝りする俺に誰が責められようか。
頬を膨らませてジト目で睨んでいる雪菜が可愛いと思うのだが、
実はこの状況がもっとも油断できない事態に発展しているとわかるのは1年も付き合っている桜荘の住民だけであろう。

「本当に悪いと思っているなら、真穂さんが愛情を込めて作ってくれた
青汁を一気に飲み干してくれるかなお兄ちゃん。
それで今日はお兄ちゃんが私の部屋で一緒に寝てくれるなら今朝のことは水に流してあげる」
「待て……この青汁を一気に飲むなんて」
 泡を吹いているジョッキに視線を向けて、これだけの量を飲み干すと食道が詰まって器官に入ったりして死ぬのがオチであろう。
 だけど、桜荘の住民たちの人間関係を壊すわけにもいかないから。

この罪を引き受けよう。
ジョッキの掴むところを持ち、俺は目を瞑って青汁を少しだけ一口だけ飲み干した。

「ぐっっぎゃあぁぁぁぁっっっっ!!」
 たった一口で俺はこの世に生きていることを後悔する。
舌の味覚が苦味渋味に支配され、それらを総合すると不味いという生半可な単語で言い表わせない青汁独特の味が俺を襲う。
胃の中の物を吐き出したくはなるが、雪菜がじっと俺が飲み干すところを見つめているので、
兄として、幼馴染たちと一緒に寝た責任を取るために。
 全てを飲み込め!!

「ぐっぎょぎょごごぁぁぁぁぁーーー!!」
 鈍い悲鳴を浴びて、俺の朝食タイムは最悪な形で終了を迎えた。
正直に言おう。安曇さんや雪菜は普段ではこんな狂気に犯された危ない人間じゃあない。
1年間も桜荘の住民として付き合いした俺が言うんだから。間違いない。

 ただ、この何事もない朝食の光景に誤解した人たちがいた。
 言わずともわかるであろう。
 
 遠い故郷からはるばるとやってきた更紗と刹那である。
773桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/17(火) 21:37:21 ID:mA4S5vy1
 朝食の時間が終わると桜荘の住民はそれぞれに解散して、自分たちの生活に戻る。
安曇さんは大学へ行き、美耶子と雪菜は同じ高校へ通学。
奈津子さんは一日桜荘の管理人兼オーナーとしての職務を果たすことであろう。

俺はバイトに行きたいところだが、店長には午後から行くと電話で連絡していた。
昨日のチンピラどもに殴られたことを理由にしたが、実際は違う。
昨夜、俺の元にやってきた幼馴染の二人とこれからの事をゆっくりと話すつもりで午前の仕事は勝手ながらキャンセルしたのだ。

 憩いの場の朝食で一口も喋らずに礼儀正しく静かだった幼馴染を自分の部屋に連れてきた。
ここ以外の場所で話すと奈津子さんレーダー内に感知されて、新たに俺をからかう美味しいネタを提供する可能性がある。
そんなものはもうごめんだ。勝手にやってくれ。
 今朝のような酷い朝食を回避するためなら、俺は安曇さんに平謝りして買物の荷物を全て背負ってもいいくらいだ。
 小汚い組み立ての机を立てると俺は憩いの場から借りてきたお茶をコップに注いで、更紗と刹那の方に渡した。

 さて、話すべき議題はもう決まっている。
「更紗。刹那。今日中に新しい部屋を探してこの家を出ていってくれないか?」
 と、単刀直入に俺は言った。
「どういうことなの? カズちゃん」
「桜荘の住民というか、安曇さんや雪菜が昨日の出来事で相当キレかかっている。
更に敵に回したくない美耶子が沈黙を隠したままだ。
このままだったら、せっかく1年間で築いてきた人間関係にひび割れそうなんだよ」

「わ、わ、私たちよりも桜荘の人たちが大切なの? カズ君」
 刹那が怯えた表情を浮かべて、すがるような円らな瞳で俺を見つめていた。
彼女の指摘通りに今はどちらを天秤に傾けても、俺の中の優先順位というものははっきりとしている。

壊れてしまった幼馴染の関係よりも現在の桜荘の住民の関係の方が大事だから。
 だが、その答えをはっきりと言うのは1年前みたいに二人を傷つけてしまうだろう。
すでに俺達の過去において、更紗と刹那を……たくさん傷つけてしまった。

 更紗と刹那をあんな目に遭わせた自分が二人に好かれていいわけがない。
もう、嫌われてしまっているなら、とことん嫌われてしまえばいい。
 自虐的な気分になりながら、俺は答えを口にする。

「い、今は桜荘の桜荘の人たちが大切だよ」
774桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/17(火) 21:40:09 ID:mA4S5vy1
「カズちゃん」
「カズ君」
 胸が引き裂けるような想いを抱いたのはどちらだろうか。
更紗も刹那も俺も気まずい雰囲気の中で誰も視線を合わせようとはしなかった。二人が傷ついた顔を見るのが恐い。
 大丈夫、と思っていた。更紗と刹那が傷つく姿を見ても、俺は耐えることができるのだと。
この桜荘に入居してからいろんな出来事が遭ったおかげで精神的に強くなった。

だが、それは妄信であった。
ただ、あの時の頃のように二人の泣き顔を目蓋の中で浮かぶだけで逃げたくなる。

「カズ君は……どうしてどうしてどうして……私と更紗ちゃんを避けるの? 
私たちのことが大嫌いだから? この1年間。カズ君の事を忘れたことはなかったよ!!」
「俺は忘れていたよ。更紗と刹那のことなんて」

 半分は嘘。半分は本当であった。
桜荘の住民と過ごす日々の間に更紗と刹那の存在は記憶の彼方に置き忘れていた。

楽しいことを忘れても、あの告白した日の事は忘れなかったのだ。
刹那は少しだけ涙目になって凄い剣幕で言った。

「そんなの……酷すぎるよ」
「カズちゃん……。告白した時の事は謝るから。昔みたいに3人で仲良くしよう。ねっ?」
 更紗も体全体を震わせて言葉を搾り出した。
俺は自分で入れたお茶を啜って沈んでいる気分を落ち着かせる。
熱いお茶のおかげで舌が少し火傷したが、最初から言うべきことは決まっていた。

「それはもう無理だよ。更紗。
 もう、昔みたいには戻れない。だって、俺は逃げてしまったから。
結局は肝心なことからはいつも逃げていたんだ。
決断すると壊れてしまう居心地の良い場所を失いたくなかったからさ」


 深山一樹という臆病者は大切に想っていた幼馴染の関係を壊れる事を恐れて逃げた。
対面するだけでその禁断の話題が口に出るのを防ぐために避けた。
俺に温もりを求めて、必死にすがり付いてきた更紗と刹那の救い手を差し伸べることはなく。
自分はさっさと遠い地まで逃げてしまった。

結局、俺はチキン野郎と呼ばれる男の分類に入るのだ。
 そんなヘタレでクズな男に一体何の価値があるのであろうか? 
更紗と刹那の傍にもっと相応しい人間が隣にいるべきだと俺は思った。

「だから、もう一緒には居られないんだよ。俺達は」

 心の奥に秘めた想いとは逆の言葉を更紗と刹那にかけることしかできなかった。
 そう、二人ともこんなクズ男からさっさと巣立って行かないとダメなんだ。
775桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/07/17(火) 21:43:45 ID:mA4S5vy1
★盗聴器を仕掛けるのは乙女の常識です

「……居られないんだよ。俺達は」
 奈津子は管理人部屋室から内緒で仕掛けていた盗聴器で住人の一人である深山一樹と幼馴染の会話を盗聴していた。
住民のプライバシー侵害という言葉よりも管理人としては
やがて桜荘を燃え盛る火種をできるだけ早いうちに消火したかった。
特にあの幼馴染たちは桜荘にとっては百害あって一利なしの存在である。
彼女にとって危惧しているのは彼が来る1年前の桜荘の状況に戻ることだけは避けたかった。
深山一樹の働きにより、安曇真穂、御堂雪菜、自分の妹の高倉美耶子が笑顔を取り戻してくれたのだ。
 それは、管理人として、姉として、彼に感謝している。

 だからこそだ。
 深山一樹の幼馴染の登場は3人の心を大きく動揺させることになるであろう。
ほんの小さな勇気を振り絞って心を救ってくれた人に想う気持ちは、大抵は恋心と決まっている。
まだ、誰も意識をしているわけではないが、白鳥更紗と進藤刹那という1年間の過ごした思い出よりも
たくさんの思い出を持っている幼馴染たちに嫉妬することになるであろう。 
火種が大火する前に幼馴染たちを追い出してしまえば何の問題はクリアされるはずであったが……。

「まさか、一樹くんと幼馴染たちの過去にそんなことがあったとはね……」

 昨日の尋問でも白鳥更紗は一樹との関係はただの幼馴染としか答えなかった。
それ以上のことは初対面の人間に話す必要はないであろう。
はるばると尋ねてきた幼馴染から距離を取ろうとする一樹に違和感を覚えていたが。彼らの関係は複雑であった。
 要約すれば、告白された一樹は幼馴染の二人を選べなかった。

それは長年大切していた関係が壊れるのを恐れてから。
 それが現在の一樹にとっては思い出したくない過去であった。
精神的に動揺してしまっている彼を癒すのは最終的に幼馴染の関係の修復であろう。
だとすると幼馴染を追い出してしまうのは一樹にとって二度と立ち直れる機会は永遠に失われる。


「う〜ん。思っている以上に厄介な問題だわ」
「だったら、あの幼馴染たちを殺してしまったら?」
 後ろから囁かれた透き通った声の持ち主は奈津子の背後にいつの間にか存在していた。
他者を圧倒する絶対的な存在感、強い意志が感じられる黒い双眸を奈津子へとぶつけてきた。

「さくら。冗談でもそんなことは言わないでくれる」
「それが最も効率がいいやり方だと私は思ってるよ。あの子たちが邪魔なら尚更ね」
「人間は感情的な生物だから、どれだけ効率が良くても人を殺すことには躊躇するわ」
「だって、私は人間じゃないもん。桜の木だもん」

 黒く艶やかで流麗な黒髪、そして人間の女性が最も理想とする整った容姿。
彼女は人間以外の存在だと言われても、年頃は一樹たちとそう変わることがない。
 さくらと呼ばれた少女は桜荘の庭に立っている桜の木。

わかりやすく言えば、桜の精と言われる存在であった。
奈津子ですら母親から紹介された時は腰が抜けるぐらいに驚愕してしまった。

「全く、この地に縛られる桜の精の業はいつになった解き放たれることやら」
「もうすぐよ……。さくらはようやく解放されるわ」

 さくらが桜の呪縛から解放される日は近い。

 後、たった一つで彼女は……。
776トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/07/17(火) 21:44:47 ID:mA4S5vy1
投下終了です

ちょっと投下に疲れたかもw
777名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 21:48:03 ID:5mVL124g
>>776
GJ!!
盗聴器が秋葉に普通に売ってて驚いた経験がある
でも一個一万ぐらいしたからバイトしてない高校生が買えるようなシロモノだろうか?
まあどうでもいいけど
778名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 21:49:01 ID:27/8kOsQ
おつかれさまでした。GJ!!!!!!!!
779名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 22:02:25 ID:4iy0ZDvW
>>776
なんかデジャブを感じる
780名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 22:09:40 ID:X5kdYEua
>>776
GJ!!
盗聴器って普通に売ってるなんて知らなかった。
781名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 23:53:43 ID:1lVXlrtw
こいつをみてくれどうおもう
http://nekomarudow.com/y/
782名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 23:56:52 ID:+WfLdw+z
ガイシュツじゃね?
783名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 23:57:33 ID:+WfLdw+z
あ、スマソかった。
age荒らしに反応しちまったわ。
784名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 03:58:26 ID:550CdYzz
>>780
元々アキバはそう言ったのも
普通に売っていた、電気街だったんだが
いつの間にか、オタクの街になっただけ事だ。
785名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 06:21:01 ID:mU3W7LGt
>>776
GJ!
シリアスな展開だったのにいきなり
★盗聴器を仕掛けるのは乙女の常識です
って出てきて吹いたwwwwwww
786名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 07:48:19 ID:u9NF6++D
トライデント氏のこう言う所は好き
787名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 08:34:45 ID:lVfawouy
今週のサンデーのワイルドライフが修羅場発生の件について
788名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 14:44:13 ID:QQpSy0o/
それは別のとこで話そうぜ
789名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 16:31:50 ID:S77j35zR
本スレとSSスレの用途を混同してる奴が確かにいるな、最近
790名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 16:49:08 ID:lcrPgvES
>>784
ってことはオタクの町になる前は、
浮気を監視するための道具を求める女の子の街だったってわけか・・・

そっちの方がステキだ
791 ◆tVzTTTyvm. :2007/07/18(水) 22:33:11 ID:RkxvaB6p
ずっと放置してた
『Why Can't this be Love?』の続きが書き上がりました
前回投下が去年の10月22日で忘れられてる方も多いでしょうから
前回までの話が収録された補完庫のURL張っておきます
http://dorobouneko.web.fc2.com/SS/20060323_1.html

では投下します
792Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2007/07/18(水) 22:35:17 ID:RkxvaB6p
「何でこんな事になっちまったんだ……」
 俺は頭を抱えながら呟いた。
 あの後、店の従業員の人達が直ぐに救急車も呼んでくれたお陰で夕子は大事には至らずにすんだ。
 とりあえず今は入院しているが、数日もすれば退院できるだろう。
 尤も退院した後も暫らくは自宅療養になるだろうが。

 そして俺はと言うとあれから丸一日経ったが、鬱とした気持のままだ。
 やはり夕子のことが気にかかる。 当然だ。 何だかんだ言ってもあいつは俺の幼馴染だ。
 それがあんな風に怪我を負って入院して、気にならないわけが無い。
 だからと言ってどうする? あいつの望むように付き合ってやればいいのか?
 違う。 そんなことしてもそれは一時的なその場しのぎにしか過ぎない。
 それでもアイツはそれで満足してくれるだろう。
 だが、其の選択肢を選ぶと言う事はすなわち美嬉との別れを――。
 出来ない!!
 やっぱり駄目だ。 夕子のことは確かに心配だが、それでも今の俺にとって一番大切なのは美嬉だ。
 もう決めよう……。 今度こそ本当に覚悟を。
793Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2007/07/18(水) 22:37:06 ID:RkxvaB6p


   X    X    X    X


 あの日、紅司クンと白波さんの間に幼馴染以上の感情があるのではないかという疑念が沸いて以来
私は白波さんは勿論、紅司クンにもまともに視線を合わせることも話すことも出来ずにいた。
 苦しかった。 寂しかった。
 本当は会って話したい気持で一杯だけど、でも出来なかった。
 疑念の気持を抱いたまま会うのが、話すのが怖かったから……。
 そして私は紅司クンを避け続けてた。

 そんな鬱とした気持のまま過ごす日々のある日の学校の休み時間。
「美嬉!」
「こ、紅司クン……?」
 私は紅司クンに呼び止められた。
「話があるんだ……」
 紅司クンは何時になく真剣な面持ちだった。
「ごめんなさい。 今、用事があるから……」
 でも私はそう応えその場を立ち去ろうとした。
 其の真剣な面持ちの口から語られるのが別れ話なのではと思うと怖くて。
 だけどそんな私の腕を掴み紅司クンは言葉を続けた。
「大事な話なんだ。 一緒に来てくれ」
「え……? ちょ、ちょっと待っ……」
 そして私は戸惑いを隠せないまま紅司クンに手を引かれ多少強引とも言える形で連れて行かれた。
794Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2007/07/18(水) 22:38:02 ID:RkxvaB6p
 紅司クンに手を引かれ私が連れて来れれた場所。 それは屋上だった。
 屋上に付くと紅司クンは振り返り私の顔を真っ直ぐに見つめた。
 其の真剣な眼差しに私は思わず気圧されながら口を開く。
「紅司クン? あ、あの私……」
 そんな戸惑いを隠せずにいる私に向かい紅司クンは意を決したように口を開いた。
「美嬉、お前に話しておかなければいけない事があるんだ。 沢山有るけど、
だが一番大事なことから伝えるぞ。
俺にとって誰よりも一番大事なのはお前なんだ、美嬉」

 其の言葉に私は今までの不安を拭い去ってくれる想いと、そして安堵感を感じ……。
 でも直後正反対の気持が沸き起こる。
 紅司クンと白波さんの親しげに話していた姿が脳裏に浮かんでしまい……。
「紅司クン……。 嘘……言わなくったっていいよ。
紅司クンにとってお似合いなのは私じゃないって解ってるから……」
 そんな弱気な気持が気持とは裏腹な言葉を紡いでしまった。
「夕子のことを言ってるのか?」
 そして紅司クンの口から出てきた言葉は私の不安な気持を見透かしてるようなものだった。
 私が其の言葉に視線をそらしたまま頷くと紅司クンは私の肩を掴み正面から見据え言葉を続けた。
「やっぱり誤解してたか。 いや、まるっきり誤解って訳でもないが……。
確かにお前が思ってるように俺の夕子に対して抱いてた想いはお前が思ってた通り、だった。
幼馴染としてじゃなくて女として好き、だった。 でもそれらの気持は全部過去形だ。
今、俺が好きなのは……、いや今だけじゃなくこれから先も俺が好きな女はお前なんだ。
もう一度言うぞ。 俺が今、一番好きなのはお前だけだ!
この気持だけは偽り無い本当の気持なんだ! お前を失いたくないんだ!」

 涙が溢れ出してきた。
 紅司クンがこんなにも私の事を思っててくれたことに対する嬉しさ。
 それなのに私は信じてあげられず、それどころか勝手に疑って避けていた事に対する申し訳なさ。
 そんな気持で胸が一杯になってこみ上げる想いが涙を溢れさせていた。
「ほ、本当に私でいいの? 白波さんじゃなくて私なんかで……?
わ、私、紅司クンのこと信じ切れず、勝手に疑って避けてたのに……」
 私がそう言うと紅司クンは私の涙をそっと拭い優しく微笑んでくれた。
「気にしてないよ。って言うより疑われるような俺にも否があった。 済まなかった。
辛い想い抱かせてしまって……」
 紅司クンの言葉に私は首を振った。
「ううん。 謝らなきゃいけないのは私のほうなのに……」
「ありがとう。 これから先も俺の恋人で―― 一番大切な人でいてくれるか?」
 優しい声で語りかけてくる紅司クンに私は想いの全てを込めて言葉を紡ぐ。

「ハイ。 私のほうこそコレから先も、ずっと、ずっと……、一緒にいてください!」
795Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2007/07/18(水) 22:40:49 ID:RkxvaB6p


   X    X    X    X


 何でよ。 どうしてよ。 どうしてこんなことになっちゃったのよ。
 私と紅司は幼馴染で誰よりも深い仲で、しかも相思相愛同士だったのよ?!
 なのに何でこんな事になっちゃったのよぉ……!
 おかしいよ。 間違ってるよ……。
 そうよ、私を選ばないなんて紅司は間違ってる。

 どす黒い感情がお腹の底から沸き起こり心を塗りつぶしていく。

 私じゃなくて藤村さんを……藤村を選ぶだなんて紅司は間違ってる!
 藤村が、あの女が紅司に間違いを犯させた。
 許せない……! 私にこんな思いをさせた紅司もあの女も絶対に許せない!
 絶対……絶対に許さないんだから!!

 だから……二人には……報いを……

 受けさせてやる!




 離れた場所に二人で話をしている紅司と藤村の背中を見つめながら私は鞄に手を突っ込んだ。
 そして取り出すは一振りのナイフ。

(死ね……! 死ね……!! 死ね……!! 死ね……!!! 死んでしまえ!!!!
私を裏切った紅司も! 私から紅司を奪ったあの女も!! 二人とも死んでしまえ!!!)

 怒りと憎しみと妬みで胸のうちを支配されてた私は其の行動に疑問を抱く余地など無かった。
 そして私の存在に気付かぬ二人に向かって私は真っ直ぐ進む。
 二人揃ってでも、どちらか片方でも構わない。
 この手で引導を渡してやる!
 もう、ただ二人が一緒にいるそれだけで私の心は掻き乱され許せない思いだけで一杯だった。
 このナイフをあの二人に突き立てる、それしか私の頭に無かった。
 そしてあと数歩で二人にナイフが届く――、そう思ったときだった。
796Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2007/07/18(水) 22:42:24 ID:RkxvaB6p
「何やってるんだ白波!」
 私は腕を掴む強い力と其の声に妨げられてしまった。
 其の掴んできた手と声の主は――
「先……輩……?」
 かって一時だけ――そう、紅司を忘れたいが為だけに偽りの交際をしてた相手――。

「こんな物持って! 白波! 一体何をするつもりだったんだ?!」
「何を……ですって? そんなの決まってるじゃないですか……。 報いを受けさせてやるんですよ。
紅司に私を裏切った事に対する――、そしてあの女に私から紅司を奪った事に対する!!!」
「バカヤロウ!! 本気で言ってるのか?!」
「えぇ、本気ですよ。 冗談でこんなこと言えるわけないじゃないですか。 だから退いて下さい。
退いてくれないなら先輩も……」
「俺も刺すって言うのか? いいぜ……」
 次の瞬間、先輩は私の手首を掴むと自分の方に向け……。
「せ、先輩何するんですか?!」
 先輩は私の手に握られたナイフをそのまま自分の腕に突き刺したのだった。
 手に伝わってくる肉を切り裂いた感触が、伝って流れてくる血の生温い温度に私は……。
「目を反らすな白波! コレがお前がしようとしてた事なんだぞ?!
こんな事をお前はしようとしてたんだぞ?! 分かっているのか?!」
 先輩の言葉が胸に突き刺さる。 ナイフから滴る血は私の手にも伝ってきて――。

「う、うわああぁぁぁぁぁ……………!」
 途端に恐ろしさが込み上げてくる。 人を傷つけてしまったと言う事の怖さ、
取り返しのつかないことをしてしまったという罪悪感――。
 指先から力が抜けナイフから手が離れると真っ赤に染まった掌が目に飛び込む。
 血塗られた掌に私はその場に崩れ落ちそうになり――。
「白波?! おい?! 大丈夫か白波?!」
 ――そんな崩れ落ちそうになった私の体を支えてくれたのは先輩の腕だった。



「ゴメンナサイ……ゴメンナサイ……ゴメンナサイ……」
「いや、俺の方こそ色々済まなかった……」
 あの後泣き崩れる私は先輩に連れられその場を離れ、そして先輩の腕の手当てもして今に到ってる。
「先輩……、腕の方は……」
「あぁ……もう血も止まってるし、ちゃんと指も動くし神経とかも大丈夫みたいだ」
 先輩の言葉に私は胸をなでおろした。 そしてホッとするとまた涙が溢れてきた。
 そんな私の涙を先輩は拭ってくれて心配そうに覗き込んできた。
 私を案じ顔を真っ直ぐに見つめてくる先輩の眼差しに私の荒んでた心は癒される思いだった。

「先輩……どうして、その、私なんかのためにココまでしてくれたんですか?」
 私がそう訊くと先輩は一瞬困惑したような表情を見せ、そして僅かに視線をそらし口を開く。
「その……お前の事が、まだ……好き、だから……」
「え……? そ、そんな……。 だ、だって私……」
 私は紅司を忘れられなくて、それが辛くて紛らわせたいと言う身勝手な思いで
その気も無いのに先輩と付き合った振りしてて……。
 それで先輩を傷つけたのに……。
「あ、別にまた付き合ってくれとかそんな事は言わないから……。 お前が吉田を諦められない事は、
惚れた相手を諦められない事ぐらい、そんな事この俺が誰よりよく知ってるから……。
でもな、振り向いてくれないからってそれでどうでもいいわけじゃないんだ。
例え振り向いてくれなくっても、報われない片思いでも、
それでも好きな相手が過ちを犯すのをみすみす黙ってなんて見てられなかったから……」
 其の言葉に再び涙が溢れ出してきた。
 先輩の気持に比べて私の紅司に対する気持の身勝手さに対し恥かしさがこみ上げてきた。
 気付けば私は先輩の胸に顔を埋め泣いていたのだった。
797Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2007/07/18(水) 22:44:06 ID:RkxvaB6p




 ――あれから数ヵ月――
 とある休日の昼間。

「おまたせっ、先輩」
「いや、俺も少し前に来たばかりだから。 じゃぁ行こうか」

 あれから気付けば私と先輩はこうして過ごす機会が増えていた。
 これが恋愛感情なのか、と問われるとやっぱり違う気がする。
 失恋の傷も多少は癒えたけど、でもやっぱり未だ紅司に告げられた事が辛くて諦め切れなくて、
結局それを紛らわす為先輩を利用してるだけかもしれない。
 それが申し訳なくて先輩にそう伝えたりもした。
 それでも先輩は微笑んでくれた。
『それでお前の気持が紛れるなら幾らでも利用してくれればいい』と言ってくれた。
 そんな先輩の優しさに縋ってる自分が卑怯だと自己嫌悪に陥ったりもしたけど……、
それでも先輩は変わらない優しい笑顔を向けてくれた。
 
 そして、最近気付いた事が一つある。
 それは先輩の――

 このひとの笑顔が前よりも好きになってた事だった――。


END
798名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 22:45:58 ID:RkxvaB6p
投下完了です
長らくお待たせしてしまって申し訳ありませんでした
では
799名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 22:58:57 ID:pN1SlrY5
放置作品復活の季節がやってきたのか・・・?
何はともあれ超GJです!
800名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 23:04:49 ID:R1Hd+sAW
スレ進んでるから来てみたらまたトライデントの糞作品だった。
ということが最近多い
801名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 23:12:11 ID:WFRduOVs
>>798
お疲れ様です。そしてGJ!
諦めかけてた作品が次々と復帰するとは、潜伏し続けた甲斐があったよ。
完結した話が読みたいけど、できるだけ長く続いて欲しいから完結して欲しくないもあって複雑な気持ちだよ。
勝手に夕子ルートを脳内で補完するしかないか…。
802名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 23:54:03 ID:lcrPgvES
>>798
GJ!
脳内補完していた作品の続編が読めるほどうれしいことは無い
やっぱり脳内より作者様が書く方がレベルが段違いだぜ(*´д`*)
803名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 00:12:03 ID:YnxRWI9v
復活祭キタ!!
そして先輩カッコヨスwww
804名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 00:17:50 ID:+i3VZ17c
GJ!
だけどなんか尻切れトンボみたいな感じに感じるのは俺だけかな…肝心の美嬉の嫉妬描写が薄いまま終わっちゃったし
でもありがとう、復活してくれて…
805名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 01:35:27 ID:ULiaD+XJ
>>800
確かにトライデントの糞作品のおかげでスレが汚れたのは事実だ
彼のおかげで嫉妬スレに荒らしが集まり、他の作家の投稿意欲を失わせた罪は
大きいであろう。てか、ブログやっているんだからそっちでやれよって感じだよな

俺はトライデントがこのスレから追放することを望むぞ!!

806名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 01:39:02 ID:ULiaD+XJ
◆tVzTTTyvmも長い間待たせたというのに
くだらない作品を書きやがって・・これだったら完結させない方が良かったな
お前も追放リストに入れてやるよ
807名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 01:44:31 ID:ULiaD+XJ
つまらない作品を書く奴がスレから追放される。それは
当たり前の事だろうに・・このスレを見捨てた阿修羅の管理人を始め、
多くの神々は自分達の文章力のなさに絶望して逃げたし・・

ダメだな。このスレはwwwwwwwwwwwwwwww
808名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 01:47:38 ID:1aHmYBA6
>>798
乙です。まさか続きを読むことができるとは。
やはり嫉妬するおにゃの子は最高だな。
809名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 01:50:05 ID:ULiaD+XJ
>>808
脳内大丈夫か?
こんなつまらない作品にGJとか言っているから
アホな作者が調子に乗って投稿するんだよ
お前のやっていることはどれだけ愚かなことかわからないの?
810名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 01:53:29 ID:Lv03r3F8
一部の携帯だけだったら悪いんだけど、保管庫の『君という華』の幼なじみが絶望に打ちひしがれるところと幼なじみがキラと出会うシーンが抜けてないかな?
811名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 01:54:18 ID:ULiaD+XJ
やれやれ・・トライデントや赤いパパみたいなアホが調子に乗って投稿するから
アホなスレ住人までいい作品とつまらない作品の区別が付かなかった
>>800の言う通りにトライデントの糞作品を読まされる読者の身になれってんだ!!
812名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 01:57:45 ID:ULiaD+XJ
>>810
はいはい これでしょ

 昼休み。学生にとって心休まる時間。
仲の良い友達とする食事は、楽しく、普段よりも料理を美味しく食べる事が出来る。
  そう。社会人になれば取り戻す事の出来ない、貴重な時間。それが昼休み。なのに、だ。
「ほら、亮君。から揚げ好きでしょ? はい、あーん」
「高木先輩、手作りミニハンバーグです。ちょっと奮発して、松坂牛をミンチにしてみました。
  その、あ、あーん」
「……あら、何か小さい生物がいると思ったら、椎名ちゃんだったの。ごめんね気付けなくて。
それとここは二年生の教室だよ? 自分の教室も分からないのかな?」
「そんな訳ないですよ。それを言うなら、水田先輩だってクラス、隣ですよ?
  胸にばかり栄養回さないで、少しは脳の活性化に役立ててみてはいかがでしょう?」
「ご忠告有り難う。椎名ちゃんは屁理屈ばっかり言う脳鍛えるのもいいけど、
もう少し身長と胸に栄養回そうね。それじゃあ小学生だよ? あははっ。椎名ちゃんは可愛いね」
「ふふっ。水田先輩は美人で羨ましいです。せいぜいその美貌で男子生徒のオナペットにでも
なっておいて下さい。あははっ。雌牛にはぴったりですね」
「なら雌猫風情な椎名ちゃんは特別な趣味をお持ちなお兄ちゃん達に拉致られてバラしてもらえば?
  あははっ。良かったね、椎名ちゃん。きっとテレビとかに出れるんじゃない?
  死体だけど。あははっ」
「……あのー、二人とも、さ」
「ん? なあに亮君? この雌猫がうざいのかな? かな?
  待っててね、後で二度と近づかないように言っておくから」
「何言っているんですか。水田先輩が乳臭いから勘弁して欲しいんですよね?
  本当、体臭って自分では気付きませんからね」
「いや、じゃなくて。から揚げとハンバーグが俺の顔に密着してるんだけど……」
  二人は慌てておかずを自分の弁当へと戻すと、今度はどっちが顔を拭くかで睨み合い。
俺の昼休みはいつもこうだ。休まるどころか神経が磨り減って磨り減って血反吐を吐き出しそうだ。
  この二人、水田 祥子と葵 椎名は事あるごとに俺の周りに出現する。最近チョット怖い。
  祥子とは小学生からの付き合いだ。セミロングの髪に、スラリと伸びた肢体。
今や男子学生の九割は告白していると言う人気ぶりだが、本人はあまり恋愛に興味が無いのだろうか。
誰とも付き合った事がないらしい。
  俺はよく友達に羨ましがられるが、俺も祥子も、一緒にいた時間が長すぎてもう
お互いをそう言う対象で見ていない。気がする。
大事な存在だが、恋人、と言う言葉の響きはどうにもピンと来ない。
  椎名ちゃんは、俺の後輩だ。腰辺りまで伸びた黒髪のストレートヘヤー。
くりっとした瞳に、透き通るような白い肌。
祥子とは小学生からの付き合いだ。セミロングの髪に、スラリと伸びた肢体。
今や男子学生の九割は告白していると言う人気ぶりだが、本人はあまり恋愛に興味が無いのだろうか。
誰とも付き合った事がないらしい。
  俺はよく友達に羨ましがられるが、俺も祥子も、一緒にいた時間が長すぎてもう
お互いをそう言う対象で見ていない。気がする。
大事な存在だが、恋人、と言う言葉の響きはどうにもピンと来ない。
  椎名ちゃんは、俺の後輩だ。腰辺りまで伸びた黒髪のストレートヘヤー。
くりっとした瞳に、透き通るような白い肌。
どこか、人形チックな風体に、初めて会った時は驚いたものだ。
  しかも、何故かは分からないが俺は椎名ちゃんに気に入られたらしい。
さらに、何故か最近のエンカウント率は尋常ではない。気が付くと隣にいる、みたいな。
  でもまあこんな可愛い後輩に慕われるのも悪くない。
そう言うといつも祥子は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
  祥子の前で、椎名ちゃんの話題はNGなのだ。椎名ちゃんの前で祥子の話題がNGであるように。



 さて。話を戻そう。そんな感じのいつもの殺伐とした昼時間を送っていると、
不意に二人とも異変に気が付いてくれたようだ。
  そう。俺は今日、弁当を忘れてしまったのだ。というか、いつも弁当を作ってくれて、
さらにカバンに入れてくれているはずの姉ちゃんが、どうも今日に限って忘れたらしい。
813名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 01:59:08 ID:orRJMrOi
叩くな叩くな。気に入らんなら徹底的にスルー汁。
だがそんな俺も>>809の三行目以降には大賛成。
神気取りなアホ作者が中途半端に下らん長編書いて未完にしてるようじゃ
保管庫もスレも大変なことになっちまうからな。

別に◆tVzTTTyvm氏ピンポイント爆撃ではないことを追記しておく。
814名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:01:07 ID:JPlL8IVK
兄さん兄さん、書き手にネガキャンやる時はね、けなしたら逆効果なの。
むしろ褒めちぎりなさい。そして、投下量を増やさせて質を落とさせるの。

糞だとか言ってるとそのうちテメエが書きやがれと住人からブーイングよ?

それともご本人じきじきに降臨して自分叩きして同情を希(こいねが)うパターン?
815名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:01:20 ID:KlYP06n8
今の嫉妬スレは糞だな
その調子でもっと荒らせ荒らせー
816名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:03:40 ID:USA+3VRI
相変わらずの自演
私怨パワーもここまで来ると感動すら覚える
817名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:06:09 ID:ULiaD+XJ
>>813
同意だな
管理人の阿修羅様にそんな仕事を増やすのはよくないってことだ
神気取りのアホを叩くことはこのスレの活性化に繋がるってわけだよ
寝取られ大好きな俺はここで存在すら否定されたからな・・怨恨の線は全くないが
この未完と投稿している作品の詰らなさにいい加減に嫌気がさしているんだよ


特にロボと緑猫とRIG2と黒ングヘアーとトライデントと赤いパパはいい加減に消えるべき
こういう大物扱いされている連中がいるから新規が全く増えないんだよ
いい加減に投稿するな・・自分のサイトに引っ込んでろ・・

特にトライデント・・お前、いい加減に調子に乗りすぎ・・ブログがあるんだから
そこで書け・・いいな・・。
818名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:06:10 ID:+i3VZ17c
>>816
IDがUSA、オメ
819名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:09:07 ID:KlYP06n8
>>817
同意だな
管理人の阿修羅様にそんな仕事を増やすのはよくないってことだ
神気取りのアホを叩くことはこのスレの活性化に繋がるってわけだよ
寝取られ大好きな俺はここで存在すら否定されたからな・・怨恨の線は全くないが
この未完と投稿している作品の詰らなさにいい加減に嫌気がさしているんだよ


特にロボと緑猫とRIG2と黒ングヘアーとトライデントと赤いパパはいい加減に消えるべき
こういう大物扱いされている連中がいるから新規が全く増えないんだよ
いい加減に投稿するな・・自分のサイトに引っ込んでろ・・

特にトライデント・・お前、いい加減に調子に乗りすぎ・・ブログがあるんだから
そこで書け・・いいな・・。
820名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:11:39 ID:ULiaD+XJ
ってか、トライデントのブログ・・おかしいおかしすぎるだろう
何でアクセス数1日で2400以上来ているんだあん?
その次の日になったら、600-400-200って

どう見ても、自分でF5連打しすぎだろww 
そこまで自作自演でアクセス数増やしたいんですかwwwwww

後、Φなる・あぷろーちとダブルキャストを無断に著作権侵害しているし
ネタも古すぎだろ・・誰か荒らせよもう

後は痛いのはRIG2もそうだよな・・
821名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:13:06 ID:KlYP06n8
>>820
同意だな
ってか、トライデントのブログ・・おかしいおかしすぎるだろう
何でアクセス数1日で2400以上来ているんだあん?
その次の日になったら、600-400-200って

どう見ても、自分でF5連打しすぎだろww 
そこまで自作自演でアクセス数増やしたいんですかwwwwww

後、Φなる・あぷろーちとダブルキャストを無断に著作権侵害しているし
ネタも古すぎだろ・・誰か荒らせよもう

後は痛いのはRIG2もそうだよな・・
822名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:18:30 ID:ULiaD+XJ
とりあえず、言いたいことはそれだけだ
これを荒らしという奴は中越沖地震の報道を見て、
亡くなっている人や家を亡くしたお年寄りや住人達が
体育館で暮らしている姿に笑っている心のない奴らだ・・

俺はきちんと5万ぐらい今回の地震の被災者に寄付しましたし
心の豊かではない人間は何でもかんでも荒らしと決めつけすぎ

では。もう、寝る

中越沖地震で亡くなった方々のご冥福をお祈りします
1日でも早く村が復興することを祈って。

823名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:20:17 ID:YAFTNCHF
素直にあぼーんすればいいんじゃね?
>>821
同じことコピペしらくていいから。
824名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:20:24 ID:svKvmB9Z
ID:ULiaD+XJさん
いい人すぎだろ・・5万も寄付なんかできないわ
825名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:20:38 ID:KlYP06n8
>>822
同意だな
とりあえず、言いたいことはそれだけだ
これを荒らしという奴は中越沖地震の報道を見て、
亡くなっている人や家を亡くしたお年寄りや住人達が
体育館で暮らしている姿に笑っている心のない奴らだ・・

俺はきちんと5万ぐらい今回の地震の被災者に寄付しましたし
心の豊かではない人間は何でもかんでも荒らしと決めつけすぎ

では。もう、寝る

中越沖地震で亡くなった方々のご冥福をお祈りします
1日でも早く村が復興することを祈って。
826名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:22:25 ID:KlYP06n8
>>824
同意だな
ID:ULiaD+XJさん
いい人すぎだろ・・5万も寄付なんかできないわ
827名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:22:53 ID:YAFTNCHF
>>822
どうやったら寄付=嵐じゃないっていう式が成り立つの?
別にどうでもよくね?
828名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:24:43 ID:YAFTNCHF
>>826
コイツなにがしたいの?
829名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:46:16 ID:8So2+65s
いつもどーりニートの暇潰しでございます
830名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:56:17 ID:VgT7NAHE
>>798完結お疲れ様です。
先輩はオイシいとこ持っていったなぁ。
831sage:2007/07/19(木) 03:43:32 ID:y+V0/BYg
このスレたまに阿呆と言うか暇人というか明らかに自作自演やって
頭の悪い文章書く奴が来るのが玉に瑕。
>>798GJ なんだが後1ひねりぐらいほしかった気もする
832名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 04:40:27 ID:+VD1+yWi
>>798
完結お疲れ様です。
先輩かっこいーなおい……

……もう夏、か。
833名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 08:01:54 ID:IWuJg6MI
>>798
完結GJでした!!

そしてス○ーしますた
834名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 09:05:07 ID:Fx0Rbuxh
だが、トライデントの糞作者以外の神はGJなんだけどね・・
いい加減にスレの住人に見放されている現実を理解して欲しいよ
835名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 09:09:38 ID:vknAnOzF
お前もな。
836名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 09:17:17 ID:Fx0Rbuxh
問題にするべきはトライデントのブログのアクセス数偽造疑惑だと思うぞ
1日で2000も来るか? あの痴呆作者の文章なんて数秒で吐き気と悪寒がしましたけど
837名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 09:53:07 ID:fHD/uv0N
>>776
>>798
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
ずっと待ってましたよ!先輩いいですね!!
トラ氏もGJです!
838名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 10:01:44 ID:adAtEqST
なんだ、自粛するようになって少しは成長したかと思ってたらまた園児の癇癪レベルに逆戻りか
卒業するんだもん!とか言ってたのにな、それを覆した結果更にブザマ
839名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 10:01:51 ID:8So2+65s
>>836
なんかもう飽きたよお前

批判したいならもう少し凝った文章を書いてくれ
840名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 12:20:39 ID:ySG7xA7l
>>839
はいはいワロスww
841名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 13:01:34 ID:8So2+65s
>>840
IDもわざわざ変えなくていいぞ――どうせ誰も引っ掛からないんだからさ
お前もいちいち面倒だろ?
842名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 13:03:49 ID:adAtEqST
はいジャンガジャンガジャンガジャンガ
843名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 15:18:19 ID:pjsuBqst
>>798
(*^ー゚)b グッジョブ!!
まとめサイトがあるから期間が開いても話が繋がるから大丈夫なんだぜ

それにしてももう夏か・・・
まぁ、荒らしてるニートには夏休みも関係ないだろうがな
スレ荒しが趣味とか空し過ぎる人生だな・・・ (´・ω・`)
844名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 15:25:42 ID:MKqkXBHm
>>843
昼間から嫉妬スレで書き込んでいる方が空し過ぎる人生だと思うんですけどね
845名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 15:58:13 ID:MKqkXBHm
トライデントのアクセス捏造疑惑はどうなったんだ?
誰も追及しないの?
846名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 16:16:07 ID:m3YEI0zC
もうお前ら分かったから黙って待ってろ。
847名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 16:38:04 ID:MKqkXBHm
どうして、そんな都合の悪い話題になると黙るんですか?
もしかして、私の非難や嫌がらせは全てトライデント氏の自作自演だったというわけか
これはついにトライデント氏の化けの皮が外れたかもしれんな
848名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 16:43:14 ID:fHD/uv0N
>>843
夏って何か修羅場イベントあったっけ?
849名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 16:51:52 ID:Lv03r3F8
>>848
どこかの夏祭りや花火大会では、自分が一緒に祭りを回るはずだった愛するお兄ちゃんや幼なじみを泥棒猫が奪って行く事件が多発しているのを知らないのか?
850名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 17:02:47 ID:fHD/uv0N
>>849
(´゚ω゚):;*.ブッ
いいなあ、それ
851名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 17:33:58 ID:1aHmYBA6
>>849
そしてその後、血で血を洗う争いが始まる訳だな。
素敵すぎるぜ。
852名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 17:40:06 ID:QAqi6f3T
>>843
  俺的には、泥棒猫が、愛する弟をいきなり海に誘い出して
 セクシー水着で誘惑して、抱きつき攻撃などをかましてロマンスが盛り上がっている最中に、

  姉は買ってきた水着を見せびらかそうとして帰ってくるのをwktkして待っているのに一票。
853名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 18:22:01 ID:hsuvbxpV
これはトライデント氏の自作自演キタァー(゜∀゜)ーー!!!!
だよな・・アクセス数偽造疑惑の件に触れない住人達はおかしい
それに俺は荒らしと言っている人間は被災地のために寄付とかしたのかよ
854ボランティア(新潟):2007/07/19(木) 18:26:29 ID:y5iPeZzv
俺被災地に寄付したんだぜ〜とかいって善人ぶっている偽善者がいるスレはここですか
じゃあお前ら被災地行ってボランティアしてるのかよ、と言いたい
855名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 18:40:05 ID:Lv03r3F8
>>852
それは作者さんによってギャグかシリアスか別れる。山本君の作者さんが書くか、姉妹日記の作者さんが書くかで大きく違う。その両方を読みたいのは俺だけじゃないはず。
どちらにしてもそんなシチュエーションを思い付いた>>852は天才だよ。
856名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 18:45:44 ID:fHD/uv0N
>>852
個人的には、普段大人しいorクールな姉が水着を買ってくるという設定を付け加えると
一気に俺の臨界点を突破するな
857名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 19:07:51 ID:ZGBl4HDg
その妄想を文字で表現してみよう
858名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 19:37:36 ID:N/ySb4ri
>>853
てか、トライデント氏のアクセス数偽造疑惑って何?
はっきり言うと単にトライデント氏のブログの繁盛ぶりに
荒らしが嫉妬しているだけでは? 

さすがは嫉妬スレだよな・・趣旨とか全然違うが
859名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 19:42:11 ID:fHD/uv0N
>>857
高校以来文章なんか書いたことないから無理だ・・・
それにしても>>852の設定をそのままにするのも勿体無いな
860名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 19:43:29 ID:JUjuq56S
>>856
普段大人しい姉が弟のためにゴスロリの服を着るというのはどうだ?
恥ずかしいけど、弟君のためなら頑張るって展開はどうよ
861名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 19:48:15 ID:flcCc0B6
>>860
それだと「夏」のテーマから外れてしまうな
まあ、水着以外にも浴衣とかあるけどさ…
個人的には女性のタンクトップはめっちゃ萌える
862名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 19:50:31 ID:JUjuq56S
夏のテーマとかあったのか・・
だったら、可愛い弟のために暑さを我慢して誰に見せたくて着ているのよ
って感じにスカート裾を摘み上げて、うちわで暑さを防いでいるのは・・

夏とか関係ないがこれは俺のツボに入るw
863名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 20:49:55 ID:adAtEqST
「・・」←これ
864名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 20:51:32 ID:adAtEqST
文章癖全部一緒でわかりやすいわかりやすすぎる
頭悪いほんとに頭悪い
865名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 20:52:55 ID:EzfV12al
「・・・」はよく使われてるんだぜ。

なぜか、指摘すると逆切れされる率が高いんだよなー。
866名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 20:54:50 ID:2i4Nobu5
またまた荒らしか
867名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 21:03:15 ID:adAtEqST
>>865
違う違う
「・・」
↑いつも必ず二個なんだよ、彼は
868名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 21:09:23 ID:9M0CJPfp
あー、そうね本当ね。
でも君もあんまり刺激しないようにね。
避難所でやろうね。ね。
869名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 21:23:34 ID:a3s7Xg1G
トライデント氏が来なければ荒れないのに
870名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 21:24:16 ID:2i4Nobu5
別に荒らしているわけじゃないのに煽ってどうするんだよ
バカじゃないの? 特にID:adAtEqST
そうやって、いちいち難癖を付けて構うから荒れるんでしょ
放っておけばいいのにさ。
ようやく、荒らしも落ち着いてネタを振ってきたというのに
これじゃあ、またまた荒れるよ。どうやって、責任を取るんですか?
871名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 21:29:25 ID:pjsuBqst
>>849>>852の設定がステキ過ぎるぜ・・・
特に>>852の姉の姿を想像するだけで・・・(*´д`*)
872名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 21:32:07 ID:fHD/uv0N
>>870
まあ落ち着こうぜ?本人も悪気はなかったかもしれないしさ
みんな疑心暗鬼になってるんだよ

とりあえず嫉妬するなら普段からつんつんしてるよりはクールなお姉さんに限るわw
873名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 21:45:29 ID:UJAPASWe
>>861
夏にゴスロリとゆーと某ビッグサイト?
874名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 21:47:22 ID:78ctDqmg
ビジュアル系バンドのファンかもしれん
875名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 23:16:44 ID:1aHmYBA6
>>874
そんな姉はいやだww
実は美人なんだけど弟以外の男避けのために
普段はおさげ、眼鏡な地味な格好をしている姉とかがいいな。
んで泥棒猫の登場で大変身します。
876名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 23:41:33 ID:fHD/uv0N
どこからか現れた正体不明のビジュアル系バンド
弟は一発でそこのボーカルのファンになってしまう
しかしそのバンドは、実は最近構ってくれない弟に注目してもらうために姉が作ったのだった・・・
ところが、彗星のごとく現れた違うバンドに弟は惹かれていく
そして弟を取られまいとする姉の葛藤が始まる・・・

>>674を読んでこんな電波を受信した。責任、取ってくれるよね♪
877名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 01:33:14 ID:MTzLRiev
>>871
>>852は「山姉」で読みたいな。
従姉妹が連れ出してお姉ちゃんが待っていると。
連れ出した先に同級生がいたとかなら最強。
878名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 02:09:20 ID:RDeK2/dR
何がどうなったら>>674を読んで>>876に繋がったのか俺にはわからない
879名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 03:11:32 ID:PS5+44Wa
それならストレスが溜まるとデスメタルの魔王と化し、
泥棒猫をSATSUGAIしながら「弟をレイプ」を歌う姉の方が。
880名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 06:12:52 ID:0SP94Rd3
>>879
面白いかもしれないけど歌ってる場面に出くわしたくは無いなwww
881名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 07:29:56 ID:qV4aDIME
>>877
携帯は着替えと共にロッカーの中だから、再びループというわけか。
そして、帰れば梓や藤原さんの匂いがまとわりついてるから前回以上の修羅場になると。
882名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 13:04:17 ID:Iddrqdo8
883プロット王者:2007/07/20(金) 15:16:23 ID:8pKlAu6a
低迷する日本のボクシング界。しかし、それを吹き飛ばすニュースが来た。
日本人初のヘビー級王者の誕生。彼は一夜にして国民的ヒーローとなった。
デビュー戦の時から彼を取材し、苦しい時も取材してくれた女性記者とともに
喜びを分かち合った。これを機に、彼の周りが一変する。アメリカの大手企業の
女社長が彼の人気ぶりに目をつけ、日本進出の足がかりにしようと、スポンサーになった。
そして、今や世界の主流であり、NO.1のキックボクシングの女プロデューサーが、
彼を引き抜こうとする。さらに、妹も世界王者を機に、彼に引退を迫り、二人きりの生活を、
実現しようとする。彼の人生は、どうなってしまうのだろう。

884名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 15:43:40 ID:0M5LFYwe
36スレが現れたのが6/7
35スレ最後のレスが7/13
で、35スレが落ちたのが最近か?
これだけ長い間生き残るとは流石嫉妬スレ、恐ろしい子……!
885名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 16:36:18 ID:lveAiLey
>>884
彼女、やっと力尽きたんですね・・・
これで名無し君と私の間には何の邪魔者もいなくなりました
クスクス・・・
886名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 19:09:13 ID:LqA81MIE
■新スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その37
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1184925991/
887名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 19:12:05 ID:UzhoeIlr
( ゚д゚ )
888名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 19:17:52 ID:2pRf10gg
ん?おかしい・・・35スレがまだ残ってる
この間見かけたとき500kbだったのにまだ残ってる
・・・おかしい、だってそうでしょう!?
最後のレスが7/13なんだ、残ってるはずないんだ、ありえないんだそんこと
途端にアタシあぁあぁぁぁーっ!!! って叫んで腰抜かした!
35スレがね、そこにポツーンと立ってたんですよ、えぇ
889名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 11:11:18 ID:bkC/SHbf
え、何……!?
やっとあの忌々しい35スレが消えたのに今度は新しい子に手を出すっていうの!?
890名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 11:24:01 ID:xMSbj4Gu
僕がすきなのは37スレ先輩だけですよ
え、いつも一緒に36スレちゃんがいる?
やだなぁ、先輩、幼馴染の腐れ縁ですよ
いつも好きだって言い合ってるって?
それも挨拶みたいなものですよ
あいつももう大人だしそのぐらい分かってると思いますよ
先輩が気にしてるなら今度言っておきますよ
もう纏わり付かないでくれって
891名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 13:02:38 ID:Tiw6YRMt
世に泥棒猫の種は尽きまじ
猫は年中発情期だからいつでも妊娠可能なの
だから泥棒「猫」
892名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 13:21:03 ID:4NtZw0ld
発情したメス猫ほど恐いものがない
後ろを振り返ると奴が居るぜ
893名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 19:46:27 ID:iPnFnM1z
彼と彼女と泥棒猫の暑い夏が今…

始まる
894名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 19:58:50 ID:9pqxhuYE
修羅場先生の次回作にご期待ください!
895名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 20:09:20 ID:Uou9hs7g
修羅場スレに絶望したーーーー!!
896名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 20:16:08 ID:WrkT8jgw
楽よね、修羅場キャラって。
897名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 20:35:24 ID:GScwrZdT
修羅場スレにようこそ
898名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 23:29:42 ID:XHnbhmY1
>>896
まじで!?
899名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 18:19:30 ID:Su1iLB7F
嫉妬
900名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 18:20:52 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬
901名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 18:21:41 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬嫉妬
902名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 18:22:46 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬
903名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 18:23:51 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬
904名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 18:26:37 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬
905名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 18:27:23 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬
906名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 18:28:21 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬
907名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 18:29:35 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬
908名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 18:30:07 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬
909名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 19:32:58 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬

910名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 19:34:45 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬
911名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 19:35:34 ID:Su1iLB7F
嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬
912名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 19:37:50 ID:leMc7mFf
つまらん
913名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 20:17:46 ID:rIMx2/WM
埋めネタを考えている人もいるかもしれないから、雑談等以外で無駄に容量を使うのはやめにしないか?
914名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 20:29:18 ID:RLrw8Czs
何よ、それ……。
なによッ、それェ!
『今まで支えてくれてありがとう』
ですってぇ!?
ふ ざ け る な。
七梨はアタシのだッ! ずっと、ずっと昔からアタシだけの物だッ!!
あんなポッと出の雌豚なんかに七梨はやらない。いいやっ、他のどんなヤツにもやるもんか。




殺してやる。
美奈子。アタシから七梨を奪おうとする雌豚。アンタもあの御子神の泥棒猫とおんなじところに送ってやるっ!!!!!


35の語呂合わせが難しかった。
915名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 00:17:28 ID:QIh1L4XH
「ナナシくんはえらいわね〜」
そう言って、せんせいはアタマを撫でてくれた。

ミロクせんせいは、とっても美人で、すっごく優しい。
ボクはそんなせんせいが大好きだから、一番キレイなお花を摘んできてプレゼントした。
「ありがとね、ナナシくん」
ちゅ、って音とちょっとの温かいがほっぺに当たる。
家族以外のチューは大人な感じがして照れくさかった。

「ナナシくん、ここにいらっしゃい」
ご本を読む時間になると、せんせいはボクをヒザの上にのせてくれる。せんせいの吐く息が耳にあたってくすぐったかった。
気付いたらボクは、せんせいの腕の中で寝ていた。
「ナナシくん、わたしのうで掴んだまま離してくれないんだもん」
そう言ったせんせいの顔は、なんでかはわからないけど嬉しそうだった。
まわりを見てみると、みんなお昼寝していたからもう一回ねむることにした。せんせいの手を外そうとしたら動かなかった。ねむくなったから寝ちゃった。

お昼寝の時間が終わると、みんなはまたお外で遊ぶ。せんせいは、みんなが使っていたタオルを片付けてた。
「ナナシ、おままごとしよ」
そう声をかけてきたのは、保育園に入る前からの仲良しのミナちゃんだった。
保育園
916名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 01:29:32 ID:RC9U2y28
wktk
917名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 18:22:52 ID:kRO7wWk0
>>915
おまwなにその焦らしプレイw





続き期待してますm( __ __ )m
918名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 23:31:20 ID:7VyEk7s6
前スレの梅ネタの三姉妹物は面白かった
今回も梅ネタとして書いてくれんだろか?

いや、新スレで本格連載でも一向に構わないのだが
919姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/25(水) 00:18:33 ID:9Tpdamjy
>>918
おk。投下します。
920姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/25(水) 00:19:56 ID:9Tpdamjy
 吉村一男という男は高校生のくせに、朝5時には起きるような生活を送っている。
 新聞配達をしているわけでも、牛乳配達をしているわけでも、食事の用意をするために早起きしているわけでもない。
 この男が早起きする、いや、早起きするようになった理由。
 それは。

「……今日こそ、一男の唇を……私のものに……」

 モデル級のスタイルと長い黒髪と妖艶な笑みを浮かべる女が、何故か早朝から部屋に忍び込んでいるからだ。
 この女、名前を倉子という。
 一男の幼馴染であり、一男より3つ年上で、一男にとっては姉的存在だ。
 職業は大学生。成績優秀、容姿端麗という女性として非の打ち所のない特徴を持つ。
 しかし彼女の場合、性格に難がある。

「一男の朝の匂い……今日は誰にも…………組子にも恵子にも嗅がれていない、匂い……」

 ああ! とうめきながら、一男の体の上で背中を仰け反らせる。
 このように、年下の男の部屋に勝手に忍び込んだうえ、悦に浸るのだ。
 倉子のこんな表情を見たら、いつも倉子を遠巻きに見ている大学の男達も引いてしまうだろう。

「まだ起きていないようだな……ふふ。昨日は夜の一時まで起きていたようだし、当たり前か……」
「…………」

 ちなみに、一男はとっくに目を覚ましている。
 倉子が自分の体の上に乗っていることを知っている。
 それどころか、部屋のドアの鍵を無理矢理こじ開けて、部屋に忍び込んだ光景まで目撃している。
 起きているのに、倉子に何も言わないのは、まだ眠いからだった。
 それと、もうひとつ。

「今から恵子が起こしに来るまで、2時間。それだけあれば……アレもコレも、嗚呼、よりどりみどり……」

 1人で変態のような独白を続ける倉子の表情が、見ものだからだ。
 昼のうちは凛々しい表情をしている倉子も、今ばかりは頬を緩ませている。ひどく緩ませている。
 ぜひとも写真に収めておきたい表情だ。
 倉子にアイドル的な憧れを向けている一男の友人連中に高く売れるかもしれない。

「夏休み初日から、私は運がいい……一男、さあ、一緒にワンダーランドへと旅立とう」

 倉子の両手が、一男の頭を掴んだ。
 そして、一男の唇を奪わんと、顔を接近させてくる――が。
921姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/25(水) 00:21:12 ID:9Tpdamjy
「む! ……ち……目を覚ましていたか……大人しくしていればいいいものを」
「おはよう、倉子さん」

 倉子の唇と一男の唇が触れ合うことはなかった。
 一男の右手が、倉子の喉元を掴んで止めていたのだ。

「おはよう、一男。ところで、その右手をもっといいことに使ってみる気はないか?」
「その、いいこと、の内容次第ですね」
「一男、女に恥をかかせるな。何をするかなんて……よくわかっているだろう? とっくに私で経験済みのくせに」
「倉子さんと一緒に過ごした経験はたくさんありますけど、そういう意味での経験はないです」
「ふふ……そのそら惚けた感じが、またそそる……」

 倉子が一男の後頭部で、両手を組み合わせた。
 サバおりの要領で、獲物を狙う目をした倉子が一男に顔を近づけていく。
 しかし一男とて負けてはいない。
 右手をそのままに、空いた左手を使って倉子の額を押し返す。

「倉子さん。いつも通り諦めてください」
「だが、断らせていただこう」
「何度やったって結果は同じですよ」
「遠い昔を生きた日本人は、いい言葉を残した」
「?」
「勝てば官軍、と」

 倉子の言葉に、一男は一瞬気をとられた。
 それが、致命的な隙になった。
 突然体を離した倉子が、一男の股間の上に――膝を叩き込んだ。
 一男の脳が、停止した。
 だが次の瞬間、痛みが脳を再起動させた。

 すまん、親父。母さん。俺……子供を作れなくなっちゃったよ。

 と、一男は思った。
 それほどのすさまじい一撃。
 うめき声は漏れない。そもそも息が吐き出せない。息の代わりに内臓を吐き出しそう。
 例えようのない痛みだ。
 男にしか、この痛みはわからない。
 その証拠に、倉子は悶絶している一男とは対照的に笑みをこぼしていた。

「ようやく大人しくなったな。さあ、早速……む? どうした、おい。一男? かーずーおー?」

 死にそうになっている一男とは対照的に、倉子の声は呑気だった。

 こうやって、一男の夏休み第一日目の朝は幕を開けた。
 もしかしたら、俺の今年の夏休みはこんなんばっかか?
 と、一男は不安にならざるを得なかった。
922姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/25(水) 00:22:55 ID:9Tpdamjy
*****

 朝の7時。
 どうにか体を蝕む最悪の痛みから回復を遂げた一男は、近所の公園に来ていた。
 なぜ一男がこんな朝早くから公園に集まっているのかというと。

「手足の運動! イッチ、ニ、サン、シ……」

 早朝から、小学生の夏休みの定番、ラジオ体操をしに来ているからだった。
 ちなみに、一男は高校二年生。小学校からはすでに卒業している。
 それなのに、なぜ朝から元気よく体操をする小学生達に混じっているのか。
 もちろん、それにも理由がある。

 一男は首を左に向けた。
 目線の先には、一男の胸元ぐらいまでしか身長のない、小学生にしか見えない少女がいた。
 少女は朝から眠そうな顔も見せず、明るい笑顔でラジオ体操を踊っている。
 この少女、名前を恵子と言う。
 一男の幼馴染であり、倉子の妹であり、一男にとって妹的存在である女の子だ。
 公園に集まっている小学生に混じっても、恵子は違和感がない。
 しかし、恵子は小学生ではない。卒業してから、すでに2年以上が経っている。
 恵子は中学校3年生。高校受験を控えている、受験生だ。

 一男は、恵子に誘われてラジオ体操に来ているのだ。
 当然、一男は乗り気ではない。今すぐにでも眠れるぐらい、睡魔に侵されている。
 それなのに恵子の誘いを断りきれないのは、一男が恵子に対して甘いからだ。
 しかし、それも無理はないかもしれない。
 胸の前で祈るように両手を組まれ、目に涙を溜めて頬を震わせ今にも泣きそうにな顔を見せられては、断れるはずもない。
 というわけで、一男は公園に来ているのだった。

 ラジオから流れる音楽が止まった。ラジオ体操第一番が終わったのだ。
 本来は第二番まであるのだが、小学生は第一番までしかやらない。
 町内会の当番で子供たちの面倒を見に来た青年も同様だ。
 ラジオ体操第二番の音楽を流しだしたところで、ラジオの電源は切られた。

 子供たちは、皆首にカードを垂らしている。
 小学校の先生達から渡された、ラジオ体操のハンコを押すためのカードだ。
 子供たちは一斉にハンコを持った青年の前に列をつくった。自分のカードにハンコを押してもらうためだ。
 恵子も周りの小学生と同様、列に並んだ。首に垂らしているのは、自作のカード。
 毎年ラジオ体操にでかけている恵子は、準備を欠かさない。

 一男は小学生の列から離れて、恵子の後頭部をなんとなく見つめた。
 なんで恵子はわざわざ俺まで誘うんだろうか。一人で行けばいいのに。
 その答えは、いまだ謎のままだった。
 恵子に聞いても、笑顔ではぐらかされるばかりで一度も答えてもらったことがない。
 嫌がらせだろうか?とは思わない。
 純粋な恵子がそんなことをするはずがないと一男は信じているからだ。
923姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/25(水) 00:24:39 ID:9Tpdamjy
「お兄ちゃーーん!」

 と叫びながら、一男に接近してくる小さな女の子が1人いた。
 女の子は細い手足を精一杯振り回しながら、短い距離を全力疾走する。
 一男の前につくと、罪を犯していないのに見に覚えの無い罪を認めてしまいたくなるような、穢れのない笑みを少女が見せた。
 少女の背は一男に比べてとても低かった。が、恵子よりもさらに小さかった。
 駆け寄ってきた女の子は、恵子ではなかった。

「見てみて! これ!」
「ん」
「夏休み第1回目のラジオ体操のハンコ!」
「あ……ああ、そっか」

 と、女の子の勢いに押されて一男は締まらない返事をした。
 途端に女の子の表情が曇る。

「どうしたの、お兄ちゃん。……元気、無いの?」
「いや、そんなことはないけど」

 女の子の悲しそうな瞳が、一男の胸を締め付ける。
 まずい。なんだか、今にも泣きそうだ。
 一男は焦った。こんなときどうすればいいのか、わからない。

「どうしたの? ……もしかして、お兄ちゃん考え事してた? 美加、邪魔だった……?」
「いやっ! いやいや、そんなことないよ。美加ちゃん。よかったね、ハンコ、もらえて」

 一男は中腰になって、美加と目線の高さを合わせると、柔らかい艶やかな黒髪を撫でた。
 どこから来たのかわからない罪悪感に苛まれながら、精一杯の笑顔を見せる。
 しばらく撫でているうちに、美加の顔に輝きが戻っていく。

「うん! お兄ちゃん、明日も、来てくれるよね! ここに!」
「え? えっと……」
「え……来て、くれないの……やっぱり、お兄ちゃん、怒って………………っふぇ……ぇっく……」
「もちろん来るに決まってるじゃないか! 俺はラジオ体操大好きだから!」
「え? ホントに……? よかったぁ……えへへ」
「はっはっはっはっは……ははは」
「あ、もう行かなきゃ! じゃあ、お兄ちゃん! またねー!!!」

 美加は一男から離れると、手を振りながら去っていった。
 一男は中腰のまま、美加に向けて小さく手を振った。
 美加に負けた気分だった。女の子、しかも小学生に負けた。
 これから、夏休みの間は毎日ラジオ体操にでかけなくてはならない。
 朝から、散々だ。
924姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/25(水) 00:26:54 ID:9Tpdamjy
「お兄ちゃん」

 一男の目の前に、恵子があらわれた。
 中腰のままだったので、ちょうど目線の高さが同じになっている。
 このときの恵子の顔は、ムクれていた。

「……むー」
「どうしたんだ、恵子」
「……むー、むー!」
「何だ? むーって」
「むー、むー、むー!」

 むーむー言いながら、恵子は一男に頭を近づけた。むー、と言うたびに頭が少し前に出る。
 一男は恵子が何も言わないので、その奇妙な動きを見続けていた。
 すると、こんどは恵子が自分の頭に人差し指を向けた。

「さっきの! やって!」
「さっきの、って……美加ちゃんの頭を撫でたやつか?」
「そう! やって!」

 撫でるのは別に構わなかった。それぐらいならお安い御用だ。
 だが、なぜ恵子が頭を撫でてくれ、と催促してくるのか一男にはわからなかった。

「お前、子供扱いされるの嫌じゃなかったっけ」
「い……いいの! 早く撫でて!」
「わかんないやつだな、お前も……」

 一男は美加と同じように、頭を撫でた。
 そうすると、つい恵子と美加の髪の柔らかさを比べてしまう。
 髪の柔らかさは……同じぐらいだな。
 けどなんていうか、撫で心地?は美加ちゃんのほうがいいかも。
 と思ったのがいけなかったのだろう。
 いきなり、恵子が一男の頬をつまんだ。続けて、力強く引っ張った。

「いててててて! 何すんだ、恵子!」
「今、美加ちゃんのこと考えてたでしょ!」
「か……考えてないぞ。………………本当に」
「嘘つき! 今絶対に美加ちゃんのこと考えてた! やっぱりお兄ちゃん、年下の女の子が好きなんだ!」
「な……何てことを言うんだお前は! 失礼な!」
「馬鹿馬鹿馬鹿ぁ! お兄ちゃんの馬鹿ぁ!」
「あだだだだだだ! さらに力を込めるな! 腫れる! 千切れる! 潰れるって!」
「お兄ちゃんの、小児性愛の意味でのロリータコンプレックスーーーーー!!!」
925姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/25(水) 00:28:27 ID:9Tpdamjy
*****

「――で、今現在頬が赤くなっているからガーゼを貼っている、ってわけね」

 セミの鳴き声と夏らしい日差しと暑さを紛らわしてくれる風の吹く、学校へ向かう道。
 その道を、左頬にガーゼを貼ったままの一男と、スポーツバッグを肩にかけた組子が歩いている。
 一男は学校指定の制服を着ている。
 理由は、補習を受ける人は授業を受けるときと同じ格好をしなければならない、と先生に言われたから。
 一男は夏休み前の期末テストで、5教科中3教科赤点をとった。
 赤点だった教科は現国・英語・現代社会。
 ちなみに、残りの数学と理科は高得点だった。
 これほど顕著に自分の長所と短所がはっきりすると、むしろ自慢したくなる。
 もちろん、自虐的な気分で。

「恵子もしょうがないわね。まだまだ子供で」
「おう。まったく、お前と倉子さんはどんな風に恵子をしつけたんだ? あれじゃ将来、困った大人になるぞ」
「そうね。どこかの理系バカみたいになったりしたら困るわね」
「だな。どっかの暴力バカ女みたいになったりしたら、俺の身が持たないな」

 組子は一瞬顔を歪めたが、すぐに平静な表情をつくった。
 いや、むしろ嬉しそうにも見える。

「ま、もしラジオ体操に行きたくなかったら私に言いなさい。ラジオ体操の代わりに、
 私が朝のロードワークに連れてってあげるから」
「それはいいな。自転車に乗りながらお前の後を追走するんなら、トレーニングにもなるし」
「あんたも走るのよ」
「ならやめだ。恵子とラジオ体操に言ってるほうがいい」
「軟弱者」
「うるせえ」

 組子は高校の陸上部に所属している。大会では長距離を走る。
 陸上部の中では、特別成績がいいほうではない。
 同じ部の中には、組子より速い人間がたくさんいる。
 それでも勝つことを組子は諦めなかった。組子は努力家で、さらに負けず嫌いだった。
 朝に行う自主的なジョギングを欠かさないのも、その性格ゆえのことだ。

「そういや、陸上部って練習でどれぐらい走ってるんだ?」
「そうね……ウォーミングアップで軽く10kmぐらい走って、それからシャトルランを20本やって……」
「あー、いや、いいや。聞いてるだけで吐きそうになってきた」
「慣れれば簡単よ。あんただってできるわ」
「慣れる前に体を壊しそうなんだよ。いや、壊されそうだな」

 組子、お前にな。

「ん? 今、なんか言わなかった?」
「んにゃ。何にも言ってねえよ」
926姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/25(水) 00:30:16 ID:9Tpdamjy
 会話をしているうちに、2人は高校の正門をくぐっていた。
 これから、一男は自分の教室で補習を受ける。そう考えると、どうしても足が止まる。
 一男は空を見た。空は青かった。まるでプールのようだ。
 今日は夏休み初日だっていうのに、俺的には記録的な猛暑だ。
 プールに入って泳いだら、気持ちいいだろうな。
 ああ、そうだ。

「組子、練習は何時に終わるんだ?」
「9時から始まるから、練習が終わって、シャワーを浴びて……12時前ぐらいかしら」
「俺も同じぐらいの時間に終わるんだ」
「そうなんだ。で、それがどうかしたの?」
「ああ、もしその後予定が無いんなら、プールでも行かないか?」
「……プール?」
「今日暑いだろ? なんだかプールにでも行きたい気分なんだよ」

 組子は歩みを止め、一男を見た。

「あ、あのさ……それって、2人っきりで、だよね」
「別に誰か連れてきてもいいぞ。人が多いほうが色々遊べるかもしれないし」
「いっ、行かない行かない! 誰も連れてなんか行かない!」

 組子はショートヘアを激しく振り乱しながら、首を振った。
 次に、組子は首を前へ倒した。そうすると、自然と目は下を向く。
 組子の目は、自分の体へと向けられていた。腕はせわしなく動いていた。
 シャツの胸元を引っ張り、腕を伸ばしたり、シャツごと腹をつまんだり、両手で太腿を掴んだりする。

「体脂肪は……今朝はいい感じだった。この間測ったとき胸は……センチだったし、ウエストもオッケー。あとは……」
「組子?」
「えっ、ああ、いや、そのあの、あはははは。……なに?」
「行きたくないか? なら俺1人で行くからいいけど」
「なっ――!」

 次の瞬間、一男は胸倉を捕まれていた。組子の手によって。

「行かないなんて言ってないでしょ? 連れていきなさい」
「あ、ああ。わかった。だけど何で俺の制服の襟を掴んでるんだ、お前」
「気にしないで。ものの弾みよ」

 そう言うと、組子は一男を解放した。
 肩にかけたスポーツバッグの位置を整え、歩き出す。一男も慌ててそれについて行く。

「じゃあ、昼飯を食ったら近くの町民プールで待ち合わせな」
「ええ。あんた、誘ったんだから絶対に来なさいよ」
「わかってるよ。じゃあ、また後でな」

 その言葉を残して、一男は校舎の中へと入っていった。
 残された組子は、一男の前では決して見せることの無い極上のスマイルを浮かべていた。
 その目がギラギラと光を放っているのは、どういう意味なのか。
 ――全ては、組子のみぞ知る。
927姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/25(水) 00:31:50 ID:9Tpdamjy

*****

 夏休みの教室は蒸し暑く、また寂しかった。
 なにせ、学期中には大量にいるクラスメイトが、今は一男と同級生の女の子の2人だけしかいないのだ。

「ねー、吉村くん」
「んー? なんだ、神川」
「暑い」
「俺だって暑い」
「……いっこだけ、聞いてもいい?」
「ああ」
「なんで私達だけしかいないの? 他にも何人かいたじゃん」
「皆適当な理由つけて休んでるみたいだぞ。
 森園は風邪、慶太は入院、大島はおばあちゃんの三回忌、田中は太陽が燃えているから。
 馬鹿だよな。補習に一日でも来ない日があったりしたら二学期中ずっとボランティア活動だってのに」

 だが、一男も休んでいる連中と同じように補習をサボりたかった。
 今でも県内一周旅行への情熱は心の中でくすぶっている。
 旅行に行きたいと考えると、その炎はあっというまに一男の心のガソリンに火をつけた。
 炎が、一男の脳の妄想スイッチを入れる。
 ああ、今すぐ自習課題のプリントを紙飛行機にしてやりたい。
 そして風に流されるまま、飛行機に乗って、あの雲の彼方へと、誰も知らない地へと飛んでいきたい。
 おお、あの雲は倉子さんのおっぱいみたいじゃないか。
 あそこでかくれんぼしている子供なんか恵子そっくり。
 あれ?組子?なんでお前俺の背中に乗ってるんだ?
 なに?今からプールに行きましょう?
 そうだったな。これが終わったら、大衆的地上の楽園、町民プールへ行こう。

「プール……行きてえなあ」
「いいよねー、プール。私も水泳部に入ってればよかったな。
 そしたら練習にかこつけてプールで泳ぎ放題遊び放題なのに」
「俺は天井がある町民プールの方が好きだな。
 学校のプールは水に浸かってるときはいいけどプールの横の通路なんか焼け石じゃねえか」
「そだねー……町民プールか」

 一男は窓側の席から、グラウンドを見下ろした。
 グラウンドでは、サッカー部、ラグビー部、野球部、陸上部、その他の面々が太陽の下で運動をしていた。
 あれに比べたら、直射日光が当たらない分、教室の方が快適かもしれない。
 しかし、運動部の連中を見ていると本当はあそこの方が過ごしやすいのではないかとも思える。
 実際は、運動部のメンバーは暑さにやられそうになりながら練習に取り組んでいる。
 少し考えればわかりそうなものだが、シャツを不快に湿らせる暑さをプレゼントする教室で補習を受けている一男には、
そんな判断もつかなかった。
928姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/25(水) 00:32:45 ID:9Tpdamjy
 だからだろうか。
 こんなことを言ってしまったのは。

「神川。今日暇か?」
「午後からは暇だよ。デートのお誘い? おごりならついていくよ」
「別にデートに誘ってるわけじゃねえよ。暇だったら午後からプールにでも行かないか、って言おうとしただけだ」
「……それ、デートに誘ってるのと同じだよ」
「そうだっけ? まあどっちでもいいや。俺は午後から町民プールに行く。
 そしてトロピカルバナナサンデーを堪能しながら夕方になって涼しくなるまでプールの中で過ごす。邪魔はするな」
「何言ってるかわかんないよ。……でもいいね、プールかあ……」

 神川は、椅子の背もたれにもたれながらつぶやいた。

「去年の水着、どこにしまったかな……?」

 時刻は11時を差していた。
 太陽は地上を歩く人々に恨みを抱いているかのごとく、己の身を焦がし続ける。
 この勢いはこれから一ヶ月、いや二ヶ月は続くだろう。
 太陽が燃え盛っている間、ずっとプールに浸かっていたい、と一男は思った。
 心の底から、そう思った。

929名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 00:35:20 ID:9Tpdamjy
次回へ続きます。


930名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 01:45:59 ID:6bWimWEq
GJぃ!
これは危険な香りだなぁ
修羅場フラグ立てまくりじゃないかww
931名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 01:47:30 ID:Fgx4gmeU
相変わらず埋めで終らせるにはもったいない出来ですGJ。でもヘタに本編出して流血沙汰も困るから、コレはコレでいいのかな。
続き楽しみにしてます。
932名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 03:27:37 ID:wcy+zVjU
918です
いや、言ってみるものだなぁ お陰でこんな素晴らしい作品が読めたGJ!!
恵子可愛いよ恵子
新キャラ増えてるし主人公わざわざ修羅場フラグ立ててるしwww
梅に拘らず出来上がったらジャンジャン投下してください
期待して待ってますから
933名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 08:43:41 ID:JroYDK3c
>>929
(*^ー゚)b グッジョブ!!

埋めにはもったいないが
スレ終盤になればこれが読めるとなると
スレ消費が激しくなるからいいかも
まぁ、無駄に消費されても困るが (´・ω・`)
934名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 23:40:14 ID:yHEe5Ptq
GJ
935名無しさん@ピンキー:2007/07/26(木) 08:28:13 ID:0xdk/svH
ヤベェ、普通に面白いから埋めには勿体ないぜマジで
936名無しさん@ピンキー:2007/07/26(木) 21:12:17 ID:e/NPawqk
このスレもまた35スレのように何週間も未練と呪詛を残し落ちていくのだろうか
937名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 10:54:27 ID:lgz9whHk
要望があってから書いたわけじゃなく、予め書いてあったのを
張りつけたんだろうな。時間的に。

自演じゃね?って疑ってる訳ではなく、要は書き溜めしてるように
感じたって事だが。
938名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 11:53:34 ID:wXgmZxS0
書き溜めは大切だよ
939名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 13:28:43 ID:KXABaYz+
予め書いておいて次スレが建った頃を見計らって投下してるんだろうな
捨てられるスレの最期の一撃みたいでいいじゃないか
940名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 17:43:26 ID:lLhvyjKV
このスレの住人は職人に限らず怖い例えを考える天才でつね。
941名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 01:29:52 ID:7wYtae0h
つまり言葉様投身の図というわけか?
942名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 13:50:00 ID:WP/XH5w2
賭けないか?
1000いくのが先か500kbいくのが先か・・・
943名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:42:31 ID:QmyHmjyn
943
944姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 19:24:15 ID:btxwkjdG
*****

 一男は、学校で午前中一杯補習を受けたあと、自宅への帰路についた。
 帰宅の手段は、徒歩。自転車通学をするほど学校から遠い場所に住んでいるわけではない。
 もう少し離れた場所に家が建っていたならば、と一男は何度か思ったことがある。
 一男の趣味は自転車に乗ること、そして自転車で旅行に行くこと。
 今年の夏休みは自転車旅行に行くつもりだった。
 期末テストの前日までに、旅行の計画はほぼ完成していた。
 どこに行って、どこに宿をとって、どこで写真をとって、と行ったところまで考えていた。
 あとは旅行に行って計画を実行するだけ、だったのだが。

 結果的に旅行に行くことはかなわなかった。
 こうなったのは誰のせいなのか? もちろん一男だ。
 一男が普段からテスト勉強を行っていればよかったのだ。
 勉強に向ける時間をアルバイトやら筋力トレーニングやらに費やしてきたのが悪い。
 しかし、一男を責めるのも酷かもしれない。
 17歳の男子高校生は、遊びたい盛りなのだ。

 時々、一男は思うのだった。
 期末テスト前、倉子・組子・恵子の三人に勉強を頼んだときのことを。
 組子1人に頼んでいれば、何もかもが上手くいっていたかもしれない。
 組子の成績は、一男にとって頭が上がらないほどのもの。2人の差は歴然としている。
 数学と理科は一男も張り合えるレベルではあるが、それ以外の教科でどうしても差がつく。
 それ以外、つまり現国・現代社会・英語の三教科。
 だから、組子に苦手教科を全て教えてもらっていれば補習は免れたかもしれなかったのだ。

 もしくは倉子に頼むか、だ。
 倉子が高校に行っているころ、一男はまだ中学生だったので、倉子がどれほどの成績を誇っていたのかはわからない。
 しかし、どうせ学年トップだったんだろうな、と予想はできる。
 昔から倉子は賢かった。
 一男が何を聞いても答えてくれたし、わからないことを聞かれても後になって教えてくれた。
 道路を挟んで向かい側に住んでいるので、倉子が学校へ行く姿は毎日見られた。
 小、中、高。毎日、倉子は学校へ通っていた。雨が降ろうと雪が降ろうと、必ず一男の家にやってくる。
 そして一男を引っ張って学校へ通学するのだ。そのため、一男は病気以外で休んだことが一度も無い。
 成績優秀、品行方正。絵に描いたような優等生だ。
 性格に難はあるものの、そんなものは深く付き合わなければわからないものであり、倉子はどこまでも優秀な女子生徒だった。

 勉強を教えてくれる相手が優秀であれば、一男にとっては組子でも倉子でも、どちらでも良かった。
 少しばかり頼りないが、見た目小学校高学年、実際は中学3年生の恵子に頼んでも良かった。
 補習から逃れられるのであれば、どんな手段でもかまわなかった。たとえ最良の手段ではなくても。

 一男はここまできても、気づいていなかった。
 10年以上幼馴染の三姉妹と過ごしてきているのに、未だに彼女達が自分に向けている好意に気づいていなかった。
 その好意ゆえに彼女達が、誰が一男に勉強を教えるかで揉めに揉めて揉めまくったということにも気づいていなかった。

 もちろん、先刻に自分が神川をプールに誘ったことが、一体どんな事態をもたらすのかという心配はしなかった。
 さらに悪いことに――自分が組子をデートに誘ったという自覚すら、一男にはなかった。
945姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 19:25:37 ID:btxwkjdG
 一男は自宅の玄関前に立つと、かばんの中から家の鍵を取り出した。
 ドアの鍵穴に鍵を突っ込み、右に捻る。なぜか、手ごたえがない。
 一男の家の玄関は、右に回せば開錠される仕組みになっている。
 それなのに、右に回しても手ごたえがなかった。
 つまり、帰り着く以前から、ドアの鍵が開いていたということだ。
 しかし、一男はあまり不安を覚えなかった。
 なぜなら、こんなことは日常茶飯事に発生する事態だったからだ。
 いちいち反応していては一男の身がもたない、というくらいにありふれたこと。
 
 簡単に言ってしまえば、知り合いが一男の家に入り込んでいるのだった。無断で。
 そんなはた迷惑なことをする人間に、一男は1人しか心当たりがない。
 心の中で三点リーダを読む。点、点、点。玄関を開ける。
 途端に香ばしいカレーの匂いが一男の鼻腔をくすぐった。
 日本の家庭であれば、帰ってきたときにカレーの匂いがするというのは珍しくない。
 しかし一男の母親は出張に出かけている。そのため家の中で料理をしているはずがない。
 父親についても同様であるし、そもそも父親は料理が得意ではない。一男についても以下略。

 読破済みの漫画を読み返す、淡々とした心地で台所に向かう。
 茶色のすだれを右手で避けて、台所の入り口から中を覗く。
 そこに居たのは、予想通り長い黒髪をリボンで結って、これまた予想通りにエプロンを着こなして料理をしている倉子だった。
 倉子は、聖火を掲げるように、小瓶を頭上に持ち上げていた。

「倉子さん」
「ふふ……あとは、これを入れれば……一男は……」
「ただいま、倉子さん!」
「――むっ!」

 突然一男の顔目掛けて、スプーンが飛んできた。反射的にかばんで受け止める。
 スプーンは床に落ちて、しまりの無い音を立てた。
 そして、静寂。2人はしばし睨みあう。
 先に口を開いたのは、投擲後の姿勢を崩さないままの倉子だった。

「……一男か。お帰り」
「ただいま。ところで……今の攻撃の意図はなんですか?」
「すまない。弾みでやってしまった。今は反省している」
「何の弾みですか。もしかして、なんかやばいことでもしようとしてたんじゃ……」
「はっはっは。時々一男はするど……面白いことを言うな。私がそんなことをするはずがないだろう」

 それはどうだろう、とかずおは 思った。
 そもそも、勝手に人の家に入り込んで料理を作っている人の言葉を信じろ、というのに無理がある。
 勝手に忍び込んでも倉子が何もしないということは信じているが、未だに真意は図れない。
 
「その小瓶、なんですか? 香辛料じゃなさそうな感じですけど」
「一男。世の中には気にしなくていいことというものがある」
「……はい」
「この小瓶を気にするのなんて、でたらめな知識で小説を書く小説家の、知識の真偽を気にかけるようなものだ」
「……つまり?」
「細かいことは気にするな。終わり良ければ全てよし、ということだ」
946姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 19:27:09 ID:btxwkjdG
 そこまで言うと、倉子は一男に背を向け、ガスコンロの火を止めた。

「さ、もうできたぞ。この私特製のカレーだ。一緒に食べよう」
「はい。……ご飯、用意してもらってすいません。勝手に忍び込んだ人に言うのも変ですけど」
「何を言うんだ。ここは一男の家。ということは私の家でもある」
「遠慮しないんですね」
「これでも遠慮しているんだぞ。本当なら夜もこの家で眠りたいんだが、妹2人がうるさくてな」
「ああ、あの2人ってまだ倉子さんにべったりなんだ。なんだかんだ言いつつも倉子さんがいないと寂しいんですね」
「え……いや、そういう意味ではないが……」

 はっ、としたように、倉子は目を見開いた。
 台所の熱のせいで額にあらわれていた汗が、頬を伝っていく。
 次に倉子は、床を見つめるように下を向いて、両腕を組んだ。
 まさか、いやさすがにそれは、いやいや、という声が一男の耳に届く。
 倉子は顔を上げると、一男の目を見た。

「一男」
「はい」
「私がなんでこんなことをしているのか、そしてそこにどんな真意があるのか、気づいているか?」

 今度は一男が腕を組む番だった。天井を見つめて、思案する。
 答えはすぐに見つかった。

「……えーっと、俺のことが好きだから?」
「おお! それだそれ! やっぱり気づいていたのか!」
「そりゃ、気づきますよ。10年ぐらいの付き合いですから」
「正確に言うと、17年だ。私は一男が0歳のときから好きだったんだぞ」

 一男は感動した。目に涙が浮かびそうだった。
 倉子さん、そこまで俺のことを弟として大事に思ってくれていたなんて。
 しかも好きだ、とまで言ってくれるなんて。本当に倉子さんはいい人だ。
 と、一男は思った。自分の答えを疑うようなことはしなかった。
 一男は、倉子は自分のことを弟として好きなのだ、と本気で思っているのだ。
 だから、自分の気持ちを伝えた。

「俺も、倉子さんのこと好きですよ」

 もちろん姉として。
 心の中で一男はそう付け加えたが、それが倉子に伝わるわけがない。
 一男の台詞を聞いた倉子は、口を大きく開けて、声にならない叫び声を上げた。

「――一男! じゃんじゃん食え! 6人前くらいはあるが、全部食べてしまっていいぞ!」
「6人分は無理でしょ。って、倉子さんも食べてください」
「私は今の言葉だけで、パラソル一本で空を飛ぶことも可能とするエネルギーが補充された!腹一杯だ! だから一男が1人で食え!」
「はあ……じゃあ、そうします」
「ああ、ああ……ああ! もう、駄目だ!」

 倉子はそう言うと一男に向かって突進した。
 押し倒される?! と一男が思ったのも束の間。倉子は一男の脇を過ぎて家を飛び出していった。
 また、倉子の叫びが聞こえた。家の中からではなく、外から。
 ご近所からの苦情が倉子の家に殺到するのではないか、と一男は思った。
947姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 19:28:34 ID:btxwkjdG

*****

 倉子の作ってくれたカレーを一杯だけ食べたあと、一男は町民プールへ向かった。
 町民プールは一男の住む町の役場に隣接する位置に建っている。
 一男の家から町民プールまでは、車で約20分ほど。
 プールへ向かう20分ほどの道を、一男は自転車で走っていた。

 先日購入したばかりの自転車はロードタイプのため、並みの自転車以上のスピードがでる。
 ゆっくり走っている50ccのバイクであれば、あっさりと追い抜いてしまう。
 そして今、一男は普段の自分のペースより速いスピードで車道を走っていた。
 それこそ車を全て追い越さんばかりの勢いで。
 なぜか? 理由は2つ。

 まず一つが、現時刻が一時を過ぎているということ。
 家をでる前に組子を迎えに、向かいの家のチャイムを鳴らしたのだが、留守だった。
 恵子はどこかに行っていてもおかしくないが、倉子すらいないというのは不思議に思えた。
 留守だということは、すでに町民プールへ向かっているということ。
 おそらく部活動の帰りにそのまま向かったのだろう。
 遅れてはまずい、ということで急いでいるのだった。
 これが理由の一つ。

 もう一つは、一男の後ろをついてくる自転車の存在だった。
 一度停止して先に行かせようとしたが、自転車は一男の後ろで停まったままで、先に行こうとしない。
 ならば振り切ろうと思い、あえて混んだ道を走ったり、全力で置き去りにしようとした。
 しかし、後方にいる自転車はいつまで経ってもつかず離れずの位置をキープしたまま追走してくる。

 始めのうちこそ不気味ではあったが、今、一男は楽しんでいた。
 一男の住んでいる町では、ロードバイクが街中を走っていることが少ない。
 時々目にはするものの、一男が自転車に乗っているときに遭遇する確率というとほぼゼロだった。
 なぜロードバイクに遭遇したいのかというと、答えは一つ。勝負したかったから。
 とはいえ実際に遭遇したところでレースまがいのことなどできるはずもない。
 そう思い、ほぼ諦めかけていた一男の前、いや後ろに現れた白いドロップハンドルのロードバイク。
 後ろを一瞬振り返ったとき、乗っている人間はサングラスをかけていた。
 車体の色はわかったものの、それ以外の特徴はつかめなかった。男か女かそれすらもわからない。
 だがどうでもいいことだった。自転車でスピード勝負ができるなら、それでよかった。

 道路が下り坂に差し掛かった。この坂の中腹に、町民プールはある。
 一男は、最後のスパートをかけた。ギアをトップに入れペダルを踏み、下りの慣性を利用してさらに速度を上げる。
 後ろから音は聞こえてこない。それはそうだ。ロードバイクの走行音はほとんどしない。
 ましてや必死に走っているときに走行音が聞こえるはずもない。
 しかし、背中に言いようのないプレッシャーは感じられる。追走者はまだ、諦めていない。

 100メートル前方の右手にわき道がある。あそこから町民プールの駐車場へ入ることができる。 
 それはつまり、この勝負も終わりだということだった。
 駐車場の入り口が目前に迫る。一男は残念に思いつつ、ブレーキをかけた。
 ありがとう、楽しかったよ。そう思いながら。
 追走していたロードバイクは、さきほどの勢いのまま坂道を下っていった。

 その時、どこからともなく、一男ー! という叫び声が聞こえてきた。
 なんとなく倉子の声に似ていた気がしたが、一男は深く考えずに駐輪場へ向かった。
948姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 19:29:25 ID:btxwkjdG
 一男は駐輪場に自転車を停め、ワイヤーロックを屋根の支柱と車体と前輪のホイールに通して、
施錠すると、町民プールの入り口前へ早足で向かった。
 プールの受付前には、やはり組子がいた。
 シャツと短パン、そして肩にはスポーツバッグ。家には帰らず、そのまま町民プールまでやってきたようだった。
 一男が駆け寄ってくると、組子は片手を挙げた。

「ここ、ここ」
「おう、悪い。遅くなって。待ったか?」
「待ったわよ。まったく今までなにやってたのよ、おかげでこっちは汗でびしょびしょ……じゃなかった。
 待ってないわ。ついさっき来たところよ」
「……なんで今、わざわざ言いなおした?」
「男が細かいこと気にしないの」

 そういい残すと、組子は受付へ向かった。一男もそれについていく。
 このプールの受付は外から見えるようになっていて、払わないと中へ通してもらえない仕組みになっている。
 受付口の中にいる係員に2人分の利用料金を払えば、プールを利用できる。
 一男は高校生1人分の料金を払った。
 そして、中へ向かおうとしたのだが、料金を払っていない組子までついてきた。

「組子?」
「ん?」
「お金、払わないのか?」
「あんた、払ってないの? なんで?」
「なんでって……お前はどこのお姫様だ。自分の分くらい自分で払え」
「は? 今日はあんたが払うんじゃないの? あんたがここに誘ったんじゃない」
「行かないかとは言ったけど、おごるとは言ってないぞ」
「……あんた今日、デートに誘ったじゃない」

 デート? 何を言っているんだこの女。

「悪いけどな、デートに誘ったわけじゃないぞ。俺が行くついでにお前を誘っただけで――」
「払いなさい」
「おい、人の話を」
「払いなさい」
「……怒るぞ」
「これで最後。……は、ら、い、な、さ、い」

 組子の喋り方が変貌していた。
 一男の脅しなど気にした様子も無く、顔も見ずに、料金を払うことを強要してくる。
 一男はこのまま1人だけで中に入ってしまおうかとも思ったが、それを思い直した。
 まったく、金が無いんなら、かっこつけずにそう言えよな。

「わかったよ。仕方のないやつだ」
「そう、それでいいのよ。……初デートくらい、おごってよね」

 一男は疑わしい目つきで見つめてくる係員に組子の分の料金を払った。
949姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 19:31:45 ID:btxwkjdG
 男子更衣室で着替えを終えた一男は、早速プールへと向かった。
 町民プールの中は、2種類にわかれている。
 一つが大人用。深さは中学校のプールくらいで、縦に25メートル、横は10レーン分の長さがある。
 一男が泳ぐのはもちろんこちら側だ。
 もう一つは、子供用。高校生の一男の膝ぐらいまでしか深さがない。

 今日は夏休みということもあって、子供の姿が多かった。中には高校生らしき一団もある。
 一男は壁際に立って、準備運動を始めた。
 屈伸、伸脚、前屈、上体反らし、といった感じで黙々と体を動かす。
 さきほどまで謎の自転車乗りとレースを繰り広げてきた体はすでに温まっていて、準備運動だけで汗が浮かんでくる。

 ふと、周りの視線が自分に向けられていることに、一男は気づいた。
 年齢や容姿、性別に関わらず、一男の前を通るとき、チラチラと一男の体を見る。
 無理も無い。一男の体はぱっと見、マッチョなのだ。
 筋肉量は平凡であるものの、脂肪量の少なさのせいで筋肉の形がはっきりわかるようになっている。
 腹筋は綺麗に六つに分かれているし、背中にも深い溝が見える。
 すべては、自転車馬鹿である一男のトレーニングの賜物だ。
 プールに来ている人たちはある人は羨ましげに、ある人は奇異の視線で一男を見る。
 学校の水泳の時間で同級生のさまざまな視線にさらされてきた一男は、視線を受け流しつつ準備運動を続けた。

「一男」

 声をかけられ、一男は振り向いた。そこにいたのは。

「組子……か?」
「うん」
「…………」
「なによ、その目」

 普段一男が目にしている、体育の水泳の授業でワンピース型のスクール水着を着たよく知る組子ではなく、
上下に別れたピンクのビキニを着た初めて見る組子だった。
 少しくせのあるショートの髪はそのまま。
 プールに入る際に被る水泳用のキャップを手に持っている。
 首から始まり、肩へと流れていくなだらかなカーブは、ほっそりとした組子の腕へ。
 ビキニに包まれた胸は大きさを主張しない程度の大きさだ。
 しかし、組子の最大の武器は、機能美を思わせる美しさにある。
 具体的には、バスとからウエスト、そしてウエストからヒップへ続くラインの美しさ。
 痩せすぎてもおらず、かといって余分なものもついていない。
 ヒップから太腿へ下るラインなど人類が目指す理想の極地。
 本当、今日は組子をプールに誘っておいてよかった。
 今さらながらに一男は自分のやったことを褒めるのだった。
950姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 19:32:57 ID:btxwkjdG
「組子。いえ……組子さん」
「何よ、いきなりさん付けで呼んだりして」
「ありがとう……本当にありがとう。お前が幼馴染で、本当によかった」
「……はーん。なるほど、あんた今頃私のよさに気づいた、ってわけね」
「ああ」

 本当に、今さらだった。
 同じ学校に通って、さらに同じクラスで、あまつさえ幼馴染だというのになぜ組子のスタイルの良さ、
レベルの高さに一男が今さら気づいたのか。
 それはおそらく、組子が一男の前で女の子らしい格好をしなかったからだろう。
 ただでさえ一男は男女の機微に疎い。そのうえ自転車馬鹿。
 同級生で幼馴染であっても、女らしさのアピールをしなければ一男の印象を変えられるはずがないのだ。
 組子は一男の前では露出の低い格好しかしない。髪型や化粧でおしゃれをしたりもしない。
 さらに生来の気の強さで一男に対して弱い面を見せようとしない。
 その点、組子は反省すべきだろう。

 組子には今、チャンスが訪れている。
 初デートで、人の目がある町民プールだというのに、一男は組子の体に釘付けになっている。
 組子が登場してから今まで、一男は組子のウエストと脚ばかり見つめている。
 この状況で密着して、誘いの言葉でも囁き続ければ一男はいとも容易く組子の手に落ちるだろう。
 一男は、17歳の男子高校生が抱く程度の性欲は持ち合わせていたからだ。

 しかし、それは組子も同じことだった。
 性欲はもちろん、異性の体についても。
 学校の授業で見る一男の体と、初デートの場所で見る一男の体では、後者の方がはるかに貴重だった。
 そのうえ、一男が組子に向けている眩しそうな視線。
 そろそろ、組子も限界に近づいていた。
 具体的には、いろいろ我慢できなくなってきた。

「……一男。プール、出ない?」
「へ……? いや、何言ってるんだ。今日はここに泳ぎに来たんだぞ、俺は」
「あら、そう……。ごめん、ちょっと……すぐ戻ってくるから、先に泳いでていいよ」
「? わかった。そんじゃ、お先」

 一男はプールサイドに立つと、人のいない水面へ向かって飛び込んだ。
 周りで泳ぐ人々も同様に、頭から飛び込んだり腹から飛び込んだりする。
 その光景に背中を向け、組子は歩き出した。
 着替えて帰るわけではない。トイレへ向かっているのだ。
 具体的に何をするのかは言わない。

 ただ、組子の後で女子トイレに入った女性は、色っぽく男の名前を呼ぶ声を聞いた、とだけ言っておこう。
951姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 19:35:48 ID:btxwkjdG
残り容量を埋められるよう、残りの文章を調整します。しばらくお待ちください。
952姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 20:53:34 ID:btxwkjdG
*****

 ひとしきり泳いだ一男は、プールから上がって空いたベンチに座っていた。
 壁に貼りついている時計を見る。2時30分。泳ぎ始めてから1時間以上経過している。
 まだ一男は帰ろうとは思わなかった。まだ泳ぎ足りないし、組子がさっきから戻ってきていないからだ。
 帰ってしまったのだろう、と一男は思っていた。そして、その方がいい、とも思っていた。

 一男は、組子の水着姿に戸惑っていた。
 正確に言えば、はまりすぎている組子の水着姿を見て思考を停止させる自分に戸惑っていた。
 組子を見ていて、一男がこんな反応を示すことは今まで全くなかったのだから、無理は無いだろう。
 一男はもう一度、組子の水着姿を思い浮かべた。
 直接的に性欲の対象になる体つきではない。だが、そのできすぎたバランスに芸術性を見出してしまうほど、組子の体は綺麗だった。
 
 一男は、いけない方向に思考が働きそうだったので、もう一度水の中に入ることを決めた。
 ベンチから腰を浮かし、背筋を伸ばそうとしたところで――頭に固いものがぶつかった。
 痛みはないが、突然のことで不意をつかれてしまった。
 不機嫌そうに眉をしかめ、周囲を見渡す。何者の仕業かを見分けるために。
 すぐ傍に居た。右に見知ったクラスメイトが。ジュースの缶を持って。

「神川か」
「お待たせ。ごめんねー、水着がなかなか見つかんなくってさ」

 神川が着ていたのは、ワンピースタイプの水着だった。
 学校指定の水着と異なる点と言えば、脇の下から脚の付け根までラインが入っているところと、
水着が背中で×を描くようになっているところだった。首の下から腰の辺りまで、ほぼ丸見えになっている。
 いわゆる競泳用の水着だった。

「実は私ね、中学校まで水泳部だったんだ。去年まではジムで泳いでたりもしたんだけど、今年に入って水泳はやめちゃった」
「そうだったのか」
「で、どう? 似合う?」
「うーむ」

 一男は、目の前の神川の姿とビキニを着た組子の姿を比較した。
 色っぽさといった点では組子に軍配があがる。しかし、神川の主張しない色っぽさもいい。
 なにより、胴の部分を見せていないところに慎ましさを感じる。
 具体的には脱がす楽しみ、想像する楽しみがある。
 以上を踏まえて出した結論。

「似合う。いや、似合いすぎてこれ以外に神川にふさわしい水着などないのではないかとも思えるな」
「言いすぎだよ。でも嬉しいな、この水着、お気に入りなんだ」
「それ、どうやって着るんだ? スクール水着もそうだけど、その手のやつって着るときに無理したらやばそうじゃないか?」
「それは女の子の秘密だよ。それより、はいこれ。ジュースあげる」
「お、サンキュ。気が利くな」
「トロピカルバナナサンデーじゃないけどね」

 一男は神川の差し出したスポーツドリンク入りの缶を受け取った。
 プルタブを開け、一気にあおる。250ml入りの缶は、あっという間に空になった。
953姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 20:54:09 ID:btxwkjdG
「さて、それじゃあ泳ごっか」
「おう」

 くずかごの中に空き缶を捨て、一男と神川がプールサイドへ向かったとき。

「一男」

 突然、名前を呼ばれて一男は後ろを振り向いた。
 そこにいたのは、潤んだ瞳を無理矢理に尖らせている組子だった。
 着ている水着はビキニのまま。シャワーでも浴びたのか、全身が濡れている。

「組子、遅かった……じゃない。一緒に泳がないか?」
「その前に、こっちの質問に答えなさい。その子、誰?」
「え、私?」

 組子の指に差され、それに流されるように神川は自分を指差した。

「やだなー、組ちゃん。私だよ、私。神川」
「神、川さん?」
「水泳用のキャップ被ってるからわかんない? これでわかるかな?」

 神川は被っていたキャップを脱いだ。押し込められていた髪の毛が重力に従い下りて行く。
 神川は学校では髪を短い三つ編みにしている。
 今日のように泳ぐときは三つ編みを解いているため、素の髪型があらわになっている。
 黒のショート。組子よりも少し長め。

「どう?」
「神川さんだっていうのはわかったけど……私が問題に思っているのは、それじゃないわ。一男」

 突然話を振られ、一男はプールサイドに座って体に水を浴びせている手を止めて振り向いた。

「なんだ?」
「どうして、あんたと神川さんが一緒にいるの?」
「どうして、と言われてもな。俺が神川をプールに行かないかって誘ったから神川がここにいるわけだが。
 なんか悪いことしたか?」
「それって何よ、つまり……デートに誘ったってこと?」
「そんなつもりはなかったぞ。たまたま暑かったからそんな話の流れになってしまっただけだ」
「たまたま? 暑かった? それに、デートに誘ったつもりはなかった、ですって?
 あんたね、女の子にプールに一緒に行かないか、って誘うのはデートに誘ってるのと一緒なのよ。
 私をプールに誘ったうえ、神川さんまで誘うなんて……あんた、わざと私を怒らせようとしてない?」
「馬鹿を言うな。俺はそんなことはしねえ」

 組子を怒らせたら怖い、ということを知っている一男が、わざわざ組子を怒らせようとするはずもない。
 しかし、怒らせるつもりはなかったとしても、怒らせてしまうことはある。
 例えば今のように。
954姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 20:55:16 ID:btxwkjdG
「でも、あんたを見てるとどうもねえ……私を怒らせようとしているようにしか思えないのよ」
「それはお前の目に変なフィルターがはまっているからだ。本当の俺は、嘘一つつくことのない真面目な人間だぞ」
「たった今嘘ついてるじゃない。……ああ、やっぱりあんた、私を怒らせたいのね?」
「いや待て。すでに今お前は怒っているわけで、それ以上怒りを濃くしたらさらに酷いことに……」
「見られない顔になるって? へええ、誰のせいでそうなっていると思っているのかしらねえ。一男は」

 事実、組子の表情はすごいことになっていた。
 眉間に眉が寄りそこが皺を浮かべ、綺麗な二重まぶたが奥に沈み一重まぶたに。
 右側の頬は筋肉が痙攣していて、右目尻をひくひくと動かしている。
 さらに濡れた髪が額や頬に貼りつき、水に関わるホラー映画的な形相を作り出している。

「別に私は怒ってないわよ? いつもどおりよ、いつもどおり」

 いつもどおりの表情の記憶を塗り替えてしまいそうな顔で、組子は笑う。
 その顔と整いすぎたボディラインの組み合わせのせいで、首と、首から下が違う生物であるように見えてくる。
 まるで何かの仮面でも被っているかのようだ。

「ね?」
「ね、じゃねえだろう。ま、いいや。機嫌が直ったんなら、泳ごう」
「ええ、そうね。と言いたいとこだけど……なんで、神川さんをここに誘ったの?」
「またそれかよ。さっきも言っただろ、なんとなくだよ」
「本当に? それ以外に目的があったんじゃないの?」
「ねえよ。なあ、お前なんかおかしいぞ。神川をプールに誘ったら悪いのか?」
「悪いに決まってんでしょ! だいたいあんた私の…………あ」

 組子が言葉を止めた。先ほどから神川を放っておいたことに、今さら気づいたのだ。
 焦った顔をして、神川に弁解をする。

「あ、あのね? 神川さんが来たらいけないってわけじゃなくって、これはいろいろな理由があってね?」

 組子の苦しい言い訳の言葉を聞いても、神川は怒らなかった。
 むしろ、笑顔を浮かべた。面白い玩具を見つけた子供のような笑顔だった。

「えっと……だから、悪いのは一男であって、神川さんは悪くないの」
「うん。わかってるわかってる。組ちゃんは悪くなんかないよね。悪いのは、組ちゃんの気持ちに気づかない人」
「えっ?」
「私を先に誘ったくせに、他の女の子を誘うなんて! って感じでしょ?」

 神川が喋るたびに組子の顔は赤くなり、同時に驚愕の色を濃くしていく。

「わ……わかっちゃった?」
「わかんない人の方がどうかしてるよ。組ちゃん、露骨すぎ」
「あ、ああ……あぅ」
「んふふー。どう、しよ、っかな」
「んー! んんー!」
955姉妹夏休みネタ ◆Z.OmhTbrSo :2007/07/29(日) 20:56:15 ID:btxwkjdG
 腕を組んで組子を見つめながらにやにや笑う神川。
 さるぐつわをされているわけでもないのに、口を封じられたようにうめき声をだしながら首を横に振る組子。
 傍で見ていた一男は、2人の様子が変だということには気づいていたが、その理由までは察していない。
 だから、不思議そうな顔をして首を傾げるしかできない。
 そんな一男に声をかけたのは、組子の肩に手を回して笑顔をつくる神川だった。

「吉村君、ちょっと待っててね」
「ん、話終わったのか?」
「いやいや、たった今から乙女同士の戦略会議をするのですよ」

 ぐふふふ、と神川は笑う。

「会議? よくはわからんが……先に泳いでてもいいか?」
「ああ、だめだめ。吉村君はプールサイドで待ってて。予想外の行動をとられたら困るから」
「いいけどさ、早めに済ましてくれよ」
「はいはい。そんじゃ、ちょこっと待ってておくれ」

 神川が組子の肩に手を回したまま更衣室へと歩き出した。
 2人は、「どこまでやる? イクとこまで?」「ええっ! そこまではさすがに。せめて告白を……」という感じで
話をしながら、奥へと消えていった。

 残された一男は、泳ぐな、という神川の言葉を忠実に守って、プールサイドに座り込んでいた。
 プールの中では、水着を着た大小さまざまな男女が各々に水泳を楽しんでいた。
 ビーチボールで遊ぶもの、水をかけ合うもの、助走をつけて飛び込み台からプールに飛び込むもの。
 その光景を見ていると、一人でプールサイドにちょこんと座っている自分が寂しい人間に思えてきた。
 いっそのこと神川の言葉を無視してやろうか、とも思ったが、結局一男はプールに入らなかった。
 一男は文句を言いながらも人の言葉を無視しない、律儀な男だった。

 まもなく時刻は3時になろうとしている。
 一男はプールサイドに座ったまま、プールの外側を囲む鉄柵の向こう側を見た。
 プールの天井は日差しを避けられるようになっているが、プールの外は直射日光が当たっていてまだまだ暑そうだ。
 涼しくなり始める夕方まで、まだ時間はある。
 夕方まではプールの中にいようと、一男は誓うのだった。

----- 
長くなりそうなので、残りは37スレの終盤、埋めネタとして投下します。
956名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 09:11:28 ID:VFFuIrxK
|∀・)イイヨイイヨー
957名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 09:31:13 ID:/VyOUtzc
埋めネタにしておくには惜しいですな
958名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 11:54:33 ID:0rc14Ltz
全裸でまってる
959名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 12:00:15 ID:+BZo/4CK
  i    | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ        |
  |   i 、ヽ_ヽ、_i  , / `__,;―'彡-i     |
  i  ,'i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三''―-―' /    .|
   iイ | |' ;'((   ,;/ '~ ゛   ̄`;)" c ミ     i.
   .i i.| ' ,||  i| ._ _-i    ||:i   | r-、  ヽ、   /    /   /  | _|_ ― // ̄7l l _|_
   丿 `| ((  _゛_i__`'    (( ;   ノ// i |ヽi. _/|  _/|    /   |  |  ― / \/    |  ―――
  /    i ||  i` - -、` i    ノノ  'i /ヽ | ヽ     |    |  /    |   丿 _/  /     丿
  'ノ  .. i ))  '--、_`7   ((   , 'i ノノ  ヽ
 ノ     Y  `--  "    ))  ノ ""i    ヽ
      ノヽ、       ノノ  _/   i     \
     /ヽ ヽヽ、___,;//--'";;"  ,/ヽ、    ヾヽ
960名無しさん@ピンキー
さよならを言えたならと鬼ごっこを全裸で待つ、信じて待つ