嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35

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1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSSを扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その34
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1176833744/

■まとめサイト
2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html

■非難所
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二人目の子
http://www2.atchs.jp/dorobouneko/
2名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 09:02:50 ID:wVkHRjTY
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第18章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1174845082/l50
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板 その2
http://book4.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1172035731/
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレin角煮板3rd
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1176121368/
誘導用
【モテモテ】ハーレムな小説を書くスレ【エロエロ】8P
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1174204650/
ヤンデレの小説を書こう!Part6
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1176605863/
ほのぼの純愛 9スレ目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171372657/
●●寝取り・寝取られ総合スレ4●●
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1164867401/
キモ姉&キモウト小説を書こう!
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1176013240/
3名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 09:04:08 ID:wVkHRjTY
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
4名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 10:07:35 ID:vwABoqMf
こんなに早く立って、あの人の気を引こうなんて、なんて汚い。
泥棒猫な屑女はひとり寂しく過疎ってればいいのよ!!!


あの人は私のモノあの人は私のモノあの人は私のモノあの人は私のモノあの人は私のモノあの人は私のモノあの人は私のモノあの人は私のモノ


それじゃあ、埋まっちゃえ―――――――――――!!!
5名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 10:30:12 ID:7kXB8r0b
>>1
乙彼
6名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 10:36:44 ID:vwABoqMf
>>5
なんでよ………。
どうしてこの泥棒猫に乙するの!?

ずっと、ずっと34スレだけを見てよ………………………………………………………………。



それより、この泥棒猫どうしてくれよう
7名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 13:07:15 ID:vwABoqMf
ほら見なさい、アナタに関心を寄せる人なんていないのよ!!


これ以上は粘着アンチって言われそうだから、止めます
8名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 21:45:16 ID:FxtxPGjD
>>1
乙age
9名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 21:48:32 ID:XVi/r4cJ
>>1


ていうか前スレに新スレへのリンク貼ってなくね?
10名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 23:42:03 ID:zCEfGvrT
>>1
今回は450k超えてたし文句は言わん。
だが一言、避難所の漢字を直さないのはわざとか?
11 ◆Xj/0bp81B. :2007/05/13(日) 01:42:45 ID:xdLNtVce
投下します。
12すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/13(日) 01:45:03 ID:xdLNtVce
一時間目の日本史を無事終えた。
夏休みの余った時間をたっぷり費やし、一から丁寧に覚えていった日本史の手応えは、いつになくずっしりと重く、回収されていくテ
ストを、翔は自信を持って見送る事が出来た。その解答用紙に空欄はなく、分からない問題も一問もなく、かなりの高得点が期待でき
そうだ。
が、いつまでも浮かれているわけにはいかない。この日のテスト最大の山場は、次の英語なのだ。
そもそも日本史は得意な科目であり、普段のテストでも高得点をマークしている。しかし、英語はそうはいかない。中間テストでも期
末テストでも、赤点スレスレを安定飛行し、少しでも高い山がくるとポシャる。一学期最後のテストではついに赤点を割り込んでしま
った。そのため、夏休みにみっちりと勉強したつもりなのだが、いかんせん元が低空であるため、どの程度まで学力が上がったか定か
ではない。もちろん、悪くはなってはいない、はずであるが、不安は募るばかりだ。
その不安を抑え込むためにも、最後の悪あがきをしようと、鞄に手を突っ込み、単行本サイズの英単語帳を引っ張り出して、適当なペ
ージを開いてパラパラとめくる。そこで翔はおかしな事に気付いた。この単語帳は一応、夏休みの間に全部覚えたはずなのに、なぜか
その中に記憶の空白がいくつもあり、知らない単語が結構あったのだ。
英単語は、基礎中の基礎であり、夏休みに一番初めに手をつけたはずである。それが今さら怪しいとはどう言うことかと愕然とし、同
時にまだテストも始まってもいないのに慄然とし、最後に翔は青くなった。しかし、いくら状況が絶望的でも、英語だけは落とすわけ
にはいかない。他の教科なら、例え失敗してもまだ挽回出来る可能性はある。しかし英語だけは配点が他の教科の倍、つまり二百点満
点という明らかに差別としか思えないほど優遇されていて、英語の失敗を他の教科でカバーする事が出来ないのだ。
13すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/13(日) 01:46:58 ID:xdLNtVce
英語は翔の前に大きな壁となり立ち塞がっていて、「越えられる物なら越えてみろ」とせせら笑いつつ、不敵に翔を見下している。そ
の揺るぎない事実に、態度に、行き場のない怒りがふつふつとこみあげてきた。ふざけんな、だいたいここは日本だ。それなのに何故
、国語や日本史より英語が優遇されるのか、意味が分からないし、その意味を出題者に問つめてやりたい。
しかし、いくら文句を垂れたところで、事態が好転するわけもなく、諦めに近い気持ちを抱いて翔は再び単語と格闘を始める。その時
だった。
「ようようよう。お前、中野と仲直りしたらしいじゃん」
隣の席に座る寺田宏樹が、椅子に横に座り、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべつつ話しかけてきた。
「何があったか知らないけどさ、ともかくよかったよ。特に中野は最近元気なかったろ? だけど、今日は心なしか嬉しそうだもんな」
おかしなテンションの寺田は嬉しそうに一人で話を続ける。寺田に構っている暇のない翔は時折話に相槌をうちつつ、黙々と単語帳を
眺めていた。その翔の姿を不思議に思ったのか、寺田は単語帳と翔の顔を交互に見比べ、やがて納得したように頷き、
「そう言えば、翔だけこのテストが内申に響くんだっけ。大変だよなぁ。ところで、どうなんだ?今日のテストの自信のほどは?」
翔は単語帳のページを一枚めくり、
「俺は今何やってるように見えるよ?」
「単語帳、見てるな」
「そうだ。そんな俺に余裕があるように見えるか?」
翔が答えると、急に寺田は悟りを開いた釈迦のような神妙な顔をつくり、翔の肩を叩いてこう言った。
「仕方ないさ。諦めろ」
「うるせー、そんな事、寺田には言われたくないんだよ」
「だって翔が必死こいてんの、今さら英単語だろ。もう絶対に間に合わないぜ? いっそ推薦は諦めて、俺と一緒に他の大学受けよう
ぜ」
そう言う寺田は何故か嬉しそうだった。自分が推薦絶望であるため、同じ境遇に友人を引きずりこもうとしているのだ。見下げ果てた
奴である。
14すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/13(日) 01:49:56 ID:xdLNtVce
こういう男は無視するに限る。翔は、耳から意識を切り離し、口をつぐんで、単語帳に没頭する。そんな翔に、なおも寺田は悪魔の囁
きを続けた。
「おっ、おっ、頑張るねぇ。まぁ、今さら頑張っても、遅いけどな。夏休みに沢山時間があったのに、勉強しなかったお前が悪いんだ
。もう、誰も助けてくれないぜ?」
そのとき、何かが心の琴線に触れたような気がして、翔は固まった。それから油の切れたロボットのような動きで、単語帳から寺田に
視線を移し、助け、と呟いた。寺田は翔の不自然な動きに瀧狽した様子で、ああと頷く。それが引き金だった。
テストの重大さや、英語の強大さに押され、いつの間にか頭の奥底で埃を被っていた記憶が、いきなり白日の元に晒される。もちろん
、それは澄香のあのメールの事だ。
どうして忘れていたのだろう。翔は慌てて携帯を取り出すと、テスト中は切っていた電源を入れ、メール画面からメールセンターに問
合せる。画面の中で、手紙を催したアイコンが小さな地球の周りをくるくる回り、メールを回収していく。
一件、二件と数を数えだしたころ、キョトンとしていた寺田が、眠りから覚めた獅子のように猛烈な勢いで口を開く。
「何だよ、どうしたんだよ携帯なんか見て。あっ、さてはお前、カンニングするつもりだな」
「寺田」
翔は真っ直ぐ寺田を見据え、
「悪い、ちょっと今マジなんだ」
寺田は目を大きく見開き、小さく口を開く。やがてまるで全てを悟ったように柔らかな微笑を浮かべ、「そうか」と言った。彼は翔に
何も聞いてこなかった。ただ、代わりに寺田は「頑張れよ」と、最後に口にして、会話から離脱した。
寺田は空気の読める男である。何かを翔から察し、身を退いてくれたのだ。そして、寺田は中々の友達思いな男でもある。先程の少々
軽弾みな発言も、彼なりに翔をリラックスさせようとしたに違いなく、本気で言ったわけではないだろう。その証拠に夏休みの間、遠
回しに勉強するようにと度々電話してくれたのは、他ではない寺田だった。
15すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/13(日) 01:53:55 ID:xdLNtVce
少し考えてみれば、寺田にしろ、中野にしろ翔を心配してくれているのである。自分は恵まれているのかもしれない、と二人に思う。
そんな感傷を切り離して、さて、そろそろ問合せも終わっただろうと、再び携帯に視線を落とす。やはり問合せは終わっていた。しか
し、その新着メールの件数に、翔は驚嘆の吐息をもらし、同時に全身の毛を逆立てた。
新着メール、21件。
僅か一時間の間に、それほどたまっていた。
しかし、驚愕はそれだけでは終わらない。そのメール全てが澄香からのもので、そしてその全てが異様だった。
たすけて。
たすけて。
たすけて。
どのメールも、それだけだった。顔文字も絵文字も添付もタイトルもない、たった四文字のメールが、まるで自らの存在を主張するか
のように21通並んでいる。その中に、ホームルームに翔の送った問いに答えるメールは一通もなかった。
澄香のメールだけでは、具体的に彼女に何があったのかは分からない。しかし、澄香が今、普通ではないということだけは、その短い
文章からでもはっきりと伝わってくる。ある種、澄香は狂っているのかもしれない、と翔は思う。
体もさすがにその澄香の異常さに気付いたようで、翔の本能的な部分がジリジリと警報を鳴らしはじめる。背中から、脂のようにねば
ついた汗が滴り落ち、肺が縮んでしまったかのように空気が足りなくなる。血液が温度を失い、それが血管を循回するたび、体が熱を
失っていく。
その冷たい体の中で、二つの感情が熱くそして激しくぶつかりあっている。それは互いに譲らず、やがて胃が捻れるような葛藤を産み
出した。
しかし、すでに悩んでいる時間はない。英語のテストはすぐそこまで迫っている。だからこそ、早急にどちらか一つを選び、気持ちに
踏ん切りをつけなければならないのだが、それが中々決まらない。ジワリジワリと足音なく近付いてきた焦りが空回りし、解決を求め
る葛藤が、記憶の底からいくつもの欠片を拾いあげる。その欠片が、硝子のように光を反射し、記憶を、まるで万華鏡のように映し出
した。
16すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/13(日) 01:54:40 ID:xdLNtVce
翔は思い出す。
初めて澄香に会った時の事を、彼女を藤宮と呼んでもの凄く怒られた事を、大好きなメロンパンを頬張る彼女の姿を、そしてそのメロ
ンパンを半分分けてくれた時の照れたように頬を染めた彼女の顔を。
ノートを貸してくれたクラスメートを、緊張を和ませようと背中を押してくれた寺田を、夏休みにテストに備え勉強した自分を、いつ
になく心配そうに翔を見つめる中野の姿を。


そして──。
17 ◆Xj/0bp81B. :2007/05/13(日) 01:56:13 ID:xdLNtVce
ひとまず投下完了。長くなりそうなので二つに分けます。
続きは後日。
18名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 01:59:11 ID:ql9D26UM
>>17
リアルタイムGJ!!
それにしても、なんという生殺し!!
是非とも早い投下を望みます。
1934スレ:2007/05/13(日) 12:28:45 ID:6BEP2Y5T
ねえ、なんで35スレなんかに投下しちゃうの?
構ってよ!
こんなGJな作品を一杯投下してよ
20名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 13:14:12 ID:dKWMvQkE
もういい、34スレ、もう疲れた。
俺は35スレと一緒に過ごす。

もう二度と俺達の前に出てこないでくれ、
   じゃあな。
21名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 14:47:19 ID:56ezB5Z0
>>10
今は荒らしに対して非難するスレになってるよw
22名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 22:09:25 ID:PrMFvWKL
保守age
23名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 01:17:21 ID:d9T/6poO
一つだけ言っておく

さよならだ

それはお前らに対してではない。
俺の自由気楽な日常生活に別れを告げるんだ・・
これからは嫁に監視された日々が始まる
嫁と言っても、家に不法侵入しているストーカーもどきだが
眠っている間に襲われていて、知らない内に俺の子供を妊娠していた

そうさ・・。

今日はできちゃった結婚の披露宴だ。
両親や親族や友人が俺の祝いの門出を祝福するが
俺の嫁さんに関係する出席する人は誰もいなかった・・。
ようするに相当な陰気な人生を送っていたようだ。

そんな陰気な女と人生を共に永遠と歩んで行かなければという不安。
束縛された日々・・嫉妬スレにアクセスする手段は失われた

PCは俺の集めたエロ画像やインストしたエロゲーを消去する以前に
粗大ゴミに出しやがった・・。ネットは解約されて。頼みの綱の携帯も
Iモードが使えない旧式の携帯に契約されてしまった。

命からがら家を飛び出した俺はネット喫茶に辿り着いた
嫉妬スレの黄金の日々と共にGJと叫んだ日々は忘れない

あばよ・・

ただ、これだけが言いたかったんだ。


結論
必ず外に出せ!!
後で孕んでしまったら女の思い通りだ



嫁「これで○○さんと一緒に居られる

 勝った・・あの女にうふふふふきゃっはははっははははっははは」


○とりあえず、結婚した時の事を考えてみた
24名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 01:22:36 ID:D3qnn5tJ
>>23
だが断る
25名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 01:42:45 ID:H/rKP5dl
>>23
お前さ、前スレで盛り上がってないとか書くなら向こうに投下するべきだったんじゃないか?
26名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 10:57:40 ID:OVUFy87y
>>25
どちらに投下しても盛り上がらない以上
27 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:09:15 ID:j7IhhsXt
保守代わり投下いきます。
途中連投規制引っかかるかもです。
約10レス使用予定
ファンタジーモノ
28聖痕 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:10:46 ID:j7IhhsXt

揺れている。

周りは闇に包まれ、"それ"が何であるのかは分からないが、俺の目の前で揺れていた。
どうしてそれが知覚できるのか、分からない。
だが"それ"は、ゆらり、ゆらりと時を刻むように正確に揺れている。

俺は、それに触れたくて、でも触れられなくて。
そんなジレンマに陥っていた。
何故触れたくて、触れられないのかは分からない。
けれども、その絶対的な矛盾が存在した。

突然、光が差した。
雲の隙間から、目の前の"それ"を照らし出すように───

"それ"をみて俺は、自分の中の矛盾がどういうものなのか気づいた。
触れたくて、触れられなくて──確かにそうだ。

"それ"とは紅く、燃えるような────

    * * *

「カイ・クルード、起きなさい」

突然、声を掛けられた。
馬車の心地良い揺れに身を任せ、いつの間にか自分が寝てしまっていた事に気づく。
まだ寝たりない、と主張する瞼をこじ開け、声の主を見る。

「ふぁ〜……あ、おはようございますメルダリア様……あ゛!」

声の主は、我が主、メルダリア・ディレイズ様であった。
29聖痕 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:11:41 ID:j7IhhsXt
メルダリア様は、寝ぼけている俺を微笑みながら見つめている。
国一番と評される美貌をお持ちのメルダリア様の微笑みは、美しい、としか表せなかった。
スラリと高い鼻筋や、その冷徹さと優しさを同時に含む切れ長の瞳。

それに───紅い髪の毛。
腰まで届く、長い朱の髪。
それは、メルダリア様の特徴であり、力の象徴──聖痕(ステイグマ)でもある。
それがいま、馬車の窓から吹き込む風で、緩やかに靡いていた。

「どうした?」
「い、いえ…申し訳有りません…従者である私が居眠りなど……」

メルダリア様の美貌に目を奪われていたが、メルダリア様の一言に我を取り戻した。
申し訳なくて、頭を垂れる。

「いや、カイが乗り物に弱い事を知っていながら、馬車に乗せたのは私だ……済まない」
「い、いえ!メルダリア様にお供できて光栄です」

逆に謝られそうになり(実際謝られてしまったが)慌ててそう言う。
そもそも、俺が乗り物には弱いのを自覚していながら、メルダリア様に誘われて、馬車に乗ることを断れなかったのが原因だ。
だから、メルダリア様が謝るのは筋違いだろう。
ところが、あたふたする俺をよそにメルダリア様はクスクスと笑っていた。
30聖痕 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:13:29 ID:j7IhhsXt
「フフ……」
「な、なんですか?」

優しく微笑むメルダリア様。
俺以外に見ている者がいれば、メルダリア様に心奪われているだろう。

「いや、やはり平和とは良いものだな……とつくづく実感しただけだ」
「……そう、ですか……」

遠い目をして、窓の外を眺めながらそう言うメルダリア様を見て、少し、胸に痛みを感じた。

俺達が現在居る国──ベルマリア共和国と言うこの国は、三ヶ月前まで、隣国のティズ公国と戦争を行っていた。
五年間続いたこの戦争は、三人の英雄の登場により、三ヶ月前に終戦。
その三人の英雄の一人が、辺境の貴族ディレイズ家の御息女、メルダリア・ディレイズ様なのだ。

メルダリア様は、ベルマリア共和国軍の一将校として軍に加わっていた。
俺も一応護衛として、共に戦地へ赴いたのだが……。
酷い、状況であった。
つい先日まで、のどかで平和であると思われた村が、一晩で蹂躙され、焼き払われた。
女は連れ去られ、男、子供、老人は皆殺し、家畜は奪われ、農作物は焼かれた。
それが、どちらの国でも行われていた。

メルダリア様は、その時の事を思い出し、仰っているのだろう。
"平和とは実に良いものだ"と。
31聖痕 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:16:00 ID:j7IhhsXt
俺もそれを思い出し、胸が締め付けられた。

「……カイ、見えてきたぞ、王都だ」

メルダリア様がそう仰って指差した先には、巨大な円形の城壁に囲まれたこの国の王都、ベルマリク。
その中心部には、巨大な城と教会が存在した。
その両方が、他の建造物より群を抜いて高く、まるで、二本の角のように、左右対称に並んでいる。

「ベルマルク城と、聖ベルマリア教会……ですか?」
「ああ…あそこには余り良い思い出はないが……やはり外から見ると美しいモノだな……」
「そうですか……」

うっとりと目を細め、感慨深げに溜め息を吐くメルダリア様
思わず俺は、王都の景観に見とれるメルダリアさまに見とれてしまった。


   * * *



そもそも、俺とメルダリア様が王都へとやって来なければならなかったのは、
戦後の処理も粗方済んだので、
メルダリア様の戦争での勲功を讃え、英雄に然るべき立場が与えられる授与式がある為であった。
しかし、先の戦争での英雄が王都へ行く。などという事態であるから、授与式だけで済むはずがない。
パレードや数々のパーティー、王"達"との会談など。
ありとあらゆる様々な催し事のオンパレードだろう。
32聖痕 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:19:17 ID:j7IhhsXt
俺としては、それを考慮し、出来れば遠慮したかったのだが……。
メルダリア様と、先述の王"達"の一人で、先の戦争での三人の英雄にも数えられる、
大賢君シルフス・カナード皇子直々にお呼びを掛けられては、断れるはずもなかった───



   * * *



「到着致しました」

馬車を操っていた騎士がそう言って馬車を止め、扉を開いた。
俺が先に降りて、メルダリア様の手を取りエスコートする。
聖騎士とはいえ、その前に女性であるからだ。

「あ、ありがとう……」

珍しく語尾を濁すメルダリア様を訝しんで、下げていた顔を上げた。
すると、メルダリア様は心なしか頬を赤らめていた。

「ここが、ベルマリク城か……」

外から見るのは初めてなので、その見た目に圧倒されてしまった。
近くで見ると、遠くから眺めた時より遥かに大きく、また、厳粛なオーラが漂っていた。

「カイはここに来るのは何度目なんだ……?」
「メルダリア様と共に来たのが三回、それ以外に二回、そして物心もつかぬ頃にも一度だけ訪れた……と父から聞いたことがありますので、7度目になりますか……」
「そ、そうか……なんだか、悪いことを聞いてしまったな……」
「……いえ」
33聖痕 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:21:00 ID:j7IhhsXt
何だかしょんぼりした様子のメルダリア様。

俺の両親は、俺がまだ幼い頃、先の戦争とはまた別の戦争で戦死した。
貴族出の騎士である父は、一個師団を指揮する立場だったらしい。
母は、それを補佐する参謀であったそうだ。
父は、負け戦で殿を勤めた際、流れ矢に貫かれ戦死。
母はそれを悔やんで自決なさったそうだ。

そして、両親を失った俺は、両親の親友であり、
メルダリア様の父君であるディレイズ侯爵に引き取られ、現在に至る。と言うわけだ。

両親の記憶が薄れつつある今でも、両親の話となれば多少は心が痛む。
しかし、それをメルダリア様に気取られぬよう、城内を歩きながら話題を変えた。


「あ〜……シルフス様はお元気でしょうかねぇ?」
「…………」

これでも精一杯考えた末に出た話題であったのだが、メルダリア様にスルーされてしまった。
少し悲しい。

「シルフス様は、何で私なんぞをお呼びなすったんですかね?」
「…………」
「シルフス様は────」
「シルフスシルフスシルフスシルフス……と、私の前であの餓鬼の名前を連呼しないでくれ、カイ!」

半ば叫ぶように、怒鳴られてしまった。
34聖痕 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:23:57 ID:j7IhhsXt
いつもクールなメルダリア様があんなにお怒りになるなんて……
そんなにしつこかっただろうか?
きっとメルダリア様を酷く気分を害されたに違いない……

「申し訳ありません……」
「い、いや、カイは悪くないぞ?……ただ、あの餓鬼──シルフスが嫌いなだけだぞ?」

どこか不安そうに、確かめるように俺に仰るメルダリア様。

「メルダリア様……英雄とはいえ、皇子をハッキリ嫌いと言うのはどうかと思いますよ?
それに、シルフス様は既に15、成人しておられるので子供ではありません」
「し、仕方ないだろう……嫌いなものは嫌いなのだから……」

少し顔を俯かせながら言うメルダリア様。
そのまま、暫く無言で歩き続け、謁見室の前へ差し掛かった時だった。

「お兄様!」

謁見室の大きなドアの前で、そわそわしていた小さな子供が、そう言って俺へと手を振り駆け寄ってきた。

「シルフス様、御久し振りで御座います」

そう、俺の胸ほどの背丈しかないこの子供──もとい皇子が、大賢君シルフス・カナード皇子であるのだ。
駆け寄ってきて、肩で息をするシルフス様に、跪きそう言う。
35聖痕 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:26:15 ID:j7IhhsXt
「お兄様、そーゆー堅苦しいのは止めにしてって言ったでしょ?」
「いえ、そのような恐れ多き事、たかが一騎士には許されません……」

跪き、俯いたまま答える。
チラと横目で黙っているメルダリア様を見ると、不機嫌そうにブスッと膨れていた。

「とにかく、顔上げなさいカイ・クルード!これは皇子命令です!」
「……ハッ」

命令と言われれば、断る事はできない
素直に従って面をあげ、立ち上がった。

視線をシルフス様へと向ける。
綺麗な金の髪を肩まで伸ばし、男児でとは思えぬ程整った顔、そして────紅い、瞳。
この瞳もまた───聖痕である。
その両目は今、俺へと真っ直ぐに向けられていた。

「んふふ〜お兄様〜えへへ〜僕、幸せですぅ〜♪」

次の瞬間、俺の胸くらいまでしか身長のないシルフス様が、ギュッと抱きついてきた。
声変わりしていないのか、女の子のような可愛らしい声で、はぅ〜、やら、ふへぇ〜、と呻いている。
すりすりと、俺の式典用の胸当てに頬をすり付けている。
ふわり、とシルフス様の髪から芳しき花の香りがして、一瞬頬が緩みそうになった。
その刹那、俺は猛烈な殺気を感じて、背筋が凍った。
この殺気は、め、メルダリア様だ……。
36聖痕 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:30:16 ID:j7IhhsXt

「……カイ……」
「は、はい!なんでありましょうか!」

ぼそりと俺の名が呟かれた。
そこには、凍てつくような殺意が込められている。

「皇子が……迷惑しておられるようだ……離れなさい」
「ハイィィ!今すぐ!……皇子、済みませんがお離しください……」

じりじりと殺気と殺意に背中を低温火傷させながら、小声でシルフス様に言う。

「……いやです!」

プーっと頬を膨らませ、可愛らしく拒否するシルフス様。
それだけ見れば、思わず許してしまいそうになるが、後ろの聖騎士とその殺気がそれを許さない。

「あとで何でも致しますから!お願いです!」
「何でも……ですか?」

自分で言っておいて、しまったと思った。
それをきいた目の前の皇子の真紅の瞳は、すでに怪しい光を帯びていた

「じゃあ、離します」

シルフス様はパッと離れ、ニッコリと笑った。

「じゃあ、またあとで!お兄様と、そっちの"お供の人"!」

ブンブン手を振りながら、皇子は謁見室へと入って行った。
クスクスと笑いながら去るシルフス様を見て、後で一体どんな無茶をやらされるのか、とても不安になった。
37聖痕 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:31:05 ID:j7IhhsXt
皇子の姿が見えなくなった直後、ドゴン、と大砲の発射音のような音がした。
メルダリア様の方を見ると、拳が、壁に完全にめり込んでいた。

「め、メルダリア、様……?」
「イエ、ナンデモアリマセン、サア、ワタシタチモエッケンシツヘムカイマショウ」

怒りの余りが、口に出す言葉はカタコト、口元は引きつり、こめかみには血管が浮いている。
今のメルダリア様には、なるべく刺激を与えないようにしなければ……
そう肝に銘じて、先程の音に兵士が集まってくる前に、俺とメルダリア様は、謁見室へと向かった。
38 ◆oPyzY43DZ2 :2007/05/14(月) 11:35:06 ID:j7IhhsXt
今回は以上です。
初めてであることに加えて、ケータイからなので読みにくいかもしれないです。
39名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 12:28:49 ID:ZMlNev4Z
皇子萌え(*´д`*)GJ!!
40名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 12:32:10 ID:OVUFy87y
正直に言おう・・正ヒロインは小学6年生の弟の方だと・・・
そして、作者は急病
41名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 13:59:25 ID:cUvrGj2C
>>38読みにくいなんて事は全然なかったし、面白かったぜ。
GJ!!
42名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 16:06:41 ID:rjlfECyh
時代は腹黒ショタ、これだな!
43名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 17:09:53 ID:A2OZkd1U
これはいい。
GJ
44名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 18:41:08 ID:ltDovZsh
ショタっ娘キターー!!!続きを期待してるぜ!
45名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 18:55:20 ID:W1Ajqerk
いや普通に事情があっての男装だろ。
46tyoujin:2007/05/14(月) 23:39:28 ID:3rE3BU/x
あえて贅沢を言うのならロリッ娘が良かった。
と思うのは自分だけか?
47名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 23:50:10 ID:1Y4fZ/4D
↑うわ何だこいつ
48名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 23:51:02 ID:Hemkgg9Y
待て、とりあえず話しはsageてからだ
49tyoujin:2007/05/14(月) 23:53:06 ID:3rE3BU/x
ごめん。
50名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 00:05:47 ID:BUQZuQM1
素直でよろしい
51名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 00:19:06 ID:BbgtJTl4
GJ
52名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 00:30:22 ID:5D2SXQ7t
個人的に男装落ちはやめてほしいなぁ・・ショタものって初だし。
53名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 00:33:08 ID:kOj0RWc/
女装っ子はいたよ
54名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 01:11:37 ID:+S1vqcBU
屋聞のことか!
55猫泥棒 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/15(火) 01:52:11 ID:H7P4G6hd
お久しぶりです。「お願い、愛して!」とか「紅蓮華」を排出していた者です。
一年近く放置しておいて本当に申し訳ないのですが、
やっぱり完成させた方がいいなってことで続きを書かせていただきました。
トリップは変わりましたが本人です。

それじゃ、投下します。
56お願い、愛して! 8 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/15(火) 01:59:47 ID:H7P4G6hd

とにかく、この状況が理解できない。
ここは屋上で、手すりに寄りかかった朝生がいて、自殺しようか考えていた。
つまり、ここから身を投げ出そうとしていたのだろうか?
……どうして?
三時間前の昼放課では、むしろ明るく俺と瑞菜と三人で弁当をつついていたはずだ。
彫刻刀を借りたときも、満面の笑みで快く「どうぞ」と貸してくれたのに。
たった三時間の内に、自殺なんて心情に至ることがあるのか?

…………。
…………ある。

少なくとも俺はそんな人間をひとり知っている。
抑えつけて、押し殺し続けて、俺が初めて辛さに泣き出したとき、やっと傷痕を見せてくれた幼馴染。
自分へのプレゼントを買いに出て両親は交通事故にあったんだと、ぐしゃぐしゃに泣きながら打ち明け、
「死にたい」とまで叫んだあの時の瑞菜のように。
もしかしたら朝生も――。

「あははははっ!」
突然の声に驚いて、思考が途切れた。
声の主は酷く空虚な――いや、ただ嘆きだけが詰め込まれた笑みを浮かべている。
人間がどうしようもない憤りや絶望を感じたときに漏れ出す、あの笑みを。
「あはっ、あはは、くふふふ!」
「…………っ」

道化のような笑い声は虚しく響くだけで、俺はそれに応えることができずにいた。
『なんで自殺なんか? 辛いことでもあったのか? 思い直せよ』
頭に巡る言葉も、すべて咽でつぶされてしまう。
自分の一言が朝生の生死に関わっているという、その重圧だけで逃げ出したくなるのに、
イレギュラーに強いタイプの人間でもない俺が説得なんてできるはずがない。
だけど、瑞菜の大切な友達を自殺させて、あいつを悲しませるようなことは絶対にしたくなかった。
あの時のように泣いて、ただ傷を舐めあっていればよかった状況とは違うんだ。

朝生を止めるには……動けないようにすればいい!
57お願い、愛して! 8 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/15(火) 02:05:49 ID:H7P4G6hd

「っ!」

一気に駆け寄って、彼女との間合いを詰める。
走り込みの練習をこの一ヶ月で散々してきた甲斐があった……のかは知らないが、
朝生が反応する前に抱きとめることに成功した。
たった一瞬、小さく悲鳴をあげて全身を強張らせる朝生。
抵抗を予想していたけど、意外にそれからは俯いたまま沈黙していた。
しばらく頃合を見計らって、静かに諭しはじめる。

「……俺は、朝生には死んでほしくない……絶対に」
「ぁ…………っ」
小さく漏れた朝生の吐息が、耳に触れて少しくすぐったい。
「自殺なんかしたら、瑞菜が悲しむから。あいつが苦しむようなことは……してほしくない」

「………………」

朝生の手がぎゅっと強く握られるのが見えた。
それが何の意思によるものか俺には分からない。
「――白河先輩のこと、好き、なんですね」
「……ただの片思いだよ」
急に、虚しさとせつなさがこみ上げてきた。

『あの人は……あんまり好きじゃないけど』
きっとこの恋は片思いのままなんだろうけど、今はそれより――。

「……先輩……あ、あの、その、えと、ですね」
「うん?」
「えぁっ……あ、ありがとう、ございます」
「うん……」
いつもの朝生に戻ったことに安堵を覚えた。
58お願い、愛して! 8 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/15(火) 02:11:46 ID:H7P4G6hd

ついでに、安堵すると色々考える余裕が出てくる。
例えば、朝生の顔が真っ赤に火照ってることとか、艶やかな髪の香りとか、
華奢なのに思ったよりずっと柔らかな体とか。
ただ胸の当たる部分がいやに狭い気がするけど……まぁ、そういうことなんだろう。

「っと、いや、その……ごめん」
とりあえず手すりから離れたところまで移動して、ゆっくり朝生を開放しようとした。
なんだかよく分からないが、この状況は瑞菜への裏切りのような気がしたからだ。
しかしすぐに離した手を朝生に握られ、そのまま引き寄せられた。

「え、あれ? あ、朝生?」
「ごめんなさい、ちょっとだけ……ひっ……ちょ、ちょっとだけ、待って、くださいっ」
しゃくり声で俺の胸に顔を埋める朝生。
か細い体を震わせて、必死に声を出さないように抑えて、泣いていた。
「ほんとに、ごめ……ん、なさいっ……ひぅ、うぇぇっ」
その姿に、こんな風に泣きじゃくった昔の瑞菜を思い出して――。
「別に声抑えなくていいから。明日には、今日のこと全部忘れるよ」

「せん、ぱっ……ひっ、うぇ……ひっく……ひ、うぁ、う゛ぁぁぁああああ!!」

ほんの少しだけ、朝生が愛しく思えた。
59お願い、愛して! 8 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/15(火) 02:14:55 ID:H7P4G6hd



夕焼けもそろそろ終わりが近づいているし、夏とはいえ夜は冷え込みもする。
そういうことで、ようやく涙も止まり始めた朝生に下校を提案したのだが……

「……あぅぅ、ご、ごめんなさいぃ」
どうやら本人は泣くのに必死で時間帯に気づいていなかったご様子。
「だから俺は平気なんだってば……それより朝生のほうが大丈夫か?」
「わ、私はそりゃもう平気ですっ! そ、その、どうせこの時間に帰る予定だったりしたんですから!」
「この時間に帰る予定だったって……。もう下校時刻だぞ」
「あわわ……す、すいません、私のせいで下校時刻まで……あの……」
「い、いや、そういう意味で言ったんじゃなくて。……まぁいいや」

とりあえず、朝生が嘘をつくのが苦手というのは分かった。
これは平気というのも嘘かもしれないな……。だからといって俺に何ができるわけでもないけど。
なら、せめて帰り道の安全は守るべきかな。
「帰り道は? 途中まででも一緒に帰らない?」
「い、一緒に、ですか? それはその、すごく、嬉しいんですけど……。そ、そうっ、ちょっと忘れ物があったので……ごめんなさい」
「そっか、分かった。それじゃまた明日な」
「あ、は、はい! また明日、お昼休みに」
なんとも不自然な断られ方に、俺は少し情けない気分になりながら朝生と別れた。

朝生がどうして自殺しようとしたかは分からなかったけど、ある程度予想はついている。
あの時の俺や瑞菜と同じ……誰にも打ち明ける相手がいなくて、ずっと辛さを抑えつけてきたんだろう。
それももしかしたら、昼放課から放課後までの三時間に何か思い込むきっかけがあったのかも知れない。
抑えつけてきた辛さは、思い込むことで増幅したりもする。
俺が屋上という場所で待たせたせいで、それが飛び降りという形で爆発した。
もちろん、すべて勝手な推測でしかないわけだけど。

もし、朝生が俺たちに今日の自殺の理由を教えてくれた時は。
その時は、俺と瑞菜の傷痕も打ち明けて、共有したいと思う。



「…………あれだけ想われておいて……っ。……白河、瑞菜…………!」

背中から、小さすぎる呟きが聞こえてきた。内容は、よく聞き取れなかった。
60お願い、愛して! 8 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/15(火) 02:22:24 ID:H7P4G6hd


――遡って、放課直後
終礼が終わると同時に女子トイレへ駆け込んだ生徒がいた。

「え? そ、そんなに……遅くなるんですか?」
『だからそう言ってるでしょ? 残業よ、残業。一回聞いたらハイって返事しなさい、バカ女」
「は、はい……で、でも、そんなに待ってたら風邪ひいちゃいます。その……夜は冷え込みますし」
『あたしの知ったことじゃないわよっ! 文句があるなら社長に直接言ったらどう?」
「そんな……なら、家を出るときに鍵を庭に隠してくれていれば……」
『冗談じゃない! あたしがいない間にあんたに家のモノ盗まれるかもわからないのにっ」
「わ、私盗みなんて……!」
『うっざいわね! いいからあんたは公園で待ってればいいっつってんの! それともまた公園に野宿する?』
「い、イヤ……それだけは……イヤ、です」
『あれもいや、これもいや、いい加減にしなさいっ! いい? 公園で待ってなきゃ本当に野宿よ』
「…………は、い……」
『ほんっと、あんたと話してると苛々してくるわね……じゃあ、切るわよ』
「ごめんなさい……わざわざお電話ありがとうございました、お母様……」
――ブチッ

「…………どうして、名前を呼んでくれないの? ねぇ、お母様……」
信頼できない娘なら、産まなければいいのに――。
「……どうして…………っ?」
こんなに惨めな想いをさせて、何が楽しいの――。
「…………」
私は何も悪いことしてないのに――。
「……屋上に、行かなきゃ……」
分かった。私がいることが「ダメ」なんだね――。
「……ごめんなさい、ごめんなさい……」

ごめんなさい――。


61猫泥棒 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/15(火) 02:32:31 ID:H7P4G6hd
以上で8回目完了、これからよろしくです。
展開分からない人多そうだなぁ……。
7回以前のあらすじ書いた方がよかったかなぁ……。

おかしな言い回しとか、違和感感じた部分は指摘お願いします。
できるだけ今後に役立てていきたいので。

62名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 02:56:16 ID:QUCXV5+Q
お帰りなさい
結構続きが気になってた作品なんで帰ってきてくれて嬉いっす
でも最初前回どこまでだったか思い出せなかったので
急いで補完庫に逝ってきて読んできましたw
朝生の心の闇と隠した本心、そして何れ来るであろう瑞菜との修羅場wktkしながら期待してます

でも次はあまり待たせないで下さいねw
63名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 07:48:22 ID:zVDQoadv
>>61
おっしゃぁぁああああ、めっちゃGJですよ!!
続きが気になる作品の一つだったので、投下はうれしい限りです。
朝生には何か私生活に秘密があるみたいですね。
作者さんのペースで良いのでなるべく早い投下を期待してます。
64名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 14:46:35 ID:AyXAtSoh
まとめサイトで「あーこれ続き読みてーなー……」と思ってたのが再開されたよ! GJ!
65名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 17:30:56 ID:mvWKyK8B
>>62-64
偽者に釣られて乙
66名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 17:38:44 ID:6zA1Yq0B
なんとなく職人さん達のリレーSSが読みたいと思った
職人さんの数も結構多いし、個性の強い人が多いから面白くなると思う

トラ氏でパロをやって
緑猫氏で戦闘をやって
ロボ氏で鬱レイプして

とか、そんな感じ


そんな妄想をする俺駄目人間
67名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 17:55:34 ID:zVDQoadv
>>66
確かに読んでは見たいが、難しいだろうな。
それぞれの作者さんの現在のSSが全部終わらない事には特に・・・。
68名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 17:56:15 ID:rpA4HHDl
>>66

一人で皆の個性をコピってみれば良いんじゃない?
69名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 18:01:38 ID:zVDQoadv
>>68
それぞれの作者さんがやってくれる事に意味がある・・・と思う。
真似出来るほどの力があれば俺だって・・・(つA`)
70名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 18:25:04 ID:3P5f+AgK
>>66
リレーは難しいし、作品がまとまらないことがあるから俺は反対
普通に自分の作品を頑張ってもらえばいいよ
71名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 22:09:24 ID:xH3Q4XiB
雨の音を結構楽しみにしてたんだけど、最近更新がない…書くの飽きちゃったのかなぁorz
72名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 22:42:24 ID:L0oBIM4e
redpepper
ノン・トロッポ

一番気になる所で停止してしまったこの2つを俺はいつまでも待ち続ける
73名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 22:49:47 ID:pNrgrnT1
静かに待ち続けるのがいい男ってばっちゃが言ってた
74名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 22:51:37 ID:o6mp1mJW
こういう流れになると必ずノントロをクレクレするやつ出るNE☆
75緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:12:49 ID:zho8HjJK
投下します
76七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:13:55 ID:zho8HjJK
 
 * * * * *
 
 ケスクは歯ぎしりしていた。
 
(……なによなによなによ! クチナの馬鹿! 馬鹿! 馬鹿!
 あんな小娘のどこがいいのよ!? 胸だってぺたんこで、頭から変なの生えてるじゃない!
 それに素性もよくわからないっていうし、そんなのクチナには相応しくないんだから!
 クチナには、もっと、その、なんというか、私みたいなのが一番なんだから!
 なのに、クチナってば……! ……うう……!)
 
 ケスクの睨み付ける先。
 ――クチナと、彼にまとわりつく羽虫。
 許せない光景を、しかし見るだけしかできないことに、ケスクは心の底から苛立っていた。
 それは、きっとあの姉妹も変わるまい。
 そしておそらくは、あの奴隷娘も同じだろう。
 
 まさか、こんなことになろうとは。
 
 クチナの部屋に女奴隷と訪れて。
 護衛姉妹と戦っていた刀小娘を殺そうとしたときは。
 今のような事態になるなどとは、欠片も想像できなかった。
 
(あいつら……絶対許さない……!
 大会で戦うことになったら、絶対に殺してやるんだから……!)
 
 ケスクは決意を新たに。
 殺すべき相手を、明確に見据えた。
 一人は当然、クチナにべたべたひっついている、角の生えた少女。
 そして、もう一人は――
 
(――あの、腐れ侍女……!
 次は絶対、油断しない。
 どんな小細工を仕掛けようとも、必ず斬り殺してやるんだから!)
 
 
 * * * * *
 
 
 愛竜に跨り、愛剣を抜き放ち、それでもケスクは油断していなかった。
 
 竜に乗った竜騎士は、紛う方無き大陸最強。
 それは誰も疑うことのない、絶対的な事実である。
 
 しかし。
 護衛姉妹が二人揃い、各々の武器を手に、侵入者と相対していた。
 ケスクは、イクハとユナハの実力を、嫌というほど知っている。
 どちらか片方ならともかく、二人揃った状態で。
 侵入者が瞬殺されていないという状況は。
 ――はっきり言って、異常だった。
 
 故にケスクは最大警戒。
 侵入者を上級竜と同等のつもりで、斬り殺す。


77七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:14:43 ID:zho8HjJK

 クチナ王子の寝室は、広いといっても人間レベルでの話である。
 竜の中で小柄とはいえ、人間の3倍の大きさの飛竜が飛び回るには、狭すぎる。
 
 だが、飛竜の強みは、名前に表される飛行能力。
 空戦を制する移動速度こそが、飛竜の真髄である。
 
 ならば、どうするか。
 簡単なことだ。
 
 
「――征け!」
 
 
 ケスクは吠えた。
 呼応するのは飛竜の翼。
 竜は、翼の揚力によって飛ぶのではない。
 翼が、空気を掴むのだ。
 
 竜騎士が、空を駆けた。
 
 一直線、敵に向かって。
 
 瞬きすら許されない刹那の合間。
 竜騎士の刃が、蒼髪の少女へ襲いかかる。
 飛竜の突撃に完璧に合わせられた、鋭すぎる一閃。
 それは、あらゆる防御すら切り裂く、必殺の一撃だった。
 
 が。
 
 ケスクの大剣は、虚空を斬った。
 
「――なっ!?」
 
 必中を信じていたケスクは、驚きの声を上げてしまう。
 外すはずはなかった。
 高速で避けられたわけではない。
 斬る瞬間まで、ケスクの人並み外れた動体視力は、相手の姿を捉えていた。
 
 斬った瞬間、消えたのだ。
 まるで――幻を斬ったかのように。
 
「――え? なに?」
 
 飛竜の困惑した様子に、乗り手のケスクは反応した。
 彼女の愛竜は、不可解そうに鼻の頭を振っている。
 何かにぶつかってしまったらしい。
 しかし――何に?
 ケスクと侵入者の間に障害物はなかった。
 侵入者に向かって、真っ直ぐ飛んだだけなのに――


78七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:15:35 ID:zho8HjJK

 そこまで考えたところで。
 ケスクは直感で飛竜を旋回させた。
 
 果たして、そこには。
 刀を拾い上げた、少女がいた。
 
「――ふん。姿を眩ますのは我の十八番だ。直線で来てくれて助かったぞ」
 
 不敵に嗤う少女は。
 しかしその全身を、いたく傷つけられていた。
 
 左肩は砕けたのか、異様な捻れ方をしている。
 横顔は耳から下が裂け、千切れた筋が血にぬめっていた。
 腰骨は歪んでいるのか、立ち方も何処かおかしかった。
 
 それでも。
 少女は、嗤っていた。
 
「跳ね飛ばされたおかげで、こいつを拾うことも出来た。
 ――結構、気に入っているのでな。多少の怪我は、仕方あるまい」
 
 言いながら、無事だった右腕で刀を振るう。
 その剣閃は、どことなくぎこちなかった。
 
「……ちっ。流石に、このままで戦うのは無理か。
 まあいい。竜騎士よ、これからが本ば――」
 
 少女が言葉を終える前に。
 ケスクの竜が、再び飛んだ。
 
「のわあっ!?
 くそ、少しは格好付けさせろ!」
 
 転がりながら逃げる少女。
 それを嘲笑うかの如く、狭い空間を飛竜が踊る。
 
「――変な技を使うようだけど! 叩き斬ってやるんだから!」
「ほざけ! 先程は機会を逸したが、今度こそ我の本当のす――」
 
 
 少女が何やら言おうとしていたが。
 全く気にせず、ケスクは再三突撃をかけた。
 飛竜の常識離れした機動力に、正確無比な己の斬撃を乗せて。
 たとえ、上級竜が相手でも殺しうる、帝国有数の竜騎士の必殺技。
 
 対する少女は、なにやら不穏な気配を発していたが。
 その小細工を起こす前に、斬り殺す自信がケスクにはあった。
 
 
 ――彼女の愛竜が、突然、その動きを止めさえしなければ。


79七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:16:18 ID:zho8HjJK

 * * * * *
 
 突然の急制動に耐えられず、ケスクは勢いよく放り出される。
 それは絶対的な隙だったが、ヘイカもそれに構ったりしなかった。
 突然止まった飛竜と同じく、全身を硬直させていた。
 
 
 その光景は、とても異様なもので。
 二人の戦いを見ていた他の者も、無言で光景を見守るだけ。
 
 
 最初に気付いたのは、ユナハだった。
 
「――クチナ様! 姉さん! 何か来る!」
 剛槍を構え、傍にいたサラサを押しのける
「ちょ!? なにすんのさ! 王子はボクが護るんだから!」
「クチナ様の護衛は私です! 貴女はどっかそこらへんで座っててください!」
「むか。何だよそれ!?
 王子様の護衛のくせに、あんな糞餓鬼、瞬殺できないのかよ!
 ――ボクだったら一撃だね、一撃!」
「なんですって!?」
 
 ぎゃあぎゃあと口喧嘩をする二人。
 しかしそれでも二人の体は、完全にクチナを庇っていた。
 壊れた窓側から如何なる相手が訪れようとも、クチナを護りきれる体勢だった。
 
 
 ただ。
 窓から飛び込んできた存在は。
 二人の想像を、遙かに超えるものだった。
 
 
 
「くちなー!」
 
 
 
 緊迫した空間には不似合いな、甘えた声。
 飛び込んできたのは、一人の少女。
 
 とはいっても、壁をよじ登り突入してきたわけではない。
 城の比較的高いところにあるクチナの寝室。
 その窓から、言葉通り。
 
 ――“飛び”込んできた。


80七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:17:09 ID:zho8HjJK

 ぐわん、と空気がかき混ぜられた。
 部屋の気流が乱れに乱れ、ユナハもサラサも吹き飛ばされる。
 暴力的なまでの風。誰一人として、その場に留まることを許さない。
 ――ただ二人の例外を除いて。
 
 ひとりはクチナ。
 彼にだけは何故か、暴風は襲いかからず、そよ風に前髪が揺らされるのみ。
 
 もうひとりは。
 部屋に乱入してきた、年若き少女。
 
 否。
“それ”は、はたして少女と呼んでよいものか。
 人にあらざる、薄緑の髪。
 額より生えた、異形の角。
 そして、何より――
 
 
 背中から生えている、巨大な“翼”。
 
 
 翼といっても、鳥のように美しいものではない。
 臓物と溶けた鉄を混ぜ合わせたかのような、赤黒くぬめる肉の板。
 蠢く腐肉が、背中の皮を突き破り、大きく展開しているのだ。
 
 翼を生やした少女――ヌエは。
 吹き飛ばした少女たちのことなど欠片も気にせず。
 一直線に、クチナの胸に抱きついた。


81七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:17:56 ID:zho8HjJK

「ぬ、ヌエ!? どうしてここに――」
「くちなにあいにきた!」
「会いに来たって……施設から勝手に出てきたの!?」
 
 朝の少女乱入から今まで混乱のし通しだったクチナだが。
 ヌエの言葉で冷水を掛けられたかのように思考を切り替えた。
 ――もし逃げ出してきたのなら、大事件だ。
 ヌエに関する研究は、最上級の機密事項である。
 検体の処分や主国との関係悪化は免れないだろう。
 ……もし表沙汰になっていないのであれば。
 何としてでもヌエを施設に戻し、彼女に被害が及ばないよう尽力しなければ――
 
「ううん。たいかいにでたいっていったら、えらいひとがすきにしていいって」
「……え?」
 
 予想外のヌエの言葉に。
 クチナの思考は、白く染まった。
 
「……偉い人って?」
 
 何とか気を取り直したクチナは。
 恐る恐る、ヌエに訊ねた。
 
「よくわかんないけど、えらいひと。しせつのひとが、みんなこわがってたから」
「――怖がってた? 施設の職員じゃない……?」
「それでね、そのひととおはなししてたらね、くちなのはなしになってね。
 わたしがそのたいかいにでたいっていったら、そのひと、でてもいいって!」
「……僕のことを知ってる? ……ねえ、ヌエ。その人の名前、教えてくれないかい?」
「ん。えっと、うんと、たしか……ねきつ。そうだ、ねきつこーしゃくっていってた」
 
 ――ネキツ公爵。
 
 どこかで、聞いた覚えがある。
 そう、確か、大会の参考にと訪れた、主国の奴隷闘技場の――
 
 と。
 一瞬考え込んだクチナの脇を。
 一陣の風が、吹き抜けた。


82七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:18:40 ID:zho8HjJK

「王子様、大丈夫……っ!?」
 
 強風で吹き飛ばされていたサラサが。
 クチナと少女の間に、割り込んだ。
 
 その拳は握り締められていて。
 踏み込む足は、地面を砕かんとばかりに力強く。
 上半身は硬く捻れ、解放の瞬間を待っている――
 
「なに勝手に、」
 
「!? じゃま!」
 
 サラサに割り込まれたヌエは。
 不機嫌を露わにして。
 異形の翼を大きく動かす。
 
「ボクの感動の再会を、」
 
「どいて」
 
 ――竜の翼は、空気を掴む。
 ヌエの背中から生える翼は、風切竜と呼ばれる種族のものである。
 知能が低いため下級竜に属されるものの、その翼は自在に風を繰るといわれている。
 それが、狭い空間で、使われたら。
 人間など軽々と吹き飛ばされる、暴風が吹き荒れることに。
 
「――邪魔してるんだよっ!」
 
「えっ――」
 
 しかし、サラサは吹き飛ぶどころか崩されることもなく。
 振り上げられた拳は、次の瞬間。
 ――暴風を突き破る、閃光となった。
 
 
「……!」
 
 ヌエの目が見開かれる。
 鉄よりも硬く握り込まれたサラサの拳が。
 無防備に晒された、ヌエの左胸へ走った。
 
 それは、肋骨を粉砕し、心臓をズタズタに破壊する。
 
 はずだった。


83七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:19:46 ID:zho8HjJK

 * * * * *
 
 ケスクは、飛竜に放り出されながらも、剣を手放していなかった。
 そのまま肩から着地し、体を回して衝撃を流す。
 部屋の端まで転がったところで、体を跳ね上げ、状況を把握した。
 
 飛竜が止まった原因は不明。
 窓から新たな侵入者。
 クチナの近くには護衛姉妹と女奴隷。
 
 ――侵入者は、クチナのもとへ一直線。
 
 駆け寄りたい衝動をねじ伏せる。
 クチナとはだいぶ離れている。
 それに、護衛姉妹と女奴隷がいれば、どんな強敵が相手でもクチナを守り抜くだろう。
 そう判断したケスクは。
 クチナを護るという最上級の名誉を諦め。
 
 刀を持つ少女に、向かい合った。
 
 
 
「……な、なんだ、アレは……!」
 
 少女は何故か戦う意志を見せず。
 呆然と、新たな侵入者の方を見つめていた。
 
 ――好機。
 
 ここで見逃すケスクではない。
 一足飛びに距離を詰め、そのまま鋭い剣閃を放った。
 
「!? ――ちぃっ!」
 
 気付いたヘイカが、慌ててその場を転がった。
 ――すんでの所で避けられる。
 その身のこなしは、大怪我しているとは思えないほど。
 だが、少女は紛う方なき重傷である。
 ケスクの刃に倒れるのは、時間の問題だった。
 
 はずなのに。


84七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:20:33 ID:zho8HjJK

 * * * * *
 
 ちりん、と。
 
 澄んだ鈴の音が、響いた。
 
 激戦の最中、そのような音に反応する者などいるはずもない。
 各々が、己の相手に対して精一杯。
 
 しかし。
 澄んだ音の直後。
 
 
 全員が、その動きを止めていた。
 
 
 暴風に吹き飛ばされたが、体勢を立て直しつつあったユナハ。
 クチナから侵入者を引き剥がすため、離れたところから棒を振りかぶっていたイクハ。
 風を操る侵入者に、必殺の拳を叩き込まんとしていたサラサ。
 今まさに、大剣で敵を貫こうとしていたケスク。
 胸元まで大剣が届き、半ば諦めかけていたヘイカ。
 風を突き破った拳を、驚いた表情で見つめていたヌエ。
 
 彼女らの動きが、全て、止まっていた。
 
 
「――まったく」
 
 
 やれやれ、と。
 呆れたような溜息は。
 部屋の入り口から聞こえてきた。
 
「お使いから帰ってきて、窓が豪快に割れてるし。
 いつからここは、戦場になってしまったのですか?」
 
 声の主は、メイド服を着込んだ少女。
 指先をくるくる回しながら、部屋の中を見回している。
 
 
「ツノニ……!」
 
 クチナの声に、少女――ツノニが肩を竦めた。
 
「まあ、ご主人様が無事だったから、良しとしますか」


85七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:21:22 ID:zho8HjJK

 つかつかと部屋の中に踏み入るツノニ。
 彼女の足運びに緊張は欠片も見られず。
 その隙の無さに、瞠目する者もいた。
 
「こら、ヌエちゃん。
 ちゃんと入り口から入らなきゃダメでしょ。
 窓から入ってくるなんて、はしたない」
 
 ヌエに人差し指を突き付けて。
 めっ、と眉根を寄せて注意した。
 
「え、あの、その、ツノニさん!? なんで!?」
「あー、ユナちゃん。下手に動いちゃダメだよー。
 銀蚕の糸に金剛石をまぶしてあるから――全身、細切れになっちゃうぞ」
 
 そう言うツノニの手からは。
 目を細めても捉えるのは難しい、極細の銀光が煌めいていた。
 それは、部屋全体に張り巡らされていて。
 クチナとツノニを除く、全員の体を捕らえていた。
 
 
 いくら激戦の最中だったとはいえ。
 これだけの猛者達に全く気付かれず。
“糸”を仕掛けるその技術は、異常としか言い様がなかった。
 
「いやー。それにしても大漁大漁。
 不意打ちが得意な私でも、これはほとんど奇跡だなあ。
 ――ご主人様ー。頑張ったツノニを褒めて褒めてー」
 
 ニヤニヤと笑いながら、クチナに擦り寄るツノニ。
 その所作に部屋の温度が一段階下がったが、全く気にする様子はない。
 
 
「ま、冗談はさておくとして。
 ヌエちゃんが部屋にいる時点で驚きなのに、
 えっちい格好の人や、死にかけの子どもまでいるんだから、もうわけわかんない。
 ――ご主人様。どうしてこんなことになったのか、最初から説明してくれませんか?」


86緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/05/15(火) 23:23:43 ID:zho8HjJK
長すぎて申し訳ありませんorz

まあそれはそれとして。
次の次で、ようやく対戦トーナメント表を公開できます。
というわけで。
 
【第一回七戦姫展開予想・対戦組み合わせ編】
 
を募集します!
ルールは簡単。次々回の投下までに、対戦組み合わせを言い当てられるか否か。
一緒にお気に入りのキャラを教えて頂ければ、最初に正解を出した人のお気に入りで外伝を1話書かせて頂きます。というか書かせて下さい。
 
 ↓こんな感じで書いて頂ければOKです。
(1)○○ 対 ××
(2)△△ 対 ■■
(3)++ 対 ◎◎
(4)攻城 対 対人
 
ついでにどうしてそう思ったかなども書いて頂けると泣いて喜びます。
ちなみに、大会には8人の選手が出場します。つまりあと一人います。
まだ名前が出ていないので、適当に「新キャラ」とでも書いて頂けると助かります。
武器は鞭。今出せる情報はこれだけです。申し訳ありません……。

もちろん、普通の感想や展開予想も大歓迎です。
いつも住人の皆様に読んで頂けるからこそ、SSを書けています。
本当に、ありがとうございます。
修羅場万歳!
87名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 23:37:37 ID:nEBusAeI
>>86
マジレスするとここは緑猫氏だけのスレじゃないから正直○○募集みたいなことはやめた方がいいです
SSの分岐とかならまだ分かるけど..,.
88名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 23:38:46 ID:sEsOeE3d
>>66
避難所でスレを立てて、リレーSSを作れば問題ないのでは・・
一般も参加できる修羅場SSです
89名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 23:57:35 ID:t6jmocN1
無難に九十九書いとけって
過去の反応見りゃ分かるだろう?
それでも書きたいなら自分のSSのあらすじくらい自分で決めな
それとキャラ多すぎて振り回されてる感じがするぜ
90名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 00:10:28 ID:6tjOK1CM
七戦姫がきた!GJ!
やはりクチナはいいものだ…

けど募集とかそういうのはここではやらないほうがいいかと
荒れる元とかになったりしますし
91名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 00:14:14 ID:tuJ5DTsq
避難所でとも思いますが逆に好きな人が争いそうだな
無難にブログでもはじめてみたらどうかなと思う
92名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 00:15:42 ID:lcuNWICH
>>86
GJ
俺、ツノニ好きだなー

どうでもいいけど、戦うメイドキャラって暗殺系が多いのは何故だろう
93名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 00:22:27 ID:I/WMLG/X
>>86
GJ!
個人的にはヘイカ対ヌエが見たい
ドラゴン同士の戦いにwktk


>>66
SS書きの一人として、参加してみたい
他の職人さんはどうかは分からないけど
94名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 00:27:13 ID:Gneq4U/f
ちょっとやるって言ってる人軽率じゃね? 
リレーってSSに限らずグダグダになる可能性のほうが高いよ、経験上
俺も各個人の作品に集中して欲しい
>>86
GJ、この人数を動かすのは大変だろうけど最後まで頑張って欲しい
でも欲を言えば九十九を先に完結して欲しいな、続きが気になってしょうがないっす
95名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 00:32:20 ID:J24Z5J2S
やりたい奴らが勝手にやればいい
96名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 01:15:01 ID:dnD96sSQ
>>93
>>SS書きの一人
えーっと、これは笑うところ?
97名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 01:19:35 ID:Lw+aRLz7
別に普通に読み流すところだと思うけど
98名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 01:30:44 ID:vTH+2oGv
>>86
GJ!!
クチナ可愛いよクチナ(´Д`;)ハアハア
99名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 01:50:27 ID:rHa9Tc6s
GJ!!
お気に入りがケスクとヌエなのでその組み合わせがみてみたい。
九十九にも期待してますwww
100名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 07:30:38 ID:ranr7+7S
しかしみんな個性がたってて可愛いのに誰かは死ぬのか・・・
101名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 07:53:14 ID:OHmq3bb6
>>100
だが、それがいい。

とか思う俺は異端か。
102名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 12:05:06 ID:BEQVOgTs
>>101 私はそんなあなたが好きよ
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと前から
そしてこれからも…
103名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 13:40:04 ID:XREc24mI
>>86GJ!
ってかじゃあ予想してみます

1ケスクvsイクハ 単に俺が姉スキーだから。……イクハが勝つとは思わないけど、でもだからこそ見たいんだい
2サラサvsヌエ 依存っ子同士の執着戦を。
3ユナハvsツノニ 今まで隠されていたダークサイドツノニに翻弄されるユナハに(*´д`*)ハァハァ
4ヘイカvs新キャラ 単に余っ(ry

そんなわけでこの展開だとおそらく一回戦で消えてしまうイクハがお気に入りです(´・ω・`)
104名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 16:05:54 ID:PKH+UegW
七戦姫は避難所、九十九をこのスレでやるとか分けた方が良いかと
105名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 16:08:25 ID:yETSyWKf
いや、そのメリットと意味がわからん……
106名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 16:17:59 ID:yETSyWKf
避難所は飽くまでも“避難“所なんだから、避難しなきゃならんような状況にならない限り利用する必要はない
107名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 16:23:05 ID:PKH+UegW
同じ作者が同じスレで違う作品バラバラ公開してたらアレだと思うし、実際
七戦姫投下された後は荒れやすくなってるしなぁ
108名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 16:29:41 ID:/0GYxAgA
荒らしてるのが自分って事分かってます?
109名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 16:40:59 ID:PKH+UegW
しかし、このスレで七戦姫投下したらこれからも荒れるだけだと思うし、せめて
どっちか終わらせてから取り込むかどうかしたほうが良いと思う。
緑猫氏の作品は普通に気に入ってるから、氏の作品関係で荒れるのは心もとない
110名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 16:50:08 ID:yETSyWKf
別に荒れちゃいないだろうに
少々作者さんが諫められた程度だろうが
むしろダラダラ引っ張ってるあんたの方が火種になりかねないわけで
111名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 17:02:40 ID:yETSyWKf
同スレ2作品平行投稿の何が悪いのか、そこがまずわからんなあ
そんなん作者の自由だし、今までだっていくつかそういうのあったけど別に問題無かったのに何を突然
112名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 17:31:52 ID:NdTydovM
こういう議論こそ避難所を使おうぜ
無駄に本スレで容量を使わせるのが目的じゃないならね
113名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 17:39:31 ID:Lw+aRLz7
議論ですらなかろ
別に作者の自由じゃね?の一言ですむ話だし

とりあえずこれ以上引っ張るネタではない
114名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 17:42:42 ID:vTH+2oGv
>>112
ちょうど避難所にも雑談スレがたってるしな
115名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 18:10:25 ID:xyQr03Lm
なんで募集とかは荒れるからやめた方がいいよ、って話が避難所と分けて投下しろって話になってんだ?
避難所は別に使う必要ないじゃん、それに今は向こうの方が投下しにくくね?
116名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 18:12:58 ID:NdTydovM
>>115
>>投下しにくくね?

WHAT?
117名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 18:13:57 ID:dZPR382d
WHYだろ馬鹿
118名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 18:15:42 ID:Lw+aRLz7
”正しい日本語”かどうかは兎も角別に珍しい表現じゃないと思うけど……
ttp://www.google.co.jp/search?source=ig&hl=ja&q=%E3%81%97%E3%81%AB%E3%81%8F%E3%81%8F%E3%81%AD&lr=
119名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 18:15:52 ID:xyQr03Lm
>>116
こっちの荒らしの話ばっかじゃん
まぁ、ぶらまり投下されてたけど
120名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 18:19:43 ID:NdTydovM
>>117
素で間違ったよw

>>119
避難所のスレが増えたぞ
121名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 18:27:28 ID:vTH+2oGv
>>119
雑談・議論スレが増えてる
122名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 19:10:58 ID:U/YYTEEn
ふと思いついたネタを投下



 無言の俺にテーブルの向こうに座っている悪魔が笑顔で言った。
「今日のお昼はチンジャオロースだよ」

 彼女と付き合い始めて3年。
 結婚も視野に入れた関係、というやつでお互いの表も裏も理解しつつある。
 無論それには食べ物の好みも含まれる。
「……俺がピーマン嫌いなのは知ってるよな」
 ピーマンなんてスカスカで中身が無くて、なおかつ苦味のあるものを食べるというのが理解できない。
「好き嫌いはよくないよ。これは言わば愛の鞭だよ」
 嘘だ。悪意を持ってピーマンを出しているんだ、こいつは。
「そうかな?」
「そうだよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
「そうかな?」
「時間稼ぎしても食べないといけないのは変わらないよ」
 あっさりと考えを見抜かれた俺は、しかたなくピーマンをより分けながら食べる。
 うん。まずい。

 そんな俺を見ながら彼女が食べながら問いかけてきた。
「ところでお昼からはどこか出かけるの?」
「ああ、ちょっと図書館に」
 というか史書のちひろに会いに。

 ちひろと俺は、まあなんというか、週一ぐらいのペースで体の付き合いをしている。
 平日の図書館は暇らしく、今日も昼から二時間体を予約していのだが。
「じゃあ私も一緒に行くよ」
 彼女の一言で予約が吹き飛んだ。

 以前もこいつがきまぐれで図書館に来て予約取り消しになったことがあるというのに冗談じゃない。
「何か用事があるなら俺がしておくぞ。本を借りるくらい楽なものだし」
「いやーそうじゃなくてさ。人に会いに行くんだよ」
「お前が人に会いに行くなんて珍しいな」
 こいつは人見知りの気があって、よほどのことがないと自分から人とかかわりあおうとしないのだが。

「史書でちひろちゃんっていう子がいるんだけど、すっごくかわいいって話なんだ」

 心臓の音が大きくなった気がする
「そうなんだ」
 まずい。非常にまずい。どうする。いや、まだばれてるとは限らない。ひょっとしたら本当に興味があるだけなのかもしれないし。
「会ってもいいよね」
「俺に聞くことか?」
「いやー聞かないといけない気がしたんだよー」
 ばれてる。これはばれてる。どうしよう。

「ところで、図書館の後って予定無いよね?」
無言の俺にテーブルの向こうに座っている悪魔が笑顔で言った。
123名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 19:15:37 ID:U/YYTEEn
終わりです

問い詰めのとき、怒りながらよりも、笑いながらのほうが、怖いと思うんだ
そんだけ
124名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 19:24:42 ID:+l/bYeaP
>>122
一発ネタにしては主人公のキャラがくどいとオモタ
ていうか自分が浮気してるくせに彼女を悪魔呼ばわりかよって感じだ
125名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 19:35:01 ID:yETSyWKf
最近みんな忘れがちなのか知らんが
>>3
126名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 20:17:21 ID:TINb3X4t
>>124
いや怖いだろ

浮気してる男も悪いがwww

>>122
GJ
時間があれば長編お願いします><俺こういう独白調の主人公好きなんだ
127名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 22:34:18 ID:E70tGg1e
>>86
トーナメントだと 8!/(2^7) で315通りかな?
128名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 00:23:37 ID:L7evYajA
"非難所”もあながち間違いじゃあないね
129名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 00:25:14 ID:L7evYajA
スマン、ミスった……
さっき書き込み損ねたメモ2の方を書き込んでしまった……
130名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 00:38:13 ID:hBOmxoCm
お前ら、嫉妬SSで萌えるキャラ属性は何だ?
俺は、年上系が好き。
お姉さんもいいけど、熟女も良いな。
131名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 01:03:50 ID:q21memxL
可愛い子、美しい女性が嫉妬してればそれでいい。
姉妹ロリ熟巨貧清楚快活なんでもこーい。
132名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 20:18:41 ID:RRZULCsp
娘属性な俺はマイノリティー。
133名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 21:40:53 ID:gdmUkxjR
バツ1の父親でその娘が実の父親にのめり込むというパターンが好きな俺も
きっとマイノリティー。
134名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 21:52:00 ID:tCA26Ug8
俺は義理の娘が(ryまたは義理の母親(ry
135名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:13:01 ID:5TQc2qlI
>>131
お前は俺か
136トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/05/17(木) 22:28:38 ID:RQaFQ2jB
では投下致します
137桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/05/17(木) 22:32:20 ID:RQaFQ2jB
 第1話『桜荘の愉快な人々』

 遠い過去と現実の境に行き来している俺はあの忘れられない告白の出来事を思い出しては
悪夢のように何度もうなされる事はしばしばで。そんな日の朝は嫌でも早く起きてしまうのだ。
 眩しい陽の日光がカーテンの隙間から入ってきて、暖かい陽気に包まれて俺は布団から出て、思わず背伸びを伸ばして欠伸をかく。
窓を開けて覗き込むとそこには満開な桜が咲いていた。

 桜荘。

 俺が大学に進学するために下宿先へと選んだアパートである。
更紗や刹那の幼馴染の関係の亀裂に走った原因を親や二人の両親たちに真相を喋らずに
突如進路変更した俺は気難しい親父と母親から勘当同然に家を出てしまった。
1年分の学費は払ってくれていても、毎月の生活費や仕送りはしてくれなかったので、

安い家賃のアパートを探していると不動産が紹介してくれた場所が、『桜荘』だった。
 家賃も破格な値段だったので俺は速攻に契約をして入居することに決めた。
古風な屋敷で建物自体はあちこちと老朽化は目立つが人が住めない状態ではない。

部屋は畳み部屋、洗濯は共同の洗濯機を使い、お風呂も共同で住んでいる住人と交代で入浴する。
トイレも共通のトイレがある。
今時、珍しいなんでもかんでも共同というのは住人同士のトラブル問題が勃発しそうで恐いのだが、
皆は仲がいいのかそういう事にならないらしい。

 俺が入居した日には住人共同の憩いの場で歓迎会など開かれたものだ。
今現在のお隣同士の希薄な関係は『桜荘』にはない。
ここには言葉では表現できない温もりや暖かさがここにはある。
 最後に『桜荘』の中庭には、大きな桜の木が立っている。
春の季節を巡る時に咲いている桜の木は住人や近所の皆様にとって、見ているだけで心が癒される『桜荘』の名物である。
桜が咲いている時は一般の方にも開放されて、休日にはお花見などで大いに盛り上がっている声が聞こえてくるものだ。

 今年も桜の木は満開に咲いていた。

 春は出会いと別れの季節。
 俺が『桜荘』からやってきてからちょうど1年である。

「さてといい加減にモノローグに浸っていると奴がとんでもない起こし方で襲ってくるかもしれん。
昨日は必殺エルボーを腹部にお見舞いされたから。今日はハイキックかもしれん」
 急いで俺は布団を押し入れに仕舞おうとした時に自分の部屋のドアが勢いよく開かれる音が聞こえた。
反応するのが遅くて、奴は次の動作で問答無用に襲ってきた。

「お・に・い・ち・ゃ・ん・。起きろぉぉぉぉぉっっーー!!」
「ぐはっっ!!」
 回転がかかったキックを予言した通りに俺の腹部を直撃する。
胃から昨日食べた物が吐き出しそうになった。少女は勝ち誇った顔をして、俺の体の上を馬乗りして見下すように言った。

「もういい加減に起きないと真穂さんが作った朝ご飯が冷めちゃうよ」
「雪菜。毎日毎日言ってるだろう。もっと、普通に起こすことができないのかよ」
「お兄ちゃんがいつまでものんびりに起きないから可愛い雪菜ちゃんが
少しでも眠たい時間を削ってまで起こしにやってきているんでしょうが。
感謝して雪菜に永遠の忠誠を誓ってくれるなら、真穂さんが作ってくれた玉子焼きをくれてあげてもいいよ」
「誰が誓うか。んなもん」
 俺は馬乗りになった雪菜を乱暴に押し退けた。年頃の女の子に触れているなら健康上よろしくはない。


 彼女の名前は、御堂雪菜。(みどう ゆきな)
 今月から近所にある学園を通う女子生徒で『桜荘』の住人である。
容貌は子供と見間違えるぐらいに幼いが最近は成長してだんだんと女の子の容姿になってきている。
俺をお兄ちゃんと呼んで慕うわけだが、そこにはまた別のエピソードである。
138桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/05/17(木) 22:34:05 ID:RQaFQ2jB
「うわ〜ん誓ってよぉぉ。お兄ちゃん」
「もう、二人ともなにやっているの。雪菜ちゃんも深山君も今日も仲良しさんだよね」
 開いている扉から入ってきたのは、同じくアパートの住人である安曇 真穂(あずみ
まほ)さんがエプロン姿を身に付けていた。
「仲良しというか、迫り来る狂犬から身を守るために必死に抵抗しているだけなんだけどな」
「それはどうかな……」
 と、安曇さんは曖昧な微笑を浮かべた。

 安曇 真穂(あずみ まほ)
 俺と同じ時期に『桜荘』に引っ越してきた住人である。
年頃は俺と同じ年齢で、ここから大学に通っている。
主に『桜荘』における料理担当という貧乏くじを引いてしまった彼女は入居した日からめげずに
アパートの住人の料理を憩いの場で腕を奮っている。基本的には面倒見が良くて桜荘の良識人と言ったところだろうか。

「とりあえず、深山さんも雪菜ちゃんも戯れないでちゃんと朝食を食べに来てください。
そうしないと奈津子さんの胃袋が胃液で溶けてしまって、深山さんの部屋に殴り込みが来ますから」

 笑顔を絶やさずに安曇さんは恐ろしい言葉を残して俺の部屋を立ち去って行った。
あの人は男を冷笑で全てを凍り付かせる特殊な業を隠し持っている違いないと俺は密かに思っている。

「というわけで俺は奈津子さんを餓えさせるわけにもいかないから。雪菜はさっさと俺の部屋から出る。いいな」
「ええっ。どうして、そんな急に追い出すの? 雪菜のことが嫌いなの?」
「着替えるんだよぉぉ!!」

 未だにパジャマから着替えていない俺の部屋を無断に入り込んで行く女性達の奇抜な行動に慣れ始めていた。
普通の年頃の女の子なら男という狼の生物の生態をよく把握して、男の部屋なんて近付くはずもない。

ここの住人からは男と認識されていないのか度々とやってきては俺の部屋で時間を潰すのは日常茶飯事になっているのだ。
 これなんてエロゲー?
139桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/05/17(木) 22:36:18 ID:RQaFQ2jB
 桜荘の朝食は個々の部屋で食べるというごく一般的な摂り方はしない。
憩いの場という桜荘の住人が集う一室に皆が集まって一緒に朝食を食べるという変わった習慣がある。
俺も入居していた最初の時期は自分の部屋で寂しくご飯を食べていたのだが、
奈津子さんの脅しに似た強い勧めで俺も憩いの場で食事をすることにした。
不思議な事に皆で食べていると胸が暖かくなった。
それは失ったはずの幼馴染とお弁当を食べたあの頃を思い出してしまいそうになる。
 
 憩いの場に辿り着くとすでに桜荘の住人が全員揃っていた。
テーブルの上には安曇さんが作ってくれた朝食が数々と並んでいる。皆の顔を眺めてから俺は挨拶した。

「みんな、おはよう」
「おはようございます。一樹さん」
「少し遅いわよ。一樹君」

 丁寧に礼儀正しく挨拶を交わした方と乱暴に言葉を返した二人の女性は姉妹である。
前者は妹で、後者は姉である。この桜荘の中では支配者階級の立場にいる極悪な姉妹である。

 姉の方は高倉奈津子(たかくら なつこ)と言う。
 年頃は二十歳を少し過ぎており、桜荘の住人の中で圧倒的な長者である。
一応、桜荘の管理人兼オーナーであり日頃の老朽化したアパートの維持のためにいろいろと頑張って修繕活動をやっている。
特に定職に就いているわけでもなく、アパート運営に人生の全てを捧げている。あんまり儲からないらしいが。

 そして、妹の名前の方は高倉美耶子(たかくら みやこ)。
 雪菜と同じ学園に通う女子生徒であり、桜荘の管理人代理兼オーナー代理という役に立ちそうもない役職を持っている。
長い髪を腰まで伸ばしており、清楚を漂わせるような整った顔立ち。
遠く眺めている限りでは美人なんだろうが、その口を開いた途端に言い寄る男性がいなくなる程の毒舌の持ち主である。
恐らく、桜荘の中では一番腹黒いなのではないかと俺は密かに疑っている。

 桜荘の住人は

 御堂 雪菜

 安曇 真穂

 高倉 美耶子

 高倉 奈津子

 そして、俺。深山 一樹。
 以上。
 計5人が仲良く共同で暮らしている。
この少人数でよくボロアパートを運営しているのかと疑いたくもなるが奈津子さんの運営は
家賃収入以外に汚い手を使って得ている黒い収入のおかげで何とか維持をしてそうな気がしてしまう。
その辺の事は誰も突っ込まないという暗黙の了解があるため誰も触れようとする人間はいないだろう。
140桜荘にようこそ ◇J7GMgIOEyA :2007/05/17(木) 22:36:57 ID:wC6Xbj9G
「うわ〜ん誓ってよぉぉ。お兄ちゃん」
「もう、二人ともなにやっているの。雪菜ちゃんも深山君も今日も仲良しさんだよね」
 開いている扉から入ってきたのは、同じくアパートの住人である安曇 真穂(あずみ
まほ)さんがエプロン姿を身に付けていた。
「仲良しというか、迫り来る狂犬から身を守るために必死に抵抗しているだけなんだけどな」
「それはどうかな……」
 と、安曇さんは曖昧な微笑を浮かべた。

 安曇 真穂(あずみ まほ)
 俺と同じ時期に『桜荘』に引っ越してきた住人である。
年頃は俺と同じ年齢で、ここから大学に通っている。
主に『桜荘』における料理担当という貧乏くじを引いてしまった彼女は入居した日からめげずに
アパートの住人の料理を憩いの場で腕を奮っている。基本的には面倒見が良くて桜荘の良識人と言ったところだろうか。

「とりあえず、深山さんも雪菜ちゃんも戯れないでちゃんと朝食を食べに来てください。
そうしないと奈津子さんの胃袋が胃液で溶けてしまって、深山さんの部屋に殴り込みが来ますから」

 笑顔を絶やさずに安曇さんは恐ろしい言葉を残して俺の部屋を立ち去って行った。
あの人は男を冷笑で全てを凍り付かせる特殊な業を隠し持っている違いないと俺は密かに思っている。

「というわけで俺は奈津子さんを餓えさせるわけにもいかないから。雪菜はさっさと俺の部屋から出る。いいな」
「ええっ。どうして、そんな急に追い出すの? 雪菜のことが嫌いなの?」
「着替えるんだよぉぉ!!」

 未だにパジャマから着替えていない俺の部屋を無断に入り込んで行く女性達の奇抜な行動に慣れ始めていた。
普通の年頃の女の子なら男という狼の生物の生態をよく把握して、男の部屋なんて近付くはずもない。

ここの住人からは男と認識されていないのか度々とやってきては俺の部屋で時間を潰すのは日常茶飯事になっているのだ。
 これなんてエロゲー?
141桜荘にようこそ ◇J7GMgIOEyA :2007/05/17(木) 22:38:10 ID:DzTuKXAS
>>140
桜荘の朝食は個々の部屋で食べるというごく一般的な摂り方はしない。
憩いの場という桜荘の住人が集う一室に皆が集まって一緒に朝食を食べるという変わった習慣がある。
俺も入居していた最初の時期は自分の部屋で寂しくご飯を食べていたのだが、
奈津子さんの脅しに似た強い勧めで俺も憩いの場で食事をすることにした。
不思議な事に皆で食べていると胸が暖かくなった。
それは失ったはずの幼馴染とお弁当を食べたあの頃を思い出してしまいそうになる。
 
 憩いの場に辿り着くとすでに桜荘の住人が全員揃っていた。
テーブルの上には安曇さんが作ってくれた朝食が数々と並んでいる。皆の顔を眺めてから俺は挨拶した。

「みんな、おはよう」
「おはようございます。一樹さん」
「少し遅いわよ。一樹君」

 丁寧に礼儀正しく挨拶を交わした方と乱暴に言葉を返した二人の女性は姉妹である。
前者は妹で、後者は姉である。この桜荘の中では支配者階級の立場にいる極悪な姉妹である。

 姉の方は高倉奈津子(たかくら なつこ)と言う。
 年頃は二十歳を少し過ぎており、桜荘の住人の中で圧倒的な長者である。
一応、桜荘の管理人兼オーナーであり日頃の老朽化したアパートの維持のためにいろいろと頑張って修繕活動をやっている。
特に定職に就いているわけでもなく、アパート運営に人生の全てを捧げている。あんまり儲からないらしいが。

 そして、妹の名前の方は高倉美耶子(たかくら みやこ)。
 雪菜と同じ学園に通う女子生徒であり、桜荘の管理人代理兼オーナー代理という役に立ちそうもない役職を持っている。
長い髪を腰まで伸ばしており、清楚を漂わせるような整った顔立ち。
遠く眺めている限りでは美人なんだろうが、その口を開いた途端に言い寄る男性がいなくなる程の毒舌の持ち主である。
恐らく、桜荘の中では一番腹黒いなのではないかと俺は密かに疑っている。

 桜荘の住人は

 御堂 雪菜

 安曇 真穂

 高倉 美耶子

 高倉 奈津子

 そして、俺。深山 一樹。
 以上。
 計5人が仲良く共同で暮らしている。
この少人数でよくボロアパートを運営しているのかと疑いたくもなるが奈津子さんの運営は
家賃収入以外に汚い手を使って得ている黒い収入のおかげで何とか維持をしてそうな気がしてしまう。
その辺の事は誰も突っ込まないという暗黙の了解があるため誰も触れようとする人間はいないだろう。
142桜荘にようこそ ◇J7GMgIOEyA:2007/05/17(木) 22:39:30 ID:veSE+4M2
>>142
桜荘の朝食は個々の部屋で食べるというごく一般的な摂り方はしない。
憩いの場という桜荘の住人が集う一室に皆が集まって一緒に朝食を食べるという変わった習慣がある。
俺も入居していた最初の時期は自分の部屋で寂しくご飯を食べていたのだが、
奈津子さんの脅しに似た強い勧めで俺も憩いの場で食事をすることにした。
不思議な事に皆で食べていると胸が暖かくなった。
それは失ったはずの幼馴染とお弁当を食べたあの頃を思い出してしまいそうになる。
 
 憩いの場に辿り着くとすでに桜荘の住人が全員揃っていた。
テーブルの上には安曇さんが作ってくれた朝食が数々と並んでいる。皆の顔を眺めてから俺は挨拶した。

「みんな、おはよう」
「おはようございます。一樹さん」
「少し遅いわよ。一樹君」

 丁寧に礼儀正しく挨拶を交わした方と乱暴に言葉を返した二人の女性は姉妹である。
前者は妹で、後者は姉である。この桜荘の中では支配者階級の立場にいる極悪な姉妹である。

 姉の方は高倉奈津子(たかくら なつこ)と言う。
 年頃は二十歳を少し過ぎており、桜荘の住人の中で圧倒的な長者である。
一応、桜荘の管理人兼オーナーであり日頃の老朽化したアパートの維持のためにいろいろと頑張って修繕活動をやっている。
特に定職に就いているわけでもなく、アパート運営に人生の全てを捧げている。あんまり儲からないらしいが。

 そして、妹の名前の方は高倉美耶子(たかくら みやこ)。
 雪菜と同じ学園に通う女子生徒であり、桜荘の管理人代理兼オーナー代理という役に立ちそうもない役職を持っている。
長い髪を腰まで伸ばしており、清楚を漂わせるような整った顔立ち。
遠く眺めている限りでは美人なんだろうが、その口を開いた途端に言い寄る男性がいなくなる程の毒舌の持ち主である。
恐らく、桜荘の中では一番腹黒いなのではないかと俺は密かに疑っている。

 桜荘の住人は

 御堂 雪菜

 安曇 真穂

 高倉 美耶子

 高倉 奈津子

 そして、俺。深山 一樹。
 以上。
 計5人が仲良く共同で暮らしている。
この少人数でよくボロアパートを運営しているのかと疑いたくもなるが奈津子さんの運営は
家賃収入以外に汚い手を使って得ている黒い収入のおかげで何とか維持をしてそうな気がしてしまう。
その辺の事は誰も突っ込まないという暗黙の了解があるため誰も触れようとする人間はいないだろう。
143桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/05/17(木) 22:39:50 ID:RQaFQ2jB
「真穂ちゃん真穂ちゃん。私の秘蔵のお宝から一本持ってきてくれない?」 

「奈津子さん。朝から飲むんですか? 
さすがに朝から飲酒するのは人としてどうかと思うんですけど。
昨晩もビールを2缶と焼酎まで飲んで。本当に大丈夫なの」

「高倉奈津子。その程度の酒の量で倒れる程のヤワな体じゃないのよ。
せいぜい、私を酔わせるならその3倍のアルコールを持ってこいって」

「そして、お姉ちゃんのお腹は水太りの階段を一歩一歩と突き進んで行くのでした。
行き着いた先は、必死に虚偽宣伝しているダイエット通販に手を出して……
挙げ句の果てにはリバウンドで更に体重が増加するという顛末は簡単に予想ができます」

 安曇さんからアルコールを受け取った矢先に食卓で大人しくご飯を食べている美耶子がぼそりと呟いた。
カチンと来た奈津子さんは妹相手にムキになって言い返した。

「美耶子……あなたも言うようになったじゃない」
「アルコール依存症の姉を持つと月の生活費の半分が娯楽とDVDBOXに消えゆく運命なんですよ。
こうして、安曇先輩の手料理で栄養を補給することで何とかこの果てしない暗闇と混沌を頑張って生き抜いているんです。
いつも。ありがとうございますね」

「いえ、どういたしましてって……奈津子さんも美耶子ちゃんも自分の欲望のために無駄遣いが多すぎますよ。
一体何をしたら学生で買えないような銘柄の酒と毎日のように
配送会社から届けられるアニメのDVDを買えるんですか? 
お二人の喧嘩よりもそっちの方が不思議です」

 安曇さんの指摘通りに俺も高倉姉妹の放蕩ぶりの資金源の謎を解明したい。
ただ、その答えは二人の笑顔を微笑んで同時に言った。
「それは禁則事項です(だから)」

 余程、腹黒いことをやっているのであろうか?

「雪菜もお兄ちゃん名義で闇金からたくさんお金を借りて、欲しいものたくさん買ってきていいかな」
「人の名前で借りてくるんじゃねぇっっ!! 利息がありえない程に高いからやめておけ。人生狂うぞ」

 腹黒い方々の会話は子供の教育には宜しくないはずのだが。
この憩いの場に集まった以上は黒い話になるのは必然になってしまっている。
あの唯一の品行方正の安曇さんですらもこの空気に馴染んでしまっているから慣れというのは恐ろしいもんだ。

「深山さんも大人しく朝食を食べてくださいねぇ」
 会話に入ろうとした俺は見事に安曇さんから注意されてしまった。俺は嘆息を吐きながらせっせと作ってくれた朝食を口に運んだ。
144名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:40:52 ID:gEDzG0Hg
>>141
>これなんてエロゲ?
こんなこと言う奴いねーよw
145桜荘にようこそ ◇J7GMgIOEyA:2007/05/17(木) 22:42:38 ID:Fm6IBb6k
「真穂ちゃん真穂ちゃん。私の秘蔵のお宝から一本持ってきてくれない?」 

「奈津子さん。朝から飲むんですか? 
さすがに朝から飲酒するのは人としてどうかと思うんですけど。
昨晩もビールを2缶と焼酎まで飲んで。本当に大丈夫なの」

「高倉奈津子。その程度の酒の量で倒れる程のヤワな体じゃないのよ。
せいぜい、私を酔わせるならその3倍のアルコールを持ってこいって」

「そして、お姉ちゃんのお腹は水太りの階段を一歩一歩と突き進んで行くのでした。
行き着いた先は、必死に虚偽宣伝しているダイエット通販に手を出して……
挙げ句の果てにはリバウンドで更に体重が増加するという顛末は簡単に予想ができます」

 安曇さんからアルコールを受け取った矢先に食卓で大人しくご飯を食べている美耶子がぼそりと呟いた。
カチンと来た奈津子さんは妹相手にムキになって言い返した。

「美耶子……あなたも言うようになったじゃない」
「アルコール依存症の姉を持つと月の生活費の半分が娯楽とDVDBOXに消えゆく運命なんですよ。
こうして、安曇先輩の手料理で栄養を補給することで何とかこの果てしない暗闇と混沌を頑張って生き抜いているんです。
いつも。ありがとうございますね」

「いえ、どういたしましてって……奈津子さんも美耶子ちゃんも自分の欲望のために無駄遣いが多すぎますよ。
一体何をしたら学生で買えないような銘柄の酒と毎日のように
配送会社から届けられるアニメのDVDを買えるんですか? 
お二人の喧嘩よりもそっちの方が不思議です」

 安曇さんの指摘通りに俺も高倉姉妹の放蕩ぶりの資金源の謎を解明したい。
ただ、その答えは二人の笑顔を微笑んで同時に言った。
「それは禁則事項です(だから)」

 余程、腹黒いことをやっているのであろうか?

「雪菜もお兄ちゃん名義で闇金からたくさんお金を借りて、欲しいものたくさん買ってきていいかな」
「人の名前で借りてくるんじゃねぇっっ!! 利息がありえない程に高いからやめておけ。人生狂うぞ」

 腹黒い方々の会話は子供の教育には宜しくないはずのだが。
この憩いの場に集まった以上は黒い話になるのは必然になってしまっている。
あの唯一の品行方正の安曇さんですらもこの空気に馴染んでしまっているから慣れというのは恐ろしいもんだ。

「深山さんも大人しく朝食を食べてくださいねぇ」
 会話に入ろうとした俺は見事に安曇さんから注意されてしまった。俺は嘆息を吐きながらせっせと作ってくれた朝食を口に運んだ。

>>144
安価ミス?
146桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/05/17(木) 22:43:00 ID:RQaFQ2jB
 朝食を食べ終わると互いの食器は流し台に水で軽く汚れを落としてから食器洗い器の中に入れる。
安曇さんが全員分の食器が中に入っているのを確認してから洗剤を入れて、電源を入れた。
後は数十分後を経つと綺麗に洗い終わってくれているので文明の発達に改めて謝辞を述べたくなる。
 畳の上で皆はTVを見ながらぼんやりと過ごしていた。
春の季節になると自然と眠たくなるものだが、ここにいる5人は今日の予定について話し合っていた。

「雪菜ちゃんは明後日から入学式。
美耶子さんは明日から始業式が始まります。
奈津子さんはいつものようにお昼からお酒お酒で。
私は大学が今日は休み。
で、深山君はお仕事はどうなっているんですか? こんなにゆっくりしていいの」

「今日はオフだよ。そうじゃないと朝はこうやって落ち着いて過ごしてるはずないだろ。仕事があれば遅刻になってクビは確実だね」
「一樹さんもいい加減に何の目的もないフリーターから足を洗ってカタギの世界を生きましょうよ。
世の中は搾取搾取搾取の弱肉強食時代なんです。
何も考えずに30代を迎えると個人的カタストロフィーで完全に発狂しますよ」

 と、毒舌の持ち主の美耶子の胸を突き刺す一言を言われる。
さすがに会話を振った安曇さんも苦渋な笑顔を浮かべて居心地が悪そうにしていた。

「いや、働いたら負けっていう名言があるし」
「働く以前に一樹さんは無意味に色目を使っているからヤンデレ症候群感染した女の子から
後ろから刺されるのがお似合いなのかもしれませんね。
幼女から熟女まで自分の手元に置いていくような人は修羅場を狙いすぎてますよ」

「そのヤンデレ症候群はクリスマス前に政府が提案した一夫多妻制度の導入で解決されたんじゃないのか?」

 美耶子の言うヤンデレ症候群というのは昨年発生した女性にのみ発病する
一種の心の病である。感染した女の子達は片思いの相手に
他の女の子が近付いたりするとどんどんと病んで行くという恐ろしい病気である。
その病は昨年の政府が一夫多妻制の導入を決めたことによって表面的に解決したはずであった。

「まあ……深山君は優しい人ですから見た目で騙される人は多いかもしれませんね」

 と、安曇さんが視線を横に逸らしながら言った。
フォローを入れているつもりなのだろうか……俺の年齢=彼女いない歴だと勝手に想像されてそうだ。

 さて、今日の休日も憩いの場で桜荘の住人と一緒に過ごすことになるであろう。

 あの日、失った幼馴染の絆はもう二度と戻ることがないけど、俺はここの生活に充分に満足している。

 だから、時々不安に思うことがある。

 この生活が粉々に壊れ落ちそうな予感が……。
147名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:43:34 ID:c0GyVcNd
>>145
相変わらずトラ氏は面白いですね
GJです
148桜荘にようこそ ◇J7GMgIOEyA:2007/05/17(木) 22:45:05 ID:piSDIc8Y
 朝食を食べ終わると互いの食器は流し台に水で軽く汚れを落としてから食器洗い器の中に入れる。
安曇さんが全員分の食器が中に入っているのを確認してから洗剤を入れて、電源を入れた。
後は数十分後を経つと綺麗に洗い終わってくれているので文明の発達に改めて謝辞を述べたくなる。
 畳の上で皆はTVを見ながらぼんやりと過ごしていた。
春の季節になると自然と眠たくなるものだが、ここにいる5人は今日の予定について話し合っていた。

「雪菜ちゃんは明後日から入学式。
美耶子さんは明日から始業式が始まります。
奈津子さんはいつものようにお昼からお酒お酒で。
私は大学が今日は休み。
で、深山君はお仕事はどうなっているんですか? こんなにゆっくりしていいの」

「今日はオフだよ。そうじゃないと朝はこうやって落ち着いて過ごしてるはずないだろ。仕事があれば遅刻になってクビは確実だね」
「一樹さんもいい加減に何の目的もないフリーターから足を洗ってカタギの世界を生きましょうよ。
世の中は搾取搾取搾取の弱肉強食時代なんです。
何も考えずに30代を迎えると個人的カタストロフィーで完全に発狂しますよ」

 と、毒舌の持ち主の美耶子の胸を突き刺す一言を言われる。
さすがに会話を振った安曇さんも苦渋な笑顔を浮かべて居心地が悪そうにしていた。

「いや、働いたら負けっていう名言があるし」
「働く以前に一樹さんは無意味に色目を使っているからヤンデレ症候群感染した女の子から
後ろから刺されるのがお似合いなのかもしれませんね。
幼女から熟女まで自分の手元に置いていくような人は修羅場を狙いすぎてますよ」

「そのヤンデレ症候群はクリスマス前に政府が提案した一夫多妻制度の導入で解決されたんじゃないのか?」

 美耶子の言うヤンデレ症候群というのは昨年発生した女性にのみ発病する
一種の心の病である。感染した女の子達は片思いの相手に
他の女の子が近付いたりするとどんどんと病んで行くという恐ろしい病気である。
その病は昨年の政府が一夫多妻制の導入を決めたことによって表面的に解決したはずであった。

「まあ……深山君は優しい人ですから見た目で騙される人は多いかもしれませんね」

 と、安曇さんが視線を横に逸らしながら言った。
フォローを入れているつもりなのだろうか……俺の年齢=彼女いない歴だと勝手に想像されてそうだ。

 さて、今日の休日も憩いの場で桜荘の住人と一緒に過ごすことになるであろう。

 あの日、失った幼馴染の絆はもう二度と戻ることがないけど、俺はここの生活に充分に満足している。

 だから、時々不安に思うことがある。

 この生活が粉々に壊れ落ちそうな予感が……。
>>147
誤爆?
149名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:46:24 ID:6BDlayfV
>>148
トライデント氏GJです!!!!!!!!!!!
150トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/05/17(木) 22:47:58 ID:RQaFQ2jB
投下終了です。

て、スレを見直したら見事に荒れていますね。
コピペで乱立しているおかげで少し読みづらいですね。
後で避難所で同じ内容の物を投下した方がよろしいでしょうか?


151名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:49:50 ID:5ayO35B6
>>150
まとめるとき面倒になりそうだからこのままでいいと思う
152名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:50:33 ID:nIcgXFNF
>>150
スルーでおk
153名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:51:48 ID:n7qCF4WJ

age荒らしkita
154名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:52:26 ID:jzykelIv
>>150
乙。コピペはNGワードでどうにかなるからそこまで気を使わなくてもいいと思うけどね。
キャラが多くて騒がし楽しいものになりそうだな。
ただ、一点だけ指摘を。「満開な桜が咲く」という表現は、多分おかしい。頭痛が痛いと同系統の表現。
「桜が満開になっている。」「桜が満開だ。」でいいと思う。
155名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:52:58 ID:YJw887Yl
>>150
スレが荒れるしこれからは避難所に投下したほうがいいんじゃね?
156名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:52:58 ID:nIcgXFNF
すまねぇ、ageちまった……
157名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:53:40 ID:TKYPuOme
>>150
うはwwwwいい展開になりそうだwwww
トライデント氏GJですた!

う〜ん・・・専ブラ使ってるから俺は問題ないんだけど・・
158名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:54:07 ID:YEtCZydm
コピペの方が面白かったので
貴方の存在はいりません
とりあえず、トライデント氏の妄想を垂れ流しにするのやめてくれませんか?
159名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:56:42 ID:CEGCl9cx
>>150
2度手間だし次からは避難所で
皆が専ブラ使ってるわけでもないしね
160名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 22:58:11 ID:V2gAVP1W
>>150
投下お疲れ様です
ここに幼馴染がどう絡んでくるか楽しみですね
偽者はすぐ判るので避難所に落とす必要はないかと

>>140-142,145,148
ただでさえ鳥付きをコピペしてもバレバレなのに
いちいちID変えていたら余計おかしいってw

>>144,147,149
釣りか自演か天然か知らんが偽者にアンカーするな
161名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 23:03:01 ID:V2gAVP1W
>>158
偽者必死だな
162名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 23:05:11 ID:rnxqZaPH
>>149
便利だし使えばいいだろ
163名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 23:06:07 ID:rnxqZaPH
>>159
164名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 23:08:42 ID:j1bJJmNK
ID:V2gAVP1W
おぉ〜っとここに荒らしに反応するアホ登場〜
165名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 23:14:26 ID:ziDeJWII
>>150
乙です
166名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 23:16:27 ID:5TQc2qlI
>>150
GJ!!
これだけのキャラを動かすのはやっぱり凄い・・・!!
変なのは気にしないで頑張ってください!
167名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 23:59:16 ID:aR1fCMb8
トラ氏GJ!!!!続き楽しみにしてます。
168名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 13:11:33 ID:HaVT7SzA
>>164
そうしてまたID変えて住人を装って煽るのか
169名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 14:12:18 ID:mGZDqSH7
193 :名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 23:22:49 ID:+O3+fuD10
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1178928067/

>>140>>141>>142>>145>>148>>158   
5. 掲示板・スレッドの趣旨とは違う投稿
荒れかねない挑発的なレス
個人コテ叩き・投稿者のコピペ
6. 連続投稿・重複
連続投稿・コピー&ペースト

作者さんがSSを投下した直後にコピペしてスレの進行を阻害しています。
またコピペの最後の行から同一人物と思われます。
170名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 16:42:50 ID:FCSW/6z3
はいはい、、続けて特定の人物の相手する気なら避難所逝こうぜ
171名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 16:51:54 ID:Gqn3DZVB
>>170
避難所は避難所だろ
ここの荒らしの話ばかりされても困る
スルーしろ
172名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 17:23:46 ID:3wZZ4G97
荒らしの原因になったトライデント氏は避難所で寂しく妄想を垂れ流すということでOK?
まあ、あっちに投稿されても誰も見向きしてないから荒れなくていいね
173名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 18:34:13 ID:jYP8VW2L
↑(^Д^)
174名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 21:01:29 ID:lXeD1o+/
>>172
m9(^Д^)
175名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 21:04:13 ID:dxa+yf0B
これで削除板のコピペは3度目か…はぁ
もしかしてそれに生きがいとか感じちゃってんの?
176名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 23:50:19 ID:590Gtgiw
194 :名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 18:21:26 ID:p9XjZcqF0
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1178928067/

>>144>>147>>149>>164>>171>>172
5. 掲示板・スレッドの趣旨とは違う投稿
荒れかねない挑発的なレス
個人コテ叩き

>>193の荒らしと同一人物と思われるレスを追加します

また見境無くなってきたな、と思われるって何?
177名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 23:53:13 ID:zcqPkEjJ
もうホント勘弁しろよ……
178名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 00:06:01 ID:8KFC6wJP
>>176
楽しいか('A`)?
179名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 00:09:29 ID:v/nEHRKg
嫉妬の炎に包まれた彼女でもない恋人未満の女の子に
膝枕されていると実の姉でもない年上のお姉さんが主人公
争奪戦に参戦してくるようなSSが読めるのは嫉妬スレだけ!!

ってみたいなCMを夢で見た・・。
正夢にならないかな
180名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 00:16:47 ID:8KFC6wJP
>>179
ちょっと過程を省きすぎじゃね?
181名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 00:20:28 ID:hZvAQdag
まぁ、夢だし
182名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 00:30:14 ID:v/nEHRKg
妹「お兄ちゃん・・小さな頃にお嫁さんにしてくれるって約束してくれたのに
  どうして・・どうして・・そんな女を選んだの? お兄ちゃんを奪ったお姉ちゃんなんかと!!」
姉「ごめんね妹ちゃん。私はどうしても弟君の事が好きだった。あなたになんて渡したくなかったんだよ」
妹「そ、そ、そんなの私だって同じだよ。お姉ちゃんだけにはお兄ちゃんを渡したくなったの。
  私が持っていない全ての物を持っているお姉ちゃんにだけは大事な物で勝ちたかった」
姉「でも、もう遅いよ。弟君は私の体に溺れている。時間をゆっくりかけて骨抜きにしたんだから・・」


と、今度は適当に主人公、姉、妹の三角関係と修羅場を軽く過程を省いて書いてみた
誰か書いてくれませんか?

183名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 00:41:57 ID:jUKyP39q
まとめに行ったほうがはえぇよ
184名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 00:46:33 ID:RecdHnMd
>>180


普遍的な日常──

変わらない筈の毎日──

全ての始まりは、幼馴染みの一言だった──

「○○くん、ずっと好きでした」
屋上で囁かれた思い。
広がる困惑

「兄さん、告白されたんだって?」
妹の冷たい一言。
抱いた疑念

「○○ちゃん、お姉ちゃんとずっと一緒だよね?」
姉の厳しい詰問。
感じた恐怖

奏でられ始めた純愛と狂気の二重奏

「この泥棒猫!!」
「殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスッ!!」
「兄さんどいて、そいつを殺せない!」
「クスクスッ……兄さん、兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん……」
「ねぇ○○ちゃん、そんな雌狐ほっといてご飯にしましょ?」
「○○ちゃん、そのお料理私の特製愛の調味料入りだよ?おいしい?」

乙女達の醜くも美しい独占欲。

渦巻く謀略と狂気と流血の果てには────

こんな作品は修羅場スレにて公開中!



てな感じでCM化したらどうですかね?
185名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 00:48:47 ID:lUzSflj2
そろそろフラッシュ職人が光臨……?
186 ◆Xj/0bp81B. :2007/05/19(土) 01:38:02 ID:A21pw/ec
投下します。
187すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/19(土) 01:39:53 ID:A21pw/ec
今朝のあの悪夢。
その中で、小さな少年が最後に言ったあのセリフを。


「どうして僕にはお母さんがいないの?」


何故、あの時、あんな事を言ったのか。
──そんな事は、分かっている。
誰もいない家が、一人が寂しかったからだ──。
気がつくと、翔は立ち上がっていた。覚悟は決まっていた。澄香の元へ行こう、と。メールには彼女の居場所を示す手掛りは何もない
。しかし不思議と、直覚的に感じていた。きっと澄香は自分の家にいるのだろう。
机の上に転がっている鉛筆や消しゴムを、そのまま鞄に突っ込み、持っていた単語帳を上から乱暴に押し込む。
その鞄を肩にかけ、横の席で早くも舟をこきはじめた寺田に一言告げる。
「悪い、俺帰るわ」
いきなり寺田が顔をあげた。夢の世界を引きずっているのか、目が半開きで、表情がついてきていない。しかし、それでも驚いている
だろう事は分かった。その寺田が死にかけの金魚のように口をパクパクさせて、何かを言おうとしている。が、寺田が声を発するより
先に翔は地面を蹴っていた。
主のいない教壇の上を駆け抜ける。半開きのドアに体を滑りこませ、廊下に出る。
そのとき、背後から伸びた手に首根が掴まれ前のめりになったところを、襟首に首を絞めつけられ、翔は綺麗なお花畑を見た。思わず
振り返る。
「あんた、どこ行くのよ」
中野だった。彼女は眉を釣り上げ、冷たい瞳で翔を睨んでいる。
「どこって。鞄持って便所に行く奴はいないだろ? 帰るんだよ」
翔は喉元をさすりつつ言う。すると、世界でもっともありえない光景を見たといった顔で、中野が消えるように呟く。
「う、そ……」
しかし、彼女はすぐに態勢を建て直し、翔を鋭い眼光で見据え、
「ばっ、馬鹿じゃないの!? あんたねぇ、今日の試験がどれだけ大事か分かってないんじゃない?今日の試験は、大学進学がかかっ
ているのよ、何があっても最後まで頑張らなきゃ駄目なのよっ!!」
188すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/19(土) 01:41:25 ID:A21pw/ec
中野はほとんど叫んでいた。とてつもない迫力で、今にも飛びかかってきそうだった。しかし、翔は怯まない、決意も変わらない。
「分かってるさ。だけど、どうしても帰んなきゃいけないんだよ」
翔は真っ直ぐ、彼女を見つめ返して言った。自分の意思を、瞳に込める。その決意が伝わったのか、中野は悔しそうに唇を結び、うつ
むいた。彼女の肩が、小さく震えている。
「……悪い、じゃあ俺、帰るわ」
そう言い残すと、踵を返し、走り出そうとした。そのとき、背中から、蚊の鳴き声のように小さく、そして悲痛な呟きが聞こえた。
「そんなに、あの娘が大事なの……?」
走り出せなかった。彼女の声が、意思が、まるで植物の蔦のように、翔の未練を絡め取り、先へ行く足を止める。
そして思うのは、「あの娘」。彼女が言ったその言葉が指す人物は、おそらく澄香であろう。それ以外に、あの娘で思い当たる節がな
い。しかし、それは中野の知りえない話であり、またありえない話である。それなのに何故、中野があの事を知っているのか、その疑
問が無意識に口についた。
「どうして、お前……」
「ねぇ、答えてよ。あの娘の何がいいの?」
翔の疑問は中野の涙声にかき消された。
「私じゃ駄目なの?私はまだ綺麗だよ、汚れていないよ。それに翔だったら、汚されてもいいよ」
まるでミルクをねだる仔猫のように甘く、そして、どこか哀れを誘うその声に、ドキリと、胸がときめいた。普段の中野が見せる強気
な態度はすっかり影をひそめ、しおらしい部分が表に出ている。そのギャップが、翔の心に熱くてむずかゆい感覚を忍ばせる。しかし
、それでも決意は変わらない、いや変えてはならない。
「……何が駄目ってわけじゃないんだよ」
翔は背中を見せたまま、喉から声を絞りだした。が、決して振り返りはしなかった。おそらく今の中野は、彼女の中で一番可愛いい顔
をしている、と思う。振り返ったら、その中野の顔を見たら、せっかくの決心が揺らいでしまう気がした。
189すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/19(土) 01:44:17 ID:A21pw/ec
「じゃあ、どうして?」
心に染みる中野の声。
翔は考える。なぜ、澄香と付き合っているのか。そしてなぜ、中野ではなかったのか。その答えは。
「……何となく似てるんだよ、俺と澄香ってさ。だから、」
「どこがよっ!?全然似てないじゃないっ!!」
翔の言葉を遮り、中野がいきなり声を張り上げた。溜った鬱憤がついに抑えられなくなってしまったかのように、感情が溢れだし明ら
かに錯乱していた。
今の刺のつきでた中野に、がさつに触れると怪我をする。だから、翔はやり方を変える事にした。振り返り、中野の濡れた瞳を真っ直
ぐ見つめる。気丈に涙を溜め込んだ瞳は、気高く、息を飲むほど綺麗だった。そこから一筋の涙の趾が、ほんのりと染まった頬を通り
、薄く紅を指した口許にまで道を作っている。それは、大人の女性の顔だった。
やはり、中野は美しかった。輝いて見えた。しかし、決して心を揺るがせてはならなず、逃げてもならず、退いてもならない。複雑に
絡み付いた未練の蔦を、一本一本丁寧にほどいていくように、言葉を選びながら翔は問う。
「中野はさ、学校から家に帰った時、何をする?出来るだけ丁寧に思い出して答えてくれないか」
「何よそれっ!?そんな事、関係ないじゃないっ!!」
「関係、あるんだ。頼むよ、答えてくれ」
翔は中野から目を離さず、ジッと彼女の瞳を見つめる。中野も見つめ返してくる。しばらくすると、中野は翔から目を反らして、ぶっ
きらぼうに、
「まず、ドアを開ける」
一つ、蔦がほぐれた。
「次は?」
「……ただいまって言う」
二つ。
「ただいまって言うと、どうなる?」
「どう、って。奥からおかえりって声が返ってくる」
三つ目で、翔は溜め息をもらした。
「それ、だよ」
「え?」
「それなんだ。俺も澄香もさ」
中野は意味が分からないといった様子で、おおげさに髪を振り乱しつつ、
「ちょっと待ってよ!わけわかんないよ!!何がそれなの? 何が違うの?私が言ったのは当たり前の事じゃない!!誰だって同じ事
するわ!!」
190すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/19(土) 01:47:26 ID:A21pw/ec
当たり前。その響きが翔を悲しくさせる。昔から、翔にはその当たり前がなかった。
「その当たり前にさ、俺も澄香も憧れていたんだよ」
しみじみと、肺の空気を吐き出すように言い、翔は目を瞑る。深い暗闇に包まれ、あの時の孤独感と寂廖感が蘇る。その感覚をかき乱
すように、中野が息を飲むのが分かった。どうやら、隠された意味を察したようだ。翔は再び語り出す。
「俺は、澄香と同じ境遇だったし同じ経験をしてる、気持ちも分かる。だからこそ、ほっとけないんだ」
ゆっくりと瞼をあげると、そこには中野の白い顔があって、彼女は唇をきつく噛みしめ何かを堪えているようだった。やがて、その唇
がゆっくりと言を紡いだ。
「じゃあ翔は、あの娘と同じだから、行くの?」
頷く。おかしい、と、か細い声の後、まるで坂道を転がる車輪のように、中野の言は勢いを増していく。
「おかしい。そんなの、絶対おかしいよ!!そんなの、ただ同情してるだけじゃないっ!!」
中野の震える唇が、唾液で、ヌメヌメとねばついた光を放っていた。
「同情……か。ああ、その通りだよ。俺は多分、澄香に同情しているだけだ。だけど、それを理由にしちゃいけないのか?」
同情だっていい。寂しい時、苦しい時、誰かが側にいてくれるのであれば、それがどんな理由であっても構わない。翔はそう思ってい
るし、きっと澄香も同じだ。それに、同情がその先へと発展する可能性だってある。現に、澄香は変わりはじめ、翔も初対面の時には
考えられないほどの好意を彼女に抱いている。もちろんそれは、恋と言えるほど成熟した気持ちではないが、まだ先がある。ゆっくり
と、彼女に惹かれつつある。
それは別に中野が嫌いだからでも、ダメだからでもない。ただ、澄香の方が、澄香がいいからだ。
「かわいいとか、優しいとか、処女だからとか、そんな理由だけで恋に落ちるほど俺は謙虚じゃないんだ」
翔がゆっくり、しかし一つ一つはっきり言う。中野はうちひしがれたように表情を萎ませた。その言葉が、翔なりの拒絶だと理解した
のだろう。
191すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/19(土) 01:48:56 ID:A21pw/ec
「だけど、だけど、もう少しだけ、様子を見ようよ。あと、二時間だけなんだし、最後まで頑張ろうよ」
それでも中野は食い下がる。まるで母親に玩具をねだる幼児のように、彼女の瞳には期待と不安が同じだけ共存していた。
「いたずらだったら、取り返しがつかないよ?」
その言葉を最後に、彼女は声を失った人魚のように押し黙り、しかし、それでも声にならない声は確かに聞こえてくる。その唇が、頬
が、そして瞳が必死で翔に訴えかけている。それが、彼女の必殺の表情なのだろう。
ずっとおかしな話だと思っていた。メールの内容も、それが誰からのものであるかも、中野が知っているはずがないのに、知っている
ように思えてならなかった。しかし、そんな事はもうどうでもよくなっていた。
未練に絡み付いた蔦は、いつの間にかあと一本にまで数を減らしていた。弱々しく張り付いたそれを、今なら乱暴に振り払う事も出来
る。しかし、翔は最後の一本を丁寧にほどいた。
「……いたずら、か。まぁ、その時は、澄香が無事でよかったって思う事にするよ」
必殺の表情を浮かべていた中野の顔から、まるで凪のように表情が消えた。中野は呆然自失といったふうで、口を動かし、視線をさま
よわせている。そんな彼女に、翔はいつものようにおどけて見せた。
「もちろんその後、小一時間たっぷり説教してやるつもりだけど、な」
中野の体から力が抜けた。彼女はまるで枯れ葉のように、フラフラと廊下の壁にもたれかかる。そこから先は見ずに、翔は踵を返し階
段へと向かう。
途中、背中からむせび泣く声が聞こえてきたが、振り返りはしなかった。
192 ◆Xj/0bp81B. :2007/05/19(土) 01:50:21 ID:A21pw/ec
投下完了。
次回から、誰かが狂い始めます。そしてようやく、話のテンポも上がる、はず。
193名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 01:54:08 ID:8KFC6wJP
>>192
キタ―(゚∀゚≡゚Д゚)ムハァ―!!
リアルタイムで読めた俺は何て幸せなんだ・・・
とうとう修羅場フラグが完全に立ててしまった翔の今後にwktk!!
194名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 09:05:04 ID:MaBqKXvG
私の作った御飯食べてよ。って2時間叩かれ続けた者ですが修羅場は近いですか?意地でも寝たフリしてたけどクズ主人公にはなれそうですか?
195名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 09:58:38 ID:qVmu7CKg
翔が男になった―――!
いやスゲェ始めて翔がカッコいいと思えましたよw
GJッス!
196名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 10:48:46 ID:1riznWVO
>>192 こんなエロゲの主人公がいたら僕はもう…!!
197名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 12:05:15 ID:AIQ27V1W
修羅場スレの主人公で始めて漢だと思える奴を見た。
なんか感動ですわー。
198名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 15:46:17 ID:FlD9gq+C
>>194
2時間というのが嘘くさいが、もし本当なら修羅場は近いな。
とりあえず、彼女や奥さんだったら答えてやれ。
199名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 15:51:15 ID:ecL3szlm
なんだかまとめサイトが重く感じるな。俺だけかな?
200名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 16:25:30 ID:8KFC6wJP
>>199
俺のPCでは普段どうりだが、回線に何かあったんじゃね?
201名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 16:56:07 ID:ecL3szlm
そうなのかなー
それにヤンデレSSのまとめサイトもちょい重く感じるんだよな
その2つだけ……それ以外は何の異常もないのはずなのに、どうしたんだべ
202名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 17:43:42 ID:8KFC6wJP
>>201
お前のPCが嫉妬してるんじゃないか?
「あのサイトばかり見るんじゃなくて、もっと私を使って」とか
203名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 19:21:00 ID:3EvCZAsV
どちらもFC2の無料HPだったような気がする・・
204名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 20:05:03 ID:VNjX5TnL
んー、俺も多少遅い気がする
見れない程じゃないが
205名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 20:43:34 ID:d0NHGRXb
多少とかちょっと程度で言われてもね
206両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/05/19(土) 21:33:31 ID:RiFlkXMF
投下します。前回同様区切りの都合上長いです。
207両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/05/19(土) 21:34:10 ID:RiFlkXMF
「……ッ!」
 多分店内の客の半数が俺に奇異の視線を向けているんだろうが、そんなこと気に掛けていられる
ほどの余裕は欠片もなかった。
 つい数秒前に送られてきた、改行も句読点もないのに律儀に漢字変換だけはしっかりされてある
奇怪なメールの文面が頭にこべりついて離れてくれない。正直最初は何かの悪戯メールだと思った
しその方が良かった。しかしそのメールには俺の名前が書いてあるから、知らない誰かが間違えて
しまったというケースはありえない。知り合いにしたって俺の友達にこんなに手の込んだ気色悪い
ドッキリを仕掛けてくる奴はいない。
 それにそんなに考えなくても、決定的なことがある。簡単なことだ、送信者の欄を見ればいい。
しかし、俺はそこを見るのを躊躇っている。だって、俺はその人物に心当たりがあるからだ。全く
の赤の他人ではなく且つ友達と言えるほど過ごした期間は長くない相手――、一人しかいない。
 店内の静寂と同化しそうなほどの微妙な動きで、俺は視線を送信者の欄へと向ける。そこには、
意味を理解し難い半角英数字の羅列が記されていた。だが、それを見て俺はデジャビュに似たもの
を覚えた。当然だ。俺はこのメールアドレスを見たことがあるんだからな。
 あの土手でこのメールアドレスを教えてもらえて喜んだ分だけ、その体験が容赦なく俺に現実の
重みを伝えてくる。
 俺は僅かに”そうでない”ことを祈りながら、携帯電話に映し出されているメールアドレスと、
別の手に持っているメモに記されているそれとを見比べる。そして俺の願いは儚く崩れ去る。
 二つのアドレスは、一方は冷たく機械的なのに対しもう片方は見ているだけで微笑ましくなって
くるような愛らしい丸びを帯びた文字であるという違いを除いて、一文字も違うことはなかった。
 愛しき佑子さんのアドレスと悪戯一歩手前の迷惑メールもどきを俺の携帯に送りつけてきた主の
アドレスが同じということが示す事実は一つ――このメールの送信者が佑子さんだということだ。
 こうも回りくどい道筋でこの結論を導き出したのは、俺が無意識の内に現実を受け入れることを
拒んでいたからなんだろう。素直にすぐに送信者の欄を見ればいいものを。自分でも呆れる。
 何で佑子さんが俺のメールアドレスを知っているのだとか、俺への呼称が”くん”から”さん”
になっていたりと不可解な点はあるが、それでも佑子さんが俺にメールを送ってきたという事実が
揺らぐことはない。
 意味もなく暴れたい衝動を何とか抑え俺はもう一度佑子さんからのメールに視線を向ける。
 理由はわからないが切羽詰った状況だということは一目瞭然。「ごめんなさい」を四回も書いて
いる辺りから推測するに、情緒不安定でもあるようだ。俺は謝られるようなことはしていないし。
 そのことについては直接佑子さんに訊くとして、今注目すべきは「私土手で待ってますから」と
いう一言だ。佑子さんの置かれている具体的な状態は俺には計り知れないが、とりあえずあの土手
にいるということだけは確定事項なようだ。助けてくれといった内容は書かれていないから危機的
状況だという訳ではないことだけが安心の拠り所だ。
 携帯を閉じメモと一緒に乱暴に鞄の中に押し込めるとそれを肩に掛ける。よし出発準備完了。
 とりあえずは佑子さんとコンタクトを取れないと話が見えてこない。まさか佑子さんがこの俺に
『実はドッキリでした』と言いたいが為にこんなメールを送りつけてきたとは到底思えないし思い
たくもない。仮に本当にこの二日間の佑子さんとの体験が全て仕組まれていたものだとしたら、俺
はその場で笑った後、家に戻って自室で枕を三つほど涙で濡らしてやる。そして一生女性不信症者
として余生を過ごしてやるさ。
 たとえ佑子さんが相手からの想いを面白がるような人だったとしてもだ、それでも許せてしまう
ほど俺は彼女のことを好きになっちまってるようだからな。
 行く末わからぬ決意を抱きつつ、俺は店を出ようとする――ところで思い出した。
「仲川……どこ行く気なの? ねぇ?」
 朝は悪戯っぽく笑い、昼は俺に怒鳴られて地に足が着いていないかの如く不安定に視線を泳がせ
て、一度俺が謝るとまた笑顔が復活して、そうかと思ったら今度は露骨なまでな作り笑いを浮かべ
て、意味不明なことを真剣染みて言った後俺にコーヒーぶっかけるとまた恐いほど悲しそうに瞳を
震わせ、挙句の果てには近寄り難い雰囲気を醸し出しながら目を見開かせつつ俺の携帯を弄る――
そんな風に表情がコロコロ変わる、佐藤早苗が目の前にいることを。
208両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/05/19(土) 21:35:14 ID:RiFlkXMF
「まだ話は終わってないのよ? ねぇ?」
 スカートの裾を掴みながら俺に視線を向けてくる佐藤早苗の今の表情は、言動こそ強気だが非常
に不安定なものだ。自身に滞在する不安や恐怖を強気で隠しているような感じだ。
 今日で随分とこいつの表情を見たなと思いつつ、俺は佐藤早苗から視線を逸らす。
「佑子さんとこ」
 短く簡潔な言葉を投げやりにぶつけてやる。これだけ言えば伝わるだろという無言のメッセージ
を乗せながら。
 素っ気無い態度で接っしてしまうのは佑子さんからのメールを見て早く行かねばと焦りが生じて
いるというのもあるが、本音を言えば佐藤早苗に対し怒りを感じているからというのが最大の理由
だ。自己正当化という面を含めても俺が激しい憤りに駆られるのは仕方のないことだと思う。別に
義理チョコのことに関してはもう何も感じていない……と言えば嘘になるが、少なくとも憎しみの
業火が燃えているとかいったことはない。佐藤早苗にチョコについて確認をしなかった俺にも非が
あったと今なら思える。ちなみにこれは佑子さんの件については全く当てはまらない。佑子さんが
好きだった男は愛しの彼女にキスした上に、『キスくらいで勘違いするな』とかどこぞのインチキ
占い師も裸足で逃げ出すような妄言を吐いたらしいからな。是非ともその男に一度会ってみたい。
勿論有無を言わさずそいつの顔面の形を趣味の悪いものになるまで叩っ壊す為にな。
 それはまた別の機会にするとして、今の問題要素は寒くもない喫茶店内で何故か震えている目の
前にいる佐藤早苗だ。こいつは俺が土手で佑子さんへの想いを教えてやってから色々と挙動が露骨
に不審なものになっている。作り笑いを取り繕ったと思ったら、次は執拗に佑子さんとの付き合い
を止めさせようとして、挙句の果てには俺の携帯を勝手に弄りだしやがった。しかも佑子さんから
貰ったメールアドレスを着信拒否設定にしようとしやがるなんて……!
 ――つまり、それが俺がさっきから佐藤早苗と目を合わせようとしない理由だ。
 多分今の俺は結構酷い顔をしていると思う。逸る気持ちと心底に沸々と煮滾っている怒りを抑え
込む為に、かなり表情が歪んでいるのではないかと。そんな醜い顔を見られたくないし、それに何
より――もし佐藤早苗と目を合わせたら俺はまた最低な行為をしてしまうかもしれない。それが、
一番恐かった。佐藤早苗を佑子さんとの距離を錯覚させる為の目晦ましに利用してしまったことを
散々悔いて謝ったばかりなのに、また彼女を傷付けてしまうのではないかと自分自身に疑心暗鬼に
なってしまっているのだ。今の俺はそれを自覚できるほど情緒不安定だ。何をするかわからない。
「俺が金持つから、今日はこれで」
 明日友達に自慢しようと意気込んでいたはずの代金払いだって暗澹たる心持のまま、乱暴に机の
上に数枚の硬貨を置くだけになってしまった。
 物事が上手く進まないことが更に俺の中に焦燥感を生むのを感じつつ、それらを振り払うように
駆け出そうとする――がしかし。
「待って」
 腕に温かみを感じたと同時に、急激に体の重みが増した気がした。何事かと振り向いてみると、
佐藤早苗が俺の腕に自分の両腕を絡めていた。いつもなら赤面もののラッキーイベントなのだが、
足が勝手に歩き出しそうなほど急いでいる今では煩わしくしか感じられない。それに、正直言うと
今俺のことを見上げてくる佐藤早苗の視線が鬱陶しい。俺がそう感じたのは佐藤早苗のその媚びる
ような瞳が佑子さんにそっくりに見えてしまったからだ。
 ――佐藤早苗、お前が佑子さんと同じような目線を俺にくれてくんじゃねぇ。
 すぐに餌を逃がすまいとする大蛇のように気持ち悪く絡み付いてくる佐藤早苗の腕を振り払って
やりたい衝動を理性でどうにか抑え込み、なるべく穏やかな口調で言う。
「佐藤、急いでるんだ。離してくれ」
「嫌よ……。あたしの話聞いた後でもいいじゃない……」
「話ってのは、佑子さんと俺は付き合わないほうがいいってのだろ? 耳に蛸ができそうなくらい
聞いたよ。この際だから言っておくが、俺が佑子さんを好きだって気持ちは変わらねぇ」
 徐々に荒くなりかけてきた声に沈静化を図りつつ腕を動かそうとするが、その細い腕からは想像
もつかないほどの力で俺の腕を掴んでくる佐藤早苗を前にしてそれは無駄に終わった。
 そのあまりのしつこさに、そろそろ限界を感じる。
「離せ」
「嫌……! だって、離したら仲川は”あの女”のとこへ行くんでしょ!?」
「当たり前だろうがっ!!」
 そして心の箍は音を立てて外れた。
209両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/05/19(土) 21:36:18 ID:RiFlkXMF
 さっきまでの心の葛藤が嘘のように、俺は何の躊躇いもなく佐藤早苗の腕を乱暴に振り払う。
「きゃっ!」
 小さな悲鳴を上げた佐藤早苗は俺が振り払ってやった方向に抵抗の余地も示さずに、まるで何か
紐のようなもので引っ張られるように床に吸い込まれていった。その悲鳴とは対照的に佐藤早苗は
派手な音を立てながら床に尻餅を着いた。痛そうに尻を押さえている佐藤早苗を一瞥しつつ、俺は
振り払った時に感じた佐藤早苗の体の軽さに驚きを隠せなかった。俺の腕を”藁にも縋る思い”と
いう言葉がぴったりなほど強く離すまいとしていたあの腕の力が偽りだったのではないかと疑って
しまうくらい軽かった。その壊れ物のような脆さを感じた時俺は佐藤早苗の『女』を再認識した。
 思わず佐藤早苗を振り払ってしまった腕を見つめる。俺はこの腕で乱暴を働いてしまったのだ。
あんなに弱々しい『女』の面を持った佐藤早苗を、『男』の俺が傷付けてしまったのだ。佐藤早苗
に対して申し訳ないという気持ちは欠片も感じていないが、我を失って女の子を傷付けてしまった
ことは男として恥ずかしい。いや、恥ずべきことだ。
 俺が羞恥心から戸惑って立ち尽くしている中、佐藤早苗は腰を上げないまま俺を見つめてくる。
その視線に現実に引き戻された俺は、一瞬佐藤早苗を流し見た後交錯させまいと再び視線を逸らし
両の拳を握力測定でもするかのように強く握り締める。
「佑子さんのことを”あの女”だなんて呼ぶんじゃねぇ! お前は佑子さんのことを知らねぇから
うだうだ言えるんだ! 佑子さんは綺麗で律儀で笑顔が素敵でっ、そんで優しいんだよ。お前とは
違って優しいんだよっ!!」
 佐藤早苗は本当に佑子さんのことを知らないんだからこんなこと言ったって理解してもらえる訳
ないとわかっていても叫ばずにはいられなかった。いや、知らないからこそ俺は腹の底から大声を
張り上げているのだ。佐藤早苗は佑子さんのことを何一つ知らない。濁りなどどこにもない黒い瞳
は一日中見ていても飽きないだろうとか、長く垂れている黒髪から漂うシャンプーの匂いは鼻腔を
刺激し思考回路を鈍らせるほど甘いだとか、小さい両肩は握り潰せてしまいそうなほど柔らかいだ
とか、――笑った顔は可愛いだとか、何も知らないんだ。
 ――なのに、佑子さんのことを悪く言うんじゃねぇ。
「他人のチョコは平気で蹴り飛ばし、俺の携帯も当たり前のように使って、見知らぬ相手に陰口を
叩くようなお前なんかがっ! 佑子さんのことを悪く言うんじゃねぇー!!」
 俺の激昂の怒声と共に、胸の中の靄が全部吐き出された。今まで溜め込んでいた、我慢していた
ものが全て漏れてしまった。幾ら好きな相手を侮辱されたからといって、短絡的過ぎる。
 荒い息を何とか落ち着かせようとしながら、徐々に冷静になっていく思考を前提に、佐藤早苗を
もう一度だけ見る。
「あっ、ちがっ……なかが……わ……」
 佐藤早苗は瞳を小刻みに震わしながら、尚俺へ向ける視線をそのままに、呻きに近い声を上げて
いた。その様は迷子になった子供のようだ。目線だけを俺に固定し、両手が何かを手探りするかの
ように動いている。そのあまりの動揺ぶりに、さすがの俺でも少々罪悪感を覚えてしまう。だが、
悪いのは佐藤早苗だ。こいつは佑子さんを馬鹿にしたんだ。ここで場の空気に流されて謝罪したり
したら、佐藤早苗の為にもならないし、それに佑子さんを裏切ったような気分になる。
 ――下らない同情は、相手の傷を抉るだけだ。
 そう自分に言い聞かせながら、俺は佐藤早苗を尻目に走り出す。今すべきことはこんなことでは
ない。こんなところで佐藤早苗なんかと時間を割いている暇はなかったんだ。
 今佑子さんが一体どんな表情をしているのかを考えながら、俺は自動ドアに近付く。そこで俺は
ようやくここが喫茶店内だったことを思い出した。佐藤早苗と俺の口論――というか俺の一方的な
罵声だが――は当たり前のように周りの客や店員に筒抜けだっただろうな。
 急に気恥ずかしくなり、俺は慌てて開いた自動ドアに身を滑らす。
「仲川! 仲川! な、なか、がわぁ……」
 佐藤早苗の嗚咽が耳にこべりついてしまったが、聞かなかったことにして俺は走る。
 今はただ佑子さんのことが心配だ。メールを送れるんだから、最悪の想像はしなくても良さそう
だが、それでも何かあったら俺は自分を許せないだろう。
「無事でいてくれ」
 佑子さんにでも、俺自身にでもなく、ただ誰に向けたものでもない呟き声が激しく行き来してる
自動車の機械音の喧騒でかき消された。
210両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/05/19(土) 21:37:17 ID:RiFlkXMF

 傾きかけてきた太陽が橙色に染め上げている砂利道をひたすら突き進む。わざと爪先から地面を
捉えて更に足を後ろに思い切り流しているのは、それによって生じる砂利が擦れる音を耳に響かせ
『雑念』を振り払おうとしているからだ。それが単なる逃避に過ぎないとわかっていても、それが
不誠実なことだとしても、今優先すべきは佑子さんの下へ行くことだけだ。他はどうでもいい。
 その間だけでいいから、何の蟠りも抜きにして一つの目的に執着させて下さいと祈りながら、俺
はさっきまでの佐藤早苗とのやり取りを思い返し、本日四度目の自己嫌悪を覚える。一日にそんな
に感じていたんじゃ一回の自己嫌悪が秘める反省の意の重みが薄れてしまうなとは思いつつも、今
さっきの行動を省みなかったら最低男確定だという自覚の下、心中で佐藤早苗に謝る。

 俺は危惧していた通り、また佐藤早苗を”利用する”ことで傷付けてしまった。こうも同じ過ち
を何度も繰り返していると、俺が今まで佐藤早苗に対して感じていた罪悪感というのは全て、反省
している自分に陶酔する為の手段なんじゃないかという最悪の考えすら浮かんでしまう。だって、
子供だって一度叱られたら悔いて同じ間違いをしまいと努力するだろう。しかも俺は既に高校生で
あり、更に言えば佐藤早苗と佑子さんの二人合わせて三度も彼女らを利用するという非行を犯して
いる。だからこそ反省すべき機会はこんなにもあった。なのに、――その時は反省した気でいたが
――、結果として俺はまた佐藤早苗を傷付けてしまった。
 確かに佐藤早苗の行動は許せないものだ。然程親しくもない相手にいきなりプライバシーの宝庫
である携帯を弄られちゃ堪ったものじゃない。そのことについては良かった。だが、俺はそのこと
以外にも別のことで怒っていた。俺が佐藤早苗に言った言葉は何だった?

 ――『佑子さんのことを”あの女”だなんて呼ぶんじゃねぇ!』

 その後怒涛の罵声で佐藤早苗を震え上がらせてしまった。それも一見悪いことのようにはとても
見えなかった。自分が好きだと伝えているはずの人物を冒涜されるのは単純に嫌だからな。勿論、
俺は佐藤早苗が然るべき報いを受けていると言い訳染みたことで自分を納得させ店を出た。だが、
もう少しで春とは思えないほど冷え切っていた空気が思考を瞬間冷却させた時気付いてしまった。
冷静になった頭が見たくもない自身の醜い部分を態々と見せ付けてきた。

 俺の佐藤早苗に対する怒りの目的は佑子さんのことをわかりきっていると思いたかったからだ。

 つまり多少は佑子さんを労わる気持ちもあったが、本音ではただ佑子さんのこと全部を知った気
でいたかっただけなのだ。俺が佐藤早苗に”佑子さんのいいところ”を言ったのは、俺は佑子さん
のことをこれだけ知っていると主張したかった子供染みた幼さ故なんだ。
 そしてその過ちの引き金となったのは、俺の奥底で心を震わすほど叫んでいる不安だ。
 ――俺は佑子さんのことを全然知らない。
 当然のことと言えばそれで片付く。俺と佑子さんは会ってまだ二日なんだし、お互いに知らない
ことがあるのは当たり前だ。これから知っていけばいい。
 だが俺は待てなかった。正直焦っていた。佐藤早苗とのバレンタインからホワイトデーまでの例
の一件で、俺はかなり女性不審に陥っていた。佑子さんを信用してないという訳ではないのだが、
どうしても確信が欲しかったんだ。俺と佑子さんは”どこかで”繋がっているはずという確信を。
 だから、その為に佐藤早苗を利用したんだ。佑子さんのことを”何一つ知らない”佐藤早苗と、
”少しは知っている”俺――、その二つを天秤に掛けることで安心を得ようとしていたんだ。二つ
を比較すれば五十歩百歩と言えども俺の方が優勢であることはわかる。そんな虚しい自己満足だけ
では飽き足らず、更に俺はその天秤の傾きを強制的に大きくする為に佐藤早苗に怒声を浴びせた。
今佐藤早苗に怒っているのは、”何一つ知らない”佐藤早苗に”佑子さんのことを全て知ってる”
俺が教えてやらなければならないからなんだ、と真実を暈す為に。
 佐藤早苗への説得の意も、佑子さんへの労わりも、そんなものはどうでもよくて俺は自分がして
いることへの正当性が欲しかっただけだったんだ。自分は他者に説明できるほど佑子さんのことを
知っているんだとアピールすることによる満足感と、それを言い聞かせることで得られるであろう
安心感欲しさ故に。
 誰か、こんな愚かで馬鹿でクズな俺を叱ってくれ。それで変われるなら喜んで受けるから……。
211両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/05/19(土) 21:38:32 ID:RiFlkXMF


 風は吹いていない。こんな時こそあの煩わしい音で何も考えられないようにして欲しいのにだ。
それをあたかも俺に対して自省を求めているかのように感じるのは、少々自意識過剰かな。
 一瞬、”今俺が思っている反省も結局は自分の為なのではないか”という恐ろしい考えが過った
のと同時に、俺は足を止めた。
 心臓が今にも飛び出しそうなほど体内で暴れ回っているのは、さっきまでの全力疾走だけが全て
の要因じゃないだろう。頼んでもいないのに勝手に呼吸する両肩を放っておき、俺は視界に捉えた
人物の背中を一心に凝視する。スカートが汚れることを厭わずに土手に座り込んでいる後姿を見て
俺が既視感を覚えたのは言うまでもない。奇しくも昨日とほとんど変わらない場所で、しかし昨日
とは違い俺と会う為に待っている人影を見下ろしながら、俺はとりあえずの安堵に息をつく。
 予想通り――というか期待通り無事でいてくれたことに心底でホッとしつつ、人気のまるでない
土手の真ん中で存在感をこれでもかというくらい見せ付けている小さい体に向かって叫ぶ。
「佑子さーん!!」
 俺の声が土手に二、三度反響した後、座り込んでいた佑子さんは居心地の悪い沈黙の中で静かに
首だけをこちらに向けてきた。そのスローモーションに等しい動きは、襖の奥を見ないで下さいと
念押しされたにも拘らず好奇心に負け「ちょっとだけ」と言い聞かせながらその先に何があるのか
知る由もなくそっと障子に手を掛けた、『鶴の恩返し』のあのおじさんの様をイメージとして彷彿
させた。
 遠くからだからはっきりとはわからないがとりあえず佑子さんと目が合っていることだけは確認
する。続いて俺の存在にようやく気付いたらしい佑子さんが神速の域に達しそうなスピードで立ち
上がる。それに驚きつつ、引き続いて目を凝らす。
 しばらくそのまま”見ている”ことだけの認識で目を合わせ続ける。佑子さんが一体どんな表情
で、そしてどんな胸中で俺のことを見ているのかを考えると不安が心中に一気に広がっていくのが
わかる。佑子さんが無事でいるということは、あの意味不明なメールを佑子さんは何者かに強制的
に送らされたんじゃなくて自発的に送ってきたということだ。だから恐いんだ。少なくとも、今の
佑子さんの挙動を見る度別段不審な点は見受けられない。とてもあんな非常識なものを送りつけて
くるような人には見えない。決して知ったかなんかじゃなく、そんなことはわかっている。問題は
今は落ち着いている佑子さんがメールを送ってきた時どんな状態だったかということだ。あれだけ
のものを常識的な思考を持ち合わせているはずの佑子さんが作ってしまうということは、それだけ
の理由が何か存在するはずなのだ。その”何か”はきっと大きいものだと思う。それを知って俺は
受け止めることができるのあろうか? それだけの覚悟があるのだろうか?
 立ち尽くしたまま考えること数秒、俺は余計な推測を全て打ち切ることにした。そもそもこの場
に来たのは、その『理由』を訊く為に佑子さんと話したかったからだ。もっと言えば、佑子さんが
来てくれと言ってきたからだ。ならば俺の胸の漂うモヤモヤを吹き払う為にすべき手段は、焼け石
に水な推測ではなく、佑子さんに直接質問することだ。確かに、佑子さんに異変が起こったことに
対して相当な理由があるのは事実だ。だがその理由は俺がどう足掻いたってわかることではない。
わからないことにビビっていたってしょうがない。わからないから恐いというのもあるが、そんな
ことに臆していて、何故佑子さんを好きだと言えるのだろうか?
 佑子さんを好きだというなら、彼女の奇行の引き金となった”何か”を排除するのが愛への証明
になるはずだ。その為にはまず知らなければならない。そして知ってからその後は考えればいい。
もしそれを知って尚佑子さんを好きでい続けるなら良し。その”何か”に恐怖し、そこから逃げる
為に愛想を尽かしてしまうというなら、それは俺の佑子さんへの愛情がその程度だったということ
だ。後悔しようが仕方ない。要は、”せずに後悔するより、して後悔しろ”、だ。
 決心を固めると、さっきまで縛られている時のガリバーの気分を存分に味わっていた足が、嘘の
ように軽くなる。今なら行けると波に乗った俺は、急な坂を転びそうなほどの速さで下っていき、
再び平坦な地面に足を降ろしたことを確認して、懸念事項だった佑子さんの表情を伺う為に視線を
上げる。
「こんにちは」
 佑子さんは笑顔で言った。その様子は、”あの時”の佐藤早苗にそっくりだった。
212両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/05/19(土) 21:39:22 ID:RiFlkXMF
 俺が佑子さんを好きだということを今いるこの土手で伝えた時に、佐藤早苗が作為感漂う笑い声
を発した、正にあの時に似通っていた。だって、佑子さんが俺に向けてくる笑顔は”ぎこちなさ”
という点で言えば、あの時の佐藤早苗の笑い声を遥かに凌駕していたから。パズルが一ピースだけ
足りないからといって他のパズルのピースをその空いた空間に埋め込んだ時の不自然さ、というと
わかり辛く聞こえるがそんな感じだ。本当の顔を笑顔で塗り潰していると露骨に感じられる。
 姉の髪型がロングからショートに変わった時に言われるまで気付かなかった鈍感な俺ですから、
手に取るようにわかってしまうその異様さに思わず息を呑みながら、佑子さんとの距離を埋める為
に一歩近付く。
 そしてそれと同時に、佑子さんが俺のより短い歩幅で一歩後ずさりした。
「佑子さん?」
 何かの間違いかと思い訊いてみるが、佑子さんは「はは」とお茶を濁す時専用の作り笑いで俺の
発言を流そうとしてくる。何の冗談かと言いたくなるのを堪え、もう一歩踏み出す。当然のように
佑子さんはまた一歩後ろに下がる。真意の読めないその行動に、俺は寂しくなる。
 今の俺と佑子さんの心の遠隔を表すかのように伸びている十歩ほどの距離が、どうしようもなく
胸に突き刺さる。”俺が佑子さんの全てを知っているという訳ではない”という受け入れ難いほど
重い現実がそこにはあるのだから。だが、そこから逃避してはいけない。その為にさっき佐藤早苗
を傷付けてしまったことを忘れるな。利己的な欲望で他人を傷付けて、その後”自己満足の為の”
自己嫌悪に陥るなんていう負の無限ループを辿るのはもう御免だ。少しは自分が傷付く覚悟で行動
しなければならない。それが”本当の意味での”贖罪に当たるのは明白だからな。
 ――佑子さんの全てを俺は知らないから、これから知っていこう。
 そう言い聞かせ、その為に罠があることがわかっているダンジョンに乗り込むような面持ちで俺
はもう一歩近付く。遅れて佑子さんが一歩下がる。改めてその事実を目で再確認した後、ようやく
俺は初めて傷付くかもしれないことを覚悟した上で訊ねる。
「何で逃げるんですか?」
 ビクリと肩を震わした後、佑子さんはさっきまでの笑顔のまま両手を振る。
「に、逃げてる訳じゃないんですよ。ただ……」
 口篭ったと同時に佑子さんは俯いた。胸が裂けん想いだったが、ここで堪えられなければ今まで
の決意がやはり”自己満足の為の”産物だと認めてしまう。それの方がよっぽど耐えられないね。
強がりだとわかっていても関係ない。俺が佑子さんを好きだという気持ちを否定されることだけは
何があっても避けなければならない。
 佐藤早苗は、「会って二日なのにおかしい」と言っていた。確かにそうなのかもしれない。一目
惚れが大抵途中で冷めてしまうのは一瞬の緊張を恋愛感情だと取り違えてしまうから。それと同じ
で、俺も自分の『痛み』を理解してくれる佑子さんという『存在』の登場に驚いて妄信的にそれに
甘えているのかもしれない。それを恋心と間違えていているだけであって、しばらくしたら今まで
どうして好きだったのか思い出せないほど冷めてしまうのかもしれない。
 だが、『今』俺は佑子さんを好きだということは『確信』を以って宣言できる。なら、『確信』
のない不安定な未来の機嫌伺いをしながら行動するだなんてのはただの杞憂だ。
 俺は一体いつから、こんな出世だけを考えているゴマ擦り会社員のようになってしまったのかと
呆れながら、もう一歩近付く。しかし、今度は佑子さんは動かなかった。代わりに佑子さんは、
「あ……あれ?」
 自分の眼を拭った指に付着している涙を見て心底驚いている素振りを見せてきた。
 俺が”佑子さんが泣いている”と理解したのと同タイミングで佑子さんの口から嗚咽が漏れた。
「え!?」
 その姿に狼狽してしまう。そんな俺をよそに、佑子さんは途切れ途切れに発せられている嗚咽を
押さえようと手で口を覆う。そうするとさっきまで濡れていた瞳から堰を切ったように涙が零れて
くる。それを拭おうとすると震える唇から声が漏れてしまう。
「あっ、あっ、止まっ、てく……どうし、て、あっ……」
 信じられないと主張するかの如く見開かれた瞳をしきりに瞬かせながら、今度は片方の手でそれ
ぞれを押さえる。安定したかに見えたがどんなに押さえても震える体だけは誤魔化せず、佑子さん
は手で口と眼を隠したまま、膝を折り畳んでしまった。
「なっ! 仲川さん、これはち、違うんです! ご、ごめんなさい……!」
213両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/05/19(土) 21:40:20 ID:RiFlkXMF
「どうしたんですか!?」
 やっとの思いで声を搾り出す。佑子さんの異変ぶりを『目』で目の当たりにし、その衝撃に半ば
放心状態だった意識を無理矢理連れ戻したことで、余計に現実を直視してしまう。
 「ごめんなさい」だけをうわ言のように繰り返す佑子さんを見て、あのメールの送り主がやはり
彼女だったということを確認しつつ一歩近付く。佑子さんは動かない。
 距離を詰めながら、今までなら自分の中で思案するだけに終わっていた疑問を素直に訊く。
「佑子さん……何で謝るんですか? 俺、何かしました?」
「ごめんなさい! 嬉しくてつい……。泣いたら鬱陶しいですよね!? す、すぐに止めます!」
 俺の質問も聞こえていない様子の佑子さんは片手で口を押さえるのを既に止めて、消え入りそう
な嗚咽を溢しながら両手で目を擦っている。目隠しされた状態で道を歩く時壁を闇雲に手探りする
ように顔の近くで両手を右往左往させている佑子さんの様子ははっきり言って異状だったが、耐性
が付いたようでもう動揺することはなかった。とにかく今は、下手したらそのまま目を抉りそうな
勢いで愛らしい瞳を弄っている佑子さんをどうにかしなければならない。
 一度決めるとブレーキの壊れた車の如く体は止まることなく真っ直ぐ佑子さんに向かって進む。
さっきまで果てしないほど遠くに見えた”近くて遠い”距離を一瞬で埋めて、俺のことすら眼中に
入っていない佑子さんの両手を掴む。その呆気なさに拍子抜けしつつ佑子さんの瞳を捉える。
「謝らないで下さいっ!」
 相手の目を見て話すという会話の基本を一方的にこなした上ではっきとした口調で告げる。佑子
さんが謝るのには絶対に理由があるのはわかり切っている。二日間佑子さんを見た記憶と、今俺の
前で涙を流し続けている佑子さんの様子がそれを物語っている。だけど俺はその理由を知らない。
理由も知らずに謝罪を繰り返されても戸惑うしかない。だからまずそれを知らなければならない。
たとえ知った後後悔するようなものだったとしても、俺はそれを知る為にここに来たんだ。
 佑子さんの両手を話した後、今日の放課後触れてしまったことを恥ずかしく思ってしまった肩を
躊躇なく強く掴む。その肩は柔らかかった。『女』を感じさせる温かみと弾力が掌に伝わる。それ
は佐藤早苗の細々とした腕の感触にそっくりだった。
 自らの過去の愚行を真摯に受け止めつつ更に言葉を紡ぐ。
「俺には心当たりが全くないけど……何で、どうして佑子さんは謝るんですか? この俺に?」
 肩を僅かにだけ引き寄せながら、佑子さんの耳から直接脳に叩き込むようにじっくりと言った。
 今度こそちゃんと俺の言ったことを理解してくれたようで、まだ涙の雫で濡れている瞳を静かに
向けてきた。その目は何か言いたげな感じで、表情も狐に抓まれたようにポカンとしている。その
様子を見て数秒、俺はその理由の片鱗に少しだけ触れた気がした。
 同時に押さえ込んでいた不安がぶり返してきた。嫌な想像が頭を駆け巡り、佑子さんの肩を未だ
に掴んでいる両手の掌から気持ち悪い汗が噴出すのを感じる。
 視線が交わるだけの沈黙が余計に最悪な想像を刺激し体が固まる。
 息遣いが聞こえてくるほどの距離にある佑子さんの小顔にドキドキしている余裕もないくらいに
俺の心が荒れている中、佑子さんは危うく聞き流しそうなほどの小声で言った。
「だって、”仲川さんが”……」
 その発言を俺はすぐに受け入れることはできなかった。
 瞬時に逃避経路を確保しようとする自分を必死に叱咤した後、改めてその発言の真意を探って、
そして項垂れかける。本当なら今この場で何度も地面に頭を打ち付けたい気分だ。
 佑子さんは確かに言った、”俺の名前”を。ということは佑子さんが俺に謝る理由として、少な
からず”俺が”関係していることは明白だ。

 ――それはつまり、佑子さんの今までの不可解な行動は全て”俺が”原因だということだ。

 佑子さんが、あんなメールを送ったのも笑顔の仮面を貼り付かせていたのも突然泣き出したのも
急に”さん”付けでよそよそしくなったのも――全部俺のせいだったのか。
 いや、薄々は気付いていたさ。佑子さんは俺に謝るのを当然だと思っているが俺にその心当たり
はない。それは佑子さんが”俺に絡むことで”何か勘違いしていることの何より証明じゃないか。
気付かなかった……いや、気付かないフリをしていただけだな。自分のせいで好きな人を泣かして
しまっているだなんてことは誰だって信じたくない。俺は結局また逃げてたのか……。
 でも――。
214両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/05/19(土) 21:41:30 ID:RiFlkXMF
 自省は後回しだ。俺の自己満足に佑子さんを巻き込むなんて事態に発展させる訳にはいかない。
自分を卑下するのは佑子さんの涙を止めて、そしてあのような花の笑顔をもう一度拝んでからだ。
俺は佑子さんの泣き顔を見る為に今までの愚行を反省していたんじゃない。無意識下での逃避に
勝手な自己嫌悪を感じている暇があるなら、すぐにでも佑子さんを宥めるべきだ。
 マイナス思考に急直下しそうだった気持ちに修正を施し、ようやく十数秒間の心ここにあらずな
感覚の浮遊旅から目覚める。明確な意志を以って佑子さんを見ると、一度は収まったかに見えた涙
の波が再び押し寄せていた。顔がびちょびちょに濡らしながら、縋るような声を発してくる。
「だって……仲川”さん”が……」
「俺が何を?」
「メールで……」
「メールで?」
「…………」
 またもや押し黙ってしまった佑子さんの様子に重くなる心を隠して次の言葉を待つ。チラチラと
何度か視線を合わせては逸らしを繰り返す佑子さん。その様子からは露骨に躊躇の意が込められて
いた。
 佑子さんが躊躇うほどの理由――それに身震いしてしまいそうな自分を抑えていると、佑子さん
は徐にスカートのポケットに手を入れた。探すという動作もなく、滑らかにポケットに滑り込んだ
手はそのまま佑子さんのものと思われる携帯電話を取り出していた。装飾の施されていない真っ白
な携帯電話。女の子にしては質素だなと思いつつ眺めていると、佑子さんは微かに震えてはいるが
馴れた手つきで携帯を操作する。画面だけにしっかりと視線を投げ掛けている佑子さんの姿はそれ
はとても微笑ましいもので。こんなことにも一生懸命だなあと少しだけ穏やかな気分になる自分に
僅かばかりの呆れを感じつつ見守ること数秒、手の動きを止めた佑子さんが視線を斜め下に向けた
上で、操作し終えた携帯電話の画面を控え目な動作で見せてきた。

 ――『あんた馴れ馴れしい近付くな』

 それだけ書かれたメールを見て、俺は生唾を飲み込んだ。途端に全身の毛が逆立った気がした。
何だか口からも汗が出てるんじゃないかと思うくらいの不快感が背中を燻っている。
 ――誰が送った?
 こんなふざけたメールを佑子さんに送ったのは誰だ? それを確かめるのは簡単だ。送信者の欄
を見ればいい。だが、俺は躊躇してしまった。恐かったから。
 あの時――佑子さんから来たあのメールの送信者を確認した後に感じた絶望感をまた味わうかも
しれないという恐怖が俺の顔を動けなくさせてしまう。これこそ杞憂だ。確定してすらいない未来
の先を伺うのは無駄だしもう止めようと決意したのに、それでも恐い。きっと俺が視線を”そこ”
へと向けたら、辛い現実が待っている。まず間違いなく。上手く考えられないが、今までの経験が
無意識の内に合体やら何やらを繰り返し弾き出した”絶対的な”結論……。
 それでも――!
 見なければ話は進まないし、俺は現実を見つめなければならない。贖罪の為にも。佑子さんが俺
が原因で悲しんでいるというのであれば、佑子さんから笑顔を取り戻すことが最大の罪滅ぼしだ。
その為にも、俺が自己中心的な身勝手な行動を取ることは許されない。覚悟を決めたじゃないか。
佐藤早苗を傷付けてしまった時に、もう二度と後悔するようなことはしないと。
 今ここで逃げたら、確実に俺は後悔する。過去の弱い自分の呪い殺そうとする。俺はずっと過去
の自分に対して呪詛を唱え続けていたからわかる。もう”間違えては”いけないんだ。
 少しだけ目を閉じて心を落ち着かせた後、俺はゆっくりと首を動かした。そして自身の視線で、
その先の『現実』を見つめる。

 送信者は、俺だった。

 高校生になってようやく買ってもらい、設定の仕方がわからないということで姉に無理を言って
設定してもらった、名前と誕生日という今時誰もしないだろうメールアドレスがしっかりと送信者
の欄に記されていた。
 俺の名前がローマ字で書いてあったからメールの送り主が”俺の携帯から”だってわかったんだ
なと理解しつつ脳が捩れそうな不安定さを覚える。
 だって俺はこんなメールを送った覚えはない。
 ――なのにどうして?
 だが俺はすぐに疑問追求を後回しにすることにした。”俺が”送ったか送ってないかなんてこと
は些細なことだ。問題は佑子さんの立場からのことだ。佑子さんから見れば、俺のメールアドレス
でこんなメールが来たら、俺が送ったとしか思えないだろう。どんなに信頼しているとしても。
 結論――佑子さんは俺が”このメール”を送ったと思い込んでいる。
215両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/05/19(土) 21:42:44 ID:RiFlkXMF
 頭の中で歪に渦巻いていた疑問の数々が居場所を見つけ、それらの全てががっちりと歯車に噛み
合うような感覚を覚えた。そのことに関して、何日も暗い部屋に監禁された後に外の空気を吸った
らこんな爽やかな気分になるんだろうなと思いながら、今までの状況を整理する。
 佑子さんの行動は全て、俺に「近付くな」と言われたと思い違いをしているが故だ。きっとあの
メールを送ってきた時の佑子さんは俺が自分を鬱陶しく思っていると勘違いしていただろうから、
かなり切羽詰っていたんだ。そう考えると、急にあのメールが可愛らしいものに思えてくる。俺に
近付こうとしなかったのだってこれ以上俺を不快にさせたくないからだろう。俺のことを”さん”
付けに変えたのだって、距離を置こうとする為だ。
 そしてそれら行動の全てには、――”俺に嫌われたくない”という想いが滲み出ている。
 普通会って間もないような相手に煙たがられたら、不快になるかその相手のことを嫌いになるか
のどちらかだ。しかし、佑子さんはその逆で、”俺との関係が切れる”のを恐れた。
 それはつまり――。
 今までの自分なら都合良過ぎと笑い飛ばしていたであろう憶測が現実味を帯びて脳裏に過ぎる。
佑子さんを悲しませてしまったことに罪悪感はあるが、それ以上に今は嬉しい。今ならメジャーの
スーパーピッチャーが投げる超剛速球も鼻歌を歌いながら場外まで飛ばせるだろう。
「私……仲川さんの邪魔にならないようにしますから……だから、これからも会って下さい……」
 佑子さんはもう涙を止めることもせずそれを垂れ流し続けている瞳で俺のことを見上げてくる。
その目は、昨日佑子さんが自分の悲恋話を俺に聞いて欲しさそうにしてきた時の目、そのままだ。
自己を抑えながらも溢れかけている”主張したい”という想いが溢れている媚びた瞳。はっきりと
綺麗だと思った。この美しい瞳をずっと見続けていたい。見つめられていたい。
 そして、この瞳の輝きを彩るように添えられている涙――それがもし嬉し涙だったらどうなるの
だろう? させたい。
 佑子さんの幸せな笑顔から一筋流れる涙――想像しただけで抱き締めたくなる。
 そして、それを成し遂げる為にすべきことは簡単なことだ。
 俺はその言葉を言えばいい。
「佑子さん、俺、あたなをウザいだなんて思ったことは一度もありませんよ」
「え?」
 腑抜けた声を漏らしながら目を丸くする佑子さん。
「神に誓って、あのメールは俺が送ったもんじゃありません」
 その言葉に佑子さんは、何とも言えない表情を浮かべた。不安のような期待のような緊張のよう
な呆れのような……色々な感情が混ざっているような、そんな複雑な表情を。
 今度は打って変って佑子さんが思考の旅へと出掛けているその様を楽しむこと数秒、我に返った
佑子さんは改めて俺を見上げ直す。申し訳なさそうに。しかし、期待を込めているのがわかった。
「本当……ですか? 仲川”くん”?」
 俺が言うことは一つ。
「だって、俺は――」
「仲川ッ!!」
 と、俺の一大決心を乗せた言葉は呑みこまざろ得なくなってしまった。大事な時に誰だと不服な
感じを含ませながら振り向く。
「な、仲川……」
 そこに、息を荒げた佐藤早苗が、胸を押さえながら立っていた。
 その表情を見た瞬間、和やかな俺の中の空気は一変し、再び負の感情が胸を蠢いた。さっきまで
佑子さんとのことで舞い上がっていたが、忘れてはならなかった。佐藤早苗の行動、佑子さんから
届いたメール、そして佑子さんに届いていたメール――知りたくもない憶測が、心を蝕んだ。

 佐藤早苗が佑子さんに”あのメール”を送った。

 瞬間的に沸騰石がないと弾けそうな怒りに苛まれる俺をよそに佐藤早苗は佑子さんを見ていた。
 佑子さん”だけ”を、一途に。
「……離れて……」
216両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/05/19(土) 21:44:03 ID:RiFlkXMF
投下終了です。
217名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 21:54:19 ID:8KFC6wJP
>>216
タヨ((´・| キタヨ((´・ω| キチャッタヨー((`・ω・´|
前回からずっと待ってたのでめっちゃ嬉しいです。
それにしても何と言う勘違い・・・察しの悪い仲川に絶望した!!
次回も期待してます。
218名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 22:17:13 ID:PJbilGi5
これは最強すぎるGJ
続きは早めに投下されたら、俺は萌え死にますねw
後、保管庫で抜けている部分を読みたいのだが・・・誰かうpしてw
219名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 22:29:27 ID:1riznWVO
>>216 来たね〜、来たよ修羅場!!GJ!

ただ一ついわせてもらうとちょっとくどい気が(ry

220名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 22:34:38 ID:VwLlpElo
>>216
キターー!!やっぱ面白いなぁ・・

ただ>>219の言うとおり俺も表現がちょっとくどいと思う。無駄に文が長くなってる気がしないでもない。
221名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 23:00:23 ID:66k9PI5F
>216
良い!続きが気になって仕方が無い!
222名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 23:03:03 ID:aSHsOk7A
あぁ、癒される、GJ。

思考の描写が細やかだから感情移入しやすい、好きな文体。
223名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 23:19:55 ID:5LKxbi/h
GJ俺もこの作品好きなんで続きが読めて嬉しい

>>218
http://www.geocities.jp/mirrorhenkan/
コレ使えばDat落ちした過去ログ読めますよ
224名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 00:25:40 ID:QyfNK537
>>222
ううむ、恐ろしいまでに細やかなことは確か。
ちょっとドストエフスキーの罪と罰思い出したくらいに。
225名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 00:31:59 ID:0aiTphEn
佑子さんは俺が持ち帰る・・いいか?
ちなみに黒佑子さんになるとどれだけ萌えさせられるのか
今から楽しみ

嫉妬スレの醍醐味は修羅場や三角関係より
可愛いやきもちを妬いている女の子だと俺は思っている
心が癒されるからな
226名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 00:34:31 ID:s0uwZkIr
SSに長ったらしい一人の思考を書かれてもあんまり面白くない。でもキャラはいいから頑張って書き続けてくれ。
227名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 00:39:26 ID:SjPLFf8e
>>225
残念だが佑子さんは既に俺の隣にいる。
今日も超ラブラブな雰囲気の中ご飯を食べさせてもらった。そんな監禁10日目。
228名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 00:52:33 ID:BUqtHP5j
あぁ、やべ、右手首腐食してるわ。
手錠って食い込むとやばいんだなー。
そんな俺の佐藤早苗による監禁生活1ヶ月目…
じらされるのもげんかいだ、いっそころして
ころしてころしてころしてこr(ry
229名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 01:01:51 ID:sYbfUfPt
妄想乙
230名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 01:06:21 ID:dHsEQHd/
>>216
GJ!久々の投稿お疲れ様です。

しかし、勝手に勘違いして勝手に暴走して突っ走り、
尚且つ自己嫌悪に陥った振りしても肝心なことには目を向けない。
ここまで独りよがりで見ててイライラする最低の主人公は見た事がねえ!!


当然ながら、この嫉妬スレでは誉め言葉だってわかりますよね?
231名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 01:54:43 ID:7oCpF6U8
誉めるつもりで言ってない言葉は誉め言葉にはならないんだよこのボナケス
232名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 04:32:56 ID:xF+n/Dmj
>>231
このスレだと「最低」とか「屑」みたいな言葉は主人公に対する最大級の褒め言葉なんだよ
233名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 09:43:44 ID:7oCpF6U8
>>232
そりゃあ知ってるが、
もし作者さんが「最低」とか「屑」な主人公のつもりで書いてないとしたら、
不用意に「この主人公は最低、屑。これは誉め言葉です」とか言われて楽しいと思うか?
もう少し慎重にそういうネタ的な感想を言えよ
234名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 13:51:46 ID:044luhIN
主人公クズ誉めは初スレからあるよ。
いいキャラクターだって意味でみんな理解してた。
235名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 13:53:38 ID:EjcPB/gF
あぁ、ゆう君は本当にクズだったなぁw
236名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 14:35:04 ID:pR9erYx7
ゆうくんは今でも一番クズな主人公だな
237名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 14:38:49 ID:adZnNGau
>>233
初期の頃からそういうのはあるんだから・・・。
新参がでしゃばらないでね。
238名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 14:45:11 ID:lMpQi6k5
優柔のGJクズコールが昨日の事のように思い出せるw

>>237
新参がどうとか言い出すとまた荒れるから、な
239名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 15:02:25 ID:avVrg93g
>>233
空気嫁。
240名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 16:01:39 ID:KvKZR3Qq
優柔は面白かった・・あのヘタレすぎに乾杯
241名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 16:27:32 ID:WfqUBDpy
職人さん達のSS読んでしまったからか、エロゲとかの所謂修羅場は生温く思えてしまうようになってしまった・・・。
今のところSSスレまとめにある、
・姉妹仁義
・白き牙
・雨の音
・七戦姫
・修羅サンタ
・九十九の想い
を読んだんですけど、住人のオススメは何?
雨の音や七戦姫がお気に入り。
242名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 16:29:01 ID:0BVjz7Is
そういや、ゆうくんてのはすごかったよな。

嫉妬深い彼女にセックスしながら洗脳まがいの事した上に、
先輩が自分の思っていたような人じゃないと分かったら
さっさと見切りをつけて「肉便所」扱い……。

うはwwww何こいつwwwwwスゴイってレベルじゃ(ry
243名無し@ピンキー:2007/05/20(日) 16:32:22 ID:5tUCpEAv
血塗れ竜と食人姫かな

嫉妬の華GJ!
主人公勘違いしすぎw
244名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 16:33:38 ID:lMpQi6k5
>>241
優柔、姉貴と恋人、沃野、不義理、実妹、合鍵。
初期の修羅場スレを支えたこの辺りは最低限読むべし。
ま、あんまりおすすめがどうとかやると荒れぎみになるのでホドホドに。
245名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 16:40:38 ID:b7Fqvxam
>>241
完結してる奴だけ見ればいいよ。みんな面白いし。
完結して無い奴は見ても意味がない。
246名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 17:03:02 ID:MaEMTtTM
完結作品は確かにお薦めだな
あと分岐って書いてるヤツの中には実質完結してたりするのも多いし
チェックしてみるといい

あとブラッドフォースとリボンの剣士は完結間近の長編大作なので
最終回投下に備えて今のうちに読んでおく事をお薦めする
247名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 17:05:59 ID:20AliokA
……ずいぶんと対応が変わったな。

以前なら「全部オススメだ!」と言って、
わざわざ火種を生むような発言はしなかったのに。
248名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 17:12:33 ID:lMpQi6k5
前に比べて数が多すぎるからなぁ。
実際全部一からよんだら一苦労なのでは。

や、できるなら全部読んでほしいですが。
249名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 17:18:39 ID:J9pIK2sb
完結子だけを見る>>241に嫉妬した、未完子による血塗られた修羅場を作るための住人のたゆまぬ努力と暗躍
250名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 17:23:00 ID:MaEMTtTM
確かに全部お薦め、全部読むべしと言いたいところだが
あえて読む順番をつけるなら
完結作品、現在連載中の作品、半完結作品(分岐のうちいくつかは完結)
を優先して読んでみては?

明らかに途中放棄の作品まで薦めるのは酷な気もするので

あとどういう方向性が好きか尋いてくれればそれに答える事は出来る
まぁジャンル別インデックスもあるが
それで括れない分類もあるし
251名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 17:25:05 ID:MaEMTtTM
スマソ
何故かクッキーからsageが消えてたorz
252名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 19:09:20 ID:WaGYLI8T
ノントロはいいところで寸止めされてるから発狂するかもww
253名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 19:18:59 ID:VQxdl4YX
誰かまとめにあるSSをサウンドノベル化して欲しいわけだが・・
演出次第ではホラーサウンドノベルになる予感・・
まあ、実際にSS全てをサウンドノベル化するとその辺のエロゲーより容量があったりしてw
1MBを超えるだけでも充分に遊べるw
254名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 19:29:10 ID:7D3yopXA
自分で作ちゃいなYO
255名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 19:34:51 ID:SFnTz9ks
>>253

おまえ つくる よろし
256名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 21:53:30 ID:WfqUBDpy
ご丁寧なお返事、ありがとうございました。

完結した作品から読んでいたわけではなく、前スレや前々スレで挙がっていた作品と、まとめの上から順番に読んでました。
とりあえず、オススメしていただいたものから順番に読んでいこうと思います。ありがとうございました。
257名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 21:56:20 ID:yxu5SrTH
なんでまとめは更新されないの?
前々スレくらいになんかあったからなんだろうけど流れ知らんから誰か教えてくれ 
258名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 21:57:44 ID:7D3yopXA
>>257
阿修羅氏が多忙の為だよ
259名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:01:33 ID:lMpQi6k5
阿修羅氏も新婚で子供も生まれたし忙しいんだろうさ。
結婚前(及び嫁入院中)の更新速度は異常だったけどw

ま、無理しないでマイペースにやってくれればいいさ。
260名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:05:13 ID:yxu5SrTH
>>258
そうなんだ。なんかで阿修羅氏が怒ってまとめるのを放棄したのかも・・・と思ってたよ、良かった
261名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:09:11 ID:4x4BzSAb
>>260
脳内嫁だから>>258は本気に受け止めるなよw
まぁ忙しいと考えるのが普通
262名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:09:59 ID:7D3yopXA
ん?
263名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:10:14 ID:044luhIN
そうそう、「まさか嫉妬にかられた嫁に●されたんじゃ……」と心配になってきたころに更新してくれる。
264名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:16:37 ID:tdxmWTmP
>>261
ん・・・?素?
265名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:30:22 ID:b7Fqvxam
いや普通に阿修羅氏が折角作った掲示板を利用してないからでしょ。
空気読める作家さんはあっちで投稿してるけど、大多数はこっちだしな。
つーか折角労力使って作った奴を誰も利用しないなんて阿修羅氏に恥かかせまくってる。
聖人君主じゃあるまいし人間なんだから妬み僻み嫉妬なんてあるもんだ
大人の対応しろよお前らまじで
266名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:39:27 ID:SFnTz9ks
またお前らか……。

阿修羅氏まで貶めて楽しいのか?
267名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:41:50 ID:b7Fqvxam
だよな。まじ最悪だよ
268名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:42:02 ID:lMpQi6k5
空気読めるもなにもあそこはモトより避難所だからなぁ……。
阿修羅氏だってこっちがあんまりにも荒れてたから作ったんだし。

前にも更新が一月半位間が空いた事も別にあったんだから騒ぐ程のことでもなかろ。
阿修羅氏だってサイト更新が本職って訳じゃないんだし、のんびりやってくれりゃいいさ。
269名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:49:22 ID:lZc4LGp7
まーたいつもの人か…
270名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:49:55 ID:AveShTwY
とりあえずお前ら包丁をその身に受けつつ正座して待機汁
271名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:49:57 ID:NtPrSrEQ
ID:4x4BzSAb
ID:b7Fqvxam
・・・
272名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 22:56:19 ID:tdxmWTmP
放置推奨だな
273名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 23:22:30 ID:7oCpF6U8
すまん、これだけ言わせてくれ。

聖人君主(笑)
274名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 23:25:15 ID:mwYVPpdX
赤紙はオススメだけど読まない方がいい
空気嫁なくてすまんね
275名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 23:31:45 ID:dxPmN/FU
共産党?
276名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 00:15:51 ID:fQM31EeQ
16スレの梅ネタで書いたやつの続きを書きました
ちなみに前回の話はこれです
     ↓
http://dorobouneko.web.fc2.com/SS/umeneta.html#24

では投下します
277 ◆tVzTTTyvm. :2007/05/21(月) 00:18:10 ID:fQM31EeQ
 そして翌日。
「お邪魔しまーす」
「よく来てくれた。 そんな緊張しなくていいから。 遠慮せず上がってくれ」
 ここは熱矢先輩の家。
 先日の私が出した提案で今日は先輩の家で一緒にプラモデルを作ることになってたのだ。

「早速作り始めますか?」
 私は手にした紙袋に視線を注ぐ熱矢先輩の顔を見ながら言った。
「え? いや、まぁ……」
 私の言葉に先輩は照れ臭そうな笑顔をしながら頭をかいた。
 本当に心の底からプラモデルが好きなのが感じられる純粋な笑顔。
 女の子を家に上げることよりプラモデルの事で一杯、そんな笑顔。
 私が大好きで、でも反面チョット寂しい気持ちにさせる笑顔。
 だってとりもなおさず私を女と意識していない証拠なのだから……。
 でもそれで良い。 今日の事は最初から其の事を折込済みなのだから。
「ま、確かに本音を言えば直ぐにでも組始めたいけどいきなりってのもな。
とりあえず茶煎れてくるから。 それで人心地ついてくれ。
それから始めようか」

 それから数十分後。 私と熱矢先輩はプラモデル作りに熱中してた。
 年頃の男女が部屋で二人っきりだってのに全くと言っていいほど色気の無い展開。
 でもいいの。
 だってプラモデルを組み立ててる時の真剣な眼差しの先輩の貌を間近で見られるんだから。
 こんな真剣な貌、あの女も見たことが無いような貌を。
 そして私は其の事にささやかながらも優越感に浸っていた。

 それから――。
「今日は本当にありがとうな」
 日も大分傾きかえた頃私は熱矢先輩に送られ帰路に付いていた。
 あれからプラモデルを完成し終えた後も、ドコを改造したほうがいい、とか
どんな色で塗ったら似合うか、とか完成したプラモデルを手に日が暮れるまで語りあった。
 そして今、もう暗いからとわざわざこうして送ってくれたのだ。

 家に帰りつき自室に戻った私は今日一緒に組み上げたプラモデルを取り出す。
 手にとって眺めると今日の楽しかった記憶が鮮明に蘇ってくる。
 本当に楽しかった。 大好きなヒトと共通の趣味で共通の時間を満喫できて――。
 これで先輩と私が恋人同士だったらもっと楽しいだろうに。
 そこまで考えると少し寂しい気持になる。
 ……そんなの虚しい願望でしかない、と。

 やめよう、分かってる事じゃない。叶わない願望だって。
 先輩がどれだけあの女のことを想ってるか。
 私と熱矢先輩との間柄は単なる同好の士でしかないが、でもそれなりに付き合いは深いんだ。
 だから、先輩があの女と別れて私を選ぶなんて無い事を分かっているから……。
278 ◆tVzTTTyvm. :2007/05/21(月) 00:19:29 ID:fQM31EeQ


  /      /      /      /


「ねぇアッくん。 昨日一人で帰って何してたの?」
 アタシ――小山 素豆子は、アッくん――幼馴染にして恋人の市沢 熱矢に問い掛けた。
 アタシとアッくんとは小学校の頃からの縁で高校に入ってからは男女の交際にまで到った仲。
 でもアタシが部活をしてるのに対しアッくんは帰宅部なので放課後は別々の事も多い。
 だからいつもって訳じゃないけど今日は何故か昨日の事が気になって聞いてみた。
「昨日? ああ、稲峰がうちに遊びにきてたんだ」
 そして返ってきた答えに声にアタシは思わず声を上げる。
「う、うちに……って、アッくん! アタシと言うものがありながら他の女を家に上げるなんて
どういうつもり?!」
「おいおい、何勘繰ってるんだよスズ。 一緒にプラモデル作っただけで何にも無ぇって」
 当たり前だ。 アッくんがあんなシンナー臭いプラモ女になびくわけが無い。
 趣味が同じだからと言うだけでアッくんに付き纏う鬱陶しい後輩。
 こんな風にあっさり話す時点で十分其の事はうかがえる。
 でも――
「プラモデル一緒に作ってたぁ?! 何でそんな事一緒にする必要があるのよ?!」
 恋人が自分以外の女と一緒にいるのを黙って見過ごせるほどアタシは人間出来てはいない。
 ――否。 恋人が他の女と一緒にいて気にならない女などいようか。

「いや、だって俺のじゃなくてあいつのプラモで……」
「何?! プラモに釣られて上げたって言うの?! だったらプラモなんか止めなさいよ!
昔っから言ってるじゃない! いい年してプラモなんかやってないで卒業しなさいって!」
 アタシはアッくんの言葉を遮り叫んだ。
「そう言うなよ。 俺の数少ない趣味なんだから」
 そんな事幼い頃からの付き合いなんだからイヤって程知ってる。

「アッくん! アタシ達来年受験生なんだよ?! プラモなんかに構っていて
アタシと同じ大学いけると思ってるの?!」
「未だ来年の話だろ? 少しは控えるから何も完全に止めなくても……」
「そんなに止めたくないわけ?! だったらイイわよ。 好きなだけ続けなさいよ。
その代わりアタシとアッくんはコレっきりね」
「な?! ちょ、チョット待ってくれよスズ。 そんな……別かれるなんて」
 こうは言ったがアッくんと別かれる気なんて毛頭無い。
「だったら言うとおりプラモデルなんかやめなさい」
「わ、分かったよ……」
 そう。 アタシがアッくんと別かれる気が無いように、
アッくんがアタシと別かれるなんてありえないから。

「本当に分かってるの? じゃぁキッパリ止めたって証明する為
今までのプラモデルも全部捨てて」
「そ、そんな……」
「出来ないの?」
 ちょっと可哀相な気がしないでもないが良い機会だ。
「わ、分かったよ……」
「本当に? じゃぁ今度確認しにあんたの家行くからね。 本当に捨てたかどうか!
分かった?!」
 長年の付き合いだけどアッくんのこの趣味だけはどうしても許容できなかったから。
 アッくんは気付いていないみたいだけど、プラモなんかやってるのせいで
アッくんをオタク呼ばわりしてバカにしてるやからは多い。
 自分の恋人がそんな風に呼ばれてるのなんてはっきり言って気分悪い。
 だからこの機会にきっぱり止めさせ足を洗わせよう。
 そうだ、それでこの機会にアタシの部に入部してもらおう。
 プラモなんかに時間廻すよりアタシと部活で同じ時間を過ごした方がアッくんにとっても
其の方が良いに決まってるんだから。
279 ◆tVzTTTyvm. :2007/05/21(月) 00:23:28 ID:fQM31EeQ


  /      /      /      /


「おーい、稲峰」
「あ、こんにちは先輩」
「今日の放課後って時間空いてるか?」
「えぇ、OKですけど」
 部活もやってないし塾にも通っていない私は当然放課後は空いてるのでOKした。
「そうか、じゃァチョット付き合ってくれるか? 大事な話があるんだ」
「はい、分かりました。 じゃァ放課後に」
 何だろう熱矢先輩、大事な話って……ま、まさか私と付き合ってくれるとか……!
 今までだって結構仲良かったし、この間なんか家に上げてもらって一緒にプラモデル――
って、そんな訳無いか……。
 私はそう思い溜息をついた。
 虚しい願望だと分かっていてもつい妄想してしまう。
 正味の話多分プラモデルがらみの話だろう。 それが私と熱矢先輩との繋ぐ仲なんだから。
 まぁいいか。 いつもの事だし。 それに確かに私が恋人になれなくても、でもその代わり
きっと恋人のあの女も見たこと無いような熱矢先輩のあんな貌を見れるんだから。
 ――とっても楽しそうで真剣で真っ直ぐな表情を。

 そして放課後。 私は熱矢先輩に連れられ某ファーストフード店にきてた。
「悪いな時間とらせて」
「いえ、お気になさらないで下さい。 ところでお話って何ですか?」
「あぁ、実はプラモデル続けられなくなっちまって……」
 其の言葉に私は愕然とした。
「そ、そんな……どうし……」
 だって熱矢先輩がどれだけプラモデルを好きか知ってる私には到底理解できなかった。
 そして、何よりそうなると私と熱矢先輩との縁が、繋がりが消えてしまうから。

「スズに……彼女にな、止めろって言われて……」
「そ、そんな……。 か、彼女に言われたぐらいで止めちゃうんですか?!」
「アイツ今までも俺がプラモデル続ける事にいい顔してなかったし、それに今回は
止めなきゃ交際もコレまでだとまで言われちまったから」
 だったらそんな分からず屋な彼女となんか別かれちゃえばいいじゃないですか!
 そう言いたかった。 でも言えなかった。
 そんな事出来ないのは先輩の顔を見れば十分察する事が出来たから。
 悔しかった。 先輩にこんな辛い決断を、貌をさせるあの女が。 そして妬ましかった。
 あの女がこんな強引な決断をさせられるほどに熱矢先輩の心を掴んでる事が。
280 ◆tVzTTTyvm. :2007/05/21(月) 00:24:50 ID:fQM31EeQ
「それで……止めたのを証明する為今まで作った分も捨てろって言われちまって……」
「な……?!」
 其の言葉に私は血液が逆流して頭の血管がブチ切れるかと思えるほどの怒りを覚えた。
 今まで何度も熱矢先輩の作ったプラモデルを見せてもらった事がある。
 どれも心を尽くして作りこまれ、熱矢先輩にとってはかけがえの無い宝物なのが伺えた品々。
 それを、捨てろだなんて……。
「稲峰……? な、泣いているのか?」
 気付けば私の両目からはぽろぽろ涙が零れ始めていた。
「だ、だって……知ってるから……。 先輩が今まで作ったプラモデルを
どれだけ大事にしてるか知ってますから……」
 そして涙が伝う私の頬にそっと柔らかいものが触れた。熱矢先輩がハンカチを当ててくれたのだ。

「ありがとうな、稲峰。 そんなお前にだから頼みたい事があるんだ。
今まで作ったヤツ、貰ってくれないか?」
「え……?」
「やっぱ、どれも思い入れがあるから捨てるのは忍びなくって。ネットで売ろうかもとも思ったけど
でも所詮素人作品だし。
それにどこの誰とも分からない相手に渡すよりは気心の知れたヤツに貰って欲しいし……。
あ、イヤなら断わってもいいんだぞ。 それに数も結構あるから全部じゃなくても……」
「い、いえ! 全部引き取らせて頂きます」
 私がそう言うと熱矢先輩はほっとしたように笑って「ありがとう」と言ってくれた。

 コレで熱矢先輩との縁も繋がりも消えてしまうのだろう。
 其の事は物凄く悲しいし辛いけれど、でも最後に熱矢先輩の力になれた。
 そして譲り受けたプラモデルを想い出に胸に刻んでいこう。


 数日後――日曜日。 熱矢先輩はダンボール箱を抱えて私の家の前にきてくれた。
 中には先輩が今まで作った数々のプラモデル。どれも丁寧に箱に詰められ間に緩衝材も詰められ、
其の事からも品々に込められた熱矢先輩の思いが伝わってくる。
「すまないな稲峰。 何だか沢山押し付けちまって」
「いえ、そんな事無いです。 先輩が大事にしてきた品々大切にしますね」
 そして受け取る。
「大丈夫か? 重くないか?」
「ありがとうございます。 大丈夫です」
 確かに思ったよりあるみたいだけど、でもそれは単純な目方とかじゃなくて、
きっと熱矢先輩の思いも詰まってるから。
 本当にコレで終わってしまうんだ。 だったら、言ってしまおうか。
 今まで胸に秘めてきた熱矢先輩への想い。
 同好の士としてだけじゃなく、先輩後輩の間柄だけじゃなく、異性として好きだと言う事を。

 ……いや、止めておこう。
 折角このまま綺麗な想い出のまま終われるのだから余計なこと言っちゃ駄目だ。
281 ◆tVzTTTyvm. :2007/05/21(月) 00:26:26 ID:fQM31EeQ


  /      /      /      /


「アッくん! 何やってるのよこんな所で」
 日曜日買い物に出かけていたアタシはある家の前でアッくんが例の鬱陶しい後輩に
何か渡してるところを見つけて声をかけた。
 あたしの声に気付いた後輩の女は途端に気まずそうな顔をする。
「よう、スズ。 今まで作ったプラモデルを稲峰に引き取ってもらう事にしたんだ」
「ハァ?! 何それ。 アタシは捨てろって言わなかった?!」
「いや、そうだけど手放す事には変わりないからいいだろ?」
「駄目よ!!」
 手放す事には変わりない? 冗談じゃない。
 アッくんが今まで持ってたものをよりによってこの女になんて!
「駄目よ! そんな未練がましいやり方。 捨てるの以外認めないわ!」
「で、でも……」
「コレだけ言っても分からないの?! だったら……」
「お、おいスズ。 い、一体何す……」
 アタシはダンボール箱に手を突っ込み無造作に一体のプラモをつかみ出すと地面に叩きつけた。
「な、何するんだよ?!」
「何度も同じ事言わせないで! 捨てろって言ったのに聞かないアッくんが悪いんでしょ?!
何よ其の顔。 じゃぁアタシと別れる?! 言ったわよね?!
どうしてもプラモ続けたいんならアタシとアッくんとはこれっきり、だって」
 返事は無い。 アッくんは俯き叩きつけられ壊れたプラモを見つめていた。
「ふん、暫らくそうして頭冷やしてなさい。 それでちゃんと全部捨てなさいよ。 分かった?!」
 私は踵を返しその場を立ち去った。


 久しぶりにアッくんと喧嘩しちゃったな。 まぁ良っか。
 どうせ直ぐアッくんの方から謝りに来るだろう。
 幼い頃からの付き合いだ。 時に何度も喧嘩だってしてきた。
 でも其の度あとでアッくんの方から謝りにきて、それをアタシが許して仲直りして、
そうやってアタシ達は幼馴染として、そして恋人同士として付き合ってきたんだ。
 そしてアタシは家に帰りつくと携帯が鳴るのを待った。

 しかし幾ら待っても携帯は鳴らなかった。
 おかしい。 どう言う事よ?
 いつもだったら直ぐにでもアッくんは電話掛けてきてゴメンナサイって必死で謝ってくるのに。
 おかげで気になって何も手がつかないじゃない!
 ああ、イライラする! 早く掛けてきなさいよ!
 謝罪なんてのは時間が立てばたつほど効果は薄れるんだから!

 そしてアッくんの電話を待ち続けながら寝るのが遅くなってしまったアタシは寝不足で朝を迎えた。

To be continued...
282 ◆tVzTTTyvm. :2007/05/21(月) 00:31:02 ID:fQM31EeQ
白き牙の筆が思うように進まないので気分転換も兼ねて書いてみました
次は何時になるか分かりませんが
では
283名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 02:14:10 ID:iG0piXl6
>>282新しい修羅場に乙&GJ!
284名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 03:28:58 ID:C+vyOJh8
後輩がんばれ
285名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 04:45:40 ID:KgRTFUF8
後輩いい子だなー…
286名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 06:51:25 ID:nW9umi11
287名無し@ピンキー:2007/05/21(月) 09:55:34 ID:iWGEN4E/
後輩応援GJ!
288名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 14:37:47 ID:+69zA4tp
>>281
GJ


アニメでは大きくsolaに期待してる
289名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 21:18:26 ID:Kwyns2sM
solaは姉さんかわいいけど凄い展開だよね。話に引き込まれる
290名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 22:04:07 ID:FNKevaYJ
キモスレが絶好調になってるな。
291名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 23:13:53 ID:UEBjAzcX
むこうじゃあ投下じゃなくてもコテ使ってるからこのスレとは雰囲気違うね
292名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 23:46:22 ID:bp4aCCve
>>290

このスレで他スレの話題を出すな。
また流れてきたじゃないか。
293名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 23:50:57 ID:VTwyoF4e
半年振りくらいにきたんだけど
浮気して妻に殺されてタイムスリップするやつの題ってなんだったっけ?
まとめサイトで見ようと思ったけど全然思い出せない
294名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 23:59:20 ID:HBtcg0S3
>>293
未完で全く更新されてない
後は自分でまとめサイトで確実に違う作品をのぞいて探してくれ

>>292
そっちの荒らしの話題をここで出されても困る

295 ◆Xj/0bp81B. :2007/05/22(火) 01:10:49 ID:EXp+aWdS
投下します
296すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/22(火) 01:12:34 ID:EXp+aWdS
平日昼間の電車はすいている。車内はガランとしていて、椅子に座る人さえまばらだ。座る事も出来たが、翔はあえて座らず、閉じら
れたドアに体を預け、車窓の外を流れていく景色をぼんやりと眺めていた。
灰色の街が、なす術なく流れていく。目的地まで、あと十分ほど。二つ駅を通過する。
そこまでの間、少しだけ感傷に浸っていよう。そう思いつつ、見上げた青空は、白い飛行機雲で二つに別れていた。

確か、最後はプラモデルだった。
ふとそんな事を思い出す。まだ物心ついたばかりの頃だから、幼稚園の年長くらいだった。あの時は、妙に母親が優しくて、ずっと欲
しかったプラモデルは高くて買ってもらえなくて、代わりに少し値段の落ちるプラモデルを買ってもらった。デパートのレストランで
お子様ランチを食べて、母親と手を繋いで屋上に行って、ヒーローショーを見た。ヒーローが蛸みたいな怪人に追い詰められて、手に
汗握って声を枯らした事をよく覚えている。
ショーも終わり帰り道。危機から見事に脱出し、怪人を薙ぎ倒したヒーローの姿が瞼に焼き付いて興奮覚めやらぬ翔が、夕焼けに向か
ってうきうき歩いていると、手を繋ぐ母親が確かに言ったんだ。
「今度デパートに行く時は、何でも欲しいものを買ってあげる」って。その時は、馬鹿みたいにはしゃいで喜んだ。
結局、その約束は守られていない。
三日後、綺麗に着飾って出ていった姿を最後に、母親を見ていない。何処にいるかも分からなかった。五日後、警察の人にその名前を
知らされるまでは。
母は、翔と夫を捨てて男と共に逃げた。そして、その男と共にこの世から消えた。
母親はもう帰ってこない。ようやくその事が理解出来たのは、翔が小学三年生の時であった。
その時から、翔は言葉を信じていない。言葉は、人を簡単に裏切るのだ。

車内アナウンス。くぐもった声が、スピーカーを通じて車内に降り注ぐ。窓の外には相変わらずの灰色の街。しかしいつの間にか、目
的地は目前にまで迫っていた。
297名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:13:01 ID:CkMO6S8h
保守
298すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/22(火) 01:15:22 ID:EXp+aWdS
肘まで落ちた鞄を肩にかけなおす。ポケットの中の財布を取り出す。
電車が速度を落として、ホームに滑り込む。停車しドアが開くと、素早く電車から降り、改札を抜けて、小さな繁華街に入る。寂れた
地方都市に、行き交う人の数は少ない。碁盤目の住宅街をずんずん進む。空き家と空き地の目立つそこは、少しだけ寂しい。
やがて、澄香の家の前まで辿りつき、翔は歩を止めた。彼女の家は、辺りのひっそりとした雰囲気を吸い込み、まるで辺りに溶けるよ
うに紛れ込んでいた。雨戸が閉じられ、電気もついていなく、人の気配さえ感じられない。以前、確かに感じた生活の匂いは、消え去
っていた。
それが不気味で、翔は慌ててインターフォンを鳴らす。ひっそりと静まり返った水樹家の中に、機械的な音が響いた。
その音が消えた後、沈黙。声はもちろん、物音さえ聞こえない。もう一度、インターフォンを押してみても、やはり沈黙しか返ってこ
なかった。不安が、胸の中でどんどん膨れ上がっていく。
「おいっ!! 澄香いるんだろ?」
ドアを乱暴に叩きつつ、声を張り上げる。しかし、返事はない。
まさか、ここではないのだろうか。そんな疑惑がジワジワとにじみよる。考えてみれば、澄香がここにいる保証はない。あったのは、
直感だけだ。
焦りが募る。
焦藻が、少しだけ翔の理性を奪う。
ノブをつかみ、ガチャガチャと強引に回す。すると、存外あっさりとドアは開いた。翔は肩透かしを食った気分だった。
軋みながら開く漆黒の扉。その内部が抱えこんだ深淵に、帯状の光が広がっていく。
ゆっくりと広がる光の中。上がり端で膝を抱いて蹲る澄香の姿が写し出された。膝を抱いた両腕に、顔を押し付けるその姿は、母の中
に宿る胎児を思わせる。しかし、胎児ほど温かさや優しさに内包されているわけではない。むしろ、まるで絶望の海をさ迷うかのよう
に、彼女は細かく震えていた。
「すみ、か……?」
戸惑いがちな声が出た。石のように固く重いその声は、すぐに闇の中に消えていき、後には静寂が残る。返事はなかった。
299すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/22(火) 01:20:06 ID:EXp+aWdS
不安がはね上がる。
「澄香っ」
今度は、はっきりとした声が出た。慌てて澄香に駆け寄り、彼女のすぐ側に腰を屈める。相手の息遣いさえ聞こえてきそうな距離、そ
れでも、澄香は翔に気付かない。まるで光を失ったように、音を失ったように、彼女はただ震えている。
ふと、静寂を震わす小さな声に気付く。小さく早口なその音は、うずもれた澄香から漏れている。耳をすまし、その音を拾おうとする
。しかし、その音が声となるにはあまりに小さ過ぎて、はっきりと聞き取る事ができなかった。
その音が止む事はなかった。まるで呪文を唱えるように、まるで悪魔に魂を持っていかれてしまったように、まるで狂った時計のよう
に、澄香はその音を放ち続けている。
不安が、爆発した。
「おい、澄香っ!どうした? 大丈夫か?」
澄香の両肩を掴み、大きな声をかける。すると、彼女は体を大きく震わせ、身を固くした。それからいかにも恐る恐るといった様子で
、ゆっくりと顔をあげた。
翔は思わず息を飲む。その顔は、翔の知っている澄香ではなかった。
疲弊しきった頬は痩けている。もう目を開ける事さえ出来なくなったように、彼女の瞼は半開きで、その奥に隠された瞳が、死んだ魚
のように澱んだ光を放っている。まるで冬山の死人のように青くなった顔色は、彼女をより凄惨に彩っていた。やがてその凍えたよう
に青紫色に変色した唇が、ゆっくりと動き出す。
「せん、ぱい……?」
集点の合わない瞳が、翔を見つめる。澱んだ瞳が、鏡のように翔を写し出している。その狂った瞳は、人間のそれとは思えなかった。
背中に冷たい何かが走り、翔は声を失う。狂った光を放つ彼女は、自分の声を確認するように再び唇を動かした。
「せん、ぱい」
そして、それが、契機だった。まるで春になり、蕾が開くように彼女の瞳が急速に色味を帯ていき、やがて笑顔の花がさく。瞳に光が
宿り、キラキラとガラスのように輝く涙が蓄積されていく。
300うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
301うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
302すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/22(火) 01:22:43 ID:EXp+aWdS
羽化する蛹を見ている気分だった。その、生が躍動を開始するような澄香の変化に見とれていると、いきなり彼女の全身が、翔の体に
絡み付いた。両腕が背中に回され、彼女の顔が胸に押し付けられる。その勢いに飲み込まれ、翔は後ろに手を着き、尻餅をついた。

澄香のしゃくりあげるような息遣いが、胸を擽る。
「う、嬉しいです」
しゃくりあげる息遣いに声を乗せて、澄香が懸命に言葉を紡ぎはじめた。
「来て、くれないかと、思って、ずっと、ずっと、怖くて、だけど、センパイが、私を、選んでくれて、本当に、本当に、嬉しい。あ
あ、せんぱい、すき、だいすきです」
澄香の絡み付く腕にいっそうの力がこもり、彼女の顔が強く胸に押し付けられる。その予想外の歓迎と変貌に翔は呆気に取られて、胸
の中の少女を、呆然と眺めていた。
その後、澄香は胸の中でこしょこしょと擽るように動き回り、ようやく恥ずかしそうに顔をあげた時には、涙と鼻水と唾液でベトベト
で、もちろん翔のワイシャツも涙と鼻水と唾液でベトベトだった。そのベトベトを拭いもせず、澄香はえへへと照れたように笑う。
そこでようやく、翔は我に帰った。そして、メールでたすけを求めてきた少女の姿をマジマジと観察する。
見たところ、澄香は元気そうである。顔色は悪いが病気のようではない、怪我をしている様子もない。つまり、そこには大学進学絶望
の事実だけが残ったわけだが、それでも怒ったり、説教する気は沸いてこなかった。彼女のあまりの変身ぶりに、翔の毒気はすっかり
抜けてしまっていた。
翔は溜め息を付きつつ立ち上がり、
「少し、話をしようか」
怒ったり説教する気はないが、聞きたい事は山ほどあるのだ。
そのとき、ふとシャツの裾が引っ張られた。
「ん? どうした?」
「センパイに、聞きたい事があるんです」
未だ立ち上がろうとしない澄香に視線を落とす。うつ向いた顔に髪がかかり、表情は見えなかった。
「なに」
一寸後、ためらいがちな声が来る。
「センパイは、私の事、好きですか?」
「え?」
303うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
304うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
305すみか ◆2qYLTTqjZU :2007/05/22(火) 01:25:43 ID:o+4xHxLY
「すごい嫌いだよ」
「グェェェェェエェェーーーーーッッ」
306名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:27:20 ID:nXadvtAZ
307名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:28:28 ID:2J7rs7Eh
すみかは相変わらず面白いNE
308すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/22(火) 01:28:38 ID:EXp+aWdS
「嫌い、なんですか?」
いや、そうじゃないけど。と翔は言葉を濁す。二択で考えられる質問ではなかった。しかし、澄香は違ったようで、
「じゃあ、好きなんでですね」
嫌いでなければ好き。彼女は心底安心したように一つ息をつき、顔をあげニッコリと笑った。それから、急に体をくねらせて、言いに
くそうに、
「それで、あの、センパイにお願いがあるんです」
「お願い?」
「はい、そうです」と、澄香は頬をほんのりと染めつつ、上目遣いで、「私の事、好きって言って下さい」
期待と不安が入り混じった瞳で見つめられ、思わず翔は眉根を潜める。それはどこかで見た事のある顔だった。
「ダメ、ですか?」
澄香が悲しそうな顔をする。駄目だ。そう言いたい。自分の気持ちを言葉で偽るのは、翔の主義に反する。しかし、澄香の悲しそうな
顔を見せられると、その要求を無下に却下する気にはなれなかった。
しばらくして翔は溜め息をつきつつ、「──分かった」と言い、苦笑いを浮かべつつ、「言うよ」
「ほ、本当ですか!? えへへ、嬉しいです」
まるで念願の玩具を手に入れた幼児のように、瞳を爛々と輝かせる澄香。それは嘘ではなく、心の底から喜んでいるように見えた。そ
の表情が、これから嘘を吐く翔の心に、罪悪感を降り積もらせる。
これから言う事は嘘である。翔はまだ、好きと言えるほどの気持ちを抱いていない。しかしそうと分かっていても、面と向かって告白
するのは恥ずかしくて、照れ隠しに澄香から視線を反らし、「好き」と言った。
視界の隅に写った澄香は、とろけたように幸せそうな顔をしていた。彼女は、翔の本当の気持ちを知らない。その事を思うと、降り積
もった罪悪感に、潰されそうになる。
やはり、言葉は感情を裏切った。だったら、いっそ本当の嘘つきになりたかった。そうすれば、もっと楽だったのかもしれない。


この時が、境目だった。何かが水面下で狂い始めていた。
狂った歯車は戻らない。歯車が精密であればあるほど、たった一個の狂いが、全てを狂わせてしまう。それでも狂った歯車は回り続け
る。全てが壊れてしまうまで。
309名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:31:10 ID:H4AhplCM
>>>307
そうだね、面白いね
310 ◆Xj/0bp81B. :2007/05/22(火) 01:31:21 ID:EXp+aWdS
以上投下完了です。
これで第二章完で、次が第三章。
第一章から二章にかけて、翔にベタボレになった誰かさんが、暴走していきます。
311うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
312名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:33:10 ID:E59VL0HU
>>311
GJ
313名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:33:45 ID:EbaKJvQx
>>310
GJGJ
壊れる瞬間をwktkしながら待ってますw
314名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:34:02 ID:eEFrVfz1
>>310
つまらないですNE
315名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:34:46 ID:Yq6vzUON
>>314
いや、つまらなくはないよ
316名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:36:00 ID:YMRhrzyB
>>312
作者自演乙

317名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:37:15 ID:Bh2Z6yAv
>>310
GJ。
318名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:41:02 ID:hRmgdyjc
>>317
信者自演乙
319名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:41:12 ID:EXp+aWdS
>>308
訂正。
×二択で考えられる
〇二択で答えられる
320名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:42:21 ID:rSF52DPM
>>314
>>316
>>318
ハイハイ、ワロスワロス
321名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:55:11 ID:XEJJJCTs
>>320
しっ、見ちゃ駄目ですよ
322名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 01:58:19 ID:5xnGE6TF
>>310
めっちゃGJです!!
とうとう翔は「好き」と言ってしまいましたね・・・
これからの修羅場を想像するだけでガクブルです。
速いペースでの投下はしんどいと思いますが、頑張ってください。
323名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 02:01:39 ID:YndKef/+
>>320=>>321
自演はやめとけ
324名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 02:02:55 ID:4GHxfzrz
>>322
信者自演ウゼー

325名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 02:05:18 ID:91UpS3jM
>>310
GJ、これから相手の更なる反撃に期待してるよ
326名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 02:09:35 ID:4vf7+LKA
単発IDのGJが多くてワロタwww
こういう自演はお前等認めるんだねw
327名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 02:15:24 ID:xGTDxdcz
>>310
GJ
中野にはこのまま引き下がって欲しくないなあ
328名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 10:05:32 ID:hxEZw5aA
く、くまー?
329名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 11:21:22 ID:AAN8n9eX
嫉妬スレも大分落ち着いてきたな・・いろんな意味で
新規参入者は減ってしまったけれど
330名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 21:34:52 ID:RgQIhzAb
プラモオタの俺は>>281のヒロインに殺意が沸いた
まあそれはいいとして自演は有り得ない件について
331名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 22:17:34 ID:vio0uuA/
ほっとけ。自演つってるのはいつもの可哀想な人だ
332名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 08:15:20 ID:HXtjv5Q2
>>281
遅ればせながら、GJ!
俺も>>330と同じくプラモオタで、放っておくにはもったいないネタだと
思っていたから、続きが読めて嬉しい。
是非、タイトルもつけてほしいところだ。
333名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 11:51:20 ID:uDphteQT
俺はプラモオタって訳じゃないけど
それでも>>281のヒロインのヒステリックさと
甘ったれぶりにはあきれ果てた・・・
334名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 15:23:50 ID:lFC7aZiI
>>332
タイトル タミヤドラゴントランペッターの悲劇〜プラモ崩壊〜
335名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 16:34:19 ID:qd/29fjr
ん?アニメがどうとかいう話が出てたからガンプラだと思ってた
336名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 18:56:02 ID:N8j2P8fg
彼の宝を棄てたなら
とか。

我ながらセンスねーなぁ。
337名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 20:41:48 ID:JOP6MUjH
漢とプラモと女二人





orz
338名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 21:25:34 ID:hSICfvPU
(男の)塗装が乾かぬそのうちに
339名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 22:40:46 ID:74Y0mdQF
べつに無理にプラモに絡めんでもいいのではw
340名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 23:09:34 ID:S0sgw5mr
些細なことだが、「プラモ」と略さないことに違和感を覚えた。
マニア的な拘りとか理由があるのかな。
341名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 23:49:31 ID:D0Ys/WZV
今見たら阿修羅氏更新キテター

いつもお疲れ様です。
342名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 23:52:04 ID:2NPcZ+Se
マジだ!
阿修羅氏乙!
343名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 23:58:31 ID:GOXCL1BR
阿修羅氏乙! 
また忙しくなるのかな?
……まさか浮気なんかしないよね?

あはっ
344名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 01:23:57 ID:l2uMUarc
奥さんの監禁から抜け出して来たんだろうな。
345名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 01:32:41 ID:z/AIdMIO
姉妹が嫉妬する作品が読みたくなってきたぞ・・
何かまとめサイトの方にありますか?
346名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 01:39:14 ID:YyUG2hwv
いくらでもあるがなw
阿修羅氏まとめサイト更新お疲れ様です。
347名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 02:46:50 ID:UCAJAwE5
自分の投稿したSSが保管されてるのを見るとなんか嬉しくなるな……
それはともかくお疲れ様です
348 ◆tVzTTTyvm. :2007/05/24(木) 03:05:13 ID:2XO3TxSx
阿修羅様更新乙です&今回もタイトルありがとう御座いました
ありがたく使わせていただきます

レスくれた皆さんありがとう

>>286やっぱ現実にもこんな女いるんですね……

solaはオイラも好きッス 茉莉ぃ……(涙

プラモオタの方から共感を得られたのは結構嬉しかったッス

何のプラモかは皆さんの好きなのを脳内で当てはめてください
ZOIDSでもガンダムでもマクロスでもスケールモデルでもご自由にドゾ

んじゃ投下イきます
3491/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/05/24(木) 03:06:56 ID:2XO3TxSx


  /      /      /      /


 目の前で起こった出来事に私は怒りを通り越して放心していた。
 あの女、熱矢先輩に対しそこまでやるなんて……!
 込み上げてくる怒りで頭の中が真っ白になりそうになる。
 そんな私は熱矢先輩の姿に現実に引き戻される。
 しゃがみこみ、あの女に壊されバラバラになったプラモデルを拾い集める熱矢先輩の姿。
 私もダンボールをそっと置き一緒にしゃがみこんで拾い始めた。
 その時地面に黒い染みが見えた。 見れば熱矢先輩の目から涙が零れ始めていた。
 私はポケットからハンカチを取り出し先輩の頬に当てた。
「ありがとう……。 ゴメンな稲峰、嫌な……所、見せちまって……」
 そう言った熱矢先輩の声はかすれ、震えていた。
「いえ……、気にしないで下さい。 それより、どうするんですか……?」
 バラバラに壊れたプラモデルを拾い終えた後も熱矢先輩はしゃがみこんで黙りこんだままだった。

「先輩、あのヒトと付き合ってて幸せですか?」
「スズも……アイツも性格キツい所もあるけど、でも良い所もあるんだ。 それに気心も知れてるし。
だからやっぱり俺、アイツとは別かれられ……」
「結局付き合い続けるんですか? でも、先輩の趣味に対し全く理解示してくれてませんよ。
上から高圧的に命令するみたいな口調で、とても対等には見えないです。
そんな対等とは言えない関係が恋人同士の関係って言えるんですか?
そんなヒトと付き合って先輩が幸せだとはとても思えないんです。
いえ、実際幸せそうになんて見えません。 だって幸せな人がそんな辛そうな顔する訳がないですから。
だから……」
 私は途中で言葉を切った。 
 私は先輩にとって趣味が同じだけの後輩に過ぎない。
 そんな私がこれ以上口を挟むのは差し出がましいんじゃ……。
 でも、やっぱり言わずにいられず再び私は口を開いた。
「先輩あのヒトとは別れたほうが良いと思うんです」
 ……何を言ってるんだろう私は。
 幾らあの女が非道い女だと言っても、でも悔しい事にそんな非道い女に熱矢先輩は惚れてるんだ。
 私なんかが何を言ったってしょうがない事だって分かってる。 けど……。

「これは……俺とアイツとの問題なんだ。 悪いけど放っておいてくれないか」
 そう。 本来なら只の同好の士で後輩にしか過ぎない私の口出しすべき事じゃない。
 だけど――。
「放ってなんか……置けません。 先輩が辛そうにしてると私まで辛いんです」
 気付けば私の瞳からも涙が滲み始めていた。
「稲峰……。 ありがとう、やっぱりお前良いヤツだな。
同じ趣味の仲間の俺の事こんなに気遣ってくれて」
 そして、其の涙が私の心の堰をも押し流してしまったのだろうか。
「確かに私、先輩の事同好の士として尊敬の念も親近感も持ってます。
でも、それだけじゃないんです」
 今まで封印してきた気持が溢れ出す。 そして――
「先輩の事が……好き……なんです」
 ……ついに言ってしまった。
 ずっと胸にしまっておくつもりだった私の本心。
3501/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/05/24(木) 03:07:52 ID:2XO3TxSx
「え……?」
 暫しの沈黙の後熱矢先輩は驚いた表情を見せる。
「先輩の事を同好の士としての親近感だとか、先輩としての尊敬だとかだけじゃなく、
一人の男性として好きなんです!」
 一度気持を口にしてしまえばもう止まれなかった
「先輩。 先輩とあの人が一緒のままじゃどう考えても先輩にとって幸せとは思えないんです。
だから別かれるべきなんです。 先輩の為にも。 でもそれで私と付き合ってくれとは言いません」
 いや、本音を言えば勿論付き合って欲しい。 でも、そう言い切ることが出来なかった。
 だって――。
「だって私なんか地味だし、背は低いし、胸だって薄いし、髪だってあのヒトみたいな
先輩好みのロングヘアじゃなくて男の子みたいに短いし……」
 とても先輩と釣り合いが取れるとは、あの女以上に先輩を惹きつける自信がもてなかったから……。
 それに今大事なのは私の願望じゃない。 大事なのは熱矢先輩の幸せ。
 だから――
「だから私と、とは言いませんから……。 でも付き合うならあの人じゃなくて、
せめて同じ趣味とまでいかなくても先輩の趣味を笑って許容できるヒトと付き合ってください。
もう……これ以上先輩のそんな辛そうな顔見たくないんです!」
 気付けば私は溢れる涙を拭いもせず感情のままに言い尽くしていた。

「ごめんなさい……。 感情のままに好き勝手言っちゃって」
 私はしゃがみこみ熱矢先輩のプラモデルの入ったダンボールを持ち上げる。
「とりあえずコレは私が大事に預かっておきます。 だから……ゆっくり考えてください。
本当にこれ以上あのヒトと付き合い続けるのか。 ようく考えてください。
それでもやっぱりあの人と付き合う事を選ぶというのなら……、その時はもう私は何も言いません。
先……輩が、プラモ……デル、を捨て……る事……を決め……たと……して……も……」
 私は先輩に背を向けそのまま逃げる様に家へ駆け込んだ。

 部屋に戻った私は熱矢先輩のプラモデルの入った箱をそっと床に置くとベッドに身を投げた。
 場の流れとは言え結果的に告白してしまった。
 本心の全て、とまではいかないが心の中に仕舞いこんでおく筈だった心の内を明かしてしまった。
 そして言ってしまった事を後悔……してるのかどうなのか――。
 私が言った言葉は正しかったのか間違ってたのか――。
 今の私は酷く精神的に疲れて、それすら分からない状態だった。
 頭もゴチャゴチャしてて混乱してきた。 私のした事は本当に正しかったのだろうか。
 あの時は自分の言ってることは間違ってなんかいないと思ってたけど……。
3511/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/05/24(木) 03:09:02 ID:2XO3TxSx


  /      /      /      /


「まさか稲峰のヤツが俺のことをそんな風に思っててくれたなんて……」
 家に帰ってから俺は今日一日、いやここ数日あったことを思い返していた。
 稲峰を家に招いて一緒にプラモデルを作ったこと。
 はっきり言って楽しかった。 当然だ。 同じ趣味で気が合うやつと共通の趣味の時間を過ごせたんだ。
 でも、そこにアイツを女の子として意識した気持は無かった。
 俺にとって"女"は昔っからスズだけだったんだから。
 だから高校入学を気に思い切ってスズに告白してそれでOKもらえた時は本当に嬉しかった。
 でも、反面恋人同士になってもそれでも俺の趣味を受け入れてくれなかったのは悲しかった。
 受け入れてくれるどころか恋人同士になったんだからコレを機に止めろとまで言われて……。
 それを頼み込んで続けてたけど、でもとうとう最後通告されちまって……。
 そんな辛い思いさせられても、それでも別かれる気にはなれなくて……。
 それはやっぱりスズが気心が知れた幼馴染で、初恋の相手で、初めて付き合った彼女で……。

 俺は携帯を取り出す。 スズとは恋人同士になる前――幼馴染の頃から喧嘩だって何度かしてた。
 でも其の度に俺から謝まってスズに許してもらって、それで仲直りしてきたんだ。
 だから――。

 だがスズに電話をかけようとした手が止まる。
 本当にそうまでして恋人関係を続ける意味があるんだろうか?
 ふいに稲峰に言われた言葉がよみがえる。
<先輩、あのヒトと付き合ってて幸せですか?>
<そんな対等とは言えない関係が恋人同士の関係って言えるんですか?>
<だって幸せな人がそんな辛そうな顔する訳がないですから>
 確かにこんな思いしてまで交際を続ける意味があるんだろうか。

 それに……そんな俺の辛い気持を稲峰は自分のことのように悲しんでくれてた。
 俺だけじゃなく、俺のことを心配してくれるヤツまで辛い気持にさせてまで……。
 そして稲峰は言ってくれた。 俺の事が好きだと。
 でも決して其の気持を押し付けたりなんかしてこなくて。
 その事をアイツは自分に女としての魅力が無いからだといってたが、でも改めて思い返してみれば
決してあいつ自身がそう卑下してるほどじゃない。
 だからあれは本当に卑下してとかじゃなくって俺のことを気遣ってくれての事なんだろう。
 そりゃ俺の好みのタイプは背は俺よりほんの少しだけ低くて、胸も結構ボリュームがあって、
艶やかで長い黒髪が似合う凛とした眼差しの器量良しの――、そう、スズの容姿そのまんまだ。
 だから稲峰は正にスズのそれとは正反対だけど、でも改めてみれば美人といえなくも無いが
どっちかと言えば可愛いという形容詞がよく似合う――。
 そう、確かに可愛くはあるけど、でも短い髪型や趣味のせいもあるが、何て言うか弟みたいな、
そんな感じの親しみや親近感だったし。
 そう言う意味では確かに女と意識した事は無かったけど、でも――。
(アイツ泣いてたよな。 いや、泣いてくれたんだよな。 俺の為に……)

 考えてみれば俺のプラモデルの趣味、スズには否定されてばっかりで其のたびに凹んだりもして、
でもそんな時稲峰の言葉に、一緒の趣味のやつがいるって事に慰められ励まされたんだよな。
 アイツの事を女として好きかどうかなんて分からない。 けど――。
 大事な、かけがえの無い仲間であり友達――そう言う存在だってのはハッキリ言える。

 そうだ。 女としてどう思ってるか、それは分からないし、大事なのはそこじゃない。
 一人の人間としてアイツ――稲峰 柚納の事を俺は好きだ。
 そんなアイツにまで辛い思いさせてるんだ。 今のこの状況が。 だから――
 このままで良い訳が無い。

 そして俺は開いた携帯を閉じて仕舞った。
3521/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/05/24(木) 03:13:06 ID:2XO3TxSx


  /      /      /      /


「最悪……」
 学校へ向かう路、アタシは寝不足で重たい瞼を擦りながら呟く。
 アッくんってばどういうつもりよ。
 昨日夜遅くまで待ってたって言うのに結局電話よこさないなんて!
 今日会ったらタップリ文句言ってやるんだから!
 アタシを寝不足にさせたんだ! 今度は映画おごるくらいじゃ済ませないんだから。
 そんな事考えながら歩いていたら前方にアッくんの背中を見つけた。
「アッくん!!」
 そして私は其の背中に向かって声をかけた。
 感情が昂ぶってたせいか思わず大きな声が出てしまった。
 だがアッくんはアタシの声に驚くでもなくゆっくりと振りむいた。
「おはよう、スズ」
 そしていつもと同じ調子で口を開いた。
 其のあまりに何でもない様子にアタシは一瞬呆気にとられたが、直ぐ気を取り直して口を開く。
「おはよう、じゃないでしょ! アタシに何か言う事があるんじゃないの?!」
「何か、って何だよ」
「すっとぼけないでよ! 昨日アタシとの約束破ってプラモ捨てなかったでしょ!?
其の事で言わなきゃいけない事があるんじゃないの?!」
 アタシは寝不足の不機嫌さもあってか声を荒げた。

「なぁ、スズ。 どうしてもプラモデル捨てなきゃ駄目か?」
「何度も同じ事言わせないでヨ! 駄目に決まってるじゃない!
それに言ったでしょ?! それが出来ないならアタシとアッくんとは――」
「これまでだ、って言うんだろ?」
「そうよ! それで良いの?!」
 そう言ってあたしは睨んだ。
 そうよ。 いくらプラモが好きだって言っても諦めなきゃアタシとの仲も終り、って
そう言われてアッくん断われる?
 断われないでしょ? だったらサッサト諦めて謝ってアタシの言う通りにしなさいよ!
「そう……か。 解かったよ」
「ふん。 やっと解かってくれたみたいね」
 そうよ。 所詮それしか選択肢は無いんだから。
3531/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/05/24(木) 03:14:45 ID:2XO3TxSx
「解かったよ。 お前がどうしても俺の趣味が駄目って言うんなら……俺たち一度距離を置こう」
「え……?」
 予想外の返答にアタシは一瞬何を言われたか分からなかった。
「ア、アッくん……? い、今何て……? ア、アタシの聞き間違いかな?
きょ、距離を置こう、って……そ、それってどういう意味……?
ま、まるでお別れの、言葉みた……い……」
 そして問い返そうとするも声帯に力が入らない。
 そんなアタシとは対照的な落ち着いた口調のアッくんの声が耳に届く。
「そういう、意味になるのかな……」
「ア、アッくん! じ、自分が何言ってるのか解かってるの?!
ア、ア、アタシとわ、別……れ……」
 アッくんがアタシと別かれる? そ、そんな事……、そんな事ある訳が……。

「ア、アッくんはア、アタシの事がす、好きじゃ……ないの?!」
「好きだよ。 小さい頃からずっと。 そして今でも……」
「だ、だったら何で……!」
「好きだからこそ……だよ。 今までの俺ってお前の事――お前の機嫌や顔色気にして……。
でもそんな関係正しい付き合いだなんて言えないよ。 だから決めたんだ。
そんな状態で関係続けてたら、其の内俺達はきっと駄目になっちまう。 
若しかしたらお前の事も嫌いになってしまうかもしれない。
そうならない為にも一度距離を置こう。 もう一度幼馴染から、友達からやり直そう、って」
「そ、そんな……、そんなの……」
「だから……、じゃぁ……な」
 そしてアッくんは背を向けると足早に去るように学校に向かっていってしまった。

「そ、そんな……、う、嘘……。 ア、アッくんが……」
 膝から力が抜ける。 振らつく足取りでかろうじて近くの堀に手を付き体を支える。
 知らないうちに両の瞳からは涙が溢れ始めていた。
 確かに言う事聞いてくれなきゃこれまで、ってそう言ったのはアタシよ。
 でも……、でも……ほ、本気で別れるつもりなんてコレっぽっちも無かったのに……!
 だ、だって……だってアタシだってアッくんの事誰よりも好きなんだから……!
 小さい頃からアタシがどんな無茶を、癇癪を起こしたって受け止めてくれてたアッくん。
 そんなアッくんが幼い頃から今に到るまでずっとずっと大好きだった。
 中学の頃には頭の中はアッくんの事で一杯で告白してくれる日を夢見ていた。
 だから其の頃結構告白とかも受けてたけど、でも心が揺れた事なんて一度だって無かった。
 だから高校入学を機にアッくんから告白してくれた時跳び上がるほど嬉しかった。
 そして始まった恋人同士としての交際の日々。
 かけがえの無い幸せな日々は何時までも続くと信じていた、のに――。

「あ、ああああ…………っっ!!」
 胸から込み上げてくる押さえ切れない悲しみにアタシは嗚咽を堪えられなかった。
354名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 03:15:56 ID:2XO3TxSx
投下完了です ではまた
355名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 03:18:11 ID:SYP30cEZ
いいよー、GJ
356名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 03:21:32 ID:MtUxR+yD
NOOOOO!!!!良いところで終わってしもうた!
続きを楽しみにしてます。
357名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 05:18:19 ID:MkbbsSRM
スズ…

m9(^Д^)m9(^Д^)m9(^Д^)
358名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 06:43:40 ID:ubLH0oPA
くくく……「距離を置こう」、か……
恋人たちが別れる前兆だぜ!そして二度と元に戻ることはない!フゥハハハーハァー!
359名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 07:17:02 ID:kzRjzNuz
アッくんGJ!
でもスズの心情を見ていたら
とたんにスズに転びそうになった優柔不断な俺ガイル
360名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 07:53:31 ID:5Wn2ZTFj
まぁ俺は根っからのすず派だけどな。 
兎にも角にもGJ!
361名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 11:00:28 ID:ZuhdtI8p
他に逃げ道=後輩ができてから行動
しかも距離=キープってけっこうなクズっぷりだよな
362名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 11:42:40 ID:8unxX4yQ
これは別にクズというか説得されて現在の関係の異常さにようやく気づいたってレベルじゃね?
告白はついでというかなんというか
363名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 11:54:01 ID:jYFvTvzG
友達に心配かけたくないし自分も相手と対等になりたいって思ったからの行動だろ?
別に後輩を逃げ道に使ってるわけじゃないと思うけど
364名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 12:02:21 ID:MX3dUK19
議論と考察は避難所を使えばいいというオチはありですか?
365名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 15:31:19 ID:7tTDvyt+
リアルでこういう事があった場合、女は男を一方的に悪者扱いするんだよな。
自分より趣味を選んだ馬鹿な男って。

お前に一々頭を下げて生きていくのが嫌なんだって事に気付けや。
366名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 15:58:01 ID:M8VyeCib
>>353
絵に描いたような自業自得ってやつか
367名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 16:23:52 ID:MurZgxse
>>366
同意。
子供の頃からさんざん甘えていて何一つ感謝しないどころか
文句ばかりじゃねえ・・・これで
ただ単に好きというのは免罪符にもならない。
368名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 16:27:52 ID:xHXI8H0N
主人公に感情移入して、ヒロインの圧迫にぶち切れる時のカタルシスとか好きだぜ
369名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 17:03:26 ID:uwo+nnib
もっとスマートに話を読もうぜ……。
370名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 17:14:42 ID:DyjtQ/jI
まあ、趣味や仕事と女のどっちを取るかは男の永遠の問題だからな。
みんなが熱くなるのも分かる。
371名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 18:42:42 ID:7tTDvyt+
>>370
でも、主人公はまた違うんだよな。単に女より趣味を選んだというよりは、
己のプライバシーや人生まで口出して言いなりにする様な女とは距離を起きたいって事。
372名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 21:47:51 ID:Kq1B4CPD
なんか久々に新鮮な感じの展開になってるな
気になって読み返してしまった
373名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 22:38:36 ID:3J8sgy6x
>>365
元カノがまさにそんな感じだったな
自分の趣味を人に押し付けてくるくせに、俺の趣味のは認めない奴だった

別に料理くらい好きにやったっていいと思わないか?
374名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 22:44:32 ID:8unxX4yQ
>>373
ほら、そこはあれだ
付き合ってる男が自ら料理を作るより自分の手料理を食べて欲しいという女心じゃね?
同棲しててそれならまだありだと思う、別々に暮らしてて料理すんなってんならアウトだろうけど
375猫泥棒 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/24(木) 22:46:59 ID:hc8fOxV/
>>354
こういう惹きつけられるような展開、いいなぁ…
しかもさらさらっと読みやすいし、GJです!

>阿修羅様
更新おつかれさま
ご多忙の中、ありがとうございます

感想にすごく感動した
わざわざ遡ってみてくれた人もいるみたいで…
お手数かけてごめんなさい

投下します
376お願い、愛して!9 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/24(木) 22:52:21 ID:hc8fOxV/


今朝、クラスでキョータくんの噂が聞こえてきた。
「別人みたい」とか、「社交的になった」とかいう噂。
噂には良い噂と悪い噂があるわけだけど、今回は珍しく良い方。

――そう。……めずらしく。
いつもは陰口や非難ばかり囁く人たちが……
キョータくんのことを何も知らない人間たちが、
たくましくなったキョータくんを新鮮に感じて、過剰反応を起こしちゃってる。
きっとそんな感じ。そんなのすごく失礼で、とても許しちゃいけないこと。
だから、たくさんたくさん言い返しちゃった。
「あなたはキョータくんの何を知ってるのかな?」
「知らないなら軽々しくあの人の名前を口にしないで」って。
ちょっと言い過ぎたかな? とは思ったけど、
そのおかげで、わたしのクラスからは彼の噂をする人が一人もいなくなったから、結果オーライだよね。
きっと他のクラスにもああいう人たちがいるんだろうなぁ、
って思うと気になってしょうがなくなっちゃう。
キョータくんも鬱陶しがってるかも知れないし。
夏休み前はそういう人たちの相手、わたしがしてたのにな……。

今では昼休みになっても、もうわたしに話しかけてくる人は誰もいない。
昨日の朝、キョータくんが言ってたみたいに、夏休み前とは彼の立場と完全に逆転してる。
わたしがキョータくんを守らなくちゃいけないのに……情けないなぁ……。

『キョータ……くんは、今のままがいいの……?』

何だか怖くて伝えられなかった、昨日の問いかけ。
正直に言っちゃうと、たくましくなったキョータくんに不安を感じてる……。
もうキョータくんにわたしは必要ないんじゃないか、なんて。
えへへ……そんなのあるはずないのにね。
たくましくなっても、キョータくんはあの時のままのキョータくんで。
わたしをたった一人必要としてくれた大切な人だもん。

自分が最低な里親に孕まされた母親の息子だって、他の誰も知らないことを教えてくれた、あのときから。

キョータくんの味方はわたしだけのはずだから……。


377お願い、愛して!9 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/24(木) 22:55:39 ID:hc8fOxV/


「キョータ……? って、あぁ、雨倉のこと?」
「うん。……教室に見当たらないけど、どこに行ったか知らないかな?」
「さっき一年の女子に呼ばれてどっか行ったけど。
 そういえば最近、よくクラスに来る子だな。
 雨倉、あの子のことなんつってたっけ……?」

と、その女子の名前を思い出そうとする男子。
わたしの方は、びっくりして声も出ない。

「確か――あさい……とか」
「な、凪ちゃんが!?」

思わず声が大きくなる。男子が驚きながら短く肯定した。
そんな……いつもお昼はわたしを先に誘ってくれたはずなのに……。
今日は用事があって誘いに来ないんだと思ってたけど、
まさかわたしを置いて、勝手にキョータくんを連れ出してたなんて……。

「多分弁当食いに行ったんじゃない? 屋上にはもう行ったの?」
「……ありがとう、行ってみるね」
感謝もそこそこに、教室を離れて屋上に向かう。
「あー! それとその女の子、ずいぶん具合悪そうだったよ!」
背中からまだ声が聞こえてきたけど、これ以上構っていられる気分じゃなくて、無視した。

――いくら凪ちゃんでも、それはやっちゃいけないことだよ。
信用してないわけじゃないけど、
やっぱりキョータくんが他の女の子と二人っきりなんて、良い気分がしない。
だから少しだけ、ほんのちょっぴりだけ、後で叱らなくちゃ。

やっと屋上の扉が見えてきた。
扉は開かれていて、屋上には予想通りキョータくんと凪ちゃんがいる。
なのに入り口の目の前まで来て、一旦足が止まった。
378お願い、愛して!9 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/24(木) 22:59:23 ID:hc8fOxV/

――そもそも、キョータくんだけをお昼に誘ったのはどうして?
もしもキョータくんと話をしたかっただけなら、屋上じゃなくてもいい。
少しすればわたしがここに来ることなんて分かってるはずだもの。
わたしがキョータくんのこと大好きってことは、
公園で初めて会ったときから知ってるだろうから、
自分に怒りの矛先が向かうことも分かるはず。
……なら、どうして?


「朝生っ!」

びくっと体が震えて、すぐに声のした方を凝視する。
その瞬間、倒れこむ凪ちゃんとほんの少しだけ、目が合った。
そして――愕然とした。

そんな……キョータくん……。
キョータくんは、凪ちゃんを支えるように、しっかりと抱きしめていた。
それだけでわたしの全身は震え、動悸が乱れ始めた。
なのに……その残酷な光景は、まだ発展する。

「っっっっっッッ!!!!!」

生まれて初めて本当の意味で、私は自分の眼を疑った。
凪ちゃんは、あの女は、わたしの、わたしだけのキョータくんに、顔を寄せてキスをした…………。
口が勝手にパクパクってなって、そこからかすれた嗚咽が力なく漏れていく。
胸が急に痛んだ気がして、急いで手を宛がう。
少しの高揚感も心地よさもないとってもイヤなドキドキ。

「あ、あ、あ、あ…………」

それが自分の声だと気づいたとき、手のひらに痛みが走った。
爪が手のひらに食い込んで血が垂れだしたんだ。
だけど、そんな痛みより…………。

「っ!」

視界がぼやけたかと思うと、堰を切ったように一気に涙が零れ落ちる。
嫉妬と怒りと悲しみとがぐちゃぐちゃに混ざり合ったような感情が、心の中をぐるぐると渦巻いていく。
急激な嘔吐感に襲われて、その場から走って立ち去った。

「うぁ……キョータ、くん……キョータくん……!
 …………許さない……あの女、最初からわたしが来るの分かってて……っ
 ……う、うぇぇ……女狐の、くせに……っ! 絶対に許さないっっ!!」

ただ、怨嗟の言葉だけを繰り返しながら。


379猫泥棒 ◆wvo7w.Uzxk :2007/05/24(木) 23:04:38 ID:hc8fOxV/
短めですが、今回はここまで
定期的に投下できないのが申し訳ないです
380名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 23:26:34 ID:eg5ClrE/
gjです
寝る前にいいのが見れた
381名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 23:45:16 ID:JcumHdD9
イヤッホオオオオウ!
382名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 01:24:05 ID:uXpmskNS
>>375
GJ!
焦らずマイペースで頑張ってくれ
>>374
元カノは実家で俺は一人暮らしだ
元カノ曰く「男が料理なんて女々しい行為は我慢できない」らしい
食費を削る意味でも料理は続けてたんだが、ほぼ毎日「料理をやめなきゃ別れる」って責められてたなぁ
一ヵ月間耐え抜いたが、さすがに限界だったから別れ話をしたらお約束通り「私より趣味が大事なんだ」って言われたよ
「生活費の問題もあるから自炊してるんだけど、お前にとってはそういう状況にいる俺自身よりも趣味のほうが重要なの?」って言い返したら物凄い目で睨みつつ黙って去って行ったな
二週間前の話なんだが、あの目はかなり恐かった


そのうち後ろから刺されるかもわからんね
383名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 01:35:43 ID:TWaM+PAk
>>382
それお前さんはなにも悪くないだろ・・・
訴えたら間違いなく勝てるぞw
384名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 01:43:48 ID:IYHL3GqH
司法は女の味方です
まー言葉の綾だろうけど
385名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 01:52:47 ID:DRUsPwUJ
>そのうち後ろから刺されるかもわからんね

元カノ「許さない…アタシのことを認めないならいっそ」

      カチャリ(包丁を手に取る)

???「許さないのはこっちの方だよ?」
元カノ「…え?」
???「彼を傷つけるなんて、許せるわけ無いじゃない」
元カノ「だ、誰!?」
???「挙句は殺そうなんて、この豚が!…というかいつまで薄汚い手で私に触ってるの?」
元カノ「やだ…手が勝手に、イヤァァァァ!!!」

       ゾキュ

包丁「あーあ、汚れちゃった…」


  私に触れていいのは、>>382さんだけなんだから、ね♪

386名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 01:54:26 ID:6j9jY86q
ちなみに裁判官は言葉様だから泥棒猫は鋸で
首を真っ二つの刑に遭うと思うよ・・

言葉様、余程トラウマがあるらしいからな・・
彼女の前で彼氏が寝取られたとか世界とか絶対にいっちゃダメだぞ!!
387名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 02:15:05 ID:zNZCAFaG
>>385
後にその包丁、どこぞのKさんによってどこぞの泥棒猫を歩道橋の上で
「死ね」
とか言いながら頸動脈を…
あ、違った。包丁は砂浜で男を殺傷するためのものか。
388名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 02:20:25 ID:uXpmskNS
>>385
軽くヒスを起こした元カノが包丁をこっちに向けたという事件があったから笑えねえw

この包丁を十年以上愛用してるんだが、そろそろ付喪神が宿らないかな(´・ω・)
389名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 05:32:11 ID:4HjK7+A0
>>382
つい最近かよ!っつーことは、あのプラモの話はまさしくピッタリのタイミングなわけか。
それにしてもきっぱりと言ってやったお前さんカコイイ!!

しかし、趣味をやめないからって別れ話を切り出す女も、やはり恋より趣味(の拒絶)を選んでるって事か。うまいな。
390名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 05:55:42 ID:/wMzbMoQ
>>388
今度は包丁に(精神的に)調教される予感
391名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 07:45:47 ID:M9rfYqpG
>>382
つか彼女が料理作ってくれてりゃ万事ぉkだったんじゃないの?
392名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 09:11:11 ID:4HjK7+A0
ところで話が変わるが、こんな風に繋がっている話も面白そうじゃない?

第1部
ある女が男と結婚する。しかしその夫は妻にそっけない。
実はその結婚はダミー婚で、夫は姉とできていた。
プライドを傷つけられた妻(あくまで愛じゃないのは2部の為)は怒る。
姉から夫を奪おうとするが、結局負ける。(妻と姉、どちらの視点でもあり)

第2部。
夫婦は離婚。二人の兄妹が残っていた。
母は兄を溺愛して狙っている。彼女ができようとすると邪魔をする。
しかし、それは妹も同じ。妹も母を狙っていた。
母と妹が兄の取り合いを始める。
393名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 09:14:38 ID:eiH/N1XY
レディコミにありそうだNE


誤字はあえて気にしなーい(・3・)
394名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 09:48:02 ID:4HjK7+A0
キモウトならぬキモ母って思ったんだが、そしたら旦那の立場がないからな。
そこを考えてたら、昔読んだレディコミを思い出して第1部。
395名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 11:21:27 ID:uXpmskNS
>>391
そりゃ無理だ。料理をやった事がないって言ってたしな
付き合い始めの頃に一度だけ作ってくれた事があったんだが、焼いただけの卵焼きと味噌をお湯に溶かしただけの味噌汁が出てきた
絶対に食えないって程不味かった訳ではない分よけいにきつかったよ

>>394
キモ家族は私も大好きだ
是非とも形にして頂きたい
396名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 12:10:29 ID:GaxVKv4Q
>>394
キモ姉&キモウトスレでも以前似たような話題が上がって、その時にキモ母話を書いたんだが
あっちじゃ投下しても良いのか微妙な雰囲気だったんで結局お蔵入り…
こっちでもキモ母話が出たは良いけど、その話には嫉妬も三角関係も修羅場も無いから投下出来ないのが残念だ
397名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 12:34:55 ID:TEsC5d3W
キモ姉&キモウトスレって
普通に嫉妬スレ住人も書き込んでいるよな?
398名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 12:44:39 ID:bpBZ02A8
他スレの話題出すんじゃねぇよ
399名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 13:01:43 ID:j439imBO
>>395
ヒント:調教

キモ家族のネックは父親だよな
殺すか離婚か父親もキモくするか
400名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 13:43:13 ID:5hmBF/SN
>>379
俺は続きを待ってるぜ
401名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 16:42:35 ID:4HjK7+A0
>>399
離婚がいい。母子を無難に成立させるにはお互いに最初から愛がない状態が好ましい。
ただ、母が子を優先するために父を殺したらビッチっぽくなるし、キモイ男は普通にキモイ。
402名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 17:15:19 ID:ny+zr702
>>395
大体そういうSSでは、家族に1人だけまともな人間がいて、そこから修羅場が始ま
403名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 19:39:19 ID:h4I0o5QY
ぶらっでぃ☆まりぃマダー?
404変名おじさん ◆lnx8.6adM2 :2007/05/25(金) 23:39:08 ID:S4s3o/uz
一月以上前に一話だけ投下したSSの続き行きます。
読んで頂ける方はお手数ですが前スレ>>165>>166か、保管庫で確認の上でお願い致します。
嫉妬は全然まだ、何日かおきに書いたりしてるので文がおかしいかもしれません。
では投下します
405変名おじさん ◆lnx8.6adM2 :2007/05/25(金) 23:40:46 ID:S4s3o/uz

「じゃあ、行って来るよ」

「うん・・・・・・行ってらっしゃい、兄様」

朝食の後に一通りの身支度を済ませ、住まいを出る。
2人で暮らすには少し広い家。家族でもない、血縁さえない僕と夜宵ちゃんが共同生活を送る場所。
そこを、家庭と呼ぶべきかは微妙なところだけど。
僕は彼女に送られながら、その場を後にした。
今日も今日とて労働に勤しむために。

普通の感覚で言えば奇妙なことなのだろうが、隔離都市においては犯罪者たる住人でも就職が出来る。
と言うより、そもそも隔離都市に収容された犯罪者には服役や懲役なんてものはなく、
原則として都市外への外出以外は禁止されていない。
無論、それ以外の何をしても許されるわけではないが、それ以外のことなら大抵は自由。
惰眠に沈もうが、美食に明け暮れようが、セックスに耽ろうが、ドラッグに溺れようが、殺戮に狂おうが、
およそあらゆる欲求に焦がれ、どんな快楽に酔おうが、自由。
むしろ管理者側もそれを推奨している。

そうしてくれた方が、彼等にとっても都合がいいのだから。
箱庭の維持のために。

隔離都市。
ここでは一切の倫理は唾棄されるためにあり、合切の条理は放棄されるためにある。
逸するための常軌であり、失うからこその正気。
無理を通すために道理が押し退けられ、合法によって無法が成り立ち、無法と言う法に従って日々、
朝昼夜の区別無く、老若男女の差別無く、常人奇人の侮蔑無く、のべつ幕無しに狂気を醸造し続ける内燃機関。
ここには確かに犯罪者がいるにも関わらず、しかし罪は成立しえない。
躊躇いも情け容赦も選別も手落ちもなく、徹頭徹尾、1から10まで、完全無欠に、
あらゆる狂気を内包し、全ての異常を抱擁し、遍く異質を許容し、考え得る限りの異端を受容する、
狂おしい程の打算と計略と試行と錯誤と決断と流血の下に打ち建てられた鉄の庭。
それが、それこそが、それだけが隔離都市であり、
それだけに、それだけで、それだけを隔離都市は法とする。

故に、僕には労働の自由が許されており、勤労に励むことが出来るのだが。暮しのためにも。
B地区第183住居。それが僕と夜宵ちゃんの住まいである。
このB地区に住む、より正確に言えばB地区の住居を購入するのも楽ではない。
隔離都市は内部を管理するための機関などが集中する中央区から始まり、
政府から送られてきた管理者達や隔離都市に名だたる『十席』とその側近など一部の特権階級しか住めないA地区、
管理者側に比較的友好的な態度を示す者達が居住を許されるB地区、
比較的問題のない者達が住むC地区、
管理者達にとって余り好ましくない者達を集めたD地区、
そして更に正式ではないが内部から弾かれた弱者が行き着く隔離都市を囲む壁際のE地区、
と中心から外へ向かって円状に広がって行くという構造を取っている。
中心に向かうほど地区の直径が狭まることから分かる通り、中心との距離がそのまま権力や住み易さの表れだ。
僕は以前はC地区の住人だったのだが、夜宵ちゃんと出会ってからは色々頑張った甲斐もあってB地区に住むことになった。

詰まりはそれだけ管理者側に尻尾を振ったということであり、
だから、知らないうちに何処かで恨みを買っていたりもする。


「テメェかあ、アニキを殺ったのは」

嫌な予感、もとい予想はしていた。
通勤途中にまだ人通りも少ない通りの路地裏から視線を感じたし、そう言えば最近は召集をかけられることも多かったからだ。
妬み恨みは世の常、誰かの幸福は誰かの不幸が支えている。
なら、そこそこ幸せな生活を送っている僕がそこそこ他人の恨みを買うのも必然なのだろう。
406隔離都市日記 ◆lnx8.6adM2 :2007/05/25(金) 23:41:59 ID:S4s3o/uz

「ああコイツだ、間違いねぇ。オレは見たぜ。アニキを殺ったのはコイツだ」

「そうかそうか・・・コイツがアニキをなぁ」

「許せねぇ! さっさと殺っちまおうぜっ!」

今僕がいるのはA地区とB地区の境界線付近、特に人通りが少ない路地である。
目の前にはチンピラ風の人物が3人、横に並んで僕を睨んでいた。
前時代的な髪型を始めとする随分気合の入ったファッションに、
全身を飾っているんだか飾られているんだか分からないジャラジャラした指輪だのチェーンだのピアスだの、柄も頭も悪そうなナリだ。
皆揃って同じ様な個性を追求することで逆に無個性に陥ってしまうということをしがちな、
まあ思春期とか第二次性長期あたりで脳と精神の発達を止めてしまった人達なのだろう。
まして犯罪者の巣窟たる隔離都市においては没個性も甚だしい。
で、そんな3人組が揃って殺気立っており、どうみても通行人に朝の挨拶という風には見えない。
これで朝の挨拶だというなら、随分とまあ変わった芸風と言える。

「で・・・僕に何か用かな?」

生憎、そんなことは在り得ないんだけど。

「あぁん? んだテメェ、ふざけてんじゃねぇぞコラァアっ!」

流石にスルーも出来ないので用向きを尋ねると、チンピラA(仮称)が唾を飛ばしながら怒鳴る。
不必要に声量が大きい。両脇の2人、チンピラB(仮称)とチンピラC(仮称)もそうだそうだと続く。
どうも僕から口を開いても無駄な気がしたので相手の喚き立てるに任せてみると、
僕と彼らの間には有するボキャブラリーの方向性に違いがあるようなので解釈に苦労したが、
どうやら次のような次第らしい。
彼らチンピラ3人組みには世話になってる兄貴A(仮称)がいた。
その兄貴Aは面倒見が良く、そして隔離都市のどこか────おそらくD地区だろう────で、とあるグループに所属していた。
そのグループとやらは何か大きなコトを企てていたらしいのだが、それが直前で管理者達に露見してしまい、
僕や仕事仲間に殲滅されてしまったらしい。
その時に兄貴Aを殺したのが僕。故に復讐するは我にあり、ということだそうだ。
正直、困る以前に身に覚えが無い。最近は召集が多いせいで、取り締まる相手の顔なんて一々憶えていられない。

その時に殺そうが拿捕しようが、二度と会わないことに変わりはないのだし。

そもそも、露見したらマズイことを企む方が悪い。
勿論、隔離都市は内部の人間におよそあらゆる自由を保障しており、
無論、欲望のままに生きることを推奨している。
ただし、例外が無いわけではない。先ず隔離都市から外に出ることがそれだ。
内部の人間を隔離するためにあるのだからこれは当然と言える。次に隔離都市から出るための行動・準備を行うこと。
それから管理者やその部下へ危害を加えること、その業務を妨害することなどと続く。
アニキとやらが何を考えていたのかは知らないが、
何もしなくても日々の糧が保証されているのだから無用のリスクを冒す必要などないのに、
ただでさえ犯罪者という身分には過ぎた待遇を受けているのにも関わらず欲をかくからそうなる。自業自得、と言うやつだろう。
だが。
そんな理屈は彼らには通用しないらしい。

「アニキはこんなオレ等にも良くしてくれたんだ。
 それを、そんなアニキを殺りやがって・・・テメェも同じ目にあわせねえと気がすまねぇ!

「復讐だ」

「ぶっ殺す!」
407隔離都市日記 ◆lnx8.6adM2 :2007/05/25(金) 23:43:14 ID:S4s3o/uz
じりじりと距離を詰めてくる三人の表情には、微かに怒り以外のものも見て取れた。愉悦だ。
相手からすれば状況は三対一。
加えて辺りに人通りはなく、
仮に僕が都合よく通る通行人に助けを求めても隔離都市では見ず知らずの他人を助けるような奇特な犯罪者はいないし、
中央の管理者なりに連絡をしても即座に誰かが駆けつけてくれるわけでもない。
それを分かっていて、甚振る積もりでいるのか。チンピラ三人組は敢えてゆっくり迫ってくる。
予め僕の扱いを三人で決めていたのか、たまたま全員が似たような嗜好なのか、
いずれにせよ、世話になった人物の復讐にかこつけての日頃のストレス発散も目的にあるのは言うまでもないだろう。
彼らの罪状の程が窺える。

「・・・・・・」

とは言え、どうしたものだろうか。
多分、この状況をどうにかするのは難しくない。

ここでの生活で培った感覚が警鐘を鳴らしていないことから、相手の危険度はせいぜいDかE。
仕事の関係で、より危険度の高い人間の相手をしょっちゅうしている身からすれば大した脅威ではない。
殲滅も無力化も難しくは無いだろう。

僕の隔離都市でのスタンスは殺人鬼でも殺人狂でもない。
と同時に、自衛のために力を行使するのを躊躇う程のお人好しでもないのだから。
問題があるとすれば、
揉め事を起こして中央から仕事というか僕への評価を下げられることだが・・・この際仕方が無い。

右手。
住まいを出る時に、1つだけ持ってきた荷物を見る。
長さ1m程の、白い布に包まれたそれ。今、僕が持つ唯一の自衛手段。
その感触を確かめるように、強く握る。

「オラァアアアアアアアアアアッ!」

それに反応したのか、真ん中、チンピラAが最初に目を血走らせながら突っ込んできた。
手には、いつの間にか奇妙に捩れた刃を持つナイフが『出現』している。
これで正当防衛が成立した。

僕は自身の『得物』を覆う布を取り払おうと手を伸ばし────止めた。
代わって、目を見開く。

「ぎゃあああああああっ!?」

赤い色が踊っていた。

眼前で、チンピラAが燃えている。
何の予告も予兆も伏線さえもなく、
唐突に生じた────それこそ発生したとしか言えない────炎が瞬く間に彼を呑み込んで火達磨と化していた。
内包する膨大な熱にゆらゆらと揺れ動く焔は足先から頭頂までを余す所無く覆い尽し、
衣服を肌を肉を髪を眼球を区別無く焼いている。
朝の日の光の明るさにも関わらずより強い輝きで周囲が照らされ、
僅かとはいえ離れていても伝わってくる熱に細められる視界の中で僕同様に驚愕に、
次いで痛苦に歪められた彼の顔が映った。
赤い壁で隔てられた彼の顔は燃え盛る炎の中でぱくぱくと口を開いて何かを訴えようとしているが、
それが叫び声以外のものを伝える前に膝を折り、人形のように崩れ落ちる。
余りに急な展開に着いていけずどこか明瞭でない感覚の中で、それだけは現実的な重い音が響いた。
408隔離都市日記 ◆lnx8.6adM2 :2007/05/25(金) 23:44:43 ID:S4s3o/uz

「お、おい・・・」

「け、消せっ! 火を消すんだ!」

数瞬の硬直。
展開についていけないながらも倒れ伏した彼の状態を理解した二人が、衝撃の拘束から解かれて動き出す。

同時に、もう一つ変化があった。

「・・・え?」

僕がそれに気付いたのは、彼等と反対側にいたからだろう。
影が見える。
伏してなお焼かれ続けるチンピラAを覆う炎が辺りを照らす中、
僕と彼の間に黒い水溜りのようなものが生じていた。
染みのようなそれは急速に濃さを増して行く。
だが、さっと視界を巡らせても、前後左右どちらにもあるべき影の発生源らしきものはない。
僕は半ば直感で視線を上げる。

影が降り、炎とは違う赤色が舞った。

人。
大人ではないが、さりとて子供とも言えない程に成長した肢体。
しなやかなそれを曲げて殺した落下の衝撃に従い、左右で結ばれ垂らされた二筋の赤色の髪がふわりと揺れる。
チリン、と澄んだ鈴の音が響いた。
着地の際に猫のように丸められた背中は濃い青のブレザーに覆われ、緑を基調としたスカートが下に続く。
僕の側に露出したうなじは細く、それが彼女の性別を教えてくれた。

「────」

突き立てられた沈黙が場を支配する。
彼女自身は着地による停滞に、
僕を含むその他全員はどこからか飛び込んできた第三者に対する驚きと対応への逡巡でその場に縫い付けられた。

それを破ったのも、また彼女。

「────────あっは♪」

早業、と言えるだろう。
曲げられた四肢をそのまま撓みから開放へ、伸縮の逆の動きで五体を弾丸と撃ち出す。
身を低くした駆け出しから刹那で跳躍を果たした体は、髪の色の軌跡を引いてチンピラ達へと迫った。

「う!?」

「お!?」

隔離都市では、一瞬の差が生死を分ける。
仮にも荒事に身が馴染んでいるらしいチンピラ達は一拍遅れて反射的に迎撃の構えを取るが、時既に遅く。

「アンタらは取り敢えず眠ってなさい!」

一閃。
一人は突き刺さるような拳で顎を打ち抜かれ、もう一人は砕くような蹴りで同じ場所を打ち上げられて沈んだ。
音が二つ、倒れた体は三つに増える。
まさに瞬殺。電光の早業だ。

「ふう・・・これでよしっと」
409隔離都市日記 ◆lnx8.6adM2 :2007/05/25(金) 23:46:19 ID:S4s3o/uz
それをなした当人はと言えば、
一仕事終えたというようにぱんぱんと手を鳴らしてから僕へと振り向いた。
未だチンピラAを包む炎に照らされ、火照ったような笑顔が向けられる。
ツインテールの髪の色より透明感を増した、勝気そうな朱色の瞳が輝く。

「強いんだね。相変わらず」

「っ・・・当ったり前でしょ! アタシを誰だと思ってんのよ」

褒めた積もりだったが、お気に召さなかったらしい。
一転、さも心外という風に顔を顰められる。
が、まあいいわ、と言う声と共に不機嫌な表情が打ち消された。

「で、アンタはこんな所で何をしてた訳?
 久し振りに会えたと思ったらお取り込み中だったみたいだけど、とうとうファンクラブでも出来たのかしら?」

「僕はそんな人間じゃないつもりだし、第一あんな手合いはご免被るよ。
 まあ、仕事上の恨み辛みって奴かな」

見え透いた揶揄をかわして要約した事情を伝えると、呆れたような視線で返される。

「はんっ! まあアンタじゃその辺が打倒よね。
 ファンクラブにしたって、アンタ変なのばっか惹き付けるみたいだし・・・・・同性には嫌われてるみたいだけど」

視線を転がるチンピラ達に転じて睨みつける。
同時に、注意を引くように、僕に見せ付けるように腕を振るうと燃え上がる炎が消えた。力を解除したらしい。
残滓と言うには強くこびり付いた人肉の焼ける異臭が辺りに漂う。

「さてと」

しかし、彼女は鼻を摘むでもなく涼しい顔をしていた。
そのまま、焼かれていないチンピラの片方にずんずんと歩いていくと。

思い切り────蹴り付ける。

「にしてもコイツらも馬っ鹿よねー?」

蹴る。蹴る。蹴る。

「アンタに手を出して無事に済むとでも思ってたのかしら?
 あの人形娘にアタシに鎌女、ざっと並べただけでもこれだけの能力者がアンタの周りにはいるのにね?」

足を踏み付け、腹を爪先で蹴り込み、顔を踏み躙る。
鈍い音。

「おまけに隔離都市治安維持部隊配属の人間に手を出せば、
 後顧の憂いを断つ意味でもアンタのチームが同僚が上司が部下が管理者が組織が、
 徹底的に徹頭徹尾、底辺までも追い掛けて追い立てて追い付いて追い詰めて、
 この素晴らしき犯罪者の巣窟の住人ですら吐き出すような処断を下すのにねー?」

蹴り、蹴って、蹴る。
中身の詰まった肉の音が耳に粘り付く。

「まあいいわ。アタシには、どうでも。
 アンタが困ってたみたいだから助けて上げただけのことだし────ん?」

「ぁ・・・ぅああ」

サンドバッグ化していた物体が身じろぎした。
おそらくは自身の知らぬ間に腫れ上がった目を薄く開く。
410隔離都市日記 ◆lnx8.6adM2 :2007/05/25(金) 23:48:03 ID:S4s3o/uz

「ぉ・・・助け・・・く」

「あら」

現状に至る事情を理解したのか、それとも自分を蹴り付ける相手の危険度を知っているのか。
許しを、助けを求めるように開かれた唇は。

「別に喋んなくていいわよ」

屈んだ、彼よりも小柄な彼女の細腕で塞がれた。

「これってある意味、丁度いい憂さ晴らしで八つ当たりで自己満足だから。
 満足するまで終わるつもりはないの。
 でも────────起きちゃったら騒がれるのも面倒よね?」

「んんーっ、んんんんんあ゜あ゜あ゜あ゜あ゜あ゜ーー!?」

チンピラの体が大きく跳ねる。
びくびくと、生きたまま調理台の上で焼かれる生き物のように。
事実その通りなのだろう。
チンピラの口を押さえる彼女の腕からは炎が吹き零れていた。
口内から喉奥へと流し込んだ炎で体内を焼いているのだ。生きたまま。
数秒それを続けると断末魔も声帯ごと焼き尽くされ、跳ねていた体は口から煙を上げて静かになる。

「ちょっとは気も晴れたし。アンタ、もういいわ」

必要の無くなった押さえが外された。
背を伸ばし、唯一焼かれずに残っているチンピラを視界に収めると。

「・・・・・・アレも始末しとかないとね。アンタに手を出した奴、生かしておく訳にもいかないし」

視線は僕に向けながら、腕を振ってそれにも火線を伸ばす。
とぐろを巻いた炎が彼を囲って火柱と化し、今度は断末魔も許さずに炭に変える。
最初に焼かれた彼も、既に生きてはいないだろう。

「っく〜〜! 朝からゴミ掃除をすると気分がいいわねえ・・・・・・って、アンタどうしたのよ?
 顔が青いわよ?」

朝から三人分の焼死体を生産した彼女は良いことをしたと言うように伸びをして、身を捩る。
それ自体はコキコキと小気味良い音が聞こえてきそうだったが、
生憎と彼女程に焼けた人肉の臭いに慣れていない僕は少々グロッキー気味だった。
猟奇殺人もかくやという死体なら幾らでも見てきたが、生憎と出来立ての焼死体には馴染みがない。
気分が悪いのが顔に出たのだろう。

「いや・・・流石に、この臭いには慣れてないから」

「ふーん。アタシにとっては慣れどころか何も感じないけど。
 確かに、普通は強烈な匂いなのかしら」

そんな僕に、彼女はずんずんと近付いて来て。
411隔離都市日記 ◆lnx8.6adM2 :2007/05/25(金) 23:48:51 ID:S4s3o/uz

「それでも────────あの女の臭いは消せないみたいだけど?」

胸倉を掴み上げ、僕を引き寄せて首の位置に頭を寄せ、鼻を鳴らす。
一呼吸分で突き放すように僕を押しやると、不愉快そうに顔を歪めていた。

「臭いって」

「あの闇人形の、ね。
 はっ! 相変わらずべたべたべたべたアンタに纏わりついてるみたいじゃない?」

夜宵ちゃんのことか。
彼女とは、どうしてか知らないけど仲が悪いからなあ。
その分の怒りをぶつけるように、彼女は鋭い視線で見上げてくる。
押しやられてと言っても大した距離ではないので、少し位置が近い。

「・・・・・・えっと」

「・・・・・・はあ」

数秒。
嘆息するように、あちらから視線を外された。

「まあいいわ」

そして、気を取り直したというように。
一歩下がり、組んた手を背中に隠して上目を遣いながら。

「それで、一応、困っているところを助けて上げたんだし」

妙に明るい声で。

「それなりのお礼は────してくれるわよね?」
ヴァーミリオン
【火炎災】の名を冠する、
隔離都市に数多存在する突き抜けた異端の一人である彼女、火神原 赤音(かがみはら あかね)はそう要求した。



僕、仕事あるんだけどね。
412変名おじさん ◆lnx8.6adM2 :2007/05/25(金) 23:52:06 ID:S4s3o/uz
投下終了。
前スレで書きためてから投下した方が良いとの助言を頂いたのですが、
分量的にはこれ位でいいのでしょうか?

極稀でも投下出来ればいいなと思いつつ、お目汚しにならぬよう祈ります。
413名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 00:22:48 ID:s3KNCFuB
「祈る」んじゃなくて「頑張って」ほしい
414名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 00:52:12 ID:GbVTOFZG
>>412
投下乙です!!
何かまだまだ登場しそうですね・・・
続きも期待してます
415短編 ◆qj8aj1j2zQ :2007/05/26(土) 09:24:25 ID:3gKDVvMD
ちとネタを思いついたので短編で書いてみました。

この本に書かれた事は現実になる。
この本が現実に出来るのは書いた人物が何らかの手段で感知できる範囲内だけである。
この本が現実に出来るのは、ある一つのジャンルに関する事のみである。
この本は複数存在し、それぞれに現実に出来るジャンルが違う。
この本を複数所有する事は『可能』である。

「何なのかしら?この本??」
そう言って、私は机の上に置いてあった本を見てみる。
悪戯にしては手が込んでおり、なんとなく逆らいがたい様子が見える。
その真っ黒な表紙には『ホラー』と書かれており、どうやらこの本は『ホラー』的な事を現実かできるようだ。
「ちょっと、試してみようかな………」
そう言って、私は何と書くか迷った。が、結局は書けなかった。ホラーな状況なんて嫌いだ。

次の日、私はお弁当を二つ作る。一つは私の分、もう一つは彼の分。
「おー●●は偉いなー。でアイツとはどこまでいった?まさかまだキスとかしてないだろうな!」
お父さんはちょっと心配性。だけど、良い人。
「まったく、お父さん。キスぐらい良いじゃないですか。」
お母さんは優しい。この二人を怖がらせるなんて出来ない。

○○君と登校するのは結構久しぶり。こころがどきどきと唸り始める。
交差点で○○君の横に誰かがぶつかる。隣のクラスの××さんだ。
その拍子に彼が倒れようとする。私も支えようとする。一緒に倒れた。
勢いでお弁当箱が零れ落ちる。道路にばら撒かれるお弁当。折角彼の為に作ったのに。

○○君は××さんと一緒に学校に行ってしまった。私は一人ばら撒かれた弁当を片づけ中。
変だ……何か変だ。
416短編 ◆qj8aj1j2zQ :2007/05/26(土) 09:25:32 ID:3gKDVvMD
昼休み、××さんと○○君が一緒に学食を食べている。なんで××さんがそこにいるの?
私だってそこにいたいのよ!!

放課後、××さんがノートを取っている。
書き終わった後、ノートを鞄の中に入れる。
そのピンク色の表紙で『恋愛』と大きく書いてあるノートを。
「許せない………」
今、私の顔は狂気に狂ってるだろう。
あの××もノートも許せない。あの女には狂い死にが当然の報いだ。
「あの泥棒猫……」

家に帰るとノートを開いてどんどんと文字を書き連ねる。
「死ね………死ね………死ね………死ね………死ね………死ね…
 …死ね………死ね………死ね………死ね………死ね………死ね
 ……死ね………死ね………死ね………死ね………死ね………死
 ね……死ね………死ね………死ね………死ね………死ね………」
あの恋愛ノート(仮)に書かれた内容もよく吟味する。まずはあのノートをどうにかするのが先決だ。
「あははははははははははははははははははははははは……
 ××さんなんて……××さんなんて……消えてしまえ!!」
ふらふらとする頭の中で私はノートを隠すと、私の体はばたりと倒れた。

その頃、××は、家の鏡の前でセクシーポーズの練習をしていた。
この恋愛ノートに敵は無い事は確認してる。幾ら食べてもずっと美人でいられる。
「●●も馬鹿よねー。幾ら頑張ったってこの恋愛ノートには勝てないのに」
そう言って、鏡の中の自分を見ながら笑う。
「鏡よ鏡。鏡さん?世界で○○君に好かれてるのはだぁれ?」
「それは私ですよ。泥棒猫………」
「えっ??」
鏡の中の××が急に顔を変え始める。怒り狂った鬼の顔になった鏡の中の××は腕を伸ばすと、彼女の顔を握りつぶす。
ケタケタと面白そうに笑うと、部屋の中を荒らしながらまた目的の物を見つける。
「あっ、私のノート!!」
そう言って××は、セクシーポーズの服装のまま部屋の外へと飛び出していく。

「待てぇぇぇぇぇ……」
ドンと××は誰かにぶつかる。
「待てよ姉ちゃん……人にぶつかっといて、何も無しかよ」
そう言ってや×ざな人が××を睨みつける。
そんなや×ざに……××はなんと恋をしてしまいました。
そしてそれからや×ざの愛人として末永く幸せに暮らしたそうです。

ケタケタと笑い声を上げながら、鏡の中の××が恋愛ノートにそう記している。
「まあ、死ぬのは可哀想だから、雌奴隷の幸せを十分楽しませてあげるわ」
●●の家の方向に向かいながら鏡の中の××は笑い続ける。
「本当は死ぬほど苦しい思いをさせたいけど、幸せなままでさせてあげますわ」
そして●●の家に着く。鏡の中の××はそこでふっと消えた。

●●が顔を上げる。そこで浮かべた笑みは、鏡の中の××と同じ物だった。
417名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 11:08:07 ID:kS/CW/vK
問題はこの話で萌えられるかどうかなんだが
ごめん俺には無理
418名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 14:08:02 ID:qmCRzmY2
>>416
ごめん、その・・・微妙・・・
419名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 14:27:28 ID:Rdz/OC9G
>>416
えと…その…い、いいんじゃない?
個人の趣味だし…うん。
420『閉鎖的修羅場空間』 ◆wGJXSLA5ys :2007/05/26(土) 15:26:11 ID:24ZREIW1
投下します
421『閉鎖的修羅場空間』 ◆wGJXSLA5ys :2007/05/26(土) 15:27:06 ID:24ZREIW1
「うぅん……なんだか……眠くなっちゃいました……ぅく……」
 過去のことを思い出しながら話を聞いていると、眠そうに欠伸を堪える霧。よかった……このまま寝てくれれば、この二人きりの空間から抜け出せられるかもしれない。
「いろいろあって疲れてるだろうからな。眠いときには寝といた方がいいぞ。」
「ごめん……なさい……私から呼んでおい…て……」
 謝りながらウツラウツラと頭が揺れる。瞼もほとんど閉じている。……眠くなるとすぐにこうなる癖、相変わらずだな。
「ほら、寝るならちゃんとベットで寝ろよ。」
 そう言って霧を抱えあげ、ベットまで運ぼうとすると……
「ありが…と……ございます……ぉ兄様……」
「っ!!」
 霧の一言に心臓がはねる。恐らく寝言なのだろうが、不意にいわれて慌ててしまった。
「……俺は、お前の兄じゃない。」
 霧の寝言に悲しい嘘を返し、俺はそっと部屋を出た。
「……はぁ。」
 なんだか妙に虚しさが残るな。もう一杯コーヒーでも飲んで落ち着くか。
 不気味なまでに静かな廊下を後にし、俺はリビングへの階段にを上っていった。
422『閉鎖的修羅場空間』 ◆wGJXSLA5ys :2007/05/26(土) 15:29:25 ID:24ZREIW1
ガチャ
 リビングのドアを開けると、翔子が中でウロウロしていた。何をやってるんだ?エラい焦ったような顔色だが……何かあったか?
「おう、翔子。起きたのか?疲れはとれたか?」
「あっ……」
 俺を見つけるなり、不機嫌そうな顔をして近付いてくる。顔だけじゃない。体から出るオーラが不機嫌そのものだ。
「ど、どうした?」
 こいつ、もしかして寝起きが悪い奴か?
「ど、どこにいたのかしら?貴方の部屋を尋ねても返事がなかったのだけど?」
 気持ちを落ち着かせようとしているのか、上品な言葉遣いで話す。顔はまた焦燥感たっぷりといった感じだが。
「ああ、さっきまで霧の奴とコーヒーを飲んで……ん?」
「………い、いいえ。そうよね。貴方がだれと何をしようが、あなたの勝手よね。」
「?……まぁ、確かに、俺が好きでやることだからな。」
「な、ならっ!私が貴方とコーヒーを飲むのも、私の勝手よね!?」
「……はいはい、砂糖とミルクは?」
「どっちもたくさん!あまーくしなさい!」
 ったく……素直に言えばいいのによ。だいたいなんで命令口調なんだよ……ちくしょう。
423『閉鎖的修羅場空間』 ◆wGJXSLA5ys :2007/05/26(土) 15:30:31 ID:24ZREIW1
トポトポトポ……
 二つのコーヒーカップに広がる黒い液体。その香りは嗅ぐだけで気持ちが和らぐ。そして片方のカップに砂糖、ミルクを入れると、たちまちその黒が汚される。
「綺麗、だよなぁ。」
 この模様も指紋や万華鏡のように、同じ形は二度とできないのだろう。だから俺はコーヒーにミルクを入れる度、この模様に魅入って……
「ちょっと!祐吾!まだなの!?」
 ……俺の安らぎをぶち壊しやがって。
「ほら、甘さはこれぐらいでいいか?」
「ん……うん、私の望んだとおりの味ね。」
 そりゃよかった。またこれ以上文句を言われたらたまらないからな。……しかし、いつまでもここでのんびりしててもいいのだろうか。
「わ、私がけ、け、結婚するなら、コーヒーを入れるのが上手な男性が良いわね。」
「それなら結婚するやつじゃなくてもいいだろ。コーヒーを入れるのが上手なお手伝いとか。」
「………バカ。」
「ん?なんか言ったか?」
「美味しいっていったのよ!」
 そう言って横を向き、不貞腐れた顔でコーヒーを飲む翔子。その横顔がまた、彼女の面影に重なる……そうだった。あいつと初めて会った時も、コーヒーを飲んでたっけ。
424『閉鎖的修羅場空間』 ◆wGJXSLA5ys :2007/05/26(土) 15:31:42 ID:24ZREIW1
以上です。次からは少し過去編にはいります。
425名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 18:23:30 ID:k4fGXjSa
>>417-419
神叩いてんじゃねぇよ、荒らし
426名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 19:06:44 ID:H/rFK5PP
なんでスルーできないのかな?
ゴミ
427名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 21:26:49 ID:Pc6GaZqv
ぶらまりキタコレ
428名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 22:27:47 ID:vS4c2p+1
報告乙
早速見に逝ってくる
429 ◆6xSmO/z5xE :2007/05/26(土) 23:55:45 ID:xPY8Gp4O
ちょっと間が空きましたが、投下いきます。
430ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/26(土) 23:57:13 ID:xPY8Gp4O
「ぐっ・・・!?」

 エルを見送って僅かに気が緩んだのを見計らったように、智の身体がぐらりとよろけた。
 壁に手を付け、倒れこみそうになるのを辛うじて堪える。
 だが、喉から急激にこみ上げてきたものは防げなかった。
 ぶほっ、と鈍い破裂音を立てて智の口が開き、大量の血が吐き出される。
 腹部からの流血が作る血溜まりに、それは時雨のように降り注いだ。

 酷使され続け、今また致命傷を負った身体を考えれば、当然の反応だった。
 しかし、ここで倒れたらもう二度と起き上がれないのも分かっている。
 だが、まだ倒れるわけにはいかない。
 壁伝いに手を付きながら、智は気絶した千早の元へゆっくりと歩み寄った。



 首に鬱血の痕を濃く残している千早は、死んだように動かない。
 酷い顔色と苦しげな様子で、無理矢理起こすのは気が引けるが、自然に目覚めるのを悠長に待っている時間は無かった。

「千早。千早、起きろ。起きてくれ・・・頼む」

 祈るように千早の身体を揺さぶる智を、そのたびに強い眩暈が襲う。
 揺さぶるという動作で自分の身体が僅かに揺れることさえ、今の智には重い衝撃になって返って来るのだ。
 倒れ込みそうになるのを堪えながら、根気よく何度も何度も千早を揺さぶり続け―――。

「ん・・・」

 祈りが通じたのか、千早からくぐもった呻きが漏れた。震える瞼が目覚めの予兆を伝える。
 緊張から唾を思い切り飲みこんだ智だが、鉄錆の強烈な味にむせ返ってしまった。

(そういえば・・・。口の周り、吐いた血でベトベトだっけ・・・)

 汚れた口元を乱暴に拭い、無理矢理にでも穏やかな表情を意識する。
 苦痛に歪んだ顔を極力出さないように。もう少しだけ誤魔化せるように。
 今が夜でよかったと心底思いながら、智は千早の目がゆっくりと開いていくのを見つめる。

431ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/26(土) 23:58:45 ID:xPY8Gp4O
「あ・・・?」

 焦点が定まっていなかったのか、千早が視線の先の存在を認識したのは、目覚めてたっぷり30秒は経ってからだった。
 初めて口付けた朝、思い切り殴り飛ばされて以来。狂うほどに恋焦がれた幼馴染の姿がそこにあった。

「智ちゃんっ!」

 頭より先に身体が動いた。潰れかけた喉の痛みも忘れて衝動的に飛びつき、抱きしめる。
 だがそれに僅かに遅れて、脳が智の出て行った朝のことを思い出させた。

 また殴り飛ばされる、拒絶される。恐怖が全身を駆け巡り、安易に抱きついたことへの後悔が頭を過ぎる。
 それでも千早は、智の背中に回した腕の力を緩めることは出来なかった。

(ごめんなさい、嫌いにならないで、いい子になるからどこにもいかないで―――でもやっぱり、他の女なんか見ないで)

 言葉にならない懺悔とそれでも捨てきれない独占欲が交錯し、千早の心を掻き乱す。
 そんな中、やや冷たい智の体温だけが現実だった。
 殴られても暴れられてもそれだけは絶対に離すまいと、両手をがっちりと握りしめる。
 しかし、どれだけ待っても千早の恐れる衝撃はやってこない。
 それどころか背中にゆっくりと手を回し、いたわるように撫で始めた。

「千早、目が覚めてよかった。・・・戻ってくるのが遅れて、本当にごめんな」

 優しい声、優しい仕草。それらに勇気付けられ、千早は胸に埋めていた顔を離して恐る恐る智を見上げてみた。
 暗くて若干見にくいものの、浮かべた微笑みは優しく、瞳もいつかの禍々しい色はしていない。
 間違いなく、千早の好きな智だった。

(戻ってきてくれた・・・やっぱり智ちゃんは私のところに戻ってきてくれたんだ!)

 その確信と同時に、張り詰めていた想いが一気に堰を切った。
 それは自身の正気と天秤に掛けるほどに肥大化していた恐怖や不安であり、千早を文字通り壊してしまう寸前で。
 彼女自身にも制御できないその感情は、最も原始的な方法で解放された。

「うわああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 智に縋りつき、あらん限りの大声で千早は幼子のように泣きじゃくる。
 そんな千早を、智はただ優しく抱き止め続けた。



432ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 00:00:23 ID:xPY8Gp4O
「落ち着いたか?」

 10分後。泣き声が止んだのを見計らって、されるがままだった智が声を掛ける。
 まだしゃくりあげているが落ち着きは取り戻したようで、コクリと頷くとようやく智の胸から顔を上げた。

 改めて見ると、千早の様子も智に負けず劣らず酷いものだった。
 首の痣は勿論だが、全体的に痩せこけ、只でさえ小柄な身体がさらに小さく見える。
 そんな中、泣き腫らした目元だけが際立って赤く、智には酷く痛々しく映った。
 かつての瑞々しい魅力に溢れた可愛らしい姿は見る影もない。

「本当にごめん・・・。俺の所為で、お前をこんな・・・」

 智が吸血鬼化したことで狂い出した歯車。その煽りを最も喰らう羽目になったのは千早だろう。
 関わらせまいと秘密にしておいたのに、その結果がこの有様なのだから。
 だからというわけではないが、全て伝えなければと智は思う。
 いや、知っておいて欲しいのだ。

「あのな、千早」

 見上げてくる千早の瞳は、赤く腫れながらも無垢な輝きを宿している。
 それは10年以上見つめ続けてきた幼馴染への全幅の信頼であり、しかし今の智には、その想いがどこか心苦しくもあった。
 異性愛という意味での千早の好意を知ってしまったからだろう。

 ずっと変わらないままの関係で居られると思っていた。
 けれど、そんなはずはなかったのだ。
 きっと、たとえ智が吸血鬼にならなかったとしても。
 意を決して、智は千早を正面から見つめた。




「俺は、さ―――吸血鬼なんだ」




433ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 00:02:51 ID:xPY8Gp4O
「え・・・?」

 予想通り、呆けた反応が返ってきた。それには構わず、智は説明を続ける。

「もちろん、元から吸血鬼だったわけじゃない。ここ最近、俺が夜な夜な外出していたのは知ってるだろ?」
「・・・うん」

 トーンの低い声で、千早の返事。この件が一連の出来事のきっかけであることを思えば、それも仕方ないだろう。

「あれはさ、人の血を吸うためだったんだ。吸血鬼は人間の血を吸わないと生きていられない。
 でも、吸わせてくれなんて他人に正面から頼めるわけない。
 だから、夜の暗闇に紛れてこっそりとターゲットを探してたんだ」

 ここで一旦言葉を切り、智は千早の反応を待った。
 色々予想してはいるが、どんな反応が返ってくるか想像が付かない。
 そして、いつの間にか俯き気味になっていた千早から返ったのは、搾り出すような低音だった。

「神川藍香・・・?」
「・・・ああ。多分、先輩のよく分からない実験に付き合ってこうなったんだと思う。
 だけど、俺は先輩を恨んでるわけじゃない。千早にも先輩を恨まないで欲しいんだ」

 声音にこそ戦慄を感じたものの、反応は想定内だったこともあり、智は淀みなく返答する。
 しかしそれが逆効果だったのか、千早の暗い雰囲気が高まり、智を更に圧迫する。

「あの女を庇うの・・・?」
「そうじゃない。どうなるか分からない実験を不用意に行った先輩の責任は確かにある。
 だけど、今更それを責めたって何の意味もない。先輩も責任を感じて、俺を元に戻す方法を考えてくれてたし。
 それに、何より―――」

 千早の圧迫感が強まっていく。以前の二の舞になる危険を感じたが、それでも智は怯まなかった。
 隠し、誤魔化すことばかり考えていたあの時と違い、自分の本当の気持ちを告白する。

「千早に知られたくなかった。そうしたら、人間としての俺を見てくれる人が居なくなってしまうような気がして。
 それに、本当のことを話して―――もしお前に怖がられたら、嫌われたら、自分の居場所が無くなると思った。
 俺は、お前との日常を守りたかったんだ」
434ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 00:06:27 ID:QYOkGfJw
 一気にここまで話して、智は大きく息を吐いた。
 言いたいことは全て言った。だからだろうか、返ってくるのが罵倒でも恐怖でも狂気でも、自分の全てで受け止めようと思える。

 暫く黙ったまま俯いていた千早だったが、不意に纏っていた重苦しい雰囲気が霧散した。
 顔を上げた千早が浮かべていたのは、智が最も慣れ親しんだ、ごく自然な笑顔だった。

「バカだね、智ちゃんは。私が智ちゃんのことを嫌いになるわけ無いのに。
 智ちゃんが何者でも、私にとって智ちゃんは智ちゃんだよ。
 私が大好きな、ね」

 当然のように言い切る千早。その表情は別段感情を露わにするでもない、まるで通学中に雑談しているかのような微笑だ。
 しかし、そんな笑顔を向けてくれる幼馴染だからこそ、智は自分の居場所が彼女の傍にあるのだと実感できる。
 何ら特別でないことが何より特別である―――智にとって、千早とはそういう存在なのだ。
 これまでもこれからも、それだけは変わらないものだった。

「はははっ。あははははははっ・・・・・・!」

 思わず笑いがこみ上げてきた。ついでに涙もこみ上げてきた。
 千早の肩に顔を押し付けながら、智は痛みも忘れて笑い続ける。

 分かっていた。千早が自分を嫌うはずないと。事情を話せばちゃんと理解してくれると。
 失敗する確率など万に一つしかない賭けだったのに、その万に一つの可能性を恐れて、ずっと言い出せなかった。
 もっと早く話していれば、きっとこんな結末にはならなかったのに。
 千早を信じ切れなかったから話せなかったのか、逆に千早が大切だからこそ話せなかったのかは、智にも分からない。
 一つ言えるのは、もう一歩を踏み出す勇気が智には足らなかったということ。
 死に瀕した今になってそんな単純なことにようやく辿り着くなど、本当にどうしようもないと思う。
 けれど、不思議と気分は清々しい。そういった思いの全てを込めて、智は笑い続けた。




 そうしてひとしきり笑うと、重苦しく圧し掛かっていたものが嘘のように消え去っていた。
 ここ数ヶ月久しく無かった、心からの開放感。
 しかしそれは、智を生の淵に留まらせる執念の消失でもあった。





435ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 00:09:06 ID:QYOkGfJw
 ふっと気が緩んだ。途端に猛烈な眠気が襲い掛かってくる。
 頭が重くなり、千早の肩に沈み込んでいく。だが、それが酷く心地よい。
 全身の痛みも、先ほどまでの苦しみが嘘のように何も感じない。
 その代わり、五感の感覚も感じなくなっていた。

「・・・・・・!? ・・・! ・・・・・・!!」

 千早が何か言っている気がするが、何も聞こえない。
 もう心残りが思い浮かばない智の心は、この沈み込んでいく心地よさに抗えなかった。

(心、残り・・・? いや、あったな・・・。ひとつだけ・・・)

 消え行く意識の中で、最期に会えなかった一人の女性の姿が浮かぶ。
 出来るなら会いたい。しかし、会わないでおくと決めたのは智自身だ。
 もう会わないという選択が、自分が彼女に対して出来る最良の手段だと思ったから。

(藍香先輩・・・。先輩には、家や立場や仕える人たちがいる。未来がある。
 屋敷でのあの数日間は・・・いや、一緒に部活をした数ヶ月は、全部夢だったんです。
 吸血鬼なんてものも、最初からいなかったんです。
 俺のことは忘れて、どうか幸せになって下さい。
 どんなに忌まわしい記憶でも、きっと時間が解決してくれるから・・・)

 我ながら身勝手な考えだと智は思う。本当なら、処女を奪い心を狂わせたことを身を以って償うべきだ。
 けれど、本当に藍香の為ということを考えるなら、会いに行くべきではない。
 こちらの一方的な自己満足の為に、藍香の心の傷を抉ることになるだけだ。
 時間があれば、或いは綸音がいればまだ出来ることもあっただろうが、今更言っても仕方ないことだろう。

(報い、だからな・・・これは・・・)

 それでも、やるべきことはやれたと思う。後悔は無い。
 むしろ千早の腕に抱かれて死ねることを思えば、これ以上何を望むというのか。
 智にはもう自分の表情を感じることさえ出来なかったが、それでも今浮かべているのは満ち足りた笑顔だと確信できた。

 そして―――。








 もう二度と、動くことは無かった。
436 ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 00:12:17 ID:QYOkGfJw
今回はここまで。
一応あとエピローグがありますが、話としてはこれが最終話という位置づけになります。
早めに――出来れば明日か明後日には投下したいと思っているので、あと一話お付き合いください。
437名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 00:14:46 ID:ZlkGa5Ks
>>436
久しぶりにktkr!
智が死んだかぁ・・・・・この後どうなるかが非常に気になる
特に先輩がどうなるかが激しく気になる
438名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 00:15:10 ID:RCaBrd9E
高村智
再起不能……死亡
439名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 00:22:20 ID:reMizh/3
キター!

智くん…ほとんど寝てたけどいい奴だったのに…
440名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 02:57:09 ID:RvuDw8q3
ブラッドフォースきてるー!!
智がついに召されてしまったか、いい奴だったんだか゛。
先輩がどうなるのか気になる。
441名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 04:09:44 ID:rZYDfJbp
つ、ついにキタッー!
やばい、先が気になって禁断症状が!
442名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 04:19:50 ID:B1XmPAna
智……いいヤツだった
時々とんでもなく鈍かったが
それは修羅場の主人公に相応しくもあった
合掌

あっちでエルが待ってるぜ(`・ω・´)
443トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/05/27(日) 16:31:35 ID:2sdbbi/m
では投下致します
444桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/05/27(日) 16:34:35 ID:2sdbbi/m
 第2話『迫り来る影』

 大学を途中で中退した俺は親の仕送りや援助なしに生計を立てている。
安曇さんや美耶子や雪菜がそれぞれに学業に励んでいる間に
俺は仕事で賃金を稼ぐのに頑張っているのだ。
(奈津子さんというのんべぇはともかく)
汗水働くフリーターの時給は限りなく低いが桜荘に居られるためならどんな苦痛も恥も受け入れてやろう。
 例え、店長が限りなくうさんくさくてもな。

「ヘイっ!! カズキっっ!!」
「何ですか店長」
「カレーライスは思いやりで作るんじゃありません。
味もわからないお客の野郎どもは味覚障害に等しい味覚しか持っていません。
賞味期限が切れた商品を知らずに喜んで家に持ち帰って食べている姿を想像するだけでワタシは卒倒してしまいます。
ゆえにコスト削減のために化学調味料をたくさんたくさん入れてしまうワタシを責められるはずがありません」

 なにいってんだ。この人。
 相変わらず意味不明な言葉を呟いているのは正真正銘のカレーを専門に扱っているであろう
店の店長、東山田 国照(ひがしやまだ くにてる)である。
年頃は40才であり、髪に白髪が染まり始めた中年男性だ。

 俺が何をトチ狂ってこんなおっさんが経営しているカレー専門店にアルバイトをやっているのは
奈津子さんから無理矢理紹介されたおかげである。
人手不足で困っていると聞いたので俺は面接を受けるところまでは良かったのだが、
店長の性格が思っていた以上にエキセントリック並みに頭のネジが数本外れていた。

最初は断ろうと思っていたが、店長があらゆる画像掲示板サイトに
俺のアイコラを張り付けてやると脅迫されたおかげで、俺は仕方なくここで働いている。
 とりあえず、働いてみると店長のコミニケーション能力の欠如やおかしな言動のおかげで客が来るどころか、
同期に入ったはずのホールスタッフさんたちも速攻で逃げた。
 本音を言うと俺も逃げたかった……。

 だが、奈津子さんの紹介だったのでそう簡単にやめる訳にいかなかった。
いや、やめられない事情があったので俺は自分の直属の上司である店長の尻を
サンダーキックで蹴りながら『カレー専門店 オレンジ』をどうにか客が来る=俺の給料が払えるまでに店は成長した。
 まあ、店長の料理の腕は悪くもないし、口さえホッチキスで止めていれば。それなりにここは普通のカレーの専門店であった。

「今は休憩時間だから店長が何を語ろうが、何をやろうが黙って見過ごしますが。
 お客さんがいる時にその口を開いたら、縛り倒しますよマジで」
「あっはははっっは。やれるもんならやってみろ童貞っ!! カズキの時給が0円まで下がってしまうだけですよ」
「その時は労働基準署に脱税と労働基準法違反で告発するから。多分、俺は余裕で勝てる」
「卑怯な……カズキはそんなことをする人間だと思ってみなかったぞよ」
 所詮、世の中は弱肉強食でありますよ店長。
 俺は勝ち誇った顔を浮かべると虚しくなってきたので休憩時間を早めに終わらせた。
445桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/05/27(日) 16:36:43 ID:2sdbbi/m
 店長が作ったカレーをお客様に運び、オーダーを取り、厨房に店長が変なことをしないかと見張っていると
 時間はあっという間に過ぎ去って行く。窓ガラスから見える景色はすでに陽が沈みかけていた。この時間帯になると忙しくなるが、
 俺にとっていつもの訪問客が顔を出す頃であった。
 カララン。
 ドアに付けられた鈴の音が鳴り響いた。

「いらしゃっい……って。雪菜か」
「はいはい。今日も雪菜ちゃんが遊びにやってきましたよお兄ちゃん。
 バイト先に知り合いがいると何かたまらず遊びに行った
 ついでにクレームを思いきり付けたくなるのは私の遺伝子がそうさせるのかな」
「ようするに俺の奢りでタカリたいだけだろう」
「店長さ〜〜ん〜〜!! 今日もお兄ちゃんの時給から私のカレーをツケてねっ!!」
「YES マイマスター!!」
「さすがにおかしいだろそれっ!!」
 厨房から店長の了承する声が聞こえてきたので、雪菜の注文したカレーのお代は俺の少ない時給からパタパタと飛んで行くのであろう。
「というわけで、お兄ちゃん。私は、カレーライス 極甘でお願いしますねっ」
「ぷっ」
「お・に・い・ちゃ・ん。どうして、そこで笑うのかしら? 
 ここのお店は極甘を頼むお客に対して嘲笑するのが接客の基本的な教育方針なの」

「いえいえ。お客様。私が考えた接客の基本は心遣いと思いやりを込めた笑顔をお客様に届けるこそだと思っています。
 単純にもう女子高校生なのに小学生すら食べないような甘さに挑戦するお客様を

 お子さまだと思っただけですよ」

「ふぅ〜ん。お兄ちゃんは私のことをそう思っていたんだ……。
 どこがお子さまだよ!! 私だってちゃんと女の子をやっているんだよ。
 身長も伸びだし、胸もちゃんと大きくなっているんだから」

 そこから雪菜はカレーが出来上がるまで自分が女の子としていかに成長しているのかと
 お客が店内にいることが気付くまで延々と語っていた。
 気が付くと顔を100倍激辛カレーを食べたように真っ赤に染めていた。
 恥ずかしさのあまりに気まずい雰囲気の中で頼んだカレーを2杯もおかわりした。
 夕食はいつも桜荘の住人が集う憩いの場で今日も安曇さんが腕を奮って夕食を作っているのだが、雪菜は曰く。

「育ち盛りなんだから。大丈夫だよっ!!」
「そんなに食べたら太ると思うんだけどな」
「そ、そ、それは……あみゅぅぅぅっっっ!!!!」
 奇妙な叫び声を捨て台詞を残して雪菜はカレー専門店を脱兎のように逃げた。当然、料金払ってないでやんの。
446桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/05/27(日) 16:38:54 ID:2sdbbi/m
 営業終了時間の20時になると俺はカレー専門店のオレンジの制服をロッカーに閉まって
 タイムカードに帰りの時刻がちゃんと刻み付けられてるを確認して後片付けを手伝わずにさっさと桜荘に帰宅する。
 汚れた皿ぐらいあの店長に洗わせても別に罰は当らないだろう。

 すでに陽が沈み、夜になっていた。
 暗い暗い帰り道を僅かな電灯の明かりを頼りにして、仕事で疲れた体を強制的に動かしていた。
 通い慣れた道を歩いていると今日の一日の終わりを実感する。
 何も変わらない極平凡な日々に俺は感謝するはずであった。

 ふと。
 俺の背後から足音が聞こえてきた。
 さっきまで誰もいなかったのに何者かの気配がする。

 少なくても、俺のアテにならない第六感が一般の通行人ではなくて……自分に危害を加えそうな第三者の存在を訴えている。
 更に周囲の空気が一瞬にして変わった。
 春の季節なのに自分の背中に悪寒が走り、目の前の暗闇が更に深淵に潜り込んだような。
 試しに早歩きで歩いてみよう。

 少しだけ速度を早めると同じように自分ではない足音が早まって行く。
 これだけで確信した……背後にいる者は深山一樹を標的にしていると。
 これは被害妄想から来る架空の出来事ではなくて、今現実に起きている確かな危機である。

 後ろを振り向くと……長い髪を黄色のリボンで纏めた女性がニヤリと微笑んでこっちを見ていた。

 や、やばいっ!?
 確信が恐怖に変わる瞬間であった。
 後ろさえ振り向かずにさっさと逃げてしまえば良かったと俺は後悔していた。

 顔は長い髪に隠されて夜の暗さでぼんやりとして見えなかったが。
 そこから溢れだしている尋常じゃあないまがまがしいオーラーは正常な人間が出せるものではない。
 陰湿で人間という枠組みから外れた、壊れてしまった人間。
 
 一般人の俺に抗う手段はない。
 唯一、できることは逃げるのみ。

「うわわっっっ!!」
 情けない悲鳴の声を出して、俺は全速力で逃げ出した。
 幸いにも、今歩いている場所から桜荘はそんなに離れてはいない。
 いくら、陰気な女がオリンピックに出れそうな記録を持っていても、男の俺の方が体力的に分がある。
「待って……ズ……ゃん……」
 女性が必死に引き止める声が聞こえても、今度は振り返らずに全力で逃げるだけ。

 次の曲がり角を曲がれば、桜荘の敷地が見えてくる。そこに逃げ込めば……俺の勝ちだ。
 桜荘の玄関を開けると俺はすぐに鍵をかけた。何とか安堵の息を付くと腰の力が思わず抜けて尻餅をついた。

「はぁはぁはぁ……」
 荒い呼吸をしながら俺はしばらくの間、追われている時を思い出して怯えていた。
447桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/05/27(日) 16:41:13 ID:2sdbbi/m
 それからのことはよく憶えてはいない。
 安曇さんが作ってくれた夕食を暖めて憩いの場で皆の雑談する声を聞きながら
 俺はさっき起きた出来事を誰にも言わずに。

 いつものように振る舞っていた。桜荘の住人には心配させたくなかったから。
 共同のお風呂が空く時間を待って、入浴して、自分の部屋に戻って……。
 布団に潜り込んだ。先程の恐怖を忘れるためにはさっさと寝た方がいい。

「明日もバイトが忙しいから……とりあえず寝よう」

 嫌な事は寝ることで忘れることが出来る。
 ただ、先程の悪夢の続きが真夜中でも再開されたらどうなるのであろうか。

 布団に入り込んだ瞬間に俺の携帯電話が安息の静寂を破るように鳴り響いた。
 俺は一体誰から電話がかかってきたのかと携帯電話の着信相手を見ると少しだけ驚愕した。

「白鳥 更紗?」
 ば、ば、ば、かなっっ!!
 夕方の屋上で幼馴染として関係が壊れたあの日の光景が自然と思い出された。
 更紗からの電話に俺は動揺していた。

「どうして、更紗が俺の携帯電話の番号を知っているんだ? 

 あの日を境にして携帯の機種だって変えて……メルアドや番号だって変えたんだぞ。
 知っているのは、桜荘の住人か店長しか知らないはずなのに……」
 当然、俺は故郷の話を桜荘の住人や店長に一度だって話したことはない。
 あの苦い思い出を語れるほど俺の犯した過ちを軽くない。
 更紗と彼女たちを結びつける接点はどこにもないので、それらの可能性は排除される。

「まさか……さっきの通り魔は更紗だったのか?」
 あの黄色なリボン……更紗のトレードマークだったリボンの色だった。
 だが、幼馴染が俺の後を追い掛けるような通り魔のような真似をやったのかは想像すらできない。

 そして、今度は携帯のメールを受信したメロディが流れた。
 俺は送り主が白鳥更紗だと確認すると躊躇なしにメールの中身を開けた。

(カズちゃん。今からそっちに行きますね)
448桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/05/27(日) 16:43:20 ID:2sdbbi/m
「ーーー!?」
 そのメールの一文に俺は再び震えだしてしまった。
「こっちに来るだと……本気か!? 正気の沙汰じゃないぞ」
 すでに玄関やあらゆる場所に鍵が閉められて、中から人が入る場所はない。
 ピッキングや泥棒のスキルを身に付けない限りは桜荘に侵入することができないはずだ。
 それでも、誰かが侵入すれば住人の誰かが気付く。ここの廊下は夜に歩くと思っている以上に足音が響く。

 ドンドンっっ!! ドンドンっっ!!
 ドンドンっっ!! ドンドンっっ!!
 ドアをノックする音が聞こえてきた……そんなに強い力で叩くな。他の住人が起きるだろうに。

「カズちゃんカズちゃん。ねえ、開けて? 開けてよぉ……」
 更にドアを叩く音が大きくなってゆく。
 正にドアを叩き壊して俺の部屋に侵入しそうな勢いだ。
 当然、鍵は閉めているので更紗はそう簡単に入ってこれないが。
 無闇に暴れて住人の皆さんの迷惑になるよりは俺の部屋に入って懐柔した方が良さそうである。
「わかった……今すぐ開けるから騒がないでくれ」
 と、ドア越しに聞こえるように俺は言った。更紗はぴたりと暴れるのをやめて大人しくなってゆく。
 そして、ドアを開けると……約1年ぶりに幼馴染と再会を果たした。

 幼馴染の更紗は1年前の面影は残っているものの、容姿は昔と違って大人の女性に更に磨きが走っていたが、
 その顔色に生気は篭もってはいない。俺の姿を見かけると笑顔を浮かべて、我を忘れて俺の胸に飛び込んできた。
 咄嗟に態勢を取ることを忘れていた俺はそのまま布団の方向にダイブする。
 幸い、クッション代わりに布団のおかげで大した痛みもないのだが、
 更紗が泣きながら俺の体にしがみつている状況はあんまりよろしくない。

「ひ、久しぶりのカズちゃんっっ!! カズちゃんだぁぁぁ!!」
「さ、更紗。頼むから離れてくれ。ついでに大きな声を出すな。案外、ここの防音対策は0に近いから普通に聞こえるぞ」
「絶対に嫌っっ!! もう、離れないんだから。カズちゃんと私はずっと一緒なんだからね!!」
「更紗。お前はどうやって俺の住所を突き止めた。親には口止めをちゃんとやったつもりなんだが……」
「えへへっ……愛の力ですっっ!!」
「んなわけあるかっっっ!!」

 更紗が俺の体をしっかりと抱きしめながら、蔓延なる笑顔を浮かべていた。
 愛の力で俺の住所が突き止めることができたなら、

 この世界で行方不明になっている人たちだって簡単に探すことができるであろう。
 いろいろと偽装工作して家に来たんだから見破れるはずがないというのに。

「深山さん……真夜中に騒がないでくれませんかっっ!!」

 安曇さんの罵声と同時に勢い良く扉が開かれて……その目の前の光景に彼女は思わず絶句していた。そりゃそうであろう。
 俺と更紗が抱き合っている姿を見ればな。

 こうして、俺が恐れていた最悪の展開の狼煙が見事に燃え上がったわけだ。
 どうしよう。マジで。
449トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/05/27(日) 16:44:13 ID:2sdbbi/m
では投下終了致します。
450名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 16:58:37 ID:ZsM9fuxJ
>>449
GK!!
嫉妬キター
451名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 17:06:41 ID:rZYDfJbp
>>449
このスレでは希少なネタ的甘甘嫉妬…
グレイトォ!
452名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 21:14:36 ID:aF7PvmA/
とりあえず、雪奈は俺がお持ち帰りますね
453 ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 22:38:59 ID:QYOkGfJw
投下いきます。
昨日の続きでエピローグです。
454ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 22:40:49 ID:QYOkGfJw
 公園を思わせる広大な庭園を、幼子が駆けている。そしてそれを、メイド服の少女が追いかけていた。

「智さま〜、待ってください〜〜〜」

 フラフラした危なっかしい動きながら、幼子の足は中々速い。対するメイドはスカートということもあり、ゆっくりとした速度だ。
 と言っても大人と子供という差は歴然であり、メイドがその気になればすぐにでも追いつけるだろう。
 それをしないのは、2人が追いかけっこで遊んでいるということだった。
 幼子は疲れを知らないかのように疾走するが、差は徐々に縮まっていく。

「ほ〜ら智さま、捕まえましたぁ」

 メイドが幼子を後ろから抱きすくめ、そのまま倒れこんだ。
 地面は芝なので怪我の心配は無いが、倒れながら身体を反転させ、自分が下敷きになるようにする。
 当の幼子は今の回転が大層お気に召したようで、彼女の腕の中で嬉しそうに笑っている。
 少女はそれが愛しくて、一層強く抱きしめて頬擦りした。



 そして、そんな彼女らを離れた場所から見つめる人影が2つ。
 やや強面で大柄なスーツ姿の男性と、落ち着いた雰囲気を纏ったメイド服の女性だ。
 何かを懐かしむような、どこか悲しげな瞳で2人を―――いや、幼子を見つめている。

「あれから3年。月日が経つのは早いものですね・・・」
「・・・そうだな。藍香お嬢様が亡くなられて、もうそんなに経つのだな・・・」

 元・藍香専属の運転手、達川礼二は、屋敷の侍従長にして妻である昭子の声に静かに応えた。

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455ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 22:43:28 ID:QYOkGfJw
 智と綸音が姿を消したことが分かった時、藍香は存外に落ち着いていた。
 綸音からは何も聞いていないが、彼女がすることなら間違いはないだろうという、絶対的な信頼があったからだ。
 実際、最初の一日はどうしたのだろうと訝しむ程度だった。
 しかし二日経っても戻らない段階になって恐慌状態に陥り、礼二たち屋敷中の人間に綸音と智を探すよう厳命した。
 そしてその翌日、繁華街中心部にある廃工場群の空き地にて、綸音の遺体を発見。
 何があったのかミイラ化しているが、間違いなく綸音の死体だった。
 智は発見できなかった。まさか智が綸音を殺したのか、と誰かが言った。
 そんなはずないと思いつつ、礼二たちは智を探す。手がかりは何も無く、当てずっぽうに探すしかない。
 日に日に不安定さを増していく藍香、連続女性失踪事件による世情不安が焦燥感に拍車をかける中、探し続けた。



 そして綸音の死体を発見してから10日ほど経過したある日、一つのニュースが藍香の耳に入った。

『市内にて2人の男女の死亡を発見。
 男は腹部の大量出血に加え、片腕が無い状態。女は現場に転がっていた刀剣で胸を一突きされていた。
 2人が抱き合い重なるように倒れていた現場の状況から、警察は殺人と自殺の双方の観点で調査をすると発表。
 死亡者は現場宅の一人息子の高村智、その友人の折原千早』



 そのニュースを知った藍香は完全に発狂。程なく意識を失い、半植物状態となって病院に担ぎ込まれた。
 その時の神川家の混乱たるや相当のものがあったが、事態は更に混迷の度合いを深めることになる。
 入院して3ヶ月後、藍香の妊娠が発覚したのだ。

 藍香の妊娠を受けて、神川本家では連日議論が繰り広げられた。
 そしてその結果、藍香を外界から完全に遮断、隔離することを決めた。

 一応、藍香には許婚―――勿論、家が勝手に決めたものだ―――がいる。
 藍香の卒業後に本格的な話を進める予定で、本人同士の面識はほぼ無かった。
 当然性的な関係などは無い。ならば藍香を妊娠させたのは別の男であり、生まれくるのは不義の子ということになる。
 しかし本家の直系となる跡継ぎは必要だ。そして、日々衰弱が進む藍香に改めて子を為させるのはリスクが大きすぎる。
 そうして出たのが、藍香を隔離し秘密裏に子供を産ませ、時間を置いて藍香と許婚の男の子供として発表する、という案だったのだ。

 問題は母体の安全だった。医者が言うには、衰弱の激しい藍香に出産に耐えるだけの力はないとのことだった。
 だが藍香の家族は『母体はどうなっても構わないから何としても出産させろ』と命じた。
 扱いにくく育った娘より、新たな跡継ぎの方が有用だと断じたのだ。


456ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 22:45:33 ID:QYOkGfJw
 そして数ヵ月後、藍香は男の子を産んだ。様々な機械に繋ぎ、無理やり延命措置を施しての出産だった。
 昔からの世話役として同伴を許された礼二と昭子だったが、その余りに痛々しい様子は正視するに耐えなかった。

 虚ろな瞳の藍香に、生まれたばかりの赤子が持たされる。
 といっても、情けからの行為ではないということが礼二には分かった。
 『病床の藍香が命と引き換えに愛する夫との子を産んだ』という美談を仕立てたいのだ。
 その証拠に、カメラを持った一人が様々な角度から無遠慮にシャッターを切っている。
 隣りの昭子が手を握ってくれなければ、礼二はこの場で暴れ出していたかもしれない。
 確かに扱いにくい主人ではあったが、礼二や昭子にとっては長年成長を見守ってきた娘同然の少女だったのだから。

 そして、もういいだろうと神川当主―――藍香の祖父が赤子を取り上げようとした時。
 奇跡―――少なくとも礼二や昭子はそう思っている―――が起こった。



「・・・・・・さ・・・と・・・・・・・・・し・・・」

 もう喋ることもできまいと思われていた藍香が喋ったのだ。
 これには礼二たちは勿論、医者も大いに驚いた。
 しかし、それを最後に藍香は死んだ。
 沈黙で満たされた病室の中、何も知らない赤子だけがその生を主張するように泣き声を上げていた。



 それは、これ以上無い美談の種となった。
 最後の最後に母親として、生まれてきた子供に名前を付けて死んだのだ。そう、誰もが思った。
 藍香の望みを汲むということで、生まれた男児は『さとし』と名づけられた。

 しかし、礼二と昭子は知っている。
 『さとし』が、産まれた子供を名づけるものとして発せられた言葉ではないと。
 藍香の虚ろな瞳が捉えていたのは手元の赤子ではなく、今は亡き愛しい少年の姿だったと。
 そして、『さとし』の本当の父親がその少年―――高村智であることを。


457ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 22:47:23 ID:QYOkGfJw
 礼二と昭子は、智が吸血鬼だったことを知っている。
 智が死んだというニュースが流れた前日、礼二は智から電話を受けていた。
 藍香と智が知り合って間もなく、智と礼二は互いの電話番号を交換していたのだ。
 藍香に何かあった時の為、という名目だったが、それが思いもよらないところで役立つことになった。

 智は礼二に全てを伝えた。
 自身の変貌、部室での毎日の吸血、藍香への強姦と狂気の目覚め。
 綸音の死、連続女性失踪事件の真相、これから自身がしようとしていること。
 最後に、藍香を頼むと言って電話は切れた。

 そして、智の死と同時に失踪事件はピタリと止まった。
 智は為すべきことをしたのだろうと、礼二は彼の冥福を祈った。
 一方マスコミは、智の事件が失踪事件に関係有りとして、ここぞとばかりに騒ぎ立てた。
 時期が悪かったのだろう。事件への世間の関心の高さを考えれば、2つの事件を関連して考えてしまうのも仕方ない。
 だがそれを差し引いても、本当に酷い騒ぎだった。

 曰く『事件の真犯人は智であり、今度は幼馴染の千早に牙を剥いたが、相打ちになった』
 曰く『千早の説得で罪の重さを思い知った智は自殺を図り、彼を愛する幼馴染と共に心中した』―――など・・・。

 男の犠牲者が初めて出たことに加え、2人が仲良しで有名な幼馴染だったことも災いした。
 共に唯一の子供を失くした高村夫妻と折原夫妻は、際限なく膨らんでいく無責任な悪意に耐えかねて街から姿を消してしまった。
 学校や近所の人間は、忌まわしい記憶に蓋をするように智や千早のことを忘れていく。
 世間の事件への熱も時と共に薄れ、事件は迷宮入りの色を濃くしていった。

 もう、この街に智たちのことを覚えている人間は殆ど居ない。
 藍香のことにしても、忌まわしい記憶として触れることをタブーとされ、別宅の使用人たち以外の話題に上ることもない。

 時間は残酷に、けれど優しく、全ての人間から辛い記憶を薄れさせていった。

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458ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 22:49:56 ID:QYOkGfJw
 図らずも父と同じ名前を付けられた彼は、偶然にも漢字の表記まで父と同じものを付けられた。
 その智は今、かつて藍香が暮らしていた神川の別宅で暮らしている。
 本当なら神川家の跡取りとして本宅に引き取られるはずだったのだが、智が藍香の家族の誰にも懐かなかったからだ。
 それどころか、本家の用意したどんな人間にも懐かない。泣き疲れることもなく執拗に叫び続けた。
 例外は礼二や昭子、別宅に勤める使用人といった、藍香と高村智の双方に縁のある者たち。
 彼らに抱かれると途端に大人しくなるが、そこで彼ら以外の者が取り上げると、また火が付いたように泣き出すのだ。

 使用人の一人は『お嬢様が守っているんだ』と言った。
 またある者は『智坊ちゃんは高村様の生まれ変わりだ』とも言った。
 滅多なことを言うものではないと礼二や昭子は彼らを嗜めたが、内心では仕方ないと思った。
 別宅の使用人の多くは藍香に同情的であり、本家の人間をよく思っていないのだ。

 ともあれ、やむを得ないということで、物心付くまで智はこの別宅で育てられることになった。
 智は素直で愛らしく、それでいてどこか男らしく、すぐに屋敷中の人気者になった。
 特に若いメイドに大人気で、智の世話役は毎日熾烈な争いによって決められるという。
 普段は従順なメイドたちだが智のことになると怖いほど顔色が変わるので、礼二もこの智争奪戦については口を出していない。
 そういえば父の高村智も、藍香だけではなく幼馴染の折原千早にも好意を寄せられていた。

(血は争えん・・・。流石は高村殿の息子ということか)

 血。このフレーズに、礼二は一つの事実を思い出した。

「吸血鬼の息子・・・か」

 ふと口をついて出た言葉に、傍らの昭子が振り返る。その表情に浮かんでいるのは不安だった。

「あなた・・・」
「分からんよ、俺にも。取り敢えず変わったことは何も無いし、普通の人間として生まれてきたと思いたいが・・・」

 そう、今のところ智にそれらしい兆候は現れていない。
 昼に弱いわけでも十字架に弱いわけでも好き嫌いがあるわけでもない。
 銀の食器に抵抗を示すこともない。当然、誰かの血を吸っている様子もない。
 それと、これは礼二が警察の知り合いから聞いた話だが、司法解剖された高村智の身体は酷く衰弱していたことを除けば
普通の人間と何も変わらなかったらしい。
 肉体組成が人間と同じなのか、藍香の実験で吸血鬼に転化したことが関係しているのかは分からない。
 とにかく、吸血鬼の存在が世間に知られることはなかった。

 いずれにしろ、何も分からないのではただ見守るほかない。
 強いて出来ることといえば、この先何かあっても挫けないよう、父親に負けない強い心を持った男に育てることだろう。
 この先智が立ち向かわねばならないのは、覚醒するかもしれない吸血鬼の血だけではないのだ。
459ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 22:52:53 ID:QYOkGfJw
 あと一年もすれば、智は神川の本宅へ引き取られる。そして、名家の嫡子としての教育が始まるだろう。
 『神川智』である以上、智は否応なくそれを受け入れていくことになる。
 だが、もし智が自分の本当の父親を知ったなら。母の想いと死に様を知ったなら。

 礼二と昭子は自発的に話すつもりは無い。使用人たちにも、高村智のことは口外しないよう厳命している。
 しかし、もし智が感づいて真実を明かすよう求めてきたなら、全て話そうと思っている。
 その時、智はどうするだろうか。
 父を恨むか、母を恨むか、神川の家を恨むか、それとも自身の存在を恨むか。
 或いは何も変わらず生きていくか。

 智がどのような道を選んでも、それを全力で支えていきたいと礼二は思う。
 昭子や他の使用人たちもきっと同じ気持ちのはずだ。






「智さま、智さまぁ〜! どこにいらっしゃるんですか〜〜〜!!」

 響き渡る大声に礼二たちが智の方へ視線を戻すと、若いメイドが一人、小走りで駆けていた。
 心配で泣きそうになっている表情だったが、芝生に寝転がって智に頬擦りしている同僚を見るや否や、般若の形相へ変貌する。

「あ〜〜〜〜〜!! こら由香、智さまから離れなさいよ! 今日の智さま係はあたしなのにっ!」
「イヤですよ〜だ。夏美が目を離すのがいけないんじゃない」
「し、仕方ないじゃないの、どうしても手が離せなかったんだから! それに手を離したって、たった10分くらいのことじゃない!
 ・・・ってコラっ、聞きなさい、離しなさい! 智さまが苦しがってるじゃないの!」
「そんなことないよぉ。少なくとも夏美の洗濯板に比べればよっぽど気持ちいいはずだもん。
 ほぉら智さま、おっぱいでギュってしてあげちゃう。智さまなら、好きに触ってもいいんですよ?」

 由香と夏美、2人のメイド少女が智を挟んで対峙する。
 互いの言動は徐々にエスカレートし、辺りにピリピリした緊張感が立ち込める。
 それはまさしく、男をめぐって繰り広げられる女の修羅場そのもので。
 遠目にも分かるほど瞳を潤ませ、頬を火照らせ、豊満な胸元に智を掻き抱く由香も。
 そんな由香を、歯を食いしばり、震えるほど拳を握り締め、血走った目で見つめる夏美も。
 少なくとも、3歳の少年に向けるような表情でないのは明らかだった。
 そんな2人をよそに、由香の胸の谷間でジタバタともがいていた智の動きが少しずつ弱々しくなっていく。

「あなた、行きましょう。このままでは智さまが窒息死してしまいます」
「うむ・・・。しかし、男にとってはある意味究極の死に様だな。あれはあれで羨まし―――」
「・・・あなた?」

 つい出てしまった本音に、昭子の冷たい視線が飛ぶ。
 礼二はわざとらしく咳払いして誤魔化した。
460ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 22:55:30 ID:QYOkGfJw

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                         ・

 時が流れ、いつか礼二も昭子も由香たちメイドも、藍香や高村智のことを忘れてしまうかもしれない。
 それでも、彼らが生き、思い、為したものまでもが無くなるわけではないはずだ。

 何も為せないまま死にたくない。
 礼二は電話の別れ口での少年の言葉を思い出した。

(高村殿・・・あの子が、あなたの生きた証です。この世界に残せたものです。
 お嬢様もきっと、あなたを愛したことを後悔なさらなかったはずです。
 ご自分の生に、どうか胸を張って下さい)



 吸血鬼となった少年が残した血。敬愛する令嬢と交じり合った血。
 新たに生まれた血の行く末に、祝福あれ。



 心からの祈りを捧げ、礼二と昭子は幼い主の元へと駆けていった。
461 ◆6xSmO/z5xE :2007/05/27(日) 22:57:22 ID:QYOkGfJw
 以上でブラッドフォースは完結です。

 まずは今回の分について。礼二と昭子ですが、初登場ではありません。
 智が別宅を脱走しようとして見つかったSP(第22回)が礼二、別宅で目覚めた智を藍香の元へ案内した(第20回)のが昭子です。
 それと明言はされてませんが千早は自殺です。智の死に絶望し、銀刀で後を追うように自刃しました。


 勢いで始めた話だったので、正直ちゃんと完結できるとは思ってませんでした。(当初はエルと綸音はいない予定でしたし)
 最後まで書ききれたのは、レスをくれた皆さんのお陰です。本当にありがとうございました。
 ただ、ストーリーを考えるあまり嫉妬・修羅場分の薄い作品となってしまったので、次何か書く時は頑張ろうと思います。


 では、また近いうちに。
462名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 23:01:38 ID:xHDYWZRX
>>461
や、やばい。
俺の涙腺が決壊してしまった・・・orz
なんとも切ない話でしたが、GJです。
3歳で修羅場を呼ぶ智くんはやばいね・・・
次回作も是非頑張ってください。
463名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 23:08:53 ID:reMizh/3
リアルタイムイヤッホウ!
お疲れ様でした。次回作も頑張ってくだちい。


智くん二世の先行きが恐ろしい…
464名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 23:10:32 ID:ZlkGa5Ks
>>461
先輩カワイソス(´・ω・`)
子も親と同じ道を歩むのか気になるわw
465名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 23:10:37 ID:OeqPpJCd
>>461良いSSが完結するのは嬉しくて寂しい。
作者は嫉妬・修羅場が少ないって言うけど、自分の中では十分堪能できた。
というか、主人公に惚れた人が全員死ぬって十分な修羅場だろw

本当にお疲れ様でした。そしてGJ!!
466名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 23:34:45 ID:7LMrKIlu
>>461
GJ!
でもやっぱりイデオンエンドは悲しい……
467名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 23:37:41 ID:Gqn2tTNk
>>461
完結おめ。
一つの物語を完結させるなんてまじ凄いと思うっす。切ない話でしたが凄く面白かったです。
468名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 23:50:34 ID:RCaBrd9E
それぞれ救いがありつつ絶望しつつ…みたいなバランスも考えたエンドだったなぁ。
救いがなかったのは綸音ちゃんくらいか?
最終話を考えずに書いて来たとは思えない、綺麗な終わり方だったね!
469名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 00:01:35 ID:zDpFpe9f
この終わり方は素晴らしい…嫉妬とかは別にして
470名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 00:04:02 ID:hoqWt3x9
その後のgdgdな展開が俺の脳を掠めた・・・

許婚氏はどうなったんだろうか?気になってならない。
471名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 00:29:44 ID:BT25KHpu
>>461
な、泣かんぞ!確かに嫉妬スレの歴史に残る名作だったが、
これしkhのknではnknぞ…
あれれ、おかしいな。目の前がぼやけて…
472 ◆6xSmO/z5xE :2007/05/28(月) 00:50:47 ID:faPCDPjD
>>470 許婚氏はどうなったんだろうか

 一応そこも考えてあります。もっとも、気持ちのいい話ではありませんが・・・。
 下に書きますが、本編には関係ない補完話として受け止めてください。










 結論から言って、消されます。(多分、社会的に)

 許婚男の家柄は神川家のずっと下。もちろんかなり上流のエリートですが、神川家にとっては種馬以上の存在ではありません。
 藍香の子供が、神川本筋の血を引いていることこそが大事なのです。(藍香以外に男児が生まれなかったのも大きい)
 そして智が生まれた以上、許婚男はむしろ邪魔な存在になったのです。

 美談等の話はあくまで建前。智が許婚男の子でないことは公然の秘密です。藍香の家族もそれを分かっています。
 (本人同士の面識はほぼ無かった、とありますし。もちろん高村智のことまでは、一部の者しか知りませんが)
 しかし、それに突っ込むことは許さないという暗黙の強制を、許婚男を消したことに現しているのです。

 いやぁ、上流階級って怖いですね。智2世の行く末、本当に大変そうです。
473名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 01:22:14 ID:WC9AX+wz
乙かれさまでした。
完結はさびしいなぁ



吸血鬼・同じ呼び名からアレを想像してしまった



サトシの奇妙な冒険  第二部 〜嫉妬潮流〜


神川智「君たちは次に『この泥棒猫!』と言う」

由香・夏見「「この泥棒猫!・・・・・・・・・はっ!!!」」
474名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 02:07:49 ID:BT25KHpu
>>473
燃え尽きる程のBLOODHEAT?
475名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 02:19:52 ID:GgvjssPG
>>461
お疲れ!

ちまたでsolaというのが物語的にも修羅場的にもとてもいい話と聞くが……

刺したり、帰って!とか叫んだりそんな作品だったりする?
もう主人公のことしか見えないというキャラとかいたり?
476名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 02:31:46 ID:6ZMY5fSB
>>461
完結おめ&乙&GJです!!
終わるのは少し寂しいけど、良い作品が完結する事で得られる感動はやはり素晴らしいですね。
しっかりと作品を完結させる事の出来る職人さんは尊敬します。
良い作品をありがとうございます。
次回作も超期待していますので頑張ってください。
477名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 02:49:54 ID:2skz+MBQ
>>475
先々週、刺されたキャラがいて、先週分で「帰って!」があった。
正しく主人公の事しか見えないキャラが、さらに今週で修羅場を引き起こす模様。
微妙に嫉妬とは違うような気もするが、見た方が分かりが早い。
478名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 03:48:55 ID:QeOf78Qs
>>461
なんかネタ切れで無理矢理終わらせた感があるな、最後の先輩や千早の扱いとか
つかエル出した時点が一番盛り上がったところで後は蛇足に近い

479名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 04:28:25 ID:FVgL/stG
>>461
乙カレーです
前回智の死に悲しみつつも
「あの世ではエルと二人で仲良くね」
とか思っていたがこの結末

あっちでも修羅場ってそうだ
480名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 07:43:51 ID:yP2BP78S
>>461
乙です!
感動しました〜、さすがは神、おもしろかったです
次の作品を全裸で待ってますww
481名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 10:09:04 ID:X8f0lA1B
>>473
究極嫉妬少女(アルティメット・ジェラシーイング)が出たりするのか
482470:2007/05/28(月) 11:46:13 ID:iDEkT6w5
>>472
いい加減な俺様のレスにこんな長レスありがとう。

次世代話の妄想がふくらみ申す。
こういうミジメな許婚ネタはかなり燃えるなあ。大藪みたいでイイ。

許婚氏の留学先での隠し子対智二世の対決話でトリップするよん。
まさに二次(以下略
483名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 17:19:12 ID:slLpUpC1
へたれな主人公ばかりだな。

まあそういうのだと楽だろうね。

駄作しかできんがな(わらい
484名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 17:34:02 ID:NVdWZOU6
>>483
だ が そ れ が い い っ て 言 っ て る だ ろ ! !
485名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 17:48:16 ID:UJt7LgwQ
>>478
確かに失速したとは感じたな

まぁ、それは作者が一番分かってると思うが
486名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 18:16:19 ID:3FwsT3uV
それでも完結させたのは凄いよ。
487名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 18:18:29 ID:1DFE17zs
中には途中でぶん投げる職人がいるからな。
そういう中での完結乙華麗
488名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 18:29:03 ID:6X8MFPKf
>>487
とりあえずメ欄にsage入れようぜ
489名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 21:46:59 ID:xQs4nyDE
荒らしが必死に作者を叩いているけどさ・・
作者以上の作品を書けない荒らしにとっては負け犬の遠吠えだな
特にレベルの低い荒らし方をしている荒らしにとっては惨めだ
490名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 21:50:28 ID:3FwsT3uV
得意げに書いてるけど嵐に反応する奴も嵐って知ってるよね?
491名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 00:06:40 ID:5wbj5HLF
荒らしというより普通に感想だと思うんだがね。
マンセー以外は荒らしとかいう思考は勘弁してほしい。
492名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 00:11:39 ID:2JWbLUoI
荒らしの定義について語るなら、避難所へどうぞ。
493名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 00:25:22 ID:1KG8AR+n
>>3に従わないなら荒らしと変わらないってのがスレ全体の了解
文盲じゃなきゃわからないはずはない
494名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 00:28:04 ID:1e2Gbfy+
神職人への嫉妬から、スレ住人を避難所へと監禁する荒らし・・・・・・ごめ、何でもない。

職人方は、身に受ける嫉妬をエネルギーに変えるといいんだぜ!

>>461
GJ!


荒らしはID変えて、自分の書き込みに批判的なこと書いてたりもするから、
みんな嫉妬する人間の知略に負けるなよ!
495 ◆Xj/0bp81B. :2007/05/29(火) 03:20:37 ID:cpboQAra
投下します
496すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/29(火) 03:22:45 ID:cpboQAra

翔が作ったオムライスをペロリと平らげると、向かいの椅子に座る澄香が眠たそうに瞼を擦り始めた。
「眠いのか?」
翔が問うと、澄香はぶんぶん首を降る。しかし、その仕草の側から、彼女は欠伸を噛み殺していた。まるで大晦日に必死で眠気を堪え
る子供のようなその様子が可愛らしくて、翔は表情を崩した。
「眠いなら、寝た方がいいよ」
「大丈夫です。眠くないです」
「いいや、嘘だな。だってほら、目の下に球磨が出来てる。顔色だってよくないし、少し休んだ方がいいよ」
優しくなだめる口調で翔が言うと、澄香はうつ向いて、ぶつぶつと小さな声で文句を言う。
「が寝たらセンパイ帰っちゃうんでしょ……」
「は?」
「……だって、帰ってほしくないんだもん」
ふてくされたような顔をする澄香。そのいじらしい言動に、表情に、翔は胸が熱くなるのを感じた。思わず破顔して、
「大丈夫。帰ったりしないよ」
「本当、ですか?」
澄香は疑うような上目遣いで言った。
「ああ、もちろんだ」
翔はそう言って微笑んだが、澄香はまだ安心出来ない様子で、翔の瞳をジッと見つめて言う。
「約束ですよ。絶対帰っちゃ駄目ですよ?」
「分かってる。約束するよ」
「あと、私が寝るまで手を握っていて下さい」
まるで手のかかる子供のような澄香に苦笑いを浮かべて、翔は頷いた。
すると澄香はようやく納得した表情を浮かべて立ち上がり、フラフラと翔の元に漂ってきて腕を掴んだ。腕が引かれる。促されるよう
に立ち上がると、翔は、おぼつかない足取りの澄香を支えつつ、二階にある彼女の部屋へと向かった。
ベッドに入っても散々駄駄をこねる澄香は、ついには一緒に寝たいとまで言い出した。丁寧にそれを断ると、彼女は再びふてくされた
顔をしたが、翔が優しく手を握ってやると安心したのか、存外あっさりと寝息を立てはじめた。澄香に掛けられたタオルケットの胸部
が、小さく上下している。何があったのかは分からないがよほど疲れていたのだろう、グッスリと眠ったようだ。それを確認すると、
翔は握り締められた手をほどいて、澄香の額を撫でてやる。
497すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/29(火) 03:24:52 ID:cpboQAra

こうしてマジマジと眺めてみると、やはり澄香は自分より年下なんだな、と思う。翔の同級生に比べれば、顔立ちはずっと幼いし、体
つきも……だ。しかし、そのまだまだあどけなさの残る顔も体も、一枚の薄い皮の裏には辛い過去を隠している。母親の死、実の父親
からのレイプ、学校からの孤立、そして堕胎。それら全てが澄香に暗い陰を落とし、度重なる不幸に反抗する力さえ失った彼女は、全てを
無気力に受け入れてきた。それは、生きる事に絶望していたからなのかもしれない。
しかし最近、澄香は少しづつ変わり始めている。以前のような感情と行動が逆さになった気持ちの悪い笑顔は見せなくなったし、年相
応の無邪気さを見せるようにもなった。何より、今を心の底から楽しんでいるようにも見える。そんな澄香の変化を間近で見ていると
、一時期は貧乏くじを引かされたと思っていたのに、今では彼女を守ってやりたいとさえ感じている自分に気付く事がある。その気持
ちの半分は同情であるが、残りの半分は心安らぐ暖かな気持ちだ。うまく言語化は出来ないが、その気持ちは妹を持つ兄の気持ちに似
ていると思う。
今はまだ澄香の事を好きなわけではないかもしれない。しかし、こういう穏やかな瞬間の度、確実に澄香に心惹かれていく。今すぐに
、というわけにはいかないが、先を感じさせるにはそれで十分だった。焦る事はないのだ、まだ時間はたくさんあるのだから。


さて、困った事にやる事がない。
澄香は寝てしまっている。鞄の中には今更やる気のおきない参考書のみ。リビングにはテレビとゲーム機があるが、他人の物を勝手に
いじるのは気がひける。しかし、やる事がないというのは退屈なものだ。いっそ帰ってしまいたいくらいだが、澄香と約束した手前勝
手に帰るわけにはいかない。仕方なく、何か時間を潰せるものはないかと澄香の部屋の中を見渡して、思う。
498すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/29(火) 03:27:37 ID:cpboQAra

びっくりするほど生活の匂いのない部屋だ。六畳ほどの広さの部屋は正方形で、部屋の北側にドアがあり、南側にはベランダへと繋が
る大きな窓、東側には小さな窓が取りつけられている。澄香のベッドは朝日がさしこむように、東側の窓の下に置かれている。その窓
を彩るレースのカーテンは、長い年月放置されていたのか、その純白さを失い茶色く焼けてしまっていた。
ベッドの隣には、勉強机が一つ。机の上には教科書やノート、筆記用具が散らばっていた。その他にこの部屋にあるものと言えば四角
いテーブルが一台、部屋の中央に置かれているくらいで、それ以外は本棚も、テレビもコンポもない。壁は全て剥き出しでポスターも
カレンダーも貼っていなかった。もちろん女の子らしい小物やぬいぐるみ、写真なども一切なく、以前訪れた中野の「何となく女の子
らしい部屋」にさえ遠く及ばない殺風景だった。
この部屋は勉強して寝るだけしか出来ない空間。あまりに寂しすぎる部屋。しかし、その寂しさが以前の澄香の生活をありありと教え
てくれる。
つまり澄香は、孤独と暗い過去に人間らしさを塗り潰されて、抜け殻のように淡々と生きてきたのだろう。この部屋の全てが、彼女の
そういった灰色の過去を写す鏡になっているのだ。そう思うと途端に澄香に対する憐れみと、この部屋に対する居心地の悪さを感じた

特に、この居心地の悪さがいたたまれない。まるで、下手なホラー映画を見ている気分だった。出来れば澄香が起きるまでこの部屋で
時間を潰したかったのだが、どうも、借りてきた猫のようにはなれそうもない。翔は澄香にタオルケットをかけなおすと、おもむろに
部屋を後にし、階段を下っていった。
広いリビングには、大きなテーブルが一つある。まだ澄香の残した食器が散らかっているが、それはまた後で片付けよう。そのテーブ
ルの向こうには、以前水樹由美と共にサッカーを見たソファがあり、翔はそこに腰を下ろした。その柔らかすぎず、堅すぎず体を飲み
込む感触が心地よく、思わず溜め息をもらす。すると、まるでそれを待っていたかのように、体の奥から疲労がジワジワと広がり、テ
スト勉強で寝不足であった事を唐突に思い出した。
499すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/29(火) 03:29:15 ID:cpboQAra

秋の陽気は暖かく、窓から指し込む柔らかな光が、翔の体を優しく包む。瞼を閉じてしまえば、すぐにまどろみの中に転がり落ちてし
まいそうだった。
しかし、さすがに人の家で勝手に寝るわけにはいかない。誰かに見られたら、さぞ怪しまれる事だろうし、何より失礼だ。だから、絶
対に眠るわけにはいかないのだが、それでも、少しくらいはウトウトしても構わないはずである。だいたいにおいて、仮に自分が失礼
なら、客を放ったらかしにして寝てしまっている澄香だって失礼だ。それに自分は寝不足であり、起きるまで待っていにゃならんわけ
であり、暇を殺さなければならないのだ。
少しくらいなら。
翔は瞳を閉じた。
すぐにまどろみが、意識を刈り取っていく。
500 ◆Xj/0bp81B. :2007/05/29(火) 03:30:45 ID:cpboQAra
久しぶりの投下完了

最近は空気が乾燥してます。みなさんも喉や鼻をやられないよう気を付けてください。
501名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 08:18:11 ID:Lonb7hDx
作者の優しさに俺が泣いた
502名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 08:29:09 ID:D7DJ7sND
晴香姉さんマダー?
503名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 10:57:05 ID:cZ+uj+ib
>>477
ワオ
DVD買ってみるかな

>>500
GJです
504名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 14:42:25 ID:rovRh13L
>>500
GJ
なんか寝てるだけなのに死亡フラグが見えるぜ
505名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 20:03:40 ID:xpyKj0Ul
>>492
避難所は荒らしついて語るスレじゃない、何でも誘導するなよ
506名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 20:10:09 ID:eqgqCGXn
本スレで語られても困るけどなと釣られてみる
507名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 20:15:24 ID:lj16HTbo
せっかく雑談スレがあるのに……。
508名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 20:17:12 ID:xpyKj0Ul
>>506
荒らしはどこでもスルーが基本だけどな
509名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 21:22:05 ID:tevGU8pA
>>508
こんな当たり前の事今更言ってるお前らにワロタw
510名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 23:21:40 ID:2eYnpwdp
>>500
どうでもいいんだけど文章の途中で改行を入れるのはやめてくれー。
画面サイズに合わせようとしてるんだろうけど、誰もが同じサイズではないし。
511名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 00:16:01 ID:cJ2cVVsb
>>507
荒らしから逃げるためにあるのに荒らしの話題ばっか話してたら本末転倒もいいとこじゃね?
512名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 00:28:39 ID:FYDTDLfj
>>500
投下乙です!!
今回は嵐の前の静けさ、と言う感じかな?
とりあえずこれからどうなるのか気になりますね・・・
あと>>510が言っているように、文の途中ではなく句読点で改行した方が見やすいと思いますよ。
513名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 00:43:01 ID:arjFQ750
嫉妬スレ・ヤンデレスレ・キモ姉&キモウトスレ

何か今年になってからハイレベルな争いが始まったのは気のせいだろうか?
514名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 00:54:55 ID:bVEm2c5/
争いなんてないに?
きちんと住み分けられてるじゃんよー。
515名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 00:56:19 ID:BjMkkoe6
このスレから分化みたいな形ではあるけどね
516名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 01:02:50 ID:bVEm2c5/
そういや、『ストーカー』と『キモ姉妹』はここからの分化だけれど、
『ヤンデレ』と『依存』って結構前からあるよな……。

発生の背景ってどうなってたっけ?
517名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 01:20:23 ID:FYDTDLfj
>>513
競い合って良いSSが現れるのはいい事じゃないかな?
結構住人もかぶってると思うし・・・

>>516
ストーカーは終焉だよ。あまりにも細分化しすぎた。
ヤンデレもここからの派生だが、依存は結構前からあったような・・・
518名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 01:28:08 ID:bVEm2c5/
>>517
thx。
そういや、依存はエロゲ板の方からだったわな。忘れてた。
519名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 10:59:08 ID:2SO/n/A1
キモ姉妹スレはいかんせん最初に投下された作品が神すぎた。現在連載中の籠の中。
520名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 11:12:51 ID:bpLQWBSG
その籠の中もそろそろ完結だし
そうなったらスレ統合の可能性も出てくるかもしれんな
521名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 12:11:25 ID:FYDTDLfj
>>520
完結したらスレ統合という経緯が分からん
522名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 12:27:39 ID:tuqzt9wE
てか、キモ姉&キモウトを作った経緯は荒らし対策ための分断工作でしょ
あちらの>>1の思惑通りに荒らしは流れて嫉妬スレは平和になった

523名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 14:16:50 ID:FYDTDLfj
>>522
あそこはここじゃなくてヤンデレスレからの派生なんだが・・・
524名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 14:35:15 ID:+6FXrhgT
統合とか、ホント勘弁。
厳密には色々と違いがあるし。

あっちにはあっちの、こっちにはこっち独特の味わいがある。
敢えて混ぜる危険を冒さなくてもいい。
分かれたものがそれなりに続いてるのには理由があるんだって。

七戦姫とか九十九の想いみたいな多種多様な属性・出自の女の子が出てくるのとか、
キャラを限定した専門スレじゃ見れないし。

どっちもこのまま行って欲しい。
525名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 14:41:05 ID:2QP3LuSo
>>523

いや、嫉妬スレからの誘導目的だが
526名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 14:47:30 ID:JcCZ3PBJ
>>524
確かに多様性があるのは良いことだ。

>>525
ま、スレ立てた本人しか分からんしどっちでも良いと思うよ。
527名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 16:16:57 ID:J0ZG2XF3
キモカワイイヒロインの物語を書きたいと思ってるんだが…。
どんな条件が当てはまるだろうか。

・人の話を聞かない、または都合よく解釈する。
・笑顔で人を殴れる、刺せる。
・過剰なスキンシップをやたらと取りたがる。(匂いをつけて所有権主張)
・親が自宅に居ない。(監禁向き)


あとどんなのがあるだろう。
わりと本気で書きたいと思ってるので案があれば教えて欲しいっす。
528名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 16:20:40 ID:rpAQEKx4
変な追加武装身につけて魅力が減ったんだ!
529名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 21:31:44 ID:TEHeIkwS
>>527
優先順位が 彼氏>[越えられない壁]>世界 とか。
ファンタジーなんかで彼を生け贄に捧げないと世界が滅亡すると言われても、
笑顔で「あっそ、じゃあ滅亡すれば?」と言い切れる女の子。
530名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 21:59:59 ID:al36H06X
>>527
一応、追加設定の例を挙げると

・主人公に頭を撫でられると尻尾を振って喜んで正気に戻る
 (ヤンデレ状態でも可能)
・主人公に頬にキスするだけで顔がゆでたこのように
 頬が真っ赤に染まる
・エロ本関係は自分の系統モノしかダメだと洗脳したりする
・ドロボウ猫は哀れ、三味線に歌いながら隠し持っていた包丁で
 笑顔で恋敵の腹部を刺す
・監禁する時はちゃんと暴力を振るうことなく愛で洗脳する

以上
思いついたのはこれだけかな
531名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 22:03:42 ID:OAKRCezJ
ギリシャ神話のヘラとかは結構素敵な嫉妬女神だって以前本スレで聞いた。
だが、妻としては最高でいようとするが、母としては最低なんだよな。
息子には徹底して冷たいし、かといって娘は然程活躍できてないし。

つまり、愛の結晶はしっかりと孕むが、
それが産まれて夫婦の間に立ち入るなら容赦しないって感じがあればいい。
532名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 22:37:30 ID:3JfQ2AKG
>>527
・家事はプロ級か壊滅的に下手のどちらか。
前者ならば三食すべて管理し、パンツの洗濯から部屋の掃除というエロ本駆除を行う。
さらに主人公がそれを拒む、もしくは他の雌猫にやらせると「私が嫌いになったんだ…ブツブツ…」
後者ならば主人公がヒロインの世話を焼き続けており、常時依存モード。両親と不和とか、家に居なければ倍率アップ
こちらの多くは自分が依存している事に無自覚で、主人公が寝とられてから自分の気持ちに気付くタイプ。
いつもならば食卓に美味しい料理が並び、向かいの席には主人公が座り、談笑しながら食事をするのに、
彼に女が出来たあの日からコンビニ弁当を暗い部屋で黙々と食べるヒロイン。
始めは何ともないが一日ごとに辛くなり、すぎた過去の日々を思い出し、頬から滴り落ちる涙。
誰が悪いのか…あの女に決まってる!!
533名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 22:47:44 ID:hK5TBuj7
>>532
一生のお願いだから後者で書いてくれまいか
534名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 23:02:10 ID:+6FXrhgT
>>532
まあ、依存に無自覚なのも楓ちゃんみたいなお世話タイプの例もあるわけだがな。
尽くす対象がいなくなった時に、世話しながらも世話させてくれる相手に依存してたって気付くことも。
家事は好きだったはずなのに、何故こんなにも虚しくて胸が苦しいの?
あの人の笑顔がないから・・・?
私が好きだったのは、家事じゃなくてあの人が喜んでくれる事だったの・・・?
で空鍋をコトコト、みたいな。

そういえば、あの家で主人公の下着は一緒に洗濯していたのか・・・?
もしかして、楓ちゃんが洗濯から干すのから全部やってた?
535名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 23:04:38 ID:+6FXrhgT
あと、>>532の後者タイプはツンデレがなりそうだな。
失って初めて有り難さに気付くとか。

何かとらドラとかゼロ魔のアレがそのまんま当てはまりそう。
536名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 23:08:48 ID:al36H06X
>>534
てか、>>534のネタでSSは充分に書ける

楓や言葉様のような健気な少女はこのスレじゃあ結構受けますよ
537名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 23:22:21 ID:1yanxNr6
逆にとらとらの姉虎はコテツミンにベッタベタで、
538名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 23:26:09 ID:1yanxNr6
途中で送信しちまったorz

>>535
逆にとらとらの姉虎はコテツミンにベッタベタで、
それが消えかかったから普通に戻ったな
あの部分は個人的に大好きだ



まぁ、寧ろサクラの方が俺の嫁だが
539名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 23:28:46 ID:vrbfbOe1
>>534
既得権益をいかにして確保し続けるかが妹&幼馴染みのたしなみ
それはそうと>>536は楓様にも様をつけろ
540名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 23:50:57 ID:jK50VxDt
魔法・超能力スレでこのスレ向きのssがきてたので報告しとく
541名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 00:33:50 ID:6P1HnEFV
隣に住んでいる幼なじみが非常にツンデレで、
人前でツンツン、二人きりはデレデレを初期設定とする。
しかし主人公がある女子に告白されて以来、
人前ではツンヤン、二人きりだとデレツン。
つまり新種のツャンデレになる。
自分では内心(黒化/恋心)を周りに隠しきれているとおもっているが、
主人公は幼なじみから染みでる黒/桃色/赤オーラに
どう対応して良いか分からなくなり女子の告白を受けることに。
あとは王道。

というベタ展開で新種のツャンデレを作ってみたんだが…
汎用性皆無だな、こりゃ。
542 ◆Xj/0bp81B. :2007/05/31(木) 00:34:01 ID:yeo0P5Hj
投下します
543すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/31(木) 00:36:38 ID:yeo0P5Hj


暑くて目が覚めた。
柔らかだった日の光は、刺々しさをまし、翔の顔を斜めに焙っている。その光を遮るように手をかざし、ゆっくりと瞼を開けた。
ピントのずれたカメラのようにボンヤリとした視界に、真っ先に飛込んできたのは、窓の外の茜空だった。西の空で雲を纏う太陽が、
黄金色に輝き、翔を照らしている。
少しずつ、輪郭がはっきりしはじめる。
翔は体を起こし、グルリと首を回した。澄香の家である。リビングに置かれたソファの上である。首を回した際に、
視界の隅で捕えた時計は、五時半を指していた。
「あら、お目覚めかしら?」
背中から、声がした。おもむろに振り返ると、ぼんやりとした視界の中に人の影。目を擦ると少しだけ輪郭がはっきりして、
エプロン姿の女性がテーブルの上を片付けているのが見えた。
「ずいぶん、ぐっすりと寝ていたようだけど、疲れてたの?」
女性、は口許を押さえてクスクスと笑う。その女性が水樹由美であると、ぼんやりとしていた頭が認識した途端、急に頭が冴えた。
しまった、と思う。他人の家でうっかり寝入ってしまったわけである。由美はリビングで寝ていた顔を知っている程度の男の姿に、
さぞ驚いた事だろう。
「あ、えっと、すいません。こんなところで寝てしまって」
「いいのよ、気にしなくても」
そう言って貰えると少しだけ気が楽になる。
「あの、それで澄香……さんは、起きましたか?」
今は五時過ぎ。澄香が寝たのは十一時半頃である。もう起きていても、おかしくない時間だ。
しかし、翔の問いに、由美は答えづらそうに眉を寄せた。
「まだ、よ。ぐっすり眠っちゃってるわ。最近、と言ってもここ二、三日だけど、眠れてなかったみたいなの」そう言いつつ、
由美はエプロンで両手を拭きつつ、翔の隣に腰を下ろした。
「あの娘、最近様子も変だったし、ずっと心配だったのよ。ようやく眠ったようで、ひとまずは安心だけど、澄香に何があったのか、
翔くんは心当たりない?」
544すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/31(木) 00:39:08 ID:yeo0P5Hj

由美は、原因はあなたでしょう、とでも言いたげな瞳を翔に向けてくる。その瞬間、今まで感じていた申し訳なさが霧散し、
腹の底に亀裂が走った。
「心当たり、ですか……」
その亀裂を隠すように、翔は澄香についての記憶を辿った。まず、初めに頭によぎったのは、今日澄香が玄関で見せた澱んだ瞳だった。
あの瞳は、何か狂気を宿していたように思う。次に死人のように青白く変色した彼女の顔。あれは、明らかにおかしな顔色だったが、
なるほど原因は寝不足のようだ。しかし、肝心の原因はいくら頭を捻ったところで、何も分からなかった。
そもそも、翔には澄香に何かをした覚えはない。彼女が喜ぶ事はほとんどしてないかもしれないが、
傷付けるような事もしていないはずであり、安眠を妨害するような事などやっていない。
「ないですね」
記憶の裏付けを元に、はっきりと言う。
「本当にない?」
「ええ、ないです」
すると、おかしいわね、と由美は腕を組み、こめかみを指で押さえた。そして、そのままの態勢で、由美はかまをかけるように言う。
「てっきり、翔くんと喧嘩したものだとばかり思ったわ」
そういう考え方は嫌いだ。今でこそ澄香との関係も喉元を過ぎたが、当時は貧乏くじを引かされた気分だったのだ。もとはと言えば、
それも全て由美により導かれたわけであり、そもそも沼の底に引きずりこんだ奴が、真っ先に翔を疑うなどおかしい。
瞬間、腹の底に風穴があき、そこから熱い感情が流れだした。
「そんな事するわけないじゃないですかっ!!」
自分の声に、自分が驚いた。必要以上に大きな声に、熱い感情に水がかけられ、翔は咳払いをして場の空気を沈める。
由美は驚いた顔をしていた。翔は柔らかな笑みを浮かべ、今度はゆっくりと、静かに言う。
「澄香と喧嘩なんてした事ないですよ」
呆気にとられていた由美は、すぐに取ってつけたようにぎこちなく笑い、
「あ、あら、そうなの。ご、ごめんね、疑ったりして」
「いえ、気にしないで下さい。俺も、少し熱くなってしまって」
沈黙。嫌な空気が辺りに立ち込めた。
その沈黙を、由美がわざとらしい咳払いと共に打ち破る。
545すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/31(木) 00:43:42 ID:yeo0P5Hj

「あの娘さ、変わったよね」
由美は遠くの茜空を見ているようだったが、その瞳に写っているのは別のもののように思えた。
「……ええ、そうですね」
しみじみと、意味を噛み締めて呟く。
澄香は変わった。そしてこれからも普通に向かい、どんどん変わっていくだろう。
そういった感慨を、由美が震える一言で振り払う。
「なんか、悔しいな」
「えっ?」
何が悔しいんだろう。
翔がいぶかしげに由美を見ると、彼女は自嘲したように鼻で嗤い、言を繋げる。
「だって、そうじゃない? 私はもう二年近く澄香の側にいるのにさ、あの娘を変えられなかったのよ。
だけど、翔くんはたった一週間で澄香を変えちゃったんだもん。だからかな、時々思うのよ、
私は澄香に何もしてあげられていないんじゃないかって、ね」
自嘲が、由美の唇を歪ませる。自分が情けなくて、おかしくてたまらないといった様子であった。
しかし彼女の瞳は夜のヒマワリのように元気を失くし、悲しげに萎んでいる。きっと、こっちが真の感情なのだろう、と翔は思う。
「そんな事ないですよ」
「あら、慰めなら、いらないわよ」
別に慰めようと思ったわけではない。翔はゆっくりと首を横にふりつつ、
「苦しい時、悲しい時、寂しい時、誰かが側にいてくれるって凄く嬉しい事なんです。気の利いた言葉なんかよりずっと、
気持ちが落ち着くんですよ。由美さんは、今までそれをやってきたんでしょう?だったらもっと胸を張ってもいいと思います」
驚いた顔をする由美に、翔はさらに話を続ける。
「俺は、たまたま目の前にボールが転がってきたFWのようなものです。ゴールを決めて目立つかもしれませんが、
そのきっかけを作ったのも、守ってきたのも、支えてきたのも全て由美さんです。目に見える何かは残らないかもしれませんが、
それは記憶には残ります。きっと、澄香も分かっていると思うし、由美さんに感謝しているはずですよ」
そこに嘘はない。ただ、ひとつ訂正があるとすれば、ボールがたまたま目の前に転がってきたわけではないという点だ。
ボールが溢れる場所を、翔は知っていたのだ。
546すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/31(木) 00:46:22 ID:yeo0P5Hj

そうとも知らず、驚いた顔をしていた由美の顔が、ゆっくりとほぐれていく。彼女は嬉しそうな、照れたような微笑みを浮かべ、
そっか、と言った。
「ありがとね、翔くん。翔くんって、優しいのね。何だか、澄香があなたに惹かれた理由が分かった気がする」
そう言う彼女の瞳はたまらなく優しい。それが恥ずかしくて、翔は彼女から視線を反らした。頬が熱い。それでも由美の言葉は、
鼓膜をやわらかく擽り続ける。
「私ね、少しだけあなたの事を誤解してたみたい。以前はさ、仕方なく澄香に付いてきているって感じだったんだけど、今は違う。
澄香の事、凄く大事にしてくれてるって分かる。それに不思議なんだけど、あなたは澄香の事を何でも分かっているみたい」
それは同じ経験をしているからだ、という言葉を、喉元のギリギリで飲み込んだ。それを言ったところで、どうにかなるわけでもないし、
同情は、されたくなかった。
だから、翔はこのまま話が続く事を危ぶんだ。どこかで尻尾を出して、それを引っ張り出され、
真実を白実のもとに晒されないとは限らないのだ。何とか話題をそらしたい。そのとき、ふと視界の隅に綺麗に陳列されたゲームソフトが見えた。
すごい数だ。その中の一つに目が止まり、翔は思わず小さな声をあげた。
「ん? どうしたの?」
「あ、いえ、由美さんもサカつく(Jリーグプロサッカーチームをつくろうの略)やるんだなぁって」
「由美さんもって、じゃあ翔くんもやるの?」
「ええ、まぁ」
すると、由美は新しい玩具を見つけた子供のように瞳を輝かせ、
「じゃあ、今度対戦しない?いい加減新しいモチベーションが欲しいのよ。ほら、あのゲームって長くやってると飽きちゃうでしょ?」
「いいっすね」
話題をうまく反らせた事にホッとして翔が言うと、由美は嬉喜として身を乗りだした。顔と顔とが近くて、
彼女の呼吸の音さえ聞こえてきそうで、少しだけドキドキした。
547すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/05/31(木) 00:48:24 ID:yeo0P5Hj

「決まりね、じゃあ、いつ戦う?明日?明後日?」
「い、いや、もう少しまちましょうよ。いろいろ準備も必要ですし……」
すると由美は顔をひっこめ、人指し指で顎を撫でながら、うーんと唸った後、名案を思い付いたとばかりに手を叩いて、
「じゃあ今週の土曜日なんて、どう?」
「そうですね、それくらいなら……」
「よし、決まり。私、まだ人と対戦した事ないから楽しみだわ」
そう言って笑う由美はひどく嬉しそうで楽しそうだった。まるで少女のようなみずみずしさを持つその笑顔は、少しだけ澄香に似ていた。


しかし、由美と対戦が実現する事はなかった。
548 ◆Xj/0bp81B. :2007/05/31(木) 00:50:15 ID:yeo0P5Hj
投下完了です。
喉はよくなったんですが、今度は咳が止まりません。明日、か明後日には続きを投下します
549名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 01:12:44 ID:94XcrZm6
続きが気になるひきだ
楽しみにしてますよ
550名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 09:46:00 ID:SlRE3TOU
>>548
>しかし、由美と対戦が実現する事はなかった。
こ、これは死亡フラグがたっていたと言う事か・・・
551名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 12:35:17 ID:xyOD0oU+
>>548
続きが気になりすぎて頭がおかしくなりそうだ
552名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 12:43:14 ID:WvQ1bqrq
>>548
バカヤロウ・・・安易にフラグなんぞ立ててしまうもんだからそんな目に・・・無茶しやがって・・・

続き楽しみにしてます。
553名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 17:15:26 ID:8hPLw//l
>>548
実在する商品の名称使うときは気をつけた方がいいぞ
登録商標ってのがあるんだから


ともあれ、続きは楽しみにしてるよ。
554名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 17:20:07 ID:4xKPSozI
普通に使うぶんには何の問題もないはずだが。
555名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 17:22:29 ID:hjN1YmWm
>>548
それ以前につまらないことが問題wwww
556名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 17:24:28 ID:CuBBiGS7
>>556
つうか信者の自演GJがUZえええええ

557名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 17:25:52 ID:4xKPSozI
自爆すぎてワロタ。
558名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 17:29:06 ID:jnsKlPQk
>>555
禿同
本気ですみかは駄作、絶対信者が自演してるNE☆


559名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 17:29:57 ID:Zz2a/c9Y
>>555-558
荒らし乙

560名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 17:43:35 ID:r0X77rlM
GJは自演かもしれないし、
荒らしに文句言ってるのもID変えた荒らしかもしれない。
信じられるのは自分と、ただ作品が投下されたという事実だけ。

疑心暗鬼に陥った人間は周囲全てが泥棒猫に思えてくるから大変だ。
本当、暗黒面に堕ちた嫉妬パワーは偉大だぜヒャッハー>>548GJ!

荒らし? 自演? 関係ナイナイ。

それでも漏れはGJする。
561名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 18:03:44 ID:SlRE3TOU
皆分かってると思うが、短時間で連続して沸くIDの違う荒らしは同一人物だからな
【パターン例】

まず「信者乙or作者自演乙orつまんね」等々
       ↓
ここで大体、「禿同」が出てくる
       ↓
んで反応すると「自演UZEEEEEE」になってグダグダ

最近はバリエーションが増えたのか、語尾にNEを付ける時もある。
もうパターン化されてるので、極力スルーして欲しい。
562名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 19:06:43 ID:io0UKB7A
で、>>539
楓に様を付けるべきなのかと真面目に考えてみた

言葉様の領域に遠く及ばないんだけど・・
実質、空鍋でNO.2に上り詰めた女だが・・

さあ、どうする?
563名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 19:57:33 ID:DYK+MQP2
アニメしゃっほーは見てないんだが

付けてもいいんじゃね?
564名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 22:10:43 ID:FDvRUO+h
言葉様はもはや畏怖と崇拝の対象。神「様」に敬称は当り前。
楓は嫁に欲しい女の子。自分の妻に「様」をつける奴はいない。
565名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 23:10:19 ID:6P1HnEFV
>>564
妻?メイドじゃなかったのか?彼女。
え?幼なじみ?聞こえんなぁ?
566名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 23:37:19 ID:nJK+waoz
「どこにいるんですか、凛くん」
「おかしいです。あやしいです」
「わかりました、そこに凜君を(ry」
「開けてください……」とん……とん……とん……

この楓になら様をつけられる
567 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/01(金) 04:05:04 ID:eAR5VVEv
投下します。


〜〜前回までの簡単なあらすじ〜〜
脅迫まがいのラブレターで、澄香と付き合う事となった翔。すぐに別れるつもりだったのだが、なぜか別れられず、ダラダラと関係を続けてしまう。
あるとき、彼女の悲惨な過去を知り、同情からまじめに付き合う事にした翔は、少しづつ過去を乗り越えていく澄香の姿に惹かれはじめるのだが。


奏翔。
主人公。

水樹澄香。
翔の彼女。少女時代からずっと父親に性的な暴力を受けていたため、一度人格が破綻。何とか人格を取り戻すも、
その時には既に父親との関係が周囲にばれて、周りから蔑まれ孤独に生きてきた。そんな孤独から救いだしてくれた翔にベタ惚れ状態なのだが。

中野早苗。
翔のクラスメート。翔に好意を寄せており、翔と澄香の破局を画策するがあえなく失敗。だが、彼女の執念が澄香を狂わせはじめる。

水樹由美。
澄香の伯母。澄香を一人で育てている。
568すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/01(金) 04:08:30 ID:eAR5VVEv

水樹由美はプロだ。
時間を持て甘し気味になったので、じゃあゲームをしようと由美の鶴の一言で、ゲームをする事とあいなった。
選ばれたゲームは、パワプロ(実況パワフル〇ロ野球の略)だった。
このゲーム持ってこそいるが、普通に対戦するよりサクセスをする時間が長くて、実はあまり試合をした事がないでやんす。
だから、試合が始まる前に言った。俺は素人ですよ、と。
しかし、残念ながら由美の耳は節穴のようだ。翔が素人であると分かっているくせに、彼女はバッカンバッカン打ちまくり、
一回の表で七点も取りやがった。早くも抑えの切り札(現在故障中)を投入し、何とかスリーアウトまでこぎつけ、ようやく攻守交代。
一回表終わって七対ゼロ。実力差は明らかで、さすがの由美も手加減してくれるだろうと、僅かな希望を持ちつつ、
一番バッターをボックスに向かわせたが、甘かった。もちろん由美は守備でも手を抜かない。現在メジャーリーガー(正確に言うと、少し前)
がマウンドに意気揚々と降臨し、高低左右、変化球とストレートを綺麗に投げわけ、翔を翻弄する。何より、サークルチェンジは卑怯だ。
おかげで一番のやたらミートカーソルが大きいセンターも、二番に座るバントと守備のうまいショートも、
三番の金に釣られた裏切り者も全員が扇風機だ。三者三振、チェンジ。
うふふふふふふ、といやらしく笑いながら、大人気なさを全開にする由美に、かなり引いた。その瞳は嗜虐的快楽に酔っているようにさえ思えた。
そんな風に、楽しく夕方を過ごし、辺りが暗くなりはじめた頃、今度はサッカーゲームをする事となった。
翔のチョイスは某水色のチーム。対する由美は、まるで翔の神経を逆撫でするかのように、
同じ街にある某王子率いるチームを選択した。元来、その二つのチームはライバル関係にあり、
両チームの対決は世界屈指のダービーマッチ(同じ街にあるチーム同士の対戦の事)とさえ言われている。
翔の選択の後でわざわざそこを選んだということは、由美は全て分かって喧嘩を打っているのだ。その証拠に、彼女はチームを選ぶ際、
翔を一瞥し挑戦的な笑みを浮かべていた。
おもしろい、返り打ちにしてくれる、貧乏なめんな。
かくして、試合は始まった。
569すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/01(金) 04:10:57 ID:eAR5VVEv

しかし、試合開始数分で、翔は自分の選択を後悔する事となる。プレーヤーの実力はほぼ互角なのに、守勢に回るケースが多いのだ。
それは明らかに選手の差だった。オランダ代表のミミズも、イタリア代表のバックもいない守備陣がズタボロで、イケイケ王子を止められない。
唯一、最近赤と黒に逃げたサイドバックと今年引退するムキムキのキーパーが奮闘したが、実力差を埋めきれず、健闘虚しくやぶれてしまった。
試合後、リプレイとして由美のゴールシーンが延々と流される画面を見ていると、沸々と熱い気持ちが渦を巻く。
悔しい。
負けた事はもちろんだが、負けた相手が相手なだけに余計悔しい。ふと由美に目をやると、彼女は勝ち誇った顔でふふんと鼻で笑いやがった。
その優越に細められた目は、もう一試合くらいやってあげてもいいのよん、と言っている。
そのとき、翔の中で何かが切れた。
「上等だぁぁぁ!次は絶っ対勝つっ!!ただし、チームは変えましょう」
「あら、チームのせいにするの? まぁ、いいけど」
ぬかせ。俺の本気はまだまだこんなもんじゃないんだぜ、とばかりに気合いを入れて、現在欧州最高の呼び声も少しだけある某青と黒の縦縞チームを選んだ、
そのとき、
「何、やってるの?」
背後から、鉄琴のようによく通る声が聞こえた。その声は儚く、寂しげですぐに静寂という闇の中に飲み込まれた。
肩越しに振り返る。リビングと廊下を繋ぐドアが開けっぱなしになっていて、そこから少しだけ肌寒い風が、駆け抜けていく。
その風を背中に受け、澄香がきつく唇を噛み締めて立っていた。青紫色の唇が震えているが、顔色はずいぶんとよくなっている。
「ああ、澄香起きたのね。おはよう」
と、由美。翔と同じように肩越しに振り返った彼女は、白い歯を見せてニッと笑った。
「何、やってるの?」
由美に挨拶を返しもせず、澄香は繰り返す。その不気味なまでの静かな声に、少しだけ不穏な空気を感じとり、背中を中心に鳥肌が立ち始める。
何かが、おかしかった。
570すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/01(金) 04:13:43 ID:eAR5VVEv

「何って、ゲームよ」由美は笑いを堪えながら、
「もうさっきから、翔くんってば負け惜しみばかり言ってね」
嵐の前の静けさに気付いていない様子で、由美は楽しそうに語り続ける。
「実は翔くん、前のゲームから六連敗してるの。もう一試合やりたいんだって、本当に負けず嫌いよね、翔くんって。それでさぁ、
今度の土曜日も翔くんとサカつくで戦う事になったんだけど、きっと翔くんは──」
──嵐は、突然やってきた。
「うるさい……」
澄香の震える体が、肩が、唇が、消えるような言葉を紡ぎだした。えっ、と由美は目を見開いて唖然とし、二の句を継げないでいる。
やがて、澄香は心が氷つくような嫉妬の炎と、寒気を覚えるほどの憎悪で燃え上がる瞳で、由美を睨みつけた。それが合図だった。
「気安くセンパイの名前を呼ばないでよっ!!!」
暴風雨が、吹き荒れる。
「どうしてセンパイと楽しそうにゲームしてるのっ!? どうして楽しそうにセンパイの事を話すの!?」
「ど、どうしてって、私は別に何も……」
「嘘っ!!」澄香は声を張り上げ由美の言葉を掻き消し、「そんな事言って、本当はおばさん、センパイの事が好きなんでしょっ!?
私からセンパイを奪おうとしてるんでしょっ!?そんな事、絶対に、絶対にさせないからっ!!」
そう怒声を巻き散らすと、澄香は足音粗くソファまで歩みより、翔の腕を掴んだ。乱暴に、腕が引かれる。
翔が促されるように立ち上がると、澄香はまるで由美に見せつけるように翔の腕を抱きこんで、由美を真っ直ぐ睨みつけ金切り声をあげた。
「誰にも、センパイは渡さないっ!センパイは、私だけのものなんだからっ!!!」
571 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/01(金) 04:16:55 ID:eAR5VVEv

雨も降り、喉も好調。咳もよくなりました。
それはそうと長くなりそうなので今回はここまで、続きは明日か明後日に投下します。
572名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 04:41:23 ID:2xCwXDrn
GJ
予想通り由美にまで絡み始めちゃったなぁ……
573名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 07:51:21 ID:uGObDSz2
GJ
再び狂い始めおったww
574名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 21:09:01 ID:lU1HBTvP
優柔を読み直したんだが、
アレはアレで、ゆう君は男らしい気がしてきた。
575名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 21:35:25 ID:qxl0ut3H
>>574
そのうちお前刺されるぞ・・・・
576575:2007/06/01(金) 21:43:09 ID:qxl0ut3H
すまん挙げちまったい
577名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 23:07:09 ID:Th8h7Qau
まぁ進む方向が崖だろうと平地だろうと全力で突き進む様は男らしいといえなくもないな
578名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 23:19:35 ID:Xr63fxcD
このスレのまとめ読んで、修羅場が多いスクールデイズってエロゲ買ったんだが『テクスチャ作成可能サイズが不足しています。』ってなるんだがどうしたら良いんだ?
PC詳しい人教えてくれないか。
579名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 23:22:57 ID:RvIr+Mhr
>・「テクスチャ作成可能サイズが不足しています」
>グラフィックVRAMの容量不足です。
>スクールデイズを実行するには、グラフィックVRAMが64MB以上必要です。
>ご使用しているパソコンのグラフィックVRAMの容量を確認してください。
せめてググろうぜ、兄弟。
後、こういうのは本スレでやるように。
580名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 23:38:41 ID:Xr63fxcD
はい。
スレ汚しスマソ。
581名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 00:52:01 ID:UYarapdZ
なんだかんだいいつつ教える>>579萌え
モニターの前にはきっと美少女が・・・
582名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 05:48:50 ID:SWZ5UiZ2
全裸で七戦姫を待ってたら、風邪を引いて高熱のあまり妄想が浮かんだ。

闘技場公爵が暗躍して、敗者死亡を義務づけ。

一回戦
・竜騎士×幻想竜
幻想竜が本性をあらわすも、竜騎士圧勝。

・護衛姉×護衛妹
マジで戦わなければいけなくなり、姉が妹に勝ちを譲って死亡。
妹トラウマ。

・大砲奴隷×暗殺娘
暗殺娘が切り刻むが、器用貧乏がたたって一撃に沈む。

・改造娘×鞭女王
戦い方を知らない改造娘が満身創痍になりながら勝つ。

準決勝
・竜騎士×護衛妹
妹がんばるが歯が立たず。

・大砲奴隷×改造娘
改造娘が大砲を受けきって勝利。
でも瀕死。

決勝
・竜騎士×改造娘
竜騎士がほぼ無傷で圧勝に見えたが、死にかけた改造娘が暴走。
見境がなくなって暴れたあげく、国が崩壊。
娘も力尽きる。

全員死亡エンド。
583名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 05:51:25 ID:SWZ5UiZ2
もしサイドストーリーを書いてくれるなら、全員およめさんのハーレム修羅場エロきぼん。
584名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 07:06:37 ID:LfLvSVsY
それが一番見たいんだよなw
修羅場でお気に入りのヒロインが死ぬなんて面白くない。
585名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 07:41:53 ID:skLZklej
石川さゆりは既出?
586名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 08:45:45 ID:SWZ5UiZ2
>>583
王子が病弱だとヤリ殺されるか・・・
でも、そこをなんとか
587名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 09:24:37 ID:qtWIttbn
>>583
でも実際はなんとかバランス取れてヤリ殺されるのを回避できるかもしらん。
588名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 10:18:03 ID:K4RMJmbB
あ!

"七" 戦姫ってことは一日一人、一週間で一回りか。
5891/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/06/02(土) 10:43:57 ID:GouErH77


  /      /      /      /


「先輩……、結局どうしたんだろ」
 学校で私は昨日の事が気になって仕方が無かった。
 思い切って熱矢先輩に聞いてみようか……。 でも――。
 でも若し最悪の答えが返ってきてしまったら……。
 結局あの女のことを諦められなくて、それであの女の言う通りにしてしまったら……。
 そう思うととても怖くて聞けなかった。
 それに……仕舞っておくつもりだった気持を伝えてしまった。 中途半端にだけど……。
 果たしてそれが良かったのか悪かったのか。
 そんな事考えながら時間は流れていく。

 放課後、靴を履き替えてた私は動きを止めた。
「稲峰」
 背後から私を呼ぶ声の主。 振り向かなくても分かる。 だって――
 その声の主は私が誰よりも好きな人なんだから。
「熱矢先輩……」
「今から帰るところか?」
「ハ、ハイ……」
 私は俯きながら答えた。
 昨日あんな告白をしてしまったせいか熱矢先輩の顔がまともに見れない。

「じゃぁ、今日この後付き合ってくれるか?」
「え……?」
「頼む。 どうしても伝えておきたい事があるんだ」
「わ、分かりました」
 私は戸惑いを隠せないまま答え、そして熱矢先輩と一緒に学校を後にした。

5901/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/06/02(土) 10:45:53 ID:GouErH77
「昨日はすまなかったな。 色々騒がせてしまって」
「い、いえ……気にしないで下さい。 わ、私も色々勝手な事言っちゃいましたし……」
 私は熱矢先輩に連れられある喫茶店に来てた。
 たまに熱矢先輩と帰りに寄り道したりする時は何時もファーストフード店なのに――。
 場所がいつもと違うせいか何だか畏まった感じすらする。
「いや、いいんだ。 気にしないでくれ。 それより今回の事の顛末お前にも聞いて欲しいんだ」
 そう言った熱矢先輩の真剣な面持ちに私は居住まいをただし息を飲んだ。
 正直怖い思いもある。 若し私が想像しうる最悪の答えだったらと思うと逃げ出したいくらい。
 だけど熱矢先輩がこんなに真剣な貌で私に向き合ってくれてる以上逃げるなんて出来ない。
 そして、私は覚悟を決め面を上げた。

「俺……プラモデル、止めないで続ける事にしたから」
「え……? ほ、本当ですか?!」
 私は身を乗り出さんばかりに叫んでしまった。
 そして周囲の視線に気付きそそくさと座りなおす。
 しまった……。 思わず場所柄も弁えず大きな声を出してしまって……。
 でも……その事に対する羞恥心より私の心の中は安堵感の方が大きかった。
 そして私は確認するようにもう一度尋ねる。
「本当に……、本当にやめないで続けるんですね……?」
 私がそう聞くと熱矢先輩は笑顔で応えてくれた。
 良かった……。
 熱矢先輩がプラモデルを捨てなくて――自分自身を傷つけるような選択をしなくて。

 ――あ、そうだ。 と、言う事は……。
「先輩。 じゃ、じゃぁ、その……あのヒトとは……」
 い、いや早とちりは良くない。 若しかしたらあの女が熱矢先輩の趣味を認め……。
 いや、それも考えにくい。 あそこまで身勝手で我儘なあの女が折れるなんて……。
 でも、悔しい事にそんな女に熱矢先輩は惚れてる。
 そんな熱矢先輩が……。

 私が聞くべきかどうすべきか口ごもってると熱矢先輩が口を開く。
「スズとは……結論だけ言えば別れた……、って事になるのかな」
 ――別かれた。 其の言葉に私の胸の内は大きく脈打ち揺れた。
 それは私が望みつつも反面諦めてた事だから。
 でも――。言葉の語尾が気になった。
 一体どういう……。 そんな事考えてると熱矢先輩が再び口を開く。
5911/8スケールのHeart→Hate ◆tVzTTTyvm. :2007/06/02(土) 10:47:01 ID:GouErH77
「一度お互い距離を置いてみることにしたんだ。 でもな……それは嫌いになったから、じゃないんだ。
むしろ……スズの事は今でも好きだ。 お笑い種だよな。 あんな仕打ちされたってのに……。
それでも未だ好きだなんて未練がましくてカッコ悪いよな……」
「い、いえそんな事無いです!」
 私は思わず叫んでしまった。
「熱矢先輩があのヒトと別れを切り出すのって物凄く勇気がいることだったっての解かります。
その事に逃げずにちゃんと向かっていったんでしょ?! むしろ立派です!
全然かっこ悪くなんか無いです!」
 そして思わずまくし立ててしまった。

「ありがとうな……稲峰。 それと……ごめんな」
 え? ――ごめん、ってどう言う意味?
「さっきも言ったように未だに俺はスズの事が好きだ。 そんな話を、その……俺のことを……、
って言ってくれたお前に言うなんて……」
「い、いえ……! そ、そんな気にしないで下さい! わ、分かってますから……。
先輩ががあの人……の事、そんな簡単に諦められない、って……」
 言いながら辛くなってくる。
 分かりきってる事とは言え熱矢先輩の口からあの女の事好きだって聞くのは……。

「ゴメン……。 でもな、お前の事も別の意味で……好きなんだ」
「え……?」
「お前とプラモデルのこと話したり、このあいだみたいに一緒に作ったり、すごく楽しかった。
だから……これからも親友として……」
「ありがとうございます。 先輩」
 私は熱矢先輩が言い終わるより先に口を開いた。 そして続ける。
「私も先輩と一緒にお話してる時すごく楽しいですから」
 そして私が言い終わると熱矢先輩はホッとしたように微笑んでくれた。

 ――親友。 そう言ってもらえて嬉しく無いわけじゃないけど……。
 だけど親友で満足出来るかと言われれば、本音はもっと親しくなりたい。
 でもね――今はこれでいいの。 ううん、コレで満足しなきゃいけない。
 "親友として"とは言え熱矢先輩は"好き"だと言ってくれたんだ。
 欲張りすぎちゃいけない。 其の事を私は誰よりも良く知ってるから。
 欲張り、慢心し、そして大事なものを失った例を知ってるのだから――あの女の様に。
 そう。 私は知っている。 だから同じ徹を踏みはしない
 だから――今はコレで十分満足できる。

 今は――、ね。

 そして私は口を開く。
「こちらこそこれからも良き仲間で、親友でいてください、先輩」
592名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 10:48:14 ID:GouErH77
投下終了です
593名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 12:03:04 ID:RhCiItDr
>>592
主人公から修羅場を避けようとする努力が見えるのが微笑ましいな
594名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 12:23:03 ID:z5AQ5qY2
GJ!
ここでスズは逆恨みして稲峰に怒りをぶつけるんだろうなぁ。
でも、多分勝ち目はなさそうだね。自分の幸せしか考えない人と、
相手の幸せを優先する人とでは明らかに後者が有利だ。
595名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 12:40:08 ID:eMIqinX+
>>592
GJ!
できれば早く続きが読みたいです。
596名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 13:24:26 ID:qqtRpb5k
>>592
修羅場避けたいのは感じとれるが、それならなおのこと稲峰とも距離を置くべきだな。
>>594の言う通り、スズの怒りが稲峰に向いて流血沙汰になりかねん。
ともあれ、続きが楽しみだ。wktkしていよう。
597名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 18:47:01 ID:PnqpI7hu
後輩がかなりの良キャラで主人公がややへたれだがなかなかいい奴だけに

スズがこれからDQN化したらすげー落差なんだろうなあ…とことん逝って欲しい
598名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 20:53:38 ID:TuUREegw
>>592
後輩萌えの俺としては、最高の話だった。



あ、スズがプラモオタになるって展開も面白そうだな。でもそしたら修羅場にならないか。
599トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/06/02(土) 21:11:40 ID:C8blUu6/
では投下致します
600桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/06/02(土) 21:15:15 ID:C8blUu6/
 第3話『捨てられた子犬のようなマーチ』

「これから……第一回『深山一樹君が女の子を連れ込んだ件』についての問い詰め会を始めようと思います。
資料は各自テーブルの手元に置いてあります。
司会進行役は作品内で出番が少なすぎる高倉奈津子が仕切らせてもらいます」

 奈津子さんが机に腕を乗せて上座の席に座っていた。
それ以外の桜荘の住人もいつものお気楽な雰囲気を醸し出すことはせずに久々にシリアスモードのスイッチが入っていた。

「まず、深山一樹が女の子を連れ込んだ決定的な目撃した第一発見者の真穂ちゃんから
当時の状況や『女の子』についての詳細を発言してください」

「はい。わかりました」

 安曇さんは立ち上がって桜荘の住人の皆様に頭を下げてから、いつも真面目な安曇さんがより真剣な表情を浮かべて言った。


「あれは私が大学のレポートを提出するために頑張っていた真夜中の時間帯でした。
私は憩いの場に密かに隠していた缶コーヒを飲み干してから作業に取り掛かろうとした時。
深山さんの部屋の方から大きなドアを叩く音がしたんです。
てっきり、雪菜ちゃんがいつものように深山さんが遊びに来たと思ったんです。
でも、しばらくしてから。深山さんと知らない女の子が騒ぎだしたんです。
住民の迷惑になるので、私は勇気を持って注意しようと思って、ドアを開けたら……。


 深山さんと知らない女の子が抱き合っていました!!」

 盛り上がるBGMがスピーカーを通して流れだした。安曇さんは演技がかった仕草と透き通った声が舞台を支配する。

「ふむ。深山一樹君は知らない女の子を連れ込んでいた……。
更に放っておけば、隠していた男の本能が牙を向けると。正に悪魔が為せる業だな」
「はい。私も深山さんがケダモノだと思っていませんでした!!」
 バックで流れるBGMがいい加減に止めろよと俺は真っ暗な視界と凍り付くような寒い世界の先からしみじみと思う。

「で、その後は私の登場に驚いた女の子が逃げるように深山さんの部屋から逃げ出しました。ちゃんとした捨て台詞を残して。
『カズちゃんは誰にも渡しませんっっ!!』って言っていました」

「う〜む。カズちゃんと呼ばれている時点でその女と一樹君のいやらしい関係が容易に想像できそうだね。
餓えた性欲を満たすために出張風俗嬢を襲う瞬間を真穂ちゃんは目撃してしまったと。いかに面白い展開になってきたな」
 誰かこの司会兼進行役の口を黙らせろと俺は必死に隔てられた暗闇ごとき世界から必死の抵抗を試みる。
だが、無力であった。閉じ込められた場所はうんともすんとも言わなかった。

「さてと、弁護側は深山一樹君に対しての弁護は必要ありますか?」
 いつから、裁判モノになったんだオイ。

「異議あり!! 雪菜のお兄ちゃんは他の女の子を部屋に連れ込むことなんてしないもん。
お兄ちゃんはちょっと子供じゃないけど大人でもないぐらいの女の子が好みだもんっ!!」
「ふむ……雪菜は何を根拠に言っているんだ」

「男の子ってのはロリコンしか発情しないんだよ」

 雪菜よ。弁護側の椅子に立っているのに被告を貶めるような発言はやめてくれ。

桜荘の住人たちが本気にしたらどうするんだ。ロリコン疑惑のある男性は嫁の貰い手はないんだぞ。
601桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/06/02(土) 21:18:54 ID:C8blUu6/
「うむ。雪菜の発言は認めます。
やっぱり、世の中の男ってもんは大人の女性よりも女子高校生や小学生の裸ごときで発情しやがるからね」

「うんうん。お兄ちゃんだってきっとそうだよ」
 欠陥がブチ切れそうになるのを我慢して俺は彼女たちの会議の内容に耳を傾けた。
弁護側が雪菜だとすると……検事役はあいつかっ!!

「じゃあ、検事役の我が忠実な妹君は今回の騒動についてどう思うんですか?」 
 今まで流れたBGMが止まり、場を盛り上げるBGMに変更された。
あいつだけ特別扱いは許さんぞ。カスラックよ、さっさと課金取れ!!
「はいはいはい。名検事の美耶子ちゃんが今回の事件の真相を私なりの思い付きで語りましょう。いいですか」


「真穂先輩が語った通りに一樹さんは女性らしき女の子を無理矢理連れ込みました。
別に風俗やロリコン趣味という線はまずありません。
天使の皮を被った悪魔は女性に暴力を奮う方の変態さんなんです。
私は以前に一樹さんの暴力に振られたことがあります。
 私は真穂先輩が作ってくれた夕食の一品を一樹さんのお皿から摘んだだけで頭をゲンコツで殴られました。
私はその事を子孫の子孫まで永遠に語り継ごうと思います。
 そんなおかずの一品も年下の私にやれないヘタレがまともな嗜好を持っているわけがないですぅ!! 
きっと毎日毎日桜荘の住人からバレないように私の下着を取り出しては貪るように匂いを嗅いでるに違いないですぅ!! 
お風呂だって盗撮カメラで録画して毎晩桜荘が静まった夜に一人でニヤリと微笑みながら見ているはずですぅ!! きっと」


 美耶子よ、だんだんと話が脱線して個人的な恨みと被害妄想に浸っているぞ。
おかずの一品を摘み食いする量がほとんど全部喰われてたら、頭にゲンコツの一発や二発ぐらい落ちるし。
今現在進行中で俺の拳が真っ赤に燃えているんですけど。

「美耶子の当て外れた意見はどうでもいいが……そろそろ本人の意見が聞きたくなってきたね。ねえ、一樹君?」
 奈津子さんが解放しろと合図が出たので、俺を閉じ込めれた寒く凍える世界から解放されて。
外部からドアを開けられると、憩いの場の照明の明かりが少しだけ眩しいぜ。

「れ、れ、れ、冷蔵庫の中に閉じ込めるなんてあんまりですよ」
「罰だから仕方ないじゃない。一樹君が女の子を連れ込んだおかげで桜荘の女の子の心が不安定になっているんだからね。
特に真穂ちゃんのご飯が美味しく食べられないのは私の胃袋に致命的だわ。
だから、その腹いせに冷蔵庫に閉じ込めるぐらいやらないと皆の気が済まないわ」

「あ、あのこれがノンフィクションだったら普通に死んでいるんだけど」
 冷蔵庫に一時間も閉じ込められたらどの哺乳類も凍死すると思うのだが、俺の安全な配慮は本当にどうでもいいらしい。

「さてと一樹君  そろそろ、真相を聞かせてくれないかな?」
「お兄ちゃん。お願いだからロリ説が正しいって叫んで」
「一樹さんの暴力DV野郎説の方が私個人的に好みなんですが」
「深山さん……」

 4人の期待するような視線が真っすぐと俺に向けられた。
それは誰もが謎の侵入者の女と俺の関係を期待しているような目だった。
もし、すでに交際関係だと発覚すれば、桜の木の下に埋めてやるという意気込みさえ見られる。

「どの説も間違っている。俺は無実だ!!」

「この桜荘では真穂ちゃんの地位は管理人の私よりも高いのよ〜〜。
その証言もここでは確かな物証も出さない一樹君が今更何を言っていても判決は決まっている。
 神聖なる桜荘に余所の女を連れ込んだ罪は重い!! 有罪よぉぉぉぉ!!」

 裁判長が机を思い切り叩いて、更にBGMが五月蝿く鳴り響いた。
 いや、いい加減にその後ろで流れている曲を止めろよ。
602桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/06/02(土) 21:22:13 ID:C8blUu6/
 4人からタコ殴りの刑を受けた後も俺は圧力や脅しや暴力に屈することなく、今日もバイト先へと出掛けて行く。
顔にあちこちと痣や傷はあるので今日はアホ店長をウエイトレスにでも使って、俺は大人しく帳簿でも付けるか。
 そんな風に今日のバイトの過ごし方をのんびりに考えている時であった。
ゴミの収集場所の前を通り過ぎろうとした時。
俺はある違和感を感じたので、改めてゴミ収集の場所の方を振り向いた。そして、俺は絶句していた。
 人間が入れる大きなダンボールの中に俺の知っている知人が捨てられた犬のように入っていたからだ。

『捨てられた幼馴染を誰か拾ってください』という立て札が置かれていた。小動物のような円らな瞳をして、俺の方を見つめていた。
「何やっているの? 刹那」
 俺は唖然とした表情を浮かべて呟いた。
刹那は嬉しそうに尻尾を振って、約1年ぶりに声をかけてもらったことが嬉しかったのか笑顔に微笑んだ。

「カズ君カズ君カズ君。私を拾ってください!! お願いしますっっ!!」
「何故にダンボールの中で捨てられた子犬のような真似をしているんだ?」
「カズ君を驚かすために恥ずかしいけれど……頑張ったんだよ!!」
 顔を真っ赤に染めた刹那がダンボールの中でドタパタと騒いでいる。
本来なら、更紗と同様に模範的な優秀な生徒だったはずの彼女が
奇抜な行動をするというのは想像以上の恥ずかしさがあるのだろう。
根は真面目で、知らない人には北極並みに距離を取るが、心を許した相手にはとことん甘かった刹那の性格は
1年という月日が経っても変わってはいなかった。むしろ、女の子から女へと成長しているので可愛らしい容姿が更に磨きかかっていた。

「恥ずかしいのはわかった……。では。俺はバイトがあるので何も見なかったことにして行くので」
「あぅぅぅ。ちょっと待ってください」
「カレーが俺を呼んでいる」
 捨てられた子犬が必死に俺の名前を叫ぶわけだが、当然のように無視をしてさっさと歩く。
「か、か、カズ君助けてぇぇぇっっっ!!」
 悲痛に似た刹那の叫びが木霊する。
 俺は下手な演技だと思いながら、後ろを振り返ってみると髪の毛を逆立てたヤンキーたちが絡まれていた。

603桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/06/02(土) 21:23:14 ID:C8blUu6/
「おいおい。拾ってくださいだと……よし俺等が拾ってやるよ。あっちで遊ぼうぜ」
 腕に刺青が入ったヤンキーの一人が乱暴に刹那の右腕を引っ張って連れ出そうとする。
「い、痛い。わ、私に触らないでぇぇぇ!! 触っていいのはカズちゃんだけなんだからっっ!!」
「あん? ふざけたことを言っているなぁ。コラァ。シバクぞ ゴルァァァ!!」

 ヤンキー達の罵声を浴びられて怯えた刹那は顔色を蒼白にした。
ただでさえ人見知りが激しくて臆病な彼女がヤンキーみたいに恫喝されるのは本当に恐くてたまらないことであろう。
 俺だって恐い。本来なら関わろうとせずに絡まれている相手を見捨てていただろう。
だが、今絡まれているのはずっと幼馴染として隣に居てくれた刹那なのである。
もし、彼女をここで見捨ててしまえば俺は本当に彼女たちにとって最低最悪な人間になる。
 それだけは嫌だった。
 だから、震えた足を、前へと一歩だけ前進する。喉の奥深くから声を振り絞って俺はヤンキーに向かって叫んだ。

「俺の大切な幼馴染に手を出すな!! 業務用炊飯器で殴り殺すぞ!!」
「カズ君……」
「てめえ、なんだ? ぶっ殺すぞゴラァ!!」

 ヤンキーの数人が俺の態度に気に喰わないのか、こちらにやってきた。丸い円のように俺を囲むと無言で容赦なく暴力が振るわれる。
「うっぐっ……!!」
「彼女の前だから調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」

 卑怯。という言葉は生温い。
大多数による一人の弱者を徹底的に痛め付けるのはヤンキーにとっては自分の力を示すための手段にすぎない。
痛みに顔が滲む姿を見て、彼らは楽しそうに笑っていた。

「カズ君っっっ!! お、お、お願いだからもうやめてぇぇぇ!! 誰か来てください!! カズ君がカズ君が死んじゃうよぉぉぉぉ!!」

 刹那の悲鳴が街中に響き渡ってゆく。
だが、通りすがりの人間は今行なわれている悲惨な光景を見ぬ振りをして何事もなかったように通り過ぎ去って行く。

 これが現実。
 下手に手を出してしまえば自分が火傷を負う。触らぬ神に祟りはなしだ。
 俺は振るわれる暴力に耐えるだけ。
 
 これだけ騒ぎになっているのだから、誰かが警察を呼んでいる可能性はある。駆け付けるまで少しだけの辛抱だ。
 泣き叫んでいる刹那を慰めてやりたかったが……俺の意識はどんどんと遠くなってゆくのがわかった。
604トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/06/02(土) 21:24:36 ID:C8blUu6/
では投下終了します

次回予告
第4話『自分の胸に聞いてください』

605名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 21:32:05 ID:ug9WCYwU
トライデント氏のは設定とかは結構いいんだけど展開が突飛過ぎるからかイマイチ感情移入出来ないんだよなぁ
ネタに走るのはともかく初めからぶっ飛んだキャラの性格のせいで嫉妬成分が微妙な感じ

とりあえずGJ、頑張ってくだしあ
606名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 22:34:10 ID:ayFL7WgW
今回はコピペ馬鹿は現れなかったな。よかったよかった。
トラ氏オツです。
607名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:00:13 ID:ynTvhiQO
ていうか、面白くないうんぬんの前に作品構成がおかしすぎると思いますけどね
こんな作品を毎回楽しみに待っている人間はいないだろうねwwwww

608名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:09:34 ID:ynTvhiQO
ああいい忘れていましたねくだらない作品を書いて無駄な時間を費やしている
トライデントGJと・・。とりあえず、↓以降はトライデント氏は叩かれる予感♪
609名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:15:17 ID:sCqF4Li9
今更内容には関わりませんが、投下する前にワードでチェックだけでもしてみてはどうでしょう?

てにをはがあまりにも酷いです。
610名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:22:53 ID:BYgpnexR
>>609
トライデント氏の日本語がおかしいのはこのスレじゃあ当たり前のことだ
今更何を言っても始まらないが・・叩いている奴に聞くけど・・
具体的にどこがおかしいのか誰も指摘してないよな
何で誤字脱字の訂正箇所をここに書き込まないんだ?
611名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:24:33 ID:4l5NrjtI
>>604
色々あるけど頑張れ
612名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:27:36 ID:qMMYeduY
面白くない作品を擁護しているオマエラにワロスwwwwwwwwww
はっきりと言えばいいのに。こんなつまらない作品はいらないと
613名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:29:30 ID:4l5NrjtI
>>2を千回読め
614名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:39:57 ID:qMMYeduY
叩かれるのが恐かったら投稿しなかったらいいじゃない
トライデント氏が日本語がおかしいのは皆が思っているのは事実じゃないかwwww
615名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:42:48 ID:AaYI+6LH
っていうか、ギャグがいらん
それが無かったら面白いと思うのに・・・
せっかく修羅場になるかと思って楽しみにしてたら急にギャグだし・・・
616名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:45:46 ID:ZP6mSNZz
ギャグには面白いのとしらけるのがあるからね
生まれ持ってのセンスとか言うのもあるだろうけど、トライデント氏には頑張って学んでいって欲しいと思う
617名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:50:05 ID:yjxu2yPH
皆分かってると思うが、短時間で連続して沸くIDの違う荒らしは同一人物だからな
【パターン例】

まず「信者乙or作者自演乙orつまんね」等々
       ↓
ここで大体、「禿同」が出てくる
       ↓
んで反応すると「自演UZEEEEEE」になってグダグダ

最近はバリエーションが増えたのか、語尾にNEを付ける時もある。
もうパターン化されてるので、極力スルーして欲しい。
618名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:55:09 ID:yjxu2yPH
あ、あと誤字脱字云々言ってる人は何処が間違ってるのか避難所にでも訂正箇所を書いてみてくれ
619名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:00:44 ID:HdqkfObD
長編だし一回一回の評価もいいが、
まとめてみたときの内容にこそ期待。
頑張って欲しい。
620名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:08:05 ID:c8hzBAfe
>>615
ギャグはあれだ・・面白くないのはともかく
トライデント氏が目指してるのは
幸せな日常を送る日々→欝になる物語
じゃないかと思うんだけどな・・。

まあ、絶望するにはまだ早いはず?

621名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:08:55 ID:uYl41wwq
とりあえず
>>おかずの一品を摘み食いする量がほとんど全部喰われてたら

ここが少しおかしいな
622名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:10:53 ID:8jgxFsJ4
避難所で(ry
623名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:13:38 ID:c8hzBAfe
>>621
おかしいのではなくて・・どういう風に訂正するのかと書かなくちゃ・・
624名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:15:41 ID:sieKQt3d
神職人に嫉妬してその人気を奪おうと日々努力する泥棒猫=荒らし。
このスレ的にはこれもある意味正しい姿だが。
泥棒猫は、いつだってウザイだけだけどね。


それでも漏れはトラ氏にGJしよう
625名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:18:03 ID:uYl41wwq
訂正する云々までやってやらなくちゃいけないのかい?
それだったらトラ氏が書く必要がないじゃないか
626名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:31:40 ID:8jgxFsJ4
非n(ry
627名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:33:58 ID:uYl41wwq
sorry
628名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:35:34 ID:N/mcoNRm
推敲でどうにかなるレベルを超えてるなこりゃ。
もしかして、わざとやってんだろうか?
今回一番すごいと思ったのはここ。

>俺は下手な演技だと思いながら、後ろを振り返ってみると髪の毛を逆立てたヤンキーたちが絡まれていた。

ヤンキーたちが何者かに絡まれてるww
分かりやすさとかそういうの超えて意味が逆転してる。
629名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:37:13 ID:3yqyR1+I
>>628
なんか囲まれてるヤンキーに萌えたんだがどうすればいいだろうか
630名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:45:17 ID:bdTgtrXQ
>>628
単純に言うとトライデント氏は推敲してないだけなのでは・・・?
で、他にもおかしな箇所があるなら教えてくれw
一緒に嘲笑しましょうよwwwwwwww

631名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:49:06 ID:qNkpT4E0
てか、真面目に聞くけどさ
こんな小学生でもやらないような文章を書いているトライデントが投稿できるならさ
俺も嫉妬スレに投稿できるんじゃないのか?

俺はこいつよりまともな作品を書けると思うよマジでwww
632名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:53:30 ID:N/mcoNRm
構想力と、それと筆の早さはあると思うけどね。
途中で作品完成を断念する作者も多い中、トライデントさんはすぱすぱ仕上げていくからなぁ。
考えたことをそのまんま書き続けて一度も見返すことなく投下してるから、文法がおかしいのかな?
だから早いのかも。もしわざと間違えて印象深くしてるとしたら、すごいな。
633名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:54:24 ID:5Nr60BZc
正直、トライデント氏は避難所の誤字脱字スレで投稿すればいいじゃないのか
他の神に比べると推敲できるレベルを遥かに通り越しているよ・・。
とりあえず、晒しage
634名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:59:32 ID:3yqyR1+I
>>631
YOUがCANならDOしちゃいなYO
635名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:01:03 ID:gs0ZVvk5
とりあえず叩いてる人はコテでも付けてSSを投下してみてくれ。
それがよい作品であればこのスレのためにもなるし、力量が分かる。
636名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:04:23 ID:BQZ8VmkZ
>>632
>>考えたことをそのまんま書き続けて一度も見返すことなく投下してるから、文法がおかしいのかな?
>>だから早いのかも。

この辺までは同意
思いついた文章をそのまま書き続けて、推敲もせずに投下すれば
それは筆が速いと思われても仕方がない。他の作家はきちんと推敲に推敲を
重ねて投下するのでミスはあんまり少なくて作品構成はしっかりとしている。

トライデント氏の場合は
推敲もせずに思いついたネタで突き走るから作品構成と文章構成がおかしくなる
推敲しないってことは文章力の上達を妨げるのできちんと行って欲しいもんだ


でも、何気に作品を3つも完結しているのはどういう評価を下せばいいのやら
文章の上手い他の作家は途中で作品を投げ出すのに、文章がおかしい作家は
最後まで完結するのってどうよ?

まるで、優秀な社員は会社に残らずにリストラ候補の使えない社員だけが残った
感じがします
637名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:06:07 ID:SuX2glTd
>>635
とりあえず、トライデント氏よりは面白い作品を書けるだろ
638名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:08:13 ID:DzPUIWiq
で、ここでいつまでその談義を続けるつもりですか?
避難所でやるべき内容を敢えてここでやるべき理由は?
避難所が嫌ならチラシの裏でやれ。
639名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:10:06 ID:3yqyR1+I
避難所、アクセスが規制されてて書き込めない人もいると思うよ


俺とか
640名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:12:49 ID:N/mcoNRm
>>635
いや叩くっていうかこれ完全に誤字脱字に近いレベル…。

>私は以前に一樹さんの暴力に振られたことがあります。

暴力はふっちゃらめぇぇぇ。ふるうもの。「ふるわれた」が正しい。
しかも暴力「に」だとさらにおかしい。
私は以前一樹さんに暴力を振るわれたことがあります、ね。
641名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:17:51 ID:DzPUIWiq
だから避難所でやれっつってんだろ?
文盲が文章云々言っとる場合かーって感じ

ああごめんいややっぱり避難所来なくていい
神とまともな読者が避難所来て活動してくれればいいんだわ
避難所は今みたいに荒れたときのためにあるわけだし
好きなだけ残っていたちごっこしててね
飽きたころに戻ってくるから
642名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:17:59 ID:Dn9Q/n0q
>>634
DOもしちゃうも意味が全く同じな件について
643名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:30:18 ID:oPTVdHkS
>>640
いい加減空気嫁
ここで言うと今は荒らしが便乗してくるんだよ
644名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:31:23 ID:ydcTk42R
皆目が肥えてるんだなあ。
俺はこういう展開の物が超好きだからGJするしかないが。
645名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:36:41 ID:gs0ZVvk5
>>644
確かに。俺もその一人だぜ。
こういうギャグ物が好きな人には堪らない。
646名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:41:24 ID:N/mcoNRm
俺だって展開に口出しするつもりは毛頭ないさ。そりゃ>>3にも書いてあるからな。
647名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:43:13 ID:DzPUIWiq
うるせえ失せろ
648名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:50:41 ID:bFa28ZRG
>>636の言う通り、推敲は絶対必要だな。
せっかくのいいシーンでも誤字脱字があると激しく萎えるから、書いたものに誇りを持ってる人間は何度も推敲を重ねる。
他の作家さんは滅多に誤字脱字がないことを見れば、ちゃんと推敲してるのは一目瞭然。
トライデント氏の誤字脱字は物語を書く人間としての前提が欠如してるとしか思えない。

金を取るようなものじゃなくても、人様の前に晒す以上はそれなりの責任を持ってくれ。
展開はともかく誤字脱字については、不愉快に思って騒ぎ立てるのも仕方ないと思う。
荒らしはスルーというが、書く方も荒らされない努力をすべき。
特にトライデント氏のは今に始まったことじゃないんだから。
649名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 02:01:14 ID:iff0BAgb
で、あるか
650名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 02:30:05 ID:3b+w4wVB
ヤア、おはようみんな。たった今まとめの全小説を読み終えたところだ
なんだかこうすがすがしい気分だよ
651名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 02:41:22 ID:ydcTk42R
それはそれは乙ですな
652名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 03:08:17 ID:3Vidgcyi
天城越えがこのスレのテーマソングにしか聞こえないのですが
653 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/03(日) 04:05:33 ID:DcC7iINV
投下します。
654すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/03(日) 04:08:00 ID:DcC7iINV

目の前で起こった事が、信じられず澄香のなすがままだった。ようやく翔が我に返ったのは、澄香に連行される形で彼女の部屋に行き、
彼女が後ろ手でドアを閉める音を聞いた時だった。
瞬時に再生される僅か二、三分前の記憶。声を張り上げる澄香、呆然とする翔、そして驚き泣きそうな顔をする由美。
沸々と、怒りが沸き上がる。
澄香にとって、由美は恩人である。本来は親戚の中を盥回しにされてもおかしくない厄介な過去を背負った澄香を、
彼女は一人で養ってきたのだ。その恩人に対し、澄香が取った言動と行動は、恩を仇で返すような人として最低の行為だ。
何より、澄香にとっての由美の存在。そのありがたさを、翔もよく分かっている分許せなかった。そして、そのありがたさを、
澄香もよく分かっているはずなのだ。
翔は膨れ上がる怒りを懸命に抑えこみ、出来るだけ静かな声で言った。
「さっきのは、ないんじゃないか?」
「さっきのって、何のことですか?」
澄香は全く反省していない様子で、悪びれる事なく言う。瞬間、怒りで視界が真っ白になった。振り返り、澄香を真っ直ぐ睨みつけ、
「とぼけんなよっ!! お前のさっきの由美さんへの言動と行動はな、一番やっちゃいけない事なんだよっ!!
由美さんはお前を世話してくれて、優しくしてくれて、それに誰より澄香の事を心配してくれてんだぞっ!?そんな由美さんが、
澄香を悲しませるような事をするわけないじゃないか!!なのに、なのにお前はどうして由美さんを疑ったりするんだ!!」
小さな部屋に反響する怒鳴り声。その声が余韻を残し、静寂に飲み込まれていく中、澄香の顔が熱を帯び、赤く染まっていく。
きつく噛み締められた唇が鬱血し、青黒く変色していた。
「そんなに、由美さんの事が信じられ──」
──翔の言い終わりをまたずして、驚くほど小さな声が、翔の言葉を打ち消した。
「どうして……」
「……えっ?」
「どうして、どうして……」
蚊の鳴くような小さな声だった。しかしその声は、まるで坂を転がる車輪のようにゆっくりと勢いを増していく。
655すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/03(日) 04:10:35 ID:DcC7iINV

「どうして、どうして、どうしてっ!!センパイは、どうしておばさんの事ばかり気にするんですかっ!? センパイ、
私の事好きって言ってくれたじゃない!!だったら、もっと、もっとたくさん私を気にかけてよっ!!」
そう叫んだ次の瞬間には、澄香の顔色が信号器のように青くなる。まるで、知りたくもない真実を知ってしまったかのように目を見開き、
澄香は両手で口をおさえ、
「ま、まさかセンパイ、おばさんの事好きなんですか?」
「なっ……」
翔は絶句した。澄香のあまりの理論の飛躍に思考がついていかない。
呆気にとられると言うより、中場呆れていた翔の目の前で、澄香は膝から崩れ落ち、頭を抱えてガタガタと震えだした。
「い、嫌だよ、センパイが、おばさんなんか好きになっちゃ、センパイは、センパイは……」
言葉が見つからない。
何がどうなったのかさえ分からない。
ただひとつはっきりしている事は、澄香が正常じゃない事くらいだ。だが、その澄香の異常さが、
逆に怒りで真っ白になった頭に彩りを取り戻させる。
話にならない。澄香はおかしいのだ。
ひとまず、澄香には頭を冷やす時間が必要だと思った。時間が、きっと彼女に平静を取り戻させてくれるだろう。
そう結論づけたのだ。
翔は溜め息をつきつつ、
「ともかく、俺は行くけど、頭が冷えたら由美さんに謝っておけよ。絶対に、だ。じゃあ」
そう言い残すと、翔は澄香の脇を通り過ぎようとした。丁度翔が彼女の真横に来た瞬間、シャツの袖がぐいと引かれて、再び溜め息をつく。
「……何だよ」
苛立ちを隠せずに、少し乱暴な口調で言った。
澄香はうつ向いたままだった。短い髪が顔を覆い、隙間から青紫の唇だけが覗いていた。その唇が、ゆっくりと動きだす。
「……行くって、どこに行くんですか?」
「帰るんだよ、家に。だから、離してくれないか?」
しかし、澄香は手をはなさない。むしろ、袖を引く手に力がこもったような気がした。うつ向いたままの澄香の手には、
信じられないほどの力がこもっている。まるで万力のように彼女の指がシャツの生地に食い込み、そこから動けなくなった。
656すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/03(日) 04:13:36 ID:DcC7iINV

「お、おい、はなせって」
と、裾を引っ張ったが、びくともしない。そのとき、虚ろな声が彼女の口から紡ぎ出された。
「本当に、家に帰るんですか?」
はぁ?と、翔は眉をひそめる。当たり前だ。だいたい翔は家に帰るとはっきり言っているではないか。澄香の質問の意図が分からない。
「本当は、あの女のところに行くんじゃないですか?」
あの女。
あの女とは一体誰の事かと一瞬思ったが、今までの話の流れから、すぐにそれが由美を差している事が分かった。今度は、
恩人をあの女よばわりか、と唐突に熱い怒りがこみあげてくる。
もう一度怒鳴ってやろうと大きく息を吸い込んだそのとき、うつ向いたままだった澄香の顔が、ゆっくりと上がり、
ずっと髪の陰に隠されていた顔が姿を現した。その顔を見た瞬間、怒りが急速に熱を失った。水を浴びせられたと言うより、
そのまま氷付けにされた気分だった。
カタカタカタ。
澄香の瞳は、死んでいた。まるで死んだ魚のように、光沢を無くし、泥沼のように光を飲み込んでいく。先に玄関先で見たあの瞳以上に、
それは淀んでいた。頭の中に浮かぶ全ての言葉が、彼女の瞳に吸い込まれていくような錯覚に陥る。
カタカタカタ。
膝が、体が言うことをきかない、まるで木偶になってしまったようだ。いや、石になってしまったのかもしれない。
さながらメデューサに睨まれた憐れな戦士のように。
カタカタカタ。
先ほどから鳴り続けている壊れたカスタネットのような音。ふと、それが歯の音が合わない音であると気付いた。
震えているのだ。そして、自分が震えていると自覚したその瞬間、言い知れぬ恐怖が心を蝕んだ。
澄香は狂っている。
初めて、澄香を怖いと思った。
不意に翔を見上げる澄香の目元が歪む。心臓が、破裂しそうな勢いで脈打った。
657すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/03(日) 04:14:52 ID:DcC7iINV

「センパイは、私のモノなんですよ?」
撫でるような寒気が背筋を駆け抜けた。膝がガクガクと笑い出す。
「センパイはすごく素敵だから、きっとセンパイに気がある人は沢山います。誰がセンパイを誘惑するか分からないんです。
だから、センパイは私が守ってあげますからね」
えへへ、と照れたように嗤う澄香。翔を見上げる虚ろな瞳が、狂気を孕んでいた。
ふと、掴まれていた袖が解放された。そして、澄香はおもむろに立ち上がり、翔の右腕に自分の体を絡ませ、
「私が、家まで送っていってあげます。帰るんなら、構わないでしょう?」
もう首を横に振ることなど出来なかった。
658 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/03(日) 04:16:32 ID:DcC7iINV
投下完了です。
659名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 09:55:13 ID:UPM/GwHM
GJ!
いい感じに目が覚めた
660名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 10:11:10 ID:rjcPYQKN
目が覚めたというより、頭が冷えた。
病んでるねGJ!
661名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 10:13:12 ID:oPTVdHkS
いい具合に病んでるね!
俺もモノって言われてええええええええええ!!

最後に一言GJでした
662名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 10:42:07 ID:gs0ZVvk5
>>658
「帰るんだよ、家に。だから、離してくれないか?」
死亡フラグ一丁はいりま〜す。
663名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 10:55:13 ID:TviD9Nce
>>648
確かにつまらない作品を書いているトライデント氏の人間性は酷いと言っているようなものだな
物語を書く人間としては最悪な分類に入るので、追放処分した方がいいんじゃないのか?

すみかと比べてくれ・・誤字脱字が存在してないだろ・・w

664名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 11:43:48 ID:EjunvShC
叩かれすぎワロタ
665名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 12:29:23 ID:DhvTh8mk
ここまで叩かれる人間も珍しいんだけどね・・
トライデント氏はNG指定決定だねwww
666名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 13:28:14 ID:HXK7Kcph
だだの読み手がウダウダ言うな。日本語おかしいなら日本語でおKと書け。追放って言いたいなら阿修羅氏に頼んでみろ。阿修羅氏が追放おKならなにも言わんし。食事と一緒で好みがあるやし、いらないのなら見るな。
667名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 13:42:24 ID:+WqhCPP9
正論だがおまいも少し落ち着け。
誤字だらけになってるぞ。

つかスルー
668名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 13:50:33 ID:N/mcoNRm
>>658
乙。対応は間違えてないし鈍くもないけど窮地に巻き込まれる主人公って、いいなww
669名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 14:22:52 ID:orvS/U/e
金払って読んでるんならわかるがタダで読んどいて追放とかはないだろ。
まあ誤字が多いのは事実だが。俺は脳内変換できてるからいいけど。
叩きまくってるやつはまずちゃんとしたSS書いてから叩けば?
670名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 14:28:28 ID:oPTVdHkS
つか>>3ぐらい守れよ
671名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 14:30:44 ID:eSMxwTyG
住人にスルースキルがないから嵐にいいように遊ばれてる。
嵐に舐められてるのわからんといかんよ。
672名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 14:40:26 ID:sieKQt3d
まあ、此処の住人の性質上、
職人に嫉妬する荒らしを見て見ぬ振りは出来ないのでしょう。

ある意味、荒らしの嫉妬が殺伐とした修羅場を生んでいます。

しかし嫉妬の余り暴走する泥棒猫=荒らしの自滅=自然消滅を待つのも謀略としては・・・イイ。
673名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 15:18:53 ID:yXNfUPn4
トライデント氏に非は無いが今後の投下は避難所にしてもらいたい
あっちだったら荒らされても荒らしの文は削除してもらえるしさ
いつも投下されるたびにこのスレが荒らされるのはたまったものじゃないよ
トライデント氏の作品を楽しみに待ってる読者も読みやすい環境で読みたいだろうし
そのためにも避難所への投下の方が良いと思う
674名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 15:24:54 ID:EA4QC3UT
トライデント氏追放キタァー(゜∀゜)ーー!!!!
荒らしの根源であるトライデント氏を嫉妬スレから追放するのだ!!!!
675名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 16:14:39 ID:orvS/U/e
なんでこのスレだけ誤字脱字でこんなに荒れるのかね。
676名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 16:41:54 ID:MxFNKJos
人の作品貶して、それを作者が読んでるかもしれないのに
心が痛まないのかな?
677名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 17:07:34 ID:NeNoj6Yb
気にするな
荒し→反応→荒しの一連の流れは単独犯によるものだ
住人はちゃんとスルーできてるんだ
678名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 17:40:32 ID:UsVHhq/Q
「指摘するなら誤字脱字」
とスレの決まりにあるじゃねーか。
それに従ってもダメなのかよ。
じゃあ諸手を挙げて万歳以外は全部不可か。
いやそもそも発言自体しない方がいいってか。
679名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 17:49:35 ID:KytxU+rL
>>675
なぜってお前みたいな反応する奴がいるからだろ
スルーしとけば問題ないのに余計な反応するから荒れだす
自分が荒れを引き起こす原因の一つになっていると少しは自覚したほうがいいと思われ
680名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 17:50:58 ID:oPTVdHkS
>>678
嫌いな作品なら見るな、飛ばせも守れ
681名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 17:51:24 ID:Hj630HX1
荒れているおかげでここ1週過分のレスを確保できたよなw
682名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 17:52:03 ID:SR+YyX9g
反応してる香具師に更に反応する香具師・・・・なんというスパイラル
683名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 18:19:22 ID:lM3yIb4j
>>680
決め付け乙、誰が嫌いなんて言ったんだ
それじゃ否定的なこと言うなってことと同じだ
684名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 18:20:45 ID:OphFLBtx
で、久々に姉モノの嫉妬プロットが読みたいわけだが・・
誰か書いてー
685名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 19:08:45 ID:TrZn4ayd
>>677
自演だと思うんなら削除依頼出せよw
自演なら削除されると思うけど?
686名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 19:55:19 ID:gs0ZVvk5
>>683
これだけ追放とか言ってるやつらが嫌ってないとでも?
嫌いどころか憎悪まできてると思うぞ
687名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 20:44:52 ID:lM3yIb4j
真面目に指摘してる人もいるじゃんか
>>609,621,628,640,648

指摘すればしたでお前が書けだの言うがな
書けない奴は指摘しちゃ駄目なのかと
つーか真面目に読めばおかしい所が嫌でも目に付くだろう、こう何回もあっちゃね
それと悪意を持ってるかどうか位文面である程度分かる
688名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 20:51:11 ID:/piWz7Nv
こう何回も脱字や誤字があるならば・・トライデント氏の追放も考えなくちゃいけないね
689名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 20:55:53 ID:orvS/U/e
>>687
要は指摘の仕方かと。
>>609,621,628,640,648のようにまじめに指摘してる人がいるのは知ってる。
ただ明らかに煽り目当てというか職人を侮辱してる奴がいるからウザイ。
690名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:00:21 ID:YbGukh5a
>>687
>>688みたいな奴が活動中だから、今はそういった指摘はしない方がいい。
「今、指摘していい雰囲気かどうか見極める」のは、お気楽なROMにとってほぼ唯一の責任だ。
それぐらい譲歩してもよかろう?

ちょいとばかりの文法間違いでスレは潰れないが、それを意図的に煽る奴が現れるとスレが潰れる。
691名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:05:12 ID:lM3yIb4j
俺も熱くなりすぎたわ、スマン
でも荒らしが消える日はいつ来るのか……
692名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:08:35 ID:P5vOM0GP
つまらんSSは読み飛ばせばいいだけだし
沢山SSが投下されると、他の職人さんが投下しやすい雰囲気を作ってくれるから役に立ってるけど

批評家気取りのレスは読み飛ばしてもスレ全体の雰囲気に影響があるし
自己満論評の為にスレの雰囲気と気分が悪くなるだけだから
後者のほうが圧倒的にウザいな。
693名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:13:30 ID:/piWz7Nv
だが、トライデント氏の作品は誤字脱字文章構成文法が全ておかしいから叩かれているんでしょ
それは仕方ない事だと思いますよ
694名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:20:48 ID:SR+YyX9g
さあ、どんどん規模が大きくなってきましたよw
次は人格否定ですかw
695名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:37:00 ID:/piWz7Nv
人格否定ではないだろうに・・
696名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:42:03 ID:lkJQL7uD
人格否定って意味が分からんw

697名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:50:24 ID:vB89s8ba
スルーを覚えなさいな
オレモカー
698名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 22:48:45 ID:/piWz7Nv
しかし・・・何でこんなにも荒れてしまうのだろうか?
699名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 22:56:47 ID:KGqfndGg
トライデント氏の昔の作品
煌く空とか雪桜とかマジで面白かった
当時リアルタイムで読んで心の底からGJを送っていたよ
でも最近のは以前ほど面白さを感じられない
推敲不足といい作品に対する丁寧さも欠けてる気もするし
何だか腕落ちてね?
700名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:10:10 ID:sieKQt3d
職人様方の筆も、常に一定で進むとは限らないでしょうし。
個人個人、
特に複数の完結作を持つ方は書く題材やネタの向き不向きもあるはず。
その時々の精神や肉体の状態などにも左右されるでしょうし。

気に入らないなら読まずにあぼーん。
これに尽きます。

職人様方にはご自愛の上でのマイペースな投下をお願い致します。
701名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:16:51 ID:TrZn4ayd
201 :鋸 ◆UKGpV/fF16 :2007/06/03(日) 02:24:47 ID:VSGFWqwk0
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1178928067/

607.612.614.630

3. 固定ハンドル叩き

このレスもコピペされる可能性があるのでその時は削除をお願いします。
203 :鋸 ◆UKGpV/fF16 :2007/06/03(日) 15:49:12 ID:VSGFWqwk0
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1178928067/
663.665.674

3. 固定ハンドル叩き

作者さんへの物凄い誹謗中傷が見られます。
このレスもコピペされる可能性があるのでその時は削除をお願いします。

削除以来出されてたwトリ付けてる意味が分からないけど
702名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:20:26 ID:9T9CpV21
推敲するもしないも作家さんの裁量だしタダで見てる以上大きな事は言えない。
書く方も見る方もお気楽にいけばいいと思う
個人的には何となく意味が推測できれば誤字脱字はどうでも良い気がする。
たとえほんの少しでも嫉妬分や修羅場分の含まれてる作品upする人は
みんな神様。仮にトライデント氏追放なんてやったら怖がって作家さん大量流出は間違いない。

ちなみに他の著名な作家さん達がどう思ってるかも知りたいかな。
次の投下の際に最後のレスで誤字脱字に関する考え方をお聞きしたいものです。
703名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:25:51 ID:yyVpXO5W
追放とかはやり過ぎ、大して期待していないしスルーしようぜ。

そんなことより俺はぶらっど☆まりぃが読みたい。
704名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:28:47 ID:wFi4spq6
>>703
避難所

荒らしスルー出来ない香具師は避難所でもお断りだがな
705名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:29:59 ID:yyVpXO5W
>>703
×ぶらっど
○ぶらっでぃ
706名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:37:55 ID:7NL5ADmF
荒らしもスルー出来ないしsage進行も守れんってどういうことだよ
707名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:40:11 ID:DzPUIWiq
まあそういう人なんだろ
つまりスルー対象
708名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:53:39 ID:3Oj4259U
っていうか、これまでの荒らしはトライデント氏の妹の仕業だと思えば
萌えてしまうのは気のせいでしょうか・・

お兄ちゃん・・あの嫉妬スレに作品を投稿してから私に構ってくれなくなった。
いつも一緒に同じベットで寝ているのに・・夜更かししてPCに熱中している。
PCの履歴を見ると嫉妬スレでお兄ちゃんは自分で書いた作品を投稿しているみたい。
お兄ちゃんの趣味にとやかく言うつもりはないけど・・

私に構ってくれないのは・・嫌だった。

どうすれば、お兄ちゃんは前みたいに私だけを見てくれるのか・・

あっ。そうだ。

こんなスレがあるから悪いんだ

壊してやる壊してやる壊してやる荒らしてやる荒らしてやる荒らしてやる
壊してやる壊してやる壊してやる荒らしてやる荒らしてやる荒らしてやる
壊してやる壊してやる壊してやる荒らしてやる荒らしてやる荒らしてやる
壊してやる壊してやる壊してやる荒らしてやる荒らしてやる荒らしてやる

私とお兄ちゃんの大切な時間を奪った、このスレは絶対に許さないんだから!!


ってな感じにやっていると思えばいいのでは?


709名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 00:37:19 ID:cq1Hu+7P
688 :名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 20:51:11 ID:/piWz7Nv
こう何回も脱字や誤字があるならば・・トライデント氏の追放も考えなくちゃいけないね

693 :名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:13:30 ID:/piWz7Nv
だが、トライデント氏の作品は誤字脱字文章構成文法が全ておかしいから叩かれているんでしょ
それは仕方ない事だと思いますよ

695 :名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:37:00 ID:/piWz7Nv
人格否定ではないだろうに・・

698 :名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 22:48:45 ID:/piWz7Nv
しかし・・・何でこんなにも荒れてしまうのだろうか?

( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
710名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 00:50:13 ID:cq1Hu+7P
短時間でポコポコ沸くからどう見ても同一人物
しかも頭が弱いときたもんだ。もう笑うしかないわな
711名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 01:09:10 ID:EZTZoaHN
すごいの発見!携帯からみてみ〜

http://2sen.dip.jp:81/cgi-bin/upgun/up1/source/up5779.htm
712名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 01:10:37 ID:0aQ255EP
こう何回も脱字や誤字があるならば・・トライデント氏の追放も考えなくちゃいけないね






なーんてね、うそうそ、応援してますよ
713名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 10:48:27 ID:DzLt+I0L
荒らしてるやつウゼー。リアルでトライデント氏に恨みでもあるんか?
それともただのニートか?
>>712
脱字や誤字ぐらい脳内で変換できんのか?
714名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 11:31:39 ID:3xfP4LBT
>>713 取りあえずsageろ。

不具合のあるゲームに同じ事言えるか?
文章は言葉しか無いから、誤字脱字の時点で大きなエラーと同じだぞ。

トライデント氏が嫌われるのは内容じゃなく、そこがいつまで経っても進歩しないというか、進歩させる気がないところだと思う。
なまじ数はこなしてるから、余計にそう思われるんだろうな。

俺も、内容はGJだと思うのでせめて推敲はしてくれと思う。
715名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 11:43:58 ID:2Zsah1/y
金出して買うゲームならクレームつけたり修正求める権利もあるが、
SSにそれはない。
金と引き替えに商品を渡してるわけじゃないからな。

ボランティアで掃除してる近所の人達に、
やれここは汚いここは手抜き、

と言うようなことはやめとけ。
716名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 12:52:58 ID:rj4D4/UU
>>715イイコト言った。
717名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 13:03:31 ID:KGyvkYdm
荒らし云々より一部住人の擁護がウザー
スルーすればいいのにいちいち噛みついてさぁ……
無自覚な荒らしの分、余計性質が悪いよ
718名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 13:22:14 ID:lB+MN/2J
あまりクレームのつかなかったゲームもあるんじゃないか?
ヒント:お部屋をおもちします。
719名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 13:32:11 ID:ssnwgZMx
>>718
あれはクレーム付く付かない以前に全てが日本語としておかしいレベルだし
信者はなんでも造語、きのこ語だって逆に感心するから
正常な人は突っ込む気にもならんのだろ
720名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 13:42:28 ID:3xfP4LBT
>>715はちょと違うだろ。
掃除なら半分でもやっといてもらえれば嬉しいが、SSは完成品として出すんだからちゃんとした出来でないと(話の内容は別として)。
嫌われてるのは誤字脱字自体より、それを直そうとしない態度だよ。お金がどうこうの問題じゃなく。
721名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 13:45:37 ID:JyihUIX+
実際に現在進行中で嫌われているトライデント氏に追放を求める声が高まっているようです。
どうやったら騒ぎが収まるんだろうか・・w
722名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 14:11:57 ID:tNy1ktF+
18歳以上しかいないはずだし、>>3
これで終わりだろ。
723名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 14:38:20 ID:2L/gCb5R
>>722
ま、そうだな。
それより、時代劇物で良い修羅場小説ってないかな?
724名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 17:23:40 ID:wtHcDisI
>>715
ここは2ch、その論理は自分のHPとかの場合だろ
725名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 17:37:46 ID:gkTUDwHB
で?無駄議論をいつまで続るの?
726名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 17:38:50 ID:t5D2790h
>>723

時代小説はあんまし読まないからよう分からんけれど、
この前読んだ「闇の傀儡師」に、
何度か寝床を共にしただけで主人公の妻のように振舞う女が出てきたなぁ。

アレは惜しかったと思う。
727名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 17:45:35 ID:2L/gCb5R
>>726
ほう、そんなのがあるのか…
今度本屋で探してみるよ
サンクス
728名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 17:47:27 ID:yEGwkBXJ
204 :鋸 ◆B6fo1v1q8U :2007/06/04(月) 00:45:04 ID:XjRbiWCo0
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1178928067/

685.693.695.698  同一ID:cq1Hu+7P

3. 固定ハンドル叩き

701   (上記のコピペです)

6.コピー&ペースト

作者さんへの物凄い誹謗中傷が見られます。
このレスもコピペされる可能性があるのでその時は削除をお願いします。


205 :鋸 ◆UKGpV/fF16 :2007/06/04(月) 00:45:51 ID:XjRbiWCo0
トリ間違えた・・・orz

>>701に速攻反応しててワロタwww鳥の意味が分からんw
729名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 17:51:05 ID:cq1Hu+7P
>>726
>何度か寝床を共にしただけで主人公の妻のように振舞う女が出てきたなぁ。
この部分で既に購入決定
730名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 18:17:29 ID:u+bKs6VJ
時代劇と言えば螢火がいい所で止まってるんだよなー
思い出したら続きが気になって堪らなくなって来た。
731名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 18:29:53 ID:2L/gCb5R
実を言うと、螢火を読んで興味持ったんだ。
昔の方が倫理的にドロドロしてそうでさ
732名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 18:30:57 ID:e7MNy6zD
>>729

※藤沢周平「闇の傀儡師」にセックル描写は有りません。
  「寝床を共に」というのは、ただ同じ布団で寝たという意味でしかありません。
733名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 18:38:01 ID:na7CsBtz
>>728
磯野貴理とかけてウザイコテてことじゃね?
734名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 18:43:08 ID:Nh/Zm2Fk
日本語でおk
735名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 18:47:43 ID:e7MNy6zD
Sprech Japanisch !!
736名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 18:54:23 ID:cq1Hu+7P
>>732
いや、セクースは無くてもいいんだ。
ただ男への歪んだ愛が見れれば
737名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 18:58:42 ID:Nh/Zm2Fk
脱線してるしそっから先は本スレでやれな
738名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 19:02:45 ID:cq1Hu+7P
>>737
おK
739名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 21:48:52 ID:kLWQqFOC
独占欲のある女の人の束縛って・・どんなことされるんですか?
経験者の方にお聞きしたいです
740名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 21:51:23 ID:mZvJEnmp
本スレ逝け
741名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 22:16:49 ID:jv96rjKT
>>739
とりあえず、彼氏の体を縄で縛られて
彼女が一生懸命に甘えてくるのが常識だけどw
742名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 22:20:24 ID:XcU9Rx4Z
携帯勝手に持ち出すのはデフォだよな。
743名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 22:22:54 ID:cq1Hu+7P
>>739
3次はちょっと・・・^^;
それをネタにSSを書くというなら、まとめを読んだ方がよく分かるかも
744名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 22:28:57 ID:lB+MN/2J
>>741
一生懸命彼氏…のジュニアに甘えて、直前で離れる
の間違いじゃないのか?
745名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 22:29:12 ID:b2YAMH10
3次元の出来事をネタにすると萌えてくるのはどうしてだろうか?

ちなみに俺は秋島 香奈子 のようなイタイ系の復讐劇みたいな奴が読みたい
本当は大好きなんだけど、復讐して主人公の中の価値を大きくするみたいな・・。
746名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 22:56:38 ID:cq1Hu+7P
>>744
そして、続けて欲しいならもうあの子と会わないで、となるわけか
747名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 23:17:52 ID:RMdgHgQ/
一度、神たちはネタづくりのためにマナマナに監禁してもらえばいいんだよ
いい勉強になるよ
748名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 23:42:18 ID:2L/gCb5R
馬鹿野郎!!
あの人に捕まって逃げられるわけないだろうが!
あれなんかドアの前に人の気配が
749名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 00:18:19 ID:0zjybbx1
メガネだけどオパーイがバイーンだし料理も上手いんだぞマナマナは!
男なら誰しも監禁されたいと思うでしょうが!
750名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 00:30:08 ID:PEclVioG
まあ、嫉妬スレ住人の男性は夜道を一人で帰れないんだよな・・
男女関係は逆転した・・俺も用心のために防犯道具を買っておかねけば
気が付いたら・・窓に人影が・・一体どうして・・・
751名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 12:10:56 ID:ty2pjwIT
雑談スレktkr
752名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 12:31:42 ID:F1T0XK7k
投下がないときは雑談
投下があるときは作者叩き
これが住人の民度
753名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 13:11:00 ID:MIYy+fR2
そうだね。
プロテインだね。
754名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 16:05:57 ID:kGZkv5eX
>>750
拉致監禁が当たり前の時代だからな仕方あるまい
755名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 16:11:54 ID:tEDnh5TH
ttp://nekomarudow.com/y/

ちょっと期待
756名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 17:08:18 ID:ziiULrSH
>>755
■ヒロイン全員病んでる!学園サイコホラーADV■
全ヒロインがとことん病んでいます。
殺るか殺られるかの殺伐【ディープ】ラブストーリー。
貴方は生きてEDを迎えれますか?

ここの趣旨と大分違うような・・・
出たら買うけどさ
757名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 19:11:38 ID:OsD9F3Js
アバウトの所マークパンサーw
758名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 23:13:22 ID:OIBM5rbx
最終更新日が4月15日だから、このままフェードアウトしそうな気がするんだけど・・・
759名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 11:47:43 ID:eSHMjQMv
投稿来ないねー
760名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 13:39:38 ID:LdT+lbfJ
嵐の前の静けさ…
761名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 17:26:49 ID:zhfcufbK
投下します
762名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 18:47:36 ID:MX/+sbSe
な、何?この放置プレイ・・・(*´Д`)ハァハァ
763名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 18:47:36 ID:rVcKZhtT
>>761が投下宣言してからかれこれ1時間
いまだ投下はない。
後日、>>761の死体と、



その姉の死体が隣接して発見された。

764名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 19:48:16 ID:/D8EKG4V
>>763
姉の監視を振り切って投下しようとしたら、見つかってというオチか・・・
これだけで良いネタになるな
765名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 19:49:36 ID:t4fdxmpS
放置すらもネタにしてしまうおまいらに脱帽
766名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 19:52:46 ID:1P40Bg4z
むしろ脱衣して全裸で待ちますよ
767名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 19:56:52 ID:xmKjnHbi
女子の全裸なら大歓迎
768名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 20:04:18 ID:X1tzJV4D
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179863962/530

530 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/06/06(水) 17:24:51 ID:zhfcufbK
>>505
あぁ…今までの痴漢に仕立て上げた女とかはどうなろうと知ったこっちゃなかったけど、
陽一に好意を持ってくれてる可愛い女の子が、レイプされたりしたら…
俺三日間は鬱になる…
レイプは嫌だ…orz

531 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 17:25:39 ID:zhfcufbK
ごめん上げちまった



生存確認w
769名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 20:05:10 ID:yx0YTV+q
じゃあオレが脱ごう
770名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 20:08:24 ID:/D8EKG4V
>>769
お前・・・連れ去られるぞ
771名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 20:13:18 ID:MX/+sbSe
>>770
何!?じゃあ俺も脱ぐ!!
772名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 20:16:33 ID:IQPDvKyd
>>768

( ´,_ゝ`)プッ

時間も読み解けないだなんて、普通の生活おくるだけでもすげぇ大変そうだな。
773名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 20:37:57 ID:uZ2hGjPm
このスレは◆Xj/0bp81B氏を最後に投下がなくなり雑談のみになりました
チクショー
774名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 20:41:13 ID:/D8EKG4V
釣り針でかすぎ。釣られないよ。

>>771
俺も俺も!!
775名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 20:42:10 ID:e7aEcnRu
>>773
しかもつまらないというのが致命的w
776名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 21:02:24 ID:Dr+qTH2D
お兄ちゃんひとりで何ぶつぶつゆっとるん?
777名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 21:19:02 ID:LdT+lbfJ
>>774
どうぞどうぞ
778名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 21:37:17 ID:zhfcufbK
ごめん暇だったからつい調子に乗ったwwww
779 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/06(水) 21:42:29 ID:uWco1Z+3
中々神が現れないからちょっと自分でスレを汚そうと思う。
初めて長編に挑んでみた。で、第一話目。
780彼女の目はつぶら ◆WIhkQEicx2 :2007/06/06(水) 21:44:50 ID:uWco1Z+3
「……こえてたら…を……て。
聞こえるかい?聞こえて…手を握って。」

ふと起きたらなんだか体はダルくて、起きてるのに目の前は真っ暗で、
聞こえてくるのは「あの人」の声だけだった。
聞こえてたら手を握って、って言ってる。ダイジョウブ、聞こえてるよ?
だから、あたしはゆっくり手を握る。「あの人」の手を傷つけないようにゆっくりと。

「あ!!聞こえてるんだね!もう一度、握って!」
「あの人」がとても嬉しそうだから、あたしはもちろんもう一回握る。

「僕の声が聞こえてるんだね!?ちゃんと起きてるんだね!?」
「うん…おきてるよ。」
ゆっくりと言葉に出す。なんだかダルいから、いつものように元気に「あの人」に答えることができなかった。
「良かった…良かった…!教授、成功しましたね!!」
「こうもあっさり成功するとは、自分でも信じられんよ。」
「滅多なことを言わないでください、教授。僕は必ず成功すると思っていました。」
「それはただの願望だろう。それとも言い訳か?拒否反応も『しょうとつ』も起こる可能性はまだ十分にあるんだぞ。」
「それを、『彼女』の前で言わないでください、教授。」

「あの人」と知らない人の声が聞こえてくる。何を話しているのかは、ムズしくてよくわからない。
ただ耳を通りすぎていくだけ。でも「あの人」の声だからそれでもいい。

「聞こえてるよね?君がこうして起きてくれて、僕は本当に嬉しい。
君は、君の名前は?名前は言えるかい?」
名前?私の?私は…水崎環(みずさきたまき)。

自分の名前を頭の中で唱えると、少しだけ頭がクリアーになってきた気がする。
途端、私が置かれている状況が気になりだした。
相変わらず目の前は暗くて、全身が虚脱感に襲われている。
でも、自分がベッドのようなところに寝ていることとか、だるさの中にもチクリとした不快感、
つまり腕や足に何かを差し込まれているような感覚があること、
目の前の暗闇は、私の目が見えなくなったとかこの場所が真夜中の真っ暗闇だからというわけではなく、
私が何か柔らかい布で目隠しをされているんだということとか、色んなことに気づきだした。
普通に考えたらここは…病院だと思う。私は、何か大怪我をしたんだろうな。
大怪我?大怪我。そうだ!私は、ここでこうして起きる前、飛び出してきた車が、
横から、私は気づいたら飛んでて、地面が視界を覆いつくしていて…!!
781彼女の目はつぶら ◆WIhkQEicx2 :2007/06/06(水) 21:45:59 ID:uWco1Z+3

「どうしたの?まだ、喋るのはつらいかい?無理はしなくてもいいんだ。」

「あの人」の声が聞こえてきて、あたしはこわいことを思い出すのをやめた。
こわいことなんて考えたって仕方がない。それより、「あの人」がいってるよ。
あたしに名前を言えって。あたしの名前は、そう。
みずさきたまき。
え?
みずさき、たまき?あれ?何でだろう。あたしそんな名前だったっけ?
「あの人」はいつもあたしをそう呼んでくれていたっけ?

「…やっぱり、まだ無理みたいだね。ゆっくり、ゆっくりでいいよ。
君が思い出せた時に言えばいい。僕からは、君の名前は言えないから。
なんて呼んであげたらいいのか、分からないからね…。」

「あの人」が困っているのが分かった。困らせるのは良くない。あたしがつらいから。
でも、どうしてもみずさきたまきという言葉が言えなかった。
私は確かに水崎環なんだけど、どうしてもしっくりこない。
だから、「あの人」に代わりに呼んでもらおう。

「…よ…んで?あなたが呼んでくれるなら…なんでも、いいから。」

「   分かった。呼ぶよ?…黒。」
黒、くろ、クロ…。
若い先生(らしき人。多分ここは病院だから)が呼んだその名前は、なぜか私の心に染み込んだ。
私はそんな名前、っていうか単なる色で呼ばれたことなんてなかったはずだし、
小中高とそんなあだ名付けられたこともなかったはずなんだけど。
何故か今すぐ走り出したいくらいに喜んでいた。
病院のベッドの上でそんな風に気持ちだけがはしゃいでいる。
おかしい。変だ。体の違和感は消えていないしそもそもまともに動かせない。
だけど、あたしはその時確かにうれしかった。
782彼女の目はつぶら ◆WIhkQEicx2 :2007/06/06(水) 21:48:12 ID:uWco1Z+3



私が次に目を覚ました時には、世界は明るさを取り戻していた。
別にどっかの誰かが光の玉を使ったとかそういうわけではなく、
単に目隠しが外されていたから見えた、というそれだけのこと。
久しぶりに私の目に差し込んでくる太陽がまぶしくて、それで窓から光が差し込んできてるってことに気が付いた。
まだちょっとだるい首をふっと窓と反対側に向けると、昔お父さんが入院した時にも見た普通の病室のドアが見える。
もぞもぞと体を動かすと、私は真っ白のシーツをかけられたベッドの中にいることが分かった。
間違えようがない。こりゃ病室だ。
「いたたたたた」
体を動かしていたら、腕が鈍痛に襲われた。あー、点滴が刺さってたんだ。
それが動かした拍子に擦れて痛かったんだな。
「うん、こりゃ間違いなく私は入院患者だな。」
改めて、言葉に出して今の自分を確認してみた。
私、水崎環19歳の短いような長いような人生の中でも、こんな経験はなかったのでちょっと面食らっていた。
目が覚めたら突然入院状態って。私の身に何が起こってるんだろう。
この清潔で安心感ある(私はまだ安心できてないけど、一応比喩で)病室の雰囲気からして、
どこかの怪しい男とか教団とかに連れ去られて監禁されてるとかそういうことは無さそうだ。
あの緑色のドアを開けて入ってくるのは、多分優しい看護婦さんとか優しい先生とかそういう人種だ。そう思いたい。

…先生?そうだ、私が起きたのはこれが最初じゃない!
唐突に、忘れていたことを思い出して、心臓がバクバクと高鳴るのを感じる。
そうだ、私を起こしてくれた若い男の人の声と何だか偉そうなおっさんの声を覚えている。
聞こえてたら手を握れとか何とか、
いかにも意識を失って大変なことになってましたって感じがする邂逅を果たしたんだよ、うん。
やっぱり私は大変な事故に巻き込まれて、ここに担ぎ込まれてるんだと思う。
「そっかー。まいったなー。」
考えたことを正直に言ってみた。ちくしょう。誰か反応してよ。
不安になるでしょ、何の説明もなしにほっとかれたら。
このまま、この明るすぎる日差しに照らされながら不安な時間を過ごさなければいけないのだろうか?
783彼女の目はつぶら ◆WIhkQEicx2 :2007/06/06(水) 21:50:27 ID:uWco1Z+3
少しずつ襲い掛かってきそうになる恐怖をどうにかしようとする前に、
緑色のドアからこんこん、と軽いノックの音が聞こえた。
「は、はひ!?」
はい、と言おうと思ったんだけど、あまりに突然だったので噛んでしまった。
そのまま、ガラガラとドアが開けられる。

開けたのは、背が高くて短い髪の綺麗な男の人。
綺麗、っていうのは顔もそうだけど良く見たら白衣だったのでそう思ったのかもしれない。
あたしは、知っている人が部屋に入ってきたので途端に安心した。
…「知っている人」?私、この人知ってたっけ?
「おはよう、黒。いい朝だね。」
「お、おはようございます。」
その先生らしき人がこれぞ朝、って感じの爽やかな挨拶をしてきた。
ああ、この声、あの時の先生だ。最初に私が起きたときの。
それで、知っている人だと思ったのかな?
顔が何となく男優の大沢た○おに似てるから、何となく知ってる気になったとか、そんな理由かもしれない。
とにかく私は安心したので、その辺の軽い疑問はどうでも良くなっていた。
先生はそのまますたすたと私のベッドの横にまで歩いてくる。
それでそのままごく自然に、私の頭をなで始めた。
「黒、今日も調子はいいかい?ご飯は食べられそうかな?」
わしゃわしゃと、ちょっと強すぎない?と思うくらいなでてくれる。
最近の病院って、こんなサービスまでしてくれるのかな…小児病棟とかじゃないよね、ここ。
私は小さい方だけど、子ども料金で電車に乗るとかそんなロリ的な真似したことないし…。
「あ、あの、先生、それってちょっと、照れるんですけど…。」
「うん?珍しいね、黒がそんなこと言うなんて。」
先生は気にせず大きな手で私の黒髪をかき乱す。ううううう。嬉しいけどどうなの、これ。
それに、何で私のことを『黒』なんてそんな情緒もへったくれもない名前で呼ぶのかな、この人。
「せ、先生先生。私、水崎です。事故った時に学生証とかは入ってませんでした?」
どういう状況でここに入ったか良く分からないけど、
この人は多分悪意でやってるんじゃなく、何かの手違いなんだろうから訂正しておいた。
「え?」
先生の手が止まる。目を見開いき、口を開けっ放しにして私のほうを見ている。
何か驚くようなことを言っただろうか、私。もしかして手術患者を取り違えたとか?
「君は、黒じゃなくて、水崎さん、なんですか?」
数秒して、先生が一言一言を噛んで含めるようにゆっくりと、私に確認してくる。
「はい。そうです。」
私ははっきりと答える。先生は綺麗な顔がちょっとアホっぽくなるほど呆然としていた。
ああ、やっぱり何か、重大なミスをしたんだろうか?私の体、大丈夫なのかな?
不安になる。でもその前に、やっぱりもうちょっとなでられておけばよかったかな、とも思った。
あたしはなでられるのが大好きだから。特にこの人に。
784 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/06(水) 21:51:13 ID:uWco1Z+3
こんだけ。この後はまた書きながら考えようと思う。じゃ、また。
785名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 21:55:06 ID:/D8EKG4V
    ┌┐    ┌──┐         (゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚).        ┌─┐
┌─┘└─┐│┌┐│         (゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚).        │  │
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┌─┘└─┐│┌┐││      │(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)│      ││  │
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    └┘        └┘         (゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚).        └─┘

>>784
何か色々と謎ですけど続き期待してますぜ!!
786名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 23:59:11 ID:lmoeEdXn
>>784
とりあえず言わして貰おう、GJと!!!
787緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/06/07(木) 00:03:32 ID:UtBw+HQy
投下します
788七戦姫 10話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/07(木) 00:04:33 ID:UtBw+HQy

 * * * * *

 ――さて。どうするべきか。
 
 隣に一人。周りに六人。
 戦姫の集う部屋にて、クチナは頭を悩ませていた。
 
 脇には緩みきったヌエの笑顔。
 周囲からは少女たちの尖った視線。
 
 刀を使う小さな女の子――ヘイカが飛び込んできて。
 
 ユナハとヘイカが戦って。
 
 イクハとヘイカが戦って。
 
 何故かサラサを連れたケスクが乱入して。
 
 そしてヌエが突撃してきて。
 
 最後はツノニが無理矢理まとめた。
 
 
(……滅茶苦茶だ……!)
 
 
 このような状況で、はたしてクチナにできることはあるのだろうか。
 何もかも無かったことにして、ベッドの奥に潜り込みたくなってしまう。
 
 しかし。
 
 その場合、残された少女たちはどうなるのか。
 特に、ヘイカとヌエは立場上、とても微妙な状態である。
 ヘイカは侵入者として殺されてしまうかもしれない。
 ヌエはその実態を、本来の管轄であるケスクに知られてしまうだろう。
 この二つは、クチナとしては絶対に避けたかった。
 
 そして、クチナにできることはただひとつ。
 
 体力も権力もない、病弱王子にできること。
 それは。
 
 
「――ねえ、君。……えっと、ヘイカさん。
 どうして僕の部屋に来たのか、教えてくれないかな?」
 
 
 話すこと。
 それだけが、彼にできることだった。


789七戦姫 10話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/07(木) 00:05:18 ID:bYA4HHq7

 * * * * *
 
(……ん。怖がってるときは凡骨だけど、やること決めたら頭の回転は悪くないのよね。
 さすがくっちー。――私のご主人様、だもんね)
 
 クチナが背後へ振り返り、刀を持つ少女に問いかけたとき。
 ツノニは、誰にも気付かれないように緩んだ溜息を吐いた。
 
 
 所用で城から出ていた帰りに、クチナの寝室の窓が全壊していたときには背筋が凍った。
 慌てて部屋に向かうと、繰り広げられていたのは大乱戦。
 まず最初にクチナの無事を確認し、彼に危害が加えられてないことには安堵したが。
 怒声程度では止められそうにないことも理解したツノニは、実力行使に出ることにした。
 
 6人全員の無力化。
 
 尋常な状態だったら、不可能以外の何ものでもないが。
 幸か不幸か、場所はクチナの寝室だった。
 床の溝やの壁紙の模様に合わせて張り巡らせた“糸”を使い、何とか動きを封じることができた。
 寝室に仕込んである“罠”は三桁を超える。
 クチナの部屋の掃除を任されているツノニだからこそ、仕掛けられた。
 
 その後は、全員を牽制しつつ、即座に戦闘を起こせない距離を確保させ、膠着状態を作り出した。
 配置には神経を削ったが、今の今まで問題が起きなかったから、成功といえるだろう。
 
 ヌエだけは、クチナと離してはならない。
 
 ツノニはそう判断し、彼女だけ、主人の傍に居ることを許した。
 他の5人は、多かれ少なかれ、自制の利く人間だ。
 配分はどうであれ、熱い自分と冷たい自分を裡に有していて、何とかバランスを保つことができる。
 だが、ヌエだけは、“熱い自分”しか持っていない。
 故に己を制せられず、感情の赴くままに行動してしまう。
 
 そんな娘だから、クチナに任せるしか、できなかった。
 
 ヌエを殺さずに止めることは不可能である。
 実際、糸を展開させたときも、ヌエが一番、その身に糸を食い込ませていた。
 体が切断されなかったのは、攻撃動作中ではなかったから。それだけだ。


790七戦姫 10話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/07(木) 00:06:04 ID:bYA4HHq7

(……まあ、死ななかったから問題なしということで。
 …………竜騎士を怒らせちゃったのは痛いけどなあ……)
 
 正攻法であれば、この中で最強を誇るであろう竜騎士ケスク。
 彼女に己の技量を見せ、且つ怒りを覚えさせてしまったのは痛すぎた。
 怒るということは、すなわち注意が向いているということだ。
 不意打ちを至上とするツノニにとって、それはこの上ない足枷となる。
 
(……まあ、なるようになるか。そんなことより今はくっちー。
 刀娘とヌエちゃんがどうなるかは、くっちーにかかってるようなもんだしなあ)
 
 己の不利はとりあえず脇に置き。
 ツノニは、主人と刀娘の会話に耳を傾けた。
 
 
 * * * * *
 
 
 ヘイカの話を聞いて。
 
 全員が、なんだそれは、という顔をした。
 
 それに腹を立てたヘイカは、声を荒げて繰り返した。
 
 
「――だから、大会の年齢制限を取り払えと言っている!
 こんないい女を捕まえて、何が“子どもは早く帰りなさい”だ!
 巫山戯るのも大概にしろッ!!!」
 
 
「…………えーと」
「……え、何の冗談?」
「……って、クチナのお嫁さんを決める大会だし……」
「子どもは早く帰れー」
「……くちな、あいつ、おこさま?」
 
 
「殺す……! 此奴等全員斬り殺す……!」
「え、えっと、その、落ち着いて! 動くと切れちゃうってば!
 ……その、要するに、君も大会に出場したいの?」
「うむ。木っ端役人を問い詰めても無駄だというのはわかりきっているからな。
 ――手っ取り早く、王子本人に抗議しに来たわけだ」
 
 あっけらかんと言い放つヘイカ。
 そして、彼女はこう続けた。
 
「要は強ければいいのだろう?
 ならば年齢など気にするのは可笑しいではないか。
 あとは母胎さえあればいいはずだ。だから出場を許可しろ」


791七戦姫 10話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/07(木) 00:07:22 ID:bYA4HHq7

「ぼ、母胎って、えっと、その……」
「安心しろ。我は産めるぞ」
 
 真正面からのヘイカの言葉に。
 クチナは真っ赤になって横を向いた。
 
 と。
 
「――ふざけないで!
 今度の大会は、クチナの“お嫁さん”を決めるのよ!
 なのにさっきから、母胎とか産めるとか恥ずかしいこと言って!」
 
 ブーツを床に叩き付け、ケスクがヘイカを思いっきり怒鳴っていた。
 そして、剣の柄に手を掛ける。
 
 瞬間。
 数名が反応して動こうとした。
 しかし。
 それより早く。
 
「――ケスク、待って!」
「ッ!? ……く、クチナ?」
 
 クチナの声が、ケスクを止めていた。
 引きつった空気の中、クチナはゆっくりと言葉を紡ぐ。
 
「……ヘイカさんの言ってることは正しいよ。
 幼く見えるけど、彼女は大会出場に恥じない使い手だ。
 その彼女が、優勝することの意味を理解していて、出場を希望している。
 ――だとすれば、こちらに断る道理はないよ」
 
「ふむ、話のわかる王子で助かったぞ。
 では、年齢制限の件は――」
 
 我が意を得たりと笑むヘイカに。
 クチナは強引に、言葉を割り込ませた。
 
「――でも、ひとつだけ。
 制限を取り払う代わりに、規則をひとつだけ付け加えたい」
 
「……取引か。顔の割りには剛胆な奴だな。
 内容によっては受け入れよう。言ってみろ」


792七戦姫 10話 ◆gPbPvQ478E :2007/06/07(木) 00:08:16 ID:UtBw+HQy

 クチナはひとつ深呼吸。
 そして、ぐるりと全員の顔を見渡した。
 脇のヌエが、不思議そうに首を傾げる。
 そして。
 
 
「これから言う規則は、きっと公式には認められないものだと思う。
 だからこれは、ここにいる7人が、個人的に守ってほしい」
 
 そこで一息区切ってから。
 クチナは、覚悟を決めた表情で。
 
「――“相手を絶対に殺さない”
 ……これが、僕の出す新しい規則だ。
 試合で戦うのは仕方ない。
 それで重傷を負わせるのも避けられないと思う。
 でも。
 絶対。
 殺しちゃ、ダメだ」 
 
 
 ごくり、と誰かが唾を飲んだ。
 クチナの表情に揺れは無い。
 確固とした覚悟のもと、クチナはその言葉を口にした。
 
 
「もし、この中の誰かが試合の中で殺されたら。
 
 ――僕は、舌を噛んで死ぬからね」


793緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/06/07(木) 00:09:10 ID:UtBw+HQy
お久しぶりです。今回はあっさりめです。
長かった前哨戦も終わり、次回、ようやく本戦開始です。
新キャラも次回登場予定です。

サクサク●っていきますね。修羅場万歳!
794名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 00:18:34 ID:KzGB2hXt
>>793
王子、お前男だ!
王子も緑猫さんもGJ!
795名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 00:22:30 ID:3GIjrdAU
>>793
GJ!王子テラヒロインww
796名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 00:23:41 ID:mhAU2GOi
>>793
GJなんだけどさ…うん。
生殺しか、これは。
あれだけ言われて九十九を投下しないとは…
その度胸に乾杯
797名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 00:25:55 ID:rjJaQWbW
なんだ、まだいたのかお前。
798名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 00:25:57 ID:wm7juMbn
イヤッホオオウ!


ユウキと言いクチナといい主人公に萌えてこまr
799名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 00:42:53 ID:ZgvKSt+5
おぉう! 病弱なりに頑張る主人公に惚れたw
GJッス
800名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 00:50:03 ID:URDcIW0H
>>793
王子可愛いよ王子!!
もうどっちがヒロインかわかんね、良い意味で。
801名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 00:55:23 ID:ROBSgYhl
待ってる作品が投下されるとほっとするなぁ。GJ!
クチナいい感じですね。
次回も楽しみにしてます。
802名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:35:22 ID:aRAdVx5S
>>>793
つまんねーーーーーーーーーーー,もう投下するな
803名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:38:51 ID:HnZg+aHe
>>802
ハゲシクドウイ
マジ投下止めてほしい

804名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:40:42 ID:5onEZ5aX
>>803
禿同
投下止めてくれ

805名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:42:11 ID:UWJFPFzb
>>804
九十九投下しろって話だよNE☆
806名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:43:55 ID:rBDZk7a0
>>805
戦姫は普通につまらん
807名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:45:49 ID:l//9jBHY
>>806
いや、面白いよ




読んだことないけど信者として擁護しておく
808名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 02:07:05 ID:URDcIW0H
皆分かってると思うが、短時間で連続して沸くIDの違う荒らしは同一人物だからな
【パターン例】

まず「信者乙or作者自演乙orつまんね」等々
       ↓
ここで大体、「禿同」が出てくる
       ↓
んで反応すると「自演UZEEEEEE」になってグダグダ

最近はバリエーションが増えたのか、語尾にNEを付ける時もある。
もうパターン化されてるので、極力スルーして欲しい。
809名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 02:09:04 ID:tKqSVA7A
>>808
避難所、逝こうぜ
810名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 02:34:52 ID:RvRc27uO
とりあえず簡単に殺ったら勿体ないと思ってたので王子ナイス
妃決定後もドロドロするんだよね?
811名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 05:50:23 ID:1HT8cAKU
これで新キャラが虐殺しまくらない限り、ハーレムエンドですね。
正妻決定トーナメント,負けたら妾。

でも丹下左膳やZ武になったりするのは忍びないなぁ。
812名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 06:13:36 ID:xB04ZObx
>>808
ソースは?
813名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 07:11:04 ID:KeuaSN2u
王子、男かな。また中途半端な偽善じゃね
中国の刑じゃないが、ひどい不具にされて殺されない、死ねないってのもかなり残酷だぞ
逆に、負けたほうがわざと致命傷まで負えば、王子を道づれにできる罠
王子の馬鹿行動で、貴族の陰謀で選手暗殺、王子自殺、全員後追い自殺、なんてオチになったら目も当てられん
814名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 07:13:27 ID:5vQaQULJ
GJ!
いやっほ−い!!誰も死なずにすむ可能性が出てきたぞい!!!
815名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 07:49:19 ID:gQDUKU3r
元々は宗主国に対するご機嫌とりで、娯楽として大会を開かざるえないという話だったのに
殺さず、では宗主国の貴族の興奮度は、本国で行われている剣闘以下じゃないのか
奴隷少女は簡単に相手をぶち殺してるワケで
なんという本末転倒ぶり
816名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 09:58:55 ID:xastFCtR
だがそれがいい!(ニヤッ
817名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 14:03:30 ID:RvRc27uO
妃を決める大会で殺し合いってのもなんか違う気がする

竜騎士が悲参加なら殺し合いもありだったかもしれんが(他の参加者の身分的に)
あの竜騎士が参加してて殺し合いはちょっと不味いと思った。もし死んだりしたら外交問題になりそうなくらいの
身分ぽいしな
818名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 14:18:05 ID:r+ux9g58
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
819名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 14:28:07 ID:EdBSdIVe
文盲だらけだな
820名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 14:40:45 ID:mAPzhB5W
今のところ、
こうなったらいいな、
こうなるんじゃね?
くらいだからいーんでないの?

こうしろよ! これはダメだろ!
とか直接的に言ってきたら問題だが。

取り敢えず猫様GJ!
821名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 14:55:52 ID:yjR1JI9g
>>815
>>817
色々伏線が張ってあるかもしれないし、これからの展開もある。
悲観するのはまだ早いぜ!
822名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 17:24:31 ID:fhe8gBOt
自分でもつまんないと思うけど、プロット投下するわ

男が13歳の時に、友達だと思っていた女に逆レイプされて中出してしまい、
女が妊娠→女の子が生まれ、数年後無理やり結婚
さらに数年後、男と結婚するために生んだ女の子が異常なほどのファザコンで男にベッタリ
で女が実の娘に嫉妬、だが女の子も男の妻である女が妬ましく、疎ましい存在だった



823名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 17:31:19 ID:URDcIW0H
>>822
もろにツボなんだが・・・
当然書いてくれるよな?
824名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 17:35:14 ID:Mxp5sBgb
>>822
俺はいいと思うけど
あとはおまえさんの腕次第だ
825名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 17:37:39 ID:Mxp5sBgb
あ、プロットだけで書くわけじゃないのか…orz
826名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 18:00:19 ID:wm7juMbn
>>822
13歳は速いなw

なんか若年結婚とか周りの目とかそういう描写が難しそう
827名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 18:08:48 ID:URDcIW0H
>>826
6歳で妊娠、7歳で出産するラノベがあるんだぜ?
828名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 19:08:18 ID:mAPzhB5W
是非とも教えて欲しい。
タイトルプリーズ
829名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 19:09:23 ID:mhAU2GOi
>>827
現実なら100%死ぬだろそれ。
きのこっても手足両目が無い超未熟児か。
830名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 19:09:46 ID:Dg17bkz0
ダディフェイスか?
831名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 19:12:09 ID:h8LKgIbp
>>829
何で現実の話が??


てか、ヒロインは宇宙人の血を引いた超人ですから。
832名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 19:13:08 ID:Dg17bkz0
833名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 19:31:58 ID:yjR1JI9g
ダディフェイスは美貴が主人公依存症だからな…
母と娘の修羅場は良い物だ
834名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 19:41:22 ID:yjR1JI9g
つまり何が言いたいかというとだ
>>822よ、分かるな?
835名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 19:48:00 ID:ebDRzV3s
まあ、他の誰かが書くのもOKだよなw
836名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 21:57:22 ID:RvRc27uO
>>822
娘と妻の年齢が凄く近くて
娘が超ファザコン、妻も当然夫のこと超大好きっての凄いツボだ
837名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 22:26:44 ID:fhe8gBOt
よかった…正直叩かれるかなぁ…って思いながら書いたから
けど俺文才能力0なんだ…ごめんorz
838名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 22:41:05 ID:kMVEIHwx
叩かれるのは日本語がおかしい人だけです
誰かと言わないけど・・。
さて、次スレタイトルを決めようぜ

ドロボウ猫、首折れるでいいよ
839名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 23:00:55 ID:URDcIW0H
立てた。

嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その36
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1181224518/l50
840名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 23:01:01 ID:xFaWZSze
とりあえず次もナンバーかな?
37番だけは語呂合わせするっきゃないでしょうけど(笑)
841名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 23:12:07 ID:kMVEIHwx
あちらにAAを張ってきた・・
少し愛情を込めた台詞に10分ぐらい考えたわけだが・・
842名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 23:21:02 ID:xastFCtR
>>841
「キメェww」ってレスしようと思ったんだけどここは嫉妬スレだったんだよね。ふー、危うく刺されるところだった。(・ω・´;)
GJ!!
843名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 23:28:48 ID:Mxp5sBgb
ypじゃないのかYO!って思った
844名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 00:02:13 ID:WKqYbDdy
845名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 00:07:50 ID:QvSiHaGj
ttp://uproda11.2ch-library.com/src/118708.zip.shtml
感謝の死るし
パスは目欄
846名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 00:09:36 ID:QvSiHaGj
誤爆・・・orz
847名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 00:18:54 ID:C8L4795n
[反村幼児] 小雪の季節


( ´,_ゝ`)プッ
848 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/08(金) 03:18:19 ID:/SPf4Foo

投下します
849すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/08(金) 03:21:07 ID:/SPf4Foo

夜道は暗い。街灯の光も、所々でその明かりを失い、不気味な静けさと共に闇が翔を深みへと誘っている。西の空に浮かぶ下弦の月が、
瞬く無数の星と、闇を吸い込み青さを持った雲を従えて銀色の光を放っていた。夜空の月は、
想像以上に明るく闇の中で一人気をはいている。しかしそれでも影をひくには至らず、辺りは闇のモヤに隠され、
かろうじて自分の周りだけが見えるだけだった。
夏の間は元気に鳴いていた蝉の声もいつの間にか途絶え、時折鈴虫の悲しげな調べを聞く事がある。
秋の冷たい夜気が半袖から顔を出す素肌を撫で、左腕に鳥肌を残していく。夏服ではもう肌寒い季節、時間になった、と思う。
夏は終わったのだ。それなのに、右腕はウールにつつまれたような暖かい。その暖かさは、間違いなく人肌のものだった。
翔は、ギョロリと瞳を回し右腕を温める澄香を見る。白く透き通る澄香の横顔が、雪灯りのように闇の中で映えている。
彼女は翔の腕に体を絡ませ、まるで寄り添うように共に歩いていた。それが昼間なら、恥ずかしくて絶対に許さなかっただろう。
夜だから、誰もいないから許しているのだ。と、言うのは理由の半分で、残りの半分は、あのとき見た澄香の淀んだ瞳が、
瞼の裏に残っていたからである。恐怖が体を縛りつけ、振り払う事が出来ないのだ。
不意に、澄香の顔がこちらに向き、彼女を眺めていた翔の視線と視線がぶつかった。翔の瞳を真っ直ぐ見据え、ニィと瞳を細める澄香。
心の中を覗かれているような気がして、翔は慌てて視線をそらした。垣間見た彼女の瞳には、既に部屋で見た狂気は消え去っていた。
それでもあの時の恐怖の火種は、まだ心の底でくすぶっている。腕に体を絡ませ、時折甘えるように頭を擦りつけてくる彼女からは、
既にあの時のような恐怖は感じない。しかし、心と体があの恐怖をしっかりと覚えていて、ありとあらゆる神経が逆立ち、
彼女の異変をすぐにでも感じとろうとしているのだ。いつ再び澄香に異常が訪れるのか、そんな不安ばかりが翔の中で渦を巻いている。
850すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/08(金) 03:23:17 ID:/SPf4Foo

不安でざらついた足音が、コンクリートを叩き続ける。闇の向こうの繁華街で、パトカーが何かを追い回す音が聞こえた。ジワリと、
季節外れの蝉の鳴き声が聞こえたような気がした。
澄香の家から一キロほど歩くと、翔の家がある。辺りはいわゆる高級住宅街で、ひっそりとした静けさと共に、
どこか高貴な雰囲気をかもし出していた。どこもかしこも大きく立派な家ばかりだが、その中でも我が家は広い、と翔は自覚している。
さすがにテレビに出てくるような豪邸とは言えないが、この住宅街の平均より明らかに広く大きい。しかし、夜の戸張に覆われ、
自ら瞬く事のないその大家は、まるで星空の中の空白のようにただただ不気味なだけだ。
「センパイのお家って大きいんですね」
澄香が、どこか感心したように呟いた。その声に、どこか羨望を孕んでいるような気がして、翔はせせら笑う。
大きいから、うらやましい?
それは錯覚もいいとこだ。大きいから、寂しいのだ。
「ここまで来れば、いいだろう? 腕、離してくれないか?」
翔は、その寂しさを隠すように言った。
澄香は、翔の腕を力を込めてギュッと抱き、無言で何かを考えているようだったが、やがて、パッといきなり腕をほどいた。
もっとぐずると思っていたので、いささか肩透かしを食った気分だった。ようやく解放された右腕には、まだ澄香の熱が残っていて、
冷たい夜気をはねかえしジンジンとうずいている。
向き直り、頭を下げる澄香。彼女の漆黒を宿した短い髪が、宙に舞った。
「それじゃあ、センパイ。私は帰ります。また明日、学校で」
そう言うと、澄香は素早く身を翻し、まるで何かに追われるような早足で、夜の闇に紛れていく。
ゆっくりと溶けるように消えていく澄香の後ろ姿。不意に翔は何かとてつもない胸騒ぎを覚えた。
このまま、澄香を行かしてはいけない気がした。
「ちょ、ちょっと待って」
気が付くと、澄香を呼び止めていた。淀みなく歩いていた澄香の足がピタリと静止する。
「あ、その……」
呼び止めておいて、何一つ言葉を用意してなかった自分に気付く。
851すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/08(金) 03:29:50 ID:/SPf4Foo

何を言おうとしていたのだろう。自分の感情を表す言葉が見つからない。いやそれ以前に、既に確かに感じた胸騒ぎも消え去り、
本当に自分があのような感覚を感じたかさえ分からなくなっていた。もしかしたら、本当は気のせいだったのかもしれない。
そんな気さえする。
しかし、それでも何かを言わねばならない。闇の中に佇む澄香は、もの言わず翔の言葉を待っているのだ。
そして、翔がようやく捻だした言葉は、
「……あのさ、由美さんに謝っとけよ」
深い闇に、静けさが戻る。
闇の向こうで、澄香が小さく頷いた気がした。そして、澄香は今度こそ、闇の中に消えていく。
違う。こんな事を言いたかったわけではないのだ。もっと別の、澄香を、そして自分の不安を取り除ける何かを言いたかった。それなのに、その何かを言い表す言葉が見付けられない自分が、たまらなく歯がゆい。
気が付くと、彼女の姿が、闇に飲み込まれて完全に消えていた。ふと我に返り、翔は無理矢理今までの思いを断ち切る。わからない事を考えたり、まして後悔しても仕方ないのだ。
そして翔は小さな門を抜け、敷地の中に入った。玄関先の、パンジーの花瓶の下に隠された鍵を取り出す。
平日の午前中に来訪する家政婦が、鍵をここに隠していくのだ。もちろん翔もそれとは別の鍵を持っているが、不用心なので、
帰宅の度に回収する。そして、朝は登校前に花瓶の下に忍ばせておくのだ。それは翔が小学生の頃から、暗黙のルールとなっていた。
鍵をあけ、翔がノブに手をかけた瞬間。
──ゾクリと、
戦慄が背中を駆け抜けた。何かが、背後にいる。
まるで獲物を狙う肉食獣のような湿った視線が、背中に絡み付いていいる。
思わず悲鳴をあげそうになったが、何とか飲み込み、恐る恐る振り返る。
何もない。
そこには、闇を纏った細い道だけが真っ直ぐ延びていた。
気のせいなのだろうか。
そのとき頭によぎったのは、なぜか、やけに嬉しそうに嗤った澄香だった。
852 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/08(金) 03:32:16 ID:/SPf4Foo
投下完了です。
853名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 05:59:25 ID:HkKVlwZF
GJ!
あー鍵の場所みつかっちゃったららめぇw
854名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 09:39:45 ID:GkQdF++i
これは恐ろしい澄香のなく頃に・・・早く続きが読みたいw
855名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 10:31:45 ID:VUwifLZC
とうとう家屋侵入フラグが立ったか…
俺もこんな彼女が欲しいあれなんか人の気配が
856 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/08(金) 20:56:43 ID:AvuK7atT
投下するよー。
857彼女の目はつぶら 第2話 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/08(金) 20:59:54 ID:AvuK7atT
「ふんふんふふんふん、んっふんっふ♪」
陽気に鼻歌を奏でながら、人のあんまり歩いていない廊下を歩く。
ここはこの大学病院の中でも重症の人しか入れられてない区画らしくて、
元々私のように元気に歩き回るような人はいないから。
夕暮れが差し込みだした寂しげな廊下で、ただただ私の鼻歌だけが響く。
時々すれ違う看護士さんがジト目で睨んでくる。すいませんうるさくて。
でもヒトって楽しい時には自然とメロディがこぼれちゃうんです。

「今会いにいくからね!かっちゃん!」
私は(気持ち小声で)宣言してから、ちょうどよくこの階に着いてたエレベーターに乗る。

かっちゃん、というのは、私が目覚めた時に最初に会った若い先生のこと。
北克己(きたかつみ)、という名前なので、私が勝手にかっちゃんと呼んでる。
目下、私が一番気にしている存在。
優しいとかイケメンとか若いのに准教授とかイケメンとか目覚めてから一番最初にあった人とか
病院という実は狭い生活範囲の中で一番頼れる人とかイケメンとか、
色々理由を挙げようと思えば挙げられるけど、でも、そもそも会ったときからどこかで会ったことがあるような、
そこにいてくれるだけで安心感を与えてくれる人だった。
ううん。あたしはあの人にあったことがある。そういう確信がある。
あ、そうそう、気になるといえば、あの後「何で私を黒って呼んだんですか?」って聞いてみても、
かっちゃんは顔を引きつらせて笑うだけで答えてはくれなかった。
気になるけど、もしも患者取り違えとかがあったとしても、
私は元気なわけだし、困ってるのは取り違えられた『黒さん』の方だから、別にいいかとも思ってる。
あ、でも、もし子宮とかそういうの取っ払われてたりしたら。
「そのときは、かっちゃんに責任とってもらおう!」
と、叫んだところでチーンという音がして、私を乗せた箱が開いた。
准教授室まで、軽やかなステップで進んだ。こないだまで病人だったのに、何でこんなに体軽いんだろう?
ふとした疑問が頭をよぎりつつも、目指す部屋の扉を躊躇なく開いた。

「やっほー!かっちゃん!遊びに来た…」
全部言い切る前に固まっちゃったのは、部屋にかっちゃんだけでなく別の女がいたから。
別に見てはいけないシーンというわけじゃないけど、いる人間が問題だった。
「水崎さん、せめてノックをしてから入ってください。常識というものがないんですか?」
嫌な匂いと聞きたくない人の声。あたしは気が滅入りそうになった。
女は目を吊り上げて私を叱る。ただでさえ細いっちゅーのに、線になっちゃってるよ?
私を叱るこの気の短い女は、看護婦の1人。名前は…なんだっけ?忘れた。ってか覚える気なかった。
858彼女の目はつぶら 第2話 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/08(金) 21:02:54 ID:AvuK7atT
かっちゃんの横に座って何かを話してた風なんで、多分仕事の話をしてたんだろう。
「まぁまぁ、堂島くん。水崎さんがそれだけ元気になったってことでもあるし。」
「先生は甘すぎます!患者は神様でも何でもないんですから!」
かっちゃんがかばってくれた。優しいなぁ、と思ってると、
堂島はかっちゃんの膝に手をかけて詰め寄り、非難を始めた。
あんたそれ、間違いなくかっちゃんに詰め寄る方が目的でしょ。
「ちょ、ちょっと堂島くん、近いよ。」
「黙って聞いてください、先生。私は貴方に対して言いたいことがいっぱいあるんです。
そもそも、私は先生のことをですね」
堂島は何か不穏なことを言いかけてる。
ピーンと来たあたしは、ツカツカと二人の方に近寄って、かっちゃんの腕を手にとって、噛んだ。
「あいたたたたたた!?み、水崎さん!?」
「な!なにやってんのよあんたーーーーー!!!」
かっちゃんは突然のことに慌て、堂島は顔を真っ赤にして立ち上がる。
「何やってんのって?見たら分かるでしょ。かっちゃんを噛んでるの。」
とはいえない。何せ、口ふさがってるからね。どっかの三刀流の剣士みたいなマネはできません。
「水崎さん、は、離してくれないかな?痛いんだけど。」
ごめんね、かっちゃん。
二人の会話を中断させたくて、堂島に近寄られてちょっと顔を赤くしてたかっちゃんにもちょっぴり腹が立ってて、
何よりあたしは堂島の体に口をつけるなんてまっぴらごめんだし、ってわけでかっちゃんを噛んだの。
それに今は、あたしは貴方を噛んだままでいたいから。
「先生どいて!鎮静剤投与します!」
堂島はいつの間にか何かのビンを手にして、投げる寸前というモーションに入ってた。
確かに、『投与』って投げて与えるって書くけどさ、ホントに投げちゃまずいんじゃない?
「ど、堂島くん!!君も落ち着くんだ!とりあえず鎮静剤の使い方違うから!!!」
「いいえ、これが一番良く効く使い方なんです!!」
さらに慌てふためくかっちゃんと、殺気を漂わせる堂島と、
慌てたかっちゃんもかわいくていいな、と思う私。
部屋は正に混沌、って感じで、私はちょっと楽しくなっていた。

「おう先生!!邪魔するぜー!!」

大騒ぎになっていた部屋を、モーゼのように切り開いたのは、私の良く知っている無遠慮で野太い声だった。
ノックもなしに扉を開いたその声の男が、ずいっと入ってくる。
間違えるはずもない、この男は。

「ヤ○ザーーーーー!?こ、この病院に何をしに来た!?」
混乱極まった堂島が、鎮静剤を投与する対象を部屋に入ってきた男に変えて、投げて与えようとする。
「ちょっとまった堂島くん!この人は○クザじゃなくて、」
「私のお父さん。」
かっちゃんの言葉に続けて、私が真実を伝えた。
堂島は、投げモーションのまま、ピシッと固まった。
859彼女の目はつぶら 第2話 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/08(金) 21:05:20 ID:AvuK7atT


「がっはっは!まぁしょうがねぇかなぁ!俺ぁこういう風貌だからよぉ!!」
笑いながら、父さんは自分の膝をバンバンと叩く。
流石に人の父親をヤのつく職業の人と間違えたことは申し訳なかったのか、堂島はそそくさと部屋を出て行った。
なので、私、かっちゃん、父さんの三人で、准教授室で椅子に座って話し合うことになった。
私も仕方ないと思うんだけどね?プラスチック工場で長年結構真面目に働いてきた父さんは、
一度機械に指を挟まれて、小指がなかったりするしさ。髭も濃いし顔もいかついし。
服も、一体どこで買ってくるのかいつも不思議な紫のスーツだし。
院内のパジャマの私や普通の白衣のかっちゃんは病院にマッチしてるけど、
父さんは明らかにミスマッチ。よくここに来るまでに通報されなかったなー。
「申し訳ありません、うちの看護士がとんだ間違いを。」
「いいんだよ、先生!この病院には感謝してるからよぉ!
なんたって、なぁ!お前がこうして、起きてるんだもんな!!」
言いながら、父さんは私の方を向いて、がばっと体を抱く。その太い腕で。
「たまきーーーーーーー!!!おとうさん、ずーっと心配してたんだぞーーー!!」
ゆさゆさと体を揺らしながら父さんは叫ぶ。ちょっと泣き声になってる?
でもそれも、しょうがないよね。なにせ、私は。
「一年も目を覚まさねぇからよぉ…俺ぁもう…ぐすっ、お前は二度と起き上がらねぇんじゃないかとよ…!!」
そう、一年間も、ずーっと意識不明だったのだから。


「まったく、信じられねぇぜ!!つい1時間前にお前が起きた、って聞いた時は、心臓が止まるほど驚いた。
こうしてお前の声がもう一度聞けるなんて、神様ってやつぁいるもんだなぁ!」
私の状態についてかっちゃんが説明した後も、相変わらず父さんは感動しながら喋り続けていた。
それだけ私を心配し続けてくれたことが分かるから、嫌じゃないけど、ちょっとウザいかな。
それより、ちょっと気になることがあった。つい1時間前?私がちゃんと起きたのは3日前だったと思うんだけど?
軽い疑問をかっちゃんに訪ねてみると、
「ああそれはね、君が安定して覚醒していられるかどうかは分からなかったから。
お父さんをぬか喜びさせるわけにはいかないだろう?」
と説明してくれた。私がちょっとでも目を覚ましたら、普通すぐに家族に連絡するもんなんじゃないのかな?
でもまぁ、かっちゃんが言うんだから仕方ないよね、と、あたしは納得した。
「どうでもいいぜそんなこたぁ。とにかくお前が目を覚ましてるってのが一番だからな!」
がっはっは、と父さんが笑う。うん、そうだよね。

「だがよ、俺もな、一つだけ気になることがあるんだけどよ。」
父さんが、指の欠けた手を自分の顎にかけて考え込むポーズをする。
「一年も目を覚まさなかった環が目を覚ましたってことはよ。
先生はもしかして、環のクローンを作って治してくれた、ってことかい?」

860彼女の目はつぶら 第2話 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/08(金) 21:08:05 ID:AvuK7atT
クローン。
父さんが突然出したその言葉に、何故か私の心臓は大きく反応した。
どくんどくんと高鳴っている。クローン?
「俺ぁ聞いたんだよ。どうしても治らない怪我や病気を治すには、
そいつのクローンを作って患者に移植すりゃあいい、ってよ。
別に俺ぁどういう方法で環が治ろうがかまわねぇんだが、先生、そこんとこどうなんだ?」
父さんを見ていた私は、すぐ横にいるかっちゃんの方にゆっくりと顔を向ける。
そうなの、かっちゃん?
私が固唾を飲んで見守っていると、かっちゃんは断言した。
「違います。」
と。


患者のクローンを作って、失った部分や使えなくなった臓器を移植する。
誰でも考えついて、拒否反応も起こらない、でも人としてどうかと思うこの方法は、
今では結構当たり前に使われている、らしい。
らしいというのは、噂には聞いても表には出てこないから。
どっかのマッドな教授が実行して発表した後、できるんだということははっきりしたけど、
そんなこと流石に国が許すわけないから、誰も「私も同じことをしました」とは言い出さなかった。
でも、できるとなったらしちゃうのが人のサガ。
お金を積んでクローンを作ろうとする人たちは、多いらしい。
私も、飛び出してきた車に轢かれて頭を打つ、というすごく普通の事故で眠ったままになる前に、
そういう方法があるんだということくらいは知っていた。
だから、私のクローンがいても、そこまでびっくりはしないと、思う。
「確かに環さんは脳にダメージを負っていて、普通の治療では治る見込みはかなり薄い患者さんでした。
でも、こうして目覚めているのは環さん自身の力です。低いといっても可能性はゼロじゃありませんでした。」
かっちゃんはクローンという方法を使ったことを強く否定する。
「いいんだぜ、先生。使ったとしてもよ。大事なのはここに環がいることだ。
あ、先生、もしや俺のナリから病院を脅すつもりじゃないかと思ってねぇだろうな?
やめてくれよ、先生。俺ぁ穏やかな人間なんだから。」
だっはっは、と笑い続ける父さん。
父さん、穏やかに思われたいならファッションセンスを変える必要はありそうだよ?
「いえ、お父さん。本当にやってないんです。
方法とか人道的なことはこの際否定しません。実際に行っている例は僕も知ってますからね。
でも環さん、水崎さんの場合ではもう一つ問題があります。
はっきり言いましょう。お金です。」
身も蓋もないことを、かっちゃんは真顔で語りだす。
「クローン作りには莫大な費用がかかります。
卵子提供者と保管管理、母体になってくれる人を探す、
その人に何度も施術を行い、さらにクローンが育つまでの費用を負担する。
それを隠しておくための場所。見つかれば補助金がなくなるという危険もある。
大学病院もイメージほど安泰なわけではないんです。
お金はかかる、名誉も得られない、それどころか世間や上から非難される。
そんな方法を取るためには、それ相応の代価が必要です。
大変失礼ですが、水崎さん。あなたの資産状況では、それだけのお金は。」
「払えない、わなぁ。」
ははは、と心なしか力がなくなった笑いで、お父さんは答えた。
861彼女の目はつぶら 第2話 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/08(金) 21:11:06 ID:AvuK7atT
「俺もよ、本当はそういう手段を取ろうかと思ったんだぜ?
だから、身を粉にしてこの一年働いてきた。環を治すためなら、何だってしようと思ったよ。」
グッとくること、突然言い出さないでよ、父さん。私まで泣きそうになるでしょ?
「でもま、足りなかった、っつーかなんつーか。
他の病院の医者に聞いたら、こんなはした金じゃ無理だって言われちまった!だはは!」
ガクッとくることを言い出さないでよ、父さん。感動した私が馬鹿みたいでしょ?
あはは、とかっちゃんも付き合いで笑う。いいよ、かっちゃん。この人ほっといても。
「あ、じゃあよぉじゃあよぉ!」
父さんが何かを閃いたー!って顔してる。あ、この顔は。
「親切なのは今だけで、俺あてに馬鹿高い請求書が送られてくるとか!」
「送りません。流石にそんな危ない商売するほどには困ってません。」
あーあ、悪ノリしだしちゃった。じゃあ、私ものっちゃおう、っと。
はいはーい!と小学一年生ばりに手を挙げて、指名される前にずばりと言った。
「じゃあ、私があんまりかわいいから治してソープに売るつもりだとか!」
「相場は詳しくは知らないが、多分そういうところに売った代価よりクローン製作費の方が高いだろうね。」
ちぇっ、かわいい、ってところに反応してよぉ。
「あれだろ、環をクローンの実験台にして学会に発表してとか!」
「クローン技術自体も、それを人に移植する実験も、方法としては既に確立されたものです。
今更僕が症例を挙げようと、何の論文も書けませんよ。」
「私は何か特殊な抗体とかそういうの持ってて培養したかった!」
「それは多分、君が目覚めなくても行えるね。」
「じゃあ昔俺が先生の命の危機を救ったことがあって、その恩を感じてってぇのはどうよ!?」
「恐れ入りますが、私と水崎さんは環さんが眠ってしまってからの知り合いです。」
「だよなぁ、先生みたいな白い巨塔に住んでる人と俺とじゃ、接点ねぇよなぁ。」
父さん、それある意味合ってるけどなんか違うよ?
呆れ顔になりだすかっちゃんと、楽しくなってきた私たち。
「じゃあ、じゃあ…」
必死で考える私。真実はいつもひとつ。よーし、これだ!
「もしかして、もしかするとだよ?かっちゃんにはすごく好きな人がいました。
でもその人は病気や怪我で体がほとんどなくなっちゃって…
その人にどうしても生きてもらいたかったかっちゃんは、残った部分を私に移植したとか?」
「…ロマンチックな妄想、と言えばいいのかな。良くそんなこと思いつくね?
残念だけど、そんなことしようとしても拒否反応が起こって死んでしまうだけだよ。
特に脳なんてデリケートなところに、まったく違う遺伝子を持った他の人の脳を移植するなんてことは、不可能だ。」

その後もあれこれと考えたけど、かっちゃんの鉄壁を崩すことはできなかった。
ま、元々かっちゃんを疑う理由もないんだけどね?気になったのは、私の胸の鼓動だけ。
ただそれだけだから。
「納得してもらえましたか?
とにかく、娘さん、環さんは、自分の力で起き上がったんです。」
机に手を置いて、かっちゃんが静かに結論づけた。
納得した父さんは、静かに席を離れ…なかった。立ち上がると、がしっとかっちゃんの左腕を掴む。
「な、何でしょう?水崎さん。」
「難しい話は、まぁどうでもいいのよ先生。とにかく俺ぁうれしいんだ!いっちょ飲みに行こうぜ、先生!」
二カッと笑う父さん。
今までの私なら父さんがはしゃぐのを止めてただろうけど、
その日のあたしは、かっちゃんと一緒に楽しく騒ぎたかった。
立ち上がって、あたしもかっちゃんの右腕を掴む。
「な!?環さん!?」
「いこ!かっちゃん!」
「がっはっは、環ぃ、お前分かるようになったなぁ!!」
親子の強み、息のあったテンポで、かっちゃんを抱えたままずんずん歩く。
「僕にはまだ仕事が。何より環さんは患者で!もしもーし!!??」
細かいことはどうでもいいじゃない。楽しもうよぉ。かっちゃん。
862 ◆WIhkQEicx2 :2007/06/08(金) 21:12:30 ID:AvuK7atT
第二話ここまで。
あ、すいません、うちでは理系の人からのツッコミは受け取ることになってませんので。
ええ、ええ。今回は目を瞑っていただくということで。お願いします。
863名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 22:32:11 ID:iPz1aWrh
GJ!
そういえば医者が恋人の脳を別人に移植しちゃうエロゲあったなぁ
864名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 22:41:34 ID:iPz1aWrh
すまん。sage忘れてた;
865名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 16:26:55 ID:OBas37aj
本当に人が少なくなってしまったね・・
866名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 17:05:37 ID:/a9VvnOZ
人が増えると変なのも増える。何事も程々がよろしい。
867名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 19:23:32 ID:oWhdrM33
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  |  \ Y/  |_/´ ̄ ̄ \ ハ| \∧    , ヽ    /:./ノ´ ̄ ̄ ̄` \〉:.:.:.:.:.:.:.:.:.
  ヘ\ヽ Y_/              /:.:∧    ,___     /:./::::::::::::::::::::::::::::::::::::\:.:.:.:.:.:.:.
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                        |     |  |/::::| / /::::::/       ,
                       |     l  |::::::;/ /|:::::/     /



嫉妬パンチーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
868名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 19:51:19 ID:dyNdB8BN
>>867
何のキャラだっけ?
869名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 20:20:16 ID:ksWXR62K
バキ
870名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 20:40:54 ID:wprbocse
バキって女性の登場人物もいるのか
871名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 21:11:07 ID:NwBKY7Nv
てか・・賑やかさがなくってしまったのはどうしてだろうか・・
昔は神の投稿でGJな毎日だったのに
872名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 21:15:46 ID:dyNdB8BN
>>869
へ〜バキってこういう系の女の子も出るんだ
873名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 21:31:27 ID:ksWXR62K
賑やかだからアホの標的にされたんだろ
そもそもこのスレには波があんだよ
投稿が集中する→アホがのたうち回って静かになる→落ち着くと投稿が再開される→アホが(ry
毎回毎回同じパターンなんだからいちいち落ち込み時の度に過疎だ過疎だ騒ぐなよ新参者
874名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 21:57:53 ID:ULsJ+OYe
>>873の兄貴っぷりに嫉妬
875名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 23:18:58 ID:ltRcedti
>>867ってなのはSSのシグナムだべ?
876名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 23:29:41 ID:t4zA0U+5
みんな分かってるさそんなこと……
877名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 00:43:54 ID:CwnpWsEu
どうでもいいが、転帰予報の続きが読みたい・・・
878名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 01:52:10 ID:VecKtG56
俺も転帰予報待ってる
そして雨の音も待ってる




でも僕我慢出来るよ!職人さんだって生活あるんだから!
出来る世!
879名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 02:03:45 ID:ZRW5YcsL
モチベーションは永久に続くものではなく消費されるものだから
大事なのはそれを再び盛り上げる「リ・モチベーション」だって誰かがこないだ言ってたぜ。
880名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 02:20:11 ID:VecKtG56
モチベーションなのかモチュベーションなのか
シミュレーションなのかシュミレーションなのか
俺にはわからない
教えてくれ五飛
881 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/10(日) 02:49:54 ID:MtUrZP1q
投下します。
882すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/10(日) 02:54:15 ID:MtUrZP1q

とんでもなくついていなく、最悪な一日がようやく終わる。そう安堵の溜め息を漏らしつつ、翔は力なく家の門を開けた。まだ太陽は高く、
空も青い。しかし、翔はすでにボロボロで、すぐにでも倒れてしまいそうだった。いや、さっさとベッドに倒れこみたかった。
ともかく、今日はとことん厄日だ、改めてそう思う。今までの人生を振り返ってみても、ここまで疲れた記憶はない。
それほどの疲労を呼び込む不幸が、雪崩のように翔を飲み込んだのだ。
元々嫌な予感はしていた。昨日、自分が学校でやらかした事が、どういった困難を呼び込むかくらいは想像できていたし、
覚悟はしていたつもりだった。しかし現実は想像をはるかに超えていて、覚悟という名の心の壁はいともあっさりと決壊し、
裸にされた一番柔らかい精神をジワジワといたぶられた結果、肉体的と言うより精神的な疲労でグロッキーになってしまったのである。
今朝、教室につくや否や、いきなり好奇の目に晒された。昨日の中野とのやりとりが、事実を無視して一人歩きし、
様々な憶測がクラスの中で飛び交っていた。浮気したとか、だから別れるとか、果てには中野をもてあそんだ悪者にまでされていた。
もちろんそれら全ては事実無根であり、翔は必死で噂を否定しようとしたのだが、間が悪いことに中野が欠席したため、
余計に高まったクラスの好奇心を沈静化させる事は出来なかった。
たっぷりの非難と好奇と、主に男子の嫉妬に晒されつつ迎えたホームルームはさらに地獄だった。担任はテストを放ったらかしにして、
しかも無断で早退した翔にたいそうおかんむりで、朝っぱらから怒鳴り声をあげた。もう大学進学は絶望だとか、
こんな馬鹿ははじめて見たとか、昨日巨人が負けたのはお前のせいだとか、ここぞとばかりに関係のない事まで持ち出し、
翔の精神をガリガリ削る。担任は加虐的嗜好を瞳に宿し、そこに快感を見い出したのか、一時間目の授業まで全て説教で潰しやがった。
そしてようやく辿りついた休み時間。こってりと絞られ、とってもへろへろな翔は、力なく机に突っ伏していた。
相変わらずクラスは翔の噂で持ちきりだが、もう翔にはそれを否定する力は残っていなかった。そして、抵抗する力を削がれた晒し者の地獄は、
一日中続いたのだった。
883すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/10(日) 02:56:45 ID:MtUrZP1q

思い返すだけで、重い疲労に押し潰された肺から、溜め息ばかりが漏れる。せめて中野がいてくれれば、噂を沈静化出来たかもしれない、
と思うと、今日に限って欠席しやがった中野に恨めしい気持ちが沸々と煮えたぎる。もっとも、
今日学校に来れなかった中野の心情も分からないでもないが。
そのとき、ふと、今日は澄香の姿を見掛けなかった事を思い出した。教室の噂を拾い聞きしたかぎり、澄香も今日は欠席らしい。
あくまでそれは噂なのだが、いつもならお昼を誘いにくるはずなのに、今日は来なかった所から考えると、
まんざら噂だけではないようだ。昨日、夜風に当たり過ぎて風邪でもひいたのだろうか。少し心配だ。後で電話してみよう。
そんな事を考えながら、残された僅かな力を振り絞り、玄関先の花瓶を持ち上げる。家政婦が残した家の鍵が、
ここに隠されているはずなのだ。が、持ち上げた花瓶の下に、あるべきはずの鍵はなかった。
その事にいささか不審に思いもしたが、それは珍しいことにしても、初めてというわけではなく、
首を傾げどそれ以外に何ら感じる事はなかった。家に来る家政婦は、まれにそういったミスを犯し、鍵を持って帰ってしまうのだ。もっとも、
それで家に入れないわけではないので、翔はすぐに思い直し、鞄から鍵を取り出して、玄関のドアを開けた。
後ろ手で鍵を閉め、玄関の上がり端に鞄を放り投げると、翔はゾンビのような足取りで階段を登っていく。
二階の廊下の突き当たりに翔の部屋がある。その途中にある部屋は全て空き部屋となっていて、また一階も同じように空き室が多く、
そのため翔のこの家での行動範囲は、自分の部屋と台所、リビング、後はトイレと風呂くらいで、他の部屋にはほとんど入る事はない。
それでも時々垣間見るそれらの空き室は、奇妙なくらい整然としていて、埃ひとつない。有能な家政婦が、
全ての部屋を平等に掃除してくれているのである。しかしそれは、悪く言うと画一的であり、生活の匂いのない部屋まで整然としているのは、
より今の状況が目の前につきつけられるような気がして寂しさを助長させている。一番散らかっている翔の部屋が、妙に落ち着き居心地がいいのも、
その辺りに理由があるのかもしれない。

884すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/10(日) 03:01:55 ID:MtUrZP1q

細い廊下、その突き当たりにある自室の前まで歩を進める。そこにはのっぺりと黙りこんだドアが佇んでいる。部屋と自分を遮るそのドアのノブを回し、
静かにそれを押した。
眼前に、見慣れた自室の光景が飛込んできた。
少しだけ、気が抜けて疲れがドッと体に押し寄せる。危うくその場にへたりこみそうになったが、そこは気合いで乗り切る。
ベッドは、すぐそこだ。
部屋の中に足を踏み入れる。その時だった。いきなり体に戦慄が走った。

──何かが、おかしい。

見慣れているはずの自分の部屋に妙な違和感を感じる。それは、心の隅に宿った小さな感情。しかし、その感情はすぐに翔の心全てを飲み込んでいく。
心臓が、早鐘をうつ。
何だ? 何がおかしいんだろう。
改めて部屋を見渡す。
今朝見た時と同じ机、同じベッド、同じ本棚、同じテーブル。何も変わっていない。そのとき、ふとテーブルの上に目が止まった。出した覚えはない、
しかしまた、出していないという確信もない幾冊かのアルバムが、そこに散乱しているのだ。
違和感の正体はこれだろうか。
一番上のアルバムを取り上げる。それは中学時代の、卒業アルバムだった。
何気無く、ページを開く。
一ページ。目次と校歌。
一枚、ページをめくる。校長の顔写真と、訓辞。
ページをめくる。
その瞬間、全身の全ての毛が逆立った。体の中を脈脈と流れる血液が、その温度を失い体が一気に冷え込んだ。寒くて、体が震え、
全身に鳥肌が立った。違和感の正体は、間違いなくこれだった。
全校生徒の集合写真。そこから、思い出の詰まったアルバムが狂いだしていた。
その集合写真には、顔が、ないのだ。
真っ黒なインクで、顔が塗り潰されている。そのページからは、鼻をつくような濃厚なインクの匂いが漂っていた。
魂が揺さぶられたかのような驚愕。しかしそれと同時に、おかしな事が一つ頭にモヤを張る。塗り潰されそこねた顔が、いくつもあるのだ。何故だろう、と首を傾げる。時間がなかったのか、単純に塗り潰しそこねたのか、はたまたわざと塗り潰さなかったのか。

885すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/10(日) 03:04:09 ID:MtUrZP1q

その答えを求めて、もう一枚ページをめくる。
教員の集合写真。そこで、塗り潰されていない顔がにある共通点が分かった。
塗り潰されているのは、全部女性なのだ。
慌てて、ページをめくる。
次のページも、その次のページも女性の顔だけが、全て塗り潰されている。一人一人の個人写真も、修学旅行や部活、
数ある行事の写真も全て同じように、女性の顔だけが執拗に黒く塗り潰されている。
たくさんの思い出が、真っ黒なインクと共に狂気に塗り潰されている気がした。
恐怖が、少しづつ心を蝕み始める。悪戯にしては度が過ぎているし、そこに何か執念のようなものを感じたのだ。
一体誰が、そして何のためにこんな事をやったのだろう。それは分からない。だが、犯人が狂っている事だけは分かる。犯人は、おかしいのだ。
開いたページから、インクの匂いと共に、その狂気までもが匂い立つような気がして、翔は思わずアルバムを閉じた。
打ち上げ花火のように、大きな音を立てて閉じられたアルバム。その後に残る静寂と、寂廖も花火のようだった。その物寂しさに紛れ込んで、
突然津波のように巨大な恐怖が翔の心を飲み込んだ。静けさが、怖い。恐怖に足が震えて、立っている事が出来なくなった。翔はアルバムを胸に抱き、その場にしゃがみこんだ。
体が、狂ったようにガクガクと震える。
怖い。
まさか、他のアルバムも同じようになっているのか。
怖い怖い。
しかし、確認する勇気はなかった。
怖い怖い怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

──そのとき、

「センパイ……」
背中から、消え入りそうな静かな声が聞こえた。
心臓が、止まりそうになった。
「どうしたんですか? センパイ」
澄香の声だった。
振り返る。
そこには、制服姿の澄香が立っていた。
886すみか ◆Xj/0bp81B. :2007/06/10(日) 03:06:07 ID:MtUrZP1q

恐怖が、安堵へと急速に変化する。その地獄から天国の心境の変化に、不覚にも涙腺が緩み、涙が溢れ落ちそうになった。寂しい時、
悲しい時、そして怖い時。誰かが、特に親しい人が近くにいてくれるのは、とても心強いと改めて認識した。
しかし、それでも涙が溢れ落ちなかったのは、ある事に気付いてしまったからだ。途端に、その安堵も、まるでジェットコースターのように、
別の感情に変化する。体に寒気が走った。
──何故、澄香がここにいる?
学校を休んだのではないのか。
いや、そもそも澄香はどうやって家に入ったのだ?
確かに鍵は閉められていたし、翔もまた閉めたはずだ。
「……どうして、ここにいるんだ……?」 翔は、警戒に身を固めて言った。
すると、澄香はうんざりしたように、
「どうしてって、センパイに会いたいからに決まってるじゃないですか。当たり前の事を、」
「違うっ!! 俺が聞きたいのは、澄香がどうやってこの家に──」
──そのとき、ふいに彼女の右手に握られているものが目に入った。それは、家政婦が持って帰ってしまったはずの家の合鍵だった。
887 ◆Xj/0bp81B. :2007/06/10(日) 03:09:20 ID:MtUrZP1q

ついにストー化ー。嫉妬と言うよりヤンデレか?と、時々自分で疑問を持ちますが、投下完了です。
なんか最近書いててもの凄く楽しい。
888名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 04:16:40 ID:wjf9Y9lp
GJ!
マジックで塗りつぶし>実に素晴らしいw
書いててもの凄く楽しい>とても良い傾向ですw
そして定期的な投下をしてくれるのはとてもありがたいです
今後も頑張ってくだされぃ!!
889名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 10:51:19 ID:j+p0tkal
フラグ消化に余念のないいい子でつね。澄香は。






ヤセ我慢だよ!
超怖えよ!
次回も楽しみにしてます。頑張ってください!
890名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 11:08:51 ID:M/G/jiJg
てか、次は空鍋か?
891名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 16:22:23 ID:7WLchAEk
凄く静かだな・・・・・
892名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 19:04:52 ID:mF3577/9
スクールデイズがアニメ化するわけだが、


エロパロ版にスクールデイズスレが誕生するのか?
893名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 20:43:02 ID:81cZfHl+
言葉様レイプENDとかないよな?な!?な!?な!?ないよな!?!?
894名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 21:04:20 ID:u5Dl+PuG
>>893
多分ない…放送Cに引っかかる。


が、しかし 歩道橋首切り、腹部刺殺、電車人身事故。
この中の何れかが選ばれるかも…
895名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 21:44:28 ID:j+p0tkal
ヘルダイブはダメ?
896名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 00:08:04 ID:iL7k0dKf
ノコギリ!ノコギリ!
897名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 08:13:34 ID:fiXWOLze
待て、アレを地上波でやんのか?

…無理じゃね?
898名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 08:21:28 ID:ipEf10w1
アニメスタッフ頑張れ超頑張れ
899うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
900うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
901うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
902うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
903うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
904うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
905うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
906うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
907うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
908うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
909うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
910名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 13:11:01 ID:8O6l07uO
残念

次スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その36
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1181534905/
911うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
912名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 13:12:08 ID:8O6l07uO
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
913うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
914名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 14:53:40 ID:4AwVqgBa
>>905
ドラえもんはわさびを食うと死ぬ!
915名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 19:21:18 ID:ar/sLQqf
たとえ客観的に見て終わっていようとも
俺の内では終わっていない。
俺一人になっても待ち続けてやるさ。
全裸で。
916名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 19:46:01 ID:/uYUYFwp
>>915
馬鹿野郎!!
お前一人のわけが無いだろう!!
俺も一緒に待ち続けるぜ。
当然全裸で。
917名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 19:52:51 ID:HInxbsGe
>>899>>900>>901>>902>>903>>904
クソワロタwww
918名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 20:07:26 ID:YqrSwSlw
>>899>>900>>901>>902>>903>>904>>917
つまんねー^^
919名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 14:45:57 ID:jrmb/bre
アンカーで構ってると演出したかったようだけど失敗したなw
920名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 18:07:31 ID:C+EpG4wX
>>918
何が書いてあったの?
921名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 18:51:24 ID:WDSJ7Qiq
>>920
荒らしがAA連貼りしながら「修羅場スレ終了」的な事を延々と書いていた。
>>917-918は恐らくアンカーの仕方から、以前出没していた削除板のレスをコピペしていた荒らしだろう。
922名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 01:13:46 ID:XpWFk6Gw
923名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 04:45:15 ID:gPXuuXCM
ごっきー死亡
924名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 23:30:59 ID:a8EEAirt
あぁ。。。
925名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 17:41:18 ID:K9WWAx69
age
926名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 12:21:41 ID:ApR0sjbc
名無し君・・・早く戻ってこないかな・・・・・・
927名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 01:06:12 ID:Hib7K8Es
九百幾つの足跡の中 ヒカリが無い あの人が来ない
寒い この部屋が嫌 何故来ない
未だ未発達の彼女のアタタカソウな顔 腹が捩れた
アカが欲しいならくれてやる だから オマエの傍らの幸福を
オマエから欲しい物は無い 只与えたい ひたすらに
このヌメるアカを ネバつくキイロを カタいシロを
全部オマエに与えたら

ワラってくれるかなァ、あのひと。
928名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 10:17:30 ID:FDBpZNhI
三日間だれもこねぇ…
929名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 10:30:16 ID:rCFX9LwY
よくあること
930名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 11:09:48 ID:g7VayGN5
だってもうここは……
931名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 19:26:48 ID:EwGxRAAU
その後、>>930を見た者はいない・・・
932名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 23:32:19 ID:y8F9rOna
昔は何人もの人々が集まり、賑わっていたここも
今はもうだれもいなくなってしまった・・・
933名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 23:50:33 ID:vnbboT6j
200X 地球は嫉妬の炎に包まれた…
だが人類は滅亡していなかった
934リクエスト王者:2007/06/27(水) 21:52:12 ID:8aVcu5V8
塾の先生VS学校の先生なんてどうだろう?面白いと思うけど・・・。誰か書いてほしいな。
935名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 23:01:50 ID:qABk8eVx
>934
お互い主人公の近所のお姉さんだったとかはどうだ?
936名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 23:45:33 ID:2JNtIbU4
年上・同い年・年下 どの修羅場が好き?
937名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 00:07:21 ID:KnsJklrl
>>934 塾の先生より家庭教師の方がよくね
938名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 17:07:16 ID:k8YVjExt
>>936
全部入り乱れるのが
939リクエスト王者:2007/06/28(木) 17:21:06 ID:SM3/Z2nd
>935
その設定いいね!!
940名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 23:53:40 ID:4lowkAer
つまりお隣さんで幼馴染の3姉妹が修羅場で大変!?
って感じか?



幼馴染属性は趣味で付けた、今は反省している
941名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 13:47:28 ID:PRf3a/Sc
じつは35スレはこのまま地味に保守し続け
36スレを先にdat落ちさせて七氏君を奪い返そうとしているのか……
942名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 14:47:39 ID:/kpLy8fM
35スレ………恐ろしい子!
943名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 15:21:59 ID:+gxK1njo
>>941 その発想になんかしらんが萌えた(*´Д`)ハァハァ
944名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 21:26:17 ID:pIkmIH1+
今から書くことはこれから書くかもしれないSSのただのプロットなんだ
流れを斬ってしまってすまない(´・ω・)

舞台は悪の組織と正義の味方がいる世界
主人公は悪の組織の怪人で、正体を隠して上司である女幹部(幼馴染)と正義の味方の根城と疑わしき学園に潜入
そこで美人の先輩(正体は言わずもがな)と出会う
主人公は先輩の正体を知らずに先輩と親しくなってゆく
恋愛に溺れる先輩
嫉妬心を燃やす幼馴染
学園生活と怪人生活を巧みにこなす主人公
互いの正体を知らぬまま繰り広げられる三角関係

…こんな話なんだ、うん。ありきたりかな?
945名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 00:56:55 ID:7vyayEyc
いや、いいと思うよ。
是非とも書いてほしいね
946名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 06:39:58 ID:oHHZOsWu
>>944
凄く読みたいです
947名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 07:42:43 ID:UT0C6ZIz
schooldaysのスレ建ててもいいかな?
948姉妹家庭教師ネタ:2007/07/09(月) 17:54:02 ID:YrZ9gadi
>>940を見て、ここまで思いついた。
-------

 吉村一男は、一枚のプリントを握り締めていた。
 プリントを見ながら、プリントを掴む手をふるふると振るわせる。
 その度に、プリントが不規則な波をつくる。

「15点……じゅう、ごてん?!」

 そして、ひとり言にしては大きすぎる声を出した。
 周囲ではクラスメイトが騒いでいるため聞こえてはいないだろうが、
隣の席に座っている女の子には当然聞こえてしまった。

「15? 一男、あんたたったの15点しかとれなかったわけ?」
「ああ……」
「どれどれ……うあ、ホントだ。なんでこんな簡単な小テストで15点しかとれないのよ」

 知るか、と一男は言いたかった。
 だが、自分の学力を否応無く思い知らせるテスト用紙を見ていると、落胆で何も言う気にならなかった。

 月曜日、一男たちのクラスでは国語の小テストが行われた。
 問題数は20。配点は一問につき5点。
 一男が15点しかとれなかったということは、3問しか正解できなかったということだ。
 一男は国語と社会と英語が不得手だったのだ。

 一男たちの学校では、来週から期末テストが始まる。
 一学期の期末テストで赤点をとろうものなら、夏休みの間、補習を受けることになる。
 夏休みに旅行へ出かけるつもりでいた一男は、当然補習を受けたくなかった。
 そのために、一男なりに勉強したつもりではいた。
 しかし結果はこの通り、一男には補習が必要だと証明することにしかならなかった。

「これはもう、補習確定ね。ご愁傷様」
「ああ、ううう。……自転車で県内一周する計画が、こんなことで、こんなことでぇ……」
「諦めなさい。行けなくなって良かったじゃない。
 あんた1人じゃ、トラブルに巻き込まれてそこで人生終わっちゃうわよ」
「くう……」

 幼馴染の組子の言葉を聞いても、一男は諦める気にならなかった。
 一男は先日自転車を購入したばかり。
 しかも、一男がずっと以前から欲しかったロードバイクを買ったのだ。
 ロードバイクに乗ってどこまでも、走れるところまで走ろう、と考えていた。
 そのためだけに一男は努力し、体の脂肪を削り、筋肉をつけてきたのだ。
 簡単に諦められるわけがない。

「頼む、組子!」
「なに?」
「勉強を教えてくれ!」
949姉妹家庭教師ネタ:2007/07/09(月) 17:54:51 ID:YrZ9gadi
 深く頭を下げる一男を見て、組子は顔をしかめた。

「なんのために?」
「俺を助けるためにだ!」
「どうして私が?」
「お前しかいない!」
「他の友達に頼めばいいじゃない」
「どいつもこいつも勉強じゃ頼り甲斐のない奴ばかりなんだ!
 クラスで5番以内に入るお前なら、俺を補習の魔の手から救うことができるはずだ!」

 もう一度、深く頭を下げる一男。
 組子は腕を組んで、考えるように天井を見上げ、数秒してから顔を下ろした。

「……やっぱり嫌」
「何故だ!? 幼馴染の俺がこれだけ頼んでいるというのに!」
「私だって暇じゃないのよ。だいたい勉強教えるって言っても、私教えるの上手くないし」
「それでも構わない、お前が教えてくれたら、俺は必ず満点をとれる。
 俺にはお前が必要なんだ! 俺にはお前しかいない! 組子、お前さえいてくれればいいんだ!」
「…………なあっ?!」

 一男の言葉を聞いて、組子は驚いた。
 どれほど驚いたのかというと、顔を茹蛸のように紅くするほどだった。

「な、なななななななな……」
「……ななな?」
「あんた、いきなりこんなところでそんなことを……」
「そんなこと?」
「今、あんたには私が必要だって……」

 一男は怪訝な表情で首を傾げた。
 組子は何を驚いているのだろうか。
 自分にとって組子は仲のいい幼馴染であり、頼れる存在だ。
 おんぶにだっこというわけではないが、自分は組子にかなり助けられている。
 組子が必要だ、というのは自分の正直な気持ちなのに。

「もう一度言う。俺を助けてくれ。俺には、お前が必要なんだ」

 正確には組子の『助け』が必要だった。
 しかし、組子には一男の言葉しか届いていない。

「………仕方ないわね。現国だけなら、引き受けてあげるわよ」

 組子には、顔を紅くして返事することしかできなかった。
950姉妹家庭教師ネタ:2007/07/09(月) 17:55:33 ID:YrZ9gadi
*****

 一男は1人で学校から自宅へ向かう帰路についていた。
 隣には、なんだかんだ言いながらも仲のいい幼馴染の姿は無い。
 今日、たまたま組子は他の友人と遊ぶ約束をしていたのだ。

 一男は歩きながら腕を組んだ。
 とりあえず、国語はなんとかなりそうだ。
 あとの苦手教科、社会と英語はどうするべきか。
 数学と理科は1人でもなんとかなる。
 しかし、1教科赤点をとっただけでうちの学校は夏休みの間補習をやらせやがる。
 穴は、すべて埋めなければいけない。

「お兄ちゃん!」
「ん?」

 後ろから声をかけられ、一男は立ち止まって、振り向いた。
 駆け寄ってきたのはもう1人の幼馴染で組子の妹の、恵子だった。

「えいっ!」
「ちょ、腕に絡みつくな」
「えー? いいでしょ、だって私達どこから見ても恋人だよ?」

 そう言ってくる恵子に、一男は沈黙を返した。
 俺とお前のどこが? とは言わなかった。
 一男が恵子を恋愛対象としてみないのは、恵子の容姿に原因がある。
 恵子は中学3年生、15歳だというのに、中学に入学したばかりの1年生のようにしか見えない。
 恵子を恋人だ、と友人に紹介しようものならロリコン呼ばわりされるのは間違いない。
 組子はクラスメイトと比べても大差ない発育具合だというのに、恵子は何故か成長が遅い。
 高校に入ったら一気に成長するタイプなのかもしれない。

「今日のお兄ちゃん、なんだか暗いね」
「ん……そうか?」
「うん。もしかして悩み事?」
「まあな」

 一男は恵子に小テストで赤点をとったことを話した。
 来週の期末テストで赤点をとったら夏休みがつぶれてしまうということも話した。
 全てを聞き終えた恵子は、ぶんぶんと頭を横に振った。

「だめだよそんなの! お兄ちゃんの夏休みがつぶれたら、お兄ちゃんと遊べなくなっちゃう!」
「ああ」
「そしたら、私誰と一緒にラジオ体操に行けばいいの?」
「それは1人で行けばいいだろ」
「嫌だ! やだやだやだやだ!」
951姉妹家庭教師ネタ:2007/07/09(月) 17:56:33 ID:YrZ9gadi
 一男は、高校1年生だった去年も近所の公園で行われるラジオ体操に行っていた。
 不本意ながらも、恵子に誘われて毎日行ってしまっていたのだ。
 一男が夏休みを利用して自転車旅行を計画していた理由のうちの一つが、
ラジオ体操に誘ってくる恵子から逃げることだった。
 恵子を嫌っているわけではないが、17歳になった今小学生と混じって
ラジオ体操をするのは気が向かない。
 ラジオ体操の後で遊びに誘ってくる小学生から逃げるのも、
断られて悲しい顔をする子供たちを見るのも、一男は好きではなかった。

「やーだーよー!」
「あのな、恵子。俺は夏休みの間旅行に行くから、どっちにしろラジオ体操にはいかないぞ」
「え……、旅行? どこに行くの?」
「とりあえず、自転車で県内を一周するつもりだけど」
「……1人で? お姉ちゃんは?」
「1人旅だよ」

 一男の言葉を聞いて、恵子は泣き顔から満面の笑顔へと、表情を変えた。

「じゃあ、私と一緒に旅行にいこうよ!」
「だから、赤点をとったら旅行には行けないんだって。特に英語が絶望的で」
「私、英語が大大大得意だからお兄ちゃんに教えてあげる!」
「は? ……そうだったのか?」
「本当だよ。ほら」

 恵子は手提げの学生かばんを開くと、薄い紙を一枚取り出した。
 恵子が取り出したものは、英単語がびっしり書かれてある英語のテスト用紙だった。
 いたるところに赤い丸が記され、右上には赤いペンで100、と書かれてあった。
 中学校のテストとはいえ、難易度はそれなりに高いはず。
 事実、英単語の意味を覚えるのが精一杯の一男にとっては30点とることすらあやしい。
 もしかしたら、恵子は高校生の英語のテストさえわかってしまうのでは……?
 一男は心の中で、この偶然を起こしてくれた存在に感謝した。

「恵子」
「なあに、お兄ちゃん」
「教えてくれ、頼む。俺に、英語力を……」
「じゃあ、旅行に連れて行ってくれるの?!」
「おう」
「やったーーーーーーーーーーー!!!」

 キーの高い叫び声を上げる幼馴染の声を聞きながら、一男は一つ悩みが減ったことに安堵した。
 代わりに、どうやって恵子を旅行に連れて行けばいいのか、という悩みがあらわれたのだが。
952姉妹家庭教師ネタ:2007/07/09(月) 17:57:52 ID:YrZ9gadi
*****

 自宅に帰ってきた一男は、玄関に女物の靴が置いてあることに気づいた。
 一男の両親は同じ会社に勤めていて、職場も同じ。
 そのため、ここ数ヶ月のように長期の出張に出かけるときは2人一緒に家を留守にする。
 つまり、玄関に置いてある女物の靴は母親以外の物だということになる。

 一男が自分の部屋に入ると、そこには近所に住む幼馴染であり、組子と恵子の姉でもある女性がいた。
 ベッドの上に。

「ん、今帰ってきたのか一男。おかえり」
「ただいま、倉子さん」

 ベッドの上にいる倉子は、胸元をタオルケットで隠していた。
 一男は今までの経験から、倉子が服を着ていないということがわかっていた。
 床に脱ぎ捨てられているジーンズ、シャツ、ブラジャー、ショーツを手早くまとめ、枕元に置く。

「早く服を着てください。あと、出てってください」
「なぜ服を着なければならない? 一男は服を着てヤる方が燃えるのか?」
「……倉子さん、もっと恥じらいを持ってください」
「一男を前にしては、恥じらいなど消え去ってしまうよ……」

 うっとりした顔で一男を見つめる倉子。
 大人の魅力を全開にした瞳で見つめられては、たいていの男なら陥落してしまうだろう。
 小さい頃からこの視線にさらされ、今ではすっかり慣れてしまった一男には効かないのだが。
 一男は嘆息して、倉子に背を向け、椅子に座った。
 かばんから社会の教科書とノートを取り出し、机の上に並べる。

「む、勉強か。珍しいな」
「ええ、今回は頑張らないとまずいんで」
「そうか、とうとう私を迎えるために努力を始めたんだな。だが無理はしないでくれ。
 いくら私との結婚生活を順風満帆にするためとはいえ、一男が倒れては意味が無い。
 いや……倒れたとしても、それはそれでいいか。一男を朝から晩まで看病できるからな」
「来週の期末テストで赤点を一つでもとったら、補習になるんです。
 邪魔するんなら、帰ってくれません?」
「補習? 補習というと、あれか。夏休み中ずっと学校へ通わされ、どこにも遊びに行けなくなるという」
「まさしく、その通りです」

 着替えを終えた倉子は、机に向かう一男の手元を覗き込んだ。

「現代社会……か、これは。最近の学校ではえらく簡単なものを教えているんだな」
「これでも俺にとっては天敵なんですけど」
「……なるほど、そうか。誰でも得手不得手があるものな。一男にとっては、これがそうだと」
「まあ、そういうことです」
953姉妹家庭教師ネタ:2007/07/09(月) 17:59:44 ID:YrZ9gadi
 一男は倉子を視界の隅に追いやり、教科書に向かった。
 しかし、全く頭に入ってこない。
 世界の政治や歴史など、一男にとってはどうでもいいものにしか思えないのだ。
 そんなものよりも体育の授業で体を動かす方が余程自分のためになる。
 そう考えて今まで現代社会という科目から逃げ回ってきたツケが今、一男を追い詰めている。

「かなり悩んでいるようだな、一男」
「はあ……どうしよ。あとこれさえなんとかなれば、問題ないのに」
「そうか……そうなのか。ならば、取引をしないか」

 倉子の言葉を聞いて、一男はなんとなく嫌な予感を覚えた。

「……何と何を取引するんです」
「そう警戒しなくてもいい。お互いに持っているものを交換しあうだけだ。
 私から差し出すものは、私の脳に詰まっている現代社会の知識。
 一男から差し出して欲しいものは、一男が持つ夏休みの時間だ」
「いや、俺は夏休みは旅行に行くつもりだったんですけど」
「全てとは言わない、一日だけでいいんだ。一男の時間を、24時間だけ私にくれたらそれでいい」
「え? ……そんなので、いいんですか。それだけで、俺に勉強を?」
「うん」

 これは罠?倉子さんが最初からこんな甘い条件で取引を申し出てくるなんて、どういうことだ?
 もしかして今日、何か悪いものでも食べたのか?

「何を不思議そうな顔をしている。取引するのか? しないのか?」

 だけど、これはチャンスだ。
 倉子さんは昔から優等生でとおっていた。
 今は隣接する市にある、有名大学に通っているほどの才媛。
 高校の現代社会のテストなど、朝飯前に解いてしまうだろう。

「本当に、その条件でいいんですね。あとから追加とか、なしですよ」
「この胸の内に秘める愛に誓って、そんなことはしない。一男の一日を独占できるだけで充分だ」
「……わかりました。じゃあ、さっそく今から……」
「では、さっそく明日、火曜日から始めるとしよう。私にも準備があるしな。
 じゃあ、明日来るから待っているんだぞ、一男!」

 倉子は一男に言い聞かせるように、びしっと指を指した。
 そして、さっさときびすを返して部屋から出て行ってしまった。

 やれやれ、と言いそうになった口を制し、一男は現代社会の教科書と向き合った。
 ……やっぱり、少しも頭に入ってこない。
 一男は勉強の内容を、現代社会から数学へと切り替えた。
 数式がすらすらと浮かび、教科書の例題がたちまちのうちに解かれていく。
 一男は、得意教科と不得意教科の実力差が極端だった。
 三姉妹の教えによりこの差が埋まることを期待し、一男は勉強を続けた。
954名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 18:03:27 ID:YrZ9gadi
>>940よ、こんなのが好きか?
955名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 20:04:02 ID:dl2TByo9
940じゃないが大好きだ
是非このまま書いてほしい
956名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 22:00:04 ID:Se6bWS/8
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 GJ!GJ!
  ⊂彡
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
  ⊂彡
957名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 22:15:19 ID:RTBfEqf3
三姉妹の個性が良い
続きを書かれるならば、おおいに期待する所存
958名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 03:47:47 ID:o96XjrFK
なんという35スレの底力
これは間違いなく本妻の意地
959姉妹家庭教師ネタ:2007/07/12(木) 02:08:40 ID:WkTcT84v
*****

 翌日、火曜日。
 帰りのHRが終わってすぐ、一男は隣の席に座る幼馴染に声をかけた。

「組子、今日は勉強教えられそうか?」
「ええ。皆今の時期はテスト勉強してるみたいだから、遊ぶ予定はなし」
「こんなこと聞くのもなんだけどさ、お前は大丈夫なのか?」
「私は普段から勉強してるから。あんたと違ってね」
「へー……」

 組子の言っていることは本当だ。
 組子は入学以来、テストの成績で学年トップ10に必ず入り込んでいる。
 授業中居眠りしない、宿題を忘れない、予習復習をしっかりする、ノートに授業の内容を書く。
 そんな小さなことを自然にこなせるから成績がいいのだろう。
 一男は組子を見習おうとしたことがあるが、どうしてもできない。
 結局、自分には向いていないと考えて、組子の真似をするのはやめてしまった。

「さ、始めましょ。あんまり学校でゆっくりしてると先生に文句言われるし」
「あ、そのことなんだけどさ。俺ん家で勉強やらないか?」
「え?」
「俺の家なら遅くまで勉強教えられるだろ?」
「あんた、私を遅くまで付き合わせるつもりなの?」
「いいだろ、家がすぐ近くなんだし」
「まあ……7時までならいいけどね。それ以降は教えないわよ。
 今から帰れば5時には着くから、それから2時間は勉強できるでしょ」
「たしかに。あんまり勉強しすぎても集中力が持たないしな」
「そういうこと。さ、帰るわよ」

 組子と2人で教室を出て、廊下を歩いて、下駄箱で靴を履きかえる。
 正門をくぐったところで組子が口を開いた。

「あのさ、一男。変なこと考えてないわよね?」
「変なことってなんだ?」
「それは……ほら、アレよ」

 変なこと?組子が思う変なことというと……あれか?

「今日はやらない。ていうか勉強しないとやばいしな」
「……そりゃそうよね」
「んー、でももしかしたらむずむずしてやってしまうかも」
「へっ!?」

 組子が素っ頓狂な声をあげて、一男から離れた。
 肩を抱きながら、一男を睨みつける。
960姉妹家庭教師ネタ:2007/07/12(木) 02:10:10 ID:WkTcT84v
「やっぱりあんた、そんなことするつもりで……」
「だめか? 勉強ばっかりじゃ気が滅入るから息抜きにしようかと思ってたんだけど」」
「ばっ、馬鹿! そういうのは、そんな軽がるしくやるもんじゃなくて、
 ムードとか大切にしたいって私は思っているし、それに私とあんたはまだそんな仲じゃ……」
「ムード? 筋トレするのにムードなんかいるのか?」
「へ?」
「いや、だから、これだよこれ」

 一男は学生かばんを右手で持ち、ダンベルカールの動きをした。
 一男がついやってしまうことというのは、筋力トレーニングのことだった。
 組子は曲げ伸ばしされる一男の腕を、大きく開いた目で見つめている。
 時間が経つにつれて、組子の顔が赤く染まりだした。

「どした、組子?」
「……なんでもない! さっさと行くわよ!」

 早足で歩き出した組子に遅れないよう、一男も早足で歩き出した。

*****

 一男と組子が一男の家に入って玄関を見ると、倉子の靴が置いてあった。

「これ、姉さんの靴? なんで、一男の家に?」
「ああ、それは……」

 一男が組子に答えを返そうとしたとき、台所から倉子が姿を現した。
 長い髪を頭の後ろでまとめ、服の上にエプロンをまとっていた。
 倉子の抜群のプロポーションをエプロンが強調している。

「おかえり、一男。……お、組子も一緒か。2人揃って今帰りか?」
「ただいま、倉子さん」

 納得できない、といった顔をして組子は口を開く。

「姉さん、なんで一男の家にいるの……?」
「なんで、か? それは愚問だ。私が一男の家に存在するのは生まれたときから約束されていたことだからだ」
「一男、どういうことか説明しなさい」

 組子は倉子に聞いても無駄だと判断し、一男に話を振った。

「倉子さんに現代社会を教えてもらおうかと思って、昨日頼んだんだよ」
「ああ、頼まれたんだ。色気に満ちた眼差しで迫られては、私に断れるはずがない」
「事実はかなり違うけど、俺がお願いしたのは本当だ」
「さ、一男。さっそく勉強をはじめよう。私がみっちり教えてやるぞ」

 エプロンを脱いだ倉子は一男の背中に手を回した。
 そして一男の部屋へ歩き出す。が。
961姉妹家庭教師ネタ:2007/07/12(木) 02:11:24 ID:WkTcT84v
「帰って、姉さん」

 腕を組み、厳しい顔つきをした組子が2人の進路を塞いだ。
 組子の目は倉子へと向けられている。
 倉子はひるんだ様子もなく、悠然と組子を見返した。

「なぜ私が帰らなければいけない?」
「一男は今から、私と勉強をするの。姉さんはお呼びじゃないわ。
 一男、現代社会なら私が教えてあげるわよ」
「組子、わがままを言ってはいけない。一男は私に勉強を教えてくれと頼んできたんだ。
 お前は一男の意思を無視するのか?」
「姉さん。私は今、姉さんはお呼びじゃない、と言ったのよ。……早く帰って」
「それはできない。むしろ組子が帰るべきだろう。自分こそテスト勉強でもしたらどうだ? ……1人きりで」

 一男は玄関の空気が圧縮された錯覚を覚えた。
 声を出すことができない。動くこともできない。
 倉子の手が一男の背中を撫でた。
 背筋を伝い肩甲骨まで達すると、今度は腰へ向けて移動する。
 一男の尻が倉子の手に撫でられた。

「一男、勉強の前に私がいいことを教えてやろうか? きっと勉強なんかよりずっとずっと楽しいぞ」
「いや、俺は勉強をしないと」
「勉強に集中するためには、煩悩を払わなくては。私が一男の煩悩を払ってあげるよ。
 私と一緒にいては、一男も集中できないだろう? 若い男なんだから」

 倉子は空いた左手で一男の左腕を抱きこんだ。

「どうだ? 欲しくないか、私が」
「ちょ……離れて、倉子さん。組子が、組子の顔が……」

 組子の顔が般若のようになっていた。
 目がつりあがって、黒くて丸い瞳が真円を描いていた。
 上下の唇のすき間から食いしばった歯が見える。

「一男」
「な、なんですかっ組子さん?」
「今すぐ選びなさい。私か、姉さんか」
「えっと……それは勉強を教えてもらう相手っていうことだよな?」
「……………………ええ、そうよ」

 本当だろうか。今の長い間はなんだ?
 もしかして、今の俺はとても重要な選択肢を選ばされている?
962姉妹家庭教師ネタ:2007/07/12(木) 02:12:33 ID:WkTcT84v
「一男、私がいいだろう? 私は、今すぐにでも一男のものになってもいいんだぞ」
「私は真面目に勉強を教えない姉さんとは違う。ちゃんと一男に勉強を教えてあげられる」
「ねぇ、一男……」
「一男、赤点をとりたくないんでしょ……?」

 一男の前と後ろにある選択肢。
 どちらか一方を選べばどちらかを捨てなくてはならない。
 どちらを選んでもかまわないのだろう。
 だが、今一男の近くにいるのは狼と虎だ。前門の組子、後門の倉子。
 片方を選んだらもう片方に食い殺されそうな状況では簡単に選ぶことはできない。
 2人に勉強を教えてくれと頼んだだけなのになぜこんなことになっているのか。
 なぜだ。俺はただ赤点をとりたくないだけなのに。夏休みを利用して旅行に行きたいだけなのに。
 誰か、助けてくれ――――

 一男が天に助けを求めたその時、玄関が開いた。

「お兄ちゃーーん! お勉強教えに来たよーー!!」

 玄関を開けたのは、輝くような笑顔をした恵子だった。
 恵子は一男の傍に駆け寄ると、一男の右手をとって引っ張った。
 しかし、その動きは倉子の抵抗によって止められた。

「恵子、なぜお前までここに?」
「お兄ちゃんに英語を教えにきたんだよ。昨日お兄ちゃんに頼まれたんだ。ね?」
「一男……どういうことだ? 恵子にまで浮気をしていたのか、お前は?」

 一男はぶんぶん、と頭を振った。精一杯否定したつもりだった。
 浮気をしたわけではない。ただ勉強をおしえてくれ、と頼んだだけなのだ。
 無言の責めに堪えながら一男は首を振り続ける。
 だが、ここで一発の爆弾が落ちてきた。
 いきなり来て状況を把握していない恵子が冗談交じりにいった言葉がそれだった。
 
「お兄ちゃんね、私と一緒に旅行に行きたいからお勉強を教えてって頼んできたんだよ」

 爆弾はすぐに効果を発揮しなかった。
 たっぷり時間を空けてから、衝撃を一男のもとへ届ける。
 一番最初に届いたのは倉子の嘆きの声だった。
963姉妹家庭教師ネタ:2007/07/12(木) 02:14:11 ID:WkTcT84v
「一男、お前……胸が小さくて背が低くて童顔でどことなく舌足らずな言葉遣いの女が好きだったのか!!」
「違います! 俺は恵子に英語を教えてもらおうと思っただけです!」
「ああ、きっと私のせいだ! 私があまりにも一男に密着しすぎるから反動でロリコンになってしまったんだ!」
「ロリコンじゃないです! 俺はものすごくノーマルです! な、組子…………組子?」

 組子が一男に届けたものは本物の衝撃。
 一男の腹に拳がめり込み、体がくの字に折れ曲がった。
 続いて放たれる左拳のアッパー。下を向いた一男の額に命中した。

「この、浮気者おぉぉぉぉっ!!!」
「ちょ、待ってくみ……ごぉっ!」

 頭を上げた一男の左テンプルにハイキックが命中した。
 蹴りを受けた勢いで一男の体が右に倒れる。
 しかし組子の攻撃は倒れることを許さない。
 返す刀で左フックを放つ。組子の左拳がカウンターで一男の右側頭部を打った。
 トドメに放たれた右足刀を受けて、一男は倒れこんだ。
 しゃれにならない。息ができない。頭にひびが入ったみたいだ。
 組子は大の字になって倒れた一男の胸倉を掴み、怒りの声を吐き出した。

「あんた私が必要だって、私しかいないって言ってたじゃない! なんで姉さんや恵子にまで頼んでるのよ!」
「いや……おま、えが現国しか教えないっていうから……」
「私を無理矢理押し切ればいいでしょ! それでも男なの?!」

 お前を無理矢理押し切れるわけないだろ。あと俺はれっきとした男だ。タマだってついてる。
 一男は軽口を叩きたかった。しかし口から音が漏れない。
 組子の手が一男の首を絞めていたのだ。
 組子を止めようにも一男の手は機能停止したように動かない。

「なんか言いなさいよ! この馬鹿! 女の敵! 痴れ男!」

 一男の首ががっくんがっくんと動く。
 視界がかすむ。気が遠くなる。体が冷えていく。
 睡魔が一男の意識を蝕んでいく。

「あれ? ちょっと……やばい、やりすぎた!」
「起きろ、一男! 起きたらいいことしてあげるから!」
「お兄ちゃん!」

 一男は、小さな手が自分の頭を包み込んでいくのを感じた。
 この手は誰だろう? ああ、きっと天使様だ。
 とうとう俺にもお迎えがやってきたのか。でも本当に天使の手って柔らかいんだな。
 一男はいろいろなことを諦めつつそう思った。

「……ごめんね、お兄ちゃん。こんなことになっちゃって。
 あ、でも結果オーライだったかも。朝ならお兄ちゃんも私に付き合ってくれるよね?
 お兄ちゃん、今年も一緒にラジオ体操に行こうね」

 耳元で聞こえたかすかな声を最後に、一男は意識を手放した。
964姉妹家庭教師ネタ:2007/07/12(木) 02:15:11 ID:WkTcT84v
*****

 二週間後、期末テストの返却日。
 教室に置いてある一男の机の上には、5枚の解答用紙とうなだれた男の体が乗っていた。
 現代国語、13点。
 数学、78点。
 理科、88点。
 現代社会、26点。
 英語、9点。
 そして、夏休みの間補習を受けることが決定して男泣きしている男。
 一男の『夏休み県内一周自転車旅行計画』は頓挫した。

 教室には一男と同じように机に伏せている者の姿もある。
 彼らにも一男と同じように夏休みを利用してやりたいことがあったのだろう。
 もっとも、彼らは同じ痛みをもつ者同士で傷を舐めあうことなどしない。
 自分の受けた傷の痛みは、自分ひとりにしかわからない。

 一男は今決心した。
 赤点をとらない程度に勉強すること。
 幼馴染の三姉妹に、同時に頼みごとをしないこと。
 そして、来年の夏、いや、今年の冬休みは絶対に自転車旅行へでかけること。

 そんなことを思いながら、一男は窓の外を見た。
 一男の今の気持ちを表すように、雨が降っていた。
 もっと、もっと振ってくれ。俺の気持ちを洗い流してくれ。
 雨粒が地面を打つ音を聞きながら、一男は目を閉じた。


埋め!
965名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 07:30:49 ID:qWn/rH6J
乙!
シリアスなのばっかりじゃなくてこういう軽いのもイイネ!
966名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 03:48:48 ID:CBa6f/EA
今まで姉妹モノは数あれど三姉妹ってのは無かったので新鮮でしたGJ!!
出来たら是非とも続編を!
967名無しさん@ピンキー
      ┌                     n /7
      ヘ 「ト                  L|ム//)
     く  ゝ)      _        へ人  ヘ∠
      て彡      |  ハ        `┤フ⌒ヘ⊃
       .| ヘ     .| ノ |-イ_  - 不 ーーイ
       |\ ⌒\  .Y / √ /イ  \二 彡
        ヘ  i⌒ <〜 Y//  / ヘ /    ノ
        ーへ //⌒>イ.( ヘ  入   /
         \《   / / |ヘ ノ </ーイ
           ヽヘノ へ ヘ√  | |
            | |ーー| |へ ム┘
           //ーー// √
          √(⌒)□へ      ww      ザ・500kb!
           i (^"^)\  ゝ    <イヘ|     スレは止まる!
           |/ ヽイ⌒ -イヘ    ヽヲiヘ
         . / /ヽヒ/ /  ヽ / フ⌒( ヘ
         ./ ん )ヘ (   <⌒ へ  ト ノ
        ./   )/  \ヽ人 ⌒) )イムi )
       ん   /     √  イイヘムイ
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        ) (  <  イ ヽヘ  ヘ ゝ
        へイ   |ア~ヘ   く ヘ人
       入ノ    \_/ヘ   ヽ|_\へ
       //      | ノ)     へ ヘii|
             ∠_/      んゝ \