嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その27

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1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSS及び、
他様々な展開の修羅場プロット・妄想を扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その26
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1168129885/

■まとめサイト
2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html
2名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 21:46:28 ID:HXCgtSfB
>>1乙!

3名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 21:53:10 ID:RMvocdij
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第16章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1165004952/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1132666398/
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレin角煮板2nd
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1167959218/
誘導用
【モテモテ】ハーレムな小説を書くスレ【エロエロ】7P
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1168178299/
ヤンデレの小説を書こう!
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148704799/
●●寝取り・寝取られ総合スレ4●●
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1164867401/
4名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 21:53:53 ID:RMvocdij
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
5名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 21:59:24 ID:12tIUXhd
==========一時停止==========
6名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 22:33:58 ID:sXcPKANe
>>3-4




>>1
( ゜д゜) ポカーン
(つд⊂)ゴシゴシ

(;゜д゜)

(つд⊂)ゴシゴシ
 _, ._
(;゜ Д゜) …?!
7名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 22:34:54 ID:9kixZ+AB
==========一時停止==========
8名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 22:37:26 ID:NxxdFOBH
ひとまずスレの一周年おめでとう。
9名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 14:10:08 ID:6zwSdDZP
>>3-4
乙です

ヤンデレの次スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1169476735/
10名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 18:11:37 ID:Ttwv3Tfk
保守っとくか
11名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 19:28:16 ID:WCPaT6YA
で、神はまだこの世に光臨してくれないというのか!!
12名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 19:45:47 ID:pMFArWeS
>>3、乙ー彼ー差ーん

見逃し無いよう、こっちにも貼っとく。

スレッドのタイトル案について以下で投票を実施中

http://debumoja.blog90.fc2.com/

※注意※
・一人につき一票。投票期間が2007/2/11までになっているが、
 27スレが460KBに到達した時点で開票。投票はお早めに。
(私の彼氏なんだから、ほかの雌豚に目移りしちゃダメだよっ)

・「語呂合わせ」>「素直に連番」だったら語呂に決定。
 「語呂」<「連番合計」だったら連番系の中でトップのものに決定。 以降のスレはそれに従う。
 (ずっとずっとずぅぅっと死ぬまで、ううん、死んでも一緒にいてね)

・文句を言う前に投票、投票したら文句は言わない。
 (ううっ、ぐすっ、別れるなんてそんなひどい言葉、聞きたくないよぉ!!)

あと、頼りっきりで申し訳ないですがが、開票時の取りまとめは前スレ>>860お願いできますか?
13名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 19:58:23 ID:xEQJWQgY
キャラクター個別の話よりも音姉と由夢の日常描写で萌える俺は異常ですか?
まあ、今回のFDを出した後でもキャラクター個別のFDでちゃんとしたゲームを作るって手がある
Fateのファンディスクのようにさくらを中心にした新しい物語を設立するのも悪くない
別にダ・カーポ1で音夢と純一の結婚式をやってもいいわけで


なんでもありだな断腸
14名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 20:00:50 ID:Ddjdcaea
誤爆・・・?
15名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 20:01:34 ID:xEQJWQgY
普通にダ・カーポスレと間違っているしwwwww
誤爆だ


嫉妬した女の子に刺されてくる!!
16名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 20:05:28 ID:kTqks1Lt
その後>>13の姿を見たものはいなかった……
>>1
17名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 20:06:12 ID:kTqks1Lt
書き忘れ>>3-4乙です
18名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 20:06:59 ID:EbH89jIT
まあ、ダ・カーポ2のように朝倉姉妹が黒化して
主人公を逆レイプする展開は俺は大好きなんだけどねw
19名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 20:13:37 ID:j+cMjQkK
なんかもう27スレが、薄幸の美少女にしか見えん…
20名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 20:16:37 ID:bYCtaPEW
>>18
「あら。言ってくれればいつでもしてあげるのに・・・」
21名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 20:17:04 ID:IwikUdz6
>>3-4乙です
22名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 20:17:14 ID:LSqEQ80P
このスレが主人公に殺される薄幸の吸血鬼と同類と思える俺は、月厨。
23名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 20:24:05 ID:EbH89jIT
いたり先輩が俺の中では圧倒的な萌えキャラになっている・・
疾走を原作にした4コマだとさぞかし萌え死ねるだろうねw
24名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 22:19:41 ID:fzH8Kh8m
26がいいならそう言えばいいじゃない。
言わないってことは27の方が大事ってことだよね!
ずっと離さないよ
25名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 22:28:59 ID:+Vmh4y+/
てか、お前ら
神が投下できない空気とか作るなっての
どこに投下するか迷うだろうに
26名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 22:47:16 ID:1Uws0itN
ふふふ、そうだね…だったら26ちゃんを埋めちゃえばいいんだよ
そうすれば七誌くんだって…
27魔女の逆襲第8話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/23(火) 23:12:10 ID:dn3XZ92K
りぃん。
りぃん。りぃん。

 夕暮れ。
遠くに伸びる早百合と良樹の影。
幼い早百合と良樹が手をつなぎ歩いていた。
「ほら、さゆりちゃん。もうすぐでおうちだよ」
「…うん。わかってる…」
「そろそろ泣き止んで。泣きながらおばさんに謝ったんじゃかっこわるいでしょ?」
「…うん」
 ぎゅっと手を握る。
 母親に謝りに帰る途中の道だった。
 いつも通っていたお地蔵さんの前を通る。腰の曲がったおばあちゃんが熱心にお地蔵さんの前で何かを拝んでいた。
「二人で謝れば、きっと許してくれるよ…」
「えぐっ…。一緒に謝るよね?」
「そう。一緒にだよ」
 ぎゅっと手が握られる。それだけで早百合の心の中は安堵感でいっぱいだった。この帰り道が永遠に続けばいいのに。
二人で歩く道は茜色に染まり、二人の影は長く伸びてコンクリートで固められた歩道に大きな姿を映した。
 涙を拭きながら歩く早百合と手をつなぎ励ましながら引っ張る良樹の姿。まるで微笑ましい兄妹ような姿。そう見えるだろう。
「…一緒…だもんね」
「うんっ」
早百合はようやく泣き止んだ顔を手でこすり、前を歩く良樹の姿を見た。青色のTシャツを着た良樹は早百合を引っ張って堂々とした様子で歩を進めている。
ちょっと前までは同じぐらいだった良樹の背丈も、成長期だからかみるみるうちに伸びてき、気が付けば早百合の身長を追い抜いていた。自分より少しづつ高くなってゆく良樹の後姿。
 いや、自分よりはるかに高い。瞬きをすればすほど良樹の背はどんどん高くなってゆく。
 良樹はどんどん変わってゆく。後姿の良樹はどんどんと大きくなっていき、握った手と指はがっしりと角ばってゆく。
 あっというまに小学生だった良樹の姿は、織姫高校の制服を着た高校生の良樹へと変化した。
「…よしきくん?」
 早百合は突然の良樹の成長に驚き、おもわず彼の名前を口にする。
 良樹の顔は見えない。ただ、早百合はこの成長した良樹の姿をなぜか知っていた。
 自分の小さな手を握り締める良樹。
手を話さなかったのは、いまこの手を離したら良樹が、もしくは自分の体が魂となって消えてしまいそうで怖かったからだ。
「さゆりちゃん。おうちについたよ…」
 良樹の声。口調…早百合への呼び方は幼少の良樹のままだが、その声はその姿相応に低い。
 着いた先は自分の家ではなく、なぜか良樹のマンションの前。良樹は早百合を手をつかんだまま、無言でそこで立ち止まる。
 急に早百合の感情の中に孤独感が溢れる。
「い…いっしょ……一緒だよ…? 一緒…」
 気が付けば早百合は傷ついたレコードのように「一緒」という言葉を繰り返していた。その言葉を言うたびに早百合の心の孤独感はカビのように黒く増えてゆく気がして、早百合はさらに恐怖する。
 早百合は返事を待っていた。今、良樹が振り向いて笑顔で「ああ、ずっと一緒だよ。早百合ちゃん」と肯定してくれれば、自分はどんなに楽になるだろうか。
 お願いだ。私を救ってください。
「兼森良樹」
 え?
 聞きなれた声が早百合の耳に響く。
 マンションの前、植え込みの傍から一人の少女が現れた。
 セミロングの伸びた髪で、首に巻いたペンギン柄のマフラーを風になびかせ、良樹に近づいてくる冬服の美少女。
 織姫高校の魔女こと、魔女っ子こと、紅行院しずるだった。
 なぜか小学生の早百合にもわかった。
 え? 何故こんなところにしずるさんが?
 不意に、良樹の手が離れた。握っていた左手が空を掴む。
良樹が早百合の手を振りほどいたのだ。振りほどき、しずるのそばへ走ってゆく。
「え…」
28魔女の逆襲第8話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/23(火) 23:13:48 ID:dn3XZ92K

「やぁ、兼森良樹…」「しずるさんっ、どうしたんですか…こんなところで」「なにちょうど君と…」「そんな…」「…」「…」

握られた手が離れていたとき。ちょうど早百合が住む世界と、良樹の住む世界がきっぱりと別れたような気がした。
つないでいた手は唯一の通信手段。早百合の小学生の世界と良樹の現在の世界との架け橋。それが途切れた。
その瞬間、彼女の居た夕焼けの世界が崩壊を始めた。
「!」
電信柱はぐにゃりとひん曲がり、茜色の空はジグソゥパズルが崩れたように闇へばらばらになってゆく。鳥の鳴き声、車の雑音、すべてが音もなく消えてゆく。
「よしきくん! 助けて!!」
 早百合は目の前に居た良樹に助けを求めた。
 崩壊する世界は早百合の背後に迫り、早百合の視界までも奪ってゆく。
 しかし、目の前の良樹は気付かない。しずるもまるで早百合のことなど見えないかのように、二人は楽しく話している。二人の世界は明るく、そしてまぶしかった。
 対して早百合の世界はどんどんと闇に変化してゆく。この闇に飲まれると、二度と良樹と会えない。なぜかそう感じる。
「よしきくん! 助けて! 良樹! 私を一人にしないでよぉ!! いつも一緒だって約束したじゃないぃぃ! ひとりはいやぁぁぁぁ! よしきぃぃ! たすけてぇ! よしきぃぃぃぃぃぃぃ!!」
 大声で叫ぶ早百合。必死で、切実で、そして奇声まじりの金切り声。
 それに気付かず談笑する良樹としずる。
 もはや彼女の切実な声など聞こえはしない。早百合の頭が完全に闇へととりこまれた。
 薄れゆく景色の中で、暗くなってゆく視界の中で、最後に早百合が見たのは

「んちゅぅ…」

 自分で擬音を出して、良樹と唇を重ねる魔女の姿だった。

 りぃんりぃぃん。

燕尾色の鈴が見せた夢は早百合の精神を大きく揺さぶっていた。
 鈴の音が響くたび、彼女の頭の隅にある忘れていた記憶を掘り起こされ、夢として早百合を責めたてる。
早百合は鈴が作り出した、想いの監獄に囚われていた。
無意識下に響く鈴の音。まるで早百合に何度も囁きかけているようだ。
しずると良樹が愛し合う姿をお前は本当に見たいのか、と
あの雌鴉に最愛の人物を奪われて良いのか、と。

 りぃぃん りぃぃん りぃんん
 りぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん

「嫌な夢だわ…」
 ベッドの中で目が覚める。見えるのは変わらぬ天井。
 ぐっしょりと布団がぬれていた。寝汗が下着にくっついて気持ち悪い。
 早百合は体を起こそうとして、突然の頭痛に頭を抑えた。
「頭がぐらぐらする」
 もうすぐ、母親が起こしに来るだろう。
 起きて着替えなければ…。
 ふらふらの意識のままベッドから這い出し、パジャマを脱いだ。
 体は熱く、ふうふうと垂れる汗がべっとりと衣類を濡らしている。
 部屋のスタンドミラーの前に立つと、寝癖はぼさぼさ、目はとろんと下がり真っ赤な頬をした自分の姿が写った。
 とりあえず制服に着替えねば。パジャマを脱ぐ。そのまま畳まずくしゃくしゃのまま床へ。
同時に肌にくっついたブラジャーも脱ぐ。自分のお椀形の胸が露わになった。小ぶりに張ったおっぱい。あと数年すればこの色気の無い胸も小さいまま垂れてゆくのだろうか。
 濡れて青が蒼色になったショーツも脱ごうとして…、
「あれ?」
 スタンドミラーの前に自分の携帯電話が置かれていることに気付いた。
「……」
 こんなところに置いたっけ?
 床に置かれた自分のコバルトカラーの携帯電話。ストラップにはしずるからもらった鈴が付けられている。
 しずるは床に置かれた携帯電話を手に取った。りぃんと鳴る鈴。
「…」
 なにか不自然に早百合は感じた。
29魔女の逆襲第8話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/23(火) 23:14:28 ID:dn3XZ92K
 何気なく携帯電話を開いてみる。ディスプレイにペパーミント調の女の子のイラストが表示された。昨日、良樹とさやかに教えてもらいダウンロードした壁紙だ。(最初はねねこに聞いたのだが、パケ代を無駄にしただけだった)
 さらにその上にデジタルで時刻が表示される。
 午前10時15分。
「え? 午前10時15分って…!」
 今日は土曜でも日曜でもない。普通の平日だ。
「が…学校! やばい! 寝てる場合じゃない!」
 二時間目が終わりそうな時間っ。しまった、完璧に遅刻だ!
「お母さん! お母さん!」
 慌てて二階の自室から飛び出した。
 廊下に出ると、火照った体にひんやりとした風が当たる。
 階段をだんだんだんと音を立てながら下りて、台所へ。どうして起こしてくれなかったんだっ!
 一言母親に文句を言おうと、台所の入り口にかけられたすだれを開けて中に入る。
 台所には誰もいなかった。…そりゃそうだ。この時間は母親と父親は仕事に行っていていつもいない時間だ。ということはこの家にいるのは自分ひとり?
 慌てて自分の部屋から飛び出したからか、早百合は汗で濡れたショーツ一枚のままだった。まぁ誰も居ないし。体が熱くて裸のほうが涼めて気持ちがいいし。早百合は特に気にしない。
 ふと、台所のテーブルの上を見ると、小さな鍋と薬瓶がある。母親が100円ショップで買ってきた一人なべ用の小さい土鍋と市販の風邪薬だった。
中を開けると母の作ってくれた雑炊が入っていた。白菜とニンジンと米を白だしで炊いた簡単なもの。
別に家族ゲームの家庭のような家族じゃないから、こんな個人用の鍋家族で使うわけ無いと思っていたが、こういうときに使うのか。
 鍋とテーブルの間にメモ用紙が挟まっていた。いつも使う広告の裏の白い部分を短冊状にして再利用した母親特製の貧乏性メモだ。昔は早百合も手伝いで作ったことがある。
 メモには母の字で簡単に内容が書かれてあった。すでに学校に休みと連絡していたこと。雑炊は楽になったら自由に食べてもいいこと。母はいつもの時間には帰るということ。昼3時にやるドラマの再放送を覚えてたら録画してほしいこと。
 だんだんと記憶が定かになってくる。たしかに今日の朝、一度起きていた。朝食を食べようとしてたらだんだんと頭が熱っぽくなり……そこから意識が途切れている。眠った自分を母親が運んでくれたのか。
 なんだか、最近は昔のことを思い出したり忘れたりと記憶の反流が激しいような気がする。
「そっか…風邪かぁ…小学生のとき以来だわ…」
 なかなか自分が風邪だとは気付きにくいものだ。
 早百合は台所の流しで薬を飲んだ。熱い体に飛び散る水が冷たくて気持ちいい。
ぺたぺたとフローリングの床を歩き、そのままリビングへ。頭はくらくらしているが、一度起きたときよりだいぶ楽になっている。
 リビングに入る。そのまま新聞を見ようとしてコタツに入る。コタツの電源は切れていたが、まだ温もりが少々残っていて早百合の火照った体にはちょうどいい。
 コタツの上にあった毎日新聞を手に取った。一面トップにある芸人の写真。県知事に当選と書かれている。
「ふぅーん……東がねぇ…」
 特に何も感じない。
 早百合はコタツに体をつっこんでごろんと横になった。
 早百合の肌に直接当たるコタツ布団。裸で布団に入るのはこんな感じなのか。なかなか妙な感じだなと早百合はひとり呟いた。
 そこへ、眠気が襲ってくる。
 コタツで寝ると風邪を引く。母親から口をすっぱくされて言われていた早百合は、のそのそとコタツから這い出ると、リビングを出、階段を上り、自分の部屋のドアを開け、中へ。
 床に散乱し、くしゃくしゃになったパジャマをひろって着ようとしたが。
「あー…だるい。眠い…」
面倒くさくなって、ショーツ一枚のままベッドに倒れこんだ。早百合はそのまま羽毛布団を簀巻きのように体に巻く。
ベッドで芋虫のように丸くなると、早百合はまぶたを閉じて、一瞬で眠りについた。
りぃん。
 早百合の携帯電話に付けられた燕尾色の鈴が、静かに一度だけ鳴った。
30魔女の逆襲第8話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/23(火) 23:15:17 ID:dn3XZ92K
 りぃん。

 織姫高校の自分の教室で、
 早百合は良樹たちの姿を眺めていた。しかし、見えるのは良樹やねねこ、さやか、恒、三郎、クラスメイト達の頭。
早百合は教室の様子を天井から眺めていたのだった。
 誤解しないようにしておくが、早百合が天井に張りつける芸当は持ってはいない。彼女は蝙蝠でもスパイダーマンでもエイリアンソルジャーでもゲンバリングボイでもない。
 早百合はまるで空を飛ぶかのように体が浮いて、天井から教室の様子を眺めていたのだ。幽体離脱で自分の体を眺めている状態…と思っていただければわかりやすいだろう。
「これは…夢…?」
 早百合はなぜか今見ているこの光景が夢だということを自覚することができた。
 クラスメイトたちは頭上に浮かぶ早百合に気付くことなく会話を続けている。

「良樹ぃ。お見舞いに行くのかにゃ?」と、恒。
「そうだよ」と、良樹がかえす。
 ここで、ねねこがにやにやしながら良樹を見て言う。
「良樹君がお見舞いに行ったら早百合ちゃんすぐ元気になるねっ」
「おおぅ! らぶらぶぱわーで風も吹き飛ぶのかにゃっ!?」と、恒。
「そうそう!」ねねこが笑いながら恒に言う。
 そこで、良樹。ねねこの頭をくしゃっとして、苦笑しながら言う。
「そんなんじゃないよ。今日の課題渡すついでみたいなもんだよっ」

「ついで…か…」
早百合は小さく呟く。まぁ、そうか。魔女という恋人がいる良樹に私に対するラブラブパワーなんてあるわけないしね…。

「ついでなの?」と、ねねこが不満そうに良樹に言う。
「みたいなものだって。それに、あいつとは…」

「「幼馴染」」

 早百合と良樹の言葉が重なった。
「幼馴染…か…」
 自分の自嘲するような呟きとともに彼女の意識はまた落ちていった。

りぃんりぃんりぃん。
(続く)
31赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/23(火) 23:17:06 ID:dn3XZ92K
第8話です。またもや予定より長くなりそうな気配。
これからエロパートとHP用の通常パート書かないといけないとなるとまたくじけそうです。
皆さんの反応が製作の糧となります。ここおかしくね?などございましたらご指摘ください。
現在、絵師にしずるさんの絵を依頼中。
32名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 23:34:05 ID:l26owqnY
GJ!修羅場の!へんりん!へんりん!にゅうりん!
33名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 23:34:51 ID:+Vmh4y+/
これはことりの悲しみ!
 ( ‘д‘)彡☆))Д´) 音(r

これは遥の恨み!
 ( ‘д‘)彡☆))Д´) 水(r

これは霧の憎しみ!
 ( ‘д‘)彡☆))Д´) エ(r

そして、これが楓の怒りだ!!!
 ( ‘д‘)彡☆))Д´) 亜(r
34名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 23:54:27 ID:IwikUdz6
GJ!幼馴染の嫉妬や独占欲はタマランな
35前スレ860ことデブモジャ:2007/01/23(火) 23:55:32 ID:QR/l5+M2
>>3-4    >>12
乙だぜ。  了解。まとめ乙なんだぜ。

>>31
修羅場の香りがすこしづつしてきたんだぜ。毎日GJ!
36名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 00:31:52 ID:p6wP0UZ2
GJです!
しずるさんがとてもよろしいのに早百合を応援してしまうぜ
37名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 00:40:31 ID:FW2N5qeX
GJ!
早百合の独占欲に惚れた

それと前スレ埋めネタもGJ愛の押し入り強盗っ子は最高でつね
38名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 07:50:03 ID:S6jVvqli
これからの時代は娘萌えか・・・
39名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 11:49:04 ID:jRZfo3cX
1.突然の引越しによって引き裂かれた中学生カップル。

2.まだ携帯やメールどころか、インターネットですら一般的ではなかった時代。
  主人公の男は歳を追う毎に恋人の事を忘れていった……。

3.主人公、三十路目前。
  会社の後輩と良い感じの仲になり、結婚を考え出す。
  そこに現れる、自称「娘」。

4.薄れた記憶を頼りにかつての恋人の足跡をたどる主人公。

5.たどり着いた一基の墓……。
  振り返れば、娘がいた。
  「母さんは、あなたが迎えに来てくれるって信じて待ってたのに」


うはw
『DADDY FACE』や『BrokenFlowers』みたいに
「実は子供がいました」みたいなシチュって萌える。
40名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 14:32:22 ID:S6jVvqli
>>39
私の頭ではどうやってもBADENDしか想像できません。
本当にありがとうございました。

というか、5で既にBADENDかw
41名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 16:07:14 ID:3JzsoZJ8
嫉妬スレも終焉が近付いてきたな
さあ、こっちに来い

ヤンデレの小説を書こう!2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1169476735/
42名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 16:23:16 ID:DDF6wFO/
>>39
「DADDY FACE」は俺も好きだぜ。特に、自分に主人公の血を取り込もうと実の娘に襲い掛かるヒロインとかw
43名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 16:55:25 ID:nIa1Q3Ra
>>39
6.男は娘に謝罪し、会社の後輩と別れ、娘と一緒に暮らし始める。
7.ぎこちないながらも、徐々に親としての自覚に目覚める男。
それに反発しながらも、早くに母を亡くした為か、初めて無償の愛情に触れ、軟化していく娘。
8.そんな時、会社の後輩は偶然ある事実を知る。
実は娘は男と別れた後に、他の男にレイプされて出来た子であること。
その事件のせいで正気を失った女が、男の娘であると思い込んでしまったこと。
それをネタに後輩は娘に迫るが、娘の中に生まれたのは暗い喜悦の感情だった。
44名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 18:49:30 ID:O1EAT94o
>>43
それすごく読みたい
45トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/01/24(水) 19:00:56 ID:BSujsQX/
では投下致しますよ
46水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/01/24(水) 19:03:08 ID:BSujsQX/
 第16話『勝敗』


 ふはっはははっはははっっはははっははははは。
 笑いを堪えるのがこんなに辛いと思ってもみなかった。
 
 計画通り!!

 嫉妬に狂った虹葉姉と紗桜がどういった手段で鷺森家に仕掛けてくるのは大体読めていた。
宅配ピザに毒物を仕掛けて俺と音羽が二人とも食べてしまい、食中毒を引き起こすのが二人の本来の策だったんだろうが。
俺はすでにその怪しい宅配ピザの従業員が紗桜か虹葉姉だとすでに見抜いていた。
シスター役の虹葉姉が宗教勧誘を装い、救急車を呼んで病室で過剰な看病で俺を病室に閉じ込めようとする。
いや、天草月を監禁して外部との接触を遮断することがことが目的なのだろう。

 それが虹葉姉と紗桜の策。

 異常な家族愛が求めるのは束縛されて依存だけの生活。
そこには、二人以外の異性の存在は許さず、ただ激しい独占欲で俺の存在を檻のように閉じ込めてしまう。

 これは聖戦。
 天草月と水澄虹葉や水澄紗桜による自由と束縛を懸けた戦いなのだ。
 きっかけはエロ本に過ぎなかったが。
 三人が抑え切った抑圧が一気に噴射したのだ。

家族であることに疲れ、単純に男と女の依存関係の枠に収まることを本能的に行動している。
ゆえに俺はそこから抜け出して自由の一歩を踏み出す必要があった。
 姉妹に対する気持ちが愛や恋という感情が芽生えているかどうかがわからない。
 ただ、これは俺の我侭。
 今まで築いてきた家族の再確認。俺は彼女たちに恋をしているのか?
 それが知りたい。

 ただ、虹葉姉と紗桜に勝利しないと待っているのは永遠に堕落した生活が待っているのだ。
今までの惰性した生活を送る。
それはもう嫌だ。

 本来の策が失敗した以上、姉妹は俺が鷺森家に同居している証拠を音羽や俺に突き付けるだけで確実に勝利する。
だから、二週間以上じっくりと時間をかけてコスプレ衣裳を仕上げて来たのだろう。
その姿で俺が思わずツッコミを入れてしまうことを期待して。
 更に呆れた音羽の隙を突いて、無理矢理不法侵入して俺がこの家にいる痕跡と証拠さえ掴んでしまえば、
姉妹特権で俺をおしおきする権利が与えられる。家に帰れば、その題目で思う存分に操られるだろう。
47水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/01/24(水) 19:05:17 ID:BSujsQX/
 だが、甘い。

 まさか、俺が直接自分自身に細工を仕掛けるなんて虹葉姉と紗桜も予想していなかっただろう。
 虹葉姉と紗桜がコスプレ衣裳を身に纏うことはすでに予想していた。
俺は姉妹の俺に対する依存心を把握し挑発的な態度を取ることで思う存分に煽った。
自分が音羽に洗脳されて監禁されている。絶対に助けなくてはという彼女たちの都合の良い被害者像が作られる。
その焦燥に駆られた感情が法に触れようが俺のためになら、どんなことをしてもいいという結論に導かれる。
 ゆえに音羽の隙を付くためにあの演出と衣裳は必要不可欠であるが、ここにイレギュラーが潜んでいたらどうなるか? 
姉妹たちが予想していなかった第三者の登場。
 それは、鷺森家に暮らしていた第三者の存在が天草月の存在を全て覆ってくれる。

 それが鷺森月花の存在である。

 昨日、俺が音羽に買物を頼んだのは女性用の洋服と下着であった。
 後はかつらや脱毛パックや乳液や美肌クリームや化粧道具etc。

 つまり、俺は鷺森音羽の妹、架空の人物である鷺森月花を演じることによって、
天草月が鷺森家に同居している痕跡と証拠を全て消し去っている。
すでに本来の俺の痕跡はできる限り隠滅し、姉妹の目の前にいるのは俺が演じている鷺森月花が暮らしていると主張すれば
姉妹は鷺森家に俺がいることを諦めるはず。

 まさか、兄と弟と慕っている男の子が女装しているとは想像すらも及びつかないだろう。
いや、可能性があるとしても真っ先に否定するはずだ。

 甘い。甘すぎる。

 花山田忠夫に遥かに劣る。

 しかし、ここに勝つチャンスがあった。
 いや、負けない方法がある。

 花山田忠夫なら相手が女装しているいないにも関わらず、女の子相手なら初対面でも胸を掴んでセクハラ行為をする。
その時点でブラジャーに仕込んでいるパッドの多さで相手が男女がはっきりと確定する。

 別に初対面でもいいじゃないか。
 相手にセクハラをかましても。

 だが、鷺森月花の存在が表舞台に出れば、俺の勝利は確定済み。
後は鷺森月花を綺麗に演じるだけで俺は勝てる。

 これで束縛された生活にさようならだ。
48水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/01/24(水) 19:08:19 ID:BSujsQX/
「音羽お姉さま、虹葉さん、紗桜さん、紅茶を持ってきました」

 長年の女の子と共同生活を送っていると自然に女の子の言葉遣いの一つや二つぐらい覚えられるさ。
テーブルに置いてあるコップに紅茶を注ぐと俺も三人同様に椅子に座った。
虹葉姉と紗桜から冷たい視線が俺に注がれているが特に問題ない。
 天草月はここにはいない。例え、気付いていたとしても証拠がなくてはただの言い争いになるだけだ。

「いい加減に家の月君を返してくれませんか? もう、二週間も家に帰ってきてないんですよ。
泥棒猫が月君を拉致して洗脳したに違いなんです」
「一体何の証拠があって言っているのか。私にはさっぱりとわかりませんよ。
月ちゃんとは昨日偶然にスーパーで出会って買物しただけですよ。
その後にちょっとだけ月ちゃんが私の家に寄っただけです。被害妄想もここまで来れば立派なヤンデレですよ」

 いいぞ。音羽。
 家主である音羽が天草月がいないとちゃんと主張すれば、黒も真っ白な事実に塗り替えることができる。
虹葉姉は悔しい顔をして唇を尖らせて拗ねていた。猫耳も怒ったように左右にピクピクと動いている。

「そもそも、どうして月ちゃんが家出しなきゃいけないんですか? あなたたちが追い出そうと工作しようとしたんじゃないの?」
「月君は……私たちにエロ本を見つけられたことで。居づらくなって家を出てしまったんですぅ!!」
「エ、エ、エロ本っっ!!」

 音羽が思わずジト目でこちらを睨んでいた。そういや、音羽がどうして水澄家に出る経緯を説明していなかった。
とはいえ、説明すると間違いなく追い出されるからな。

「そのエロ本のジャンルはほとんど姉妹恥辱だったの」
「へぇ……。姉妹恥辱ねぇ……。それは月ちゃんのとんだ変態さんですねぇ」

 声に怒気を篭もらせた音羽はさっきよりも鋭い細い瞳で睨んでいた。
会話の内容次第では虹葉姉側に寝返りするかもしれない。

「そうです。月君は変態なんです」

 少し嬉しそうに頬を赤く染めて虹葉姉は妄想に浸っていた。が、そんなことはどうでもいい。
「兄さんの趣味には困りましたね。えへへ」
 犬耳の紗桜も嬉しそうに尻尾が振っている。更に音羽の不機嫌は増すばかりだし。
もしかして、俺は追い詰められているのか?
「月ちゃんの異常な趣味はともかく。私は今妹の月花ちゃんと二人暮しなんですよ。
遠方から姉を慕って遊びにやってきたんです。あまり、妹の前でそういう会話をやめて欲しいんだけど」
「そうです。身内の方の恥話を女性が高らかに話すことではありません。
男性の方には発情期というものがあり、そういう本を読むことで性欲を発散しているのですから。悪く言うものではありませんよ」

  自分のフォローを女性を演じている月花でしているのは何か違和感を感じるのだが。これはこれで新鮮。面白っ!
  月花の説教じみた言葉に虹葉姉と紗桜の敵意がこちらに向く。彼女たちからすると俺は月を匿う敵だと認識しているだろう。
音羽が自白しない限りは俺の正体が発覚する恐れはない。
 だが、その視線が向けられる意味は俺が思っていたとは違った。

「に、兄さん? 兄さんの匂いがする」
 はい?
49水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/01/24(水) 19:11:01 ID:BSujsQX/
「そういえば、月君の匂いが月花さんからするよね」
 待て待て待て待て待て待て。そんなものはありえない。
 体臭なんかで個人を判別できるのは訓練された警察犬ぐらいしかないだろ。
「あはははっ。何を言っているのでしょうか?」
「兄さんの小さな頃から兄さんの下着の匂いを嗅いでいるんですよ。その私が大好きな兄さんの匂いを気付かないと思いますか?」
 いや、明らかにおかしいから。普通の女の子はそんな年頃から男の子の事を意識しないっての。
「つまり、あなたが月君ですね!!」
「何のことかしら?」

 行儀悪く椅子から立ち上がって俺を名指しに指を差す。
俺は優しい微笑を零しながら、内心焦っていた。音羽の協力により完璧に女装したつもりであった。
かつらを被って、女性の服を着衣し、女の子言葉で喋っていれば誰でも簡単に騙せると目論んでいた。
だが、現実はそう甘くない。
 たかだが、俺の体臭ごときで簡単に姿を見破られるとは。ありえない。絶対にありえるはずないだろうが。
だが、思う。数年以上俺の下着の匂いを嗅いできた姉妹は警察犬よりも鼻がきくじゃないのかと?
 とりあえず、落ち着け。
 ここで演じるべきなのは鷺森音羽の妹、鷺森月花だ。

「そんな匂いごときで私を天草月さんだと決め付けるのはちょっと言い掛りにも程があるんじゃないですか? 
裁判所に人の体臭を証拠として提出するには様々な化学的な分析が必要ですよ」
「でも、兄さんの匂いだもん。絶対に間違わないだもん」
 少し半泣きになって紗桜が上目遣いで俺を見つめる。うっ。胸に突き刺さる痛みは俺の良心か。
「月君」
 虹葉姉が俺の手を握って自分の胸に当てる。真剣な眼差しで俺を見つめると優しく笑って言った。
「 捕 ま え た っ !!」
 なぬっ!!
 それは一瞬の事だった。俺の手を離して虹葉姉は俺の背中に腕を抱き締めるように包んだ。
予想外のことに俺は反応が少しだけ遅れた時はもう手遅れであった。
 虹葉姉のどこにそんな力をあるかはわからないが、抱き締められた腕力はそう簡単に引き剥がすこともできずに胸に柔らかい感触が当てられる。

「あっ。ずるいっっ。私もするぅ」

 俺の背中から紗桜が抱き締めてきた。姉妹に裏表抱き締められた俺は逃げる場所なんて存在せずに二人の温もりに心が癒されていた。

「月花さんが月君なら別に証拠とか関係ないもんね。強制的に月君を連れ戻せばいいんだから。後の細かいことはどうでもいいよ」
 虹葉姉と紗桜の非常識さに呆れながらも俺自身の甘さに後悔する。
 いや、普通さ。俺が女装している事を虹葉姉と紗桜が天才的な推理で見破ったりさ。
そういう、お約束的展開がすっきりと抜けてるのはどうよ?
「にゃあ。にゃあ」
「く〜ん。く〜ん」

 猫と犬がすでに本来の目的を忘れて俺の肉体に甘えるように顔を寄せていた。

「つ・き・ち・ゃ・ん。これは一体どう言ったことかな?」
「俺にもわからん」

 音羽の凄まじい迫力に俺は首を傾げるぐらいしかできなかった。

 こうして、俺の家出の日々に終わりを告げた。
50トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/01/24(水) 19:13:05 ID:BSujsQX/
今まで遊びすぎたので
これからは頑張って修羅場になるようにしますww
前半戦終了。

次回から後半戦に突入です
51名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 19:19:44 ID:MOPkmz6a
トライデント氏キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
次回が楽しみだぜ!!
52修羅場の神 ◆IOEDU1a3Bg :2007/01/24(水) 19:47:22 ID:Qq+wNOji

人間なんて簡単に死ぬもんだと思う。
きっかけも簡単、たった一つの言葉……

「A男とB美、最近仲が良いな」

そんな言葉。
それが全ての始まりにして、すべての元凶。
それは偶然聞こえた誰かの独り言だった。
誰が喋ったのかはわからない、印象にも残らない。
顔も、声も、体格も、全て思い出せない。
だけどその言葉だけはしっかりと私に刻み込まれていた。
そこから先はもう何も無い。
最初は、まさか……と思った。
次に、もしや……と思った。
証拠は無い、根拠も無い、それでももう止まらない。
思考は思考を呼び、次に疑惑を産み出し、殺意を育て、狂気を完成させた。
いったいどれだけ経ったのだろうか?
最後にこんなにも明確な思考をしてから。
いったいあとどれくらいあるのだろうか?
こんなにも明確な思考をしていられる時間は。

「良い魂になったな」

あれはきっと神の声。
決して抗えない、決して逆らえない。
全てが神の思惑通り。
この世に現れた時点でもう詰んでいる。
逃げられない、避けられない、まるで運命。

「その魂……貰った」

心臓から突き出た一本の棒。
たぶんそれは神の槍。
神様にお会いできた事を喜ぶべきか、それとも自分の死を悲しむべきか。
そのどちらでもなく、私は人間なんて簡単に死ぬもんだと思った。
人間なんて簡単に殺されるもんだと思った。
53シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2007/01/24(水) 19:48:25 ID:Qq+wNOji
修羅場スレには天然物の修羅場しかないので、今回は養殖物の修羅場を投下してみました。
元ネタは内緒、ギリシャ神話ではありません。

以下チラシの裏

割と忙しい合間を縫って書きました。
かなり短いのはその影響です。(恋と盲目も平行して書いていますので……)
投下ペースに満ち干きがある私ですが、もうしばらくは「干き」状態になっているかと思います。
54名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 21:24:20 ID:LdvqcTQQ
>>53
ゆっくり待ってますとも(*´∀`)
55名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 21:32:52 ID:h4wy9S4d
>50
女装ハァハァ(´Д`;)

>53
(全裸で)待ってますので、ゆっくり自分のペースで頑張ってください
56名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 21:59:52 ID:768Bxqpd
>>43
ときめきが止まらない
57名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 22:06:25 ID:51tOMGMW
>>50
これなんて夜神月?
58名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 22:37:29 ID:6SNOzDLw
こうして職人たちは来なくなるのであった
59名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 22:56:05 ID:FW2N5qeX
>>50
やはり修羅場っ子は匂いに関して敏感なんだなw
>>53
wktkしてゆっくり待っておりますので、マイペースでどぞ
60魔女の逆襲第9話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/24(水) 23:27:39 ID:Kl/Dnwx1
りぃんりぃん

 ピンポーン。
 インターフォンが鳴る。
 早百合は自分の体に巻いた羽毛布団に、顔だけ出した状態で目を覚ました。
 カーテンの隙間から差し込む光は、先ほど起きた時の方向とは反対側に差し込んでいた。
 今何時ぐらいだろうと思い、ベッドの棚にある携帯電話を取ると時刻は午後4時。どうやら結局簀巻きのまま6時間も寝ていたようだ。
 昨日寝たのが午後12時、今が4時。もしかしたら自分は24時間連続睡眠ということができるのかもしれないと思ってみる。
 意識ははっきりしている。朝みたいな頭のくらくらは無い。ただすこし喉は痛いがこれも明日にはだいぶひくだろう。
 ピンポーン。
 もう一度鳴るインターフォン。
 早百合はその音に起こされたことに気付いた。
 二階の窓のカーテンの隙間から玄関を見ると、学校師弟のスポーツかばんを持った学生服の良樹が立っていた。
 良樹がお見舞いに来てくれたようだ。早百合はなぜか心の底からうれしくなってきた。
 良樹が自分のために行動してくれる。そう思うと気分が高揚して、もっと何か良樹に何かしてほしくなってくる。
 早百合はカーテンを開け、窓を開け、縁に手をかけて体を乗り出した。外は無風で肌に当たる日の光が暖かくて気持ちよい。
「よしきぃ!」
 インターフォンを押して反応を待っていた良樹は、早百合に突然呼ばれて二階の窓の方へ顔を向けた。なんども家に遊びに来ていた頃は窓から呼ばれて、玄関と二階の窓で会話することも多かった。
 早百合はこうやって良樹を二階から呼ぶのは久しぶりかもしれないと思った。小学生ぶりか。
「良樹ぃ。私のお見舞い?」
「え…? あ、早百合……ぶっ!」
 良樹は早百合を見るなり、いきなり噴出した。そしてあわてたように目をそらす。
 顔を向けた二回の窓には上半身裸の早百合が窓から体を出していたからだ。
「ん、どうしたの? もしかして鍵開いてない? あ、すぐ開けるわ!」
「そんなことより服を着ろって!」
「え…? きゃぁっ!」
 自分の状態に気付く。そうだった、自分はショーツ一枚で布団に包まっていた。そして声につられてそのまま体を出してしまった。
おっぱいまるだしのまま。なんてことだ、人様に、しかも良樹に貧相な体をさらしてしまったっ。
 慌てて胸を押さえてカーテンを閉めると、早百合は自分のあまりの情けなさと恥ずかしさに一気に紅潮した顔を抑えて、床に散乱していたくしゃくしゃのパジャマに袖を通す。
「なんで、私こんな恥ずかしいことしちゃったの!」
 真っ赤になって早百合は叫んだ。
 カーテン越しに見ていたときは、少なくとも自分がショーツ一枚だということに気付いてたはずなのに、気付いてたはずなのに、
良樹が来たとわかった途端……そんなことは忘れて反射的に窓を開けて呼んでしまった。
 
 りぃん

 パジャマを着ると、赤い顔をクールダウンさせるように一段づつ、階段を降りる。
 自分の家はちょうどクレヨンしんちゃんにでてくる野原家のガス爆発でなくなった家の間取りと似ていて、階段を下りた先にすぐ玄関がある。まぁどこの家も玄関のすぐ横に階段があるが。
 ぱたぱたと降りて、玄関の鍵を開けた。
「やぁやぁ。兼森良樹! よくきたね。うれしいよ。うんうんっ!」
 早百合は先ほど自分のおっぱいをまるごと見られた動揺からか口調がしずる調になっていた。
 良樹の顔はまだ赤かったが、ちゃんとパジャマを着てきた早百合に安心して
「あ、うん。 プリント渡すついでにお見舞いに…」
 と、言いかけ、早百合の姿をもう一度見て…赤い顔をさらに赤くして一言。
「ズボンも履けよ!!」
「ふぇ…。ひゃっ!」
 慌てた早百合は、パジャマのズボンをはき忘れていた。さらに早百合はスウェットタイプのパジャマを使っていた。
故にシャツタイプとは違い、自分の水玉のショーツは一切隠れることなく、逆三角形の形をまるまると晒していたのだった。しかも、色気が無いという救いようの無さ。
「ご…ごめんっ。すぐに着てくる!」
 またどたどたと階段を駆け上がる早百合。
 結局早百合は、良樹におっぱいからパンツまでかなりの部分見られてしまったのであった。
61魔女の逆襲第9話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/24(水) 23:28:29 ID:Kl/Dnwx1
りぃんりぃん。

 早百合が慌ててパジャマのズボンを履こうとして倒れ、スタンドミラーに頭をぶつけ悶絶している頃。
早百合の家からかなり離れた町の大きな高級スーパーでしずるは買い物籠を片手にフルーツの品定めをしていた。
「こっちの林檎は赤いが…ツルが萎びているな…。やはりこっちにするか…、しかしこっちも捨てがたい…」
 何十個も綺麗に整頓された高級スーパーの棚のピカピカの林檎を見比べ、赤さや大きさを調べ、さらに香りや、指ではじいた音などおいしい林檎の見分け方を全て実行し、念密に見分けていく。そして棚の中でも一番良いと思ったものだけを自分の籠へ。
 ひとつの果物を選ぶのに5分以上も時間かけている。だいぶこだわっているようだ。
 ようやく、満足するものを選ぶとそれを買い物カートの中へ綺麗に並べる。籠の中には美しい果物が山ほど並んでいた。
「メロンにマンゴーに林檎に…。…うむむ、柿は果物にはいるのか? トマト姫の柿っ八はたしか野菜扱いだった気が…」
 しずるはカートを押すと今度は柿の棚へ。
 そこでまたひとつひとつ柿を検閲してゆくのだ。
 普通ひとつの果物の前に、ましてやセレブご用達とも言われる高級スーパー、味も品質も一級どころか特級品の棚の前に5分も10分もいれば他の客に迷惑になり注意されるものである、それにしずる自身も選ぶのに気が散る。
 しかし、彼女は果物を選ぶのに全神経を集中して選ぶことでできた。
 何故か? 彼女の周囲に人が近づかないからである。というか近づけないのである。
 しずるが鬼も金棒抱えて金縛りになりそうなほど、目を光らせて果物を選ぶ姿に怖気づいたわけではない。(一応それもあるのだが)
 原因は単純に彼女の服装である。
「むぅ、柿は良いものがないな…。仕方がない、柿っ八を信用して、柿は果物と数えないことにしておこう」
 彼女は真冬だというのに体操服だった。ジャージでも着ればいいのに、そんなダサいモノは着てられるかという態度である。寒くないのだろうか。
 さて、上は体操服なら下にはいているのは割れ鍋に綴じ蓋のごとく、ご想像通り定番中の定番、
 
紺のスクール水着である。

 …いや、待て。
 しずるはスクール水着を着たさらにその上に白の体操服を着た格好であった。
 ぱっつんぱっつんの若干キツめで股に少し食い込む紺のスクール水着、そしてその上に野暮ったく袖を通している体操服。さらにスクール水着の紺が目立つためか白の体操服の表面にぴっちりとしたしずるの胸ラインが紺色に浮かんでいた。
 そして、そんな女の子が高級スーパーでものすごい眼力で果物をチョイスしているのである。
 そりゃ、誰も近づかねぇよ。
 しかし、しずるは自分の格好なぞどこ吹く風、周りの視線など完全無視で買い物を続けているのであった。
 歩くごとに磁石のように避けてゆく人々。着物姿で白く白粉を塗った上品なおばあちゃんや場違いなところに来てしまった紫に染まった髪のおばちゃんでさえも彼女の半径4メートルを綺麗に避けて通る。
「これぐらいにしておくか。あんまり買いすぎるとかえって迷惑だからな…」
 自分の買い物に満足したしずるはカートをくるりんと反転すると、そのままレジへと闊歩する。
 体操服にスクール水着という格好で店内を堂々とレジへと向かってくる少女(しかもかなりの美貌である)にこの店の支配人も唖然とした表情であった。
「会計。コレ全部だ」
 どしんとレジに置かれる買い物籠。顔が引きつるレジ打ちの従業員。
 が、そこはさすがに高級スーパーのサービス業店員である。動揺の顔は一切隠して、いつもの爽やか営業スマイルでひとつひとつレジを通してゆく。
「全部で2万4890円です」
「これで。釣りはいらん。外に居る赤い羽根共同募金の箱につっこんどいてくれ」
 しずるは諭吉が描かれたピン札を三枚、体操服のVラインの中から取り出し(ということはスクール水着の胸部分に挟んで仕舞っていたのか?)レジに置くと、そのままカートを押し、袋も受け取らずにスーパーを出て行った。
 残されたのはピン札を前にした従業員と客である。慌てて従業員は札が偽札ではないかと透かしやナンバーを調べてみたが、正真正銘の日本銀行が平成16年に発行した日本銀行券の一万円三枚だった。

 これが隣町でじきに噂になる「スク水体操服の魔女」の根源である。

りぃん
62赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/24(水) 23:30:05 ID:Kl/Dnwx1
風邪を引いてしまいました。今日は短めです。勘弁してください。
だんだん萌え方向に特化してきた展開ですが、そろそろ嫉妬の片鱗が現れてくるはずです。
つらいですが頑張ります。文章におかしくね?などございましたらご指摘ください。
個人的には誰が活躍して欲しいとかリクエストがあればいろいろと取り入れていきたいと思います。
ちなみに、スクール水着の上に体操服ってどのくらいアリなんでしょうか?
63名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 23:45:07 ID:N8wJ6odf
GJです。体操服の下はスク水だったのか。
前回ブルマ脱いだとか書いてあったから、オジサンちょっとドキドキしちゃったよ。
64名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 23:56:46 ID:CNIs1fEG
俺はスク水と聞いてついにドキドキがおさまらなくなったがな。
65名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 00:04:52 ID:COCQ2Fcl
>>62
あの子が修羅場に目覚めたらGJ!!

あと上のオジサン、茶道室の一コマは前日じゃないか?
66名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 00:15:22 ID:uVj8aI03
しずるさんのスク水+体操服のコンボで俺はもう死にそうですよ。
67名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 00:17:04 ID:xSCSugQt
早百合の独占欲や依存心が見え隠れする一方でしずるさんはスク水体操服姿で果物を選ぶ
だがそれが良いGJ!
>>53
全裸で正座してお茶を飲みながらゆったりと待ちますね
>>50
GJ!
さすがキモウトだ長年一緒だったお兄ちゃんの匂いをかぎわけるなど
泥棒猫の匂いを当てるのに比べたら造作も無く簡単な事だったのか
68名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 00:27:09 ID:sCO44oSb
>>39 >>43

どなたか、職人さん!
こ、これも書いてくだせぇ!!
69名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:09:33 ID:4Q4iNPv9
トマト姫ネタ入っててわろたw柿っ八の物の落としようは異常
70名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:29:14 ID:vihDw8Si
   _ ,ク _
   ヽ__゙!l' _ノ
  γ∠_ハ_l oヽ
.  l ‐- 、  , -‐ ijl   かきっぱちと聞いて飛んできました
.  l ( ゚)  ( ゚)  l    
 (,rj` ヽ/ ´ ノ
.イ )`ttー ‐ tt ' `
71名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:36:37 ID:RtQ7rqIg
「あの子はあなたの娘じゃないのよ」

浩一の会社の後輩、そして元婚約者の愛美が語る。
一年前、突然現れた浩一の娘を名乗る少女・香織は自分が十三年前に別れた彼女―――詩織と浩一との間に生まれたと言った。
だが、それは間違いだった。
詩織は浩一と別れた後、強姦された。
そのときのショックが彼女の心を壊した。
その事件で身篭った子供を浩一との間にできた子供と記憶をすり替え、出産し、育てた。

「そして今に至るというわけよ」
「・・・・・・・・・」
「だからね浩一、もうあの子と暮らすのは終わりにしよ?浩一が辛くなるだけだよ」
「・・・・・・お父、さん」

そのとき扉の向こうに香織が立っていた。

「香織・・・・・・」
「ご、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
「なんで・・・香織が謝るんだよ・・・」
「だって・・・いっぱい酷いこと言って・・・で、でも、それでも優しくしてくれて・・・それでいっしょに暮らして、すごく幸せで・・・けど、ほ、本当は違ったんだ・・・血が繋がってなくて・・・・・・」

浩一は香織の言っていたことを思い出す。
詩織が早くに死んで、香織は親戚をたらい回しにされていたという。
香織は親戚から冷たい態度で接しられていた。
香織はそんな状況が耐えられず父親を探しに家を出た。

―――香織は家族が欲しかったんだ。暖かい家族が・・・
72名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:37:45 ID:RtQ7rqIg
「もう・・・いっしょに暮らせ、ないん、だ・・・」
「香織」

浩一は香織をギュッと抱きしめる。

「えっ・・・」
「香織、おまえの生まれなんて関係ない。これからもずっと暮らしていけるさ。・・・おまえは俺の娘なんだ」
「お父さん・・・」

抱きしめられていた香織も浩一の腰に手を回し抱きしめる。
そのとき愛美は呆然としていた。
自分の計算―――浩一から香織を引き剥がすことができなかったから。

「ちょっと待ってよ、浩一!!!それじゃあなたは―――」
「いいんだ愛美。・・・ありがとう、本当のことを話して、俺のことを考えてくれて」
「ち、ちがっ・・・わ、わたしは―――」
「けど、血は繋がってなくても香織は俺の娘だ。だから香織が成長し大人になって結婚するまで香織を見守っていくよ」

浩一は香織を抱きしめている腕に力を込める。

そのとき愛美は見逃さなかった。
抱きしめられている香織の表情に。
口元は笑い、目には子ではなく、女の光が宿っていたことを―――
73名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:40:33 ID:VgLGiMfZ
こ れ は す ご い
74ID:LNRlnJ02:2007/01/25(木) 01:42:12 ID:RtQ7rqIg
勝手に43さんので書いてしまいました
久しぶりにこのスレに来れて調子にのりました
スミマセンorz
75名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:50:43 ID:vihDw8Si
>そのとき愛美は見逃さなかった。
 抱きしめられている香織の表情に。
 口元は笑い、目には子ではなく、女の光が宿っていたことを―――

びっくり仰天
76名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:51:13 ID:vihDw8Si
もろちんいい意味でね
77名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:51:44 ID:Ujj7CPCT
長編希望!
最後の文でゾクっときた
78名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:56:54 ID:sCO44oSb
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 GJ!
 ⊂彡
79名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 04:17:39 ID:BhnLB7uT
>>74

           
             続  編  希  望 !!
80名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 05:27:08 ID:Ab2u4JGD
81名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 07:34:34 ID:hqJpt6PH
>>80
煽りかもしれないけど、一ss書きとしては正直参考になった。
とはいえ、漏れはどの神々のssも素晴らしすぎてGJですよ。
>>72氏ぜひ続編を書いてくださらないだろうか?
8280:2007/01/25(木) 08:11:29 ID:Ab2u4JGD
>>81
スマソ、煽るつもりは無かった。
SSを書いてる人、これから書く人に参考してほしいと思ってのことなんだ。

83名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 08:23:14 ID:oV9bDU7L
続編?違うだろう

>>74
是が非でも
最初から書いて読ませていただきたいいぃぃぃぃぃ!!!!!
84名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 08:37:52 ID:KHJDN3MP
>>80
その控え室に出入りしている身から言わせてもらえば、
「あまり作法に細かいことを言い出すと、余計に荒れるから程ほどに」というのも、真理だと思うよ。

言いたいことは分かるし、見苦しくない程度の作法は必要だけど、程ほどにね。
このスレに常駐している荒しも、同じ手を使ってきているから。

特に段落初頭の一マス空けは、改行がネックになるBBS上でやって意味があるのか、
控えスレでも意見が分かれていたはず。
85名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 08:53:08 ID:vPUzf3lK
最初に挙げられてるマナーとやらも、所詮は出版物の取り決めであって
どんな場合にも妥当する、絶対的なルールなわけでもないしね。

というか、blogを見ると、かなり……な人だな>一番上に紹介されているサイトの管理人氏。
86名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 09:30:18 ID:XeFIWhqF
>>80を読んだ
句読点や視点・心理描写についての考察はためになった。紹介してくれてありがとう
俺は読みやすく書くことができれば、文法などにこだわらないので参考にするよ

>みんな、ここで勉強してきて続編を書くんだ!!
問題は作者、または新たに書き始める人たちの想像力・発想力が無限ではないということだな・・・・・・


とりあえずSSの投下をwktkして待つことにするか
87名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 09:37:35 ID:7/S1yYRX
スレタイ投票やり直したほうが良くないか?
あれ多重投票してるやつ絶対いるよな?
その〜とか語呂とか明らかに票の伸びがおかしいだろ
88名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 10:36:21 ID:9YVz4f1j
>>12でも言ってるけど、一人一票のはず。
どういうシステムなのかは知らないから、抜け道はあるのかもしれないけど。
ちなみに、ブログ開設一日目で、『語呂合わせ』の票は既にありえない数だった。
まあ、その、なんだ。
修羅場スキーは意外と多い、ってことでいいと思うんだ。
89名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 12:07:49 ID:46TXHUSK
スレタイなんて全部「その○○」でいいと思うけどな、もしくは立てる奴が勝手につければいい。
正直くだらない議論だ
90名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 12:18:52 ID:aq257bFE
投票で勝てないとわかるとそれかよ
91名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 13:26:29 ID:mAZEdjM7
天然で修羅場や嫉妬を生み出す『女性』がでるSS読みてぇっス。
92前スレ860だぜ:2007/01/25(木) 13:31:37 ID:j7WM6d5+
携帯(というかPHS)からなので途中でID変わっちゃうかもですが、それは勘弁してください。
それで、ですね。
多重投票についてですが、不自然な投票があったのは残念ながら事実です。
昨日の9時半位に確認した時、
総数186、語呂86で後は大体監禁40ちょい、泥棒猫30ちょい、その〜20位、Part一桁
位だったんですね。
まず、総数と語呂は間違いない。
連番系が100ちょうどだなぁ、と思いながら見てましたから。
で、夕飯食べて酒を呑みながら風呂に入って(大体一時間位)、出てきたら
50票近くごっそり連番系の方に入ってたんですね。
まぁ、確かに皆起きてて投票が進みやすい時間台だってのはわかりますよ?
五分五分だった最初に比べて連番系が優勢だってのもわかってます。
だけとこれはいくら何でも多すぎる。

特に今まで20票しか集まってなかった「その〜」が一時間やそこらでいきなり40票に増えるなんてのは不自然極まりない訳です。

その後は一晩たっても十数票しか増えてない訳で。
その一時間の不自然さが理解してもらえると思います。

そんな訳で一応防衛策として今朝投票をコメント必須にしてきたのですが。
他に何かいい案があったら教えてください。お願いします。

>>91
悪いけど男の嫉妬はこのスレでは扱ってないんだぜ。
男の嫉妬なら少女漫画系のスレなんかいいかもしれないんだぜ?
93名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 13:51:52 ID:xSCSugQt
確かに連番派だがずっと186で停滞していたのに短時間で
急激にその〜に入るのはちょっと不自然過ぎるな
俺が見た時も5時くらいと10時までに見た時186で変わってなくてこりゃ勝負あったなと思ってたし
94名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 14:40:31 ID:hjLnqOSA
そもそもスレタイの投票ごときに一日で186も票入るか普通?
95名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 15:13:23 ID:KY/NN4S2
>>94
このスレを舐めてはいけない。
96名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 15:22:14 ID:hqJpt6PH
個人的に投票のことは投票場内で話したほうがいい希ガス。
神も投下しにくくなるかもしれんし、まとまった内容をこちらに報告するといった形のほうがいいのでは。
97名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 15:29:17 ID:hjLnqOSA
>>95
本気でそう思ってる?
98前スレ860だぜ:2007/01/25(木) 15:39:45 ID:nkQYIYCX
>>96
投票に関してはブログの方で話すって事で。
了解したぜ。
99名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 15:52:54 ID:1GGrK4NT
んな下らねーことで絡むな絡むな
みんな全裸になって投下を待つんだ
100名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 16:18:25 ID:L09f968R
案外見てるだけの人間も多い
初カキコっと
101名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 16:47:10 ID:DrxG2PH8
まあママーリといこうや。
102名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 16:53:12 ID:sCO44oSb
ママーリと申したか。
103名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 17:33:20 ID:DrxG2PH8
「せ 拙者はさような事は・・・」

ブシュウ

鋸を用いた斬撃は 鮮血の結末と呼ばれる

「口論は災いの元」

ビュッ ビュッ 

バタリ

「あーっはっはっはっはっはっはっはっは……」

スレを荒らすことなど不可能であった
104名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 17:39:24 ID:o3TMg1vP
嫉妬や修羅場を愛する魂と神々に感謝をする心を持ってマッタリと待ちましょうや
105名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 17:57:58 ID:o3TMg1vP
そういや投票のコメント数限界設定少なすぎじゃね?
最初の方のコメントがもう消えてる……
106名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 19:13:16 ID:COCQ2Fcl
>>39
応用編その1
1.男は自分より少し年上のシングルマザーと結婚するも、交通事故などで妻死亡。
義理の娘とだけは幸せにしようと誓い、日々を暮らしている。

2.そこに現れる、かつて愛した女性の忘れ形見にして、自らと血縁を持つ実の娘。
いざこざの結果、男、義理の娘、実の娘による奇妙な共同生活が始まった。

3.実の娘は始めこそ嫌悪を露にするも、次第に依存欲、独占欲を強くしていき、
血縁も無いのに男に優しくされる義理の娘を、疎ましく思うようになる。

4.義理の娘は、男に養ってもらっていることと、実の娘と変わらない扱いをして貰えることに負い目を感じ始めるが、
同時に愛情を失いたくない自分に気付き、自己矛盾に陥った結果、徐々に壊れていく。

5.その中で義理の娘はあることに気付く。父親の愛情を失っても、己には「もう一つの愛情」を受ける手段があることを。

よしっ!これで夢にまで見た、娘同士による修羅場が可能に!
107名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 19:41:37 ID:Z2LzZ5gW
神は来ないね全然来ないね
108名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 19:50:32 ID:BhnLB7uT
>>106
やべぇ、創造しただけで濡れてきた・・・
誰か書いてくれないかな
109名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 19:54:02 ID:y3UAFjmf
>108
>濡れてきた・・・
女子?
110名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 20:07:35 ID:uVj8aI03
>>105
悪い、初期設定のままにしてたんだぜ……。
今朝の更新で保持数を増やしたからこれからは大丈夫だぜ。
111名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 20:18:28 ID:6P7FNUR5
なるほど、最後は義理の娘が実の娘に「あなたの新しいお母さんだよ」って言うのですな。
112名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 20:57:19 ID:1GGrK4NT
実の娘「あんたって人はー!」
113名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 20:57:42 ID:lM+Xld8/
怖いのにどこか微笑ましいと思う漏れはここに居すぎたのか?
114名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 21:04:32 ID:BhnLB7uT
>>109
イエス。嫉妬好きが男だけと思ったら大間違い。
115名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 22:07:47 ID:QXb6HsBL
ノントロまだー?
116名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 22:52:45 ID:RzpXhgvN
ノントロは大体の伏線を張り終えて
これから本格的に修羅場ってくから
構想を練ってる最中と予想。
117名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 22:53:24 ID:M51MBSt9
>>111
おばあちゃんが言っていた。義理でも一度戸籍上親になると結婚はできないとな
118名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:08:26 ID:COCQ2Fcl
>>117
ばっちゃん、しつもーん。
じゃあ逆に血縁関係があっても、戸籍上認知されてない私生児とは結婚できるんですか?
119名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:19:08 ID:y9Cint3/
>>118
しようと思えばできるだろうね。役所でDNA検査の結果を提示する必要はないからね。
ただ、DNA検査の結果を他人が裁判所に出したら検察が取り消しにするんじゃないかな。
120名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:22:35 ID:LmMEUhhQ
流れをガッツリ斬ってスマン
投下しますよ
121『甘獄と青』Take21:2007/01/25(木) 23:24:08 ID:LmMEUhhQ
 欠伸をして時計を見ると示している時間は夜の九時、そろそろ二人が寝着いた頃だろう。
「いよいよ明日か」
 誰にともなく呟き、指輪を見る。左の薬指に嵌っているのは青い宝石の輝く指輪、どの
ような理由かは分からないがサラさんが送ってきたものだ。何か特殊なプログラムが中に
あるのは『SHOPオリハマ』で見てもらったので分かったが、起動はさせていないので効果
は分からない。サラさんが最初に作ったオリジナルプログラムに近いと言われたが、それ
はそうだろう。何しろ本人が作ったものなのだから。今現在普及しているものと違って、
こちらのプログラム関係の資料は政府が封印しているらしいので、プログラムを見ただけ
では判断出来ないらしいのだ。送り主に聞けば分かると言われたが、そんなことを今訊く
訳にもいかないだろう。指輪に関するメッセージを添えてこなかったということは、そこ
の部分に意味がある筈なのだと思う。
 そして意味は、恐らく明日には分かる筈だ。
 そして、全てに決着がつく。
 思い返してみれば意外に短いものだが、日々の密度が濃かったせいだろう。知り合って
からまだ二ヶ月程しか経っておらず、一緒に過ごした期間といえば最初の一ヶ月だけだ。
それなのに大分昔から知り合っていたような気がするし、何十年も一緒に居たような気に
なっている。今の状況だって、夢なのではないかと思うことがあるのだ。
122名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:25:00 ID:n5RX30Pg
じいやが言っていた
男と女は燃え上がるもの
危険な火薬は多い程いいとな
123『甘獄と青』Take21:2007/01/25(木) 23:25:27 ID:LmMEUhhQ
 いや、それは我儘か。
 明日のことで何もかもが終わってしまうと分かっているから、下らない夢のようなこと
を考えてしまうのだろう。だとすれば我儘ではなく、寧ろ逃避だということになる。
「駄目だ」
 これ以上考えていると、思考の渦から抜け出せなくなる。
 気分転換に何か飲もうと思い立ち上がると、控え目なノックの音が響いた。
「どうぞ」
 扉が開き、段ボールの箱を抱えたナナミが現れた。戦闘モードで持っていたのだろう、
軽そうに見えた箱だが床に降ろされると鈍く大きな音をたてた。何が入っているのか少し
気になったが、ナナミのスカートの裾が邪魔をしていて中身を知ることは出来ない。
「明日、ですね」
「そうだな」
 唐突にかけられた言葉だが、すぐに対応出来たのは先程同じことを考えていたからだ。
と言うか、考えない方が無理だろう。これまでの人生で一番の大舞台、これからもきっと
無いであろう出来事が待っているのだから。
「大丈夫、なのですか?」
 何が、ということは言ってこない。様々な意味を含めての疑問なのだろう。
「正直、辛いさ。まさか僕が世界の命運を握るとは思ってもみなかった」
 監獄都市に入った理由だって若い恋心と見栄が原因だったのだし、こんなことになった
直接的な原因も大したものではない。差別をせずに普通の人間として接して、愛情に飢え
乾いていたサラさんという個人に応えていただけだ。それが世界滅亡に繋がるなんて予想
出来る者など居ないだろうし、例に漏れず僕もそうだった。
124『甘獄と青』Take21:2007/01/25(木) 23:27:52 ID:LmMEUhhQ
 だからこんな状況になっているのは辛いものがあるけれど、
「でも後悔はしていない」
 これはそれぞれが生きてきた、その結果だと思っている。だからサラさんを哀れむ気も
なければ、蔑んだり嫌ったりする気も起きはしない。明日のことも、サラさんなりの一つ
の答えなのだと、そう思っている。だから後悔などしない、僕はそれに応えるだけだ。
 どうなるのかは分からない。
 けれど、どうするのかは決めている。
「青様、久し振りに悪い癖が出ておられます」
 ナナミは僕の前に立つと、瞳に強い光を宿して顔を覗き込んできた。
「何故、頼って下さらないのですか?」
 言われて、気付いた。
「何があろうとも私は必ず青様の隣に居ます。何百年も言い続けてきたことを今更止める
つもりはありませんし、感情を得たからといって変えるつもりもありません。青様が望む
から隣に居るのではなく、私がそう願うから隣に居るのです。だから頼って下さい、必要
なのだと仰って下さい。大事なときこそ、私に寄りかかって下さい」
 久し振りに聞いたナナミの長口舌は、意思のあるものだった。
 本当に、肝心なときに馬鹿をやっていると思う。再び一人で背負い込んでしまうところ
だった、今のナナミは完全に対等な立場で隣に居るというのに。個人的な性分だと言えば
否定は出来ないけれど、恋人に余計な気苦労や心配をさせる為にあるのではない。
「ごめんな」
「しかしそんなことを言っても、どうせまた一人で行くつもりだったのでしょう?」
125『甘獄と青』Take21:2007/01/25(木) 23:28:54 ID:LmMEUhhQ
 見抜かれていた。
「すまん」
 抱き締めて、髪を撫でる。
「ごまかされません。やはり、これを持ってきて正解でした」
 軽く一歩下がると、ナナミはテーブルの上に例の段ボール箱を置いた。開けられた中に
あるのは見慣れた紙の束、その枚数は八百以上だ。正確な枚数は覚えていないし、何かの
行事があったときにも作ったような気もするので、下手をしたら千枚を越えているのかも
しれない。意外と僕もまめな人間だったのだと思う。
「『奴隷券』、数にして千百二十一枚です」
 そんなにあったのか。
 ナナミはその内の一枚を手に取ると、千切りだした。ラミネート加工が外されている券
は軽い音をたてながら一瞬で小さくなり、放り投げられて空中に舞った。
「これで一回、私からの願いです。約束して下さい、絶対に私を置いていかないと」
 二枚目を手に取ると、やはり先程と同じように千切って放り投げた。
「二つ目です。約束して下さい、絶対に裏切らないと」
 三枚目。
「約束して下さい、最後まで嘘は吐かないと」
 四枚目。
「約束して下さい、独りにならないと」
 五枚六枚七枚と続き、ナナミの口からは様々な願いが吐き出される。券を千切るペース
は既に言葉の速度よりも遥かに高くなっているが、それはもう関係ないのだろう。ナナミ
はただ、僕と一緒に居たいと、独りきりにしないと、それだけを必死に吐き出している。
126『甘獄と青』Take21:2007/01/25(木) 23:30:01 ID:LmMEUhhQ
「約束、して下さい」
 視界を埋めるのは白。
 ナナミの作る紙吹雪。
 紙を千切る音さえ掻き消し、ナナミ自身の姿だけでなく声さえも埋めてしまう程の膨大
な想いの結晶だ。それが紙の姿を借りて、空間ごと奪い、強く意味を主張している。
「絶対に、約束、して下さい」
 最後の一枚をゆっくりと破ると、高く広くそれを散らした。
「最後まで、私の隣に居て下さると」
 実際に涙は出ないのだが、それでも泣きそうな顔をして僕に抱きついてくる。
「約束、して、下さい」
 一途な感情によって作られた勢いは強く、ナナミを抱き止めて慣性のまま倒れ込んだ。
紙吹雪がクッションとなり、痛くはなかった。衝撃で舞い上がる紙の欠片を見て、綺麗だ
と場違いなことを思ってしまう。いや、案外場違いでもないのだろうか。この紙屑が綺麗
に見えるのは、ナナミが今まで大切に守ってきて、そして気持ちを込めて使われたものの
欠片だという理由なのだから。
「約束する、絶対に……」
 軽音。
 言葉を遮るように発せられた音の方向を見ると、先程まで券が入っていた段ボール箱が
床に落ちていた。どうやら二人が倒れたときの衝撃でテーブルから落下したらしい。
 不意に、白い色が目に入ってきた。茶色い底の中、少し浮いた色を持つその紙は空気に
ひらめきながら箱の外へと出ていった。よく見てみれば、その紙はどうやら奥に挟まって
いたらしい奴隷券だ。感情が走っていたせいなのだろう、珍しいことにうっかり見逃して
しまっていたらしい。ナナミは僕の視線に気付いたらしく、素早く券を手に取った。
「使うか?」
 それに指先をかけ、しかし千切ることなく動きを止める。
「これも何か意味があるのでしょう。今は使わずに取っておきます」
 そう言うと、ナナミは笑みを浮かべて僕の胸に顔を埋めた。
127ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/01/25(木) 23:32:27 ID:LmMEUhhQ
今回はこれで終わりです

紙吹雪は最初から書きたかったシーンの一つで、大満足
残すは最終決戦のみなので頑張ります
128名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:41:36 ID:RzpXhgvN
GJ!
129魔女の逆襲第10話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/25(木) 23:42:57 ID:vzW3Ew8K
りぃん

「風邪は大丈夫?」
「ええ。もうだいぶいいわ。一日寝てればすっかり治るものなのね」
「そっか。でもそういう気が抜けたときが一番危ないみたいだよ」
「そうみたいね。でも大丈夫よ」
 早百合の部屋に案内された良樹は、先ほどまでの騒動を気にしてないような口ぶりだった。
 まぁ、早百合としてもあんな醜態をいつまでも覚えておかれるとかなりダメージが溜まってくるため、そうしてくれることはありがたかった。
 早百合の自屋は綺麗に整頓されていて、早百合自身良樹を部屋に入れることはあまり抵抗無かった。部屋はテレビが無いだけで、普通の女の子の部屋となんら変わらない。そういえばこの部屋に良樹を入れたのは6年ぶりぐらいだ。
 良樹は床にあぐらをかいて座っていた。対する早百合はベッドに上半身を起こした状態だ。喉が痛いだけでほとんど抵抗無く動けるが、一応病人らしくしている。
「えっと…。これ、今日もらったプリントと……、貸すって言ってたCDな」
 鞄から良樹が取り出したのは、ボランティアの募集という別に持ってこなくても、早百合には関係なさそうなプリントと奥村愛子のアルバムCD。タイトルは万華鏡。
 昭和ノスタルジーごちゃまぜ妄想オシャレ歌謡という、一言では言いづらいジャンルで雰囲気的にはスカオーケストラのビッグバンドに大人の香りが漂う歌声の曲が主。たまたま良樹のMDプレイヤーで聴いてみて興味を持った歌手だった。
 プリントとCDを受け取ると、早百合はベッドの棚に置く。プリントはすぐに捨てるけど、今良樹の目の前で捨てちゃったらさすがに失礼に当たる。CDは後で聴こう。BGMとしては向かないだろうし。
「ありがと。明後日ぐらいに返すわ」 
「いや、べつにいいよ」
「そう? じゃあ、しばらく借りるわね」
「うん」
 一瞬、会話が途切れる。が、雰囲気を察してすぐに良樹が話題を切り出した。
「早百合、今日のことなんだけどさ…」
「へぇ、なに?」
「藤咲がさ」
「ねねこが?」
「……」
「…」
 ……。
 ……。
 会話が続いてゆく。
 良樹は今日学校であった珍事件(弁当の中身をぶちまけ事件ねねこ)を話すと、早百合もそれに続いてねねこの過去の事件(鰯の読み方をマグロと回答事件)を披露する。
 それに続いて話がどんどんと飛んでゆく、幼馴染の会話は三〇分ほど続いた。

 りぃんりぃん

 時刻も4時半を過ぎた頃。
「もう4時半か。あんまり長居しちゃ悪いから、僕はそろそろ帰るよ。」
 良樹が立ち上がる。
「え、もう帰るの? まだ居てよ」
 早百合の口から出たのは良樹を引きとめようとする言葉だった。早百合は自分で言ってすこし照れそうになる。このセリフは彼氏を自分の部屋に引きとめようとする恋人の言葉じゃないか。
 まるで早百合の心に直接口がくっついて喋ったように自然に出ていた。
「いやいや。お前は病人だろ? それにあんまり無理させると悪いからさ」
「え、ええ……」

りぃん

 目の前でコートを着込み帰る準備をはじめる良樹を見てると、早百合の体の奥から焦燥感と寂しさが襲ってきた。
不安が体中に悪性ウイルスのように広がり早百合の精神を締め付ける。
何故? どうして、良樹が帰ろうとすると自分はこんなに不安になるのだ?
 どうして、良樹にこんなに傍に居て欲しいのだ?
 どうして、どうして……。

りぃんりぃん

 どうして、こんなにも。こんなにも、こんなにもこんなにもこんなにもこんなにもこんなにも、
良樹を独占したいと思っているのだ?

りぃんりぃんりぃんりぃん

 頭の中で鈴が鳴る音がする。早百合に警告を与えるように鳴り響く鈴の音。

りぃんりぃんりぃんりぃん
130魔女の逆襲第11話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/25(木) 23:43:48 ID:vzW3Ew8K
 早百合は森の中に居た。
 じめじめと辺りは湿り、自然の思うがままに伸びた草や木々は怪物のように大きくうっそうと生い茂り、昼か夜かもわからずとても暗い。
 そこの大きな木の前に立つ早百合の耳元には、燕尾色の鈴が音を響かせていた。
 りぃんりぃんとなる鈴に呼応するかのように木々は蔦を生やしていき、それに増長されるように早百合の意識もどんどんあらぬ方向へと転がってゆく。
 そして、響く鈴の音。その音は早百合に存在する心を守る籠の鉄柵の隙間を縫うように侵入すると、内側から早百合の精神を追い立てた。

りぃんりぃんりぃんりぃん
 
 ひとつなるごとに、早百合の心には焦燥感が。
 ふたつなるごとに、早百合の心には束縛欲が。
 みっつなるごとに、早百合の心には独占欲が。
 そしてそこから生まれるたのは、紛れも無い、黒くて暗くて不気味で無様で険悪で邪険で醜い醜い…しかし見るモノから見ればとてつもなく純粋な

 良樹を掌握した、あの魔女への強烈な嫉妬心だった。

りぃんりぃん。

 そうか。ようやくわかった。
 この正体が。いままでずっと胸を締め付けていた原因が。

 私は魔女に、紅行院しずるに嫉妬しているのだ。

 りぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃん
 りりりりぃりりりりぃりりりりりりぃりりりりいん!

「早百合? 早百合? 早百合!」
 誰かに肩を掴まれている。
 早百合が気が付くと、目の前に良樹の顔があった。良樹は早百合の名前を何度も呼びかけていた。
「あ、あれ……?」
 その声に早百合はようやく混濁した意識をとりもどす。 …自分はどうしたんだ?
 きょろきょろとあたりを確認すると、紛れも無く自分の部屋。
 つい今まで、どこか知らない森の中を走っていたような気がしていた。
 早百合は思う。ここ最近は気のせいじゃなく、確実に意識が飛んでいる。しかも今回はかなり重症だ。
「どうしたんだ。早百合。いきなり虚ろな目でぼーっとして……」
 ただ普通にボーッとするぐらいなら、良樹もこんなに取り乱さないだろう。こんなにも良樹が慌てているということは、自分はどのくらい意識を飛ばしてたんだ?
「い、いや。大丈夫。うん、大丈夫よ……」
「やっぱり風邪酷いんじゃないの? 薬、下から持ってこようか?」
「大丈夫って言ってるでしょ!」
 思わず早百合は大声を出した。良樹の瞳が一瞬大きくなり、不安そうにゆがむ。その顔を見ると早百合はいたたまれない気持ちになり、思わず顔をそらす。
「大丈夫…。大丈夫だから……」
 本当は良樹に心配して欲しい。
 そんな本心は悟られないように早百合はうわごとのように大丈夫……と呟いていた。

 りぃん

「そう…。じゃあ、僕。帰るよ…」
 良樹は眉をひそめ、掴んでいた早百合の肩を離すとコートのボタンを上まで締めて立ち上がる。なんとなく。肩が下がってるように見えた。
「玄関まで送るわ」
「いや、いいよ」
「送るわ」
「いや……」
「送るのっ!」
 有無を言わさない早百合の言葉。
結局二人は無言のまま部屋を出ると階段を下り、玄関へ。
玄関に座り良樹がシューズを履く様子を、早百合はじっと見ていた。見られている良樹はなんとなくやりづらそうで思わず靴紐を縦結びしてまう。
「じゃぁ……、お大事に」
「待って」
 ドアノブに手をかけようとした良樹を早百合は制止する。
 先ほどまでの早百合の態度から、良樹は早百合の行動に敏感になっていた。そのままドアノブに手をかけようとした姿のまま言葉通り静止してしまう。
131名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:44:05 ID:VgLGiMfZ
>>127
もうこの言葉意外を口にすることができない。

萌えぇぇぇぇぇ!
132魔女の逆襲第11話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/25(木) 23:44:35 ID:vzW3Ew8K
「そこで待ってて」
 早百合は良樹を待たせたまま、風呂場へ歩く。
 そこで放置されていた黒い布を掴むと、すぐに良樹の居る玄関へ戻ってきた。
 良樹は素直なのか早百合の態度にビビってるのか、そのままの状態で待っていた。幼少期は早百合のほうが普段の立場は上だったので、その時の名残が出てるのかもしれない。
 そんな良樹に早百合は丸まった黒い布を押し当てた。
「持ってって」
「なにこれ?」
「ブルマ」
 良樹は黒い布を受け取ると、パサリと両手で広げる。
 そこに広がったのは、ポリエステル100%で女の子の下半身を包む体操服、紺のブルマだった。
 ご丁寧に、洗濯されていない使用済みタイプで足を通す部分にシワが残ってるところがポイントである。
 良樹の顔が赤く染まる。早百合はその様子を無表情で見ながらを一言
「あげる」
「いらないよ!!」
 良樹は真っ赤になって叫んだ。
「なに考えてんだよ! なにいきなりブルマ渡すんだよ!」
「いらないの?」
「いらないって!」
「しずるさんのだけど」
「えっ…?」
 りぃん
 一瞬、良樹が詰まった。そこを見逃さない早百合は裸足のまま玄関口へ歩くと、良樹に問い詰めるように顔を近づける。無表情。
「欲しくなった?」
「ち…ちがうよ!」
「欲しいとか思わなかったの?」
「思ってないよ!」
「しずるさんのだよ? あなたの綺麗な恋人の……」
「だから思ってないって!」
「しずるさんのって言った途端、目が泳いだじゃない。欲しくなったんでしょ?」
「それは……、なんで早百合が持ってるのかわかんなかっただけで……」
 もっともらしい言い訳をするが、さらに早百合は詰め寄る。
「耳も真っ赤になった」
「違う」
「ブルマを持つ手も柔らかくなった」
「違うっ」
「やっぱり欲しかったんだ?」
「ちがうっ!」
「正直に言って。欲しかったんでしょ?」
「……」
「どうなの?」
「……そ…そりゃぁ……ちょっとは…欲しいかもって思ったけど」
「やっぱりそう思ったんだ」
「……う…ま……まぁね……」
「あたしのはいらないって言ったのに、あんな魔女のブルマは欲しいんだ?」
「そ…それは、早百合が詰め寄るから!」
 正論で返そうとする良樹だが、今の早百合は正論が通じる相手ではなかった。
 自分の感情だけで動く人間に言葉は無意味である。
「帰って。いますぐそれを持って消えて」
「さゆり…」
「早く!!」
 早百合の恫喝に、良樹は何か言おうとして……すぐに無駄だと悟り、ブルマをコートのポケットに入れた。そして敵意の篭った視線で見つめる早百合に「ごめん」と一言だけ呟くと、玄関のドアを開けて出て行った。
「………」
 玄関には早百合のくぐもったような息だけがこだましていた。

 りりぃん

「ここだな。鞠田早百合のホゥムは…」
数時間後。早百合の家の前には籠にめいっぱいフルーツを入れた魔女の姿があった。

(続く)
133赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/25(木) 23:45:53 ID:vzW3Ew8K
変なタイミングで書き込んでしまいました。
ようやく嫉妬分が出せた…。毎日くじけそうですが、よろしくおねがいします。
文章におかしくね?などございましたらよろしくお願いします。
134名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 00:39:40 ID:YxaflMi5
りぃん

がムカツク
135名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 00:50:34 ID:erFM6bRz
〉〉134
しずる乙
136名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 00:54:21 ID:Y2k9eGvP
>>133
GJ
次回に修羅場の予感がする
137名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 00:56:36 ID:Y2k9eGvP
>>133
GJ
次回は修羅場な予感がする
138名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 00:57:38 ID:Y2k9eGvP
連投したorz
すまん
139名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 01:03:23 ID:UOiQHGWV
ホゥム笑った
ロボ氏も魔女の氏もGJです!!
140名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 01:14:57 ID:T4ryHB5a
>127
最後の奴隷券が気になるぜ。GJ!
>133
早百合の嫉妬っぷりが愛しいぜ。GJ!
141名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 02:21:11 ID:tIbNIcoe
>>127
ロボ氏GJ!ナナミかわいいよナナミ、次回の最終決戦にも期待
>>133
嫉妬大爆発ktkr!そしていきなり次で衝突の予感!
142名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 02:25:01 ID:sqPOrWXJ
> そしてそこから生まれるたのは、紛れも無い、黒くて暗くて不気味で無様で険悪で邪険で醜い醜い…
>しかし見るモノから見ればとてつもなく純粋な

小百合よぅ、わかってんじゃねェか
143名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 02:29:01 ID:+hkBevxT
早百合が遂に覚醒キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
>>127
ナナミの愛と依存心と独占欲と忠誠心がごちゃまぜとなったような奴隷券の乱用に惚れた
144名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 04:47:42 ID:DA0Fb+ic
「あなた邪魔なのよ!!!血も繋がってないのにお父さんに優しくされて!!!」

香織は目の前にいる義理の妹・由奈に激しく怒鳴る。

「いいよね、香織ちゃんはあとから現れたくせにお父さんに愛されて」

由奈は彼女たちの父親・浩一の再婚相手の連れ子だ。
だが由奈の母親は結婚後すぐに事故で死んでしまいその後ずっと浩一と二人で暮らしていた。
由奈は幸せだった。血は繋がってなくても浩一は由奈を可愛がった。
そんな浩一に由奈も時が経つにつれ浩一を好きになっていった。

そんなとき、香織が現れた。
香織は浩一が中学のときに付き合っていた女性の子供だった。
香織の母親・詩織は有名な財閥の娘で、彼女の親に自分たちが交際していることを知られないように隠れて会っていた。
だが彼女は身篭ってしまった。
それを隠し通せるわけもなく彼女の親にばれてしまい浩一と詩織は引き裂かれてしまった。
そして今になって香織が現れた。
この不況で財閥は跡形もなく消え去り、行く当てのない香織は実の父親の浩一の所に来た。
香織は祖父から浩一のことを悪く聞かされていたため、浩一を恨んでいた。
だが浩一の優しさと幼い頃に死んだ母が言っていた父のことを思い出し浩一を父親と認めていった。

由奈と香織は最初はどうであれ今は浩一のことが大好きだった。
しかしお互いのことは嫌っていた。
由奈は、『どうしてあとから現れたくせに……』
香織は、『他人のくせに……』
と互いの存在を疎み、憎しみ、そして―――

「あなたは他人なのよ!!!私とお父さんと何も関係ないの!!だから消えてよ!!!」

溜め込んだ憎しみを由奈にぶつける香織。
だが由奈は

「…………クスッ」

冷たく微笑しただけだった。
145名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 04:48:48 ID:DA0Fb+ic
「何が可笑しいのよ!!」
「だって香織ちゃん、血の繋がりのことしか言わないんだもん」
「だから何よ!!あなたには何もないくせに!!!」
「……あるよ、繋がりなら」

そう言った由奈は口元から笑みがこぼれ、頬は紅く染まり、目は喜悦を感じていた。
香織はその表情に恐怖した。次に出てくる言葉は何故か絶対に聞きたくないと思った。

「私、昨日お父さんに抱かれたの」

香織は由奈の言ったことが理解できなかった。したくなかった。

「嘘」
「うそじゃないよ」
「お父さんがそんなことするわけない」
「お父さん真面目だからね、薬を飲み物に入れたの」

由奈の口から異常な行為が淡々と語られる。
香織は絶望的な表情をし、由奈は勝ち誇った表情をしている。

「私はお父さん……ううん、浩一さんと心も体も繋がったの」
「嫌」
「だけど香織ちゃんは血が繋がってるだけ」
「嫌」
「邪魔なのは、どっち?」
「いやああああああああ!!!!!」

香織は由奈の言葉から逃げるようにして飛び出しっていった。

「……クスッ」

由奈は冷たい微笑をした。
そして香織は―――

「わたしだってわたしだってわたしだってわたしだってわたしだってわたしだってわたしだって」

……この日から最悪な形の三角関係は始まったのかもしれない……
146 ◆N.P5FQhRG6 :2007/01/26(金) 04:53:49 ID:DA0Fb+ic
昨日と同じようにまた勝手にすみません
続編は書けれたらがんばって書いてみます

書けれなかったらすみません
147名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 05:28:06 ID:Te/nDo+e
なんか
SUGEEEEEEEEEEEことになってる――(゚∀゚)――!!!!!
148名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 06:41:49 ID:+KLV4ieJ
素晴らしいとしか言えない
149名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 08:58:27 ID:IgiY/m3G
やっぱ課程が面白いと修羅場になってからが最っ高に燃えるな……
なにはともあれGJッス!
150名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 09:20:46 ID:29Hm4b7C
>>127
ナナミィ〜…。紙吹雪の中、好きな人の前で自分をさらけ出す。
そんな日が来るなんて、想像もしなかったなぁ。
>>133
紅行院しずるの異常な愛情
または鞠田早百合は如何にして幼馴染みであることを止めて兼森良樹を愛するようになったかGJ!
151名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 12:37:58 ID:9hEzG30A
>>146
変なことは言わん。
ただ感じるがままに書いてくれ!
152名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 13:16:20 ID:G63Xg7p2
>>146
GJ!続きに期待。
だが今の日本に財閥は存在してるんだろうか。
重箱の隅をつつくようですまん。スルーしてくれ。
153名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 15:05:09 ID:pwVXRCAV
投下しますよ
154『甘獄と青』Take22:2007/01/26(金) 15:06:12 ID:pwVXRCAV
「お兄ちゃん、早く帰ってきてね?」
「……お土産、忘れないで」
 ユンとリーの頭を撫でると、立ち上がる。
 昨日の天気予報で言っていた通りに天気は快晴で、寒さを運んでくる秋風も強くない。
こういう言い方はおかしい気がするが、まさに絶好の決着日和だ。全てが終わるには丁度
良い日が晴れか雨かは分からないが、少なくとも僕にはそう思えた。
 隣に立つナナミを見ると、二人に様々な注意をしている。火を勝手に使うなだとか昼飯
の作り置きの場所だとか、普段から言っているようなことだ。これから大事なことをしに
行くというのに、その対応は普通の留守番のときと変わらない。随分所帯じみた決意だと
思うが、僕ならば最後まできちんと締めてくれると信じてくれているのだろう。
 約束もしたことだし。
「どうされたのですか?」
 部屋の奥に引っ込んでゆく二人を見届けながら、訊いてきた。
「いや、本当に母親みたいだなって」
 僕には母にそうされた記憶が無いけれど、普通の家庭ではよくある光景だ。今のナナミ
の姿は、服装を除けば侍女と言うよりも母親と言った方がしっくりくる。拾ってきた頃は
二人を侍女にすると言っていたのに、今の扱いではまるで娘のようである。ナナミ自身も
それに気付いているのだろうが、それでも態度を変えることなく微笑を浮かべていた。
155『甘獄と青』Take22:2007/01/26(金) 15:07:00 ID:pwVXRCAV
 さて、そろそろ時間だ。
 僕はナナミを抱き締める。
「最後まで、頑張ろう」
 この抱擁も別れの為ではなく、決意を再確認する為のもの。腕の中にある大切な存在が
離れていってしまわないように、在り方を確認する為のものだ。唇を重ね、笑みを交す。
 電子音。
 来客のようだが、今日は無理だ。これからサラさんの場所へ行かなければならないし、
それが終わったらユンとリーも含め、四人で過ごすつもりなのだから。
 玄関のドアを開くと、小さな陰が見えた。
「リサちゃん?」
 僕の腹より少し低い位置、金色の髪が風になびいている。
『ソノ方ハ誰デショウカ?』
 どうやら人違いだったようだ。戻ってきてくれたのかと
一瞬期待してしまい、この人には悪いが落胆した。リサちゃんが戻り、サラさんも戻って
以前の生活をする。そんな甘い幻想は、まだ僕の中に残っているらしい。
 彼女が低い位置から見上げてきたことにより、首が見えた。首輪は填っておらず、瞳に
あるのは無機質な光。どうやら機械人形らしく、先程の妙な発音の理由も納得がいった。
 しかし何の用だろうか。
 腕には小さな体に不釣り合いな巨大な荷物を抱えているが、そんなものを頼んだ覚えは
ない。ナナミも不思議そうな顔をしているので違うだろうし、ユンとリーはそもそも幼い
ので保護者の同意無しに通信販売をすることは出来ない。役所からの遣いだということも
考えたがナナミの修復届けは出しているし、よく観察してみれば管理局の機械人形が義務
で着けているカフスも無い。一体、どこの誰だろうか。
156『甘獄と青』Take22:2007/01/26(金) 15:08:11 ID:pwVXRCAV
『青様デイラッシャイマスカ?』
「そうだけど、君は?」
 荷物を抱えながら彼女は器用に一礼、
『申シ遅レマシタ。私ハゆかりトイウ者デス』
 ユカリ。どこかで聞いたことのある名前だが、思い出せない。
『オ母サンノ、さら様ノ遣デヤッテ来マシタ』
 そうだ、サラさんの世話を引き受けているという機械人形だ。以前ナナミを見て、よく
似ていると言っていた。機械人形という理由だけでなく、確かに似ている部分がある。
『青様、個人的ナ質問デ申シ訳無イノデスガ、一ツ訊ネテモ宜シイデショウカ?』
「どうぞ」
『さら様ヲ殺ス覚悟ハゴザイマスカ?』
 いきなりの核心を突いた質問に、僕は言葉を失った。
 殺すということは、完全に存在を切り捨てるということだ。
 沈黙。
『ソウデスカ』
 ユカリが俯いて包みをほどくのと同時に、ナナミは彼女を蹴り飛ばした。
 轟音。
 ドアを破砕しながらユカリは外へと吹き飛んでゆく。
「何してんだ!?」
「青様、伏せて下さい」
 ナナミはパイルバンカーを掴むと跳躍、一瞬後にはその空間を黒い杭が通過していた。
色は違うものの形や長さには見覚えがある、これはパイルバンカーで撃たれたものだ。
 黒杭は僕の頭上を抜けて通り過ぎ、奥の壁をも破壊貫通して飛んでいった。慌てて家の
奥を確認すると、ユンとリーが脅えたような表情でこちらの様子を窺っている。辛うじて
怪我が無かったことが、唯一の幸運だろう。しかし公園での大参事を思い出したらしく、
二人の小さな体は震えていた。目には涙さえ浮かんでいる。
157『甘獄と青』Take22:2007/01/26(金) 15:09:43 ID:pwVXRCAV
「どういうことだ!!」
 視線を前方に向けると、二発目を撃とうとパイルバンカーを構えているユカリが見える。
先程まで無機質だった瞳にあるのは明確な敵意、殺意と言っても良いものだ。実際、彼女
は僕を殺すつもりなのだろう。案内役だと思っていたのに、意味が分からない。
『さら様ハ覚悟ヲ決メテオラレマスガ、貴方ハドウナノデスカ?』
「僕だって、決めている」
『ナラ、殺セマスカ?』
 ユカリはナナミが撃った白杭を一振りで弾き飛ばすと、黒杭の石突きで打撃した。衝撃
に倒れ伏したナナミの背を踏みつけ、眉を立ててこちらを睨みつけてくる。身長1mにも
達しない子供のような体駆から、怪物のような巨大な威圧感を発していた。
『今マデ長イ時間、さら様ハ独リデシタ。ソレヲ破ッタ貴方ハ称賛デキマスガ、再ビ孤独
ヲ与エタノモ貴方ナノデス。世界ヲ破壊スル悪役ノ覚悟ヲ、殺スコトガデキマスカ?』
 殺す?
『蜜ノ味ヲ知ッタさら様ハ、孤独二泣イテイマス。ソレヲ、貴方ノ手デ楽二デキマスカ?』
 抵抗するナナミの頭を踏みにじり、静かな声で語りかけてくる。抑揚も少なく平静な声
に聞こえるが、その奥には煮えたぎる強い感情が見えた。敵意の具現である黒杭の先端は
震えていて、今にも飛んできそうな雰囲気がある。
『答エナサイ!!』
 抑えが効かなくなってきたのか、とうとう怒鳴りだした。
 殺さなければならないのか。
158『甘獄と青』Take22:2007/01/26(金) 15:11:43 ID:pwVXRCAV
 どうするかは、決めてあった。
 僕はナナミを選んだと、そう伝え、その意思を変えるつもりはないと示そうと。世界が
滅んだとしても、その意思が変わることはないとはっきりと言おうと思っていた。しかし
今のユカリの口ぶりでは、そんなことは関係がないといった様子だ。伝えてくるのは一重
にサラさんを想う心、例え主が死んだとしても心だけは守ろうという意思だ。
『何度裏切レバ気ガ済ムノデスカ!? 突キ放シ、殺シモシナイ!!』
「死ねば全てがおしまいだ!!」
『全テヲナクサナケレバ、全テガ壊レテシマイマス!!』
 それは違う、全てを無くした後に待っているのは悲しみだけだ。
 それは、僕が一番知っている。
 親に捨てられ、大切な恋人を無くし、孤独を抱えてここに入ってきた。生活が出来たと
しても、全てが消えてしまえば待っているのは地獄の苦しみだけだ。ナナミが居なかった
場合のことを考えると、サラさんの気持ちはよく分かる。しかし、全てを手放しても悪に
染まってはいけないのだと、そう思う。その線引きは自分の中にしか無いけれど、自分で
引くことは絶対にしてはならないのだから。
「だから、殺さない」
『モウ、良イデス』
 狙いを定めるようにユカリの目が細くなり、
『死二ナサイ』
 黒杭が、飛来する。
 直後。
「何をしてるんですか、貴方は?」
 聞こえてきたのは金属が噛み合う鈍い音と、懐かしい声。
「大丈夫ですか、青さん?」
 翻る金髪に、小柄な体に不釣り合いな長い両場の剣。
 綺麗な歌と踊りが得意な、姉思いの優しいソードダンサーが、そこに立っていた。
159ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/01/26(金) 15:13:06 ID:pwVXRCAV
今回はこれで終わりです

ベタな引きですね
個人的には好きなんですが
160名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 15:16:20 ID:EuFAAU95
GJ!!GJ!!
161名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 18:30:49 ID:CDNSpyi+
オレンジもさっさとSSを投下してくれと
中毒症状を起こしております

                    __   .イl. , -- ミ 、       ,ィ
 ∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧   / `く.  l/ , - 、: .` ==、___/ノ!
<        ┌┐□□ >, '   . : . \l //: : :、:、: . .__ : : ´/ィ
< ││  ┌┘└─┐ >.イ/ /: :__!{ム___ヽ:、: : : :--‐: ´:/イ
< ││  └┐┌┐/  >ヽ|{ {/     ,.ィ l ,{   `\、: :‐--‐: : ! .ィ
< ││    │└┐   >ij ヽヽ==彡' ノ i `=r 、_`===彡'′
< ││    └─┘   >|//\ヽ ∨〃/\   彡/::/::/::/
< ││            >//(・) \ゞ/ /(・)  〉   `ァ〃イ^ヽ
< ││  ┌───┐ >| \_/ノ  \_/ ノ し| ∨ L  }
< ││  │┌─┐│ >l:::::::::∠~         ⌒|〉  ,'::::∧
< ││  |└─┘│ >|:::::::::r〜〜‐、ヽ      /ゝ/彡'::/
< ││  └───┘ >|:::::::::)jjjjjjjjjjjヽヽ        /
<   ̄           >|:::::::::|,,    ||      /
<  ロロ┌┐  ┌┐   >!:::: ヽiiiiiiiii//      /
<   ┌┘│  ││   >ヽ  ヽ〜〜"     /
<     ̄ ̄   ││   > ヽ、__,,,____/
< ┌┐┌┐  ││   >  _]:::::::   [_
< ││││  ││   > ̄~        ゙ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
< ││││  ││   >               ,〜ヽ
< └┘└┘        >             〜 ノ ̄\
<  [] []         >           ’ノ⌒⌒⌒⌒〉〉
 ∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨            {       Y∫
162名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 18:33:24 ID:tRbi/VgS
ブリタニアに帰れブリキ野郎
163名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 19:47:19 ID:+hkBevxT
>>159
GJ!
だが心に触れる何かがあるからこそ、こういうベタな引きは愛されるんじゃないかと思う
164名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 20:58:41 ID:2rwDivMb
また神々が投下してくれるようになってきて嬉しいっす。
神の皆様方乙です。
165名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 23:11:59 ID:PRzdqvAB
ミャー子・・・・・・・・・・
166名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 23:12:50 ID:d1FW1qzL
俺のいたり先輩と雪桜さんまだぁーーー!?
167名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 23:19:18 ID:zBWONmeR
あんまり露骨なクレクレはスレの空気を悪くすると何度も何度も何度も何度も
168名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 23:23:07 ID:NJ2wKCaY
主にそんなレスするから悪くなるんだけどな
ホラ、ついこんなレスしちまった



流まだー?
169魔女の逆襲第12話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/26(金) 23:29:55 ID:jKR95M0w
 りぃん。

 玄関のドアが閉まる。
 良樹の姿が消えた。
 早百合はじっと閉じられたドアを見つめていた。
 早百合の頭には良樹に対する嫌悪感が風船のようにぎゅうぎゅうと詰められていた。
 数秒後。
 早百合は突然頭を抱えてうずくまった。
 般若の形相をした早百合は、玄関マットに猫のようにぎゅうぎゅうと頭を押し付けた。
ぎしりぎしりと軋む玄関の床。
 玄関のドアを背に早百合は頭を掻き毟っていた。整えられていない寝癖のついた髪の毛がさらにぐしゃぐしゃに方向を変え、数本がぶちぶちと抜け早百合の足元へ落ちてゆく。
「ぎぃぎぃぎぃぎぃ!」
 自分の衝動を押さえつけようとして顎から響く歯軋りが奏でる不協和音。
「ぐっぐっぐっぐっ!」
感情をぶつけるように壁を叩き。赤く染まる拳。どくどくと噴出す血液。赤く染まる玄関マット。まるで負傷した兵隊の包帯のよう。
そこに早百合の口から呪詛のように響き始める声。
「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い良樹なんか嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いきらいきらいきらいきらきらいきらいききききききいきらききらいききらききききききききぃききききききぃきぃきききき……」
 早百合にはこんなにも誰かを蔑む言葉を繰り返したことはいまだかつて無かった。あまりにも繰り返しすぎて感情に口がついていけず、最後にはきききききききききききききききききと嫌いの頭文字だけ、玄関中に連呼している。
 彼女は足元にあった携帯電話をぎゅうと握った。コバルトブルーの携帯電話が何かに浸けたみたいに赤黒く染まってゆく。
彼女が嫌いという度に携帯電話に付けられた燕尾色の鈴がりぃんと音を鳴らしている。
 早百合の部屋にあるはずの携帯電話が何故、玄関の床にあるのか? 今の彼女にはそれを思考できる余裕が無かった。
 
もし、この時点で。彼女が真相に気付き、この鈴をこの場で処分すれば最悪の事態は免れていたのかもしれない。

 彼女の心は何かに操られ、心にぼこりぼこりと溢れるて占める嫉妬のことしか考えられなくなっていた。
 鈴の音は脳髄の奥の奥まで響かせるようにりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃん。
 揺れる鈴。
 そしてそれを虚ろな目で眺める早百合。
 りぃんりぃん。
 待て。何故こんなに良樹が嫌いなのだ?
 良樹を独占したい自分は、何故良樹が嫌いといえるのだ?
 早百合は自分に問う。興奮したままの頭の中の狂ったコンピュタは回答はすぐにはじき出した。

りぃんりぃん

魔女!

りぃんりぃん

紅行院しずる!!

りぃんりぃん

あのからすおんな!!!

りぃんりぃん

 あいつがあいつがあの女があの魔女があの鴉女が良樹のそばに居るのが嫌い!
170魔女の逆襲第12話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/26(金) 23:30:59 ID:jKR95M0w

 良樹が魔女を見ると嫌い
良樹が魔女と一緒にいると嫌い。
良樹が魔女の手をつなぐと嫌い。
 良樹が魔女の話をするともっともっと嫌い。
 良樹が魔女を恋人にするともっともっともっともっと嫌い
 良樹が魔女にキスをするともっともっともっともっともっともっと嫌い
 良樹が魔女に何かするだけで、何かしてあげるだけでもっともっともっともっともっともっともっと嫌い!

 そしてその世界に私が存在していることが、ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっと嫌い!
 頼むから良樹! 魔女を関わらせないで!
 あなたの世界から完全に魔女を消滅させて!
 でないと、あなたのことを私はどんどん嫌ってしまう!!

 良樹を嫌いになんてなりたくない!
 良樹良樹良樹良樹よしきよしきよしきよしきよしきよしきききききききききききききききききききききききぃきぃきぃきぃきぃいいいいい!!

りぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃん

171魔女の逆襲第12話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/26(金) 23:32:06 ID:jKR95M0w
 ……。
「……なにやってんの……私……」
 意識がようやく覚醒し始める。
 気が付けば、20分間。何も言わずに床を殴っていた。
「……最悪」
 血だらけの拳に、マットに広がる血の跡、そこに散乱する自分の髪の毛。
 とても自分でやったとは思えない。何度壁を叩いてたんだ? 
 玄関マットをめくってみる。
「げっ」
 床がめっちゃヘコんでいた。
 ボコりっという擬音が似合いそうなほど、フローリングの木にひびが入っていて体重をかけるとそのまま足がズボリと沈んで突き破りそうだ。
 マットを元に戻す。早百合は見なかったことにした。
 早百合は立ち上がると、とりあえず血で汚れた玄関マットを仕舞い靴箱の棚の奥から使われていなかったクモのプーさんの玄関マットを取り出す。それをひびが入った床を隠すように置いた。
 一番踏んじゃいけないところに足で踏む玄関マットを置いてしまってるが、その時はその時だ。ズボリといったらシロアリのせいにすればいい。築4年だけど。
「ふぅ……」
 それにしても…。ここ最近の自分は酷い。
 感情が高ぶりすぎて、床を殴ったりするなんて初めてのことだ。
 原因は……。
 しずるへの嫉妬……。
 嫉妬のはず……。
 しかし、なにかがおかしい。
「……私、嫉妬してるんだよね? しずるさんに……」
 そうだ。良樹が欲しくてたまらない。
 魔女が邪魔で憎くてしょうがない。
「嫉妬……」
 しずるの顔が頭に浮かぶ。
 頭の中に浮かんだしずるの表情は何故か笑顔だった。一緒にプリクラを撮った後、二人で話していたときの笑顔。
 自分と友達になってくれと言って手を出してくれた時の笑顔。頬のえくぼまではっきりと浮かぶ。
 良樹を奪ったしずるが憎い憎い憎い憎い……。
 憎いはずなのに。頭の中に浮かぶしずるは爽やかで、微笑ましくて、とても綺麗。

 だめだ。自分がわからない。
 この嫉妬は間違いに決まっている。
 でなければ、こんなときに、本心晒してくれた時の爽やかな顔をした綺麗なしずるの姿を頭に思い描けるものか。

 自分のことの筈だ。
 これは自分の感情の筈だ。
 こうやっていま立っている足も、血だらけだった手も、くしゃくしゃになった髪の毛も、目も、鼻も、口も、この感情も、心も、なにもかも。全て私のものの筈だ。

 しかし、それが揺らぎ始めている。
 自分の意志とは違うところに、何か違う自分が居る。
それは本物である自分の意思を食い始めている。

 早百合は寒気を感じ、自分の体を抱きしめた。この寒気は風邪なんかではない。しかし、がたがたと震え始める自分の体。
 浮かんでは消える、思考。

 自分は良樹を独占したいのか?
自分は魔女を憎んでいるのか?
自分は嫉妬に狂った女なのか?
本当に自分は良樹が欲しくてたまらないくて、魔女を殺したいほど憎む嫉妬心を持っているのか?

 早百合が握り締めた携帯電話の鈴は今は鳴っていない。
(続く)
172赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/26(金) 23:36:19 ID:jKR95M0w
今回は短めです。魔女とのまだまださきになりそうです。
というか、80の方。普通に参考になりました。
…を二つ並べなきゃいけないこと初めて知ったよ…orz

あ。友人に頼んだしずるイラストを一緒にUPします。みなさんのイメージに合うでしょうか。
ttp://bbs9.fc2.com/bbs/img/_166100/166037/full/166037_1169822082.jpg
173赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/26(金) 23:40:54 ID:jKR95M0w
……は2つだって! 自分。
あと魔女との戦闘は先になりそうでした。
もういっちょしずるイラスト。
ttp://bbs9.fc2.com/bbs/img/_166100/166037/full/166037_1169822262.jpg
174名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 00:03:57 ID:czohhG1/
早百合侵食嫉妬覚醒キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
175名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 00:30:39 ID:ZSCxPONX
そこで切るか!?切っちゃうのか!?明日、発表会なのに一日悶々と過ごせと申すのか生殺しGJ!!
176名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 00:39:43 ID:e6MRm6VQ
うん、魔女派の俺でも萌えるね。うん。
さゆりかわいいよさゆり。
177 ◆6xSmO/z5xE :2007/01/27(土) 01:58:29 ID:e602kcGj
投下いきます。
178ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/01/27(土) 02:03:10 ID:e602kcGj
 朝の教室は騒がしい。宿題やら部活やら、昨日のテレビやら放課後の予定やら、話題には事欠かない。
 だがここ数日は、ある一つの話題で持ちきりになっていた。
 予鈴が鳴っているにも拘らず話し続けている生徒も何人かおり、その表情は総じて深刻なものだ。
 入ってきた担任教師がファイルで教壇をバンバンと叩き、ようやく席へ戻っていった。

「高村と折原は今日も休みか。他には・・・・・・。
 ん? 奈良橋がいないな。誰か、何か聞いてるか?」

 ここ数日続いている2つ以外の空席を見つけた担任はクラス全体に呼びかけるが、返事は無い。
 後で自宅に電話を掛けるか、と呟いて一つ咳をすると、改まった様子で話し始めた。


「えー、皆も知っていると思うが・・・ここ数日、若い女性が立て続けに失踪する事件が起こっている。
 それも、この近辺ばかりでだ。
 警察は連続誘拐事件として捜査を続けているが、目立った進展は無く事件も相変わらず続いている。
 そこで・・・・・・今日から当分、学校は午前中のみとすることになった。
 部活動も委員会も、中止だ」

 一拍置いて告げられた担任の言葉に、教室が一斉にざわめき出す。担任の静止の声も中々届かない。
 大声で3度呼びかけてようやく静まり、再び担任が話し始める。

「とにかく、今この辺りは非常に危険な状況に置かれている。何が起こるかは、先生たちでも正直分からん。
 なので、次に挙げることを必ず守るようにして欲しい。
 1人で帰らないこと、不用意に出歩かないこと。特に女子生徒はこれを絶対に守るように。
 マスコミに何か聞かれても、余計なことは言わないこと。
 警察を刺激するような不審な言動を取らないこと。
 一時限目は職員会議なので自習とする。
 HRは以上だ。委員長、号令」

 HRが終わって担任が出て行くと、教室は途端に騒がしくなり始めた。
 話題は勿論、件の連続失踪事件について。
 真面目に自習に取り組もうという生徒は殆ど見られない。


 このところ多く話題に上っていた、あまりに長期に渡り休んでいる智と千早へのクラスメートの心配。
 そんな中起こったこの事件が、2人への彼らの関心を奪い去ることになっていた。


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179ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/01/27(土) 02:05:18 ID:e602kcGj
 奈良橋今日子が目を覚まして最初に感じたのは異臭だった。
 はっきりと覚醒するにつれ、異臭はより具体的な感覚―――腐臭となって纏わり付く。
 その臭いに顔を顰めながら、彼女はフラフラと立ち上がった。

「何よここ・・・。どうしてあたし、こんな所にいるの・・・?」

 キョロキョロと周りを見渡すが、真っ暗闇で何も見えない。だが、少なくとも見知った場所ではない気がした。
 しかも、今のボソリとした呟きさえ反響して聞こえるほどの、痛いくらいの静寂の空間。
 急激にこみ上げてきた恐怖を振り払うように、今日子は思考を順序立てていく。

「確かあたし、学校に向かう途中だったよね・・・。で、その途中で・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 そこから先が思い出せない。
 ぶつ切りにしたように、すっぱりと記憶が途切れているのだ。
 自分に何があって今こうなっているか、まるで思い出せない。
 強いて言うなら、記憶が途切れる寸前、強い突風が吹きつけたような気がするくらいで―――。



「あら、目が覚めたみたいね」

 突然声が掛けられ、今日子の全身が露骨に強張る。
 バッ、と振り向くと、人影らしきものが見えた。
 向こうが近づいてくるのと目が闇に慣れてきたのが相まって、程なくして人影がその輪郭を現す。

 現れたのは女性だった。それも、破格の美貌を持った長身の女性。
 暗くてはっきりとは見えないが、雑誌やテレビで見たどんなモデルや芸能人も霞んで見えるほどの美人だった。
 何故か左手側の袖がゆらゆらと揺れているが、それさえもどことなく優雅な雰囲気を醸し出しているように見える。

「どうしたの? ぼーっとしちゃって、大丈夫?」

 笑顔で声を掛けられ、今日子はようやく我に返る。
 その表情の優しさに気を緩めた彼女は、目の前の女性に一番知りたいことを問いかけた。

「あの・・・ここはどこなんですか? あたし、どうしてこんなところにいるんでしょうか?」

 女性が自分にとって助けとなる存在だと微塵も疑ってない様子で、今日子が話しかける。
 しかし、返ってきたのは信じられない言葉だった。

「あなたがここに居るのは、私が攫ってきたからよ。生贄になってもらう為にね」

180ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/01/27(土) 02:08:09 ID:e602kcGj
「い、いけにえ?」

 あまりに予想外の返答に、今日子は間の抜けた声でオウム返しをしてしまう。
 理解が追いつかない彼女をよそに、女性は鈴の鳴るような声で楽しそうに笑った。

「ええ。私の大事な人の為に、若い女の子の生き血がいっぱい要るの。
 こんなに沢山連れて来てるのに、まだ足りないのよ?」

 そう言って、何かを示すように手を広げた。
 それに倣って周囲を見渡した今日子は、足元に誰かが倒れているのを見つける。
 思わずしゃがみこみ―――強くなった腐臭に顔を歪めながら―――その顔を覗き込んで、悲鳴を上げた。



「きゃあああああああああああああああっ!?」

 顔を恐怖に歪めて後ずさる。だが、それも無理はないだろう。
 覗き込んだ顔は暗くても分かるほど土色で、水分を吸い尽くされたように干からび、明らかに死者のそれだったのだから。
 腐臭の原因も、この死体が発しているからに違いなかった。
 しゃがんだまま後ろ手に這って下がる今日子だが、その背中に何かが当たる。
 恐る恐る振り向いてみると、そこにあったのもまた、ミイラ化した女性の死体だった。

「いやぁっ・・・!!」

 腰が抜け、力が抜ける。
 ついでに気も失いそうになったが、幸か不幸か、意識はギリギリのところを辛うじて踏みとどまった。
 だが地面を這って動く程度の力も入らず、生殺しを待つ魚のように身動き一つ取れない。
 視点の低くなった今日子の目には、今しがたの2人と同じように倒れている人影がいくつも映っていた。
 見えているだけでざっと10人程度。誰もが同じようにミイラ化しており、纏う衣服も不自然にブカブカになっている。
 それらに劣らず青白くなっている今日子の様子に、女性が小さく笑う。
 その笑顔は先程までと同様優しいが、今となってはこの惨状にそぐわない微笑みがかえって恐ろしかった。

「大丈夫よ。最初はちょっとチクっとするかもしれないけど、すぐに気持ちよくなるわ。
 気持ちよくなりすぎて気を失う頃には全て終わってるから。
 痛いことも怖いことも、何もないから大丈夫よ」

 女性は純粋な笑みで―――純粋な狂気を纏った笑みで―――話しかけてくる。
 ここにきてようやく、今日子は自分がこれからどうなるかを認識した。
 不意に頭を過ぎるのは、ここ最近の女性連続失踪事件のこと。
 同時に、被害者の結末も悟った。


 殺されるのだ。
 ここに転がる多くの人間と同じように、ミイラにされて。
 生贄とは、そういうことなのだ。

181ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/01/27(土) 02:10:09 ID:e602kcGj
「いや、いや・・・! やだっ、誰か、誰か助けて・・・!」

 何とか声を絞り出すも、その音は空間を空しく反響するだけ。
 今更のように気づくが、ここは廃工場のような場所だった。誰かが居るようなことは期待できない。
 小さく返る山彦が絶望を増幅しているように感じられ、今日子はそれ以上叫ぶことができなくなった。

「だから、私たちの為に死んで? 私と彼の為に、あなたの命をちょうだい」

 そう言ってあさっての方向を向いた女性は、先程までの愛想笑いではない、本当に優しい慈母の微笑を浮かべる。
 反射的にその視線を追って―――今日子は、精神に恐怖以外の感情が入り込むのを感じた。


「高村くんっ!? なんで・・・!?」

 クラスメートの高村智がそこにいた。
 部屋の隅にポツンと置かれた小さなベッド、その上で壁にもたれて力なく座っている。
 顔色が悪く、表情も苦しげだった。気絶しているのか、今日子の声にも反応しない。

 ずっと学校を休んでいた智がなぜこんなところにいるのか。
 千早はどうしたのか。まさか、ここに倒れている内の1人なのか。
 この女性は誰で、智と何の繋がりがあるのか。
 生贄が智の為とはどういう意味なのか。

「高村くん! 高村くんっ!」

 いくつもの疑問が浮かぶも、恐慌状態の精神に生じたそれらは今日子に更なる混乱をもたらしただけだった。
 脳内をグルグル回る言葉は何一つ形になってくれず、ただ智に呼びかけるしか出来ない。
 だがやはりと言うか、智は目を覚まさない。

 完全に脱力した智は、普段の様子からは想像出来ないほどに弱々しかった。
 常に千早を気に掛け守るように接する学校での姿は、頼もしいという印象さえあったというのに。
 そんな智が、手足をだらんと伸ばし、着衣を乱し、苦しそうな顔で、弱った病人のように無防備な身体を晒している。
 良く見ると整った顔立ちをしていることもあり、その儚げな様子はどこか倒錯的な色気を醸し出していた。
 自らが置かれた状況も忘れ、今日子は思わず智に見惚れる。
 だが、それも数瞬のことだった。



 バシュッ、と首から血を噴出して、今日子がその場に崩れ落ちる。
 いつの間にか今日子の傍らに立っていた女性が右腕を一閃し、今日子の頚動脈を掻っ切っていた。

182ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/01/27(土) 02:13:39 ID:e602kcGj
「サトシに色目を使わないで。身の程を知りなさい、雌豚が」

 先程までと同一人物とは思えない声で、女性―――エルは、物言わぬ肉塊となった少女を冷たく見下ろす。
 智を見つめる少女の頬にほんのりと赤みが差した瞬間、頭が真っ白になって衝動的に腕を振るっていた。
 まさか智の知り合いだとは思わなかったが、殺したことに後悔は無い。
 大事な大事な自分だけの智を汚らわしい視線で侵そうとしたのだから、これは当然の報いだ。


 尚も流血を続ける今日子を片手で軽々と持ち上げ、エルはベッドへと歩いていく。
 ゴミでも捨てるようにその死体を無造作にベッド脇に放ると、智の首に腕を回して抱き寄せる。
 無抵抗にエルの胸に埋められたその身体は、血色が悪いだけでなく、幾分痩せ細っていた。

「んふふふふふ・・・。こうしてるとあったかいね、サトシ・・・」

 甘く蕩けた表情で、エルは智に頬擦りする。
 一分ほどその温もりを堪能し、名残惜しそうに顔を離した。

「じゃあ、今日のご飯ね。身の程知らずの雌豚だったっていうのが、ちょっと気に入らないけれど・・・」

 そう言って、傍らの今日子の死体を乱暴に引き寄せる。
 首筋に牙を突き立てて血を吸い、口にいっぱいに含むと、そのまま智に唇を重ねた。
 そのまま口移しで、智の喉に血を注ぎ込んでいく。

「んん・・・ぷはっ・・・。
 やっぱり・・・死んで少し経ってるから、精気が大分逃げちゃってる。
 ごめんねサトシ、我慢の出来ない女で。私、自分がこんなに嫉妬深いなんて思わなかったよ」

 エルが顔を離すと、2人の間に唾液の橋が掛かった。
 再び今日子の血を口に含み、唇を合わせる。

 幾度と無く繰り返される濃厚なキスに、いつしか智も目を覚ましていた。
 だが瞳は霞んだようにぼんやりとし、そこに明確な意思の光は見られない。
 それでも血を飲まされている事は分かるようで、エルが唇を重ねるたびに、親鳥に餌をねだる雛のように舌を伸ばす。
 エルもそれに応えようと舌を絡め、智をきつく抱きしめて離さない。


 冷たくなっていく今日子をよそに、2人ははしたなく音を立てて互いの唇を貪りあう。
 そのまま、どちらからともなくベッドに倒れ―――1時間も経つ頃には、エルは智の胸に身を預けて安らかな寝息を立てていた。
 隙間風が冷たい中で人肌の温もりを確かめるように、智は本能的にエルの身体を抱きすくめる。

「んんぅ・・・。サトシ、大好きよ・・・・・・」

 聞くだけで眠気を誘うような、幸せそうなエルの寝言。
 それにつられるように、智も瞼を閉じていく。

 その瞳からは、一筋の涙が流れ落ちていた。
183ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/01/27(土) 02:18:11 ID:e602kcGj
今回はここまで。インターバル的な回ということで、多少長いですが軽めの内容でお送りしました。
状況説明も含めて次回に続きます。動き出すまで少しお待ちください。

184名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 02:19:30 ID:b+gca0bB
どうしちまったんだサトシ!
かっこいいサトシが何故!?

でもこのエルのヤンデレっぷりがやばいくらいいいぜぇぇぇぇぇっぇぇぇ
マジで良すぎ!
GJ!
185名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 02:24:55 ID:N9lLcgma
うおおブラッドが!!
エルの、恋する乙女の周りの見えてなさが可愛すぎてヤバイな。これはヤバイ
ついでに智もなんかヤバイ
GJです!!
186名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 02:43:18 ID:bbjS4JwS
いやっおおおおおおおおおおお!
187名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 02:44:41 ID:Z9g4WLxc
ブラッドフォースきたーっっ!
エル怖えぇーーーーーーーーー!!
職人様超GJです!!!
188名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 07:10:15 ID:z+bpXimj
エルキタ━━(゚∀゚)━━!!
この狂った幸せが素晴らし過ぎます
189『疾走』 第十九話 B ◆/wR0eG5/sc :2007/01/27(土) 17:03:10 ID:dVTD/lZK
「ぁ、あの、実は俺、今日、放課後ちょっと外せない用事があって」
「え……っ? あ、そうなんだ」
 俺独りだけでお見舞いだと……冗談じゃない。
 いかにも困ったように髪をかきながら、どんどん嘘を吐き出す。
「なのですいませんけど、生方先輩が届けてくれませんか」
「まあ、わたしはいいんだけど、いたりが残念がると思うなあ。どうしても外せないんだよね」
 確認された。
 やっといたり先輩が俺から離れてくれているのだ。
 心配でもここは無視する。俺は正しいのだ。
 そのはず、なんだよ。
 そりゃ怖いからとか、そんな理由もたぶんに含まれてるんだけど……。
「はい」
 俺は断言する。
 生方先輩は、「ふぅ……ん」と、左右に結った髪を交互に撫でながら呟く。
 まっすぐ、視線が俺をいぬく。
「だったらしょうがないね。うん、わかった。今回はわたしに任せたまえっ」
「は、はいっ。お願いします」
 苦笑で頭を下げた。
 ああ。
 言えない、言えないけど……はやく、言わないと。
 でもなんかめんどくさいなあ。
(――ぁっ)
 ……めんどくさいっ?
 そんな思考に陥った自分が嫌だった。
190『疾走』 第十九話 B ◆/wR0eG5/sc :2007/01/27(土) 17:04:54 ID:dVTD/lZK
 初見から、なにかおかしいとは頭の片隅で考えていた。
 放課後。ノートを手に。
 生方はエレベーターの中で、上昇していく数字をぼんやり眺めながら考える。


 俺が、いたり先輩の彼氏って……だ、誰が、そんなこと言ったんですか……っ?


 この台詞は変だ。
 あのときの瑛丞の表情も同時に思い出しながら、改めてそう判断する。
(あきらかに動揺してたもんねえ……エースケくん、さ)
 あのとき、もっと突っ込んで訊くべきだったのか。
(いや……ぃやいや、ああもう、よそう、なんかこういうの、考えるの嫌だと、いうか……)
 数字は五階を示している。もう少し。
 また数字を眺めながら、ぼんやりとまた考える。
(ああっ……でもエースケくんはアレだな、性格は優柔不断って感じだけど、笑うとすげえ可愛いよねぇ)
 笑わなくてもそうだが。
 決して彼の顔は男らしいそれではなく、むしろその逆で。
 かなり華奢だし、背丈もそれほど……生方と同じくらいであるから、男としては低いのではっ……?
 女装とかできそうっ?
 生方のあの言葉は、決して冗談などではない。
(でもだめだ、だめ、もういたりがとっちゃったんだから、うん)
 左右に結った髪がふりふり揺れる。
(けど、おしいなあ、ああっ)
 想像する。
 彼の泣きそうな顔を……っ。
 ぞくり。
 いじめたい。すげえいじめたい。彼のよわみを握ってそれを材料に罵倒したい。
 泣き出した彼の顔はきっと可愛い。それをみおろす。そして彼はいう。
『ご、ごめんなさい、ごめんなさいっ。許して下さい、生方先輩……っ』
 う、うひゃあっ!
 いいなあっ……。
 ついでに女装させて一緒に無理矢理外出したり。うへっ。
「やば、よだれ出そうっ」
 というか出ていた……自分の悪癖に、生方は「はあっ」と吐息。
 わたしという女は、どうにも趣味が悪いというか、何というか……っ。
 数字は、八階。
「はあっ……さっさと渡して帰るかねえ」
 ホールに出て、廊下に。
 瀬口の表札を見つける。迷わずチャイムをならす。
 ピンポン。
 ……出ない。
「ぁ、れ」
 連打する。しかし出ない。
 だがいたりは病気で学校を休んでいるのだ……なら家にいるはずだ。
「ええっ……? あれえ、おかしいなあ」
 その後数分、生方はチャイムを連打したのだが。
 瀬口至理は結局そのチャイムには応じなかった。


 もしくは、自分の家に、いなかったのだ。

191 ◆/wR0eG5/sc :2007/01/27(土) 17:07:20 ID:dVTD/lZK
 短いですがここまでです。
 書くの遅いですが最後まで頑張ります。
192名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 17:08:52 ID:jLMedxiP
GJ
193名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 17:12:25 ID:qItQZp+g
疾走キタァー(゜∀゜)ーー!!!!キタァー(゜∀゜)ーー!!!!
これでいたり先輩の嫉妬成分を補給できますよ
うぉおぉぉぉ

これで一週間の活力が沸いて来ます
194名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 17:12:29 ID:e6MRm6VQ
生方先輩も何か変な属性持ちだったんですねw
GJ!
195名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 17:16:00 ID:N3CylHm4
>>191
GJ!!
なんと。思わぬ伏兵が。
疾走Bルートをこれからwktkして待つことにします。
196名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 17:22:09 ID:z+bpXimj
疾走キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
GJ!
生方先輩の黒い面ktkr!
そしていたり先輩の動向にwktk!
197名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 17:32:23 ID:FC1hn8Te
GJッス!しかしサド系のキャラが来ましたか……
他の二人は自分に縛りつける為の暴力でしたけど生方先輩は欲望の為にやる感じですな……
198名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 17:57:48 ID:czohhG1/
疾走キタ━━(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)━━!!!
生方先輩もキタ━(゚∀゚)━!!!!!
199名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 18:20:59 ID:DTSyS1BQ
疾走GJ!!
Aルートは楽しく読ませてもらったので、Bルートも期待してますよ。
200名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 20:38:34 ID:QSDi5Y8z
うぉ超久しぶりw
201名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 21:04:00 ID:wiX8b2Z+
GJ!
ヤバい…いたり先輩一筋だったのに…
生方先輩に鞍替えしてしまいそうだッ!
202名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 22:11:56 ID:MX5gigUe
今日は何かの日なのか!?
203名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 22:56:55 ID:GGAAfDAB
今日はあの雌豚を殺す日よ、愛しの名無しくん…
204名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 23:04:33 ID:tgweCik1
>>203
なんかIDがチェーンソーの音みたいだね
205名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 01:08:01 ID:KNQCIDHC
ぎがああフだぶ

こうですか!?
206名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 01:14:22 ID:8ORdVqvp


                   そこをどけ豚ども。
         私は、これから、最愛のいたり先輩に、会いに行かねばならんのだ。
207 ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 01:42:23 ID:woIf9xpJ
それじゃ投下します。
208A bond and a bond ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 01:44:55 ID:woIf9xpJ
EpisodeV 「Two visitors」


玄関の前でインターホンを押していた睦美は上機嫌だった。

んっふふ――。今日は楽しいカレー曜日。
腕を振るって友ちゃんにカレーをご馳走しちゃおっと。
材料は既に友ちゃんが買ってあるって言ってたから問題なし。
最近すれ違いばかりだったから、これを機に更に親密な仲になっていかなきゃ。
でもその為には触れ合うのも大事だけど、敵の排除も考えとかなきゃ。
この後には二人っきりの旅行も控えてるから問題は無いだろうけど、
これ以上「アイツ」が干渉してくるようなら……。
って何やってんのよ。早く開けてよ。

ピーンポーンピーンポーンピーンポーン

すると暫くして、家の奥から何か物音が聞こえてきた。

もしかして、私が来たから慌てて部屋でも片付けてるのかしら。
ま、まさかまたエッチな本を買ってきたのかも……
先日隠してあったエッチな本を全部捨てた時、泣いてたからな……
大体本に載っていることをしたいんだったら私に言えば……がんばるから……
そのために今日は万が一のために勝負下着を着てきたんだからね。
ねえ、友ちゃん……私以外のメスに発情したら……分かってるわよね?
209A bond and a bond ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 01:46:29 ID:woIf9xpJ
玄関前でブツブツ言ってたら、やっとドアが開き

「ハアハア……いらっしゃい。待った?」
「遅い!!早く家に入れてよ」
「ごめんごめん。ちょっと片付けてたから……」

玄関に入り、靴を脱ぎながら睦美が友二に向かって


「ねえ友ちゃん……何か隠しごとしてない?」

ギクッ!!

「イヤナニモカクシテナイヨ」
「…………………(じ〜〜〜)」
「…………」
「やっぱり何か隠してる!!声が裏返ってるもん!!またエッチな本買ったね!!」
「違う違う!!そうじゃなくて……ああもう面倒くさい、こっち来い!!」
「きゃ!!引っ張らないで!!」

案内された先は台所。そこでは鍋でグツグツとカレーのルーを煮ていた。

「いや……、今日はカレー曜日初日だろ?だから記念に今日は俺が作ろうと思って……。
いきなり見せて驚かそうと思ってな。」
「……………」
「あまり美味くは出来ないかもしれないけど、愛情なら溢れるほど入ってるから
食べて……くれるか?」
「…………しい」
「え?」
「友ちゃん!!嬉しい!!!」

嬉しさのあまり友二に抱きついた睦美は

「私のために料理を作ってくれるなんて……、誤解して御免なさい」
「い、いや分かってくれればいいよ」

ふう……何とか誤魔化せたか
210A bond and a bond ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 01:47:55 ID:woIf9xpJ
さて、どうやってこのピンチを切り抜けたか。遡ること数分前―――



こうなったら少々強引だけど、しょうがない。

友二は台所に行き―――

「先輩、ごめん!!」
「ん?どうした……きゃ!!」

台所で料理をしていた真紀を、友二は強引にお姫様だっこして、居間の押入れに放り込んだ。

「何するのよ!!まだ料理の途中なのに!!」
「これも無用のトラブルを避けるためです。暫くここに入ってもらえれば
後でデートでも何でもしますから」
「え?!デデ、デート!!……暫くでいいなら……」

その後、真紀の鞄や靴などを隠し、待ちくたびれていた睦美を迎えるために玄関の
ドアを開けたのであった。




「いただきま――す」
「んじゃ俺も。いただきます」

途中まで真紀が作ったカレーを友二は見よう見真似で何とか完成させた。
これが意外にも上手くいって
「美味しい!!この味が私への愛情なのね」
211A bond and a bond ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 01:49:09 ID:woIf9xpJ
「ま、まあな」

先輩、ごめんなさい。勝手に先輩が作ったカレーを食べちゃって。
でもここで二人が出会うと多分、明日のワイドショーに載る事態が起きそうなんで我慢して下さい。

今睦美の背後の押入れの中に居るであろう真紀に心の中で謝っていた友二だったが、その押入れが
少しづつ開き真紀の顔が覗いていた。

殺意に満ちた表情で声を出さず、口だけ動かした。


「こ ろ し て い い ?」


「ひっ!!!」

何とか叫び声を上げるのは我慢できたが、睦美が訝しがるように

「どうしたの?変な声だして」
「なな何でもないよ、うん」
「?後に何かあるの??」
212A bond and a bond ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 01:50:29 ID:woIf9xpJ
睦美が振り向くと、そこには引き戸が閉まっている押入れだけだった。

「何もないじゃない。おどかさないでよも〜〜」
「あ、ああ悪い……」

その後、美味しくカレーを食べて適当に談笑し、夜7時を回った頃に
帰る準備をした。
何故か膨れっ面の睦美を玄関で待っているように言った後、急いで押し入れの戸を開け

「先輩、睦美をちょっと送っていくので待ってて下さい」
「………ろす、絶対……す、私の………レー」

何か呟いていたようだったけどさして気にすることも無く、友二は
睦美を家まで送っていった。
この時、友二はまだ「真紀」という女の危険性を認識してはいなかった。
もし少しでも認識していたら絶対家に一人きりにはしなかっただろう。
事実、友二が家を出て行ってすぐ押し入れの戸が開き、真紀が出てきた。

今、真紀の行動を阻む物は何も無かった。




第三話「二人の訪問者」完
213 ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 01:53:40 ID:woIf9xpJ
パソコンが完全に壊れてしまったため、投下が思ったよりも遅れてしまいました。
多分暫くはネットカフェの投下になりそうです。
214名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 01:56:31 ID:AtLhZnjb
このスレにいると
殺すって言葉の響きが素敵に感じてしまうよ
215名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 01:59:02 ID:RuO0aBzX
それだけ譲れない愛がセットになってるからなぁ。
216名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 02:29:48 ID:Pmtas609
ここのストーカー体験談みたいな小説を読んだら
何か恐くなってきたので誰か読んできて
ttp://www.geocities.jp/fukurou_lanokai/stalker_9.htm
217名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 02:37:17 ID:Q40e2QlH
背景が恐い。
218名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 03:05:43 ID:E3soUR/8
>>213
GJ!こういうシチュエーション良いな
219名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 11:07:09 ID:Jm4wxjlb
嫉妬…何て甘美な響きだろう。
嫉妬深い女の子に絞められて死にたい願望がある俺は間違いなく変態。
220名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 11:33:22 ID:EdB4ROPl
>>216
まるで、ゲームそのままのヤンデレを見てるようだった。
どうやら、まだ続きがあるらしい。とりあえず、背景怖ぇwwww
221名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 11:40:18 ID:J1+QUkLE
友人が邪魔だからバイクを故意に転倒させたり
女の子の友人に私は付き合っているんですと電話をかけたり


こういう男性が女性のストーカーに遭うのはどうしてこんなに萌えるんですか
222名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 12:55:21 ID:wFSh9mQ6
>>221
普通のデレでは満足できずそれ以上のデレを求めてしまったがゆえに、
ヤンデレに萌えるようになったからだ。つまり我々が

変 態 だ か ら さ

・・・・・・俺もな
223『子猫はどこへ消えた?』 ◆/wR0eG5/sc :2007/01/28(日) 13:48:28 ID:CvsQPvxE
 最近の僕。
 日課が一つ増えました。


「ほら、ごはんだぞぉう」
 朝の六時。家の庭で。
 子猫は今日も、そこにいた。
「みぁっ」
 地面においた器にまっしぐらのその子猫は、今日も綺麗に全身白い。
 懸命にキャットフードを征服している様子を眺めながら思い出す。
 はじめて遭遇したのが確か一週間前だったか。
 リビングのカーテンを開けてふと庭を見てみると、こいつはぽつねんと座っていた。
 視線がぶつかると、なぜか嬉しそうに鳴いて、近づいてきたのだった。
 おそらく捨てられたのだろうが、それまでは随分と人間に甘やかされてきていたみたいで。
 とにかく警戒しない。すぐになつかれてしまった。
 以来、こうして毎朝ごはんをふるまうことが、日課の一つに加算されたのだが。
 それにともない、どうにも理解しがたい変化が我が家で発生してしまっている。
 などとおもっていたら、そら、足音が近づいてきた。
 背後に気配。
「あ、おはよう姉さん」
「……ん。ぉふぁ、よぅ、ん、んっ」
 ん。ん。を連発するのは僕の姉だった。そして理解しがたい変化、そのもの。
「最近ほんとはやいよね。なんでさ?」
「ん、ん……っ? や、いや、別にぃ、いいじゃん」
「いいけど、ね……」
 腰まで伸ばした髪ぼさぼさ、あきらかに睡眠が不足してるらしいとにかくまぶたをこするこする。
 絶対まだ寝ていたいはずだ。
 そもそもだ。
 この姉はとにかく寝起きが駄目なのだ。特に今の時期一月、このくそ寒い環境下に在っては布団の魔力もそれはそれは増大するだろうに。
 なのに起きる。しかも六時。
 六時に起きる姉、それは奇跡の体現……過言ではない。
 それが一週間も続く、その理由とは。なんだろう。
 子猫がみたいから……それは僕も最初に考えたのだが、しかし。
「ナツ。また子猫にえさやって……」
「ぁ、い、いや、だって、ねえ、可愛いし」
「全然可愛くない」
 はじまった。
 一週間前。姉に子猫の話題をふったときからこうだ。
 飼おうと言ってみれば絶対に駄目。
 じゃあごはんだけでもと言ってみれば、野良猫に関する餌づけの問題を徹底的に説教された。
 そういう行為は周辺の野良猫を集めて野良猫の固体密度を上げてしまう。
 野良猫は食料さえあればよく増える旺盛な繁殖力を持っているから異常繁殖を引き起こす。
 残した餌がカラスやネズミを集める。
 とかなんとか……。
224『子猫はどこへ消えた?』 ◆/wR0eG5/sc :2007/01/28(日) 13:49:55 ID:CvsQPvxE
「餌づけされてる子猫は、つまりペットとみなされるの。いい、これが引き起こす様々な問題は、ナツ、あんたの責任問題としてみなすこともできるの。ちゃんと周りみなさい」
「ぅ、う……わ、わかってます、はい、ごめんなさい」
 そうなんだけどなあ。
 だって毎朝来るし、来てるの見たらどうしてもほっておけないんだよなあ……。
 子猫をふりかえる。僕が説教されているあいだに食事はおわったらしい。あしをなめている。
 近づいてだきかかえる。本当に抵抗しない。
「ほら、こんなに可愛いのに、姉さんはどうしてそうぴりぴりしてるかなあ」
 ほおずり。今日も柔らかいなあ。
 子猫がくすぐったそうにからだをよじる。
「……ナツ、汚いから、それやめなさい」
「やだっ。だって柔らかいし」
「野良猫だよ。わかってるの。綺麗なのなんてみためだけで……っ」
「おお、姉さんは怖いなあ、シロスケお前もそう思うだろ?」
 勝手になづけてみた。
「ふぎゃっ」
「そうかそうか、お前も怖いか、あははっ」
「――そんなものはなしなさいって、ナツ、ねえ」
「姉さんもしつこいなあ、なにをそんなに必死で……っ」


「はなしなさいっていってるでしょっ!?」

225『子猫はどこへ消えた?』 ◆/wR0eG5/sc :2007/01/28(日) 13:51:23 ID:CvsQPvxE
 早朝にその音量は、大きすぎると、言えたと、僕はおもう。
 びっくりした。
 子猫も驚いて僕の手から逃れるとはしりさった。
 姉さんは。
 怒鳴ると同時、手を子猫にむけて伸ばした。伸ばしたのだった。
 子猫は俊敏に反応して、姉さんが触れる直前に脱出したが……。
「ね、姉さん……っ?」
 もしも反応が遅れていたら。
 姉さんは、その伸ばした手を使って、子猫になにをしたのだろうか。
 少なくとも……頭を撫でてやろうという意思は、欠片も感じられない、そんな動きだった。
 姉さんは、子猫のはしりさった方向をずっと睨んでいる。
 睨んでいた。
 真剣に怒っていると、一目で理解できる。
 やがて伸ばした手をゆっくりと戻した。いまだに五指は開いたままだったが……。
 てのひらを今度は睨む。
 ぐうとぱあの動きを数回くりかえして。
「ナツ」
 こっちをみないでしゃべりだした。
「もう餌づけは駄目だよ、絶対に。わかった」
「ぇ、でも、ぁの」
「柔らかいモノが触りたかったらお姉ちゃんの胸にしなさい」
 は、はぁ……っ!?
 姉さん、ちょ、ちょっと……なにを言ってるんだよ。
「冗談だよ。半分」
「は、半分って……っ。ぁ、いや、それよりも」
「ふぁ……むぅ。……ナツ。あたし、寝直すから、ソファで」
「ぇ、あ、そうなの?」
「……布団持ってきてよ」
 ぇえっ。
「な、なんで僕が……っ」
「やなの?」
「めんどくさいじゃんっ」
「ん……じゃあナツを布団の代用で使おうっ。じゃあお姉ちゃんと一緒に寝直そうか」
 姉さんが両手を僕にむかって広げる。
 ん、ん、となにか、せかすような声をもらしてきた。
「は、はっ!?」
 金魚みたいに口がぱくぱくしてしまう。
 な、なな、なにをこの姉さんは突然平然とそんな大胆な……っ!?
 顔に赤みがさすのが自覚できるくらい心臓が特急で血液をめぐらせている。
「ん、ふっ……。今朝もナツは素敵に可愛いわね」
「からかうなよ姉さんっ」
「冗談だよ。一割だけね……ん、ふふっ。ナツぅ、お姉ちゃん眠い、もう駄目、このまま寝直したら風邪もらっちゃうかも」
 ごろんと、それこそ猫のように、姉さんはソファで丸まった。
 まったく。どうやら猫は嫌いみたいなのに、仕草にはそれの片鱗を感じさせるなんて。
 姉さんはよくわからない。
 さっき、何故あんなにもあの子猫に過剰な反応を示していたのかとか……そういう所も含めて。
「わかった、持ってくるけど……勝手に部屋とか入っても、大丈夫なの?」
「お姉ちゃんのパンツ盗っちゃやだよ」
「とらないよっ!?」
 わからないけど。
 でも僕は姉さんが嫌いではなくむしろ好きだったので、だまって従うのだった。
226『子猫はどこへ消えた?』 ◆/wR0eG5/sc :2007/01/28(日) 13:52:45 ID:CvsQPvxE
 その翌日。
 何故か僕の目覚しはいつもより三十分も遅くにその使命を全うしたので、時刻は六時半。
 今日はごみの日だなあ、忘れないように……内心で確認しつつ髪をかきながらリビングに移動すると。
「あれ」
 僕の朝の日課の一つ、リビングのカーテンを開ける、がすでに実行されていた。
 フローリングに陽光がおちている。
 姉さんか……っ? 庭に移動して周囲を見るが、姉のぼさぼさ長髪は見当たらなかった。
 父さんは仕事でここしばらく家には帰っていないし、まあ見当たらなくても姉さんが開けたに決まっているが。
 それにしてもどこだろう。キッチンにあの姉が立っている道理はないし、じゃあトイレかな……。
 見当たらないと、そういえば。
「今日はシロスケ、いないなあ」
 姉さんが怖がらせるから、まあこれはしょうがないんだけど。
 おもっていると、ちょうど外に姉のぼさぼさ頭が見えた。
 ふらふらといかにも眠そうな足取りで庭に入ってくる。
「姉さんおはよう。こんな時間からその髪でどこいってたの?」
「ん……ぁ、ナツ。今日ごみの日だから……あたしが、出してきたの」
「姉さんがそんなめんどくさいことを自分から……っ!」
 朝っぱらから感動だった。人間は成長するんだね。
「えらい? あたしえらい? ナツぅ、ねえ、お姉ちゃんえらいでしょ、ね、ねっ」
「うん、うんっ」
「ん、んっ。ほめてほめて」
「姉さん天才、大好き姉さんっ」
「ん……んっ。なでてなでて」
「ぇえ……っ!? ま、まあいっか、ほら、よしよしよし」
 寝癖大爆発の髪に手を突っ込んだ。ふわふわ。
「ん、ん……んっ」
 すごい笑顔だった。
 本当に猫みたいだなあ……猫嫌いなくせに。
「あ、姉さんちょっと訊きたいんだけど」
「んぅ。なによぉ」
「シロスケ、俺まだ見てないんだけど、姉さんはみ――っ」
「知らない」
 ぴしゃりと、いきなり声音を変貌させて、姉さんは断言した。
「……ぁ、そ、そう?」
「うん。あんな野良猫は今日みてない。だから知らない」
「そ、そっか」
 急にはきはきしゃべりだした姉をいぶかしみつつ、僕は会話を続ける。
「やっぱりアレかなあ、昨日姉さんが怖がらせたから、もうこないのかなあ」
「いいじゃん。半端にふれあってても、よくないしね」
「そうなんだけど……まあ、公園とか散歩したら、ひょっこりあえるかもね」
「ん……それは無理だけどね」
「え?」
「んっ。や、ただの独白……ぇいっ」
「ぉわあっ!」
 抱きつかれた。
 朝っぱらからとても情けないが、心臓がばくばく動くので、僕は大変だった。
 大変だったが、姉さんは好きなので、とても悪くなかった。
 あの子猫も。
 今の僕と姉さんみたいに、他の子猫とだきあっていれば、少なくとも寒すぎることはないだろうと、おもった。
 ともかく。
 最近の僕。
 日課が一つ減りました。
227『子猫はどこへ消えた?』 ◆/wR0eG5/sc :2007/01/28(日) 13:54:47 ID:CvsQPvxE
 ところでこの朝っぱらからいちゃついている姉弟とは関係のない知識なのだが。
 今日はごみの日なのだ。
 つまりあの図体のでかいごみ収集車がやってくる。
 ごみ収集車を大きく分けると車体の後部に積込み装置がある機械式収集車と、容積の大きい荷箱をのせたダンプトラックがある。
 さらに、機械式収集車は、プレス式と回転板式に分かれる。
 今日、ナツの姉が出してきた黒いごみ袋を収集したのは、プレス式だった。
 プレス式は、プレスプレートによりごみを圧縮しかさを減らして積込む方式である。
 圧縮。
 つまりプレートでごみを潰す。
 潰すのだ。


 そしてこれも朝っぱらからいちゃついている姉弟とは関係のないさまつな出来事です。
 とある子猫はとても白かったのだけれど、
 今日、
 とっても紅くなった。
 それだけ。
228 ◆/wR0eG5/sc :2007/01/28(日) 13:57:46 ID:CvsQPvxE
 おわりです。
229名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 14:10:18 ID:3yaG8zIk
GJ
それだけ。
230名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 14:14:21 ID:jtc9/Ine
GJ
シロスケが雌なら転生してほしい。
231名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 14:20:59 ID:21hmheAS
GJ!
いやー人間以外のモノに嫉妬する女の子って本当に可愛いな
232名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 14:39:58 ID:cquTvGAp
ぬこカワイソス
でもキモアネはいいものだ
233名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 14:53:21 ID:A7PP3ONL
どの職人さんだっけ?
嫉妬に狂った女が猫を殺して、その猫が転生して主人公を寝取るヤツ。
234名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 15:08:09 ID:+0z1VGqq
きもいな










だ が そ れ が い い (*´ρ`*)
235名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 15:33:47 ID:G5mCmft6
>>233
トライデント氏の 煌く空、想いの果て ですな。保管庫にもあります。
236名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 16:02:29 ID:F3Q9JlLO
>>235
 

  ト ラ イ デ  ン  ト  っ  て   だ   れ ?
237名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 16:53:17 ID:er541raY
非常にGJ!
これはいいキモアネですね。樹里を思い出した。
238名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 17:03:43 ID:PFHf6Gfn
このキモアネ素晴らしいよ!

今度は人間の泥棒猫が弟さんを誘惑する話とかきぼん。
239名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 17:08:36 ID:A7PP3ONL
>>235
thx.
今から読み返してくる。



ところで、『*月道*』の過去の絵ってもう見れないのかな?
沃野とか山本君以外にもかなり興味深い絵があった気がするんだけれど……。
240名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 17:08:50 ID:27aQpWWb
SSでもリアル猫を殺すだけはいかん・・まじいかん
241名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 17:42:01 ID:HhX+Rpdw
>>239
気持ちはわかるがサイトの名前を出しちゃだめだぜ……
242 ◆tVzTTTyvm. :2007/01/28(日) 18:31:28 ID:M2brOaBy
投下します
243白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/01/28(日) 18:35:24 ID:M2brOaBy
<div align="center">+     +     +     +<div align="left">


「遅いね、リオにいさん」
「そうね。 説得に手間取ってるのかもね。 大丈夫かな……」
 今私達はリオの村に帰ってきてて、そしてリオの家でクリスと二人お留守番中。
 リオはと言うとコレットの家に行ってる。
 そう、私と付き合う事にした事。
 そしてそれによりコレットと交わしていた婚約の破棄を申し出る為に。

「そんなに気になるなら姉さんも一緒に行けばよかったのに」
「うん、確かにね。 私も最初は一緒にいけばよかったかなって思ってた。 けどね……」
 実際私は最初其のつもりだった。 だがリオが一人で行くといったのだ。
 結局私のことを明かさねばならないことには変わりないのだが、最初から其の事を明かすと
私の"勇者"と言う肩書きを言い訳にするみたいでイヤだと言ったのだ。
 何よりリオの其の言葉が私を"勇者"ではなく一人の女としてみてくれてる証だったから。
 それが嬉しかったから。
 だから――。
「リオが決めた事だから。 だから私は其の意見を尊重することにしたの」
 そう言って私はクリスに向かって微笑みかけた。
 私が微笑みかけるとクリスも応えるように微笑を返してくれた。


 その時私達の耳に扉を開く音が届いた。
「リオ?」
 私達は其の音に反応し扉の方を見た。 だがそこにいたのは――。
「お久しぶりね。 セツナ」
 そこに立っていたのはコレットだった。

(え? な、何でコレットがココに?)
 コレットの予期せぬ来訪に私は戸惑いの色を隠せず固まってしまった。
 開け放たれた扉の前に立つコレットは其の顔に満面の笑みを浮かべてた。
 村の中で両親に大切にされのびのびと育てられてたことを感じさせる笑顔。
 今まで幾度と無く見てきた、いや見せ付けられてきた笑顔。
 だが、今目の前にある笑顔はどこかいつもと違う違和感を感じさせる異質なもの。
 いや、異質と言うよりはどこか歪な、まるで精巧にそっくりに作られた仮面のような
そんな奇妙な感じを抱かせる笑顔。
 其の異質な笑顔に私が言葉を発せらずに、いや、呑まれていたのだろうか。

 その時傍らでがたりと椅子が動く音。
 見ればクリスが凄まじい形相でコレットを睨みつけていた。
「(クリス……!)」
 私がクリスの肩に手をやりそっと耳打ちすると、クリスは「ゴメン、大丈夫だよ」と
そう言ってそして視線をコレットからそらした。
244白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/01/28(日) 18:36:57 ID:M2brOaBy
「もう〜、セツナってば最近全然うちに来てくれないんだから」
 コレットはクリスのことが眼中に無いように引き続き私に語りかけてきた。
「あ、うん……。 最近冒険もキツくなってきて、チョット疲れとかも溜まって……」
 私は戸惑いを隠せず答えるがコレットはそんな私の言葉に気にせずいった風に喋り続ける。
「それよりね、今日は大事な事を伝えにきたの。 あなたにリオからの伝言よ
『ごめんなさい』ですって」
「え……?」
「まぁ何て言うの? リオったら若気の至りみたいな感じで告白しちゃったのね」

 若気の……至り?
 違う。 リオは決してそんな短絡的な行動をとるような浅い人間なんかじゃない。
 私は反論の言葉を紡ごうとする。
 しかしそんな私の発言を妨げるようにコレットは言葉を続ける。
「村に帰ってきて私の顔を見て目が覚めたみたい。
気心の知れた幼馴染の私の方が良かったって事なのね。
そりゃそうよね。 何て言ったって刻んできた年月の長さが違うもの」
 コレットの言葉に言い返そうとした私は思わず言葉に詰まってしまった。
 刻んできた年月の長さ。 積み上げてきた思い出の深さ――。
 私がどう足掻いても敵わない――時間の壁。
245白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/01/28(日) 18:38:22 ID:M2brOaBy
「だからね、そう言う訳だからリオに代わって私が伝えに――」
「出鱈目抜かすなぁ!!」
 そう怒鳴り声を上げたのはクリスだった。
 言葉を遮るように叫んだクリスはそのままコレットの胸倉を掴み壁に叩きつけてた。

「クリス?! ちょ、落ち着きなさいクリス――」
「さっきから黙って聞いてりゃ勝手な事ばっか抜かしやがってこのアマァ!!
リオにいさんが……リオにいさんが姉さんじゃなく貴様を選んだだとぉ?!
そんな……そんな訳あるかァ!!」
「く……苦し……」
 クリスはコレットの胸倉を掴んだままそのまま締め上げていた。
「落ち着きなさいクリス! とりあえず手を離しなさい!」
 話し掛けるもクリスは私の声が聞こえないかのように尚もコレットを締め上げていた。
「いい加減な事言ってんじゃねぇぞ! 殺されたいか、あぁ?!
だったらこの場でブッ殺してやるっっ!!」
「クリスッッ!!」

 ヤバイ。 このコのコレットに対し積もり積もって長年溜め込んできた量は尋常じゃない。
 このまま放っといたら感情のまま確実に絞め殺して、或いは首をへし折ってしまいそう。
 クリスの豪力の前ではコレットの細首をへし折る事なんて花を摘むより容易い――。
 いけない。 そりゃ確かに私もコレットは嫌いだし気持ちは分かるが、
でも私の力じゃこのコは止められ……止めさせなきゃ駄目だ! 何があっても。
 でもどうやっ……!
 私はクリスの頭を両手でがっしと掴むとすかさず自分の唇をクリスの唇に重ねた。
 睫毛の数まで数えられそうなほど間近に迫ったクリスの瞳に驚きの色が浮かぶ。
 そして其の拍子に手から僅かに力が抜けるのを見計らいその手からコレットを引き剥がす。
 開放されたコレットの体がドサリと床に崩れ落ち、断たれてた空気を取り込もうとする様に
激しく咽び咳き込む。

「ね、姉さん!! 何でこんな女助け――」
 思わず顔を真っ赤にし食って掛かりそうなクリスの耳元にそっと囁く。
「(コレットが嫌いなのは解かるわ。 でもね殺したら駄目。
そんなことしたらリオに顔向けできなくなるわよ?)」
 そう。 仮にもこの女はリオにとっては家族も同然の幼馴染。
 そんな人間を殺してしまっては幾ら大切な仲間で妹分とは言え――。

 私が言わんとした事を察したクリスは動きを止めバツが悪そうに黙り込む。
 そして私はそんなクリスを抱きしめ背中を優しくそっと叩きなだめる。
 私が目配せするとクリスは頷いて私から離れた。
246白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/01/28(日) 18:40:39 ID:M2brOaBy
 私は咳き込むコレットに目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「ゴメンね。 手荒な真似しちゃって。 後で言っとくから許してあげて。
それよりさっきの話もう一度詳しく話してくれる?」
「ゲホッ……、ゴホッ……。 い、良いわよ。 な、何度でも言ってあげるわよ。
リ、リオはね……。 あなたじゃなくて幼馴染で気心の知れた私を――」

「嘘」

 私は遮るように只一言、すっぱりと言い放った。
 そう言い放ったその時の私の気持は驚くほど落ち着いていた。
 そしてその声には頑なな否定も、非難も、そう言った感情も、そして迷いも全く無い、
自分でも信じられないほど抑揚の無い落ち着き払った声だった。
 さっきのクリスのキレた行動が私の気持を落ち着かせ鎮めてくれたのかも。
 そしてそのことが私の中のリオへの気持を、信頼を想い起こさしてくれたのかも。
 そう、誰に何といわれようと胸を張って言える。
 私のリオへの想い、そしてリオが私へ向けてくれる想いは紛れもない本物だと。
 誰が何と言おうと揺るがず信じられる想いだと。

「な……?! 何言ってるの?! わ、私の言ってることが信じられないって言うの?!
だ、誰よりもリオと長い時間を過ごしてきた私の言う事が!!」
 そう言ったコレットの口ぶりは先ほどまで私に対峙してた時の落ち着いた様子は微塵も無い。
「そうね。 確かに過ごしてきた時の長さじゃあなたには敵わないわ。
そんなあなただからこそ分かってるんじゃない?
自分の言ってることが嘘だって」
「だ、だから嘘なんかじゃ……!」
「過ごした時間の長さじゃ敵わなくっても過ごした密度と思いの深さじゃ負けないつもりよ。
そんな私だからわかるの。
リオは責任から逃れたり、そのために他人に任せたりなんかする人間じゃないって」
「う、五月蝿い!! ひ、ひとから婚約者を奪った泥棒猫がリオを語らないでよ!」
「奪った……か。 否定はしないわ。 でも裏を返せばそれはあなたが
"奪われた"と認めたって事よね?」
 次の瞬間乾いた音と主に私の頬に痛みが疾った。
 目の前のコレットは腕を降りぬいた姿で怒りで滲んだ瞳で私を睨みつけていた。
 そんなコレットにクリスは思わず掴みかかろうとするのを私は手で制した。
 ――痛い。 けど不思議と不快感はあまりない。
 モンスターとの戦闘で受けるダメージに比べればこんなの撫でられたようなもの
と言うのもあるが――。

 私は頬をさすりながらコレットを見据え口を開く。
「今の平手打ち、つまりは認めたって受け止めていい訳ね?」
「う、うあぁぁぁっ……!! か、返してよ!! リオを!! 私のリオを返し……
むぐっ?!」
「クリス!」
 激昂して私に掴みかかろうとするコレットの間にクリスが割り込むように入り込み、
コレットの口を塞ぐように顔面を掴んでいた。
「クリス! 落ち着きなさ――」
「大丈夫、落ち着いてるよ、姉さん。 このままこの女の顔面を握り潰したりしないから」
 クリスは怒りを押さえ込んでる――そんな笑顔を私に向け、
そして無造作に手を開くとコレットの体がどさっと崩れ落ちる。
247白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/01/28(日) 18:42:18 ID:M2brOaBy
「……っ! さ、さっきから一体何なのよアンタ?!」
「……フン。 やっぱり憶えてないみたいだな。 まぁいい。 
それよりさっきから聞いてりゃ随分嘗めた事ばっか抜かしてくれたものだな、あぁ?!」
 クリスがそう言って凄むとコレットは「ひいっ」と小さく悲鳴をあげる。
 先ほどまでのが堪えてるのだろうか。
 クリスはそんなコレットに冷ややかな視線で見下ろし、やがて私のもとに戻ってきた。

 そしてコレットは暫らくうなだれているとやがて肩を震わせる。
 だがコレットの口から漏れてきた声は嗚咽ではなく。
「フフ……、アハ、アハハ……。 そ、それで勝ったつもり……?」
 其の口から漏れてきたのは狂気染みた笑い、声?
「そうよ。 確かに私はあなたに奪われたわよ。 でも奪われっぱなしじゃないわよ?」
「どう言う……意味?」
「貴様! リオにいさんに何かしやがったのか?!」
 私は其の笑顔に気圧されるように声を発し、クリスは怒気を孕んだ声を上げた。
 コレットはそんな私達に向かい挑発的な、そして狂気染みた笑顔を向ける。
「ふふ……。 さあぁねぇ? でも、教えてあ〜げない。 くすくす……」
「な、何? コ、コレット、あんたリオに一体何を……」
 私は口から漏れる声に狼狽の色を隠せなかった。
 そして狼狽する私の顔を見つめながらコレットは嘲けるように口の端を持ち上げる。

 そんなコレットに向かいクリスは再び胸倉をつかみ壁に叩きつけた。
「姉さん、今度は止めないでよ? 大丈夫殺したりはしないから」
 そう言うとクリスはコレットの体を投げ捨てるように床に叩きつけた。
 そして継いで口を開く
「おい、リオにいさんをどうした」
 コレットは一度クリスを睨みつけ、そして顔ごと視線をそらした。
「素直に吐くつもりは無いようだな。 だったら……」
「ちょ、ちょっとクリス。 一体どうするつも――」
「喋る気になるまでこの女の指を一本づつ折ります」
「!!」
 その声にコレットの顔が引きつる。 クリスの声に含まれた"本気"を感じ取ったのだろうか。
 クリスの手がコレットの手に向かって伸びる。
 即座にコレットは其の手を引っ込めようとするが、それより早くクリスの手が掴んだ。
「や、やだ! ちょっ、は、離しなさいよ!」
 叫ぶコレットの顔には恐怖の色がにじみ出ている。
「ああ、素直にリオにいさんの事喋れば離してやるよ。 リオにいさんをどうした?」
 そう訊きながらクリスは手に力を込めようと――。
248白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/01/28(日) 18:45:03 ID:M2brOaBy
「待ってください……!」
 その時クリスの行動を制するように響いた声。
「リオ!」
 声のした方を見ればリオが扉に身を預けるように立っていた。
 私はリオに向かって駆け付けた。
 そして頭に包帯を巻いた其の姿に思わず声を上げ体を支えた。
「ど、どうしたのよその怪我?!」

「そんな。 しっかり縛っておいたのに……」
 そう声を洩らしたのはコレット。 目をやればしまったと言う風に口元に手を当てる。
 そしてコレットの手を捕まえていたクリスの貌にはより一層の敵意が深まり
今にも其の手を握り潰しそうな。
「待ってくださいクリス! 私なら大丈夫ですから。 だから……」
 リオの声が届いたのかクリスは険しさを残した表情も、掴んだ手もそのまま動きを止めた。
 そしてリオは言葉を続ける。
「コレットを責めないで下さい……。 悪いのは、全て私なんです……」
 え……? 其の言葉に私の胸はざわつく。
<悪いのは、全て私なんです……>
 い、一体リオはどんなつもりでそんな事……。

「私が……、安易な気持で婚約など受けなければ……。そうすればコレットを傷つけたり……」
 私は其の言葉に胸をなでおろした。 一瞬リオが私を選んだ事を後悔して
あんなこと言ったのかもと思ってしまったから。
 そして恥じた。 一瞬でもリオを信じられなかった自分を。

「リオ! 違うでしょ! 間違いは私との婚約じゃなく一時の感情で其の泥棒猫に誑かさ……
痛っ……!」
 叫びかけたコレットは痛みの声をあげた。
「クリス……! 手荒な真似は――」
 リオの声に振り向いたクリスの其の顔からは先ほどまでの険しさは消え平静さを戻していた。
「大丈夫、落ち着いてるよ。 ごめんねリオにいさんの"幼馴染"に手荒な真似しちゃって。
じゃぁボクはこの女……コレットを送り届けてくるね」
「ちょっ! わ、私とリオの話は未だ済んでな……ひっ!」
 そしてクリスはコレットを睨み付け引き摺る様に連れ出し家の外へ出て行った。
 心配が無かった訳ではないが出て行くとき私が「手荒な真似しちゃ駄目よ」と目配せすると
笑って応えてくれたので大丈夫だろう。

 コレットがその抵抗も空しくクリスに引き摺られる様に出て行くと
部屋には私とリオだけになるとリオは縋りつくように私に抱きついた。
「リオ……?」
 二人きりになった部屋の中私の耳に聞こえてきたのはリオのすすり泣く声だった。
 私の頭の中を色んな思いが駆け巡る。
 私を選んでくれた事への嬉しさ。
 私を選んだ事で辛い思いさせてしまった事への申し訳なさ。
 でも……、今はあえて何も言わなかった。 言うべきでないと思えた。
 だから――。

 私は黙ってリオの体をそっと抱き締めた。

To be continued...
249名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 18:53:20 ID:M2brOaBy
灰汁禁の巻き添え食らったのでいつもと別のPCから投下しました

あと、まだまだコレットの出番は終わりません
って言うかこれからが本領?

>>228
GJ 今回の主人公はエー君じゃないんですねw

>>233 >>235
懐かしいですな 猫崎猫乃結構好きでした
250名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 19:17:06 ID:55y1WNMm
「翔太君が餌をくれるから、勘違いしないでよ野良猫……。翔太君は私にだけしか
  優しくしないといけないんですから!!」
  猫の首をぎっちしと掴んで、尋常なる圧力で絞めてゆく。

 苦しい、苦しいよ。やめてよ。
  助けて……。
  猫は泡を吹いて、失禁してゆく。
「あはははははは。死んじゃったの。でも、猫さんが悪いんだよ。わたしの翔太君を奪おうとしたから。
  これに懲りて、来世も翔太君に近付かないことね」

↑これか・・。

猫を殺したくなる程の嫉妬の炎を燃やす女の子はいいね!!
251名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 19:21:18 ID:OBstdB3y
>>249GJ!
ここからコレットがどう巻き返すか楽しみです。
それにしてもクリス・・・恐ろしい娘!
252魔女の逆襲第13話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/28(日) 19:29:04 ID:CCqSw5//
 ベッドの上で早百合の意識が覚醒する。今日何度目かの目覚めだ。
 いつも見ていた天井。点けっぱなしのままだった蛍光灯が光っている。
「……疲れた」
 今日は感情が高ぶるごとに何もすることができず、そのまま自分のベッドに横たわるの繰り返し。寝すぎだ。夜は眠られないかもしれない。
「……もう喉は痛くないけど……」
 風邪もすっかり完治しているようだ。体全体が重く感じているのはただ単にずっと寝ていたためだろう。
 携帯電話で時刻を確認すると午後七時。窓の外は暗く、夜の帳が空を覆っていた。
 さらにディスプレイには新着メールが届いている。開くと、送信元は母親だった。早く帰るつもりだったが予定以上に仕事が伸びてしまったらしく、帰るのは午後10時過ぎになるという。なんともタイミングの悪い。
 そのままメールには謝罪の文や言い訳が20行にわたって続いていたが、そこは無視すると早百合は自分の携帯電話を閉じてベッドに置いた。
 考えてみれば早百合は今日は雑炊しか食べてなかった。ぐぅぅうと早百合のおなかから鳴る低い音。独特の胃がしぼむような空腹感。
「ラーメンでも食べよ」
 台所の戸棚の奥にチキンラーメンがまだ残っていたことを思い出す。早百合はチキンラーメンに卵を入れて食べるのが好きだった。ちなみに湯だけでCMのように玉子を白く作るには生卵をいったん常温に戻してから入れるのがポイントである。
 早百合はベッドから立ち上がるとぼさぼさあたまを軽く押さえながら伸びをした。んんんっと声が漏れる。背筋が延びる感覚が気持ちいい。
「ん?」
 と、そのとき。視界の端になにか色とりどりなものが置かれている事に気付いた。
 そちらの方向へ視線を動かしてみる。ちょうど、部屋にはいってすぐのところにそれは置かれてあった。
「フルーツ?」
 色とりどりのフルーツがたくさん入った籠があった。
 林檎やメロン、マンゴーやキウイ、スターフルーツまで。どれもが綺麗でみずみずしい輝きを持っていた。特に林檎なんてピカピカに赤くて、見ているだけでかじりつきたくなる。
 どれもが、そこらの販売店で売っているような安いものとは一線をかす、高級フルーツばかりだった。
「なんで、こんなものがここに?」
 早百合は近づいて、籠を持ってみる。籠は綺麗にラッピングされていた。
 こんなものを買った覚えは無い。じゃあ母親が買ってきただろうか? いや、母親はこんなフルーツを差し入れるような気遣いはしない。それにここにある果物は全て高級品だ。そこまでこだわってくれないだろう。
 早百合が籠を片手に一人考えてると。
 ぎしぃぎしぃぎしぃぎしぃ。
 誰かが階段を上る音がする。
 母親だろうか。いや、違う。母親はもうすこし乱暴に昇ってくる。それこそ一段昇るごとに家全体を揺るがすように。
 では良樹? ……違う。良樹が来るわけがない。あんな行動をして来てくれるわけ無い。
「いや、でも万が一……」
 万が一。もしかしたら、本当に良樹が来たのかもしれない。
 早百合の心情を理解して、追い出されたにもかかわらず無茶を承知でもういちど来てくれたのだとしたら……。
「良樹?」
 立ち上がってドアノブをつかむ。
 良樹に謝りたい。
 何故自分があんなに怒っていたのか、あんなに嫌ってしまったのかどう説明できるかわからないけど。早百合は良樹に謝りたかった。
 部屋のドアを開ける。すぐに階段から昇ってきた人影を見据えた。
 そこに居た人影は。
「おっ。おっおっ。 起きたか。鞠田早百合。起こす手間が省けたな。おはようっ。 そしてこんばんわ、だ」
 体操服の上にエプロンをした紅行院しずるだった。

 りぃん
253魔女の逆襲第13話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/28(日) 19:29:41 ID:CCqSw5//
 早百合が家で簀巻きになったまま眠りについていた今日の午前11時ごろである。
季節柄の風邪の被害を受けたある教師の有給消費のせいで、良樹たちのクラスの授業が一時間ほど自習へと変化した。
担任が委員長にいくつかの問題集プリントを渡して、退室。それから15分たったぐらいのころ。
教室にはまともにプリントをやるものはおらず、テスト勉強をしているもの、惰眠をむさぼっているもの、友人とおしゃべりしているもの、携帯電話で株取引をしているもの、右ひじに違和感を覚える野茂など思い思いの行動をとっていた。
ただ、あんまり騒ぎすぎると隣のクラスで授業をしている数学教師がブチギレて教室に乱入し本来は化学の時間なのに余弦定理の問題を解くことを強要してくるため、クラスメイト全員はそれなりの節度を持って騒いでいた。
良樹は友人であるねねこ・恒・三郎・さやからと大富豪をやっていた。
「よーし、これで決めるよ! キングの2枚出し!」
「甘い。ジョーカーとエースで2枚出し」
「え」
「流すぞ。ねねこはあと一枚だよな。じゃあここで『ずっと俺のターン』宣言。6のダブル。4のダブル。3のダブル、最後に5で終了だ」
「ふぇっっ。またあたし大貧みぃん!?」
 最後の三郎とねねこの一騎打ちはねねこの切り札が見事に外れた形で決着した。これでねねこ、四度目の大貧民である。
「ねねこは7とか8とかのカードの使い方が悪いのよ。あたしが後からアドバイスしてあげようか?」
 さやかがふふんと鼻で笑うようにねねこに言う。それがまたねねこの神経を逆なでしたようだ。ねねこはさらにムキになる。
「さやちゃんは黙ってて! もう一戦やるよ!」
「はいはい」
 平民の良樹はトランプカードを集めると器用にシャッフルする。本来は大貧民であるねねこがシャッフルして配るべきなのだが、ねねこにやらせると二回に一回は失敗して床にばら撒くので、ディーラーはもっぱら良樹の役目だった。
「カードこいカードこいカードこい……」
 ねねこは念力で絵札を集めようとしていた。
「そんなんでいいカード来るのか?」
「うんっ! こうやって念じるといいカードが来る気がするの!」
「来ないよ」
「来るよ!」
「なんで、自信満々なんだよ」
 良樹は苦笑して、カードを人数分に配り分けた。小さな札の束が五つテーブルに並ぶ。
「ねねこ、好きなのとっていいよ」
 ねねこに配慮して良樹が言う。といってもあんまり意味が無い行為なのだが。
「よーし……。じゃあこれ!」
 ねねこは大富豪であるさやかの前に置かれた札束をとった。とりあえず運にあやかりたかったようだ。
 全員が札を取る。良樹の札は7と8と10の特殊ルールの札が二枚づつ揃った、なかなかトリッキィな手札だった。特殊ルールとは7渡し、8切り、10捨てである。
 対するねねこはどうだろう。
「うっふふふふふっ……」
 ねねこはニヤけていた。
「にゃにゃっ! まさかねねこ。ついに最強のデッキを完成させたのかにゃ!?」
「デッキってなんだ」
 恒は大げさなように驚いてみせ、それに三郎が冷静なつっこみをいれる。
「うふふっ。今回はすごいよ! 強いカード二枚あげちゃっても平気だもんねー!」
 そういうとねねこは大富豪であるさやかと強いカードを二枚交換する。先ほどまで、カードを渡すたびに「あたしのジョーカーがぁ〜」と泣きそうだったのだが(しかもバラすという珍プレィ)、今回に限って自信満々な態度である。
「やばいわね。今回はねねこに負けちゃうかもしれないわ」
 そして、さやかもそういうこというもんだから、
「ふふんだ! これでさやちゃんを都落ちさせるよ!」
 ねねこはもっと調子に乗る。
 いつもならこの後、すぐに足元を掬われねねこが5度目の大富豪となるのがお決まりのパターンなのだが。
今日は違った。闖入者が現れたのである。特有のガラガラというでかい音を鳴らして、教室の戸が開かれる。
 全員の喧騒が静寂し、戸に視線が集中する。
「失礼するよ。諸君」
 全員が我が目を疑った。
 てっきり隣のクラスの数学教師がキレて入ってきたのかと思ったのだが……。はなたれる声は美女の綺麗なハスキーボイス。
 教室に入ってきたのは、体操服にスクール水着といういでだちの魔女こと、紅行院しずるだった。
「なんだなんだ。いっせいにこちらに注目して。そんなに見ても私の服は透けんぞ? 連打しても無駄だからな」
 魔女は自分に集まる注目を見据えて、からからと笑う。
 クラスメイト全員が全員固まっていた。
 何故、このクラスに魔女が?
「ほぇ……。魔女さんだ……」
254魔女の逆襲第13話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/28(日) 19:30:35 ID:CCqSw5//
 ねねこは呆然とした顔で呟いた。ぱらぱらと手から落ちる手札。キング4枚とあとは3や4のカード。
 恋人である良樹も呆然としていた。

 魔女はめったなことでは教室へ入らない。授業なんてほとんど出たためしがない。しかし、学校へは毎日といっていいほどやってくる。そしていつも学校中を徘徊している。
 魔女の姿が目撃されるのは大抵休み時間や放課後など、生徒たちが自由に移動できる時間である。しかも、目撃されるときは「どこどこを歩いていた」「擦れ違った」など何の目的かもわからない。
 時には雰囲気につられて話しかけるものも居る。とくにあの美貌だ。容姿だけ見て話しかける者も数多い。
 しかし、ほとんどの者らは魔女の素っ気無い態度、もしくはまるで人をおかしな物に例えたような言動。そして魔女の何を根拠かにしているのかわからない行動。
 相対した者たちは皆宇宙人と喋ってると思ってしまう。というか、学校中の生徒たちは魔女のことを宇宙人とほぼ同等の存在と思っていた。見える幽霊、存在する異星人。という具合である。
 良樹や早百合の場合は少し違う。良樹と早百合と話すときは魔女が積極的に話題を合わせているからに過ぎない。普段の魔女は誰ともコミュニケーションをとろうとしないのだ。
 嘘か本当か混同した噂が飛び交い、もはや今の学校に誰一人として彼女と関わろうとするものはいない。生徒たちがすることは奇異の視線で彼女を観察するだけであった。

 そんな状況の中。
「な……なにしにきたんですかっ?」
 恐る恐るながらも魔女に対等から話しかけた学級委員長の駒木愛華の勇気は敬意に値するだろう。さすが、普段から「いいんちょう」と呼ばれているだけある。関係ないが。
「君がこのクラスのツンデレメガネかい?」
「は?」
 クラスのわかる人だけわかる一部の生徒が噴き出しそうになった顔を慌てて隠した。
 まさに駒木愛華の容姿は丸いメガネと緩いおさげ。で、性格は強気で真面目で意外と照れ屋という絶妙なキャラだったからだ。ロリが居て委員長が居てなんだこのクラス。
「ああ、いやいや。君がこのクラスの委員長かい?」
 魔女の頭の中には委員長=ツンデレメガネという公式があるらしい。どこのゲームだ。
「そ……そうですけどっ。 授業中になんですか!? 紅行院さん」
「おおっ、君は私の名前を知ってくれてるのか。魔女としか呼ばない若者が増えたなか珍しい子だな。さすがだ、ツンデレメガネ」
「私はツンデレメガネではなく『こまきまなか』です!」
「愛華でまなかと読むのか、紛らわしいな。君はツンデレメガネで十分だ」
「わけわかんないこと言わないでください!」
 上から見られているようで駒木愛華はイライラした様子だった。
しかし、魔女から話しかけられて告白された良樹にはわかっていた。あれは魔女が精一杯コミュニケーションしようとしているんだと。
「用が無いなら出てってくれませんか? 自習の邪魔です!」
「まて、ツンデレメガネに聞きたい。このクラスに鞠田早百合という女子はいるか? 確かこのクラスだったと思うのだが……」
 鞠田早百合の名前が出て、クラスメイトたちの姿が揺れる。魔女の口から早百合の名前が出るとは誰も思わなかった。
「ま……鞠田さんはいませんっ。今日は風邪でお休みですっ」
 駒木愛華も突然、早百合の名前が出て驚く。が、すぐに持ち直し、突っぱねるように返した。
「そうか。風邪で休みか。それならお見舞いに行かねばなるまいなぁ……」
 魔女はそう呟くと、視線を上にあげて考えるように腕を組んだ。もう駒木愛華には興味は無いといった風にぼそぼそと何かを呟いている。
生徒達なぞ完全無視で教室の教壇の前で立ちっぱなしのまま。クラスの生徒にとってはその時間中もずっと緊張しっぱなしだ。
「やはり定番といえばフルーツか……。最高級のフルーツを用意しなければ……だとしたら隣町のスーパーに行かなくては」
「すいません。用が済んだら出てってくれますか?」
 真面目な駒木愛華にとっては不真面目な魔女と根本的にからそりが合わないのかもしれない。言葉の端々にとげとげしさが感じられる。しかし、魔女はそんな言葉にも反応せずに考え込んでいる。
 と、ずっとしずるを見ていた良樹に、魔女が気付いた。良樹の姿を視線に捉えたしずるは、良樹にだけわかるような顔でにやりと笑う。
 セミロングの黒髪を右手で翻す。綺麗な髪の毛がぱさりと波うって流れた。その行動ひとつひとつに駒木愛華やクラスメイトたちは反応していた。
「ところで、ツンデレメガネ。君には好きな人はいるのか?」
 上を向いてどこ吹く風だった魔女の目が突然視線を落とし、駒木愛華の瞳を正面から捕らえた。
「え」

255魔女の逆襲第13話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/28(日) 19:31:19 ID:CCqSw5//
 突然の質問とその内容に生徒たちの目がさらに点となる。
「な……なななななな?」
「好きな人はいるのかと訊いているんだよ。ツンデレメガネ」
 魔女は涼しげな顔だが、対面している駒木愛華の顔が突然真っ赤になった。
「どうなのだ? 好きな人はいるのか? ちょっとおねいさんに聞かせてみろ」
「な……なにいきなりゆーてはるんですかっ! そなことあんさんに関係ないやろがぁ!」
 駒木愛華は焦ったり興奮したりすると地の関西弁が出るのであった。そして、それを見て勘の良い者は「あ。いるんだ」と察っした。
「なんだ。いないのか」
「おらんわ!」
「ムキになって否定する。その様子だと実は居るな」
「おらんゆうとるやろ!」
「二人とも好き?」
「なんでわて、二股してんねん! 好きな人は一人だけや! ……あっ」
「ほら、居た」
「うわぁぁぁぁぁぁ! こげな初歩的な誘導尋問に引っかかるなんてぇぇぇ!」
 完全に魔女のペースにはまってしまった駒木愛華。しかも、好きな人が居ることをバラしてしまった。後日、駒木愛華はねねこにしつこいほど好きな人について訊かれる事になる。
「にゃにゃー。あのいいんちょが押されてるにゃ!」
「しかし、魔女も何をいきなり言い出すんだろうな。好きな人はいるかって……」
「別に魔女の言うことだから。無視よ無視」
 恒がポリポリと頭を掻いて魔女と駒木愛華の漫才チックなやり取りを実況している。三郎もやり取りを冷静に見て、言葉を漏らした。さやかは興味なさそうにやり取りを眺めていた。
その様子を横目で見ながら良樹は内心ハラハラしていた。
 しずるが良樹に見せた笑顔。あれはしずるがちょうどいい悪戯を思いついたときに浮かべる微笑だったからだ。
「ふふふ。君も好きな人は居るんだな。告白はしたのか?」
「ちがうゆぅとるやろがぁ。 もうわてのことはほっとけやぁ!」
「告白はしたのか?」
「する度胸がないんや!」
 駒木愛華はもうやけくそだった。何聞かれても丸々答えてしまっている。
「なんだ、告白する度胸がないとは。恋に臆病な人間なのだね。君には当たって砕ける精神はないのかい?」
「それを言うなら『砕けろ』や! 『砕ける』じゃあ告白失敗しとるやないか!」
 もう完全に漫才であった。駒木愛華が若干涙目になっているのはかわいそうだが。
「君は私を見習うといい。私は始めてきた教室でもこのように躊躇なく入れるのだぞ。度胸があるからだ。君も度胸を持って告白するべきだ」
「うるさいわ! だいいち、告白するのと教室にはいるのとはまったくちゃうわ! 告白なんてしたこと無いあんさんなんかにはわからんやろうがなっ」
「何を言う。私はつい先日、勇気を持って告白したんだぞ。好きになった男にな」
 げっ。良樹の額から汗が流れ始めた。魔女はもしかしたら。もしかしたら……。
「なにゆーて……、ちょいまて。告白? あんさんが?」
 委員長駒木愛華は興奮してたが優秀だった。てっきり勢いに任せて流すかと思われた魔女の言葉のある単語に反応して聞き返す。
 ヤバイ。
 体中の温度がどんどんさがってゆく感覚。汗がだらだらとあふれ出す。
良樹はしずると付き合っていることを早百合以外の人間には誰にもバラしてなかった。良樹にとってはしずると付き合っているということは、芸能人と付き合っていると同じぐらいの感覚なのである。
 それゆえ魔女と付き合っているということはあんまり注目されることが苦手な良樹には秘密にしておきたかった事実であった。
だからこそ信頼できる早百合以外には誰にも話すことなく黙っていたのである。
 が、芸能人は自分がどれぐらい影響力を持っているのかわかってないものが多い。
「ああ。告白したよ。いま現在付き合っていてラブラブラブラブラブラブラブラブラヴィだ。はぐはぐもキスもしたぞ」
 良樹の恋人こと魔女は涼しい顔で堂々と答えた。
 駒木愛華ははとが豆鉄砲食らったような顔になった。そして数秒。クラス中に衝撃が走った。
「なにぃぃぃ!?」
「えええええ!?」
「なんと、まぁ……」
 良樹の横で目を丸くする
「ま…魔女に恋人!?」
「衝撃事実にゃ!」
 もしここで普通のクラスだったら魔女の衝撃告白だけで全員が驚いてそれ以上誰も詳細には突っ込まなかったであろう。魔女と付き合っているのは良樹だと言うことはバレなかったであろう。
 が、良樹のクラスはかなり特殊な人間が集まっていた。そして運が悪いことに、その中には特に人の恋愛事情に首を突っ込みたがるあの女の子が居たのだった。
256魔女の逆襲第13話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/28(日) 19:32:02 ID:CCqSw5//
「ね……ねぇねぇ! 魔女さんっ」
 そう、ロリ姉ことねねこである。良樹たちの机からいつのまにか魔女の目の前まで行っていた。
 あんまり魔女についての噂を聞いたことがなかったねねこは魔女への警戒心がかなり薄かった。故に魔女に堂々と質問をすることができたのである。
「なんだね?」
 しずるが視線を落としてねねこを見る。ねねこの瞳はキラキラと輝いていた。
「その、告白した人って誰!?」
 うわわぁぁぁ。
 良樹は確信した。バレると。
 魔女はにやりとわらう。体操服とスクール水着というエキセントリックな組み合わせの格好だが、ニヤリと笑う姿は悪魔のようであった。
「告白した人が聞きたいのかぃ? ロリロリちゃん」
「うんっ! 誰? 誰なの?」
 普段なら『小さい』『ロリ』『小学生』『発展途上』『おまる』などの言葉には過剰反応するねねこだったが、今回に限っては好奇心のほうが強かったようだ。
 良樹のすぐ横で恒とさやかと三郎が、親指を立ててねねこにグッジョブを送っている。「よくぞ訊いた!」という表情だ。反対に良樹はドキドキである。
「好きな人はあんまり人に教えるものではないと聞いているが」
「じゃあ、ヒント! ヒントは?」
「ヒントか。よし、教えてあげよう。このクラスの中に居るぞ。男の子だ」
 クラス中にまたもや衝撃はしった。
 クラス中の男たちが全員が全員お互いの顔を見合わせる。
「にゃにぃ? まさか三郎君か!?」
「違う。恒じゃねぇよな…」
「レズパターンで早百合かと思ったけど……それは違うわね。男だと断言してるし……」
 良樹の汗だらだらの状態には気付かず、恒たちは勝手に恋人探しを探している。
 そこでやめときゃいいのに、ねねこはさらにヒントを求めた。
「まだ、ヒントちょうだい! ヒントヒント!」
「さらにヒントか。うーん……そうだな。メイド服は青と白より黒と白のほうが好きな奴だ」
 そこで恒が良樹の方を向く。
「まさか、良樹にゃ……?」
 ぶわっ。汗が一気に出た。良樹の喉はからからだ。
 というかなんでメイド服の好みで僕だとわかるんだよ、空稲恒! 何者だお前は!
「ちちち、違うよ! そんなわけないじゃないか!」
「うーん、そうかにゃ……。まぁ良樹が魔女と付き合うなんてあるわけは無いんだけど……」
257魔女の逆襲第13話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/28(日) 19:32:33 ID:CCqSw5//
 良樹は慌てて否定する。恒もあまり確信が持ててないようで、すぐに良樹の否定を飲み込んだ。
「もっとない? ヒント!」
「いや、ヒントはここまでだな」
 魔女はねねこの頭をなでるとかははと笑った。
「ええっ。もっとヒントちょうだいよぉ!」
「ふふふ、あんまり欲しがりさんになったら将来いい女になれないぞ? ここからさきは自分で考えるんだ。ロリィタちゃん」
「ええー……」
 そういうと魔女はくるりと反転し、そのまま何事も無かったの用に自分が入ってきた戸へ向かう。
「ちょ……ちょっと! どこ行くんですか!」
 衝撃発言にぼぉっとしていたが、ようやく我に返った駒木愛華が退室しようとする魔女に叫ぶ。しかし、魔女は振り返ると先ほどまでのニヤニヤ顔は失せて、いつもの興味なさげな顔に戻っていた。
「今は自習の時間なのだろう? 邪魔者は死なずただ消え去るのみ。更新はされずただ放置するのみ」
 そう言うと魔女は左手で引き戸を開けた。ガラリガラリと独特の小うるさい開く音。
 良樹は安堵していた。魔女のあの笑顔を見て不安だったが、魔女はかなりヤバイところまではバラしたが特定はやめてくれた。最終的にはこの発言も噂として結局うやむやになるに違いない。
 はぁぁ。息を吐く。握っていたトランプは汗にまみれて変形していた。
 魔女は教室を出ると、もう一度教室のほうを向いて戸をガラガラと閉めはじめた。そのまま全て閉まるかと思われたが……、最後に教室の中に顔だけを出して
「じゃあな、兼森良樹。ちゅぅ」
 最後にそう一言添えて………、ピシャリと引き戸が閉められた。
 ………。数秒の沈黙後。
 クラス中にかつて無いほどの衝撃が走った。これではもう答えを言ってしまったようなものである。
 全員の注目が良樹にあつまり、刹那、クラス中の人間が良樹の机に集結した。良樹の平穏な日々はこの瞬間に終わりを迎えた。
「どういうことにゃー!」「あんた、説明しなさい!」「ええええ!?」「どうやってゲットした!?」「うひー!」
 突然はじまるクラスメイトたちの質問攻め。
しかし、その直後。隣のクラスの数学教師が三角定規と三次関数の問題を持って教室へと怒号とともに入ってきた為、質問攻めが中断される。途端に沈黙し席へ戻るクラスメイト全員。
 良樹は生まれて初めてこの数学教師のことを尊敬した。
出された三次関数の問題は風雲たけし城を攻略するぐらい難しかったが。

「君が休みだと聞いたから、めいっぱい用意してお見舞いに来たわけだよ」
 学校で起こった良樹告白騒動について、早百合は魔女のこの一文だけしか説明されなかったのであった。
(続く)
258赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/28(日) 19:33:15 ID:CCqSw5//
 土曜休日をとりました。
 今回はかなり嫉妬とは関係ない展開ですが、前回までが暗かったのでクールダウンする意味で。ただ、やっぱり自分はコメディ色、長ぇよ。
 恒・三郎・さやか等、クラスメイトたちの名前が出てますが修羅場とは関係ないのでクラスメイトAとかBと同じ扱いだと思ってください。
 なにかミスなどがございましたらご指摘ください。
259名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 19:40:31 ID:8VN6kpL3
投下ラッシュ来てたーー!
職人の皆さんGJです!
260名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 20:04:13 ID:E3soUR/8
>>249
泥棒猫勇者とコレットとの初の修羅場キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
しかしクリスとコレットとの修羅場にも見える不思議
>>258
GJ!
しずるさん早百合が居ない隙にクラスで既成事実を作るとは素晴らしいな
261名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 21:12:40 ID:FzqfMn4e
ノントロッポ分が不足して死にそうだ
262名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 21:26:50 ID:MYof4Vd7
>>261
同じく
263名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 21:30:47 ID:541uRdnJ
>>261
右に同じく
作者さんに何かあってなければいいが・・・
264トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/01/28(日) 21:57:50 ID:qa2Fk+8e
では空気を読まず投下
265水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/01/28(日) 22:00:33 ID:qa2Fk+8e
 第17話『閑話休題』

 エロ本騒動はお約束を破るという意味のわからない展開で終わりを告げた。
虹葉姉と紗桜が抱きしめている姿に嫉妬した音羽がブチ切れて強制的に鷺森家を追い出された俺は着替える間もなく、
両腕をぎっちしと掴んでいる姉妹から逃げられずに女装の姿で帰路を歩いた。
音羽によって丁寧に細工している女装は街中を歩いてもバレることもなく、虹葉姉と紗桜に連行されている姿だけがちらちらと庶民たちの注目を浴びた。
 二週間ぶりに懐かしい水澄家に帰宅すると俺は想像以上に驚いていた。
廊下には生ゴミや燃えないゴミの袋が集められて、異臭を漂わせていた。
どうやら、ゴミの日にゴミを出さなかったせいか、二週間分のゴミが溜まっているようだ。
更にリビングに辿り着くと変な電波ソングが垂れ流されていた。


 つ、つ、つ、つきるるん つきるるん

 素直に監禁したいと言えない貴女も勇気を出して
 恋のまじない 鋸で首の頚動脈切断 溢れだす血で癒してあげる



 大型液晶テレビには先程の鷺森家で起こった出来事が電波ソングと共に編集されて映像として流されている。
コスプレ姿の虹葉姉と紗桜はもちろん。女装した俺の姿ですらちゃんと流れてやがる。
「あっ。お帰りなさい」
 聞き慣れた声の主がキッチンの方から現われてきた。
 水澄家の最強の支配者が笑顔を零して言った。
「今日の夕ご飯は私がご馳走しますよ。昨日の駅前のスーパの激安セールで美味しい肉が超格安で手に入ったのよ。
もう、これは私で一人で食べるよりも皆で食べた方が絶対に美味しいよ」
 昨日の駅前の激安セールってあれか? 
 血の雨が文字通りに降るという激安セール。おばはん一人が死亡。
店員の話では肉を無事に買うことができるのはたった一人しかいないと。他は五体満足のどれが破損するという話だったのだが。
 まさか、冬子さんが……。
「で、この大型液晶テレビはどうしたんですか? 俺が水澄家に出る前はこんなもん存在してなかったし」
「お前らの両親の遺産を勝手に使った」
「立派な横領罪だろ!!」
「問題ありません。問題があるのは月さんあなたじゃないんですか?」
 柔らかなほほ笑みが消えて、真っすぐに俺を睨み付けた。冬子さんが珍しく本気で怒っているようだ。
突如、変貌した冬子さんに俺はおろか、虹葉姉や紗桜も口を挟む事ができなかった。
「この子たちを二週間も放置していたなんて!! 虹葉ちゃんと紗桜ちゃんの精神が壊れる可能性はちゃんと指摘しましたよね。
月さんには厳重に二人の世話をお願いしたはずです。
すでに冗談とパロネタで済まされる問題じゃないんです」
「す、すみませんでした」
「特にその女装!! どうして、男の子なのに化粧しただけでそんなにいい肌をしているのよ。
2○ピー歳の私に対する嫌がらせですか? 嫌がらせですよね。だったら、
文句なしに私は月さんに厳罰な処置を執行する義務があります。保護者代理としてね」
「さ、さすがに我が家に帰ってきた兄さんにそれはちょっと……」
「文句あるんですか? 紗桜ちゃん」
「い、いえないです。特になしです」
 冬子さんの剣幕に圧されて紗桜は慌てて俺の弁護を撤回する。
あまりにも気弱な子犬は野性の本能に従い危険な強者には絶対的な服従しているように見えた。
「待ってください。どんな、どんな、おしおきを月君にするの?」
「女装して喜んでいる変態月君を
 手足を縛り、長期間自宅で監禁」
 マジですか?
「じゃあ、監視役はお姉ちゃんがやってあげるからね!!」
 嬉しそうに喜んで虹葉姉はコスプレ衣裳の尻尾を振っていた。弟である俺を庇うという気持ちよりも俺を監視する事の方が大切らしい。
「やるなら今からです。さっさと準備しましょう」
 残された夏休みは家で強制的に監禁ですか?
266水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/01/28(日) 22:02:53 ID:qa2Fk+8e
 夏休みの最後の日まで紐に縛られて冗談なく監禁されていた。
しかも、女装した格好でだ。冬子さんの怒りは思っている以上に相当怒っていたのだろう。
女装している男性の方が自分よりも綺麗な肌をしており、それを認めるのは女性として致命的なものである。
現実逃避のために俺を部屋に監禁して欝憤を解消させる気持ちを理解できないわけはない。
ただ、監禁されていたとしても、虹葉姉と紗桜がちゃんと監視の役割をちゃんと果たしているおかげで
孤独な気持ちにならなかった事だけが幸いか。
「月さん。もう、夏休みの最後の日です。明日からは新学期ですから、月さんの監禁は今日で終わりにしましょう」
「ええ……。いい加減に終わらないと俺の体力と精神力が持ちません」
 長期による監禁で俺はやつれてしまっている。体重も格段に痩せ細っていた。
まあ、食事は虹葉姉と紗桜からあ〜んって感じで口を開けて無理矢理食べさせられていたおかげで餓死する事はなかったが。
「わかりました。解放しましょう。最後に月さんには偉大なる黄金伝説に挑戦してもらいます。いいですね」
「なんですかそれ」
「夏休みの課題を一日で終わらせなさい!!」
 あっ……。
 それは今まで記憶の忘却の彼方に置き忘れていた事実。
「夏休みの課題は終わってねぇ!」
 終業式の日に水澄家を飛び出し、二週間の期間を鷺森家にお世話になってから。
冬子さん主導による監禁生活の間に夏休みの課題を仕上げる時間はあったのか? 
いや、もちろんない。夏休みの課題は全く手を付けていなかったのだ。
 その事を思い出すだけで俺は顔を真っ青になっていくのが自分でもわかる。
「や、やばい。どうしよう」
「じゃあ。私はこれで帰りましょう。虹葉ちゃんも紗桜ちゃんも明日から新学期だけど月さんの事をよろしくお願いしますね。
目を離すと一体何をやらかすのかわかりませんから」
「はい。月君の面倒は私にど〜んと任せてください!!」
「かったるいけど。私も兄さんの面倒はしっかりみます」
 三人の嫌味たっぷりな会話を耳に入らずに俺は必死に夏休みの課題を仕上げるために
拘束している紐を自分の口で切り裂いてやろうと頑張っていた。

 こうして、俺の夏休みは最大の負債を抱えて終わりを告げるのであった。
267名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 22:03:07 ID:8VN6kpL3
ノントロの作者さんは凄いペースで投下してたからちょっと心配になってしまう気持ちは分かるが
ずっとそんなハイペースで投下する訳にはいかないだろうし
このくらいのペースが普通だと思うので、あまりプレッシャーをかけないよう心がけながら
楽しみに待っとります。(全裸で)
268トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/01/28(日) 22:07:39 ID:qa2Fk+8e
皆さんはちゃんと夏休みの宿題を終わらせましょうね
ってもう夏はとっくの昔に過ぎ去ってるしww

水澄の蒼い空はようやく終りが見えてきました。
後は姉妹編を書き上げるだけで終了
と、言ってもネタとか全然浮かんでこないので
雪桜の舞う時に逃避して書いていたりもしますww

さてと、次回作品のプロットを仕上げるとしますか。
プロローグのあらすじを数行書いたので
後はキャラクター設定と名前を決めて、適当に話を考えるだけ。

でも、時間がないからいつの事になることやら・・。

それでは。失礼します
269267:2007/01/28(日) 22:08:22 ID:8VN6kpL3
トライデントさん、すいませんでした。
更新して確認するのを怠ってしまいましただ。
トランデントさんのSSを楽しみにしてる皆さんにも
見苦しいものを挟んでしまってゴメンナサイです。
270名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 22:22:03 ID:9mozkKBx
GJです、ドロドロな物が大好きな俺だが合間にこういったコメディ路線を読むと癒される
271名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 22:35:27 ID:+wYQ/rkI
>>268
GJ!
姉妹に飼われてる間にどんなことがあったのか想像するだけでステキ(*´д`*)
272 ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 22:40:58 ID:79Hw5LAK
それでは投下します。
273A bond and a bond ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 22:42:40 ID:79Hw5LAK
EpisodeW 「The beginning」


友二が家を出て暫くしてから、真紀が押入れからゆっくりと出てきた。

無表情の真紀は先ず台所に向かった。
流しに無雑作に置いてあった、先ほどまでカレーを盛っていた皿を見つめていた真紀は
その二枚の皿を手に取り、匂いを嗅ぎ始めた。

「クンクン……、すんすん……」

二枚の皿を交互に嗅ぎ分け、一枚をゴミ箱に捨て、残った一枚を舐め始めた。

友二が使った皿……

自分の顔が写るぐらいに綺麗になった皿の次は、スプーンに目を付けた。
これも二本とも嗅ぎ分けられたのか、一本をゴミ箱に捨て、残った一本をしゃぶった。

友二が舐めたスプーン……


次に真紀が向かったのは、二階。
階段を上がり、とある部屋に入った。
そこは、いかにも男の部屋らしく、雑誌や服などが散乱し、壁にはコートや制服などが
掛けられていた。
周りをざっと見渡した後、ベットに目を付けてそして

ジャンプ

ボフン!!
274A bond and a bond ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 22:43:43 ID:79Hw5LAK
ベットに飛び込んだ真紀は、体全体で友二を感じていた。

ああ……これが友二の匂いね。何て心地良いのかしら……

ゴロゴロとベットの上で転がったり、深呼吸したり、ギュッと抱きしめていた時
ふとベットの脇に脱ぎ捨てられていたパジャマを見つけた。

こ、これは!!!!

素早く手にとり、早速匂いを嗅いだ。

は、はうう……す、すごい

ベットの数倍は有ろうかという濃厚な匂いに、さすがの真紀も眩暈を覚えた。
この濃厚な匂いを身体に染み付けるため、真紀は服を脱ぎ、友二のパジャマに着替えた。
ところが着替えた瞬間

ポタッ、ポタッ……

立ったままイってしまい、しかも鼻血を出してしまった。




275A bond and a bond ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 22:45:09 ID:79Hw5LAK
血まみれのパジャマを脱ぎ、畳んで片付けると、他に何かないか探した。
ふと目に入ったのは、机の上に置いてあった携帯電話だった。

素早く手にとり、電話番号の登録を見てみると男友達の番号の中に
「坂奈睦美」の名があった。

…………………

無言のまま、電話番号の登録を全て消し、別の番号を登録した。

桝井真紀 090ー△△△△ー□□□□
桝井真紀 090ー△△△△ー□□□□
桝井真紀 090ー△△△△ー□□□□
桝井真紀 090ー△△△△ー□□□□
桝井真紀 090ー△△△△ー□□□□
桝井真紀 090ー△△△△ー□□□□
桝井真紀 090ー△△△△ー□□□□
桝井真紀 090ー△△△△ー□□□□
桝井真紀 090ー△△△△ー□□□□
桝井真紀 090ー△△△△ー□□□□
桝井真紀 090ー△△△△ー□□□□




もちろんメールアドレスも「桝井真紀」のみにした。

そこまでして、真紀は次に携帯の画像フォルダを開いた。

やっぱり……

そこには友二と睦美の仲睦まじい写真やデートの写真などが保存されていた。
真紀はもちろんこれらの写真も消去し、そして―――

もっと良い写真をあげるから……

自慢のロングの黒髪……
顔のどアップ……
手のひらじゃ掴みきれない胸の谷間……
スカートを上げて、露にした太股……

自分の自慢の部位を写真に収め、最後に

設定を……こうして……っと。これでOKね。
友二の喜ぶ顔が目に浮かぶわ……
276A bond and a bond ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 22:46:34 ID:79Hw5LAK
すっかりご満悦の真紀は、一階に降り洗面所へ行った。
そこには一組の歯ブラシとコップがあり、真紀はそれで歯磨きをし、居間で
友二の到着を待つことにした。
でもただ座って待つのも暇なので、目に入った棚の引き出しや小物入れなどを漁って見た。
すると―――

あったあった♪

それはこの家の玄関の合鍵だろうか、小物入れに無造作に置かれていた。
何の躊躇も無くそれをポケットに仕舞い、散らかした引き出しなどを綺麗に元に戻した。
そこまでして、真紀は居間のソファーに座り、瞑想するかのように瞳を閉じた。

…………友二は……ここから……50メートル先……こっちに向かってる……

友二を感じた真紀は先ほどまでの上機嫌は消えうせ、漆黒のオーラが漂い始めていた。





277A bond and a bond ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 22:48:08 ID:79Hw5LAK
「ただいま……先輩居ますか?」

睦美を送っている間、終始膨れっ面の睦美を訳が分からないまま宥めて家まで送り、
疲労困憊の表情で帰ってきた。

一体何なんだよ……、「友ちゃんのヘタレ!!意気地なし!!」なんて言われて
しまいにゃ泣かれる始末だもんな……。
こっちは先輩が凶行に走らないか心配してるのによ……。
おっと、それよりも先輩は……

真っ暗な居間の電気を付けると、何故か電気が付かなかった。

あれ?おかしいな……、電球切れちゃったかな?

だが、その時

「友二」
「うわっ!!!び、びっくりした――。驚かさないで下さいよ」

真っ暗な部屋から真紀の声が聞こえ、それと同時に部屋の電気が付いた。

「………………………」
「ど、どうしたんですか?先輩……え?ち、ちょっと」

友二の鼻先まで顔面を近づき、微笑んだ。
だが、その瞳は……怒りの炎が燃えていた

「先輩?……がはっ!!」

突然友二は腹に衝撃を覚え、体がくの字に折れ曲がった。
見ると真紀の拳が友二の下腹部にめり込んでいたのだ。

「な、何をするんで、すか先輩……」
「友二、そのお腹に入ってるのは「アイツと一緒に食べたカレー」よね。
そんな物は出しちゃいなさい」
「そんなこと言っても……」
「つべこべ言うな!!出すったら出すの!!」

二発、三発と連続して腹に拳を突き出し、暫くすると友二が口を押さえて
台所に行き

「お、おえええええぇぇぇぇぇぇ………げほっ、げほっ……」
「やっと出たわね。ごめんね友二、乱暴な真似して。これも友二の為だから。
「私が作ったカレー」を「私と一緒に」食べなきゃダメだから」
「そ、そんな無茶な……」

友二は本当は腹の痛みで食べるどころじゃなかったが、今の真紀を宥めるには食べるしかない
と思った。

考えるな俺。考えたらダメだ!!全ての思考を停止して、一つのマシーンとなれ。
ただ目の前にあるカレーをスプーンで掬い、口に入れろ。それだけだ。それだけだ。

「はい友二。い〜〜〜っぱい食べてね♪」





第四話「発端」完
278 ◆n6LQPM.CMA :2007/01/28(日) 22:50:36 ID:79Hw5LAK
これにて食事編は終わりました。次は真紀とのデート編です。
もちろん無事にすむはずはありませんが……
279名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 23:42:30 ID:JATPq3vV
週末の投下ラッシュGJ!
真紀先輩……これがスーパーヤンデレ人3か……

それはそうと、赤い瞳と栗色の髪の続きが気になってきた。わたし待つわ。
280名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 23:56:36 ID:3Rd5eCqZ
一週間の始まりは日曜日からじゃないのかGJ!
実は自分が気づいていないだけで、俺にもストーカーが憑いていて、先輩みたいなことしてるんじゃないかと妄想。
その後、正気に戻り、一人のベッドで泣きながら寝る俺。
281名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 23:58:45 ID:AE82dxWE
一度でいいから萌えるストーカーに俺の後を追ってきて欲しいもんだ
犬系の依存系のヒロインなら大歓迎するが

現実は・・

クソったれだぜ!!
家に侵入したら現行犯で捕まえて警察に突き出しますよ
282名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 23:58:50 ID:HhX+Rpdw
感想が間に合わない等と贅沢な悲鳴をあげる俺。
283名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 00:00:46 ID:AE82dxWE
俺はとりあえず。
トライデント氏が新作のプロットを書き出したと聞いて
ここは天国のようば場所だと絶叫したわけだが
284名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 00:07:09 ID:kgvqZ/Ei
ボディワロスw
先輩はやばいな、もちろんいい意味でだがwww
デート編期待してます
285名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 01:12:03 ID:EyS4AeOx
先輩の変態っぷりに惚れた
これはGJと言うほかないではないか
286名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 01:41:26 ID:RLeUof6r
ノントロ・・・
287名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 01:59:50 ID:4DbbUASW
>>286
黙って待ってろ
288名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 02:53:54 ID:VqzUuCVN
>>286
さすがにいいすぎだぜ

つ旦
茶でも飲んで全裸でまとうぜ
289名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 03:04:09 ID:gWugqqr1
いいことを思いついた、低年齢で修羅場というのはどうだろう
小4か5くらいで
子供ならではの純粋さと残酷さがあると思うんだ
290名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 04:22:21 ID:+4y5EUiI
 や は り 娘 か !

291名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 07:29:12 ID:aLyFgQls
どんな育て方をすれば小4でヤンデレになるんだろう。
子育ての参考にしたいんだが。
292名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 08:22:28 ID:cMSwyM9x
子供どころか嫁さんもいないのにか?
293名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 08:23:56 ID:bT6KQYqF
>>289
それは登場人物全員がってことかい?
その年頃なら既にヤンデレの兆しはあると思う。
父に対しては恋愛感情を抱きにくいだろうけどね。
12年前、俺が小学生の頃は女の子同士で取っ組みあいの喧嘩してたし。
ベクトルさえ変えればなんとかなるはずだ。

・・・・・・ちなみに双子だった。
294名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 09:00:41 ID:mLfARJxc
>>292
待て、291は阿修羅氏かもしれんぞ?
295名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 09:23:41 ID:FMqSkYE+
小学生くらいの子供がさ、弟妹ができたときにお母さんを取られたと思って
弟妹が嫌いになる話ってあるよね。
あれで思いついたんだけど、弟妹が欲しくて欲しくて仕方がなかった女の子が、母親が
妊娠したと言って大喜びするんだけど、母乳を飲んだり母がべったりと甘やかすところを
想像して"弟妹"ではなく"母親"に嫉妬。
まだ生まれていない愛しの弟妹を奪うため、母親のおなかを包丁で…なんてのが頭に浮かんだ。

「うふふ、きみはお姉ちゃんが産んであげる。
 だからママのおなかなんてところからはさっさと出ようね…ううん、出してあげる!!」

こんな感じ。でもこれってここじゃなくてヤンデレスレ向きだなぁ…
296名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 10:35:39 ID:YfDo+bHs
母子もそうだが、親子間での恋愛はちょっと・・・。
ひぐらしのレナみたいのは萌える
297 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/29(月) 10:52:09 ID:bT6KQYqF
>>295
ヤンデレスレのSS書きですが、そのネタもらってもいい?
298295:2007/01/29(月) 11:12:17 ID:FMqSkYE+
>>297
こんなのでよろしければどうぞ使ってやってください。
最初は自分でショート書こうかとも思いましたけど、デレ文が書けないので諦めました。
299 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/29(月) 11:31:03 ID:bT6KQYqF
>>298
どうもありがとう。
今日か明日にでも投下します。
300名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 13:20:38 ID:eEfnkFMU
レナ、ねぇ。

自らの家庭が円満で幸せだと思い込んでいた少女。
だが現実には母親の父に対する愛はとうに失われており、家族はすでに仮面夫婦状態。知らぬは娘のみ。
(父親の母に対する愛は本物であり、逆に妻は都合のいい男としてしか見ていない)
父親は家庭を維持するために、かなりマイホームパパ化。よくかまってくれる父に対し、娘、ちょっとファザコン化。
だが娘の成長とともに母は責任感を無くし、男作って出奔。
父、無気力症候群。娘「父は自分がいなければ死んでしまう」と思い、超ファザコン化。
しかし同時に、愛について蔑視的な性格を持つ様になる。

ここからどうすりゃいいんだ?
こうか?

父ポックリ死亡。(自殺、事故、病気)娘、母に引き取られるのを嫌い、一人暮らしを始める。
だが、東京でも父以外の人間を信じることができず、孤立。
そんな時、一人の少年に出会う。どことなく父に似た少年に。失われた依存のベクトルは少年の方に…

えーっと、無理!なんかよっぴー混ざってるし、よく見りゃ二等辺三角関係じゃねえか。
301『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆.mRmra90Ys :2007/01/29(月) 14:12:47 ID:L80kMqz1
守護霊……という言葉、誰もが一度は聞いたことがあるだろう。それは本人には見えず、自分を守ってくれると言うが……俺の場合はちと違う。
 そう……守護霊が見えてしまうのだ。いや、見えるなんてレベルじゃない。『彼女』に触れるし、『彼女』も物に触れるのだ。とはいえ、僕以外には『彼女』は見えないので、怪奇現象みたいになってしまう。
 初めて彼女と会ったのは、自分の部屋だった。幼心ながらに、知らない女の子が居るのは普通は怖いが、何故か怖くなかった。それは守護霊だからか。
 『彼女』を親に紹介しようとしたら、当然見えないので……
「子供だから想像力豊かねぇ。」
と言われてしまった。それ以来、俺は人前で『彼女』と話す事はしない。
まぁ、守護霊といっても全く役立たない。『彼女』が転んだりして傷付くと、俺も傷付く。俺が風邪をひいて具合が悪くなると、『彼女』も具合が悪くなる。正に一心同体なのだ。
しかっしそのせいで恋人なんかできやしない。一度いい感じになった娘がいたが、『彼女』にずっと横で睨みをきかされた。
 さぁて、俺の人生どうなることやら……
302『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆.mRmra90Ys :2007/01/29(月) 14:13:29 ID:L80kMqz1
「ふぁぁぁぁ……」
今日も気持ちいい欠伸から始まる朝。まだ眠気が残る。洗面所に行き、顔を洗おうと鏡の前に立ち、雪のように白く柔らかい髪を梳かす。
……この白い髪、周りからは奇特の目で見られるが、結構気に入っている。親は二人とも黒いため、遺伝という訳ではない。話しによると、どうやら近親婚らしい。
どれほど近いかはわからないが、子供の俺に影響あるんだ。難しい結婚だったのかもしれない。今は二人とも仲良く海外出張に行ってるから、その熱愛っぷりは変わらないだろう。
「うー、つめてぇ!」
タオルを探して手をのばすと……
「はい、おはよ。」
「ん、あんがと。」
『彼女』がタオルを手渡してくれる。そう、俺の守護霊であり、一心同体の『彼女』。名前は……
「今日は朝から体調がいいのね、翔。」
「お互いにな、翔子。」
俺の名前、皆川 翔から取って、翔子と呼んでいる。……もっとも、そう呼ぶのは俺しかいないため、あまり名前に意味はないが。
翔子もまた、俺と同じく髪は白く、腰まで長い。それに加えて切れ長の目、高い鼻と、整った顔をしている。
303『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆.mRmra90Ys :2007/01/29(月) 14:14:24 ID:L80kMqz1
正直、今まで翔子以上に綺麗な女性を見たことがない。この美貌を世の中に見せられないのは非常に残念だ。彼女も鏡に映らないため、自分の顔を知らないらしい。
「どう?今日の私は?」
「相変わらず綺麗なこって。」
「うふふ、ありがとう。翔もかっこいいわよ!」
最近の朝はこういった褒め合いから始まる。実際翔子は綺麗だが、俺はまぁ、普通だろう。髪が白いのを除けばいたってノーマルな顔だ。
「おっし!それじぁ学校に行きますか。」
ギリギリな時間だ。走ってかないと間に合わなそうだ。素早く制服に着替え、空っぽの鞄を掴み、部屋から飛び出す。築二十年。結構綺麗なアパート。
親はこのアパートの家賃以外は一銭も払いやしない。食費や雑費は自分で稼げという鬼畜っぷり。別にバイトも面白いからいいんだけどね。
「はっはっ…はぁっ……」
家から学校まで、歩いて二十分。走ればその半分で着くだろうか。時計を見る。部屋を出た時点で残り九分。やべぇ。今月はもう遅刻出来ないってのに。もうちょっと早めに起きればいいのか。






「げえっ!やばい!」
校門が見えるところまで来ると、教師が校門を閉め始めていた。今時なんて
304名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 15:11:00 ID:ptHHmALX
オレンジが嫉妬SSクレと騒いでいます

                   __   .イl. , -- ミ 、       ,ィ
 ∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧   / `く.  l/ , - 、: .` ==、___/ノ!
<        ┌┐□□ >, '   . : . \l //: : :、:、: . .__ : : ´/ィ
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305 ◆.mRmra90Ys :2007/01/29(月) 15:41:01 ID:L80kMqz1
すみません、手が離せなくなって書きっ放しに……
少しずつですが、書いていきたいかと
306名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 18:50:04 ID:k5MNwtUb
  _,、_
( ゚Д゚) ……?
307名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 19:03:16 ID:EyS4AeOx
>>305
読みやすかったし続きも期待している
308名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 19:09:05 ID:zK1IfwlJ
キリのいいところまで書いて投下するべきでは

でもGJ
309名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 19:27:52 ID:FMqSkYE+
>>300
>ここからどうすりゃいいんだ?

@割とポピュラー
ファザコン娘は父を身体で慰めるが、父は肉体関係はいけないことと拒み
娘は「パパは私よりあんな女(母)の方が大切なのね!」とキレて母を殺しに行く。

Aちょっと捻る
ある日父は突然元気になる。原因はなんと、再婚相手ができたからだった。
『再婚すると自分の居場所がなくなる』と思い込んだ娘は再婚相手の排除にかかる。

B逆襲の母
無気力症候群どころか廃人一歩手前になってしまった父。
しかしそこへ男に逃げられたと自分たちを捨てた母が借金を抱えて戻ってきた。
「真実の愛に目覚めた」やら「私にはあなたたちしかいない」などとのたまう母だが
当然娘はそんな母を許すはずもなく、自分たちの生活を守るために母を消す。

こんな感じ?
310『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆.mRmra90Ys :2007/01/29(月) 19:41:12 ID:L80kMqz1
正直、今まで翔子以上に綺麗な女性を見たことがない。この美貌を世の中に見せられないのは非常に残念だ。彼女も鏡に映らないため、自分の顔を知らないらしい。
「どう?今日の私は?」
「相変わらず綺麗なこって。」
「うふふ、ありがとう。翔もかっこいいわよ!」
最近の朝はこういった褒め合いから始まる。実際翔子は綺麗だが、俺はまぁ、普通だろう。髪が白いのを除けばいたってノーマルな顔だ。
「おっし!それじぁ学校に行きますか。」
ギリギリな時間だ。走ってかないと間に合わなそうだ。素早く制服に着替え、空っぽの鞄を掴み、部屋から飛び出す。築二十年。結構綺麗なアパート。
親はこのアパートの家賃以外は一銭も払いやしない。食費や雑費は自分で稼げという鬼畜っぷり。別にバイトも面白いからいいんだけどね。
「はっはっ…はぁっ……」
家から学校まで、歩いて二十分。走ればその半分で着くだろうか。時計を見る。部屋を出た時点で残り九分。やべぇ。今月はもう遅刻出来ないってのに。もうちょっと早めに起きればいいのか。
「げえっ!やばい!」
校門が見えるところまで来ると、教師が校門を閉め始めていた。今時なんて古いシステムなんだ!
「はぁっ…ぐっ!間に合わん!翔子!頼む!」
「はいはい、おまかせ!」 翔子が一足先に校門まで走り、閉じるのを押さえる。突然動かなくなった門に、焦る教師。
「よっしゃっ!」
その間に楽々通り抜ける、それを見計らい、門を放す翔子。
「ありがとな、毎度毎度。」
「ふふん。翔が良ければそれでいいのよ。」
翔子の身体能力は、男の俺より全体的に高い。やはりこれも俺に影響があるようで、俺が体を鍛えれば、自然と翔子も強くなるのだ。常に俺より強いのが癪だが……
そして今日も暇な一日が過ぎていく。学校行って、バイトして。家に帰って飯食って寝る。翔子がいる以外は平凡な一日な……はずだった。
だが、今日のバイトで、その暇な毎日が崩れ去るのだった……
311『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆.mRmra90Ys :2007/01/29(月) 19:42:33 ID:L80kMqz1
よく見たら変に切れてたorz
すみません。みっつめの投下はこれです。
312名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 19:57:35 ID:HQUwflEU
>>309
そういうのもいいかもしれんなぁ。
だがお題通り、あくまでもひぐらしのレナっぽくするってのが難しい。
一番それらしいのはBだが、嫉妬に絡めるのは恐らく至難の技。
313309:2007/01/29(月) 20:10:53 ID:FMqSkYE+
>>312
ごめん、レナ知らなくて1行目と以下の文は別物(オリジナル)だと思って書いてた。 吊って来ます。∧||∧
314300:2007/01/29(月) 20:23:34 ID:HQUwflEU
>>313
いや、むしろレナと分からない物を投下した俺の方が悪い。スマヌ。
315名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 20:36:46 ID:4MEhTJ/y
>>311
GJ!

こういうの大好きだなァ
316名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 21:41:04 ID:hUNC/PTu
>>311
(・∀・)イイ!!



全裸で続きを待ってもいいですか?
317リボンの剣士 38話B ◆YH6IINt2zM :2007/01/29(月) 23:12:40 ID:A6og5ZlN
アナザールート、投下します。37話の終わりから分岐になります。
318リボンの剣士 38話B ◆YH6IINt2zM :2007/01/29(月) 23:13:23 ID:A6og5ZlN
どうして私は、レイプさせただけで勝った気になっていたんだろう。
何もしなければ、あるいは殺していれば、新城明日香とこんな形で顔を合わせることは無かったのに。
ただでさえ凶暴なところに復讐という目的が加わって、最悪の展開になってしまった。
日本刀を持つ手に震えなどは無い。
完全に迷いを、迷いどころか何もかも捨てて、私を……殺しに来た。

「明日香……?」
裏で起きたことを全く知らない人志くんは、この女の登場に困惑している。
……もしかしたら、うまくやればうまく行くかもしれない。
「どう……したんだ?」
新城明日香が、刀の先を私の方に向ける。
「クリスマスプレゼントに、あんたの命をもらいに来たのよ」

その口から出る言葉は、人志君にとって非常識で耳を疑うものだと思う。
人を殺す、なんて聞いて、穏やかでいられるはずがないからね。
「何を言ってるんだ。性質の悪い冗談はやめろ!」
人志くんは立ち上がって、新城明日香と向かい合った。
そうそうそうそうそれでいいの。刀を持って他人の家に上がりこんでくるなんておかしいの。
人志くんは、この頭のおかしい女を叩き出せばいいんだよ。
「あたしが冗談を言ってると思う?」
冗談でも本気でも関係ないよ。さ、頑張って人志くん。早くキチガイ女を追い払って。
ああそうだ。私が警察を呼ぶのもアリだよね。刀を振り回す怖い女は、死ぬまで塀の中に閉じ込めておかな
いと。

あれ? 電話したいのに、体が動かないなあ。

「そこの女の陰謀で、レイプされたのよ」
出た。人志くんの耳を疑うこと二つ目。これでますます、新城さんは正気じゃないって思われるよ。
「金でその辺の男を操って、ついさっきあたしを……ね」
「そんなの、私……知らない!」
人志くんの視線がこっちを向いてから、私は声を上げた。
「私じゃない! そんなことやってない!」
新城さんは、今ここでレイプ云々の証拠を出すことは出来ないはず。
だから、やったやってないの水掛け論にしてしまえば、目に見えて物騒なものを持っている新城さんのほう
が不利。
この場をしのぎさえすれば、私のほうの証拠隠滅なんてすぐできるしね。
319リボンの剣士 38話B ◆YH6IINt2zM :2007/01/29(月) 23:14:04 ID:A6og5ZlN
「あんた以外に!!」
さらに大きな声が割り込んできた。
「誰が金を払ってまで、あたしを犯したりするのよ!!」
殺気が大きくなって、私に近付いてくる。
そうだ。動けなかったのは、この威圧感があったからなんだ。
殺気を越えた、どす黒い煙のように吹き出ている殺意。
でも、私と新城さんの間に、人志くんが入った。
「明日香……やめろ」
私を守ってくれるかのように、両腕を広げている。

いくら幼馴染とはいえ、殺意をむき出しにしている新城さんの前の立つなんて、人志くんは勇気あるよ。
私が好きなのは、そういうところなの。
「その女を庇うの? あたしより、その女のほうが大事なの!?」
人志くんが庇ってくれる――嬉しくて涙が出そう。
同時に、庇ってもらったことなんてないだろう新城明日香への優越感も持ち上げられる。

「そうじゃない! ただ、殺すというのはいけな――」
「レイプされるのはいいんだ」
「っ…………」
「殺すのはいけないから、レイプされても話し合いで解決しましょうと、そう言いたいの?」

ああ頑張って。その女に言いくるめられちゃ駄目だよ。

「……」
人志くん、言い返してよ。幼馴染が人殺しなんて、絶対にあっちゃいけないでしょ?
私も殺されたくないし、新城さんだって本当に人生台無しになる。お互いのためだよ。
もちろん、真相を知っていればこんなのは詭弁だって分かるけど、それを人志君に知らせなければいい。
知らないことは起こっていない。
人志くんを手に入れるためなら、それくらいのことは隠してみせる。

「……」
「……」
「……どいてよ」
「……それは、出来ない」
「そう……」

刀の先が下を向いた。
でも次の瞬間、新城明日香は刀を振った。
「――っ!?」
速くてはっきり見えなかったけど、重い打った音がして、人志くんが倒れる。

――ついにやったんだ、この女。力ずくで自分の考えを押し通した。

自分の復讐のために、人志君に手を上げた。
320リボンの剣士 38話B ◆YH6IINt2zM :2007/01/29(月) 23:14:48 ID:A6og5ZlN
「最低」
言ってやると、不敵な笑みが返ってきた。
「自分の事?」
悪びれた様子はない、むしろ、一段落ついてすっきりした顔だ。
これで木場春奈を殺せる――って、思ってるのかな。
もう前しか見ていない、この目的さえ果たせば後のことなんか知らない、という覚悟。

……私だって、覚悟は持っている。

持って来た大きな袋に手を伸ばす。あの中には、色々入っているから。万一のときのものも用意してある。
「死ね!」
ほんの一瞬ですぐ近く、刀が届く間合いに新城明日香が飛び込んできた。

――くっ!!

袋に手を入れて、ダーツの入ったケースを掴む。
上段から降ろされる剣。

――間に合う!

何とかダーツだけは取りつつ、転がって刀をかわした。
一本を牽制に投げつける。
新城明日香は難無くかわすけど、その間に私は態勢を直して距離をとることに成功した。

さすがに、剣を相手に接近戦は出来ない。
――って、きっと向こうも思ってるだろうね。

「へぇ……そんなオモチャでやる気?」
完全に余裕の表情。確かに、日本刀とダーツじゃ、武器としての差は大きい。
でもね。
ただのダーツじゃ、ないんだよ……。
321リボンの剣士 38話B ◆YH6IINt2zM :2007/01/29(月) 23:15:43 ID:A6og5ZlN

「ねえ新城さん。ここであなただけ死んでくれれば、キチガイが刀振り回して勝手に死んだ、ってことにな
ってハッピーエンドなんだけど」
「安いストーリーね。時代はバッドエンドよ。先物好きのあんたにぴったり」

私がダーツを投げる。新城さんは軽くよける。
次を投げる前に、新城さんは地を蹴った。
速い。間合いは瞬く間に縮まって、私の頭を喰らってやらんと剣が迫る。

やっぱり私では勝てない――ことはない!

剣に対して、左腕を上げる。
「!……ぐっ……」
刃が左の前腕に食い込み、骨に当たり、肘まで切り裂かれた。
体験したことのない痛みと出血に、視界が歪む。
その歪んだ視界であっても、あの女の驚きは分かった、ここがチャンス。
右手に握ったダーツを、新城さんの体に突き刺してやる。

このとっておきの、毒塗りのダーツで、お前を殺す!

頭の中では刺さる映像が出来ていたのに、直後、離れている新城さんの光景に上書きされた。
……外した。
なんて人並みはずれた反応。あのわずかの間に、刀を抜いて後ろに跳んだ。
左腕を使ってまで引き付けたのに……。
まだ。今度こそ。

新城さんは血の付いた刀身を見ていたけど、また向かってくる。
振りかぶったときを狙って、私も前に飛び込んで刺そう。相討ちにならないように、出来るだけ深く。
距離が縮まる。まだ振りかぶらない。
体重を前にかけて待ち構える私に、突っ込んでくる新城明日香。
刀を、前にしたまま!?

これは、突き――――。

「いぃあああああぁぁぁぁあっ!!」

光のように、伸びる突き――――。
322リボンの剣士 38話B ◆YH6IINt2zM :2007/01/29(月) 23:16:29 ID:A6og5ZlN
ずっ……。

胸、が……入って……骨……すきま……とおった。

しん、ぞう……。

「おぶっ!」

のどから、血が逆流して……。

死ぬ……? 私、死ぬの?

死ぬなら……。

「――!!」

まだ動く手で、ダーツを、刺す……今度は、ちゃんと入ったよ……。

腕、足の、力が、抜ける。
新城さんも……毒でもがいて倒れた。
目をひん剥いて、口から泡を吹いて……。
私も……死ぬんだ。


どうして、こうなっちゃったんだろう。
死にたくなかったのに。愛しい人を、手に入れたかっただけなのに。

頭の中を、記憶が駆けていく。
歳が途切れ途切れのパパ、ママ……。
今まで付き合った人、捨てた人……。
人志くんと過ごした時間……ここはそう長くないのに、細かく再生された。
始めは一緒にご飯食べて、試合を見に行って、お見舞いに付き添って、お見舞いに行って、昔の同級生と揉
めたり、誕生日パーティーやって、クリスマスに一緒に居て……。
そしてついさっきの、私が、殺される瞬間。

ああ……そうか。

愛する人は欲しい、でも自分は痛い目に遭いたくない。

結局、自分のことしか考えてなかったんだ……。だから、全部捨てて来た新城さんに殺された。

やっとわかったよ……。

わかったから、もう一度、やり直させて……お願い……。


(最終話Bに続く)
323リボンの剣士 38話B ◆YH6IINt2zM :2007/01/29(月) 23:17:08 ID:A6og5ZlN
まとめサイトの方では、37話のラストでAルートへ、Bルートへ、と分けて貰えれば助かります。
お手数お掛けしますが、お願いします。
324名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 23:37:38 ID:Th3HgRLk
>>323
う・わわわわ((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル

(*゚∀゚)=3ムハァ

  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
 ⊂彡
325名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 01:31:36 ID:G88KmVrP
Bルートキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
Aルートでは文字通り一刀両断されたが今回は明日香タソに一矢報いたか
326名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 01:36:05 ID:4d1vcxa/
>>323どっち行ってもバットエンドっすか!?
人志もよくよく運が無い・・・
327名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 02:59:27 ID:1+aL+fB0
だから、F-22が一番じゃないの?
328名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 03:13:36 ID:yh/j4An4
何言ってるのこのマーティンの狗!
ちょっと足回りがいいだけで選ばれただけの癖に!
あんたの正式戦闘機の座は本当は私のものだったのよ!

…こうですか!? わかりません!

後、最後のAを忘れてる。
329名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 04:06:41 ID:1+aL+fB0
ああ糞
誤爆したわ
正確にはF/A-22な

330名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 08:02:28 ID:4p8rZw3G
>>328
わかりすぎw
こっちはなんのことかわかんねぇよw

>>329
>だから、F-22が一番じゃないの?
が誤爆なのか
F/A-22をF-22に間違ったことが誤爆なのか
331名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 09:46:32 ID:1+aL+fB0
ν速と間違えたわ
332名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 12:37:04 ID:k6x5ub8c
大人しい女性が黒化するとき

私は自分の人生が彼女を幸せにしない限り、死の恐怖から逃げ出せないことを知った

迫り来る積極的なアプローチは俺の細かな神経を狂わせてしまう
バレンタインでもないのに手作りのお菓子を持ってきたり、1時間ごとにメールを送ったりなど
数々の嫌がらせを仕掛けてくる。
どうして、そんなことをするんだ?
と、俺は彼女を呼び出して問い詰めた。

そうすると彼女は狂気な笑みを浮かべて言った

「○○さんのことが大好きなんです。世界中の誰よりも。だから、私の事を好きになってください」

冗談じゃない。

どこの世界で同じ会社で働いている女性を恋人にしようと思うのか? 俺は絶対に嫌だ
彼女はどこから見ても一般的な女性だ。別にどこぞのお嬢様でも虐められている悲劇なヒロインでもない
だったら、どうする。逃げ出すか?

「えへへ。○○さんは優しい人なんですから。わたしとちゃんと付き合ってくれますよね?」

正直、サイコ女は好みじゃない。

「じゃないと○○さんは・・・。絶対に絶対に絶対にぜっっっっったいっっに不幸になりますよ
 あたしのような○○さんを想っている人は他にいないんですからねっ♪」


俺にどうしろと?




ってプロットでもないネタでもないSSもどきを書いてみた
神には遠く及ばないぜ
333名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:12:55 ID:RL41v6Os
>>332
ようするにそのまんま東は知事には向いてないとお前は言いたいわけか?
334名無し@ピンキー:2007/01/30(火) 15:07:12 ID:yHggVCoK
φ(゜゜)ノ<センセー、ベタベタラブコメ風作品でもいいんですかー?



>>333
吹いたw
335名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 15:37:44 ID:8YGVoqg9
>>334
構わないよ。君の好きに書いてみてごらん
336名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 15:41:41 ID:pNQBqOpK
おいしい嫉妬を落としてくれるなら作風なぞ作者の自由さ
337名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 17:23:53 ID:kZZTWK3I
>>334
心配なら保管倉庫の作品と比べるといいかも。
>>333
確かに知事選前後の奴の目は、狂気に満ちていた。
338名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 17:29:48 ID:4p8rZw3G
>>337
 >確かに知事選前後の奴の目は、狂気に満ちていた。
 喩えるならば、獲物を求めサバンナを徘徊するライオン。

 
339名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 17:55:04 ID:0z4voIX5
>>338
うふふ、あは、あははははははは、はははは、や、やった、やったわ、ついに知事に当選したわ!
私は権力を手に入れた!これで、これで、か、彼を寝取った雌豚をはははは破滅させられる!
き、汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い手で、大会社の社長令嬢だからって、地位で彼に
迫るああああああの雌豚を!社会的に殺して殺してころしてころしてコロシテコロシテやる!

「では次のニュースです。
 先日当選した○知事は、県内の公共工事で県と一部の会社が不正談合をしていたと
 内部告発をし、波紋を呼んでおります。県警の調べに対し知事は…」



>>338 こうですか?わかりません!
340名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 18:22:27 ID:8+10Wb6j
>>339
東国原の顔が思い浮かんで爆笑してしまった
341名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 18:33:49 ID:XvP8PT+y
誰か>>332に対してエールを送ったれよww
342名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 18:52:53 ID:g6cZmyPM
>>332
面白い流れの源流となった君にGJを贈ろう。
343名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 18:54:39 ID:I6ViY9PZ
山本くんと九十九さんを全裸で待ち続けます
344名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 18:54:57 ID:tC3S5+rk
>>332
何をどう読んだら、そのまんま東が出てくるのか意味わからん
どちらかというと、テリー伊藤が勝谷誠彦とキャラを被るから嫉妬しているならまだわかるww
345295さまへ ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 20:13:05 ID:g6cZmyPM
あなたの書いたネタを元にSSを書きました。
ヤンデレスレに投下してあります。
もしよろしければご一読ください。

ああ!みなさん石を投げないでくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」
346名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 21:42:25 ID:B8o3uMe6
>>332
どう見てもほのぼの純愛です。本当に(ry
347魔女の逆襲第14話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/30(火) 23:04:55 ID:o1WIr5vC
 早百合は目をぱちくりさせた。
 時刻は午後七時。階段をのぼる音に気付き良樹かと思って廊下へ出てみると、そこにいたのは良樹ではなく彼の恋人で学校では魔女と噂されている紅行院しずるが居たのだ。
「ど……どうして、しずるさんが?」
「君が休みだと聞いたから、めいっぱい用意してお見舞いに来たわけだよ」
 呆然と訊く早百合に、しずるは至極当然のように言う。しれっとした顔だ。
「ちょっと! か……鍵はどうしたんですか! というかどうして家を知ってるんですか!」
「鍵は普通に開いたまんまだぞ? 住所は名簿で調べた。最近は住所で場所を特定するのが難しくて、結構迷ったぞ」
 早百合は思い出す。そういえば、良樹を追い出したときに鍵をかけずにそのまま部屋に戻ってきてしまっていた。
 目の前のしずるを見る。しずるは体操服にエプロン姿という格好で下は何故かスクール水着だ。意味がわからない。
 とりあえず。とりあえずだ。この現状でしずるに注意することが山ほどあることは確かだ。
「どうした? 鞠田早百合。風邪で頭が痛いのか?」
「違いますっ。しずるさん! とりあえず人の家に勝手で入ってきちゃダメです!」
 しずるはきょとんとした顔で早百合を見る。
「鍵は開いてたぞ」
「ごめんくださいと言うとか、インターフォン鳴らすとかして下さい!」
「言ったぞ。返事が無いからさらにチャーリー浜調にも言ってみたがそれでも返事が無かった」
 一瞬『ごめんやしておくれやしてごめんやすぅ』と言うしずるを想像して吹き出しそうになる。が、早百合は何とか抑えた。
「インターフォンも16連射したが、反応なしだった」
 一秒間に16回鳴ったインターフォンにも気付かないなんて、自分はどれほどまでに熟睡してたのだ。ノンレム睡眠以上の睡眠をしてたのかもしれない。つーか、それは迷惑すぎだ。下手すると警察沙汰である。
「まぁ、もしかしたら強盗が押し入っているとか、君が身動きできない状態なのかとも思ってね。心配になって上がりこんだわけだ」
「若干、不法侵入ですよ……」

 しずるに連れられて一階へ降りる。階段できゅっきゅっと揺れるしずるにお尻。紺のスクール水着が若干きつめに食い込んでいた。
「ところで、しずるさん。どうして体操服にスクール水着なんですか?」
「ブルマ代わりだ」
 階段を下りながら、しずるはこともなげに言う。ジャージは絶対履きたくないだろうか。
「そういえば、私のブルマはいつ返してくれるのだ?」
 しずるの言葉に早百合の背筋が冷やりと凍る。
「え、えっと……良樹に渡しました……」
 先ほどのあまり思い出したくない情景が頭に浮かぶ。ブルマを挟んで押し付け合いの口論……という言いがかり。いまは落ち着いているが、あの時の私はどうかしていた。明日良樹に顔を合わせられない。
「そうか、明日にでも返してもらって感想をいただいとこう」
 しずるさんは早百合に様子には特に思うことは無かったようで、ふむふむと頷いていた。つーか、何の感想を聞く気なのだろうか。
348魔女の逆襲第14話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/30(火) 23:06:06 ID:o1WIr5vC
台所に入るとあたりにスパイシィな香りが充満していた。インド風のスパイシィな香りである。要するにカレーだ。
 早百合は呆れる。
「台所まで勝手に使ってたんですか……」
「食事はまだだろう。 食事の用意も無かったから、ここはひとつ私が風邪を吹き飛ばす薬剤料理をつくってやろうと思ってな。つい先ほど完成したのだ」
 また勝手なことをする。ほとんどストーカー行為である。というかしずるが料理ができることがちょっと驚きだった。
「で、薬剤料理がカレーですか?」
 早百合の感覚では病人にカレーはちょっと不似合いだ。たしかにデブの言葉ではカレーは飲み物だと言われるように、雑炊と同じく流動系の食事ではあるかもしれないがちょっと微妙な感じ。
 少なくとも早百合の家で風邪の日にカレーを出されたことはいまだ無い。
 しかし、しずるはカレー鍋をおたまですくいながらからからと笑う。
「カレーの香辛料は漢方薬の材料みたいなものだ。あるところでは医食としても食されておるぞ。それに辛いものを食べて体をあっためるのも風邪の予防となるものだ」
 なんだか、しずるさんに当たり前のような顔で言われると妙に説得力があって、そうかもしれないと早百合は思った。海外では風邪の時には無理矢理にでも風呂に入れるように体をあっためるという行為は風邪にとっては結構な予防にもなる。
 ちなみに、日本では風邪のときに風呂に入ってはいけないと言うが、それは湯冷めで体が冷えて悪化することを懸念しているのだ。
 早百合はなるほどと呟いた。
 ただひとつ、気になることがある。しずるはのほほんと言いながらお皿に盛り付けられたカレーが、とてつもなく赤い。
COCO一番屋などで普通のカレーを頼むとほとんどの店舗では(白白白茶茶茶)で(赤)のふくしん漬けはご自由にお取りくださいのようなモノが出されるわけなのだが、早百合の前に登場したしずるカレーはまさに唐辛子色。
上から見れば(白白赤赤赫赫)でこの(赤)はふくしん漬けではありませんぐらいの殺人的赤さ。湯気に当たっただけで目がぱちくり瞬きで痛くなりそうだ。
そしてしずるさんはその盛った皿を当然のように早百合に突き出してきた。
「さぁ、星のしずるさんカレーだ。是非食べてくれ」
「いや、星の王子様カレーのような名前ですけど、この色は確実にLEE以上です。何入れたんですか」
「獣肉はいっさい使わず野菜のみのシーフードカレーだ」
「それ以外のもっと大事なもの入れまくってませんか」
「さぁ、食べてくれ」
 そんなしずるさんにわくわくした目で見られたら、食べるしか選択肢は無いではないか! 早百合は泣きそうになった。暴君ハバネロだってベビネロで限界なのに、こんな辛いそうなものを食べなければならないのか。
「えっと……しずるさん。私もうほとんど回復してますので……。できればおなかに優しいものがいいなぁと……」
 遠まわしにおかゆを要求する。が、しずるの目は「早く食べてくれ光線」をびんびんに発射していた。
「こうやって料理を人に振舞うのははじめてなのだ。さぁ、食べてくれ」
 ……だから、こうわくわくした目をしているのか。早百合は自分に退路が無いことを悟った。しずるのはじめての手料理の振る舞いが自分の敵前逃亡になるのはちょっと悲しいだろうと早百合は思った。早百合は優しかった。
 意を決して、スプーンでご飯と赤いカレーを掬うと恐る恐るながらも口へもってゆく。その様子をしずるさんは一挙動作かかさず眺めている。
 しゃくり。食べる。
「味はどうだ? 鞠田早百合」
 早百合の口の中でひろった刺激が脳へ届くには何秒かの間があった。
 かっちかっちと台所の時計の秒針が三回響く。刹那。
「……んんんんんん!!!!」
 早百合の口内に言葉にできない衝撃が走った。
 辛辛辛辛辛辛辛辛。
 ポーカーフェイスで食べようとしていた早百合だったが、目の前のしずるが異変に気付いたは直後だった。
349魔女の逆襲第14話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/30(火) 23:07:19 ID:o1WIr5vC
「というわけで今日は私のはじめてのお見舞い記念日だ。君たちと出会ってからどんどんはじめての記念日が増えていくな……」
 しずるは言葉を続ける。
「今日、早百合の姿が見えなくてとても不安だったのだぞ? 君のなにかあったらどうしようかと思ってな。ただの風邪と聞いて安心したものだ」
 しずるは鴉色の瞳で早百合を見つめる。その言葉に嘘偽りが無いということを早百合はすぐにわかった。
「こんなこというような場面じゃないかもしれないが……最近の私は毎日が楽しい。兼森良樹といちゃいちゃしたり、君としゃべったり、君たちと3人で出かけたり……初めての出来事ばかりで嬉しい」
 それにね、としずるは一拍置いて言う。
「こうして、つながりを確認しあえることが……なによりもね」
 早百合に伝わるしずるの言葉。口の中はまだひりひりするが、しずるの言葉は早百合の心まで届きそうなほど純粋だった。
「君が私に注意してくれたり、いろいろなことを質問してくれることも……私にとってはうれしくてたまらないよ。人とのつながりというものは……。赤いザクレロに乗ったあの男も人とのつながりに一目置いていたのがよくわかるよ」
 そして、それは悩みこんでいた早百合にひとつの決心をさせるほど……シャアはザクレロに乗ってねぇよあと絶対それとは関係ねぇよというつっこみさえもどうでもよくなるほど……、早百合に優しく届いていた。

 鈴は鳴らず、ただ二人の会話を聞いている。

 早百合は心を決めた。
「……しずるさん」
 もう絶対、捻じ曲げたり、悩んだりしない。ここで決着をつける……と。
「なんだね?」
「今日は、今日はお見舞いに来てくれてありがとうございます」
 早百合しずるに向かって、笑顔で頭を下げる。この礼はお見舞いに来てくれたしずるへの感謝の念をこめて……。そしてさらにもうひとつの意味を隠し含ませていた。

 魔女は、人とのつながりをほとんど持たずに過ごしてきた。
「しずるさんに来ていただいて、とても嬉しいです」
 その魔女がつい先日、良樹と早百合にはじめてつながりを求めた。
「もう、元気ですけど……。しずるさんが来て頂いたおかげで、さらにパワーが湧いてきました。カレーも……辛かったですけどたしかに美味しかったです」
 初めてつながりを持つことを覚えた魔女は、そのつながりを形成する友情や恋慕、そして「絆」に感動した。そして、つながりの強さを感じ取ったに違いない。
 だからこそ。魔女は良樹や早百合とのつながりを深めることを積極的に行う。つながりの強さを感じたくて。つながっているという事実を確認したくて。
 
 早百合は思う。
 ……たぶん、ずっと一人きりだったしずるは。本当はとても寂しかったのだろう。むしろ自分が寂しいことにさえ気付かないほど孤独だったのだろう。

 しずるさんは純粋に私と仲良くしたい。私や、良樹とのつながりを心行くまで深めたいと思っている。
 キス、デート、一緒にお出かけ、そして今日のお見舞い。魔女にとって早百合と良樹との交流全てが幸せなのだ。
 良樹と恋人同士になって、私と親友になって、ずうっと一生生きていたい。そう、しずるさんの思いはとても強い。

「これからも、これからも私と良樹をよろしくお願いします」
「うん……ああ。これからもいい友達でいようではないか。鞠田早百合」
 しずるは早百合のなにか含んだ言葉にすこし戸惑うような表情をするが、すぐにいつものように笑った。頬のえくぼがちらりとのぞく。

「私たち親友ですね」
「そうだな。親友だ」

 決心した。しずるさんに良樹をわたそう。
 もともと、私の嫉妬なんて……たんなる独り相撲だっただけだけど。ただ、しずるさんの笑顔を見て、本心を聞いて、ようやく決心が付いた。
 私は良樹のことと同じくらいしずるさんのことが好きなのだ。しずるさんの笑顔を見るのが大好きなのだ。
 そう。……私の思いは、全て、全て全て封印するべきなのだ。
 こんな醜い、黒くて暗くて不気味で無様で険悪で邪険で醜悪な嫉妬心のせいで。しずるさんの繋がりを断ち切ってはいけない。
 幼馴染は幼馴染らしく良樹を見守ろう。親友なら親友らしくしずるの恋を応援しよう。それが、私の一番の幸せなのだから。

 心を決めた早百合は顔は晴れやかで、そこには一遍の悔いも迷いも残っていなかった。
 夜になるまでは。

 りぃん。りぃん。りぃん。
 りぃりぃりぃりぃりぃりぃりぃん。
 りりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりり。
(続く)
350魔女の逆襲第14話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/30(火) 23:09:39 ID:o1WIr5vC
(すいません、書き込みミスです。348と349の間にコレを入れてください)

「すまないっ! すまないっ! すまないっ!」
 水を3リットル飲んでようやく落ち着いた早百合に、しずるは何度も頭を下げた。正座をし

ながら腕立て伏せをする格好で、脳細胞を死滅させてるかのように頭をガンガンと床に叩きつ

けている。
「も……もう頭を上げてくださいっ。」
 人からこんなにも謝られたことが無い早百合は頭をぶつけるしずるを前にため息をついて答

えた。こんなに謝られると逆にこっちのほうが悪いような気がしてしまう。あと、しずるがや

っているのは土下座でいいのかコレ。
「本当にすまない……私もはじめてのお見舞いだったからか、少々はしゃぎすぎてしまったよ

うだ。」
 しずるの言葉の語尾はすこしさびしげだった。その様子に早百合はおやと思う。はしゃぐと

いう単語がしずるには似合わないことは最初に思うが……それ以上に、
「お見舞い……はじめてだったんですか?」
 早百合はおずおずと聞く。しずるの「はしゃぐ」という言葉に引っかかったのだ。
「ああ。恥ずかしながらな。この年になるまでお見舞いというモノには行った事がない」
 そう言うとしずるは寂しげに、すこし自嘲気味に、はにかんだ。その顔は魔女と呼ばれると

は思えないほどごくごく普通のはにかみだった。
「お見舞いは本で見たイメージしかなかった。君には悪いが、お見舞いに行くと決めてからは

私はうきうきしっぱなしだったんだ。だからフルーツもカレーも最高なのを用意しようとした

んだよ。その結果カレーは失敗したが」
 いま台所のコンロに乗っているあの星のしずるさんカレーの鍋は、罪悪感に捕らわれたしず

るの手によって「WHO IN」と書かれたガムテでふたを密閉されている。直訳すると「中誰」だ

が一応「封印」のシャレらしい。なんだか森博嗣風味。
351赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/30(火) 23:11:35 ID:ybEnrrlu
 すいません。一日休んでしまいました。あと書き込みミス失礼します。焦りました。
 変な展開ですがもちろんこれで終わりません。明日に続きます。
 文章でおかしなところなどあればご指摘ください。
352赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/01/30(火) 23:19:32 ID:ybEnrrlu
誤字ばかりです。薬剤料理→薬膳料理です。
あと「ごめんや」しては末成由美でした…。
353名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 23:53:05 ID:G88KmVrP
封印されて圧縮された早百合の嫉妬心が鈴によって爆発するぜGJ!
しかし辛党の俺は星のしずるさんカレーも気になるところだが
354名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 23:56:05 ID:5ndlTmXo
――兄様――子供が出来たの。兄様の子よ。

「兄様のために父親も母親も殺してあげたのに」

「鈴子のことを焼き殺そうとしたね」

最近よんだ小説の一節
355名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 00:04:17 ID:Bs6xlheD
>>354
鉄鼠だっけ?
あれはハンパなく萌える
京極堂は病みヒロインの宝庫だよな

>>352
GJ!!
しずるさんの可愛さは異常
356名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 00:09:04 ID:BHnpxAJq
箱根は雪だぜ?
357名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 00:21:15 ID:hExVsldG
子曰く、推理・サスペンスは痴情の縺れの宝庫である。
358名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 00:27:05 ID:3Mw/2Py6
GJです。とてもほのぼのしているけど、毎度それだけじゃ終わらせない鈴がいいね。
あとググって初めてふくしん漬って言う地域が存在することを知ったw
359名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 01:06:11 ID:8QSOfTYH
>>354-355
明日速攻で勝ってくる!!
360名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 01:18:57 ID:Ve4rmIFk
>>359
鉄鼠の檻は基本的にじいさんばっか出てくるし
>>354の人達も脇役もいいところで、全然出てこないと記憶している。

一般的な萌え要素もこのスレ的な萌え要素も
京極小説の中でも全然無いようにも思うので注意が必要かも。
361名無し@ピンキー:2007/01/31(水) 01:19:31 ID:w41gyQvE
「姉ちゃん、この間一緒にいた人、誰?」
「え、えっと……あぁ、坂田さんの事? 会社の取引先の人よ。それがどうかしたの?」
「ん、いや、別に」
「あれあれぇ? もしかして、亮君ヤキモチやいてるのかなぁ?」
「い、いや、そう言うんじゃなくて……仲良さそうに見えたから、さ。彼氏なのかと思った」
「うふふっ。心配しなくても、そういうんじゃないから大丈夫よ。お姉ちゃんには、亮君がいるし、ね」
「でも、良い人そうだったし。俺、姉ちゃんの彼氏がああいう人ならいいな、て思ってさ。姉ちゃん、いつも自分の事後回しで、俺の心配ばっかりしてくれるからさ。たまには、自分の事も考えて欲しいんだ」
「……そう。でも、まだ亮君高校生だし、お姉ちゃんがいなくちゃ、ダメでしょ?」
「もう、高校生だよ。俺も、いつまでも姉ちゃんに頼りっぱなしにはなりたくないんだ」
「……そう、そっか。ごめん、亮君。このお皿、テーブルに置いといてくれる? もう少しで両君の好きなハンバーグが出来るから、ね?」
「え、あ、ああ。うん、分かった……ごめんね、姉ちゃん。突然、生意気な事言って」
「ううん。いいのよ。お姉ちゃん、ちゃあんと分かってるから」
「じゃ、じゃあ、皿置いとくよ」
 そう言って、亮はテーブルに皿を置きに、キッチンを後にする。
 一人になった姉、志穂は、右手の人差し指を力一杯噛んでいた。所々、歯が皮膚を裂き、血が滴り落ちている。

「私は、ずっと一緒にいるのよ。ずっとずっと。ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずぅっと一緒にいるのよ。
私の目は、亮君以外見えないの。両君がいれば、他の醜いバカな男なんてどうでもいいの。亮君、言ったよね? 自分の事も考えろって。
ふ、ふふふ。い、いいのかな? お姉ちゃん、本当はずっとずっと、亮君とシたくてシたくてたまらなかったんだよ? うふ、うふふ。
でも、今はまだ我慢しないと。まだ、準備は整っていないもの。それまでは、両君が大好きな、お姉ちゃんの唾液入りハンバーグで、亮君の中身から犯していってあげる。
あは。あははっ。亮君、今日お姉ちゃん、すごい気分いいから、特別に血と愛液も入れてあげるね。ほら、お姉ちゃん、亮君の匂い嗅ぐだけで軽くイっ
嬉しいでしょ? お姉ちゃん、両君のことばっかり考えているんだよ?
亮君、大好きだよ。ううん、愛してる。心の底から、愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる殺し」

「姉ちゃん、他に手伝える事無い……って、うわっ、姉ちゃん、指! 血ィ出てる!」
「えへへ。失敗失敗。包丁で切っちゃった」
「しょ、消毒しないと。もう、本当姉ちゃんドジだなぁ」
「亮君には言われたくないなぁ。さ、傷はいいからいいから、ご飯食べよ」
「美味そう〜やっぱ姉ちゃんが作るハンバーグが一番美味しいよ」
「ふふっ。ありがと。じゃ、お姉ちゃん特性ハンバーグ、」

 召し上がれ。

あんまり可愛く書けません。が、唾液入りハンバーグ書けて満足です。なんかエロくね?
362名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 01:30:37 ID:Ve4rmIFk
>>361
愛してる連呼の最後が怖ぇ〜!
363名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 01:37:03 ID:ozfaTQsb
お姉ちゃん「特性」ハンバーグ

誤字なのかはたまたわざとなのか…たとえ誤字だとしても運命を示唆されるような誤字だな。素敵。
364名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 01:37:21 ID:jlfSQNJ8
勿論、次は「亮くんが彼女を家に連れてくる」編ですよね?
365名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 01:42:17 ID:kMW63DEC
このお姉ちゃんの今後がすげー気になるw
366名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 01:48:50 ID:t5XWC9AD
いっその事、姉ちゃん3分クッキングでシリーズ化すればいいと思うんだ。
毎週、雌猫との料理対決したり。
367名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 03:05:47 ID:a9E1VZ6S
ここの住人的には弱いかもしれんが
http://ameblo.jp/ohwen
ここのアスカさんは、どうかな?
漏れは結構キタんだが。
368名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 07:38:20 ID:a+qypsHN
>>360
ttp://www2.tokai.or.jp/studio-HiRo/amakana/amakana01.html

何言ってんだね
萌要素はあるよ
369361:2007/01/31(水) 08:00:45 ID:mMTqyxjC
今見ると誤字脱字のオンパレード…orz
370名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 08:26:17 ID:fYBCFWD7
>>361

「お姉ちゃん」
「なぁに?」
「…………」
「…………?」
「まさか食事に唾液や愛液を混ぜたりなんて…」ポカッ!
「なに言ってるの!お姉ちゃんがそんなことするわけないでしょ!」
「そうだよね!ごめんねお姉ちゃん僕が馬鹿だったよ!」
「まったく、あ、それより飲み物でも飲みたくない?」
「うん、飲む飲む!いつもみたいにお姉ちゃんの唾液や愛液飲ませて」
「ん、んっ…うふふ、食事に混ぜるなんてもったいないことはしないわよ」
「うん、やっぱりお姉ちゃんジュースは採りたて100%だね」


わざわざ食事に混ぜなくても(ry
371名無し@ピンキー:2007/01/31(水) 08:33:31 ID:mMTqyxjC
>>370
いやいや、あえて姉の片想いだからこその異常な行動だからこその萌えでは?
372名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 09:35:23 ID:ql59vair
>>371
うむ。弟が自分の想いに気づいてくれなくて、悶々とするところが萌えになる。
そして、主人公が姉の想いに気づかない鈍さこそが『修羅場』の源になるのだ。
373名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 09:53:30 ID:m0Wlu1o6
結果なんじゃないか?
ずっとやってて壊された弟とか、過程を妄想するだけでワクテカだね。
374名無し@ピンキー:2007/01/31(水) 10:02:03 ID:mMTqyxjC
姉だけじゃなくて実は弟も姉ちゃんにハァハァしてるのも捨てがたい。でもそれだと修羅場になりにくい、か。
375名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 11:11:42 ID:eA2kkCu1
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:.::/ i.:.:.:.:.:.:.:i.:::.:.:::.レ'´i  'i..:.:i..:.:.:.:i.:.:/ ァ-i:./=ェ;_i;;`メ,i.:.:::.::.:i.:.:.:.:i:.::i
::;|  .|.:.:i.:.:.:.:i.:.:.:.:/| ヾ;|ェ=テミ、i.::.:.:i/   //{f:テヘレメ、 |.:.::.:.:i:.:.:.::∧;:`、
.i|  |.:..:i.:..:.::i.::.:.:.:| ,ク{rソ::i }` \::.|  /'´ .|.i::::::i.j.} `|:..:.:/i.:.:.:/.:.:ヽ.:.ヽ,
. i  `;.:.:i.:.:.:.:iヽ.:.:|i{ .{i.i:::::r.j.  ヽi     |.i::::ノ;;ソ |.:.:/ ; |:.:/:';.::.:.:ヽ;;r'; それがっ わたっしの いい と・こ・ろっ♪
.    ヽ.:.i.:..:.:i ト;:::i  Y:;::;'ソ        ~ー-'  /:/-'.//.:.:.:丶.:..:.:ヽ`i   
     \.:.:.:ト、‐ト;i ~ ̄.    ,     ...::::::..../'´/''/'ヽ、.:.:.:.::i.:.:.:.:.:i.:::}
       \;i,>'i`;...:::::::... \___/    '´ ,/.:.:.:.:.:.:.:`ヽ、::i.:.::.::.::i i;|
       / :/ `、      \/     ./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:  `ヽ、.:.:.:i i
      /i   |  :.::`  、         , '´/.:.:.:.:.:.:.:.:.:      _,>:.|
     ./ i  |   :.:.:.:.:.:.:`i ー、 . _,  .'´  /.:.:.:.:.:.:.:.::      /  .ヽ
     /  i  |    :.:.:.:.:.:.:| ヽ,     /.:.:.:.:.:.      ./     ヽ


       _ アンタみたいのがいるから
      | _> 世界は混乱するんだ!!
      | _>
      | _>
      |_>
  パーン.. ||    (⌒
    _, ,_ ∩  从':;.':;.
 ( ‘д‘)彡 ☆).∵;'。.) ←>>1
     彡   ;.: * 。
    U    ) ,;";:,:  ヽっ
   _||_    ;.;;     i
  <_ |   ∵:・ c_,.ノ
  <_ |
  <_ |
  < |
376名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 14:11:39 ID:GP9otzX3
催促するのは良くないって分かってるけどさ、
一定のペースで投下してた人がぷっつり途絶えると凄く不安になるよね。
何かあったのかな?もしかしたらもう投下してくれないのかな?
もうずっとこの先に悶々としながら過ごさなきゃならないのかな?
ってさ。
377名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 14:17:04 ID:mhAksdgY
>>376を主人公として、職人さんをヒロインに見立てたら萌えた。
378名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 15:17:15 ID:ql59vair
>>376

『ドシャッ』

 力が、入らない。立ち上がることができない。
 あの女の蹴りは私の肋骨を砕き、内臓を破裂させた。
 咳き込むたび、私の口から赤黒い血が飛びだしてくる。

『あなたがSSを投下しなければ、七誌くんは私に書き込みをしてくれる。
 あなたはそこで自分の書いたSSを読んでればいいのよ。
 私が代わりに七誌くんを天国に連れて行ってあげる』
「あの・・・・・・女・・・・・・っっ!」

 許さない。七誌君を気持ちよくさせるのは私だけ。
 私のSSだけが彼のGJを手に入れることができる。

「もう・・・・・・少し。あと、少しで書き終わるわ・・・・・・
 ふ、ふふ、うふふふふ。私の両腕を折らなかったのは、失敗だったわね・・・・・・
 待ってて、ね。七誌くん。すぐ、に・・・・・・SSを投下、するから・・・・・・」

 不思議。これから先の展開がどんどん頭の中に浮かんでくる。
 ――よし!書き終わった!


職人さん=ヒロイン 女=27スレ

とりあえずSS投下を全裸で站椿しながら待つとしよう。
379名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 15:42:24 ID:V8sbnveY
単純に言うと書き溜めしている分がなくなると
急いで書かないと投稿できないからね。
1話を書き上げるのに私は2-3日かかってしまうぞ俺はw
380名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 15:48:51 ID:D+BJP4DA
>>379
二重人格さんだ・・・
381名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 16:33:21 ID:hFiLX4nM
>>380確かにwwそう見えなくもないw
382名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 16:44:41 ID:Ve4rmIFk
>>376
気持ちは凄い分かる。
色んなスレで未完の作品が沢山あるし、それが好きな作品だったら結構ブルーになるw
ただ創作物ってのは全てそういう可能性を孕んでいるし
2chだけでなくネットの小説サイトとかもそうだし、商業作品だって打ち切られたり
ハンタ(rみたいなのもあるし、最初からそういう覚悟もしとくしかないと思う。

ただ2chのSSスレや小説サイトでも、何ヶ月とか1年以上投下が途切れていたのが
いきなり再開したりする事もあるから
作者さんが投下したいと思った時に、気兼ね無く投下出来る雰囲気を作っておく事が一番だと思うよ。
過度の催促をしたり、文句を言ったりするのは逆効果でしかないと思う。
もしかしたらいつか気が向いた時に再開してくれるかもしれないという、僅かな可能性も潰す事にもなりかねない。

まあ、個人的にはたま〜に1行レスで「○○マダ〜?」とかそういうレスがあるくらいなら問題ないと思うし
作者さん的にも、むしろそういうレスがたまにあったほうが嬉しいんじゃないかと思ったりもするけど。
ウザいと思う人もいるのかもしれないけど。
383名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 17:01:14 ID:R3lWEIz/
>>376
その悶々をした気持ちを、自分でSSを書く事によって昇華するのだよ。

「ちくしょー!続きが気になって寝れないんだよバカヤロー!
 あれから一体どんな展開になると言うんだ!!
 こうなるのか!?
 それともこうなのか!?
 それともこんなんなっちゃうのかぁーーー!!!」

そして君は神と呼ばれるようになる。
384名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 17:03:47 ID:YfLBLhCF
かみはばらばらになった
385名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 17:04:51 ID:D+BJP4DA
ああ・・・美人サイコさんに付き纏われて躾けてもらいたい・・・・
386名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 17:27:50 ID:KbhMmbFE
大学生の神々が多いと思うから、この時期はマターリ茶でも飲んで全裸で待とうや
つ旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦
387名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 17:31:33 ID:ql59vair
>>376の人気にシィット!
388名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 19:16:10 ID:j2NFLfp9
>>383
そうそう。
SS職人のみなさんは想像力が優れているのだ。
だからみんなも四六時中ハァハァしてればSSを書けるようになるはずだ!

俺なんか幼稚園のころには戦隊もののピンクを裸に剥いてたぜ!
だから今こんなところにいるんだけどな!hahahahaha!
389至極短編  ◆I3oq5KsoMI :2007/01/31(水) 19:25:38 ID:aY2pe1cS
vol.4 とある死者の魂の風景



僕は他の人が持っていない、特殊な力があります。
それは、幽霊に触れるというものです。
霊感が強い人は沢山いますが、僕のように触ることができる人は、たぶんいないでしょう。

それはさておき、僕はこの度、一人暮らしを始めることになりました。
『……おはよう……』     
始めたのですが。
『……今日みたいな雨の日だった……』
少し困ったことがありまして。



『……私が殺されたのも……』



はい……実は、新しく借りた部屋に幽霊がいましてね。
強制的に同棲生活を送らされています。
やはり、家賃月3000円、敷金礼金なしには理由がありましたか。
破格の安さに惑わされて、物件を下見することなく即決したのがまずかったようです。

彼女――あやめさんは5年前に発生した、強盗殺人事件の被害者です。
当時のことはあまり詳しく知りませんが、なんでも酷い殺され方だったようで、その時の恐怖と苦しみのせいでいまだに成仏できずにいたのです。

「あのね、あやめさん」
『……なに……』
彼女と初対面した時にぶつけられた怨念は、それはそれは凄まじいもので。
「朝からテンション下がることは言わないでほしいなあ……なんて」
耐性のかなり強い僕でさえ、気を抜けば卒倒してしまいかねないほどでした。
『……だって……憎いから……』
確かに彼女の存在は厄介でしたが、それ以上に厄介なものがありました。
「そりゃあ、自分を殺したやつのことが憎いのは分からなくもないけど、ね?」
それは、僕の半端な優しさです。
『……違う……』
僕は自分を呪い殺さんとする幽霊に対して。
「違うって何が?」
助けてと言いながら僕に怨念をぶつけるあやめさんを。
『……憎いのは……あなた……』
大丈夫、僕が助けてあげるよと語りかけ、あまつさえその冷たい身体を抱きしめました。
「ええっ!?なんで僕が!」
その結果、僕はあやめさんに。



『……憎いぐらい……愛しているから……』



恋愛感情を持たれてしまったようなのです。

390至極短編  ◆I3oq5KsoMI :2007/01/31(水) 19:26:41 ID:aY2pe1cS
それ以来、僕はあやめさんにずっと憑かれています。
まあ、あやめさんは世間一般で言うところの『悪霊』なわけですが、一緒にいてだんだん分かってきました。
彼女は純真無垢な少女のままなんです。
そりゃまあ、彼女の回りを覆う青白い光や、真っ白な死に装束には度々ビビりますけど。
それでも、何気に僕のことを心配してくれたり、家族のことを思い出して泣いたり。
本当に綺麗な心をしているんだなと思います。
最初、氷のように冷たかった身体は、日に日に温かくなっていきました。
それは、悪霊から無害な幽霊になっていることを表します。
僕のことを想ってくれて、変な言い方ですが怨念が和らいでいるようです。
良かったと思います。
このままいけば、あやめさんは成仏できるのですから。

ですが僕の予想は大きく外れ。
『……さっきの女……いつも馴れ馴れしいね……』
あやめさんは成仏するどころか。
「いや、大学生なんてそんなもんだと思うよ?」
ずっと僕と一緒に居たいなんて言い出しました。
『……私……あなたのことが誰よりも好きなのに……』
そんなことが許されるわけがないと僕は言いました。
「それは重々承知してるけどさ、女の子と喋っただけで怨念ぶつけるのはやめてよ」
すると彼女は。
『……分かった……でもね……』
最初の頃にぶつけた怨念よりも遥かに強い力で僕を縛り上げ。
「でも?」
死んだほうが楽なんじゃないかという恐怖と苦しみを与えながら。
『……前にも言ったけれど……』
動けない僕を後ろから抱きしめて、耳元でこう囁きました。



『……捨てられるぐらいなら……あなたを殺して……ずっと離れられないようにしてあげる……』



あやめさんは、これからもずっと、悪霊のままなのかもしれません。


(おわり)
391 ◆I3oq5KsoMI :2007/01/31(水) 19:30:11 ID:aY2pe1cS
データ整理をしていると、大分前に書いたものが出てきたので投下させていただきました。
申し訳ありませんが、リアルが忙しくて猫の話はもう少し先になりそうです。ご容赦下さい。
392名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 19:32:55 ID:j2NFLfp9
ヤンデ霊GJ!
393名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 19:40:39 ID:mhAksdgY
『ツンデ霊』に続く新ジャンル発生!?
394名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 19:48:06 ID:SW0l164+
幽霊ネタは美味しい
俺もSSネタに使いたいぐらいだよw
一度、誰かが幽霊ネタをやると他の誰かが幽霊ネタをやろうとしても
パクリと指摘されるのがオチだから早いもん勝ちですね
395名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 20:21:22 ID:SP8INAb2
あやめさんかわいいよあやめさん

>>394
もっとひねるんだ
首が一回転する勢いで
396名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 20:21:39 ID:KbhMmbFE
悪霊嫉妬ktkr!
>>248
そんな事無いぞ、嫉妬や修羅場を愛する魂が伝わってくればどんなネタだろうともバッチコーイだ!
397名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 20:23:01 ID:KbhMmbFE
アンカー豪快にミスったOTL
×248
>>394
398名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 20:31:04 ID:8QSOfTYH
>>395
なんかそんなネタがあったな。
首を一回転させると、変わってないように見えても根元は変わってるって言うやつ。
399名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 20:49:27 ID:YvSINzCR
>>368
絶望的に萌えた。
……ちょっと………ネタが降りてきたかな……
400名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 20:51:31 ID:dlwWJ+iO
木崎さんの話かと思った
401名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 22:47:02 ID:siQ5RrEZ
なんか最近半分雑談スレと化してるな
402名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 22:48:10 ID:SP8INAb2
いつもこんなだ
403名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 22:52:34 ID:YjezB64R
まあ、嫉妬スレの終焉がやってきたんだよ・・
当時の神作家による読めない程の投下は・・夢の世界の出来事だったんだよ
404名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 22:58:49 ID:dlwWJ+iO
終焉とか言い出す奴が現れるうちはまだ健在だわ
過疎でもない限り全然問題ないっつうの

なんか最近「最近このスレは〇〇だな」ってレスをよく見かけるなあ
405千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/01/31(水) 23:15:13 ID:/Wv2d/ft
【伍】





思考という情報の海に、熱い吐息がノイズをかける。
俺は無骨な屋上の床に押し倒され、小さな手のひらで顔面を固定されていた。

「はぁ、はぁっ…」

中天の空に響くのは、淫魔に憑かれたような瑠璃の喘ぎ声。
絶えず舌と舌が混ざり合う音をBGMに、下半身が激しく律動する。
“はじめから俺のため”用意されていたように、ぴったりとブツを呑みこんでいる瑠璃の秘唇は、薄い陰毛が陽光に透けてこの体勢でも伺い見ることができる。
だが俺が視線をそちらに遣る度に、首筋に痺れが発生し、瑠璃が激しくうごめく。

――――――

おかしくなりそうなほどの快楽。
黒い理性のブロックが白く塗りつぶされ、徐々に射精感が高まっていく。
もう、何度目だろうか?
そう逡巡するのすら馬鹿馬鹿しいくらいに、ただ気持ちがいい。

「あ、あはっ、ときはるちゃん、き、きもちいぃ?」

瑠璃と溶け合うのはとっくの昔に日常の一部になっていたが、これほどまで凄まじい交合は初めてだった。
杭をより深く自分の膣(なか)に打ちつけ、瑠璃は俺という存在を体に刻み付けている。
視界には彼女の――――熱毒にうなされるような頬と、じっとりと絡みつくようで、それで淫蕩な瞳しかない。
他の存在は全て断絶され、音という部外者さえも淫水が弾けるそれによって、ただ欲望を高めるだけの踏み台に成り下がっている。

「う…くぅ…」

芯から惑わすような嬌声がなければ、瑠璃は俺を使って自らを傷つけているようにしか見えない―――それほどまで激しい上下運動だった。
自分を苛む何かを削ぎ落とすように俺を舐り、愛し、この胸板へ深く沈み込む。

そう、たしかに、“狂っている”

何が狂っているのか、狂ってしまっている俺の頭では、解を求めるうちにまた―――狂ってしまう。

「時春ちゃん、時春ちゃんッ!!!!」

頬を締め付ける掌が、ごく自然な動きで喉仏に移動する。
そのまま、ぎゅうううぅぅ…と白魚のような指が絡まると、回転数の上がった俺の心臓がガソリンを求めて揺れ喚く。
緩やかな指先の愛撫。
死へといざなう甘美な快楽は、脳へ思考の光と引き換えに、煮えたぎるような嫉妬の麻薬を塗りつける。

ひりひりと頭蓋の裏を引っ掻き、細い血管を、手繰って千切る。
蝋に点った小さな炎は、業火のように酸素を燃やし尽くしていく。

「る、り…るり、る……り?」
「どうしたの?時春ちゃん。気持ちいい?ねぇ、気持ちいい?」

そのどろどろと濁った瞳。
いつもと変わらない、真っ黒で純粋な瞳なのに、奥に透けた憎悪がある。
歳を経て何度も何度も上塗りされた感情は、分厚く積もった灰土のように爛れ、燻っている。

406千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/01/31(水) 23:16:23 ID:/Wv2d/ft

「気持ちいでしょ?こうすれば、あたし以外誰も見えなくなる。あたし以外愛せなくなる。あたし以外の名前を呼べなくなる…
 ねぇ時春ちゃん。あなたの恋人は、他の誰でもない、このあたしなの。ずっと決まっているの。昔から。
 ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと昔から。
 何度この思いを舌に乗せても、何度胸に杭を打ちつけても、どれだけこの掌が罪で汚れても、絶対に消えなかった大切な想いなの。
 真っ赤な、お華みたいに可愛くて、真っ黒な夜空みたいに綺麗なの。千年降り積もって、ようやく時春ちゃんに届く大切な想いなの………」

瑠璃は極まった喉から漏れる微かな息さえも、深い口付けによって奪っていく。
むぅ、ちゅ…じゅうぅ…という淫蕩な音に、いつかの言葉が共鳴する。
瑠璃の唾液を味わうと思い出す―――首筋を突き刺す痺れにも似た、激情。

『時春ちゃんは、全部あたしのものなの。顔も、腕も、脚も、お○ん○んも、体を巡る真っ赤な血も、吐いた息も全部、あたしのもの』

呼吸がヤバイ。
心臓はSOSのシグナルを打ち違えたのだろうか、先程からエンストしたような情けない音と共に、とっくに停止している。

きっと頭を巡るこの言葉さえも奪われる。
瑠璃に、全部、総て、何もかも。

脳内を走る細い電流も、何れ瑠璃に喰らい尽くされる。


“   時   春   ち   ゃ   ん   ”



そうダ、コんna、fuう■―――――――――――――――。



407千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/01/31(水) 23:17:28 ID:/Wv2d/ft


*   *   *   *   *   *   *   *   *


目の前の惨状をどう言葉で表していいのか、呆然と活動を停止した思考の中でわたしは模索する。
今日。
わたしは鬼の呪法によって苦しむ時春様を、下唇を噛み締めながら見つめ続けた。
わたしと、あの女の瞳にはしっかりと映っているだろう…忌々しいほど深く根を下ろした、業魔の印が。
何度噛み切ったかわからない唇によって、咥内は鮮血の海と化した。
きっとこのままならリップやルージュをせずとも、炯炯とこの唇は赤く色づくはず、

そう。わたしは、ただ見つめることしかできなかった。
―――鬼の見えない手に引かれて、薄穢い嫉妬の海に焼かれる時春様を。
わたしは、ただ睨み付けることしかできなかった。
―――千歳を乗り越え、災厄にも劣るほど忌々しい殺意をあの女へ抱いて。

だから、この光景は、とてもからだと、ココロに悪い。

『あ、あはっ、ときはるちゃん、き、きもちいぃ?』

分厚い鉄の扉の向こうから、耳障りなほど伝わる男女の艶声―――
どうにも、このわたしを動かす青白い炎に、嫉妬という薪をくべ、怨念という渦へ昇華させてしまう。

奥歯が、がちがちと鳴って、目の前を赤い火花が散る。

こぶしが、ぎりぎりと鳴って、腕の付け根から暴力という洪水となって堤防を押し流そうとする。

膝が、がくがくと震えて、殺戮のバネを十分に筋肉へ伝導する。

薄く開いた鉄扉の向こう、広がる青空とは正反対に、暗く淀んだこの空間。

時春様が数度腰を跳ね上げ、絶頂の飛沫があの女の顔面に吹き上がると、わたしは風のごとく飛び出した。


―――見えなかった、と思う。

大きく振りかぶったかと思えば、掌の小さな痺れと一緒に、乾いた音が響き渡った。

ぱぁん。

打ち抜いたまま硬直するわたし、時春様に跨ったまま打たれた頬を押さえる汚らわしい犬畜生。

スローで犬の奥歯がぎり…と噛み締められると、濁った残像を残して再度乾いた音が響く。

ぱああぁぁん。

青天に相応しい爽やかな音。
場違いなほど湿度の失せた空気。


ひりひりと痛む頬を押さえ、わたしは何度拭ったか判らない口の端を、痺れの残滓が伝う掌でこすり落とした。
408千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/01/31(水) 23:28:03 ID:/Wv2d/ft

「泥棒猫」

「なにか用かしら、捨て猫さん」

血が付いたままの右手を、再度打ち抜く。

―――乾声。

左頬を衝撃が襲う。

―――乾声。

打ち抜く。衝撃。打ち抜く。衝撃。打ち抜く、衝撃。打ち抜く、衝撃。打ち抜く打ち抜く打ち抜く。衝撃衝撃衝撃。うちn、衝撃―――
乾いた音乾いた音乾いた音乾いた音乾いた音かw―――



「…はぁっ、はぁっ…早くそこからどきなさい、泥棒猫。そこはアンタの場所じゃないでしょ、自分のおトイレの場所も忘れちゃったの?
 本当にお馬鹿な子猫ちゃん…昔から、何も変わってないわね。困ったらすぐ不機嫌になるところとか、おつむがちょっと足りていないところとか…
 変わってない。変わってないわ、愚かな妹…わたしの影に隠れて、こそこそ世界を呪うことしかできなかった馬鹿な―――」

「うるさいっ!!!!!いまさら何しにきたの!!貴女が泥棒猫でしょ、根暗女。ちょと綺麗だからってみんなにちやほやされて…
 “時春様”だってアンタの上面しかみてないんだから!!そうよ!!時春ちゃんが今の顔見たら、なんていうでしょうね?
鬼灯なんてかわいいものじゃなくて、カボチャかしら!!
 それほど情けないわよ、アンタの顔!!!真っ赤に晴れ上がって、熟しすぎて腐ったカボチャみたい。
 昔はアンタに盗られたけど、もう渡さないんだから。絶対に、絶対に!!!だからさっさと熟れすぎて腐り落ちた穢い感情抱えて谷底に沈んでなさいよ。おとなしく。
 今度はちゃんと、火葬してあげるから!!!」

憎い、憎い、憎いっっっっ!!!
ふてぶてしくも腐れた股間で時春様を誑かして尚もわたしに逆らう…
愚妹の分際で馴れ馴れしくもわたしの肌に触れたばかりか、かのほどに打ち果てるとは…

「おのれぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!」

掴みかかり、鬼の角を思わせる髪の束を引きちぎる。

「気持ち悪いのよ、ぶつくさぶつくさ一日中つぶやいて、アンタ自分が根暗だってこと気づいてないの??
 ホント、気持ち悪い。吐き気がする。その真っ赤に染まった唇も、握り過ぎてしわくちゃになったスカートの端も、全部みすぼらしい」

409千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/01/31(水) 23:37:45 ID:/Wv2d/ft

お返しとばかりに、則頭部に垂れた髪を引っ張られる。
反対の爪はわたしの首筋に食い込み、浅く肌を傷つけた。

「こんな眉毛、今の時代流行らないわよ!!気づいてないの?いい加減旧いって。夢枕に立ったって誰も応えてくれないわよ、この蛇婆!!」

「ああああああああああああああっ!!!」

二人でもんどりうちながら、硬い床をボールのように転がる。
熱くうねり過ぎた思考が邪魔をし、殺意をうまく指先に伝えられない。
腕に篭める力よりも、殺気立つ顔筋だけが暴走する。

「死ね、死ね、死ね!!!」

からだ全体を使って、瑠璃の頭を石畳に叩きつける。

「死ぬのはオマエだ!!!!!!」

腹腔を何度も蹴られ、息が詰まる。
しばらくすると呼吸に刺すような激痛が混ざる。
切り裂かれるような息に変わっても、わたしは瑠璃を打ちつけるのを止めない。
瑠璃が死ぬまで、打ち付けるのを止めないッ!!!

ごすっ、ごすっ、ごすっ…と鈍い音と共に、頭が割れて確かに朱が飛び散る。
このまま、このままやれば…禁法を使わなくとも…

「や、いた…ときは、る、ちゃん、た、すけ…」

がすっ、ごすっ、ぼすっ…

肉が潰れるような鈍い音。
いよいよ剣呑なものへと変わり、わたしの動きはさらに加速する。
あと少し、あと少しで…

「うふふふ、時春様が、貴女みたいな豚、助けるわけないでしょッ―――おとなしく、畜殺されろッ―――――――――」

止め。
と念じながら、べったりと顔面をぬらす朱化粧に引きちぎられた黒髪を大きく引き寄せ、石畳に叩きつけてその硬い頭骨からあふれ出す鮮血交じりの腐れた脳漿を描き出してやろうとして…



なぜか思い切り左頬を殴りつけられるわたしがいた。

410千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/01/31(水) 23:38:47 ID:/Wv2d/ft






窒息プレイで卒倒させられ、呑気にも目を覚ましてみれば掴み合って石畳に頭を打ちつけられている瑠璃がいた。

側頭部で二つにくくった黒髪はほどけ、赤く染まった白い面に張り付いている。
赤…って、血??
なんで瑠璃が頭から血を流して…

ようやく真剣を取り戻した頭で確認すると、瑠璃と掴み合っているのは転校生の藤原“ほおずき”さんだった。
鼻面に皴を刻み、蛇のうろこを思わせる青筋を顔全体に浮かべた彼女の形相は、凄まじかった。
不自然なほど腫れ上がった頬に、口からばたりばたりと零れる血の塊。
機械的な動作で瑠璃の頭を振りかぶるその姿と、狂気に囚われた瞳は間違いなく危険を伝えてくる。

なんで、瑠璃が、“ほおずき”さんに殴られてるんだ?
どうして、瑠璃と、“ほおずき”さんが、こんなにも凄惨な表情で、罵り合っているんだ??

冷静を取り戻したと思った脳は、あまりにも突拍子過ぎる光景に再度フリーズする。
それでも必死に頭を振って再起動を果たすと、俺ははじかれたように起き上がった。

何より、瑠璃がヤバいのだ。
俺の幼馴染で、大事な彼女の瑠璃。
たとえどんな仕打ちにあろうが、どんなに嫉妬深くて独占欲が強かろうが、目の前で苦しんでいる様を見て冷静でいられるほど俺も日和ってはいなかった。

色を失っていく瑠璃の瞳。
ヤバい、本当にヤバい。

“瑠璃、ほおずき

“瑠璃姫、鬼灯姫”

そして俺、“時春”

夢の登場人物、照らし合わせたように現れた人々。
生き写しの面、“あまりにも都合がつきすぎる現状”


「ぐっ…」


頭痛が襲う。
全身を弛緩させようと、まるで麻酔のように体の芯から崩れていく。

はやく、いかないと、俺の、瑠璃が、俺の、瑠璃が…

この俺、時春の、瑠璃が…


「や、いた…ときは、る、ちゃん、た、すけ…」


411千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/01/31(水) 23:39:42 ID:/Wv2d/ft

『時春は、千歳廻りた後、必ず鬼灯と交わる』

頭痛が、言葉に変わる。
しらねぇよ、そんな約束、しらねぇよ。

俺は知らない、知らない、知らない!!

『時春、しかと見よ。お前の瞳は、どちらに向けられるべきなのか』

しらねぇよ、“時春”

てめぇの事情なんて、しらねぇよ…

押し付けるんじゃねぇよ…
女々しいんだよ、うざったるいんだよ!!
云いたいことがあるならはっきりいいやがれ、俺の頭じゃなくて、耳に直接言いやがれ!!


『時春、「ときはる…ちゃん…、たすけ、て…」



気づけば思い切り転校生の顔面を殴っていた。
この際女だからとか、そういう考えは総て抜きにして、俺は思い切り拳を振りぬいた。
骨と骨がかち合う感触。肉が潰れる感触。
吹き飛びながらこちらを魂が抜けるような瞳で射抜く転校生の姿が焼きついたが、捨て置いて瑠璃に駆け寄る。

「瑠璃、瑠璃!!!」

「あ……時春、ちゃん…やっぱり、たすけて、くれ…たね…やっぱり、ときはるちゃんは、あたしを…選んで、くれたんだよね…うれしいよ、うれしい…」

血に塗れた顔で、それでも健気に笑う瑠璃。
いつも俺を高圧的に見下ろす態度とは違う。
初めて見るような、心の底からでた笑顔、そう思わずにはいられない輝きがあった。

「瑠璃、早く、助けないと、病院、保健室か?!!」

「ときはるちゃん、やっぱり、あたしの、だいじな、だいじな…ひと、やっぱり、あたしだけを、あいして…」

「説明は後でしてもらうとして、とにかく急ぐぞ!!」

まったく会話がかみ合わないが、羽のように軽い瑠璃を抱き上げると、俺は疾走する。
満身創痍だというのに、とてもうれしそうな瑠璃の表情。

背後に纏わりつくじっとりとした瘴気には、気づかないフリをした。

412千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/01/31(水) 23:41:41 ID:/Wv2d/ft







あ、れ…?
何でわたしは屋上に横たわっているの?

何でボロ切れみたいに転がっているの?

ココロに開いた穴が大きすぎてわからないよ、時春様。

あの女を殺して誓いを果たすのではないのですか?時春様?

どうしてわたしの邪魔をするのですか、時春様?

そう、うん、ええ…

何で、なんで、ナンデ、貴方様が……


死にかけの猫をかばって“千歳の華”であるわたしに、容赦ない拳を見舞うのですか?


「あは、あはははは、アハハハハハハハハハハハハハッ!!!」


あの誓い、うそなの、時春様?

炎の中で、わたしを優しく抱きしめて、囁いてくれたじゃないですか。
薄れ行く意識の中で、ちゃんとわたしの指に絡めて下さったではないですか…

酷い、あまりに、あまりに酷すぎる。

どんな悲劇に比べても、こんな結末は寒すぎる!!!

たとえ数瞬といえど、貴方と離れていた間は、どれほど胸が泣き叫んだことか、まったく伝わっていなかったようですね?


時春様、時春様ッ!!!!!

残酷すぎる、残酷すぎるよ…

こんな現実、酷すぎる…




「絶対に、認めない…」

もう、あれを―――



413千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/01/31(水) 23:42:37 ID:/Wv2d/ft

*   *   *   *   *   *   *   *   *




「また、この夢かよっ!!」

罵倒に返すものはなく、ただ闇に吸い込まれていくだけ。
胸を締め付けられるような恋しさに、俺は目を覚まし、再びそれが夢の中だと気づく。

どうして、こんなにも苦しく、愛しい?
どうして、こんなにも愛しく、苦しい?

ただ二人は好きあっていただけなのに、何故世界はそれを引き裂こうとする?
所詮ただ一人の人間、肉の塊。時の流れには逆らえない。
密かに偲ぶ恋は、夜の中に焉わるしかない。
人知れず、かなう事無く、記憶の中だけに埋没していく。

――――だからこの涙は時を越えたのだろう。
美しく散っていく思いの中で生まれた誓いは、内側から焦がす様に俺を締め付ける。

「ちくしょう…」

普段なら涙は乾いているはず。なのに、今日だけは悲哀の残響が手のひらにとめどなく零れ落ちていく。
止まらない、止まらない、止まらない。
俺はあいつじゃないのに。あの人は、ましてや瑠璃を殺そうとした転校生じゃないのに!!
目蓋の裏に焼きついた彼女の姿に、発火するほどの愛しさを覚える。

「あれだけ瑠璃に言われただろう??俺は!!俺が好きなのは瑠璃だ、瑠璃なんだよ!
 “時春”は関係ない!!」

言い聞かせるように叫んでも、喉が虚しく渇くだけ。
はぁ、はぁ…
瑠璃、瑠璃…

“駄目です、その名を、呼んでは駄目です。時春様、どうか、私の名前を…”

“だまされているのです、時春様。ですから、先はあのようなことを…”

“あの女同等、わたしにも、後がありません。だから、どんなに苦しくとも、誓いを忘れないでくださいまし…時春様…”


“瑠璃”

何故かその名前を舌に乗せるたびに、頭が割れそうに痛い。
視界が回転し、脳内に声が響く。
割れそうな不協和音、猛る嘔吐感。
縋る様な、焼けるような、切迫する怨念が身を締め付ける。

『時春さまぁ…時春さまぁ…私を捨て置くなど、許せませぬ。あれだけ愛を誓い合い、あれだけ睦み合いましたのに、あのような女とぉぉおおお…』

「がぁあああああああっ!!!」

414千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/01/31(水) 23:43:48 ID:/Wv2d/ft

頭を振る。
雑念を追い出す。
奇妙なほど重なる転校生の姿と、鬼灯姫。
そして、立ち上る白大蛇。
伏せた目が、金色の目が、輝くごとに脳を軋ませる。
真っ赤に晴らした頬、血溜まりと化した白目に、閃光が宿る。

『時春さまは、私のもの。私も、時春さまのもの。どうして、どうしてぇ…』

「あ、あ、あ…」

『私を見てください。私を見てください。私を見てください。私を見てください』

「や、メ、ロ…」

『私を、鬼灯を、鬼灯だけを。愛して、愛して、愛して…!!』


――――き、は…ん。

――――――――とき……る……ん…

――――――――ときはるちゃん!!


「「     時春ちゃん!!!     」」

「はっ――――――――」

全力で身を起こす、なによりも先に確認しなくてはならないこと。

それは――――――――

顔を巡らす。
薬、包帯の匂い。
病院だ。
窓側の、一番奥の、爽やかな風の吹き込む場所。

病室のベッドの上。
白い部屋に似つかわしくないほどの笑みを浮かべた少女。
そんな彼女に縋り付くように伏せている俺。
顔を上げると、その少女と瞳が重なる。
あぁ、たしか■■だ。
黒い黒曜石を思わせる、深く、慈愛にあふれた輝き。
その綺麗な瞳が、溶け落ちそうなほど潤んで―――

「時春ちゃ…」
「お前、誰だ?」

と、俺は言った。




415千歳の華 ◆pmLYRh7rmU :2007/01/31(水) 23:46:17 ID:/Wv2d/ft

投下の間隔が開いて申し訳ない。
六話でさっくり終わらせる予定でしたが、+エピローグを考えています。

もっと緊迫した修羅場を書きたいのに、文章力の無さが悔やまれます。
416名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 23:55:16 ID:ZS5On3LV
>>391
わずか2つのレスでここまで萌えさせられるとは・・・
ヤンデ霊とはヤンデレと霊の幸福な出会いですな。

>>415
凄いのキターーー!!!
GJ!!
十分緊迫した修羅場でガクブルしつつも萌えも堪能させてもらいましたよ。

職人さん達は
好きな時に書いて、好きな時に投下してくださればいいと思います。
ただそれを待ちわびるのみです(全裸で)
417魔女の逆襲第15話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/01(木) 00:14:31 ID:VIM/AW63
 りぃん

 その夜。
 早百合にとっては眠れない夜だった。
 一月も半ばを過ぎた寒波が襲い掛かる夜だ。暖房も明かりも点けない部屋はすぐに寒くなる。
 寝る場合では貧乏人よろしくな薄い煎餅布団ではガタガタ震えて、ベッドが揺れてぎしぎしと音を立てるほどの。
早百合のベッドには立派な羽毛布団と毛布がかけられてあり、熱をとどめる効果は抜群で、いつものように体を布団で包めば暖を取れるのは簡単だ。オプションで湯たんぽなど追加すれば快適に眠りに付くことができる。
 しかし、早百合の眠れぬ原因は決して寒さのせいでない。むしろその逆。早百合は熱さで眠れなかった。
 もちろんここでの漢字のとおり、『暑さ』で眠れないというわけではない。早百合の部屋があるのは北半球に位置する日本のある町のある家の二階であり、例外的に早百合の部屋だけが気温が高いという例外もない。
 さらに言うなら、熱いのは早百合の周りではない。早百合自身が熱くなっている。
「うぅ……うぅぅぅぅぅ………」
ベッドの上で早百合は悶えていた。
 体中が熱い。風邪? 違う。風邪とは違う。風邪のなかで体の奥から熱と興奮を生み出す症状は早百合は体感したことが無かった。つまり初めての感覚である。
 ごろりとこの夜何度目かの寝返りをうって仰向けになる。布団もかけず、ベッドの上に放り出された四肢。汗がだらだら出てまとわりついて気持ち悪くなったパジャマはすでに脱いでいた。パジャマの布が留める熱さえも煩わしいのだ。
 ゆえに、早百合は下着一枚である。その下着もくちゅくちゅという音と汗と水でびしゃびしゃに濡れていた。

りりりりりりりりりりりぃん

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
 口から断続的に漏れる吐息。どくどくと体中の血流が音を立てて流れる感覚。そしていまにもはち切れんばかりに血液の流動を繰り返す心臓。ビクビクと疼くなにか。
 早百合はジェットコースターに乗ったときのことを思い出した。そういえば小学生の頃、九州のスペースワールドでタイタンに乗ったときも、こんな風だった。しかし、今はジェットコースターの座席では無い。自分の部屋のベッドの上である。
 いまの早百合の状態は普通ではない。誰が見ても明らかであるし、早百合自身も自覚していた。体の熱さ。そして、それに鼓動するように起こるひとつの感覚。
 頭の中で早百合の下腹部のある部分がうずきを訴えている。
 はじめての感覚。早百合はなんとか気持ちを静めようと羊を数えようとする。が、その羊も興奮してニュージーランドの映画のように凶暴に暴れて柵を引きちぎるイメージしか浮かばない。素数も数えようとしたが5で止まってしまった。
 目をつぶっている早百合のまぶたの裏に写るある光景。早百合の脳内ではその光景がテレビでも見ているように無意識的に浮かんでいた。とても鮮明に、はっきりと。
 早百合は写った光景を見たくなかった。ダメだ。ダメだ。だめだだめだだめだだめだだめだめだめだめだめだめぇ………。
「だめぇ……だめなのにぃ……」
自分の意識とは離れて、別の意思をもったように蠢く自分の右手。ぞわぞわと自分の体を慈しむようになでまわしている。自分の手だというのに、その指先が触れて肌をなぞるたびに、早百合の熱い吐息は荒くなり、甘美な刺激が脳にこだまする。
 まるで透明人間に陵辱されているようだ。
まったくそんなつもりはないのに。まったくそんなことはしたくないのに。どんどん、興奮してしまう。まったく収まらない
 胸を徘徊していた右手がゆっくりと方向を変えて、おへその上を通り過ぎる。まっすぐと目指す場所は下腹部のその下の蕾。
「だめぇっだめぇっらめぇっ……そんなのやだぁ………せっかく……けっしんしたのにぃ……」

りりぃいん

 早百合は処女である。特定の彼氏も居たことは無いし、そういう関係にもなった事が無いので当たり前だ。ただ、性欲に関してはかなり消極的だと自負している。
高校入学の頃、ちょっと大人の階段を進んだ友人に(断じてねねこではない)一人での性欲処理の方法を聞いたことはあったが、いざやってみると自分にはいまいちでそれ以降こういった行為をすることはなかった。
早百合はいつも思っていた。なにこれ、こんなものに興奮するの? と。しばらくの間その友人に将来の夫婦の性生活についての心配をされた。余計なお世話じゃ。
418魔女の逆襲第15話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/01(木) 00:15:29 ID:VIM/AW63
この時の早百合が、今の早百合の状態を見たならば泣きながら情けなく思うだろう。自分のベッドの上には、裸で悶えながら右手を下着の布の一枚下をぐしゅぐしゅとまさぐっている自分が居るのだから。
なんだ、私は。発情期の犬か。
自分でそう思うが、行為は止まることなく続いていた。
「あひぃ……ひぃ……」
弄るたびに広がる甘美な刺激に酔いしれている自分。その手は明確な意思を持って動き突起を揺らし刺激を与え続けていた。
早百合の頭には二つの音が響いていた。一つは警笛。その手を動かすのをやめろと言う声とともになるサイレン。もうひとつは、

りりりりりぃん

鈴の音。音が鳴るたびに、頭に響くたびに、快楽が体を陵辱し欲情が生まれ、さらなる刺激を求めるように手を動かす。自分に響かせるように自分の手が大きく布の下から水音をたてている。
体が快楽でどんどん潤っていくのに対し……、彼女の心は泣いていた。精神を痛めつけられていた。
彼女が持っていた貞操概念がピシリピシリとムチで打たれ、もともと持っていた恥じらいがガラスで引っかかれたように傷つけられていく。

りりりりぃりぃりりぃん。

そして、それ以上に彼女の精神をもっとも痛め続けているのが、脳内に広がる映像だった。
「やめぇてぇ……これ以上は……わたしのぉ、きぃもちを……穿りかえさないでぇぇ……」
彼女の脳内に浮かぶ映像。
それは、良樹と早百合が抱き合ったまま粘膜を擦り付けあう映像であった。
アダルトビデオのように上空から見える良樹、そしてそれに抱き寄せられて股間を押し付けている自分。アダルトビデオのように第三者の目線から自分が抱き合っている様子が見える。
良樹の体が動き、早百合の体をまさぐり始めると意識は抱き合っていた早百合に移る。まるで擬似体験のように目の前で揺れる興奮した良樹の顔。その顔を見つめるだけで溢れる心からの幸福感。そして手から生まれる刺激と奥から湧き出る快感。
早百合の体には快楽が、そして自分のまぶたの奥には良樹との行為の映像が。
まるで早百合をクモの糸のようにがんじがらめにして、この背徳的な悦楽から逃がさないようにしていた。
しかし、意識の奥では早百合は抵抗していた。ここでこんな妄想に、妄執に流されてしまってはいけない。せっかく、せっかく、諦めてしずるに……魔女に、魔女に良樹を渡したのに。
今日で、良樹のことを、すべて、諦められると思っていたのに!!
しずるさんと良樹と私でずぅぅっと仲良く一緒に過ごせると思ったのに!!

りりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりぃん

突然、まぶたの裏の良樹の虚像が大きく揺らいだ。良樹の顔が赤く、そして苦しげにゆがむ。せつな、早百合の粘膜にぶしゃりと熱いなにかをぶつけるような熱い熱いの液体がかけられる様な生々しい刺激。
それに呼応するかのように今まで以上の大きな快感が脳髄の奥の奥まで駆け抜けた。
早百合の抵抗していた最後の砦が破壊される。
頭に浮かべていたしずるの笑顔が拡散し、世界が良樹一色となっていった。
「やめぇ……やめぇ………やっ………。 ………よ……よしきぃ……、よしきぃぃ……、よしきぃぃぃぃっ!」
 叫ぶのは良樹の名前。良樹を求める声。
これは……私の願望なの? がんぼう、がんぼう………。
がんぼぉ……。あぁぁ、いい。いぃ……。

りぃん

 もうどうでもいい。しずるさんなんてどうでもいい。わたしはよしきといっしょにいたい。

りぃん

よしきとだきあっていたい。ずぅーっとこすりあっていたい。

りぃん

よしきぃ。だぁいすきぃ。よしきぃぃ……。

りりりりぃん
 
 早百合は背筋を弓なりに伸ばして達した。ビクビクと下半身の渡る最高の快感が余韻が波のように早百合に纏わり付く。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、よしきぃ……」
しばらくの間、早百合は裸でぐしょぐしょの体を晒していた。
程なくして、体の奥から湧き出した熱は収まる。あれほど乱れていた吐息もすぅすぅと静まり、本来の一月の部屋の寒気が戻ってくる。
早百合はようやく落ち着いた興奮に安堵した。もはや、恥ずかしがる気力も体力も無かった。
布団に包まる。目をつぶればすぐに眠気が襲ってくる。
ああ、ようやく眠れる。そう呟くとそのまま早百合は、夢の世界へ誘われるように旅立っていった。
しかし、誘われた夢の世界は地獄そのものだった。
419魔女の逆襲第15話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/01(木) 00:16:23 ID:VIM/AW63
りぃん

夢の中、畳張りの部屋に早百合は立っていた。
学校の、しずるに案内された茶道室。封印された小さな小さな部屋。
そこに学校の制服と体操服とブルマが脱ぎ捨てられたように散らかっている。
早百合は嫌な予感がした。
 早百合は何かを感じ、急いで外に出ようと茶道室のドアへ走り、開けようとする。
「し、し……しずるさん……しずるさ……しずるっ…」
「んっ、んっ、兼森良樹……良樹……よしき……よしき……」
そこに突然、後からお互いの名前を呼び合う声がした。
恐る恐る振り向く。
そこに居たのは、茶道室の真ん中で裸で交わる良樹としずるの姿だった。
「!! よしきっ!? しずるさんっ!?」
 いままでいなかった筈なのに、突然現れた二人の姿。
「な……なにやってるの! こんなところで!!」
 早百合は激昂する。
 しかし、二人はそれを無視するかのように行為を続けていた。
「良樹……私ははじめてなのだが……気持ちがいいかい? んっ、私のは……」
「いいよっ。からみついて、しめつけて……すごく……いぃい」
「ふふふ、やらしい表現だなぁ……んっ、私も気持ちよいぞ………」
 粘膜がぐしょりぐしょりと生々しい音を立てている。その音は早百合の脳内まで響き渡っていた。
 止めようとしたい。でも、できない。早百合は動けなかった。ただ、二人の行為をじっと眺めているだけしかできない。
「ごめっ、しずるさんっ……そろそろっ、限界、いっ、いっ、いっ!」
「んっ……んっ、……んっ、……つながってるっ。私たちはっ……、いいぞっ、いいっ、いいっ! 中に……」
 二人の動きが早くなってゆく。しずるの良樹の二人の口から出る荒い息はまるでガスのように扇情的で甘いな雰囲気を茶道室中に充満させてゆく。
二人の間に早百合は存在してなかった。

 りぃん

「やめて」

 りぃん

「やめてぇ」

 りぃん

「やめて……、やめてぇ………、やぁめぇろぉぉぉぉぉおおお!!」
 気がつけば、早百合は携帯電話を握りそれを凶器のように振り上げて、しずるに襲い掛かっていた。
 目指すはしずるの脳天。

 りぃりぃりぃん

 そこで、悪夢は目覚める。
 早百合はすぐさま時計を確認する。
午前3時半。
「ま……まだまだだわ……」
 早百合は顔は絶望にゆがんでいた。この夢を見るのは今夜でもう三回目。
「はやく……朝になってよ………」
早百合の願いは切実だった。
お願いです神様。はやく、今日の夜が終わらせてください。終わらせて欲しくてたまらない。
 欲しくて。欲しくて。欲しくて。欲しい。欲しい。ほしい。ほしい。ほしぃ、ほしぃほしぃほしぃほしぃほしぃほしぃほしぃほしぃぃぃぃぃいいぃぃいぃいいい。
420魔女の逆襲第15話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/01(木) 00:16:54 ID:VIM/AW63
 りぃぃぃぃぃん

「んっ……んんっ……んんんっ……!!」
 また熱くなってゆく肉体。脂のようにねっとりとした汗を分泌する肌。
 刺激を求めるようにまた動き出す右手。そして疼くように刺激を求める下着の中の蕾。
「よ……よんかいめだわ………」
 体が快楽を欲しがっている!

 早百合は悪夢と快楽の二つの地獄をずっと繰り返していた。
 悪夢を見た後、すぐさま襲い掛かる背徳感にまみれた欲情に早百合は巻き込まれる。そしてそれが終わるとそこに待ち受けるの先ほど見た同じ悪夢。そして慌てて起きるとまたもや湧き上がる感情の渦。
 現実では妄想に陵辱されて、夢の中では現実に陵辱されて。早百合は休むことなく精神をいたぶられていたのだった。
「よ……よんか……い………よ……よ、よしきぃ……よしぃきぃぃぃ………んんんんんんっ!!!」
 まるで拷問だ。早百合は桃色に染まりゆく意識の中で最後に呟いた。

 りぃん。

 本気で、本気で、この想いをあきらめたのに。
 私はしずるさんが好きで、良樹としずるさんが二人並んで笑って歩いているのを眺めているだけで幸せだと思ったのに。
 このまま三人の関係が変わらず、おじいちゃんおばあちゃんになってもずぅっと一緒にすごせるような友達関係で満足だと思ったのに。

 りぃん。

 しかし、そう決心しようとすると、こうも体が熱く甘美に疼くのだ。

 りぃん。

 そして、こうして慰めるたびに心の奥からふつふつと魔女への憎しみが湧いてくるのだ。

 りぃん

 鈴の音が響く。薄れゆく早百合は気付き始めていた。
この鈴……しずるからもらったこの鈴。これが私を狂わせている、と。

(続く)
421赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/01(木) 00:18:14 ID:V4ASUkF/
 早百合、ヘタレて堂々巡りの巻。
 15禁ぐらいに押さえようとしても押さえ切れていません。直接描写は避けたんですけどどうなんでしょうか。
 エロ描写は初めてですのでおかしいところありましたらご指摘ください。
 で、そろそろ早百合が覚醒です。クライマックスに向けて動き出します。
422名無し@ピンキー:2007/02/01(木) 00:33:11 ID:lnXlRc2j
//|   /ヽ              /       ヽ
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/ | /\        V          /     ヾ、∠___|
/ ∠   \               /    _-― ̄`\   さぁ、てめえら!
// | ̄ -ヽ  \           /  /  ̄|       \
// |  |  \ \    |   /  /   /       / 覚悟しやがれ!!
///|   ヽ、_  (\\_  |__/ /◯ _,.-'        /
/// | ._  ` ‐-‐' ヽ!.l|, l__/ヽ‐-‐‐'´   __,.   /   このベジータ様が、たっぷりとお前等の
////|   ̄=≡/ =i i= ヽ≡=== ̄     \
//// |         | 「       -┐        \チンチンをオッキさせてやるぜ!!!
//// |       /|       , ヘ        /ー \
/////|    __ヽ| ヽ    / /|       /  /
///// |    |‐--二二二二 =-イ  /       /  /     /|
///// |    Y´         `、/      /  /    /   |    /\
////// \   |          /     /  /  /      |   /  \
////////\  |         /     /  / /        |  /    
/////////ヽ  !二二二二/    / /  //          | /     
//////////ヽ   ━==    /   /              |/

沃野オモチロイナァー。て訳で投下だぜ。今回もお姉ちゃん特性料理の出番だぜ。あと続くかどうかはベジータ様次第だぜ。だぜ。DZ。
423名無し@ピンキー:2007/02/01(木) 00:35:00 ID:lnXlRc2j
 昼休み。学生にとって心休まる時間。仲の良い友達とする食事は、楽しく、普段よりも料理を美味しく食べる事が出来る。
 そう。社会人になれば取り戻す事の出来ない、貴重な時間。それが昼休み。なのに、だ。
「ほら、亮君。から揚げ好きでしょ? はい、あーん」
「高木先輩、手作りミニハンバーグです。ちょっと奮発して、松坂牛をミンチにしてみました。その、あ、あーん」
「……あら、何か小さい生物がいると思ったら、椎名ちゃんだったの。ごめんね気付けなくて。それとここは二年生の教室だよ? 自分の教室も分からないのかな?」
「そんな訳ないですよ。それを言うなら、水田先輩だってクラス、隣ですよ? 胸にばかり栄養回さないで、少しは脳の活性化に役立ててみてはいかがでしょう?」
「ご忠告有り難う。椎名ちゃんは屁理屈ばっかり言う脳鍛えるのもいいけど、もう少し身長と胸に栄養回そうね。それじゃあ小学生だよ? あははっ。椎名ちゃんは可愛いね」
「ふふっ。水田先輩は美人で羨ましいです。せいぜいその美貌で男子生徒のオナペットにでもなっておいて下さい。あははっ。雌牛にはぴったりですね」
「なら雌猫風情な椎名ちゃんは特別な趣味をお持ちなお兄ちゃん達に拉致られてバラしてもらえば? あははっ。良かったね、椎名ちゃん。きっとテレビとかに出れるんじゃない? 死体だけど。あははっ」
「……あのー、二人とも、さ」
「ん? なあに亮君? この雌猫がうざいのかな? かな? 待っててね、後で二度と近づかないように言っておくから」
「何言っているんですか。水田先輩が乳臭いから勘弁して欲しいんですよね? 本当、体臭って自分では気付きませんからね」
「いや、じゃなくて。から揚げとハンバーグが俺の顔に密着してるんだけど……」
 二人は慌てておかずを自分の弁当へと戻すと、今度はどっちが顔を拭くかで睨み合い。俺の昼休みはいつもこうだ。休まるどころか神経が磨り減って磨り減って血反吐を吐き出しそうだ。
 この二人、水田 祥子と葵 椎名は事あるごとに俺の周りに出現する。最近チョット怖い。
 祥子とは小学生からの付き合いだ。セミロングの髪に、スラリと伸びた肢体。今や男子学生の九割は告白していると言う人気ぶりだが、本人はあまり恋愛に興味が無いのだろうか。誰とも付き合った事がないらしい。
 俺はよく友達に羨ましがられるが、俺も祥子も、一緒にいた時間が長すぎてもうお互いをそう言う対象で見ていない。気がする。大事な存在だが、恋人、と言う言葉の響きはどうにもピンと来ない。
 椎名ちゃんは、俺の後輩だ。腰辺りまで伸びた黒髪のストレートヘヤー。くりっとした瞳に、透き通るような白い肌。どこか、人形チックな風体に、初めて会った時は驚いたものだ。
 しかも、何故かは分からないが俺は椎名ちゃんに気に入られたらしい。さらに、何故か最近のエンカウント率は尋常ではない。気が付くと隣にいる、みたいな。
 でもまあこんな可愛い後輩に慕われるのも悪くない。そう言うといつも祥子は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
 祥子の前で、椎名ちゃんの話題はNGなのだ。椎名ちゃんの前で祥子の話題がNGであるように。
424名無し@ピンキー:2007/02/01(木) 00:36:15 ID:lnXlRc2j
 さて。話を戻そう。そんな感じのいつもの殺伐とした昼時間を送っていると、不意に二人とも異変に気が付いてくれたようだ。
 そう。俺は今日、弁当を忘れてしまったのだ。というか、いつも弁当を作ってくれて、さらにカバンに入れてくれているはずの姉ちゃんが、どうも今日に限って忘れたらしい。
 三時間目が終わるとほぼ同時に、メールが入ってきたのだ。メールによると、どうも持ってきてくれるらしい。そのメール文を読んで、俺は胸の内が不安でいっぱいになる。
 あの姉ちゃんが、この空間に入ったらどうなるか、予想もつかない。姉ちゃんは意外と頓珍漢な事を言うので、弟である俺は気が気でない。
 と、教室のドアが開く音がした。クラス中の生徒の視線が音がした方に向けられる。
 そこに立っていたのは、俺の姉ちゃん、高木 志穂だった。
 姉ちゃんは最初、教室内を見渡すようにキョロキョロとしていたが、俺を発見すると、申し訳無さそうに照れ笑いを浮かべながら近付いてきた。
「ごめんねぇ、亮君。お姉ちゃん、ちょっと朝バタバタしてて、入れるのつい忘れちゃった」
 失敗失敗。俺は笑顔で気にしていない、と告げると弁当を受け取った。
 ふと、気が付くと教室中の視線が姉ちゃんに注がれていた。まあ、無理もない。
 姉ちゃんは、どこかのモデルなんじゃないか、と勘違いしてしまうくらい美人だ。スタイルも良い。実際、街で何度もスカウトされている。何にせよ、人から注目を集めやすい人なのだ。
 と、姉ちゃんは二人に気が付いたのか、笑顔で言った。
「こんにちは、祥子ちゃん。それと、ええと……」
「葵 椎名です。『今は』高木先輩の後輩をさせていただいています。初めまして」
「あらあら。これはご丁寧に。こちらこそよろしくね、えーと、何て呼べばいいかしら?」
「お好きなように」
「そう? なら、改めてよろしくね、椎名ちゃん」
「いえ、こちらこそ」
 笑顔で握手を交わす姉ちゃんと椎名ちゃん。うん、こう言うの見るとなんか癒されるなぁ。
「っと、ごめん俺チョットトイレ行ってくる」
 急に尿意を催し、俺は席を立つと、小走りでトイレに向かった。
425名無し@ピンキー:2007/02/01(木) 00:37:17 ID:lnXlRc2j
「……椎名ちゃんにも、言っておかないといけない事があるの」
「はい?」
「もう、祥子ちゃんには何度も何度も言っているんだけどね。亮君に……亮に手を出したら、ただじゃおかないから、ね?」
「……」
「ふふっ。あの子はね、優しい子だから良く勘違いされちゃうんだけど。あの子は私がいないと何も出来ない子なの。間違っても他のバカな女が扱える子じゃないわ。
そう、私だから一緒にいられるの。わかる? あなた達みたいなお子様は、その辺にいる男子で充分。言ってる意味、わかるよね?」
「……、ええ。要するに、お姉様は弟に欲情するただのアバズレ、て事ですね?」
「……ふ、ふふ。うふふふっ。そう。そっかそっか。そうなのね。あなた、本気で言ってるのね? そっかそっか……そうなんだ」
「ええ、本気です。わたしも、お姉様や水田先輩に負けない……ううん、お二人以上の愛を持っていると確信していますから」
「……祥子ちゃんは、どうなの?」
「……あたしも、昔から言いたい事は変わりません。譲る気なんて、ミリ単位もありません」
 そう、と志穂は愉快そうに顔を歪める。その酷くいびつな表情に、二人は内心慄く。
 椎名は、今やっと感じ取れた。志穂の、異常とも言える愛欲と、執着心。そして依存心。その一つ一つが深く、暗い感情となり志穂の体内に渦巻いている。
 見ていて気持ちのいいものではない。だが、だからと言って諦める気など、これっぽっちもない。そっちがその気なら、こっちだってやるまでの事。
 負けているなんて、思わない。椎名は自分の愛の深さを、信じているから。
 それは、祥子も同じだった。昔から変わらぬ志穂のドス黒い感情に、少しも臆する事無く、平然と受け流す。もう何年この感情をぶつけられたか分からない。
 初めは何度も挫けそうになった。だけどその度に亮の顔を思い浮かべ、自らを叱咤激励した。自分の為に戦うのではない。何よりも愛すべき亮のために戦うのだ。その気持ちが、何度祥子を奮い立たせただろう。
 そして。志穂は今、最高に愉快な気分だった。頭の中がスッキリとする。とても気分がいい。
 いずれ殺すべき雌豚が一匹から二匹になった所で、変わりはない。少し、準備する事が増えるだけだ。
 面倒と言えば面倒だが、それも全て亮のためを思えば、苦にならない。むしろ、亮が喜んでくれる顔を思い浮かべるだけで、軽く絶頂を迎えそうだ。
 私だけの可愛い亮。早く、その手で私を汚して欲しい。隅々まで犯して、汚して、奪っていって欲しい。その愛しい指先で身体中を弄って欲しい。亮が望むなら、殺されたっていい。
 そう考えただけでもう全身が燃えるようだ。自分の体を亮の指先が這うのを想像するだけで、口内は唾液で溢れかえり、子宮の一番奥が疼く。

 三者三様の考えが入り乱れるその空間。だけども、そのドス黒い欲望が渦巻く空間に、誰一人として気付かない。
 周りの生徒が思うのはただ一つ。高木 亮、死すべし! ただそれだけだった。得てして、人と言うのは己の欲望に忠実なのかもしれない。
426君という華 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/01(木) 00:39:47 ID:lnXlRc2j
タイトル付け忘れた……orz
姉ちゃんが初回から飛ばしすぎてちょっと不安……。
427名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 00:43:42 ID:PuJmFlPU
>>421
GJ!!
すごく……エロいです……
修羅場の土台がどんどん固まってきてwktk

>>426
キモヒロインのバーゲンセールだな!!!11
428名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 01:02:47 ID:MMf2lyXS
>>426
いぃいぃぃやあぁぁっほおぉぉぉう!!!!!
グゥーーッドジョヴッッッ!!!!!!!
429名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 01:05:44 ID:k1Xel2gw
>>415
さっすがwwwwつぼを分かってらっしゃるwwwwww
これいじょうのないほどもだえマスタ!マジでGJ!!!!!!
430名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 01:14:11 ID:eskz04gW
>>421
これはもう小百合で決定だろ…常識的に考えて
>>426
姉ちゃんいきなり変わりすぎwww
やっぱりこうでないと
431名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 01:16:48 ID:Yn+95PsO
魔女の逆襲を寝る前に読むのが最近の楽しみなんだ。
職人さん達、いつもGJです。
432名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 02:23:19 ID:0ASuF7Jv
早百合ん、この鈴が全部悪いんだと棄てちゃって正気に返って仲直り
ってわけにゃーいかねーんだろうな、ここは嫉妬スレだ
ともあれwktk
433名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 03:59:29 ID:Haum8Yjw
>>421
早百合つえぇー!精神的拷問を受けながら原因に気づくとは。
ここから、正体を見破られて巨大化した鈴と、
覚醒して右腕に早百合バスターを装備した早百合とのシビアな2Dアクションボスバトルが(ry

>>426
色々すっとばして役者をそろえたなww力技、嫌いじゃないっす。
434名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 05:23:59 ID:R5bNerh7
>>415
ドロドロとして緊迫感のある嫉妬と修羅場が堪らなく愛しいぜGJ!
背筋がゾクゾクするこの感情、……もしかして恋(*´д`*)ハァハァ
>>421
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
早百合がエロさとともに遂に覚醒か!!!
>>426
一瞬お姉ちゃんに肩透かしを食らったと思ったが、素晴らしいヒロインでおらwkwkしてきたぜ
すげえぜべジータ、お前が1だ!
435名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 09:07:52 ID:i1K/FEjt
『本命彼女のライバル/友達/家族とエッチしたいスレ』

が落ちてて(´・ω・`)ショボーン
436『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/02/01(木) 19:35:18 ID:U/n6zsM4
「ありがとうございましたー。」
 ……このバイト、ただの本屋なのだが、人のいない田んぼ中にあるため、客が滅多に来ない。それもそのはず。街中に本屋なんていくらでもあるのな、こんな辺鄙な所に来る訳がない。
 そのため店長も、「じゃ、後はよろしくね。」とか言ってパチンコに行ってしまう始末。ちくしょう。今客が来たから後一時間は暇になっちまう。
「暇ねぇ。」
「暇、だな。」
 そういやクラスの友達に、
「バイトやるなら楽できて暇なバイトがいい!」とか豪語していたが、実際にやってみると苦痛以外の何物でもない。
プルルルル……
 暇死にしそうな時に、ちょうど店の電話がかかってきた。
「はい、こちら……」
「あ、皆川君かい?」
「店長、なにか?」
「いやぁ、言っておくの忘れちゃってたんだけどさ、実は今日、新人さんが来るんだよ。悪いけど、基本的な事は教えといてくれるかな?しくよろー。」
 ピッ
「……しくよろー、じゃねえよ、このヅラ野郎。」
「今度取ってやろうかしら。」
「こんな人の居ない時にやっても意味が……ん?」
437『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/02/01(木) 19:36:01 ID:U/n6zsM4
 電話を切って振り返ると、カウンターの前に一人の少女が立っていた。歳は俺と同じくらいか。……正直、心では翔子並に綺麗だと思った。
 翔子と同じく腰まである髪は黒く、まるで女優のように美しかった。……ああ、いかんいかん、こんなふうに女の子を見てるtあgjぶ
「いでででで!」
「?」
「なぁにデ・レ・デ・レしてるのかなぁ〜?」
 翔子が自分の頬を思いっきり抓る。その痛みは俺にもくるわけで。直接引っ張ると、不自然に頬が盛り上がるので、俺を痛めつける時はよくこうする。
「いや、ごめん、ちょっと虫歯が染みて。」
「それはそれは、お大事に。」
「えっとそれで……なにかお探し物でも?」
「いえ、バイトの件で……」
「あ、はいはい。」
 どうやら早速来たようだ。机を探してみると、彼女の写真が貼ってある履歴書を見つけた。えーと名前は……
「皆川、静流?へぇ、俺と同じ名字なんだ。俺も皆川っていうんだよ。」
「ええ、知ってます。皆川翔さん。雅山高校二年。両親は共に海外出張中なため、今は一人暮らし。兄弟はいない。恋人も多分いな……」
438『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/02/01(木) 19:36:44 ID:U/n6zsM4
「ウェイ、ウェイ!ウェイト!!なんでそこまでしってる?」
 『まさかストーカーか?』彼女に見えないように、紙に書き、翔子に見せる。翔子は不機嫌なまま彼女にガンを飛ばしている。
「ううん、こんな奴知らない。それに翔にストーカーなんていないよ。いたらぶっ飛ばしてるし。」
 ……さいですか。いや、でも翔子が違うと言うんなら違うんだろう。じゃあなんで知ってるんだ?
「……覚えてないんですか?私の事?」
「い!?」
「ショーウ〜!?」
 い、いや、待てよ。落ち着く、俺。翔子以外に親しくなった女なんていないはずだ。小、中学の時はこの白い髪のせいで誰とも接しなかったし、高校に入ってからはそれなりに人付き合いはあったが……
 それなら覚えているはずだ。あっ!まずい、なんか涙目になってる。俺が原因で泣かれるのはやめてくれ。人生に荒波立てたくはない。
「い、いいです。明日にはわかりますから。それより仕事を教えて下さい。」
 少し涙声だったが、クールに努めていた。それ以降、仕事内容を教えても、はい、年か言わず、かなりおとなしいこだった。
439『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/02/01(木) 19:37:59 ID:U/n6zsM4
「イ・ラ・イ・ラするるるぅぅぁぁああ!!」
バキィ!
「いってぇ!こらっ!俺の体なんだから大事にしろよ。それに無暗に看板を壊さない。」
 翔子が殴った『熊、出没注意』の看板は、見事に真っ二つになっていた。俺の指の付根からは、少し血が滲んでいる。
「なに?あの女?!翔が仕事の事教えてる間もずぅーーっっっと翔の顔ばっか見やがって!私の翔を汚されたね!犯されたね!!」
「……まぁ、仕事の覚えは早かったから、別にいい……ぐぇっ!」
 喋ってる途中で喉を突かれる。こっちは苦しくて喋れないというのに、同じく苦しいはず翔子は、そのタフな精神でまだ愚痴をこぼし続ける。
「はぁ!?なに甘やかしてんの?!昔の知り合いだからって付け込みやがって、翔は覚えてないんだから、シッポまいて消えろっての!……この……ド畜生がぁー!!!」
バキィ!
「ちょっ!やめれって!痛い!」
 また物に当たる翔子。今度は『俺、出没注意』の看板が真っ二つ。
 だが、今日の出会いは、まだまだ波乱の人生の、ほんの序章でしかなかった。
440『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/02/01(木) 19:38:58 ID:U/n6zsM4
すみません、同じ作者です。
441名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 21:01:50 ID:6sk/fuOk
>>440
w・k・t・kするるるぅぅぁぁああGJ!!
てか、自分にも守護霊とかいると思うとオナヌー出来ないよね、ご先祖様ごめんなさいみたいな感じで。
442名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 21:49:17 ID:Xf5Qm03e
しかし過去に会ったことがあるっていうと翔子さんも会ったことあるはずだよな〜
とりあえず静流さんがどこまで食い込んでいくのか楽しみにしてます。
443赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/01(木) 22:59:11 ID:hqLAZEGx
いつも寝る前に魔女の逆襲を読むのが楽しみな人が居ることに嬉しさを通り越して泣きそうになった赤いパパです。
日刊連載をぶち上げていた「魔女の逆襲」ですが、最初に予想していた展開からどんどんと逸れはじめ、気がつけば自分でも書いたことが無いくらいの大ボリュームになり、少々手が回っておりません。
一応、日刊はできる限り続けさせていただきますが。自分の遅筆とクオリティ追求を考えると今後の更新は若干滞りがちになると思われます。(2・3日おきぐらい?)
楽しみにしてらっしゃる皆さんには申し訳ございませんが、何が言いたいのかというと今日の投下分はお休みにさせてください。

小説書く時間でせっかくやりはじめた聖剣伝説3が進まないのも原因の一つですけど。
444名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 23:02:39 ID:hwP0iAyY
聖剣伝説3に嫉妬
445名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 23:47:35 ID:ag1Y+lHe
全裸で待ち続けて半年の作品とか普通にありますから、お気になさらず。今年は暖冬ですし。
修羅場は煮詰めるほど、コクと深みが増すものです。
446名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 00:37:19 ID:i2KzixAR
>>445
へっ!ブラザーよ、俺なんか溜め込んだ切なさは爆発しちまったから家出して
作者の家に無言電話かけてるぜ!?
447名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 00:55:07 ID:SX9qTcvZ
大学の期末もそろそろ峠を越えたと思うんだが・・・。
448名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 00:56:29 ID:zPK4fyx9
そろそろ終焉じゃないのか?
449名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 00:58:44 ID:vnQLuJ/g
この程度で終焉なんて言ったら、俺の常駐の殆どが終わってるがなww
450君という華 1.5 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/02(金) 01:11:28 ID:4IqMoQSB
 わたしは教室に戻る道すがら、考え事に耽っています。それは、つい数十分前の、近年稀に見る衝撃的な人物の事を思い返していました。
 高木 志穂。二十二歳。某大手証券会社に勤める、高木先輩の実姉。
 あんな禍々しい雰囲気を持った女性は、初めましてこんにちは、です。いや、最早あれは人ではありません。ていうかありえません。人の皮をかぶった、化け物です。
 思い出すだけでも胃がムカムカします。ああもう! 折角高木先輩の体臭を肺いっぱいに吸い込もうと楽しみにしていたのに!
 実の姉だかなんだか知らないですが、はらわたが煮えくり返ります。何様なのでしょう、あの態度は。ベタベタヘラヘラと。
 そもそも、先輩の前とわたし達の前での態度の豹変ぶり、如何なものでしょう。人格を疑います。さすが化け物。
 しかし、そんな事わたしにはまったくもってどうでもいいことです。あの酷い腐敗臭のする雌牛と同レベルの下等生物に、時間を割くなんて、わたしの脳細胞の無駄使いと言うものです。
 わたしは、思考を先輩の為に使わなければなりません。将来妻となる身ですから、今から旦那様一途な思想を育めば、いつでも新婚生活を始められますし。
 ああ、愛しの高木先輩。この崇高なる愛を、早く先輩にぶつけたい! 先輩の愛を、全身で感じ取りたい!
 でも、まだダメなのです。あの乳ばかりでかくして男子生徒の夜のお相手ばかりしている淫売雌牛や、弟で毎夜毎夜自分を慰めている変態地球外生命体がいる限り、わたしと先輩の未来は茨だらけです。

 だから、わたしは排除しなければなりません。ゴミはゴミ箱に。わたしは綺麗好きなのです。先輩の部屋だってお掃除してあげます。
 ああ、先輩。先輩の匂いが未だに鼻孔をくすぐります。本当はもう肺いっぱいに吸い込んで先輩の匂いで包まれたいです。
 きっと先輩との生活は楽しい事でしょう。楽しみで仕方ありません。ぎゅうっと抱きしめて、頭を撫でて欲しいです。
 なんなら、というよりちょっと、いえ本気で犬と呼んで欲しいです。ポチとかでもいいです。
 先輩に犬と呼んでもらえるなんて……ああ先輩、そんな事恥ずかしくて出来ません……でも、先輩がどうしてもって言うなら……え? あ、はい。分かりました、その、ご、ご主人様……。
 ……、イイ。すごくイイ。決定。もうこれは絶対にしてもらう。そうだ、今から四つん這いで歩く練習とかしておいたほうがいいでしょうか。よし、今日帰宅後練習しよう。
 完璧だ。わたしの良妻賢母ぶりに、きっと先輩……ううん、ご主人様も喜んでくれるに違いない。いや、きっと頭を撫でて頬擦りしてその、キ、キスとかしてくれるに違いない。
 どうしよう。首輪とかってどこに売っているのだろう。犬用のでも問題無いんでしょうか。ああ、すごく興奮します。ご主人様の物になれるなんて! わたしは天才なのかもしれません。
 と、妄想の世界にとっぷりと浸っていると、突然後ろから声をかけられます。振り返ると、級友二人がこちらに駆け寄っていました。
「よっす! ヒメヒメ、考え事? 何々? 教えて教えて!」
 この少し、と言うよりも全然頭の足りていない感じ全開の子は、須藤 希美子。本当に高校生かと疑ってしまうほど、あどけなさが残る顔つきです。まあ、わたしも人の事言えませんが。
「待て待て希美子。お前はなんでもかんでも聞きすぎだ。で、姫。何を考えていたのかお姉ちゃんに話してごらん」
 もう一人の級友、柏崎 アンナ。わたしや希美子とは違って大人びた雰囲気を持つ、セクハラ大魔王です。ちょっと危ないです。
 わたしは二人に別に、とだけ言うとまたすたすたと歩き始めます。折角先輩とご主人様ごっこで盛り上がっていたのに。すっかり水を差されました。テンションゲージダウンです。
 ……先輩、イヌミミとか興味あるのでしょうか。くるり、とわたしは振り返ると、二人の級友に尋ねます。
「わたしの首にも付けられる首輪って、売っていますか?」
451君という華 1.5 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/02(金) 01:12:33 ID:4IqMoQSB
「……アンナちゃん。ヒメヒメ、やばくね?」
「……やばやばっすね。飛んでるよ。あれだね、例の先輩だよ多分。うっわ、二年生って怖いねぇ。自分を慕う後輩に首輪で拘束とか、やべぇやべぇ」
「勘違いしないで下さい。わたしがはめて欲しくって仕方ないんです。あと、イヌミミって必要でしょうか?」
「……」
「……」
「? どうかしました?」
「いや、なんでもー。ヒメヒメって、ドM?」
「いやぁ、流石にそのプレイを受けた事は無いなぁ。と言うか多分先輩ドン引きすると思うんだけど」
「そんな訳ありえません。先輩はわたしの事犬と呼んでくれて、頭撫で撫でしてくれるんですよ。最高です」
「いや、最低だよそれ」
 わたしは級友の言う事は当てにならないと判断し、妄想の続きを開始します。
 ああ、ご主人様、いけないこの犬を叱ってください。優しく叱ってください。最高です。
 うふふっ。どうです。わたしの愛の深さを前に、あの汚らわしい下等生物はなすすべなく涙を飲むのでしょう。いい気味です。むしろ生きている事に感謝して欲しいくらいです。
 ああ、ダメですご主人様。そんな、そんなの舐めれません……で、でも、犬のわたしに拒否権はないんですね……、せ、先輩のなら、喜んでその、むしゃぶらさせて頂きます。
 ふふっ。いけませんね、これ。癖になりそうです。と言うかもう夢中です。先輩が笑顔で叱ってくれます。イっちゃいそうです。と言うか軽くイきました。ごめんなさいご主人様。どうかこのはしたない犬をお叱りください。
 うふふっ。素晴らしいです。世の中にこんな素晴らしい事があっていいのでしょうか。いいんです。何故なら先輩だから。
 次の五限もこの妄想パワーを使用すれば瞬く間に終わってしまいそうですうふふっあははっ。先輩大好きですよ。

「おーい、姫ー? ダメだ完全に別次元にワープしてるよ」
「ヒメヒメってドMなんだねー。あれだね、DVとか嬉々として受け入れそうだね」
「やべぇだろ、それ。否定できないけど」
452君という華 1.5 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/02(金) 01:13:07 ID:4IqMoQSB
 うふふっ。先輩、タイツ履いた足でシコられるの、気持ちいいですか? いいですよ、この犬の足にたっぷりかけて下さい。うふ。先輩のなら味わって飲みますよ。ですから遠慮なくドウゾ。うふふあはは。
 ああ、ダメですご主人様。こんな、人に見られてしまいます。え? あ、やだ、ごめんなさい。口答えしてごめんなさいご主人様。
 おあずけは辛いです。ご主人様の好きなようにして下さい。この犬の分際ですが、受け止めますから。
 ダメです。これ以上妄想を続けると、狂ってしまいそうです。落ち着くのです、椎名。ビークール、ビークール。
 ……そうです。確か先輩達は次の授業は、体育だったはずです。これは千載一遇のチャンスです。先輩の爽やかな汗の匂いをくんくんしに行きましょう。
 それこそ犬の様に。そうです。犬はご主人様の匂いを覚えなければいけません。言わばこれは必然の行為なのです。
 正面、からでは難しいです。そう、後ろからつまずいたふりをして、先輩の背中にダイブです。そしてどさくさに紛れて匂いをこれでもかって言うくらい吸いまくってやります。
 完璧です。揺ぎ無いです。本当は先輩に抱きついて愛している、と想いをぶちまけたい所ですが、それはまだとっておきます。いまはくんくんで我慢します。
 うふふふふふふ。先輩の匂い。今夜は多分、いえ、絶対にもう眠れません。興奮しまくりでしょう。抱きついたついでに、わたしの制服にもたっぷり先輩の匂いを染み込ませましょう。
 これで今日の夜のお相手は決定です。いやもう、これから一ヶ月はこの制服洗いません。いえ、洗えません。
 うふ、うふふ。えへへへへへ。早く、早く授業が終わって欲しいですね。まだ始まってもいませんが。
 それまでは、また妄想パワーの出番です。先輩の愛を受け止められるのは、やはりわたしだけのようです。あの俗物二匹にこんな高度なわんわんプレイ、出来るはずがありません。
 えへへっ。今度は先輩に甘やかされてみましょうか。飴と鞭です。鞭と言う道具を使うなら先輩のてのひらで殴られたいですうふふ。

「……ヒメヒメ、すごい楽しそうだね」
「……今日は多分、関わっちゃいけないんだと思う。何か、殺されそう」
「きっとエロいこと想像しているんだろうね」
「犬プレイがどうとか言ってたからなぁ。将来が激しく不安だ」
453 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/02(金) 01:16:51 ID:4IqMoQSB
キャラ別小話編だよ。えへへっ。
ちょっと、ていうかかなりエンジンフルスロットルだけど勘弁な! だよ。
……ところでお兄ちゃん。服から他の女の匂い以下省略
454名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 01:30:55 ID:5bP8YGer
犬プレイだと!?
そんなことお父さんが許しませんよ!



でもGJ
455トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/02/02(金) 01:31:06 ID:ms4harMu
では投下致します
456水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/02/02(金) 01:34:24 ID:ms4harMu
 第18話『暗黒の果てに』

 本当の両親は俺が小さな頃に交通事故で死亡した。
もう、顔や声など幼い頃の記憶は思い出すことができずにいた。
ただ、覚えていることがあると言うならば、あの日は天草月の誕生日であったことだ。
両親が子供の誕生日プレゼントを買ってくると出掛けて、俺は楽しみに待っていた。
が、両親は夜遅くになっても帰ってくることはなくて、俺はただ一人暗闇の果てを恐れながら待っていた。

不安を抱き、風に運ばれる物音にひたすら驚き、誕生日に作った豪勢な料理に手を付けずにいた。
襲いかかってくる飢えに耐えながらも、食べるときは両親と皆一緒でという気持ちのおかげで意地になっていた。
 その日、両親が帰ってくることはなかった。
 誕生日から五日も経っていたのに両親は帰ってこなかった。一人で家を留守番するのは何よりも恐かった。

特に夜という暗闇は人の本能的な恐怖を刺激する。
余りにも壮絶な不安は子供の幼稚な想像すらも具現化するぐらいに恐かったのだ。
自分がここで寝てしまうと両親は二度と帰ってこないのではないのかと。
 だから、俺は五日も一睡することなく両親の帰りはひたすら待った。
 そして、七日。
 玄関から現われたのは両親の親友である、後に俺を引き取るおじさん夫婦であった。

 おじさん夫婦は両親の交通事故に遭って亡くなった事を知ったのは両親が亡くなってから六日後。
交通事故で死亡した両親は原型を留めず程に潰されていたらしい。
身内ですら判別も難しい死体は数日間も身元不明で連絡がつかなかった。
更に仕事の先の人間関係の希薄さのおかげで両親の死は書類上で片付けられていた。

残された息子の存在に気を留める人間はいなかった。
 おじさん夫婦が両親と会う約束をしていなかったら、まず気付かなかったらしい。
家に電話をかけても、俺が電話の音を恐がって出なかったおかげで繋がらなかったしな。

誰がやってきた安心した俺はおじさん夫婦の前で意識を失ってしまった。
子供には耐えられない精神的な負荷と疲労がかかっていたおかげで俺は即刻病院に運ばれた。
入院している間に信じられない事だが親権問題が解決し、俺はおじさん夫婦に引き取られる事となっていた。
両親の死を信じられなかった俺は強く拒んでいたが、現実を認めろとおじさんの罵声を浴びて、思わず涙を零してしまった。
両親が死んだ人間と認識することで悲しみが胸から溢れてきた。止まらない涙の粒と共に大切な温もりを失ってゆくのがわかった。

 病院から退院すると俺はおじさん夫婦の家に引き取られた。その家には俺と一つ上と一つ下の女の子がいるとおじさんが
親バカ同然に自宅に着くまで自慢話をたっぷりと聞かされた。
それだけおじさんが娘の事を大切に想っているのかわかった。
まあ、そんな自慢話を聞かされていたおかげで俺はその女の子達に出会うのがほんのわずかだけど楽しみにしていた。
457水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/02/02(金) 01:36:25 ID:ms4harMu

 水澄家に辿り着くと前の自分の家よりも広い一軒家に驚いた。
俺の家は父さんの稼ぎが悪かったおかげでちょっと小さめの家しか建てられなかったが。
そこにはいつも明るい談笑と心を安らげる居場所があった。
この水澄家もそんな場所になればいいなぁとちょっとした期待をもっていた。
 おばさんの後ろに隠れている女の子たちは恥ずかしそうにスカートの裾を引っ張って警戒していた。
初対面である人間の前では緊張するのは仕方ない事だと言えよう。
 これが虹葉姉と紗桜の出会いだった。
 俺は優しく微笑んで自分の名前と今日からお世話になりますと言った。

「は、はじめまして。水澄虹葉です」
「あ…あぅ……。紗桜」
 顔を赤面させて、二人は笑顔を浮かべて言った。

 水澄家の家族と暮らしている内に俺は以前の自分を取り戻していった。
でも、一つだけ悲しいことがあるとするならば、虹葉姉と紗桜が最初に会話した時以来、全く話をしたことがないぐらいだろうか。
 生活を送っている度に彼女たちが天然の恥ずかしがり屋で
大の男嫌いだとわかったときは自分がこの家にいることが本当は迷惑じゃないのかと悩んだりもしたが。

挨拶するとちゃんと返事を返してくれるし、俺が一人で部屋で遊んでいる時は部屋の隙間から覗き見もしているわけだから、
全く嫌われているわけではなさそうだ。
単に男嫌いな姉妹たちは同居人になってしまった男の子である俺の接し方がわからないだけだろう。
 焦ることなくゆっくりと姉妹達と接して行けばいい。
 仲良くなるまでは孤独で寂しいけれど、水澄家に居候している間は一人じゃないから。

 その間に隣に暮らしている音羽とほんのきっかけで知り合って友達同士になれた。
虹葉姉と紗桜に避けられている間は音羽とずっと遊んでいた。
彼女には俺の境遇を隠さずに全て話した。両親が交通事故で亡くなっていること。

水澄家に引き取られた事も。音羽は全て受け入れて、俺と友達になってくれた。
 だから、あの別れ夜の時も彼女との再会の約束をして別れた。
 再び、出会える日を待ち望んで。

 それから数年の時が流れた。
458水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/02/02(金) 01:39:39 ID:ms4harMu
 犬の一件以来、本当の姉弟妹になった俺達は毎晩遅くまで働いているおじさん夫婦のために
何か記念にプレゼントしようと考えた。たまたま、虹葉姉が商店街の福引きで特賞を当てた。
温泉旅行一泊二日と豪華な商品に俺達は立派な恩返しができると喜び合って躊躇なくおじさん夫婦にプレゼントした。
 子供たちのプレゼントに大いに喜んでくれたおじさん夫婦は有給をとって、温泉旅行の旅に出掛けた。
 事件が起こったのは、おじさん夫婦が今から帰ると宿泊先から電話を自宅にかけた後の帰り道。
おじさん夫婦が乗り合わせた飛行機が墜落した。
どこぞの名前も知らない山の麓に飛行機は手抜きの整備不良で墜落していた。

そのニュースが特別報道で番組が垂れ流している時はあの飛行機におじさん夫婦たちが乗っていなくて良かったなと
三人が談笑し合うが、念のために乗客名簿を確認していると嘘だと疑いたくなるようなおじさん夫婦の名前がテロップで流れていた。
 俺達にとって衝撃的だった。
 数時間前の電話で元気よく楽しんでいると会話していたのに、その人間はもうこの世にはいない。


 そう、嫌な脳裏がよぎった。

 両親が帰ってこなかった、暗闇の夜を思い出す。
親しい人間が一瞬の内に消えてしまうことを俺はよく理解していた。
心の損失した激しい痛みが夜と共に思い出すトラウマだ。 

姉妹たちを慰めながら、俺達は墜落した山へと急いで向かう。
もしかしたら、生きているかもしれないという希望を抱いてしまうが、現実はそう甘くない。
 事故の現場に辿り着くと悲惨な光景が嫌でも目に入ってきた。

瓦礫の山となった機械の物体と黒焦げた山林の荒れた姿を見てしまうだけで、厳しい現実を受け入れるしかなかった。
それでも、諦めたくはないと近所の病院に搬送されている場所に向かおうとした。
だが、政府の発表によると乗客は生存者なし。
死亡者420人と報道されたおかげで俺達はおじさん夫婦が生きてないことをようやく認めざるおえなかった。

 おじさん夫婦の葬儀は二人の死体が発見されることなく行なわれた。
葬儀に参加する人間たちから聞こえる心のない噂話は耳が腐るぐらいに俺達の心を無神経に傷つける。

あの子達が温泉旅行をプレゼントしなければ死ななくて済んだのに。
更に居候の俺にまで悪口があちこちと聞こえてきた。血も縁もないあの子は引き取りたくないわ。きっと孤児院行きよね。
 確かに俺を養ってくれた保護者代わりのおじさん夫婦が亡くなるすれば、

俺は未成年だし誰も引き取る意志がなければ孤児院に強制的に行かせることになる。
すでに血の繋がった親戚連中から見捨てられている俺は孤児院に行く以外の選択肢はない。
でも、家族のように暮らしていた虹葉姉と紗桜が傷ついて泣いているというのに水澄家を離れるだけは絶対に嫌だった。

 葬儀が終わると俺はずっと泣いている虹葉姉と紗桜を抱きしめて、優しく髪を撫でた。

男の子だから泣いてはいけないと思っていたが、緊張の糸が切れると抑え切っていた物が溢れた。

瞳から溢れる涙の粒は両親を失った時と同じ痛みを胸に受ける。
459水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/02/02(金) 01:41:42 ID:ms4harMu
おじさん夫婦に引き取ってもらわなければ、俺は生きることができなかった。
 虹葉姉と紗桜がいつも隣に居てもらえなかったら、俺は笑うことができない。
 おじさん夫婦に恩返しすることができずに逝ってしまった。二人のために出来ることは考えなくてもわかっている。

 虹葉姉と紗桜の傍にいて、支えてやることだ。
 二人とも強がって意地っ張りだけど、本当はとても寂しがり屋で儚く弱い。
 だから。
 二人が互いに好きな男の人を見つけて幸せになるまでは。
 俺がずっと二人を守ってやる。
 これがおじさん夫婦に対する俺の恩返しだ。

 祖母や冬子さんの暗躍により、保護者や保護者代理人になることで
俺と虹葉姉と紗桜は水澄家で離れ離れにならずに暮らすことができた。
でも、両親を間接的に殺してしまったことを悔やんで二人は心に深い傷を受けていた。
精神科に通院してもそう簡単に治るようなものではないらしい。
 
俺と冬子さんは出来る限り姉妹のために家にずっと居た。
特に俺の存在は長年家族として暮らしていたせいか、二人の俺に対する依存心は医者に精神を安定させるために役に立っているとらしい。
二人を守る決心がある俺は自分の学園生活を犠牲にして、虹葉姉と紗桜のために寄り道せずに帰る。
俺が傍にいることで精神的な支えになるためにはどれだけ犠牲にしても構わなかった。

おじさん夫婦が亡くなる前は思春期のおかげで姉妹とは少し距離を離していた。
まあ、女の子と触れ合う事が格好悪いとか思っていた頃である。
 束縛された環境を一度でも嫌と思わなかったのは、俺がいるだけで虹葉姉と紗桜の幸せそうに笑顔のおかけだった。
その笑顔のおかげで俺の心の空虚を全て埋め尽くしてしまい、胸がとても温かい気分になれるからだ。

 そんな毎日を過ごすしていくと徐々に二人の心の傷は癒されてゆく。
堪え難い痛みは時が過ぎ去って行くことで癒すことができる。
それがどれだけ大切な愛しい人間が亡くなっても、人は痛みを忘れることができる。
悲しい気持ち、楽しい気持ちさえも。

 やがて、俺達は大人になり、互い互いが離れることになるだろう。

 その時に見る、蒼い空はどんな空なんだろうか?
460トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/02/02(金) 01:56:09 ID:ms4harMu
今回は月の過去回想編でした。

次回から音羽編が始まる予定。
ついに女の戦いのコング第一回戦が幕を開ける。


さて、次回作品のプロットネタも大体書けてきたんですが
一番迷っている設定として

ずっと仲が良かった幼馴染3人組み。
だが、幼馴染Aが抜け駆けして告白するが振られる
幼馴染Bがその事実を知り、主人公に告白。しかし、振られる。
二人の幼馴染がAかBのどっちかを選んでよと問い詰めるが
ヘタレ主人公「俺は3人と一緒にいる時が好きだったんだ」とヘタレ的意見
恋人になれない=一生友達を突きつけられた幼馴染二人は号泣
主人公はその幼馴染の零れる涙を見て、二人を傷つけたと思い

その日を境に幼馴染を避けるようになる。


というのが基本設定なんですが・・。

今、迷っているのは物語を展開とする舞台として

プロットA

幼馴染を避けて学園を卒業後、大学に進学→しかし、受けた心の傷は深く大学中退
フリーターとして働く。ボロい荘に住んで変な住人達と暮らす

プロットB
幼馴染を避けて中学を卒業後→二人が追ってこれないようにどこぞの島にある学園に進む
学園生活を平穏に送る


まあ、違いは主人公がフリーターか高○生の違いってことでしょうかね?
社会人か学園にするかで迷っておりますww


駄文長くてすみませんでした

461名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 02:13:43 ID:qAzd2aTQ
>>460
B。ボロい学生寮の奇妙な住人たちは超能力者、魔術師、男装の麗人、胸たゆんたゆんと怪しくクラスで。
学園てとこに妙な生々しさを感じるのは、俺だけでしょうか。
462名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 02:26:59 ID:UdVVm3Zz
>>460
A
単に大人になって色々と覚えた中でのどろどろとしたものが
見てみたい
463名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 03:08:13 ID:6kMKG6Vs
>>453
GJ!
クール系かと思ったら、中身はドMわんこな後輩に惚れた
>>460
甲乙つけ難いが、学園物が大好きな俺はBを選ぶぜ
464名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 06:57:50 ID:voQJW9d+
両方見たいんだからね
465名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 07:13:43 ID:DrbdurRG
周りを海に囲まれた古びた洋館、嵐の中閉じ込められた少女達と一人の男
そして、その中で起こる殺人事件
ある者は保身を、肉欲を、そして彼の愛を求め巡り合う
疑心暗鬼に囚われた女たち
繰り広げられる惨劇と修羅場に邸は赤く染め上げられる……


うん、ありがちだ。誰か書いてくれんかね?
当然ラストは洋館炎上で


466名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 09:30:37 ID:K3LzANL/
>>460
Aで。トライデントさんの長編学生もの以外も見てみたい(*´д`*)
>>465
そのプロットに気づいちゃったら書くしかないな465が
期待してます!
467名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 10:40:09 ID:5bP8YGer
>>465
いや、ラストはドッキリオチだろう。
468名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 11:05:01 ID:NyfxzIYl
>>453
GJ
これは実にいい後輩ですね。
469名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 14:19:15 ID:NEr9ZgPx
>>460
Bですな
その学園の男女比率が男:女=8:2で
470名無し@ピンキー:2007/02/02(金) 14:59:34 ID:BbVRcCT2
>>465
いやむしろラストは爆破オチがよろしいかと
471名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 15:08:01 ID:7v0GmvCo
いや、いっそのこと豪華客船で…


どうみても鎖です
本当にやっぱりまた会いに行くわ
472名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 16:47:39 ID:FzaHvlMc
今まで投下された沢山の作品で、お勧めの長編を教えてくれないかい?
最後はただ和解するでもなし、潰しあって終わるでもなし。
ずっと争い続けるENDか、選択肢で片方のヒロインを選べるか。
473名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 17:31:25 ID:STkgk5z2
>最後はただ和解するでもなし、>選択肢で片方のヒロインを選べるか
じゃぁ片方のヒロインを選択し、もう片方とも和解というのはOK? それともNG?

ほぼすべてのヒロインに対し選択の余地が与えられてる作品で一例を挙げると
「うじひめっ!」だな
コメディ調でテラクオリティなので一読してみるといい
474名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 19:40:47 ID:FzaHvlMc
>>473
よくわかんないけどNGかなぁ・・・。

今まで長い間争い続けてヤバさキモさを見せ付けておきながら、
結局落ち着くとどうも消化不良気味で・・・。チラシの裏
475名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 20:05:27 ID:rccuj4KR
も う 全 部 読 め
476名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 20:14:40 ID:JmrWnYKz
流れをブッ千切って投下しますよ
477『甘獄と青』Sideリサ:2007/02/02(金) 20:15:43 ID:JmrWnYKz
「リサちゃん、何でここに?」
「いけませんか?」
 そう言うと、青さんは軽く首を振った。しかし顔には困惑の色が浮かんでいる。当然だ、
あれだけ格好をつけて出ていったのに戻ってくるとは誰も思わないだろう。実際あたしも
辛いことだが、今朝まではそうするつもりだったのだ。二度と会うことは無いとも思って
いたし、会ってはいけないとも思っていた。
 それが破られたのは、単純な理由。
「心配になったからです」
 朝食を食べようと思ったが、扉が開かずに部屋から出られなかった。フロントに電話を
かけると、確率システムの異常で操作を受け付けないとのことだった。それならば仕方が
無いと、テレビを見て時間を潰そうとスイッチを入れるとテロップに妙なことが書かれて
いたのだ。『全てのドアが開かない』、と。
 そこで思い至ったのは、サラさんのことだった。
 あれから一度も会っていないから、どうなっているのか分からない。何を考えているの
かも分からない。しかしこんなことを出来るのはサラさんだけだと思ったし、何を目的に
しているのかは分からないが、こんなことをするのも彼女だけだと思った。
 そしてサラさんが行動する理由は只一つ、青さんに関係したことだろう。そう思い至り、
気が付いたときには邪魔なドアを切り裂いて廊下に飛び出して、疾走していた。ただ今の
攻撃に間に合ったのも、それどころか青さんに会うことが出来たのも幸運に近い。あたし
は姉と違い神様をあまり信じていなかったけれど、今なら信じても良いだろう。
478『甘獄と青』Sideリサ:2007/02/02(金) 20:16:39 ID:JmrWnYKz
「出来れば、戦の神様を頼みます」
 言って、一歩目を踏み出した。
 先程の一撃のせいで腕の感覚が鈍くなっているが、まだ大丈夫だろう。しかし念の為に
柄尻の紐を腕に巻き付け、外れないように固定する。あたしの攻撃の基本動作は、回転に
よる遠心力を利用したものだ。第四惑星の人間は小柄な体のせいで非力だが、それを補う
剣術が発展した。当たる瞬間に握りを強くするものとは違い、常に握りを強くする必要が
あるけれど、こうして固定すればその必要は無くなる。
 後は、加速するだけだ。
 二歩目、三歩目でトップスピードに入り、あたしは大きく腕を振った。
 回転。
 踊るように身を回し、軸足を交互に入れ換えれば体は自然と前へと進む。
「いつまでも、人を足蹴にしてるんじゃないですよ!!」
 回転はまだ足りないが、相手を吹き飛ばすだけなら充分だ。野球のミートの瞬間のよう
に僅かに力を込めて、一気に刃を振り抜いた。
 高音。
 金属が噛み合う音は、何度聞いても快い。あたしの剣をパイルバンカーの装甲で防ぎ、
しかし堪えきれずに機械人形は宙に舞った。小柄な体駆を丸めて姿勢を整え、次の黒杭を
撃とうとしているが、問題ない。倒れているナナミさんの体の安全を確認。どこにも怪我
がないことに安堵をした後、申し訳なく思いながら少し乱暴に足を引っ掛けた。
479『甘獄と青』Sideリサ:2007/02/02(金) 20:18:20 ID:JmrWnYKz
「すみません」
 断りを入れ、その体を跳ね飛ばす。打撃ではなく投げるように飛ばした体の向かう先は
青さんの腕、抱えられるようにキャッチされたのを確認すると、あたしは改めて機械人形
に向き直った。見れば、既に黒杭を構えて放とうとしている。
 鋭利な先端の向かう先は、あたしではなくナナミさんだ。
「走って!!」
 青さんが頷くのとほぼ同時、黒杭が放たれた。
 疾走する。
 金属音。
「なんて、威力ですか」
 ナナミさんに向かい正確に飛来したお陰で黒杭をいなすことが出来たが、それでも高い
威力のせいで腕に痺れが走る。踏ん張りが効かない空中で放たれたにも関わらず、これ程
の威力だ。地上で放たれた最初の一撃を防げたのは、まさに奇跡としか言いようがない。
きっと黒杭もパイルバンカー本体も市販品ではないのだろう、見れば音叉剣に小さなひび
が幾つか入っていた。姉の剣に、ひびが入った。
「ブッ殺……」
 いけない。
 ここで暴走してしまうのはいつものことだが、それでは駄目だ。今まで何度もこうして
全てを駄目にしてきたし、こんなことでは姉をいつまでも生き返らせることなど出来ない。
それに何より青さんの前でこんな失態を犯してしまうのは、あたしの理性が許さない。
 呼吸を調え、崩れかけた理性を再構築する。
「いけます」
480『甘獄と青』Sideリサ:2007/02/02(金) 20:19:08 ID:JmrWnYKz
 背後を見ると、青さんとナナミさんの姿は見えない。向かった先は、恐らくサラさんの
ところだろう。前から約束していたのかもしれないし、今の状況を止める為に向かったの
かもしれない。どちらにしろあたしの知らない部分だが、寂しいとは思わない。あたしを
信頼して先に向かったのだろうし、大事な何かを成す為に行動しようとしていたのは二人
の目を見れば分かった。いつまでも諦めることなくあたしを守ろうとしてくれた姉の目と
同じ、強い意思と曇りのない光があった。論理的な根拠にもならないけれど、青さん達を
信じる理由としては、それで充分だ。
 ならば、あたしの成すことは、成さなければならないことは何か。
 決まっている。
「貴方の手から、二人を守ります」
 あたしは刃を水平に構え、真っ直ぐに相手を見た。
「今だけ、昔のあたしに戻ります」
 青さんにお別れの挨拶をしたときにもう戻ることは無いと思っていたし、まさかこんな
状況になるなど考えもしなかった。ひたすら姉を生かそうと思っていたのに、神はあたし
に何度もチャンスを与えるつもりらしい。自分を捨てることが良いことなのか、それとも
悪いことなのか、自分でもう一度考えろということか。恐らく今回が最後になるだろう、
剣も壊れてしまう可能性が高い状況での試練は、多分そんな意味があるのだと思う。
「フランチェスカとして、貴方に正々堂々と一騎討ちを申し込みます」
 何年ぶりだろう、こんな口上を告げるのは。
481『甘獄と青』Sideリサ:2007/02/02(金) 20:20:08 ID:JmrWnYKz
「『暴君』として恐れられた力を、その目に焼き付けておきなさい」
『良イデショウ。ナラバ私モ、生キロト言ッテクレタオ母サンニ応エル為、ソシテ貴方ノ
覚悟ニ応エル為ニ、さら様ノ愛娘『ゆかり』トシテ全力デ向カイマス』
 懐かしい空気だ。戦場ではお互いの大切なものを守る為に、善も悪もなく、皆が必死で
戦っていた。ここは戦などという物騒な考えからは最も離れた場所だし、場に居る存在も
あたしと機械人形ユカリの二人だけだ。しかしそんな定義などは関係なく、ここは確かに
戦場に成っている。自分の信念や誇りを守る為に動く者が存在する、それは場所など何の
関係もなく戦場なのだと実感する。
「行きます」
『行キマス』
 後のことなど考えず、第一歩目から体をトップスピードに乗せて跳躍する。
 自分の大事なことを成す為に、戦場にふさわしい存在になる為に。
 見ていますか、リサ。
 貴方の妹は、戦います。
 過去に軍の命令でさせられていた殺人でもなく、リサが殺されて、リサを殺してしまい
自暴自棄になっていたときのようでもなく、愛する存在からの信頼を守る為に戦場を駆け
戦っています。過去に3000人もの大虐殺をしておいて、ムシの良い話だというのは自分が
一番知っています。この二つの首輪から逃げようとも思いません。それでも、刃を振るう
べきだと思う瞬間がやってきたのです。罪よりも重く心を震わせる、あの愛しい人の為に、
青さんの為に。振られはしましたが、それでも恩を返したい人。姉や部隊の仲間以外で、
初めてあたしに優しくしてくれて、温もりを与えてくれた人。
「見ていて下さい、守って下さい」
 リサ。
 青さん。
「あたしは、フランチェスカは頑張ります!!」
 叫び、腕を大きく振るった。
482ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/02/02(金) 20:21:37 ID:JmrWnYKz
今回はこれで終わりです

はいすみません、嫉妬も無ければヤンデレも無い
ユカリの台詞が読みにくい
勘弁して下さい
483名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 20:47:01 ID:o9OWPVbZ
GJJJJJJJJJJJJJJ!!!!!!!!!!!
リサ・・・じゃなくフランチェスカ格好いい!!!!!!!GJ!
484名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 21:05:04 ID:6kMKG6Vs
GJ!
フランチェスカはとても強くて良い子過ぎるぜ・゚・(つД`)・゚・
485名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 21:11:40 ID:xMkeqk+n
>>482
全俺が泣いた。
486名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 21:23:52 ID:VE062JQR
>>444
聖剣3といえば、冒険するうちにホークアイに惹かれるが、ホークアイにはジェシカがいる。
いつしかヤンでED後にころしてでも奪い取るリースというネタを妄想したなあ…ナツカシス。
487名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 22:42:13 ID:2vsRnWQ3
フランチェスカ、カッコ可愛い!!
青がいただかないなら俺がいただ くぁwせdrftgyふじこ
488魔女の逆襲第16話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/02(金) 23:15:09 ID:WD+0oi25
 朝だ。
 朝が来た。
 新しい朝がきた、希望の朝だ。
 早百合の顔は絶望にまみれていたが。
「……うう……、もう一日休みたい気分だわ」
 いつも通学路を歩く早百合の顔は酷いものだった。
 結局昨日は妄想と夢の間を合計六往復し、最後は眠ることを諦めてリビングまで逃げ、そのまま見たくもない衛星放送の映画(しかも『死霊のはらわた』)をずっと見ていたのだった。
 ベッドに戻るとまた繰り返しそうで怖かった。見た映画も結構スプラッタで怖かった。鈴の効果外でも怖がらされてる早百合である。
 内容はあまり覚えていないが、ホラー映画のクセにスタッフロールのBGMが軽快な音楽で、この日はなにか腑に落ちないまま朝を迎えた。
 のっそりのっそりと歩く早百合。足取りが重い。
 頭の中に浮かぶ、昨日の夜の痴態。良樹に抱かれる妄想におぼれた自分。そしてしずるを殺したいぐらい嫉妬に狂った自分。
 ああっ、今日からどうやってしずるや良樹の顔を見てしゃべればいいの? それに昨日、自分は良樹と気まずい別れをしたままだ。どこの世界に他人のブルマに嫉妬してぶちぎれる女が居るのだ。ここに居た。
「……どうしよう」
 家から出て数分。良樹のすぐ前のマンションを通る。
 いつもは良樹が出てくるのを待ったり、良樹が待ってたりして一緒の登下校となるのだが。早百合はとてつもなく顔を合わせづらかった。どっちにしても教室で顔を合わせることになるのだけども。
良樹は居るのだろうか。居て欲しいような、居て欲しくないような。そんな想いが早百合の頭をぐるぐる回る。
いたらいたで、昨日の事について謝りたかった。しかし、二人っきりで登校するとなると夜の妄想が蘇ってきそうで怖い。あの体の発熱興奮がおんもで発病するくらいだったら服上死のほうがまだマシだ。……いや、服上死の方がやっぱり嫌だ。
 万が一のため、早百合は鈴を家に置いてきた。携帯電話から取り外そうとしたが、何故かきつく結んであるためか鈴のリボンはまったく解くことができず、仕方なく携帯電話ごと部屋の引き出しの中へしまってある。
 いくら、早百合でもいままでの現象に鈴が絡んでいることぐらいわかる。
 あの意識の奥まで響く鈴の音。そして、その音に呼応するかのように生まれる感情の奔流。あの鈴は危険だ。
 本当なら、鈴をはずせないなら携帯電話ごと捨てるべきだけど……。いざ捨てようと思っても携帯電話が惜しくなってしまい捨てるに捨てられない。あれだけこだわりの無いと言い張っていた携帯電話なのに使い始めるとなにか愛着がわいてしまうのが不思議だった。
 そりゃ擬人化も流行るわけだ。スレも賑わうわけだ。
 閑話休題。
 それよりも、今は良樹のことである。
 次の四つ角を曲がるとちょうど、マンションの入り口の前を通る。いつもならここのマンションの茂みの前に良樹が立っているはずだ。いない場合はまだ来ていないか、もしくは先に出てったということだ。
 これまでの経験上、良樹は遅刻寸前ギリギリの時間までは待ってくれる為、今の時間なら先へ出てったという案は無いと考えたほうがいい。例外としてなら昨日のいざこざのせいであちらも顔が会わせづらいという可能性もある。
 一応選択肢はふたつづつで合計四つ、早百合はそう考えていた。
 居た場合。
 @いつもどおり声をかける
 A見つからないように別ルートで学校へ行く
 居なかった場合
 @ 良樹を待つ
 A そのまま見つからないよう学校へ
 どれにしても、会うか会わないかの違いだ。
 早百合の心の中では居ないほうがよかった。居なければ居ないで顔をあわせる時間が延長できるし、考える時間も増える。もし居る場合ならすぐに選択を迫られることになる。早百合はできるかぎり「居ないでくださいマジで」と念じながら四つ角の前へやって来た。
 そーっと、角からマンションの前を見る。
「居ないわ…」
 マンションの前には誰も居なかった。
 早百合は四つ角で顔を出したまま思案する。このまま待とうか? それとも行ってしまうか?
489魔女の逆襲第16話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/02(金) 23:16:37 ID:WD+0oi25
 迷った末に、早百合は。
「……やっぱりもう少し様子を見ましょう」
 早百合はきびすを返すと、そのままいま来た道を駆け足でもどってゆく。すぐ走ったところにバス停が見えた。側面には緑の線が入っているバスが止まっていて、そこにのろのろとおばあさんやサラリーマンが乗りこんでいた。
 走ってバスに乗り込む。このバスはちょうど、学校の前を通るバスで遠方の生徒の通学バスでもあった。早百合は普段まったく使用しない。乗り込むとにゅうと横の機械から整理券が飛び出す。
 久しぶりに乗ったのでバスの乗り方を忘れていた。そういえば整理券とやらがあったのだった。慌ててそれを取る。バスはすぐさま発車した。
 早百合は、良樹と顔を合わせず別ルートで登校することを選択したのだった。

 学校にはいつもより早くに着いた。当たり前だ、いつも徒歩で二〇分かかる道をバスで来たのだから。
 教室に入ると、何名かのクラスメイトが自習をしていた。こんなに早く来る生徒も居るのかと早百合は軽く驚く。
 席に着き椅子に座ると、早百合に睡魔が襲い掛かる。昨日の夜はまともに寝ていなかったのだから当然だ。いや、まて。昨日は昼間長い間寝ていたはず。じゃあ、合計を出すと寝ていた時間は普段と変わらないのでは……。
 考えてみようとしたが、それより早く早百合の脳の回転スイッチはオフされていた。早百合は机に突っ伏すとすぐにすやすやと寝息を立てていた。
 
 疲れていたからか、鈴が無かったからか。悪夢は見なかった。

 教室にて。
 二時間目が終わった休み時間。
 早百合は席に座ってひとりで出したままのノートにぐしゃぐしゃと落書きをしていた。何の目的も無い気のまぎらわすための手遊びだ。
 横目でちらりと窓側に居る良樹の席を見てみた。良樹は一人で文庫本を読んでいた。
 今日の朝のHRの最中に良樹は登校してきた。ぎりぎりセーフで遅刻扱いにはならなかった。もしかしたらずっとマンションの前で、いつものように早百合を待っていたのだろう。
 教室で先生に注意されながら早百合の姿を発見した良樹と一瞬だけ目が合ったが、早百合はすぐに目をそらす。早百合は良樹の表情から、良樹の感情をすぐさま理解していた。
「何で、来なかったんだ」という責めるような表情ではなく、「よかった、来てたんだ」という安堵の表情。それは、風邪の早百合を気遣うような優しげな顔だった。早百合の罪悪感がちくりと痛む。

 そしてそれと同時に、早百合の心の奥に植えつけられた恋慕の種子にも、土を焦がし小さな小さな芽が生えだしていた。

 良樹は担任に謝りつつも自分の席へと着席する。早百合はなるべく意識しないように目線を違う方向へ向けた。
 その後、良樹は話をしたいのか早百合に近づこうとするのだが、そのたびに早百合はトイレに逃げたりと徹底的に避けた。
 そのせいか普段はあまり空気が読めない良樹もなんとなく察し、今はお互い膠着状態のままになっている。いや、良樹にとっては冷戦状態と言ったほうが適切だが。あっちにとっては早百合がまだ怒っていると思っているのだから。
 実際は早百合が良樹と話すのが恥ずかしいからなのだが。(無理も無い) 
 それからいままで、早百合と良樹はお互いの姿を確認しながらも一向に顔を合わせず話をすることは無かった。
 今のところ、早百合は落ち着いていた。授業も集中して受けられたし、ノートを取っている間は良樹のことも鈴のことも忘れられた。
 早百合は安心していた。とりあえずあの感情の本流は鈴から離れていれば影響は受けないようだ。
 しかし、しずるはどうしてあんなとんでもない鈴を渡してきたわけなのだろう。鈴については出所を詳しく聞いてみるのがいいのかもしれない。
 早百合が頭をめぐらせていると、前方の明かりが何かに遮られ、ボールペンの線が踊るノートが暗くなる。そこで、早百合は声をかけられた。
「…………ねぇ」
「ん? !! ……え……えっと、榛原さんだよね……?」
「うん……そうよ」
 早百合は突然の珍客に驚く。
 声をかけたのは同じクラスメイトの榛原よづりだった。鴉のような黒髪で不健康な顔を半分隠している暗い雰囲気の女の人だ、つい最近まで不登校だったが一週間ほど前からまた登校しはじめた人だ。
ちなみに年齢は28歳。出るところは出ているが、容姿に大人っぽいという雰囲気は皆無である。むしろ貞子と言ったほうが適切かもしれない。
「ど……どうしたの? 森本君はたぶん次の時間の準備だと思うけど」
 榛原よづりはこのクラスの副委員長を務める森本和人にまさにべったりというくらい執心していた。そのせいか最近森本和人の友人が減りつつあるらしい。ロクな生徒が居ないな自分のクラスは……。
490魔女の逆襲第16話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/02(金) 23:17:34 ID:WD+0oi25
「紅行院さんからの手紙。渡してくれって頼まれたの……」
 え? 早百合は目が点になる。
「え? ん? てがみ? しずるさんの? え、なんで……」
 しずるはほとんど人と交流しない。そして目の前に居る榛原よづりも最近登校し始めたが、あのクラスから浮いた雰囲気でまったく人と交流しているところを見たことが無い。人と目が合ったらすぐに後退するような人だぞ、榛原よづりは。
二人に接点なんてあるはずが無い。それなのに……。
 どうして、あなたがしずるさんの手紙を持ってるの? 
 そう聞こうとしたときには。
「あ、かずくんが来た……。 かずく〜ん〜……。かまってぇ……」
 次の時間の地理の教材の地図セットを持ってきた森本和人のところへ行ってしまっていた。
 教室の前方で十歳も年上の不気味な女に抱きつかれている副委員長森本和人の表情はなんとなくげっそりとしているようだ。……まるで未来の自分を見てるような気がする。
「なんで、榛原さん……しずるさんの手紙を持ってたんだろう……」
 謎は残るばかりである。一番可能性があるのは、魔女が手紙を渡してくれと頼んだ相手がたまたま榛原よづりだったということなのだが……。しずるはそんな性格だろうか? あの人なら矢文とかでやりそうだが。
 まぁ、このへんは次回作で明かされることだろう。
 榛原よづりに果たされた手紙は、ルーズリーフを封筒状にした簡易なものだった。
 表面にピンクのカラーペンで『早百合へ』と丸文字で書かれている。……しずるのイメージに合わない字だった。字だけだと普通のギャルである。
 開いてみる。ルーズリーフには簡単に一文だけ書かれていた。

 よろしく。

 これだけである。
 短い上になにがよろしくなのか書く必要はあるのかそもそもなんで手紙でこんなものをという疑念が浮かびまくる。
「なんだろう、これ?」
 もしかして、これは……文通か? いやいや、そんなわけは……まて。 
しずるは早百合とのつながりをいつもいつも強化しようと努力している。もしかしたら、お見舞いイベントを済ませたしずるは今度は人を介した手紙という文通システムで早百合とコミュニケーションをとる気なのかもしれない。
 いまのしずるはコミュニケーションに貪欲だ。ありえないこともない。
 確かに、昔の雑誌には文通募集といわれるコーナーが結構あったけど……。今になって思えばあれは個人情報保護的にどうなのだろう。早百合は手紙を大事に胸ポケットに入れるとはぁぁぁとため息をついた。
 ちらりと横目を見ると良樹は文庫本に集中していた。帯から見えるにパーネル・ホールの探偵シリーズだろう。早百合的にはあの作品は主人公の思考が脱線しまくるので少し苦手だった。『絞殺魔に会いたい』は面白かったけど。
 さらに、視線を動かす。教室の隅で榛原よづりと森本和人がなにやらこそこそモメていた。榛原よづりのポケットから少し光り物が見えた気がするが、たぶん気のせいだろう。榛原よづりの手首には体育会系でもないのに何故かリストバンドがついてたのは気になるが。
 ……。視線だけぐるりと見渡す。休み時間ものこり五分ほど。

 りぃん

 早百合はすでに気付いていた。
 教室自体の雰囲気が一昨日までと違うということに。
「…………」
 何人かが集まって雑談している。いつもどおりの教室風景。しかし、妙に静かだ。グループで話している生徒たちもなにかひそひそと密談するように話していて何か変だ。
 いつもおしゃべりな恒やねねこでさえ小さくまとまって話している。 それに気になるのは……。
……良樹のところに誰も行ってない。今日のHRから二時間目の休み時間まで。誰も良樹と口を利いていない。
 こんなことを気付ける自分はどれだけ良樹を意識しすぎているのだと、自己嫌悪におちいりそうだが。今はそれは置いておく。
 ただ事実、良樹だけがなにか隔離されているのである。いじめのような嫌悪感で隔離されてるのとはちょっと違っていた。どちらかといえば、触るに触れないといったようである。
 自分が休んだ間に、なにかあったのか?
 早百合の勘は恐ろしいほどに冴えていた。
491魔女の逆襲第16話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/02(金) 23:18:33 ID:WD+0oi25
「え……えっと。早百合ちゃん」
 気がつくと、すぐ目の前にねねこがいた。いつも後でまとめている髪を今日はちょんとツインテールにして幼さが二割増ししていた。
「なに? ねねこ」
 ねねこはまるで怒られた後のように、おどおどした表情だった。なにかに罪悪感を感じているようで早百合はすこし眉をひそめる。ねねこは何故申し訳なさそうに自分を見るのだ?
「あ、あたしっ。早百合ちゃんに謝らなきゃいけないの!」
 いきなり何を言うのかと。早百合はさらに怪訝な顔になった。
「どういうこと?」
「え……えっと」
 歯切れが悪い。なにか言うことに躊躇しているようでもある。その様子に早百合はイライラした。
「はやく言ってよっ。休み時間終わるわよ?」
「あ、うんっ」
 ねねこは決心したように頷くと、俯きがちに喋り始めた。
「あ…あたし。いつも良樹くんに告白しなよって言ってたよね?」
「そうね」
「で、そのあと。あたし、良樹くんの恋人ずぅっと聞いたよね?」
「……うん」
 しつこいほど。
「そ……それで、謝らなくちゃって……。あたし自分の好奇心だけで聞いてて、早百合ちゃんの気持ちなんて考えないで……」
 ねねこは文章をまとめ切れたい内容だ。言っている意味がよくわからない。
「どういうこと?」
「えっと、だから……良樹君が魔女さんと付き合っているのに、早百合ちゃんがそれを知っているのに、あたしずっと早百合ちゃんの気持ち考えずにずっと好奇心だけで聞いちゃって……」

 良樹くんが魔女さんと付き合っているのに。

「え……?」

なんで、知れ渡っている?
 良樹の性格上。隠していたはずだ。

「昨日魔女さんが教室にやってきて、委員長に好きな人はいるのかって、で魔女さんにはいて、それで恋人で、ラブラブだって言ってて、話を聞くと良樹くんらしくて、それで、それで……」

 ねねこが早口で言い繕うように続けるが、早百合はその言葉を無表情のまま聞き流した。ガタンと音を立てて椅子から立ち上がる。
そのままクラス中の全員を無視するように、良樹でさえも無視して早百合は大股歩きで教室を出た。
 休み時間などもう終わるというのに。

 りぃん。

鈴の音が鳴ったが早百合は気付かなかった。

(続く)
492赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/02(金) 23:19:04 ID:WD+0oi25
原稿用紙換算だとここらで大体120枚ぐらい。赤いパパです。
一度ボルテージが上がれば下がり、上がれば下がりの繰り返し。それでもゆるやかに上昇中。
早百合はどこへ向かっていくのでしょうか。
あ、あと榛原よづりの話は近いうちに新しく書きます。これがおわったらにも。
493名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 01:00:17 ID:5nOlhY+i
>>492
GJ
あんた最高だ。
494名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 01:14:40 ID:yXV9rP+K
今回はちょっとインターバルって感じですね。早百合の嫉妬の源泉は果たして鈴だけなのかどうか…。
495名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 01:40:57 ID:5OWFa/Js
よづりさんが気になってしょうがない。28歳か〜
496名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 01:48:37 ID:fjC2Nj7A
>>482
フランチェスカもかっこいいけど……

何かダメだ。俺はユカリの方に感情移入して泣きそうになってしまう。
497名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 02:21:02 ID:beTG8jhb
これで安心して眠れる。
おやすみ。
498名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 02:28:08 ID:fOuBSj07
GJ!早百合の嫉妬エンジンがうなりを揚げてきたぜこれからの展開にwktkが止まらない!
499赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/02/03(土) 02:39:02 ID:N98iVNv+

ピピピッ―――ピピピッ――――ピピピピピピピ―――


携帯の電子音で夢の世界から覚醒する。
まだ半分眠っている体を動かして、枕元の携帯に手を伸ばす。
「…もう7時か………。」
まだ眠っていたいという衝動を抑え、のそのそと立ち上がり1階へと降りる。
昨日の夜も来ていた、あいつは恐らく今日の夜も来るのだろう…。
「なんなんだよ…あいつ…。」
今でも耳に残っている、悲しそうに俺を呼ぶ声…。
…何だか悪い事をしてしまった気分だ。
そんな感情を抱いてしまう自分自身にも憂鬱が募る。…相手はあいつなのに。


「ちーちゃんおはよ!」


その元気な声と共に突然目の前に若菜の顔が迫った。
「うわあぁぁぁ!?!」
思わず情けない声を出してその場にへたりこんでしまった。
「もぅ!失礼だなぁー!」
「い、いきなり顔を近づけるな!!」
「いきなりじゃないよぉ、ずーっとちーちゃんの事呼んでたんだよ!」
「へ?そうなのか?」
「そーだよ!」
ぷにぷにした頬をぷくっと膨らませている。多分言っている事は本当なのだろう。
「そっか……ごめんな、少しぼうっとしてた…。」
「もー、せっかく朝早くから来たのにぃー。」
「…そういえば何でこんな朝っぱらからいるんだ?」
「えへへっ、朝ごはん作りに来たんだよ〜。」
何で若菜が朝ご飯を…?おばさんは居るはずだが…。
「何で若菜が作りに来るんだ?」
「それは〜……乙女のヒミツ♪」
「……まあ良いけど…。」
「えへっ、じゃあさっそくご飯食べよ!」

若菜が手伝いに来てくれたお陰で楽が出来たとおばさんは大喜びだった。
それにしても何故いきなり朝飯を作りに来たのだろうか。
まあ朝から美味い飯が食べれたんだし、些細な疑問なんて大した問題じゃないだろう。
500赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/02/03(土) 02:41:30 ID:N98iVNv+
「あのさ、若菜。」
「なぁに?」
朝飯も食べ終わり、何をするでもなく無駄な時間を過ごしている。
だが俺にはずっと気になっていた事があった。
――布袋葵。
あんな5分にも満たない、あの夢のような時間を今まで何度頭の中で再生したか…。
あの人が頭から離れない。あの仕草、声、笑顔、全てが俺の脳裏に刻まれている。
もう一度会いたい、だがあの人がどこにいるのか、俺に解る筈が無い。
…でも若菜なら…、若菜ならきっと何か知っているだろう。
小さな手がかりでも良い。だが露骨に聞けば怪しまれる。それとなく…聞き出す…!

「昨日会った葵さん…だけどさ、仲良いのか?」
「うん。輪ちゃんとあおちゃんは私の大事な親友だもん。」
「親友か……、いつからなんだ?」
「小学生の頃から…だね。 この村には小学校があるんだけど、田舎だから子供の数がすごく少ないの。
私達の頃は同年代っていったら、輪ちゃんとあおちゃん抜かしたら後は男の子だけで…、それでいつの間にか一緒に遊ぶようになったって感じなの。」
「へぇ、じゃあずっと一緒だったって事か。」
「当然! 悲しい時も楽しい時もずっとずっと一緒!これからも一緒…私はそう信じてるよ。」
本当に心から信頼しきっているかのような笑顔。
きっと俺には解らない固い絆がその笑顔を引き出しているのだろう。そう思える相手がいるというのはとても幸せな事だ…。
「…良いよな、そういうのってさ。」
「えへへ…、まあね。」
はにかみながら自信たっぷりにそう言う若菜はとても可愛かった。
…と、違う違う!葵さんの事を聞かないと!
「えーっと…、最近は3人で遊ぶ事とかって無いのか?」
「そうだねぇ、輪ちゃんは神社があるし、あおちゃんはバイト始めちゃったし…。」
「バイト…!?バイトってな、何の?」
「あおちゃんは図書館でバイトしてるんだよぉ〜。 昔から本が好きだったから、あおちゃんらしい仕事場なんだぁ。」
「そ、その図書館って……近くにあるのか?」
「ううん、バスに乗って…1時間かな? 終点まで乗らないといけないから。」
「そっか……。」
図書館………。葵さんが居るとは限らない。けど、行く価値はある!
そうと決まれば俺のすべき事はただ1つ。
「ありがとう若菜!」
感謝の気持ちを籠め、思いっきし若菜の頭をわしわし撫でる。
「わっ、わわぁっ!?」
「じゃあな!行ってくる!!」
「ふえっ!?」
突然の俺の奇功に若菜が困惑した表情を浮かべているが、そんなものは無視だ。
俺は急いで家を出た。


出る時に一瞬見えた若菜の表情なんて気にも留めずに―――
501赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/02/03(土) 02:42:14 ID:N98iVNv+

――――10分後。

……ここ、どこだ?
辺りを見渡す。田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ。
小さな古い家はぽつぽつと見えるが、目当てのバス停は影も形も無い。
…失敗した。若菜に聞けば良かった。
「考えなしにも程があるよな……。」
自分の馬鹿さ加減を呪うしかない。
俺は深い深い溜息をついた。

「…七原…ちかさん?」

俺を呼ぶ静かな声に振り向く。
そこには案の定、巫女姿の少女。
「あれ?錨…?」
「七原ちかさん、こんな所で何をしているのですか?」
道の真ん中に突っ立って途方に暮れている俺を不思議そうな表情で見つめている。
「ちょっとバス停を探してたんだけど……どこにあるのか若菜に聞くの忘れちまって。」
ははは…、と力なく笑う。ホント、情けない。
「…バス停でしたら、私が案内しましょうか?」
「なんだって!?」
錨の提案に思わず大きな声を出してしまった。
突然大きな声を出され、少し眉を顰めるが。
「嫌なら無理にとは言いませんけど。」
「い、いや!行く行く!! 是非案内してください!!」

錨と並び、同じような景色が続く道を歩いていく。
もし錨に会わなければ俺はどうなっていた事か…、感謝しないとな。
「ありがとな、忙しいのに案内してもらって。」
「別に、忙しいわけじゃないです。 野菜を貰ってきただけ。」
そういえば手にビニール袋を下げている。
「野菜ってやっぱり採れたてなのか?」
「ええ。」
「おおっ、新鮮な野菜が手に入るなんて凄いな!」
「そんな事ないです。ここでは普通の事ですから。」
「ここでは、な。 俺はこの村の人間じゃないから、少し羨ましいよ。」
「…私は学校行く時くらいしかこの村から出ないから…他の所の事はよく解らない。」
「学校だけなのか!?」
学校だけっていったら、殆どこの村から出ていないって事じゃないか。
「私はここを捨てられないから…。 それに…………。」
「それに?」
一呼吸置いて、寂しさと悲しさが入り混じったような表情を浮かべて錨は続けた。
502赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/02/03(土) 02:46:42 ID:N98iVNv+


「…約束だから…、あの方との……。」


――風が舞う。
髪が風に舞い、表情は解らないが悲しい声が響いた。
「あの方って…?」
「…言えない。言ってはいけないから。」
「そういう事なら…まあ気になるけど、聞かないでおくよ。」
多少気にはなるが、言えない事をあれこれ詮索するのは失礼だろう。 それに錨はどんなに聞いても言わないような気がする。
悲しそうな瞳を見ていれば…、何か事情があるだろう事は俺にだって解るから。

「バス停、着きましたよ。」
「え?あ、ホントだ。」
どうやらバス停に着いたようだ。 さっそく時刻表を見る。
「え…っと……、………どうやら後10分で来るみたいだ。」
一時間に来るか来ないかの運行状況なのに、このタイミングの良さは神に恵まれているとしか思えない。
俺は胸を撫で下ろし、ペンキが所々剥がれ落ちた古びたベンチに腰を下ろす。
「じゃあ私はこれで。」
「ああ、本当にありがとう。お陰で助かったよ。」
「どういたしまして。」
そう言うと、錨は何事も無かったかのようにその場を後にした。

しばらくすると予定通りバスが来て、1時間かけて多少大きな町でバスを降りた。
途中人に道を尋ねたりして、ようやく目的地へと着いた。
中へ入ると、涼しい空気が俺の体を撫で、本の匂いが広がってきた。
「ここ…だよな?」
受付を覗いてみると…………。

―――――居た。

葵さんは隣に居る同僚らしき人と楽しそうに何か話している。
俺は高鳴る胸を抑えながら、受付へと歩き出す。

「あ、あのっ…!」
「はい?本の返却ですか?」
会話を中断して、眼鏡から覗く瞳をこちらに向ける。
「…あれ? 貴方確か………。」
「ど、どうも。七原です…。」
まさか忘れられてる…?そんな嫌な予感が脳裏によぎる。
「ああっ!七原さんですね。 こんにちは。」
そう言って、優しく微笑みかける葵さん。
…俺は心臓の音が一際高鳴るのを感じた。
503赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/02/03(土) 02:50:09 ID:N98iVNv+
短いですけど今回はこれまでです。
ペースが落ちてしまって申し訳ないです。
そして修羅場がまだ訪れない事も申し訳ないです。
次の話は今回程間を開けずに投下します。

あと、この話を楽しみにしてくださっている方がいてくれたようで…、とても励みになりました。
これからも期待に添えられるよう、頑張りたいと思います。
504名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 09:00:34 ID:bq3CJqeD
久しぶりに赤い瞳キテルー! (*゚∀゚)ムッハー
GJGJ!
鈍感で分かりやすい七原に泣いた
赤い瞳じゃない輪も修羅場に混じってはこないんだろうか
なんにせよ展開が気になるー
505名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:14:40 ID:59ewTXrL
>>503
赤い瞳キタキタキタキタ━━━!
田舎モノ好きな俺も待ってる信じてる!
506名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:57:31 ID:kW3EvB4x
投下しますよ
507『甘獄と青』Take23:2007/02/03(土) 12:58:32 ID:kW3EvB4x
 時計塔に向かい、疾走する。
 背後から聞こえてくるのは連続で金属がぶつかり合う高い音、それなりに離れたという
のに聞こえてくるのは戦いが激しいからなのだろう。リサちゃんのことを信頼し時計塔に
向かうことにしたのだが、堪えきれずに一度だけ後ろを向いた。
「リサ様のことですか?」
「リサちゃんは、大丈夫だろうか?」
 とうとうスピードが落ちてしまった。ナナミは眉根を寄せ、こちらを鋭い目で見つめて
くる。理由は分かっている。リサちゃんにユカリの相手を頼み置いてきたのは僕自信だし、
今になって心配すれば信頼をしていなかったということになるからだ。
 けれど信頼と命の重さを秤にかけた場合、どちらが大事なのだろうか。命、という言葉
は文字通りの意味を持つ。ユカリの覚悟は本気だったし、殺すことも躊躇いはしなかった。
それにユカリの強さは、ナナミよりも遥かに上だったのだ。サラさんとリサちゃん二人を
相手に勝利したナナミを制し、それでもまだ底が見えなかった。そんな化物のような者が
相手で、リサちゃんは勝つことが、生きることが出来るのだろうか。
 彼女は目的があると言っていた。暴走したときでもなく、普段のリサちゃんの姿として
でもなく、ありのままのフランチェスカとして僕の前に現れたとき。普通の人ならば無理
だと思う以前に馬鹿馬鹿しいと思うような計画を立て、真剣な目で言ってきたのだ。
 姉を生き返らせる、と。
508『甘獄と青』Take23:2007/02/03(土) 12:59:29 ID:kW3EvB4x
 命を落としてしまったら、そこで彼女の全てが終わりになってしまう。だから、心配に
なっとしまう。姉への気持ちを失ってしまうかもしれないのに、それで良いのかと。
 そこまで考え、僕は苦笑を浮かべた。いけない、これでは彼女への侮辱になる。
「ナナミ、頼む。叱ってくれ」
「青様」
 一瞬だけ間を置き、ナナミは頷いた。
「かしこまりました」
 白杭を地面に突き立てスピードを完全に殺し、腕を掴んで僕の体も引き留める。そして
二人で向かい合う形になると、ナナミは左の平手を高く掲げ、
「失礼致します」
 勢い良く振った。
 快音。
 頬に強い痛みが走るが、それで目が覚めた。
「青様、公園で私が戦ったとき、最後まできちんと見ていて下さいいましたね?」
「それを今度は、リサちゃんにしなければいけない。それが僕に出来ることで、するべき
ことだ。そうしなければ、リサちゃんの覚悟が無駄になる」
 分かっていたことだが、こうして口に出すと意思はより固まる。
 もう、揺るがない。
「すまん、迷惑かけた」
「本当です」
 それに、とナナミはそっぽを向き、
「恋人の前で、他の女の心配をするなんて失礼にも程がございます。今だって、サラ様の
為に頑張っているなんて……青様、もう一発如何でしょうか?」
「遠慮しとく」
509『甘獄と青』Take23:2007/02/03(土) 13:01:28 ID:kW3EvB4x
 可愛いらしい嫉妬だが、ナナミの表情は真剣そのものだ。個人的にビンタはさっきので
終わりにしてほしいと思う、今度殴られたら奥歯がきっと取れてしまうだろう。この場の
真剣な雰囲気を壊したくないので言っていないが、実は先程のビンタで既に奥歯が危ない
感じでぐらついているのだ。恐ろしいのは、機械人形の嫉妬である。
「行きましょう」
 頷き、走り出す。
 頭に思い浮かんでくるのは、ユカリが僕に言っていた言葉だ。慕う母親に怒られるかも
しれない可能性が高いのに、そんな危険を犯してまで僕を殺そうとした理由。
 僕はサラさんを、殺すことが出来るのか。
 殺したくはないし、出来ることなら平和に解決したいと思っている。その考えは公園で
ナナミ達が戦いをしたときから今に至るまで、全く変わっていない。寧ろ公園で皆が死に
かけ、ナナミを失ってしまいそうになり、シャーサが完全に居なくなってしまったことで
その考えは強くなっている。誰が死んでも、良いことも嬉しいことも何もない。辛いこと
ばかりで、誰もが耐えきれなくなってしまう。
 しかし、どうしても殺さなければいけなくなった場合、僕にそれが出来るのだろうか。
「ナナミ、僕はサラさんを殺せるだろうか?」
「心配は無用です。青様ならば、きちんと解決できます」
 断定系で言われて、苦笑が溢れる。しかも論点が微妙にずれているが、これはナナミの
気遣いなのだろう。逆に考えれば僕はサラさんを殺せないということだが、その可能性は
考えていないのだろうか。いや、考えていないのだろう。
510『甘獄と青』Take23:2007/02/03(土) 13:02:28 ID:kW3EvB4x
「そんなに立派な人間じゃないんだけどなぁ」
 軽口を叩き、加速する。
 時計台は近い。息が切れるが気にせずに、強引に身を前へと飛ばす。震える左右の足を
交互に出せば、それに付いた胴体は自然と前へ進んでゆく。当然、頭も前へと進み、その
中に存在する思考や視界も前へと進む。後はそれの繰り返しで、目的地まではひたすらに
動くだけだ。やりたいことが決まっていれば躊躇いは無いし、現に決まっている僕は前へ
進むことに遠慮も何もない。感じとることが出来るのは、時計台塔の姿と併走するナナミ
の足音、そして自分の鼓動だけだ。
 辿り着く。
 見上げると針は11時45分を示している。かなりのハイペースで進んできたつもりだった
けれど、ユカリの相手をしていたせいで大幅に時間を取られてしまったらしい。
「間に合って良かった」
 深呼吸をして息を調え、中に入る。
『いらっしゃい、ブルー。わたしは展望台に居るわ』
 僕が言ったことを覚えていてくれたらしい。高い場所から見下ろせば、自分も普通の人
であると分かる。そう言って時計塔に来る約束をしたとき、サラさんは本当に嬉しそうに
笑っていた。自身を普通ではないと責めていた彼女からしてみれば、確かに嬉しかったの
だろう。今までの重圧から解放されたのだから。
 そう、彼女は普通の人間なのだ。
511『甘獄と青』Take23:2007/02/03(土) 13:03:31 ID:kW3EvB4x
 だから皆と一緒に笑ったり食事をしたり歌ったりしたし、振られてかなしかったときは
泣いて暴れて気持ちを伝えようとした。寂しかったから温もりを求めたのだし、その温度
が忘れられないから世界が滅びれば良いと思っている。程度の差こそあれ、これは誰でも
考えることだし、普通のことだと言うことが出来る。サラさんだけが特別なのではない。
 エレベーターの前に着くと、ナナミは一歩下がった。
「それでは、私はここまでです」
「来ないのか?」
 離れないでほしいと言っていたのはナナミの方だったのに、随分と思い切りが良い。
「私も、そこまで野暮なことは致しません」
 ですが、と続け、
「絶対に、帰ってきて下さいませ」
 言って、抱き付いてくる。背中にパイルバンカーが当たるが、それすらも気にならない
程の必死の抱擁。何度も繰り返し、家を出るときにもしたけれど、これが最後だと思った
ことはない。これから先も、大事なことがある場合、何度でもしたいと思う。
 エレベーターに乗り込むと、もう本当に最後だなと実感する。これが最上階に辿り着き、
一歩踏み出せば展望台だ。きっとそこに居るだろう、独りで寂しく僕を待っている人が。
「伝えよう」
 言うべきことは山程あるし、それが僕の成すことだ。
 見上げれば、階を表示するランプの速度は遅い。昔に来たときはそれ程遅いとも思わな
かったけれど、それは僕が今一人だからだろうか。そう考えると、橙色の光もなんとなく
寂しい色に思えてくる。色の暖かみすらも、遠いものに感じてしまうのだ。
「サラさんも、こんな気分だったのか」
 独りで見る光は、どれだけ孤独を浮彫りにしたのか。
「伝えよう」
 僕の、サラさんの。
「伝えよう、全ての為に」
 扉が開き、黒髪を風に翻しながらサラさんが振り返った。
512ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/02/03(土) 13:05:05 ID:kW3EvB4x
今回はこれで終わりです
513名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 13:11:31 ID:yXV9rP+K
田舎モノか…。それなら、古い習慣に引き離されたカップルによる修羅場、とかもありかな。
十六になると男女ともに、村の決めた相手と婚約しなくてはならない、とか。
選ばれなかった幼馴染みがキレて、一緒に村を出ようと誘うけど、すでに男は婚約者とやっちゃってたり、結婚後の地位に目が眩んでいたり、とか。
実は選ばれるのは幼馴染みだったのを、婚約者は裏で操作して自分がその場に納まった。それを知った幼馴染みは…、とか。
不正を知った男は婚約破棄をして、幼馴染みと結ばれようとするが、それを婚約者が許すはずも無く…、とか。
514名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 15:01:13 ID:YsZfbkd9
>>513
そういうのをおまいが書くんだな?
515名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 15:19:47 ID:gXl5KmQV
>513
見事な発想力と妄想力だ
ぜひともそれをプロットに作品を書き上げてくださいませ

ところで話は変わるが
ある職人様に○○ばっか書かないで△△と□□の続きを書いて
とせがむのはルール違反なのだろうか?
学園百合モノと異種族幻想モノが不足気味で禁断症状が出そうなのだが
516名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 15:24:47 ID:cUs2FcQ+
>>513
そのプロットで書いてみようかな・・・・、と思ったけど文章力が無いのでやめておこう
517名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 15:34:04 ID:lvGDJhgE
>>512
GJ!
ついにこの時が……wktkが止まらない!

>>515
作者様は自分のペースでやってんだから急かすようなことはせんほうがいいと思うが
518名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 17:57:11 ID:hQGmdxmx
>>515
自分の趣向だけしか考えないクレクレは、荒れる元になるからやめれ
いい大人ならそこらへん分別つけないと
519名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 18:05:54 ID:ZNNYqvep
サウンドノベルを作ってくれる奴いないのかな

誰かまとめの作品の全部をサウンドノベルで読めるようにするんだ
520名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 18:32:01 ID:bq3CJqeD
>>519……お前はなんて献身的な住人なんだ
わかった、そこまで言うなら全てお前に任せる
521名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 18:33:34 ID:yXV9rP+K
サウンドノベルツクールとかあったな、昔。
522名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 18:49:51 ID:nMoPt/hR
そういやサウンドノベルを丸々作ってくれた神も居たな、昔。
523名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 18:55:58 ID:iEFoRZOZ
立ち絵さえ何とかしてくれれば、サウンドノベル作れなくない。まぁ、かまいたちみたいな奴でいいなら立ち絵もいらんが。

ただ、作るにしても仕事が今詰めだから、時間かかるとオモ。
524名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 19:01:21 ID:rgsymKaW
まあ、有志で金を集めてプロの絵師さんに書いてもらい
完成度の高いサウンドノベルを作ることは夢ではないがなww

コミケで売れば話題になることは間違いなし?
前に張られていたヤンデレの同人即売会なら少し売れるのかな

525名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 19:11:59 ID:HtlxGwDs
コミケに夢を見るのは止めようぜ
修羅場スキーは特殊な嗜好なんだから
526魔女の逆襲16話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/03(土) 19:33:31 ID:K5fpEQNK
 早百合は廊下を歩いている。キンコンカンコンと三時間目の始まりを告げるチャイムが鳴り、生徒たちの喧騒が消えて廊下には人影は居なくなった。
「はじめてのサボりになるわね」
 早百合はそう呟く。早百合の無遅刻無欠席の目標、崩れ去り。しかし、いまはそんなことはどうでもよかった。別に無遅刻無欠席だからって欲しくもない皆勤賞が貰えるだけだ。
しずるはなるべく教師に見つからないように、目立たない通路を歩いていた。
 早足でカツカツと足音を響かせ、しずるの姿を探していた。
 魔女。早百合はいますぐ魔女に会いたかった。
 廊下を歩いて、ふとした瞬間に止まりきょろきょろと見渡してみる。そして誰も居ないことを確認するとまた歩き出す。神出鬼没のしずるだ。いつも授業中どこに居るのかはよくわからない。
しかし、しずるを探しつつ早百合はあるところへ向かって歩いていた。
「茶道室……」
 階段をちょうど校舎の三階のはじっこに位置する開かずの間。早百合にはしずるがいそうな所はそこしか知らない。唯一しずるが案内してくれた場所だ。
 教室のある二階から一階分昇る。特殊教室の近くになってくるとさすがに教師の姿は見えなくなり、薄暗く人気のない茶道室の前は不気味だった。
 しずるが返すと思わないが、茶道室の戸をノックしてみる。
 面接練習のように中指の関節だけでのノック。
「……」
 反応は返ってこなかった。
 まぁ、予想通りだ。早百合は胸ポケットに入れていた茶道室の鍵をとる。鍵穴に差し込むとちゃんと奥まで入った。偽物ではないようだ。ぐるりと回す。カチャと軽い音がしてドアのロックが外れた。
 戸を開ける。居ない可能性も高かったが、早百合は勘で居ると確信していた。
 靴を脱いで畳みの上にのぼる。畳の匂いが漂う茶道室。茶道室に人影は無かった。ただ、六畳分の畳とちいさな釜があるだけであった。
 しかし、暖房はつけられていた。備え付けのエアコンがふうふうと暑い息を吐いて部屋をあっためている。普段この部屋には誰も入らない。しかし、暖房が付いているということはしずるは今日この部屋に来ていたということである。
「………」
 とりあえず学校に来てない可能性は排除してもよさそうである。
 しかし、どうしようか。このまましずるが来るのを待つか、それとも戻って授業を受けるか。三時間目はサボってもあまり自分には支障がないが四時間目は体育のマラソン練習で参加しなければ後でキツい罰をうけることになる。
 待っても一時間か。戻って授業を受けるのもいいが、いまさら帰ってもしょうがないだろう。それにねねこの手前、あまり顔を合わせたくない。
どんどん顔を合わせたくない人が増えてる早百合である。これも全部鈴のせいだ! 早百合は悪態をついた。
 とりあえず、この部屋はあったかいし座って待つかと早百合は足を折り、畳の上に足を崩して座ろうとして、
「ん?」
 茶道室にある小さな押入れの引き戸が少し開いているのを見つけた。なんとなく、早百合はその引き戸のところまでひざ立ちで近づいてみる。
「くー……くー……」
 中から寝息が聞こえていた。めちゃくちゃ平和な寝息である。
 早百合はもしやと思いつつ、ほとんど確信した状態で引き戸を開けた。
「……しずるさん」
 やっぱり、と言ってはなんだが。案の定そこに居たのは魔女こと紅行院しずるだった。
 体操服にスクール水着、そして首にペンギン柄マフラーといういでだちのまま、半畳分のスペースの押入れの中で体育ずわりのまま寝ていた。
 早百合は頭を押さえる。丸まったまま寝息を立てるしずるの顔はまるで天使のように美しく、揺り起こすと福を持って逃げ出しそうなぐらい優しげで儚げだった。
「……しずるさーん」
527魔女の逆襲16話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/03(土) 19:34:08 ID:K5fpEQNK
 早百合は廊下を歩いている。キンコンカンコンと三時間目の始まりを告げるチャイムが鳴り、生徒たちの喧騒が消えて廊下には人影は居なくなった。
「はじめてのサボりになるわね」

 ただ、早百合は真面目にしずるの肩をつかむとゆっくりと左右移動を繰り返した。片方の肩に重心をかけるたびにしずるの頭ごとゆらりと重しのほうへ移動する。
 一分ほど、右左に揺れていたしずるの頭だったが、まどろんでいた意識も徐々に覚醒してきたようで早百合の顔に視線を合わせる。
「おはよぅ、鞠田早百合」
「おはよう。しずるさん」
 しずるさんは眠そうな目をこすりつつ、起こした相手である早百合を嬉しそうな表情で迎えた。来てくれて嬉しい、といった表情だ。
 対する早百合の顔はすこし固かった。
「やぁやぁ、いつでも来ていいと言ったがこの時間に来るとは思わなかったよ。すまないな、こっちはおねむしていたもので何も迎える用意はできてないぞ」 
「見ればわかりますよ。別にそんなのいりません。なんで押入れの中で寝てるのかはわからないですけど」
「ふぅむ、しかし今は三時間目のはずでは? サボりかい? ダメだぞ。授業に出て勉強しなければ学校に来る意味などないぞ」
「普段授業なんて出ないしずるさんが何言ってるんですか。説得力ありませんよ」
「……なんだか、今日はやたら言葉にとげとげしさが感じられるのだが、鞠田早百合。どうした? 図書館のほうでも紛失したのか?」
「違います」
「むぅ……、寝起きはボケがうまく浮かばないか」
 しずるはひざ立ちで外へ出ると、むうと腕を組んで唸った。
「なんで、今日もそんな格好で?」
 早百合は聞く。しずるの格好は半そでスクール水着の体操服のクセに今日はマフラーまで巻いている。
 そういえば、早百合はしずるのマフラーを見たのはコレが始めてである。待て……、いや初めてのはずだ……。思い出した。たしかこのマフラー、どこかで見たことがある。夢の中。夢の中だ
 ペンギン柄のマフラーなんてなかなか無い。それなのにどうして私は現実のとおりにペンギン柄マフラーをした魔女を見ることができたのだろうか。単なる偶然か?
 そうではないのなら。……鈴が見せた? 
 夢の中でしずるがこのマフラーをしていたシーンはなんだったか。思い出そうと早百合は頭をひねる。どこかに出てきた……。
 たしか、……しずると良樹がキスしていた時……。早百合が幼子のまま、しずると良樹の蜜月を見ることしかできなかったあの夢。 
ひとつの仮説が浮かぶ。……あれはもしかしたら夢ではなく現実ではないのか?
現実で起こった事実を、私が夢としてみていたのでは? 夢が現実を映したのか?
もし、これが……鈴の力だとしたら。早百合は鈴の力に改めて恐怖が湧いた。
 この鈴は、もしかしたら私をどこまでも追ってくるのかもしれない。私はもう逃げられないのかもしれない。
「鞠田早百合?」
「え、あ?」
「どうした? 君が質問したから答えたが、私の回答をちゃんと聞いていたのか?」
 しまった、ずっと考え込んで聞いてなかった。
早百合は自分は何を質問したのか思い出そうとする。深く考え事をすると前後の記憶が消えると言うのは本当のようだ。自分は何を質問したのだ。なにかを思ってマフラーにつながってたから……。
「では、もう一度言おう。昨日夜巫女装束を着ながら町を闊歩……」
「あ、大丈夫です。聞いてましたから」
 あまり重要な回答じゃなさそうだったので、早百合は嘘をついて打ち切った。
「やはり、なにか刺々しいぞ……」
 しずるは眉をひそめて言った。そうかもしれない。早百合は自分でもそう思う。なにか、自分の中でしずるへの対応が変わってきている。
 いや、そんなことはない。しずるは親友だし、鈴はいまは無いのだ。
528魔女の逆襲16話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/03(土) 19:34:59 ID:K5fpEQNK
 りぃん

 それでも……。鈴の音は頭の中でずっと響いている。
 そんな早百合を、しずるはひざ立ちで早百合を見ていた。早百合がその視線に気付いて顔を向けるとしずるは真剣な表情で鴉色の瞳で貫くように見ていた。
「本気で、なにかあったのか? 鞠田早百合。君の心が乱れてるぞ」
「……」
 一瞬だけ、早百合はしずるに全てのことを話そうかと思った。
 しかし、しずるの顔を正面から見据えるうちに……そんな思いは頭の中で崩れてしまっていた。
 そして、早百合が口を開いた瞬間。出てきたのはしずるを責める言葉
「どうして、交際をばらしたんですか?」
「ん」
「どうして、クラスメイトに交際をバラしたんですか?」
「……昨日のことかい?」
 しずるはきょとんとした顔で早百合を見ていた。
「昨日、クラスメイトにバラしましたよね」
 ねねこの言葉を無視したように出ていった早百合だったが、紀要はちゃんと聞いていたようである。早百合はそれなりに優秀だった。
「別にバラしたつもりはないぞ。ただ私には恋人が居るとしか言ってない。で、恋人は君のクラスの中に居ると……」
「バラしましたよね?」
 しずるはふふんと笑った。
「問題ないと思ったからだ」
 やはり、しずるはバラすつもりでやっていたようだった。
「どうして問題ないと?」
「恋人同士なのだし、宣言してみたかったのだよ。それに、この学校で交際してるカップルなんて何組も居るぞ? 全てのカップルが隠しているわけじゃないしな」
「良樹はあなたと付き合っていることを隠してたんです」
「そうか、兼森良樹は私に遠慮してたのかな? ふふふ、私ならかまわんというのに」
「そんなわけありませんよ。あなたのことそんなに気にかけるほど良樹は気遣いがいい奴じゃありません。空気読むの下手ですし」
「ふぅむ、兼森良樹にとっいては耳が痛い幼馴染の君の意見なのだからそうなのだろう」
 おさななじみ。何故かしずるにそれを言われたくなかった。
「そうです。幼馴染です。だからこそ良樹のことは多少は知っているつもりです。だからこそわかるんです」
「ほぅ」
「良樹は、目立つことや注目されることが苦手なんですよ。小学校の頃の発表会なんてどんだけドジしたか……。だから隠してたんです。あなたと付き合っているって言うことがどれだけ大事件かわかっているんですか?」
「………」
「魔女と呼ばれてるんだからわかりますよね?」
 早百合は言いながら自分で思った。こんなに魔女相手に喋れるとは思わなかった、と。
 しかし、一方で思う。私はなんでこんな些細なことで激昂してるのだ? これぐらいのこと、そんなに怒ることではない。少なくとも、三時間目をサボってまでしずるを探してまでやることじゃないだろう。
 もしかしたら…………私は魔女を罵倒したいのか?
 良樹のことなら私のほうが知っている。良樹の気持ちをわかっていないあなたなんかに良樹と付き合う資格は無い。
 そう魔女に罵倒したいんじゃないか? 本当は。
 早百合の言葉を聞いていたしずるは一言
「わかるよ」
 と呟いた。
529魔女の逆襲16話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/03(土) 19:35:56 ID:K5fpEQNK
「私の理解が足らないのと……、わたしが調子に乗ってたことが原因だろうな」
 しずるは少し自嘲したような表情で言った。
「恋人自慢がしたかったんだよ。みんなに自分の恋人を紹介して、良樹の素晴らしさを知ってもらいたかった。しかし、それが良樹を傷つけることになるとは………。ここまで友人を作ってこなかったツケかな」
 しずるは本当にいい人だと思う。
やりたいことは自分でできる限りやろうと努力し、自分が反省すべきことはすぐに認めて謝罪する。
 それに、早百合はしずるの気持ちがわからなくもなかった。恋人が居ればそれを誰かに紹介して優越感を持ちたい。早百合でも普通に思うことだ。
「君のように、私に注意してくれる者というのは私にとって宝物そのものだ。イエスマンやイエスガールばかりでは私も腐ってしまう。教えてくれてありがとう、鞠田早百合。これからは兼森良樹のことをもっと理解しようと思うよ」
しかし。早百合はもう、そんなことはどうでもよくなっていた。
「注意してくれて感謝する。私と良樹のために、言ってくれてありがとう」

 りぃん。

「いえ」

 りぃん。

「そんなつもりじゃありませんから」
 そんなつもりじゃない。
 私は、しずると良樹のために、こんなこと言ったんじゃない。
 自分のため。自分の感情のため。自分が、魔女に優越感を持ちたかった為!

 頭の中に浮かぶ映像。それは夢の世界で突きつけられた現状。
 ベッドで交わる良樹としずるの姿。
 そしてそれを見ることしかできない自分。
 やっぱり、もう一日休むべきだったのかもしれない。
しずると良樹。二人の姿を見ていると蘇ってくる。
封印したはずの負の感情が。ふつりふつりと、しかし急速に増大して。

 りぃん。

 宣言します。

 りぃん。

 私は、あなたと良樹の間なんて。応援していない。

 りりりりぃぃぃん

「じゃあ、私はこれで失礼します」
 そう言うと、早百合はさっさと立ち上がる。
「おっ、どこへいくのだ? まだ三時間目が始まってすぐだぞ。とりあえずコーヒーでも飲んでいきなよ」
「結構です」
 早百合はくるりと体を180度反転し、しずるに背を向けると茶道室のドアを開けた。脱いだ学生靴を入り口で履きなおす。
 あまりにも早い行動にしずるは何かを感じたようだ。焦った表情になり、早百合に詰め寄ろうとする。
「やっぱり、なにか怒ってないか? ……なにかあったのか? 鞠田早百合!」
 うしろからかけられるしずるの声。しかし早百合は立ち上がろうとして足がしびれて動けなくなっているしずるに一瞥することなく茶道室を出たのであった。

 早百合のポケットの中には、何故か家に置いていたはずの鈴の付いた携帯電話が入っていた。
 それに気付く早百合。携帯電話に付けられた鈴。早百合は力任せにそれを掴むと、リボンごとぶちりと引き抜いた。
 鈴だけが早百合の手に残る。燕尾色の鈴。風もないのに動き小さな音を奏でている。しかし、早百合はそれを見てももうなにも驚かなかった。

 りいんりぃん

 早百合は鈴を握り締めながら大股で歩いていた。
 この鈴と共に崖から投身した、数十年前に生きた女のように。
(続く)
530赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/03(土) 19:36:27 ID:K5fpEQNK
 早百合覚醒。です。ここまで来るのに長かった。
 筆の進みが遅くてあっぷあっぷです。
531名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 20:40:56 ID:B67pJ3qn
GJ!!めくるめく修羅場の世界へようこそ、早百合ん!!
今は物語全体のどの位置なんでしょうか?作者様としては。五合目くらいですか?
532名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 21:07:07 ID:fOuBSj07
早百合覚醒キタ━━(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)━━!!!
>>512
ついに最終決戦か
天を焦がすような激しい嫉妬も良いがナナミのヤキモチみたいな嫉妬も好きだぜGJ!
>>503
赤い瞳ktkr!
だんだんと修羅場へ向かって来ているな
533名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 21:12:20 ID:hgKIvNKi
>>524
これか。
ttp://amane.dyndns.info/yami/
発祥がmixiってのが何か微妙な気がするが……この試みはすばらしい。


…………間違っても作者氏の了解を得ずに勝手に売るなよ?
534名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 21:47:51 ID:rgsymKaW
>>533
作者本人なら自分の作品を自由に使えるぜ
535名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 22:07:42 ID:ONMts+xu
ストーカー女と寝てしまった場合後の状況について

ストーカー女が彼の彼女になっていると思い込んでそうで恐い
536名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 23:11:20 ID:+kIFhd4/
魔女の逆襲はたまに入るリアルなネタが気に入っている。
ところで>>526-527の出だしがダブっているが527のは余計かな?
それと風邪の欠席ですでに無遅刻無欠席にならないのでは?
537赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/03(土) 23:26:06 ID:K5fpEQNK
>>536
うわっ。本当にミスだ。
すいません、早百合の無遅刻〜の一文を削除の方向でお願いします。

リアルなネタってなんだろう。
538君という華 1.7 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/04(日) 00:02:30 ID:RDIfopqN
 酷い吐き気。ズキズキと尾を引く頭痛。眩暈がする。体調は、最高に最低だ。それはもう、生理の時だってこんな気分にはならない。今日は人生において最悪最低の日だ。孫の代まで言い残してやる。
 だいたい、あの二人……ううん。あの二匹の豚がいけないのよ。あたしと亮君の前をちょろちょろと。目障り極まりない。害虫は早急に駆除すべきよね。あたしと亮君の為にも。
 でも、どうやって駆除しよう。撲殺? 毒殺? んー、どうもピンと来ない。
 それに、日本の警察はなんだかんだと言っても優秀だと聞いたし。あんまり目立った行動をすると、すぐに逮捕されてしまう。それはダメ。亮君と離れちゃう。
 きっと亮君は泣いちゃうわ。亮君、あたしがいないと不安そうな顔、いつもしてるもんね。うふふっ。あたし、亮君の事なら何でも知ってるよ。亮君の事、一番好きなのはあたしだよ? 気付いてるよね? えへへ。
 ああ、それにしも腹が立つ。早くあの雌豚二匹を抹殺したい。そうすれば、亮君はあたしのもの。うふふっ。今度は誰にも邪魔されないように、首輪をつけておかないとね。
 首輪をつけた亮君……イイ。すごく可愛い。ついでに、犬小屋みたいなものも作ってあげよう。最高だ。一気に気分が昂揚としてくる。
 そうだ。あんな薄汚い豚どもの事を考えるのは止めよう。無意味だ。それより、亮君の事を考えた方が、何億倍もマシってものだわ。
 ああ、亮君。その可愛い顔を、あたしの前だけで苦痛に歪ませたい。きっと可愛いわ。
 ほら、亮君。こんな変態さんな格好しながら、反応しちゃったの? こんな大きくして・・・・・・ふふっ。悪い子にはお仕置きが必要だわ。亮君はそんなはしたない子じゃないでしょう? うふふふふふふふ。
 ああ、楽しい。亮君を飼いならせるのは、世界中捜しても、あたしだけだよ、亮君。気付いてるよね? 亮君、あたしの事いつも見てくれてるもんね。
 いいんだよ。気にせず、亮君の為なら夜のオカズにも喜んでなってあげる。本当、亮君はあたしの事が好きなんだねあははははは。
 えへ。えへへ。亮君、そんな媚びた目をして、許して欲しいの? でもダァメ。そんな身体から他の女の匂いさせている犬は、許しあげないよ? うふふ。
 これからは、他の女について行っちゃダメだよ? それと、今日からは朝三回、夜七回はセックスしてもらうからね? 早くその酷い匂いをあたしの匂いに変えないといけないからね。
 無理、なの? 無理じゃないよね? あたしの事愛しているなら、それくらい平気で出来るよね? うふふ。
 いつか、本当にこんな日が来るかな? ううん、絶対に来る。来ないなら、迎えるまで。
 だから、あたしは強くならなきゃいけない。あの雌犬二匹に勝つくらい。いや、世界中の亮君を狙いそうな人間全てに勝てるくらいに、強くならなきゃ。
 これは、亮君と結ばれる為の、宿命。決して逃れる事は出来ない。
 上等だ。それくらい、あたしの敵じゃない。邪魔するもの全て、叩き潰してやる。容赦はしない。
 潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して。
 そうして、あたしの世界は完成するの。そうでしょう、亮君?
539 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/04(日) 00:07:01 ID:RDIfopqN
以上、幼馴染編でした。後輩と比べてこの異様な短さはなんでしょうね。
ダメだ眠いんだだからその釘バットをしまっt(撲殺
540名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:13:04 ID:iz8guG6t
>>539
何だこの幼馴染……

異常なくらい可愛過ぎるだろこれは……
541名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:22:59 ID:Uxq3NYzV
40x40で4枚、原稿用紙16枚ぐらいを目安にして投稿している俺にとっては
毎回毎回一話分を一日で仕上げるのはだんだんと辛くなってきたりもするな

一体、原稿用紙何枚ぐらいで投稿すればOKですかかね?
542名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:30:25 ID:AqY5AMdz
>>541
自分のペースで良いんじゃね?
俺は携帯で3000文字以上を目安にしてる
原稿用紙だと、多分十余枚くらいだと思う
543名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:39:53 ID:PvaSwnfp
>>539
GJ!
幼馴染の愛の深さに感動した
544名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:40:37 ID:kXjusumE
>>541
気、気にしたことないよ…
545名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:40:40 ID:iz8guG6t
自分のペースで十分ですよ
無理なさらずに好きなときに好きなだけ
546名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 01:15:52 ID:4gjTfpJm
こんな子に首絞めてもらいたいなぁ…。
こんな趣味人に話せねぇw
547 ◆rgd0U75T1. :2007/02/04(日) 01:18:32 ID:4gjTfpJm
548名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 01:30:14 ID:tLr6/p3c
一瞬キモ姉かと思った
549名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 05:08:07 ID:dan933jb
犬エンド という単語が頭をよぎった

くそぉ・・・みんな可愛いなぁ・・・・!!!!!
550愛娘の恋 ◆N.P5FQhRG6 :2007/02/04(日) 05:48:44 ID:/jOvSEX0
「浩一、今日のご飯何がいい?」

携帯電話で今晩のメニューを美風が聞いてくる。

「……おまかせで」
「いつもそれしか言わないんだから」
「いや、美風の料理はなんでも美味いからさ」
「もう……じゃあ私材料買ってから帰るから、ちょっと遅くなるかも」

わかったと言って浩一は電話を切り、バイクを発進させる。

美風とは三年前から交際し始めた浩一の彼女だ。
あることがきっかけで知り合い、そして美風から告白された。
しかし美風の両親はこの交際に反対した。
彼女の父親は大会社の社長で、美風は社長令嬢というやつだ。
美風が交際のことを両親に話したとき父親はかなり激怒したらしい。
美風が当時十九歳で大学生であったこと。実は結婚させようとしていた相手がいたこと。
そして何よりも交際相手が気に入らないこと。

そんな父親に美風も激怒したらしく、父親の反対を無視して浩一の済むアパートにやってきた。
バッグ一つを片手にやってきた美風に浩一は驚いた。そしてすぐに帰そうとした。
だが美風の決意は固くここに置いてくれないなら死んでやる、みたいなことを言いだし結局一緒に住むことになった。

浩一はアパートの駐車場にバイクをとめ、部屋へと向かう。
浩一の部屋は二階にある。
551愛娘の恋 ◆N.P5FQhRG6 :2007/02/04(日) 05:51:05 ID:/jOvSEX0
「……ん?」

階段を上がるとドアの前に一人の知らない少女がいた。
……知らない?
浩一は何故かその少女に見覚えがあった。
だがどこで会ったのか思い出せない。

「あの……ウチに何か用?」

少女に声を掛けるとその少女は見上げて浩一を真っ直ぐ見た。
じーっと浩一の顔を見つめている。
その表情からは何とも言えない感情が伝わってくる。

「…………あなたが神木浩一さん、ですか?」
「あ、ああ、そうだけど……キミは?」
「わたしは……」

名前を尋ねるとそのままうつむき黙り込んでしまった。

「あー、えーっと、……キミ一人?親は一緒じゃないのか?」
「……親は……………………た…です…」

うつむいている上に小声なので少女の声は全く浩一に聞こえない。

「あの……もう一回言ってくれる?」

すると少女は下を向いていた顔を上げ、

「親は……あなたですっ!!!!」

顔を上げた少女の目から涙が流れている。

「………………えっ?」

少女の言ったことが理解できなかった。
いきなり親が自分と言われて理解できるはずがなかった。

「わたしは……あなたの…………娘です」
552 ◆N.P5FQhRG6 :2007/02/04(日) 05:55:13 ID:/jOvSEX0
とりあえず娘のやつを最初から書いてみました
設定とかかなり変更してしまいましたけど
553名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 09:04:51 ID:MJF1R1KE
>>552
GJ!

口下手なのでコレだけで勘弁・・・ね?
554名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 10:39:28 ID:QIz1CJhz
GJ!
お願いだから完結するまで物語書いてね
555名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 11:57:16 ID:rroPq7Mx
GJ!
俺にこれをいわせたのだからこれはかなりの良作になるだろう
556『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/02/04(日) 12:57:26 ID:pE824ulL
「ふぁぁぁぁ……」
 くそう。昨日はやたらと翔子のやつが興奮してたから眠れなかった。アイツのテンションが高いとこっちにまで影響が来る。
「ふぁぁぁぁ……」
 学校に向かう間、ずっと欠伸ばっかしている。俺の寝不足が翔子にも伝わっているのだろう。登校途中、ずっと申し訳なさそうにしている。
「その……ごめんね?ショウ〜?」
 ですり寄って謝ってくる。普段はお高くとまり、強気な翔子だが、俺に迷惑をかけたと思うとこうやって甘えた声で謝る。まるで猫のような奴だ。
 こいつの影響かどうかわからないが、俺の女の好みが猫みたいな女になってしまった。いいよね、強気反転甘えっ娘。
「ふぁぁぁぁ……」
 学校に着くまで計十回の欠伸。
「ごめん!ごめんね?ショウ、ほ、本当に許して?」
 翔子から計五十回のごめんを聞いた。そんな翔子に「うん、うん。」としか言わない俺鬼畜。
 そんなささやかな幸せに包まれた朝は、教室に入ったとたんにぶち壊される事になった。
 「いやったはぁー!!翔ー!つ、い、に!俺の人生エロゲ化計画が実行されることにったぁぁ!!ふげあふぁ!?」
557『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/02/04(日) 12:59:07 ID:pE824ulL
「ま、少しは落ち着けよ、圭太。」 
「ふふ、さ、さすが。高速の右を持つ男。相変わらず見えなかったぜ。」
 今、目の前で地面に伏した男、秋川圭太。(自称)俺の親友だとか。いつも俺に抱き付いて来る度、翔子のストレートに沈む。
「で?今日は何を思い付いたんだ?ん?前は『エロゲ主人公みたいに図書室で勉強する』とかいってたよな?」
「ふふ、あの時は図書室の隅で寝ちまってな。誰にも気付かれないで閉じ込められちまったい。」
 言ってる事はキモいが、顔は恐らく学校一のかっこよさだろう。まぁ、性格がコレだからモテはしないが。
「ふふふ……ぐふふ、つ、ついに、今日!今まで立てたフラグが!ついに起動する!!」
 鼻血を出しながらも、万円の笑みで立ち上がる。ここまで清々しい笑顔。どうやら今回は本気のようだ。
「ふふ、実はな、今日このクラスに転入生が来るのだよ。……しかも女の子、噂では美人!……ああ!来たこれで全ては一つに繋がった!謎はとべてすけた!」
「つまりこういう事か?『転入生というのは、昔お前が結婚の約束をした幼馴染み』、と。」
558『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/02/04(日) 12:59:54 ID:pE824ulL
「その通りでございます。ちなみにそこは、許婚やいつの間にか出来た義妹も可」
「はぁ、馬鹿馬鹿しい。それこそ正にエロゲじゃねえか。そんな人生あってたまるか。」
 一人悶えている圭太を放置し、自分の席に向かう。窓際の一番後ろ。あー、今日も暖かい、ベストポジションだ。
「翔、やっぱりアイツとの付き合いやめたほうがいいよ。翔まで変態扱いされちゃう。私、そんなのやだよ?」
 翔子の言葉に、首肯する。とはいえ圭太も悪い奴ではない。ただの愛すべき馬鹿なのだ。
「圭太君、キモいから消えて。」
「ていうか、学校やめたんじゃなかったの?」
「君のせいでこのクラスが変質者扱いなんだけどー。」
 哀れ圭太。クラスの女子から罵倒を浴びる。『かっこいい人に触られてもセクハラではない』という理不尽も、圭太には当てはまらないだろう。
「ホームルーム始めるぞ。こら圭太!なに一人で騒いでんだ。さっさと席に着け。」
 担任が入って来る頃には、圭太はすでに半泣きだった。しょーがねーなー、昼飯でも一緒に食べてやるか。翔子が少し不機嫌になるかもしれんが、仕方ない。
559『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/02/04(日) 13:00:59 ID:pE824ulL
「よーし、じゃあ早速だが……うん、みんな知ってるかもしれんな。今から転入生を紹介する。入ってきてくれ。」
 担任が呼び掛けると、前のドアが開く。正直、転入生が来てもなんら変わりないので、興味が無かったが、あの圭太が美人だと騒ぐくらいだ。面でも拝んでおくか。
「あの、オンナァァァァーーーー!!!」
「ん?!」
 俺が見るよりも先に、翔子の怒声が響く。慌ててその生徒を見ると……
「ああっ!?」
 思わず俺も叫んでしまった。クラスの皆から視線が向けられる。しかし気にしてはいられない。その転入生は……
「おお、翔、この子はお前の従姉妹らしいな。皆川静流。みんな、よろしくしてやってくれ。」
 ザワザワ…すっげー美人……
 ザワザワ…ウチのクラス、いや、学校一じゃないか?
 クラスのみんなが騒いでいたが、俺はまだ驚きから復帰していなかった。
「みなさん、はじめまして。ご紹介された通り、皆川静流と申します。そちらの皆川翔さんとは、相思相愛の仲です。」
「なっ?」
「「「「「「にぃーーー?!?!」」」」」」
「冗談です。」
 そ、そうだよな。よかった、冗談で……
「翔!アイツを、あの女狐を殺す許可を!!早く!ハリー!!」
「翔ー!キサマァーー!俺の静流ちゃんになにをしただぁー!!!」
 ……約二名、本気にしてるやつがいるが。
560名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 14:55:13 ID:gf1quLpx
>>559一点だけケチを付けさせてくれ。
投下が終わったらその旨を伝えて欲しい。
でないとGJと書き込めないだろ?
561名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 15:10:57 ID:pE824ulL
そうでした、すみません。
m(_ _)m
562名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 15:19:08 ID:rroPq7Mx
よし。では気をとりなして
グゥゥゥウゥゥッドジョオオォォォオブゥゥゥッ!!
563名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 15:53:31 ID:u2C35XDX
>>559
展開に口を出すつもりはないが

他の神の皆様は事前に投稿すると断ってからやっています
投稿終了になるとコメントを付けて終了の合図を知らせることが
暗黙の了解になっておりますので


さてと


            (⌒
       ,,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,,,  
       i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
      l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l
.       |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
      |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| GJだぜ
      |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
.      |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;';;;;;/l;;/|;;|
      !、!.!、;i'l/:|ノ`l/、|ノ
      /:: :: :: :: :: :: :: :: :: \
      ,!: :: :: :: :: :: :: :: :: :: /::'i
      l:: :: :: :: :: :: :: :: :: :/;:::::::|
.     |:: :: :: :: :: :: :: :: :: i/:::::::::|
    |:: :: :: :: :: :: :: :: :: |::::::::::::::l
     |:: :: :: :: :: :: :: :: :: :T´ l ̄l
.    | :: :: :: :: :: :: :: :: :: ::|  |  |          人_
    | :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: |  |  |   _, , ...:-:-┐"∨
    |_:_:_:_:_:_:__:|  ,!、 `T´|    _/
     |;';';'';'';;''::''::''::' :: :: ::|  l,,i__,.,.!´!,:-‐:''´
     |:: ::l::`':Tー:: :: :: :: ::|
     |:: ::l:: :: :|:: :: :: :: :: ::|
    \:_:_;;,-!、:: :: :: : ,:‐,'
       |; ; ;|`ー'T´' ' |
      i'    i'   i   i
564名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 17:06:24 ID:UOuj+rUo
他の神にも言える事なんだけど
もし良かったらでいいから
タイトルに話数もつけてくれると有りがたい
565名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 17:58:26 ID:88C4oD/e
>>564
それは、「今日の投下は○レス分使いますよ」という意味での話数ですか?
566名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 18:00:28 ID:rroPq7Mx
>>565
おそらく>>564の言いたいことは赤いパパ氏のようなものをいってるのだと思う
567名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 18:12:16 ID:86dcrZHK
 927_   本当にあった怖い名無し本当にあった怖い名無し    V5jKzOvy0   2007/02/04(日) 04:05:49
    お兄ちゃん? お兄ちゃんだよね?
    お兄ちゃんにまた会えたんだよね?
    お兄ちゃんが大事にしてた猫を飼うことになったたんだよ?
    お兄ちゃんのベットでいつも寝るようになったんだよ?
    お兄ちゃんが可愛がってたみたいにゴロゴロいってるよ?
    お兄ちゃんの部屋は今でも変わらないよ?
    お兄ちゃんが猫と一緒に寝ていたのは知ってたよ?
    お兄ちゃんと寝たかったのは私なんだよ?
    お兄ちゃんが私よりも猫を大事にしてたのは分かってたよ?
    お兄ちゃんが猫と遊んでる時は私のことを忘れてたよね?
    お兄ちゃんは猫ばっかり可愛がってたよね?
    お兄ちゃんは私のことを嫌っていたんだよね?
    お兄ちゃんの子供を産んだから嫌いになったんだよね?
    お兄ちゃんの子供も大きくなって猫と遊んでるよ?
    お兄ちゃんとも遊びたいって言ってるよ?
    お兄ちゃんはなんで逃げたの?
    お兄ちゃんに会いたいんだよ?
    お兄ちゃんに会いたくて死んだのに?
    お兄ちゃんは何処に居るの?
    お兄ちゃんの猫も何処に居るの?
    お兄ちゃんの子供と一緒に死んだのに?
    お兄ちゃんは今も生きてるの?
    お兄ちゃんと大好きなんだよ?
    お兄ちゃん ?お兄ちゃん? お兄ちゃん? お兄ちゃん? お兄ちゃん?
568名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 18:26:36 ID:zuQrYZ5/
いい加減飽きたと思ってこのスレ見るの止めても
ある日突然衝動の如く嫉妬が恋しくなるんだよな
どうにもならんなこれは・・・
569赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/04(日) 18:42:21 ID:aE+nSUJS
投下します。
570 ◆z9ikoecMcM :2007/02/04(日) 18:42:38 ID:88C4oD/e
>>566
了解。

と言っても、二月半ばを過ぎないと、投下できなさそうです。
RedPepperはきちんと完結させますので、ご容赦を。
571魔女の逆襲第17話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/04(日) 18:43:19 ID:aE+nSUJS
 それからの一週間。
 早百合の行動は以前とは歴然としていた。

 朝五時。
 目覚ましの鳴る音に、早百合は敏感に反応し目を覚ます。
 ベッドの上の自分は下着一枚で体中がべとべととしていた。クローゼットにしまっていた制服を取ると、そのまま風呂場へ行きシャワーですべて洗い流す。液体が乾いてぱりぱりの肌をお湯がはじいていく。
 五分ほどで行水を済まし、制服を着ると今度は台所へ。外はまだ夜の帳が覆っていて、家中が暗い。電気をパチンとつけると台所に白色蛍光灯の光が落ちる。
 テーブルには昨日用意しておいた鶏のモモひき肉と卵、それに小松菜が並んでいた。
 早百合は『OKAN』と胸に刺繍された母親のエプロンを制服の上につけると、調理用具を戸棚から取り出してそろえる。
 作るのは三色鶏そぼろ。
 卵を菜ばしでとき、鍋に入れてだしと塩・砂糖で味付けをする。中火で熱される卵が固まらないように細やかな作業で早百合はパラパラにしていく。卵そぼろが出来上がると、早百合はそれを小皿へと移す。
 味をみてみる。甘くない。良樹好みの玉子そぼろ。
 次に鶏のモモひき肉を鍋に入れて味を調える、そして両手に装備したチョップステックスで炒めながらかき混ぜて汁気を飛ばす。炒り煮になってゆく鶏そぼろをちょいとつまんで口に含む。味はしっかりとしみこんでいた。
 完成した甘い匂いのする鶏そぼろをお皿へ写す。三人分作ったので結構な量だった。
 そろそろかな? まな板で小松菜を切りながら早百合はちらりと蒸気を噴出す炊飯器を見る。その直後、炊飯器からピーという甲高い電子音が響いた。
 早百合は戸棚から弁当箱を取り出す。赤・黄・そして紺の弁当箱。
 そこに炊飯器から炊き立ての白米をよそった。ほかほかと湯気を放つ米はみずみずしい。
 ご飯の上に先ほど作った鶏そぼろと卵そぼろを盛り付けて、小松菜で色合いを整える。プチトマトを脇にのっけて完成。
 完成した鶏そぼろ弁当は彩り豊かで早百合の料理の腕をまざまざと見せ付けることのできる一品だった。
「珍しいわね。毎日のようにアンタが弁当作るなんて」
「おはよう、母さん」
 自分の作った弁当のできに満足していると、台所にパジャマ姿の母親が自室から入ってきた。
「はい、これ。母さんの」
 早百合は紺の弁当箱を差し出す。まだ湯気が出ているので蓋を閉めて包むことができない。
「あら、どーも」
 母親はふわぁとあくびをかいた。時計を見ると午前六時少し前。母親にしては早起きな方である。
「朝ご飯は私が作るからアンタは新聞とって来て」
「朝ごはんはいいよ。食べてるから」
 嘘。朝ごはんなんて食べてる暇は無い。
「アンタの箸も出てないけど……何食ったの?」
「おにぎり」
「ふぅん、そう」
「包んどいて。それ」
 早百合はエプロンを母親に押し付けるように渡すと、そのまま二階の自室へ行く。
 学生鞄を手に取る。テストまでもうすこし、参考書がいくつか入っているからかすこし重い。学習机の上に置いた携帯電話を掴んで鞄に入れる。
 そして、燕尾色の鈴。
「……これは……もう手離せないわ」
 早百合はそう呟くと、制服の一番胸ポケットに大事にしまった。ここなら絶対無くすことはないだろう。最悪忘れて洗濯機に入れてメリーゴーランドしたらマズいからそこだけ気をつけるべきだ。
 りぃんと鳴る鈴。
 その音で早百合は思い出す。今日見た夢のことを。
 早百合は部屋の隅にある学習机の引き出しを開けた。それも普段めったに開けない小さな引き出しである。というか開けても入れるだけでほとんど出すことの無い引き出しだ。
 中はハガキや小さいパンフレットやDMなどが積まれて入っていた。指をつっこんで中をあさる。一番下に進研ゼミの案内の封筒があるのを見つけた。それを取り出す。
 赤や青といった原色系の封筒は今見るとなにか広告過多のような気がする。これひとつで成績トップクラス! というゴシック体のキャッチコピー踊る封筒。今見ると「そんなうまい話は無いよなぁ」と思うが、
当時は中にあるマンガを見て「一日一時間でマスター」「女の子にモテモテ!」「自信がついてレギュラーに!」という展開にあこがれたものだ。あのマンガは誰が描いているんだろう。
あと関係ないが、学研の付録に関しては何年同じ付録を使ってるんだと常に思う。いまだに『地震のメカニズムをお菓子で学習』とかで『中身はただのゆで卵じゃないか』で『だってそこにはチョコが乗ってないんだもん』とか言ってるのであろうか。ありえる。

572魔女の逆襲第17話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/04(日) 18:44:36 ID:aE+nSUJS
 それはともかく。
 早百合は封筒をふってみる。ゆさゆさとする音。小学生の頃の進研ゼミの封筒をなぜ未だにとってあるのか。
 早百合はこの引き出しは要らないけどなにか役に立ちそうで結局は役に立たないけど捨てるのは少し惜しいものを入れる引き出しというふうに意識している。
 整理なんてほとんどしないから。という理由のほかに、さらにもうひとつあった。
「この中に……」
 封筒を傾ける。口から鍵が飛び出した。鍵には小さなシールが貼ってあり、名前が書いてある。
『よしき』と。
「やっぱりあった」
 早百合はそれを握り締めた。
 夢で見たとおりだ。早百合は呟く。

 彼女が鈴を手放せない理由。それは鈴の秘められた魔力にあった。

 遡るは昨夜の夜。
 夜十二時を過ぎてベッドに入る。
 するとすぐに早百合の体から湧き上がってくるなにか。
「き……きた……きたぁ!」
 待ちわびたように早百合が叫ぶ。
 彼女はすぐにスウェットのパジャマをまくりあげると、素肌と胸を晒して体中の毛穴という毛穴から噴出す汗を肌に塗りまわすように手のひらを動かしていた。
 すぐに体内の温度が上昇していく。首筋やこめかみそして下腹部の血流がぐるりぐるりどくどくと流れる感覚。そしてきゅんきゅんと響くように痒みのような刺激が下腹部をおそってきた。
 そして目の奥に浮かぶ、妄想の映像。妄執。
 早百合の手は別の生物のように蠢き、妄想の刺激を現実として体の刺激にぶつけるように肌を刺激する。
 一週間前と同じ現象。そう、この体の異変は毎日のように早百合を襲っていた。
 妄想に抱かれ、体は火照り、感覚は敏感に、そして何度も繰り返される陵辱。極上の悦楽の檻に閉じ込められたような拷問。
 手を動かして肌を撫で上げるたびに、早百合の脳内は快楽成分が分泌されて、脳内麻薬のように病み付きになってゆく。
 しかし、今の早百合はこの全てを享受していた。
 つまり、全て望みどおりに受けていた。
「よしきぃ! よしきぃ! よしきぃぃ!」
 躊躇無く叫ぶ良樹の名前。なにも考えず本能のまま動く手。胸をとおり、へそを撫でて、敏感な部分をくちゅりと擦る。
「いいよぅ! よしきぃぃ! あの女よりぃ、いいでしょぉ!? よしきぃぃ!」
早百合が悦楽に叫ぶたびに、早百合の心の中は良樹でいっぱいになっていった。そこにもう友情や幼馴染と言ったしがらみはない。
びくりと動く粘膜。
早百合は腰に思いっきり力を入れて、達した。
力が抜ける。脱力感。なにも動けない。
「よしきぃ……」
 ただ、愛しい人の名前だけ呟いて。彼女の意識は落ちた。

 りぃん。

 鈴は従順になった雌犬にはその力を早百合のために使った。
573魔女の逆襲第17話 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/04(日) 18:45:52 ID:aE+nSUJS
 りぃん。

 夢の中。
 一週間前なら、ここで精神攻撃のごとく何度もしずると良樹の肉体の絡みを見せ付けられる。
 しかし、今の早百合に鈴はそんなものを見せる必要が無いと判断したようだ。それよりも、彼女の劣情をもっと煽ろうとしていた。

 早百合が見ていたのは幼い頃の記憶だった。
 小学生の頃の記憶。
 早百合の部屋で遊ぶ二人。この頃から早百合個人の部屋はあった。もともと早百合は一人っ子だからすでに用意されていたと言うほうが適切だが。
 夕方になってゆく外の景色。日の光が傾き、二人の顔を茜色に染めてゆく。
 二人とも、鉛筆とノートになにやら書き込んで遊んでいたが……、そろそろ帰りの時刻だからだろう。良樹が立ち上がった。 
 そこで、幼い良樹は早百合にあるものを渡した。
 きらりと光る何か。
 そうだ、鍵だ。
 詳細な記憶が蘇る。早百合は思い出した。自分は確か幼い頃良樹から鍵をもらっている。
 たしか、この頃から良樹の親は留守がちになっていた。良樹のひとりで過ごす時間が多くなっていた頃だ。
 そのとき、自分はたしかたびたび遊びに行く名目で良樹の家の鍵を受け取っていた。
 しかし、その鍵は今は無い。なくしてしまったのだ。確かにもらったが……気が付くとなくなっていた。と、いうより、もらってたことをずっと忘れていた。
 小学生の頃は早百合と良樹も頻繁に遊んでいたが、特に鍵が必要になる場面はなかった。中学生の頃はほぼ絶縁状態で交流は無い。高校生になった今はほとんど学校での関係のみだった。忘れてても仕方が無い。
 良樹が部屋から出て行った。早百合は玄関まで下りてそれを見送る。
 そして、幼い早百合は近くにあった進研ゼミの空き封筒に鍵をいれると小さな引き出しの中にしまった。
 そこで目覚まし時計によって早百合の意識は途切れた。

  りぃん。

 鍵はずっと、8年間引き出しの中に封印されていた。
「良樹の家の鍵……」
 きらりと銀色に光るそれは、まるでRPGのラスボスの部屋の最後の鍵のように重要なアイテムに見えた。手に持って天にかざした瞬間早百合の脳内で『たれてててー』という音楽が鳴った気がした。
 それを見て早百合はにやりと笑う。まるで悪戯を考えたしずるのような顔だった。魔女の顔なんて思い浮かびたくないけども。
 早百合は確信する。鈴は夢の中で常に自分に有利な情報をすべて見せてくれていると。
 早百合が鈴を手放せない理由。それがコレだった。
 早百合は鈴のおかげでこの一週間。良樹の行動をすべて把握することができていた。
 良樹と離れている間でも、そのときの良樹のとった行動がすべてが夢として早百合の睡眠中に再生され、全てが筒抜けになっていた。

 りぃん。

 不適に笑う早百合。
 鞄を持って部屋から出た早百合は、台所へ向かうと母親の手によって包まれた弁当をふたつ掴んで、外へ出て行った。
 走る早百合。早くしないとおきてしまう。早百合には小学生の頃のデータしかない。
 早百合の足が向かう先は、まだ寝ているはずの良樹が一人で住むマンションだった。
 (続く)
574赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/04(日) 18:46:45 ID:aE+nSUJS
筆が進みません。
いいところですが、やっぱりしばらく休憩を挟みます。
575赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/04(日) 18:48:26 ID:aE+nSUJS
追記:
物語の何合目あたりか? という質問ですが、ここまでの話を当初は序盤で終わらせるつもりでした。
しかし、そろそろ物語としても終息させていくつもりです。
ただ、いつぐらいに終えられるか、それはまだわかりません。
576名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 18:50:38 ID:UOuj+rUo
いつまでも待ってるからちゃんと完結させてね〜
577名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 18:52:36 ID:ZX7De/tP
GJ
578名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 19:03:24 ID:aCKEUEFb
GJ!
さゆりんがとうとう修羅場に向かって歩き出したな
鈴パワーTUEEEEEE!!
579名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 19:46:23 ID:az+/VqRb
早百合が一気に攻勢を掛けてきたか
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
>>559
GJ!いいよね、嫉妬強気反転嫉妬甘えっ娘
580 ◆z9ikoecMcM :2007/02/04(日) 19:48:43 ID:88C4oD/e
よく見ると赤いパパ氏の投下に割り込んでる……申し訳ありません。
581名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 22:41:00 ID:xihiO0Lo
ネタじゃない…実話だったんだ……!
いいか、なぜ未完成の作品のほとんどが一番美味しい場面で止まっている?
住民の反応も概ねGJの嵐だったにもかかわらず…。そして阿修羅氏…
もうわかったろう!!そう!!監K…
?えっ、ちょっと散歩に行ってただけ…本当だよ!!君以外に好きな奴なんてうわやめr…


わんわん♪
582名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 22:46:02 ID:QIz1CJhz
すまん、↑の話がさっぱり見えない漏れはもっと空気嫁なのか?
583 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/04(日) 23:47:29 ID:RDIfopqN
ほらほら投下だよ、と。
584君という華 2 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/04(日) 23:48:37 ID:RDIfopqN
 疲れた。足の震えが止まらない。原因は、さっきの体育の時間に行ったサッカー。一体、うちのクラスの男子は、俺に何の恨みがあると言うのだ。
 敵チームだろうが味方チームだろうが関係なかった。俺がフリーの状態なら味方からの強烈なスルーパス。あれに追いつけるなら、俺は今頃ワールドカップ得点王に輝いているだろうよ。
 さらに、俺がボールを持てば敵からの殺人スライディング。人間魚雷と化したアホどもに吹き飛ばされる事、両手の指では数え切れない。
 本当、俺が何をしたって言うんだ。
 何が腹立つって、それを爽やかな表情で行っているのだ。俺のクラスの男子は常軌を逸している。頭のネジが足りてなさ過ぎるんじゃなかろうか。
 さて。しかしそんな少林サッカーも真っ青なオバカサッカーを終え、教室に戻る途中。後ろから呼ばれ、俺は振り返った。
 と、ほぼ同時に、俺の胸に何か当った感覚。突然の事に、俺の思考は数秒停止する。フリーズ。
「……椎名ちゃん?」
 俺の胸元に、黒い塊……椎名ちゃんの頭部がうまっていた。と言うか、椎名ちゃんの息が妙に荒い。と言うか、鼻息が荒いです椎名様。
「椎名ちゃん、あの、椎名ちゃん?」
「……ふぇぁ」
 やばいです。かなり気持ち良さそうな、恍惚とした表情を浮かべているんですけど。なんかメガトロン、違う。目がとろん、としていますよ。とてもエロイです母さん。
 俺が肩を揺すっても、戻ってきません父さん。俺の後輩がピンチです。誰か助けて!
「ちょ、椎名ちゃん!?」
「しぇんぱい……? えへへ」
 ごすん。椎名ちゃんの頭突きが俺の胸に突き刺さる。胸骨と小さく叫んだ。痛いんだよちゃんと受け止めろやボケェ! はい本当すいません。
 椎名ちゃんはまたもの凄い勢いで鼻呼吸を繰り返している。これは確実の俺の体臭を嗅いでますよね? ってうぉぉい!
 ただでさえサッカーで大量の汗をかいた後なのだ。それはもう凄まじい男臭がしているんですけど。え、ちょ、何ですかこれ? 誰か、俺の後輩が! 助けて! 死ぬほど恥ずかしいデス!
「あむっ」
「……あむっ?」
 変な音が聞こえて、視線を向けると椎名ちゃんが俺の体操服をその小さく可愛らしいお口に含んでいる。
 しかも。
「ん、は、あむ、んぅ、じゅ、じゅる、ちゅ、あ、あ、んっ! ふぁ、ん、は、んぅっ!」
 イヤイヤイヤイヤ! ええちょ、ええ!? ナンデスカコノヨクワカラナイオンキョウコウカハ? しかもここ廊下ですよ!? 羞恥プレイなのか、そうなのか!
 本格的に危険な匂いを察知した俺は、椎名ちゃんの首が折れるんじゃないか、と見ている人が思ってしまうほど肩を揺する。可愛い後輩に、人の道を教えるのも先輩の勤めだ。
585君という華 2 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/04(日) 23:50:13 ID:RDIfopqN
「椎名ちゃん! 汚いから! ぺって! ぺってしなさい!」
「……ふぅえ? あえ? しぇんぱい? どうひたんれしゅかぁ?」
「いろいろ突っ込みたいけど、今は目を覚まして椎名ちゃん!」
 俺の魂の叫び。と、椎名ちゃんはようやくはっ、と我に返った。
「あ、や、す、すいません。つまずいてしまいました」
「いや、俺の突っ込みたい箇所はそこじゃないんだけど」
「そ、その……先輩、すごくイイ匂いがしてましたので、つい」
 そう言って頬を染める椎名ちゃん。何だろう、俺の知っている椎名ちゃんってこんな子だっけ?
「それでつい、その、先輩のあ、汗を吸ってしまいました……すいません」
 待て待て待て。仮に、俺からイイ匂いが発せられたとしよう。でも、それでついその匂いの元である汗を吸いたくなるのだろうか?
 ……いや確かに、そそられる行為ではある。じゃなくて。
「ご迷惑をお掛けしてしまって、大変申し訳ありません。先輩、着替えないと、まずいですよね?」
「え、あ、うん。て言うか、椎名ちゃん、俺に何か用事あったんじゃないの?」
「いえ、『たまたま』先輩の背中が見えましたので、つい嬉しくなって……すいません」
「いや、いいんだよ。そんなに謝らなくても。気にしてないから、ね?」
「でも」
「いいから。ホラッ、椎名ちゃんがそんな暗い顔してる方が、お兄さん悲しいな。ねっ?」
「……はい。では、失礼しました。先輩、また後ほど」
「うん。じゃあね、椎名ちゃん」
 と言うか、ここ二階なんだけどね。椎名ちゃん達一年生の教室は一階なはずなんだけどなぁ。こんな二年生の教室しかない所、用事ないはずなんだけどなぁ。
 でも、どこか元気がない椎名ちゃんを見ていたら、そんな愚問しても自分を殺したくなるだけなので辞めておいた。
 その時の俺は、思考を完全に椎名ちゃんの後姿に向けていた。だから、かどうかは分からないが。
 突然椎名ちゃんの肢体が宙を舞った。その事態に、脳が追いつくには少し時間がかかった。
 混乱する俺の脳。だけど、視線は、真っ直ぐに、それをとらえていた。
 俺はその表情を見るのは、かれこれ六年ぶりくらいになるだろうか。酷く懐かしい、それでいて二度と見たくなかったそれ。
 鬼の形相の祥子が、そこにいた。
 そこで、よくやく俺は理解する。ああ、祥子が椎名ちゃんを殴り飛ばしたんだ。
586君という華 2 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/04(日) 23:50:49 ID:RDIfopqN
「こンのォォォォ! 雌豚風情が! 今、何をしてた! 畜生、畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生がぁぁ!」

 まさに、咆哮と呼ぶに相応しい、廊下を震わせる叫び。廊下に横たわる椎名ちゃんに、祥子は襲い掛かる。
 マウントポジション、と言うんだけ。馬乗りの状態で、祥子は椎名ちゃんに罵声を浴びせ続ける。
「畜生の分際で! あたしの、あたしの亮に、何をした! 答えろ! 答えろ! 畜生が! 答えろ! クソ、クソクソクソクソクソクソォッ! 答えろ雌豚がッ!」
 祥子の平手が、情け容赦なく椎名ちゃんの頬を殴りつける。何度も。何度も何度も何度も。
 気が付くと、俺は走り出していた。走って、どうするかとか、何も考えず。
 止めろ、止めてくれ。
 俺は祥子に、走った勢いそのままに、体当たりをかます。なおも暴れる祥子を、何とか押さえつける。
 それにしても、凄まじい力だ。かなり体格差があるのに、気を抜けば吹き飛ばされそうになる。
「落ち着けって、祥子。なっ? ほら、落ち着け落ち着け。ほーら、大丈夫大丈夫」
「畜生! 殺す! 絶対に、絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に殺す! 畜生、畜生!」
「ほら、祥子、ゆっくり息吸え。ゆっくり、ゆっくり息を吸うんだ。良い子だから、な?」
 なおも暴れ続ける祥子。正直、椎名ちゃんの事を考えている余裕は無かった。
 今の祥子に、俺の言葉は届いていない。それでも、俺は祥子に話かけ続ける。
 と、俺の横を誰かが通った。一瞬見ると、確か椎名ちゃんの友達の少女二人だ。
 どこかに隠れていたのかどうかは知らないが、助かった。これで、椎名ちゃんの事は、今の段階では考えなくて済む。
「ほら、祥子。俺の目を見て、ゆっくり深呼吸するんだ。な? ほら、ゆっくり吸って、ゆっくり吐き出せ。良い子だから、な?」
「う、ううううぅぅっ! う、あ、りょ、君……あ、う、ううう、ううぅぅぅぁぁ」
「おーし、よしよし。祥子は良い子だな。ほらほら。深呼吸深呼吸」
 祥子の頭を撫でてやる。祥子は興奮した表情で、俺の目を食い入るように、見る。
 少し、息遣いが治まってきた。よし、あと少しだ。
 と、その時。俺の横を、椎名ちゃんの友人二人が、椎名ちゃんを抱えて、通り過ぎた。
 椎名ちゃんの表情を良く見えなかったが、とても驚いているように見えた。そりゃそうだ。いきなり先輩にボコボコに殴られれば、誰だって驚く。
 と、今日の俺はなんとも間が抜けている。本当、もう一度クラスの男子に辛い目にあわせてもらったほうがいいのかもしれない。
 俺の目を見ていた祥子は、当然のように俺の視線の先を見る。そこにいるのは、当然椎名ちゃん。
 見る見るうちに激昂する表情。這ってでも追い駆けそうな勢いだ。
 見ろ。椎名ちゃんの友達もびびっているじゃないか。まったく、こんな先輩ばっかりじゃないからな。と、名も知らぬ後輩二人に届かぬ願いを思いながら。
 俺は、祥子の頬を、渾身の力を込めて叩いた。
「……え?」
「いい加減にしろっ! 何が気に食わないのか知らないけど、人を殴って良い訳ないだろ! 分かってんのか!?」
 俺の怒声に、祥子は顔を真っ青にしてカタカタと肩を震わせている。こんな怒声を上げるのも、六年ぶりだ。
 俺は祥子を無理矢理立たせると、屋上に向かった。授業の事は、後で考える事にしよう。
 途中、椎名ちゃんが、まるで自分が食べたかった物を先に食われたような、怒りの表情を浮かべていた。いや、この例えも変か。ダメだ。俺もかなり混乱している。
 ともかく、だ。まずは祥子をどうにかしないと。俺は右手で握っている祥子の左手首から感じる体温の低さに内心驚きながら、屋上へと向かう足を速めた。
587 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/04(日) 23:52:45 ID:RDIfopqN
取り合えずこんだけ。やばい。最近修羅場シーンと変態行為を書くとニヤニヤしている漏れがいる。
漏れもいよいよここの住人ッぽくなってきたのかな? かな?
588名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:02:49 ID:N5PBvhpW
dぎゅwfhyふdふじぇふぃおpqphyugudとにかくGJ
589名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:16:33 ID:b5ihc/uA
後輩の変態っぷりとわれわれの業界ではごほうびですを先にもらった嫉妬にGJ
590名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:17:59 ID:1GGrK4NT
これがスーパーキモヒロイン4か…
GJ!
591名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:25:51 ID:K8cxV4Sb
>>587ヒロイン達の壊れっぷりにこちらこそニヤニヤが止まりません。GJ!
592 ◆gPbPvQ478E :2007/02/05(月) 01:14:28 ID:BsG31NUu
投下します
593九十九の想い 1−11 ◆gPbPvQ478E :2007/02/05(月) 01:15:50 ID:BsG31NUu

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 こんこんと降り続ける雪を聴きながら。
 少女はいつものように夕餉の支度を進めていた。
 
 さゆ、という名で呼ばれる少女は、義父が帰ってくるまでに夕餉の支度を終えねばならない。
 夕餉の支度はそれほど難しい作業ではない。
 だが、多少力の要る仕事なので、さゆの細腕では一苦労。
 特に骨からスジを剥がすのが一番堪える。
 柔らかい肉質なら愛用の包丁で何とかなるが、硬いものだと鋸を持ち出さなければならない。
 鋸の取っ手は、さゆに不似合いな無骨な物で、できることなら使いたくない。
 特に冬場は、骨まで使う料理が多いため、さゆの苦労は増えてしまう。
 とはいえ、夕餉の支度が遅れてしまったら、待っているのは義父の折檻だ。
 竹束の痛みは冬場の肌には厳しすぎるし、火箸の熱さは思い出すだけで気が狂いそうになる。
 故に、今宵もさゆは義父の帰宅時間を気にしながら、夕餉の支度を進めていた。
 
 
 悴んだ手に息を吹きかける。
 竈(かまど)の火はやや遠い。
 突き刺さるような痛みに耐えながら、冷たい塩に浸されていた肉を捌いていく。
 
 ――ああ、今日も、硬い。
 
 スジの部分はガチガチに固まっていて、女子の包丁では切り裂くのは不可能だ。
 この肉は晩秋に仕込んだものなので、上手に保存できていれば、雪が弱くなる頃までは保つはずなのに。
 
 ――また、殴られるのかな。
 
 義父は厳しい人だった。
 間違いを許せない質らしく、さゆが失敗すると拳骨で何度も殴ってくる。
 反抗したら骨が折れるまで殴られるので、さゆは怒られるときは目を瞑るようにしていた。
 目を瞑れば、世界は消える。
 真っ暗な闇の中、たゆたうように自分を忘れる。
 そして目を開けた頃には、折檻も終わっている。
 今晩も、そうなるのかな、と。
 
 さゆは、窓の外をぼんやり眺めた。
 雪がごうごうと降っていた。
 
 ――その横顔を見ていると。
 ――こころが、とても、痛くなった。


594九十九の想い 1−11 ◆gPbPvQ478E :2007/02/05(月) 01:16:46 ID:BsG31NUu

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 
 瞼を開けたら、見慣れた天井。
 
「……なんだ、今の?」
 
 ぼんやりと呟きながら、体を起こす。
 何故か、胸が締め付けられたかのように軋んでいた。
 
 変な夢を見た。
 妙にリアルな夢で、少女の横顔もしっかりと思い出せる。
 豪雪の音も耳に残っている。
 一度だけ修業で雪山に籠もったことがあるが、それよりも激しい雪だった。
 
 というか、初雪もまだなのに、雪夜の夢なんて見てどうするんだよ俺。
 全然脈絡無いし。疲れているのかもしれない。
 
 ぼんやりとした頭を振りながら、取りあえず掛け布団を脇にどける。
 ――途端、肌に冷たい空気が突き刺さり、思わずぶるりと震えてしまう。
 
「……うう、さぶ」
 
 ああ、そうか。
 雪が降ってる夢を見たのは、寒い格好で寝ていたからか。
 そろそろ初冬といってもいいこの時期、裸で寝るのは厳しいだろう。
 下着も履かないすっぽんぽんだ。風邪を引いてもおかしくない。
 
 
 
 ――って、ちょっと待て。
 
 
 
 裸?
 
 
 
 慌てて自分の体を見下ろして、ぺたぺたと触ってみる。
 紛う方なき全裸である。
 そして。


595九十九の想い 1−11 ◆gPbPvQ478E :2007/02/05(月) 01:17:28 ID:BsG31NUu

「――んぅう……? ぉお、もう朝かえ?」
 
 ごそごそと布団の奥から這い出てきたのは。
 いつもの襤褸を脱ぎ去った、鈍色髪の女の子。
 
 
 …………。
 
 
 あー。
 
 
 うー。
 
 
 あー…………ああああああああっ!
 
 
「? どうした郁夫? 素っ頓狂な顔をしおって。
 もしや、妾を抱いたのが不服だったとでも言うまいな?
 ――昨晩は、猿のように腰を振っておったくせに」
 
 
 ……あー。そうだそうだ。
 やっちゃったんだった。さよなら童貞。こんにちはロリコン。
 じゃなくて。
 
「えっと……その……」
 
 何か言わなければならないのはわかっているが、何を言えばいいのかわからない。
 昨晩の記憶は、それはもうはっきりと記憶に残っている。
 そりゃそうだ。初体験の記憶だし。入口がわからなくて恥ずかしかったとこまで覚えてるぜ。
 ……まあそれはそれとして。
 そんな、俺の初めての相手が、裸で横にくっついているっていう今の状況。
 こんなとき、なんて言えばいいのだろうか。
 ドラマの俳優とかは、こういう大事な場面で格好いいことをさらりと言えるが、
 今の俺は、頭の中が真っ白で、気の利いた言葉どころか日本語さえ危うかったりする。
 
 無言。
 ちょっぴり気まずい無言。
 
 あああ何か言え俺。
 何でもいいから、とりあえずこの微妙な空気を変化させられる言葉を何か――


596九十九の想い 1−11 ◆gPbPvQ478E :2007/02/05(月) 01:18:23 ID:BsG31NUu

 とにかく何かを言おうとして、口を開きかけ、
 
 茅女の白くて細い指先が、唇に当てられた。
 
「伊達男は閨の後、無闇に言葉を重ねぬぞ?
 ……まあ、後とは言っても一晩過ぎておるがな」
 
 そう言って、こちらの胸に、こてんと頭を預けてくる。
 
「それより、どうじゃ? 初めての術だが、それなりに上手くいった感触なのだが」
 
 ……そうだ。
 そもそも茅女と身体を合わせたのは――
 
「……試しに妾を持ってみろ。
 小娘の影響が失われておれば、問題なく持てるはずだ」
 
 ――流が弄った俺の心を、元に戻すため。
 
 そのために、茅女は己の体を差し出して、俺の心を直してくれた。
 初めてのセックスに少なからず浮かれていた気持ちが、途端に冷えていく。
 これでも健全な男子高校生だったので、初体験にはそれなりに幻想を抱いていた。
 しかし、現実は治療のため。
 茅女が俺に好意を寄せてくれていたのは知っている。
 しかし昨夜のは、好意とかそういうのをすっ飛ばした、作業のようなものだった。
 そう思うと、何故か心が妙にささくれ立ってしまう。
 
 茅女が差し出してきた手を、どこかやるせない気持ちで握り締めた。
 
 瞬間。
 茅女は変化を解き、包丁になった。
 
「……あ……」
 
『……どうやら問題なく持てるようだな。
 此度も落とされたらどうしようか心配したが、杞憂だったな。
 ――うむ、術は上手く為せたようじゃの』


597九十九の想い 1−11 ◆gPbPvQ478E :2007/02/05(月) 01:19:19 ID:BsG31NUu

 ――術、か。
 
 そういう言い方をするということは。
 やはり茅女にとって、昨夜のは治療行為に過ぎないのか。
 心が元に戻ったし、気持ちよかったし、俺が不満を言うのは筋違いだが。
 
 どうしても。
 
 ――茅女に、悪いなあ。
 
 そう、思ってしまう。
 
 
『――気に病むことこそ、筋違いだぞ』
 
 
 手に持つ包丁から、そんな思念が伝わってきた。
 思わず、ぽかんとした顔で見下ろしてしまう。
 
『房中術で心を繋げた影響か、ヌシの心が容易に伝わってくるわ。
 ……何やら、妾がヌシに抱かれたのは治療のためとか何とか、
 益体ないことを考えておるようだが、』
 
 そこで、茅女は少女の姿へと変化した。
 鈍色の髪がふわりと揺れる。俺を見上げる一対の瞳は、潤んでいた。
 
「――妾は、こうなりたかったのだ。
 治療行為と銘打って、この状況を利用して。
 郁夫の初めてを奪ったのだ。
 故に、ヌシは妾のことを恨みはしても、気遣う道理は何処にもない」
 
 
 だから、気にするな、と。
 
 
 心を繋げているわけでもないのに。
 茅女の想いが、優しく胸に響いていた。
 
 何故だかどうしようもなく愛しくなって。
 思わず茅女を抱きしめてしまう。
 力を込めたら折れてしまいそうな躰は、抗うことなく受け止めてくれた。


598名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 01:19:32 ID:nksKzOcn
これ面白いw
599九十九の想い 1−11 ◆gPbPvQ478E :2007/02/05(月) 01:20:06 ID:BsG31NUu

「――ありがとう」
 
 言うべきかどうか迷ったが。
 気付いたときには、素直な想いを伝えていた。
 
 腕の中の少女が微かに震えた。
 そして、唐突にこちらの胸へ体重をかけてくる。
 抗うのは難しく、そのまま布団の上に押し倒された。
 
 ぼすん、と後頭部が枕に埋まり、
 追うように、茅女に口を塞がれた。
 
 入ってくる舌の感触に、思わず背筋がゾクゾクする。
 
「……ぷは。――閨の後には喋らぬものだと言ったろうに。
 聞き分けのない輩には、お仕置きじゃな。
 可愛い声で鳴いて謝っても、許さないから覚悟しろ」
 
「……照れ隠しにコレかよ。茅女って随分直情的なんだな。
 ってちょっと待て、俺が攻められる側かよ――ひにゃあっ!?」
 
 突然、ナニが柔らかいものに圧迫されて、変な悲鳴を上げてしまう。
 慌てて下の方を見ると、茅女が膝の裏で俺の物を挟んでいた。
 フトモモのむにむにした感触が押しつけられて……やば、かなり気持ちがいい。
 
「だから喋るなというのに。此奴の持ち主らしく、黙って固まっていればいいものを」
「いや、硬くなってるのは朝だからであって……。
 ――じゃなくて、朝っぱらからするのは流石に」
 
 なんというか、初体験の翌朝から、そういった行為に耽るのは、
 なんかこう、色々と爛れてるような気がする。
 これでも昨夜までは、清く正しい初物だった俺としては、
 性行為というものを神聖視しているというかなんというか。
 それがこうもあっさりと朝っぱらからに繰り広げられるには凄まじく抵抗があるというか。
 
 と、そんな考えのもと、茅女の侵攻を慌てて止めようとしたのだが。
 

「……郁夫、焦らすでない。
 ――妾はもう、とろとろだぞ?」
 
 
 初めての相手に、潤んだ瞳でこんなことを言われてしまっては。
 陥落するしかないだろ、普通?


600九十九の想い 1−11 ◆gPbPvQ478E :2007/02/05(月) 01:20:55 ID:BsG31NUu

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 ――謹慎として離れに放り込まれてから、一週間が過ぎた。
 
 冷え切った畳の上で、色無地を着込んだ少女が正座をし、瞑想している。
 ぴくりとも動かず、端から見れば、よくできた人形とさえ見間違えてしまうかもしれない。
 
 妖怪故に、足が痺れるということはなく。
 ただひたすら、時間が過ぎ去るのをじっと耐えるだけ。
 
 
 ――謹慎を終えたら、郁夫様のところに行きます。
 
 
 その想いを抱えるだけで、流の全身は暖かくなる。
 謹慎を終えた後に待っているのは、郁夫との心休まる日々。
 だから、謹慎だって真面目に受けているし、不平を言ったりすることもない。
 謹慎を終えるまでは、どんなに愛しくても郁夫に会いに行くのは我慢するつもりだった。
 
 ――郁夫様は決して、私のことを嫌っていない。
 
 胸を刺し貫かれたら、普通は相手のことを怖がるものだ。
 しかし流は、郁夫に限ってそれは無いという確信があった。
 
 
 ――だって、“そのように”したのだから。
 
 
 郁夫が流のことを嫌わず、
 他の雑多に心移ることもないように。
 
 自分が、そう、変えたのだから。
 
 故に、郁夫が流を受け入れるのは確定事項で。
 こんな謹慎なぞ、“焦らし”のようなものでしかない。
 
 そう思うと、どうしても暗い笑みがこぼれてしまう。
 
 郁夫が使う道具は、自分だけ。
 その事実は、流の芯を甘くとろけさせてしまう。


601九十九の想い 1−11 ◆gPbPvQ478E :2007/02/05(月) 01:22:09 ID:BsG31NUu

 郁夫のもとへ戻ったら、何をしようか。
 共に訓練をし、共に退魔を行い、共に在り続ける。
 その間、他の道具が介入することはなく、郁夫の全てを独占できる。
 彼の優しさも、彼の肉体も、彼の心の支えすらも。
 
 何より、あの“瞳”さえも。
 
 
 ――ぜんぶ、ぜんぶ、わたしのもの。
 
 
 想像するだけで、軽く達してしまいそうになる。
 気を抜くと、その場で変化が解けてしまいそうなほど。
 溢れる歓喜に溺れてしまいそうになる。
 
 ――心を弄るのは、便利だなあ。
 
 偶発的に手に入れた能力だったが、
 改めて考えてみると、最高の能力に違いない。
 流にとっては郁夫が全てであり、その郁夫の心を自由にできる。
 それは、他のあらゆる誘惑にすら勝る。
 
 そして。
 
 この能力を使えば。
 
 
 ――『人間に、なりたいなあ』
 
 
 郁夫にとっての、“大事な人”になることも――
 
 
 今度こそ、笑いを堪えきれなかった。
 暗い離れの一室で。
 流は独り、けたけたと歓喜を漏らしていた。



602 ◆gPbPvQ478E :2007/02/05(月) 01:23:21 ID:BsG31NUu
お久しぶりです。
忘れられてないことを祈る今日この頃。

とりあえず1部完結するまでは、そこそこ早いペースで投下できるっぽいです。
血塗れ竜ではできなかったことを、九十九ではやっていきたいと思います。
603名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 01:27:16 ID:y9Cint3/
>>602
よぉお帰り。待ってたよ。
いいなぁ…郁夫がロリコンになって流が実力主義になって…修羅場の匂いがぷんぷんしてきやがるぜ!
604名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 01:27:54 ID:ZBYGMtws
流が独り妄想に耽ってる間に…茅女、やるじゃないか。

忘れてなどいなかったぜGJ!
605名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 01:30:56 ID:sCO44oSb
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
606名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 01:32:09 ID:xYZA3kE8
妖刀流ん
かわいいなあ
607名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 01:35:31 ID:65uEda+A
あとは山本君とノントロと・・・・・・

と言うかすべてが待ち遠しい
608名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 01:36:58 ID:Af5tNW89
>>602
めっちゃくちゃ待ってたぜ〜!GJ!!
これから早いペースで投下出来ると聞いて、不覚にもウッヒョ〜って思ってしまいましたよ。
609名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 01:38:49 ID:BhnLB7uT
>>602
お帰り!!
今まで何してたのかは聞かないから、もうどこにも行っちゃ駄目だよ?
610名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 01:39:05 ID:42TPoXAj
もうカウパーでまくりで大変だったよ
611名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 02:04:28 ID:b5ihc/uA
九十九キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
いきなり良質の修羅場の雰囲気がビンビン伝わってくるぜ!
612名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 02:06:57 ID:c9ccpKjw
>>602

お帰り! ずっとずっとずっと待ってました!


てか割り込んだ奴誰だよ。
613名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 02:31:48 ID:h47vdrVa
きゃっほーい! キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
全裸で待ち続けてたよ
614名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 02:48:19 ID:oV9bDU7L
>>602
今でも時々、あの時「全部」を選択して良かったのか考えてしまう事がある。

血塗れ竜では出来なかったこと 期待してます
615名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 06:58:25 ID:vNEzQB/y
血塗れ竜は何か打ち切りで終わったような感じで、しかもBADENDだったので、九十九
はハッピーエンドでお願いします
616名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 08:59:11 ID:1GGrK4NT
ワガママ言うない
617名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 09:20:05 ID:e+3whU1d
九十九きたわーーーーーーー!!
やったーーー!
久々だったから読み返してみたけど
やっぱこれ超面白れぇーーーー!!
GJGJGJ!!

ホント、もう職人の皆さんは、こんな面白さを提供してくれる神々なんだから
自分のペースで自分の好きな時の投下してくだされば十分ですたい。
618名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 11:19:17 ID:ZEaakHvT
流に絞められたいわー
619名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 13:39:09 ID:vn+WjCOl
流に刺されたい
620名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 14:59:44 ID:yWjCuPRG
しかし、投下してくださる神たちのレベルの高さにSHIT!
>>602
GJ!流に色んな事されてぇー
621名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 17:21:30 ID:Cs6XN5di
流が可愛すぎですわー
622名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 17:41:20 ID:WFSrqLvP
いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
623トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/02/05(月) 18:30:08 ID:yAzJk414
では投下致します
624水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/02/05(月) 18:32:26 ID:yAzJk414
 第19話『始まる予感』

 懐かしい夢の残骸を見た。過去は変えることができない残酷な思い出の欠けら。
記憶の忘却の彼方に置き去っても、夢として蘇る。悪夢に近い過去の再演は目が覚めるといつも驚くことに忘れ去っている。
ただ、胸に密かに潜む痛みだけは別として。
 天草月は残念の事に夏休みの課題を仕上げるために不眠不休で四日ばかり遅れて提出することが出来たが、
長期に渡っての監禁のおかげで体がやつれてしまっていた。

それに気付かずに徹夜で課題を仕上げると体にどれだけの負担をかけてしまっていたのか、全く考えていなかった。
課題を提出した後に学校で意識を失って病院に搬送された。栄養失調、体力的な問題うんぬんで
医者による学校の登校をドクターストップを喰らうはめになるとは。体を壊した俺が学校に通うことができずに
強制的に一ヵ月の入院をすることになっていた。

 すでに学生にとって貴重な一ヵ月が過ぎた辺りには夏の季節が過ぎ去り、秋の紅葉が病院の窓から見える木葉から確認できた。

今月の中旬には中間テストがあり、それを受けないと俺は留年するという恐怖に怯えていた。
仮にも留年して、紗桜と同じクラスになると兄の威厳が失われる可能性すらもある。それだけは避けねばならない。
 これからは絶対に冬子さんの前では女装すると北斗七星に誓いながらも、
病院ですることがないので待合室に置かれている贅沢な大型液晶テレビで暇を潰すことにした。
 階段を降りると入院患者や外来の方。医者や看護士の皆様が忙しそうに働いていた。
俺は虹葉姉から用意してもらった犬と猫柄のパジャマを身に纏いテレビが置かれている場所に向かい席に大人しく座った。
 今、流れているのは最近のニュースであった。


「今年の夏休み明けの学生の死亡者は一万6000人という前年より増しという驚異的な数字が出ました。
これは嫉妬した女性が男性を突き刺した被害者男子生徒の数です。
更に女性の被害者は一万人という冗談で済ませられない数字となっております。
これは女性が女性を殺す被害者です。主な原因は狙っていた男子生徒をと付き合い、
それに嫉妬した女性の脳内思考で泥棒猫さえ排除してしまえば想い人が私の事を見てくれるという根拠のない心理的な状況で
実行するケースが殆どです。
 最近、新たな傾向としては。
 姉妹の家に同居している義理の弟か兄を巡っての修羅場が全国各地で勃発しております。
姉がフォークで妹の目を突き刺したり、妹が兄の大事な性器を真っ二つにしたりと残虐的な行為が見られます。これに政府は……」


 そのニュースに俺は少しだけ驚愕していた。姉妹が一人の男を、
しかも家族として暮らしている男の子を取り合って修羅場というのがどうも他人事とは思えなかった。

「なんて世の中だ」

 景気が低迷しているとか、学力が低下しているとか、某国の自爆テロなんか全然問題にならない程、
この国は堕ちるとこまで行っているんじゃないのかと俺は不安を抱いた。
625水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/02/05(月) 18:35:14 ID:yAzJk414

 社会問題うんぬんと考えている時に時計を見た。すでに夕刻。
この時間帯になると俺の入院している部屋はもっとも騒がしくなる時間帯だ。
昼間に学校があることを俺は幸せに望む。虹葉姉と紗桜と音羽が人の迷惑を考えずに訪問している時間だからだ。
 自分の病室に入ってくると俺のベットには虹葉姉の姿がまずそこにあった。

「月君がいつも寝ている布団。月君の温もりが気持ちいいよ」
 あろうことか、以前と同じ過ちを繰り返している時点で俺は思わずため息を吐くことができなかった。
すぐに目を離すと弟の所持品や布団に忍び込む悪い癖が虹葉姉、いや、姉妹にあるのだろう。
こういう細かいことをいちいち気にしていれば、水澄家に暮らしていくことは難しい。
 俺は虹葉姉の肩を優しく叩いて、あっちの世界に引き戻す。
「に、にゃんと? 月君。いつ、帰ってきたの?」
「今帰ってきたんだよ」
「そ、そうですか。わ、私は別に何もし、してないんだからね」
 虹葉は顔を赤面させて頭から白い煙が立っていた。余程、弟相手に今の光景が目撃されたのが恥ずかしかったのだろう。
「紗桜は来てないの?」
「うーんとね。紗桜ちゃん。運悪く文化祭の実行委員に選ばれて、今日は委員会で遅くなるんだって。
本当はすぐに病院に向かうつもりだったんだけど、さすがに日常生活を疎かにしてまで月君の見舞いはしちゃだめって、
私がき〜つ〜く言っておきました」
「で、本音は?」
「紗桜ちゃんがいない間は私が月君独り占め。てへ。嬉しいな」
 気まずい空気が一瞬だけ流れる。
 いつものパターンだ。これが逆に紗桜だったら、同じ事を言うに違いない。所詮は姉妹。
行動パタ−ンは似てしまうことがお約束なのだ。だが、俺は夏休みに起きた体験を思い出すと、
ブラコン姉妹による暴走で俺は精神的にも体力的にも限界まで追い詰められてしまった。同じあやまちを繰り返すつもりはない。
 俺はベットの近くに置かれているナ−スコールを持つとボタンを押した。

「天草さん。どうかしましたか?」
「ちょっと頭のおかしい女子学生が……わけのわからないことを」
「変質者ですね。はい。わかりました」
 若い看護士さんが俺の必死の演技に動かされて焦った口調で応えてくれた。虹葉姉はぽかんと開いた口が塞がらなかった。
「変質者って、もしかして、お、お姉ちゃんのことなの?」
「リベンジです。少しは反省してくださいお姉さま」
「うにゃ〜。お姉ちゃんは月君に恨まれるような事はやってないよぉぉ」
「体を壊した可愛い弟の休息に俺の胃痛の原因になっている人が見舞いに来るなぁぁ。

 病院の検査であなたは本当に10代の体ですか? って聞かれた時はちょっと死にたくなったぞ。
 誰かに黒いオーラーを浴び続けると体によくないって、医者が断言していたぞ」

「う、うにゃにゃ。そんなことないよ」
 思わず、動揺している虹葉姉の頬から冷たい汗が流れているのを見た。やはり、確信犯なんだろうか。
「虹葉姉と紗桜は見舞いの立ち入り禁止!! 病院患者と美少女姉妹が見舞いにやってこない男性患者の総意です。今、決めちゃました」
「月君と一緒に喋るのが私の生き甲斐なのに。お姉ちゃんの楽しみを奪うつもりなの?」

「ふふっ。俺は一夏の経験で悟ったんだ。あえて、修羅場を避けるよりも戦うと。顔を上げて、戦う覚悟をした俺は最後まで絶対に引かないっての」
626水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/02/05(月) 18:37:18 ID:yAzJk414

 冬子さんの監禁で完全に精神と体を病み、一ヵ月も入院しておかげで学業の方は疎かになっており、単位も危ないと新担任は言う。
 ちなみに前担任のメガネは夏休み中に別れた奥さんが無理矢理復縁を迫ってきたので
 男らしく『もう、束縛される生活は嫌なんだ』と叫んだ途端に。奥さんに心臓を隠し持ってきた包丁で刺されてお亡くなりになった。
 別にこれは珍しい事でも何でもない。
 夏休みが終わり新学期を迎えるために学校に登校すると自分のクラスは2〜3人ぐらい花瓶が机の上に置かれていた。
 恐らく、ストーカーかヤンデレのどちらかに恋人になってくださいと迫られて、断られた途端に殺されるケースが多発しているのである。
 他のクラスでは花瓶がクラス半分以上も置いてあった実話もある。

「天草さん。変質者はそちらのお姉さんですね。今すぐに確保して病院の外にまで追い出します」

 看護士のお姉さん方数人が虹葉姉の両腕を見事にぎっちしと掴んで連行してゆく。

「ひ、酷いよ月君。うぇ〜ん」
 反抗しようとジタバタ暴れていると看護士さんが面倒臭そうに鎮痛剤らしきモノを虹葉姉の腕に注射する。
 そして、問答無用に連れて行かれた。

「ふぅ。虹葉姉ももう少しだけ距離を置いて欲しいもんだよ」

 弟にべったりな姉と兄に依存と溺愛している妹を家族に持つと一日一日が命懸けのガチンコ勝負である。
 少し嘆息してから、買い溜めしてある缶コーヒーを片手に憂欝な気分でいると次の来訪者が現われた。

「月ちゃん。今日も見舞いにやってきたんだけど、さっき、あなたのお姉さんが看護士の皆さんに神輿にされて連れていかれたよ」
「音羽。あれはきっと変質者だからあんまり気にしなくてもいい」
 身内の恥を音羽に説明するのも恥ずかしいすぎる。
「あれぇ。紗桜ちゃんはどうしたの? いつもなら、この時間になると私を妨害するために水澄姉妹がきっちりとガードしているはずだけど」
「紗桜なら文化祭の実行委員に選ばれて今日はその委員会に出席するので来られないってことを虹葉姉が言っていた」
「へぇ。そうなんだ」
 音羽は嬉しそうに微笑んでいる。その笑みが俺にとっては嫌な予感が脳裏をよぎったと言えば、
 彼女にとってはとても不謹慎な事なので口には出さないが。


「じゃあ。ようやく、私は月ちゃんに宣戦布告することができる」
627水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/02/05(月) 18:40:48 ID:yAzJk414
「はい?」
「今日は邪魔な水澄姉妹がいないおかげで月ちゃんをたっぷりと独占できるんだけど。
 もう、私は嫌なの。何も変化がないってことは月ちゃんと私の関係が全く進んでいないことだもん。
 だから、私はここに宣戦布告する」

 音羽。どうした、何かおかしい物を食べてしまったのか。
 ここは病院だからすぐに医者を呼んでやるよと言いたかったが。音羽の様子がいつもと違い、その眼差しは俺に真っすぐに向けられている。

「私は月ちゃんに復讐する。その復讐は私と月ちゃんが恋人同士になって、幸せな生活を送る事なんだよ。言っている意味がわかる?」
「はあ? なんだけど」

 音羽は睨み付ける視線は俺に向けられていた。
 再会してから、ずっと仲のいい幼なじみとしてこれまでやってきたはずだった。
 それが突然に復讐すると言われても俺はただ狼狽えるしかできない。

「月ちゃんは全く覚えていないんだよね。まだ、小さかった頃だったし。
 私が引っ越しする原因になったのはお父さんが友人の保証人になって、多額の借金を背負ってしまったから。
 でも、お父さんは保証人の書類には全くサインも印鑑は捺さないと私とお母さんにきっちりと言った。
 だから、私はお父さんが保証人になったとは今では考えられない」

 俺は思わず缶コーヒーを力なく落としてしまった。連帯保証人関連の記憶で思い出される事はただ一つ。

「ガキの頃に音羽の家で遊んだ連帯保証人ごっこか」
「そうよ。それが鷺森家の不幸、私のどん底人生の始まりだった」
 音羽が俯いて長い髪が彼女の表情を隠す。
 あの遊びが原因で彼女は父親や母親を失い、俺と同じく独りぼっちになってしまったのだ。

「まさか、夢にも思ってもいなかったわ。月ちゃんと私がお父さんの机にあった連帯保証人に関する書類を見つけて、
 書き込んだ内容がほぼ正確で判子を押した状態でお父さんの友人が尋ねてくるなんて。
 私達は疑うことなくその友人に書類を渡しちゃった……」

「そ、そうだったのか……」
「私と月ちゃんがお父さんとお母さんを死なせてしまったんだよ」
「おじさんとおばさんはどうして死んだんだ」

「お父さんとお母さんは私のために借金を返済するために自殺したの。
 死んだ後に入ってくる多額の生命保険金で借金を返して、私が人間らしい生活を送れるように。
 でも、私は借金を返済しなかった。
 だって、親の借金は親の借金だもの。親の遺産を相続せずに遺産放棄してしまえば私は借金を支払う必要はなくなる。
 更にちゃっかりと親の生命保険金をしっかりと頂いたよ。
 だって、生命保険金は受取人が指定していた場合は遺産にはならないから。
 受取人の私にはきちんと貰える権利があったの。
 そのお金のおかげで私は今のように自由に生活を送っているけど、心の中ではどこか寂しかった」

 過去のことを思い出しているのか、音羽の目蓋から涙が頬を伝って流れてゆく。
 感情的になっているのか、体が小刻みに震えている。

「だから、月ちゃんに復讐する。きちんと責任を取ってもらうの。

 ううん……私の所有物になってよ。そうじゃないと私の心はいつまでも穴が空いたままになっちゃうよ」

「音羽……」
「月ちゃんは誰にも渡せないんだから……。

 水澄姉妹には絶対に指一本だって触れさせないんだから。うふふふふふふっっっっ」
 
 俺は言わずともナースコールのボタンを押した。いや、普通に押すだろ。
628トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/02/05(月) 18:46:59 ID:yAzJk414
影の薄い音羽がついに黒化・・。ようやく、修羅場を迎えることができる♪
まあ、黒化した女の子に立ち向かうにはデザートイグールだけでは心細いですw


新作のプロットの事ですが
皆様の書き込みの意見を見て、私が長考して考えた結果
今まで学園モノの作品を書いていたので、たまには新たな分野に挑戦するのもいいかもしれないので
本来のプロット通りにプロットAでやってみようと思います。
まあ、社会人編はいろいろと設定やら難しいですけどねw
629名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 18:52:31 ID:LmMEUhhQ
>>628
連帯保証人ゴッコバロスwwww
月ちゃん達何やってんだwwwwwwww

連続ですいません、投下しますよ
630『半竜の夢』Take3:2007/02/05(月) 18:54:21 ID:LmMEUhhQ
 今日は久し振りに仕事が入っておらず、図書館も休みなので遊びに出ることになった。
天気も良く、風が涼しく過ごしやすい。普段店番を頼んでいるせいで閉じ籠りがちなササ
からしてみたら、1日外に居られるというのは嬉しいのだろう。基本的には建物の中より
外で体を動かすのが好きな娘だ、竜害のせいで体が弱っていても基本的な部分は簡単には
変わらないものだ。それどころか普段体を動かすのを禁止されている分、余計に活動的に
なっているのかもしれない。そんな訳で、ササは始終上機嫌だ。
「次はどこに行く?」
 竜尾を楽しそうに揺らしながら、こちらを見上げてくる。
「はい、そろそろお腹が好いたので何か食べたいです!!」
 元気に手を上げて自己主張をするチャクムの方へ視線を向けると同時、まるで地獄の底
から鳴り響いているような豪快な音が聞こえてきた。そろそろどころか、こいつは物凄く
腹が減っているらしい。いつものことだ。元気に動くのは良いが、必要以上に元気なので
腹の減りも激しいのだ。タックムも喋らないだけで意外と活動的なので、二人揃って大量
の飯を食う。お陰で我が家の食費は半端じゃない額になっているのだ。この小柄で細い体
のどこに入るのか不思議だったのだが、先日チャクムが分かりやすく図で説明してくれた。
個体差があるので他の魔物はどうなのかは分からないらしいが、どうやら二人は食物自体
を摂取するのではなく、その中にある魔力を食べるらしい。魔物は魔法の余剰魔力や残留
魔力が固まって出来たものだから、納得といえば納得かもしれない。因みに人を襲うのも、
そうした体質が関係しているのだろう、とチャクムが教えてくれた。人や動物の体は魔力
が前進に満ちているから、それを吸収する為に襲って食べようとする。俺達が肉や野菜を
食べようとするのと同じような感覚かもしれない。水分や金属を食って生きていくことが
不可能なことと同じ理屈だ、腹は満たせても栄養が取れない。
631『半竜の夢』Take3:2007/02/05(月) 18:56:03 ID:LmMEUhhQ
 何とか出来ないものかな、と考えて歩いていると、大きな雄叫びが聞こえてきた。
「あれ、クリヤさん?」
「何してるのかしら?」
 見ればクリヤが、女性と口論をしているようだった。相手に見覚えはないが、どこかで
聞いたことがあるような声と口調。もしかしてユマだろうか、鎧を脱いでいる姿を見るの
は初めてだが、なかなか整った顔立ちをしている。疲れているのか仕事柄なのか、目元が
やけに鋭いことを除けば親父さんに瓜二つの顔だ。彼女は父親に似たのだろう。
「と、止めた方が良いんじゃないですか!?」
「いつもの喧嘩でしょ? 放っときなさいよ」
 慌てているチャクムとは対照的に、ササは呆れたような顔で二人を眺めていた。確かに
珍しいことではないが、この四人の中で魔物が一番平和主義というのはどうなのだろうか。
因みにチャクムは興味深そうに二人の喧嘩を眺めていた。但しこいつの場合は喧嘩に興味
があるのではなく、その際に使われる魔法に好奇心が向いている。勉強家であるチャクム
はいつの間にか、多数の魔法が使えるようになっていた。喧嘩を見て覚えているので自然
と使えるものも戦闘用のものばかりに片寄っているのだが、それを上手く応用して生活に
役立ててくれているから大したものだと思う。片方が争いを嫌っていたり、片方が勉強家
だったり、つくづく魔物らしくない。そこらの奴よりも、よほど立派に出来ている。
 それとは正反対に喧嘩を続けていたユマとクリヤだが、とうとう二人とも我慢の限界に
来たらしい。ユマのヒステリーはいつものことだが、クリヤまでもが激昂するなど余程の
ことでもあったのだろうか。二人の溢れ出る魔力に怯えてしまって、チャクムなどは俺の
背後に隠れてしまった。ササも竜の血が高まってきたらしく、タックムに支えられている。
632『半竜の夢』Take3:2007/02/05(月) 18:56:59 ID:LmMEUhhQ
 このままでは不味い。
「叩きのめしてやりますわ!!」
「やってみい!!」
 叫び、ユマは左右の袖口から二本ずつ棒を取り出すと、高速で組み立てた。現れたのは
見慣れた形、全長2mを越える十字架の形をした長杖だ。頭上で数度回転させると、長い
金髪を翻して槍のような構えをとった。
 対するクリヤは身を大きくのけぞらせ、天に向かって吠えた。先程の雄叫びよりも更に
強い、周囲の空間をも揺るがす響き。通常の声帯では発音することが不可能な竜の声は、
彼女特有の竜証である竜口によるものだ。人の姿でありながら異なる言葉を用いて、敵を
滅ぼそうとする。それは竜の姿に戻ったときよりも、なまじ恐ろしいものに思えた。
 不意に、肌に熱を感じた。
「マジかよ?」
 思い出すのは、クリヤの竜証の説明を聞いたときのこと。彼女はこの口があれば、人の
姿でも竜言語魔法を使うことが出来ると言っていた。炎を吐くことも出来ると言っていた
けれど、前進を焦がすような熱は普通の炎ではないものだ。大きく開かれた口の中にある
火球は赤を通り越して黒く輝いており、その熱は空気を焼いて風を起こしている。
「竜の炎、受けてみい!!」
 吐いた。
 長い尾を引いて吹き出された火球は瞬時に巨大化し、ユマへ飛来する。
「温い、温いですわ!!」
 身を一瞬だけ縮め、それをバネのようにしてユマは跳躍した。
 避けるのではなく、前へ。
 炎に向かうという方向性を持って己の身を跳ね飛ばし、長杖の先端を突き込んでゆく。
動きは単純なものだがそれ故に力の方向性も収束しており、指向性のある一撃となる。
 直後。
「突て、我が力よ!!」
 ユマの声に応えるように長杖の先端に魔力が展開し、それは白く輝く刃となった。魔力
で形成された白刃は命令通りに炎を突ち、更には膨張して巨大な熱量の塊を霧散させる。
竜の力が砕けたことで轟音が響き、大気が荒れ狂った。
633『半竜の夢』Take3:2007/02/05(月) 18:58:37 ID:LmMEUhhQ
 しかし、ユマの力はそこで終わらない。
 一点突破という意味を持つそれは、攻撃を退けてもまだ力を残していた。再度地を蹴り
突進を加速させ、クリヤの元へ突っ込んでゆく。先端に収束させても強すぎる力のせいで
大気に余剰魔力の光が舞い、それを見に纏ってユマは突き進む。その姿は、まるで彼女が
槍になったのかと錯覚する程だ。いや、彼女は槍そのものだ。
 衝撃。
 何かが噛み合う音と共に風が吹き、土煙が舞い上がる。
「温いのは、どっちかのう?」 煙が晴れると、信じがたい光景が視界に飛び込んできた。
「こんなもの、腹の足しにもならんわい」
 勢い良く突き込まれた光槍の先端を、クリヤは口で受け止めていた。そのままクリヤが
身を勢い良く捻ると、光槍が硬い音をたてて半ば辺りで折れた。
「違う」
 ユマが見せたのは、焦りではなく笑みの表情。
 これは元々複数の棒を繋げたもので、当然ジョイント部分は存在する。ユマの行動は、
それを利用したものだ。つまりクリヤに折られたのではなく、ユマ自身が折った。正確に
言うのならば、その連結していた部分を自分で外したのだ。
 体に力を入れていたのならば、すかしを受ければ力は行き場を失って姿勢が崩れる。
「謝りなさい」
 ユマは柄を両手で持つと腰を落とし、柄を外したときの身の捻りを利用して振り抜いた。
普通ならば当たることは殆んどない大振りの一撃だが、クリヤはバランスを崩している。
避けられそうもない状態だったが、しかし強引に身を投げてそれを回避した。光刃を展開
していなかったことと、得物の長さが1m程になっていたのが原因だ。
 ステップを踏みながら距離を取るとクリヤは跳躍、再び竜の雄叫びをあげる。
634『半竜の夢』Take3:2007/02/05(月) 19:00:04 ID:LmMEUhhQ
「お馬鹿さん、どんなに力が強くても空中では意味がありませんわ!!」
 ユマは柄の先に光刃を展開、5mもある大剣を作り振り被る。このままでは一刀両断に
なってしまうだろう。だが俺は、クリヤの狙いに気が付いていた。今の雄叫びは多分偽物、
相手を欺く為のものだろう。強い攻撃の際にはこうすると知っている相手にこそ、効果が
あるものだ。幼馴染みであり、共に守護役として戦っているユマだからこそ、引っ掛かり
やすいフェイントだろう。戦い方を知っているからこそ、騙される。
 ユマが光剣を振り下ろすのと同時に、クリヤは炎を吐いた。但し竜言語魔法ではなく、
普通の炎。それ自体は刃にかき消されるが、それで問題ない。大事なのは炎を吐いたこと
により起こる、空中での移動だ。それによりクリヤの体は後方に飛び、ユマの一撃を避け
改めて行動することが出来る。先程手に入れた長杖の上半分を持ち、不適な笑みを見せた。
「天誅!!」
 落下の勢いを味方に付け、それを振り降ろす。ユマは光剣を振り下ろしたばかりの姿勢
で身を前に傾けており、頭を垂れる罪人のようになっていた。杖の向かう先は無防備にも
晒された首筋、吸い込まれるように一直線に振ってくる。
 これは流石に不味いだろう、死んでしまう。
 俺はユマの襟口を掴むと放り投げつつユマの杖を奪い取り、クリヤの打撃を受け止めた。
馬鹿みたいに強い威力だが、相手が俺に変わり手加減してくれたのだろう。辛うじてだが、
姿勢を崩すこともなく防ぐことが出来たのだから。
「ふん、命拾いしたな」
「わざと、ですわよ」
 そう言うと、クリヤは鼻で笑った。
「おい、流石にやりすぎだろ」
「おお、クラウン。すまんかったの。怪我はないか?」
635『半竜の夢』Take3:2007/02/05(月) 19:01:16 ID:LmMEUhhQ
 漸くこちらに気が付いたらしく、笑みを向けてきた。いつも通りの表情を見ていると、
つい数秒前まで殺し合いをしていた者と同一だとは思えなくなる。
 しかし、これ程までに仲が悪いのだ。二人の親に仲良くさせろと依頼を受けたのだが、
これではまだまだ無理かもしれない。今の争いは、仲が悪いとかそんな次元ではなかった。
しかも喧嘩を止めるにも、守護役同士の争いなので命がかかっている。これからのことを
考えると、思わず溜息が溢れてきた。
「クラウン、大丈夫?」
「おかげさまで」
 チャクムとタックムに支えられながら歩いてきたササに、苦笑を向ける。
「それより、今の喧嘩を見て凄いことを思い付いたの。チャクム、口開けて」
「何ですか?」
 不思議そうに口を開くチャクムの顔に手をかざすと、ササは笑顔でタックムに耳打ちを
する。タックムは首を捻りながらチャクムの顔に手をかざすと、ササを見上げた。
「チャクム、せーので飲み込むのよ」
 間抜けに口を開き、頷いた。
「せーの!!」
 直後。
 タックムはいきなり、光弾を打ち込んだ。当然飲み込める筈もなく、チャクムは口から
白い煙を吐き、白眼を剥いて気絶する。あまりにも酷い光景に、言葉が何も出てこない。
ササは一体何を考えているのだろうか、クリヤ達の喧嘩とは違う意味で恐ろしい。
「やっぱり駄目だったかぁ」
 やっぱり、って何だよ。
 ササは苦笑を浮かべ、チャクムを見た。
「いやね、チャクムとタックムは魔力を食べるっていうから、おにぎり感覚で食べれると
思ったのよ。この魔法って魔力の塊だし、それに上手くいけば食費も浮くしね」
 何て無茶な。
 可哀想なチャクムの頭を撫でると、俺は治癒魔法をかけてやった。
636ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/02/05(月) 19:04:30 ID:LmMEUhhQ
今回はこれで終わりです

>>515
自意識過剰な間違いだったら恥ずかしいですが、俺のことでしょうか?
半竜はぼちぼち進めます
花束は今悪い癖が出ていて、話を広げる為にプロット再組み立て中です
もう少し待ってくれると嬉しいです
637名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 19:32:56 ID:Pqwl8pqW
職人の皆さん乙&GJ!!

懐かしい作品がチラホラと復活してきて嬉しい限りです。
あとはこれでノントロが来たら最高だなぁ。。。
638名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 19:42:44 ID:2KWjFSXR
おおお、よもや九十九が来てるとは
ありがたやありがたや
「膝の裏」というマニアックな攻め方に感動しますた
639名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 19:57:22 ID:7LE0InrN
そうだよな、保険金は遺産扱いにはならないよな。
じゃあ、この間の茨城の計画殺人は何なんだ……ハッ、GJ!!

ナナミ萌えとマトリックスと某爽快ハイスピードロボットアクションに影響されて、嫉妬するAIへの道を模索中。
嫉妬したらAI失格じゃないのか。ああでも、不良品扱いになっているのを、偶然ダウンロードして…。
640名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 20:02:10 ID:yWjCuPRG
>>639
欠陥品で廃棄処分→色々あってその辺のごみ捨て場に破棄→主人公が偶然見つけ、拾う。
みたいな?うん萌えるよねー
641名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 20:32:55 ID:aDmO8DI+
>>639
ヒント:HOS

劇場番パトレイバーを見てみよう。
あれではレイバーが暴走するプログラムが開発段階で意図的に仕込まれていた。
つまり嫉妬プログラムもバグやウイルスではなく最初からAIに…
642名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 20:51:58 ID:COCQ2Fcl
逆に大切にされまくった結果、機械なりの解釈しちゃうとかね。貴方と私は二つで一つの機能である、みたいな。
643名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 20:56:45 ID:aDmO8DI+
>>642
自己学習機能つきのAIが嫉妬に狂ってロボット三原則の「人間を傷つけない」を
「邪魔する雌豚はジェノサイド」と書き換えるのとかイイねw
644名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 21:08:16 ID:IGOpUzgv
第二原則で引っ掛かりそうな気がしましたが、
泥棒「猫」、雌「犬/豚」は人間ではないのでOKだと言う事に気がつきました!

>643 さん、ありがとう。
それでは行ってきます。
ノシ
645名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 21:24:38 ID:n5RX30Pg
>639
つ敵は海賊 海賊たちの憂鬱

愛に生きる決意をして
邪魔な相棒を艦内から放り出し
海賊なんて危険なことやめてくんなきゃ一緒に死ぬ
とのたうち回る宇宙空母のお話
646名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 21:27:11 ID:aDmO8DI+
第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、
人間に危害を及ぼしてはならない。

第二条
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた
命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。

第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己を
まもらなければならない。


第一条を書き換えた場合

ロボ子「第一条ニヨリ雌豚ヲ排除シマス」
人間女「第二条に従ってやめなさい!これは命令よ!」
ロボ子「ソノ命令ハ第一条ニ反スルタメ聞ケマセン。デハ死刑執行」

こうなるのかな。
647名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 21:56:28 ID:hoEnOjyN
>>639
つ スペースサタン(SATURN 3)

この映画自体はひどい出来だが、ロボットの教育に人格移植を使うというアイデアはおもしろい

元の人格提供者が男に想いをよせていれば自動的に三角関係ができあがるですよ
648名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 22:11:53 ID:t9ETT4CB
第二条補足
場合によっては抹殺することも許される
649名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 22:37:51 ID:3NlwEI2j
>>647
随分と懐かしい物をw
650名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 22:50:36 ID:7LE0InrN
いやもう、戦闘妖精・雪風ぐらいの無機質さで嫉妬させたいんだが、表現できないな。
…そういえばアイツ、主人公と心中しようとしてたな。少し違うか。

>>647
ググったら一番上に最低映画館とか出てきたwww
651 ◆N.P5FQhRG6 :2007/02/05(月) 23:23:33 ID:RtQ7rqIg
投下します
652愛娘の恋 プロローグ2:2007/02/05(月) 23:25:25 ID:RtQ7rqIg
浩一はとりあえず少女を家の中に入れた。
自分が親と言われてはじめは冗談かと思ったが少女の様子からはそれが嘘とは思えなかった。

「……名前は?」

浩一は少女を居間の座椅子に座らせて尋ねた。
少女は目に涙を溜めていたがさっきよりは落ち着いていた。

「……雛川…奏」
「…………雛川!?」

香織の苗字に浩一は過去のことを思い出した。
それは忘れたくても忘れられない思い出だった。

「キミの母親は……雛川詩織か……」
「……!! ……そうです……覚えていたんですか?」

忘れるわけないよ、と浩一は思った。

雛川詩織は浩一の昔の彼女だ。
浩一と詩織は幼馴染で、小・中と同じ学校だった。
中二のときに詩織が浩一に告白し付き合い始めた。
だけど中三のとき別れがきた。
浩一が父親の転勤で引っ越ししてしまった。
そしてそれ以来詩織とは二度と逢えなかった。

「そうか……詩織は元気なのか?」
「……母は七年前に死にました」
「死んだ……?」

詩織は七年前癌で死んだらしい。
発覚したときにはもう末期で手の施しようがなかったそうだ。
653愛娘の恋 プロローグ2:2007/02/05(月) 23:27:46 ID:RtQ7rqIg
「……そうか……どうしてここに住んでるってわかった?」
「母の中学時代の友人に何人かあたって……」

よく簡単に人の住所を教えられるな、と浩一は思った。
この際それはどうでもいいが。

「……ずっと会いたいと思っていました。……母を捨てた男に」

憎らしげに話す奏。
容赦ない一言が浩一の胸に突き刺さる。
捨てた、か……。
確かにそうだな、と浩一は心の中で自嘲した。

「そうだな。酷い男だ。そんな男にキミはどうして欲しいんだ?」
「…………それは……」

ガチャッ

玄関のドアを開ける音がした。
浩一はこのときまで美風のことをすっかり忘れていた。
そして居間のドアが開けられる。

「ただい…………」
「…………………」

美風は目を真っ赤にした少女を見つめている。
奏も突然現われた女性を見つめている。
…何も言わず見つめ合う二人。
浩一はこの場から逃げ出したい気分になった。
そしてほぼ同時に浩一に顔を向け、

「「誰?」」
654愛娘の恋 プロローグ2:2007/02/05(月) 23:29:31 ID:RtQ7rqIg

……あの後特に何も起こらなかった。

美風に奏のことを説明したが、美風は特に怒る様子もなく、
「お腹空いた?」と奏に聞いて料理を振舞った。
奏は何も言わず黙って食べた。
そして浩一が帰らせようとしたとき、

「ここに泊まります」
「保護者の方とか心配してるんじゃ……」
「泊まります」
「せめて電話ぐらい……」
「かまいません」

結局帰りそうもない上に時間も遅かったしここに泊まらせることにした。
そして今、スースーと寝息をたてて隣の部屋で寝ている。

「なあ、美風」
「ん、なぁに?」

美風は今食器を洗っている。

「その……なんで怒らないんだ? 娘とかいきなり現われて」
「私は……浩一のことを信じてるから……」
「そんなに信じられる男かな、俺は」

美風は食器洗いを終え、浩一の隣に座る。
そして自分の左目の眼帯を指差す。

「これがその信じられる証拠……。それに浩一がそんな最低なマネをするわけないじゃない。
あの子が勘違いしているだけだよ・・・絶対……」

そう自分に言い聞かせている感じがした。
まあ仕方のないことだろう、と浩一は思った。

「そっか…………明日ちょっと出かけてくるから」
「どこへ?」
「……墓参り、かな」
655 ◆N.P5FQhRG6 :2007/02/05(月) 23:38:02 ID:RtQ7rqIg
まだプロローグ編なので全然嫉妬に狂ってないです……orz
プロローグ編が終わったら害虫駆除編(仮)を予定してますんで
そこで爆発させたいなあ、と

ちなみに名前の読みは奏(かなで) 美風(みかぜ)です

656 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/06(火) 00:01:01 ID:HzFdL1FR
>>655
うほっ! 害虫駆除編とは、なんとも甘美な響き……!
投下投下。
657君という華 2 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/06(火) 00:03:24 ID:HzFdL1FR
 屋上に辿り着くと、俺は祥子を座らせた。二度、深呼吸をする。俺自身、少し冷静になれていない。
 祥子は、ずっと青い顔をして肩を震わせながら、ごめんなさい、ごめんなさいとまるでうわ言のように繰り返している。
 確かに、殴ったのはまずかった。カッとしてしまったのだ。俺もまだまだ子供だ。
 俺は何と言えば良いかわからず、しばらくは二人の間に気まずい空気が流れる。
「あー、祥子? その、なんだ。殴ってしまって、すまん。その、感情的になり過ぎた」
「う、あ、ごめ、なさい。ごめん、なさい」
「祥子? おい、祥子?」
「あたしなんか死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね…………殺してよ」
「オイッ! 祥子!」
 祥子は目線を明後日の方向に向けて、笑顔で、死にたいと言う。
 止めろ。止めてくれ。お前が、そんなこと言うと、俺は。俺は?
「亮君に殴られたわもうあたしに生きる価値はないんだわ亮君がいない世界なんてあたしはいらない。やだよ。やだやだやだやだやだやだやだ。
亮君、どこにもいかないであたしを捨てないで。いい子にするから。亮君の言う事何でも聞くから捨てないで、ねえ、亮君。亮君亮君亮君亮君亮君亮君!」
 狂ったように笑いながら俺の名前を連呼する祥子。その笑顔はひどく幼くて、無垢な狂気に彩られている。
 何でだ。何でそんなこと言うんだ。俺は、ただの幼馴染だろう? 捨てるとか、生きる価値とか、何を言っているんだ。
 止めてくれ。違う、違うんだ。祥子、頼むから、止めてくれ。殴ったのは悪かったから。もう殴らないから。だから、お願いだ祥子。

 俺の瞳を見ながら、殺してなんて言わないでくれ。

「祥子……ほら、俺、怒ってないから。祥子がいい子なの、ちゃんと分かってるから。だから、落ち着けよ、な? ほら、いい子いい子」
 俺は、祥子を優しく抱きしめた。祥子を慰める、と言うよりもこれ以上この状態だと、俺まで狂ってしまいそうだ。
 狂って、俺は……俺は? 何だ。俺は何をすると言うのだ?
「う、あ、亮君、怒って、ない? やだ、やだよ? 亮君、怖いよ。一人は……独りは、怖いよぅ」
「ん、怒ってないから。でも、もういきなり人を殴っちゃダメだからな? 分かった?」
 俺は泣きじゃくる子供をあやすように言う。しかし、祥子からは返事が返ってこない。
「……祥子?」
「……あの子の肩持つんだ」
658君という華 2 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/06(火) 00:04:46 ID:1W/8OR7S
「え?」
「……ふ、ふふっ。あはは」
 祥子はすごく楽しそうに、それこそまるで新しいオモチャを手に入れた小学生みたいな、天真爛漫と呼ぶに相応しい屈託のない笑顔で、笑う。
「祥子……?」
「ふふっ。大丈夫だよ。泣いたら、スッキリしちゃった。えへへ」
 そのあまりにも突然の豹変振りに、一瞬分離病かと思ってしまった。それほどの変わりぶり。
 祥子は、自分の身長の二倍ほどあるフェンスにもたれかかった。その顔には、まだ笑顔が浮んでいる。
「ごめん、亮君。先に戻ってて。色々……うん、色々考えたい事があるから」
「あ、ああ。そっか。じゃ、じゃあ先に戻っとく……自殺とか、すんなよ?」
「あはは。やだなぁ。亮君残して、一人で死なないよ」
 さっきは死にたいと仰っていたんですがね。と言うのは止めておいた。俺はじゃ、と言って屋上から去る。
 もう、六時間目も終わろうとしていた。
659君という華 2.5 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/06(火) 00:06:33 ID:1W/8OR7S
 亮君の背中を見送ると、一回大きく深呼吸する。なんでだろう。自分でも不思議な感覚。
 亮君に殴られた時、世界が暗転したのをあたしは確かに感じた。その後は、もう自分が何を言っているのか良く覚えていない。
 でも感じたのは、このままじゃ亮君に捨てられる、と言う事。それだけは嫌だ。あたしの存在理由である両君に捨てられる。それはつまり、死ぬと言う事。
 いや、違う。消滅、だ。あたしの存在を誰も認識しない。最初から、いないことになる。
 今考えるだけでも、怖い。思わず身震いする。
 しかし。亮君にイタイ女だと思われただろうか。亮君は優しいから、きっと態度には出さないだろうけど。
 でも、大丈夫。捨てなければ、問題はない。結ばれれば、いくらでも調教できる。あたしの理想の亮君になってくる。
 だから、本当の問題はあの、醜い雌猫。泥棒猫。今思い出すだけでも、胃がムカムカする。気持ち悪い。
 あたしの亮君に、抱きついて放れようとしないなんて、なんて厚かましい女だ。亮君が気持ち悪がっていたのに気付いていないのだろうか? なんとも哀れな豚だ。
 そう。あの泥棒猫はあたしと亮君の未来には必要のない、異端の存在。存在を消さなければ、あたしと亮君に安らぎは訪れない。
 ゴミは、ゴミ箱へ。殺さなきゃ。殺して、あたしと亮君の記憶からも、抹殺しないと。
 でも、どうやって。いや。手はいくらでもあるはず。まずは、準備が必要だわ。下調べと、確実に殺せて、あたしに容疑のかからない、完全犯罪。
 殺さなきゃ。絶対に、殺す。殺す。殺してやる。その醜い顔を誰だか分からなくなるまで殴って殺してやる。ガリガリに痩せこけた肢体をぶった切って殺してやる。
 その気持ちの悪い黒髪を引き千切って殺してやる。肉切れすら残さずに、殺して、やる。
――随分、楽しそうな事考えているじゃねぇか?
 突然聞こえた、声。少し甲高いその声に、あたしは驚く。まさか、独り言を呟いていたのだろうか。少し、聞かれるとまずい内容だし。
 でも、周りに人影はない。空耳かな。まだ少し、気分が興奮状態にあるのかもしれない。いい加減落ち着くのよ、祥子。
 そうだ。ここから見える景色は中々秀逸だ。それを見て、少し気分を落ちつかせよう。
 くるり、ともたれかかっているフェンス越しに見える景色を見ようと振り返る。
 そこから見えたのは、空中に立っている男。
「え、え?」
――んあ? なあに不思議そうな顔して……ああ、こんなとこに立っているのが変か。ま、そりゃそうだ。
 男はまるでそこに道があるかのような足取りで空中を歩き、フェンスをすり抜けてあたしの側に立った。
 大きい。二メートル近い身長。銀色に輝く髪の毛。左目が、ない。空洞になっているそこを見ていると、吸い込まれそうだ。
 男はけらけらと、あたしを見ながら笑っている。不思議と、不快感はない。
――なあ、その面白そうな話。俺も混ぜてくれよ。
「面白い話……?」
――家畜、殺すんだろ? 猫か豚かは知らねぇけどよ。そりゃもう無残に、殺すんだろ?
「殺す……そう、よ。殺すの」
――フヒヒッ! 面白そうじゃねぇか。なぁ、俺も混ぜてくれよ。お前に力、やるからよぉ。
「力? 力ってどんな?」
――いや、やるって言うより、引き出してやる、て感じだな。どうだ? 俺も混ぜてくれるのか? くれねぇのか? どっちだ?
660君という華 2.5 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/06(火) 00:07:09 ID:1W/8OR7S
「……いいわ。混ぜてあげる」
――ヒヒ、フヒヒヒヒヒヒャヒャヒャヒャヒャァッ! イイねぇ、話の分かるお嬢ちゃんだ。嫌いじゃねぇぜ?
「ただし。殺すのは、あくまであたし。それは守ってもらうわ」
――いいぜ。大体、俺ァお前等人間に直接的な影響は与えられないからな。そんなもん、約束するまでもねぇよ。
「あっそ。なら、あんたもあたしの力をさっさと引き出しなさい」
――オォ、怖えぇ。んじゃ、失礼して。
 男の右手が、あたしの顔をわし掴む。何か男が呟いた、と思ったら男は右手を放した。
――なんだ?
「終わったの?」
――おお。なんか不満顔だな。
「なんか、もっとすごいの想像してたのに」
――知るか。俺ァお前の持っている殺意を引き出してやっただけだ。ヒヒャヒャ! しっかしお前、分かりやすい能力だな。
「そうなの? 全然変わってないんだけど?」
――あー。例えば、だ。おう、そこに小石が落ちてるだろ。それを手の平に乗せてみろ。
 男が指差した所に、確かに親指の爪ほどの大きさの小石が転がっている。あたしはそれを言われた通り、手の平に乗せた。
「で?」
――重要なのはイメージ、だ。その小石を吹き飛ばすのをイメージするんだ。お前の体ン中から衝撃波が出て、その小石を飛ばす、てのをイメージしてみろ。
 あたしは目を瞑り、イメージする。体内の芯から出る、唸るような衝撃波。それを脳裏に浮かべる。
 どこまでも飛んでいく小石。手の平。イメージを繋げる。
 そして。
「……きゃっ!?」
 あたしの手の平に転がっていた小石は、瞬く間に空へと消えた。
 イメージ通り。まさにイメージした通りに吹き飛んだ小石。あたしは手の平を見つめる。
――おーおー。流石。それがお前の能力、『殺意』だよ。まあ、名前はお前が勝手に決めろ。俺はどうでもいいからな。
「……ふふ、うふふ。ふはっ、あはは、あは、あははははははは、はは、は、ははははははははははっ!」
 思わず声を出して笑ってしまった。最高だわ! これこそ、神の指示なのかもしれない。今まで信じてなくてごめんなさい、神様。
――……。
 男は何か複雑そうな表情を浮かべている。でも、笑いは止まらない。
「えへ、えへへ。凄い、凄い凄い凄いッ! これなら、殺せる! 殺せるわ! あは、あはははは!」
――……しかし、お前、やっぱおかしい女だな。そもそも、俺の存在をなんでそんなあっさりと受け入れるんだよ。フツー、少しは驚くだろ?
「あは、あー楽しい。で、何?」
――いや、だから。
「聞こえてるわよ。うふふ。別に、どうでもいいもの」
――あ?
「あたしと亮君の邪魔しなければ、どうでもいいの。霊だろうが化け物だろうが、関係無い。あたしと亮君にとって邪魔かどうかが問題なだけ。後はノープログレム、よ」
――ヒヒ、ヒャーヒャッヒャッヒャッヒャ! オンモシレェー! おもしれェよ、お前。
「お前、は止めて。あたしにはちゃんと水田 祥子って言う名前があるの」
――祥子、祥子ね。ふは。俺の名前は……あー、好きに呼べ。
「は?」
――名前は特にねぇからな。好きに呼べ。
「ふうん……じゃあ、キラ」
――はあ?
 男は何ともマヌケな表情を浮かべた。すごい、心底を人を馬鹿にした表情だ。失礼ね。
「キラーの、キラ。ほら、ぴったりじゃない?」
――ふん。好きに呼べと言ったのは俺だ。お……祥子がいいって言うんなら、俺ァ反対しねぇよ。
「それじゃあ、これからよろしくね、キラ」

 共に世界を、完成させる為に。
661 ◆35uDNt/Pmw :2007/02/06(火) 00:09:37 ID:1W/8OR7S
以上。ちょ、豹変しすぎだよ! と書いた本人も驚きだよ。うん精進する。
あと、途中中途半端に短くなっていて、申し訳ないですorz
662名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 00:11:55 ID:IxPZYdbR
まとめてしまって申し訳ないが作者様方GJっす
今日帰ってきたらまさかこれだけ大量のSSが投下されているとは・・・
世の中、まだまだ色々な嫉妬にあふれているのですね(*´д`*)
663名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 00:18:10 ID:50dQDHPa
>>661GJ!!
新世界の神じゃなくて嫉妬世界の神ktkr
664名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 00:20:50 ID:gbe1tjnw
娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…
殺人娘AI…殺人娘AI…殺人娘AI…殺人娘AI…殺人娘AI…殺人娘AI…ハッ!GJ!!

次スレのことすっかり忘れてたがホントどうしようかね。
665名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 00:26:34 ID:nhHHv6jD
しかし、感想が書けないからどこかに感想掲示板を隔離させるとか
WEB拍手で作者が感想が見れるようなシステムにしておかないと
さすがに頑張って投稿して感想をもらえなかったら、神達も離れてゆくぞ
感想一つだけでやる気が沸いて来るんだからw
666名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 00:30:18 ID:Q3hZPjjE
>635
半竜ktkr!! GJ!
相変らず無茶やりつつほのぼのな感じが良いですw
あと魔物双子が相変らず萌えますw

花束は再組み立て中ですか
パワーアップして帰ってくる日を待ってますね
667名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 00:53:05 ID:vRNeHHFx
ロボは日本語自体がおかしいだろうに
668名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 00:55:37 ID:50dQDHPa
>>664素晴らしい嫉妬を堪能していて、次スレの事なんかスッカリ忘れてたw
もう471KBいってるけど、次スレどうするの?どうなるの?
669名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 01:16:00 ID:XwaMjmpP
約二週間か……。
修羅場SSスレ、未だ衰えず……(´Д`;)ハァハァ
670名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 01:24:32 ID:lYsihmlN
結局次スレのスレタイの案はどうなったんだっけ?
671名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 01:34:09 ID:l6jTrGdI
語呂合わせがつおい
二番目に番号
672名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 01:37:10 ID:XwaMjmpP
語呂合わせでいいんじゃない?
39.9% (160票/39.9%)



28、28……。
「貴女には(←28)渡さない」とか
「修羅場の庭(←28)」とか……。

だめだ、思いつかねぇ。
673名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 01:46:10 ID:NvKwUD5I
39%なら語呂合わせより連番合計の方が多くないか?
語呂合わせでいくのか?
674名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 02:02:27 ID:sKTZ2qEl
>>673
2択じゃないよ
ちゃんと見とき

嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 浮気28おしおきを
675名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 02:06:36 ID:ELxwwhT8
>>671-674
まず「語呂合わせ」か「連番の合計」のどっちが多いかを考えて、
連番のほうが多ければ、連番の中で一番投票数の多いのを選ぶってことになってたと思うんだけど……。
676名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 02:07:32 ID:lYsihmlN
>「貴女には(←28)渡さない」

俺はこれ、いいと思うけどな。
677名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 02:08:56 ID:lYsihmlN
>>675
いつの話だっけ、それ。
このスレは職人さんといい感想といい凄まじいスピードだから、ほんの数日あけるだけですぐ話題が……
678名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 02:11:19 ID:ELxwwhT8
>>677
前スレだったと思う。
一応、このスレの>>12にも書いてるけど……。
679名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 02:19:19 ID:lYsihmlN
>>678
今ログ見たわ。前スレの860ね。
もう投票期間終わっちゃってら。さっきつい出来心で入れちゃったのに。
680名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 02:22:47 ID:Q3hZPjjE
「貴女28渡さない」も良いけど
「泥棒猫28渡さない」なんてどうよ
681名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 02:27:38 ID:xm1nOA4q
スレタイは長すぎると入らないからなぁ……。

どれくらいまで良いんだっけ?
682名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 02:45:33 ID:q1Hfz+9h
投票の結果、今後スレタイの語呂合わせはなくなりました。
詳しくは前スレ読んでね
683名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 02:54:12 ID:qR0tLm+H
疲れ果てて帰ってきたら投下ラッシュキテル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
1日の疲れがこれで癒される!!! 
>>661
殺意の波d――もとい嫉妬の波動で泥棒猫2匹を虐殺かGJ
>>655
このやんわりとした流れから美風が奏に泥棒猫の匂いを感じる時が楽しみだ
害虫駆除編という文にwktk!して待ってます
>>636
半竜キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
まとめサイトで改めて見返して、そしてスレで最新部を読むのがたまらない
>>628
連帯保証人ごっこの流れと月の冷静さにワロタw
新作の社会人物にも期待しています
684グリフォンとオレ。:2007/02/06(火) 04:46:13 ID:44SRSiWe
調子に乗って、投下します。取り敢えず導入部だけ。


その0(プロローグ)

 ずぶずぶずぶっ。

 男のペニスが湿った音を立てて、腰を降ろした女の股間に埋め込まれてゆく。

 めりめりっ、めりめりっ!!

「痛い、痛い痛い痛いっ!! もうやめっ……ああああっ!!」
「んふふふふ、そぉんなに痛いんだぁ。だったらなおさら、治してあげられないねぇ、あなたの包茎ちんちん……!」
 女が男の上で腰をくねらせるほどに、男は涙を流してもがこうとする。

 そう、男は確かに、女の言う通り、包茎だった。
 それも仮性ではなく、真性の。
 つまり、彼にとっての性行為とは、ペニスに快感を与える行為でも何でもなく、単に性器に苦痛を与え続ける行為でしかなかった。

「こぉらグレイス、じたばたしないのぉ」
 痩身でありながら逞しい筋肉に包まれたその男は、しかし女に手首をつかまれた瞬間に、そのあまりの握力に、微動だにできなくなってしまう。
「……ぐっ……んううううう……!」
「あはっ、すっごぉい! すっごく可愛い! もう食べちゃいたいくらい!!」
 男のペニスから与えられる刺激を一方的に感じながら、女は、男――グレイスの顔面の傷痕を舐め始める。そして、そのまま舌を彼の唇に捻じ込み、その口内を蹂躙する。
「……んんんっ……んぐぐぐ……!」
 酸欠で、彼の表情がいい加減青くなってきたところで、ようやく女は舌を引っこ抜く。
「んん…ぷは〜〜っ。ああ、美味しかった。……あなたは? どうだった、あたしの唾液?」
「――はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……」

 ぐいっ!
「あがぁっ!!」
 男が不意に悲鳴をあげる。
 女――ハブローが膣内に力を込めて、彼の包茎ペニスを締め上げたのだ。
「ハイ、訊かれたらちゃんと答えるぅ! 学校で習ったでしょう、それくらいっ!」
「おっ、おい……」
「はぁ!? 聞こえない!!」
「美味しかった、ですぅ!!」
「そうぉ、美味しかったんだぁ、んふふふ……。んじゃ、こっちは?」

 きゅっ!
「ひぎいいいっ!!」
「ぷっ、ホントなの? 本当にそんなに痛いの? まるで処女じゃないの」
「くううううっ……!」
 ペニスに与えられる激痛だけではない。
 男としての自分自身を侮辱される屈辱に、彼は耳まで真っ赤になった。

「くっ……、どう? 気持ちいいでしょ? 処女の気分でオンナノコに犯されて、すっごく興奮するでしょっ!? ねえ、なん、とか、言い、なさい……よぉぉっ!!」
 男を罵りながらも、彼女は快感に酔いしれ、がくんがくんとグレイスの上で腰を振る。
 一方グレイスは、その耐えがたい苦痛を凌ぐためか、または耐え切れずに悲鳴をあげるのを避けるためか、シーツを掴んで口に咥え、歯を食いしばる。

「はぁっ、はぁっ、いいっ、いいっ、ああっ、やっぱり、あんたの包茎ちんちんって、最高よぉぉぉっ!!」
「〜〜〜〜〜〜!!」
「いっ、いいっ ――ああああああぁぁぁぁっっっ!!!」
 次の瞬間、ハブローは絶叫と共に、絶頂を極めた。
 当然、男の苦痛とは関係なく、である。
685グリフォンとオレ。:2007/02/06(火) 04:50:36 ID:44SRSiWe

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、……じゃ、そろそろ、痛いのは勘弁してあげるぅ」
 ハブローは、淫蕩な笑みを浮かべながら、ずるずると音を立てて、自分の胎内からグレイスの陽根を抜き出した。
「かはっ……」
 グレイスが大量の唾液とともにシーツを吐き出す。
 その眼には、うっすら涙すら光っていた。
「あらあら、こんな事で泣いてるようじゃ、まだまだオンナノコの覚悟は出来てないようねぇ」
 そう言いながらハブローは、低い声で呪文を詠唱した。
 その碧眼が妖しく輝く。

 めきっ、めきめきっ。
 
 彼女の股間から、猛烈な勢いで何かが生えている。
 クリトリスだった。
 クリトリスが突如巨大化し、見る見るうちに立派な、逞しいペニスがそこに出現した。
「どぅお坊や。折角おちんちんでオンナノコの気分を味わったんだから、次は違う穴でオンナノコの気分を味あわせて上げる。んふふふ……どうしたの? 喜んでいいのよ」
 しかし、当のグレイスはとても喜ぶ気分では無さそうだった。

「……ハブロー、何をする気だ……お前、まさか、それで……!」
「んふふふ……あんたバカぁ? エッチでおちんちん使ってする事って一つでしょう?」
「うっ……うあっ……いやだぁぁああ!!」
 逃げようとするグレイス。しかし、ハブローはその片足を掴んで引きずり寄せる。信じられない腕力だ。そのまま、彼をうつ伏せの体勢で固定する。
「いいのよ、泣いても。オンナノコだってみんなそう。痛いのは最初だけ。でも、すぐに感謝する事になるわ。ハブロー様、こっちの穴の気持ちいい使い方を教えてくれて有難うございますってね……」
「いっ……いやだぁ……女になるのは、いやだよう……」
 グレイスがふるふる、ふるふると首を振る。騎士として戦場で見せる精悍な表情が、まるで嘘のようだ。
「んふふふ、だぁめ。聞き分けの無い子には、――お仕置きっ!!」
 ずずずっ、ずぼぉぉっっ! ごりごりゅっ!!
「ああああああああああああ!!!!!!!」

 一撃だった。
 その一撃でハブローは、彼のアナルをその奥底まで侵略した。
 グレイスの身体が、びくんびくんと痙攣している。まるで高圧電流でも浴びたように。
 半ば、白目を剥いた彼の表情を見下ろしながら、女は愛する男を征服し、蹂躙する快感に、その身を震わせていた。

(いいのですよ、お兄様。じっくりと楽しんでください。私が、私が、お兄様を天国まで連れていって差し上げますっ!!)

686名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 06:41:37 ID:VQdrBbaw
>>682
工作乙
詳しくは投票場を見てね
687名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 06:53:15 ID:JIXi4R3s
結局揉めるのね
何のために投票制にしたのか分からないな
688名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 06:54:11 ID:csOuR6k8
だから「その〜」「PART〜」「監禁○日目」「泥棒猫○匹目」の四つを足した数は242票
語呂合わせの数はたったの161票でどう考えても語呂合わせが少数派。
第一もう語呂合わせはきついんじゃないか?

次スレからは「その28」でシンプルにいきましょう
689名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 07:32:32 ID:B7wJ/uAf


ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1170714407/l50

単純に立てる人の好みで良いと思う。語呂が出来るのなら語呂、難しいなら
数字とかその場その場で臨機応変に行きましょう。

690名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 07:37:39 ID:B7wJ/uAf
いまさらだが次のタイトルって語呂にも数字にも見える・・・
691名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 07:41:27 ID:1TRvvHxn
勝手に立てた後からそんな事言っても賛同する人は少ないと思うが。
しかも選択肢になかったものを堂々と出しちゃって、本当に何のための投票だったんだか
692名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 07:44:04 ID:ui9byB92
結局語呂合わせにしないのなら投票制にする意味もねーじゃん
またこうやって強引に立てた奴がまかり通るんだな
前回最後で揉めた反省はどこにいったんだって話だ
693名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 07:51:21 ID:qR0tLm+H
>>687>>688>>691>>692
今回の投票では明らかに不正投票が横行しているから、何とも言いがたいが
もうこれはしょうがないのかもしれんな。
些細な事は気にせず、もう立ててくれる人の好みでいいよ
694名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 07:52:02 ID:NFV8BF++
また勝手に……馬鹿じゃないの?
それで揉めたり、ぐだぐだ言うヤツがいるから統一しようと言う話になったんだぜ

あと語呂合わせとか言ってる奴、見苦しい
本来ならその〜で決まりだ>>12に書いてあるじゃんか
多重疑惑の票をまだ除いてないとかなら分からんが……
695名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 07:57:06 ID:ui9byB92
語呂の案も出してる人もいたのにこれだからなぁ
696名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 07:59:07 ID:ui9byB92
語呂合わせが一番投票数多かったのも考慮しないと
何のための投票だったんだか
697名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 08:00:32 ID:qR0tLm+H
>>694
確かFC2の投票システムは管理者権限弱いから不正投票あっても削除等の操作できんのよ
だからぱっと見て明らかに不正だと分かるの抜くと「監禁○日目」になるが
もっときちんとしたシステムで再度投票したほうがいいのかもしれんな
698名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 08:03:35 ID:JIXi4R3s
もうスレタイなんて立てたもんがちでいいよ
投下を阻害さえしなければ
699名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 08:29:17 ID:ui9byB92
立てたものが優先ならどうしても案を出してから始めなきゃいけない語呂合わせが
絶対的に不利になってしまうよ
700名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 09:15:49 ID:NvKwUD5I
>>695
672の見る限り語呂合わせなんじゃね?
701名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 10:07:26 ID:b/l29fnn
まぁ、なんだな。このスレで話す内容ではないわな。というか、スレタイにそこまで執着しなくても…漏れは良作大作嫉妬SS読めれば良いしね。
702名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 10:12:23 ID:wVfe4EHr
語呂、対、語呂では嫌という意見を、まず最初に比較するという話も
不正投票についても、以前から話として出ていたのに
勝ってる間は何も反対せずに、いざ負けるとなると持ち出してくるのがなぁ。
>88-90の流れの後、>689のレスとか何の冗談かと

>697
ネットの投票で「きちんとしたシステム」なんて、そう簡単には実施できないだろ。
今まで投稿してるトリ付職人様のみが、投票権、とかじゃない限り。
アンチついたり、職人さんに反撥しそうな奴が出る諸刃の刃
703名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 10:22:43 ID:DnPf80D7
スレタイなんてどうでもいい、スレの雰囲気悪くしないで欲しい、と
意見も勘定しておいて欲しいな。

少なくとも議論するならどっか他でお願いしますよ。
704名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 10:23:44 ID:hRrDCMeF
つか、アンチ語呂合わせの奴がうざい
なんでそこまで語呂合わせに憎悪を燃やすんだ?
705名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 10:44:04 ID:hRrDCMeF
いいこと思いついた
投票場の人にスレ立て人になってもらって、トリ付きで立てるようにそればいいんじゃまいか
また前スレと今みたいに、スレタイ案がいくつも出てるにもかかわらず、荒らし紛いのスレ立てされるのはもういやん


あとどうでもいいが一行目を変換したら「イイコと思いついた」と出たよ? ブレンスレに出入りしてたせいか
706名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 10:54:08 ID:ULuZzx7q
よくお前らスレタイごときにここまで執着できるな。

もう何でもいいからこんなくだらないことでスレ消費すんなよ。
707名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 11:00:25 ID:vvZHTt2+
みんな感情的にならずにもうちょい建設的な意見をだな・・・

明らかに多重があるまで需要の無かった「その〜」はもう除いて

監禁、泥棒猫、語呂で短期集中決戦投票すりゃ良いんじゃない?

投票開始日を決めてから一人一票、期間は一週間ぐらいでどーよ
708名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 11:13:49 ID:vvZHTt2+
それと差し当たって今の問題は

立ってしまった新スレを使うのかどうかだと思うんだ

バレンタインも近いのに投下先が無いなんてゴメンなんだぜ?

連な上自治厨みたいで本当にスマン
709名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 11:27:12 ID:S0QO21HB
建設的意見とやらも、>707のように中身が無意味なら、混乱するだけだから黙ってた方がいいよ
710名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 11:43:33 ID:MTnCkx3y
立てた者だけど今回のサブタイは選択肢の中に有りました。
本当は泥棒猫にはが良かったけどオーバーしました。
立てた者勝ちで自分は良いと思う。語呂が不利と言うのもあったけど
そんなものでしょ語呂合わせなんて。何だかんだ言って更新のたびに
面白い語呂が浮んでくるものなんですよこういうのは。
711名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 11:47:27 ID:Gf5aMYqh
ここにSS投下してるモンだけど、最近の流れははっきり言って嫌だな
投下しづらいよ
712名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 11:55:51 ID:2XCzUp2n
>>706
お前さんはSSが読めれば他のやり取りなんかどうでもいいのかもしれんが、
俺にとってはスレタイのことも一つの楽しみでもあるのよ。

それにスレのルールを制限とかしすぎると楽しめるモノも楽しめなくなると思うぜ。
いくらここがSSスレでも、書き手だけじゃあスレは成り立たないだろうから。

長々とすまなかった。
713名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 12:26:05 ID:b/l29fnn
流れぶったぎり。ふと思いついたネタ。
714名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 12:39:06 ID:b/l29fnn
じっとりと汗ばむ。全身をしととに濡らしながら、あたしは無邪気な子供のような笑顔で中に入ってくるモノの感触を楽しむ。
ガチガチに勃起したそれは、見ていて痛々しいほどに充血している。薬がだいぶ効いているみたいだ。
うふ。うふふ。可愛いあたしの彼。油断すると、すぐに他の女に目移りする。彼の悪い癖だ。だから今日もあたしはお仕置きする。
彼の目は包帯に巻かれ、何も見えないようにした。こうすれば感度が上がるのだ。
さらに口はあたしが穿いていた下着で塞がっている。今日も愛液でべとべとになっているそれを口にくわえると彼は嬉しそうに勃起させる。
快楽を与え続け、何度も中に吐き出させる。あたしだけだよ? こんなにセックス出来るのは。
だから、もう他の女で勃起しちゃ駄目だよ? 次もし勃起なんかさせたら、その眼球をくりぬくからね? うふふ。
あ、また出た。



みたいな。いいなぁセクロスしたいなぁ。
715名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 12:42:48 ID:3p/63LfC
>>703
>>706

同意。見苦しい。
716名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 12:45:21 ID:G1kTdJG5
前にも言ったんだが、スレタイの話しはブログのコメントでしたほうがいいんじゃないだろうか?
少なくとも、SS読めれば別にいい人はこういう話しを嫌がると思うし。
ブログの管理人の人にもどうするか意見を聞いといたほうがいいかもしれんし。
717名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 13:24:19 ID:ZME4CoKz
要するに

ノントロまだ〜?

って事だろ?
718名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 16:08:21 ID:b6jMDhds
スレタイなんてどうでもいい、っていう方針でやってたら
毎回毎回グダグダ言ったりやったりする奴が出るから統一を話し合おうという話だったはずなんだが
結局ふりだしか
またグダグダが恒例になるわけだ
719名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 16:14:28 ID:b6jMDhds
いっそテンプレに入れときゃいいんだよ
「次スレのスレタイ番号は立てる人の好きな形式で結構です」とでもさあ
720名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 17:34:07 ID:hRrDCMeF
>>718
投票結果が気に入らないから「投票なんか無視して俺の好きにやる」と言ってるやつがいるだけ
721名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 17:39:08 ID:UcIWKsy4
>>719
賛成。
毎回毎回スレタイでうだうだ言うのがわくかと思うとウンザリする。
722名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 17:55:28 ID:FOpFmES7
スレタイ決めって埋めネタじゃなかったのか?
723名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 18:01:24 ID:OomtC6k0
なんの為にアンケートまで取ってるのか分からなくなるから待ったほうがいいんじゃ・・・
724名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 18:02:30 ID:rcBB7sc6
スレタイ案で無駄なレスが埋まっていくのが嫌だ、番号でも語呂でも立てる奴の勝手でしょ
725名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 18:10:54 ID:UcIWKsy4
>>723
アンケートとっても「組織票が入ってる」とか揉めることが判明したから
解決策にはならんと思う
726名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 18:13:51 ID:GbxnWevM
>722
そのはずだろうけど、>710や>712見てると
自分らは面白い価値のあることをしてるんだ!、と根拠不明の自信を抱いてるみたいだなー
727名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 18:29:54 ID:OomtC6k0
既に490kb・・・
728名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 19:04:56 ID:XwaMjmpP
建てた者勝ちだなぁ、もう。
729名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 19:47:30 ID:NFV8BF++
立てる人の好きにしろとか言ってるけどさ
自分でスレタイを決めたいがために早漏されても困るんだよね
730名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 19:52:03 ID:1tm0C/Z7
現行のスレが450KB未満の内に立てられた次スレは無効にするとか
731名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 20:18:48 ID:K9kykY5J
埋めで短編を。『バッドラック樋口』

「ぐすっ…ぐすっ…それでね、部長ったらね、あんな女の作ったお弁当をすごく美味しそうに食べるの…。」
「そう、ひどいね。」
「そう!ひどいでしょ!?わたしも…わたしもお弁当作ってきたのに、
部長は食べてくれないんだよ…あんな女の作ったお弁当は食べるのに…えぐっ」
そこで、
「梅村さんのを部長が食べてくれないのは、梅村さんがお弁当を渡さないからだよ」
とは言わない。
言えば、部長が好きで好きでたまらないけどそんな厚かましいこと出来ない、
という答えが返ってくるのは分かってるからだ。間違いなく泣きながら。
もう同じ問答をループするのには疲れてしまった。
こうして恋に悩むクラスメイト兼部員仲間が悲しみにくれている時は、
ただただ何も言わずに聞いてやるのが一番なのだ。
今日もこうして聞いていれば、放課後には部活に励む部長の姿を見て
恋エネルギー(本人談)を充填して元気を取り戻してくれるに違いない。

そう思っていた僕の希望は儚くも裏切られた。
「よう、樋口、梅村。」
「「ぶ、部長!?」」
思わず梅村さんとかぶってしまった。
休み時間の教室で、学年の違う部長と出くわすなんて考えてもみなかったので。
たまたま同じクラスの違う部員に用事があったと後で聞いたが、そんなことはどうでもいい。
たまたま通りがかっただけなら、ただただやり過ごして欲しかった。
あんな言葉、残していってくれさえしなければ。
「なんかちょっと見ちゃいけない場面に出くわしちゃったかな?
樋口、お前あんまり女の子は泣かせちゃ駄目だぞ?…じゃ、また放課後にな。」
それだけ言って、手をひらひらと振ると、部長は教室を出て行った。
732名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 20:22:44 ID:K9kykY5J
僕は教室を出る部長の後姿を見送りながら、どうしても梅村さんの方を振り返る勇気がもてなかった。
今の部長の言葉、部長は何を思っていったのだろう?
僕は梅村さんの彼氏で、梅村さんに別れ話でも持ちかけてると思っただろうか?
いやいや、白昼の教室でそんなことしないだろう。
そう、部長はよく事情は飲み込めないが適当に言ってみただけだ。
梅村さんと僕が付き合ってるなんて、きっと思ってない。
梅村さんも、きっとそう考えているはずだ。
僕は一縷の希望にすがりながら、鞭打ちに襲われたように固まった首を元に戻す。

ああ、やめようよ梅村さん。そんな、椅子なんか振り上げるのは。
大丈夫だって。部長は勘違いなんかしてないって。
仮に勘違いしているとしても、後で訂正すればいいじゃない。付き合ってなんかないって。
今僕を殴りつけなんかしたら、もっと大問題になって部長に嫌われちゃうよ。
そういえば、部長、貴方は何でいつも空気が読めないんですか?
何でいつもいつも修羅場を作り出すんですか?
あまつさえ、そのとばっちりを僕のような善良な小市民にまで振り掛けるんですか?

色んな言葉が脳裏をよぎったが、防御行動に移る時間はなかった。
時は止まっていない。僕にそんな能力はない。
この世の終わりのような泣き顔をしている梅村さんの腕で、椅子は僕の頭に正確に振り下ろされた。
733名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 20:26:09 ID:K9kykY5J
これだけです。失礼。
734名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 20:36:33 ID:saNyGOB0
最初部長って出たとき会社の部長が頭に浮かんだ俺は負け組…orz
とりあえずGJ!
735名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 21:54:14 ID:HLaU3xNX
>>734
あれ? 俺まだ書き込んで無かったよな……
736名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 21:59:18 ID:ySv/z6PK
この後、主人公と女の子が絶交状態になって、それで初めて女の子は主人公が相談に乗ってくれることの大切さに気付くんだけど、時すでに遅し。
主人公は持ち前のバッドラックで、妖艶な遊び人の女性の玩具にされてたりして、取り返すために戦うとかそこまで書いてくんなきゃGJって言ってあげないんだから!
737名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 22:07:01 ID:h8chMLjE
しかして言う。GJ!
738名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 22:22:26 ID:b6jMDhds
部長が♀ならおk
739名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:14:01 ID:bMXhMiKS
男ひとり女ふたりの一方通行な三角関係が思い付いた。
740名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:35:15 ID:RIVIkvRt
だが修羅場がうまれない罠。
741名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:39:47 ID:q1Hfz+9h
スレタイ投票結果出たんだから今後は>>12に従えよなぁ。

今更「スレ立て人が好きなように」とか言ってる奴、見苦しいですよと。
742名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:43:30 ID:xm1nOA4q
蒸し返すな
743名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:52:46 ID:sKTZ2qEl
前スレ860氏がスレタイ案から選んで立ててくれればよろしいのでは
何にしろ、もう連番はないだろ
連番タイトルを拙速に立てたからスレの雰囲気が悪くなってるんだぞ。
>>710は反省しる
744名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:14:27 ID:Wark6O5Y
久しぶりに初期の作品を見てきたがまろやかな嫉妬もいいもんだ
745名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:18:49 ID:dgD5ll7v
>>732
GJだぜ! その調子で連載も書けるように…いや小ネタでも十分いいんだけどさ、もったいないぜ!
確かに初期の作品も読み返すといいよな、あと最近うたわれるものらじおにはまってる
ラジオで嫉妬とは柚姉と力也さんは時代を先駆けてるな
746前スレ860だぜ:2007/02/07(水) 00:19:20 ID:UxFDI7ON
対応が遅れて申し訳ありません。投票をいまさらですが、終了させておきました。
投票所で今回の件に関して私見を述べさせていただいてますので一度見ていただけたら幸いです。
ではでは。
747名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:22:41 ID:dgD5ll7v
乙、気に病むことはないぜ
何とかしようという気持ちだけでもありがたいもんだ
748名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:23:30 ID:V6OGTJLz
>>743
新スレは語呂合わせだぞ。
そのトンデモ論理に従えば「もう語呂はないだろ」ってことになる。

文章も読めない人がよくSSスレにいるね……。
749名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:27:05 ID:ENcfciEn
罵りCDとかある時代だからな。嫉妬CDとかヤンデレCDがあってもいいような……需要が無いか…
所詮、俺たちゃマイノリティー。嫉妬は純愛だと訴えても白い目で見られるだけさ。
750名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:33:49 ID:hOt4U5zC
俺達はイノベーターなのさ。

これから……。
そう、これからが……、修羅場というシチュが専業主婦以外にもウける時代……
751名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:34:36 ID:tcVg8CX3
"軽めの"SSで勧誘しようと「やくそく」を読ませたらグロ嗜好呼ばわりされたあの日・・・
752名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:37:43 ID:jMPxqadT
>>751
読み返したら久しぶりにキタww
これのよさが分からない奴は異常
753名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:38:51 ID:UxFDI7ON
>>751
あれは”普通の人間”にとっては全く軽くないんだぜ……。
無難に実妹あたりを勧めておけば修羅場ラーが一人増えたかもしれないんだぜ。惜しい。
754名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:39:19 ID:4VwxFEVW
どこが重いのかよく分からない
755名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:49:34 ID:9EelYzsI
新スレ過疎った?
756名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 00:56:23 ID:3SE/UIFM
>>751
精神的修羅場と肉体損傷の描写はそれぞれ耐性の有る無しがわかれるからねえ
757名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 01:11:52 ID:hIthZ2Pl
>>751
俺がお前の友達だったら「同士よ!」
と抱き合ってたであろう・・・
俺もこの属性は言うと引かれるぜ・・・
758名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 01:18:02 ID:hOt4U5zC
相変わらず、修羅場スレは凄いよな。
もう新スレに短編二つと続き物二つが投下されてるよ。
759名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 01:40:43 ID:rbytzMRQ
>>746
集計乙。
だが投稿コメントを見ると語呂合わせに投票されてるほうも
妙な無言コメントが続くけどこれは多重投票ではないの?
760名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 02:25:29 ID:ooqIbuyk
初期はコメントが必須じゃなかったもさ
コメント無し=多重投稿 ってわけじゃないだろ

761名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 02:57:05 ID:LT8aEzHm
スレタイ一つ決めるのに、何このgdgdは
ここの住民は孝之以上に優柔不断じゃね
762名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 06:19:16 ID:tm78IW9Y
  そだ  |------、`⌒ー--、
  れが  |ハ{{ }} )))ヽ、l l ハ
  が   |、{ ハリノノノノノノ)、 l l
  い   |ヽヽー、彡彡ノノノ}  に
  い   |ヾヾヾヾヾヽ彡彡}  や
  !!    /:.:.:.ヾヾヾヾヽ彡彡} l っ
\__/{ l ii | l|} ハ、ヾ} ミ彡ト
彡シ ,ェ、、、ヾ{{ヽ} l|l ィェ=リ、シ} |l
lミ{ ゙イシモ'テ、ミヽ}シィ=ラ'ァ、 }ミ}} l
ヾミ    ̄~'ィ''': |゙:ー. ̄   lノ/l | |
ヾヾ   "  : : !、  `  lイノ l| |
 >l゙、    ー、,'ソ     /.|}、 l| |
:.lヽ ヽ   ー_ ‐-‐ァ'  /::ノl ト、
:.:.:.:\ヽ     二"  /::// /:.:.l:.:.
:.:.:.:.:.::ヽ:\     /::://:.:,':.:..:l:.:.
;.;.;.;.;;.:.:.:.\`ー-- '" //:.:.:;l:.:.:.:l:.:
763名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 08:30:23 ID:hwYcHRU4
嫉妬の良さに気付けてよかった。
764名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 09:23:25 ID:+CQF54lV
『これで500Kね。

 ウフフフ、彼は貴女を捨てて私を選ぶわ。

 貴女は地獄の底で私が彼に愛されるのを見てなさい。

 あはは、なによ、そんな睨んでももう彼は貴女のもとへは帰らないわよ。

 それでは、さ・よ・う・な・ら、27スレ』

28スレは言い放つと、その手に持った剃刀でゆっくりと27スレの首筋を撫でる。
剃刀は頚動脈を傷つけ27スレの服は流れ落ちる己の血によって赤く染まり始めた。
765名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 09:39:41 ID:WctVcjsy
埋め?
766前スレ860
>>759
だからトータルで見たら「監禁○日目」が多分一番なんだぜ。
ただ、何で「その〜」だけを晒したかっていうとソレで一番になっちゃってるからなんだぜ。
他のは順位自体は変動してないんだぜ。