◆◆ファンタジー世界の女兵士総合スレpart3◆◆
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スレ立て乙
保管庫管理人さんもいつも乙です
5 :
投下準備:2006/11/19(日) 17:45:07 ID:ZGnZpJLD
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スレ立て乙です。
では予告どおり投下させていただきます。
前スレの131で書いたような話から作ってみました。
135の方も気に入ってくれたようなので。
設定の元ネタはゲルマン神話のアレです。
いつもの魔王モノとは百八十度違います。あの物語とは世界の繋がりはありません。
ちょっと話が長めです。
こっちの魔王はまだヘタレです。
よろしければ、そのヘタレと姫将軍の物語をどうぞ。
僕の指には『指輪』が嵌められている。
これはただの指輪じゃない。
かって愛の悦びを拒絶した男が大河の底に眠る黄金を掴み取り、この指輪を作り出したらしい。
指輪には絶大な魔力が秘められ、古の神々や巨人、小人、そして英雄達がそれを求めて争ったという。
そんな指輪が今僕の指に嵌められている。
これは紛れも無い事実だ。
さて、そんな巨大な力が手に入ってしまった場合、どんな事をするべきだろうか。
そりゃあ決まってる。
世 界 征 服
しかないだろう?常識的に考えて。
やっぱり世界征服は男として生まれた以上、一度は夢見る浪漫だよね。
この指輪に秘められた叡智、魔力をもってすれば、決して不可能じゃない筈だ。
指輪の力で小人や小鬼、妖精や巨人を支配することも、
姿かたちを変化させる不思議なカブトを造る方法も分かる。
その他諸々の不思議な術を使うことも出来る。
でもどうやって征服していけばいいのか、いまいちよく分からないんだな。
………笑わないでくれよ。
しょうがないじゃないか、半年前まで田舎の村の羊飼いだったんだから。
とりあえずかき集めた軍勢で、ドガッとお城を攻め取ってしまえばいいのだろうか?
でも乗っ取った後はどうするんだろ。
『はい、ここは今日から僕の物!皆さん僕が新しい王様だよ』なんてイキナリ言っても、
すんなり従ってはくれないよね。
それから兵隊をいっぱい集めたとしても、どうやって彼らを食べさせていくのかな?
羊みたいにそこらの牧草を食べてくれればいいのに…
それに自慢じゃないが、僕は自分の名前すら読めない、書けないんだ。
もちろん法律なんて一個も知らない。
羊飼いの生活で普段やってく分には、な〜んにも法律なんて知らなくていいのだ。
また、お城を乗っ取っても、それからどうすればいいのやら?
大臣や将軍はどこで雇えるんだろ? 街の酒場やギルドで探すのかな。
裁判とかはどうしよう?コインの裏表で決めちゃマズイかな。
いろんなことを考えると、僕の世界征服には色々教えてくれる人が必要だ。
軍隊を指揮したり、政治やなにやらのやり方を教えてくれたり、
間違ったことをやろうとした時に忠告してくれる人だ。
だから僕は、戦に強くて、政治に詳しくて、王様としての暮らし方を知ってそうな人を探した。
もちろん一介の羊飼いにそんな知り合いは全然いない。
心当たりは少なかったけど、一人だけそれに該当しそうな方が居た。
隣国のお姫様であり、高名な将軍であるクローディアさまだ。
クローディアさまが戦上手なのは僕にも分かる。
なんせ彼女の所為で、僕は一度死にかけたんだから。
僕の住んでた国とクローディアさまの国が戦争をして、僕は半年前兵役に駆り出されてしまった。
で、生まれて初めての合戦に先日参加したんだけど、それがすっごい負け戦。
大河のほとりで行われた会戦で、しばらくすると反対側に陣取ってた味方が逃げ出した。
そうこうしてるうちに味方は包囲されたらしく、気が付いたら横も後ろも殺る気満々の敵だらけ!
しょうがないから僕たちは、大河へ向かって逃げ出した。
今思えば僕たちも慌ててたんだと思う。
急流じゃないとはいえ、ただでさえ動きづらい皮鎧を着たまま河を渡ろうとしてたんだから。
敵方の矢玉に追い立てられて、僕たちは命がけの水泳大会。
山の小川で水遊びしかしたことが無かった僕は、途中で脱落、河の底。
でも聞いた話じゃ一緒に泳いだ仲間の兵士も同じような運命をたどったらしい。
こうしてクローディアさまは大勝利、戦上手の名をさらに高めることになったのだ。
えっ、なんで河の底に沈んだお前がこうして生きてるのかって?
そうそう、つまり僕はその河底でこの指輪を手に入れたんだ。
河の深みに沈んでいくのを、何とかしようと僕はもがいてた。
でもやっぱり体は沈んでく。
あのときは僕も『ああ、死んじゃうんだな』って思ったよ。
河の底まで沈みきって、文字通り藁をも掴もうと色々もがいてるうちに、気が付いたらなんか掴んでた。
それがこの指輪だった。
古の伝説どおり、指輪をめぐる様々な争いの末、指輪は元通り河の底に沈められていたらしい。
そこに同じように沈んでいった僕が、偶然それを手に入れてしまった。
指輪の力で溺れ死ななかったらしく、気が付いたら下流まで流されてたという訳だ。
・・・・・・・・・
「………で、この私に何をしろと」
「うーん、話が分かりづらかったかな? つまり僕の手助けを…」
「世界征服の? 貴様の? 半年前まで隣国の羊飼いだったという?」
「そう、分かってくれた?」
「 ふ ざ け る な ぁ !!! 」
「わわっ! そんな怒鳴らなくってもいいじゃないか」
うーん、怒らせちゃったかな。
こっちは真面目にお願いしてる積りなんだけど。
「いきなり私を城から攫って、魔力で動けなくした挙句、世界征服に協力しろだと!?
怒鳴らない方がどうかしてるわっ!!」
だって夜中お城の寝室に忍び込んでこっそりお願いしようとしたんだけど、
クローディアさまは目が覚めたと同時に襲い掛かってくるんだもの。
仕方ないから魔法で動けなくして、今僕が住んでる荒れ果てた山塞へ来て貰った。
「太古の魔力を秘めた指輪だと? 世迷い言もいい加減にしろ!」
「本当なんだけどなあ」
「貴様、打ち首…いや車裂きにしてくれるっ! 私をすぐに城へ戻せ! 縛めの魔法も解け!」
「うう…車裂きは勘弁して欲しいな」
どうやら相当怒ってるみたいだ。頼み方を根本的に間違えてしまったらしい。
でも、だからこそ僕には手助けしてくれる人が必要なんだ。
こういう時はどうお願いすれば良いのか、それを助言してくれる人がいれば、
クローディアさまだってこんなに怒らなかった筈だ。
この状況を打開できそうな方法が無いか、僕は指輪に秘められた秘められた古代の魔法を探ってみる。
指輪は村の雑貨屋で酒飲んでいつもクダを巻いてた物知り爺さんみたいに色々な叡智を教えてくれる。
ときどき言うことが違ってたり、知らない事を聞くと機嫌を損ねたしたけど、根は悪くない爺さんだった。
指輪は間違った事を教えたり、機嫌を損ねたりすることは無いけど、
その代わり爺さんみたいに分かりやすく教えてはくれない。
(うーん………、これかな)
「何を黙ってる?!」
「ちょっと眠ってて」
「なっ……… Zuu、Zuu、」
魔法で眠らせると、僕は準備にとりかかった。
指輪から伝わる叡智によって、手順と方法は僕の頭の中に納まっている。
材料はたしか倉庫に仕舞っておいたはずだ…
「はい、起きて」
「ん、………何をする気だ?」
(いや、これからするんだけど)
「えーっと、クローディアさま、喉が渇きませんか?」
「は?」
「そんなに怒鳴られては喉が枯れますよ、お茶でもどうぞ」
僕は手に持ったコップをクローデイアさまに差し出した。
「おい、これはなんだ?」
「………お茶ですけど」
「貴様の国ではこんな毒々しい色で、おどろおどろしく泡立ち、禍々しい臭いを放つ液体を
『お茶』と称するのか?」
「………」
「まず貴様が飲んでみろ」
「嫌ですよ」
「 自 分 も 飲 め な い 代 物 を 私 に 飲 ま す な ー っ !!」
マズイ、さらに怒らせちゃったかも。
でも飲んでもらわなきゃ困るし、かといってコレを自分で飲むのも嫌だ。
しょうがないなあ。
「ふぐぉ?、なにほする!」
飲んでくれそうに無いので、僕はクローディアさまの鼻を摘んで、
開いた口に無理やり『お茶』を流し込んだ。
半分以上溢されちゃったけど、量的には十分なはずだ。
「げほっ、げほっ……… 貴様!? 私に何を飲ませた!!」
(本当に効いてくれるかな)
指輪の魔法は疑うべくも無いが、実際に試すときはやっぱ心配だ。
クローディアさまは必死に『お茶』吐き出そうとしてる。
せっかく造ったんだから大人しく飲んでくれれば良いのに…
「えっと、クローディアさま?」
「何だ………… うっ?」
呼びかけに答えて僕を睨み付けたクローディアさまだが、
僕と目が合った瞬間さっきまで眉間にしわを寄せて怒ってた顔が、不意に緩んだ。
そしてなんとなく目が潤んでいるような、頬が紅に染まってきたような感じだ。
「う……、な、何だ?人の名前を突然呼んで」
「えっーと、さっきの話ですけどどうしても協力して貰えないでしょうか?」
「さっきの話、せっ世界征服とやらか……… 駄目だ駄目だ、そんな事出来るわけが無い。
この私が見ず知らずの男に、それも隣国の元羊飼いなんかに……出来ない、出来ないぞ」
「………」
「そうだな、私の立場を考えれば、たとえやりたくても出来ない。やりたくても………
見ず知らずの男だけど、それなりに見てくれは良さそうだけれど………」
だんだん効いてきたみたいだ。
さっき飲ませたのは指輪の叡智で造った魔法の惚れ薬。
飲んで最初に目が合った者に強烈な恋をする液体だ。
材料にイモリの黒焼きとか妖しい草花とか色々使ってるから、自分じゃ飲みたくないけどね。
「いや、協力を求められても……残念だが出来ない、 悪いが出来ないよ…」
うーん、大分気が変わってきてくれたみたいだけど、後一押しが足りないみたいだ。
僕みたいな隣国の平民に協力するなんて、お姫様としての矜持が許さないのかも。
こういうときどうすればいいんだろ?
………そういえば物知り爺さんが言ってたな。
『女を相手にするときにな、向こう側がこっちに気がありそうな時は、ためしに一歩引いてみな。
男の方につれない態度を取られたら、身持ちのかてえ女も焦るからよぉ』
あの頃は子供だったから良く分からなかったけど、いまこそ爺さんの言葉に従うときじゃなかろうか?
「うーん、そんなに嫌ならいいですよ」
「えっ?」
「仕方が無いから別の人を探します。
クローディアさまにはご迷惑をおかけしました」
「別の女を探すのか?」
(女限定って訳じゃないけど)
「いっいや、迷惑って訳じゃないが… 私にも立場があるし、それに突然こんな形で頼まれても…」
「そうですね、突然こんなこと頼まれても困りますよね。
お城までお送りしますので…」
「まっ待て、待ってくれ!」
「どうしました?」
「城へ戻されたとして……… その、私にまた会いに来てくれるということは無いかな?」
「いえ、その時点でたぶんずっとお別れですね」
「そうなのか…」
「………」
僕たちは二人とも黙り込んでしまった。
クローディアさまはうつむいて考え込んでるし、
僕は本気でクローディアさまをお城に帰す積りはないし(だって他に心当たりが無いんだもの)、
居心地の悪い沈黙だけが流れていった。
「きっ、決めたっ!」
「えっ?」
「わっ私はお前に協力するっ!!」
クローディアさまは顔を上げて、そう言ってくれた。
「本当ですか?」
「ああっ、私がお前を世界の王にする」
「ありがとうございます、今後よろしくお願いしますね」
「じゃあ、まず体を動かせるようにしてくれ」
「そうですね……えいっ」
指輪が嵌った手を振るって、僕はクローディアさまにかけた魔法を解く。
と、同時に僕は床に押し倒された。
動けるようになったクローディアさまが、僕にすごい速さでタックルをかましたのだ。
(あわわっ、惚れ薬が効いてなかったのかな!?
さっきのは効いた振りをして、魔法を解かせるための演技だったのかも!)
さっすが姫将軍、組み打ち技も素早いなあ…って感心してる場合じゃない。
ああ、これで僕の夢も終わりか。
今からじゃ、攻撃呪文を唱える暇も無いな。
世界征服はやっぱ僕には無理だったんだ… 短い間ありがとうございました。
………あれ、覚悟は出来てるんだけど、クローディアさまの鉄拳が降りかかってこないな。
クローディアさまは倒れた僕の腹の上に馬乗りになって、僕を見下ろしている。
そのの顔を見ると、先程同様目は潤んで頬は紅潮していた。
「その、世界征服に協力するにあたって私からもお願いがある」
「なっ何でしょうか」
「私を抱いてくれ」
「えっ?」
「お前の、いや君の事が好きになってしまった…」
(いえ、そりゃ惚れ薬の所為ですよ)
「ほら、君の事を想う私の胸は、こんなに高鳴ってる…」
そう言うと、クローディアさまは僕の手を取って自分の胸に押し当てた。
ぐ に ぐ に
「どうだ?」
(すごく、柔らかいです…って僕の手を押し付けるのは構わないんですが、
おっぱいの上からじゃあ心臓の鼓動は分かりませんよ)
「ああ、今初めて分かる。愛だの恋だのを吟遊詩人が歌っていても、私にはその詩情が理解できなかった。
でも今こそ分かるよ。胸を灼き、体を熱くする、こんな気持ちの事だったのね」
僕の手を胸に押し当ててたまま、(そんなに押し付けるとおっぱいの形が変わっちゃいますよ)
クローディアさまは僕に愛の告白をしてくれる。
うーん、困ったなあ。
『僕のことを好きになってくれれば、協力してくれるだろう』と思って惚れ薬を飲ませたのに、
こんな展開になるとは思ってなかったぞ。
クローディアさまは戦好きで色恋に興味の無い冷たいお方だって聞いてたけど、
反面こんなに情熱的で積極的な所もあるんだな。
考えてみれば女の身で戦を指揮する程なんだから、人一倍決断力、行動力は有るんだろう。
「……駄目か」
「いえ、駄目って訳じゃ」
「こんな女だてらに戦に出る、男勝りの姫将軍は抱く気も起こらないか?」
「そんなことは無いんですけど…」
むー、さっきとは『頼む側』と『悩む側』が逆転してしまったぞ。
実際クローディアさまは美人だ。
今僕の上で思いつめた顔をされてるけど、その憂いを含んだ顔もすっごく綺麗だ。
最初はどんな人か知らなかったので、寝室に忍び込んで寝顔を見たときビックリした。
こんな美しい顔をした女の人が有名な姫将軍だなんて、と思ったよ。
(その直後、クローディアさまは枕の下に隠された短刀を取り出して襲い掛かってきたんだけど)
「こんなことを頼んで、私もはしたないと思ってる。
私なんかを『抱け』なんて言われても、願い下げかもしれないな…」
「とんでもないです。クローディアさまにそんな事言って貰って、嫌がる男なんて居ませんよ」
「本当か?」
「はい、僕も胸がドキドキしてます」
「ふふ、確かめてみてもいいか?」
「どっどうぞ」
クローディアさまの手が僕の胸板の上に乗せられる。
剣とか槍とか扱ってるとは思えない、長くてすらりとした綺麗な指だ。
「本当だ… 君の心臓も高鳴ってる」
「そうでしょうね」
「じゃあ、私を抱いてくれるの?」
「うっ…」
少し悩んだが、ここまで来たらしょうがないよね。
「クローディアさまさえよろしければ…」
「嬉しいっ、ちゅっ!」
あう、キスされてしまった… クローディアさまの唇はすごく柔らかいんだな。
唇だけじゃなく、頬にも鼻にも顎にも額にも、クローディアさまはキスの雨を降らせてくれる。
(うーん、僕に『抱いて』って言われたけど、これじゃあ『抱かれて』っていう方が正しいかも)
こうゆうときは男の方がリードするべきなんじゃないかと思うけど、
先月従軍娼婦のお姐さんに筆おろししてもらったばっかりな僕は、あんまりやり方に詳しくない。
初めての時も全部お姐さんに教えてもらったし…
「あうっ!?」
「君のここも堅くなってるね…」
僕の股間をクローディアさまの手が擦る。
でもこんな綺麗なお姫様に馬乗りになってもらい、キスされまくったし…
おまけに夜中寝室から来てもらったので、クローディアさまは絹の夜着しか着ていない。
それで顔にキスされるわけだから、その胸の膨らみが僕の胸板の上に当然乗っかってるわけで…
そりゃ男子なら堅くなるよ。
「こんな私にも魅力を感じてくれてるんだ」
「ええ、クローディアさまはとっても素敵です」
「そう言ってもらえると嬉しいよ、ちゅっ」
(クローディアさまはキスが好きだなぁ)
「あの… 私ばかり触るのも何だから、その…」
「えっ?」
「私の体も触って欲しいんだ… 君の手で」
自分から『触って欲しい』なんてクローディアさまが言い出したので、
僕は(随分大胆だな、これも惚れ薬の効果かな)って思った。
それでも触ることに対して、異議があるどころかぜひ触りたいと思ったので、
遠慮せずに僕はクローディアさまの夜着の裾に手を入れた。
「あぅんっ」
(あわわっ、変なところ触っちゃったかな?)
「すごい、初めて他人に触ってもらったけど、こんな気持ちいいなんて…」
クローディアさまはうっとりとした目でそう言った。
(良かった、どうやら間違ってはいないみたいだ)
ほっとした僕は緊張がほぐれて、そのままクローディアさまの股間を指で弄った。
お互いに暫く触りあっているうちに、僕は布越しじゃなく直接触って欲しくなり、
ズボンを下げて既に硬くいきり立った男根をさらけ出した。
初めて見る男性の性器を、クローディアさまはまじまじと見てくれたので、
はっきり言って僕は恥ずかしかった。
でも、『恥ずかしいから見ないで下さい』と言うのはもっと恥ずかしいので黙ってたけど。
「これが、男のモノなのか… 大きいんだな」
「いえ、普通だと思いますよ」
「そうなのか?、コレが私の中に入るんだね」
「う、うん」
「こんな感じでやるのかな… よいしょ」
(うわっ)
クローディアさまは身を翻すと、僕の上に再び馬乗りになる。
丁度股間が触れ合うような位置に乗られるので、巧くすれば入ったんだろうけど…
「んん、どうしたことだ? 入らないな」
(そりゃそうでしょう、クローディアさまは初めてだし)
「んん? 困ったな…」
どうにかして腰の位置を合わせて挿入させようとするクローディアさまだが、
そんな簡単に入るもんじゃない。
困った顔も可愛いけど、何時までもそうさせておくのは可哀想だ。
えーっと、古参兵のおじさんがこう言ってたな。
『処女とかよ、濡れにくい女を抱いちまおうってときはな、ひひっ。
てめえのナニに唾ぁ付けて、こっち側で濡らしておけば挿れやすいんだぜ!
おめーにも機会があったら試してみ』
あのおじさんは博打が好きで、隙あらばいつでも人の金を巻き上げようとしてたなぁ。
………逃げる途中で溺れ死んじゃったけど。
「あの、クローディアさま」
「なあに?」
「きっとよく濡れていないので入りにくいんだと思います」
「そうなのか?」
「はい、こういう場合は唾かなんかで僕の先を濡らしておくと入りやすくなりますよ」
「分かった」
それを聞いてクローディアさまは、その手に唾を吐き出して僕の男根の先に塗りつけてくれた。
………もちろんそれも気持ち良かったよ。
それから腰を下ろしたときに僕のがずれないように、片手をそえておくように言ってみた。
これは従軍娼婦のお姐さんがそうやってたのだ。
「んっ…あぅっ………」
「あの、クローディアさま? 無理をなさらずに…」
「いや、良いんだっ。私は、君と一つになりたいんだっ」
そう言ってもらえて、僕はホントに嬉しかった。
この指輪を作った者や指輪を僕に授けてくれた運命の女神さまたちに、幾ら感謝しても足りないくらいだ。
クローディアさまの入り口はとってもきつくて、僕の方もかなり痛かった。
だけどクローディアさまの方はもっと痛いんだろうと思えば全然我慢できた。
そして、ついに僕のモノの先が秘洞の入り口を捉え、奥深くまで突き刺さったんだ。
「あううぅん!」
「だっ大丈夫ですか?」
「うぅ、痛いけれど…大丈夫だよ。
痛いのよりも嬉しい気持ちの方が強いから」
腰を落としてじっくり奥まで到達した男根は、体重のおかげで一番奥の突き当りまでずっしり嵌った。
でも顔をしかめてるクローディアさまを見ると、このまま続けてしまっていいのか、ちょっと不安だ。
「あんまり辛いようでしたら、今日はこれ位で…」
「まだそんなことを言うの? 私は平気だっ」
(ホントかなぁ)
「ほらっ動くよ!?」
「わぉっ!」
この期に及んで躊躇ってる僕を叱咤して、クローディアさまは腰を動かしてきた。
そうするとクローディアさまの中に入ってる僕のモノも秘肉でしごかれる訳で、
締め付けはきついけど、当然とんでもなく気持ちいい。
(さすが名高いクローディアさまの騎馬戦術、初めてなのにすごく良いです…)
腰の上で姫将軍さまに動いてもらって、僕はそんな間抜けなことを考えたりした。
だって、破瓜の痛みに耐えてつつも『こんなに激しくって良いのかな?』って僕の方が思う程、
クローディアさまの行為は激しいんだもの。
僕に出来ることといえば、クローディアさまのおっぱいや腰へ手を伸ばして、
少しでも悦んでもらおうと撫で回す事ぐらいだった。
我ながら拙い愛撫だと思うけど、でもクローディアさまも嬉しそうに微笑んでくれたので、僕も嬉しくなった。
でもそんな気持ちのいい事をされ続けて、何時までも男子が我慢できるもんじゃ無い。
「クローディアさま、僕っもう出そうです」
「ああっ、私の身体で悦んでくれてるんだね。
いいよっ、出してくれ! 私の中にっ!!」
「ああぅ、クローディアさまぁ」
抱かれてくれた姫将軍さまの名前を呼びながら、僕は膣の中に思い切り精を放出してしまった。
「うう、分かるよ。君の精が私の中に出されているのが…」
(む〜、イクときに相手の名前を叫ぶのは、普通女性の方じゃなかったかなぁ?)
「………あの、どうだったかな? 私との交媾は」
「え〜っと、言葉にならない位気持ちよかったです」
「うふ、嬉しいな… こんな私でも、好きな殿方に気持ち良くなってもらえるんだから」
「あの、クローディアさま」
「なんだい?」
「クローディアさまは、姫将軍さまと呼ばれるのがお嫌なのですか?」
僕は思い切って聞いてみた。
さっきからクローディアさまは『私なんか』とか『こんな私』とか自信無さげに言うのが気にかかる。
顔も綺麗だし、こんなにいい身体をしてるのに………
「…嫌じゃないけど、周りに『男女』や『生まれぞこない』だとか『あれじゃあ嫁の貰い手も無いだろ』
とか言われることも有ったから…
女の子として好きな殿方とこんな事が出来るなんて自分でも思ってなかったんだ」
(う、その『好きな殿方』とやらは僕のことなんだ)
「それでも良い、私は姫将軍として戦を生きがいに生きてくのだって、昨日まではそう思ってたんだけど…」
「…」
「今は違う。こんな素敵な気持ちになれるなんて… 本当にありがとう。お礼を言うよ」
うっ、笑顔が胸に突き刺さる。
まさか今更『その気持ちは惚れ薬のせいですよ』とは言えないな…
この秘密はずっと隠しておこう。
「だから君が世界を欲するのなら、私の全てを使って協力するよ。
君が望むのなら、世界を焼き尽くしてみせる。天の極みから海の果てまで、そして地の底までもだ」
(えーっと、とりあえず地上だけでいいです)
「そして生きとし生けるもの、死者までも君に従わせ、ありとあらゆる土地と財宝を君に捧げよう。
でも、その代わりといっては何だが………」
「何でしょう?」
「時々で、気が向いたときでいいんだが… また私を抱いて欲しいな………」
消え入りそうな声で囁くクローディアさま、その顔は恥ずかしさで真っ赤だ。
こんなしぐさを見せられて、『お断り』できる奴はいないよね。
「えっと、いいですよ」
「いいのか?」
「はい、出来れば僕がしたくなったときもお願いします」
「ふふふ、私は君と出来るなら、何時でも何所でもどんな形でも良いんだよ……… チュッ」
そう言ってクローディアさまはもう一度キスをくれた…
・・・・・・・・・
まあこんな感じで、僕はクローディアという無二の協力者を得ることが出来た。
(クローディア『さま』と呼ぶのは他人行儀だというので止めさせられた)
それから僕はクローディアの国へ行き、王様を退位させて僕自身が即位した。
色々反対、反発、反抗する貴族達がいたけど、
僕の魔力と魔物の軍隊とクローディアの軍略でみんな踏み潰した。
思ってた以上に世界征服って大変だ。
一つの国を征服するのにも、こんなにたくさん殺したり追放したり投獄したりしなきゃならないんだから!
やっぱ僕一人じゃきっと出来なかったと思う。
今、世間じゃ僕のことを『魔王』と呼んでいる。
地獄から蘇った魔王が姫将軍を堕落させて傀儡にし、世界を闇に包もうとしているって話だ。
世界を手に入れようとしてるのは事実だけど、別に暗黒じゃなくってもいいんだよ?
王様稼業も退屈だったり、面倒だったりするけどそれなりにやってる。
大抵の場合、クローディアが良いって言ったことは許可し、駄目って言ったことは許可しない。
(んー、『かいらい』って操られてる奴のことだぞって、物知り爺さんは言ってなかったっけ?)
冬でも毛皮のマントを着て温まることが出来たり、
豚の太り方を気にしなくて済んだり、
塩の値上がりに腹を立てずに済むのは、王様になって良かった所だ。
そして何より一人で眠らなくても良いのが、僕には一番幸せだ。
今僕の横には今日はクローディアが寝ている。
彼女は次の標的である隣国攻略の作戦を練っている。
その合間にだけど、約束どおり僕は彼女とよく交合ってる。
(たまに若い女官や小間使いの女の子に手を出したりもしてる… この辺はちょっと魔王っぽくなれたと思う)
そう、この国は夢の為の第一歩でしかないんだ。
世界は広い、げんなりするほど広い、まだまだたくさんの国や人々が僕を待ってる。
でもクローディアや他の色々な人や妖精や鬼・小人、そしてなによりこの指輪の力があれば、
きっと世界を手に入れることが出来るに違いない。
だから僕は夢と希望と決意を込めて、明日へ向かって叫ぶのだ。
僕たちの世界征服はこれからだ!
(手に入れた後でどうするかは、後で考えよ…)
終わり
21 :
投下完了:2006/11/19(日) 18:01:29 ID:ZGnZpJLD
以上、いつもの魔王とは真逆なヘタレ物語にお付き合い頂き、ありがとうございました。
現状維持で行くことになりましたが、これまで通りちょっと外しても
寛容な心で受け入れて欲しいなと思います。
ぐっじょば
何かそのままエロゲに出来そうな話だなw
GJ!ゆるい魔王ってのも乙なものですなw
楽しく読めました。
ムカツク以上にワロタ!
自分のしている事に自覚が無い奴が一番性質が悪いといういい見本だなw
そういえば昔読んだ短編にこいつそっくりの独裁者が居てさらったお姫様に
「貴方が本当にしたい事はなんだったんですか?」って聞かれて
勝手に悩んだ挙句に火病って宝石に閉じ込めた馬鹿が居たな。
GJ!
物知り爺さんとか豚の太り方とか、細かいところで味が出ていてとても面白かった。
クローディアも可愛くていい!
今更ながら… 前スレの131じゃなくって132でしたね。
皆様感想有難う御座います。
向こうの魔王様は神秘性を持たせるため、心情描写を排除してあるんですが、
こっちのヘタレは一人称で話を進めてくれるので、書き易かったです。
魔王様にはとても言わせられない馬鹿な言葉だろうと、こいつには使わせる事が出来るますから。
遅刻してしまいつつ、やべぇえよ!魔王に萌えてしまったよ。
何このヘタレっぷり。
ラスト三行の文章の輝きっぷりも合わせGJ!
>>前スレ593
>漏れの意見は何度も言うように
匿名で自己同一性を主張するのは止めとけ。
別板で自分が似た事をした時なんか、「やっぱり自演による多人数工作か、
と思われるリスクも分からない馬鹿なら黙れ」と言われたぐらいだ。
>>前スレ590
>んじゃあテンプレを
>「・タイトルに拘らず、女剣士・騎士、冒険者、お姫さま、海賊、魔女、何でもあり。」
>↓
>「・「女兵士」に拘らず、女剣士・騎士、冒険者、将軍、海賊、魔女、
> 戦闘員の女性が出てくるなら幅広くOK」
>って感じに変更すればいいんでない。
そんな感じでいいんでない?
つうか、勝手に「総合スレ」と名乗るスレが立った事から始まった議論だと思うが、
この調子で似たようなスレが立つたびにスレタイ変更と内容変更と移住をやるわけか?
俺は嫌だぞ。
本当に、スレタイ一つで、いろんな感じかたがあるものですね。
受け取り方は一つじゃないし、いろんな考え方があるのだなあ。
今の職人さんたちが、投下しやすくて、新しい職人さんが来易くて、
ファンタジー色が失せない、今の感じなら何でもいいやw
って言うのは無責任かもしれないけど、揉めないで欲しい・・・。
>>30 同意
また次スレ立てる時まで、この話は封印ってことでいいんじゃね?
このスレでも良作の投下、お待ちしてまっせー
アビゲイルの話が読みたい
>31
逆に考えるんだ
「自分が書き手になって良作の投下してやるぜ」と
考えるんだ
お待ちしてまっせー
自分もアビゲイル待ってる。
自分もアビゲイル持ってる。
36 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 01:42:46 ID:e9AqX345
私も待っている。
37 :
アビゲイル:2006/11/27(月) 14:29:44 ID:/9c/KeRq
お待ちいただいていたみたいで・・・ありがとうございます。
今回はお話も長くなってしまいました。
しかもまだ書いてる途中なので、週1ぐらいでのんびり投下します。
38 :
邂逅T 1/1:2006/11/27(月) 14:32:47 ID:/9c/KeRq
・・・なにか、くる。
濃密な晩春の暗闇のなか、アビゲイルの磨がれた感覚が告げている。
彼女は中流階級の職業軍人の出である。父の急逝により急遽17歳で家督を継ぎ、軍務について既に1年がたった。
額に天眼を抱く魔法使い一族が治めているこの国は、北の山岳地帯と南の海、西と東の豊かな大国に地理的にも勢力的にも窮屈な小国である。
中継貿易て活況を呈し小さいながら富栄えるが故にしばしば国レベルでは大国の食指が動き、個人レベルでは略奪の対象となる、悩み多き国でもあった。
山岳民族の略奪におびえる北面の国境警備隊に属し、現在は昇格して「山の砦」を仕切るロク中隊長に替わって50人を束ねる小隊長を務めている。
アビゲイルの愛馬が主人の気配を感じ取り、耳をそばだて闇をうかがっているようだ。
揮下の兵士も勘のよいものから起き出し、同僚を起こし臨戦態勢を整えはじめた。
なにものかの気配は金属音がまじり、すぐに明確に争う人馬の衝撃音となり、鏑矢(音の出る威嚇用の矢)の後引く音が上がる
「意外と近いな・・・距離200あまり」もう20年も戦場にある叩上げの分隊長ウイがささやく。
「馬が4頭・・・いや5頭、追うもの4、追われるもの1まっすぐこっちへ来ます」
39 :
邂逅T 2/5:2006/11/27(月) 14:34:49 ID:/9c/KeRq
「凹型隊形をとり、まるごと囲い込む。追われているものが味方もしくは民間人であれば保護、略奪者であれば拿捕」りん、とアビゲイルの声が響き渡る。
「追うもののが略奪者であれば距離おいて弓で対応!頃合をみて本隊は退け。ゴト分隊長!10騎つれて後をつけろ。あとは打合せのとおり!いけっ」
指示通りに部下が散った直後、少し開けた野営地に喧騒が駆け込んできた。
数多い追撃者は大型獣の毛皮を身につけ、明らかに山岳民族のいでたちであった。
単騎追われていた者が開けた草地を待っていたかのように馬を返し、追手の一人を鮮やかに切って捨てる。
その流れるような動きは余裕さえかんじさせ、その場にいた全ての者が目を奪われ一瞬時が止まったように間があいた。
「押し包め!」アビゲイルの指示をうけて、20騎あまりが槍を掲げ押し寄せ、退路を断つように弓揃隊がまわりこみ、矢をつがえ待ち受けている。
40 :
邂逅T 3/5:2006/11/27(月) 14:35:58 ID:/9c/KeRq
思わぬ多勢の伏兵に略奪者である追手・・・今や立場は逆転しているのだが・・・は浮き足立ち、てんでに森へと馬を乗り入れ、逃走をはじめた。
「深追いするな!あとはゴトたちにまかせろ」
小隊は追われていた1騎を静かに取り囲む。山岳民族は基本的に略奪を目的に王国に進入する。
王国風の装いをしていても中身は山岳民族であることも充分考えられるのだ。
簡単に警戒を解かないあたり、アビゲイル小隊は機能的でよく鍛えられた部隊だといえる。
「所属は」
「中央監察部のタイロン=ツバイ。定期巡察使の供で北東城より北城へ移動中である。」
ヘルメットを外した顔は、先ほどの豪腕を感じさせない、茶色の髪と珍しい金の目を持つ涼やかな若者であった。
「おかげで命拾いした。礼を言う」小隊を見回し屈託なくにっこりと笑いかけた。
ウイ分隊長がアビゲイルに信用できるか、とささやいた。
アビゲイルもヘルメットを取り外す。
「問題ない。私の知り合いだ」苦虫を噛みつぶしたような表情で青年に歩み寄った。
41 :
邂逅T 4/5:2006/11/27(月) 14:36:55 ID:/9c/KeRq
「持つべきものは友だな、アビゲイル」
「友になったことなどない。単なる訓練所の同期だろう。」冷たい言葉を口にしながらも、しっかりと握手を交わす。
打ち解けた雰囲気を受け、小隊は緊張をとき、武具をおろす。「国境の外でなにやったんだ、アビゲイル」
「略奪者を追ってる」タイロンが野営の跡地を片付け、荷をまとめ始めた小隊を見回す。
「赤鬼城主と寝ないと城砦の中隊には食糧も休息もないんだって?」
部下達の作業の手が一瞬止まり、みなそれぞれタイロンの言葉などきかなかったように一層手早く作業を進めだした。
「まとまりのいい部下持ってるなぁ。上司も部下も健気だね。城主相手に持久戦かよ。10日ぐらい自給自足?」
何の屈託もなくさらりと告げる。
「・・・お前のそういうデリカシーのないところが嫌いだ」
アビゲイルの怒っている、というよりあきれているような顔つきにタイロンが笑いだす。
「まぁ、赤鬼城主が稀代の色好みなのは有名な話したし、目下のところなかなか折れない北方の女騎士にご執心なんて噂は出てたけど、本当の事だったとはなぁ」
相変わらずの情報収集能力を発揮しているが、下世話といえなくもない。
ちらり、とアビゲイルと目線を合わせる。「王都の巡察使と一緒なら赤鬼も手は出さないんじゃねーの?」
部下が一斉にタイロンを振返った。人なつっこいが、人の悪い笑顔を浮かべていた。
42 :
邂逅T 5/5:2006/11/27(月) 14:37:41 ID:/9c/KeRq
あっというまに部下となじみ、撤収の手伝いを始めたタイロンを眺めまがら、喰えない男だ、とアビゲイルは思う。
最期の一言と悪童のような笑顔で、心身ともに疲れ果てているアビゲイルの部下達を一挙に自分のモノにした。
訓練生時代から、タイロンはなぜだか人をひきつける。人蕩かしの天才だ。
そろそろ部下には気を引き締めてもらおう。
「ところでお前、一人で行動しているわけじゃないだろう?部下だか上司だかはどこに置いてきた?」
タイロンがアビゲイルの腰の水袋を取り上げ、飲み干した。
「定期巡察使の本隊はこんな境界域ではなくて、国内の街道を北城へ堂々と向かってる。俺たちは別働隊でね・・・辺境警備の実際のところを探ってたのさ」
タイロンが真顔に戻る。
「岩場と森の境に怪我人を2人隠してる。矢傷で少々厄介だ。保護を頼みたい」
「案内しろ」
「ついでに北城まで道案内をたのむ」
「承知。怪我人を回収して速やかに北城に帰投する。ゴンドレイとナレマジム、先行して北城主に状況の報告せよ」
名指しをうけた兵士が躊躇なく騎乗し、駆けはじめる。その背中にタイロンが声をかけた。
「定期巡察使どのの本隊が街道を北城へ向かってることを報告するの忘れんなよ!あのエロ親父も怯むぜ!」
小隊からはリラックスした笑い声があがる。
アビゲイルは自分自身や小隊に横たわる安堵感を感じとり、臨戦態勢に変わりはないのになぁと複雑な気分を味わいつつ、最後尾で騎上の人となったのであった。
43 :
邂逅T 5/5:2006/11/27(月) 14:38:55 ID:/9c/KeRq
あっというまに部下となじみ、撤収の手伝いを始めたタイロンを眺めまがら、喰えない男だ、とアビゲイルは思う。
最期の一言と悪童のような笑顔で、心身ともに疲れ果てているアビゲイルの部下達を一挙に自分のモノにした。
訓練生時代から、タイロンはなぜだか人をひきつける。人蕩かしの天才だ。
そろそろ部下には気を引き締めてもらおう。
「ところでお前、一人で行動しているわけじゃないだろう?部下だか上司だかはどこに置いてきた?」
タイロンがアビゲイルの腰の水袋を取り上げ、飲み干した。
「定期巡察使の本隊はこんな境界域ではなくて、国内の街道を北城へ堂々と向かってる。俺たちは別働隊でね・・・辺境警備の実際のところを探ってたのさ」
タイロンが真顔に戻る。
「岩場と森の境に怪我人を2人隠してる。矢傷で少々厄介だ。保護を頼みたい」
「案内しろ」
「ついでに北城まで道案内をたのむ」
「承知。怪我人を回収して速やかに北城に帰投する。ゴンドレイとナレマジム、先行して北城主に状況の報告せよ」
名指しをうけた兵士が躊躇なく騎乗し、駆けはじめる。その背中にタイロンが声をかけた。
「定期巡察使どのの本隊が街道を北城へ向かってることを報告するの忘れんなよ!あのエロ親父も怯むぜ!」
小隊からはリラックスした笑い声があがる。
アビゲイルは自分自身や小隊に横たわる安堵感を感じとり、臨戦態勢に変わりはないのになぁと複雑な気分を味わいつつ、最後尾で騎上の人となったのであった。
44 :
邂逅T:2006/11/27(月) 14:41:48 ID:/9c/KeRq
本日はこれで・・・
がんばって最期まで書きますので、よろしくお願いします〜
早速の投下、GJです!
続きをお待ちしてますよ。
続きwktk
タイロンとの再開キタコレ。
続き期待してるよ!
アビゲイルキテタ!
GJGJ!
この先が楽しみです
おお。
巡回する楽しみが再開した。
アビゲイルktkr
前スレ読み返しながら待ってます
他の書き手の人々も待ってますよ〜
ヘタレな魔王の話ですが、スレタイ・テンプレについて一悶着あったばかりにも係わらず、
性懲りも無く別スレ(お姫様スレ)に該当しそうな話を作ってしまいました。
新登場人物は王室関係者ですが戦闘職では無いので、さすがにここに投下するのもどうかと思い
今回についてはお姫様スレに投下しようと考えています。
魔王様本編の登場人物は皆何かの形で光と闇の戦争に係わってきているので、従来どおりここで書かせて頂きたいと思っています。
アデラの話をお待ちの方、もうしばらくお待ち下さい。
ええええええ〜〜〜〜!!
ここに書いてよ!!
とにかく見れればOK!
アデラ話も全裸で待ってます。
54 :
箱庭の虎:2006/12/02(土) 20:21:40 ID:G/hphj4Q
新シリーズ・スタート ―――――
世界観:
ここは中世ファンタジー世界!もうコテコテの剣と魔法の
中世ファンタジー世界だ。
エルド帝国は大陸の中央部に位置する大国。宗教を背景にして
大規模な軍事拡大を目指している。そんな中、忘れ去られたような
場所で帝国の遺産を守り続けている一団がいた。
帝国の国境に近いブレイル地方、ソルブレイル郊外…
「トゥエルブダンス神聖宝衛団」通称「箱庭の虎」。
女性だけで構成されたこの集団は、団員数わずか6人とはいえ
強固な信仰心・忠誠心と驚異的な戦闘能力をもってこの地を
守り続けている。
「箱庭の虎」のメンバーは、全員が神聖とされている法衣に身を包んでいる。
メンバーによって着こなし方はそれぞれである。
55 :
箱庭の虎:2006/12/02(土) 20:23:43 ID:G/hphj4Q
キャラクター紹介
名前:フリルダ=ソールスベリー(団長)・27歳・剣士
体格:身長186cm、体重71kg、スリーサイズ108/64/96
容姿・印象:三つ編み。豊満なスタイル、普段は穏やかで丁寧な話し方をする
攻撃手段:片手剣、両手剣による剣技、他に強力な神聖魔法を使える
説明:
豊満な体をした「箱庭の虎」の団長。現在あまり人前に姿を表す事はない。
その戦闘能力は恐ろしく、帝国では五本の指に入るといわれる。
経歴はかなりのもので、少女時代に奴隷を経験しており、ある貴族の子を身篭り、
産んだと言われる。その後は傭兵時代、貴族時代を経験して今に至る。
名前:レイン=クリスチャーノ(副団長)・22歳・弓戦士
体格:身長183cm、体重66kg、スリーサイズ88/60/90
容姿・印象:長髪、尊大な口調、プライドが高い
攻撃手段:魔法の弓での遠距離攻撃、他に魔術を得意とする
説明:
「箱庭の虎」の副団長で、こちらが実質リーダー格となっている。
団長ほど影響力はないが、強気な性格で指揮力はあるほう。ツンデレ。
実は男性経験はほとんどない。
名前:フレア=ヴェレンス・17歳・弓戦士
体格:身長176cm、体重63kg、スリーサイズ97/58/83
容姿・印象:ショートヘアー、ボーイッシュ、露出が多い
攻撃手段:強力な弓での力任せの攻撃のほかに剣術、格闘術を得意とする
説明:
「箱庭の虎」で最年少。体は別としてかなり子供っぽい性格。
だが、女性としては多感な年頃でもあり、色々と敏感になっている。
弓よりも、実は殴った方が強いのではと言われている。
名前:アルルカン・25歳・軽戦士
体格:身長194cm、体重55kg、スリーサイズ79/55/83
容姿・印象:ボブカット、物凄い長身で細身、普段はだらしない性格
攻撃手段:ナイフでの攻撃の他に小道具、飛び道具など何でも武器にしてしまう
説明:「箱庭の虎」では諜報員のような役割を担っており、団長と外との連絡手段
としてもよく活躍している。普段はボケているぐらい大人しいが、任務になると
別人のようになり、泥水を飲むような戦いぶりを見せる。
名前:ナイル・34歳(外見14歳)・神官
体格:身長164cm、体重49kg、スリーサイズ83/57/84
容姿・印象:ツインテール、子供っぽい媚びた口調
攻撃手段:回復魔法の他に強力な攻撃魔法が使え、むしろこちらがメイン
説明:
子供のような外見をしているが、実際は34のおばさん。魔法の力で14歳のまま
歳を取らなくなっている。神官の癖に強大な魔力を持ち、神殿という閉鎖的な
環境を利用して研究なども行っている。他の団員と見劣りする体型を気にしている。
男性経験は意外と少ない。
名前:ミリア=ヴェレンス・19歳・神官
体格:身長178cm、体重59kg、スリーサイズ102/60/89
容姿・印象:ポニーテール、爆乳、普段は丁寧な口調だが…
攻撃手段:回復魔法を得意とする他、棒術、体術を使える
説明:
マンゴーのような乳房に桃もような尻をした、清楚な雰囲気の神官だが、
それは上辺の姿、本性を表すとメイスを振り回す凶暴な戦士となる。
フレアの姉でもあり、実は「箱庭の虎」の中でも一番男性経験が豊富である。
-----------ここまでが団員-----------------
56 :
箱庭の虎:2006/12/02(土) 20:28:40 ID:G/hphj4Q
名前:サラ=リーズヒル・15歳・修道女
体格:身長171cm、体重54kg、スリーサイズ86/58/84
容姿・印象:ミディアムヘア、控えめな性格だが芯は強い
攻撃手段:剣術が少し使える程度
説明:
とあるきっかけで「箱庭の虎」に救助され、修道女として団に雇われることに
なった少女。一般兵士を一人を相手にするのがやっとだが、これから団のごたごたに
巻き込まれて強く育っていく予定。
名前:アドニス=エドモン=イェールド・24歳(男性キャラ)・貴族
体格:身長170cm、体重56kg
容姿・印象:短髪で真面目そうな青年、ひ弱そうな雰囲気
攻撃手段:剣術、魔術ともに中途半端
説明:
帝国の国境に近いブレイル地方を治める領主の次男に当たる。
一見頼りないが、彼こそが「箱庭の虎」を編成するきっかけを作った
人物である。特に団長のフリルダにとっては恩人でもあり、以降の
物語でも「箱庭の虎」と深く関わってくる。
名前:フリード・20歳(男性キャラ)・盗賊
体格:身長165cm、体重52kg
容姿・印象:子供っぽい印象の青年、野盗の仲間だった
攻撃手段:剣術、ナイフが申し訳程度に使える
説明:
「箱庭の虎」の団員を襲った一団の一人。敗北して捕らわれる。
奴隷のような扱いを受けると思っていたが、思ったよりも居心地がよかった
ため、何かしらの恩返しをしようとしている。
以上!
ちなみにこの世界では平均身長男が170cm、女が160cmぐらいです。
シリーズはまた後ほど書きます。乞うご期待!!
come on!
「箱庭の虎」でぐぐっちゃったよ。
キャラサロンから追い出されたのかな。
キャッシュに残ってたのを見ると、キャラを使った妄想がしたいと言ってるようだが……
>この板は、オリジナルキャラを中心としたなりきりを行う板です。
>特定のキャラが不特定の参加者と受け答えをする様式のスレだけでなく、
>シチュエーションのみを指定し、参加キャラを募る様式のスレも可能です。
>また、オリキャラ専用ではなく、オリキャラと版権キャラが混在するスレも可能です。
>エロを必要としないスレはキャラネタ、なりきりネタを、
>な り き り を 行 わ な い、コテハンによる雑談はなんでもあり、ピンクのなんでもありを、
一応お約束なので
設定厨は自サイト作って好きなだけ語ってろ
何はともあれ、まずは一本投下汁。
漏れも重度の設定厨なので気持ちはめちゃくちゃ判るんだが、
設定はSSの中で表現するよう努めるのがSS師のあるべき姿かと。
アビゲイルの続きが投下されたと思ってwktkしちゃったよ…
>>65 皆大柄すぎる事が気になった以外は、とりあえず期待してみよう
なんだか、
この間のスレタイのハナシから、投下に厳しくなってるような気がするんだが、
気のせいですかそうですか
そうですよ
設定だけ投下されても、反応に困るな
というわけで
ss━━━━(屮゚Д゚)屮 カモーン━━━━ヌルポ!!!
がッ
みょッ
こそっと投下します・・・
73 :
邂逅U1/8:2006/12/05(火) 15:00:52 ID:fHu1bYFo
北城は北面の国境警備の要の城塞都市である。民間人も多くにぎやかな中心地だ。
季節は6月。雨と共に首都より遅く訪れる春の終わりを謳歌している最中である。
城主クンツ・イエはかつて豪胆をもって知られ、砂漠の国との戦線を任され「赤鬼」と二つ名で呼ばれる将軍であった。
老いて一線を退き、北城の城主となって10年あまりか。赤銅色の髪と髯と天眼を頂く齢67、現国王トトクの叔父にあたる。
余談だが、現在は過去の功名や現在の堅実な国境運営よりも、漁色家として名を馳せている。
北城の中心は巨大な広間となっており、天井が高く豪奢でこの国を治める者の富と権力を思わせる佇まいだ。
諸外国からの使者を迎え入れたり、儀式・式典の舞台となる、その場所にアビゲイルは招き入れられた。
本来、小隊長ごときの報告にこの大広間が使われることも、城主が出向くことなどありえないのだが。
74 :
邂逅U2/8:2006/12/05(火) 15:04:04 ID:fHu1bYFo
報告を聞いている者の中には、赤鬼城主クンツがご執心の女騎士が来ていると、興味本位まるだしの不届き者も混じっていた。
アビゲイルは臆することもなく経緯を説明し、ラジエント・ゴト分隊長が手はずとおりに追い込んで拿捕した略奪者を引渡した。
その声は広いホールに凛と響き渡り、冑を小脇に抱えて跪く肢体も伸びやかなのが見て取れる。
短くした明るい栗色の髪から白くのぞく項に、目を奪われているものもいた。
実はアビゲイルは既に2度ほどクンツの枕席に侍っている。
アビゲイルの上司ロクをはじめ山の砦の兵の大半は、彼女がいずれ好色な城主の目に止まるだろうと考え、その時期をできるだけ遅めようと努力をしたようだ。
しかしアビゲイルが予想以上に有能で功績を得て論功考証の対象となり、城主の前に出ざるおえなくなった。
以来、山の砦には定期連絡にアビゲイルを遣すよう指示があり、断ると露骨に物資が滞ることとなった。軍需物資を受けとるために1度。
厳しい冬が終わると、小隊ごと北城に召還され、無理難題を押し付けられる。部下の休息のために再び。
淡々と己を受け止めるだけの女の何が気に入ったものか・・・城主に怯えるそぶりも、媚びることもない女が珍しかったのか。
アビゲイルには判らない。
75 :
邂逅U3/8:2006/12/05(火) 15:05:47 ID:fHu1bYFo
城主は上機嫌でしきりとアビゲイルの功績を褒め称える。むろんアビゲイルの隣に跪く、定期巡察使の随従など眼中にない。
タイロンは殊更に目立たぬように振舞っており、普段の闊達さを微塵も感じさせないので、アビゲイルは内心不審に思っていた。
「国境の勇者、麗しの女騎士に敬意を表して、我が夕食にご招待しよう。」
立ち上がり解散しようとする城主に、さすがにまずいと思ったか、「巡察使補殿もご一緒に。」と補佐官が付け加える。
「御二方ともお疲れであろう、部屋を用意したので夕刻までゆっくり休むがよい」
結局タイロンは顔を上げることもなく、一言も物を言わず、会見は終わった。
タイロンは侍従に、アビゲイルは侍女に先導され、それぞれ準備された部屋に案内されることになるだろう。2人とも態のよい軟禁である。
アビゲイルが逃げ出さないように。タイロンが城内を勝手に出歩いたりしないように。
76 :
邂逅U4/8:2006/12/05(火) 15:06:55 ID:fHu1bYFo
アビゲイルは過去、この部屋に2度通された。
小さな中庭を有し、香木であつらえられた調度品と絹で覆われ、全体に淡い薔薇色で統一された豪奢な部屋だ。
たしか前回は深い緑色、その前はクリーム色を基調に整えられていたはずだ。
一般のご婦人ならその贅沢な設えに感激するところであろうが、アビゲイルにとっては無駄に豪奢な牢獄だ。
控えの間に通ずる扉は内側からは開かないのだ。もとよりアビゲイルは逃げ出すつもりはないが、気分のいいものではないのは確かだ。
用意された着替えに腕を通す気になれず、溜息をつきつつ2箇所ある窓を開け放って外を見る。
高台にそびえる北城の、尖塔の中腹からでも充分に眺めを楽しむことができた。
渡ってくる風に湿気を感じ、どこかそう遠くない山か森で雨が降っていることを感じさせた。
77 :
邂逅U5/8:2006/12/05(火) 15:09:48 ID:fHu1bYFo
低く高く、タカが鳴く。
アビゲイルはタカの鳴声が不自然に抑揚が突いていることに気が付いた。
斥候用の合図で眼下だ、と告げている。思い当たることがあり、身を乗り出して、下を見下ろす。
案の定、タイロンであった。
ご丁寧に保護色の砂漠色の歩兵服に着替え、金属の楔を打ちつつ、ゆっくりと確実に塔を登る。
「器用なやつ」城主の私室に進入しようなどどいう無謀な試みに頬が緩んで、タイロンのためにグラスに水を満たした。
やがて、軽々とタイロンが室内に滑り込んだ。「よ。」
普通、城壁を登るためにつける命綱など身に着けていない。驚いたことにタイロンはフリークライミングをしてのけたようだ。
「おまえは猿か」アビゲイルはグラスを渡してやり、タイロンはグラスを掲げて一息に水を飲み干した。
「とらわれの女神を助けにきたんだからさ、ロープでも投げて手助けしてくれればいいのに。」
「そりゃ有難い話だ。・・・狙いはなんだ?巡察使補殿」
「お前・・・なんてね。ひみつ」
どちらともなく口の端をゆがめて笑う。
78 :
邂逅U6/8:2006/12/05(火) 15:12:19 ID:fHu1bYFo
タイロンは遠慮なくアビゲイルのあてがわれた部屋の入口や調度品を調べた。
アビゲイルは所在なげにタイロンが入ってきた窓枠に腰をおろして、足をぶらつかせていた。
「ほんものの囚われの身なんだな。扉は内側からあかないし、窓からは墜落一直線。壁面はつるつるで手ごわい。」
「細工があろうとなかろうと私には逃れる術はないのにな・・・」アビゲイルのつぶやきがタイロンの耳に入ったかどうか。
「鍵はかかっているけど、こっちから開くな」大きな姿見を調べ終わって、タイロンが立ち上がった。ベルトから小さな工具を抜く。
アビゲイルは初めてその姿見からクンツが現れたときには驚いたものだ。「へぇ。流石だな、巡察使補殿。」
あっという間に仕掛扉を見抜いたタイロンはやはり優秀なのだ。
79 :
邂逅U7/8:2006/12/05(火) 15:14:19 ID:fHu1bYFo
「あんた、黙って城主に抱かれてンのか」
仕掛扉の開錠に取り掛かるタイロンの唐突な問いにアビゲイルは咄嗟に言葉がでてこない。
「 あんた ほんと遠慮ないな」
「壁に楔が打ってある。千鳥足だ。暗くなってからのほうがいいな。」
タイロンが登ったルートを使って逃げろ、というのか。「・・・気持ちは有難いがね。部下にも家にも迷惑をかけたくない」
窓枠からひらり、と下りてアビゲイルは部屋を横切る。
「弟が訓練所に入ったんだ。」
ひろい寝台に腰を下ろすアビゲイルの姿が、姿見に映っている。
「アビゲイルが納得してるんなら、俺はいいんだけどね」アビゲイルとタイロンは鏡越しに視線を交わす。
「いっそのこと、交わり自体を楽しむことができれば気が楽なんだろうけど」
アビゲイルはひとつ大きな溜息をつき、淡い薔薇色のシーツの海に仰向けに転がり、タイロンの視界からは表情が見えなくなった。
「早く終われ、早く終われ、と願ってる女なんか抱いて、なにが楽しいんだろうな、城主は」
彼女の目は天井に向けられてはいるが、何も映してはいない。
80 :
邂逅U8/8:2006/12/05(火) 15:16:27 ID:fHu1bYFo
本来の扉の前に人の気配が近づいてきた。
2人とも一瞬で戦士の顔にもどる。
入口からは見えにくい寝台の影にタイロンは身を伏せた。死角はせまく、部屋に入ってこられると見つかってしまう。
アビゲイルは開いた窓に腰をかけた。
「窓の鍵はあけておく。何を探っているのか知らんが、気をつけていけよ、タイロン」ささやく声はいつかの森の中と同じ、抑えたものだった。
「失礼いたします」香木のドアがひっそりとあいた。
「湯浴みの準備が整いました」
アビゲイルはふわりと窓枠から降り立つと、窓を閉めて、カーテンをひいた。
振り向きざまにっこりと侍女に笑いかける。「ありがとう」
一見細身で少年のように見えるアビゲイルに見つめられ、侍女が顔を赤らめた。
その傍をごく自然に通りぬけ、侍女は室内を検めることもせず、部屋を後にする。
豪奢な檻の出口は開いた時と同様にひっそりと閉じた。
きょうはここまで〜
城主とタイロン、城主とアビィ、アビィとタイロンの邂逅でした
お待ちしてました!!
いつもながらGJです。早く続きが読みたい…!
おや、そっちが投下されたのか?
GJ!!!
で、長身巨乳の箱庭まだ?
GJです。情景が目に浮かぶよう。
続きもものすごく期待してますよ。
キテタ━━━!
今回も良かった!
いつも強気のアビィが、このことについては諦めている感じがあるのがいいねー
86 :
アデラと魔王:2006/12/06(水) 22:33:41 ID:Z0d5eOwU
夕暮れの空を覆う雲が流れ行く様を、アデラはじっと見ていた。
すでに秋も深いという段を過ぎ、もうすぐ王国に冬が来ようとしている。
『雪だ、雪さえ降れば…』
魔王軍の陣中にあって、今彼女が切望しているのは一日も早い冬の到来であった。
いくら魔王が強大な魔力を誇ったとしても、季節の巡りまで捻じ曲げることはできまい。
冬の最中に行軍を続けようとすれば、寒さと飢えが闇の軍勢を押しつぶす。
三十万を超す大軍の糧食を確保することは困難なはずだ。
現に自分に割り当てられる食料も、少しずつだが減らされてきている。
一時宮廷から排除されていた王国元帥が復帰し、従来の主張である焦土作戦を実行しつつあるのだろう。
国王や将軍達は『王侯や騎士は民を守るのが本分、民衆を苦しめる策など取れぬ』と主張し、
老元帥をその職から罷免した。
合戦の前までは、アデラも元帥の作戦が有効であるとは思いつつ、
『聖騎士として華々しく勝利したい』という気持ちを抱いていた。
だが、魔王に完膚なきまでに敗北した今となっては、
元帥の戦略眼こそが正しかったということを認めざるを得ない。
『我々のせいで、どれほどの民が家や畑を失うことか…』
先の戦で、彼女の属する光の軍勢は国境を守りきれなかったのだ。
あまつさえ、主力を失ったことにより、連合軍は闇の軍勢による蹂躙を許すまでに弱体化している。
唯一出来る事と言えば、闇の軍勢の侵攻ルートを焼き尽くし、侵略を食い止める事だけだ。
王都近郊にまで侵入される事だけは避けるため、国内の焦土化も苛烈で容赦無いものになる筈だった。
軍事に『もし』はありえないが、もしも当初から元帥の構想に従っていたならば、
ここまで王国を、そして民を追い詰める状況にまでは至らなかったであろう。
それを思うと、聖騎士としての己の不甲斐なさにアデラの心は苛まれるのだった。
「何よりも冬だ… 冬よ、早く来い…」
「アデラ様は冬がお好きなのですか?」
「いや、そう云う訳でもないよ。フィリオ」
「私は冬は嫌いです。冬場の水仕事は大変ですから」
アデラの呟きを聞いたフィリオは、何時までも空を見上げている女騎士にそう訊ねた。
風呂係の端女たちにとって、白い天幕の中に侍っているうちはいいとしても、
寒さに凍えながら水仕事をするのはなにより辛い。
彼女たちにとっては『冬よ来るな』であり、『冬よ来い』と云う言葉は本当に奇異に思えたのだった。
87 :
アデラと魔王:2006/12/06(水) 22:35:24 ID:Z0d5eOwU
「風が強くなってまいりました。どうぞこちらをお召しになって下さい」
「ありがとう… でも構わないでくれ」
晩秋の風は肌に冷たい。
フィリオの差し出したローブは、魔王の所有物たることを表す黒山羊のローブであった。
それを纏うことは、自分が闇の勢力に屈するかの様に思える。
光の軍勢の聖騎士が纏うべきは白く輝く陣羽織であり、それは今でも変わらない積りである。
だがその反面、自分がそれを纏う資格があるのか、という気持ちがアデラの心にわだかまっている。
戦に敗れ生き恥を晒した挙句、魔王に身を汚され、さらに暗闇の牢獄で魔獣に襲われ、
そして敵の情けによって牢獄から出され…
運命の転変を怨むにせよ、こうまで立て続けに絶望と悲痛の淵に突き落とされると、
どう嘆けばよいのかも分から無くなりそうだ。
(ふふっ、王国…いや光の軍勢の中で最も誉れ高く、輝かしい聖騎士団の一員がこの様とは…)
己の境遇に彼女は苦笑せざるを得なかった。
何の因果か、今の自分は敵の端女に身体を気遣われる状況に陥ったのだ。
(風よ、いっそ引き裂かれる程に吹き荒れよ… そうすれば私の恥多き生涯にも終焉が訪れるというものだ!)
フィリオにはアデラの微笑みの理由がついに分からなかった。
その夜、アデラは魔王の寝所に呼び出された。
・・・・・・・・・
88 :
アデラと魔王:2006/12/06(水) 22:36:34 ID:Z0d5eOwU
「うぅ………」
うなじを這う魔王の唇の感触に、アデラは喘ぎ声をあげた。
あの暗き牢獄から出されてより、幾度も彼女は魔王の褥に連れて来れられている。
初めの数回は抵抗したし、相手の行為を無視しようとも試みたが、
今ではそれが無駄な行動だということを思い知らざるを得なかった。
口惜しいが、魔王の力は自分よりも遥かに勝っており、
己の身体は肌を交えるごとに悦びを覚えるようになってきているのだ。
屈辱はそのままであっても、身体を貪られる快楽は数を重ねる度に増してきている。
痛みにならばどれだけでも耐える決意があるが、
悦楽を堪えることが非常に難しい事ということを最近になって彼女は理解するに至った。
「ひゃぁん… 止めっ、そこは駄目だ!」
下帯の奥に伸びてきた手に、アデラは抗議の声を上げる。
しかし、後になれば自分ながら無駄なことを言ったものだとまた自嘲することになるだろう。
魔王が女の拒絶に従って手を緩めるような事をする筈が無いものを…
かってフィリオに剃られた秘所の毛はまだ元のように生え揃っていない。
あれからもフィリオはアデラの体毛を剃りたがったが、かたくなに彼女は拒否してきた。
彼女の善意はありがたいが、あるべき所に生えていないとどうにも股座が涼しすぎるのだ。
「はぅん…」
その秘所を、魔王の指は蹂躙する。
以前は苦痛でしかなかったが、既に裂け目に差し込まれた指の感触すら甘い。
魔王の愛撫を受ける前から、そこはもう潤み始めていた。
そして幾度となくそこを冒してきた指は、どこを攻めればよいのかすでに熟知していた。
容赦なくかき回されていくうちに、アデラはもはや抗議の声をあげることすら出来なくなってしまった。
89 :
アデラと魔王:2006/12/06(水) 22:37:22 ID:Z0d5eOwU
秘裂を弄る最中も、魔王はアデラの身体を賞味し続けた。
官能に震える乳房を吸い、鍛え上げられた筋肉がうっすらと浮かぶ腹を撫で、愛撫にわななく下腹を眺める。
その振る舞いの一つ一つが彼女を羞恥と喜悦の高みへと追いやっていく。
「あうぅっ」
胎中で曲げられた指に膣壁を引っ掻かれ、アデラは絶頂に達しそうになった。
荒く息を吐く相手を、魔王は相変わらず静かな瞳で見つめている。
魔王の視線をアデラは受け止めることが出来なかった。
肌を重ねる様になった今、見詰め合うような事をすれば否応なしに情が湧いてきそうなのだ。
少し気を抜けば、身体の疼きを静めて欲しいと魔王に求めてしまいそうになる。
彼女はそれを歯を食いしばって耐えていた。
そんな葛藤に苦しむ女騎士を、魔王はしばし鑑賞していたが、アデラの息が落ち着いてきたのを見て取ると、
すらりと伸びた脚を開かせて割り込むと、その分身を彼女の秘所に押し当てた。
「あんっ!」
押し殺せない喜悦の声が、アデラの口から零れる。
子宮の奥まで突き上げられる感触を既に何度も味わっている。
心の内では否定しても、身体はこうなることを望んでしまっていた。
こうなってしまえば、アデラにはもう抵抗する術はなかった…
・・・・・・・・・
交わりを終え、アデラは魔王の胸を枕にその身を委ねていた。
聖騎士として余りに情けない様であるが、身体は幾度となく絶頂に至り、満足に四肢に力が入らないのだ。
事が済めば、己の不甲斐なさに歯噛みしたい気持ちになる。
魔王はそのアデラの髪を指で撫で梳いていたが、不意に彼女に語りかけた。
90 :
アデラと魔王:2006/12/06(水) 22:38:19 ID:Z0d5eOwU
「アデラ……… 余は一度兵を退くことにする」
「!」
「これ以上の深入りは敵を利するのみ、東方の冬営地に引き返す。
十万ほど兵を割いて南部方面へ向かわせるが、本格的な遠征の再会は来春以降になるであろう」
突然の宣告に、アデラは言葉が無かった。
これまでの経験から、魔王が空言を言うことは有り得ない。
王国はとりあえず滅亡の危機を逃れることが出来るのだ。
「そこでアデラ、そなたはどうする?」
「?」
続けられた問い掛けの意味をアデラは掴むことが出来なかった。
自分は敵の虜囚であり、己の意に従って物事を決められる状況には無い。
どうもこうも無いではないか… そう言おうとした矢先、信じられない言葉が魔王の口から紡がれた。
「望むのなら、そなたは光の軍勢に帰陣しても構わんぞ」
「えっ!?」
アデラは思わず魔王の瞳を見つめたが、その瞳は常のように静かで冷たくすらあった。
その目から相手の思惑を探ろうとしても無駄だった。
魔王の意図は、魔王が語ろうとしない限りは余人に窺い知れるものではないのだ。
「何ゆえ… 何ゆえ私を解放する? いやっ、それより何で一度は幽閉した私を解き放った!?
そして何故私をこうして閨に侍らせ、それをどうして今になって………」
アデラの心中にわだかまっていた疑問がついに爆発した。
(なぜ魔王は自分をこのように扱うのか)
彼女の心が定まらない訳はそこにあった。
自分を殺さない理由は、自分の武勇を愛でる故だと、かって魔王は言った。
しかしその後、自分は黒き天幕に閉じ込められた。
あの剣牙虎との出会いが無ければ、永劫に近い時間を封じられた世界で過ごすことになっていただろう。
その気があれば、魔王はまた自分をどこにでも投獄できる筈だが、
獄に繋ぐどころか手枷さえ嵌められず、側妾の一人のごとく端女をあてがわれた。
それから幾度となく褥を共にするようになった今、この自分を解放するという…
堪え切れない疑念が、アデラに魔王を問い詰めさせた。
91 :
アデラと魔王:2006/12/06(水) 22:39:23 ID:Z0d5eOwU
「そなたを抱くようになったのは、聖騎士の娘は面白い応えをする故かな………」
魔王の言葉は、必ずしもアデラの疑問に答えるものでは無かったが、彼女はそれに真剣に聞き入った。
「戒律に己を縛りつつも、その身に巣くう劣情は切り離せておらぬ。
それを実感するときには、事実を肯定するよりも、目を背けて否定しようとする……… 愚かなことだ」
「………」
「だが鍛え上げられた身体と精神を余は愛する……… ただし、近頃のそなたはすこし鈍っているようだな」
「ぐぅっ」
「身体が馴染むにつれて、研ぎ上げられた刃の様に美しかったそなたの心も曇りが出たか?
そのような女子は何所にでも居る。あえて本国に連れて帰るほどもあるまい………
褥を暖めるための女には、余は事欠いておらぬ」
その言葉は、アデラの心に突き刺さった。
堕落しかかった己の現状を言い当てられたと思うと、さらにその相手が己の怨敵であると思うと、
自分を許せない気持ちで胸中が張り裂けそうになった。
魔王は悔しさで震えるアデラの肩を抱き寄せて言った。
「だがアデラよ、解放しようというのはそなたの身体に飽きたゆえでは無い」
「?」
「そなたと余の間には、余にも計り切れぬ繋がりがあるやもしれぬ」
「………何だと?」
「余はそなたの戦働きを愛でて命を取らなんだ。そしてそなたは再び余に挑み、余に血を流させた…
それが黒き天幕の牢獄においてあの虎に匂いを嗅ぎ当てさせ、あれを脱獄させた………」
「…」
「此度の出征で王都へ迫れなんだのは、あれを屈服させるのに余計な魔力を使った為ぞ。
………先の戦での槍働きよりも、閨での一噛みの方が高くついたわ」
92 :
アデラと魔王:2006/12/06(水) 22:41:29 ID:Z0d5eOwU
アデラは魔王の語る言葉に聞き入ったが、彼女は知らなかった。
闇を統べる王、あらゆる暗闇の掟の執行者である魔王が、
このように誰かに語りかけるなど有りあえないという事を。
イリアも、ティラナも、フィリオも、ネリィでさえ魔王とここまで語り合った事など無かった。
「それが単なる偶然であるのか、あるいはそれ以外の物が世界に存在していたのか、余は見極めたい」
「どういう意味だ? それは」
「例えるならば『深き井戸に石を投じてその深さを測るようなもの』と思うがいい。
深遠を見通す力を持たぬ者は、水音によって初めてその深さを知り得る」
「………」
「もし星が我らの間に繋がりを与えているのなら、ここで解き放っても再び巡り合うであろう。
たとえどのような形であろうとな」
「……………魔王といえども、未来は計れないのか?」
「いずれ出来る様になるかも知れぬが、今はその術は持たぬ。
可能なのは、事象が発生して後にその因果を突き止めることだけだ」
魔王が望んでいる事は何であるのか、アデラには分からなかった。
このような世界論、運命論については『光の戦士として正統な』知識しか持っていない。
それは『光と闇の勢力は戦いを繰り返し、最後の決戦を経てついに光は勝利するであろう』という教義だ。
「私にはお前の言うことが分からない………」
「無理に判かろうとしなくてもよい。余もそなたに理解できるとは思っておらん。
先の例えで言えば、水面に石を投じたとしても、聾には意味を持たぬのだ」
「いいのか? 私を帰還させれば、また貴様の命を狙うぞ」
「当然だな」
「仮に偶然以外のものとやらが介在したとして、貴様も死ねばそれを知ることなど出来まい」
「少なくとも余を脅かす程の力を手に入れてからその言葉は吐くがよい。
………それに命を惜しんで真理に到達出来ようものか」
そう言った魔王の言葉は、ほんの僅かだが楽しそうな笑いが含まれているのではないか、
アデラにはそう思えた。
それとも彼女の願望がそう思わせたのだろうか?
「こうして誰かと話すのも久しく無かったが、すでに語り過ぎた感がある」
そう言うと、魔王はそれ以上アデラの問いには答えなかった。
「あとはそなた自身が決めよ……… 光の陣営に戻るもよし、戻らず余の後宮に納まるもよし。
その決断もまた偶然以外のものの一つかも知れぬ」
手を振ってアデラに退出を促し、魔王は目を閉じた。
これから起こる運命とやらに心を向けているのであろうか?
身体を交わすようになってからも、この宿敵のことは何一つ理解できないのだった。
93 :
アデラと魔王:2006/12/06(水) 22:42:10 ID:Z0d5eOwU
・・・・・・・・・
「本当に行ってしまわれるのですか?」
アデラを見送るフィリオは、今更ながらのことを言った。
「ああ、フィリオには世話になったな」
「寂しいです… もっとアデラ様のお世話を続けたいと思っておりましたのに」
「そうだな、今までありがとう… でも悲しむ必要は無いかもしない」
「へ?」
「魔王が言っていた… 誰かとの間に運命の繋がりが有るのなら、どんな形でも巡り合えると、
ここでフィリオとは別れたとしても、再び会えないとは限らないさ」
「………そうですね、またお会いできると良いです」
フィリオの微笑みに見送られ、アデラは鞍上の人となった。
やはりどのような事があっても、自分の居るべき所は光の白き軍旗の下しかない。
そこに帰還する為ならば、魔王の思惑など知ったことではない。
己の為すべきこと、それは光の勢力の勝利のために戦い続けることなのだ。
もはや彼女に迷いは無い。
軍馬に拍車を当て、アデラは帰還を始めた闇の軍勢と反対の方向へ駆け出した。
アデラと魔王が再び合間見える宿命にあるのか否か………
それは闇の王ですら判らぬもの、余人が知りえる筈も無かった。
(第一部完)
94 :
投下完了:2006/12/06(水) 22:42:48 ID:Z0d5eOwU
『アデラと魔王』でした。
魔王シリーズはここで切りが良いので第一部完です。
ジャソプ的表現で第一部完になるかもしれませんが…
今回も素晴らしかったよ。
魔王の世界観とかが深くてとても面白い。
第二部も期待してるのでぜひまた書いてください。
第二部も、カモ――屮゚Д゚)屮 ―――ン!
アリューシア書いた人です。
一番初めにこのスレ1に投下した「王女様の使い」で
薬師が作った媚薬を手に入れたマルゴット王女。
彼女が何を企んだのかを書いた話「王女様の薬」を
お姫様スレの方に投下しました(レス376より)。
主役はマルゴットではなく、そのお姉さんなのですが
王女の企みが成功したかどうか興味のある方は、よかったら読んでください。
アデラたんかっこいいよアデラたん
続きくれ。
>>97 読んできたよー
アリューシアの続きも楽しみに待ってます
魔王のひとGJ
それにしても焦土作戦とか聞くと王国元帥の顔が某新城中尉に見えるから困る
なんかこう俺も女騎士ものでエロい話書いてみたいなあ。
だがリビドーは余ってるのに文才が足りないぜorz
>>101 やめろよ…俺も新城顔の王国元帥を想像しちまったじゃまいか( ゚д゚)
コソーリ投下
侍女三人がかりで時間をかけて身支度を整えられ、化粧を施されたアビゲイルが通されたのは、こじんまりとした品のよい小部屋であった。
円卓には既に城主クンツと側近貴族が2人、それに巡察使補が着席済みである。
淡い水色の薄い素材の女服は、最近王都ではやり始めた一枚の布を身体に巻きつけ、布端を胸で交差させて首の後ろで結ぶもので、生肌が出る両肩は、ショールがかけられている。
本来は腰帯で裾を抑えるものなのだが、アビゲイルの腰に帯はなく、裾は頼りなく身体に沿っているだけだ。
歩くと裾が割れ、引き締まった足首やふくらはぎが現れる。下手をすると両脛や白い内腿があらわになるので、アビゲイルは相当に気を使って歩いた。
そうでなくとも薄い素材はしなやかなアビゲイルの体のラインをはっきりと浮かび上がらせ、城主の側近貴族の一人は生唾を飲んだ。
明らかにその光景を楽しんでいる正面の城主と、礼装の上何食わぬ顔で席についている横のタイロンと一瞥し、アビゲイルは侍従が引いた椅子に着いた。
食事は豪華なものであった。
今までアビゲイルが口にしたことがないような食材。手の込んだ調理、食べもしない飾り。ピカピカに光る銀の食器。質の良い酒。
城主が時折立ち上がり、アビゲイルに自慢の葡萄酒の説明をしながら酌をする。
貴族社会の中では下層である家庭で育ち、現在も原野を生活の場にしているアビゲイルが一流のマナーを身につけているわけもなく、正面の城主の見よう見まねで食事をとる。
動きがぎこちない上に、肩のショールが滑り落ちるので、落ち着いて食べれたものではない。
同席者から注がれる胸元や肩にそそがれる無遠慮な視線に居心地の悪い思いをしていた。
貴族どもは、ときおり城主の薀蓄に意味のない追従を自動的に吐き出すが、視線はアビゲイルに注がれたままだ。
アビゲイルのショールの隙間から垣間見える白い肩口や、揺らめく灯りに透ける胸元に気もそぞろで食事どころではない様子だ。
彼女の不調法で口元を伝うソースにさえ欲情している。
城主は時折困惑して手を止めるアビゲイルにマナーを示し、それをたどたどしく実行する彼女を満足げに眺めている。
アビゲイルの目線が助けを求めるように城主を捕らえる瞬間を、城主は堪能した。
若い無知な娘を洗練された教養ある淑女へ・・・ここ数年、耽溺している城主の趣味である。
豊かな北城に赴任し美食と魚色の毎日を送る城主には贅肉がしっかりと覆っており、往年の精悍さは失われている。
タイロンはというと4人を完全に無視して供される豪勢な食事をたいらげることに専念している。
マナーなど関係ない。殻つきの海老は遠慮なく叩きつぶし、魚には頭からかぶりつく。高価なワインを水のように飲み干す。
皿と言う皿を片っ端から空にして、北城の豊饒を享受していた。
その屈託のなさに、アビゲイルはちらりと目をやり、嘆息した。
やがて最期の果物の皿が運ばれてアビゲイルにとっては居心地の悪い、男たちにとってはそれぞれの欲を満たした会食が終了した。
タイロンは城主に招待の礼を述べ、速やかに退席した。
アビゲイルに一瞥も加えない。自室に引き取った後、密やかな活動を開始するのだろう。
城主は2人の側近にアビゲイルを客間へ送っていくことを命じた。
2人はよだれを垂らさんばかりの面持ちで、アビゲイルの腕をとる。
彼女が酒で足元がおぼつかないと言い訳をして、両腕をしっかりと両方から絡めてきた。
2人ともぴったりと身を寄せてくるので、窮屈で歩きにくいことはなはだしい。
アビゲイルは客間までの道中を考え、暗澹たる気分になる。
彼らは口々に言い訳をしながら、アビゲイルの二の腕に指をはわせ、むき出しの肩に手を回す。
流石にこれから城主の相手をする女なので、薄布のなかまで手を差し伸べることはないが、ゆっくりと体の外側を撫で回す。
引き立てられていくアビゲイルは抵抗する気も失せてなすがまま、罪人か病人のような諦め顔を見せていた。
両腕を押さえられているので乱れる裾を押さえることができない。
長い廊下ではアビゲイルも歩幅を狭めて気を使っていたが、階段を登り始めるとどうしようもなくなった。
段を上がる度に裾が割れ、足の付け根まであかりの中に浮かび上がる。2人の目はアビゲイルの下肢に釘付けである。
さすがに羞恥で頬をあからめ、ぎこちなく歩を進めるアビゲイルの姿は、2人を喜ばせた。
歩みがことさら遅くなり、バランスを少しでも崩すと大きく裾が乱れて白い太ももや足の付け根が外気にさらされ、ますます2人を興奮させる。
欲望にぎらつき、股間を膨らませた貴族にあるまじき男たちの姿をあさましい、とアビゲイルは思った。
そしてこの2人など組み伏せる事は簡単であるのに、そうすることができない自分を惨めに思った。
永遠のような時間をかけて部屋にたどりつき、精神的な辱めから解放されたアビゲイルは、心底疲れはて広々とした寝台に倒れこんだ。
服が煩わしく感じ脱いでしまおうかと思ったが、手を動かすのも億劫だった。
開いた窓から見える夜空がきれいだ。頬をなぶる風がここちいい。蜀台の灯りが大きく揺らめき、消えてしまったが、灯しなおす気にならなかった。
・・・少々酔ったのかもしれない。城主がこの部屋に姿を現すまで、少し眠ろう。
アビゲイルは星明りのなか胎児の格好で目を閉じた。
次ぎはエロで。
ここまで引っ張って申し訳ない。
う、う、う…
裾を割るアビゲイルのふくらはぎが
見、見える…。
続きを…。続きをーっ!
投下キタァ━━(゚∀゚)━━!!
エロ城主自重しろw
やっぱり夜伽の相手はエロ城主なのだろうか…
そして食事の描写をみたらお腹すいてきた。
ここらでレイープ物投下してよろしげ?
ゆるす
よしなに投下してたも
ようがす。
超ねちっこい陵辱物注意。苦手な人はNGよろです。
元ネタは洋ゲーのOBLIVION。
あるクエストで腐敗した帝国兵の隊長を告発するんだけど、手順間違えたら
逆に無実の罪で牢獄にぶち込まれちゃう。その時の妄想エロス。
徹底した主人公視点に挑戦してみますた。
この帝国の皇帝ユリエル・セプティムが暗殺されてから1ヶ月近く経った。
巷では後継者がどうとか、異界の門が開いて西の町が壊滅したとか、不穏な噂が持ちきりで、まさにお先真っ暗、この帝国どころか、この世界そのものが先どうなることやらさっぱり判らない。
おかげで街の雰囲気も最近はピリピリしてるよ。みんな不安なんだ。
ちなみに帝国の後継者は全員暗殺者に殺されたって話だ。だとしたら、もう帝国は崩壊寸前ってことなんだけど。
でも、あたしは知っている。
皇帝はこんなこともあろうかと、子供の一人を生まれてすぐにどこかの街の修道院に預けていたんだ。
その後継者の居所を知っているのはただ一人。
皇帝直属の近衛兵集団に「ブレイド」って言うのがあって、その最高責任者のジョフレとか言う人だけが、その秘密を知っているんだって。
なんであたしがこんな重大な秘密を知っているかって?
それは、あたしが皇帝の暗殺現場に居合わせてしまったから。
信じられないけど、皇帝本人はひょんな事で会っただけのあたしを夢の中で見たとか言ってて、あたしがそこに居たのは偶然じゃないと言ってた。
皇帝の血族はドラゴンの血を引いているとかで、予知能力にも長けていると言う。
その皇帝が、息を引き取る時に代々伝わる王家のアミュレットをあたしに託して、ジョフレを訪ねて跡継ぎを探す旅に出て欲しいと頼んできたの。
ここまで言われて黙っていたら女が廃るよね!
そんなわけで、あたしは冒険者になったんだ。
つまり、言ってみれば、この帝国の未来はあたしの手にかかっていると言っても過言ではないよね?
あたしはあたしで使命感もそれなりにあったし、頑張ってはいたんだけど。あたしは…どうも要領が悪いみたい。
そのせいで、今もとんでもない寄り道をしちゃっているの。
あ、言い忘れたけど、あたしの名は【アシュレ】って言う。
皇帝暗殺騒ぎのゴタゴタの中で、急遽「戦士」のクラスに認定されたから、これでもれっきとした戦士だよ。
予想を裏切るようで悪いだけど、あたしはハッキリ言って華奢なほう。エルフだししょうがないよね?
しかもちょっと近眼。眼鏡は欠かせないよ。
長い金髪が自慢ではあったけど邪魔になるから、最近、首の辺りでバッサリと切っちゃった。
眼鏡をかけたエルフ女が鎧を着込んで剣を振り回してるって言うんだから、イメージにそぐわないことこの上ないと自分でも痛感する。
それでもレベルも2つ3つ上がってきて、ようやく戦士としてやっていく自信もついてきたってとこかな。
の、はずだったんだけど…。
今あたしが居る場所は帝都の牢獄だったりする。
情けない話なんだけど、今、あたしは囚人として尋問を受けているんだ。
どうしてこんな事になったんだろう?
判ってる。あたしはこの男の卑劣さを甘く見ていたんだ。
事の起こりはマーケット地区だった。最近仲良くなった雑貨屋で、お店のおばさんと話をしていたとき。
突然、店の外が騒がしくなって帝国兵が現れたんだ。それもただの帝国兵ではなく、隊長クラスの白銀の鎧を着ていた。
何事かと思ったけど、おばさんの様子がどうもおかしい。
帝国兵が言うには、この店で買った商品に盗品があったとかで、盗品取り扱いの罰金として金貨500枚を払えとのこと。
このおばさんが盗品売買に手を染めるわけが無いって事くらいわかる。
それに何?金貨500枚って。強盗罪に匹敵する罰金じゃない!
当然、あたしは帝国兵に食って掛かろうとした。けど、それをおばさんは止めたんだ。
なんで?って顔してるあたしに、おばさんは諦めたように顔を横に振る。
帝国兵はあたしを睨み付けたけど、おばさんからお金をもぎ取るように受け取り、ニヤニヤしながら去って行った。
おばさんは最後まではぐらかしていたけど、多分あたしを巻き込みたくなかったんだろう。
でも、あたしにはすべて理解できていた。
あいつは皇帝が死んで帝国の規律が乱れていることをいい事に、そこらの店に難癖を付けては罰金と称してゆすり行為を繰り返しているんだ。
おばさんはあたしを気遣ってくれてたけど、やっぱり許せないよ。
こう思っちゃうあたり、やっぱりあたしは冒険者なんだ。
目の前に何かのクエストがあったら、解決しないと気がすまないんだ。みんなだってそうだよね?
逆に言うと、ここであたしが見て見ぬふりをするって事は、この先に出会う事件も全部見て見ぬふりをしちゃうって事でもあるでしょ?
実感は無いけど、きっと、こう言うタイプの人達がきっと世界を少しずつ良い方向へ変えていくんだと思う。
あたしはあの帝国兵の隊長について色々と聞いて回った。
どうやらマーケット地区だけでなく、寺院地区あたりでも同じようなことを繰り返しているらしく、情報は意外に簡単に集まった。
あの隊長の名前はオーデンスと言って、マーケット地区の店だけでなく、目をつけた金持ちの家に難癖をつけてはゆすり行為を繰り返しているらしい。
あたしは奔走した。不正をしてる人を告発する方法とかも調べた。
話によれば、二人以上の証人が然るべき場所で証言すれば告発できるとの事。
あたしは店のおばさんや寺院地区の被害者を訪ねては証言してくれるように頼んでみることにした。
でも、あたしの期待をよそに、おばさんの反応は明るいものではなかったの。
実は、過去に何度か同じ事を試みた人は何人かいた。そしてその悉くが何かしらの理由で投獄されたと言う。
更にこの事件に触れて投獄された人は、牢獄に入る姿を最後にその姿を見たものは一人も居ないそうだ。
噂では牢獄で密かに殺されてるんじゃないかと言われている。
だから、今さらあたしが説得しても、オーデンスの報復を恐れるみんなは首を縦に振ってはくれなかったんだ。
手の打ちようが無くなって、落胆してマーケット地区に戻ったあたしの前にオーデンスがニヤニヤ笑いながら現れた。
どうやらこいつの手先は町のあちらこちらに居るらしくて、あたしが嗅ぎ回っていることは筒抜けだったみたい。
あたしは嫌な予感がした。
「小娘、アシュレとか言ったか?冒険者ふぜいが調子に乗りすぎたようだな。覚悟しな!」
無茶だ。いくら帝国兵の隊長とは言っても、こんな簡単に他人に死刑執行できるはずは無いよ。
あたしも今回あちこちで情報を集めて知ったことなんだけど、犯罪者を立証するためのマジックアイテムがあって、それで証拠として用意しない限りは犯罪者として扱うことはできないはず。
そんな事は意にも介さないようにオーデンスは魔法詠唱を開始した。
オーデンスの魔法は一瞬で完成し、伸ばされたオーデンスの掌に光の玉が生まれる。
あたしに狙いをつけるように手を向ける。フレアか?それともアイスボールか?
仕方なくあたしは剣を抜いた。
先制攻撃を受けてしまう事になるが、一撃くらいなら耐えられるだろうか。
オーデンスのレベルがそれほど高くないことを祈るばかりだ。あたしはせめて確実に一太刀与えようと走り寄った!
目の前が真っ白な光に包まれ、オーデンスの放った光球が直撃した事を感じる。
あたしは自分の身体のダメージも気にせず、視力が戻らないままにオーデンスに切りかかった。逃がすもんか!
どんな魔法であれ、今の一撃で仕留められなかったのがこいつの運の尽きだ。
ガキン、とあたしの剣が金属音と共に止まる。
オーデンスが盾で受け止めたのだろうか?それでもあたしは止まらない。
「やぁっ!」
盾に押し返されるのも構わず、剣に力を込めて思いっきり切り払った。
あたしのパワーアタックを受けて無様に吹っ飛び、向こう側の路地まで転がるオーデンスの姿がボンヤリと見えてきた。
まだチカチカするけど、少しずつ視力が戻ってきたみたいだ。
あたしはオーデンスを追い詰めるように剣を構えて路地に出た。
ふと、違和感を感じる。オーデンスは仮にも帝国兵の隊長、いくらなんでも弱すぎない?
あたしはぶんぶんと頭を振り、雑念を振り払ってオーデンスに向き合う。
帝国兵隊長が強かろうと弱かろうと、仮に何か企んでいようと、地面に倒れた状態では何も出来まい。
でも、あたしの活躍はここまでだった。
オーデンスが吹っ飛んだ路地はマーケット地区の門の近く、そこには常に2人の帝国兵が警備についていたんだ。
けたたましい音が響く。隊長を殺そうとしているあたしを見張りの帝国兵が発見して呼子を吹いたみたい。
駆けつけたパトロールも合わせて、合計4人の帝国兵にあたしは取り押さえられてしまった。
あたしはオーデンスに魔法で先制攻撃されたんだと言い張るけど、不思議なことにあたしの身体にはフレアによる火傷の痕も、アイスボールによる凍傷の痕も、ひとつも無かったんだ。
勝ち誇ったようにオーデンスが笑った。悔しいことにオーデンスの方も無傷らしい。
「俺はライトの魔法で顔を確かめただけだぜ?いきなり斬り付けやがって、これだけ証人がいたら言い逃れできねえぞ!」
あたしは今更ながら、声をかけた場所も、使用した魔法も、そして剣を受けた後の挙動も、全てがオーデンスの計画通りだったことに気づいた。
オーデンスの罪を暴こうとした者は、全て投獄されたと言う話が思い出される。
こいつはあたしみたいなのを何度も相手にしてきたんだろう。
そもそも世間知らずの駆け出し冒険者が簡単にどうにかできる相手じゃなかったんだ。
帝国兵に対する対人暴行罪。それが、あたしが牢獄に入れられた理由。
そして今、あたしの背中に鞭が振り下ろされていた。
オーデンスは形式通りに「なぜ帝国兵を襲ったか」と聞いていた。
もちろん理由など言うまでも無くオーデンスは知っている。
罠に嵌められたあたしにどんな言い訳ができるだろう?
魔法をいきなり受けて剣を上げてしまった、と言うのが最も正確な理由。
もちろんオーデンスは納得しなかった。
「街では散々、俺のことを嗅ぎ回っていたじゃねえか?目的があって俺を襲ったんだろうが!」
白々しいにも程がある。自分から近づいてきたんじゃないか。
結局あたしはそれ以上は何も喋らなかった。
何を言ったところで全てオーデンスが仕組んだことだし、下手にあたしが喋れば店のおばさんや寺院地区のみんなにどんな迷惑がかかるか判ったもんじゃない。
それに何よりもあたしは散々調査をしていたので、帝都の法律をまったく知らないわけではなかった。
実は対人暴行罪は相手の怪我の度合いにもよるけど、それほどの重い罪ではない。
オーデンスのように被害者がピンピンしているなら、1日牢獄で過ごすだけで釈放される。
帝国兵を襲ったと言う事実が厄介だけど「魔法をいきなり受けて、驚いて剣を上げてしまった」と言う主張を貫けば、単なる勘違いと言うことで処理するしか無いだろう。
とにかく今日だけ耐えてしまえば、自由の身なんだ。
尋問にはアーケイン大学から派遣された【見届け人】が立ち会う規則で、その人はあたしの言葉を証言として書き留める準備をしていた。
見届け人は尋問が必要の範疇を超えて行われないかなど、看守や帝国兵の歯止めとしての機能も兼ねている。
その手に持っているのは【法の筆】と呼ばれるマジックアイテム。
これはアーケイン大学の最高位の魔術師が作る法の象徴であり使い手の精神に作用して「決して嘘を書くことは出来ない」と言う特殊な機能を持っている。
これで書かれたもので無ければ、どのような証拠も証拠としての能力を持たないんだ。
しかし逆に言うと、これで書かれたことはこれ以上無いくらいに確実な証拠となってしまうって事。
だからこそ、オーデンスはあたしの口から「帝都兵を殺そうとしていた」など、より重い罪を自白させようと躍起になっていた。
オーデンスにとって、あたしみたいなのがウロウロしてると今までのようなゆすり行為がし難いと言う事なんだろう。
あんな奴の思い通りにはなるもんか。
そこに罪状を書き込まれさえしなければ、明日には放免されるはず。
だから、めちゃくちゃ痛いけど、耐えてやる。
耐え抜いて、かならずオーデンスの罪を暴いてやるんだ。
いつの間に気を失ったんだろう?そして、気を失ってからどのくらい経ったのだろう?
昼間に打たれた背中の痛みのせいで目が覚めたようだった。あたしは尋問を耐え抜いたんだ。
あたしは何とかピンチが去ったのを感じて一息ついた。
明日になれば釈放される。オーデンスの手口は思い知った。同じ手は二度と食うもんか。
そう決意して、痛いのを我慢しつつ無理やりもう一度寝ようとしたとき、物々しい足音が聞こえた。
あたしは他人事のようにその音を聞いていたけど、向かいの牢に押し込まれている3人ほどの囚人が下品な声で喋っているのが聞こえてきてしまう。
「おや、夜の尋問の時間ですかい。さっそく味見とはオーデンスの旦那もお好きですなぁ。」
「おっと、こりゃ毎度どうも。へへ…判ってますぜ。あっし等は『何も見なかった。何も聞かなかった。』ですな。ごゆっくりお楽しみくだせえ…ひっひ。」
あたしの意識は一挙に凍りついた。
えっ?何?「夜の尋問」って?
今、「毎度どうも」って言った?
何?どういう意味?
ぞくっと寒気がして、あたしの額を嫌な汗が流れた。
実のところ、帝国では例え囚人でも凶悪犯で無い限り、そこそこまとも扱われている。
あたしが明日になったら釈放されるように、犯罪者であっても刑期が過ぎれば保護するべき一般人であるからだ。
当然、看守や帝国兵が見届け人の立会い無しで私的に囚人に尋問や拷問を行うことは硬く禁じられている…はずだよね。
その規則は幾つか例外項目があるらしいんだ。
見届け人がいる、つまりアーケイン大学が稼動している間しか尋問できないんじゃ、手遅れになっちゃう事もあるよね。
だから、帝都の監獄運営基準には最後のほうにちっちゃく、こんな項目が書かれているんだって。
・重要事項の尋問である場合、アーケイン大学の閉門した後の時間帯にも尋問を行う事を認める。
・重要事項の認定については隊長以上の権限を持つ者の承認を必要とする。
・その際には看守または隊長以上の帝国兵が見届け人の代理を勤めるものとする。
あたしはまだ、それがどんな意味持つか、どんなふうに悪用できるか気づいてなかった。
ここまでプロローグ。
こっからエロス。13レス。
尋問された内容は昼間と少し違った。
オーデンスはあたしの荷物から【王家のアミュレット】を見つけていたんだ。
さすがにオーデンスはそれが王家のアミュレットだとは思わなかったらしいけど、冒険者のあたしが身につけるには派手すぎる事に目をつけたらしい。
更にまずかったのは、あのアミュレットの正体が何であるか、あたしの立場としても秘密にしないといけないと言うことだった。
何しろ、あれはジョフレさんを通じて帝国の後継者に渡すべきものだからだ。
表立った後継者が全て暗殺されてしまった今、帝国に後継者がいるという事実そのものを隠しておかねばならない。
少なくとも、このオーデンスのような最低の人間には絶対に知られてはいけない類の情報だって事は、あたしも充分に理解していた。
あたしがアミュレットの出所について口篭ってしまったことで、オーデンスは盗品だと思い込んでしまったらしい。
オーデンスが真実から遠のくことは望ましいと思う。でも、あたしにとってもそうであるとは、とても言えなかった。
何故なら、オーデンスはあたしを尋問するための最高の材料を手に入れて、これ以上無いくらいに嬉しそうに顔を弛緩させていたからだ。
ただの盗品疑惑、それも証拠も被害者もいない。
これのどこが監獄運営基準で言うところの「重要事項」なのか判らないけど、それを判断する権限がオーデンス本人にある以上、これを止めることができる者はいなかった。
両手を壁に預けるように手械で拘束され、鞭を受ける姿勢に固定されてしまっていた。
しかし、あたしの背中に鞭が打ち下ろされたのは、ほんの数回程度。
でも、尋問が終わったわけじゃない。むしろ、始まったばかりだった。
「くっ…ふうっ…」
オーデンスの指がいやらしく蠢き、あたしは歯を食いしばりながらも声が漏れてしまうのを抑えようとする。
向かいの牢には鉄格子越しに息を呑んで見守る囚人たち。
彼らがさっき言っていた言葉は、すべてを物語っていたんだ。
オーデンスの尋問は明らかに越権行為、と言うより犯罪行為だった。
いくらオーデンス本人や看守が見届け人の代理を許されるとは言え、そして、行き過ぎた尋問が行われないか監視する人が居ないとは言え、遅かれ早かれいずれは発覚すると思う。
だってこんなのは明らかに尋問じゃないもの。もっと、別の歪んだ目的で行われている私刑に過ぎない。
こんなことをすると、囚人か、身内か、どこかから話が漏れてしまうものだ。
帝国兵隊長と言う、牢獄での出来事が漏れるのを防ぐのに最も有利といえる立場にオーデンスは居た。
オーデンスを止めることが出来るのは、同じ帝国兵隊長以上の人間だけだ。
見届け人の代わりに【法の筆】を持ち、あたしの証言を聞き漏らすまいとしている看守も、いやらしく顔を歪めている。
きっとこいつもオーデンスに加担しているんだろう。
残るは向かいの牢の囚人達。この囚人たちが牢獄で見聞きした者を釈放後に喋って発覚する可能性が一番高いと思う。
それで、さっき聞こえたやり取り「何も見なかった。何も聞かなかった。」って事になるんだろう。
金か、食料か、とにかく何かの報酬を受け取ることで、向かいの牢で行われている尋問について口外しないと言う話が付いているのだろうと想像できた。
さっき囚人が「毎度どうも」って言ってた事から察するに、オーデンスは女の子が牢に入る度に「夜の尋問」とやらをしばしば行っていたんじゃないかな。
少なくとも、オーデンスはあたしが嗅ぎ回っている事を知った時から、こうするつもりだったんだと思う。
そう考えても不思議は無いくらいにオーデンスはあたしに夢中になっていた。
ふーっ、ふーっ、と鼻息が荒くなるのを隠そうともせずに、あたしの身体に背後からしがみ付いている。
オーデンスの着ていた白銀の鎧は、簡素な椅子の背もたれに着せるように乗せてある。
その椅子の周りにオーデンスのチュニックやパンツ等が適当に脱ぎ散らかされていた。
その中には…囚人服と、そして女性用の下着も含まれている。そう…あたしの着けていたものだよ。
あたしの背中にオーデンスのだらしなく弛んだお腹の肉が、むちっとした感触と共に押し付けられている。
オーデンスが動くたびに弛緩したお腹が、脂っぽい汗で滑りながらあたしの背中と擦れ合うのが気持ち悪い。
あたしは相変わらず壁に両手を戒められたまま、オーデンスが言うところの「尋問」を受けさせられている。
冗談じゃない!これのどこが尋問だって言うの?
あたしは顔を真っ赤にしたまま、奥歯をぎゅっと噛み締めた。
そんなあたしの反応を確かめるように、オーデンスの両手があたしのおっぱいをキュッと搾り上げた。
あたしは目をしっかりと閉じる。そうしないと挫けて涙が溢れ出しそうだから。
「はあっ…」
あたしの吐息が熱くなっている。
オーデンスと看守、そして向こうの牢獄で固唾を飲んで見守る3人の囚人。
5人もの男達に隠すことも許されずに全裸を晒してしまっていることが、あたしの羞恥心を燃え上がらせていた。
背後から抱きしめるように、あたしのおっぱいをグイグイと揉みしだくオーデンス。
その唇が、そして舌が、ナメクジのようにあたしのうなじを這い回る。
はみはみと歯を立てるでもなく唇と舌で愛撫するような動きで、羞恥に火照ったあたしから滲み出る汗を嘗め取るように蠢いていた。
「んふぅ…っ!気持ち…悪いよう…」
あたしの抗議などに耳を貸す様子も無く、夢中でうなじを嘗め回す。同時にその両手も休み無く動いている。
おっぱいの下側、お腹の方から両手で持ち上げるようにおっぱいを柔らかく包み込むと、たぷん、とあたしのおっぱいがその重さをオーデンスの両手に預けるように揺れた。
そのまま、両手であたしの胸板におっぱいを押し付けるようにきゅっと揉み潰す。
「んくっ…」
あたしがピクンと反応するのを余所に、オーデンスはおっぱいを胸板と掌の間で転がしながらこね回すように、ムニ、ムニ、と弄ぶ。
「このぉ…ヘンタイぃ…」
あたしは悔しさに耐えかねて罵声を浴びせる。もしとんそれはすぐにオーデンスの反撃となって返ってくる。
オーデンスはあたしの言葉に対するお仕置きのように、おっぱいをキリリッと強く搾りあげた。
「へっへ。生意気な事言わねえほうがいいと思うぜ?」
「ひううっ!痛っ…」
おっぱいをキリキリと搾り上げられる痛みにあたしが苦悶の声を漏らしている間に、オーデンスの唇はぬめぬめと這い回り、首筋を上ってきた。
「はううっ…やだぁ…」
不快感に嫌がるあたしの首筋をちろちろと様子を伺うように舐め回し、そのまま更に上へ。
「ひゃうっ!」
あたしは思わずビクンと跳ねるように拒絶してしまった。
何!?何?今のは?
オーデンスの舌があたしの身体を丹念に調べるように蠢き、その動きが首筋を上り耳たぶの裏に触ったとき、あたしはまるで背骨に電流を流されたような感覚を覚えたんだ。
あたしはオーデンスが特殊な道具なり魔法なりを使ったに違いないと思ったけど、そうじゃなかったみたい。
オーデンスは単に舌の先であたしの耳たぶの裏側をぺロリと舐めただけだったの。
あたしの反応を確かめるように、再びオーデンスの舌が耳たぶの裏側をペロッと舐めた。
「ふあうっ!」
あたしの背筋を、ぞくん、とした感覚が走り、ビクンと弾けるように反応しちゃう。
「ほほぉう。ここを舐めると素直になれるらしいなぁ?」
オーデンスはどれほど嬉しそうな顔をしていることだろう?
むに、むに、とおっぱいを揉みしだきながら、オーデンスは発見したあたしの弱点を責め始めた。
にちゃっ、と粘液質の唾液を纏わりつかせた舌が、あたしの首筋を這う。
「く…」
あたしは不快感に耐えながら、一生懸命オーデンスが喜ぶような反応を示すまいと頑張った。
その舌が糸を引くように、のるん、と首筋を上る。
「ふ…あ…」
あたしの微妙な反応に欲情したのだろうか?オーデンスの舌は一気に耳たぶまで移動した。
「ひゃううっ!」
ぞわぞわとした感触があたしの背筋を責める。何でここを舐められただけで困難なっちゃうんだろう?
そんな事を考える余裕は無かった。
ねちゃり、と音を立ててオーデンスの舌が耳たぶの裏を嘗め回し始めた。
「ふああっ…そ、それ…やだぁっ…ひゃうん!」
あたしはガシャガシャと両手を壁に拘束している手械を鳴らしながら、オーデンスの舌の感触に身もだえする。
じゅるり、とオーデンスの唾液が滴るように耳たぶの後ろを滴る。
それを舐め上げ、塗り広げるような動きでオーデンスの舌がニュルニュルと不快な生き物のように蠢く。
「んはあぁっ!」
あたしは思わず熱い吐息を吐き出したときに自分で発した言葉に驚いてしまった。
「ひひっ!イイ声で鳴けるじゃねえか!んむっ!」
オーデンスはあたしの反応に大いに喜びながら、耳たぶを唇に含む。
そのまま、ちゅうっと耳たぶを吸い、舌でクリクリと弄し始めた。
「んはうっ!やっ!そこは…やめてっ!んあっ!」
あたしの身体はあたしの意思に背くようにビクンビクンと突き動かされるように震えてしまう。
ちゅぽ、と耳たぶからオーデンスの口が離れる。
「へへ、お前の”ここ”、どうなってると思う?」
ここ?ここって?
そう思った直後、オーデンスは腰をクイクイと動かした。
「ふゃああんっ!」
あたしは耳たぶの裏側と同じか、それ以上の反応をしてしまった。
オーデンスはさっきからずっと、あたしの股間に自分のモノを挟むようにしていたの。
それをいきなり、じゅる、とした感触と共に動かされて、あたしは敏感に反応してしまっていた。
…え?…今あたし、じゅる、とした感触があったって言った?
あたしは信じられない、信じたくないという気持ちで自分の下半身のほうを見る。
オーデンスに激しく揉みしだかれるおっぱいの谷間の向こうに、あたしの股間がある。
それは、まるでローションでも塗ったようにトロトロの液体でぬめっていたの。
「へっへ。尋問の最中だってのに、まったくいやらしいエルフだぜ。」
オーデンスの勝ち誇ったような声が突き刺さる。
「そんな…こと、ないよ…っ!」
あたしは、なんとか絞り出すように否定するが、オーデンスは楽しそうに男根を擦り付けるようにあたしの股間の割れ目に沿って上下に動かした。
「ふああっ!やだっ!やだっ!」
スマタって言うのだろうか?
その性感帯をじわじわと刺激する感覚を打ち消そうと、あたしは慌てて頭をぶんぶん振る。
それに追い討ちをかけるように、オーデンスは再び耳たぶの裏にジュルリと舌を這わせた。
「ふああっ!それやだあっ!そこはやだぁ…ふえええんっ!」
上と下を同時に責められて、あたしは身体がビクンビクンと跳ねるように反応してしまい、どうしようもなく泣いてしまった。
それでもオーデンスは許してくれない。
執拗に、執拗に、あたしの弱いところを責め立てる。
指が、舌が、肉棒が、あたしの弱点を擦れるたびに、あたしの頭の中で何かがスパークするようにバチバチと弾ける。
こんなの、とてもじゃないが耐えられないよ。
それでもオーデンスはその行為を更に激しくしていく。
「んああっ!ふあっ、ふあぁ…やだあ…」
このままだと、あたしは、どうにかなっちゃう。どこかに行っちゃう。そんなのやだ。絶対にやだ!
あたしは何とかしてこの感覚をやり過ごせないかと頭を振って正気を保とうとするが、そうやって頭を冷却する程度では何も変わらない。
オーデンスの指はきゅうっと乳首を引っ張り、舌は激しくジュバッ、ジュバッ、と耳たぶを責め立て、同じく硬くいきり勃った肉棒はあたしの股間を激しく擦り上げる。
「ひうぅっ!…あうう…あたし…も、い…ちゃう……」
もう限界だった。
あたしの心は真っ白に塗りつぶされちゃうくらいにオーデンスに虐められる感覚でいっぱいになり、それは恥ずかしさとか、悔しさとか、そーゆーのが全部を流し去ってしまうようだった。
「くっ…あ…くぅ…―――――――――――――っっ!!」
じんじんする頭にオーデンスの声が聞こえる。
「ひひっ!どうだいアシュレちゃんよ、派手にイキやがって!本当にエロいエルフだな!」
オーデンスに絶頂させられたと言う事実が、どうしようもない屈辱感となってあたしの心を責める。
「うっ…ひっく…ふえええ…やだって…言ったのに…」
「へっへ!これは尋問だからなあ。尋問される相手には全て包み隠さずに見せるのが筋ってもんだろ?」
何を言ってるんだろう?この変態は。ここまでやっといて何が尋問だって言うんだろう。
あたしは思わず涙に濡れたままの目でキッとオーデンスを睨む。
そんなあたしの視線をむしろ喜ぶようにオーデンスの下品な声が浴びせられた。
「アシュレちゃんのイってる顔、めちゃくちゃ可愛かったぜえ?」
「…っっ!!」
あたしの顔がカァーッと熱を帯びるのを感じた。
悔しい。悔しいよ。こんなやつにこんな事を言われるなんて。
「ひゃは!いい顔だぜ!それじゃあ今度は、もっといい顔でイって貰おうかい?」
「え…」
あたしの背筋が嫌な予感にぞくりとする。
オーデンスはあたしの反応を待たずに、再びあたしにのしかかる。
「あ…」
あたしの股間をぬるぬるとスマタしていたオーデンスの肉棒が、ちゅ、と卑猥な音を立てて然るべき場所にセットされた。
「や…もう、やだ…」
あたしは頭をふるふると振って、オーデンスに拒絶の石を示す。
それがいったいなんの役に立つだろう?もちろんあたしにもそのくらい判るよ。
オーデンスはいきり勃った肉棒をセットしたままの状態で、あたしの腰をガシッと捕まえる。
「…やめて…やめてよう…」
あたしは背後のオーデンスの方を怯えるように振り返り、必死に懇願してしまっていた。
無駄だとは判っていながらも、やらずにはいられない。
オーデンスは野獣のような荒々しさで、あたしの腰を掴む手に力を入れる。
「せいぜいイイ声で鳴いて見せろ!」
あたしはギュッと目を閉じた。
じんじんする頭にオーデンスの声が聞こえる。
「ひひっ!どうだいアシュレちゃんよ、派手にイキやがって!本当にエロいエルフだな!」
オーデンスに絶頂させられたと言う事実が、どうしようもない屈辱感となってあたしの心を責める。
「うっ…ひっく…ふえええ…やだって…言ったのに…」
「へっへ!これは尋問だからなあ。尋問される相手には全て包み隠さずに見せるのが筋ってもんだろ?」
何を言ってるんだろう?この変態は。ここまでやっといて何が尋問だって言うんだろう。
あたしは思わず涙に濡れたままの目でキッとオーデンスを睨む。
そんなあたしの視線をむしろ喜ぶようにオーデンスの下品な声が浴びせられた。
「アシュレちゃんのイってる顔、めちゃくちゃ可愛かったぜえ?」
「…っっ!!」
あたしの顔がカァーッと熱を帯びるのを感じた。
悔しい。悔しいよ。こんなやつにこんな事を言われるなんて。
「ひゃは!いい顔だぜ!それじゃあ今度は、もっといい顔でイって貰おうかい?」
「え…」
あたしの背筋が嫌な予感にぞくりとする。
オーデンスはあたしの反応を待たずに、再びあたしにのしかかる。
「あ…」
あたしの股間をぬるぬるとスマタしていたオーデンスの肉棒が、ちゅ、と卑猥な音を立てて然るべき場所にセットされた。
「や…もう、やだ…」
あたしは頭をふるふると振って、オーデンスに拒絶の石を示す。
それがいったいなんの役に立つだろう?もちろんあたしにもそのくらい判るよ。
オーデンスはいきり勃った肉棒をセットしたままの状態で、あたしの腰をガシッと捕まえる。
「…やめて…やめてよう…」
あたしは背後のオーデンスの方を怯えるように振り返り、必死に懇願してしまっていた。
無駄だとは判っていながらも、やらずにはいられない。
オーデンスは野獣のような荒々しさで、あたしの腰を掴む手に力を入れる。
「せいぜいイイ声で鳴いて見せろ!」
あたしはギュッと目を閉じた。
ごめん。間違えて7/13を2発投げちゃった。
「やあんっ!ひうっ!くぅぅんっ!」
あたしの両腕に嫌でも力が入り、手械が無常にガチャガチャと音を立てる。
もちろんこんなことで手械が外れるわけも無く、仮に外れたところで何が出来るというのだろう?
「いやじゃねえんだ!おらっ!おらっ!吐かねえかっ!」
ぱんっ!ぱんっ!とリズミカルに、肉と肉がぶつかり合うような音が響き、あたしの身体奥深くに激しい衝撃が加えられる。
そうだよね。許してもらえるわけないよね。判ってる。
あれだけやらしい事された以上、次はこうなるのは当たり前だよね。
壁に戒められたまま、その壁にすがり付くように逃れようとするあたしのウェストを、がっしりと掴み、やや引き上げた場所で固定するオーデンス。
その位置があたしに肉棒を突き立てるのにちょうど良いのだろうか?
位置も角度もバッチリ。
オーデンスとしっかり結合してしまったあたしは、お腹の中をゴリッゴリッと擦れる感触を何とかやり過ごそうと必死に目を閉じて頑張っていた。
しかし、そんな頑張りもお腹の奥を肉の塊で責め立てられるとあたしの精神力を貫通、と言うか、浸透してくるようにジンジンとした波で溶かされていく。
これに比べたら、さっきのスマタや耳たぶなんてのは、本当にお遊び、文字通り「前戯」だった事を思い知らされる。
「ふうっ!やんっ!やんっ!くぁうっ!」
その感覚はあたしの身体にもフィードバックしていて、どうやらあたしが小刻みにフルフルと震えてしまうのがオーデンスにはこの上ない快感をもたらしているみたい。
「はあっ!はあっ!うっ…おう…っ!」
オーデンスが不意に何かに耐えるような声をあげた。
「はあ、はあ、あんまりキモチイイから、思わずイキそうになっちまったぜ!」
その言葉にあたしの心が恐怖に凍る。
「やあっ!やだあっ!」
あたしは必死に拒絶の声を上げるが、オーデンスは楽しそうに言う。
「へへっ!そんなに嫌か?じゃあ、こうしよう。お前が素直に認めたら、せめて外に出してやる。どうだ?」
「…っ!」
その手には乗るもんか!あたしは涙をながしながらもキッとオーデンスを睨みつけた。
「へっへっ!そんなにぶち込んでもらいたいか!それじゃお望みどおり、そらっ!そらっ!」
「ふあっ!やあんっ!」
あたしはオーデンスの要求に応えることもできず、かと言って逃れることもできずに膣内に与えられる刺激に翻弄されて泣き叫んでいた。
オーデンスは容赦なく腰を振る速度を加速していった。
「はあっ、はあっ、そ〜ら、早く言わないと孕んじまうぞぉ…」
その言葉に嘘はあるまい。オーデンスはもはや射精感を抑えるのに必死で、少しでも我慢を緩めたら、たちまち射精してしまうだろう。
あたしも膣の奥をこれだけ小突かれてしまうと、頭がジンジンと痺れて正常な判断が出来なくなってくる。
オーデンスは更にリズムを速めて腰を突き出し始める。
「やんっ!んっ!んっ!やだあっ!」
その動きにいよいよオーデンスの射精が近いのを感じ、あたしは必死に拒絶する。
しかし、そんな拒絶は何の意味も無い。
膣内射精されるのを避けるためにはただひとつ、オーデンスの言う罪を認めるしかないんだ。
とにかく膣内に射精されるのだけは避けないと。
こんな男に犯されて妊娠してしまうなんて、死んでも嫌だ。
その思いだけがあたしの頭いっぱいになり、あたしは悔し涙をボロボロと流しながら、遂に言ってしまった。
「わかったからぁ…もう、盗んだアミュレットって事で良いから…もう、やめてよう…」
あたしはそれがどれほど致命的な意味を持つかを考える余裕も無いままに喋ってしまっていた。
ただ、悔しい。この卑劣な男に良いように嬲られて言うことを聞かされるということがたまらなく悔しい。
あたしの背後でオーデンスはどれほどの喜悦の表情を見せていたのだろうか?
「へっへっへっ!遂に白状しやがったな!この泥棒猫め!」
ずんっ!と激しく肉棒が突き入れられ、あたしは思わぬ攻撃に涙を散らす。
オーデンスはあたしの膣内からその汚い肉棒を引き抜くどころか、あたしのウエストをガシッと捕まえて更に結合度を強くしてしまった。
「ふわぁんっ!なんでっ…」
ゴリッと膣の奥をこすり上げる感覚に、あたしは悲鳴を上げつつも抗議の声を上げる。
「正直に答えたから中出しは止めてやりたいところだがな。だが、今度は盗みを働いた罰を与えてやらないといけなくなったぜ!」
「っっ!!!」
本当に、なんだってあたしは一瞬でもこの卑劣な男の要求に応えるような事を言ってしまったんだろう?
この男が約束をまともに守るわけが無いなんて、判りきってる事じゃないか。
「おらっ!おらっ!泥棒にはお仕置きだっ!おらっ!」
いっそう激しく、速くなったオーデンスの肉棒があたしの胎内を穿つように攻め立てる。
「やんっ!やんっ!くうっ…このぉ…うそつき…卑怯者ぉ…」
あたしは約束を平気で破られた悔しさに涙を流しながらも罵声をあびせる。
オーデンスはそんなあたしの言葉を嬉しそうに聞きながら、腰を打ちつける速度を更に激しくしていく。
「へへ…まだそんな口を聞くとは、お仕置きが足りないらしいな。」
ぱぁん!と乾いた音が響き、あたしのお尻に激痛が走った。
「ひうっ!」
あたしの目から涙が飛び散り、すぐにお尻を平手打ちされたことに気づいた。
「やっ…」
あたしが拒絶の声を上げるよりも早く、ぱぁん、ぱぁん、と連続でオーデンスの平手が打ち据えられる。
「そらっ!そらっ!反省しない泥棒にはお仕置きだ!」
まるで悪戯をした子供に折檻をするように、オーデンスは自身の肉棒をあたしに咥え込ませたままの状態でお尻を打ち据える。
いや、それだけじゃない。
オーデンスは肉棒をグン、と突き込むのに併せて思いっきりお尻を引っぱたいていたの。
「ひぃんっ!ひぃんっ!やだあっ!ひゃあんっ!」
ぱぁん、ぱぁん、と小気味良い音が響くたびに、あたしの胎内ではオーデンスのペニスが乱暴に突き上げてきて、あたしはペニスを深々と突き立てられたまま、お尻を叩かれる痛みで萎縮してしまう。
それは図らずもオーデンスのペニスを、きゅうっ、きゅうっ、と締め付ける形になってしまった。
「うおっ!こりゃすげえ!そらっ!そらっ!泥棒め!反省しろ!どうだっ!どうだっ!」
あたしの締め付けにオーデンスの興奮度はピークに達しているのか、腰を振る速度も頂点に達していた。
お尻もめちゃくちゃに叩かれ、もうジンジンと痺れて何が何だか判らない。
「おら!おら!どうだっ!泥棒め!反省したか!」
あたしもここまでめちゃくちゃにされたら、もはやどうすれば良いのか判らなくなっちゃう。
「ひぃぃんっ!ふぇぇんっ!反省したからぁ!ごめんなさい!ごめんなさぁいっ!」
いつしかあたしは膣内に射精されるのを避けたい一心で、必死に謝っていた。
でも、オーデンスは許してくれなかった。
ちゃんと謝ったのに、泣きながら謝ったのに、オーデンスは許してくれなかったの。
オーデンスの身体が快感にぶるるっと震えた。
「ふええんっ!やだよぅ!いやああああああっ!ごめんなさぃぃ…!」
あたしの拒絶もむなしく、お腹の中でオーデンスのペニスがビクン、ビクン、と元気良く脈動してるのを感じる。
同時に、そのペニスの先端から熱湯のようなゲル状の液体がビュルン、ビュルン、と弾けるように迸る。
きっとこれがオーデンスの精液の感触なんだろう。
あたしは、遂にオーデンスの子種を膣内に注ぎ込まれてしまったんだ。
「あ、あつっ!」
あたしはすぐに予想外の熱さに強烈な存在感を感じさせられる。
誤って熱いコーヒーを飲んでしまったときのような感覚といえば少しだけ近いだろうか?
喉の奥を熱いコーヒーがその存在を主張するように流れ落ちていくあの感覚。
あれに近い感覚を、あたしは膣の奥深くで味わっていた。
その感覚が一生懸命堪えていたあたしの理性を再び吹き飛ばす。
「あ…くぅ〜〜〜〜っ!!…ふあぁ―――――――――っ!」
あたしの意識も、オーデンスの射精にあわせて絶頂を迎えていた。
こうなってしまうと、少なくとも絶頂している間だけは、恥ずかしさも悔しさもない。
もちろん、絶頂から冷めたあとに、それは何倍にもなって襲い掛かってくるんだけど。
でも、今は、こころが、真っ白に、焼ける。
オーデンスはここまで射精を我慢していただけあって、すんなりとは終わらせてくれない。
ビュルッ、ビュルン、と2度、3度、と射精を繰り返す。
それも、あたしの最も奥深くに子種を植えつけようとするかのように、ペニスをグイッと突き出すと同時にあたしを犯して行く。
「ふあっ…んくぅ―――――っ!」
あたしは膣の奥深くで存在を主張するオーデンスの精液を無視できず、立て続けに飛んでいた。
「うむっ…もっと…もっとだ…っ!」
オーデンスは最大限まで快感を貪ろうとするように、射精の快感をより充実させようとするように、こともあろうに、射精しながらあたしのお尻を叩き始めた!
「ひゃうんっ!」
まさかこんなタイミングで折檻を受けるとは考えもしていなかったあたしは不意を突かれるように悲鳴を上げてしまう。
オーデンスがペニスを突き出しながら、射精する。同時にお尻を思い切り平手で打ち据える。
「ふやぁ―――――んっ!」
絶頂しながらも、ぱぁん!、と音が鳴るたびにあたしの身体はきゅうっと引き締まる。
オーデンスのペニスをあたかも精液を搾ろうとするかのように締め付ける。
それに従うようにピュッ、ピュッ、と迸る精液の熱さを感じ、それがあたしが絶頂から冷めるのを許してくれなかった。
満足そうな表情でオーデンスが、ほうっ、と溜め息を付いた。
射精の快感の余韻を味わうように、ペニスはあたしの中に入れたまま、あたしの首筋にキスをした。
あたしは…それどころじゃないよ。
あたしはオーデンスに犯されてしまった。その実感が、お腹の中に確かな存在感と共に今も残っている。
「俺様の周りを嗅ぎ回るとどんな目に合うか、思い知ったか?アシュレちゃんよ。」
ぼんやりとしたあたしの耳に、勝ち誇ったようなオーデンスの声が聞こえる。
悔しくて涙が滲んだ。
「ぐすっ…ゆるさない…あなたみたいな卑劣な人、ぜったい、ゆるさないんだから…ぐすっ」
辛うじてそんな強がりを言うあたしに、オーデンスは嬉しそうに答えた。
「そうは言うがな。あれを見な。いったい悪人はどっちかな?」
オーデンスはあたしの頭を乱暴にグイと掴んで後ろに向けさせた。看守が持っている【法の筆】が魔力を帯びていたのを見て、あたしの血が凍りつく。
先ほども言った事だが法の筆で書かれたもので無ければ、どのような証拠も証拠としての能力を持たない。
逆に言うと、これで書かれたことはこれ以上無いくらいに確実な証拠となってしまう。
その筆で看守は、さっきあたしが口走ってしまったことを、サラサラと書き留めていたんだ。
何故オーデンスがあたしに泥棒行為を認めるように執拗に迫っていたのか、どうしてあたし自身の口から喋らせようとしていたのか、あたしは知っていたはずなのに。
昼の尋問でオーデンスが言わせようとしていた「帝都兵隊長への殺人未遂」に比べれば、装飾品の盗難の服役日数なんて可愛いものだ。
だから、あたしは油断してしまったのかも知れない。
「へへっ!明日には出られるつもりだったか?残念だったな。これで少なく見積もってもプラス一週間ってところか。」
愕然とするあたしを他所に、オーデンスは楽しげに喋っていた。
「だが喜びな。偶然にも俺様は当分の間、夜はこの牢獄の見回りをすることになっているんだ。」
何を言っているんだろうこの男は。あたしはあまりのショックに混濁した頭でぼんやりと考えるが、考えが纏まるはずも無い。
そんなあたしに構わずにオーデンスはあたしのお尻をぺチンと叩いて言った。
「ひひっ!放免になるまでの一週間、よろしくな!」
あたしの頭は夢の中のようにジンジンと痺れて、オーデンスの言葉は実感を伴わずに聞こえていた。
とりあえず一発目は終了。
脱獄するまでしばらくエチー続ける予定。
また纏まった量が書けたら投下しまする。
ああん、いやらしい〜〜〜〜!!
GJ!!!!!
あまりのいやらしさに(笑)
後に続くレスがないが、それからの拘留を待ち兼ねてるゾwktk
真っ赤に腫れあがる尻は丁寧に手当てをして進ぜよう
>>141,142
レスありがとですよ。
レイープ物は好みがはっきり分かれるので反応薄いのは覚悟の上w
とにかく「粘りつくようにネチっこく」表現しようと努めてたけど、それが
「いやらしい」と言う評価になったなら嬉しいです。
エログッジョ!!
(*´Д`)ハァハァしました
焦土戦術+剣牙虎の組み合わせは、自分でも皇国っぽいなと思いました。
知らないうちに影響受けてましたね。(原作は読んでませんが)
おまけに大陸の西部に存在する「帝国」の設定があったりする。
さすがに姫元帥は今のところ出すつもりは無いですけど。
>>140 これはいい!
いつもROMっているけど、初めてレスを、GJを言いたくなった。
とてもエロかったし、何より面白かった。
元ネタは知らないけど、豊かなイメージが伝わってきた。
ぱんつ、ageとくね
いやああああん、下がってないいい!!
戦争で負けた国の姫さまとか女騎士が見せしめのために衆人環視の中嬲られてーとか
そんな感じのダークエロが読みたいです
戦争で負けた国の姫様が敵国にさらわれてきて
変態国王になぶられることになるっつー筋の話ならみたことある。
ただすんげーいいとこで切れてて続き今だにナシス
>>150 あるあるwww
琴線に響いた話に限って最終更新が2年前とかザラですお
152 :
投下準備:2006/12/17(日) 01:06:53 ID:l5JPmezY
『女海賊×美少年』です。
※注意※
これまで書かれてきた作品のヒロインは大抵goodかneutralなので、
思いっきりevilの女主人公にしました。
そのため残酷鬼畜な展開であります。
153 :
隻眼の鮫:2006/12/17(日) 01:07:36 ID:l5JPmezY
大陸がいかに混迷を極めようと、東西の交易は途切れた例が無い。
その原動力となるものは、貿易が生み出す莫大な利潤である。
欲と野望に取り付かれた商人たちは、命の危機を顧みずに遠方に繰り出す。
否、危険であればあるほど遠方の産物は希少となり、高値で取引される。
僅かな元手から出発した駱駝引きが、東西交易によって大富豪にのし上がったという話も御伽噺では無い。
しかし、栄光も無事に産物を持ち帰ってこそもたらされる物なのだ。
・・・・・・・・・
今、そうした勇気ある交易船の一隻が、海で二番目に恐ろしいものに襲われていた。
彼らにとって一番恐ろしいもの、それは暴風雨である。
海神の怒りである大嵐は、船乗りにとってこの上ない恐怖である。
自然の猛威の前には、人間の営みなど波間に揉まれる藻屑同然の力しか無い。
その次に恐ろしいもの、それは海上を往来する交易船に襲い掛かる凶悪な悪魔たち。
すなわち海賊である。
交易品を積んで船足の遅くなった獲物を、海賊船は執拗に追いかけた。
ぐいぐいと距離を詰めてくる海賊船に、船長は遂に覚悟を決める。
「総員、武器を取れっ、こうなれば奴らを返り討ちにするしか無いぞ!」
その声に応じて船員達は各々武器を用意する。
互いの矢玉が飛び交う中、交易船は遂に敵船に接舷されてしまった。
「寄せろー!」
「おおうぅー」
おぞましい格好をした海賊達の声が海上に轟き、船員達を震え上がらせる。
しかし陸の上と違って、洋上では逃げる道は無いのだ。
海に飛び込んで敵から逃れたとしても、生きて地上に戻れる可能性は万に一つ位しか無いだろう。
事ここに至れば、生きるか死ぬかである。
船長以下、すべての船員達が覚悟を固めた。
「そりゃ、飛び移れー」
「殺れやっ!」
鉤縄や板子を使って海賊達が乗り込んでくると、すぐさま甲板は修羅地獄と化した。
蛮刀や手斧が火花を散らし、罵声と怒号に混じって断末魔が響く。
いかに交易船とはいえ、船乗りは柔な肉体で出来る家業ではない。
陸上のそこらの雑兵など問題にならないほど、身体も精神も鍛えられている。
その彼らが生死を賭けて抵抗すれば、易々と敵に遅れは取らないはずだった。
154 :
隻眼の鮫:2006/12/17(日) 01:10:48 ID:l5JPmezY
だが、今回は相手が悪過ぎた。
自ら刀を振るって戦闘を続けていた船長は、乱戦の中にあってさえはっきりと聞き取ることのできる、
高く凛とした声を耳にした。
「野郎どもっ抜かるんじゃないぞ! 我々に歯向かう身の程知らずは、残らず鮫の餌にしてしまえ!」
海賊船の帆柱の上から発せられたその声を聴いた瞬間、船長の背は凍りついた。
自分が何者を相手にして戦っているかを、彼は理解したのだ。
「おおーうっ! こいつらの魂を海神に捧げようぞ!」
「とこしえなる深海の王へ、血を、血を! 血を捧げよ!!」
「骸は鮫に! 血は神に!!」
首領の声に激励されて、海賊達は一層嵩にかかって攻め立てはじめる。
それぞれが海賊の神への賛歌を唱えつつ、狂乱という形容が似合うほどの勢いで船員たちを圧倒した。
「あそこだっ、帆柱の上の奴が頭だ! あいつを射落とせ!」
船長の必死の号令に従って射手は敵船に狙いを定めたが、その命令は遅かった。
標的となるべき人物は、船長の声が終わるよりも早く帆柱から姿を消していた。
「イヤァッハァーーーーっ!!」
帆桁に括り付けた荒縄にぶら下がった彼女は、
自らを揺れる振り子の錘のように吊るして、獲物である交易船に闖入してきた。
驚くべきか、飛び移った際にその勢いを駆って交易船の船員を一人斬り飛ばしてさえいた。
年の頃は二十半ば、背は並みの女よりやや高い程度だが、服の上からも筋骨のしなやかさが見て取れる。
船乗りの常として、肌は日に焼かれて浅黒い。
だが目を引くのは、その高く整った鼻梁、形のよい顎、赤い唇、
そして何よりも片一方を眼帯に覆われた眉目だ。
「せっ…『隻眼の鮫』ガレーナっ!」
「我が名をご存知とは光栄だね…… 光栄ついでにお前の船と積荷と命を頂戴しようかっ」
155 :
隻眼の鮫:2006/12/17(日) 01:11:30 ID:l5JPmezY
ガレーナの身体が跳ねたと同時に、船長は後ろに飛びずさった。
半瞬前まで自分が居た空間を湾刀が薙いでいく。
攻撃を間一髪かわした船長だが、それに乗じることは出来なかった。
打ち返そうとした船長の腕は、ガレーナの二振り目の斬撃によって切り裂かれていた。
三太刀目が敵の首筋を一閃すると、女海賊の全身は返り血で染まる。
「ぐわぁっ!!」
「偉大なる海尊主よ、血を捧げ奉る!」
血に濡れた湾刀を掲げ彼女が宣言すると、海賊達からは歓声が、船員達からは絶望の声が上がる。
「さあ殺せ、殺せ、皆殺しにせよっ!」
「うおおーー!」
血に酔った死神たちが踊り狂う甲板の上は、程なく赤い血によって塗装し尽くされていった。
既に甲板の戦闘は終結し、地獄は船内に移っている。
ときおり断末魔が聞こえてくる船内を、海賊達は丹念に調べ上げてゆく。
物陰に隠れていた船員たちを見つけては、彼らの懇願を無視して縛り上げ、引っ立てていくのだった。
抵抗すればもちろん甲板で戦った仲間達と同じ運命を辿る。
ズタズタに切り裂かれて鮫のエサだ。
「………生き残りは居ないかよく探せ! 一人でも残せば酷い目に会うぞ」
「分かってまさぁお頭」
この海の海賊達の俗信の一つに『殺し残しをすると祟りがある』というものがある。
貪欲なる海の神々は供犠を惜しむ者を許さないのだ。
「そりゃ、この部屋で最後だぁ」
黒髭の海賊が手斧を振るい、閉じられたドアを叩き壊す。
ドアが開かないという事は即ち、誰かが内側から閂をかけているのだ。
「どりゃ、大人しくとっ捕まるか! それとも戦って死ぬかぁ! …ああん?」
「どうした?」
「へへっ… 見て下せえ」
「ほう? これはこれは………『永久なる深海の王』よ、御身の恵みに感謝仕る」
ガレーナは海賊神を讃え印を切った。
陸の人間からは奇異に思われるかもしれないが、海賊に限らず船乗りはみんな敬虔だ。
自然を支配する大いなる存在を敬う事は、海という豊穣かつ非情な世界で生活する人間の必然である。
この海域では特にその傾向が強く、『隻眼の鮫』以下手下たちも海賊神へ崇拝は強かった。
海原は全てを飲み込むが、彼女達に糧を与えてくれる。
そして稀に今回のようなご褒美を授けてくれる。
ドアを打ち破られた船室の奥で震えていたのは、少女と少年の二人であった。
・・・・・・・・・
156 :
隻眼の鮫:2006/12/17(日) 01:12:25 ID:l5JPmezY
少年はガレーナの船室へ連れてこられた。
船長の私室は海賊船『大喰らい鮫』号のなかでも一番広く、居住性に富む。
一緒に居た少女と引き離され、少年はまだ怯え震えていた。
「ぼ… 僕たちをどうするつもりですか?」
「うむ、君たちがどこぞの街の大富豪の子供だったなら、身代金をたんまりせしめる所なんだがな」
少年の名はマリクといった。
マリクによると、彼ら二人はある港町の商人の子だという。
父は各地を巡り、小さな商いを堅実に続けているらしい。
その商人がある遠方の町に行った際、一人の街娘を口説いて懇ろになった。
二人の間には子供が産まれ、父親となった商人は、ある時期になると妻子の住む町へ行商へ出かけ、
しばらく過ごした後にまた別の町へ向かうという生活を送っていたそうだ。
だが、今年になって母親が流行り病で亡くなってしまう。
その知らせを聞いた商人は娘と息子を自分の故郷へ迎える事にし、
知り合いの船に乗るように手配してくれたそうだ。
少年の身の上話を聞いて、ガレーナは心中落胆した。
商人は子供たちを迎えるにあたり、その町の特産物を後払いで仕入れ、
積荷と一緒に父親の元へ来るよう言い付けていたのだ。
後払いとは、言い換えれば借金である。
マリクたちが無事に到着すれば、積荷を売却した金で借りた金も簡単に返せよう。
だが、その積荷が届かなければ商人には借金しか残らない。
そして、積荷はこのとおり海賊船に奪われてしまった。
一度信用を失えば、商人はそれ以上商売を続けることは出来ない。
これまで利益を上げることが出来た交易路から、彼は追い出されることになる。
結論を言えば、二人の父親がガレーナに身代金を支払ってくれる可能性は皆無に近いのだった。
「姉さまに会わせて下さい! そして僕たちを開放して下さい!」
「さあ、それは君の態度次第だね」
「僕次第って?」
「フフフッ、我々は海賊なんだよ? 捕まえた獲物をそう簡単に開放する訳にはいかないだろう」
157 :
隻眼の鮫:2006/12/17(日) 01:13:17 ID:l5JPmezY
一つしかないガレーナの目が意味深げに歪んだ。
右側の目は眼帯に覆われているが、それを割り引いても彼女は美人と呼ばれるだろう。
だが、マリクにはその瞳の奥から残酷さが滲み出るように思われた。
「でも君の姉さんには無体な真似をしないでやってもいいぞ」
「えっ、本当?」
「ただし、それは君が私の言うことに何でも従うってのが条件だ」
「うっ………」
「嫌ならいいがね、君の姉さんがどうなっても知らないよ」
「やっ…やります。何をすればいいんすか」
「では、まず服従のしるしに、私の足にキスしてもらおうかな」
突きつけられた屈辱的な要求に、わずかに少年は躊躇した。
「どうした、やっぱり止めとくか?」
「………約束は、守って貰えるんですよね」
「ああ、我らが神『全てを与え、全て飲み込むもの』に誓ってこの約束は守ろう」
その言葉を聞いて意を決したマリクは、ガレーナの前に跪きその足に口付けをした。
少年がためらいつも自分の足にキスをする姿を鑑賞しながら、女海賊は楽しげな笑みを漏らした。
唇からこぼれる残虐な笑いを見て、少年の背に震えが走った。
凶悪な女海賊が自分にどんな事を要求を持ち出すのか恐れているのだろう。
もちろん、この程度でガレーナが満足するはずも無かった。
「じゃあ、裸になれ」
「へっ?」
「聞こえなかったか? 服を全部脱いで裸になれと言ったんだよ」
有無を言わせない冷徹さが込められた命令に、マリクは従わざるを得なかった。
家族以外の前で着替えをする行為もまた、普段の彼にとっては恥ずかしくて出来ない振る舞いである。
少年が頬を赤らめて、なるべく身体を晒さないように衣服を脱ぐ様をガレーナは眺めていた。
158 :
隻眼の鮫:2006/12/17(日) 01:14:07 ID:l5JPmezY
「ぬ… 脱ぎました」
「手で隠そうとするな、全部見せてみろ!」
「はっはい!」
相手に見られまいと股間を覆っていた手を、マリクはゆっくりとどかした。
生まれて初めて他人に身体を見つめられ、少年は震えていた。
『ふむ、骨組みも肉付きも悪くない…』
ガレーナは少年の身体にそのような感想を抱いた。
彼に手招きして近寄らせると、ガレーナの手は彼の頬を撫でる。
その若々しい肌触りも秀麗な顔立ちも、彼女の気に沿うものだった。
これならば身代金は取れなくても、他の部分で少しは補填が出来そうだ。
「マリク、もう女は知っているか?」
「……まだ、です」
恥ずかしそうに答える少年の体を、ガレーナは値踏みするように触っていった。
「うん、良く締まったいい尻だ… こちらも」
「ひぃゃん!」
「そのうち立派になりそうだな」
「嫌っ、やめ…止めてください」
その手で少年の性器を掴みつつ、彼女はそう呟いた。
羞恥の余り、マリクは顔を背ける。
まだ大人になりきっていない性器であっても、弄ばれ続ければ次第に硬度を増してくる。
恐怖で縮こまっていた先程よりも大きく、硬くなった物を、ガレーナは握り締めた。
「あぅ!」
「痛いのか? それとも気持ち良いのか?」
「………」
「答えろ」
「りょ、両方です」
「ふふふ、それは悪かった。もっと優しく握ってやろうかね」
「だっ、駄目です…」
「何故?」
「そんな事されたら、僕… きっと……… 出しちゃいます」
「構わないよ、出しても。でも、お前だけ気持ち良くなるのも何だな」
ガレーナはマリクの手をとって彼女のベッドへといざなった。
「今度はお前が、私を良くしてくれ………」
「ううっ」
その言葉の意味が理解できぬ程の歳ではない。
幼い手がおずおずと自分の服を脱がしていく。
脱がされたガレーナは、その豊満な胸に少年をかき抱いた。
少年が初めて奉仕する事になった女の身体からは、血と潮の臭いがした。
159 :
隻眼の鮫:2006/12/17(日) 01:14:57 ID:l5JPmezY
「ほら、胸を揉むんだ……… もっと力を入れていいぞ」
「はっ… はい」
「空いている手で、私の尻も撫でろ」
「こ、こうですか?」
「そう、上手だぞ… でもいつまでも同じ様に触るのは芸が無い。
相手を飽きさせないように、揉む力加減を工夫してみろ」
「わ、分かりました」
「ふふ、それが女の身体を扱うときの一番大切な事だ」
ガレーナはマリクに指示を与え、その身体を擦らせる。
男女の交わりを行うのは初めての体験であり、
どのように女体を扱ったら良いか、まだ彼には判っていなかった。
そんな稚拙な愛撫を、女海賊は楽しそうに味わう。
そして片足を開き、今度は少年の手をその股間にあてがった。
初めて触る女性器に戸惑う指に、ガレーナは細かく指示を出してやった。
襞をなぞらせ、肉芽を捏ねさせる度に悶える女体を見て、マリクも次第にやり方を理解していく。
『これならば今夜もこれから先も、お前は喰いっぱぐれはしないだろうよ』
口に出さないまま、彼の物覚えの良さをガレーナは二重の意味で喜んだ。
そんな女海賊の思いも知らず、少年は指を使い続ける。
少年の髪の絹糸のような手触りを楽しみながら、ガレーナは愛撫を堪能した。
強要されての事といえ、初めて女体を目の当たりにしたマリクの股間は、高く硬く怒張している。
その目からも恐怖と不安が薄れ、興奮と期待が入り混じっていた。
「フフフッ、入れたいか?」
「いっ入れたいです」
「いいだろう、おいで…」
女海賊の許しを得た少年は、すぐさま脚を開いた女体の間に自分の性器を差し込む。
初めての性交に慌てた様すら、ガレーナにとっては愉快である。
彼女は筆下ろしが嫌いではない。
初々しい男児に、自分の身体の扱い方を仕込んでゆくのが好きなのだ。
「慌てすぐに出すなよ」
「はいぃ、でも気持ち良過ぎて…」
初めて女の胎中に自分の一部を挿入し、少年は無我夢中で腰を前後させた。
波に揺られる船中で、少年は童貞を失った。
自分の上に覆いかぶさって、がむしゃらに付き込んで来る感触を、
隻眼の女は楽しそうに味わった。
160 :
隻眼の鮫:2006/12/17(日) 01:15:42 ID:l5JPmezY
だが、マリクが快感の極みに達しようとする寸前、船室の外から悲鳴が届いた。
『イヤァー!』
「姉さま?」
『止めて、来ないで!!』
それはマリクの姉の悲鳴であった。
船長室のドアの向こう側から、明らかに恐怖に怯えた少女の声が聞こえてくる。
「姉さま!」
『マリク? 助け… 』
『このアマっ子が、大人しくしねえか!』
「お前たちっ! 何の騒ぎだ」
『おお、お頭! お楽しみを邪魔して申し訳ねえです。
俺達もこの娘でちょっと楽しもうと思ったんですが… この餓鬼、兄いを齧りやがったんでさあ』
「間抜けどもがっ、気ぃ抜いてるからそういう目に会うんだ!
その娘を使うにしても、傷をつけたり膜破って値を下げるような真似しやがったら、
私が手前らのナニをぶった切ってやるから覚悟しとけ!!」
『へへへ、心得てまさあ。おら、とっとと来ねえか』
「そんな、約束が違う!」
「何の事だ?」
「言ったじゃないか、姉さまに酷いことはしないって」
マリクはその遣り取りを聞いて驚愕した。
自分が女海賊の言うなりになる代わりに、姉には手出ししないと誓った筈ではないか。
彼の詰問を、女海賊の一つしかない目が嘲笑した。
その瞬間、少年にも自分が欺かれた事が分かった。
「くそっ!」
自分の下に横たわるガレーナに掴みかかろうとした時、
逆に少年の腕を掴み取った女海賊は、瞬時に体を入れ替えた。
閨での組み打ちの経験については、二人を比較する事すら愚かしい。
結合状態のまま相手に跨る格好へと転じ、少年を押さえつける事などガレーナには朝飯前だった。
161 :
隻眼の鮫:2006/12/17(日) 01:16:23 ID:l5JPmezY
「君に一つ教えておくことがある」
「離せ、この嘘つき!」
「我々海賊はね、海の仲間以外の連中には誓いを破っても罪にはならないんだよ」
「離せ離せっ、嘘つき! 人殺し! 悪魔!」
両手を女海賊の手で押さえつけられつつも、マリクは脱出しようともがき続ける。
足腰をくねらせて何とか逃れようとするが、そう容易く獲物を逃す鮫では無い。
繋がったままでのその行為は、むしろ相手の下腹に心地よい快感を与える以外何の効果も無かった。
「腰使いもなかなか素質があるな。ただ突き込むだけじゃ女は悦ばないんだぞ」
「この呪われた海賊っ、絶対許さないぞ!」
「ふふふ、怒った顔も可愛らしいな。お詫びに最後までしてやろうじゃないか」
「あうぅ!?」
その宣告と共に、マリクの性器は締め付けられた。
膣壁がまとわりつく感触に、少年は自分を騙した女海賊を罵ることを忘れた。
「そら、今度は私が動いてやる」
「ああぅっ!」
ガレーナの腰が上下に動くと、マリクは官能の悲鳴を上げた。
再開された交合にうめく少年の声も、女海賊の耳には心地よかった。
そしてまだ成長しきらぬ男根は奥まで届きはしないが、胎内を強く擦り上げるには事足りる。
若々しい肉体が与えてくれる快楽は、女海賊にとって満足のいくものであった。
初めて味わう女悦に、マリクは長くは耐えられなかった。
こみ上げる射精感を抑える程の経験は彼には無い。
「あっあああぅーー」
憎むべき女海賊の中に盛大に射精し、マリクは生まれて初めて悦楽を味わった。
・・・・・・・・・
162 :
隻眼の鮫:2006/12/17(日) 01:17:11 ID:l5JPmezY
「マリクーっ!」
「姉さま!」
波止場で引き裂かれる姉と弟を、周囲の人間は誰も気に留めた風は無かった。
『泊まる船舶の一割が海賊で、二割は奴隷船、三割は密輸船、残りの船は何でもやる』
そんなこの街の港では、似たような光景は三日に一遍は起きている。
『大喰らい鮫』号から降ろされた姉弟は、そうして別々の倉庫へ連れて行かれたのだった。
「今回も大漁だったなガレーナ。『日月を飲み込み、且つ吐き出すもの』の恩寵篤く何よりだ」
禿頭の老人が収穫物の目録に目を通しながら、女海賊にそう言った。
海上で手に入れた獲物は、そのまま市場に出す訳ではない。
適当な買い手が見つかるまでは、港の倉庫に保管しておく必要があるのだ。
この老人はその倉を幾つも持つ蔵主であり、同時に港の顔役であり、引退した元海賊でもある。
「姉の方はまだ処女だからね、競にかける時に破かれてたら賠償を請求するぞ」
「ああ、言われんでも承知してる。弟の方は?」
「弟も後ろは処女だ、男にはなったが…
私たちが海に出てる間に、何か変わったことは?」
「一つある、西方への大遠征が始まるらしい。何でも五十万って数の兵士が動くって話だ」
「へえー、戦争かい」
ガレーナは老人の話を関心が無さそうに聞いた。
「…興味が無さそうだな」
「まあね、陸の奴らが何しようと私たちには関係ないよ」
「そんな事も言ってられないぜ。武器も資材も値上がるし、船の行き来にも影響が出る」
「ふん、海坊主の親父も船から降りて塩っ気が抜けたかい?
どんな時でも海から船が消える事は無いぜ。むしろ獲物が高く捌けるじゃないか」
この時のガレーナの認識はその程度の物であり、それは多くの海賊に共通する認識でもあった。
「お頭ー! まだ話はつかねえんですかーい?」
「おう、今行く! じゃあな親父、後は頼むよ」
「ああ、任せとけ」
預り証のサインを確認すると、ガレーナは外で待つ手下と合流した。
命を海に落とさずに港に帰って来れたのならば、まずやる事は酒と女だ。
金さえあれば、この街ではどちらも手に入る。
女も、男も、処女も、童貞も、死体も、人間以外でも、ここの色町で出来ない事は無い。
それを支えているのが彼女たち海賊でもある。
奪った積荷は捌けていないが、一遊び出来る位の金は交易船から奪えた。
行きつけの酒場でとりあえず乾杯した後は、各々娼店へ繰り出すのだ。
この享楽が無ければ、海賊はとても生きていけない。
もちろんガレーナもそっちの趣味の手下を連れて男娼窟で豪遊するつもりである。
『獲物さえ居なくならないのなら、陸の上なんかどうとでもなっちまえ』
そう豪語できる事こそ海賊の矜持であり、海の上以外で生きられない者たちの実感だ。
これからも海の神々が自分たちに糧を与えてくれる事を、彼らは疑いもしなかった。
だが、陽気な海の悪魔たちが自由に暴れまわる事の出来たのは、この年が最後となるのであった。
(終わり)
163 :
投下完了:2006/12/17(日) 01:18:37 ID:l5JPmezY
スレタイでは
>>女剣士・騎士、冒険者、お姫さま、海賊、魔女、何でもあり。
となってるけれど、海賊や魔女は出てきてないと思った。
そこで出てこないなら出せばいいじゃないか、と思って作成。
今回はかなり文章がくどいですかね。
海賊っぽいところを描写しようとしてみたんですが。
乙
楽しませてもらったよ
エロが少なめだけど、読み物としてしっかりさせてる漢字がいいね
小説書きの経験が多そうな感じ
本音を言えば、少年と御頭のやり取りはもうちょっと見たかったな
GJ!女海賊読みたかったんだ。
エロにも金にも貪欲なところがいいね。
文章も読みやすかったよ。
面白かった!
しかし、最後の文章が気になったぜ…
なにが起こるかwktk
>>149 隷妃双奏がオススメですお
ぐぐればすぐ見つかるので解説はしない
>>163 GJ、たまには攻めヒロインもいいね。
なにか一波乱待ってそうなラストだけどwktkして待ってろってことなのか
169 :
163:2006/12/17(日) 16:46:05 ID:l5JPmezY
はい、その通りです。
なんか異様に最後の文が気になった。
とりあえず海賊達が色んな意味でぶっ壊れてくれると痛快
172 :
163:2006/12/17(日) 23:04:18 ID:l5JPmezY
感想を書いて下さった方、ありがとうございます。参考になります。
ラストの文についてご期待頂いて申し訳ないです。
実は「隻眼の鮫」の続編を考えてあったという訳ではないのです
「隻眼の鮫」は単体でも読んでもらえるよう、文中での描写を控えてありますが、
魔王のサーガの外伝的な世界設定で作っていました。
ただ何時までも光と闇、妖精や戦鬼の話じゃ飽きられるかな、と思ったのでそういった記述は避けました。
ラストの一文は、光と闇の戦争に海賊たちも巻き込まれていく… という暗示のつもりでした。
時期的には第一話の直前、闇の軍勢による西方遠征の号令が発せられた頃の話です。
「五十万の兵士が西方へ遠征」と海坊主が話していたのはその為です。
魔王の話から切り離して、海賊都市物語とかも造れそうですけどね。(エロさえ考え付けば)
保管庫にスレpart2が格納され始めたようですね。
管理人さんに感謝です。
感謝です
(・∀・)人(・∀・)ノ ヽ(´∀` )))感謝です
魔王VS女海賊も面白そうだね。
ストーリーを思いついたらぜひ書いてください。
投下待ちのオレ様からの質問だ。
SSを書く時に、登場人物の顔ってあるよな
芸能人、例えばオレ様の好きな松嶋菜々子だ、
どうやって表現してくれるんだ?
顔と書いたら(@_@;)と出たオレ様には到底無理な話だから、お願いします。
次。
ここを見る奴のなかにロム専はいるか?
みんな書ける奴なのか?だとしたら俺は言いたいね、
いつもありがとうございます
ロム専ですが、いつも感動してます
俺の仲間だっているよな?
他スレでたまに書いてるけどここだとロム専。
いつも投下がスンゲ楽しみ。キュンキュンムラムラしながら読んでる。
>顔の表現
自分は使い古された表現ばっかり使っちゃうな。
とりあえず顔の表現つっても自分は目とか鼻とか部分の描写する。
ツンツン美人系なら「涼やかな切れ長の目元に、高い鼻梁の」とか
かわいい系なら「ぱっちりとした瞳はいかにも愛らしく」てな感じで。
ただ177が言ってるみたいに松嶋菜々子だって分かるようにするのはムズいと思うなぁ。
一応書いてみたけどこんな感じですか先生!
『整った顔立ちは清楚でおとなしやかであったが、はっきりとした眉や光を宿す瞳は芯に強いものを秘めていることを感じさせた』
犬神家のイメージでやまとなでしことかの菜々子はまた違うけど。
にしても松嶋菜々子みたいなヒロインが出てくるファンタジーSSてどんな話なんだろう。
前スレの「チアニ」の続きを投下します。10レスです。
続き物ですので、出来ましたら、
前スレの「シーア」「ルーゼン」「チアニ」から読んで下さい。
180 :
ディットル:2006/12/21(木) 01:01:44 ID:c209ZuSg
シーアは、ディットルが刑吏と一緒にいるのを見て、こみ上げる笑いを飲み下した。
刑吏が罪状を読み上げているのに、当のディットルといえば、少しも注意を払わず、
シーアを見つけて、嬉しそうにひらひらと手を振る。
この憎めない同僚の騎士は、近衛一の美男で、女たらしで、たびたびアリスン監獄の
お世話になっていて、その回数をことあるごとに吹聴するのだ。
武芸大会が三日後に迫っていて、どこも忙しいのに、ディットルは相変わらず、と
愛嬌たっぷりに片目をつむった彼に、シーアは微笑した。
「ディットル、今度はいったいどこの伯爵夫人の名誉をかけて決闘したの?」
シーアは近づいて、軽口を叩く。
「んんー。ご婦人の名誉がかかっているから、たとえ陛下のご命令であっても
それは言えないな」
「はいはい。それで……、アリスン監獄に入るのは何回目?」
言って、二人で吹き出す。聞かなくても、近衛なら皆知っている。二十三回目だ。
「夕方には戻れそう?」
「あ、シーア、その件なんだが、内治部に行って、釈放書をもらって来てくれないか?」
シーアは一瞬たじろいで、黙り込んだ。
考えるふりをして、額に手を当て、もっともらしく断れる理由を探す。
「事務方でも近習でも、誰かいるでしょう?」
「武芸大会の準備で出払ってる。頼むよ。夜に約束があるんだ」
「逢引の約束? 分かったから、いってらっしゃい」
シーアは早々に諦め、笑顔でディットルを見送った。
結局のところ、ディットルをアリスン監獄に入れたまま放っておくことは出来ない。
武芸大会の開催、そして、その最終日に王太子殿下の婚約の正式発表がある。
他にも緊急の仕事は幾つかあって、近衛は今、手の空いている人間がいない。
シーアは深呼吸して覚悟を決め、内治部のある庁舎棟に足を向けた。
*
181 :
ディットル:2006/12/21(木) 01:02:44 ID:c209ZuSg
最近、ルーゼン殿下に関わりすぎているかもしれない、とシーアは思う。
ここも人が出払っているのか、閑散とした内治部の奥、第二王子の執務室は明るくて、
"智の王子"の美意識を反映した趣味のいい部屋だった。
でも、無用心にもほどがある、と見渡して、シーアは顔をしかめる。
部屋の中は、彼一人きりで、護衛も側近もいなかった。
廊下の衛兵は執務室の扉から遠くて、何かあってもすぐに駆けつけることが出来ない。
黒光りする重厚な仕事机の向こうで、書類に集中するルーゼンは、うつむいたまま
目を上げず、ちょっと待て、とだけ言って、片手を上げてとどめる仕草をする。
いくら近衛育ちでないといっても、部屋に誰が入って来たか、確認さえしないとは、
さすがに呆れ、やきもきしてしまう。
そして、シーアはその心配を自覚する。
やはり深く立ち入りすぎている、と。
「シーア!?」
書類を読み終わったルーゼンが、やっと目を上げてシーアを認め、ぱっと顔を輝かせた。
部屋には他に誰もいないとはいえ、感情をあらわにして手を差し出す第二王子に対し、
シーアは、その場でゆっくりと腰をかがめ、騎士の礼をとった。
「アリスン監獄の釈放書が、こちらに来ていると聞きまして」
「あ、……ああ」
少ししおれたルーゼンに、シーアはやわらかい表情を作る。
近づいて、手を重ね、首を傾け口づけを交わした。
歯の間から差し込まれる生ぬるい舌を迎えてなぞり、曲げられた先にこすりつける。
「……シーア…」
引っ張られるまま、ルーゼンの足の間に、横向きに腰を下ろし、体をひねって
再度深く繋がるようなキスをする。
もう、嫌悪感はない。
背中から横腹に巻きついて重みを支える腕や、髪を撫でる優しい手と同じように、
ルーゼンの肉体が自分の体の中に入るのにも、いつしか馴染んでしまっているのを、
シーアは身にしみて強く感じていた。
182 :
ディットル:2006/12/21(木) 01:03:44 ID:c209ZuSg
――だから、あまり会いたくないのに。
「近衛は忙しいのか? その、ずっと来ないから」
ルーゼンは嬉しそうに髪を一房づつもてあそび、跳ね散らかしてくしゃくしゃにする。
「お忙しいのは、殿下も同じでしょう?」
シーアは両手を彼の頬に添えて、顔の輪郭を見定めた。
「少し、痩せたようですね」
シーアがルーゼン邸に行かない時期は、すぐにそうなると分かってはいたが、
いつもと違って日の光で見るから、痩せて見えるのだと思いたかった。
彼は照れくさそうにして、顔を近づけ、ところかまわず唇を当てる。
「ん、ああ。お前がいないと眠れないから」
「……殿下」
抱き寄せられるより、キスの雨より、そんな告白が一番困るから、
シーアは顔をそむけ、彼の胸に手を当てて押し返す。
「シーア、もう少し……」
ルーゼンは、シーアを抱く手に力をこめて引き止め、彼女の肩に顔をうずめた。
「お前、馬臭いな」
彼女は思わず微笑んだ。
「今日はずっと馬場におりましたので」
臭いが移ります、と立ち上がろうとするのを、やはり引き戻されて座り込む。
「構わないから、……シーア」
求められるまま、シーアは口づけに応じた。
突き放すか否かの判断が、どんどん曖昧になり、しかも、そうすべきと思っても、
実行するのが容易でなくなってきている。
脇腹に手を差し入れて、体のぬくもりを共有し、汗とは違う匂いの汗をかく。
足の下にある彼の膝の丸い場所が、彼女の膝の内側をこすって熱が生まれ、
下半身に溜まってうごめく。
183 :
ディットル:2006/12/21(木) 01:04:44 ID:c209ZuSg
ルーゼンが唇を離して、シーアの頬に触れ、覗き込んだ。
「馬術部門の優勝候補だそうだが……」
一拍置いて、見下ろす薄青い瞳がためらい、のどが上下に動いた。
「その、優勝して、メダルを取ったら、……俺にくれないか」
「メダル?」
思いがけない言葉に、シーアは目をしばたいた。
彼の足の間から滑り降り、すがりつく手を振り払うように向き直る。
武芸大会の各部門の優勝者の誉れであるメダルは、リボンのついた、やや小さい
純金の徽章だ。
獲得者がその恋人や妻に贈り、公式の宴席などで、その胸に燦然と輝くことにより
二人の関係をあからさまにする。
「誰にも見せびらかしたりしない。手元に置くだけだから」
「いけません」
こればかりは承諾できないと、彼女は重くのしかかる感情を隠して、ルーゼンの
必死の申し出をなるべく穏やかに、しかし、断固として一蹴する。
「……シーア」
追いすがる目線がなおも懇願し、シーアに食い下がった。
シーアは耐えられず、まぶたを閉じた。
心にふたをして、諦めさせることの出来る言葉、突き放すことの出来る言葉を模索する。
「近衛では、特定の相手がいない者は、忠誠の証として近衛長官――王太子殿下に
捧げることになっていますので……」
「王太子殿下…、か……」
ルーゼンは、すねたように視線を斜めに落とし、うわずったしゃがれ声で返した。
「兄には他に捧げてくれる近衛がいる。俺が、俺の騎士にもらってもいいだろう」
「殿下、わたくしは王の近衛です。殿下の騎士ではありません」
シーアは有無を言わさぬ口調で言い、目的を達して早々に帰ろうと、彼に背を向け、
机の上の書類に手を伸ばした。
184 :
ディットル:2006/12/21(木) 01:05:49 ID:c209ZuSg
「…………俺が兄なら、お前の忠誠心は信じないがな」
不穏な空気を察し、書類をめくる手が途中で止まった。
「"弟殿下はご存知ない。戦に出られたことがなければ知り得ない。
戦場がどのようなものか、背中を合わせて戦った戦友がどういうものか"」
ふと言葉が口をついて出る。
――あの血と煙と悲鳴を、ルーゼン殿下は知らない。
「なんだ、それは?」
「父の……弁ですが、でも……」
咎められ、言いよどんでひらめく。
「兄殿下の……」
――兄殿下のために、私の忠誠心を疑っているなら。
「ふん、お前と兄が戦場でどうだったかなんて、俺には分からないし、知りたくもない」
背後からのとげとげしい声にさえぎられ、彼女は溜め息を漏らした。
「殿下、その短気なところは改められたほうが良いですよ」
そして、しばしの沈黙。
ルーゼンは何も言わずに黙り込み、シーアは釈放書探しを再開する。
紙のこすれる音が、やけに大きく聞こえ、やがて呼びかけられる。
「シーア、……」
気配がして、ルーゼンに後ろから抱きすくめられた。
身をよじって避けようとすると、腰に固いものが当たった。
それは、たちまちのうちに膨れ上がり、彼女に先ほどの熱さを思い出させる。
「殿下、これにサインを」
シーアは努めて冷静を装い、ようやく抜き出したディットルの釈放書に、ざっと目を通した。
ルーゼンは聞いているのかいないのか、体を密着させ、さらにシーアの髪をかき上げ、
うなじに息を吐きかけて、かじり、うねうねと自在に舐め回した。
シーアは自分の肌が赤く染まっていくのを自覚する。
185 :
ディットル:2006/12/21(木) 01:06:45 ID:c209ZuSg
「…っ、サインを」
羽ペンの先をインク壜に浸して、彼の手に押し付ける。
「ああ……」
「…っく」
吐息まじり生返事が、耳の後ろの敏感なところを襲い、シーアはあえいだ。
ルーゼンが書類の内容に頓着せず、言われるままにサインしたことを、
たしなめる言葉がうまく出ない。
「ん、殿下、…見もしないで、ぁ……サインなさるのは、感心できない……行為です」
「……ああ、そうだな」
耳たぶを粘りつくように甘噛みされて、体の火照りを抑えられない。
「シーア、これならくれるか?」
「……っん」
股間に割って入ったルーゼンの指に、布の上からその熱の中心を引っかかれ、
たまらず体が反応する。
「は、ぁ、……あ」
前に後ろにとこすられて、体中の力が抜け、机に両手をついて姿勢を保つが、
シーアの抵抗はそこまでだった。
剣が落とされ、帯に手がかかるも、関節ががくがくして彼を止められない。
「こんな、…こんなとこ…ろで……。誰かが、戻ってきたら……ぁ」
「来ない。まだしばらくは戻らない」
臀部がむき出しになり、涼しい空気がかすかに流れ込んで、陰毛をそっとくすぐる。
その実際以上に冷たい風の肌触りが心地よく、局部に血が集まって腫れぼったく
なっているのを痛感する。
「……では、無用心で、す」
「もういいから、……黙れ」
押さえ付けられて崩れ、机に伏せる。
つかまれて腰が浮き、背中が弓なりに反る。
「ぁ……やっ、殿下……」
衣擦れの音がして、ルーゼンの熱くて固いものが直接触れた。
尻の左右の間にルーゼンの指先がめりこみ、引きつれて甘く痛む。
186 :
ディットル:2006/12/21(木) 01:07:21 ID:c209ZuSg
理性が彼を拒否するべきと命令する。
こんなところでまじわるなど、正気の沙汰ではない。
けれども、淫靡な欲情は誤魔化せない。
それを体の奥からにじむ粘液が証明していた。
「ん、……」
二、三度の内腿をこする感覚に震えて目をつむる。
ルーゼンは入って来ない。
あふれだす愛液をからめて、ただあてがって往復し、先端で突付くだけ。
「あ、…あっ、……ぁん、殿下…、……、ぁ」
いいようにもてあそばれて、我慢ができない。
導かれるままに両足を開け、濡れた部分を突き出して、その瞬間が訪れるのを待ち望む。
自分が感じて、喜んで、それを望んでいると認めたくはなかった。
邸なら言い訳することが出来る。必要なことだからと。
だから、ここで会いたくなかった。
ただルーゼン殿下を利用しているだけだから、ただの時間稼ぎなのだから、
深入りはしないと、自分に言い聞かせるのが難しくなる。
「入れるぞ……、シーア……」
「んん……ん」
ついにルーゼンが、じりじりと押し開いて侵入する。
入り口が彼の雁首の形にひしゃげて包み込む。
その緩慢な動作に、どれだけ入ったか分かる気がした。
「…ぁあ!」
前から潜り込んだ手が、シーアの核をつまんでなぶった。
シーアは、自分の声に自分で驚き、片手で口元を覆った。
釈放書の端が肘の下で押し潰され、ぐしゃぐしゃに折れ曲がる。
かろうじて思考をつかまえて、扉の厚さと衛兵までの距離を思い出そうとして挫折する。
187 :
ディットル:2006/12/21(木) 01:08:19 ID:c209ZuSg
「んく、…ぁ、ふ」
一突きで思考が砕ける。
手を伸ばして机の向こう側のへりをつかみ、叫ぶのを我慢して涙目になる。
「……ん、くぅ」
ゆっくりと引き抜かれるのを感じ、そしてまた埋められるのを感じる。
ルーゼンが中で充満し、飽和し、どくどくと脈打つ感覚が自分のものか彼のものか、
区別のつかないほどだった。
乳首が立って服にかすめ、震えるような痛痒感を覚える。
全身がぼってりとした快感に支配され、もどかしくてたまらない。
からっぽの場所に奥まで埋めたい。
服を脱ぎ捨てて、隙間なく抱き合って、叫んで、持て余す体を解放したい。
ルーゼンが満足げな息を吐いて、近衛の制服の下に指先を忍び込ませた。
彼女の肌を撫でまわし、腹部を何度か軽く叩いてかすかに震動させた。
その震動は、とん、とん、と体の中心にまで響き、中にあるルーゼンの熱さ、固さ、
存在感を際立たせて感じさせた。
「シーア、俺を感じるか?」
「ん、……んっ」
シーアは臀部を突き上げ、肩越しに振り返って、ルーゼンを見上げた。
もっと感じたいと、もっと欲しいと思っているのを、彼に伝えたかった。
「……シーア」
ルーゼンが安心したように口角を上げ、シーアの望むように動きはじめた。
「あ…んぅっ」
最初はゆっくりと、そして少しづつ速く。
「ん……、ん、……んむ、……ぁ、…ぁん、……ぁ」
机に這いつくばり、彼の荒い息遣いに合わせて腰を振る。
脱ぎたいと思った服さえも肌を刺激して、悪寒にも似た快感に体中がぞくぞくする。
「………ん、む…ぅく、…ん…んっく、ぁん」
シーアは、自分のいる場所もその目的も忘れ、求めて、求めて、求めて……。
188 :
ディットル:2006/12/21(木) 01:09:44 ID:c209ZuSg
ふいに扉の向こうから、朗笑が響いた。
耳慣れた王太子殿下の笑い声と、相手はおそらく廊下の衛兵の声。
――王太子殿下が? ここへ?
シーアの全身から、さっと血の気が引き、うってかわって冷たい汗が吹き出した。
「ぁ……殿下…、……あ、兄殿下、が…」
「くっ、……」
一時、動きを止めたルーゼンが、のどの奥から声をしぼり出してうなった。
「…かまうも…の、か」
――かまわない?
シーアは、一瞬めまいを感じ、関節が白くなるほどこぶしを握り締めた。
――ダメ、かまわない、このまま、だめ、つづけたい、だめ、だめ、駄目。
*
王太子が弟の執務室に入ると、二つのしかめ面が彼を迎えた。
一つは彼の忠実な近衛騎士。
この多少過保護な女騎士は、たとえ王宮内であっても、王太子が護衛をつけずに
歩き回るのを、ひどく嫌がるのだ。
賢明にも彼女は、今は何も言わず、すっと控えの位置に下がったが、
つい昨日も、こんな時期で、しかも武芸大会開催で身元の分からない人間が
入り込みやすくなっているのですからと、叱られたばかりだ。
そして、もう一つは彼の幸薄い弟。
少し前に仲違いをして以来、弟は彼に対して小難しい態度を崩さない。
もちろん、不仲の原因が同じ部屋にいて、二人きりでいるのを邪魔したのだから、
今はことさらにとげとげしくなっている。
それでもルーゼンは億劫げに立ち上がって、作法通りに兄王子に一礼した。
189 :
ディットル:2006/12/21(木) 01:10:44 ID:c209ZuSg
「兄上、何かご用ですか?」
「いや、お前に用ではなく、シーアを呼びに来たんだ」
ルーゼンの顎の筋肉がピクリと動いてこわばった。
「王太子自らがそのような使い走りの用をされるとは、近衛ではよほど時間が
有り余っていると見えますね」
ルーゼンの皮肉げな言葉を、王太子は微笑んで軽くかわす。
「ああ、配下の者が有能で、よく働いてくれるからな」
「武芸大会のことで聞きたいことがあるので、もう少し彼女にいて欲しいのですが」
「悪いが、こちらも急ぎの要件だ」
王太子は即座に却下して、シーアと視線を合わせた。
彼女は、はっと目の奥をひらめかせ、真剣な顔つきでかすかにうなずき、
了解の意をこちらに伝える。
その二人の以心伝心ぶりが、ルーゼンにもっと険しい顔をさせたようだった。
「必要だったら、誰か遣わそう。シーア?」
王太子の問いかけに、シーアが落ち着き払って答える。
「近衛に手の空いている人間はおりませんが……」
「無理に誰かをよこさなくても結構です」
感情的で突き刺さるように鋭い声の弟に、王太子は溜め息をつく。
「ルーゼン、その短気なところは改めろ」
弟との会見を早々に切り上げ、王太子はシーアを引き連れて執務室を後にする。
廊下を歩きながら、彼は斜め後ろのシーアの足音をそっとうかがった。
父王や自分への忠誠心のあまり、シーアは自身のことをないがしろにする傾向が
あるのを知っているから、時々心配になる。
ガチャリと何かが扉に叩きつけられて割られ、二人は同時に振り返った。
しばらく執務室の内部に耳をすまし、重くしたたる水音が、ぽたりぽたりと扉をつたい、
水滴となって落ちるのを聞き、顔を見合わせる。
「インク壜、……だろうか」
王太子は小さくつぶやいた。
「……でしょうね」
シーアが悩ましげに眉を寄せた。
以上です。
読んでくださって、ありがとうございます。
また、前スレで感想下さった方々、感謝してます。励みになりました。
とても良かった。
展開は気になるし、エロも濃厚だし、心理描写にも引き込まれる。
続きも楽しみに待ってるよ。
良かったです。
自分もこういうのが書ければいいのに...
193 :
邂逅W:2006/12/21(木) 17:53:15 ID:Cyd8LAKA
がんがん投下があってうれしいかぎりです!
眼福の隙間に投下します。
194 :
邂逅W1/8:2006/12/21(木) 17:55:39 ID:7jnzrEyI
頭のどこかで誰かきた、と告げている。
せっかく眠りに入ろうとしていたのに、煩わしい。誰か、といっても城主しかありえないのだし。
寝返りをうとうとして、体が動かないことに気が付いた。
城主クンツも国王の一族とあって魔法が使えるらしく、前回もその前も言われるままに城主の要求に応えるしかなかったアビゲイルは、一切の努力を止める。
しかし、耳元に響いたのは聞き覚えのある別人の声だ。
195 :
邂逅W2/8:2006/12/21(木) 17:56:24 ID:7jnzrEyI
「注意力散漫にも程があるだろう」
アビゲイルの自由を奪っているのはタイロンであった。城主の魔法ではなく、体術で完全に動きを封じられている。
左耳のすぐ裏から響く声はからかいを含んでおり、悪童の笑みを浮かべた顔が想像できた。
「何しにきた」身をよじってタイロンと向き合おうとしたが、しっかりと体重をのせられていて、身動きがとれない。
「囚われの女神に夜這いを」
アビゲイルの溜息は深い。「不能のくせに、よく言う。城主が来る前に失せろ」
「・・・はっきり言うなぁ」タイロンがくつくつと笑う。耳元にかかる息がくすぐったい。
「モノを使わなくても、気持ちよくすることはできるんだぜ?」
タイロンの唇が項に当てられた。
アビゲイルの溜息はさらに深く。「好きにしろ」吐き捨てるように言う。
「男と寝て、快いなんて思ったことは、ないよ」
「・・・へぇ」目を光らせて満足げに口の端で笑うタイロンの表情は、アビゲイルには見えなかった。
ルーゼンもアビゲイルも大好きだよ。
197 :
邂逅W3/8:2006/12/21(木) 17:57:50 ID:7jnzrEyI
後ろから、アビゲイルの柔らかな耳たぶを口に含んだ。「本人も承知したことだし」
左耳をなぶるタイロンの唇は思いのほかやさしく思いやりに満ちていて、以外に心地よい。
飴玉を弄ぶように舌が動くたび、ゾクリとした感覚が脳天に抜けていき、アビゲイルは少々慌てる。
「・・・本気か?」タイロンは答えないかわりに、タイロンは押さえ込んでいたアビゲイルの両腕を起用に彼女の顔の前で一つにまとめあげた。
後ろからタイロンの右腕に腕枕をされたような状態で包まれるように抱きこめられたかたちだ。
下腹まで乱れた裾からそっと左手を差し入れられ、アビゲイルの鍛えられた腹筋にそって指がはう。
わき腹を行き来する手指の感覚に、腹筋が痙攣した。
「よく鍛えてあるなぁ。兵士のカガミ」タイロンののんびりとした賛辞に、思わず締めていた腹筋が緩んだ。
その瞬間を見計らったように、するりと手のひらが這い登り上になっている左の乳房に至る。
壊れ物を扱うように包み込まれる。アビゲイルには、タイロンの大きな手が吸い付いたように感じた。
「・・・あたたかいな」タイロンの言葉に、アビゲイルの頬に朱がさした。
首をそむける彼女の顔を、覗きこむように顔を寄せ、胸のいただきをそっと摘み上げた。
198 :
邂逅W4/8:2006/12/21(木) 17:58:45 ID:7jnzrEyI
その瞬間をどう表現すればよいのだろう。
アビゲイルは湧きおこった快楽を表現する言葉を持っていない。
雷でも喰ったような衝撃をうけ反射的に丸めていた背が反り返る。
ごつ、と鈍い音がした。
「ってぇ」跳ね上がったアビゲイルの後頭部で、タイロンはしたたかにあごを強打したようである。
横目でタイロンを窺うと、思いのほか近くで目があった。「・・・その」
アビゲイルにとっては、あいてしまった間がなんとも気まずい。
「・・・なんて言えばいいのか、その」やっと押し出した声はいつもよりかすれて、自分でも驚くほど艶かしい。
タイロンはしかめていた顔に悪童の笑みを浮かべた。ちろり、と自分の上唇を舐める。
唇が、横から回りこみ困り顔のアビゲイルの唇を捕らえる。
最初は触れるだけ。次にお互いの唇が触れたときには、自然と引き結ばれていた唇が開いた。
199 :
邂逅W5/8:2006/12/21(木) 17:59:37 ID:7jnzrEyI
お互いの咥内を舌で探り、歯列をなぞり、からめとり、貪る。
それは永遠のような長い一瞬だった。
やがて唇が離れ、放心状態で息の上がったお互いを至近距離で見詰め合う。
頭の芯が熱を持っているように感じるのは、首のねじれた無理な体勢のせいか、深い接吻の合間にもタイロンから与えられた絶え間ない乳房への刺激のせいなのか。
唇はうなじに移動していき、その感触に声が漏れそうになるのを、必死に押し殺した。
タイロンはそのまま、器用に唇をつかってアビゲイルの身に着けている布を解きにかかる。
いつのまにかアビゲイルの両腕の拘束は解け、タイロンの両手は後ろからすっぽりと彼女のささやかではあるが弾力のある胸を包み込んでいた。
200 :
邂逅W6/8:2006/12/21(木) 18:00:35 ID:7jnzrEyI
「・・・ぁ」
頂を指で弄ぶたび、本人の意思とは関係なしに押し殺した吐息がもれ、爪先や腹筋や体のいたるところが痙攣する。
やがて、タイロンは体を入れかえて、一糸まとわぬアビゲイルと相対した。
「綺麗じゃないか、アビゲイル」タイロンの視線を痛いほど感じ、アビゲイルはいたたまれなくなり、唇をかんだ。「・・・戯言を」
胸の前に取りはずされた薄布をかき寄せるアビゲイルの両腕はまたしてもタイロンに拘束され、大きく広げた上体で寝台に押し付けられる。
「ホントにきれいなんだ」
その時浮かべられたタイロンの表情。新しい悪戯を思いついた頑是無い子どものような得意げな顔をみて、アビゲイルは嫌な予感がした。
「自分の目で確かめてみる?」
201 :
邂逅W7/8:2006/12/21(木) 18:01:31 ID:7jnzrEyI
抵抗する間もない。
やすやすとアビゲイルの身体は持上げられ、身を捩りもがいてはみたものの、いいようにあしらわれたあげく落ち着いた先は鏡の前、だった。
タイロンに背をとられ羽交い絞めにされて為す術もなく全裸の自分を見つめるしかない、アビゲイルの姿が浮かび上がる。
鏡の中に現れたのは、見たことがない女だ。
普通の女性とは違い、よく鍛えられた筋肉でしなやかな肢体が彫刻されている。むき出しの肩や大腿はどこまでも白く滑らかだ。
つき出された胸には女性らしいまるみを帯びたシルエットの上に、はっきりと立ち上がっている頂が見て取れた。
引き締まった腹筋の下方には、髪の色よりやや仄暗い下草が続く。
瞳と唇は濡れ光っており、上唇がめくれて半開きだ。
タイロンのいたずらな唇が耳元で蠢くたび、眉が切なげに寄せられ、震える。
どこからみても発情期のメス、だった。
少なくとも以前、同僚と寝たときに窓に映し出された女とは同一人物には思えない。
202 :
邂逅W8/8:2006/12/21(木) 18:02:20 ID:7jnzrEyI
「ね?きれいだろ?」下から掬い上げるように両乳を包むと、鏡のなかの女の顔に血が登る。
胸の上で蠢くタイロンの指にいちいち反応する己の姿を目の当たりにして、アビゲイルは羞恥に顔をそむけた。
やがて、与えられる刺激は下へ移動させはじめ、時折ぴくぴくと痙攣するわき腹を通りずぎ、下草に指が絡まった。
そこははすでに充分に潤っており、指の動きにあわせてしっとりと露を含み、暖かく指を湿らせる。
指が動くたび、アビゲイルの背骨をふるえのようなものが駆け上がり、息つく間もない。
既に肢体は束縛をとかれて自由に動きが取れるはずなのだが、膝に力が入らなくなっていた。
アビゲイルの中心核をタイロンの指が摘んだとき、彼女の精神的な箍がはずれた。
自らの足で立つことができなくなり、全体重がタイロンにむかってしなだれかかる。
アビゲイルは倒れまいと力を込めきれない両手でタイロンの逞しい腕に縋りついた。
「・・・ぁ、うっ あぁっ・・・」
喘ぎ声が抑えきれなくなり、それでも精一杯抑えた声が室内に流れ始めた。
やっと、エロティックになって参りました。
一安心。
GJ!二人の神様ありがとう。
どっちのカップルにも幸せになって欲しいなあって思う。
両方GJ!!!
読んだばっかりだけど早く続きが読みたいなあ
GJ!
「男と寝て、快いなんて思ったことは、ないよ」
アビゲイル、可哀相…
タイロン、超ガンバレ!! 男を見せろ!
ルーゼンとシーアの人は文章がスマートかつ洒落ているよね。
とっても読みやすくてエロい。
ちょっとした短編としての完成度が高いからいつも楽しみにしてます!
シーアの心理が少しづつ出てきて益々面白くなってきたな〜
投下待ちのオレ様からの謝礼だ。
つ旦 旦
GJです!!俺にはそれしかいえません。
>>178 犬神家の菜々子か!すげえな。GJだ。つ旦
これもまた疑問なんだが、皆様あれなのかい?
具体的、というかはっきりした誰かモデルがいて、それを表現するのかい?
大体こんな感じ・・・ってなイメージで徐々に固まってくものなのかい?
そしてオレ様は気づいたんだ、
こうして雑談でもしていれば、勉強になるし、投下待ちの苦しさも薄れるってことにな!
リクエストっていいのかな。
古いけどグルドフとアリューシアのが読みたい
顔のモデルとかはハッキリ言って全くといって良いほど居ない。
造形的に説明するよりも「気の強そうな釣り目」とか「ほにゃっとした笑顔」とか印象で書くなあ。
背景とか状況とかを書くときは
>>209の言うとおり。
まず情景を頭ん中に克明に描いて、それを読み手の頭に描くように出来るだけ細かく文章化してかんじかな。
三次元のモデルは居ないけど、
主だったキャラの容姿は頭の中にある。
言い換えれば、コイツを漫画化した場合どんな顔で描こうか、という具合に考えてある。
それを文章に直す感じ。
でも人の容姿を表現するときは、余り奇をてらっても「何それ?どんな顔なの?」って思われるかも。
「目鼻立ちが整っている」とか、「憂いを含んだ目元が悩ましい」とかベタな表現でいいのでは無いでしょうか。
うううううん、どうかなあ。
私は、書いているうちにイメージが固まっていく感じかな。
自分は先にシーンごとのセリフとイメージ、雰囲気から浮かんで
そこに肉付けしていくので、登場人物は成り行きに合わせていくかなあ。
例えば、松明に照らされるなら、彫りの深い顔がいいか、とか。
特に最初にこんな人ってのはいない、かな。
個人的に松嶋菜々子は、女神か女王(姫君ではない)、かな。
やまとなでしこ風に、ちょっと型破りな感じがいいかも。
あ、ごめ思いついた。
若い後妻で、「どうして?どうして、女が戦えないとお思いになるのかしら」
と優雅に、でも無邪気に笑う女王。
口元に手をあてて、失礼ではないんだが、周りを絶句させる発言をする若き女王。
「女子は、総じて弱いと決まっております」と言われて、
「あら。」意外、と笑って。
「あなたは女を知らないんではなくて?」と微笑む感じ。
試してみる?とでも言うように。
ポーク切り失礼。
>>190 GJです。
いつかシーアがマジでルーゼンを好きになるといいな。
そう思わずにはいられない。
ルーゼンがんばれ。超がんばれ。
>>203 そ、そこで切るかーっ!?
>>210 ちいさく同意。ついでに情報。
お姫様スレ4の374-398にマルゴットの姉姫の話があるよ。
アリューシアとグルドフもちょこーっとだけ登場する。
>>203 クリスマスも終わるし、そろそろ続きを…プリーズ。
投下待ちの間に。
いつもと文体を変えて書きました。
ご意見ご感想いただけると、嬉しいです。
では、以下から。
219 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:01:23 ID:L9X1sEJW
叩き上げのルナにとって、近頃の軟弱な男共ほど苛立つものはない。
所詮は多勢に無勢、ルナの味方なんてほとんどいないのだ。
思い至ってルナはため息をつく。
任務を終え、大食堂での騒がしい食事も終え、普段ならこの時間を読書なり、愛馬の手入れなり趣味に費やすところだが、今日はそんな気分になれない。彼女は自室でただぼんやりとしていた。
気合のない掛け声を続けた新入りの男・・・・クウリ。
「まあ、ちょっと扱いづらくはあるが、実力はある男だ」
上長に半ば押し付けられるような形で、引き受けた訓練生は、まことに筋がよい・・・・・
と本人もわかっているのらしく、際立って生意気だった上に屁理屈がましく、謙虚のけの字もない。
要するに、全く立場を解っていない、といった様子だった。
扱いづらい、とかそういう問題ではない。
ルナは初めて彼を見たとき、これは・・・ため息をついたものの
なるほど、お荷物を押し付けられたわけか、とは気づいたが、ならばと逆手にとってこいつを育て上げて見せよう、と気合を入れたくらいだ。
今までのルナの評価は功績に比例していない、だからこれはいい機会だ、と思った。
街中で、隊員が不始末を犯した時のことを思い出す。
隊長が男であれば、「たまってるんじゃないのか?部下も、お前も」といったような軽口で済む話、
これが、ルナの部下となれば、そうはいかなかった。
ここぞとばかり、「やはり、女ではな」示し合わせたように、一様に周囲は眉を顰めた。
あの時、私は思った、回りの男と同じでは、認められないと。
むしろ、一挙手一投足に隙をうかがわれているようなものだ。
ならば、他の者が根をあげたこの男を育て上げて見せようじゃないか、と思った。
確かに私は決心したのだ。
三ヶ月立った今、表面上ルナは相変わらず振るってはいた。
内面では、思い通りに行かないもどかしさ、空回りにここのところ、振るうほど余計な疲れを感じてもいる。
暖簾に腕押し。
豆腐にかすがい、
ぬかに釘。
雑草は、死なない。
厳しくすればするほど他の者への指導が疎かになり、クウリには基礎中の基礎を指導するから、
クウリ一人に周りが引きづられる形でレベルは下がり、統率がとりづらくなっていくばかりだ。
経験から得た対処法も出し尽くしてしまっていた。
ルナは人一倍忍耐力もある、と自負していたが、
それでも今日は耐え切れなかった。とうとう爆発してしまった。
そんなところに女性が、と彼は言ったのである。
220 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:03:11 ID:L9X1sEJW
雲ひとつ無い空の下、日差しは眩しく、遮るものは何も無い。
ルナの乗った白馬も、心なしかうなだれて歩いているようだ。
彼女は、整列し素振りする訓練生たちを馬上から見渡しながら、その軽装をうらめしく見た。
訓練生である彼らは、逆に彼女の堂々とした鎧姿をうらやましく思っていたのだったが、
真夏の鎧の中の暑さと言ったらない。それが実戦用と比べはるかに軽かったとしても、だ。
所詮新入りに毛の生えたような彼らには耐えられたものではないだろう。
ルナは、この鎧こそお前らとの違いだ、と一瞬にせよ恨めしく思った自らを戒めた。
そのとき、遠く、鳶が鳴いた。
彼女は耳で反応した、素早く隊員を目で確認する。
予想通り、訓練中にもかかわらず何人かが手を止め、空を仰いだ。
60人程度を束ね、それぞれ20人に一人分隊長を置いてはいたが、彼らに信用を置いてはいなかったルナは、
馬上から、一人ひとりに目を光らせていた。最も気の抜けやすい基礎訓練中だったこともある。
「ちっ」舌打ち。あれほど気を抜くな、と言っているのに。
そちらに馬を向けながら、かくもレベルは下がるものか、と思う。
ルナが新人だった頃と、どうしても比べてしまう。
百歩譲って、毎日の訓練の基本は相手のないものだ、彼らの気の抜くのもわかるとして。
だが、平和だと言う中いつ襲撃を受けないとも限らないのだ、その緊張感がまるでないというのは懸念であり、
ましてや、騎士としては珍しい女性であるルナの部下であれば、微かな失態も話題になりかねない。
理不尽だ、ルナはだからムキにもなっているのかもしれない。
訓練生の彼らに、指導員が悪かったのだ、と言い訳を与えてはならない。
一人残らず、次回の兵士格付けに合格させなければ。
ルナは馬の腹を軽く蹴り、歩調を速めさせた。
221 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:04:05 ID:L9X1sEJW
鳶に釣られて空を仰いだうちの一人の隊員の横に立つと、緩んだ剣捌きを咎め、
「気を抜くな!」とルナが怒鳴った。
覚えのある隊員は、肩を竦めるまもなく、最初から気合を入っているようなそぶりを見せた。
そのときまた鳶は啼いた。
誰も気の散った様子はない・・・・奴を除いて。
ただ一人、クウリだけは、態度を改めなかった。彼はまた空を見た。
「クウリ!」
ちっ、と聞こえるようにしたうちをしたルナの目をまっすぐに見あげ、やれやれ、といったように
「なんでしょうか、隊長」
彼の返答に、ルナはひらりと馬から飛び降りた。
身のこなしとは逆に、がしゃり、と彼女の重々しい鎧が音を立てる。
足元に砂埃が舞った。
たちどころに道をあけた隊員たちの間を、ゆっくりと距離を置いて彼の前へと立つ。
「お前の、その態度は?」
クウリは持っていた剣を鞘に納め、一礼をしたが、顔を上げるとすぐ、
「その態度、とは・・・?自分には、解りかねます」
直立しているものの、面倒くさそうに答えるところが余計に腹立たしい。
ルナに対して、舐めきっているのは明らかである。
隊員たちは固唾を呑んだ。
「・・・・お前はどのような意識で、訓練に当たっているのですか?」
ルナはここで口任せに怒鳴るより、冷静に詰め寄った方が得策だ、と計算した。
「相手によって、攻撃を変えるのは当然、今僕が切るのは空気です」
ルナはその意味にすぐ気づいた。
「・・・今現在、相手は空気であるから、その所作で事足りる、と?」
「そのとおりです」
座学で習う「見極めよ、攻撃は相手によって変え、無駄に体力を消耗すべきでない」を皮肉っている。
これが、よりどころとなり根拠ともなったようで、普段よりも好戦的だ。
意味に気づいた隊員たちのあいだにも、どこからともなく、しのび笑いが広がった。
「そうか・・・」
60人、という大人数の中、クウリとルナの周りを、遠巻きな小波のように騒ぎが広がっていく。
整列は崩れていった。
ことを面白がり、集まった同僚たちの目にさらされて、彼は得意げなようすだ。
気づいたときには誰もが訓練などそっちのけで、成り行きを見守っていた。
彼を包括する分隊長ですら、隊員に混じって傍観しているようだ。あとできつく訓戒しなければ、と思いつつ
押し付けるように馬の手綱を近くの者に持たせると、ルナはクウリを見据えた。
時間の無駄だ、苛立ちを辛うじて堪えながら、二三歩近づき、
「では、相手によってはその限りではない、と?」
ルナは低く抑えた声で問うた。
222 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:06:24 ID:L9X1sEJW
「はい」
口元は歪んだ微笑を浮かべ、クウリははっきりと答えた。
ルナは、「よろしい」と言った。
腰に掛けた剣を握り、かしゃりと鍔上げ、あごをしゃくる。「みせてもらいましょう」。
クウリは一瞬怯み、だが呑まれるように剣を握ろうとしながら、聞いた。「かかってこいと?」
彼の腕は優秀だったが、負けたときのことを考えたかあたりの視線が気になっているようだ。
どうでるか?
プライドだけは一人前に高い彼のこと、あとには引けないだろう。
ルナは考えていた。ここで彼に制裁を与え、見せしめにするか・・・・
一瞬緊迫した空気が流れたものの、徐々にそれは興味本位に変わる。
ルナが、クウリが、この場をどう切り抜けるか、それによっては自分たちの態度も、と考えているのだろう。
「その通り。空気以外にはお前はどんな攻撃をするのか?」
「・・・後悔、しますよ」
「口は達者なようね」
ルナは剣を取れ、と促し、他の訓練生たちに下がるように目で指示した。
「いや、自分は・・・・・」
「何?今度の相手は空気ではない。思いっきりかかってくるといい」
と、抜き身の剣を彼の前に突きつけた。
「空気以外のものにお前がふさわしく剣を使えるのなら、ね」
クウリは困惑した顔で、彼女の表情と、突きつけられた細身の剣とを見比べている。
ルナの真意を推し量りかねているのか、一瞬攻撃的な目をし、すぐに疑念の色に変わり、また戻る。
無理もない、この剣は彼女の護身用であり、実戦では役立たない華奢な刀身であった。
クウリのそれと比べればあからさまに玩具のような剣を、ルナは突きつけている。
まあこれで充分だろう、と考えているから、顔には余裕の笑みを浮かべている。
223 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:07:25 ID:L9X1sEJW
もちろん、承知の上だった。
だが、こんな剣一つ、鎧一つから、彼らの気を緩めることになっているのかもしれない。
明日からは、せめて剣だけでもまともなものを持つか、とルナは考えながら、
「リンツ分隊長!」と呼んだ。
あたりの隊員が体を横にし、呼ばわれたリンツを通す。
彼が前に出てくると、
「君の指導の成果、見せてもらいます。・・・わかっていますね?」
とクウリから目は離さないまま告げ、後の処罰をほのめかした。
ただ後方で面白がっていたリンツは前に出た途端、それを聞いて自分の立場に思い至り、青ざめた。
兜の目元だけあけたルナの灰紫の目から、本気なのが見て取れたからである。
部下の失態は自分の責任ではあったが、ここまで非道い新入りを彼は見たことがなかったし、どちらかと言うと、
彼の指示は聞くクウリのことは、ルナの性別による問題だ、と彼は思っていた。
傍観を決め込んでいたのである。
ルナに言わせれば、自覚に欠ける、と一言でよいのだが。
だからと言って、すぐにこの場を納めるだけの器量も度量も彼にはなかった。
「は!」
背を伸ばしてただ敬礼をするほかない。
円陣の中にルナと取り残されたクウリは、さすがに叩き上げで「女性とはいえ」、いや「女性でありながら」分隊を三つ束ねる立場の騎士相手に、勝算はないとやっと考え至ったのか、「分隊長・・・・」と弱気な声を出した。
分隊長は、直立不動のまま、無視した。
どこからか、「やっちゃえよ」「相手は女だぜ」と、けしかける声が入る。
ルナは野次に微笑みこそ動じず、彼をはったと見据えたままだ。
そこで、きっかけのごとく鳶が鳴いた。
「いや、自分は・・・・」とクウリは言い澱み、言葉の先をルナに託すように彼女を見た。
ルナはまっすぐな視線を逸らさず、相変わらず剣を突きつけたままだった。
情状酌量の余地がないのを見て取ったか、彼は抜かない剣をぐっと握って見せ、かっと瞬くと身構えた。
あたりは息を呑んだ。
しかしルナは、これ一つ目を揺らしもしなかった。
ただ、身構えながらも決して剣を抜かないクウリを、冷ややかに見つめている。
クウリはしばらく力んでいたが、ルナの態度は変わらない。
やがて彼はおもむろに構えを解くと、そっぽを向いた。そして、
やけっぱちに、「ただ、そんなところに女性がいると、」と口走り、一瞬慌てたが、
迷い、それから思い切ったように、
「気が散ってしまうだけですよ!」
吐き捨てた。
「・・・・・何?」
「気が散ってしまうのです!」
彼は小さく剣に手を添え、横を向いて足元を睨んでいる。
ルナは絶句した。
お前が気を散らしたのは、鳶じゃないか。
女だといえば大義名分になるとでも思っているのか、この馬鹿は。
こうまで自覚のない彼を前に、怒り、というよりも、諦めに似た嫌悪を感じた。
既に訓練生として教育を受けていながら、なんと幼稚なことを言ったものか、と言葉もない。
しばらくの沈黙が続いた。クウリは所在無さ気に剣を握ったままだ。
頬を紅潮させ、まるで無理に意地を張っている子供のようだった。
「この鎧兜の格好に・・・・」
ようやく口を開き、呟いたルナに、ここで言ったとて顔は見えないと踏んだか2、3の後方の兵士が、
「自分も気が散ります!」とからかうような声をあげた。
ルナは静かに剣を納めた。
兜の隙間から見える目は、強い。
224 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:10:07 ID:L9X1sEJW
どうなることかと固唾を呑んでいる隊員を、無表情に目だけ動かし確認したあと、
兜をに手をやり、ゆっくりと脱いだ。
くせのついた髪が、徐々に零れ落ち陽にきらめいた。
前列にいた者は、目を見開く。
長い一瞬のあと、髪に空気を入れるように、彼女はふるふるっと頭をふった。
脱いだ兜を脇に抱えようとして、思い直して指先に引っ掛け、横にいた者に腕を伸ばし差し出す。
その隊員は、ルナから目を離せないまま、慌てつつ前に出て受け取ろうとして、よろめいた。
華奢な体からは思いもよらぬ重さに、取り落としそうになったのだった。
普段兜に覆われている素肌は、磨かれた鈍色の無骨な甲冑と対照的に柔らかそうで白く滑らかなクリームを思わせた。
陰になってしか見えなかったするどい目元は、素顔ではまるで印象が違う。
気の強そうな眉、その下にまつげに飾られた、リスのような、丸く大きい灰紫の目。
怒りのためか、ほんの少し目のふちに、紅が指していた。
つんとした桜色の唇。
ルナは充分に視線を意識しながら、指先を少し噛んで引き、皮の手袋を緩めると、両手から外した。
素手で前髪をかきあげて、押さえられていた髪をほぐし、
「気が散りますか?」
どうだ、と言うように目元に勝気な笑みを浮かべて、周りの者を見渡す。
黒であっても細く、軽やかな髪。あでやかな微笑。
無骨な甲冑とのアンバランス、艶やかな髪に縁取られた小さな顔。
頬が、飴玉を含んだように柔らかに膨らんでいた。
その姿は可憐だった、言葉と目つきさえ甘ければ、この上もなく。
当然、女性であることに言及したのに憤慨し今度こそ止まらぬ、と身構えていた隊員たちは思わずどよめき、
後方では、その姿を一目見ようとちょっとした押し合いになった。
初めてルナは素顔をさらしたのだから、無理もないことかもしれない。
普段から鎧兜に身を隠し、鮮やかな青のマントを翻したこの騎士の素顔を、ほとんどの者が初めて目にする。
城内に出仕するときは礼服に着替えていたルナだが、その姿を見る機会は訓練生である彼らには全くない。
隊員たちは浮かれたようにざわめいた。
だが、ルナの黒目がちな瞳が冷えきっているのに、じわじわと沈黙が広がる。
ぐるりと一周、目をやってから、ルナはクウリに視線を戻すと、
「答えなさい」
と言った。
225 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:11:15 ID:L9X1sEJW
クウリは、なぜここで彼女が素顔をさらしたのか皆目わからず、困惑していた。
見て愕然とするような姿ではない、見せたことにより劣情をより刺激することは彼女にだって解っているだろう。
黙っていると、ルナはもう一度「答えなさい」と穏やかに言った。
その目を見る限りどう答えても不利な気がする、それならば正直に、
「・・・散りますが・・・・」
としか、無難を選んだクウリに答えようがない。
ルナはすい、と強い目になると、
「では、戦場に置いても同じですね」と吐き捨てるように言うと、ざっとあたりに向かい、
「女性と見ただけでこれでは、話にならない。戦場に女性がいないとも限らない。
そして戦においても隊長は私だ、気の散ると自覚した者を戦場に伴うわけにいきません」
と、凛、と声を張り上げた。
隊員たちははっと背筋を伸ばした。中でも先ほど声を挙げた者ほど顕著である。
クウリは自身、逃れられないのに慌て、
「隊長、これは訓練です、」と余計な口を聞いた。
途端ルナは振り向きざまに剣を抜き、鋭くクウリの鼻先をかすめた。前髪が散らばる。
驚いた彼は腰が砕けたか、大きくしりもちをついた。
眉一つ動かさず、まっすぐに見据える灰紫の視線。
「何のための訓練だと?」
クウリはもごもごと口を動かしたものの、黙って彼女を見上げた。
「・・・・・・」
226 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:12:04 ID:L9X1sEJW
ルナは言った。
「以後、お前は訓練に参加する必要もありません。他、自覚のない者も同様」
事実上の解雇宣告に、あたりはざわめいた。
可愛い顔、冷たい表情。
「戦場に出さない者を指導するほど、私は暇ではありません」
言い放つ。水を打ったかに静まる隊員に、剣を戻しながら、
「戦場で動揺されても困る。よく見ておきなさい、これが私だ!!」
一同を睥睨した。
「見失うことのないように!」
そういうと、何事もなかったように手を差し出し兜を受け取り、頭を収めた。
手綱を受け取り、馬上に戻ると「再開せよ」と命令をする。
分隊長たちは誰ともなく「整列!」と怒鳴った。
隊員たちは彼女の素顔に捉われていたが、それではクウリと同じ処罰を受けることになる、とばかり、
頭から振り払う。それには集中力を要し、いつしか彼らは無心に剣を振っていた。
227 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:13:39 ID:L9X1sEJW
結局、解雇しかなかったのか、私には。
ルナはシーツに顔をうずめ、考える。
もう少し、やり方はなかったものか・・・・・・・。
雑念に惑わされる者など、兵士たる資格がない、と決め付けてしまうのは簡単である。
簡単なゆえに選びたくない意地があった。
だが、クウリのあの言葉、態度。
処罰は当然と思う。
いい加減、見せ付けるためにも今回は、仕方がなかった、と思いたい。
あの場で、打ち据えられても文句は言えない態度だった。
彼だって、それくらいは承知の上だっただろうに。
承知の上だったろうに。
ルナはころり、と横になった。
当然な者を、当然のごとく処罰するのに、何か引っかかる。
クウリ、処罰されて当然の態度を何故取った?
本気で私を舐めているのなら、切りかかってきたはず。
煽ってみたかった?にしても・・・
規律、覚悟・・・・・いまの軍の指南書にある教えを思い出しながら、ルナは唸った。
他になにか彼の反抗に理由があるだろうか?
私は、感情を出してはいなかったか?彼は実力はあったんではないのか?
私が、引き出せなかっただけではないのか。
そこまで考えて、ルナは頭をかきむしった。
勘弁してくれ、
極力の努力をしたと思いたい。
彼女は、疲れていた。
そのまま意識するともなく昔を思い出す。そうしながら、ため息をついて、仰向けになった。
目を閉じたルナに、ふ、と睡魔が襲ったとき、ほとほとと扉を叩く者があった。
「・・・誰」
ルナは物憂げに身を起こし、問いかけながら足音を忍ばせて探るように扉の内側に立った。
「・・・俺だ」
その低いかすれたような声、ルナはため息をつきながらも安心し、音を立てて乱暴にも錠を解く。
鍵を緩めるや否や扉を開けた男・・・・サクラは、言った。
「聞いたぜ、解雇通告」
228 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:15:01 ID:L9X1sEJW
やはり、とルナは目を閉じて言い切れない感情を露にした。
誰か来るとは予想していた、多分もう噂になっている頃だ。
より詳細を知ろうとするだろう、とは思っていた。サクラが来るとは意外だったものの。
彼でよかった、とも思う。彼だったらあることないこと膨らませて吹聴することはないだろう。
「お前らしくないな」
彼はいい、立ちはだかったルナを押しのけるように部屋に入り込むと、外套を脱いだ。
長くなるな、と舌打ちをして、不機嫌そうに片手を差し出し、
「お前らしくない、か」と繰り返しながら、放って寄越される外套をハンガーにかけ、
「別に」ルナは答えた「当然の判断をしたまでよ」
客人に客への最低限のもてなしをした彼女は、扉の横にかかとを組みながら寄りかかった。
「何の用?」
知り合った頃は同僚、今は上官であるサクラを見つめ、ルナは問うた。
こいつは男で、支障なくあるべき地位についている。
自分の担当する訓練生にもその名は響き、名乗らずとも顔は知れ、敬礼を受ける立場にある。
その姿かたちはなるほど威風堂々としており、見るものに緊張を与えた。
私は・・・と比べる。
我ながら子供っぽいとわかっていて、ルナは彼を嫌いと思うようにしていた。こういう気分の悪いときはなおさら。
「相変わらず、苦戦しているようだな」
思い含んだ言い方にルナは反発を覚え、
「お前に関係したことではない」と突き放した。
気を使うようにサクラは笑った後、
「クウリ、といったか?お前の、その問題の部下」と言った。
そうだが、とルナは答え、後ろ手にしていた腕を前で組むと、重ねたかかとを組みなおした。
睨むような格好になる。
229 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:15:48 ID:L9X1sEJW
「からかいに来たわけ?」
「・・・・・・・」サクラは迷うようにルナの部屋を見渡し、カーテンに寄るとそれを掴んだ。
彼らしくない、女性染みた行動だとルナは思った。
「・・・言っていいのか解らんが」
背後を見せた彼を、ルナは無言で上目遣いに見た。
「・・・・・首には、ならんよ、あいつは」
ルナは一瞬、考えるように目を床に落とし、すぐに睨みすえると、
「なぜ?」と聞いた。
サクラは答えない。
クウリ。
あいつのあの不遜な態度・・・・・・。
不遜すぎる、態度。
何か、ある。そうだ、何か、おかしいのだ。
何者かの後ろ盾がある、と言うことか?
いや、私に知らされない時点で、ただの訓練生として放り込む理由がない。
理由がないが、
かれは、明らかに、あからさまに、反抗しすぎる。
230 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:16:34 ID:L9X1sEJW
「首にならん、お前が言ってもな。お前の上官、近衛隊長が言ったとしてもだ」
「なぜ?」ルナは胸騒ぎを抑え、静かに聞いた。
「彼は軍に従事するべきではない」
「意味が解らない、では何故入隊させた?何故首に出来ない?」
サクラは、黙った。
ルナは少し苛立って彼に近づいた。
「それは言えない」
「・・・・・・・」
彼は黙って首を振り、迷ったように「起爆剤、とでも言おうかな」と呟いた。
起爆剤、何か引火するもの。
「奴は、首になることを承知だった、と?」
「むしろ、そうされるよう仕組んだのだろうな」
「なぜ?」とルナが言って、サクラを見た、彼は黙って振り返りルナを見返した。
ルナは思った、「言えない」と言ったからにはどんなに探っても無駄だろう。
苛立つというより、どちらかと言うと猜疑心に襲われた。
なぜ、サクラは、クウリが首にならないと解っている?
軍に従事すべきではない、と言う意味は?
その前に、
なぜ、「言えない事情がある」ことをわざわざ教えてくる必要がある?
「わからない」
ルナはため息と共に言った。
何を信じていいかわからない。
231 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:17:42 ID:L9X1sEJW
もともとルナはこのサクラですら、信用していない。
彼はいつだって彼女の味方であったが、でもそれは確固たる地位に就いていての余裕かもしれない。
そんな憐憫に、友情を感じる義理もないし。いつ裏切られるかわかったものでもない。
沈黙の中、唐突に、ただ詩を読み上げるように、サクラは言った。
「結婚、しないか?」
ルナは何一つ聞き逃すまい、としていた耳を疑った。
「何?」
「結婚、しよう」
サクラが振り返る。
「・・・・・・」
首を傾げて見せても、彼は黙ってこちらを見つめている。
ルナはようやく合点がいき、大仰にため息をついた。
たちの悪い冗談だ。
「はあ・・・・?」
これでもこの男は気を使ってくれているんだろうか?
気が抜けてしまったのもあるが、くだらなさにふつふつとおかしさがこみ上げた。
幾分疲れていたものの、ルナは屈託ない笑い声を上げる。
扉の横の寝椅子にもたれるようにどさりと腰掛けて、脚を組みながら、肘当てによりかかって彼を見上げた。
「何を言うかと思えば、全く」
笑いながら言うが、サクラは乗ってこない。
「ははは・・・は・・・・」
続かなくなって不審げに目をこらした。じっと見つめられ、ルナはうろたえた。
気まずいな。
「面白うない、やっぱり」
意識してふて腐れたように言い放った。
232 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:18:31 ID:L9X1sEJW
サクラは何も言わない。
心臓が、どくんとはねた。
本気で言っている?
まさか。
結婚。思っても見ないことだ。
私が鎧を脱ぐとき。
サクラが無言なのに、ますます想像を掻き立てられ、慌てて打ち消した「ばかな」と笑う。
「ええと・・・そろそろ冗談は」ルナは身を起こした。
彼はじっとしていたが、ふと、
「・・・・・好きなのかな、俺は。お前が」
その言葉にルナは思わず顔ごと背けた。
何を動揺しているんだ私は、自覚するとますます心臓が跳ねる。
冗談に決まっている。
が、手のひらに汗がにじんだ。
サクラは、カーテンを開いてから手を離し、月光を背にすると、
「結婚、しないか?」と再度言った。
部屋は蝋燭の灯のみ。月光ははるかに明るかった。
ルナは彼を見上げた、居心地が悪くて、片方のかかとを行儀悪く椅子に乗せる。
そっと見やり、眩しそうに瞬きをし、つ、と息を呑んでから、
「・・・・お前口説き方がなってないよ、もっとロマンティックに出来ない?」
立膝にあごを載せ、挑戦的に睨み、茶化したつもりだった。
微笑もうと思ったが、唇が引きつり上手くいかない。
自分の表情は、月に照らされているのだろう。
心臓がやたらばくばくとしていた。
233 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:19:16 ID:L9X1sEJW
比べてサクラは冷静な顔で、
「そうか?ロマンティックだろう、月明かりの下」
「どこが?」
「そりゃ・・・・」
即座に切り返されたサクラは口ごもり、ルナを見る。
「冗談にしても」ここを強調してルナは言い「花束くらいは欲しいな」
「・・・・・・花束かよ」
サクラはくす、と笑った。
・・・・・否定しない。
ほら、冗談だった。
「思いつきで口説かれたくないね?」
ルナは精一杯にっこりと笑ってみせたが、すぐ顔を下に向けた。
なんだか、すごく傷ついたような気分だ。
なんでだろう・・・?
考えて、ごまかすように絨毯張りの部屋、その模様を眺める。
「花束か、案外可愛いこというんだな」
可愛いこというんだな・・・・反芻してまたも心臓の跳ねたルナは目を泳がせた。
慌てて両手を振りながら、
「いや、それは物の例えで!ないから不満とかではなく!」
その・・・ええと、ともごもごし、「・・・ちょっと言ってみただけ」と小さく言った。
拗ねた言い方に、サクラは、困ったように笑う。
「今度来るときは、忘れずに持ってくる」
ルナは黙る。
かあああっと自分が赤くなるのがわかる。
知られたくないから、片膝を抱えて顔を押し付けるように下を向いた。
結婚、そりゃ、いつかはと思っている。
でもそれはいつか、と思っていただけで・・・・
可愛い、だって。
234 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:19:55 ID:L9X1sEJW
思いのほか、嬉しいものだった。
火照る頭の中で、私も女なのだな、とふいに、冷静にルナは思った。
所詮は、女か・・・・・。
私の今いる世界は・・・・・女であってはならない。
男に混じって同等いや以上の能力を示しても認められない、保守的な組織。
どんなに女を隠しても、だ。
他人によって女であることを思いださせられる、排他主義。
クウリ。私が男だったら、彼は・・・・。
あんな言葉が出るはずもないし、謂れの無い嘲笑も受けなかった。
どんなに頑張ってみても、所詮、女なのだ。
ルナは、急に疲れを感じた。肩こりのように自然な、疲れと虚無感、諦めを。
無駄に意地になっていたのは、私なのかもしれない。
ぼんやりと、着ていたローブの紐を見た。
「ルナ」
サクラが呼んで、ルナが顔を上げたとき、彼は間近にいた。
「わっ・・・」
ルナは思わず手をついて寝椅子を後ろずさりながら、「ちょ、ちょ、と待って」
まだ、心が決まったわけではない。
動揺しているとも悟られたくない。
目を逸らし、出来るだけ自然に身をそらした。
「逃げるな」
サクラはさらに近づいてくる、ルナは平静を装いつつ、胸元を片手で押さえながら、じりじりと後ずさり、
斜めに背にした肘当てと自分と、サクラとの隙間を考えた。
が、もう後はなかった、気づいたときには滑り出す隙間も彼の右手に塞がれていた。
彼は寝椅子の背もたれに左手をかけて、あごを引き、後ろに背を引いたルナの太ももの横に、右膝を置いた。
上を覆われた形になり、
「そんな、だから、いきなり言われても・・・・」
ルナは少しの余裕も失った。
逃げられない、しかもここで大声を上げて不利になるのは私だ。
襲われるような隙を作った自分をさらすわけに行かない。
むしろ男を連れ込んで、ともっぱらの噂になるのは目に見えていて・・・・
力では互角のはず。本気で抵抗すれば、彼は無傷ではすまないだろう。
当然解っている、かつての同僚、なのにこうしてゆるぎない自信。
まるで蛇に睨まれたカエルのようだ。
好きだと寄ってこられたのは、初めてだった。
ルナは、小さく唇を震わせ「来ないで・・・・」と言った。
「無理」
サクラは、ルナの両肩に手を掛けて、言った。
ルナは小さく嫌々をするように首を振った。
遮ろうとした手首を捕まれると、ルナは目を逸らした。
「お願いだから・・・・・・ちょっと待って、考えるから」
「考えることは、ないだろ」
息遣いを間近に感じる、暖かくて湿った息を、ルナの首筋を這わせる。
目を閉じ感触に耐え、もう逃げられない、とルナはなりふり構わず
「いやだああ、」
と泣き声をあげる。
235 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:21:10 ID:L9X1sEJW
サクラは、彼女の肩を抱き、瞑った目元に口付ける。
なだめるように「大丈夫」と、サクラはかすれて言った。
しゃくリ上げるような、ルナ。
目元が塩辛い、と思いながら上唇を舐めたサクラが、何が嫌だ?と囁くのに、ルナは固く目を閉じた。
熱い息遣い、体を撫でられて、ルナは、ゆっくりと吐息を吐く。
もじもじと身を固くするルナに、
「可愛い」
サクラは、目を細めていった。
「可愛くない・・・・」
ルナは言う。恥かしそうにサクラの肩に伏せて、彼の背に手を回し、服をよわよわと掴む。
サクラは抱き締める。小さな体が、身に這うように密着した。
「どうして?」とサクラは耳朶を口に含む。
「言われたこと、ないから・・・ん・・・・くすぐったい感じが、する」
すん、と鼻を鳴らす。
「可愛いよ、ルナ」
そういって、張りのある首筋を味わうように柔らかく噛んだ。
ルナは身じろいで、泣きそうな声で、
「ん・・・可愛くなんか、ないのに・・・・」
と言った。
その髪をかきあげ、少々乱暴に唇を吸う、ルナが身を引くのを追いかけるように離さず、
舌を絡ませ、固く閉じたからだを開かせる。
柔らかな乳房、小さく息を呑んだルナが、また目をきつく閉じる。
指で、その頂点をつまむ。服の上から、彼女の汗ばんだ肌を思う。
小さく顔を背けるルナの顔を引き寄せて、改めて、
「可愛い」と言った。
ルナの目が、潤むように色を変える。
名を呼んで、サクラはルナの胸元に手を差し入れる。
鎖骨の辺り、素肌は冷たく、さらりとしていた。そして、柔らかい。
236 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:22:14 ID:L9X1sEJW
いつも鎧で身を固めていたルナの肌は、むしろ固い殻に頼って弱くなってしまったかのごとく、繊細で柔らかく、
吸い付くように瑞々しい。
ボタンを一つ、二つと外していく。
女性を貝と陰する理由を、サクラは思った。
するすると、絹が肌をすべり彼女の体は露になっていく。
隠されていた肌が手に触れるたびに、サクラは体が波打つのを感じた。
やがてあらわれたふくよかな乳房に、彼はそっと唇を寄せた。
唾液を絡ませ、転がすように弄ぶ、彼はそうするごとに自分の興奮していくのを意識した。
手のひらですくうようにもう片方を愛でる。
ルナの息遣いが聞こえる。
ふいに指が、彼の首筋に触れた、彼はぞくっとする。
その指を掴んで自分の指を絡ませ、唇で乳首をなぞった。ルナは初めて声をあげた。
もう片手を、茂みの方へ滑らせた。
ルナの表情を見る、苦しげで、きつく目を閉じてしまっている。
「力、抜いて」
サクラは言う。
ルナが、薄目を開ける「・・・うん・・・・」
汗ばんでくる肌、弾力のあるそれにサクラはますます掻き立てられる。
指を、差し入れた。
とろり、としているものの、容易に受け入れはしない。
「ルナ、力、抜いて」
ルナは弱気な顔で、「・・・うん・・」と言う。
「もう少し・・・・大丈夫だから」
大丈夫だから、と言いつつ、サクラは思う。
肌着を脱がせつつ、優しく乳首を噛む。
ねじ込んでしまいたい。
もっと、泣く顔を見たい、ルナが泣きながら、やめてくれ、と言うところを見てみたい。
「んうう・・・・」
指一本受け入れないルナ、
思いっきり突き込んでやったら、どんなに気持ちがいいだろう。
サクラは、自分にこんな嗜虐的な思いがあることに驚き、すぐに、ルナがそうさせるのだと思った。
なんだかんだ言って、濡れてんじゃねえか。
肌着を放り、組み伏せる。
237 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:24:04 ID:L9X1sEJW
言い訳のように思ったサクラを、ぱっちりとしたルナの目が、見ている。
それでも受け入れないルナに、サクラはよりそそられた、と言うところだ。
ソファの背もたれに、ルナの左足を乗せさせ、右足を床に下ろさせる。
その中心に、彼は舌を滑らせた。
ルナは、びくりとした。
とろりとした中心に、いやらしく舌を這わせると、ルナの足が震えた。
吸って、暖かい息をかけてから、小さく舌で振るわせる。
ルナが、小さく叫ぶように声をあげた。
とろりと垂れてくる入り口に指を差し入れた、抵抗を感じながらも奥へと進める。
ルナの腰が、跳ねる。
舌を動かしつつ、指を奥に奥にと進める。
「んあああっ!」ルナが、跳ねた。
サクラはより激しく舌を動かした、一方で奥の指を第一関節を曲げ、こするように動かす。
ルナが体をよじるのを、抑える。
「ん、や、だっ・・・・・!!」
びくっ、びくっ、として、ルナは大きく身を震わせた。
はあっと息をついたのに、サクラは聞く。
「気持ちいいか・・?」
ルナは物憂げに彼を見やり、「ん・・・」と言う。
荒い息遣いのルナに、サクラは口付けて、冷めた口調で、
「いれるぞ」といった、臀部を手で支えるように持ち上げる。
ルナは、また、泣きそうな顔をする。
入り口に、自分の先端をあてルナに圧し掛かる。
「痛いかもな・・・」と言い、
離さぬように彼女の肩を掴む。舌で、耳朶を刺激する。
少しずつ、差し入れるたび、突き破っていく感覚にサクラは身悶えた。
腰にしびれるような快感が走った。
横目で見るルナは、歯を食いしばっている。
238 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:26:08 ID:L9X1sEJW
痛そうだ、と思いつつどうにも止められない。
「ルナ・・・・」
ルナは声にならない声をあげる。
無理に押し込んでいく感覚がたまらないのだ、ルナが苦しそうであっても。
ルナは、小さく「痛い・・」と言った。
悪い、とは思う。
自分でも、歪んでると思う。
が、やめるにはあまりに強すぎる快感が、サクラを煽っていた。
勢いに任せて腰を動かすと、ルナは悲鳴をあげた。
が、サクラは止められなかった、ルナが痛がるたびに、しびれる快感が襲ってくる。
けれど、ルナが泣くたび、痛がるたびにぞわりとした快感がサクラを襲っていた。
いま、ルナはしくしくと身をかがめ痛みに耐えている。
その姿が俺にとって、征服欲と快感を満たす、思いサクラはルナを抱きしめた。
やがて、ぽたぽたと泣くルナに彼は力強く己を放ったのだった。
239 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:30:40 ID:L9X1sEJW
「ごめんな」謝るが、それはもう笑いを堪えるように、余裕からの気遣いだった。
とろけたような体を、ルナは起き上がらせ、
「別に」と言いながら、微笑む。
「痛かっただろ?」
「うん・・・」
ルナは、服を引き寄せた。
「いやだったか?」
「・・・・・・」
黙るルナに、サクラは自身を揺るがされる。
無理をしすぎたかな、と思いやりながらも、満足感に、酔いしれていた。
サクラは、彼女を女だと扱った手前があった。
あの騎士を、この手で落としてやった、とでも言うような。
「俺はね」
と、サクラは話し始めた。
この時、彼はルナを手中に納めたことで普段より饒舌になっていた。
「俺はね、最初からお前が心配だった」
ルナは服を身に付けつつ、柔らかく、言った。
「心配?」
「・・・無理だ、と思ってたよ」
「・・・・・・・」
「だから、結婚してやろうと」
ルナが黙ったのを、サクラは感動したのかと思い、
「女に戻れるんだよ、これで」
「・・・・・・」
「もっと早くこうすればよかった」
と微笑んだ。
240 :
月の隠れる:2006/12/26(火) 02:33:49 ID:L9X1sEJW
ルナは無言だった。
無言で、突然、サクラを見据えた。
「出てけ」
サクラは理解できず、ルナを見た。ルナは、静かに、
「出てけ」と繰り返した。
「・・・・愛してるってことだって」とサクラが腕を絡ませようとするのを振り払うと、
「出てってくれ」ルナはひらりと身を起こした。
「俺は、心配だったといっただけだ、お前は・・・」
慌ててサクラは気を使った。
「うるさい!!」
ルナは怒鳴った。
「お前も!!・・・・・・」
そこまで言って、ルナは俯いた。
「もう、出て行って、もう・・・・・いや、悪かった、思い通りの女でなくて」
だから、出て行ってくれ、ルナは押し殺した声で言う。
「機嫌、損ねちまったかな」
「そういうんじゃない」
ルナはいらいらとサクラを急かした。
慌て服を身につけたサクラの背を押し、扉まで送ったルナは、そこで目を見開いた。
「・・・・クウリ」
扉を開けたそこに、クウリはいた。
憎しみをこめた目を、こちらに向けていた。
はっとしたように、彼に向かって黙礼をするサクラを、ルナは目ざとく見咎めた。
この、男が、黙礼をした・・・・?
「隊長」
クウリはサクラを斜めに過ごすと、言った。
「お話が、あります」
サクラが過ぎ去ると同時に、まっすぐにルナを見た。
あのサクラが、すごすごと言葉もなく去っていく。
廊下の端で、彼がかすかに振り返るのを捕らえながら、ルナは聞いた。
「クウリ」
「はい」
動じない彼の目に、ルナは戦慄する。そして聞く。
「お前は、何者?」
クウリは、申し訳なさそうに微笑を浮かべ、頭を垂れた。
この男にここまで振り回されることになろうとは、
と後にルナは思うことになる。
だからと言って、サクラとの生活も考えられなかったのもまた事実。
ルナはこうして、より頭を抱えることになる。
終了です。
ルナの感情=女のずるさとプライド、意地みたいなものを
表現したいと思いました。
今後、折を見て(隙を見て)、続編を、と思います。
ちなみに、ルナのモデルはいません
あしからず。
面白かった!
特にルナが姿を晒すシーンでどきどきした。
全体的に視点が混乱して読みづらかったのが残念。
それぞれのキャラクターのマイナス面がリアルなのと
ストーリーがどこに着地するのか読めなくてwktkできるのが嬉しい。
続きすごく楽しみにしてます。
すぐ投下してほしいが待っとります。
クウリの正体が明らかになるまでは、
GJも、何もいわねえぞ俺は、決して。
245 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 00:28:46 ID:mwIV1oya
全裸正座でwktkしつつ待ってます
すまん、ageてしまった
保守ageってことで許してくれ…
アビゲイル、もう一週間過ぎたよ。続き待ってる…
月の隠れるの人はアビゲイルの人なのかな
文体変えたって書いてあるけど
違ってたらごめん
>>248 すみません、違います。
ユノ話のものです、一人称で今まで書いてきたので。
ここに来て、慣れずに書き込んだ最初のころを色々恥かしく思います。
自分もアビゲイル、シーア待ちです。
暇つぶしにご覧いただければ、と思います。
250 :
投下準備:2006/12/31(日) 02:16:44 ID:E/YwjmWp
『隻眼の鮫』の続きです。
前回は女海賊攻めでしたが、今回は男海賊と絡みます。
ちょっと海賊の皆さんに壊れてもらいました。
では、ガレーナたち大ピンチ『海賊たちの改悛』をどうぞ
「嗚呼、我らが神よ!どうぞ心弱き者たちへ慈悲を賜らんことを!」
「申し訳ありません、あなたへの供物と祈りを怠りました」
「大いなる方よ、あなたを謗りました」
「お許しを、磯断ちの忌み日に魚を捕まえて食べちまいました」
「兄ぃが海に出てる間に姐さんを孕ませた挙句、兄貴の子だと偽って育てさせています」
「いかさま賭博の片棒を担いで義兄弟を嵌め込み、彼の女房と娘を女郎屋に売り飛ばしました」
「神殿への貢納を要求された時に、
『欲張り爺ぃ、稚児買いにでも使い込んでるんだろ』と神官に毒付きました…」
屈強な海賊たちが、全身びしょ濡れになりながら甲板上で己の罪を告白する。
全員が悪魔も恐れ入る程の凶業を重ねてきた、筋金入りの海賊である。
腹の底に隠しておいた大小の悪行は、それぞれ一つや二つでは無い。
そんな彼らが今、必死の形相で神々への祈りを捧げている。
「捕まれっ、次のが来るぞっ!」
「おおぅ…」
船員達が答え切らぬうちに船体は傾き、続いて圧倒的な量の海水の壁が甲板を洗い流していった。
「ぎゃっ!?………」
「ティロ!」
悲鳴も満足に上げられぬまま、一人の船員の姿が消えた。
だが、誰も助けに行こうとしない。
当たり前だ、この海に落ちた者を助ける術があるだろうか?
次の波を越えたとき、まだ自分の身体が船上に残っているという保障すら無いというのに。
「お頭ーっ! ティロが海に攫われた!!」
「分かってるっ… あいつは何を仕出かしてたんだ!?」
「大鰭神様の賽銭を盗んだのと、神殿に納める貢納金に贋金を混ぜたとか言ってやしたぜ!」
「あー、そりゃ助からんわ………」
海に引き摺り込まれた船員は、これからその所業の償いを己の魂で支払うのだ。
舵にしがみ付いたまま、ガレーナは独語する。
「畜生、どいつもこいつも罰当たりどもがっ!!」
潮と雨に濡れて、彼女もその片目すら開けるのが辛いほどだ。
彼らは何故このような状況に陥ったのか?
それを説明するためには、一ヶ月ほど時間を遡らなければならない…
・・・・・・・・・
その晩、ガレーナは男に抱かれていた。
彼女が金で買った男以外に身体を許すのは稀だ。
海上での規律を守るため、彼女は自分の手下とは肉体関係を持たない。
だからといって、他所の男に体を安売りする気も無い。
ほいほいと身体を開いて後で面倒を起こすよりも、金で男娼を買ったほうがさっぱりする。
「あうぅん…」
胸乳を後ろから揉みしだかれ、切なげな吐息がガレーナの唇から洩れた。
この男とは長い付き合いになったが、相変わらず女の使い方が巧い。
どうやったら相手が喜ぶのか、十二分に知っている指使いだった。
普段はたわわに実った乳房も荒布で縛り上げているが、今晩は男の指を深く沈みこませている。
「はうっ!?」
男の指が乳首を弾く。
すると女海賊は甘い悲鳴を上げた。
弾くだけではない、摘んだり、引っ張ったり、抓り上げたり…
ただし、女の側が痛みよりも快楽を覚えるように、指は加減を忘れなかった。
太く力強い指に翻弄されていた女も、このまま黙って玩ばれては居られないと、
自分の背中に押し付けられた男の物を後ろ手に掴んだ。
既に男根は熱く、硬くいきり立っている。
ガレーナの座り位置からは見えないが、男の熱い血肉の衝動が指先から感じられた。
女の繊手で扱き上げられた男根は、先端が汗以外の汁気を帯び初める。
我慢できなくなったのか、乳を嬲る指を止め、男は女海賊を振り向かせた。
「ちゅうっ…」
ガレーナの舌を、男の唇が吸い上げる。
その唇を味わうとき、ガレーナは自分と同じ匂いを男に感じるのだった。
自分と同じ、即ち血と潮の匂いだ。
男の名はギルという。
『海蛇』の二つ名を持つ、この街でも名を知られた男で、生業はガレーナと半分同業である。
アガリの半分を海賊で、密輸や奴隷交易で残りの利益を上げている。
だが、決して海賊だけで喰っていけない半端者では無い。
どれか一つに拘らなくても、十分に稼ぎを出せる才覚を持つ、筋金入りの海の男だ。
彼は現在、ガレーナが身体を許せる数少ない男の一人だった。
唇を封じられたガレーナを、ギルはベッドに押し倒した。
海の男の分厚い胸板が、女海賊の乳房を押し潰す。
身体を密着させることで感じる互いの鼓動が、彼女に重苦しさを感じさせなかった。
そのままギルはガレーナの口を啜り上げ、組み敷いた女の腿に手を這わせていく。
脚の付け根にある茂みも、すでに汗以外の体液で濡れていた。
躊躇いもせずに毛を掻き分けて、裂け目に指を入れて陰核を小突く。
不意打ちに驚き、ガレーナは危うく口の中に迎え入れていたギルの舌を噛んでしまうところだった。
最も敏感な箇所に与えられた愛撫で、乳を弄られた時以上の快感が身体を走る。
(んんーーっ!)
ガレーナは耐え切れずに、男の背中に爪を立てた。
跡が残るほどに引っ掻かれても、ギルは攻め手を緩めない。
勃起した肉芽を嬲りながら、別の指は女の秘道の中へと伸びてゆく。
潤みを帯びた膣は容易く異物を受け入れていった。
侵入した指が膣壁を押し込む。
一番弄られて喜ぶ場所を、すでにギルは知っている。
そこと陰核を執拗に玩ばれる、ガレーナは相手に口付けを続けることが出来ないくらい昂ってきた。
「ああぅ、…ギルっ」
ガレーナの手が男の物を再び握り、催促する。
隻眼の愛人の要求に、男は笑って応じた。
「じゃあ、そろそろ入港と行きますか」
「来てくれっ、私の中にっ… あうっ」
「ガレーナ…」
巧妙な愛撫で開き切った花弁の中心へ、男は突き立てた。
最初の一突き目で、いきなり最深部まで侵していく。
「うぅ… お前の衝角は相変わらず硬いなぁ」
「ふふっ、硬いのはお嫌いかな?」
「冗談、ヤワくて小せえ衝角は突込みの役に立たないよ」
海賊らしい睦言と呼べるかどうかはともかく、二人はお互いの言葉に笑みを浮かべる。
閨での陶然と微笑むガレーナの顔は、とても海の羅刹と恐れられる女とは思えない。
閉ざされた右目に、男はキスをした。
解かれた眼帯の下、薄く残る傷跡の上を、舌はゆっくりと舐めていった。
ガレーナがこの行為を許すのも、街ではギル一人だ。
他の男がこんな真似をしようとしたのなら、どんなにお気に入りの男娼であっても、
目玉かそれ以外の玉を一つ失う覚悟が必要だった。
互いに自前の船を持つ者同士、街で時間を共にする機会は少ないが、
この相手になら、遠慮なく身体を貪らせることが出来る…
二人の間にはそんな信頼に似た関係が存在していた。
「ああー…」
男の腰がくねるように動かされると、中をかき回された女は歓喜の声を上げた。
ガレーナもそれに応じて腰を動かす。
熱く柔らかく締め付ける膣中に、ギルも心地よい快感を覚える。
吸い付くようなと表現すればいいのか、鍛えられた足腰を持つガレーナの中は途轍もなく気持ちが良い。
(こう下半身の使い方を弁えてる女は、そうそう居るもんじゃない…)
言葉には出さないが、ギルもガレーナの身体を気に入っている。
角度を変えて突き込んだときに見せる、良さそうな表情も堪らない。
顔に走る傷など特に気にならなかった。
この傷が付く前から、ガレーナを知っているが、傷跡が彼女を醜くしたとは思わない。
むしろ男すら凌駕する、海の猛者の証だと彼は思っている。
深く浅くを繰り返し、重なり合う男女は互いの性感を掘り起こしあう。
女の脚はより深い結合を求めて男の腰に絡みつき、
男はそれに応じて膣の中を小突き回すしていく。
そして、双方絶頂が近付いてきた事を知った。
相手の呼吸を計りながら、それまでよりも激しく身体をぶつけ合う。
「あああぁああぅーーっ!」
誰憚ること無い絶叫とともに、二人は同時に絶頂を極めた。
ガレーナは自分の奥に、男の精液が吐き出される勢いを感じることができた…
・・・・・・・・
「旨い話があるんだがな、ガレーナ」
「…なんだよ? こんな時に」
横たわって情事の余韻に浸っていた時に声をかけられ、ガレーナは不機嫌そうだった。
「男衆は犯るだけ犯ったら、すぐ別の女か商売の事を考えるんだからな… 付いて行けないぜ」
「そう言ってくれるなよ………、お前にも良い話さ。
なんせ総督府と新月艦隊の鼻を明かしてやりながら、とてつもなく儲けようって話だからなあ」
「…へえ、豚と黒旗どもをねぇ?」
その口調から、ギルには相手が話に喰い付いてきた事が分かった。
予想通りだ。今ガレーナを怒らせたかったら、街に派遣されてきた総督か、
南海を制圧しつつある『新月艦隊』を賞賛すれば良い。
そいつらはガレーナや他の海賊たちを『とんでもなくけったくそ悪い』気分にさせる存在だからだ。
逆も然り、気を引きたかったら奴らに一泡吹かせる話を持ちかければよかった。
「知ってるだろ、西の王国とこっち側が喧嘩してたって事?」
「ああ、それが?」
「なんでもあちら側は、王都まで攻め込まれそうな程大負けしてた所だったが、
なりふり構わず村落焼き払って、ようやく敵軍を引き上げさせたらしい」
「………」
「で、一時お引取り頂いたのはいいとして、収穫前の田畑もほとんど焼いちまったんだから、
当然アレが起きるよな」
「アレって?」
「飢饉だよ… いま王都じゃ麦粉一握りが銀貨一枚だぜ」
ギルが精悍な顔を楽しそうに歪めて離し続けるのを、ガレーナは黙って聞いていた。
陸の事情に疎いガレーナも、最近の東西情勢は耳にしている。
だが、海蛇の情報は信じがたかった。
一握りの麦粉が銀貨に換わるなどという事は、果たして起きるべき事なのだろうか?
「逃げてきた難民たちを収容して食い扶持は増えてるのに、食料は収穫無しとくれば、
どう工面しても無理が出る。そして西方からの援助を受けようにも、海は私掠船たちがウヨウヨだ」
「けっ、豚に尻尾振る犬野郎がっ!」
「そう言うんじゃねえよ… 奴らだって好きで私掠許可証なんて貰ってる訳じゃないんだぜ?」
「知ったことかよ! 奴らも評議会も全員クソだっ! 皆まとめてナマコのエサになっちまえっ」
私掠船の話題を出したのは失敗だったと、ギルは心中思った。
彼にもガレーナの言い分に一理あるのは判る。
海の大悪魔たちから構成される海賊評議会は、結成以来初めて陸上勢力の圧力に屈し、
派遣された総督の支配下に収まった。
そして伴い、自由に大海を荒らし回って来た海賊たちも、許可制という名の鎖が嵌められた。
勝手に海賊行為を働く船は、総督の支配下にある黒無地の帆の大艦隊、新月艦隊に沈められる事になる。
誇り高き海の悪魔に言わせれば、
『陸の豚の尻を舐めなきゃ漁一つ出来ない、誠に糞ったれな状況』
になってしまったのだった。
「………で、話を続けるけどよ。
冬明け早々に始まりそうな次の遠征には、南海周りでも糧秣が輸送されるって話は聞いたか」
「知らん」
「もう街の倉庫に穀物の一部が集まり始めてる。次こそ王国の息の根止める気だろうな」
「ふん、思いっきりボロ負けしちまえ」
「その食料品を譲ってもらう」
「………横流しか?」
「それだけじゃ無い。『大喰らい鮫』と『大海嘯』に積んで、王国まで運ぶ。
さっき言った通り、一握り銀貨一枚でも売れるって話を何所の誰が放っておける?」
言うまでも無く、戦争中の国に許可無く渡航するのは密航である。
加えて物資を運び込もうとするのは密輸。
それに横流しもしてしまおうというのだから、吊るされる首が幾らあっても足りない位の重罪である。
「私掠船連中は昨日までのご同輩だ。こっちを見つけても手出しすることはねえ」
「王国艦隊に出くわしたら?」
「おいおい、頭がどうにかしたのかよ。
王国の窮状を見かねて、危険を冒してまで食料を輸送して来てくれた英雄的船乗り達を、
どこの艦隊が襲って来るんだ?」
ギルの言葉は実に楽しそうだ。
この間までは王国艦隊に追われる海の無法者、それが立場を変えて英雄になろうっていうのだから、
笑わない方が無理というものだ。
「港は俺が普段使ってるトコが有る。馴染みの業者も居るから不測の事態があっても安心だ。
あとは王国の奴らに高値で売りつけてやればいい… 完璧だろ?」
「ああ、一つ残った問題を除いてな。
王国への航路の途中では、黒旗どもが哨戒線を張ってるぜ。
重い積荷積んで、どう奴らの目を誤魔化す? 大南海まで下ってたら荷が腐っちまう」
女海賊の目は、疑わしそうに男の顔を見た。
ガレーナは密輸業に詳しくないが、現在東西交易の航路上に新月艦隊が哨戒し、
禁を犯す不届き者を監視している。
彼らの目を誤魔化す事は至難の技だ。
「そう、だから俺達は『鮫の歯群島』を通って王国領海へと向かう。
あそこは新月艦隊の哨戒線の裂け目だ」
気が付かなかった謎掛けの答えを聞いた時のように、ガレーナの目の色が変わった。
「なんせ悪魔も泳がないあの岩礁帯を突破できるのは、南海広しといえどもお前だけだ」
ギルの言葉が終わると、合わせて三つの目が笑う。
答えは既に決まってる。
ガレーナは寝台から飛び起きて、先とは逆にギルの身体を押し倒した。
「お前に乗るよ」
話は決まった。
久しぶりにでかいヤマを踏める興奮に、ガレーナの身体は再び昂っていた。
空が白むまで、二人は互いを求め合った。
・・・・・・・・
すべては上手く行っていた。
まるで海の女神に祝福されているかのように、計画通りに事は進んだのだ。
手筈どおり横流しされた食料をぎっしり二隻に積み込み、偽造の渡航許可証で出港。
新月艦隊の哨戒領域に入る直前に航路を変え、彼らさえ近付かない魔の岩礁帯を突破。
妨害にも会わずに王国港湾に入港すれば、積荷を降ろす前から買い付けようとする輩が、
『まるで生簀でエサを乞う魚たちの如く』集ってきたのだ。
王国の食糧事情はそこまで困窮していたかと、ガレーナたちは驚愕したが、
そこで情けをかけて安売りするほど、彼らは慈悲深い海賊ではない。
背に腹は変えられない連中に存分に吹っかけまくり、
東国に出荷できないでダブついていた産物は、逆に思い切り買い叩いた。
そう、すべては上手く行っていたのだ。
総督が集めていた物資をちょろまかしてやり、王国商人は食料が入ってきて大喜び、
ガレーナとギルはボロ儲けが出来た。
だが、帰りの航路で鮫の歯群島へ進む直前、海神のご機嫌が変わったらしかった。
それともここまで貯めてたツケを、一まとめにして取り立てる気になったのか、
季節外れの暴風雨が二人の船を襲ったのだ…
「海親父さま、あなたに誓った約束はまだ果たしてませんが、これから絶対に遂行します」
「無事に港へ帰して頂ければ、盛大な供物を捧げます」
「神よ、もう博打で良い目が出ないからといって、あなたを罵ったりしません」
「怒りをお鎮め下さい!海の神々よ、我らはこの通り悔い改めておりますっ」
必死の懇願にも係わらず、嵐は一向に収まりそうに無い。
既に帆は千切り飛ばされ、これ以上風雨が強まればマストまで切る羽目に成る可能性が大だ。
人知でどうにかできる部分は、全力を尽くしてやっている。
後は神々に船を沈めないようにお願いするだけだ。
「お頭、どうします!? このままじゃ鮫の歯群島に近付けませんぜ!!」
「んな事は分かってる!
幸い船は北東へ流されてる! このまま黒旗どもの哨戒領域を突破するんだ!」
「げっ!! 正気ですかい!?」
「怖気づくなっ! この大嵐じゃ奴らも出て来れねえよ!」
怒鳴らなければ側に居る操舵手に話しかけるのも難しい。
なにより大声で手下たちを叱咤しなければ、船員の心が挫ける。
この大時化の中で統率が乱れれば、船の行き先は海の底だ。
「でも哨戒領域のど真ん中で嵐が止んだら………
いや、奴らも俺達と同じように流されてたら!?」
「…とりあえずお前も懺悔しとけ!」
心配性な操舵手の不安を、ガレーナは突き放す。
それ以上は彼女にも如何ともし難い。
そこから先は、海の機嫌次第だ。
「ウナダマ様、あなたに捧げられる処女の生贄を寝取ったのはお詫びします。
でももう十五年も前の話じゃないですか? いい加減お忘れになって下さいよ!」
「海魂様の花嫁を寝取ったのかい!? 何て太ぇ野郎だ!」
ガレーナも思わず呆れた声を上げる。
もし露見してたら、軽くても溺死刑だ。
「お頭もまだ隠してる事が有るでしょう!?
とっとと白状して、海神さまたちのお怒りを鎮めて下さいよ!」
「馬鹿言うな! この敬虔で品行方正な私が、神の怒りを買うはずが………」
ゴ ゴ ゴ ロ ゴ ロ ゴ ロ ゴ ロ ゴ ロ ゴ ロ ゴ ゴ ロッ!!!
余りに不吉な音に、船乗り全員が凍りつく。
嵐は雷雨に変わりつつあった。
「海底神殿の大神官を闇討ちして半殺しにしたのは私です。
酔っ払って聖なる生簀に反吐を吐いて、おまけに小便したのも今ではすっかり反省しております。
可愛い顔した神官見習いの少年を誘惑するのも、これからは控えます!」
「頭、この嵐はあんたの所為じゃないんですか!?」
「うるさいっ、手前よりはマシだっ! この花嫁泥棒っ!」
「俺の場合は、向こうが誘ってきたから仕方なく…」
カ ッ !!
雷光一閃、その瞬間だけ暗い海が不気味に照らされる。
荒れ狂う不吉な海面は、まるで咎人の証言に怒っているかのようだ。
「申し訳ありません! ウナダマ様、嘘を付いておりました! あの女を誘惑したのは俺の方です!!」
暴風雨に遭うと、海賊たちは己の罪業を神々に詫び、その怒りを鎮めようとする。
だが、嵐を生き残った海賊は、性懲りも無く別の罪を犯す。
それゆえ、何時になっても海から嵐は無くならない…
港町では、昔からそう言い伝えられている。
鮫と海蛇が無事に嵐を乗り切れるか、それは神々のみぞ知ることであった。
(終わり)
GJ
ガレーナと手下のやりとりが面白くて好きだw
いっそシーサーペントとかいくちに遭遇しちまえw
ワロタw
面白い。
後、微妙に魔王と絡みだした。
続きに期待。
あけおめ女兵士スレ
今年も良いssに恵まれますように
とりあえず、アシュレの続きを待ってるよ〜
>261
シーサーペント×ガレーナで獣姦?…触手?
あけましておめでとうございます。
気が付けば中世ファンタジー総合をレス数でも容量でも追い抜いてる…
アリューシャの続編キボン
ご希望に添えなくて申し訳ないのですが、
ルナの続きを、投下させてください。
先に言い訳をさせていただきたく。
長くなってしまったので、自分なりの見せ場一編でまず分けました。
もし視姦エロを感じていただければ、嬉しく思います。
長いだけあって、クウリの正体はこの編が終わってからになりそうです、すみません。
前回、ご指摘いただいた方、ありがとうございました。
勉強になります。
269 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:14:54 ID:KTSlu8Qh
夢うつつに、どこか焦った雰囲気を感じて、ルナは目を覚ます。
ぼんやりとした視界に、なにやら詰め込む姿が見えた。
「カイヤ・・・・帰って来たの?」
ルナは同室の仲間に何気なく問いかけ、返事がないのに不穏なものを感じた。
夢であればと言わないでも、普通であれば他愛無く返事があるものに、今は無い。
「カイヤ?」
ぐらぐらと疲労した頭を振りながら、彼女は身を起こした。
「カイヤ?」
頭に手をやり、物憂げに呼んだルナに、当のカイヤは見向きもせずに、
「あたし、出てく。もう、無理」
とだけ言った。
「無理って・・・・何、急に、カイヤ?」
ルナの新人だった頃の話である。
270 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:16:15 ID:KTSlu8Qh
カイヤは思いつめたように、服を畳みもせずに袋に詰め込んでいく。
そこに殺気立ったものを感じて、ルナは更には声をかけることをためらった。
「ルナも、考えたらいいわ。あたしは出てく」
ばし、と音を立てて詰め込む様子に、ルナはただならぬものを感じた。
原因に予想が付いてはいたが、本人が言うまでそれを口にするのは憚られた。
「出てく、私は、もう近衛兵になろうなんて、思わない」
ルナは腕枕をし、神妙な顔つきで、そう言うカイヤを見あげた。
「何よ、なんか文句ある?!」
彼女は息を荒げ、怒鳴ってもすまないように、ルナに訓練用の制服を投げつけると、
「こんな・・・こんな汚いところ!!」
どうやら、彼女の怒りの頂点であるようだ、とルナは冷静に考えると投げつけられたそれを拾い、
「そうだね」と対照的に言った。
それから、ゆっくりと腕枕から身を起こし、ルナは横座りになった。
カイヤは振り向くと鼻息も荒くルナを見下ろしていたが、やがて、気の抜けたように腰を下ろす。
ルナと言う人は、いつでも冷静で、どこか人をバカにしている、とカイヤは思う。
カイヤが黙っていると、ルナが、
「逃げるの?」
聞きながら、目を合わせず、ゆっくりとカイヤの投げた制服を丁寧に畳み、自分の脇に置いた。
カイヤはそれには答えず、意地悪く言った。
「ずいぶん、丁寧に畳むのね」
ルナはそっと目を上げた。
「変なことで、揚げ足取られたくないだけよ」
「もう、わかってるんでしょ」
カイヤはどかりと座りなおし、
「何で何も言わないの」荷物をごそごそとやったかと思うと、禁じられている紙巻のタバコを取り出して言った。
ルナが少し驚いてまじまじと見るのに、カイヤはゆうゆうと火をつけ、勝ち誇ったように笑うと、
「真面目でいるのもいいけど、さ」ふーっと、彼女はルナめがけて息を吐く。
271 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:17:45 ID:KTSlu8Qh
「カイヤ、それをどこで?」
ルナは煙に目をしばたかせながら、聞いた。
「あんたの知らない場所」憎たらしくカイヤは言うと、「あ〜あ」と同情にも似た笑いを浮かべ、
「ルナ、あんた、このままじゃ潰されるわ」とバカにしたように続けた。
昨日まで励ましあい、同じように訓練を受けていた彼女の豹変振りにルナは驚きながら、
「どういう意味?」と、微笑んで見せた。
何がなんだかわからないまま、ただ、ものを見知ったようなカイヤに対抗しただけだ。
カイヤはじっとルナを見、その何も読み取れない表情を憎たらしく思った。
「真面目でいられるうちが花、なのかもね、優等生ちゃん」
嫌味たらしく言うのに、ルナは答えず微笑んだまま、畳んだ制服を、カイヤのほうへ滑らせた。
カイヤはその制服を斜めに睨んで、しばらく見つめていたが、唇思い切ったようにを噛むとそこでタバコをもみ消した。
「カイヤ」ルナはとがめるように言った。そこからひらりと細い煙が立ち、すぐに消える。
本気なのだ、とルナは会得して、眉を寄せる。
はたはたとそれをはたく様子を、カイヤは捨て鉢な様子で笑った。
ルナの表情を「慌ててる」と思い、満足したように、
「あんた」
と呼びかけた。
ルナが目を上げ、二人の視線が絡んだときカイヤは、
「どんなことされるのかも知らないんでしょう!」
と止めを刺すように言った。
ルナは目の端をほんの少し動かし、汚された制服を引き寄せてから、
「知ってる」と答えた。
272 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:19:16 ID:KTSlu8Qh
カイヤはこの時、はっきりとルナを憎んだ、私の気持ちのこれ一つ、わかろうとしない。
だからこそ淡々と言えるのだ、今まで友情を感じていた自分をバカらしく思った。
「あんただって、そうなるのよ!」
カイヤは語気を荒げ、立ち上がった。
「それとも、耐えられない私を馬鹿にしてるの?!」
ルナは、拳を握ったカイヤを見ながら、「違うわ」と言った。
それが、火に油を注いだ。
「私は、私はあんたみたいに、」カイヤはわなわなと震えて、
「強くない!!」
はっきりと怒鳴りルナを見据え、それでも言い切れないのか言葉をつなごうとして、ひゅうッと息を吸った。
ルナはただ大きな目を、見開いていた。
まるで癪におかされてでもいるようだ、とまじまじとカイヤを見ていた。
ただ、思っていたのだ、嫌なら仕方ないではないか、と。
何事にも苦痛を感じるような訓練が続くその中で、逃げたい、と思って何を責められようか。
同じ訓練を受けてきた自分だからこそ、わかるのだ。
それと、カイヤの受けたであろう羞恥、痛み、精神的苦痛と、恐怖。
次に自分も受けるだろう「訓練」とは名ばかりの強姦。
敵の捕虜となった場合に備えて、と言うのが建前だが、それを避けることは許されない。
実際、精神を病む者もいるほど卑劣極まりない、と聞いている。
だから少なくとも、彼女を否定する気はさらさらなかった。
出来る限りの協力をカイヤにするつもりだった。
なのになぜカイヤが、こんなに自分に対して攻撃的なのか、解せないでいる。
2人の思惑は、歯車のずれたところで触れ合っていた。
273 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:21:24 ID:KTSlu8Qh
ルナの沈黙は、カイヤに決意を促してしまった。
カイヤは、吐き捨てるように、
「あんたの為に、我慢しようかとも思ったけど」
と荷物を持ち上げると、じっとルナを睨んで、
「悪いけど、手っ取り早い方を選ばせてもらうわ」
と言った。
声をかけるまもなく、窓辺に寄ったかと思うとがちゃりと開けたかいなや、ひらり、とその窓枠を越えた。
ルナは慌てて窓辺により、いま下をひた走るカイヤを目で追った。
「カイヤ!」
いけない、ルナはとっさに窓枠を越えた。
門には、衛兵がいる。訓練生であるルナたちの中には夜逃げを試みる輩が少なからず、いる。
そしていま、カイヤがまさにそうであった。
衛兵に捕まれば、拷問が待ち受けている。
拷問に耐えた後は、逃亡者として烙印を押されたまま、ぼろきれの様に門外に捨て置かれるのが常だ。
そういった者の悲惨な末路を、耳が痛くなるほどルナたちは聞かされている。
同室だった者は、連帯責任を追及されることも、何度も何度も繰り返し聞かされた。
「カイヤ!待って!」ルナは声を押し殺しながら、呼ぶ。
「付いてくんな!」とカイヤの声が聞こえた。
その声の方向に、ルナはひた走る。
274 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:22:46 ID:KTSlu8Qh
「待って!」
もうすぐ塀に突き当たる、とルナが走りながら目を凝らすと、そこに、息を切らせながらも身構えたカイヤがいた。
はあ、と上がった息のままルナはじっくりと塀によると、今にも逃げだしそうなカイヤに向かって笑ってみせた。
肩で息をしながら、ほど高い塀を指でこんこん、と叩き、
「一人で、逃げれると、でも、思ってたの?」と、息を整えながら、言った。
「・・・ルナ?」カイヤは、驚いたようにルナを見た。
「引き止めるの・・・?」
すがる様にいったのを、ルナは残念ながら読み取れない。
首をゆるく振ると、微笑んだ「サポート、必要でしょ?」
両手を体の前で組むと、ルナは足に力を入れて見せた。
「さあ、早く」
「ルナ・・・」
カイヤは肩を落としかすかに頷くと、さすが鍛えられた腕力に任せ荷物を向こう側に放り投げた。
諦めたように彼女は息を一つついた。
それから、
「さようなら」と呟き、ルナが疲れたように微笑んで返すのを確認すると、
助走をつけるために、いったん、離れる。
ルナは、これで一人になってしまうな、と思いつつ彼女の為に、今一度体に力をこめた。
充分な助走をつけたカイヤの靴底と体重とを、嫌、と言うほど手のひらに感じた瞬間に、思いっきり上へと跳ね上げる。
夜空に、カイヤの姿が飛んだ。
275 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:23:52 ID:KTSlu8Qh
塀の向こうに消えながらカイヤの呟いた声を、ルナは惜しみきれない気持ちで聞いた。
力を抜き、今はもう隔たれた向こう側を思う。しびれた手のひらを二、三度振り、
「カイヤ・・・」塀に寄り添い、冷たい壁に頬を当てて呼びかけたとき、そこは、かっと明るくなった。
「動くな!」
ルナは目を閉じ、観念して振り向いて、そこに多数の衛兵が並んでいるのを見た。
発覚しない自信もなかったし、当然といえば当然の露見にルナは心からうなだれた。
抵抗する気のないのを両手を挙げて示したが、やはり苦い顔を隠しきれない。
眩しさに何度か瞬きをし腕をかざしながら、冷えたものが足元から上がってくるのを感じた。
灯明に囲まれ、ルナはじぶんの犯した罪を、改めて思った。
私は、何のために・・・・。
ルナは、大人しく光源の下へと進み出た。
カイヤの最後の言葉に、「そうでもないみたい」と思いながら。
276 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:24:59 ID:KTSlu8Qh
夜中の召集にも関わらず、きりりと制服に身を固めたほかの訓練生が並ぶ。
その一同の前へ、ルナは引きずりだされた。
先ほどのまま拘束されていたから、起きた格好のままだ。
薄い白いシャツに柔らかい黒の膝までの肌着、一目で夜着とわかる。
一同は、引きずり出されたのが優秀と名高いルナであることに驚き、同室のカイヤがそこにいないことを訝った。
「ルナ=シレネ」
重々しく口を開かれ、後ろ手に縛られたルナは顔を上げた。
膝を揃え、正座しながらすっくりと見上げた肩を、思いっきり蹴り上げられる。
無抵抗なルナは吹っ飛んだ。
脚を下ろした大佐があごで指示するのに、彼の左右で直立していた2人が駆け寄り、ルナをまた中央に引いた。
大佐は、目の前にうなだれるルナのあご先をつま先で触れ、くい、と持ち上げた。
「誰が面を下げてよいと?」
「申し訳ありません」
ルナが痛みに眉を寄せて見上げたところを、どかりと蹴られる。
「ぐっ」後ろに倒れたルナは気丈にも、横になり、ゆっくり、縛られたまま肩を使って身を起こした。
頭を下げる。
「申し訳もございません」
「同室のカイヤ=セダ、お前、その犯した罪を述べてみろ」
ルナはごくん、と唾を飲み込み、はっきりと澄んだ声で
「カイヤ=セダは逃亡罪、わたくしは、幇助罪で、あります」
277 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:26:15 ID:KTSlu8Qh
一気に吐き出す。一同に納得したような吐息が漏れた。
隣にいないカイヤの理由がやっと腑に落ちた、と言った感じだ。
同時に、新たな疑問が彼らに浮かんだようである。
ルナといえば、カイヤと並んで、優秀と名高い訓練生であるとともに、2人だけの女性、皆が知っていた。
泥で顔を汚したこともないようなルナとカイヤがまさか、と信じられないのだろう。
今までに仕置を受けた者は、なかなかに評価を得られないような、いわば落ちこぼれの顛末だった。
カイヤが逃亡した。なぜ?目覚しい評価を得ていたのに。
納得のいかないものたちの中、後ろの誰かが呟いた、「上官の役得だ」。
それは肘で互いを突きあいながら全体に伝わり、この2人がなぜ、という疑問はやがて苦笑ともつかない答えを得た。
「ふん・・・」大佐は腰に刺した剣を幾度となく撫でていたが、
「カイヤの逃亡を、お前は進んで助けたと申すか」
「はい」
少なくとも、止めようとは思わなかった。それはルナ自身何度も、もう逃げたいと思っていたからであり、
逃げようと実行した彼女に己を託したようなものでもあり、結局自分は逃げる勇気はない、と思い至ったことでもある。
「はい、だと?」
横に蹴り飛ばされ、今度こそルナは壁に打ち当てられてちかちかとした。
ぐらり、と自分が揺れたのがわかり、この時ばかりはカイヤを恨んだ。
278 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:27:34 ID:KTSlu8Qh
「これで一人勝ちね、ルナ」
最後、カイヤが呟いた言葉を、今になってルナは思う。
そんなんじゃ、なかった、カイヤ、私にはわかるから、手伝っただけだ。
体力的にも筋力的にも劣る私たちが耐えてきたのは、一緒に近衛兵になる、と約束したからだ。
引き止めた方がよかったの?なんて、今更じゃない。
うっすらと意識の中に消えそうになった瞬間、冷水を浴びせられた。
「んあッ!!」
ルナは頭を振るい、現状を再度認識した。
襟首をつかまれ、また中央に引きづられる。
私はいま、見せしめにされているのだ、何度も耳にした逃亡者の末路、その当事者なのだ。
「申し訳もございません」
のろり、と起き上がり、ルナは体から雫をたらしながら、床すれすれに頭を下げた。
「立て」
大佐の言うのに、ルナはのろのろと立ち上がった。
心地悪く、張り付いた布が、そこここで皺になっていた。
体を動かすたび、つつ、と肌に張り付いたシャツがずれる。
あたりの視線は下着をつけていないルナの体に突き刺さる。
それでも、大佐が目の前すぐに立ったのに、背筋をより伸ばそうとする。
「女だからと、容赦されると思うなよ?」
「思って、おりません」
女でなくともこれで終わるわけがないのだ。一度見た事のあるこの手の拷問は長く、見る者に確かな恐怖を与えるまで続く。
「ほう」
面白がるような言い方に、ルナはぞくりとした。
座れ、と言うのにルナは腰を下ろし、ああ、と思った。
279 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:29:09 ID:KTSlu8Qh
幾度となく、こんな場面はあった。ここまで大仰なものでもなくとも単なる処罰として。
何度も見ている、多分、舐めろ、と言うことだろう。
思った矢先ルナの目の先に、大佐の磨かれた靴が差し出される。
「磨け」
ルナは、一同の視線を、嫌というほど感じた。
うなだれた視界に、ぼやけ、うすら滲んだ乳首が見え、張り付いた短いズボンが太ももに張り付いている。
今、自分は犬のように身を伏せている。差し出された靴先、カイヤ、一人勝ち。
ここで逃げるわけにも行かない。
ルナは、柔らかな舌をそっと、ためらいがちにその靴に当てた。
屈辱に、嗚咽が漏れた。
ぽたぽたと水滴、涙とも付かないそれにまみれてルナはぎゅっとまぶたを閉じた。
精一杯、息を止め、唇を近づける。
靴の素材は、思ったより舌に張り付いた、艶やかな表面ほど滑らないものだ、とルナは変に感心した。
大抵は、そろ、と舐め「お許しください」と言う。
瞬きもせず、無意識に覗き込むように一同はルナの姿を無遠慮に見ている。
普段唇をつんをあげたルナの、今の姿態は目を奪うに充分だった。
時折、唾を飲む音が聞こえてくる。
四つん這いになって、ほんの少し尻を上げ震えながら靴に舌を這わせるルナは、なんとも言えず、ただ欲情を煽った。
280 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:31:38 ID:KTSlu8Qh
ひれ伏させてみたい、と思わせていた高慢なルナが、今奴隷のように。
ルナは、その皮肌に舌先を這わせていた。
頭を下げ、小さな体を緊張させたまま、ぺろ、ぺろ、と震えながら舌を使う。
大佐はしばらくじっとルナを見下ろしていたが、ぞわりと駆け上る快感に苛立ったように、ルナを蹴り飛ばした。
大きな音を立てて転がるルナを、また引き上げる腕。それを感じた次にばしゃあっという顔に勢いのある水を感じた。
「んぐ・・・っ」ルナは何度か咳き込んで、身を起こそうとした。
ぽたぽたと水滴が垂れた。
「申し訳、ありません・・・」
いけない、しっかりとしなくては・・・・・・びしゃり、と音を立て、途中で彼女は倒れた。
立ち上がらなくちゃ・・・・・、
しっかりと捌きをうけなくては・・・・・
だが、彼女の神経は切れたように何も動かない。
重い、自分の体が重い、水のせいだ、水中で泳ぐ訓練のようなもの・・・・・。
「ん・・・・ぐう・・・・」
281 :
月の隠れる:2007/01/06(土) 03:34:16 ID:KTSlu8Qh
うねる、ルナの体。
何も感じるな、と言うほうが無理であろう。
肩で息をしながら、悶える姿、張り付いた布、後ろ手に縛られた手、荒い息。
濡れそぼった着衣は、ルナの鍛えられメリハリのある体のすべてを晒し、肌の色さえ透けて見える。
目をそらすもの、食い入るように見るもの、突きあうもの。
その中にはルナの同僚であるサクラがいたが、彼だとて思いがけないルナの姿に目をそらせなくなっていた。
さぞ痛かろう、と目を逸らしたくなる、が、認めたくはないと思いながら彼はルナの姿態に確かに欲情していた。
苦しげな声さえも艶かしい。
気づいた大佐は、非常に苦々しく、解散を告げた。
この仕置きは、見せしめどころか彼らにとってよい影響を与えないであろう。
ルナは、ぐったりとしたまま肩で息をしながら、横たわっていた。
講堂から、三人の男を残し名残惜しそうな一同が去った。
ルナはようやく、グラグラしながらも重なる足音に、状況を理解した。
仕置き途中でこうなる、それは人目を忍ぶものであるのだろう。
ああ、と思う。
一編終了です。
中途半端が自分の身上と。
今だ至らない奴だ、とご容赦の上、読んでいただければ、
ありがたいです。
続編投下待ってるw
ルナとカイヤの心情の絡みにぐっときた。
続きを楽しみに待ってます。
またお前かよ!と言われてしまいそうですが、
そうです、私です、としかお答えできません、どうか、ご容赦ください。
前回のルナの続編です。
今回の話は、全体に色んな構想が絡んでしまいました。
思っていたより書きたいことがどんどん増えてしまいました。
これも、全員が繋がるまでに、必要な要素、と書いた本人が思っているので、
どうか許してやってください。
クウリの話は、この編が終わって繋がる予定です。
長くなってしまい、申し訳ないです。
同時に、レスくれた方、ありがとうございました。
(ルナとカイヤのところは自分でもかなり気を使ったので嬉しい限りです)
では、以下から。
倒れたルナを引き起こしながら、
「捕虜になる可能性も・・・・」わかっているな、と含めてささやくように大佐は言う。
「・・・・・はい」
ルナが苦しげに口を開くのにこの大佐、ツィツァは眉をゆがめていた。
出来るだけ寄りかからないよう必死な様子で礼を尽くすルナに、彼は少し哀れみを感じた。
「カイヤが逃げ出した理由を、知っているのであろう?」
ルナは、押し殺した声で「はい、」と言った。
「では、同じ女のお前に耐えられるとも思えぬが」
ツィツァは、まんじりともせずにルナを見た。
「同じ目に合うのだぞ」
何か仕置きを後伸ばしにするような理由があれば、せめてこんな姿を皆にさらすこともなかったのだ。
止めようとした、でもいい。下らない言訳だが、それでもまだこんな事態にはならなかった。
聞かれるがまま、素直に答えてしまったルナの不器用さを、もどかしく、腹立たしく感じた。
いや、その前に何故カイヤを助けるような真似をしたのか、と惜しまれてならない。
仕置きをする立場として。
カイヤの逃亡はある程度予測出来たことであったし、ツィツァにとっては、ルナによい影響を与えないであろう彼女が
去ることは、特に心煩わすことでもなかった。
ただ、それをルナが助けることは計算外であり、裏切られた、とも余計腹立たしい。
ルナは、反抗的にもならず、ひたむき、といえる目で見返してくる。
情けを請うような色はなく、普段どおり勝気な目だった。
「いい訳くらい、すればよいものを」
いらいらと、彼は言った。
女は時に妙な連帯感を持つものだ、とため息をつく。
何故、自分を庇おうとせず認めた?
ツィツァは、考えれば考えるほど苛立つ。
ルナ、ほかの者に負けない実力、このままいけば歴史に名を残す騎士になったろうに。
彼は、悲しそうにルナを眺めた。
「おまえ・・・・・・・」
このまま行けば、それをやって見せる段になるだろう「女が受ける拷問、それを耐えられると」
彼は言いながら、カイヤは慣れたものであった、と思う。
彼女はどちらかと言うと、女であることを特権に思っていたように見えた。
貴重な存在は大切に扱われるべきだ、という思い込みを覆され、逆上したと聞く。
逃亡にも納得がいく。
このルナは全くの正反対で、女であることをどこか劣等感としている。
その、ひたむきさが却って痛々しい。
上司として、あってはならない考えに、彼は戸惑った。
もうこれ以上、ルナを傷つけたくない、と思ってしまうのと、任務の遂行とにツィツァは葛藤した。
試すようにルナのあごを持つと彼は、黙っていたが明らかに期待したようなほかの2人を横目で見やった。
「耐えられるのか」
「はい、耐える、所存に、ござい、ます」
息を切らせながらまっすぐ透明な目で言われて、
「耐えたからとて、先があるのを知っているのか?」
ルナが、困ったように申し訳ありません、と俯き、
「・・・先は、わかり、ません・・・・」
濡れた髪、潤んだ目のルナが堪えるのを、ツィツァは胸をつかまれるような思いで見た。
ふん、と彼は笑った、「痛みに耐えればいいと言うわけではない」
「耐えられるものか、試してみよう」
ルナがはっと顔を上げたのに、彼は強烈な一撃をこめかみに食らわせた。
ルナは当然、吹っ飛び壁に激突する。
大きな音を立てて、ルナの体はぼろきれのようにのたうった。
「ごほっ・・・ん・・・ぐ・・・・っ」
何度か瞬きをし、必死に意識をつなぎとめていたが、やがて糸が切れたように、ぐたりと倒れた。
彼の思惑通り、意識を失った。
2人が駆け寄り、上擦った声で「どうしますか」と腰を浮かせるのに、ツィツァは「もうよい」と言い、
明らかに落胆した2人に振り向かずに「兵舎にぶち込んでおけ」と命令をした。
翌朝、普段の起床時間に辛うじて間に合ったルナは、痛む体を押さえ他の訓練生に混じった。
だが、どんなに耐えて抑えられるものではない痛みが全身を襲い、彼女は何度か倒れそうになる。
隣の者、後方の者がルナの体に触れ、起こす。
どこを触られてもルナが無反応なのをよいことに、彼らはここぞ、といわんばかりである。
指導中のツィツァは見ていられず、何度目かに彼女がふらついたとき、退出するように言った。
苦々しく怒鳴った、いわく、
「どのような意識で訓練に当たっている?それでは全く実戦で役に立たん!!」
ルナは謝ったが、衛生兵に連れられ、部屋に戻っていった。
ツィツァはその後、一同からルナへの興味を逸らすために、一層厳しくも怒鳴っていた。
彼は我ながら、庇いすぎだと思いながら、それも周りのために必要な指導だと自分を落ち着けた。
幸い、誰も彼の煩悶を気にする者はいなかった。
その頃、普段なら、昼間眠れることを嬉しいと思うのに、粗末な寝床にルナは落ち着かず横たわっていた。
薄い毛布を引き上げ、昨夜からのことを考える。
カイヤは、逃げたいわけではなかったのだろう。
「これで、一人勝ちね」思い返して口にしながら、今頃何をしているのだろうか、しぶしぶ逃げたカイヤは。
成功しなければ、どうなっていたのかな。
と、言ったところで遅い。彼女は逃亡に成功した。
今まで見てきたうち逃亡の成功を助けた者は、失敗したそれよりもひどい仕置きを受ける。
ルナはふいに昨日の仕置きがあれで終わったことを不思議に思った。
なんであれで、済んだんだろう。
成功したカイヤを補助した私が、何故あれで済んだのだろうか。
翌日の訓練に這いつくばってきた者も、最後まで退出を許されなく、倒れてもなお蹴られるもの、
仕置き途中で、血を吐きながら殴られた者、明らかに骨の折れた音・・・・。
そういうものを数多く、見てきている。
ルナはそれらを心を殺して見ないようにしていた。
激しい痛みの中でも打撲ですんだ体を撫でた。
どのような意識で・・・・
逃げようなんて思ってやしない、だが、昨日の最後、「耐えられるか、試してみよう」
と、大佐が言った、言った・・・・・・蹴られて・・起き上がって・・・
そこで、意識が飛んで・・・・・・・・・。
ルナは氷で打たれたように感じた。
試してみよう、といわれて意地でも意識を飛ばすものか、と思ったのに。
あそこから、全く記憶がない。気がついたらこの部屋に寝かされていた。
「試してみよう」
諦められた?耐えられない、と判断された?
優秀と謳われていたルナには、認めがたい屈辱だった。
まさか、と打ち消して、いや、と思う。
「試してみよう」・・・・私はそこで意識が飛んでいる。
耐えられない、と判断されたのだ。
あれで仕置きが済むわけがないのだ、私は、ここまで頑張ってきて、ここで終わるのか?
カイヤを逃亡させ、仕置き途中で気を失う失態。
見捨てられた?正式な通知が来るまでわからないが、今日の私の訓練の状況を見て、と最後の一縷だったのかもしれない。
生き馬の目を抜くようなこの中で、あの仕置きで済んだだけならいざ知らず、今日で決定打になったかもしれない。
一度そう考えると、もう他の考えにはいかない。
何のために今まで耐えてきたのだろう。
こんなことなら、一緒に逃げればよかった。
悔しさとともに、これで終わらない、といった決意のようなものが湧き起こった。
そう思うと、いても立ってもいられなくなる。
ただ、今出て行っても返されるのがオチだ。
どうするか・・・・・・ルナは、カイヤの使っていた棚に目をやるとそこに小さなビンを認めた。
カイヤがいつも飲んでいた薬、滋養強壮剤だ。
たいそう効く、と効いている。この際、何でも使えるものは使っておこう。
訓練が終わるまであと6時間、出来るだけ体力を。前と同じになっては、元も子もない。
ルナは、そのビンだけをめがけて起き上がり、あちこちにぶつかりながら手に取った瞬間、
ラベルを見ることすらせず慌てたように蓋をこじ開け、中身を飲み干した。
ふう、と息をついたとき、
がたん、とルナは倒れた。
昨日の睡眠不足を補うように、ルナは眠りに入っていた、手に持ったビンが転がる。
そこには、たどたどしい字で、処方箋のように、カイヤの字が連なっていた。
「使用上の注意
一回一匙
一日三回を目安に
女性用
いっぺんに飲むと、効きすぎるので注意」
夜に近い時間、訓練を終え身づくろいと食事を済ませたツィツァは、無意識にルナのことを思い浮かべた。
あの姿、誰が見ても欲情するではないか。
だから、女を受け持つのは嫌だったんだ・・・・、と思い、
区別は必要ないはずなのに、この自分がそう出来ないことに、腹立たしさと、自己嫌悪とに陥った。
彼は、カイヤの件に関係していなかった。
カイヤは、その前からうすらうすらと噂が立っていたのであり、必要はないのではないか、という
彼の提案に、2人の部下は「だからこそ、情感ですまないものを教えるべきです!」と言い張った。
彼は、あまりに止める自分が滑稽に思え、投げやりにに2人の部下に任せた。
今回は、その結果である。
敵に捕まったとき一番拷問に弱いのは女、と相場が決まっている。
前もって、慣らしておくことに彼に否やはない。が、ルナ・・・・あの子であれば、必要ないのではないか?
口も堅く、根性も下手な男よりはある。
無理にして、逃亡を図っても・・・とそこまで考え彼は唸った。
どうも、ルナをひいきしているように見える、と自分で思う。
実際にはそんなこともないのだが、彼は意識するあまりに考えてしまう。
やはり、周りへの建前もある。
近いうちに、ルナに仕置きをしなければならない。
でも、ルナ・・・・自分に向ける、あのひたむきな瞳を無くしたくない、彼はまたいらいらとしていた。
悶々としている中、突然何の前触れもなく、ノックの音がした。
彼は、予約のない訪問を少し疑問に思ったが、気を紛らわせたいのもあり「入れ」と言った。
「失礼いたします」と言っておずおず入って来たのはルナ、きちんと制服を着こなしている。
ツィツァは何故だか動揺し、後ろめたい気持ちそのままにドアを閉めるように言い放った。
かちり、と扉が閉まった瞬間、ツィツァは自分で言っておきながら、余計に慌てた。
自分の執務室に、ルナがいる。
「本日はまことに申し訳ありません」とルナがしっかりと言うのを、うろつきながら彼は「うむ」と答えた。
ルナは思いつめたように、吐き出した。
「私、逃げるつもりはありません」
「何?」
ツィツァが問うのに、ルナは唇を開けてまた閉じ、迷ったように、
「カイヤが受けた訓練を・・・・」
ツィツァは、どくん、とした「なんだと?」
「私、・・・耐えて・・ではなくて、その」もじもじと小さい声で言うのに彼は、ごまかすように
「なんだと!?きこえん!!」と突き放した。
これでルナが怯んで逃げてくれれば、と彼はどれだけ願っただろう、が、ルナは意を決したように、
「お願いします!!」と頭を下げた。
彼は、ここに見守り役がいないのを、是とも否とも思った。
今ここでなら他の男に触れさせずに済む。
迷っていた。ここで、ルナに仕置きをして、はたして済むのだろうか?
余計な意見を封じるだけの力はある、だがそれは、公私混同ではないのか?
いや、昨日の状態から見て、明らかに任務をずれたような彼らを見る限り、ここは俺一人で・・・
あるいは公私混同では、ないか?・・・俺は・・・・・
ツィツァが苛立っているのを感じ取ったルナは、やはりと思い、泣きそうに頭を下げた。
「どうかお願いいたします」
ごくっと息を呑んだツィツァは、しばらく考え込むふりで、あごに手をやったまま黙った。
「お見捨てなきよう・・・・」
ルナの声が、少し潤んだようだった。
ここで帰せば、こいつは諦めてしまうのではないか?それでは本末転倒だ。
ツィツァは、試すだけだ、と自分に言い聞かせた。
「耐えられると?」
「はい、耐えて見せます」
ほう・・・・とツィツァは言った、逃げないか、それを俺は確かめるだけだ。
「後ろを向いてみろ」
「はい」ルナは、びくりと泣きそうな固い表情を浮かべたが、それは一瞬だった、くるりと背を向ける。
思い知らせてやる。ツィツァは言った。
「そのまま、ズボンを脱げ」
ルナは黙って、痛む胸と腕を庇いながら、ゆっくりとそれを下ろした。
「・・・下着もだ」
ツィツァは、冷静でなくなっていく。
ルナのかすれた息は、はい、といったつもりなのだろう。
ツィツァは目の前で、震える指先をやっと動かして弱々しく脱いでゆくルナを、たまらなく思った。
が、悟られないよう重たく、
「手を壁に付け」
「はい・・・」ルナのそれは声になってはいたが、震えている。
背を向けていることも、また余計な想像を掻き立てていた、ツィツァは次第に高じてくるのを感じた。
自分を戒めようとし、が、朦朧として上手くまとまらない。
いや、これは任務だ、必要悪だ、任務だ・・・ルナが自分から申し出た・・・・俺に・・・お願いします、と。
「・・・足を、開け」
ツィツァの声がかすれた。
ルナは、一瞬置いて、じわりとほんの少し脚を開いたが、それ以上は、かかとを浮かせては、ためらっている。
実際には目に涙を浮かべていたものの泣いてはいないのに、背中から、泣き声がにじむようだった。
「・・・・いいだろう」待ちきれず大佐が言うのに、ルナは・・・足の間に乾いた空気を感じた。
ツイツアがルナの腰に触れる。
「・・っ」
びくっと身を引いてしまったルナは、すぐに「も、申し訳ありませ・・・」と消え入るような声で言う。
「・・・動くなよ」
改めて柔らかく触れると、冷たい肌、すぐにわかるほど力が入っている。
小さな肩、柔らかな黒髪が時折震える。
壁についた手は指先を握りこんでいる、それらはルナの緊張を顕著にしていた。
ツィツァは、ほぼ無意識に、ルナの足の間に後ろから指を差し込んでいた。
案の定、そこは乾いており、彼女の体の緊張と同じように、険しかった。
「くそ・・・」
これは彼の失敗である、自分の高まりと彼女との温度差に、つい口を出てしまったものだ。
指を話、自分を落ち着けようと深呼吸をした。
ルナは何か自分に至らないことがあったのかと慌て、よくわからないまま、
「申し訳・・・ありま、せん・・・」
と俯く、そのとき、髪は肩から零れ落ち、白いうなじがちらりと見えた。
ツィツァは、口を開くことができない、何を口走るか自分でもわからなくなりそうだった。
何も知らないルナは、沈黙に追い詰められていく。
だめなのか、ここまでしても。まだ・・・いや、もう・・・・
「大佐・・・・・」
この白い肌に思いっきり歯形をつけてしまいたい、ツィツァが葛藤し黙るのが精一杯なところにもってきて、
「お願いします・・・・・」
ルナの泣き声が聞こえた。
ツィツァは、ふつ、と切れたように、もう、何も考えられなくなった。
ルナの口をそっと大きな手で塞ぐ。
耳元で「声をあげるな、それから、このことは誰にも言うな」と言った。
誰にも言わなければ、任務の意味もあったものではないのだが、彼は必死にそう言った。
何もわからないルナは、ただ怯えたが、抵抗はしなかった、
「わかったか」
彼はルナの反応を待ちきれず、そう脅すように言う。
後ろ向きのルナの首が、こく、としたのを皮切りに、ツィツァはルナを強く抱き寄せ、その髪をかきあげると、
そのうなじから耳の下までに舌を這わせ、何度か繰り返すうちに、
「・・・・ぅ」口元を押さえた手のひらに、ルナの熱い息を感じた。
ツィツァはそこから耳朶を柔らかく噛み、空いた片手を上着の下に滑らせた。
冷たくしっとりと張った肌を撫でてから、すいと抜くと、したから一つずつ、ボタンを外す。
壁に当てられたルナの手が、とっさに引き止めるように控えめにその手を覆う。
「黙ってろ・・・」ツィツァは言ってルナの口から手を離すと、彼女の抑えようとしていた手を掴み指を絡ませる。
シャツのボタンまでを外し終えると、ツィツァは急に両手をルナの肩にあて、ぐるり、と表を向かせた。
ルナの目は、不安な色を浮かべているように見えた。
どうしたらいいかわからない、といったように眉根を寄せ、身を硬直させた。
今にも泣きそうな顔で、ひたむきに見つめてくる。
ツィツァは、ルナの髪に指を差し入れて引き寄せ、その淡い唇を吸った。
下唇を舌で刺激しながら、吸ってやる。ふと唇が開いたところで上唇を吸い、柔らかく、まとわり付くように
唇を味わった。
ゆっくりと離して見る、とルナの頬は染めたように赤く、瞳が潤んでいる。
もう一度、引き寄せる、口づけて舌でちろちろといじると、ルナはため息をつくように口を開く。
舌の先でルナのそれの側面をなぞる、逃げるそれをまた吸い引き寄せ-----、
片手で自分の着ていたものを脱ぎ去り、ルナの腰を抱く。
素肌が直接触れる感覚に、ルナは、驚き一度引いたものの、すぐにおずおずと肌を合わせてくる。
その慣れない様子、唇を合わせながらルナの乳房に触れると、急にルナは慌てたように顔を逸らした。
「だめ、です・・・・・大佐」
「だめだと?」
「いえ、あの・・・」
「なんだ」
必死に逃げるようなルナのそれを追いかけて口をつけると、ルナは悶えるように避けようとした。
「変な、・・・・変な感じ、が、して・・・・」
恥かしそうに、瞳を歪めて、体を隠すようにする。
ツィツァがわが意を得たりとばかり覗き込み、「どんな感じがするんだ?」と聞くと、
「〜〜〜〜」
ルナは困ったように眉根を寄せ、唇を尖らせて
「どういって、いいのか、・・・わかりません」
申し訳なさそうに、ルナは答えた。
あくまで真面目なルナを、彼は思わず引き寄せ口付け舌を絡ませながら、その場に座るよう促した。
素直に膝を折ったルナに、ツィツァは押し倒すように圧し掛かる。
2人で重なるように横たわると、唇を離し、
「だったら、何も言うな」
ルナの不安げな目を見つめて、じっとそのまま片手をルナの乳房に這わせた。
親指で転がすようにいじり始めると、ルナはたまりかねたように見開いていた目を閉じ、吐息をもらした。
指の代わりに舌を這わせながら、もう一度ルナの足の間に指を差し込む。
今度はルナが、敏感に跳ねた。
そこはゆるりと濡れ、指先が滑ったのに、
「あ、」とルナは小さく声を上げた、かと思うと止まらなくなったように指の動きに合わせて小さく声をあげる。
隠すように両手をそこにやったのをツィツァは掴み、胸元からつうううっと舌を滑らせた。
「いやあああ」
今にも顔を隠そうとする手を押さえながら、彼は茂みの中に舌を差し入れ、最初は突くように、それからゆっくりと
舌全体で舐めあげ、そっと吸い、細かにいじりながら吸い、息を吹きかけ、唇で撫でた。
ルナは膝を震わせている。
ルナの腕の力が弱くなったころを見計らって、彼は手を離した。
潤沢に潤んだそこに指を一本差し入れ、ツィツァは言った。
「ここに」
「・・や・・・・」悶えるルナを見下ろし、
また隠そうとする手を掴んで、どくどくと脈打ったものを握らせる。
「これを」
ルナは初めての感触に、びくりと指を離した。それを覆い、強く握らせる。
「入れる」
ルナの怯えたような表情、ツィツァは自身のそれをルナに握らせたまま、小さな入り口に押し当てた。
「耐えられると、言ったな?」
お願いします、とも、と言って彼は間違いなくそこに先を入れながら、ルナの手を掴みあげると、不意に身を起こし、
一気に、押し入れた。
ルナは当然、悲鳴をあげた、が、それは「よかった」と言うのに近いものだったかもしれない。
必死だった自分を認められた気がした。
決して、見捨てられていなかった、と言う実感。
自分の中に異物を受け入れた瞬間だった。
痛みは結構なものだったが、覚悟したことだ、とルナは思った。
けれど、何か知らない体の心が疼いている。
今までに感じたことのない焦燥感のような、充足感のような、もどかしいような、足りないような・・・・?
大佐の汗ばんだ体が、心地よくて、うずもれてしまいたくなる。
「いいか、このことは誰にも言うな・・・・」
荒い息の中でツィツァは言った。
這うように抜いては、また割り込めるように刺しながら。
ルナは「また、大佐以外に・・・?」と切なそうに聞くのに、
彼は迷っていた答えを出す。
「そう、ならない、ために」
「そう、ならない、ために?」
ルナは閉じてしまいそうな瞳をこじ開け、喘ぎそうな声を抑えたために、上擦って、聞いた。
「俺にひどく犯されたといえ」
ツィツァはここばかりは深く押し込んだまま、ルナを見つめた。
かすかにでも動いてしまう腰を、抑えられず、自覚し、かなり突き放した言い方をした。
ルナは、悲しそうにツィツァを見る。
迸る彼の汗が、ルナの体に降った。
「わかったか」
ルナは痛みの奥底にうずく何かを感じていて、
濡れた声で「約束したら、」
と涙を浮かべながら、言った。
「このまま、今このまま、続けて、ください、ますか?」
ツィツァは答えなかった。
答えなかった代わりにルナを抱きしめ呼吸を止めるように唇を吸いながら、
ただ強く押し込んで・・・・
夜明けになっても、ルナを離さずにいた。
これでルナの新人の頃の話は終わりです。
途中の誤植は愛嬌・・・いえ、すみませんでした。
これで、カイヤ、ツィツァとルナ、クウリ、サクラが繋がりました。
また、隙を見て投下させてください、
今回は、もうこれで終わってもよいかな、という自分でも思いがけない展開だったので、
少々びっくりしております。
それでは。
良かったです。
ツィツァの葛藤に萌えた。
いつでも待っておりますよw
いつも楽しませてもらってるよー。
ただ誤字とかよりも、誘い受けな投下宣言が気になる。
せっかく面白いんだから自信持って投下してくれ。
レス下さった方、ありがとうございます。
特に
>>301の方、本当に、ありがとうございます。
誘い受け、のつもりはなかったのですが、いいかな?いいのかな?と
思っていたのをずばり見破られた気がして、余計、心に染みました。
ありがとうございました。
言訳になってしまいますが、ルナは自分にとっていじらしく可愛いキャラであり、
このちょっと幸せなまま、終わらせてやってもいいかな、と思ったのです。
が、それでは自分の構想、ルナの性格設定が崩れてしまう
今度からは自信を持って投下します、
お見捨てなきよう、どうかお願いいたします。
303 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/10(水) 02:16:01 ID:xk2TDcyO
頑張れ
ユノの人は、書いているキャラにものすごく
影響されるのかな? レスを見て、ルナっぽいなとおもったよ
アビゲイルマダーチンチン(AAry
あんなところで放置プレイですかそうですか……
アビゲイル・・・
魔王・・・
ルナ・・・・
楽しみが多くて嬉しい。
早く読みたい!
アリューシアも待ってます。
シーアの続きを待ってる
もちろんそれ以外の新規職人さんも大歓迎です。
ヴィオラ様の大暴れも見たい。
アシュレ……
みんな、連載みたいにお気に入りがいたりするんだね。
先日の、スレタイが・・・って問題があったけど、このままでいいじゃん!と思う。
蒸し返すつもりはない。投下してくれる人が「このスレがいい」と
思ってくれるんなら、それでありがたいじゃないか。
好きな話にコメントつければいいんだから、これほど恵まれたスレもないよね。
あれは、異なる意見がそれぞれあって、
『とりあえず次スレの時期になるまで棚上げしよう』という折衷案があって、
それに沿う形で双方意見を抑えた行儀のよさがあって、
だから支障なく進行しているんだろうに。
そこに「蒸し返すつもりはない」といいつつ実質蒸し返しながら、
片方に偏った意見を感傷めいて書く行為はいかがなものか。
書き込む前に分からないものかなー
如何なものか、は君もだけどね。
スレが賑わっているうちはずっと保留でいいよややこしいし
向こうは向こうで問題なく進行してるようだしね
まあ最近スレに来た人には
>>265みたいなお茶目さんも出てくるだろうが
そこらへんは空気読んでもらえばいいんじゃね?2chだし
女兵士限定を解除すれば、もっと新規職人の参入や趣向を変えた話も
投下されるかもしれないとは思うけどねー
総合スレは、あれで色々問題があるような気がする。もっとも一番の問題は投下が少ないことだが。
まあ総合が埋まる頃には、こちらは5スレ目の終わり位になるだろうから、
議論しつつもマターリ、で行けばいいんじゃないでしょうか?
個人的には「女兵士→女戦士」に変える程度のスレタイ変更はアリだとは思う
やだって人が居るなら無理に変える必要は無いけど
とにかく一番嫌なのは既存のSS師に移住を迫るようなやり方
ものすごく不思議なことがある。
みんな、お好みのキャラが居るってことは、
このスレへの投下を待っているわけだよね?
>>312の言うようにこれが「お行儀よく」の状態なら、
この中にスレ違いな投下がありますよ、ってことだよね?
だとしたら、それはどれなの?
自分には、すべてスレ相応だし、移住を迫るSSもないと思うし、
ないのなら、スレタイを変える必要もないのに。
このままでいいじゃん、なんで住み分けとか、スレの内容とかを決めなくちゃなんないの?
投下するかしないかは、SS師がきめることじゃん。
SS師がこのスレに、と思うなら、それでいいじゃん。
なんでだめなの?
今260kbだから430kbあたりでまたその話しようぜ。
そろそろ一ヶ月…
アビゲイルマダー?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
321 :
投下準備:2007/01/19(金) 21:27:48 ID:k/F/dsPD
しばらく投下が無いので、エロない話ですが
他の話を待つ間のおつまみにどうぞ〜
322 :
海大祭前夜:2007/01/19(金) 21:30:37 ID:k/F/dsPD
港湾都市に溢れる喧騒はいつものことだが、このニ三日はどこか違う。
路地で遊ぶ子供たちも軒先に佇む老人も、どこかそわそわしている。
大人たちは何やら忙しそうに作業を続けている。
そう、もうすぐこの街の一年で最大の行事、海大祭が開かれるのだ。
通りごとに衣装をしつらえ、各々のギルドも出し物の準備に余念が無い。
もちろんどの神殿も、司祭から小坊主まで目が回るほど駆け回っている。
でも、誰にとっても嫌な苦労ではない。
日々の暮らしの憂さを晴らし、神々への恩寵へ感謝し、これからの幸福を祈る…
これから三日間、市民たちにとって何よりも楽しみな祭日が続くのだ。
そのどこか浮ついた街の様子を、宿のテラスから眺める二人が居た。
一方の老人は禿げ上がっているものの、その頭には陽光が照らされて輝き、
肌の艶はどこか脂の抜け切らぬ精力を感じさせる、奇妙な老人であった。
テーブルを挟んで正面に座るのは、小奇麗な服装を着た活動的な美女であった。
よくよく見れば、この街でも目を見張るほどの美女なのだが、
惜しいことに、眼帯に覆われた右顔がその美貌に傷を付けている。
「……………ふぅーーーっ、」
太陽と海風に痛みがちな髪には東国産の華油が塗られ、
長い煙管から唇を離し、肺の中に溜めた紫煙をゆっくりと吐き出しながら、
その甘い煙を女は存分に堪能していた。
彼女の手前に座る禿頭の老人は、手に持った杯を傾けながら女海賊に話を続けた。
「なあ、ガレーナ? お前が奴らに腹を立てるのも分からんでも無い。
だがそう挑発することもなかろう?」
「ふんっ、人の山車に口を挟むなんて親父らしくもないじゃないか」
海大祭の見ものの一つ、それは船主がそれぞれ職人に作らせた張子細工を載せて、
着飾った町人たちとともに大路を練り歩く山車行列である。
海の神々、海獣や魚、伝説上の海の英雄達などを象った張子を見物するため、
行列には街中どころか、内陸の町からも人が集まるのだ。
金回りのいい船主ほどこの山車に金をかけると言われ、
みずぼらしい山車しか出さない輩は、周りから見くびられる。
そのため、大抵の船主は趣向を凝らし、見栄えのする細工を用意させる。
これはこの街の細工職人達にとっては稼ぎ時でもあり、
住民の批評と感想は祭りの後まで続き、しばしの話題の種にもなるのだった。
323 :
海大祭前夜:2007/01/19(金) 21:31:27 ID:k/F/dsPD
「ああ… 儂だって祭りの出し物に口を挟むなんて野暮な真似わしたくはないさ。
…………だがお前が作らせてる山車は、ちょっとやり過ぎじゃないのかい?
『犬たちと豚を、頭から齧る鮫』の張子を出そうなんざ、冗談にしても笑えんぜ」
「ふぅーーっ、どっから聞き込んだんだ? 私の山車の事を」
「お前さんの山車を作らされてる張子職人からな。
可哀想に、あんなの造る片棒担がされて、総督府と評議会からお咎めをうけるんじゃないかと
あいつら青くなってたぜ」
「そんで親父に泣きついてきたって訳かい……… ぺっ、根性のねえ職人どもだっ!」
この街の人間ならば、その山車が何を意味しているのかは即座に分かるだろう。
陸地出身の者に、あれこれ指図されることを喜ぶ住民は少ない。
だが総督府の力の前には、海賊評議会さえ屈服せざるを得なかったのだから、
しぶしぶ大人しくしているだけなのだ。
表立っては新支配者に文句をつける事が出来ぬ住民たちも、
影でこっそりと総督の横暴や評議会の弱腰を謗っていた。
しかし、近海中の人間が集まる海大祭で、
堂々と『豚と犬』の張子を練り歩かせようとする者は、隻眼の女海賊以外には一人もいないだろう。
「親父、あの山車が港大路から大神殿に向かって練り歩きゃ、街っ子に大受けするだろうよ」
「そりゃあそうさ… 皆長年守って来た海の自由を失って、内心腹を立ててるんだ。
お前さんの度胸にゃ拍手喝采だろうぜ」
「………ふぅっーー、そうだろ?」
「だが、総督府と評議会の人間にとっちゃ笑い事じゃない。
お前ほど名の知れた海賊が奴らを貶めれば、皆面子が丸潰れだ」
禿頭の老人はため息をついた。
この女海賊のことは、彼女が『鮫』の二つ名を認められる前から知っている。
男どもを率いて海賊稼業をする程の女が、理屈で話をした位で気を変えるとは思わなかった。
それでもガレーナがやろうとしている事は危険に過ぎた。
統治者は民に嫌われたとしても構わないが、侮られたら終わりである。
海賊評議会も、ここまであからさまに自分たちの事を嘲笑されれば、
他の構成員たちに示しが付かない。
両者は全力で彼女を潰しにかかるだろう。
324 :
海大祭前夜:2007/01/19(金) 21:33:13 ID:k/F/dsPD
「けっ、豚と犬を怖がって漁が出来るかよっ!」
「実際のところ、奴らを本気で怒らせればお前さんもひとたまりも無いぜ?
そうなりゃお前の度胸に感心してた人間も、ほっかむりして知らん顔を決め込むだろうさ」
「ふんっ」
「お前だけが咎めを受けるならともかく、
船の手下たちも巻き添えを食らうのは美味くねえんじゃないか?」
「ちっ… 親父、小言は聞かないぜ。
私はあの張子を山車行列に出して、『豚に尻を貸す腐れ犬ども』に見せつけてやるんだからね」
老人に顔を背け、ガレーナは言い放った。
銀製の吸い口から煙を再び肺一杯に吸い込み、長い時間をかけて空に煙を吹き出す。
その様子を見て、老人は道理をもって諭すことは不可能だと悟った。
「ガレーナ………話は変わるけどよ、
最近は『ウツボ』のトコの小僧と一緒に商売やってるんだってな」
「あっ、ギルのことかい?
親父に相談しなかったのは悪いかなと思ったけど、ぼちぼちやってるんだよ」
「まあそいつはいいさ。
私掠許可取ってないのに、勝手な海賊働きをするよりはマシだからな」
老人は鷹揚に頷いた。
海賊船と蔵主の関係はややこしいものだ。
洋上では一本独鈷でやっていける海賊稼業だが、
一旦船から降りれば、様々なしがらみが海藻のように絡み付いてくる。
特にこの老人のように、評議会にも顔が利く大物となれば、
傍若無人な海賊連中であっても慎重な付き合いが欠かせなかった。
「それにしても随分儲けてるみたいじゃないか。
今お前が吹かしてる煙草、遠南海産の特上物だろ?」
「………まあね。自分でも驚いてるけど、結構私には算盤弾きの才覚があったみたいなんだ」
「でもよ、手下どもには普段より二枚は格上の女郎を買わせて、
去年よりもどデカい張子細工を職人に作らせようっていうのに、
儂の蔵にちっとも物を卸さないってのは、少し不義理が過ぎるんじゃないのかい?」
「それは…」
眉毛すら抜けたぬるりとした顔から、老齢に似合わぬ眼光が放たれた。
それはけして鋭い眼光ではないが、言い逃れを許さぬ凄みを秘めた視線であった。
老いたりとはいえ、かって東西の海を震え上がらせた五大海賊の一人『海坊主』。
彼が未だ老いぼれてはいないことをガレーナは感じとった。
325 :
海大祭前夜:2007/01/19(金) 21:37:12 ID:k/F/dsPD
「なあ、どんな稼ぎ方をしようと、そっちの才覚次第だよ。
親の代から付き合いの有るお前を密告(さ)そうって心算は無いさ」
「………」
「ただよ、儂もこんな生き方してれば敵には事欠かない訳だ。
お前がヘマやらかした時に、儂を陥れようとする輩が『お前の裏で糸引いてるのは海坊主だ』
とか言い出せば、こっちにも累が及びかねない……… 儂が言いたいことは分かるよな」
「ぐっ」
ガレーナと老人の付き合いは長く、そして深い。
二人には祖父と孫娘同然の繋がりがあった。
しかし、海の冷厳な掟にはこうある。
『乗員が疫病を発症したる時、船長はそれが自分の母親であろうと海に投じるべし』と。
いざとなれば、自分と船を守るためにどれだけでも冷酷になれる… それが海の大将の資格なのだ。
海賊を一人、誰にも知られぬまま魚のエサにする事など、この老人には朝飯前のことである。
女海賊には老海賊の言わんとする事が十二分に判った。
「判ったよ、親父っ。豚と犬の張子は外させる」
「ほう、分かってくれたか」
「ああ、これから職人どものトコに行って、注文を変えてくるよ」
「そうかそうか、気が変わってくれたのか!
ガレーナは良い子だな、この爺の言うことをちゃあーんと聞いてくれるんだから」
「全く… 早くこの老いぼれ坊主にも、海判官のお迎えが来ないもんかね!?」
「あいにくだがお前と違って、儂は判官さまに賄賂を欠かしてないのさ」
「けっ、とっとと海の底へ逝っちまえっ! 先に逝った仲間も敵も痺れを切らしてるぜ!?」
海に生きるものが死んだ後、その魂は海底にある弾正台に引き据えられ、
海判官の審判を受けるのだという。
憎まれ口を叩きながらテラスを後にするガレーナを、海坊主は愛しげに眺めていた。
好き好んで怨みを買うことは無い、彼女がそれを理解しないのなら、
出来る限り自分がそれを防いでやらねばならない… 海坊主はそう思っていた。
近海一不敵な女海賊も、彼の記憶のなかでは可愛らしいお転婆娘のままなのだった。
326 :
海大祭前夜:2007/01/19(金) 21:38:21 ID:k/F/dsPD
・・・・・・・・・
海大祭が始まると、一年で一番忙しく楽しい日々が始まる。
大路には露天が軒を連ね、酒や食べ物の香りが溢れる。
生娘から年増まで、全ての女たちは着飾り、男たちはそれに鼻の下を伸ばす。
数日限りの享楽の時間が、これからしばらく続くのだった。
祭りの初日に、各船主が作った山車が公開された。
この祭りに出そうという物なのだから、どれも負けず劣らず立派な張子を載せた山車ばかりであった。
だが、一際街っ子の話題を攫ったのは、隻眼の女海賊が作らせた山車であった。
その『隻眼の鮫に、頭を齧られる大蛸』の張子は、
どこか実在する蔵主の顔に似過ぎてはいないかと、事情に通じる人々の笑いを誘ったのだ。
もちろん祭りの間中、件の蔵主の機嫌があまり麗しくなかったのは言うまでもないことだった。
(終わり)
327 :
投下完了:2007/01/19(金) 21:39:12 ID:k/F/dsPD
隻眼の鮫の話を書いていると、
なんだか極道の世界の話に近付いていく感じが…
爪メд゚)もなんだかヤンキーみたいになってしまって…
次が有ったらエロも含めて何とかしたいと思います。
GJ!楽しく読めたよ。
ガレーナのきっぷの良さに惚れ込んでます。
次回作も魔王も期待。
GJ
ガレーナは面白くて好きだw
あんまりエロくないね
ってか分からないところが多いよ
君はもう少し読解力と知識と想像力を身につけたほうが良いかと。
ガレーナも背景がしっかりしてきて良い感じですな
その分だけ以降のエロが盛り上がるってもんでwktk
>>330 厳しい評価はあっても(あったほうが)良いと思うが、
せめて「どこが」「どんな風に」判らないのか書かないと
姫スレも合わせて保管庫更新ktkr
いつも乙です
どこが分かりにくいか書いてもらった方が、書き手も次に繋げることができる(かもしれない)。
>>330じゃないけど
張子や山車って何?って思った
ググらなきゃ分からん言葉が出てくるとは
どーでもいいけど
「張子」や「山車」がググらなきゃ分からんなんて、
堂々と書き込むことじゃないだろう?
一般教養だよ…。
お前は18年生きてきてねぶたのニュースも見た事がないのか
でもねぶたってよりはアレだよな、イタリアとかスペインとかの
聖母マリアの張りぼて作る祭みたいな感じだよねこのSSだと
何はともあれGJ! ガレーナかっこよくて読んでて爽快だった
いや、一般教養とは呼べないかも。
張り子と書いた方がより読者に分かり易かっただろうし、
祭りで神輿を担ぐ事はあっても、山車なんて見た経験が無い人もいるし。
そもそも山車と書いて(だし・やま)と読める人が何人いる事か…
ただファンタジー世界の作品を堪能するためには、
古代〜近世の生活、風俗についてある程度知識が必要になる面がある(と思う)。
山車のイメージが湧かない人は、バレンシアの火祭でぐぐってみて。
アビゲイル、まだ?
シーア、まだ?
ヴィオラ、まだ?
魔王、ガレーナ、まだ?
ルナ、まだ?
早くしないと一般教養とねぶた祭りの話になっちゃうよ
アリューシアとアズリンも待ってる(・∀・)っ/凵⌒☆
自分の無知をわざわざ晒すことはないと思うが
職人さんを全裸でお待ち申し上げます
全裸は読者のステイタスです。
344 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:02:50 ID:Pkh9XC7j
ねぶた祭りにならないように、投下します。
エロなしですが、
クウリの身分、ルナとカイヤ、今後の布石とご了承ください。
お嫌いな方は、どうぞスルーをお願いいたします。
姫スレ保管庫の管理の方、いつもありがとうございます。
345 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:04:27 ID:Pkh9XC7j
前回の前、サクラが出て行ったところから。
*
クウリは、鼻をつまむように、「着替えてきてくれませんか」と言った。
「情事にふけるのは結構ですが、僕には毒でしかない」
ルナは感情のまま、お前とは話すことも何もない、と突き放してしまいたかったが、ふと、サクラの言葉、
態度に、引っかかるところがあったのに、
「では、30分後に」
と扉を閉めようとして、クウリの足に阻まれた。
咎めるように見るルナに、「お分かりですよね?」
「ここにいること自体で、処罰の対象なのですから。訓練中の僕は」
確かにそうだ、就寝時間を越えた今、兵舎から抜け出してきただろう彼が、ここに、誰の許可なくいることは許されない。
「・・・・入りなさい」
ルナはあごで示し、彼を中に引き入れた。
「どうも」いいながら長身の彼はドア枠を避け、のそ、と踏み入れた。
「そこに」
座るように命令をし、自分の執務室兼居室、その横にある浴室に彼女は向かいながら、
冷静ではあったが、このローブ姿で話をする相手ではない。
「すぐに終わる、動かないように」と睨んだ。執務室の中には、訓練生には見せるべきものではないものもある。
ルナの言葉に神妙にクウリが頷くのに、彼女は念を押すように眼差しに力を入れてから、す、と化粧室に消えた。
着替えを持ち、化粧台の前に立ったものの、ここでは見られないとも限らない。
しかたない、浴室に入り、ついでだと湯を浴びることにした。
サクラの余韻が残ったままで、いたくなかった。
346 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:06:06 ID:Pkh9XC7j
湯を使う音が聞こえる中、クウリはそっと本棚に近寄り、その中の資料、を探す。
ツィツァ・・・俺は奴を許さない。
クウリは、食いつくようにラベルを見流していた。
目的のものはなかなか見つからない。
焦りを感じ、苛立ったとき、かちり、と浴室の方から聞こえた。
彼は観念し、もといたソファに戻った。
「それで、話とは?」
きちんと制服をきこなしたルナは向かい合ったソファに腰掛けると、即座に言った。
風呂上り特有の匂い、湯気のようなそれを感じながらクウリはルナを見た。
すっかり彼女は色を落としていて訓練中に近い緊張感でいたが、サクラを見送るルナから、
クウリの脳裏は、彼女の姿態を想像して止まなかった。
「・・・・隊長も、男が必要なんですね」
「・・・・」
「あれだけ男と扱え、と言っておきながら」
からかうようなクウリに苛立ち、こいつと必要以外の話をすることもない、と改めて思ったルナは、
「・・・・・・話があると言ってましたね」と、有無を言わせない口調で、言った。
ニヤニヤとするクウリに、乗せられたか?と疑いルナは、
「ないのなら、出て行ってもらいます」
と見据え、すぐそばの机の上、呼び鈴に目をやった。
「ありますよ」
クウリは、もったいぶるように言い、黙っているルナをじっと見つめ、ツィツァ、と呟いて見せた。
ルナの目に、驚いたような色が浮かんだ。
が、すぐに彼女は何事もなかったように半乾きの髪を撫でると、
「ツィツァ・・・?」と言った。
347 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:07:26 ID:Pkh9XC7j
「ご存知のはずです」クウリは、仰け反っていた身をおこした。
しばらく観察するように、目を逸らし続けるルナを見つめながら微笑んでいたが、
「北の、メリカ、を攻めた際に、功績を上げた、ツィツァ」
何かを決め付けるように、クウリは言った。
沈黙。クウリは、余裕に笑っている。
ルナは、じっとまぶたを閉じたが次の瞬間、はっきりクウリを見ると、
「どういう意味だか、解らぬ」と言った。
ふふん、と笑ったかのようにクウリは身を乗り出した。
「あなたの、恋人です」
ルナは目を動かさぬまま、止まった。
それは恋人を否定するようでもあり、こちらの動向を伺っているようにも見えた。
「メリカは、この国の思惑通りその手におち・・・この国の第一王子、が、そこの領主として納まりましたね?」
ルナは無言で頷いた。この国には、三人の王子が居、それぞれ母親が違う。
王妃との間に生まれたのが第二王子、第一王子は母の身分が低かったために争いを避けるために遠征を命じられた。
第三の王子は、王の余生に比べ幼すぎて、今だ政治の中に入らない。
この国を継ぐのは第二王子と、無言の前提、ルナが仕えているのも彼である。
ルナは管轄外の第一王子に関して、それほど詳しくなかった。
彼はツィツァを筆頭にした大軍でメリカを攻め、成功し、そこの王として君臨した、それで充分な知識だった。
348 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:08:49 ID:Pkh9XC7j
「そこに、王妃が居たのをご存知ですか?」
自嘲的なクウリの笑いに、ルナは引っかかる。
「王妃」
いただろうな、メリカは王政国家だったし、とルナは考え何故クウリがこの話題を出したかを考えた。
「王妃は」
言いながらここで、クウリは大きな息を一つついた。
「美しかった、誰よりも」
ルナをまっすぐに見つめる。そのとき瞳の奥に揺らいだものを、ルナは見逃さなかった。
「・・・・それで?」
「美しさに、王子は」
何か、覚悟のようなものが必要だと、ルナは本能で思った。
「王子は、妻にすると」
今、メリカの王として第一王子は居て、年上の妻を得、何人かの子供が居る。
運命に抗えなかった王妃、その悲しいながら受けるしかない立場を思った。
女は、いつだって弱い、ルナは思いながら、
「・・・知っている」
クウリのくすんでいたような瞳が光り、初めて自分が映るのを見つめ、
「けれど、それが戦世の理でもある」
彼女は、自分に言い聞かせるように言ったのに、クウリは表情を変えず、
「王妃には、前王の子供が居ました」
そっと目を逸らして俯き、搾り出すように言った。
「既に11歳になっていた」
聞きたくない、本能的にルナが身を引いたときだった。
「僕です」
全てのパズルが納まるように、ルナの疑問は氷解した。
349 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:10:15 ID:Pkh9XC7j
8年前。
ルナが昇格したちょうどその年は、メリカの侵略についてちょっとした騒ぎになっていた。
第一王子が行くのである、それはその身を掛けたものであるともいえる。
ルナたちは世の流れとして自分たちは第二王子=次国王に仕える、となにとはなく決められていて、
そこに介在する思惑も知らされずに、進軍を、王子の華々しい門出とだけ聞かされていた。
体の良い厄介払い、とは知らされずとも解っていて、王子の引き連れる軍、そこにツィツァさえいなければ、
ルナはそれも単に、世の中の流れとしていたかもしれない。
誰が選ばれるか、誰に矢が立つのか、軍に選出されることは、いわば国の中心から退け出ることでもある。
いやな騒ぎの中、ツィツァは、自ら志願していた。
あの一件があった翌日は休みであった。
夜明けを過ぎ、辺りが日に照らされる前にルナは自分の兵舎へと戻った。
何も考えられず、ただツィツァの手のひら、その他の感触を逃したくなく、毛布を抱えた。
ルナは目を閉じ、疲労と眠たさにうなだれながら、頭の芯が活発に訴えているのを持て余す。
大佐、と声に出し、あれは仕置きであったのかを思う。
耐えられない私を、ああして救ってくれただけではないのか。
だが、冷たかった、どうしようもない、と言った感じだった。
私が期待するのを、押しつぶすように。
突き上げてくる思いに、ぽろり、と思いがけなく涙がこぼれた。
ルナは困惑して、たがの外れたように、今日くらい、と誰にともなく祈りながら、むせび泣いた。
ツィツァはあの一件以来、ひたむきなルナの目が変わらないまま、指導していく中で思っていた。
俺は、彼女を潰してしまうのではないか?
きっかけは、メリカとは別の遠征軍に、ルナが抜擢されたときである。
逃亡の汚名返上には、うってつけの機会。
その通知を執務室でしたとき、ルナは、期待でもない、試すようでもない、キッパリとした口調で、
「お断りできますか」
と言った。
鬼畜、と言われる男がその隊長だったこともあり、ツイツァは多少、ほっとしたのも否めない。
が、自分から機会をいとも簡単に断るルナを訝しくも思い、
「よいのか?充分な機会だ、断るのは酔狂だとも思われるが」
ツィツァが言うのに間髪入れず、ルナは、
「私は、今だ足りない身です」と言い、黙ってから、意を決したように顔をまっすぐに向け、
「まだ教えていただきたいことが、山とあります。全て身にしてから、その上で、と思います」
ルナの目は、ツィツァをしっかりと見据えていた。
その抜擢をあっさりと蹴った、感情を出さず、あくまで上司として接し、くじかれないルナに応えようと思った。
改めて、出来ることのすべてを教え、ルナのコンプレックスを押さえる方向に彼は尽力したのであり、結果、
ルナは、もう庇う必要もない、押すも押されぬ騎士に昇格した。
どんなに辛い訓練を課しても、どんな中でも、彼女は、ツィツァから、離れたがらなかった。
騎士に昇格したと告げたとき、ルナは、本当に嬉しそうにツィツァを見あげた。
ツィツァは感慨深くも、迷い、潮時だ、とも思いながら、祝辞を述べ、徽章をその胸につけてやった。
もし、離れたくないと、あの時、ルナが素直に言葉にしたなら、結果は変わっていたかもしれない。
こうなったら、もう手放さなければ、と言った想い。
ルナはそんなことも知らず、新しい制服を身に付けて無邪気に部屋にやってきて、恭しく非の打ち所ない礼を述べ上げ、
「大佐、私は騎士になりました」
くるり、と回って見せる。
「似合いますか?」
「ああ」彼が言ったのに、ルナは頬を赤らめ、心から、微笑んだ。
「これで、大佐と同じ場に、いられます」それは抑えられていたが、隠し切れない熱が、垣間見える眼差しだった
350 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:12:58 ID:Pkh9XC7j
俺が居てはいけない
ツィツァは、そう思った。
この子を、潰してはいけない。
ツィツァは、紅潮したルナの頬を指摘しながらも、
「似合う、本当に」
ルナは照れながら、にっこりと笑った後、敬礼をして見せた。
ツィツァの志願がかなったことを聞き、ルナは、抑えてきた感情が爆発するのに任せ、彼の部屋へと急いだ。
扉を開け、そこに立っていた彼にたまらず抱きつくと、
「私も、行きます」と言った。それがかなわないことであるのを、ルナは知っていた。
「お前には、他の任務がある」
ルナは泣き声で、それでも、「もう・・・」と黙り、会えないのですか、と言葉を呑み、
それから、
「何も、教えては下さいませぬのか」
と言いなおすのを、ツィツァは突き上げる思いと、後悔とにせめぎあい、迷った末にこれが最後と思った。
思いのまま、ルナを抱きしめる。
「もう、離れるときだ、そうしたくなくとも」
そうしたくなくとも、初めてツィツァの本音を聞いた気がし、ルナは天井を見つめた。
何度か迷ったように自分を見ていたツィツァの眼差しを思い出して、ツィツァの決心を思った。
自分がそうさせている、と言うことは何となく解る気がした。
「私は、忘れません」
ルナはその大きな目から、ぽろぽろと涙をこぼし、
「いつか、」
口走ってすぐに後悔したが、すぐに、ツィツァがそれを断ち切るように、言った。
「・・・・活躍を期待している。ルナ=シレネ」
「・・・・はい」
ルナは悟った、これ以上、困らせてはいけない。
だが、濡れた声で、
「最後のわがままです」
と、言った。
すと体を離そうとしたツィツァに、「何を勘違いを?」とルナは悪戯っぽく笑い、
意味が解らず困惑するツィツァをしっかりと見つめて、
「どうか、生きていてください」
「会える日まで」言ってルナは、しっかりとツィツァに抱きついた。
ツィツァは言葉にならない思いを、愛おしんだ。
王子を守るためなら命を落とすのが当然の出軍に、そうルナはさらりと言いながら、じっと彼を見ている。
「ずいぶんと、自分勝手な・・・本当に・・・」
わがままだなと、彼は、苦しげな顔で、抱き返す。
2人は、体を隙間なく合わせながら、それ以上に求められずにいた。
この先、いつともしれずに離れるのに今肌を合わせたら、と思うと指先も固まったまま、
無言で、飽きもせずいつまでも、2人は、抱き合っていた。
351 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:14:17 ID:Pkh9XC7j
「当然、王妃の子供は消されるべきでした」
ルナは、動揺を隠すように脚を組んだ。
「それなのに、なぜ、ここにいる?」
低くルナが言うのに、クウリは、試すようにルナを見つめた。
「王妃が、僕が生きていることを条件にしたからです」
「負けて、捕虜となった身でか」
「でなければ舌を噛む、と言ったそうですよ。王子は夢中だった、だから即座に頷いた」
サクラが言った、あいつは首にならない、と言った言葉。近衛隊長が言っても。
ツィツァ、第一王子、王妃の、幸せだった頃の象徴、クウリ。
・・・・とそこまで考え、はた、と思い当たる。
「・・・・・・人質」
ルナは思わず呟いた。
クウリは、口元を押さえ苦笑すると、
「さすがですね」と言った。
「僕は、王妃の生きがいであり、が、反乱を起こす火種にもなるわけですよ」
と、すい、と真面目な顔になり、
「正当な王位継承者は、僕だ」
起爆剤・・・・ルナは思い返し、このクウリの不可解だった反抗に思い至ったが、
「・・・ここにいる以上、お前にその機会はないと思うが」
いいながら、自分の血が下がるのを感じる。
正当な継承者。
だから、軍に入れたのだ、彼の言動を見張るために。
目の届くところに、こいつを置いておくため。
下手に殺せない人質を、何も知らない私の下に。
私が何も知らないことにある、利点。
「お分かりになりましたね」クウリはうなづき、
「あなたの部下として」
クウリは言い、「戦場に出る」とじっとルナを見、充分に間をおくと、
「そこで、僕はやっと、殺されるわけですよ」
ルナは一瞬、彼でなくとも一人としてそうならないように訓練をしているのだ、と怒鳴りそうになり、
にや、と笑ったクウリを見、思う壺かと必死に堪え、黙った。
352 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:15:37 ID:Pkh9XC7j
みすかしたようにクウリが笑う。
「あなたであれば、誰もが納得する」
「・・・・どういう意味だ?」
ルナは身を起こし、解りかけているのに殴りそうな右手を押さえ、聞いた。
わからないのか、と言ったように、
「満場一致、だったそうですよ、暗殺計画の駒として」
クウリは、ふざけていた顔を顰めて、思いつめたような顔をした。
ルナは考えた、納得いくような気もして、だが認めたくもなく、
「お前を殺すための、駒だと?」
と聞いた。
満場一致。
「何も知らないあなたは、僕を思いっきり指導するだろう、そして戦場において、庇うだろう・・・
責任においてね。・・・・そして何より」
女だ、とクウリは言った。
僕の母のように、利用されて生かされているだけだ。
それが真理だと言うようなクウリに、
ルナは、こいつ・・・と唇を噛み、それでいて思い当たるような節に一つ一つ打ち砕かれていく。
「庇っても、庇いきれなかった部下、庇っても庇いきれない隊長・・・麗しい師弟愛の中、僕たちは消される」
そこで言葉を切った。ルナがそっと目を合わせるのに、
「それなら、僕の母も納得いくでしょう、僕は一生懸命な、名高い隊長に命を捨てさせてまで庇われる、
が、助からない。あなたは、僕の素性を、知らない」
ルナは目を逸らすと、一点を見つめたまま、動かなくなった。
クウリは黙り、だが思い直したように、
「あなたが信じた軍は、あなたを捨て駒としている」
はっきりと、そう言った。
ルナは、動かず
「そうか・・・」とだけ、言った。
353 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:20:37 ID:Pkh9XC7j
なるほど、どんなに憎たらしくても、何も知らない私はこいつを庇ってしまうだろう。
なぜなら、自分の部下であるから。
こいつが自殺行為をしない限り、すべては自分の指導の下と思い、庇うだろう。
一番必要だと思っていた覚悟を、うまく利用されたことにルナは、正直参っていた。
出立と進軍を命じられたら、断ることは出来ない。
こいつの身元云々ではない、ただ、つじつまは合う。
満場一致。
だが、こいつの言うこと全てを信じるわけには・・・
彼を疑うことが今一番救われるようだった。
ここまで身を殺して投じてきたものが全て無駄にも思われて、否定しながら、また考え、彼を怪しみながらも、
信じたくない、と思い、かといって軍を信じる気にも、なれなかった。
行きつ戻りつ、彼女は思った、
今はまともな思考ができないだけだ。
ルナは俯いて、何も考えたくない、と言うように、「それで、どうしろと」と目を閉じた。
動揺と怒りに、はちきれそうになりながら。
彼は少し同情したような表情を浮かべた。が、すぐに皮肉なそれに戻り、追い討ちをかけるように、
「もし、僕が死ぬ様なことがあれば、ツィツァは処罰されます」
ルナは、投げやりに、「何故だ?」と言った。
「あなたと、彼が繋がっている。これを何者かが、王妃だけに忠告しました。」
何者かが、・・・お前しかいないじゃないか、とルナは思いながら、「それで」とただ促した。
「だから、僕に何かあれば・・・・、メリカで、王妃の憎しみの代表として彼が処罰される」
もちろん、あなたを動かしてと思われるからです、と続け、
「王子は、彼を許さないでしょうねえ、自分の国の信頼を、王妃から奪った彼を」
あえて言葉を呑んだクウリに、
「だから、どうしろと言うのですか」
ルナは低く言った、その貫禄に息を呑んだクウリを睨み、
「それを、私がどう出来ますか」
言う。しっかりと前を見つめ、追随を許さないように。
なのに表情の奥では、今にも泣きそうだ。
クウリは・・・・・困惑した。
何に関しても冷静だった上司の、一場面弱い部分を見てしまったように思った。
クウリはそれでも伺うように言った。
「だから、協力していただきたいのです、あなたと僕が消されぬように」
354 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:22:11 ID:Pkh9XC7j
ルナは混乱したように、「私にそんな力はない・・・」と顔を背けた。
小さく鼻を啜る音がする。
嘘だろ、とクウリは思い、女と言うのは何て面倒くさいのだろう、とため息をついた。
強気の次は弱気かよ。
感情そのままにぶつけてくる、ルナも、違わず女だったと言うことだ。
だが、これなら扱いやすいかもしれない。
他の女と同じように、面倒くささも可愛さのうち、むしろ軽く扱える、と思いながら、どこか気落ちするような気もした。
結局、ただの女か。
偉そうにしていて・・・・・。
得意の、腫れ物に触るようなそっと抱きしめるように優しく、「隊長・・?」と呼びかけると、
意外なことにルナは泣いていなかった、微笑んでクウリを見て、言った。
「もしお前の言うことが真実であっても」
クウリが多少驚きを隠せないのに、ルナは、
「サクラ=リタ、中佐の言動を踏まえて、お前の告白は・・・・・・・ほぼ真実であるのでしょう、が、私は」
「真実です、だからあなたも」
と勢いづいたクウリに微笑むと、
「そうだね、でも」
軍に、と言いかけたルナを遮って、「あんた、馬鹿ですか」とクウリは怒鳴った。
「殺されるんですよ?」
胸倉を掴まんばかりに身を乗り出す。
「あなたはそのための駒だ!身を守ろうとは思わないんですか?!」
ルナはじっと黙って、それから、
「自分の命を守ることだけを考えたら、その時点で失格だと、」
クウリを見つめ、
「私は教えたはずです」
きっぱりと決め付けた。
一瞬の沈黙。
クウリが、わざとらしくせせら笑って、腰を下ろしたのに、
「私は、出来るだけお前を守りましょう、部下として。
例え、どんなに狙われても。
せめて、お前に逃げるだけの時間は、与えられる自信はある」
「へええ?」
クウリの唇は震え、そんなことができるはずがない、とおもいながら精一杯の思いを込めて、
「僕の為に死ぬんですよ?」と言った。
ルナは、疲れたように笑い、「そうだな、結果的にはね」
「それ以外、何が出来ようか?」と言った。
355 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:25:27 ID:Pkh9XC7j
結局、簡単だと思っていたルナを篭絡することに失敗したクウリは、今ぽつぽつと回廊を歩く。
「お前を守る」そう言い切ったルナ。
クウリの計算では、彼女は失意のあまり自分の駒になる予定だったのだ。
思い通りに行かなかった悔しさに、壁を殴っては見たものの・・・・・
彼は過酷な運命、と言えないこともなかったが、11歳までの甘えた生活、その後の恵まれた境遇まで掘り下げて
考えることは出来ない、いわば珍しいだけの環境を理由に、自分の能力と影響を過信していたのである。
僕の苦しみなんて、ルナになんか解るはずがない。
あんな女、何も知らないくせに。
僕は、他人より苦労をしているし、僕の言うことは真実だ。
大人しく協力するべきなのに、あの女。
ルナのように、女として生まれ人生にも恵まれて、黙ってればいいものをあえて男の中に混じり、そこで評価を求めるなど、単なるわがままで、自己満足の頂点でもある、と思う。
いつだって退ける立場の彼女に、僕の気持ちなんて解らないだろう、
僕を、守れるわけがない。
命を捨ててまで僕を守るなんて、出来るはずがないのだ。
できるもんか。
「守りましょう・・・・・」
頭から離れないその言葉を、クウリは悲しいような、信じたいような、甘酸っぱい気持ちで反芻する。
356 :
月の隠れる森:2007/01/24(水) 01:27:19 ID:Pkh9XC7j
ここまでで一旦投下終了です。
次にカイヤと絡ませた部分を投下させていただきたく。
お願い申し上げます。
ルナktkr
続きも全裸で待ってますよ
>180の「ディットル」の続きを投下します。13レスです。
359 :
レネア:2007/01/25(木) 01:03:31 ID:3CAo7Bwo
ルーゼンは、レネアが手を上げて人々の歓声に応えるのを、割目して眺めていた。
武芸大会の最終日、闘技場のひな壇で、王太子であるレネアは、堂々たる体躯を
午後の光にさらし、時が来るのを待っていた。
程無くして、場内が水を打ったように静まり返る。
それを見計らい、彼は再び手を上げて、自身の婚約を宣言した。
歓喜の声や拍手がどっと沸き上がり、空を震わせた。
貴族たちも民衆も、人々は皆、幸せそうで祝意にあふれていた。国王と王太子の
そばに居並ぶ近衛たちも、シーアも含めて誰も彼もが幸福と誇りに満ちていた。
兄は、顔も見たことのない姫と政略結婚するというのに、日焼けしたいかつい顔に
やわらかな笑みを浮かべていた。獅子のたてがみのような金髪が、いつもより
濃く輝いて見えた。
突然、ルーゼンは悟った。
ここに集う人々、或いはこの国に住まう人々の幸せが、兄の幸せなのだと。
それは、王者たるものの必要不可欠な資質だ。
ルーゼンは、もう一度シーアに視線を戻した。
シーアの胸に輝くメダルは、今日か明日にでも兄に捧げられるのだろう。
国政の表舞台に出たばかりの弟王子は、まだ兄王子を無邪気に慕っていた頃を
思い出し、涙にかすむ目を閉じる。
そして、王国の繁栄と栄光を祈った。
*
「お前がこんな時間に来るなど、珍しいことがあるものだな」
ルーゼンの寝室に入ってかけられた声は、シーアの予想に反して穏やかなものだった。
ベッドの上で、くつろいだ格好をしたルーゼンは、羽ペンを片手に書類を見ていた。
シーアは扉を閉めて、蝋燭の明かりが、かすかに届く場所まで二、三歩進む。
360 :
レネア:2007/01/25(木) 01:04:31 ID:3CAo7Bwo
ルーゼンの執務室で会って以来の逢瀬。
理由はどうあれ、弟殿下より兄殿下を優先させたのだから、彼が怒り狂っていても
おかしくはない、と思っていた。
だから、シーアは彼の態度に拍子抜けして、首を傾ける。
「せっかくの祝宴に、馬術部門の優勝者がいないのは盛り上がりに欠けるだろうに」
もう真夜中も近かったが、王宮ではまだ、王太子殿下の婚約と武芸大会の成功とを
祝って、酒席が続いていた。
その席で、武芸にうとい第二王子が所在無げにしていたのを、シーアは知っていた。
「優勝者は他にもいますし、ルーゼン殿下が早々に退出されたようでしたので、
どうかされたのかと思いまして」
手招きされ、横に座るようにうながされて、シーアはベッドに膝をついた。
「どこか具合でも悪いのですか?」
「いや、少し考えていて……」
ルーゼンが彼女の胸に顔を埋めて大息を吐き、シーアは腕を回して彼を抱きとめた。
「武芸大会が、無事に終わって、……大変だったけれど、盛大で、皆が喜んでいて。
その、……上手く説明できないが、こういうのは良いなと思ったのだ。
王国が安定していて、平和で、人々が幸せそうで。
お前が父上や兄に忠誠を誓っている理由が、分かったような気がしたのだ。
それで……」
ルーゼンは空咳をして顔を起こし、見返す緑の瞳に勇気づけられたように独白を続けた。
「それで俺も……、その、短気なのを直して、何か出来ればと、力になれればと思って。
知識を身につけたり、国政の責任を引き受けたり、そういったことを」
ルーゼンの真剣な表情に打たれて、シーアはわずかにうなずいた。
武芸大会を通じて何がしかを学び、その結論に達したのだろうと、暖かな気持ちをいだく。
それは王族の一員として遅い自覚ではあったが、まだ遅すぎるわけではない。
361 :
レネア:2007/01/25(木) 01:05:31 ID:3CAo7Bwo
「それに、もう一つ、分かった。……お前は本当に嘘つきだ、と」
「…………?」
シーアは一瞬どきりとして、ルーゼンに無言で問い掛けた。
彼にはたくさんの嘘をついたから、密かに心構えをして、しかし、表情は変えずに、
ルーゼンの次の言葉を待つ。
「お前はいつか、内治部に話せる人間がいるのは助かるなどと、俺の利用価値を
匂わせたが、いくら第二王子とはいえ、政務についたばかりの若造にどれだけの
権限があると…………笑ったな、シーア」
「……殿下、も、申し訳ありません。でも……」
シーアは、彼に咎められた後も、こみ上げる笑みをとめられなかった。
「だいたい、国政三府のうち、王統府も護国府もおさえてあって、内治部の
何を利用すると言うのだ。それら二つの府に比べれば、内治部などは所詮、
内宰府の管轄している内宰十二部の一つにしか過ぎない。
武芸大会でも、内治部の関与出来るところは、ほんの一部だった。
俺を利用するといっても、せいぜい、あの貴賓牢好きの近衛騎士の釈放書に
サインさせるくらいが関の山だろう?」
ルーゼンの不満げな顔がおかしくて、シーアはくっくっくっと腹筋を小刻みに震わせる。
「それを誰にも言われずに理解することが出来るなら、次の次か、その次くらいの
武芸大会には、内宰府の重鎮としてルーゼン殿下が仕切れるようになりますよ」
「ん、なる……かな」
「もちろん、なりますとも」
少し機嫌を直したルーゼンに、シーアは微笑みながら、なかば予見めいたものを
感じて断言する。
「次の次……十年後か。十年後、内宰府の重鎮なら……、シーア」
「殿下……」
その先をさえぎるため、シーアは自分の唇で彼の口を塞いだ。
「その書類は今、決裁しないといけませんか?」
362 :
レネア:2007/01/25(木) 01:06:37 ID:3CAo7Bwo
二人はキスをしながら、お互いの服を脱がせる。
彼の服を脱がせるのも、自分の服を脱がせられるのも、すっかり手馴れて、
もう以前のようなぎこちなさは無い。
途中、ルーゼンの手がメダルに触れ、止まった。
「……優勝おめでとう」
「ありがとうございます」
彼がメダルから手を離し、それ以上何も言わなかったので、シーアは安堵する。
と同時に、彼が努力してそれを諦めたのを思いやり、胸がちくりと痛んだ。
「シーア……、……」
「ん、…はい」
ルーゼンの手が、シーアのズボンと下穿きを、するりと脱がせた。
ベッド脇に服を投げ落とし、全裸になったシーアは、両手をルーゼンの胸に当て、
肋骨をさりげにさわって痩せ具合を確かめる。
それは、シーアが初めてこの邸に来て、国王陛下や王太子殿下が心配するほどの
痩せ方に衝撃を受けて以来、習慣になった動作だった。
皮膚が骨に張り付いているのを見てとって、シーアは、彼と一緒に夕食を取る時に、
できるだけ食べさせるようにすることを、忘れずに心に刻む。
「競技の間、お前を見ていた」
ルーゼンの低いささやきを受けて、シーアはまた笑った。
何回も目が合ったと思ったのは、やはり気のせいではなかったらしい。
「殿下は興奮していらした」
「ああ。抱きたくてたまらなかった。お前も、そうだったろう?」
彼女は肯定してうなずく。
思い出して体が火照り、その時と同じように興奮した目を見交わした。
シーアの唇と戯れていたルーゼンの唇が、首筋を通って胸まで下りる。
すでに赤くとがっている乳房の先を、上下のやわらかな唇に挟まれて、舐められる。
唾液でたっぷり濡れた舌先で、その形に沿ってなぞられ、すくわれるように包まれ、
時には丸く転がされる。
ちりちりとしたうずきがシーアの全身を駆け巡り、彼女をせきたてる。
363 :
レネア:2007/01/25(木) 01:07:36 ID:3CAo7Bwo
「ぁ……ん」
シーアは、ルーゼンの金髪に指を差し入れて、胸を突き出すように体を反らした。
ルーゼンの快感を作り出す口唇が、もう片方の乳首に移り、今度は熱い息を
吹きかけられて煽られ、シーアはその快感に、歓喜の悲鳴を漏らした。
「やっ……んん、ぁふ、……っくっく」
彼と一緒に低く笑い、抱きかかえられて転がされる。
ルーゼンが、先ほど放り出した羽ペンを取り上げた。
シーアの目の前で振ってみせ、おどけたような表情を作り、彼女の頬を撫でる。
それから、顎からのどにかけて、そっとたどって滑り下ろした。
「殿下……、くすぐったいですよ」
「そうか? でも、じっとしていろ。……いいな」
その芯にまで響くかすれ声は、魅力的で逆らいがたかった。
やわらかいような、固いような羽毛の、奇妙な感触の愛撫。
ルーゼンの唾液で濡れた乳首は、空気を送るとひんやりして感じた。
シーアは、両手を上げて枕をつかみ、触れるか触れないかの触れ方に神経を集中させる。
胸から脇腹を通って、腹、へそ、さらにその下へ。
「あっ…」
それが太腿を回って敏感な突起に到達すると、むずがゆいような粘液がにじみ出て、
シーアは両足をこすり合わせた。
ルーゼンが手を止めて、シーアを見詰めた。下半身が戸惑い、うずく。
「殿下?」
「お前がそうやって動くなら……」
シーアはたまらず両足を緩め、見上げて請う。
「……殿下」
「もっと、だ。もっと開け」
両足の間に手を差し入れられて、恥ずかしいほどに開けられた股のつけねを、
そよ風のような愛撫が通り抜ける。
「……はぁ、あ、…やっ……ん」
押さえきれない声が漏れ、触れられた場所がしびれ、足腰が深く沈みこむように重たい。
364 :
レネア:2007/01/25(木) 01:08:33 ID:3CAo7Bwo
「んっ…、ぁ…、…ぁふ」
体をピクリとすくませて震えるたび、手を握り締めるたびに、ルーゼンが得意げで
楽しそうにするので、シーアの顔が一層熱くなる。
「ルーゼン殿下……」
シーアは下を見て、期待に胸を膨らませて、ルーゼンの目を直視する。
彼の瞳に映ったのは、欲情をあらわにして渇望する淫らな女。
ルーゼンが、シーアの手首をつかんで、手のひらに唇をつけた。
欲望に濃くなった目が、彼女の指の間から覗き込んだ。
「シーア、この前の続きがしたくはないか?」
彼がこうやって彼女に欲しがらせる理由は分かっている。
だから、いいなりになるのは良くない、と自分をいましめるも、いったん火のついた
欲望は、果てまで行き着かなければ、消しようが無い。
「……はい、……」
シーアは、こくりとうなずいて、与えられた快楽で麻痺したような肢体を、のろのろと
動かし、四つん這いになる。
あふれる液がつつっと内腿を垂れ、愛撫のように伝わってシーツにまで染みる。
後ろから覆い被さるルーゼンの重みを受け止め、彼の骨ばった胸板に、ぴったりと
こすり合わせるように背中をくねらせる。
首筋にかかる暖かい呼気、それに続けて、ぴちゃぴちゃと濡れた舌と歯が、
シーアのうなじを襲った。
肘を曲げてつっぷして這いつくばると、唾液が襟元から首のくぼみに流れて溜まり、
鎖骨から糸を引いて、したたり落ちた。
「あ、……殿下」
揺れ動く乳房を覆われてもみしだかれ、彼のものがあてがわれる。
「……あ、はあぁ、…ぁん」
ぐっと分け入るものを迎えて、シーアはそれに夢中になる。
なめらかに一番奥まで進められ、二人の繋がっている場所を前後に揺らされて、
肺から空気を吐き出した。
365 :
レネア:2007/01/25(木) 01:09:32 ID:3CAo7Bwo
「シーア……、シーア、……シーア、……」
ルーゼンが彼女の名を繰り返し、合わせるように何度も動いた。
「あ、…ぁあ、はん、ぁ、ぁん」
いつもより性急に叩きつけられ、激しくかきまわされる。
勢いに圧迫され、短い息を次々に送り出して、衝動を受け止める。
シーアは、彼にどれだけ求められているかを実感し、それに応えるため、
そして前に得られなかったもののために、腰を突き上げ、貪欲に求める。
次々と燃え上がるような快楽が生まれ、乱れて、飛び散った。
「あっ、んっ、あぁ、ぁん、っふ、ぁ、……ぁあ、あ、あ、あ」
シーアは、ついに欲しかったものを手に入れて、自分がぎゅっと収縮するのを感じた。
時を同じくして、ルーゼンが静止してあえぎ、ぬめる液体が中に注がれたのを、
内側のどろりとしていく感触から知った。
「……それで?」
「それで、国王陛下の命令で、虐げられた人々を救う、名も無き流浪の女騎士の
物語に憧れて、わたくしも騎士になろうと思ったのです」
ことが終わった後、それでもまだ足りなくて、二人は揺れる蝋燭の影の下、
弛緩した肢体をからめ、混ざった体液の匂いをかぎながら、ぽつりぽつりと
耳元でささやきあっていた。
それは、お互いの心臓の音を聞くような近しい、親密な時間だった。
シーアは、自分の胴体に巻きついているルーゼンの腕に、優しく触れた。
「ルーゼン殿下も、全く鍛えてないというわけではないのですね」
「ま、まあな、…そ、その、その少しはな」
ルーゼンは、なぜか少しあせったような口調で、どもりつつ答えた。
彼の慌てた理由は、はっきりとは分からなかったけれど、シーアは、彼の狼狽ぶりに
顔をほころばせ、血が昇って熱くなった彼の耳たぶに唇で触れた。
「剣術ですか?」
「剣と馬を、少し……」
王族の方は出られませんけれど、と前置きして、シーアは彼の顔を覗き込んだ。
「武芸大会に出てみたかったですか?」
「そのような理由で、剣を始めたわけではない」
「では、どのような理由で?」
「別に、どんな理由で始めたっていいだろう。あまり、そんなに、上達しなかったし」
ぷいと横を向いたルーゼンの顔は、真っ赤になっていた。
366 :
レネア:2007/01/25(木) 01:10:31 ID:3CAo7Bwo
「わたくしと五本勝負で何本勝てますか?」
なんとなく聞いた質問が呼び水だった。
「お前と? お前とだったら、当然……」
ルーゼンは、にやっと笑い、照れ隠しのようなやや乱暴な動きで、彼女の両足を
つかんで開かせ、のしかかった。
「えっ…、あっ……殿下!」
先ほどのまじわりで、中はまだやわらかくどろどろに濡れていて、突然の侵入にも
たやすく対応して、彼を包み込んだ。
「全部、勝てるな。お前は俺しか知らない」
「い、あっ…、……そういう勝負では、ありま、せ、…んんっ…っぁあ、っん」
言葉は続かず、嬌声に変わった。
入ってくるものに対し、シーアは力を抜いて主導権を明け渡した。
実際、ベッドの中で、もしくは外でも、それで彼に勝てたためしはないのだから。
彼に触れられた肌は感覚が鋭くなって、こすられて息が乱れた。
「んっ、殿下、…どうか、…あ、もう……、……」
シーアは二度目を欲して、ルーゼンにしがみついて請う。
「ぁん、……、……ぁ、あ…あ…、……」
こすり付けるようにしごかれ、こねまわされる。
二人の粘液の溜まったものが波立ち揺れる水音と、肉のぶつかる卑猥な音とが、
喘ぎ声に混ざった。
与えられる快楽に溺れ、その快楽のその繋がっている場所のように、シーアは
身も心も、ぐちゃぐちゃにとろけさる。
「っく、…シー、ア、……は…、…っ」
「やっ、ん、あっ…んっ、んっ、…っんんぅ」
ルーゼンがうめいて深奥で跳ね、シーアは彼の欲望を受け止めて、ぎゅっと
収縮を繰り返す。
また二人は同時に果て、崩れ落ちるように折り重なって倒れ込んだ。
*
367 :
レネア:2007/01/25(木) 01:11:32 ID:3CAo7Bwo
シーアは、自身に乗せられたルーゼンの手を、避けるようにどけて、ベッドから
静かに滑り出た。
床に投げ捨てた服をかき集め、身支度をととのえる。
ゆらりと、足元にのびる明かりのきわが揺れ、彼女は、ふと顔を上げた。
ベッド脇のテーブルの上に置かれた燭台に近づき、顔をしかめる。
上質の蜜蝋で出来た太い蝋燭は、いつもつけっぱなしで、おそらく一晩中
そのままになっているのが、突然、ひどく気になった。
「……シーア」
不意打ちのような呼びかけに、シーアの心臓が飛び上がった。
なかば眠たげなルーゼンの瞳が、明かりを受けて金色に光る。
「それは、消さないでくれ」
「でも、……まぶしくて、…眠れないでしょう?」
ルーゼンは何か考えている風にまぶたを閉じた。
「…………昔、王宮に住んでいた頃、夜眠るのが怖かった。
夕方から夜中にかけて、よく熱が上がって苦しくて、このまま、目を閉じれば、
朝まで生きていられないかもしれない、暗闇の中、一人きりで死んでしまうかも
しれない、と思って。……だから、せめて明かりは」
胸が少し、きりっと鳴った。
「ルーゼン殿下、でも……、今は、健康になって……」
「今は……、朝起きて、お前がいないと知るのが寂しい」
ルーゼンが上掛けから片手を出して、シーアに差し出した。
「もう少しだけいてくれないか? もう少しだけでいいから……」
目を開けて、一心にこちらを見るルーゼンの訴えに、感情の弱い部分がぐらつき、
それを自覚して、シーアはうろたえた。
拒否すべきだとの内なる声はあまりにも小さく、その手をどうすることも出来ずに握り返す。
「…………はい、……」
「ありがとう。……シーア、今夜は来てくれて嬉しかった」
シーアはベッドに腰掛け、上掛けを引き上げて彼の肩をくるみ、つややかな金髪を
優しく撫でる。
「それに他のことも、いろいろありが、と…う」
「…………」
368 :
レネア:2007/01/25(木) 01:12:31 ID:3CAo7Bwo
ルーゼンの次第に穏やかになっていく呼吸を聞きながら、それとは反対に、
シーアの表情は我知らずに険しくなる。
この邸に来るのは良い、一緒に夕食を取ったり、何かについて語ったり、
国政に関して意見して手助けをするのだって良い。
他のことも――共に夜を過ごすのも、彼と寝るのを楽しむのも。
でも、これが時間稼ぎであること、時々突き放したり、釘をさしたりすることを、
忘れてはいけなかった。
もうあまり時間が無いことは分かっていた。
王太子殿下がルーゼン殿下の執務室まで呼びに来た時から、遺恨を残さないで
彼から手を引く方法を考えていたけれども、いまだにどうやっていいか思いつかず、
ずっと頭を悩ませていた。
そのうえ今日も、彼が十年後の希望をいだくような言動をとってしまい、扱いかねて
誤魔化したことに、今さらながら、突き刺さるような後悔を覚えた。
――いずれ時が来て、悲しむのは、ルーゼン殿下なのに。
シーアは、そっと手を抜いて、そろそろと後退した。
ルーゼン殿下は王族として学ぶべきものを学ばずに成長した。
だから彼は、第二王子という立場に比して、その行動は危うい。
脅迫と言う手段を使って、女をものにするような直情さ。
愛人の言動に一喜一憂し、言われるがまま書類にサインするような軽率さ。
本心はどうあれ、皆で祝っていなければならない祝宴を、中座と取られかねない時間に
退出することが、うがった見方をする人々から、兄殿下への叛意と勘ぐられることも
あるのを、配慮しなければならなかった。
シーアには、ルーゼンの寝顔が無防備すぎるように見えた。
――殿下は、生来病弱で、体力がなくて、よく眠っているから、そんな風に見えるだけ。
彼女は、ルーゼンから視線を引き離し、首を振って、扉に手をかける。
――それ以外の理由はないもの。
369 :
レネア:2007/01/25(木) 01:13:31 ID:3CAo7Bwo
「……っ」
わずかに開けた扉から、冷たい隙間風が彼女の脇を通って、忍び込むように侵入し、
ルーゼンを照らすはずの明かりを吹き消した。
一瞬にして、空間が暗闇に閉ざされ、シーアは思わず振り返った。
耳が痛いほどの静寂と、ほの蒼い闇の中で、彼女は立ちつくす。
もし今、彼が暗闇の中で目を覚まし、彼女の離したうつろな手を、やみくもに振り回せば、
誰がその手を握り返すだろう。
或いは、あたたかい確かな何かを求めて、彼は、手に触れるものならどんなものでも、
たとえ獣の手でさえも、救いと信じてすがりついてしまうかもしれない。
シーアは衝動的に、足音を立てないようゆるゆると、ベッドの方へ戻った。
動悸が激しくて、他のことは何も考えられなかった。
「ルーゼン、……殿下」
痛みとともに、顔をゆがめて小さくつぶやき、彼の寝息をよく確かめる。
それから、自分の胸からメダルを外し、彼のやわらかく丸まった手の内に、それを
押し込んだ。
*
翌朝、シーアは馬場にいた。
遠乗りが趣味という王太子殿下の婚約者のために、彼女用の何頭かを片鞍に
調整する仕事は、自ら進んで引き受けたものだったが、今日ばかりはどうしても
集中できないでいた。
馬が乗り手の不安定さを感じていななき、彼女はついに諦めて、ちょうど馬場に
やってきた王太子に視線を移した。
昨夜か今朝に捧げられたメダルが三つ、彼の胸で朝日を受けてきらめいていた。
「殿下……、また……」
そばによって馬を降りたシーアは、一礼後、また護衛をつけずにいたレネアに
咎める顔を見せる。
彼は、よく分かっているとでもいう風に、手をあげて彼女の言葉をとどめた。
370 :
レネア:2007/01/25(木) 01:14:31 ID:3CAo7Bwo
「そういえば、先ほどルーゼンに会った。どこか上の空で、落ち着かない様子だったが」
レネアは先制して、シーアの何もつけられていない胸元を見ながら言った。
「そうですか? 何かあったのでしょうか」
シーアが素知らぬ顔でしれっと答えたので、王太子は笑った。
「あれは隠し事に向かないかもしれないな」
「内治部では、きちんとやっていらっしゃいますよ」
むっとして反論した言葉に、レネアは意外そうに眉を上げた。
「そうか。まあ、それはそういうことにしておくが……。しかし、お前がそれほど
情に流される人間だとは知らなかったな。俺とはキス一つさえも、勘違いするなと、
あんなにうるさかったのに」
「当たり前です。情に流されては、殿下もわたくしも困る結果になるだけでしょう?
お互いの立場というものもありますし」
シーアは、自分の心がそんなに痛まなかったこと、いずれ痛みは消えていく予感が
したことに、ひそかに胸を撫で下ろした。
「ルーゼンはいいのか?」
レネアが聞いた意味は違うと分かっていたが、シーアは無意識に、昨夜の痴態を
思い出して、ぼっと顔が熱くなった。
「ほおぉ」
からかうような口調に、シーアは答えに詰まる。
「ええ。……え、と、少なくとも、ルーゼン殿下は騎士の理想の一つです」
「騎士の理想?」
「"戦友と背中合わせに戦い、恋人を背中にかばって戦う"」
その冗談に、王太子は再度吹き出して哄笑した。
「それで、お前はルーゼンを背中にかばって戦うのか?」
「レネア殿下も、婚約者の王女殿下を背中にかばって戦いたいでしょう?」
「それはそうだが、それにしても……ルーゼンを……くっくっく」
「……殿下!」
腹を抱えて笑うレネアに、シーアはまなじりを上げる。
371 :
レネア:2007/01/25(木) 01:15:30 ID:3CAo7Bwo
「お、そうか、分かったぞ。お前は過保護だから、ルーゼンを甘やかして、甘やかして……」
「あっ、甘やかすだなんて、人聞きの悪いことを」
「あれのために情報を集めてやって、根回ししてやって……」
「ルーゼン殿下には、それが必要なのですよ」
「甘やかすことが?」
「違います! ルーゼン殿下は、レネア殿下やわたくしのような近衛育ちでないの
ですから、誰かが連絡役を務めるべきなのです。そうしないと、知り合いのいない
王統府や護国府とは、事前の折衝が出来ないですから……」
「しかし……、シーア、メダルをやって……」
「それも、誤解です!」
何が誤解なのかも分からぬまま、シーアは抗弁し、レネアは笑い続ける。
「一緒に寝てやって、…くくっ、……内治部の、執務室で、……」
「レネア殿下!」
いまや、シーアはうなじまで深紅色に染まっていた。
「分かった、分かった。すまない。これ以上はやめておく」
レネアは、にやにやしながら、手のひらをシ−アに見せるように上げて、話をきった。
「それで、……戦友」
レネアが急に声をひそめ、シーアは体の筋肉を緊張させ、唇を引き結んだ。
「先を越された。……例の叔父上の従僕が謀反側に捕まったと報告があった。
ここ何日かが勝負どころになるだろう」
「……わかりました。では、他の者にも声をかけて、すぐにでも見張りにつきます」
「ああ。十分に気をつけてくれ」
「はい。レネア殿下も、身辺の用心はおこたりなくなさって下さい」
シーアは微笑んで返し、レネアが苦笑してうなずく。
「シーア、……」
馬を引いて厩舎に向かったシーアを、レネアが呼び止めた。
「……ルーゼンを頼む」
彼女は、その表情を見て、兄弟が和解できることを確信する。
兄弟の不仲の原因を聞いた時、彼は話さなかった。
ずっと後になって、話しても話さなくても結果は変わらなかったですね、と彼女は笑った。
これも自分の責任ですから、やるべきことをやるだけです、とも。
だから、シーアは剣を掲げ、いつまでも変わらぬ忠誠を誓い、レネアに対して
主君に対する騎士の礼をとった。
以上です。
次回の投下分は完結編になります。
GJGJGJ!!(*゚д゚*)
レネアかっこよすぎる…
あと1話で完結なのが残念でならないぜ…
超GJ!
相変わらず文章や台詞まわしにセンスが溢れまくっとりますな。エロいし。
完結編楽しみにしてる!
キターキタキタキタ!!!
なにこの超良作は…面白いし!
シーアがルーゼンの痩せ具合を確かめる所に萌えまくったぜ。
GJ!
王太子の意図がつかめなくて展開がすごく気になる。
シーアやルーゼンの感情の機微の描写も素晴らしい。
終わっちゃうのは寂しいけど楽しみにしてるよ。
続きがすごく気になる。いつもお疲れさまです。
今更ごめん。
でも気になった。
山車、は小学生で普通に習うよ…?
確かに一般教養なんてもんじゃあない。
それ以前の問題だよ…。
地域差個人差
どーでもいいことを蒸し返さんでいい
そのときには、必要ないものとして記憶してなかっただけでは?
いま徳川の第何将軍が・・と言われてぴんと来ないのと一緒で、
解らないなら、調べればいいじゃない?
どうして知っているかいないかがSSの評価に繋がるの?
「張子」や「山車」を知らないなら、
自分の教養が足りないと思って黙って調べておけばいいのに、
そんな言葉を使う作者が悪いような言い方をするから顰蹙をかっただけだろう。
もうその話はいいよ。
アビゲイルマダー?
>>382 あんな寸止めは逆に辛い!
アビゲイルマダー?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
384 :
投下準備:2007/01/28(日) 01:30:38 ID:9DiWUDGK
海賊ものの第4話です。
前回の話は分かりにくい所があったようで、
少々反省しております。
もうちょっと状況説明を増やしておけば良かったですね。
また「大祭前夜」は「海賊たちの改悛」を読んで貰い、
そこから連想してもらう内容だったので、
投下前に書いておくべきだったと思います。
今回の話も前の二話と繋がっていますので、
先にそちらを読んでおいて下さい。
では『海大祭』をどうぞ。
385 :
海大祭:2007/01/28(日) 01:31:22 ID:9DiWUDGK
その夜、監察官ダラハーが己の素性を女に話してしまったのは、祭の熱気の所為としか言いようが無い。
任務を考えれば、総督府の限られた者にしか知らせるべきではなかったのだが、
普段己が暮らす都とは、世界が異なるのではと思えるほどの喧騒と狂乱の最中にあって、
つい口を滑らせてしまったのだ。
「えっ、閣下は都の監察官でいらしたのですか?」
「いやいや、そのように閣下などと呼ばれるような身分ではないのですが…」
「でも都から、この街で行われている陰謀を曝きにこられたのでしょう。ご謙遜には及びません」
「うん…、西国へ潜入している密偵からは、こちら側より密かに物資が輸送されたという報告がある。
それを調べるためにやって来たのです」
上官から命じられた任務は、禁輸令を無視して食料を輸送している者を発見、処断することにある。
昨年の大勝利によって開いた戦力差は、数隻の輸送船でどうにかなるようなものでもない。
それでも封鎖線を破って密輸が成功しているという事実が世間に洩れれば、
総督府と新月艦隊を欺く方法が存在するという証明になる。
このまま放置すれば、統治者の権威と支配力に傷をつけられるばかりでなく、
不届き者に追随する輩が出始め、なし崩しに禁輸令が破られかねない。
ダラハーが忠誠心と実直さを買われ、東方騎士団の中より極秘に派遣されたのは、
このような事情からであった。
しかし、生き馬の目を抜くこの悪徳の街において、彼の若さと実直さは裏目に出た。
また、やって来た時期も悪かった。
目前に繰り広げられる華やかな祭の光景と音楽に、なにより己の前に座る妖しい美女に、
ガラハーはすっかり幻惑されてしまったのだ。
「そのような方とは知らず、下々の者が席にお誘いするなど… 本当に失礼な事をいたしました」
「そんな… 民情を視察するのも任務のうちです。
貴女のような美しい女性に同席いただき、こちらの方が失礼を致している所ですよ」
「ふふっ、お上手でいらっしゃいますね…」
口元を押さえて女は笑う。
ダラハーが女と同席する事になったのは、相手方に誘われた為であった。
彼が独自に街の情勢を調べようと、祭の大路をあてもなく見物していた時、
『よければ同席しないか』と声をかけられたのだ。
大通りに面したこの桟敷は、祭の名物である山車行列もよく見える。
ここから眺める行列は、人込みに紛れて見るのとはまた違った風情がありそうだ。
さらに、美女と並んで祭を楽しむ事が出来るとは、何ともいえぬ僥倖と思っていた。
386 :
海大祭:2007/01/28(日) 01:32:11 ID:9DiWUDGK
チリン チリーン
主の鳴らす鈴の音に呼ばれ、先程己を呼び止めた少年が馳せ近付いてくる。
女は少年の耳元に唇を寄せ、何やら言いつけていた。
「………だよ、分かったかい?」
「はい、ご主人さま。すぐに海星堂に行って、店主に
『艦首の女神像に張り付いたフジツボは、まばらに黒いカビが生えている』と伝えます」
「よし、行きなさい」
「はいっ!」
元気に溢れた返事をかえし、少年は桟敷の階段を下りていった。
「今のは?」
「港の小路に、海星堂という店がありますの。
あの子に言ったのは、私と海星堂の主の間で使う符丁です…
閣下のお仕事に、わたくしも微力ながら力添えをさせて頂きたいと思いまして、
港の情勢に詳しい人間にこっそり調べさせて見ますわ」
「や、それは困ります、今回の任務は極秘のうちに行われるべきもの。
情報屋などを使って機密が洩れたら一大事です!」
ダラハーの焦りも無理はない。
当初の予定では、情報漏れを懸念して総督本人にさえ目的を話さない心算なのだ。
可能性としてだが、総督府内部に密輸の共犯者がいることも考えられる。
また、自分たちの失態を隠蔽しようと、総督府がなんらかの妨害を行うやもしれない。
自分ひとりでは手に余るとしても、まずは信頼できる人間かを見極めてから
捜査に協力させる計画であった。
「この街では『蛸壺は蛸に、海蛇の穴は海蛇に調べさせよ』と申します。
失礼ながら、陸地の方だけで探しても、抜け荷を働くネズミの尻尾を掴むのは難しいかと」
「む…」
「ご心配なく。海星堂の親父は口が堅く、信用できる人間ですよ」
「しかし…」
「閣下、どうか信用なさって下さいませ。
わたくしも海の上で仕込まれて、波に揺られて塩辛い産湯を使った正真正銘の海の女ですのよ?
それに、閣下のお役に立たせて頂きたいのです…」
387 :
海大祭:2007/01/28(日) 01:33:47 ID:9DiWUDGK
女の目に見つめられ、ダラハーは強いて拒む事が出来なくなった。
彼女の瞳には、まるで魔力でも秘められているかのように、人を惹きつけ従わせるものがある。
ダラハーの二十数年間の人生で、これまで出会った事のない魅力を持つ女であった。
「そういえば、まだ貴女のお名前を伺って…」
「あっ、閣下? 行列が始まりましたよ!」
通り脇に並んでいる庶民達も、楽隊の奏でる音楽にざわめき始める。
三昼夜続く海大祭の目玉、張り子細工を載せた山車が覆いを解かれ、姿を現した。
松明の灯りに照らされた張り子は、おのおの色も形も趣向が凝らされ、
ダラハーのように、海の世界に馴染みが無い人間にも十分その面白みが感じられる。
大通りに並んだ見物人は、町衆に引かれる山車が目の前を通るたびに歓声を上げ、
山車の出来不出来にあれこれ批評をつけていた。
群集に慣れぬ田舎者が大路脇に立って行列を見ていたのならば、周囲のざわめきに気を取られ
山車行列の見事さを楽しむどころではなかったかもしれない。
しかし桟敷の上は、観衆の騒がしさと切り離されて、優雅に祭を堪能する事が出来た。
「ほら、閣下… あれは私の身内が出した山車ですよ」
「おおっ、見事なものですね」
彼の言葉も世辞のつもりは無かった。
その山車が通ったときには、通りに集った観衆から一際大きな歓声が上がる。
張り子の大きさといい、洒落っ気に溢れた題材といい、なかなか面白い趣向の山車を繰り出すものだと、
彼なりに感心したものだった。
「しかし、お身内にあれほどの山車を出せる方がいらっしゃるとは、
もしや貴女はどこぞの大商人の奥方であらせられますかな?」
「フフッ、どうでしょうね」
「いやいや、実際この桟敷も、相当の金とコネが無ければ手に入らぬ物でしょう」
「なんの、この程度の席にしかお招きできず、全く恥じ入る限りです」
女はダラハーの問いをはぐらかしたが、彼とて本気でそう尋ねた訳ではない。
けれどもその身に纏う装束を見ただけで、相手が只者ではない事は分かる。
東国の絹をふんだんに使った衣服は、庶民が一年働いても購うことの出来ぬ上物だ。
四肢に嵌めた装身具も、それぞれ一財産になりそうな品々である。
彼らの座る桟敷も、限られた数しか準備出来ない席を分限者達が争って手に入れようとすると聞く。
これほど見通しの効く席を手に入れられるとは、
それなりに資力も実力もある人間でなければ説明が付かない。
388 :
海大祭:2007/01/28(日) 01:34:39 ID:9DiWUDGK
ただ不審なのは、女の生身だ。
衣装の隙間からその瑞々しい肌がちらちらと覗き、彼の煩悩を揺さぶったが、
その肉体は意外なほどに引き締まり、日に焼けている。
首筋や腕、足元に目をやれば、布地の奥に隠されている筋肉が相当鍛えられていることが見て取れる。
ダラハーはその肉付きを見て、鍛え上げられた競走馬の美しい馬体を連想した。
豊満な胸元と腰以外に、その体には一片の贅肉もありそうになかった。
何の苦労も無く、屋敷の中で安穏としている富豪の内儀とはどう考えても思えない。
さらに、なによりもこの女が堅気とは思えないのは………
オオッーー!!
桟敷の下から喝采と拍手が響く。
丁度目の前を件の山車が通り過ぎようとしているのだ。
「見事なものですなぁ」
「うふふ、そうでしょう! この祭の山車で一番の出来だと思ってますわ」
「………ご婦人、つかぬ事をお伺いしますが」
「何でしょう?」
「内陸の育ちゆえ、あの張り子が何を象っているのか、良く分からないのです。
あの丸い怪物に齧りついているのは、一体何と言う魚でしょうか?」
ダラハーのような陸地育ちの人間には、あの魚の形は実に珍しかった。
鱗が無く、口には鋭い歯がノコギリのように並び、変わった形のヒレを持つそれは、
内地の湖や川に見た事も聞いた事もない魚であった。
「あら、ご存知ありませんでしたか。
あれこそ海軍神の御使い、大海原の略奪者、千の牙を持つ海王、
海の中で最も古く、強く、恐ろしい魚…『鮫』で御座いますよ?」
女は誇らしげにダラハーに説明した。
彼女の瞳には、相変わらず妖しい魅力を秘めた輝きが潜んでいる。
しかしその右顔は、精緻な黄金細工を縫いこんだ眼帯に覆われていた。
その眼帯で覆われた右目も、女の持つ神秘的な魅力を強めているようだ。
喜色に満ちた笑顔に、男は女の素性をそれ以上問いただす気を削がれてしまった。
・・・・・・・・・
389 :
海大祭:2007/01/28(日) 01:35:24 ID:9DiWUDGK
女に促されるままに、ダラハーは街を歩いていた。
街を案内しようと言われ、断る事も出来ぬまま祭に盛り上がる街路を進む。
夜中に至っても、祭の熱狂は収まらない。
それどころか、激しさを増している。
広場では芸人たちが軽業を披露し、歌声はあちこちで響き渡っている。
街の住人も、多種多様な来訪者たちも、今日という日を大いに楽しんでいた。
ダラハーは女に手を引かれ、とある小路へと入っていった。
「こちらですわ、閣下」
「ここですか?」
「はい、…どうやら先客もいないようですから」
「先客?……んっ!?」
女に唇を奪われ、長く熱い舌が唇の間から侵入して己の舌を絡め取る。
突然の行為に、言葉の意味を問いただす機会は奪われた。
しなやかな腕に抱き締められ、布越しではあるが柔らかい肉の感触が胸板に押し付けられた。
「なっ、何を…」
「ふふっ閣下、野暮な事をお聞きになるのですね?
こうして女の方からお誘いしているというのに、何をするもないでしょうが」
振りほどこうとしても、相手は男を逃さなかった。
「しっしかし、こんなところでは… 誰かが小路を覗き込むことだってあるでしょう」
「いいんですよ。祭の間は、誰がどこで楽しもうと勝手なのですから。
ほかの小路でも同じように、男と女が悦びを分かち合っていますわ」
「そんな……… むゅっ」
唇で唇がふさがれる。
舌を吸い出されるかと思うほどに強く吸われた。
ちゅっ、ちゅるる、 じゅる、
淫らな音をたてつつ、女の舌は止まらない。
男を抱き締めていた手は、いつのまにかダラハーの下半身に伸びている。
だが、もはや彼の脳裏から女を拒もうという考えは失われつつあった。
用を足すために空けられた脚衣の裂け目から女の指が忍び込み、下着の上から肉の棒を掴んだ。
その大胆な行為と執拗な口付けの所為で、男の物は硬くなりかけていた。
390 :
海大祭:2007/01/28(日) 01:36:04 ID:9DiWUDGK
「もうこんなに熱くなっておいでですね…」
「あっ…」
指から伝わる熱と硬さを感じ、女はようやく口を離した。
だが、男が一息つこうとした隙に、巧みな指使いで下着から性器を引き出す。
そして改めてそれを手のひらで覆うと、ゆっくりとした動きで玩び始めた。
「ひぅぉっ!?」
思わず奇妙な叫び声を上げてしまったダラハーであったが、
そんな事には一切構わず、女の指は肉棒を操っている。
勘所を押さえて緩急自在にしごき上げるその技は、これまで味わったことのない快感であった。
彼もこの歳になるまで、それなりに妓女買いの経験はある。
しかし内陸で春をひさぐ女たちでさえ、この手練には舌を巻くであろう。
五本の指と掌で包まれるうちに、今や男根は硬くいきり立った。
「逞しいモノをお持ちですね…… わたくしも嬉しくなってきますわ」
陶然と微笑み、女はダラハーの前に跪いた。
そして目にある熱い肉棒に舌を這わせる。
この薄暗い小路の外にはいまだ祭の喧騒が続き、道行く人影は絶えない。
通行人が覗き込めば、こちらが何をしているのかは直ぐに悟られてしまうだろう。
そんな状況を全く気にしていないのか、濡れた舌は男根の根元も先も容赦なくねぶっていた。
既にダラハーは背を建物の外壁に預け、女の責め手に耐えていた。
「ふふふ、そろそろ趣向を変えてみましょうか?」
「?」
女は衣装の肩紐をずらすと、豊かに実った乳房を晒した。
ダラハーがその大きさと張りに驚く間もなく、乳の谷間に性器が挟み込まれた。
391 :
海大祭:2007/01/28(日) 01:36:48 ID:9DiWUDGK
「おう、おぁっ」
「どうですか、わたくしの胸は?」
女はそう聞いてきたが、男の喘ぎ声がすでに答えになっているだろう。
その快感は言葉にならぬほどのものであった。
先程に舌と手で昂っていたこともあり、二つの膨らみにしごかれてどれほども経たぬうちに、
ダラハーはもう耐え続ける事が出来なくなった。
それを悟った女の方は、なお一層激しく上下に乳を動かす。
柔らかい肉の塊に包み込まれる愉悦に、股間からこみ上げる射精欲は留められなくなった。
「うう、出そうだっ、いや出るっ!!」
「あんっ」
女の乳房に挟まれたまま、ダラハーは射精した。
精液は女の顔めがけて放たれ、彼女の眼帯を白く汚した。
垂れ落ちる白濁液が金細工にかかり、実に奇妙な印象を与える。
一度放出した安堵感からか、ダラハーは興奮に息を荒げながら尋ねた。
「貴女は…、一体何者なのです?」
「閣下… この祭の中で出会えたのは、海神の引き合わせに違いありません。
名前や素性などどうでもよいではありませんか?」
女は立ち上がり、彼にむかってそう微笑んだ。
潤んだ隻眼が煌めき、妖艶な囁きが耳をくすぐると、
自分の身分を明かしてしまった事は、彼の頭からそっくり消えていた。
「んっ、閣下ぁ」
己の精液で汚れていたのも構わず、ダラハーは女の唇を啜った。
抱き締めると、女の肉体の引き締まった肉感が分かる。
だが、もう彼にはこの女が何者なのかはどうでもよくなっていた。
彼が欲するのは、一瞬でも早く相手を味わいたいという事だけだった。
392 :
海大祭:2007/01/28(日) 01:37:56 ID:9DiWUDGK
口付けを交わしながら、ダラハーは荒々しく女の下着を剥ぎ取った。
そして相手に片足を上げさせ、その股間に再び硬く勃った男根をねじ込んだ。
「ああんっ」
甘い喘ぎ声が赤い唇から洩れる。
唾液と精液で濡れた肉棒は、容易に女の奥にまで入っていった。
また、女体の方も準備は出来ていたようだ。
性急な侵入者を迎え入れても、特に痛がった様子は見られない。
先程胸でされていた時とは逆に、ダラハーは女の体を小路の壁に押し付けた。
「あうっ!!」
注挿が開始されると、女の声も激しさを増した。
ひょっとしたら、小路の外にいる者たちに聞こえたかもしれない。
だが、浮かされたかように男は目の前の肉体を貪ることしか考えられなかった。
ダラハーは、唾液が糸を引くほど深い口付けを交わし、先程己の物を優しく責め苛んだ双胸を揉んだ。
鍛えられた体のなかで、そこは柔らかかった。
弾力のある肉を手で弄ると、女は切なそうに吐息を漏らした。
腰の動きで揺さぶられるたびに、その乳房はゆさゆさと震える。
その様はなんとも扇情的で、ダラハーはその膨らみの先に甘噛みを加えた。
「ゃぁん!」
乳首を噛まれ、女は抗議とも歓迎とも取れる嬌声を発した。
ただ、いずれであっても今の彼を止めることは出来なかっただろうが。
交わりの中で味わう女の体は、どこか潮の味がした。
「はあっ、はぁんっ…… 閣下、そっちがその気なら……それっ」
「おうぅっ!?」
いきなり肉棒を包む膣肉が締まった。
突然の攻撃にダラハーは戸惑うが、ふと見ると女の勝ち誇ったかのような隻眼が目に付いた。
それが、彼の男としての征服欲を燃え上がらせた。
(この女を屈服させたい…)
そんな雄の本性が、彼の動きに拍車をかけた。
「あっ、閣下? そんなに激しく……」
女を強く壁に押し付け、それまで以上に激しい力で腰を奥まで突き入れていく。
腰を打ち付けあう肉の音が、二人の居る小路に響いた。
女の反応を計りつつ、弱点となりそうな箇所を狙って擦りつける。
熱く締め上げてくる膣を、男根が抉り、穿ち抜いていく。
「はぁっ、ああ、いい… いいです…… ああぅ!」
相方の昂りと同時に、ダラハーもまた放出への欲求が湧き上がっていた。
体の動きがさらに速さと深さを増す。
何度かの最後の注挿によって、ダラハーは女の中で射精し、女も快楽の果てに落ちていった。
疲れた体を建物の壁に預けながら、二人はこの夜幾度目かのキスを交わした。
その後ダラハーと女はある宿屋へ赴き、また幾度も体を重ねた。
だが、次の日ダラハーが目を覚ましたときには、女の姿はどこにも無かった。
・・・・・・・・・
393 :
海大祭:2007/01/28(日) 01:39:21 ID:9DiWUDGK
祭日の後は、燃え尽きた焚き火のように静寂と虚脱感が街に漂う。
前夜と今朝が繋がっていることが不思議なほど、その落差は激しい。
今日からまた港湾都市の日常が始まる。
だが大抵の住人は、三日間の疲れのせいで祭の翌日は使い物にならない。
そんな気だるい朝に、悪名高き隻眼の鮫、ガレーナはある男に面会を求められていた。
その男とは、こんな日でなくても会いたくなかったが、
無下に断るわけにもいかない事情がある。
その男は、海賊評議会の意向を汲んで、港湾の規律を取り締まる役を負っているからであった。
ガレーナは心中『このフナ虫野郎め』と罵り、傍らに愛刀を置きつつも、
執法員、ウミウと会わざるを得なかった。
「何の用だい? こんな日に」
「………ガレーナ。今朝方、港に一つ死体が浮かんだ」
「はん、この街では珍しくもあるまい? おまけに祭の最中ならなおさらだ」
「確かに、でも放置出来ない裏話が有る」
「なんだよ」
「そいつは最近特命を帯びて都から派遣されてきたらしくてな、
総督府ではちょっとした騒ぎになってるのさ」
ウミウの話に、ガレーナは何の感銘も受けなかったようだった。
本当のところ、評議会の執法員がこんなに早く動員されるという事は、
ちょっとしたどころではない話になっているのだろう。
「あー、そりゃご愁傷様だな。
アンタも祭の翌日から働かされて大変なこった」
「一昨日の夜、お前と一緒に男が居たろう」
「あ? おとといといえば、祭りの中日だな。
そりゃ一人で祭に繰り出すって柄じゃないから、男ぐらい釣ったさ。
それが何か海の掟にでも触れるのか?」
「そいつが今朝、港に浮かんでた男だ」
「……本当かい。顔は良かったけど、運は悪かったんだね」
「そいつについて、何か知らないか?」
「何も、ちょっと引っ掛けて酒飲んで一緒に祭り見物しただけだよ」
「それだけか? ほかに何かあったんじゃないのか?」
互いの腹の底を探り出そうと、テーブルを挟んでウミウの両目とガレーナの隻眼が鋭く光る。
394 :
海大祭:2007/01/28(日) 01:42:23 ID:9DiWUDGK
「おい、ウミウ… まさか私に疑いかける気じゃあなかろうね?
こっちは昨日の夜には、山車を海大神に捧げる神事に出てたんだよ。
そいつは他の船主連中だって証言してくれる。
私と別れてから、そいつが何時何所で殺られたのか知らないが、私には係わりのないことじゃないか」
「この街じゃあ金かコネさえあれば、その場に居なくても殺せるさ」
「へえっ、そんなら目の前にいるフナ虫をぶった切るなんざ、なおさら簡単さね」
言い終わった瞬間、ガレーナの手は動いた。
ウミウも身構えようとしたが、その動作は途中で停止した。
既に彼の首筋には、女の抜いた曲刀がぴたりと当てられていたのだ。
鋼の冷たさが、肌から伝わってくる。
血は流れなかったが、ウミウの命はガレーナの手中に有ることは確かだった。
「おい、アンタが自分の船で稼がないで上納金で喰ってく、フナ虫稼業をしやがるのはいいけどね。
よく調べもしないで、人を下手人呼ばわりするのは許さないよ」
「………」
その隻眼に秘められた怒りに晒されて、ウミウは出直す事を余儀なくされた。
執法員が帰っていくと、入れ替わりに『大喰らい鮫』号の操舵手が部屋に入ってきた。
「お頭、ウミウの旦那は何のご用でしたかい?」
「あんな野郎を旦那呼ばわりするんじゃないよっ、けったくそ悪い。
海の誇りを忘れて、総督府の豚にケツ貸す陰間野郎めが………」
口では一通りの悪口を言いながら、頭の中では危険の匂いを嗅ぎ取っていた。
(ウツボの親父、仕事が速すぎる…)
実際には、監査官ダラハーを消させたのはガレーナである。
手を下したのは、評議会に議席すらもつ大海賊『ウツボ』の手の者だった。
一昨日海星堂の親父に伝えたのは、実はウツボとの間で使われる符丁であり、
『私が連れて歩いている男は、秘密を嗅ぎだそうとしている』という暗号なのであった。
だが、こう手早く殺されてしまうと、彼が祭の最中に接触した人間達に探りが入る事は間違いない。
(もう少し時間が経ってから、消した方が良かったか?)
そう思わないでもないが、相手に時間を与えれば
それだけ密輸と横流しが発覚する危険性は増していたことだろう。
加えて祭の最中であったからこそ、こうして総督府の人間を容易く殺れたというのも有る。
(まあ仕方が無いか、今回の密輸にはウツボの親父も一枚噛んでるんだ。
あっちから洩れる心配はほぼ無いだろ………
だがウミウの野郎は、ああ見えてしたたかだ。ほとぼりが冷めるまで街を離れた方が得策だね)
この女海賊が今日まで生き延びてこれたのは、危険を感知する能力が優れているだけではない。
決断が早く、そして鋭いゆえだった。
395 :
海大祭:2007/01/28(日) 01:43:39 ID:9DiWUDGK
「おいっ、出港の準備はできてるよな」
「へっ?、そりゃあ… いつもの指図どおり、祭の最中でも船を出せる準備だけは出来てますがね」
「よし! 船を出すぞっ。全員すぐに集合させろ」
「ええっ、本気ですか!?」
「まだ酒場でぶっ倒れてる奴がいたら、銛で刺してでも連れて来い!」
海の荒くれ者を叱咤するその姿には、一昨日の夜見せた淑女の如き振る舞いは微塵も見られない。
もちろん女海賊としての生活こそが、彼女の本性である。
あれはあくまで獲物を釣る為の演技だ。
思わぬ大物が針にかかったが、それこそ日頃の行いを神が嘉したに違いない。
操舵手を急き立てて、ガレーナも手荷物を纏めた。
彼女には一昨日一度寝た男を死なせた罪悪感など一片も無い。
祭の間は、後腐れのないよそ者の男を誘って楽しむのが彼女の習慣だが、
もしあの日にダラハーを誘わなかったら、また誘いに乗ってこなかったのなら、
反対にガレーナが吊るされる事になったのかもしれないのだ。
この街では喰うか、喰われるかだ。
ガレーナは釣り、ダラハーは釣られた。
海の掟は美しくも残酷である。
それには体を重ねたことなど関係ない。
アレ自体は気持ちの良いことだし、こっちも向こうも楽しめたのだ。
むしろ死ぬ前に良い思いをさせてやった分、良い供養になるというものだ。
(まあ、いずれ私もどこかの海でくたばるだろうさ。
その時にはそっちの恨み言も聞いてやるよ。ただし憶えていたらね、ダラハー…)
愛刀を腰に差し、ガレーナは宿を出た。
彼女の生まれ故郷であり、いずれ眠る墓地でも有る、大海原へ向かうために。
(終)
396 :
投下完了:2007/01/28(日) 01:45:02 ID:9DiWUDGK
ガレーナの話はとりあえずここまでです。
次はそろそろ魔王の話の続きに入りたいと思います。
本当はまとめサイトに魔王の話がみんな掲載されたころを目処に
第二部に入ればいいやと思ってたんですが、
予想外に素早く載せていただいてしまい、
若干慌ててるところです。
GJ!!!!
こういうシチュはたまらん
超GJ!
自分もガレーナ様に誘惑されたいっす。
第二部楽しみに待ってますよ。
ペースはお気になさらず素晴らしいものを書いてください。
399 :
投下準備:2007/02/01(木) 22:51:18 ID:G9v2MO6g
本編再開の前に、伏線回収の幕間劇を幾つか投下します。
今回は本番は無しです。
冬の空にうっすらと朝日が昇り始めた頃、緋色の寝台に敷かれた毛布の中で、何やらが蠢きだした。
王の愛妾が寝起きするこの寝台に好き勝手に出入りするのは、持主以外には二人しかいない。
「ふあぁぅ…」
大きなあくびをしながら、そのうちの一人は寝台から這い出し、ぼりぼりと頭を掻き毟る。
「んんっ、お早うティラナ…」
「うむ、はよう」
同居人に起こされる形で、寝台の持主である魔王の寵姫、ネリィも目を覚ました。
西方遠征を途中で切り上げ、魔王軍主力は国境線付近に設けられた冬営地に駐留している。
魔王もこの基地に建てられた行宮におり、ネリィたちはその一角に部屋を与えられていた。
正確には寵姫ネリィに割り当てられた区画に、二人は暮らしている。
ティラナは魔王の王宮でどのような位置を占めるべきか、現在もいまいち曖昧なのだ。
黒い天幕から出獄した後、特に魔王からの沙汰は無い。
役職を与えられる事も無く、地位や称号を賜っている訳でも無い。
まあ仮にそんな物が与えられていたとしても、彼女に務めが果たせるは考え難いが…
強いて言えば、今のティラナは魔王の寵姫の居候であった。
雪が降り、寒さが厳しくなったこの時期、寝る時分になると知らぬうちに寝台に忍び込んでくる。
ネリィとしても一人で寝るのは冷たいし、なにより寂しい。
相手は自分の毒の体質を気にしないので、彼女の方こそ金髪の少女との同衾を喜んでいた。
「ふぁう、昨日は夜遅くまで体使ったゆえの、腹が減ったわえ」
少女が眠気を払うために伸びをすると、鉄の首輪からぶら下がる鎖がジャラジャラと音を鳴らした。
「しっかし、毎日毎日豚に鶏にアヒルでは舌が飽きるわ。
野牛、猪、鹿… いや羚、それとも猿か兎……… たまには美味い物を喰らわして欲しいものじゃ」
「冬なんだから仕方ないわ」
「むう、そうは言っても喰いたい物は喰いたいのじゃ。
そもそも王が食に淡白なのがいかん。
父上はよく一族を率いて狩に赴き、仕留めた獲物を皆の序列に応じて公正に取り分けたものぞ。
妻妾や奴僕にお零れも与えられないようでは、群れの長として失格じゃ」
「陛下は食が細くていらっしゃるから…」
「おまけにお前は肉を喰わんしの。たまには精の付くものを喰らわなければ、血が足りなくなるぞ」
「………」
肉を食べるためには、動物を屠らなければならない。
自分の体質に気が付いてのち、彼女は一切の肉食を拒絶するようになった。
己の宿命を呪うネリィは、自分を生かすために他者の命を奪う事が我慢できないのだ。
魔王のため、己の毒の血を味方に使わせるようになってからも、その習慣は続いている。
たとえ貧血で倒れようとも、命を奪って食べる事への抵抗は如何ともしがたい。
その点、鬼族の様に生きた動物をそのまま貪るティラナとは全く対照的である。
「すまぬ、言い過ぎたか、
じゃが本当にそのままでは体を壊すぞよ?」
哀しげなネリィの顔を見てこの場に居づらくなったのか、
ティラナは寝台を跳び下りると、窓際へと進んだ。
ガ ラ リ 、
ティラナが開けた窓の外は、太陽の光を受けて雪が白く輝いている。
朝日を浴びて、窓際に立つ美少女の頭髪も金色に輝く。
急に差し込んできた光の眩しさに、ネリィは目を顰めた。
「では朝飯を喰ってくるわえ」
「もうっ、出入りは扉を開けて出て行きなさ……… って? ちょ、ちょっと待ちなさい!!」
「ぁっ? …ぐぐぐぁああああ!??」
まさに外へ飛び出そうとしていたティラナだが、鉄の首輪は進行方向と逆向きに引っ張られた。
魔王の寵姫の中指には、その主から与えられた鉄の指輪がある。
ネリィがそれを止めようと手を伸ばした瞬間、鉄輪に繋がる鉄鎖は誰の手にも触れぬまま、
緋色の寝台の方へと引き戻されていたのだ。
402 :
ネリィとティラナ:2007/02/01(木) 22:53:32 ID:G9v2MO6g
「ぐぎぎぎ、なにしよるか!?」
「あ、貴女… そ、その格好で出歩くつもりなの?」
「がぐぅ?」
突然の苦痛に対する抗議の声にも耳を貸さず、ネリィは問いただした。
「なんじゃ? 腰巻は着けておろうが!」
「その事じゃないわっ」
全裸、いや鉄の首輪を嵌めただけで陣中を歩き回ろうとするこの娘に対し、
ネリィは繰り返し裸身を隠すように説得した。
最初は駄々を捏ねていた少女も根負けし、ようやく獣皮を腰に巻き、
要所だけは人目に触れないように配慮し始めた。
闇の軍勢に参加する蛮族戦士並に大胆な露出ぶりであるが、これでも少しは進歩しているのである。
「そ… その体の跡は、………一体どうしたの?」
「んあ、これの事か? 昨日魔王に付けて貰ったのじゃ」
ネリィが指し示した少女の体には、白い肌に幾つもの跡が刻まれていた。
背中に数条、長く平行に付けられた紅い創は、恐らく爪で掻かれたためだろう。
主に首筋から乳房にかけて、所々に付けられた青く小さい跡は、唇で吸われたものか。
肩口、わき腹、太腿に多く残る破線の半円型は、噛みあとと見て間違いない。
「陛下に?」
「そうじゃ、昨晩王の寝所に忍び込んでの。あ奴にねだって、こうして跡をつけて貰ったのじゃ」
ティラナは恥ずかしげも無く、その行為の跡をネリィの前にさらけ出した。
こうして間近に見てみれば、三種の傷痕は所構わず全身に満遍なく付けられている。
「ほれ、ここにもあるぞよ」
「ぃ!? そんなの見せなくてもいいのよっ」
めくり上げた腰巻の奥、両脚の付け根に当たる部分にも痕跡は残されていた。
「とっ、兎に角っそんな跡を付けたまま外に出ちゃ駄目よ!」
「むぅ? なぜじゃ」
「そ、そんな物を付けたまま出歩かれたら……… 陛下の恥になるわ」
「おかしなコトを、昨日あ奴に妾が抱かれたのは、別に隠す事でもなかろうが?
それがどうして魔王の恥になるのじゃ」
「そういう事は、普通は大っぴらにしないからよ」
「ぬ、ますます分からん。これらの創は、妾が奴に愛された証じゃ。
それを恥じねばならんとは、全く理解しがたいわい」
「………」
「大体な、傷が残るほどに強く愛し合うことの、何所が恥ずかしいのやら。
妾はこうして疵物にしてもらう間、いつに無く気持ちよくて痛かったぞ」
そのあどけない頬を膨らませ、ティラナは不満を露にする。
「妾は腹が減ってるのじゃ。下らん議論は後でしようぞ」
「駄目っ、外に出ては駄目っ!」
「ぐぎぎっぎっ!! 締まるっ」
王の指から直々に与えられた鉄の指輪は、古に空から飛来した鉄を用いて作り出された物である。
そして剣牙虎の精を本性とする少女に嵌められた鉄輪も、同じ素材を鋳造した物であった。
本を同じくする二つの鉄は、分かたれて後も不可思議な繋がりを秘めている。
芯に当たる部分を用いて作られたネリィの指輪には、その力に干渉して
鉄鎖に嵌められた者を自在に引き据える魔力が付与されているのだった。
「そんな姿で出歩かれたら、陛下のご威光を損ねるのよ。
それだけは絶対に許せないもの」
「ぎぎぎぎぃいいっ、分かった! 分かったからっ、輪を絞めないでたもれ!」
「………創が消えるまで、ちゃんと服を着てくれるのね?」
「着る、着る着る着るからっ」
そこまで確約させて、ようやくネリィは指輪に込められた魔力を封印した。
人間とは羞恥心の持ち方が違う種族だとは知りつつも、さすがにこれは容認しがたい。
「うう、縊り殺されるかと思ったわえ…」
「私の着物を貸してあげるから、暫くそれを人前で脱がないで」
「ちぇっ、仕方が無いの………
折角あの黒兎めに、妾がどれほど魔王に愛されたか存分に見せつけ、
自慢してやろうと思うたのに…」
ぶつぶつと不平をこぼすティラナを放って、ネリィは長持ちから装束を取り出す。
あれこれ迷った挙句、金糸と銀糸で刺繍を施した朱色の衣装を選んだ。
これが一番彼女の黄金の髪と瞳、雪のように真白い肌を引き立てるだろう。
そう思っていそいそと着せたのだが、相手はそんなに乗り気ではなかった。
『きつい』『窮屈だ』『布が余って動き辛い』とたびたび文句をつける。
それでも何とか着せ終わると、黙っていれば愛らしい顔立ちが華麗な衣装に引き立てられ、
まるで東方の王国の姫君であるかの如く、じつに美しい姿に仕上がった。
「うふふ、似合うわよ? ティラナ」
「ぐぅ、こんなに体が布で覆われていては窒息しそうじゃ」
初めて全身を着飾らされ、ティラナは居心地の悪そうだった。
これでも二の腕やすねに付けられた痕は隠せていないが、その程度は許容範囲であろう。
「これで文句は無いじゃろうな?」
「ええ、可愛いわよ」
「ぷんっ、誰が可愛くしてくれと頼んだのじゃ!
外に出ても文句は無いなと聞いたのじゃ」
同居人の答えを待たず、少女は再び窓際から飛び出していこうとする。
今度はネリィもそれを止めようとはしなかった。
「汚してもいいから脱いじゃ駄目よ」
その言葉が届いたかどうか、ティラナは雪の降り積もる屋外へ裸足で飛び出していった。
いつものことだが、あの元気さには圧倒される。
こんな事を言えば相手に怒られるだろうが、己よりもよほど長い時を生き、知識もあるというのに、
どこか稚気の抜けぬところが愛しかった。
そんな事を思っている時、ふとあの白い肌に残された痕が脳裏に蘇った。
あの傷跡を付けたのは、他でもない彼女の主なのだ。
(陛下…)
聞けば、あの創は少女の方からねだって付けて貰ったという。
人型を取っているが、その本性は化生の獣だと聞いている。
あのような性行為は彼ら独特の代物なのだろう。
魔王にすれば、褥を共にした女の求めに答えてやったに過ぎないだろう。
ただ、他の側妾たちを差し置いて、遠征にまで同行させてくれる主のことだ、
自分もそう願うのなら、あのように創を付けてもらえるに違いない。
ティラナは言った。
『これらの創は、魔王に愛された証だ』と『疵物にして貰う間、いつに無く気持ちよく痛かった』と。
次第に、それはまだ味わった事の無い甘美な行為に思えてきた。
(でも、どんな顔して言い出せばいいというの?)
金髪の少女が出て行った窓から、冬の冷たい空気が入り込んで来るが、
ネリィはそれを閉めようとはしなかった。
一つは熱く火照った自分の頭を、寒風で冷やそうと思ったため、
そしてもう一つ、我ながら実にはしたない、淫らな考えを抱いてしまい、
羞恥に紅く染まった顔を、誰かに覗かれはしまいかと思ったためであった。
(終わり)
GJ!!
二人ともとても可愛いなあ。
いいもの読ませてもらいました。
投下蝶乙。
二人に モエェ(*´Д`*)ェエ工
GJ!
ツルペタかわいいよツルペタ
ログ見てて思ったんだが、
3スレ目になってから新規職人さん来てないね。
つわけで、新規職人さん大募集!!
今なら絶賛GJコールサービス中!!
ミーシャの人やルーシーの人やアヴァロンの人は帰ってこないのかな。
宰相話あたりで構想練ってるって言ってた人はどうなったのかな。
箱庭の虎の人はSS書き上げられたんかな。
アビゲイルマダー
>410
おk!
待ってる!
投下キテターーー!
しかもお気に入りの虎幼女と毒姫ですよGJ!!
ティラナは幼女かな?
月の障りうんぬんの話から、もうちょっと(外見年齢は)あると思うが。
410じゃないけれど
ベタなシチュで申し訳ないが、ベタゆえに一度は書いてみたかったシロモノを投下
あまりにベタ過ぎて投下しないでおこうと思ってたけど、
職人さんを待つ間の暇つぶしにでもしてもらえれば
ありがちな展開が嫌な人はスルーで
416 :
オウレンの妻:2007/02/06(火) 01:53:21 ID:s4U+6KXT
男がルテアの前に姿を表したのは、彼女が地下牢に閉じ込められた翌日のことであった。
「俺が誰かわかるか」
鉄の格子扉を開け、身を屈めて牢の中に入ってきた大柄な男の問いかけに、
壁に寄りかかるように座っていたルテアは視線だけを彼に寄越し、煩わしげに口を開いた。
「わかる。オウレン……元は傭兵の出で、今はウルワの5大将軍の一人」
「詳しいな」
「……自分の戦った相手だ」
「お前と戦ったのはこれが2度目だな。一度目は」
「赤岩の砦」
「そうだ。───あの時の刀傷は癒えたか」
オウレンの言葉に、ルテアは無言でじろりと彼を睨みつけた。
自分を見上げる女の鋭い眼光を真っ直ぐに受けながら、オウレンは彼女の頭をぐっと掴んだ。
「お前にはだいぶ手を焼いた。今度の作戦でも、俺は兵の3分の1を失った。
もっとも、投じた兵を全滅させられたザイド将軍よりは、ましだがな」
松明の明かりだけが頼りの暗い牢屋の石壁に、男の低い声が響いた。
ルテアは無言のまま炯々と彼を見詰めた。
その細い手足には黒々とした鉄の枷がはめられている。
足の枷からは蛇のように鎖が伸び、のたうつその端は石壁に埋め込まれていた。
彼女の顔も躯も、埃と返り血と、この地方特有の黄土色の土でひどく汚れている。
だが、それでも彼女の美貌は損なわれず、形のいい唇は強く結ばれ、金色の瞳は砂漠の
夜空に浮かぶ神聖な月のように澄み、強い輝きを放っていた。
激しい戦いの末に生きて捕らえられたこの敵国の武将を前に、冷め切った声で
オウレンは言葉を続けた。
「ザイドの怒りはたいそうなものだったぞ。お前のような女将軍に愚弄され、ただでは
済まさぬと……………だが、情け深い我らの王は、お前に慈悲を下さるそうだ」
言い聞かせるように、オウレンの口がゆっくりと告げた。
「命は取らぬ。その代わり、お前は今の信仰を捨てた後に改宗し、俺の妻となって生きよと
仰せだ」
「なんだと…………!」
それまで石のように動きを見せなかったルテアが大きく目を見開き、声を上げた。
その表情にみるみる憤怒が浮かぶ。
「改宗してお前の妻に?………私に邪教の神に跪けと言うのか! 何と滑稽な事を!
何が慈悲だ。そのような話、受け入れられぬ! さっさとこの命を奪うが良い!」
声を荒らげるルテアに男は眉を顰めた。
417 :
オウレンの妻:2007/02/06(火) 01:55:38 ID:s4U+6KXT
「愚かなものだ。なぜそう死に急ごうとする。何人もの兵の犠牲の上に成り立つその命
だというのに、今此処で捨てるというのか」
「では聞くが、もしお前が逆の立場になって改宗を迫られたら、お前はそれに従えると
言うのか?」
「……………………」
「どうだ、答えよ」
「お前は敗戦の将だ。答える義務はない」
ルテアは屈辱に美しい顔を歪めた。
「…………どうしても、従う気は無いのか」
オウレンの問いに、もはやルテアは答えなかった。
突如、頭を掴んでいた大きな掌に力が篭められ、ルテアは強く横に押しやられた。
鎖の音を立てながら石の床に倒れたルテアの躯の上に、オウレンは圧し掛かった。
「何をするっ!」
「仕方あるまい。口で言ってわからぬのなら、力ずくで従わせるまでだ」
「力ずくだと?! 笑わせるな!」
オウレンに組み敷かれながらも、ルテアの顔には恐れは浮かばなかった。
男の下でぎらぎらと輝く金色の瞳に侮蔑の色を滲ませ、忌々しげに罵った。
「このように自由を奪っておきながら、何が力ずくだ! ウルワの勇猛で知られた武将は
鎖の戒めの助けがあって、はじめて女一人を好きにできるような腰抜けというわけだ。
お前は武人としての誇りをもたぬ男のようだな!」
肩を押さえ込もうとしていたオウレンの動きが止まった。
その黒い瞳が微かに逡巡するように揺らぎ、一拍の間の後、ゆっくりと彼は口を開いた。
「……………成る程。誇りか」
彼はおもむろに身を起こした。腰から鍵を取り出すと、ルテアに反撃の隙を与えぬように
気を配りながら、彼女の手の戒めを解いた。
「足は自分で外せ」
そう言って、ルテアの前に鍵を放り投げる。彼女がそれを拾い足の鍵穴に鍵を差し込むと、
それに視線を定めたままオウレンは後ろに下がり、檻から出た。
この男は、何を考えている………
猜疑しつつ、ルテアは鍵を開けた。ガチ、と硬い音を立てて足枷が外れる。
開放された足首を撫でさすりながらオウレンを見やると、彼は既に檻の外に佇み、
黙ってこちらを見ていた。
鉄格子の扉は────開いている。
418 :
オウレンの妻:2007/02/06(火) 01:57:06 ID:s4U+6KXT
ルテアの視界がそれを捕らえた時、オウレンは一言「出ろ」と言葉を発した。
鉄格子を一歩出ると、その足元に一振りの抜き身の剣が置かれている。
それは、拘束された時にウルワの兵に取り上げられた、ルテア自身のものであった。
「それで俺を倒してみろ」
オウレンは言った。
「お前に一度チャンスをやろう。俺を倒せば、お前は自由だ。なんなら俺の首を取って、
故郷への土産にすれば良い。だが、俺が勝てば、お前は俺に従え。それでどうだ」
「今の言葉、誠だな」
「誠だ」
ルテアは剣を拾うと、数歩前に出て、両手で剣を構えた。それはオウレンの申し出を
承諾したという無言の返答であった。
3つ連なる牢屋の前の空間は、剣を振るうには充分な広さがある。
オウレンの後ろに、外に通じる扉が見えた。
手にした剣を鞘から音もなく抜き、オウレンは鞘を横に投げ捨てる。
それが地面に落ちる音を合図に、ルテアはオウレンに切りかかった。
キンッ───
硬い音をあげ、オウレンは正面でルテアの剣を受け止めた。彼がその剣を振り払うと、
重圧を感じながらルテアは後ろに飛び退り、間髪いれずに再び剣を振り上げ、
オウレンを襲った。
二人の剣は幾度かかみ合って凄絶な響きを起こした。
二人の体は飛び離れたかと思うと、すぐに迫り合っては激しい打ち込みを繰り返す。
オウレンが足を横に移す。
ルテアも足を送ろうとした時、オウレンの剣が刃うなりをのせて下りた。
素早い動きで彼女はそれを躱す。だが浅く左腕をかすられていた。
「───くっ」
ルテアは間合いを取り、構えを固めた。鷹のような目付きでオウレンを動きを窺う。
オウレンも切っ先をルテアに向け、鈍い光を放つ刃越しに、鋭く彼女の瞳を
凝視していた。
───勝てぬ
突如、ルテアの脳裏に赤岩の砦で同じように自分の前に立ちはだかったオウレンの姿が
重なり、その時に味わった焦燥感が鮮明に蘇った。
419 :
オウレンの妻:2007/02/06(火) 02:00:00 ID:s4U+6KXT
馬を射殺され、やむなく黄砂の舞う中で対峙した彼の、落ち着いた動きに秘められた
凄まじい気迫。
女でありながら何人、何百もの敵兵をその剣で倒してきたルテアであったが、オウレンには
それまでの敵とは異なる手ごたえを感じとっていた。
前回は途中で援軍が来て、それに気付いたオウレンが逃げ帰り、勝敗は付かなかった。
だが、今は────
恐怖がじわりとルテアの背筋を這い登った。
いくつもの戦火を駆け抜けた経験によって養われた直感が、奮い立とうとする自らを
裏切るように冷ややかに告げる。無理だと。
だが、ほかの逃げ道は選べぬ。ルテアの矜持は望みの無い可能性に縋った。
迷いをはらう様に頭を横に振るい、オウレンに切りかかる。
ルテアの金褐色の髪がふわりと空に舞った。
力では圧倒的に勝るオウレンの剣に対し、
ルテアはその敏捷さと厳しい鍛錬で得た技とで攻めた。
覚悟を決めて踏み込み、激しい一撃を真っ向に振り下ろす。
一旦右へ引いたオウレンの躯がルテアの躯に吸い込まれるように迫り、すっと離れた瞬間、
焼けるような痛みが左足に走った。
ルテアの動きが一瞬鈍り、身を翻したオウレンの手刀が彼女の背中を強く打った。
床に叩き付けられ、ぐっ、とルテアは唸り声をあげた。
オウレンは無駄の無い動きでルテアの片腕を背中に捻じ上げると同時に、手から剣を
奪い取ると手の届かぬ遠くに放り投げた。
「お前の負けだ」
獣じみた力で、腕ごと躯を押さえつけられる。肺を押しつぶされる様な強烈な圧迫感に
ルテアは無意識に口を開け酸素を求めた。呼吸の道が絶たれ、苦しい。
「俺に従え。いいな」
オウレンは背後から床とルテアの腹の間にもう一方の手を差し挟み、彼女の躯を浮かせると、
出来た隙間にさらに手を滑り込ませた。
シャツをたくし上げ、露になったルテアの白く滑らかな腹を撫でた。
「───!」
体中が総毛立った。
「嫌だ………殺せ」
ルテアは掠れた声で呻いた。
「──殺してくれ。……………頼む」
420 :
オウレンの妻:2007/02/06(火) 02:02:21 ID:s4U+6KXT
「観念するんだ」
男の低い声が耳に落ちた。
「嫌────嫌だ! 止めろ!……このまま殺してくれ! お願いだ!」
「言っておくが、自害も許さぬ。お前が自害すれば、捕らえてあるお前の部下の命も無いと
思うがいい。確か、お前の弟もいたな」
薄気味の悪い感覚が腹の表皮に蠢き、ルテアは今までに無い恐怖を覚えた。
「成る程」
確かめるように腹を撫でながら、オウレンは呟いた。
「ウルワをさんざん悩ませた知勇の武将も、こうしてみればやはりただの女だな。
……………柔らかな肌をしている」
ルテアは一瞬羞恥に顔を赤く染めたが、すぐに歯を食いしばり、彼の手から逃れようと
猛然ともがいた。だが、組み敷かれたこの状態で抗うには、オウレンはあまりにも
力強く、重い躯を持っていた。
背後から圧し掛かられ、押さえこまれた腕に体重を掛けられると、必死の抵抗も実際には
僅かな身じろぎに過ぎなかった。
うつ伏せになり腰を浮かせた格好のルテアのベルトの止め具を外し、それを抜き取ると、
オウレンの手がズボンを下穿きごと膝までずり下げた。
節くれだった太い指が下腹部に伸び、ルテアはびくんと躯を硬直させた。
「………………くっ」
「諦めろ」
冷たい声が耳元で響いた。
「お前は俺のものになる」
男の指が何度か探るように秘裂を往復し、やがて無遠慮に沈み込んできた。
そのおぞましい不快な刺激に、ルテアは戦慄した。
誰も触れたことのない清浄な肉の窪みをかき回され、強引に中を濡らされていく。
「………怖いのか」
背後から聞こえる男の声に、いたぶるような興奮が入り混じっているのに気が付き、
ルテアは屈辱に怒りを滾らせた。
その怒りが、ルテアに矜持を蘇らせ、一気に彼女を奮い立たせた。
「誰がお前のような下劣な奴など……。たとえ体を奪われようとも、心まではお前の
好きにはさせぬ!」
「気丈な振る舞いだな。流石だ、ルテアよ」
オウレンはぐい、とルテアの腰を高く持ち上げた。
「では、早速その体を頂くとしよう」
そして、一気に彼女の体を貫いた。
421 :
オウレンの妻:2007/02/06(火) 02:04:25 ID:s4U+6KXT
「はっ…!」
体の統御を一瞬失うような、強烈な痛みが襲った。
「もっと力を抜け」
低い声が耳元で囁かれた。
「………………」
嫌だ、と言おうとしたが、代わりに出るのは苦痛の呻き声だった。
腕ごと押さえつけられていた背中からオウレンの手が離れ、呼吸が楽になる。
だが、最早それはルテアの受ける苦痛の慰めにはならなかった。
オウレンは彼女を開放した手で再び二の腕を床に押し付けた。
ゆっくりと、馴染ませる様にオウレンが動き出した。
「………っ、ふ」
突然、ぐっ、と深くまで押し込まれる。
今まで閉じられていた狭い胎内を強引に押し広げられる肉体的な痛みと、自分の躯の中に
無理やりに得体の知れぬものが捻じ込まれる恐怖と嫌悪感。
浮かせた腰に背後からオウレンは何度も自身の怒張を突き立てた。
尻を掴み、引き抜いては再びルテアの中に奥まで押し込める。
男の荒い呼吸音が聞こえる。そして、自分自身の。
交合の最中の獣めいた息遣い。
────いやだ
背後から貫かれ、その度に躯が揺れ、床に押し付けられた頬が擦られて痛みが走る。
────こんなやり方で
肉のぶつけられる音を聞きながら、痛みと衝撃に朦朧とした意識の中でルテアは思った。
────こんな男の妻になど
目をきつく閉じ、歯を食い縛る。
耐えるしかない陰惨な痛みが終わるのを、ルテアは待った。
噛み締めた奥歯から小さな呻きが断続的にこぼれていった。
422 :
オウレンの妻:2007/02/06(火) 02:05:48 ID:s4U+6KXT
腰を掴んでいたオウレンの掌がシャツの中に滑り込み、背中から胸へと伸びた。
背後から激しく腰を揺さぶり出しながら、ルテアの胸の柔らかなふくらみを掴み、
揉みしだく。
「あっ…」
硬い皮膚に覆われた指が胸の尖りに触れ、擦られ、弄ぶように摘まれ、ルテアの口から
小さな悲鳴が上がった。
振り払うことの出来ない不快な感覚が沸き起こり、体を蝕む。
もはやオウレンの好きなようにいたぶられるだけしかない自分の状態に、名状しがたい
恐怖が背筋を走った。
「うっ、あっ、あっ…!」
最奥まで突き込まれる。
耳元で低いうめき声が聞こえた。
同時に、何かが自分の中を犯し、浸していくのを感じた。
男が深い息を吐く。
動きが止まった。済ませたのだ、とルテアは思った。
「いいか」
男が躯を起こし、埋めていたものを引き抜いた。
痛みだけが脈打つように起こるその部分を、どろりと生暖かいものが伝う。
「お前は俺の妻だ。これからは俺にだけ従え。………自分の立場を忘れず、愚かな事を
起こそうなどとは考えるな」
「………………」
「それがお前に唯一残された道だ。わかったな、ルテア」
虚空を見る女の瞳には、何も写っていなかった。
言い聞かせた言葉にも、反応は無い。
ただ彼女の吐く細い息の異様な震えだけが、乾いた空気をかすかに動かしていた。
オウレンは立ち上がると、僅かに乱しただけの自分の服装を整え、微動だにしない抜け殻の
様なルテアの躯を易々と担ぎ上げた。
牢に中に彼女を戻し、足枷を再びはめる。
「後で部屋に移してやる」
そう言うと、灰色の石の床に横たわるルテアを振り返ることも無く、オウレンは立ち去った。
423 :
オウレンの妻:2007/02/06(火) 02:07:54 ID:s4U+6KXT
扉の開く音がし、外へと続く階段をゆっくりと登る足音が響いた。
「世話をしてやれ。左足に傷がある」
そう声がした後、男の重い足音と入れ替わるように、軽い足音が降りてくる。
このような無様な姿を、人の目に晒したくは無い。
ルテアは気力を振り絞って躯を起こそうとした。その時になって初めて、膝ががくがくと
震え、脚に全く力が入らない事に気付き、改めて愕然とする。
絶望の中、ルテアは起こしかけた躯を再び倒し、双瞼を閉じた。
終
424 :
オウレンの妻:2007/02/06(火) 02:09:10 ID:s4U+6KXT
以上です
そうだ言い忘れてた
剣で戦うシーン、書き慣れていないというかあまり自信が無いので
ここの表現は変だから、こうしたほうがいい、等あれば指摘お願いします
今後の糧にしたいので
女兵士スレの真骨頂というべき作品ですね。
ベタさを補って余りあると思います。
剣戟シーンから陵辱へ進む展開も、文章の流れがスムーズなので
読みやすいです。
GJ!GJ!
イイヨイイヨーベタでもべたべたでイイヨー
オウレンたくましくて男っぽくてイイヨー
戦闘シーンもイイヨー
でも、>425について、敢えて言うなら、
>力では圧倒的に勝るオウレンの剣に対し、
>ルテアはその敏捷さと厳しい鍛錬で得た技とで攻めた。
もちょっとくわしく
戦闘シーンは回想シーンの前より後に力を入れて
ちょっと戦闘→回想(勝てない予感)→がっつり戦闘(やっぱり勝てない←ここ強調)
して陵辱シーンに移った方が、屈服させられるエロの陰惨さとか絶望感が増したのではないかと思う。
あんまり答えになってないかも、ごめん。
GJ!!
あらためて剣の勝負をしたところが定番だけどやっぱり萌えたよ。
続きがあるなら読みたいなあ。
細かいところだけど「黄土色の土」は「黄土」でいいと思う。
「馬から落馬」な感じがするので。
GJ!!
ふと思ったんだが・・
俺には指摘するほどの才はないさ。
でもさ、ユノ書いた人にはあんまりみんな指摘せず、誘い受けだと言う。
俺にはさ、同じように思えるんだよ、
なんでだ?なんで、ユノの人が勉強になります、とかご意見お待ちしてます、
とか言うのは誘い受けで、この人のは違うんだ?
あ、いや、批評も意見もいいと思う。
言葉が大事なこのスレだから俺は不思議なんだよ。
俺だって投下したい、そして皆の指摘を欲しい。
誘い受け、って言われちゃうのはなんで?
怖えよ、マジで。
意見を求めたら、そういわれちゃうの?
すみません、
わかるような呼び名でそう言われてしまうと
悲しい。
悪気はないと思いますが
そう言われてしまうと。
困ってしまいます。
>>429 意見が欲しい、と言ったら誘い受けてわけじゃないと思う。
別に意見を募る分にはまったく問題ないと思うけど。
ただ何を知りたいのか分かりやすい聞き方のが答えやすい。
誘い受けてのはあれだよ、もっと確信犯的だ。
例えばこんなん↓
「全然面白くもエロくもないやつ書いちゃいました(>_<)スイマセン!
しかも長いんです…おまけにいらん伏線ばりばりだし……」
投下後に↓
「レス汚しごめんなさいでした!(>_<)
初心者なので変な所あったら言ってください(あ、全部か(爆))
…次も書けたら投下していいですか????」
こういう「お前そんな事ないよ、て言われたいだけだろ! んじゃ投下すんな、て言ったら本当に投下しないんだな!」と
小一時間詰め寄りたくなるタイプのやつ。
だからユノの人は違う。
そもそもユノの人が誘い受なんて誰も言ってないべや。
ただ「投下前後にあんまり恐縮したコメントがあると
誘い受けに《思われる》からやめた方がいい」て言った人がいるだけ。
しかもその発言の要旨は自信もてYO!てことだろ?
この話はそれで終了という事で。
SSの続き&新作ドゾー
>>誘い受けてのはあれだよ、もっと確信犯的だ。
なんでBL(ゲイ)の隠語をポンポンと書き込むかね、腐女子か、おまえら?
433 :
425:2007/02/07(水) 18:57:39 ID:roSkfKVv
SS投下後のレスが元で、結果的に変な流れを作ってしまい申し訳ない
後から思えば、自分の書き方ももしかしたら読んでくれた人に
アドバイスを強要しているみたいに感じさせてしまったかもしれない
決してそんなつもりじゃなかったんだが、反省している
でもレスしてくれた人、とても参考になりました。本当にありがとう
では、自分も名無しロムに戻るので、次の話題へどうぞ
アビゲイル、まだでしょうか…。
いいところで途切れて一ヶ月半、生殺し状態です…。
ルナ、気にせず書いてくださいね。
あの時はコメントしなかったけど、
待ってますよ!!他の方もそうだと思いますよ!
本当に待ってます、頑張って!!
BL と聞いて絢爛舞踏祭が好きな俺がキマシタヨー!
もし芝村信者なら今すぐカエレ
ふと思ったんだが、日本でくのいち物のエロスな企画でポルノ映画、小説が作られているように、
欧米ではお城のお姫様、尼僧、街娘を登場させる作品が作られているのだろうか?
いや、もしそういう物があって、日本で手に入るのなら、普段感じるファンタジー不足の解消にいいかなと思っただけ。
こっちに女侍があるのだから、向こうでは女騎士モノがあるのかな。
尼僧モノは定番の一つだったと思う。
女騎士はどうかな。あんま例がないんじゃね?
「オゥ!イェス!イェス!ジーザス!!」
とか喘ぐ修道女ってどうなんだろう。
欧米の方々は日本人ほどシチュエーションにこだわらないんじゃないだろうか
442 :
投下準備:2007/02/11(日) 05:06:44 ID:qJ1s3Ljy
第二部再開です。
※ 注 意! ※
独占派の方は読まないほうがいいかも知れません。微妙です。
取り合えず、濡れ場に魔王様は登場しないとだけ言っておきます。
今回はリョジョークです。酷いです。
相変わらず前振りが長いです。とても長いです。設定厨には付ける薬がありません。
エロだけ読みたい人はぜひ前半部分はワープして下さい。
大聖殿の地下には、数多くの聖遺物が安置されている。
そのなかでも最も厳重に保管されているのは、数百年前に大魔王を討ち滅ぼし、
この王国の開祖となった伝説の勇者王、ラルゴンの神器である。
今、地下宝物殿の最深部にあたる『神剣の間』が開かれ、聖騎士たちが二列に並んでいる。
玄室の入り口から神剣が安置されている祭壇までを、それぞれ厳粛な面持ちで固めていた。
「では、邪宗審問会の決定に従い、これより『神剣の裁き』を執り行う」
審問長官がそう宣告すると、彼ら全員が抜剣した。
整列していた聖騎士たちは磨きぬかれた剣を掲げ、それぞれ向かい合った同輩と交差させる。
松明の輝きを受けて輝く白刃が、祭壇までの道に光のトンネルを造った。
その様子を、アデラは入り口に立って見つめていた。
儀式の手順は良く知っている。
彼女もこの『神剣の裁き』に参加した経験があった。
その時は先に玄室に入り、剣のトンネルを造る役の方を勤めていた。
しかし今回は違う。
アデラは軍服を着ていたが、腰には剣を下げていない。
それどころか武器になりそうな物は、寸鉄すら帯びる事を許されていなかった。
「聖騎士アデラ。汝は邪悪の存在に関わり、光の神々の教えを裏切ったとの疑いが持たれておる。
この『神剣の裁き』によりて、己が潔白を明かさんとする覚悟はあるや?」
「無論…、望むところです」
被疑者の宣言を確認すると審問長官は頷き、彼女の前に道を指し示す。
「ならば進むが良い。そして偉大なる英雄王の霊に触れよ。
汝が闇に冒されておらねば、何も起こらぬ。
しかし、些かなりとも闇に心奪われておれば、神霊の怒りが汝の魂まで滅ぼしさるであろう」
アデラは何のためらいも無く、白刃の下を進んだ。
完全武装の上ここに並ぶ聖騎士たちの任務は、土壇場になってこの儀式から逃亡しようとする
被疑者を誅殺することにある。
仮に誰かの剣をもぎ取って抵抗しようとしても、
あっという間に残りの聖騎士により肉塊になるまで切り刻まれる。
否応無く、被疑者は神剣の前まで進まなければならない。
そして神剣に触れ、己の潔白を証明するのだ。
それ以外に、生きてここを出る方法は無い。
頭上で交差する剣をくぐり抜け、アデラは祭壇の前に立つ。
その時、初めて彼女は息を飲んだ。
儀式への恐れではない。
祭壇に置かれた神剣の放つ、あまりの荘厳さに圧倒されたのだ。
神剣は豪壮な飾りをあしらった鞘に納められ、こうして目前にするだけでも、
その神々しい気配を感じる事ができた。
神剣の霊力は、邪悪な勢力に与した者を判別するという。
その伝説は決して虚言ではない事を、アデラも承知している。
彼女も参加した前回の『神剣の裁き』では、暗黒神教団への内通を疑われた司教がこの剣に触れ、
灰も遺さずに文字通り消滅した。
今まさに、アデラはその神剣に手を伸ばそうとしている。
光の軍勢の壊滅の後、他の団員が全滅したにも係わらず、たった一人助命、解放された聖騎士。
彼女には内通、裏切り、戒律違反等、様々な疑惑が持たれていた。
(当然だな。もし私が審問官であっても告発するだろう…)
拘禁されたときの感想は、そんなものであった。
だから、この儀式はむしろ彼女としても望むところである。
『徒にラルゴン王の御霊を煩わせぬように』と、かなり重大な嫌疑が無ければこの玄室は開かれぬ。
先の大敗によって、聖庁の人間達はよほど魔王の脅威に怯えているらしい。
アデラも自分の潔白に自信があるわけではない。
敵に犯され貞操を失い、魔王に女としての愉悦を覚えさせられた身体である。
それでも一つだけはっきりしている事がある。
それは、もし自分の心が闇に穢されているのなら、いっそ儀式で消滅するべきだと考えている事だ。
アデラの手が神剣に触れた瞬間、異変は起きた。
ヴォォゥン―――――…
何の前触れもなく、神剣が鳴いた。
「なっ!!」
「これはっ!?」
突然の出来事に、この場に居合わせたすべての者が瞠目した。
これまで行われた『神剣の裁き』において、このような現象が発生した事はなく、また記録もない。
神器の鳴動により、体の底を貫くような重い音が玄室内に響き渡る。
(こっ、これは一体…?)
事態の発端となったアデラは、思わずその手を離そうとした。
だが、それはできなかった。
手のひらは吸い付かれるように鞘から離れず、五本の指はしっかりとそれを掴んでいた。
異変はそれで終わりではなかった。
アデラの掴む神剣から、まばゆい白い光が放たれた。
松明の炎など打ち消すほどの圧倒的な光量に、祭壇に釘付けになっていた全員の目は眩む。
「うぉっ!!」
「何事だ、この光は!?」
直立して威儀を整えていた聖騎士たちも、動揺のあまり隊列を崩した。
突如太陽が出現したかの如く、玄室から一切の闇が駆逐される。
審問官を含め、この儀式に参加した騎士団員全員が眩しさに祭壇から顔を背けた。
神剣から手を離せぬアデラも、あまりの煌きに目を閉じた。
しかし、光は瞼を貫いて瞳の奥を灼く。
(神剣よ、私を拒んでいるのか? 魔王に抱かれた私を…)
心の中で彼女は叫ぶ。
(ならば咎を逃れようとは思わない。 私の魂魄を焼き滅ぼすがいい! )
その想いに答えるように、頭の片隅に何処からか声が伝わってきた。
(抜ケ…)
(えっ!?)
(それヲ抜ケ…)
不思議な事に、声は耳ではなく手から伝わってきた。
それは、逆らいがたい威厳に満ちた声、聞く者に否応無く畏怖と緊張を覚えさせる声であった。
誰の物とも判らぬ命令に、アデラの手は自然に動いた。
―――――
閃光が鎮まり、玄室は松明の薄明かりが残される。
聖庁の査問官と聖騎士達は、ようやく視線を祭壇に戻す事ができた。
そんな彼らの目に入ったのは、信じがたい光景であった。
「神剣が…?」
「ば… 馬鹿な………」
「なんて事だ…」
「ありえぬっ、ありえぬ!」
全員の目が祭壇に釘付けになった。
彼らの信仰の対象である英雄王の聖遺物、なかでも王の魂が宿るという最も重要な御物。
英雄王の死後、王国の誰も抜くことが出来ず、ラルゴン王の亡骸とともに祀られし神器。
正邪を判じ、その霊力によって邪悪を焼き焦がすという伝説の霊剣…
それが今、抜き身となって一人の女騎士の手にあった。
「………」
アデラも、何故自分の手に神剣が握られているのか分からぬかのようであった。
ただ、数世紀ぶりに抜き放たれたにも関わらず、
まるで研ぎ出されたばかりのように輝きを放つ、目の前の鋼の美しき刃紋に
心を奪われるばかりであった。
・・・・・・・・・
昼間の『神剣の裁き』の後、その場に居た全員に厳しく緘口令が敷かれ、
彼女が神剣を抜いたという事実は厳重に秘せられていた。
なにしろ、事は聖庁の教義にすら影響を及ぼしかねない重大事件なのである。
とりあえず『神剣に触れても滅せられることは無かった』として、拘禁状態の解除はなされた。
そのうち軍籍も回復してくれるだろう。
彼女は久しぶりに聖騎士の宿舎に戻り、主の帰りを待ち侘び過ぎて
やや埃臭くなったベッドに身を横たえていた。
(アデラ… アデラ…… )
「誰?」
自分の名を呼ぶ声がした。
どの方向からその声がするのか分からない。
それでも自分を呼ぶ声は聞こえてくる。
枕元に置いた愛剣の柄に、彼女の手は伸びた。
(アデラよ… 聖騎士の誓いを立てし、勇敢なる光明の娘よ………)
今こそはっきりとその言葉が聞こえた。
どこからともなく、白く輝く靄が部屋に充満してくる。
そして光る靄が目の前で一つに集まり、形を造っていく。
それは次第に盛装した男の姿を取り、アデラに相対した。
男の背後からは後光が射していた。
頭には宝玉を散りばめた王冠を載せ、髯が白くなるほどの老齢にもかかわらず、
体躯には頑健そうな筋骨の隆起が、衰えることなく張り詰めている。
彼女はそれが誰なのか即座に理解した。
聖庁を飾る硝子細工の窓に、王都の広間に建立された石像に、幼い頃に読んだ伝承本の挿絵に、
偉大なその英雄の面影を見ることができたのだ。
(ラルゴン王陛下…)
「左様、我はラルゴン。神に選ばれし勇者にして、聖別されし王、遍く闇を払う者なり…」
彼の姿を認識した瞬間、アデラは寝台から跳び起き、床に跪いていた。
勇者王ラルゴンこそは、光の勢力にとって畏敬と崇拝の対象であった。
彫りの深い顔立ちと眼差しは威厳に満ち溢れ、
響き渡る重厚な声は、聞く者の心を無条件に揺さぶるだろう。
英雄王の光臨を目の当たりにして感動に打ち震えるアデラに、王は語りかける。
「聖騎士アデラよ。
闇の軍勢との合戦を生き延び、再び光の軍旗はためく下に帰還せしは真に喜ばしき事だな」
「ははっ…、しかし闇の軍団に凱歌を上げさせたるは我らの力不足。
大王陛下には面目次第もございませぬ」
「よい、あの敗戦は我が子孫の無策の所為だ………
無能なら無能らしく、最初から身の程を弁えて元帥に兵権を委ねておればよいものを!」
苦々しげに、ラルゴンは己の血を引く現国王を罵った。
国王に対してここまで尊大な物言いが出来るのは、
世界の救世主にして王朝の始祖たる、この大英雄を除けば誰一人としていないだろう。
「アデラよ、我が死の眠りより目覚め、お前に幽体の身を晒した理由が判るか?」
「いえ、判りませぬ」
「先程の儀式の最中にも、我はお前に声をかけたが、さぞ不審に思っただろう」
「大王、先だって御佩剣に触れし時にも、確かに大王の御声が聞こえました。
今まで誰にも抜けなかった神剣が、私ごときの手に引き抜かれましたのは何故でしょう?」
「フッ、それは我がお前を選んだからだ」
「えっ!?」
「そう、我はお前を選んだ。闇が世界を覆わんとする時、選ばれし勇者は顕現する。
既に入寂の運命を迎えし我に代わり、お前は魔王を討つのだ!」
「………」
驚愕のあまり顔を上げたアデラの目に、ラルゴン王の笑みが見えた。
信じられぬ事態に理性が追いつかず、彼女は言葉もない。
「我が剣を取りて、闇の力と戦うのだ。それがお前の宿命である」
「しっ、しかし… お言葉に背く事は恐れ多かれど、私は一介の女騎士。
才も力も無い若輩者には、そのような務めは果たせませぬ」
「愚か者っ! 我が選択が誤っておると言うのかっ!!」
ラルゴン王の獅子吼に、アデラは身の縮まる思いがした。
「若輩だと!? 我が大魔王に反旗を翻したのは、十五にもならぬ時だったのだぞ?
重責を恐れて尻込みするのが、聖騎士のとるべき態度か!」
「はっ、されど…」
「まだ言うかっ!!」
王が怒りに任せて床を踏み鳴らすと、まるで地震のように建物が揺らいだ。
「あの戦でたった一人、お前は魔王の本陣を突いたではないか!
お前が力不足というのならば、誰が世界を救う?」
「…」
「お前が不安に思うのも無理はない。
我でさえ、かっては己の身に背負わされた天命に押しつぶされそうになった事もある。
だが誰かが担わなければならぬ事なのだ」
女騎士の肩に手を乗せ、王の幽体は諭すように語った。
「大王…」
「改めて命ずる。 聖騎士アデラ、我が剣を取りて全ての邪悪な闇を退けよ」
「はい、謹んで承ります」
「では立つがいい」
王の言葉に従い、アデラは立ち上がった。
「アデラ… 先程自ら申したように、今のお前では魔王に勝てん。
しかし、事態は急を告げている。お前の成長を待てるほどの時間は無いだろう」
「はっ」
「だから、お前に我が力を与えてやろう」
そう言うと、ラルゴンはアデラの肩を抱き寄せ、彼女の唇に己の唇を合わせた。
「ぃっ!?」
唇を割って柔らかい肉が口中に侵入し、唇の周りに王の白髯が触れる。
王の御前において無礼な振る舞いだったが、アデラは思わず後ろに飛びずさった。
だが、部屋の隅に置かれた寝台がそれ以上の後退を阻んだ。
「だっ、大王? ……何をなさいます!」
「我とまぐわうのだ」
「!?」
「お前には力が足りぬ。我が霊力を受領して暗黒と戦う力を身に付けよ」
うろたえる女騎士を、ラルゴン王の霊はベッドに押し倒した。
「お許し下さいっ。聖騎士には不犯の掟が…」
「そんな物、この期に及んで何の意味が有る?」
「でも…」
「我を拒むのかっ、光の神の代行者たる我を!」
「いやっ!!」
「我の勅は非力な聖庁の教義ごときに縛られるべきものでは無いわ!」
抗うアデラの手を跳ね除け、ラルゴンは女の衣装を引き裂いた。
羊毛の部屋着が軽々と千切られる。
まろびでた女騎士の乳房を、王の霊体は鷲掴みにした。
霊体からは、生身の肉体から感じられる温もりがまるで無かった。
冬の空気が実体化したような冷たい愛撫に、アデラは震えるような嫌悪感を覚えた。
「駄目っ、お止め下さい!」
「この不届き者っ」
「あぐっ!」
骨が割れるかと思うほどの衝撃が顎を突きぬける。
握り固めたラルゴンの拳が、まるで鉄槌のようにアデラの頬を打ったのだった。
「聖騎士が我の命令に従わぬのか!」
「…」
「我が知らぬと思っているのか、貴様は既に生娘ではなかろう!」
「そっ、それは…」
「事もあろうに魔王に身を穢された貴様に、我が情けを呉れてやろうというのだ。
ありがたく身体を開くがいいっ!」
その侮蔑の言葉は、拳よりも強く彼女の精神を打ちのめした。
抵抗をしなくなった女騎士の身体から、ラルゴンは下穿きを引き剥がす。
相手の体に何の遠慮も無くアデラの足を開くと、王はそこに己の腰をあてがった。
「闇の者によって穢されたお前の身体を、我が聖体で清めてやる」
「うあっ…」
冷たい肉の塊がなんの前戯も無く秘所に突き立てられた。
急に押し広げられる感触に快感は無く、耐え難い痛みと嫌悪感が彼女を襲った。
「おお、久しぶりに味わう女の体だが……… 実に懐かしい。
良く聞け! 我は王国の開祖にして神々に選ばれし者、下界における光の神の写し身である。
我を拒むのは、光の神の意思を拒む事に等しいぞ!」
ラルゴンは女体に聊かも配慮を持つ事をしなかった。
それは、ただ抜き差しして精を放とうとするだけの交わりだった。
交わりを続けるうちに、男の性器が愛液に濡らされて出入りがし易くなっていったが、
愛液が秘所を濡らしたのは、単に異物の侵入によって傷つくのを防ぐための生理現象であった。
アデラはこの行為に何の悦びも見出せなかった。
それどころか、男根が膣奥に突き当たる度に感ずる苦痛に、吐き気すら感じた。
だが、信仰の対象であり、忠誠を捧げるべき英雄王にそんな感情を持つ事が許されるのだろうか?
身体を貪られながら、脳裏を駆け巡る様々な想いが纏まることはなかった。
女騎士の惑いなど意に介さず、ラルゴンの霊体は腰を使う。
何の反応もしない女の腰を抱え、ただひたすらに秘奥へ突き込んでいた。
「いいか、これは儀式だ! 我の力を受け入れてお前は世界を救うのだ。
世界を救うのは我が力なのだ」
「…」
「我は選ばれし者! たとえ死んでも、我こそがただ一人の救世主だ!!」
発情期の牡馬の様に鼻息を荒げ、己に圧し掛かるラルゴンの霊体に、
先に抱いた英雄王の威厳は微塵も見えなかった。
憎むべき宿敵の腕に抱かれていた時ですら、このような苦痛は感じた事が無かった。
いつしかアデラの目には涙が浮かんでいた。
魔王に純潔を奪われた日に流して以来の涙だった。
「おうぅっ…、アデラよ、邪悪に汚された体が、聖王によって浄化されるのだぞ。
喜べ、そして光栄に思え。
我が精、我が霊力、闇を払う聖なる祝福を授ける! 一滴も残らず受け取るが良いっ!!」
「!!?」
奔流が身体の奥に流し込まれてくる。
だが、それは今までに味わった事の無い熱と量で彼女の胎を浸し尽くした。
「ひぃ!?」
「アデラ! 我に成り代わり、地上を救うのだ………」
―――――
「あああああっーーーー!!?」
絶叫と共に、アデラは目を覚ました。
薄汚れた宿舎の天井が見えた。
(ゆ、夢だったの?!)
引き裂かれたはずの部屋着もそのままだ。
だが、身体は確かに大王の霊体が触れた感触を覚えている。
(夢じゃない、どんな現象か想像が出来ないけれど。
私は、犯された… ラルゴン大王が私を…犯した………)
アデラは己の下腹に手を伸ばした。
下着の中はぐっしょりと濡れていた。
これがもし別の夢であったのなら、聖職者を堕落させようとする夢魔の仕業かと疑うところだ。
否、むしろ夢魔の仕業であった方が、どれほど彼女にとって安堵できたことだろう?
アデラはそれまで抱いていた幻想が砕けかかっているのを感じた。
獣のように自分を犯したあの霊体が真実にラルゴン大王の物であるとするならば、
あれほど嫌悪を感じた人物に対し、これまで同様に赤心を捧げる事が出来るだろうか。
張り裂けそうになる心を繋ぎとめるため、アデラは必死に自分の両腕を抱き締めた。
どうか夢や幻術のたぐいであって欲しい… その夜、彼女は頭の片隅でそう願い続けた。
しかし、もう目覚める前の自分では有り得ない、そんな確信が心と身体に根付いていた。
・・・・・・・・・
同じ頃、王国から遥か東方、光と闇の勢力圏の狭間にある冬営地にて、魔王は楼閣の上に立っていた。
誰も側に寄せ付けず、無言で空を眺めていた。
深夜になって空から雲は消え、満月の輝きが夜の仮宮に降り注いでいる。
その魔王しか居ない楼閣に、朱色の衣装を身に纏った美姫が登って来た。
「ネリィか?」
「はい、我が君」
「何用だ」
「いえ、もう随分長くこちらで天を見上げていらっしゃると聞きまして、
差し出がましい事でございますが、ご様子を伺いに……」
黒いローブの肩に積もった雪は、長時間に渡ってこの場を動いていない事実を明らかにしている。
魔王は漆黒の装束に降り積もった雪と霜を払いのけると、己が寵姫を差し招いた。
「近う寄れ」
「はい…」
ネリィが己が主の横に立つと、魔王は彼女を抱き寄せた。
「あっ」
「…身体が冷えるぞ」
黒いローブが広げられ、ネリィの肩にかけられる。
主の温もりを感じつつ、一つのローブで包まれる事に、彼女はささやかな幸せを感じた。
「………何を見ておられたのです?」
「星を」
「星、でございますか」
日が沈む前から、魔王はここに立っていたという。
そして雪雲は小一時間まえにようやく晴れたばかりだ。
だが、ネリィは主の言葉を疑う事はしなかった。
自分が愛している男が、世の常の測りからは超越している事を承知しているためだった。
「お邪魔でございますなら、私は下がらせて頂きますが…」
「特に邪魔とは思わぬ。そこにもう一匹いるゆえ」
魔王が指差すと、少女がひょっこりと屋根の上から顔を出した。
「何じゃ、ばれておったのか… 音を立てぬように登ったつもりじゃったが」
ひらりと屋根から飛び降りると、首から下げた鎖が音を鳴らした。
小さく愛らしい顔に、月光を浴びて輝く金髪、この寒空の下で身に着けているのは皮の腰巻のみ。
魔王の寵姫の居候、ティラナの態度にはいつもながら君主への礼儀もへちまもない。
「気が付いておるな? 西の方角にて何やら異変が起きおった。
この気配は尋常ではない。見よ、妾も鳥肌が立っておる」
「光の勢力に肩入れする低俗な人格神の介入であろう。案ずるには及ばぬ」
「随分と自信が有るのじゃな? しかし忘れてはおるまいな。
『暗黒の百年』を支配した大魔王すら、光の諸神や精霊の介入によって滅せられたのじゃぞ」
「現世に未練を断てぬ下級神格の思惑など、如何ほどのことやある」
「おうおう、頼もしい言葉じゃの… ところで王よ。
妾も雪の中で一人突っ立ってるのは体が冷えるのじゃが?」
「服を着ろ」
「ぐぅ… つれない言い草じゃ。ネリィとは扱いが違い過ぎる」
「それがどうした。そなたが風邪をひくとでも?」
「うふふっ」
「ちぇっ… ネリィ、そこをちょっとばかし詰めい」
そう言うと、ティラナは無理やり魔王と寵姫の間に身体を滑り込ませていく。
ネリィは我儘な闖入者の態度に苦笑しながらも、同居人のために少し場所を譲ってやった。
魔王は己が女たちの他愛無い行動を無表情に見ていたが、そのうち再び視線を西の空に向けた。
(だが、ここまであからさまに余とアデラとの宿命が膳立てされるのは… かえって興を削ぐ)
「ん?、何か言ったかの」
「………」
ティラナの問いに、魔王は何も答えなかった。
魔王が見つめる空の下には、あの光の王国がある。
雪が溶ければ再び大軍勢を率いて侵攻が始まるのだ。
解き放ったあの聖騎士の娘との再会に思いを馳せているのか、
相変わらず誰にもその胸のうちを打ち明ける事は無かった。
(終)
455 :
投下完了:2007/02/11(日) 05:24:36 ID:qJ1s3Ljy
いつのまにか主役級の扱いになってるアデラの話でした。
ただし、自分で作った話しながら、アデラは酷い目にばっかりあってます。
幽霊に犯られるというのは、ぎりぎりNTRでしょうかね。
実体じゃないからセーフなのでしょうか?
書いてる私もNTRは嫌いなんですけど、話の展開上そうなってしまったので。
他の職人諸氏も同じだと思いますが、感想や批評をもらえると
それまで気が付かなかった癖が分かってくるので、何でも書いていただけるとありがたいです。
乙です。
私的にはアデラは感じてもいないし、嫌悪すら抱いているので別段NTRではありません。
乙
アデラには同情するけど毒&獣派なので無問題
もう「アデラとラルゴン」が保管庫に保管されてますよ。
管理人さん仕事が速くてGJですね。
保守
保守
アビゲイル可愛い
461 :
投下準備:2007/02/20(火) 21:09:24 ID:MqG3ph7w
アデラとその女友達の話。
「アデラとラルゴン」を読んでおいて下さると、話が繋がります。
※ warning ※
雄は登場しません。ガチで。
都の繁華街のいかがわしい裏路地。
そこに建つ占い小屋を、この夜密かに訪れる者があった。
ドアを叩く来訪者を覗き窓から確認すると、小屋の主は閂を外して招き入れた。
「あら、いらっしゃい… どうしたの? 貴女がこんな所に来るなんて」
「久しぶりだわ、マリー。今日はちょっと聞きたい事があるの」
「うふ、邪宗審問会に転属して、異端摘発にでも来たの? それとも禁制品所持容疑?」
「そんな用事じゃないわ… 『光の学府随一の学識』と謳われた貴女に相談したい事があるの」
「『元』を付け忘れてるわよ」
閂をかけ直し、マリガンは旧友を小屋の奥へと誘った。
蝋燭の薄明かりの中であっても、波打つ赤毛と衣服の下に垣間見える豊満な肢体は相変わらずだ。
身長は自分と変わらないにしても、女らしさという点では昔からマリガンに及びもつかなかった。
もっともその頃には、既に女らしい人生を捨てる覚悟をしていたのだが…
水晶玉を載せたテーブルを挟んで二人は座った。
マリガンは笑みを浮かべながらも、神妙そうな口ぶりで旧友に問いかける。
「さて、お悩みはいかなる事柄で御座いましょう?
星の趨勢の語るまま、貴女様のお尋ねには何でも答えましょうぞ」
「相変わらずね。でも占星術は結構よ。上から譴責されるし」
「貴女こそ相変わらず頭が固いわね。聖庁のお偉いさんだってこっそりウチには来るんだから」
彼女のようなモグリの術者の活動は非合法な物である。
ただし、幾ら取り締まっても無くならない上、貴賎を問わず需要があるのである程度黙認されている。
それでも大っぴらにやり過ぎたり、あまりにインチキが過ぎれば聖庁から審問を受け、
下手をすれば追放、悪質な者は焚刑の憂き目にあう。
占星術さえ時折『聖庁の予言解釈とは異なる結果を占う』場合が有るので、
有史以来監視の対象から外されたことは無いのであった。
「聖庁の博士どもを差し置いて、学府を追放されたこの私に何のお尋ねかしら」
「光と闇、そして世界の真実について」
「………なるほど、それはあの堅物どもには相談できないわねえ」
何かを察したかのように艶かしい笑みを浮かべると、マリガンは椅子から立ち上がって
部屋の隅の棚から一本のボトルを取り出した。
「素面じゃ話せないかもしれないから、飲み物でも用意するわ… 火酒は大丈夫よね? アデラ」
「ええ、たぶん貴女には飲み負けるでしょうけど」
「じゃあ、私たちの再会に乾杯しましょ」
マリガンはアデラの前に白い杯を、己には黒い杯を置き、
それぞれに火酒を注いだ。
ドワーフ族によって蒸留された芳醇な酒薫が鼻腔をくすぐる。
占い師として相当な稼ぎが無ければ、こんな高級品を手に入れることは出来ないだろうが、
そこについてはアデラも旧友を追求する気は無かった。
「未来に光あらんことを」
掛け声と共に軽く心地よい音を鳴らして、杯が打ち合わされる。
闇の軍勢との苦戦が続く中、本当に未来に光が有るのかは別として、
杯を傾ける二人は喉を焼く火酒の味を堪能した。
・・・・・・・・・
「『世界の創造と共に光があり、その後に闇が生まれた』これが聖庁の公式教義ね。
で、『創世の際に、光と闇は同時に生まれた』とする主張が、知っての通り二元論異端。
二元論異端は聖庁によって徹底的に取り締まられたけど、
学者たちの中ではこっそり今でも信奉してる者がいるのよ。
先光論よりも諸般の事象について説明がしやすいし」
ぐいぐいと杯を開けながら、相手にも分かり易いようにマリガンは語る。
昔から、彼女は人に教えるのが巧かった。
彼女いわく、
『人が何をどう理解出来ていないのか。
それを判断する知性が無いから、あの教師達は駄目なのよ』
そう豪語する友人に、学術試験の前はアデラも今と同じように教わったものだ。
アデラはマリガンの説明を聞きながら、二人の過去を思い出した。
二人が出会ったのは、王都の学院である。
そこは貴族の子弟や聖職者を目指す少年少女たちに、初等教育を施すための学園であった。
郷士階級の末娘として生まれ、幼い頃から聖騎士に憧れていたアデラは、
両親の支援もあって学院へ入る事が出来た。
だが自分で望んだ夢の為とはいえ、故郷を離れる寂しさで入学当初は夜中に泣き出したものだ。
そんな時、同じ部屋をあてがわれていた赤毛の少女は、夜毎彼女を慰めてくれた。
いつしか二人はかけがえの無い友達になり、あの少女時代を共有したのだった。
数年後、アデラが武術を修めるために学院を離れてからも、赤毛の少女の行跡は常に耳に出来た。
彼女は学問の面では『光の学府始まって以来の神童』と呼ばれる天才であったが、
同時に学院始まって以来の問題児であったのだ。
東方から輸入される新種の興奮剤が学院生の間で大流行し、教師、学生が大量に処分された際も、
その大元締めと噂されたのマリガンだった。
だが証拠も証人も消え、薬剤の不法所持者のうちの一人として軽い処罰しか受けていない。
他にも学院の教師全員の誘惑に成功し、閨での強さと巧さに番付を付けた、
進級試験の前夜にへべれけになるまで酒を飲み、二日酔いのまま首席を取った、
聖庁の役人たちの不正を暴き、彼らを強請って自分の宿舎を改築させた…
異性同姓を問わず、学院や宮廷で浮名を轟かせ、半ば学院の伝説と化した武勇伝を残しながらも、
将来は学問を究める者として最高の地位である『主席王宮顧問大博士』の称号を
手に入れるだろうということを、あの頃誰も疑いはしなかった…
「………聞いてる? アデラ」
「あっ、ちゃんと聞いてるわよ」
「本当でしょうね? じゃあ今言った事を説明してみて」
「光の王国における教義である先光論に対して、東方の闇の世界では先闇論があって…
ある『大異端者』が、光と闇がどちらが先に生まれたかなど重要ではないという主張を唱え…
本人どころか家族や弟子まで火あぶりになった?」
「ふむ、大体合ってるわ。彼の著作は表向き残っていないけど、その論旨はこうよ。
『光が先か闇が先かを議論する事は、先祖の由緒の古さを競い合う見栄の張り合いに等しい』」
『表向き残っていない』書物について、なぜかマリガンは知っている。
それどころか、その学説に精通していなければとても出来ないような批評まで、
予備知識のないアデラにも判りやすく説明してくれるのだった。
実際に、教師としても研究者としても、彼女は超一流の才を持っている。
もし『異端思想に近付きすぎる』として学府を追放されなかったならば、
彼女は王国にとってどれだけの貢献をしたことだろう?
聖騎士団の従卒として地方軍務に就いていた頃、アデラは追放処分の知らせを聞いた。
その時アデラは友人として彼女を導いてやれなかったことを、大いに悔やんだのであった。
ふと、アデラは再び物思いに耽りそうになった自分に気が付いた。
(しっかりしないと… 私は友達と昔話をしに来たんじゃないのよ)
旧友と飲み交わす安心感からだろうか、妙な高揚が心の中から離れない。
「禁書になった幾つかの魔道書には、光が生まれる前に既に何かが生まれていた可能性について
言及してる物があるわ」
「…」
「判ってるでしょうけど、私がこんな事話したなんて誰にも言わないでよ?
知識として持ってるだけで、十分異端扱いされる発想なんだから」
「ええ、勿論よ。で、光の前に世界にあったとされる物って何?」
「書物によってまちまちだけど、その中で私が面白いと思うのは『運命があった』とする説ね」
その時、危うくアデラは杯を倒しそうになった。
まさにその言葉を聞くために、彼女はここを訪れたのだ。
「『運命』…」
「そう、光も闇も世界も、生まれる運命にあったからこそ生まれたとする学説…
どうしたのアデラ、顔が赤いわよ?」
「いえ、大丈夫よ…」
「そう? でもこの説も完全ではなく、運命より先に『偶然』があった考える事も出来て…」
(魔王から聞かされたあの話… 私との間に有るかもしれない繋がり、偶然以上のもの……)
「偶然世界に『運命』が生まれたと考える賢者も…
この光の聖神と闇の邪神の間の優劣を否定しかねない思想は……
その中では光の神など………に過ぎなくて……… 占星術の観点から見ると…………
……………結局それを確かめる方法は…………
(あれ、なんだかマリーの言葉が聞き取りにくくなってる…
今彼女は何て言ってたのかしら?)
気が付かぬうちに、顔が熱くなっていた。
これしきの酒量で何時も酔うはずは無いのだが、頭の中がぼやけて考えが集中しない。
「ちょっとお酒が強すぎたかしら?」
「いえ、そんな筈は… でも……、なんだか頭がはっきりしないわ…」
「少し休んだ方がいいわよ、私の部屋でよければ横になって頂戴」
マリガンはアデラを支えて、奥の部屋にある寝所へ導いた。
「ちょっと熱が有るかしら… 服を脱いだ方がいいわね」
赤い額に手を乗せて熱を測ると、手馴れた手つきでアデラの服は脱がされてゆく。
だが、さすがに下着に指がかかった時、アデラは慌ててそれを止めた。
「あっ… 下着まで脱ぐ必要は無いわよ」
「そうかしら? じゃあ、これは何本か判る?」
マリガンは指をアデラの目の前に立てた。
「四本よ」
「ならこれは?」
「二本…」
「これは?」
瞬間、人差し指が空中に独特の印を描く。
指の動きを注視していたアデラは、容易にその魔力に囚われた。
「それは… 催眠の指印、あっ…まさかマリー、貴女…」
「うふ、アデラ… 友達として助言するけど、
同じボトルから酒を飲んでるとしても、一服盛られないとは限らないのよ?
相手側にだけ毒消しの魔法がかかった杯を使われる事もあるんだから」
「あんんっ」
マリガンの指が下着の中に忍び込んで来ても、アデラは己の身体を動かす事が出来なかった。
媚薬入りの酒を盛られて注意力が衰えていた状態で、さらに催眠の魔術を仕掛けられた身体は、
もはや施術者の意のままである。
「いや…いやよ、マリー…… 友達だと思ってたのに……」
「私は今でも友達のつもりよ? でも貴女も私の性分を知ってるでしょう。
欲しい物があった時、知りたい事があった時、自分を抑えられなくなってしまうのよ…」
妖しい微笑みと共に、マリガンの唇がアデラの頬に優しく口付けする。
女同士の交わりは二人が過ごした僧院でも珍しくはなかったが、
戒律に厳しいアデラは一切そんな経験が無い。
元々そちらの性癖は持たないからだろうが、同室の少女が不純な同性交友を重ねていると聞いた時は、
彼女の将来を思って注意したほどだった。
「あうぅんっ」
「好きよ、アデラ。私は昔から貴女のこと好きだったのよ?
でも『嫌われるかも』と思ってしまうと、あの頃の私は何も出来なかったっけ……」
下着の中に侵入した指が、アデラの乳首を抓った。
だが痛みよりもむしろ甘い痺れが彼女の胸乳に広がる。
同時にマリガンの唇はアデラのそれを啄ばむように咥え、思う存分吸い上げた。
「ちゅぱっ、ちゅぴっ… 」
相手の舌を吸い出そうとするかのように、マリガンはアデラの口を覆う。
唾液の濡れた水音が寝室に響いた。
「ああぅ………」
「ふふ、気持ちいいのね? 嬉しいわ。私のキスを気に入ってもらえて…」
唇が離れた際に二人の混ざり合った唾が糸を引いたが、マリガンはそれを愛しそう啜り取る。
薬の効果で意識が朦朧としかけているアデラの目にも、それは実に淫らな光景であった。
古来より、媚薬はまっとうな政権の下では厳重に取り締まられる薬である。
そして同時に貴賎を問わず人々の希求する薬品なのだ。
催淫、快楽増幅、精力増進…
その効果を求める人間が居る限り、媚薬作りは無くならない。
マリガンが調合した物は、催淫と快楽増幅の薬であった。
それには意識を混濁させる効果もあるが、相手の反応を殺してしまうほどの物では無い。
第一彼女には無反応の相手を嬲る趣味は無いのだ。
今のアデラは、下着一枚まで脱がされても熱いくらいに身体は火照り、
揉みしだかれた胸は、さらなる愛撫を求めて先端の乳首が勃っている。
その朱色の突起をマリガンは指で弾いた。
「あうぅんっ」
「感じる? アデラ」
「はぁんっ……… そんな事聞かないで…」
「ふーん、答えられないくらい感じてるのかしら?」
マリガンは目を細めて旧友の乳首を爪弾く。
白くて細い美しい指がそこを弄るたびに、アデラの口からは押し殺した喘ぎ声が漏れた。
「ふふふ、じゃあ私も…」
占い師という職業らしく、怪しげなローブを着ていたマリガンだったが、
それを床に脱ぎ捨てアデラと同じく下穿き一枚の姿になる。
「今度は貴女が私を気持ちよくして…」
「えっ?」
女占い師の華奢な指が、女騎士の鍛えられた手を己の股間へ誘導した。
「判るでしょ? ここを弄って…」
「そんな… そんな事…」
出来るわけが無い、アデラはそう思った。
だが、彼女の指は自分の意思よりも女占い師の言葉に従うかのように、
相手の秘所を撫で回し始めた。
それでも現実に彼女の指はマリガンの下穿きの中へ侵入し、
手探りに旧友の秘所を愛撫していったのだった。
「あうっ! いいわ… ぁん、アデラ… 貴女の指がわたしのを擦ってるわ…
ふふ、女同士の方が、男よりも女の身体の事が判ってるものね」
(えっ… なんで私… こんないけない事を?)
ぼやけた思考の中でも、こんな真似は決してするべきではない事は判るのだが、
その指は裂け目の上に突起した肉芽を見つけると、それを集中して擦り上げる。
「ああっ、い…いいぃっ! ああぅん!!」
その下穿きはぐっしょりと濡らし、旧友の指でマリガンは達した。
相手の股間から引き抜いた指もまたしとどに濡れていた。
「ふふ、良かったわよ。アデラ… 次は一緒に気持ち良くなりましょうね?」
そう言うと、マリガンは下穿きを脱いだ。
赤毛の茂みがきれいに刈り整えられている。
(そういえば、マリーは昔から身だしなみには拘ってたわね…
でも『はしたない』『派手すぎる』って寮長によく小言も言われてたっけ……)
朧げな記憶が脳裏に漂うが、それこそアデラが正気を失っている証拠だった。
本来なら今の状況ではそんな事を思い出している場合ではないのだ。
「ねえアデラ、これ何だか判る?」
「えっ?」
寝台の下にあった小箱から、マリガンは棒状のものを取り出した。
長さは女の手を二つ広げた位、太さは掴んで指が周る位、両端は丸く膨らみ角が無い。
(それ、ひょとして……)
「足を広げてよ」
自然に足は開いた。
事を始める前に、マリガンがかけた催眠の魔術によって、
今のアデラは術師の命令に忠実に従うよう仕向けられている。
それに加えて媚酒の効果が、彼女から疑問を持つ力を奪っていたのだった。
「んっ…」
棒に花油を塗りたくると、マリガンは自分の股間の秘穴に沈め込む。
そしてアデラの下穿きをずらすと、旧友のそこを指で広げた。
秘所に触れられたことでアデラは小さな嬌声を上げたが、それも一瞬の事だった。
「ああああぁんん?!!」
膣口を広げて捻り込んで来る異物の感触で、アデラの叫び声が部屋に響いた。
「うふふ、貴女は張り型遊びなんか全然しなかったものね。
学院に居た頃は、貴女に憧れている娘が結構居たのよ?
中には『アデラ先輩との仲を取り持って欲しい』なんて私に言う子も居たわ…」
巧みに張り型を相手の膣内に突き入れるその動作は、実に手馴れたものであった。
先ほど受けた唇と胸への愛撫で、アデラの秘所は若干濡れ始めてはいたものの、
かなりの経験が無ければ、ここまで容易く相手の秘穴へ差し込めるものではなかろう。
「…ぁんっ、」
相手の膣内に突き込もうとすれば、当然自分の膣奥も抉られる。
張り型の特性を楽しみながら、マリガンはアデラの秘所を蹂躙していったのだが、
相手の膣口を案外簡単に貫いてしまった事に、軽く失望のため息を漏らした。
「はぁ…、悪い予感って当たるものね… やっぱり貴女もう処女じゃなかったのね?」
「ぅ……」
「んっ残念だわ…… アデラの処女は私が奪いたかったのに。
ねえ、どこで無くしたの? どこかの駐屯地に居た時、同僚の聖騎士としたの?
それとも捕虜になってる間に、蛮族の男達にマワされた?
ひょっとして醜いオークや亜人たちの太いモノで破かれちゃったのかしら……」
うわ言のように囁く声は、相手に届いているかなど関係がなかった。
ただ旧友が処女を失った場面を想像するだけで、彼女の興奮が昂るのだった。
「ほら、これはどお?」
「いっ、いゃあああああぁんっ……」
己の腰を廻す事で、咥え込んだ張り型で相手の膣壁を擦った。
女の身体をどう扱えばよいのか熟知しきったマリガンの腰使いは、アデラを容易に翻弄する。
二人の秘所から零れ落ちた愛液が、淫らな水音を立てて絡まりあう。
喘ぎ声と仕草から、マリガンは相手の急所を見つけると、最早腰の動きを止める事はなかった。
進退自在に攻め立てる張り型の妙技に、アデラは急激に登りつめてゆく。
「マッ マリー!? そこっ駄目ぇー!」
「………アデラっ、好きぃ! アデラぁ」
「ひっ? あっあうあああああああぁーーーーーー!?」
すべての世界が白く染まり、あらゆる重力が消え去る感覚がアデラに去来する。
だがその刹那、凄まじい力が身体の内側から吹き出した。
精神を蝕んでいた媚薬と催眠術の効果は瞬時に掻き消され、即座に理性と良識が復活した。
「嫌ぁっ!?」
「ぐうぁっ…!!」
正気に戻ったアデラが絡み合っていた相方を突き離すと、
相手の身体は羽枕のように軽々と跳ね飛ばされ、凄まじい音を立てて壁にぶち当たる。
(えっ?)
我ながら信じられない程の膂力を発揮し、思わずアデラは自分の手を見つめた。
建物が揺らぐほど衝撃によって、戸棚から壺や小瓶が倒れ、幾つかは床に転がり落ちて砕けた。
「……しっ、信じられない、完全にかかっていた媚呪を術式無しで解除するなんて………
よっぽどの魔道抵抗力が備わってなければ出来ない芸当なのに……」
「……」
赤毛の旧友の視線から裸身をシーツで隠そうとしたアデラだったが、
アデラ自身、なぜ解術出来たのか判らなかった。
だがあの瞬間、確かに身体の底から媚術を解くための力が湧き出したのだ。
「げふっ… 肋骨にヒビが入ったかも…… ねえアデラ、貴女その力をどこで手に入れたの?」
「そっ、それは…」
「おかしいとは思ってたのよ? 聖騎士ともあろう者が、追放されたモグリの術師に
『光と闇の秘密を教えろ』なんて言って来るんですものね……
貴女が魔王の軍勢に囚われて居た時、それとも帰還した後かしら… 一体何があったの?」
壁によりかかったまま、マリガンは旧友に不敵な笑みを向けた。
この顔をする時、それは己の推理に絶対の確信を抱いている時だと、アデラは知っていた。
「……」
心の底を覗き込むような旧友の深い眼光から、アデラは視線を背けた。
どうして他人に言えようか?
あの闇の軍勢での出来事、そして神剣の裁きを受けた夜の事を…
相手に嘘を見抜かれぬように、アデラは居心地の悪い沈黙を続けていた。
彼女をそこから救ったのは、ドアの外から聞こえてくるけたたましいい声であった。
『マリガンや! 一体どうしたってんだい、今の音は?』
玄関の扉を叩く音が、この寝室にまで響いてくる。
先ほどの衝撃は、どうやら隣近所にまで轟いていたらしい。
「あらあら、大事な所で邪魔が入るのねぇ…… アデラ、その本棚の後ろに隠し通路が有るわ。
そこから地下水路道へ繋がってるから、早いところこの場を離れなさいな」
「えっ?」
「うふふっ、聖騎士様が深夜いかがわしい占い師を訪ねた挙句、
女同士の痴情の縺れで相手に怪我をさせた… なんて事になったら、譴責じゃ済まされないわよ?」
「あっ!?」
アデラにも、マリガンが言おうとしている事がようやく理解できた。
真相がどうあれ、周りの目から見たらそう取られてもしかたがない状況なのだ。
おまけに女占い師を訪ねた目的を考えれば、真相を正直に話すことも出来やしない。
大急ぎで服をかき集めると、剣を腰に下げるのさえもどかしそうにアデラは隠し通路へ消えていった。
「やれやれ、まるで浮気の現場を押さえられそうになった間男ね… 痛たたっ……」
笑いがこみ上げてきた時に、また胸骨に痛みが走った。
その感覚が今なすべき事を思い出させる。
『ちょっと、マリガン、マリガン!
またヤバい儀式でもしてるんじゃあなかろうね? とばっちりは御免だよっ!?』
(うーん、どう取り繕おうかしら… 薬の調合を失敗したというのは、先月も使ったしねえ?)
とりあえず床に脱ぎ落としていた服を着て、周りの住人達への言い訳を考えなければならない。
だが、本当はそんなことよりもよっぽど静かに考えたい事があった。
光の学院を追放されて以来、マリガンはこれほど心が逸った事が無い。
自分の推理が正しければ、あの勇敢な女友達は光と闇の謎に触れかかったに違いない。
(アデラ、判ってるでしょうけど… 私は知りたい事があると我慢が出来なくなるのよ?)
胸の痛みを忘れるほどの甘いときめきに、自然とまた妖しい笑みがこぼれるのだった。
(終わり)
472 :
投下完了:2007/02/20(火) 21:21:11 ID:MqG3ph7w
魔女×女騎士でした。
レズ物なので好みが分かれるかもしれませんが。
マリガンはこれからも話に登場する予定です。
彼女の今後の話をご期待下さい。
また今作における媚薬の表現について、
アリューシアシリーズの「王女様の使い」も参考にさせて頂きました。
作者様に多謝。
投下超乙です!
シュッ
(;´Д`)
Σ⊂彡_,,..i'"':
|\`、: i'、
\\`_',..-i
\|_,..-┘
(;´ω`)ムシャムシャ
つi'"':
`、:_i'
( ゚ω゚ )
つi'"':
`、:_i'
>>472 投下乙であります。
女騎士側に頼もしい仲間ができたようでなにより。
これで毒とか虎とかがピンチになることもあるかとニマニマできる
これからアデラは何処へ・・。GJ!
>472 作者様に多謝
どういたしまして。
いつもながらGJです。
続きを楽しみにしてますよー。
投下乙
魔王とのフラグが着々と立ってる気がするのは気のせいだろうかw
突然邪魔するようでお許しください。
2レスで済みます、
よろしくお願いします。
小さな、本当に小さな意思があったとして、
僕は、それに気づくことが出来るだろうか・・・?
僕は、領主に雇われている。
この領主は、自分の領分やら自分の命令に関する効力に異常な執着心を持っていて、
例えば、牛乳が飲みたい、と言ってすぐ用意されなければ、即刻、自分の威信に関わる、
とさえ思っているに違いない人だった。
僕は単に、牛の面倒を見るだけのために雇われたに過ぎないが、屋敷にも出入りできるし、
ある程度の自由もある。
けれど、世の中には、この領主によって自由を奪われる人もいる。
僕のように、代価をもらうのではなくただ拘束される人。
領主の権限で、囚われてしまう人。
彼女は美しく、そして魔術を使う。
瞳が煌いていた、僕は近づくのを、怖いと思う。
ある日、領主は僕に言った。
「お前の忠義は本当か」
僕は領主様に直接話しかけられたこともないので、ただ単に硬直して答えた。
そうか、と領主は笑った。
「あの魔女に、餌をやれ」
僕は恐怖があった、けれどそれ以上に領主が怖かった。
応諾すると、領主は僕に給料を増やすことを約束し、頭をなでてくれた。
僕の故郷には母さんが居て、送られる金銭が増え、みんなが幸せなのなら、と僕は思う。
相手が魔女でも、牛でも、面倒を見るのは一緒なのだから。
魔女は、僕を見て最初に言った。
「私が怖い?」
僕は、エサ(と言え、と領主が言った)の入った皿を檻に入れて、
「こわくない」と言った。
魔女は、「もうちょっといいもの食べさせてよ」と、大して気のない様に言う。
皿に乗ったのは僕が食べるより何倍もいいものだったのに
彼女は口をつけなかった。
「これくらいで、いいだろお前には」僕はふてくされていった。
「じゃあ、あんたにあげる」
魔女は言った。
銀色の皿に盛られたそれは、魔女のエサ、僕のものより何倍も美味しい。
「取っておきなよ、干して乾かせば、いくらでも食えるよ」
魔女は言う。
僕は、領主に与えられた、自分の世話主の制服を見、「いらない」と言った。
「ねえ」
魔女が僕に話しかける。檻の中の彼女はまるで心地よいようだった。
「面白いもの、見せてあげる」
僕は、皿の中身が気になりながら、「見せてみろよ」と言った。
魔女はゆっくりと笑い、指先を押しの隙間から僕にあて、
つん、と鼻をつついた。
「知りたいんだあ」
からかうような口調に、僕は膝を抱えた「そうじゃねえよ」
「ばかだなあ・・・・、」と魔女はいい、
身に付けたぼろきれのような服をひらひらとさせた
「ぼろぼろじゃん」
「それがドレスだったら、」と僕は言った。
魔女は言う
「ドレスよ、私にとって。魔法って言うのはね、君が思う真実よりも確実なのよ、
だから魔法なの」
「はあ?真実じゃなかったら意味ないだろ」
「ばかだなあ、真実が全て?真実以外に意味はない?馬鹿ね、じゃあ、夢は何のために見るの」
「もういい」
僕がそこを去り、与えられた小屋に戻ったとき、
あの魔女の声音、その艶かしさ、その存在感に僕は戸惑う。
あの人の声を思い、僕の手は僕のそこに触れる。
あの人の声。
「ばかだなあ・・・」
思い出して、指それぞれに力を入れる。
擦るように上下し、脈打って、腫れていくそれを僕は包む。
「入れてえよ・・・」
檻の中の魔女、とろりとしたその姿態、
あの人はどんな顔をする?
魔女でも、喘いで、悶えるものだろうか。
僕が、檻の中に侵入して、魔女を犯すことは可能だろうか?
魔女は、いつでも微笑んでいた、
エサも食べず、ただそのまま、豊満なまま。
俺の物になったら
僕は考える、領主からあの魔女を貰い受ける瞬間を。
ぼくは
あの魔女が領主の所有に満足していないのを、
知っている。
檻のまま、魔女を貰い受けたい、
僕はその檻に入って、
二人で過ごす。
逃さないまま、
僕は、魔女を手に入れる。
だって
魔女の悶えうることを、檻に入った魔女のことを、
きっと、僕しか知らない。
そろそろシーアの人、来るかな〜
結末がどうなるか気になってしかたない今日この頃
>481
GJ!GJ!
いろいろ妄想しました
レス番間違いorz
×>481
○>480
圧縮が来るらしいので保守代わりに雑談。
女兵士スレの諸氏は、ロードス島戦記のスメディさんのような
「筋肉ムキムキ女蛮族戦士」もオッケーなのでしょうか?
普段は豪放磊落だけどセックスは受身ならなおOK.
ムキムキ女戦士は大好物だ。
受け身でもいいし積極的でもいい。
上腕筋・大腿筋ガッチリはいいんだが、腹が割れてると…ちとしょんぼりする。
ほっそりと引き締まっているならうっはうはというか、むしろ必要条件というか。
神官のお姉さんと信者の少年の聖堂での秘め事とかいいよな……
捕手
490 :
投下準備:2007/03/03(土) 20:39:36 ID:uOiNdiLU
シリーズ物を書いてくださってる職人諸兄は、お忙しいのでしょうかね。
スレが寂しいので、エロ薄物でお蔵入りにしてたやつですが投下します。
491 :
魔女と弟子:2007/03/03(土) 20:40:32 ID:uOiNdiLU
月明かりの差し込む寝台の上で、魔女は少年を抱き締めていた。
魔女の艶やかな肌理は、まるで空に浮かぶ満月のようであった。
抜けるように白い肌には、先程まで交わしていた愛撫の跡が残っている。
恐ろしいまでに臈たけた面立ちに、瞳と唇だけが紅い。
永い歳月を生き、常人の数層倍もの叡智を蓄えたとは信じがたい程の若さと美しさであった。
ただし、星の光を受けて輝くその長い髪は、驚くべきか完全に白い。
だが彼女の髪は、老いが白くしたのではない潤いを持っていた。
その魔女と抱き合う少年の体にも、相方につけられた唇の跡が体中に残っている。
激しく愛し合った直後だというのに、魔女は少年を離そうとはしなかった。
魔女はその胸に若々しい体を抱き寄せて、彼の額に口付けをした。
「我が師よ、何をお考えですか?」
「今私の頭の中にあるのは、ただお前の事だけだよ… 我がいとし子」
少年は魔女の弟子であった。
彼女に師事し、魔道の業を修めるため日々研鑽を続けている。
いつしか少年は魔女の閨に招かれるようになり、師と褥を共にするようになった。
それは、初めは夜の無聊を慰めるだけの関係だった。
だが、真摯なまなざしで魔道を学ぶ少年に、いつしか魔女は師弟以上の感情を抱くようになった。
「不思議だ……… 私が生きた永き年月の中で、こんな気持ちになった記憶は無い」
「……」
「お前と共に居るだけで、今の私は満たされる… お前を失う事を考えると心が張り裂けそうになる」
「僕の事を愛しんで下さるのですね、我が師よ」
「あんっ……」
少年も師匠の首筋にキスを返す。
弟子の行為に悦びの声を上げた魔女であったが、少年は愛撫を続けようとはしなかった。
訝しげに弟子を見つめた魔女に、少年は言葉をかける。
「何ゆえ近頃の御身は僕に冷たいのです」
「冷たいなどと…… 私はこれ程までにお前の事を愛しているというのに!」
魔女の紅い瞳と少年の栗色の瞳が見詰め合った。
赤い瞳の奥には困惑が、淡い栗色の瞳には猜疑が秘められていた。
492 :
魔女と愛弟子:2007/03/03(土) 20:41:15 ID:uOiNdiLU
「我が師よ、御身は僕が魔道の深淵に近づこうとするのを望んでおられない」
「まさか、そんな」
「いえ、御身もかっては僕を導いて、暗黒の底に在るものを見通す技を教えて下さった。
長き年月を経て会得した知識と術を授けて下さった。
しかし、今は以前のように僕を扱って下さらない」
「……」
「我が師よ、僕に何か落ち度や誤りがあったのでしょうか?
それならば、何が悪かったのか教えてください。僕は御身からもっと学びたいのです」
少年の言葉に、魔女は顔を背けた。
白く輝くような美貌を曇らせた苦渋の面持ちは、愛弟子の追及が誤りではないことを証明している。
「お前は何も悪くない。悪いのは私だ」
「我が師よ、何とおっしゃる」
「私は怖くなってしまったのだ。砂地が水を吸い込むように、お前が我が叡智を学んでいく事を」
「僕が御身に背く事をお恐れでしょうか? それは杞憂という物です。
教え導いて下さる師に、どうして僕が背きましょうか?!」
「いや、そうでは無い… 私が怖いのは、お前を失うことだ」
「………」
少年は、己の師がこのような悲しい声で語るのを聞いたことは無かった。
師の声は常に冷徹で威厳と自信に溢れ、彼の指標となるべき声だった。
その師が怯えた態度で自分に接するとは……
「お前は恐ろしいまでに速く成長している……
おそらく魔道の真髄を極め、この世界の内外にある秘蹟を解き明かすようになるだろう」
「師よ、それこそ我が望みです」
魔女は少年の瞳の奥に燃える野望の炎を見つめた。
彼の弟子入りを許したのは、真理を追い求める純粋なる渇望が彼女に伝わったからなのだ。
それは、かっては自分も持っていた筈の物だ。
「私は、今の私にはそう言い切れる自信が無い」
「……」
「今の私には世界の真理よりも、我が黒檀の玉座よりも、ただお前だけが大切なのだ」
「……我が師よ、御身は自分を見失っておいでです」
493 :
魔女と愛弟子:2007/03/03(土) 20:42:16 ID:uOiNdiLU
少年を弟子に取った時には持っていた知への渇望を、彼女が見失ったのは何時の頃だろうか。
魔女には判っている。
この弟子を愛してしまった時に、魔道を極めようとする意思よりも少年への愛おしさが勝った時に、
それは失われてしまったのだ。
「お忘れですか? 僕が御身の前に額づいて『魔道の業を授け給え』と言ったとき、
御身は『魔道の真髄を求めるならば、それ以外の全てを捨てることを覚悟せよ』とおっしゃった。
その御身がどうしてそのような事を?」
「………お前に恋をしてしまったから」
「なんと?」
「そう、私は愛や恋というものを蔑んでいた。
知恵も力も無い、虫ケラに等しい輩達が興じる愚かな感情だとばかり考えていた。
だが、無知だったのは私だ。愛や恋の甘美な誘惑に、誰が抗し得ようか?
はっきりと分かる、『世界に愛以上に価値のあるものは無い』と」
魔女は弟子の手を取って、胸の谷間へと導いた。
「ほら、お前にも分かるだろう。私の血潮が熱く燃え上がっているのが」
「師よ……」
少年は驚きを隠せなかった。
己の知る師匠の体は、月の様に冷たかった筈だ。
だが現実に魔女の心臓は熱く高鳴っている。
そしてその時、己の恋に灼かれる余り、魔女は気が付く事が出来なかった。
いつの間にか自分の弟子が、かっての己のように白く冷たい体になってきたことに。
「では師よ、御身が愛する弟子に、その技を伝えてくれぬのは何故ですか?」
「言ったろう。私はお前を失うのが怖いのだ。
お前にすべてを授け、与えられるものが無くなった時、私はどうしたらいい?」
魔女の声は震えている。まるで恋に怯える俗世の娘のように…
「……お前の望みは我が叡智。それを手に入れたのならば、もはや私は用済みになる。
そうなってもお前は私の側に居てくれるだろうか?」
「………」
その問いに答えは返されなかった。
もし魔女がもう少し恋の技芸に長けていたのならば、
愛する者を正面から問い詰めることの愚を知っていただろう。
「……我が師よ、僕はまだ御身に業を習う身。それを修めた後のことなど考えられません。
そして学ぶことがある以上、僕は御身から離れないでしょう」
長い沈黙の後、少年はようやくそう言った。
師匠の真摯な言葉に比べれば、彼の答えはやや狡猾であったかもしれない。
自分に向けられた問いをはぐらかし、半分だけ相手の望む言葉を選んだのだから。
「我が愛し子よ………」
魔女が弟子の狡猾さに気付かなかったのか、それとも気付かぬ振りをしていたのか、
ただ彼女が行ったのは、再び少年の頭を抱き締めて、己の胸に埋めることだった。
少年も何も言わず、師の求めに応じてその乳房に唇を這わせた。
心の通わなくなった師弟の交わりを、ただ月だけが見ていた。
それからも少年は魔道を学び、日々魔女の力に近づいていった。
だが少年との差が縮まるほどに、魔女の恐れは強くなっていく。
ある日少年は魔女の元を去る、その師に何も告げることなく。
魔女は持てる魔力の全てを駆使して、少年を捜し求めた。
だが、どうして彼の姿を捉えられようか?
彼は魔女のあらゆる術を知り尽くしているというのに。
いとし子を求めて彼女は彷徨い、嘆きの余り白く冷たい石に変わった。
それが月光の魔女の最後であった。
・・・・・・・・・
495 :
魔女と愛弟子:2007/03/03(土) 20:44:57 ID:uOiNdiLU
後宮の女の生活は、主の訪れを得られなければ退屈なものである。
そんな彼女たちの無聊を慰めるため、物語師が一つの昔話を吟じ終えた。
「『月光の魔女とその愛弟子』の物語で御座いました」
「…………ご苦労でした。それ、この者に褒美を取らせなさい」
侍女に命じて金子の入った袱紗を物語師に与えると、
物語師はそれを押し頂いて御簾の前から引き下がった。
「悲しいお話だったわね…」
「……愚かな話じゃ。神代以来、最も深く暗黒の魔術を極めたという者が、
たかが色恋に狂って劫を失ったとな」
「これは、本当にあった事なの?」
「うむ、黒檀の玉座を所有した者の中で、最も強大な力を行使したという魔女の話じゃ。
伝え聞く所によると、その月の如く白い身体は闇の力の根源に迫り過ぎたゆえ純白になったらしい」
「闇の魔力の影響で、身体は白くなったの?」
「白は闇を余すところ無く映し出し、黒は光を最も強く集める。至純の闇は反転して光を生む。
逆に光は極まって闇を助ける… 太極と呼ばれる秘儀玄理じゃ」
燭台に燃える炎の光を浴びて輝く己の金色の髪を弄りながら、少女は麗人と語り合う。
「そもそも好いた雄が強くなっていくのは、嬉しい事ではないか?
妾はあやつが強いからこそ好きになったのじゃぞ」
「そうね、貴女のように純粋に、失うことを恐れずに居られたのならば、
魔女も別れの悲しみを味わう事は無かったかも知れないわ………」
もしも魔女がその弟子に業を伝えていたら、惜しまず彼にすべてを捧げていたら、
二人の結末は違っていた可能性も有る。
だが、それでも少年は魔女を捨てて去って行ったかもしれない。
こと愛という事になると、いかなる賢者にも見極めることが出来ないのだ。
「雄に捨てられる事をめそめそ心配するなど、妾には考えられぬわ!」
「ふふ、貴女ならそう思うでしょうね……
でも、恋の悦びを知ってしまうと、誰しもそれを失うことを恐れるものなのよ」
「……妾にはよく分からん」
「満ちても欠ける運命の月のように、永遠で無い愛は哀しさを伴うもの……
でも貴女がそれを知るのは、まだ早いかしらね」
496 :
魔女と愛弟子:2007/03/03(土) 20:45:40 ID:uOiNdiLU
麗人は教え諭すように少女に話しかける。
しかし、金髪の少女はその態度に不服げであった。
「子ども扱いしおって! 妾の方が年上じゃと言っておろうが」
「女はね、誰かを恋い慕う気持ちを知って始めて一人前になれるのよ……
私から見れば、貴女はまだまだ子供だわ」
「ぷんっ、好きな様に言っておれ!」
人よりも長い年月を生きるこの少女は、確かに自分よりも多くの知識を持っている。
でもまだ愛の深さを知ってはいない。
古来より、多くの人々を溺れさせてきた、恋の恐ろしさ、悲しさ、そして甘さを知るまい。
麗人が己が主君へ捧げる愛……
それがどれほど彼女を喜ばせ、苦しめていることか。
まだ愛欲の業深さを知らぬ、この少女の幼さが麗人には羨ましくもあった。
後宮に侍る女は、主君の寵愛にすがる以外に道は無い。
そしてこの麗人は、己が主の他は誰にも触れることが出来ない宿命を背負っていた。
主に捨てられたのならば、きっと自分も生きては居られまい……
物語師の語った魔女の心境が、麗人には分かる気がした。
(終わり)
投下乙です。
ひょっとしてこの少年が・・・?
>>496魔王の作者様・・・ですよね。
いつもながら豊富な語彙でもって綴られる美しいお話、GJです。
GJ!GJ!
魔女かわいいよ魔女
再登場に
途中で送ってしまいますたorz
再登場に期待
GJ。
魔女の伝説で終わらせずに、ネリィの想いと重ねるところがぐっと来ました。
石から元に戻れることがあるといいなあ。
戻っても、少年はもう、どこにも居ないんじゃないかな
少年が魔女を捨てたと決まったわけではない、と思う。
ところで、そろそろ430kbなんだけど、スレタイ論議はいつから?
前スレは475kbごろに移行準備が始まったね。
part3は立つのが早かったという意見があったから、450kb位からでも良いんじゃないかと思う。
ただ、投下が無い期間の保守雑談程度なら、そろそろ始めてもいいかも。
まだはじめなくて良いよ
ていうか、どこまでも平行線なスレタイ論議はもううんざり
よしよし、なし崩しで現状維持に成功。
かつ馬鹿の駆除にも成功。
GJです。
スレタイ議論外部でやるの嫌だな。
議論しても反映されないんじゃ意味ないし。
初代スレでは最初Part2からは間口広く見えるスレタイにしようと言ってなかったっけ。
ファンタジー世界のエロ小説総合【女兵士スレPart4】
なら現状維持にも総合に変更にも対応できない?
中世ファンタジー世界総合とは住み分けているというか……
向こうはあまり機能していないと言うか……
このままでいい派
このままじゃいかん派
投下待ちに聞こうじゃないですか。
>新規の職人さんが来づらい
今までに、明らかにスレ違いと非難されたことがあっただろうか?
投下お待ちしてます、と言う態度に他ならないと思われる。
逆に言えば、他でスレ違いといわれた作品も、ファンタジー系、女兵士系、
戦う女系であれば、歓迎するといったことに他ならないと思われる。
>兵士萌需要について
該当の作品にコメントすればいい。他の投下は避けてくれ、ということは
スレの過疎化を招きかねない、従って投下に躊躇させる結果を招きかねない。
自分の考えつくのはいまこの辺だが、
皆さんはどうお考えだろう?
相手の考えを馬鹿とか言う前に、せっかくここまで育ったスレなんだから、
皆でよりいい方向になるよう、意見を出そうぜ。
とりあえず、自分はこのままでいいと思う。スレタイにこだわらず、
主体は戦う女である、ってことで。
このままでいい派。
ただし「なんでもあり」はズルい。などという意見もあったので
スレの方向性だけはテンプレで決めておいたほうがいいと思う。
以下スレタイ・テンプレ案。
スレタイ:◆◆ファンタジー世界の女兵士総合スレpart4◆◆
テンプレ:
・剣と魔法のファンタジーの世界限定で
・エロは軽いものから陵辱系のものまで何でもあり
(ですが、ひとによって嫌悪感を招くようなシチュの場合はタイトルなどに注意書きをつけることを推奨します)
・「兵士」に拘らず、女剣士・騎士、冒険者、姫将軍、海賊、魔女など、闘う女性なら幅広くOK。
・シリーズものの番外編としてなら、戦闘員女性の出ないSSもOK。(事前の注意書き推奨)
・種族は問いません。
・オリジナル・版権も問いません。