微妙に失敗したorz
1乙
乙です
乙
>>1 まあ、アンタにしては頑張ったんじゃないの?乙って言ってあげないこともないけど・・・
その前にこの前一緒に歩いてた女・・誰か教えてくれる・・・?
 ̄ `丶.
\
,人,ノヽ
人ノ ,. !
,ノ' / | (|
,/,/l ! ム|
/,/ / | (_,|
/゚ / / /|
´三:"/ フ|
 ̄ ̄ <, |
へ(⌒ヽ厂 |
/
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_/ / |\
〇ここのスレタイの変遷
単位 (二股目)
↓
四字熟語(三角関係、四面楚歌、五里霧中)
↓
単位(泥棒猫六匹目、監禁七日目、監禁八日目)
↓
慣用句(九死に一生)
↓
単語(十戒)
↓
単位(墓標11基目、十二因縁)
↓
映画題(13日の金曜日)
↓
単位(無言電話14回、15年目の浮気)
↓
熟語改変(十六夜血華)
↓
語呂合わせ(あなたが17い)
↓
単語(十八禁)
↓
語呂合わせ(恋は19さなの、二十(重)生活)
↓
数え(その21)
↓
漢数字(弐拾弐)
.
.
以降は数えで統一みたいな空気だったのにいきなり漢数字かよ、驚きだよ
統一性の欠片もないのに重ねて、最近はセンスすら伺えないようになってきたな
いい加減整えようぜ
いや建てた人が決めるものだから。
>>10がスレ建て毎回やれば良いんじゃねえの
12 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/12(日) 21:34:07 ID:W4vTlWes
別にこのままでも良いんじゃない?
統一性無い方が浮気者っぽいしw
さて、前スレの空軍話に触発されて小ネタを投下してみる
背景
架空の大陸を舞台にした架空国家同士の戦争。
主人公は政権への不満を逸らすため辺境の小国に侵攻した大国の空軍少尉。
主人公はAWACSの空中管制官、そして僚機に乗るヒロインと共に毎日を過ごしていた
ある日主人公は、ペアから告白を受け、一夜を共にする。
翌日の作戦で対空砲火にペアは撃墜され、主人公は悲しみの底へと叩き落された。
悲しみに暮れる主人公を管制官は慰め、主人公は管制官を抱いてしまう。
その後、ペアは満身創痍になりながら歩いて基地まで帰ってくる。だがペアを待っていたのは、管制官と恋仲になっている主人公であった。
主人公と管制官はそれを隠してペアに接するが、ある日の出来事でペアにそのことが露呈してしまう。
管制官を泥棒猫、メス豚と罵るペア。
「私はね・・・○○を追ってここまで来たんだよ?蛇を食べて、泥まみれになって。それなのに、あんな温室育ちの養殖魚を選んだんだね」
「待て○○!俺は・・・」
「大丈夫、○○は何も心配することないよ。あのメス豚を殺せば、全て丸く収まるんだから」
ペアはAWACSのミサイルの照準を合わせ、主人公はそれを阻止しようとする。
「邪魔しないで○○!あいつ殺せない!」
主人公は苦悩の末、ペアを撃墜する。
味方殺しとして周囲から距離を置かれる主人公。それと時を同じくして、敵は同じような小国の戦力を結集して大攻勢を仕掛け、大国側の制空権を完全に掌握する。
戦線が崩壊し主人公は疲弊した体に鞭打って飛び、圧倒的な敵に立ち向かう。
その頃ペアは敵に救助され、そこで出会った敵兵の思いやりと優しさに感動を覚える。ペアは対地攻撃機のパイロットとして寝返り、A‐10を操りかつての味方に牙を剥く。
「そうだよ・・・勝てば、○○君を取り戻せるんだ。敵をみんな殺して、軍を滅茶苦茶にして、国を潰しちゃえば、どうにでもなるんだから・・・」
大国は各地で敗退を重ね、ついには虎の子の空母機動部隊さえ壊滅させられた。そして敵は、総戦力を投入して上陸作戦を敢行する。
上層部の判断ミスのため、主人公はたった二機で上陸部隊に殴りこみを仕掛ける。そこで見たのは、鬼神の如き強さで海岸線を叩くかつてのペアの姿だった。
「○○!?○○なのか!?」
「○○くん・・・迎えにきたよ!さあ、私と一緒に行こう!」
「どうして裏切った!?」
「目を覚まして、○○君!騙されてるんだよ!」
「○○ちゃん、もうやめて!」
「プンプンしてきた!装甲板とキャノピー越しにも、あの女の匂いがしてきた!」
主人公の活躍むなしく上陸作戦は成功し、大国は部隊の再編成もままならないうちに後退を繰り返す。
そして主人公に与えられた任務は、核兵器を用いた焦土作戦の護衛・・・。
必死に迎撃する敵国機を撃墜し、核は自国の領内で投下される。地は焼かれ、死の灰が降り注ぐ。
辛くも核の被害を免れた敵国は首都前面に迫り、大国軍は形振り構わない方法で抗戦を試みる。
補給も整備もままならない状態で主人公は飛び、管制官は機を失ってなお地上から任務を続行する。
首都に対する侵攻が開始され、その上空ではトドメを刺すため総力を挙げて攻勢に出る敵国空軍と最後のあがきを続ける大国空軍の死闘が展開された。
「戦争に勝って私は、○○君を取り返す!そのためなら悪魔にでも何にでもなる!」
「俺は、お前を撃ちたくない!」
「じゃあ今すぐ投降して!ベイルアウトよ、ベイルアウト!すぐに迎えに行くから!」
そして主人公は、ペアにミサイルを放ち、自らも撃墜された。
戦後、生き残った管制官は二人の墓に花を添える。
墓には、三人が笑顔で写る写真が置かれていた・・・。
と、こんな具合。
どう見てもエースコンバットです(ry
スレ汚しスマソ
管制官ビッチだなw
ベアと読めてしまってもうロマサガが頭から離れない
21 :
sage:2006/11/12(日) 22:43:23 ID:RIwhBCYV
帝国重装歩兵かよw
ていうかエスコンってこんなゲームだったのかよし買ってくる
投下しますよ
「今日はお天気が良いので、お弁当を作っておきました」
「本当に、いつもありがとう」
僕はナナミから弁当を受け取り、軽く頭を撫でた。他の皆は日が照っているのが気持ち
良いらしく、既に外に出てはしゃいでいる。誉められる様子を見る者は誰も居ないので、
ナナミは僕にされるがままになっていた。最近は賑やかだったので暫く味わってなかった
が、相変わらずナナミの髪は手触りが良い。
「青様、そろそろ行かれませんと」
「そうだな、じゃあ行くけど本当にナナミは来ない?」
「今日は大事な用がございますので」
名残惜しいと思いながら手を離し、外から呼ぶ声に返事をする。双娘を連れ初めて公園
に行った日から、それは日課になっていた。ユンちゃんとリーちゃんは遊んで歌い、リサ
ちゃんは剣を持って踊る。ナナミも希にではあるがそれに着いてきて、二人にせがまれて
歌を歌っている。そんな日々を二週間程続けていた。
そしてサラさんは、全く変わっていない。
あの日のことなどなかったかのように微笑み、皆と話をしては楽しそうに声を漏らす。
それは僕が相手でも変わらず、ごく普通に接してくる。時折寂しそうな目をするものの、
態度は皆へのそれと変わらない。だからこそ戸惑ってしまうし、もしかしたらあの日の事
は夢だったのかと思うことすらあるくらいだ。僕の方が、どう接して良いのか分からなく
なってくる。その結果、時計塔に行く約束を守れていないのが現状だ。
今日もきっと、いつも通りに一日が終わってゆくのだろう。
漠然とそう考えた。
「行ってくるよ」
「行ってらっしゃいませ」
毎日見ている角度で深く礼をしたナナミの頭を再び軽く撫で、背を向ける。人が他には
居ないとはいえ、少し問題のある声量で呼んでくることに苦笑をしながら歩き出した。
「青様、もし」
背後からかけられた声に振り向くと、ナナミと目が合った。顔はいつもと同じ無表情、
しかしどこかそれは真剣なものに見える。無感情故に躊躇うことなく真っ直ぐにこちらを
見つめてくる瞳だが、それ故に何を言いたいのかが読み取れない。
「どうした?」
「もし、わたしが再び感情を持ったとしたら。青様はどう思われますか?」
言われ、考えてみる。何百年も一緒に暮らしてきたが、それは初めての問掛けだ。
どうするのか、どう思うのか、自分のことながらそれは想像がつかない。大分昔のこと
になるが僕は感情が有った頃のナナミを知っているし、明確な違いがあるとはいえ、その
頃の付き合いも覚えている。今のナナミがが僕に馴染んでいるというのもまた本当のこと
だから最初は勝手の違い戸惑うかもしれないけれど、すぐに慣れていくと思う。しかし、
その過程が上手く想像が出来ないのだ。
僕は首を振り、
「そのときにならないと分からない」
素直な答えを出した。
数秒。
「お時間を取ってしまいました、申し訳ございません」
礼をして、ナナミは奥へと消えてゆく。
どうしたのだろうか、と思いながら玄関に行くと、両脇腹に強烈な衝撃が来た。双娘が
飛び付くように抱き付いてきて、楽しそうに目を弓にしている。続く肩への衝撃は、リサ
ちゃんのものだろう。腹を押し付けるように頭を強く抱きながら、呑気に鼻唄を歌いつつ
体を軽く揺らしている。その度に背中に剣の鞘が当たり、中では軽い音をたてていた。
「あら、ナナミちゃんは?」
「来れないから、今日は皆で行ってこいって。その代わり、弁当を預かった」
それを見てユンちゃんとリーちゃんは目を輝かせる。毎晩体を使った奉仕をされている
ので、それを忘れさせてくれる普通の表情がとても嬉しい。必死に手を伸ばしてくるのを
見て弁当の包みを差し出すと、笑みを強くして受け取った。包みが二つに分けてあったの
は量が多かったということもあるが、きっとこうなることも予想していたのだろう。二人
は少しはしたなくも包みに鼻を埋め、漏れてくる匂いをかいで幸せそうな顔をしている。
「早く行こ!」
「……たくさん遊んで、美味しく食べる」
「おにーさん、早く早く」
急かされて、歩き始めた。それを見てサラさんは小さく笑い声を漏らした。
「ブルーも大変ね」
適度な距離をとり、サラさんも着いてくる。
公園までは徒歩でも十分程、弁当の中身を話しながら歩いているとすぐに辿り着いた。
敷地に入るなりリーちゃんとユンちゃんは僕に弁当の包みを渡して遊具へと駆け寄り、僕
の方を見て手を振った。リサちゃんも僕から飛び降りると二人の方に向かい、続いてサラ
さんも歩いてゆく。最近はブランコがお気に入りらしく、どちらがより高く上がることが
出来るのか競っているらしい。押す係として僕が一番下手らしく、この勝負のときは専ら
見ていることが多い。寂しくはない、見ているだけでも充分に楽しい。
「幸せそうね、蒼」
「まあね」
隣からの声に振り向き、
硬直した。
体だけではない、隣に座っている人物を見て思考までもが停止する。意味を理解しよう
として、何故ここに居るのかを考えて、頭を巡らせようとしても全く動かない。この人は
居ない筈だ、少なくともこんな場所に居ることはおかしい。
何故なら、僕がここに居るからだ。
「お、嬢様」
確認しようとした訳ではない、現実を把握しきれずに口から自然に漏れてきた言葉だ。
彼女はそんな言葉にすら反応して笑みを浮かべて、真っ直ぐに僕の目を覗き込んでくる。
その仕草は昔と寸分変わらない。いや、仕草だけではない。腰まで届く程の長く艶やかな
黒髪、少しでも力を加えてしまえば折れてしまいそうな程に華奢な体。そして切れ長の目
の中心で光る、僕と同じ青い瞳。記憶の中にある姿と変わらない、まるで当時をそこだけ
切り出してきたような姿で存在している。
「お久しぶりね、蒼」
声も変わらず、僕が好きだった高く澄んだもの。鈴の鳴る音に似た、硬質だけれど柔ら
かく涼やかなもの。僕を強く惹き付ける、魔性の声だ。
そして彼女だけが呼ぶ『蒼』という呼び名、それが彼女だと知らしめている。
「お嬢様、何故、ここに居るんですか?」
「そう呼ばないでって、言ってるでしょ? 何百年経っても治らないのね」
そんなことはどうでも良い、どうして僕の隣に彼女が居る。
「シャーサ、君は」
「大変だったのよ? 蒼が居なくなったショックで体を壊して、それを治すのに十三年。
ディーグリフ家の信用を取り戻すのに五百年、大統領と近付くのに三百余年。失敗しては
やり直しで、頑張ったんだから。誉めてくれる?」
まさか、
「お揃いよ?」
シャーサは襟を下げ、僕に首筋を見せた。
「……SSランク」
鈍い光沢を放つのは、二つの黒い首輪。特例であるサラさんを除いては、最高ランクの
罪を犯したという証がある。まさかシャーサは、僕に会う為に再び八百年前と同じ過ちを
犯してしまったというのだろうか。不老になってまで、監獄都市に来てまで、そんなに僕
に会いたかったのだろうか。それは最早執念という言葉すら生温い、本当の異常だ。
「どうしたの、蒼。昔は頑張った私をよく誉めてくれたじゃない。ねぇ、頭を撫でてよ。
どんなに辛い想いをしても、蒼に会えると思って努力したのよ?」
言いながら、体を寄せてくる。
「あ、分かった。大丈夫よ、安心して。他の男には指一本触れさせていないから。だから
私は昔の体のままよ、私の体は全て蒼のものだもの。偉いでしょ? 誉めて誉めて」
強い感情の勢いに負け、僕はシャーサの頭に手を伸ばす。
「愛してるわ、蒼」
気持ち良さそうに目を細め、シャーサは呟いた。
今回はこれで終わりです
最後の一人が登場して、これから急展開
ふ
伏兵だとォー―――ッ!!
落ち着け・・・コレは孔明の罠だ!
>29-30
久しぶりに大爆笑
LP5か。
大丈夫だ青……お前はSSランク。誰もお前には勝てやしない!!!
GJ!
GJ
今の今まで新スレに移行したことに気づかなかった
うっかりさんな俺
投下しますよ
暫く頭を撫でていたが、もう終わっても良いだろうか。そっと手を離すと、今度は抱き
ついてきた。控え目な胸を押し付けるように強く体を寄せ、背中に腕を回し、僕の胸に顔
を埋めて擦り着けてくる。こうする癖も、昔と全く変わっていない。
「ところで、これからどうするの?」
「今までの生活を、続けるだけです」
「何で? 蒼は何も悪いことしてないじゃない」
一拍、僕の背を抱いている力を強くして、
「だって、昔も殺したのは私なのに」
昔の光景が、蘇る。
ディーグリフ家にも様々な事情があったのだろうし、大統領と名家の娘が婚約するのは
不自然なことではない。寧ろ力を強くする為に、当然のことと言えた。旦那様はシャーサ
と僕が恋人同士であったのを認めてくれていたから陰で助力してくれていたけれど、所詮
はお嬢様と使用人。二人がどんなに好き合っていようとそれは実る筈もなく、シャーサは
大統領の妻になってしまった。こんなものは陳腐な昔話だ、昔からのお約束のようなもの。
しかしシャーサはそれを拒み続け、そして悲劇が起きた。
大統領の殺害。
初夜の晩、シャーサに呼び出されて寝室に行くと、そこには大統領が倒れていた。全身
から血を噴き出し、周囲を赤く染め、恨みの声をひたすらに呟いている。何が起きたのか
は一目で分かった、シャーサが血の滴るナイフを持ち、こちらを困ったような表情で見て
きたからだ。返り血なのだろうか、絹で出来た白い夜着は赤黒く汚れ、見るも無惨な姿に
なっていた。彼女のお気に入りだったそれは、今やその面影はなかった。
医師が駆け付けてきたとき、既に大統領の息はなかった。
お嬢様が大統領を殺したのは、すぐに問題になった。殺人犯に、それもSSランクの罪人
にしてはいけない。そこで白羽の矢が突き立ったのが僕だった、親族からしてみれば厄介
払いも出来るし良いことづくめだっただろう。恋仲にあったお嬢様が他の男に嫁いでゆく
のが我慢できず、嫉妬のあまり殺してしまった。そんな三文小説のような話で、僕は罪を
背負うことになった。
辛いとは思わなかった。今まで殆んど何もしてやれなかった僕だったが、少しでも彼女
の為になることが出来る。そう思い、悲痛な顔で頼んできた旦那様に承諾の返事をした。
あのときの表情は今でも忘れられない、旦那様は泣きながら僕の顔をずっと見ていた。
これが僕がここに入った理由。唯一法に触れたことといえば、裁判官の前で僕が殺った
と虚偽の発言をしたことくらいだ。
「だから、蒼は安心して私の側に居て良いのよ」
顔を上げ、微笑みを向けてくる。
「これからはずっと一緒よ、今度こそ離れ離れにならないわ。二人とも不老なんですもの、
永遠の恋人なんて素敵だわ。ね、二人きりで暮らしましょうよ」
「それは駄目よ」
いつの間に来たのだろうか、サラさんが隣に立っていた。その後ろにはリサちゃんが、
ユンちゃんとリーちゃんが立っている。双娘は顔に不安そうな表情を浮かべて、サラさん
とリサちゃんは睨むような目でこちらを見つめてくる。先程まで楽しくブランコで遊んで
いたのが嘘のような、重く、冷たい空気が張りつめる。
「あら、貴方達は誰ですの?」
「彼女達は」
言おうとして、リサちゃんの鋭い目に止められた。いつものあどけない雰囲気とも踊る
ときの不思議な雰囲気とも違う、それどころかまるで別人のような苛烈さがある。剣の柄
に手をかけて、今にも抜きそうだ。サラさんも武器は持っていないものの、リサちゃんと
同じように今にもシャーサを殺してしまいそうな雰囲気がある。
「あなた、誰ですか?」
いつもとは違う口調で、低く唸るようにリサちゃんが呟いた。
「蒼の妻よ、昔に将来を誓いあったの。ねぇ、蒼?」
それは、そうだが。
「でも昔の話じゃないですか!!」
「約束は永遠よ」
おかしそうに声を漏らす。シャーサの瞳にあるのは優越感、絶対的な確信を持って二人
を見つめている。話にならないと小馬鹿にしたような強気の笑みは、彼女が幼い頃からの
得意技だ。僕もまだ小さかった頃は、それにさんざん苦しめられた。
しかしサラさんもリサちゃんも負けずに、強い敵意の瞳で見つめ返す。春だというのに
凍えるような寒さがあり、それに脅えたリーちゃんとユンちゃんは目尻に涙を浮かべ、僕
に助けを求めるような視線を送ってきた。だが情けない話だが僕は動けない、どうしたら
良いのか僕自身にも分からないのだ。
「あら怖い、助けて蒼。昔はよく守ってくれたじゃない。あの犬を追い払ってくれたとき
みたいに、私を守って頂戴。こんな駄犬、さっさと消して」
わざとらしく眉根を寄せてシャーサが抱きついてくる、それに合わせて二人も一歩前に
踏み出した。リサちゃんの方に至っては目付きを凶悪にさせて歯を剥き、悪い意味で剣が
似合う状態になっている。それはまさしく狂剣士、SSランクの罪人のイメージ通りの姿だ。
今なら納得できる、本当にリサちゃんは3000人を殺したのは嘘ではない。
油が注がれた火は勢いを強め、炎となっている。
「あなた、800年以上も間を開けておいて、どうして今頃出てきたのかしら? それに、
今のブルーにはあなたは関係ないじゃない。さっさと離れてくれないかしら」
「あるわよ、だって蒼がここに入ったのは私の為ですもの」
「だったら尚更です、青さんから離れて下さい。そして貴方こそ消えて下さい」
二人の言葉を、シャーサは鼻で笑う。
「貴方達こそ、関係ないじゃない」
「あるわよ」
一歩前に踏み出し、サラさんは笑みを浮かべた。
嫌な予感がする。それ以上は言わせてはいけないと、本能が大音量で僕の頭に響き、心
を強く軋ませる。もし言ってしまったら、全てが終わってしまうね叫んでいる。
立ち上がろうとしたが、服が鉄のように固くなっていて動くことが出来なかった。何故
だろうという疑問は、サラさんの顔を見て答えが分かる。こちらに向けられた申し訳なさ
そうな表情は、自分がやったのだと言っていた。確率システムの応用だ、僕も裁判のとき
にこの方法で固定されていた。しかもサラさんのそれは恐らく、それを遥かに越える精度
だろう。どんなに体を動かそうとしても微動だにしない。
サラさんはシャーサに視線をずらし、
「だってわたし、ブルーと寝たもの」
言ってしまった。
リサちゃんの視線が、今度はサラさんに向けられる。浮かんでいるのは怒りや敵意では
ない、信じられないものを見たような驚きの色だ。だが一瞬後にはシャーサに向けたよう
な悪意に満ちたものになり、柄を握る力が強くなった。華奢な腕のどこにそんな力がある
のか、布を絞るような低い音が聞こえてくる。
「サラさん、どうして」
「どうして? 決まっているわ、ブルーを愛しているんですもの」
これだけの発言をしても、シャーサの顔色は涼しいままだ。それどころか、サラさんに
向けての侮蔑の色が益々濃くなってきている。まるで汚いものを見るような、哀れなもの
を見下すような、各下相手に向ける挑戦的なもの。サラさんが一番嫌がりそうなものだ。
くすくすと笑い、
「流石SSSランクの人はやることが違うわね。でも残念、私は何十回も、何百回もしたわ。
あの忌々しい不良品のナナミですら、そのくらいはしているんじゃないかしら」
サラさんは悔しそうに歯を噛み、睨みつけた。リサちゃんは既に鞘の留め金を外して、
今にも凶刃を抜き放とうとしている。僅かに除く鈍い色の刀身が、陽光を反射する。
「良い? 私は蒼のもの。そして蒼は私のものなのよ」
その言葉が示す意味を誇示するようにシャーサは僕に口付け、二人を見て唇を歪めた。
今回はこれで終わりです
漸く修羅場まで来ましたよ、長かった
もりあがってきますた
これは…リサがノエルになる予感
「あなたが泥棒猫ですね?殺らせていただきます」
少ないですが投下します。
「…で蔓さんの行方は結局分からなかったんだけど花梨ちゃんのほうはどうだったの?」
「ああ、花梨は吉備と二人で駅まで一緒に居たな。…嬉しそうだったな。感触はいいみたいだ。」
「それだけ?キスとかしなかったの?まあ愛しの花梨ちゃんがそんな大胆なことしてたら
名波は今みたいに冷静で居られないとは思うけどね〜」
…土日は俺が花梨を、四ツ川が蔓を監視することにしていたのだが、
土曜のバドミントン部の練習に蔓が吉備と一緒にやって来たため、俺と四ツ川も一緒になって監視していた。
だが、気がつくと蔓が居なくなっていたのだ。慌てて四ツ川が探しに行ったが、四ツ川もそのまま帰ってこなかった。
それで夜になってやっと連絡がついのだが、蔓の行方は結局分からずじまいだったそうだ。
…しかし、なぜだ?
「四ツ川…なんで蔓は途中で居なくなったんだろうな。」
そう、腑に落ちない。蔓は吉備と花梨を二人っきりにしたくなかったから、吉備についてきていた筈だ。
「何よノリ悪いわね名波まあ確かなことは言えないけどとても見てられなかったんじゃないの?」
なるほどな。吉備について来たのはいいが、割り込めずに浮いている自分に気づいて居たたまれなくなった。
それで一人で帰ってしまった、という解釈は有り得る。が
「いや、俺は計算された行動じゃないかと思うんだ…考えすぎかもしれないけどな。」
「ん〜確かに花梨ちゃんと吉備が二人で一緒に楽しく帰るなんてことを蔓さんがむざむざ許すとは思えないけど
現にそうなっちゃってるんだから蔓さんはあきらめちゃったんじゃないかな」
「そうだといいんだがな…」
確かに、花梨が有利なのは明白だ。
たとえ蔓が突然消えたのが計算だったとしても、蔓は策を弄する所まで追い込まれているということでもあるしな。
それに、花梨に直接会って受けた印象も恋する乙女といった感じで…幸せそうだった。心配することは無い。
…そう考えていると、四ツ川が口を開いた。
「…ねえ名波………名波は…本当にこれでいいの?」
四ツ川のこんな声、初めて聞いた。電話ごしでも口調の違いとトーンの低さがはっきり分かる。
「…花梨と吉備が恋人になってもいいのか…ということか?」
「そう。名波は花梨ちゃんを応援してあげたいって言ったけど、名波が花梨ちゃんのことをどう思っているのかは
まだ聞いてないから…名波は、花梨ちゃんのことが好きなんじゃない?」
…どう、答えたものか。
「………花梨は、ただの幼馴染だよ。少なくとも、今は、な。」
「…昔はどうだったの?」
「…小学校高学年になるくらいの頃は、意識していたと思う。…でも意識して、恥ずかしくなって、
それで顔を合わせなくなって…結局、そのせいで疎遠になってしまったな。」
「……後悔は、してないの?」
「後悔、とは少し違うな…。確かに、俺と花梨が恋人になる道はあったのかもしれない。
だが俺はその道を選ばなかったし、それは、花梨も…同じだろう。」
「………………………」
「いや…そもそも、そんな道があったのかさえ…、あやしいけどな。」
「………………………」
「なんにせよ、花梨が幸せなら、それでいい。俺はそう思ってる。」
「………そう……ごめんね。変な話をしちゃって。」
「いや………ありがとう。四ツ川。」
「………………………」
「じゃあ、おやすみ。」
…結局はぐらかしてしまったな。
携帯を切り、ベッドの上に寝転がる。
『本当にこれでいいの?』…か。
ktkr
今一番先が読めないSSです。
GJ!
四ツ川も修羅になるのかな?
>>42 こいつは久々の上等な修羅場だ!
さあ青!漢になる時が来たぞ!
GJです。
互いを意識しすぎてしまって疎遠になるってので
乙一の未来予報を思い出したよ。
Gj!今はまだ修羅場に絡まない主人公がこれからどう動いて行くのか期待
>>42 シャーサ登場により修羅場が激化してきていい感じw
ますます続きに期待
作者さんGJ
プロットを投下してみる・・・。
主人公(恋人あり)は科学部の実験に付き合い、謎の薬を飲んで倒れる。
保健室に運び込まれ、保健委員の少女に倒れたことを教えられる。
そんな彼女に好きだと叫んでいきなり押し倒す主人公と、主人公が倒れたことを聞いて飛び込んでくる恋人。
科学部曰く、飲ませたのは偶然できてしまった惚れ薬だという。
解毒薬はなく、また無理やり衝動を押さえ込もうとすると、精神に本当に異常をきたすかもしれない。
数日で効果は切れるので、主人公の好きにさせるしかないとのこと。
恋人は断腸の思いで、保健委員も嫌々ながら人助けのためと了承。
それから数日、保健委員に付きまとい株を上げまくる主人公。
最初は鬱陶しがっていた彼女も、我が身を省みず尽くそうとする主人公に心惹かれていく。
そして、ついに解ける薬の効果。
主人公はここ数日の記憶がなかったが、2人の少女に多大な迷惑を掛けたことを謝る。
臨界に達しようとしていた恋人の我慢も収まり、万事解決と思われたが、その時。
「・・・責任、とって」
保健委員のその言葉が、場を完全に凍らせた・・・。
今週のジャンプの某漫画からインスピレーションを得たネタです。あれは良かった。
だれか書いてみてくれないかなぁ・・・。
55 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/14(火) 00:18:15 ID:EQ9fMICG
投下してみます。
56 :
血婚:2006/11/14(火) 00:19:07 ID:EQ9fMICG
そんなことはとうの昔に知っている。
この人には「最愛の恋人」とやらがいて
私はセフレ・友人・相談相手のどれかだと。
「お前髪きれいだよなぁ」
この人はコトが終わった後は必ず髪に
触れたがる。2人でベッドの上にいる
今が私の至福の時だ。
今日はいつもより格段に優しかった。
そして触れてくる手や口唇や降ってくる声が
覚悟を告げていた。
とうの昔に知っている。
私はベッドサイドのテーブルに手を
伸ばしてバタフライナイフを手にとった。
これを弄ぶのは私のいつもの仕草だ。
隣にいるこの人には、恋人にもらった
イミテーションだと言ってある。
本当は恋人などいないのだけど。
だって、私が愛してるのは。
私が、欲しいのは。
「あのさ、言わなきゃいけないことが」
多分私の考えた通りの結末が来るんだろう。
そんなことはとうの昔に知っている。
この人は私を絶対に選ばない。
「最愛の恋人」とやらを選ぶ。
この人が私の物になることは絶対に無い。
それでも、私は。この人を。
57 :
血婚:2006/11/14(火) 00:21:05 ID:EQ9fMICG
「俺さ。結婚、する」
「じゃあこんなことしてたらダメじゃん」
笑いながら、ナイフをいじりながら言う。
私はあくまでドライな女を演じる。
重い存在になればこの人は私を遠ざける。
軽い友人という表の関係にとどめられる。
だから私はこの人が話しかける全ての人を憎み
この人が触れる全ての物を妬んでも決して
それを悟らせない。
でも、そんな努力も今日限りで意味は無い。
「うん、俺もダメだと思う。だから、ごめん」
ほら。とうの昔に知っていた。
この人は「最愛の恋人」とやらのために
私の存在を切る。だから私は、この人を
私だけの物にする方法をずっと考えていた。
だって私は。私はこの人だけを。この世で何よ
り。どうしてもと。この人を。私は。私だけの
物に。ずっとこの人だけを。欲しいと。私は。
ずっとこの人を。私は。私だけに。会った瞬間
から。この人を。この人だけを。ただそれだけ
を。私は。何をおいても。私が欲しいのは。
私が。私は。心から。私は
私は
アイシテル。
58 :
血婚:2006/11/14(火) 00:24:09 ID:EQ9fMICG
パチン、と音をたててこの人がイミテーション
だと思っているナイフの刃を煌めかす。
「ねえ」
ナイフの刃をこの人の首筋へ。
力一杯引けば一瞬で私だけの物になる位置へ。
「私、嘘をついたの。恋人がいるなんて嘘」
私が真剣な話をする時はまばたきの回数が極端
に減るらしい。きっとすごく緊張してるんだね
とこの人は笑っていた。
「私、ずっとずっとあなただけが好きだった。
あなたがそばにいてくれたら何もいらない。」
「私の最愛の人」の右手が私の頬に触れる。
ああ、この手は私のためのものでは無い。
なんでだろう。
私の右手はナイフを握ったまま。
今はまだ決して傷つけないよう注意を払う。
「最後に言って。愛してるって。」
微笑んでいたつもりだった。私の頬を離れた
手は何故か涙に濡れていた。
泣くつもりなど無かったのに。
59 :
血婚:2006/11/14(火) 00:25:03 ID:EQ9fMICG
そして、私は抱き寄せられる。
「愛してる」
残酷で優しい声が耳元で嘘を囁いた。
私は右手を力一杯引いた。
この人にはもう一つ嘘をついた。
ナイフがイミテーションだと。
だってこの人を私の物にするためには
これしか方法が無かったから。
部屋が鮮血に染まる。
酷く驚いている最愛の人を
私は抱きしめた。
腕の中の人が動かなくなって
刃こぼれが心配なナイフの代わりに
包丁を自分の首に当てて
私は、とうの昔に知っていた結末に
やっと辿り着いた。
60 :
血婚:2006/11/14(火) 00:26:24 ID:EQ9fMICG
神々に感化されて勢いで書いてみました。
改行慣れてなくて読みづらかったらごめんなさい…
というかスレ汚し大変すみません。
むしろsage忘れてごめんなさい。
>>60 やはり女の一人称はいい。いずれ試してみたい
ツイスター投下します。
62 :
ツイスター:2006/11/14(火) 00:44:04 ID:N7mDGxsL
伊勢に逃げられてしまった翌日、太郎は久々に妹研に顔を出していた。
毎度のように繰り広げられている妹談義に耳を貸すこともなく、哀愁漂うメロディーを持ち込んだギターでかき鳴らしていた。
山鹿が見かねて、声をかける。
「一度失敗したくらいでどうした。お前は初めてなんだから仕様がない。おまけに相手は他人なんだ。妹とは違うんだからな」
そんな山鹿の言葉にも、太郎は無反応だ。ただ、うつろな目でギターをかき鳴らす。
山鹿が肩をすくめたとき、部室の戸が開かれて、こんなところに来るはずのない顔がのぞいた。
「おい、簸川。客だ。うわさの伊勢さんが来たぞ」
山鹿がそういうと、太郎はすぐさま顔をあげ、戸からのぞいているのが伊勢の顔なのを確認した。
会いたかったが、会いたくないような気持ちもする。一言でいって、気まずかった。
「先輩、今、いいですか?」
伊勢がそういうので、太郎はギターを置き腰を上げた。
話があるという伊勢の後について、軽音の部室へと向かった。
無人の部室に入ると、伊勢は頭を下げた。
「昨日はすみませんでした。あの、昨日は急に体調がわるくなっちゃって」
何を言われるのかとびくびくしていた太郎は、それで救われた。少なくとも、昨日は自分に非があったわけではないらしい。
たしかに、あの時伊勢は顔を青くしていた。風邪かなにかだったのだろうか。
どう具合が悪くなったのかについて、伊勢はそれ以上説明してはくれなかった。
今はもう大丈夫だというのだから、ムリをして聞きだす必要もないだろうと、太郎は考えた。
63 :
ツイスター:2006/11/14(火) 00:44:49 ID:N7mDGxsL
「じゃあ、今日は、その、うちに来れる?」
太郎は、いくらなんでもがっつきすぎだろうと自分に突っ込みつつも、先日の寸止めのままではいられなかった。
伊勢は顔を曇らせていった。
「でも、今日もあの妹さん、家にいるんですよね」
「ああ、多分いると思うけど」
平日に、街をふらふらと出歩かれて補導でもされれば、いろいろと面倒なことになるのは明白だった。
だから、なるべく家から出ないように次子に言い含めていた。
「こんなこと、先輩にいったら悪いんですけど、わたし何かあの子が怖くて」
「怖い?」
たしかに行動に常軌を逸したところはあるが、あの天真爛漫を絵に描いたような次子が「怖い」などといわれるのは思いもしなかった。
まだ、一子がそういわれるのは分からないでもないが。
「だって、あの子、笑ってるのに、笑ってないんです」
そういうと、伊勢は黙りこくった。
太郎には、伊勢のいいたいことがいまいちよく分からなかった。彼女が太郎の家に行きたくないということ以外は。
だとすると伊勢の家しかないが、そこには専業主婦の母親がいるはずだった。
さすがに、相手の母親がいるのに、同じ屋根の下でその娘を抱く気にはなれなかった。
かといって、自分たちのような年頃の男女が、ラブホテルに入れるのかどうかも分からなかった。金もなかった。
それで結局、どちらかの家で二人きりになれるときまで、初めてはお預けということになった。
太郎が、目に見えて落胆のそぶりを見せると、伊勢はクスリと笑ってキスをした。
「別に最後までしなくたって、いろいろできますから」
そういって、淫蕩に微笑む伊勢にたまらなくなった太郎は、今度は自分から唇をつけた。
舌を深く差し込み、口蓋を嘗め回し、唾液を飲ませた。
太郎の方が背が高いので、上を向く格好になった伊勢の口に、唾液が流し込まれる。
伊勢は、それをのどを鳴らして飲み込んだ。
それから太郎は、首を傾け自分の膝を折って、無理やり伊勢を見上げる格好になった。
今度は、伊勢の唾液が太郎の口に流し込まれた。やはり甘い唾液を、太郎が飲み込んだ。
そして、今度は太郎の唾液を伊勢の口に流し込む。
部室に足音が近づいてくるまで、それを繰り返した。
64 :
ツイスター:2006/11/14(火) 00:45:24 ID:N7mDGxsL
家に帰ると、やはり次子が迎えに出てきた。毎日の出迎えは、理想の妹の仕様なのだろうか。
「お帰りなさいお兄ちゃん」
次子は、ミニスカートの上に犬のエプロンをつけ、両手は餃子のあんで汚していた。
次子の後について台所に行くと、一子が猫のエプロンをつけ、餃子の皮にあんを包んでいた。太郎は驚いた。
食事の準備は、ほぼ次子の仕事になっていた。一子が次子の同居を認めるようになった理由のひとつがそれだ。
その一子が、次子の手伝いをするようになるとは、太郎も思ってもみなかった。予想外のことはそれだけではなかった。
「ああ、お帰り兄貴」
ごく自然に、一子がそういった。太郎も、反射的に返してしまう。
「おお、ただいま」
一子はそれを聞くと、再び餃子を包む作業に戻ってしまった。
そんな風な挨拶をしたのは、久しぶりだった。だが、そうとは思えないほど自然なやり取りだった。
一子がそのことを意識していたのかどうか太郎には分からない。いや、一子にとってもそれは無意識的な行動だったのだろう。
その証拠に、今頃になってうろたえ始めた一子が、餃子を包むのを失敗した。多すぎるあんが、皮が飛び出てしまう。
一子の行動は、次子に触発されてのものだろうと太郎は考える。
もちろん、意識的に張り合ったなどということはありえない。一子は、次子を受け入れ、次子と太郎の兄妹関係を認めている。
しかし、無意識的に、次子の「妹ぶり」に一子が触発されたということはありえるだろう。
あるいは、太郎と次子のやり取りを見ていて、やっと自分の兄妹関係を思い出したのか。
太郎は、リビングにかばんを放り投げると、袖を巻くりあげ、流しで手を洗った。
「俺もやるよ」
そういって、一子の横に座った。昔は、そうやって二人して母親の食事の用意を手伝ったことを太郎は思い出した。
餃子の皮を手に取ろうとすると、次子が太郎と一子の間に割り込んできた。
「わたし、お兄ちゃんと一子ちゃんの間がいい!」
もちろん、太郎も一子もそれを拒むようなことはない。3人で並んで座って、餃子を包み始めた。
「兄貴、何よそのしょぼい中身は。ちまちま包まないでよ」
「何いってんだ馬鹿。お前は豪快に入れすぎてはみ出ちまってるじゃねえか」
「見て見て、お兄ちゃん。次子上手でしょお」
「おお、さすがだ、次子。誰かさんとは大違いだ」
「ほーんと、兄貴とは大違いだよねえ」
「いや!お兄ちゃんと一緒がいい」
そんな3流ホームドラマのような光景を繰り広げていると、3人が本当の家族のような気になってくる。
次子に情が移り始めているのを太郎は感じた。というよりも、完全に入れ込んでしまっている。それはきっと、一子も同じだろう。
だが、次子の寿命は一ヶ月しかない。一ヶ月後にはきえてしまう。
それまでに、次子への情はもっともっと深くなってしまうだろう。それこそ本当の家族のように。
ペットだって、少しでも飼っていれば情が移ってしまうのに、ここにいるのは人の形をしていて、しかも自分を兄と慕ってくれるのだ。
それに、太郎と一子の間を結果的にであれ取り持ってくれたという恩もある。
一ヶ月後には、自分も一子も泣くことになるかもしれない。
そう考えると、次子を押し付けられたときとはまったく違う理由で、山鹿のことを恨めしく思った。
65 :
ツイスター:2006/11/14(火) 00:46:50 ID:N7mDGxsL
そういった団欒とは別に、太郎は性的経験を順調に重ねていた。
部室や、公園や、カラオケボックスで。だが、いまだ最後には至っていなかった。
公園や、カラオケボックスで挿入に至りかけたことはあった。
しかし、邪魔が入ったり、主に太郎が集中できなかったりで、その手前でとまっていた。
はじめのうち、そのことに本気でいらだっていた太郎だったが、そのうちこの寸止め感も悪くはないと思いはじめていた。
実際、最後までしたところで、それがどこまで気持ちいいのかは分からない。
体験済みの仲間に聞いても、その評価は両極端だった。
ならば、その期待を持続させたまま、いろいろと試してみるのも楽しいのではないか。
今では、学校で伊勢の手の中に射精することさえしていた。
「少しは自重しろ。服をきた猿め」
教室で山鹿にそういわれた。太郎にはとっさには何のことか分からない。
「話を聞いたぞ。お前と伊勢が学校でキスしていただの、お前が伊勢の胸を揉みしだいていただの」
それは事実だが、そんなことがうわさになっているとは思っても見なかった太郎は狼狽した。
気をつけているつもりだったのだ。もちろん、学校にばれればまずいことになる。
「安心しろ。まだうわさにはなっていない。それを見た人間がいたということだ。一応、口は封じておいた」
その「口封じ」がどういうものかはあえて聞かなかった。山鹿なら、うまくやったのだろう。
なぜか、山鹿は頼みもしないのにこんな具合に太郎の尻拭いをしてくれることがあった。
一度や二度のことではない。太郎が妹研に入るハメになったのも、そういう恩があったからだ。
それが一子を狙っての行動ならば分からないでもないが、山鹿はそうではないという。
「気をつけろ。当局にばれたらやっかいだぞ。反省文ですめばいいが」
山鹿はそう忠告してくれた。
しかし、思春期の青い性欲がそんなことでやむはずもなかった。
二人は今も、放課後の誰もいない図書室の死角で、キスをしていた。太郎の右手は、そこが指定地のように伊勢の胸に置かれている。
伊勢が、いったん唇を離して太郎の耳元でいった。息が熱い。
「口でしてあげましょうか、先輩」
66 :
ツイスター:2006/11/14(火) 00:47:56 ID:N7mDGxsL
伊勢は、太郎の返事も聞かずに腰を下ろすと、ズボンのチャックを下ろした。
そして、トランクスの隙間から太郎のいきり立ったペニスを引き出した。
すでにカウパー腺液で濡れているそれに顔を近づける。伊勢の息を感じて、震えた。
そのまま、ゆっくりと口に含んだ。唇の感触だけで、太郎は背筋を振るわせた。
伊勢が、口の中で、ちろちろと舌を動かし、先端を刺激した。
フェラチオを初めて体験した太郎は、それだけで達しそうになった。何とか堪える。
気を散らそうとして窓の外を見ると、野球部員たちがグラウンドを走っていた。
その学校の日常と、その横で繰り広げている自分たちの行為とのギャップに、太郎はめまいを覚えそうになる。
伊勢の舌が、裏筋を這い、そのまま先端にいたって、その先で鈴口を開こうとした。
そこまでで、太郎には限界だった。思わず漏らしそうになって、あわてて引き抜く。
結局、それは失敗だった。
精液は、伊勢のチャームポイントだったおでこを白く汚した。その下のめがねも汚す。
太郎は唖然として、伊勢の頬を伝った精液が、その胸に落ちるのを見ていた。
それから、太郎は謝りながら後始末を手伝っていた。
「わたし、エッチな娘だと思いますか?やっぱり変でしょうか」
濡れたハンカチで、おでこをぬぐいながら伊勢がいった。
女の子がエッチで、男に文句があろうはずもない。
「いや、俺は好きだな、エッチな娘は」
太郎は、間髪いれずに応えた。伊勢は、それを聞くと薄く笑ったが、すぐに表情を暗くして目を伏せた。
「最近、なんかおかしいんです」
以上、第6話「団欒とでこ射」でした。
おでこがチャームポイントである以上、一度はかけねば
>>服をきた猿
俺のことかと思った・・・
フェラからメガネ&デコ射それは正しい行動だ。失敗なものか。
ナイスなこだわりですねw
片方はほのぼの団欒ムードでもう片方はひたすらエロに走ってますね。
これからどうなるのか楽しみです。
作者さんGJ
71 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/14(火) 02:03:25 ID:YgNnOCeN
伊勢さんは経験豊富なん?
主人公と付き合いやすくするために虚勢張る処女だったらたまらんなあ
だまれ処女厨
妹が好きです、でも嫉妬深い妹はもっと好きです
>>60 GJ!ナイス短編だ、ドライな女を演じているが内心では狂おしいほど愛している……そんな女性は素晴らしい!
むしろ今更になって慌ててる一子に萌えた漏れはきっとマイノリティ。
76 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/14(火) 20:50:48 ID:J4dJG4+2
スレの進みが遅いな。
そんな日もあるさ・・・・・・・
プロットでも考えて悶・え・な・い・か?
赤色分マダカナ。
板違いだけどあえてここで聞こう、葱板にあるSS投下スレでこのスレの住人的にお勧めってあるかな?
山本くんまだなの?
他所のスレで嫉妬修羅場成分含んだSSがあったら哨戒機本
投下しますよ
ブルーから視線を外すと、女はこちらを向いて強気な笑みを見せた。わたしがこの世で
一番嫌いな、哀れなものを見るような瞳で見つめてくる。思わず歯を噛み、しかしそれが
わたしのミスであったことに後悔した。もしもブルーを拘束していなかったら今のキスを
避けていたかもしれないのに、無防備な状況にさせてしまったのは不味かった。その結果、
こうして苦い気持ちを味わっている。どうせならブルーだけでなく、女も拘束しておけば
良かった。こんな屈辱は、本当に久し振りだ。
しかも女は何を勘違いしたのか、それはブルーが自分を愛しているからだと思ったらし
く、キスが終わった後も執拗に体を撫でたりしている。今からでも遅くはない、女を拘束
するプログラムをシステムに打ち込もうとするが、苛々とした気持ちのせいで上手くいか
ない。調子付いた手は頬に伸び、擽るように撫でると首に回される。首筋を包んでいる腕
はまるで首輪のようで、所有者であることをわたし達に見せ付けているようだ。わたし達
の首に巻かれた首輪が罪人であることを示すように、ブルーが女のものであると。
嫌だ、認めたくない。
出来ることならば、その腕を引き千切ってやりたい。いやらしく巻き付いた手をブルー
から引き剥がし、汚くなってしまった部分を綺麗にしてやりたい。
なのに、わたしの足は何故かここから一歩も動かない。恐れているのだろうか、ブルー
の口から二人の関係を肯定する言葉が出てくることが。未だにブルーは女の言葉に対する
言葉を発していないが、もし何かを言ってきたのなら、どうなってしまうか分からない。
拘束にしてもそうなのかもしれない。これだけ二人がべたべたとしているのが嫌なのに、
ブルーの体を捕えたままなのは、女に何かしてしまったりわたしから逃げてしまうのが嫌
だからだろう。表情や今までの彼のことを考えれば万に一つも有り得ないことなのだが、
わたしの弱気な部分が心の奥のところを刺激して、決して拘束を解こうとしない。
結局動けず、わたしは棒立ちになった。強く噛んでいる奥歯が音をたて、微かな痛みが
どうすることも出来ない現状を残酷に伝えてくる。口の中が切れてしまったのか、血の味
が口の中に広がった。飲むことも出来ずに不快な味と匂いが口内に残る。
無理にそれを飲み下し、どうすれば良いのかを考える。
言葉で相手を引き剥がす、これは無理かもしれない。この女が相手ではそれが出来ない
ような気がした。相手の表情や態度ではない、独特の雰囲気からそんな感じがしてくる。
それに、もしもブルーが擁護してしまったら、わたしはそれだけで生きていけなくなる。
有り得なくもない話だ。他意はなくてもブルーは自然と弱い者の味方になってしまう人だ、
SSSランクのわたしが救われた事実もあるから、それを否定することは出来ない。もしか
したらという可能性だけで、わたしはその手段を放棄した。
武力ならどうだろうか。わたしは特に体を動かすことが得意という訳ではないけれど、
それでもこの女相手ならば体格差で何とかなるだろう。それが無理でも、確率システムを
上手く使えばどうとでもなるかもしれない。しかし少し考えて、それも無理だと判断した。
女に近付くと嫌が応でもその隣に居るブルーと目を合わせることになるし、女がブルーに
かばわれでもしたらやはり生きていけなくなる。確率システムで女に傷を付けて、それが
原因で嫌われでもしたら元も子もない。殺してしまうことなど論外だ、ブルーの目の前で
人を殺してしまったら、嫌われたり拒絶されたりでは済まないだろう。
女が鼻で笑い、嫌な目を向けてくる。ブルーが動かないのを良いことに頬を寄せて目を
細めた表情は、わたしを敵とすら思っていない証拠だ。
「まだ分からないの? こんなに分かりやすく教えてあげたのに」
それは勘違いだ、叫びたいけれど声が出てこない。わたしは無言でブルーに視線を向け、
だが顔を見ることが出来ずにすぐに目を反らしてしまった。負けを認めているようなもの
だけれど、どうしても見続けることが出来なかった。隣のリサちゃんはどう思っているの
か、険しい顔をして女を見つめている。
不思議な状態だ。
いつもの子供らしさは消えて、まるで軍人のような厳しい雰囲気がある。今にも殺そう
という気配が見えているのに、一歩も動こうとはしない。そして柄に沿えるだけになった手が、気弱な部分を見せていた。
わたしも似たような状態なのでリサちゃんのことをとやかく言えるような状態ではないし、
リサちゃんから見たらわたしもさぞ滑稽に見えることだろう。リサちゃんはわたしを見ず
に相手を睨んだままでいるけれど、ブルーはどうなのだろうかと思う。怖くて確認するの
は無理だけれど、嫌な目で見られていなければ言いなと思う。
どうしてこんな惨めな目に遭わなければならないのだろうか、酷い感情が沸いてくる。
わたしは皆の為に良かれと思ってしたことなのに、罪と言われてしまった。その日から皆
のわたしを見る目が変わり、ゴミでも見るような視線を向けてくるようになった。こいつ
はどうしようもない悪人だと、そんな烙印を押されてきた。ユカリが居るものの苦しくて
孤独な日々が2000年以上も続き、発狂を何度もしそうになった。それでも皆の為にと思い
生き続けてきたのだ。それがどうだ、わたしを酷い目で見てきた人間達はわたしが作った
確率システムで豊かな暮らしを手に入れ、笑顔で暮らしている。今では生きていることを
知る人間も少なくなり、わたしは歴史上の悪人として皆から知られるだけの存在となった。
わたしが今までさんざん辛い想いをして、そして漸く見付けた光も、誰とも知れない他人
に奪われようとしている。権利さえ手に入れることなく、終わろうとしているのだ。
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ。
何かがぷつりと、音をたてて切れた。
狂ってしまえ。
ブルーの目がどうしたというのだ。
幸福は後から着いてくる。
そうだ。
こんな女、いや全員だ。
殺してしまえ。
体の奥底から沸き上がってくる言葉に、否定の余地はない。寧ろ良いことだ、この邪魔
な女を消してしまえばブルーも楽になることが出来るだろう。それに人類数固定のおかげ
で、新しく綺麗な命が生まれてくる。こんな汚い女とは比べようもない程の、尊い命だ。
そう考えると良いことづくめだ、肯定の意見しか浮かんでこない。今までは肯定しながら
も疑問を抱き続けてきた罪だったが、こうしてみるとやはり素晴らしいものだと思える。
罪を犯して良かった、いや、これは最早罪ではない。世界がどんどん住み良く綺麗になる
為の素晴らしいシステムだ。
自分の中で納得すると、急に怒りが消えていった。代わりに沸いてくるのは、女を何の
問題もなく殺すことが出来るという嬉しさ、そしてブルーがわたしのものになるという、
僅かな望み。想像するだけで頬が緩み、声が漏れてくる。
「あなた達、何を笑っているんですの?」
ここは公園、武器になりそうなものは幾らでもある。どうやって殺してやろうか。
串刺。
殴打。
破裂。
溺死。
轢死。
どれも素晴らしくて迷ってしまうが、出来るだけ残酷なのが良い。
内心で歓喜の声をあげながら、わたしはシステム操作の為に指輪を起動させた。
今回はもう一本あります
目の前の光景に、一瞬思考が停止した。
意味が分からずに、ただ眼前の出来事を眺める。この人は一体、何をしているんだろう。
情報として受け取ることは出来る、青さんと見知らぬ女の人がキスをしている。しかし、
それを脳が処理しきれていない。気が付けば柄を握る力も弱まり、軽く開いた掌は淡い熱
と弱い痛みを持っていた。再び手に力を込めようとしても、上手く握ることができない。
は、という吐息が聞こえ、女の唇が青さんから離れた。互いの唇の間に透明な橋ができ、
惜しむように粘度を持ちながら離れてゆく。そして女は指先でそれを拭うと、あたし達に
向かって小馬鹿にしたような笑みを向けた。
そこで漸く行為の意味を理解し、先程の言葉の意味を飲み込んだ。途端に、体中を焼く
ような強い感情が押し寄せてくる。女やサラさんが青さんと寝たと言ったときも酷かった
けれど、それを遥かに上回る強い怒りと嫉妬が沸いてくる。言葉だけなら大丈夫だった、
そう自分に言い聞かせていたが、実際にそうしたことを目の前でされるとその非ではない。
それ以上のことをしたというのは聞いた、だが見ていないからといってどこか逃げていた
のだ。しかしこれには逃げ場がない、紛れもない現実だ。体験して、女の言葉が現実身を
もってあたしの心に襲いかかってくる。
この女は、青さんのもの?
青さんは、この女のもの?
違う、青さんは無理矢理されただけだ。昔は好き合っていたのかもしれない、あたしが
知らない繋がりがあるのも事実だろう。現に女は青さんが自分の為にここに入ったと言い、
青さんもそれは否定しなかった。悔しいけれど、過去にそんな出来事があったことは認め
ざるを得ないだろう。だけども、それは飽くまで過去の話だ。今の青さんには関係ない。
そう、こんな下らない女などに惑わされて、姉さんを、そして青さんのことを諦める訳
にはいかないのだ。それを確認し、頭のスイッチを切り替える。いつまでもされるように
してはいけない、寧ろ責める姿勢でいくように心を整える。考えるのは悪いことではなく、
相手を倒すこと。それは言葉でも暴力でも構わない、勝てば良いのだ。そう教えてくれた
教官に感謝の気持ちを送りつつ、相手をじっと睨みつける。
「まだ分からないの? こんなに分かりやすく教えてあげたのに」
分かる訳がない、分かりたくもない。
それどころか、他の女の人も要らない。
何度も心の中で否定の言葉を重ね、そして気が付いた。どうして今まで気付かなかった
のだろう、これまでの馬鹿な自分を呪いたくなってくる。しかし、今は気が付いた自分を
誉めるべきだろうか。あたしも姉も幸せになれる方法が、存在したのだ。
あたしが姉を生き返らせる手段として選らんだのは、多重人格症候群というものだった。
軍では扮装して敵地に潜り込み、そして奇襲を仕掛けるという部隊に入っていたので要領
は得ていたし、そもそも今の計画もそこからヒントを得たものだ。こうでありたいと強く
願うことで生まれてくる人格は、想いに沿ったものになる。あたしと姉は一卵性の双子で
あるから遺伝子的には全く同じ体なのだから、乱暴に考えればその違いは中身だけという
ことになる。だから姉の人格をあたしの体に入れれば、それは姉そのものということなる
のだ。幸いにしてあたしは童顔だし、第四惑星の人間は約10才程度で外見の成長は殆んど
止まるので、幼い姉を演出するのは容易い。後は、あたしがフォローをしながら少しずつ
成長させ、成人したら前に出てこなくなれば良い。親も見付ければ、幸せに暮らしてゆく
ことが出来るだろう。
ここまでが今までの計画、しかしそれを少しだけ変える。
何も親を無理して探す必要などはなかったのだ。あたしと姉の心が自分の体に共存して
いるということは、あたしの体が青さんの隣にずっと存在するということだ。青さんを父
に選んで、姉がずっと生きていく。それをサポートするあたしは、まるで姉の母親のよう
なものなのだ。それはまるで青さんと夫婦のようじゃないか、そう考えれば全てが上手く
いくだろう。姉が一人前になったら消えようとしていたが、それはとんでもないことだ。
ずっと一緒に居れば良い、そうすれば一体一の男と女の組み合わせであたしの理想の親子
関係を築くことが出来る。他の女なんか必要ない、あたしと青さんだけの閉じた世界が、
一番だと分かったからだ。きっと姉もその意見には賛成してくれるだろう。
そして築いた家庭では幸せな生活が待っている。あたしだけが青さんと睦事を経験して
いないというのは辛かったが、いずれ気にならないようになるだろう。あの女と似たよう
なことを言うのは酌だが、あたしも青さんも共に不老なのだ。これからは余る程に、それ
こそ無限に時間はあるのだから幾らでも取り返すことが出来る。何百年も何千年もかけて
埋めていけば良い、それの何と素敵なことだろうか。
剣を握る。
この女を殺すのは簡単だろう。軍を辞めてから約50年以上の時間が経つとはいえ、人目
を盗んではトレーニングを続けていたので体に訛はない。それに対してこの女は機械人形
のナナミさんを侍女にしている青さんの昔馴染みだと言っていたし、綺麗な衣服や華奢な
外見から何の訓練も受けていないお嬢様であろうことは容易に想像できる。あたしと女の
差は歴然としたもので、殺すのは赤子の手を捻るより簡単だろう。今のこのときばかりは、
軍人一家に産まれたことや厳しかった訓練に感謝した。
問題があるとすれば不老不死だというサラさんだが、それもこの二週間を殆んど一緒に
過ごしていたことで大体のトリックは分かってきた。最初に会ったときにナイフを差そう
としても無駄だったが、今ならば勝てるような気がしてくる。その課題さえクリアをして
しまったら、後は楽なものだ。サラさんも何の訓練も受けていないだろうし、隠している
だけの可能性もあるが基本的に運動能力は普通の人間と何の変わりもない。それどころか
デスクタイプの弱さもあり、女性であるということを差し置いても余裕で勝てる。
つまり、何の障害にもならないのだ。
殺した後も問題は幾つか残るだろうが、それは些細なもの。寧ろ今まで殺そうとしても
殺すことの出来なかったサラさんを殺すことが出来たのだから、何かの恩賞が貰えるかも
しれない。良いことずくめだ、俄然やる気が沸いてくる。
そう決めてしまえば、後は実行に移すだけ。
いつの間にか完全に抜けていた力を再び込めて、剣の柄を握り締めた。軍人時代、姉と
お揃いで使っていたこれは存在だけであたしに勇気をを与えてくれる。これがあるから、
あたしは今まで発狂しそうな深い闇にも耐えてくることが出来た。今回もきっと、あたし
に力を与えてくれるだろう。大きな壁を乗り越えて突き進み、敵を切り裂いて光を見せて
くれるこれは、あたしが生きてきた証だ。それが裏切る筈がない。
女は不思議そうにこちらを見つめてきた。
「あなた達、何故笑っているんですの?」
それは、明るい未来が見えるから。
この腹の立つ女を殺し、他の邪魔な女を殺し、青さんとの幸せな生活を考えたからだ。
目標に向かっての第一歩として、あたしは剣を鞘から抜いた。
今回はこれで終わりです
秘技『二人同時病み』
ついでにプロットを一つ
主人公はどこにでも居る馬鹿でエロい青年、ヒロインは生真面目で潔癖な少女
しかし少女には主人公と二人だけの秘密があった、それはヒロインは多重人格だったのだ
普段はツンのみガールなヒロインだが、内心は超デレという厄介な性格
もう一人の人格は世間を全く気にしない、これまた厄介な性格
二人目の人格のせいで周囲からは突発的にエロくなるアホカップル認定されていた
そんな主人公とヒロインは二人目がセックスをして、一人目に戻ると嫌そうな顔をすると
いう不思議な生活を送っている
ある日いつものようにセックスをしていたが、実は二人目の演技をした一人目だった
それに激怒した二人目は頻繁に表に出るようになり、一人目は逆に姿を消していった
しかしそれは罠だった
二人の仲が良くなる時期が来るのをひたすらに待ち、頃合いになったら自分が表に出て、
周囲から不自然に思われないように主人公とバカップルになる作戦だったのだ
それは成功をしたものの、今度は二人きりのときに二人目の名前で呼んでくることに悩み、
辛い日々を送ることになった
そんな中で消したと思っていた二人目が再び現れて、今まで二人目だと思って接していた
主人公は驚愕の事実に混乱する
Sideリサを書いていて思い付いたネタです
俺は謀略系の話しか思い付かないから困る
とてもいいじゃないですか!
少なくとも俺は読んでみたい。
>>94 二重人格ネタは、女の子同士のやり取りがなくて難しいかも
インナースペースで喧嘩とか
別の体を手に入れて喧嘩とか
ツイスター投下します
97 :
ツイスター:2006/11/14(火) 23:07:17 ID:3BMu+hMu
伊勢の周辺で異変が起きはじめたのは、ここ最近のことだった。
そう、太郎と付き合い始めてからのことだ。
伊勢の家は、太郎の帰り道からすこし外れたところにあった。
途中までは一緒に帰り、家まで5分ほどのところで分かれて一人になる。
その日は、軽音の活動日で帰りが遅くなっていた。
太郎と付き合い始めてから、別に淫行にふけっていただけではない。
学園祭のライブに向けて、まじめに練習もしていた。太郎の彼女として、それを成功させてやりたかった。
何より、一人のロック好きとしてやりがいのある企画だった。
一人になって、伊勢は後ろに誰かがいるのを感じた。
それだけならば、何も不思議なことはない。今の時間帯なら、この道を誰が歩いていてもおかしくはない。
おかしいのは、後ろを振り返ってみても、誰の姿もないということだった。
そこにいたのは夕日に照らされた自分の影だけだ。だが、気配があった。
誰もいないのに、誰かがいる。
勘違い、気のしすぎだと思おうとした。だが、うなじに感じる視線は、とても気のせいだとは思えなかった。
自然と足が速くなる。家までは、すぐのはずだ。しかし、このときは家に着くまでがやたらと長く感じた。
自分の家の門が見えると、もう我慢できなかった。伊勢は、走り出した。
すると、視線の主も走り出した。もちろん、伊勢にそれは見えていない。ただ、そう感じた。
ほとんど全力疾走で家までたどり着き、ドアを開け、玄関に飛び込んだ。
すぐさま、鍵をかける。そのとき。
どん!!
ドアに何かがぶつかる音がした。
その衝撃が、ドアに寄りかかっていた伊勢に伝わった。伊勢の心臓が飛び跳ねる。
どくどくと、ものすごい音を立てて、鼓動が鳴った。のどがからからに渇いている。
それっきり、静寂が降りた。
「おかえり、どうしたの?」
玄関に現れた母親の声を聞いて、伊勢はずるずると背中をドアにつけたまま腰を落とした。
しばらく、口がきけないほど、伊勢はショックを受けていた。
やがて落ち着いてから、事情を話した。それを聞いて、母親がドアの外を確認するという。
伊勢は、それを止めようとした。しかし、いささか豪胆なところのある母親は玄関にかけてあった靴べらを手にドアを開けてしまった。
ドアの外を確認した母親が、悲鳴を上げた。
からすの死体だった。どうやら、ドアに衝突して死んだらしい。
母親は、縁起の悪いことだとぶつくさ言っている。
では、自分を追いかけていたのはからすだったとでもいうのだろうか?伊勢は、呆然とした。
98 :
ツイスター:2006/11/14(火) 23:08:30 ID:3BMu+hMu
奇妙なことは、それ以降も続いた。
伊勢の、毎朝の日課は朝配達される牛乳と新聞をとりに出ることだった。
ある朝、パジャマを着たままの伊勢がいつものようにとりに出て、家に持ち帰ろうとして異変に気付いた。
牛乳のふたが、少し開いていた。
ぞっとした。
単なる、牛乳屋のミスかもしれない。だが、これまでこんなことは一度もなかった。
それに、ビニールの部分を一度はがしてから、かぶせた痕跡がある。配達された後に、誰かがふたを開けたに違いなかった。
誰かが。
何を入れたにせよ、細工にしてはずさんだった。これなら、何かされたことは一目瞭然だ。
気がつかずに飲んでしまうということは、よほど無頓着な人間でない限り、おそらくないだろう。
だとすれば、これは警告だ。今なら、こんなみえみえのわなで勘弁してやるという。
いや、やはりただの悪戯かもしれない。伊勢は、そう言い聞かせた。
自分にはこんな脅しを受けるような心当たりはない。恨みを買うようなことをした覚えはなかった。
だから、疑心暗鬼になるのはやめよう。
ただ、その牛乳を飲むのはやめた。
次の日の朝、今度は新聞受けがむちゃくちゃに壊されていた。
これには父親も憤ったが、警察に届け出るほどではないだろうと、新しい新聞受けを買ってきた。
伊勢には、一連の出来事が、悪意を持った誰か一人の手によって引き起こされているのだと思えてならなかった。
ただ、その悪意が、自分に向けられているのか、あるいは家族の誰かに向けられているのかは分からない。
自分には身に覚えがない。母親も誰かに恨まれるような人間ではない。では、父親の仕事の関係なのではないかと疑った。
父親は、地方銀行の支店長だった。娘の自分に話したことはないが、おそらく融資先の人間などからうらまれることもあるだろう。
だとすれば、父親に向けられた悪意のとばっちりを受けているのだろうか。
すべては、推測に過ぎなかった。ただ不安だけが募った。
不安が募ると、なぜか性欲が増した。
これは、誰でもそうなのか、自分だけがそうなのか伊勢は分からなかった。
不安を、性欲によって打ち消そうとしているのかもしれない。伊勢はそう思った。
99 :
ツイスター:2006/11/14(火) 23:09:55 ID:3BMu+hMu
昼休み、部室の片隅、その戸棚の影で、伊勢は自分のスカートを持ち上げていた。その前で、太郎がかがんでいる。
誰かが来て部室の戸を開けても、自分たちは見えないはずだった。それでも、いつ人が入ってくるかと二人ともびくびくしていた。
それがかえって、不謹慎な快楽をあおっていた。
「濡れてるよ、伊勢」
本当はまだ、表から目に見えるほど濡れてなどいなかった。太郎はでまかせをいった。
だが、それを間に受けた伊勢が、恥ずかしそうに身をよじった。
「いやあ」
すると、薄いショーツにじわりとしみが広がった。
「スカート、持ったままでいろよ」
太郎はそういうと、ショーツに手をかけてゆっくりと下ろした。
伊勢のそれを目にしたのは初めてだった。いや、こんな風に女の性器を凝視したのは初めてだった。
以前に、ちらりと見た次子のものとは違っていた。
次子の時にはぴったりと閉じていた小陰唇が、厚い花びらを持った花のように広がっていた。
その内側は、蜜でたっぷりと濡れている。いや、あふれた蜜が花びらも濡らしていた。
おそろしく、淫猥な光景だった。太郎は、自分の頭がくらくらするのを感じた。
「本当にスケベなんだな、伊勢は」
「そんなあ。いわないでください」
媚を含んだ声でそういった。太郎が伊勢の顔を見ることができていたら、その淫蕩な表情に驚いたかもしれない。
だが、あいにく伊勢の胸が邪魔をして下からはその表情を確認することはできなかった。
「だって、伊勢初めてじゃないんだろう?最初はいつ誰とやったんだ?」
この場の異常な空気が、太郎にそんなことまでいわせていた。いつもなら、そんなこと口に出せたはずもなかった。
だが、伊勢の淫蕩さと従順さが、太郎をどこかサディスティックにしていた。
あるいは、自分より先に伊勢を抱いた誰かに嫉妬したのかもしれなかった。
「ああ、ごめんなさい、せんぱい。でもすきなのは、すきなのはせんぱいなんですう」
そういいながら、腰を揺らした。割れ目から飛び出た舌がぷるぷると震えた。
太郎に応えながら、伊勢もどこかマゾヒスティックな快楽を感じている。
その証拠に、花びらの奥から蜜があふれていた。
「いいから、いえよ」
太郎は、かすれた声でそういいながら、人差し指と中指を伊勢の中に差し込んだ。
そして強めに、かき回した。
伊勢は、崩れ落ちそうになった体を、太郎の肩に手を置いて支えた。
100 :
ツイスター:2006/11/14(火) 23:10:49 ID:3BMu+hMu
「い、いいます。14、14のとき、せんせいに、ああ、せんせいにされたんですう」
14歳といえば、伊勢がまだアメリカにいたときだ。
優等生然としているが、帰国子女なんだから進んでいるはずだという男子たちの勝手な妄想が当たっていたことになる。
まさか、教師と関係を持っていたとは誰も思ってはいなかったろうが。
「他には。他には誰とやったんだよ」
太郎が、いっそう激しく伊勢の中をかき回した。膝のところでとまっているショーツの上にぼたぼたと愛液が滴り落ちる。
「それだけ、それだけです」
「本当か」
「ほんとう、です、わたし、もう、せんぱい、しか、もう、だめ」
伊勢は、そういいながら体を震わせ、太郎の指を締め付けた。息がとまっているように見えた。
やがて、体を弛緩させると、腰を落とした。荒い息をつきながら、太郎の首に腕を回して自分の体を支えた。
その身じろぎで射精してしまった太郎は、先までの自分を振り返るだけの冷静さを取り戻した。とたんに自己嫌悪に陥る。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「あの、すまん。調子に乗ってしまって」
ばつの悪そうな顔をしてそう謝ると、伊勢は太郎の耳元でいった。
「いえ、いいんです。わたしも、気持ちよかったし」
こんな風に乱れたのは、今朝の出来事が原因だろうと伊勢は思った。
通学中、あるマンションの前を通りがかったときだった。目の前に何か大きなものが音を立てて落下した。
叩きつけられたそれは、一度大きくバウンドして地面に横たわった。
三輪車だった。
後一歩前に出ていれば、確実に当たっていた。そして当たればただではすまなかっただろう。
死んでいたかもしれない。伊勢は、背筋が凍るのを感じた。
子供の悪戯かもしれない。あるいは住人の不注意かもしれない。普通ならそう考える。
だが、伊勢は最近の不審な出来事と、このことを切り離して考えることができなかった。
それらを結びつけるのは勘だけだったが、今はそれがどんな合理的な説明よりも確かなものに感じた。
そして、それが確かならば、狙われているのは自分だということも同じく確かなことだった。
しかし、これが自分だけにしか持ち得ない確信だということも、伊勢にはよく分かっていた。
誰にいっても、そこに明白な連関を見出すことはできないだろう。警察にいってもきっと無駄だ。
そして実際に、すべては単なる偶然の出来事であったのかもしれないのだ。いや、そうであってほしい。
誰かに相談した時点で、自分の懸念が本当のことになってしまうのではないかという非合理な恐れを抱いた。
伊勢は、自分の確信をその願望だけで押し殺した。
その日、伊勢が帰宅すると、机の上にはねじ切られた犬の首が置かれていた。
何の冗談か、おもちゃのめがねがかけられている。
陰惨で、しかも滑稽なその光景に、思わず伊勢は笑いだしていた。
ふッ……ふたり同時にだとッ
う…うろたえるなッ! 修羅場廃人はうろたえないッ!!
以上、第7話「インヴィジブル・ストーカー」でした。
妹研メンバーいわく、「理想の妹は処女でなければならない」
GJ!!
やはり、召喚されただけあって悪魔じみてきましたね。
「ど、同類だ!インヴィジブル・ストーカー(見えない追跡者)!」キター
うっは怖ぇええええッ
実は犯人は次子ではなく嫉妬に狂った山鹿だ!
ktkr
召喚者には修羅場スキー以外に邪悪ヒロインスキーもいた模様。
兄の知らないところで事態はかなりの深刻化を。
さすが理想の妹w
作者さんGJ
理想の妹は兄に仇なす女を排除してくれるってことか。ステキだな
理想の妹歪みすぎだろw
非処女に多少拒絶反応が出てしまう俺はまだ若いのだな
妹可愛いよ妹
>>102 妹研メンバーに激しく同意
投下いきます。
意識を戻した智の目に最初に映ったのは、布の屋根だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」
とりあえず疑問符を浮かべてみたものの、意味のない呟きでしかない。
何が分からないのかさえ分からないのだから、気の利いたセリフなど出ようはずも無いのだが。
沈み込むほどフカフカなベッドの心地よさに意識を落としたくなるのを耐え、智は何とか身体を起こした。
――そう、ベッド。しかも天蓋付き。智が見た布の屋根とは天蓋のことだったのだ。
(すっ・・・げえなあ・・・。実物を見たのは初めてだ・・・)
しかも、それに寝かされていたときている。
立ち上がって部屋を見渡し、智は更に度肝を抜かれることになった。
自宅の敷地――標準的な一戸建てだ――とほぼ同等の面積の部屋。
敷き詰められた絨毯は、そのまま寝転がっても普通に熟睡できそうな足触り。
いくつかの家具や調度品は、智の目から見てでもはっきり分かる高級品。
それらが、部屋を殺風景にしないよう、且つ客人を威圧しないよう、絶妙のバランスで以って並べられていた。
ひとしきり見渡してベッドに腰掛け、智は考えてみる。
誰かが自分をここに連れてきたのは確かだが、この扱いからして悪意ある人間ではないだろう。
よほど嫌味で悪趣味な人間の仕業とも限らないが、そんな人間の恨みを買った覚えは無い。
そしてこの部屋の内装からして、相当な資産のある―――。
‘コンコンッ’
「・・・!」
ノックの音に思わず立ち上がってしまう智。
突然の来訪者に全身を力ませ、扉を凝視している。
相手に悪意がないと推測できても、不安までは払拭できないのだ。
智の返事がないことをまだ寝ていると判断したのか、扉がそっと開けられる。
「・・・あら? 起きていらっしゃったのですか。お身体はもう大丈夫なのですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
智は返事をしない。唖然としていて出来なかったのだ。
(メイド・・・さん?)
白のエプロンドレスにカチューシャ、現れた女性はどうみてもメイドさんだった。
「高村様?」
「あっ、はいっ!?」
怪訝そうなメイドの声で我に返り、智は裏返った声で返事をする。
それを気に留めた様子もなく、メイドは言った。
「大丈夫でしたら参りましょう。お嬢様がお待ちです」
メイドの女性――20代後半くらいか――に先導され、智は立派な絨毯の敷き詰められた通路を歩く。
学校の廊下以上に長いその通路にはいくつものドアがある。
ドアの置かれた間隔から察するに、中の部屋はいずれも智が寝かされていた部屋と同等の大きさであることが伺えた。
「あ、あの・・・!」
「事情はお嬢様からお聞き下さいませ。私は高村様がお目覚めになったらお連れするようにと申しつかっただけですので」
内心の不安からつい声を掛けしてしまった智に、メイドは振り返ることなく答える。
そう言われてはこれ以上聞くこともできず、智は置いていかれないよう早足でメイドに続いた。
(お嬢様、か・・・。一体誰なんだろう・・・?)
メイドの背中を追いながら智は考える。
歩き始めて早数分が経過したが、お嬢様とやらの居場所はまだらしい。
(お嬢様・・・お嬢様・・・おじょ・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
「あっ・・・!」
はっとして声を上げてしまうが、メイドが気づいた様子はない。
なぜなら、いつの間にか立ち止まっていたメイドが扉をノックする音と智の声が重なっていたから。
どうやら目的地に着いていたらしい。
(お嬢様ってもしかして・・・。いや、もしかしなくたって・・・)
というか、なぜここまで気が付かなかったのか。該当者は1人しかいないのに。
突然のことに混乱していたとはいえ、智は自身の鈍さを呪いたくなった。
そして同時によみがえる、彼女にしてしまったとんでもない罪。
しかし状況は無情にも、智の心の準備を待ってくれなかった。
「お嬢様、高村様をお連れいたしました」
メイドの声に一拍置いて、部屋の中から声が返ってくる。
「入ってください」
凛とした大きな声が返り、メイドが扉を開く。
今更逃げることも叶わず、智はメイドに続いて部屋に足を踏み入れた。
智が部屋に入ると、入れ違うようにメイドが退出する。
部屋に残ったのは3人、智以外の2人は彼の予想通りの人物だった。
「お久しぶりです、高村先輩。もう大丈夫なのですか? お嬢様も心配なさっていましたよ」
丁寧な口調で微笑みかけるポニーテールの少女と、その隣りでコクコクと首を縦に振る長髪の少女。
言うまでもなく、綸音と藍香だ。
「病み上がりの上に、登校早々お嬢様の実験の失敗に巻き込まれたとか・・・。
気絶した先輩を放っておくわけにはいかないと、お嬢様の意向で此処に運ばせていただきました。
あっ、ちなみに此処は神川の別宅です。普段お嬢様や私が生活している家ですよ。
私たちの他には使用人しかいません」
藍香を前にした智の後ろめたさを、今の状況への戸惑いと思ったのか、綸音が先立って状況の説明をしてくれる。
藍香の方を見ると、またコクコクと頷いていた。
部室での『あれ』は、綸音には知られていないらしい。
(話を合わせろってことか・・・)
正直、今の智にはその方がありがたい。
「そう、なのか・・・。確かに、起きたら全然知らない場所だったから驚いたよ。
で、今は何時? 俺、どのくらい気を失ってたんだ?」
「今は7時半です。私たちが帰宅して1時間くらいですね」
記憶が正しければ、藍香の前で散々泣き散らし、泣き疲れて意識を失ったはず。
なんとも情けない話だが、今は自省している場合ではない。
いつもなら、とっくに下校して千早と食卓を囲んでいる時間だ。
(千早・・・)
智の記憶に残っているのは、手刀で千早を吹っ飛ばしたところまでだ。
思いのほか手応えがあった気がするが、大丈夫なのだろうか。
(いや、それよりも―――)
―――千早の心はどうなのか。今頃どうしているのか。
智が突然去ったことに、一週間前のような狂態を晒しているだろうか。
智に傷つけられたことに、ショックを受けているだろうか。
いや、それ以上にきっと。
恐怖しているのではないか。
なぜなら。
116 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 01:34:55 ID:3N4yPYG4
>>111 確かに・・・後輩だからかな。
先輩だったらあんまり気にならんが。
(知られたんだ・・・)
自分の中の化物を知られた。
理性を完全に失っていたためか、はっきりとした自覚は無い。
しかし、藍香を犯した時のおぼろげな記憶が、自分が如何に化物であったかを存分に物語っている。
千早はそれを目前で、身を以って思い知らされたのだ。
外見など関係ない。『分かる』はずだ。
人の姿をした化物だと。千早の知る、幼馴染の智ではないと。
千早の心を傷つけ、今また身体をも傷つけた。
もはや自分は、千早にとって害のある存在でしかなくなってしまった。
(もう・・・一緒には居られない・・・)
だがそれは、十数年来の自身の居場所を失うということ。
これから一体、自分はどうすればいいのだろ―――。
ぐぅ〜・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その音は、やけに大きく響いた。
2人の少女は目を丸くして智を注視し、当の智も思考の中断を余儀なくされる。
一瞬後、智の顔が真っ赤に染まった。
腹の虫の音だ。それも特大の。
昨日の夜から丸一日何も食べていないし、一週間ぶりに色々と身体を動かしたのだから、仕方ないかもしれない。
それでも、と赤面しながら智は思う。
(だからってこんなところで・・・。ちょっとは場を弁えるべきじゃないか、俺?)
だが思ったところで後の祭り。
食欲は人間の本能であり、所詮人は本能には逆らえないのだ。
あっけに取られていた綸音が、我に返るとクスリと微笑んだ。
「お食事にしましょうか。すぐに準備をさせますから」
そう言うと、足早に部屋を出て行ってしまった。
そして、部屋には智と藍香だけが残される。
途端に気まずくなる雰囲気。
いや、気まずいと思っているのは智だけなのだが。
「あの、先輩。俺・・・・・・」
とにかく何か言わなければと思うものの、上手く言葉になってくれない。
あんな目に遭わされた藍香が加害者である自分をわざわざ連れ帰ったのには、何らかの意図があると智は考える。
無かったことには勿論、単純な謝罪で済ませる気もないということだ。
いっそ断罪してくれれば楽なのにと思うが、それは智が判断することではないだろう。
自分は此処で、何かするかされるか、しなければならないのだ。
もっともそこまで分かっても、だからどうするといえば何も思いつかないわけで。
このような煮え切らない言葉しか出てこない。
そんな智を見かねたのか、藍香がゆっくりと近づいてきた。
部室でしたように智の頭をゆっくりと撫で、智はそれだけで心が安らいでいくのを感じる。
甘えては駄目だと、自分にそんな資格はないのにと必死に言い聞かせても、伝わるぬくもりの心地よさに全て駆逐されてしまう。
罪も、欲望も、秘密も、涙も。
藍香は全てを受け止め、また今も受け入れようとしてくれるのだろうか。
智の身体から力が抜けてくると、藍香は智の身体をを抱き寄せた。
抵抗もなく、智の頭は藍香の胸に抱かれるようにすっぽりと収まる。
そして、耳元に囁かれる小さな呟き。
一分近くの逡巡を経て、智の首が小さく縦に振れた。
・
・
・
コンコン
「お嬢様、高村先輩、食事の準備が整いました。どうぞお出で下さい」
控えめなノックの後、綸音の呼ぶ声が響いた。
藍香は優しく微笑み、先導するように手を引いてくれる。
智はそれに曖昧な笑みを返すと、手を引かれるままにドアに向かって歩き出した。
『ずっと、私が傍にいますから』
耳に残る音と吐息の優しさに、泣きそうになるのを堪えながら。
そして、藍香の身体の感触に劣情と卑しい期待も抱いてしまった自分に、それ以上の自己嫌悪を感じながら。
今回はここまで。主人公、ちょっとダメな子になってきました。
久々の割に大した進度じゃなくてすみません。次から動き出す・・・予定です。
久しぶりのブラッドフォースキターー!!!
藍香してやったりといったところですねw
このまま智は落ちていくのか。
メイドの方と一緒に楽しみに待ってます
作者さんGJ
ktkr!負い目を感じている状態からさらに優しくする事で藍香のリードが大幅広がった様に見えるが
千早の監禁調教にも堪えて泥沼化させた智なら智ならきっとこのままでは終わらないはずだ
作者様GJ!
藍香先輩もいいがいつエルの襲撃があるかと心待ちにしている俺ガイルw
|ω・`)藍香め、謀略を巡らせていた女の子とは思えないぜ
クッ、千早派としては、千早がもはやリタイア組みなのが悔しい(;つД`)
馬鹿野郎!
千早ならきっと・・・きっと手料理とバットで襲撃してくれるはずだっ!
そういや、トライデント氏の新作とかまだぁ?
鬼ごっこの続きまだぁ?
楽しみにしている作品の続きが来ないのは寂しいです
九十九の続きマダー?(チン
127 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 14:28:54 ID:5Jlr5fxn
着々と智君飼い殺し計画が進展している模様。
しかし、戦闘能力の高いお二人方が後ろに控えてるのでこのまま終わりそうもない気配。
次回が楽しみ。
最近、SSの神以外の一般人の書き込みが少なくなっていないか?
あまり書き込んでレス消費するのもアレかと思ったんだが・・・
少ないのもまずいか?
俺も
>>129と同じような感じかな。
実際朝スレをチェックしてみて新着20!新作あるな〜と思って見てみて
住民の会話しかないと萎えるな
まあ大体が荒れてるときだからな
神の投下に触発されて自分も書いてみようかな……って思ってる住人は結構いそうなんだけど
「プロットを投下してみる」というのが意外に少ないな
プロットだけの投下が始まると収拾が付かなくなりそう。
う〜ん、でもサ
そうしたプロットから生まれた名作だってあるわけだし
スウィッチとか姉妹日記がそうじゃん?
それで?
ツイスター、投下します
137 :
ツイスター:2006/11/15(水) 23:14:45 ID:MSiToLll
自分の机の上に、めがねをかけた犬の首が置かれていたということ。
それは、単なる嫌がらせ以上のものだ。それが意味するところを、伊勢は正確に理解していた。
この首は、自分の首に見立てられている。つまり、ほとんど殺人予告のようなものだった。
それだけではない。
これをやった犯人は、伊勢の部屋に誰にも気付かれずに侵入していた。家には、母親がいたにもかかわらず。
そういうノウハウを持った人間の仕業だということだ。
ここにいたって、さすがに伊勢も、伊勢の家族も警察に通報する気になった。
ストーカー防止法ができて以来、この手の嫌がらせや家宅侵入を警察も深刻に扱うようになったはずだと聞いていた。
しかしそれを期待していた伊勢の家族は、いささか拍子抜けした。
犯人の侵入経路も分からず、指紋も取れないことが分かると、警官はいくつかの注意をしただけで帰ってしまった。
いわく、戸締りをしっかりすること、何かあったらすぐに電話すること、そして周辺の巡回を増やすということ。
これが、殺人予告に等しいものだと訴えてみても、警官は過剰な反応だと取り合ってくれなかった。
逆に、このような仕打ちに身に覚えがないのかをしつこく聞かれた。
それがまるで、伊勢の側に何か非があったのではないかといわれているようで不快に思った。
身に覚えがあるとすれば、それは太郎に関することだろうと伊勢は考えていた。
異変が生じはじめた時期に自分に変化があったとすれば、そのことだけだったからだ。
ただ、それを訴えるのははばかられた。
確証はなかったし、太郎に迷惑をかけるかもしれなかった。
何より、そのことで太郎から引き離されてしまうことを恐れた。
いや、恐れただけでなく、憤った。
もしそうなれば、それはストーカーの思い通りにことが運んだということではないか。
そんなことが許せるはずもなかった。
それに、おそらく犯人は女だ。太郎に横恋慕している女の仕業だ。
ならば、気をつけてさえいれば、みすみすやられることもないだろうと思った。
いや、返り討ちにすることさえできるかもしれない。
伊勢は、スタンガンを持ちあるくことにした。
それを忍ばせながら、いつもどおりの日常を送ってやろうと伊勢は決心した。
それが、卑劣なストーカーに対する抵抗だと思った。
だが、いったいその女というのは誰なのか。
太郎の交友関係は、大まかに把握しているだけだったが、それがあまり広くはないことを伊勢は知っていた。
親友と呼べるのは、おそらく山鹿一人だろう。それは、山鹿にしても一緒だったのだが。
それから、同じ軽音に所属している友人たちがいた。妹研の部員たちとの付き合いは薄い。
それらはすべて、男同士の付き合いだった。
軽音には、女は伊勢しかいないし、同じクラスに特別仲のよい女友達がいるというのも聞いたことがなかった。
いや、相手は異常者だ。太郎には関係なく、一方的な愛情を抱いている見知らぬ女が犯人なのかもしれない。
そうだとすれば、太郎の身の回りから犯人を推測するのは難しいだろう。
そこで、自分以外で太郎の回りにいる近しい女のことを伊勢は思い出した。
二人の妹のことだ。
138 :
ツイスター:2006/11/15(水) 23:15:27 ID:MSiToLll
一子のことは、クラスは違うがよく知っていた。彼女がこんな陰湿なことをするとは思えなかった。
いささか粗野なところがあるが、さっぱりした性格をしていると、伊勢は分析していた。
それに、動機がない。彼女は、兄の太郎とあまり仲がよくはないと聞いていた。
太郎には、もうひとりの妹、次子がいる。
伊勢は、先日、太郎の家で初めて会った彼女のことを考えた。
そして、次子が自分に向けた目のことを思い出した。
あのとき、次子は終始にこやかに笑っていた。少なくとも、太郎に見せていた表情には嘘はなかった。
だが、自分に向けた目の奥は、まったく笑っていなかった。
アイスティーを勧められてすぐさま飲み干したのは、彼女を早く追い出したかったのと、自分の内心の動揺を抑えるためだった。
単に、客のために作り笑いをしていたというだけなら、その目の奥にあったのは無表情のはずだろう。
だが、実際に目の奥にあったのは、激しい感情の揺らぎだった。あれは、何だったのだろう。赤い感情だった。
少なくとも、それがよいものではないということだけは、伊勢にもはっきりと分かった。
そんな目を向けられて、動揺してしまったのだ。
思えば、アイスティーを飲んでしばらくして急に腹が痛くなったのも、偶然ではない気がしてきた。
もしかしたら、一服盛られたのではないか。
しかし、次子が犯人だとして、なぜ彼女がそんなことをするのか。
確かに、ずいぶんと兄である太郎を慕っている様子だった。
だが、それだけで兄の彼女である自分を殺そうとまでするだろうか。それはもはや、兄妹愛だけでは説明がつかない。
では、次子は太郎を女として愛しているとでもいうのだろうか。そんなことがありうるのだろうか。
伊勢は一人っ子だった。妹が兄に寄せる思いがどんなものなのかは分からない。
しかし、妹が兄を女として愛するということがタブーだということは知っていた。
普通に育っていれば、そんなことにはならないということも。
伊勢は、次子が学校に行っていないという太郎の説明を思い出した。
それ以上詳しく聞くことははばかられたのだが、それは次子が普通に育っているのではないことを意味している。
では、やはり次子は異常なのだろうか。それで、兄を愛してしまい、こんな行為に走ってしまったのだろうか。
すべては推測だった。そうである以上、このことを軽々しくおおっぴらにすることはできない。
次子は、ストーカーであるかもしれないが、太郎の妹でもあるのだ。
伊勢の推測が正しかろうと間違っていようと、太郎は大いに悲しむだろう。
いや、太郎のためにも自分の推測が間違っているようにと伊勢は祈った。
ともかく、今は可能な限り気をつけることだ。
なるべく一人にならないようにし、スタンガンをいつでも持ち歩く。
139 :
ツイスター:2006/11/15(水) 23:16:36 ID:MSiToLll
太郎は、伊勢が最近憔悴した顔を見せるようになったことに気付いていた。
たずねてみても、ただ眠れないのだというだけで、核心についてははぐらかされていた。
そんな時、伊勢はいつもキスをねだってごまかした。二人きりの時には。
今、太郎と伊勢は二人きりではない。軽音の他の部員たちと一緒に練習をしていた。
太郎を含めた皆は、伊勢の様子を心配して帰るように勧めたが、伊勢はここにいたがった。
家に帰れば、また何かが待っているかもしれない。そう考えると、家には帰りたくなかった。
ここならば、皆がいる。何より、太郎がいた。家にいるよりも、ずっと安心した。
「歌、どんどんよくなるな」
休憩中、太郎がそういうと、伊勢は照れくさそうに笑った。
「ああ、こんなに上手いとは知らなかった。これからは全部伊勢に歌ってもらおうか」
部長が、重ねていった。実際に伊勢は、歌が上手かった。玄人はだしといえる。
伊勢も、生の演奏をバックに歌うのがこれほど気持ちいいとも知らなかった。
今、このときだけは、本当に楽しかった。歌っている間は、最近のおかしなことも不安もすべて忘れていられた。
だが、それもつかの間の平安に過ぎなかった。
部室の戸が、開いた。誰何の間もなく、訪問者が中に飛び込んできた。
「お兄ちゃん、来ちゃった」
ニコニコと、思わずこちらもうれしくなってくるような笑顔を振りまいているのは、次子だ。この学校の制服を着ていた。
「おい!お前どうして」
「だって、お家にいるの退屈なんだもん。街はダメでも、学校はいいでしょ。制服着てきたんだから」
あわてる太郎に対して、次子の方はあっけらかんとしたものだ。
「ねえ、お兄ちゃんいいでしょお。お兄ちゃんがギター弾くところ見たいの。絶対、邪魔しないから。お願い!お願い!」
ぴょんぴょんはねながらそう懇願されると、太郎も強くは出ることができない。
140 :
ツイスター:2006/11/15(水) 23:17:15 ID:MSiToLll
「お、おい、一子ちゃん、いったいどうしたんだ?」
その娘を一子だと誤解した部長が、そのはしゃぎぶりに困惑した様子でいった。
太郎は、伊勢にしたのと同じ説明を部長以下、部員たちに繰り返した。
すなわち、この娘は一子の双子の妹で次子といい、事情があって今は学校に通っていないことを。
「別に見学するぐらいいいだろ。家でひとりじゃあ退屈だろうし。でもお前、こんなかわいい妹が二人もいるのかよ。神は不公平だ」
まるで、妹研の連中のようなことをいいながら、部長が次子の見学を認めた。
顔を伏せていてその表情が読めない伊勢以外、皆それに不満はないようだった。
「わかった。でもおとなしくしてるんだぞ」
「ありがとー、お兄ちゃん」
次子がそういって太郎に抱きついてくる。
「おい、やめろ、みんな見てるじゃねえか」
そういいながら、太郎もまんざらではなさそうな顔をしていた。
恥ずかしいのは確かだが、これほどまっすぐな好意を向けられてうれしくない人間などいない。
部員たちも、それを笑いながら見ている。
バカップルならいざしらず、仲のよい兄妹同士のじゃれあいは、彼らの目にもほほえましく見えた。
次子は、太郎に抱きついたまま、振り返っていった。
「伊勢さんが歌うんでしょ。楽しみだなあ」
朗らかに笑っていた。太郎にはそう見えた。
以上、第8話「招かれざる客人」でした。
142 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 23:33:00 ID:ubnzVNbT
策士。なんて恐ろしい子。
ジャーンジャーン乙
げぇっ!次子!?
げえっ
>>次子は太郎を女として愛しているとでもいうのだろうか。
吹いたw
GJ
なるほど。百合属性まで完備ということか……!
>>147 …いや、次子が妹ではなく女として、太郎を愛しているという意味ではないのか?
それはそうと作者さんGJでっせ
>>146 よくない書き方をしてしまった。
正確には、「次子は女として・・・」か。
ここで百合はあり?
アリーデヴェルチ(どんとこいや)
ついに相手の領域まで侵入、やるな次子w
次子の心情描写がいつくるのかwktkしながら待ってます!!
>>149 つ『花束』
ロボさんなら普通に本番を書いてくれると信じてる
>>153 『白き牙』は百合かなあ?
その展開を期待しないわけじゃないけど。
複雑な修羅場になりそう。
まぁ作者さんの思うようで良いじゃないか
でもその部分読んで俺は百合とは思わなかったがなぁ
国語力不足か? 何よりGJ、続きに期待
ちなみにここは百合でも確かおk
いたり先輩に匹敵する依存系ヒロインっている?
スウィッチの森さんとか?
ククク・・・まずは奇襲成功・・・
奇襲?
やはり、ストーカーヒロインって癒されてしまうのは何故だろうか
>>160 |ω・`) 依存属性を持つ俺もストーカーっ娘は大好きだぜ
依存系のストーカーヒロインで犬属性を持つ女の子は常に最強
主人公の家に盗聴器や盗撮カメラを仕掛けるのはデフォw
主人公に振り向いてもらうために後を追いかけたりとするが
全て主人公にはバレバレであるw
うーん、SS書くネタがないな
プロットがここから思いつかない
>>141 「伊勢さんが歌うんでしょ。(いったいどんな醜態をさらさせようかなあ。)楽しみだなあ」
こうですか? わ(r
一子の動きが非常に気になって眠れないorz
投下します
早朝の道場に、木刀のぶつかり合う音が響く。
郁夫の怪我も完治して、流も本調子に戻っていた。
故に訓練は激しくなり、実践さながらの打ち合いも行っていた。
両者共に、表情に甘さはなく、真剣に相手のことを見据えている。
ただ、郁夫の場合は瞳術をかけないように注意しているため、少々しかめっ面になってしまっているが。
「……ふっ!」
鋭い呼気と共に、郁夫が踏み込み、上段への一撃を放つ。
後の先を取ろうにも、太刀筋も速度も申し分ないので、流は受けに回るしかない。
一歩退いた流を追撃するように、郁夫も踏み込む。
そしてそのまま、流れるような動きで、突きへの準備姿勢に入る。
瞬間。
微かに空いた脇への隙間を、流は見逃さなかった。
一歩退いた姿勢は、そのまま横薙ぎの一撃を振るうのに適していて。
吸い込まれるかのように、流の木刀が、郁夫の胴へ――
打ち込まれることは、なかった。
がつん、と鈍い音。
それは胴を打つ音ではなく、木と木のぶつかり合う音だった。
見ると、郁夫は木刀を腰まで引き戻し、柄で横薙ぎを受けていた。
刀身で受けていたら間に合わなかっただろうが、柄ならそのまま引くだけで済んだのだ。
あとは郁夫が前に踏み出せば、流はそのまま押し倒されてしまうだろう。
――こんな技、教えてない。
流の膝が深く沈む。
重心が極端に前へと移り、勢いはそのまま木刀の先へ。
「うわあっ!?」
踏み込もうとしていた郁夫は重心を崩され、そのまま床に転ばされてしまう。
どだん、と朝の道場に派手な音が鳴り響いた。
「……痛てて……。くそー、上手くいくと思ったんだけどなあ……」
床に寝転がったまま、郁夫は悔しそうな声を上げた。
「でも流、狙いは悪くないだろ?」
「…………」
流はすぐには答えずに、冷たい目で郁夫を見下ろす。
そして。
「駄目です」
と、言った。
「えー。なんでだよ。胴狙いは避けるの難しいから、
確実に受けて、懐に入り込んで制圧した方が良いって茅女が――」
「――駄目です!!」
雷鳴の如き流の一喝が、道場の空気をびりびりと震わせた。
「それは、郁夫様が使うのが短杖であった場合です。
刀の場合ですと、柄を斬られ、握りが狂ってしまうでしょう。
最悪、目釘が壊れてしまい、刀を使えなくなる恐れもあります」
淡々と説明する流。
その瞳には、微かに激情が揺れていた。
「……なるほど。でもさ、今は木刀なわけだし、これはこれで――」
「――郁夫様は」
郁夫の言葉を遮るように。
先程までの冷たい表情から一転、どこか泣き出しそうな危うさを持つ顔で。
「刀を使う訓練を、しているんですよね……?」
そう、訊ねてきた。
何を当たり前のことを、と郁夫は首を傾げたが、
流があまりに不安そうに訊ねるので、何も言わずに頷いた。
ほっ、と流が安堵の溜息を吐く。
どうしてそんな仕草を見せるのか郁夫にはわからず、ただ首を傾げるのみ。
「……でしたら、そのような技はお忘れください。
胴の守りも、しっかりした筋がありますので、それをお教えします」
そう言って、流は郁夫を助け起こす。
折角覚えた技を忘れろ、というのには引っかかったが、
しっかりとした技を教えてくれるのなら、と郁夫も納得した。
「受けの基本は鎬です。ですから先程のような場合は――」
説明しながら、郁夫に動き方を示す流。
郁夫も真剣にそれを聞き、言われたとおりに体を動かす。
そして、郁夫の飲み込みが弱い場合、流は手を添えて一緒に動かしたりする。
このときも、そうだった。
ただ、いつもより心なし体を近づけて。
肘や背に、慎ましやかな膨らみの感触を、押しつけるように。
時折郁夫がそれに気付き、気恥ずかしそうに身を捩らせるが、
流は気付かないふりをして、更に指導に熱を入れた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『――最近、流の様子がおかしい?』
「ああ。気のせいならそれでいいんだけど、なんかこう、なんというか……」
『不調みたいってこと? まさか奇跡的に一本取ったとか?』
「いや、そういうわけじゃなくて、なんか雰囲気が、さ。
千茶は何にも感じないか? 流と仲悪くないだろ?
……あと、奇跡的って言うな」
『んー。どうだろ。最近流って、厨房に来ないのよねえ。
なんか、道場に籠もってることが多いみたい』
「そうなのか? ……そういや、いつも先に道場にいるよな。
着衣もなんか乱れてるし、一人で訓練でもしてるのか……?」
『道場に百年も居座ってた剣術バカの奉納刀が、これ以上強くなってどうするのよ』
「……だよなあ」
千茶からお茶をひと啜り、他に理由を考えてみる。
しかし、さっぱり思いつかない。
……やはり、訓練しているとしか思えない。
では、何のために?
ただ強くなりたいというわけではないだろう。
流は今のままでも十分に強い。
退魔刀として高名な霊能者に振るわれていてもおかしくない存在だ。
そんな流が、今より更に強くなろうとしている理由。
……まさか、
「茅女に、勝ちたいのかな」
『茅女? ああ、新入りの包丁ね』
千茶から伝わってきた思念は、思いの外、冷たい響きを含んでいた。
姉御肌なところがあるので、大抵の付喪神には親切に接せられるはずなのに。
『……嫌いってわけじゃないわよ。だから、そんな顔をしなさんな』
「……む、顔に出てたか」
『郁夫はわかりやすいからねえ。
まあそれはそれとして、郁夫が心配することじゃないわよ。
――私の場合、目の前で橘音や流を切り裂かれたわけだし』
「あ」
そういえば、あの場には千茶もいたんだっけ。
俺が倒れた後、他の付喪神をまとめたりしてくれたのは聞いている。
そんな冷静な対応ができていたから心配要らない、というのは浅はかだったか。
親しい人間や同属が目の前で重傷を負わされたのだ。
何かしら思うところがあっても、全く不思議ではない。
『まあ、本人同士で手打ちになったことは知ってるから、
私がどうこう言うべきじゃないのはわかってるわよ。
……ただ、ショックだったってのは気に留めておいてもらえると、嬉しいかも』
「……ん。了解」
『まあ、台所の付喪神なら、私の後輩になるわけだから。
そうズルズルと引きずるわけにもいかないよね。
今は鍋のトン子に任せてるけど、もうちょいしたら私自身がビシバシとここの掟を叩き込んであげるわよ』
そりゃあ心強いな、と言おうとしたら。
割り込むように、聞き覚えのある声が。
「――ふん、変化すら覚えておらぬ小娘が、妾に指導とは片腹痛いわ」
噂をすれば影。
音も立てずに部屋に忍び込んできていたのか、後ろに茅女が立っていた。
たすたすたす、と畳を踏みしめ、俺の真横に回り込んでくる。
そしてそのまま腰を下ろし、視線は俺の手元の千茶へ固定。
「ふん、ろくに怪異も持ち得ぬ小娘が思い上がりおって。
妾に意見したければ、もう少し礼儀を弁えてから――」
「――こら、茅女」
ぺちん、とおでこにでこピン一発。
「あた!? 何をするか……!」とこちらを向いたところで、少し厳しめに睨み付ける。
うっ、とあからさまに怯む茅女。
「今のは、千茶に失礼だぞ」
「し、しかしだな郁夫」
「言い訳は無しだ」
あとはじっと見つめるのみ。
一度瞳術に堕ちた者には、ただ睨むだけでもそれなりに効果がある。
「…………むぅぅ」
茅女は文句を言いたそうな顔で、しかし結局モゴモゴするだけ。
「――妖怪としては、お前の方が格上だ。それは俺もみんなもわかってる。
でもな、研修生という立場では、紛れもなく千茶が先輩だ。
これから人間社会に適応していくのが研修の目的なんだから、
こういう上下関係にも順応しなくちゃダメ」
「……うぅ。郁夫ぉ……狡いぞ」
頬を赤く染めながら、むすーっとふくれっ面を晒している。
と。
『――あははははは!』
いきなり、千茶が笑い出した。
「……笑うな」
それに対し、茅女がむくれた声を上げる。
しかし千茶は気にせずに、笑う思念を垂れ流し。
偉ぶった茅女が説教を受ける様が、そんなにおかしかったのだろうか。
『いやはや、話には聞いていたけど、新入りが郁夫に骨抜きって本当だったんだ!』
「……ふん、そのうち郁夫の方も妾に骨抜きにしてみせるわ」
『おや、否定しないの? そこらへんは流と違って素直だねえ』
「郁夫が魅力的であるのは、ここの付喪神であれば否定する者は居らぬじゃろうて」
『ま、それもそうだね』
少々ぎこちなくはあるが、くだけた様子で話す両者。
……いや、でも、その話のネタが俺のことってのは、
なんつうか、こう、背筋がムズムズするというか……。
「――特に、これが良い」
唐突に、茅女が俺の背後に回り込む。
そしてそのまま、右手を俺の首に回し、指先で頬を撫でてくる。
「……? なんだよ、茅女」
意図を掴めずに、俺はただ困惑するのみ。
「――郁夫。妾がヌシに瞳術をかけられて久しいが、
害意を抱ける程度に回復しているのは、知っておるな?」
…………。
一応、わかっている。
瞳術の効果は永遠に続くわけではない。
冷水をひっかけるようなもので、一時的に冷やすことはできても、時間が経てば熱は戻ってくる。
害意も同じだ。
茅女の復讐心を一度掻き消したといっても、時間が経てばそれは元に戻ってしまう。
確実に抑え込むのであれば、定期的に瞳術をかけて支配しなければならない。
でも――
茅女の声は、初めて会ったときのように、冷たく暗く沈んでいた。
殺気を欠片も隠さずに、包丁の付喪神は俺に問いかける。
「なのにヌシは、妾に再度術をかけることはなく、あくまで見つめる程度に留めておる。
今この瞬間、妾はヌシの首を裂くこともできるのじゃぞ?
妾が抱いていた復讐心は、目的のためならそれくらい為せるであろうことを、ヌシは直に味わったであろう?」
なのに、どうして放っておくのか。
そんなの、決まってる。
「――だって茅女、悪い奴じゃないし」
思ってることを、そのまま口にした。
少なくともコイツは、何の理由もなく人の首を裂く妖怪じゃない。
復讐心は確かにとんでもなく濃いけれど、それと同じくらい、純粋な心を持っている。
まだ二週間程度の付き合いだが、それくらいは理解していた。
「ほれ。悪い“奴”じゃない、ときたものだ。これが良いよの」
言うなり、回した手をこちらの胸へ。
そのまま抱きつきながら、顎をこちらの肩に乗せてきた。
――って、ちょ、当たってる当たってる!?
「郁夫は、平等なのが良いの。人も付喪神も何者も等しく、心を持つ者として接してくれる。
魔性の瞳も魅力的だが、何よりその姿勢が心地良い」
『ありゃ、そっちの方にも気付いたんだ。流石は五百年物。見る目があるねえ』
「妾等付喪神は、人に使われることで染みついた想念が心として定着したもの。
故に、人と非常に近しい存在にもなり――人の心に触れたくなる。
郁夫は自然に、その心を触れさせてくれる。渇いた心には染み入る甘露よの」
「いや、あの、褒めてくれるのは嬉しいのですが、くっつきすぎではないでしょうか茅女サン」
『あ、茅女。郁夫は肩胛骨のあたりが弱いよー』
「心得た。……ふふ、小さいなりに柔らかいじゃろ?」
「ちょ、何で知ってるんだ千茶!?
ってかお前ら何なんですかそのコンビネーションは!」
『ふ。孫の手のゆっきーが、郁夫の弱いところは全て把握しているのよ!
そして浦辺家研修生の心得・その弐。――如何なる時も郁夫で遊べ!』
「ふむ、良い心得よの。妾も深く心掛けるぞ」
「何だその滅茶苦茶失礼な心得はーっ!? って待って茅女それ以上はマジでヤバイ」
「……ふふ。其処に血が集まるのは、男子として正常な証拠じゃ。
何ひとつ恥じることなどないぞ。……ほれほれ、ここが良いのか?」
『あははは! いけ! そこだ! 郁夫にパンツを洗濯させろー!』
千茶の楽しそうな思念。
思っていたより早く、千茶は茅女と普通に接せられるみたいだ。
そのネタが自分というのは正直微妙だが、まあこの場は、
2人が仲良くなる材料として、潔くこの身を提供しようじゃないか……!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ぽたり、ぽたり、と。
廊下の上に赤い液体が滴り落ちる。
「……私の方が先だ。私の方が先だ。私の方が先だ……」
――私の方が先に、郁夫様の良いところを知っていた。
ぶつぶつと。
声は暗く、歯ぎしりの音と混じり合う。
握り締めた拳からは、鮮血が垂れていた。爪が掌を破った模様。
しかし、そんな痛みより――
「――郁夫様。包丁なんかに心を許さないで。
其奴は貴方の寝首を掻こうとしているだけです。
先程だって、本当に首を切り裂いていたかもしれない。
躰だって、殆ど子どものようなものじゃないですか。
私の方が、そんな小さな躰より、きっと貴方を満足させられます。
私の方が、私の方が、私の方が、私の方が、私の方が、私の方が――」
ひたり、ひたり、と。
幽鬼のように、音を殺し、気配を消して。
激情を裡に押し込んで、刀の付喪神は、廊下をゆっくり歩いていた。
「――私の方が、先に、郁夫様に目を付けたんだ」
乱入して、引き剥がしてやりたかった。
しかし、あの場は千茶と茅女を和解させるのに最適だった。
郁夫の狙いもそこにあるとわかったから、歯を食いしばって我慢した。
――ほら、こんな風に、郁夫の考えを慮ることができる。
郁夫に相応しいのは自分だ。
そう思いながら、流はあることを必死に考えていた。
――どうすれば、あの包丁を、郁夫様から引き離せるのかな。
茅女が溶け込むのに結構話数を使ってしまいました……orz
次回以降、話が動き始めるかもしれません。
GJ!!
流の壊れかけてる描写に思わずにやけてしまいました!!
>――こんな技、教えてない。
↑は新しい名言かも知れません。
GJ
意中の男性に泥棒猫の匂いが付いてく。徐々に徐々に。これ最強。
GJです!
流タン黒いよ流タン(*´Д`)ハァハァ
GJ
流の病みっぷりは最高
GJ!
自分の居場所が泥棒猫に奪われていき、嫉妬に狂っていく流さんは素敵だ
>>182 まったくだ、たとえ刃物でも抱き締めてチューしてやりたいくらいだぜ!!
鉄鍋のジャンを読んだ流ん
「これだ!」
その後
「ああっ妾の大切な現身がボロボロに腐蝕してしまっている!」
ツイスター、投下します
186 :
ツイスター:2006/11/17(金) 00:28:25 ID:mILN6H2c
練習を再開すると、伊勢はへまばかりをやった。
出だしを間違える、音程をはずす、歌詞を間違える。
その様子を、いすに腰掛けて伊勢の正面に陣取っていた次子が、じっと眺めていた。
「やっぱり、体調がよくないんじゃないか」
太郎が伊勢を慮ると、申し訳なさそうにいった。
「すみません、なんだか少し」
「大丈夫?休んだほうがいいんじゃない?」
次子がそう聞くと、伊勢はびくりと体をふるわせた。
「ああ、休んだほうがいいって。帰るのがきつかったら保健室行くか?」
「はい、すみません。少し休んできます」
それを聞いた太郎が、腰を上げていった。
「心配なんで、しばらく付き添ってます。いいですか」
「ああ、こっちは勝手にお開きにするから。そのまま帰っていいぞ。彼氏らしくしっかりエスコートしてやれ」
部長がそういうと、次子が笑っていった。
「そっかあ。お兄ちゃんと伊勢さんって付き合ってるんだあ。だったら、いつかお姉ちゃんになるのかなあ」
太郎は、照れくさそうに顔を赤くした。
「馬鹿。お前は先に帰ってろ。おい、伊勢行こうぜ」
太郎は、伊勢の手をとって部室からそそくさと抜け出した。伊勢は顔を伏せていて、その表情は読めない。
保健室に向かう途中、伊勢は一言もしゃべらなかった。太郎も、体がつらいのだろうと思って、会話は振らない。
結局、無言のまま保健室にたどり着いた。
保健室は無人だった。ベッドを使っている生徒はいない。会議にでも出ているのか、養護教諭もいなかった。
体を横にして休むだけなのでそれで問題はない。
ベッドの吟味をした太郎が背後の伊勢を振り返ると、なぜか伊勢は保健室の戸に鍵をかけているところだった。
「おい、何して」
伊勢は太郎の方に向き直ると、そのまま抱きついてきた。不意打ちに、太郎はベッドに倒れこんでしまう。
伊勢が、何を求めているのかぐらいはすぐに分かった。だが、伊勢は体調が悪く、ここは保健室だ。
いくら鍵がかかっているとはいえ、いつ誰が来るか分からない。見つかればただではすまない。
「だからここはまずい」、そういおうとした太郎の口を、伊勢が自分の口でふさいだ。情熱的に、いやほとんど暴力的に舌をねじ込んでくる。
いつものように、伊勢が自分の唾液を流し込んだ。いや、いつもよりたくさんの唾液が流し込まれる。
それだけで、太郎は自分の理性に霞がかかってくるのを感じた。
187 :
ツイスター:2006/11/17(金) 00:29:14 ID:mILN6H2c
「お願いです、抱いてください、我慢できません、お願いです」
伊勢がまるで熱に浮かされたような顔でそういうのを聞くと、太郎の理性は完全にたがが外れた。
下から伊勢を抱きしめると、体勢を入れ替えた。口付けしながら、ブラウスのボタンをはずそうとする。
あせりからかなかなかはずせないボタンにいらだった太郎は、それをあきらめてスカートに手を入れた。
ショーツに手をかけて引き下ろそうとする。伊勢が自分から腰を上げてそれを助けた。
それだけなく、自分でブラウスのボタンをはずし、ブラジャーのフロントホックをはずして自分の胸をあらわにした。
豊満で真っ白な二つの乳房が現れる。真ん中にはじゃっかん大きめの乳りんと乳首が紅色を添えている。すでに乳首は立っていた。
それを見た太郎は、ショーツを下ろしながら、乳首に口をつけ吸った。
伊勢は、片足を折り曲げてショーツを足首からはずしながら、胸への愛撫に声を上げるのをこらえる。
それくらいの分別は残っていた。
伊勢は、太郎の頭を抱き寄せると、耳元でいった。
「もう、いいですから、はやく、ください」
正直、太郎はもっとじっくり愛撫を楽しみたかったが、ここが保健室でゆっくりはしていられないことを思い出した。
あわてて、ベルトをはずし、ズボンをトランクスと一緒にずり下げる。
そして、洗濯するときにポケットから出して家においてきてしまったコンドームのことを思い出した。
太郎の動きが止まる。さすがになしではまずいだろう。
「大丈夫ですから、今日は、そのままで」
大丈夫な日というのがあることは、太郎も知っていた。それがどのくらいあてになるのかは知らなかったが。
ともかく、ここで止めることはできなかった。たとえ、妊娠することが分かっていたとしても止めることができたかどうか分からない。
太郎は、一気に挿入しようとした。失敗した。伊勢の性器の表面が、裏筋をなぞった。
もう一度挿入しようとして、やはり失敗した。太郎はあせる。そしてまた失敗する。
すると、伊勢が太郎のペニスに右手を添えて、しかるべきところに導いた。亀頭が、入り口に触れた。
これまでの予行演習がなければ、その感触だけで達していただろう。
そのまま、一気に奥まで押し入る。亀頭から根元までを、膣壁がなぞった。
最後まで入れると、収縮した膣の筋肉に圧迫された。
「うごいて、うごいてください」
伊勢の求めに、腰を前後させることで応えた。太郎が腰を振るたびに、伊勢の中が収縮する。中で抱きしめられているようだった。
伊勢は、両足を太郎の腰に巻きつけている。そして太郎の動きに合わせて、自分もその下で腰を揺らしていた。
保健室の中で聞こえるのは、二人の荒い息の音と、ベッドのきしむ音だけだ。
いや、グラウンドから部活の練習をしている生徒の掛け声が、かすかに響いている。
いつの間にか、夕焼けが窓ガラスを赤く染めていた。
やがて限界の来た太郎が、伊勢の中に精を放った。
その快楽に、太郎は思わずうなり声を上げる。それを感じた伊勢も、小さく声を上げた。
太郎の体を、下からぎゅっと抱きしめ、腰を密着させた。まるで、すべてを自分のうちに取り込もうとするかのように。
射精がとまると、太郎の体が弛緩した。
伊勢は、大きく息をついた。
オーガズムを得ることはできなかった。性急すぎた。
しかし、精神的に深い満足感を得る。圧倒的な安心感。
このまま、二人で抱き合ったまま眠り込みたい衝動に駆られた。
188 :
ツイスター:2006/11/17(金) 00:30:00 ID:mILN6H2c
もちろん、保健室でそんなことはできない。すぐに身支度を整える必要があった。
スカートをはいたままだったので、ベッドはほとんど汚れていない。
ペニスを抜いたときにあふれた精液を、スカートの裏で受け止めた。それをティッシュとハンカチでぬぐう。
多少汚れてしまったところは、水をかけてごまかす。窓を開け、薬をこぼして、匂いもごまかす。
これでごまかしきれているのかどうかは分からない。
ともかく、できるだけの隠ぺい工作をして二人は保健室を飛び出した。
伊勢の体調は、もうすっかりよくなっているようだった。廊下を歩く伊勢の顔は、晴れ晴れとしている。
「結局、学校でしちゃいましたね。もっと早くしちゃえばよかったかも」
「あ、ああ、そう、かな」
太郎は、いきなりの童貞喪失にまだ現実感を取り戻していなかった。後始末もほとんど伊勢がやっていた。
先輩として情けなく思わないでもないが、これがはじめてだったのだから仕様がない。これから追いつけばいいことだった。
きっと、これから数え切れないくらい体を重ねるだろう。
伊勢は、太郎に家まで送ってもらう。玄関先でキスをした。
「今日は、ありがとうございました」
伊勢がそういうと、太郎はあいまいに笑った。手を振り合いながら、分かれた。
一人になる。鍵を開けた。ここ最近は、常時鍵をかけたままにしている。
「ただいま」
家には人の気配がなかった。廊下は薄暗く、静まりかえっている。
玄関には、母親の靴がない。買い物にでも出ているのか。
都合がよかった。早く着替えて、制服を洗濯しておく必要があった。
鍵を閉めて、家に上がる。
一人だが、心細くはない。まだ、太郎との一体感の余韻があった。
初めて太郎とセックスしたせいか、勇気が沸いてくるのを感じる。
伊勢は今日改めて次子と会って、ストーカーの正体に確信を持った。やはり、次子以外にいないと思えた。
誰にも分からないかもしれないが、自分には分かる。
この確信さえあれば、やることはひとつだった。太郎に訴えるのだ。
太郎を煩わせるのは心苦しいが、自分は彼女なのだ。守ってもらう権利がある。
太郎も、自分のことを信じてくれるだろう。当然、自分の味方になってくれるだろう。
今日、体を交えたことで、そう思うことができるようになった。太郎を信じられる。
実の妹が自分の恋人に嫌がらせをしていたと知って、太郎はどう思うだろうか。
もちろん、怒るだろう。男なら、妹より恋人を大切にするはずだ。恋人は抱けるが、妹を抱くことはできない。
太郎くらいの年代の男が、女を抱く快楽を手放すことはできないだろうと、伊勢は思っていた。
自分を背後にかばった太郎の目の前で、次子が泣き崩れるさまを想像し、胸のすく思いをする。
自分の兄に懸想する、不潔な女だ。同情の余地はなかった。
太郎だって、そんな妹を気味悪く思うに違いなかった。伊勢の知る限り、太郎は普通の人間だった。
太郎の目の前で、思うさま蔑んでやりたい。伊勢は、その想像だけで、ほとんど性感にも似た快楽を感じた。
階段をのぼり、自分の部屋に入る。やはり、鍵を閉めることを忘れない。
そして、ドアノブに手をかけたまま伊勢は硬直した。
背後に誰かの気配を感じたからだ。
189 :
ツイスター:2006/11/17(金) 00:30:36 ID:mILN6H2c
部屋に入ったときには、誰もいなかったはずだ。
薄暗かったが、誰かがいれば見逃すはずはない。狭い部屋だ。
だが、背中に誰かがいる。気配だけではなかった。
息遣いまでもが聞こえてくる。首筋にその息がかかっているのを感じる。
それだけ、間近にいる。それこそ、背中に張り付くようにして。
のどが渇く。水が欲しい。
台所に下りれば、水が飲める。そうだ、このまま振り返らずに部屋を出て行こうか。
いや、ダメだ。ここで正体を見極めてやる。伊勢は、先ほどの勇気を取り戻す。
振り返るのと同時に、かばんを叩きつけてやろう。思い切り。
そして、ひるんだ隙に、かばんからスタンガンを取り出して押し付けてやる。
威力は最大に設定してあった。相手が伊勢の考えている人間なら気絶させられるだろう。そのまま警察に突き出してやる。
伊勢はそう決意して、振り向いた。
いや、振り向こうとした。
実際には、強制的に振り向かせられていた。背後のものの手によって。
そして伊勢は、自分の真後ろにあるはずの相手の顔を、なぜか真正面に見た。その正体を瞳に焼き付ける。
しかし、それを誰かに伝える機会は永劫訪れないだろう。
伊勢の首は、きっかり180度回転していたからだ。
190 :
ツイスター:2006/11/17(金) 00:33:00 ID:mILN6H2c
以上、第9話「伊勢、イク」でした。
エロ以外の見せ場もあまりなく、退場です。合掌。
(次回予告)
伊勢を失い失意に沈む太郎。山鹿の助言を得た太郎は、「拳魂復活の術」を会得するため、次子を連れて中国へと旅立つのであった。「ロッテンピッテンサッテンよみがえれ、伊勢東子よーっ!!」
次回ツイスター、「伊勢復活」をお楽しみに(次子の声で)
この手の超展開も考えないわけではなかった。
(゚Д゚)<・・・・
いッ、伊勢サァァァアアアン!!
イッタ後に逝くとは・・・・、伊勢かわいそうな子・・・
>>189 あ……嗚呼……orz
容赦無いな……妹……妹研の連中どんな妄想持ってんだ?
あらまーあっさり退場ですか。合掌(-∧-;) ナムナム
諸君らの愛した伊勢は死んだ!
何故だっ!
次子・・・恐ろしい子!
阿修羅様も更新乙です
バッ・・・バカな・・・・・簡単すぎる・・・呆気なさすぎる・・・
エロイ巨乳が死んでしまった・・・
GJ
妹の嫉妬ってレベルじゃねぇぞ!
ふー、びっくりした。でも、伊勢退場派の意見はほぼ一点に集中している。
このままだと一子の出番がないから、復活する必要はないというもの。それ、ほんとなのかなあ。
今回のこたえは数字のうえでは「しなくていい」派が圧倒的だったけれど、
レスしなかった多数のサイレントマジョリティを考慮にいれて決定させてもらいます。
エロ巨乳の伊勢は復活したほうがいい。あたりまえの話だよね。
あと阿修羅氏も更新お疲れ様です。
伊勢よ・・・なぜ死んだ。これでエロ担当がいなくなってしまった。
だけどこれでメインである妹二人の修羅場が始まるかと思うとwktk
作者さんGJ
阿修羅氏保管庫更新お疲れ様です。
GJ
ツイスターって、首がよじれるからツイスターですかーッ!?
GJ
犯人を知った時の太郎を思うと胸が痛むな・・・
ちょwwwジェラレンが阿修羅氏のまとめサイトで連載ものになってるwwwうぇwww
これはあれですか?続きを書けという神(阿修羅氏)のお告げですか?
素人の召喚魔法や魔法生物作成は大概ろくな結果にならないのが
大抵だとか。多分、召喚時に素人、それも大勢が
いっぺんに参加したので思考ルーチンに偏りが出たっぽい・・・
赤い雪になっちまったか・・・伊勢・・・(´・ω・`)ショボーン
投下しますよ
― 最初は微グロ注意 ―
轟音。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。目の前で突然シャーサの顔が消え、生暖かい
液体が僕の顔に降り注ぐ。呆気にとられて思わず半開きになった口にそれが入り、口内に
広がる鉄に似た味でそれがシャーサの血だと認識する。
それだけではない。鋭角に切断されたシャーサの上半身がもたれるように落ちて僕の胸
に当たり、軽い音をたてながら地面に落ちた。不自然に椅子に残った体の広い切断面から
は赤黒い血が溢れ、気持ち悪く光を反射している。ぬめる光沢の臓器が溢れ落ちて僕の腹
に当たったところで、とうとう堪えきれずに吐いてしまった。それがシャーサだったもの
に降りかかり、それによって僕は再び気分が悪くなる。
どうして、シャーサは殺されたんだろう。
殺された部分までは理解出来たが、それ以上の思考が現実に追い付いてこない。犯人は
誰なのかを考えて、苦笑が込み上げてきた。誰が、なんて言うまでもない。必死に考えて
いるのは、否定をする材料を探す為の口実だ。しかし他に答えが浮かぶ筈もない、二人を
振り向いて改めて確認する。サラさんは唸り声のような起動音をさせて指輪のはまった手
をこちらに向けているし、リサちゃんは剣を振って刃に付いた血を払っていた。どんなに
否定をしようと、この二人が殺したとしか考えられない。
「ごめんなさいね、ブルー。すぐに終わらせるわ」
痛みを感じないのか、サラさんは陽炎が立ち上る程熱くなった指輪をリサちゃんに向け、
「青さん、待ってて下さいね」
対するリサちゃんは、刃渡りの中間辺りで二股に分かれた妙な形状の剣を突き出すよう
にサラさんへ向けたまま立ち、睨みあっている。
「どうして、殺した」
二人は首だけ動かし、
「ブルーが好きだから」
「青さんを愛しているからです」
濁った瞳を向けてきた。
過去に一度だけ見た、絶対に忘れられない色。シャーサか大統領を殺した後、困った顔
で僕を見つめてきたときに嵌っていたのもこの瞳だった。理性が消し飛んで、目的の為に
一直線に向かって走り続けようとする者の瞳だ。
何故、今こんな目をしているのだろう。つい数分前までは皆で仲良くブランコで競い、
ナナミ手作りの弁当を楽しみにして、普通の生活を送っていた筈なのに。今やここは殺し
合いの場所になろうとしている。乾いてざらついた空気が頬を撫で、喉を焼く。
「止めろ」
サラさんが両手を広げると空から二つの金属輪が落ちてきて、それを握るとリサちゃん
を歪な笑みで睨みつけた。リサちゃんもそれに応え、剣を構え直す。
「止めてくれ!!」
サラさんがそれを投げ、リサちゃんは疾駆した。
快音。
金属が打ち鳴らされる高い音を響かせて輪を打ち払い、リサちゃんが突き進む。だが、
それは当たることがない。サラさんの体を通過し、高い音をたてて空を切った刃を翻して
後方へと跳躍する。直後、リサちゃんが立っていた場所に金属の輪が突き立った。やっと
気が付いたのだが、あれは多分シャーサの首に嵌っていたものだ。
かばう訳ではない。しかしサラさんがリサちゃんを傷付ける為に使っている物が、僕の
昔の恋人だった人のものだということに無償に悲しくなる。今もまだ未練があると言えば
嘘になるけれども、大切だったものが壊されていくような感覚があるのだ。
しかしそれを抜きにしても、これは止めなければならない。
拘束を抜け出す方法を考え、一つ思い至った。サラさんから貰った指輪がある。サイズ
が合わないので指に付けてはいないけれど、今でも鎖を通して首に下げている。この拘束
は空中に散布されているナノマシンによるものだろうが、それは正六面体フラクタル回路
を使用しているものの筈だ。だがそれを遥かに上回る性能を持つ正四面体フラクタル回路
が嵌っているこの指輪なら、プログラムに割り込むことが出来るかもしれない。それなら
脱出が可能になる。二人の戦う音を背景に、僕は指輪を起動させた。
「……お兄ちゃん、大丈夫?」
「これから、どうなるの?」
ユンちゃんとリーちゃんが涙を流して寄ってきた。瞳に純粋な恐怖の色が浮かべ、二人
の戦を見つめている。今にも逃げ出したいと思っているのか、それとも自分に被害が及ぶ
と思っているのか、しゃくりあげるように声を出して脚にしがみついてくる。ジーンズも
固定されているので振動が伝わってくることはないが、僅かに自由な首を下に向ければ、
その身を震わせているのが分かる。誰も彼もが傷付いてしまう、最悪の展開だ。
二人に聞こえないように吐息し、
「大丈夫だよ」
自分にすら言い聞かせるように呟いた。
何が大丈夫なものか、大丈夫なものなどここには無い。こんなとき、手を動かすことが
出来たのならどれだけ良かっただろうと思う。普段から必要以上に髪を撫でている癖に、
肝心の今は何も出来ないというのが情けない。無機質な音と振動をたてながらも未だ解除
が出来ない指輪に苛立ち、出力を上げる。
その間にもリサちゃんとサラさんは争い、豪快な音をたてていた。
リサちゃんの基本的な動きは、見慣れたものだ。何しろここ二週間ずっと見てきた踊り
がそのまま使われていて、こうした状況でなければ日常の一場面として見てしまいそうに
なる。剣を振り、体を回し、跳んで伏せてを繰り返す。けれど今のそれはソードダンスと
いうものではない、敵を倒すという意思のある行動。体の動きはサラさんの攻撃を避ける
為に自然に出たものだろうし、振る刃も飛来する障害を斬り、更にはサラさんをも斬って
しまおうというものだ。しかし何故こんな動きが出来るのか、思考が回らない。
そんなリサちゃんを圧倒しているサラさんも、怪物じみて見える。基本的な行動は単純
なもので、たまに距離を取りつつシャーサの首輪や周囲のものを飛ばすだけだ。時折地面
を破裂させ、土砂もけしかけている。シンプルなものだが、それ故に破壊力が高いのは僕
の目にも分かる。あれを受けてしまったら、リサちゃんは一瞬で死んでしまうだろう。
拘束を解き、更にはあの間に入って争いを止めさせる。自分のことながら、その考えに
寒気がした。しかし僕がやらなければいけないことだ、これは原因である僕の責任だ。
死んでも、二人を止める。
だから二人には、先に言っておこうと思った。
ナナミには言えないということを惜しく思いながら、皆を見て言う。
「今まで、ありがとうございました」
困ったこともあったけれど、楽しい日々だった。
夜のことは僕が治すと決めた筈なのに、それは出来そうもない。
数秒。
僕の言葉を聞いたユンちゃんとリーちゃんは涙を拭い、顔を見合わせて頷いた。
「……大丈夫だよ」
「あたし達が、今助けるから」
二人は声を揃え、
「「今まで、ありがとうございました!!」」
無理に作ったような、歪んだ笑顔を浮かべて叫んだ。
直後。
サラさんとリサちゃんの間に双娘が飛び込んでゆく。
止めろ、という言葉は届かない。
「邪魔です」
ユンちゃんに刃が迫り、
「退きなさい」
リーちゃんに凶弾が飛来する。
怖くて仕方がないのだろう。先程拭ったばかりなのに、二人の目には涙が浮かんでいた。
それなのに頑張って、殺し合いをしている二人の前に出て、小さな体を張って止めようと
している。体を動かせないということが辛いことだと、先程以上に思った。リーちゃんも
ユンちゃんもこんな場所で、殺し合いに巻き込まれたなんて理由で死んで良い訳がない。
それにサラさんもリサちゃんも、お互いに殺し合うなんてことはしなくても良い。そんな
に苦しんでまで、人を殺そうとしなくても良い。
動け、と念じて指輪の演算を更に加速させる。限界まで性能を引き出されたそれは強い
熱を帯び、激痛を与えてくる。しかし他の皆が味わっている恐怖に比べたら、こんなもの
は大したことはない。あの娘達の方が、余程痛くて辛いのだ。
だから、何度でも強く念じる。
動け、と。
「「死ねえぇェッ」」
高い音が響いた。
今回はこれで終わりです
ナナミの絵を描いていたつもりなのに、完成したのはどう見てもSfです
本当にありがとうございました
大丈夫です、俺の脳内でもナナミさんはSfそのものでした
無愛想ロボメイド良しッ!
サーシャが死んだとな
あっというまの退場でしたね。
今後の展開が楽しみです。
……??( ゚д゚)ポカーン
新ヒロインで元恋人のお嬢様が速攻で退場になって
ロリ双子が大ピンチの修羅場になるだとぉー!(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
ほとばしるほどGJだ!
>>190 余命1ヶ月のぱっと出の虚像である次子に逝かされた生身の人間の東子カワイソスorz
>>218 さあ青!限界を超える時がきたぞ!
いやまだだっ!
こんなことでお嬢様が終わる訳がないッ!
ツイスター、投下します。
225 :
ツイスター:2006/11/17(金) 22:16:57 ID:IU5NBlyz
伊勢と別れてから一人で歩いていた太郎は、いつの間にか自分の横を誰かが歩いているのに気がついた。
一子だった。太郎と同じく、学校帰りのようだった。
「あ、あれ、なんで」
「やあっと気が付いた。呆けちゃったの?狂牛病?」
一子が憎まれ口を叩く。だが今は、腹も立たない。
初体験の余韻がまだ体に残っていた。むしろ、顔がにやけてしまう。
「何笑ってんの、気持ち悪う」
「い、いや、ちょっとな」
さすがに本当のことはいえない。太郎はごまかした。
一子も、それ以上追求しては来なかった。そのまま、無言で太郎の横を歩く。
太郎は、せきをひとつして気を取り直そうとする。
「ブラバンの練習か?」
尋ねると、一子はそっけなく返した。
「まあね」
一子は、ブラスバンド部に所属していた。中学生のときから一貫してだ。
そして、やはり一貫してクラリネットを吹いていた。
太郎も中学生のときにはブラスバンド部に所属し、クラリネットを吹いていた。
つまり、同じ部に所属し、同じ楽器を吹いていた。ちなみに、太郎はパートリーダーをやっていた。
あの頃、一子は必ずしもクラリネットが上手だとはいえなかった。生来、あまり器用ではないのだ。
一年先輩であることを差し引いても、太郎の方がずっと上手かった。
そんな一子の練習に、遅くまで付き合ってやったことがあるのを思い出した。
太郎の方はといえば、ギターに専念してからはクラリネットにはまったくといっていいほど触れていなかった。
そこに、一子に対して多少後ろめたいところがないわけでもなかった。
「どうだ、最近調子は」
「別に、普通」
一子は、前を向いたままでやはりそっけなくいった。連れない態度だが、逃げ出したり、無視しないだけ、ましとはいえた。
そのまま、しばらく無言で歩き続ける。二つの長い影が、道路に並んでいた。
その沈黙に耐えかねた太郎が適当なことをいってお茶を濁そうとすると、それに先んじて一子がいった。
「なんで入んなかったわけ?ブラバン」
釣り目がちの大きな目が、太郎に向けられている。
予想外の問いかけだった。理由はいうまでもないと思っていたし、今更の問いだった。
226 :
ツイスター:2006/11/17(金) 22:18:08 ID:IU5NBlyz
「あんた、わたしなんかよりずっとクラ上手かったのに」
「いや、別に、まあ、バンドやりたかったし」
実際、中学生の時に高校に軽音部があることを知ってからずっと、進学したらそこに入ろうと決めていた。
今振り返っても、その選択は間違いではなかった。これまでの軽音での活動は充実していたし、おまけにそこで彼女まで手に入れた。
軽音にいなければ、伊勢との接点などなかっただろう。
だが、その説明では一子は納得しなかったようだ。
「それは知ってるけど、掛け持ちすればよかったじゃない。今だって日文研とは掛け持ちしてるんでしょ」
日文研、いや妹研とブラスバンド部を掛け持ちするのは、まったく意味が違うと太郎はいいたかった。
妹研は溜まり場みたいなものだが、ブラスバンド部はそういうわけにはいかない。
そもそも、妹研に入っているのは、山鹿に強引に引き込まれただけだと太郎は思っている。
しかし、太郎がそう釈明する前に、一子が畳み掛けた。
「わたしと一緒にやるのがいやだったわけ?山鹿さんがよかったわけ?」
太郎は、まったくわけの分からないことをいわれて困惑した。
「そりゃまあ、あんたはギター弾いて、山鹿さんと馬鹿やってればそれで楽しいんだもんね」
「別に、そんなこと」
太郎は、それだけしかいえない。とにかく、自分と山鹿をペアにするのは止めて欲しかった。
山鹿との仲は腐れ縁だと、太郎は思っていた。腐りすぎていて、いまさら絶つこともできない。
「それとも、わたしに気をつかったわけ?」
一子が、いささか皮肉めいた調子でいった。
入学した時分、ブラスバンド部への入部を誘われながら断っていたとき、そういう気持ちがまったくなかったわけではないと太郎は思い出す。
中学の頃から一子が太郎と演奏に関して比較されていたのを知っていた。とはいえ、それがフェアな比較かどうかは分からない。
太郎の世代、部は全国大会で銀賞をとった。
その功績はもちろん大会に出場した全員に帰されるべきだったが、なぜか太郎のクラリネットがそれに多大な寄与をしたということになっていた。
つまり、太郎のソロのおかげで銀がとれたというわけだ。真相は分からない。
ただ、少なくとも太郎を除く部員たちはそう認識していた。それは、一子も同様だ。
その太郎の世代が引退してから、一子の世代はこれといった成績を上げることができなかった。
その責任を転嫁されたわけではないだろうが、周りから、一子が太郎ほど上手ければという目で見られていたのは一子にも分かった。
いや、太郎が引退する前からそういう雰囲気がなかったわけではない。太郎も、それに気付いてはいた。
しかし、一子は持ち前の根性でそれに耐え、ひたすら練習し、今では次期パートリーダーだと目されている。
太郎は、そういった現状に詳しいわけではない。ただ、人一倍努力していることだけは知っていた。
それだけに、いまさら突っかかってくる一子が不思議だった。
227 :
ツイスター:2006/11/17(金) 22:18:52 ID:IU5NBlyz
「なんだよ、もしかして俺に入って欲しかったのか?」
太郎が冗談めかしていうと、一子が顔を赤くして怒鳴り返した。
「馬鹿!んなことあるわけないでしょ!脳みそトコロテンになったんじゃないのっ?!」
そのまま、すたすたと歩みを速めて太郎を置いていってしまう。
「おい、冗談だろ、何まじになってんだ」
太郎が追いかける。
「ついて来ないでよ!」
「馬鹿、方向が一緒だろうが」
「じゃあ、離れてよ」
「なんでだよ」
それ以降は無言のまま、早足で競うように家まで帰ることになった。
なぜか始めてしまった競歩を終えて家に帰ったが、いつもあるはずの次子の出迎えがない。
玄関に靴もサンダルも置いてあるので、出かけたわけではない。台所にもいない。
廊下の奥からシャワーの音が聞こえてきた。風呂に入っているらしい。
こんな時間に珍しい。次子が風呂に入るのは、いつも夕食後だった。
風呂場の前まで来て、次子に呼びかける。
「おーい、飯のしたくまだかー?」
次子が、シャワーを止めて答えた。
「あ、お帰りなさいお兄ちゃん。ごめんね、まだなの。材料は冷蔵庫にあるから、あがったらすぐやるから」
「あー、いい、いい。ゆっくり入ってろ。飯は俺がやっとく」
「ほんとー?わたし、お兄ちゃんに作ってもらうの初めてだよねえ。楽しみっ!」
ガラス戸を通しても、次子の楽しそうな様子が伝わってくる。こんなことがうれしくてたまらないという具合だった。
飛び跳ねる音さえ聞こえてくる。
228 :
ツイスター:2006/11/17(金) 22:19:49 ID:IU5NBlyz
「おい、転ぶなよ」
つくづく幸せな奴だと、太郎は苦笑した。
だが、そこに救われてもいる。何せ、次子はしばらくすれば消えてしまう運命だ。絶望に沈んでいてもおかしくはない。
深く考えているのかいないのか、明るく振舞ってくれている。ありがたかった。
自分の部屋に戻って、部屋着に着替える。情事の後なのだから、正直すぐにでもシャワーを浴びたかったが、先客がいるのだから仕方がない。
太郎が台所に入ると、そこにはまだ制服のままの一子がいた。冷蔵庫を開けて、牛乳をパックに直接口をつけて飲んでいる。
「こら、グラスをつかえ、グラスを」
「いいじゃない、別に」
毎度言い聞かせているが、いうことを聞く気配はない。太郎も、そろそろあきらめかけていた。
一子を押しのけて冷蔵庫の中を見ると、一通りの材料がそろっていた。ひき肉とたまねぎがある。
「ハンバーグだな」
太郎は、つぶやいた。
「何、今日はあんたが作るの?」
「ああ、たまにはな。我慢しろ」
「兄貴がハンバーグ作るとソースが適当だよね。ケチャップにマヨネーズ混ぜてるだけでしょ、あれ」
早速、クレームがついた。
「じゃあ、ソースはお前がやれ」
「いいよ」
まさか、素直に受け入れられるとは思わなかった太郎は驚く。
確かに、最近の一子は角がとれてきていたが、そのときにはいつも次子が間に立っていた。
今は、この場に二人しかいない。
一子を見ると、そしらぬ顔をして手にした牛乳パックに口をつけていた。のどを鳴らして飲んでいる。
遠くからは、パトカーのサイレンの音が聞こえていた。
以上、第10話「惨劇の裏で」でした。
伊勢がいないとさわやかだ。
ひき肉………。
いやしかし、肉を挽く時間的余裕は
いやいやしかし
次子は孔明ではなく妲己ちゃんだったとは
>>229 GJ!
こ、この世界では、処女を喪失すると間もなく命までも喪失するのか……
どっちが殺したのかわからんな・・・
>>232 ありゃあスゲーネタだった…
怖いぜ……
ママー
山本君のお姉さん分とか色々禁断症状がでて苦しいよ
ちくわでも食ってろハゲ
俺の雪桜さんの更新まだぁ?
僕は嫉妬が足りなくなったら姉スレとか妹スレとか幼馴染みスレに行って完結した作品を見て嫉妬分を補給するよ
ようするにこのスレに飽きたってことか
そろそろ、このスレも終焉が近付いてきたわけか
>>240 |ω・`)保管庫にもいっぱい作品があるわ
何にせよ、連載中の作品のクオリティが高いから
それを待ったり、脳内で続きを考えるだけで楽しい人生が送れるよ(*´д`*)
作者様いつもありがとうございます(_ _(--;(_ _(--; ペコペコ
九十九の流さんがいい感じに壊れてきてるなぁ
修羅場が楽しみだ
といいたいところだが、実はこう、じわじわ壊れていく描写を見てるのが一番好きだったり
だが溜まっていた物が堰を切ったように崩壊していくのも乙であるな
町中、登下校中、放課後、道場で、屋上で、職場で、戦場で、牢屋で、自室で・・・泥棒猫と相対し、互いに主導権を得るために主人公の目の前で牽制しあう姿など実に微笑ましいものだ。
GJ
次子がニトロの沙耶に見えてきた。
投下しますよ
「いらっしゃい。今朝連絡しといた通り、情報入ってるよ」
「ありがとうございます」
お辞儀をして、私はカウンターに座りました。表に出してはいけないとのことで店内で
読むことになりましたが、そのことに不満はありません。念の為に青様には昼食を渡して
いるので私は早く帰宅する必要もありませんし、青様も同じく早く帰宅なさることもない
でしょう。心配なく読むことが出来ますし、いざという緊急の用事が入ったとしても電子
情報なので私のデータ層に取り込んでおくことも出来ます。
「それで、ナナミちゃんはどっちのを知りたいの?」
どちらの、という言葉はどのような意味でしょうか。どちらという言葉は二つの中から
片方を選ぶということです。私は先日SSランクの娘と言った記憶がありますし、もしそれ
が店主様の勘違いだとして青様のことを調べていたとしても、ここに入ってくる前からの
付き合いである私には不要なものです。完全に把握しているとは思いませんが、それでも
必要なことは殆んど知っているつもりです。
「いやね、最近もう一人SSランクの娘が入ってきたんだよ。そっちが気になったのかなと」
渡されたディスクは二枚、二人分だということで分けているのでしょう。最近入った方
という言葉が気になり、返すことなく私は二枚とも受け取りました。
「両方、お願い致します」
「まいどあり」
「それともう一つ」
私は背後にある棚に目を向け、感情回路を手に取りました。交換の時期を向かえる前に
壊し、こちらに入ってからも今までは見るだけであったものです。外見の割に重く、私は
改めて大事なものなのだと認識しました。
「これを、取り付けて下さい」
「どんな心境の変化だい?」
店主様は驚いたような目で見つめてきますが、すぐに笑みに変えて受け取りました。
「必要だと、私にそう言った娘が居ました。私自身もまた、感情を持つことがその娘達に
とって必要だと判断しただけのことです」
数秒。
「奥へ来な。情報を読んでいる間に終わるよ」
店主様の後に続き、奥へと入って寝台に横たわります。傍にあった読み取り機器に記録
ディスクをセットし、痛覚回路を切りました。これで準備は完了です。
「それじゃ斬るけど、この傷跡はどうする?」
考えるまでもありません。
「このまま残して下さい」
店主様は頷くと、電源のスイッチを入れました。振動メスが低く音を鳴らすのと共に、
起動した読み取り機器からディスクの中身が流れ込んできます。
一人目は、リサ様のことでした。
本名はフランチェスカ・K・タイザー。現在74歳。第四惑星の華塔地区の軍属名家出身。
23歳の頃に出兵先である西塔地区の住民3000人を虐殺して軍法会議にかけられ有罪判決を
受け、残虐な人間性も問題視されSSランクの罪人認定を下される。第七監獄都市に入り、
何故かその頃から周囲に双子の姉であるアリサスト・K・タイザーの名前を名乗り、囚人
生活を開始する。幼児退化のような症状も見られるが、精神的なショックによるものだと
判断され、しかし攻撃性が減ったことから有益とされ軍からは何の処置もされていない。
普段はその状態で生活を続けているが突発的に狂暴性が現れ、その度に違う監獄都市へと
移動している。関連事項として姉であるアリサストはフランチェスカが虐殺を行う一ヶ月
前に、投薬実験により死亡したとされる。
感情回路を今の壊れたものから、新しいものへと取り替えている振動が身を震わせます。
その揺れが僅かに身を動かし、視界がぶれるのを煩わしく思い目を閉じました。そのこと
によって余計な情報が遮断され、代わりに以前見たリサ様の映像が浮かび上がってきます。
必要な情報は手に入ったと思うのですが、逆に分からないことの方が増えてしまいました。
あのときの姿は幼いものでも、ましてや狂暴なものでもありません。何を意味するのかが
分からなくなり、私は一旦考えることを止めました。
「はい、完了。起動させて良いよ」
区切りの良いところで終わったので、私は感情回路を起動させました。瞬間的に溢れて
くる様々な気持ちを吐息によって抑えること数秒、そしてユンとリーのことを思い出せば
暖かな気持ちが溢れてきます。これで、良かったのでしょう。
「どうだい、気分は?」
「そうですね、良いものです」
動作不良もなく、よく馴染み、快い。
そして何より、生きているという実感が沸いてきます。800余年ぶりの感覚に、自然と
笑みが溢れてきました。感情を強める補助装置の付いたものなので、その感覚は尚更です。
しかし、それはすぐに止まってしまいました。不備があったのではなく、二人目の資料
に書かれていたことが問題だったからです。それだけ、強烈なものでした。
罪状は大統領の殺害、国のトップを殺したことによりSSランクの罪人判決を受ける。
その方は間違いなく私が昔、私や青様がお世話になっていた屋敷の……
「もう終わったかしら?」
声に振り向けば、本人が立っていました。
「ナナミ、久し振りね。相変わらず無愛想な顔をして」
周囲の全てを馬鹿にしたようなその顔は、間違いなくシャーサ様のものです。しかし、
妙なことに気が付きました。何故か首にはSSランクを示す首輪が嵌っておりません。普通
に出歩ける筈もないというのに、それを気にした様子もないのです。
「あぁ、首輪? それは、必要ないのよ。だって私、機械人形ですもの」
それは、どのような意味なのでしょうか。
「あなたは嫌いだけど、昔のよしみで教えてあげるわ。ここに来る前に、意識のコピーを
してこっちの体にも入れたのよ。本人の方は今の計画に関係する記憶を消してあるから、
今は知らないでしょうけれどね。まさか自分がメイドだと思っている機械人形の中に本人
と同じ人格が入っているなんて、知ったらどう思うでしょうね。外見まで同じくしてある
のに気が付かないなんて、本当にお馬鹿さんだわ」
おかしそうに声を漏らし、歌うように言葉を続けます。
「それが、どのような意味を持つのでしょうか?」
「あなたも相変わらず馬鹿ね、少しは頭を使いなさいよ。もしここで元の私が死んだら、
人格は残ったこっちの体の方が本物になるじゃない。つまり、何の罪状もない綺麗な体の
私が生まれてくるのよ。ここまでは分かる」
全て、理解出来ました。
今まで説明された部分で、どのような計画かも想像がつきます。それが分かり、浮かぶ
感情は恐怖です。この方は、どれだけ恐ろしいのでしょう。まるで自分の体を道具か何か
としか思っておらず、それに疑問すら持っていらっしゃいません。
「漸く分かったみたいね。叔父様の家に保管してあった昔の事件の証拠もちょろまかして
きたし、もうすぐ計画は完全に実行されるわ。そうしたらもう、蒼と二人の世界よ」
罪を負った体を捨てて、新しい体を手に入れること。それだけがシャーサ様の目的では
ありません。過去に負った罪も公表することで元の体に全ての罪を負わせ、そして殺す。
そうすることで無罪になった青様と幸せになろうということなのでしょう。
「ただ殺すのも面白くないから蒼のところに行くように仕向けたの。簡単だったわ、自分
のことは自分が一番分かってるし。べたべたされるのは自分が相手とはいえ腹が立つけど、
私は心が広いから。ただ、少し厄介なことになったのよね」
シャーサ様はわざとらしく溜息を吐き、
「使えると思ってた二人が暴走したみたいで、止めてきてほしいのよ。このままだと、蒼
が取られてしまうわ。最悪、殺されてしまうかも。それはナナミも嫌でしょ?」
強い不安が沸き上がり、私は立ち上がりました。殺されてはならないと、その気持ちは
感情を得た今はそれを強く後押しします。焦燥感が胸を焼き、早く動けと命令してきます。
「行くでしょ?」
「行きます、青様を」
私は軽く首を降り、自分の心に素直になりました。
「愛する人を、守る為に」
――運動機能を通常モードから戦闘モードへ変更
――了承しました
駆動系のギアが組み変わるのは一瞬で、強い力が体に満ちているのが分かります。二人
の特級を相手にどこまでやれるのかは分かりませんが、それでも青様を助けたいと、想い
は体を動かしました。愉快そうにこちらを見ているシャーサ様が不快ですが、そのような
ことは些細なもの。気にする暇もありません。
「代金は後で払います」
私は杭打ち機を腕に装着すると白杭を2ダース程背負い、
疾駆しました。
今回はこれで終わりです
お嬢最強伝説
やっぱり俺の書くものは謀略系の人が出てきます
シャーサ復活!シャーサ復活!復活!復活!
>>255 さすがシャーサ様!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ
そこにシビれる!あこがれるゥ!
策の為に自分自身すら手駒にするとは・・・
シャーサ、恐ろしい子!
「うぅ……うぇーん…ぐす……、おか、おかぁさん……おとおさん……」
私がまだ七歳……小学校二年の春の時。私とシュンちゃんの親が死んだ。小学校によくある遠足の日。
前から仲の良かった私達の親が、旅行に行くことになった。久しぶりの旅行……そうお母さん達は喜んでたのに………なのに………
「なん、で………死んじゃったの……うぇぇ…」
旅行から帰る途中、大型トラックとの正面衝突。たったそれだけの。即死と言う呆気ない出来事だった。
「茜……」
その時、そばにいてくれたのがシュンちゃん。大好きだった親を無くし、無気力だった私を支えてくれていた。
シュンちゃんも親を無くしたのに、私の前では涙も流さず、弱音もはかず。いつもの……変わらないシュンちゃんでいてくれた。
「ほらほら!料理作ってみたんだよ!ちょっとこげちゃったけど……へへ、目玉焼きだ。」
「いらないっ!!なにもたべたくない!」
ガシャーン!!
ひっくり返ってこぼれた料理。割れてしまったお皿。あの時、シュンちゃんの手が切れて血が出てたのに、それを必死に隠して。
「あっはっはは、やっぱり焦げたのはいやだよなー、うん。俺もいやだし。焦げをたべると癌になるってのは俗説なのかねー。」
そうやっていつも笑って、私に元気を分けてくれて。この頃からかもしれない。シュンちゃんに頼って生きてきたのは。
「シュンちゃん、かえろ。」
私も元気になってきた、小学校五年の時。クラス変えがあった。シュンちゃんと違うクラスになるかと心配だったけど、運良く一緒になれた。
だけど……もう一つの不安が沸きあがってきた。それは…
「えぇ……うん、と………みんなとサッカー……」
「かえ、ろうよぉ……」
「あー!倉橋、茜ちゃん泣かすなよー。」
「いじめだよ、いじめー。」
「いやー、しまったなぁ。二組の生徒会長たるオレ様がいじめはよくないなぁ。」
「あの……生徒会長は僕……」
「サランラップ!(シャラップ)俺はクラスの裏のテイオーなんだ。」
シュンちゃんは優しい。だからいつも私と一緒にいてくれる。私がわがままを言っても、怒らずに聞いてくれる。それはきっと、シュンちゃんも私のことを好きだから。
でも………その好きは、どういう意味だろう。小さい頃からのよしみ?放っておけない幼馴染み?
私は違う。私はシュンちゃんを、一人の男の子として好き。異性として意識している。その気持ちに気付いたのは、中学二年の時。
毎週火曜日、私は図書委員なため、シュンちゃんには教室で待ってもらっていた。当然、一緒に帰りたいから。
でもその日……教室にもどってもシュンちゃんはいなかった。机の上には、鞄が置いてあったので、まだ学校にいるということだ。
きっとトイレにでも行っているのだろうと思い、シュンちゃんの席に座って待っていた。
シュンちゃんの机………なにやら落書きが書いてある。
『高山ティーチャーが自分が独身だと愚痴った回数7』
もう、シュンちゃんたら。授業も聞かないでこんなことばっかりしてて……
でも、また一つシュンちゃんのことを知れて嬉しい。
ガサ…
ただなんとなく、机の中に手を入れて。触った紙切れを掴んだから、机の上に出してみたら…
「あぁ…え?…」
可愛らしい、ピンクの便箋だった。最初はまた、シュンちゃんの冗談かと思ったら…
「な、に……これ…」
そこには丸みのある……女の子の字が書いてあった。内容は……見るまでもない、ラブレターだった。
「あ、ははっ……もぅ、シュンちゃんたら…破っちゃうなんてひどいなぁ…」
ラブレターは真っ二つに裂け、グシャグシャになっていた。あ…でも。
「…やっぱり…」
もう一度机の中を見ると、封筒もあった。ということはもうこの内容を見たあと…もう一度手紙を元に戻し、確認してみる……今日、放課後に体育館の裏で……だめ、ダメ!ダメだよ!!!そんなの無しだよ!
気付いた時には教室から飛び出し、駆け出していた。体育館の裏…ちょうど今そこで、告白……もしOKしちゃったら?シュンちゃんがいなくなっちゃう?
そんなの、考えられない。私にはシュンちゃんしかいないんだから。シュンちゃんがいないと生きていけないんだから。
「はぁっ、はぁっ……」
体育館のそばで、息を整える。走ってきた疲労と緊張で胸がいっぱいいっぱいだ。今にも破裂しそうなほど。胸がいたい。
「…来てくれて、ありがとうございます……」
「あー…うん…」
その時、ちょうど女の子とシュンちゃんの声が聞こえた。見つからないように影からそっと覗いてみる。……いた。シュンちゃんと、女の子だ。
「えと……手紙をみてもらってわかると思うんですけど……しゅ、俊太さん、す、好きです!私と付き合ってください!」
「………」
シュンちゃんは黙ったまま夕陽を眺めていた。なんですぐに断らないの?なんで考えてるの!?
「…あの、返事……」
「うん…嬉しい……けど、さ。……ワリィ、君とは付き合えないなぁ。」
「え……」
やった!そうだよ、シュンちゃん!!断って正解だよ!!
「ど、どうしてですか!?誰か好きな人でもいるんですか?」
「いやぁ、いないけど。」
もうっ、しつこいよ!ふられたんだからさっさといなくなってよ!
「じゃ、じゃあ!」
「うん……君が俺を好きだと言ってもさ、俺は君を好きじゃないから。そんな一方通行な付き合い方じゃ、長持ちしないよ。」
シュンちゃんたら、本当に優しいんだから。もっと厳しく突き放せばいいのに。そうすれば私以外に、誰も寄らなくなるのに。
私はもう大丈夫だと思い、その場を後にした。
教室
あれから数分。まだシュンちゃんが帰ってこない。もしかして変なふうに絡まれちゃったのかな?だとしたら……助けた方がいいかな?
「ふぃー……おっ、待ったか?」
そんなことを考えていたら、シュンちゃんが戻ってきた。
「いやぁ、便秘気味でさぁ、久々の開通に手間取ってしまいましたよ。」
もう、シュンちゃんたら。私に心配かけさせないためにそんな優しい嘘をつくなんて。
でもね、信じてるよ。シュンちゃんは私が好きだから誰とも付き合わないんだよね。それなら、シュンちゃんが私に告白してくれるまで、ずっとまってるからね。
ずっと、ずっと、ずぅっとね!!!
病んでるワァ
大変GJ
どうも、すでに忘れ去られているトライデントです。
今から新作を投下致します。
ウホッ。
プロローグ
どこまでも透き通った蒼い空がどこまでも広がっていた。
雲もなく、今日は快晴だったが。俺の中の天気は突如来た夕立に打たれている気分だ。
目の前にいる友人がまた一騒動を起こした模様である。
夏の日差しが強い昼頃に出掛けて、あてもなく友人とショッピングセンターをぶらついている途中に起きた騒動であった。
俺が友人の目を離して書店で本を立ち読みをしている隙に起きた騒動らしい。
ガラス越しで人が集まっているので俺はそのおかげで友人がガラの悪そうなお兄ちゃんに絡まれているのがわかった。
ほとんど半泣き状態で誰かに助けを求めようとしているが、見物人は全く彼に視線を合わせようとしない。
せっかく、第三者として面白い物を見物できるのにわざわざ自分から火の粉の中に入り込もうとするバカは
山奥のどこかで仙人か新世界の神になればいいと俺はつくづくそう思う。
全く、俺こと天草 月(あまくさ つき)の周囲にはトラブルメーカー以外にいないかと思わず嘆息の一つや二つも吐きたくなる。
その友人は彼氏付き女に口説いているのが幸いして、今思い切り絡まれています。
さて。
ここで友人を見捨てて帰ってゆくのも面白いかもしれない。
「おい。コラ? 人の彼女に手をだして生きて帰れると思うなよ」
ガラの悪いお兄ちゃんに友人は胸倉を掴まれて足元が少しだけ宙に浮いていた。
囲んでいるギャラリーはストリ−トファイトになることを期待しているのか誰も止める気配は見せない。
警察もまだ到着してなさそうだし。
さらばだ。花山田忠生。
お前と思い出は決して俺は10秒後にすっかりと忘れてやる。
「わ、わ、わ、わ、忘れないでくれよ月!!」
うわっ。俺の心の中が読まれている。
人込みに隠れて忠生の苦しむところを思う存分に眺めてやりたいと思っていたのに。
ちくしょう。
気を利かせて、人込みを作っていた人は俺が談笑への舞台まで道を明けてくれた。
ありがとうよ。バカ野郎どもよ。
「あん? てめえもこいつのツレかよ。だったら、お前にも責任とってもらうぞ」
むっ。こいつ、言ってはいけないことを。
「勘違いして欲しくないんだが、俺は花山田忠生のツレじゃあない。
ここにいる皆様方にも告げたいが、俺はこいつと友達になるぐらいなら、カブトムシと友達になった方が100倍マシだぁ!!」
「月。お、俺とお前の友情は?」
「んなもん。最初からあるわけないだろ」
藁をも掴みたかった忠生は失望の表情を浮かべてこれから起きることを覚悟していた。
ガラの悪い男は忠生の首をがっちし掴んで人気のない場所へと連れて行かれようとしている。
周囲の見物客も騒動に飽きてきたのか散り始めていた。
「くそぉぉぉ。今度生まれ変わってくる時は女の子だけの世界を作って、俺は新世界の神になってやるぅぅぅぅ!!」
と、忠生は不吉な事を言い残して強制的にこの場から姿を消した。
「熱いからそろそろ家に帰るか。夕飯の準備に取り掛からないとな」
俺は忠生という男の存在はもう頭の片隅に残ることなく、今日の夕食の献立を何にするのか頭が一杯一杯であった。
水澄家という表札が飾られている一戸建の家が俺がお世話になっている家である。
俺は小さい頃に両親が交通事故に遭って両方とも亡くしている。
両親の親友であった人が俺を引き取ると言ってくれたおかげで俺はその頃から水澄家に居候させてもらっている。
養子縁組をせずに俺の籍を移し替えていないのは亡くなった両親に思う所があるだろう。
詳しく聞けないまま、そのお世話になったおじさんおばさんも3年前に他界した。
運悪く俺達姉弟妹が普段からお世話になっている両親に恩返しするために商店街の福引き券で当てた
温泉旅行の移動の最中に飛行機が墜落したのだ。
帰らぬ両親たちに俺達は悲しんでいたが、いつまでも悲しんでられない。
難しい相続に関する手続きは叔母や祖母達が全て引き受けてくれたのは助かった。
話に聞くと両親は何かのために多額の生命保険の受取人として水澄姉妹宛てにしていたのだ。
更に俺も知らなかったことだが、俺の本当の両親も俺のために多額な遺産を残してくれていたようだ。
管理人としておじさんが俺が20才のときにこの遺産の事を話す手筈だったらしい。
だが、いくらお金が入っても俺達が好きだった両親は戻ってはこない。
心のどこかに傷を抱えたまま3年の時が流れた。
3年も経てば表面上は以前のように振る舞えることはできるだろう。
ただ、俺は知っている。
俺の家族になってくれた姉妹が両親の遺影を前にして泣きそうにしていることを。
家に帰ると俺は夕飯の食事の準備に取り掛かる。
水澄家には二人の姉妹がいるのだが、料理関係は恐ろしくダメで作らせると
暗黒料理やカ−ボンという人間では作れない料理を作ってしまうほどに下手という領域を遥かに超えているのである。
一度、姉妹達にせがまれて試食した時に俺は食中毒で病院に運ばれて1ヵ月も入院するとありえない事態が起きてしまった。
それ以来、水澄家では虹葉姉と紗桜に料理禁止令がひかれている。
生前でも自宅を留守にするほど忙しかった両親の代わりに居候の俺が小さな頃から台所を立たざるえなくなってしまった。
そのおかげでこの年頃になると一人前の主夫としていいお嫁さんに貰われるまで成長してしまったのだ。
(何かが虚しいぞ)
「月君。月君。今日の夕食は何かな? かな?」
ある程度夕食を作ることとモノロ−グに深けてしまっている間に虹葉姉が台所にやってきた。
この人は水澄虹葉。(みずみ なのは)
年は俺より年が一つ上。細い体に乗った小さな頭、長い髪を黄色のチェックリボンに纏めている。
雪のような白い肌に整った顔立ち。美少女というよりはだれにも気軽に話せる雰囲気を持つ女の子であり、
俺が通う学校では密かにファンクラブが設立される程の人気を持つ。一応、この家にやってきた頃から俺は姉と慕っているが。
「つまみ食いしていい?」
「だめ」
「お姉ちゃん。お腹空いているんだよ。ちょっとぐらいいいでしょ? ねえ。ねえ」
全然、姉らしくありませんでした。
まあ、この家に来た頃はちゃんとお姉ちゃんをやっていたはずだが、俺がこの家に馴染めて頃には弟べったりな女の子になってしまった。
「はいはい。好きなだけ食べてくれ」
「わーい。月君。話わかるよ」
俺はフライパンで炒めていた食材を皿に盛り付けると真っ先に虹葉姉の箸が素早く動いた。
口を含むと頬に手を押さえて一人別世界に旅立つ。
「うわっ。いい匂い。兄さん、今日は何を作ったの」
「適当な残っていた食材を工夫して作っただけだ。食費を節約できるなら節約した方がいいしな」
「節約したお金を兄さんが裏金作りに励むわけですね」
「そんなもんないっての」
俺は嘆息しながら、他の食材を調理をし始める。紗桜には問等に付き合っている暇はない。
この子は水澄紗桜(みずみ さくら)
年は俺より一つ下。小柄な体で身長も平均の女子よりも少し小さい程度。
長い髪を真っ二つに分けている。俗に言うツインテ−ルという髪型にしていると言った方がわかりやすい。
姉同様に恵まれた可愛い容姿に気さくで親しみやすい性格。姉同様にファンクラブが設立しているが、本人は知れば卒倒するだろう。
この家は虹葉姉と紗桜、そして、居候であるこの俺の3人家族で暮らしているのだ。
「今夜のニュ−スを放送します。今、社会問題とされている女性による男性の刺殺事件が年々と増加傾向に当たります。
原因は男性による他の女の浮気とされ、嫉妬した女性が精神的に病んでしまうことにあります。
その結果、男を寝取ろうした女性や恋愛の勝ち組の女性が刃物や鋸などで刺されるケ−スは全く珍しくありません。
今月未明に起きた男性Mを懸けて争った女性の西園寺世界さんが容疑者の女性に
通学途中で刺されるというショッキングな事件も該当します。
政府はただちに問題になっている刺殺事件の対応を…」
食卓に先程作った料理を並べて、3人仲良くテレビを見ていた。
流れているニュ−スは食事の時に見るには相応しくない内容だったが。まだ、7時前だから仕方ないだろう。
虹葉姉と紗桜がニュ−スを真剣な眼差しで見ていたが、俺はできるだけ気にしないでおこうと思っていた矢先に紗桜は問い掛けてきた。
「兄さん。ど・う・し・て・男の人は浮気するんですか?」
「そうそう。ようやく、恋人同士になったり結婚したのにね」
「いやいや、待て待て。なんで、俺の方を睨んで聞くんだよ」
「別に」
「別に」
息が合う姉妹の連携プレイ。俺を論理的に追い詰めている寸前はできている模様です。
この二人がお互いの利益のために協力し合うとさすがの俺でも勝てる気はしない。
「男は本能的にそう生物なの。種を植え付ける性欲に我慢できずにいろいろと口説いたり襲ったりするものじゃないのかな?」
何故か疑問係。
対面し合うテ−ブルの向こうにいる姉妹の迫力は先程よりも上回っているような気がするぞ。
外面は笑顔の冷笑を保っているけど。
「月君は女の子の気持ちとか考えないの? 好きな男の子が他の女の子の事を想っているだけで自殺するぐらいに傷つくんだよ」
「そうそう。お姉ちゃんの言う通りだよ。兄さんは少し無神経ですっ!」
姉妹の猛攻。俺がテレビで報道されているヘタレ男並みに軽蔑する視線が送られている気がする。
これはとんでもない屈辱だ。
何とか反論しなければ。
「でもさ。男がたかだか浮気したぐらいで鋸を持ち出して、恋敵である女の子を刺そうとするか?
最近の女の子はちょっとおかしくなってきているよ」
「別に全然おかしくないですよ。恋敵を排除して好きな男性と幸せになるのは当たり前じゃないですか」
「そうだよ。月君。今も昔も恋のオウガバトルに関しては殺した者が勝者なんだよ」
だからさ。殺した時点で刑務所行きは確実なんだけどな。
それでどうやって幸せになるんだよと内心口から溢れそうになったが思わず引っ込めた。
油に水を注ぐ行為をすれば、地雷を踏んでしまう。
「恋人の仲介をしといて、本命のために練習台になってあげるよと言って寝取ってしまう女の子は本当に最低だよ」
「ううん。彼女を携帯メ−ル一通で別れようとする彼氏の方も生きている価値はないと思う」
虹葉姉も紗桜もすでにその件のニュ−スが終わっているのにいつまでもその事に関して会話で盛り上がっていた。
俺は触らぬ神に祟りなしのことわざの通りに自分で作ったみそしるをすすりながら、姉妹を相手にしないでおこうと思った。
夕食の後片付けをしてから、最後の順番になった入浴をして疲れを癒す。
適当に玄関や窓の鍵を占めるのを確認して自分の部屋に戻る。
これで今日一日が終わる。
姉妹の部屋を通り過ぎようとすると虹葉姉と紗桜がドアを開けてひょっこりと顔を出した。
「月君。お休みなさい」
「兄さん。お休み」
パジャマに着替えた姉妹がお休みの挨拶を言ってくれる。
これも日常的なことになっているよな。
ちなみに猫柄のパジャマを着ているのは虹葉姉で、犬柄のパジャマを着ているのは紗桜だ。
二人の趣味はモロ出しだが、その姿が可愛くて似合うなんて言葉に出せるはずもなく。
「ああ。お休み」
と、その一言を言ってさっさと自分の部屋に戻った。
ベットで横になっていると俺はたまに思い出す。
隣の家に住んでいた女の子のことを。水澄家に馴染めることができなかった頃に一緒に遊び、いろいろお世話になってくれた女の子。
しばらくすると引っ越してしまったが。
今はどこで何をしているんだろうか。
そう思いながら、深い睡魔に襲われて眠りに着いた。
というわけで新作を投下致しました
忘れ去られているトライデントです。初めての人もこんにちわ。
今回の新作は前々から言っていた姉妹ネタです。
すでに神々たちが姉妹ネタを投稿されている中、無謀にも姉妹ネタの新作を投稿致しました。
だって、姉妹ネタが書きたい衝動を抑えきれずについ書いてしまった。
今はとても反省しているww
さて、今回の『水澄の蒼い空』は前作の『雪桜の舞う時に』の焼き回した作品です。
似たような展開も多いです。プロットの作成段階は姉妹ネタの方が早い
本当なら水澄の蒼い空を先に書き上げて投下する予定でしたが、
雪桜さんのネタを浮かんでので、先に『雪桜の舞う時に』を投下することになったオチです
では
ヒロインの水澄姉妹VS約束した幼なじみ(泥棒猫)の戦いを頑張って書き上げますので
楽しみにしてください。
GJ
てかニュースにクソワロタwwwwwww
どれだけ病んでる世界なんだw
GJ
ちょwwwwwww本当に友人見捨てられてるwwwwwwwwwww
この外道さは月という名前ゆえかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ちょっと俺この世界に引越してくる
作品自体は姉妹日記ととらとらシスターのパクリではないのかと
トライデント氏の作品はネタだけの作品だね
最初のエクスカリバーもどきから分かってた事じゃないか。
いまさらなに言ってんだよ。
もっと気楽に楽しもうぜ。
>最初のエクスカリバーもどきから分かってた事じゃないか。
そんなものあったけ?
どこにエクスカリバーなんてあるんだよ
俺のいたり先輩との結婚式はまだか?
今日は投下が多くてイイね!
私もいきます。
「ふう〜・・・・・・・」
神川の別宅、滞在2日目。
あてがわれた部屋に戻ってきた智は、ようやくといった感じで一息ついた。
その顔は疲労の色が濃く、とりわけ精神的なものが大きい。
と言っても、酷い扱いを受けているわけではない。
「いくら先輩が連れてきた人間だからって・・・。俺はこの家の主人でも何でもないのにな・・・」
そう、むしろその逆。
使用人たちの智への態度が、彼を非常に敬ったものなのだ。
まだ一日しか経ってないが、自分が屋敷の主である藍香とほぼ同格の扱いを受けていることは容易に察しがついた。
まず夕食の席。座る椅子をわざわざ引いてもらい、思わずたじろいだ。
廊下で会えば、会釈でないきちんとした礼を返された。
呼び名にしても、様付けはやめてくれと何度言っても、恐れ多いと聞き入れられなかった。
若いメイドには彼をご主人様と呼ぶ者までおり、正直勘弁してもらいたかった。
実際、これらは『智は自分と同列に扱うように』という藍香のお達しによるものだ。
しかし、そんな扱いに慣れていない智はどうしても腰が引けてしまう。
基本的に物怖じしない性格の少年だが、そんな彼にとってもこの扱いは過分だと感じざるを得ない。
自分を連れてきたことといい、この扱いといい、智には智には藍香の真意が分からなかった。
だから昨晩の夕食の後、智は意を決して自分が此処に連れてこられた顛末を藍香に聞いた。
藍香に嫌なことを思い出させるかもしれないのを覚悟の上で。
しかし聞かされるのは、部分的な状況説明の言葉ばかり。
『着替えは予備があったから平気』『智くんの服も、予備の男子制服があったから着せた』
『精液はシャワー室に忍び込んで洗い流したからバレてない』『智の身体はリムジンの運転手に運ばせた』などなど・・・。
話を聞きに来たと言う智の、本当に聞きたいことが分からないわけではないだろうに。
機嫌よく告げる藍香は果たして、はぐらかしているのか本気なのか。
ついでに、なぜ男子の制服の予備――しかも智の体格にピッタリ――まで部室にあるのか、疑問に思わないでもなかったが。
結局その日は心身の疲労を理由にそれ以上問い詰めることをせず、早々に眠りにつき。
翌日は土曜で学校も休みなので、藍香や綸音と談笑したり、屋敷を案内されたりして過ごし。
藍香の真意の分からないまま、冒頭の通り部屋に1人で落ち着いているわけである。
そうして静かな空間に佇んでいると、頭の隅に追いやられていた様々なことが脳内に蘇ってくる。
強く思い出すのは、深い関係にあった2人の女性のこと。
特に、エルだ。
「結局エルさんとはあれっきりだもんな・・・。一週間ほったらかしかよ、俺・・・」
エルの枕元に残したメモには、自分の携帯番号と共に『すぐ戻ります』という走り書きを添えてあった。
実際、帰宅し千早をやり過ごして学校に行かせたら、すぐにホテルに戻るつもりだったのだ。
(それが、あんなことになっちまって・・・)
いくら千早の件で大変だったとはいえ、この一週間エルのことを思い出すことは全くなかった。
携帯電話は手元になく、連絡が入っていたか確かめる術もない。
実は携帯は智の知らない間に千早に隠されていたのだが、普段あまり使わない所為か、今の今までその存在を全く忘れていた。
(エルさんも、こんな最低な男のことなんかもう忘れてるかもしれないな。でも、俺は・・・)
夜の街で偶然出会い、急展開に流されるままたった一度身体を重ねただけの女性だ。
一夜の夢だと切って捨てることは容易い。
しかしエルのことを思い出せば出すほど、その存在感は智の中で急速に膨れ上がっていく。
千早や藍香との件で、自身もエルと同じ人外の化物と思い知らされたからかもしれない。
しかし何より大きな理由は、あの泣き顔が頭に焼き付いて離れないからだ。
一週間で多少記憶がおぼろげになった中、寂しいと慟哭するあの涙だけは鮮明に思い出せる。
智の知るどんな人間よりも大人びていて、同時に誰よりも幼いエル。
そんな彼女の100年に渡る孤独を、20年も生きていない自分が救えるとは思えない。
しかし、素顔を覗いてしまった人間として、せめて何かしてやりたいと思ったのだ。
だからこそあの日、すぐに彼女の元へ戻ろうと思ったのに―――。
(今からでも・・・・・・・・・遅くないか?)
会いに行ってみようか。まだあのホテルに滞在しているかもしれない。
各地を旅しているという彼女だからこんな何もない街に一週間もいるとは思えないが、可能性はゼロではない。
それが、約束を破ったことへの後ろめたさを誤魔化す行為に過ぎないとしても。
何もせずじっとしているなど、智には出来そうもなかった。
それに、もしかしたら。
エルに会う事で、千早の傍に居られなくなった自分の生きるべき道が見つけられるかもしれない。
(そうだな・・・。よし、出掛けよう)
たとえエルに出会えなくても、出掛けることは必要だ。
血を補給しなければならないし、何より千早の様子を見に行かなければならない。
千早がどんな状態にあるか。そして、自分は千早の為に何が出来るのか。
知らなくては、何も始まらない。
よしっ、と1人呟いて藍香に出掛ける旨を伝えに行こうとした時、扉をノックする音が小さく響いた。
どうぞと返事をすると、そっと入ってくる人影が1つ。
それは、今まさに会いに行こうとしていた人物。
藍香だった。
藍香の姿は、白のブラウスに短めの黒いスカート。
至って普通の格好だったが、制服姿に慣れた智の目には新鮮な姿に映った。
智を意識してスカートの丈を普段よりかなり短めにしているのだが、それは彼だけが知らない事実だったりする。
部屋に入った藍香は窓際にいる智へ近づき、その傍らに立つ。
自然に寄り添うような距離感がまるで恋人同士のように感じられ、それだけで藍香は嬉しくなる。
智は藍香を一瞥すると照れたように顔を背け、視線を外の景色へ移した。
彼にしてみれば、会いに行こうとしていた人物が逆に向こうから現れ、出鼻を挫かれた形だ。
互いに沈黙のまま数分が経過し、藍香から智に話しかけた。
「・・・・・・・・・」
「え? 何を考えてるのか、ですか?」
珍しく藍香の方から話しかけられ、智は驚く。
しかし、数分間も沈黙したままでは不思議に思われるのも当然だろう。
まして、何か言いたげに落ち着きない様子では尚更だ。
「えっと・・・ですね。エルさんのことを考えていたんです。
エルさんっていうのは、一週間前に偶然出逢った女性の吸血鬼なんですけど。
・・・吸血鬼って、俺だけじゃなかったんですよ」
どう話を切り出そうか悩んでいた智だが、ありのまま全てを話すことにした。
相手が藍香なら、吸血鬼関連のことを隠す必要はないと考えたからだ。
むしろ、藍香に相談することで何か知恵が借りられるかもしれない。
そう思って外の景色を見つめたまま話し始めた智は、藍香の纏う気配が変わり始めたことに気づかない。
春風のような穏やかな雰囲気が、段々と鳴りを潜めていく。
「俺みたいに中途半端な能力じゃなく、突然変異でもない、正真正銘の吸血鬼。
力は強いし、年も取らない・・・。実際、100年以上生きてるらしいです。
それだけ見れば、確かに化物かもしれないけど・・・」
一旦言葉を区切り、一息入れた。
智の横顔は酷く優しく、それがまた藍香の瘴気を強くしていく。
「普通の人間と変わらない女の子でした。・・・いや、女の子っていうのは語弊があるかもしれないけど。
寂しがり屋のくせして、傷つけることや傷つけられることが怖くて、孤独に身を置くしかない1人の人間だったんです」
そして、今ならその気持ちが分かる。
千早と藍香を傷つけ、彼女たちに恐れられることに心から震える、今の自分なら。
幸い藍香は智を受け入れようとしてくれているが、いつまでも甘んじるわけにはいかない。
「俺、エルさんに会ってこようと思うんです。まあ、会えるかは分からないんですけど。
もう人として生きられないのなら、それ以外の道を見つけなきゃいけないから。
それに、千早の様子も気になるし・・・。
だから先輩。俺、ちょっと出かけ・・・」
限界だった。
智の口が、自分以外の女を優しく語る。
何と、あの忌々しい折原千早とはまた別の女。
しかも、不老の吸血鬼だという。
智との閉じた永遠を望む藍香が、何よりなりたい存在。
それが今、智の心を強く占めている。
そして千早の名前が出た時、堰は切れた。
あんなに狂おしく自分を求めてくれたのに、まだ智はあの女に未練を持っているというのか。
―――許せない。
だから、最後の言葉を紡ごうと智が藍香の方を振り返った時。
藍香は全身でぶつかって、衝動的に智を押し倒していた。
「うわっ!?」
いきなりのことに耐え切れず、智は仰向けに倒れる。
痛みが無いのは、ちょうどベッドに押し倒された形になったからだろう。
「先輩、いきなり何をっ・・・!?」
またも、言葉は最後まで紡がれなかった。
智に重なるように圧し掛かってきた藍香に、強引に唇を奪われた所為で。
「んんっ、んっ・・・!? ちゅるっ、ちゅむっ・・・!」
舌を侵入させ、智のそれと乱暴に絡める。
口腔内を一方的に蹂躙し、唾液を流し込む。
あらゆる感覚が粘膜の接触点へ集中し、抵抗はおろか思考もままならない。
1分経ち酸欠の危機を感じ始めたところで、ようやく藍香が唇を離した。
「・・・ぷはっ! 先ぱ・・・い・・・?」
行為の理由を問いただそうとする言葉は、しかし途中で中断せざるを得なかった。
黒く濁った瞳。
藍香の瞳の色は、長い黒髪と同じ美しい黒色だ。その色が、今はなぜか酷く淀んで見える。
言うなれば、黒を通り越した闇色。迷い込んだら二度と出られない、光無き世界の色。
それの放つ圧倒的な威圧感が、智の言葉を文字通り封じてしまった。
藍香は先程までと変わらない笑顔で智を見下ろしている。
なのに、空恐ろしいものしか感じられないのは何故なのか。
笑顔のまま、藍香が口を開いた。ボソボソとした声ではなく、はっきりとした音を伴って。
「智くん。私のこと、愛してる?」
言葉の意味は、すぐに智の頭に浸透した。
混乱している思考でも、理解するには十分すぎる簡素な言葉だ。
「あ、愛って・・・。先輩・・・?」
どう返せばいいか分からず、智は自分を押し倒す藍香を見上げる。
しかし藍香は、憑かれたように同じ言葉を繰り返すだけだった。
「智くん。私のこと、愛してる?」
濁った瞳も笑顔も、全く揺らがない。
返ってくる言葉が自分の望むとおりだと、少しも疑ってないという顔だ。
彼女の望む答え。それが肯定の言葉であることは、鈍い智でも容易に想像がつく。
(つまり・・・先輩は俺に、愛してるって言ってほしい・・・?)
なぜ、一体どうして。智は混乱した頭を必死に回転させる。
藍香に対する智という人間。並んで立つと明らかに見劣りするし、何か抜きん出た才覚があるわけでもない。
智を吸血鬼化させたことへの責任感はあっても、それは恋愛感情と結びつくものとは思えない。
それどころか、強姦したという忌まわしい事実が―――。
(―――まさか)
不意に、智は一つの推論に思い当たる。
(解釈のすり替え)
智に無理やり犯されたことを、レイプという忌まわしい記憶を封じるために、藍香は意味をすり替えているのではないか。
すなわち、『智くんが自分を犯したのは、彼が自分を愛しているから』と。
吸血鬼による女の強姦ではなく、想い合う男女のセックスだったのだと。
このように解釈をすり替えることで、嫌な記憶を無意識に回避し、精神の安定を得ているのではないか。
そう考えれば、色々と辻褄があってくる。
智の扱いを自分と同格にしたことも。
真意を問いただそうとする智に、要領を得ない答えしか返ってこなかったことも。
先程のように、躊躇いなく智の部屋にやって来ては傍に寄り添おうとすることも。
藍香にしてみれば至極当然の行動となるだろう。
となれば、智を押し倒し『愛してる?』と問い詰めるこの行動も理解できる。
恋人と思う男性が知らない女性を気に掛け、会いに行こうとすれば、怒るのも当然だ。
しかし、その『当然』が一般的に見て異常なのは一目瞭然。
とはいえ、藍香をそのように病ませたのは自分自身。
(俺は・・・どうすればいいんだ・・・?)
藍香の望む言葉を言うべきだと思う心と、はっきり否と言い虚構を断ち切るべきだと思う心。
強姦の真相を明かし謝罪すべきだと思う心と、気づかないなら罪を隠しておきたいと思う心。
このまま藍香に溺れたいと思う心と、立ち上がって外に目を向けるべきだと思う心。
全てがない交ぜになってせめぎ合い、智を容赦なく責め立てる。
「ねえ、触って・・・?」
いつの間にか、藍香が服をはだけていた。
智の手を掴むと、露になった豊かな乳房に押し当てる。
つい軽く力が入ってしまうが、それだけで藍香は切なげに身を捩った。
その媚態が、目覚め始めた智の吸血鬼衝動を強く刺激する。
本能に身を任せる快楽を知った肉体と、交錯する苦悩に弱りきった精神に、それを抑える術は無かった。
「きゃうっ!?」
藍香の短い悲鳴。
智が藍香を抱き寄せ、素早く体位を入れ替えたからだ。
思考を放棄し、今度は自分から藍香の身体を貪る。
藍香の驚きの声もすぐさま嬌声に変わり、部屋は喘ぎと愛の囁きで満たされていった。
『ワタシノコト、アイシテル?』
その問いへの答えは、もはや闇の彼方。
肉体の快楽で誤魔化すという、最悪にして最低の手段によって。
そう分かっていながら、智にはどうすることも出来なかった。
今回はここまで。予想外に長くなり、目標のシーンまで行きませんでした。なんてダメな自分・・・orz
次こそは動き出す・・・はずです。いや、ホントに。
しばらくは『ブラッド〜』を更新する予定です。行き詰まったら『メイド〜』に逃げるかもしれません。
>>阿修羅様
283の誤字、更新の際に修正お願いします。
『智には智には藍香の真意が分からなかった』
↓
『智には藍香の真意が分からなかった』
>>290 GJ!
智君が見事なまでの鈍さと藍香先輩によってダメになっていくw
エルたんの逆襲をwktkして待ちますともw
各キャラが順調に病んでいってますね。
それに伴い、智も……ハァハァ(*´Д`)GJ!
>>279 貴様、氏の作品をしっかり読んでないな?
>「約束された勝利の鋸(泥棒猫虐殺闃)ーーーー!!」
>>290 >>(俺は・・・どうすればいいんだ・・・?)
そりゃもう恋人プレイしかないでしょw
本腰入れて三股GOw
>>293 どこの作品とどの場面ですかそれw
モロにF○teパクってますよwwww
いいねいいね
ふぉうふぉう
>>296 パクリとパロくらい見分けろ
次はエルさんが乱入して3Pd(ry
―――…それは、突然の出来事だった。
「お前……その指輪…」
剣術の練習のためにいつも通る少し暗めな廊下。
私は恐いからと言って、そのたびに、剣術の師であり、想い人でもある奴の手を掴む。
「あぁ、これですか。…自分、来月結婚するんですよ。
身内だけでやる……粗末な物ですから、姫様はご招待できませんけど…」
そう控えめに言う奴の顔は、今にも踊りだしそうなほど幸せな表情だった。
「自分の、幼い頃からの仲で、少し気が強いですけどね。告白は自分からしました」
「そ、そうか…」
「…姫さま」
「な、なんだ…?」
「大丈夫ですよ。今日の練習は軽めですからっ!」
…コイツを好きになって以来、初めて殴りたくなった。
裏切られた怒り、奴が遠くに行ってしまう焦り、色々な物が入り混じった感情を顔に出さないように俯いていた私に、
奴は能天気な面で鈍感なことを言ってきた。
「そうか…、それはよかった…」
「はいっ!」
時が流れるのが、こんなにも早く感じたことは無かった。
一日、また一日、振り返ってみれば、それは数十分くらいの出来事にしか思えなかった。
私への剣術の指南が終わってから、奴が私の知らない女と幸せな一時を過ごしていると思うと、胸が苦しくなる。
奴が結婚を三日前に控えた日に、私はこの苦しみから脱出する方法を取った。
いつものように通る少し暗めな廊下、私は奴と手を繋いで歩いていた。
手の中にある奴の指輪が、私の心を不快にさせた。
だがそれも今日で終わる。
「?、今日は少し辛かったでしょうか?」
いつかのように俯く私の表情を伺うに奴は屈んだ。
「…ふ、ふふふ…」
「姫様…?」
この笑いの意味をコイツは知らない。
コイツの背後から気配を消して近づく、私の影のことも知らない。お前が幸せに暮らしてる間、お前は私のしてることを知らないだろう。
その先に起こることを想像するだけで、背筋がゾクゾクする。
そして目の端で護衛を捉えた私は合図を送る。やれ、と。
影は奴の首筋目がけて手刀を繰り出す。僅かな残像を残しながら、それは確実に奴の意識を断ち切ろう奔る。
「!」
しかし、奴は剣士としての勘でも働いたのだろうか。
逆手に握った木刀でそれを防ぐ。
「……何者だ」
鋭い眼光を光らせて私の影を睨むコイツとは反対に、私は笑いを堪えるのが必死だった。
「姫様、下がっていてくださ……い…」
奴の膝が崩れる。そのままヒヤリとする地面に倒れこみ起きることはなかった。
知らないこと尽くしだろう?
私の生活も、好物も、色も、趣味も、苦しみも、気持ちさえも…
ふふふ……私が、今お前の意識を飛ばしたことも…
「連れていけ…」
「…はっ」
奴が闇に消えていくのを見送り、私はこの上ない幸せな気持ちになった。
「…ふふ、お前は、一生私の物だからな…?」
スキップにもなりそうなほど、軽い足取りで私は、奴とこの先を一生共に過ごす場所に向かった。
クチュクチュと淫美な水音が響く。
薄暗い部屋、ベッドの上で奴は腕と足は逃げられないように拘束されている。
気持ちが昂ぶる。待ちきれない。にやけた頬を正せない。
「ひ、姫さま、やめて…ください」
「嫌じゃ、今日、お前は私の物になるのだ」
左手で奴の肉棒をしごき、余った右手で自分の秘所を刺激する。
指輪などとっくの前に奴の目の前で粉砕した。
後はコイツが私の物になるだけ。
「気持ちいいか? 気持ちいいか?」
「…姫…さま…!!」
「ふふ、可愛い声をする。……私の方の準備もいいぞ」
そう言って私は、奴の体にまたがり、肉棒の上で腰を浮かせる。
奴は私の行動を見た瞬間、逃げ出そうと藻掻くが、そんなものに意味は無い。
「ひ、姫さま。そ、それはっ、これから夫になる方のためにお止めくださいっ!」
「…大丈夫じゃ、私の夫はお前なのだから…」
その後の奴の言い訳を聞く前に、私は、一息に腰を降ろした。
てのを思いついた。
その後は幼なじみ奥さんのスーパー救出活劇。
もちろん自分は書かない。ではなく書けない。シチュ希望
なんと言うか、例えるなら
極上のひき肉を見せときながら
あと、パン粉と玉葱とソースが無いからハンバーグ作れません
といわれたような気分だ
私が書くと妹が救出後、幼馴染奥さんに引き渡さず愛の逃避行、
そして10数年後兄妹の間に生まれた忌み子を巡って操を守っていた
幼馴染&姫様の争奪戦という、極上の挽肉が肉団子になってしまう。
GJだあぁぁぁ!
>もちろん自分は書かない。
うううURYYYYYYYYYY!!!!
ツイスター、投下します
305 :
ツイスター:2006/11/18(土) 23:49:53 ID:anV+mjmJ
通学途中、太郎は、周りの連中がやけに浮き足立っているのに気がつく。
何かあったのかと思い、校門のところに同じクラスの人間を見つけて尋ねようとすると、困ったような顔をして逃げていった。
首をかしげる。
その太郎の肩を、山鹿が叩いた。
「よお、何かあったのか」
山鹿はため息をついた。
「その様子だと何も知らんようだな」
そういって腕を組み、困ったような顔をして太郎の顔を見た。ずれてもいないめがねを直しながらいった。
「いきなり衆人観衆の前で聞かされるのもいやだろう。俺が教えてやる。来い」
306 :
ツイスター:2006/11/18(土) 23:50:58 ID:anV+mjmJ
「単刀直入にいうぞ。昨日、伊勢が死んだらしい」
妹研に太郎を連れ込んだ山鹿が、前置きなしにそういった。
太郎は、何をいわれたのか理解できない。やがて理解して、冗談にもほどがあると怒ろうとした。
山鹿が機先を制していった。
「いっておくが冗談ではない。俺がそういう冗談は嫌いなのは知っているだろう」
確かに、山鹿は馬鹿でふざけた人間だが悪趣味ではなかった。
「今朝のニュースを見なかったのか?」
見ていない。新聞も読んでいなかった。
黙りこくったままの太郎にかまわず、山鹿は今知っていることだけをそのまま伝えた。
いわく。事故でも自殺でもなく、他殺、つまり誰かに殺されたらしいこと。その状況はよく分からないこと。
そして、遺体が発見されたのは伊勢の自宅で、昨日の夕方に帰宅した母親が第一発見者らしいこと。
太郎は、「伊勢の自宅」、「昨日の夕方」という言葉にピクリと反応しただけでじっとそれを聞いていた。
ずっとうつむいている。受け入れることがまだできていないようだった。
あたりまえだと、山鹿は思う。自分の恋人がいきなり死んだ、しかも殺されたとなれば、自分だって取り乱す以前に呆然としてしまうだろう。
「俺が知っているのはこれだけだ。テレビと新聞から得た情報にすぎないがな。多分、今日は全校集会があるだろう。
もしかしたら、もっと詳しい話が聞けるかもしれん。だがお前はもう帰って寝てろ。どうせ今日は休校になる」
山鹿がそういうと、太郎は顔をうつむかせたまま首を振った。
「いや、大丈夫だ、何もない。はは、薄情だな、俺は」
「そうじゃない。まだ理解できていないだけだ。どうせ後で来る。今のうちに帰れ」
「いや、今は平気だ、変な心配するな」
今度は、顔をあげて太郎がいった。本人がそういうのであれば、仕方がなかった。
ともかく、歩みに力のない太郎を連れて教室に向かう。太郎の表情は、山鹿にも読みきれない。
教室の戸を開けると、一斉にこちらに目が向けられた。多少なりともざわついていた教室に一瞬にして静寂が降りる。
その多くは、気まずそうにそのまま目をそらす。
クラスの少なくない人間が、太郎と伊勢の交際のことを知っていた。
おそらく、今まで知らなかった人間も、太郎がいない間に聞いていたに違いなかった。
太郎は、その教室の微妙な空気に気付いていないようだった。山鹿は、それを幸いだと思う。
二人が座ると、誰も身動きひとつしない。
やがて教師が来た。山鹿の予想通り、全校集会があるという。
太郎と一緒に、講堂に向かう。その途中で、少なくない視線が太郎に向けられるのを感じた。
この学校には、うわさ好きが割りといるらしい。ただ、やはり太郎はそれに気付かない。
二人は、終始無言だった。
307 :
ツイスター:2006/11/18(土) 23:51:58 ID:anV+mjmJ
校長の話に、新しい情報はなかった。
ただ、夜には出歩かず、身辺に気をつけること、警察の聴取があるかもしれないが素直に従い、何か事件に関係のありそうなことを知っていれば教師か警察に話すことを伝えただけだ。
告別式は未定とのことだった。検死解剖でもしているのだろうかと、山鹿は考える。
事件に関係のあることを知っていそうな人間といえば、太郎だ。
先ほどの太郎とのやり取りの中で、山鹿は太郎が昨日の夕方に伊勢と会っていたのではないかと推測する。
そうであれば、殺される前の伊勢と最後にあった人間だということになる。
重要参考人というわけだ。
だが、今の太郎に情報提供させようというのは無理に思えた。太郎はああはいったが、少しずつ堪えてきているはずだった。
少なくとも、太郎も今は能動的に動く気はないようだから今日のところは休ませた方がいい。
そう判断した山鹿は、案の定休校になったのを幸いに、太郎を家に送っていってやる。
太郎はいやがったが、山鹿が強引に付き添った。
「お帰りなさーい、お兄ちゃん、ってどうしたの、何か変だよ」
次子がいつもの調子で迎えに出て、その様子に気付き、まじかに顔を寄せた。
太郎は、それから顔を背けながらいった。
「いや、大丈夫だ、悪い、少し一人にしてくれないか。いや、すまん新聞、今日の新聞あるか」
それを聞いた次子がとてとてとリビングから新聞を持ってくる。
太郎はそれをひったくるようにとると、階段を駆け上がった。
玄関に残された山鹿に、次子が目をくりくりさせながら尋ねた。召還式の時に会って以来だが、山鹿のことは覚えているようだ。
「ねえ、どうしたの?何かあったの?」
「お前は、次子だな」
山鹿が確認する。次子がここに来て以来のだいたいの経過は、太郎から聞いて知っていた。
「俺の口からいっていいものか。伊勢という女の子を知っているか」
「うん、お兄ちゃんの彼女だよね。すごくおっぱいが大きいんだよ。卑怯なぐらい」
ぷりぷりと憤りながら、次子がいった。
「その伊勢が昨日死んだ。殺されたらしい」
308 :
ツイスター:2006/11/18(土) 23:52:50 ID:anV+mjmJ
「えっ。うそっ、伊勢さん殺されちゃったの?」
「そうだ。それで簸川はショックを受けている。よかったら慰めてやってくれ。いや、そうだな、しばらく一人にしてやれ」
いささか常識に欠けたところのある次子に任せては、逆効果になるかもしれない。
それなら、一子に任せた方がいいだろう。山鹿はそう考えたのだが。
「大丈夫。任せてよ。ちゃんと慰めてあげるから。だいじょぶ、だいじょぶ」
そういってにこにこと微笑む次子に不安をおぼえないでもない。
しかし、妹召還を行った生みの親としても、そのぐらいはできるだろうと信頼したい。腐っても理想の妹だ。
それに、こういうときはいろいろ考えて気を遣う人間よりも、次子のような無自覚な人間がそばにいたほうが楽かもしれない。
そう考えて、「だいじょぶ、だいじょぶ」と繰り返す次子に太郎を任せて帰ろうとした。
その帰り際、次子に妙なことを尋ねられた。
「死んじゃったってことは、やっぱり消えちゃったってことなんだよね」
一瞬、何をいわれたのか分からず呆気にとられる。まさか、死ぬということの意味を聞かれるとは思わなかった。
いや、次子にとっての死とは消えることでしかないのだから、それも当然のことなのか。
「まあ、そういうことになるな」
「そっかあ」
次子は、少しだけ難しい顔をすると、腕を組んで何度もうなずいた。
それを見た山鹿は、やはり不安になる。
それはもちろん、そんな次子に太郎を任せることに対する不安であったが、同時にそれ以外の漠とした不安も感じた。
それがどういう不安なのかは分からない。その対象が次子であるという以上のことは。
「そっかあ、そっかあ」
以上、第11話「バッドニュース」でした。
薄い。伊勢は温存すべきだったのか。山鹿が女の子だったらよかったのに。
,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
(.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 『新しい妹が繰り広げるほのぼの修羅場物語だと
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ 思ったらいつのまにか人が死んでた』
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ |
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも何をされたのかわからなかった…
,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉
|/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった…
// 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
/'´r ー---ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐ \ 独占欲剥き出しだとか
/ // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ 愛してるって言わなきゃ殺すだとか
ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ } そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::... もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
>>302 問題ない。挽肉は別に一つではないだろ?
>>300 滅茶苦茶好みなだけに続きがないのがショックだぜ
師弟関係って初じゃね?
まあ何にせよGJだ!
来週の火曜日は新月か・・・
ちょっくらヤギの首でも狩ってくるわ。
何気にレッドペッパーの続きが気になる
つまりエルはオールド・ブラッドで智はアンダーイヤーということですね
「辞める?なんでさ!?」
剣道部2年の夏。まさにこれからという時期に、僕は部長である彼女 高津巳 都(たかつみ みやこ)に退部を切り出した。
今にも掴み掛からんとばかりに憤る都を前に、僕はどう言い訳をしたものか思案していた。やましい事があるわけでは無いのだが、素直に話したら話したでこのおせっかいで世話焼きな少女が納得するとはどうしても思えなかった。
「ん、家庭の事情・・・かな?」
「登校拒否する小学生かっつーの!?大体何故に疑問形!?」
腕と一緒にポニーテールをぶんぶん振り回しながらヒートアップする都。鼻先を掠めた、危ない。気付かれないように僕はそっと一歩下がった。
「嘘じゃないよ、ミヤ。ちょっと実家の方で・・・ね」
これは嘘じゃない。ただ、事態はまさに異常を極めており、到底彼女に説明できるものでは無かった。
「実家って・・・こないだ帰ってたのとなんか関係有るの?」
「うん、まあね」
彼女は僕の家庭事情の幾らかを知っている。だからだろう、渋々といった感じで引き下がる都。
「・・・でも、辞めるなんて部長として許さないかんね。大体くーがいなかったら僕は誰と稽古すりゃいいのさ。休部なら条件付きで可」
「条件?」
「三日に一度は顔出すこと、約束」
「・・・それじゃ辞めてないのと同じだと思うんだけど」
「うっさい!言い訳する前にまず『イエッサー!』だって教えただろ!」
うちの部はいつのまに軍隊になったのだろうか。
「・・・分かったよ、部長。鋭意努力する」
「どっかの政治家みたいな返答・・・んー、まぁいいだろ。ほれ、指切り」
彼女の剣道部員としてはどうにも不釣り合いな、細い指を絡める。
『ゆーびきーりげーんまーん・・・』
だが、この小さな手、中学生と見紛うばかりの小柄な体躯から繰り出される打突はまさに苛烈の一言。全身のバネを用いて男子顔負けの破壊力を発揮する。
『うーそつーいたーら・・・』
性格は、周囲にしばしば変人呼ばわりされる――非常に不本意ではあるが――僕をして奇抜である、と言わざるを得ない。がさつなようで面倒見が良く、面倒くさがりの癖にお節介焼き。
感情の発露が大きいのに本心が分かりづらい。・・・そして非常に人に好かれやすい。僕もその例に漏れず、彼女のことがとても好きだった。
『はーりせーんぼーんのーます・・・』
だから。僕はあまり人の感情の機微に聡い方ではないけれど、それでも彼女に隠し事をするのは、それなりに心が痛むのであって。
『ゆーびきった!』
よし、おっけー!とにっこり笑う都。・・・僕は何となく都の頭に手を伸ばして、ゆっくりと撫でた。
「あ、ちょっと・・・」
「嫌?」
「というか、さっきまで稽古してたから、その・・・」
あせくさいかも、と俯く都。こうしてしばしば都が見せる年頃の少女らしい一面が僕は特に好きだった。決して口には出さないけれど。
「・・・・・・・・・はふぅ」
陶然とした息をつく都の髪を手櫛でそっと梳く。さらさらとした心地よい感触、鴉の濡れ羽という表現がしっくりとくる今時珍しい長い黒髪。
彼女は度々邪魔だと言っているが、僕が頼んで伸ばしてもらっている。こんな綺麗な髪を切るなんてとんでもない、と都を説得したのだ。
都が人に言われて自分の意見を変えることなど滅多にないのだが、その時は珍しく、本当に珍しくあっさりと承諾してくれた。
僕は都の反応に首を捻ったものだが、周囲で事の成り行きを見ていた部員達の呆れたような視線が妙に屈辱的だったのを覚えている。
こっくり、こっくりと船を漕ぎ始めた都の頭をそっと僕の膝に横たえる。板間に直接寝るよりはマシだろう。夕日が差し込む武道場、既に他の部員達は下校させたので
(先に帰って欲しい旨を伝えたときの部員達の生暖かい眼差しには如何なる意図が込められていたのだろうか?)僕ら二人以外に人影はない。
「くー・・・だぃ・・・き・・・・・・・んぅ」
武道場の扉から射し込む西日に顔を照らされ、都が眩しそうに寝返りを打った。頬に掛かった髪をそっとどけてやる。
現在の時間は丁度5時半。校門が閉められる6時半迄には下校しなければならない。僕は都の寝顔を眺めながら、着替えと戸締まりに掛かる時間を逆算し、あとどれだけこうしていられるのかを考え始めた。
都を送り届け、僕は自宅前に立っていた。そう、紛れもなく自宅である。僕はこの家で生まれた、それは間違いない。
ただし、僕には余り馴染みはない。当然だろう、僕がここに住むようになってまだ一月も経っていないのだから。
僕の両親は僕が幼い頃に事故に遭い、父は死亡、母も意識不明の重体となり僕は親類の家へと預けられた。
といっても僕が預けられたのは父の両親の家であり、僕は実の孫として彼らに可愛がってもらい、何不自由なく育てられた。
僕のことを親無しと揶揄る者もいないわけではなかったが、僕は自分が不幸だと思った事など一度たりとも無かった。
その後高校へ進学する際に、中学から半ば都の付き合いで続けていた剣道で幸運にも推薦を取り付け、授業料免除、寮費免除という素晴らしい条件で進学することに成功した。
僕の祖父母らは好きな学校へ行けばいい、そのくらいの蓄えは十分にあると言ってくれてはいたが、それでも世話を掛けないならそれに超した事はない。
僕はそのまま寮暮らしとなり、同じ街にあるこの生家の事を思い出すことは殆ど無くなっていた。
「ただい―――」
僕がドアを開ける、と同時にどたばたどたばた、とけたたましい足音を響かせながら人影が飛び出してきた。
「おかえりー!!ごはんにする、おフロにするー?それとm」
「部活を終えたばかりなのでお風呂をいただきます」
「うう・・・つれないよ、くーくん・・・」
年の頃は20歳前後。色素の薄い髪を三つ編みにまとめた、どこかタンポポの綿毛を人に連想させるやわらかな印象の女性。
「わかったよー・・・じゃあご飯の用意して待ってるね?」
ぱたぱた、と蛙を模したと思わしき奇っ怪なスリッパを鳴らして台所へ帰っていく彼女の背中を見送りながら、僕は小さく溜息をついた。
僕はある日、突然祖父母らに寮から呼び戻された。血相を変えた様子の彼らにただ事ではないと感じた僕は、言われるままに街でも最も大きな病院へと向かった。
そして、彼女に出会ったのだ。
僕に対して異様なまでの執着心を示す彼女に、僕は正直に言えば戸惑っていた。理屈では分かっていたが、到底納得できるものではなかった。
だから、僕は彼女に対して距離を取ってしまった。また明日も見舞いに来て欲しい、と言う彼女に対して嘘をついた。僕だって人間だ、考える時間が欲しかった。
翌日、病院の外来終了時間と同時に彼女は病室で手首を切って自殺した。
どうにか一命を取り留めた彼女の様態を医者に聞き、躊躇い傷が無かったと聞いて僕は覚悟を決めた。
この人には、僕がいないと駄目なんだ。僕しか頼れる人がいないんだ。
僕は両親を無くしても、沢山の優しい人達がいた。でも彼女には正真正銘、僕しかいないんだ。
・・・なら、僕が一緒にいる以外無いじゃないか。
心づくしの夕食を前に僕がきっちりと三角食べを繰り返すのを見ながら、彼女は何が楽しいのかニコニコとしている。まるで自分は世界一幸せだ、と言わんばかりの笑顔。
「ね、ね、おいしいかな?」
「はい」
その質問はもう10回目なのだけれど、毎回律儀に返す僕と毎回喜ぶ彼女。まだまだ家族初心者の僕たちだが、こんな事の繰り返しで本物の家族になっていくのかもしれないと思った。
僕はその話を聞いたとき、小学生の頃図書室で読んだ有名な医療マンガのある話を思い出した。ある少年が炭坑の崩落事故だかに巻き込まれ意識不明となり、事故当時と寸分違わぬ変わらぬ姿のまま何十年も眠り続ける、という話である。
「ね、ね、くーくん。あれやってよー」
夕食を終えた僕に、彼女は突然“あれ”なるものを要求した。彼女は不安や孤独感からか、僕との身体的な接触を望む傾向があった。
仕方がないだろう。彼女の現在の状況は言ってしまえば浦島太郎のそれに近い。知己すらなく、まさしく異世界へ放り出された彼女にとって僕は唯一の寄る辺なのだろう。
「・・・いいですよ」
「わーい♪じゃ、よいしょ・・・っと」
僕の膝の上に横に座り、僕の身体を抱きしめる。僕も誘われるように、彼女の背に手を回す。
「ん・・・くーくん、あったかい・・・」
僕と彼女の身長はそれ程差がないため、僕は必然的にそれなりに豊かな彼女の胸元に顔を埋めたような体勢になる。夢のように柔らかな感触。
でも、不思議なことに一片たりとも劣情が喚起されないのだ。それどころか、ずっとずっと昔に無くしてしまったものをようやく見つけたような、切ないまでの充足感を感じる。
もしかしたら、彼女が僕を求めているように、僕も彼女を求めているのかも知れない。そんな風に、思った。
彼女の名前は木佐凪 笹揺(きさなぎ さゆり)。
僕の、実の母親である。
入れ忘れました、タイトル「僕と世界にお別れを」
インモラルと真っ当な恋愛の間で揺れ動く少し変わった少年の話。修羅場分は少し低めになると思います。
お袋には夢はありませんが、ママンには夢があるのです。
愚かにもどうしようもない遅筆が多忙を極める時期に書き始めましたが何とか頑張りたいものです。
>ママン
GJよやぁーーーーーー!!
8歳と9歳と10歳の頃と、12歳と13歳の時も僕はずっと、待っていた!
ママン「な、なにを…」
クリスマスプレゼントだろ!!
ママンの想いを受けて生まれたくーくんは無敵である!
見ていなさいくーくん! 泥棒猫は私が排除してあげる!
>>323 こ、これは久々に物凄くツボな話かも・・・
タイトルから「月と貴女に花束を」を思い出した
ママンかわいいよママン。
90年代あたりの流行を嬉々として語るママンを想像した。
ママンとは・・・予想の斜め上を行きやがった!GJだ!
・・・正直登場シーンでは姉かと思った。
このスレ初のママンの嫉妬か……期待してます!
金属を打ち鳴らすような音がして拘束が解除され、自由になった。
間に合うかもしれない。
救う為に、走り出す。
間に合わない、という言葉が脳裏に浮かんだ。体格差は大きくあるが、二人は既に走り
出している。それに対して僕はやっと動き出したばかり。初速が低い今では、二人に追い
付けそうもない。しかし諦める訳にはいかなかった。
距離を縮める為に手を伸ばし、
「失礼致します」
突然視界に入ってきたのは、黒いスカート。風を受けて翻るその中から延びた足が僕の
掌を足場に、大した重さも感じさせずに跳躍する。空中に視線を向ければ、たなびく銀色
の髪と黒いメイド服。そして髪と同色の翼が見える。
一瞬、天使が降りてきたかのように思えた。
「……ナナミ」
そう、それは天使ではなく僕のよく知っている機会人形だ。背中から伸びているものも
翼ではなく慣性によって宙に暴れる白杭の束で、逆光の中に目を凝らせば無機質な反射を
しているのが分かる。どこまでも人工のものだが、動きにはそんな歪さは感じられない。
空中に身を踊らせていたナナミはコンパクトに身を回して姿勢を整え、空間を踏み抜く
ように着地する。衝撃によって砂埃が立ち上がり、視界が閉ざされた。
轟音。
「ここまでです!」
土煙が晴れ、皆の姿が見えた。
リーちゃんもユンちゃんも、サラさんもリサちゃんも、それからナナミも、皆無事だ。
「青様」
器用にもパイルバンカーで左右の攻撃を受け止めているナナミは、こちらを向いて眉根
を寄せた。少し遅れて背に負った白杭がぶつかり合って硬質な音をたて、重力に従い下を
向く。しかし天使の翼のように見えたそれが閉じた今でも、神々しさが残って見えた。
「大丈夫でしょうか、血が」
「大丈夫、これは」
シャーサのものだ、とは言えなかった。幾ら僕のものではないからといって、それを気
にしないでいられる程僕は悪人じゃない。これが僕にとってかけがえのないものだという
ことには変わりないのだ。今の争いの原因がシャーサだったとしても、それは同じだ。
だがナナミの言いたかったことは違ったらしい。軽く首を降り、パイルバンカーが装着
されていない左手で僕の右手を取り、おもむろにそれを唇で挟んだ。指先を舌が包み込み、
ぬるりとした感触が背筋を震わせる。微かな痛みがして指先を切っていたのだと気付く。
唇を離されたときには軟膏のようなものが塗ってあった。暫くお世話になっていなかった
ので忘れていたが、こんな便利な機能があったことを思い出した。
「遅くなってしまい、申し訳ございません。そしてリーとユン」
ナナミは見下ろすのではなく、しゃがむことで二人に視線を合わせ、
「よく、頑張りましたね。ありがとうございます」
こんな状況だというのに、穏やかな笑みを見せた。表情を見て気が付いたのは、そこに
感情がしっかりと宿っていること。作って浮かべたのではない、二人がしたことを心から
誇らしく思うような、そんな笑みだ。
「ナナミ、感情が」
「無断で戻したことをお許し下さい、とは言いません。それが原因で青様が傷付いたり、
リーとユンが危険な目に遭ったのですから尚更です。ですから」
ナナミは呆気に取られているサラさんとリサちゃんを鋭い目で睨む。その瞳に浮かんで
いるのは、二人に対する明確な怒りだ。しかも睨むだけではまだ足りないと言うように、
音をたてて白杭の先を突き付ける。
「それを償う為の御命令を、お願い致します」
「二人を止めてくれ。ただし、傷一つ付けるな」
「かしこまりました」
ナナミは深く一礼し、その低い姿勢のまま身を回してリサちゃんとサラさんを弾き飛ば
した。リサちゃんは空中で姿勢を整えて着地し、サラさんもバランスを崩しながらも踏み
止まりナナミを睨みつける。
「お兄ちゃん、怖かったよぅ」
「……死ぬかと思った」
実際、本当に死ぬところだったのだ。叱ろうとも思ったが、しかし二人の顔を見てその
気は失せてしまった。だから僕は黙って頭を撫で、抱き締める。先程は出来なかった分、
その力は強い。それに安堵したのか、少し苦しそうにしながらも二人は強く僕を抱き返し
て泣き声をあげ始めた。伝わってくる体温や振動が生きていることの尊さを伝えてくる。
僕は二人を抱えると、ベンチに戻った。ここからはナナミの領分だし、邪魔をすること
は許されない。しかし、その代わりに逃げ出さずに見届ける。どんな結果になろうとも、
決して目を背けたりはしない。それが僕の責任だ。
「何故、争うのですか?」
ナナミは攻撃をいなしながら、僕にも問掛けているような大きな声で言う。化物のよう
な二人を相手に苦しそうだが、それでも互角に戦っているのは凄いことだ。しかも、よく
見れば少しずつではあるけれども、押してきている。護衛も出来るようにナナミにも戦闘
モードがあるのは知っていたが、これ程のものだとは思わなかった。
白杭を槍のように扱って立ち回り、その度に背中の白杭が跳ね上がり翼のように翻る。
それは天使ではない、戦場を飛び回る高貴な戦乙女のように見える。無駄な血を流すこと
を嫌い、命を落とすことを悪とし、主の意思に背くものを嫌悪し、誇り高く戦う。命令を
忠実に守り、二人に一切の傷を負わせないように動く姿は、まさにそれだ。
リサちゃんの剣を受けるのではなく流すことでサラさんに向かわないようにして、逆に
サラさんの攻撃は背の白杭の束やパイルバンカーを盾のようにして受け止める。近付いて
くるリサちゃんを押すようにして投げ飛ばし、サラさんから距離を開ける。
「青様は、このようなことを望んでおられません」
「あなたに、何が分かるというの?」
地面が破裂し、土砂が降り注ぐ。ナナミは突撃槍のようにパイルバンカーを構え、それ
をぶち抜いて飛び上がり、続いて身を高速で回した。広がった白杭の束は片方2mを超過
する羽根となり、押し寄せる遊具や石の波を弾き返す。
「ずっと青さんの隣に居て、幸福を味わってきた貴方が」
足元に走り込み、下からリサちゃんが刃を突き上げてくる。
「何が分かるというんですか!!」
それを靴の裏で受け止め、身を縮めて勢いを殺す。それの反動で、ナナミは高く跳んだ。
「確かにそれは、リサ様やサラ様の仰る通りです」
最高位で白杭の束を翼のように広げ、ナナミは二人を見下ろしながらパイルバンカーを
構えた。そして続くのは合計25本の杭による怒濤の連射、金属性の雨は檻のように二人の
周囲に突き立てられる。肌を擦ることもなく打ち込まれた白杭は、歪な籠のように見える。
しかし、二人はその中に納まっていなかった。もしかしたら、躊躇いや揺らぎのような
ものがあったのかもしれないが、それを責めるようなことはしない。以前のナナミならば
正確に捕えていたかもしれないが、感情がある今では無理もないことだ。だから僕はただ
ナナミを信じて、ずっと見守る。
やってくれる、と。
ナナミは僕を信じて、今戦ってくれている。だから僕もそれに答えなければいけない。
「ナナミお姉ちゃん、踊ってるみたい」
「……綺麗」
いつの間に泣き止んだのだろうか、リーちゃんとユンちゃんがナナミ達の戦いを真剣な
表情で見つめていた。二人の口から漏れてくる言葉に苦笑して改めて眺めると、言われた
通りかもしれないと、場違いな感想が思い浮かんでくり。
リサちゃんが踊っていた印象が強く、動きが未だに踊りに見えているせいもあるののかも
しれない。再び戻ってほしいと、そんな甘い希望を持って。
踊りでも何でも良い。
皆、幸せになってほしい。
「生きてくれ」
呟き、リーちゃんとユンちゃんを抱き締めた。
今回はこれで終わりです
俺は描写がえらく下手だから困る
「これを見てください……」
そういって碧さんがポケットから取り出したのは、これまた写真を入れられるペンダントだった。そしてそこには。
「あ、れ?また……俺?」
俺の写真……かと思ったが、少し違った。着たこともないスーツを着ていたし、少し老け気味だった。
「これは?」
「亡くなった…旦那です。」
旦那……つまり、葵の父親ってことか。確かによく似てるな……
「だめだって事はわかってるんです。晴也さんはあの人とは違うって。でも……その顔を見ると…もう…」
「み、碧さん!?」
気付けば、碧さんは瞳を潤まし、顔を上気させたまま目の前に迫っていた。
「ちょ、ちょっと!?」
有無を言わず、俺の着ている服に手を掛け始めた。これは……いろんな意味でやばいか!?
「ご、ごめんなさい!でも……ああ…」
俺も俺で、あまり抵抗しないため、上着をすべて脱がされてしまった。
「はぁ……若い子の体って逞しいんですね……ごく…」
うわ…すご……碧さんいろっぽすぎだ…これが未亡人の魅力ってやつか?
「うふふ……私みたいなおばさんにも反応してくれるんですね?」
「え?……あ!」
自分でも気付かなかったが、すでに自分の分身がジーパンを押し上げ、破裂寸前にまでなっていた。
「いや…碧さん、まだまだ若いですし……きれいですから。」
もはや俺に抵抗できるほどの理性も無く、ただその身を委ねるだけだった。
「それじゃあ……ここ、見さしてもらいますね?……ん…」
ジー
そういって碧さんはズボンのチャックを、口を使って開け始めた。
「うおぉ……」
その見慣れない、艶やかな光景に、ますます興奮してしまい、さらに股間の怒張が増した。
「うわぁ……また大きく……男の人ってこんなにまでなるんですね。」
ズボンから取り出されたそれは、自分の意思とは関係無く暴れていた。そんな暴れん坊に、白くて細い指を絡める。
「すごく……あつくて、堅いですね……」
シュッシュッ……ジュッ……
カウパーが碧さんの指を汚し、いやらしい音を立てる。それがまた興奮を誘った。
「くぅ……」
「あ、気持ちいいですか?久しぶりなもので……うまくできないかなぁって……」
「うぐ……い、いえ、十分に気持ちいいです…」
葵の母親と。こういった状況がまたいい。背徳感というか、罪悪感というか。快感のスパイスとなっているのだろう。
「それじゃあ、次は口で……やりますね?……んん…」
ガリ
「おぅぁ!」
碧さんの他人より目立つ八重歯が鬼頭に突き刺さった。痛みと快感が同時に走り、自然と呻き声が漏れてしまった。
「んん!…ふぅ…じゅる……ちゅぷ……ぷぁ……あ、その…大丈夫でしたか?」
「え、ええ…はい…」
気持ち良かったなんて言ったら変態扱いだろうか。
「んぷ……じゅる…ジュッ…ジュッ……ほんろうに……おおひいれすねぇ……」
「うぅ……そう…ですか?」
「はい……ふふ、これで葵を喜ばしてたんですか?うらやましいですねぇ。……ごめんね、葵。今は……私にも……」
そう口では葵に謝りながらも、行為事態は止まる事無く、続けられる。しかし、これが未亡人のテクだろうか。裏筋、カリ、鬼頭と、まんべんなく刺激され、腰の奥から快感が沸き上がってくる。
「あぐぅ……み、碧さん……そろそろ…いく…」
「ん……んん!…ぢゅぼ、ぢゅる…ちゃううう!」
それを聞いた途端、まるでスイッチが入ったように、さらに激しく刺激する。
「ん、ん…い、いいですよ……どこに出したいですか?……顔…お口?それとも……胸?」
「く……む、胸!」
それが果てる直前にに言えた言葉だった。
「それじゃあ、えい!」
咥えていた俺のモノをはなし、その豊満な胸の中に挟まれる。その瞬間…
ドクン!
「う…ふぁ…す、すごい勢いで胸の中に……あはぁ…ビクンビクンて脈打って…私の胸の中、汚してますよぉ……」
ビュル、ビュクビュク!
その勢いは治まることを知らず、さらに欲望をはきだしていく。あまりに大量にでたためか、碧さんの胸からも溢れ出てしまった。
「ん……ちゅる…ちゅ……こく…あぁ……すごく濃くて……とろとろぉ……もしかして、溜まってました?」
「う……」
確かに、ここ最近すっきりした覚えがない。
「まだ大丈夫ですね、うん。次は……ここで…」
そう言って、俺の上に跨がり、垂直にたった棒に自分の秘部を一気に突き立てた。
ズブブ…
「んぁぁ!……す、すごぉい!一番おくまでぇ……」
とろとろになった膣は、ぬるぬると絡み付いてきて、今までにない快楽を覚えた。葵も葵だが、碧さんはまた違う。親子でもこんなに違うのか……
「す、すごいよ……晴也さん、おく、奥に……子宮に当たってるよ…」
「ま、また……くる……」
情けないが、もう二発目がでそうだ。まだこの気持ちよさを味わいたいというのと、思いっきり開放して気持ちよくなりたいという感情がぶつかる!
「ん、ん!…い、いいわよ、好きな時に、好きなところへ出してぇ!」
「ぐぁ!」
さすがに中に出すのはやばいため、全身全霊で中から抜いた途端。
ビュー!ビュクン!
「あ、あああ!熱い!……うぅ…すご……まだ、こんなに濃いなんて……ふぁ…」
「ぜぇ、ぜぇ……」
「んふふ……ほんと、若いって凄いわねぇ。もう一回ぐらい出せる?」
「い、いえ……むりです……」
「そうねぇ、さすがに疲れちゃったかな?」
平然と後始末をし、色っぽい笑みを浮かべる碧さん。さ、さすがだ。これが年のこ……
ごほん、経験差ということなのか。
GJ
未亡人祭り開催中。
GJ
久しぶりに抜いた
「こんにちは。・・・あいつ、居る?」
「居ません。」
「何処行ったのかなぁ?待たせてもらっていい?」
「いつ戻るか分かりませんよ。」
「あいつの部屋で適当に時間潰すからいいよ。おじゃまします。」
「勝手に入らないで・・・」
「うわ〜部屋全然変わってないね。あいつこういうのに無頓着だからなぁ」
「ちょっと・・」
「あは。ベットに黒い髪の毛。長さからいって・・・・いたずらな猫でも居るのかな?」
「いいかげんにしろよ。出てけよ。」
「・・・あいつはあなたに扱えるような男じゃないの。妹サン。」
「出てけよ。」
「あの女好きの事だからね。普通の女に飽きたから妹の具合に興味が出た。って感じじゃないの?」
「出てけよ。」
「捨てられるよ。あなた。」
「出てけ!早く!失せろよ!」
「・・そんな物騒な物・・・出て行くから置きなさい。」
「あなたがお兄ちゃんを語るな。二度と来るな。・・・殺すよ。」
「あなたは妹よ。忘れないで。」
>>346 また懐かしいものを・・・
結末がねぇ・・・
>>346の元ネタ知らない(初めて見た)ので勝手に続きを妄想してみる。
「あなたは妹よ。忘れないで。」
「…ハ、ハハハハハ、アッハハハハハ!妹、妹ねぇ…」
「そうよ、貴女は所詮妹! 彼とは結婚できないのよ!」
「ふふふ、かわいそうな人。本当のことも知らずに… 実はお兄ちゃん、養子だったのよ」
「…え?」
「はとこだから赤の他人ではないわ、でもね、はとこ同士は結婚できるのよ?」
「な、なに、そ、れ…」
「実はお兄ちゃん、私のお婿さんになるために引き取られたの…見て、この指輪、婚約指輪よ」
「ゆび、わ、う、嘘…」
「高校卒業したら即結婚の予定よ」
「指輪…外しなさいよ…」
「お兄ちゃんは上手くいけば院生だけど、学生結婚でも構わないわ」
「外しなさいって言ってるでしょ! それとも私がその汚い指ごと切り落としてあげようか!?」
「ナイフなんか取り出して私が引くとでも思ってるの!? 私に危害を加えたら雌豚らしく豚箱行きよ!」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいぃぃぃっっっ!!!」
投下します。
「――むっ?」
外は雪模様。それを眺めていた私こと、屋聞菫の心拍が、一瞬だけ不規則になったのを感じました。
つい声を出してしまい、反射的に側のベッドに寝ている夢月の方へ視線の向きを変えます。
移るのは、規則的に盛り上がり、盛り下がる掛け布団。寝息が聞こえました。
今ので起こしてしまったかと思いましたが、大丈夫のようです。
安心したと思いきや、今度は強い胸騒ぎが迫ってきました。今の心拍の乱れは、さながらそのスイッチです。
この胸騒ぎが起こるのは、今日が十二月二十四日であること、私の近くにある三角関係。
この二つの共鳴によるものに違いありません。
個人的には通俗的過ぎると笑い飛ばしたいイベント、クリスマス・イヴ。
数多くの恋する男女が、純愛から性欲まで、様々な心情をぶつけ合うことになっています。
夢月もこの日に、『お兄ちゃん』と目一杯遊ぶことに期待し、胸を膨らませていました。
で、今は遊び疲れてお休み中です。
私が気に掛けているのは、例の三者がどう動くのか。
ここ数日、木場先輩は、会うどころか電話連絡もしていません。出来なかったのです。
木場先輩が出てこない以上、私だけがちょろちょろしてもあまり意味は無いので、私も動かずにいたのですが…
…。
まさか、木場先輩が何の作戦も立てずにこの日に臨むことは、まず有り得ないでしょう。
しかし、私とは全く連絡を取らず、学校にも来ていない。
嫌な予感がします。
今日、伊星先輩は予定無し。新城先輩は一日部活。木場先輩は不明。
おそらく、伊星先輩は自宅にいるでしょう。木場先輩が仕掛けるには、直接伊星先輩の家に行く他に無し。
尤も、私を不要とする作戦ならそれはそれで構いません。私の勘も、人並み程度にしか当たりませんし。
ですが、体の内からこみ上げてくる不安は、私の足を外へ押し出さんとしています。
さて、どうしましょうか……。
* * * * *
「お邪魔しま〜す」
「サンタの本分は基本的に不法侵入か。」
計画は全て、順調に進んでいる。
やっと、私の努力が実る時が来る。
人志くんの家に上がった私は、もう一人いるはずの住人がいないことに気付いた。
「人志くん。お母さんは、いないの?」
「居ない」
振り向かずに返事が返ってきた。
人志くんはそのまま居間へ真っ直ぐ歩き、コタツに入った。
「どこかに行ったの?」
私も向かいの位置からコタツに入る。中は暖かい。
「……人志くん?」
座ったままじっとして何も言わない。かと思ったら、すぐ立ち上がって、積み重ねてある新聞紙の束の中から紙
を一枚取って、コタツの上に広げた。
その紙は、温泉旅館の広告。
「今頃は、暖かい温泉にでも浸かっているんだろう」
人志くんは、グラス二個とジュースを台所から持ってきた。
私の前のグラスに、ジュースが注がれる。
その水面のように、私の感情もせり上がっていった。
母親が、子供をほったらかしにして、勝手に旅行? 何それ、ふざけてるの?
一人ぼっちにされたらどれだけ子供が寂しいか、そんなことすら考えないの!?
……人志くんの痛み、私にはよく分かる。
私も、親にちっとも構ってもらえないで、苦しい思いをしてきたから。
「人志くん」
「ん?」
「今から、プレゼントをあげる」
「あ? ああ……」
「目、つぶって」
言われた通りに目を閉じる人志くんの、すぐ前に移動する。
ああ、愛おしい。私と同じ痛みを持ってるって分かったから。
人志くんも、きっと私の苦しみを分かってくれる。
互いの気持ちは、絶対に通じ合う。
顔を近づけて、人志くんの口に、自分の唇を――。
「……んっ?」
腕を回して、身体を人志くんに押し付けた。胸が当たってるの、わかるよね?
最初から、こうしていれば良かったのかもしれない。
唇を離して、人志くんの胸に顔をうずめる。
「好き……。人志くんさえ良ければ、私が……プレゼントだよ」
たとえ今告白したら不利であっても、関係ない。
私だって分かってるよ。打算を超えた愛があること。
計算を入れない、何も手を加えない、そのままの気持ちを受け取って欲しい。
ゆっくりと顔を上げて、人志くんを見ると――。
「……」
……。
…………。
私もね、何人も男の人と付き合ったことがあるし、アプローチを掛けてきた数も、きっと人より多い。
その経験を踏まえて考えると、人志くんの反応は……。
困惑、狼狽、色々言葉はあるけど。
愛情に関する針の揺れは、無い――――。
「木場……」
抱きついていた私の腕が、ほどかれる。
重く、苦々しく、言ってはならないけど言わなくちゃいけない事を抱えている表情をしているのが分かる。
「……どうして?」
認めたくない。
「私じゃ駄目なの? 魅力ない? もっと愛してくれなきゃ嫌? 髪型とか? 知り合ってから時間が短い?
スタイル? 胸が大きいのは駄目? 処女じゃないから? 噂を聞いたから? ねぇどうして? どうして?
どうしてなのぉ……」
縋り付く私に、人志くんは明確な、どうしようもない言葉を出す。
「明日香に、何も返していない……」
酷いよ。酷すぎるよ。
結局私のしたことは、全部無駄だったの?
私のつまらないプライドが、火を放つ。
「新城さんが好きだから? どうしてよ!? あんな暴力だけの! 隣にへばり着いていただけの!
頭も悪い! 家庭的なことも何も出来ない! 人を傷付けて知らん顔の! そんな女に、そんな、女に……」
だめだよ。愛情を憎しみに変えたら、逆効果だよ……。
「木場……あまり明日香の悪口は言わないで置いてくれるか」
「――!!」
止まらないと。落ち着かないと。
意思とは裏腹に、私の右手は人志くんの頬を叩いていた。
「馬鹿! 馬鹿っ!! 馬鹿ぁっ!! 私をフって、新城さんを選ぶなんて、馬鹿だよ……」
「言う通りだ」
もう私は、悪あがきしか出来ないの……?
「馬鹿な男は嫌いか?」
「嫌い。大っ嫌い」
「じゃあ今は、俺が嫌いか?」
「……ずるいよ」
好きだから、振り向いて欲しくて必死になってるのに。
届かない――。
その現実を突きつけられた私は、ただ、泣き叫んだ。
「人志くん……」
「……」
泣いて泣いて泣きまくってから、ずっと重い空気が圧し掛かっている。
もう人志くんは、私のことなんて『早く帰ってくれ』くらいにしか思ってないんだろうね。
でも――。
「友達なら……どう?」
「……」
私は諦めない。見苦しいと笑いたければ、笑えばいい。
初めから誓っていた。どんな手でも使うと。どれだけ手を汚しても構わないと。
私が持ってきた袋の中には、その『どんな手』が入っている。
「友達”まで”なら……」
人志くんに心理的な隙は無い。まだ、ね。
「それで、いいよ」
私はコタツから出て立ち上がった。
「コーヒー淹れてくるね」
「……ああ」
一人、台所へ向かう。
なみなみと注がれたコーヒーの面を見つめながら、思う。
もう迷ってはいけない。あの剣道馬鹿だって罠にかけて倒した。引き返すことは出来ない。
小さな袋に入った粉末の薬を、人志くんの分のコーヒーにさらさら……。
薬は、すぐに溶けて見えなくなる。
「お待たせ〜」
私は知らない振りをして、薬入りのコーヒーを人志くんに渡す。
人志くんは、何も疑わずにコーヒーを飲んだ。
これでよし。私が入れた薬は、どんな強い理性を持つ人でも肉欲の権化となるもの。
効き目が出るまで少し時間が掛かるけど、まあ時間は適当に稼げばいい。
薬が効いた人志くんは、理性なんか吹き飛ばされて、私に襲い掛かる。
既成事実さえ出来上がってしまえば、人志くんも『友達”まで”』なんて言わないよね。
レイプされた新城さんも、泥沼に沈んでいくだけ。
そう、これでいい。最後に勝つのは、私だ。
薬が効くまでの時間が待ち遠しい。
最初の一口から十分。もうそろそろだと思うけど……。
がたん。
「何だ?」
ドアの方から、大きめの音がした。何かが倒れたような音、かな?
「……寒い?」
急に、コタツに入っていない肩や背中で冷たい空気を感じた。
ギッ……ギッ……。
ドアの向こうの廊下から聞こえる、きしむ音――足音。
曇りガラス越しに見える人影。
そんな、まさか……。
ドアが開かれる。
「 こ ん ば ん は 」
倒したはずの剣士が蘇り、私たちの前に現れた。
(38話に続く)
こ、殺される…!!
kita--------------------------------------------!!
(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
投下ラッシュktkr!
全ての神々に感謝(-人-)
う〜む、GJだな。さすがだ。
だんだんと俺の生きる糧である修羅場の気配が近づいて来てるな・・
いやぁあああああ(((((((( ;゚Д゚)))))))
穏便に!穏便に!
明日香派の俺はwktkしてるぜ!
さぁ、泥棒猫をぶちのめせ!人志を取り返せ!
それはさておき自分も投下させて頂きます
両腕を折られ、顔には掌の形に内出血の跡を浮かべながら其の瞳には怒りの色を露わに
魔甲蟲姫は立っていた。
見下ろす視線の先には頭部から流れでた血溜りに倒れ伏したクリスの姿。
「こン……の、糞餓鬼がぁっ!!」
魔甲蟲姫はクリスの腹に蹴りを叩き込んだ。 クリスの体が浮き上がり、吹き飛び転がる。
「うぐぅっ……! ゲホッゴホッ……!!」
咽び咳き込む口から鮮血が散る。
苦しげに呻き声を洩らすクリスを見下ろす魔甲蟲姫の瞳は怒りを滲ませ其の腕を踏みつける。
踏みつけられた腕がバキリと嫌な音を立てる。
「ぐああぁぁっ……!」
――たかが人間の分際でよくもこのアタシの手を煩わせてくれたわね!
散々悪足掻きしてくれて! でももうお終いよ!
止どめよ! 骨の一片も! 髪の毛の一筋も残さず溶かし尽くして食い殺してくれる!
そして魔甲蟲姫は喉を鳴らせ、その奥底からありったけの溶解液を吐き出さんと振り絞ろうと――。
だが何かを思いついたように止めた。 そして口元を残忍に歪める。
――ここで殺してしまうのは簡単だ。 だがその程度でこの溜飲は治まらない。
そうだ。 この糞餓鬼をコイツの仲間の見てる前で殺してやろう。
アハッ。 そうだ。 それがいい。
助けを目の前にしながらなす術なく殺される! この上ない絶望でしょうね!
そして口の端を益々残忍に歪める。
――ふふっ。 そうしたらあのヒトどんな顔するかな? 殺さないでって懇願してくるかな?
でも当然助けてあげたりなんかしない。
何故ならそれがアタシの想いを裏切り傷つけ報いだから!
仲間を目の前に絶望しながら死ね!
目の前で仲間を殺され、助けられぬ無力さに死ぬほど悔やめ!
そして怨嗟と後悔と憎しみの声を上げろ!
それでこそアタシの気持も晴れる!
「うふっ。 えへっ、えへへっ……。 アハッ、ハハハッ……。
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
そして魔甲蟲姫は高らかに笑った。
――さぁ来い! 来るがよい!
味あわせてやる!
この上ない絶望を!
奈落の如き深き悲しみを!
生まれてきた事を後悔するほどの苦しみを!
「「クリス!!」」
その時悲鳴にも似た叫び声が響いた。
魔甲蟲姫が声のした方に目を向ければ魔導師の少年と異形の刃を構えた少女――リオとセツナの姿。
――来たわね。
アハハッ。 必死な顔なんかしちゃって。 そんなにこの糞餓鬼が大事?
残念ね。 今からアタシの手で殺され、そして二目と見れない無残な肉塊に変わり果てる。
アンタ等にそれを阻む術は無い。 どんなに早く駆けつけたってそこからじゃ間に合わない。
さぁ。 上げるが良いわ! 絶望の、悲しみの、怨嗟の声を!!
そして魔甲蟲姫は其の鉄をも溶かす溶解液を喉の奥から絞りだすように吐き出そうと――。
瞬間背中に何かがぶつかる感触を感じる。
――何? 突然背中に何かがぶつかって――。 え? 違うアタシの体が床に倒れたの?
何でアタシ倒れて? 寝てる場合なんかじゃないのよ。
だってこの糞餓鬼に止どめを刺ささなきゃいけないんだから……。 ってあれ?
脚が動かない、っていうより脚の感触が無い? いや、脚どころか……。
その時魔甲蟲姫は気付いた。 動かないとか感触が無いどころではない。
自分の下半身がそっくり無くなっていたことに。
鋼をもはるかに超える強度を持った天然の装甲たる外骨格。
今まで如何なる攻撃に晒されようと傷一つ付かなかったその装甲が、
それがまるで紙切れのように斬り裂かれていた。
切り裂かれた断面から覗く内臓や筋組織、いや細胞の一つ一つに到るまで
毛髪一筋分の乱れも歪みも無く断面から零れる事無く整然と並んでいた。
あまりにも滑らかな断面。 それはまるで精巧に描かれた解剖図のよう。
想像を絶するほどの斬れ味の"何か"で斬られた――そうとしか言いようの無い状況。
其の切れ味は"痛み"という信号の発信すらさせぬ程。
そしてその胴を斬った"何か"の正体を魔甲蟲姫には知る術が――いや、時間からしてなかった。
凍りついた時間が動き出したように断面から内蔵が零れだし体液が溢れ流れ出す。
其の様は正に命そのものが溢れ流れ出していってる様。
初めて体感するその状況に魔甲蟲姫は狼狽を隠せない。
――な、何よこれ? 何でアタシの下半身が無くなってるの?!
あ、ありえない! こ、こんなの何かの間違いよ!
そ、そうよ! そうに決まって……! え? あ、何? 眩し……。
その時魔甲蟲姫の眼前に迫りくるもの――それは新雪の如き白刃の煌き。
薄暗いこの広間でありえない程の、まるで夜の闇を切り裂く朝陽の如き真っ白な光。
其の光に魔甲蟲姫の視界は塗りつぶされ、其の光の中今までの記憶が溢れ出す。
迫り来る回避不可能な絶対的死――。
それが魔甲蟲姫の脳裏に今までの人生を呼び起こし、まるで走馬灯のように映し出す。
魔族の中にあっても権力争いと言うものは存在する。
魔甲蟲姫は――、いや今より前、幼かった頃はそのような忌み名ではなかった。
だが今や其の名前を覚えてる者も呼ぶ者もいない。 彼女自身も含めて。
彼女の一族は権力争いに破れ、一族郎党もろとも根絶された。
当時幼かった彼女とその姉だけがそれを免れる事が出来た。
だがそれは決して情けや恩赦などではなくむしろ逆。 それは利用価値があったが為。
幼く生育途上の彼女達の体は実験材料に格好の素材だった。
やがて改造を受けた彼女と其の姉は生きた兵器とも言うべき禍々しき姿へ変貌する。
兵器と化した彼女達は最後の仕上げとして其の成果を見るべくお互い戦わさせられた。
そしてその時二人は正気ではなかった。
責め苦のような改造で精神は磨り減り、さらに戦いの直前に戦意高揚の為薬を投与され、
二人は正気を失い、ただ二匹の獣と――殺戮兵器と化し殺しあった。
だが戦いの最中片方が正気を取り戻した。
それは薬の投与が足りなかったのか、改造による体質の変化によるものだったのか。
正気に戻ったのは姉の方だった。
姉は鬼の形相で襲い掛かってくる妹に向かい必死で語りかけた。
だが薬で正気を失わされた妹に其の声は届かない。
妹が正気を取り戻したのは自らの手で姉を喰い殺した後だった。
正気を取り戻した彼女の目に飛び込んできたもの。
それは虚ろな、そしてどこか悲しげな瞳で自分を見つめる物言わぬ骸と化した姉だった。
正気を失っていたとは言え姉を殺してしまった。
只一人、この世界で自分の名前を呼んでくれた唯一残ったかけがえの無い存在。
そのヒトを自らの手で殺めた。 その事実は彼女の精神を崩壊させるに十分だった。
絶望、怒り、悲しみ……あらゆる負の感情が心の底からこみ上げ其の心を黒く染めていく。
そしてそれはそのまま破壊衝動に変わり――。
少女が気付いた時その周りに生きているものはいなくなってた。
彼女を"造った"ものたちは薬や操魔術などで意のままに出来ると思っていた。
しかしそれは甘すぎた認識で結果は逆襲に合い残らず殺されて果てた。
そしてその日彼女は手に入れた。
――何者をも捻じ伏せる力を。 それは魔将軍さえ手出し出来ないほどの。
そして失った。
――只一人残った身内を。 唯一自分の名前を呼んでくれた姉を自らの手で屠った事実は、
それは自分の名前を失うに等しい事だった。
唯一残った身内である姉も、名前も失い、代わりに得たのは比類なき強さと魔甲蟲姫の忌み名。
だがそんな力は只虚しい時だけしかもたらしてくれない。
そんな中見つけた光。
少年魔導士の陽の光にも似た優しさ。
まるで暖かな光で包んでくれるみたいな――。
其の光に希望を見出せるかもと淡い期待をも抱いた。
しかしその希望は儚く消え、絶望へと変わった。
初めて抱いた希望――育くまれ大きく膨らんだ期待は、それは彼女に始めて芽生えた恋心だった。
だからこそ無残に打ち砕かれた時の絶望の大きさもまた計り知れないほど深かった。
そしてどうせ叶わない希望ならこの手で徹底的に粉々にしてしまおうと思った。
だが、其の全てが幕を閉じる。
闇を、魔を滅ぼす圧倒的な力を持った真っ白な光によって――。
外骨格同様に鋼より遥かに硬い頭蓋をもった頭が真っ二つに両断され、
禍々しき強さを誇った魔甲蟲姫の命は光の中に散った。
To be continued...
ツイスター、投下します。
366 :
ツイスター:2006/11/19(日) 23:32:37 ID:J2gsb9Pd
次子が部屋に入ると、太郎はベッドに腰掛けていた。足元に新聞が広がっている。
太郎の隣に腰をかける。ベッドがきしんだ。
「お兄ちゃん」
次子は、太郎の手を握った。次子の手は冷たい。
「山鹿の奴に何をいわれたのか知らないが、俺は大丈夫だ。ただちょっと変なだけで。余計な気は使わなくていい」
太郎はうつむいたままいった。それでも、次子が出て行く気配はない。太郎は、深くため息をついた。
「伊勢と付き合ってから一ヶ月もたっちゃいない。知り合ってからも2、3ヶ月ってとこだ。泣き喚くことなんてできない」
次子は、ただ太郎の手を握って聞いている。
「それが伊勢に申し訳ないだけだ。俺はただ浮かれていただけで。伊勢に何もしてやれなかった。伊勢にとって最後の時間だったのに。こんなことになるなら。残りの時間を俺なんかのために使って」
太郎はそういうと、両手で顔を覆った。太郎の手を握っていた手が振り解かれる。
次子は、今度は丸められた太郎の背中を抱いた。優しく、花束を抱くように。
「わたしももうすぐ消えちゃうんだよ」
次子がそういうと、太郎がびくりと震えた。その反応を、次子はうれしいと思う。
「でもね、わたしはお兄ちゃんに会えて本当によかったって思うよ。ううん、これからもっともっとよかったって思うようになるよ。絶対。
だからね、伊勢さんもきっとお兄ちゃんと会えてよかったって思ってるよ。お兄ちゃんと恋人になって、よかったって思ってるよ。本当だよ」
拙い言葉だった。陳腐な慰めだったかもしれない。
だが、あとわずかで消えてしまうという次子からそういわれると、重みが違う。
彼女は、そんな自分の境遇を呪っても、憐れんでもいない。
これまで共に生活してきて、次多少エキセントリックなところはあっても、次子はごく普通の少女だと太郎は感じていた。
ならば、つらくないはずはない。そんなつらさを押し殺して自分を慰めてくれる次子は、本当にやさしい子だ。
そのやさしさに涙が出そうになる。
次子は、そんな太郎の背中を今度は少しだけ力を入れて抱いた。頬を寄せる。太郎のぬくもりを感じた。
聞こえるのは、太郎と一子の呼吸と動悸の音だけだ。
まるで、この世界に二人しかいないような気がした。次子はそんな世界を妄想する。
だがその妄想も、玄関のドアを開けた一子によって破られてしまう。次子は、太郎からそっと離れた。
「兄貴、どうしてる?」
階段を下りてきた次子に、一子が尋ねた。
こんなときだからなのか、次子しかいないからなのか、一子は心配そうな表情を隠そうとしない。
「うん、やっぱり参ってるみたい。でも変に気を使うより、少し一人にしてあげた方がいいんじゃないかな」
「そうか、そうだよね」
次子の忠告を聞いて階段を上がる一子の背中を、次子が見送った。
367 :
ツイスター:2006/11/19(日) 23:33:16 ID:J2gsb9Pd
結局、太郎を一人にしておくことはできなかった。その日の夜、早速刑事が来たからだ。
太郎と伊勢の関係を聞きつけたからではなく、昨日二人が歩いているところを見たという証言を得たのだという。
太郎は、自分と伊勢の関係を明かし、昨日の状況を可能な限り詳しく、次子のことはごまかしつつ話す。
保健室で、セックスしたことも含めて。
それだけを聞くと、刑事は自分の名刺を渡して帰ろうとした。
これには、太郎の方が驚いてしまう。警察署に出頭して聴取されることも覚悟していたからだ。
下手をすれば容疑者にされてもおかしくないと考えていた。
しかし、刑事はまた来るとだけいいのこして帰ってしまった。あまりにあっけなかった。
次の日同じ刑事が来た。
やはり、最近伊勢に変わった様子はなかったかなどとありきたりのことを、玄関に腰掛けながら聞くだけだった。
逆に、事件のことについて聞いてみても、新聞に書いてあること以上のことは教えてくれなかった。
それは、容疑者に余計な情報を与えないためか、と思いきって聞いてみると、刑事は笑った。
「君、握力いくらある?」
質問の意味が分からないまま、太郎は40キロぐらいだと答えた。
「まあ、そんなもんだろうね。でも、それじゃあ犯人にはなれないな」
その意味を教えてくれないまま、刑事は帰っていった。
368 :
ツイスター:2006/11/19(日) 23:33:58 ID:J2gsb9Pd
学校は、結局一日休校しただけで再開した。授業を遅らせるのがいやだったらしい。
一年生を中心にしばらくは生徒も浮き足立っていたが、告別式をはさんでやがて落ち着いてしまった。
以前には、学校周辺にちょくちょく出現していた新聞記者やテレビレポーターを見かけることもなくなった。
新しい情報が入らなくなると、事件についての報道も少なくなった。
報道されるのは、嫌がらせについて相談されていながら動かなかった警察の対応のまずさだけで、捜査そのものの進展が伝えられることはなかった。
あれから何回か太郎の家に話を聞きに来た刑事も、やがては来なくなった。
日常が戻りつつあった。吹っ切れない太郎の気持ちだけを残して。
太郎も、努力してその日常に溶け込もうとした。
いつまでも引きずっているようなそぶりを周りに見せるのは情けないと思った。
何より、次子のことを思えば、そんな甘えを自分に許すことはできなかった。
伊勢の事件によって、いつの間にか少なくない日数が押し流され、その間に月はやせ細っていった。
次子が召還されてから、一ヶ月目が迫っていた。
太郎は、それまでにできるだけのことを次子にしてやりたいと思った。
もう、遅いのかもしれない。それでも、伊勢を失って感じたような後悔はもうしたくなかった。
伊勢のことを悼むのは、少なくとも、次子を見送ってからでいい、太郎はそう思っていた。
369 :
ツイスター:2006/11/19(日) 23:34:30 ID:J2gsb9Pd
「ピクニックにいきたい!」
太郎に何かしたいことはないのかと問われて、次子はすぐさまそういった。
どうせやるなら、できるだけ凝ったものにしてやろうと、太郎は大きなバスケットを引っ張り出した。
母親が使いもしないのに買ったブランド物のバスケットだ。ばれたらどやされるだろうが、構いはしない。
そして、次の日曜日。3人で過ごす、最後の日曜日。
太郎たちは、電車に揺られていた。次子は流れてゆく景色を眺めながら、一子とあれこれしゃべっている。
そんな二人を見ていると、服装だけが違う双子にしか見えなかった。
一子は、ジーンズと草色のブルゾン、次子は桃色のミニのワンピースにカーディガンを羽織っている。
一時間ほどして、電車が止まる。目的地は、大きな池のある公園だった。
よい天気だ。ぽかぽかと暖かい。絵に描いたような、ピクニック日和だった。
夏も、もうすぐそこまで来ていた。もちろん、次子がその季節を見ることはできないのだろうが。
昼になっていたので、早速お弁当を開く。サンドイッチ、海老のマヨネーズ和え、そしてりんごのタルトにレモネード。
りんごのタルトだけは、次子が一人で作ったものだ。太郎がほめてやると、次子は飛び上がって喜んだ。
食事が終わって、くちくなった腹を抱えて空を見上げると、とびが旋回していた。池が柔らかい日差しを反射し、その周りをたくさんの花が彩っている。
のどかだった。眠くなってくる。思わずあくびが出た。
「ねえ、お兄ちゃん。膝枕してあげよっか」
正座した次子が、自分の膝をぽんぽんと叩きながらいった。期待に目を輝かせている。断る理由などなかった。
肉付きがいいとは思えない次子の膝に頭を乗せる。一子は、遠慮したのか池の方へ歩いていった。
上を見上げる格好になった太郎がまぶしがると、次子がいった。
「横になったらいいよ」
つまり、次子の太ももに頬をつけろということだ。
自分と次子は兄妹なのだからそこで照れるのもばかばかしい。太郎はそう思って、遠慮なく横になった。
次子のワンピースは短い。太郎の頬が、直接次子の太ももに触れた。
滑らかで弾力のある太ももだった。ひんやりとしている。それも、やがて太郎の頬と同じ温度になった。
次子の手が、太郎の頭に添えられた。誰かに触られているだけで、どうしてこうも心地よいのだろうと太郎は思う。
伊勢との間にあったような激しい交歓はなくとも、これだけの幸せを感じられることを太郎は初めて知った。
結局、欲望をぶつけるだけの自分は子供だったのだろう。そんな自分につき合わせてしまった伊勢に申し訳なく思う。
370 :
ツイスター:2006/11/19(日) 23:35:29 ID:J2gsb9Pd
「お前は、俺でよかったのか?」
唐突な問いかけだったが、次子はその意味を的確に理解する。だが、答えない。
「お兄ちゃんは?お兄ちゃんは、わたしが妹になってよかった?」
答える代わりに問い返した。
「ああ、よかったよ。お前がいてよかった。お前が妹になってくれてよかった」
途中で、声がかすれてしまった。
「ありがとう。わたしはね、生まれたときからお兄ちゃんの妹で、生まれたときからお兄ちゃんのことが好きだった。これはそんな風に作られたからかもしれない。
でもね、今お兄ちゃんにそういわれて今感じてる、ありがとうって気持ち、うれしいって気持ちは、わたしのものなの。このわたしがお兄ちゃんだけに感じる気持ちだよ。
それはね、やっぱりお兄ちゃんがお兄ちゃんだからなんだよ」
そこまで一気にしゃべると、次子はいったん言葉を切った。
「だからありがとう。わたしのお兄ちゃんになってくれて。お兄ちゃんがお兄ちゃんでよかった」
次子は、太郎の目を手でそっと覆った。ひんやりとした手が気持ちいい。
太郎は自分の唇に何か濡れたものが触れるのを感じた。思わず離れようとする太郎の頭を、次子の手が抑えた。
唇が触れるだけのキスだった。伊勢と交わしたそれとは比べ物にならないほど軽い。
それでも、心がじんわりと暖かくなるのを感じた。いとおしい。
離れる間際、太郎の唇がぺろりと舐められた。顔を離した次子が顔を赤くしていった。
「これくらいならいいでしょ?」
そういって微笑む次子に、太郎は思わずどきりとしてしまう。妹に抱くはずのない気持ちに、太郎は戸惑った。
やがて、月のない、新月の夜が来た。
以上、第12話「包囲」でした。
伊勢、不憫。
怒涛の投下ラッシュキター!
次子の理想の妹っぷりに乾杯
>>338 三人が争う状況に持ちこんだ策士お嬢様はこれからどう動くのか期待
>>343 ママンエロいよママン(*´Д`)ハァハァ
>>353 一服盛り&明日香タソキ、キタ━━━━━(((( ;゚Д゚)))━━━━━━ッ !!!
>>363 GJやはり死亡確認してもらえば安心だなw
なんだこの投下ラッシュは
声を大にしてGJ!!!
クリス無事で良かったよ。ホント。いっそリオには二人と逃避行でもして欲しい物だ。
次子が新月にどう動くのか、不安一杯ながらwktk修羅場の醍醐味がまた!
GJ
包囲か。裏で何か動いているってことだろうか。
( ;Д;)ブワッ
ということは「気を使って」離脱した一子が大変な事に…!!
皆様方GJです!
しかしSS職人さんは本当凄いわ。
自分の好きなシチュだからってのもあるけど、下手な深夜アニメよりよほど萌えるし燃える。
ミスターの時もそうだったけど、
ツイスターの作者様は投下スピードも凄いが
物語をきっちり制御して展開している感じが凄いな。
計画通りに危なげなく書き進めてる感じがする。
新月に大期待。
次子はこのままじゃ終わらない子なので何をやるか楽しみw
むしろ一子に心を許せない俺がいる
なにかが…
なにかが俺に、警鐘を鳴らしているんだ。一子に期待しろと。
ちくしょう・・・どの作品も面白いのに、ちょっと修羅場耐性が低い俺は失禁しちまいそうなほどおっかないぜ・・・。
↑リアル経験者の方ですか? 詳しく
投下します。
支援
僕は今、蔓さんとの待ち合わせ場所…駅の近くにある、公園に向かっている。
日曜日の早朝。よく晴れていて、いつもなら気持ちのいい朝のはずなのに…とてもそんな気分にはならない。
昨日の蔓さんは、いつもの彼女らしくなかった。
朝早く僕の家を訪ねてきて、「光君、今日は部活でしょ?私も一緒に行って、見学しててもいい?」
なんて言って僕についてきたのに、気がついたら居なくなってしまうし、夜中になってやっと電話が繋がったと思ったら、
たった一言「明日、公園の噴水で待ってるから…」と言われて一方的に切られてしまった。
おかしかった。彼女はきちんとした人で、いつもはちょっとしたことでも連絡を欠かさないのに。
待ち合わせをする時だって、きちんと場所と時間を指定してくるのに…どうしてしまったんだろう?
………………………
本当は分かってる。僕が優柔不断なことが原因だって。
僕がはっきりしないから、蔓さんは不安になって…余裕がなくなって…昨日みたいになってしまったんだって。
分かってる、分かってるけど…
…公園が見えてきた。僕と蔓さん両方が知っていて、噴水のある公園と言えば…多分ここだと思う。
時間は…分からないけれど、普段登校する時間よりもずいぶん早めに出てきたから…僕の方が先だろう。
だんだん…重苦しい気分になってきた。足取りが重くなって…前に進まなくなる。
大丈夫。こんなに早いんだから、まだ蔓さんは居ない。それに、もしかしたら蔓さんは来ないかもしれない。
そう、拗ねてしまった蔓さんは、最初から僕に待ちぼうけを食らわせるつもりで電話をかけたのかも。
『明日、公園の噴水で待ってるから…』
…どちらかといえば思いつめたような声だったけど多分そうだ。だってそうでもなければあんな曖昧な電
いや………
いる…蔓さんが…噴水の前に…俯いて…立ってる………
蔓さんは僕に気づいた様子は無い。まだ俯いている。
行かないと。
一歩一歩、足を踏み出す。…胸がドキドキする。冷汗がながれる。体全体が…重い。
行きたくない…会いたくない…話したくない…嫌な予感がする…でも…
ゆっくりと歩く。呼吸が苦しい。こんな短い距離なのに、体全体が疲労している。
蔓さんは俯いたままで、まだこちらを見ていない。…そのまま近づく。
ついに蔓さんの前にたどり着いた。…蔓さんは、まだ俯いている。
気持ちを落ち着ける為に、深呼吸をする。
すぅ…はぁ………………
蔓さんの体が、ピクリと反応する。深呼吸の音で僕に気づいたみたいだ。…でも、顔はまだ上げない。
どちらも、声をかけない。
「………来てくれたんだ…光君…こんなに…朝早くから…」
先に口を開いたのは…蔓さんだった。
「うん、遅れたら大変だと思って…蔓さんこそ、何時から待ってたの?」
よかった、俯いたまま呟く様に喋っているけど、怒っては居ないみたいだ。
「………ごめんね…昨日は…勝手に帰っちゃったりして…」
あれ、話がいきなり…とりあえず、気にしてない事を伝えないと…
「うん…あの時は連絡が取れなくて心配したけど…蔓さんにも事情があるんだろうし…今は気にして無いよ。」
あれ、反応が無い?………いや、蔓さんの体が、ふるふる震えている…
「そう………心配………してくれてたんだ………ごめんね………」
ゾクリとした。マズイ。なぜかはよく分からないけどマズイ。
「………答えが、欲しいの」
また、蔓さんが口を開いた。さっきと同じ、何かを押し殺したような声で。
「………答、え?」
何を聞き返しているんだ僕は…あの事に決まってるじゃないか!
でも、口の中が、喉が乾いて、頭も回らなくて、何も考えられなくて…
「わ、分からない、よ」
口から出たのは、そんな、曖昧な、何も答えていないに等しい、そんな言葉だった。
「………そうなんだ…」
…蔓さんの声が、柔らかくなった。どっと汗が吹き出して来て、力が抜けそうになる。
「まだ…チャンスは…あるんだ…私にも…よかった…」
あんな答えのどこがよかったのか…分からないけど…何か納得してくれたみたいだ。
「光君、ごめんなさい。こんなに朝早く呼び出しちゃって。…でも、ありがとう。」
蔓さんはやっと顔をあげて、少し無理のある感じだけど…笑顔を作ってくれた。
「うん、べつに、当然の、ことだよ。」
この際、時間の指定が無かったことにはつっこんでられない。これなら何とか切り抜けられ…
「それじゃあ光君…また明日ね。今日は…ゆっくり休んで頂戴。」
………へ?
帰っちゃう、の?
あの………あ…走って行っちゃった…いや…気まずく…ならなくて…よかったけど…
えっと…どう…しよう…いや…何も…しなくていいのか…うん…でも…え…えぇー?
終わりなのかな…
GJ! m(ryとは違った意味でムカつく男だw
次も期待してます、あと終わったらここまで、といった書き込みをしてくれると有難いです
ナンバーをつけているので問題無いかなーと。
このスレは1000までいく事は無い様ですが、
なるべく無駄に消費しない方がいいと思うので。
>>391氏に限らず、レスを下さった方々、本当にありがとうございます。
それが例え批判であっても、SSを書く原動力になります。
そう、こんな時間まで起きていてしまうほどに…
>>391 主人公?と比べてこの男の優柔不断ップリはむかむかするぜ・・・
とりあえずまだ何とも言えないので次の展開にwktk
だが、ソレがいいっ!
「あの、私、絵の勉強で…留学することになったの…!」
目の前に居る彼に、視線を合わすことが出来なかった。
「あ…えぇ…!?」
彼の持っていた箸が手からこぼれ、机の上にカランと音を立てて落ちた。
ただ、口をパクパクさせて、何か言葉を繋ごうとしている。
「その、だから……出来れば、待っててほしいの。帰ってくるまで…」
自分で言ってても解る。自己中だと。
留学の話を相談もせずに勝手に進め、留学直前になってからやっと言う。
ましてや彼に今まさに、留学終了までずっと一人で居ろと強要しようとしている。
「………」
「………」
―――頬が熱い、自分の優柔不断さに腹が立つ。
沈黙が苦しい。空気が重い握り締めた手に食い込んだ爪が痛い。
罪悪感の塊に浸かっているような感覚、死にたい。
「………どれくらい、留学するんだ…?」
「……えっ!?」
「…いつ頃帰ってくるんだ?」
「え、えっと一年間、滞在する予定…」
「一年かぁ…」
声が裏返りそうになるのを抑え、彼の質問に答える。
彼は、しばらく目を瞑った後、ハァ、と息を吐いて私の方を向いた。
「しょうがない。行ってこい」
その時の彼は、何かを諦めたように微笑んだ複雑な表情をしていた。
空港
「じゃあ…行ってきます…」
「がんばってこいよ」
「……手紙、送るからっ!」
「…あぁ」
―――彼は、私が振り返るたび手を振り、見送ってくれた。
留学先での出来事は、驚くことばかりだった。
始めは慣れない外国語に苦労させられたが、それはもう大丈夫だ。
もちろん、彼との手紙での連絡は欠かさない。
〈―――絵の勉強ははかどってるか? あんまり無理はするなよ。お前は体弱いんだから〉
「はいはい、アンタこそ、私が居ない間インスタントとか、カップ麺ばっかで済ましちゃダメだぞ」
〈―――安心しろ、俺はこう見えても料理の達人だ〉
そんな、普段と変わらない何気ないない会話を手紙で繰り返していたある日。
一通の手紙で、私の中で眠っていた不安が一気に息を吹き返した。
〈―――寂しい、会いたい…〉
いつもなら手紙の半分まで書いていた文章が、たった一行になっていた。
彼の気持ちが痛いほど解る。だけど、今ここで帰ってしまえば私の努力が無駄になってしまう。
〈ゴメン、今はまだ、帰れない〉
その手紙を最後に、彼からの手紙は帰ってこなかった。
*
―――アイツが留学してから半年、俺は、
風邪を引いてしまった。
病気になると人の心は弱くなると言うが、それは本当だった。
昨日、渾身の力で書いて送った手紙は、
あまりに自分勝手な内容で、彼女が読んだことを考えるだけで胸が押し潰されそうなる。
「腹、減ったなぁ…」
もう起きる気力さえない。
友人にメールで食料の支援を頼んだから、今日中にはインスタントのお粥やら薬やらを買ってきてくれるだろう。
ドン ドン
「お…?」
噂をすればなんとやら、早速来てくれたようだ。
「開いてるから勝手に入ってきてくれ…」
しかし、擦れた声は扉の向こうには届かなかった。
このままでは……マジで餓死してしまう…。
……そうだ! 俺には携帯があったのだ!!
これで連絡すれば…!!
充電してください。
(なにィィーー!?)
……終わった、終わったよパトラッシュ。餓死確定だよ。
ガァン
だがそんな俺の運命を変えるように、扉を粉砕せん勢いで扉が開かれた。
「あ〜あ〜、完全にのびちゃってまぁ…」
光が差す方向を見るとそこには、中学時代からの親友、ではなく。
「よっ、お見舞いに来てあげたぞ」
中学時代の女友達、いや女ではない。あれは女の皮を被った男だ。
まさに目の前に居るのは、その男女がだった。
「…なんで、お前がここに居るんだ…」
「聞いてなかったのか? お見舞いに来てやったんだよ」
「じゃなくて、なんで? 俺はお前じゃないもっと優しい友人に頼んだはずなんだが…」
「あぁ、アイツのことね。いやぁ、アンタからメールが来た時にたまたま一緒に居てさ、代わってもらった」
「…帰れ、暴力女」
最後は無視され、買ってきたと思われる材料を台所に並べる。
「なに食いたい? …つってもお粥ぐらいしか食えないか」
「なにを言う。お前がまずお粥などという高等な料理を作れるはずが…」
数分後、俺の目の前には美味しそうに湯気立てるお粥が並んでいた。
「なにか言ったかい…?」
「なんでもないです」
鼻がつまって味はしなかったが、ちゃんと食える物だったから安心した。
気分が悪く、全部は食い切れなかった。
俺がレンゲを置くのを見る矢否や、アイツ見計らったように目の前に水を置く。
「ほい、薬」
「…あ、あぁスマン」
「いいっていいって、病人は病人らしくしてな」
いつものアイツらしくなくて、少し調子が狂う。
薬の飲み終わった俺を無理矢理布団に戻し、アイツは洗い物や、掃除をし始めた。
(…家事できんだ。アイツ)
……
…
「じゃ〜、アタシ帰るね」
掃除も終わり、することが無くなったアイツはしばらくテレビを見た後、思い出したように立ち上がり、そう言った。
「あ…」
その言葉に、どこか不安感を覚えたのか、咄嗟に呻き声に似た言葉を洩らしてしまった。
「ん、どした?」
「…いや、なんでもない」
――どうかしている。
気が滅入ってるだけだ、こんな気持ち、一日寝ればすぐに消えてなくなる。
「…早く帰っちまえ」
「……そういやぁ」
「なんだよ」
「アンタの彼女ってどっか遠くに行ってるんだっけ?」
「絵の勉強で外国に留学してんだよ」
「へぇ〜♪」
布団で顔を隠したままだったが、アイツの返事は、どこか弾みがあるものだった。
一気に場が静まり返り、数拍置いてから、ギシギシと床を鳴らして近づいてきた。
「…彼女さん、出てってからどれくらい立ったんだい…?」
…応えることが出来なかった。
唾を飲み込めない。体が動かない。
「な、なんだよ…」
「いやねぇ、アタシがここに来たのにはもう一つ理由があってさぁ…♪」
絶対今アイツの顔にニヤけてる。見なくても解る。
「知ってた…?」
「な、なにが」
「私がアンタのこと好きだってこと」
「は……」
次の言葉を紡ぐ前に、布団の上からのしかかられる。
「ずっと待ってたんだよねぇ〜、この機会を♪」
「ちょ、冗談よせ。重いから速くどけ! んでもって帰れ!!」
「やだね、今日は泊まってくことにするよ」
「誰に断って………んぐっ」
「ん…」
布団を剥がされ無理矢理唇を重ねられる。
「お、お前、怒るぞっ!」
「…さぁて、病気のアンタとアタシ、今ならどっちが勝つかな?」
「なッ!!」
「それにさ、いっぱい汗かいたほうが治りが速くなりって言うじゃないか」
この状況でその言葉が差す意味は一つしかないわけで。
相手は黙ってたら美人だが、いやいや、なに考えてんの俺!?
「だ、だ、誰がするか!!」
「…する?」
「あ、ああ俺はしないからなっ!」
「アンタの許可なんか関係ないね。アタシがアンタを襲うんだから」
てのをまた思いついた。
そのあとは帰国した彼女と男女の男をめぐった修羅場。
もちろん自分は書かない。じゃなくて書けない。
398 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 09:21:12 ID:Puezw2oS
>もちろん自分は書かない。じゃなくて書けない。
ちょwwwwwwwwおまwwwwwwww
すまんageてしまた・・・・・orz
そして彼女の元に届く手紙
短い文と一枚の手紙
僕たち
結婚しました
私たち
いや、結婚通り越して「子供が出来ました」でw
つ[孫が生まれました]
>>397 GJ
一話完結でいいから最後まで書いてほしいです。
つ、ついにしてしまった。
処女なのに襲っちゃったみたいで、凄い恥ずかしいけど絶対この機会は逃せなかった。
中学の時からずっと好きだったあいつに彼女ができていた事を知ってしまった時何度も諦めようとした。だけど私の何かがあの女を許していなかった。
好きといいながら一度も会いにこないんだから、試合放棄って事でいいんだよね?
どうか美術で大成してください。その代償として切り捨てたられたあいつは私が責任を幸せにしますから。
あいつは私を女としてみてくれなかったけどこれからは違う。なんだかんだ優しいから私を邪険には扱わないだろう。……まあ、それを見越しての作戦だったんだけどね。
後は段々とあの糞女が占めていて心を乗っとって、塗り替えていくだけ。だから今日も求める。
「……ねえ、もう我慢できないよ。しよ?」
勝手に書いた。
反省はしている。
誰か彼女との鉢合わせ書いて〜w
>>392 GJです。
これはもう定期的にさりげなくレッドペッパーの禁断症状の報告をするしかない。
この頃は投下間隔もわりかし短めで嬉しい限りです
>>405 ラストだけ
とうとう彼女が個展を開くというので、招待された。
本当は、ここ何日か音信不通のあの子のことが気になっているのだけれど。
個展は、盛況だった。日本人の彫刻家としては、久しぶりの大物ということでずいぶん報道されていたから。
「ありがとう、きてくれたのね」
スーツを着た彼女が出迎えてくれた。きれいだ。輝くようだった。
「すごい人気だね」
「ふふ、こんなの最初だけよ」
そういいながらも、彼女はうれしそうだった。
「ぜひ見てもらいたい作品があるの」
ある女の像の前に連れて行かれる。すばらしい作品だった。生き生きとしている。
そこで、この像のモデルに気付く。そうだ、間違いなく、あの子の像だった。
「驚いてくれた?わたしたち、和解したの。それでモデルになってもらったの」
音信不通の理由はそれか。ともかく、彼女たちが和解してくれたのはうれしい。
「すごいね、まるで生きているみたいだ」
いささか陳腐な感想をいうと、彼女は笑った。
「違うわよ、これはね、死んでいるみたいっていうのよ」
彼女の奇妙な言い方を疑問に思いつつ、像の肌をよく見てみる。
石膏に、産毛が浮いていた。
(江戸川乱歩、コーマン風)
悪趣味だ
408 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 18:29:22 ID:+cE7z6wd
埋め・・埋め・埋め・・うめ・埋・埋めぇぇぇぇぇぇー。
>>407 GJ!!
はいここ注目。
「和解」とは争っていた者たちが許しあうことを言いますが、
修羅場用語ではこのような形を「和解」と言います。
勉強になりましたね。
死んでいるみたいってことは……中で生きてるんだよな
では投下致します
第1話『来訪者』
ねえ。約束しようよ。
今度ね。再会することがあったら……
わたしを。
懐かしき情景である。俺が水澄家に引き取られてから仲良くしていた隣に住んでいた女の子。
仲良くしてから数ヵ月後に引っ越してしまったが、
彼女の存在が両親を亡くした傷心の俺を励ますようにいつも傍で支えてくれた。
これは彼女がこの地を離れようとする時の出来事だ。
見送りするのは俺だけで、他には誰も見送ろうとする者は来なかった。
当たり前である。
彼女の両親は連帯保証人で多額の借金を背負っているのだ。
この地から逃げるのは借金取りから逃げるための夜逃げである。
俺は彼女から大体な事情を聞いていたので、深夜に水澄家を抜け出して彼女の両親と彼女を見送ろうとしていた。
時刻は深夜。子供が起きていい時間ではない。
深淵のような暗闇に恐れずに彼女の両親は小トラックに家具や荷物を積む。
俺自身が手伝おうと思ったが、彼女と一緒にいる時間をできるだけ長く傍にいたかったのでその光景を見守りながら、彼女と手を深く握り締めた。
まだ、子供だから。俺は彼女がどういう境遇にいるのかは全く理解することができずにいた。
彼女は涙目になりながら、俺と一緒にいた思い出を長々と語っている。
(ありがとう。月ちゃん)
深々と頭を下げながら彼女は俺に礼を述べていた。
全く、理解できずに俺はただ慌てることしかできない。
どうして、彼女が俺に礼を述べる理由は全く検討がつかなかった。
ただ、わかっているのは彼女が俺との別れが惜しんでいることぐらいか。
彼女の両親が家の荷物の全てを小トラックに押し込むと迅速な行動でトラックに乗り込んでエンジンを入れるとようやく別れの時が訪れる。
彼女は小さな小指を差し出すとこう言った。
(約束しようよ。月ちゃん)
泣きながら笑顔を浮かべようとしている。本当は泣きたくてたまらないのに。
それを堪えて我慢とする彼女をこれ以上見るのが辛かったので俺は彼女の小指に自分の小指を絡めた。
(また、どこかで絶対に再会するの。
この広い世界のどこかで私たちは会いたいと想い続けている限り、また会えるんだよ。だから、そのために約束しよう)
俺は首を縦に頷いた。
彼女の言葉通りにお互いがまた会えると信じている限り、どこかで会うことができる。
この広い世界は残酷で悲しいことが多いけれど、子供の純粋な想いだけは誰にも汚されることなく叶うことを祈る。
(もしね。再会することができたら、私をお嫁さんにしてください)
夢が終わる。
懐かしい夢の終わりと同時に眩しい朝日の光が部屋の隙間から細かく入ってきた。
時計が鳴る音が部屋中に鳴り響くと俺は問答無用に止めた。
本来なら、ここで二度寝タイムに入りたいところだが、俺は居候であり普通の男子学生と違った生活を送ることはできないのだ。
起床時間は6時。
こんなに朝早く起きる理由は俺が家事一般を任されている、どこに出しても恥ずかしくない主夫だからだ。
ある程度目を覚ましてから急いで台所に立ち、冷蔵庫から取り出した材料を包丁で細かく刻み、
慣れた手つきでフライパンを動かして具を炒める。
料理禁止令の水澄姉妹の代わりに俺は水澄家の朝食を作る。
ついでにお弁当も俺がせっせと作っている。この時間帯に起きないとさすがに慌てて準備をするのはあんまり好きではない。
ある程度の作業工程を終了すると出来上がった朝食をテーブルに並べて行く。
朝食が出来上がった時点で俺は階段を上がって、姉妹の部屋に行く。
ドアをノックするが、当然返事はない。一応、女の子だから礼儀正しくドアをノックしているのだが、
女の子じゃなかったら問答無用に張り倒して叩き起こしているところだ。
ドアを開けると二人は仲良く心地良く寝ていた。
ダブルベットの上で姉妹は寝息を立てている。
姉妹一緒に寝ている姿を見ているとこっちも心が癒されるような感覚に陥るが俺は二人の布団を問答無用に取り除いた。
それでも、起きない。ただ、乱れたパジャマがあちこち肌を露出しているし、胸の谷間とかも見えているので慌てて俺は視界をずらした。
姉妹が好んで着ているパジャマは彼女たちの性格を現す。
猫柄のパジャマを着ている虹葉姉は猫が大好きで普段からにゃにゃと言っているし。
犬柄のパジャマを着ている紗桜も犬好きだし、犬みたいな性格をしている。
と。モノロ−グに浸っている暇はなかった。
「虹葉姉。紗桜。もう、朝だよ。いい加減に起きないと遅刻しちゃうぞ」
「うーん。もう少しだけ」
「布団気持ちいいよ」
「はいはい。とりあえず、起きような」
体を揺らして起こそうとするが、全く起きる気配はなかった。
女性特有の柔かくて暖かい感触に喜びを感じる間もなく、俺はさっさと最終手段を使うことにした。
「起きないとキスしちゃうぞ」
その一言の言い終えた途端に姉妹は顔を真っ赤にして眠たそうな瞳をきっちりと開けた。
俺は虹葉姉と紗桜が起きたとわかってから、面倒臭そうな足取りで台所へ戻って行く。後片付けはちゃんと最後までやらないとな。
テレビを点けて朝のくだらないニュ−スを朝ご飯を食べながら呆然としていると騒動しい二人組が慌てて乱入してきた。
パジャマから俺達が通う学園が指定した制服へと着替えてきたらしい。
女の子は準備にいろいろと時間がかかるなら、もう少し早起きしてこればいいのにと俺は内心思っていたりするが。
「月君。おはよう」
「兄さん。おはようございます」
礼儀正しく丁寧に姉妹が挨拶を交わす。
先程の寝呆けた二人の姿はどこにもない。ノ−トの記憶でも甦ったような変貌ぶりである。
学園ではこの姉妹は優等生と通っているせいか、学園中では優等生の仮面を被っているのだ。
でも、家の中では仮面を剥ぎ取られてダメモードに入っているが。
「今朝のニュ−スです。
男性を監禁した疑いで元恋人の猫崎猫乃容疑者を警察は逮捕致しました。
事の発端は恋仇であった女性に片思いの男性に寝取られてしまい、その男性に復縁を迫ったところ。
思わず、そこに遭ったフライパンで被害者の頭を殴打して、そのまま1年9ヵ月による長い監禁生活が続いたと思われます。
警視庁は記者会見で真相は捜査で明らかにすると宣言しています。
今日のような女性による監禁事件は1日で5−6件と年々と増加傾向にあります。
次のニュースは……」
朝食の憩いに流れたニュースに朝食を食べずに虹葉姉と紗桜は箸を止めて、今のニュ−スを険しい表情を浮かべて真剣に見ていた。
嫌な予感がする。
だが、もう遅い。俺は迫ってくる悲劇を避けられることなく、昨夜と同じように紗桜が尋ねてきた。
「兄さんは女の子による監禁事件はどう思いますか?」
「監禁自体は犯罪だから捕まって仕方ないじゃないのか」
「違いますよ。監禁は女の子による大好きな人を独り占めにできる恋愛の最上級テクニックなんですよ。
好きな想い人を自分好みに調教できるなんて最高じゃないんですか。
監禁して調教している最中にその人も自分の事を愛するようになってくれたら。もう、メチャクチャ幸せです!!」
「紗桜。お前、一度病院に診てもらえ」
「あうっーー!!」
監禁生活が恋愛の最上級テクニックって頭のおかしい主張する妹は一度黒い医者に診てもらえばいいと思う。
実際、被害に遭った男性は外部から遮断されて今まで積み重ねた物が発狂した女性によって全て失っているだろう。
監禁から解放されたとは言え、これからの社会復帰は重く冷たく伸し掛かるはずだ。
「月君。紗桜ちゃんをいじめないの」
虹葉姉が真剣な眼差しで俺を見つめてきた。
「女の子の素直な気持ちをちゃんと受け取っていれば監禁生活も天国に変わるんだからね。
私も想いを受け取ってくれない人にはとことん調教したいとか思っているんだけど」
「姉妹揃って仲良く精神科に行けっっ!!」
やはり、虹葉姉も紗桜もニュ−スの電波を受信して頭のどこがおかしいです。
姉妹より俺は先に家を出ると夏の熱い日差しをまともに受けながら黙々と歩いた。
紗桜や虹葉姉や俺が通う学園は徒歩で15分ぐらいだろうか。
学園は至って普通の子が通う平凡な学園であるが、俺は家からも近いことだし成績も並みのため通っている。
だが、少なくても疑問に思うのはもっと上の学校を狙えたはずの虹葉姉と紗桜は何故かこの学園に通っているってことだ。
二人に聞いても、その理由までは教えてもらえなかった。
とはいえ、この猛暑の中でも足取りは軽い。
昨日までの期末考査は終了して、悪夢のテスト返しを終了すればついに念願の夏休みに突入するのだ。
今日も大した授業もないし、学校に着けば寝てればいいから気楽な一日なるはずであった。
朝のホームルームが始まると突如いきなり全校集会という校長が家で起こった出来事を売れない小説家よりも大げさに語るという伝統行事が待っていた。
この猛暑の中で長々と語られると体育館の中ではとはいえ日射病で倒れる人間が多数続出するかもしれない。
眠りを誘いそうな電波を発するヅラ校長の顔を思い浮かべるだけで俺は仮病を使って、保健室へと逃げ込みたかったが
担任の次の一言で俺は地獄に行くことを決めた。
なぜなら、この学年に女の子が転校してくるからだ。
ぜひ、こんな設備も人材も整っていない物好きな人間の容姿や性格その他の事などもろもろ知りたいと思うのは人として当たり前のことだった。
とはいえ。全校集会は退屈と眠気と耐久力を競う競技であった。
名前も知らない多数の人間と一緒に正しく綺麗に一直線に並んでいる。
校長先生らしきヅラはそれを見下すように国語教師に強要したカンペの内容を忠実に読み上げていた。
更にアフレコらしき校長先生の孫の自慢話になる頃には数人の犠牲者が出ていた。
さっさと転校生紹介に入ってくれないかと心から願っていた。
恐らく、周囲の男子生徒も俺と同じことを思っているはずだ。
ヅラ校長の反射する光よりも、転校してきた女子生徒の眩しすぎる笑顔を見たいってね。
その願いが届いたのか、ついに待ちに望んだ転校生の紹介がやってきた。
「初めまして。皆さん。わたしはK高校から転校してきた……
鷺森音羽と言います。よろしくお願いします」
ここまでは普通であった。
全校生徒の前で転校生として立っていることで硬張った表情を浮かべて、オドオドしている彼女は涼やかな声で言った。
「ただの人間には興味ありません。この中に『天草月』さんがいたら、私のところに来てください。以上です」
さすがに驚いたね。転校生である鷺森音羽さんは自己紹介の場で俺を名指しするなんて一流の脚本家すらも思いつかない展開に
俺はただ驚きを隠せない。俺を知っているクラスの連中と他のクラスからの視線が一斉に向けられた。
転校生である美少女と知り合いなのかよという男のジェラシ−が9割と常識では考えられない紹介した奇人と
同類なのかと問い詰めたい視線が1割といったところか。
ただ、俺が危惧することはただ一つ。
この全校集会で参加しているであろう虹葉姉と紗桜が家に帰るとどういった反応が返ってくるのが考えるだけで思わず嘆息してしまう。
しみじみと思う。これは夢だと信じたい、と。
というわけで第一話終了
やはり、SSを書く習慣を身に付いてると
嫉妬SSを書かないと落ち着かない症状に襲われるんですけどww
これなんて中毒?
417 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 19:31:46 ID:+cE7z6wd
>416 気にする事は無い。我々はそれを望んでいる。
GJ!ただ・・・
ネタを豊富に使うのは結構だが、使いすぎるとシリアスなシーンを台無しにしたり白けさせる諸刃の剣。
使いすぎに注意と老婆心ながら忠告するぜ。
前作、前々作でもその傾向があったからな。
GJ。
むしろ才能というべきな気もするが。
SS書けない人からすれば正直羨ましい。
電波受信と妄想言語化のスキルがないと神になるのは難しい。
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l::::l!::::ll:::::::::l.l! ヘ、l{,゙ニリ゙' l / .lt;;;;kヅl:ll:::::::l!::::i
l:::l!:::::ll:::::::::ll ≡=.  ̄_,,.、;;;:=l=、 `"'''''"=.,!:ll::::::ll:::::l
ヽl:::::l.l:::::::l.l ~ ̄ .} `"''=- ./:::ll:::::リ:':l'
\::l.l:::::::ト、. ' /:::::ll:::::l/ll'
ヾl::::::l! .ヽ, ,、-‐- rへ::::ll:::〃リ
l;::::::l! .l.\, ,/ 'lリ::〃
'、::::l,_ l! ヽ、, __ ,、イ,,、、、 ,l::::/
/i::::l ,>' ,lヽ;;;;; `ヽ,llニニニ--- .、.....,,,__
,/; ; ; 'i;::i, ,.r‐ 、, /;;/; ; ;,f.l  ̄``''''''‐--二ニニニ
/; ; ; ; ; ; ; lヾ ,/;l l `ヽ、/;/; ; ; ; l l
,r ' ´; ; ; ; ; ; ; ;.;, ;l/; ; ;l l; ; ; ; /; ; ; ; ;,l l
.,.<`ヽ、; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,l,;;;r‐'゙  ̄7,;; ;,;,;,;;;;;l.l パ ロ デ ィ は
"ヾ=`ヾ、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,':, ,,, r-,/,;;;;;;;;;;;;;;;l.
/ .l.l ~ヾ=-`''-、;;;;;;;;;;ヾ;;;l .l;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;l l ほ ど ほ ど に な
、 ./ ll .ヽ .~ヾ"=-,'-;;;;;ヽ;l l;/;;;;;;;;;;r‐ラ ,l
>>416 GJ
しかし、嫉妬ニュースはいいネタだと思うんだけどな
監禁は女の子の恋愛上級テクニックという設定は
リアル女の子こそがやるべきことだよ
パロネタは巧みなく使っているが
猫崎猫乃ネタには吹いた
お前はまた男性を監禁しているのかとツッコミたくなったw
>>416 GJ
あ〜あ、俺も監禁されてぇなぁ・・・・・
423 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 21:19:54 ID:+cE7z6wd
>422 悲しいぐらいその気持ちがわかるな。なぁみんな。
可愛くて一途な子にされたいな。
あとsageてね。
監禁は厳しいなあ…露呈した時引き離されちゃうし
軟禁でいいよ、軟禁で我慢する
包丁もって突進されたことならある
それなんてトンベリ?
>>425 いたり先輩「露呈する前に調教すればおk」
GJ
しかしその世界では夏休み後何名の生徒が五体満足で二学期を迎えられるのだろうか。
>監禁事件は1日で5−6件と年々と増加傾向にあります。
一月で165件……ブルブルGJ
ツイスター、投下します
434 :
ツイスター:2006/11/20(月) 23:46:36 ID:SIr/2Hrj
月のない夜。真っ暗な部屋の中、太郎はひとりベッドに横たわっている。眠れない。
今日は、次子の最後の日だった。
最後の晩餐を家で取った。外に豪華なものでも食べに行こうかという誘いに、次子は首を振った。
自分が腕を振るうから、最後の食事はここでみんなと取りたいという。
今までになくはりきって、次子は食べきれないほどの料理を作ってくれた。
カレイの煮付け、肉じゃが、エビチリ、鳥のから揚げ、グラタン、シーザーサラダ、餃子、デザートにアップルパイ。
それらはすべて、太郎がうまいとほめてやったものばかりだった。
最後の食事を辛気臭いものにはしたくなかった。
だから、太郎も、そして一子も、なかば料理を取り合うようにして料理を口に運んだ。
もっとも、それが上手くいったかどうかは分からない。一子などは、ほとんど涙ぐんですらいたからだ。
次子は、それを知ってか知らずか、笑って眺めていた。
本当に楽しい食事だった。いや、次子が来てからずっと、程度の差こそあれこんな感じだったのだ。いつも。
たった一ヶ月の間に、次子は簸川家になくてはならない存在になっていた。
太郎は、食事中、次子の笑顔を見るたびに自分の胸が高鳴るのを感じていた。
胸の高鳴りと共に、次子を愛しく思う気持ちが湧き上がってくる。
次子を失いたくない。太郎は切にそう思う。
自分は、伊勢を失った。そして今、次子を失おうとしている。
そうなったとき、自分がどれほどの喪失感を味わうことになるのか、太郎には想像もできない。
いや、きっと次子を失った痛手は、伊勢を失うよりもはるかに大きくなるだろう。
悲しみを先取りした太郎の目も潤んでくる。そんな太郎の様子に気付いた一子が叱咤した。
「ほら、何ぼさっとしてんのよ、ちゃんと味わって食べなさいよ!」
「お、おう」
一子は、エビチリを太郎のご飯の上によそってやった。それをがつがつとかき込む。
その食べっぷりを、次子がうれしそうに見ていた。
食事が終わる頃には、すでに夜が更けていた。
山鹿の話では、次子が消えるのはその日の夜明けだという。
そのときまで二人で見守ってやりたいというと、次子はまた首を振った。
自分の消えるところを見せたくないから、いつもどおりに寝て、いつもどおりに朝を迎えて欲しいと。
そのいじらしさに、太郎も一子も、また泣きそうになる。そんな二人の手を握って、泣かないで欲しいという。
今日の次子は、まるで二人の姉のようだった。
435 :
ツイスター:2006/11/20(月) 23:47:08 ID:SIr/2Hrj
だが、いつもどおりに寝ることなどできそうもない。きっと、このまま朝まで起きていることになるだろう。
そうして太郎が眠るのをあきらめた頃、部屋のノックが鳴った。
「お兄ちゃん、わたし、次子。入っていい?」
太郎が返事を返す前に、ドアが開いた。もちろん、太郎も迎え入れるつもりだったのだが。
しかし、開いたドアから、廊下の電灯の明かりを受けて現れた次子の姿を見て絶句する。
全裸だった。
以前、見てしまったときと同じ、細くて白い肢体。穏やかなふくらみの乳房。ぴったり閉じた割れ目。
ドアが再び閉じると、部屋は暗闇に沈んだ。次子の体も見えなくなる。
だが、残像のように目に焼きついていた。
「お前、何して」
「分かってるでしょ、お兄ちゃん」
気配で、次子がベッドに近づいてくるのを感じる。そのまま、ベッドに腰を下ろしたようだった。
そして、あっけにとられたまま、ベッドに身を起こしていた太郎の唇に口付ける。
「お願い、お兄ちゃん。わたしの最後のお願い、本当に一生のお願いだから」
次子が、太郎の手をとって自分の頬に当てた。涙で濡れていた。
「わたしも消えたくなんかない。お兄ちゃんとお別れなんてしたくない。でも、お兄ちゃんが抱いてくれたら、お兄ちゃんと一つになれたら、心残りになくいける気がするから。だから、だからお願い、お兄ちゃん」
暗くて、次子の表情は見えない。だが、きっと顔を歪めているんだろう。つらそうに。
次子には、最後まで笑っていて欲しかった。幸せであって欲しかった。いや、確かに太郎もまた、次子を欲しがっていたのだ。
口実があり、そして自分の本心がそうであるなら、拒む道理はなかった。
だから、太郎は次子の手を引いて体を引き寄せ、かき抱いた。
「うれしい、お兄ちゃん」
そういう次子の口に口付けた。小ぶりの唇を舌で割り、前歯をなぞった。次子がおずおずと隙間を空ける。
そこに、舌をねじ込む。小さな舌が待っていた。一度ふれあい、そしてからみあう。真っ暗な部屋に、舌をからめる濡れた音だけが響く。
キスしながら、太郎は次子の背中とうなじをさすった。やはり、ひんやりとしていた。まるで、水晶を抱いているようだと思った。
その感触が心地いい。さすっていると、少しずつ温かくなってきた。唇を離す。
「胸、触るぞ」
伊勢のような豊満さはないものの、穏やかなふくらみが十分に自己主張していた。伊勢とは違った弾力があった。
やさしく、触れてやる。そこも、冷たかった。丹念にさすってやる。乳首の周りを何度もなでてやると、次子の体がぴくぴくと反応した。
小さな乳首に触れると、控えめに勃起していた。親指と人差し指でつまむと、次子がくぐもった声を上げた。
「痛かったか?」
「ううん、でも、なんだか変な感じ」
436 :
ツイスター:2006/11/20(月) 23:47:59 ID:SIr/2Hrj
それを聞いた太郎は、次子の胸に顔を寄せると乳首を口に含んだ。舌で転がす。乳首がいっそう固く勃起した。
軽く歯で挟む。次子が今度ははっきりとした声を上げた。歯で刺激を加えながら、乳頭を舌でなぶる。
次子が太郎の頭を抱きかかえた。
「は、ああ、気持ち、いい」
空いていた両手で、乳房を揉む。次第に強く。
いつの間にか、次子の体温があがっていた。熱いくらいだ。まるで、燃えているようだった。
太ももに触れると、やはり熱い。以前、膝枕をしてもらったときに感じたのとはまったく違っていた。
太ももの表から、内股へと手を滑らせる。円を描くようにして、内股を何度もなでてやる。
「なんだか、ぞくぞくする」
「変な感じか?」
「うん、でも、気持ちいいかも」
「そうか、もっと上、触るからな」
太郎はそういうと、次子の割れ目に触れた。ぴったりと閉じている。それに、まだほとんど濡れていない。
割れ目を何度もなぞり、少しだけ指を入れた。熱い。思わず、手を引っ込めそうになる。
体の外以上に、中は熱かった。そして、まるでその熱で体の中が溶けてしまっているかのように、汁気に満ちていた。
指を入れた分だけ開いた割れ目から、その汁がどろりとあふれた。
それを指で塗りつけるように、膣口からクリトリスまでを往復させる。クリトリスに触れるたび、次子が震えた。
「お兄ちゃん、あの」
「ん?」
「そこ、気持ちいいから、その」
次子が恥じらいながらいった。突起の皮をめくって直接触れた。
「ここか?」
「あっ、うん、そこ」
指で揉んだりはじいたりして何度も刺激してやる。太郎をぎゅっと抱きしめてきた。
体温がさらに上がっているようだった。さらに執拗に責める。
「お兄、ちゃん、何か、わたし、変、だよっ、ああっ」
そういうと、次子は背中を反らせて、びくびくと震えた。そして、大きく息をついて脱力する。
体全体が、弛緩している。ぐったりしていた。
「今の、何?」
「イッタんだよ」
かすれた声で問う次子に答えてやりながら、もう一度中に指を入れる。そこもまた、弛緩しているようだった。
それでも、初めてに違いない次子は痛がるだろう。太郎にできるのは、こうしてなるべく体をほぐしてやることだけだった。
後は、決して途中で止めたりしないことだ。
437 :
ツイスター:2006/11/20(月) 23:48:36 ID:SIr/2Hrj
「次子」
それだけで、太郎が何をいいたいのか分かったらしい。
「うん、来て、お兄ちゃん」
太郎は、着たままだったパジャマを脱ぎ捨てる。
次子の膝を立たせて足を広げさせ、その間に座る。手探りで腰を抱えると、驚くほど細かった。
暗闇の中、探り当てた次子の中心に亀頭を密着させた。割れ目に沿って滑らせて、よく濡らす。それだけで、次子が声を漏らした。
十分に濡らした亀頭を、ゆっくりと進めてゆく。閉じた貝殻にナイフを差し込むように、じりじりと。
やがて、亀頭が埋まった。粘膜でじかに感じる次子の中は、やはり熱い。そして、狭かった。
膣口が、まるで甘噛みしているかのように締め付けてくる。こんな狭い中に本当に入っていけるのか、今になって心配になる。
その太郎の躊躇を察したのか次子がいった。
「お兄ちゃん、わたし、大丈夫だから、痛くても平気だから、最後までして」
そんな次子のいじらしさに、また胸が一杯になる。太郎は、次子と手を合わせて、握り合った。
侵入を再開する。慎重に腰を進めた。ひときわ狭くなっている場所に突き当たる。そこを突き抜ける。
ぷつぷつと柔らかいものを引きちぎる感触がした。
「ぐうっ」
次子が痛みに声を漏らす。だが、止めない。そのまま、奥へと進んだ。
膣の筋肉が、まるで押し戻そうとするかのように締め付けてくる。それに加えて、膣壁の襞がペニスを舐め上げてくる。
太郎は、挿入の途中ですでに達しそうになっていた。中で動かすことなどできそうにもない。
やがて、根元まで太郎のすべてが埋まった。
「入ったよ、次子」
「うん、感じるよ、お兄ちゃん。うれしい、わたしお兄ちゃんと一つになったんだね」
次子がそういうと、膣壁もまたうれしそうに太郎をぐいぐいと締め上げ、その襞を絡みつかせてきた。
鳥肌が立つほどの快感だった。
「次子、すまん、もう、いきそうだ」
「うん、お兄ちゃん、出して、わたしの中に、出して」
太郎は、次子の中に射精した。
「ああ、感じる、お兄ちゃんが出してるの、感じる、よ」
次子は、うっとりとした声色でいった。
すると、中の襞がそれ自体が意志を持つ生き物のように波打った。その刺激に、萎えかけた太郎のペニスが再び大きくなる。
「また、大きくなったね、お兄ちゃん、気持ちいいの?わたしの体、きもちいい?あのひとより?」
「ああ、次子、気持ちいい、すごく」
「うれしい、うれしい」
次子の感情に連動しているのか、またも膣壁が太郎を締め上げる。そして、まるで無数の小さな舌に舐られるような感触。
太郎は、少し腰を引いただけで、射精してしまう。次子が、自分の中にこんなみだらな生き物を飼っていたなんて信じられない。
「ああ、また出してくれたのね、うれしい、うれしい」
再び、締め上げられ、舐めあげられる。
そこからは、もう何回いったのか分からない。5回か、10回か。
いつの間にか、気を失うように眠ってしまっていた。
438 :
ツイスター:2006/11/20(月) 23:49:11 ID:SIr/2Hrj
翌朝。開きっぱなしのカーテンから差し込む朝日のせいで目覚める。
ベッドには、太郎一人だけだ。朝日が、本当にまぶしい。
昨晩のことを思い出す。あまりにすさまじい体験に、すべては夢ではないかと思う。
だが、体に残る疲労が、すべては事実であったことを教えてくれる。そして、シーツに残った血痕も。
次子は、消えてしまった。
涙は出ない。ただ、心にぽっかりと穴が開いたような気がする。涙も、そこに吸い込まれてしまったようだ。
頭の中で、わけの分からない音が鳴り響いている。何も考えることができない。
そんな太郎の心を置いて、体はいつもどおりにすごそうとする。腹をならし、朝食をねだった。
どこまでも生き汚いんだなと、太郎は思う。それでも、部屋を出て廊下を降りた。
はっとした。台所から、味噌汁の匂いが漂ってくる。毎朝、台所で朝食の準備をしていた次子の姿が連想される。
だが、実際にそこにいるのは一子なのだろう。
一子もつらいだろうに、いつもの朝を迎えようとしている。次子のやっていたことを引き継ぎながら。
きっと、それが消えた次子に対する一子なりの手向けなのだろう。
ならば、自分だけが沈んでいていいはずがないと、活を入れる。頬を叩いた。
いつもどおり、いつもどおりと言い聞かせながら、台所に入る。
太郎に背を向けて、妹がなべに向かっていた。
「おはよう」
「おはよう、お兄ちゃん!早いのね」
妹が、太郎の声に振り返った。犬のエプロンをつけている。
いつものように、何がうれしいのか、にこにこと笑って朝食の準備をしている。
そう、いつもの次子がそこにはいた。
以上、13話「チェックメイト」でした。
やっとこさここまでこれた。
うおおお!ぐっじょぶ!!
なんだか読んでてドキドキしやしたぜ!
入れ替わったのか、フュージョンしたのか!
はたまた、何らかの条件付けによって奈落のそこに叩き落したのか!??
妄想が、止まらない!
(;゚д゚) ……
一子が消えて次子が居る……のか?GJ
恐るべき●●が世に解き放たれましたね。
GJ
・・・・・・・・・・・・・ヒイィー!!
コレは怖い・・・。
あと亀ですがサウンドノベル落とせるようになってますな。
阿修羅氏お疲れ様です。
GJです!!
嗚呼、もうクライマックスに近づいているのか
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
>>444 俺達は女の子に嫉妬されてないと落ち着かないじゃないかw
ピッピピピ…
ピ――――――……
「21thre is dead.」
これはどういうオチなのか・・・14話が激しく怖楽しみですな。
投下いきます。
目覚めて最初に感じたのは、人肌の特有の温かさだった。
ベッドの上、智の身体にしがみつくようにして藍香が安らかな寝息を立てている。
それを見てまず湧き上がったのは後悔であり、智は自分がその感情を抱いたことに安堵した。
(今の俺は、『人間』だ・・・)
欲望を一通り吐き出したことで、衝動が収まったらしい。
藍香の首筋には真新しい穿ち痕があり、性欲と同時に吸血欲も満たしたことが伺えた。
千早に拘束されていた間とは比べ物にならないほど身体は絶好調であり、かつてない充足に満たされている。
そして、そう感じてしまう自分が忌まわしい。
身体が、女を『喰らって』生きることに慣れ始めているのだろうか。
このまま――求められるまま、或いは求めるまま藍香を抱き続ければ、やがて心まで呑み込まれるかもしれない。
そうなれば、いつかエルが言っていた、本能の赴くまま人を襲う理性無き吸血鬼になってしまう。
それだけは嫌だった。
たとえ肉体は化物になろうとも、人としての心までは失いたくない。
(何とかしなきゃな・・・このままじゃダメだ。
俺にとっても、藍香先輩にとっても)
許しを得られなくても、強引に出かけるしかない。
傍らを見下ろすと、心底幸せそうな藍香の寝顔。
一抹の罪悪感と限りない誘惑を感じてしまう。
しかしそれらを振り切るように頭を振って、今日の夜――決行の時に思いを馳せた。
・・・といっても、そう大袈裟なものでもない。
夕食後に一息つくと言って席を外し、何食わぬ顔で外に出るだけだ。
誰かに会っても、ちょっと散歩に出ると言えば済む。
そう思って玄関の扉を開け、正門に向かって歩き出したのだが・・・。
「高村様、どちらへ?」
黒服・サングラスのSPに見咎められ、早速声を掛けられる。
思わずビクッとなってしまうが、相手が顔見知りと分かると緊張が抜けた。
学校へ通うリムジンの運転手でもあるこの男は、大柄で厳つい顔つきだが気性は穏やかで、気軽に話せる存在だ。
智は安心し、予定通りの台詞を繰り出した。
「ちょっと食後の散歩に。軽くその辺りを回って来ようと思って」
気楽な表情でそう言った智に対し、男は申し訳なさそうな顔になる。
「お嬢様より、自分の許しなく高村様を外に出さないように、と申しつかっております。
申し訳ありませんが・・・」
「ええっ? いや、ちょっとその辺を歩いてくるだけで・・・。すぐに戻りますよ?」
しかし智がどれだけ言い募ろうと、SPは首を縦には振らなかった。
ここまで言って駄目ということは、余程強く言い含められているのだろう。
これ以上無理を言っても彼を困らせるだけだ。
顔見知りに面倒を掛けるわけにはいかないし、変に食い下がって不審がられても困る。
(次の機会だな・・・。誰にも見つからないよう、こっそりと出て行くようにしないと)
そう考え、智は踵を返すと何食わぬ顔で食堂に戻った。
藍香――目覚めた時には平静を取り戻していた――や綸音と談笑を交わし、遅くなったところで自室へ引っ込む。
(服は黒一色で統一して・・・闇に紛れて一気に突っ切る。夜の俺なら可能なはずだ)
藍香は今の時間なら風呂に入っているはず。
風呂を上がったら『恋人同士の営み』に来る可能性がある以上、それまでに出て行かねばならない。
そう考え、タンスを開けて着替え――何故か、智にピッタリのサイズの多種多様な服が納められている――を物色する。
するとノックの音。綸音かメイドでも来たのかと、返事をして扉を開ける。
立っていたのは藍香だった。
その姿を認め、智は凍りついたように身動きが取れなくなる。
風呂に入っているはずの時間に来たから、ではない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その瞳がまた、昼間のように黒く濁っていたからだ。
藍香が一歩踏み出す。釣られるように智も一歩下がる。
また一歩踏み出す。また一歩下がる。
一歩、一歩。また一歩、一歩。
「わっ・・・!?」
10歩ほど下がったところで足が何かに当たり、バランスを崩して智は倒れこむ。
倒れた先にあったのは、ベッドのフカフカな感触。未だ数時間前の行為の残滓が残る場所だ。
圧されるまま、部屋の奥まで下がっていたらしい。
よぎったのは既視感。
そのまま覆いかぶさってくる前にと身体をどけようとしたが、一歩遅かった。
「ぐはっ!?」
腹部に激しい衝撃。藍香が腹部に飛び乗ってきたのだ。
両足で挟むように跨がられ、智は身動きが取れない。ちょうど騎乗位の体勢だ。
黒濁した瞳が智を見下ろす。
食堂に居た一時間程度前までは普通だったのに、なぜ急にこんな状態になっているのか。
さっぱり分からない以上智としても下手に口を開けず、2人の間に沈黙が横たわる。
均衡を破ったのは藍香だった。
「悪い子です、智くん。勝手に私から離れようとするなんて・・・」
ユラァ、と広がる幽鬼の笑み。目が全く笑っていない、口元だけの微笑み。
またもや既視感。一瞬、千早と重なって映った。
「先輩、何を言って・・・!?」
暫し理解の追いつかなかった智だが、すぐに思い至る。
つい先程、夕食の直後。
自分は屋敷を確かに出た。エルに、そして可能なら千早に会うために。
(それを知られたってのか? なんで・・・!?)
あの時は結局断念し、すぐに戻った。離れたのは、ちょっと長いトイレで誤魔化せる程度の時間だ。
それを感づかれたというのだろうか。
更には、己の真意までも。
・・・実のところ、これは智が遭遇したSP――運転手の報告によるものだ。
いくら藍香を以ってしても、広大な屋敷の外を全て把握するほどには知覚は及ばない。
だからそこら中にカメラやレーダー、アラームを仕掛け、更に要所に人員を配置し、屋敷を鉄壁の鳥篭にしてしまったのだ。
無論、この場合の鳥は智。
智に不審な動きがあった場合、すぐさま藍香に報告がいくようになっている。
財力を使った卑怯なやり方かもしれないが、その財力とて神川藍香という人間を構成するものの一つだ。
何より、智を自分だけのものにするには手段を選ばないと決めたのだから。
躊躇いなど、あるはずもない。
藍香の口が再び開く。
「智くん。私のこと、愛してる?」
全く揺らがない、濁った瞳と歪な笑顔。
返ってくる言葉が自分の望むとおりだと、少しも疑ってない顔。
3度目の既視感がもたらしたのは、恐怖や不安より、むしろ諦めの念だった。
――部屋に女の嬌声と男の荒い息遣いが聞こえ出したのは、それから1分後のことである。
--------------------------------------------------------------------------
苦行であろうとその逆であろうと、繰り返されれば慣れるもの。
そして感覚を麻痺、磨耗させていくものだ。
「俺はっ・・・『人間』だ・・・!」
屋敷で初めて藍香を抱いた時と同じ台詞。そして、抱く度に後悔と共に繰り返した台詞。
違うのは、声の主である少年の息遣いの荒さ、声の震え、力んだ肩とは裏腹に力の入らない身体。
後悔と抵抗は少しずつ薄くなっており、言い聞かせるように口にしなければ自身を保てないほどになっている。
何度抱いたか分からない。そう多い回数ではないし、日もそうは経っていないはずだ。
しかし智には、回数も日付も思い出すことが出来ない。
無論、学校のことなど気が回るはずもない。
衝動の抑制に苦心した千早の時とは違う方向で、智は吸血鬼としての自分に呑まれそうになっていた。
次に目を覚ました時、果たして自分はまだ人の心を持っていられるか―――そんな漠然とした不安に慄きながら。
――しかし、転機は意外なところから訪れた。
外に出なければと思いつつも自発的に動こうとする気力もなく、その日もベッドに腰掛け項垂れていた智。
事態を打破する方策も思いつかず、藍香がやって来ては抱くことを繰り返す日々。
豪華な屋敷での生活は何不自由なく、美味い物を食らい、極上の美女を犯し、その疲れに身を委ねて眠る。
この上なく堕落した、しかしある意味究極に贅沢な生活。
あと一日遅ければ、たとえ『機会』が訪れても智の足は動かなかったかもしれない。
しかし、そうはならなかった。
コンコンッ
藍香にしてはやや強いノックの音。
「はい?」
我に返った智が立ち上がって返事をすると、そこに居たのはやはり藍香ではなかった。
「綸音、ちゃん・・・?」
木刀と思われる長細い袋を手にした、ポニーテールの少女。藍香の付き人にして智の後輩。
その表情はどこか堅く、智は彼女の用件を何となく察する。
(とうとう来たか・・・。いや、遅すぎるくらいだ・・・)
食事時など2人きりでない時は、智も藍香も普通に振舞っているつもりだが、ボロが出ている可能性は否定できない。
鋭く聡明な綸音のことだ、2人が只ならぬ関係にあることまで察知しているかもしれない。
いずれにしろ、表情からして穏やかな話ではないだろう。
苦言か叱責か、最悪断罪か。
半ば投げやりな気分で、智は綸音の発言を待つ。
しかし、綸音から発せられたのは意外な言葉だった。
「高村先輩。外に出たくはありませんか?」
今回はここまで。綸音が動き出したことで、物語はいよいよ終盤に入ります。ここまで長かった・・・。
ちょっと、フォロー的裏設定を・・・。
・藍香はもう処女ではないですが、処女を奪ったのが智自身であるため、智の吸血対象範囲(第5回参照)から外れていません。
むしろ『自分のものになった女』ということで吸収効率がアップしているので、藍香1人の血で十分自分を保てるくらい。
『処女、あるいは自らが処女を破った女性』が智の吸血ターゲットとなるわけです。
取って付けたような設定ですが、そんなわけで、屋敷での生活の間智が血に困ることはなかったのでした。
>>454 智がいい感じに壊れてきたところで綸音登場w
何が目的なのか非常に楽しみです。
物語もいよいよ終盤に差し掛かってきたので壮絶な修羅場を期待してwktkして待ちます
GJ
そして倫音キタ━━(゚∀゚)━━!!
ここで倫音が動くとは思わなかったwktk
名前間違えたorz綸音たんゴメンorz
>>ID:Tcfv7LK0
あなたが綸音を語るな。殺すよ。
男の嫉妬はきめえwwww
ていうかネタだとしてもこれはきもい
ブラッド・フォースは面白い
ぜひ、どこかの新人賞に応募するべきだよww
「私、絵の勉強で留学することになったのっ…!」
胸を抉る衝撃っていうのは、きっとこういうことを言うんだろう。
彼女が発した言葉が、文字通り刃となって俺の胸に突き刺さった。
「あ…………?え…?」
思わず持っていた箸を取り落としながら、俺の口は言葉にならない無残な音階を重ねている。
あまりに唐突過ぎる。
頭が割れそうだ。
しかし、そんな俺を置き去りに、
「その、できれば、私が戻るまで、待ってて欲しいの…」
と、彼女が言葉を続ける。
意味がわからない。お前は何を言っている?
ちゃんと俺の顔を見ろ、俺の瞳を合わせろ、俺に、何か言葉を…
「………」
長い沈黙だけが支配する。
彼女は顔を真っ赤にして俯き、俺は対照的にきっと真っ青になっている。
こんな空気が訪れるのはもしかしたら初めて彼女を抱いたとき以来ではなかろうか。
処女であった彼女を欲望のままに貪って泣かせてしまった、あのときの状況と似ている。
「………」
彼女は小さな体を余計に小さく見せるように縮こまり、膝の上で握り締めた拳を見つめている。
俺はといえば…
ひたすらに空、ただ空だった。
取り落とした箸を拾う気にも、まして彼女を押しとどめる気にもなれない。
呆然と、口を酸欠の金魚のようにパクつかせて間抜け面を浮かべていることしかできなかった。
「………」
いい加減沈黙がいい具合に肺を締め上げている。
そして頭の中が言葉を模索するうちにカオスになった頃、ようやく彼女が小さな唇を開いた。
「あの―――」
「どれくらい、滞在するんだ?」
なんともタイミングが悪い。
彼女が口を開く瞬間を見ていたというのに、この失態。
自分のアホさ加減に脳がイカれそうだ。
死にたい。
間抜けに片方握ったままの箸が凶器であるならば、すぐさま手首を切り刻んでしまいたい。
「………一年間、滞在する予定、だけど…」
彼女が沈黙に重なった気まずさを掻き分け、俺の顔色を伺うように上目で言う。
「そ、そっか、い一年かぁ〜長いなぁ〜」
俺はどうしてこうも空気を読めないのか。
やっと目を合わせてくれた彼女が再び申し訳なさそうに俯いてしまう。
本当に駄目な男だな、俺は。
最愛の彼女が自分のやりたいことで世界に羽ばたこうというのに、どうして上手に祝福してやれない?
胸がひび割れそうなくらい痛くて、指先が凍るくらいに悲しいのに、何故せめて抱きしめてやれない?
自分の不器用さ、鈍感さ、すべてに腹が立つ。
そして…
本当は行ってほしくないのに、傍にいて欲しいのに、どうして…
「しょうがない。行って来い」
諦念で歪んだ作り笑いを浮かべながら、こんな言葉しか贈れないのだろうか?
・
・
・
・
・
・
「私、絵の勉強で留学することになったの…!」
目の前でお気に入りの日替わり定食にがっつく彼と、視線を交わせない。
言ってから、何もこんなところで…と思う。
重要なことなんだから、他にもふさわしい場所はいくらでも浮かんでくるのに…
今更吐いた言葉は飲み込めず、気恥ずかしさと申し訳なさ、すべてが混ざった不甲斐なさに身を打たれ、彼から視線を外すことしかできなかった。
「あ…………?え…?」
カツン…と箸が片方落ちる。
そして持ち主である彼は大降りの豚カツを一切れ口に運ぼうとしたところで硬直していた。
何か言葉を選んでいるのか、それとも透明の肉を咀嚼しているのかは判別つかない。
しかし、そんな彼を置き去りのまま私の口は更にトンデモないことを発した。
「その、できれば、私が戻るまで、待ってて欲しいの…」
言ってからまだ自分を殴りたくなった。
阿呆か?そう罵られても何も言い返せない。
このまま全裸に剥かれて店の軒先に吊るされても文句は言えないくらいの傲慢発言。
今まで何の相談もせず留学の件を進めたことと、勝手に滑って出た愚劣過ぎる束縛の言葉に、身が焼けそうなくらいの熱を持った。
―――頬が熱い。
一気に氷点下まで下がった空気にそぐわないほど自分に腹が立つ。
私は女王にでもなったつもりなのか?
いったい私はどれほどの女なのか?
浅はか過ぎる思考と、無駄だとわかっていながら海を越えて彼を束縛したい独占欲という本音が、卑しい自分を象徴するように滑り出ていた。
夢と大切な彼…
両方を手に入れることは絶対に不可能なのに…
どうしてこの汚い口はどす黒い本心を透かすような言葉を放ってしまうのか?
思わず拳を握り締め、睨み殺さんとする勢いで見つめてしまう。
どれくらい沈黙が落ちていただろう。
次に彼が口を開くときどんな言葉で罵られるのか、どんな冷たい言葉で別れを告げられるのか…
凍るような沈黙の中で私は死ぬほどの恐怖に身を震わせた。
最愛の彼に、一番大切な彼に、ゴミみたいに捨てられるなら…
せめて、私から…
「あの―――」
「どれくらい、滞在するんだ?」
まだ片方を落とした箸を握りながら、私程度の恋愛経験では見抜けない複雑な表情で私を見つめている。
彼の感情を読めないのは悔しい、悔しいけど…
「………一年間、滞在する、予定…」
裏返りそうな声で必死に押さえつけ、なんとか答える。
「そ、そっか、い一年かぁ〜長いなぁ〜」
伺うような私は、再び打ちのめされる。
一年なんて、待ってくれるわけがない。
彼くらい素敵な人なら、他の女性がほうっておかないだろう。
彼くらい素敵な人なら、私なんかよりもずっといい女性が見つかるだろう。
彼くらい素敵な人なら………と想像するだけで身がちぎれるほどの嫉妬心に震える。
どこまで、どこまで私はズルイ女なの?
自己嫌悪が胸中を埋め尽くし、吐き気に変わろうとしたころ…
「しょうがない。行って来い」
いつも通りの困り眉で、彼は背中を押してくれた。
空港。
「じゃあ…行ってきます…」
「がんばってこいよ」
日差しの差し込む空港で、両手いっぱいに荷物を持った私に爽やかな笑顔を向けてくれる。
あの後、我儘を受け入れてくれたことが嬉しすぎて彼の腕の中で一日中泣きじゃくった。
周りの目など気にすることなく、少ない時間を分かち合うように、溶け合うようなキスをした。
彼は私を裏切らない、絶対に捨てたりしない。
そう心で叫ぶたびに私は強くなれるような気がして、不安な海外での一人暮らしにも光が満ちてきた。
「……手紙、送るからっ!!」
彼の優しい笑顔を見ていると、また涙がこぼれそうになった。
―――離れたくない。ずっと触れ合っていたい。
でも、これは私が選んだこと。今更引き返すのは情けないし、背中を押してくれた彼を裏切る行為だ。
私は嗚咽を飲み込んで、歩み出した。
―――行くな。
笑顔で、俺は何回胸の中で唱えただろう。
―――行くな。
何度も振り返る彼女に微笑むたび、目の前が軋む。
―――行くな。
頭が割れそうなくらい痛い、不安に足元がぬかるむ。
―――行くな。
手を振る指先が、凍る。
―――行くな……
もう、手を伸ばしても届かない。
・
・
・
・
・
ある程度想像していたものの、小さな島国で生まれ育った私にとって海外での生活は驚きと発見の連続だった。
しかし一日を過ごすたびに言葉にも馴染み、その土地で新たな関係を築いていく日々に充足さえ覚え始めた。
もちろん、彼のことを忘れた日はない。
(絵の勉強はどうだ?馴れない海外なんだ。あまり無理はするなよ)
手紙に視線を落とし、一文字一文字指先でなぞりながら口にするだけで彼に包まれているような気さえする。
「はいはい、平気ですよっと。アンタも私がいないからって冷凍食品とかばっかりじゃ栄養偏っちゃうぞ」
(任せろ、料理はもう覚えた。帰ったら楽しみにしときな)
恐ろしく間隔の長い会話。
それでも私は満たされている。
不安や悩みはとっくに封印したはずだった。
でも…
冬の訪れとともにやってきた一通の手紙が、深く眠った感情を揺り動かすように惑わせた。
(寂しい、会いたい―――)
今まで絶対に見せることがなかった彼の感情。
頭がおかしくなるくらいの衝撃を受けた。
だとしても、戻れない。
ここで戻ったら、すべてを無に返してしまう。
彼の気持ちも、裏切ってしまう。
「ごめん、今はまだ帰れない…」
一人の部屋でつぶやいた言葉は、寒空に消えた。
彼からの返事は、それが最後になった。
アイツがいなくなって半年、冬の訪れとともに俺は風邪を引いた。
狭いアパートの一室。
余計に広く見える。
咳きをするたびに響く声に、返す人はいない。
虚しく部屋の隅に消えていく言葉は、寂しさを更に積み上げていく。
昨日勢いで出してしまった手紙を思い返すたびに、縮んだ心が潰れていく。
あれだけ封印した気持ちを、弱った心のまま解き放ってしまった。
「腹、減った…」
後悔と熱で体が動かない。もう起きる気力もない。
彼女が留学すると聞いた時に死ねなかったなら、いっそ今死んでしまおうか。
てか、何か食わないとマジで死ぬ。
とりあえずメールで友人に救援を頼んだが、ちゃんとやってくるのだろうか。
あいつらのことだから薬代わりに酒飲ませてきそうだ…
更に増していく頭痛に、回る視界、ドアを乱雑に叩く音が俺を覚醒させなかったらそのまま死んでいたかもしれない。
「うぅ……入って、くれ……」
ガツン!!!!
扉が割れそうな轟音と一緒に、暗い部屋に明かりが差し込む。
「お前が伸びてるなんて珍しいなぁ」
そこには、中学時代からの男友達、ではなく…
女の皮を被った悪友、いや、悪魔がやってきた。
あ、今、絶対熱上がった。
「何でお前がいるんだよ…」
「これ見てわかんない?お見舞いだよ、お・み・ま・い☆」
そいつは右手にぶら下げたビニール袋を見せびらかすように言った。
☆をつけるな、気色悪い。
「そこじゃねーよ、俺はヤツに頼んだはずなのに…」
「あぁ、ヤツね。急に熱でたから代わりにあたしがきてやった。感謝しな」
カカカと白い歯を見せて笑う。
そいつは部屋の明かりをつけると、俺のベッド脇にどかりと腰掛けた。
俺とそう変わらない長身に、はっきりとした目鼻立ち。
アーモンド形の大きな瞳は好奇心に揺れ、綺麗な弧を描いた唇は化粧っ気もないというのに湿っている。
なんだかいつもとは違う雰囲気が俺の警戒心を加速させていった。
「俺よりヤツを見舞ってやるほうが先なんじゃないか?」
「あぁ、腹に一発鉄拳呉れてやったら直ったよ。お前も試す?」
また大げさな手振りで笑った。
肩まで伸びたセミロングの黒髪、女だと意識させないサバサバした性格からこいつとは早十年来の付き合いとなっている。
中学の時は一緒に授業を抜けて校舎裏でタバコを蒸かし、高校の時は取ったばかりの免許で長距離ツーリングに出かけた。
今思えば、俺の記憶にはいつもこいつがいた。豪快な性格に、まっすぐな心。
そういう心地よさが、俺たちの関係をここまで続けてきたのかもしれない。
やべぇ、そんなことを思っていたら急に気恥ずかしくなった。
「帰れ、暴力女」
「ふふふ、病人はおとなしく、ね・て・な!」
ボフッっと、わき腹に一発。軽い一撃だったが、俺は思わず咳き込んだ。
「ゴホッ、ゴホッ…うぅ…」
軽く睨み付けてやるが、こいつはわずかに眉を動かしただけで気に留めない。
「ところでさ、何食いたい?」
気づけばこいつは台所まで移動し、ビニール袋の中身を広げていた。
玉子に葱、豚肉、林檎…多種多様な食材を並べ、吟味するように眺めている。
行商でも始めるつもりか?お前に食材は似合わないぞ。
「まぁその様子じゃあ、お粥ぐらいしか食えそうもないな…」
一度俺に視線を這わせ、目を線にして笑った。
いつもなら嫌な予感しかしないニヤニヤ笑いだが、なぜか今日に限って不気味なほど落ち着く。
何でだ?
「はっ…お前が料理で人の食えるものを作れるはずが…」
・
・
・
わが目を疑った。
ちょうど十五分後、小さな丸テーブルにはお粥というには立派過ぎる代物が輝きを放ちつつ鎮座していた。
なんつーか、米、光ってる。とてもインスタントの白米で作ったとは思えない。
「やっぱりお前の家、炊飯器とかないんだもんなぁ…普段何食ってるの?霞?」
「仙人か!!ちゃんと食ってたよ…彼女がいたときはな」
俺は程よい食感の米と、抜群の舌触りを楽しみつつ、しんみりとつぶやいた。
正直こいつがここまでやれるとは思ってなかった。
中学の時の調理実習では炭しか作れなかったのに…
「……彼女…か…」
「あぁ、それより見直したぜ。お前が料理できるなんてな!!これならちゃんと嫁の貰い手がいるぞ」
俺がこいつに持っていた印象は、男モンのライダースとエンジニアを履いてアメリカンを転がしてるっていうものだった。
でも、俺が蓮華を置くと同時に薬と水を差し出すこいつの指先は…
細くて白い、女の指だった。
「どうした?…なんか変だぞ、お前」
「ん?あぁ…メシ食ったら体温上がったみたいだ。それより、美味かった。ありがとな」
そう言って肩を軽くたたく。
ダボダボの服越しに想像していた固さとは違う、細くて華奢な…
「ホントに変だぞ、お前?寝たほうがいいんじゃねぇ?」
肩を掴んだまま固まった俺を訝しげに覗きこみ、シーツをかけてくれる。
そのまま慣れた手つきで冷えたお絞りを俺の額に乗せて歯を見せて笑った後、こいつは部屋の掃除を始めた。
・
・
・
・
「じゃあ、あたしは帰るから〜病人様はおとなしくおネムの時間だよ」
半ば男屋敷と化していた俺の部屋に清潔感と統一性をもたらした後、俺の顔を覗き込んでそう言った。
熱でぼーっとしているためか、視界がぼやけて俺一人取り残されたような感覚に襲われる。
「あ…」
自分でも情けないほど細い声。あわてて口をふさぐ。
「どうした?」
「なんでも、ねえ…」
気恥ずかしさのため、布団を鼻まで持ち上げて寝返りを打つ。
なぜだかわからないが、頬が熱を持ってこいつと視線を交わせない。
―――どうしたよ、俺?
「帰れ」
後ろで影が動く。
どうやら俺の背中までやってきたようだ。
早く帰ってくれ。
「そういえば…」
「何だ?」
「アンタの彼女って、どこか遠くに行ってるんだっけ?」
「華の都に美術留学中だ。あと半年は帰ってこない」
「ふぅん…♪」
背中を向けているため、表情はわからない。
しかし、こいつの声はいつになく弾んでいる。
これは、新しい玩具を見つけたときの声色だ。
ここまでわかってしまう自分が情けなくて恥ずかしくて、俺は布団の中で体を丸めた。
「半年、会ってないのかぁ…」
言うな、思い出す。
食欲が満たされると、別の欲望が沸いてくるから。
一人の布団、腕を伸ばしてもぬくもりはない。
俺…
一人だ。
「な、なんだよ…」
背中に布団越しでこいつの手が触れる。
女にしては大きい、でも、温かい。
ひどく落ち着いて、ひどく懐かしい。
「いやねぇ…あたしがここに来たのはもうひとつ理由があってさぁ…♪」
きっと俺の反応をみて楽しんでいる。
絶対ニヤけて俺のことを…
「知ってた?」
「なにがだ?」
「わたしがあんたのこと好きだってこと」
―――――――――はぁ?
「――――――は」
心の言葉を口に乗せる前に、布団の上にのしかかられる。
「…ずっと、まってたんだよねぇ…この機会を♪」
背中に当たる柔らかな感触、触れた部分から溶け堕ちそうなほど熱い体温。
体が感じるぬくもりは、確かに…
「ちょ、まて、冗談はやめろ!!俺は病人だぞ!!それに重いし、もっと労われよ!!」
「い・や」
耳にかかる息は甘く、冷えた心を芯から痺れさせるような官能。
俺の背中で形を変える柔らかな肉感、押し当てられる細い腰…
全部俺の知らないこいつの姿。
頭を振ってショートする思考を追い出そうとする。
しかし、俺が長い間失っていたぬくもりが、体温が、邪魔をした。
「お前、いい加減に!!」
体を返してこいつを布団から追い出し、怒鳴りつけようとして―――――――
「んぐっ…」
唇が、重なった。
「お、お前!!…」
語尾は更に深い口付けによって消えてしまう。湿った吐息に痺れるほど甘い感触。
どうしちまったんだ?こいつも、俺も?…
俺はどうして抵抗しない?どうして探るような舌先に答えてしまう?
どうして…胸板でつぶれる細いからだと、折れそうなくらい華奢な肩を…
突き飛ばせない?
「今日は泊まっていくことにするよ」
「誰に断って…っ!!」
奥、口腔まで蹂躙される。小さな舌先は必死に俺の中を駆け巡り、たっぷりと唾液を塗りつけた。
「頼む、止めよう…俺とお前の関係はこんなんじゃないはずだ。いつも笑って一緒にいられる関係。
それが正しい形だろう?違うか?それに、俺は…」
「…本当に、それでわたしが満足してたと思う?本当に、悪友っていう立場で満足してたと思う?
あんたの隣に女の子がいて、それで笑顔でいたと思う?」
銀の糸が橋となって俺とこいつの舌先を結ぶ。部屋を照らす僅かな照明のなかでもわかる。
こいつの瞳が、ありえないほど潤んで、ありえないほど熱く滾っていることに。
「……」
何も言うことができない。こいつの瞳を見た瞬間にわかってしまった。
どれだけ自分の気持ちを偽って、俺との関係を築いていたことに。
「本当に気づいてなかったの?わたしの本当の気持ちに。まぁ、あんたは鈍感だから、仕方ないか。
それに、あんたの前では必死に押さえつけてたから。気味悪いくらい女の情欲に燃える“あたし”の心を」
「……」
「ふふふ…ただの友達だと思ってた男女がしおらしくなって引いちゃった?でもね……“わたし”はあんたのこと友達なんて思ったこと一度もないよ。
ずっと、ずっと見てたんだから。あんたを一人の“男”として“女”のわたしが。浅ましくて汚濁よりも下劣な気持ちで、あんたのこと見てたんだから…」
俺の手首を押さえつけ、これでもかというほど豊満な胸を押し付けてくる。
胸板の形に押しつぶされ、柔らかに変形する質感。下品なほど大きな音を立てて交わる舌先。
そんなことをどこか他人事のようにして、俺はこいつの温もりに溺れていた。
これは彼女に対する裏切り、頭の中では何度も繰り返される。
でも、ひょっとしたら彼女は俺なんかより絵のほうが大事で、他に男でも作って楽しんでいるのではないか?
などという雑念まで生まれ始める。
自分でこんなことをされておいて、なんて汚い男なんだ…と罵っても止まらない。
きっと今まで何度も胸の深い部分で思っていたことだからだろうか?
そう考えていると、死ぬほど自分が恥ずかしい。
「それにさ…いっぱい汗かいたほうが治りが早くなるって言うじゃないか」
ふざけるな、いや、おねがいだ…
やめてくれ…
「俺は…しないからな…」
見つめ返すこいつの顔。
今まで気づかなかったのがバカらしいくらい整っている。
勝手に黒いと思っていた肌も、アホみたいに白い。
筋肉でがちがちだと思っていた腕も、腰も、俺のことをせせら笑うくらい華奢で柔らかい。
あぁ。
こいつ、女だ。
バカバカしいくらいに女だ。
どうして今まで、気づかなかったのだろう…?
「そんなの関係ないね…襲うのは、“わたし”なんだからっ!!」
理性の箍が外れる。
閉じた瞼の奥で、彼女が寂しそうに俯いた。
・
・
・
・
・
・
やった。
やってしまった。
いや、正確には…成功したというのが正しいだろうか。
彼女が留学したと聞いてから半年、ずっと伺っていた機会が遂に訪れた。
ずっと、ずーっと昔から…
高く積み上げるようにしてきたあいつへの想いが、爆発するようにあふれ出した。
あいつがあたしのことを女としてみていないと気づいたとき以来、何年も押し殺してきた女としての“わたし”
きっと覗かれたら自殺するしかないと思うくらい、黒くてキタナイ女としての情念。
あいつの“女”になれないならせめて友達でいようと思って、ずっと男として振舞ってきた。
あいつのことをみて潤みそうになる瞳を、どうしようもないくらい熱くなる下半身を、身が切れるほどの忍耐で抑えつけた。
でも耐え切れるはず、ないよ。
だって、体はこんなにもあいつを求めていたし、あいつの隣に違う女がいるだけで胸が発火するくらい打ち震えたんだから。
どうして、あたしじゃないの?
どうして、あたしを女としてみてくれないの?
どうして、そんな女がいいの?
あたしだって、本当は、もっと女らしくなれるのに。
あたしだって、本当は、あんたのこと女として愛せるのに。
正直あいつの彼女が留学したと聞いて、嬉しいと同時にとてつもなく腹が立った。
大成するとも知れないちっぽけな夢とあいつを天秤にかけて、尚且つあの女は両方を手に入れようとしていた。
あいつの“友達”としての立場を手に入れるために、わたしは一番大切な気持ちを切り捨てたのに…
目の前が真っ赤になって、拳が割れそうなほど握り締めた。
ずるいよ、両方なんて…
ずるい、ずるい…
絶対に、認められない。
絶対に、許さない。
だからわたしは、あいつを襲った。
直前まで平静を装って、なるべく内に潜む気持ちを悟られないように。
でも我慢できるわけないよね。
ずっと、ずっと思い続けてきたんだから。
死ぬくらい好きで、殺されたいくらい愛してるあいつを前にして、思わず心のうちを吐き出してしまった。
胸なんてないと思ってただろうけど、実は大きいんだよ。
いっつもダボダボのジーンズ履いて誤魔化してたけど、脚だってその辺のモデルに負けないくらい細い。
大食いを装ってたけど、体系維持のために、ホントにがんばったんだから…
だから遠慮しないで貪っていいんだよ。
この体は、全部あんたのために作ってきたんだから。
ううん、生まれてからずっと、あんたのために、あんただけのために生きてきたんだから。
ははは…♪
元・彼女さん。
もうあいつのことは忘れて、せいぜい美術で大成してください。
貴女が切り捨てた大事な大事な彼は、わたしが責任もって一生添い遂げますから。
毎日毎日体を重ねて、まだ収まらないわたしの深い、深い、気持ちで塗り替えてあげるから…
貴女のものだった彼を…
―――――――わたし色に。
ついカッっとなってやってしまった。
反省はしている。
ちなみに後半もあります。
長くて非常に申し訳ない。
俺の言いたいことは一言だけだ
マジGJ
後半wktk
GJすぎww
OKOK!!
こういうシチュもまたいい
もちろん書かない、いや書けない とか無しな
元彼女さんの逆襲はまだ?
>全裸に剥かれて店の軒先に吊るされても文句は言えない
ここで興奮した
・・・ごめん台無しだな
>>474 続きもうできてるので安心を。
ってか、オチがアレなんでユルい乗りでおねがいww
後半は十時ごろに投下します。
ktkr!!!GJすぎるぜ!
>>477 okok、早速読ませてもらったよ
家来て姉をファックしていいぞ
さて、なんというか。混乱してる。
電波受信のスキルしかない自分が書いた。ものが、こんな、大作になるとは予想だにしなかっ、た。
もちろん自分は書かない、じゃなくて書けアップョロポー
さて10時迄長いな
ちょw
俺がノリで書いてしまったあのまるごと辞書変換脳内補完がこんな見事な作品になるとはw
それも俺の妄想文も取り入れてもらってるし。
リレーというか委託でこのクオリティスゴスw
483 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/21(火) 20:38:56 ID:cQWjru5I
>482 これが職人のすばらしさだよ。
投下しますよ
もうこの町に来てから、一ヶ月が経った。半竜ということで迫害されてきたあたし達は
当然手に職があるという訳がなく、しかしお金がなくては生活も出来ないので何でも屋を
やっている。店の名前『極楽日記』というのは、クラウンが付けたものだ。
極楽鳥のように全てを包み込むように、と言っていた。
言葉の示す通りに、この店は種族別に分かれた三つの集落の丁度中心になっている場所
に建っているのを使わせてもらっている。そのお陰か殆んど同じ割合で依頼人が来るし、
それぞれの様々な文化を見ることも出来ている。今までそんな余裕も無かったので知らな
かったが、ここに落ち着いたことで、伝聞以外でそれぞれの生活特徴を知った。それだけ
ではない、殆んど例外的に魔物の娘を置いているので全ての種族がここに居ることになる。
最初はどうなるかと思ったけれどチャクムが言った通りタックムは本当に頭が良いらしく、
すぐに人に化ける術を覚えて普通に過ごしている。二人の正体が知れると面倒なので店番
には出せないものの、それでも一生懸命働いてくれている。チャクムがたまに失敗をする
もののタックムはそれをしっかりとフォローしているので、こうして呑気にカウンターに
座っていられるのだ。
良いことばかりだ。
ただ、不満がないこともない。チャクムとタックムは店に置いて貰っているという立場
なのに、不必要なくらいにクラウンにべたべたとまとわり着いて回っている。命の恩人、
という理由て言い訳してくるが、だったら尚更敬意を払って線引きをしてほしいと思う。
それだけじゃない、客の殆んどが女であることも苛々の原因の一つだ。女の力では大変だ
と言ってくるが、黙って旦那や兄弟にでも手伝ってもらえば良いと思う。クラウンは仕事
だと言うし、そもそもそれが生活費になっているから仕方のないことだとは思うけれども、
だからといって他の女のところに行くのは嫌なのだ。
他にも不満があるが、それはあまり言いたくない。
溜息を吐いて甘茶をすすり、干し菓子をかじる。貧乏な旅の途中では滅多に味わうこと
が出来なかった甘い味が口の中に広がり、とても幸せな気分になってくる。日頃の不満が
消える、数少ない時間だ。珍しく暇だということもあり、このまま時が止まってしまえば
良いとさえ思えてくる。後は、クラウンさえ居れば完璧だ。今日も仕事だが依頼は簡単な
ものだし、竜害について調べている図書館も今日は定休日の筈なので、じきに帰ってくる
だろう。早く帰ってきてほしい、と思いながら扉を睨む。
数秒。
視線を送り続けるが、それがどうしようもなく間抜けな行為に思えてきたので止めた。
だが再び目を干し菓子に向けたところで扉に付けている鈴が鳴り、慌ててそちらに視線を
向け直した。もしかしたら、もうクラウンが帰ってきたのかもしれない。
期待は外れた。
視界に入るのは初めて見る顔の二人の女性、正確に言えば女性と幼女の組み合わせだ。
「初めまして、貴方がここの店長さんですか?」
女性が、笑みを向けてくる。
「あ、いや。あたしは違います。店長は今仕事で出ていますので、用件があったらあたし
から伝えておきます。急ぎでないのでしたら待ちますか? もうすぐ帰ると思いますが」
「いやいや、良いんじゃ。ちょっと見に来ただけだからのう」
幼女が言った。
だったらさっさと帰れ、と思った。決して口にはしないし顔にも出さないが、女の客は
正直居るだけで腹が立ってくる。東の島国では嫌な客には塩を撒けと言うらしいが、まだ
生温いと思う。どうせなら岩塩で頭をかち割ってやろう、そんな穏便でない考えが脳裏を
よぎった。東の国でも最初はそうだったに違いない。
「本当に、変わってませんのね」
「そうじゃのう、あいつが居た頃を思い出す」
あたしの内心とは正反対に、二人は穏やかな目をして店内を眺めている。
「そういえば、お土産を持ってきましたの」
「遠慮せずに受け取ってくれ」
手渡されたものは鳥籠、中には極楽鳥が入っていた。あたしは久し振りに見たそれに、
一瞬目を奪われてしまった。何度見ても綺麗だと思う。
極楽鳥の一番の特徴は嘴と左右の風切り羽、尻尾と両眼だ。それは無限大の色を持って
いると言われ、見る角度によって様々に色が変わってくる。極楽を見てきたとされるこの
鳥の先祖は、その美しさを伝える為にこうした色になったという。この店の名前を付けた
理由も、そうした伝説にあやかったものだ。
「美味そうじゃろう?」
幼女の発言に、思わず耳を疑った。
「止めて下さいまし。貴方が言うと、冗談に聞こえませんわ」
やはり冗談だったのだろう、幼女は悪どい笑みを浮かべながら笑い声を漏らした。
それを見て、どこか既視感を覚えた。ごく最近、しかも頻繁に見ているような気がして
ならず、記憶を必死に辿る。しかし脳が邪魔をしているのか、なかなか思い出せない。
「あ、申し遅れました。私の名前はマルスティ、ユマの父です」
「儂はキルマ、クリヤの母じゃ」
様々な意味で驚いた。
てっきり女性だと思っていたこの人が実は男だったり、母だというのに外見が幼女の姿
だったり、意見を言いたいところは沢山ある。それが顔に出てしまっていたのか、二人は
おかしそうに声を漏らした。悪い人達ではないと思うが、何とも掴みどころがない。
「誤解させたみたいですみませんね。私は早くに妻を亡くしてしまって、父と母を兼ねて
頑張ってきたもので。何故かここ数年はあまり口を聞いてくれなくなりましたが」
両親が居ないあたしにはよく分からないけれど、確かに少し嫌かもしれない。父がカマ
野郎だったら、それは会話も減ってくるだろう。あたしから見ればクラウンがそういった
立場になるのだろうか。クラウンがそうなった姿を想像し、途端に嫌な気分になった。
「ほれ、だから昔に女装は止めろと言ったじゃろうが。このお嬢さんも複雑な顔をしとる」
クリヤの母であるからには絶対にあたしよりも二回りは年上であることは分かっている
けれど、外見が幼女である人にお嬢さんと言われると複雑な気分になる。守護役の親だと
いうことは先代の守護役、今は集落の長である筈なのに、こんなふざけた人達だとは思い
たくなかった。それでもこの町は平和なのだから、不思議だと思う。
あたしは一気に脱力して、二人を睨んだ。
「帰って下さい」
「噂通り、物怖じしない娘だのう」
「あ、一つ依頼を思い付きましたわ」
軽く手を打ち、こちらを輝いた瞳で見つめてくる。
「私達の娘のことなのですが」
「嫌です」
「言う前からですの!?」
あいつら絡みのことは、正直嫌だ。嫌いではないのだけれども、店に度々やってきては
クラウンにちょっかいを出したり、店内だというのに喧嘩をしたりと問題ばかりを起こす
のだ。それが暮らしていく中で、一番の不満だ。思い出したくなかったことを思い出し、
あたしは溜息を吐いた。今日は平和だったというのに、何故居ないところでもこんな気分
にならなければいけないのだろうか。
「まぁ、話だけでも聞いとくれ。こいつは変態じゃが、馬鹿ではない」
知性のある変態ということだろうか、一番厄介だ。
「私達の娘は、普段は喧嘩ばかりなのです」
「知ってます」
勝手に喋りだしたので、取り敢えず合いの手を入れた。
「ユマもクリヤちゃんも昔から気が強くて、ことあるごとに衝突していたんです。それが
決定的になったのは、あの娘達が七つの頃でした」
「懐かしいのう。ブチ切れたクリヤが思わず竜化をしての、ユマに襲いかかったんじゃ」
「しかしユマもユマで、当時覚えたてだった光剣でクリヤちゃんをしばき倒してしまって」
「うむ。峰打ちで本当に良かった」
随分と過激な子供の喧嘩もあったものだ。
しかしそれをあたしに聞かせて、一体どうしろと言うのだろうか。
「それで、是非二人を仲良しにしてほしいのです」
「儂からも頼む」
頼まれても、これは無理なのではないかと思う。最近知ったことだが、二人はもう20歳
にもなるらしい。小さい頃から続き7歳に決定的になったらしい溝は、つい一ヶ月程前に
知り合ったばかりのあたし達にはどうすることも出来ないだろう。十数年も続いたものを
綺麗に流そうとするならば、それはもう奇跡にでも頼りにするしかないと思う。あの二人
が相手なのならば、それは尚更のことだ。
「すいません、それは……」
「クラウン、居るかの?」
無理です、と言う前に店の入口が開いた。入ってくるのは褐色の肌を大胆にも露出した
竜の娘、話の渦中の人であるクリヤだった。手には菓子が入った袋があり、機嫌良さそう
に開いた口からは並んでいる牙が見える。
「クラウンは今、仕事で居ないわよ。さっさと荷物を置いて帰りなさい」
言ったところで気が付き、キルマさんの方を向いた。いつものように言ってしまったが
不味いのではないだろうか。聞くところによると、親は子供を悪く扱われると気分が悪く
なるらしい、それはどんなにふざけた人でも変わらないという。あたしもクラウンをそれ
に当てはめて考えれば、結果は同じものだった。
しかしキルマさんは笑みのまま、特にそんな様子はない。
「気にせんでも良い、寧ろ今の非はこの馬鹿娘にある。それよりもさっきの依頼じゃが」
「だから、それは……」
「クラウン、居ますの?」
今度も、無理ですと言えなかった。先程と同じパターンで店に入ってきたユマがあたし
の言葉を阻止したからだ。手に持っているのはお茶の葉が入った包み、ここまで良い匂い
が漂ってくる。クリヤのお菓子と組み合わせれば、さぞ良いことになるだろう。
だからユマを睨み、
「クラウンは今、仕事で居ないわよ。さっさと荷物を置いて帰りなさい」
「ササ、お主さっき儂にしたことと同じ行動だのう」
クリヤが何か言ってくるが、気にしない。
「それで、さっきの依頼じゃがの」
これからの展開も予想がついている。しかし諦めてはならないと、あたしは溜息を吐き
ながらもキルマさんとマルスティさんを見た。
「ですから、それは……」
「ただいま」
予想通り入口を開けたクラウンに、あたしは鳥籠を投げつけた。極楽鳥にはかなり迷惑
だったかもしれないけれども、このお土産があって良かったと思った。
今回はこれで終わりです
修羅場成分が少なめの予定ですが、生温い目で見て下さい
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
+. (0゚∪ ∪ +
と__)__) +
∧_∧
( ゚д゚ )
( ∪ ∪
と__)__)
では、続き行きます。
作者バレるかもww
・
・
・
・
・
あの手紙を受け取ってから二ヶ月。
彼からの返事はない。
季節は本格的に冬になり、外を一人で歩くには寒すぎる。
手紙を読んでから、封印したはずの彼への思いは堰を切ったようにあふれ出していた。
そして気づく。
こんなにも、彼のこと好きだったということに。
あれほど輝いていた毎日もどこか色あせ、留学の目的である勉強にもほとんど身が入らなくなっていた。
思うことは、一つ。
朝起きて、思う。
夜お風呂に浸かり、一人で夕食を胃袋に納め、小さなベッドに埋まるたび―――――
彼のぬくもりが欲しい…
それだけ。
気づけば涙を落としている。
なんて、傲慢な涙か。
自分で切り捨てておいて、何の連絡もよこさない彼に苛立ちさえ感じている。
待っててくれるんでしょ?
わたしのこと好きなんでしょ?愛してるんでしょ?
だったら、不安にさせないでよ。
手紙、送りなさいよ…!
こっちに、遊びに来なさいよ…!!!!
気温の低さとは違う寒気に、胸が萎んでいく。
パジャマの上から心臓を握り締め、愚かな感情を打ち消すように体を丸める。
サムイ―――――アイタイ――――――
アイシテル…
想いは彼に届かない。
しかし絶対に届かないと思った私の気持ちは、手紙となってやってきた。
嬉しい。
始めはそう思った。
でも…彼が絶対に使わない可愛らしい手紙、丸っこい文字、そして何より私を地獄に突き落とした―――――
俺たち
結婚しました
わたしたち
の文字。
次に我を取り戻したのは、その手紙をぐちゃぐちゃに引き裂いて、小さな手荷物一つで成田に降り立ったときだった。
向こうよりは多少暖かい。
でも、胸の奥が凍てつくほど鋭く、燃えるほど、妬けている…
半ば亡霊のような足取りで、彼のアパートへ向かう。
タクシーのバックミラーで自分の顔を見る。
般若。
瞬時に背けた。
流れ行く町並み。
あと少しで彼のところへたどり着く。
窓に映る私はやはり…
―――――――修羅。
ぶすぶすと鉛が灼熱の温度に溶けていく。
じーっとりと、私の胸を焦がして、焼き尽くすように流れていく。
涙は、枯れた。
いや、燃え尽きて灰になった。
待っているっていったくせに待ってるっていったくせに待っているっていったくせに待ってるっていったくせに
待っているっていったくせに待ってるっていったくせに待っているっていったくせに待ってるっていったくせに
待っているっていったくせに待ってるっていったくせに待っているっていったくせに待ってるっていったくせに
クラクラするくらいの憎悪。
私のこと愛してるんでしょ?私のこと愛してるんでしょ?私のこと愛してるんでしょ?私のこと愛してるんでしょ?
私のこと愛してるんでしょ?私のこと愛してるんでしょ?私のこと愛してるんでしょ?私のこと愛してるんでしょ?
私のこと愛してるんでしょ?私のこと愛してるんでしょ?私のこと愛してるんでしょ?私のこと愛してるんでしょ?
身が捩じ切れそうなほどの嫉妬。
ガタン!!!バタン!!!!
破らんとする勢いで彼の部屋の扉を開け放つ。
気に喰わない新しい表札はぐしゃぐしゃに握りつぶして踏みつけた。
暗い、部屋。
奥から響いてくるのは、鈍い男の声と、快楽に溺れた女の嬌声。
誰よ?
誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ
誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ誰よ―――――――
「――――ねぇ、その女、誰?」
明かりをつけ、溶け合うように抱き合った一組の男女を見据える。
驚愕に見開かれた男の顔。
どうして、お前が…?そう告げている。
知るか、そんなこと。
それより…
「―――ねぇ、誰なの、その女?」
こっちのほうがたいせつ。
「待っててくれるって、言ったじゃない。気にしないで行って来いって、言ったじゃない。
それなのに、どうして、そんなのと、抱き合ってるのかなぁ?」
自分でも驚くくらいに低い声。
仕方ないよ、だって、彼と抱き合いながら私のほうを見ているメスの顔が…
殺したいくらい愉悦に歪んでいるんだから――――
「お前、なんで、絵の勉強は?…」
「こんなの送りつけられたら、誰だって戻ってくるよ。うん。誰だって」
ぱらぱら…ととっくに白くなって氷と見まがうほど冷たい拳を開く。
木っ端微塵に引き裂かれたピンクの便箋、鮮血のように零れた。
「あははははは♪見てくれたの?その手紙。じゃあわたしたちのこと祝福しに来てくれたの?わざわざ?
うれしいわぁ…“わたしの彼”の元カノさんが優しい人でぇ〜」
視界が明滅。
気づけば彼の上に跨って浅ましく腰を振っていた泥棒猫の顔を張っていた。
「この…泥棒猫!!!!!!!!どうやって彼を誑かしたの?????」
「……そんなに怖い顔しないでよ。顔、般若みたいだよ?それより、痛いなぁ〜怖い怖い女の人にはたかれてこんなに真っ赤になっちゃった…
ねぇ、優しく撫でてキスして…」
足元から這い上がって虫唾が走るほどの猫なで声。
■したい……■して、野犬の餌にしたい。
「なんなのよ…いったい!!!!その女―――――――まさか!!!!」
■す勢いで薄汚い泥棒猫の顔を見ていると、記憶の中の一つと見事に一致した。
見覚えがある、その姿。
記憶のそいつとは大分違うけど、その顔、髪型…そして…
吐き気を催すくらい愚劣な目つきで私だけの彼を見つめる盛りのついたケモノみたいな瞳…
あはは、やっぱり。
そうかぁ…
やっぱり…
「あんただったのね…気の置けない友達を装って彼に近づいて、魔女みたいに彼を誑かして…
■しておけばよかった―――――――蝿より浅ましい泥棒猫…また彼に色目使ってる…」
引きつる顔筋を抑えるように頬を引っかく。
伸びた爪が薄い肌を引き裂いて生ぬるい液体が零れてるけど、どうでもいい。
そんなことより、先にこのメス猫を■すのが先だ。
「元はといえば、アンタが悪いんだよ。こいつを放ってどっか飛び出しちゃうから。最初にこいつを見捨てたのはアンタなんだよ!!!」
バチン!!!
目の前で星が弾ける。
殴られた。
直感的そう思い、返す手の甲で殴り返した。
ガツン!!
「あぁ…痛いよぉ…殴られた、わたしは張っただけなのに、怖い怖いメス犬さんに殴られちゃった。
頭撫で撫でして、慰めてぇ〜♪」
「■■■■!!!!!!」
気づけば馬乗りになり、忌々しいくらい指どおりのいい黒髪を引きちぎる。
鼻の奥が熱い、唇が焼けそうなくらいひりひりする。
口の奥で何かが折れた。
でも、知らない…
そんなことよりなにより、この泥棒猫を、泥棒猫を…
――――――血祭りにしたい。
「死んで、死んでよ!!!彼は私のものなんだから!!!離れても、ずーっと私だけのものなんだからぁ!!!」
「自分で見捨てておいて何いってるのかなぁ〜この狂犬は。どこのどの口で、そんな図々しいこと言えるんだか!!
始めにこいつの魅力に気がついたのは、“わたし”なのに!!!こいつを手に入れるために、全部犠牲にしてきたのに!!!」
「うるさいうるさいうるさい!私のいない隙に、どんな手を使ったのよ!!!この■■以下のクズ!!!」
彼に聞かれたら思わず口を切り裂きたくくらいの罵詈雑言が、次々と飛び出す。
そのたび殴り合い、視界を真っ赤にしながらつかみ合う。
「死んじゃえ!!死んじゃえ!!」
やっとのことでソイツの首に手を伸ばす。
私よりもだいぶ背が大きいから、苦労した。
ほんっと、そんな巨木みたいな体で彼をどうするつもりなのかしら?
アンタが乗ったらつぶれちゃうでしょ?大事な彼が。
ぎりぎりと指先に力を込めていく。驚くくらい白い肌に、朱が滲む。
あははは…このまま、このままだよぉ…そうすれば―――――
「やめろ!!!!」
―――――――あれ?
何故か私の体は宙を舞っている。
「―――げほっ!!!」
硬い床に叩きつけられて肺が空気を押し出している。
あれ…?
あれれ…?
「俺はこいつを選んだんだ…お前は、俺より絵の方を選んだんだろう?だったらいまさら戻ってきて心をかき乱さないでくれよ!!」
どうして、私が、彼に、叱られてるのか?
などと考えていると沸々と冷えたはずの彼への怒りが胎動する。
元はといえば、アンタが悪いんでしょう?
待ってるって言ったんだから、そんな猫にだまされないでずっと私のことだけを思ってオナニーでもしてなさいよ。
それでも我慢できなかったら、飛行機のチケット代くらいケチらないでこっちに来なさいよ!!
「どうして私が怒られるの?私は悪くない!!だって、約束したでしょ?待ってるって?嘘だったの?
ねぇ?答えてよ!!」
掠れに掠れて声とも言えないような怨念。
もう、自分でもなんだか、わからない。
誰が悪いとか、誰が原因だとか…
「あはははははははははははは!!!!!!!!!!もういい!!!どうでもいい!!!全部どうでもいい!!!」
眼球が滲んで黒い涙が溢れ出す。
あはは。
本当に、全部、何もかも、どうでもいいよ。
夢とか、絵とか、全部…
結局、何もかも悪いのは―――――――
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突然留学した彼女が帰国して、幼馴染のあいつとの修羅場を繰り広げて一年。
あの場は何とか収まった。
今にも刃物が飛び出しそうな雰囲気であったが、持ちうるすべての力を使って収拾した。
正直自分を褒めてやりたいが、結局あの関係の中心にいたのは俺、自業自得だろうか。
和解したあいつと彼女は時々二人で会っているらしい。
それも俺とあいつの結婚について話し合っているだろか…
にわかに信じがたいが、最近は絵画から彫刻だか造型だとかに転向した彼女のモデルも勤めているらしい。
仲がいいのは結構なことだが、結局面と彼女に謝れなかった俺は胸にしこりを抱えながらも
彼女の初個展のインヴィテーションカードを握り締めてとあるビルの前に立っていた。
謝るには絶好の機会。
そんな愚かしい算用をしながら受付を済ましていると、奥から彼女がやってきた。
細身のパンツスーツを着こなし、花が咲いたような笑顔をして。
素直に綺麗だ。まるで輝くような存在感。思わず息を呑んでしまった。
「ありがとう、きてくれたのね」
「すごい人気だよな…転向してからたった一年だろ?」
そういうと、彼女は口に手をあてて上品に笑った。
「ふふ、こんなの最初だけよ」
「…それはそうと、“あいつ”はどうしたんだ?来てないのか?」
そう。
気がかりなのはあいつのこと。彼女が個展に向けた制作の山場に差し掛かって以来、モデルを勤めていたあいつと急に連絡が取れなくなった。
毎日しつこいくらい電話をかけてきたり、家に押しかけてきたのに…
「あぁ、彼女ね…ちゃんと“ある”わ」
ある?疲れてるのか?まぁ、ちゃんといるならそれでいいけど。
「それよりも、見せたい作品があるの」
なるほど、あいつをモデルにした作品か。
あいつもきっとそこにいるんだろう。報道陣とかに囲まれて大変そうだな。
ちゃんと受け答えできてれば良いけど。
・
・
・
暫く歩くと、何故か作品群が並ぶスペースと離れた楽屋?のようなところに案内される。
なんか妙な匂いがするが、きっと作品に使う素材のものだろう。
この際無視する。
背丈ほどのカーテンをくぐり、照明が落ちた小さな部屋に明かりが灯ると、そこには一つの像があった。
見た瞬間にわかる、間違いなく“あいつ”の像。
「驚いた?よくできてるしょ?」
素直に驚く。
まるで生きてそこに“いる”かのような存在感。
圧倒的な迫力に全身が総毛立つ。
空気を通して肌に伝わる臨場感。細い腰と豊満なバストから伝わる躍動感。
間違いなく…
「凄いね、生きているみたいだ」
漏れた言葉、暫く沈黙が降りる。
すると、俺の隣に並んだ彼女は――――
「違うわ、これはね、死んでいるみたいって言うのよ」
大輪の花のような笑顔で、奇妙なことを言う。
訝った俺は近づいてその像を舐るように凝視した。
“ ぜんぶ あなたが わるいのよ”
『Alles wegen Ihnen』
と銘打たれた作品…
肌の木目まで細かに表現された像…
――――石膏に、産毛が浮いていた。
ネタを提供してくれた皆さん、ありがとう。
お願いだからモノを投げないでくださいww
ちなみにドイツ語は適当です。
正統派ぽくて凄くいいね〜
面白かったです。
>>504 godjob!!
リアルタイムで良い物見せてもらいました・・・
ところで作者さんの名前なんだろ・・・気になる
GJ!
どうやってあの場を収めたのかとか
山場に差し掛かるまでよく殺されなかったなとか
それまでは表面上は仲良くやってたんだなとか
どう殺してどう石膏にしたのかとか
考えるととてもおそろしいです
>>504 GJです!こういうプロットから派生した作品というのも趣があっていいですね。
あと、作者さんのバレバレ具合にも萌えるw
石膏に埋められる。に似ている
韓国ホラーの『ボイス』を思い出した
ちゃんと嫉妬ものだったし
瑪羅門の家族思い出した
久しぶりにプロットとのコラボレーションキター!!
用意された極上の食材を存分に使いこなして作られた至高の料理!!
そんな印象を受けました
GJでございました
では私も投下イかせて頂きます
<div align="center">+ + + +<div align="left">
「クリス……、クリス……」
全身を包帯に巻かれベッドに横たわるクリスの手を握りながら私はうわごとのように呟いていた。
あの時魔物娘を斬り殺したあと、直ぐにリオに頼みありったけの回復魔法をクリスに掛けてもらった。
だが流れ出た血は魔法では補えず、折れた骨や傷ついた内臓などは魔法でも回復しきれず、
大急ぎで近くの町に連れ帰った。
頭蓋骨を始めとした全身の骨折。 出血多量。 筋肉組織の炎症及び断裂。
溶解液による火傷のような炎症。
常人どころか並みの、いや歴戦の戦士でも死んでておかしくない。
むしろ生きてるのが不思議なくらい。 しかも未だ予断を許さない。
このまま意識が戻らなければ最悪の事態を覚悟せねばならない。
――それが今のクリスの状態だった。
(お願い。 死なないで……)
自分の無力さが恨めしい。 未だ目を覚まさないクリスに何もして上げられない自分が……。
只祈るしか出来ない自分が……。
勿論出来る限りの看病はした。 でも医師でも看護士でもない自分に出来る事などたかが知れてる。
だから結局私に残されたのは祈ることしか出来なかったから……。
(――神様。 どうかクリスの命を助けてあげてください。 私から……クリスを奪わないで下さい)
私は始めて神様に祈っていた。
――それから数日。 クリスの意識は未だ戻らない。
「セツナ……」
私は声のした方を振り返る。
「リオ……」
そこには心配そうに顔を曇らせたリオがいた。
「あなた、また食事をとらなかったんですか……」
「…………」
「クリスのことが心配なのは分かりますが、ですがあなたまで倒れてしまっては……、
頬だってこんなに痩せこけて……」
そう、クリスが倒れてからと言うもの心配で食事が喉を通らないのだ。
どうしても気になって……。
「ううっ……、ぐすっ、ひぐっ。 ねぇリオ……。 助かるよね?
クリスは……死んだりしないよね?」
私はリオに縋るように問いかける。 瞳からはまた涙がぽろぽろ零れ始めてた。
「私……悔しいよ。 勇者だ何だと言われもてはやされても、
大切な妹分が生死の淵を彷徨ってる時に何も出来ないなんて……!」
「セツナ……。 あまり自分を責めないで下さい。
確かに予断は許せない未だ危険な状況です。 でもかろうじて命を繋いでるのもまた事実なんです。
分かりますか? あなたがあの時モンスターを倒してくれたお陰なんです。
アルビオンファングだったから……、あなたが勇者だからこそクリスを救い出せたんです!」
――そう、あの時目の前であのモンスター娘は私達を嘲笑うかのように
クリスに止どめを刺そうとしてた。
とても一足飛びには詰められない距離。
どう考えても私の刃が届くよりもモンスターの止どめの一撃がクリスの命を奪う方が早い。
そんな絶望的状況下で私はアルビオンファングを振りぬいた。
届けと願ったのか、それとも届くと言う確信が在ったのか――。 今となっては分からない。
只一つ言えた確かな事。 あの時私の頭の中は只クリスを助けたい――その一心だけだった。
其の願いに応えるようにアルビオンファングは今までに無い輝きを放ち、そして其の輝きは、
光は刃となり届かないはずの離れた敵を斬り裂いた。
それは今思い出せばアルビオンファングの覚醒だったのかも。
クリスを助けたいと言う思いが引き出した真の力だったのかも。
だけど――。
「でも……! でも若しこのままクリスが目を覚まさなかったら……!」
幾らそんな力手に入ったって大切な人を失くしちゃったら……!
どんな力だって護るべき大切な人がいなければ意味が無いじゃない……!
「クリス……。 クリスぅ……」
「大丈夫です! 信じましょう。 今まで幾多の死線を共に潜り抜けてきたじゃ有りませんか。
今回もきっと大丈夫ですよ」
「ありがとう。 リオ……」
――それから更に数日後。
「う……ん……」
「クリス!! 目が、目が覚めたの?!」
「姉……さん?」
クリスはうっすらと瞳を開けながら私を見て小さく声を洩らした。
……目を覚ましてくれた。 助……かったんだ。
安堵の気持が瞳から涙を溢れさせる。
「クリス……。 わ、私……、私……」
言葉が出てこない。 代わりに涙だけがとめどなく溢れ出してくる……。
そんな私を見てクリスは静かに口を開く。
「ゴメンね……。 ボクのせいで心配掛けさせちゃって……」
「違う! クリスは何も悪くなんか無い!! 私が……、私がもっと早く駆けつけられたら……!
そうしたらアンタにこんな大怪我させずに済んだのに……! 私が不甲斐無いばっかりに……!」
私の言葉にクリスは気遣うように微笑みを浮かべ首を振る。
「違うよ姉さん……。 ボクが今こうして生きてるってことは、
姉さんがアイツをやっつけてくれたからでしょ? ありがとう。
やっぱ姉さんは凄いや」
「そんな……、そんな事……」
「それより姉さんこそ顔色悪いよ……? ちゃんとご飯食べてる?」
「クリス……」
このコったら自分の体がボロボロで物凄く痛いはずなのに……、それなのに私なんかの……。
私はそっとクリスの髪を撫でながら口を開く。
「私なら大丈夫よ。 だから……、だからアンタは自分の体を治す事だけを考えなさい。 ね?」
「ありがとう。 姉さん」
一旦ココまで
残りはまた近いうちに
ツイスター、投下します
518 :
ツイスター:2006/11/22(水) 00:28:22 ID:tVxkBPhG
今日は、珍しく太郎と一子が並んで登校していた。
というよりも、話があるという一子が太郎を連れ出したのだった。
太郎は、あからさまにうれしそうな顔を隠そうともしない。それも、当然だった。
今朝には消えてしまうはずだった次子が、変わらぬ様子で台所にいたのだから。
それは、一ヶ月前からまったく変わらない朝の光景だった。
なぜ、新月の晩が明けたのに消えなかったのか、その理由は次子にも分からないらしい。
たしかにその晩には、このままでは自分は消えてしまうだろうという予感があったというのだが。
「愛の奇跡かもね」
次子は冗談めかしていったが、本当にそうかもしれないと太郎は柄にもなく思った。
神様が、太郎と次子を不憫に思って奇跡を起こしてくれたのかもしれない。
神だろうが、悪魔だろうが、感謝をささげたかった。
理由なんかはどうでもいい。ともかく、次子がそこにいて笑顔を見せてくれている。
それ以上、望むものはなかった。
抱きしめる。
「よかった、よかった」
「お味噌汁、煮立っちゃうよ」
「いいから、このままでいさせてくれ」
しばらくそのまま抱きしめていると、昨晩のことが思い出された。
暗闇の中の情事。燃えるように熱い肌。その下に潜んでいた、淫らな生き物。
太郎は、顔を赤くして離れた。次子が、不思議そうに首をかしげる。
きっと、もう次子を純粋に妹としてだけ見ることはできない。
それは、単に一度抱いてしまったからという既成事実だけによるのではない。
こうして次子が消えずにいる以上、あれを一晩だけの思い出にすることなどできそうになかった。
次子を抱きたい。太郎は、切にそう思った。
一子もまた、次子が消えずにいるに驚いていた。
ただ、太郎のように喜びを露にする様子はなかった。あいまいな笑みを浮かべていた。
それはきっと、一子の素直でない性格によるのだろう、内心は自分と同じく喜びにあふれているのだろうと、太郎は思っていた。
「話ってなんだよ?」
横で、難しい顔をして歩いている一子に尋ねる。
「次子のこと。当たり前でしょ」
「ま、そりゃそうか。なんにせよ、よかった、本当」
いかにも幸せそうにそうつぶやく太郎に、一子はいらだつ。
「そりゃ、よかったわよ。でも、どうすんのよ、これから」
太郎は、一子のとげのある言葉に顔をしかめる。
「どうするって」
「いつまでも家に置いておくわけにもいかないでしょうが。次子は他人なんだよ」
一子のいうことが理解できない。
「おいおい、次子はもう家族みたいなもんだろうが。お前だって、まるで双子みたいに」
「違うわよ!」
太郎の様子に苛立ちが限界に達したのか、一子が怒鳴った。
519 :
ツイスター:2006/11/22(水) 00:28:56 ID:tVxkBPhG
太郎の様子に苛立ちが限界に達したのか、一子が怒鳴った。
「次子は家族じゃないし、わたしの双子の妹でもない。だいたい、人間ですらないでしょうが」
「そりゃあ。だけどお前だって仲良くやってたじゃないか。次子にもなつかれて」
「それは、一ヶ月だって分かってたから!かわいそうだと思ったから!ずっと置いておくことなんてできないに決まってるでしょ!だいたい、お父さんとお母さんが帰ってきたらどうすんのよ」
「そんときはそんときだよ。親父もお袋も当分帰ってこないんだから、対策を練る時間はあるさ。安心しろ」
「そういうことをいってんじゃない!!」
一子がとうとうきれた。
「次子は、あんたの妹じゃないんだよ、分かってんの?お兄ちゃんお兄ちゃんってなつかれてるうちに、脳みそやられちゃったわけ?馬鹿じゃないの?いい加減、頭冷やしなさいよ!」
それだけ言い捨てて、一子は走っていってしまった。太郎は、それを呆然と見送る。
こんな反応をされるとは思ってもみなかった。一子も一緒に喜んでくれるものだと勝手に思っていた。
一子と次子とまるで姉妹のように見えていたのは、表面上のことに過ぎなかったのだろうか。
そう思いたくはなかった。そこには確かに、情があったはずだと思う。
きっと今は予想外のことに混乱しているのだろう、一子の方こそ頭を冷やすべきなのだろう、そう太郎は結論付けた。
520 :
ツイスター:2006/11/22(水) 00:29:54 ID:tVxkBPhG
「兄妹喧嘩とは感心せんな。兄と妹は常に仲むつまじくあるべきだ」
いつからいたのか、山鹿が太郎の背中に声をかけた。
「何かあったのか。最近、一子ちゃんも角がとれてきたという話だったが」
山鹿に事情を話した。次子が今朝になっても消えていなかったこと、それに対する一子の反応が予想外だったこと。
それを聞くと、山鹿は眉をひそめた。
「次子が消えていない?それは本当か」
「ああ、理由、分かるか?」
山鹿は、腕を組むと考え込んだ。やがて、毎度のようにずれてもいないめがねを直しながらいった。
「分からん。『妹召還呪法』には新月が明けた朝に消えるとあっただけだからな」
山鹿のめがねが光を反射した。
「簸川、お前、次子に何かしたか?」
どきりとする。しかし、山鹿に、次子を抱いたことを告白するのはためらわれた。あの妹研の連中と同じ穴の狢だと思われるのはいやだった。
それに、山鹿の太郎に対する良識家だという評価を裏切るような気がしていやだった。山鹿の信頼を失いたくはなかった。
「何かって、何だ」
だから、ごまかす。
「いや、いい。まあ簸川だからな。それに、何をしたから消えなかったかなんて因果関係が分かるわけじゃない。何せ、初めてのことだからな」
それ以上、追求されなかったことにほっとする。
太郎と山鹿は、そのまま通学路を歩き始めた。しばらくして、山鹿がつぶやいた。
「紀長谷雄、かな」
521 :
ツイスター:2006/11/22(水) 00:30:47 ID:tVxkBPhG
「なんだそりゃ」
「平安時代の貴族だ。そいつは双六の名人でな。双六といっても当時のはバックギャモンみたいな、賭け事なんだが。ともかく、長谷雄はある日、怪しい男から双六の勝負を挑まれるんだ。朱雀門の上でな。
そいつは掛け金として、絶世の美女を差し出すんだ。長谷雄もスケベだから、全財産を賭けて勝負を受けてしまう。それでまあ、苦戦しながらも見事に勝利し、その美女をもらうわけだ。
もちろん、長谷雄はすぐにでも抱きたいと思う。だが、怪しい男が言うんだ。百日の間は女に絶対に手を出すな、手を出せば女を失ってしまうぞ、とな。長谷雄も、最初のうちは我慢するんだが、スケベだからな。結局80日目に抱いてしまった。
すると、女はたちまち溶けて消えてしまった。実は、怪しい男は鬼で、美女はそいつがいくつもの死体から作り上げたものだったんだ。百日たてば本当の人間になれたのに、残念だったね長谷雄君、そういい残して鬼は去ってしまったとさ。チャンチャン」
さすが、古今の妹譚を求めて『古事記』から『加奈』まであらゆるメディアを猟歩する山鹿だけあって、無駄な知識にはことかかない。
「それなら、逆だろ」
太郎が思わず口に出していた。
「そうだ。お前は長谷雄とは逆に、手を出さなかったおかげで、妹を手に入れたというわけだ。まあ、ただの戯言だ。妹召還はそんな鬼道とは違う。気にするな」
太郎がいいかけたことはそうではなかった。
長谷雄は抱いたことで女を失い、太郎は抱いたことで次子を得た。それで逆だといいたかったのだ。
「まあ、俺も調べてみる。悪いがもうしばらく面倒みてやってくれ。もしかしたら、これから突然消えてしまうのかもしれんしな」
太郎は、それを聞いて山鹿に詰め寄った。
「おい!どういうことだ。もうあいつは消えずに済むんじゃないのか!」
「だから、調べて見なければ分からんと」
山鹿は、詰め寄った太郎から一歩はなれると、皮肉めいた表情で太郎を見た。
「最初のときとずいぶん変わったな。まるで妹を心配する兄みたいだぞ。いや、それ以上か?」
しかし、表情をまじめなものに戻して付け加えた。
「だが、忘れるなよ。次子は所詮妄想の産物なんだ。お前にとって本当の妹といえるのは一子ちゃんだけなんだからな」
太郎はうなづく。しかし、考えていることといえば次子のことだけだった。
再び歩き始めてから、太郎が思い出したようにいった。
「なあ、さっきの話さあ、そいつが100日我慢できてたらどうなったんだろうなあ」
「まあ、どちらにせよいい結果にはならなかっただろうな」
山鹿のその言葉に、足を止めた。
「古今東西、人造人間譚なんてそんなもんだ。お前だって『フランケンシュタイン』くらいしってるだろう?まあ、所詮は虚構の話だがな」
そういって、山鹿が笑った。
以上、「新しい朝が来た、希望の朝か?」でした。
イザナミ(妹にして妻)に萌える男、山鹿。
テラGJ!
リアルタイムで初めて読めたwwww
一子の本性が徐々に見えてきましたな・・
リアルタイムに更新キターー
作者さまGJ!!
先の展開にwktkして待ってます
なんというか
山鹿の透徹とした信念と、鋼のようなオタキズムに惚れてしまいそうだ
やばい一子やバイw
なんか一子と次子がほのぼのムードだったからどうなるんだろと思ってたけど
これはよさそうな展開になってきましたよwww
作者さんGJ
ミステリ(?)チックな作品にはこのタイプの解説キャラがよく映える。
山鹿なら修羅場SSスレのベストオブサブキャラを狙えそう。
あとはお約束だが
「いあ!いあ!」
これだけやっときたかった。新月だし。
ついすたの作者様は筆の早さもさることながら、うまい話の展開から抜けるエロ描写
まで実に抜かりがないですね。 前作も同様、ただの素人じゃない気がします。
そしてそれが楽しみながらもその才能に思わず嫉妬しそうな自分…(# ゚Д゚) ムッキー
>>522 GJ!!
次は一子の兄に対する本音の暴露かな?、とwktk!!
一子死亡フラグか?
531 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 02:22:49 ID:ek4HLNsd
半竜、ネタもの、白き牙、ツイスターと今日は豊作でつね。
それぞれ個性があって楽しいです。GJとしかいえない
一子も首がツイスター?
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
一子が取って代わられたかと脅えつつもそうならなかった事に安堵
懐疑を抱くリアクションに意表を突かれつつも確かに納得
相変らず先が読めない展開にwktkしてますGJ
ところで今投下しても人いるのかな?
一子の活躍に期待! 伊勢の怨みを晴らすのだ
>>533 さすがにいないんじゃない?
いるんでしょうか
<div align="center">+ + + +<div align="left">
クリスが目を覚ましてから数日が流れ時間と共に其の傷も少しずつ癒えていた。
そんなある日の事クリスの病室のドアがそっと叩く音が響く。
「どうぞ」
ドアをノックする音にクリスは応えた。
「クリス、体の具合は如何です?」
ドアを開けて入ってきたのはリオだった。
「うん。 御陰様で大分良いよ」
答えてクリスは身を起こそうとする。
「ああ、寝たままでいいです。 未だ怪我も癒えてないんですから。
そうですか。 順調に快方に向かってるようで何よりです。
ところで何です? 改まって二人きりで話がしたいだなんて」
そう、今部屋にいるのはクリスとリオの二人だけ。
クリスが二人っきりで話がしたいとリオに頼んで今の状況にいたってる。
「うん……。 リオにいさん。 今回殺され掛けて改めて感じたんです。
ボクらのこの戦いは何時命を落としてもおかしくない死と隣り合わせの危険な旅なんだ、って」
そんなクリスの言葉にリオは微笑んで応える。
「何を弱気な事を言ってるんです」
「うん。 勿論ボクは死ぬつもりなんて無いよ。 でもね、幾ら死にたくないと望んでも、
それでもどうにもならない時ってのは本当にどうしようもないんです。
だからどんな時も悔いを残さず今をめい一杯生きたいと思うんだ。
それはね、何もボクだけに限った事じゃないんです。
だからね、リオにいさん……」
そう言うとクリスは真っ直ぐな瞳でリオを見つめた。
「リオにいさんにも悔いが残らないように生きて欲しいんだ。 解かるよね? ボクの言いたいこと」
クリスの其の言葉にリオは言葉に詰まったように黙りこくる。
言いたい事が分かるから。 そう――コレットとの婚約のこと。
そしてその婚約故にセツナへの恋慕の想いを押し殺してる事を指してるのだと。
「リオにいさんの言いたい事もわかります。 確かに約束は大事でしょう。
あの女……コレットの両親に対する恩義も有るでしょう。
でもね、一番大事なのはリオにいさんの気持。たった一度の、それも死と隣り合わせの人生なんです。
だからね、悔いの無い人生を送って欲しいんです。
本当に心から想う女性と人生を歩んで欲しいんです」
そう言ったクリスの口調はとても穏やかなもの。
かっての様に感情を爆発させ問い詰めるようなものではない静かな口調。
「クリス……」
「確かにリオにいさんとは姉さんと付き合って欲しい、それはボクの望みでもあります。
それこそが二人にとってもボクにとっても幸せな理想だと信じてるから。
でもね……、あくまでも最後に決めるのはリオにいさん自身。
よく考えて答えを出してね。 誰かの――約束だとか、世話になった恩義だとか……、
それよりも何よりも、リオにいさん自身の為に」
クリスは言い終わると瞼を閉じた。
そして瞼を開き静かな眼差しを向け口を開く。
「リオにいさん、そろそろ眠くなってきたんでいいかな?」
「あ、はいクリスも未だ病み上がりの身ですものね。 じっくり休んで治してください。
おやすみなさい」
「おやすみ。 リオにいさん」
――それから数日間。 リオは一人篭って考え続けた。
自分の気持と向かい合い問い続けた。
リオは瞼を閉じた。 そして思い描く。
婚約者であり、そして幼馴染の少女――コレットの姿を。
物心がついた頃から最も自分の側にいた幼馴染。 何でも話せる気心の知れた仲。
其の距離は家族と呼んでも差し支えの無いほどの近い存在。
親近感もある。 親しみの情もある。
だから婚約を切り出されたときも抵抗感も無く自然に受け入れられた。
だが、女性として意識した事は無かった。
そう。 リオにとってまるで妹のような――。
おそらくコレットが結婚を、婚約を言い出さねば決して自分からは言い出さなかっただろう。
コレットがリオ以外の誰かと結婚すると言われても何の抵抗感も疑問も感じなかっただろう。
きっと笑って祝福して上げただろう。
――そういう存在なのだ。
リオは瞼を開き、そして一つ深呼吸をし再び閉じる。
そして思い描くは勇者の少女――セツナの姿。
ある日突如現れた異国の――いや、異世界の少女。
今まで共に冒険をする中見続けてきた彼女の色々な表情が次々と浮かんでくる。
共に強敵を打ち倒した時や困難を乗り越えた時喜びを表し向けてくれた笑顔。
その笑顔にどれだけ報われただろう。
乗り越えた時だけじゃない。 困難に挫けそうな時や辛い時だっていつも其の笑顔で励まされた。
自分やクリスが其の身に大怪我を負った時などに流れ落ちる涙。
其の涙に込められた優しさがどれだけ自分の心を癒し楽にしてくれただろうか。
そうした一つ一つを思い起こすたびに胸が熱くなる。 それは今まで感じた事の無い感情――。
初めリオは其の感情に面には出さずとも戸惑いを感じていた。
だが今なら理解できる。
幼馴染のコレットに感じてた"好き"とは全く別の感情だと。
リオは思い描く。
自分とセツナとコレットを取り巻く状況を。
コレットとの婚約。
コレットの両親に対する恩義。
セツナが背負う救世の勇者としての使命。
セツナが使命の為に命がけで戦ってくれてると言う恩義。
それらを全て取り払い改めて自分の心に問う。
それでも尚残るセツナへの想い。
そして気付く。 そうか、これが"恋"なんだと。
何時の間に自分はこんなにもセツナを好きになってたんだろう。
若しかしたら……、いや多分そうだ。 初めて出会ったときから惹かれてた。
気付いてしまえばもう止められない。
セツナと一緒にいたい。
世界の命運を背負うにはあまりに小さなその両肩。
其の肩の重荷を少しでも減らしてあげたい。
共に背負って少しでも其の重さを軽くしてあげたい。
そしてそれはセツナを勇者としてではなく――、
一人の女性として助けてあげたいと言う想い。
共にこの冒険を歩み支えてあげたい。
この冒険が終わった後も離れたくない。
何時までも一緒にいたい。
願わくば人生の最後の瞬間まで……。
その為には……。 そう、その為には――。
「ごめん……コレット」
リオはそう呟き立ち上がる。
澄んだアクアマリンの瞳からは一筋の雫が流れ落ちた。
To be continued...
ジャーン!ジャーン!ここに居るぞ!!!
GJ、ついに泥棒猫勇者がリオの心を掴んだ事でこれからのコレットの動向に注目
深夜まで乙です。
リオ…普通のスレなら一人に決めたらそれでエンディング
だけど、悲しいけどここ修羅場スレなのよね
太郎はイイ感じで人の気持ちの分からないやつだな。
でも高校生なんて、だいたいこんなもんだよね。
ここでクリスが本当の気持ちに目覚めるという展開かと思ったら
正統的展開か・・・う〜ん(*^ー゚)b グッジョブ!!
>>540 >だけど、悲しいけどここ修羅場スレなのよね
吹いた!wwwwww
修羅場…
たまに名前の出てくるいたり先輩って誰?
>>544 おいおい・・
このスレでいたり先輩を知らないとは新参者ですね
>>544 修羅場スレは初めてか?力を抜けよ
とりあえずまとめの「疾走」を読むんだ
>>544 いたり先輩はおいらの新妻だ。
きみは知らなくてもよろしい。
ついでに俺のオススメは
山本くんとお姉さん
合鍵
沃野
もし、神様がいるのなら……
妹(わたし)は実兄(あなた)を愛してる←超オススメ
の完結作品かな
すでに忘れ去っているので話題が出ない
>>549 うわぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ
>>549 GJ!
いたり先輩テラオソロシス((( ;゚∀゚)))ガクガクブルブルハァハァハァハァ
>>548 一時たりとも忘れて居るわけもなく、常に心の中に在り続けているぜ!外伝や番外編も渇望中……
特に山本くんなんかはほとんどの住人が待ち続けているんじゃないか?もう冬だし
>>549 早速読んできた、いたり先輩(((((((( ;*゚Д゚)))))))ガクガクハァハァブルブルハァハァガタ
>>549 こういう結末は大好き。
歪んだ愛に一生縛られ続けるなんて素で羨ましい。
>>549 いたり先輩は俺の精神安定剤です!!
私も/wR0eG5/sc氏のように
ブログで自分のこれまでの作品をまとめて収録するべきかな
ブログってどうやって小説投稿するのかはさっぱりとわからないので
頑張ってヘルプでも読みます
556 :
544:2006/11/22(水) 20:11:53 ID:SVhBC0Qh
優柔や妹兄や山本くんは何度も読み返してるくらい好きだー。
過去作品を持ち出して「あれは良かったのぅ……」とか書き込むと
「ちぇっ、まーた古参の年寄りが『昔は良かった症候群』に罹ってるよ」
みたいな印象を与えかねないので控えているだけ。
椿ちゃんや楓やキモ姉の魅力について語り出すと止まらなくなりそうだし。
再読に耐えるSSがたくさんあるってのもこのスレの魅力だね。
これも管理人様のおかげですね
いつも感謝していますよ
>>553 え、え゛? 待ってる人いたの…? あわあわ
そういえば2.5から投げっぱなしだったですね。
ごめんね、もうすこしまっててね。腰が落ち着くまでもうちょっとだけかかるです。
つい先日、スレに帰ってきたばかりなので……。
まずはいたり先輩で一発抜いてからかんがえる
>>559 作者さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
wktkしながら舞ってますね!
神が帰ってきた!!!
_, ._
( ゚ Д゚) キタ…………
( つ旦O
と_)_)
_, ._
( ゚ Д゚) ガシャ
( つ O. __
と_)_) (__()、;.o:。
゚*・:.。
( ゚ Д゚ )
( つ O. __
と_)_) (__()、;.o:。
゚*・:.。
神がいる神が・・・・
>>562 こっち見んなって!
>>559 キター!!!ついに待ちに待った山本くん復活の時がwww
この時がくるのをどれだけの人が待ち望んだことか。
今から期待して待ってますねw
疾走 別エンド怖すぎる。
ちびったw
GJ!
あれか?エースケくんはシアワセにはなれない運命なのかwwwwww
シアワセになれないのではなくシアワセにきづいていないだけなんだよ
568 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 23:04:58 ID:FSZL7OQd
567がいいこと言った。
ところでしゅらばとるマダーーーですか?
いたり先輩よりも有華のほうが好きなおれは少数派?
有華にはいたり先輩をぬっ殺すくらいの力はあるはずだ
疾走は残り2つのエンドも待っておりますとも
>>559 山本くんの作者様のことをどれだけ待ち望んだことか!
思わず今までの想いを長文独白しそうになったけど、男がやるのはキモイのでやめときます
ツイスターの代わりに変な妄想
わたしは彼を愛した。全身全霊をもって。
家族を捨て、私財のすべてを捧げ、彼に付き従って生まれた土地も離れた。
彼もまた、わたしを愛してくれている。
けれど、その愛がわたしだけに向けられることはない。
わたしと同じく彼に付き従うものすべて、いや、人類すべてに彼の愛は向けられている。
彼は、神の子だから。
その彼に、淫らな想いを抱いてしまう自分をわたしは恥じる。
もちろん、彼がわたしを女として受け入れることなどない。
でも、それはすべての女たちにも同じなのだ。
だから、わたしはただ彼の側にいられるだけでいい。
そう思っていたのに。
なぜ。
なぜ、あんな娼婦上がりの女を側に置き、あまつさえ抱いたのか。
神の子である彼が。
そして、あの女を抱きながらなぜわたしを拒んだのか。
わたしは嫉妬の炎に焼かれた。
そして、わたしは彼の忠実な僕を裏切りへと誘う。
彼はきっと殺されるだろう。磔にされて。
そうして彼はもはや、誰の手にも届かないところへ行くのだ。
その引き金を引くのはわたしなのだ。
ほら、忠実な会計係が来た。
「ねえユダ、こっちに来てくれない?」
神よ、お許しください。
いたり先輩がクリティカルヒットしてしまうようになった俺のこのスレの女性遍歴を振り返ると実に錚々たるメンツが顔を揃えることに今更気付いた、後悔はしていない。
>>559 先日帰ってきたと言うあなたに、血塗れ竜と食人姫とか鬼ごっことかうじひめっ!とかスウィッチブレイド・ナイフとかマジオススメ。
分岐があるのはいいんだけど死亡エンド一本だと萎えるのって俺だけ?
血塗れ竜とかスウィッチとか沃野とか大好きなんだけど結末が悲しくて読み返す気にならない・・・
自分で作り上げるってのはどうかな?
このスレ辺りでは嫉妬スキー相手に有効な手段だったけど。
576 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 05:26:07 ID:oUDfPVAW
>574 確かに監禁調教ENDがあればいいなと思う。
うおっ!?
暫らく来ない間に随分スレが進んだんだな…最後に会ったのはまだ14だったのに。
さて、過去ログ漁ってくるか。
ログはほぼ全部取ってるけど読んでない作品がたくさんある俺(ノ∀`)
最初は投稿される作品全部読んでたんだけど数多すぎてついて行けねーw
小恋物のこともたまには思い出してあげて下さい
俺は信じているぞ…復活の日をorz
>>574 作らないにしろ我々には妄想があるじゃないか!?
俺は作者様のクオリティの高い作品からいくらでも妄想できるぜ
投下スピードが早いので休みの日にまとめて読んでます(*´д`*)
このスレって主人公や男キャラに対する罵倒はたまにあるけど
例:ゆう君 祥ちゃん シロウ etc…
ヒロインに向かって言うのはタブーなのか?
まぁ、男キャラに対する非難や罵倒は愛情やエールの裏返しともいえたが
だってヒロインが痛ければ痛いほど燃え上がるスレだし
そういや、怪物妹を殺したアトリが許せないって住人もいたな。
>>584 白も結構殺してるのにこっちは人気あったよな。
怪物姉半殺し
アマツ半殺し(殺害?)
暗殺侍女皆殺し
・・・さすがメインヒロイン。
白みたいなヒロインまた出てこないかなあ
流さんがこれから・・・・・
アトリの場合セッちゃんを殺して、後引くようなダメージ受けてない上
ユウキを付き人として手に入れ、ファックもできて、いたれりつくせり
良い思いばっかりしやがってって感じ
反面白の場合半殺しが多いし、自身も腕を失ったりとかなりの痛手を被ってる
おまけに理不尽な権力でユウキまで取られて思わず肩入れしたくなる状況だからな
続きは脳内で補完すりゃいいじゃない
男キャラってよく考えてみればあんまり酷いことしてないよな
ゆう君は先輩を気持ちよくしてあげたし
祥ちゃんは結季の気持ちを汲んでの行動だし
士郎くんはただヘタレなだけだし
むしろ名も無いキャラをゴミのようにヌッコロすヒロインのほうが酷いと思われ
>>589 君の後ろにナイフを持った女の子はいないかい?
居たら実況するように。
投下いきます。
久しぶりの外は寒かった。
ちゃんと意識のある状態で外に出たのは実に10日以上ぶり。エルと初めて逢った日以来となる。
流れる空気は以前と同じ季節に思えず、周囲の景色は以前と同じものに見えない。
そう感じるほどの時間自分は外界と隔絶されていたのだと、智は今更のように思い知らされた。
まるで知らない場所に放り出された気分の中、唯一確かなもの。
前を歩く少女の背中を、智は何とはなしに眺める。
歩くたびに左右に揺れるポニーテールと、背をピンと立てた真っ直ぐな姿勢。
神川の末端の家の子にして、本家の一人娘である藍香の付き人を務める少女、鬼道綸音。
智にとっては、同じ学校の後輩で年下の女友達。
その彼女の助力を得て、彼は今ここにいる。
屋敷の脱出は、拍子抜けするほど簡単だった。
綸音と連れ立って、堂々と正面から出ただけ。
SPに呼び止められたが、綸音が智を一瞥して『問題ありません』と言うと簡単に引き下がってしまった。
公式には他の使用人たちと同格の地位の綸音だが、藍香と対等な立場で意思疎通が可能な唯一の存在だ。
生真面目な性格と藍香への忠誠心の強さは誰もが知るところであり、周囲の信頼も厚い。
藍香の他者とのコニュニケーション能力の低さもあり、綸音の言葉は藍香の言葉として扱われることも少なくないのだ。
智はそこまで知る由も無いが、そんなわけで、彼は屋敷の外へ出ることに成功したのだった。
「でもさ、本当に良かったのか? 綸音ちゃん、先輩の命令に背くことになるんじゃ・・・」
智は小走りで綸音に並び、その横顔を伺う。
覗き込んだ彼女の表情は、やはりというかどこか堅い。
生真面目だが穏やかな性格の彼女らしからぬ様子に、智も心配になる。
歩調を緩めることなく歩く綸音は、暫く経って一言だけ漏らした。
「このままでいいと、思えなかったからです。お嬢様にとっても、先輩にとっても」
それだけ言うと、さっさと先に行ってしまう。
いや、綸音が足を速めたのではなく智が足を止めたのだ。
(このままっていうのは・・・つまり・・・)
智が監禁状態にあること? 藍香が智のことばかり気にして学校にも行かないこと?
それとも・・・・・・・・爛れた関係にある2人のこと?
どこまでバレているのか、智は不意に空恐ろしい気持ちに駆られた。
藍香の態度を見れば、彼女が智に恋愛感情を抱いていること一目瞭然。
ベッドシーツを替えてくれる世話係のメイドには口止めを頼んでいるが、どこまで信用できるか分からない。
殆どの者は推測で、何人かは確証を持って。
使用人たちも、智と藍香が只ならぬ関係にあると察しているはずだ。
まして、智と藍香に最も近い立場に居る綸音なら尚更・・・。
(・・・下手な推測は止めよう。無意味だし、問い詰められたらその時は覚悟を決めればいい。
今、確かなのは・・・)
『このままではよくない。智にとっても、藍香にとっても』
綸音はそう言った。
今の状況が異常だと、良くないものだと思っているということだ。
そしてその状態を打破するためなら、たとえ主の命に逆らうことになっても構わない、と。
綸音は使用人というより友人だと、妹のようなものだと、いつか藍香が言っていた。
これまでは綸音の丁寧な態度と言葉遣いからピンと来ないでいたが、今はその通りなんだと思う。
仕える者として盲目的に主人の命令を聞くだけでなく、時に身を以って諌める。
それは、心ある友人の行動だ。
(きっと何とかなる。まだ俺には、頼れる仲間がいるんだ)
綸音がいれば、きっと藍香の件は解決できる。
頑張ればきっと、エルのことも千早のことも。
何とかできるはずだ。
綸音の言葉が、萎えかけていた意志に火を灯す。
表情に力を取り戻し、先を行く綸音に追いつくべく小走りで駆け出した。
そうして、歩き続けること1時間弱。
薄暗い路地を抜け、2人は少し開けた場所に出ていた。
出発前は青かった空は、今は茜色に染まっている。
人気は全くなく、緩い風の音さえうるさく響くほど。
そして、智には見覚えのある場所だった。
繁華街を繋ぐいくつもの裏路地のうち、繁華街の方向から外れたところにある空き地。
吸血のため夜な夜な街を徘徊していた智が、一休みするのに使っていた場所だ。
ここに来て、智も違和感を感じ始める。
綸音にはエルのことも千早のことも話していないが、きっと自分の家に向かっているんだろうと思っていた。
だから何も疑わず、ぼんやりと考え事などしながら綸音が進むのに任せて付き従った。
しかしこの場所は、神川の屋敷と高村家のライン上から明らかに外れる。
多少遠回りをしたとて、こんな所を通りはしない。
そもそもこの空き地は、行き止まりではないか。
「綸音ちゃん? 何でこんな場所に・・・」
空き地の真ん中で周囲を見渡していた智は、振り返って綸音に問う。
綸音は空き地の入口で足を止め、何かを思案するように目を閉じて俯いていた。
声を掛けられるとゆっくり目を開き、顔を上げて真っ直ぐに見つめてくる。
強い意思を感じさせる切れ長の双眸に射すくめられ、いたたまれないような、落ち着かない気分になった。
それが純粋な胸の高鳴りか、藍香との関係からくる後ろめたさか、智には分からない。
「高村先輩。先輩に、大切なお話があります。」
(やっぱりか)
藍香とのことを問い詰められる時が来た。
全て話してしまうべきか。しかし、部室での件の真相まで話してしまっていいものか。
藍香の今の精神状態に深く関わるし、彼女とてレイプされたことなど他人に知られたくはないだろう。
しかし自分だけで何とかできないなら、助けてもらうため誰かに事情を話す必要がある。
その相手の最たる候補としては、自分と藍香の双方に近しい綸音意外には考えられない。
どこまで話すべきか智が頭を悩ませていると、綸音が先んじて話し始めた。
「私、ずっと気になっていたことがあるんです」
「それとなく気に掛けてはいたんですが・・・。
他の者が多く居るせいで、はっきり確かめることは出来ませんでした」
「でも先輩が屋敷にいらしてからというもの、その思いはどんどん膨らんで・・・。
お嬢様と先輩のためにも、どうにかしなければと思っていました」
「だから私、ずっと高村先輩を見てました。今日のこの機会を、ずっと待ち望んでいたんです」
「こうして2人きりになるのは初めてですね。邪魔者も誰も居ない・・・。
お陰で、私は自分の考えに確信が持てました」
(・・・・・・あれ?)
何だか話の展開がおかしくないだろうか。
綸音の言う『気になっていること』は、藍香との件ではないのだろうか。
言葉と共に一歩ずつ近づいてくる綸音の顔が赤く見えるのは、おそらく夕日のせいだけではない。
昂ぶっている感情を必死に押さえ込んでいるのが分かる。普段が穏やかで物静かだから尚更だ。
(ま、まさか・・・)
一つの可能性が頭に浮かぶ。
心臓の音が急にうるさくなった。
そんなはずないと思いつつ、もしかしたらという考えも捨てきれない。
人気のない場所、夕暮れという状況も、その可能性に拍車を掛ける。
「だから・・・」
綸音が締めに入るのを察し、智は固唾を飲んで最後の言葉を待つ。
その時、智の目に空高く浮かび上がるものが映った。
それが綸音の持つ竹刀袋だと気づいた瞬間。
「こうするんです、私は」
智の懐に入り込んだ綸音の手には、剣の柄が握られており。
真っ直ぐ突き出された刀身が、智の胸を深々と貫いていた。
今回はここまで。次回は綸音視点です。
いきなり訳分からんことになってますが、次でちゃんと説明する予定です。
593に題名入れるのを忘れました。すいません。
キタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━( ゚)━━( )━━(` ) ━━(Д` ) ━━(´Д`)━━(;´Д`) ━━━ノカ?
ど…どうなるんだこれから…wkwktktk
↓以下「そっちかよ!」禁止
太郎の行動を見てて思ったんだが
伊勢とヤッた後は伊勢(とするSEX)のことしか考えてない
次子とヤッた後は次子(とするSEX)のことしか考えてない
後々のことまで考えられない主人公は多いがここまで無自覚的にSEXしか考えてない主人公は
めずらしい
欄れてお気楽な彼の思考を大自然の悠然たる獣に例えて猿太郎と呼びたい
>>597 ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
(.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 『話の流れ的に犯られるかと思ったら
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ 剣で刺されてた』
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ |
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも何をされたのかわからなかった…
,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉
続きが気になって寝れないよ(;つД`)
>>597 何の理由で刺されたかが何パターンも浮かんでくるよ……続きが気になる!
>>600 ……ゆう君を超えるじゃねぇか!?
こんなに気になるところで止めるなんて
>>597は極悪人だ!
>>600 このお猿さんっぷりは伊勢が化けて出てきそうだよな
>>597 ものすごい先が気になる。
これは藍香が知ったらオソロシスなことになりそうな悪寒。
とりあえずwktkしながら次を待ってますw
悪い子だ!まったくもって悪い子だ!!
放課後………
いつもなら学校が終わり、晴れやかな気分になるのだが、今日は当然そんなわけにはいかなかった。
空乃葉先輩……そして麻理、沙恵ちゃんのことだ。ただ、自分でも意外だったのは、麻理が自分の妹ではないという事が、一番ショックだった。
話によると、僕は洗脳されていた……もとい、今でも洗脳されているのだ。確かに、よくよく思い返してみれば、麻理との小さい頃の思い出なんてない。
でも……だとしても、僕にとっては大好きな『妹』だったのだ。………秋乃葉先輩と結婚でもすれば、『義妹』になるのか。
「ハハハ……」
あまりにも皮肉な思い付きに、自然と笑い声があがってしまった。ただただ、自分を嘲笑するような笑い声。
しかし……洗脳、か。僕は洗脳されるまえはどんな人間だったのだろう。それがまるっきり思い出せない。そう、ある種の記憶喪失みたいなモノなのだ。ただ、まったくその事に関しては気にしていなかっただけで……
本来の『僕』が覚えているのは、親しい後輩がお弁当を持ってきてくれた……それだけだった。その後輩とは多分……
「お前、水瀬海斗か?」
「はい?」
ぼーっとしているうちに、いつの間にか声を掛けられていた。ふと席の前にたっていた人物を見上げると、見たことのない男子生徒だった。
次に足下を見てみると、靴が緑……三年生だった。つまり先輩か。
「そうですけど、なにか?」
正直『彼女達』三人以外のことは何も考えたくなかった。やることはまだ山程あるのだ。他に時間をさいていられない。
「ちょっと話があるんだ、付き合え。」
「いやだ、といったらどうします?」
それを聞いた途端、ムッとした表情が表に出る。反抗的な僕の態度にカチンときたのだろう。もっとも、挨拶もなしに呼び出す人に礼儀なんて向けないが……
「だったら力づくでも連れていく。」
そういって腕の筋肉を見せるように袖をめくる。ただ、その腕に想像していたほどの筋肉がなく、細身な腕だったため、拍子抜けしてしまった。
「くくっ……力づくって……はは……」
「なに笑ってやがる!?」
「はいはい、ついていきますよ。はやく終わらせましょう。」
自分で面倒を増やすなんてのは愚の骨頂だ。オレは先輩の後についていった。
そしてついていった先は、校舎裏の焼却炉がある所だった。すでに掃除の時間も終り、生徒は………いた。僕を連れてきた生徒を含め、三人いた。
その視線には友好的なモノはなく、明らかな敵意が含まれていた。そして三人の前についたとたん、僕を連れてきた生徒が振り返り……
「秋乃葉さんを知っているな?」
「っ!」
まさにいま問題になっている人物の名前をあげられ、動揺してしまう。なんとか冷静に勤めて返事をする。
「え、ええ。美術部の先輩です。」
「ほんとにそれだけか?」
「はい……」
「にしては、仲がいいよな?」
「えぇっと……結論だけいってもらえます?」
「てめぇっ!」
「いいから落ち着けって……つまり、だ。君は秋乃葉さんとは釣り合わない。あまり親しくしないようにすることだ。さもないと……」
「?」
「怪我をすることになるぞ?」
ああ、そういうこと。これは男の嫉妬というやつか。なんというか……見苦しい。あまりにも見苦しい。
いや……この三人は、秋乃葉先輩をアイドル視しているわけだ。確かに、見た目だけなら綺麗だ。
でも……彼らは知らないのだ。彼女の本性を。狂気を越し、凶鬼にまで至った彼女を。
「ぷっ……ふふ…ははは!」
そんな三人が、まるで何も知らない操り人形のようで、笑いが込み上げてきた。先輩を遠ざけられるもんならしてみたい!
いくら突き放そうと!!どんなに逃げようと!!!彼女は追って来るんだよ!!!!だって彼女は鬼なんだから!!「あは!あははははは!!!っはははは!!」
「な、なんだこいつ……」
「むかつくやろうだな……にどと彼女に近付きたくなくなるようにしてやろうぜ。」
「だな。」
なにかをかってに相談し、近付いてくる三人。ほら、見てくださいよ、秋乃葉先輩。あなたのためにここまで必死になってる人もいるんですよ?
彼らがかわいそうじゃないですか。だから、オレなんかを見ないで、彼らに優しくしてやってくださいよ。
「ハハハ!」
「うざったいんだよ!いつまで笑ってやがる!!このっ!」
ブンッ
気付いたときには、目の前に握り拳が飛んできた。そこまでだった……僕の意識が続いていたのは…………
「っははははは!!!」
「はぁ、はぁ……」
気付けば夜空に星が輝いていた。空気が澄んでいるせいか、やたらと星が綺麗にみえる。
ぼーっと視線をさまよわせていると、蟹座が目に入った。どういうわけか、蟹座だけはすぐに見つけることができた。
なんでだろう……別に星座が好きなわけでも、小学生の時理科の成績がよかったわけでもない。
「うぅ……」
疲労のせいか、眠気が襲ってくる。校舎の隅っこだけど、別に寝ても構わないよね。家には……もう誰もいないんだ。
ごめんね、沙恵ちゃん。今だけでいいから休まして。ほんの……少しだけ………
・
・
・
・
・
・
『……ちゃん。あの星はなに?』
『うん?…えぇっとねえ、あれは多分蟹座だよ。』
『蟹座?』
『うん。あ、ここにお話がかいてあるよ。』
『しんわ、っていうやつ?』
『うん、えっと簡単に読むね……』
全能の神ゼウスには、兄妹であり、正妻の女神、ヘラがいた。
『えっ?兄妹ってけっこんできるの!?』
『これは神話。だまってきいてろよな。』
『はぁい。』
僕に言われ、シュンと黙る彼女。でも耳は僕の方に傾ける。
ゼウスはかなりの浮気性で、ヘーラーはそのことに頭を痛め、かなり嫉妬深い性格だった。
そんなある時、人間アルクメネとの間に、半神ヘラクレスが生まれた。ヘラクレスは妻を持ち、子供を授かり、幸せに暮らしていた。
しかしそんなヘラクレスを、ヘーラーは憎んでいた。夫の浮気相手との息子が、幸せにしていたからだ。そのためヘラは、ヘラクレスに狂気をとりつかせ、妻と息子を殺させてしまう。
ヘラクレスはその罪を償うため、エウリュテウス王のもとで、10の難題を成し遂げればならなかった。だが、この難題もまた、ヘーラーが入れ知恵したものだった。
この無理難題により、ヘラクレスを殺してしまおうと思ったのだ。そして二番目の難題……ヒュドラという化け物を退治するということ。
このヒュドラというのは不死身であり、さすがのヘラクレスも苦戦した。これをヘーラーは、ヘラクレスを殺すチャンスだと思い、一匹の蟹をヒュドラの元へ遣わした。
蟹はその自慢のハサミでヘラクレスの足を挟んだが、所詮はヘラクレスの敵ではなく、踏み付けられて殺されてしまう。
そんな蟹を哀れに思い、天にあげたため、蟹座ができた…………
『だってさ。蟹座の由来はいいとして……このヘーラーってやつ。なんか変だよな。そんなに浮気されて怒るんだったら、ゼウスに罰をあたえればいいのに。』
『………きっとね、彼女はゼウスのことが本当に好きだったんだよ。だから、ゼウスを傷つけたくなかった。その怒りの矛先を、第三者にむけたんだよ。』
『ふーん……でもなぁ、なっとくできないや。』
事実、ヘーラー本人は浮気をすることなく、貞操を守り通したというのは、後に知った事である。それがゼウスに対する愛情の証拠だろう。
『きっと………』
『ん?』
『きっと私も、同じ事をするだろうな。うん、彼女に憧れるなぁ。』
そう言ってなぜか、僕のほうに視線をむける。なんだかよく分からない感情で、僕はその場から立ち去った。最後に彼女の………
『たとえ、兄妹でも…………』
その言葉を耳にして………
・
・
・
・
・
「……くん!かい…くん!」
そしてその夢は、嫌なほど聞き覚えのある声によって覚まされるのであった。
鬼ごっこキタ━━━━━━(゚д゚)━━━━━━ !!!!!
海斗はかなり追い詰められてきているなあ(;゚∀゚)=3ハァハァ
ツイスター、投下します
616 :
ツイスター:2006/11/24(金) 00:07:28 ID:b+PqZkS6
うつぶせになって高く突き上げられた腰が、誘うように揺れている。扇情的な光景だ。
暗い部屋の中で月明かりを受け、尻と太ももが白く浮かび上がっている。
太ももの内側は、繰り返された愛撫にべったり濡れ、ひときわ輝いていた。
太郎は、膝をついたまま後ろからペニスを次子の中心に触れさせ、こすりつけた。
にちゃにちゃと音がする。それに合わせて、次子が腰を小刻みに揺らす。荒い息を吐いている。
挿入した。次子がくぐもった声を漏らす。シーツを噛んでいるからだ。
大声を出すわけにはいかない。激しくベッドを揺らすのも、禁物だろう。
できうる限り、静かに済ませなければならない。一子に知られるのはまずい。
ここ最近、太郎は毎晩のように次子を抱いていた。
こういうのを「溺れている」というのだろうと、太郎は思う。
比較の対象は伊勢しか知らない。それでも、次子の体が普通の女のものではないことは想像がつく。
締め付けてくる膣壁と、舐めたててくる襞。いわゆる名器というのだろう。
この細くて滑らかな腰の肌の下に、これほど複雑な機構がそなわっていることに、素直な感動を覚える。
次子が、やはりくぐもった声を上げてひときわ強く締め付けてきた。
もう我慢できない。太郎は射精した。
セックスの後にはいつも、暗い部屋の中でしばらく肌を寄せ合って睦みあう。一晩中そうしているわけにはいかなかったが。
最中には焼けた鉄ほどに熱かった次子の体は、いまではひんやりとして、太郎のほてった体を冷ましてくれる。
「ねえ、お兄ちゃん。近頃、一子ちゃんが変じゃない?」
太郎に胸に顔を寄せていた次子がいった。
新月の次の朝、一子が太郎にぶちまけた気持ちは、太郎が思っていたように一時の気の迷いなどではなかった。
次子に対する一子の態度、振る舞いは、あの朝までとは違っていた。
といっても、表面上はそのままの日常が続いていた。あからさまな敵意が次子に向けられるわけではない。
それでも、一子がどこかよそよそしいように、太郎には見えた。
朝起きれば、台所の次子におはようをいい、次子の作った朝食を食べはする。
だが、次子と簡単な会話があってもすぐに終わってしまう。食事の準備を手伝うこともなくなった。
二人で出かけることもない。もしあったとしても、かつてのように二人が腕を組むことはもうないだろう。
平穏ではあるが、冷めた日々だった。
次子の頭をなでてやった。
「少しだけ変かもな。でもまあ、また上手くやれるよ」
「うん、わたし、一子ちゃんも好きだから」
顔をあげて、次子が笑った。いじらしく思う。何とかしてやりたい。
だが、すぐさま解決策が見つかるはずもなく、またも同じような朝を迎えるだけだった
617 :
ツイスター:2006/11/24(金) 00:08:26 ID:b+PqZkS6
簸川家のそうした冷たい状況とは裏腹に、季節はすでに夏に入っていた。
朝はまだ涼しいが、昼は汗ばむほどに暑くなる。
「今日、お前の家に行っていいか」
昼飯を食べながら、山鹿がいった。二人とも昼は弁当で、たいていは妹研の部室で食べる。
妹研には、お茶からコーヒー、お茶うけまでそろっていて、弁当を食べたり昼休みをだらだらと過ごすのに都合がよかった。
「一度、次子の様子を見ておきたい」
「ああ、それはいいけど。なんか遅くないか?」
「すまん、他にも調べていることがあってな」
山鹿がお茶を一口飲んだ。
「なあ、簸川。お前、伊勢の死因を知ってるか」
次子とはまったく関係のないことを話し始めた。
「首の骨折だとは聞いてる」
「そう、直接の死因は首の骨折だ。こんな風に」
そういって、山鹿はインスタントコーヒーのビンを取ると、そのふたをひねった。
「首をひねられて殺されたらしい。なかなかできることじゃない。それでも、かなり力のある男ならやれないこともないだろう。でもな、本当にすごいのはこれからだ」
山鹿は、ビンのふたをさらに回した。ふたは次第に浮き上がり、最後には当然ビンから離れてしまう。
「こんな感じで首をぐるぐるひねって胴体からねじ切ってしまったらしいんだ。素手でだぞ」
太郎は、それを想像して、思わず吐き気を催す。伊勢は、警察で検死された後、すぐに火葬されて家に帰された。
その理由を知った。確かに、遺体をそんな状態で家に帰すわけにはいかなかっただろ。
「なあ、どうだ、こんなことできる人間いるか?いたとしても極々限られるだろう。それでも容疑者すら見つからない。つまり、そんな人間は伊勢の周りに見当たらないんだよ。そう、そんな人間はいないんだ。人間は」
「人間」を強調する山鹿を、太郎がいぶかしみ、やがて山鹿のいいたいことを察する。
思わず立ち上がっていた。いすが倒れる。山鹿の胸元に手が伸びていた。
「まあ、落ち着け。俺はまだ何もいっていない。俺だってあれの生みの親だ。そんなことは信じたくない」
山鹿が太郎を押しとどめる。
「ともかく、次子の様子を見たい。それだけだ」
618 :
ツイスター:2006/11/24(金) 00:09:44 ID:b+PqZkS6
学校が終わって太郎の家に来た山鹿がしたことといえば、本当に次子の様子を見ただけだった。
それに、消えない理由は分かるか、体に何か変化はあるか、といった簡単な質問をするだけだった。
太郎に抱かれたことは黙っているように、太郎は次子にいい含めていた。
だが、山鹿は勘がいい。太郎と次子の言動の端々からすでに気がついているのかもしれないと、太郎は思っていた。
果たして、山鹿もなんとなく気付いてはいた。とはいえ、それが問題解決の糸口になるとも思えない。
抱かれたことと、消えずにすんだことの因果関係ははっきりしない。もしそれが原因だったとしても、解決の手段に結びつくとは思えなかった。
一階にあるトイレを借りて、すっきりした山鹿を、一子が壁に背を預けて待ち伏せていた。
それまで自分の部屋にいたのか、顔を合わせたのは初めてだ。
「ああ、一子ちゃん、お邪魔してるよ」
「山鹿さん、ちょっといい?」
一子は、そういって山鹿の袖を引っ張ると、台所へ連れ込んだ。台所で、二人きりになる。といっても色っぽいことなどなにもない。
話の内容は、容易に想像できる。次子のことだろう。
「ねえ、次子を作ったのって、山鹿さんなんでしょ。いい加減、何とかして」
正確には、太郎も含む他12名が製作者ということになるが、製作指揮を取ったという意味では、確かに山鹿が作ったともいえる。
正直に、今のところ、消えなかった原因も確かなところは分からず、対処法もなく、様子を見る他ないことを話した。
「様子を見るっていつまで?わたし、もうあの子と一緒にいたくない」
ここ最近で、一子の次子への隔意は次第に強くなっていた。こんなことがあった。
一子が、以前太郎に買ってもらった白い帽子を被って出かけようとしたときだ。例の、太郎からの初めてのプレゼントだ。
その帽子がない。
それこそ、部屋をひっくり返すようにして探し回ったが、結局見つからない。一子はあきらめて帽子なしで出かけた。
しばらくして、帽子はなぜか次子の部屋で発見された。勝手に次子の部屋に飛んでいくはずもない。
問い詰めると、次子は悪びれずもせずにいった。
「だって、欲しかったの。お兄ちゃんに買ってもらったんでしょ。だから、頂戴」
そう、それは確かに「お兄ちゃんに買ってもらった」帽子だった。しかし、その「お兄ちゃん」は次子の兄ではない。一子の兄だ。
同じ顔、同じ体つきをしているが、次子は一子ではない。
その当たり前の事実を素通りして、「だから、頂戴」と続ける次子に、一子はどこか不気味なものを感じた。
一子は、次子が太郎のことを「お兄ちゃん」と慕うのは、おままごと、芝居のようなものだろうとどこかで安心していた。
だからこそ、一子も次子と擬似姉妹的な関係を持つことができたのだ。
だが、実際には次子は自分のことを太郎の本当の妹だと、しかも極めてねじれた仕方でそう思い込んでいることを知った。
そしてまた、太郎もそれに乗せられている。一子が二人から一歩身を引いている最近では、まるで恋人のように仲睦まじい。
太郎は、次子の味方だと一子は感じた。
自分の家なのに、そして自分の兄なのに、次子のせいですべてがよそよそしくなっている今の状況は、耐え難いものだった。
次子のおかげで、太郎と一子の関係が雪解けしたことは感謝してもいい。だが、もう必要ではないし、ありていにいえば邪魔だった。
次子には悪いが、一刻も早く消えて欲しい。
「早く消しちゃって!お願い」
619 :
ツイスター:2006/11/24(金) 00:10:25 ID:b+PqZkS6
「何を?」
台所の入り口から、一子と同じ声が聞こえた。二人が振り返る。
次子がいた。
「ねえ、何を消しちゃいたいの?一子ちゃん」
次子がにこにこ笑いながら、一歩前に出た。山鹿も、一子を次子の視線からさえぎるように一歩前に出る。
山鹿と次子が対峙する格好になった。にらみつける。
「何でもない。俺ももう戻る。お前も、さっさと戻れ」
「はーい、山鹿さんも早く戻ってきてね。お兄ちゃん、待ってるから」
次子は、相変わらずにこにこしたまま踵を返して台所を出て行った。
一子は、思わず安堵のため息を漏らしていた。
以上、第15話「疑惑」でした
次回予告
拳魂復活の術によって蘇った伊勢。再会を喜ぶ太郎。だが伊勢は、地獄で身に着けた毒手を振り上げて太郎に襲いかかるのだった。
「止めてくれ伊勢、俺が分からないのか?!」「このセックスモンキー!天誅!!」
次回、ツイスター「操られた伊勢」をお楽しみに(次子の声で)
一子の嫉妬分が急激に増加してきたw
そして同時に死亡フ(ry
次子VS一子がたしてどうなるのか非常に楽しみwww
作者さんGJ
山鹿のこともたまには思いだしてやってください
作者さんGJ!次子テラオソロシスww
それでも一子なら…一子ならサクッと次子を消去してくれるはずだ
次子の名器は妹研補正。
まちがいない。
しかし、今んとこ一子は猿君にミチナラヌ情を抱いてるとか
そういうふうには思えんな
……そんな見方しかできない俺はまだまだ未熟なんだろうか
一子ガンガレ超ガンガレ
そして山鹿の危険が危ないきがす
アイデンティティとしても一子はきついよな。
それにしても次子怖いな。
そして鬼ごっこ!久しぶりだったから急いでログ見返してまた展開にびびっちゃいましたw
次子オソロシス。名器の妹研補正は間違いないな
しかしそうすると怪力の妹を求めたやつがいるのかww
ktkr
太郎が次子の正体を知ったらサルから一転して不能になりそうだな。
Bloody Mary 3nd まだ?
ショ…ショックだッ! つ…次子は私の机の引き出しを勝手に開けて見ているッ
それにもう2度とあの帽子は戻らないような気がする。 壊れるまでッ!
632 :
sage:2006/11/24(金) 16:22:00 ID:LUSEM91N
>>631 一子が次子の伊勢殺しの証拠を発見した後、
追い詰められた次子に殺されそうになった一子を庇って、太郎死亡
そして一子と次子の因縁の闘いが始まるわけですねw
最近このスレを知ったばかりだが、どれもこれも先が気になる作品ばかりで困る。
633 :
632:2006/11/24(金) 16:29:57 ID:LUSEM91N
ミスって名前欄にsage入れちまったorz
もしかして、新月までに誰か殺す(生贄にする)とまたひと月命が延びる……とか?
次は一子か……南無。
投下します。
朝…か?
携帯電話の目覚ましアラーム…いや、電話の着信音で目が覚めた。
目を擦りながら携帯電話に手を伸ばす。かけてきたのは四ツ川、か…
「もしもし?…おはよう、四ツ川」
「何がおはようよ名波もうすぐお昼よそれより今日学校に出てこれない?」
朝っぱらから元気なやつだな…昼?…確かに外は明るいし…そうかもしれないな…
「聞いてるの名波?が・っ・こ・う・に・来て欲しいの!聞こえてる!」
「聞こえてる聞こえてる…学校に行けばいいのか?………なんでだ?」
「話したい事があるからに決まってるじゃない!いい1時に部室よ分かった!」
はいはい分かりました分かりました行きます行きます…二度寝しなかったらな…
あの後やはり二度寝してしまったが、何とか約束の時間には学校に着いた。
…それにしても、なんで学校なんだ?
休日でもなぜか開いている裏口、というものが存在するので校舎に入る事はできるが、
新聞部は目の敵にされているので先生はお目こぼしなどしてくれない。見つかると相当マズい事になるのだが…
裏口からこっそり侵入して、部室に向かう。…人がいないと、歩く音がずいぶん響く。
…幸い何事も無く部室に着いた。軽くノックをする。…少ししてから、カチリと鍵が開いて戸が動いた。
「ちょっと遅いわよ名波4分遅刻」
「少しくらい多目に見てくれよ。」
部室に入って再度鍵を閉める。四ツ川は自分の机に戻って…紙を手に取った。
「はい。とりあえずこれ読んで名波」
四ツ川から紙を受け取る…見覚えがある。去年…俺が一年生の時の秋頃に発行された裏新聞だ。
…学校に呼んだのはこいつのせいか。裏新聞は部室からの持ち出しは禁止になってるからな。
内容は、当時三年生だったある女子生徒の妊娠騒ぎについてだ。
派手に遊んでいるタイプではなかったので、本人は誰が父親なのか分かっていたはずなのだが、
相手については頑として口を割らなかったそうだ。その為、当時は随分といろいろな噂が飛び交ったものだ。
…ちなみに、ちゃんと出産したらしい。今でも見かけたという話をたまに聞く。
「ん…これがどうかしたのか?」
「………………………」
一通り読んでから四ツ川に尋ねるが…黙ったままだ。…?
もう一度裏新聞に目を落とす。ええと…普通科三年生のMさん(バドミントン部所属)の妊娠が先月…
…バドミントン部、所属…?
………まさか
「妊娠させたのが、吉備光だと言いたいのか?」
四ツ川を見る。…真剣な顔をして、俺を見つめている。
「記事に、可愛がられていた後輩のK君について…書いてあったと思うけど?」
バカな。自分の子供の責任を放棄した奴に花梨は恋をした、だと?
………いやまて落ち着け。冷静になれ、冷静に。可能性は無くも無いが…
「………吉備が妊娠させた証拠なんて、一つも無いはずだ。」
そう、証拠が無い。証拠が無ければ、ただの憶測に過ぎない。
「まずは証拠ありきだってこと…お前だって、それくらいの事は分かってるはずだ。」
と、四ツ川が顔を緩めた。
「…なにがおかしい」
「名波…分かってないのはあなたの方じゃない?」
四ツ川はいつもの少し得意そうな顔に戻っている。
「…どういうことだ?」
「だってそうじゃない?私は一言も吉備光が怪しいなんていって無いわよ。私はただ新聞を見せただけ。」
「………なに?」
「吉備ならありえると思って、犯人だって憶測したのは名波の方でしょ?」
……………………………
四ツ川は…憎らしいくらいニコニコしている。
「やっぱり名波は花梨ちゃんに吉備はふさわしくないと思ってるんだ〜そうじゃなきゃ疑ったりしないもんね」
………しまった…嵌められた!
「ふふふ〜もう逃げられないわよ名波観念しなさい!ガツンと告白して花梨ちゃんを取り戻すのよ!」
「…いや…別に俺が告白しなくても…俺は花梨の相手が吉備で無ければそれでいいんだよ…」
「じゃあほかにいい方法があるの花梨ちゃん吉備といい感じになってるんでしょ早く行動しないと!」
「分かった分かった、分かったから静かにしろ…先生に見つかるとマズいだろ。」
「分かったの?じゃあ決まり!それじゃあ早速準備しないとね〜」
「いや、分かったのはそうじゃなくてだな…」
数分後、俺はまた四ツ川に丸め込まれかけていた。…このままでは花梨に告白させられてしまう。
しかし…吉備の目の前で花梨に告白するのなら、悪くは無いかもしれないとも思う。
吉備が男らしく対応するなら、それでよし。はっきりした態度をとらなくても、状況は動くだろう。
むしろ問題は花梨がどう反応するかだ。
「…っていう感じでどう名波?私はこれがベストだと思うんだけど」
「全然聞いてなかったが、とりあえず却下。」
「えーなんでよ!」
賭けには違いない。しかし…俺は、吉備がどんな人間なのか確かめてみたい。
腹、括るか。
GJです!
四ツ川の本心が気になる
ただゴシップネタが欲しいだけなのか
名波のためを思ってけしかけたのか
それとも(ry
乙です。でも今回はかなり唐突な展開なような。
四ツ川と2人でバトミントン部ネタなんていったら吉備と花梨しかないわけで。
>俺は花梨の相手が吉備で無ければそれでいいんだよ…
っていう台詞も急にでてきて驚いた。今まで名波が吉備を否定したことあったっけ?
でも男二人っていう作品は珍しいのでぜひ頑張ってほしいです
>>638 GJです!!
やっぱり吉備は屑でしたね、優柔不断だから妊娠を認知しなかったのかな・・・
まあ、ここで名波が一発決めて四ツ川と花梨の修羅場か!?
>>640 >俺は花梨の相手が吉備で無ければそれでいいんだよ…
>っていう台詞も急にでてきて驚いた。今まで名波が吉備を否定したことあったっけ?
恐らく花梨が好きな相手なら吉備でなくとも誰でもいい、ということだと思われ・・・
>>640 名波は最初に吉備がヘタレだった場合を苦慮しているし
三角関係ですぐに結論を出さない吉備の態度もみてる。
今回の話でわかるように深いところでは吉備をあまり心よく思ってなかったんじゃないかなぁ。
加えて女を妊娠させたのも吉備じゃないかという疑惑もあって
勢いで口から出てしまったんじゃないか?
まぁ吉備以外の男でも本心では嫌だと思うが。
なんだか小説の登場人物の心情を勝手に想像して答えを間違えてしまった高校時代を思い出してしまった。
不安だ。
センター形式のは得意だったんだけどなぁ。
>>630のBloody Mary 3nd
なぜ誰もつっこまないんだ?
黙ってたら
>>630のためにならないぞ
644 :
642:2006/11/24(金) 19:05:42 ID:Qw5FXBzr
>>640 まぁ確かに新聞を見せられたときの反応は名波じゃなくても同じ反応をしそうなもんだな。
ここは四ツ川が名波を混乱させて無理矢理告白させるための二重トラップということで手をうたないか?
冷静に考えれば普通の反応だったんだが、実はあんたは吉備が嫌いなのよ的錯覚を与えられて乗せられる的な。
>>643 単純なタイプミスだらー。
あんま突付いちゃかわいそうだにー。
やめてやれやー。
吉備のへタレっぷりを見ているとやはり名波を応援したくなるな
では投下致します
第2話『嫉妬の炎は鉄をも溶かす』
このように転校してきた美少女らしき鷺森音羽さんは一瞬にして
全校生徒の注目を浴びると同時に彼女が主張した『天草月』という俺の名前が全校に囁かれることになっていた。
あの全校集会の後にクラスたちが俺のところに問い詰めてきた。
当然、あの鷺森音羽さんとはどういった関係なのかと聞かれて、
俺は会ったこともなければ話を交わしたこともない赤の他人だと答えると、男子生徒の半数から反感を買ってしまう。
だって、本当に顔の面識もないんだぜ。
これ以上話すこともなくても、クラス半数に問い詰められるのはごめんだ。
生まれて始めて、さっさと授業開始のチャイムが鳴ればいいのにと心の奥深くに祈った。
祈りが通じたのか、チャイムが鳴り担当教師がやってきた。
授業はテスト返しで退屈な授業だったが、今の俺は赤点や補習を気にする余裕はない。
さっきから、ズボンのポケットに隠してある携帯電話が振動し続けている。思っている以上に敵の動きは早い。
すでにその敵の名はこの作品を読んでいる読者はおわかりであろう。
俺の身を脅かす敵は、水澄虹葉と水澄紗桜である。
電話の宛先は確認していないが、俺の本能の勘が告げる。
まあ、水澄姉妹のことだ。授業中に俺が出れないことはすでに予想済みであろう。
だから、これはある一種のメッセ−ジを送っているのだ。
『月君』
『兄さん』
『今日のお昼休みは一緒に食べましょうね』
ってな。
考えるだけで身震いする事実だが、俺は苛酷な現実を受け入れよう。
ついでにこのテスト表紙も何故か赤点だ。
ちょっと泣きそうになった。
休み時間が来た。
意地でも自分の席を離れないように堅い意志を貫く。この教室から出れば、それが俺のBADENDフラグだ。
容易に誰かに話かけるのは不味いような気もするが、耳に入ってきた鷺森音羽さんの情報は今の現状を打開するのに有り難いことであった。
まず、鷺森音羽さんは2−D組に転入したこと。(俺のとこは2−A)
同学年だったのは驚きだが、彼女の人気が余所のクラスからも転校生の顔を見るためにやってくるらしい。
しかも、嫌そうな顔もせずに天使のほほ笑みを周囲に浮かべているのが好印象だったらしく密かに鷺森音羽さんファンクラブを結成するらしい。
それ以上の情報は入ってこない。ついに昼休みの時間を迎えてしまった。
今日は体力を温存しているため、昼休み中の逃走は可能だ。
追われる身に必要なお弁当を持ち、俺はチャイムが鳴ると同然に走った。
陸上選手も驚愕するスタートで俺は教室の果てからドアまで辿り着き、その勢いで開けると。
目の前にいたのは、よく見知っている人物の顔がそこにあった。
「えへへ。月君。一緒に食べようね」
「本当に今日だけだからね」
全て終わったことを悟ると俺は立ち崩れると、俺の腕を強く掴んで姉妹に連行されるように歩いて行く。
一体、どうなってしまうんだ!!
込み入った食堂で3人仲良く昼の食事を摂ることになったが、
俺は姉妹の対面する側の席を座ると二人の見えない殺気に近いオーラを感じてしまう。
「ねえ? 月君。あの鷺森音羽さんとはどういった関係かな?」
「いや、どういう関係と聞かれてもな。全然顔の面識もないって」
「ううん……。お姉ちゃんは月君が誰と付き合っても別になんの文句はないんだよ。
ただ、家族として月君が女の子に構って学業を疎かになることがあったら、家を預かる私がはっきりと言わないとダメなんだと思う」
「何を言うんだ」
「月君。その子と別れなさい」
「いや、付き合ってもいないし知り合ってもねぇよ」
「兄さん。嘘はよくないよ。あの鷺森音羽さんは可愛い女の子だよね。だからといって、不純異性交遊をしていいと思ってるの?」
「してません」
圧倒的に俺は虹葉姉と紗桜の迫力に圧されていた。
彼女たちが言う関係は男と女の関係であろう。
ただ、あんな美人な鷺森音羽さんとそんな関係になるとは想像すらできないわけであって、尋常ではない姉妹の怒りに果てしなく疑問はある。
「虹葉姉も紗桜も少し落ち着いてくれ。ここは家じゃないんだぜ」
「わかってる。わかっているんだけど、月君が他の女の子に誘惑されているかもしれないって考えるだけで不安になるんだから」
「虹葉姉と紗桜以外にバレンタインのチョコをもらっていないのにそんな心配はご無用です」
これは確かな事実だ。
この世に生を受けてから女の子にバレンタインチョコなんて物を貰った覚えはない。
毎年くれるのは家族である虹葉姉と紗桜だけである。忠生ですら義理チョコを貰っているので男として自信を失いつつある。
「それにどうして、虹葉姉も紗桜も俺の女性の対人関係にいちいちとそんなにうるさく言うんだ。二人には関係ないだろ」
「がるるるー」
「ぐるるるー」
水澄姉妹はついに交渉不可能な獣へと変化していった。
これ以上何を話しても彼女たちは脳内で都合良く変換して俺を追い詰めようという算段だ。
相変わらず、女の子という生物はよく理解できない。
俺は姉妹の殺気がこもった視線を受けつつお弁当を食べたが、味覚障害並みに食物の味を感じることはなかった。
更にお昼休みの間は解放されることなく永遠に取り調べが続くことになる。
放課後になると俺はテスト返しの点数よりも家に帰ってまでも
虹葉姉と紗桜に問い詰められることに暗澹たる気分になってしまう。
こんな日にまっすぐ家に帰る気もしないのでその辺にある商店街辺りに立ち寄って
自宅に帰る時間をできるだけ遅れて帰ることが唯一の生存方法だと思えた。
家に門限時間が定められているがこんなものを破っても俺にとっては何の支障もないし、怒られる相手は多分いないだろう。
帰る準備を支度すると俺は教室に出ようとするが、昼休みと同じ悪夢が目の前に遭った。
鷺森音羽さんらしき人物が笑顔で手を振っていた。
「あなたが天草月さん?」
「たぶん、人違いだと思います。銀河の彼方から零れ落ちてくる星の欠片並みに」
「ふふっ。嘘を言わないでください。私はずっと休み時間の間に聞き込み調査をしたんだから。
あなたがずばり私の捜していた天草月さんってことをね!!」
テンション良く鷺森音羽さんは俺に向かって指を刺すという人に対しては失礼な行為をポーズを取りながら、
まだ周囲に帰ろうとはしない生徒たちがいる前で大声で叫んでいた。
すっかりと俺は忘れていた。
機嫌の悪い姉妹の事ばかり考えていたが、問題の本質である鷺森音羽さんのことをすっきりと頭の片隅に追いやられていた。
なんて、ドジな俺。
「あのとりあえずここではゆっくりと話はできないんで、屋上に行きましょう。あそこなら誰も来ないし」
「じゃあ、行きましょうか」
多数の生徒の冷たい視線がなぜか俺に浴びられているが、気にすることなく覚悟を決めるしかないだろうな……。
屋上に辿り着くと柔らかな風が吹き、緊張した足取りで俺は鷺森音羽さんに一つの疑問を問い掛けた。
当然、朝の全校集会のことである。
「どうして、朝の全校集会ってあんなことをしたんだ?」
「全校集会って?」
「皆の前で俺のことを名指したことだよ!!」
本当にわかっているんだろうか天然ボケ少女よ。
「その前にいつになったら私のことを思い出してくれるのかな」
「いや、思い出すって。あんたと俺は今日初めて出会ったんだろう」
鷺森音羽さんは悲しそうな表情を浮かべてこっちを上目遣いで見つめてくる。
そんな表情を浮かべても、俺はあんたに思い出すモノは多分ないはずだ。
「ほらほら。昔、隣同士でよく遊んだじゃない」
「隣同士って……。まさか?」
今日の夢に出た、水澄家に引き取られた時に俺と遊んでくれたあの女の子。
(約束しようよ。月ちゃん)
面影はある。薄れてしまった記憶の奥底にあるあの女の子が俺と同じ年令ぐらいになると今のように成長しているかもしれない。
「ほ、本当に音羽なの?」
「そうだよ。月ちゃん」
ようやく、思い出してくれたことが嬉しいのか音羽は俺に抱きついてきた。
「やっと、月ちゃんに出会えたよ」
親が連帯保証人になり多額の借金を負わされて、夜逃げしてしまった時から数年。
おれたちはついに再会を果たした。
積もりに積もった話は気が付いたら夕刻を過ぎていた。
見上げた空は暗く陽は沈んでしまった。再会した音羽との会話は楽しくて、時間を過ぎるのを忘れていた。
「月ちゃんって、今は一人暮しなの?」
「いいや。引き取られた家で暮らしているよ」
「えっ? だって、月ちゃん。引き取られた先の姉妹と全然上手くゆかないって言っていたでしょう。
この地から離れてもずっと月ちゃんの家庭内のことを心配していたんだからね」
「昔は上手くいってなかったけど、今は本当の姉弟妹のように暮らしているよ」
上手くいかなかった姉妹との関係はここ数年で驚くべきに改善されている。いろいろ出来事があり家族として一歩一歩と近付いていったのだ。
「そうなんだ」
残念そうに沈んだ表情を浮かべる音羽。ここは逆の反応を見せるべきかと思うんだが、俺はあえて何も言わなかった。
「じゃあ、そろそろ遅くなってきたし。また学校でゆっくりと話しましょう」
「なんか。いっぱい昔のことを語り合っていたら遅くなってしまったな。悪かった」
「ううん。いいんです。私も久しぶりに充実な時間を過ごすことができたから」
時計を見ていると。
すでに門限時刻より2時間以上の時間が過ぎている。
帰りづらかった家の家事は今日は全て放棄させてもらっている。
まあ、虹葉姉と紗桜も子供じゃないんだから。自分たちでコンビニでお弁当を買ってくるだろう。
ただ、二人の機嫌を良くするために二人の好物のものを買っておくか。
「帰ろうか」
「はい」
音羽のマンションまで送ると俺はだるい足付きで虹葉姉と紗桜が好物をコンビニで買って帰り、
少しスーパーなどに寄って足らない食材や切れている香辛料など買って帰ると家に帰ってきたのはそれなりの時間帯になっていた。
時刻はすでに21時頃を回っているころだろうか。
学生なら別にこの時間帯に帰ってくることは珍しくなんともない。普通だ。
ただ、俺はこの時間帯に帰ってくることは滅多になく、
門限時間をとうに過ぎて帰宅するのは水澄家に引き取られてから初めてではないだろうか。
恐る恐るとドアを開けてみると玄関から廊下に続く明かりは真っ暗でリビングは豆球で薄暗い明かりを照らしている。
姉妹は自分の部屋にいるのかなとリビングに踏み込んだ瞬間。
俺は見てはいけないものを見てしまったっっ!!
というわけで次回に続きます
おいおい、生殺しかい?俺の筋肉。
悪い子がいっぱいだな・・・・
ちょwwwいいところでwwww
投下しますよ
厄介だ。
ナナミさんが入ってきたことで、一気に戦い辛くなった。サラさんの攻撃は威力が恐ろ
しいものの捌ききれない程でもなかったし、相手を殺す為の方法も大分見えてきたところ
だったのに、あたしの攻撃自体が届くことがなくなってしまった。
近付くことが出来れば、きっと次はサラさんを殺せる。
不老不死の理由は確率システムを使っているからだと思う。攻撃も超能力等の妙なもの
を使ったものではなく、確率システムに依存したものだ。軍に有罪判決を告げられたとき
に付けられた首輪が、それを物語っている。確率システムを使って壊されないように特殊
な加工をされたもので今までは厄介なものだと思っていたけれど、こうして戦っている間
はかなり心強い。首を斬られることもなければ、あの腹の立つ女みたいな悲惨な死に方を
することもないだろう。それがあたしにとって幸運だった。
正直、あれを見たときには背筋が凍りそうになった。普通の人では見ることも出来ない
ような速度だったから、青さんには首が突然消えたように見えただろう。しかし、あたし
ははっきりと見てしまった。どんな原理でやったのかは分からないけれど、恐らく今遊具
や石を飛ばしているものと同じだと思う。そんなことはどうでも良い、ただ残酷な光景が
思考の中に残っている。それ程長くなかった軍人生活でも、あれ程に残酷なものは滅多に
なかった。思い出したくないのに、忘れることすら出来ない。
何せ、首から上が強引に削り取られたのだ。
首輪が回転しながら猛烈な勢いで跳ね上がり、引っ掛かった顎の部分から、まるで彫刻
でもするように削り、消してゆく。細かく砕けた肉片や頭蓋骨の欠片は、ミキサーにでも
かけられたように撹拌され、次第にそれすらも粉々になって空中に消えていった。あんな
ものは人間のすることではない、まるで悪魔や怪物のすることだ。
だから尚更、サラさんなどに青さんを渡す訳にはいかない。もしサラさんの手に青さん
が渡ってしまったら、あんな異常者のところに行ってしまったら、きっと青さんは苦しい
日々を送ることになるだろう。あたしが想い描いているものとは正反対の、まるで地獄の
ような日々だ。愛しい人をそんな目に遭わせる訳にはいかない。
剣を持つ手に力を込め、跳躍した。
「お止め下さい!!」
ナナミさんが割って入るが、空中で方向を変えて加速する。最初は邪魔だと思った白杭
だが、こうした場合にはとても便利だ。空間に突き出たこれは足場となり、地面の二次元
的な移動から、空中を駆ける三次元的な移動が可能になる。あたし達を閉じ込めることが
目的だったのだろう、絡み合うように立っているお陰で複雑で不規則な軌道で動くことが
出来る。あたしのそれに対してサラさんは移動することも困難らしく、バランスを崩して
はいないものの、かなり遅い速度で動いている。仕留めるのも、今や時間の問題だ。
剣の先を白杭に引っ掛け、弧を描くように空中で身を回転させ、進行を防ぐように突き
出されたパイルバンカーを避ける。遠心力によって得た速度に追加するように白杭を蹴り、
更に加速する。基本はいつもの踊る動きで良い、敵を軌道の上に置いて刃を回せば勝手に
相手は斬られてくれる。今回もそれだ、軌道が阻害されないように腕を伸ばすタイミング
に気を付けてさえいれば良い。あたしの推測が正しければ、そろそろ斬れるようになって
いる筈だ。そもそもこの剣は、それを目的として作られたものだから。
『音叉剣』と仲間内で呼ばれていたこの剣は、振動を溜めておくことが出来る。音楽が
好きで、またあたしと双子であることを喜んでいた姉は、あたしとお揃いでこれを選んだ
らしい。先端が二つに分かれているので双子のようだと言ったり音叉に似ていると言った
りと、単純な外見を姉は気に入っているようだった。しかしこれの本当の使い方はあまり
気にしていないらしかった。だから、これが本来どのような残酷な武器かは知らなかった
だろう。性格が戦いに向いているらしいあたしは、逆に形の意味を熟知している。
これは、本当に音叉のようなものなのだ。だが記憶しておける振動の数は普通の音叉と
違って一つではない。柄尻に填め込まれた回路によって音は何度も記憶され、やがて複雑
な振動を持つようになる。それがこの剣の真骨頂、物体に振動を与えて様々な現象を作り
出す確率システムはこれの振動に対処しきれなくなり、剣は目標のものを何の邪魔もなく
切断することが出来るようになる。また二ヶ所を同時に切り裂くことにより、縫合が困難
な傷口を作ることが出来るのだ。戦場において応急処置が大変な傷は、驚異の一つだ。
間違いなく切断し、致命傷を与えることが出来る。
そうすれば、後はあたしの世界だ。
「お止め下さい!!」
止めるものか。
姉が歌っていたリズムで身を回し、教わった踊りの動きで移動する。
滑るように体を横に飛ばしながら半回転させ、その回転の軸足を連続で切り替えてゆく。
激しさの中に効率の良い動きが組み込まれたそれは、人が多い舞踏会のダンスのときにも
よく世話になっていた。白杭を他の客人に見立てれば、これ程簡単なことはない。本物の
客人と違い動かないそれは、容易にすり抜けることが可能だ。一度場所を記憶すれば動き
を阻害されることなく加速出来るし、ときには盾にもなってくれる。
口から溢れてくるのは姉の十八番だった歌の一つ、『歌わない雨』だ。降り頻る雨の中
に独り佇んでいる兵士が誇りと勇気を持ちながら敵を倒そうと自らを鼓舞する曲、まさに
今のあたしのような状況だ。雨は降っていないものの幾多の障害があり、それを打破して
進む様が似ているように思う。雨は歌ってくれない、只の音となって鼓膜を震わせるだけ
のものだ。だから歌おう、あたし自身が歌って道を切り開いていこう。あたしの意識とは
関係なく自然に流れるこのメロディは、きっと姉が伝えてくれるもの。
リズムに乗って更に加速し、あたしを追い掛けてくるナナミさんを振り切るように加速
してゆく。遠心力に身を任せて左右に旋回し、ときには白杭を利用して上下にすら身体を
回してゆく。歪な檻のようになっている白杭の中を移動している為、飛んでくるものは既
に石などの小さいものばかりだ。体を小さく捻るだけで避けることの出来るそれは、今と
なっては驚異ですらない。ナナミさんが厄介なせいで未だにサラさんに剣は届かないもの
の、少しずつ有利になってきているのが分かる。
そう意識した瞬間、不意に妙な高揚感が沸いてきた。
姉を生かすと決めたときの決意でもない。
他の女を全滅させようと決めたときの暗いものでもない。
ただ戦いを楽しむ、軍時代の心だ。
これは、いける。
「きゃは」
もしかして、ナナミさんも排除出来るのではないか。
「きゃはは」
「何が、おかしいのですか?」
何が?
「きゃははは」
死ね。
「ぎゃははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
青さんは、あたしが手に入れる。
負けて惨めな姿を晒す、お前らの姿がおかしいのだ。
待っててね、リサ。今、幸せが手に入るから。
今回はこれで終わりです
状況描写が分かり辛い展開が後数話続きます
出来れば我慢して見て下さい
まけないでぼくのせくさろいど
666 :
ツイスター:2006/11/25(土) 00:23:56 ID:M94J6tAc
ツイスター、投下します
667 :
ツイスター:2006/11/25(土) 00:24:35 ID:M94J6tAc
太郎にとって夏がつらいのは、軽音の部室として使っているプレハブがサウナになるからだ。
クーラーなどといった気の利いたものはない。扇風機が一台置いてあるだけだ。それも、ぬるい空気をかき回すだけの機械になる。
今はまだましだが、真夏になればとても正気ではいられないほどになる。
ところで、太郎の学校では学園祭は夏休みが終わってすぐに行われる。
当たり前のことだが、生徒には評判がよくない。夏休みの多くの時間が、その準備にとられてしまうからだ。
生徒会は時期の変更を検討しているということだが、少なくとも今年は例年どおりに行われる。
だから太郎たち軽音は、真夏になる前の今の時期に練習を重ねて、学園祭のライブに備えていなければならない。
伊勢が死んでからしばらくは軽音の活動そのものが休止していた。太郎はもちろんだが、他の部員のショックも小さくはなかった。
太郎としても、伊勢との思い出のあの部室にいくのはつらかった。
とはいえ、落ち着きを取り戻した今では、そこで笑うことさえできる。太郎も、そんな自分を薄情だと思わないわけではない。
だが、勝手な言い草だが、伊勢もそうやって日常を取り戻すことを望んでいるのではないかとも思える。伊勢は部活を楽しんでいたから。
そして、太郎自身に残った心の傷も、次子によって埋められていた。
しかし、伊勢がいないことで、それとは別の問題が生じていた。伊勢がやる予定だった、学園祭ライブでのボーカル役がいないのだ。
それについて話し合う会議の最中、最終的には自分が歌うことになるだろうと考えていた太郎は、思いがけない名前を聞いた。
「あのさあ、簸川の妹さん、一子ちゃんじゃない方、次子ちゃんだっけ、前に遊びに来たろ。あの子にやってもらえないか」
部長がの言葉だ。太郎はあっけにとられる。
「いや、あのときさ、お前らがいなくなった後、あの子が歌ってみたいっていうから、まあ、遊びで歌わせてみたわけ。そしたら、すんげーの。発音もいいし、センスあるし、パワーあるしで。
こんなこといっちゃなんだけど、伊勢よりずっと上手いと思ったぜ。あの子がやってくれるんなら願ったり叶ったりなんだがなあ。どう、頼めないか?」
次子にそんな特技があるとは、知らなかった。
「理想の妹」という次子の称号を思い出す。
とはいえ、ロックのボーカルがやれることと、一般的な妹の理想像との間にはずいぶんとギャップがある。
もしかするとそれは、自分の願いの反映であったのかもしれない。
その謎はおいておくとして、音楽に関して部長の言葉には嘘はないはずだ。次子が優れた歌い手であるということは信じていいのだろう。
そして太郎も、ライブのためという理由とは別に、次子と同じステージに立って演奏するということを魅力的に感じていた。
次子も、太郎が頼めばいやとはいうまいし、むしろ、きっと乗り気になってやるに違い。
だが正直いって、次子を公にさらすことになるのは避けたい。次子には戸籍もなければ、学校にもいっていない。
身元不詳の人間だ。追及されれば、面倒なことになるのは必至だろう。
668 :
ツイスター:2006/11/25(土) 00:25:04 ID:M94J6tAc
「でも、あいつはこの学校の生徒でもないし。やっぱりまずいんじゃないですかね」
だから、太郎は渋った。
「ならさあ、一子ちゃんとその間だけ入れ替わってもらうってのは?」
「はあ?」
「つまりだ、次子ちゃんを一子ちゃんとして出演させる。顔は同じだし、性格は違うみたいだけど歌うだけだからまずばれない。そして、その間、一子ちゃんにはどこかに隠れていてもらう。どうだ、面白くないか?」
部長は、いかにも面白いことを思いついたという顔をしてそういった。
トリッキーではあるが無理のある計画だとは思わない。上手く確率は高い。
次子は、一子と顔も同じなら、体つきも同じ、そして声まで同じだった。多少のごまかしは必要だろうが、さほど困難があるとは思えない。
問題があるとすれば、一子だ。いくら太郎でも、一子に次子がらみで何かを頼むのはさすがに難しいだろうと思えた。
以前、次子との擬似双子関係を楽しんでいたように見えた一子であれば、おもしろがって協力してくれたかもしれない。
だが、今の一子が素直に承諾してくれるとは、太郎にはとても思えなかった。
しかし、太郎たち3人の置かれた状況を知らず、次子が一子の双子だと疑いもしない部長は、どんどん話を進めていってしまう。
「だから頼んだぞ、簸川。二人にお願いしてみてくれ」
背中をばんばんと叩かれながら、半ば強引に依頼される。
太郎は、押しに弱い。結局、二人への依頼を承諾したのだった。期待はしないでおいて欲しいと、しつこく繰り返しながら。
太郎が帰宅すると、家には次子だけがいた。一子はまだ帰っていない。
今のうちと、次子にその件を話してみる。案の定、次子は文字通り躍り上がって承諾した。ぴょんぴょんと飛び跳ねている。
「うん、やるやる、わたしお兄ちゃんと歌いたい」
それにつられて太郎も、次に控えている、一子に話をつけるという気の重い課題を忘れて笑顔になった。
「お前が歌が上手いなんて初めて聞いたぞ」
「うん、次子なんでもできるよ」
「理想の妹」とは結局そういうものなのだろうか。太郎はいぶかしむ。
もしかすると、能力的に巨大なキャパシティーを持っていて、状況に応じてそれを自由に駆使できるということなのかもしれない。
病弱であることすら、望みのままに実現してしまえるような。
ふと思いついた。
「なあ、次子。お前、他にも楽器とかできるか?」
「うーん、お兄ちゃんが教えてくれればできるかも。試してみる?」
669 :
ツイスター:2006/11/25(土) 00:25:45 ID:M94J6tAc
部活が終わって、一子は家路に着く。帰りは、基本的に一人だ。一子は、今でも友達を作るのが苦手だった。
というよりも、他人に気を許すのが苦手なのだ。
だから、家にいるときが一番落ち着く。それは、太郎との関係が必ずしもよくなかった頃にすらそうだった。
しかし、今では家は落ち着ける場所ではなくなっている。いうまでもなく、次子のせいだ。
あの日、山鹿との会話の一部、ひょっとすればその全部を聞かれていたのかもしれないあの日以来、一子は次子を邪魔だと思う以上に、どこか怖いとさえ思い始めていた。
それは、あのときの次子の笑顔を見たせいだった。
次子は笑っていた。だが、笑っていなかった。
一子は、それがかつて伊勢が次子に対して抱いた感想と同じだとはもちろん知らない。
とはいえ、帰る場所は結局ここしかない。一子は、重い気持ちを抱えて帰宅した。
家のドアを開けて、はっとする。笛の音が聞こえてくる。クラリネットだ。懐かしい音。
吹いているのは、太郎に違いない。一子は、すぐさまそう思った。
何年ぶりだろうか、この音を聞くのは。高校にあがってから、太郎がそれを吹いたという記憶はない。
それでも、かつてと変わらず衰えることのない美しい音色に、少しの妬ましさとそれ以上のうれしさを感じる。
一子がクラリネットを始めたのは、この音を聞いたからだった。それを奏でたかったからだ。
いや、それはきっと後付の理由だ。
太郎と一緒にクラリネットを吹きたかった。それだけが理由だった気がする。
昔の一子と太郎は、いつも一緒に遊んでいた。二人とも、友達を作るのが下手だったから。
だが、太郎にも友達ができた。その中でも親友と呼べるのは、山鹿だった。
きっと、山鹿にとっても太郎は最初の親友と呼べる友達だったのだろう。彼は幼少の頃から変わり者だった。
なぜ、まったく性格も嗜好も違う二人が親友になれたのかは分からない。成り行きだったのか。
初めの頃は、太郎と山鹿、一子の3人で遊んでいた。しかし、やがて女の子の一子では二人のペースについていけなくなった。
一子は一緒に遊ぶのを止めた。楽しくなかったからではない。
二人が、いや太郎が、そんな自分を疎ましく思っているのではと思い始めたからだ。
中学にあがった太郎がブラスバンド部に入り、家で一子にクラリネットを聞かせたとき、一子は自分もそれをやろうと決めた。
あの時、自分を置いていった太郎の横にまた立てるのだと思って。
ずいぶんとお兄ちゃん子だったのだと、当時の自分を思い出して、一子は苦笑する。
おそらく、一子に才能はなかった。それでも、努力した。
クラリネットを始めて、一子はかつてのように太郎と同じ時間を持つことができた。
太郎は、昔のように、いや昔以上に、一子の面倒を見てくれた。
それはきっと、太郎も一子と一緒にいたいという気持ちがあったからなのだろうと、一子は思っていた。
だが、高校にあがった太郎は、何の未練もなくクラリネットを捨てて、ギターを始めてしまった。
正直、裏切られたと思った。
それ以来、一子は太郎を追いかけるのを止めた。
だが、太郎を見返してやりたくて、以前にもましてクラリネットの練習に励んだ。今では、次期パートリーダーの指名を受けるほどの腕前だ。
しかし、それもきっと太郎への未練が、太郎と同じ場所で同じことをすることへの未練があったからなのだろう。
670 :
ツイスター:2006/11/25(土) 00:26:37 ID:M94J6tAc
そんなことを考えながら一子は、演奏の妨げにならないよう、静かに階段を昇り、そしてドアを開け放してあった太郎の部屋をのぞいた。
凍りつく。
なぜなら、ドアに背を向けて腰掛けた太郎の前でクラリネットを吹いているのは次子だったからだ。
まじかで聴くと、その腕前がいっそうよく分かる。明らかに、一子を超えていた。
自分と同じ顔をしているのに。
演奏が終わった。太郎は、ドアの影にいる一子の姿に気付いていない。
「すげーな!ちょっと教えただけでそれかよ。俺より上手いんじゃないか、いや、絶対上手い」
そういう太郎の前で、次子がうれしそうに笑った。そして、視線を一瞬、一子に向けた。
一子は、顔を引っ込めた。声だけが聞こえる。
「ねえ、お兄ちゃん、これ、次子に頂戴」
「ああ、やるよ」
「ほんと!うれしい」
次子の弾んだ声が聞こえてきた。
「俺は伴奏してやるよ。ギターでやれるかな」
それだけ聞くと、一子は自分の部屋に駆け込んだ。
ベッドに倒れこむと、二人の演奏が聞こえないよう、布団にもぐり込んだ。
以上、第16話「デュオ」でした。
次子いわく、「尺八も吹けるよ!」
UOOおおおおおおおお GJ!!
次子は、着々と伊勢や一子の立場を乗っ取ってますね。
まだ生きている一子には、鬱積した感情を吐き出すところまで頑張って欲しいです!!
作者さんGJ!
そろそろ来るな・・・一子ちゃんの大爆発が来る・・・
自分の居場所をだんだんと奪われていく一子の様子がいいですね。
このたまったものが爆発するときが今から楽しみですw
毎回のことながらこの更新頻度でこのクオリティーはすさまじい。
作者さんGJ
いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
>次子いわく、「尺八も吹けるよ!」
正直、俺の尺八も吹いて欲しい・・・
こ、これは一子による次子の殺戮ショーが文化祭のステージの上でおこる悪寒が・・・
次子にマジで怯えてる俺ガイル
尺八シーン切望
いやぁ、まさに完全無欠妹
薄ら寒い魅力ってやつなのだろうね
猿は頼りにならん!
たすけて山鹿!
GJ一子カワイソス
ところでそろそろ次スレの時期だな
やはりタイトルは23と書いて”にいさん”と読ませる?
嫉妬・三角関係.修羅場系総合SSスレ 23どいてそいつ殺せない
長いな
23のバカ とか?
思うんだが…
「嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ」の「総合」の二文字は、要らないんじゃないかな?
「嫉妬・三角関係・修羅場系SSスレ」で充分通じるし、余った二文字ぶんを他に使えるようになる。
文字数制限が緩くなるから、少しだけスレタイに自由の幅が広がると思うんだが…
やっぱ「総合」は必要かねぇ
ちなみに本スレは「嫉妬・三角関係・修羅場『統合』スレ」なのが、また不統一で面白いところw
そう言えば纏めサイトのネーミングメモ
これって作品の紹介も兼ねてて良いね
他の作品にもこういう紹介があると始めて来た人にはありがたいと思うのだがいかが?
そんな訳で皆で各作品の紹介文とか書いてみてはどうだろう
ある男が、自分を愛している3人の女の中で
誰を結婚相手にするか長いこと考えていた。
そこで彼は3人に500カブずつ渡し
彼女らがそのカブをどう使うか見ることにした。
一人目の女は、腕によりをかけ、最高のカブ料理を作り上げる、と、こう言った。
「私はあなたをとても愛しているの。だから、あなたが町で一番料理上手な妻を持っているとみんなに思ってほしいのよ」
二人目の女は、カブをすべて出荷して、夫になるかも知れないその男のために新しいスーツやシャツ、農場の整備用品を買って、 残らず使いきる と、こう言った。
「私にとってはあなたが一番大切な人なの。だから換金して全部あなたのために使ったわ」
最後の女は、500カブを種にし、栽培して倍にして男に返した。
「私はあなたをとても愛しているわ。 カブは、私が浪費をしない、賢い女であることをあなたに分かってもらえるように使ったのよ」
男は考え、後ろで包丁を研いでいる大家を妻にした。
>>688 いいアイディアだが作品の紹介など恐れ多くて出来ない((;゚Д゚)ガクガクブルブル
>>689 これは一体・・・大家が他三人を解体ってことですか?
牧場物語を思い出した
牧場物語はいつからそんな修羅場要素を含んでいるんだよww
>>688 神がご自身の作品を紹介してくれるのがBESTなんだけどなw
>>689 あまりに自分のことを想ってくれた結果、男は重いと感じた。
だから大家に3人の女を消してもらい、引き換えに大家と結婚することによって楽になろうとした。
自分にとって大家は、程よい距離を保ってくれる心地の良い存在だったからだ。
だが男は知らない。
大家の真の恐ろしさを……
こんな感じ?
これはDSの新牧場物語だな
大家がやばい女というのが定説になってる
発言が何気なく黒いんだよな
どういう風に黒いんだw
まあ最後は大家との結婚に不満を持った妹が大家を殺しちゃって、
「これでふたりっきりだね、お兄ちゃん」
で終わるんでしょうね。
>>688 俺は別スレで保管庫の管理人やってるけど、「タイトルくらいつけてくれよ……」と内心で思うことが多々ある。
特にオリジナルは困る(二次ならカップリング表記で誤魔化せる)
だからネーミングメモを読むと頑張ってるなぁなんて思ったり。
>>699 耳が痛いw 何せ自分このスレで4本作品投下したが
自分でタイトル付けたの一本だけで他の三本は管理人さんにつけてもらったから
そう言う意味では阿修羅さんには感謝しても し切れないね
改めて阿修羅さんに感謝
だが其の一本もネット上で同名の小説があったりして改題を考えてたりorz
>>696 詳しく、ただし嫉妬分のみで頼む
場合によってはDSごと買ってくるから
>>697 俺は
>>696じゃないが
あくまでもそう見えるということで
記憶喪失で行き倒れの主人公を上手く乗せて、自分の牧場で働かせたあげく、渡したのはボロボロのクワと穴の開いた如雨露
朝から晩まで畑に立ち、主人公を監視
町の住人の話によると、騙されて働かされたのは主人公だけではないらしい
牧場の片隅に林立する墓らしきもの
家は町から離れた国境の近くに独り暮らし
いつのまにか自分の家に入り込み、「寂しいので、遊びに来ちゃいました」
ダンジョンの奥地(ボス戦の辺り)にタイミングを見計らったように出現
愛情度が何故か勝手にガンガン上昇していく
時折垣間見える黒い言動とカブ電波
他のヒロインと結婚したにもかかわらず、
当たり前のように家に居た時は笑うしかなかった。
>>他のヒロインと結婚したにもかかわらず、
>>当たり前のように家に居た時は笑うしかなかった。
余裕で吹いたwwww
そりゃ、嫉妬スレで話題にならないはずがないww
誰かそんなSSを書いておくれww
さて、ジェラレンジャーの埋め埋め投下はまだかな?
>>701 会話要素、キャラの掛け合いは少なめなので、修羅場スレ的には物足りないと思う。
まぁ会話の節々からいろいろと妄想して補完もできるし、ゲームとしても結構面白いので、
牧場物語というゲームとして買うならいいと思う。
↑とは別ヒロインだが、
主人公さんの事、一番好きなのは私ですから……
のようなセリフを吐く、どことなく言葉様を彷彿させるヒロインもいます。
愛情度最大だが結婚しなかったヒロインが
「(主人公)さんが結婚してなかったら、こんなに苦しまなくてすんだのに……」
って言ったときは正直wktkが止まらなかった。
>>705 …………誰が言うんだ?
流れを切ってスマソだが
投下致します
あの屋上の出来事から約一ヵ月
俺と雪桜さんは恋人同士として清い交際関係を続けているはずであった。
「桧山さんなんて……。大嫌いっ!! 大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌いっ!!
大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌いっーーー!! 今日で別れます!! ありがとうござました!!」
だが、異常な状況下で結ばれた交際は。
それ程長くは続かないらしい。
こうして、俺と雪桜さんの交際関係は短い終わりを告げた。
「桧山さんのバカぁ。大バカぁ。オタンコナスです」
勝手に部屋の入り込んで隣の剛君に対する愚痴を零している少女を見つめて、私は思わず嘆息を吐いた。
彼女の名は雪桜志穂。かつては泥棒猫と敵視して剛君との仲を破滅させようと思ったが。
私の失策のおかげでこの二人の仲を更に深く結ばれた。本当に後もうちょっとで剛君が私の物になるはずだったのに。
そんな、私こと東大寺瑠依は未だに剛君に未練たらたらである。
正直、一緒に夕食を食べている仲とはいえ、泥棒猫、今は泥棒犬か。
泥棒犬が剛君との仲が拗れてぐらいで私のところに愚痴を零すのは迷惑の他にならないんだけど。
「聞いてますかぁ? 瑠依さん?」
「うん。ちゃんと聞いているよ。えっと、どこまで話したのかしら」
耳は空通りしているので志穂の会話は当然頭の中に残ってはいない。
でも、対人関係は大切にしましょうということで私は善意を持って彼女の愚痴を心存分に聞いてあげよう。
なんて、いい人なの。私!!
「桧山さんったら。酷いんですよ。この前、私が気に入っているコスプレ喫茶店であろうことか
猫耳娘の格好した店員の女の子なんかに手を握られて頬がにやけているんですよ」
「それで」
「私が誘っているのに。こうやって、桧山さんの大好きな犬耳を身に付けているのに。
犬は可愛いんですよ。ちゃんとご主人さまの言うことは聞くし、愛想の悪い猫よりもご主人さまの事を大切に想っているのに。
この身の全てを捧げてもいいぐらいに。
ってか、そもそも私が誘ってきたんだから、余所の女の子よりも私にたくさん構って頭を撫でたりして欲しいのに。
どうして、
猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに
猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに
猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに
猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに
猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに
猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 猫なんかに 」
思わず、志穂の黒い殺気の篭もったオーラが部屋全体の空気を重くする。
私はできればこの場から逃げ出したかったけど。部屋の主が敵を前にして逃亡するわけにはいかない
「そこで不味い水道水を桧山さんの頭にかけてコスプレ喫茶に注文もせずに出たんです。
桧山さんがどうして私がこんなに怒っているのか理解できずに狼狽えていました。
もう、本当に桧山さんは女心については鈍いです」
そりゃ、私も同感だ。
「それだけじゃないんですよっ!!」
「まだ、あるの?」
「飼い犬はちゃんと首輪をして誰かの所有物をちゃんと提示する義務があるんです。
だから、私は桧山さんに首輪をかけてもらおうとしたのに。
桧山さんったら、『首輪はさすがに危ない趣味を持っている人に見られるかもしれないから却下っ!!』なんて言ったんです。
それを聞いて、私とってもショックだった」
「普通のカップルに首輪をしないだろぅ」
「首輪は犬とっては大事なアイテムなんです。桧山さんが私を桧山さんの所有物だとちゃんとはっきりしておかないと。
他の泥棒猫たちが桧山さんに寄り付いてくるかもしれない。桧山さんに捨てられるのはもう嫌なんです」
「もう少しアブノーマルから離れて純愛系に戻ったらどうなの?」
敵に塩を送る行為はしたくはないが、風紀委員として。人として。この子にまともな教育を施す必要がある。
「それは無理な話です。桧山さんは『犬耳』萌えなんです。
私は桧山さんのワンちゃんになるためにどれだけの努力をしているのかおわかりですか?
桧山さんが好みそうな犬耳をコスプレショップで購入したり、尻尾は毛並みのよいふさふさして暖かそうな物を。
そして、桧山さんに頭を撫でられると自然とうにゃーーーー!! って叫ぶの我慢してわんわんって叫ぶ、私の凄まじい努力を」
「それ、本当に凄まじい努力なの?」
私は剛君に思い切り同情したくなる。こんな天然ボケ少女を彼女にしたことを。私も幼児退行化プレイとかしたから人の事は言えないけどさ。
「ええ。努力しましたよ。瑠依さん」
拳をぎゅっと握り締めてガッツポーズしている志穂の姿が何故か痛々しく見えた。
でも、その表情が真面目な顔をしているのであんまり強く言うことができない。まあ、いいか。
「愚痴を言ってしまう原因になった剛君と別れることになった原因は結局なんなのよ。
まだ、真相を言うべきどころか。のろけ話しか聞いてないんだけど」
「うにゃーーーー!! そうだった。忘れていたよ。いまの今まで」
私もこの台詞を言うのは22回目なんだけどね。志穂は剛君とイチャイチャ話に没頭して話の本編に辿り着くことすらもできないでいる。
これは大いに問題だ。
「私、桧山さんにある事が許せなくて、本人を前にして大嫌いを連呼しちゃたんです。
頭に血が登ってしまって、何を言ったのか覚えてないんだけど……」
「最後の別れ際に別れてやるーーー!! って叫んだんでしょう。もう、あなたたち破綻決定!! 剛君を頂く機会は私にもやってきた」
「うにゃにゃ!! 私はそんなつもりで言ったんじゃないですよぉぉ」
せっかく、剛君の彼女の地位を占めていたのにその座を捨てるとはとても愚かなことだよ志穂。
傷ついた剛君を今の隙に頂いてしまおう。
そんな風に私は踊りたいぐらいに喜びたかったが。
その時、ちょうどドアが開いていた。
お母さんだ。
「剛君、知らない女の子と腕を組んでいたけど。何かあったの?」
「うにゃぁぁぁぁーーー!!」
「ええっっっっ!!」
一体、どうしたのよ。剛君!!
次スレ埋めネタに続く(かも)
スレを埋めるために即興に作り上げた
『雪桜の舞う時に☆埋めネタ』
1時間ぐらいでつい書き上げて投稿してしまった。
今はとても反省しているw
とりあえず、次スレが立てられた時にまた投稿しようかと思っている
>>706 >>「(主人公)さんが結婚してなかったら、こんなに苦しまなくてすんだのに……」
マジでヒロインがゲーム内で言っているんですかwwww
何かいろんな意味で興味がわいてきましたよ
ルーンファクトリーはおもろかった
未亡人に手を出せないのが・・・・・・
>>710 トライデントさん超GJ!!相変わらず雪桜さん萌える……(*´Д`)
セリフだけで具体的に何をする、ってわけじゃないんだけどね…………orz
>>711 もう一方は再婚するしな。
>>702 OK兄弟。今から買ってくる。
ところで公式サイト見てたら気になる一文があってだな
>主人公が町で落とした物は、この子がコレクションしているという噂もある。
すとーか?
>>710 泥棒猫の立場が泣けるw
GJ
買っておけばよかった○| ̄|_
牧場DSバグ多いぞ?
修羅場の道は刺されることと覚えたり
718 :
713:2006/11/26(日) 17:58:35 ID:KQCNibNg
昨日買ってきてからぶっ通してやったせいで電池が無い。
>>706 フィルだな。
マジで本体ごと買ってきててワロタ
ある意味
>>718はこのスレの狂気を象徴してるなw
ただ一人のヤンデレで24時間監視することが出来るのか
ただ一丁の包丁で泥棒猫を抹殺することが出来るのか
出来る
出来るのだ!
やべぇ・・・バグも酷いがそれ以上に結婚しても大家がいるよ・・・マジで。
>>722 よくわからんが家の真ん中にどんと大家が仁王立ちしてるのかw
投下します。
なんかほんとに家の中に「寂しいので遊びに来ちゃいました」とか言って居座ってんのよ大家。
「○○さんの事、一番好きなのは私ですから……」と言い出す病弱っ子も居るしさ。
なぜか母子家庭と父子家庭と独身しか居ない村だし。
(((((((( ;゚Д゚)))))))
最近俺はストーカーに合ってる気がする。
けして、被害妄想だとか自意識過剰だとかそんなものではない。
帰宅途中に無性に誰かに見られてるような気がしてならないし、
学校に置き忘れてた俺の体操服がいつのまにか消えていたと言うこともあった。
まあ、それもただの勘違いと言うことで済ませても別にいいかもしれない。
だけど、俺は見てしまったのだ。
ふと、後ろから視線を感じ、振り向いたその瞬間、逃げるように物陰に隠れた人影を見たのを。
ちなみに、これは誰にも離してはいない。
だって、考えても見てくれ。特別にもてるわけでもない、
彼女いない歴=年齢=童貞の俺が女性にストーカーされている。
周りに言っても鼻で笑われるのが関の山だ。
しかも、俺は一人暮らしなので家族と言う証言してくれる人もいない。
仮に、警察に訴えたとしよう。友人に相談したとしよう。
もし、それが俺の勘違いだとしたら……俺はきっとここから引っ越すことを余儀なくされるに違いない。
てか、恥ずかしくて外に出られなくなりそうだ。
と言うわけで俺は罠をはってみる事にした。
いつものように監視の視線を感じる中、わざと家の鍵を閉め忘れたまま出かけたのだ。
俺の私物を盗むような奴、加えて今も監視してる最中なら必ず不法侵入をやらかすはず……それを俺は辛抱強く待てばいい。
そう、思って張り込みから約30分程度。まったく、そんな気配は無い。
やはり、俺の勘違いだったのだろうか。あの人影はたまたまで全ては俺の早とちり。
まあ、それはそれで周りを騒ぎ立てる前に決着がつけられて良か……
どうやら、俺の不安は杞憂ではなかったみたい。
ここからでは遠くて顔は見えないが、俺の部屋の前でこそこそ明らかに怪しい
動きのまま入っていくものを一名確認。
どうみても、これは動かぬ証拠、俺が警官なら住居不法侵入で現行犯逮捕決定!!
後で、俺のストーカーという余罪もたっぷりと吐かせてやることにしよう。
ってわけで俺は自分のアパートへと勢いよくドアを開けて踏み込んだ。
「やい、ストーカー。俺の周りをうろちょろしやがって!! 警察にひっ捕らえて……」
そっから、先は言葉が浮かばない。
何故かって!? あれだ、てっきりその女はあまりもてなくて、男に見向きもされない不細工だと思ってたわけだ。
なのにその、ストーカーっ娘が驚異的なくらいの綺麗さと可愛さを誇っていたからだ。
俺は不覚にもそれに見惚れてしまっていたのである。
スタイルはグラマーと言うわけではない。だが、肌は白くて顔立ちも整っており、
活動的とはいわないが、控えめで大人しそうな発光の美少女みたいに見えてしまった。
てか、俺は彼女のことはまったく覚えてない。いったい誰だ!?
これだけの美人さんなら覚えてるはずなんだろうけど……だめだ、思いだせん。
「あ……あ……」
俺が彼女に見惚れている数秒間、彼女は顔を真っ青にしたまま俺を凝視している。
まあ、犯行の現行犯を捕まえられれば無理もあるまい。
おそらく、万引きがバレた主婦は今の彼女のような心境になるのだろう。
そこまでなら充分想定の範囲内だろう。だが、次の瞬間。
俺の予想のはるか斜め上を行く行動を彼女はやってしまったのだ。
なんと、彼女は台所の奥にある家の包丁を持つなり……
「ごめんなさいッ!!」
などとのたまいながら俺にヤクザの子分もびっくりなドスをかましてきやがった。
「ぬおおおおおおおおおおおッ!!」
予想外の行動に俺はもう叫びを上げずにはいられない。
全力の彼女の一突きを避ける。と同時に彼女から距離を取る。
それが不幸にも唯一の逃げ道である玄関のドアと俺との間に彼女を挟む羽目になり、
俺の退路は断たれてしまったわけである。
「なななななな、なにしやがる!! 俺を殺すきかッ!?」
「あなたにこんな所を見られて……き、嫌われて……わ、私もう生きていけません!!
あなたを殺して私も死にますッ!!」
彼女は半ば半べそになりながら震えた手で包丁を構えている。
マジだ、本気と書いてマジ。彼女はガチで俺を殺る気だ。
いくらなんでも、あんまりだ。少なくともなんで彼女がこんなことをしてるのか、
とか俺との接点とか、彼女の名前とかを知らないと死んでも死にきれんッ!!
見知らぬ、美女に出会い頭に刺されて心中って……笑い話にもならねえって!!
とりあえず、彼女を止めないと。けど、どうやって!?
俺は狂気と凶器を持った人間に対処する術など欠片ほども持ち合わせていない。
うお、まだ考えがまとまっとらんのに、彼女向かってきてるし。
うわ、包丁が包丁が〜〜〜〜〜〜!!!!
反射的に俺は身近にあるもので彼女の凶刃を受け止める。
それは俺がいつも愛用している安物の枕だった。俺の夜の相棒は無残にも儚く散っていく。
俺は枕がないと眠れないのに、お前の死は無駄にはせんぞ!!
綿に阻まれ俺まで届かなかった包丁の柄を掴んでそのまま力任せに彼女の手ごと
強引に引き剥がそうとする。同時に俺の枕がビリビリと破れ綿が当たり一面に四散。
彼女には水増ししてこの枕を弁償させてやる。
え、自分で買えよって? 俺にそんな金銭的余裕はねえッ!!
俺の家計は明日の飯すら困るほどに切羽詰っているんだよ。
そして、そのままもつれ合い俺たちは床に倒れこんだ。
危なっかしい凶器はなんとか彼女の手から飛び去りなんとか俺の命の危機は去ったみたいだ。
で、ここからなんだが前もって言っておこう。
俺に悪気はない。これは、偶然に起こった事故であり決してそうしようとしてしたわけではない。
まあ、あれだ。もつれた拍子に俺の右手が……うん、その、何だ。
彼女のバストにジャストフィットで吸い込まれるように収まってるもの事故なわけで、
ついでにいうと、左手が彼女のあそこにくっついてるのも事故な訳で……
けっして、下心があってやったわけではないのを理解してもらいたい。
とはいえ、男ってのは基本的には欲望に充実な生き物だ。
俺の頭は混乱しながらもしっかりその握ってるものの感触はその全神経を使って感じ取ろうとする。
女の子の胸ってこの世のものとは思えんくらい柔らかけえな、とか思ってしまうわけだ
そして、俺は何を思ったかほんの一握りだけだがうっかり彼女の胸を揉んでしまったわけだ。
「あ……」
彼女はそう言うと彼女は羞恥のあまり真っ赤に染め上げて俺をまっすぐに見つめている。
それに俺は、またまた不覚にもさっきまで殺されそうになったことなどすっかり忘れて、
手の中にある未知の感触と彼女のその色っぽい表情も相成って何とも情けないことに……
俺のナニが勃ってしまい、しかもそれが彼女の太腿に当たってしまった。
今度は俺が赤面する番だ。互いに恥ずかしさのあまりフリーズしたまま一歩も動けなかった。
そのまま、硬直状態が続くこと数十秒、その均衡は玄関のドアが開けられたことで破られた。
「おーい、今日もどうせ金欠でろくなもん食べてないでしょ。
残りもん差し入れにやってきてや…っ…た…ぞ…?」
「「あ……」」
均衡を破ってくれたのはありがたいけど、俺の命の危機は引き続き継続中になりそう。
続きは……みなさんの妄想で補ってください。
ノリだけで書いたので続ける自身がなくこちらに投下しました。
ちなみに、これ続きを書きたいなどというありがたい神がいたら、
書いてくださっても結構です。
気が向いたら書くか書かないか……程度のものなんで。
ただ、おバカな話しを書きたかっただけなんです(´・ω・`)
な…生殺しやん…
最近の嫉妬スレは寸止め生殺人犯のすくつになっとるやん…
これがどう修羅場に発展するのか楽しみだったのに・・・・
残念だ・・・・
でもGJです
ほぉおお…おおう…!
ここれはヤバイぜ……猫じゃらしで脇をくすぐられ続けているような感覚だ…!!
GJです
>>716 こんなんか?
貴方は今からラグナさんです
さあラグナさん、ここが農場ですよ
一生懸命カブを育てて行きましょうね
ラグナさん、弱いモンスターを呼び寄せました
大丈夫です、これ位ならラグナさんは負けません
カッコいい所見せてくださいねラグナさん
ラグナさん、ちゃんと働いているか見に来ましたよ
真面目に働いているようで何よりです
楽しみにしていてください、雨の日は家に遊びに行きますね?
ラグナさん、自分で収穫したカブは格別でしょう?
一杯作って私にプレゼントしてくださいねラグナさん
ラグナさん、私はラグナさんの事が大好きです
私の事をもっと見てくださいねラグナさん
ラグナさん、回収に来るロゼッタさんとは仲良くお話をするんですね
本当に楽しそうです
でも最近私に余り構ってくれなくて寂しいです
これもロゼッタちゃんのせいですか?
そうだ、ロゼッタちゃんがラグナさんの前から居なくなれば良いんですね
そうしたら私に構ってくれますよねラグナさん?
ラグナさん、最近病気や怪我をしているみたいでで心配です
だって毎日エド先生の所に通っているじゃないですか
もしかしてラグナさんはラピスさん目当てで通っているんですか?
それじゃあラピスさんにお仕置きをしなければいけませんね
もうみんな女の子は居なくなったのにラグナさんは出かけてばっかりですね
そうだ、ラグナさんが動けなくしてしまえば良いんですね
大丈夫です、すぐに終わりますよラグナさん
もうどこにも行かなくていいんですよ
ラグナさん、どうしたんですか?
私だけを見てくださいラグナさん
どうして私だけを見てくだらないのですか?
私だけを見てくれないならこんな眼は要らないです
そうだ、どうして気がつかなかったのでしょう
目がなければ他の女の子に目移りしたりしませんよね
ラグナさんラグナさんラグナさんラグナさんラグナさんラグナさんラグナさん…
>>736 あれ…本当だ…違和感がない…?
なんかアレだな…下手な黒キャラより遥かに自然だ…
コレで一本書いて欲しいぞ。
ラグナさんの元ネタ知らないので空気読まずに投下します。
タイトルは「ジェラレンジャー(仮)」改め、「HERO」です。
先ずは第1話の書き直したのを。
正義を守るバイク乗りや五人の戦士たち。
子供たちの永遠の憧れ、僕も小さい頃は大きくなったら彼らのような英雄になりたかった。
小学校高学年にもなり友人はみんな彼らへの興味を失い、僕も番組は見るものの流石に
変身グッズやお面は買わなくなった。
だけど中学時代進路に迷っていた頃、敵は突然現れた。
宇宙人だとか古代人や海底人、挙句はナチスドイツの遺産だとかさまざまな憶測があった。
だけど、結局なにもわからなかった。
わかっていることは敵は個人ではなく組織であり、全国で生物兵器を暴れさせ、拉致した人を
洗脳・肉体改造を施して市民を襲わせたりしていることだけ。
国は最初こそ後手後手に回って対応に困っていたけど、ついに警視庁、防衛庁、海上保安庁、
その他民間の組織までもが混じってひとつの機関を作り上げた。
防警庁特殊治安維持局
簡単に言えば相手が怪人、それを操る組織の場合にのみ権限を持たされる武装機関。
自衛隊のような対外戦争には参加できない、警察のような通常の犯罪者の逮捕権はない、
対怪人・組織専用の武装機関。そして今の僕の職場だ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
anti- H umanoid
E quipment soldier of
R anger
O rganization
HERO 第一話A ライダー (Rider's hero)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「ホーホッホッホ! この街を植物で埋め尽くしてさしあげるわ!」
市民公園にて気勢を上げる身体中に黄バラの花とバラの蔦を巻きつけた半裸の女。
彼女はただの女ではない。女は手の平のバラの花から光る粉を風に乗せて飛ばす。
するとそれを受けた街頭樹はまるでクレイアニメのように変化していった。
ふた回り近く巨大化し、枝は捻れ、葉は異常増殖し、いたるところに禍禍しい色の実をつける。
「ホホホ、ここの植物はわたくしと相性が良い。この調子なら予定より早く種ができそうですわね 」
植物系の怪人の脅威はあの繁殖力だ。種から新たに生まれる怪人はオリジナルに比べると弱いが
その数はネズミ算式どころではないほど膨れ上がる。
それを防ぐにはなんとしてでもここで食い止めなければならない。
「…残念だがその実に種はできません」
「だ、だれか!?」
得物を横一文字に一閃! 怪植物となった街頭樹の1本を一刀の元に切り倒す。
そして腰を落として得物を構え直し怪人を睨みつけながら、僕は宣言した。
「防警庁特殊治安維持局騎手科所属、MR-1115ヒーローネーム、ライダーハチェット!」
特殊治安維持局開発の対怪人用スーツを装着し、同じく局開発の得物を構える。
生身の人間では怪人に対抗できない。しかしこれを装備することによって互角の戦いができる。
防警庁特殊治安維持局の切り札、それが僕たち、HERO。
(anti-Humanoid Equipment soldier of Ranger Organization)
「悪事もここまでだ、植物怪人イエローローザ!」
「そのスーツ貴様が噂の…
ええい! そんな装備を纏ったくらいでわたくしに勝てるかしらっ!」
怪人は両腕を前に出すと、腕の巻きついていた蔦が鞭のようにしなりながら襲い掛かってきた!
だけど得物を一閃、蔦を叩き切る!
そう、鈍い光を放つ刃が1m近くある大鉈、このハチェット(大鉈・手斧の意)が僕の得物だ。
「無駄です。街頭樹を元に戻して投降しなさい。今ならまだ間に合います」
「そ、そんな、うぅ…」
「もし投降しないというのなら、斬るしかありません」
大鉈の刃を向け威嚇する。さて、このまま投降してくれると楽なんだけどね。
怪人は洗脳手術を受けた被害者であることが多く、そのためまだ凶悪犯罪を起こしていない
怪人には、投降を促し洗脳解除手術で更正する機会を与えているのだ。
「くっ…わ、わかった、と、投降します。命は取らないで欲しい」
「投降に応じます。先ずは武装解除として携帯している全ての武器を捨て、
人間形態に戻れる場合は怪人化を解きこちらの拘束具を身に着けなさい」
言いながら怪人の足元に自動拘束具を投げる。
最近は怪人内でも投降すれば洗脳が解けるというのが広まったのか、敵にモラルブレイクが
起こりかけているらしく、ヒーローに追い詰められると抵抗せずに投降する怪人も増えていた。
「ところで私の処遇だけど…洗脳解除手術を受けたあと投降したヒーローの下で
ヒーロー見習として働くという噂は本当なの?」
「希望者は罪状と能力によってそうなります。手術後、罪状によって刑に服して貰いますが、
怪人化が本人の意思によるものでないなど経歴によっては執行猶予もつき、局員として
治安維持に貢献することによって刑も軽減されます」
「そう…ねぇ、あなたの素顔見せてくれない? 噂のハチェットの素顔を見てみたいのよ」
「「「「ハチェット、危ない!!!」」」」」
話しながら武装解除も進んでいたところ突然の叫び声と共に彼女、イエローローザに
矢やダーツ、手裏剣等が大量に突き刺さった!
怪人化も解いていた彼女の身体からは派手に血が飛び散る!
「ぅぁ、な、なんで、投降、した、の、に…」
「イエローローザ! だ、誰だ!?」
怪人とは言え投降した無抵抗の相手が殺された。
『もしこれが情報の漏洩を恐れた組織の手の者だったら?』と考え、素早く大鉈を構えながら
相手を確認する。が、武器が飛んできた方向に居たのは味方だった。
「「「「防警庁特殊治安維持局戦隊科所属、ジェラレンジャー!」」」」
「ハチェット、ケガはない? あぁ、矢が間に合って良かった」とジェラブラック
「良くない! 彼女は投降し、武装解除中だったんだぞ!」
「騙されるな、あたいたちの場所からだと貴方の死角から怪人が…」ジェライエロー
「武器を出しているのが見えましたの、もぅ、ハチェット様は相手が怪人でも『投降』と
言うとすぐ油断なさるのですから」ジェラブルー
「そぅそぅ、だからさ、前から言ってるとおりハチェットも戦隊科にきなよ☆」ジェラピンク
いつもこうだ。
彼女たちは担当区域が同じだからという理由で毎回現れては僕の邪魔をする。
そればかりか戦隊科に異動して、殉職して欠番中のジェラレッドになれとまで言う。
「くっ…ほ、本当だとしても、そのことと異動は関係ないだろ…」
「「「「まだ未熟なハチェットが心配なのよ!!」」」」
彼女たちが僕のことを心配してくれているのはわかる。
でも、僕は戦隊科には絶対に異動しない。いや、できないのに…
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
anti- H umanoid
E quipment soldier of
R anger
O rganization
HERO 第一話B レンジャー (Ranger's Heroine)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「今日も彼、異動を承諾してくれなかったわね」
あのあと彼と一緒に本部にことの顛末を報告。
そして勤務も終わり、戦隊科の更衣室でレンジャースーツを脱ぎながら話し掛ける。
今ここに居るのは私、ジェラブラックとイエロー・ブルー・ピンクの4人だけ。
「そうねぇ、やっぱあたいが身体で釣ろうかなぁ…」とイエロー
「あら貴女のような男女にハチェット様が惹かれるとでも?」とブルーが毒を吐く
「そぅそぅ、冗談は顔だけにしてよねっ☆」ピンクも相槌を打つ
「ケッ、お前等のようなえぐれ胸と幼児体型よりはマシだろうけどな!」
イエローがそう言うと彼女の横のロッカーに手裏剣とダーツが何本も突き刺さった。
もし数センチずれていたらイエローの顔には無数の穴が開いていたわね。
あ〜あ、ブルーもピンクも下手ねぇ。
「おお怖っ、ブルーもピンクも鏡見てみなよ、般若が見えるぜ」
「貴女こそご覧になってみたら? 化粧をした男が見えますわよ」
「はいはい、3人ともそこまで。あまり行き過ぎると暫定リーダーとして罰するわよ」
各自ウェポンラックから得物を取り出しそうな雰囲気の3人の中に割って入る。
その後数秒間睨み合いは続いたが、それでも各自力を抜きラックから手を離した。
「それに忘れたの? 一時的とは言え私たちは同盟を結んだ仲、内紛で隙を作って
他の雌豚ちゃんに彼を盗られてもいいの?」
そう、私たちは彼のために一時的とは言え同盟を結んでいる。
もちろん私も故あれば裏切る、薄氷のような同盟だけどね。
「よく言うぜ、レッドにとどめを刺したくせによ」
「まぁ、それはそれ、これはこれね。
兎も角まだ同盟条約は有効中よ、『彼に纏わり就く騎手科の雌豚ちゃんの排除』
『彼の下につく可能性のある女怪人の排除』は協力し合うって」
今日はあのイエローローズとかいう女が敵で焦ったわ。
害虫駆除は初期段階でしないとね。手を抜いてあの女が彼に惚れたらもっと面倒だもの。
「雌豚ねぇ、あたしとしては3人も"雌豚"に入るんだけどねっ☆」
「それはわたくしも同じですわ、特にキャーキャー五月蝿いロリ豚とかは目障りで」
「いいかげんにしなさい。ブルーもレッドみたくなりたくなかったら少しは自重して」
レッド、ジェラレンジャーの元リーダー。
彼女は表向き怪人との戦いで殉職したことになっているけど本当は違う。
彼に抜け駆けして近づいたので私たち4人が殺したの。
あの雌豚ちゃん、よりによってハチェットに無理矢理キスまでして…
ま、そのムカツク唇もイエローがナイフで切り取ってやったし、最後は敵のウィルスに
感染したため消毒のため焼却処理と称して、生きたまま火葬にしてやったけどね。
最後まで彼の名前を呼んでいたけど、まぁ、『焼き豚』は雌豚ちゃんには相応しい末路よね。
「はぁ、恋に戦いに、正義のヒーローも楽じゃないわね」
初回ということで嫉妬分は少なめで。
次回からは嫉妬分増やしたいなぁ…
あと第2話も6割くらいできてます。
スレが残っていれば今スレに、無理なら次スレの埋め時に投下する予定。
いやっおおおおおおおおおおおおおおおお
これは爽やかな嫉妬ですね
やってる事はライバル皆殺しだけど
>>736 そのまま連載してくれないか?
このヒロインは萌える・・萌えるぞぉぉぉ!!
二次作品の解禁は他のスレ立てるか、ここで投下するか
鋸を持って判断を求めたいところです
まあ、二次作品が投下されると一次作品が翳ってしまうのがオチなんだがなw
>>732 ここで連載する気はないですか?
あなたなら充分に神になれる
ストーカー娘は破壊力ありすぎ!!
>>747 |ω・`) おいらは一次のほうが好きだ
まぁ牧場は専用スレあるし投下するならそちらの方がいいかも・・・
嫉妬住人なら誘導さえしてくれれば見に行きますし
それじゃ久々ですが投下します。
第二話「魔女、語る」
新しい使い魔の亀有をゲットしたシーンは、一路神奈川へ飛んだ。
東京にこれ以上いると面倒なことにになりかねないからだ。
とある高級ホテルにチェックインし、最上階の部屋を取り中に入ってみると―――
「わあ〜〜、綺麗な夜景ね〜〜」
確かに窓の外には横浜ベイブリッジのネオンが輝いていて綺麗なのだが、そんなことよりも―――
「あの―、夜景は置いといてとりあえず自己紹介しませんか?俺の名前は亀有。
亀有和哉(かめありかずや)って言います。」
「へ――、カメアリって言うんだ。えっと私はシーン・Λ(ラムダ)って言うの。
朝も夜も宜しくね。チュッ♪」
「おわっ!!」
不意打ちに投げキッスをしたシーンだったが、全力で避けた亀有に
「む〜〜〜、何かちょっとムカツク!!!女の子の好意は素直に受けなさい!!」
「俺を勝手に使い魔にして、肉体を消し炭にした張本人に向ける好意は持ってない!!いや、
今はとりあえず現状を把握しないと。幾つか質問があるんだけどいい?」
「質問?……あ〜〜、3サイズね。上がトップが88。アンダーが―――」
「ちっが―――う!!!サイズじゃない!!ってか随分巨乳だな……はっ!!」
どんどんシーンのペースに嵌っていく亀有だったが、気を取り直して
「いかんいかん。すっかりペースに乗せられてる。……まず、お金は幾ら持ってるんですか?」
そう、シーンはチェックインの際、懐から百万円の札束を取り出して「これで足りる?」なんて
言って周りを驚かせていたのだ。
「オカネ?……ああ、あの紙の束のことね。それなら一杯あるわよ、ほら。」
そう言ってマントの裏をゴソゴソ弄っていたら、札束が出るわ出るわ
「え〜〜……っとこの国の単位で1オクエンぐらいあるわ」
「1億円!?……シーンってお金持ちだったんだ」
それを聞いたシーンは不思議そうな顔をして首を傾げ
「オカネモチ??それは分からないけど、この紙の束なら家で印刷―――」
「ぎゃ―――!!!ストップストップ!!!それ以上言うな!!」
この世界とシーンの世界とはどうも常識や価値観は全然違うようだな。
何にしてもこれ以上関わるとえらいことになりそうだ。何とか使い魔の契約を解除して
おさらばしないと……
「ハアハア……。じゃ、じゃあシーンがこの世界に来た目的は?」
「目的?表向きは間もなく落ちる隕石から地球の平和を守るためよ」
「え???……隕石???間もなく落ちる???……冗談……じゃないよな」
「マジマジ。あと数日後にドカ――――ンって落ちるわ。だ・か・ら、私たちが来たのよ」
「マジかよ……。ん?「表」ってことは「裏」は何なんだ?」
「ん―――」
ドンドンッ!!
そこまで話していた時、激しくドアがノックされて
「警察だ!!今すぐドアを開けろ!!!」
「え?警察?まさかシーンを逮捕に?どうし―――」
ちょっと混乱していた亀有だったが、シーンから漂う殺気に続ける言葉がなかった
「ふぅ……ん、変な飛び道具といい、私をどうこうしようといい、どうもこの国は魔女が
嫌いなのかしら。まあどうでもいいか。カメアリ、この箒に掴まって!!」
言われるまま箒に掴まった亀有を確認したシーンは
「しっかり掴まっててね。……ん――――」
杖を握ってブツブツ呟いていたら、先端に付いていた水晶の球が
不気味に怪しく光りだし、そして
「吹き飛べ――――――!!!!!」
真横に杖をフルスイングした瞬間、あたり一面を爆風が薙ぎ払った!!
「さ、星空のデートに行きましょ♪」
自分も箒に跨り、満月の星空へ飛んでいった。
「あ〜〜あ、暖かいベットでカメアリとあーんなことやこーんなことしたかったな……」
上空数百メートルの所で空中に浮いていたシーンは残念がっていたが、亀有からしてみれば
ひとまず貞操の危機は去ったようだ。
「なあ、シーン。さっきの話の続きだけどさ、私「たち」ってことは魔女ってまだいるのか?」
「いるわよー。私を含めて6人召喚されているわ。……ほら、噂をすれば」
「シ〜〜〜ンちゃ〜〜〜ん!!」
シーンが上空を見上げた視線の先に、満月をバックに浮かぶ一つの人影。
ただ、その人影の背中には2枚の蝙蝠みたいな羽が生えてて、それを大きく羽ばたかせて飛んで来た。
「うう……、亀有くん、何でよ……、ぐすっ」
こんな……、こんなことって……。これからだったのに……。
アイドルグループとしてこれから売り出そうという、この時に……。
一人の女性が、亀有の肉体の消し炭を握りしめながら泣いていた。
これも全部あの魔女のせい……
私の全てを奪った魔女め……
許せない、絶対許さない!!!!全てを賭けて復讐してやる!!!
相手が魔女だか何だか知らないけど、それだったら悪魔に魂を売ってでも!!!
次回予告
突如現れた蝙蝠の羽を持つ魔女!!彼女の正体は?!この世界に召喚された6人の魔女が
集合した時、全てが始まる。
多種多様な上に一筋縄ではいかない魔女の「お茶会」は平和的に終わるか?!
次回「魔法少女」第三話「魔女、集う」
「とっても大好きなシーンちゃん……唯一人私の羽をバカにしなかった人……
シーンちゃんのためならどんな困難な任務も平気だもん!!」
ちなみに痛いキャラはあと一人でてきます。
自分で書いててもイタイ……
失うことから全ては始まる。
正気にては恋愛成就ならず。
恋の道はシグルイなり。
757 :
736:2006/11/28(火) 00:04:29 ID:8owtyNoA
「ごめん」
彼は何時もの柔らかい声でそう言った。
一瞬、時間が止まったかと思ったけれど。
彼の困った顔は見たくなくて、私も何時もの笑顔に戻った。
戻した、筈なのに。表情が保てない。声が震える。
耐え切れなくて私はついに後ろを向いてしまった。
「ご、ごめんなさ…大丈夫ですから。明日には、きっと…」
それだけ言って私は俯いてしまった。
彼の息を呑む声が聞こえる。次に紡がれる言葉を聴くのが怖くて、顔を上げることができない。
言わないで。言わないで。そのまま、立ち去って欲しかった。
「ありがとう、タバサさん。本当に、嬉しかった」
「…」
彼の優しさが痛い。彼のその心に偽りなんか一つもなくて。
だからこそ、彼の言葉は今の私の心を深く抉った。
どうして貴方はそんなに優しいのですか。
どうしてこんな私に優しくしてくれるのですか。
そんなに優しいのにどうして
私が今一番欲しい言葉をくれないのですか
嫌な感情が広がっていく。
彼が優しすぎるから、私は彼に全てを求めてしまうのかもしれない。
ごめんなさい、優しいラグナさん。
明日はきっと、元の私に戻れるから。今だけは許して欲しい。
「…ありがとう」
最後に彼はそれだけ言って、立ち去っていった。
顔を上げた私に見えたのは、にじんだ彼の背中。
ゆっくりと一度。大きく深呼吸をして、私の中の彼と淡い恋に別れを告げた。
いつもの私に戻るのは簡単だった。
翌日ビアンカお嬢様に目が腫れていることを指摘されたものの、それだけだ。
何時ものように、彼のように柔らかく笑って「寝不足です」と答えておいた。
彼も最初は少し戸惑っていたようだったが、私が何時ものように「おはようございます」とい言えば、
彼もまたいつものように「おはよう、タバサさん」と笑って返してくれた。
そのやりとりが少しだけ暖かく、心が揺らいだ。
758 :
736:
そんな日常が1ヶ月程続いたある日、ビアンカお嬢様が夜中に私をたずねてきた
「どうしたのですか?こんな夜中に…ジャコリヌス様に見つかってはお叱りをうけますよ?」
「うん…そう、なんだけどさ」
私の言葉を半ば受け流し、お嬢様はもじもじと落ち着かない。
視線があちらこちらへと移動し、何か言いたそうに時折此方を伏し目がちに伺ってくる。
ピンと来た。
「お嬢様、もしや…何か相談事ですか?私でよければ幾らでも」
どうやら正解のようだ。
ピクッと一瞬身体が反応したのち、ゆっくりと此方へと視線を合わせるお嬢様。
「うん…あの、ね?」
「えぇ」
「ラグナに…プ、プロポーズ…されちゃった」
思考が、飛んだ。
何?
お嬢様は今…何と仰ったのだろう。
忘れていた想いがふつふつと胸の奥深くで湧き上がってくる。
優しい彼の笑顔が、優しい彼の言葉が頭の中で何度も反芻される。
私は―――
タバさん選択肢
1「二人を応援しようと決意した」
2「心の中で渦巻くどす黒い感情を隠すことは出来なかった」
どっちだお前ら