嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ あなたが17い
1 :
ついに4人目、とまらない浮気:
2 :
ついに4人目、とまらない浮気:2006/09/01(金) 21:30:04 ID:Iu/Ky2Pj
3 :
ついに4人目、とまらない浮気:2006/09/01(金) 21:31:48 ID:Iu/Ky2Pj
過去スレが多すぎてhttp:〜が多すぎますと警告が出たために3分割にしました。
過去ログ倉庫みたいなのがあったらスレ立て助かります。
とりあえず4連続スレ立て成功してよかった。
このスレは神々の力と嫉妬修羅場大好きっ子でなりたっております。
修羅場は作品内で楽しみましょう。
2月から始まって、9月で17スレかよ・・
エロパロスレナンバーワンの称号もらえるんじゃないのか?
>>1乙
浮気しすぎるとそのうち・・・
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新スレです。楽しく使ってね。仲良く使ってね。
時代の流れはようやく俺たちに追いついてきたみたいだな!
>>1 乙
俺この修羅場が終わったら違う娘と結婚するんだ
日曜日
「麻理ー!仕度できた?」
「ま、まだっ!女の子はいろいろと準備がいるから時間がかかるの!」
「はぁ。」
待つのは男の甲斐性とはよく言うけど……妹が相手じゃなぁ……あまりに遅いので麻理の部屋のドアの前で待つ。
「ぶつぶつ……」
「ん?」
部屋の前まで来ると、麻理がなにやら呟いているのが聞こえる。なにを言ってるんだろう。ちょっと趣味が悪いが、聞き耳をたててみる。
「うーん……これじゃあ派手すぎるかなぁ……かといってこれは地味過ぎだし……おにいちゃんはどんなのが……」
ははは、麻理も女の子だなぁ。兄と出掛けるのにも服を選ぶのに一生懸命だなんて。妹の成長を微笑ましく思いながら、そっと立ち去り、玄関の外に出る。
今日は絶好のお出かけ日和だ。天気予報じゃまだ残暑のせいで暑くなるって言ってたんな。
………不意に道に出て、自分の部屋を見てみる。あの位置だと何処からでも丸見えだな……こんなことになりまで気にして無かったけど。頼むから、今日ぐらいは静かにしててくれよ。
「えへへ、お待たせー。おにいちゃん。」
「ん、ああ……」
仕度が終わった麻理が出て来たので、振り返って見てみると……
「………」
「ど、どう?じろじろ…見てるけど……」
不覚にも実妹に対してかわいいと思ってしまった。友達曰く、義理ならまだしも血が繋がってたらタブーらしい……けど…
「うん、すごくかわいいよ。」
悩むに悩んで着てきた服は黄色いワンピースだった。シンプルだけど小柄な麻理にはとても似合っていた。それに加えた麦藁帽は、それこそ夏の少女というイメージだった。
「ほ、本当?えへへー。」
かわいいと言われて嬉しかったのか、万円の笑みを浮かべる麻理。……うん、やっぱりかわいい妹だ。
「……むー…」
そう思ったのも束の間。僕を見た途端に拗ねた顔になる。
「ど、どうしたの?」
「おにいちゃんももっとお洒落しなくちゃだめだよっ!」
「えぇ!?」
自分の服装を改めて見てみる。履きこなしてるジーパンに明るめのタンクトップ。その上に学校の半袖Yシャツを羽織ってるだけだ。
「これで十分じゃないかな?」
「だーめ!おにいちゃんのことだからどうせ適当に手に取ったのを着ただけでしょ?」
「うっ。」
図星。だって麻理と映画見に行くだけだし……
「あーあ。デートに誘ってくれるから、期待しちゃったけど………やっぱりおにいちゃんはおにいちゃんだね。」
「む。なんだよ、それ。」
「なんでもないよっ!ほら、早く行こ。」
また笑顔の花を咲かし、腕をぐいぐいと引っ張って行く。はぁ。女心と秋の空。ころころと変わっていくな。
〜〜♪
「……今日ぐらいは…」
さすがに一日中なりっぱなしなんてのは勘弁なので、携帯の電源を切る。うん、僕もリフレッシュしよう……
・
・
・
・
・
・
「この映画?」
「うん。結構友達からの評判がよかったから、見てみたいなって思って…」
麻理が選んだのは、今話題のラブストーリーの洋画だった。
「うん。この俳優さん好きだし、楽しめるかな。じゃ、早速入ろうか。」
チケットを買い、入場するここは僕がお金を出したというのは言わずもがな。たとえ妹でも女の子だからね。
適当にジュースを買い、中にはいる。人の入り具合はそれなりだ。まだこれから混むだろう。真ん中辺りの席を見つけ、麻理と座った。
・
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上映中
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・
やはりラブストーリーというだけあって、それなりにラブシーンがちりばめられているわけだ。しかも洋画。キスシーンだけにとどまらず、ベットシーンもあるわけだ。
キスシーンだけで顔を真っ赤にしてる麻理は、もう直視できないのか、こっちへ目をそらしてしまっている。照れているのか、かなり強く手を握ってくる。
「大丈夫?麻理。」
「う、うん……まともに見れないけど…」
それは大丈夫とは言わないぞ。
「お、おにいちゃんは……平気なの?こういうの。」
「ああ……まぁ。」
平気かどうかと言われれば恥ずかしい。とはいえ僕も男。それなりの耐性はついているので、目をそらさず見ることぐらいはできる。
「むぅ〜……おにいちゃんのスケベ。」
「なにゆえ。」
結局それ以降、麻理はビクビク震えながら最後まで見ていた……まだ麻理には早かったかな?
映画が終わり、外へ出る。時計を見たらちょうどお昼だった。
「あそこのレストランで休もうか?おなか空かない?」
「うん、お昼にしよっか。」裏路地にはいった所に、こじゃれたレストランを見つけた。看板には『Fan』と書いてある。このレストランの名前だろうか。なかなかいい雰囲気の店だ。
カランカラン
麻理と二人で店内に入ると……
「いらっしゃ…」
僕と同じ年ぐらいの男の声……
「申し訳ございません、お客様。本日カップルのご来店はお断りさせていただいておりますので。」
「へ?」
を、遮るように綺麗な女性が笑顔で、だけども何処か怖い顔で割り込んで来た。
「あ、いや……僕たち兄妹なんですけど……」
「え?兄妹!?あ、あははぁ…失礼しましたぁ。二名様、ご来店〜」
反転したような態度で案内され、なんだか拍子抜けな感じだ。男の人はやれやれといったかんじで溜め息をついていた。
席に着き、メニューを見る。レストランというより喫茶店と言った感じだな。
とりあえず腹にたまりそうなものを頼むと、麻理が身を乗り出して聞いてきた。
「ね、ねえ。私達、カップルに見えるのかな?」
「うーん……若い男女って言う組み合わせなら、大抵そう見えちゃうんじゃないの?よくわからないけど。」
「『私』と『おにいちゃん』が、カップルに見えるかどうかだよ。他の女の子じゃなくってっ!」
「え、ええと……」
「あんまりここで色恋沙汰は話さないほうがいいぜ。」
「うわっ!」
「きゃあ!?」
二人間を割るように、さっきの男性店員が飲み物をテーブルに置いた。
「あ、ワリィ。驚かせるつもりじゃなかったんだがな……それより、あいつ、機嫌悪いからカップルだの恋だのは止めたほうがいいぜ。」
「……フられたりでもしたの?あんなに綺麗なのに…」
「まぁ、な。そんなとこ…」
「はいはいはい、お客様口説いて無いでさっさと仕事しましょぉーねぇー!」
「あだだだだっ!やめっ、ひっぱんな!ちぎれるってば!」
その女性にひっぱられ、店員さんはいってしまった。確かに……機嫌が悪そうだ。
それから一通り食事を済ませ、休んでいる時に携帯を確認してみた。
センター問い合わせ………
50件
「ぶっ!」
思わず食後のコーヒーをはきそうになった。誰からかは予測できるけど……一応送信者だけ確認していく。
……やっぱり、登録されて無い……『あの』アドレスだった。
「…あれ…」
だが、途中に一件だけ…
『frm沙恵ちゃん』
沙恵ちゃんからのメールがあった…
GJ。このメール地獄はくるものがあるぜ!
あとこの喫茶店に見覚えあるぜ!具体的には285あたりで。
>>5 しょっちゅうナンバーワン云々いってるのはお前さんかい?
荒れるからやめてね
ちょwwwwクロスオーバーwwwwwwww
こういうお互いに影響与えない程度に接触するクロスは個人的にツボ。
GJ
クロスオーバーktkr!ストーカーメール凄す……
>>1乙
>>13 ちょっと待って
メールの送り主は沙恵ちゃんなのか?
それとも、先輩
大穴の、妹
一体誰だ・・w
気になるぞw
>>19 考えるな感じるんだ
あんまり予想とか議論したりすると作者様が書きにくくなるかもしれんから
そっと胸の内に自分の考えを留めといてwktkするのがよかろうよ
カチ
カチ
それは歯の噛み鳴る音。ほんの一瞬だけ歪な半月を描く唇。最愛の幼馴染でさえ知らないシグナル。
折原千早という女の、それはスイッチだった。
帰りのHRが終わると、千早は一緒に帰ろうと言うために一目散に智の席へ駆ける。教科書を鞄へ片付けるのは後回しだ。
例え一緒に帰るのが10年来の決まりごとだったとしても、千早は必ずこうして誘いをかける。
一々言わなくても一緒に帰るのにと智は言うが、『ちゃんと形式を取るのは大切なことなの』と千早は返している。
そう、形式は大切だ。最早限りなく夫婦に近い自分たちだけど、言わずとも互いの気持ちは分かりきっている自分たちだけど。
ちゃんと改まって「好きだ」と言って欲しいのが千早の気持ちだ。受け止める用意はいつだって出来ているのだから。
それに、この帰りの誘いは今や決定事項の確認とは限らなくなってしまった。
あの暗い――を通り越して、邪悪とさえ言える気配を纏った女の所為で。
カチカチという音を鳴らす頻度が、この数ヶ月で異常なまでに上がっている。
「智ちゃん、一緒に帰ろっ」
「悪い千早、今日も部活なんだ」
カチ
「また・・・? ここのところ毎日だよね。以前はそんなことなかったのに・・・」
そう。正式に所属しているわけではないものの、智はオカルト研究会に参加している。大抵週に1回か2回、多くて3回というところだ。
本人曰く「巷のインチキなオカルト番組の100倍は面白い」ということだが、千早にとっては共に居られる時間を害する、悪魔の誘いでしかない。
最初は、当然のように千早も共に行こうとしたのだが、『先輩が秘密厳守っていうんだ。ごめんな』と智に申し訳なさそうに謝られては、引き下がらざるを得なかった。
悪魔の名前は神川藍香。様々な風聞を持つ先輩だが、千早の認識は悪魔の一言だ。それも比喩ではなく、文字通りの意味で。
霊感があるなどというつもりはない。だが、その女とすれ違った時に千早は恐怖を感じたのだ。人間を害する存在に抱く、本能的な警戒心や敵愾心を。
その悪魔が、大事な智に目を付けた。それも、智を堕落させようとする淫瘍な空気を纏って。他の誰も気づいてないようだが、自分の目だけは誤魔化せない。
「どうしても! いいから先に帰ってろ! じゃあな!」
カチリ
智ちゃんが怒鳴った。怒鳴られたのは初めてじゃない。でも、智ちゃんはこんな理不尽な怒鳴り方は絶対にしない。
あんな風に目を逸らして逃げるように去っていくことは、絶対にしない。
智ちゃんは取り込まれようとしているのだろうか。魔に魅入られてしまったのだろうか。
私の智ちゃんが、私を残してどこかに行ってしまうなどあり得ない。あの悪魔が――人に仇なす淫魔が、智ちゃんの心を蝕んでいるんだ。
カチ カチ カチ
助けなきゃ、智ちゃんを。唯一無二の、パートナーとして。
妹に期待。
千早の歯鳴らしの癖は、周囲の誰も知らないものである上、千早自身意識して行っているものではない。
この行為が初めて為されたのは小学校3年生、8歳の時。体育でケガをしたクラスメートの女子に智が手当てをしているところを見た時だ。
「あんっ・・・!」
「ごっ、ごめん・・・。その、くすぐったかった?」
「う、うん、ちょっと。でもイヤなわけじゃないから。続けて、高村くん」
・・・カチ
保健の先生がいない時だったのだが、保健委員だった智は見よう見まねでその女子の膝を洗い、消毒をした。その時の、太股に触られていることに頬を赤らめる少女と、
同じく頬を赤らめながらも必死に意識していないふりをして手当てに集中する少年の姿を見た瞬間、千早の唇は笑みの形に歪み、歯が本人にしか聞こえない音でカチリと鳴り響いたのだ。
それは、恐ろしく早い覚醒を迎えた『女の嫉妬』だった。
元々、千早は智が自分以外の女の子と話すことにとても焼きもちを焼く少女だった。しかしそれは、飼い主に構ってもらえない犬のような、弟妹が生まれたため親に構ってもらえない姉のようなものであり、
ストレートな感情の発露だった。『智ちゃん、他の女の子となかよくしちゃやだぁ〜!』と子供じみた癇癪を起こして幼馴染に纏わり付く様は、周囲をして「わんこ」の通称を戴かせたほどだ。
だがその時の千早はただ見ているだけだった。ユラァ、と唇を歪め、カチカチカチカチと加速度的に増して行く歯鳴らしの音は、真冬の風に凍えているのかと思わせるほど。
そして、見開かれた目は瞬き一つしない。まるで、目の前の光景を一瞬たりとも逃すことなくその網膜に焼き付けんというばかりに。
30秒ほどして智たちはようやく千早に気づいたのだが、その時にはいつも通りの千早がいた。笑みは自然な流線型を取り、歯が鳴っていることも当然ない。
『ケガは大丈夫?』と小走りで二人の下へ近づいていった。
平気だよとか気をつけろよと笑いあう少年少女の姿は、どう見ても仲の良いクラスメートの談笑だった。
・・・その数日後、膝に絆創膏を貼った三年生の少女が、階段で足を滑らせて転倒、数ヶ月入院するほどの重傷を負ったのはまた別の話である。
普段から智を目で追っている千早なので、歯鳴らしの癖が嫉妬心の発露だと自覚するのは早かった。
ふと我に返って歯が鳴っているのに気づいた時、視線の先には智がクラスの女子と話している光景があったからだ。音が鳴るたびに泥が肺に堆積していくような感覚に陥り、吐き気さえ催すようにさえなった。
そして、そんな思わず顔を歪めたくなるような苦しさを訴える内面とは裏腹に、虚ろな笑みを浮かべた表情は、口元の笑みの曲線を不自然なまでに深くしていくのだ。
泥の堆積は堤防の決壊に似ていた。溜まりに溜まった鬱屈は、いつか暴発して全てを押し流してしまうかもしれない。
しかし、堤防が崩れることはなかった。千早にとってそうであるように、智にとっても千早以上に大切な存在がなかったから。
向けられる声、笑顔。触れる指先、抱く腕―――その全ては千早のものだったからだ。
智が友人の一人、クラスメートの一人ではなく、特定の個人を意識してそれらを向けるのは千早が唯一の存在だった。
積み重なる泥濘全てを覆い隠すほどの愛情に包まれて育った少女は、故に自覚していない。
己の中の独占欲がどれほど肥大化しているかを。
満たされることに慣れきった心がどれほど脆いかを。
堆積した泥は、隠されることはあっても無くなることはない。今や天高く積みあがったそれは、智の更なる愛情を求めて決壊を必死に耐えていた。
とき○も爆弾女、折原千早でした。
千早の一人称はもう少し続きますが、キリがいいので一旦切ります。続きはほぼ出来ているので、土日中に投下します。
>>◆pmLYRh7rmU様
「クロック〜」リニュ版序章、お疲れ様です。ここからは私も一読者として楽しませてもらおうと思いますので頑張ってください。
ところで、もしまだ無題ならタイトルに「クロック〜」を使ってやってください。
もちろん、作者様が独自に題を考えているのなら、差し出がましいことになりますけど。
麻衣実ちゃんの入院期間は一ヶ月弱。怪我自体は二週間足らずで完治したのだが、残りは病
室に実質軟禁状態にされていた。手間をかけさせられた腹いせに、彼女の父親が病院側にそう
いう診断をさせたらしい。かといって麻衣実ちゃんも素直にそれを受け入れたわけでもなく、父娘
二者間で国際交渉さながらの緻密な駆け引きが行なわれたようだ。最終合意の協定には、雫を
殺した際のバックアップを取り付けられましたと涼しい顔をしていたから。
その入院もただベットに臥せって安静にしていたはずもなく、父親が持て余していた人材ではあ
るが現職の警官を借り入れて、絶えず俺の監視に当たらせていた。加えてその手のことのプロと
は言え、さすがに部外者が学校内部まで覗き見ることは不可能なので、彼女は俺のクラスメイト
に監視依頼を持ちかけ、そいつに俺の動向を報告までさせている。
妥協もあるが、それは目的達成への段階的なもの。一連の対応に余念はない。
そんなんで麻衣実ちゃんは、俺が学校では可能な限り常に雫と二人きりでいることも、ほぼ毎
日雫の家に通い詰めていることも、何一つ余すことなく把握している。それに関しては週に一度
のお見舞いに行く度に愚痴られるのだが、先行きが明るいせいか――俺と雫にとっちゃどん底だ
が――特に怒鳴り散らされたり泣き叫ばれたりせずに済んでいる。それは喜ぶべきことだろう。
――けど、終わりの時は確実に迫ってきていて、麻衣実ちゃんはそれだけを心待ちにしている。
夜は雫が占有していて繋がらない回線。麻衣実ちゃんはそれが空くのを健気に待ち続ける。携
帯電話は使用禁止の病院のロビーで、ひたすらに公衆電話でダイヤルする。十円玉を一枚入れ
ては通話中。二枚入れても通話中。三度かけ直しても通話中。四度受話器を置いても通話中。
何十何百と同じ動作を繰り返し、やがてやっと繋がった電話で彼女はこう言うのだ。日数だけが
磨り減っていく、死へのカウントダウンを。
「後、七日で幸平先輩は私だけを愛してくれますね」――と。
――でなけりゃ、雫との通話が終わった途端に毎度都合よく呼び出しはかからない。
麻衣実ちゃんは告げている。『これは猶予期間です』と。
それが、本当の意味での理由。麻衣実ちゃんが病室から出ないわけ。
敵に送る塩はただの援助ではない。そこには遅効性の神経毒が仕込んである。最後の手向け
として幸福を味わわせた後に、腑抜けたところを狙う寸法だ。
事実、最近の雫はすっかり俺と二人きりの日々に酔い痴れてしまっている。
件の騒動以来、遠巻きに避けられていることも関係しているが、ほとんど四六時中べた付きっ
放しだ。麻薬常用者並みに蕩けられ、依存的に心酔されるのが心地よいのは相変わらずだが、
これでは麻衣実ちゃんの存在を覚えているかどうかすら怪しい。こちらからその名前を出すとまた
狂乱しかねないし。遠まわしに言わんとしても、無意識下で惚けられてるような節があってどうし
たものか。兎にも角にも警戒心がなさ過ぎる。全部が全部隙だらけなのだから。
――持て余す、という意味ではどっちもどっちか。少なくとも俺ごときの悩みが届く範囲にいるよ
うな二人じゃない。指折り数えて殺人予定日を待つ麻衣身ちゃんも、殺されかねないのにある意
味泰然としている雫も。ましてやその殺し合いの結末なんて……俺の知るところにはないのかも
しれない。
……当然無責任にならない程度に俺も頑張るけどさ。身を挺すりゃ俺だって雫の盾くらいには
なる。さすがに俺が怪我か重態か――あるいは死か――になりゃ、麻衣実ちゃんも考え直してく
れるだろう。昨日、必死で考えぬいてやっと思い付いた奥の手がこれとは自分の自己犠牲の精
神に嘲笑の一つでも送りたくなるけど。
そういえば、何考えてるのか読めないことがもう一つ。
普通、殺しの計画や監視していることを、殺しのターゲットの恋人同然であり、また監視の対象
である男に包み隠さず話すかね? 『幸平先輩の許可を取っておきたいので』って言われてもさ、
ピンとこないというか……、ああやっぱり俺には量り切れねえな。それが愛の形ってことだけは、
陳腐ながらも理解できるんだけど。
微妙に話がズレているような気がするが、つまりそれは俺が一ヶ月の間自らの監視役に選ば
れた相手と自由に交流できたということである。対象が女子ゆえに雫絡みでそのタイミングは限
定されていたが。――けど、仲間意識くらいは湧いてもおかしくない期間だった。
「アナタってつくづくどうしようもない男なのね」
急用とやらで教師の消えた自習時間、そんな言葉をかけられた。
受験コース別に分けられた特別編成授業では各クラスは分解され、バラバラに振り分けられる
ので、この教室に雫はいない。いたら近寄るだけで涙目で睨まれるだろうから俺に話しかけるよう
な猛者はいないはずだ。それが例え、性悪の権化であっても。
「今は静かにしとくべき時間じゃないのか?」
「そう思うならベランダにでも出たらどう? 気を利かせられないようじゃアナタも同罪よ」
まさしく止まることを知らない減らず口にイラつく。人の神経を逆撫ですることにかけちゃ、コイツ
は俺の知り合いの中でも随一だ。
任期が切れて肩書きが前会長に変わったことでいよいよもって好き勝手し始めたのか、その底
意地の悪さが表に出る機会が増大している。
だが、クラス中が目線は向けずとも耳で様子を窺っているのは事実なので、やむなく表に出た。
見上げた空は日差しを曇天が遮り、涼風が肌を刺す。少し、冷え過ぎているかもしれない。
「嫌われ者同士仲良くしているようで面白くないな」
「同感ね。でも今更何を思われたって関係ないんでしょう?」
「そりゃそうだ。そうでなけりゃ俺は今頃とっくに雫を見放してる」
「それをどうしようもない男って言うのよ。アタシは目立っても別にいいけど、アナタはちゃんと竹
沢にフォローしておきなさいよ。叩けば割れるガラスのように脆いみたいだから」
俺の言い切りと同じくらいはっきりとした嫌味が返される。どうしようもないのはお互い様だが、
反応して無益な言い争いの火種を蒔くほど俺も馬鹿じゃない。つーか、ガラスは脆くないぞ。それ
を叩いたお人の精神が相当に強靭だからな。
「図星かしら?」
「うるさい違う」
ニヤニヤ笑うな。見なくてもわかる。
くだらない応酬をしながら、ベランダの端まで移動した。一番端の部屋は空き教室、ここなら誰
の眼も気にすることはない。
「しかしロクでもないな……。雫を除けば俺の話し相手はもうオマエくらいしか残ってない。嫌い
で嫌いで仕方がない性悪女しかさ」
ふと思い当たったことを口に出す。口に出してからしまったと思った。
「リストカットがチャームポイントの地雷女を好きになった愚図に言われたくないわね。それにこっ
ちだって好きでアナタの相手なんかしてるわけじゃないの。これ、結構ストレス溜まるのよ?」
「予想を全く裏切らない辛辣なお言葉をアリガトウ。……それで、そこまでして手に入れた推薦
枠の調子はどうなのさ?」
麻衣実ちゃんが取引をした相手。大学と警察の仲は基本的に険悪のはずなのだが、父親が自
慢のパイプとやらで口利きをしてやったそうだ。つまり、この前会長――神林久美――は、合格
決定の出来レースを条件に、俺の監視を引き受けた。
都合は悪くない。俺もコイツも雫も含めて、学年中で浮いてるし。前会長の場合はその性格の
せいだから好きでそうしてるんだろうが。まあ、似た者同士仲良く、という先程の会話はそういう
点では外れているわけでもない。
「別に……まだ小論文の指導を受け始めただけだし」
あまり関心がなさそうに答える。
初めは上位の大学合格だけがコイツの生き甲斐だと思っていたが、ここ暫らく色々と憎まれ口
を叩き合う内に、案外そこまで学歴主義者なわけじゃないと知った。邪道を用いるのに罪悪感で
はなく無気力感を抱く辺り、悪人であることは間違いないだろうが。
もしかしてわざと悪ぶって見せているのだろうか?
「何? その安っぽい同情の眼差しは? 人を見て勝手に優越感に浸らないで頂戴」
小さく浮かんだ疑問はあっさり一笑に付せられる。その皮肉げな笑みがまた似合っていて不気
味だ。無駄に容姿の出来がいいから、妖艶の魔女の微笑にも似た色っぽさがある。
「そもそも、アナタのせいで、こっちの気苦労が、絶えないんだけど?」
強調されまくった苛立ちの刺々しさは何時ものことで、俺は平然と聞き流すと落下防止の手摺
りに寄りかかった。
舌打ちが聞こえた。素行悪いぞ。
自習はもうどうでもよくなってしまって、そのまま鉄柵の冷えた感触を味わう。遠目に見える街
並みに麻衣実ちゃんがいる病院を探そうとしたが、その方向の大部分は正面にそびえる本校舎
別館が埋め尽くしていた。
「……で、どうするわけ? このまま竹沢を見殺しにする気?」
少しの間を置いて、前会長が訊いた。どうせそれを訊くために話しかけてきたのだろうに、なか
なかどうして切り出すのが遅い。そんなことにもその高慢なプライドが邪魔をするとでも言うのか。
「オマエが訊くか? それ。麻衣実ちゃんの意向に逆らったら折角手に入れたエリートコースが
一瞬でパーになっちまうじゃねえか」
「だから訊いてるのよ。アナタが竹沢を生かすつもりなら、こっちの苦労が全部水の泡になるか
ら。もしそうなら気に食わないし、ここでアナタの足を掬ってあげるのもいいかと思って」
あまりに意地悪く笑うので逆に演出だとわかりやすい。極めて不快ではあるが、これは人一人
が精一杯になって見せている悪意なんだぞと思うと、怒りまでは起きない。
「脅すようだが……多分殺されるぞ。そんなことやったら」
それでも一応は真面目に答えた。
恋敵を殺すと宣言した彼女が、俺自身の死に対して何のアクションも取らないはずがない。恐ら
くは、その日の内に東京湾にバラバラ死体を実演してくれることだろう。
「……馬鹿馬鹿しいわね。……ミスったわ。取引相手にしてはヤバ過ぎた」
どんな捻くれ者も純然たる狂気の前では無力に等しい。前会長は珍しく弱音を吐くと、背中を丸
めてコンクリートの上に座り込んだ。
二進も三進も行かなくなって焦る気持ちはよくわかる。ましてやコイツはほとんど部外者だ。表
面だけ関わって死人が出るなんて相当目覚めが悪いだろうさ。
「説得……はできないの?」
震えかけた言葉を気力で戻した。その意地に敬意を払って気付かないフリをする。
「次のお見舞いで頼めるだけ頼むつもりだ。ただ……」
麻衣実ちゃんは絶対に首を縦に振りはしないだろう。できるならとっくの昔にやってる。俺の雫
が死んだら彼女に乗り換える薄情な性質を知っているから、尚更口先だけの言葉に力はない。
「わかってるわよ……。期待はしないわ」
揃って気落ちしたところで、隣接する建造物の合間を縫い、一陣の風が横殴りに吹き付けた。
「うわっ」
とっさに風下を向く。
乾いてしまった眼を潤そうと瞬かせると、パタパタとはためくスカートが見えた。陸上の短距離選
手のようなしなやさと長さを持ちながら、何故か女性的な柔らかさのある美脚。悔しいが眼がいっ
てしまうそれを無遠慮に折り込んだ姿勢で、前会長はそれを押さえることなく屈んだままだ。
「恥じらいくらいは残しとこうぜ……。オマエを嫌ってる俺が言っても信じられないかもしれないけ
ど、オマエは一応美人の区分に入るわけで。そんな豪快だとタダ見され放題だぞ」
「……それこそ今更よ。推薦枠の争奪戦で勝つために選考委員の教師に色仕掛けをしたってウ
ワサ、知ってるでしょ? よくあるタイプだけど、我ながらイイ線ついてると思うわ。副委員長さんか
ら話を持ちかけられなかったら、きっとアタシはそうしてただろうし」
何でそこまで大学に固執するのかは私的な問題だろう。首を突っ込むことじゃない。俺が言える
のは、こんなダウナーな状態のヤツに欲情できるわけもないし、したくもないってことのみだ。
雰囲気をさらに重くしただけで、傍迷惑な秋風は凪いだ。
「麻衣実ちゃんは今は委員長だよ。前任が受験期に入ったってことで辞退したから。後は入院
患者を名指しで指名してそのまま多数決。ロクでなしの集団も悪知恵だけは働く」
沈黙に息が詰まるのが嫌で、瑣末な間違いを指摘した。中央委員の堕落ぶりに手を焼いてい
たのは何も内部の人間に限ったことじゃない。相手は仮にも前生徒会長なのだから、そこらの事
情は既知に決まっていた。
「どーでもいいわよ。疲れるから無駄な揚げ足取らないで」
「そうだな。どーでもいいことだったな」
結局沈黙してしまう。
話せば話すだけ機嫌を損ねるだけの気がしてきたので、俺は潔く味気ないパノラマ観賞に戻っ
た。こちら側から見えるのは棟の廊下側だ。誰かに見られる心配はない。最下段の端に映る白い
カーテンの部屋を見付けて、二人分の流血の後片付けをさせられた掃除当番に黙礼した。
「……昨日会いに行ったのよ」
とうとう堪えきれずに震えた声。誰に会いに行ったかは訊くまでもない。
「中間報告? 何時もお勤めご苦労様だな」
監視者とその依頼主、どちらの言動も丸々教えてもらえる俺が果たして監視されてると言える
のかは疑問ではあるが。麻衣実ちゃんはそんなに正直者でいたいんだろうか。
「茶化さないでっ! ふざけてる場合じゃないでしょう!」
「そう、テンパるなよ。会いに行ったってだけじゃ何もわからねえだろ」
不肖の俺が雫ならともかく前会長を宥める術をそう都合よく思いつくわけがない。ヒステリックに
詰られても、こちらのペースを乱されないように気を配るぐらいしかなかった。
背中にキツイ視線が突き刺さったが、小さな逡巡の後、前会長の怒りの気配が鎮まるのを感じ
た。代わりに、身体を縛り付けるような重苦しい困惑の念が伝わってくる。
やがて、前会長はそれを告げた。
「……副委員長さん、拳銃持ってたわ」
「そうか……」
そこまでするか。麻衣実ちゃんよ。
「最近のアナタの様子を話し終えるなり、いきなりこっちに向けて一発。……当然、弾は外れた
し銃声もしなかったわ。でも、確かに本物だった。後ろの壁に穴が開いてたのよ……。……それ
で顔色一つ変えずに『試し撃ちですよ。最近イライラが溜まっているものでつい。どの報告でも竹
沢先輩が幸平先輩を独占しているから弱っちゃいますよ。……ああでも、先輩にはくれぐれも気
にしないように伝えておいてください。私は冷静ですし、それにこれはあくまで最終手段ですよ。
消音の加工こそありますが、これじゃあ偽装が無理ですので』って……。――狂ってるわよっ!」
「俺は何度も忠告したぞ。――その度に鼻で笑われて話も聞いてもらえなかったけどな」
前会長が怯えだして聞き出した頃にはもう抜け出せなくなっていたのだ。
「黙って! 元凶のアナタが白々しい態度とってんじゃないわよっ! 馬鹿馬鹿しい馬鹿馬鹿し
い馬鹿馬鹿しいっ! 何でアンタ一人のためにそこまでするわけ!? アンタの何がそんないい
わけ? 竹沢はそんなことで殺されなくちゃいけないわけ!?」
麻衣実ちゃんは正直過ぎるから、その狂気が本物に見えなかった。自意識過剰な演出に見え
た。剥製だと思っていたライオンに跨って遊んでいたら実は生きてましたなんてどれほど恐ろしい
ことか。事実を知ってしまってはそこから飛び降りる勇気を持つのは並大抵のことではない。
全てを受け入れている俺と違い、前会長は寸前になって事の重大さを認識した。そしてそれに
恐怖した。殺人という言葉の重み。細かい理屈なんて要らない。人一人が取り返しのつかなくな
い世界に行ってしまうことへの拭い去りようのない不安。そういうのに直面させられているんだ。
「アタシはっ……、ここまでヤバイなんて思ってなかったのよ……。最初は、今までこき使った仕
返しに嵌めようとしてるのかと思った。でも、先払いで推薦枠に入れてくれたからはこのまま利用
してやればいいやって……。それでそのまま続けてたらこんな……」
「……ゴメン」
コイツは口も性格も悪いし、関わっても気分が悪くなるだけだし、嘘でもなく友達としてやってい
ける自信さえない。けど、だからといってコイツが深入りさせてしまった責任は俺にある。本人が
乗り気だったので止めなかったところもあるが、それはコイツならどんな荒事でも平気だろうと決
め付けていた裏返しでもある。
「……アナタが謝ったって何にもならないわ。わかってるわよ、自業自得だって。引き受けたの
はアタシ。思い違いをしていたのもアタシ。……だから同情の余地なんてこれっぽっちもないわ」
「気丈だな……。その調子で頑張ってくれ。麻衣実ちゃんのほうは俺が何とかするさ」
それこそ死ぬ気で。
「アナタに頼って祈ってろって……? ……余計なお世話よ。馬鹿にしないで頂戴」
他人の心配をどうしてそう無下にするかね。
けどようやく立ち上がってスカートの汚れを落とす前会長の仏頂面を見る限り、何はともあれ復
活してくれたようだ。関わりのある人間が不調になられると、どうにも気分が悪い。
「そうだ……忘れてたわ。今日の放課後も生徒指導室に来るようにって、梶山が」
教室に戻ろうとした怒り足が、はたと動きを止めて振り返る。
「またか? もう十回超えてるんじゃないか? ……たくっ、そんなに俺を雫に構わせたくないの
かね? 何言われても聞く気なんてサラサラないのに」
「こっちに言われても困るんだけど? アタシはただの伝言係よ。むしろ、指導を担当してるから
って小間使いにされて嫌になってるのはこっちのほう」
不満げに睨むのも最もだが、これでまた帰り際に雫がごねる。生徒指導というのならそれこそ
雫共々すべきだと思うが……、雫を問題児扱いして相手にせず、馬の俺から射ようとしてるのが
バレバレだ。正直教育者としてどうかと思う。受験期で効率重視とでも言うつもりかよ。
前会長は呆れ顔の俺にまるで中小企業の下請け役員のように年季の入った溜息を吐くと、
「……まあ、精々可愛い彼女さんの手首にこれ以上傷が増えないようにご機嫌とってあげなさ
いな。壊れないように丁重に。縋ってくるわよいくらでも。……それしか希望がないんだから」
皮肉でも嫌味でもない。彼女がするなと俺を叱り付けた感情を。吹けば消えるような安っぽい同
情心を露にして見せた。「殺させないでよ」との呟きが聞こえたのは空耳と思いたくはない。
どうしようもないのはお互い様。それでも前会長は正面きって俺を悪く言ってきた分、遠巻きの
する噂のような陰湿さはなかったし、何よりほんの少しだけだけど、雫に優しいような気がした。
――それだけに結局最後まで良好な友人関係を築けなかったことを思うと、この時が唯一のチ
ャンスだった気がして、俺は悔やんでも悔やみきれなかった。
久しぶりの上に繋ぎの話。しかも最長かも。
そして、フラグはフラグでも立ったのは死亡フラグ。
まさか、その死亡フラグは・・・((;゚Д゚)ガクガクブルブル
あぁ、麻衣実も好きだが雫に死んで欲しくない(;つД`)
主人公の人生ハードすぎ
なんか大人びすぎ……主人公も元会長も……これが高校生の思考と会話かよ
来世では幸せになれるといいね
>37
漫画やラノベのお約束やがな
極個人的には、もっと日常の描写ネチネチ楽しみたかったなぁ
依存の描写とか、非常に好みでゾクゾクだったので。
後輩の感情知ると同時に急激展開でびっくら
ともあれ期待させてもらってまつ
なんつうか本当に病んでるって感じだな、最高!
再び、俺の自由を完全に奪った先輩は、ふらふらと部屋から去った。
失敗してしまった、という確信。
けれど、ここで嘘の言葉で武装してしまうのは……、どうしても、出来なかった。
(けど先輩、なんで、わかってくれないんだ、よ)
駄目って……言ったのに。
と――足音が、また、近付く。
「ふ、ぅふ、ふっ」
なにを笑ってるんだ……っ?
「……、む――ぅっ!?」
戻ってきた先輩は、俺の意識を砕いた道具……、フライパンを、持っていた。
後頭部の痛みが、ずきりと、よみがえる。
(なんだよ、おい、そんなモノ、持ってきて、どうする)
どうするって……、はは、は。
ここがキッチンでない以上、あれに残される他の用途は。
「治療、ち、血血、治療の、時間ですよぉ、エースケくん」
その凶器をぶらぶらと片腕で弄びながら、そんな台詞を、いたり先輩は言った。
は、ぁ……っ?
フライパンぶらつかせながら、ち、治療って……。
(治療が、必要なのは――先輩じゃないかっ!)
そんな俺の叫びも、口を塞がれては内心に消えるのみだった。
「これでがんがん、あたま叩いたら、あの……あんな、女のこと、忘れるんじゃないかなあって、思ったんですよ」
駄目だ。
「そ、そしたら、ぁ、エースケくん、私のことだけ、見てくれますし、ぇ、へへ」
いたり先輩は――。
もう、駄目なんだ。
「ぅ、む……ぅ、ぅ」
それは違うと、俺は涙目になっているのを自覚しつつ、首を振る。
違う、その手段だけは間違っている、気付いて、気付いてくれ先輩、頼むから……っ!
「……うん? ぁはは、エースケくん、すっごく嫌がってる」
い、嫌に決まってるだろう……っ!?
下手したら、今度は、し、死ぬかもしれないのに、誰が好き好んでフライパンで頭殴られ……っ!
「大丈夫ですよぉ。注射と同じで、……目をつぶっていれば、すぐに終わりますから」
お、俺の人生が、終わるって、それ。
いたり先輩が、歩み寄ってくる。
動けない俺は……、飛来するだろう痛みを想像して、震えるだけだった。
「忘れろ、ぉっ!」
あまり加減せず、それを、エースケくんの頭に振るう。
右に左に、あわせて交互にエースケくんの横顔も揺れる。
「忘れろ、忘れろ、あんな、あんな害虫、忘れて、忘れて……ぇっ!」
額が割れて、鮮血が流れる。
構わない。
それくらいやらないと、十分ではないだろうから。
「ぅ、あ、あは、ははっ」
のってきました。
お腹にも、一撃入れておきましょう。
「ふ、は、はぁ」
お腹、お腹、あたま、お腹、あたまお腹お腹あたま――。
「げ、ひ、ひひぃ、ふ、うへぁははははははははははははははぁあっ!」
至理の、治療という名前の暴力は。
一時間ほど、ほぼ休息無しで、瑛丞を痛めつけた。
「ぁ、はっ、はっ、ぁ、はっ」
鼓動の音が、うるさい、です。
見下ろせば……椅子に繋がれたまま、横に倒れている、エースケくんが、いる。
興奮する。濡れる。
ぴくぴくと弱々しく震えている様子が……いじめられた小犬みたいで、すごく。
「か、わいい、ぅ、ふふ、ふ」
食べちゃいたい。
けれど――抑える。まだ治療は、終わっていない。待機する必要が、あった。
とりあえず。
朝まで、エースケくんを、見ていようか……。
そして朝。
苦しそうに目覚めたエースケくんを確認してから、朝食を用意する。
「はい、エースケくんの」
言って、それらを床に置く。
ぎゅるるるぅ、という、空腹の音がエースケくんのお腹から響く。
手足と口を動かせないエースケくんには、その空腹を満たすことは、まあ無理なんですけど。
黙ったまま、朝食を眺めるだけのエースケくんを尻目に、私は笑顔で朝食をいただく。
「エースケくん、食べないんですか……っ? ぅふ、ふ」
そんな質問を、知らず投げていた。
さて、風邪は気付いたら全快していたので、今日は登校します。
エースケくんは、……まあ、手足はちゃんと縛り直したし、ガムテープも張り替えた。大丈夫だと思う。
昼休みに、さくちゃんに話しかけられる。
「昨日はエースケくん、来てくれたんでしょっ! で、どうだったわけさっ!? ん、んっ?」
「あはは、うん……それは秘密、かな」
まさかそのまま監禁しちゃったとは言えません。
時計を見上げる……あ、もう四時をまわってる。
ひねっていた首を、もとに戻す。
椅子と一緒に倒れたまま、ずっと、おれは耐えていた。
それは空腹だったり、のどの渇きだったり……、そして。
(やばい、やばい、まずい、ぞ、これ)
にょういだったり……。
部屋の蒸し暑さだったり。
(あついし、体中、痛いし、痛い、ぅ、痛い、よぉ)
あたまは割れるみたいに痛い。意識がちゃんとさだまらない。ふわふわする。
痛いのは、いやだ。ぅ、う……ぅう。
おれ……馬鹿、泣いてる場合じゃない、ぅ、ちくしょうぅ……っ。
ガチャリ。
(っ! ひ、ぃいっ……!)
いたり先輩、帰ってきたのか……っ?
(いやだ、もういたいのはいやだ、いや、ひぃ、ぅ、あ、うぐぅ……っ)
うごいてくれ……、よ。
もう……なぐられたくないよ、いやだよ。
たすけてよ、だれか。
かえって来るなり、先輩はガムテープをはがしてくれた。
のどが渇いたというと。
「ん、むぁ……ちゅ、む」
口移しで、みずを飲ませてくれた。
とても、きもちがわるい、けれど。
蒸し暑い部屋で死にそうだったおれには、その行為をこばむことが、できなかった。。
その後、椅子を立たせて、先輩は俺の真正面に座り。
「じゃあ質問しますよっ? ――エースケくんの好きな人は誰ですか」
まっすぐにおれをみつめて、問いかけられる。
おれの、好きな人。
それは――。
「ゆ、」
あ、違う、しまった。
「――えと、いたり、先輩です」
「……ふうん」
しっぱいした。
いたり先輩……すごく、こわい顔、してる。わらってるけど、こわい。
「エースケくん……、ねえっ? 最初、ゆ、とか言わなかった、かな……っ?」
「い、いってない、いって、ないです」
「言ったよね」
「ちがう、ちがいま――っ」
「言ったよっ! 私には聞こえたっ!」
頬から、響く音が広がる。
平手でたたかれた。
「駄目だなあエースケくんは。今日もたくさん、たたかないとね」
「そ、そんな、いや、やだ、いやだっ」
「あはは。泣いてるエースケくんも、可愛いよ」
そん、な。きょうも、いっぱい、たたかれるのか……っ?
再びガムテープで口を塞がれる。
こわい、いや、やだ、ぃ、や……ぁ、う。
「あ……、エースケくん。おもらししちゃったの……っ?」
「しょうがないなあ、私がふいてあげるね」
「くすくす……そんなに泣いちゃって、赤ちゃんみたいだね……エーちゃんっ?」
ぅ、うう、ぅう。
うあ、あ……っ、ああ、ぅ。
二等辺と疾走キターーーーー!!!
みなさまが忘れたころに投下させて頂きました。
展開遅いです、すいません。
いたり先輩が素晴らしすぎる(*´Д`)ハァハァ
>>47 い、いいたりいたり先輩可愛いよ可愛いのですよいたりせんぱいいたりせせせんぱぱいたりりりあうあうあうあうあうあ
(もはや言葉にならない)
実に痛り先輩だ。
生爪剥がす拷問まだ?
実にマナマナな展開ですね
いたり先輩の病みと調教は最高だな!!1!
投下します
「ネトゲ?なにそれ――――?」
「ああ、ネットに対応したゲームだよ、そこで知り合ったんだ」
放課後、優華しつこく月夜との関係を聞いてきた
最初は軽く流すつもりでいたけど、最後には根負けし結局話してしまった
「はぁ〜ん、ほぉ〜、ふぅ〜ん、現実では女の子に指一本触れられないからネットに逃げたんだ」
おいおい、お前も普通にチャットとかしてるじゃないか、顔も知らない―――もうリアルで逢っちゃったけどね、そんな相手になぜに嫉妬する
それに俺だってお年頃だ、お前とあ〜んなことやこ〜んなことなんかをして充実した恋人ライフを送りたいよ
けど、身体が拒絶する、怖いと逃げる、行くなと抑える
俺が女性恐怖症になったのは数年前だ、理由は解らない
数年前にと時期はわかっているのになぜ理由が解かは――――その時期の記憶が曖昧なのだ
あれは優華の誕生日だった
その日、俺は彼女にプレゼントを渡そうと優華の家に向かう途中だった
急に意識がなくなり、目覚めたとき俺は女性恐怖症になっていた
そのとき何があったのか俺にはわからない、けどあの時から俺の中の本能のようなものが訴えてくる
女に近づくな・・・・と
まぁ、そんなことはいいとして・・・・
「お前、穂華・・・・だろ?」
「あら、気づいていましたの?」
時同じくして優華は二重人格となってしまった
本人は知らない、知っているのは穂華本人と俺だけだ
「なぜにキミが?」
「心配しておりましたのよ?和地が小汚いメスブタに騙されているのではないかと」
「何度も言うようだけど、俺の恋人は優華でキミじゃない・・・・お分かり?」
優華もそうだけど、彼女――――穂華もなぜか俺に好意的なんだよな
それも度が過ぎるほどに
正直な話、恋人としては間違いなく役不足な俺を好きでいてくれるのはすさまじく嬉しい
の、だが・・・・俺が好きなのは優華であって穂華ではない
「あら、身体は同じなのですよ?それに性格だって優華よりは・・・・」
「そういうこと言うから、ダメなの」
そう言うと優華は不満げに俯いてしまった
「あの〜?」
泣いているのでは?逃げようとする身体を必死で引っ張り近づいて顔を覗く
「和地♪」
不意をついた穂華が俺の頬に口付けた
寒気と共に温もりが伝わった、身体は・・・・大丈夫、拒絶反応は示していない
「うぅ〜ん、そろそろ戻らないと優華が気づきそうなので私は戻りますね?あとのフォローはお願いします」
ぺこりと頭を下げると目を閉じ一瞬よろめいた
「――――――あれ?私?」
「ああ〜、なんだまた夢遊病じゃないか?」
「え、またなの?うぅ〜、自分では意識ないからわからないよ」
普通気づくだろうに、突然意識がなくなるんだぜ?
それでも優華は気づかない、神様・・・・優華を天然に生んでくれてありがとう
「・・・・」
あれ?どうした?俺の顔をジッと見て
「口紅・・・・」
寒気がした、その視線が俺の頬一点に集中している
さっき穂華が付けたキスマークだ、急すぎて拭くのをすっかり忘れていた
それに、穂華の奴・・・・完全に狙ってやがる
「ああ〜、それはお前さんが付けたものですよ〜」
完全に目が泳いでしまっているのが解る
嘘ではない、嘘ではないのだが・・・・つうか俺の立場が微妙すぎる
当然のこと動揺する俺に優華は疑いのまなざしを向けている
「浮気したら・・・・あんた殺して私も死ぬからね・・・・」
していません、神に誓って・・・・
完全に目が据わっている彼女に俺は心で念じた
あれは浮気ではない、しかも不可抗力だ
「あはは〜、冗談がうまいな優華は」
ガシ!俺に腕を優華の手が掴んだそれも物凄い力で――――
身体が拒絶反応を示す、身体中から汗が流れ、内に秘めるものが逃げろと訴えてくる
「冗談だと・・・・思う?」
優華の奴、最初こそ俺に自分より好きな人が出来るまでと言っておきながら
俺が告白を受けた瞬間からその独占欲が爆発した
元々俺は触れられるのがダメなだけで女性自体が嫌いではない
声高らかというのもなんだが、女の人が大好きだ
なので話したりするのは大丈夫、けど・・・・
最近は俺が優華以外の女の人と会話するだけで不機嫌になり、あとでネチネチ言ってくる
それに触れられないんだから浮気なんて出来ようもない
まぁ、最近は度が過ぎる優華のスキンシップのおかげでだいぶマシになったな
腕を掴まれた瞬間は拒絶を示した身体も今は落ち着いている
「いい、覚えておいて、私を捨てたら――――どうなるか」
はい、ベタ惚れしております――――優華さま
食い込む指を一本一本見つめ俺は心に念じた
「ただいま」
「お帰り〜♪」
帰るなり黄色い声が俺を出迎えた
パタパタと音を立てて今から一人の女性が出てきた
ウェーブの掛かった髪がはらはらと舞い女性の喜びを表現した
「なんですか?この新婚家庭のようなお出迎えは」
「あら、違うの?あ・な・た♪」
可愛らしく小首をかしげる女性
この人は茜さん、俺の義母だ
父の再婚相手とかそういうのではない
正確に言えば叔母さんさんだ
俺の両親が墓標に入ってしまったので今は茜さんが俺の面倒を見てくれている
歳も7つしか違わないので母というよりも姉に近いかもしれない
「なにか良いことでもあったの」
「それがね〜」
パンパカパ〜ン♪
と、音を立て両手を広げた茜さん、身体をずらし後ろの景色を見せた
「ども、今日から同居することになった月夜です、よろしくです」
終わった、俺の人生終わった
「なんか照れるな〜、てへり♪」
頭の中で嫉妬に狂う優華がナイフを持って俺を追いかけてくる姿を想像し俺はそう思った
とどめ、だ・・・・長らく続いたこの戦いもようやく終わりを告げる
まずはこの女・・・・夏美からだ
この女が一番許せない、私の目の前で涼さんの唇を奪い、そして私から寝取った
「涼さん、見ていてください、今から・・・・最後の治療を開始しますからね」
ニコッと笑んで私はナイフを天空に向かって思い切り振り上げた
「死ねぇぇぇぇぇ――――――!!!!!!」
痛みにもだえながらも夏美は迫る刃先を察知し身体を横にずらした
私はすばやく地面からナイフを抜くとまた振り上げた
「しぶといんだよ・・・・はやく死んじゃいなよ・・・・醜女」
「あぁあああぁぁあぁぁ!!!!!」
急に聞こえてきた奇声と共に私の脚から痛みが前進を巡った
見ると夏美に馬乗りになり正座のような形を取っていた私の脚にナイフの先が食い込んでいた
口にナイフを咥えて必死で私の脚にナイフを食い込まそうとする冬香
なぜ、この女がナイフを?
そっか、さっき蹴飛ばされたやつか
「お兄ちゃんをいじめる人も寝取ろうとする女も、私が全部やっつけてやる!」
冬香に意識を集中させたのがまずかった、夏美が最後の力を振り絞り私を押しのけた
なす術なく私の身体は地面に投げ出され叩きつけられた
その拍子に落ちて地面に転がったナイフを夏美は血に染まった手で掴むと私の上に馬乗りになった
さっきまで私がとっていたポジションを取られ私は身動きがとれなくなってしまった
「死ぬのはあんたよ、涼ちゃんを苦しめる、泥棒猫が――――!!!!!」
肩先に切っ先が食い込んだ
脚のときとは比べ物にならないほどの痛みが私を襲った
「まだまだよ、あんたには地獄を見せてやるんだから・・・・ふふふ」
冬香も私の腕を拘束し不敵に笑んだ
「だ、大丈夫?」
涼ちゃんが心配げに私を見つめ包帯を取り替える
「あ、お姉ちゃんばかりずる〜い!お兄ちゃん!私も私も!!」
涼ちゃんはやれやれと方をすかすと今度は冬香の包帯を取り替え始める
そして私は衣装ダンスの隙間から覗く憎悪に満ちた瞳を見つめ微笑んだ
中にはもちろん、南条秋乃を縛って入れている
なぜ警察に突き出さなかったかって?
そんなことしても私の気が晴れないからだ
あの出来事は強盗に刺されたとして南条秋乃のことは一切口にしなかった
被害者の私が犯人を匿うなどと思われるわけもなく案外簡単にこの状況に持ち込めた
それと、涼ちゃんはこのことを知らない
だって、その方が涼ちゃんの本音を聞かせられるでしょ?
「ふぅ〜、終わった〜」
「涼ちゃ〜ん、お姉ちゃん〜涼ちゃんに癒してもらいたいな〜、なんて」
「あ、私も〜」
こうして私たちは涼ちゃんと私たちの行為をあの女に見せ付けてやった
「あん!あぁぁん!涼ちゃん好きよ!!!!!」
「僕もだよ!夏姉ちゃん!」
「私は〜!?ねぇ私は!お兄ちゃん!!!!」
「冬香も、大好きだよ!!!」
凄まじい殺気を背中ぬ受けながら私たちは何時終わるとも知らない夜の営みを続けた
ここまで読んでくださった方、お疲れ様です
ここから夏冬姉妹の逆襲が始まります
いたり先輩最強伝説の始まり
誰か俺もフライパンで殴ってくれ
……沙恵ちゃん、どうしたんだろう。一応内容を確認する。すると……
『frm沙恵ちゃん
いたいよ。』
「?」
たった4文字の簡単な文だった。でも…痛いって?もしかして…もうストーカーが手をだしたのか?だとしたら危ない!
「どうしたの?おにいちゃん。怖い顔して……」
「え?…いや…な、なんでもないよ。」
麻理にもわかるほど怖い顔してたのかな。でも、やっぱり心配だ。痛いって……普段沙恵ちゃんが送ってくるメールと全然違う。
時間が経つ度に、どんどん不安が広がっていき、それを内側に隠しきれなくなる。
「それでね……って聞いてる?おにいちゃん。」
「あ……うん……あのさ、麻理……」
「え?」
「ちょっと電話しても…いいかな……」
「だ、誰に?なんで今…」
「うん…ちょっと沙恵ちゃんに……」
そう言うと、さっきまで笑顔でしゃべってた麻理の顔が、一気に怒った顔になる。
「どう……して…」
「え?」
「どうして!?今は私と一緒にいるんでしょ!?なのに……なんで沙恵さんに電話なんかするの!?他の女の子の事なんか心配してるの!!?」「ちょっ…ま、麻理…」
「うるさいうるさいうるさい!!もういいっ!おにいちゃんなんか死んじゃえ!バカァッ!!」
バシッ
鞄からなにか袋を取り出した麻理は、それを僕に投げ付けて外へ走って行ってしまった。突然のことに、呆然としている僕。
麻理に投げられた袋を手に取り、開けてみると………
「あっ!」
中に入っていたのは、僕が前から欲しいと思っていた腕時計だった。もちろん、安いものなんかじゃない。麻理も時々臨時のバイトをしていたけど……まさかこれを買うために?
「僕は……なんて最低なことを……」
いくら相手が兄でも、一緒にいる時に他の事に気を取られていては、心中穏やかじゃないだろう。
それに……僕は気付いている。麻理の気持ちに……気付かないフりをしているだけで……
「追えよ。」
「え?」
気付けば、さっきの店員さんが声を掛けてきた。
「今は追うべきだと思うぜ。」
「……あ、うん!」
そう返事をした直後、僕は店から飛び出た。
「……お代はあんたの給料から差っ引くわよ。」
「あああ〜〜!!金払ってけぇ!!!!」
街を走る。全力で走る。昼下がりの人の少ない道を、がむしゃらに走る。麻理は何処へ行ったんだろう。あの様子だと家に帰ったのかな……
不意に立ち止まり、空を見上げるあれだけ晴れていた空が、今では薄暗くなっている。一雨きそうだ……
と、そのとき
〜〜♪
携帯がなったこの着信音は電話だ。表示をみてみると……
『沙恵ちゃん』
「あっ!」
もう一つの心配の種であった、沙恵ちゃん本人からの電話だった。慌てて電話に出る。
「も、もしもし!?沙恵ちゃん!?」
「あーっ!やっと繋がったよ。いくらかけても電源切ってるっていわれちゃうんだもん。」
僕の心配とは裏腹に、元気な声の沙恵ちゃん。
「沙恵ちゃん!?大丈夫なの!?『いたいよ』ってメール送ってきたけど…」
「へ?いたい?……ええっと……あ、ああっ!ちょ、待った!」
そう言うと沙恵ちゃんはなにやらぶつぶつ言っている。なにをしてるんだろう。
「あ、えへへ、そのー……送るつもりは無かったけど間違えて送っちゃったみたい……それに、文も『あ』が抜けてたし……あわわっ!じゃなくてっ!う、うん僕は大丈夫だか!」
「とにかく、大丈夫なんだね?」
「うんっ!ヘーキヘーキ。痛くなんてないよ!…ただ…」
「ただ?」
「心が…痛いかな、なんて……」
「心?」
「わーっ!なんでもないっ!あはは、今日の僕、おかしいね!……そ、それより、麻理ちゃんどうしたの?泣いて家の中に入っていったみたいだけど。」
「え?麻理が?」
よかった。ちゃんと家に帰ったのか。
「うん……喧嘩でもしたの?今日一緒に出掛けたんでしょ?」
「うん、まぁ、そんなとこ。」
「おおー、ついに喧嘩かぁ。ま、キミ達はそれぐらいが丁度いいよ!仲が良過ぎると……不安になっちゃうから。」
「……うん。」
「じゃ、じゃあ、ボクの誤解も解けたっていうことで、切るね。ばいばい!」
「うん、ばいばい。」
電話を切り、ホッと溜め息。麻理の無事がわかっただけでよかった……でも、今麻理に会ったらなんて言えばいいんだろう。このままじゃダメなことはわかっている。
答えが見つからないままでは帰れないので、考えながら時間を潰して帰ろう。そう決めると、僕は適当に街のなかをぶらついた。
・
・
・
・
六時を回った頃に家についた。その頃にはそらは真っ暗になり、雲も不気味に黒かった。
とりあえず麻理に会ったらあやまろう。そう決めて家はいる。
「ただいまー。」
……やっぱりいつものおかえりはない。怒って…るよね……
靴を脱ぎ、真っ先に麻理の部屋までいく。
コンコン
「麻理…」
ノックをし、声をかけるが、返事はない。そんなに怒ってるんだろう。
コンコン
再度ノックするが、やっぱり返事はない。仕方ない……ちょっと失礼して。
「麻理?開けるよ?」
ガチャ
断りをいれてドアを開けると……
「なっ!?」
麻理の部屋は衣服で目茶苦茶になっていた。まるで争ったような形跡……そうだ、麻理は?どこにもいない!?もしや……
再び不安が広がり、家じゅうを探し回るが、麻理の姿はどこにも見当たらない。
「嘘だろ?……麻理、麻理!!」
いてもたってもいられず、家から飛び出た。外はいつの間にか雨が降りはじめていた。かなりの土砂降りだ。でも、気にしていられない。麻理を探しに、再び街の方まで駆け出した…………
「麻理ー!麻理ー!!」
恥も外聞も無く、街中を駆け回る。周りの人がどう思おうが関係ない。今は……麻理を見つけないと…
息が上がってもペースを落とさず走った。けれども努力は虚しく、麻理はいくら経っても見つからなかった……
「麻理……麻理…」
気付けばもう八時。あれから二時間も探したのか。絶望に包まれながら家に入ると……
「え?」
台所からいい匂いがしてきた。靴を脱ぎ捨て、台所に駆け込むと……
「あ、おにいちゃん……どうしたの?…こんな時間に、ずぶ濡れになって……きゃ!?」
自分でも無意識のうちに、麻理を抱き締めていた。
「よかった……よかった…」
「ど、どうしたの?冷たいよ……」
「心配したんだよ……家に帰ったって聞いたのに……何処にもいなくて……部屋だってあんなに荒れてたから…」
「夕飯の買い物に行ってたのよ……って、部屋に入ったの!?」
「う、うん。」
「あーっもう!出掛ける時片付けなかったから、服散らかしっ放しだったのよ。」
そうだったんだ。よかった。
「でも……そんなに心配してくれたなら……許してあげる。今日のことは……」
「うん……そのことは、本当にごめん。麻理の気持ち、何も考えてやれなくて……それとこれ、ありがとな。」
そう言って、さっきの時計を見せる。
「あ…う、うん…」
麻理が照れたように下を向く。なんだかこっちも照れくさい。しばらく沈黙が続いた後……麻理がさきに口を開いた。
「あのね、おにいちゃん……」
「ん?」
「わ、私…ね。……お、おにいちゃんの……おにいちゃんの事が……す…」
フッ
と、急に目の前が真っ暗になった。
「きゃぁ!?」
不安になったのか、麻理が力強く抱き付いてくる。それを守るように、僕も麻理を抱き留める。
停電だろうか。……いや、周りの家は電気がついている。ならブレーカ?ウチのブレーカは外にあるから一旦出ないと………
〜〜♪
その時、携帯がなった。今度はメールだ。暗闇の中、メールを見てみると……
『鬼ごっこ再会(^-^)
ターゲットは…その抱き付いてる女!……私は鬼だからね、殺すまで追いかけちゃう♪それでは、スタート〜』
そのメールを読み終えた瞬間…
ガチャガチャガチャ…ダンダンダン!
玄関をこじ開けようとする音がした……
僕は別の意味で、目の前が真っ暗になった。
鬼キター!!(|||゚Д゚)
掌に鈍い感触が伝わってきた。お肉を捌くときの手応えに似ているかと思っていたけれ
ども、全然違う。覚悟もしていたけれども、実際に刺してみれば酷く生々しいその弾力は
私に吐気を沸き上がらせた。
だけど、ここでくじけてはいけない。
弱る心に喝を入れて、刺す直前に閉じてしまった目を開いた。最後までやりとげると決
めたのは自分なのだから、そこから逃げてはいけない。
一瞬。
何が起きたのか理解出来なかった。唇に柔らかい感触が当たり、数秒してそれが離れて
いく。それを名残惜しいと思いながら姉さんの顔を直視すると、そこには微笑を浮かべた
顔があった。諦めでもなく、怒りでも悲しみでもなく、純粋にこちらを包み込もうとする
暖かな表情。不純物など混じっていない、完全に純粋なものだ。
どうして、と言おうとしたが声が出てこない。唇も舌も動かせず、機能を全く果たして
いない。それでも何かを言おうとしても、ただ喉の奥から細く空気が漏れてくる。ドラマ
などでは刺された方がこんな状態になるのに、これでは立場が全く逆だ。
それでも、せめて何かをしたいと思い小刀から手を離した。短い時間で思考して、まず
は抱き締めようと思い腕を伸ばす。しかしそれは宙を切った。直後、重いものが床に落ち
た音が聞こえてくる。畳敷きの筈なのにやけに大きく聞こえてくるそれで、やっと思考が
追い付いた。
掌に鈍い感触が伝わってきた。お肉を捌くときの手応えに似ているかと思っていたけれ
ども、全然違う。覚悟もしていたけれども、実際に刺してみれば酷く生々しいその弾力は
私に吐気を沸き上がらせた。
だけど、ここでくじけてはいけない。
弱る心に喝を入れて、刺す直前に閉じてしまった目を開いた。最後までやりとげると決
めたのは自分なのだから、そこから逃げてはいけない。
一瞬。
何が起きたのか理解出来なかった。唇に柔らかい感触が当たり、数秒してそれが離れて
いく。それを名残惜しいと思いながら姉さんの顔を直視すると、そこには微笑を浮かべた
顔があった。諦めでもなく、怒りでも悲しみでもなく、純粋にこちらを包み込もうとする
暖かな表情。不純物など混じっていない、完全に純粋なものだ。
どうして、と言おうとしたが声が出てこない。唇も舌も動かせず、機能を全く果たして
いない。それでも何かを言おうとしても、ただ喉の奥から細く空気が漏れてくる。ドラマ
などでは刺された方がこんな状態になるのに、これでは立場が全く逆だ。
それでも、せめて何かをしたいと思い小刀から手を離した。短い時間で思考して、まず
は抱き締めようと思い腕を伸ばす。しかしそれは宙を切った。直後、重いものが床に落ち
た音が聞こえてくる。畳敷きの筈なのにやけに大きく聞こえてくるそれで、やっと思考が
追い付いた。
腕が空振ったのは急に姉さんが視界から消えたからで、それを確かめるように視線を床
へ向けると倒れた姉さんの体がある。
再び目を閉じてしまったけれど、私の目の前で広がっている筈の光景はしっかりと目に
焼き付いていた。仰向けに横になっている姉さんの体、その脇腹から生えたように小刀が
突き刺さっている。倒れた拍子に傷口が広がったのか、その部分からまるで洪水のように
鮮血が溢れてきている。それは衣服だけでなく床までもを赤く染めていた。
意識した瞬間、思わずむせて咳き込んだ。それのせいで大きく呼吸をする度に、生臭い
血の匂いが鼻孔から侵入してくる。
どうしよう。
数秒して漸く目を開いたけれども、目の前には絶望的な光景があるだけだ。足が震え、
あまりの恐怖にその場に座り込む。青海さんを殺したときとは比べ物にならない程の後悔
が沸き上がってきた。もしかしたら先程の姉さんの表情を見たからかもしれないけれど、
今更になって失いたくないと思った。
そうだ、電話。
救急車を呼べば、助かるかもしれない。
ポケットから携帯電話を取り出し、開こうとしたところで腕に軽い圧力がかかる。袖を
姉さんが掴んでいた。顔を見てみれば先程のものと変わらないままで、ゆっくりと横に振
っていた。目が合い、口の端が僅かに上がったことで、呼ばないで、ではなく呼ばなくて
も良いと言っていることが分かる。
吐息を一つ。
私はなるべく悲しく見えないような笑みを浮かべて姉さんの隣に座った。そして負担が
あまりかからないように上体を重ねると、ゆっくりと唇を重ねる。少し照れ臭かったけれ
ども他に見ている人は居ないし、一度したのだから気にする程でもない。続いてこのまま
抱き締めたかったけれども、流石に止めた。抱いてしまったらきっと苦しむだろう。その
代わりに、長く長く口付ける。舌に血の味がにじむけれども、構わなかった。不快だとも
思わない。これが姉さんそのものだ。
数分。
兄さんとも数える程しかしなかった長さの口付けを終えて唇を離すと、姉さんは子供の
ように笑った。言葉が無くてもなんとなく分かる。何だか照れ臭いね、と言っているのが
表情から伝わってきた。昔から何度も、それこそ数えきれないような回数で見続けてきた
笑みだからこそ、伝わるもの。
私も同じような表情をしていたのだろう、お互いに頷いて同時に小さく笑い声を出した。
姉さんの口の端から溢れた血をハンカチで拭い、それをされた姉さんが恥ずかしそうな表
情を浮かべる。しかし、それでも笑みの形は崩さない。
凄いな、と思う。
今だって傷口が尋常でない痛みを訴えてきている筈なのに、それを気にしていないよう
な態度で接してくれている。それは気遣いかもしれないけれども、それでもそうしていら
れる姉さんを誇らしく思った。そして、それをさせてしまっている私を情けない、とも。
不意に、温かさが体を包んだ。
私は相当酷い表情を浮かべていたらしい、慰めるように姉さんが私を抱いていた。死ぬ
間際だというのにそれはとても力強く、温もりに満ちている。人が死ぬ直前は温度も力も
弱くなると言われているけれども、それは嘘だ。現に姉さんの体は暖かいし、腕もほどく
ことが出来ない。体に負担が掛るから止めてほしいのに、どれだけ頑張って脱け出そうと
してもそれは私を捕えたままだ。
これ以上は姉さんの負担を強くしてしまう、と私が逃げるのを諦めると、嬉しそうに頬
を寄せてきた。滑らかな肌が擦れ合う感触が気持ち良い。
と、突然背中にぬめる感触が来た。一拍遅れて姉さんの咳き込む音がする。驚いて体を
離すと口から大量の血液が溢れ落ちてきている。襟元にできた赤い染みが勢い良く広がり、
脇腹から延びていた染みと繋がった。私を抱いたことで余計に酷い状態になったと思うと、
目元が熱くなる。目が合うと、ごめんね、というような視線が来て更に熱を持った。
それを堪え、慌てて姉さんの上体を寝かせると、頬に指が伸びてきた。ゆっくりとした
速度で撫で、滑る指は目尻にまでやってくる。せっかく寝かせたのにこれでは意味がない
と思っても、それは止められなかった。いや止めようとも思わない、ここまできたら好き
にさせてあげようと思った。昨日兄さんにしてあげたことと同じことをされ、心地良いと
感じながら、私にこうされた兄さんはどうだったのかと考える。
嬉しかったのでしょうか。
それも今考えても仕方のないかもしれないし、他のことを考えているのは姉さんに少し
失礼かもしれないと思い、考えることを止めた。
数分。
頬を撫でる手が不意に止まり、床に落ちる。
もう、限界なんですか。
急いでパジャマの上着を脱ぎ、傷口に当てた。すぐに黄色かった布地の色が赤に変わっ
ていく。そもそも、今までかなりの出血だったからあまり効果はないかもしれないと思っ
たけれども、やらないよりはずっとましだと思う。何かが刺さっている場合は抜かない方
が良いと聞いたことがあったので、酷いと思いながらも刺したままにしておいた。
これで、少しは長く生きれるだろうか。
会話が出来なくても良い、触れ合えなくても良い、今はただ生きている姉さんの隣に居
たかった。自分でやっておいて随分と都合の良い話だと思うけれども、それでも私は隣に
居たかった。
姉さんの顔をもう一度覗き込み、軽く口付けた。目を開かないどころか何の反応もない
けれど、私の顔に軽くかかる息でまだ命を落としていないことが分かる。
このまま姉さんの顔を見ていたかったけれども、我慢して携帯電話を開いた。呼び出す
番号は、姉さんと同じくらい大好きな人のもの。
数コールで、相手の人は出た。
「死にます」
一言だけ言って、通話を切った。
私の役目はそろそろ終わる。
兄さんは駆け付けてくれるだろうか、とは思わない。けれど、駆け付けてほしいと思い、
長い息を吐いて天井を見た。
今回はこれで終わりです
また凡ミス('A`)
最初のタイトル無しの部分は気にしないで下さい
切ねーな・・・・(つД`)
ついに鬼との対面!
沃野のときも思ったけど、停電ってこえーな。
投下します。
「ただいまー・・・」
西日に赤く染まった高村家の玄関に覇気の無い声が響く。家の主とその妻が出張で留守にしたその家は、もはや長いこと智の一人暮らし状態だ。
しかし両親は智を安心して放任し、智もそれに何も言わない。なぜならば――
「おかえりなさーい!」
パタパタとスリッパの音を響かせ、制服の上からエプロンをした千早がキッチンから顔をのぞかせた。料理中らしく、台所からは食欲を誘う匂いが漂う。
このように、千早が智の面倒を甲斐甲斐しく見ているためだ。当初は面倒を掛け心苦しいと思っていた智だが、今ではすっかり甘んじている。
千早が身に着けたエプロンもスリッパも、この家での彼女専用のものだ。
「ああ、ただいま。・・・千早、さっきはごめんな。怒鳴りつけたりして」
「ううん、いいよ。ちゃんと謝ってくれたから、許してあげる」
今更この程度で揺らぐような絆ではない。それを感じて千早は嬉しくなり、智の傍に駆け寄って鞄を受け取る。新婚さんを思わせるこういった些細な行動は、千早の毎日の密かな楽しみだ。
しかし。
「・・・あの女の匂いがする」
カチリ
「え・・・?」
俯いた千早の表情は、ちょうど真上から見下ろす形になっている智には見えない。呟きと歯音は烏の鳴き声に掻き消され、耳に届くことはなかった。
「おい、千早?」
智が俯いたまま動かない千早を怪訝に思い声を掛けると、面を下げたまま千早が口を開いた。
「智ちゃん。ご飯できるまで時間あるから、先にお風呂入ってきて」
「え? でもまだ早・・・」
「いいからっ! 入ってきて!!」
千早の剣幕――といっても顔は見えないのだが――に押されてか、智は疑問を持つことも忘れて急いで二階の自室に上がっていった。
部屋の扉を開け、バタンと閉める。その音と同時にゆっくりと顔を持ち上げた千早は。
口裂け女もかくやとばかりに歪んで広がった唇を三日月型に開き、壊れた人形のようにガタガタと歯を噛み鳴らしていた。
智が風呂場からシャワーの音を響かせ始めると、千早はすぐさま二階に上がる。見慣れた幼馴染の部屋、そのベッドには乱雑に脱ぎ捨てられた制服が散らばっていた。
それを見た千早の笑みが穏やかな、母親のそれになる。若い男子の常というべきか、智もまた年相応に自堕落であり、その世話をするのは千早の役目だった。
制服を手に取り、シワを伸ばしハンガーに掛けようとして――千早は不意に制服をギュっと抱きしめると、そのまま智のベッドに倒れこんだ。
股に制服を挟み込むと、モジモジと両足を擦り合わせ始める。
「んんぅ・・・智ちゃん・・・智ちゃぁん・・・!」
既に数年来の習慣となっている、智の部屋で自らを慰める行為。小学生の頃に知ったそれは、中学生になって本格的な習慣と化した。
私服だった小学校とは異なり、制服はそう頻繁には洗えない。いつものように苦笑しながら智の制服を片付けようとして、そこにはっきりと残る愛しい人の残り香を感じた千早は、簡単に理性を手放してしまったのだ。
慣れた行為に肉体はすぐに上気し、間もなく水音を響かせ始める。
「やぁっ、そこはだめぇ・・・! 汚いよぉ、智ちゃん・・・」
脳裏に浮かぶのはいつだって、この世で一番愛しい幼馴染の少年の姿。
しかし、身体がいつも通りに快楽を享受し始めた中、千早の頭の中に僅かに冷めた部分が残った。智の匂いに混じった他の女の匂いが、快楽への没頭を邪魔するのだ。
カチリ
またも歯が無意識に噛み鳴らされる。
智ちゃんが他の女の――あの女の匂いをつけて帰ってきた。これまでだってあったことだけど、今日は特に酷い。
一体何をさせられているの? 一体何をしているの? 服に匂いが付くほど近づかなきゃ出来ないようなこと?
智ちゃんに近づいていいのは私だけなのに。智ちゃんの隣りは私だけのものなのに。
智ちゃん、ダメだよ。あの女に近づいちゃダメ。あの女は悪魔だよ。それも女の形を取ったとびきり性質の悪い淫魔。きっと智ちゃんを不幸にする。
いまならまだ間に合うよ。幸い自分の領域でなきゃ何も出来ないみたいだし、私が守ってあげていれば大丈夫。魔に魅入られた部分も、私がそばに居ればきっと回復する。
そうしたらきっと智ちゃんも『千早のお陰で目が覚めたよ。もう俺はお前なしじゃ生きていけない。愛してる』ってちゃんと言ってくれる。
でも、もしかしたら・・・もう智ちゃんは、口で説得するだけじゃ聞いてくれない領域まで侵されているかもしれない。
もうそうだったら・・・そうだったら私は、何に代えても智ちゃんを救わなきゃならない。
学校には行けないだろう。あの女が目を光らせている。怪しげな術で立ち回られたら、いくら私でも守りきれないかもしれない。それでも智ちゃんは学校へ行こうとするだろうから・・・。
ムリヤリにでも、動けないようにしなきゃ。
薬を盛ろうか。睡眠薬なら持っている。三食私に頼りきりの智ちゃんだから、混ぜるのは簡単。後で縛るための縄でも探しておかないと。
殴って気絶させるのはどうだろう。フライパンは・・・ダメ。硬いけど力が足りない。それに何年も智ちゃんにお料理を作ってる道具だもの、へこんじゃったら大変。結婚してからも大事にしたい想い出の品だもんね。
なら・・・玄関にあるおじさまのゴルフバック。うん、いい。あれなら非力な私でも強力な衝撃を生み出せる。
どちらにするかは後で考えよう。
智ちゃん、ちょっとご無体するかもしれないけど許してね。智ちゃんの為なんだから。驚かせるかもしれないけど、きっと智ちゃんなら分かってくれるよね。
それに、ずぅぅっと私がそばに居るから。ご飯も、おトイレも、お風呂も、私が全て面倒見てあげる。性欲だって・・・受け止めてあげるよ。
私のことしか考えられなくなるまで、何日でも、何ヶ月でも、何年でも愛してあげるから。
なぁんにも、心配することはないんだからね?
まずは、服に付いた女の匂いを消さなきゃね。私の匂いに染め直さないと。
「いくっ、いくぅっ、いっちゃうよぉぉっ! さとしちゃんっ、一緒に、一緒にイってぇぇっ!」
すべきことが決まると、不思議と気も軽くなる。思考の為に残した部分を手放して快楽に身を任せると、一際高く啼いて千早は果てた。
エプロンの前を濡らした千早が部屋を立ち去った後には、ところどころを同じく濡らした智のズボンが残されていた。
智が風呂から上がり、千早が最後の仕上げを終えて。いつも通り向かい合って座り、夕食を取り始める。
疲れているのか、智の箸の動きはいつもより鈍い。しかし、千早の動きはそれに輪を掛けて鈍かった。
食欲がないわけではない。これから発する言葉への緊張からだった。
また怒鳴られるだろうか。『俺が放課後どうしようが俺の勝手だろ!』とか言って。まさかあの女を庇うようなことは言わないだろうか。
いざ相対すると嫌な方向ばかりに想像が行く。ともすれば唇が歪み、歯が噛み合わさりそうになるのを必死に堪える。
(智ちゃんのため、智ちゃんのためなの・・・! 私が言わなきゃいけないの!)
「智ちゃん!!」
「うわっ!? な、何だ!?」
いきなり立ち上がって身を乗り出してきた千早に、智は思わずのげぞる。
その攻めの態勢に勢いを見出したのか、千早は矢次早に一気に告げた。
「もう・・・もう部活に行っちゃ――あの先輩に会っちゃ、ダメ」
最初の勢いとは裏腹に、静かな響きを持って紡がれた言葉。それは沈黙に満たされた空間に不思議なほど深く浸透した。
その態勢のまま数十秒。沈黙に耐え切れなくなった千早が泣きべそをかきそうになった頃。
「わかった」
智の口から、予想だにしない返事が返ってきた。
「え・・・?」
理解できなかったのか、千早が呆けたように呟く。
「そうするよ。俺も薄々そうした方がいい気はしてたけど、ずっと決められなかった。でもお前の言葉で踏ん切りがついたよ。これ以上お前に心配は掛けられないし、先輩にも迷惑を掛けられない」
なぜ智が藍香に迷惑を掛けると言うのか。少し疑問に思わないでもなかったが、智の言葉に比べれば些細なことだった。
やっぱり智ちゃんは分かってくれた。私が一番だって分かってくれた。
ううん、初めから分かっていたんだ。優しい智ちゃんだから、可哀想な悪魔に少し構ってあげていただけ。
悪魔は好かれたと勘違いして智ちゃんを魔に引きずり込もうとしたけど、そんなもので切れてしまう絆じゃあ、私たちはない。
いつの間にか、千早は花が咲いたような満面の笑みを浮かべていた。幼い頃に戻ったかのような、不純物など何一つない童女の微笑み。
だからだろうか。また明日と言って別れるに至っても尚、少女は思い出さなかった。
己が智の食事に入れたもののことを。
爆弾不発。期待していた人は申し訳ありません。
次は主人公視点に戻り、吸血鬼に関する話を進める予定です。
79と80に題を入れ忘れました。凡ミスごめんなさい。
家に帰ったらたくさんの作品が(*´д`*)作者様方いつもながらGJっすm( __ __ )m
>>60 夏冬姉妹、恐ろしい子・・・だが、秋乃さんはまだ生きている!
>>82 千早エロス(*´д`*)こういう幼馴染は堪らないっす
さて、新作三連発の二発目投下します。
「女」は走った。死に物狂いで走っていた。狭い廊下に薄暗い蛍光灯の中をただ
ひたすらに走った!
聞こえる音といえば、「女」の走る音と、けたたましく鳴るサイレンの音だった。
時々廊下に設置されているパトライトが回っているのを尻目に、「女」は一つの
ドアを開けた。
ドアの先にはビルの外に設置されている非常階段があった。「女」は脇目も振らずに
上へ、上へと上がっていった。
「ターゲット見失いました!」
「守備隊、半数が戦闘不能です!」
舐めてたわ!まさかここまでやるなんて……
本気……ってことね。知らない仲じゃないから穏便にしたかったけどそっちがその気なら
容赦しないわ!!
「戦闘が可能な守備隊の数は?」
「あ、はい!……およそ50!」
「重火器の使用を許可します。方法や手段も問いません。何が何でもターゲットを
排除して下さい!」
「「はいっ!!」」
「それとターゲットの目的は最上階の「あれ」ですからそこを重点的に警備して下さい」
部長の激でオペレーターやその他に気合いが入った!
姉さん……逃がさないわ!!
「あちゃーここまで手が回ったか……」
「女」は非常階段を一気に昇り、目的の階に着いた。
ドアの隙間から覗いてみると、既にその階は守備隊で鼠一匹通れない有様だった。
「そうよね、たしかここには晴海がいたんだっけ」
晴海……「女」にとっては因縁浅からぬ仲であったが、彼女がいるのであれば
少々やっかいであった。
「晴海がいるんじゃ、私の目的もバレバレか。」
「女」は自分の残りの武器を確認した。
「えーと、仕込み刀と……拳銃一丁弾少々……閃光弾一発に愛が無限大。うん!
大丈夫!」
最後のは絶対役に立たないような気がするが、「女」はともかく突破を試みた!
「隊長!配置終わりました!この階は鼠一匹通れませんよ!」
「うむ。ターゲットは必ずここに表れるはずた!全員油断するなよ!」
部隊長の指示のもと、部隊は「女」を迎え撃つ準備を整えた。
だが、「女」の方が一枚上手だった。
突然、1人の隊員の足元に何かが当たった。
「ん?何だこれ……まさか!」
隊員が正体を知った次の瞬間、辺りは光に包まれた!!閃光弾だった。
そして、閃光が収まった時、対処が間に合わなかった部隊に、チャンスとばか
りに「女」は突撃した!!
「りゃあああああああーーー!!」
「女」が刀を振るたびに、1人、2人と血の海に倒れ、気がつけば部隊
はほぼ全滅していた。
「はあ!はあ!……ふう。何とか片付いたか」
「うう………」
だが、部隊長だけは致命傷を免れていた。
「あら、まだ息があるのね」
「お、お前……何の目的でこんな……」
あらあら無理しちゃって。邪魔しなければ何もしないのに。……まあ愛は他人には理解
されにくいからなー。
「死にぞこないに語る舌は持ってないの。バイバイ」
血に染まった廊下を後に、「女」は先へ進んだ。
「部長!!ターゲット最終防衛ライン突破しました!!目標地点まであと
10メートルです!!」
「ダメです!!「第5研究室」の電源カット出来ません!!外部からの電源を
切っても瞬時に自家発電に切り替わります!!」
先ほどからの報告で、部長は歯軋りが止まなかった。それも仕方のないことで
今「女」が向かっている「第5研究室」に設置されている「あれ」……
あそこには晴海にとって大切な思い出があった。
くそっくそっくそっくそっくそーーーーー!!
なんてこと……。守備隊が全滅なんて。あの「女」の義手義足はかなりの高性能
だけど、ここまでなんて……。まあ今はそんなことを考えていてもしょうがない
!とにかく止めないと!
「あれ」には私の声紋や瞳の光彩などでロックが掛けられているからそんな簡単
には起動できないはず。……さあどうする?姉さん。
「ああ、やっぱりロックが掛けられていたか……」
「第5研究室」に入った「女」は他の機器には目もくれず、一番奥にあった機
械に向かった。
「あれ」は一つの仰々しい椅子が中央に設置されてて、その椅子を遠巻きに
色んな機器が置いてあった。
その中の一つ、コントロールパネルの前で「女」は唸っていた。
うんうん、さすがは晴海ちゃんね。備えは万全だわ。お姉ちゃん感心しちゃう。
……でもね、晴海ちゃん、今貴女は部長なんていうポストにいるけど、もし自由
の身だったら私と同じことをしたと思うんだ。
私と同じ男を愛したんだもんね
「女」はコントロールパネルにパスワードを入力した。
私だけが知っているパスワード……これでいいはず。
入力した瞬間、止まっていた機械が動きだした。計器盤が回り始め、スイッチパ
ネルが点灯し、「椅子」にスポットライトが当たっていた。
よーし、成功!それじゃ早速データの入力しちゃおっと♪
「ぶ、部長!!た、大変です!!「シューティングスター」起動始めました!!」
「な!!!!!!そんな馬鹿な!あれにはロックが……」
一体どうやって……!!まさか「裏コード」!!
そんな物あるなんて聞いてないわ。いや、もしかしたら姉さんが秘密裏に仕込ん
でいたってこと?むきーーーーー!!!
ブチ切れた晴海は手に持っていたコーヒーカップを床に叩きつけた!
こうなったら徹底的にやってやるわ!!
「オペレーター!!「シューティングスター」の動きを見張ってて!どこに
「跳ぶ」か調べておくのよ!それと、ターゲットは逃がしません。私が直接行って
取り押さえます。」
「え!部長自らですか!無茶ですよ!相手は守備隊を全滅させた化け物ですよ!」
「大丈夫です。実用化前ですが「パワードスーツ」を使用します!後は頼みましたよ!」
晴海は実験室に置いてあった「パワードスーツ」を装着した。
名前は大層だけど、見た目は全身黒タイツと頭にヘルメットとゴーグルをつけた
だけだった。実用化までまだ数回テストをする予定だったが、今はそんなことを言っ
ていられない。幸いなことにサイズはぴったりだった。
殺してでも……止める!
武器にビームライフルと超硬ブレードを手に、憎っくき姉に向かって走った!
起動を確認した「女」は起動チェック及び座標データとタイムデータの入力を終え、
中央の椅子に座った。
すると正面にモニターが表れ、メッセージが表れた
「裏マスターこんにちは。」
「はーいこんにちは。早速で悪いんだけど、急いでんだ。多分ここに誰かが向か
ってると思うから」
「はい、エレベーターに一人。レーザー兵器を装備した人間がこちらに向かって
おります。」
んもう晴海ちゃんね。殺す気マンマンだわ。残念だけどそうは問屋が卸さないわ。
ここでむざむざと晴海ちゃんの希望を叶えるわけにはいかないから。
「それでは最終確認します。目的地は「西暦2006年9月1日 日本国トーキ
ョー都 座標ЮГΨ、410、564」で間違いないでしょうか。」
「うん、ばっちり!それでお願い。あと、私が「跳んだ」ら一切のデータは
ロストしておいて。時間稼ぎしたいから」
「了解。尚、持っていきたい物が有りましたら身につけておいて下さい。5分後
に「シューティングスター」発動します」
「女」はポケットから一枚の写真を取り出した。古ぼけたその写真には、一人の
男と3人の女が写っていた。
うっとりとした目で見ていたら、入口のドアががたがたと動いていた。
来たわね。でもちょ〜っと遅かったわね。
物凄い音とともに入口のドアが真っ二つに折れて吹き飛び、全身黒ずくめの人間
が乱入してきた!
「姉さん!そうはさせないわ!」
ビームライフルを「女」にロックオンした瞬間、警報が鳴り響いた!
「警告!警告!プログラム起動中は関係者以外立入禁止です!強制排除します!」
「な!私は「マスター代理」の瀬峰晴海よ!「シューティングスター」の設計者
の一人よ!!」
一瞬の沈黙ののち
「現在、本プログラムは「裏コード」によって起動しております。その場合は
「マスター」か「裏コード」を入力した本人以外は侵入者として認識します。」
「そ、そんな馬鹿な!そんな……侵入者って……」
「あーーはははははははははは!晴海ちゃん最高よ!面白いわ〜!」
「何がそんなに面白いのよ!」
足を組み、椅子にふんぞり返った「女」は醜悪な笑顔を晴海に向けて
「ん〜?だ〜って、その絶望に打ち拉がれている顔がもう……ぷぷっ」
お姉ちゃん……あなたはいつだってそう。おいしい所は全部もっていって、私に
はおこぼれだけ。
お姉ちゃん……あなたはいつだってそう。何かやらかしても、
その尻拭いはいつだって私。
お姉ちゃん……あなたは、あなたは、あなたは!!!!
今までの欝憤が爆発した晴海は、自分の立場や状況、思考など全てふっとび、超硬ブレード
を構えて獣の咆哮と共に走っていた!晴海の開いた瞳孔の先に
は、椅子にふんぞり返っている「女」の首しか映っていなかった!!
「強制排除プログラム起動します。」
パワードスーツを着ていた晴海さえ、まったく反応出来なかった。一瞬のうちに
手首と足首に拘束具が掛けられていた。
「な?何時の間に!だけどこんな物!ん〜〜!あ、あれ?何で?」
いくら力を込めてもびくともしなかった。いや、それどころか段々と手足の感覚
が無くなっていった。
「無理無理。その拘束具は手足の運動神経に直接働き掛けて動けないようにする
代物だから。そこでおとなしく見てて」
足掻いても藻掻いてもぴくりともしない手足に晴海は怒り心頭だった。
「くそっくそっ動け!動いてよ!今動かなきゃ意味ないよ!!」
「もう〜晴海ったらドジっ娘ね。自分で設計した防衛システムにやられるなんて。うふ♪」
ニヤニヤしながら晴海を見下ろしていると、突然ブザーが鳴り響いた!
「「シューティングスター」発動します。危険ですので跳躍者以外は椅子に近づ
かないで下さい。」
「それじゃ、晴海ちゃん。バ〜イバ〜イ♪」
まるで椅子の周りにエネルギーが集まっているのか、びりびりとした空気が辺り
に充満していた。そして次第に「女」自身が光だした。
「くっ……姉さん、いや、瀬峰深海!必ず!必ず追い掛けて!ブッ殺してやる!必ずよ!」
深海は何か言い掛けたが、光の渦に飲み込まれ、「跳んで」しまった。
「時間跳躍完了致しました。データ、ロストします。」
計測盤やコントロールパネルなどの電源が落ち、晴海を縛っていた拘束具も消え
去っていた。
立ち上がった晴海はとりあえず司令室に連絡した。
「あ、私。ターゲットは逃がしてしまったわ。そっちはどお?……そお。こっち
もデータはロストしてしまったわ。……いえ、まだよ!「時間跳躍」したという
ことは空間に「ゆらぎ」が生じているはずたわ。それがどこに続いているか調べ
て!私もすぐ戻るわ、それじゃ」
瀬峰深海!たとえ地の果て宇宙の果て、はたまたそれが時間の果てだろうが追い掛けて、
追い掛けて、追い付いてやる!!
第一話「過去への旅立ち」
やっぱりこういうトンデモ科学は書いてて楽しいな
ネタとしては「バックツウザフューチャー」(だっけ?)や
ドラゴンボールの人造人間の話を思い出してもらうといいかも
時空を越えた修羅場か……
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) 楽しみでしかたがないぜ!
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
祖母と孫が取り合う修羅場とかありますか?
中年以上の嫉妬は気持ち悪いなぁ('A`)
こんな選り好みをするのは俺だけかな
>>97 逆に考えるんだ
美幼女と美ロリババァが主人公を取り合うと考えると萌えないか?
むしろ適齢期過ぎて今を逃すと後がないぐらいの修羅場も見てみたい今日この頃
美ロリババァって存在自体が矛盾しt(ry
いやいやいや無理無理無理さすがに無理
まあ、魔法使いとか不老不死の人とかだったら可能かもな
俺は妻物の後編をいつまでも待ち続ける
投下します
ふらふらと。
ユメカはユウキに近付いていく。
怖い女の子も、何故か邪魔をしてきた女の子も、いなくなった。
もう、自分とユウキの再会を邪魔する者は、いない。
身体も、もう限界を通り越してしまっている。
霞みがかっていた思考は殆ど白く染まっており、その中央に、ユウキの顔だけ鮮やかに浮かんでいる。
つらかった。
くるしかった。
でも、すがるものがあったから生きてこられた。
死にたくない、という思いを維持するには、今までの仕打ちは惨すぎた。
死にたい、という思いをいつ抱いてもおかしくない状況だった。
でも、支えてくれる思いがあったから。
妹と男。この2つだけを見るようにして、全ての現実から目を背けてきた。
妹はユメカに生きて欲しいと願っていた。
男の優しさに触れ、一緒に生きたいと思っていた。
だから、ここまで生き延びてこられたのだ。
ユウキまで、もうあと数歩といったところか。
邪魔する者はいない。
彼と…………のところに向かうのだ。
彼がいなかったら、ここまで頑張ることはできなかった。
自分を生かしてくれたのは、この人。
ゆうきさん ありがとう
ユメカはユウキを前に、救われたような表情を見せ。
その首が、宙を舞った。
――これで、全員。
アマツ・コミナトは、剣を真一文字に振り抜いた姿勢のまま、唇の端を歪めていた。
血塗れ竜も食人姫も怪物姉も、全員排除した。
血塗れ竜は腹部を貫かれ、内蔵破損と大量出血。
食人姫は脊髄を砕かれ、頸動脈を引き裂かれている。
そして怪物姉は、頭と胴がお別れだ。
やった。
邪魔者は、みんな、殺した。
ユウキは、私のものだ。
私は、輝かしい未来を疑うことなく、そのままユウキに近付いた。
ユウキを惑わす雌猫も雌犬も雌狐もいなくなった。
だから、もう怖がることはないと、苦しみ悩むことはないのだと、安心させてやるべきだろうか。
それとも、少なからず仲の良かった少女を殺してしまった、可哀相な女として慰めてもらおうか。
どちらでもいい。どちらもいい。
ユウキは見たところ重傷で、これだけ衝撃的なことがあった直後なのだから。
心身は摩耗しきっていて、何かに逆らう余力は残ってないだろう。
そこに強い言葉や縋り付ける言葉をかけられれば、まず間違いなく、堕ちる。
そうなれば、ユウキは完全に私のもの。
私だけに優しい言葉をかけてくれて、私だけを見てくれる。
抱きしめて貰えなくなったのは残念だが――私がユウキの腕の代わりになればいい。
そうすれば義理堅いユウキのことだ。己の全てを私に捧げようとするだろう。
その様を、想像してみる。
ぞくぞくどころじゃない。
恍惚で、身体全部が吹き飛んでしまいそうだ。
さて。
そのためには、最初の言葉がけが重要だ。
ユウキの自我を壊すことなく、私しか頼れる存在がいないと認識させなければ――
「……ユ」
「――アマツさん」
しかし。
心神喪失状態と思われたユウキが、口を開いた。
それは、弱り切っているとは思えないほど力強く。
私の発言を認めない強硬さが、あった。
おいおい、どうしたんだよユウキ。
お前は、囚われの王子様なんだぞ?
助けを求める悲鳴こそ上げても、間違っても助けに来た騎士を払いのける人間じゃないはずだ。
私は、お前を助けに来たんだ。
私だけが、お前を幸せにしてやれるんだ。
だから。
だから、その、
そんな目で、私を、見ないで。
一部始終を、目にしてしまった。
僕を助けるために文字通り飛んできたアトリ。
その脊髄は破壊されていて、首筋からは夥しい出血が見られる。
僕を助けるために侍女を殺した白。
その腹部には大きな剣が貫通し、引き抜かれて無惨な傷口を晒している。
僕を見て何故か救われたような表情を見せたユメカさん。
その首から上は見当たらず、断面から鮮血が、逆さにした蛇口のように溢れていた。
全員、どう見ても、致命傷だ。
どうして、こんなことになったのだろうか。
僕は、殺し合いなんてして欲しくなかった。
だから自分の命を捨てる覚悟で、白とアトリの間に飛び込んだ。
2人はその後、殺し合おうとする気配もなく、何とかなったと思ったのに。
そこにユメカと天津が現れて、大乱闘になってしまった。
その結果が、これだ。
ユメカは即死だし、白とアトリもじきに死ぬだろう。
――結局、白とアトリを止めたことは、無駄だったのだろうか。
あのまま2人を殺し合わせても、結果は同じだったのだろうか。
自分が両腕を失ったのは、意味がなかったのだろうか。
いっそ止めずに静観していれば、両腕を失うこともなく、五体満足で同じ結末を――
――そんなこと、ない。
一部始終を、目にしていた。
だから、わかった。わかってしまった。
目を逸らすことなんてできなかった。
それどころか、感動すらしてしまっていた。
血塗れ竜と食人姫が、相手を殺そうとせずに、戦っていた。
相手を殺すことしか知らなかった白が。
相手を喰うことしか知らなかったアトリが。
命を賭けた戦いであるにもかかわらず、相手を殺さないように、戦っていたのだ。
ただの気まぐれだなんて思わない。
彼女たちは、こちらの思いを、受け取ってくれたのだ。
血塗れ竜も食人姫も。
人を殺さないように戦うことができたのだ。
2人は、僕を守ろうとしてくれた。
殺すことしかできない怪物に、できることではない。
囚人闘技場なんて特異な環境で、限られた選択肢しかない状態だったからこそ。
少女達は、殺すことしか知らず、疑うことなくそれを実行していた。
しかし。
闘技場とは関係ない場所では、殺すことはいけないことだと、誰かに教えられさえすれば。
少女達は、きっとそれを守ることができるのだ。
では、何故。
何が、少女達を、殺すことしか知らない存在へと祭り上げたのか。
きっと、環境であったり本人の資質であったり、様々な要因が絡んでいるのだろう。
でも、何が一番かと問われれば。
血塗れ竜。
食人姫。
こんな名前を与えられたことが。
彼女たちに、殺戮の正当性を与えていたのではないか。
物々しい2つ名。
少女らが持つ純粋さや可愛らしさとはかけ離れた呼び名。
こんな名で呼ばれることがなければ、ひょっとしたら、普通の女の子のように――
――でも、戦わねばならないことに変わりはない。
わからなかった。
思考がぐるぐると渦を巻く。
少女達の幸せの形とはどのようなものか、いくら考えても答えが出ない。
戦うことしか許されない少女達は、一体何を望んでいたのか。
ふと、視界の端に、声をかけようとしているアマツが見えた。
混乱した頭のまま、ユウキは明確な答えを求めて、アマツに問いかけることにした。
其処にアマツに対する思いはなく。
ただ純粋に、白とアトリのことを思っていた。
「――アマツさん。
この子たちは、何を望んでいたのでしょうか」
どうしても、知りたかった。
問いかけを受けたアマツは、しばし悩んだ後、口を開いた。
「血塗れ竜も食人姫も、相手を殺すことしか知らない怪物だ。
それはきっと、こいつらのせいじゃなくて、環境とかの要因もあったんだろう。
だとしても、こいつらが怪物であることには変わりない。
――人間以外の望みなんて、考えるな。無駄だ」
その言葉は力強かった。
少女達の願いなんて考えるだけ無駄だ、と。
それに縋り付いてしまいたくなる。
自分にはどうせわからないことだと。
生き延びられたことの幸運を噛みしめて、先のことを考えていこうと。
そんな誘惑に、囚われてしまいそうになる。
――違う。
そんなこと、ない。
だって、少女達は、僕の考えを受け取ってくれた。
アマツやユメカを殺さないように戦っていた。
僕を守るため、命を投げ出してくれた。
分かり合えるはずのない怪物には、不可能だ。
ならば答えは簡単だ。
少女達は、怪物では、ない。
「そんなことありません。
この子達は、れっきとした人間です。年端もいかない、女の子なんですよ」
「ユウキ、それはお前がそう思いたがってるだけだ。
血塗れ竜と食人姫に命を救われて、分かり合える存在だと誤解してしまっているんだ。
お前も身近で見ただろう? そこのミシアを、こいつらは何の躊躇いもなく殺したじゃないか」
「それは、僕を守るためで……」
「守るためなら、何をしてもいいのか?
冷静になれ。ユウキは少し疲れているんだ。安心しろ、アタシに全部任せてくれ。
今は何も考えず、ゆっくり休めばいい。血塗れ竜と食人姫のことなんて、忘れて――」
「――ちがう」
自然と、言葉が漏れていた。
「“血塗れ竜”と“食人姫”じゃない。この子たちは“白”と“アトリ”だ」
知らず知らずのうち、口調が厳しくなっていた。
そうだ。傷の痛みで、大事なことを忘れていた。
この子たちは――その名前で呼ばれたときは。
嬉しそうに、笑っていたじゃないか。
――僕だけに“白”と呼ばせていた少女。
他の者にはそれを許そうとせず、嬉しそうに変わった呼び名を受け入れていた。
――僕だけと秘密の会話をしたがっていた少女。
それは、凄く胸が暖かくなると、恥ずかしそうに言っていた。
ああ。
そういうことか。
今更のように気付かされる。
少女たちは、戦うことしか、殺すことしか知らなかったわけではない。
ちゃんと、普通の女の子のように、恋をしていた。
“血塗れ竜”と“食人姫”、と呼ばれているときは、その名の通り殺戮のための怪物となり。
“白”と“アトリ”、と呼ばれているときは、乙女のように恋をしていた。
ただ、それだけのことだったのだ。
立ち上がり、2人の姿を探す。
――いた。
すぐ近くに、血塗れで横たわっている。
その姿は、怪物などではなく。
苦しげに横たわる、2人の少女でしかなかった。
「ユウキ、どうし――」
重傷なのに突然立ち上がったユウキに、アマツが心配そうな表情を見せる。
しかしユウキは、そちらには視線を向けずに。
「“白”と“アトリ”を、助けます。2人とも、まだ、生きています」
きっぱりと、そう言った。
アマツの反応を待たずに、白とアトリのもとへと向かう。
白は腹部に大きな貫通傷。乱暴に剣を引き抜かれたからか、傷口はかなり荒れている。
下手に動かしたら内臓がこぼれてもおかしくない。
アトリの方は出血が酷い。
頸動脈を裂かれてから、ある程度の時間が経っている。
背中の損傷も酷く、内側の赤と白が晒されていた。
どちらも致命傷だ。今すぐ専門家に任せても、助かるとは思えない。
だけど――自分に恋している少女を、どうして見捨てることができようか。
両腕がない。激痛で今にも気を失ってしまいそうだ。
――それがどうした。頬の内側を噛み千切って意識を保つ。
何かできることがあるはずだ。
幸いなことに、近くにはアマツもいる。
彼女に手を貸してもらえれば、何か手があるはずだ。
そう思い、アマツの方へ顔を向けると。
「どうして」
初めて見るアマツが、そこにいた。
その手には血の滴る剣が握りしめられていて。
いつの間にか、振り上げられていた。
「そいつらの方を、見るの?
私の方を、見てくれないの?」
25話が予想以上に長くなりすぎてしまったため、いったん切りますorz
よって残り2話。全27話になります。
もう少しだけ、この物語にお付き合いいただければ幸いです。
家を出る前に、もう一度だけ顔を鏡に映す。
自慢の長い髪は、丁寧に梳かして滑らか艶やか。
お化粧は薄く柔らかく、清楚な感じを心がけた。
制服は清潔、胸元のリボンのズレに気づいて整える。
よし、完璧。
そわそわして、靴を履くのがもどかしい。会いたい。早く、ミツ君に。
もやもやを晴らすように扉を開けて、私は玄関から駆け出した。
駅前に着くと、いつものようにミツ君を待つ。時計ばかりに目が移る。
落ち着いて。ミツ君の来る時間は分かってる。もう一分も経たないうちに現れる………ほら。
「蔓さん、…おはよう。」
「おはよう、ミツ君。」
いつも通りの挨拶。でも、ミツ君の声には戸惑いが混じってる。
本当なら、そんなもの欠片も無いはずなのに。
…あの女のせいだわ
あの女が告白なんかするから
あの女がミツ君の心を掻き乱したから
あの女が私とミツ君の仲を引き裂こうとしたから
私が先にミツ君に出会ったのに。私が先にミツ君に恋をしたのに。私が先にミツ君を愛したのに!
「…蔓さん?」
っ、いけない!
このままじゃ、この気持ちをミツ君に気取られてしまう、それだけはダメ!
ここは攻めに転じて誤魔化さないと!
「…なんだか、ミツ君元気無いみたい」
「!えっ、そ、そんなこと、無いよ」
「ミツ君が元気ないと、なんだか私まで元気がなくなっちゃう…」
「大丈夫だよ、ほら。いつも通りだよ」
「…いつもの、通りなの…?」
「ぅ…いや…」
…ほっ、何とか誤魔化せたみたい。
でも…ふふ、ミツ君たらすっかり慌てちゃって。
…そう、それでいいの。ミツ君、私のことだけを考えて。
ぎゅうぎゅう詰めの電車の中なのに、今日はとても快適な空間に思える。
いつもは圧迫されて窮屈なだけなのに、たった二人で寄り添っているみたいな感じ。
私と接触する度に、頬を赤らめて必死に視線を外すミツ君が可愛くて可愛くて仕方無い。
…そう、私たちが初めて出会ったときみたいに。
改札口を出て、やっと人ごみから抜け出せた。
でも、ミツ君と離れてしまうのは残念。
…少しだけ大胆になってもいいよね。
すぐ横に、ミツ君の右手がある。男の子なのに、白くて、可愛い手。
そっと、自然に、手と手を絡め
「おはようございます、吉備さん。」
!!!ッ
「ぁっ…おはよう、佐藤さん…。」
ハッとして、ミツ君の視線の先を見る…あいつ…アノ女!
ナゼオマエガココニイル!
「…どうしたの、…わざわざ駅前に…」
「ええ、吉備さんの顔を早く見たいと思いまして。」
何をいけしゃあしゃあと!ミツ君を誑かしに来たんでしょ!この泥棒猫!
「ぇっ?…だって、いつも、朝練で顔をあわせるのに…」
「それはそうですけれど…でも、もっと一緒に居たくて…。」
何恥ずかしそうにしてるのよ!計算ずくのくせに!この腹黒女!
「それとも…迷惑でした…?」
「…そうじゃなくて…ちょっと、びっくりしただけ、かな…。」
迷惑よ迷惑に決まってるじゃないそんな顔したってミツ君はあなたの事をお見通しさっさと消えてほしいと思っ
え
ミツ君 なんで迷惑だって言ってあげないの
ミツ君 なんで私とミツ君の時間を邪魔されて怒らないの
ミツ君 なんでその女の存在を受け入れるの
ミツ君 なんで なんで ミツ君 なんで なんで なんでナンデなんでナンデナノ!
ミ ツ ク ン ! ! ! !
「あら…どうされたんですか?お具合が悪そうですけれど」
クッ…!コノ女!!
慌てて顔を俯き加減にそむけた。
だめよダメダメこんな顔見られたらミツ君に嫌われちゃうそれだけは!
「なんでもない…なんでもないの、ミツ君。」
…なんとか顔は落ちつかせた。多少ぎこちないかもしれないけど。
「…本当に大丈夫?具合悪かったりしない?」
「大丈夫。本当になんでもないから…」
ミツ君に笑顔を向けると、その横からあの女の顔が見えた。…笑ってる、こっちを見て、私を嘲ってる!
ヤッパリワザトカコノオンナ!
耐えるの!耐えるのよ蔓!!ここで耐えなきゃアイツの思う壺じゃない!!!
笑顔を必死に貼りつけて、何とか声を絞り出す。
「…ほら…早く行かないと…朝練に間に合わなくなっちゃうよ…」
それからは平常心を保つのに必死で、ミツ君とはほとんど話せなくて返事するのが精一杯。
挙句の果てに、ミツ君とあの女が一緒に朝連に出かけるのを見送る羽目になった。
許せない。あの女、私とミツ君を引き離しにかかってる。
…掌がズキズキする。爪が食い込んで、血が出ていた………あはは。
…忘れられる前に投下してみました。
それにしても、神々スゴスギです。最近読んでばかりで書く暇が無いです。
投下しますよ
「それでは失礼します」
見送りに来てくれたユキさんに頭を下げて、僕は青海の家を出た。家まで送ると言って
くれたけれども、とてもそんな気分にはなれなかった。会わせる顔がない、と言うよりも
一緒に居ることが出来なかったからだ。だから、悪いと思ったけれども無理を言って先に
帰してもらった。母さんはまだ話があるらしく残ったが、一人の方が考えるのに向いてい
るから寧ろ都合が良かった。
思い出すのは、つい先程のこと。
僕に会った青海の両親や姉は悲しそうなものではあったけれども、それでも笑みを浮か
べて出迎えてくれた。勿論、ユキさんや他の使用人の人達もだ。恨んでも良い筈の僕に対
して頭を下げて、言ってくれた。
短い間でしたが青海様を幸せにしてくれてありがとうございました、と。
最近は本当に楽しそうでした、と。
それは違う、とは言えなかった。青海が死んだのは殆んど僕のせいなのだし、僕に会わ
なければもう少し楽しい人生を遅れたのかもしれなかったのに。何度もそう言おうと思っ
たけれども、皆の表情を壊すことは出来なかった。それに、言おうとする度にサクラのこ
とが頭に浮かんでしまったからだ。姉さんが昨日の夜に言ったことを思い浮かべる度に、
言ってしまっても良いのか迷ってしまう。喰った詞を吐き出してしまえば真実は分かるけ
れども、絶対に全てが壊れてしまう。
どうしようか。
結局さっきの席では言えなかったけれども、まだ間に合うかもしれない。振り向いてみ
れば門までは僅か100m程しか離れておらず、歩いても一分もかからない距離だ。未だに僕
の見送りを続けているユキさんの表情もはっきりと分かる。悪い表現をすれば感傷とでも
言うのだろうか、若干寂しそうなその表情を見て心が痛んだ。
数秒。
少し躊躇ったけれども、僕はユキさんの前へと足を進めた。
「お忘れ物ですか?」
僕が戻ってきたのを少し不思議そうな目で見ながらも、どこか安心したような、嬉しそ
うな声で訊いてくる。もしかしたら青海のことを過去にしたくないから、話せる人が居た
のを喜んでいるのかもしれない。多分僕もそうだ、常に青海の側に控えていたユキさんが
応えてくれたことが少し嬉しかった。
僕は吐息を一つ、
「青海と居たことを、過去に置き忘れそうになりました」
「ありがとうございます」
ユキさんは深く一礼すると、歩き出した。
「車は、使わないんですね」
「青海様は虎徹様の隣を歩いていたのでしょう? でしたら私も車などという無粋なもの
を使わずに、隣を歩かせて頂きます。役者不足かもしれませんけれども、私も少しは青海
様を理解していたと自負する身。思い出話のお相手くらいは出来るでしょう」
僕と同じくらい、いやもしかしたら僕よりも辛いかもしれないというのに、ユキさんは
笑みで答えてきた。そのまま僕の隣に立つと小首を傾げ、
「どこに行きましょうか?」
格好良いことを言ったけれども、どこに向かうのかは決めていなかったらしい。意外と
抜けている部分がある、と思うと自然に笑いが溢れた。それに対して不思議そうな表情を
浮かべているのも少しおかしい。
「どうされたんですか?」
「何でもないですよ。それよりも、行く場所が決まってないのなら行きたい場所があるん
ですけど」
相手の答えを待たずに歩き始めた。
十数分。
早く着きたいと思っていたからだろうか、目的の場所には予想よりも短い時間で着いた。
見上げる看板には『極楽日記』という文字が書いてある。ほぼ毎日、青海と学校帰りに寄
った喫茶店。放課後デートの締めはいつもここだったな、と思いながら扉を開いた。僕に
続き、ユキさんが入ってくる。
「あ、虎徹君いらっしゃい。今日はまた別嬪さん連れて、青海ちゃんに怒られるぞ?」
「そう、かもしれないですね」
それが本当に起こるのならどれだけ良かっただろうか、と思いながら返事をする。そう
言えば青海に告白された次の日、突っ込みどころのありすぎるユキさんの方ばかりを気に
していて怒られたな、と思いユキさんを見た。僕と同じことを思い出しているのだろうか、
視線を交わした後、互いに苦笑が漏れる。
いつもの席に座り、青海がいつも頼んでいたウィンナー珈琲とパンプキンタルトを三人
分注文した。僕とユキさんと、それから青海の分。マスターは少し驚いていたけれども、
これ以上のものは思い付かなかった。
「あの」
不意に、ユキさんが声をかけてきた。もしかしたら勝手すぎただろうか、と思ったけれ
ども様子が少しおかしい。ユキさんは眉を少し寄せると頬に手を当て、声を潜めるように、
「あの方は、堅気なのですか?」
「大丈夫ですよ。最初は皆誤解しますけれども、外見が怖いだけで性格は普通の人よりも
ずっと良いですよ」
最初は青海も同じことを言っていたな、と思いながら楽しそうにサイフォンをセットし
ているマスターを見た。流石にユキさんのように店内でこんな発言
をするようなことはなかったけれども、アルコールランプに火を点けるとき、ライターが
異常な程に似合っていたりなどしたから本気で誤解していたものだ。僕が説得をしても、
その後数日の間は不審な目を向けられていたものだから、マスターがすっかり落ち込んで
いたことを青海は知っていただろうか。
「思い出の場所なのに、随分落ち着いているんですね」
「思い出の場所だから、ですよ。多分」
いつもと変わらない店内を見回しながら、「ただ、後悔はありますね。毎回、こんなところ」
「聞こえてるよー」
マスターに苦笑を返し、
「悪い意味じゃないですよ」
「まぁ、確かにお嬢様には合わないかもな」
数秒互いに笑いを溢す。
「話がずれましたけど、毎回毎回ワンパターンだったな、って。楽しそうにはしてました
けど、他にも色々してあげれば良かったなって」
数分。
ユキさんは運ばれてきた珈琲を一口飲みながら笑みを浮かべ、
「大丈夫です。虎徹様は青海様に、こんなに美味しい珈琲を飲ませてくださいました」
タルトをフォークで崩しながら、
「他にも教えて下さったのは、たくさんあります。毎日、青海様はそれはもう楽しそうに
お話し下さいました。だから安心して、前に進んで下さい。ただ一時でも青海様のことを
思い出して頂ければ、それが幸いです」
そんな誉められた人間でもないのに、全肯定されると辛くなる。青海に隠れて姉さんや
サクラと体の関係を持ったり、サクラを止められずに青海を殺してしまったり、悪い部分
は幾らでもある。そんな僕に笑顔を向けられる資格があるのだろうか。
「僕はそんな」
言おうとしたが、口にタルトを突っ込まれて強制的に止められた。
「言わないで下さい。虎徹様が自身を否定されるということは、虎徹様を選んだ青海様を
間接的に侮辱することになります」
そうじゃない、僕は本当に駄目な人なのに。
「では、こうしましょう」
僕の気持ちは顔に表れていたのか、ユキさんは眉根を寄せ、
「忘れないで下さい、何もかも。罪を露にせず抱えるのが罰になります。如何でしょうか」
そこで僕が頷くと、ユキさんは再び笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。ユキさんが女だったら惚れてますよ」
「私は例え自分が女でも、妻一筋ですよ。それにそんなことを言っていると、天国の青海
様に叱られますよ」
そうですね、と頷いたところで携帯が鳴った。液晶に表示されている文字は、サクラと
いう単語を浮かべていた。丁度良いかもしれない、昨日のことを本謝りする前に軽く謝う
とも思ったし、これからのことも色々話したくなった。
ユキさんに断りを入れて通話ボタンを押すと、
『死にます』
一言だけ言われて、一方的に切られた。
今回はこれで終わりです
次回Aルート最終回
血塗れと赤キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
(((((;゚Д゚)))))ユウキが着々と死亡フラグを立ててるようにしか見えない
( ゚Д゚ )
「な、なに?なんなの?おにいちゃん?」
「静かに。落ち着いて僕についてきて。」
突然の停電。それに加えて玄関をこじ開けようとする音に、麻理は完全に怯え、混乱していた。まだ現状を理解している僕は落ち着いていた。
「さあ、こっちだよ。」
麻理の手を引き、台所をでる。さて、どうする。逃げるか?隠れるか?……前者はたとえ逃げ切ったところで、家で待ち構えられたらまずい。だとしたら、隠れてまくしかない。
僕は麻理を連れ、そのまま裏口のある部屋までくる。ここの床には地下倉庫の入口がある。……倉庫とはいっても、使わなくなった衣服等をいれる場所なので、僕と麻理が入ればギリギリだ。
もしバレたら……素早く逃げ出すのは無理だろう。一か八かだ。
ガコン
「麻理、ここに隠れるよ。」
「え?…う、うん。」
まだよくわかっていないのか、言われるように入っていく。その時……
ガシャン!
「アハハハハハハハ!開いたぁ…」
玄関をぶち壊した音と共に、どこか聞いたことのある笑い声が家中に響く。これは本当にまずい。見つかったら……終わりだ。
「あははははは。鬼ごっこ……鬼ごっこ………見つけたら殺さなきゃ…」
ミシッ
意味不明なことを言いながら、廊下を歩いてくる。普段聞き慣れた床の軋みが、やたらと大きく聞こえる。僕も麻理の隣りに座るように入り、蓋をしめる。
怯えて震えている麻理を抱き締めながら、携帯をとりだす。とりあえずはマナーモードに。奴のやることは大体見通せる。
明りのない倉庫は真っ暗なため、麻理を不安にさせないように携帯のカメラのライトをつけ、互いの顔を確認できるようにする。
「おにいちゃん…」
顔を見て少し安心したのか、ホッと溜め息をつく。
「いいかい、麻理。なにがあっても声をだしちゃいけないよ?…麻理は僕が必ず守ってあげるから。」
「…うん。」
それからしばらくすると……
ブーッブーッ!
携帯のバイブが震える。やっぱりな。音でこっちの場所を探そうとしてたか。
『あれぇ?どこにいったの?もしかして隠れんぼに変更?ふふふ、いいよ。どっちにしても、私が勝つんだから。
賞品はもちろん、海斗君だよ
V(^-^)V』
……頼むから負けてくれよ。僕はそう祈った。
ギシッギシッ
「ハハハハ、……どこかな?どこへいったのかな?」
だんだんと奴の足音と声が近付いてくる。……なんだろう。やっぱりどこかで聞いたことのある声だ。それもつい最近……女の子の声……
「かーいーとーくーん!でてきてよー!」
一段と大きい叫びが聞こえ、麻理の体がまた震える。そっと「大丈夫だよ」と耳打ちをし、落ち着かせる。
そして……ついにその足音は……
ギシッ!
僕達のいる部屋に入ってきた。真上にいるのがわかる。それだけ大きい、床の軋みが聞こえる。
ズッズッズッ
なにかを引きずるかのような、不気味な音。麻理もそれに気付いているのか、顔が真っ青になり、今にも発狂しそうなほどだ。
麻理の口をおさえ、上をみる。この床一枚をはさんだ向こうに……いままで恐怖をあたえてきたストーカーがいるのか……
「海斗君……裏口から逃げちゃったかな?」
今度はハッキリと声が聞こえた。誰だ……思い出せそうで思い出せない。胸にモヤモヤがたまり、不快感が増す。
ガチャガチャガチャ
ストーカーが裏口のノブを回すが、鍵がかけてあるので開かない。
「開かない……まだ逃げて無いってことだよね?」
誰にとうわけでもなく、ストーカーの独り言は続く。
「ふふふふ…昔は一度も追いつけなかったけど……今はもう違うんだよ……海斗君を掴まえられる……でもその前に………邪魔者は消さないと……」
ギシッ!
裏口から戻って来たストーカーが、再び倉庫の蓋の上にのり、立ち止まる。
この床の入口は、ただでさえ見つけづらく、蓋を開ける取手も、裏返して床と同じ柄になっている。だから知らない限り、こんな真っ暗闇では見つけられるはずがない………
「………」
「………」
「………海斗…君………海斗君……もーいーかぁーい……アハハハハハハハ…」
「…!」
見つかったか?あきらかにここに立ち止まっている時間が長い。心臓が飛び出しそうなほどばくばくしている。
もういっそのことここから飛び出て、暴れてやりたいほどだ。
だが……
「………はぁ、留守だったのかなぁ……うーん、残念。…また今度一緒に遊ぼっと。次こそは、私が勝つもんね。」
そう言い残すと、ストーカーは部屋から走りさってしまった。
行った……のか?
それからどのくらい経ったのだろう。確信がもてず、しばらく倉庫の中に隠れていたが、足音や笑い声が聞こえなくなったので、勇気を出して蓋を開ける…
ガコン!
やけに蓋を開ける音が大きく聞こえた。そんな音にビビりながらも、顔を出して辺りを確認。……いない……
念のため、裏口に置いてある傘と懐中電灯を持ち、家中をくまなく調べる。
台所……トイレ……お風呂場……洋間……リビング……僕の部屋………麻理の部屋……
全て調べ終えたが、どこにもストーカーはいなかった。だが、どの部屋も誰かが漁った形跡があるため、ストーカーが僕達を探していたのは確かなことだ。
さらに念のために家の外へ出て、庭や周りの道を見てみるが、こんな雨の夜に外に出ているのは一人もいなかった。
ブレーカを上げると、家の電気が再びつく。……もうストーカーも見てないし、大丈夫だよね?
まだ隠れたままの麻理を迎えにいく。
「麻理、もう大丈夫だよ。出てきても……って、麻理?」
声を掛けても返事がない。……麻理は気絶していた。そうだよな。あれだけ怖いめにあったんだから。
とりあえず麻理の安全を確認すると、僕も恐怖のためか、腰を抜かすようにその場に座り込み、しばらく立つことが出来なかった………
>>130 乙です。
正直ストーカーが恐すぎて他のヒロインが逆襲というか有利になる姿が想像できないw
もう麻理ちゃんが恐れから戦線離脱しそうな気がするw
GJ!
シザーマンみたいな子だな
クロックタワーやってる気分になっちまった
あぁ怖い(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
>>113 後二話か…寂しい気もするけど続きが見てえ…ユウキ萌え
マジ怖ぇー!!(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
キター(;゚∀゚)
こんなかくれおにをしてみたい
>>132 シャキーンシャキーンシャキーン
ああぁあ………
無血修羅場は有りえないのかあああああああAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!
結局、ストーカーは誰なんだ 気になるよw
ストーカーテラコワス(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
>>113 ユウキ本当に良い奴だ・゚・(つД`)・゚・
>>117 嫉妬心全開キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
>>124 切ねえ……切なすぎるよ。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
サクラァァァΣ(゚д゚lll)ガーン
『第十話』
確定だった。
今まで何度も心の中で否定してきたが、終にこうやって自身の瞳で映してしまったのだ。
その、決定的な光景を。
なんといえばいいのだろう。
この気持ちを。
概念では表現できず、頭の中の抽象的な映像でしか捉えることができない。
ただひとつ簡単に言葉にしてしまうとすれば、それは一色に表すことができる。
――――黒。
私があれほど釘を刺したのに、馨はまたあの病院へ向かった。
その結果が、これ?
身を切るような寒さに体を丸めてこらえ、いつ馨がでてくるのだろうかと心待ちにしていれば、朝日が目を焼いていた。
ふと一晩中私は何をやっているのだろうという考えにいたったが、一瞬で打ち消した。
決まっている。
馨のことを考えていた。
いつもいつも、私の心を占めているのは馨しかありえない。
どんな佳境に心を乱されようとも、結局残るのはその気持ちだけ。
少し悔しいなぁと、馨の横顔を浮かべては、思う。
でも、同時に仕方ないと思ってしまった。
それが、私の本心なんだから。
二度と来ない瞬間に後悔だけは残したくない。
中学時代からの教訓。
でも教訓に倣っているだけでは、現実は好転しない。
一度傾いていしまったバランスを正すには、それ以上の衝撃で今を転覆させるだけ。
朝の病院から足早に去っていく馨の後姿を眺め、不穏な決意を身に抱いた。
だが実のところ、どうやってあの女から馨を取り戻す?
自分の体を使って馨を惑わそうか?
これは何度も失敗している、却下。
ならばあの女みたいに自傷行動に出るか?
これも無駄。長年築き上げてこいた関係を白紙に戻してしまうだけ。
さてどうしようか…
胸に黒いものを抱えながら思索をめぐらせていると、先ほどまでの激昂は怖いくらいに醒めていった。
それと同時に妙なシンパシーを感じる。
きっとあの女も馨をひきつけようと、こんな策謀をめぐらせていたのだろう。
同じくして浮かび上がったのはあの女の零れんばかりの笑顔。
「■■…」
病室とあの女の顔、そして馨の後姿がかちりと音を立ててリンクした。
馨を他の存在に曝さない。
自分だけが馨を見ていられる状況を作り出す。
簡単なことじゃない…
“馨を閉じ込めてしまえばいいんだ”
そう思いついたとたん、急に胸が軽くなった。
昨晩は不安で不安で仕方がなかったけど、その気持ちがまるで夢の中の出来事みたいに消滅していた。
なんて素敵なことだろう。
ずっと馨と一緒にいられる。
あの女のところに行かない、別の女を見ない。
そしてずっと私は馨のお世話をしていられる。
十数年、心に溜めて来た想いが爆発して、私は今にも踊りだしたい感情をこらえ切れなかった。
馨…ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね。
恐くない、すぐに済むから。
すぐに二人だけになれるから。
どうして今までこうしなかったのだろう。
とても簡単で単純で、小学生でも思いつくようなことなのに…
沸き立つ気持ち。
何度も別の女に盗られた馨。それを後ろから見ていることしかできなかった私。
馨の上辺ばかりを愛した雌ども、馨の優しさだけに漬け込んできた犬ども。
悔しくて。目を覚まさせてあげたくて、何度も、何度も頼んだのに。
いつも馨は笑っていた。
どんなに傷ついても、自分がボロボロに壊れていっても…
その寂しい笑顔が、忘れられなくて、離れられなくて。
それでもずっと待ち続けた。
もう我慢は要らない。
今度の相手は今までの連中とは違う。
手段を選ばないタイプ。
自分を抑えられないタイプ。
――――私と同じ、■■■なタイプ…
こんなことを考えている私、どんな顔をしているのかな?
唇を吊り上げて、私は歩き出す。
学校を無断欠席した。
授業を一度もサボったことのない私が連絡もなしに姿をくらませば、馨は私の重要性に気づくはず。
困ったとき、嬉しいとき、傍に私がいない。
どう思うかしら?
馨の心(なか)に住んでいる私、馨の瞳に映る私…
嬉しくなる。
自分がいないところで、馨が私のことを考えてくれていると思うと…
一人はしたない笑みを浮かべていると、携帯が着信メロディを吐き出した。
この曲は、馨から。
神速でメールボックスを開き、新着メッセージを確認する。
内容は昨晩のこと。
私があの女に何を言ったか、何をしたか。
そして、最後に私を心配する内容が添えられていた。
とても簡潔で馨にしては乱暴な言葉遣い。
それでも嬉しい。
胸に暖かい気持ちがあふれた。
でも同時に、心の奥には冷えた部分がある。
昨日あの女が馨を呼び寄せて何をしたかだ。
私の言葉でバカみたいに踊ったあの窮鼠はどんな行動に出たのか。
おそらく、馨に関係でも迫ったのだろう。
その貧相な体を精一杯押し付けて。
そして如何なる妄言で馨を病院に呼び寄せたのか。
私が馨からの誘いに甘く震えているときに。
せっかく私が馨からの誘いに甘く震えているときに。
…
……
………引いていたはずの溶岩が腹で胎動する。
嫉妬と、焼付く様な怒りを伴い、業火で狂う。
メールは平常心を装った内容で返信した。
それでも、手が標的のない殺意に痙攣する。
それから自分が何をしていたか覚えていない。
気づけばお気に入りのぬいぐるみがボロボロに弾けていたし、綺麗に並べた香水の瓶がいつの間にか割れて魔女の釜のような匂いを発していた。
私がようやく平常心を取り戻したのは、馨のお陰だった。
荒々しく叩かれる扉。
来た……!!
目の前に馨がいる。
今すぐ飛びつきたい。
その逞しい体に顔をうずめたいしなやかな体に抱きしめられたい。
無骨な指で、頬をなぞって欲しい。
でも、我慢…
楽園は目の前に迫っている。
ここで焦ってはだめ。
慎重に、慎重に機会を待つ。
精神を研ぎ澄まし、急降下を待つ鷹のように爪を研ぎ。
舌をちらつかせ、喰らいつく毒蛇のように呼吸を殺す。
すぐに去っていく足音。
管理人室に向かったのだろう。
さぁ・・・
はじめよう。
私が、馨を、外敵から護るための神聖な行為。
誰にも侵されない、誰にも触れさせない聖域を築くための、儀式。
優しく馨の背中に触れてあげよう。
崖の下は谷底じゃない。
私の腕の中だから。
安心していいの。
ずっとずっとずっとずっとずっと!!
傍にいてあげるからね。
後ろから迫る私の存在に、馨は気づかない。
襟元に狐の毛をあしらった革のブルゾンを着こなしたその背中。
いっそのこと抱きついたまま飛び降りようかと思う。
…そこは押しとどめた。
そして馨が階段を下りようとして固まった瞬間…!!
愛撫するように優しく、そして律動するように激しく、その背中を押した。
魂が中に浮かんだように呆ける馨。
自分がどうなったか、がらんどうになった心では整理がつかないのだろう。
それでも美しい。
鈍い衝撃に転がりながら階段を滑っていく馨。
踊り場の壁に背中を打ち付けてうつぶせに倒れた馨は、身を折って激しく咳き込んだ。
その体の動きに伴って、前頭部からぬるりと赤いものが滴る。
それが意外にも長い馨の睫毛を濡らしたとき、私はいよいよ我慢が利かなくなった。
色っぽい。
あまりに官能的。
普段凛々しいその姿が、雨に打たれる棄て猫みたいに震えて…!!
あぁ、こんな馨見たことないよ。
可愛い愛しい素敵大好き愛してる襲いかかって服を脱がしてこのまま獣みたいに交わりたい
ぞくぞくぞくぞくぞくぞくぞくするこれは寒さのせいじゃない体をおかしくさせるくらいに
こぼれた血を掬って舐めたい迸る鮮血を尖らせた唇で吸収したい馨のにおいを胸いっぱいに吸い込んで
あの女の不健康な病院と包帯と薬のにおいを私の匂いでかき消して
一生離れられないようにこのまま一つになるのもいいし■■してもあこれから監■するんだった■禁
でも私の手当てじゃ馨が死んじゃうから救急車を呼んで近くの病院に搬送してもらおう
あの女がこられないように私がずっとずっと死ぬまで傍にいてあげるから、ね?
自分の存在をアピールするように、いつも歩き方をする。
沈黙した空間に、ヒールの音だけが響く。
馨が微かに顔を上げた。
自ら突き落とし、自ら手を差し伸べる。
そんな背徳的な行為がいよいよ高揚感という猛火に油を注いでいく。
馨の閉じかけている瞼から光るのは、思考の光。
生きてる。
だから、ゆっくり休んで…
私は。
そっと…
うごかなくなったかおるにくちづける。
■にはお好きなワードを入れてお楽しみください。
6xSmO/z5xE様、次回から使わせていただきます。ありがとうございます。
序章いかがでしょうか。拙い文章ですが楽しんでいただければ幸いです。
Σ(´д`ノ)ノ 大量のレベルの高い作品が投下されてて感想が追いつかないよ
>>113 あぁ、ユウキさん頑張って!平行世界の君は搾り取られても頑張って生きている
>>117 嫉妬して血が出てるのにちょっと楽しそうなのが((;゚Д゚)ガクガクブルブル
>>124 一瞬ユキさんが男だということを忘れてた・・・
虎徹ちゃん急いでー!
>>130 緊張感が異常((;゚Д゚)ガクガクブルブル
あぁ、でもストーカー側に興奮してる俺って」 ̄l○
>>144 監■キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
あぁ、これだけ凄い作品が書ける作者様方の力量に嫉妬
投下します
闇に包まれた空間。
僅かに聞こえてくる呼吸の音が部屋の静寂を際立たせる。
その中央に糸のように弱々しい光が差し込むと同時に。
パチッ
軽い火花の弾ける音に合わせ、
暗闇の部屋は嘘のように姿を消し、明かりに満ち溢れた。
「あはっ!」
…いけない。思わず笑ってしまった。
あまりにも調子良く進んでいく研究に呆気なさすら感じる。
私に与えられた使命、新エネルギーの開発。
手強かったら嫌だなとは思ったがやってみるとサクサク進む。
まず目につけたのが従来の太陽電池だ。
太陽光。ほぼ無限に降り注ぐ光を電気に変える。
まさに理想的だが今まではその変換効率とコスト。
この二つが乗り越えられなかったらしい。
しかし私は今その一つを乗り越えた。
今の実験からするとこの太陽電池は
夜の月明かりでですら発電出来るんじゃないかと思う。
この成果を郷護に話したら褒めてくれるだろうか。
私の頭をよくやったと撫でてくれるだろうか。
うん。
郷護なら褒めてくれる。それは、確実だろう。
いや、それにとどまらずだ。
こう…強く抱きしめてもらっちゃったりなんかしちゃったりして…
そのままの勢いで…
感動の再会に抱きしめ合う男女。
男の存在を全身で感じた女はふと顔を上げる。
そこにははにかんだような男の表情。
しばし見つめあい、やがて、どちらからともなく顔が近づく。
ファーストキスだ。
それは、時間にすれば数秒。
軽い、唇を合わせるだけのキス。
それでも二人には充分だ。
互いの気持ちを言葉にするまでもない。
合わせた唇から相手の感情が全て流れ込んできたから。
再び見つめあい、軽く微笑みあう。
また、唇をあわせる。
今度は深く相手を貧りあうキスだ。
先程のファーストキスが嘘かのようにお互いを激しく求めあう
ピピピピッ…ピピピピッ
……………………
少しうるさめの電子音に私は我に帰った。
なんだ。これからがいいところだったのに。
せっかくの郷護との再会シミュレーションを邪魔されて
少し不機嫌になりつつ私は時計に目をやった。
午後十一時
一気に思考が切り替わる。こうしてはいられない。
急ぎパソコンの電源をいれキーボードを叩く。
目的はとある人工衛生の管理システムのハッキングだ。
手早くシステム内に侵入し焦点をある家のテラスに合わせ、
一気にズームアップ。
衛生のカメラで撮られた映像が画面に送られてくる。
いた。郷護だ。
いつもどうりの時間にいつもの場所で本を読んでいる。
何故外にでて本を読むのかはわからないが
そのおかげで私はこうして郷護を見ることができる。
郷護のこの癖を発見したのは一ヶ月くらい前。
それまでは安定して郷護を見れなかった。
そのため精神的に辛いものがあったが
今ではこの就寝前の郷護観察に大分助けられている。
ふと郷護が顔をあげた。
家の中を驚いたような表情で見た数秒後、
テラスに何かが飛び出してきた。
そのまま郷護の腕に絡み付く。
突然の乱入者に目をこらすとそいつは……………女だ。
………………………………………………………………
………………………………………………………………
何がなんだかわからない。
お前は……誰だ。
なぜ…郷護の隣にいる。
そこで何をしている。
どす黒い感情が溢れ出してくる。
殺意にも似た言いようのない怒りが込み上げる。
なんなんだ?その顔は?
「あぁ…幸せぇ。」とでも言いたげなその顔は?
喧嘩を売っているとしか思えない。
女が顔をあげた。
郷護の首に両手をまわし、顔を近づけそのまま………キス…を…………
そうか……コイツ、自殺願望があるんだ…
「なら、手伝ってあげる。」
ガシャン
私はおもむろににパソコンを突き飛ばす。
机から落ちたパソコンに向かってキーボードを振り下ろす。
ガシャン! ガシャン! ガシャン! ガシャン! ガシャン! ガシャン! ガシャン!
ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン!
ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン!
まだ足りない、まだ足りない、まだ足りない
ディスプレイが砕け、火花を撒き散らそうとも叩き続ける。
殺してやる、あの女、郷護を、汚した、私の、光を、汚した。
以上です。
テキスト量に対しレス数が多くて申し訳ありません。
スウィッチブレイドキター
ゆかりんかわいいよゆかりん
スウィッチブレイドナイフ*・゜゚・*(n‘∀‘)η*・゜゚・*ァ !!!!!
乙っす
>>153 シュミレーションをしていることに興奮する
|ω・`) そんな自分が大好きだ!
>>153 シミュレーションをしていることに興奮する
|ω・`)俺もそんな自分が大好きだ!
投下します。
「じゃあまた明日ね、智ちゃん! おやすみなさい!」
満面の笑顔で帰っていく千早を、智も笑顔で見送る。あれから千早は始終ご機嫌で、智にずっと纏わり付いていた。
不思議なことに、智もそれに邪な心を抱くことなく接した。決意さえちゃんとできればどうということはないのだ。
やはり自分にとって千早は大切な幼馴染だと、智は今更のように思う。
その千早をどれだけ心配させていたかは、先程までの犬っぷりを見れば明らかだ。
そしてその始まりは、やはり自身の吸血鬼化。それは智に、かなりの精神的負担を強いていた。
吸血鬼になって変わったのは、血を飲む性質だけではない。
まず身体能力が上がった。以前が運動会のクラス対抗リレーに選ばれる程度とすれば、今は国体クラスといったところ。一応常人レベルに収まっているし、ある程度力をセーブできるので、周囲にバレてはいない。
肉体のバイオリズムも変わった。昼がダルい。強い日差しを受けると、チクチクと針を刺すような痛みを感じてしまう。
割と真面目に授業を受けていたのに、寝ることも増えてしまった。元の成績が悪くなかったので今はそれほど問題はないが、今度の期末テストは少し気をつけないといけないだろう。
逆に夜は元気なので、夜に勉強すればいいだけなのだが。
懸念された吸血鬼の弱点というのは、実はそれほどでもなかった。まずニンニクは平気。多少は効くが、単に嗅覚も鋭くなったために感じるだけのことであり、これはニンニクに限ったことではない。ドリアンなどの方が余程脅威だ。
十字架も平気だった。藍香曰く『単に物が交差しただけでは、魔を祓う聖性はない』とのこと。つまり、藍香が持っているような魔術的な力のある十字架でないと効果がないということだろう。
日光は前述の通り。多少は堪えるが、せいぜい慢性的な寝不足状態、という程度でしかない。根性と体調管理でどうにでもなると智は踏んでいる。
心臓に杭は・・・打てば死ぬだろうが、それは吸血鬼に限った話ではあるまい。それでなければ傷つかない身体にもなっていない。現に、昨日は体育で擦り傷を負ったし、普通に痛かったのだから。
つまるところ、日常生活には問題はないのだ。ならば、何が智をこうも疲労させているのか――。
(くそ・・・・・・)
毒づいて見せても、脳裏に浮かぶ情景は現れるのを止めてくれない。例え身体が今のようになっていなくても、それは押さえ込むにはあまりに魅惑的な光景。
部室での藍香の艶姿。下着が見えることも厭わず開かれた制服、大理石のように滑らかな肌、震える慎ましやかな唇、そして張りのある美しいラインを描いた豊かな双丘。
そんな姿を年頃の男子に晒すことの意味を、藍香は分かっているのだろうか。
確かに智の身体の異変の原因は藍香にある。あの報告に行った日の色を失った藍香の表情からもそれは分かる。口数は少ないが優しい藍香だ、責任を感じているのだろう。
だが、それは自己犠牲的に己の全てを捧げることとは違うと思う。別に贖罪を望んでいるわけではないし、こんな形でのものなどいわずもがなだ。
今の智は身体能力を始め、嗅覚など五感も強化されている。そしてそれは、性的な欲求とて例外ではない。
だからこそ困るのだ。この年齢の割に強い理性を誇る智だが、あくまで年齢の割に、だ。所詮17歳の少年に過ぎない彼の理性は、毎日恐ろしい勢いで磨耗している。
初めての吸血の時、藍香は制服を緩めて僅かに肩を晒した。首筋に噛み付きやすくするためにと言って。別に必要はなかったが、先輩が言うならこのくらいはいいかと、少しドキドキしながら承諾したのだ。
それが、いつの間にこんなことになったのだろう。分かっている。欲望に負けて拒めなかった自分が悪いのだ。だが、それも今更。
血と女への陶酔感に溺れかけている自分は止めようがなかった。
加えて千早のあの金切り声。智には匂いがどうとしか聞こえなかったが、それもオカルト研究会によるものだろう。
始めはもしや自分はそんなに臭いのかと思ったが、あの部室を思い出せばその疑問もすぐに解けた。
思えば、部室ではいつも怪しいお香を焚いていた。時に香水のようだったり、時に刺激臭だったり、時に香辛料そのものだったり。
湯船に浸かりながら、智は今日のお香を思い出した。身体を火照らすような、温度の高い煙だったが、不快な匂いではなかった。むしろ甘い感じの・・・。
「・・・・・・・・・」
なぜか浮かんだのは藍香の肢体。即座に冷たいシャワーで頭を冷やした。
ともあれ、それらの香も何かしら魔術的な代物に違いあるまい。自分は慣れているし、人体に害はない――と智は思う――とはいえ、千早には何か不快感を与えるものがあったのかもしれない。
思えば、千早はここのところ不安定だった。今日のように我を忘れた叫びを上げたのは始めてだが、智がオカルト研究会に行くことに、ずっと不安を抱いていた。
それは、人知が及ばぬ領域に対する根源的な恐怖だろうか。ならば自分も、必要以上にそこに関わるのは止すべきではないか。
確かに本物の魔術などに興味はあるが、それは何より大切な幼馴染にあんな思いをさせてまで貫くものではない。
藍香から血を吸うのを止め、オカルト研究会とはただ吸血鬼から元に戻ることに関してのみ付き合う。そうすべきだ。
部活をやめても、別に藍香との付き合い自体が消えるわけではない。もう自分たちは友人同士だ。ずっと藍香の領域で付き合ってきたが、今度は自分や千早で藍香を光差す世界へ連れ出そう。
一度決めてしまうと気が楽になる。
夕食での、千早の痛いほど真剣な言葉が、その決意を後押ししてくれた。
(この日常を守ろう。千早や藍香先輩の前では、俺はいつもの高村智だ。みんなが見てないところでどんな思いをしても、それを絶対に表に出さない)
時計をみると、午後の十時を回ったところだった。
智は部屋に戻って上着を羽織ると外へ飛び出す。日常を守るためにも、これからしなければならないことがあるのだ。
夜という翼を得た吸血鬼の少年は一陣の疾風となって、住宅街からあっという間に姿を消した。
・・・日常を守るため、などと格好のいいことを言ったとしても。
(俺のしてることって、まるっきり性犯罪者のそれだよな・・・)
それでも智は、自らの行為をやめようとしない。
「ぁぁぁ・・・いい、いいよぉ・・・!」
智に後ろから抱きすくめられた女が身体をくねらせて身悶える。眼鏡を掛けた真面目そうな少女だったが、今は快感に呆けた浅ましい表情で智に身を任せている。
その女の首筋には、智の鋭い歯が突き立てられていた。
言うまでもないが、血を吸っている。
夜は11時遅く、場所は繁華街の裏路地だった。
藍香から血は吸わない。いくら言ったところで、こればかりは根性で抑えられるものではない。一度我慢を試して実証済みだ。血を断って三日、翌日に貪るように藍香にしゃぶりついた経験は、今も智に苦い思いを抱かせる。
ならば他から血を供給するしかない。だが、見知らぬ他人に血を吸わせてくれなんて言える訳がない。
だったら無理矢理――それでもなるべく穏便に――いただくしかない。
他にいい案があるかもしれないが、悠長にそれが見つかるのを待ってもいられない状況だ。
そうして智が考えたのが――夜の街に繰り出し、人知れず暗躍して人を襲う、だった。
実は、こうして夜に出かけるのはこれが初めてではない。藍香から吸う血の量だけでは足りなかったのだ。貧血にならないようにと手加減して吸っているためなのだが、それで自分が暴走しては元も子もない。
だから智は、見知らぬ人々からほんの少しずつ血を吸って吸血欲求を満たしている。
初めはのべつまくなしに吸った。中年サラリーマンにも我慢して牙を立てた。結果、吐いた。純粋に血が不味くて。
血にも良し悪し、或いは相性があることを知ると、段々と自分に合うターゲットを絞っていった。
まず女性。それも若い女。そして、これは智が推理した傾向でしかないのだが――。
清楚な、真面目な、遊んでなさそうな――そして、これは邪推だと本人は思っているが――。
処女。
で、ある。以前、年不相応に似合わない化粧をしたけばけばしい中学生――制服で分かった――の血が酷く不味かったのに対し、三十路前くらいと思われる真面目そうなOLの血はとても美味かった。
・・・無論、血を吸っただけで相手の性遍歴まで分かるわけはないのだが。
ともあれそんなわけで、智はターゲットを女子中高大生から若いOL当たりに絞っている。
塾帰りの学生やちょっとコンビニに出てきた受験生、残業で疲れて帰路に着くOLと、探せば以外に見つかるもので、今のところ相手に困ることはない。
襲う方法は極めて単純。近道と思って裏路地や人気のない暗がりを通った所などを羽交い絞めにし、有無を言わせず素早く歯を立てるだけ。早ければ5秒、多くても10秒は掛けない。
猥褻行為とは違うし、智も邪な気持ちはないのだが、客観的に見れば、本人が思った通りどう見ても性犯罪者だ。それでも智は今のところ、全くボロを出していない。
夜が智に与える力は思いのほか大きく、女性一人の動きを封じるくらいは難なくやってしまうからだ。
無論時間と場所という要因もある。だが、何より――。
「あぁぁぁ・・・はふぅぅぅ・・・・・・」
智の腕の中で、眼鏡の少女がくてんとなる。実はイッてしまったのだが、智が気づくはずもない。
「ふう・・・上手くいったな。ごめん、ちょっともらっただけだから。身体に影響は出ないと思う。・・・ホントにごめんな」
心からすまなそうに、しかし顔は決して見せず、脱力した少女をその場に横たえて智は姿を消した。
・・・そして何より、女性からの抵抗がないこと。これが大きい。最初は抵抗されるが、一度牙を突き立ててしまえば大抵が脱力し、智のなすがままにされてしまうからだ。
女性の無抵抗の理由を『吸血などいう行為を受けたへの衝撃から』と取っている智は、その衝撃を押さえ込んででも抵抗する女性がいつ現れるかと、内心では戦々恐々としている。吸血時間の短さやすぐに逃げ出すことからもそれは明らかだ。
だから気づかないのだろう。その少女の血を吸うのは実は二度目であること、少女が一時間ほども前からこの辺りをうろついていたこと。
そして、彼女と同様に意味もなく、だが一抹の期待を胸に抱いて繁華街をうろつく女性たちの存在と、彼女たちの首にある小さな刺し傷のようなものを。
このように自力で血を補給できる智が、なぜ藍香の血を吸うことに甘んじていたのか。それはまさしく「甘え」だ。弱い自分と藍香の優しさへの。
藍香の血は美味い。味がどうこうではなく、もっと何か・・・本能的な欲求というか、支配欲というか――智には上手く言葉に出来ない――を満たしてくれるのだ。
『藍香』が、『藍香の血』が欲しい、と心の中が喚くのだ。他の女性には今しがたのように、単に血を求める存在以上の衝動は抱かないというのに。
実際、量はともかく満足度では、他の女性が束になっても藍香には敵わないだろう。
だからこその甘えであり、しかし自分はこれを終わらせなければならない。取り敢えず相性の合う血さえあれば自分の身体は保つのだ、後は藍香を信じて待つしかない。
時計を見ると、既に日付は翌日になっていた。
(午前1時前か・・・そろそろ帰ろう)
身体は元気一杯だが、寝ておかないと明日に響く。授業中ずっと寝て過ごすなどという醜態は晒せない。
そう思って自宅への道を取ろうとした智だが、ある光景が目に映った。
「なあ姉ちゃんさー、俺らがこんなに誘ってるんだぜ? そろそろOKって言ってくれてもいーじゃん」
「そーそー。忘れられない夜にしてやんぜ? ぎゃははははははっ!」
「なあいいだろー? こっちが大人しくしてる間にさぁ、うんって言っといた方がいいぜー?」
未だ人の多いメインストリート、電灯が明るく照らす下で、三人の若者が女性一人に蝿のようにたかっている。
そして周りの人間は、チラリと一瞥して素通りしていく。薄情ではあるが、関わり合いになりたくないのだろう。
その格好の悪趣味さは智曰く『筆舌に尽くしがたく』。彼らを見て最初に抱いた感想は、『こんな時代錯誤な連中がまだいたなんて・・・』だったのだが。それはさておき。
「悪いけど。タイプじゃないって何度も言った通りよ。もういい加減にして、他の相手を探したら?」
「そんなこと言わないでさあ・・・」
毅然と言い放つ女性に男の一人が無遠慮に手を伸ばし――。
パンッ。
小気味よい音が響いた。男の手を叩き落とした女性が、返す手でその頬を引っ叩いたのだ。
叩かれた態勢のまま、男は何が起こったのか分からないとでもいうように立ち尽くしていたが。
「このアマぁっ! 人が下手に出てりゃ調子に乗りやがって!」
あっさりキレた男が拳を作って女性に踊りかかる。
剣呑な雰囲気になってきたことに周囲の人間の注目が集まるが、やはりというかこの期に及んでも尚助けようとする者はいない。
女性は気丈な姿勢を崩さず、男がまさにその顔に殴りかかろうとして――。
「やめろ」
いつの間にか男と女性の間に入り込んだ智が、男の拳を受け止めていた。自分より一回りも大柄な男の拳を、智は顔色一つ変えず左手で受け止めている。
驚いたのか、後ろで女性が息を飲む気配が伝わる。周囲の全ての人間の足が止まる。そして男の動きも止まったが――智はそれが再び動き出すことを許さない。
驚愕に歪んでいる男の顔に、智は間髪入れず右の拳を叩き込んだ。
「へぶらっ!」
鼻血を吹いて男が転がる。
「なっ・・・テメェっ!」
ズザァッ、と音を立てて仲間が自分たちの間に転がり、暫し呆然としていたが、残る二人もすぐに頭に血を上らせ、智に殴りかかってくる。しかし。
「・・・見える」
冷静さを欠いた単調な攻撃、群れて数任せに戦うことしか能がない平均以下の能力。智の中に酷薄な感情が芽生え、相手を冷静に分析する。
チンピラ相手に本気を出すことはないが、ケガに気を使って手加減してやる必要もない。
二人をある程度引き付けると、智はドロップキックの要領で一人の脛に飛び蹴りを食らわす。為す術も無く倒れる一人。しかもその動きでもう一人の後方を取る。
慌てて振り返ったもう一人へ、立ち上がりざまに身体を捻りながらの裏拳をお見舞いした。
「あがぁっ!?」
何とか倒れずにたたらを踏むが、鼻血を吹いてよろけていてはとても様にならない。
その間に智は脛蹴りで転ばせた男の背中を踏みつけ、宣言した。
「まだやる気か?」
智の問いに二人の鼻血男が敵意を込めて睨みつけるが、距離を詰めようとする様子は無い。
相手の戦意の喪失を確認すると、智は背中を踏む足をどかせた。すぐさま這うような動きで立ち上がり、仲間の所へ合流する。
「覚えてやがれ!」
あんまりと言えばあんまりな捨て台詞を残し、男たちは走り去る。智はそんな言葉を浴びせられたことに、ある意味で深く感動していた。
今回はここまで。新ヒロイン登場編でした。もうちょっと短くするつもりでしたが・・・。
基本的に主人公は熱血系のいい奴です。浩○ちゃん(byあか○)のイメージで。
なにこの80年代の香り
新ヒロインキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
そしてチンピラが……懐かしいです…………
作者様GJっす
T○Heart自体エロゲの中ではもはや古いに入るからねぇ、主人公もそれっぽい
とりあえず新ヒロインに負けないように千早と藍香を応援するっす (´・ω・`)
特に千早は不利っぽいから応援しないと・・・
血を吸われたくて繁華街をうろついてる眼鏡っ子を想像すると激しく萌えるw
新ヒロインははたしてどんなキャラなのか、今から期待が膨らみます
作者さんGJでした
ここにきて新ヒロインか…
どうなっちまうんだ?ハッフゥー!
東鳩ってもう昔の作品に分類されるのな(´・ω・`)
なんか吸血することによって修羅場の種をばら撒いてるようにしか見えないよハアハア
町中が修羅場になりそうだ
この話はいわば後日談です。
第八話以降に起こった諸問題は解決、大槻は怒りを取り戻し(と言っても肉親が殺された並の激しい怒りが必要で、それ以外は大槻スマイルが出ます)、
不屈がまた行方不明になり、そして勇気と天野は晴れて恋人同士となった後のお話です。
長い長い道のりを天野と一緒に歩き、ようやく部屋へと戻ってきた。
「あの……不撓さん」
「どうした?」
「流石にちょっと恥ずかしいですので……」
そう言われて自分達が手を繋ぎ続けていたのを思い出す。
俺も天野も一瞬にして顔を真っ赤に紅潮していくのがわかった。
だが……それでもその温もりは消えない。
逆に手にどんどん力が入っていった。
「なんだか、名残惜しい気もしますね」
「そうだな」
部屋の前で立ちすくむ、できる事ならずっとこのままでいたい。
天野も同じ事を考えていると思っても良いのだろうか?
「不撓さん」「天野」
……同時だった。
まるで一昔前のドラマのようだ。
「どうしたんだ?天野」
「えっと……もしかして、不撓さんも同じ事を考えているのかな……と思いまして」
なんだ……悩む必要も考える必要も、聞く必要だって無いじゃないか。
「ああ、きっと同じだよ」
迷わず答えた。
これ以外の答えは何も思いつかなかった。
「不撓さん……」
きっと……天野も同じ気持ちだと思う。
俺のうぬぼれだろうか?
いや、それでも俺は天野を信じていたかった。
「……浮気は絶対に許しませんよ」
「待て天野、何を考えていた?」
……台無しだった。
ガチャ……
ドアを開けた瞬間、妙に甘ったるい匂いが鼻腔をくすぐった。
「天野っ!」
「不撓さんは離れていてください、毒物の可能性があります」
部屋と靴置き場を隔てる襖から距離を取る。
迂闊だった……大槻が狙われる可能性は0になった訳じゃない。
こうなる事も予測しておくべきだった。
「どうする、襖に穴を開けて流出させるか?」
「離れていてください、私が突入します」
「大丈夫なのか?」
「対人間用の毒は吸血鬼には通用しません、たぶん大丈夫です」
そう言うと天野は素早く襖の陰に移動し……手をかけた。
アイコンタクトをとる……わかっている、何かあったらすぐに行動できる。
「……んっ……はんっ……」
妙な声が聞こえた。
もう一度アイコンタクトをとる……天野にも聞こえていたようだ。
……って待てよ、今の声は聞き覚えがあるんじゃないか?
それにこの匂いもどこかで……
「なんだか嫌な予感がするのだが……」
「この声……大槻さんですよね……」
……ああ、どこかで聞いた声だと思ったが。
言われてみれば確かに大槻の声だった。
そして4年以上の付き合いなのに言われるまで気づかない俺。
「やんっ……駄目……これ以上……はうんっ……」
よくよく耳を澄ませれば英知の声も聞こえてきた。
ついでにこの匂いの正体も思い出した。
これは確か以前英知から逆レイプされた時に嗅いだ匂いだ。
曰く『媚薬の一種』だとか。
……だんだん中で何が起きているのか想像がついてきたな。
「突入……しても良いんでしょうか?」
「大槻が英知に襲われてる可能性もあるからな。一応、助けに行った方が良いんじゃないか」
「でもお楽しみ中だったら……」
「英知はともかく大槻が両刀って事は無いと思うぞ……自信は無いが」
英知に関しては今更どんな性癖があったとしても俺は驚かん。
天野はそれでも何秒か躊躇し……そして意を決して襖を開けた。
ガラッ……
むせ返るような汗の臭いと共に、甘い匂いが一段と強さを増す。
それと同時に視界に飛び込んできたのは、案の定互いの性器を擦り合わせ少しでも多くの快楽を得ようともがく二人の少女であった。
「あっ、あっ、あんっ……」
「くっ、あんっ、はうぅっ……」
こちらに気づいた様子も無い、よっぽど夢中になっているのか。
だが散らかった布団、はだけた浴衣、焦点の合わない眼……やべぇ、凄くやらしい。
「どうします……」
「とりあえず窓を開けてくれ、この匂いの効果は意外とすぐに切れた筈だ」
すぐに天野が窓を全開にする。
逆に俺はドアを閉める、この匂いが他の客を襲い始めたら厄介だからな。
息を止め窓に近づく、幸いな事に今回は全身が脱力したりはしなかった。
「はんっ、はんっ、ああううぅぅっ……」
「やぁっ、駄目、駄目ぇぇっ……」
だが媚薬としての効果なのか、それともこの二人を見ていたからなのか、俺のアレは痛々しい程に勃起してしまっていた。
「……不撓さん」
「不可抗力だ、許せ」
睨むな、低い声を出すな、そして殺気を放つな。
「一気に空気を入れ替えます、伏せていてください」
「天野?」
「吹けよ無情の野分の風よ……」
……聞いてねぇし。
「竜巻地獄っっ!!」
ブワァッ!!!
凄まじい勢いの旋風が部屋中を駆け抜け、一瞬にして甘ったるい匂いを雲散させる。
「あっ……兄上!?いつからそこへ?」
その突風を受けてようやく英知がこちらに気づいたらしい。
「英知、これはどういう事だ?事と次第によってはレッグ・スプリットだ」
「やっ、駄目です……ちょっ!?そこは……ああっ!!」
やれやれ、まだ返事をする余裕は無さそうだ。
英知は耐性でもあるのか、多少はこちらを気にしている様だ。
「あんっ、あんっ、はあぁっ……」
だが大槻は完全に眼がイッてしまっている。
口も眼も大きく見開きながらただ身体を揺らすその姿を見ると、どうしても4年前の公園を思い出してしまう。
四年前の……パジャマ……いかん、思い出したらまた興奮し始めた。
「……不撓さん」
「だから不可抗力だ」
睨むな、低い声を出すな、そして殺気を放つな……頼むから。
どちらにせよこれ以上ここに居るのは得策ではなさそうだ。
英知からは話を聞ける状況ではないし、大槻は半狂乱だし、それにこれ以上ここに居たら俺の理性が保たん。
理性……と言うよりはむしろ神経と心臓が保たん。
「ところで、今の内に不撓さんとゆっ……くりとお話がしたいんですけど」
「いや、だから不可抗力なんだって」
もしこの状況下で下半身が何の反応も示さない男が居るとすれば、そいつは不能か精も根も尽き果てている奴だろう。
「それもありますけど、別件の事もゆっ……くりと」
そう言うと天野は俺の手を掴み、そのまま問答無用で連れ去られるのであった。
……情けないと言う事なかれ、単純なパワーなら天野の方が上なのだ。
こうして俺達は再び互いの手を繋ぐ事となったのだが、二度目は別の意味で緊張するハメになるのであった。
……翌日……
「「サンダーウイングリュウケンドーライジン!
サンダーウイングリュウケンドーライジン!
サンダーウイングリュウケンドーライジン!」」
箱根温泉旅行二日目の朝はそんな訳のわからない声で始まった。
いつの間にか眠って……いや、気絶していたらしい。
あの後天野に人気の無い場所に連れて来られ、そのまま気力と体力が尽きるまでイカされ続けたのだった。
どこで覚えたのかは知らんが、手や口はもちろん素股や足、脇、文字通り身体のあらゆる部分が俺に襲いかかってきたのだ。
結局俺が数十回の絶頂を迎え精も根も尽き果てるまで、俺は天野をイカせる事はおろか主導権を握る事も挿入する事も無かったのであった……
ううぅ……思い出したら劣等感が蘇ってきた。
一晩分回復したとはいえ、未だ気だるい体を起こす。
「……何やってるんだ?」
そこには食い入るかの様にテレビに注目する天野と英知が居た。
天野は昨日と同じく浴衣姿、英知は始めて見る姿……パジャマ姿だった。
英知と関係の深い植物を連想させる淡い緑を基調とし、所々にやや濃い緑色の水玉模様が描かれたパジャマだ。
家では常にネグリジェを愛用し、決して見る事のできなかった英知のパジャマ姿。
それは俺にまるで破城鎚のような衝撃と感動を強要した。
英知と言えばネグリジェ、その既成概念を打ち破るばかりではなく、その姿はその姿単体で見ても十二分に破壊力を秘めていた。
常にやや大人びた……いや、背伸びをした言動をし続けていた英知。
しかしその英知が時折魅せる子供っぽさの持つ破壊力を改めて確認したような気がする。
眼を輝かせテレビを食い入るように見つめる英知、ほんの少しだけ大きめのパジャマを身につける英知、
今この瞬間だけは年相応の少女をやっている英知。
それら全てが英知のアンバランスさとでも言うべき物を演出し、昇華させているのだ。
それはどんなに小さき欠落もゆるさない絶妙なるアンバランスのバランス。
まさしくパジャマ・オブ・英知だ。
「兄上、泣いておられるのですか?」
「……ん?いや、別になんでもない」
英知から声をかけられ正気を取り戻す。
いつの間にやら番組はCMに入ったようだ。
天野は……まだテレビに見入っている。
鍵の数だけサウンドが楽しめる。全魔弾キー対応、DXザンリュウジン。
……CMがそんなに面白いのかね?
まあ良い、昨日気絶するほど絞り取られたと言うのに男の生理現象……朝立ちはしっかりと起こっている。
昨日の様に妙な焼きもちを焼かれる前にトイレにでも行って収まるのを待つとしよう。
「……えい」
……甘かった。
天野の両足が浴衣越しに俺のモノを挟んでいた。
そのまま昨晩の様に圧迫と開放を繰り返し、ゆっくりと……だが確実に快感を蓄積させてくる。
まずい、このままでは俺はまたなす術も無く一方的にイカされる。
しかも相手はよそ見をしながらでだ。
天野よ、昨日も思ったがどこで覚えたんだこんなテクニック。
……が、幸か不幸かじきに天野の足は動きを止めた。
なんて事はない、CMが終わり天野の注意がそっちへ向かったのだ。
てか……俺よりもテレビの方が大事なのか?
かなり複雑な心境だが、俺は再びCMが始まる前に大浴場へと避難する事にした。
ががががががががっ……
「あ”あ”あ”あ”あ”〜〜〜」
温泉にゆっくりと浸かった後のマッサージ器ほど日頃の疲れを癒せる物が他にあるだろうか?
思わずやや険悪になっている天野の機嫌の事を忘れてしまう気持ち良さだ。
いや……全然忘れてないか。
さて、天野の機嫌を直す良い方法でもないだろうか?
生理現象を抑える方法などわからんし、それで不機嫌になる天野も理不尽だとは思う。
まあ英知にレッグ・スプリット……別名股裂きをかけようとしたのは少々デリカシーに欠けていたかもしれない。
別にレッグ・スプリットに深い意味は無かった、ただ一番最初に思いついた技がそれだっただけだ。
とは言え、仮にも女性……しかも妹にあんな格好を強いる技をかけようとしたのは責められて当然の行為だろう。
……昔師匠にあの技をかけた事は言わない方が良いんだろうな。
当時は師匠を女性と意識した事は無いとは言え、確かあの時はスカートをはいていた記憶がある。
その後で師匠から卍固めをかけられた時に、スカートの中に俺の頭が完全に入っていた事も良く覚えている。
……て、良く良く考えたらとんでもない事をしてるな、俺って。
あの頃は師匠に限らず恋だとか女性だとか考えた事なんてなかったからな。
ここ一年ばかり師匠とは会っていない、最後に会ったのは去年の正月だった。
最後に手合わせをしたのは……もう一昨年の事になるか。
あの時も師匠が女性だって事を全く考えずに技をかけてたっけな。
今の俺がやったら……どうなるだろう?
師匠はともかく、今の俺に体を密着させる技をかける事ができるだろうか?
はっきり言って自信が無い。
なんか……思春期やってるな、今の俺。
そんな事を考えていると、急に師匠に会いたくなってきた。
この旅行が終わったら会いに行くのも悪くない。
どうせ隣町だしな。
いつの間にかマッサージ器が停止していた。どうやらタイマーで停止するような構造になっているらしい。
壁に掛けられた時計を確認する……8時42分、あれからもう一時間以上経っている。
番組はもう終わったのだろうか?
いや、関係ないか。
どちらにせよ天野の機嫌を直す手段を思いついていない以上、まだ顔を合わせる気は起きない。
もう一度マッサージ器のスイッチを入れる、もう少しだけここで時間を潰す事にしよう。
……だが、すぐにスイッチを切った。
今視界を横切った人物……大槻だったような気がした。
大槻が居た。
早朝のまだ電源の入れられていないゲームコーナー。
大槻はただ暗闇のみを映す画面に囲まれていた。
だが俺には声をかける事ができなかった。
ただ大槻に見とれていた。
今朝、部屋に居た時は気がつかなかった。
四年前から大きく成長した……大槻のパジャマ姿。
成長した、これほどまでに今の大槻に合う言葉があるだろうか?
出るべき部分は出て、引き締まるべき部分はしっかりと引き締まった肢体。
そしてその恵まれた肉体を逆に隠すように纏われたやや大きめのパジャマ。
そのある種チラリズムとでも言うべき物が俺の好奇心を大きく揺り動かしているのは明確だ。
パジャマはピンクの無地、シンプルだが大槻の魅力をストレートに引き出す最良の選択だ。
大槻は元々小細工を好まない性格、その大槻の基本とでも言うべき物をより印象付けるには、
やはりシンプルかつストレートに衝撃を与えるピンクの無地こそが最良の選択であると断言できる。
……だが、一つだけマイナスポイントがある。
それは大槻の表情、暖色であるピンクに憂鬱顔は似合わない。
それはこの四年間で何度も見た、嫌な事があった後の大槻の顔であった。
「大槻、どうした?」
やっと声が出てくれた。
大槻は無言で視線をこちらへ向ける。
そして少しだけ悲しそうな眼をして……すぐにいつもの大槻の眼になった。
「勇気君……私、汚されちゃったよ……」
言葉とは裏腹に大槻の語調はいつもと殆ど変わらない、悪ふざけを考えてる時の大槻の声だ。
だが俺には大槻が無理をしているような気がしていた。
まるでそう……きっと無理矢理話題を変えている、きっと無理矢理何かを思考の隅に追いやっている。
放っておいた方が良いのかもしれない、そっとしておいた方が良いのかもしれない。
それでも……やっぱり気になってしまう。
己惚れかもしれないが、俺がなんとかしなくてはいけないような気になってしまう。
そっと頭の上に手を置く。
大槻の髪は少しだけ湿っていた、風呂上りの感触だ。
「勇気君?」
大槻の抗議も無視して、俺はただ願っていた。
「泣ける時に泣いておけよ」
……そう願っていた。
すると大槻は少しだけ悲しそうな顔をして、少しだけ嬉しそうな顔をして……
涙を見せる事無く、優しい笑顔に戻っていた。
「勇気君って、割と嘘つきだよね」
冗談とも本気とも解釈できる不思議な笑顔を見せながら大槻は言う。
「なんだ?俺は大槻に嘘を言った記憶は無いぞ」
「昔さ……勇気君が私の着替えを覗いた時の事、覚えてる?」
……少しだけ記憶を探る。
ああそうだ、確か天野と出会う前に大槻が俺の家に泊まりに来た時があったっけな。
すぐさまあの時に見せてもらったパジャマ姿を思い出す。
色は今日みたいな薄いピンクで、白いラインが何本か引かれたタイプだった。
それは無地以上に大槻の体のラインを強調するが、残念ながらやや不自然な強調となってしまい全体としてのバランスを損なってしまった感がある。
まるで視線を体型に固定するかのようなあの感覚は俺の趣味には合わない。
だがあの時に見せた大槻のいつも以上にリラックスした表情、あれがマイナス点を帳消しにしていた。
パジャマとは本来眠りにつくための存在、即ち休むための存在だ。
故にリラックスした表情以上にパジャマとマッチする表情は存在しないと断言できる。
それになにより……
「勇気君、顔が溶けてる……」
……いかんいかん、つい本題から脱線してしまった。
「あの時の事なら良く覚えている。それこそビデオよりも鮮明にな」
「なんか釈然としないけど……まあいっか。その時もさ、私汚されちゃったよ……なんて言ったのも覚えてる」
言われてみれば……そんな事もあった。
「あの時の大槻、兄貴に泣きついてたな。一発でわかるような嘘泣きで」
「もうお嫁に行けないよ」
「その時は俺が貰ってやるから安心しろ」
「良かった……覚えててくれたんだ」
大槻は……今、何を考えているのだろうか?
優しい笑顔……悲しい訳じゃない、怒っている訳でもなさそうだ。
それでも俺には、大槻が表情通りの感情を持っているとは思えなかった。
「嘘つき」
「ぐっ……」
「嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき」
「あ〜……悪かったな」
俺としては深い意味を込めたつもりはなかった。
大槻は表情を変えない、俺を怨むようなそぶりはなかった。
「勇気君が大好きな女の子としてはね、嬉しいって思うし信じたいとも思うんだよ。
勇気君はきっと軽い気持ちで言ったんだろうけどね」
「そうだな……俺もガキだったしな」
「嘘つき」
「悪かった」
こんな時、俺は大槻に決してかなわない。
いつもこうやって謝る以外にない。
だが……こんな時、大槻は優しい笑顔をしなかった。
怒っているのか、からかっているのか、そのどちらかだ。
「勇気君って、割と嘘つきだよね」
冗談とも本気とも解釈できる不思議な笑顔を見せながら大槻は言う。
「なんだ?俺は大槻に嘘を言った記憶は無いぞ」
「昔さ……勇気君が私の着替えを覗いた時の事、覚えてる?」
……少しだけ記憶を探る。
ああそうだ、確か天野と出会う前に大槻が俺の家に泊まりに来た時があったっけな。
すぐさまあの時に見せてもらったパジャマ姿を思い出す。
色は今日みたいな薄いピンクで、白いラインが何本か引かれたタイプだった。
それは無地以上に大槻の体のラインを強調するが、残念ながらやや不自然な強調となってしまい全体としてのバランスを損なってしまった感がある。
まるで視線を体型に固定するかのようなあの感覚は俺の趣味には合わない。
だがあの時に見せた大槻のいつも以上にリラックスした表情、あれがマイナス点を帳消しにしていた。
パジャマとは本来眠りにつくための存在、即ち休むための存在だ。
故にリラックスした表情以上にパジャマとマッチする表情は存在しないと断言できる。
それになにより……
「勇気君、顔が溶けてる……」
……いかんいかん、つい本題から脱線してしまった。
「あの時の事なら良く覚えている。それこそビデオよりも鮮明にな」
「なんか釈然としないけど……まあいっか。その時もさ、私汚されちゃったよ……なんて言ったのも覚えてる」
言われてみれば……そんな事もあった。
「あの時の大槻、兄貴に泣きついてたな。一発でわかるような嘘泣きで」
「もうお嫁に行けないよ」
「その時は俺が貰ってやるから安心しろ」
「良かった……覚えててくれたんだ」
大槻は……今、何を考えているのだろうか?
優しい笑顔……悲しい訳じゃない、怒っている訳でもなさそうだ。
それでも俺には、大槻が表情通りの感情を持っているとは思えなかった。
「嘘つき」
「ぐっ……」
「嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき」
「あ〜……悪かったな」
俺としては深い意味を込めたつもりはなかった。
大槻は表情を変えない、俺を怨むようなそぶりはなかった。
「勇気君が大好きな女の子としてはね、嬉しいって思うし信じたいとも思うんだよ。
勇気君はきっと軽い気持ちで言ったんだろうけどね」
「そうだな……俺もガキだったしな」
「嘘つき」
「悪かった」
こんな時、俺は大槻に決してかなわない。
いつもこうやって謝る以外にない。
だが……こんな時、大槻は優しい笑顔をしなかった。
怒っているのか、からかっているのか、そのどちらかだ。
「勇気君……」
「どうした?」
「天野さんの事幸せにしてあげて、絶対に」
「おう」
言われるまでもない。
その言葉を聞いた大槻は少しだけ悲しそうな眼をして、少しだけ寂しそうな眼をして……やっぱり優しい笑顔に戻った。
「私は天野さんが嫉妬するくらい素敵な人と出会うから。だから……寂しくなんてないよ」
「そっか……」
「だから……勇気君は天野さんのための勇気君でいてあげて」
「なあ、大槻」
「なに?」
「俺の前で泣くのはもう嫌か?」
大槻はまた少しだけ悲しそうな眼をして、少しだけ寂しそうな眼をして……すぐに優しい笑顔に戻った。
「うん……嫌だよ」
何かあるとすぐに大泣きをする少女は、もう居なかった。
いくら俺が鈍感でももう察しはついていた。
「そっか……」
もう……何も言うべきではない。
俺はゆっくりと大槻から離れていった。
大槻もそれ以上は何も言わなかった。
どうやら……俺にはもう、大槻の表情は読めないらしい。
ゲームコーナーの入り口の影に、天野が立っていた。
眼が合うと、お互い無言で歩き始めた。
ただなんとなく外の空気が吸いたくなっていた。
「……不撓さん」
最初に天野が沈黙を破った。
俺は……まだ、何も言わない。
「浮気は大槻さんまでにしてくだい」
まだ……何も言わない。
「私だって女の子ですから、焼きもちも焼きますし嫉妬もします。
ですけど……大槻さんまでだったら、きっと我慢できます」
まだ……言わない。
「私が不撓さんの一番ならきっと我慢します。
でも……やっぱり……不撓さんがどこかへ行ってしまうのは……怖くて……」
それだけ、それっきり……
また全てが沈黙した。
俺はもう……落ち着いた。
ようやく現実を理解した。
目の前に寂しそうな顔をした天野が居る。
俺はどうするべきか?そんなのはわかりきっている。
だって俺はもう……
「俺はもう、大槻のための不撓勇気にはなれなかったんだ」
「不撓……さん?」
「読めなかったんだよ、表情が」
「………………」
「あいつも俺の前で泣こうとしなかった」
天野は……もう何も言わない。
その表情は曇っている……でも、わかる。
天野は俺の行っている事の意味……きっと誰よりも心で理解していると。
「俺はもう天野のための不撓勇気にしかなれない。だからもう浮気もできない」
「不撓さん……」
天野の表情は変わらない……でも、わかる。
「俺は天野の笑顔が好きなんだが、俺には見せたくないか?」
「不撓さん、不撓さん……」
天野の顔が急に崩れた、まるで決壊したダムの様に。
天野が泣きじゃくっている……でも、わかる。
「本当は……こんな事……思ってはいけないんでしょうけど……でも……」
わかる……今の俺にはわかる。
だって俺はもう……
「でも……嬉しいっ!!!」
だって俺はもう……天野のための不撓勇気になると決めてしまったのだから。
「そろそろ行こうか。もう朝食の時間だ」
「……はいっ!」
「英知さん、英知さん」
「お姉様、どうなさいましたか?」
「いろいろあって聞くのを忘れてましたけど、昨日私達が居ない間に何があったんですか?」
「ええっと……答えなければ……まいりませんか……」
「ええまあ、個人的興味で」
「あ〜……昨晩は……チャンネル争いをしていまして……」
「はい、それで?」
「乱闘になりまして……それから……持ってきた薬瓶が……」
「割れたんですか?」
「………………」
「………………」
「……はい」
「コメントしづらいですね、それは……」
「何も言わないでください……」
「第一、どうしてこんな所にまで持ってきたんですか?」
「黙秘します」
「英知さん?」
「黙秘します」
「あの……」
「黙秘します」
「いえ、ですから……」
「黙秘します」
「…………………」
「黙秘します」
「話は変わりますけど……」
「はい、何でしょうか?何でもお聞きしますよ」
「そんなに話題を変えたいんですか?」
「黙秘します」
「その……どうしてお姉様なんですか?」
「はい?」
「呼び方です。どうしてお姉様って呼ぶのか、気になっちゃいまして」
「お姉様はいずれ勇気の兄上と結婚なさるのでしょう。それなら早かれ遅かれお姉様とお呼びする事になりますので」
「それはそうですけど、それなら姉上にならないですか?」
「それは……まぁ……」
「英知さん、どうなんですか?」
「お姉様では……いけませんか……」
「………………」
「………………」
「可愛いので許しますっ!」
「お姉様、大好きですっ!」
(不撓さんごめんなさい。今一瞬だけ英知さんに手を出しかけてしまいました……)
(昔からお姉様にという存在に憧れてただなんて……言えませんよね……)
前スレのリクエストに対する作品なんですが……ごめんなさい、遅くなりすぎました。
今回はそれなりに嫉妬とかやきもちだとかを絡ませた展開なので、チラシの裏ではありません。
スレ汚しすいません。
不撓家本編での天野は、仮に大槻と勇気がイチャついても嫉妬する人ではありませんので、
嫉妬する天野を書くには後日談しかありませんでした。
基本的に天野が恋愛に関して積極的になるのはジャンティーレの記憶と経験を受け継いでからですし……
てか、正直に言って天野の嫉妬は書きにくい。
途中、レッグ・スプリット(別名股裂き)を黒崎栞に掛ける勇気を想像して……黒崎栞の処女膜が非常に心配になりました。
設定上は(不撓家本編では)まだ処女なんですが、たぶんどこかで処女膜は破れちゃってるのではと……
それともう一つ、勇気は基本的に黒崎栞の事を女性として意識した事はありません。
ですがもし勇気が天野に会う前に一度でもパジャマ姿を披露していたら、意外とアッサリと落ちてたんじゃないかとも思います。
(黒崎栞も勇気に恋愛感情を抱いていた訳ではありませんが、勇気の熱意を持ってすれば落ちるのも時間の問題かと。
そうなった場合、もちろん歴史が変わる事になるのですが。
そっちの場合でも誰一人として不幸になる訳でもないですし、それはそれで……)
追伸。>179では同じ文章を二度投稿してしまいました。
ご迷惑をおかけしますが、無視していただけると幸いです。
久しぶりに来たら新スレ立ってた
タイトルに「時効17年目」はどうですかって言いそびれた
>>183 軽いやきもちぽいのいいなあ〜GJ! 長文、お疲れ様です。
また、次回作、楽しみにしています。
188 :
前スレ324:2006/09/04(月) 15:27:28 ID:9e3F7wmq
駄目もとでリクしといて良かった。GJ!!です。
とりあえず、勇気のパジャマフェチに激しくワロタwwww
では投下致します
第10話『お別れの日にうたう歌』
○月○日
昨日は私にとっての大切な記念日。
わたしこと、雪桜志穂は片思いの桧山さんとファ−ストキスをするという偉業を達成したのです。
えっへん。
キスしたおかげで、私は昨日は興奮して全然眠れなかったよ。おかげで今日の授業はほとんど頭に入っていません。
と、言っても期末テストの答案を返して答え合わせするだけなので別に入れなくてもいいですね。
期末テストも終わったことだし、夏休みがようやくやってきます。
長い休みは私にとっては救済の日々。
誰にも苛められることなく傷つけられる日々を送らなくていい。むしろ、学校に通うことは苦痛以外しかありませんでした。
でも、それは去年までの話。
今年は桧山さんの運命的出会いを果たした私にとっては、桧山さんと会えない日々が寂しくてたまらないです。
うっ。これほど長い夏休みが恨めしく思ったことはないですよ。
桧山さんが作ってきてくれたお弁当も食べられないし、食料的にも厳しい日々が続くよ。
けど、悪いことばかりでありません。
今日の放課後に一緒に帰る約束しているのでその場で言います。
夏休みはたくさんたくさん遊ぼうね。
二人で楽しい思い出を作りましょうねって。
私はあの事件を境にして、苛められ続けました。信じていた友達から裏切られ、
周囲の人間に冷たくされて。生きる日々に絶望ばかりしていた。
ああ。今日も人から罵倒や石を投げられるんだって、何もかも諦めていた。
ずっと、薄汚れた者の血のおかげで、私は暗い暗い底を歩いてゆくんだって思っていたのに。
桧山さんが暗闇から救い出してくれたんだよ。
信じられる?
誰かも私を嫌っていた世界に、手を差し伸べてくれた人がいたんだよ。
まさに奇跡だった。
大多数を前に足が震えせながら、あなたの意志と小さな勇気が。
俯いていた私の心を救ってくれたんです。
だから、私は桧山さんとこの夏の思い出をたくさん作りたい。いろんな場所に出掛けて、素敵な風景を二人でみたいんです。
それが私にとって小さな願いなんです。
期末テストの答案がたくさん返ってくる悪夢の日も昼休みの出来事のおかげで
すっかりと忘れることができても、胃を締め付けるような衝撃的な事実が忘れずにいた。
茫然と重く受けとめているのは、俺が事件の被害者家族のせいだろうか。
あの大人しい雪桜さんを憎み始めている自分自身に嫌悪しながらも、ただ学校が終わって放課後になるのを待った。
いつもなら、至福の放課後になるわけだが。雪桜さんに別れ話をもとい、
絶交宣言を言うのだから、最悪最低の放課後になることは間違いなかった。
通い慣れた2−D組の教室に行くと雪桜さんがぽつんと一人で待っていた。
これもすでに見慣れた光景であった。友達と帰らずにただ純粋に俺を待っていたわけではない。
雨霧雫が同じクラスにいるのならば、このクラスメイト全員にあの事件の加害者の娘として知られているはずだ。
被害者家族もクラスにいることだから、どれだけ雪桜さんは憎まれているだろうか?
そんな深刻な事情を抱えている雪桜さんに友達になろうとするバカはいない。
触らぬ神に祟りなしだ。中途半端に手を出せば、自分に火の粉が降り注ぐのだから。
「あっ。桧山さん」
蔓延なる笑顔を浮かべて、嬉しそうにはしゃいで俺の方に近付いてくる雪桜さん。
黄色の大きいリボンが左右に揺れる。
「さあ。帰りましょう。今日はどこに行きましょうか?」
「その前に雪桜さんに話したいことがあるんだよ」
「はい。なんでしょうか?」
「ここではちょっと」
「では屋上へ行きましょう。あそこなら、二人きりになれますよ」
昨日のキスの事を意識しているのか顔を赤く染めて、俺の腕に抱きついてくる。
俺は乱暴にその腕を振りほどいた。
昼休みに雨霧雫に屋上へ呼び出され、今度は俺は雪桜さんをここに連れ出した。
まったく、ドラマでもないんだから、いちいち屋上のシチュエ−ションに飽き飽きしてきた。
俺は別れ話を切り出す彼氏の気持ちになりながら、真剣な眼差しで雪桜さんを見つめて言った。
「雪桜さんを苛めていた雨霧雫が言っていたんだけど。雪桜さんがあの赤坂尚志の娘だというのは本当なの?」
その言葉に雪桜さんは敏感に反応していた。俺を見る瞳が怯えと恐怖が入り混じっている。
まるで今まで隠していた大切な事を知られたような感じで。
「な、な、なんで。桧山さんがそのことを……」
「雨霧雫から事情は全て聞いた」
「ひ、ひ、桧山さんは私を苛めていた人のことを信じるんですか? あ、あの人は私の嫌がらせのために吐いた嘘かもしれないですかっっ!?」
普段とは違う雪桜さんの態度から察するには雨霧雫の話したことが真実だろう。
嘘がばれそうになると無駄な虚勢を張るのは誰でもあることだ。
「絶対に、そ、そ、そ、そうに決まっていますっっ!!」
「赤坂尚志の娘が雪桜さんだったなんて……」
「ち、違うよっっ!! 私はあんな薄汚れた男の血なんか引いてないっっ!! どうして、どうして、桧山さんは信じてくれないんですかっ!?」
「信じられるわけないだろうっっ!!」
必死に嘘を吐いて、この場をやり過ごそうとしている雪桜さんが憎々しく思えてきた。
彼女は悲鳴に近い声を上げて、俺の言葉を遮ろうとすらしている。目にはたくさんの涙の粒が零れてゆく。
「どうして、桧山さんも私から離れていくんですかぁっっ!? なんでもするからっ!! 私の傍にずっといてぇぇっっ!!」
雪桜さんは俺の体にしがみつくと女の子の力とは思えないほど、強い力で抱きしめてくる。
俺は振り払おうとするが、雪桜さんは頑固として離れようとはしなかった。
「ごめん、俺はもう雪桜さんとは付き合うつもりはないんだ。今日限りでもう会わないでおこう」
「いやあぁぁぁぁぁっっっっ!!」
更に俺を抱きしめている腕に力が込められる。取り乱した雪桜さんに優しく手を差し伸べることはもうないだろう。
俺は冷酷にも最後の別れの言葉を言い放つ。
「だって、俺の妹はあの事件で殺されたんだからっっっ!!」
「えっ!?」
「真っ赤な血の湖で妹は……、俺の家族はメチャクチャになったんだよ。
あんたの父親のせいでどれだけの家族が人生を狂わせたと思っているんだよっ!!」
確かに雪桜さんには罪がないだろう。彼女には罪はない。
でも、あの加害者の娘と仲良くできるかと問われると、できるはずがない。
雪桜さんの顔を見るたびに事件のことを思い出す。
脳裏に離れない赤坂尚志の面影が雪桜さんの顔を見るだけで思い出してしまうのだ。
彼女が笑顔で微笑んでいるだけで、殺された被害家族は誰だって理由なしで不愉快に思うはずだ。
だから、恋をするまえに別れなきゃならない。
もう二度と会わないことが二人にとって何よりも幸せなことなんだ。
「ううっ……。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。志穂は悪くないんです。志穂を苛めないで。志穂に石をぶつけないでよっっ!!」
精神的なパニックを起こして、雪桜さんは俺の体をポンポンと叩く。今回のような事を彼女の人生で数度行なわれていたに違いない。
その度に雪桜さんは裏切られて、悲しんでいたに違いないだろう。俺も先人に見習い、抱きついて泣いている雪桜さんを切り捨てなきゃいけないんだ。
「もう、俺に近付くなよ」
その言葉同時に俺は乱暴に雪桜をきつく押し返した。少し力を入れてたために雪桜さんは地面に尻餅をつく。
「ううっっっ。ひ、ひやまさん」
その場に泣き崩れてゆく雪桜さんの嗚咽を聞くのが俺の胸に鋭いナイフのように突き刺さってゆく。
もう、慰めることも助けることもできない。この手で雪桜さんを傷つけたのだから。
ああ……なんて淀んでいる世界。
泣き叫んでいる雪桜さんを見るのが辛くて、俺は振り返ってゆっくりと歩く。
その矢先に背中に温かい感触が感じられた。
「雪桜さんっっ?」
「私には桧山さんしかいないんですよっっ!! だから……。だから……」
「俺はもう雪桜さんの傍にいられないんだ」
「そんな悲しいことを言わないでよっっ!!」
雪桜さんが懲りずに抱きついてきた。この場の別れが二人にとって最後の別れになることがわかっているかのように。
あの内気で大人しい雪桜さんとは信じられない程、積極的に自分の意見と行動で俺を繋ぎ止めようとしている。
刹那。
「剛君から離れなさい!」
罵声が響き渡った。
その声の主は俺でも雪桜さんでもなく。
虎が屋上の入り口に悠然と立っていた。
次回、虎がついに参戦です・・w
あぁー早く次回作が読みたい!
虎の大逆襲が楽しみ!!!!!!!!
ついに直接対決かこれで雪桜さんがどうなるのか。
これから壊れていく様子に期待。
作者さんGJでした
主人公が腹立たしい
修羅場主人公としてはこれで正解なんだろうけど・・・
菩薩や聖人のような主人公よりは魅力的だと思う
「ん…うぅ……あ、あれ……おにいちゃん…?」
「あ、麻理。おはよう。」
結局あれから麻理は目覚めること無く、そのまま朝になってしまった。僕はまたストーカーが来た時のことを考えて起きていた。
「……そ、そうだ!昨日の……昨日の家にあがりこんできたのは誰だったの!おにいちゃんを探してたよね!?」
僕の顔を確かめるなり、攻めるように問い詰めて来る。……無理もない。僕が悪いんだから。
「それは……」
「おにいちゃん知ってるようだったよね!?ねえ、なんなの!?なんであんな風に襲われたの!?」
「わかった……全部話すよ……」
もうこれ以上は隠すことはできない。隠したとしても、気付いてしまうのは時間の問題だろう。麻理のためにも、この事は教えておいたほうがいいだろう。
「あのね、落ち着いて聞いて。僕はね……」
それから僕は、麻理に全部話した。高校に入ってからストーカーにあっていたこと。頻繁にメールが送られてきたこと。そして、昨日の襲撃がストーカーによるものだったということ……
話しが進む度に、麻理の顔は暗くなっていった。
「そんな……高校に入ってからなんて……もう二年近くもストーカーにあってるじゃない!なんで私に相談してくれなかったの?」
「麻理には……心配かけたくなかったんだ。僕のことで麻理の高校生活を壊したくなかったんだ!」
「で、でも……私、おにいちゃんのことなら、なんだって耐えられるよ?おにいちゃんが一人で苦しんでるのなんて……見ていられないよ……」
「ごめんな、麻理…」
「ううん……でも、このままじゃダメだよね。うん、ストーカーをやっつけようよ、おにいちゃん。」
「やっつけるって……そんなの穏やかじゃないなぁ…」
「別に物理的にやっつけなくても、精神的に…ストーカーなおにいちゃんの事を諦めればいいのよ。」
「…どうやって?」
「例えば……面と向かって『嫌いだ』って言ったり……多分、そのストーカーはおにいちゃんのことが好き……というより、あまりに純粋すぎる愛が狂愛にかわっちゃったのよ。」
「純粋すぎる愛?」
「うん、ストーカーは、恨みから来るものと、愛から来るものがあるのよ。おにいちゃんは……前者はありえないわね。」
「なんで?」
「おにいちゃんは馬鹿がつくほどお人好しだからよ。」
む。それは褒められてるのかけなされてるのか……複雑な気持ちだ。
「……ていうか、心当たりないの?昔自分に惚れた女の子がいるとか……あんまりいてほしくないけど……」
「い、いるわけないよ。僕だよ?」
「はぁ………それだからストーカーに狙われるのよ…」
それにしても麻理は強いな。さっきまで気絶してたっていうのに。最近の女の子は度胸があるよね。
「あ、学校の時間だよ。ほら、麻理。準備しなくちゃ。」
「……なんでそんなに普通なの?…おにいちゃんは……」
時計を見るともうギリギリだった。急いで着替え、学校の準備を済ます。すると……
ピンポーン
玄関のベルがなった。昨日の事のせいで、麻理と二人でかたまってしまうが……
「おーい!かいとー!学校いくよー!」
その不安はすぐに消え去った。いつものように沙恵ちゃんが迎えにきたのだ。
「あ、沙恵ちゃんだ。ほら、行こう、麻理。」
だが……
がしっと麻理に腕をつかまれ、動けなかった。
「待って!おにいちゃん。……沙恵さんがストーカーかもしれないよ?」
「は?あはは……まさか。沙恵ちゃんがストーカーなわけないでしょ?ほとんど毎日一緒にいるんだから…」
いくらなんでもそれは無茶があり過ぎだぞ、麻理。
しがみついて止めようとする麻理を、引きずりながらも玄関にむかう。
「や、いや、だから、その……沙恵さんとは一緒に登校しないで……私と一緒にいこう?」
「だったら、沙恵ちゃんも一緒でいいでしょ?そのほうが、ストーカーが来ても二人同時に守れるしさ。」
そう。守るのは麻理だけじゃない。沙恵ちゃんだって危険なんだ。
それでも腰にしがみついて離さない麻理を無視し、玄関の戸を開ける。
「おはよ、沙恵ちゃん。」
「おっはよ〜!海斗!。今日も一緒に元気に登校……し…よ?」
毎度の事ながら、朝からハイテンションな沙恵ちゃんだったが、僕に抱き付いている麻理をみたとたん、一気に顔が暗くなる。
「ふぅん…朝から抱き合ってるなんて、仲いいんだね。兄妹のくせに。」
「ち、ちがうって、沙恵ちゃん。抱き合ってるなんてないよ。麻理がしがみついてるだけだよ。ほら、麻理…」
いいかげん麻理をひっぺがす。
「ほら、麻理。そんな恥ずかしいことしてないで、早く行くよ。」
「うぅーぁー……」
なるべく沙恵ちゃんに昨日の事は悟られないように、あくまでも自然にいこう。
「ささっ!遅刻しちゃうよ。妹さんはほっといていっくよー!!」
ガシッ
「う、うわっ!沙恵ちゃん、走んないで!」
今度は沙恵ちゃんが僕の腕をつかみ、走って引っ張っていく。
「あ、こらぁ!まちなさい!おにいちゃんをはなせー!!って聞きなさいよ〜!!」
麻理が目をつり上げておっかけてくる。良かった……いつもの麻理だ。昨日の事を引きずったままではないようだ。
「はっはっはっ……ね、ねえ、海斗!」
「……な、なに?」
沙恵ちゃんがまだ僕の腕を引っ張りながら話し出す。
「う、ん…はっ……き、今日だ、け……部活…や、休めない?」
「…え、えぇと…なんで?」
さすがに理由がないと休めないけど……
「うん……海斗に……話……大事な話が…あるんだ…」
心なしか、沙恵ちゃんの横顔はいつもより寂しく見えた。ここで断ったら……もっと悲しい顔をするんだろうな。沙恵ちゃんの悲しい顔は見たくない。
「うん、いいよ。じゃあ放課後は一緒に帰ろうよ。」
「……うん!よぉーしっ、ボク、今日の授業頑張っちゃうよ!」
「うああ!」
さらに沙恵ちゃんはスピードをあげる。さすが陸上部。ぐんぐんスピードが伸びる。
そんな速さの景色は、いつもストーカーに追われているものとは違い、とても気持ちいいものだった……
支援!
やばい、先が超気になる。
作者さんGJ
そいや、火山の女神かなんかで、妹に婚約者を迎えに行かせたら
妹と婚約者が恋仲になってて、怒り狂って二人を焼き殺すっていう神話があったような希ガス
Gj!こういうほのかな嫉妬の雰囲気がたまらん
2年もストーカ化されているなら、普通は誰がストーカーなのかわかりそうなんだけどなww
とりあえず、作者GJです
『十一話』
完全勝訴。
頭にはその四文字がでかでかと踊っていた。
馨さんはわたしを必要としてくれた、わたしに誓いをくれた。
どこにも行かないと、優しく囁いてくれた。
これであの女が馨さんに近づく道理はない。
彼は完璧にわたしのものになった。
今朝はこの部屋から馨さんを見送った。
アレだけ念を押して、寝ている馨さんに思念を送り、その後も着替えを手伝ってもらったりご飯を食べさせてもらったりした。
朝の貴重な時間を共有できたことが嬉しい。
まるで急ぐ夫を見送る妻みたいなシチュエーション。
だからぽかぽか陽気に、この胸も自然と温かくなるんだろう。
わたしには無縁と思ったこの明るい場所でも、自分は輝いていられる。
そんな気さえしていた。
輝く未来に包まれて、このままずっとベッドのシーツに残る感触に溺れていたい…
定期的にわたしを確認しにやってくる看護士さんが、まるで見てはいけない類の人を見てしまったみたいな仕草でせわしないがこの際無視。
それでもわたしを優しく揺籃してくれる馨さんの甘い名残に、ニヤニヤ笑いは止まらない。
胸の奥に灯った馨さんという暖。
その暖かさに溺れて、離れるのが死ぬほどに嫌で、
見捨てられるかもしれないという被害妄想に浸った結果、様々な奇行に走ってしまったけれど最後の最後で彼はわたしを選んでくれた。
あれほど先延ばしにしたかった退院という文字が『勝訴』の隣で軽快にタップダンスを始めた。
釣られてわたしの心も躍る。
もう一人きりでこんな暗くて寒い場所にいるのは嫌。
馨さんと二人で輝く未来に向かって歩み出したい。
そう考えていると、ニヤニヤ笑いがだらしなく垂れ下がってきた。
失った体力が戻ったら、馨さんといろんな場所に行こう。
手と手を繋いで、腕と腕を絡ませて、歩幅の違う足並みをぎこちなくも合わせながら歩こう。
「えへ」
妄想の産物が現実を侵し始めた。
意味もないのに頭に手をやって照れた仕草をしてみる。
「えへへ…」
わたしの脳内お友達は、馨さんの半歩後ろをついていくわたしを見て、祝福のライスシャワーを投げかける。
“おめでとう、おめでとうみずき”
“そそ、そんな、まだ早いって…”
「えへ、えへ」
垂れた目じりが口の端も溶かしていく。
…止まらなくなった。
そしてひとしきりその世界に耽溺し、胸が満たされたわたしはベッドの下から雑誌を数冊取り出す。
それらは最新のデートスポット、流行のファッション、好きな男を死んでも一生自分だけのものにする手法などが書かれたホットな内容で、どれも今のわたしにぴったりなものだ。
ぱらぱらとカップル達が誌面を踊るページをめくっていく。
どれもロマンティックで、わたしには小説やテレビドラマの中でしか存在しなかった空間。
そんな場所に自分と彼の姿を重ねてみる。
――――たとえば新たなファッションビルが立ち上がった表参道。
老若男女を問わず、人ごみでごった返す歩道。
さりげなく手を引っ張って、わたしを歩道側に寄せてくれる馨さん。
上目遣いで見つめると、自然な形で車道側を歩いてくれた彼は精悍な面立ちをくしゃりと潰した飾りのない笑顔を向けてくれる。
わたしはその笑顔の眩しさにとぎまぎする。
思わず内股を擦り合わせた。
大して肉がついていない腿だけど、何だがその部分から熱という熱が全身に広がっていく。
…………………
――――夜景。
京超の星を見上げながら、身を切る寒さに思わずぬくもりを求める。
コートの襟を立てて寒さをしのぐと、彼は黙って自分のマフラーをわたしの首にかけてくれた。
そして指先にそっと自分の掌を重ねると、“小さな手だね”といって自分のジャケットのポケットに導く。
手の温もり、ポケットの中で重なり合う、確かな意思の疎通。
気づけば顔を寄せ合い、銀景に染まり行く町並みの中で二人は唇を合わせる…
……………………
――――夏。
肌が弱いわたしを気遣った彼は、人静かな避暑地へわたしを奪っていく。
大きなストローハットをもてあまし気味なわたしに爽やかな白い歯を輝かせて微笑む。
スリーブレスのシャツから覗くしなやかな筋肉が覆うたくましい腕。
血管が焼けた肌の中を蛇みたいに這い回って、無骨な指をより官能の色に染め上げる。
彼はそんないけない指で、わたしの鼻に浮かんだ汗をそっとぬぐって…
……………………
――――映画館
冷房の効きすぎた館内で彼は無言で着ていたシャツをわたしの膝にかける。
そして照れたように
“冷えるといけないから”
と呟くとわたしの手の甲を大きな掌で包んでくれる。
遠慮がちに重ねられた手、夜はあんなことやこんなことをしているというのに、今日だけは妙に初心な二人。
気分を盛り上げるように上映開始のベルがなる。
ゆっくりと落ちていく照明。
感じるのは周囲の同じようなカップルの内緒話と、熱い彼の吐息だけ。
フィルムがカウントを始める。
一際大きく画面が輝いた後、照明が完全に落ちる。
誰も二人を覗くものはいない。
深々とわたしたちは舌で混ざり合う…
……………………
――――小鳥が幸福の祝詞を挙げる小さな教会。
わずかな身内だけで執り行われるささやかな挙式。
輝かしい未来を啓示するように悠々と鳴り響く鐘の音。
赤いヴァージンロードをひとりで歩くわたし。
どこか寂しげな表情を浮かべている。
そんなわたしを見止めると、彼は力強く抱きしめてくれる。
式の脚本にはないシナリオ。
指環の交換もしていないのに、彼は熱い唇を情熱的に捧げた。
勿論受け止めるのはわたしのそれ。
柔らかさを味わうように唇のしわとしわと食む。
頬を包み込むように撫でた彼は、そっと耳元で呟く。
“きれいだ”
真っ赤になるわたし。
困ったように咳払いをする神父。
あわてて整列する二人。
神への誓いの言葉を読み上げていく。
一定の音域でしゃべり続ける老神父の声色は、どこか教授の講義に似ている。
彼も同じことを思ったのか、目配せで微笑む。
同じことで笑い合える関係が嬉しい。
いよいよ指環の交換。
“細くて可憐だ”
と唇の動きで告げる彼。
ゆっくりと銀の指輪をわたしの指に通す。
それでは、誓いのキスを…
何故か日本語でしゃべる神父。
窓辺から大空に羽ばたく幸せの青い鳥。
ステンドグラスを通して差し込む光に照らされ、見詰め合うわたしと馨さん。
彼が革靴の踵を鳴らして一歩近づく。
身長差を埋めるようにわたしを軽く抱きしめる彼。
にっこりと穏やかな微笑を浮かべる神父。
ゆっくりと、今。二人の唇が、重な…
ばたん………!!!
突然の来客に教会のドアが開け放たれた。
わたしたちは誓いのキスも忘れて驚愕に目を見開く。
印象的な歩き方、耳障りなヒールの音。
そこには怒りに整った顔立ちを鬼のように歪めたあの女が立っていた。
ハンドポーチから取り出されたのは掌サイズの飛び出しナイフ。
凄絶な表情と相まって実に恐怖感を煽る。
ぎらり。
ナイフが飛び出す。
後ずさるわたし。
背中に庇う彼。
ごにょごにょと口の中でなにかを呟き、じっとりとした視線を向けながら女、いや、修羅が確実に歩を詰めてくる。
猛火がうなるような悲鳴が上がったかと思えば。
幸せな雰囲気は文字通り切り裂かれた。
…白いタキシードに咲いた紅の薔薇。
赤いヴァージンロードを更に深い朱で染め上げた新郎が、がっくりと崩れ落ちた。
ひたすら紅に染まっていく。
純白が、哀しみのディープレッドに染まる。
目をそむけたい光景。
紅だ。
すべてが紅に食われる。
紅紅紅紅紅紅紅紅紅紅紅紅紅紅紅紅紅紅紅紅
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
朱朱朱朱朱朱朱朱朱朱朱朱朱朱朱朱朱朱朱朱
…………
…なんて不快な妄想をしてしまったのだろう。
思わず胃がむかむかして奇妙な嘔吐感が押し寄せてくる。
途中まではよかった。
なのになんで肝心なクライマックスのシーンにあの女が乱入してくるの?
歯軋りする。
爪を噛む。
「あ、あの、牝犬…妄想の中でさえも、わた、わたしの邪魔を…」
頭の中をあの女の般若の面が覆いつくしていく。
そうしていると、急に不安になった。
そういえば、馨さんは学校へ行った。
でも、学校にはあの女が、いる…
なんでこんなことに早く気づかなかったのだろう。
早く、早く引き剥がさなきゃ。
あの妄想が現実になってしまう前に。
あわてて携帯電話を取り出してコール。
出ない。
再度コール。
話中。
コール。
留守番電話。
だ、誰なの…
馨さんとの愛のコールを邪魔するヤツは…
力を込めすぎて携帯電話がみしみしと音を立てた。
しかし、このまま小さな小箱を破壊せんとまでに高められた握力が不意に失われる。
ぷつり…と世界が真っ暗になった。
どさりと背中に柔らかさを感じてようやく気を取り戻す。
いい加減頭に血を上らせすぎてぷっつんとと来てしまったのか、急激な貧血でわたしは枕に倒れこんでいた。
……
暫くベッドに身を任せていると、忘れていた孤独感が這い上がってくる。
死にたいほどに情けない。でも死ねない。馨さんがいるから。
とっさに打ち消してみたものの、胸のわだかまりは消えそうもない。
だから全身を覆う寂寥感を紛らわすように、わたしは下着に手を這わせた。
孤独から逃れるためにわたしが思い浮かんだ方法。
馨さんと出会ってから幾度となく繰り返された未来のない行為…
優しく撫でるように触る。
きっと初めてのときはこんな風にしてくれるんだろう、と思いながら。
次いで反対の手で内腿をなで上げると、寒気に似た快感が這い上がった。
「あぁ…ああ…」
不意に漏れてくる吐息。
触ったあちこちが熱を持ってわたしの肉体に染み渡ってくる。
じんわりと、じんわりと快楽を持って這い回る蟲みたいに。
指先が早くなる。
中指だけで撫で上げていた秘所には、三本の指が添えられた。
フィットする下着を爪で引っかくように、入り口の形に添って強く刺激する。
「ふぅ、う…」
窓ガラス越しに感じる太陽の熱。
体の中から吐息と一緒に噴き出して神経を焦がす熱。
両方に溺れてわたしは自慰に傾倒していく。
小ぶりな胸の中心に爪を立て、強くこね回す。
――――針で突かれたような快感が走った。
下着の中に指を滑らせて、ずっぽりと第一間接まで埋めた。
角度をつけて内側を引っかいていく。
これが、この指が、馨さんのそれだと思い浮かべながら。
「馨さん、馨さん、寂しいよ…馨さん、馨さん、馨さん」
秘唇の中を、本能のまま蠢く指先。
時折こすり上げるように、時折押し付けるように。
種類の違う快楽が襲う。
酔っていく。
どここまでも堕ちる様に酔っていく。
酩酊感とは違う。
頭をぐるぐるとかき回すのはアルコールじゃなくて、もっと甘い蜜。
「あぁあ、あぅ、馨馨馨馨ぅう…さぁぁん…」
うわごとの様に繰り返される想い人の名前。
快感と絶頂の波が僅かに重なり始める。
もはや自分のものではなくなった指が、最後の高みへと向けて疾走する。
ぐちゃぐちゃと淫水の音を響かせて、声にならない快楽に身を震わせて。
「ひゃ、はふ、はぁぁぁぁぁぁん…っ!!」
最後に力強くこすり上げると、一際大きな波が、絶頂を飲み込んで大きくわたしの体を痙攣させた。
二度三度波は打ち寄せる。
大きく襞の内側からはしたない液をあふれさせて、それでも消えないぬくもりを探すみたいに。
一時の快楽。
それに身を沈めているたびに感じるこの寒さ。
指先が馨さんの熱を求めて走り回る。
いつの間にか唇でかみ締めて唾液塗れになった今朝の名残。
シーツに残ったぬくもりは自分の熱で冷めてしまっていた。
心の奥に根付いたあの女に抱く、醜く滾る嫉妬心に駆られた自分の未熟さによって。
「くぅ…ふぅ…寂しいよ、馨…」
自慰の後に訪れる倦怠感。
それでも優しいのは脳裏に浮かぶあの人の横顔。
早く馨がしてくれないと、瑞希はどんどん不安になっちゃうの。
もっともっと厭らしくなっちゃうんだよ…?
だから瑞希を救って、暖かくて大きな腕で、救ってよ。
………………
……………………
わたしはこんなにあなたのことをおもっているのに。
記憶の中のあなたに口付けても口付けても心に響かない。
だからおねがい。
こたえて…
馨。
阿修羅様更新作業お疲れ様です&拙作の収納感謝いたします。
作中に登場した『好きな男を一生自分だけのものする本』はリアルに存在します。
一瞬「好きな男を自分だけの本にする方法」に見えて皮剥いで本にするかと思った(((((;゚Д゚)))))
うわああああああああああああ
森さんもゆかりんも俺のもんだ
やたら詳しい妄想にワロタw
ゆかりんは今どうしてるんだろう。
作者さんGJ
作中のリアルでも妄想の中でも血塗れな馨タン・・・
>>216 もうなんつーかスウィッチブレイド・ナイフ無しで生きていけません………
>>218 →殺してでも奪い取る
GJ!!
てかコワス((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
どらえもぉ〜ん
>>218をぶち殺す道具がほしいよぉ〜
これはとてもいい妄想ですね(*´д`*)ハァハァ
あら
>>224……私というものがありながら
>>218なんかをかばうの?
あなたにはさらなる躾が必要ね
投下します。
「ふん・・・」
軽く鼻を鳴らして高揚を打ち消す。暴力自体を否定する気はないが――人助けの為でもあるし――こういった衝動も吸血鬼化によって増幅される傾向にある為、必要以上に気を高ぶらせるべきではない。
それに、せっかく十分な血を吸って気分がいいのに、それも台無しになってしまった。
とはいえ、後ろの女性に罪はない。一つ深呼吸して何とか笑顔を作り、『大丈夫ですか』と言って振り返ろうとして・・・。
智は後ろから、思いっきり抱きしめられた。
「うわっ!?」
「ありがと〜、ボク! すっごくカッコよかったよ! それと、助けてくれてありがとうね」
人目もはばからずぴったりと抱きつかれ、智は間の抜けた叫びを上げる。
周囲の視線は無関心と微笑ましいものを見る目に分かれ、少なくとも見咎める類のものはない。
結果、先程まで一番毅然としていた少年が、一番狼狽しているということになっていた。
「ちょっ、ちょっと! 離れっ、離れてくださいよ!」
押し付けられるやわらかい胸の感触と、頬をくすぐる髪のくすぐったさが、折角取り戻した冷静さを奪う。
こうなると力ずくで引き剥がそうとまで頭が回らないのは、智の女性への免疫の無さの表れだ。
いくら強く抱きつかれているとはいえ、吸血鬼の力を使えば簡単に振りほどけたのだから。
智の反応に満足したのか、1分近く経って女性はようやく智を解放した。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。いきなり何するんで――」
――すか、までは紡がれなかった。今度こそ振り向いた声の主が、口を開けたまま呆然と立ち尽くしてしまったために。
なぜなら、見惚れてしまっていたから。目の前の女性のあまりの美しさに。
170弱の身長と、智が身を以って体験したスタイルのよさ。身長では智が勝るが、足は彼女の方が長く見え、腰の細さも小柄な千早より更に細く見える。
薄紫の髪は、見た事の無い煌きを放つ。紫水晶(アメジスト)のようだと智は思った。実物を見たことはないのだが。
ぱっと見て22〜3歳くらいだろうか。どう見ても年上の、大人の女性なのだが、猫のように愛嬌のある笑顔は同年代のような可愛らしさも内包している。
そして、そんな健康的な美に溢れながら、いっそ病的と思えるほどに白い肌。深窓の令嬢である藍香以上だ。
「・・・・・・・・・・・・」
「お〜い? ボク、ボク? どうしたの? 大丈夫?」
女性がヒラヒラと眼前で手を振り、智はようやく我に返る。
自分が視姦とも取られかねないほど女性を凝視していたことに気づき、真っ赤になった顔を慌てて逸らした。
「え、えっと・・・。大丈夫でしたか?」
取り繕うように言葉を搾り出すと、女性もそれを察したのか智に答える。
「ええ、大丈夫よ。ボクのお陰ね。本当にありがとう」
「・・・そのボクっていうのは勘弁してくれませんか・・・」
17歳の高校生には堪える呼び名だ。とはいえ、先程までの間抜けな様を思い出すとそう呼ばれるのも否定できない気がする。
結局出てきた台詞は勢いの無いものになってしまった。
「ふふっ、そうね。じゃああなたの名前、教えてくれる?」
「・・・智です」
一瞬、本名を名乗るべきか逡巡する。結局名前だけを名乗った。
しかし女性は特に追及せず、名乗り返した。
「そう、サトシ君ね。私はエルよ。エルって呼んでちょうだい」
「エル、さんですか・・・」
やっぱり日本人じゃないよな、と智は思う。しかし丸っきり外国人にも見えなかった。
となると、ハーフかクォーターかもしれない。
「でも本当に助かったわ。もしあのままサトシ君が来てくれなかったら・・・」
エルの目が悲しげに伏せられる。一転して変わった雰囲気に智は慌てた。気丈に振舞ってはいたが、やはり怖かったのだろうと。しかし――。
「あの三人、八つ裂きにしちゃうところだったわ♪」
一瞬にして笑顔が戻る。暫し唖然としていた智だが、次の瞬間には思わず噴き出していた。
「あははははっ! 何ですかそれは。あははははっ!」
ガチガチに固まっていた緊張が、笑いとともにほぐれていくのを感じる。それは日々の維持に追われていた中で、久しぶりの腹の底からの笑いだった。
「それじゃエルさんは今、日本中を旅して回ってるんですね」
智とエルは、二人で並んで歩きながら互いのことを話し合う。今はエルの泊まっているホテルへ彼女を送っているところだ。
・・・本人の名誉の為言っておくと、智に下心は無い。エルがあまりに綺麗過ぎるため、いっそそういう感情が湧かないのだ。
マラソンの周回遅れの心境とでも言おうか。それはさておき。
「まあ、そんなところかな。しばらく来てなかったんだけど、何年も経つと色々変わるものなのね」
エルは生まれは日本だが、ここ数年は海外で暮らしていたらしい。
確かに数年も経てば、色々と変わるものだ。ずっと同じ場所に暮らしている智でも時折そう感じるのだから、エルにとっては尚更だろう。
「でも、一番変わっちゃったのは・・・人間かなあ。まあ、あんな手合いは昔っからいたけどね」
「いや、アレは特殊な部類に入る思うけど・・・」
疲れた声で智が応じる。
「誰も、何もしなかったね。直接割って入らなくても、何か出来る事はあったんじゃないかな。なのに、誰もが無関心を貫いた」
ゾクリ、と智の背筋が一瞬凍る。淡々と話すエルの横顔が、何故か酷く恐ろしくて。
声が出ない。先程のチンピラをネタに振ろうとした冗談も、思考の彼方に飛んでいってしまった。
「でも、サトシ君みたいな子に出逢えたし! 帰ってきたのも無駄ってわけじゃなかったね!」
こちらを向いたエルの笑顔は、先程までの無邪気なものに戻っていた。一瞬戦慄した智だが、思わず拍子抜けしてしまう。
(気の、せい・・・?)
そんな内心構わず、エルは続ける。
「でも勇気あるね、サトシ君。まさか真っ向から立ち向かうなんて」
「・・・そんなこと、無いですよ」
賞賛に居心地が悪くなって、智は顔を逸らす。
あそこまで立ち回れたのは、吸血鬼の力があったから。歓迎されざる力に頼ったからだ。
それがなければ、自分もエルが罵った大勢の人間たちと同じ態度を取ったかもしれないのに。
「別に、当然のことをしただけです・・・」
話題を打ち切りたくて、思ってもいない文句を口にする。
しかしその思惑とは反対に、エルは喰らい付いてきた。
「そんなことないよー! だって信じられないもの。今私を送ってくれてるのだって、完全にサトシ君の善意でしょ?
見返りを求めたり下心があったりするわけでもないし」
「・・・エルさん、人間不信なんですか? そりゃさっきみたいな人は多いけど、世の中見返りだけで動く人間ばかりじゃないですよ?」
自分の行動をありえないもののように言うエルに、流石に智も苦笑する。
しかしエルは首を振る。いつの間にかその表情は真剣なものになり、瞳は智を深く覗き込んでいた。
「違うよ。私が言ってるのは人間のことじゃないの」
ドクンと鳴った心臓の音。
それは虫の知らせか、本能の警告だったのか。
それはどういうことですかと。何の比喩ですかと言いたかった。
でも言えなかった。闇よりも深い、しかし何かを見透すように透明な色。黒曜石の黒。その瞳が、魔力を持ったように智を呪縛した。
「信じられるわけがないもの。女の子を襲っておきながら、僅かな血を吸うだけでそれ以上のことをしない男を。
人間に心からの優しさを持って接する同族の男を。私がどんなに恋焦がれたか分からない存在が目の前にいることを」
エルの瞳の闇が増す。いつの間に後ずさっていたのか、背中が民家の塀に当たっていた。
道路を挟んだ向こう側にホテルが見える。目的地に着いたのだ、もう別れても構わない場所だ。
なのに、足も唇も動かない。動くはずが無いのだ。今や智は、その思考さえエルに絡め取られていたから。
なぜなら。
(今彼女は・・・何て言った?)
血を吸う。同族。その言葉が、智の逃げたいという恐怖を封じる。
エルの表情が再び笑みの形を取った。しかしそれは、先程までの無邪気さなど欠片も無い、妖艶な笑み。
智は悟る。自分が彼女へ下心を抱かなかったのは、怖かったからなんだと。
だってあれは、人にあらざる域に達した美貌。『魔性』だ。
「本当に感謝してるのよ。あと数秒遅かったら、本当にあいつらのこと八つ裂きにしてたかもしれないんだから。
ね、吸血鬼のボク?」
そう言って微笑むエルには、身に覚えのある鋭い歯が覗いていた。
今回はここまで。チンピラの思いもよらぬ人気に嫉妬して(?)一気に書いちゃいました。
何か変な展開になってきましたが、このスレの趣旨は忘れていません。
燃える展開まで、もう少しお待ちください。
吸血鬼娘キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
きゅ、吸血鬼っ娘キタY⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒Y !!
これは予想できんかった……
一気に修羅場にいくよりもじわじわといったほうが楽しみが深まるので全然無問題ですよ。
新ヒロインは吸血鬼だったとは。
作者さんGJです
くるか三つ巴…
強敵現る。千早たんガンガレ。外れ者たちの手から智をとりかえすのだ!
どんとこい吸血姫、しかし他二人よりいい意味でトレースしきれてなくて、
作者さんの味が出てるんではないだろうかってのは深読みですか、そうですか。
これで鬼ごっこ、大穴で腹話術で妹がやってたら怖いな
いきなりエルたんに萌えてしまった俺ガイル
239 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/05(火) 18:31:11 ID:kXDzCLnA
投下しますよ
タクシー代を立て替えてくれたユキさんにお礼を言いながら、玄関まで走った。胸の中
には何故、という気持ちが渦巻いている。何もかもが上手くいかない。せっかく罪を持つ
意味が分かったというのに、その矢先に全てが終わろうとしている。
舌打ちをして玄関の扉を開き、乱暴に靴を脱いでリビングに駆け込んだ。
一瞬、何が起きているのか分からなかった。
小刀が脇腹に刺さった姉さんが床に倒れている。衣服は赤く染まっていて、多分止血用
にその上に巻かれた布も同じ状態だ。意識がないのか目は閉じられている。刺されている
のにその表情は安らかで、まるでそのことが当然であるかのように微笑みを浮かべていた。
こんな異常な状態でなければ、ただ幸せな夢を見ながら眠っているように見える。
その隣に座っているサクラも同じだ。返り血なのか、所々が赤く染まった体だが、それ
以外はまるで普通に談笑しているかのような表情で姉さんを見つめている。上半身が何故
か裸で、しかも手に包丁を持っているということを除けば、日常と何ら変わりはない。
あまりのことに言葉を出すのを忘れ、ただ眺めているとサクラが振り返った。露出した
胸元を隠そうともせず、小さな笑みを漏らしながら、
「早かったですね」
「タクシー使ったからね」
今言うべきことはそれじゃないだろう、と自分に喝を入れるが、麻痺した思考はまとも
な言葉を紡いでくれない。この場にふさわしくない、茶化すような声で、
「随分と大胆な格好だね」
「あ、これは」
今頃になってやっと自覚したのだろうか、恥ずかしそうに顔を赤らめて腕で乳を隠し、
「兄さんが予想よりもずっと早く来てくれたのが嬉しくて、すっかり失念していました。
これは、その、上着を姉さんの止血に使ったので。決して変な趣味じゃないです」
血で染まりすぎていたせいで分からなかったが、確かによく見てみれば浸透していない
部分とズボンの色が同じものだと分かる。それだけ急ぎで、しかも自分の格好のことを忘
れるくらい一生懸命だったのだろう。僕が帰宅するまで保つように。
そこまで考えて、自分が何故急いで帰宅したのかを思い出した。
「おい、死ぬって何だよ?」
「あ、忘れてました」
サクラはまるで醤油でも買い忘れたかのような軽い調子で言うと、恥ずかしそうに首筋
に包丁を当てて、
「私、死にます」
言い終えるのと同時、横に引いた。
「な!?」
傷口から鮮血が溢れ、サクラはゆっくりと体を倒していく。
「思ってたよりも、キツいですね」
こいつは何を馬鹿なことをしているんだ、簡単に死のうとしたり人を殺そうとしたり、
しかもこんな状況なのに笑っていたり。姉さんも姉さんだ、何で脇腹を刺されているのに
笑っているんだ。全く理解が出来ない、思考が追い付いてこない。
「あの、兄さん?」
呆然としていた僕を現実へと引き戻したのは、不意に袖口にかかった弱い圧力だった。
摘むようにしてシャツを引かれる感触や、呼ぶ声に反応してサクラを見た。目が合うと、
上目遣いでサクラが顔を覗き込んでくる。
現実逃避のように可愛い、と思うが、しかし首元から流れる血によってその思考は中断
させられた。肌の上を滑る赤のラインは蠱惑的で確かに綺麗だと思うが、今はそれよりも
恐怖の方が遥かに上回っている。
「兄さん?」
「何、だよ?」
もう一度来た僕を呼ぶ声に応えたのは、かすれた声。
「死ぬのって、辛いですね」
「そうだよ!!」
今度は、大きな声が出た。
「何で、こんな馬鹿なことをしたんだよ」
数秒。
時間が経つのをもったいないと思いながら待ち、それだけの間を置いてサクラは答えを
返してきた。顔に浮かべたのは強い笑み、微笑だった口元を三日月にして、
「馬鹿、そうですね。馬鹿ですみませんでした。ただ、弱かったんですよ、私」
サクラが弱いのは知っている。だからそれに応えるように何かを言おうとしたけれども、
返す言葉が思い付かない。言葉にもなっていないただ細い息が、喉から漏れてきた。
「だから、兄さんに拒絶された後、迷って迷って、それで、こんな馬鹿な答えを、出して
しまいました。嫌われて生きるくらいなら、死のうって。姉さんが兄さんと、この後に、
ベタベタするのなら、道連れだって」
僕の、せいだ。
昨日僕が一時の感情にまかせて拒絶しなければ、こんなことにはならなかった。姉さん
も死ぬようなことにはならなかったし、サクラも自殺をせずに済んだのに。青海もそうだ、
僕に会わなければもっと生きることが出来たのに。ついさっき『極楽日記』でユキさんに
言われて自覚した罪を持つ意味は、それだけしっかりと僕にのしかかってくる。
「そんな、悲しい顔を、しないで下さい。全部、私の責任です」
苦しそうに、途切れ途切れでありながらも笑みを浮かべたまま、サクラは言葉を続ける。
しっかりと意思を込めるように、一語一語を丁寧に発音して、
「でも、やっぱり、嫌われたままって、辛いですね」
「嫌いじゃない、大切な家族を嫌ったりなんかしない」
僕の言葉に複雑そうな表情を返してくる。嬉しさと悲しさの混じったような顔を見るの
は辛いけれども、これが僕の本心だ。嘘でもサクラを女として愛していると言えれば少し
くらいは喜ばせることが出来ただろうけれど、言えなかった。必死な相手に対して嘘など
吐けないし、何よりも失礼だと思ったからだ。
僕の気持ちが伝わったのだろうか、サクラは長い息を一つ吐き、
「ありがとうございます」
「ごめん」
少し
「あたしからもお願い、サクラちゃんのお願いを聞いてあげて?」
聞き慣れた声に振り向いてみれば、姉さんが薄く目を開いてこちらを見つめていた。声
を出す度に口の端から血が溢れ、苦しそうにしているけれども、サクラと同じように意思
がはっきりと篭った言葉で告げてくる。
「姉さん、意識、戻ったんですか?」
姉さんはサクラに笑みを向け、
「うん、虎徹ちゃんが、大きな声を出したときに、起きちゃった。そんなことよりもね、
虎徹ちゃん、サクラちゃんのお願いを聞いてあげてね」
僕はそれに頷き一つで返した。元々言われなくてもそうするつもりだったから、覚悟は
もう出来ている。どんな無茶な注文が来ても、応えてやるつもりだ。
サクラは僕の胸の辺りに視線を移動させ、
「サクラ、って呼んで下さい。いつもみたいに」
一つ目の注文は、驚く程簡単なものだった。
「昨日から、そう呼んでもらえなくて」
そう言えば、そんな気もする。拒絶したときは虎桜と呼んでいたし、夕食のときは名前
自体呼んでいなかった。夕食の後は会うこともなかったし、今日だって朝早くに家を出た
ので、今日の会話をしたのもさっきが最初だ。そう考えると、かれこれ丸一日分はサクラ
と呼んでいないことになる。
「恋人になれないなら、せめて最後は家族として、って。浅ましいですね、私」
「サクラ」
そんなことはない、という思いを込めて呼び掛けるといつの間にか暗くなっていた表情
が、途端に明るいものになった。幼い子供のように、ただ名前を呼ばれるだけで嬉しそう
な表情をこちらに向けてくる。
「次は何だ?」
「おむすび、食べて下さい。最後に、私の作ったものを、食べてほしくて」
指差す方向に視線を向けると、おにぎりが幾つか乗った皿があった。殆んどが母さんの
作ったものだろう、大きさを見ればすぐに分かる。しかし、その中に一回り小さいものが
あった。誰が作ったのかなんて一目で分かった。小さな手で丁寧に固められ、綺麗な三角
をしているそれは間違いなくサクラが作ったものだ。僕が食べ慣れた、今となっては一番
食べやすい大きさと形のおにぎりは、僕の最も好きな食べ物の一つになっている。
僕はそれを手に取り、一口かじった。何故か妙なぬめりがするものの、程良い塩加減と
ご飯の甘味、丁度良い固さが合わさって最高の状態になっている。昨日の晩御飯は珍しく
母さんが作ったものだったし、朝も母さんが作ったものだったので、一日振りにサクラの
食事を食べたことになる。それのせいもあってか、今までで食べた中で一番美味しかった。
僕はサクラに笑みを向け、
「美味いよ」
「私特製調味料がたっぷりですから」
支援
照れ臭そうにサクラが言う。今までにも何度か聞いた単語だが、このぬめるものがそう
なのかもしれない。僅かに感じる微妙な塩気があるけれども、塩とは少し違う感じがする。
どこかで味わったことがあるような気がするけれども、どうしても思い出せない。なんと
なく気になり、もう一口食べたけれども記憶の再現は不可能だ。
「なぁ、この調味料って材料は? どこかで食べたような」
「愛液です、それと唾液も少々」
照れ臭そうに言うサクラだが、きっと冗談だろう。
僕の心を読み取ったのか、サクラは真面目な表情で、
「本当ですよ?」
「マジで?」
「マジです。多分今頃兄さんの体の70%は水分ではなく私の体液ですね? 幸せです!!」
どれだけ歪んだ幸せなんだよ!?
「サクラちゃん、ずるぅい。ふんだ、そんなこと言ったら、虎徹ちゃんの体の匂いは十割
あたしのだもん。虎徹ちゃんの服でどれだけオナってあたしの匂いを染み込ませたのか、
分かってるの!?」
香水じゃなかったのか!? しかも変態発言で返すなよ!?
今になって知った二人の秘密、と言うか衝撃の真実に僕が悲しんでいる間にも、二人は
そろぞれのやってきたことを暴露していた。やれ呑助の口に愛液を付けて間接的にクンニ
を体験してみたり、僕の使用済みの箸を利用して双穴自慰をやって
みたり。その他、僕の知らないところで行われていた幾つもの悪行を次々と言い出して、
ついには口論のようになっていた。
いつものようにサクラが早口で巻くし立て、ギリギリアウトに性的な暴力を振るい、姉
さんがテンパりながら応戦する。
今まで何度も見てきた、一般家庭とは少し違うかもしれないけれども、それでも我が家
では見慣れた普通の家族の触れ合い。こうして見てみると、やっと普通に戻れた気がした。
もしかしたら僕を悲しませない為にやっているのかとも一瞬考えたけれども、すぐにその
考えを捨てた。そうするのが一番良い。
「それで、兄さんはどっちを選ぶんですか?」
「お姉ちゃんだよね?」
「黙りなさい、肉達磨。お肉屋さんに売りますよ?」
「お姉ちゃん、デブじゃないから売れないもん」
「そうですね、乳とか尻とかは脂肪ですから。脂身は売れないですね」
「え、えぇと。よく分かんないけど、お姉ちゃん駄目な娘じゃないもん」
本当に、手間のかかる。
僕は二人を抱き寄せると頭を撫で、それぞれの唇にキスをした。今までとは微妙に違う
喧嘩の治め方だけれど、こうするのが正しいと思ったからだ。予想は正しかったらしく、
二人は笑みを浮かべて腕の中でおとなしくなった。
数分。
穏やかな雰囲気の中、二人の顔を覗き込んでみるとまるで眠ったように目を閉じていた。
それぞれの顔に浮かんでいるのは、さっきまで喧嘩をしていたとは思えない微笑。まるで
二人とも、穏やかに眠っているように見える。
その気持ちの良さそうな顔を見ていたら、不意に眠気が湧いてきた。朝早くから起こさ
れたせいなのか、それとも緊張の糸が切れたからなのか。理由はよく分からないけれども、
とにかく眠かった。
僕は二人にキスをすると、川の字になるように体を並べ寝そべった。
「おやすみなさい、愛してる」
あれから二年、僕は何事もなく大学生になった。
結局あの後も、青海の死の真相は誰にも喋っていない。それを抱えたまま生きるという
のが、僕の選んだけじめの付け方だった。甘えている、と言われれば反論出来ないけれど、
誰に言われても曲げるつもりはない。
ただ僕は決して忘れない。
僕に対して常にひたむきで、一生懸命だった恋人のことを。
罪を重ねたまま、誰にも悲しまれることを望まずに自殺した妹のことを。
皆に対して目を背けずに、向き合おうとしていた姉のことを。
僕を取り巻いていた、まるで虎のようだった女の子たちのことを忘れない。
あの日と同じ晴れた空を見ながら、吐息を一つ。
不意に、足に柔らかい感触が幾つも来た。全部で五匹居る猫の群れ、その中の三匹は、
他の二匹よりも体は小さいが、それを補うように全力で僕の足に体を擦りつけている。
「呑助も、子宝に恵まれたもんだ」
青海と知り合うきっかけになった猫は、僕の感傷も知らずに奥さんとじゃれあっている。
呑気なものだ。
僕は立ち上がると三匹の仔猫を振り返った。
「おいで。青海、虎百合、サクラ」
ゆっくりとした速度で歩いているつもりだが、仔猫にとっては少し早いのだろう。足を
せわしなく動かしながら、小走りで着いてくる。
「愛しているよ」
「「「ニャー」」」
『"The Double Tiger Sisters" Drop Dice Game』 is END.
第二部Aルートはこれで終わりです
ここまで読んで下さった方、楽しんで頂けましたでしょうか?
これは初期プロットのお話ですが、少し悲しいですね?
次からは第二部Bルート、救済措置のようなものになります
良い話にする予定ですのでもう少し付き合って下さい
>>250 乙でした!
これはこれで自分ではありです。
あまりにも悲しすぎて誰も救われていない感じがしますが。
Bルートは最初のようなエロエロなノリに期待
>>250 みんないなくなってしまった・・・分かっていたとはいえ、すごく悲しい。
けど、本当にいい話、読ませていただきました。ロボさん、ありがとう!
次のBルートも楽しみにしています。
>>243 失敗しました
正しくは↓
昨日僕が一時の感情にまかせて拒絶しなければ、こんなことにはならなかった。姉さん
も死ぬようなことにはならなかったし、サクラも自殺をせずに済んだのに。青海もそうだ、
僕に会わなければもっと生きることが出来たのに。ついさっき『極楽日記』でユキさんに
言われて自覚した罪を持つ意味は、それだけしっかりと僕にのしかかってくる。
「そんな、悲しい顔を、しないで下さい。全部、私の責任です」
苦しそうに、途切れ途切れでありながらも笑みを浮かべたまま、サクラは言葉を続ける。
しっかりと意思を込めるように、一語一語を丁寧に発音して、
「でも、やっぱり、嫌われたままって、辛いですね」
「嫌いじゃない、大切な家族を嫌ったりなんかしない」
僕の言葉に複雑そうな表情を返してくる。嬉しさと悲しさの混じったような顔を見るの
は辛いけれども、これが僕の本心だ。嘘でもサクラを女として愛していると言えれば少し
くらいは喜ばせることが出来ただろうけれど、言えなかった。必死な相手に対して嘘など
吐けないし、何よりも失礼だと思ったからだ。
僕の気持ちが伝わったのだろうか、サクラは長い息を一つ吐き、
「ありがとうございます」
「ごめん」
少し辛いだろうと思ったけれども、細い身を抱き締めた。服が血に染まるけれども、気
にしない。今はただ、手指に直接触れるサクラの暖かさが大事に思えた。
「謝らなくても、良いですよ。その代わりお願いを二つ聞いて下さい」
いらっしゃいませ ちはやさん。 ここは ぶきや です。 どれを おもとめですか?
→ ヴァンパイアキラー
まじょがりのギロチン
ことのはのノコギリ
かえでのからなべ
むりしんじゅうのチェンソー
>>250 GJ!ジェノサイドエンドは好きだが、やっぱり切ないぜ。・゚・(ノД`)・゚・。
Bルートをwktkして正座で待ってますね
ネコエンドかぁ・゚・(つД`)・゚・
救済エンドが待ち遠しいです
うわあああああああああああああああああああああ。・゚・(ノД`)・゚・。
ちくしょう切なすぎる!Bルートではまた初期の楽しげなノリを見れる事を願ってるぜ!!
それでも先輩なら・・・
先輩ならジルワンをかましてくれる・・・
みんな猟奇小説化してるな…。
>>259 これもひとつの修羅場さ
俺はスプラッタじみてるのよりは
もっとコメディタッチな修羅場のが好みだが
読めるだけで幸せです><
それでは投下します。これで話の方向性が分かるかも
第1話「嫉妬と裏切り」
「あれ?おかえりなさい。見回り早かったですね。」
「…………」
三井久美子(みついくみこ)は周りの教師が話しかけても沈黙のまま自分の椅子に座り、怒りに耐えていた。
多分教師になって一番……いや2×歳生きてて一番忍耐に忍耐を重ねている瞬間だった。
そして我慢しているその姿は恐ろしい、としか形容出来なかった。顔のあちこち
に血管が浮き出て、下唇を強く噛みすぎて血が垂れ、目尻は吊り上がった上に充
血し、手に持っているボールペンは真っ二つに折っていた。
普段の朗らかで明るい様子しか知らなかった他の教師はその異様というか、暗黒
のオーラに近付けないでいた。
何事かと噂していたその時、久美子は勢い良く椅子から立ち上がり、
「ちょっと暗室へ行ってきます」と言い残して職員室を後にした。
この学校にはもともと写真部はあったのだが、部員がいなくなってしまい、
今では元顧問の久美子の私室と化していた。
このデジカメ全盛の時代でも久美子は昔ながらの印画紙が大好きだった。
「撮った」という感覚が強く残る上に、人物だけでなくその場の空気まで撮っているようだったからだ。
暗室に入り、鍵を掛け今日写した写真を現像すると、その写真には全て博史が写っていた。
登校時、授業風景、お昼休み、放課後の補習……、そして問題の屋上での告白シーン。
博史の写真を見てニコニコしていた久美子だったが、最後の告白シーンの写真を見た瞬間怒りが湧いてきた。
あの転校生!!よくも私のヒロくんに手出ししたわね!転校早々私のヒロくんに手出しするなんて
いい度胸だわ!!……私の、私だけのヒロくん。初めて会ってから私は女子高生のようなトキメキを覚え、
ヒロくんが補習を私とワンツーマンでやった時は食べちゃうのを我慢するので大変だったわ。ヒロくんが
卒業したら即プロポーズして私のマンションで愛の営みをするっていうのが作戦だったのに、
あの!あの転校生がーーーーー!!!
怒りに我を忘れ、手に持っていた屋上での告白シーンが写っている写真を破り捨てた。
はあ…はあ…そうよ、ヒロくんは優しいからあんな塵の告白でも断りきれなかったのよね。
うんうん、先生は何でも知ってるんだから。そんな優しいヒロくんも大好きよ……そうね、
ヒロくんを困らせる塵は捨てないと。よし!まずは……
久美子は、壁という壁に博史の写真が張っている暗室を後にした。
翌日の放課後、久美子はとある人物を屋上に呼びつけた。呼び出した
久美子は真剣な面持ちに対して、呼び出された方は怪訝そうな顔をしていた。
「突然屋上に呼び出したりしてごめんなさいね。香苗さん」
「…………」
香苗と呼ばれた女子生徒は眉を顰めつつ
「先生、一体こんなとこに呼び出したりして何の用ですか?これから生徒会があるんですけど?」
「大丈夫よ。手間と時間は取らせないから。それに貴女にとっても悪い話ではないはずよ」
今度は胡散臭そうな顔をした香苗に対して久美子は
「単刀直入に言うわ。私と手を組んで文子を倒さない?」
「!」
香苗は表情を変えない。だがこの提案を頭で思考した
この教師自分で何言ってるか分かってるの?よりにもよって自分の教え子の生徒を倒すなんて……。
ただこの提案、中々面白いわ。別にこいつの手を借りなくても近いうちに文子にはこないだの
ソフトボールの借りを返そうと思っていたのよね。
うう〜〜、考えただけでこの腕の傷が疼くわ……。だが、この教師を無条件で信じるほど
オマヌケではないわ。こいつの狙いや目的を知って、逆に私が利用してやるわ!!!
「その提案の返事の前に幾つか聞きたいわ。貴方の目的は?」
う、やっぱりその質問が来たか。……どうしよう。下手に真の目的を話せば後々までに弱味を握られるし、
教師生命やヒロくんとの家族計画がパーになってしまうわ!!ここは適当に嘘八百並べとくか。
Pet☆Hot☆High-School!!エロコメディみたいなものが最高だった
いやもちろんシリアスや猟奇も好きだけども。
「あいつが転校して来てから、クラスは乱れっぱなしだわ!!平気で遅刻するし、
授業中はいびきかいて爆睡……。体育だけは良いのにその他は全滅。テストなんて
見れたもんじゃないわ!!問題児1人のせいでクラスの空気が悪くなって、そのせいで
私の教師としての評価が悪くなるのは御免蒙るわ!!」
なるほど、要は自己保身ってことか……でもなぁ〜んか怪しいのよね。
まだ何か隠してるような……。
「もう1つ。「倒す」って言うけど具体的には?まさか殺せって言うんじゃないでしょうね」
「そこまで言わないわ。死んでくれた方が嬉しいけど、とりあえずこの学校から居なくなればいいわ」
ふむ……目指す所は分かったけど、手段方法は任せるってことか……。しかしこの教師、自分の手を
汚さずに事を成そうって考えてるわね。だめよ!イザとなったら教師の権限を使わせてでも手伝わせるからね!!
「……いいわ。引き受けましょう。確かに文子は憎っくき敵だし、排除したいのは確かだわ。ただし、あんたにも
色々手伝ってもらうからね」
香苗が去った屋上で1人久美子はタバコを吹かせながら
これでお膳立ては揃ったわね。あの香苗なら陰湿なイジメや嫌がらせなどをして転校させる……って所かしら。
私としては目的さえ果たせばあとはどうなってもいいし、脛に傷在りの香苗なんて所詮捨て駒だしね……
「ごめんな文子、買い物につき合わせて……」
「別にいいわよ。私もスーパーに用事があったし」
放課後、「スーパーまで買い物に付き合ってくれないか?」という健史の誘いを文子は
「いいわよ」と言ってOKした。但し、恥ずかしさからか心では喜んでいても顔には出さなかった。
なーんてね。本当は用事なんて無いんだけど、健史と一緒に帰りたかったから嘘ついちゃった。
両親が共働きってことでよくスーパーに食料品なんか買いに行くんだ……とか言ってたけど、意外にマメな性格かもね。
とにかく今日は買い物に付き合うふりをして、健史の趣味嗜好をよく把握し、その後家に行ってそのままお邪魔させて
貰おうかしら。うん、その線で行こう!!
目的地のスーパーに行く途中、健史が「近道だから」と近くの公園を横切った。
ここは噴水や遊具が充実し、ちょっとしたデートスポットなのだが、文子は入った瞬間
言い知れぬ不快感に包まれた。
うっ……何これ、気持ち悪い。しかも少し臭い匂いがするわ。見た目は綺麗な公園だけど
ここ、何なのかしら。でも健史は何も感じてないようだし私だけかしら。とにかく
こんなとこはさっさと突っ切っちゃいましょ
しかし、健史はそんなこととは露知らずに公園について案内していた。
「どう?ちょっとしたもんだろ?この噴水はこの辺じゃ有名で待ち合わせ場所や
デートスポットとして使われるんだ」
「うっ……へ、へ〜、そうなんだ。じゃ、早く買い物行きましょ」
急かす気持ちを抑えて、文子は健史の手を引っ張るようにして出口へ急いだ。だが、出口まで
あと少しという所で
「そういえばさ、すぐそこのでっかい木の下でつい先日殺人事件があって大騒ぎだったな。
何でも近くの高校に通う女の子が刺殺されていたって。」
「おえっ……ふ〜ん………」
博史の指差した方を文子は吐き気を我慢しつつ、何気なくその現場という木を見た。
見る限り普通の杉の木のようだったが文子はハッキリ感じた。この不快感や匂いは
あそこから来てる……そう確信した、その時
「やっと気付いてもらえたわ」
「ん?」
何処からか自分に語っているような声が聞こえて来た……ような気がした。
「健史?今私に話しかけた?」
「え?いや話しかけてないよ。どうしたの?」
周りを見渡してみても、今自分の周りには文子と健史しかおらず、かと言って
遠くから話し掛けられたような感じでもなかった。不気味に感じた文子は一秒でも
ここに居たくなかった。だが
「ずいぶん霊感が強いのね。私の声や公園の空気を感じるなんて……」
「だ、誰!どこにいるのよ!!」
「何処って……あんたの真後ろ」
「え!!!!!!!!」
それを聞いた瞬間、文子は全身の筋肉を使い真後ろに振り向きざま、
渾身の右ストレートを放った!!
「うりゃあああああああ!!!!」
もちろん右ストレートは空を切っただけだったが、声は聞こえてきた
「あ、あんた!!いきなり何するのよ!!危ないじゃない!!」
「何だか分からないけど、勘で殴りたくなったのよ!!」
「む、なによそれ!!なんて暴力女なのかしら!!よ〜し、こうなったら…」
やっと声が聞こえてこなくなってほっとした瞬間、文子の頭が少し重くなったような気がした。
だがそれだけじゃなかった
(お〜、入れたわ。私の声が聞こえる?)
なんと今度は文子の頭の中から直接声が聞こえて来た!!
「え?今度はどこにいるのよ?」
(あんたのあ・た・ま♪)
たぶん文子の意識でそうしたのではないだろう。よく「本能でそうした」
ということがあるように文子の本能がそうしたのだろう。まさしく「腕が勝手に動いた」
ってやつだった。
考えるよりも早く、文子の腕は自分の頭を本気で殴りつけたのだ!!
こめかみに拳が直撃し、三半規管にモロにダメージが出てフラフラと歩き
最後に一言「きゅう」と言って文子は視界が反転し、平衡感覚を失い、
意識が遠のく感覚の中で健史の呼びかけが少しだけ聞こえ、地面に倒れた。
(こいつ………真正の馬鹿ね)
あまりこのスレ内じゃ「女教師」が見かけなかったんで入れてみました。
次回 久美子対文子+1
たしかに女教師モノはなかったなぁ。
それこそ盲点。
暗室を盗撮写真で埋め尽くす女教師・・・・このさきがたのしみですねぇ。
ところで、漏れの読解力不足なのかもしれないんだけど、
男の名前が「博史」だったり「健史」だったりするのは意図してのことでしょうか・・?
もしそうならすみません。
突然でてくるんで、ちょと驚きます。
女教師はポイント高いな。でもいきなり旗色が悪そうだ。
あとマンツーマンとワンツーワンが合わさっているよ。
新しい神キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!
最初題名見たとき、転校生がハーフなのかと思っていたら
幽霊との共有でハーフなのか、一本取られた!
ぴりりりりりりり。
目覚ましのアラームが、僕を夢の世界から現実に引き戻す。
あぁ・・・もう朝か。
僕──薙代 歩(なぎしろ あゆむ)は、アラームのスイッチを切ると、ベッドから起き上がった。
時刻は七時過ぎ。
普通の人なら二度寝でもしたくなる様な時間だろうけれど、僕の場合はそうも行かない。
まだ眠い眼を擦りながら床に足を着けると、白いカーテンを思いっ切り開き放った。
途端、眩い光が部屋全体を照らし、僕は思わず眼を細めた。
光の向こうには、僕の家から見下ろす形で幾つもの家々が並んでいる。
天気はこの上なく澄んで。
遠くからは、早くも出勤の人を乗せた車の音が聞こえてくる。
何かが始まる予感、と言うより確信。
この毎朝の光景を見ていると、少しだけ、日々の重圧を忘れられる気がする。
・・・思えば、これが、僕が独りになる代わりに手に入れる事ができたものなのかも知れない──。
僕の朝は忙しい。
階下に下りると第一に台所に向かい、一人分の朝食を作らなければならない。
冷蔵庫からそれなりに使えそうなものを見繕って取り出す。
なめこに卵、それからベーコン・・・あぁ、それから茄子もよさそうだな。
それと味噌と油と醤油・・・って、醤油はもう切れ掛かってたんだったけ。
ストックなかったらまた買ってこなくちゃなぁ・・・と思いつつ包丁と俎板を出して、僕は先ずベーコンの捌きから始める事とした。
それから三十分後。
御飯、なめこ入りの味噌汁、ベーコンエッグ、焼き茄子。
それらをきっちり胃袋の中に収めると、手早く使い終わった食器を水洗いする。
食後の歯磨き、洗顔が完了したら、休む暇なく再び二階へ。
昨日の夜に洗濯して部屋干ししておいた衣類をベランダに移して吊るす。
今日もいい天気だから、よく乾いてくれるだろう。
風に吹き飛ばされない事を確認してから、ベッドのある自室に戻った。
クローゼットから制服を取り出して着替え。
ふと時計を見ると、七時五十分・・・不味い、ゆっくりし過ぎた。
鞄を引っ掴んで家を飛び出そうとする・・・その前に。
居間に据えられた仏壇の前で、僕は手を合わせる。
・・・。
・・・。
・・・。
「行ってきます」
自転車を懸命に漕いで駆けた結果、僕が学校に到着したのは八時十五分を回った頃だった。
昇降口で上履きに履き替えて、その足で二年の教室が並ぶ四階に向かう。
我が二年A組の教室に入ると、先ず最初に眼につくのは人の少なさ。
どうやらこのクラスは時間にはルーズらしく、結構な数の生徒が予鈴前に慌てて駆け込んでくるのが日々の光景になっている。
そんな中、毎朝変わらぬ姿で僕の机の隣に座っている少女が一人。
近づくと彼女も僕に気づいたのか、微笑みと共に朝の挨拶を送ってきた。
「お早う、薙代君。今日は遅かったんだね」
「・・・お早う御座います、天使さん」
天使 伊祈(あまつか いのり)。
僕の数少ない女性の知り合いであり、いつも隣り合って授業を受けるクラスメイトであり、そして・・・このクラスを率いる委員長。
因みに僕は副委員長を務めているので、天使さんは職務上僕にとって目上の立場の人になる。
「いや、今朝は少しのんびりし過ぎてしまったので・・・」
その為か、どうも天使さんと会話をする時は敬語になってしまう。
・・・まぁ、順逆の区別はつけるべきなんだから、これでいいのだろうけれど。
「ふふ、そうなんだ」
対する天使さんは優雅に笑う。
僕は机に座ると、朝の短い時間を天使さんとの談笑に費やす。
それはとても他愛のない話なのだけれど。
今や日常と化したこの光景に、・・・呑気かも知れないけれど・・・僕は平穏を感じられるのだ。
天使さんについてのあれこれを、僕は彼女が作ってくれたお弁当を食しながら考える。
先ず最初に思いつくのは、眉目秀麗と言う事。
整った清楚な顔立ちとすらりとした肢体による美しさと、アクアマリンのリボンで結われた栗色のポニーテールの可愛らしさとが
絶妙な加減でマッチしている。
聞くところには、彼女に告白して玉砕したと言う人は二桁にも上るらしい。
明るくさばさばしたその性格は男女両方から好かれており、一説には天使伊祈ファンクラブなる組織もあると言われている程の人気だ。
それに加え、成績優秀。
テスト毎に貼り出される順位表では只一度だけの例外を除けば常に天使さんの名前がトップに躍っている。
僕はその後塵を拝する形で毎回学年二位・・・って、そんな事はどうでもいいか。
更に対外活動・・・英語のスピーチ大会や美術のコンテストでも、彼女が入賞しないと言うのは先ずあり得ない事であった。
しかも文武両道を体現するかの様な目覚ましい運動能力。
五十メートルを六秒で駆け抜け、テニスではテニス部所属の女子にも引けを取らない技術を披露する。
その他、バスケットボール、バレーボール、バドミントン等々・・・どの競技でも八面六臂の大活躍だ。
これで大富豪の娘──とか言ったらグランドスラムもいいところだけど、幾ら何でもそこ迄は行かないらしい。
とは言え天使さんが僕に伝えてくれた事によると、お父さんは敏腕の検事、お母さんは一流のキャリアウーマンだとか。
収入がどれ位かは流石に分からないけれど、その額が低くないと言うのは僕だって簡単に予想できる事だ。
・・・そう言えば天使さん、何で僕なんかに御両親の職業を教えてくれたんだろう?
別に僕から訊いた訳でもないのに・・・まぁいいか、気にしないでおこう。
要約すると、容姿端麗、頭脳明晰、抜群の運動神経、恵まれた家庭環境。
そして、僕は右に出る者のいないこんな優秀な少女と、一緒に昼食を御相伴させて頂いている訳で。
何と言うか・・・彼我の差を感じて、小さく溜め息が漏れてしまった。
「──君? どうかした?」
「えっ?」
気づくと、天使さんが心配そうに僕の顔を覗き込んでいた。
・・・っと、駄目だ、ちょっと考えに浸り込んでしまっていた。
よくよく見れば、箸も先程から全く進んでいない。
「ぁ・・・いえ、ちょっと考え事を・・・。それで、何の話でしたっけ?」
「もう。聞いてないんだから」
天使さんは頬を膨らませて怒る、が直ぐに元の柔和な表情に戻った。
「だからさ、近頃薙代君疲れてる様に見えるから大丈夫? って訊こうとしてたんだけれど」
「疲れている・・・ですか?」
うん、と天使さんは肯定する。
「最近、何だか顔色が悪いし。話し掛けても今みたいにぼんやりしてたりとか」
「そう言われれば・・・確かに、そうかも知れません」
先刻も思考に没入し過ぎて、天使さんの呼び掛けに反応する事ができなかった。
顔色がよくないと言うのは自分では余り認識できないけれど、天使さんがそう言うならきっとその通りなのだろう。
「本当に大丈夫? もし君に倒れられたら、私独りじゃ仕事も厳しくなるんだけどな」
「いえ・・・御心配には及びませんから。それに、天使さんなら単独でも十分やって行けますよ」
冗談めいた事を言う天使さんに笑って答えると、そうかなぁ、とどうしてか天使さんは首を傾げる。
大丈夫ですよ、と僕は自分の発言を強調する様に首肯を返す。
そう、僕は彼女には及ばない。
どう足掻いても、どう努力しても、天使さんに追いつく事なんてできやしないんだ。
天才と凡人の差、如何ともできない大き過ぎる隔たり。
彼女とのまだ短いつき合いの中で、もう何度味わったか分からない諦念を、僕は天使さんのお弁当と共に腹の中へと流し込んだ。
見ているだけと言うのも何なので自分でも何か書こうかと一念発起。
まだまだ愚作の域を出ないものではありますが楽しんで頂ければ幸いです。
一応予定としては全部で四回位になると思います。
期待の新作登場w
今後どうなるのか今からwktkして待ってます
やったぜ連投三日目。
というわけで、投下します。
「私は元々人間なんだけど、もう100年くらい生きてるの。12歳の時、死に掛けていたところを血を吸われて、吸血鬼に転化してね。
吸血鬼が人間の血を吸うと、その人間も吸血鬼になるの。といってもかなり長く――それこそ10分くらいは吸い続けないと吸血鬼にはならない。
それでも上手くいくとは限らないしね」
思いがけなく出逢った自分以外の吸血鬼。壁際に追い詰められた態勢のまま、智はエルの言葉に耳を傾けていた。
「吸血鬼のルーツは私も知らない。でも、きっと大昔からいたんだと思う。私だってこんな姿で100歳以上だし、1000年くらい生きてる人がいたっておかしくないものね。
ただ、数は極めて少ないと思うわ。私も100年世界を旅して、ちゃんとした同族に会ったことなんて数えるほどしかないし」
スケールの違う話に、智は唖然とするしかない。取り敢えず彼は、ただエルの言葉を聞く事に努めた。後で理解できるかは別として。
「吸血鬼になって多くのものを失い、また多くのものを得たわ。
まずは身体能力。何メートルも飛び上がったり岩を握り潰したりできるくらいだし、ちょっとやそっとのことじゃケガだってしなくなった。・・・こんな風にね」
そう言って智の手を取ると、そっと自らの頬に当てさせた。上気している割に、やけにひんやりとした感触が伝わる。
そう思ったのもつかの間、エルは智の人差し指を取って、その爪――吸血鬼化して以来伸びるのが早い――を、頬に当てたまま・・・振り下ろした。
「・・・・・・!」
肉を裂く音が確かに聞こえた。肉を裂き血を掻き出す生々しい感触に、智の喉が引き攣った音を出す。
そして、次の光景を目の当たりにして智の喉は完全に引き攣りきった。
反射的に後退するが、石壁に足を掛けただけに終わり、バランスを崩す。
エルの頬に深く走った傷が目に見えて細くなっていき、ついには完全に消えてしまったのだ。
不意に智の脳裏に浮かんだのは、いつか理科の授業、植物の数ヶ月に渡る成長の映像を超早送りで見た記憶。
人間のケガも早送りで見たらこんな風に治るのかな、などと考えてしまうのは、つまるところ現実逃避に近い。
ある意味非常に素直な反応を見せる智に気を良くしたのか、エルの微笑が深くなる。
智がバランスを崩した分だけ前傾姿勢を深くし、更に自らの血の付いた智の指を口に含んだ。
「うぁぁっ・・・!?」
指を舐められている。ただそれだけのことなのに、何故か背徳的な快感が智の背筋を駆け抜けた。
身じろきしようにも上手くいかないこの態勢が、どうしようもなくもどかしい。
「んふ、可愛い・・・」
指を離し、悩ましげに舌なめずりをするエル。ゾクリとした感覚は、唾液に濡れた指先が風に晒された為だけではあるまい。
「でも本当に何も知らないのね。まあ、ここまで早く治るのは夜だからっていうのもあるわ。昼だとこうはいかないし。
これが私たちの種族特性。老化スピードが極端に遅くなったのもその一つよ。
昼に行動しづらかったりニンニクが気持ち悪かったり、十字の物を見るだけで気持ち悪くなったりするのは困りものだけどね」
「・・・・・・」
多少の違和感。智の身体能力はそこまで極端ではないし、弱点についても同様だ。
エルは構わず言葉を続ける。本人は、新人にレクチャーするような気持ちなのだろうが、壁際に追い詰めてレクチャーする先輩は普通いないだろう。
「その中で最も厄介なもの、それが本能衝動。吸血衝動の他、人間の本能の激しい部分――性、食、暴力とか――が強くなっちゃう。
特に男の吸血鬼は性衝動が極端に強くてね。おまけに男ってばバカで、それは人間だろう吸血鬼だろうと変わらないから、衝動に簡単に飲み込まれちゃうの」
言葉に棘があった気がするのは気のせいだろうか。
「さらに厄介なことに、吸血鬼の唾液には催淫性があって・・・。それが牙を突き立てることで直接身体の中に入ると、相手は媚薬を嗅がされたみたいになる。
少しくらいなら一晩程度で抜けるみたいだけど、下手をすれば中毒症状にもなりかねない危険なものよ。
サトシくんも、思い当たることは無い?」
言われて見れば、確かに心当たりはある。虚ろな瞳で息を整える藍香。牙を突き立てるといきなり無抵抗になる女性たち。
あれは、『そういうこと』だったのか?
「衝動に飲まれた男たちと吸血の特性が合わさって・・・・・・説明するまでも無いわね? 吸血行為にかこつけて、どんなことをしたのか。
同族は――というより吸血鬼の女たちは、そんな男たちを許さなかった。
大きな騒ぎを起こして欲しくなかったから。身体能力の差ほどには吸血鬼の強さは絶対的じゃないし、人もまた無力じゃない。
殆どの者は人知れず生きていくことを望んだし、昼に弱いという特性があるからそれは尚更のことだった。
でもね、一番の理由は―――」
エルの口から微笑が消えた。目が細められ、智は射すくめられような感覚に陥る。虚空を睨む氷の視線、それが映しているのは自分ではないのに。
「女として許せなかったの。人間だろうと吸血鬼だろうと、同じ女という存在として。
ただ欲望の捌け口として女を弄ぶそいつらが許せなかった。
・・・そんな風にされる気持ちが分かる者からすれば、尚更にね」
見上げる形になっている智には、エルの瞳が映すものは分からない。
ただ一つ、彼女の言葉が単に吸血鬼女性一般の思いを述べただけのものではないとだけ、感じた。
「元々吸血鬼は数も能力も女性が勝っていたし、狂った男たちは発見次第すぐに駆逐された。
昔はいくら狩ってもそんな男たちは減らなかったらしいけど、最近はそいつらが暴れている所は怪事件発生ってことですぐ有名になるから、大分減ってるみたい。
情報化社会っていうの? すごいよね。今じゃどこからでも、世界の何処で何が起こってるか、リアルタイムで分かるんだもん」
先日まで信じてもいなかったオカルト的存在の吸血鬼と、ずっと世話になってきた科学の粋である文明社会。
対照的な二つが見せた思わぬリンクに、智は場違いな感心を抱く。
エルの表情に微笑が戻ったことで、落ち着いたのだろうか。黒曜石の瞳に見つめられることにも、幾分か慣れてきた。
「聞いた話では、今じゃ男の吸血鬼の殆どは性衝動を抑えるために、我慢して男の血を吸ってるらしいわよ。
単に命を繋ぐならそれでもいいけど、吸血鬼に力を与えるのは異性の血だからね。
力とともに衝動の強さも失っていって、今では常人に毛の生えた程度っていう個体も多いって話よ」
それは智にも思い当たる。初めて男の血を吸った時に感じたあの吐き気、脱力感。
何より、男として大切な何かを失ったんじゃないかと思わせる、言いようのない敗北感。
あれをもう一度味わえというなら、幼稚園の時にままごとで千早が食べてと泣き叫んだ泥団子だろうと、部室にて藍香が煮ていた謎の液体を出汁にしたイモリだろうと、智は喜んで食べて見せるだろう。
思わず落ち込んでしまった智を、エルの声が引き上げた。
「ねえサトシ君。君は何者なの? 吸血鬼なのは間違いない。でも何かが違う。
何人もの女性の血を吸って相手も無防備で、それでも欲望を押さえ込んで。
思うまま力を振るう気持ちよさを、手加減することで封じ込めて。
衝動に忠実なのを旨とする吸血鬼にとって、我慢を重ねるのは何よりの毒なのに。
それでも君は優しさを失わない。私にそうだったように」
「・・・・・・」
エル問いの質が変わった。これまでの、教師が説明の過程で確認を取るようなものから、一個人として相手の答えを求めるものに。
しかし智には答えられない。なぜなら、それは彼自身こそ知りたいものだったのだから。
エルが語った身体能力、自分はそれに遠く及ばない。目の当たりにした再生能力も、自分にはない。
寿命に関しては考えていない。よく分からないし、今の状態で考えるには話のスケールが大きすぎる。
男の吸血鬼の衝動というが、それも厄介ではあるものの致命的なものには感じない。
自分に人並み外れた忍耐力があるとは思えないから、衝動自体が弱いのではないだろうか。
そして、吸血鬼への転化。血を吸われることで人間は吸血鬼になるという。
これが原因なのだろうか。吸血鬼の牙ではなく、謎の魔術による転化。
吸血鬼の特性がどれも中途半端なのはそのせいなのだろうか。
あるいは、自分は吸血鬼とは違う存在という可能性もある。
そもそも世間一般で言われているヴァンパイア、ドラキュラ、そういったものについても『物語の悪役っぽい化け物』という理解しかない自分なのだ。
自分という存在について判断を下すことなど、出来そうもない。
しかしエルは待ってくれなかった。答えを待ちきれなかったのか、独白するように話し始めた。
「老化が遅いから、私たちは一つの場所に留まれないの。何年経っても見た目が変わらなかったら怪しいもんね。
それは仕方ないし、旅暮らしは割と楽しいけど・・・やっぱり寂しかったの。
吸血鬼になったことを後悔する気持ちはないつもり。そうでなければあの雪の日、私は野垂れ死んでいたはずだから。
ただ―――同じ時を生きていける人が欲しかった」
ポツリポツリと紡がれる言葉。智には、そこに秘められた思いを理解することは出来ない。ただ、何となく感じるだけだ。
「男の吸血鬼に出会う度、私は期待した。性衝動の暴走についての話は聞いていたけど、この人ならもしかして、と思って。
・・・ふふっ、そうして殺した男の数も、片手じゃ数えられないくらいになっちゃったけどね」
あっけらかんとした口調で、とんでもない内容。現実感だけが取り残されて感じる。
「自分で仲間を増やそうとも考えたわ。いいなって思った人に噛み付いて、吸血鬼にしてしまおうと思った。
でも、結果はいつも失敗。相手の意志力が持たなくて、途中で気絶したりイッちゃったり。
時には快感に耐え切れなくておかしくなる人も出た。それからしばらく入院生活を余儀なくされたとか・・・。
酷いことしちゃったよね。
第一、そんなやり方で同族にしたって、好きになってもらえるはず無いのに」
切なく潤む、虚ろな光。それがはっきりと認識される。
いつの間にか、エルの瞳は智だけを映し、しかと焦点を合わせていたのだから。
ドクンッ!
再び鳴った強い音。今度は自覚を持って認識できる。
警鐘だ。二度目であるそれが、智の意識を瞳の呪縛から僅かに救った。
「最後に生まれ故郷に寄って、自分の未練を断ち切ろうって思ったのに。
いっそ冒険者みたいな生き方も悪くないって考えていたところだったのに。
ねえサトシ君、どうして現れたの? どうせ君だって、すぐにダメになるに決まってるのに。
ねえ私、どうしてこんなにサトシ君が欲しいの? あの日の慟哭を、また繰り返したいの?
どうして? ねえどうして? どうしてよっ! 答えてよっ!!」
暗闇の中、エルの絶叫が木霊する。時間の所為か、こんな叫びが上がろうとも、二人だけの空間は崩れない。
そして、エルは智から目を離さない。だが、最早智を見てもいない。
次の一手は自分が出さなければならないのだと、智はおぼろげに理解した。
(どうすればいい・・・? どうすべきなんだ、俺は・・・?)
目の前の女性を放ってはおけない。それは偽らざる気持ちだ。
だがもしそうしたら、自分は引き返せない領域に足を踏み入れてしまう気がする。
もう二度と、千早が懐き先輩が微笑むあの世界へ戻れないのではないかと思う。
両方を得る手立ては無いと、そして今選ばなければならないと、心が酷く急き立てる。
そして、智が選んだのは――。
「っ!」
押し倒されるに近い態勢から僅かに身体を浮かし、一気に走り去る態勢を取る。
もし追いかけてこられたら、単純な速度では敵わないだろうが、そこは地の利を活かして脇道に逸れることで撒けばいい。
勝算は十分。
何より大切な日常を失うということを、エルの魔性が現実的な感覚を伴って迫る。故に選んだ結論だった。
走り出す瞬間。エルはまだ気づかない。よし、行ける―――。
しかし。
「・・・ぁっ・・・!?」
グラリと。身体がよろめいた。平衡感覚が消え失せる。不自然なほど急激な、身体の変調。
吸血鬼は、身体能力のあらゆる点において人間を凌駕する。
それは外傷に留まらず、薬品などの投下による体内への影響も例外ではない。
完全に相殺することがあれば、ある程度の影響が出ることもあり、時には時間をおいて効果が出ることもある。浸透に時間が掛かるということだろう。
そして今、少年の身体に起きた異変。それは前述の三例目に該当する。
恐ろしい偶然ではあれど、ありえないことではない。
『折原千早が高村智の夕食に混ぜた睡眠薬が、数時間を経た今になって効果を表す』ということは。
それは、誰かが気づくなどありえない要素。
少年の様子に呆然とするエルも、夢で愛しい幼馴染に包まれている千早にも、今まさに意識を手放そうとしている智にも。
だからこの場で展開されている光景、それが現実であり全てだ。
立ち上がった拍子によろめいた智は、そのまま前方に倒れこみ―――
エルの腕の中に、堕ちた。
今回は今回はここまで。主人公は一体どうなってしまうのか? それは私にも分からない(ぇ
書き溜めた分が切れたので、次回までの感覚が少し空くかもしれません。
ある程度構想はできているし、なるべく早く戻ってきますので、頭の片隅くらいには覚えていてやってください。
ktkr!
こっから智はエルにイロイロされちゃうんだろうかw
毎日更新されててうれしい限りです。
頭の片隅どころかそれメインで待ってます!!
作者さんGJでした
少し遅れて言うが
このスレのやつ、伊集院のコマンのコーナーに送ったろw
ってラジオ聞きながら思った
放課後……
いつもように帰り支度をする。……とはいえ、今日は少し違う。沙恵ちゃんが大事な話があるというのだ。
そのせいなのか、今日一日、沙恵ちゃんはずっとボーッとしていた。話しかけても上の空だし、お昼もいつもなら一緒に食べるのに、今日は一人でふらふらとどこかに行ってしまった。
………これは余談だが、今日に限って僕以外の男子とよく喋っていた。……まぁ、別に沙恵ちゃんはただの幼馴染みなんだからさ、誰と話してもいいんだけど……
なんか……悔しいな……結構楽しそうに話してたしな……
っと、そんなこと考えてる場合じゃない。その沙恵ちゃんから話があるんだ。
「えっと……あ…」
今日を見回すと、丁度沙恵ちゃんがこっちに向かってきていた。その顔には相変わらず不安がまとっている。
「い、いこっか……海斗……」
「うん…どこで話すの?」
「えっと……他の人に聞かれたくないから……ボクの部屋まで、来てくれる?」
「…わかった。」
沙恵ちゃんの部屋か……よく考えればしばらくいってないな……恥ずかしいっていうのが理由だったけど。
帰り道でも、沙恵ちゃんは焦ったような顔をして僕の前を歩いていく。二人の間に会話はいっさい無い。……なんだかいつもと違う。間が持たない。
なんで沙恵ちゃんは話しかけてこないんだろう?いつもみたいに今日あったこととか……昨日のテレビの事とか……なんでもいい、沙恵ちゃんと話したい。
今日ずっとまともに話してないだけで、心の中のモヤモヤが急激に膨れ上がっていく、もう……今の僕に沙恵ちゃんが必要不可欠となっているんだ
……たとえストーカーのことで落ち込んでも、沙恵ちゃんが居たおかげでやってこれたんだ。
もしかしたら……そのストーカーの事がばれて……もう近付くな……とか…ああ…だとしたら…
そんな事を考えたせいか、目の前が真っ暗になり、クラクラしてきた。いやだ……沙恵ちゃんだけは失いたくない……
不安に心が押し潰されそうな状態で、僕は沙恵ちゃんの家にあがり、部屋まで案内される。
「そ、それじゃ、適当なところに座って。」
言われたとおり、テーブルの前にある座布団の上に座る。沙恵ちゃんも、僕と向かい合うように座った。
「あの……沙恵ちゃん…話って……なに?」
「う、うん……えっと、あはは……」
歯切れの悪い笑い声を出し、気まずそうに目をそらす。ここは……沙恵ちゃんが話し始めるまで待とう。
沙恵ちゃんは何度か深呼吸を繰り返したあと、覚悟を決めたように話だす。
「あのさ……海斗……今日一日、私達あんまり話さなかったじゃない?学校で…」
「う、うん。」
「それに、ボクも他の男子とよく喋ってたじゃん?」
「うん……」
「か、海斗はさ、今日ボク達がこんな状態でいたのを……その……どう思った……かな?」
さっきまで考えていたことを読まれていたかのような質問され、内心物凄く驚いている。
「えっと……」
「………」
沙恵ちゃんは真剣な目で僕を見て、反らすことはない。これは……僕も真面目に答えるべきだな……
「うん…正直、モヤモヤしてた。沙恵ちゃんが、他の人と仲良くしてて……僕が相手にされなかったのが。
でも、それを口に出したら……なんか、嫌な男みたいだからさ……黙ってたけど……沙恵ちゃんにそう聞かれるなら、今言ったことが本心だよ。」
それを聞くと沙恵ちゃんは、なにやら俯いたまま体を震わしている。
「……った…」
「え?…」
「よか…った…よぉ……」
気付けば沙恵ちゃんの目からは涙が出ていた……それが何の涙なのか理解できなかった。
「さ、沙恵…ちゃん…」
今までたまっていた不安がいっきに爆発し、沙恵ちゃんを抱き締めたくなる。
「だって……だ、ってね……最近……海斗、ボクといる時間が少なくて……学校だって、行く時は一緒でも……帰りは……ボクの部活待ってくれないようになったし……」
それは、ストーカーの行動が危険を増したからだ。暗くなった校門で、一人待つのは危なかった。
「……それで…それで、一人で帰るのも…うぅ…すごく寂しくて…ひっく…気がついたら…知らない間に…ぶ、部活の…先輩と仲良くなってて……」
ああ、確かに。秋乃葉先輩とは最近になって急激に近付いたような気がする。
「い、妹さんとも……スン……急に……ひっく……兄妹以上に……仲良くなって……ぼ、ボク……すごく……うぅ……すごく不安だったんだよ……」
ああ、僕はなんてことを……
沙恵ちゃんをストーカーから遠ざけようとしたのは、それだけ沙恵ちゃんが大切だったからじゃないか。妹の麻理より、ストーカーから守るのが簡単だと考えていた……
でも、そのせいで沙恵ちゃんがこんなにも悲しんでるじゃないか。僕がしたかったのはこんなことじゃなかった……笑って欲しかったんだ……
「……ボク、嫌な娘だよね……ちょっと海斗と離れただけで、こんなに不安になって……海斗と一緒にいる女の子を、うらやましく思ってた。」
僕が悪いのに、沙恵ちゃんが悪く思う必要なんてない……
「だ、だから……ボク…決めたんだ……こんな思い、二度としたくないから……海斗に…は……ボクとずっと一緒にいてもらいたい……」
もう沙恵ちゃんの目からは涙が止まり、声もしっかりしていた。そして、一度姿勢を直すと、また僕の目を真っ直ぐ見た……
「正直にいいます……ボク……ううん、私は、幼馴染みではなく、一人の女の子として海斗が好きです……だ、大好きです!だ、だから、恋人として私と付き合ってください!もう……幼馴染みの関係はいやだから……海斗を…愛しているから…」
……薄々気付いてはいたけど……やっぱり直接言われると少し戸惑う。
「…ほんとに僕なんかでいいの?」
「うん!か、海斗じゃなきゃやだっ!今までも……これからも、海斗だけが好きだから……」
「…うん、ありがとう……うれしいよ。」
そう言って沙恵ちゃんを抱き締める。ああ、よく考えればこうやって沙恵ちゃんと抱き合うなんて初めてかもしれない。近すぎて遠かった。
そんな沙恵ちゃんにやっと触れる事ができた。
「うぅ…あぁ…か、かいとぉ…うれしいよ。……私も……うれしいよぉ。……うぐ……ひっく…」
また僕の胸の中で泣き始める沙恵ちゃん。いつもとは違う。こんなにも小さかったのかな、沙恵ちゃんの体……
「いい?浮気したら許さないんだからね?私以外の女の子て話したりするのは必要最低限にすること!わかった?」
「うーん…む、難しいなぁ。家には麻理もいるし…」
「……そろそろ麻理ちゃんも兄離れが必要だよ。…いつかは別れるんだから。」
「うーん…そうだね……」
麻理とはストーカー撃退同盟を組んだばかりなんだけどなぁ……
〜〜♪
くそっ、またこいつか。こうタイミングよくメールが来るもんだ。……沙恵ちゃんの部屋も僕と同じでカーテンが開いてると外から見えやすいのか……
じゃああいつはまたこの部屋を覗き見てるのか?………だったら、彼女には諦めてもらうような光景を見てもらおう。
「沙恵ちゃん。」
「え、え?」
「僕は沙恵ちゃんが大好きだ。愛してる。……だから、沙恵ちゃんを抱きたい。…いいかい?」
沙恵ちゃんは驚いたような顔をしたが、一息置いて……
「うん……いいよ…んぅ…」
同意の返事として、キスをしてきた
・
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〜〜♪♪〜〜♪♪♪
『や、やめようよ、ね?海斗君。そんなことしたら、私、君を殺さなくちゃいけなくなるよ?鬼ごっこ終わっちゃうよ?
ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ!やめてよ!やめてってば!!!ああ、もう!!!!嫌!!!本当に殺すからね!!君も!!その女め殺すからね!?』
動揺ストーカー可愛いよストーカー(*´Д`)ハァハァ
誤字してて萌えw
鬼は未来日記のセカンドを彷彿とさせる
____
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/ '''''' '''''' \
/ (●) (●) \
| (__人__) |
\ ` ⌒´ /
_____________
|__/⌒i__________/|
| '`-イ ./⌒ 三⌒\ | おやすみユッキー・・・・
| ヽ ノ /( ●)三(●)\ |
| ,| /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
____
/ノ ヽ、_\
/( ○)}liil{(○)\
/ (__人__) \
| ヽ |!!il|!|!l| / |
\ |ェェェェ| /
>>296 286ではないがスレが止まってるので・・・
小梅ちゃんのキャラクターとして考えたコマンというキャラクターのプロフィールを作るコーナで
「コマンははじめ小梅をからかってやろうと思っただけだった。
しかし一度火がついた誠様(小梅が思いを寄せる男性)への思いが消えることはなく
このままではいけない、このままではいけないと思いつつ、ずるずると誠様と情事を重ねるコマン
ある日の夜、密会先のホテルのドアがけったたましく鳴った
強引に開けられたドアの向こうに立っていたのは包丁を片手に息を切らした小梅
「あんたはそうやって私から全部奪っていく!返せ!誠様を帰して!」
そういうと小梅は誠様を返せ、誠様を帰せ!と叫びながら小梅は包丁を振り上げながら突進していく
もみ合いになる小梅とコマン。誠様も必死に二人に割り込もうとするが気が動転している小梅は決して包丁を離そうとはしない
そして、錯乱した小梅がついに包丁を振り下ろした
ドスッ
次の瞬間コマンが見たものは腹からぽたぽたと赤い血を流す誠様の姿だった
誠様の名を呼び続けるコマン、金切り声を上げ鳴き続ける小梅
そんな中で苦痛に顔をゆがめる誠様が最後に、最後の力を振り絞って見せた笑顔が
どちらに向けられたものなのか、誰にも、分かりません・・・
誠様が涼ちゃんっとかユウキっぽい(*´д`*)
あげてやる
いたり先輩分が足りなくなってきたな。
俺は有華分が足りない。激しく足りない
俺は山本君分が足りねぇ・・・
青木分と松岡分が枯渇している俺に比べれば
俺はリボンの剣士の部長さん分が欲しい
スレが止まってる・・・くやしい・・・ビクビク
こういう時こそ過去の作品を読み返すとまた新鮮な良さがある
でも個人的にたぬきなべがあんなにもおいしい所で停止しているのが切なすぎる……
あと俺に変な属性を付けたまま止まってしまったしゅらばとるも今だに待ち続けて餓死しそうだ
オイラは二条先輩が・・・・
早く先輩ください・・・・喉が渇いて死にそう
喉が乾いたなら喉そのものを千切ってしまえばいいじゃない
「んんっ……」
ついばむようなキスからディープキスへ。経験は無いけどこんな感じで大丈夫だろうか。ずっと沙恵ちゃんの唇を貪っていると……
「うーっ!んん!」
急に暴れ出し、僕の背中をバンバン叩き出す。僕は驚いて唇を離した。
「ふぅ……ど、どうしたの?沙恵ちゃん……こういうの嫌だった?」
「はぁ、はぁ、はぁ……う、ううん…ぷあ……い、いきがれきなひゃった……」
舌が回って無い。うん、うまくいったってことかな。
「沙恵ちゃん、鼻で息するんだよ、こういうときは。」
「そう…なの?……詳しいね。」
「……僕も男だからね。そういう知識は覚えるよ。」
「むぅ……えっち。」
そんなことを言いながら、力が入らないかのようにぐったりし、僕に支えられるようにしている。その顔は赤く上気していて、そのほうがとてもえっちだ。
「沙恵ちゃん……」
「え?…わぷっ!」
我慢できなくて、再びキスを重ねる。
「んっ…んふぅ……ちゅぅ……」
携帯が五月蠅いぐらいなっているが、それは動揺している証拠。キスをしたまま沙恵ちゃんの胸に手を添える。
「んぷっ……やぁ…胸……」
「沙恵ちゃん…かわいいよ。」
今までそんなこと思った事無かったのに、自分の気持ちに気付くと、沙恵ちゃんがかわいくてしかたない。
「ね、ねえ……海斗?」
「ん?なに?」
キスをやめ、服を脱がしていると沙恵ちゃんが聞いてくる。
「うん……自分でこんなこと言うのも変だけど……私なんかで、いいの?」
「………」
「私なんかより、かわいい娘いっぱいいるし……それに、海斗、最近秋乃葉先輩とも仲が良さそうだから……綺麗な先輩のほうが良いって、ならない?」
「…はは、僕には沙恵ちゃんしか好きになれる人はいないよ。」
そういうと、沙恵ちゃんは顔を真っ赤にして俯く。……というか、沙恵ちゃんは気付いてないのかな?
沙恵ちゃんだって相当かわいい部類になる。お世辞にも秋乃葉先輩以上…とはいえないが、おそらく僕達の学年では一番だろう。
うん、僕って果報者かも。
「ほんとに?ほんとに秋乃葉先輩に靡いたりしない?」
「はぁ……もしそうなるなら、とっくに先輩に惚れてて、沙恵ちゃんのことを好きだなんて言わないよ。」
不安そうな沙恵ちゃんを、何度も落ち着かせる。沙恵ちゃん、普段は強気だけど、こういうときは弱気なんだなあ。
「それに……先輩は……」
先輩は…アレ…だしね。
「先輩…は?」
僕の言葉に沙恵ちゃんが不思議がる。
「ん、なんでもない。」
「ひぁぁ!?」
誤魔化すように沙恵ちゃんの秘部を、下着の上から触る。突然の事に沙恵ちゃんはびっくりしたねか、腰を抜かすようにへたりこむ。
「すご…い……なに?今の……気持ちいい……」
「…沙恵ちゃん、自分でこういうことしたことないの?」
「あ、ある…けど……全然違う……やっぱり、好きな人の指だと違うのかな?」
「はは、かもね。」
そう言われるとうれしいものがある。沙恵ちゃんを起こし、窓の縁に座らせる。今度は下着を脱がしていくと……
「っぅ〜〜!」
恥ずかしいのか、沙恵ちゃんは体を震わしながら、声にならない悲鳴をあげる。
「大丈夫だよ。」
沙恵ちゃんに声を掛けながら下着を脱がすと……そこにはイヤらしいくも綺麗な糸が、下着と沙恵ちゃんのアソコで繋がっていた。初めて見るけど…綺麗だな。
「…沙恵ちゃんのここ、きれいだよ。」
「やめ…てよぉ……言わないで…」
そう言われてもなぁ。ほんとにきれいなんだし。
沙恵ちゃんのそこは、十分に濡れそぼっていた。
「沙恵ちゃん……すごい濡れてるよ。キスだけで感じちゃった?」
「か、かいとのいじわる〜。なんだか……いつもの海斗とちがうよぉ……こんなにリードされるなんて……」
「あはは…こういうときぐらいはね……うん、これならもう入れても大丈夫かな。沙恵ちゃん、ちょっと…」
そう言って沙恵ちゃんの体を動かし、窓に張り付かせるような体制にする。いわゆるバック。
「冷たいかもしれないけど、ごめんね?」
「う、うん…それは大丈夫だけど……カーテン開いてるから、外から見られちゃう……」
「うん……見せるんだよ。沙恵のえっちな姿をさ。」
「え、い、いやぁ、恥ずかしい…」
嫌とは言うものの、抵抗しないあたり、本当に嫌なわけじゃなさそうだな。
僕もズボンのチャックを開け、限界まで固くなったペニスを沙恵ちゃんのアソコにあてがう。
「いくよ…」
「う、うん……優しくね、海斗…」
ズズズッ
「んんっ…きゃぅっ!」
十分に濡れていたためか、最初はスムーズに入るが、途中で壁のようなものに当たる。これが処女膜ってやつかな?
「このまま一気にいくよ……」
ズッ!
「うあぁぁ!いたぁい!」
ぐっと膣がしまる。僕のにも急激に快感が加わる。
「ご、めん……止まらないよ……」
「う、ん……はん…大丈夫だから…続けて……あぅ!」
罪悪感を感じながらも、何度も沙恵ちゃんを突く。
「はぁ…うぅ…あぅ…んっ!」
沙恵ちゃんも慣れてきたのか、声が甘くなってきた。
「沙恵ちゃんっ!僕…もう……やば…」
「うん……ひぁ…いい、よお……だして……中で……だしていいよ…」
「くっぅ!」
ドクン!
「あっ、ひぁ、ふぁぁぁぁ!んぅ!……」
「…はぁ、はぁ…」
余りの快感に、体が動かない。沙恵ちゃんの中の暖かさに浸ったままでいる。これは…やばい、気持ちよすぎた。
「さ、沙恵ちゃん、大丈夫?」
「…うん、大丈夫……ふふ。もう、心配しすぎだよ……あ…」
ゴポ
出したばかりの精子が、血と混じってピンク色になってあふれてきた。
「好きだよ、沙恵ちゃん。」
「うん…私も…」
結局あれから互いに疲れ果てて眠ってしまい、起きたら夜になっていた。
「じゃあ、また明日ね。」
「うん…ばいばい。…ちゅ」
いつもとは少し違う別れ方。幸せで胸が一杯になったまま帰宅する。
「…ただいま〜…」
そっと玄関から入る。少し遅くなっちゃったから麻理のやつ怒ってるかなぁ。……沙恵ちゃんとのこと、教えた方がいいのかな?
「麻理、ただい……ま…」
……台所に居た麻理は…僕の幸せをぶち壊すのに十分すぎた……
「麻理……麻理!」
そこには、脇腹に包丁の突き刺さった麻理が倒れていた。自分でやったのか?いや…そんなはずはない!だとすると……
〜〜〜♪
もう何度も聞き慣れた着信音。だけど……今回は違う。怒りとも悲しみともいえない、曖昧な感情のままメールをみる……送信者は…アイツだ…
・
・
・
・
・
・
・
・
『もう、海斗君がいけないんだからね?私の言うことも聞かないであんな雌とえっちしちゃったんだから。私は優しいからね、これが最後通告だよV(^-^)V
次は、海斗君の番だよ♪次こそはつかまえてみせるからね!』
。
〉
○ノ イヤッホォォ!
<ヽ |
i!i/, |i!ii ガタン
 ̄ ̄ ̄ ̄
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
(*´Д`)/ヽァ/ヽァ
(((((((( ;゚Д゚))))))))ガクガクブルブルガタガタブルブル
くそっ俺の麻理をよくも…許せねぇ
でも怖いお(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
317 :
王大人:2006/09/07(木) 16:59:43 ID:Dz6ZNjQU
麻里…死亡確認!
(((((((( ;゚Д゚))))))))KOEEEEEEEEEEEEEEEY!!!!
>317
良かった、助かった
まとめ、前スレを読んでて思ったんだけど、
◆pmLYRh7rmUさんはゼノギアス好きだったりするのかな?
人名や画家の話を見ていると、偶々とも思えないんだが、やはり偶然なのだろうか。
>>317 麻里「ふふん、実はあの時の怪我は自作自演で(ry」
こんなこともあろうかと
>>313 おいおいもはや犯罪ですよ?
警察にしょっぴかれて一件落着
嫉妬パワーは国家権力さえも意に反さないのさ、そこにしびれるあこがれるぅ!
それにストーカーの時点で既に(ry
×ストーカー
○一途な純愛
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル怖いよー
続きマダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
チンチンだなんて恥ずかしい
チンチンみてマンマンぱっくり
なんか今日は寂しいね・・・
そんな日もあるさ・・・
恐らく、今日は死人が出る
そういう前兆みたいなのを感じないか?
嵐の前の静けさというやつか……wktkしてきたぜ!
鬼は紗江ちゃんと確信したよ(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
所詮修羅場SSスレなど神がいなければこの程度か……
何よ!あなたが修羅場SSスレ君の何を知ってるていうの?何も知らないくせに・・・・・・、勝手なこと言わないで!!
>>334 この泥棒猫!!貴方がこのスレの神を誑かしたのね…!!
返して!!神を返してよッ!!
神が居ないとダメなの…!!神が居ないと生きていけないの!!
お願い…神に逢いたいよ…神……神…
>>336 神と呼ばれたって何かができる訳じゃない。
全知でもなければ全能でもない、
全てを守れる訳でもない、全てを救える訳じゃない。
それでも……君の笑顔だけは守りたいと誓った。
とんでもねぇ
わたしゃ、神様だよ
何よっ!どうして私がアンタなんかに慰められなきゃなんないのよ!!
っていうかアンタ誰よ?!私を幸せにしたいって言うならSSの一つでも投下してみなさいよ?
……出来ないんでしょ?そんな上っ面だけの言葉なんて要らないのよ!!
私を幸せにしてくれるのは神様だけ…神様だけは私の心を無敵な嫉妬と素敵な修羅場で満たしてくれるの……
私は神様が好き、愛してるの!!神様が投下してくれるなら私は何だってするわ!!
だから、お願いだから…見捨てないでください…
付き合いきれないんだよ・・・・これからはラブ米路線で逝くから・・・・
341 :
sage:2006/09/08(金) 12:32:50 ID:Ufaa00PA
神が17い!!
私の神を返してよ!
17スレが監禁したから・・・
神なら今私の隣で寝てるわよ…ウフフ
・・・・・神ちゃん。どうしてそんなヒトと一緒にいるの?
ウソだよね?いつもみたいにわたしをびっくりさせて遊んでるんだよね?
でも・・・・冗談もあんまり酷すぎると、少し面白くない・・・よ?
彼はね、あなたと一緒にいるのがつらいんだって
殴られたり…
だから私のトコロに来たんだって♪
安心して これからはずっと彼は私といるから‥一生ね
投下しますよ
「明日?」
パプリカタルトを口に運びながら尋ねると、青海は真剣な表情で頷いた。記憶を掘り返
して、明日の予定は何があったかなと考えるが特に予定はない。強いて言うのならば中間
テストがもうすぐ来るので勉強しようと思っていたのだが、まだ若干の余裕もあるので、
明日一日を潰しても問題ない。
「多分大丈夫だと思うけど、どうしたのさ急に」
「いや、珍しく空いたんでな」
「本当に珍しいね。じゃあ遊びにでも行こうか」
言いたいことが伝わったのが嬉しかったのか、青海は満面の笑みを浮かべた。そして端
から見ている僕が心配になる程に勢い良く首を上下に振る。
青海は基本的に土日は忙しいらしく、その度にお嬢様は大変だなと思っている。そんな
青海の苦労は推して測るべし、たまの休日には心の底から楽しんでほしいと思う。こんな
僕の一言でこれだけ嬉しがってもらえるのなら、いくらでも言ってあげたいと思う。
随分と興奮していたせいなのか、青海は猫舌なのに熱い珈琲を大きく口に含み、辛そう
な表情で吹き出しながら、
「待ち合わせはどうしようか?」
「いつでもどこでも良いよ?」
青海の口の周りを拭きながら僕は答える。こうしているといつもの気品や聡明さは感じ
られないけれども、こんな子供っぽい部分や少し抜けているところも魅力的に見えてくる
から不思議なものだ。頭の悪い恋人の思考だと言われれば反論できないけれど、それでも
こうしていたいと思ってしまう。
「じゃあ、十時に駅の四番ホームで」
「え? あ、待ち合わせか」
青海の顔を眺めるのに夢中で危うく聞き逃すところだった。僕から訊いておいて、相手
の答えを聞かないなんて失礼も良いところだ。
「虎徹君、ちゃんと聞いてるか?」
案の定、青海の表情が暗いものになった。情緒不安定という訳でもないだろうけれど、
瞬間的に考え込んでしまう癖があるのか青海の感情の移り変わりは結構激しい。良い表現
をすれば感情豊かなその性格は、付き合い始めてから知ったものだ。僕自身もそうだった
けれども、こうなる以前は冷静沈着で理性的な部分しか知らない人が多いので青海がこう
した性格の持ち主だと言うと驚かれる。
他にも意外な部分は多い。いつも毅然としているから殆んどの人は知らないが、
「もしかして虎徹君は、わたしのような女と居るのは嫌だろうか?」
こんな弱い部分が幾つもある。
「そんなこと無いさ」
「しかし、二周間も経つのにキスもしていないのは、わたしの魅力が」
「違う」
言葉を途切れさせるように、否定をした。自分で口に出せば、より実感を持って考え込
んでしまうのが人間だ。それにあまり酷いことは言いたくないが、これは青海の悪い癖の
一つで、極端な方向へと答えを出そうとしてしまう。今回のような場合は尚更だ。
だから安心させるように笑みを作り、
「焦らなくても良い」
一言言うと漸く落ち着いたらしく、こちらを見つめてきた。
他の恋人達はどのくらいの時間でそうしたりするのかは分からないし、平均と比べても
あまり意味がないと思う。それこそ人それぞれで、本人の好きな速度で進めていけば良い
と僕は思っている。どんな理由かは分からないけれども、無理に焦って駄目にしてしまう
よりかはずっと良い。
ただ、不安にさせていたかもしれないと思い、
「ちょっと、目を閉じて」
こちらを向いたまま、言われた通りに青海は瞼を下ろした。
数秒。
それだけの時間を置いて覚悟を決めた。我ながら随分と大胆な行動をしているなと思い
ながら目を閉じ、青海の唇に自分のそれを重ねた。驚いたのか一瞬唇が離れたが、しかし
確認するように今度は青海の方から重ねてくる。ゆっくりとした速度でしてきた青海は、
どんな表情なのだろうか。そんな疑問も沸いたが、なんとなく目を開く気にはなれずに、
相手が離すまで応え続けた。
どれだけの時間が経ったのか、青海の唇が離れるのを確認すると目を開いた。視界に入
ってくるのは、耳までも赤く染めた青海の顔。浮かんでいる表情は照れと嬉しさが混じっ
たもので、こちらを直視でないのか床を向いていた。普段は過激なことを口にするのに、
実際にしてみるのとでは違うらしい。
「これは、その、凄いな」
青海は幾らか時間を置いてから、呟くように言った。勿論視線は下に向けられたままだ
が、その気持ちもよく分かる。今まで何度も、それこそここ二周間は毎日姉さんやサクラ
ともしていたけれども、それとは全く別物のように思えた。姉さんやサクラとしていたよ
うに舌を絡めた訳でもないのに、鼓動が跳ね上がる。情欲を高めるそれとは方向性が違う
それは、今までに体験したことのない感覚だった。
互いに、言葉が出ない。
僕は妙な沈黙を崩すように笑みを作り、
「まさか青海は、これで子供が出来るって思ってないよね?」
言ってから、後悔した。こんな時間こんな雰囲気でこんな話題を出したら、気不味いど
ころの話じゃない。余計に場の空気が悪くなってしまう。
恐る恐る青海の表情を見てみれば、まだ少しは赤いものの幾らか落ち着きを取り戻して
いた。顔を上げて僕の顔を覗き込みながら、
「大丈夫だ、いつも正しいやり方を脳内でシミュレートしている。そう、今も!!」
冗談を言ってくれるだけありがたい。発言内容はいつも通りの直接的なもので、苦笑を
浮かべてしまうようなものだけれど無音よりは良い。実際に考えてはいないだろうけれど、
変に生々しく聞こえたのも僕が姉さんやサクラとのそういう行為に慣れすぎたせいだろう。
自分に言い聞かせるように心の中で呟き、自然に反れていた視線を青海に向き直す。
「明日、楽しみだね」
自分でもかなり強引だと思う流れで、無理矢理に話を変えた。青海にも気持ちが伝わっ
たのか笑顔で頷き、まだ少し熱いのに珈琲を口に含んだ。
「大丈夫?」
「心配ない。この程度の熱さ、明日のことを考えるだけで吹き飛んでしまう」
熱そうな表情で言いながら、青海は再び口に含む。本当に辛そうだが青海の努力を無駄
にしてしまう気はないので敢えて触れずにおいた。誰にでも苦手なものはあるし、それを
克服しようとする人は素晴らしい。青海はもっと素晴らしい。
「どうした?」
「明日の予定を考えてたんだよ」
熱い珈琲を飲む青海の応援をしていたとは言えずに適当に言った言葉だが、青海は嬉し
そうに笑みを強くした。だが半分は嘘ではない、僕もそれなりに考えていた。
「ありがとう、楽しい日になるだろうな」
「そうだね、一日使えるから普段では出来ないことも出来るし」
「うん。周期が合わなかったのは幸か不幸か」
「ちょっと待ちなさい」
いきなり飛躍した。
驚いて青海の表情を見てみれば、先程と何ら変わりない笑みを浮かべていた。幾ら冗談
だと分かっていても、一瞬本気だと思ってしまった自分が情けない。いや、普段の発言を
省みてみれば本気なのだろうか。ユキさんもそれらしい表情で僕と青海をよく見ているし。
「ところで虎徹君」
悩んでうなだれていると、青海が声をかけてきた。
「さっき、なんとなく気になったんだ」
「ん?」
何だろう。
「キス」
「え? 檸檬の味じゃないのは多分珈琲を飲んでたからですよ?」
思わず声が裏返ってしまった。そんな僕を一瞬不審そうに見ていたが、青海はすぐに顔
を笑みに変えた。おかしそうに笑い声を漏らしながら、
「そんな中学生みたいなことは思わんさ」
一息置くと、顔を赤らめ、
「ただ、初めてだったのは本当だがな」
今回はこれで終わりです
Bルート開始
イヤッッッホォォォォウゥゥゥゥゥゥ!
何だかすごく長いこと待った気がするよ。
ついにキター
投稿のないSSスレなど脆いものだな
他の人もカモーン
青海タン復活!
今度は幸せになってね。・゚・(ノД`)・゚・。
ヤンデレハルヒのサイトにここのURL貼ったの誰だww
ヤンデレなホスト部ハルヒを想像しようとして2秒で挫折した。
キタ━━(´_ゝ( ´∀( ゚Д( ´∀(・∀(゚∀゚)∀`)∀・)Д゚)∀`)_ゝ`)━━━!!!!
青海タソ純情でBルートも期待が持てるぜ!今度こそ虎虎姉妹を打ち破りコテツミンを手に入れるんだ!
さすがにこのスレは過疎してきているな
r、ノVV^ー八
、^':::::::::::::::::::::::^vィ 、ヽ l / ,
l..:.::::::::::::::::::::::::::::イ = =
|.:::::::::::::::::::::::::::::: | ニ= 仙 そ -=
|:r¬‐--─勹:::::| ニ= 道 れ =ニ
|:} __ 、._ `}f'〉n_ =- な. で -=
、、 l | /, , ,ヘ}´`'`` `´` |ノ:::|.| ヽ ニ .ら. も ニ
.ヽ ´´, ,ゝ|、 、, l|ヽ:ヽヽ } ´r : ヽ`
.ヽ し き 仙 ニ. /|{/ :ヽ -=- ./| |.|:::::| | | ´/小ヽ`
= て っ 道 =ニ /:.:.::ヽ、 \二/ :| |.|:::::| | /
ニ く. と な -= ヽ、:.:::::::ヽ、._、 _,ノ/.:::::| | /|
= れ.何 ら -= ヽ、:::::::::\、__/::.z先.:| |' :|
ニ る と =ニ | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.|'夂.:Y′ト、
/, : か ヽ、 | |::::::::::::::::::::::::::::::::::::_土_::| '゛, .\
/ ヽ、 | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.|:半:|.ト、 \
/ / 小 \ r¬|ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| \
こういう時間帯って日によっては怒涛のように投下されたりするんだよな
そう思いながらまたまた更新をクリックしてる俺ガイル
まあゆっくりまったりと待っていようぜ
ガラスの艦隊が言い感じだ
レイチェルは半年前から化けると思ってました
でも新聞には最終回って書いてあったよ
投下します。
「へぇ〜。木場さん、来週誕生日なんだ」
明るさと嫌味っぽさが混じった声で言いながら、新城明日香が、不敵な笑みを浮かべて現れた。
どうして? 部活に行ったのを、ちゃんと確認したのに。
新城さんは、さながら舞台の主役のような堂々とした足取りで、伊星くんの隣まで移動した。
「パーティーやるんだ。いいわね」
「あ、うん……」
計算外だった。まさか、ここで邪魔が入るなんて。
「明日香、部活に行ったんじゃなかったのか?」
伊星くんはベンチに座ったまま、立っている新城さんを見上げて尋ねた。
「ちょっと忘れ物しちゃって、戻ってきた時にちょうど話が聞こえたのよ」
新城さんは何も臆さず、素知らぬ顔で答えた。
違う。私の声は、校舎の中の廊下まで届かない。聞こえるとしたら、中庭に出ていて、かつ、私たちとある程度
近くじゃなきゃいけない。
だから、新城さんは、そろそろ私が仕掛けてくることを読んで、隙をわざと見せていたんだ。
出し抜いてやるつもりが、その裏を掻かれた……!
ぎりっ。
口元は微笑んだままでいるけど、奥歯は強く噛み合わさる。
「人志、パーティーに呼ばれたの?」
「ん? ああ」
「へぇ……」
新城さんは、嫌らしい笑みを浮かべて、肩に担いだ竹刀を下ろした。
喜、怒、哀、楽。どれも含まれているような、不気味な顔。
……この女、ただの剣道馬鹿じゃなかった。私への妨害を、きちんと計算して行っていた。
まさか私が、策略でこの女に遅れるなんて……。
「ねぇ、あたしも行っていいかな」
私に向けたその表情は、男の人なら、九十九パーセントは騙されそうな、いかにもスポーツに精通している人ら
しい、爽やかなものだった。
でもその実、私への明確な敵意、蹴落としてやろうっていう意思がある。
私と近い性質を、この女も持っているんだね……。
「いいわよね?」
あくまでも否定は許さないらしい。新城さんは念を押してきた。
拙いね。私としては伊星くんだけを呼びたいけど、ここで新城さんだけ断ったら不自然だ。でも二人とも招待し
たら、何が起こるか判らないよ。
「一寸待ったぁ!」
そこに割って入ってきたのは、
「そうはブン屋が見逃しませんよ!」
カメラを片手に、別のほうの腕を水平に大きく伸ばしたポーズの屋聞くん。
いいタイミングだね。
「何やら面白そうな話ではありませんか。この屋聞も、参加させて頂きたいですね」
言い終わった途端、伊星くんと新城さんの顔つきが変わった。
伊星くんは半ば呆れた感じ。新城さんは今にも斬りかかりそうな感じ。
「あんたは邪魔よ。消えなさい」
凄い速さで、竹刀の先が屋聞くんの鼻先に向けられた。屋聞くんの身体が後ろに反れる。
さっきの明るい笑顔はなんだったんだろうね。新城さん? まだまだ、演技は下手だね。
「明日香、止せ」
そこに伊星くんが腕を伸ばし、竹刀の真ん中を掴んだ。
「う……」
それだけで、新城さんの殺気は一気に弱くなる。
良く躾けられてるね。家畜みたい。
「木場先輩。自分も加わって宜しいでしょうか」
屋聞くんは、私の前に来て、軽くお辞儀した。
「うん、いいよ。でも、家出の写真撮影はやめてね」
「心得ました」
はっきり言って、苦肉の策。屋聞くんを加えることで、ある程度の緩衝材的役割になると思う。
「え、ちょっ……」
「私が決めていいでしょ〜?」
「……」
新城さんが割り込もうとしても、今なら殺気が弱いから、私でも何とかなる。
予定より二人も多くなっちゃったけど、これで何とかするしかない。
チャンスが一転、ピンチになっちゃったよ……。
これも全部、あの女のせい。あの女が、伊星くんの意思まで縛り付けているから。
伊星くんの未来は、私の求めるものは、それを解いた先にある。
私は負けない。
新城さんが始めから有利だろうと、私に不利な要素があろうと。
結局三人とも招待することに決まって、伊星くんは帰り、新城さんは部活にいった。
「危ないところでしたね」
残った屋聞くんは、やっとといった感じで肩の力を抜き、息を大きく吐いた。
かく言う私も、ベンチにしばらく座って一息つきたいくらい、疲労感がある。
「ほんと。危なかったよ」
「当日は、自分が新城先輩を牽制します」
「うん……。じゃ、お願い」
「はい。では、ご武運を」
その屋聞くんの言葉は、皮肉や冗談ではなかった。
当日は、それこそ『戦い』と呼ぶのが相応しい日になるのは予想できるから。
* * * * *
人志に許してもらえたのは、すごく嬉しかった。……んだけど、新しい疑問が出てくる。
どうして、人志はあたしを許したのか。
あたしは暴力を振るった。虐めるヤツらと、同じことをした。
普通だったら、許すはずがないのよ。
そこを許したってことは、普通じゃなかったから。
他の連中になくて、あたしにあるものが、その違いを分けている。
それは――――。
……。
やだ、顔が熱くなってきちゃった。
心の中でも、言うのは恥ずかしい。枕を強く抱きしめる。
――愛。愛が、あったから。
人志が、あたしを、愛しているから。
殴られても許せるくらい、あたしを好きだから。駄菓子屋でのことが、その証明。
嬉しい。何があっても離れない絆が、あたしと人志の間にある。
あたしたちの心は、絶対に離れない。自身を持って言えるわ。
たとえ邪魔が入ったって、そんなもの全部跳ね飛ばして、人志と、一緒になる。
恋人になって、結婚して、そしたら、
そしたら――――。
「……んっ」
こんな、ことだって、するの。
人志と、からだを、ひとつに、するのよ。
「っ……んぅ……」
大事なところを、こんな風に、こすって……。
上も、まくり上げられて……この下着、どうかな……。
「あ、はっ……」
胸、木場春奈ほどじゃないけど、あたしだってそれなりにあるの。
きっとこの大きさが、人志の一番好きなサイズよ。
「んんっ……」
自分で言うのもなんだけど、手触り、柔らかさは最高。
指先だけでそっとなでると、ぞくぞくする。
手でわしづかみにして、こねるように揉むと、とろーんとする。
どっちも、気持ちいいよ、人志ぃ……。
あそこをこするのを、上下から円を描くように変える。
「あ、んっ、うぅん……」
に、にく? ……が、別のほうに引っ張られたりして、刺激が、気持ちよさが増してくる。
指先に、湿った感触が伝わってくる。
左手で弄っていたおっぱいの先も、すっかり固くなっていた。
濡らして、乳首固くして……あたし、感じてる……。
パンツも脱いで、直接触ると、さらに強いのがきた。
まだ、もっと気持ちいい所がある……。
「あっ、あ、あんっ、ああっ!!」
指が止まらない、止められない、濡れたところが、ねちゃねちゃ音を立ててる。
いいよぉ……人志、もっとして……。
「はぁ、はぁ……」
息も、心臓も、剣道のときより激しい。
うん、わかってる。する、のよね……。
仰向けになって、脚を広げて、枕を胸の上に乗せる。
こんな風に、人志が、あたしの上に覆いかぶさって……。
「ん……むぅ……」
人差し指を、付け根まで口に入れて、吸って、舌でなめる。
人志のあれは、こんな指一本よりも、ずっと大きいんだろうなあ……。
口から出すと、垂れてくるくらい唾液が付いていた。
これ、を、あたしの、中に。
「ん……んんっ!!」
痛い。ちょっとだけなのに、身体の外からじゃなくて、内側から引き裂かれるように痛む。
大丈夫よね? 指一本だったら、処女でいられるわよね?
少しずつ、ゆっくり出し入れする。
「っ……あっ……うぅっ……。」
やっぱり痛い。これで気持ち良くは、まだなれない。
でも――。
親指で、入れるところの少し上、一番感じるっていう部分を……。
「……っ、ひっ!」
うん、ここ、クリトリス。
一発で、頭に白ペンキがぶちまけられるような、強烈なのがきた。
白いの、ぶちまけ……。
人志のを、あたしに……。
「あっ、ひあぁっ!!」
指が、もっと早く動く。
人志にだって、エッチなことしたい欲望が、少しくらいはあるはず。
その欲望、あたしにしてっ!
あたしに、全部、受け止めさせてっ!!
「あ、あんっ、ひとしぃっ! ああんっ!」
してるのっ! 人志と、エッチしてるのっ!
刺激が強すぎて、あたしは人志にしがみつくことしか出来ないけど、そんなあたしを、いっぱい愛してくれるの
っ!
「ひぃっ……ひと、しっ……ひっくっ……いくっ……!」
痛いとか、気持ちいいとか、そんなんじゃないの。頭の中真っ白になっても、人志に染められて、
それが一番嬉しくて……。
「すきっ! だいすきっ!! は、あ、あ……あああっ!!」
そうなることを想いながら、一番高いところまで、登りつめた……。
少し、気を失ってたかもしれない。
呼吸もようやく落ち着いて、冷静になってみれば、あたしのベッドは、すごいことになっていた。
抱きしめていた枕と、ベッドのシーツは汗でべったりしてるし、途中で脱ぎ捨てた下着は濡れて、洗わないまま
乾いて、変なにおいが付いてるかも。
つい興奮して、一人でしちゃったけど、将来、これは絶対二人になる。
木場春奈が、また何かずる賢い手を打ってきたけど、あたしはこれを破って見せる。
誕生日が何よ。あんたの思い通りになんかさせないわ。
友達引き連れて、誕生日無視して騒いでやるから、覚悟しときなさいよ。木・場・さん?
(31話に続く)
明日香たんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
「あら?」
温泉から上がった私が部屋に戻るとそこには――。
「クリス。 若しかして私のこと待ってたの?」
そう、部屋の扉の前にはクリスがいたのだ。
私が声を掛けるとクリスは気まずそうに口を開く。
「その……。 さっきは、ゴメンナサイ……」
――嬉しかった。 ほんの少しかもしれないけど心を開いてくれたんだと思えて。
「ううん。 良いのよ、気にしないで。 あ、そうだ。 それより明日武器屋に行きましょ」
「武器屋?」
「うん。 さっきので私アンタのグレイブの柄駄目にしちゃったじゃない。 だから弁償させて?」
「い、いいですよ。 悪いのはボクなんですから……」
「遠慮しないの。 頼りにしてるんだから、ね? じゃぁまた明日ね。 オヤスミ、クリス」
そして翌日。 昨晩話してた通りに私達は村の武器屋にきてた。
「お客さん。 一体どんな相手とやりあったんです?」
声を上げたのは武器屋の親父さん。
手にとって見てるのは昨日私が真っ二つにしちゃったグレイブの柄。
クリスのギガンティスグレイブの柄は鍛え抜かれた鋼で出来てる。
生半可な剣やモンスターの爪牙なら防ぐのは勿論、相手のほうが刃こぼれしてしまうほど。
それが綺麗に真っ二つ。 まるで鏡のように滑らかな断面。
クリスに悪い事しちゃったと思いつつも改めてアルヴィオンファングの切れ味に畏れ入る。
「まぁでもコレなら柄さえ取り替えれば大丈夫ですよ。チョット待っててください。
たしかこのサイズの鋼鉄製の柄は在庫があったはず……」
そう言って親父さんは同じぐらいの太さと長さの鋼鉄の柄を取り出し手早く付け替えてくれた。
「はい、済みましたよ。 で、こんなゴツイ武器を扱うのは一体どこの豪傑で?
ってまさかアンタですかい?」
親父さんはクリスを見つめながら口を開く。
確かにギガンティスグレイブの重さは大人の戦士でも扱いが困難そうなほど。
更に言えばクリスの体は戦士としては小柄な方。 親父さんの疑問も尤もな事。
だけど――。
「どう? クリス。 手にとった感じは。 今ココで素振りしてみる? 親父さんイイかしら」
この武器屋の中には購入前に試しに素振りさせてもらえるだけの広いスペースが設けられてた。
「ああ、それは構わんが、でも本当に扱えるのかい」
親父さんから許可を貰い私が目配せするとクリスは黙って頷きグレイブを構えた。
そう。 クリスのギガンティスグレイブの矛先の重さはかなりのもの。
その為、柄にも相当の強度が要求される。
生半可な柄では振り回したとき耐え切れず折れてしまいかねない。
故にそれに見合った強度の鋼鉄製の柄となると重量も相当なもの。
結果総重量も相当なものになるのだが。
そしてグレイブを振り回して見せる。 改めて見るとやはり大したものだ。
其の動きは刃の巨大さもクリスの体の小ささも感じさせぬほどの見事さ。
しかもこれは純粋にクリス自身の筋力だけによるもの。コレにブーストアップの魔法を上乗せすると
クリスはこの巨大な長柄武器をまるで枝葉のように軽々と振り回すのだ。
ウン。 やっぱりクリスのグレイブさばきは何時見ても力強くて頼もしいな。
「イイ感じみたいね」
私が問い掛けるとクリスは頷いてみせる。
「じゃぁ親父さん。 お会計お願いね」
「まいどあり」
そして私達は店を後にした
「ありがとうございます」
武器屋を出たところでクリスはポツリと口を開く。
「良いの良いの。 仲間なんだから、ね。 これからも頼りにしてるわよ。
でも丁度イイのが見つかって良かったわ。まさかこんな村の武器屋で手に入るとはね」
「扱える戦士がいなかったから売れ残ってたってことなんでしょうね」
「あ、なるほど。 でもそう考えるとこんなの扱えるなんてやっぱアンタ凄いわね」
「いえ、それほどでも……。 ボクなんか及びもしない戦士はいくらでもいますよ」
またこのコは謙遜するんだから。
「そう? コレでも私とリオ今まで色んな戦士と組んでみたんだけど
実際アンタの強さに並ぶやつなんかいなかったわよ?」
事実今まで組んだ戦士達で私達に付いて来れたものはいなかった。
「そうですね。 そうした凄腕と言える戦士達は殆ど討ち死にしてますから。
だから正確にはそんな戦士も『居た』といったほうが正確でしょうか。
言うなればボクらは其の次の世代ですから」
「あぁ、なるほど」
クリスの言葉に脳裏に浮かんだのはかってウォドゥスと戦った時の事。
ヤツと戦ったあの場所には無数の戦士の死骸と輪切りにされた甲冑や折れた剣が散乱してた。
確かに私はやつに勝ったとは言えそれは私一人の力じゃない。
この常軌を逸したほどの切れ味を誇る純白の刃とリオの魔法が無ければ決して勝てなかった。
若し私一人だったなら、アルヴィオンファングが無ければ、リオの協力が無ければ。
きっと私もあの死体の仲間入りしてただろう。
つまりクリス以外に強い戦士が居ないんじゃない。
殆ど殺され返り討ちにあって居なくなってしまってたんだと言う事か。
もう少し早く私がこの世界に来ていれば違ってたのかな。
私はクリスと二人で歩きながらそんな事を考えてた。
「どうしたのクリス?」
「どうかしましたか?」
今日は久しぶりにリオの村にやってきてた。
だが入口のところでクリスが立ち止まってしまった。 村に立ち入るのを躊躇らうように。
そしてクリスの表情からリオは何かを感じ取ったかのか私に囁くようにそっと耳打ちしてきた。
『実はクリスはこの村にいた頃村の子供達から虐められてたんです。顔の傷で……』
成る程、クリスのとってココはリオと共に過ごした事のある思い出の場所である反面、
過去の苦い思い出も含んでるわけか。
私はクリスの手を取り口を開く。
「先にリオの家に行ってましょ。 リオも村のヒトへの挨拶とか済んだら直ぐに家に来てね」
<br><br><br><div align="center">・<div align="left"><br><br>
「ん……、んーーーっと」
私はベッドから身を起こし体を伸ばした。
旅の疲れもあってかリオの家に付いてからそのまま眠り込んでしまってた。
外を見れば日も傾き始めている。
「リオー?」
リオを呼んでみるが返事は無い。 未だ帰ってないのかな。
「クリスー。 リオ未だ帰ってきてないの? ――ってクリスも居ないの?」
やっぱり返事は無い。 一人で待っててもしょうがないし探しに行くかなぁ。
そして私は扉を開け外に出た。
「何?」
リオとクリスを探しがてら歩いてた私は思わず声を上げた。
耳に飛び込んできたのは妙な物音。 どうやら村の外れの森の方からのようだ。
音のした方に向かってみれば樹が折れてた。其の折れ方は横から物凄い衝撃を受けたかのような。
そして見渡せば倒れてる木は一本じゃない。 一、二……結構ある。
そしてその中心に立っているのは……クリス?
見ればクリスは拳を振り上げ――。
「ああああぁぁぁぁぁっっ……!!!」
そして一本の樹に向かって拳を打ち付けてた。 何度も何度も。
やがてクリスの拳を受け樹がバキバキと物音を立てへし折れる。
うわぁ……。
クリスの豪力は知っているし多分ブーストアップしてるんだろうけど。
それにしても……って、え?
クリスの顔を見ればそこには怒りとも悲しみともやるせなさとも……そして目には涙が。
視線を顔から移せば拳には……血?
闇雲に樹を殴りすぎ皮が破れ出血して?
いけない、このまま放っておいたらあのコ自分の体が壊れるまで暴れ続けそう。
反射的に私はそう思いクリスに向かってか駆け出した。
「クリス!」
私は後ろからクリスを抱きすくめる。
「うあああぁぁぁ!!」
「落ち着いて! 私がついてるから! 何も怖い事無いから!」
「あああ……! はぁっ、はあっ……」
「どうしたの? 大丈夫?」
「あ……セ、セツナ……さん?」
「大丈夫よ。もう心配ないから……それより手、酷い状態じゃない。ボロボロに皮が敗れ血が出て」
いくらこのコの腕っ節が強いからと言ってもそれでも戦士であって武闘家じゃないんだから。
闇雲に素手で殴ったりすればこんな風に皮だって破れる。
「痛いでしょ? すぐにリオにお願いして回復魔法……」
「い、いいです! こ、こんなの大した事無いから……」
「何言ってるのよ!」
「お願いです! ……リオにいさんに知られたくないんです……」
「分かったわよ……。 じゃぁせめて手当てさせて。 ね?」
そして――。
「大丈夫、痛くない?」
あのあと私はクリスの傷口を洗って綺麗に消毒し、薬を塗って、そして包帯を巻いてあげた。
鍛えてあるだけあって骨とかへのヒビとかの心配は無く、見た目ほど酷くは無さそうだ。
「ゴメンナサイ……心配かけてしまって、手当てまでしてもらって……」
「水臭いこと言わないの。 仲間なんだから、ね。 それより何かあったの?
言いたくなければ言わなくてもいいけど」
「なんで……」
「え?」
「何でコレットが、あんな女がリオにいさんの……」
「コレットに会ったの? 何? あの小娘に何か言われたの?」
私が聞くとクリスは小さく首を振る。
コレットは取り立てて嫌な女と言うわけでは無い。仮にリオが婚約の約束を交わした女なのだから。
とは言え私にとっても虫の好かない相手ではあるけど。
「いえ、特に何か言われたわけじゃ有りません。けど……」
見るとクリスの瞳からはまた涙が滲み始めていた。
「あの女……小さい頃より綺麗になってた。
きっと何の苦労も不自由も知らず大切にされてきたんでしょうね……。
ボクなんかとはまるで正反対の穏やかな人生を送ってきたんでしょうね」
そう。 コレットの家はこの村で一番裕福な商家。
「そうやって成長して年頃の娘になった今ボクなんかの事憶えてるわけも無く……。
そのくせボクを見る視線は幼い頃と全く同じ、脅えた視線……!」
クリスは声を震わせながら続ける。
「何不自由なく恵まれ、きっと今まで望んで手に入らなかったものなんて無いんでしょうね」
コレットの両親にも出会った事もあるが、コレットがいかに大切に育てられてきたのかが伺えた。
実際彼らは娘が望むものは出来うる限り惜しみなく与えてきたのだろう。
「そんな女にあんな眼で見つめられちゃ物凄く惨めじゃないですか……!
何でも欲しいものを手に入れられて、あげくリオにいさんまで……!
イヤだ……! あんな、あんな女がリオにいさんとだなんて……!」
いいながらクリスの肩がふるえはじめ――。
「そんな、そんな事考えて、気が付いたら……」
そしてクリスは私に縋りつき泣き出してしまった。
私はそんなクリスを抱きしめなだめてあげるしか出来なかった。
暫らく後、泣き疲れたクリスは私の膝で寝息を立てていた。
戦闘の時はそれこそ鬼神の如き強さを発揮してくれるこのコだけど、
でも考えてみれば未だ子供なのよね。 時に感情の起伏をコントロールできない程に。
クリスの髪をそっと撫でながら私は其の寝顔を見つめる。
このコの辛さ悔しさ、私は痛いほど分かる。 そして私のこのコに対する親しみがより沸いてきた。
と、同時にコレットに対する嫌悪感が益々強まっていた。
そうよね、コレットなんかにあんな小娘なんかにリオは渡したくないよね……。
リオとコレットを結ぶ繋がり。 それは幼馴染だけじゃない。
裕福なコレットの家は其の資金力で今まで多くの有能な若者に援助をしてきたらしい。
リオもまたそうして目を掛けてもらった若者の一人だ。
言うなればリオにはコレットの親に対する義理が、恩義がある。
そんな立場上コレットと其の親に婚約を申し込まれたのならリオが断われる訳が無い。
だから私は認めてもいないし諦めてもいない。
リオとコレットとの婚約なんて。
「あ、目が覚めた?」
「ボク……あのまま寝ちゃってたんですか? スミマセン……」
「ううん、謝らなくっていいよ。 あと……変な言い方かもしれないけど
クリスが私を頼ってくれてるんだな、って感じがしてチョット嬉しかったかな。
だからね、甘えたかったり愚痴りたかったら遠慮なんかしなくていいのよ」
「じゃ、じゃぁ……」
「うん? 何」
私が問い返すとクリスは口ごもりながらも呟くように声を出す。
「……………………………も良いですか?」
「え、えっと今なんて? よく聞き取れなかったんだけど」
だけど其の声があまりにも小さかったので私は問い返した。
「……姉さんって、呼んでも良いですか?」
其の言葉を聞き私は思わずクリスを抱きしめた。
無性に嬉しかった。 『姉さん』――そんな風に想ってくれるなんて。
思わずコッチまで涙が出そうになる。 そして私はクリスの耳元にそっと囁く。
「ありがとう」
To be continued...
ユリっぽいのもキター!
リボンの騎士は相変わらず面白いですねぇ。
パーティーにも期待大です。
今までは
明日香たん>>木場さん
だった俺
でも今俺は
木場>>明日香たん
だが俺の思い入れはころころ変わるから油断しちゃいけねぇ
これが修羅場の恐ろしいところですよ
クリスは黒くなるのか百合になるのか、はたまたその両方が来るのか
楽しみにしています
俺もいつのまにか明日香タン派から木場タン派になっていたよ
まったく修羅場スレは天国だぜ
前回は名前のご指摘有難うございます。自分の頭の中で
「健史」と「博史」が混じってしまい混乱したまま書いちゃったので……
文子の彼氏は「博史」というで統一します。ここまで書いてるのに申し訳
御座いませんでした。ぶっちゃけ女教師がヒロくんヒロくん連発してるので
それで行こうというだけですが……
管理人さま、申し訳御座いませんがまとめサイトの方も「健史」を「博史」
に名前を変えて下さい。
それでは気を取り直して投下します。
なにこのゆり展開最高すぎるんですけれど♪
第2話「0,5+0,6=1,1ぐらい」
「どっこい……しょっと」
先程まで狂人と間違われてもおかしくない様な言動をしていた文子は、博史にベンチまで
運んでもらい、博史の膝の上に頭を乗せて目を回していた。
所謂膝枕という奴だが、出来れば俺が膝枕されたいな……などと思いつつ、文子のこめかみ
に出来た、まるでマンガみたいなタンコブを優しく撫ででいた
しかし、さっきの文子は一体どうしたっていうんだ?急にぶつぶつ独り言を言ったと思ったら
突然誰もいない後ろを殴ってるし、しまいにはいきなり自分の頭を全力で殴って目を回して
ぶっ倒れるんだもんな。あれは錯乱していたというか……まさか二重人格とか分裂症とか精神病の類?
いやそれはないな。まだ付き合って日は浅いけどそういう素振りは全くといっていいほど無かったし、
別にそんな噂とかも聞かないし。せっかく買い物を楽しみつつデート気分を楽しんでいたのに……。
とにかく目が覚めたら何があったのか聞いてみるか。
「あはははは、うふふふふ、わ〜〜〜い楽しいな〜〜〜」
ここは文子の心の中。そこは
「クレヨンで書いた草原」
「クレヨンで書いた雲」
「クレヨンで書いた渦巻き模様の太陽」
が広がり、その中心を文子がクルクルと踊っていた。
一言で言えば「小学生の絵の中を錯乱した文子が踊っている」。正にそうとしか言えなかった。
そんな風景を冷ややかな視線で見つめる一人の女性がいた。
「こ、これは……もう最悪ね。いい年した女子高生がこの程度のイメージしか出来ないって
ことは精神年齢は……アホらしくて言う気にもならないわ。」
心底呆れた女性は事態の整理を始めた。まず手始めに中央で頭に花を咲かせて
錯乱している文子を目覚めさせることにした。
「何時までアホ踊りしてんのよ!!起きなさい!!」
女性は頭でイメージしたトゲトゲバットを手に、文子のアホ顔めがけてフルスイングした!!
「ぐぼぁ!!!!」
「へ〜、ここではイメージしたことなら何でも出来るんだ。じゃあ……」
女性は自分自身をイメージした。すると今まで朧げだった自分の身体が徐々にはっきりと表れた。
色が付き、髪が生え、体のラインがはっきりと現れ、最後に顔の造形が出来て自分がイメージ
していた生前の姿形が形成された。完成した自分の身体を見渡して
「う〜〜ん、たしかもうちょっと巨乳で指が長かったような気がしたんだけど……。
しょうがない、これで我慢するか。っと忘れていたわ。」
鼻血を噴出して倒れていた文子を女性は叩き起こした。
「ちょっと!!何時までぶっ倒れてるのよ!!早く起きなさい!!」
「う〜〜〜〜ん、はっ!!」
女性の往復ビンタでやっと目が覚めた文子だったが、事態の把握が出来ていなかった。
「え、ちょっと、あ、あれ?一体……」
「はあ……とりあえず説明するけど、ここはあんたの心の中。今はあんた気絶してるから……
そうね、夢の中って言った方が分かり易いか。そして私は幽霊よ」
夢?夢なの?でもそれにしても何なのこのメルヘンワールドは……見てて恥ずかしいわ。
まあ夢はともかく……う〜〜〜ん、目の前にいる幽霊なんてほざいてるコイツの声どっかで
聞いたような……つい最近……
「それじゃ自己紹介するか。私は」
「あーーーーーー!!!思い出した!!!公園でブツクサ言ってた奴だ!!死ね!!」
文子は親の仇を見つけたような目をして左ハイキックを繰り出した!!
迷いのない、殺意丸出しの蹴りだったが、辛うじて女性は手に持っていたトゲトゲバットで防いだ。
「ちょっと!!少し落ち着きなさい!!私は別にあんたの敵じゃないわよ!!」
「うるさいうるさい!!私の頭の中から出て行けーーー!!」
「まず……私の話を聞けぇーーーー!!!」
女性は文子の動きを封じようと、今度は紐をイメージし、それを文子に投げつけた!!
まるで生き物のように紐は動き、文子の手足に巻きつき動きを封じた。
手足を封じられ、倒れた文子だったがさすがにしぶとく
「くんぬ〜〜こんなもん〜〜ぐぎぎ……」
「はあ……口で食い千切ろうってあんたは野獣か!!とにかく話を聞いて」
「ぺっぺっ!!だーれが聞くもんか!!この悪霊!!死霊のはらわた!!」
いきなり手に「50t」と書いてある巨大ハンマーを文子に突き付け、笑顔で最後通告を勧告した
「はーーーい、いい子だからお姉ちゃんの話聞いてね♪」
「ふんっ!!やなこった!!死にぞこないのあんたの話なんてだれが」
「う、うわ!!何だ?文子大丈夫?しっかり!!」
博史の膝の上で気絶していた文子が、突然全身に痙攣を走り、口から泡を吹き、
鼻と目から血が垂れ始めた!!
「と、とにかく病院だ!!文子!!気をしっかり持って!!」
「私はつい先日、あの公園の杉の木の下で数人の男どもにナイフでメッタ刺しされたのよ」
「……それで成仏出来なくて、化けて出てきたっていうの?」
このアマ……よくも私をハンマーで殴ったわね!!危なく御陀仏しちゃう所だったわ。
しかし……悪霊に取り付かれるなんて……
「う〜〜ん、本当なら成仏でもしちゃうんだろうけど、気が付いたらあの木の下にいたのよね……
呼べど叫べど誰も気付いてくれなくて、このまま地縛霊にでもなるのかなって思ってたらあんたが現れたってこと」
「じゃあ、あんたの目的は?」
その質問をした瞬間、女性の雰囲気が変わった!今まで生前着ていた服が暗黒に、
いや服どころか女性全てが暗黒に染まった!さすがの文子もたじろぐ気迫だ
「決まってるわ!!私を殺した犯人たちを八つ裂きにしてドブ川に垂れ流すためよ!!」
「わ、わかったわ!!だからあんたの方こそ落ち着いてよ!!」
はっと気が付き、暗黒色は薄まり、前に戻っていった。
「復讐も大事だけど、アイツのことも心配だしね……」
「ん?何か言った?」
「え!?何にも」
はぁ………面倒事に巻き込まれたわ。どうしようかしら。こんな
赤の他人になんで手なんか貸さなきゃならないのよ!!やっぱり御免だわ!!
「つまり纏めると、成仏するために復讐を手伝えってこと?」
「ぴ〜んぽ〜ん♪正解」
「でもそれって私がやらなきゃならないんでしょ?やだ!!反対!!」
「それは最終手段だけど、まあそこは私のためにってことで………」
「やだやだやだやだやだ!!やーーだーー!!この年で犯罪者はいや!!」
すると女性の目が細くなり、鋭いナイフのようなトゲトゲしい空気が漂い始めた
「……言っておくけど、あんたに拒否権は無いのよ。出来れば穏便にことを進めようと思ったけど、
そこまで拒否するなら実力行使よ!!」
来る!!文子は迎撃の構えをしたが、何かおかしい……。女性の体がどんどん薄くなっていった!!
そして最期に……消えた。拍子抜けした文子だったが、突然声が聞こえ
「片方の「目」の感覚は渡すわ!!その目で見てみなさい!!」
「先生、文子の様子はどうですか?」
「はっはっ、そんなに心配しなさんな。こめかみのタンコブ以外は特に検査に異常はなかったよ。
まあ君の話の鼻血などは極度の興奮でなっちゃったんだろう」
突然の奇行や出血で心配した博史は、近くの総合病院へ連れて行ったが特に異常が無い
ってことでひとまず安心した。診察室のベットで寝ている文子を見てみると確かに見た目にはタンコブ以外には
異常はないのだが、まだ言い知れぬ不安を感じていた。
とにかく今は暫く寝かせておこう、と考え一旦診察室を出ようと立ち上がった瞬間、文子が跳ね起きた!!
「クケケケケケケ!!!キーーーーー!!」
「おい!!文子!!ここは病院だから落ち着いて!!……うわっぷ!ん?これは?」
博史の顔に何か被さって来たので、取ってみるとそれは文子の制服だった!!
ベットの上で暴れていた文子は何時の間にか服を脱ぎ始め、残りはしまパン一枚になっていた
「何も飾らない私を見て…………」
「文子!!正気に戻って!!君はそんなことをする子じゃないはずだ!!」
必死で押さえ込もうとする博史だったが、文子の怪力の前になすすべがなく振り払われてしまった!!
そして最後のしまパンに手を掛けた瞬間、文子の動きが止まった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!!何でも言うことを聞きます!!復讐も手伝います!!
だから!!だから博史の前でこんな恥ずかしい格好はやめて!!!」
文子は心の中で今自分の体を操縦している女性に向かって土下座をしていた。
常勝無敗を誇った文子も、愛する彼の前で痴態を晒されるぐらいだったら土下座でもなんでもするだろう。
何でよりにもよって博史の前で奇声を上げたり、裸踊りをしなきゃならないのよ!!
別に博史に裸を見られるのは良いんだけど、もうちょっとロマンティックな場所じゃないと。
こんな病院で、しかもキチガイじみて裸になっても意味ないわよ!!!
暫くして、靄が集まって人の形になり、あの性悪女が現れた。
「ふふん、どうやら魂のレベルやイメージ力は私の方が上みたいね。あんたがいても
私がこの体を乗っ取れるんだから。……で、私の復讐を手伝ってくれる?」
「仕方ないわ。それで気が済むなら。」
「あ、ちなみに私は強制はしないわよ。あくまでもあなたが「自主的に」手伝ってくれるって
いうんだったら手伝わせてあげるわ。」
ぐっ……文子!ここは我慢よ!今は言いなりになったフリでもしないとこれ以上は
精神科行きになってしまうわ!!
「……お願いします。手伝わせてく、下さい」
してやったり、と顔に書いてあるかのような笑顔で
「そう、それなら手伝わせてあげる。これで私とあなたは運命共同体ね。じゃ、改めて自己紹介するわ。
私の名は……名は……」
?何言い澱んでんのよ。もしかして変な名前なのかしら。
ウ○コ太郎とか山田万子だったら窒息死するほど笑ってやるわ!!
「…………私の名は羽明歩(はねあきあゆむ)。まあ、あゆむって呼んで」
「……………………………(ぼそっ)ハーフ」
今、この心の世界の支配者は歩だということを文子は身をもって知った。
空から落ちてきた足に下敷きになってしまったのだ
「誰がハーフよ!!!次その言葉吐いたらあんたの初めてはこけしにするからね!!」
薄れ行く意識の中で文子は初めて、悪霊こと歩に対して勝利の気分を味わっていた。
次回は新プロットか捨てネタか……
やばい、凄い、良い。ここを発見して初めて自分がこういう属性を持ってることに気付いた。
相手の女をナイフで刺すくらい嫉妬してくれる女の子が、こんなにいいものだとは…
これ系のエロゲとか持ってないけど安ければひとつくらい買おうかな…
これ系のエロゲーはあまりの崇高さに
大衆には理解できないのか
非常に不思議だが地雷判定されてるゲームもある
あと凄く可愛い子が出てるのに
ビッチが居るから気をつけろとか言って騙す悪人も居る
少なくとも高騰してるのは無いから買ってみ
>>392 わかってねえなあ、ああ言って評判落として、
自分だけで独占してんだよ、みんなヤンデレなんだよ。
>>392 いや、普通にヤンデレ好きだがだからといって崇高だとは思わんぞw?
ヤンデレがあるのはいいけどライターが下手すぎて意味不とかあるし・・・orz
病院……
あれからすぐに救急車をよんだところ、なんとか一命を取り留めた。傷は思ったよりも深くは無く、発見も早かったらしいからだ。
……最後通告、とか言ってたっけ。ていうことは…次は本気で殺しにくるわけか。
〜〜♪
携帯がまたなった。しまった。病院の中なのに電源を切るの忘れてた。まぁ、かなり焦ってたからそんな余裕なかったんだけど。
一応確認してから切っておこう。
着信は二通だった。
『frm沙恵ちゃん
麻理ちゃんは大丈夫?ボクも今から病院に行くね。』
……沙恵ちゃん、ごめん。心配かけちゃって…やっぱりストーカーの事はちゃんと話さないといけないかな。
麻理が刺されたなんて、あまりにも不自然な話だからな。
そしてもう一通……
『あーあ、なんで助けちゃうの?海斗君?まあ私がちょっと手加減しちゃったから死に切れなかったんだね。うん、今度こそは殺してあげる。
海斗君に心配かけさせちゃう悪い娘だね♪プンプン
大丈夫、心配しないで。今からそっちにいってあげる♪あ、病院で鬼ごっこっていうのも楽しいかもね♪♪待っててね。』
今から来るだって?この病院に?……なに考えてるんだ、刺した張本人が。トドメをさすだなんて……
ベットに横たわっている麻理を見る。今はもう落ち着いたようだが、まだ意識は取り戻さない。こんな状態で襲われたら抵抗もできないだろう。
「大丈夫だよ…麻理…」
麻理の綺麗な髪をなでる。たとえストーカーが来ても、今度こそは絶対に守ってみせる。なにがあっても……
時計を見ると、午後の五時だった。あれから救急車をよんだり、麻理の手術を待っていたりしたら、一日経ってしまった。学校は……いまはどうでもいいや。
今僕がするべきことは麻理のそばに居てやること。麻理を安心させてやることだ……
「麻理……」
麻理の手を握る。すると……
「ん……」
「!ま、麻理!」
麻理が気がついた。少し呻き声をあげながら、ゆっくりと目を開ける。
「…おに……ちゃん…」
「よかって……気がついたんだ……」
あまりの安堵感に、全身の力が抜けるようにへたりこんでしまう。
「おにいちゃん……ここ…」
「ここは病院だよ……麻理、なにがあったか覚えてる?」
「うん……私…台所で…刺されて……だれに、さされたんだっけ…」
「あ、ムリして思い出さなくてもいいよ。今はゆっくり休んで、ね?」
「うん……ごめんね、おにいちゃん……心配かけちゃって。」
麻理が本当に申し訳なさそうな顔で謝る。
「麻理が謝る必要なんてないよ。……本当に悪いのは、僕なんだ。……ごめん。」
「ううん、こうやっておにいちゃんが側にいてくれるだけでいい。……あの日の夜、……おにいちゃん、が、…ぐす…帰ってこな……くて…うぅ…本当に寂しかった…」
涙声混じりに、麻理が僕の手を強く握ってくる。ああ、僕は本当に大切な妹を傷つけてしまったんだ……
「大丈夫だよ……ここにいるから…」
「うん……えへへ、安心したら……また眠くなってきちゃった……」
「ああ、今はゆっくり寝るといいよ。大丈夫、寝てる間は、僕がここにいてやるから。」
そう言って、麻理を安心させるよう、手を握り返す。
「…沙恵ちゃんも、じきにくるらしいから…」
「……そう……ねえ、おにいちゃん?」
「ん?なんだい?」
「やっぱり…沙恵さんと付き合ってるの?」
「え、へ?」
突然の質問に、なんて答えればいいか戸惑う。
「はあ……その慌てようを見れば、図星ね…」
「うん……気付いてた?」
「……薄々ね。いつかはこうなるかと思ってたけど……最近の沙恵さんの様子や、夜になっても帰ってこなかったからね……」
「………」
互いに沈黙が続いたあと、麻理の目からは涙がこぼれ始める。
「うぅ…ひっく……わ、私の……初恋…だったの、に、な…うえぇ……」
そんな麻理に、僕はただ黙ってやることしかできない。
「兄妹だから……ぐす…限界があるって、わかってたけど……ひっく…うぅ…うああああん…おにいちゃん……おにい…ちゃん」
今、麻理の思いがひしひしと伝わってくる。その思いは、とても痛く響いた。
しばらくして泣きやんだ麻理は、握っていた手を、僕の顔に添え、自分のほうに寄せる。そして……
「ちゅ…」
軽いキスをした。僕は慌てる事無く、それを受け入れた…
「おにいちゃんに……これだけは貰って欲しかったの……本当は、もうひとつの初めてもあげかったけど……」
「麻理。」
それ以上言わせないように制する。
「わかってる。おにいちゃんには沙恵さんがいるもんね…」
ふぅ、と深い溜め息を付いたあと、麻理は目を閉じる。
「今度こそ寝るね……そばにいてね…」
「ああ、……おやすみ、麻理。」
「おやすみなさい、おにいちゃん……」
しばらくすると、麻理は気持ち良さそうな寝息をたてる。
「ふぁ……僕も…」
昨日からいろんなことが一度に起こったのと、一睡もしてないためか、急に眠気が襲ってくる。麻理の手を握ったまま、僕も眠りについた…
・
・
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「ん…あ、あれ……」
目が覚める。そこはいつもと違う風景。そうか…病院だっけ。麻理の手を握ったまま眠っちゃったんだ。
もう夜なのか、やけに部屋が暗い。窓の外は、黒い雲に覆われ、月明りも入ってこない。この総合病院は、建物自体はかなり大きいが、なぜか市街地から離れた所あるため、近くにはこの病院以外の建物はない。
そのため、車の通りや街明かりなどもなく、周辺は暗闇に包まれている。
部屋の電気を点けようと思ったが、麻理が寝てるんだし、やめとこう。
携帯で時間を確認すると、もう十時だった。まずいな、とっくに面会時間すぎてるけど……まぁ、いいか。取りあえず看護師さんにでも事情を伝えておこう。
そう思い、廊下に出ると……
「うわ……」
一寸先も見えないほどに暗かった。病院の夜はこんなものなのか………いや、非常灯もついてないのはおかしい。試しに麻理の部屋の電気スイッチを入れてみるが…
「つかない…」
停電?いや、これだけ大きい病院なら予備電源ぐらいあるはずだ。なら、なぜ?
「しかし…臭いな……」
病院特有の匂い……とは少し違う、血なまぐさい匂いがする。
このままでは歩き辛いので、部屋にある非常用の懐中電灯をを持ち、廊下でつけてみると……
「…!な、なんだ…こ、れ…」
その光景に、まともに声も出なかった。壁、床、天井……その一面が、血で染まっていた。血の付いたブラシで擦ったような跡だ。
まるでスプラッター映画の、化け物が暴れた。そんなスクリーンに入り込んだような錯覚をうけるが……これは映画でもなんでめない、現実なんだ……
そのとき……地獄の始まりを告げる音が響いた…
・
・
・
・
〜〜〜♪
『鬼ごっこ開始だよ、海斗君♪こんな広い病院でやるのって、ワクワクするよね!大丈夫、邪魔者はみんな消したから、誰にも注意されないよ♪
それじゃあ、つかまったら終わりだから、頑張って
(o^-')b』
・
・
・
カツカツカツカツカツ…
ズルズルズルズルズリ………
響く足音……なにかを引きずる音……奴が……きた…
鬼ごっこキター
しかし、どう見てもクロックタワーです本当に(ry
今は誰も使っていない、しかし物置にもなっていない部屋の中。未だ使用していた人物
の面影が漂う空間で茉莉は軽く溜息を吐いた。そして愛しそうに彼が使っていた本棚や机、
コンポなどを手指で撫でる。家族の未練からか、何一つ移動されていないそれらの家具は
綺麗に掃除されていて、埃一つ付いていない。それ故に表面を撫でると彼自身が付けた傷
の感触が直に伝わってきて、茉莉は小さく微笑んだ。
「先輩」
茉莉はつい先日死んでしまった最愛の人を呼んだ。付き合っていたけれども照れ臭さや
長い間の習慣で、とうとう名前で呼ぶことはなかった。
吐息を一つ。
そして全ての家具を撫で終えた後、ベッドへと視線を向けた。思い出すのは、過去に幾
つも産まれた思い出だ。皺一つなく綺麗にメイキングされたベッドからだけは当時の生活
臭がしないけれども、体はしっかりと覚えている。
ゆっくりと腰掛けて目を瞑れば、無数の光景が浮かんできた。
彼と自分と、彼の妹の由香。その三人でここに座り、よく話をした。素直になれないの
か甘え方の下手な妹は辛く当たっていたけれども、自分と同じくらい彼が好きだったこと
を茉莉は知っている。
「それを私がからかって」
小さく笑いながら、茉莉はポケットから白い小片を取り出した。
私はその小片、先輩の遺骨を見て吐息を一つ。
「寂しいです」
仰向けに倒れると、ベッド付属の小さな棚に頭をぶつけてしまった。何故ぶつけてしま
ったかと言えば理由は簡単で、端に座っているからだ。自分一人しか座っていないのに、
こうして端の方へと寄ってしまったことがおかしかった。
そうしてしまったのは、
「癖、ですね」
三人で座っていたときは先輩を中心にして自分が右、由香が左に座っていた。それが長
く続きすぎたせいか、そうした習慣が体に染み付いている。
だから、余計に寂しくなる。
「寂しいです」
無音を掻き消すようにもう一度呟いたが、答えが返ってくる筈もない。寧ろ隣に先輩が
居ないことを余計に思ってしまい、目頭が熱くなった。
乱暴に手指で拭う。
いじめられ、辛いと思ったときに声をかけてくれた人。
苦しいとき、呼べば駆け付けてくれた人。
泣きたいときに泣かせてくれて、その後で涙を拭ってくれた人はもう居ない。
「会いたいです」
死ねば会えるのだろうかと思ったけれど、すぐにその思考を捨てた。自殺なんて、先輩
が一番嫌いな行為だ。初めて会ったきっかけも、私の自殺を止めたことだった。
どうしよう、と心で呟く。
「会いたいです、先輩」
「大丈夫よ、すぐに気にならなくなるから」
振り向いた茉莉に向かってバットを振り下ろした。骨を砕く独特の感触が掌に伝わって
くるのが何とも気持ちが良い。昔から嫌いだったけれども、やっとすっきりできた。
「あはっ、死ね」
長い間お兄ちゃんの隣に居た罪は重い、死刑にしても、尚軽いと思える程だ。それでも
優しいあたしは死刑で済ませることにした。お兄ちゃんが使っていたバットで殺してあげ
たのはサービス、これなら茉莉も満足だろう。
「死ね死ね」
お兄ちゃんを怒らせたり悲しませたりしたくなかったから我慢していたけれど、死んで
しまった今、あたしを止める人はもう居ない。心のもやになっていた泥棒猫も、もうすぐ
居なくなる。
「死ね死ね死ね死ね」
積年の恨みを込めて何度も振り下ろす。手に伝わる感触は、もはや固い部分など残って
いないとあたしに教えてくる。それでもまだ足りずに何度も打ちのめした。
数分。
床に硬質なものが落ちる軽い音が聞こえて、漸くあたしはバットを止めた。吐息をしな
がら、額の汗や返り血を拭う。全く、兄さんの部屋やベッドを汚して悪い泥棒猫だ。
「邪魔よ」
あたしはベッドの上から茉莉の死体を退かすと、床に落ちていたものを拾った。
ベッドの上、寝そべった由香は袖口で兄の遺骨を拭った。表面は何かで加工してあるの
か、血の跡もなく白い表面が表れる。それを満足そうに見つめて、兄の名前を呼びながら
口付けた。はしたない音をたててねぶり、とろけた表情で身をくねらせる。
異常な光景だが、それを止める者は存在しない。
由香は唾液で夕日を反射する遺骨を胸へと這わせ、そのまま滑るように股間へと移した。
既に洪水とも言える量の蜜を溢れさせているのが、下着越しでも分かる。愛液によって出
来た染みを広げるようにクロッチ部分をなぞり、由香は甘い声を漏らした。
「お兄ちゃん、早く、入れて」
呟きながら下着を下ろし、秘部の中へと骨を侵入させた。粘着質な水音を響かせながら
細長いそれを出し入れさせると白く泡立った密に混じり、赤い液も漏れてきた。溶けあっ
て薄桃色になったそれを手指で掬い、嬉しそうに舐める。
つい先程まで処女であった筈なのに、その顔は淫靡に歪んでいた。
痛みを感じさせないような嬌声を響かせ、うっすらと汗をにじませながら、由香の体が
大きくのけぞった。数秒そのままの姿勢を維持し、やがて力が抜けたように肢体を伸ばす。
「お兄ちゃん」
荒い息を吐きながら、虚ろな目で天井を見た。
「ずっと一緒だよ、あはっ」
割れ目に挿入ったままの骨を撫でながら、満足そうに目を閉じた。
「あははっ、ずっと、ずっと一緒だよ」
夕日だけじゃない赤い色に染められた部屋の中、由香の笑い声が響いた。
今回はこれで終わりです
初めての人の為の、俺の書いたもの入門
初心者:『とらとらシスター』(比較的読みやすい)
強 者:『歌わない雨』『ジグザクラバー』(文が読み辛い、癖が強すぎと評判)
曲 者:『倶楽部シリーズ』(読み辛い、後味がとても悪い)
スレチ:『ツルとカメ』(下品)
貴方はどれから?
鬼ごっこ、話がヤバクなりすぎてwktkが止まらない
この鬼の戦闘能力高すぎです
>>406 倶楽部シリーズが俺は好きだ。ヤンでる話だけど短編だからさくっといける
鬼ごっこ、ぶっちゃけもう官憲すら敵に回してるよ…
なんつー愛だ、レベル高すぎ
>>406 俺はとらとらが好きだな、虎姉妹最高!
鬼ごっこ(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
まさに純愛だ
リボンの騎士……って騎士ちゃうで剣士やで
そう言えばこのスレで百合要素含む作品って無かったっけ?
ハーフ&ハーフGJ!!
悪霊やら女教師やら他に見ない要素満載でギャグも利いてて好きだ
そう言えば前スレに投下され補完庫に収められてる第一話は
事実上プロローグ若しくは零話なんだね
306 :1 ◆D60106Bc4s :2005/12/07(水) 00:47:55 ID:LQab6Mcc0
引越しの終わったその日、僕は初めての一人暮らしに浮かれていた。
地方から大学通いのため都会に出てきて、そりゃあ不安はある。でも、それ以上の高揚感が僕を包んでいた。
6畳1間の古ぼけたアパート、とても城だと思えるような間取りではないけど、
それでもここから何かが始まるような予感がしていたんだ。
その日なかなか寝付けなかった僕は、2時ごろ歯を磨いていた。
そのとき、ふとガラスを横切る影。
後ろを振り向いても、何もそこにはない。洗面所から出て、狭い部屋を見回しても、何もない。
きっと、今日は疲れているんだなと思い、洗面所に戻った。
すると後ろから『クスクス……』という女の子の笑い声。
今度は、気のせいじゃない。
背中に走る悪寒。気温が急激に下がったような感覚。
僕は歯磨きも途中のまま洗面所を出ると、布団に包まり、顔だけを出して
きょろきょろとあたりに様子を伺っていた。
『クスクス……』
声は、部屋のどこから聞こえてくるのかわからない。
ぼんやりと薄暗い部屋の隅?さっきいた洗面所からだろうか?
それともすぐ近く……?そう、僕の後ろから……
「バーカ」
左の耳たぶの裏から、吐息まで感じられるような声を聞き、僕は気を失った。
307 :2 ◆D60106Bc4s :2005/12/07(水) 00:48:30 ID:LQab6Mcc0
とんでもないところに越してきてしまった。
僕は次の日、焦って引越しを考えたが、ただでさえ格安物件を中心に選択した財政状況では
そうもいかない。故郷の両親にいきなり心配をかけるのもためらわれた。
第一、僕はその姿を見ているわけではない。
血みどろの実像を見てしまったりしていたら冷静ではいられないが、
今の所脅かしてくるくらいじゃないか。
部屋に戻ってきた僕は、恐る恐る部屋の様子を伺った。
真昼間から現れるようならお手上げだけど、それはなかった。
でも、夜、布団に入った途端にそれはまたやってきた。
『なんで戻ってきた』頭に響いてくるあの声。
ふっと壁かけ時計に眼をやると、2時。
僕はまた布団に身をくるむと、うろ覚えの念仏を唱えた。
『そんなもん効くか、アホ』
声は幼く、冷たく、そして絶望的だった。
「たのむよ、僕は邪魔したりしないから。ただちょっと卒業まで住まわせてくれるだけでいいんだ」
家賃を払っているのは僕だなんてことは考えなかった。
僕は、家庭がそんなに裕福じゃないこと、こっちにはまだ友達もいなくて、頼れる人もいないこと、
そんなことを念仏代わりに訴えかけていた。
『……ふん、まあ退屈だったし、オモチャができたと思えばいいか……』
彼女はそんな風につぶやくと、ふっと気配を和らげた。
「いいの!?」
僕はかぶっていた布団を剥ぎ取ると、どこに向かうでもなく話しかけた。
返ってきた答えは
『うるさい』だった
308 :3 ◆D60106Bc4s :2005/12/07(水) 00:49:08 ID:LQab6Mcc0
僕は果たしてオモチャだった。期末のレポート提出に四苦八苦していると
『普段からやってないから今苦しむんだな、アホだ』
『今はじめて参考書を見ているのか、もう終わりだな』
『こんな子供に期待している親が不憫だ、荷物まとめろ』
そんなことを言って、僕をどこまでも追い詰める。
でも、最初感じたような圧迫感はない。僕は相変わらず友達は少なかったし、
バイトで遅くなることが多かったから、彼女がでる時間に起きていることも多かった。
僕は、奇妙なことに彼女によって救われている気がしてきていた。
……相変わらず、姿は見えないけれど。
そんな生活が続くうちに、僕にもそれなりに交友関係ができた。
彼女が怒るかな、とも思ったが、自分の部屋に友達を招いて飲み会をした。
その夜は僕一人になっても彼女はでてこなかった。
いまさらながらに薄気味悪いと思いつつも布団をかぶろうとしたら、テレビの上においていた
目覚まし時計が落ちてきて、したたかに頭に命中した。
「な、なにすんだよ」僕はさすがに怒って彼女に呼びかけた
『……あの女は誰だ』
予想外の質問だった、まさか、吉野さんが気に障ったのだろうか?
「サ、サークルの先輩だよ、もしかして彼女が嫌なのか?祓われちゃいそうな霊感があるとか?」
『ふうん、で、お前はあの女のなんだ』
わけがわからない。
「別になんでもない、単なる先輩だよ」
『……どうだか、とりあえず、あの女はもう呼ぶな、次に来たらあの女も巻き添えにする』
「わ、わかったよ」
それきり、その夜彼女は出て来なかった
414 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 20:34:16 ID:Qa1ZsRqc
続きマダー?
>>410 レズならロリコン教授
ホモなら夢魔法とか
嫉妬する幽霊、たまらん……
嫉妬のあまり呪い殺す幽霊とか最高だな
そこで源氏物語ですよ。
逆に考えるんだ。
男の幽霊に恋する女(生きてる)、そして嫉妬する女幽霊。
女幽霊は嫉妬のあまり呪い殺そうとも考えるが、もし万が一幽霊となってしまっては
自分のアドバンテージが崩れてしまうため苦悩する。
もし成仏して天国に行ったら男幽霊も連れて行きかねないし、重罪人ではないため
無間地獄にも叩き込めない。
恋するあまり自殺しかねない女となんとかそれを食い止めようとする女幽霊の話し。
なんてどうですか?
良いんじゃない?
当然自分で書いて投下して(ry
投下しますよ。
吸血鬼化して以来朝に弱くなってしまった智は、千早に起床の世話までもされるようになっていた。
情けないとは思うが、千早ならと思って甘んじている。
幼馴染のそんな情けない姿を見て毎朝嬉しそうにしている千早もどうかと智は思うが、
一日の初めに目に映るのが千早の笑顔だと思うと、辛い日中も頑張ろうと思えるから不思議だった。
だが、今日は起こし方が乱暴だ。そんな風にベッドの上で跳ねなくてもいいではないかと思う。
ぐいぐいと押し付けられる柔らかい身体が、腰の上で踊るのを感じる。
そして、それに悲しいほど素直に反応してしまう智。
(千早、冗談は止めろって。いつもみたいに普通に起こせよ。
ここまでしなくたって、俺はいつもちゃんと起きるだろ?)
心の声が聞こえたわけではないだろうが、動きが止まった。智がほっとしたのもつかの間――。
(・・・!?)
再び身体が動き出す。それも単純な上下振動ではなく、擦り付けるような、くねらせるような動き。
強弱をつけた縦横無尽の動きが、智の身体のある一点を執拗に責め立てる。
そして、左右の腰骨に感じる挟まれたという感覚が示すのは、自分が跨られているということ。
これらが連想させる言葉を知らぬほど、智も子供ではない。
(千早、やめろっ! ほら、もう起きっ・・・!?)
――られない。身体が動かない。おまけに頭が重く、酷く朦朧としている。
そんな中しっかり屹立していると分かる一点が、自分とは別の生き物のように感じられた。
(ああ、これは夢だ――)
こんな夢を見るなんて最低だ。それも藍香ではなく千早を相手にだなんて。
誰よりも近い幼馴染。変わらない関係でいてほしい人。
智にとって千早は、決して汚してはならない存在だったのに。
その誓いを破るような夢を見るほど、自分は欲求を溜め込み、抑え付けてきたのだろうか。
平気だと思っていたけれど、無意識の内に吸血鬼の性衝動に蝕まれていたのだろうか。
『あはっ、智ちゃん・・・』
そんな思いを肯定するかのように、千早――もはや浮かぶ輪郭は彼女以外の何者でもない――は
未成熟な肢体を躍らせ、股間を智の腰へ擦り付ける。
髪を振り乱し汗を飛び散らせ、見たことも無いような微笑で見下ろすその姿は、
智をどうしようもなく魅了した。
もういいと、この背徳的な幸せに溺れようと、そう思い意識を手放そうとした時。
幸か不幸か、智は気づいた。
『千早』の唇から覗いた、一本の鋭い歯。牙。
それが何であるか気づいた時、急激なフラッシュバックが突風となって思考のもやを消し飛ばし。
そして―――夢は醒めた。
「あっ、ああああああああああぁぁぁぁぁっっ!!」
その嬌声は誰のものか。自分のもののようにも、そうでないようにも智は感じる。
唯一はっきりと分かったのは、夢の続きを思わせるほど張り詰めた己の分身――紛れもなく自分の物だ――が、その迸りを解放したこと。
溜まりに溜まった毒が全て吸い出されるような、圧倒的なまでの解放感だった。
「んんんんぅぅぅ・・・。ふふっ、サトシ君のがまた来たよぉ・・・いっぱい膣内に入ってくる・・・。
ねえサトシ君、気持ちいい? 気持ちいいでしょ? 私もすっごくいいよ・・・。
まだいける? いけるよね? こんなに硬くしてるんだものね?
まだまだ、まだまだまだまだ。まだ離さないわよ、サトシ君・・・」
智は返事をしない。出来ないのだ。目の前の光景の、あまりのありえなさに。
ベッドに仰向けになった智は素っ裸であり、見上げると同じく一糸纏わぬ姿のエルがいる。
熱に浮かされたような霞んだ瞳が智を見下ろし、盛んに舌なめずりをされている真紅の唇は、ぬらぬらと怪しく輝いていた。
そして、再び蠢き出した彼女の腰、その動きの中心部に。
智の一物が、飲み込まれていた。
「っ・・・!?」
声にならない叫びが上がった。
訳が分からない、訳が分からない。どうしてこんなことになっている。
脳裏に浮かぶのは、意識を失う寸前に聞いたエルの絶叫。
しかし今の智の頭は、それと今の状況とを繋げて見られるほど落ち着いていなかった。
取り敢えず離れようと、痺れが残る身体を何とか起こそうとして――。
「ダメよ、サトシ君」
静かな囁き声と共に、肩にエルの手が添えられて。
「がっ・・・!?」
ゴキリという音が鳴って、身体がベッドに深く沈みこんだ。
辛うじて外れてはいないようだが、激しい痺れに腕が全く動かない。
「ねえ、サトシ君・・・」
呼吸を乱され咳き込んでいると、エルが覆いかぶさってきていた。
咄嗟に目を瞑ってしまう智。
しかし新たな痛みが来るわけでもなく、顔に髪が掛かってのくすぐったさに身を捩っただけ。
そっと目を開いてみると、眼前にあったのはエルの薄紫の髪と身体の温もりで。
脱力して肩の力を抜いた瞬間。
エルの牙が、智の肩口に喰い込んだ。
「があああああああぁぁぁっ!?」
迸る絶叫。今度のそれは、間違いなく智の発したものだった。それも、苦痛の叫び。
エルの牙が智の右肩口を『刺し穿って』いた。
吸血の為に自分がやる、注射のような浅いものでは断じてない。
肉食獣が獲物にするような、喰らう為のもの。
牙はその深度を着々と進め、人間と同じ部分である歯も容赦なく咬合に力を込める。
叫び声が掠れてきた頃になって、エルはようやく口を離し。
今度は左の肩口に噛み付いた。
「っ・・・うああぁっ!!」
耐えたのも一瞬。声を上げずにいるには激しすぎる痛みが智を襲った。
たっぷり一分経って――その間、我慢の神経が上半身に集中した為に、耐え切れず射精すること一回――エルがようやく顔を上げた。
先程と変わらない、智を見下ろす妖しい微笑みが見える。そこには敵意も悪意も読み取れない。
血を滴らせる牙と血の付いた唇が、やけに扇情的に映った。
「やん、もったいなぁい・・・」
思い出したように呟き、エルが再び顔を近づけてくる。反射的に身を強張らせる智だが、苦痛はやってこない。
「んふっ、おいし・・・。サトシ君の、とってもおいしいよぉ・・・」
変わりに聞こえたのは、猫がミルクを舐めるようなピチャピチャという音。
血を流す智の肩から聞こえてきた。
「つぅっ・・・!」
不意に、舐める感触が沁みるような痛みに変わった。
エルの舌が、皮膚とは明らかに違う場所を這っている。
喰い破られた場所だった。
皮膚が破れ、露出した傷口の肉。血を求めるエルの舌は、そんな場所も執拗に愛撫する。
「ふふふ、本当に元気ね・・・。こんなに出したのに少しも収まってないわよ? やっぱりキミも吸血鬼ね・・・」
口に付いた血を拭った指を、更にしゃぶって言うエル。
美しい女性が血を――それも自分の血を――美味しそうに啜るという異常な光景なのに。
彼女の言う通り、自分の身体は萎えるどころか怪しい興奮に更なる昂ぶりを見せている。
明らかにまともではないエルと、同じくまともでない状態の自分。
それでも互いの肉体は狂おしく互いを求め、止まろうとしない。
(俺は、やっぱりおかしくなってるのか? くそっ、俺は・・・!)
そんな智に、エルの声が追い討ちをかける。
「やっぱり君も、か。・・・でも仕方ないのかもしれないね。
吸血鬼って精神力は人間のレベルしかないのに、身体だけは化け物じみてるんだもの。
耐えられる方がおかしいのよ」
慰めるような言葉なのに、どこか責めるような声。
不意に、エルの手が智の首に触れた。感じたのは本能的な恐怖。
咄嗟に身を捩ろうとしたが、時すでに遅く。
智の首は、エルの両の手のひらで包まれていた。
首を、絞めるように。
そのまま力が込められる。
「がっ、ぁっ・・・!?」
「好きよ、サトシ君。
強いキミが好き。優しいキミが好き。困った顔のキミが好き。そんな風に、苦しさに耐えてるキミが好き。
きっと、ここまでに誰かを好きになったのはキミが初めて。
だから・・・」
首を絞める力が増す。
「今、殺してあげる。衝動に狂ってしまう前の、綺麗なキミのままで。
キミの全てを私にちょうだい。
血も、肉も、精も、心も、そして最期の思い出も。
愛してるわ、サトシ・・・」
酸欠の脳が、その言葉を最後まで聞いたかは定かではない。
後悔も、憎しみや怒り、悲しみさえもなく――智は、ただ死を覚悟した。
今回はここまで。何だかエルが当初の予定とは変わったキャラに・・・。
モロ続きになるので、次は早いうちに投下します。
エロのシーンがムズかったです。あんまりエロくなくてごめんなさい。
目が覚めたら童貞失ってたと言うのが最近の流行なのか?
ともあれGJ
文字通り食べられちゃいました的な逆レイプって好きよ
早くも主人公がデットエンドを迎えそう((;゚Д゚)ガクガクブルブル
どうやって助かるのか今から(*´д`*)ハァハァ
早くも貞操&命の危機!!まあもう貞操の方はアウトですがw
作者さんGJでした
朝は不覚を取ったけど、もう負けない。
登校から朝錬までの時間をあの女に渡したのは…口惜しいけど、それ位は与えてあげる。
せいぜい良い夢を見ておけばいいわ。もう私は油断しないから。
認めてあげる。あなたが私を出し抜いたってこと…そして、私のライバルに足る女だってこと。
佐藤花梨…覚悟しなさい。これからは、本気でいかせてもらうから!
お昼休み。食堂も購買も無いこの学校では、みんなお弁当を持ってくる。
当然、私も持ってきてる。私とミツ君、合わせて二人分を。もちろんお揃い。
ミツ君とお揃いのお弁当を一緒に食べる…そんな妄想を今朝はしていたけど、今の私はそんなに甘くない。
必ず、あの泥棒猫が現れるはず。でも、あの女は私達とは別のクラス…先手を打たせてもらうから。
いつものように、ミツ君と机と机をくっつけながら扉の様子を伺う…まだこない。今のうちに!
「ミツ君…実は、ミツ君のためにお弁当を作ってきたの…食べて、もらえるかな…?」
少し目を伏せて、控えめにお弁当を差し出して、上目遣いにミツ君を見つめて、可愛い女の子を演出する。
どう、ミツ君。ぐっとくるでしょ?
…でも
「うん、ありがとう…うれしいよ。」
ミツ君の歯切れが悪い…まさか
「吉備さん、約束どおり一緒にお弁当食べましょう」
後ろから、泥棒猫の声が聞こえた。…先手を打たれたのは私の方だった。
泥棒猫は、空いてる席から堂々と椅子を持ってきて、ミツ君の隣に座った。
そして、いつものことのような手つきで、ミツ君の前に弁当箱を置いて、包みを広げてふたを取った。
…和風のお弁当。煮物、魚の照り焼き、きんぴらごぼう、玉子焼き、おひたし、そして俵型のおにぎり。
見た目はぱっとしないけど、彩りは悪くないし、家庭的な温かみも感じる…口惜しいけど。
私も負けじと、自分の作ったお弁当を広げる。
私のお弁当は洋風。エビフライ、煮込みハンバーグ、マッシュポテトのサラダ、卵とハム&レタスのサンドイッチ。
…ちょっと品目が少ないかも。それに、なんだかまとまりが無いような気が…今朝は完璧だと思ったのに。
ううん、大丈夫。味には自信がある。この日を夢見てずっと腕を磨いてきたんだから。
ミツ君は、二つのお弁当を差し出されて、困った顔をしてる。
泥棒猫と約束してたみたいだけど…ミツ君、いったいどっちを食べるの?
「ミツ君、ハンバーグ大好きだったよね?」
どちらか決めかねているミツ君を後押しする。…やった!箸がこっちのほうに動いてくれた!
「吉備君…お弁当を食べてくれる約束、私のほうが先だったのに…」
ああっ、だめだよミツ君、泥棒猫の言葉なんかで動きを止めたら!
「ミツ君はおいしいものは先に食べるタイプだったよね?」
「おいしさなら私の玉子焼きも負けません。私、いつも作ってますから。」
…くっ、邪魔しないでくれる!これじゃ、ミツ君がいつまで経っても食べられないじゃない!
「えっ、えっと…そうだね、佐藤さんと先に約束してたし…じゃあ…」
!?
「ミツ君!」
箸が玉子焼きに届く前にミツ君を止める。すかさず玉子焼きを自分の箸で奪って…
「ミツ君、あ〜ん」
「…えっ?」
「あ〜ん」
「………」
「あ〜ん」
「………………………」
「あ〜ん」
「……………………………………」
「(ぱくっ)」
…勝った。
ちらりと横目で泥棒猫を見る。あはっ、固まってる固まってる片頬引きつらせながら固まってる!
どぉうれしいでしょだってあなたの玉子焼きを先に食べてくれたんだもんうれしいに決まってるわよね!
アハハッ!
「き、きき吉備君!きんぴらごぼうもおいしいよ!」
うふふ、やっと持ち直したみたいね…でも普通にやったってダメよ。
「ぅぅ…ぃや、でもあの…恥ずかしいし…」
ほぉらやっぱり。ミツ君は恥ずかしがり屋さんなんだから、さっきみたいな状況でなきゃ食べてくれないわよ。
「ミツ君。次は私のハンバーグ食べて頂戴。」
…今は放課後、部活動の時間。私はいつものように、美術室で絵を描いている。
…でも、気が散って、ぜんぜん進まない。
「何でミツ君はバドミントン部なの…」
なんだかモヤモヤして、思わず呟いてしまった。
どうせスポーツ万能なんだから、文化系の部活のほうがいいと思うのに。
美術の授業でデッサン見せてもらったけどうまかったし、ミツ君らしいやさしい色使いをするし。
絶対ミツ君には美術部が似合う。それに、美術部だったら、泥棒猫の付け込む余地なんか…
いけない、こんな気持ちじゃ今日は…ううん、あの泥棒猫がいる限りはずっと進みそうに無い。
展覧会までまだ猶予はあるけど、それまでに解決するかどうか…
あ〜もう!今日はやめ!また明日!
体育館に向かって走る。もちろん部活をしてるミツ君を見るため。
扉をそっと開けて、中に入ってミツ君を探す…いた。
いつ見てもかっこいい。運動しか取得の無いような男とは違う、敏捷で、無駄が無くて、知的な動き。
そして普段はめったに見せない、真剣な顔。
…やっぱりミツ君にはバドミントンが似合う。確かに美術部も似合うと思うけど。
そういえば、泥棒猫もバドミントン部だっけ。
まあどうせ同じ部活のよしみでミツ君に近づいたんでしょうけど…汚い女。
ええっと、どこかしら…あ、いたいた
………………ぁっ
やだ…見とれちゃってた………口惜しいけど、キレイ…
どちらかといえば、キビキビした印象のミツ君とは違って、優雅で流れるような動き…
まるでバレリーナ…踊っているよう…
そう、妖精が。
私…この女に………勝つ、の…?
同じ蔓視点ですが、前回投下分と比べて違和感があるかも…心配です。
思った事はガンガン言ってほしいです。なにしろ初心者なもので。
|ω・`) この時間にリアルタイム更新!
一緒にお弁当は常套手段とはいえやはり燃える(*´д`*)ハァハァ
泥棒猫に気を取られてるがその程度で負けちゃダメだ(;つД`)
GJ!幼なじみという武器に対し同じ部活という武器か……
勝負はまったくの互角かもしれんな
これは最初の視点が和三くんだったから軽い寝取られ属性もあるよね
和三くんに見せ場はあるのだろうか
未だに最初のやつが主人公だと信じている俺がいる。
ミツ君視点がないから今一まだどんなキャラかも分からないし
交際相手を包丁で刺す、21歳女を逮捕…東京・青梅市
9日午後11時25分ごろ、女の声で「路上で彼氏を刺してしまった」と110番通報があった。
警視庁青梅署員が駆けつけたところ、東京都青梅市東青梅3の路上で、近くに住むアルバイト小寺達也さん(29)が背中を包丁で刺され、血を流して倒れていた。
小寺さんの近くに立っていた同市東青梅2、アルバイト鶴田和泉容疑者(21)が、刺したことを認めたため、同署は殺人未遂の現行犯で逮捕した。小寺さんは重傷。
鶴田容疑者は「別れ話を持ち出されたので、逆上して自宅から包丁を持ち出して刺した」と供述しているという。
(2006年9月10日3時16分 読売新聞)
ttp://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060910i501.htm
これは素晴らしい
……………俺も今それに近い状況にあるんだがorz
いや、実際の修羅場は果てしなくキツい。こないだはナイフ持ち出されて「死ぬから!」って言われた。必死に止めたけど。
やっぱ修羅場は見て萌えて愉しむものなんだと実感したよ………(´・ω・`)
はいはいチラシの裏チラシの裏
素晴らしいネタだが、本スレ行きじゃねえ?
まあ、別れ話を切り出されて包丁で殺すってことは余程二人の仲は冷え切っていたんじゃないのか?
そうじゃないと包丁で刺すってことは普通はありえないと思うが・・。
逆だろ。人生棒に振ってもかまわない覚悟がないと刺すなんて出来ない。
冷え切っている相手に自分の人生捨てる気にはならんよ
投下しますよ
445 :
『花束』:2006/09/10(日) 12:19:51 ID:rceQATyu
「眠い」
「遅くまでゲームやってるからだよ」
「うん、ゴメン」
ボクはミズホに謝りつつ今日何度目かも分からない欠伸を噛み殺した。流石に深夜二時
までやっていたのは不味かったと思うけれども、過ぎてしまったことは仕方がない。それ
に、あのゲームには底知れない魔力めいたものがあると思う。ルールはとても簡単なもの
で、二個でワンセットになっている半透明の軟的球体生物を落下させ、繋げて消すという
もの。縦横で結合部分が発生し、四つ繋がれば消えて死んでしまうという残酷なシステム
だけれど、大きな目が特徴のカラフルで愛らしいキャラクターでもそうなってしまうのは
愛や運命、生や死について深く考えさせられる。命というものは、儚いからこそ美しいの
かもしれない。
「イっちゃん、また妙なこと考えてる?」
「まさか。大体、いつボクがそんなこと考えてたよ?」
「普段の行動を思い出してみて? すぐに答えは出るよ?」
言われた通りに過去を思い出してみて、答えもすぐに出た。
「無いね」
「あるわよ」
肩を落として吐息するミズホを慰めるように髪を撫でると、妙な表情で振り向かれた。
何か悩みでもあるんだろうか、幼馴染みとして出来るだけ協力してあげたいとは思うけれ
ども訊かない方が良いんだろう。お互いのことをそれなりに知っているし、何でも話し合
う仲だけれども、それでもボクに言ってこないというのはそれなりの意味がある筈だ。
446 :
『花束』:2006/09/10(日) 12:20:56 ID:rceQATyu
「元気出して」
「そうね、イっちゃんには分からない問題だし」
もう一度吐息して、ミズホは歩き始めた。ボクも髪を撫で続けながらそれに着いていく。
これだけで元気になるとは思わないけれど、それでも幾らか気力は沸く筈だ。
数分。
他愛のない話をしながら歩いていると、一人の人が寄ってきた。それを見て、ミズホは
露骨に嫌そうな表情を浮かべた。ボクは表情に出さないけれども、実のところボクも少し
苦手だったりする。
「おはようイツキ君、今日も美しいね。とミズホ君、会う度に辛そうな表情をしているが
大丈夫かね? 難なら良い医者を紹介するが?」
「おはようございます、サオリ先輩」
「……おはようございます」
ボクに少し遅れてミズホも挨拶をする。
サオリ先輩、ボクより一つ上の三年生。身長は高く、スレンダーな体付き。それが切れ
長の目が特徴の端正な顔立ちや腰まで届く艶やかな黒髪、独特の口調と合わさっていて、
まるで一つの芸術作品のようになっている。ミズホも結構可愛い部類に入ると思うけれど
も、この人は別格だ。
しかし、天は二物を与えなかった。
「先輩、何でこんなところに居るんですか?」
ミズホが当然のように湧いた疑問を口にする。ボクも同じ、この町に済んでいる人なら
ば誰でも疑問に思うだろう。朝の忙しい登校時間に、サオリ先輩がここんな場所に立って
いるのはおかしい。この町の中でも一際目立つ大屋敷の一人娘であるサオリ先輩、その家
は高校を挟んで丁度反対側にあるのだ。
447 :
『花束』:2006/09/10(日) 12:23:36 ID:rceQATyu
先程のミズホの質問にボクも視線で同調すると、サオリ先輩は細い体に不釣り合いだが
不思議とバランスの良く見える豊かな胸を反らした。この姿勢を見る度にミズホが何とも
悔しそうな表情をするのは、言ってはいけないものなのだろう。
閑話休題、サオリ先輩は自信に満ち溢れた表情で、
「愛の力だ」
うすら寒いことを言った。
「具体的には?」
眉根を寄せながらミズホが問うと、サオリ先輩は笑みを浮かべ、
「うん。通学路を丹念に調べたあと、約一時間程前から奇遇を装う為にここに居た」
「今物凄い勢いで暴露してますよ。それにサオリ先輩の行動は一般的にはストーカーって
言うんです、知ってましたか?」
「馬鹿な!?」
そう。容姿淡麗、文部両道、性格美人と三つ揃えているけれども、人として大事な部分
が足りないのだ。キモい言葉を言ったり、キモい上に変な具合いに積極的なストーカー行
為をしたり、悪行を数えていけば枚拳に糸間がない。
蔑んだ視線を向けると、サオリ先輩は嬉しそうに身をくねらせた。
「どうすれば良いんだろう?」
「無視すれば?」
「そうだね」
言われた通りにサオリ先輩を無視して歩き出す。
「待ってくれ、イツキ君」
「どこに話し掛けているんですか!?」
448 :
『花束』:2006/09/10(日) 12:24:19 ID:rceQATyu
思わず突っ込んでしまったボクを見て、ミズホは吐息を一つ。逆にサオリ先輩は嬉しそ
うに胸を張り、
「尻だよ!! 私は慎み深いのでね、真正面から言わずに後ろから声をかけさせて貰った。
しかし華の女子高生に路上で尻と言わせるなんて、酷い人だね」
慎み深さの欠片もない。
「じゃあ、話ながらボクの尻を撫でているのは何故ですか?」
「魅力的な君の尻が悪いのだよ。そんな悪い尻にはお仕置きが必要だね、こうだ!!」
「いい加減にしなさい!!」
気合いの言葉と同時に尻を鷲掴んできたサオリ先輩の頭部を、ミズホが勢い良く鞄で殴
り飛ばす。ボクの周囲で、いや通っている高校の中でも数少ない常識人であるミズホは、
本当にありがたい存在だ。彼女が居なかったら、ボクは多分まともな生活は遅れていない
のではないだろうか。
「いちいち変態行動をしないで下さい!!」
顔を赤く染めながら、ミズホはサオリ先輩を睨みつける。
これがミズホがサオリ先輩を嫌う何よりの理由、サオリ先輩の最大の欠点だ。何事も、
最終的にはこうの様ないやらしい行動に直結する。潔癖ではないにしろ、常識を何よりも
大切にするミズホにとってサオリ先輩のような行動は我慢ならないのだろう。
「さ、行くよ」
動かなくなったサオリ先輩から目を反らし、ミズホはボクの腕を引きながら歩き出した。
449 :
『花束』:2006/09/10(日) 12:26:11 ID:rceQATyu
しかし、問題なのはサオリ先輩だけではない。
「おはようございます、センパァイ」
校門に辿り着くと、幼い声が飛んできた。
「おはよう、チヨリちゃん」
ポニーテイルが愛らしい後輩、チヨリちゃん。140cmしかないという身長や幼児体型は
高校生にしてはやけに発育不足だと思うけれども、活発な性格にとても良く似合っている。
人懐っこいその性格も手伝って、一年生の間でのマスコット的なキャラクターだ。
しかし彼女にも問題が一つ。
チヨリちゃんは胸の高さから上目遣いでボクを見て、
「センパァイ、いつアタシの処女膜をブチ抜いてくれますか?」
「ブチ抜かないよ?」
発言がいちいち下品なのだ。
横を見ると、やはりミズホは眉根を寄せていた。
「お願いしますよぅ」
そんな甘えた声を出されても困る。
「はいはい、今度ね」
「約束ですよぉ?」
適当に髪を撫でると、チヨリちゃんは嬉しそうに身を寄せてきた。
「羨ましい、私も撫でてくれ。こう、乳とか尻を重点的に!!」
「あ、痴女先輩」
「撫でませんよ。仮に、仮にですよ? 撫でたら『次は股を!! 激しく!! もっと情熱的
に!! さぁ!!』とか言いますよね?」
サオリ先輩は不思議なものを見たような表情で、
「そんなことを言う訳無いだろう、痴女じゃないんだから」
何故こんなところで真面目なことを言うのだろう。少しくらいは普段の行動を思い返し
てほしいと思ったけれども、すぐにその考えを捨てた。きっと言っても無駄だろう。世の
中には言っても分からない人や自覚がないまま行動するタイプの人間は確かに存在する。
ボクは吐息を一つ。
「しかし、残念ですねぇ」
「本当に」
「まぁ、ね」
何だろう。
「イツキ君が」
「センパイが」
「イっちゃんが」
「「「女じゃなかったら、幸せになれたのに」」」
今回はこれで終わりです
普通のラブコメと見せかけて、実は百合でした
活字ならではのトリックですね?
これは『甘獄』と同様、ゆっくりと書いていきたいと思います
そうきたか!GJ!
452 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 15:10:21 ID:N3Poc2Wr
性転換いくか?
これはやられたwwwGJ!!!!
あと、「枚挙に糸間がない」→「枚挙に暇がない」
すっかり、騙されてたwwww
百合修羅場の登場に激しくwktk
GJ!だ〜ま〜さ〜れ〜た〜!!!
このまま百合展開で突っ走るかそれとも性転換がくるのかwktkして待ってますね
鬼ごっこ、警察への通報や聴取の過程がごっそり抜け落ちてる件について。
…まさか通報してないなんて言わないよね?>作者
>>456 SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
457
少し落ち着け
(´・ω・)つ日←コテツミン
市販の小説にだって突っ込み入れだしたらキリがないし。
そんな所にどうこう言うのは野暮だしね。
「行間を読め」ってことじゃないかな
それにだ。もしかしたらこれから書かれるかもしれない。
叙述トリックてやつですな
ヤバい、蔓←が読めない
マジで鬼は誰なんだろう・・・。
それはともかく、昨日の続きを投下します。
目覚めるとそこは、天国でも地獄でもなく――そもそも天国と地獄がどういう場所かも知らないのだが。
智は自分が生きていることを悟った。
目の前にはエルの姿。智に跨って繋がり、口には血を滴らせ、手は首に掛かったまま。
腕や胸に無数の刺し傷が増えているが、状況は気を失う前と変わっていない。
いや、一つだけ決定的に違うところがあった。そして、智の取り戻した意識はそこに釘付けになっていた。
「ぐすっ、うぅ、うああぁぁぁん・・・!
嫌だよ、やっぱり一人は嫌だよ。さみしいよ・・・。
お父さんもお母さんも、もう誰もいない。みんな私を置いていった。
私を一人にしないでよ。私のことを見てよ。ずっと私の傍に居てよ。私のことを愛してよ!
誰か、私を助けてよ・・・。
さみしいよ、さみしいよ、さみしいよ、さみしいよ・・・」
エルが泣きじゃくっていた。迷子の子供のように、ただ寂しいと呟く。
人として生きられなくなった100年に対する、万感の慟哭がそこにはあった。
首に置かれた手にも、もはや力は篭っていない。
思い浮かぶのは帰り道での会話。突然、人が変わったように纏う雰囲気が変質したエルのこと。
(あの時は、まだ彼女が吸血鬼だと知る前だったけど・・・)
勿論、智にはエルが過ごしてきた100年という孤独を理解することは出来ない。
ただ、あの冷たさも、第一印象の無邪気さも、先程の狂気も、この子供じみた幼い泣き声も。
全て、エルという『人』の一部だと智には思えた。
そして、そう考えると不思議なもので。
智は、先程まで感じていたエルへの恐怖が、霧が晴れるようになくなっていくのを感じていた。
敵意や悪意がなかったのも当然だった。
エルは訳の分からない狂った女などではない。
孤独の恐怖にただ震える、幼い子供でしかなかったのだ。
12歳で転化したというが、その時から心の成長が止まってしまったのかもしれない。
心は、人と触れ合い続けることによってしか育まれないのだから。
泣き止ませなければ。
どうすればいいかは分からないけれど、とにかく何か言わなければ。
その思いに突き動かされ、智は必死に身体を起こそうとする。
しかし、色々あって弱りきった身体は言うことを聞かず、ただ身体を小さく揺らしただけに終わった。
だがその小さな動きは、もはや死姦の如く智を貪っていたエルに絶大な反応をもたらした。
「え・・・? サトシ・・・くん?」
光を取り戻したエルの瞳が智を見下ろす。
智は泣いていた。
それは苦痛の涙ではなく、哀しみの涙。
自分のためではなく、エルのための涙だった。
殺そうと思った。でも殺し切れなかった。どうしても、あの照れたような笑顔がちらついて。
だから決断を放棄して、子供の心という殻に閉じこもった。
勝手に惚れて、勝手に犯して、勝手に殺そうとして。
それでも彼は、私を見てくれるの?
そんな人、いるわけないじゃない。100年探して見つからなかった存在。
まして、それが吸血鬼の男なら尚更・・・。
期待さえしなければ、落胆することもない。孤独の100年で得た教訓だ。
それでも何故か、今度こそという思いが心を縛って離してくれない。
目の前の少年が、恐らくは見た目の年齢通りの年月しか生きていない子供の瞳が、心を揺さぶって苦しめる。
彼に見つめられることがこんなに苦しいなら、今度こそ本当に殺してしまおうか。
たとえ、後でどれだけ後悔することになろうとも。
エルの冷静な部分がそう判断しかけた時。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・!」
それは、音にさえならなかった少年の声。
首に生々しい鬱血の痕を残しながら、それでもそれでも必死に言葉を紡ごうとする。
そして、エルには彼の言おうとしたことがはっきりと分かった。
泣かないで、と。
首に掛けられたエルの手が智の両手を握り、繋がったままの腰が再び動き出した。
しかしそれは、先程までのように一方的に貪るためのものではない。
相手に気持ち良くなってもらう為の、奉仕の動きだった。
時に激しく、時に優しく擦られ、しぼんでいた智のモノが硬さを取り戻してくる。
今のエルには、それがどうしようもなく嬉しい。
たとえ吸血鬼の精力によるものだとしても、智が自分を求めている証を感じられる。
「サトシ、サトシ、サトシ、サトシ、サトシ、サトシ、サトシ、サトシ・・・!」
狂ったように智の名前を連呼するエル。
動けない彼の為に、抱きしめた細い身体を揺り動かし、自分の動きと一致させる。
そして、すぐに波が来た。耐えるだけの余力のない智と耐える気のないエルではそれも仕方ないだろう。
「一緒にイこうね? 二人でだよ? もっと、もっといっぱい感じさせて! ねぇ、サトシぃっ!」
度重なる酷使の所為か、もはや智の意識は半ば無い。
身体の感覚はほぼ精神と切り離され、エルとセックスしている自覚もなくなっている。
ただ、エルが泣き止んだこと――泣いてはいるが、それが悲しみの涙でないことだけを何とか悟り、安堵する。
そして、一瞬感じた心地よい浮遊感に身を任せると、今度こそ完全に意識を落とした――。
「サトシ君・・・私の運命の人。
キミに逢うために、きっと私は100年の時を生きてきたんだね。
もう離さない。逃がさない。キミは私だけのもの。
血の一雫も、肉の一片も、精の一滴までも私のもの。
100年後のキミも、1000年後のキミも、朽ち果てる時のキミも、生まれ変わったキミも私のもの。
ね、お別れしよ。人間の世界に。
化け物は化け物と共にしか生きられないの。だからキミには私しかないの。
しがみついても辛いだけ。このままじゃいつかきっと、キミは私と同じ絶望を味わう。
そんな悲しい思い、キミにはしてほしくないから。
未練があるならさっさと断ち切って? 自分でするのが難しいなら手伝ってあげるから」
勿論、気を失った智が答えられるはずが無い。
それでもエルには、智の未練が分かってしまった。
夜な夜な出歩き、すまないと思いながらも赤の他人の血を吸い、そうしてまで智が守りたいと思うもの。
『千早・・・』
最初に気が付くまで、智が寝言で何度も呟いていた言葉。
日本が長いエルには、それが女の名前だとはっきり分かった。
自分に犯される智が、夢の中で犯していたであろう女。
あの時は気にならなかったが、今になって思うと酷く心が苦しい。
もしかして、付き合っている相手なのだろうか。
智はとても魅力的な男の子だから、それも仕方ないのかもしれないけれど。
毎日一緒に学校へ行き、向かい合って食事を取り、寝る前は欠かさず電話し、休日は手を繋いで色んな場所を散策して。
その日の夜は暗い部屋で抱き合い、愛を囁き、唇を貪り、一糸纏わぬ姿で睦み合い、奥深くへ解き放って。
あの優しい笑顔を、自分以外の誰かに向けるのだろうか。
衝動的に智の首へ手が伸びる。
が、すぐに我に返るとその手で智の髪を優しく梳った。
所々が尖ったようにはねている短い黒髪が、心地よいくすぐったさを伝える。
愛おしくて堪らない。食べてしまいたいほどに。
もう、この子は自分のものだ。
この子を傷つけていいのは自分だけ。他の誰にも触れさせはしない。
だから。
(消さなきゃね・・・その千早っていう子)
智が彼女と付き合い続けていれば、いつか必ず壁が現れる。
人間と吸血鬼という、越えられ得ぬ壁が。
その時に女の目に浮かぶのは、間違いなく怯えと蔑みの色。
そして残るのは、ズタズタに引き裂かれた彼の心。
許さない。
そんなもの許せるわけが無い。
だが、それは確定した未来だ。
・・・今のままなら。
自分が、未来を変えなくては。
自分の為に。そして何より、智の為に。
やべええええええええええ!!!
エルたんテラ萌エス(*´Д`)ハァハァ
涙は女の最終兵器だな
現時点では俺はエルを全力でで応援する
-------------------------------------------------------------------
「んんぅ・・・・・・」
カーテンごしに入る光が、智の目を覚ました。
「いだだだだっ・・・!」
起きあがろうとして、激痛に身を捩る。
負担を掛けないようそっと身体を起こすと、辺りを見渡した。
どこかのホテルの部屋、ベッドの上。少なくとも自分の部屋ではない。
「・・・・・・・・・・・・」
色々と思い出して、すぐ隣りを見下ろすと。
「んん・・・・・・」
エルが眠っていた。目が腫れて真っ赤になっているが、寝顔はとても安らかだ。
よかったと、智は安堵の溜息が漏らした。
だが、微笑ましい気持ちでいられたのも一瞬だった。
当然だが、目の前のエルは裸。
辛うじてシーツで大事な部分は隠れているが、服を着てないため身体のラインが布越しにくっきりと映る。
きわどい胸元や露出した太股による『見えそうで見えない』状態は、ある意味裸より性質が悪い。
そして思い出す、昨夜の自分たちの狂態。
一応初体験だったのだが、思い返して浸るには、あまりに衝撃的な思い出となってしまった。
自分の身体を見下ろすと、身体中傷だらけだった。刺し傷、歯型、その他諸々・・・。
(すごい傷だな・・・。ケンシ○ウかよ、俺は)
それに、一体何度エルの膣内に放ったのか。
自覚が無いのはある意味幸せなのかもしれない。
吸血鬼の性衝動を嫌い無意識に自慰さえも忌避していた智なので、昨夜の射精量は正気を疑うほどのものだったのだから。
(やっちまったんだよな、俺・・・。それも、こんな美人と)
エルに襲われた形とはいえ、『やられた』より『やった』と思ってしまうのは、男ゆえか。
これからどうすべきか、智は悩む。
取り敢えず頭に浮かんだのは、責任、避妊、妊娠、認知、否認。そんな言葉ばかりだった。
(ええい、ニンニンうるさいんだよ、俺!)
急速に引いていく血の気に、智は自分を叱咤する。
とにかく、エルと落ち着いて話さなければならない。
これからの自分、これからのエル。自分がすべきこと、彼女が望むことを。
そうと決めると、まずはシャワーでも浴びようかと考える。汗や様々な体液で身体はベトベトだった。
そして、何とはなしに時計を見て――絶句した。
(7時だって!?)
そう、朝7時。もう少し経てば千早が自宅にやってくる。その時自分がいないのはまずい。
千早に嘘はつけない。智自身千早に嘘はつきたくないし、何より言っても見破られる。
基本的にのんびり屋だが、智のこととなると異常なまでに鋭くなるのだ。
だからといって、本当のことを言えるわけも無い。
となると、どうすればいいのか――。
(すぐ家に帰ってベッドに潜り込む! そして体調不良を訴えて学校を休む! これしかない!)
実際身体は疲労でボロボロなのだ、嘘ではあるまい。
千早がやってくるまであと30分、このホテルと自宅の距離を考えると結構ギリギリだ。
となると、ゆっくりシャワーを浴びてはいられない。
タオルを濡らすと乱暴に身体を拭き、脱ぎ散らかされた服を身に纏う。服に性交の名残は無い。
全部脱がしておいてくれてよかったと、ずれた感謝をエルにした。
部屋を出て行こうとして、そのエルを振り返る。眠りはかなり深い様子だった。
朝に弱いというのは本当なのだろう。それに、彼女も相当疲労しているはずだ。
智が何とか起きられたのは、学校という毎日の習慣があったために過ぎない。
「・・・念のため、残していくか」
呟くと寝台のメモを一枚破り、何か書いてエルの枕元に置く。
智の携帯の番号だった。
「それじゃエルさん、また後で」
小さく微笑み、智は部屋を飛び出した。
何があっても、千早は智にとって一番大切な存在だ。その彼女に無用な心配はかけたくない。
思いのほかスピードが出ない、そんなままならない身体に鞭を打ちながら。
これが最後と、力を入れて智は走り出した。
今回はここまで。夜の物語はここで区切りとなり、舞台は昼の世界へ戻ります。
思いのほか長くなったせいでエルばかり目立ってますが、他の娘もちゃんと活躍させます。・・・多分。
三人称だとヒロインのサイコっぷりがうまく書けない・・・。
でも一人称で地の文を書くのはもっと苦手。
精進します、ちくせう。
途中で割り込んでしまったorz
すみません、吊ってきますorz
でも作者様GJ!
作者にお願いがあるのだが、
名前欄に(1/9)とか、
投下する前に何レスくらいとか入れてくれないだろうか。
そうすると割り込まないですむと思うんだ。
勝手なお願いだが頼みたい。
>>472GJ!
* * *
『モカ』
バイトから帰って来て、そのまま軽くベットに体を投げ出す。
ぐるりと寝返りをうち仰向けになり携帯を取り出しメモリから士郎君の番号をコールする。 五回のコールを待たないうちに電話は繋がる。
「はい」
――あれ? 涼子の声?
「シロウは只今お風呂で、電話に出られません」無味乾燥の涼子の声。
「あ、うん――」――こっちから何か言う前に電話が切られた。通話時間僅か五秒。
これってあれ? 携帯電話普及前の時代によくあった恋人の家に電話をかけるにはお父さん、お母さんのガードを掻い潜らなきゃいけないとかいうアレ。
でもねーでもねー、用件だけ言って切るなんてあんまりじゃないかな。それにいきなり切るなんて、そこまで愛想が悪かったかな。友達と弟の関係は適当に茶化したりしないのかな。
ま、いっか三十分ぐらいしたらもう一回電話しようか。
そう思っていると小さく鈴の音がなる。外を見ればこの間の白猫がいる。
「おいでおいでー」
窓を開けて声をかけると、この間の僅かばかりの警戒心は何処かに言ってしまったらしく、人懐っこく仰向けになってまで体をこすり付けてくる。
指を差し出すとしばらく甘噛みした後、私の指を咥えて舌を小刻みに動かし吸い始めた。
「赤ちゃんみたい」
士郎君にもやらせたいな、こういう事。
猫のお腹を撫でつつ、そろそろ頃合かなと思い、再び士郎君へと電話をかける。
しかし電話越しに聞こえてくるのは女性の声。
そんな――携帯の電源切れてるじゃん……
* * *
『士郎』
グィっと顔を前へと押し付ける。独特な柔らかさをもった感触につつまれる。その感触をもっと味わいたくて顔を擦り付ける。
猫が体を摺り寄せてくるのは自分の匂いを擦り付ける為だと昔テレビで言っていたが、自分は違うと思う。あの擦り付けている時の気持ち良さそうな顔を見ていると、気持ちいいから体を擦り付けたがっているようにしか思えてこない。
夢現の中、今顔を擦りつけながら、それは間違いないと思えてくる。
――はて、今顔を擦り付けているものは何なのだろう。一応知っているはずなのだが、半分眠った頭でははっきりしない。
瞳を開くとかすんだ視界のぼやけた焦点がゆっくりと合い始める。ついさっきまで顔をこすりつけていたものの上によく見知った顔があった。
一瞬体が勝手にビクッと跳ねたが、姉ちゃんはまだ熟睡しているらしく反応はなかった。
起こさないようにゆっくりと体を引き離しベッドから抜け出る。
カーテン越しに薄っすらとオレンジ色に照らされた部屋に脱ぎ散らされた衣服などない。
ベッドの端に腰を下ろし、姉ちゃんの顔を眺める。静かに規則正しい呼吸を繰り返す整った顔。ずっと見ていたのに――いやずっと見ていたから意識することを忘れてしまった顔。
気がつけば自分の右手がゆっくりと姉ちゃんへと伸びかけていた。
今自分はこの手でどうしたいんだろう。伸ばしていた手を戻し、意味もなく自分の手を何度も握り返す。
スキンシップ――だよな……
<チラシの裏>
ペルソナ3ようやくクリア
</チラシの裏>
>>477 GJ!!このモカ分補給で俺は後一週間は戦える。
そして今回で赤ちゃんプレイのフラグが立ったと思もうわなにをする離せえぇぇぇえええッ!!
これで精神崩壊痴呆エンドもOKなわけだな
合い鍵のエンドが一瞬横切ったが
ペルソナ3は会計メガネが萌えた
>>472 エルたん大奮闘w
千早は全くの予想外のところで智の貞操が奪われてしまっていることに気づくのか。
続きが楽しみな展開だ。
>>477 義姉キター!!
姉にかなり心が揺れ動いている今日この頃。
モカさんは苦戦気味な様子だがどう出るのか。
作者さんGJでした
義姉GJ!!GJ!!
いつもながら最高です。続きに期待してますので。
Wキター(*゚∀゚)
__,,,,....,,,,__
,. '"::::::::::::::::::::::`ヽ っ っ , ‐'´ ̄ ``` ‐、
/:::::::::::::::::::;::::::::::::::::::::', っ っ っ |\ ,' .,.., r‐-、. ヽ.
/::::::::::::::::::::::::/'ヽ::::!::::::::::::! っ っ っ |:::i | /./ ヽ. 、 i
ノ:::::/::::::;':::::::/ `ヽヘ:::::i:::::::::!. |:::i | { iノ 、 ヽ、 i i i
イ:::::i:::::::i::::::/ ● !::{l_)::::::!. |:::i | i.{ ○r‐r'、○__フ |、 │
.!:::::i::::::::!:::/_,、_,⊂⊃/::!/;::/. t i┘ | |⊃、_,、_, ⊂⊃ |ノ │
i::::/ハ:!V ゝ._) ´i/ヘレ' /⌒ヽ| ヘ ゝ._) |. |/⌒ヽ
レ' V>.、,.__ ,.イ、/!/ \ /::::ヽ >,、__ イ | / /
ヽ._,.ィ7!_/ヽ//ヽ、. <:::::く ン大ヒ ̄ フ::::,ヘ、__ ム
/i::::!ム!ヽ!/:::/:::::::ヽ. `ヽ</三.\/:::/ヾ::::_彡'
↑満足か?
携帯用まとめサイトが欲しいと言ってみるテスト
>>486 携帯からでも見れるよ?
ブラウザとか色々工夫してみて
携帯厨だけど今のままでいいよ
花梨はよくやっている。そう思う。
花梨達の情報収集と尾行を始めてもう三日になる。しかし、思ったほどの進展は無い。
二人とも、自分を吉備光にアピールしながら相手を牽制している状態で、まあ一進一退といったところだ。
だが、それで十分だ。花梨にはハンデがあったが、それを撥ね退けて対等の立場に立っているのだから。
これからも積極的に動き続ける限り、勝算はあるように思える。
それに、二人とも正々堂々と勝負をしているように見える。これなら、例え花梨が振られたとしても、諦めがつくだろう。
もちろん、振られたら落ち込むだろうが…その時は慰めてやればいい。
今、俺にできる事は無い。…いや、俺はすべきじゃない。そう思う。
…駅前に着いた。いつも通り花梨は家に向かい、吉備光と氷室蔓は電車に乗る。
尾行もここで終わりだ。
「はぁー今日も特に進展なかったわねもう面白くない」
「面白くないって、全く人事だと思って気楽だな」
「そうよねー名波にとっては愛しい花梨ちゃんのことだもんね気になるよね〜」
「だから違うと言ってるだろうが…」
と、四ツ川が口を開いた。最初の尾行の時は、ひそひそ声がやかましく感じる程喋りまくっていたのだが、
三日目となると流石に飽きてきたようで、今日の尾行で口を開いたのはこれが最初だ。
…いや、三日目だというのにすでに飽きてきた、の方が正しいかもな。こいつの場合。
でも、四ツ川がいるのは心強い。積極的に情報を集めてくれているし、尾行にも付いてきてくれている。
もっとも、面白半分で付いてきているのだろうが…それでも感謝している。
ふと、店の看板が目に入った。…そうだな、感謝しているし、な。
「四ツ川」
「なに名波?」
「お前、アイス好きか?」
「え〜とじゃあ私マンゴーとパパイヤとパイナップルと」
「…待てそんなに食うのかおまえ」
「なによおごってくれるって言ったじゃない」
「いやそうじゃなくて胃袋に入るのか?」
「あら知らないの名波女の子は甘いものは別腹なのよ」
かるくアイスでもおごろうと、サーティーンアイスクリームに入った所まではよかったのだが…
四ツ川が五つも頼んだ上に「私コーン嫌いなの」とカップで注文したため、店内で食べる事になった。
しかも店が結構混んでいたせいで二人用の席…そう、窓際のカップルが向かい合うような席に座るハメになった。
…なんか恥ずかしい。
「…でさ、俺は花梨はよくやってて心配要らないと思うんだ。」
「………………」
「それに、…なんだか花梨の味方をするのは、かえってよく無いような気がしてさ…」
「………………」
「聞いて…ないな。全然。」
「………………」
四ツ川はアイスを食べるのに夢中で、俺が話しかけていることにも気づいていないようだ。
こいつはご飯粒を飛ばしながら食事をするタイプだと思ってたんだがな。かなり意外だ。
…意外といえば、こいつの見た目もそうだ。割と美人系の顔立ちに、髪をきっちり肩の上までに切り揃え、
黒縁眼鏡をかけて、化粧ッ気も無い。静かにしてさえいれば、委員長、級長といった言葉が似合う。
そんなやつが表情をくるくる変えながら喋りまくるのだから…世の中は面白い。
…うわ、溶けかけたアイスをミックスし始めた。しかも五種類均一に。計算して食ってたのか。
つうかうまいのかそれ。うん、まあうまいかもしれないが、普通やらないよな。花梨だったらきっと
きっと、花梨だったら、どうするんだろう
昔はいつも一緒におやつを食べた。アイスだって数え切れないほど食べた…はずだ。
でも、思い出せない。アイスだけじゃなく、ケーキも、ポテチも、どんなものも
花梨がおやつを食べている姿が、思い出せない。
…そもそも、俺は見ていたのだろうか?
今の四ツ川のように、目の前の相手の事など気にしていなかったのではないか?
それは、単にお互いの距離が近すぎたせいなのか?それとも…
「名波」
「………………」
「名波?」
「………………」
「名波ってば!」
「………………ああ悪い、聞いてなかった。」
四ツ川はもう食べ終わっていた。どうやら結構な時間考え込んでいたらしい。
「もう呼ばれたら即座に反応するものよ名波らしいけど」
「…お前がそれを言うのか?」
「どういうこと?それはそうとアイス食べないの?」
「まだ食う気なのかおまえ…」
…とりあえず、自分のアイスを片付けよう。
「…でさ、俺は花梨はよくやってて心配要らないと思うんだ。」
「なに言ってるのよ名波あなたの花梨ちゃんへの思いはそんなものなの!?」
「いやだから何度違うといったら分かるんだそうじゃなく」
「男なら一度決めたことはやり通しなさいよ花梨ちゃんを盗られても良いの!?」
「…お前もしかしてホントに勘違いしてるのか?花梨を盗られた方がいいんだ!ていうか花梨は俺のものじゃない!」
…アイスを食べ終わって、もう尾行しなくても良いんじゃないかと切り出したらこれだ。
まあ、こいつと話す時はいつもこうだから、さほど気にはならないが。
「もう名波ったらこの私の親心がぜんっぜん分かってないんだから」
「…親心って何だ?」
「あのね花梨ちゃんたちを尾行するのにはもう一つ別の目的があるのよ」
「別の目的?」
「そう!名波に取材力を付けさせるための訓練も兼ねてるのよこの尾行には!」
ビシィーッ、と効果音が付きそうな勢いで四ツ川に指を指された。
…なんか話の雲行きが怪しくなってきたな。
「…取材力?」
「そう!だって名波は表新聞の仕事しかしてないでしょ裏新聞も経験しなきゃ」
…表新聞とは新聞部が毎月発行する新聞のことで、詳しい内容は割愛するが要するに普通の学内向け新聞のことだ。
表があるなら裏も存在するわけで、これは外部に漏れたら即座に廃部になるという代物。つまりはゴシップ新聞だ。
そして、我が校の新聞部員の意識としては裏新聞こそがメイン。つまり俺は部内でも異端の部員なのだ。
「…副編の仕事は表新聞だからな」
「名波は入部してからずっと裏新聞作って無いでしょ!手伝ってあげるから一回くらいやりなさいよ」
「まあそれはそうだが…」
「気になる花梨ちゃんのことが分かって新聞部員として成長できる!こんなチャンスをみすみす逃がすの名波?」
結局、四ツ川に丸め込まれて尾行は継続する事になった。その上、土日も花梨を監視するはめになるとは。
…今更しょうがないか。前向きに考えよう、前向きに。
ナンバーを付けてみましたが…いきなり間違えました。
名波はこれからも傍観者なのか、それとも新たな修羅場が発生するのか
なにはともあれGJです。
悪い意味ではないが、とらドラ!っぽいと思った
でも作者さんGJ!!
主人公?っぽいのが傍観っていうのは
今までにない感じだから、とても面白く読んでます
「う、うああ!」
あまりの恐怖に腰を抜かしながらも、その足音とは反対の方へ逃げる。と、僕が走ると同時に…
タッタッタッタッ!
タッタッタッタッ!
ああ、やっぱり。走って追いかけて来る。なんだ?いったいなんでだ!?なんでこんな怖い思いしなくちゃなんないんだ!?
「うああああ!!だれ、だれかぁ!!」
必死に走り回り、助けを呼ぶ。やっとの思いでナースセンターについたが……そこは、ただの地獄だった。
「うぅ!」
血塗れになり、無造作に置き捨てられた死体、死体、死体。ライトで照らしてはみたが、直視できるものでは無かった。
「う…うぇぇ……」
あまりの血なまぐささと光景に、胃の中のものを吐いてしまう。その吐瀉物の匂いで、さらに気持ち悪くなり、嘔吐…そんな悪循環をし、胃の中は空っぽになり、出るものもない。そこへ………
カツカツカツカツカツ……
ズルズルズルズリ………
恐怖はやってきた。その音が、僕を奮い立たせた。……逃げないと死ぬ……こんな死体になるのは、まっぴらごめんだ!
よろよろと立ち上がり、僕はそう決意した……
「あははははハハハハハハハ!!?海斗くぅーん!!そこにいるのぉ?」
「くっ!」
より一層狂喜を増した笑い声が響く。だめだ、出口へ行く前に、あいつをまかないと……
取りあえず懐中電灯を消す。心許無いが、これでは相手に場所を知らせるだけだ。それにだいぶ目も暗闇に慣れてきた。普通に移動するだけなら支障はない。
「くっ……とりあえず…」
足音から逃げながら、男子トイレの個室へ逃げ込む。こんな状況じゃ構わず入ってきそうだけど……運を天に任せるしかない。
カツカツカツ…………
ズルズルズル…………
足音となにかを引きずる音が、トイレの入口の前で止まる……気付かれたのか?
「…………」
「…………」
互いの沈黙が続く……本当に気付かれた?
「かーいーとーくぅーん……うーん……本当に逃げ足が早いよねぇ。昔っからそう……」
昔から……僕はあのストーカーと小さい頃に知り合ったのか?
カツカツカツカツカツ…
ズルズルズルズルズリ…
うまく隠れられたのか、音が遠ざかっていく。今は考えてる場合じゃない。一刻も早く逃げないと……
その前にまずは麻理だ。あいつを置いていけない。おぶってでも連れて行こう。
〜〜♪
「う、わっ!わっ!」
いきなり着信音が鳴り響く。慌てて消し、しばらく様子をみるが、気付かれた様子は無いようだ。胸を撫で下ろし、確認してみると……
「ん?」
画像が添付されていた。初めてのことだ。おそるおそる画像を見てみると……
「!!さ、えちゃん!?」
状況を忘れ、思わず叫んでしまった……いや、叫ばずにはいられなかった。その画像には、沙恵ちゃんが写っていた。当然普通の画像じゃない、
手足を縛られ、後ろの柱のようなものにくくり付けられていた。見る限り暴行を受けた感じは無い。気を失っているだけのようだ。
続いて本文を見る。
『鬼ごっこ開始〜♪今日は本格的にやるからルールを説明するね。
制限時間は夜が明けるまで。それまでにこの女の場所を探して、うまく逃げ出せたら海斗君の勝ち☆
もし私につかまったら、海斗君も死んで、この娘も死ぬ。夜が明けたらこの娘は自動的に死んじゃうよ★
海斗君を殺しちゃうのは悲しいけど……自業自得なんだからね♪』
……最悪だ。時間を確認すると、まだ十時半。夜明けにはまだ時間がある。その間に沙恵ちゃんを助け、この病院から逃げればいいのか。
となると、まずは沙恵ちゃんの居場所からだ。画像をよく見てみたが、全く手掛かりが無い。沙恵ちゃんと縛られている柱……タイルの床……
おそらくこの病院内なのだが、廊下も病室も全部タイルだったため、まったくヒントにならない。ましてやこの馬鹿でかい病院……見つけられるか?
ただでさえあの狂人が徘徊してるっていうんだ。それに逃げながら…
いや、これはゲームじゃないんだ。あきらめてリセット、なんてことはできない。せっかく沙恵ちゃんと心が通じ合ったんだ。
こんなところで一緒に野垂れ死になんて勘弁だ。
「……いくぞ。」
自分に活を入れ、トイレから出る。片っ端から探すしかない。取りあえずは一階から……なるべくストーカーに会わないよう、慎重に行かないと。
ここは五階。近くにある階段を見つけ、下を覗いて見ると、暗闇がまるで僕を飲み込むかのようにポッカリと穴を開けて待っていた……
(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
いったいこれからどうなるんだと…
wktkで待ってますw
こわいよ シザーマンが怖いよ
トラウマ引き出しちゃったよ(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブル
ハァハァ・・・
では投下致します
第11話『瑠依の計画』
すでに真っ赤な夕日が西の方へ傾き始め、風は温い風から心地良い風へ吹き始めた。
だが、屋上では夏の猛暑に負けないほど熱していた。
俺の背中から抱きしめられている腕の力が意外な登場人物のおかげで力が抜けてゆく。
俺自身ですら、なんで虎がこんな場所でこの場面に出てきているんだ。キャラ違うだろと驚いている。
「話は全て最初から聞かせてもらいました」
「あなたはだれですかっ!?」
「雪桜さんと私は一応初対面だったわよね。初めまして。こんにちわ。
極短い付き合いになるのかもしれませんが、私は東大寺瑠依と言います。
あなたの薄汚れた手で抱きついている剛君の彼女です」
「なぬっ!?」
瑠依の奴、こんな場面で一体何を言っているんだ?
「か、か、か、のじょですってっっっ!!」
雪桜さんがこれまでの付き合いで決して怒る姿は見たことがなかった。
瑠依の彼女発言でこれまで抑圧されていた気持ちが表に出てきているのだ。
大切に抱きしめていた俺から離れるとすぐに瑠依の方へ向かってゆく。
揺れるふわふわの長い髪が逆立っている気もするのだが、俺も慌てて歩きながら追いかけた。
「どういうことですか? あなたみたいな人が桧山さんの彼女って」
「言葉の通りよ。5年前からずっと家族ぐるみの付き合いをしているのよ。どこかに遊びに行くのも一緒だったし、
二人の時間が塵に積もるほど、互いを好きになっていくのは当たり前でしょう」
「ふざけないでください。そんな恋愛小説みたいな展開は実際にありえません!!
私は絶対にあなたが桧山さんの彼女だって認めませんからっっ!!」
「フフフ。負け犬は好きなだけ吠えればいいわ。だって、雪桜さんは剛君から絶縁されている程に嫌われているんだから」
「えっ……」
虎が雪桜さんの猛攻に余裕で流すと今度は己れの牙を彼女に向けようとしていた。
敵は誰であっても容赦することがない地の負けず嫌いの性格である。そんな瑠依は俺の方に寄ってくると腕を組んできた。
「雪桜さん。あなたの父親が彩乃ちゃんを殺したのよ。冷静に考えてみても、憎むべき加害者の娘を慕うことはないわ。むしろ、憎いはずよ」
「うっ……ぐすぐす」
「彩乃ちゃんは小学校に通うことを何よりも楽しみにしていたの。でも、あの事件で1ヵ月も通えずに未来を閉ざされてしまった。
私もあなたのおかげで大切な友人を亡くしてしまったわよ」
「そ、そ、そんなの私のせいじゃないもん」
「確かにあなたのせいじゃないかもしれない。ただ、赤坂尚志の娘というだけで私たちと雪桜さんの間には遠い壁が存在するの」
瑠依の言う通りに壁が存在していた。もし、雨霧雫に事実を教えてもらわなければ、雪桜さんを憎悪することもなかったはずだ。
虎の雄叫びはもはや止まるということを知らない。
口から溢れだしてゆく言葉一つ一つが雪桜さんを傷つける。
「やめてよ……。もう、やめてよ……」
目を真っ赤に涙を流しながら、雪桜さんはその場に座り込む。
助けを求めるように俺に視線を向け続けていたが、俺はあえて気付かない振りをしていた。
「剛君は私の彼女なんだから、もう近付かないでくれる?」
更に俺は事態をややこしくする虎に小声で囁いた。
(これ以上、雪桜さんを挑発しないでくれ。ってか、いつから俺はお前の彼女になったんだよ?)
(だって、仕方ないでしょう。私が彼女の役を演じてないと、雪桜さんは絶対にストーカ−になるわよ。
それでもいいの?)
(なるはずねえだろう)
(なるわ。絶対になる。わたしの紫色脳細胞がそう告げているわっっ!!)
(紫色脳細胞っ!? それ腐っているって)
(腐ってないもん。これ以上雪桜さんに付き纏われなくなかったら、私の言うことを聞きなさい。いいわね?)
長い付き合いの瑠依と恋人同士を今ここで演じるのはそう難しくない。
雪桜さんと絶縁するならば、他に彼女がいることを高らかに宣言しておく必要がある。
彼女がより傷つくことになるかもしれないが、もう一緒にはいられないのだから仕方ないことだ。
(わかった。お前の紫色脳細胞に全てを賭ける)
(よし。私に任せなさい)
虎よ。
正直言うとお前の作戦アテにしてないわ。
「ぐすっ。ぐす。二人で何コソコソ話をしているんですかっ?」
雪桜さんが弱々しく問い掛ける。その瞳は潤んでいた。捨てられた子犬のように何も知らない純真なままに。
「恋人同士の会話に雪桜さんには関係ないでしょう? ねえ。剛君」
「あ、ああ。そうだな」
「い、い、いやっ……。ひ、桧山さん……」
今まで拒絶した事実を雪桜さんは必死に頭を振って否定しようとする。
それは彼女にとって、どれだけの残酷なことなのだろうか?
ずっと苛められていた女の子にとって、これほど容赦のない裏切りはないはずだ。
心を切り裂くような痛みを雪桜さんは感じているかもしれない。
「この人と桧山さんが恋人同士なんて……。う、嘘ですよね?」
雪桜さんは壊れた表情を浮かべて、真っ赤になった瞳で俺に問い掛ける。
瑠依の作戦通りにここは肯定するしかないだろう。
「俺と瑠依は恋人同士なんだ」
「う、う、嘘だよ……」
その場で倒れこんだ雪桜さんは声を殺して泣いていた。
たまに嗚咽を漏らしながらも、身体全体を小刻みに震わせている。
俺は虎に目で『ここから離れよう』とアイコンタクトで訴えると、瑠依は首を下に向けて頷いた。
雪桜さんは徹底的に傷つけてしまった俺は罪悪感からここからすぐに離れたくてたまらなかった。
助けようと思った女の子を、結局は俺の手で傷つけてしまったという笑い話。これを偽善と言わず、何を言うのか。
屋上から立ち去ろうとすると瑠依は俺の腕を組んできた。
振りほどきたかったが、雪桜さんの前では恋人同士を演じる必要があるのでできなかった。
しかし。
「ふふふふっっっあっっははっはっ」
不気味な笑い声が聞こえると俺の背中に悪寒が走ってた。
後ろを振り返ると髪を纏めていた黄色のリボンを外した雪桜さんが無気力で立っていた。俺は恐る恐ると彼女の言葉を待つ。
「桧山さん。わたし、絶対にあなたのことを諦めませんから!!」
沈んでゆく夕日をバックにして雪桜さんが胸の位置に手を合わせて、しっかりとした口調で言った。
俺に裏切れ、傷ついたはず少女の事を華々しく思えてしまう。そこにはあったはずの憎悪とかではなくて。畏怖と畏敬であった。
「調子に乗るんじゃないわよっっ!!」
虎が真っ先に雪桜さんの言葉にキレて、彼女の方に尋常のない脚力で向かってゆく。そして、俺ですら見えない光速の右手ビンタが雪桜さんの頬を襲った。
「きゃあっ!」
「もう、私たちに近付かないでねっっ!!」
その一撃で昏倒する雪桜さんに虎は吠え続けていると飽きたのか、俺の方に戻ってくる。再び、腕を組むと、今度こそ屋上を後にした。
計画通り!!
私こと、東大寺瑠依はついにあの泥棒猫から剛君から引き離すことに成功した。
更にあの泥棒猫の致命的ダメ−ジを与えるという二重の攻撃。
始めは剛君をずっと風紀委員に拘束して、泥棒猫との接触を立とうしていたが。私の友人である雨霧雫の話は大きく事態を変わってしまった。
雨霧雫たちが雪桜志穂を苛めているグループであることを1年の頃から知っていたんだけど。
その苛めている理由は全く知らなかった。
だが、彼女を苛めている理由が明きからになると私はあの女がもっと嫌いになってしまった。
剛君の彩乃ちゃんやあの事件を引き起こした加害者の娘だということ。
なのに。
何も知らない剛君に近付こうとする雪桜志穂が憎くてたまらなかった。
あの事件でどれほど剛君が塞ぎ込んでしまったことやら。
だから、私は雪桜志穂を生き地獄に突き落とすために剛君と泥棒猫を近付けさせたのだ。
仲良くなってから、雪桜志穂の秘密をバラして、剛君が泥棒猫を憎むように仕向けた。
そう。
あんなに優しかった剛君から憎しみやゴミのような視線を向けられるのだ。
かよわい泥棒猫には決して耐えられるはずはないだろう。
そのまま、自殺してくれたら、どれだけ私は喜ぶことか。
本当ならね。
剛君に近付いた泥棒猫を監禁して、
指の爪を剥がして剥がして剥がして、
泣き叫ぶ悲鳴を聞きながら、私は電気ノコギリの電源オンにするの。
腕。
足。
4本を全て切り落としてから、それらをミキサーにかけるの。
出来たモノはさっそく泥棒猫に飲ませる。
さぞかしい、不味いと思うんだけど。剛君に近付いた罪はこんな程度じゃあ償うことができないわよね。
そこから、残った胴体を私が研いた刃物で突き刺す。
一本一本丁寧に突き刺して、苦しむ泥棒猫の姿をちゃんとHDDレコ−ダに録画しておく。
後で私がどれだけ頑張って泥棒猫を駆除しているのか剛君に誉めてもらうために。
胴体のあらゆる隙間に刃物が突き刺さっている時点で泥棒猫は生存しているとは思えないけど。
最後の仕上げとして、首を切り落とす。
その首の懲罰を剛君に決めてもらおう。
それで泥棒猫の処分は完了する。
これぐらいことはやりたいんだけど、現実では無理よね……。
うふふふ。
やりたいな。
狂ってしまった女の子に恐いものはない!!
さあ、愛しい彼のためなら、路上で30回刺したり
泥棒猫を駅のホームから突き落とせ!!
防犯ビデオに残ってないから、誰が押したのか立証は不可能!
確実な完全犯罪で恋愛の勝ち組の階段を駆け上れ
それでもだめなら、女の武器を使って、妊娠するまで押し倒せ!!
男に責任を取らせろ!
ストーカーは恋する乙女という辞書はダテじゃない!!
常に笑顔で彼の後を地獄の果てまで追い詰めろ
って展開は雪桜さんには似合わないんでやりませんが
虎に完全敗北した雪桜さんの逆襲は近いうちに始まるんで
とりあえず、頑張って書き上げようと思います
投下しますよ
つい我慢できずに、携帯のフリップを開いた。虎徹君とお揃いで壁紙として使っている
呑助の画像の上、踊っている数字は午前9時30分を示している。待ち合わせの30分前だと
いうのに心臓は早鐘のように脈打ち、時間の経過を不規則に伝えてくる。
喉が渇く。
気分を落ち着ける為にバッグからペットボトルを取り出して、蓋を捻る。軽いけれども
快い音が響き、それだけでも少し気分が楽になった。意識をそちらに向けるだけでも大分
変わってくる。一口飲めば爽やかな酸味と炭酸の刺激が口の中に広がり、爽快感が残る。
今までに味わったことのない妙な風味だが、なかなか美味しい。商品名は何だろうと思い
パッケージを見れば、『コテツミン8000』という文字。注意して底から中身を覗いてみれ
ば、虎毛色の液体が泡と共に揺れていた。本人曰く自毛らしく、その証拠とばかりに傷ま
ずに輝いている虎徹君の髪を連想させるその色はただ純粋に美しい。
良い出来だ。ユキが意味深な笑みで持たせてくれた理由が分かり、自然に笑みが湧いて
きた。大丈夫だ、という気分になってくる。
完成していて良かったと思う。祖父の経営する会社の一つに開発してもらっていたもの
で、今日に間に合うように急かしてしまったが彼らは見事に応えてくれた。これは祖父に
きちんと報告しなければ、と思いながらもう一口。
美味い。
これを見せたら、虎徹君は喜んでくれるだろうか。流石に愛用している頭身大の抱き枕
や1/1スケールフィギュアは見せられないけれども、これなら喜んでくれると思う。いや、
もしかしたら他のグッズを見せても大丈夫なのではないだろうか。
なんとなく想像をする。
薄暗い寝室の中、豪奢なベッドに腰掛けるわたしと虎徹君。それぞれの手には虎徹君の
顔をプリントしたグラスが握られており、中にはコテツミン8000が満たされている。軽く
振り傾けると泡が弾け、二人の仲を祝福する天使のラッパのような音が部屋に響く。乾杯
の声は必要なく、お互いの笑みを交わし合うのを合図に口に含んでまずは飲み下す。次は
口付けて虎徹君はわたしの、わたしは虎徹君の喉へと注ぎ込む。口の中でたっぷりと舌に
絡ませ、唾液とブレンドされた液体が喉を通過する感触を心地良いと思いながら視線を向
ければ、そこにあるのは愛しい人の微笑。繊細な手付きで頬を撫でられ、今度は純粋な口
付けを交わす。何も混じっていない完全純度の唾液が舌の上を滑り、自然な流れでわたし
はそれを受け入れる。グラスを置く音を背景に二人はシーツの海へと潜り込み、激しく唇
を求め合いながら相手の服に手指を伸ばしていく。
ここで、ふと気が付いた。
もしかしたら、思考が飛躍をしすぎているのではないだろうか、そう思いながら周囲を
見回した。視線が会った人は片っ端から目を反らすが、これは仕方のないことなのかもし
れない。現代人は無関係な人間と目を合わせて話をするのが苦手な人が多いし、わたしは
苦手ではないけれど、いきなり目を合わせてくる人を好きにはなれない。何事もバランス
とマナーが大切だと再確認をする。
周囲もおかしな様子がないし、わたしはセーフだな。
何も問題はないと頷いた後、どのくらいの時間が経ったのか気になり再び携帯の画面に
視線を落とした。コテツミン8000を飲む前から幾らも時間が経っていない。
素晴らしい!!
思わず叫びそうになったが、必死に堪えた。わたしは虎徹君の姉妹のように非常識な人
と違い、常識的な人間だ。虎徹君も、そうした方が喜ぶだろう。
しかし、不思議なものだ。
楽しい時間は早く過ぎてゆくと言うけれど、今は楽しい上に時間の経過も遅い。虎徹君
と会っている時間が一番だけれども、こんな時間も悪くない。だから、もう少し未来予想
をしても大丈夫かと考える。
数秒。
大丈夫、寧ろ今の数秒間のロスの方が問題だ。
そう結論し、無駄な数秒間のことを心の中で詫びながら続きを想像する。
間接照明の淡い光に照らされながらお互いに愛を囁き、衣服をぬがしてゆく。シャツの
ボタンを外すと見えてくるのは、普段の優しい言動からはあまり創造できない意外と厚い
胸板だ。体は細いけれども、引き締まっていると表現する方が正しいのだろう。雄々しい
そこにそっと唇を這わせると、虎徹君も同じようにわたしの胸に口付ける。顔を離すと、
そこに浮かんでいるのは桃色の斑点。愛しそうな視線を向けられ、手指でそこを撫でられ
ると、擽ったさに思わず笑い声が漏れた。それを嬉しそうな表情で見つめながら、虎徹君
はわたしの残りの服を脱がせてゆく。下着も外し、靴下のみを身に
付けたわたしを虎徹君は強い力で抱き締めた。
それから。
虎徹君はわたしの胸を擦り、絞るように揉み始める。手指の形に表面が窪み、圧力に合
わせて変形するのを楽しむように強弱をつけて弄び、時折先端の突起を甘噛みする。舌で
表面をなぞり、唾液で線を引きながら下方へと顔を移動させた。舌先で臍をこじりながら
軽く吸い、わたしが身をよじらせると更に下へと移動させる。そして最終的に辿り着いた
のは、股間の割れ目。クリトリスをねぶるように音をたてて刺激し、割れ目の周囲を舌で
舐めあげる。愛しい人にそうされると、只でさえ溢れていた蜜の量が一気に増してくる。
恥ずかしさに顔を赤く染めると、虎徹君は優しく髪を撫でてくれた。わたしは手指を絡め
て、しっかりとその手と握りあう。
虎徹君はもう片方の空いた手でわたしの尻を撫でながら、舌を濡れそぼった割れ目に侵
入させた。それは奥の方にまで伸ばされ、はしたない水音をたてながら丹念に舐めあげて
いく。今までとは比べ物にならない程の強い刺激に、さほど時間はかからずに達してしまった。
そして虎徹君は、硬くなった彼自身のものを当てがうと馴染ませるように割れ目の入口
で軽く上下させ、押し込むように……
轟音。
意識を現実へと引き戻したのは、目の前を通過した列車の音だった。大事な場面で邪魔
をしてきた車体を睨みつけるが、この駅に止まらないそれは無感情に通り過ぎていく。
いや、逆に良かったのかもしれないな。
口に出さずに呟き、思考を切り替えた。時間を潰すのにかまけていて肝心の生虎徹君を
少しでも見失ってしまうよりは、ずっと良い筈だ。これは、神がわたしに与えた警告なの
かもしれない。そう思いながら、虎徹君がやってくるであろう入口に振り向いた。
水音。
どうやら恥ずかしいことに濡れてしまっていたらしい、今になって気付くのも間抜けな
話だと思う。ただ、何故か周囲の人が全員わたしから距離を取っていたのが幸運だった。
下着を変えようかとも思ったけれども、その間に虎徹君が来るかと思うと移動する気には
なれなかった。
仕方なく電車の中で変えようと決めて、吐息を一つ。そう決まれば後は待つだけだ。
数分。
「ごめん、待った?」
携帯を見ると、表示されているのは9時45分。9時から待ち続けていたので都合45分待
ったことになるが、これは興奮しすぎて待ちきれなくなり早く来すぎたわたしの問題だ。
虎徹君は悪くない、それどころか感謝の言葉を伝えたいくらいだ。今回はたまたまわたし
が早く来てしまったからこうなったが、現に約束の時間より15分も早く来てくれている。
わたしは軽く首を振ると笑みを浮かべ、虎徹君にペットボトルを差し出した。
今回はこれで終わりです
忘れている人が多いと思いますが、青海も変態ですよ?
それと、良いことなのか悪いことなのか分かりませんが、
最近は下品なものや頭の悪いものばかり書いている気がします
仕事疲れというものは恐ろしいですね?
|ω・`) 作品がいっぱい投下されてるわ
平日の疲れを癒すひと時をありがとうございますm( __ __ )m
>>508 似合わない展開の中においらのツボをつくシチュが!
それはともかく逆襲、楽しみにしてます(*´д`*)
>>515 青海エロスぎ(*´д`*)
変態って素敵です
鬼、雪、とら……この凄まじい連投!
しかも何れも言うまでも無くGJ!
白き牙投下しようと思ったんだが今は止めたほうがいいかな……
帰宅後の憩いのひととき
神達に感謝しつつ
テ ン シ ョ ン 上 が っ て き た
雪桜さんの逆襲に期待だな。あと虎はこのままポジションをキープできるのか。
青海よ、それは本人に見せてもいいものなのか・・・
作者さんGJです
>>508 剛君は私の彼女なんだから
まさか、百合展開!!!?
521 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/12(火) 00:06:01 ID:PshM5bIG
それって男女関係の役割が普通とは逆という意味では?
「どうしたのクリス?」
深い森の中、突然歩みを止めたクリスに私は声を掛けた。
「今、遠くで悲鳴が……」
耳を澄ましてみるが私には何も聞こえない。
しかし聴覚も含めクリスの五感はうちのパーティーの中では随一。
故にいつもモンスターの襲撃などには一番に気付く。 だから――。
「確かなの?」
私が問うとクリスは頷く。
私達は互いに顔を見合わせ頷きあうとクリスが視線を送った方向に向かって駆け出した。
果たして其の先には予想した通りモンスターに襲われてる人たちの姿があった。
巨大な体躯のレッサーデーモンが一匹に羽根の生えた人間大の悪魔が数匹。
襲われてるのは豪華な装飾が施された馬車。 見るからに良い所のご令嬢でも乗ってそうな感じだ。
馬車の周りでは護るように数人の兵士達が奮戦してるが……全然なってない。
彼らの装備は見た目ばっか豪華で派手で全然実戦向きには見えない。
そんな彼らがモンスター達の相手が務まるわけが無い。始終押されっぱなし。
あ、一人やられた。
私はリオの方をチラッと見ると呪文を唱え始めていた。
口から流れ紡ぎだされる詠唱ははまるで異国の唄のような神秘的な響。
詠唱が終わるや否やリオは照準を定める様に掌をモンスターに向かってかざす。
瞬間幾つもの氷の矢が現れ飛来し羽悪魔たちを刺し貫いた。
今の初撃で約半数のモンスターを撃破。
残ったモンスターたちは直ぐにコチラに向き直り襲い掛かってきた。 が――。
「ハアァッッ!!」
群る羽悪魔どもに向かってクリスはグレイブを振りぬいた。
まるで空気ごと引き裂くような強烈な一振り。
其の一撃で残った羽悪魔どもは全て切り裂かれ、或いは叩き落された。
流石はリオとクリス。 二人共一撃でモンスターの殆どを打ち倒した。 だがまだ終りじゃない。
モンスターの群の首領格のレッサーデーモンが鋭い爪が生え揃った腕を振り上げる。
だが其の腕が振り下ろされるより先に私は懐に飛び込みアルヴィオンファングを一閃した。
純白の刃を受けデーモンの首が地面に転がり落ちる。
そしてそれにやや遅れデーモンの巨体が音を立て崩れ落ちた。
時間にしてほんの数秒。 其の数秒でモンスターの群は全て物言わぬ骸と化していた。
モンスターの全滅を確認し刃を鞘に収めると耳に歓声が飛び込んでくる。
声を上げたのは言うまでも無く先ほどまでモンスターに苦戦してた兵士達。
まぁ、当然よね。 死の危険から脱する事が出来たのだから。
そして皆口々に感謝の言葉を発する。
中には感極まってか恐怖から開放された喜びからか泣いてるものまで。
其の中の一人が馬車に向かって声をかけてる。
「ナタリーお嬢様。 もう大丈夫ですよ」
そして現れたのはきらびやかな衣装に身を包んだ少女。
其の装いは乗ってた馬車の豪華さからも予想してたがやはり良い所のご令嬢と言った感じ。
見るからに苦労知らずと言った感じで今まで大事に育てられてきたのが伺える。
そして其の顔には貴族や上流階級特有の他人を見下した雰囲気が感じとれる。
其の顔は――一応お礼の一つでも言っておこうかしら――そんな風。
はっきり言って嫌なタイプ。
別に私達は感謝されたくて助けたわけじゃない。
それでも助けてもらった癖にまるで値踏みでもするような其の視線は癇に障る。
そして口を開こうとした小娘の表情に変化が。 何かに気付き或いは見つけたかのような。
頬を染め其の視線を向けるその先にあるのは――リオ?
小娘はリオの下に駆け寄ると其の手をとり口を開く。
「貴方が助けてくださいましたの?! 心よりお礼申し上げますわ」
こ、この小娘ぇぇぇっ!! 何馴れ馴れしくリオの手なんか握ってんのよ!
私は思わず逆上し喰って掛かりそうになる――が。
「落ち着いて姉さん」
逆上しそうな私を制してくれたのはクリスだった。 だが――。
見ればクリスの手はグレイブををきつく握り締めわなわなと震えていた。
そうよね。 年下のクリスが耐えてるのに姉貴分の私が堪えられないでどうするのよ。
「ありがとう。 もう大丈夫よクリス」
私はそっとクリスの肩を抱き応えた。 そして再び視線をリオのほうに向ける。
「いえ、私一人の力じゃ有りません。 私の大切な仲間の力があればこそです」
そう言うとリオは私達を紹介するようにこちらに向き直った。
「まぁ、そうでしたの。 貴方たちもご苦労様でした」
そう言った小娘の言葉には何の気持も込もって無い棒読み。
”一応”とか”ついでに”とかそんな適当な気持の込もってないお礼なんかいらないのよ!
「いいえ、お気になさらないで下さい。 困ってる人がいれば助けるのは当然の事ですから」
私は笑顔を取り繕って答える。
が、その時私のこめかみは自分でも分かるほどにピクピクと引きつっていた。
「そう言えば助けて頂いたと言うのにお互い未だ名前も名乗ってませんでしたわね。
わたくしナタリーと申しますの。 貴方のお名前は?」
「リオと申します。 そしてこっちが私の大切な仲間セツ……」
「まぁ!リオ様と仰るの!とても素敵なお名前ですわ」
喋ってる途中のリオの言葉を遮るように小娘は口を開いた。
私らのことなんか眼中に無いってか?! 本当イイ性格してるわね?!
しかも未だ馴れ馴れしく掴んだリオの手を更に自分のほうへ引き寄せ――。
人を見下した小娘の馴れ馴れしい態度にいい加減私の我慢の限界も越えそうなその時――。
ドンッ!!!と地面を揺さぶるような重い音が響いた。
音の正体はクリスがグレイブの穂先の逆側――石突を思いっきり地面に叩きつけた音だった。
見れば地面にめり込み刺さってる。
そしてクリスの顔を見れば……うわ、目が据わって――って、アンタがキレちゃってどうするのよ?!
と、兎に角落ち着かせなきゃ。 えぇっと……。
「そしてこの二人がセツナとクリス。 私のかけがえの無い大切な、そして頼もしい仲間です」
すかさず私達のもとへ駆け寄ってきたリオが私とクリスの肩を抱き口を開く。
クリスの顔に再び視線を送ると――。
私はホっと胸をなでおろす。 どうやら落ち着いてくれたみたいね。
私の方もクリスが先にキレかけたお陰で結果的に血が上りかけた頭も冷えてくれた。
「そうよ。 私達三人は数多の死線を共に潜り抜けてきたかけがえの無い仲間なの」
私は小娘に牽制の視線を向けながらそう言ってリオの腕に抱きつく。
そしてクリスに目配せすると、クリスもリオにしがみつくように身を摺り寄せた。
そう、リオに接していい女は私と、そして可愛い妹分のクリスだけ。
……コレットは、今は黙ってるけどいつか絶対引き剥がしてやるんだから!!
だから――。
あんたみたいな小娘の出しゃばる幕じゃ無いのよ!
To be continued...
嫉妬オーラ全開カワユス(*´д`*)ハァハァ
526 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/12(火) 01:05:27 ID:PshM5bIG
いつかはその妹分を刺し殺すほどの嫉妬をリオに見せてくれるだろう
526さん、メール欄にsageといれたほうが良いかもだわ
修羅場スレ君はもてもてだからあんまり目立つと泥棒猫に取られちゃうの
そんなことになったら・・・私・・・
クリスのほうがリオより強い狂気を持ってるんじゃないかと思ったり、どうなるんだろう|ω・`)
この先どういう展開になるか読めないから楽しみで楽しみで(*´д`*)
と書こうと思って間違って送信してしまった
>>527 2個に渡ったレス申し訳ない」 ̄l○
>>528 >クリスのほうがリオより強い狂気を持ってるんじゃないかと思ったり、
リオとセツナ名前間違えてないカイ?
たしかに風呂場での修羅場といいクリスの方が切れると怖そうだな
この時間まで書き込みなしかよ・・
ついに勢いは下落してしまったか
そんな日もある
533 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/12(火) 23:48:47 ID:24bHtkr7
雨が降る晩に包丁を持って震える女としたたる血
ユメカとセツナ分が切れてきた・・・・
>>531 投下してくださる方にも都合がある
もう少し落ち着くんだ|ω・`)
こういう時こそ阿修羅殿が管理していらっしゃるまとめサイトの過去ログを読むんだ
溜まらん(*´д`*)
名前を間違えるとフラグが・・・
デート中にうっかり別の女の名前で呼びかけるとどうなるんだろう……。
年齢の半分が彼女居ない歴のオレにはわかんねぇ。
>>539 パーなら良いじゃねぇか
俺なんかグーで脇腹打たれてグロい青痣が出来たよ
空手ガール怖い
プロットでも投下してみる。
どこかで見たことあるような話だが・・・。
プロット1・・・退魔師の一族の兄妹。命令のまま妖を狩りながら、兄は自分たちの行いに疑問を抱く。そんな折に妖の少女と出会い仲良くなるが、そのために裏切り者とされ、妖の陣営に身を投じることになる。
一方最愛の兄が裏切ったと信じられない妹は、兄が妖に騙されていると思い込み、狂って殺戮の鬼になる。妖の少女も、彼にしきりに気にされる妹に嫉妬し、戦いの最中亡き者にしてしまおうと考えるようになる。
プロット2・・・徴兵され、故郷に恋人を残して戦争に出てきた青年は、大怪我をして倒れていたところをある女性に救われる。戦争が終わったら恋人のところに帰りたいと療養しながら毎日のように話す青年と、
いくら尽くしても命の恩人以上に見てもらえない女性。戦争が終わって、青年が去ってしまうことに恐怖した女性は、青年の食事に微量の神経毒を混ぜることで、身体の復調を邪魔しようとするのだが。
プロット3・・・ヒロインが毎日付けている日記をそのまま物語にした形で話を進める。
ヒロインはストーカーで、ひたすら主人公の一日の行動を追い、自分に対する主人公の行動をひたすら都合よく解釈する。その日の感情、というか泥棒猫の行動によって、
文体が乱れたり、ひたすら呪詛ばかりだったり、シャープペンの芯が折れた跡がいくつも見受けられたりする。
>>541 プロット3を見た瞬間からwktkが収まらない……プロット1も捨てがたいな
>>541 プロット3は最後に第3者目線での話が見れてどういう状況だったのか分かったりするのかな(*´д`*)
これはプロットで妄想するだけで興奮が止まらないわ(((( ;゚д゚)))アワワワワ
全てが捨てがたい…
そうか、 全て書いてもらえばいいんだ。
ガラ…
「違う………いったいどこにいるんだ…」
あれから一階から一番上の六階まであらかた探してみたが、沙恵ちゃんはどこにもいない。居場所がわかるヒントもない。
ここまでくると、本当に病院内にいるかどうかも怪しくなってきた。 まだ時間は残ってるが、このままだと見つけられるか危うい。
「はぁ……沙恵ちゃん……ごめん、僕のせいで。」
守ってみせると誓ったのに。このざまじゃあ顔向けできない。疲労と絶望にやられ、廊下に座り込むと………
カツカツカツカツカツ………
ズルズルズルズルズル………
ああ、もういっそのことこのままつかまり、殺されてしまった方が楽かもしれない。逃げ回っているのが向こうの楽しみなんだから。
「はは……なに考えてるんだ、僕は。」
死んでいいわけがない。死ぬ時は幸せに死ぬって決めてるんだ。それには……沙恵ちゃんが必要だ。
「逃げないと……」
疲れ切った体を引きずるように階段まで行く。だが、足がもつれて転んだ拍子に、懐中電灯を手放してしまい、下へと落ちてしまった。
後ろからは鬼がせまってくるから引き返せない。
「……取りに行かないと…」
暗闇の中、鬼から逃げるように階段を転げ落ちて行く。そのまま一階まで行ったが、懐中電灯は見当たらない……
「くそっ…どこに……」
カツカツカツカツカツ……
ズルズルズルズルズル……
「あははははハハハハハハハ!!!!海斗君たらぁ、懐中電灯無くしちゃったのぉ?うふふふ……ドジだけど、そこがかわいいなぁ。」
狂喜の声が階上から降るように聞こえて来る。確実に距離は縮まっている。どうすれば……
「あ……」
よく目を凝らすと、さらに下から光がもれて見える。……暗くて分からなかったけど、どうやら地下があるらしい。まだ探してないところだ。
きっと沙恵ちゃんはここにいるのだろう。………とはいえ、鬼がせまっている。このまま行けば追い詰められる……
「よし……」
バァン!
階段部屋のドアを思いきり開け、逃げたようにカモフラージュする。そのまま地下へ……様子をみて、覗き込んでみると。
カツカツカツカツカツ…
ズルズルズルズルズル…
「!!」
確かに今初めて鬼を見た……暗くて顔がわからなかったが……
手に持っていたのは、なにやら銀色に光る物だった。……刃物か何かだろうか。もっと重いように感じるけど。
なにはともあれ、うまい具合に騙され、外へ出て行った。このすきに沙恵ちゃんを探そう。どうやら地下は倉庫になってるらし。
……霊安室があるけど……いや、やめとこう。他で見つからなかったらということにしよう。
片っ端から見ていく。だけどどこにもいない……まさか本当に霊安室に?
そんな不安を抱えたまま最後……第三倉庫……頼む、ここにいてくれよ……
ガチャ
ゆっくりと開けて入ると……
「だ、誰?だれ……なの?」
いた!部屋のどこかで沙恵ちゃんの声がする。沙恵ちゃんの声を聞いた途端、一気に疲れが吹き飛んだ。意気揚々と奥に行くと……
「沙恵ちゃん!」
「か、海斗?海斗なの!?」
光の先には、画像と同じように縛られた沙恵ちゃんがいた。
「大丈夫だよ、沙恵ちゃん。いま解くから…」
幸い、ロープは手で解けるぐらいのものだった。手足のロープを解いた途端……
「か、海斗…海斗…うぅ…」
沙恵ちゃんが泣きながら抱き付いてきた。
「わ、わたし……いつの間にか気を失って……ぐす…気付いたら、真っ暗なとこ、で………うぇぇ……縛られて……怖かったよぉ……」
安心したのか、すごい強い力で抱き付きながら、顔を胸に押しつけてくる。……慰めたいのは山々だけど…
「ねえ、海斗…いったいなにが…どうなって……わたし……こんな……」
「うん……ごめん、取りあえず説明は後でするから…いまはまず、ここから逃げ出そう。ちょっとまだ安心できないから。」
「そ、そうなの?」
「うん、じゃあ、立てる?」
「うん…」
おぼつかない足取りだが、何とか自分の力で立ち上がる。沙恵ちゃんの手を取り、ゆっくり外へ出る。
「海斗……暗いよ……」
「ああ、ごめん。」
懐中電灯をつけ、辺りを照らす。もう慣れたのか、沙恵ちゃんもちゃんと歩いてついてくる。まだ手をつないだままだけど……不安なんだよな。僕が頑張らないと……
階段へと向かい、歩いて行く途中……さっきの霊安室の前に来る。それにしても良かった。ここを調べる事なく沙恵を見つけられて……
バァン!!
「え…」
「きゃぁぁ!?」
突然開いた、霊安室のドア……その中からは……
「あはははは……海斗君……すごいねぇ…でも、まだまだだよ?鬼ごっこは…ここから逃げるまで終わらないよぉ!!」
「あ、あ…いや……」
完全に混乱し、腰を抜かしてしまった沙恵ちゃん。だが、そんな沙恵ちゃんにも、無情に凶器を振り上げる。…それは、血に塗れた鉄バットだった。
「私の海斗君を取った泥棒猫!殺してやるぅ!!」
ブン!
「危ない!」
ガァン!
間一髪で沙恵ちゃんの体を引き寄せ、なんとか回避する。たたき付けられたバットは、物凄い音を響かせる。
「あはははは…ハハハハハ!海斗君たらぁ、ダメじゃない。じっとしないとその女を殺せないよ?
ほら、早くその女を渡して?そしたらすっごく気持ち良いことしてあげるから♪」
「それは、勘弁だね!」
未だ動きそうにない沙恵ちゃんの体を抱き抱え、お姫様抱っこのまま走って逃げる。毎日鍛えていたせいか、沙恵ちゃんがとても軽い……いや、もともと沙恵ちゃんは軽いのか。
「待てぇ!!」
鬼も少し遅れて追いかけて来る。今度こそ……本当の鬼ごっこだ!
「はっ、はぁっ、はっ、はぁっ………」
階段をかけ上がり、一階へ。このまま外へ出ても追いかけられてしまう。だいぶ距離は開いたが、まだ視認できる距離だ。
「海斗君!その女を落として!」
相変わらず怖いセリフをはきながら追って来る。さらにスピードを上げ、角に隠れると、鬼は気付かずに通り過ぎていった。
「なんとかまいたね……」
沙恵ちゃんも自分の足で立っているが、状況をつかめていない。説明したいが、今は時間がない。取りあえず麻理を見つけ、逃げようとすると……
「あ…麻理…ちゃん?」
「え?」
沙恵ちゃんの指差すところに、麻理がいた。ちょうど良かった。これでこのまま逃げられる。
「麻理!急ごう。ここから逃げるよ。」
そう言って麻理の手を握り、歩こうとすると……
「?」
麻理に引っ張られ、動けなかった。沙恵ちゃんも麻理につかまれ、動けないらしい。
「ま、麻理?」
どんなに力を入れても動かない……まるで麻理が岩のように、その場から離れない。そして麻理は……慌てることなく……
「あはははは…つかまえた……おねーちゃん!」
「は?」
つかまえた?なにを……あの鬼みたいなこといってるんだ?それに、そんな大声出したら……
カツカツカツカツカツ……
ズルズルズルズルズル……
あいつが……
「うふふふ……さすが、私の妹ね、麻理。やっぱり、鬼ごっこには騙すのも必要よねぇ?」
イモウト……この人達は……なにをイッテルンダ?麻理ハ僕のイモウトダロウ?…アき乃葉セン輩のイモウトなわけないだろ?
「あっはははは……見事に騙されてくれましたねぇ?………おにいちゃん…いえ、海斗センパイ♪」
イ味がワカらなかった。だって……麻リが僕をセンパイダッテ?アハハ……そんな……ダレカオシエテクレ?この現状を!?!?!?
すっ
僕の手を取る秋乃葉センパイ………
「ふふふ……最後の最後、残念だったね?麻理に裏切られて………」
次の瞬間、口に何かを当てられた。そのまま僕は、抵抗する気力も無いまま、意識を失った………
遂に鬼キタ━━(゚∀゚)━━!!
しかしこれは…完全に予想外の展開
どうなるんだ((( ;゚Д゚)))ガクブル
>>551 いぃいぃぃやぁぁっほおぉぉぉうッッッ!!!!!!!!!
キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)━━━!!!!
wktkがとまらない
キモ先輩キター!
沃野のサウンドノベルが落とせない……。
俺は2のプロットがいいとオモタ。その場合は恋人の存在をどう登場させるかとかいってみる。
わけ わか らん♪
∧∧ ∧∧ ∧∧
(=゚ω゚) (=゚ω゚) ヽ(=゚ω゚)ノ
ヽ(x ヽ) (ノ x)ノ (∩ x)
< < ) ) U
鬼ごっこキター。良い方向に予想の斜め上な展開にwktkですよ。
そりゃ妹が共犯ならどうにも逃げられない罠。ちょっくら今までの読み返してくるぜ
これで週末まで戦えそうだぜ・・・・
サンキューなjSNxKO6uRM
投下します
wktkwktk!
って、兄妹じゃなかったのか?
>>556 夏コミ前からそうだったと思う。
まあゆっくり待とうや。
563 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/13(水) 23:00:51 ID:kARZs0mv
主人公はずっと苛められ続けていてそれでもそんな彼を愛しているという人が出てくるんだけど、
ずっと苛められ続けたからそんな好意とか優しさも後からくる苛めの伏線とか、からかいとしか思えなくて、
というか信じられなくてその彼女を拒絶する。で、彼女のほうは、好きだという気持ちを信じてもらえないうえに、
ひどい拒絶をされて、どうして私を信じてくれないの、とだんだん病んでいく。というのはこのスレ的にはどうでしょうか?
日差しがじりじりと肌を焼いている。
見上げれば眩しい太陽。
眼前に広がる白い砂浜、青い海。
海鳥が空で歌っている、絶好の海水浴日和である。
ユウキ・メイラーは灼けるような日差しに目を細めながら、大きく伸びをした。
執政省で働き始めてから早4ヶ月。
夏の休暇を与えられたユウキは、悩んだ挙げ句、海に来ることにした。
帝都から馬車で丸一日はかかるところにある、行楽都市テシヤ。
宝石のような海で名が広まっており、夏は大人気の旅行先である。
しかもその一等地。海は特に綺麗で、海水浴場持ちで完全予約制の宿を、取っていた。
正直、安くはなかった。
しかし、職場の先輩の紹介もあり、一念発起して、この海に来ることを決意したのだった。
「ユウキさーん。お待たせしましたー」
「お兄さん、よ、よろしくお願いします……」
――ユメカ、セツノと共に。
「うわー。綺麗な海ー。ユウキさん、泳ご、泳ご!」
ぐいぐいとユメカが腕を引っ張る。
淡い緑の水着を着たユメカは、まるで童女のようにはしゃいでいる。
帝都に住んでいたら縁のない海を前にしたからか、それともユウキと一緒にお出かけだからか。
どちらにしろ、身体全体でその喜びを表している。
その身体は水着で隠されているところ以外は、惜しげもなく陽光に晒されていた。
こんな日差しの中に晒してもいいのだろうかと心配してしまうほどの白い肌。
その弾力性は毎晩(無理矢理)味わわされてるが、それでも思わず喉が鳴ってしまうほど艶めかしい。
これで妖艶な笑みでも浮かべてみせれば、海に散らばる男達を、軒並み落としてしまいそうだが、
今のユメカは妖艶とは全く無縁の、健康的な美しさに溢れていた。
それはきっと、彼女の全身から溢れ出る「楽しんでますオーラ」によるものなのかもしれない。
どうやら、喜んでもらえたようだ。
知り合ってから4ヶ月。同居は3ヶ月。
怪しげな諜報員姉妹だが、ユウキにとっては居て当たり前の存在になっていた。
2人には色々世話になっているからこそ、こんなお高い旅行も決意できたのだ。
この旅行、2人には特に楽しんで欲しいものだ、とユウキは思っていた。
特に、毎日三食、美味しい手料理を振る舞ってくれるセツノには、普段の仕事を忘れて、楽しんで欲しい――
「――って、あれ? セツノちゃん?」
姉はこれでもかというくらいはしゃいでいたが。
妹の方は、姉のようにはしゃぎ回ったりせずに、俯いてじっとしていた。
ユメカの水着のインパクトで気付けなかったが、セツノは水着姿ではなかった。
上に大きなタオルを巻き、生足だけが伸びている状態だった。
下はおそらく水着だろうが、タオルにくるまれていてわからないため、生足が妙に視線を惹きつける。
(って、年下の女の子に何変なこと考えてるんだ僕は!)
頭を振って煩悩を打ち払う。
そして、セツノが黙って己の体を隠す理由を考える。
海が気に入らない、というわけではないだろう。
この旅行の件を打ち明けたとき、セツノも言葉には出さなかったが相当喜んでいたと思う。
しかし、現状ではそうは見えず、顔を赤くして俯いて、タオルで全身を隠している。
(ん? 顔を赤くして?)
よくよく見てみれば、セツノの頬は赤く染まっていた。
ひょっとして――
「体調が悪いんですか?」
ユウキはやっぱりユウキだった。
まあそれはそれとして。
セツノはぶんぶんと首を振り、恐る恐るユウキの顔を見上げてくる。
「あの……見ても、笑わないでくださいね?」
「?」
何に対して笑うというのか、ユウキははてなと首を傾げた。
セツノは顔全体を紅潮させて、小さく「えい!」と気合いを発した後。
はらり、と。
全身を隠していたタオルを砂浜に落とした。
水着は純白で、よくあるタイプの一体型。
所々にちりばめられたフリルが可愛さを引き立てている。
すらりと伸びた手足は年の割には美しさが際立っていて、本当に14歳かと目を疑ってしまうほど。
スタイルも悪くない。姉に比べて背も胸も遠く及ばないが、それでも同年代の平均は突破していると思う。
もともと、ユメカに似て目鼻の整った美少女である。
それが、肩や生足を晒して、表情を恥ずかしげに赤く染めている様は。
「素敵ですね」
と、無意識のうちに言わせる破壊力を秘めていた。
「〜〜〜〜〜ッ!」
くるり、と反転。
そしてダッシュ。
「え、ちょ!?」
慌てるユウキは置いてけぼり。
セツノは砂浜の向こうへ、赤い顔のまま駆けていった。
呆然としながら、セツノが走り去るのを見送るユウキ。
そのユウキの肩を、白い指がつんつくつんと突いていた。
「……ユウキさん」
振り返ると、拗ねたようなユメカの顔が。
「私には、何も言ってくれないんですか?」
唇を尖らせて抗議するユメカも、とんでもなく可愛いもので。
さて、自分はどう発言すべきだろうか、とユウキは悩むことになった。
「…………」
ゆらゆらと。
水面に広がる、長い黒髪。
周囲には誰もいない。
がぼん、と頭が水中に沈む。
そして数秒。ぷくぷくぷく、と水泡が漏れている。
「…………」
何やら海の中で身悶えした後、ざばあ、と頭が浮上してきた。
その表情は――なんというか、緩みきっていた。
「……にへへ……」
ぽーっとした表情で、中空をぼんやり眺めている。
かと思えば、唐突に沸騰したかのように真っ赤になり、再び沈んで身を捻る。
「……“素敵ですね”だって! いやーっ! きゃーっ! 来て良かったーっ!」
ざばざばざば、と水面で暴れてしまう。
あと1時間はユウキのもとへは戻れないだろう。
ばんばんと水面を平手で叩く。
女の子のものとは思えない豪快な水柱が立つが、そんなことは欠片も気にせずに叩き続ける。
「“素敵”! “素敵”! “素敵”!
これってアレかな? やっぱりアレかな!?
一生懸命水着選んで良かったよー!
姉さんの無駄乳で怖じ気づいちゃってたけど、やっぱり私もいけるよね!」
ばんざーい、と両手を挙げるセツノだった。
なんというか、壊れきっていた。
「――え? 胸を気にしているんですか?」
「そうなんですよ。着替えのときも、私の方をちらちらと見てましたし……」
セツノが走り去ってから。
ユウキはユメカから、妹が逃げてしまった原因を聞いていた。
ちなみにユメカの勝手な推測であるのは言うまでもない。
しかし、ユウキがそれを見抜けるほど女心を理解しているはずもなく。
あっさり、ユメカの語る“原因”を信じてしまっていた。
「私が今のセっちゃんくらいの頃は、もう二回りくらいは大きかったですし、
やっぱり劣等感を持っちゃってるんだと思います……。
それになんだか、最近しぼんでいるような気もするんです……」
この場にセツノがいたなら跳び蹴りが後頭部に炸裂してもおかしくなかったが、
幸か不幸か、ツッコミ役の妹は、遠く離れた海面で一人にへらにへらと悶えている。
そのため、この場にはユメカを止める人間はおらず。
彼女はいつものように暴走していくのみ。
「でも、セツノちゃんの、その……アレも、別に小さくはないと思うんですが」
「甘いですユウキさん! 大きなおっぱいは母性の象徴なんです!
ですから女性は皆、大きなおっぱいに憧れるんです!
私ももう一回りくらい大きくしたいところですし!
……できればユウキさんに大きくしてもらいたいなあ、とか……」
「ちょ、こんな真っ昼間っから外でなんて絶対駄目です! 強姦したら絶交ですからね!?」
「……しょんぼり」
むー、と唇を尖らせるユメカ。
彼女は常に臨戦態勢なのである。色々な意味で。
「……まあそれはそれとして、セっちゃんが胸のことを気にしているのは間違いありません。
セっちゃんと仲良く海を楽しむためには、私たちであの子の劣等感を拭い去ってあげなくては!」
「そうなんですか……?」
「安心してください、ユウキさん。
これは私たち姉妹の問題ですから。ユウキさんはのんびり待っていてくれればそれでいいんです」
「……というか、ユメカさんは何をするつもりなんですか?」
ユウキのその問いに、ユメカはフフフと不敵な笑みを浮かべて。
「イナヴァ村の諜報員を舐めてもらっては困ります。
……あ、でも、いつでも舐めてくれても、その、構いませんよ……?」
「いや別にそれはどうでもいいですから」
「……しょんぼり」
「とにかく!」
ユメカは拳を握りしめて宣言する。
「セっちゃんが胸を気にしているのは間違いないんです!
ですからここは私が姉として!」
「セっちゃんの胸を、大きくしてみせます!」
と、ユメカが激しくずれた決意を示したのと同時刻。
テシヤの中央駅に、長距離馬車が辿り着く。
帝都から何度も馬を代え、丸一日かけて馬車に揺られるコースである。
その客席から、一人のあか抜けた女性が降り立った。
眩しい陽光を見上げながら、女性が吐いたのは溜息だった。
「はあ……折角一等地で休暇を過ごせるのに、独り身なんてなあ……」
同僚を誘うつもりだったのだが、先約があったらしく、お流れとなってしまったのだ。
しかし、職場の先輩から旅券を貰った手前、キャンセルするのも気が引けたため、
仕方なく、一人で遊びに来ることとなった次第である。
のんびり海沿いの観光街でも散策して、土産を買うのが精一杯である。
念のため水着を持ってきたが、見せたい相手が一緒にいないのだから、着る機会はないだろう。
「……ったく、ユウキのやつ、最近付き合い悪いんだから……」
執政省の新米秘書、サラ・フルムーンは。
同僚に対する愚痴を吐きながら、鞄から切符を取り出した。
今年の夏は海に行けませんでしたorz
そして本編はもうちょっぴり待っていただけると助かります
書く時間を捻出し次第、最終話まで一気に書き上げますので。
あと何度も言うようですが外伝のヒロインはセt――ユメカです。
ユメカなんですってば。
感想なんて一言で十分だ。
萌・へ。
571 :
562:2006/09/13(水) 23:19:00 ID:Kjr+SkzE
ぐあぁぁ9秒差で割り込んじまった申し訳ない
これならほのぼの騒ぎかなぁと思ってたら
し っ か り 修 羅 場 到 来
怪 物 姉
キ タ !!
なんていったらいいのかな 今の気持ち
例えて言うならば
ヤッフーハッハッハー
>>573 マリオwwww
なんというか本編が血みどろってるのに外伝はほんわかしてていいなぁ
と思った直後に彼女襲来ですか
wktk
サラが不憫です・・・(;つД`)
サラも良い子なんだけどなぁ、相手が強すぎる・・・」 ̄l○
これだけ連載を続けてくださっている方にお願いするのも申し訳ないのですが
短編一本で良いので出来ればサラにも良い思いをm( __ __ )m
。
〉
○ノ イヤッホォォ!
<ヽ |
i!i/, |i!ii ガタン
 ̄ ̄ ̄ ̄
。
〉
○ノ イヤッホォォ!
<ヽ |
i!i/, |i!ii ガタン
 ̄ ̄ ̄ ̄
。
〉
○ノ イヤッホォォ!
<ヽ |
i!i/, |i!ii ガタン
 ̄ ̄ ̄ ̄
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『おれは姉萌えだと
思ったらいつのまにか妹萌えになっていた』
な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
おれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
セっちゃん萌えだとか14歳は犯罪だとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
鬼ごっこの超展開にwktkが止まらない!監禁か!?
怪物姉妹のセツノに萌えた!が、さすがは神様!修
羅場の伏線を張るのを忘れていない!
『十二話』
体が動かない。
頭が痛い、息が苦しい。
思考だけが暴走する。
爆発した懐疑が燃料になって無意味に消費され、から回る車輪のように体が置き去りにされている。
脳で思い描いたとおりに体が動かない違和感。
俺は腰から寝返りを打とうとして…
自分が縛られていることに気がついた。
「おはよう」
固定された視界に、黒い影が出現する。
栗色の髪を垂らし、甘い香りを撒き散らしながら。
はっきりとした顔立ちに目を見張るほど整った鼻筋。
大きな瞳は美しさと妖艶さをギリギリの場所で繋ぎとめている。
薄くチークの乗った頬は僅かに桃色で、わかりやすい美貌に幼さを加えて、更にその危うげな色気を加速させていた。
後姿…いや、足音だけで存在を確認できる。
十五年来の幼馴染――――
間違いなく、ゆかりだった。
「お前!!」
思わず声が弾丸となって打ち出された。
喉に込められた次弾――――疑問は尽きないが、何よりも始めに叫んでいた。
「ようやく目が覚めた?」
ゆかりは僅かに口の端を持ち上げる。
吐き出された僅かな呼吸が頬を撫で、突き抜けるほどの官能が首筋をくすぐった。
「俺を突き落としたのは、お前か」
「そうよ」
俺が大きな瞳の剣呑さに負けじと睨みつけると、ゆかりは悪びれた様子もなく答えた。
そのまま小さく顎を引き、体を俺に摺り寄せる。
おそらく、ベッドにでも縛り付けられているのだろう。
体が言うことが聞かない理由は実に簡単だった。
純然と黒いコードで雁字搦めにされている――――それだけ。
「いろいろ聞きたいことがあって来たが…」
「だめ。馨は私の料理を食べにきたの」
搾り出すような俺の声を、ゆかりは踏み潰すように遮った
俺は今、ゆかりに押し倒されるような姿勢でベッドの上にいる。
両手を突いて拠りそう様な形でいたゆかりが、ベッドに登った。
豊かな体を押し付けるように密着し、その柔らかさを暴力的な魅力と一緒に振りまく。
耳に感じるゆかりの吐息。
――――熱い。
「お前、森さんに何を言った?彼女がどんな行動に出たのかわかってんのかよ!!」
状況ではないというのに、腰の辺りが熱くなってくる。
俺はそんな薄汚い昂ぶりをかき消すように怒鳴ると、再び触れそうなほどの距離に接近したゆかりと視線を交差させる。
問い詰めたいことはたくさんある。
しかし、俺と目を合わせたまま微笑んだゆかりは口を割らなかった。
ただ、甘美な笑みで表情を蕩けさせている。
「嬉しいの…」
囁くように、零す。
甘い息と一緒に吐き出された言葉は、歓喜に打ち震えている。
これ以上ない恍惚に、耽溺している。
「――――はぁ??」
「嬉しいのよ」
まったく的を射ていない答え。
それでもゆかりは嬉しい、嬉しい、と零し続ける。
自分を昂ぶらせ、熱く昇りつめていくように。
「嬉しいの。だって、一番大切で、ずっと欲しかったものが手に入ったんだから」
「お前さっきから…」
寒気がした。
ゆかりは中毒者のようにひたすら同じ言葉を呟き、俺の頬を愛しげに撫でていく。
時折首筋に顔を埋め、刻み付けるように息を吸い込む。
明らかに異常な行動。
――――狂った笑みを浮かべる森さんと強烈に重なった。
「おい、ゆかり!!」
「二度と馨に近づくなって、言ってやったわ。それにもう、馨は私のものだってね」
体を起こしたゆかりは、豊かな胸を押し付けるように体重をかけてくる。
柔肉が俺の胸板で潰れ、凶暴な快楽を脳髄に叩き込んでくる。
「お前…」
ゆかりは伏せるように俺の胸に顔を埋めると、
先までの満ち足りた声色が擬態であったかのように低い声を出した。
「だって、あの女、馨のこと何も知らないくせに、自分が愛されてるって勘違いしてるんだよ?
馨の優しさを、自分に向けられた好意だって、勘違いしてるの。
図々しいと思わないかなぁ…ただの被害者の癖に、馨の純粋な善意に付け込むような真似をして…
ううん、あの泥棒猫だけじゃないの。
今まで馨に言い寄った女、馨と付き合った女、全員そうよ!!
馨の好いところ、悪いところ、何も知らずに上目だけ好きになってる。
馨が優しくて、裏切らなくて、影ですっごく努力してるってことを、誰も知らないクセに!!」
「おい…?」
圧倒的な剣幕だった。
有無を言わせないとは正にこのことだろう。
シーツをしわくちゃになるほど握り締め、綺麗な歯列を剥き出しに、唸る。
「だまされちゃ駄目。絶対に。馨はもっと幸せにならなきゃいけないの!!
今まで苦労して、自分を省みないで尽くして…
だから報われなきゃいけないの!!誰よりも。幸せにならなきゃいけないのよ!!
だから、あの女にだけは手を出さないで。あの女は、あんたを不幸にするだけだから…!!」
いつの間にかゆかりは俺の手を包み込むように握っていた。
鬼気迫る戦慄を生み出していた表情は形を潜め、そこには泣き出しそうなゆかりがいた。
瞳。
映しているのは俺の顔だけ。
黒い宝玉に映る自分が、滲んでいく。
揺れるように潤んだ瞳、溜めた感情が溢れる様に、しとど俺の頬を濡らす。
あぁ、そうか…
バカ野郎…
――――気づいた。気づいてしまった。
ずっと思考の端では理解していたが、近く遠すぎた故に見過ごした気持ち。
染み渡るように、胸へ沈み込んでいく。
「おね、がい…」
――――作り笑いが歪む。
俺の中で長い月日が、終った。
「泣くなよ……泣くな」
にあわねぇよ。
森さんをどうしたとか、俺を突き落とした上にベッドに縛り上げたこととか…
もうどうでもよくなっていた。
「駄目、なの…他の女は、駄目…馨を幸せにできるのは、私だけなの…
だから、おねがい、私だけをみて…私だけに、馨を愛させて…」
俺の頬を掌で包み込み、唇が触れそうな間合いでゆかりは続けた。
「この体にね、別の女が触れたかと思うと、体が怒りで熱くなるの。
この唇にね、あの女の薄いここが重なったと思うと、耳の奥が真っ赤に燃えるの。
馨の隣にね、他の女が近づくだけで嫉妬してたの。どうして私じゃないの?どうして私を見てくれないの?って。
でも、もうこれからは心配しなくていいんだよね?もう…」
それから先は言わせなかった。
首を起こすようにして、ゆかりの唇に深く喰らいつく。
こんな姿勢なんだ、巧拙は問わないでくれ。
ただ思いのうちを、すべてぶつける様に重ねた。
深く、深く、染み渡れ――――
そう心で念じながら。
「かお、る…
・
・
・
・
かおるかおるかおるかおるかおるかおるかおるかおる!!!」
ゆかりは俺のキスに深く、深く答えるように唇を突き出した。
表面の感触を味わうように重ね、ギリギリを味わう。
押し付けるように掠め、啄むように食む。
甘い、ひたすらに甘かった。
いままで足りなかったピースが埋まるような充足感をもたらしてくれる。
森さんにむりやり重ねられたときとは違う、心で感じる口付けだった。
舌を入れる。
舌で答える。
歯茎を舐り、歯先を奪うように吸い尽くす。
頬の裏に、舌の凹凸に、ゆかりのそれを感じるたびに脳が焼き鏝でも突っ込まれたみたいに熱く燃えた。
思考が混ざる。
もうどうでもよい。
ずっとこうしていたい。
唾液を味わいたい。
ゆかりの柔らかさに、溺れていたい。
漣のような快楽が、臨界点を飲み込んでいく。
これ以上はまずい――――理性がいう。
でも――――甘い。ひたすらに、甘い。
身を狂わす肌の感触、間近でみる大きな瞳。
蟲惑的に開かれた口は、唾液のオイルでぬらぬらと輝いて下半身の剛直を誘う。
気持ちがよかった。
下品な音を立てて舌を吸い合い、ただ欲望のままに唇を奪う。
そんな行為が、何よりも気持ちがいい。
壊れるほど強く、抱くほどに狂おしく、ゆかりは体を押し付けて、湿った音を立てて舌を吸い上げていく。
痺れが口を中心に広がると、腕が自由になっていた。
階段を転がり落ちるときにできた打撲で若干重いが、もう関係なかった。
「やっとしてくれたよね、馨から…私を、選んでくれたんだよね?」
「ああ」
「もう、嬉しくて……嬉しくて…泣くようなところじゃないよね。ごめ・・・」
それ以上は言わせなかった。
もう一度深く重なり合う。
今までゆかりを蝕んできた悲しみを、すべて吸い尽くしてしまうように。
忘れさせたい。
すべての悲しみを。
拭い去りたい。
すべての苦悩を。
殺してしまいたい。
俺の、今までの迷いを。
柔らかい肉を押し付けたり、すすったりして味わう。
綺麗な唇のライン。それを舌先でなぞり、自分の唾液を塗りつける。
蜂蜜みたいに零れた御髪が弾けると、ゆかりの匂いがいっぱいに広がった。
――――体の軸が捩れる。
それはもう、俺を押しとどめる感情が壊れたといっていいだろう。
そこから先は、本能の赴くままにゆかりを貪っていた。
荒々しく上着を剥ぎ取り、直接白絹の様な肌に舌を這わせ、可愛らしいピアスのはまった臍を思いっきり吸い込む。
じゅ、じゅじゅ・・・と。
そのたび、熱い吐息が漏れる。
「ん…はぁ…あぁ…」
零れる吐息を拾い集めるように体を押し付け、壊れるほど強く抱きしめた。
官能の弦が快楽と喘ぎの旋律を奏でる。
俺はそれをよりメロディアスに調整してやるだけ。
簡単だった。
俺が思うとおりに動けば、ゆかりが呼応する。
「ん…あぁ…あふ…ぁ」
指を沈めれば答える弾力的な尻。
滑らすように表面を味わい、そのまま秘所に滑り込む。
薄い下着の上からも感じる。
焼け付くくらい熱く、濡れていた。
軽く指先で触れるだけで淫靡な水音が弾け、黒い布がぬちゃりと沈んでいく。
「…ひゃ…あぁっ…」
漏れる声は、もう俺を掻き立てるBGMでしかない。
指がぬめりと、強烈な雌の体温を求めて動き回る。
親指で下着をずらし、人差し指で入り口をなぞるようにこすり上げる。
ゆかりは腿をかすかに動かして反応するが、中指の更なる動きによって封じ込めた。
薄い恥毛のお陰で、ゆかりの秘唇は驚くほどすべらかだ。
じんわりと染み込むような柔らかさと、それを上回る感度。
気づけば深く差し込み、襞を指先の甲で味わっていた。
第一間接を曲げると、吸い付くように締め付ける。
千の襞がびっちりと覆う天井は感じたことないほどに熱い。
ぐちゅ、くち、ぐちゅ…
えぐるような淫水の音。
ゆかりは耳を塞ぐように俺の唇に吸い付いて離れない。
角度を変えてみる。
…大きく反応した。
「んあっ!!…」
追い詰めるように、指先を加速させる。
そのたび湿った音が大きく耳朶に響き、俺を掻き立てる。
止まらない、快楽の連鎖。
「あああああっ、んあっ…」
中指で攻めると同時に、押さえる親指をグラインドさせて陰核を弄ぶのも怠らない。
腫れたみたいに充血したその場所を擦りつけ、弾く度にゆかりの喉は快楽に震える。
綺麗な眉を寄せ、頂に上りつめる快感に耐える。
背筋を、脊髄を、甘い痺れが覆い尽くしてどこから自分の体なのわからないのだろう。
でも、俺は止まらない。
「だめ、かおる、かおるぅぅぅ…」
強く細い声。
小さく打ち寄せる絶頂の波に攫われないように、唇の楔を俺に打ち込む。
「んん…ちゅ…ぅ…ずっ…」
上の唇と下の唇は耳に痛いほど淫猥な悲鳴を上げている。
美しく弧を描くうなじから腰へのライン。
汗が伝っていく。
お互いの熱気に燻された快楽の落とし子たち。
弾ける子嚢になってシーツを濡らす。
ぐちゅ、ずちゅ、ずちゅ、くちゅ、くちぃ…
指が汁を掬う音だけだった。
動物のような吐息以外に耳にはいるものは。
ぐちゅ、ぅ、ずう…
舌と舌の会話のみ。
俺達が交わすものは。
おかしくなりそうなほど濃密な性の香り。
部屋に焚かれた香を飲み込んで、媚薬のごとく俺達を突き動かしていく。
もう、わからない。
ただ、ゆかりが愛しかった。
頭の隅っこにはまだ森さんがいる。
でも、ゆかりに腰を打ちつけ、甘い悲鳴を聞いているうちに、霞んでいった。
頭の奥で、森さんが悲しげに俯く。
夜明けを見ているようだ。
正しい選択ではないのかもしれない。
俺を縛り上げる鎖みたいに捩れていたのかもしれない。
でも、もういい。
悩むのは終わりだった。
全部、元に戻そう。
元に、最初の場所に。
これは、被害者加害者以上の関係に対する別れと。
幼馴染が宝物に変わった瞬間だった。
置き去りな展開&読みにくい上にわかりづらい文章ですいません。
あと二話で終了します。
しかし鬼ごっこ、気になって夜も眠れません。
スウィッチブレイド・ナイフキター!!!ゆかりのまさかの逆転劇。
森さんの逆襲が怖いですなw
GJ!ゆあきん寄りとしては嬉しい展開でした。
>あと二話で終了します
工エエェェ(´д`)ェェエエ工
森さんが・・・また覚醒しそう((;゚Д゚)ガクガクブルブル
それはそれとして前半のゆかりの独白が堪らない(*´д`*)
この後の森さんの覚醒が楽しみでしょうがねえぜ!
>>551 妹が妹じゃなくて鬼だった(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
予想の遥か上を行かれたぜ
>>569 セツノ可愛いよセツノ(*´д`*)ハァハァ
サラせつないよサラセツナ(´・ω・`)ス
\从_人_从_人_从_人_从_人_从_人_从_人_从_人_从/
ゝ イ可 な の よ ! も ぉ ぉ っ !!! ゝ
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Lv.Max \:' ; ; ; ''.:| .;;; =二三 ̄ ;;; = __  ̄ ̄ ̄ ̄ ───  ̄ ̄ ヽ'.;: .: . .
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.::.:::.;..; 。'⌒⌒ヽ \从 ,;; 三ニ .__.;,;; __ ── __ ,,::':,,,;:'::, _ ───__そ " '
.:.:::.;.:.; /ノ(リノハリ))rm γ,;;二 .;,;; ── =  ̄ ̄ (;;:;;;:::;:::;;:.);;;::: ─── >;. :'
..:.:::;.;..; "'从#゚ロノリi!.っ) .,;; 三 .,;;; __ = ─── ;;:::::;;;::.;:::;;;:;:;;;::;::''' ──  ̄ ̄= ( ,:,
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.:.::;;.;..;..; く/:_|jヾ /W ..;; 三二 ──.:,;; ─ _ =___ ::;:::;: ';::;::; _  ̄ ̄  ̄ >. :''
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かおる「この別れが終わったら俺…結婚するんだ…」
ヤッフーハッハッハ
594 :
プロット:2006/09/14(木) 18:28:54 ID:RV7pX9GO
編み物好きな彼女は付き合い始めた彼に手編みの手袋をプレゼントする。
喜んでくれた彼のために今度はマフラーを編み始める
出来上がったマフラーを手に彼の元に急ぐと彼と女性が楽しそうに談笑している。
内心嫉妬するも相手にせず彼にマフラーを渡す。
彼と話していた女は不機嫌になり、後日、呼び出されて彼女と修羅場になる。
結果、女を殺してしまった彼女。淡々と死体を処理しながら女の髪の毛を剥ぎ取る
3日後、彼にその女の髪でできたセーターをプレゼントした。
それ以来、彼の周り女から材料を刈り取るようになる。
彼へのプレゼントはもちろん、自分のお洒落にも「素材」を使い始める
髪で編み物はもちろん、爪がきれいな女からは携帯ストラップを作ったり・・・
・・・ただの猟奇小説のプロットになってしまったorz
監禁や突き落としに触れない馨の優しさに乾杯。
同じことを森さんがやったらこうはいかないと考えると、やっぱり幼馴染は強いってことか。
プロットを考えてみました。
武力により大陸統一を果たした大帝国、そこへ人質として集まる帝国傘下の
小中国の王子王女たち。
傘下内では最小国の王子である主人公(少年)はそこで他の小中国や帝国の
王女たちと出会い惚れられる。
そして主人公は青年となり母国へ帰還して王位を継ぐが、同時に帝国皇帝が
倒れ後継争いで戦争が勃発、さらに傘下の小中国も参戦して群雄割拠の時代へ。
主人公はこの有様を予期していたため、少年時代に惚れられた王女の国々(複数)へ
同盟の締結と政略結婚の密使を送り自国の防衛と地位向上を謀る。
主人公との結婚を餌に王女たちは一部の大臣たちの反発を他所に、主人公の国を狙う
国や主人公自身を狙う他の王女の国へ大軍を派遣する。
書こうとしたところでクロックワーク・ホイールズ(仮)と被りそうなんで没にしました。orz
投下します。
彼女は公務員の父と専業主婦の母、OLの姉との四人暮らしである。
クラスでの役職はクラス委員。そして、クラスの誰もが彼女を委員長と呼ぶ。
あくまで一委員に過ぎず、委員長では決してないのだが、そう呼ばれるのである。
眼鏡に三つ編みという、ある男子生徒曰く『典型的な委員長スタイル』の所為なのかもしれない。
学年トップの成績も一因だろう。
生真面目で少々融通が利かず、一部には恐れられている彼女だが、基本的にはクラスの頼れる優等生。
それが彼女だった。
(ふう、重いな。やはり二回に分ければ良かったか? 横着はするものじゃない・・・)
放課後、両手に大量のプリントを抱えて彼女は教室へ向かっていた。
クラス委員といっても仕事内容は雑用が多い。数ある役職の中でも外れくじと目される一つだ。
それを知って引き受けた彼女なので、不満をいうつもりはない。
ただ、今運んでいるプリントの量を考えると、流石に愚痴の一つも出てしまうのは仕方ないところだった。
(まずいな、腕が痺れてきた・・・。一旦どこかにプリントを置いて・・・)
と思った瞬間。汗ばんだ手がつるりと滑った。
(まずっ・・・!)
これだけ大量の紙が散らばったらどんな大惨事になるか。開いた窓から風にさらわれていく枚数も馬鹿にならない。
それに、自分もどれだけ恥をかくことになるのか。
脳裏に描かれた最悪の瞬間は、しかし訪れることは無かった。
「あっぶねえ〜・・・。大丈夫か委員長。今、手滑らせただろ?」
駆け寄った人影が、彼女の窮地を救ったからだ。
外れかけた手を握って固定し、さらにプリントの落下をもう片方の手で支えている。
力を入れなおして態勢を整えると、彼女は顔を上げて人影の正体を確認する。
驚いたことに、見知った顔だった。所々が跳ねた、癖のある黒髪が映る。
「あ、ああ。大丈夫だ。すまない、お陰で助かった、高村」
クラスメートの高村智だった。
いつものぼんやりした顔ではなく、苦笑の中に心配そうな色を混ぜて彼女の様子を伺っている。
どうしてか、ドキンと胸が高鳴った。
今だ握られている手から伝わる体温が、その鼓動を助長する。
「助かったとは思うが・・・いつまで人の手を握っているのだ、高村」
「え・・・? あっ、悪い」
ついぶっきらぼうに言い放つと、多少の狼狽を見せながらぱっと手を離す。
ぎこちない沈黙が数秒続いたところで、智が口を開いた。
「と、とにかく。その量は一人じゃきついって。まして女の子じゃ尚更だろ? 教室までだろ、俺が半分持つよ」
そう言うと、返事を待たずにプリントを半分以上取り上げて教室に歩き出す。
小さく礼を呟き、彼女もその後を追った。
教室に着くと、智は教壇にプリントを置いた。
「ここでいいか?」
「ああ。ありがとう。
・・・それにしても高村。あの時だが、よく私を助けられたな。
私が手を滑らせてから高村が助けに入るまで、コンマ数秒あったかどうかだぞ。
いくら近くにいたとはいえ、凄まじい反射速度だ」
委員長は純粋に感心しただけだったのだが。
智の方は何故か不自然なほど焦った様子になった。
「そっ、そうか? そんなことないだろ? あのくらい別に大したことないって。いやホントに。クラスの男子くらいなら誰だって出来るさ」
たたみかけるように謙遜――ここまでくるとむしろ卑下――する智に面食らいながら、そんなことはないと言おうとした委員長だったが。
「智ちゃん、帰ろ?」
それは、割って入った声によって遮られた。振り返ると小柄な人影が一つあった。
短く切りそろえた髪と愛くるしい顔立ちの少女。
彼女もまたクラスメートの一人。智の幼馴染の折原千早だった。
「ああ。悪い、少し待たせたみたいだな。ちょっと委員長の仕事を手伝ってたんだ」
「そうなんだ。流石は智ちゃん、優しいね」
すぐに智は千早の元へ駆け寄り、千早は笑顔で彼を見上げる。
ぴったりと寄り添っていながらとても自然に見えるその光景が、二人の関係を端的に表していた。
「じゃあ委員長、また明日な。もう無理はするなよ?」
そう言って智は自分の席へ鞄を取りに行く。
そして彼の意識がこの場を離れた瞬間。
カチリ
「ん・・・?」
時計の針が動いたような。そんな音が聞こえた。
「委員長? どうかした?」
怪訝そうに千早が尋ねる。
「いや・・・」
(今、折原の笑顔が一瞬・・・)
歪んだように見えたのは――それが音が鳴るのと同時だったのは――気のせいだろうか。
目の前の千早は、何でもないと返した彼女の言葉を受けて、笑顔に戻っている。
いつもと変わらない、天真爛漫な笑顔。
(疲れているのかな、私は・・・)
「千早、行くぞー!」
悩む間もなく智の声が響き、友人に手を振りながら千早が教室を出て行った。
それを当たり前のような、微笑ましいような目でクラスメートたちは見送る。
もちろんそれは委員長にとっても同様なのだが、何故か今日だけはどこか釈然としない気持ちで見送ることになった。
(はあ、すっかり遅くなってしまったな・・・)
塾からの帰り道。繁華街を歩きながら、委員長は溜息を吐く。
時間は既に午後11時を回っていた。9時に授業が終わった後、残って復習をしていたためだ。
いつもなら復習は10時前には終わり、10時過ぎには帰宅している。
しかし今日に限って全く集中できず、こんな時間になってしまったのだ。
理由は、本人も分かっている。
放課後の、智のことが原因だった。
(意外と大きくて強いんだな、高村の手は・・・。運動神経はいいが見た目が細いから、もっと貧弱な印象だったのに・・・)
そして、心配そうに覗き込む優しい瞳。
あの時は不覚にもうろたえてしまったが、あの瞳を見たのは別に初めてではない。
というより毎日見ている。
千早を見る時の目だ。
千早を見る時の智は優しい。
呆れだろうと叱責だろうと、千早に接する時の智はどこか優しい。少なくともクラスメートたちへのそれとは違う。
智は否定しているが、二人のクラスでの扱いは公認バカップルだ。
二人とも意外とモテるのだが、アプローチをかける者どころか浮いた話の一つさえないのがその証拠だろう。
交際の是非はともかく、ただ甘やかしあう関係を超越した、互いを空気――無くてはならないもの――と思う関係なのは間違いない。
委員長は、それを羨ましく思う。それは、智にとって千早が『特別』だからだ。
別に智にそう思われたいというわけではなく、誰かに自分だけを特別に思われること、それが羨ましいのだ。
堅物に思われている彼女だが、実はそういった恋愛や男女関係に対する興味は人一倍強い。
部屋には少女漫画や恋愛小説が溢れかえり、最近は家族を部屋に入れることさえ気をつけなければならないほどだ。
とはいえ、実際の恋愛経験はゼロ。
普段の言動が示すとおり堅物で強気な彼女は、異性に心惹かれるような気持ちになったことがないからだ。
だからこそ妄想ばかりが先立ち、それが深みに嵌まると今日のような失態をしてしまうのだが。
(この調子では帰りは何時になるか・・・。仕方ない、ショートカットを使おう)
そう思い、繁華街を脇道に入った。途端に周囲の明るさが一転し、暗闇が視界を覆う。
見たいテレビがある時や遅くなった日などによく使う近道だった。
といっても精々2、3分程度の節約にしかならない。要は気持ちの問題なのだろう。
少ししか縮まらないということは、裏を返せば危険も少ないということであり、だから今日も彼女は何の警戒も抱かなかった。
まさか変質者に後ろから羽交い絞めにされるなど、思うはずもなかった。
―――こんな風に。
「・・・!!!」
動けない。両腕を完全に極められ、身じろぎさえもできない。浮かぶ腕の輪郭は細いが、凄まじい力で締めつけている。
口も完全に覆われ、息も漏れないほどだ。
暗い夜道、それも人が通らないような場所でこんな目に遭う女――それが意味するところは明白だった。
(私、レイプされる・・・? ・・・いや、いや、いやっ、いやっ、いやぁっ! やだ、やだやだやだやだ!
助けて、誰か助けて! お父さん、お母さん、お姉ちゃん・・・!!)
しかし、叫ぶどころか音さえ出せない。自由な下半身で暴れてみるが、ビクともしない。
そして当然、助けてくれる人の気配などあるはずがない。
(私、本当に犯されてしまうの? もう観念するしかないの・・・?)
絶望が心を覆い始める。強気の象徴である堅い言葉遣いも崩れてきた。
「ひっ・・・!?」
ビクンと身体が反応する。人影が彼女の首に口付けたのだ。
見知らぬ男にいいように蹂躙されること、それが現実感を持って彼女を襲う。
それは、生まれてこの方経験した事の無い嫌悪感だった。
(いやぁ・・・・・・)
視界は滲んだ涙で完全に塞がれていた。
そして、心が漏らすのはただの泣き言。つまりは諦めだった。
委員長の抵抗が止み、レイプ魔は何かを確認するように彼女の首筋に口付け、そして――。
ガブリと、そのまま噛み付いた。
「・・・!?」
最初は何をされたのか分からなかった。
直後に感じたのは痛み。一瞬チクリと感じたが、次に感じたのはむしろくすぐったいようなもどかしさだった。
そして、ようやく認識が追いつく。唾液と、何かを吸い込む息遣いが感じさせる、ひんやりとした感触。
そう、吸い込む。何を吸っているというのか。それは。
(血・・・血を吸ってる。首に歯を立てて、血を吸い出してる・・・!)
それを認識した途端、急に力が入らなくなった。歯を立てられた場所と下半身が急激に熱くなってくる。
ほぼ同時に歯が抜かれ、羽交い絞めにする拘束も緩んだ。当然、力の抜けた状態の彼女は身体を支えられず崩れ落ち――。
「危ない・・・!」
――なかった。レイプ魔が支えてくれた為だ。耳元でされた呟きは想像外に若々しく、そして甘く響いた。
先程の強引な羽交い絞めから一転。優しくというよりむしろ、おっかなびっくりという形容が似合う様子で委員長をそっと支える。
そして彼女に力が戻らないと判断すると、ゆっくりとその場に座らせた。
「本当に、ごめんな・・・」
ボーっとしたままの委員長の耳元にそっと囁き、レイプ魔はそのまま身体を離した。
一瞬遅れて我に返った彼女だが、辺りを見渡しても人の気配は全く無い。
いくら暗いからといっても、僅かな隙にここまで完璧に気配を消してしまったことに、彼女は驚きを隠せなかった。
(夢でも見ていたの、私は・・・)
しかし、頭を振ってすぐにその考えを否定する。この熱い身体の疼きが何よりの証拠だ。
いつの間にか嫌悪感は綺麗さっぱり消え失せ、代わりに恍惚とした感覚が沸きあがってきている。
それは我慢できない衝動となって、彼女の身体を支配しようとしていた。
「ち、ちょっとだけ・・・ちょっとだけだから・・・。
・・・あんっ、いい・・・! ひゃんっ、あぁんっ!」
我慢できなくてスカートの中に手を入れると、いきなり甲高い声をあげてしまった。
触れる前から湿り気を帯びているなど初めてで、その混乱がまともな思考を絡め取ってしまう。
(ああ、いけないのに・・・。こんな場所でいけないのに・・・!
私、オナニーしてる・・・! 外でオナニーしちゃってるぅ・・・!)
しかし、だから止めようという考えは出てこない。
普段している自慰とは比べ物にならない快感が理性を完全に押し流してしまっている。
(うそ、どうして・・・どうしてこんなに気持ちいいの・・・!?)
興味から自慰をしたことはあるものの、彼女はそれをあまり気持ちいいと思ったことはない。
彼女の行為は聞きかじった形式になぞらえてしているだけのものであり、触れられることを思い浮かべてしているものではないからだ。
しかし今、彼女の中には明確なイメージがある。自分を乱暴に締め上げ、首に歯を立てる男の影が。
(私おかしい・・・。だって相手は・・・レイプ魔ではなかったけど。でも変質者だったのは間違いないのよ?
そんな相手に触られて興奮してるなんて・・・)
そんな内心の言い訳を尻目に、委員長の身体はどんどん盛り上がっていく。
声を抑えるために丸めたハンカチを口に突っ込んだまま悶える姿は、何とも倒錯的な光景だった。
普段の彼女を知る者が今の姿を見たら何と思うだろう。
その想像さえも、今の彼女には興奮を掻き立てるスパイスにしかならない。
既に下着は彼女から出た水気を吸って肌に張り付き、筋がぴったりと見えるほどになっている。
そして膨らんだ豆を弄っている拍子に、偶然指の一本がその割れ目に吸い込まれた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
背筋を思い切りしならせながら、ハンカチをきつく噛み締める。
もし口に何も入れていなかったら、舌か唇を噛み切っていたのではないかというほどだった。
(イった・・・私、イったんだ。これが、イク・・・)
初めてだった。圧倒的な浮遊感と、周囲の全てがどうでもよくなる感覚。
実際、眼鏡がずれて衣服も乱れているのにそれを気にしようという気持ちさえ湧かない。
その感覚を与えてくれた存在を思うと、また身体が熱くなってくる。
力強く、時に優しく私に触れた。血を吸って夜を駆ける闇の貴族。
そう、あの人は。
(吸血鬼・・・様)
彼女の瞳は、恋する女のものになっていた。
それも、姿かたちさえも分からぬ相手に。それどころか、人間なのかさえも分からぬ男に。
--------------------------------------------------------------------------------
10分後、自らの痴態にようやく思い至った委員長は、すぐさま衣服を整えて家路を急いだ。
その間誰もその道を通らなかったのは、幸運としか言いようが無いだろう。
下着を穿いたままでは液が垂れるため脱がざるを得なかったが、野外でパンツを脱ぎ、あまつさえノーパンで帰るという羞恥に彼女は死にそうになった。
12時を回って帰宅した娘を心配して、玄関先に両親が待っていた時など、生きた心地がしなかったほどだ。
・・・同時に、スカートの下の風通しのよさに妖しい性癖が目覚めかけたのは彼女だけの秘密である。
それからも彼女は委員長として、これまで通りの生活を送っている。
だが、いくつか変わったこともあった。
部屋に吸血鬼を中心とした古代の伝承に関する本が増えたこと。
背後から近づかれるのに強く怒るようになったこと。
千早と智が一緒にいるところを見ると、何故か微笑ましさより焦がすような憎悪や嫉妬が先立つこと。
塾で自習する時間が増え、帰宅が一時間ほど遅くなったこと。
また、塾に替えの下着を持っていくようになったこと。
彼女以外の人間にとって些細な変化でしかないそれらは、本人にとっては世界の改編といっても過言ではないものであり。
そして、今日も彼女は一抹の期待を胸に夜の繁華街を彷徨うのだった。
ちなみに、OLの姉も最近帰りが遅く、しかもよく繁華街で出くわすのだが、その理由までは彼女も知る由はなく、また別の話である。
これで一応終わり。初の外伝物に挑戦でした。
主人公はいつぞやの眼鏡っ娘です。堅物っぽさは出せたでしょうか?
次は本編を更新します。千早が活躍する・・・・・・予定です。
おおおおお、激しくGJです。
それにしても、羨ましい。俺も吸血鬼になりた(ry
スウィッチも完結まであと少しか……テラサビシス
そろそろ、次スレですか……ってかスレタイはどうなるの?
すばらすぃっす。
私も物書きの端くれとしてこれくらい書けるようになりたいです。
次スレ候補
18番で何か作りたいけど…思い浮かびません。
簡単なやつなら、18(いや)なあいつ、とか。
やっぱ十八番(おはこ)だろ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
修羅場戦闘教義指導要綱十八番「奪われるより奪え」
・・・・逃げるか!!
私の十八番は監禁♪♪とか
GJ!
それはともかくもう新スレか
やっぱり十八番関係がいいよね
泥棒猫は十八歳未満
今夜は彼と18禁
新スレ建てる時出来れば
1レス目へは
前スレ 纏めサイト 関連スレ 姉妹スレ 誘導用
そして2レス目で前々スレ以降のURL
ってスタイルの方がありがたい
なるべく現在生きてるリンクを優先で貼って欲しいと思う
てか、投下するんなら新スレまで待つべき?
其の方が無難だと思う
長さが7・8キロバイトぐらいの短いのであれば
今投下しても大丈夫だと思うが
4スレ連続でスレ立てしたものだけど
テンプレは変えたほうがいいと思う。
スレタイ長いのも結構ひっかかったし
テンプレはhttp:〜が多すぎるって警告がでるし。
今回のスレ立ては誰かに任せるが。
過去ログはまとめサイトにも置いてあるし阿修羅氏まとめURLと関連スレ
だけでいいんじゃないかな
それだったら1レスでまとまりそうだし
てかいっそ、まとめURLだけでもいいんじゃないかな。
阿修羅氏に世話になりっぱなしになるかもしれないけど。
620 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/15(金) 00:18:18 ID:GTObeYBf
でもそれじゃ携帯厨の俺には見れないよ・・・・
阿修羅氏頑張れ!!
女神さまっ で嫉妬分が補給できるとは思わなんだ
623 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/15(金) 02:33:37 ID:GTObeYBf
>>622しょ、詳細を!!
18らしい雌豚に一票。
>>625 乙
携帯厨の俺にはコピペが切れてしまうorz
どなたかスレ立てお願いします
角煮のスレはテンプレに入れないの?
やっぱ「希ガス」はだめか
18って意味もあるんだけどな
で、スレタイは?
十八番はストーキング
とかどうよ?
18な女とか
>>630 いいな
291スレ目はあの女が291で予約
>631
来年の話をすると鬼が笑うよ
じゃあ37564スレは泥棒猫を375(ry
で、どうしよう名前、早く立てないと職人さんも困るよね?
18らしい雌豚ってきいておっきしたので一票
十八番はストーキングも捨てがたいが、俺も18らしい雌豚が良いと思う
十八番はストーキングがいいかな。
立てたもん勝ち?
普通に「18禁」でいいよ
でもここって21禁だしなぁ
後、9KBか……さすがにそろそろ立てないと……
スレタイは立てたもん勝ちでいいんジャマイカ?
と思ったらつまらないので立てられたな。
ず〜っと、一緒だよ・・・
ごめん、僕は次スレに行かなきゃならないんだ
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
/ /" `ヽ ヽ \
//, '/ ヽハ 、 ヽ
〃 {_{`ヽ ノ リ| l │ i|
レ!小l● ● 从 |、i| ただの恋バナには興味ありません。
ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ│ この中に逆レイプによる既成事実、監禁歴、孕んで逆転劇、刺した経験のある人がいたら
/⌒ヽ__|ヘ ゝ._) j /⌒i ! あたしのところに話しに来なさい。以上
\ /:::::| l>,、 __, イァ/ /│
. /:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |
`ヽ< | | ヾ∨:::/ヾ:::彡' |
目覚めたとき、僕の身体は変わっていた。
そもそも、人間じゃなくなっていた。
剣。
しかも大剣である。
一般人が振り回そうとしたら肩を外してもおかしくない代物だ。
何故剣になってしまったのかはわからない。妖精の悪戯か、はたまた質の悪い悪魔に目を付けられたか。
戻る当てなどひとつたりとて存在せず、今日も今日とて、敵を斬るだけである。
僕の剣としての特性は2つ。
ひとつは、非常識なまでに頑丈だということ。
今まで様々なものを斬ってきたにも関わらず、刃こぼれひとつしていない。
もうひとつは、使用者の身体を操れるということ。
強制力はそれほどでもないが、使用者が身体を任せてくれれば、
まるで自分の身体のように使用者の体を動かすことが可能となる。
そして、僕が使用者の身体を操っている間は、剣――僕のことだが――は羽根のように軽くなる。
使用者の身体が強化されてるのか、僕の刀身が軽くなってるのかは曖昧だが、
まるで木の棒を振るうかの如く、自身を振り回すことができるようになる。
人間だった頃は、一応剣術道場の師範だったので、
僕が操っている間の使用者は、かなりの強さを誇ることになった。
今の、少女のように。
横薙ぎ一閃。
魔獣の首が宙に舞う。
身体を反転させてもう一匹の襲撃に備える。
相方が瞬時に殺されるとは思っていなかったのか、戸惑ったまま中途半端な突進を仕掛けてきた。
下段への一撃。
四つ足の魔獣は反射的に跳んで避け――切り返しの一撃で胴を斬り裂かれた。
『……ふう』
2匹共に絶命したことを確認してから、構えを解く。
「お疲れ様です」
『うん。それじゃあ身体を返すね』
「あ……」
少女は、残念そうな顔をした。
『……ユウ?』
「いえ、もう少しお貸ししていてもよかったのですが……」
もう敵はいなくなったのにどうして、と訊ねると。
少女は恥ずかしそうにはにかみながら。
「いえ、貴方に操られているというのが、その、いいんです」
そう、言った。
「うわわ、剣が喋った!?」
がしゃん、と石畳の上に放り出された。
痛みは感じないが、衝撃で視界が揺れてしまう。
「あ、ごめん、痛かった?」
少女はおっかなびっくり、僕に再び手を伸ばしてきた。
『大丈夫』
「……うわあ、やっぱり喋ってる。どっから声出てるんだろ?」
『持ってる人に直接意志を伝えてるだけで、音が出てるわけじゃないよ』
「……難しいことはよくわかんないや。それより、こんな所に喋る剣があるなんてなあ」
少女は暗がりの中、周囲をきょろきょろ見回している。
どこをどう見ても物置である。確かに、こんな所に喋る剣が放置されているのは奇妙だろう。
「しっかし、喋る剣となると、やっぱりそれなりに値が張るのかな?」
『売られたことはないから、値段はわからないなあ』
「あはは。キミ、面白いね」
『それはどうも。で、お嬢さんはどうしてこんな所に?』
ここは貴族の屋敷の奥にある、何の変哲もない物置の中だ。
少女の格好は、薄汚れたボロ布を一枚身に付けているだけである。
手足は擦り傷だらけで、まるで何かから逃げてきたかのようだ。
「ん。逃げ出したんだけど追いつめられちゃってね。
きっと捕まって殺されるだろうけど、その前にちょっぴり抵抗してるとこ」
『……諦めているの?』
「だって、どうしようもないもん。
警備兵だってたくさんいるし、門を飛び越えることもできないしね」
『……生き延びたい? ここから、逃げ出したい?』
「? そりゃ勿論。でも、どう考えても無理だもん。
もしボクがキミを使えるくらい強かったら、ひょっとしたら逃げられるかもしれないけどね」
どうせ無理だと割り切っているのか、それともただの空元気か。
少女は驚くほどあっさりしていて、明るい笑顔をボクに向ける。
『――取引しないか。
僕は、今、本来の持ち主と離ればなれになっちゃってるんだ。
だから、僕が持ち主の所に辿り着けるまで、僕を持って旅をして欲しい』
「は? 何言ってんの、キミ」
『もし、僕をここから持ち出してくれるのであれば、僕は君を、ここから逃がしてあげる。
――僕が君を、助けてあげる』
「すごい! すごいすごいすごいすごい!
キミって凄いよ! 伝説の魔剣か何かなの!?」
『伝説になった覚えはないけど。そんなことより、約束、忘れないでね』
「わかってる! 私も、外に出てみたかったんだ!
キミの持ち主が見つかるまで、一緒に旅をしよう!」
『うん。ありがとう』
「こちらこそ! わたしはテン。これからよろしくね!」
「――見つけた!」
聞き覚えのある、声がした。
「うわ!? ちょ、いきなり何なんだよっ!?」
僕を取られそうになったテンが、相手を引き剥がして睨み付ける。
「し、失礼しました。ですが、貴女の持っているその剣――」
「何だよ。コイツはボクの相棒なんだからね!」
『待って、テン。その人は――』
「私が、その剣の正式な所有者です。
お金はいくらでも払います。ですから、どうかその剣を返してください。
私にとって、その剣は、無くてはならないものなのです」
『ユウ……』
「え……嘘……」
テンとの約束は、僕の本来の持ち主を見つけるまで一緒に旅をすることだ。
随分と長い間テンに運んで貰ったが、これでようやく、彼女を自由にしてあげられる。
と、思ったら。
「……やだ」
『……テン?』
「コイツの相棒はボクだ! ぜったい、誰にも渡さない!」
そう叫んで。
テンは、僕を両手で握り、持ち上げて。
僕に操られるのではなく、歯を食いしばって、自分の力で。
切っ先を相手――ユウに突き付けた。
テンの予想外の言動に、僕はただ呆然としてしまう。
そんなテンに向かって、ユウが口を開いた。
「いいえ、貴女にこの剣は相応しくありません!
この方に相応しいのは私です。四の五の言わず、返しなさい!」
テンの言動も予想外だったが。
ユウがここまで言葉を荒げるのも、初めて見た。
僕を間に挟み。
少女2人が、睨み合っていた。
唐突に浮かんだネタを投下してみました。
剣の主人公と、少女2人。
どちらも剣のことを剣以上に想っているというお話です。
こういうのもこのスレ的にはありですかね?
>>650 俺はありだと思うぜ!
というか、続きが気になって……wktk!
イイヨイイヨー
個人的にはとても好き
もちろんありで!!!
このまま剣のまま取り合われるのも人に戻った主人公を取り合うのもいいな。
それと埋めねたにはもったいないので、是非とも続きをお願いしたいです。
作者さんGJです
こいつは埋めネタで終わってしまうのはもったいない!
ぜひ続きを!!
こりゃすごいのキタなw
GJ
全く関係ないんだが、保管庫の更新を急いで欲しいものだな。
保管庫で余計なものを挟まずに読むのも、また面白いからねぇ。
――――なんて、厚かましいのかしらこの娘は。
最近、振りのレスに対しての返しのレスがつまらない
取り合われる剣!いいな!操られている時に気持ちよかったりするのか。
そういう描写も入れてくださるとまさに神作品になれると思う。
個人的にはうじひめ並の衝撃を感じた!
と ど め よ !
ぬるいっ!
ベクトルの向きが少しずつずれた3角関係ネタを考えた。
まず、主人公は一途な努力家の優等生。
幼馴染のヒロインAに憧れて、少しでも認めてもらいたいがために
勉学に励み、晴れて同じ学園に入学。
・・・が、受験勉強の間にヒロインAは家庭教師の大学生に寝取られ、
既に主人公など眼中に無かった。
次に、気が弱く内向的なヒロインB。
同じクラスとなった主人公に好意を寄せるものの、
一途にAを慕い続ける彼はBの思いに気付かない。
だが、Aが既に他の男の『女』になってしまった事実を突きつけられ、
主人公が自暴自棄になったその時、チャンスが訪れた。
・・・呆然自失の主人公が衝動的に万引きをしたその現場を、
偶然携帯カメラで撮影したBは、それをネタに主人公に関係を迫る。
隠れたサディストの本性むき出しに、欲望の赴くまま
執拗に主人公を呼び出しては求めるようになる。
自信から次第にその外見も変化してゆくBは、
主人公の身も心も支配下に置くべく、学園を煽動してAを抹殺しようと画策する。
B(隠れS)→主人公→A(清純王道ヒロイン、でも寝取られ)
みたいな感じで、矢印の方向に相手を振り向かせようと足掻くわけで。