嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十六夜血華

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13人目に手をだしてみる・・・
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSS及び、
他様々な展開の修羅場プロット・妄想を扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 15年目の浮気
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155309105/
■過去スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 無言電話14回
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1154274190/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 13日の金曜日
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153233347/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十二因縁
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1152367165/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 墓標11基
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1151452702/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十戒
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1150625025/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 九死に一生
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149764666/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 監禁八日目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148998078/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 監禁七日目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148113935/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 泥棒猫六匹目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147003471/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五里霧中
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145036205/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 四面楚歌
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1143547426/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 三角関係
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142092213/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二股目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1140208433/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1137914849/
2名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 21:09:45 ID:skRFwlva
2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第13章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1152011761/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1132666398/
誘導用
【3P】ハーレムな小説を書くスレ【二股】 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1144805092/l50
寝取り・寝取られ総合スレ 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133346643/l50
ヤンデレの小説を書こう!
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148704799/l50
3名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 21:10:15 ID:skRFwlva
前々スレ、前スレに続き懲りずにまたこの娘にも手を出してしまったぜ!

スレのお約束
マターリ仲良く
修羅場はゲームの中で

さて神々よこのスレもよろしくお願いします
4名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 21:15:04 ID:X3WTJHI9
>>1
夜道には気をつけてな。
5名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 21:39:42 ID:AEz3EIEi
1くん。15年目の浮気より私を選んでくれたのね!うれしい!ありがとう!
ところで、もし、もしもよ。私が500kbになっちゃっても、ずっと私と一緒にいてくれる?
いてくれるよね。ね?
今まで振ってきた15ものスレたちと、私は違うよね。
ねえ、どうしてうんって言ってくれないの?
い ち く ん ?
6switch / telepathic communication  ◆U9DQeTtJII :2006/08/22(火) 21:49:16 ID:jY4CgRWK
>>1乙です。投下します。
7switch / telepathic communication  ◆U9DQeTtJII :2006/08/22(火) 21:49:47 ID:jY4CgRWK
「空也さん……」

彼とが帰るのを見送った私は少しして自分の家の中に入った。
玄関を開けるなり目の前に仕事着のような調えられたスーツのような、
服装をした年頃年のころ四十前後の男の人が目に入る。
中年特有の頼りなさとかは感じられず、どこぞの会社の重役でもやってそうな容貌だ。
実際、彼は父の最も信頼を置く側近で今は私の世話役をやっている。。
彼は家をよく空ける両親の変わりに私の世話をしてくれていて、実の親以上に信頼している。

「雪乃さま、彼はもうお帰りですか?」
「ええ、先程お帰りいただいたわ」
「まったく、帰るなり私を部屋の隅に押しやって何事かと思えば……
こともあろうに見ず知らずの男を招き入れて。私としては賛同しかねます」
「わかってます。相変わらず、秋唯は心配性なんですね」
「当然です。世話役を任されたからには私には、お嬢さまをお守りする義務があります。
そうでなければ、私を信用してくださるあなたのお父上とお母上に申し訳が立ちません」

秋唯は姿勢を崩さず直立不動のまま話している。
この人は悪い人ではないんだけど、若干まじめすぎる人だ。
長い付き合いなんだから、もう少しくだけた態度をとってもいいと私は思うんだけど。
8switch / telepathic communication  ◆U9DQeTtJII :2006/08/22(火) 21:50:22 ID:jY4CgRWK
実は私はあの時少しばかりの嘘をついた。
引っ越したばかりのことや、一人っきりだったのも本当だが、
付き人はほとんどいないんだけど、本当は家に私の専属の付き人の秋唯がいた。
彼には無理をいって邪魔されないように下がってもらってたのだ。
更にいえば、帰ろうと思えば自分で帰れたのに空也さんと少しでも長く居たいあまりに道を知らないふりまでしてしまった。

「大体、あの男はお嬢さまにつりあう様とはとても思えません。
気づかいも足りないですし、あのようなつまらない男など……」
「秋唯!」

秋唯のあまりの物言いに私は思わず声を荒げていた。
私の強気な態度を取ることなど、滅多にないので思わず秋唯は口をつぐんでしまう。

「空也さんのことを悪くいうのは例えあなたでも許しません」

秋唯は一応何も言わないけど、言いたいことがあるようだがそれを外に出さず、
むっつりした顔のまま背筋を直立のままに伸ばして立っている。

「秋唯。あなたに話したことがありましたね。彼が私のよく話しているあの人です」
「まさか!? あの男が……」

私の発言が余程意外だったのか秋唯は少しだけ驚きの表情を見せる。
普段、無表情な彼が表情に出すくらいだから相当の驚きようだろう。
私は彼のことを相当素敵な人だと話してたからそのギャップにおそらく驚いているのだろう。

そう、私は以前に空也さんとあったことがある。
向こうの方はそれを覚えていないみたいだけど。けど、覚えてなくても無理はない。
だって、二人ともまだ幼い子供の頃だったし、出会った日も本当に短かったから。
けど、私は彼のことを一瞬たりとも忘れたことはなかった。
少し、昔と雰囲気が違ってたけど優しいところはあの時と全然変わってない。
家に招いたのも空也さんだからで他の男だったら絶対に上げたりしない。私はそんな安い女じゃない。

「私、空也さんのことが好きです。愛してます。愛されたいとも思ってます」
「そうですか」
「応援してくれますよね?」
「はい、雪乃さまが決めたことなら私が横から口を出す必要はありませんから」

秋唯はお堅い性格だけど、無理に自分の意見を押し付けるような人じゃない。
こっちの、言葉に耳を傾けてくれるし、その上で私に助言をしてくれたり、叱ってくれたりする。
だから、私もこうして信頼することができる。

「じゃあ、お願いがあるんですけど、これから私に家事を教えてくれませんか?
あと料理も。好きな人に手料理の一つも作れないんじゃ、かっこ悪いですから」
「構いませんが……私の指導は厳しいですよ」
「もちろんです。こちらとしても望むところです」

空也さんには私と昔会ったことは黙っておこうかなあ。
向こうから思い出してもらうほうが、こっちも嬉しいし……
それよりも、明日また空也さんに会えるのかあ……嬉しいなぁ。
まだ友達だけどいずれは恋人どうしになって、私は空也さんじゃなくて空也って呼んで、
向こうも雪乃って呼んでくれて一緒に遊びに行ったりお話ししたり
それからそれから――――キャーーーーー!!!! 明日が楽しみすぎて眠れないよぉーーーー!!!!

「ゆ、雪乃さま……」

恍惚の表情を浮かべたまま、顔を横に振るわ、手をぶんぶん振り回すわ、
千鳥足のようにふらふらと部屋を闊歩してゆくわな今まで見たことのない彼女の奇行に
どうすればいいかわからず、秋唯はその場でずっと立ちすくんでいた。
9switch / telepathic communication  ◆U9DQeTtJII :2006/08/22(火) 21:51:54 ID:jY4CgRWK
今日はいろんな意味で疲れた。そうは言っても、悪い意味での疲れじゃないけど。
どっちかっていうと心地よい疲れってやつかな。時間はもう八時過ぎ……
父さんや母さんが帰ってくるとしたら、まだまだ先かな。その前に、溜まった洗濯物たたんでおかないと。
そんな、どうでもいいことを考えながら夜道をとぼとぼと歩いてゆく。


そんなことに考えを没頭してる最中に肩をポンポンと叩かれる。
普通の人なら十中八九振り向くのが必定。当然、俺もその例外ではない。


「やーい、引っかかったあっ♪」

振り向いた俺の右頬をつつきながら伶菜が無邪気にはしゃいでいる。
こういう子供じみたいたずらをするのがいかにも伶菜らしい。

「なんだ、部活の帰りか?」
「うん、ちょうと今終わったところ」

伶菜はやけにはつらつとした様子で答えてくれる。
部活の疲れなど傍目には感じられない。けど、年頃の女の子が夜道を一人歩きは見ていて心配になる。
せめて、徒歩じゃなくて自転車で帰れるようにしてあげればいいのに。そりゃ、伶菜の家は学校からそこまで遠くないけどさ。
あれ? けど、そういや家の学校って許可もらえば別に良かったような気が……

「なあ、家って申請すれば自転車通学の許可もらえなかったっけ?
夜道に一人歩きは危ないしそっちのほうが楽だろ」
「え……でも、それは……」
「何だよ、そっちのほうが絶対いいぞ」

伶菜はどこか歯切れの悪そうに口をもごもごさせている。
俺そんなに変なこと言ってないよな、何か不満なんだ。

「だって……それじゃクーちゃんと一緒に帰れないし……」
「ん? 何か言ったか?」
「ううん、何でもないの。けど、クーちゃんもこんな時間に珍しいよね」
「ああ、実は色々あってさ。実は……」

そうやって、俺は今日起きたことを全部話した。
河原で雪乃さんっていう変わった人と会ったこと、そして友達になってくれっていわれて了承したこと。
それはもう、洗いざらい全部。隠したところで別に悪いことしてるわけでもないし。
(大げさだけど)今日は、自分から一歩踏み出したようで調子に乗ってたのかもしれない。


10switch / telepathic communication  ◆U9DQeTtJII :2006/08/22(火) 21:52:38 ID:jY4CgRWK
「……………………」
「伶奈?」
「ねー、クーちゃん」
「ん、どうした?」
「あのね……あんまり知らない人についてくのって良くないと思うの」
「へ? なんで?」
「クーちゃんは優しいから……わからないかもしれないけど……雪乃さんって人が、
いい人とは限らないし……もしかしたら、クーちゃんに悪いことしようとしているかもしれないよ」
「そんなふうには見えなかったけどなぁ……」
「…………もういい」
「え?」

夏で薄暗いとはいえ伶奈の顔をうかがえるほどには明るくはない。
けど、伶奈がどこか機嫌が悪くなっているのはわかった。
服の裾をつかんで擦るのは伶奈の機嫌が悪くなった証拠だ。
伶奈が俺のことをすぐに理解できるように逆も然り。俺も伶奈のことを理解することができる。

「もういいのッ! この話しはもうおしまい!」
「おしまいって……」
「いいじゃない! 私がそう言ってるんだからクーちゃんは黙っててよッ!!」

伶奈はそれっきり、まったく取り合ってはくれなかった。
これ以上、追求したって火に油。ますます事態は悪化するに違いない。
触らぬ神に祟りなしじゃないけど、嵐が過ぎ去るのを待つか。


って嵐がすぎるのを待ってたら家に着いちゃったし。


しょうがないなあ。明日、改めてまた謝っとくか。
けど、俺なんか悪いことしたっけ?



11 ◆U9DQeTtJII :2006/08/22(火) 21:54:37 ID:jY4CgRWK
自分の読みたいものを自分で書く。これ自給自s(ry
12名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 22:14:41 ID:Htf1NyCW
一番槍。GJ
13リボンの剣士 28話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/22(火) 22:49:28 ID:SrYqXji3
投下します。
14リボンの剣士 28話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/22(火) 22:50:02 ID:SrYqXji3
一歩、もう一歩。足を進めれば進めるほど、怖さが増してくる。
真正面から向かって行く――剣道の試合では当たり前にやっていることなのに、何でこんなに辛いの。
いっそのこと、正面からぶつかって、粉々に砕け散ってしまえばいい。そんな気持ちが、あたしの足を前へ動か
している。
人志は、どんな気持ちで、歩いて来るあたしを見ているだろう。
限りある距離は、やがてゼロになった。
もう人志は、いや、あたしは、手を伸ばせば届く距離まで来た。
間には、壁も何もない。
「……」
「……」
あたしも、人志も、何も言わずに、時間だけが過ぎていった。
後ろから、竹刀がぶつかる音、踏み込みの音、掛け声が聞こえる。
「……帰ろう」
「……うん」
それだけのやり取りをして、あたしは、人志の後をついて行くように、武道場を、そして学校を出た。

学校を出てからは、縦じゃなく、横に並んで歩く。
夕日が沈みかけていて、長い影が、あたしたちから伸びている。
帰るには、いつもよりちょっと早い時間だった。
今思えば、今日、あたしはほとんど部活をサボったようなもの。
他の部員は、何て思ったんだろう。
人志を初めに、周りの人にも迷惑ばっかりかけて……。

何の言葉も無いまま、いつも別れる場所、駄菓子屋の前まで来た。
ここで人志が、やっと口を開いた。
「ああ、ちょっと待った。たまには、寄って行かないか?」
人志は店を指差している。
「うん……」
あたしに拒否権はない。言われるまま、店に入った。
このとき、今日初めて、一瞬だけ人志の顔を見た。
目の下に痣があった。あたしが、昨日殴ってつけたやつだ。
痛いわよね、痛かったわよね、本当に、ごめんね……。
頭の中で何度も謝った。直接口で言えばいいのは分かっているのに、怖くてできなかった。
15リボンの剣士 28話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/22(火) 22:50:39 ID:SrYqXji3
人志は、店に入ってからというもの、手当たり次第に駄菓子を取っては、その場で食べている。
店番のおばあちゃんは、人志が食べた分の金額を、しっかり電卓で計算している。
「明日香も、食べろ」
あたしの前に、棒ゼリーがぬっと伸びてきた。差し出してきた人志は……うん、言っちゃあ悪いけど、凄くいび
つな笑顔だった。
右半分と左半分を、それぞれ別の人が書いた似顔絵のようで、不自然としか言えない。
人志は、何を考えているの。
何年も幼馴染をやってるくせに、そんなこともわからない。
あたしへの怒りと建前が、混ざってるからかな……。
「久々に食べると、うまいもんだ」
人志の手は止まらない。テンションも上がっているように見える。今更、こんな駄菓子くらいではしゃぐなんて
……。

「明日香、手」
不意に言われて、あたしは片手を、手の平を上にして、人志に向けた。
そこに、人志はドンをさらさらと落とす。
片手に収まりきらない量になって、もう片方の手も添えた。
「半分ずつな」
そう言った人志と、何年も前、あたしの記憶の中にある人志が重なった。
ああ、昔もこうやって、少し量の多いお菓子は半分ずつに分けてたのよね。
懐かしい。二人で店の中を走り回って、限られたお金でどれだけ食べられるか、一緒に考えて。
でも、何で今日に限って人志はこんなことを?

ドンを食べ終わると、すぐに人志は半分に折ったチュ○ペットの片方を、あたしに渡した。
今は十二月。この季節にアイスはちょっと……。
「ソーダ味だったよな。一番好きなの」
人志の表情には、もうぎこちなさは無く、ずっと前の、親が離婚する前のときの明るさが見える。
……あたしは気付いた。
人志は、一人で舞い上がってるんじゃない。昔みたいに、あたしと二人で楽しく遊んだことを、その記憶を蘇ら
そうとしてる。

――もう、限界。

「人志……」
「ん?」
「はっきり、言ってよ」
優しくしなくていい。気を遣わなくたっていい。
「あたしのことなんて……もう、嫌いなんでしょ!?」
本心を伝えてくれないのが嫌。本心が分からない自分が嫌。
「どうしてよ! 何であたしに構うのよ!?」
人志に近づいて、胸倉を掴む。視界は涙でぼやけていた。
何逆ギレしてんだろう。頭の片隅でふと浮かんだ言葉は、すぐ吹き飛ばされた。
「嫌いじゃ、ない!」
16リボンの剣士 28話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/22(火) 22:51:13 ID:SrYqXji3
次の瞬間、人志との距離がさらに縮まった。というか、密着してる。
腕が……人志の両腕が、あたしの、背中に?
「あ、あ、ひ、うぇっ?」
ああああたし何言ってんの? いや、人志こそ何やってんの?
熱くなった頭が少し冷えて、また熱くなった。
胸と腕に挟まれて、熱いような、あったかいような……。
何秒くらい、そうしていたのか分からなかった。人志は、腕をとき、あたしの手を解いた。
「もういいんだ。あんな事は」
人志は、あたしの目を、まっすぐ見ていた。

……これが、人志の気持ちなんだ……。
あたしの視界は、まだぼやけ始める。
今度はあたしが、両腕を人志の背中に回して、自分の顔を胸に押し付けた。
これだから……あたしは人志が好きなんだ……。
人志の胸の中で、少しだけ、声を出して泣いた。

「姉ちゃん。落としたアイスはちゃんと拾いなよ」
店番のおばあちゃんの言葉で、すぐ離されたけど……。


「そうか。人志君とは仲直りできたか」
あれから別れて家に帰り、晩ご飯の席で、あたしの話を聞いたお父さんは、安心したようにビールをぐいっと飲
んだ。
「まあ、傷は男の勲章。それくらい笑って許せる器じゃないとな」
「また古臭いこと言って……」
お父さんは、もうビールを四杯飲んでいて、顔が赤らんでいる。お母さんは台所で、包丁を動かしていた。
「いやいや、女はそれくらい強くて、執念深いもんだ。小百合だって若い頃は――」
ダン!
台所から、強い包丁の音がした。
身振り手振りで話していたお父さんの動きが止まる。
そのすぐ側に、ビール瓶を手に持ったお母さんが、音もなく現れた。
「あらあら、もうグラスが空ね。もう一杯飲みますか?」
「い、いや、明日も仕事だし、このくらいで……」
お父さんの顔色が、赤から青に変わっていた。
やっぱり、お母さんは強い。
あたしも、人志のために、もっと強くなれるよう、頑張ろう。


(29話に続く)
17リボンの剣士 チラシの裏 ◆YH6IINt2zM :2006/08/22(火) 22:52:21 ID:SrYqXji3
『リボンの剣士』でぐぐってみました。
同じタイトルのAVがあるなんて……。

あ、次回、木場の話を書きます。
18名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 23:09:04 ID:WXfq/3UM
明日香がこれ以上強くなったら人志死んじゃうw
作者さんGJでした
19作られた命 2 ◆uDrWoF795A :2006/08/22(火) 23:09:07 ID:tysD/pHF

ふぅ…
パソコンの中に写し出された情報を一段落させ
そっと溜め息をつく。
ふと時計を見ればもう夜の3時を越えている。
いや、この研究所には夜や昼の概念はない。
眠くなったら寝て、腹がすけば食べる。
後は脇目もふらず研究。
それがここの規則だ。
時計とは何時間くらい研究したかをしる目安に過ぎない。
いつからこんな生活になってしまったのだろう?

思い起こせば、俺の主観で五年ほどまえだろうか。
世界は深刻なエネルギー不足に悩まされていた。
化石燃料は使い果たし、現在頼りにしている原子力も有限。
20作られた命 2 ◆uDrWoF795A :2006/08/22(火) 23:14:04 ID:tysD/pHF
このままではまずい。
各先進国の首脳会談が何度も行われ、たどり着いた答えは、
天才を作り出すこと。
世界が欲したのは、新たなエネルギー源を見つけだし、
工業化、実用化することの出来る天才。
そのための研究機関がここ。
世界に名だたる学者の遺伝子を集め、
それを組み替え、操作し、新たな命を生み出す研究所だ。
俺はそこで働いている。
正直、気持ちのいい仕事じゃない。
無理矢理命を作り出し、世界に従うように育てるのだから。
利便さに慣れきった人類は不便に戻ることを拒否し…
愚行に走った。
21作られた命 2 ◆uDrWoF795A :2006/08/22(火) 23:16:20 ID:tysD/pHF
「郷護。調子はどう?」
女性の声に名前を呼ばれた。
彼女の名前は鶴見 涼子。
俺の恩人であり、高校時代からの付き合いだ。
こんな仕事場まで同じになるとは夢にも思わなかった。
まぁこのような監禁に近い状況で気の知れた友人は
非常にありがたい。
しかし今は話をする気分ではないので、適当に返事をした。
「多少眠い。」
「郷護のことじゃないわよ。私が聞いているのは
Tのこと。責任者、郷護なんでしょ。」
責任者か…
Tと呼ばれる少女のことを考えると心が痛い。
確かに彼女は俺の意見が元で生まれた。
22作られた命 2 ◆uDrWoF795A :2006/08/22(火) 23:19:07 ID:tysD/pHF
あの意見は俺のこの研究所で行った最初で最後の
学者らしい仕事だろう。
あの頃はとにかくここから抜け出したかった。
やりたくもない非人道的な研究を延々とやらさるのは
苦痛でしかない。
だから俺はあの意見書を作った。
とっとと世界が臨むような存在を作り上げ、
この研究所から出して欲しい。
その一心で俺は俺のなかで完璧なものを作った。
しかし、生まれてきた少女を見た途端俺は後悔した。
俺は自分が助かる為に、
あれほど嫌だった監禁のような生活。
それより遥かに辛い生涯を、
何も知らない少女に押し付けてしまった。
23作られた命 2 ◆uDrWoF795A :2006/08/22(火) 23:22:43 ID:tysD/pHF
深い自己嫌悪に陥った俺は、
研究になるべく関わらないようにした。
遺伝子情報の処理とデータの管理を主として働いた。
だが、そんな単純作業を続ける傍ら、
俺はなんとかしてあの少女を救えないかを考えた。
人並みではなくとも、
せめて少しでも今よりまともな生活を少女に与えたい。
高校の時に俺が涼子に救われたように、
人とのふれあい、生きる喜びを与えたい。
自分で作り出しておいて身勝手な考えだが、
俺はそれ以上の償いを見つけられなかった。
まず、他の研究員に俺の思惑がばれないように、
あの少女と直接会おうと思う。
24名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 23:44:22 ID:KQixEBC+
新スレになっても作者様たちGJです
一度ヤンだ明日香もみごと復活。てっきりヤンだままかと思っていたので、安心したような残念なような。
switchと作られた命はこれから話が大きく進んでいきそうで両方とも期待しています。

阿修羅様ホントにお疲れさまです。おかげでいつも快適な嫉妬ライフを堪能させてもらってます。
25名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 23:49:32 ID:jdlsph/3
Wキター

人志格好いいじゃないか、見直したぜ
木場さんのターンにもwktk
26名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 23:54:47 ID:yXBLWbcV
素晴らしき神のごとき投下ラッシュはGJ!と言うほかないな
switchの強い嫉妬の片鱗が出てきたりこれからもwktkして待っています
27トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/08/23(水) 00:22:53 ID:5ZCloAQ9
では投下致します
28雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/08/23(水) 00:27:37 ID:5ZCloAQ9
 第7話『SUCCESSFUL MISSION』

 虎から解放されてから、幾つかの月日が流れた。
 瑠依との関係は今まで通りに晩飯を食べに来る程度で曖昧な関係はすでに終わっている。
 そのせいか、ここ最近は家に食べに来る日数が極端に減っている。
 この前は1週間に4日来ていたのに、今となっては週に一回ぐらいしか俺の家に訪れないようになった。
 少し寂しいような気もするが仕方ないことだ。俺がいつまでも瑠依の傍にいることはできない。

 もし、彼氏とかできれば何もかも今まで通りにやっていけないので、俺達の近すぎて遠い関係はいつ破綻するのかわからないあやふな物だったということだ。
 雪桜さんとの関係は恋人未満友人の関係が続いている。
 付き合っているとか交際したとこまでは進展してはいない。別にそういう訳で雪桜さんに近付こうとは考えたことがなかった。
 昼休みに俺の特製のお弁当をご馳走したり、放課後には一緒に商店街やゲームセンタとかに寄っている。

 ただ、それだけだ。
 でも、雪桜さんは出会った当時に比べて、とても明るくなった。
 以前のような陰気な少女を思わせるな雰囲気が見事に消え去っている。これも頑張って俺がお弁当を作って、栄養を付けたおかげかな。
 そんな去年と変わった日常を過ごして、季節は7月を迎える。

 期末テストという悪夢のような期間を無事に通り過ごして俺はようやく安堵の息をつく。
 補習で夏休みを無駄にするってのはできる勘弁したいものだ。
「とりあえず、礼を言っておくぜ内山田」
「あはっはははっっ。愛するつよちゃんのためなら、学校に忍び込んでテスト用紙を盗むぐらい朝飯前だよ」
 友人である内山田は可愛い仕草で微笑する。窃盗発言を教室で高らかに叫んでいても、他のクラスメイト達は別に驚かないだろう。
 その事を尋ねる勇気も持たないのだから仕方ない。

「これで担任のお見合いを成功させる秘訣っていうわけわからんレポートを出す必要がなくなるからな」
「本当だよね。今、黒岩先生の見合いが連敗新記録を樹立しているおかげで株も安定しているけど、いい加減にあきらめて出家したらいいのに」
「いやいや。黒岩先生の事だから、しっとマスクの仮面を被ってカップルを妨害する偉大な人間になっているかもしれないぞ」
「あはははあっ。そんなことになったら、黒岩先生が何組のカップルを破綻させるのが賭けの対象になっちゃうよ」

 まあ、実際にそんな事になったら、こいつは喜んで黒岩先生に校内のカップルの情報を躊躇なく売り渡すんだろうな。
 この腹黒女男めっ。

「でも、先のことを考えて黒岩先生が変貌するまえに手を打っておく必要があるわね。
 例えば、わたしとつよちゃんが今期最高のカップルだと学校中に広めて、黒岩先生の様子を見れば、わたしたちのことをうらやましそうに見ているなら。
 コンディション・レッド発令!。対モビルスーツ戦闘。パイロットはただちにコクピットに待機してください。って感じ?」
「あの誰と誰がカップルって?」
「嫌だな。わたしとつよちゃんに決まっているじゃない」
「なんやてっっ!!」
「瑠依ちゃんには悪いけど、すでに結婚式場は予約しているの」

 この女男は今ここで始末したほうが世の中のためになるかもしれん。

「さてと、わたしはウェディングドレスを買いにいくから先に帰るね」
「とっと、帰ってくださいお願いします」

 立ち去る内山田に一言。
 男がウェディングドレスを買いにいってどうするんだよっっ!!
 もはや、狂気の沙汰ではない。
29雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/08/23(水) 00:28:56 ID:5ZCloAQ9
 内山田の存在に怯えながらも、俺は癒されるオアシスへと直行した。
 言うまでもなく、雪桜さんのいるクラスだ。
 期末テスト終了おめでとう記念の打ち上げパーティを含めて、雪桜さんと遊ぶ約束をしているのだ。
 以前なら、他の女の子とこうやって遊ぶことなんて滅多になかったような気がする。

 そう、虎が何かと理由を付けて妨害してきたからである。
 女の子にちょっかいを出すだけでとても不機嫌になってしまい、家の米の貯蔵量を大量に減らすという大技を見事に成し遂げるのだ。
 生活費と俺の小遣いの減額を恐れた俺は虎の機嫌を損ねないようにいろいろと努力の日々が続いたが。

 あの出来事を経て虎の許しが出たので、俺は自由の身になった。
 雪桜さんのクラスに辿り着くとすでにクラスルームは終了して、雪桜さんは自分の席でぽつんと待ってくれていた。
 髪留めに使われている大きな黄色なリボンが嬉しそうに左右にパタパタと動いているように見えるのは錯覚だろうか。
 子犬が愛しいご主人様を待っているように思えた。
「雪桜さん。待った?」
「いえ、全然。待ってないですよ」
「じゃあ、行こうか」
「はい」
 雪桜さんの笑顔は俺にとっては真夏の太陽よりも眩しかった。
30雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/08/23(水) 00:33:06 ID:5ZCloAQ9
 学園を出ると近くにある商店街を俺と雪桜さんと仲良く手を繋いで歩いていた。
 勘違いして欲しくないのだが、雪桜さんとは付き合っていない。彼女彼氏の関係ではない。
 ただ。
「桧山さん。手を繋いでください」

 と、つぶらな瞳で上目遣いで見つめられるとどんな頑強で堅い男でも手を繋ぎたくなるのが男の業である。
 この俺ですら、お持ち帰りしたくなるぐらいに心が揺れてしまっていた。
 そんな風に衝動を抑えながら、雪桜さんと俺はゲームセンタ−やショッピングセンタ−などに立ち寄っては買物やゲームを楽しんでいた。
 充分に楽しい時間であったが、雪桜さんの一言で俺は地獄の底に落とされていた。
「あの私、胸が大きくなってしまったので新しいブラジャーを買わなければならなかったんですけど。桧山さんも一緒に付き合ってくれますよね?」
「なんですと」

 ランジェリーショップへと強制的に誘導されている事に全く気付かなかった俺はその言葉に驚愕していた。
 ランジェリ−ショップとは、男が踏み入れることができない禁断の領域。
 男一人で入ることは法律的に制限されてはいないが、女性陣から冷たい目で見られて変態扱いされるのがオチだ。
 ここに立っているだけでも警察で通報されそうで恐いというのに。
 雪桜さんはトマトのように頬を真っ赤に染めて、更に衝撃的な一言を言う。
「桧山さんに選んで欲しいんです」
 首まで真っ赤にして、オドオドしている健気の姿はぜひお持ち帰りしたい。
 って驚くところはそこじゃないぞ俺。

「だ、だめですか?」
 無表情で硬直している俺の反応がないのか、真っ赤に染まった顔から泣きそうに目に涙を溜めてゆく。
 もし、丁寧に断ったとしても雪桜さんは泣きだしてしまいそうだ。
 ランジェリーショップの前で女の子を泣かす俺の存在は世間的では大人しい女の子に派手な下着をはけと強要している最低男と位置付けされておかしくはない。
 それだけは避けねばならない。人として。
「わ、わかったよ。とことん付き合うよ」
「わ〜い。桧山さん。ありがとうございます。じゃあ、行きましょうか」
 逃げられないように雪桜さんは俺の腕にぎっちしと組んでランジェリーショップに突入する。

 店内にはもちろん男性などいなかった。年頃の女の子やご婦人など言うまでもなく女性しかいなかった。
 様々な種類の下着が置かれているので、目の移る場所には本当に困る。 雪桜さんのお目当てのブラジャー売場に辿り着いた。
 俺は周囲の突き刺さる冷たい女性陣の視線を無視をして、雪桜さんが楽しそうにブラジャーの売場で選んでいる姿を見ていた。
 後ろを振り返ると恐いので、現実逃避をしないと精神が壊れそうだ。
「桧山さん。これどうですか?」
 差し出されたのはピンク色のブラジャーで、サイズは少し大きめである。
 あの小柄な雪桜さんは結構胸があるんだといけない妄想を考えていると。

「ひーやーまーさん?」
「ううん。いいんじゃないか……?」
 可愛らしく延びた声が発する意味は『嫌らしいことを考えないでください』であろう。 
 一体何をどういう風にコメントしたらいいんだろうか。女性の下着に関する知識なんて持っているはずもない。
 だが、雪桜さんは蔓延なる笑顔を浮かべていた。
「そ、そうですかぁ」
 嬉しそうに頬が弛んでいる雪桜さんはえへへと笑っていた。
 その天使の姿を拝見するだけでこのような地獄にいることすらも忘れさせて癒してくれるのだ。

「念のために試着してきますね」

 ブラジャー売場のすぐ近くにある試着室に駆け込むと禁断のカーテンを閉めて外部から遮断される。
 ぽつんと残された俺は雪桜さんが出てくるまでにその辺で暇を潰そうと思った途端にここがランジェリーショップだと思い出される。
 完全に無視していたと思っていた女性達の冷たい視線が次々と突き刺さってゆく。
 社員と思われる人達が睨んでいるが、さすがに問題を起こしていない俺に制止する声はない。
 ただ、何か問題を起こしたらすぐに警察を呼びますよという意思表示は
 内山田に期末テストの用紙を盗んでもらうわないとこの夏を乗り越えることができない学力の俺でもわかった。
 長い長い沈黙が流れる。
 疑惑の判定よりも心の抗議の声が多そうだ。
 居心地の悪い場所から抜け出したいが、雪桜さんの事を考えると逃げるという選択肢はない。
31雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/08/23(水) 00:35:42 ID:5ZCloAQ9
「桧山さん。ちょっと来てください」
 この地獄から抜け出す天使の声が聞こえると俺は躊躇なく雪桜さんがいる試着室に向かった。
 雪桜さんが困っているとならば、そこが幻の大地や平行世界の果てでも真っ先に飛んでゆくことだろう。
 カーテンの隙間から手を差し出して、早く来てくださいと手を勢いよく振っているのは滑稽のように思えるが、そこが雪桜さんの可愛いところである。
「どうしたんですか?」
 返事が返ってくる間もなく、俺は胸倉を掴まれて無理矢理に試着室へと連れ込まれる。
 状況を判断できない俺は雪桜さんの顔を見た。ランジェリーショップに誘い込む以上に顔を赤面させている。

 本当にどういう状態になっているんだ? と冷静に状況を把握した途端に俺は背筋に冷たい汗が流れたのを確認した。
 学園の制服を半脱ぎしている状態の雪桜さんが俺にぎっちしとしがみついて抱きしめているのだ。
 雪桜さんの胸元にははだけた白いブラジャーから胸の谷間がしっかりと見えている。

 更に俺の体に押しつけるように抱き締めているので柔らかい膨らみを先程から感じているのだ。
 まさに天国はこの試着室にあった。
 と、単純に喜べる状況ではない。あの大人しい雪桜さんが過激な行動を取るなんて考えられないのだ。

「雪桜さん、どうしてこんなことを?」
「しっ。静かにしてください。大声を出したら人が来ちゃいますよ」

 狭い試着室の中で男女が抱き合っている姿を赤の他人に目撃させるわけにはいかない。
 雪桜さんが少しだけ悲鳴の声をあげるだけで俺が変質者として、その場で逮捕される可能性が一番高いのだ。
「えへへへ。桧山さんといっしょ」
 小悪魔的笑顔を浮かべる雪桜さんの可愛いさに俺は昇天しそうになった。
「キスしてください」
「なんですと?」
「私とするのは嫌なんですか?」

 喜んでキスさせていただきます。じゃなくて。恋人関係じゃないのにそんな行為は雪桜を汚す行為に等しいものである。
 俺は喉から手が出るほど雪桜さんの好意に甘えたかったが残念ながら辞退するしかないだろう。
「そういうわけじゃないんだけど」
「人呼びますよー」
 俺には選択権とか拒否権は存在していなかった。
「わかった。キスするから呼ばないでくれ」
「じゃあ、お願いしますね」

 雪桜さんは目を瞑って、唇を差し出てくる。
 その唇は小刻みに震えているが、俺の胸の鼓動もドクンと高鳴っている。
 ただ触れるだけの稚拙なキス。
 それでも、二人にとっては大切な初めてキスであった。
32雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/08/23(水) 00:36:50 ID:5ZCloAQ9
 試着室から出てから、真っ向にランジェリーショップを逃げるように抜け出した。
 雪桜さんは顔を真っ赤にして、俺に視線を合わすこともなく。
 今日はありがとうと言って帰っていた。恥ずかしいのは俺も同じであった。
 雪桜さんを女性として意識し始めている。
 彼女に男女の関係を求めているのだ。
 キスの事を思い出すだけで、頬が弛んでしまう。
 今年の夏は楽しい夏になると俺はこの時は思っていた。

 でも、世の中はそう思い通りに行くはずがないと……。
 後で思い知らされることになる。
33トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/08/23(水) 00:41:52 ID:5ZCloAQ9
うーん。
なんだか、今回はこのスレ外的展開になっているわけですが・・
次回こそは修羅場に発展できたらいいかと思います。
それ以前に書き溜めしていたの分を今回は放流してしまったので
第8話の分を今から書き上げようと思います。
というわけで頑張って長考中なのでしばらくお待ちくださいませw
34名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 01:05:26 ID:hnOTIzOJ
|ω・~) うはwwwww 感想が追いつかないwwwww 神々GJです  
        ついでに雪桜は俺が・・・・
   
35名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 01:08:36 ID:DPCEcgqF
問題なのは雪桜さんは一体何カップなんだ?
CカップかDカップなのか・・


気になるぞ!!
36名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 01:58:53 ID:YStXI0W6
たくさんの作品が投下されてて感想が追いつかない(;つД`)
流石、作者様方はいい作品をいっぱい書いていらっしゃる
>>33
こういう日常があるからこそ嫉妬は輝きを増す(*´д`*)
そして主人公の受けっぷりが堪らないわぁ
>>23
|ω・`) 未来物?は少ないのでどうなるか読めない、楽しみ
>>17
お母さんに不覚にも心を惹かれた件
一体どんな修羅場があったのやら・・・
>>11
|ω・`) 伶奈さんから凄く何かいいものを感じる
37名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 02:45:18 ID:hnOTIzOJ
|ω・`) ところで、まとめサイトにこの子どこの子が載ってないのは忘れてるだけですか?
    忙しくてできてないだけだったらスマソ
38名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 03:05:50 ID:i4yQ2MjM
広き檻の中でに統合されてるぞ 
39名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 03:07:53 ID:hnOTIzOJ
|ω・`) サンクス
40名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 03:57:15 ID:er6C5dR8
阿修羅さん本当にお疲れ様ですね。マジで尊敬の念が沸き起こってくる。
41名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 12:42:21 ID:49lgaDVR
そして
尊敬する住民VS依存する阿修羅氏嫁の壮絶な修羅場がはじまるというわけですね
42名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 14:37:50 ID:We+fugog
>>41
それなんて二等辺三角関係?
43Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/23(水) 18:04:03 ID:q/siOpOj

Sequel to Story(2)

「おっぱい、恐い……おっぱい、恐い……おっぱい、恐い……」
 虚脱感で自分が何してるのか解らない。
なんとなく、一室にみんなが集まってるのだけは霞がかった頭の隅で理解していた。

「ウ、ウィリアムっ!?どうした!?」
 誰かが俺の肩を揺さぶっている。……うぅ。誰?

「おっぱい、恐い……おっぱい、恐い……おっぱい、恐い……」

「しっかりせよ!」

 ぱんっ、と頬を張られて、やっと意識がしっかりしてきた。

「あ、あれ?俺、いったい…………姫様…?」
 きょろきょろとまわりを見渡すと、
団長やシャロンちゃんも合わせた四人でひとつのテーブルを囲んで座っていた。
 どうしてみんな集まっているのか状況が把握できない。

「何があったのじゃ、ウィリアム」
 さっきまでの俺の様子が余程おかしかったのか、恐る恐るこちらの顔を覗き見る姫様。

「えっと、確か……」
 ノイズの酷い記憶を辿りながら、これまでの経緯を思い出す。
朝起きたら、団長と姫様に襲われて……凄く気持ちよくて。
ええと、それから射精したモノがシャロンちゃんにかかっちゃって――――――――あ。

「う、ううぅ………おっぱい、恐い……おっぱい、恐い……おっぱい、恐い……」
 恐怖が。死臭漂う戦場ですら味わったことのない恐怖がぶりかえしてくる。

「しっかりせよ、ウィリアム!!シャロンに何されたのじゃ!?」

 とても言えない。
まさかシャロンちゃんの部屋に連れて行かれた挙句、
俺の■■■を■■され、■■■■させられたかと思えば、さらにシャロンちゃんの■■が俺の■■■を■■■■し、
最後にはその■■で■■■■■かのように■■されたなんて。

 言える訳がない。
44Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/23(水) 18:04:46 ID:q/siOpOj

「おっぱい、恐い……おっぱい、恐い……」
 うわ言の如く呟いて必死に心が潰されないように耐える。
そうでもしないと裸でオークニーを闊歩してしまいそうだ。

「シャロンっ!」
 姫様の追求の目がシャロンちゃんに照準を合わせ。
その瞳から目を逸らすようにこちらを見つめる女中服の大魔王。

「軽く注意させて頂いただけです。……ですよね?ウィリアム様」
 シャロンちゃんががががが俺の肩にににに手を置いたたたたた。

「ひぃっ!!?」
 驚きのあまり寿命が五年縮まった。……というか今一瞬死んだ。

「なっ、何したんですか、シャロンさん!?ウィルの怯えようはただごとじゃないですよっ!?」
 団長が椅子を蹴って立ち上がる。

「ダイジョブ デス。ダンチョウ。オレ ナントモ ナイ」
 とりアえず、誤解ヲ解いてオかナイと。なにもナいかラ、オチついテくだサい、団長。

「どうして片言なんですかっ!」

「いや、ホントに大丈夫ですから。それよりも何でみんな集まっているんでしたっけ?」
 おもいっきり話題を逸らした。そうでもしないと俺の身が危ない。あ、あんなのは二度とゴメンだ。

「そろそろ備蓄が切れる、という話でございます」
 よし、シャロンちゃん!ナイスフォローッ!!このまま一気に―――――――

「ウィリアム、やはりシャロンに何か脅され……」
 

「お願い!話を蒸し返さないで!俺のために!!」





…………閑話休題。




「…で、みなさん。
いい加減我が家の家計が火の車です。みんなの知恵を絞って何か打開策を練りましょう」

 ばん、と机を叩いて俺はみんなを見据えた。

「そりゃそうでしょう。ウィル、あなたが悪いんですよ。
慈善事業でもないのに依頼を破格の値段で引き受けてばかりいるから」
 最初の意見はえらく俺に風当たりの強いものだった。言ってることに間違いはないが。
45Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/23(水) 18:06:01 ID:q/siOpOj

「おかげで街の者の中には"ハーレム"をボランティア団体か何かと勘違いしてる者もおる」
 更に姫様が追撃。

「いや、だって……困って此処に来た人たちに『金がないなら帰れ』なんて言えないでしょう」
 それに。
これは完全な自己満足ではあるが、人助けが俺の償い方のひとつでもあると思っている。

「だからってこっちの首が回らなくなったら元も子もありませんよ」
 ……仰るとおりです。

「と、とにかく!
これまでのように仕事を受けていては今月分の家賃すらヤバイことになりかねません。
ですので、このピンチを乗り切る起死回生の案を募集します」


 マローネが此処を発ってからおよそ半年。
俺たちはオークニーのとある一角で何でも屋を営んでいた。

 何でも屋"ハーレム"。
迷い猫捜しから要人の護衛まで来る者拒まず仕事を引き受けていたおかげか、街の中でも俺たちの存在は有名だ。
やはり安価な報酬で仕事をしているのが好評らしい。オークニーでは困ったら此処に来るという人も少なくないようだ。
まぁ、別の意味でも有名だが。
ちなみに、店の名前である"ハーレム"の命名は約一名の反対を除いて全会一致で決まった。
皮肉が多分に含まれていることは想像に難くない。……とほほ。

その"ハーレム"が安価で仕事を請け負い過ぎたせいで、今看板を畳む危機に陥っているのだ。
今日中に何とかしなければ本当に冗談ごとでは済まされない。…なんとかしなければ。

……召集をかけたのはいいけれども。
 無情にも時間だけが過ぎていく。

 四人集まれば何かいいアイディアが浮かぶと思ったんだけど。

団長は「うーん」と天井を見つめながら、一生懸命考えてくれている。
シャロンちゃんは黙々と林檎の皮を剥いていた。あの、林檎はもういいから…シャロンちゃんも何か考えて。
姫様は……胸の前で両の手の平を合わせて、そこにぐっ、ぐっ、と断続的に力を込めていた。
何やら「これで本当に胸が大きくなるんじゃろうか…」とか呟いてる。

 これはもう駄目かも…。
46Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/23(水) 18:07:28 ID:q/siOpOj

「……おっ、俺は何か羽振りのいい仕事がないかジュディスさんに訊いて来ます!
みんなも何かいい案があったら帰ってきたときに教えてください」
 あまりに居た堪れなくなったので、俺は逃げるように家を飛び出した。

 家を出るときの俺を見る皆の視線が冷たかったような気がする。
えぇ。そうですよ。全部俺が悪いんですよ、こうなったのも。

 "ハーレム"から程近い場所にある酒場。俺はそこに足を運んだ。
街でも結構な賑わいを見せている場所だ。
その酒場はさっき言っていたジュディスさん―――俺たちに家を貸してくれている人なのだが―――が経営している店で、
彼女にはちょくちょく仕事を紹介してもらっている。

 今回もジュディスさんを頼るというのは全くもって遺憾であるが…背に腹は代えられない。
俺が此処で踏ん張らねば皆が餓死してしまうのだ。


「……というわけで何かいい依頼は来てませんか?」

「ウィルちゃん、かっこ悪いわよ」
 グラスを拭きながら、いつものにこにこ顔で一笑に伏された。

「うぅ……でも本ッ当〜に何とかしないと、ジュディスさんに家賃も払えなくなっちゃいます…」
 ジュディスさんに家賃を払うために当の本人に仕事を紹介してもらうというのは、確かにかなりアレではあるけど。

「私はそれでも構わないんですけど。ウィルちゃんの身体で払ってもらえばいいんだから」
「それは堪忍してください…」
 終始変わらぬ笑顔が恐すぎる。そんなことになったら一体何されるか…第一、団長たちが黙ってない。
実際にそうなったときの光景を想像して、俺は身震いした。
 この人、いつもニコニコしてるけど腹の底では何考えてるか解らないしなぁ…。
俺はとんでもない人物に関わってるんじゃないかと今頃になって思う。
47Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/23(水) 18:08:08 ID:q/siOpOj

「家賃もそうだけど、マリベルちゃんのお月謝も二ヶ月分滞納してるわよ」

「あ……」
 そうだった。そっちは完全に忘れてた。
借家や仕事の紹介だけじゃない。この人には姫様に護身術を教えてくれている。
 例の誘拐事件が原因なのか、姫様が身を守る術を身に付けたいと言い出した。
姫様は刀剣類を嫌う傾向があったので、剣技専門の俺たちでは教えられることに限界がある。
やれどうしたものか、と困っていたところを快く引き受けてくれたのがジュディスさんだった。
何でも昔、極東地域出身の人物に格闘技を習ったのだそうだ。
 まさにうってつけということで、酒場を閉めた後、姫様に護身術を教えてもらうことになった。
ジュディスさんにはタダでいいと言われたのだが、それだとあまりにもおんぶに抱っこなので月謝制で代金を支払っている。

兎も角、家賃の上にそれが上乗せとなると益々ヤバイ。

「もしかして……忘れてた?」

「い、いえいえ!滅相もありませんっ!そそ、それより依頼は…?」
 雲行きが怪しくなってきたので、話の方向を元に戻した。
期待しながらジュディスさんが依頼文のリストに目を通しているのを見守る。


「…そうねぇ。西地区に住んでるエリザちゃん(9歳)が『犬を飼いたいんだけどママに反対されて
困ってます。どうかママを説得してください』っていう依頼が来てるわね」
 リストに目を通しながら依頼文を読み上げていく。
また…なんというか…その、ほのぼのした依頼内容だな。いや、まぁそれはいいとして。

「……えと、報酬は…?」
 まさか9歳の幼女に多額の報酬は期待できないだろうが、念のため訊いてみた。
「えーと、どれどれ……
『成功した暁にはあたしと一日デートできる権利をプレゼントしちゃいます。優しくエスコートしてね(はぁと)』……だって。
まぁ、ウィルちゃんモテモテね」

「………」
 ガク。
今まさに、仕事を選ばずに引き受けてきたツケが俺に圧し掛かっていた。よくよく考えれば最近はこんな依頼ばっかだった。
こ、子供の依頼なら後で団長にでも頼もう……あの人、子供好きだし。
今はそれよりも俺たちを潤してくれる仕事を受けないと。この際報酬を奮発してくれるなら3Kな仕事でもいい。
48Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/23(水) 18:09:27 ID:q/siOpOj

「ほ、他には何か来てませんか……?」

「今来てる依頼はそれだけね」
 僅かな期待を胸に尋ねる俺を余所に、ジュディスさんは死の宣告を下した。

「…さいですか」
 あまりに絶望的な状況に頭痛を禁じえない。
とうとうジュディスさんの毒牙にかかる日が現実味を帯びて迫ってきた。……し、死ねる。

「…まあ、これでも飲んで一息ついたら?サービスにしとくから」
 がっくり項垂れる俺に気を遣ってか、目の前のカウンターに珈琲を置いてくれた。
礼を言うことも忘れ、それをちびちび飲み始めながら思う。

(お、終わった……)



「私の方は別に待ってあげてもいいんだけどね。
でもウィルちゃん、このままじゃ食費だって危ないでしょ?」
 ジュディスさんがいつもの笑顔をやや苦笑いに変え、そう言った。

「全くもってそのとーりです……」

「なんなら領主様に頼んでみたらどうかしら?ロット伯なら何だって仕事くれるわよ?
ウィルちゃんのことも買ってるみたいだし」


「あー…いや、それは……」
 ジュディスさんの提案は最もなのだが、俺はとても乗り気にはなれない。
と言うのも、ロット家は今の俺にとっては鬼門中の鬼門だからだ。
いや、ロット伯は領主としても人間としても非常に出来た人物なので、それは問題じゃない。
……問題は"彼女"なのだ。
 暇を見つけては団長たちを焚き付けて騒動を起こし。
またある時は、姫様に悪知恵を吹き込んで団長とバトルさせ。
団長たちが俺を取り合う様を傍観して悦に浸る、超要注意人物。
 そういう女性がロット家に巣食っているのだ。とてもあの家に近づこうとは思わない。

「そう、それが問題だ」
 珈琲をすすりながら独りごちた。
今のこの状況で彼女に会えば、どんな災難が降りかかるか解ったもんじゃない。
ロット伯に助けを求めることは彼女の災厄を甘んじて受けることと同義なのだ。
49Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/23(水) 18:10:12 ID:q/siOpOj



「それじゃあ、どうするつもりなの?」

「みんなで分散して適当にバイトでも探してみます。当座はそれで凌げるでしょう。
――――――でも…」
 一区切りして嘆息。その後はただの愚痴だった。
「………高額報酬の仕事、どこかに落ちてないかなぁ……」

 嗚呼、我ながら情けない。
自嘲しながら再び珈琲をすすり始めた途端。

――――――バタンッ

 …と勢いよく酒場の扉が開け放たれ。




「話は聞かせてもらったわ!!」




「ぶふっ!!?」
 珈琲吹いた。
50Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/23(水) 18:11:37 ID:q/siOpOj
ゲストキャラ投入。
51名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 18:17:10 ID:+IBIkINs
リアルタイムキター


すべて話は聞かせてもらった!人類は滅亡する!キャラにwktk
52白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2006/08/23(水) 20:00:52 ID:zFRhvHhd
 私は刃をクリスの目の前に留めたままに、私達はお互い睨み合うように対峙してた。
 いや、睨んでるのはクリスの方だけ――。
 其の瞳には敵意と、そして悔しさがありありと浮かんでた。
 そして私はと言うとどうして良いか困惑してた。
 正直このコを殺す様な真似はしたくない。 以前の腐れ姉弟とは訳が違う。
 其の戦闘力を買ってと言うのもあるが、それ以上に私は――。

「とどめを刺したらどうです」
 沈黙を破るように口を開いたのはクリスだった。
 其の瞳には敵意と共に悔しさの色が浮かび、そして涙も滲み始めてた。
「……そんな事しないわよ」
 私は溜息を吐き刃を下ろし鞘に収めた。
 次の瞬間クリスは叫び声を上げる。
「なんですかそれ! 見下してるんですか?! 憐れんでるんですか?!」
「少し落ち着きなさ……」
「ウルサイ! ウルサイ……!」
 クリスは叫ぶと柄だけになったグレイブを放り捨て。 そして――。
「うわああぁぁぁあ!!」
 代わりにあの鉈のような大ぶりの短剣を振りかぶった。

 其の一撃は感情を剥き出しにしたあまりにも直情的で、それ故に直線的な攻撃。
 真っ直ぐ振り下ろされるナイフを紙一重で交わし手首を掴むとそのまま勢いを利用し放り投げた。
 放り投げられたクリスの体が宙に弧を描く。 其の落下地点は――。

 派手な音と共に水しぶきが上がる。
「プハァッッ……!! ゲホッ、ゴホッ……」
 そして湯船からクリスは顔を出した。
 私は湯船の中のクリスに向かい歩を進め、服を脱ぎ湯に足を入れる。
53白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2006/08/23(水) 20:02:19 ID:zFRhvHhd

「いいお湯ね、クリス」
 湯に浸かると私はクリスのほうを向き口を開いた。
「あ、あなた何をそんな悠長な……! ボクはあなたを殺そうとしたんですよ?!
そんな自分を殺そうとした相手に何呑気な……!」
「細かい事気にしないの。折角の温泉なんだし女同士裸の付き合いで腹を割って話し合いましょ」
 そう言って私が微笑みかけるとクリスは呆れたような顔をしながらも、
未だ視線に敵意を残しながら黙った。

「ねぇ、クリス。 私の事嫌い?」
 私が語りかけるとクリスは相変わらす敵意の込もった視線で睨んできた。
「って聞くまでも無いか。 殺そうとまでしたぐらいだもんね」
 私は笑いながら溜息をつき続けて口を開く。
「けどさぁ、チョット聞いていい? 私を殺せた場合、殺した後どうするつもりだったの?
死体の処理とか、リオへの言い訳とか」
 言われてクリスの表情が硬直した。 やっぱあれは考え無しの咄嗟の行動だったんだ。
 そんなクリスの表情を目にした私は思わず笑みをこぼす。
「笑わないで下さい!……っていうか自分を殺そうとした人間相手に良くそんな風に笑えますね」
 そう言ってクリスは怒りと言うより、呆れた顔を見せる。

「ねぇ、クリス。 アンタは私の事嫌いかもしれないけど、私はアンタのこと結構好きよ?」
「……ハァ?! あなた何言ってるんですか?! ボクはたった今あなたを殺そうとした人間ですよ?!」
 私の言葉にクリスは其の顔に益々呆れの色を強める。
「うん、まぁ確かにそうだし、あれには私も本気で肝が冷えたんだけど。
でもね、やっぱアンタの事嫌いとは思えないのよ」
「……ボクなんかの何がそんなに気に入ったんですか?」
 そう言ったクリスの表情からはさっきまでよりは大分敵意が薄らいでいた。

「そうねぇ、其の前に私が嫌いな人間ってどんなだか分かる?」
「分かるわけ無いでしょ」
 私の問いに尚も仏頂面で答えるクリス。 私はそんなクリスに向かって言葉を続ける。
「私が嫌いなやつってのはね、一言で言えば恵まれてて――そう、才能とか家柄とか境遇とか、
そして其の事に胡座をかいて慢心してたり人を見下してたり、そんなヤツラ。 
若しね、そんなヤツラがあんな真似してたらあそこで刃を止めたりしない。遠慮無く殺してるわ。
って言うか過去に既に殺っちゃってるし」
 言葉を紡ぎながら私は笑ってみせ、そして続ける。
「クリスはさァ、言ってみりゃそう言うヤツラと正反対のタイプでしょ?
其の強さを手に入れるまで一杯苦労して頑張ったんでしょ?」
 このコの躯、さっき見て改めて感じたけど、無駄なく絞られ物凄く引き締まってる。
 それに……全身傷だらけ。 小さいの大きいの、新しいの古いの。
「あ、あなたなんかに何が……何が解かるって……!」
「そうね。 私はアンタじゃない。
ココで安易に解かる何て言っちゃ知った風な口を利くなって怒るでしょうね。
でもね、私もアンタほどじゃないけどこう見えても色々あったんだ」
54白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2006/08/23(水) 20:05:06 ID:zFRhvHhd

 私は話した。 コッチの世界に来てリオにも話した事の無い話。
 私が生まれる前に私と母を捨てた父親に当たる男の事。
 暴漢に襲われ純潔を失いそうになった事。
 その時付き合ってた初恋の人が私を見捨てて逃げた事。
 その日以来男に絶望し男に頼らずとも生きていける強さが欲しくて武術にのめりこんだ事。
 嘗めた態度で近づいて人を見下しバカにしてた腐れ姉弟をこの手で殺した事。
 そして話題はリオの幼馴染のコレットの事に。

「コレット……」
「クリスも知ってるの?」
 私が聞くとクリスはコクリと頷いた。
「そっか。 アンタ昔リオと一緒だったときあるって言ってたもんね。
リオと幼馴染のコレットのこと知ってても不思議は無いものね。
ねぇ、クリス。 アンタ、コレットとはどうだったの?」
 私が聞くとクリスは苦い表情を見せる。 そして口を開く。
「ボクは……苦手ですコレットは。幼い頃、遠巻きにボクの事ずっと脅えた視線で見つめてた。
ボクが引き取られ村を離れる日――そのときも遠巻きにボクのこと見てたけど、
物凄くホッとした表情してた……!」
 そう言ったクリスの表情はまるで苦虫でも噛み潰したかのごとき物だった。
「きっとボクのこの顔の傷が怖かったからなんでしょうね。幼い子供の事なんだから
仕方ないのは分かってたけど、でも物凄くイヤだった……あの視線。
自分が物凄く惨めな気持にさせるあの視線が」
 言い終わったクリスの表情はやりきれない思いを抱えてる、そんな感じだった。

「そっか。 ねェ知ってた? あのコってリオと婚約してるってこと」
 クリスの表情がこわばった。
「其の事知った時私物凄くショックだった。 始めてコレットに出会ったとき殺意すら抱いたわ。
でもね、勿論そんな事おくびにも出さなかったわ。 っていうか出せる分けないものね。
だからね、表向きは『オトモダチ』の振りしてたりするわ。 そうあくまでも表向きだけ。
本心は……大っ嫌い!
だって! だって! あのコに何が出来るって言うの? リオに何をしてあげられ るって言うの?!
何も出来やしない! リオが使命を果たし帰ってくるのを村にこもって待つ事しか出来ないくせに!
只幼馴染と言うだけでリオの心を独り占めに出来るあの小娘が私は大っ嫌い!!
あ、勿論こんな事リオの目の前では口が裂けても言えないけどね」
 私が一通り話し終わると、聞き終わったクリスの顔からは先程までと比べ殆ど敵意の色が消えてた。
「ゴメンね色々愚痴っぽい事たくさん言っちゃって。 でもお陰でスッキリ出来たわ。
ありがとね色々聞いてくれて」

 暫らくの沈黙の後クリスは立ち上がり湯船から上がる。
「もう出るの? そうね、あんまり長湯しちゃ湯あたりしちゃうものね。
私はもう暫らく入ってから出るから」
 返事は無かった。 無言で去っていくクリス。
 やっぱそう簡単に心を開いてはくれないのかなぁ……。
55白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2006/08/23(水) 20:07:07 ID:zFRhvHhd

 私がクリスに感じたもの――。
 確かにこのコの戦闘能力の高さを買ってというのもあるが、それだけじゃない。
 今まで色んな人間と組んだりもした。 でも仲間と呼ぶに値する人間はいなかった。
 どいつもコイツも私達の名声に引かれ実力も無いくせにお雫れに預かろうと、
腹の底で人の事を利用しようと、実力もヘボなら信頼も置けないそんなヤツラばかり……。

 だから……。
 初めてだった……。
 初めてのまともな仲間と言える、初めて頼りに思える、そんなコだったから。
 確かに腹の底で凄い事を隠し考えてたけど……でも。
「あのコ隠すの下手だったわね……」
 しょっちゅう顔に出てたものね、気持が。
 確かに本心は隠してたけど、でも……隠し切れてない不器用な面。
 そして知った。 このコが体に、そして心にも大きな傷を負いながらも逞しく生きてる。
 そんなこのコ――クリスだから親しくなりたいと思えた。

 勿論私が一番好きなのがリオなのはこの世界に来た時から今に到るまで変わってないけど、
だけど好きな相手だからこそ口に出せない、打ち明けられない事もある。
 そしてそんな思いを話せる相手が欲しい――そんな親友にクリスになって欲しいと。
 私は思ったのだった。

To be continued...
56 ◆tVzTTTyvm. :2006/08/23(水) 20:10:19 ID:zFRhvHhd
今後の展開にマジで行き詰まりかけとります
展開に対する要望とか
応えられるか分からないけどあったら教えてください

もしコッチに書きずらいのであれば前スレにでも
57うじひめっ! Vol.12B(前編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/23(水) 20:37:14 ID:I5Pv7fUs
「――我はアイたん激ラブなるがゆえに」
「その呼び方をするなと言っとろうがッ!」
 気絶していたはずのアイヴァンホーが条件反射のツッコミを繰り出す。
 衝撃が来る。ちょっと、いや……かなり脳が揺れた。視界がぐらんぐらんと大地震を起こす。
 ――すぱーん
 叩いた音が遅れて聞こえてきた。
「いい一撃だ……音速を超過するほどとは……」
 宙を見れば、掌に切り裂かれ低気圧で冷やされた水蒸気が見事な飛行機雲を棚引かせていた。
「ええい黙れ! 貴様、よくも姫様の貞操を……!」
 俺に抱きついていた遥香をべりっと引き剥がし、胸倉を掴む。
「おわっ! 何すんじゃい、女バルログ!」
 引き剥がされて放り投げられた遥香は猫の如く柔軟に体を捻り、四肢をついて着地しながらキッと睨む。
 目尻の涙は既に乾いていた――なんとなく、そうじゃないか、とは思ったが。
「やっぱり嘘泣きだったんだな、あれ……」
「せっかくイイ空気になってきたんだから邪魔しないでよ!?」
「今度こそ殺してくれる!」
 抗議する困り眉の声を無視。
 仮面を外しているアイヴァンホーは碧の瞳で睨み据え、ぐいぐいと喉を絞めてくる。
「ぐっ……!」
 息が詰まり、苦しくなる。視界が赤く染まる。
 だがそんなことよりも、俺の胸を苦しめるものがあった。
 アイヴァンホーの双瞳――怒りに燃える二つのそれらは。
 しかし、密かに悲痛な翳りを帯びて心を刺す。
 ああ――この人は。
 お姫様を傷物にした、ぶっ殺してしかるべきゲスゲスしい陵辱漢の俺を手にかけることに。
 ――哀しみと、罪悪感を覚えているのだな。
「アイ……ヴァン……ホー……」
 震える手で彼女の肩を掴んで――ぐっ、と。
 引き離すのではなく、むしろ力いっぱいに引き寄せた。
「え!?」
 引き離されまいとして体重を前に掛けた彼女は予想を裏切られ、俺の胸に飛び込んでくる。
 ぽすん。細い体が腕の中に収まった。柔らかい。
「さっきも思ったけど、案外巨乳なんだな……」
「な、なにを言っているんだ!? は、離せ、離さんか!」
 暴れるアイヴァンホーをぎゅっと抱き締めて力を封じつつ、耳元に口を近づけた。
 そっと言葉を耳孔に吹き入れる。
「アイたん」
 びくっ、と大きな震えが腕に伝わってきた。
「だ、だからその呼び方をするなと何度言えば……」
「いいや! 言うね! あなたのことが好きだから! 好き好き大好きだから! 超愛してるから!」
「あっ……」
 間近で大声を出されたせいか、身を竦める。すかさず抱き締める力を強くした。
「初めて会ったとき――あなたにおもいっくそ投げ飛ばされたときから胸がキュンとなって恋に落ちました!」
 いや床には落ちたが恋には落ちなかっただろ、俺。心臓がキュンしたのも恐怖で縮んだからじゃん。
 どうした? 超音速で頭を叩かれて言語機能が変調を来たしたか?
 確かにアイヴァンホーは鼻がないけど美人で、髪がさらさらの銀ボブカットで、身長高くてほっそりとスタイルが
綺麗で、料理もそこそこ上手で、きついところもあるけど姉貴みたいな気安さもあって、朝が弱くて、抹殺すべき相手に
ついファーストキス(と思う)をしちゃって失神するドジっ娘だけど、半分が蛆虫のDNAで構成されている女なんだぜ?

 つまり結論を言うと――パーフェクトじゃないか。

「頼む! どうか俺の嫁になってくれ!」
58うじひめっ! Vol.12B(前編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/23(水) 20:40:12 ID:I5Pv7fUs
 告白っつーか、いきなりプロポーズしていた。
「―――!」
 求婚されたアイヴァンホーは硬直した。俺の腕から抜け出そうとしてもがいていた力が消え失せる。
 沈黙。顔を俯かせ、一向に上げようとはしなかった。
 返答を待ちながら、見下ろす。銀髪の間から覗く耳の先端――紅に色づいていた。
 おお……これは……
「可愛いな――」
 はむっ
「あうっ!?」
 思わずちょっと齧ってしまった。こりこり。軟骨の感触が歯に響いてくる。
「いい形してる――はむはむし甲斐があるってもんだな」
 ぺっこんぺっこんこねりこねりと、歯と唇で耳介をすり潰すように弄んでは囁いた。
「や……やめろ……耳は……耳はダメ、なんだぁ……ぁ!」
 今までの震えとは比べ物にならない、打ち上げられた魚さながらの活きの良さでビクンビクンと身を痙攣させる。
 全身の毛穴でその振動を受け止めた。鼓動が早くなる。ああ。この女(ひと)が欲しい。今すぐ欲しい。
「なら早く答えてくれ。『はい』か『Yes』か『Да』か『Ja』か『是』の五択だ! こんだけありゃ答えられるだろ!
さあ! 言え! 言いたまえよ! 言わないとあんたの耳を甘噛ミズムでいつまでも犯し続けてやるぞ!」
「あ……あああ……!」
 イイ感じにテンパってきた。声に虚脱の匂いが嗅ぎ取れる。きっと眼もウツロになっているだろう。
 ふっ――
 この女、陥落(おち)たっ!
「これからアイヴァンホー様の生くちびるに生接吻してやりたいんですが構いませんねッ」
「いいわけあるかアホ! あんたがキスしていいのはあたしだけだろーが! コラ、やめへんかーい!」
 外野で猛抗議して飛び掛かってくる遥香を眼中からなくし。
 いざトドメを刺そうと、頬をベロ舐めしながら彼女の薄桃色をした唇に喰らいつ――

「姉様はここねッ!?」

 ――こうとして邪魔が挟まれた。
 どばんっ
 右上段回し蹴り一閃。部屋のドアをブチ開けて誰かが乱入してきた。
「ヒギィッ!?」
 ちょうどドアの脇から跳躍する瞬間だった遥香が、飛び込む勢いにドアの開く勢いが加算された相対速度を顔面に
モロ頂戴したおかげでカートゥーン風に歪みながら悶絶して転げ回っているがまあこの際どうでもいいか。
 ちっ、あと一歩だったのに。
「誰だ!?」
「トゥーシー!?」
 乱入者が名乗るより早く、瞳に正気を取り戻したアイヴァンホーが叫ぶ。
「姉様!? ……どうやら間一髪だったみたいね!」
 まるで遠慮のない足取りでずかずかと踏み込んでくるそいつは、
「ぷぎゃっ!」
 と踏みつけられて鳴く足元の遥香を一顧だにしない。
 声や身長からして、俺よりも若そうな女の子だった。
 体格で言えば中学生くらいだろうか。服装は緋の半袖ブラウスにスカート。
 アイヴァンホー同様普通の夏服なんだが。
 それ以外はあんまり普通じゃなかった。顔の脇から腰まで伸びた赤髪は見事な縦ロール。顔にはアイヴァンホーと
色違いの真っ赤な仮面を被っている。白の模様入りで、やっぱり眼のところにだけ穴が開いていた。
 そう――言わばその子は、一個の燃え立つ炎だった。オペラ座のファントムならぬ木更津家のフレイム。
「紹介されなくてもだいたい分かるぜ……あんたの妹なんだろ」
「あ、ああ。又左衛門尉――利家と云う」
「は!?」
 利家だと!?
「幼名は犬千代だったが、今年に数えで十五を迎えてな……」
「利家っつーことは……お、男の娘(こ)かよ!? 最近流行りの!」 
「いえ! れっきとした女よ! 父様のネーミングセンスがアレなせいでよく間違われるけどね! だからみんなは
『トゥーシー』と愛称で呼んでくれるわ! ――あなた、わたしの前でもっぺん『利家』と呼んだらマジ殺すわよ!」
 ギンギンの殺意を篭めて睨んでくる。瞳の色までもが痛いほどの深紅だった。
59うじひめっ! Vol.12B(前編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/23(水) 20:42:19 ID:I5Pv7fUs
 ご自慢の縦ロール赤毛をふさぁっと掻き上げつつ行った彼女の自己紹介を二行に要約すると。
「姉様の五つ下で十四歳よ! でも年下だからってバカにしないでね! これでもわたし、通っている蛆人学園の
中等科重機動部でエースストライカーやってて『ドリルの又左』って恐れられてるんだから!」
 ということだった。意味分からんが詳しい説明は別に聞きたくないので放置。ジューキドーって柔道の亜流か何かか。
 でもたぶん、「ドリル」ってのは縦ロールを揶揄した表現であってだな。
 恐れられているというより、みんなにからかわれてるんじゃないか?
「父様と母様が、『本当にあの子はちゃんとお仕事をこなせるかしら。生ものを食べておなか壊してないかしら。
学園での成績は良かったのにあの子、いざという場面で弱いから……』ってあまりにも姉様を心配するもんだから
こっそり様子を見に来たけど! やっぱり、変なことになっていたみたいね!」
 回し蹴りでドアぶち開けといて「こっそり」とは、なかなかアルティメットな妹だな。
 しかし「やっぱり」って。そんなにアイヴァンホーは家族から信用されていないのか。
「ああ……トゥーシー……」
 無駄なくらい活力と自信に満ち溢れた妹に会って、アイヴァンホーはホッとするどころか沈み込んだ。
 彼女の視線から隠れるようにして、顔を俺の胸に押し付けてくる。
「ね、姉様!? 何をしているの!? わたしが駆けつけたからには、そんな見るからに性犯罪を通じてしか異性と
交流を行えないムードが濃厚な、負の意味合いでアデプトしたうだつが上がらない下種男からは離れてもいいのよ!」
「初対面の人間に向かって遠慮容赦なく言いたい放題だなテメー」
「さあ! その生けるゴミ人間略して生ゴミはポイ捨てして! 早くわたしの胸へ飛び込んでらして!」
 どんと来い、とばかりに両手を広げる真っ赤なトゥーシーこと利家。
「すまない、わたしは……お姉ちゃんは、通常考えられないほどの失態を犯してしまったの……!」
 一人称が「お姉ちゃん」でしかも姉口調になってるアイヴァンホーって、とっても新鮮。
「もう、おうちには帰れません……! 父上と母上には、お姉ちゃんは死んだものと伝えてちょうだい……!」
「姉様!? なんでそんなことを言うの!? どうか! わけをおっしゃって!」
 悲痛な声を張り上げ、舞台劇みたいな遣り取りをする姉妹。間に位置する俺は耳がキンキンする。
「あーもう! あんたら、さっきからうっせーよ! いいから、さっさとかずくんから離れなさいよ!」
 半分空気化していた遥香が立ち上がり、話に割り込んできた。

「邪魔しないでよ! この滑り台眉毛!」

 ごきん
 あっ、クリムゾン・ガールが遥香の頭頂と顎を両手で挟んで横に九十度回転させた。
 直角に折れた首の肉が少しばかり長く伸びているように見えるのは錯覚だろうか。
「うぼあー」
 首を捻じ曲げられた遥香はすとんと膝を付き、口端からぶくぶくと泡を吐いて前のめりに倒れた。
「おまっ、ちょっ、人の幼馴染みを瞬殺するなよ!?」
「大丈夫! 骨を外しただけだから! ハメ直せば命に別状はないわ!」
 薄い胸を張って堂々と言い切る紅蓮童女。
 いや頚椎って外したりハメ直したりしていいものなのか? 俺にはすこぶる疑問だぞ?
「姫様の純潔を守れなかった以上、蛆界にわたしの戻る場所はないの。だから――」
 見えてなかったせいもあって、遥香の件をまるっきりスルーするアイヴァンホー。
 彼女はぎゅっと俺のシャツを掴み、宣言。
「わたしは、愛に生きる!」
60うじひめっ! Vol.12B(前編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/23(水) 20:44:09 ID:I5Pv7fUs
 だんだん話がおおごとになってきたのを肌身に感じながら。
 いまだに事情を呑み込めないでいるトゥーシーへ、これまでのあらましを説明する。
「っつーわけで俺、フォイレの未使用膣にち○こ突っ込んで膜ブチ破って精液ドバドバ中出ししちゃったノダ☆」
「こ……殺すっ! こいつ殺すっ! 姉様が止めても! 絶対に絶対にこいつを殺してやるうっ!!」
 少しでも固い雰囲気をほぐそうとフランクな口調を心がけてみたが、逆効果だったらしい。
 憤激して目を血走らせ襲い掛かろうとする真っ赤な少女を、姉であるアイヴァンホーが必死で押し留める。
「お、落ち着いてトゥーシー! わたしも今一瞬和彦を圧壊させたくなったけど、ここで彼を死なせても姫様の
純潔は帰ってこないの! ノーリターン! つまり――殺し損! 『犬死に』ならぬ『犬殺し』よ!」
 すごい説得法だった。それにしても「ノーリターン」は字にすると「ノータリン」に見えて仕方ないよな。
「駄犬は駄犬らしく、むごたらしく屠殺してあげなくちゃダメよ姉様! こいつの穢れた遺伝子を根絶し! 負の連鎖を
断ち切って! ダーウィン賞を差し上げるのが、わたしたちのなさねばならぬ務めなの! そうに決まっているわ!」
「遅いの、トゥーシー……もう姫様はとっくに受精されている……」
「なんですって!?」
 目を剥き、トゥーシーは俺から視線を逸らした。そっちを見ると、いつの間にかヒト形態になったフォイレがいた。
「ええ。今、私の子宮では和彦さんの精子が熱烈に細胞分裂してらっしゃいますの。愛の結晶――卵は、もう数十分も
すればどこにでも産み付けることができます。まさしく……デキちゃいましたわ!」
 ふふん、となぜか得意げに鼻を高くする。
 え? デキちゃったって……え? マジで?
「そ、そんな! 姫様が! いと気高き“エーデル”フォイレ様が! こ、こんな下郎の子を孕むなんて!」
 さすがにショックだったのか、へなへなと膝を折って床に手を突くと。
「お゛お゛お゛……!」
 形容しがたい声で哭いた。哭き叫んだ。咽び哭いてやむことがなかった。
 アイヴァンホーはそんな妹の背を優しくさする。
「分かったでしょう、トゥーシー。もはやどうにもならないの。だからわたしはもう、素直になることにしたわ」
「す、素直になった結果が『愛に生きる』だなんて……こいつのどこに姉様が惚れる価値なんてあるの!?」
「価値なんてない」
 お、おい、てめえ……否定の出来ないことをズバッと言い切りやがったな……!
 傷つく俺のことも知らぬげに、アイヴァンホーは口元を綻ばせた。
「――でも、気持ちはある。和彦と一緒に暮らし、ともにご飯を食べ、くだらないことで喧嘩して、まるで……
トゥーシーよりも出来の悪いきょうだいが加わったような……そんな毎日を送りたい気持ちは、確かにあるの」
 切々と訴えかける。「トゥーシーよりも」と言ったところを見ると、妹の出来が良くないことは知ってるらしい。
「おうちにも蛆界にも戻れないなら、ここで和彦と在りたい。それがわたしの偽らざる気持ち。だって……」
 火照る頬を押さえ。
「……もう、く、口付けだって済ませてしまったし……」
「く、口付けぇ!?」
「すごかった……き、気絶しちゃうほどなんだもの……」
 窒息でな。
「――こ」
 姉の話を聞いて、全身をぷるぷるさせ始めた緋色の少女は。
「ころ――」
 足元から、我が家がネタで購読している朝○新聞を拾い上げてごそごそと丸め。
「――す」
 それをしっかりぎゅうっと握り締めると。

「殺すううううううううううううううううううううっっっ!!!」

 ダンッッ
 床を踏み鳴らし、槍撃の勢いで一気に突き込んできた!
61 ◆kZWZvdLsog :2006/08/23(水) 20:45:57 ID:I5Pv7fUs
ほんの思いつきで妹キャラを出してしまったのが運の尽き。ちょっと長くなりそ。

それにしても遥香が物凄い勢いでヤムチャ以下の存在に……
62名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 20:58:06 ID:LzQOblHJ
遥香かわいいのに(´・ω・`)・・・
縦ロールでドリルでD4(ry しか頭にでてこないし・・・
早く続きが読みたいし・・・
63名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 22:01:17 ID:2xrUa6Yq
展開もさることながら、毎度うじひめっ!のギャグセンスには脱帽だね!
そこらへんの漫画よむよりもよっぽどウケている自分がいる。
64名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 22:41:28 ID:WOFB23KK
>>63
超同意。下手な漫画より全然笑えるな
65名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 22:57:13 ID:XAO1lKPS
姉妹丼フラグが立ちました
66名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 23:08:27 ID:Fvp+OS67
首の関節を早く・・・・・手遅れに・・・・・
67名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 23:16:02 ID:oLwrrNaL
うじひめっ!の強引な展開なのに読ませる手腕には脱帽。
68恋と盲目 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/23(水) 23:29:59 ID:T3FWMCU1
「………………」
「………………」
救急車に乗って、病院へとやってきた。
呼んだのはお母さん。
幸いな事に私の泣き叫ぶ声を聞いて駆けつけてくれた。
救急車に詰め込まれるまで、誰も何も喋る事はなかった。
病院に着くまで、誰も何も喋る事はなかった。
手術室に運び込まれるまで、誰も何も喋る事はなかった。
赤い手術中のランプが消えるまで、誰も何も喋る事はなかった。
真夜中になるまで、誰も何も喋る事はなかった。
東の空が明るくなるまで、誰も何も喋る事はなかった。
意識が戻るまで、誰も何も喋る事はなかった。
意識が戻ったら、私は大声で泣き叫び始めた。
何度も何度も謝り続けた。
そして男の子が最初に言葉を発したら、今度こそ誰も何も喋る事ができなくなった。

「検査では何の異常も発見できませんでした」
また……あの時の夢か。
妙に冷たい眼で白衣の女を見つめる私を、私は妙に冷めた眼で見つめていた。
オチのわかっているギャグマンガ、トリックを知っている推理小説。
そんな程度では説明がつかない、とにかくそう……冷めた眼だ。
「しかし宮間京司(みまや きょうじ)さんは……」
この先の台詞なら一字一句たりとも忘れた事はないし、忘れるつもりもない。
忘れてはいけないとは思うけど、思い出したくもない。
もう何百回と見続けてきた光景だけど、もう二度と見たくない。
「……失明してしまっています」
私……どちらの私なのかはわからないけれど……私の眼に涙が溜まっていたような気がした。
「治る見込みは……無いんですか?」
お母さんの顔は真っ青になっていた。
断じてこの薄暗い照明のせいじゃない。
異母兄弟とは言え、自分の弟が一生光を感じずに生きねばならない事。
自分のたった一人の娘が一生その罪を感じながら生きねばならない事。
お母さんはその事について予知に近い確信をもっていた。
「正直に言いまして……とても難しいです。二度精密検査をしましたが、どこにも異常は見当たりませんでした。
精神的なものなのか、それとも検査に引っかからない程に小さな傷が付いているのか……原因がわからなければ対処のしようがありません」
女医がそう答えた。
ぶん殴ってやりたいと思う……完全な八つ当たりだ。
小学校低学年の私にも、15年経った今の私にもそれはわかっている。
この人は悪くない……悪いのは私だ。
69恋と盲目 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/23(水) 23:30:51 ID:T3FWMCU1
 ジリリリリリリリ……
 ……ガチャッ
「タダイマ、6ガツ6ニチ6ジ00フン、デス」
間の抜けた電子音声が聞こえる。
止めたのは私じゃない、私のすぐ隣から長い腕が伸びていた。
「……緑、起きてるかい?」
吐き気がする……今日も最悪の目覚めだ。
二日連続で嫌な夢を見た、でもそれは珍しい事じゃない。
あの時の夢はいつもいつも何日か連続して見る事が多い。
一度でも見てしまうと、それから何日かは最悪の目覚めをし続ける事になる。
のそ……とした動きで布団が動く。
きっと私を起こさないように気を使ってるんだと思う。
そんなちょっとした気遣いが素直に嬉しい。
手を伸ばす……掴まえた。
「……おはよう、緑」
「……おはよう、京司」
そのそこまでも暖かい微笑を見て、吐き気が収まった。
「起きているのなら返事をしなさい」
「悪かったわ、ちょっと頭が痛かったの」
嘘は言ってない、吐き気は収まったけど頭痛は収まってくれそうもなかった。
「体調が悪いのかい?」
京司が心配そうに眉をしかめる。
本当にやさしい……けど、京司に心配をかける訳にはいかない。
「大丈夫、いつもの事よ」
そう良いながら無理矢理笑顔を作る。
どうせ京司には見えないが、それでも雰囲気は伝わるらしい。
「なら良いけど……今日はどこかの雑誌の記者さんが取材しに来るらしいけど、無理そうなら断っておくよ」
「大丈夫よ。今ご飯を作るわ」
ふらつく足を畳につけ、立ち上がる。
立ちくらみがした……気力で抑える。
今日は大事な日、この位で休んではいられない。
そして6月6日7時6分。
言い換えれば……6月6日6時66分。
 ……ピーンポ−ン
呼び鈴が鳴った。
70シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/23(水) 23:31:45 ID:T3FWMCU1
個人的最萌えキャラクターは『とらいあんぐるハート』のリスティなシベリア!です。
思えば私が初めて書いた小説はとらいあんぐるハートの二次創作でした……

そんな訳で、こうやって盲目の人物を描いていると嫌でも十六夜さんを思い出す私。
そしてこの狙い澄ましたかのようなスレタイ……考え過ぎか。

それはそうとして、新スレ記念にまたリクエストを募集します。
例にもよって先着一名様の御要望に応える形で何か書きます。(過保護関係も可)
私は元々二時創作を専門にやってた者なんで、遠慮無くどうぞ。
(……できればで良いですので不撓家の感想もお願いします)

関係無いが、来週のリュウケンドーでは焼きもちで大騒動になるらいしい……
71名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 23:51:11 ID:tKBhAQJ2
GJ!不吉な数字の時間の来訪者は修羅場への幕開けなのか!?
72名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 23:51:23 ID:YStXI0W6
>>70
盲目といえば那波を思い出す
それはともかく盲目にしてしまった責任を感じての依存になるのだろうか・・・
先が気になる(*´д`*)

73名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 23:59:28 ID:vnkJv3hR
対抗ヒロイン出てくるのwktkして待ってます。

メル欄じゃ収まらなかったorz 以下チラ裏。
不撓家最新話読みました。
ここにきて改めて天野さんと英知が生きててよかったとつくづく……
英知なら今の天野さんの心の揺れにもそのうち気付きそうな気がするんで
慕っていた兄二人と、恩人との狭間でさらに複雑な乙女心とか見せてくれないかなーなんて。
74プロットらしきもの:2006/08/24(木) 00:09:44 ID:V+8/Ib8s
○学生の主人公は突然同級生から告白される。
だが恋愛に疎い主人公は付き合うとは具体的にどういうことをするのか?と尋ねる
同級生は想像のつく限りのイチャイチャする妄想をぶちまけるが主人公は
「それの何処が楽しいの?」と言って断る。
それでも、恋愛というものに興味がわいた主人公はませた妹に色々尋ねる。
過激な少女コミックばかり読んでいた妹は色々アレな知識を主人公に植え込んだ。
ある日、友達との罰ゲームで、一番性格のきつい女教師に告白する事になった主人公。
(もちろん恋愛感情等ない)
告白された女教師はにべも無く主人公を振るが、妹の偏った知識により、その行動の意味も知らず冗談半分で
女教師を押し倒す主人公。結局未遂に終わるが、女教師の隠れていた性癖(シ○タに押し倒される)
が発露。以後、主人公を激しく意識し始める。
ついでに偶然その現場を目撃した同級生が女教師に嫉妬の炎を燃やすようになり・・・

っていう話はありがちなんだろうか・・・?
75アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/24(木) 00:36:26 ID:ouMmD9UH
投下します
76『もう一つの姉妹日記』 間奏  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/24(木) 00:37:02 ID:ouMmD9UH
 そう、あれは秋の紅葉がはらはらと舞い、綺麗に道を赤に染めていた季節だった
 まだ小学生になったばかりの私は親戚の家に来て、まだ見ぬ景色に惹かれ秋の紅葉の彩りに誘惑され、一人その道を歩んだ
 歩く度に新たな景色が広がり私はその景色を必死で追った
 その結果、幼い私は道に迷ってしまった
 されに不幸は続いた、あまりに夢中になっていたので外の色は夜のそれに変わってしまていた
 泣くことしかできなかった、小さな私の小さな泣き声は夜の闇に覆われてしまい誰にも届かなかった
 孤独感で胸をいっぱいにしながら私は叫んだ
 助けて!私を見つけて!・・・・と
 すると不意に私の腕が引かれ、王子様が姿を現した
 それは・・・・まだ幼いお兄ちゃんだった
 赤みがかった茶色の髪を夜風に揺らしながらお兄ちゃんは静かに笑んだ
 親戚のお兄ちゃん、私にとってそれだけの存在だったのに
 その日からお兄ちゃんは私にとって王子様になった
  
「ねぇ、冬香・・・・あんたのお兄さんって付き合ってる人いるの?」
 お兄ちゃんと同居を始めてすぐ、友達の鎌瀬狗沙良がそんなことを聞いてきた
「さ、さぁ・・・・解らないよ」
 お兄ちゃんの恋人になりたい、そうは思ってもお兄ちゃんの恋人の存在なんて見たくもないし知りたくもない
 だから私はお兄ちゃんからそういう話を聞かないようにしてきた
「ならさ、コレ・・・・渡してくれないかな」
 手渡されたそれはピンク色の封筒に包まれ、ハートマークのシールがそれを止めていた
「なに?これ?」
 解っている、ラブレターだ・・・・けど、いまどきラブレターって
 古すぎ・・・・
「ラ、ラブレター、その・・・・ほら!あんたのお兄さんすごく可愛い顔してるじゃん!だからね!」
 私はニコッと笑むと渡されたラブレターを目線まで持ってきてビリッと破りそのまま捨てた
「な!なにすんのよ!」
「うっさい、あんたなんかに私が何年も言えなかった事、先に言わすか!」
 バチン!乾いた肌の音と共に私の頬が赤く染まった
 思い切り睨み返してやると沙良はさらに憤怒し私の頬を叩いてきた
 痛みは感じなかった、それよりも悔しかった、こんなにも簡単にお兄ちゃんに気持ちを伝えようと出切るなんて
「人に頼んで自分の気持ち伝えようとする女・・・・お兄ちゃんが見るわけない!」
 そうだ、自分の言ったことに自分で妙に納得してしまっている
 ここは強気よ、お兄ちゃんのことを想えば友情がひとつなくなるなんてどうってことなかった
「それに、お兄ちゃんはあたしが好きなのよ!だからあんたなんて眼中にないの!」
 言葉で怯ませた隙に私は思い切り沙良の頬を叩いてやった
「ふん、負け犬!」
 私は悪役のような捨て台詞を残して、頬を抑え悔しそうに私を睨む沙良を誰もいない夕暮れの教室に残して出て行った
77『もう一つの姉妹日記』 間奏  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/24(木) 00:38:05 ID:ouMmD9UH
 帰って来て、私一番にお兄ちゃんに甘えようとした
 けれど、お兄ちゃんの様子がおかしいのに気づいて私はそれを途中でやめた
 元気のない、お兄ちゃん
 反対に肌の艶が増し、嬉しそうなお姉ちゃん
 これは、二人になにかあったんだ
 幼い女の勘が私にそう告げていた
 その夜私は行動を起こした
 夜遅くお兄ちゃんの部屋に向かい
「失恋でもした?」
 直球でそう聞いた・・・・
 そして、私たちはいつの間にか唇を合わせていた
 その瞬間私の頭の中で独占欲が噴出した
 こっそりケータイでその様子を取り、最近お兄ちゃんを惑わしていると評判の南条秋乃のケータイにそれを送った
 番号は前に南条秋乃のケータイを偶然私が拾いそのときに確認済み
 私はフッ笑んでお兄ちゃんの背中に手を回しその裏でケータイで南条秋乃に私とお兄ちゃんの愛し合ってる証拠を送った
 もちろんそのあと沙良にそれを送ってやった
 お兄ちゃんにこれ以上誰も近づかないように・・・・
78アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/24(木) 00:38:59 ID:ouMmD9UH
『間奏』冬香編です
自分はリアルで妹が居るので妹属性がありませ
なのでちゃんとうまく書けたのか不安ですが、自分なりに頑張ったつもりなので・・・ダメでもどうかご勘弁を
次は本家の姉妹日記の続きを投下して、そのあと間奏の夏美編を投下しようと思います
79名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 00:58:33 ID:dmYBtDbH
リアル姉がいる俺だが、リアル妹とリアル姉はどちらがいれば幸せなんだろうか・・
80名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 01:08:31 ID:3NYgAdPo
あれだよな。日本は多神教の国で良かった。
こんなにも沢山の神々がいるんだもの。
81名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 01:11:25 ID:ZfYHM1yt
嫉妬があれば姉だろうと妹だろうと!
と姉も妹も居ない俺が言ってみる

>>78
リアル妹が居ると書きづらいと思うのにしっかり書いてくださるアビス殿の魂に感動
|ω・`) 姉編楽しみにしてます
82名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 01:38:36 ID:Dn+vEI9s
もうすぐ8月も終わる・・・


スウィッチブレイドナイフが・・・!
83作られた命 3 ◆uDrWoF795A :2006/08/24(木) 01:40:04 ID:Y+z+hts8
「…私が聞いているのは
Tのこと。責任者、郷護なんでしょ。」
…やはり返事がこない。だんだん読めてきた。
Tのことになると必ず郷護は困った顔をする。
上手く表現出来ないが泣き出すのを我慢するような顔。
郷護はよく不安な時、こんな顔になる。
そんな時、悩みの種を見抜き、親身になって話を聞いて郷護の不安を
取り除いてあげるのが私の役目だ。私だけの役目。
というより私にしか出来ない。
郷護はとても優秀だ。
私が高校三年の頃、私は郷護と同級生になった。
日本に飛び級制が出来たのは知っていたが、私は心底驚いた。
84作られた命 3 ◆uDrWoF795A :2006/08/24(木) 01:42:27 ID:Y+z+hts8
自慢じゃ無いが私が通っていた高校は日本では有名な進学校だ。
そこに小学校の中学年程度の男の子がやってきたのだから。
しかもやってきた理由が大学受験の対策をする為。
郷護の専門分野ではとっくに超高校級なのだが英語は少し苦手らしい。
憎たらしいガキだと思うのが一般高校生だろう。
しかし私は魅せられてしまった。あの困った顔に。
高校にも給食があると思っていた郷護の昼休みの困りっぷり、
今でも眼に焼き付いている。
私がこの子を一生面倒みなくてはいけない。
まるで神の啓示のようにその言葉は私の生きるベクトルになった。
85作られた命 3 ◆uDrWoF795A :2006/08/24(木) 01:44:20 ID:Y+z+hts8
だれもかれも皆、郷護の表面の優秀さしか見ていない。
郷護の内の弱さを見て、守れるのは私だけだ。
そろそろ郷護も気付いてきているだろう。
郷護には私が必要なのだと。
私がいなくては郷護は生きていけないのだと。
だからとっととプロポーズをしてきてくれないと困るが
私の予想ではTが完成し、この研究所からでる頃くらいかな
とは思っている。
…いけない。今は思い出と未来予想をしている場合じゃない。
郷護が困っているのだから助けてあげなくては。
ふふ…私のかわいい郷護。
お姉ちゃんが今助けにいくから…安心して、ね。
86名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 01:50:51 ID:3ylCrb3r
投下してもよろしいでしょうか?
87名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 01:54:30 ID:3ylCrb3r
投下させていただきます。
88巷説江戸風嫉妬絵巻一話(起) ◆oEsZ2QR/bg :2006/08/24(木) 01:56:23 ID:3ylCrb3r
私は幕府に仕える武士である。名は今日丸。この正月で三〇になる。
私はかぽかぽと、長い街道を旅の行者を連れて馬に乗って歩いておった。
 尾張の国での二年の出張仕事を終えて、江戸へと戻っている途中であった。
「お侍様。次の宿場が最後でございます」
「左様かっ」
「はい。早ければ明日の夕方には江戸へ到着しますかと」
 行者の言葉に私は馬から乗り出して反応してしまった。
 うぬ、どうやら私は三〇になっても感情を抑えるのが苦手のようだ。
 この感情は、もちろん喜びだ。この二年、ずっと会いたかった気持ちが私の胸を支配する。
 
 私には江戸に一人の妻を残しておった。雪絵という女で、記憶が正しければ今年で二〇になる。
 私が言うのもなにだが、私にはもったいないぐらいの美人な女だ。
 まだ身を固めるつもりのなかった私に、お上が、妻として無理やりあてがった娘だ。
 こんな、幕府の一さむらいに過ぎない私の妻にされるとは、そやつにとってはなんと不幸なことだろうと思っておったが、雪絵は私をだんな様だんな様となぜかとてもよく慕った。
 雪絵は恥ずかしがり屋で内気な性格だったが、私にはとても心を開き、なにかあればすぐに「だんな様の妻にしていただけて雪絵は幸せでございます」と口癖のように言う。
 妻なんぞ面倒くさいと思っていた私だが、そこまで慕う雪絵の健気で可愛い姿を見ると、心のそこからいとしいと思う感情に溢れ、雪絵を心から愛した。
 しかし、運命というものはなかなかうまくいかないものである。
 雪絵と過ごすようになって半年がたった頃。私はお上から、尾張の国の殿様の城への出張を言い渡された。
 このような出張奉仕はとくに珍しいことではない。これまでも私は何度か北へ西へと動き回ったことがある。私は江戸に小さなお屋敷を構えてるが、屋敷にいるより、地方で生活していた時間のほうが確実に多い。
 そういえば、半年もこの屋敷に居たのはかなりめずらしいことだった。雪絵という妻と一緒になった私に少しの間、お上が遠慮してたのか?
 しかし、このような命。私に拒否権なんぞあるはずがない。
 私は数枚の着物と愛刀を携えて、尾張へ出るしかなかった。
89巷説江戸風嫉妬絵巻一話(起) ◆oEsZ2QR/bg :2006/08/24(木) 01:57:04 ID:3ylCrb3r
「だんな様。雪絵はさみしゅうございます・・・」
 出発の前日の夜。布団の中で雪絵は私のにおいを体に擦り付けるように、私の体に密着したまま泣いた。
 まるで、味でもするかのように私の寝巻きを何度も甘噛みする。
「だんな様ぁ・・・だんな様ぁ」
「雪絵、そこまで泣くな」
「だんな様は…雪絵に飽きてしまったのですか…?」
 雪絵は多少自傷気味な奴でかなりの依存系な女だった。わたしが何度説明しようとも聞かず、まるで自分に愛想が尽きたとさめざめと泣く。
「心配するな。現地に着けば手紙も送る。それに、いつもの奉仕だ。はやければ一年でまた戻ってくる」
「・・・一年・・・ですか」
 雪絵は潤んだ瞳を私に向けると、顔を私に近づけた。そして小鳥が啄ばむように私の口元に唇を押し付けた。接吻だ。
「・・・・・・だんな様の味・・・」
「雪絵?」
 衣擦れの音がする。私の体の上で雪絵が動いている。もぞもぞと動き、外からもれる月の光が雪絵の白い肌を照らしてゆく。瞬き数刻。気がつけば雪絵は一糸まとわぬ姿になっていた。雪絵の年頃にしてはすこしゆるやかな体つきが露になる。
「だんな様…まぐわい…を……お願いします・・・」
 これに私は少なからず驚いた。
 雪絵は自分の体に劣等感を持っているのか、それとも大切に育てられていたからなのか、これまでこういう性交は私とまったくといっていいほどしなかった。
 一度だけ、雪絵の中にいれたことはあるが雪絵は痛みと恥辱にわんわんと泣き出し、そのまま幼子をあやすように添い寝しただけとなってしまっていた。
それ以後、雪絵とは毎晩のように同じ布団で寝ているがいずれも接吻と添い寝だけで私は独身の頃となんら変わることも無く右手が恋人であった。
「雪絵…よいのか?」
 私が聞くと、雪絵は赤く染めた顔でうなづいた。潤んだ瞳の奥にはひとつ決心の光が浮かんでいた。
90 ◆oEsZ2QR/bg :2006/08/24(木) 01:58:35 ID:3ylCrb3r
初代からこのスレを見守ってましたが、ついに自分も神になってやろうと思い
投下させていただきます。

@短編です。たぶん2〜4話ぐらいで終わります。
Aエロシーンは付け加え可能ですが書いたほうがいいでしょうか? ほぼ、初めて書くことになりますが。
B江戸風なので、時代設定おかしい。もしなにか設定で気がついたら指摘してくれると今後の参考になります。
Cこの作品は小松重夫のずっこけ侍をすこしヒントにしています。
91名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 02:07:37 ID:kX/1k8qL
あっぱれな心意気でござる (`・ω・´)シャキーン

・・・ところでこういう設定のエロは個人的に好きですが、
修羅場重視で、余裕があればと言う感じで良いと思います
92名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 02:20:47 ID:1hat8dmd
見事でござる!

>>85
Gj!これからどのように嫉妬や修羅場へ向かって行くのか楽しみだ
93血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:08:05 ID:cD/sODYP
投下します
94血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:08:50 ID:cD/sODYP

 ユウキさんだ。
 ユウキさんだユウキさんだユウキさんだユウキさんだ。
 やっとみつけた。
 これでたすけてもらえる。
 いたかった。
 くるしかった。
 つらかった。
 
 だって…………がいなくなっちゃったから。
 
 でも、ユウキさんにあえたから。
 あうことができたから。
 きっと、…………にもあえるはず。
 これで、ぜんぶもとどおり。
 いたかったけど。くるしかったけど。つらかったけど。
 でも、がまんできたから。
 だからきっと、ユウキさんは、わたしをたすけてくれるんだ。
 
 
 …………あれ。
 
 
 ゆうきさんのまえに、みおぼえのあるひとがいる。
 だれだっけ。
 わすれちゃった。
 おぼえてない。けど、なんだかこわい。
 こわい。
 このこ、こわい。こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい。
 ころされる。
 いやだ。
 やっとユウキさんにあえたのに。
 ころされたくない。
 ユウキさんとわたしは…………にあいにいくんだから。
 じゃまなんて、させない。
 だから、ころしてやる。
 
 
 
 
 
95血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:09:36 ID:cD/sODYP

 粉塵の中からゆっくりと歩み寄る女性を見て、白の右肩はじくじくと痛んだ。
 壁を破壊して入ってきたのは、間違いなくユメカ・ヒトヒラだった。
 腕を引き千切り、その眼孔に突き刺した感触を覚えている。
 あれで生きていたとは、強靱な生命力によるものか、はたまた抉られた場所がよかったのか。
 まあ、生きていたことはこの際どうでもいいとする。
 問題は――どうしてこの部屋に来たのかということ。
 ここはいち囚人の部屋であり、半死体が来る場所ではない。
 
 ゆうきさん みつけた
 
 ……そういうことか。
 こいつも、ユウキに惹きつけられてやってきたのか。
 そういえば、試合のときも、ユウキのことを言っていた気がする。
 
 ユウキに嫌なニオイをくっつけて。
 自分の右腕を吹き飛ばした。
 
 はっきりいって、気に食わない。
 でも。
 今は、戦う理由なんて、ない。
 闘技場で敵として相対するならともかく、ただユウキを探してここに来たのなら。
 気に食わないが――立ちふさがる理由もない。
 全身から立ちのぼる禍々しい気配こそ気になるが、
 殺されかけた相手を目の前にしたのであれば、そう不思議ではない反応だ。
 本音を言えば、ユウキに近寄る女は全て引き千切ってやりたいところだ。
 でも、こんな半死体になってまで、ユウキを求め続けていたのならば。
 ――自分も、ユウキに会えない間は辛かったから。
 その辛さをどうしても共感してしまい、殺してやろうという気には、なれなかった。
 
 だから、近付いてくるユメカには、特に手を出そうとはせずに。
 そのまま、道を譲ろうとして。
 
 
「――危ない!」
 
 
 その叫び声がなかったら、きっと反応できなかった。
 咄嗟に視界が全てを捉える。
 ユメカの右腕が、捻られていて。
 その腕には、手甲が装備されていて。
「ッ!?」
 息を吸い込み、吐く一刹那。
 横に跳ぶと同時に、ユメカの腕が白のいた空間を引き裂いた。


96血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:10:28 ID:cD/sODYP

 ――迎え撃とうとしなくてよかった。
 きっと、気付くのに遅れていたら、咄嗟の反応で逸らそうとしていたに違いない。
 だが、今放たれた一撃は、闘技場で見たものより、段違いに速くなっていた。
 迎撃が間に合わずに、そのまま粉々にされていたかもしれない。
 気付かせてくれた声の主に、視線を送る。
「……どうして、わかったの?」
 自分ですら、前もって攻撃を見抜くことができなかったのに。
 それを、どうして。
 
「見覚えがあるんだよね。
 嫌なことがあって、どうしても諦められないものがあって。
 で、現実逃避して、甘いところだけを啜ろうとしてるの。
 ――そいつ、ユウキさんを独り占めするつもりだよ。さっきまでの私たちみたいに」
 
 
 
 言いながら、アトリは裸のままユメカに歩み寄る。
 ぺたぺたと、軽い足取りに恐怖は微塵も含まれない。
「見てるとさ、すっごくイライラするんだ。
 だって――そいつ目、どう見ても、ユウキさんを殺して自分を死ぬ、って感じなんだもん」
「……そう」
 アトリの言葉に得心がいったのか、白も怪物姉に対して戦闘態勢を取る。
「……それはそうと、助けたお礼がまだなんじゃないの?」
「…………声をかけられただけ」
「それがなかったらやばかったんじゃない? ほれほれ、頭を下げれ」
「……やだ」
 
 白とアトリは呑気に会話しているように見えるが、その実、ユメカに対する警戒は失われていない。
 相手が不振な動きを見せたら、即動けるように緊張状態を保っている。
 
「……お前」
「……? ひょっとして、私のこと? ちゃんと名前で呼びなさいよー」
「知らない」
「私の名前はアトリ。アトリ様でいいわよ」
「どうでもいい」
「むか。……ま、まあいいわ。んで、あんたの名前は何だっけ。――白?」
「白って呼ぶな」
「? でも、ユウキさんはそう呼んで…………ははあ。なるほど」
 にやり、とアトリは唇の端を歪めた。
「で、白。何か聞きたいことがあったんじゃないの? わざわざ声をかけてきたんだから」
「…………」
「白ー。白ちゃーん。何でも答えちゃいますよー?」
「……うるさい」


97血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:11:15 ID:cD/sODYP

 繰りかえすが、2人は油断などしていない。
 冷静に、ユメカと自分らの戦力を比較して、まず不覚を取ることがないと確信しているのだ。
 半死人だからといって気を抜いたりなどしていない。
 ユメカの攻撃力は侮れない。故に2人は、ふざけているようでいて、注意か真っ直ぐユメカに向けられていた。
 
 だから。
“それ”が来たとき、反応できたのは奇跡だった。
 
 白を呼び名でからかおうとしていたアトリ。
 それでも、ユメカへの注意は怠っていなかった。
 逆に言えば。
 ユメカにしか、注意していなかった。
 
「――アトリ!」
 
 そこへ、白が体当たり。
 重心と打点を完璧に捉えていた、強烈な体当たりである。
「うぎゃっ!?」
 故に、アトリが悲鳴を上げて吹っ飛ぶのは当然のことで。
 
 故に、アトリは粉塵の中から現れた剣に刺されずに済んだ。
 
 鋭い突き。
 それは辺りを覆っていた粉塵を一掃し。
 引き戻されたところで、使い手の姿が視認できた。
 
 
「――粉塵の揺れを視界の端で捉えたか。
 食人姫を庇ったのは不可解だが――どうせ両方とも殺すから、関係ないか」
 
 
 其処にいたのはアマツ・コミナト。
 昨晩白と死闘を演じ、右腕を負傷したはずの“銀の甲冑”。
 しかし。
 その右腕はしっかりと剣の柄を握りしめ。
 滾る気迫は、昨夜のものとは比べものにならなかった。
 
 
 
「……えっと、これ、どういう状況?」
 吹っ飛ばされたアトリが、起きあがりながら呆然と呟く。
 白は厳しい視線を怪物姉と銀の甲冑に向けながら――言った。
 
「わからないけど――こいつらは、敵」

98血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:12:00 ID:cD/sODYP
 
 
 
 
 
 最初に仕掛けてきたのはユメカだった。
 見かけは半死体でも、状況判断はできるらしく、アマツが己の敵ではないと認識した次の瞬間。
 目下の敵――白に向かって距離を詰めた。
 刃の付いた手甲を、しかも零距離打撃で。素手で逸らすのは難しい。
 先程の空振りを“見て”、白はどうすればいいのか考える。
 攻撃の勢いをそのまま利用するのは難しい。
 何せ――速さが素手のときを数段上回る。捉えるのは困難を極めるだろう。
 攻撃は基本的に避けるしかない。
 そして――避けた後、脆い部分を攻撃する。
 以前までの白だったら、相手の攻撃の勢いを利用しなければ大きなダメージを与えることはできなかったが。
 今は、ユメカから盗んだ技がある。
 動きは全て見切れているのだから、後はタイミングを合わせてそれを叩き込めば充分だ。
 充分なのだが――
 
 
 
 
 
 ユメカが白に突撃してから一呼吸。
 アマツも、アトリに対して斬りかかってきた。
 豪快な、大剣による斬撃。
 鉄すら切り裂く必殺の斬撃を、欠片も躊躇せずにアトリの脳天に叩き込む……!
「――がぎッ!」
 しかし。
 斬撃を認識した刹那に、アトリは咄嗟に上を向き、強靱な顎で斬撃を受け止めた。
 アマツの剛力で打ち込まれた斬撃――それを、完璧に止めていた。
 アトリの全身は非常識なまでの防御力を誇っているが、最も強靱なのは、やはり歯と顎である。
 顎の筋肉は外見からは想像できないほど絞り込まれていて、鉄どころか金剛石すら噛み砕く。
 そんな顎でがっちり押さえられているのだから、当然アマツの剣は動かない。
 普段なら、完全に武器を封じている今の状態から、腕あたりを掴んでそこへかぶりつくのだが。
「んぎ……ぎぎぎ……ッ!」
 そのまま剣を噛み砕こうと、顎に全力を叩き込む――
 
 
 
 
 
99血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:12:54 ID:cD/sODYP

 ユメカの攻撃発動のタイミングは見切っていた。
 頭の天辺から爪先まで、全てを連動して、あのとんでもない威力を出しているのだから。
 予備動作はかなり前段階から発生している。
 それは数刹那の時間でしかないが、それこそ一刹那の間に攻撃を見切り引き千切る白からすれば。
 前もって「このときに攻撃が発動しますよ」と教えられているようなものだった。
 だから、避けるのは容易い。
 
 ずばん、と空気を引き裂いて。
 ただ差し伸べられていただけの手が、凄まじい勢いで突き出される。
 しかし、白は既に体を開き、その一撃を避けていた。
 
 あとは、肘の辺りに手を添えて、同じように強烈な一撃を炸裂させれば――
 
 
「……ッ!」
 
 
 しかし、白はそのまま飛び退いてしまう。
 これ以上ないくらいの好機だったのに。
 相手の威力とこちらの威力の相乗効果で、確実に、
 
 
 腕を、千切り飛ばすことができたのに。
 
 
 好機は後に危機となる。
 再び攻撃動作に入るユメカ。素早い。
 一瞬でも気を抜けば、確実に殺されてしまうだろう。
 それを、ギリギリで何度も避ける。
 集中力を糸に例えるならば、白のそれはいつ擦り切れてもおかしくない。
 
 でも、白が反撃に移ることは、なかった。
 
 
 
 
 
 噛み砕く自信は、あった。
 しかし、顎が全力を出し切る前に、アマツがアトリの腹部を蹴る。
 苦し紛れの一撃じゃない。鳩尾を正確に穿つ一撃だ。
 皮膚や内臓が傷つくことはないが――咳き込んでしまう程度の効果はあった。
 その隙に、口から剣を引き剥がされる。
 結局、剣には歯形を残せただけだった。

「……驚いたな、この剣に歯形を入れるとは」
「囓られたくなかったら、退いてくれない? 私は別に――」

100血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:13:45 ID:cD/sODYP

「こんなのが、ユウキに噛み付いたのか?
 噛み付いたんだろ? 噛み千切ったんだろ? ユウキの腕を! なあ!?」
 
 叫びながら、再び剣を振るってくる。
 今度は下段への一撃。
 跳び上がって避けるが――切り返しの一撃が、空中のアトリに襲いかかった。
 
「――このっ!」
 がつん、と。
 襲いかかる刃を、脛で正面から迎え撃つ。
 
 激痛。
 頭の中が真っ白に染まりそうなそれを、歯を食いしばってなんとか堪える。
 皮膚と肉が切り裂かれたが、骨で止まった。
 アトリの骨は、鉄より硬い。
 普通の斬撃なら、どこかしらの骨に阻まれて、致命傷にはなりえない。
「なにっ!?」
 流石にこの結果は驚きだったのか、アマツの動きが一瞬止まる。
 その隙を逃さず、腕に食いつこうとアトリは駆け寄る。
 硬い脛との直撃で痺れたのか、アマツは剣を持ち替えて斬りかかってきた。
 狙いは首。悪くない。頸動脈を切り裂かれたら、流石に戦闘不能となる。
 よって、腕を挟んで骨で防御。
 常人の骨だったらあっさり切断できるであろうアマツの斬撃だが。
 アトリの骨を切断できるには至らなかった。
 
 腕がじんじんと痛むが、気にせずアトリは飛びかかる。
 狙いは、斬撃を防がれて無防備になった持ち手。
 
 
 いつもなら、手首ごと囓り取るところだが。
 
 
「……ッ!」
 少々無理な体勢だが、剣の柄を狙うことにした。
 指を囓り取られることを恐れて、剣を手放してくれればいいのだが。
 がつん、と。
 柄頭を突き出し、アトリの額を強打してきた。
「ふぎゃっ!?」
 それなりに力を込めて飛びかかっていたのに、あっさり弾き飛ばされてしまう。
 恐れるべきはその剛力。先程の斬撃も、脛と前腕部分の骨に、切り込みができている。
 あの斬撃を何度も喰らったら、アトリの手足でも切断されてしまうだろう。

101血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:14:40 ID:cD/sODYP

 手加減できる相手ではない。
 隙を見つけ次第、急所にかぶりついて殺さなければ、きっとこちらが殺されてしまう。
 骨のない部分――腹部や眼孔を狙われたら、そのまま致命傷を受けてしまうだろう。
 でなくとも、防御した腕や足が切断されるのも時間の問題だ。
 受け手に回り続けたら、負けは必至。とにかく、相手の攻撃手段を奪わなければ。
 腕なり肩なりを食い千切って、戦闘不能にしなければ、こちらが殺されてしまう。
 
 でも、アトリが身体に噛み付くことは、なかった。
 
 
 
 
 
 白もアトリも、敵の攻撃をなんとかやり過ごし、部屋中を跳び回って――中央で合流した。
 否、これは合流したのではなく。
 
「……誘導された!」
 
 白が警戒の声を放つ。
 おそらくは、アマツの意図によるものだろう。
 戦う4名の立ち位置を把握し、それが重なるように誘導したのだ。
 それは何故か。簡単だ。
 白とアトリが防御を主にして戦っているのを見抜き、挟撃しようとしているのだ。
 
 先に攻撃してきたのはユメカだった。
 突っ込んできて、再び、手を突き出してくる。
 先程のように避けると――今度は、背後からアマツの斬撃がやってくる。
 では、どうすればいいのか。
 
「――盾!」
 
「……へ?」
 ちょうど左手の近くにいたアトリの手を掴み、投げ飛ばすように自分の前へ。
 突然のことに間抜けな悲鳴を上げてたりするが、全くもって気にしない。
 怪物姉は割り込んできた障害物に臆することなく、そのままとんでもない破壊力を発揮した。
「ってちょ――はぶし!?」
 胸元に怪物姉の攻撃を喰らったアトリは、そのまま後ろに吹っ飛ばされる。
 そして、彼女の片腕は、未だに白が握っていて。
 
「――槌っ!」
 
 ぐおん、と。
 その場に踏ん張り、勢いを円運動に変換して。
 紐付き砂袋を振り回すかの如く。
 
 アトリを、怪物姉にぶち当てた。

102血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:15:29 ID:cD/sODYP
 
 
 吹っ飛んでいった2人には目もくれず、白はそのままアマツの方へ向き直る。
 流石に今のは予想外だったのか、アマツが放ってきた斬撃は、驚きで鈍っていた。
 寸前で見切り、皮一枚で避ける。
 そのまま踏み込み、距離を詰めようとしたが、切り返しの一撃で、それを阻まれる。
 距離が近すぎたので、大きく避けるしかなかった。
 その隙に、アマツは大きく距離を取る。
 
 どかん、と。
 人間2人が壁に激突する音が響いた。
 
 がらがらと破片をかき分けながら、アトリが大声で文句を言う。
「けほ、ごほ……ちょっと! なにすんのよ!」
「交代。こっちの方が相性は良い」
「それは構わないけど、せめて、口が前に来るように振り回してよ!」
 それなら噛みつけたのに、と微妙にずれた不平を漏らすアトリだった。
 しかし、白は冷静に。
 
 
「……できたの?」
 とだけ、呟いた。
 
 
「…………」
 それに対し、アトリは黙り込んでしまう。
 そして、何かを口走ろうとするが――それを遮るかの如く、崩れた壁の中からユメカが飛び出してきた。
 
 白は、背後で戦闘が再開された気配を確認し、改めてアマツに注意を向ける。
 装備は昨晩と変わらない。剣はスペアのものだろうが、表面に施された細工は同じだった。
 迂闊に素手で受けたりしたら、手が使い物にならなくなってしまうだろう。
「…………ん」
 ふと、床に落ちていた布を発見。
 アマツに隙を見せないように、それを拾い上げて、口で左手に巻き付ける。


103血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:16:22 ID:cD/sODYP

「こらー! 人の下着をくわえるなー! 変態!」
「ハダカで戦う奴に変態なんて言われたくない」
 軽口を叩き合う白とアトリ。しかし、その声色に余裕はない。
 
 アトリを追いかけるユメカ。その打撃は、アトリの骨格すら軋ませる。
 大きな刃物を持っていなくとも、危険であることに変わりはない。
 それでも、長い剣に遮られていない分、噛み付きやすくはあった。
 アマツに比べれば、まだ与しやすい相手といえるかもしれない。
 しかし――
 
 
 白を鋭い目で睨み付けるアマツ。状況は昨夜と一緒だが――白はこの上なく警戒していた。
 先程の切り返し。あの速度は、昨晩のそれを遙かに上回っている。
 剣速が増したわけではない。
 純粋に、アマツの反応が早くなっているのだ。
 何故かはわからないが――集中力が極限にまで高められている模様。
 拳を布で守ったからといって、昨日と同じ手は通用しそうにない。
 ただ、ユメカに比べれば、攻撃の助走距離が長いため、まだこちらの方が対応しやすい。
 しかし――
 
 
 
 ――白とアトリは、大きな枷を嵌められていた。
 
 血塗れ竜と食人姫、両者共に、その強さの大元は攻撃力にある。
 相手の手足を引き千切る血塗れ竜。
 相手の身体を食い千切る食人姫。
 そのような特性があってこそ、両者は非常識なまでの戦闘力を発揮する。
 
 だが。
 今の2人は、それを思う存分に振るえない事情があった。
 
 どうしても、浮かんでしまうのだ。
 相手を殺すつもりで前に進んでいたとき。
 割り込んできた、最愛の男性。
 
 ――自分たちが両腕を失わせてしまった、ユウキの姿が、脳裏にこびりついていた。
 
 それは容易に拭えるものではなく。
 2人から、戦意や殺意といった類のものを、完全に奪ってしまうのだ。
 また、誰かを殺そうとしたら、ユウキが割り込んでくるのではなかろうか。
 そんな思いが、どうしても生じてしまう。
 常識的に考えて、重傷のユウキがこの戦いに割り込むなんて不可能なのだが。
 でも、ユウキが命を賭けてまで、戦いを止めたあの姿が。
 どうしても、少女らの中から消えなかった。

104血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:17:06 ID:cD/sODYP


 故に、白とアトリは防戦一方となってしまう。
 アトリは打撃に強い体だし、白はアマツの斬撃を見慣れている。
 そのため、先程よりは少なからず楽ではあるが――それでも不利なことに変わりはない。
 戦闘が長時間にわたれば、いずれ集中力が尽き、致命傷を喰らうだろう。
 だからといって、逃げるわけにもいかない。
 壊れてしまったユメカが、ユウキに何をするのかわからないし、
 殺意の塊となったアマツが、逃がしてくれるとも思えない。
 白とアトリは、ジリ貧なのを理解しつつも、攻撃に転ずることはできず、ただひたすら逃げるのみ。
 
 とはいえ――アマツとユメカも、万全な状態というわけではない。
 アマツは昨晩の負傷が癒えたわけではないし、ユメカの身体はボロボロだ。
 どちらも、長期戦に耐えられる身体ではないし、無理して短期決戦に持ち込むのも難しい。
 壊れかけの身体で無茶をすれば、大きな隙ができてしまう。
 本能的にそれを理解しているアマツとユメカは、白とアトリが致命的な隙を晒すのを待つしかない。
 
 4人全員が、長期戦の難しい状況。
 先に崩れた方が負ける、そんな奇妙な膠着状態が生まれていた。
 
 このまま、誰かが最初に崩れるまで、猛攻を続ける2人と防ぐ2人の構図が崩れないのかもしれない。
 
 そう、思われた。
 
 
 
 しかし。



105 ◆gPbPvQ478E :2006/08/24(木) 03:18:02 ID:cD/sODYP
久しぶりの本編です
完結に向けてラストスパート
頑張ります
106名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 03:26:39 ID:kgkHTRwG
( ゚д゚)ポカーン

(つд⊂)ゴシゴシ

( ゚д゚)


( ゚д゚ )やべぇマジおもしれぇ
107名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 03:27:05 ID:JBTSAgZp
はぶしカワユス
アトリモエス
108名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 03:36:36 ID:kHd2N2wA
>>105
これ何て神展開?
もちろん続き楽しみだが、同時にもうすぐラストだと思うと惜しい…

だから重傷のユウキは俺が持ち帰って保護しておきますね
109名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 03:41:16 ID:ylq/W8oN
ユウキたんが何をしているか気になるなぁ

あと誰か同人で格闘ゲームにしてくれないかな。
嫉妬修羅場ノベル格闘ゲーム
110名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 03:53:53 ID:m3eIyV+y
この隙にユウキたんを拉致監禁凌辱したい
111名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 04:03:16 ID:gZTCh9Hn
>>105
すごく続きが気になる終わり方で……wktkが止まらないっ!
下着をくわえた白(*´д`*)ハァハァ

>>109
自分で作っちゃえばいいんじゃね?
112名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 14:12:26 ID:u08KII/4
ユウキって何も悪いことしてないよね(´;ω;`)
113名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 14:24:40 ID:kX/1k8qL
両腕と引き替えても修羅場をとる、ユウキはまさに漢 (´;ω;`)
114名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 15:04:53 ID:0T8w9UHR
ユウキは今後ま(ryたちといっしょに崇められます
何で弟の名前なんだ…orz
115名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 15:32:58 ID:UMzgsqHx
わかった!このあとユウキ君の両足もなくなって、うじひめのお父さんになるんだね!
116名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 17:05:27 ID:xwnE239h
投下しますよ
117『とらとらシスター』18虎:2006/08/24(木) 17:06:35 ID:xwnE239h
 軽く体を揺すられて、ぼんやりと目が覚めた。薄く目を開いてみれば周囲は明るく、今
が何時なのかは判断が出来ない。携帯で時間の確認をしてみると、表示されている時間は
午後の三時、今頃僕と青海はどこかの喫茶店にでも入って軽食を楽しんでいる頃だろう。
それとも、公園の芝生でお茶でも楽しんでいるのか。
 靄がかかった思考で浮かんでくるのは、そんな何気無い風景。
 僕と青海?
 午後三時?
 状況を整理して、まず最初に来たのは強い悲しみだった。あの悲惨な現場を、何よりも
青海を失ってしまったという実感に目元が熱くなる。気が付けば声が漏れ、滝のように涙
が溢れ落ちてくる。雫が頬を伝う感触を不快と思いながらも、しかし拭う気力さえ湧いて
こない。甘えているとは思うけれども、ただ流れにまかせてずっと泣いていたかった。
 不意に、頬に柔らかい感触が来た。
「兄さん」
 声や感触の主はサクラだった、視線を向けると悲しそうな目をしたサクラと目が合う。
しかしサクラは何も言わずに、僕の頬をハンカチで拭っていた。丁寧に、ゆっくりとした
速度で布が滑り、目元までそれが移動する。それはそのまま両目に当てがわれ、僕の視界
を塞ぐように止まった。気遣いをしてくれているのか、何も目に映らないようにしてくれ
ているのを有り難いと思いつつ声を荒げた。これはきっと、泣いても良いというサクラの
無言の言葉だろう。口にすることだけが繋がりではない。
118『とらとらシスター』18虎:2006/08/24(木) 17:07:31 ID:xwnE239h
 涙が布に吸われていくのを感じながら数分、漸く気分が幾らか落ち着いてきたのか目元
から溢れる雫も勢いを無くし、声も収まってきた。
 数秒。
「兄さん」
 ハンカチを目元に当てたまま、再びサクラが呟いた。
「何が、あったんですか?」
 僕に遠慮してなのか、若干控え目な声で尋ねてくる。
 言っていいものなのか、迷った。本当に大切なものだから簡単に口に出してしまっても
良いものなのかも分からないけれど、それでも誰かに言ってしまいたいという気持ちが心
の中で渦を巻いている。それ程の矛盾を作り上げるくらいに、人の死というものは重い。
言葉にしてしまえば陳腐なものだけれども、どうしようもない。
 数分。
「あの」
 重苦しい沈黙を先に破ったのは、サクラの方だった。僕の手を取ってハンカチに当てさ
せたあと、僅かに離れたような気配がした。
「お水、取ってきますね。何か、たくさん泣いたみたいなので」
 立ち上がる音がするのと同時、ハンカチを投げ捨てた。その勢いのまま部屋を出ようと
するサクラの手首を掴む。見上げた視界には驚いた表情の顔があった。
「あ」
 今になって、どうしようかと思った。多分、サクラは僕が言うのかどうか考える時間を
くれようとして部屋を出ようと思ったのだろう。それなのに引き留めて、しかし僕はまだ
言おうという決心がついていなかった。慌てて視線を反らしても何も変わる訳ではなく、
再び気不味い沈黙が部屋の中に降りてくる。
119『とらとらシスター』18虎:2006/08/24(木) 17:10:07 ID:xwnE239h
「あの、兄さん、痛いので、その」
「あ、ごめん」
 どうやら強く握りすぎていたらしい、掴んでいた手を離すとサクラは苦笑を浮かべて僕
を見た。そして手指を絡めて改めて握り返してくると、ベッドに腰掛けた。それはまるで、
どこにも行かない、と言われているようで安堵が込み上げてくる。
「何が、あったんですか?」
「うん」
「帰りはもう少し遅くなるものだと思っていたので、驚きました」
「うん」
「それなのに、帰ってきたら靴があって」
「うん」
「しかも、寝ていたので」
「うん」
「デート、しなかったんですか?」
 うん、とは言えなかった。しなかったのではない、そもそもそれ以前の問題だ。青海は
死んでいたから、デートなんて出来なかった。そのときは混乱していたから比較的大丈夫
だったけれども、一度寝て現状把握出来るようになってからは、余計に辛くなってきた。
今だってサクラが居るから何とかなっているけれども、もし一人だったらあのまま泣いて
いたに違いない。
「青海さんですね。全く、あの人は!!」
 そうじゃない、と言おうとしたけれども言えなかった。駅のホームで泣き始めてからの
記憶が殆んど無いが、相当泣いてしまっていたらしい。喉が痛くて、声もかすれ、言葉が
上手く出てこない。しかし無理矢理絞り出すように、
「青海は」
120『とらとらシスター』18虎:2006/08/24(木) 17:11:17 ID:xwnE239h
 これ以上言ったら危険だと、日常の側の僕が叫んでいる。心の扉はもう緩みきっていて
意味をなさなくなっている。青海と居た側も、姉さんやサクラと情事を交した側も、関係
なくなってきていた。どちらの声も、今や筒抜け状態だ。
 青海を失った痛みが強かったから、だから楽になりたくて、
「死んだ」
 言ってしまった。
 それが合図となったように、再び声と涙が溢れ出してくる。言葉として吐き出した次は、
涙として全て出し、流しきってしまえば良いとでも言うように。そうして全てを無くして
しまえば楽になる、とでも言うように、感情の流れは止まらない。
 不意に、圧迫感。
 頭を胸に押し付けられ視界が黒く染まったことで、それがサクラに抱き上げられたのだ
と理解した。薄いが確かに弾力のあるその感触と、もう既にかいで馴染んだ匂いに、気分
が落ち着いてくる。
「サクラ?」
「遠慮しないで、泣いて下さい。さっきよりも、もっとたくさん」
 一呼吸置いて、
「そうすれば少しは楽になります。今なら私と兄さんだけですし、こうして抱いていれば
泣き顔を誰にも見られることはありません。声も聞かれるのが嫌ならば耳も塞いでいます」
 サクラは抱く力を強くして、
「それなら私が部屋を出るのが一番なのでしょうけれども、人が隣に居るか居ないかでは
やっぱり違いますので。それに何より、私が兄さんの側に居たいんです」
 小さな笑い声が聞こえ、
「すいません、自分勝手で」
「そんなことないさ」
121『とらとらシスター』18虎:2006/08/24(木) 17:13:32 ID:xwnE239h
 そう、サクラが今こうしてくれているだけで、僕は大分救われている。温かな体温も、
柔らかな感触も、どれもが心地良く僕を癒してくれる。
 泣いて良いと言われたのに、いつのまにか涙は止まっていた。それでも離れたくなくて、
細い体を抱き締め返す。腕の中に丁度収まる大きさの体は簡単に抜け出してしまいそうで、
それを防ぐために強く力を込める。少し苦しそうに声を漏らしたけれども、それでも何も
言わない気遣いが嬉しかった。
「サクラ」
 胸に顔を埋めている上、泣きすぎたせいで声も枯れている。そのせいかとても聞き取り
辛いだろう声に、サクラは抱く力を変えることで応えてくれた。言葉で答えるよりも動き
で応えてくれたのが嬉しい。
「ありがとう」
 僕の言葉に、サクラは腕の力を解いた。続けて僕の顔を手指で挟むと、軽く唇を重ねて
くる。驚いて顔を離し、見つめてみればサクラははにかんだような笑みを浮かべていた。
「ありがとう、だなんて言うのが早いですよ。兄さん」
 今度は、顔の高さを同じにして抱き締めてくる。
「言われるのは、私が死ぬときです」
 死ぬ、という言葉が、今は重みを持って感じられた。
「死ぬなよ」
「大丈夫です。何の取り柄もないですけれど、兄さんの側に居ることぐらいは出来ます。
それに、しぶとさには自信がありますから」
 もう一度僕に口付けて、
「私は、死にません」
 僕に温かな笑みを向けた。
「いつまでも、側に居ます」
「ありがとう」
「だから、早いですってば」
 サクラの口から、小さな笑い声が漏れる。
「あ、でも。いつまでもって言いましたけど、水を取りに行くのくらいは許して下さいね」
 僕は軽く笑って、腕の力を緩めた。
122ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/08/24(木) 17:14:15 ID:xwnE239h
今回はこれで終わりです

最初の雰囲気が好きという方、すいません
その言葉が嬉しくて長編にしたのに俺のバカ!

ほのぼのとしたタイトルに騙されて読んだ方、すいません
何か鬱ったり暗かったり変に真面目だったり俺の阿呆!!

そして以前のような癖のある文体が読み辛いと思われた方、すいません
たまに文体が元の変なのに戻ったりする俺の間抜け!!!!


それでも見捨てないという方が居たら、ありがとうございます
プロットは残り4分の1、頑張ります
123名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 17:16:27 ID:pSYPlqmn
お江戸モノと血塗れキター
ユウキ可愛いよユウキ
ユウキ出番無いよユウキ

>>115
鬼才現る
124名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 17:35:59 ID:jV3PxXm8
ユウキたん究極の修羅場おめでd

>>115
ちょwwwwおまwwww
125名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 18:01:54 ID:1hat8dmd
コテツミンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!

>>115
天才現る
126名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 18:51:42 ID:0T8w9UHR
>>115
鬼 才 現 る
127名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 22:07:03 ID:ZfYHM1yt
>>122
この雰囲気も好きですよ
策士の妹はうまく付け込んで来たなぁって感じが流石・・・
128トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/08/24(木) 22:21:00 ID:RAdPdyw7
では投下致します
129雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/08/24(木) 22:24:35 ID:RAdPdyw7
 第8話『moment』

 キスされた日の夕食は珍しく瑠依が食べにやってきた。
 俺は二人分の料理を作り、食卓に並べた。
 相変わらず簡単な調理だが、瑠依は文句なく黙々と食べていた。会話もなく、静かな時間が流れてゆく。
 俺も雪桜さんにキスした事ばかり考えていたおかげで自分で作った料理の味がどんな味だったかは記憶にはない。
 どうして、雪桜さんがこんな俺相手にキスをしたのかという一点に尽きる。
 そんなことばかり考えていても、女の子の心や行動を、鈍い俺がわかるはずがなかった。
 目の前にいる、一応女の子をやっている瑠依以外は。

「なあ。瑠依。女の子からキスを誘ってくるってどういう意味なのか知っているか?」
「ゴホゴホっ」
 思わず食べている物を吹き出した瑠依は俺がコップに注いだ麦茶を慌てて飲んでから、一息を吐いてから言った。
「女の子とキスっっっっ!! 誰よ。私の剛君にキスしようとした不届き者はっっ!! 成敗してくれるわっっ!!」
 発狂した虎は顔を紅潮させて、殺気を周囲に展開させる。瑠依が久々にマジギレしていた。
「キスされたのは俺じゃない。俺の友人だよ(思いきり仮定だが)」
「本当に本当に本当に本当に本当なの?」
「本当だから。頼むから落ち着いてくれ」

 これで雪桜さんにキスしましたと真実を語ったら、この台所にある全ての皿を投げ尽くすだろう。
 虎による器物損害後の後片付けをすることになる俺は事を穏便に済ませたかった。

「友人が付き合ってもいない女の子と密室の中に誘い込まれて、キスしろと強要されたんだ。その時の女の子の気持ちは一体どういう意図があったんだろうな」
「決まっているじゃない。その女の子はいつまでも告白してくれないヘタレ友人に自分の気持ちを伝えるためにキスを強要したんだわ。
 だって、好きでもない男の子とキスをしたがる女の子なんてこの世のなかのどこを探してもいるはずないもん」

 確かに虎の言う通りである。女の子にとってキスはとても大切なモノ(一般的常識概念に基づいて)である。
 どうでもいい男にキスしようとする女の子はこの世のどこを探してもいるはずがないのだ。

「本当にそれだけなのか?」
「一応、女の子をやっている私の言葉を疑うつもり?」

 瑠伊は冷笑を浮かべながら、怒りのオーラを体中から発散させ始めていた。
 虎の威嚇に怯えてしまった俺は食べ終わっていた食器を片付けるために流し場に持っていく。
 数秒たりとも、あの場所にいれば俺自身の寿命が何年かぐらい縮んでしまうし。
「瑠依の前では当分の間はキスの件に触れない方がいいな」

 妙に機嫌が悪くなった虎がウチの炊飯器からご飯を器に入れ移している。これでもう何杯目なんだろうか? 
 瑠依がご機嫌ななめの時にヤケ喰いに走るのだ。後のことを考えずに自分の体重を増加させて、今度は人を巻き込んでダイエットするからなおタチが悪い。
 だが、反抗して虎の牙に噛まれるわけにもいかず、すでに長年の経験から何もせずに傍観していれば自分に危害を加えられることがないのを知っているので。
 とりあえず、俺は黙っておくことに決めた。


「剛君。おかわりっ!!」


 今夜も虎の雄叫びは豪勢に吠え続ける。
130雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/08/24(木) 22:26:52 ID:RAdPdyw7
 剛君は嘘を吐いている。
 彼程、嘘を吐くのが下手な人間はいないだろう。
 今まで剛君に近付いてくる女の子は私が全て追い払ってきたのだ。
 私以外の女の子には免疫がない剛君が友人の話だとはいえ、私の前で、そ、そ、そ、そ、そのキスの話をするのだろうか? 
 嫌らしいエロ本も私が部屋を週末事に隅の隅々までチェックして、没収した本を焼却処分にしているのだ。
 私がその手の会話に弱いことは剛君なら知っているのに。
 楽しい夕食の時間にその話題を出すってことは、友人がというのはもちろん嘘で。
 剛君の身に起きた事だと推測できる。
 簡略すると泥棒猫が剛君を誘惑して無理矢理キスする状況に追い込んだ。剛君も年頃の男の子だもん。女の子に迫られたら、その場の勢いでキスしてしまうだろう。

 悪夢。

 これは悪夢なのだ。

 だって、私ですら剛君の唇を奪ったことがないんだよ。

 どこぞの馬の骨女が剛君にキスをしたっ?

 そんなことが許されていいはずがないんだよっっ!!

 勉強机に置いてある携帯に着メロの音が鳴った。
 どうやら、メールらしい。
 私は今届いたメールを開くと風紀委員から報告が詳細に書き込まれていた。
 もしものために剛君の放課後の行動を私の忠実な風紀委員たちに見張ってもらっている。
 これも剛君が頭のおかしい女どもから守るために仕方ないことだと思っている。
 風紀委員から毎日メールを送るように指示しているのですでに日常になってしまっていた。
 送られた内容は私の胸を締め付けられている、あの泥棒猫と剛君の一日の行動。
 私が剛君を解放してから、あの泥棒猫と剛君が放課後の時間を利用して遊びに行っている報告を受けた時は何とか我慢することが出来たけど。
 今回は違った。

「剛君があの女とランジェリーショップにっっっ!!」
 
 許さない。許さないよ。
 殺すわよっ!!

 私の我慢の限界はようやく限界点突破まで行ってしまった。
 ならば、あの泥棒猫を天国から地獄へと突き落とそう。
 それだけのカードは私は持っているのだ。

 ねえ。
 雪桜志穂。
 このカードが発動すれば、あなたは終わる。

 私が剛君を解放したフリをしたのも、あなたの存在を今まで容認していたのも。
 全てはあなたを絶望の底に突き落とすためだった。

 舞台は整った。
 あなたが足掻く姿を見物しながら、雪桜志穂の破滅を見届けよう。

 
「あっ。もしもし、雫。明日、お願いしたいことがあるんだけど」

 ふふふ。
 明日が楽しみだよ。
131トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/08/24(木) 22:30:52 ID:RAdPdyw7
次回からいよいよ物語が動き出したらいいなと思います。

EDは多数選択型にするべきなのか、たった一つだけにして完結にするべきなのか
今から考えておく必要がありますね・・。

うーん、悩みますねw
132名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 22:33:59 ID:CBV4CFos
乙GJです
雪桜さん派の俺としては雪桜さんハッピーENDであるのなら
一つだろうと派生だろうと一向に構わなかったりします
133名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 22:43:42 ID:BwYLpvLq
超個人的我侭だけど、陵辱展開だけはカンベンしてぇ〜
そんな俺は瑠依との明るい未来を夢見ています
だってツンデレだいすk(ry
134名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 22:55:32 ID:UjuzShCW
このスレでは凌辱はするものじゃない。
されるものだ。
135名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 23:08:35 ID:g3SmcUFf
すばらしき名言
136名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 23:24:23 ID:kgkHTRwG
「陵辱やめて」って言うのははよくない、
作品の展開においちいち口出しする権利はないし、
いやなら読まなきゃきゃいいんだから、
だから「注意書きとかしてください」とかそういうふうに言うのが正解だと私は思う。




まとめると 
つまり雪桜さんは俺の物
137作られた命 4 ◆uDrWoF795A :2006/08/24(木) 23:56:21 ID:Y+z+hts8
今日もいつもどうりの食事と報告を終え、
ベッドに腰掛け本を読んでいる。
最近の本はあまり面白くない。
私の今までの知識を
少し応用したくらいの内容しか書いてないからだ。
この本にも私が知りたいことは載っていないのだろう。
そう思い始めた頃に声が聞こえた。
この声が食後の時間以外に聞こえてくるのは初めてだ。
「T、今日は少し実験をする。
今お前のところに一人の人間が向かっている。
会話したいことがあったら好きなようにしたらいい。」
それだけ言うと声は途絶えた。
138作られた命 4 ◆uDrWoF795A :2006/08/24(木) 23:58:04 ID:Y+z+hts8
こちらの返事を待たずに消えるのは失礼だと思ったが
今はそんなことどうでもよかった。
重要なことは今からここにヒトがくること。
つまり、
自身とここにやってくるヒトを直接見比べれるのだ。
先程の声はヒトとの会話も了承していた。
これほど条件が揃えば
私の疑問が解決するかもしれないのだ。
私はヒトなのか、そうでないのか。
私は生物なのか、そうでないのか。
真っ白な壁に切れ目が入り、徐々に開いていく。
私ははやる気持ちを抑え、その光景を凝視する。
贅沢をいえば「女」が来てくれると比較しやすい。
139作られた命 4 ◆uDrWoF795A :2006/08/24(木) 23:59:45 ID:Y+z+hts8
壁が開ききり、薄暗い空間からヒトが入ってきた。
頭のてっぺんからつま先までなめ回すように視線を動かす。
体格等で「男」だと予想する。
初対面の相手をじろじろ見るのは無礼だろうが、
ここだけは大目にみてもらいたい。
予備知識はあるが気分は正に未知との遭遇だ。
私の好奇心が身体の中で暴れているのは仕方ない。
見つめるだけで我慢しているだけ上出来なほうだと思う。
「はじめまして、俺は源 郷護っていいます。」
日本語でくるなら日本語で返すのが礼儀だろう。
「はじめまして、私の名前は…」
私の名前は…なんなんだろう。
140作られた命 4 ◆ccqXAQxUxI :2006/08/25(金) 00:02:01 ID:Y+z+hts8
くそっ!
私の名前はなんなんだ?
自己紹介はコミュニケーションの第一歩なのに!
それすら出来ないと思われては最悪だ。
対人関係で相手に見下されては有益な情報は得られない。
大丈夫、落ち着いて考えよう。思考速度には自信がある。
名前を言うのに1,2秒のタイムラグなら問題ないだろう。
そういえばいつも聞こえてくる声にはTと呼ばれている。
私の名前はTでいいのか?
しかしTってヒトの名前としてどうなんだ?
いや、私はヒトじゃないかもしれないんだ。
でもだ、仮に私が相手の立場だったとしたら?
141作られた命 4 ◆uDrWoF795A :2006/08/25(金) 00:03:38 ID:Y+z+hts8
私が自分の名前を言って、相手が
「私の名前はHです」
と言ってきたら?
うん。
少なくとも私はそんな奴と真面目に会話しようとは思わない。
なら話は簡単だ。
本名が駄目なら偽名を使えばいい。
相手は日本人らしいので日本人の名前が妥当だろう。
たしか少し前に日本人の書いた本を読んだ。
著者は…福沢諭吉だったな。
よし、諭吉から名前を借りて雪奈でいこう。
「はじめまして、私の名前は…福沢雪奈です」
……あれ?
男の表情ががらっと変わった。
表情の変化は感情の変化を表すらしいが、
ヒトを初めて見る私には表情は読めない。
142作られた命 4 ◆uDrWoF795A :2006/08/25(金) 00:05:26 ID:Y+z+hts8
まぁいい、男がどう思ってようが私には関係ない。
とにかく自己紹介は終わったのだ。
対人コミュニケーションは初めてだが
、私には今までに得た知識という武器がある。
男がなんと言ってこようと対応し、会話を誘導して
私の疑問を解決する方向に持っていく自身はある。
郷護と名乗った男の口が動く。
「Tと呼ばれるのは不愉快だったかな?」
……やられた。
何故か知らないが私がTと呼ばれているのをこの男は知っている。
全く予想外の展開に私の自信はいとも簡単に崩れさっていった。
143作られた命 4 ◆uDrWoF795A :2006/08/25(金) 00:07:36 ID:MDt5JOED
自信が崩れただけならまだいい。
問題はさっきまで私が考えてたことの滑稽さだ。
私はなんて馬鹿なことをしてたのだろうか!
とっくに本名を知られてる相手に必死で自己紹介をしていた。
しかも偽名を使うという始末。
何が福沢雪奈だ!阿呆にもほどがある。
情けなくて今にも逃げ出したい。
…あぁ、そうか。
これが「恥ずかしい」という感情なんだな。
うん。記憶した。
こんな感情、二度と持つわけにはいかない。
だいたいこんなのはいつもの私ではない。
初めてヒトを前にして興奮気味。
少し落ち着かなくては。冷静に、無感情に、だ。
144みこし ◆uDrWoF795A :2006/08/25(金) 00:13:01 ID:MDt5JOED
この話、最初は女医と患者二人という設定だったのに。
今では影も形も…。
145名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 01:54:47 ID:dnRpAN+M
GJ!だんだん感情が育まれてきて、これから 嫉 妬 という素晴らしい物が出てくる日が待ちどうしい
146名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 02:02:49 ID:E271RuL3
寝る前に投下。いきます。
147夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/25(金) 02:05:11 ID:E271RuL3
 どんなに気が重かろうと、平日である以上学校へは行かなければならない。
 思い出すのは昨日の破局。結局俺は部屋の空気に耐えられず、逃げるように先輩の家を出た。
 そう、自分で選んだ別れだ。こうなることは納得ずくだったはずなのに・・・。

(慣れて・・・甘んじてたってことだよな。先輩と恋人同士でいることに)

 先輩との縁自体が切れたわけじゃない。でも、毎日のように昼休みを一緒に過ごしたり、一緒に帰ったり、
休みの日には欠かさず共に過ごすということはもうない。思えばこの一ヶ月、先輩と顔を合わせなかった日は
一度だって無かった。
 ここからまた一ヶ月も経てば、思い出も埋もれてこの気持ちも晴れるのだろうか。


 ともすれば暗い雰囲気が表面化しそうになるのを抑えて、いつも通り教室に入り、クラスメートに適当に声を掛けながら
自分の席へ向かう。友人づきあいは浅く狭いので、別に誰かが寄ってくることもない。

(・・・いや、一人いたな。あ、見つかった。やっぱり来るのか・・・)

 今はぼんやりと物思いにふけっていたい気分だったのだが、それも断念せざるを得ないらしい。

「おはよう、皓一! あら、今日は辛気臭い顔をしてるのね」

 肩くらいまでのショートカットをなびかせる、見るからに活発そうな印象の少女が俺を見下ろしていた。
 倉地唯(くらち ゆい)。中学の頃からの俺の知り合い。何かと俺に絡んでくるヤツだが、それはあくまで俺の主観だ。
 倉地は男女問わず誰にでも明るく接する性格で、それはクラスでもあまり目立たない俺も例外ではない。
 だから、俺にとっては倉地は話す頻度の高い相手だが、倉地にとっては大勢の友人の一人でしかないと思う。
 ・・・のだが。

「別に・・・そんなことはないだろ? 俺が暗いのはいつものことだ」
「そう? まあ確かにそうだけど。・・・何となく、いつもと違う感じがするのよね。
何ていうか、単に暗いってだけじゃなくて、こう・・・ダークなオーラを背負ってるっていうか。
もしかして、二条先輩とケンカでもした? まさか別れちゃったとか?」
「・・・!!」

148夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/25(金) 02:08:45 ID:E271RuL3
 自分で言って少し虚しくなったのはさておき。余計なお世話だと思ったのもさておき。

 やっぱりバレた。なぜか倉地には、俺のその日の気分が簡単にバレる。気分がいい時、怒ってる時、疲れてる時・・・全て見抜いてしまう。
 クラスでの倉地を見る限りでは、周りへの気遣いは上手いが、特別勘が鋭いという印象は受けないのだが。人は見かけによらないということか。
 だから今日も、いくら気を張っても、彼女には気が沈んでいることがバレるのではないかと思っていた。
 しかし、先輩のことまで見抜かれるとは思ってなかったので、俺はあからさまに動揺してしまった。
 これで気づかない奴はいないだろう。はっとして周りを見渡すが、俺たちの会話を聞いている生徒はいなかった。
 ほっ、と軽く息を付くと、気を取り直して倉地に向き直った。当の倉地は、目を見開いて口をポカンと開けている。どうやら先輩のことは
あてずっぽうだったらしい。

 こんな間抜け面を、倉地のことが好きな男子たちが見たらどう思うかなーなどと他人事のように考えていると、倉地が詰め寄ってきていた。
 くわっ、という擬音が聞こえそうなほどに、見開いた目を更に大きくして俺を睨みつける。正に百年の恋も冷めるような形相だ。

「・・・嘘? 本当? ホントに? マジなの?  ほんっっっっっとうに!? 冗談じゃなく!?」

 段々とヒートアップしていく倉地。俺の胸倉を掴まんばかりの勢いで詰め寄って叫ぶその様子に、周囲のクラスメートの視線が集まり始める。
 そりゃそうだろう、クラスの人気者の美少女が我を忘れて興奮し、叫んでいるのだから。
 ・・・だが。

「本当にせんぱ」
「!!!」

 咄嗟に倉地の口を塞ぐ。すぐ近くに居たのが幸いした。
 危ない・・・もしあのまま「先輩と別れたの!?」なんてあの音量で叫ばれてみろ、少なくとも二年のクラス中に響き渡るだろう。
 月とスッポンのカップルのうえ、毎日のようにべったりしてた俺と先輩だ。周りが結構強い関心を抱いていることは俺も知っている。
 実際、付き合い始めた頃の周りの反応は凄いものがあったし。
そんな俺たちが何の前触れもなく別れたら、今度は周りがどんな反応をするか・・・考えただけでも恐ろしい。

 結局すぐに予鈴が鳴って担任がやって来たため、すぐにみんなそれぞれの席へ戻った。
 うやむやになって助かったと、俺は思った。
149夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/25(金) 02:14:33 ID:E271RuL3
 ・・・とはいえ、真実を知った相手までは誤魔化せない。放課後、俺は倉地に連れられて屋上に来ていた。
 西からの日差しがきついそこは、俺たち以外には誰も居ない。
 HRが終わるや否や、倉地は一緒に帰ろうという友人の誘いをやんわりと断り、いつになく真剣な瞳で俺の席へ来た。
 用件は分かっていたが、よく考えれば倉地に先輩とのことを話す筋合いはない。だが雰囲気に呑まれたからだろうか、素直についてきてしまった。
 バタン、と重い屋上の扉が閉まり、それに背を預けるようにして倉地が振り向く。何故か、逃げ場を断たれたと感じた。

「で・・・本当に別れたの?」

 真剣な瞳はそのままに、朝とは対照的な静かな声。
 真意はともかく、倉地は真面目に聞いている。なら俺も、答えを言うかはともかく、それに誠実に応える義務がある。

(どうするかな・・・)

 などど思ってみたものの、答えは既に決まっていた。
 倉地にだけは話そうと思う。コイツには先輩と付き合ってる間も色々相談に乗ってもらっていたし、
(といっても大抵は、『あんたじゃ二条先輩とは釣り合わないって』で締められるのだが・・・)
その以前からも色々世話になっている。
 例えば文化祭などの行事、あまり積極的に人の輪に入らない俺を引っ張ってくれたのは倉地だった。
 親しい友人こそいないが、不自由なくクラスに溶け込みクラスメートともそれなりに仲良くやれているのは倉地のお陰といっても過言ではない。
 そんな倉地だから、話してもいいんじゃないかと思うのだ。


 とはいえ、それが言い訳に過ぎないことも分かっている。
 本当は、辛いことを自分の胸だけに抱え込むのが苦しいだけだ。
 誰かに聞いて欲しい、俺は間違ってないといって欲しいのだ。
 ・・・なんて弱い、俺は。
 俺を心配してくれる倉地の好意を逆手に取るような真似をして。それでも俺は、倉地に事の顛末を話した。先輩のことも、全て。
150夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/25(金) 02:21:08 ID:E271RuL3
「そっかー、ホントに別れちゃったんだ。だから言ったじゃない、釣り合わないって。住む世界が違うのよ」

 かねてから自分が言っていた通りになったからか、倉地は上機嫌なうえにいつもより多弁だ。

「高校を中退してアメリカに留学でしょ? それってこんな公立高校にこれ以上通う必要がないってことじゃない。
 本当なら私立のお嬢様学校に行ってるような人よ。実際、二条先輩の家って世界的にも結構有名な実業家だし」
「そ、そうなのか? 確かに家も大きいし、お金持ちのお嬢様だとは思ってたけど・・・。世界的に、だって?」
「そうよ。ま、皓一のことだから知らないんじゃないかと思ってたけど」
 確かにそこまでは知らなかった。先輩も何も言わなかったし。
「先輩に告白した連中の中には、単に美人の先輩狙いってだけじゃなくて逆玉狙いの男も居たの。だからあんた、一部の連中には結構睨まれてたのよ」
「・・・・・・」
「本当に、別れて正解よ。もしあんたも逆玉狙いだったらそういう奴らと戦わなきゃいけないだろうけど、そんなんじゃないでしょ?
第一、そんな大きい財産をどうしようって甲斐性が皓一にあるとは思えないし」

 どさくさに紛れて酷いことも言っているが、倉地の言葉は主に俺の判断を支持するものだった。実際、逆玉うんぬんに興味は無い。

「とにかく、これでよかったの。傷が浅いうちでよかったじゃない」
「・・・まあ、そうかもしれないけど。そんなに嬉しそうに言うことはないだろうが」

 何だかんだいっても失恋だ。それも初めての。本気になれる予感のあった恋だ。我ながら勝手ではあるが、ショックだったのは間違いないのだ。
 それを察したのか、倉地が慌てたように言葉を紡ぐ。

「ま、まあつまり、よ。人間、身の丈にあった相手が一番いいってこと。皓一も早く二条先輩のことは忘れて、新しい出会いを探したほうがいいよ。
そういうのって、結構身近に転がってたりするものだし」
「簡単に言うなよな・・・。第一、俺の人間関係のどこにそんなのが転がってるんだよ」

 倉地のように交友関係が広い人間ならともかく。倉地だって俺の対人関係の薄さは知ってるだろうに。
 やや不機嫌に言い放つと、なぜか倉地は急に黙り込み、視線を彷徨わせ始めた。
 夕日のせいで顔色ははっきりとは分からないが、もしかして照れているのだろうか?

「倉地?」
「た、例えば・・・今あんたの目の前に居る、可愛い女の子・・・とか、さ」

 俺は思わず目を丸くする。倉地も自分のあまりにあからさまな台詞に照れたのか、ばっ、と俯いてしまった。
 そこまで照れるくらいなら言うなよ、という内心の突っ込みと共に、俺は思いのほか落ち着いた心で倉地の思いやりを悟っていた。
 俺なんか相手に、冗談だとしても照れてしまうような言葉を言ってまで励まそうとしてくれているのだ。
 もしかしたら、終始上機嫌かつ多弁だったのも、俺を暗くさせないためだったのかもしれない。
 ならば、俺も元気に振舞って見せないと。せめて倉地の前では。
 そうだ、ついでにこれも。今日話を聞いてくれた、せめてもの礼だ。

「そうだな、それもいいかもな。じゃあさ、これ・・・一緒に行かないか?」

 そう言って、一枚のチケットを差し出す。遊園地のチケットだ。・・・明日、休日の土曜に先輩と行くはずだったもの。

「え・・・皓一・・・?」

 戸惑った様子で、倉地は俺とチケットを交互に見る。普段の倉地からは想像も出来ない小動物のような仕草がほほえましい。

「全アトラクションのフリーチケット。明日限定なんだけど、一緒に行く相手の都合が悪くなってさ。勿体ないけど一人で行ってもつまらないし。
だから一緒に行かないか? 俺じゃ役不足かもしれないけど、食事を奢るくらいはできるし」

 こんな爽やかなお誘いは俺のキャラじゃない。拒否反応が起こりそうなのを必死で耐え、倉地の言葉を待つ。
 しばらく呆然としていた彼女だが、すぐにいつも通りの元気を取り戻すと、チケットを手に取り大切そうに胸に掻き抱く。

「うんっ! 折角だから誘われたげる! 根暗の皓一からデートのお誘いなんて、一生に一度あるかないかだもんね!」

 そして、満面の笑顔。見慣れたはずの笑顔なのに、なぜか胸が高鳴る。彼女のこんな‘綺麗な’笑顔を見たのが初めてだからだろうか。
 その日は、分かれ道まで倉地と一緒に帰った。教室前に先輩の姿はなく、だが俺はそれを気に留めず、それどころか家に帰るまで
ずっと明日のことと倉地の笑顔に思いを馳せ、先輩のことを思い出しもしなかったのだった――。
151名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 02:27:51 ID:Os1E8qoG
先輩が壊れる日が楽しみで仕方ないなww
152夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/25(金) 02:30:21 ID:E271RuL3
今回はここまで。次回は倉地唯の視点の予定です。

前回言っていた先輩のイメージはメル欄です。
文字制限の所為で分かりにくいです。すいません。
もっとも、私は当該ゲームは買いませんが。(その日の買い物は決まってるし)
しかも、今回は先輩の出番が無いため明らかに旬を逸した情報に・・・。

相変わらず進行が遅くてごめんなさい。
ある程度先の展開は決まってるので、ペース上げて書いていきます。



・・・残業がもう少し短くなったら、ね。
153名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 02:35:44 ID:8txmrv0i
神々GJ!!

>>152
倉地いいなあ (*´д`*)ハァハァ
あと・・・・・・残業乙です
154名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 02:35:48 ID:3MoxwBKc
>>152
GJ!

だが、すまん一言言わせてくれ


役不足は誉め言葉だ
155名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 02:45:40 ID:B73rxdkn
役不足より役者不足のほうが適切だね。

役不足
例・我輩のような有能な人間には給食係は役不足だ。委員長にさせろ。

役者不足
例・お前が委員長じゃ役者不足だ。黙れ

こうですか?わかりません><
156名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 02:54:54 ID:4e0ut3k2
初出はスラムダンクだっけ?
まあ確信犯くらい定着してるからどうでもいいけど
157名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 03:28:05 ID:YvjmXqsA
役者不足と言う言葉自体は全くの造語だけどね
力不足のほうがいいと思うけどねぇ
役者不足という言葉の認知度にもよるけど。
158名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 08:01:44 ID:7pAsv5za
やっぱりこの話題になってたか…
僕は今ハァハァしてるのでまったく関係ありませんが
159アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/25(金) 08:02:28 ID:cndqkUpz
投下します
160姉妹日記 18話 Bルート  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/25(金) 08:04:31 ID:cndqkUpz
 お兄ちゃんの記憶に障害がでた
 記憶の整理が曖昧になり、急に子供のように振舞ったり、急に十六歳の少し大人びたお兄ちゃんになったり
 そして、日に日にその症状は重くなっていく
 どんどん記憶がなくなるのではない、記憶力が・・・・
 酷い時には5分前のことを忘れてしまい、自分が何をしていたのかすら忘れてしまうこともある
 許せない、あの女・・・・あ、もう血祭りにしてやったから関係ないか・・・・
 あの夜、私は南条秋乃のお腹を刺した、血を流し意識のないあの女を私はお兄ちゃんとあの女が暮らしていたマンションの近くに捨てた
 今は、どうなっているか解らない
 まぁ、死んでいるでしょう・・・・可愛そうに、一人寂しく死んでいくなんて
 想像するだけで身震いするほどの快楽を憶えた
 後悔はない、罪悪感は消え、歓喜が残った
「夏お姉ちゃん、どうして・・・・服を脱ぐの?」
 お兄ちゃんの声がした、それも聞きなれる言葉を発した
 私は恐る恐る病室を覗いてみた
「涼ちゃん、涼ちゃんはねお姉ちゃんだけを見ていれば良いの、お姉ちゃんだけを・・・・ね」
「え、でも・・・・」
「大丈夫よ、涼ちゃん・・・・」
 ゆっくりとお兄ちゃんの唇がお姉ちゃんの唇で塞がれた
・・・・・・・・・・なんだろう?
この気持ち、南条秋乃とお兄ちゃんが交わっていた時と同じ気持ちを私は抱いていた
 憎い、誰が?
 お兄ちゃんと交わるお姉ちゃんが・・・・
 殺したい、南条秋乃のように?
 そうだ、邪魔者は排除するの・・・・
161姉妹日記 18話 Bルート  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/25(金) 08:05:11 ID:cndqkUpz
「涼くん・・・・」
 あれから、私は涼くんと一度も逢えずにいた
 そして、数日前から秋乃の姿も見えない
 もうあんな子どうでもいいか・・・・
 私の初恋相手の涼くんを横から掻っ攫った時点でもうあんな子、姉妹でもなんでもない
 あの時は、正直負けたと思ったけど・・・・
 でもでも!諦めるなんてできない、私は涼くんのこと大好きだから・・・・
 私は父のコネを使って特別に涼くんの病状をしることが出来た
 なんでも記憶障害らしい、それも特異な例らしく病院でも大騒ぎになったらしい
 私は父に頼み込んで涼くんの病室の面会謝絶を私に限り解いてもらった
 ようやく、ようやく逢える・・・・
 私ははやる気持ちを抑えきれずに足早に病室に向かった
「死ねぇぇ!!!!」
 病院の白で清潔感漂う雰囲気とはまるで正反対な声がして私は残り数メートルとなった病室まで急いだ
162姉妹日記 18話 Bルート  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/25(金) 08:05:55 ID:cndqkUpz
 ナイフがベットに突き刺さった
「ちょ、なにするのよ!冬香!!!」
 許さない、お兄ちゃんに触れる女は誰であろうと
 今までなかった、お姉ちゃんがお兄ちゃんとSEXしていてもなんとも感じなかった
 けど、南条秋乃という最大の敵を始末したことにより私の中の標的が南条秋乃から神坂夏美に変わっていた
 おそらくこの感情は永遠に止まらない、一人が消えたらまたもう一人・・・・
 何時まで経っても変わらない、そう・・・・お兄ちゃんが完全に私の物になるまでは
「お兄ちゃんにこれ以上触れるなぁぁぁ!!!!!」
 犯罪者特有の追い込まれる感覚はなかった
この行為が世間一般でいう犯罪行為だとしても、私にとっては正当な行為だからだ
「ふ、冬香・・・・うぅ」
 幼児化したお兄ちゃんが部屋の片隅で震えている
 待っててね、お兄ちゃん・・・・すぐに助けてあげるから
「自分がなにをしてるか、わかってるの」
「わかってるよ、でもね・・・・止められないんだもん、私・・・・お兄ちゃんが欲しいんだもん!」
 今度は確実に刺し殺す、ナイフをちらつかせ私は視線でそう語りかけた
「あんた・・・・ほんと、使えない子ね」
「・・・・」
「少しは使えると思ったから、狂いそうな気持ちを堪えていたのだけど・・・・無理!もう限界!あんたうざいのよ!」
 お姉ちゃんもようやく本性を露にしたようだ
「なつ・・・・お姉ちゃん?」
 見た?これがお姉ちゃんの本性なのよ、醜く己のことしか考えていないのよ
「涼ちゃんが少し私とイチャイチャしただけで、彼女でもないのに嫉妬して!
暴力振るって!バカね!そんなことしたって涼ちゃんが喜ぶ訳ないでしょ!!
涼ちゃんはきっと思っていたわ!暴力を振るってくる冬香よりも!
私の胸にすがりついて甘えたいってね!!!
涼ちゃんの気持ちもわからないくせして!涼ちゃんの周りうろちょろしちゃってさ!
うざいのよ!!!あんたは!消えなさいよ!お願いだから消えてよ!
これ以上私と涼ちゃんとの間を邪魔すんじゃないわよ!ボケ――――!!!!」
威圧感に押されたじろぐ私の隙を突いてお姉ちゃんが飛び掛ってきた
「取ったわよ!冬香!!!」
 私の上に馬乗りになるとお姉ちゃんは私の両手を押さえつけた
「うぐ・・・・うぐ!」
 力が抜け持っていた果物ナイフが私の手から離れた
163姉妹日記 18話 Bルート  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/25(金) 08:06:58 ID:cndqkUpz
「く!」
 必死で腕に力を込めナイフを取ろうとしたけど、馬乗りになっているお姉ちゃんの力には勝てず押さえ込まれてしまった
「ふふ、最後までダメダメな子ね・・・・ふ・ゆ・か・ちゃん♪」
 ナイフを奪ったお姉ちゃんが思い切り腕を振り上げ銀色に輝くナイフの先を私のノド元に向けた
「死ねぇぇ!!!!」
 瞬間、今までの記憶が走馬灯のように浮かんだ
 フラッシュのように記憶が巡っていく
「あんたらなにやってるのよ!!!!」
 その声に私は一気に現実に引き戻された
 南条秋乃の声だ、ナイフが私のノド元直前で止まった、見上げるとすぐ近くに南条秋乃が立っていた
「涼くんが怯えているわ、可哀想に」
 南条秋乃は恋敵が何も出来ないでいる間にという感じで涼さんに近づき抱きしめた
 南条秋乃が優しく頭を撫でるとお兄ちゃんは安心したかのように鼻を鳴らしその胸に顔をうずめた
「さぁ、私と一緒に行きましょうね・・・・涼くん」
 不敵に笑むと南条秋乃はお兄ちゃんと抱えるようにしてその場を去っていった
164アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/25(金) 08:07:49 ID:cndqkUpz
ここまで読んでくださった方、お疲れ様です

秋乃さん、ごめん!
姉妹日記の私の一番の被害者は彼女です
『もう一つ』ではヤンデレ、本編では・・・・
165名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 09:27:59 ID:j9zbzdyq
妹の嫉妬とヤンデレは可愛いよすぎるよねw


さて、問題なのはこのスレに

あのヘタレ孝之を上回る程のヘタレ主人公が登場していないことだ
やはり、書く側にしても、あんなヘタレを自分の作品に登場させたくねえよって感じなのかなw
166名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 14:29:11 ID:Yc0CFxEH
>>163って冬香視点ですよね?
だから
>南条秋乃は恋敵が何も出来ないでいる間にという感じで涼さんに近づき抱きしめた
これって誤文? だって涼さんって……

それはさておき個人的には冬香応援してる
妹ガンガレ

確かに姉妹日記は色々あってこんがらがりそうだが
そんな時こそ纏めサイトを読み返せばすっきり解消
改めて阿修羅様には感謝です
167名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 18:18:31 ID:cndqkUpz
>>166
すいません誤文ですね、「涼さん」ではなく「お兄ちゃん」ですね
168名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 20:16:45 ID:wUIhyTaY
>>94
。・゚・(ノД`)・゚・。 お姉さん・・・
169名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 20:44:57 ID:WJPchS1Z
>>168
だが君の大好きなお姉さんはsうわなにをすくぁwせdrftgyふじこlp;@
170名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 20:57:38 ID:9ZOmtirF
本編ではもう出番がないセっちゃんよりずっとマシ。
さらに外伝では(一応)主役だし。
171「無題」 ◆4PRDdoNSjw :2006/08/25(金) 22:02:16 ID:/s2ZHeg3
PRELUDE


――妹は知らない

兄が家族に欲情する変態だということを。
ベッドに何かが入り込んでくる様子に気づき眼を覚ます。
いつものことだ。
きっと千尋だろう。
二段ベットの上で寝ている千尋は夜中にトイレに行って戻ってくると
上へ登らず下の僕のスペースで眠ってしまう。
小学生の頃から変わらない千尋の癖だ。
すぅすぅ寝息をたて、僕の右腕を抱きこんで眠るのもいつものこと。
兄を信頼し、危機感なんか微塵も感じていないのだろう。
   僕がその信頼を裏切っているとも知らずに
僕の右側で眠る彼女の寝間着を乱し、形のいい胸に慎重に手を這わせていく。
それと同時に抱き込まれた右手で下着の上から千尋の秘裂をゆっくりと擦り上げる。
「・・・っ・・・うん・・・はぁ・・・」
寝息が徐々に色を帯び艶かしい響きが混じってくる。
乳首は硬くしこり、秘所は熱く潤ってきた。
だけど今日もここまで。
これ以上先へは進んではいけない。兄妹なのだから。
172「無題」 ◆4PRDdoNSjw :2006/08/25(金) 22:02:48 ID:/s2ZHeg3
――兄は知らない。

妹が兄に犯されることを夢見て毎夜ベッドに潜り込むことを。
今日も寝ぼけたフリをして兄の布団に潜り込む。
いつものことだ。
兄も起きただろう。
いつものように兄の右腕を抱き込み、二の腕には胸を、手のひらにはあそこを押し当てる。
そうしてしばらくすれば兄はまた私を求めてくれるはず。
ふふっ ほぉら動き出した。
   私が兄を求めて起きているとも知らずに
今日はおっぱいなんですね。私としては最初はキスからして欲しかったけど。
「・・・っ」
急に手が一番敏感な場所を擦り上げ、思わず声を出しそうになった。
「・・・うん・・・はぁ・・・」
兄に触れられるだけで自分でする何倍もの快感が襲ってくる。
すぐにでもいってしまいそうになる。
だけど今日もここまで。
なぜこれより先へ進んでくれないのだろう。義兄妹なのに。
173「無題」 ◆4PRDdoNSjw :2006/08/25(金) 22:03:20 ID:/s2ZHeg3
初投稿。
かーっとなって書いた。反省している。
モチベーション維持できれば本編のほうも書こうと思います。
本編では泥棒猫であり正妻でもある幼馴染が登場の予定です。
飽きっぽいのでこのまま放置の可能性高し。
174「無題」 ◆4PRDdoNSjw :2006/08/25(金) 22:07:15 ID:/s2ZHeg3
あ 主人公の名前決めてなかったので一般公募します。
応募された名前を主人公につけようと思います。
175前スレ559:2006/08/25(金) 22:14:10 ID:awwaIOnT
思いつきで書いたSSを投下させてもらった者です。

些か遅筆で申し訳ないが、続きが出来たので投下させていただく。
注意などがあれば遠慮なく頂きたい。
176前スレ559:2006/08/25(金) 22:14:42 ID:awwaIOnT
Act.1
─side 竜。

竜が遅刻したことに、担任教師の女は強く言及しなかった。
それは恐らく竜が一人暮らしであること、体があまり強くないことを知っているからだろう。
気をつけろ、とだけ注意されて職員室から開放された竜を待っていたのは、クラスメイトの少女・霧生ソラだった。

「お前が遅刻って、珍しいな?」
「うん。少し気になるニュースがあってね」
「・・・ニュースってな?鳥肌が立つぞ・・」
「一夫多妻制度が導入されるってさ」

教室まで歩きながら、暫しの談話。
一夫多妻ってなんだよ〜、などと漏らすソラに苦笑などをしてみる。
この少女といるとき、竜はひどく穏やかで満たされた気になる。

「一夫多妻ってのは、一人の夫にたくさんの妻がいてもいいってことだよ」
「へぇ〜。これもあれか、乳児化の影響かねぇ?」
「少子化だよ、ソラ。乳児化なんかしたら、日本はそれこそお終いだ」
「う、うるさいな。ミスだよ。ミステイクってやつさ!」
「もう、ソラったら・・・」

顔を真っ赤にして、喚く少女。
呆れ顔で、それでも楽しそうな少年。
廊下を並んで歩く二人を見つめる一対の瞳が、背後にあった。


177前スレ559:2006/08/25(金) 22:15:16 ID:awwaIOnT
Act.1

─side 桜子。

「おはよう、竜君」

音楽室への移動の最中、少女と並び歩く部活仲間の少年を見つけて、私は精一杯『いい先輩』『美人の先輩』『気さくな先輩』を演じて挨拶をする。
声に気付いてくれた竜君がこっちを向いて、

「あ、おはよう御座います先輩!」

あぁ、これだけで丼にご飯100杯はイケそうな笑顔。
当然、脳内の竜君フォトグラフに保存するのを忘れない。
これから一ヶ月、いや一年は今の笑顔だけで自慰に浸れる。
しかしそんな事を考えるのは後でいい。
今は『いい先輩』であることが最優先だ。
嫌われてしまっては、元も子もないのだから。

「今日は重役出勤なのね?また体を悪くしたの?」
(そうだったら、これからは毎日私が竜君をお世話してあげるからね)
「いえ、少し気になることをテレビでやってまして。」

苦笑で返してくれる竜君。
─まったく悪い子。自分の魅力を解せず、そんなにころころと表情を変えて、私を魅了するんだから。お陰で濡れちゃったわ?─

内心、このまま襲いたくなる。
しかし私の一部がそれをとどめる。
チャンスはまだある。きっと、あるのだ。
…そのとき、竜君の隣にいた雌豚が始めて声をあげた。

「おい、もうすぐ授業始まるぞ?」

それを聞いて、私と竜君は同時に腕時計を確かめる。
こんなところで、私たちは通じ合っている。

「あ、そうだねソラ。じゃあ先輩、また明後日の放課後にでも」
「えぇ。では、授業をがんばってね?」
「はい」

あの雌豚。あいつがいなければ竜君とあと十秒も話が出来ていたのに。
それに、私でも、この私でも先輩なのに、呼び捨てにされている。
─…許しがたい。
この怒り、あの雌豚を四肢を裂いて身体中の肉を千切り、心の臓を抉り肺腑を穿ち、達磨にした後浮浪者の穢れた精液漬けにしても許しえない。

ギリ、と歯軋りの音が聞こえた。

178前スレ559:2006/08/25(金) 22:17:17 ID:awwaIOnT
以上であります。

タイトルなど考えもしないので、当分はこの名前で行かせて頂く。
続きは暫くするが、お待ちいただければ幸いだ。


タイトルなど考えて戴ければ、無上の幸福である。
179名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 22:20:37 ID:Xy0FQVGD
投下しますよ
180『とらとらシスター』Side妹虎:2006/08/25(金) 22:22:03 ID:Xy0FQVGD
 兄さんの部屋を出て、私は軽く身をよじらせた。こうでもしないとついつい笑い声が口
から漏れてきそうになる。一言でも聞かれたくないから、足音をなるべく立てないように
して部屋から遠ざかる。
 何となく気になって、洗面所に寄った。
 やっぱり。
 鏡に写った私の顔は、酷く歪んでいた。堪えきれない歓喜に口の端が釣り上がり、それ
なのに瞳は鈍く光を反射している。細く鋭くとがった目はまるで、虎のように見えた。私
は普段から無愛想な表情やキツい表情が多いと自覚しているけれども、それでもここまで
酷いものは浮かべていないと思う。アンバランスなその色に、自分でも少し恐怖した。
 本当に、良かった。
 小さく安堵の吐息を吐く。
 もしこんな表情を兄さんに見られていたのなら、きっと幻滅をされていただろう。
 気合いを入れて、微笑を作ってみる。
 しかし鏡に写った私は我慢が出来ずに、すぐに先程の笑みに戻した。しかも、それには
高い笑い声も付いてくる。最初は喉の奥から漏れる短い音だったそれは、次第に連続して
大きなものになる。
 駄目だ、我慢が出来ない。
 頭の中で渦を巻くのは、兄さんとの幸せな時間と、あの邪魔だった薄汚い『泥棒猫』の
死の瞬間だ。いや、死んでしまった後でこのような表現をするのはおかしいかもしれない
けれど、多少の敬意は払って『泥棒猫』から『泥棒虎』くらいは言ってあげても良いかも
しれない。
181『とらとらシスター』Side妹虎:2006/08/25(金) 22:22:51 ID:Xy0FQVGD
 正直、ここまで私たちにつっかかってきたのは、二年前のあの娘以来。数えてみても、
二人目だ。多分それなりに覚悟はしていたんだろう、最初に虎の目をして睨んできたとき
は少し驚いた。けれども、やはり覚悟も愛情も私が兄さんに持つそれには遥かに及ばなか
ったのだろう。ぽっと出の女なんてそんなものだ。
 だから、死んだ。
 思い出すだけでも笑えてくる。青海さんが死ぬ瞬間というものは、それだけ滑稽で愉快
だった。やったことといえばとても簡単で楽しそうに兄さんを待っていた青海さんの背中
を軽く押してあげただけ、それくらいなら非力な私でも簡単に出来る。余程驚いていたの
だろう、突然空中に放り出された青海さんは呆けたような表情をして私を見つめていた。
そのときの愉悦は多分永遠に忘れない。それから後も傑作だった。自分が置かれた状況を
理解した後の顔、悔しそうな、悲しそうな表情も私に喜びを与えてくれた。
 でも。
 一番快かったのは、やはり体が粉々に砕けた瞬間だった。兄さんを横合いから奪った、
その汚らわしい体がこの世界から消え去ったかと思うと心が途端に晴れやかになっていく
のが実感できた。撥ねられ、挽かれた瞬間の音はまるで天井の竪琴が奏でる極上の音楽の
ようにさえ思えた。
 青海さんは、もう居ない。
 言葉に出さず、心の中で何度も噛み締めるように反復すると、その度に嬉しくなる。
 全く、あの人は馬鹿だ。
182『とらとらシスター』Side妹虎:2006/08/25(金) 22:27:44 ID:Xy0FQVGD
 兄さんが魅力的なのは分かるけれど、何度も頑張らなければ、それこそ虎にならなけれ
ば死なずに済んだのに。兄さんに色目を使わなければ悪い人ではなかったし、その部分を
除けば嫌いではなかったのに、惜しいことをしたものだ。
 まぁ、それもこれも、自業自得なんですけどね。
 そう、私は悪くない。
 どれもこれも、殺してしまったのも、兄さんの為。
 このまま余韻に浸るのも悪くはなかったけれど、兄さんを待たせたくはないし、何より
今は兄さんの隣に居たいので台所へと向かう。一旦部屋を出たのは、私が一息入れたいと
いうのもあったけれど、純粋に兄さんが心配だったというのものが一番だ。青海さんの死
で泣きすぎて綺麗だった声は枯れてしまっていたし、寝汗も酷かった。心の方は私が世話
を出来るから大丈夫だけれども、そんな状態で起きているのはとても辛そうだった。未来
の妻として、夫が辛い思いをしているときには助けなければ、それが良い妻というものだ。
 未来の妻。
 常日頃、日に何十度も思っている言葉が今は少し違って捕えられた。それはより鮮明な
意味を持ちながら心の中に染み込んでくる。今日の朝までは目標としていたものなのに、
今となっては実感を伴って私と兄さんの間に降りてきていた。
 兄さんが望み、
 私も望んで、
 隣に居ようとしている。
 唯一の邪魔だった人はもうこの世には居ない上に、二人の気持ちも強い。そこには何の
問題もなく歩んでいける道がある。
 最高だ。
183『とらとらシスター』Side妹虎:2006/08/25(金) 22:29:40 ID:Xy0FQVGD
 いや、待て。
 私はある部屋の前を通り、もう一つの可能性に思い当たった。邪魔者がもう一人居た、
それもかなり身近に。 姉さん。
 敵を一人殺したせいなのか、それとも兄さんの隣に居ることが嬉しかったからなのか、
どちらにせよ高揚しすぎてうっかり失念していた。一番の邪魔は青海さんじゃない、長年
私の邪魔をしてきた最も厄介な敵は姉さんだ。最近こそ私と兄さんが仲良くしているのを
邪魔するようなことは少なくなってきたけれども、それでも完全になくなった訳ではない。
方向性が変わったのか、少なくなったそれに代わってより一層兄さんに甘えるようなこと
が多くなってきている。青海さんが兄さんと仲良くしているのに、一生懸命離そうとして
いる私に反発したりとあざとい点数稼ぎなどもして、本当に油断がならない。
 そして何より、あの体だ。あまり頭の良くない私が言えるような言葉ではないけれども、
どう考えても脳味噌の方に栄養が行っていないような下品な体型で兄さんを誘惑したあの
体。実際兄さんはそれに初めてを捧げてしまったから、これからどうなるのか分からない。
兄さんは馬鹿じゃないからそうそう同じ手にかかる訳はないと思うけれども、あの雌豚の
ことだ、どんな方法を使ってくるか分からない。もしかしたら、卑劣なことに弱っている
兄さんの心に漬け込んでくるかもしれない。
184『とらとらシスター』Side妹虎:2006/08/25(金) 22:32:25 ID:Xy0FQVGD
 兄さんは繊細な人だから、弱っているところに救いの手が伸びてきたら掴んでしまうだ
ろう。優しく伸ばされたそれがどれだけ甘美なものなのかは、昔から兄さんに救われ続け
てきた私自身が一番良く分かっている。それに頭の良し悪しや心の強さは関係ない、ただ
甘さを求める心だけがものを言う。だからこそ、心配になってくる。
 守らなければ。
 姉さんの毒手から兄さんを守ることが出来るのは、私だけなのだから。
 そう考えている内に、台所へと着いていた。色々考えながら歩いていたつもりだったが、
あまり時間は経っていなかったらしい。もしかしたらゆっくり歩きすぎていたかもしれな
いと思って時計を見てみても、兄さんの部屋を出てからあまり時間は変わっていない。私
は考え事をしてしまうと時間の経過を失念してしまうという悪癖があるので少し心配した
けれども、今回はそれ程でもなかったようで少し安堵した。兄さんのことを想って、それ
で迷惑をかけてしまったら本末転倒だ。
 気を取り直し、冷蔵庫に常備してあるミネラルウォーターを出しながら、ふと思い付く。
 只の水よりも他に何かを入れた方が良いのではないだろうか。
 答えはすぐに浮かんできて、いつもの私特製調味料を多めに混ぜた。少し時間がかかる
のを申し訳なく思ったけれども、兄さんが元気になることとを秤に架けたら充分にお釣り
が来るから問題ない。
 愛情を込めながら軽くペットボトルを振り、しっかりと混ざったのを確認すると部屋で
私を心待ちにしてくれているだろう兄さんのことを思い描いた。
「待ってて下さいね、兄さん」
 洗面所の鏡で確認をしたときのように失敗しないよう、落ち着いて笑みを作る。
 そして姉さんを排除する方法を考えながら、しかし遅くならないように少し急いで、私
は兄さんの部屋に向かった。
185ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/08/25(金) 22:33:25 ID:Xy0FQVGD
今回はこれで終わりです

俺の書くキャラは、何故こうも極端にイチャ付いたり裏方大好きだったりするんでしょう?


>>165
俺の場合は

Happy Endを目指す

女の子達は皆、腹に逸物抱えた頑張り屋さん(学名は変人)風にキャラ特化

自然と主人公のメンタルも強めになる

という感じです
えぇ、ノーマルな娘なんて書けませんとも
186名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 22:39:27 ID:bVBKB41t
>>178
だめもと提案二つ
・オペラグラス
・モザイク
187前スレ559:2006/08/25(金) 22:41:08 ID:awwaIOnT
>>165
ヘタレ孝之とは誰か存ぜぬが、そこまで酷いのか・・・?

私の場合、

主人公のキャラクター付けが最も最初に成り、以降ヒロインの性格付けになる。
更にある程度主人公のキャラをしっかりさせねばヒロインに負けるキャラクターになってしまう。

私の中で、主人公は物語で最も濃いキャラクターという先入観があるゆえだろうか?
188名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 22:43:12 ID:Xy0FQVGD
>>178

俺も駄目元で一つ

・重なる夢の外で
・幾つかの澱
189名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 22:49:06 ID:SAqD/STW
GJラッシュに興奮が抑えきれない
神々ありがとう

>>187
>ヘタレ孝之
エロゲ『君が望む永遠』の主人公。
どういう人物かは調べればすぐ出てきます。
まぁ、二股かけて(場合によっては3股)一度「こうする」と言いながらやらずにフラフラしてる人。
癒しを求める場合は、緑髪のナースさんから攻略するとよろしいかと。
190名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 22:49:24 ID:bVBKB41t
191名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 22:54:43 ID:nDXU8oPq
>>185
「愛は身勝手」

そんな言葉が浮かんできた
真実を知った虎徹君はどうなるんだろうか……続きが楽しみです!
192名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 23:01:22 ID:dnRpAN+M
怒涛の投下ラッシュキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
>>173
スタートからいきなりエロい雰囲気の新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
俺はセンスが無いので名前が付けられないOTL
>>178
先輩の黒さに(*´д`*)ハァハァ先輩イイよ先輩!
>>185
こういうドロドロとした内心描写がたまらなく素晴らしいな!
193名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 00:02:24 ID:zbA5NhyD
それでは投下します。こういう明るい展開は大好きです。
194名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 00:03:33 ID:2Q/xjDUT
>>189
まあ、そのヘタレ孝之を上回るのがま(ryなんだけど
結局、ヘタレ争いはどうなっているんですか
195スクエア☆アタック ◆n6LQPM.CMA :2006/08/26(土) 00:08:26 ID:hh1Gj3PJ
「友紀の秘密」


優那、友紀、千晴の三人は学校へ行く準備のために一旦それぞ
れの家に戻っていった。三人が呼びに来るまでの数分間は数少ない
大智が一人になれる時間だった。
テレビの情報番組を見ながらコーヒーを飲む……
この一時は大智にとって落ち着ける時間だった。

ふう……今日も今日とて慌ただしい朝だったな。それにしても
三人ともあの時と比べれば仲良くしてるようだな。
……あの時……あの時か……

「みんなみんな、大智に近づく女は殺してやる――!!」

優那が狂気に取り付かれた時のことを思い出して寒気が走った。

もう大丈夫。あの時のようなことは起きないはずだ。三人が仲
良くしてる限りは……

「大智お兄ちゃん!学校行こ!」
「大智!学校行くわよ!早く早く!!」

玄関から友紀と千晴が呼んでいたが、時計を見るといつもの出
発より随分早かった。

あれ?今日はいつもより早いな。どうしたんだろ。

学校へ行く準備をし、玄関に出てみると、制服姿の二人が笑顔
で立っていた。

「さ、大智お兄ちゃん。行きましょ」
「大智、お弁当持った?忘れ物ない?さっさと行くわよ!」
二人に両手をがっちりとホールドされ、歩きはじめたが何か忘
れてるような……。あ!

「ち、ちょっと二人とも!優那お姉ちゃん忘れてるよ!置いてくの?」

二人は大智を引きずりながら

「ああ、優那お姉ちゃんならほっといていいから」
「そうそう。ちょっとお仕置きしないと。そんなことより早く行くわよ!」

二人にズルズルと引きずられながら、大智は一抹の不安を感じた。
196スクエア☆アタック ◆n6LQPM.CMA :2006/08/26(土) 00:14:22 ID:hh1Gj3PJ
大智が通う学校までは電車で通学しているが、場所がかなり郊外に
あるため、殆どの学生が電車通学を余儀なくされていた。もちろん
大智らもその例に漏れず、電車に乗るためにホームで電車が来るのを
待っていた。
いつもより早くホームに着いたが、電車待ちの学生で混雑している中、
大智は何か胸騒ぎがした。

心配だな……優那お姉ちゃん。暴走してなきゃいいけど……

しかしそれは無理な話だった。

ホームに溢れている学生を掻き分けて、誰かがこちらに走ってきた。

「うわ〜〜〜ん、大智!大智〜!!」

あ!……やっぱり。

目からは大粒の涙を流しながら、優那は大智の元に真っ直ぐ駆け寄り、
抱きしめた。

「大智!大智!!酷いよ置いていくなんて!!お姉ちゃん怒って
るんだからね!!怒って……うわ〜ん!!」
「優那お姉ちゃんごめん。置いてくつもりはなかったんだけど……」

すると今まで泣いていた優那がピタリと泣き止み

「……まさかあんたたちが!!」

優那に睨まれた友紀と千晴だったが、全く悪びれた様子もなく

「大智お兄ちゃんの手、と〜っても暖かかったわ。」
「全く、大智ったら手握らないと通学1つ出来ないんだから。」

二人とも!これ以上挑発しないで!!
197スクエア☆アタック ◆n6LQPM.CMA :2006/08/26(土) 00:17:34 ID:hh1Gj3PJ
「友紀!千晴!そんなにひどい事するなら、優那がやっつけてやる!!」

ボクシングのファイティングポーズっぽいポーズを取る優那。だが友紀、
千晴にしてみれば、そもそもの始まりは優那の我儘だっただけに
堪ったものではない。

「はあ?何言ってんのよ!ケンカはご法度よ!!」


一、本気の喧嘩は理由の如何を問わず、両成敗とする。
  これ一切の例外を認めない禁忌とする。


「そうよそうよ!!大体優那お姉ちゃんがケンカ出来るわけないでしょ!!
デカ尻!ウシ乳!アソコがゆるゆるのあ〜ぱ〜お姉ちゃんのくせに!!
あっかんべー」

友紀!!いくらなんでも言いすぎだよ!!優那お姉ちゃん怒っちゃうよ!!

友紀のあまりの暴言にさすがの優那も眉を吊り上げ、頬を膨らませた。

「お姉ちゃんを……ばかにするな――――!!!!」

遂に優那は怒り、取りあえず目の前にいた千晴に向かって腕をブンブン
振り回してポカポカ叩きだした。しかし全然痛くない上に……かわいい。

「ち、ちょっとお姉ちゃん!落ち着いて!……あだ!!」
「優那お姉ちゃん!元はといえば優那お姉ちゃんの我儘が原因なんだから!!」

嗜めようとした友紀だったが、今の優那に理屈は通じなかった

「優那ゆるゆるじゃないもん!キツキツだもん!大体アソコに毛の一本も生えて
ないパイパン娘に言われたくないもん!!」
198スクエア☆アタック ◆n6LQPM.CMA :2006/08/26(土) 00:21:11 ID:hh1Gj3PJ
「な!!!!!!!!!!!!!」

その瞬間沈黙がホームを支配し、誰も彼も言葉を発することが出来なかった。
ただ、暫くしたら徐々に周りからヒソヒソ話が聞こえてきた。

(パイパンだって……)
(パイパンだったのか……)
(学校一の才女と謳われていたのに……パイパンとは……)

今まで隠してきた秘密がよりによって公衆の面前で優那の口から暴露され、
今度は友紀が我慢の限界を超えた。

「優那お姉ちゃん!!!殺す!今ここで殺してやる!!!」

友紀は顔や耳を真っ赤にして腕をブンブン振り回して優那をポカポカ叩いた。
やっぱり痛くない上に……かわいい。

「ふーーんだ!チビでつるつるでひんぬーのくせに生意気なのよ!!」
「あー!言ったわね!占いバカの赤点女が!!」

二人がお互いをポカポカ叩いているのを大智と千晴は溜息まじりに見ていたが、
反対側のホームにいたこの二人も面白可笑しく眺めていた。

「先輩、何ですか?あのコントは」
「え?ああ、知らないのか?我が校名物の三人娘を」

後輩は頷いた。
すると先輩は一枚の紙を後輩に差し出した。

「あの三人にはそれぞれにファンクラブがあるぐらい有名だぞ。しかも
トラブルの種も尽きないときたもんだ。この紙に三人娘の基本データが
載ってるからこれを見て、トラブルに巻き込まれないようにしろよ」

後輩はイマイチよく分からない顔をしながら、その紙を見た
199スクエア☆アタック ◆n6LQPM.CMA :2006/08/26(土) 00:24:34 ID:hh1Gj3PJ
     「尼知友紀」
   身長「149、5」

所属クラス「1−2」
   属性「従妹」「幼馴染」
所属クラブ「科学部」
装備スキル「口撃」(論理的かつ辛辣に相手を言い負かす)
     「天才」(大学教授も真っ青)
     「眼鏡」(萌えポイント)
     「行動力」(即断即決)

パワーバランス「魏」


     「三条千晴」
   身長「155,3」

所属クラス「2−3」
   属性「クラスメイト」「幼馴染」
所属クラブ「弓道部」
装備スキル「弓攻撃」(ハート以外は百発百中)
     「独占欲」(大智のみ)
     「家事全般」(特に料理)

パワーバランス「呉」


     「氏本優那」
   身長「163,3」

所属クラス「3−1」
   属性「お姉ちゃん」「幼馴染」
所属クラブ「帰宅部」
装備スキル「お姉ちゃんこんぴゅ〜た」(大智のみ)
     「お姉ちゃんれ〜だ〜」(半径2キロにいる大智をキャッチ)
     「お姉ちゃんあたっく」(フライングボディアタック)
     「お姉ちゃんふぁいなるうぇぽん」(大智に夜這いし、妊娠して結婚を迫る)

パワーバランス「蜀」
200スクエア☆アタック ◆n6LQPM.CMA :2006/08/26(土) 00:26:49 ID:hh1Gj3PJ
後輩はこの三人娘のデータが書いてある紙を見て、幾つか疑問があった。

「先輩、このパワーバランスの魏呉蜀って何ですか?」
「ん?それは三人娘のパワーバランスを三国志を例にして表しているんだ。
例えばこの三人の中では友紀ちゃんが「魏」で、他の二人よりも強いって
ことさ。まあ高い知性と行動力は他の二人を圧倒しているからな。」
「ふーん、じゃあこの「呉」は?」
「千晴ちゃんの「呉」は実力は有るのだが、チャンスに弱いってことと、
他の二人に比べて存在感がちょっと薄いってことで「呉」と。」
「じゃあ最後の「蜀」は?」

それを聞いた瞬間、先輩は困った顔をして

「う〜ん、優那ちゃんの「蜀」ね……。まあ他の二人より明らかに
頭が弱いってことで……。本当は「匈奴」や「南蛮」ってのもあったん
だけど、さすがにそれじゃアレなんで余った「蜀」になったわけ。
ちなみに優那ちゃんのあだ名は劉禅だとさ」

後輩はよく三人の人となりは知らないが、この紙を見て何となくは分かった。

「さ、電車も来たし行くぞ」
201名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 00:31:14 ID:hh1Gj3PJ
とりあえず次は新しいプロットを投下予定
「スクエア☆アタック」は4人目がそろそろ登場かも
202名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 00:49:27 ID:lW4aNNh8
優那パワーバランスカワイ(・ω・`)ソス
> 「お姉ちゃんふぁいなるうぇぽん」(大智に夜這いし、妊娠して結婚を迫る)
ちょw
203『memory』の人 ◆KnhAfDLnMc :2006/08/26(土) 01:05:22 ID:GWcPHz9B
みなさんお久しぶりです。
果たして覚えてる人がいるでしょうか?
2話まで書いてずっと止まっていた話の作者です。
なんかもうずっとほったらかしですみません。
もう内容覚えてる人なんてほとんどいないだろうから
あらすじっぽいキャラ紹介載せときます。

高野諒一 主人公。綾香を庇って車にはねられて記憶をなくした。
酒井綾香 諒一の記憶をなくす前の幼馴染みの彼女。諒一の事故の原因になった。
吉村真理 もちろん「しんり」とは読まない。自殺しようとしていたところを諒一に止められた。
204『memory』第3話 ◆KnhAfDLnMc :2006/08/26(土) 01:07:04 ID:GWcPHz9B
「ねえ、そろそろ手離してよ」
「いいじゃない、このままで。ねっ?」
「でも……はずかしいよ」
僕はさっき真理さんに引っ張ってこられたまま手をつないでいる。
ちなみに今僕たちはエレベーターの中で二人っきりだ。
これで緊張するなという方が無理な相談だ。
「別に誰も見てないわよ」
「いや、そういう問題じゃなくって……」
その瞬間エレベーターの扉が開いた。いつのまにかエレベーターは止まっていた。
そしてその扉の向こうに一人の少女が立っていた。
「諒一?」
「ん、誰?知ってる人?」
そこに立っていたのは酒井さんだった。
まだ手はつながれたままだった。

「ねえ諒一、その女……誰?なんで手なんか握ってるの?」
顔は笑っているが目が笑っていない。
必死に作り笑いしようとしているがその目は強烈な敵意を持って真理さんに向けられている。
「何?諒一くんの知り合い?でも記憶喪失ならそんなのいるわけ無いよね?」
そう言って真理さんは腕も絡めてさらに密着してきた。
「えっと……この人は酒井綾香さん。僕の、その…彼女だって。僕のことも酒井さんが教えてくれたんだ」
「へえ、彼女さんだったんだ」
そう言って酒井さんの方を見たが絡めた腕は放さなかった。
「こ、この人は吉村真理さん。さっき屋上で……その、たまたま会ったんだ」
飛び降りようとしていたことは伏せておいた。多分知られたくないだろうから。

酒井さんは答えなかった。
というより耳に入っていない様子だった。
ずっと真理さんを睨んでいる。
「………酒井さん?」
「…………えっ?ああ、とにかく早く戻ろう?さっきお医者さん呼んだから」
急に反応した酒井さんは真理さんから僕の手を奪い取って階段の方に引っ張っていった。
僕は酒井さんに引かれながら振り返って真理さんの方を見た。
「私406号室だからー。遊びに来てねー」
小さくなっていく真理さんはずっと手を振っていた。
205『memory』第3話 ◆KnhAfDLnMc :2006/08/26(土) 01:08:19 ID:GWcPHz9B
「あ、先生、連れてきました!」
そのまま僕は自分の病室まで引っ張られてきた。
302号室か。今度は覚えておこう。
病室にはすでに医者の先生が来ていて後ろに一人の看護婦さんが控えていた。
「ああ、目が覚めたようだね。
初めまして…というのも変な気分だが、君の手術をさせてもらった長谷川だ。よろしく」
白衣を着て聴診器をぶら下げた男が手を差し出した。
歳は四十代くらいだろうか?口ひげを生やして髪の一部が赤みがかった色で染められている。
「あ、いえ、こちらこそ。高野です。よろしく」
軽く会釈して握手した。

「ああ、それから、私のことは敬意を込めて平成のブラックジャック先生と呼んでくれて構わないよ」
「…………は?」
何なんだこの人?普通自分からそんなこというか?
対応に困っていたら側にいた看護婦さんが耳元でささやいた。
「実際腕はいいんですけどね。まあ、性格は見ての通りです。
あと、あくまでブラックジャックは自称ですから。」
「はあ……」
要するに自信家な訳か。
「体調はどうだい?おかしなところがあったら遠慮なく言ってくれ」
特にありませんと言いかけてやめた。そうだ、記憶喪失だったんだ、僕。
「事故に遭うまでのまでの記憶がないんですけど……」
「何!?すぐに脳波の検査だ」
言うやいなや自称ブラックジャック先生は僕の腕を引っ張って病室を出た。
…………引っ張られてばっかりだな、さっきから。
206 ◆KnhAfDLnMc :2006/08/26(土) 01:11:39 ID:GWcPHz9B
今回は以上です。
これからはもう少しまともに更新できるように……したいです。
待ってくれてた人本当にすみませんでした!!
207血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/26(土) 04:26:50 ID:L6j7ZsQr
投下します
208血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/26(土) 04:27:53 ID:L6j7ZsQr

 轟音を聞き、ミシアははっと顔を上げた。
 食人姫に媚薬を飲まされ、あられもない姿を晒してしまってからしばしの時が過ぎていた。
 身体の熱と疲労を排するため、監獄の外に出て涼んでいたのだが――
 
「……何かしら? 尋常な音じゃなかったけど……」
 
 とりあえず立ち上がる。休憩はもう充分だろう。
 公爵から命じられていたのは、食人姫の煽動と、ユウキ・メイラーの監視である。
 予想外の事態に一時離脱してしまっていたが、そろそろ戻った方がいいのかもしれない。
 ユウキは食人姫の部屋にいるはずだ。ティーが付いているとはいえ、長時間任せっきりにするのは拙いだろう。
 食人姫や血塗れ竜の戦いに巻き込まれる可能性だって高いし、アマツが来たらユウキを殺さなければならない。
 自分もティーも暗殺が専門である。
 正面に向かい合っての戦闘は不得意どころか鬼門ともいえるだろう。
 
「あの子、気の弱いところあるしなあ」
 
 ティーことトゥシア・キッコラは、双子の姉妹のような存在だ。
 ビビス公爵直属の暗殺者として、幼い頃から共に教育を受けてきた。
 互いが辛いときには支え合い、喜びは分かち合ってきた。
 故に、絶大な信頼を寄せているし、逆に心配もしてしまう。
 ティーに何かあったら、きっと自分は生きていけない。
 体の火照りも、もう充分に治まった。
 動きも元通りだし、思考もクリアになってきた。
 そろそろ、食人姫の部屋に向かうことにする。今の轟音も気になるし。
 
 
 
 そして。
 ミシアは、己の目にした光景を、すぐには受け入れることができなかった。
 
 
 
 戦闘の空気を感じたので、気配を消して部屋を覗き込んだ。
 そして、飛び込んできた戦闘模様。
 しかし、それ自体は別にどうでもよかった。
 問題は――部屋の端。
 両腕を失っているユウキ・メイラーのすぐ近く。
 ベッドの周囲に散らばっていた“それ”が。
 最愛の存在の成れの果てであることを、受け入れるのは難しかった。


209血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/26(土) 04:28:36 ID:L6j7ZsQr

「……嘘」
 ぽつり、と心が口から零れた。
 冷徹な暗殺者には、あってはならないこと。
 自分はまだまだ未熟者だな、と思いつつも、それを止めることはできなかった。
 
 訓練が辛いとき握りあった腕が、転がっていた。
 ミシアより速く駆けることのできた足が、粉塵にまみれて汚れていた。
 過酷な訓練のせいで固形物を食せなくなっていた内蔵が、断面からこぼれていた。
 半分以上が失われている、虚ろな瞳で中空を眺めている顔が、こちらを向いていた。
 
 嘘だ。
 こんなの嘘だ。
 ずっと一緒だと信じていたのに。
 信じていたから今まで生き延びてこられたのに。
 
 なにこれ。
 ひどいよ。
 
 ティーは苦しんだのかな。
 あんなにバラバラにされちゃって。
 きっと痛かったんだろうなあ。
 苦しかったんだろうなあ。
 死にたくなかったんだろうなあ。
 
 殺されたく、なかったんだろうなあ。
 
 
 誰だ。
 誰が殺した。
 中で馬鹿みたいに殺し合っている四人の誰かなのは間違いない。
 ティーはバラバラに解体されている。こんな非常識な殺しができるのは一人しかいない。
 それに、頭部が砕けている。その壊れ方は特徴的で、まるで獣に囓られたかのよう。
 そうか。
 つまり。
 
 
 殺したのは、血塗れ竜と食人姫か。
 
 
210血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/26(土) 04:29:18 ID:L6j7ZsQr

 憎い。
 殺してやりたい。
 でも、自分一人では血塗れ竜と食人姫のどちらか片方でも殺すのは難しい。
 差し違えようとしたところで、自分だけが殺されるのがオチだろう。
 そんなの嫌だ。
 絶対、ティーのカタキを取ってやる。
 
 血塗れ竜と食人姫に、殺すことと同等の苦痛を与えることは可能だろうか。
 …………。
 ……ひとつだけ、あった。
 実行すれば、自分はきっと殺される。
 怒り狂った二匹の怪物に惨殺されるのは間違いない。
 でも――別にそんなことはどうでもいい。
 だって、ティーが死んでしまったのだから。
 もう、生きていく意味を見出せない。
 それに、アマツがこの場にいるということは、それをしなければならないということでもある。
 ビビス公爵に逆らうことはできないのだから。
 命を賭して――否、捨ててでも、実行に移すしか、ないのだ。
 
 ユウキ・メイラーを、殺す。
 
 自分にとってティーが最愛の人間だったのと同様に。
 血塗れ竜と食人姫にとっての最愛の人間は、彼に間違いない。
 それを殺し、自分と同じ苦しみを与えてやるのだ。
 しかも都合の良いことに、今の2人は銀の甲冑・怪物姉という同格の怪物と死闘を演じている。
 助けに戻ることすらままならないだろう。
 ひょっとしたら、ユウキの死に気を取られて、そのまま殺されてしまうかもしれない。
 そうなったら最高だ。自分の復讐は完全となる。
 まあ、その場合でも、怒り狂ったアマツ・コミナトに殺される可能性は高いが。
 血塗れ竜と食人姫に復讐できれば、それでいい。
 
 
 
211血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/26(土) 04:30:26 ID:L6j7ZsQr

 そうと決まれば、行動は迅速に。
 怪物4匹の決着は、いつ着いてもおかしくない。
 連中の注意が戦闘に向けられてるうちに、ユウキ・メイラーを殺さなければ。
 幸いなことに、気付かれないようこっそり殺すのは得意分野だ。
 これだけなら、自分は血塗れ竜にだって負けはしない。
 
 食人姫の部屋の中にいる全員、その意識の隙間を縫って、ユウキ・メイラーの横たわるベットへ。
 
 袖の内にある刃物の感触を確認する。
 腹の底でぐつぐつと煮えたぎる殺意や復讐心は、欠片も外には漏らしていない。
 音も立てず、滑るように部屋の中を進んでいった。
 誰一人として、ミシアの存在に気付いていない。
 
 ユウキ・メイラー。
 悪い人間ではないのだろう。怪物連中の執着具合から考えて、良いところも少なからずあるに違いない。
 先程抱き留められた感触を思い返す。
 下心など欠片もなく、助けようと親切心だけが感じ取れた。
 あんなに暖かく心地よい男の胸は、滅多に存在しないだろう。
 それを――殺す。
 抵抗がないといえば嘘になる。
 でも、それ以上に。
 ティーを失ったことの方が、ミシアの中では大きかった。
 大きすぎて、空っぽになってしまった心のまま。
 ユウキ・メイラーの枕元に、立った。
 
 まだ、血塗れ竜と食人姫は気付いていない。
 呑気に、戦闘を続けている。
 
 憎い憎い怪物ども。
 私の最愛の人にしてくれたように。
 お前らの最愛の男を、殺してやる。
 
 
 断固たる決意のもと。
 ミシアは、取り出した刃物を、ユウキの喉元へ――


212血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/26(土) 04:31:13 ID:L6j7ZsQr

 ――ひとつだけ、ミシアが失念していたことがあった。
 暗殺をする際は、対象の素性を調べておくのは基本中の基本であり、ユウキのことも調べてあった。
 だが、今、この瞬間。
 ミシアの中には、白とアトリへの復讐心しか存在せず。
 ユウキを、無害な重傷者としか、考えていなかった。
 
 ユウキ・メイラーは、かつて帝都中央の巨大学院に通っていた。
 本人の努力のもと、文武共に優秀な成績を残していたことも記録されている。
 ミシアはそれを知っていた。
 知っていたが、この瞬間、ユウキは無力な男であり殺すことは容易いこと、と思い込もうとしていた。
 ――学院には、護身術の授業も設けられていた。
 当然、それはミシアたちから見ればお飯事のようなものに過ぎず、
 正面から相対したとしても、5秒とかからず殺すことが可能であった。
 
 だが。
 
 ほんの数秒、抵抗することができる程度には。
 ユウキは、護身の術を身に付けていた。
 
 時間にすれば2、3秒に過ぎないだろう。
 それでも、ユウキは、ミシアの暗器を一度だけ避け、
 続く太刀を防ごうと、距離を外し、死の刃が到達するのを遅らせた。
 
 
 それが、彼の命を、救うことになった。
 
 
 
 
 
 白とアトリは、同時に気付いた。
 気付いて、このままじゃ間に合わないことも、悟ってしまった。
 両者とも、ユウキとミシアのいるベッドからかなり離れたところにいた。
 ユウキが抵抗しているとはいえ、彼が殺される前に辿り着くには、絶望的な距離だった。
 しかも、白はアマツと、アトリはユメカと相対中である。
 尋常な手段では、ユウキを助けることなど不可能だった。
 
 不可能だから諦めるしかない。
 ――白とアトリは、そんなこと、欠片も思っていなかった。
 
 他の何ごとを諦めようとも。
 これだけは、絶対に、諦めない。


213血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/26(土) 04:31:54 ID:L6j7ZsQr

 先程のユウキの姿が脳裏に蘇る。
 命を賭けて、白とアトリの衝突を防いだユウキ。
 命を賭けて、白とアトリを“助けた”ユウキ
 
 ユウキに助けられた2人の少女は。
 全く、同じ思いを抱いていた。
 
 
 ――今度は、こっちが、助ける番だ!
 
 
 
 
 
 許された時間はほんの数瞬。
 そのあまりにも短い時間の中。
 アトリは、ユメカに背中を向け、1歩だけ、駆けた。
 それだけだ。
 走って辿り着くなどどう考えても不可能で。
 アトリも、そんなことは考えていなかった。
 
 無防備な背中を晒すという、度し難い隙が現れた。
 当然、それを逃すユメカではない。
 右手に装着された手甲型のナイフ。その切っ先を正面に向ける。
 アトリの身体に叩き付けたら、刃の部分は一度で壊れてしまう。
 故に今まではそこを使わず攻撃してきたが、今この瞬間、確実に壊せる確信が持てたユメカは。
 城壁すら破壊しうる打撃力を。
 刃の先端という、非常に細い一点に集中させ。
 
 アトリの背中を、穿ち抜いた。
 
 剣撃すら防ぐアトリの頑強な骨格も。
 この一撃には耐えることができず。
 脊髄が、完全に破壊された。
 
 その痛みは、人格すら吹っ飛ばしてしまいそうなものだった。
 しかしアトリは、健気にも歯を食いしばって耐え、そのまま、正面に吹き飛ばされた。
 
 正面――ユウキとミシアの、いる方向へ。


214血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/26(土) 04:32:53 ID:L6j7ZsQr

 隙を見せれば攻撃してくることは分かり切っていた。
 問題は、その方向。
 アトリを完全に戦闘不能にするには、生半可な攻撃では不可能だ。
 故に、急所に完璧な角度で攻撃を通さなければならない。
 逆に言えば。
 急所を晒せば、そこを完璧な角度で、攻撃してくれるのだ。
 人間をあっさり吹っ飛ばす、あの威力で。
 アトリは背を向ける際、後頭部を手で庇った。
 残る急所は脊髄となり、其処を壊すには全力の一撃を、真っ直ぐ当てなければならなかった。
 だからユメカはそのままアトリの背中へ強烈な攻撃を叩き込み。
 アトリをユウキのもとまで運んだのだ。
 
 血液と髄液と骨片を撒き散らしながら。
 アトリは、ユウキのもとへ、飛んだ。
 
 1秒もかからず到達する。
 ユウキはまだ殺されてない。
 しかし、首に刃が向かっていた。
 壁にぶつかりそこから飛びつくのでは間に合わない。
 
 よって。
 
 アトリは空中で。
 刃とユウキの首の間に、己の指を差し込んだ。
 
 空中を高速で飛ばされながら。
 針の穴を通すような正確さで。
 
 それは血塗れ竜に勝るとも劣らない精密動作で。
 アトリは、一瞬だけ頑張った自分の身体を、心の底から褒めてやりたかった。
 
 刃を掴んだまま、アトリは壁に激突する。
 それに引っ張られ、ミシアもユウキから引き離された。
 
「――このっ!」
 それでも反応できたのは、流石“暗殺侍女”といったところか。
 アトリの手から刃を引き抜き、彼女の首を切り裂いた。
 ぶば、と。
 常人より血圧の高いアトリの首から。
 まるで花が咲くように、鮮血が撒き散らされた。
 アトリは反撃を試みようとしたが、脊髄を破壊されているため、足がぴくりとも動かない。
 そのまま一歩も進めずに、首と背中から鮮血を撒き散らすだけだった。
 
 だが。
 アトリの、唇の端は。
 何故か、笑みの形に、歪められていた。
 
 
 
215血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/26(土) 04:35:52 ID:L6j7ZsQr

 アトリがユメカに背中を向けたのと全く同じタイミングで。
 白も、ユウキに向かって駆けだしていた。
 アトリと比べて多少近いところにはいたが、それでも間に合わない距離だった。
 
 しかし白は、焦ることなく、全速力で駆けていた。
 
 そして、アトリが砲弾のように飛んでいき、更に数秒稼ぐことに成功していた。
 ――やっぱり。
 それしか方法がないとわかっていた。
 
 そして、アトリならやってくれるだろうと、信じていた。
 
 つい先程まで、殺してやりたいと心の底から思っていた奴なのに。
 今この瞬間だけ、白はアトリを信じることが、できていた。
 同じ相手を好きになったからだろうか。
 それとも、好きな相手の腕を失わせてしまったことによる共感か。
 明確な理由はわからないが、それでも白は己の裡に突き動かされるまま。
 ユウキのもとへ、駆けていた。
 
 懲りもせず、ユウキへ刃を向けていたミシア。
 アトリの突撃で動揺していたのだろう。白のことは、完全に失念していたようだ。
 そこに、白が辿り着く。
 ミシアが気付き、ユウキと白、どちらを攻撃しようか一瞬迷った。
 
 そして白には、その一瞬で充分だった。
 
 飛びかかり、相手の腕を掴む。
 全身の力を左手に収束させ、そのまま脆い部分を破壊する。
 そしてその反動を利用して、ミシアの全身を引き裂いた。
 確認するまでもない。
 ミシアは完全に絶命して、ユウキの命を脅かす存在はいなくなった。
 白とアトリの力が合わせられた結果。
 ユウキ・メイラーの命は、救われた。
 そして。
 
 
 
 それと、同時に。
 
 
 
 アマツの投擲した剣が。
 白の小さな胴を、貫いていた。


216 ◆gPbPvQ478E :2006/08/26(土) 04:36:34 ID:L6j7ZsQr
暗殺侍女、敗北。
血塗れ竜と食人姫、敗北。
217名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 04:54:35 ID:Qh3MbIio
ははっ……、あはっ。アハハハハハハハ!!!
死んだよ!遂にくたばったよ!!あの人食い娘が!!!

やったよセッちゃん。お姉ちゃんが仇を討うってくれたよ。・゚・(ノ∀`)・゚・。 

でも……他の三人とユウキには助かってもらいたいなぁ
218名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 05:08:05 ID:MqdA35iZ
>>216
うわっ、、、死んだ!、、お、おれたちは将をあやまった!
やはり今はロリの時代ではないんだ!ふたなりの時代なんだ!
219名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 05:17:30 ID:SQWheZqq
うそだぁ!!!!!!

うわぁあああああおおおおおああ(´Д⊂ヽ
220名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 06:04:04 ID:iTWhP0KU
しろ………白が…ッ

死ぬわきゃねえだろ…ッ

メインヒロインなんだぞ…ッ!!すっげー強いけどちっちゃくて可愛いんだッ!!

その白がッ!!!!!!
全てを駆逐してユウキを再び取り戻すまで死んだりするもんかあああぁぁああああッ!!!!!!!!!!!
。゜゜(ノ皿T)゜゜。
221名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 06:34:40 ID:JXubwUMn
>>220
そして、命を落とした彼女たちは転生し、愛する彼の愛娘となった。後のうじひめである。
222名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 06:45:26 ID:lW4aNNh8
タイトルが……メインヒロイン2人が…
怪物姉とふたなり騎士に負けちゃったよ。・゚・(ノД`)・゚・。

>>206
GJ!待ってたよ、ファーストコンタクトから綾香タソは良い嫉妬ぶりだなぁ
223名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 07:53:28 ID:4PEyuMiw
死なへんもん
白と暗殺侍女は死なへんもん(´・ω・`)
224名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 09:11:24 ID:cOW0v+cI
白が死んだなんて・・・嘘だ
225名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 09:53:37 ID:vAL4HNNM
なにいってんの?シロは死なへんよ
アトリもそんな、だいじょうぶやで?おねーちゃんもアーマーバロンもだいじょうぶでなんかもうつごうのいいはっぴいえんどになるんやで?
226名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 09:57:09 ID:lZu/RSSj
うそだ………

白が…死んだなどと……


ウソをつくなああああーーーッ!!
227名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 10:41:37 ID:NWvUJkgq
みんな……いい子達だったんだ……

ただ……時代が悪くて……仕方なかったんだ……

だから僕は……どんな結末になろうとも……受け止めるよ……

・゚・・゚・・゚・・゚・・゚・・゚・(ノД`)・゚・・゚・・゚・・゚・・゚・・゚・
228『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/26(土) 11:27:49 ID:nnSxYaBw
「ん?……お……」
目が覚めると共に違和感。なぜかいつもの堅い布団の感覚では無く、もっとやわらかいものが手に当たる。
「……いっ?」
それを見てびっくり。裸の女の子が抱き付く形で寝ていた。お、俺はいつの間にこんなことを!?
そんなことで目を白黒させ、パニックに陥っている間にその女の子がゆっくり目を開ける。
「……んぅ……あ、晴也さん……んっ……おはようございます…」
ああ、そうだ。いま唇を重ねながらおはようの挨拶をしたのは葵……思い出した。昨日の学園祭で大衆の前で告白したあと………
「ふふふ……昨日は激しかったですね。」
「あ、ああ……」
ヤったんだった。
「その……痛くない、か?」
昨日の光景を思い出し、思わずきいてしまう。葵はいわゆる『はじめて』だったため、血が出て痛がっていた。俺もはじめてだからよく判らなかったが……
「はい、晴也さんがやさしくしてくれましたから……とっても気持ち良かったですよ。」
そう言ってまたホワッと笑う。ああ、いかん。そんなことされたら朝からいけないことになる………
229『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/26(土) 11:29:14 ID:nnSxYaBw
「あ…えへへ…お腹に当たってますよぉ?」
「うっ。」
まったく面目ない。朝だからという理由もこんな状況では通じないだろう。
「……いいですよ。私も昨日のでコツが掴めましたから、いっぱい気持ちよくし……て……あ。」
そう言いながら俺のモノを扱いていたら、何かを見つけたような声をあげる。
「っ……ど、どう、した?」
「あはは〜。残念。もう時間ですねぇ。確か今日、開店からでしたよね?バイト。」
そう言われて時計を見ると、開店まであと一時間だった。むぅ、支度や通勤の時間を考えてると……
「いや、大丈夫だ。いける…」
「めっ、ですよ、晴也さん。そんなえっちなことして遅刻なんてしたら、かっこわるいですよ。」
なぜかこういった情事の時だけはお姉さんぶる葵。なんだか主導権を握られているようでいい気がしない。ここはひとつ……年上の威厳を……
「こういったことは、た、確かに気持ちいいですけど……ふだんの生活を堕落させてしまう……って、は、晴也さん!そんな、ダメです。…んぅ…あん…あっ……ひゃうっ!み、耳はダメですぅ〜。」
230『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/26(土) 11:30:28 ID:nnSxYaBw
「うぉーー!!!遅刻するーー!!!!!!」
結局あれからやってしまい、家を出たのが開店十五分前。我が愛車を飛ばしてバイト先へとひたはしる。
キキーッ
「ぐぅっ!」
半ば突っ込むような形に駐輪場へ入り、速攻で走る。時計を見ると、まだ開店五分前。よし、これで着替えればまだ間に合う……
カランカラン
「おはようござ……うおっ!?」
いつもの様にマスターに挨拶しながら入っていこうと思った…が、そのマスターがはいつくばっていた。それもそのはず。この店内の空気が異常なまでに重いのだ。
俺の体もこの重さに耐えられず、動きが鈍くなる。
「マ、マスター……なんなんすか……これ……」
ちょいちょいとロッカールームを指差す。そうか…原因はあそこに……なんとか体を引きずりながら歩き、ドアを開けると……
「っ!?」
更にフィールド効果が高まり、ついに俺も地面にひれ伏してしまう。そのロッカールームの片隅に……セレナが体育座りで背を向けていた。
「セ、セレ……」
「ふられた〜……ハルにふられた〜………葵の奴なんかに……取られた……はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」
231『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/26(土) 11:31:25 ID:nnSxYaBw
ぎりぎり聞こえる様なか細い声で呟く。これは……相当怒ってるのか?
「……遅かったねー……ハル………どうせ葵なんかと遅くまでニャンニャンしてたんじゃないの?………ハルって意外とスケベだからねぇ……クスクス……」
「…遅れたのは謝ります………あと……葵を選んだのも……一応謝ります……だからこの重力波を解除してください………」
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」
「くぁ!?」
その溜め息で更に重くなった。
「はいはい……そうねぇ……仕事しましょうか………」
そう言いながら立ち上がり、ロッカールームを出て行く。それと同時に、やっと重力波が消え、まともに立つことができた。まったく……いい迷惑…
「ん?」
着替えようと中に入り、ロッカーを見てみると、俺とセレナ以外のロッカーがボコボコに凹んでいた。そこには明らかな人の手の痕が……
「はぁ……なにを…」
ガチャ
溜め息をつきながら自分のロッカーを開けると……
ガラガラガラ!
「うぉーーぁ!」
大量のモップが倒れ込み、その下敷きになってしまった……やばい……セレナの奴、相当キテるな……
232名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 15:55:35 ID:QVd5OmMr
ひさしぶりにセレナ分を補充。このスレにしてはめずらしくあっさりした娘だ。
233名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 16:27:30 ID:rIYTp80e
オイラはセレナのこれからの動きにwktk

>>216
なぜか胡桃タン黙祷を思い出した
ユウキどうなっちゃうの!?
234名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 17:37:36 ID:RI5m5UET
今日の24時間テレビは

「ユウキ・両腕をもぎ取る少女達を許す青年と修羅場を作り出す少女達の絆」
235名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 19:12:12 ID:edw4hBKd
あ、アトリと……白が………

………なんってこったい………
236名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 21:22:58 ID:WZ1O+waz
>>217-227
お前ら必死杉wwww



白・・・・・・(´・ω・`)


>>232
けっこうあっさりしてるセレナ
なんで殺しちゃうんだ?
できればこのまままったりした修羅場が続けばなぁとかなんとか言っちゃたりして
237うじひめっ! Vol.12B(中編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/26(土) 21:41:51 ID:M5NLOhuL
 英国陸軍にはSAS(Special Air Service)という有名な特殊部隊が存在する。
 そこでは殺人術の教練として、新聞紙や雑誌を使った暗殺を習わせる。
 筒状に巻き、素早く喉元に突き入れて骨を砕く――
 たったそれだけの動作が致死的となり、人は絶命するのだ。
 鍛え上げられた工作員にとって、身の回りにある日常品を凶器とすることなど実に容易なのである。

 ――とこの前読んだ海外小説に書いてあった。
「おわあっ!?」
 冷静に考えていながらも、飛び出した悲鳴は情けなさの極み。
 斜め下から一直線に迫り来る鼠色の殺意――ニュースペーパー刺突!
 手にまだ持っていたポスターを咄嗟に構えてガード!
 ごどっ
 鈍く篭もった音。ポスター自体はメッチャ歪んだが、俺の体は無事だ!
 よ、良かった! 朝○新聞で殺されるなんて真っ平ごめんだからな!
「チィィィッ!」
 赤毛ドリル少女は盛大な舌打ちを一つ。
 姿勢を立て直し、フェンサーよろしく左手を側頭部の脇に添えて第二突を繰り出そうとしたが。
「やめなさい」
 姉の拳骨がごいんっと落ちてきて、頭がかくっと下がった。
 かなり痛かったらしい。「………ッッ!」と涙目になりながら○日新聞を投げ捨てて頭を押さえた。
「づううう〜! な、なにをなさるんですか! 姉様!?」
「お姉ちゃんはっ! トゥーシーをそんな殺人狂に育てた覚えはありませんっ!」
 人差し指を立ててガミガミとお説教を開始。
「で、でも!」
 反論しようとする妹を「口答えするんじゃありませんっ!」と更なる拳骨で強制的に黙らせる。

 そして、お仕置きという名の地味な宴が始まった。

 最初は立ったままお説教を聞かされていたトゥーシーが、いつの間にか正座になっていて、俺があくびを
噛み殺すようになった頃。
 ようやく満足したのかアイヴァンホーは、
「分かりましたねっ!?」
 とメッをする。
「はい……もうしません……二度と、絶対に……トゥーシーは悪い子でした……和彦様……どうか愚昧なるわたしの
穴という穴をすべて埋め尽くす勢いで存分かつエネルギッシュにガッツンガッツンと嬲ってくださいませ……」
 えっぐえっぐとしゃくり上げている中学生にそんなことまで言わせるほどの調教を終了させた。
 ――あれ? 「説」教じゃなかったっけ。「調」教じゃなくて。
 ま、いいか。

 ともあれ、アイヴァンホーはうちの嫁に来ることで合意が成った。
 蛆人には戸籍がないのでいわゆる内縁状態になるが、まあそもそも俺もまだ結婚可能年齢に達していないことだし。
 差し当たっての問題はなかった。
 いや、一つあった――俺の子を妊娠したフォイレだ。
 彼女に関しても責任を取らされるのかと思ったが。
「アイヴァンホーだったら別にいいですの」
 とあっさり身を引いた。あまりにも呆気ないので「え……?」と固まっていたら。
「――まあ、その気になればいつでも取り上げられますし?」
 と妙に邪な笑みを頬に浮かべたが、アレは見なかったことにしよう。
 フォイレはお産やら子育てやら、蛆界に帰ってから対処しなければならない事柄が山積みにつき。
 いったんアイヴァンホーを伴って我が家を辞去することになった。
 で。
「――なぜ、お前ここに残ってんだよ」
 隣の座布団にちょこんと正座しているトゥーシーへ、俺は当然の疑問を投げかけた。
238うじひめっ! Vol.12B(中編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/26(土) 21:49:25 ID:M5NLOhuL
「ふん! まずこの方を……直してさしあげなくてはならないから!」
 ごきんっ
 外れっぱなしのまま放置されていた遥香の首関節――それを元の角度に戻した。
 本人はハメ直される瞬間に「おぎょぎょ」と呻いたきり沈黙。
「ちゃんと生きてんのか、これ?」
「息はしてるわ!」
 シャア専用系少女は口元に手の甲をやって確認し、断言。
 その生存確認の後で俺をキッと睨むと、「ふん!」とこれ見よがしにそっぽを向いた。
 ツーンとした横顔が仮面で大部分見えないにせよ、ちょっと可愛らしかった。
「しっかし、見事なドリルだなー」
 暇だったこともあるし、からかいたくなってきた。
 縦ロールの赤髪へ無造作に手を伸ばす。てっきり避けられたり、手を弾かれたりするかと思っていたが。
「………っ!」
 ぐっ、と歯を噛み締める音がして。
 膝のスカートの生地をきつく握りながら、何かに耐えるような目をする。
 予想外の反応に戸惑い、手を戻すかどうかで迷ったが、やめるのもそれはそれでバツが悪く。
 仕方なく、すぐ終わらせようと思って赤毛を指で摘んだ。
 が。
「あ――」
 これ。すげえ。やべえ。今まで触れたことのなかった赤毛の手触りに、心の男根がエレクチオン。
 単純に、髪質そのものがさらさらつやつやとして良いこともあるが。
 視覚情報として入ってくるド派手な色合いがなんとも興奮をくすぐる。
 髪は見て、触り、嗅いで、舐めて、味わうもの。一つたりとも欠かせはせぬ。
 その思いを充分に補強して余りある一品だった。
 つい夢中になってべたべたと触りまくったが、トゥーシーはキレる様子もなかった。
 ――さっきのお説教がそんなに利いたのか。文句一つさえ漏らさない。
 さすがにいたいけな女子中学生の髪を好き勝手に蹂躙してるという罪悪感には、負けた。
 後ろ髪を引かれる思いながら手を引っ込める。
「……あっ」
 するとなぜかトゥーシーの方が残念がるような、切ない喘ぎを発した。
 その声を自分で聞いて驚いたのか、慌てて口を押さえる――仮面の上から。
 穴なんて開いてないのに。
 うーん。姉も姉だが、この子も結構面白い反応をするな。
「くっ……!」
 俺が愉快に思ったことを悟ってか、彼女はわざわざ仮面を外し、今度こそしっかりと口を手で押さえた。
 いや、だから……そういう反応が面白いんだってば。
「あなた! いつまで笑ってるつもりよ!」
 ぱっ、と押さえていた手を外し、晒された素顔のまなじりをキリッと吊り上げる。
 姉同様に鼻がないせいか、性格の割にキツい印象のしない顔だった。吊りがちな目だけが気の強さを表している。
 そのくせ口元のつくりが柔和だ。唇に宿した真紅の彩りは、十四歳という若さに似合わぬエロさを漂わせていた。
「いや、単にトゥーシーちゃん可愛いなーって。そんだけ」
「馴れ馴れしくちゃん付けしないで! 虫唾が走るわ! わたしのことは呼び捨てで結構ッ!」
 火を吐くような、決然たる口調でピシャリと言い置いた。
239うじひめっ! Vol.12B(中編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/26(土) 21:54:42 ID:M5NLOhuL
 俺がシャワーを浴びて着替えを済ませたり、遥香を病院に送って帰宅した後、アイヴァンホーはまだ戻らず。
 ふたりきりで黙っているのも気詰まりだったのか、ぽつりぽつりと赤い中学生は会話の端緒を開き始めた。
 まあ、概ね取るに足らない話だった。蛆人学園という、響きは異常だけど中身は結構普通な学園での生活に
ついてとか。家でのアイヴァンホーの様子とか。「いかに姉様が素晴らしい人か」を説き、「またその妹である
自分が素晴らしくないわけなどあろうか、いやない」と反語的に自画自賛する永久ループ。
 正直、聞いていてうんざりしないでもない内容だったが。
 次第に活き活きしてくるトゥーシーの顔を見ると、「まいっか」と思ってしまうのだった。
「でね! わたしは重機動部のエースストライカーとして、パイルバンカーを片手に突っ込んでったわ!」
 キラキラと瞳から紅玉の輝きを放ち、血に濡れたような唇を躍らせ、ボディランゲージ満載で語る少女の姿は
目を細めたくなるほど眩しかった。「ああ」「うん」「へえ」「なるほど」と、聞きようによっては気がないと受け取られ
かねない平凡な相槌を繰り返し俺にも一切お構いなしで、どんどん身振り手振りの度合いを高めて話に熱を
吹き込んでいく。俺が同学年の男子だったらさっくりフォーリンラブしそうな活力に溢れていた。
 でもまー年下だしな。内縁とはいえ嫁の妹だしな。つまり血の繋がらない義妹だしな。
 言い直せば言い直すほどムラムラしてきたが、ともあれ、手を出す気はない。マジでマジで。
「相手が避けようとするから! こう、どーん! と!」
「おわっ!?」
 話に熱中するあまり、本当にどーんと突き飛ばしてきやがった。痛くはないがビックリした。
 ったく、夢中になると周りが見えなくなる性格かよ。いかにもって感じだな。
「ご、ごめんなさい! ――あっ!?」
 助け起こそうと腰を上げて腕を伸ばした彼女は、正座のしすぎで足が痺れたのか。
 コケた。
「うおっ!?」
 俺の体にのしかかってくる。ちょうど、押し倒すような形で。
 や、やーらけぇ。無駄な肉のないしなやかな体つきだが、それでも女の子特有のすべすべした肌は心地良く。
 ふわっと包み込んでくる髪の匂いも、暑苦しいようでいて爽涼なるパヒュームを漂わせる。
「お、おい……」
 人類最強並みに真っ赤な格好をした女子中学生に押し倒される――
 ライトノベルの一場面みたいな状況に陥った。絶対ここに挿絵入るな。パンチラとか微エロ有りで。
「あ、」
 艶かしい唇が動く。
「ああああ足がじーんと来て! た、たたたた立てないいいい!」
 痺れが脳天まで突き上げてくるのか、涙目で声を震わせながら喚いた。
 やれやれ、俺が動くしかないか。
「つまり、ここでの正解は――」
 彼女の足に刺激を与えないよう、そっと下から抜け出し。
 改めて上から組み敷く。
「俺が上、お前が下ッ!」
「なあ……っ!?」
「やっぱり押し倒されるのは女の子で! 押し倒すのは男であるべきだよな!」
「こ、根本的に間違っているわよ!? やめ……やめなさい! この卑劣漢っ! レイプ魔ぁっ!」
「ふふん? 生意気な雌蛆はよく吠えるなぁ。この子ってば状況が分かってるのかしらん?」
 つんつんと足をつつく。至ってソフトなタッチ。だが、それだけで少女は目を剥いて悶絶した。
「あ゛あ゛あ゛!」
「おやおや、イイ顔をするじゃないか。普段が生意気なだけに、いっそう格別だよう」
 ひっひっひっ、とオヤジ笑い。
 危うく殺されかけた恨みを晴らすべく、思う存分撫でつつき回し、甘い疼きをこれでもかと刺激してやった。
「う゛う゛う゛!」
「あらあら、この子ってば口の端からヨダレ垂らして喜んじゃって。はしたないったらないわ」
 口調がいつの間にかオヤジからオカマに変わっていたが、支障なく責苦晴(セクハラ)を続行することができた。
240うじひめっ! Vol.12B(中編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/26(土) 21:57:21 ID:M5NLOhuL
「ハァ……ハァ……ハァ……!」
 ぐったりと横たわる少女を見ていると、いかにもひと仕事ヤリ終えた……って感じで爽やかな汗が出る。
 これがエロゲーなら差分でザー汁掛かりまくったCGも欲しいところだが、リアルであの量はキツいのでパス。
「ったく、アイヴァンホーは遅っせえな。小生意気なガキもシメ終わって一服してるところなのに」
 ちびちびとカルピスを飲む。今日は親たちが帰ってこないからのんびり寛いでいるが、もしこの状態で部屋に
踏み込まれたりでもしたら即通報 → 赤色回転灯も眩しくパトカーさんが門前に馳せつけることになりそう。
「それ……で……! 姉様と……暮らすというのは……! 本気、なの……!?」
 息も絶え絶えだが声に張りを残し、キチンと「!」が付くような発音をして訊くトゥーシー。
 全身を覆う苛烈な色彩に負けず劣らずのタフさがなんとも加虐心をそそるが。
 これ以上はヤリすぎになるので素直に答える。
「ああ。聞くところによりゃ、アイたんも少々忍術を嗜んでいるみたいだし。この家に隠れ潜んで暮らすのも可能だろ」
「おい……! 姉様の呼び方を……そんなふうにするな……!」
 どうもこの姉妹は「アイたん」呼称がよっぽど気に食わないらしい。そんなにダメか、アイたん。
「分かった分かった、普通にアイヴァンホーって呼ぶって。そう怒んなよ」
「ふん……! なんだって姉様はこんな奴と……!」
 見詰められただけで人体発火現象を起こしかねない視線に晒されながら、黙々とカルピスを啜る。
 会話が途絶えた。ちりーん、と間を埋めるように風鈴が鳴る。
「……あの!」
「なんだ。ちょっと呼びかけるときにも大声を出さなきゃ気が済まんのかお前は」
「混ぜっ返さなくていいから! ……その! で、できれば……! なんだけど!」
 気のせいか、やけにもじもじとためらう気配がする。何をデカい声で言いよどんでいるんだろう。
「す……て!」
「え、なんだって? 途中だけ小声になるという器用な真似されたせいで聞こえなかったぞ」
「わ、わたしも住ませて! ここに! ね、姉様を一人だけでは放っておけないもの!」
 信じられないことを言い出してきた。「一人だけで」って。夫たる俺は員数外かよ。
「お前も忍術の心得があるってのか?」
「ふん! わたしを誰だと思っているのかしら!? 蛆人学園中等科重機動部のエースストライカーよ!」
 それはさっき何度も聞かされた。しかし「エースストライカー」以外の語彙がないのか、この子。
「奇門遁甲くらいお茶の子さいさいだわ! 人はわたしを『ドリル付きの加藤保憲』と褒め称えるもの!」
 いや、その称号はおちょくってるだけで誉めてないだろ。
 ツッコむ気も失せて、「へーへー、そうですか」と生返事。
「し、信じてないわね!? ま、まあっ、なんてムカつく男!」
 ぎっ、と歯軋りをして灼熱の視線を飛ばす。見られているだけで肌が焦げそうだ。
「おいおい義兄に対する礼儀がなってないなぁ。頼み事ならもっとへりくだって言いたまえよ」
 別に俺がこの家の主ってわけでもないのに、偉そうにふんぞり返ってみる。
 効果は覿面だった。
「くぅぅ……!」
 いっそう悔しそうに歯噛みする。目尻に薄く涙が滲むほどだった。
241うじひめっ! Vol.12B(中編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/26(土) 21:59:33 ID:M5NLOhuL
 プライドが邪魔をしてか、その後も執拗でいて可愛らしい抵抗を続けていたが。
「ど、どうかここに住まわせてください……!」
 ぺこり。頭を下げて懇願してきた。がりりと指が畳を掻き毟っている。
「勝った!」
 俺の笑顔は寂海王の如く晴れ晴れとしていた。鏡を見なくても分かる。久々に放つ会心のスマイルだ。
 対してトゥーシーは満面の苦渋。唇を白くなるほど噛み締めている。畳を掻き毟る指の爪が今にも剥がれそう。
「こ、これは明日の勝利に繋がる敗北! け、決してこのままで終わらせたりなんか、し、しないんだから……!」
 ぶつぶつと独り言を呟いているつもりなんだろうが、声が大きくて丸聞こえだった。
 ひと通り生意気な義妹を屈服させ、すっかり満悦したがアイヴァンホーはまだ帰らない。
 なんだ? 蛆界の手続きってそんなに時間が掛かるのか? それとも何かトラブルが……?
 心配になってきた俺は部屋をうろうろし、時計を見て、遂に決心して外に向かうことにする。
 と。
 トゥーシーがシャツの裾をぐいっと引っ張った。
「引っ張るな、伸びるから。普通に口頭で言え」
「……家賃!」
「はあ?」
「そういえば、家賃の話をしてなかったわ!」
 確かに。でも、俺の家ったって所有物じゃないからなぁ。そんなの払ってもらうのは気が咎める。
「いいって、そんなの」
「よくない! こういうのはキッチリさせないと!」
 ギロッ。まるで俺の方に支払い義務があるのではないかと錯覚させられる眼光に怯んだ。
「でも、お前中学生なんだから稼ぎとかないだろ」
「た、確かにお小遣いは月に千円だけど! お金以外にも支払う方法はあるわ!」
 何かイヤな予感がするな。つまりそれって。
「――体! 体で払う!」
 し、指摘しやがった! 全エロメディアにおけるお約束、肉体貨幣による経済活動の可能性を!
「なんだぁ……? 蛆虫の世界ではなんでも体で済ませる裸一貫ロジックが根幹を成しているのか?」
「バ、バカにしないで! わたしがこんなことを切り出すのは……あなたが初めてなんだから!」
 かぁぁっと白い頬を紅潮させる。
 おお、真っ赤な少女が真っ赤な顔をした。ぶわっはっはっはっ。いや別そんなに面白くないけど。
「ふむ。いかにもオボコいリアクションだけど、じゃあなんでそんなこと切り出すの? 俺のこと好きなわけ?」
「か――!」
 擬音を当てるとしたら「どっかーん」だろうか。トゥーシーの顔が噴火した。
「勘違いしないでッッ! あなたのことなんか大ッ嫌いなんだからッッ! で、でも! わたしだけ何もされなくて
一緒に住んでる姉様だけがあなたの慰み者にされるなんて耐えられないから! ほ、本当にそれだけよ!」
 ふーん。うそくせー。エロゲーでももっとマシな言い訳するぜー。
「信じてないわね!? ……なら、これでどう!?」
 すっかり舐め切っていたので反応が遅れた。顔が近づいてきたかと思った直後――

 唇が、唇で塞がれた。
242 ◆kZWZvdLsog :2006/08/26(土) 22:01:10 ID:M5NLOhuL
次で終わり。「中中編」とか「続中編」とか「新中編」とか「帰ってきた中編」とかはないです。
243名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 22:06:28 ID:0b1OOn6C
グッジーブ!
それでも…「中編ファイナル」や「中編ピリオド」ならなんとかしてくれる…
244名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 22:17:56 ID:zV79AtrV
疾走分が足りない……っ
245名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 23:19:18 ID:WZ1O+waz
それでも中編リターンズなら・・・中編リターンズならなんとかしてくれる・・・
246名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 23:37:02 ID:PIZg8BUt
姉妹丼の可能性を夢みた時期が俺にもありました。
247名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 23:48:04 ID:tALm0dBH
一見姉妹丼フラグだが

どうしてだろう妹死亡フラグに見える
248名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 23:49:50 ID:lW4aNNh8
先生……姉妹丼が見たいです・・
249名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 23:53:57 ID:PIZg8BUt
きっと丸く収まる別ルートを用意してくれるさ!
250名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 23:57:17 ID:Qh3MbIio
蛆人姉妹の姉妹丼  怪物姉妹の姉妹丼  羽津姉と結季の姉妹丼  夏冬姉妹の姉妹丼  虎姉妹の姉妹丼 
251名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 00:03:55 ID:IaZ/U+yK
>>250
後半になるほどありえないと思ってしまうのは何故だ?
252名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 00:18:56 ID:IBDUbX53
「中中編」「続中編」「新中編」「帰ってきた中編」
「中編ファイナル」「中編ピリオド」「中編リターンズ」
に期待
253名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 00:24:26 ID:daddlLj/
「エピソードT」に期待
254名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 00:34:37 ID:FPbogsZO
>>228
「さよならを言えたなら」いつのまにかキテター!!
更新はまだかといつもwktkしながら待ってました
いつまでも私だけはあなたを見つめていますYO!
255ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2006/08/27(日) 01:06:42 ID:5ygfQ7Q8
 帰りのHRが終わり、部活へ行く者、帰宅する者など、生徒たちは思い思いに動き始めた。
 その中の一人、カバンに教科書などを詰めている少年――高村智(たかむら さとし)の元へ、一人の少女がとっとっ、と小走りで駆けて来る。
「智ちゃん、一緒に帰ろっ」
「悪い千早、今日も部活なんだ」
「また・・・? ここのところ毎日だよね。以前はそんなことなかったのに・・・」
 いっぱいに広がっていた、少女――折原千早(おりはら ちはや)の笑顔が途端に萎れる。
 まるで子犬のようだと少年は思った。もし彼女に尻尾があれば、先程までブンブンと振っていたのが今は悲しげに垂れていることだろう。
 実際、仕草の一つ一つもどことなく犬っぽい。
「えっとな・・・先輩の実験が佳境なんだ。だから今は一日も欠かせないんだよ」
 行かなければならないとしても、捨て犬のような目で見つめられて平気で居られるわけは無い。まして相手は10年来の幼馴染であり、
毎日――部活に入ってからも週に3回は――一緒に帰っていたお隣さんなのだ。
「・・・例のオカルト研究会だよね。どうしても、なの?」
 千早は智に密着するほど近づいて見上げる。彼女がこうやってやたら智にくっ付きたがるところは10年前と変わらない。
 上目遣いのつぶらな瞳が揺れ、瑞々しい唇が震えている。昔と変わらない幼さを残したかわいらしい顔立ちと、
対してめっきり女らしくなってきた体つきが否応なく目に映る。
 そして、白いうなじのラインから続く胸元の――
「どうしても! いいから先に帰ってろ! じゃあな!」
 内心をかき消すようにわざと大声を上げると、教室に残っていた何人かが何事かと注意を向けるが、それらを気にした様子もなく
智は教室を出て行った。
「なんだよ、夫婦ゲンカか? お前らが、珍しい」
「もう、高村君ったら怒鳴るなんて最低ね。千早、大丈夫?」
「なんだなんだ、破局の序章か?」
 やいのやいの言いながら、クラスメイトが集まってくる。彼らにとって智と千早はお似合いの公認カップル以外の何者でもない。
 千早はいつも『智ちゃん智ちゃん』と少年に纏わり付いているし、当の智もまんざらでもない様子で懐かれるに任せている。
 高校以前からの付き合いの長い者でも、二人がケンカするのはおろか、智が千早に怒鳴ることさえも見たことはない。驚きも当然だった。
「智ちゃん・・・」
 しかし千早は、そんな周囲の喧騒も聞こえてない様子で、ただ胸に手を当てて立ち尽くしていた。
256ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2006/08/27(日) 01:14:20 ID:5ygfQ7Q8
 早足で歩きながら、智は必死に気を落ち着けていた。
 ・・・危うく『衝動』に飲み込まれるところだった。千早は無防備すぎて困る。
 彼女の自分への感覚は、きっと10年前から変わっていないのだろう。お互いに、もう子供ではないのに。
 しかし、それが言い訳でしかないことも分かっている。自分の身体が『こんなこと』にならなければ、千早との子供じみた幼馴染関係を
今も容認していたはずだから。たとえ身体が成長して大人になっても、ずっと変わらない関係でいたはずだから。
 だから、思春期という時にさえ切れず、10年間ずっと続いている千早との幼馴染という関係を半ば神聖視している智にとって、
彼女に性的な欲望を持ってしまう現状は辛い。そして、それを隠すためとはいえ冷たく当たってしまうことが辛い。
 それでも、なってしまった以上は仕方ない。それに、その衝動を抑えるための部活だ。それとて智にとっては本意ではないのだが。



 文化部棟の最奥、空き教室がいくつか並ぶ薄暗い領域。出る、と噂されるその場所には、好んで足を踏み入れるものは居ない。
 その数少ない例外の一人である智は、ある一つの教室に足を踏み入れた。
 カーテンが外光を完全に遮断し、蛍のような仄かな発光体のみが照らす薄い室内。本棚には怪しい本が、カートには怪しい薬品が、
壁には怪しい貼り紙が、棚の上には怪しいぬいぐるみ(?)が置かれている。全て、この部屋の主の趣味だ。
「先輩、来てる? ・・・来てるみたいだな」
 部屋の中央、六紡星の真ん中にちょこんと座る無表情な人影が一つ。来訪者に気づいて立ち上がったそれは、呼び名の通り智の上級生だった。
 神川藍香(かみかわ あいか)。制服の上からでも分かる凹凸のはっきりしたスタイルが目を引く、腰までの艶やかな長い黒髪の美少女。
 しかし、薄くしか開かれていない瞳と無表情が、彼女を『女』というより人形のように見せていた。
「・・・・・・」
「え、今日も来てくれて嬉しいって? ははっ、ありがとな」
 しかし、今は嬉しいという気持ちらしく、ゆっくりと智に駆け寄っていく。
 一見無表情のままであり、話し声も全く聞こえないのだが、智には分かるようで、こちらは目に見えて分かる笑顔を浮かべていた。
 しかし、その笑顔もすぐにぎこちないものになってしまう。智にとって、これからすることを考えればそれも仕方ない。
 もう幾度も経験していることとはいえ、慣れるものではないのだ。
「じゃあ・・・。先輩、今日も・・・」
 搾り出すように智が告げると、藍香は皆まで聞かずに部屋の中央まで下がり、智もそれに続く。
 六紡星の真ん中で見つめあうこと暫し。藍香が自らの制服に手をかけた。リボンを解き胸元を緩め、横にずらして肩を露出させる。
 薄暗い部屋でも分かるほどに頬を染めているが、それでも手の動きに躊躇いはない。
 逆に智の方が照れて、必死に目を逸らそうとしているが、緩められた制服から僅かにのぞく胸の谷間や露出した細やかな肩に視線が行くのは避けられないでいた。
「・・・・・・」
「えっ、さあどうぞって? ・・・うん。分かったよ」
(先輩は俺の為にここまでしてくれてるんだ。ヘタレてないで、覚悟を決めろ!)
 自身を叱咤し、智は藍香の肩に手を置いた。そして、少しずつ顔を近づけていく。藍香は耐えるように目を瞑っていた。
(やっぱり綺麗だよな、先輩は・・・。オカルトが趣味でちょっと掴み所がないところもあるけど、優しい人だし。スタイルもいいし)
 つい、視線が下がった。至近距離にいるためか、胸の谷間を真上から見下ろす形になっていた。
 その豊か過ぎる双丘に智は一瞬我を忘れるが、ぐっと堪えると、気持ちを落ち着かせるために軽く藍香の首筋を撫で上げる。
「・・・! ぅぁぅ・・・」
 ピクンッ、と藍香がくすぐったげに身を捩るが、彼女がこうされるのが好きなのを知っている智は、暫くそれを続ける。
 徐々に藍香から力が抜け、智に身を預けてきた。
 今度こそはと気を取り直すと、改めて藍香の顔へ自分のそれを近づけていき・・・・・・。



    ・・
 藍香の首筋に、がぶりっと噛み付いた。
257ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2006/08/27(日) 01:21:36 ID:5ygfQ7Q8


 キスでなく、甘噛みでもない。しっかりと歯を立てていた。鋭く穿たれたその場所には血が滲み、ゆっくりと垂れ落ちる。
 智は藍香の首から顔を離すと、その流れる血を舌で丹念に舐め取り始めた。
 ピチャピチャと、卑猥な音が木霊する。静まり返った部室にその音はやけに大きく響いた。
「・・・ぁぁ・・・ぅん・・・!」
 何かに耐えるように身体をぎゅっと強張らせる藍香。その口からは、滅多に聞くことの出来ないであろう大きい音量で(と言っても彼女にとって、だが)
甘い喘ぎが漏れている。
 だが、その原因である当の智は、熱に浮かされたような虚ろな瞳で、一心不乱に藍香の首筋を嘗め回している。
 皿に付いた生クリームを舐めるような、浅ましくも執拗な愛撫を繰り返す。
 唾液でべたべたになったそこは、既に血も止まっていた。しかし智は止まらない。
 更なるご馳走を求めるように智の舌が藍香の鎖骨まで伸び、藍香の身体の強張りが増し―――


 智の瞳に、意思の光が宿る。すぐに自身のしていることを認識して後ろに飛び退くと、力が抜けたように座り込んだ。
 立てないほどの精神的な負担がのしかかる中、痛いほどに自己主張する下半身の痛みが、更に自身を疲労させるのを感じる。
(この『衝動』はヤバい・・・。身を任せるのが気持ちよすぎて、段々抑えが効かなくなってる・・・。それでも・・・)

 ――血を飲まなければ治まらない。


 そう。智は今、血を吸わなくては生きていけない身体になっている。言うなれば、吸血鬼だった。
258 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/27(日) 01:26:03 ID:5ygfQ7Q8
第一話は以上。なるべくエロエロにしたいなーと思います。

ヒロインのキャラがT○HE○R○とか言わないで下さい。
千早があか○とか、藍香が芹○先輩に見えるのは気のせいです。
259名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 01:29:29 ID:UvHOsgQY
あか○の依存は結構おいしいからまぁ似てるのは気のせいだろうけど期待(*´д`*)
それにしても色々な設定が思い浮かぶ作者様方は天才揃いだなぁ・・・
260名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 01:31:06 ID:oyXCqtfh
>>258
期待の新作キタ Y⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒Y !!!
どうやらヴァンパイア物みたいだが、エロエロ&修羅場に期待しています!
261名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 01:36:27 ID:YZN7LAtL
>>216
トゥシア・キッコラという名前に笑った
262名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 02:19:09 ID:2Ve/cIMy
栗栖川先輩ktkr
263名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 06:17:43 ID:awgVF6CZ
>>242
ちりばめられたネタの数々に脱帽!
264アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/27(日) 10:03:12 ID:uR2OgcS/
投下します
「それでは、お家からお洋服取って来ますね♪」
 私はそう言って足取り軽く涼さんのお家を出た
 あぁ、清々しい・・・・こんなにも爽快感が溢れたのは初めてだ
 今までうじうじしていた私がバカみたい、はやく自分の気持ちに素直になっていればよかった
 そうすれば、あんなブタ女どもなんかに涼さんの操を奪われたりしなかったのに
 そうだ、私は二度もその現場を見ている
 けど次の日にはもう頭の外に出ていた、どうやったら涼さんが振り向いてくれるか
 そのことだけが頭を覆い尽くしていた、そして私の悲願は成就した
 今出来うる限りの最高の形で私は自分の純潔を彼に捧げることが出来た
 これで涼さんだけは信じてくれる、私の噂はただの噂でしかない
 本当の私はそんな女ではないとわかってもらえたはず
 これで身実共に私と彼は一心同体で人生共同体となった
 共に生き共に死ぬ――――
 ああ、幸せ――――
 いけない、いけない・・・・これからは涼さんに女を近づけないようにしないと
 涼さんは優しいから、些細な心遣いが出来て、いつも天使のような笑顔で接している
 どんなにブサイクな女でもそれは変わらない
 本人は気づいていないようだけど、学校では女子人気をある人と二担するほどなのだ
 もう一人の人は、正直な話容姿が良いだけ・・・・それだけ
 涼さんとは大違いもいいところだ、涼さんは容姿は女の子みたいで可愛らしく、性格まで申し分ない
 容姿だけのもう一人の・・・・なんて名前だっけ?
 確か先週だったかな?私に告白してきたけど、すぐに蹴ってやった
 私は涼さん専用だもの、当然よね――――
 あ、でもそのことを話して涼さんの嫉妬心を煽って、夜は激しく――――
 想像しただけで涎が垂れてきた
 涼さん、ああ見えて嫉妬深いのよね〜
 まぁ、私を愛してくれてる証拠だけどね・・・・ふふ
 昨日の電話、様子が可笑しい、私はそう思ってお姉ちゃんに昨日の電話の件を話してみた
「うぅ〜ん、心配ね〜」
 ダメだ、こりゃ・・・・
 ここは私がしっかりしないと・・・・
「うんしょっと」
 がさごそと音を立ててお姉ちゃんがカバンを弄っている
「な、なにしてるの?」
「決まってるでしょ?帰るのよ・・・・・お家に、涼ちゃんに悪い虫でも付いてたら困るでしょ?」
「でもでも!お給料は?私たちそのために」
「先ほどおばさんがね、可愛い二人が売り子してくれたおかげで売り上げが二倍だったて、喜んでたわ」
 そう言ってお姉ちゃんは封筒を私に手渡し、またカバンの中に物を入れ始めた
 私は手に収まる封筒を見て、驚きで目を見開いた
 思ってた金額の数倍は入っている、これで・・・・
 お兄ちゃんの負担も少し楽にしてあげられる
「さ、帰りましょう」
 しっかりと私の分の支度を済ませて、お姉ちゃんは私に荷物を渡した
「う、うん!」
「うぐ!うぐ!うぐ!!!」
 ダメだ、動けない・・・・口を縄で塞がれ助けも呼べず
 身体を腕輪に繋がれた鎖で拘束され、脱出も不可能
 そして僕の股間には油性マジックで「秋乃専用」と書かれている
 首元がヒリヒリと痛む、彼女が付けた無数のキスマークのせいだ
 腕輪も秋乃さんの持っている鍵がないと外れないようになっている
 どうしてら良いんだよ、もう――――
 いったい何が彼女をそこまで駆り立てるのか僕には解らなかった
 いくら僕が酷い拒絶の仕方をしたからって、あれではまるでストーカーだ
 ――――いや、彼女はもうストーカーだ
「うぐ!くぅぅぅ!!!」
 必死でもがいて逃げようとする、腕輪が食い込み血がにじんだ
 ダメだ、それにこれ以上したら逃げようとしたのがバレてしまう
 その時の彼女の血走った目と嫉妬に狂う顔が容易に想像できて僕は身体を恐怖で震わせた
 突然扉が開く音がした、彼女が帰ってきたんだ、僕は再び訪れる恐怖の時間を思い絶望した
「ただい・・・・・ま、おに――――」
「あら、涼ちゃんったら、そういう人だったの?言ってくれればお姉ちゃん女王様になってあげたのに」
「って!一人でうなことするわけないでしょ!それよりはやく助けてあげようよ!」
 天使が舞い降りた、二人の純白の天使が僕を地獄の底から引き上げてくれた
             


              原案協力
             ID:KH6Ae6Nl様
             ID:L1esCa31様
268アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/27(日) 10:08:31 ID:uR2OgcS/
親戚の家は近場の海の家ということで
「もう一つ」の方では夏冬姉妹の修羅場は期待しないでくださいね
ぶっちゃけた話ですが本家の方で二人の修羅場はネタ切れしてしまったので
それにしてもどう考えても秋乃さんのインパクトが強すぎるな、誰の救済だよって感じですね
269アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/27(日) 10:11:11 ID:uR2OgcS/
すいません、海の家ではなく旅館の設定でした
本家が夏から秋の間辺りで
「もう一つ」が春なので頭こんがらがっていました

なので
2レス目の
「先ほどおばさんがね、可愛い二人が売り子してくれたおかげで売り上げが二倍だったて、喜んでたわ」

「先ほどおばさんがね、可愛い二人が仲居さんしてくれたおかげで話題になって売り上げが二倍だったて、喜んでたわ」
に訂正します
270名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 11:00:04 ID:5lixvcFl
さて、原案協力の方が2名いらっしゃるわけだが……
2パターンのエンドを書いて下さるんですか!?
もしそうなら無理をせずに頑張って下さい。応援してます。
271名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 15:28:07 ID:UvHOsgQY
秋乃さんが可愛すぎる(*´д`*)
そう思ってしまった俺はもう帰って来れない
もちろん一遍の悔いも無い!
アビス殿いつもながら最高の作品でありがとうございますm( __ __ )m
272名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 15:28:58 ID:roIyFTZN
ようするに涼ちゃんが逆ギレして、ストーカーになった秋乃を調教するような展開とかキボンヌw
まあ、嫉妬でヤンデレ化した女性は好きな異性による調教は悦びだからなw
273名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 16:08:23 ID:oyXCqtfh
いい感じで秋乃さん病んでいるなあ(*´Д`)ハァハァ
274名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 17:05:27 ID:5coGmvV8
それではプロット三連発の一発目投下します。
275ハーフ&ハーフ ◆n6LQPM.CMA :2006/08/27(日) 17:08:18 ID:5coGmvV8
季節は春。出会いと別れが溢れる、良くも悪くも変化に富んだ季節です。
しかし変化が必ずしもいい事とは限りません。もしかしたら変わってしまう
ことで不幸になってしまうこともこの世には腐るほどあります。
そしてそれはこの女の子にも当てはまります。

但し、不幸なことに彼女の場合はそれが普通ではなかったことだった


「プロローグ」



「みなさん、今日は転校生を紹介します。なんと可愛い女子ですよ?
男性生徒は喜びなさい。」

クラス担任の先生から転校生の紹介、しかも可愛い女生徒となれば
喜ばないにしても少しは気になるっていうのが男子生徒ってもんです。
案の定男子生徒の中には「やったーー!!」や「ヒューヒュー!!」
と騒ぎ始めた生徒もいるようだ。

「はいはい静かに!それでは紹介しましょう!入ってらっしゃい!」

静かに引き戸から入ってきた女性生徒は……はっきり言えば普通であった。

ちょっと肩に掛かるくらいのセミロングの髪
女子としては平均的な身長に体形
人懐っこそうな目に、普通に収まっている鼻に口……

どこをどうとっても普通の女の子であった。
名前と性格以外は……
女の子は黒板の前まで歩き、チョークで名前を書いた。
276ハーフ&ハーフ ◆n6LQPM.CMA :2006/08/27(日) 17:10:21 ID:5coGmvV8
「半 文子」

「え〜、こほん。私の名は「はんふみこ」です。決して、決して
「はんぶんこ」では無いです!!「はんぶんこ」と呼んだ奴は殺します。それじゃ、
よろしく!!」

「はんぶんこだって?あはははははは、面白いなごぶっ」

一人の男子生徒が言い終わる前に文子はダッシュで飛び膝蹴りを
顔面に食らわせていた。

「私の話……というか忠告聞かなかった?「はんぶんこと呼んだら殺すから」
って。次は無いわよ……判った?」

クラスにいた全員が顔面が陥没した男子生徒を踏み付ける文子を見て、深く肝に
命じた。


一ヵ月後


「文ちゃーん、今度のバレーボールに助っ人に来てー!!」
「あ!文ーー!!頼む!!100M競争出てくれ!!」
「おーい、半分………ごふっ、な、なんだよ冗談、いたたたほ、骨折れる!!」

禁句さえ言わなければその他は明るくてスポーツ万能の文子はクラスに溶け込み、
クラブの助っ人や男女関係なく遊んだりとすっかり学校に馴れ始めた。
そんな新しい学校生活が始まって二ヶ月後、事件は起きた。
なんと文子に彼氏が出来たのだ!!
お相手は隣のクラスの佐々木博史という男子生徒だった。
既に学校ではスポーツ万能で有名だった文子に彼氏が出来たことに学校中が
大騒ぎになり、校内新聞に載るほどだった。

出会いは今から二週間前に遡る……
277ハーフ&ハーフ ◆n6LQPM.CMA :2006/08/27(日) 17:12:35 ID:5coGmvV8
学校の近くにある商店街を文子はのんびりと歩いていた。

うん、この街は中々良いわね。あんのクソオヤジの転勤話を聞いた時は
「1人で単身赴任しろボケ!!カス!!」って言ったけどいざ来てみる
と学校も意外に早く打ち解けたし交通や買い物も便利で気に入ったわ。
何しろ全部が家から歩いて10分以内なんだもん。
ここまで好条件が揃えば気に入らないわけないわ。家が前より狭くなったのは
我慢我慢っと。

のんびりと散歩がてら買い物をしていたら、何やら人だかりが出来ていた。

ん?商店街のど真ん中で何だか騒動でもあったのかしら。ちっ、通行の邪魔ね。

野次馬を掻き分けて騒ぎの元を見てみると、いかにも不良と言わんばかりの
ゴロツキ5人がなんだかひ弱そうな男を取り囲んでいた。

「てめえ!!もういっぺん言ってみろ!!」
「で、ですから道の真ん中で座り込んで話をするのは通行の邪魔です、と言ったんです」
「へん!いい度胸だな!!」

多勢に無勢というのか、ひ弱な男はゴロツキ5人にフクロ叩きにされてしまった。

あーあ、弱いものなんかいぢめちゃって。ま、私にゃ関係ないか

「あーすいません、通りますよー」

申し訳なさそうに横を通りすぎようとした文子。
しかしゴロツキの一人と目が合ってしまい

「あん?なんだお前!!邪魔するのか、チビが!!」



「大丈夫?立てる?」
「あ、はい。大丈夫です。助けてくれてありがとう。」
「あー、うん、まあ……そういうことにしとくか」

文子の足元にはさっきまでイキがっていたゴロツキ5人がモザイクを掛けなきゃ
見れないほど「人」として原型を留めていなかった。

「あ、俺の名前は佐々木博史っていうんだけど、君の名前は?」
「あ!え、え、名前?あ、あー、半文子っていうけど……」
「へー、文子ちゃんか。古風で良い名前だね」
「え!良い名前?良い名前……」

今まで名前のことでバカにされたことは数多あったけど、「良い名前だね」と言
われたのは初めてだわ。
ちょっと嬉しい……かも
278ハーフ&ハーフ ◆n6LQPM.CMA :2006/08/27(日) 17:15:05 ID:5coGmvV8
文子がぼーっとしていた時、不良の一人が立ち上がり、近くにあった木の棒を
振り上げて文子に襲ってきた!

「死ねーー!!」
「あ!危ない!!」

文子の頭に当たる直前、健史が文子を突き飛ばして身を挺して庇った!!

「ぐっ!!」

健史はまともに木の棒を背中に受けて、倒れこんだ。

「おーおー、女を庇うたぁお優しいこって。それじゃあお前から先に……!!!」

殺気を感じて振り返ったその時、不良は見た。文子から立ち昇る怒りの赤オーラを。

「な、何だお前。やるってのか?……う、う、うわーー!!」




「ちょっと、怪我とかない?大丈夫?」

向かって来た不良を壁にめり込ませて文子は助けてくれた健史に駆け寄った。

「ちょっと背中が痛いけど、何とか。けど助けたつもりがまた助けられちゃったな」

ちょっと恥ずかしいのか健史は、はにかんだ笑顔をしていた。

ドクン


「殿!城攻めの準備が整いました!!」
「うむ。あの難攻不落の城、落としてみせる!!城攻め開始!!」
279ハーフ&ハーフ ◆n6LQPM.CMA :2006/08/27(日) 17:17:31 ID:5coGmvV8
自分でも動悸が激しくなったのが判った。
あれ?おかしいわね。この助けたモヤシ男の笑顔を見ていたら何か……心臓が熱いな。
たぶん疲れているのね。うんそうだわ。ここんところ色々あったから。

この場は適当に話を切り上げ、文子は逃げるように走っていった。

しかし次の日

「あ!やっと見つけた。文子ちゃーん!」
「ん?……あ、あんたは!ど、ど、ど、どうしたのよ。な、な、な、何か用?」

いきなり教室に表れた佐々木博史に文子は冷静を装っていたが、動揺してしまい、
どもってしまった。

「うん、お昼でも一緒に食べようと思って。どお?屋上で」
「お、お、お、屋上!い、い、いいわ。行きましょ」

な、何で急に来るかなこの男は。まあいいわ。こいつのことをもう少し知ってお
くのも悪くないわ。べ、別に嬉しくないんだから。本当なんだから!

必死に自分自身に言い訳しつつ、顔が真っ赤になっていた文子は、博史の後に付
いて屋上に行った。


「殿!内堀も埋め終わりました!本丸に切り込みましょう!」
「うむ。ついにこの時が来たか……。皆の者行くぞ!!」
280ハーフ&ハーフ ◆n6LQPM.CMA :2006/08/27(日) 17:19:21 ID:5coGmvV8
「え!佐々木くんってそんなに頭良いの?」
「博史でいいよ。……そんなことないよ。今の成績なら何とかなるし、
金銭的にも国公立の方が安いしね」

文子の脳みそには

国公立の大学=天才

とインプットされているので、そこを受験するということは少なくとも自分より
も遥かに頭が良いってことは分かった。

私なんて真っ赤っ赤かか、よくてギリギリだもんな……

「文子ちゃんは進学するの?」
「文子でいいわよ。……そうね。どうせ私の学力じゃ大学は無理だし……はなか
ら諦めてるわよ。」

何?もしかして自分の頭が良いのを自慢してんの?えーえーそうですよ!あんた
は大学を受験できるぐらい頭が良いんでしょうけど、私なんか頑張ったってせい
ぜい専門学校止まりよ!そうやって頭悪い人間馬鹿にして楽しい?

文子は我慢出来なくなって文句の一つでも言ってやろうと博史の目を見た。しか
し、その目に映っていたのは蔑視や嘲笑ではなく、ただただ自己卑下していた自
分の姿だった。

あれ?え?え?何で?何でよ!頭の悪い私を馬鹿にしてんでしょ?違うっていう
の?そんな目で見ないでよ……自分自身が馬鹿みたいじゃない……

「そんなに自分を卑下しない方がいいよ。人にはそれぞれ向き不向きがある
んだから。例えばいくら頭が良くても昨日みたいに不良に絡まれても何の対処
も出来ずにやられっぱなしだった自分とそれを助けてくれた文子ちゃん……もと
い文子。果たしてどちらが人として上か下か分かる?」
「え?そ、それは……うーん……」
281ハーフ&ハーフ ◆n6LQPM.CMA :2006/08/27(日) 17:22:28 ID:5coGmvV8
急にそんな哲学的なこと言われても……分からないわよ

博史は食べていたパンの袋などのゴミを片付けて、立ち上がった。

「たぶん急に言われても分からないかもしれないけど、人の価値を一面だけで判
断しちゃ駄目ってこと。その人全部を見てからでも遅くないよ」

全てを悟っているかのような口振りで、博史は屋上を後にした。

人の価値……考えたことなかったわ。

それから博史はことあるごとに文子の教室へやってきた。
帰宅時、昼休み……
最初こそ文子はめんどくさそうにしていたが、いつのまにか博史のことばかり考
えてしまう自分がいた。しまいには

放課後のひとコマ 教室にて
「博史、今日は来るの遅かったわね。どうしたの?」
「ごめんごめん。ちょっと数学で分からないことがあったから先生に教えて
もらってたんだ」
「そう……」

文子は眉間にシワを寄せて、明らかに機嫌がわるそうだった。

「それなら許してあげる。じゃ、帰りましょ」

文子はそう言って博史の手を握り、顔を真っ赤にして帰っていった。
282ハーフ&ハーフ ◆n6LQPM.CMA :2006/08/27(日) 17:24:58 ID:5coGmvV8
こんな生活を暫く続けていたある日、運命の日はやってきた。
この日、放課後に屋上に呼び出された文子は博史の姿を見てにやける顔を必死に
押さえつつ、近づいていった。

「どうしたの?急に呼び出したりして。」
「うん、どうしても話したいことがあるんだ」

何か変な雰囲気ね。緊迫した空気……そんな感じだわ。それにしても今更話なん
てあるのかしら。大体のことは話尽くしているような……。!ま、まさか!!

「うだうだ考えていてもしょうがない!文子!俺の彼女になってくれ!!」
「!!!!!!!」

あーびっくりした。話しってそれか。答えなんてもう決まっているわ。今更考えるまでもない。
もう少し遅かったら私から告白していたわね。でも博史に出会ったおかげで初めて分かったわ。
この燃えるような心………そう、これが……恋。初めて会った時に生まれた心……


「殿!見て下さい!!本丸が燃えております!!」
「難攻不落と言われた城が遂に落ちたか……」


「うん……うん!彼女になってあげるわ!特別だよ!感謝しなさいよ!!」

目に涙を溜め、精一杯強がっているが、顔から滲み出る嬉しさと手足の震えは隠しようがなかった。

そんな青臭いラブラブワールドを展開していた二人だったが、反対側の校舎の屋上にい
る人物の怒りの視線には気が付かなかった。

そしてこの時、学校の近くの公園で事件が起きた。本来なら文子には全く関わりが
無いし、知ることも無かったはずだったが、この事件の波紋は意外な形で文子に
降り掛かるのであった……
283名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 17:31:19 ID:5coGmvV8
本当は埋めネタ用に作っていたのが、結構ボリュームが大きくなっちゃいました。
ちなみにギャグ色が強いですが、修羅場ももちろんあります
284『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/27(日) 18:05:13 ID:CUeYqwYh
二つ投下します。
285『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/27(日) 18:05:53 ID:CUeYqwYh
カランカラン
「いらっしゃいま……」
「大変申し訳ございません、お客様。本日、カップルの方ははお断りですので。」
「え、で、でも…」
「お断りですので。」
「前来た時は大丈夫……」
「お断り、ですので。」
ゴウッ!
「は、はひ。」
「ごめんなさい!」
セレナの黒いオーラの恐怖に背を向けて走って帰ってしまうお客様。ああ、せっかくのお客様なのに。
(マスター!ちゃんと注意してくださいよ!帰っちゃったじゃないですか!)
(無理。死にたくない。)
マスターとの目でのやりとり終了。頼りにならないな、……俺もだが。
「あーあ、ほんと、カップルなんて一回滅べばいいのよねぇ。そうねぇ、有志を募ってカップル解散運動を勃発させて……」
なにやらブツブツぼやいているセレナはほおっておこう。「ふぅ……」
また客がいないので、ひとつ溜め息をつく。そこで思い出すのは昨日のこと……
葵のやつ、可愛かったよな。ああいう状況になっても、おとぼけで天然なのは変わらないんだな。いや……少しというかかなり怖いところもあったよな………
286『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/27(日) 18:06:38 ID:CUeYqwYh
『あ、あのっ、晴也さん。こういうことってはじめてですかぁ?』
こういうこと。隠さずにいえばセックス。
『…いや、一度だけ…経験ある。』
高校の友達と、風俗に行った。あの時のことは緊張のし過ぎでまったく覚えて無かったが。
『はぁ、そうですか……残念です。』
『別にその風俗嬢が好きだとかいうんじゃないから。』
『はじめてを取られたから悔しいんです。そうですね、過去に行けるならその風俗嬢をころしてでも晴也さんのはじめてをうばいとりますね。』
『………』
『良ければ今からでも殺しに…』
『いえ、勘弁してください。』






あそこまで独占欲が深いのな。女って。葵とかそういうあたり気にしない様なタイプかと思ってたけど……
あ、いけね。またそんなことばっかり考えてたな。なんか俺のキャラが変わったような……恋は人を変えるというやつか?いや、少し違うか。
カランカラン
おっと、お客様だ。
「いらっしゃいませー。」
「晴也さん、来ちゃいましたぁ。」
ひょこっと現れたの、当の葵だった。が、セレナが立ちふさがる。
287『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/27(日) 18:08:54 ID:CUeYqwYh
「お客様、申し訳ございません。葵という名前の方は……」
「晴也さぁーん。」
ギュム
葵は……恐れ多くもセレナをスルーして俺に抱き付く。
「お断り……させて……」
「そろそろ終わりですよね、晴也さん。一緒に帰りながら夕飯のおかずを買いましょぉ。今日はなにがいいですか?なんでもつくってあげますよ?」
「いだだいて………っああ嗚呼あ!!こんなとこでイチャつくなぁ!!!!」
セレナが暴走し、トレイで襲いかかってくる。が、葵はヒラリとかわし…
「あのぉ、負けたセレナ先輩は黙っててくださいっ。今は晴也さんと話してるんです。」
言っちゃったよ。葵。
「ほぉぉぉ……急に態度をかえましたねぇぇぇ……それがお前の本性カァッ!」
「きゃあっ!は、晴也さぁん!助けて〜」
「またハルにべたべた抱き付きやがってぇ〜!死んで詫びろぉぉぉぉ!!葵ーー!!!」
一瞬にしてレストランは戦場に。飛び交う怒号。追いつ追われつの二人。目茶苦茶な店内。
あーあ、マスターったら、血の涙流してるよ。………あまり大事にならなけりゃいいんだがね。
288『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/27(日) 18:10:43 ID:CUeYqwYh
それは小さい頃の、たった一日の思い出。
『一緒に遊ぼうよ。鬼ごっこ。きっと楽しいよ。』
友達がいなくて、本ばっかり読んでいた私を、あの人は誘ってくれた。
『鬼ごっこ?』
『うん!』
それから日が暮れるまで、二人っきりの鬼ごっこ。私が鬼のまま、彼を捕まえられなかった。でも、彼の背中を追うのは楽しかった。そんな楽しい時間……永遠に続くと思ったのに。
『ごめん……もう行かなくちゃ。』
『え?…だって鬼ごっこ……』
『今日、引っ越しちゃうんだ。だから、もうお終い。』
両親に連れられていってしまう彼。これで終わりにしたくない。そう思った私は……
『名前……あなたのの名前は!?』
そして彼は笑顔で……でも、泣き崩れた顔で……
『…海斗……水瀬海斗だよ!』
『水瀬……海斗君……』
彼の名前を、笑顔を永遠に。これが私の最初で最後の恋、けっして逃がさない。まだ鬼ごっこは終わってない。まだ私は鬼のまま。だから、ね?
私は追い続けるよ?あなたが逃げるのなら、追いつくまで……その背中を……追い続けるから……
カンタンニツカマラナイデネ?
289『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/27(日) 18:11:29 ID:CUeYqwYh
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
夜の街。誰もいない通りを駆けていく。いるのは僕だけ……
タッタッタッタッ
タッタッタッタッ
訂正。僕ともう一人。どれだけ逃げても隠れても、確実にその足音は追ってくる。毎晩毎晩、学校の帰りに追ってくる。
タッタッタッタッ!
タッタッタッタッ!
「はぁっ、はぁっ、こなくそっ!」
立ち止まって振り返っても、姿は見えない。自分の足音が消えるとともに、もう一つの足音も消える。ゆっくり歩き出す。それと同時に、また足音が増える。
タッタッタッタッ!!!
タッタッタッタッ!!!
スピードに緩急をつけてみても、その足音は正確に追い続ける。距離は開かず、されど縮まらず。常に一定の距離を保つ。
「ふふふ……あはははは……」
時折漏れる女の声。追いかけてくるのが女なのだろう。女の子に追いかけられるのはうれしいことだけど………相手がストーカーだなんて勘弁だ!
バタン!
「はぁ、はぁ……た、ただいま…」
無事に家にたどり着く。
「おかえり……って、また走って来たの?」
迎えてくれるのは、唯一の家族である妹。その顔をみて安心する。
290『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/27(日) 18:12:58 ID:CUeYqwYh
「う、うん。まあね。」
「はぁ、体力づくりだかなんだか知らないけど、恥ずかしいから近所の人に見られないでよね。」
「うん、わかってるよ。注意する。」
それだけを言い残して二階に上がる妹。まだストーカーのことははなしてないから、こうやって誤魔化してる。
靴を脱ぎ、僕も二階へ上がろうとするが、なにか嫌な視線を感じ、振り返ると……
カラン
「?」
なにか郵便受けが揺れたみたいだけど……気のせい…だよね?
自分の部屋に入り、ベットに寝転ぶ。本当に怖いのはこれからだ……
〜〜♪
着メロが鳴る。手に取って見てみると……
『おかえりなさい、』
と、短い文。相手はわからない、登録されて無い携帯。でも……誰が送ってきたのかわかる。
〜〜♪
『ご飯はちゃんと食べた?』
『シャワーは浴びた?』
『宿題は終わらせた?』
『妹さんと一緒にいちゃだめだよ?』
『まだ起きてる?』
『まだ起きてる?』
『まだ起きてる?』
『眠れないの?』

何日も続いているけど、やっぱり怖い。だけど……相談できない……
部屋の電気を消し、布団にくるまる。そして……いつものように、最後のメール。
『おやすみなさい、海斗君。明日も私が鬼だね。』
291名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 18:38:19 ID:hGtiSU53
不覚にも萌えた。

451 名前:冥王星 投稿日:2006/08/24(木) 23:06:01 ID:tnZ1euxo
みんなが楽しそうにあの人の周りを回ってるの見て、いいなぁって思ってた。
ここはとても寒くて、でも私はこんなだし、でも…さびしくて。
いつのまにか、こっそり私も回ってた。みんなみたいにうまくいかなかったけど。

見つかっちゃった時は少し恥ずかしかった。でも、うれしかった…
みんなが私に気づいてくれた。ここは寒いけど…もう寒くなかった。
私はもう、一人じゃないんだって。そう思えた。
でも…やっぱりいけない事だった。みんな今まで騙してゴメンね。やっぱり私には資格がなかった。

今まで私を仲間にしてくれて、ありがとう。
みんなにたくさんのあったかい思い出をもらったから、私はそれで十分です。

どうか、私が勝手に回ることをゆるしてください。
うまく回れるように、今も頑張っています。
そうしたら、もしかしたら、また…
それは絶対にない。頭ではわかってる。でも、そうせずにはいられない私を、どうかゆるしてください。
292名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 18:43:28 ID:9pADiSfX
新規がダブルとさよ言えktkr!
293名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 20:03:53 ID:aAF1r6qp
>>291
太陽系で嫉妬ものか…

太陽ちゃんの周りは泥棒猫で一杯でつね。
控えめな冥ちゃんは早々に脱落…
294名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 22:08:38 ID:UvHOsgQY
>>287
葵可愛いよ葵
|ω・`) 独占欲っていいなぁ、やっぱり
>>283
ボリュームアップとは・・・ありがたい(*´д`*)
嫉妬楽しみ
>>290
こういう鬼ごっこをしたかった(;つД`)
どこかで開催してないかな・・・


ttp://www.so-net.ne.jp/vivre/kokoro/psyqa1013.html
フィクションと思えばこういうのもあり(*´д`*)
妹もうまく絡めて嫉妬ストーリーを妄想すると楽しい
295名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 22:14:07 ID:eOyy1s50
投下しますよ
296『とらとらシスター』19虎:2006/08/27(日) 22:15:20 ID:eOyy1s50
 戸が開く。
「すいません、遅くなって」
 微笑みながらサクラが部屋に入ってくる。「気にしないで」
「すいません。でも私、兄さんのそんな優しいところも好きです」
 頬を僅かに赤らめながら言うサクラの姿は、とても可愛い。たったそれだけの仕草なの
に思わず愛しさが込み上げてきて、ベッド横のカラーボックスの上にペットボトルとコッ
プを置くのと同時に抱き締めた。背後から抱き締めているにも関わらず表情まで分かるよ
うな慌てぶりに、つい口から笑いが漏れる。
「ちょっと、展開早いですよ?」
「ごめん、つい」
 抱き抱えたまま離さずに、ベッドへ腰掛けた。多少妙な感じがあったらしくバランスが
少し崩れたものの、そろでも拘束は解かなかった。
 僅かに聞こえた甘い抗議の声に答えようとして、しかし止めた。
 体温が欲しくなったから、とは言わない。せっかく慰めてくれたのに自分から掘り出す
ようなことはしたくないし、それをしてくれたサクラに対しても失礼だ。だから、言葉の
代わりに抱く力を強くする。サクラが好きだと言っていた少し強めの力に応えるように、
頭を僕の胸板へと擦り付けてくる。普段はまるで虎のように思えるような部分が多いが、
こうして甘えているときはまるで猫のようだ。
「兄さん」
「ん?」
 囁くような声での呼び掛けに、聞き取りやすいよう顔を下げる。 一瞬。
 かすめるようにして唇を重ねた後、サクラははにかみ、
「言葉を出したりするのだけが、唇の役目じゃないですよ?」
297『とらとらシスター』19虎:2006/08/27(日) 22:16:18 ID:eOyy1s50
 それに同意するように今度は僕の方から唇を重ねると、サクラの舌が割って入ってきた。
口内全体を味わうように満偏なくしゃぶり、ねぶり、吸ってくる。更にそれだけでは満足
出来ないとでも言うように、舌に絡み付いてきた。それを自分の口内へと引き寄せ、互い
に内部を確認しあう。唾液を交換し、飲み込むとサクラは不釣り合いな程に艶めいた笑み
を浮かべてこちらを見つめてきた。
「兄さんの、美味しいです」
 言葉に応えるようにもう一度唇を重ね、サクラの中へと唾液を流し込んだ。わざとらし
く音をたてながら飲み、まだまだ欲しいとばかりに潤んだ瞳で顔を覗いてくるのが何とも
いやらしい。
 気付けば僕は、シャツの中へと手を滑り込ませていた。きめ細かく滑らかな腹部を撫で、
軽く臍の辺りをこじると擽ったそうに身をよじらせる。そのままなだらかなラインの脇腹
を経て、肋骨の線をなぞりつつ、指先が乳頭のところまで辿り着くと甘いだけではない声
が漏れてきた。既に硬くなり始めている乳首を転がすように擦り、耳を甘噛みすると泣く
ような声と共に、サクラは大きく身をくねらせた。
「あの、はしたない女だと思わないで下さいね? その、下も」
「何を今更」
 可愛いなぁ、と言いながらスカートの中へともう片方の手を滑り込ませる。下着の上か
ら割れ目をなぞり、僅かに浮き出た突起を摘む。それだけでクロッチ部分に愛液が広がる
のが、指先の感覚で分かった。
298『とらとらシスター』19虎:2006/08/27(日) 22:19:13 ID:eOyy1s50
 初めてではないけれどそれでも、僕の愛撫で感じてくれているというのが嬉しい。念入
りに続けていると湿った感触だけだったものが、指先に絡み付くようになってきた。下着
をずらして中に指を差し入れるとそれで達したのか、抱く腕に強い抵抗が来た。
「挿入れても良い?」
 尋ねれば返ってくるのは、首の僅かな上下の動き。それによって胸板に打たれる頭部の
弱い力でサクラの存在を感じながら、シーツの上に横たえらせた。そして下着を膝下まで
降ろすと硬くなっている僕のものの先端を当て、馴染ませるように僅かに上下になぞった。
「あの、兄さん。こんなときに、しかも自分で言うのもアレですけど」
 何だろう。
「今こうしていて、青海さんはどう思うでしょうか?」
「サクラはどう思う?」
 我ながら質問を質問で返すことを卑怯だと思いながらも、訊いてみたくなった。青海の
ことを嫌っていた、と言うよりも単に敵対していただけだったサクラの意見だからこそ、
興味を持った。今こうして名前を持ち出してきた意味が知りたかった。
 僕の言葉にサクラは少し黙り、
「正直、妬いてると思います。私がその立場なら、きっとそうですから」
 そうだろうなぁ、と僕も頷く。
「でも、最後には笑いますよ。自己肯定じゃないですけども、やっぱり最愛の人が笑って
いるのが一番ですから」
 やはり、そうなんだろうか。
「青海さんもあんな悲惨な死に方でしたけど、きっと大丈夫ですよ」
 待て。
 突然覚えた違和感に、心臓が高鳴った。
299『とらとらシスター』19虎:2006/08/27(日) 22:19:59 ID:eOyy1s50
「体はバラバラに砕けても、心は綺麗なままです。きっと天国で見ていてくれていますよ」
 こいつは今、何て言った。
 何故サクラは青海があんな死に方をしたことを知っているのか。僕は青海が死んだこと
は話したけれども、それがどんな風だったのかは言っていない。それなのにこんな発言を
出来るというのはおかしい。
「虎桜」
「何ですか、改まって」
 本人が嫌がるので普段は使わない、本当の名前で呼ばれたことに少し疑問の表情を浮か
べながらも赤く染まったままの顔で尋ねてくる。
「何で、青海がそんな風に死んだことを知っているんだ?」
 知る方法は大きく分けて三つになる。
 一つ目は、人から聞いたりビデオなどの媒体から情報を得る方法。端的に表現すると、
間接的に情報を仕入れることだ。だけれども、僕はサクラに言っていないのでこれは違う。
他人がサクラに教えることもまず有り得ないので、これは該当しない。
 二つ目は、実際にその光景を目撃した場合だが、これも違う。第一、これは一つ目にも
当てはまることだが、知っていたのなら僕の事情が察せられる筈だ。
 しかしさっきの発言の前までのことを言うのなら、サクラは何も知らなかったというこ
とが前提でなければ僕に事情を聞くということは成り立たない。つまり、どちらにも該当
しない場合でなければ成り立たないのだ。
 だから、残るのは三つ目。
300『とらとらシスター』19虎:2006/08/27(日) 22:22:25 ID:eOyy1s50
 自分が青海を殺した犯人だった場合だ。そうすれば知らなかったふりをせざるを得ない
から、これまでのことにも筋道が立つ。
 僕はサクラを睨みつけるように見て、
「何故だ?」
 再度尋ねた。
「……それは」
 目を背けるサクラを見て、溜息を一つ。
「殺したな」
 底冷えするような声が漏れてきた。
「あの、兄さん」
 追いすがってくるようなサクラの声を無視して、体を離した。つい先程まで心地良いと
感じていたサクラの体温までもが、忌まわしいものに思えてくる。股間の先端部分に付い
たぬめりを取ろうとしてティッシュを取ろうと身を屈めたところで、弱い抵抗が来た。
「兄さん、その」
「何だ、虎桜」
 シャツの裾を掴んでいる手を振り払うように、少し距離を空けながら振り向いた。視界
に入ってくるのは、血の気が引いて青ざめた顔。怯えているような、今にも泣きそうな色
を浮かべたそれは何とも痛々しい。事情を知らない者が見れば誰もが庇護欲を掻き立てら
れるであろうその表情だが、僕には別のものに見えた。
「その」
 サクラは何かを言いかけ、しかし言わずに視線を床へと向ける。
 数分。
「出てけ」
 しかし、サクラは下を向いたまま動かない。
「頼むから、出ていってくれ」
 今度は少し強めに言葉を投げ掛けた。サクラは体を小さく震わせると、漸くベッドから
降りて歩き出す。ふらつきながら僕の横を通るときに何かを呟いたようだったけれども、
それは聞こえなかった。
 数秒。
 何かを言いた気な悲しそうな表情で僕を見ていたが、結局サクラは何も言わずに部屋を
出た。僕一人が残った部屋は、何故かいつもより広く感じる。それは、多分芝居だったと
はいえ、僕を慰めてくれた妹が意思を持って隣に居てくれたからだろうか。
「どうしろっつうんだよ」
 僕は溜息を吐き、ペットボトルの水を飲んだ。それは何故か、妙な味がした。
301ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/08/27(日) 22:23:36 ID:eOyy1s50
今回はこれで終わりです

サクラちゃん、やらかしました
302名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 22:28:03 ID:I89sR7hk
バレたーー(|||゚Д゚)ーー!!
303名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 22:28:56 ID:GRyYNTUU
鳥肌が立ちそうなほどGJ
こりゃお姉ちゃんが漁夫の利で一人勝ちか?
304ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/08/27(日) 22:30:59 ID:eOyy1s50
凡ミスが二つ

最初の「気にしないで」と、そのレス最後辺りの 一瞬。 という部分
改行入っていませんがまとめのときには改行を入れるようお願いします
305名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 22:46:24 ID:oyXCqtfh
>>283
ボリュームが大きくなるのは大歓迎ですがな、これからどうなるのか期待
>>287
セレナの嫉妬が大好きです、でも葵の独占欲も大好きです
つまりどっちも最高!
>>290
ストーカー娘はやっぱり良いなぁ(*´Д`)ハァハァ
この属性は今や俺のストライクゾーンど真ん中だ
306義姉 ◆AuUbGwIC0s :2006/08/27(日) 22:46:47 ID:H5YetzLY
        *        *        *
『モカ』

「いや、でもオレ掃除あるから……」
「いいじゃん、いいじゃん、私も今日バイトあるから何処にも寄れないけど、さっさとかえろ」
 グイグイと士郎君を腕を引っ張る。
「その辺にしときなさい」
 何時の間にやら近づいていた涼子が士郎君の肩をグイッっと引っ張る。そして、なんか目がキツイ。
「こいつはそんな事したら、後で思い返して胃を痛めるようなタイプなの」
「うーうー」
 士郎君の腕を大袈裟にブンブン振り回してみるが、涼子はキッツい視線を送ってきていて、士郎君は少し困った顔。
「うー、後で電話するからね……」
 このまま粘ってるとバイトに間に合わなくなってくる。渋々観念してトボトボと背を向けて歩き始めた。
「……にゃおん」
 三歩程歩いてから名残惜しげに後ろを振り返る――猫に学ぶ名残惜しさの表現方法。

        *        *        *
『士郎』

 姉ちゃんと一緒に並んでドラマを見ている。
 別にいつも通り、極々普通の日常――のはずだ。
 しかし時折、目線が姉の方へ向いている。そして自分がそのことに気づくと慌てて目をテレビに戻す。そんな事を最近ずっと繰り返している。
 そして再び目が勝手に隣の住人にへと向いた時、その顔は笑っていた。
「ふ、風呂入ってくる」
 慌てて立ち上がっていた。

 ――おかしい。
 湯船に肩まで浸かってから考える。
 なんでもない事をやっている。その筈なのに何か意識してしまう。
 その『何か』が何であるかは、わかっている。三沢に抱いていたものと同じだ。
 今頭の中を空っぽにすべく、頭から湯を被った。
 目を閉じたまま手探りでシャンプーを探す。
「ナイスタイミング」
「へ?」
 風呂のドアが開くと同時に姉の声が聞こえる。
「まだ髪洗ってないね」
 人の脳味噌の硬直を無視したまま姉は勝手に人の頭を洗い始める。
「いや、あ……」
「昔ね、同級生の子が弟の髪洗っているって話しててね、そういやあんたに、そんなことしてあげたことないな、って思い出してね」
 今何が起きている? シャンプーが目に染みそうで目が開けられない。
 全身硬直したまま、リンスも無事終えると姉はさっさと風呂場から出ていった。
 何だったんだ――

 チラチラと部屋のドアを見つめては机の上のノートに目を戻しては少しだけ手を動かす作業を繰り返す。
 隣のベッドに枕が二つある。昨日からあるオレのと、姉ちゃんの。
「ここに枕あるってことは、そういう事だよな……」
 その言葉を口にした時、それを期待している自分に気づいた。
 階段を上ってくる音がする。一歩、二歩とこちらに近づいてくる。その音にあわせて胸の鼓動が早くなってくる。
 ドアが開く音――この部屋ではない、姉ちゃんの部屋だ。
 大きく深呼吸を繰りかえし、鼓動が落ち着きかけた頃頭を大きく振った。
「何か分らない問題でもあるの?」
 ベランダ側から唐突に声をかけられ背筋を伸ばしていた。
307名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 22:47:39 ID:H5YetzLY
<チラシの裏>
カクカクシカジカで中々書けない今日この頃

最近猫がベランダに遊びに来るんだけど
網戸ガリガリはやめて、網戸ガリガリは
</チラシの裏>
308名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 23:24:02 ID:NYqfP+bj
オウイエス、久しぶりにモカさん分が補給されたぜ。


姉の方が押してる感じだけどな。
309名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 00:04:59 ID:ZgC2msoQ
ビューティフル
素敵なモカさんね
310 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/28(月) 00:30:36 ID:tK4u1HB7
投下します
311ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2006/08/28(月) 00:32:41 ID:tK4u1HB7
「それじゃ先輩・・・俺、帰ります」
 しばらく荒い息をつきながらへたりこんでいた智だが、落ち着きを取り戻すと早々に部室を出て行った。
 部屋の中央には着衣を直して同じく息を整えていた藍香が残された。
 これが、智と藍香の秘め事。血を欲する智に藍香は自分のそれを与える。智は僅かな量しか吸わないため、今のところ貧血になったりはしていない。
「・・・・・・・・・」
 もっと吸っていいのに。もっと私を貪ってもいいのに。そんなに我慢しなくていいのに。この部屋のお陰で鋭敏化している私の知覚は、貴方の手が私の胸に触れる寸前まで来ていることを知っているのに。吸血以外の欲望だって、全て思うままに私にぶつけて欲しいのに。
 毎日少しずつ大きくしている着衣の乱れにだって気づいているはずなのに。そんなに私は魅力が無い?スタイルがいいなんて言われても、貴方が欲情してくれなければ何の意味もないのに。
 智の理性が自分によって揺らいでいるのは藍香も感じている。だとしても、今日も触れてもらえないまま彼が帰ってしまった切なさは隠しようが無い。
 一人ぼっちの部屋の中、首筋を中心に未だ身体を火照らせる熱を感じながら、藍香は折角整えた着衣を再び乱しはじめた・・・。

312ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2006/08/28(月) 00:35:56 ID:tK4u1HB7

 智がこうなった原因は藍香にある。そもそも智はごく普通の人間だ。しかし、オカルト趣味の藍香の実験に付き合ってこうなってしまった。
 オカルトや黒魔術は空想の産物ではない。世の中の殆どの人間にとってはそうだろうが、現実に存在しているのだ。

 古くからの名家であり、今も政財界に強い影響を及ぼす神川の家に生まれた藍香は、その環境に馴染めず、心を閉ざすことで自己防衛を図った。
 ただ言われることを素直にこなすだけのお人形になったのだ。そんな彼女が心奪われたもの、それが書庫に眠っていたオカルトの本だった。
 古い家だからか、ただの娯楽でない本物の魔術の本があった。まだ日本が呪い(まじない)を国の基幹としていたころのことを後世に残した本が中心だ。
 効果が不安定ゆえに時代と共に廃れていったとあるが、それは間違いなく『本物』だった。
 学校が終わると毎日そこに籠り本を読み漁り、解読作業に勤しむ。東洋だけでなく、西洋の魔術にも手を出した。
 そして、遂には人知れず怪しい実験を行うまでになった。
 そんな奇行をやめさせようと、両親はごく普通の公立高校へ藍香を入れたが、それは藍香にオカルト研究会という邪魔の入らない空間を進呈しただけだった。
 あまりに掴み所がない様子に加え、神川の名への恐れも入り、彼女を止める者はいなかった。と言っても、誰かに迷惑をかけるわけではなく、純粋に知的好奇心からオカルトの研究をしていたのだが。


 そんな中現れた唯一の例外。それがが智だった。
 実験の材料を部室へ運ぶ途中でぶつかった少年。ぶつかったことを詫びると、部室まで荷物を持ってくれた。
 部室やオカルトに純粋に感心したようで、ちょくちょく遊びに来てくれるようになった。
 神川の名前にも物怖じしない智に、一度聞いてみたことがある。彼はこう返した。

「そりゃ先輩がすっごいお嬢様ってのは聞いてるけどさ。それって周りが言ってるだけだろ?
 俺自身はまだ先輩のこと何も知らないのに、それだけで敬遠するのっておかしいじゃんか」

 ・・・その日以来、藍香は智を自分のものにすることしか考えられなくなった。神川のお嬢様ではなく、藍香という一人の女の虜にしたくなった。
 魔術の実験助手が欲しいといって部室に連れ込み(といっても合意の上だが)、色々と試した。
 惚れ薬を作ってみたり、催眠術を掛けてみたり、傀儡の術を試してみたりした。(もっとも、オカルト知識のない智は自身がそんなことをされているとは思ってもいなかったのだが)
 が、文献の散逸や、現代では手に入らない材料の関係でいつも失敗。でも、失敗に落ち込む自分を優しく励ましてくれる智の心遣いが愛しくて、今のままでもいいかなと思うようになった。

 しかしある日、それが甘すぎると思い知らされることになる。

313ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2006/08/28(月) 00:40:17 ID:tK4u1HB7
 ある放課後、藍香は二年の教室のある階をウロウロしていた。智の教室まで直接行く勇気がない藍香は、彼に来て欲しい日は、休み時間ごとにこうして廊下をうろつく。
 そうすると大抵智が藍香を見つけ、駆け寄ってきてくれるのだ。
 しかしその日はいずれの休み時間にも智を見つけられず、こうして放課後まで引っ張ってしまった。
 待ち始めて十数分、視界に智の姿を認めて歩み寄ろうとした藍香は――。
「・・・・・・・・・!!」
 智にぴったりと寄り添って歩く少女の姿に、その歩みを凍りつかせた。
「智ちゃん、おじさんたち今日も帰ってこないんでしょ? 晩御飯作りに行ってあげるよ、何がいいかな?」
「何でもいいよ。千早は何を作らせたって上手いからな」
「もう、そういうのが一番困るのに。じゃあ、帰りに一緒にスーパーに行こ? 買い物しながら決めればいいよ」
「帰りにか? まあ金は持ってるけど・・・。一度帰って着替えてからでもいいじゃんか」
「だぁめっ。制服のままっていうのがミソなんだから」
「みそ? ・・・訳がわからん。何の味噌がいいんだか。っておい、引っ張るなって!」
 その少女は智の手を――自分だってまだ触れられないでいる彼の手を――無造作に取って駆け出した。怒った口調とは裏腹に、智も苦笑しながら彼女に続く。
 藍香と5メートルくらいの距離まで近づいたが、気づくことなく昇降口の方へ消えていった。



 どうやって歩いたのか覚えていないが、気が付けば藍香は部室にいた。周囲には散乱した本や薬品、砕け散ったビーカーが転がっている。
 大切なものなのにこんなになっているなんて、どうしてだろうか。泥棒が入るような場所でもないのに。
「・・・っ・・・!」
 口が痛い。血だ。いつの間にか噛み切っていたらしい。こんなに強く歯を食いしばっていたなんて。どうしてだろうか。どうし――
「!!!!」
 決まっている。あの女だ。私の愛しい後輩に、智に纏わり付くあの女。
 恋人のように寄り添うその姿、思い出すだけで目の眩むような憎悪を覚える。それは、人形である自分の中にこんな激情が眠っていたのか、と藍香自身感心してしまいそうなほど強い負の感情。それでいて表情は一見いつもの無表情であり、それが恐ろしさを一層掻き立てる。
 藍香の領域であることも手伝い、部室内は普通の人間なら立っていられないほどの瘴気が渦巻き始めていた。
 しかし今の藍香には、その瘴気こそが自らを落ち着かせ、これからどうすべきかを教えてくれる存在だった。

「・・・・・・・・・・・・・・・」
 そうだ、あの魔術を試そう。人間を動物に変える魔法。前から試したかったけど、流石に実行するには気が引けていたあれを。
 あれなら被術者がこの場にいなくても発動できる。問題は施術者のイメージ力だ。
「・・・・・・」
 問題ない。忘れるはずがない。あの忌まわしい小娘の姿を。
 さあ、堕ちろ。智の前から消えてしまえ。自分が誰かも認識されないまま朽ち果てていけ。変化させる姿を決めるまでには解読してない術だけど、むしろそれでよかったかもしれない。
 だって、どんな下等な動物にするのが最も相応しいか悩んで、いつまでも決められなかっただろうから。
 そして藍香は、‘力ある言葉’を解き放ち―――。



314ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2006/08/28(月) 00:45:52 ID:tK4u1HB7
 智の吸血が始まって以来、藍香にはもう一つの日課がある。智が帰った後の部室内での、彼女だけの秘め事――。
「あぁん・・・! いぃ・・・」
 再び衣服をはだけた藍香は、勃った乳首をブラの上からピンと弾く。智に触れられる期待を一身に受けていたそこは、何もせずとも臨戦状態だった。
 鎮めなければ、服から擦れる感覚だけで達してしまいそうな程。このままでは帰れないし、何より自分も耐えられない。
 乳房を揉みながら、右肩を上げてそこを舐める。先ほど智が舐め回していた場所だ。本当なら洗わずそのままにしておきたいが、さすがにそれは不潔なので、今のうちにたっぷり味わっておかなければならない。

 元々藍香は自慰行為をよくしていた。しかしそれは、実験に少女の愛液が必要だから、などという場合のことで、快感などは副次的な、むしろ不要物だった。
 それが今や、愛しい男に抱かれる想像に酔い、快楽の海へ望んで溺れるための行為と化してしまっている。
 ストックしてある愛液を智に出すお茶に入れることもあり、それを彼が飲むことを想像しただけで濡れてくるほどになっている。
 特に智に血を吸われた直後は、どうしようもなく身体が疼くのだ。
「・・・・・・・・・」
 そう、吸血。あの日、千早が受けるはずだった魔術の効果を受け取ったのは智だった。しかも、変化したのは身体の外部ではなく内部。
 智は吸血鬼になってしまったのだ。
 翌日、魔術の効果を確かめる前に、智が自分の変質を相談に来たことで事態を知った藍香は、応急処置として自身の血の進呈を提案し、智を元に戻す方法を探すことになった。


 ・・・しかし、藍香が今探しているのは吸血鬼を人間にする方法ではない。それどころか『人間を吸血鬼にする方法』だった。
 自分を吸血鬼にするために。愛する少年と共に、世界にたった二人の異端の存在となるために。
 異端者を弾こうとするこの世界で、自分と智は皆のように生きていくことはできなくなるだろう。そうなれば、互いに寄り添って生きていくしかない。
 それはどんなに幸せなことだろう。
「・・・・・・・・・」
 智は藍香の行うオカルト儀式をちゃんと理解しているわけではないが、魔術の実在は知っている。
 そして彼が関わったその類の使い手は藍香しかいない。今回の己の変貌の原因が何らかの形で藍香にあることは、彼女から告げなくとも感づいていたはずだ。
 智を変えてしまった、それによって嫌われることを怯える藍香に、しかし智は笑って言った。

「先輩、俺は自分の意思で先輩の所に通ってたんだ。誰かの所為ってものじゃなくて、俺が選んだ先にあった結果がそれだったってだけのことだよ。
 確かに不本意な状態ではあるけど、先輩が望んでそんなことしたはずはないし、今だって俺の為に色々手を尽くしてくれてるじゃないか」

 ・・・ああ、だめ。例え上辺の慰めだったとしても、そんなこと言われたらもう気持ちを抑えられない。
 貴方を自分だけのものにできなければ死んだほうがマシとさえ思える。どんな手段を使ってでも手に入れたい。
 乳房を弄っていた左手は、いつの間にか足の間に差し込まれていた。ぐしょぐしょに濡れそぼった秘裂をなぞり、すぐにそれだけでは我慢できなくなって人差し指を突き入れた。
「んんんああぁぁぁっっ・・・!!!」
 それだけで軽くイってしまう。気持ちいい。もっとイキたい。
 でも我慢だ。この先に怖くなるほどの快楽が待っているのは分かっている。だからこそ、初めては智のモノでしてほしい。
 正直、そう長く我慢できる自信はない。ああ、早く貴方が私を奪ってくれないと、私は堕ちて淫魔にでもなってしまうかもしれない。
 それも悪くないけど、やっぱりなるなら貴方と同じがいいよ。比翼の存在となって、二人でどこまでも堕ちていこう?
 だから、早く見つけないと。偶然でなく確実に、私を吸血鬼と化す方法を。



 たとえ、永遠に人の身を捨てることになろうとも。
315 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/28(月) 00:51:20 ID:tK4u1HB7
今回はここまで。エロコメにしようと思ってたのに何故かシリアス系に・・・。

私はオカルトに関する造詣はありません。かなりいい加減な設定が出てくるかもしれませんがご了承下さい。

ニ連休はこのスレでたくさん読んだり書いたりできて充実してました。やっぱりこのスレの神々は偉大です。これで明日からも頑張れそうです。
316名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 00:55:55 ID:aWJWZ2Ab
藍香タソ(((((((( ;*゚Д゚)))))))ガクガクハァハァブルブルハァハァガタガタブルガタガクハァハァ
こんなにもwktkさせる黒さだとは思いもよらなかったぜ!!!

>>307
モカ分が補給キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
最近モカさん分失調気味から回復しまつた
317名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 02:14:48 ID:Nq6/G0np
(*・∀・)センパイモエッ!
318名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 02:56:14 ID:tFWls9Tf
>>307
義姉の続きキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
モカさん分補給できた。
319名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 04:04:13 ID:XK9OalYw
スウィッチブレイドナイフ分無くして俺の八月は終わらない。
320恋と盲目 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/28(月) 07:44:11 ID:f+OBP100
 ……ピーンポ−ン
呼び鈴が鳴った。
「……来たのかな?」
「私が出るわ」
重い頭を引きずりながら玄関へ行く。
 ガチャッ……
「………………」
「………………」
「「………………」」
 ……ガチャンッ
また近所の子供のイタズラかしら……?
眼鏡を外す。
拭く。
戻す。
 ガチャッ……
「………………」
「………………」
「「………………」」
 ……ガチャンッ
何だったの今のは……?
何故かまた頭が痛くなってきたような気がする。
何故かさっきよりも悲壮感が増していたような気もする。
 ガチャッ……
「………………」
「………………」
「「………………」」
 ……ガチャンッ
驚いた、まさか貞子……いえ、濡れ女子が出てくるとは思いもしなかった。
 ……無視しないでく〜だ〜さ〜い〜……
……とうとう幻聴まで聞こえてきた。
やっぱり京司の言うように少し休んでいた方が良いかもしれない。
記者がいつ来るのかは知らないが、来るまでの間寝ていれば少しは体調も回復するだろう。
うん、それが良い。
そう結論づけると、私は……

1・鍵をかけた。
2・もう一回だけドアを開けてみる事にした。
321恋と盲目 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/28(月) 07:45:03 ID:f+OBP100
 カチャンッ
……鍵をかけた。
うん、戸締りはしっかりとしなくちゃ。
 ……ふっ……ふええええぇぇぇぇんん……
何かを忘れているような気がする……
忘れていると言うよりは……見えた瞬間に忘れていると言うか……
……脳が理解するのを拒絶している?
駄目ね、自分でも何を考えているのかわからなくなってきた。
とにかく休みましょう、頭痛薬はどこだったかしら……
「緑、誰か来たんじゃないのかい?」
「さあ……たぶん近所の子供のイタズラだと思うわ」
残念だけど私にはこれ以上は言えない。
「悪いんだけど記者の方が来るまで仮眠をとってても良いかしら」
「体調……やっぱり悪いのかい?」
「頭が少し……ああ、そんな顔をしなくても大丈夫よ。少し眠れば治るわ」
市販の頭痛薬を水と一緒流し込む。
また悪夢を見る心配はあるけど、眠らない訳にもいかない。
さっきのチャイム、やはり気になるけど……まあ、多分大丈夫でしょう。
畳の香りと布団の感触に包まれると、私は今までの思考を手放そうとする。
それからそう長い時間はかからず、ゆっくりと……ゆっくりと……
……私は意識を手放した……



その後、結局某誌の記者は現れなかった。
何故かその記者の所属する編集部からの連絡もなかった。
私自身、そんな事があったのさえ数日の内に忘れ去るのであった……


余談だが、あの日失意の内に町を彷徨い歩く一人の女性記者の姿が……誰にも目撃されなかったそうだ。
322シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/28(月) 07:45:54 ID:f+OBP100
恋と盲目、完結!!!
長い間ご愛読ありがとうございました。
シベリア!の次回作に御期待ください。

……冗談ですよ、もちろん。
ロビンマスク曰く「これからトーナメント・マウンテン頂上に突き刺さる黄金のタッグトロフィー奪取のため、
いやでも血で血を洗う死闘を演じなければならないんじゃないか!
ならばこの入場セレモニーという、唯一敵と味方が争わずお披露目する時間だけでも…
平穏にやろうじゃないか…」と。
正直、不撓家も恋盲も過保護(大ブーイング必至、開き直りver)もこれからどんどんシリアスな内容になっていくので、
今の内に入れられるだけギャグを入れておこうという魂胆です。

>70
ところで……誰もリクエストしないのは……何故ですか……
323名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 08:24:45 ID:WpgkiM15
過保護再開するんですかキタ━━(゚∀゚)━━!!

>ところで……誰もリクエストしないのは……何故ですか……
いや、いいリクが浮かばなかったものでorz
324名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 10:32:42 ID:9GNbxGXu
それじゃ、遠慮なくリクしてみるぞ。
大槻と勇気さんに妙な誤解現場を見て天野さんが嫉妬すると……
不撓家でリクるってどうよorz 誰か大槻氏に救いの手を。
とりあえず、過保護再開にwktk
325名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 14:23:28 ID:Nn4CuBuJ
>>322
万人受け狙いバレバレだからじゃね?
326名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 16:38:07 ID:aWJWZ2Ab
>>322
俺としては新作リクよりも恋と盲目に集中して欲しかったからに決まっているジャマイカ!
327トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/08/28(月) 18:48:39 ID:Jid39WIy
では投下致します
328雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/08/28(月) 18:51:03 ID:Jid39WIy
 第9話『幸福が終わり、世界の終わりがはじまった』

 昼休みの屋上にて。
 俺こと、桧山剛は女の子から呼び出されていた。
もちろん、告白されるような状況ではないことはわかっている。だって、その女の子は。
 雪桜さんを苛めていた主犯格だから。
 長い金髪の髪をストレートに伸ばしている白い肌の少女は悠然と風を気持ち良さそうに受けていた。
 この容姿ならどんな男でも容易く彼女の虜にしてしまう魔性を感じられる。

「私は雨霧雫と言います。初めましてというべきでしょうか? 桧山君?」
「あんたは雪桜さんを苛めていた主犯格だろ」
「ええ。そうだったわね」

 今朝、登校していた時に下駄箱の中に手紙が置かれていた。
 内容は雪桜志穂に関する件について話したいと言ったものであった。
 クラスから苛められている雪桜さんに友達がいるはずもないので、仲良くしている俺に警告するために苛めグループの呼び出しだと考えた。
 実際に来てみたらビンゴだったので雨霧雫に警戒しながらも慎重に言葉を選んで、俺は言った。

「一体、何の用なんだ?」
「だから、手紙に書かれている通りに雪桜志穂に関する件について話したいと言っているでしょう? もう、桧山君はせっかちだよね」
「だったら、さっさと話せよ」
「桧山君は雪桜志穂の境遇に同情しているから、いつも一緒にいようとしているよね?」
 雨霧雫の言葉に胸が突き刺さるような痛みを感じていた。
 そう、俺が今までやってきた事は単純に言い換えるなら『同情』という二文字で済んでしまうことなんだ。

「でも、雪桜が同情される価値もない女だったらどうする?」

 はあ? この女は一体何を言おうとしているのだ。
 俺の中では女神にまで祭り上げられている雪桜さんを侮辱するような事を言う奴は八つ裂きにされてもおかしくはない。

「桧山君も無関係じゃないわ。だって、私達とあなたの接点は小学生無差別殺傷事件の被害者家族なんだから。
 わかりやすく言いましょうか?
 雪桜志穂は、あの事件の殺人犯『赤坂尚志』の娘。

 赤坂志穂なんだから」
329雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/08/28(月) 18:54:08 ID:Jid39WIy
「なんだってっっ!!??」
「私たちはあの赤坂志穂の父親によって、大切な家族を奪われてしまったのよ。
 殺人犯の娘がのうのうと平和に暮らしているのが憎かった。
 だから、苛めたの。この世界に赤坂志穂の居場所がないと徹底的に教えるためにね」
「そんなは嘘だろ?」
 もちろん、俺はこの女の言葉なんか信じたくはなかった。
 だが、出会った頃の雪桜さんの言動を思い出すと謎解きパズルの最後が頭の中で綺麗に埋まってゆく。


 雪桜さんが人を避ける理由。

 雪桜さんが苛められていた理由。

 雪桜志穂が殺人犯の娘、『赤坂志穂』だったからだ。


「嘘じゃないわよ。私は中学校時代はあの雪桜志穂と同じ中学だったんだから。
 それに桧山君もあの殺人犯に妹を殺されたんでしょう? どうして、あの女が家族を殺した男の娘だと気付かなかったの?」
「それは……」
「雪桜志穂を苛めているグループの連中は赤坂尚志によって、可愛い弟や妹を殺されたの。
 あの事件のおかげでどれほどの幸せだった家庭が崩壊したのか、被害者家族の桧山君がわからないはずないでしょう!! 
 私のお母さんはマスコミの過熱した取材と息子を失った悲しみで極度の欝病になってしまったわ。
 何度、自殺未遂したのかすらわからない。
 グループにいる連中なんか、父親が極度ストレスに耐えられず、厳しい現実から逃げるために酒で気を紛らわす毎日を送ってる。
 アルコール依存症になって、働きもせずにお酒が飲むお金がなくなると家族に暴力を振るうのよ。
 その子の体があちこちが痛々しい痣を付けられてるのも。
 全ては赤坂尚志のせいなのよ!!」 

 感情的になった雨霧雫が流れる濁流のように零してゆく。
 今まで送ってきた人生を現すように彼女の取り乱し方は普通ではなかった。

「だから、その娘の『赤坂志穂』がのほほんと暮らしているのが私たちは気に入らないの。
 赤坂尚志は司法で裁きを受ける。だったら、私たちが殺人犯に復讐するために『赤坂志穂』を地獄の底に突き落とす。
 そのためには苦しんで苦しんで死んで欲しいと私たちは思っているんだよ」

 憎悪の瞳が真っすぐに俺を見つめている。黒く濁りながらもはっきりと強い意志に背中に悪寒が走った。

「でも、雪桜さんには何の罪はないじゃないか?」
「桧山君が雪桜志穂が実は赤坂尚志の娘、赤坂志穂だと知った今。
 同じ事が果たして言えるのでしょうか? 
 あなたの妹を殺した殺人犯の娘と仲良くしていたら、無惨に殺された妹さんが喜ぶと思うの?」
「ぐっ……」
330雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/08/28(月) 18:57:38 ID:Jid39WIy

 雨霧雫の言う通りであった。
 真っ赤に染まったアスファルトと無惨に散らばっている小学生の遺体の数々。
 その中には彩乃だって含まれていたはずなんだ。
 まだ、小学生だった彩乃があんな風に殺されていいはずがなかった。
 楽しいこと、悲しいこと、辛かったこと。自分で勝ち得た物。
 桧山彩乃はそれらを体験もせずに、あれほど楽しみにしていた小学校を一ヵ月足らずも通えずに死んでしまった。

 それから、俺の家族は狂った。

 家に帰ることがない父親と母親の帰り待つ俺は、彩乃が生きていた頃の家族の温もりを求めても二度と手に入ることがなかった。
 彩乃はいなかった人として扱われて、私物や彩乃がいた証を両親は全て捨て去ったのだ。悲しみから逃げ去るために。
 そう考えて行くと過去に置き去ったはずの怒りと憎しみが胸元に宿るような気がしていた。
 赤坂尚志が憎い。殺したいほど、憎い。その衝動が簡単に抑えきれない。
 このような気持ちで雪桜さんに会う、いや、今まで通りの付き合いは不可能だ。
 この理不尽な感情は雪桜さんを憎んでしまう。赤坂尚志の血縁者である、赤坂志穂まで殺したい気持ちになってくる。

「まだ、綺麗事を言うつもりかしら?」
「うるさい。俺はアンタ達とは違うんだ!!」

 何もかもわかりきった卑しい声が俺の心を狂わせてゆく。
 雪桜さんを憎めと。憎まないと、それはあの事件で死んでしまった被害者達にとっての裏切りだと。
 そうやって、雨霧雫は常に叫び続けてきた。最初から決められていた結論に俺を懐柔するためにこの屋上を呼び出されたと気付くのが遅かった。

「フフフッ。一体何が私たちと違うと言うのですか? 雪桜志穂を苛めている私たちと雪桜志穂に憎いと思い始めている桧山君と何が違うのかな」
「俺は……」
「私たちのグループに入りませんか? 同じ仇敵を持つ桧山君なら歓迎されると思いますよ。
 そして、赤坂尚志に復讐しましょう。あの女をとことん不幸な目に遭わせることが亡くなったあの子達の供養になりますよ」
「なるわけねぇだろうがっっ!!」
「返事は保留ということにしておきますね」
 ちょうどその言葉が言い終わる時に昼休みの終わりを告げるチャイムの音が鳴り響いた。
「では。またお会いしましょう」
 悠然と振り返る背中に飛び蹴りを喰らわせたい気分になったが、俺は何とか踏み止まった。 
 雪桜さんを苛めるグループに入るつもりはないが、これ以上彼女と付き合う時間を持つことはないだろう。
「雪桜さんに思い切って話すしかないか」
 これまでの友人関係を白紙にすることを。



 その話を境に雪桜さんが壊れてゆくことになろうとは
 俺はこの時は思いもよらなかった。
331トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/08/28(月) 18:59:57 ID:Jid39WIy
次回から徐々に雪桜さんが壊れてゆく予定w
ヤンデレ女性を上手に書くのは難しいっス
では。また。お会いしましょう
332名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 19:01:43 ID:Nn4CuBuJ
>>331
ノシ乙
333名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 19:11:03 ID:KWQHkVTA
>>331
wktkして待っております
334名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 19:20:38 ID:VBNUtOrc
ブラマリはどうしたのだろう?
早く続きが読みたいです
335スウィッチブレイド・ナイフ ◆pmLYRh7rmU :2006/08/28(月) 19:45:00 ID:aVgNl0Iw
『第九話』

俺にはやらなくてはならないことがあった。
それは、森さんをあそこまで暴走させたゆかりから事情を聞くことだった。
離れるのが厭なのか、子供のようにごねる森さんを何とか押し止めて病院から抜け出す。
その代わりといってはなんだが、肩口に思いきり歯型を頂戴した。
服の上から触れても痛みがあり、インナー一枚になったら間違いなくばれる。
そして去り際に、
『あの女のところへ行ったら―――――――わかってますよね?』
という危険な微笑まで賜ってしまった。
あまりにキレイすぎる、完璧すぎる微笑。
ここまで来て、その切欠を作ったゆかりを問い詰めずに何ができるだろうか。

真冬の風に差し込む日差しに少しの勇気をもらって、俺は携帯を握り締めた。
とにかく今はゆかりに会って問い詰めるのが先だ。
学校へと向かう電車のホームでゆかりの番号にコールする。
いつもなら3コール内に出るか留守電につながるはずなのに今日はそのどちらでもない。
胸に膨らんでいく不安と焦燥感が思考をかき乱す。
再びコールするが、出ない。
苛立ちは焦りに変わっていた。
いつものゆかりと俺の距離が違う。
更につづけようとしたが、電車がきたので断念。
車内で通話するのはさすがに気まずいので、連絡の手段をメールに切り替えてみる。
文面はゆかりを心配する旨と、森さんと何があったのかを問う内容にした。
いきなり強い態度に出ても無駄だということは重々理解しているが、そこは不撓不屈の信念で望みたい。
今すぐに連絡をよこせ、と普段からは考えもよらないほどのストロングスタイルで攻めてみる。
矢張り返事はなかった。
苛立ちを抑えるために携帯を閉じたり開いたりして玩ぶが、デジタルの時計が、オープンのたびにすこし遅れて時の流れを伝えるだけ。

中央線の擦過音が耳を劈く。脳の位置がずれたのではないかと思うほど、いつになっても慣れない騒音だ。
思い返してみると、ゆかりは学校を休んだことがない。
気づけば俺の隣に座っているし、食事のときも常に傍にいた。
何より人気の高い教授の講義を聴くとき、ゆかりは席取り係だった。
在校生の数に較べて収容人数の少ない食堂の座席をいつの間にか確保しているのもゆかりだ。
それが突然なくなる。
今までの苛付きはきれいさっぱり消えてしまっていた。
その感情がもっと大きな波に攫われたからだ。神経が窄まって、心臓の音だけがやけに五月蝿い。
人の匂いでいっぱいの車内。だがこの中に人間的なつながりはどれくらいあるのだろうか。
偶然同じ時刻に、同じ電車に乗り合わせただけの希薄な関係。
ここで誰かが急病で倒れても、いったい何人がすぐさま救いの手を差し伸べるだろうか。
きっと、誰かが声をかけるだろうと知らぬ顔をするのが相場だ。
実際俺もそうするだろう。ただそれだけの、薄い、薄い空間。
336スウィッチブレイド・ナイフ ◆pmLYRh7rmU :2006/08/28(月) 19:45:37 ID:aVgNl0Iw
しかし、俺と森さん、ゆかりの関係はまったく違う。
ゆかりは大切な幼馴染。思春期を通り過ぎても弱まらなかった絆がある。
森さんは俺が事故に巻き込んでしまった人物。
被害者加害者の関係であったが、今はもっと別の形でつながっていると思いたい。
俺に見捨てられるという被害妄想に浸ってしまった森さんはいくつかの奇行に出たが、その意図はすべて俺に繋がっている。
ゆかりとの繋がりも同様だ。どちらかがナイフで切ったとしても、相互関係である以上片方がしっかりと相手に絡みつく。
なら、森さんとゆかりの関係はどうなのだろうか。
俺を中心に生まれたトライアングル――――
三角という以上、その二人にも糸が張っているはず。
それがどんな糸なのか・・・
俺はそれを今から追及しようとしているのだ。
すべてを捻じ曲げた二人の関係。
たとえそれが拗れて修復不可能なほどに歪んでいたとしても、俺にはそれを受け止める義務があるのではないだろうか。
だとしたら、俺はまっすぐ目の前を見て進むしかない。
昔からそれほど器用な人間ではないのだから。

突然ポケットに突っ込んだままだった携帯が振動した。
バックポケットでジーンズを揺らす振動は三回。メールだ。
俺は待ちわびたとばかりに携帯を開く。
はやる気持ちを抑えもせず、薬の切れた中毒者のような手つきで新着メールを確認した。

『ゆかり
題名:ごめんね
本文:電話出れなくてごめんね〜ちょっと体調崩したみたいで、今日は病院に行くから学校は休むからよろしくね☆
夕食はちゃんと作っておくから期待して待っててね!!学校が終ったらすぐ来てよ〜』

内容は水槽の金魚に餌をやろうとしたら、鰐が飛び出して腕を持っていかれるくらいに予想外だった。
勿論、逆の意味で。
安堵感と先ほどから張り詰めていたせいか、妙な疲労感が全身を奔る。
俺は電車のドアに背中を預けてほっと一息ついた。
朝から全力で走りこんだような虚脱感で暫く呆けながら、列車の揺れに体を預けた。
あぁ・・・やべぇ・・・ここ優先席の目の前だった、電源、切らなきゃ。
アホみたいに律儀な考えだけが、浮かんでは消えていた。
337スウィッチブレイド・ナイフ ◆pmLYRh7rmU :2006/08/28(月) 19:46:28 ID:aVgNl0Iw

ゆかりのいない講義というのはいやに殺風景なものだった。
何故か瞳には講堂が色あせて映り、普段なら仲間と大勢で囲む昼飯も何故か一人で摂りたくなった。
購買で買ったパンとペットボトルの緑茶。
室内から出ると、外はやはり真冬。
小春日和の太陽は早々に形を潜め、北風が乾いた悲鳴を上げていた。
キャンパス内を歩く者たちは一様にコートの襟を立て、マフラーの結びを強める。
その中でポツリとたっている自分を客観的に見ると、他人にはどう映るのだろうか。
ただの学生、その中の一人でしかないだろう。列車の中で感じたとおり、ワンオブゼムの、すれ違うだけの関係。
仲間との繋がりを強く感じられたこの場所でも、感じるのは何故か孤独感だけだった。
あぁどうかしてんぞ、俺。頭の中だけでぼやいてみる。
学校が終れば飯だ。ゆかりの飯。そこでゆかりに話を聞けばいい。
今は、握り締めたペットボトルの人工的な暖だけが俺のぬくもりだった。




普段は思いつくことのない大学という場所に不釣合いな感傷に浸りながらも、その日を滞りなく消化した俺は、講義終了後即刻電車に乗り込んだ。
流れ行く風景と夜に染まり行く都景。
電車が空気を切り裂いて進むたびに、追い越していく街の光。
一際大きな不眠街にたどり着いたかと思えば、家路に着くものであふれ帰る私鉄へ足早に乗り換える。
二十分ほど、電車の揺れに身を任せると目的の駅にたどり着く。
さっさと切符を精算して改札をくぐり、ざわめきだす黒い雲を眺めながらも俺は走り出した。

ガツガツとソールを鳴らし、俺はゆかりのマンションの階段を上っていた。
エレベーターを使うのもいいのだが、このマンションはあまりには階数が多い。
正直待つのがダルイので階段で行くことにしたのだ。
一階分上るたびに感じる焦燥感は加速していく。
自然とペースの上がる足に自分でも気づかない。
人の流れに身を任すことによって一時は抑えられていた気持ちが、フルスロットルで回転する。
心臓が大きな音を鳴らす。
今思えば、これは半鐘だったのだろう。
クラッチ盤を焦がすような感覚は、直感的な警鐘だったのだろう。

――――だが俺は、それに気づかず、ゆかりの部屋にたどり着いた。
338スウィッチブレイド・ナイフ ◆pmLYRh7rmU :2006/08/28(月) 19:47:24 ID:aVgNl0Iw

荒れる呼吸を何とか整え、とりあえずインターフォンを鳴らす。
・・・・無音。
間隔を置いて、再び鳴らす。

もう一度、鳴らす。
――――無反応
今度は間隔を狭めて、鳴らす。
――――沈黙
更に早いタイミングで、鳴らす。
――――無返答
時を置いた最後は、連打していた。

何だこの違和感は?
奇妙。
奇妙だ。

俺はすぐさま体を反転させ、管理人室へ向かう。
ゆかりとは確かに夕食の約束をした。
今までそういう類の約束を破ったことのないゆかりが、家にいないはずがない。
たとえ学校を休んだとしても、そんなことはありえない。

俺は再びエレベーターホールに向かい、階段を下ろうとして、言い知れぬ不快感に足を止めた。

心臓の鳴らす半鐘と、背筋を走り抜けていく悪寒が、強くなる。
冬なのに肌と服の隙間を滑り落ちていく冷や汗に、俺は階段を下ることをためらった。
339スウィッチブレイド・ナイフ ◆pmLYRh7rmU :2006/08/28(月) 19:48:24 ID:aVgNl0Iw

だが中途半端な姿勢でそうしていた所為か、不自然な衝撃に体が均衡を崩した。
気づけば緩やかな陥穽に全身を囚われているかのように。

ふらつく足元、ゆれる体。

突然の衝撃に、階段を受身も取れないまま転がり落ちていた。
ゆかりに固定されていた思考のせいか、実感がない。
思考だけがぽつりと宙を浮かんでいるよう。
手を伸ばして胸に戻すと、体を鈍い衝撃が襲う。
階段の縁に頭を打ちつけ、肘を殴打し、脇腹を打撲して、足が妙な方向に捻じ曲がっても、心はぽっかりと穴を開けたまま。

踊り場に転げ落ちて数瞬。

ようやく追いついてきた体のコントロールに全神経が痛みのオーケストラを奏でた。

ヘッタクソな演奏だ。統一性などない。
だからこそ混ざり合った思考と、正反対の痛みをリアルに刻み付けてくれる。
ぬるりといやな熱さが額から落ちて、視界を塞ぐ。

だが、たとえ視界をふさがれようとも、この細い目は、ぽんこつな耳は、霞む風景の中で逃してはならないものを捉えていた。



カツ、カツ、カツ・・・

この音は・・・

不気味なくらいに冴えていく思考。

まさか・・・
腹の辺りを這い回る、いやな、いやな感覚。

それが・・・


――――暗転した。

340 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/28(月) 19:55:27 ID:aVgNl0Iw

皆様お久しぶりです。
八月に入ってからバイト部屋に半ば監禁されていたのでまったく進みませんでした。
そして久しぶりの投稿がこんなダルイ文章でごめんなさい。
続きはなるべく近いうちに投下いたします。

あと『夕焼けの徒花』の作者様が起こしたクロックワーク・ホイールズ(仮)のプロットで作品を書いてみたのですが
序章だけですさまじい容量になってしまいました。
作者様の許可がいただけたら続きも書きたいと思います。
341名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 20:53:40 ID:K4gTB0cR
スウィッチブレイド ツイニキタ(゚∀゚)ッ!!
342名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 20:55:59 ID:PfIAxurU
>>340
こ、これはまさか監禁フラグ!?
プレッシャーをかけるほど続きに期待してます!
343『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/28(月) 21:11:38 ID:FOvh6JqC
「ゴール……ふぅ、海斗、またタイムが速くなっとるぞ。」
「え、本当ですか?」
今は体育の時間。五百メートル走でのタイムをはかり、ゴールしたとたんに先生に溜め息をつかれる。
「まったく……陸上部でもなければ運動部でもない。ましてや文化部だというのになんでそんなに足が速いんだ……」
「あ、あはは……」
「もったいない……三学年全部合わしてもダントツで速いぞ……どうだ?陸上部に入らんか?」
「い、いえ、遠慮しますよ。」
そうか、とつぶやきながら、先生は去っていく。まさかストーカーのせいで足が速くなったなんて自慢できるはずもなく、陸上部も当然はいらない。
「はぁ……体力もまだまだ余裕あるしな……」
五百を全力疾走してもまだ余る体力。うれしいのやら悲しいのやら。とても複雑な気持ちだ。
「はぁ、はぁ、か、海斗……おま…化け物かよ…」
クラスの友達が息絶え絶えになりながら聞いてくる。
「え……あはは、帰り道を走って帰れば、これぐらい普通じゃないかな?」
「いや…はぁ、はぁ…お前だけだと思うぜ、それは……」
344『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/28(月) 21:12:30 ID:FOvh6JqC
「はぁ…」
体育の授業が終わり、昼休みに入った。着替えようと廊下を歩き、教室に向かって行くと……
「かーいとっ!」
バッ
「う、うわっ?なに…って、沙恵ちゃんか……」
いきなり後ろから乗っかってきたのは、同じクラスの高坂沙恵ちゃん。こっちへ来て小さい頃からのお隣りさん……いわゆる幼馴染みというやつ。
グリグリ
「い、痛いよ!沙恵ちゃん!」
「むふふ〜。海斗ったら、また足速くなったんだって?」
「え?もう知ってるの?」
「うん、さっき先生に見せてもらったよ、記録。ほーんと、まいっちゃうよねぇ。陸上部のボクより速いんだからさ。あの速さは性別の差以外にもなにかあるね。」
「あ、あはは……」
うーん。さすがに彼女を廊下のど真ん中で背負ってるのは……人の目が恥ずかしいかな?
「ま、私には、この豊かな胸が重いからねー。」
「うわっぷ!」
その豊かな胸とやらをさらに押しつけてくる。豊かな、とはいえ他の女の子とあまり変わらない気もするけど……それは言わないのが優しさかな。
「うぅ……胸……当たってて苦しいよ……沙恵ちゃん…」
345『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/28(月) 21:13:48 ID:FOvh6JqC
「ボソ…当たってるんじゃなくて当ててるのに……」
「え?なに?」
「なんでもないよーっだ。それよりボク、お腹空いちゃったよ。」
「うん、じゃあまた屋上でまってて。」
「うんっ。」
背中からおりた沙恵ちゃんをみると、自称チャームポイントである髪を留めているリボンが、いつもと違っていた。
「あ、リボン、変えた?」
「え?…う、うん。」
「へぇ、似合ってる。かわいいよ。」
「っ〜〜〜!」
そう言って髪を撫でるとなぜか沙恵ちゃんは真っ赤になって黙ってしまった。
「?…どうしたの?」
「こ、こいつは〜……そうやって無意識にそんなこと言えちゃうから〜…もてちゃうのよ〜。」
「え?なに?」
「な、なんでもないっ!いちいち独り言を追及するなー!」
そう言い残して、走って去ってしまった。
「……な、なにか気に触るようなこと言っちゃったかな?……」
でも本当に似合ってたんだもんな。
〜〜♪
「ん……」
ピッ
『私にも、リボンが似合ってるって頭撫でてくれる?あの女より似合ってるって言ってくれるよね?海斗君?
(^〇^)/』
346『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/28(月) 21:15:07 ID:FOvh6JqC
「お兄ちゃん。」
「あ、麻理。」
中庭で待っていると、いつものようにお弁当を作ってくれている麻理が、弁当箱を届けに来てくれた。
「ありがとう、麻理。いつも悪いね、作らせちゃって。」
そう言って頭を撫でる。どうやら僕のこの癖は、昔から麻理にやっているかららしい。なにかをしてもらってうれしいと、ついつい頭を撫でてしまう。
「うぅ…べ、別に、お兄ちゃんのために作ったっていう訳じゃないんだからねっ。私のお弁当の余り物よ!」
「うん、それでもうれしいな。麻理が作ってくれるんだから。」
「あぁ〜うぅ〜……えと、お、お兄ちゃん?」
「なんだい?」
「そ、その……一緒にお昼…た、たべ、ない?」
あちゃ〜。いきなりっていうのはマズいなぁ。
「えと、ごめん。沙恵ちゃんと約束しちゃってて……」
「え?……そ、そう、なんだ……」
「うん、だからまた今度。それでいいかい?」
「い、いいわよ!別にどうしても一緒に食べたいっていうんじゃないんだからっ。ほら、沙恵さんが待ってるんでしょ?早く行けば?」
急に怒ったように行ってしまう麻理。
「うーん。女の子って難しいなぁ。」
347『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/28(月) 21:16:32 ID:FOvh6JqC
「某女子生徒は見た。」
「…ど、どうしたの?いきなり……」
屋上の金網にしがみついたままの沙恵ちゃん。
「海斗君は誰彼構わず頭を撫でる男の子でした。私だけの特別な行為じゃありませんでした。」
「……ああ、屋上から中庭、丸見えだもんね。あはは…恥ずかしいなぁ。別に、シスコンっていうわけじゃぁ…」
「海斗はお鈍さんだからわかってないだろうけど、麻理ちゃんは重度のブラコンよ。」
「えー…それはないと思うなぁ。だって自分で作った残り物だって言ったし…」
「その端から端まで全部手作りのお弁当がっ、手抜きに見える?ボクの冷凍物とは雲泥の差だよ?」
「うーん…でも、麻理が言ったんだから、きっと本当だよ。」
「あー!もう、この馬鹿兄貴わぁっ!」
「お、怒らないでよ。仲が悪いよりマシじゃないかよ。」
「仲が良過ぎるの。キミ達二人の場合は。ま、血が繋がってるぶん、向こうは不利だよねー。本人は唐変木だし、このままいけばボクが一番優勢かな?」
…また沙恵ちゃんがわからない事を言い始めたなぁ。
〜〜♪
『あははは、何言ってるんだろうね。私と海斗君との間に割り込める隙間なんて、これっぽっちも無いのに。妄想女って空しいね
┐('〜`;)┌』
348名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 21:46:28 ID:MdRNn8Vy
投下しますよ
349『とらとらシスター』Side姉虎:2006/08/28(月) 21:47:54 ID:MdRNn8Vy
 ベッドに腰掛けて大きく息を吐き、そのまま天井を見上げた。
 計画は全て上手くいっている、順調すぎて自分でも少し恐ろしくなってしまう程に、だ。
先程の夕食のときに聞いた話によれば青海ちゃんは死んでしまったらしい。楽観主義者の
ママでさえ沈黙したその場の空気はとても重く、あたしはそれに合わせて笑いを堪えるの
が大変だった。下を向いて肩を震わせていたことと目尻に浮かんだ涙を虎徹ちゃんは上手
い具合いに勘違いしてくれたから助かったけれども、それがなかったら本当に危なかった。
せっかく進めてきた計画がつまらないことでおじゃんになるの程、興冷めするものはない。
努力を無駄にされるのも嫌いだし、第一虎徹ちゃんには嫌われたくはなかったから。
 そんな思いで頑張った結果、神様はあたしを選んでくれた。正直なところ、今日一日で
こんなにも進むなんて思ってもみなかった。早くてもあと二周間はかかると思っていたし、
こんな状態になるのは更に先だと思っていた。
 やってみたことといえば言葉にするのもつまらない、下らないもの。虎徹ちゃんの常識
を破壊したときとあまり変わらない。サクラちゃんの嫉妬を扇り虎徹ちゃんに関係を強要
させるよう仕向けたときと何ら変わりはないものだ。ただ、その方向性を変えただけ。
 今度は嫉妬ではなく怒りを扇る。
350『とらとらシスター』Side姉虎:2006/08/28(月) 21:49:00 ID:MdRNn8Vy
 それだけのことだけれども、これは一つ目のように簡単にいくとは思ってはいなかった。
サクラちゃんが虎徹ちゃんを想っては自慰行為をしているのは知っていたから、あたしと
虎徹ちゃんがそういうことを見せつければ簡単に箍が外れそうなのは分かっていた。それ
を強く望んでいれば、他人が口火を切れば人は簡単に後続に着く。何も心配などせずに、
溺れることが出来るのは二年前のことで分かりきっていたから。
 でも、二つ目はそうはいかない。
 だからゆっくりと待っていた、それこそ心が折れそうになる程に我慢や忍耐を重ねて。
あたし自身が暴れたくなることも一度や二度ではなかった、それこそいつ怒りが爆発して
もおかしくない状態だったのだ。最終的にはあたしのものになると分かっていても、痛み
が完全になくなる訳ではない。それどころか、サクラちゃんの依存を増やす為に全て絞り
とるのを我慢し、虎徹ちゃんが青海ちゃんと仲良くしていることに耐え続けるのは辛かっ
た。二人の仲に対するサクラちゃんの怒りと悪意を扇る為に、自身の腹腸が煮えくり返る
のを表に出さずなだめるのはひたすら苦痛だった。
 その結果、サクラちゃんは爆発した。
 あたしがそうなる前にしてくれて良かった、という思いがある。今のサクラちゃんの様
子を見たときに安堵したことであたし自身もかなり危ないところまできていたと理解した
ときは、本当に肝が冷えた。だけれども結果は結果、あたしの勝利。
351『とらとらシスター』Side姉虎:2006/08/28(月) 21:51:48 ID:MdRNn8Vy
 青海ちゃんは死んだから。
 多分、正確に言えばサクラちゃんに殺されたんだと思う。そう考えることができる材料
は、山程ある。まず皆が虎徹ちゃんを慰めている中、サクラちゃんはあまり積極的ではな
かった。どんなに青海ちゃんと仲が悪くても、より近付くために優しい言葉を投げ掛ける
のは当然のこと。それなのに虎徹ちゃんから一歩引いていた。それは家族の皆に青海ちゃ
んの死を知らせた夕食の時間よりも前に、二人の間に何かがあったということだ。
 それが何かと言えば、多分虎徹ちゃんにばれてしまったということが妥当。虎徹ちゃん
に対して何も慰めの言わない、ともすれば冷血だと思われるような態度のサクラちゃんを
かばうように、夕食前に慰められたと言っていたけれども、絶対にそれだけではないのは
あたしから見てみれば一目瞭然だった。悲しみだけじゃない、怯えも混じったような瞳で
何度も虎徹ちゃんを見ていれば簡単に理解ができる。虎徹ちゃん自身も多分表に出さない
ように頑張っていたんだろうけれど、それでも注意深く見ていればサクラちゃんに対する
態度が少し妙なのか分かった。
 どんなやりとりが二人の間にあったのかは知らないけれど、サクラちゃんが青海ちゃん
を殺したのは間違いなく知っていた筈だ。慰めている途中で青海ちゃんを馬鹿にしたから、
という可能性も考えたけれど、それだけではあの態度にはならないだろう。ばれるにして
も、やったことがそれ程酷いことではなかったのならばまだ何とかなったのに。
352『とらとらシスター』Side姉虎:2006/08/28(月) 21:53:05 ID:MdRNn8Vy
 つくづく救いのない話だと思う。
 まぁ、あたしには好都合だけれど。
 しかし、殺人かぁ。 心の中でその物騒な単語を、何度か呟いた。
 サクラちゃんも、随分と思いきったことをしたものだ。さっきも考えたけれど、例えば
軽く怪我をさせる程度ならばまだ何とかなった。それは虎徹ちゃんも怒るだろうけれど、
取り返しのつかない状態にまではならない。上手く誤魔化せば事故と言い張ることもでき
るし、謝ったりして罪を消すこともできる。けれども、殺人だけはどうにもならない。罪
を消したりだとか償うだとかを遥かに超越した位置に存在するそれは、永遠に消えること
なく付き纏う。誰にもばれなくても、それは変わらない。
 本当に、馬鹿な娘。
 あたし個人としては、そこまでして貰わなくても良かった。確かに、もう青海ちゃんが
虎徹ちゃんに近寄ることはなくなったし、これ以上そちらに心がなびくこともなくなった。
けれども狂ってしまうのだ、計画が。本来なら暴れるだけ暴れて、単に青海ちゃんを引き
剥がしてもらうだけの役目だったのに、あろうことか殺してしまうなんて。普段はクール
ぶっているのに、中では相当熱くなっていたらしい。日常の中でもそんな一面を見せるこ
とも少なくなかったから実際に計画した訳だけれども、まさかここまでとは思いもよらな
かった。扇る量を間違えたあたしのミスでもあるけれど、この予測は不可能だ。
353『とらとらシスター』Side姉虎:2006/08/28(月) 21:54:25 ID:MdRNn8Vy
 しかし今回ではっきりと分かった、切れすぎる刃はしっかりと鞘に収めなければやがて
あたし自身もそれに切られることになりかねない。
 どうしよう、と考えたところで今の状況の滑稽さに気が付いた。
 間抜けすぎて笑えてくる。
 簡単に殺されてしまった青海ちゃんも、
 うっかり殺してしまったサクラちゃんも、
 匙加減を間違えてしまったあたし自身も。
 面白い。

 せっかく邪魔者が居なくなり、サクラちゃん自身もミスをして自分から遠ざかることに
なったのに、幾つもフォローが必要な部分が出来たということが。
 吐息を一つ。
 これからは、大仕事だ。虎徹ちゃんの意思こちらに向けて依存させたり、もしかしたら
あたしに向いてくるかもしれないサクラちゃんの棘を抜いたり、殺人が表に出ないように
二人を説得したり、二人を普通の兄妹に戻したり、やることは沢山ある。
 しかし、それを終えれば虎徹ちゃんは永遠にあたしのものになる。そうして二人で築き
あげるのは完全無欠に閉じられた、絶対無比の夢舞台。観客も立ち入らせず、役者が役者
の為だけに踊り続ける理想京。
 想像するだけで、体が芯の部分から震えてくる。
「あはっ。待っててね、虎徹ちゃん」
 展開が少し早いと思ったけれども、良いことをするのならば早いに越したことはない。
 込み上げてくる笑いを堪えながら、あたしはいつもの如く虎徹ちゃんの部屋へ向かった。
354ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/08/28(月) 21:57:10 ID:MdRNn8Vy
今回はこれで終わりです

ハイまた昔の癖の強さが戻ってきましたよ!?

『歌わない雨』の雪ちゃんを思い出したアナタ、正解です
355アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/28(月) 22:04:40 ID:mmpraIta
投下します
「チャ〜ン、チャン、チャ、チャ〜ン、チャン、チャ、チャ、チャ〜ン」
 結婚式の定番の音を一人、口ずさむ
 虚しく響く声が静かな空間に溶け込み、闇を深めた
 楽園だった、昨日までのこの場所は・・・・
 けれどその楽園は一日と経たずして崩壊し、私は奈落に落ちた
 ――――涼さんが誘拐された
 迂闊だった、あの女共がこんなにもはやく帰ってくるなんて思いもしなかった
 あの時だ、涼さんを誘き出すために涼さんの部屋と電話との間を空けておいた時だ
 少し目を離した隙に涼さんがどこかに電話を掛けてしまった
 推測だけど、涼さんはあの女共二人のどちらかに電話したんだ
 そして、電話を受けた内のどちらかが不審に思い帰ってきた
 すぐ切ったつもりだったので明確なことはわからないはずなのに
 ――――仮にも女だ、男の人よりかは勘は良いだろう
 事、涼さんのことになるとその察知能力は研ぎ澄まされるようだ
 どれも推測の域を出ない、けれども・・・・一つだけ揺ぎ無い事実がある
 嫌がる涼さんを無理やりにあの女共が連れ去ったということだ
 可哀想に、涼さんは私との絆を表す証であった腕輪を無理やりに剥ぎ取られ、悪女共に連れ攫われてしまった
 けど、あの悪女共にも誤算がある
 私を甘く見過ぎているという点が悪女共の最大の誤算だ
 あの悪女共は私よりも頭が悪い、成績もそうだけど、もっと後々のことも考えるべきだ
 第一、私が帰ってくるまでの時間は極僅か、その間だけで荷物をまとめ出ていくことなどできない
 近く必ずこの家に姿を現さねばならない、まぁ近場の店かなんかで買えば良いものもある
 なのでここに戻ってくる可能性は極めて低くなる
 そして・・・・第二―――――
「ふぅ〜、ここまでくれば安心だね〜」
 涼ちゃんは心底安心したのかその表情から笑みが読み取れた
 帰った私たちがまず目にしたのは陵辱しつくされた涼ちゃんだった
 目は虚ろ、残ったのは恐怖と深い傷痕だけ
 平静を装っていたけど、内から溢れ出ようとするあの女への殺意を抑えるのに必死だった
 ここ数ヶ月すっかり安心していた、涼ちゃんは嘘が大嫌いだ
 小さい頃からずっと一緒だった私は良く知っている
 涼ちゃんは小さい頃にお母さんに捨てられた
『必ず帰ってくるから待っててね』
 偽りの言葉、自分も連れて行ってくれと泣きじゃくる子供を黙らせる魔法の言葉
 まだ幼い涼ちゃんはその言葉を一途に信じ母と別れた場所でその人を待ち続けた
 魔法は何時か解けてしまう、涼ちゃんが小学生になった頃ようやく事実に気づいた
 心の拠り所を失った涼ちゃんは次第にやつれていった
 私と、なぜか同い年なのに涼ちゃんを『お兄ちゃん』と呼び始めた冬香は必死で涼ちゃんを元気付けようとした
 結果少しずつではあるけど涼ちゃんは生を取り戻した、そして今の心優しい涼ちゃんになった
 けれども『嘘』『偽り』その二つの事柄すべてに拒絶反応を示し問答無用で嫌悪し拒絶の意を表した
 だから、涼ちゃんにとって『嘘』『偽り』の二つの絶対不可侵条約を犯した南条秋乃を涼ちゃんが受け入れる訳がない
 その私の安易な発想がこの事態を招いてしまった
 ごめんね、涼ちゃん・・・・
 懺悔の念で胸をいっぱいにしながら、鍵穴をいじると案外もろかった手錠を外し、冬香は脚と口を縛る縄を解いた
 そのあと涼ちゃんの乱れた服を整え支度も早々に家を後にした
 家を出てしばらくしてから私は親戚の人に電話してしばらくの間、その家のご厄介になることにした
 その親戚は近場にいるので一時間ほどで目的地に着き私たちはホッと肩をなでおろした
「・・・・・顔色、悪いね」
 冬香が顔色の悪い涼ちゃんの額に手を伸ばした時だった
「――――ひぃ!!!」
 拒絶反応を示し涼ちゃんは後ろに引いた
「お、お兄ちゃん・・・・?」
 唖然とする冬香を涼ちゃんは恐怖心いっぱいで見つめている
「冬香・・・・」
 私が冬香の肩に手を置くと冬香はゆっくりとうなずいた
 それを合図に二人で涼ちゃんを抱きしめる
「・・・・・っ!」
 尚も恐れの念を崩さない涼ちゃんに二人で優しく呼びかける
「大丈夫だよ、お兄ちゃん」
「お姉ちゃんが守ってあげるからね」
「私もお兄ちゃんを守ってあげるんだから」
 のどかな田舎の村、静かな空間、あるのはすぐ横を流れる川のせせらぎと風になびく枝と葉が織り成す心地良い音のみ
 私たちは穏やかで暖かな抱擁をいつまでも交わしていた
 ―――――第二、ここに戻って来ないとなると親戚の家を頼るしかない
 それが誤算なのか?当然私にその親戚の家を探る手段は皆無だと思われているはず
 けれども私には涼さんのケータイがある、親戚の欄を用心深く見ていく
 履歴の中で頻繁に連絡を取った親戚を調べる
 いくら休みとはいえ親しい親戚でなくては泊めてくれなんて頼めない
 そしてそれはあの女共寄りのはず
 あの女共の旧姓の苗字で尚且つ一番頻繁に電話を掛けている所が逃走場所だ
 あった、ついでに自宅の履歴も見てみる、やはり同じ家に頻繁に電話を掛けている
 私は涼さんのケータイからその家に電話を掛けてみた
「もしもし、堺ですけど?」
「あ、私・・・・涼さんのクラスメイトなのですが、彼・・・・
 私の家に来たときケータイを忘れてしまったらしくて、自宅にかけたのですがいないようなんですよ
 なので履歴の一番上に電話した訳なんですけど」
「ああ、涼くんたちなら今、家に来ているんですよ」
 独特のなまりがある、田舎の人だ
「あの、私・・・・届けに行きたいのですけど、住所を教えていただけませんか?」
 疑うことを知らない田舎の人を騙し、私は住所を聞きだした
 もちろん、突然行って驚かせたいからこのことは黙っていてくれと付け加えておいた
 
 涼さん・・・・今から私は勇者になって魔王に攫われてしまった
 あなたを命を賭けて助けに行きます、もちろん途中で魔王を討伐してです
 魔王を倒して平和になったら二人だけのお城で幸せに暮らしましょう
 ―――――だから、もう少し待っててくださいね
359アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/28(月) 22:08:09 ID:mmpraIta
自分、頭の出来が良いほうではないので頭の良い子のように書けたか不安です
360『月夜の華』  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/28(月) 22:09:13 ID:mmpraIta
 私には幼馴染、最近になって恋人へと関係を変えた人がいる
 南雲和地・・・・スポーツ万能容姿端麗
 少女マンガに出てきても可笑しくない彼を持てて幸せなはずなのだけ・・・・ど!
 一つ、彼には欠点がある、それは・・・・
「どわ!」
 私が少し近づくと彼は私が近づいた分だけ私との距離を開けた
 1m、近くて遠いその距離を私は毎日のように歯がゆく思っていた
 彼の欠点それは、女性恐怖症・・・・女の人に触られただけで失神してしまうほどにそれは酷い
 理由は・・・・解らない
 でも小さい頃はそうではなかった、なにか理由があったんだ
 その理由を聞いても彼がはぐらかすだけ
 そして、少しは縮まったと思った距離も彼の女性恐怖症を境に途方もない距離に変わってしまった
 そんなある日私は賭けに出た
「あなたが私以上に好きな人が出来るまででいいから、付き合ってくれないかな」
 断られる、そう思った瞬間だった、彼は二つ返事で告白を受けてくれた
 け・・・・ど!
 和地の女性恐怖症は合いも変わらず、なのだ・・・・はぁ
 そりゃ、ため息も付きたくなるよ
361『月夜の華』 ◆1nYO.dfrdM :2006/08/28(月) 22:09:59 ID:mmpraIta
 そんなこんなで今日も退屈でしかない日常が始まる
 けれども今日は少し違った
 転校生が来る、普段とは違う刺激を受けクラスが歓喜している
 まぁ、私にはあまり関係ない話だ
 担任が教室に入ってきた瞬間、クラスがさらに沸いた
「な、あぁぁぁ―――――!!!!!」
 その姿を見た瞬間私ははしたなく大声を上げて担任と共に転校生を指差した
「な、おい!優華どうしたんだよいきなり、大声上げて・・・・」
 和地が両手で耳を覆い私の奇声をシャットアウトしながらそう言ってきた
 けれどもそれどころではなかった、教壇に立ちにこやかに笑んでいたのは私の親友の月夜だった
「あれれ〜、大声出しちゃって、はしたないな〜」
 アニメ声が私に向けられる、瞬間クラスの男が沸き涙した
「おお!女神だ!この学校に二人目の女神が舞い降りた!」
 口々に二代目の女神が誕生しらことを喜んでいる
 月夜はおどけて見せると私の元に・・・・
「あれ?」
 私をすり抜け後ろの席の和地のほうへと歩みを進めた
「リアルで逢うのは初めてだね、アラトさん♪」
 アラト?なにそれ?この人の名前は和地なのに・・・・なにを言ってるの?
「キミ、誰・・・・?」
 知らなくて当然か、とばかりに月夜はため息を付くと前かがみになり和地と目線を合わせた
「月夜を逆にしてみてよ」
「夜月?ヨズキ!?」
 な、なに?まったく付いていけないんだけど
「おぉ〜、ようやく解ってくれたのね〜」
 月夜は嬉しそうに和地の首に手を回し思い切りに抱きついた
「な!」
 胸がもやもたした、明らかに嫉妬だ、けれども彼には女性恐怖症がある
 すぐに発作を起こして拒絶を・・・・
「―――――あわわ」
 自分でも信じられないといった感じで戸惑う和地
 なぜに?そうなるのですか?
 私は嫉妬に任せて二人を無理やりに引き離した
「ああ〜、リアルでのめぐり逢いを二人で抱擁という形で喜んでいたのに!!!」
 不満げな声を出し、月夜は私を可愛らしく睨んだ
「・・・・」
 収まらない、モヤモヤも嫉妬も・・・・
 この子は私がしたくて仕方のないことを平然とやってのけた
 親友とはいえ、許せなかった
362名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 22:10:17 ID:OMUVzWCF
全作品の作者最高にGJ!!
ほんと神々には頭が上がりません。

>>315
ブラッドフォース最高!
なんかエロい匂いがするのがたまりません

>>331
早く次回作が読みたいです!!
雪桜さんの壊れっぷりが楽しみすぎる!!

>>340
みんなが好きな監禁きたか!?

>>347
ヒロインいきなり3人キターーーー!!
楽しみ!!

>>354
確かに当初の雰囲気と全然違う作品になりましたねー
何か過去の作品と雰囲気が似てきてる感じが・・・・
でもとらとら一番エロイよとらとら
363アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/28(月) 22:11:15 ID:mmpraIta
ここまで読んでくださった方、お疲れ様です

突然ですが、『ハピネス』と『生きてここに・・・アナザー』なのですがもう既に出来上がっておるのですが
どう考えてもこのスレ向きではない話になってしまったので、自分のサイトかなんかで公開せざる得なくなりました
本当に申し訳ありませんが、打ち切りという形ですね
と、言っても別の形で公開しますが・・・・

管理人様、「生きてここに・・・アナザー」と「ハピネス」をできれば削除していただけないでしょうか?
ワガママを言って「生きてここに・・・」と別に独立して作ってもらったのに本当に申し訳ありません

これからは姉妹日記と月夜の華、それとサノベのブラッドに全力投球でいきます
このような形になってしまい本当に申し訳ありません
364名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 22:16:03 ID:XK9OalYw
神々GJ!!凄まじい投下スピードだッ!!
まさか九月を待たずにこのスレも捨てられるのか?!

>>340
おかえり、愛してるぜ。
365名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 22:33:06 ID:Nq6/G0np
鬼ごっこ物凄く…怖いです…(((((;゚Д゚)))))
366名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 22:51:31 ID:RZaOjfWp
>『生きてここに・・・アナザー』
続き楽しみにしてたので打ち切りは辛イッス

某氏の某作品みたいにどこぞのアップローダーでアップとかしていただけないでしょうか?
別のサイトでアップしてくださるのなら検索キーとか教えてくださいませ

姉妹日記は直接対決迫るな感じで続き楽しみにしてます
367名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 23:11:37 ID:9tRNOxAm
スウィッチブレイド・ナイフが投下され、クロックワーク・ホイールズの続きが
読めるかもしれない。
しかし◆pmLYRh7rmU氏は一人しかいない。
これも一つの修羅場か・・・。
368名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 23:11:39 ID:aWJWZ2Ab
秋乃さんの病みに(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
月夜の華は女性恐怖症という新しい?タイプの主人公に期待
>>354
姉虎黒いよテラ黒スだよ。。。 大 好 き だ !
>>347
メールのストーカーっぷりに(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
ヒロインが出揃ってこれからどうなるのかwktkして待ってます
369名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 23:27:48 ID:5WeQkQUb
鬼ごっこいいな
展開は普通のラブコメなのに
メールが来るだけでこれほど印象が変わるとは
370名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 23:40:01 ID:34HFdr7R
ヒロイン全員ヤンデレのゲームとかねえかなあ…
371名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 23:49:12 ID:YpwMSEBV
だから流れ早いってっ!
もう…神多すぎだよ……

>義姉
涼子姉ちゃんktkr!
たとえモカさん賞賛レスがどれほど続こうとも俺は姉ちゃん一筋で……
いや、あのごめんなさいちょびっとミカたんにも浮気ごこr
372 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/29(火) 00:11:38 ID:9pR9nA59
>>340
なら書いてもらうしかないじゃないか!

・・・すみません、興奮のあまり一発叫びました。


>>阿修羅様
「クロックワーク・ホイールズ」の命名に、遅ばせながらお礼申し上げます。
つうかそのネーミングセンスの良さは何事ですか。もし私に子供が生まれたら、名付け親をお願いしようかってくらい。
あやかりてぇ〜・・・。

>>◆pmLYRh7rmU様
まさかあなたのような大物が名乗りをあげてくれるとは・・・。
私の気持ちは冒頭の叫びの通りです。プロットに縛られることなくご自由にお書きください。
しいて言うなら、ヒロインごとの立場や愛の形の違いにこだわって書いてもらえると嬉しいかも・・・。
 あと、スウィッチブレイドナイフGJです!
 ダルイなんてとんでもない。久々なので、むしろこんな嵐の前の静けさっぽい文章の方が読む方としても
感情移入しやすくていい感じだと思います。果たしてゆかりの反撃なのか、それとも森さんの追撃なのか・・・。



「夕焼けの徒花」は文章量のダイエット中、「ブラッド・フォース」は千早の性格に苦戦中です。
どちらも頑張って書いていくのでよろしくお願いします。
373 ◆uDrWoF795A :2006/08/29(火) 00:37:21 ID:Z75to0Hy
投下します
374作られた命 5 ◆uDrWoF795A :2006/08/29(火) 00:39:20 ID:Z75to0Hy
パソコンの画面越しの郷護を見ながら私は物思いにふける。


郷護と名乗る男と初めてあってから、だいぶ月日が経った。
始めのほうこそ疑いをもってかかったものだが今なら信じられる。
あの男、郷護なら信頼出来ると体全身が納得している。
止めろと言うのにしつこく雪奈と呼んでくることも許せる。
他の相手ではそうはいかないだろう。
仮にいつも聞こえていた天井からの声から呼ばれたら?
うん。
きっと私は不愉快になる。
怒りの感情を持つことは避けられないと予想する。
郷護の言葉には表現できない暖かみを感じる。
375作られた命 5 ◆uDrWoF795A :2006/08/29(火) 00:40:53 ID:Z75to0Hy
郷護のおかげで表情から感情を読めるようにもなった。
郷護は私に嘘をつかない。
だから私は前に郷護に尋ねてみた。
「私はヒトなのか?」
そしたら郷護は困った顔をして答えた。
「本当のことを言えば、たぶん雪奈は傷付く。それでも?」
「知りたい。」
「…雪奈は人だよ。でも普通の人じゃない。」
そして郷護は色々なことを教えてくれた。
私は遺伝子操作から生まれたこと、私が作られた目的、
私を生み出したのは郷護だったこと。
郷護はとても辛そうな顔で謝ってきた。私を犠牲にしてしまったと。
しかし私は特に腹をたてることはなかった。
376作られた命 5 ◆uDrWoF795A :2006/08/29(火) 00:42:35 ID:Z75to0Hy
私は自分の境遇を呪ったことなど一度も無いからだ。
逆にだ。例え今は罪悪感を持っているにしても、
郷護が私を必要とし、己の力を出し切って私を生み出した、
という事実が嬉しかった。でも、郷護は辛そうにしている。
だから私は伝えた。
郷護が私を作ってくれて、私に会いに来てくれてよかったと。
郷護は一瞬驚いて、微笑をうかべ、ありがとうと頭をさげた。
やはり郷護はいい奴だ。
その日はそれで郷護は帰っていったが
私は郷護ともっと一緒にいたいと思い始めていた。
郷護が私の人生に光を与えてくれる。そう、思い始めた。
377作られた命 5 ◆uDrWoF795A :2006/08/29(火) 00:44:20 ID:Z75to0Hy
郷護への思いが変わって以来、
日に日に郷護のことを考える時間が増えた。
郷護が会いに来てくれるのを待ち望むようになった。
ずっと郷護といたいと願った。
しかし、私には義務がある。
世界が望む成果をあげなければならない。
その為の研究に入るとき、郷護は側にいない。
エネルギーに関しては郷護は専門外だからだ。
そのことを聞いて、私は泣きそうになった。
絶望を感じ、わめきそうになった。
それでも郷護の目の前では泣きたくなかった私は
一つの約束をすることで自我を保った。
378作られた命 5 ◆uDrWoF795A :2006/08/29(火) 00:46:24 ID:Z75to0Hy
その約束とは、
私が新エネルギーを開発し、私の役目を終えたら郷護と一緒に暮らす。
そんなことだ。
拒否されることを怖がる間もなく私の提案に了解してくれたのが嬉しかった。

その約束から数日後、私はスーツ姿の人間達に連れていかれた。
遂に新しい研究所に行くんだ。
郷護に会えなくなるのは、身を引き裂かれる程辛いが、
郷護と暮らす。
その輝かしい未来の為に今は死ぬ気で頑張ろう。
そう誓うことで気を紛らわした。
379 ◆uDrWoF795A :2006/08/29(火) 00:50:02 ID:Z75to0Hy
以上です。
本当はここまでの場面、もっとダラダラと続いてましたが
スレ違いなので雪奈の独白?形式ですっ飛ばしました。
次回からはスレの方針に合う予定ですので…
380怪物姉発情記 ◆gPbPvQ478E :2006/08/29(火) 01:52:33 ID:eq5liUzm
投下します
381怪物姉発情記 ◆gPbPvQ478E :2006/08/29(火) 01:53:35 ID:eq5liUzm

「あれ、姉さん? なにそれ?」
 
 ユウキ・メイラーの部屋にて。
 掃除を終えてユウキのベッドの上でごろごろしていたセツノは、
 何やら大量の荷物を抱えて“帰宅”してきた姉に気付き、声をかけた。
 
「ただいまー。ちょっと図書館で本借りてきたの」
「へー。……って、ちょい待った。身分証明はどうしたのよ」
 ユメカとセツノは、帝国の暗部とも言える戦闘諜報員である。
 戸籍は持っているものの、それを軽々しく明らかにすることは禁じられている。
 当然、表の図書館で本を借りるために、なんてのは許されない。
 面倒くさい規則だが、立場的には仕方ないことなのだが――
 
「ユウキさんの使ったー」
 ユメカはあっさりとそう言い、机の上に手提げ袋の中身をばさばさと放り出した。
「……間借りしてる身で使う姉さんも姉さんだけど、男の身分証で女に貸し出す司書も司書よね……」
 セツノは半眼で溜息を吐く。
 まあ、厄介事に使ったとかそういうのではなく、本を借りただけなのだから、
 目くじらを立てるほどのものではないのかもしれない。
 
「まあそれはそれとして、どんな本借りてきたの? 私にも見せてよ」
 家事をする以外にはごろごろしているしかないので、セツノも基本的には暇だった。
「……しかしまあ、ずいぶんと節操ないというか、どういう基準で選んだの?」
 物語や私記、技術書や絵本、果てには艶本まで、一貫性というものが見当たらない。
「適当に選んでみたの。どうせ暇だし、色々読んでみようかなって」
 あっけらかんとユメカは言った。
 まあ確かに、とセツノも頷く。
「次の任務は未定だしね。……とりあえず、これとこれと、あとこれ借りるよ」
 ユメカが机の上に積んだ本を適当に見繕い、面白そうなのを数冊手に取った。
「……セっちゃん、そういうの読むんだ」
「む。いいじゃない別に。女の子が少女小説読んで何が悪いの?」
「いつもは『私、恋愛になんて興味ありませーん』って顔してるくせにー」
「べ、別に興味がないってわけじゃ……」
「ふーん。へーえ。ほーう。それもそっかー。ユウキさんに色目使っちゃってるしねー」
「そそそ、そんなことにゃいよ!?」
 
 ちなみに、ユウキは出勤中である。
 だというのに、この2人のくつろぎっぷりは。なんというか。
 
「セっちゃんの泥棒猫さん!」
「ああもう! 艶本でも読んでさない馬鹿姉!」


382怪物姉発情記 ◆gPbPvQ478E :2006/08/29(火) 01:54:20 ID:eq5liUzm

 
 
 
 
 
 空が赤みを帯びてきた頃。
 ユウキは自宅に向かってのんびりと歩いていた。
 考えているのは、家で留守番している姉妹のこと。
 喧嘩してないかなあ、とか、変なことしてないかなあ、とか、セツノちゃんの料理楽しみだなあ、とか。
 明日と明後日は週末で休みを貰えたので、3人でどこかに出かけるのも良いかもしれない。
 とか何とか。適当なことをつらつらと考えていたら、ふと、見覚えのある姿を見つけた。
 向こうもこちらを見つけたようで、何やらもの凄い勢いで駆けてきた。
 
「セツノちゃん? 食材の買い出しですか?」
 と、声をかけるも。
「お兄さん! こっち!」
 焦った様子のセツノに、ぐい、と腕を掴まれて。
「ちょ!? うわあっ!」
 そのまま強引に引っ張られて、裏路地の方に連れ込まれた。
 
「ど、どうかしたんですか?」
 目を白黒させて訊ねるユウキに、セツノは切迫した表情で。
 
「お兄さん! 逃げて!」
 
 その訴えに、ユウキの思考はクリアになる。
 どう見ても緊急事態だ。ここで慌ててはいけない。
 とにかく冷静に、事態の把握に努めるべきだ。
 
「――何があったんですか?」
「ちょっと予想外というか、ある意味予想通りというか……。
 とにかく、お兄さんの身に危険が迫ってます!
 ほとぼりが冷めるまで、ひとまず逃げるか、身を隠してほしいんです!」
 荒事にも慣れているであろうセツノがここまで取り乱すとは、よほどの緊急事態なのだろう。
 セツノの所属する組織と敵対している何者かが、ユウキを人質にしようとしているのかもしれない。
 荒事となったら、自分は完全に役立たずだ。専門家の意見に従うのが最適だろう。
 しかし、セツノがここまで慌てるほどの相手とは、一体どれほどの存在なのか――
 
「差し支えなければ教えてください。僕なりに対策を立てられるかもしれません。
 僕の身に迫る危険とは、何者ですか?」
 
 ユウキのその問いに、セツノは数瞬ほど沈黙して。
 こう、言った。
 
 
「――馬鹿姉が、発情期に入りました」
 
 
383怪物姉発情記 ◆gPbPvQ478E :2006/08/29(火) 01:54:57 ID:eq5liUzm

 聞き間違いかな、と思った。
 数秒ほど呆然としてから、ユウキは己の頬を抓った。
 痛い。どうやら夢ではないらしい。
 
「えっと……発情期?」
 
 ユウキの記憶が正しければ、人間には発情期はないはずだ。
 犬や猫じゃあるまいし、発情期なんて……。
 
「はい。姉さんはある意味、お兄さんに対して年中発情期のようなものですが、
 ちょっと今回は洒落にならないというか、お兄さんの命が脅かされるというか……」
 
 待て。
 ちょっと待て。待ってくれ。待ってくださいマジで。
 
 いつも以上、ということなのか!?
 
 ユメカが年中発情期というのは、ユウキも(失礼だとは思うが)納得である。
 毎晩五回も六回も搾り取られれば、フォローしようという気も失せるものだ。
 しかし――それを上回る、とは、一体どういうことなのか。
 まさか二桁なのだろうか。それは流石に、生命の危機である。
 絞り尽くされるとか枯れるとかを通り越して、死にそうだ。
 
「下手したら3桁に届いてもおかしくありません……。
 戦闘訓練では2日ぶっ続けで戦い続けることもできる持久力の持ち主ですから。
 ……ちょ、お兄さん!? 気持ちはわかりますが気を確かに!」
 
 危うく気絶しそうになったユウキを、がっくんがっくんと揺らして現実に立ち返らせるセツノ。
 
「す、すみません……。ちょっと絶望しちゃいました」
「姉が迷惑かけてます……」
「ああいえ、セツノちゃんが気にすることじゃありませんよ」
 しょんぼりしたセツノを見て、咄嗟にユウキはフォローする。
 頭を優しく撫でてあげると、セツノは一瞬にへらと頬を緩ませて、慌てて表情を引き締めた。

384怪物姉発情記 ◆gPbPvQ478E :2006/08/29(火) 01:55:39 ID:eq5liUzm

「と、とにかく! 姉さんが落ち着くまで、お兄さんはどこかに身を隠しててください!
 知人の家に泊まらせていただくか、宿を取るかしてください。
 必要経費は、私の貯金箱から出しますから……」
「いえ、そこまでして頂かなくても結構ですよ。
 サラが自宅で酒を飲もうと言ってましたし、たぶん泊めてくれるかと――」
「サラ? 変わった名前の男性ですね」
「いえ、サラは女性ですが、学院生時代からの付き合いですから、多分気兼ねなく泊め」
「お兄さん、宿を取りましょう」
「え? いえ、ですからサラに――」
「当日にいきなりお邪魔するなんて迷惑ですって絶対!
 馬鹿姉の不祥事でお兄さんの友人関係に影響を与えるわけにはいきません!
 ですからここは宿を取って――そうだ、ご、護衛に私もご一緒します!
 姉さんが実力行使に出たら厄介ですので! これで完璧です! こうしましょう!」
「え、えっと……?」
 
 と、そんな話をしていたところで。
 突然、セツノの表情が鋭くなった。
 
「――姉さんが来ました」
 
「え?」
「……静かに。呼吸は自然に、身体はできるだけ動かさないようにお願いします」
「……(こくこく)」
「現在、表通りの向こう側を走っています。
 勘で動いてるんでしょうけど、姉さんの勘は馬鹿にできません。 見つかる前に移動して、近場の宿に潜り込みましょう」
「…………」
 移動したら、気配とかそういうのでばれるのではないか、とユウキは思った。
 その疑問を察したのか、セツノは安心させるように、
「大丈夫です。姉さん、戦闘以外はからっきしですから。
 索敵も苦手なので、この距離なら静かに移動すれば気付かれません」
 
 そう言って、通りの方をこっそりと見る。
 つられてユウキもそちらに視線を向けると――いた。
 
 露店で、何やら買い物をしているユメカの姿が、見えた。
 
(って、普通に買い物しているように見えますけど?)
(……いえ、よく見てください。姉の買おうとしてるものを)
(…………遠くて見えません)
(豚の睾丸と毒抜き蛇ですね。――精力剤の材料です)
(……要するに、いつも以上になる、と?)
(……多分、違うと思います。先程も言ったとおり、姉さんの持久力は異常です。
 アレは多分――お兄さんを自分と同じくらい保たせるためかと)
 
 3桁、腹上死、といった単語が何故か浮かんできた。
 まあそれはそれとして。

385怪物姉発情記 ◆gPbPvQ478E :2006/08/29(火) 01:56:30 ID:eq5liUzm

 逃げなければ。
 ユウキとセツノの意識は、ここで完全に一致した。
 幸い、今のユメカは買い物に夢中になっている。
 それの効果を空想しているのか、頬がだらしなく緩んでいるのが遠目からでもよくわかった。
 
 今のうちに。
 
 言葉に出さずに、目を合わせて、ユウキとセツノは頷きあった。
 そしてそのまま、できる限り音を立てないように移動する。
 幸いなことに、ユウキはこの辺りの地理に詳しかった。
 即座に身を隠せる宿も、少なからず心当たりがある。
 ひとまずそこに退避して、今後の対策を練るべきだろう。
 
 そう、思ったが。
 
 セツノもユウキも。
 ユメカの勘を、甘く見ていた。
 
 
「ユウキさん、見つけたー!」
 
 
 ぎくり、と2人の動きが止まる。
 氷漬けにされたかのように、その場で彫刻の如く固まる2人。
 ひた……ひた……と足音が近付いてきている。
 
「ユウキさんユウキさんー。お仕事でお疲れですよねー?
 ですから、その疲れを私が吹っ飛ばしてあげますよー。
 さっき読んだ本によりますとね、体力の続く限りえっちなことをすれば、翌日は気力満タンになるそうで」
 
 吹っ飛ぶのは命じゃなかろうか。
 少なくともユウキの身体は、丸二日性行為を続けて無事でいられるほど丈夫にはできていない。
 しかしそんなユウキの考えなど全く関係なく、やる気満々で近付いてくるユメカの気配。
 
(……お兄さん。私が時間を稼ぎます。その隙に……!)
(そ、そんな!?)
(大丈夫。負ける気なんてありません。きっと姉さんをやっつけますから。
 ――だから、この戦いが終わったら、私のお願いを、ひとつだけ、聞いてください)
(セツノちゃん……!)
 目頭が、熱くなった。


386怪物姉発情記 ◆gPbPvQ478E :2006/08/29(火) 01:57:28 ID:eq5liUzm

「――さあ行って、お兄さん! 大丈夫、すぐに追いつきますから!」
 
 叫んで、姉と対峙するセツノ。
 ユウキは涙を堪え、その場を駆けだした。
 
 背中に届くのは、振り返るのも恐ろしい殺気の嵐。
 どうか無事に――そう祈りながら、ユウキは裏路地を、駆けた。
 
 
 
 
 
 その日。
 帝都中央の裏通りにて。
 怪物同士がぶつかり合ったかのような戦闘があったと噂されるが。
 真偽のほどは定かではなく。
 いつしか、人々の記憶からも薄れていった。
 
「……畜生……エロ姉め…………ガクリ」
 
 
 
 
 
 
 そして。
 
 最終的には13時間で許してもらえた。
 臨死体験というものを生まれて初めて体験したユウキだった。
 
 
 結局、そのまま動けなくなっってしまったため、
 週末はベッドの上で過ごすことになってしまった。
 ぐったりするユウキと、健康に良い料理を一生懸命作るセツノ。
 そして。
 
 
 ベッドの上で灰の如き抜け殻になっていたユウキに、明るい声がかけられる。
「ユウキさんユウキさーん。
 この本によりますと、三回限度を迎えると、耐久力はよりいっそうアップするみたいで」
「……ユメカさん」
「はい?」
「読書禁止」
「そんな!?」



387 ◆gPbPvQ478E :2006/08/29(火) 01:58:31 ID:eq5liUzm
……外伝のヒロインはユメカですよ?
ユメカなんですってば。
388名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 01:59:10 ID:s9mK5MyF
リアルタイムGJ!!!!!!!!!

せっちゃんかわいいよせっちゃん
389名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 02:28:22 ID:IYM+kFWc
うああぁぁぁぁぁ!
やべぇ!セッちゃん可愛すぎるよぉぉぉ!!!
なんか密かにセッちゃんフラグ立ちそうな気がするのは気のせいでしょうかw
っていうか俺の脳内では既に立っと(ry
390名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 02:34:33 ID:B3zbJz1u
覚悟とは、本来不幸なものと誰かが言った気がしますが

逃げちゃダメだ×3

神様、僕をエロ姉発情期に乗せてください。
エロ姉と魂のルフランしたいです。
391名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 03:30:10 ID:gh4LLjWk
うむ、セッちゃん可愛いいよセッちゃん(*´д`*)ハァハァ

>>379
この嫉妬や独占欲のバックボーンを活かして、次回からの嫉妬展開を期待してますね
392名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 13:26:32 ID:Rd81kL54
>>379
いよいよ嫉妬がハァハァ
携帯という打つのが大変なものからいつもご苦労様です!!
>>387
ドウ見てもユメカガヒロインですよ、こんなエロイなんて羨ましいじゃないか!
393名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 14:31:31 ID:vtq4bUha
え?セッちゃんメインヒロインじゃなかったの?
394名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 14:35:17 ID:9I3KlqYY
だからユウキがヒロインだとなんかい言ったら(ry
395うじひめっ! Vol.12B(後編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/29(火) 19:36:23 ID:0rd7GpL7
「ん……んんんんんんん!」
 猪突猛進。ひたすら押し付けるだけの、姉そっくりな拙い接吻。
 ごつっと歯が当たる。
 まったく、こんなところで似ているとは……本当に姉妹なんだな。
 ついつい微笑ましくなって、俺は彼女の唇をこじ開ける。
 童貞は今朝卒業したばかりの俺だが――キスならそこらの中坊には負けんど!
「むふうっ!?」
 開いた口から舌に乗せた唾液を流し込んでやると、てきめんにパニックを起こした。
 目を白黒させ、反射的に突き飛ばそうと腕を伸ばし。
「………ッ」
 何かに堪えるような色を瞳に浮かべた後、ゆっくりと瞼を閉ざした。
 ――ぎゅっ
 突き飛ばしてくるはずだった手は、俺の二の腕を痛いほどしっかり掴んでくる。

 逃げない――!

 その気持ちが一途に伝わってきた。俺がどんなに口腔を舌先で蹂躙しても、抗わない。
 ただ唇と舌と唾がぐちょぐちょと混ざり合う粘膜的な世界に身を委ねている。
 ほう、見た目に違わず根性はあるようだな。
 一分、二分。
 ディープキスの時間はまたたく間に過ぎていった。
「あ――っ!」
 彼女の膝は、終わるのが待てなかったらしい。
 カクンと力が抜けて、俺の体に縋りつきながらずるずると垂れ下がっていく。
 くっくっくっ。中学生には少し刺激が強かったか――
 と、小学校に上がる前にディープの経験を済ませていた俺が嘯いてみる。
「ア……ハァ……すご……ハァ……」
 最終的に、腰にしがみ付くような姿勢で落ち着いた。
 なにげにマズい位置だった。俺の分身が赤射しかねない危険性を多大に孕んでいた。
「フッ。何を証明したかったのかよく分からんが、お子ちゃまはもう寝なさァい」
 屈んで彼女を立ち上がらせようとしたが。
 何を考えたのか、赤光敏感少女は俺の股間にぐっと頬を押し付けた。
 お……
 ふ、ふっくらとした感触が柔らかすぎて……俺の俺の欲望が、ががががが。
「――ハァ! ハハ! 和彦、あなたの急所がビクビクいってるわ! ハハ! あれだけ余裕ぶっておいて、
自分だってギリギリなんじゃないの! ふ、ふん! わたしがき、生娘だからって、偉そうにしないでよ!」
 まさかの反撃。むろん、性的な意味でのだ。
 ――生意気でSっ気のある女の子がエロ方面のタガを外すと、底なしに恐ろしい事態を招く!
 これは幼馴染みである遥香を観察したうえで導いた、俺の経験則だ!
「おとなしく往生なさい! ハハ! 姉様が穢されるまでもなく、わたしがあなたを仕留めてあげるわ!」
 得意げに、しかし何かが狂った表情で笑う。マンガで言うと、そう、ぐるぐる目をした状態。
「ま、待て! この文脈で逆レイプかよ!? 冗談じゃねえ!」
 慌てて引き剥がそうとするがトゥーシーは俺の尻にがっしり手を回し、身動きを取れなくした。
「くすっ――」
 真っ赤な唇を、同じくらいに鮮やかな舌でぺろりと舐めてから。
 ちぃぃ……とファスナーを歯で咥えて引き下ろす!
「んー、むにゅ……」
 もぞもぞとトランクスの隙間に口を突っ込んだ!
「むにょ」
 イントゥ・ザ・ファッキンガム宮殿!
 半勃ちになっている我が愚息の皮を唇で摘んで、この光溢れる世界に引きずり出してきた。
「アッハハ! 観念なさい! わたしが! あなたを! 姉様相手に何もできなくなるほどコテンパンしてあげ――」

「――誰が、誰相手に、何をできなくするほどのことをするって?」

 そのとき。部屋の入り口に、静かな声で問う人物がいて。
 振り向くと、鬼のような微笑みを張り付かせて仁王立ちしていらっしゃいましたよ?
396うじひめっ! Vol.12B(後編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/29(火) 19:47:17 ID:0rd7GpL7
 かくして。
 それはそれはもうすっげーことになりました。
 ギャフン。



 具体的にどうすっげーかと言うと。
「やだ! 姉様がするんだったらわたしもする! 仲間外れなんてイヤ! イヤよ! 拗ねてやるんだから!」
 と頑なに駄々をこねて無茶なことを請願する子、つまり頑駄無な子に手を焼いて。
 「――分かった」とアイヴァンホーが折れてしまったことであって。

 要するに。
 俺は、「令嬢姉妹の処女膜を交互にブチ抜いてそれぞれの子宮にたっぷり中出しする」という
ダブル中出しシチュエーション――コード名「中原中也」をあくまで現実のものとして叶えるハメに
なったんだからさあ大変ってものですよ大哥!

「や、優しくしてくれなくてもいい……ひと思いにやってくれ! ぐっ……!」
「ああ! 姉様の、まだ穢れを知らない秘所に! 和彦の生殖器が荒々しく捻じ込まれて行くわ!」
「お、大きな声で実況しないでちょうだい、トゥーシー! 近所に聞こえたらどうし……あうう!」
「姉様! なんて痛々しいお顔……! 無理もないわ! こんなもの、本来挿れるべきものじゃないわよ!」
「そ、そうでもない……少し、慣れてきた。和彦、動いてくれて構わないぞ」
「まあ! 姉様ったら強がって! こんなに激しく出たり入ったりしてるのだからツラいのは当然よ!」
「あなたは黙りなさい……! ほら和彦。いいから、遠慮しないで好きなだけ突くがよい」
「犯されながらも毅然とした表情を見せる姉様……! かっこいいわ! 下はシーツがすごいことになってるけど!」
「だから実況はやめなさいってば! あ、あなたはおとなしく部屋の隅で自慰でもしてなさい!」
「んまあ! 信じられない! 姉様がそんなことを口にするなんて……和彦、こんな姉様はもっと犯っておしまいなさい!」
「いつの間にあなたが命令する立場に!? あ!? か、和彦まで悪ノリして……や、やめて!?」
「! すごい! すごいわ! こんな格好でするだなんて……まさに肉体の神秘! 拷問的性交!」
「あああああっ! 痛い痛い痛いっ! さすがにこれは無茶だっ、やめてくれっ、元に戻せっ!!」
「ハハ! アハハハハハハ! アッハハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハハ!」
「トゥーシーが壊れた!? し、しっかりなさい! こっぴどく責め苛まれてるのはわたしの方でしょうに!」
「なんだか! 姉様が卑らしく惨めに嬲られているサマを見て! わたし、とっても楽しくなってまいりました!」
「目がぐるぐる渦巻きになってるー!? まずいぞ、和彦、このまま放置するのは大変だっ!」
「さあ和彦! もっとハードに! もっとコアに! もっとセンスオブワンダーに姉様を……ってあれ!?」
「ふう、トゥーシー。お姉ちゃんは無事に純潔を捧げ終わったから、今度はあなたの番ね」
「そ、そんな! 姉様が! 妹であるわたしを押さえつけて! 処女を奪わせる手助けをするなんて!」
「……ショック?」
「いえ! 最っ高に燃えるお膳立てですわ! わたし! こういう状況って大好き!」
「まあ……こんな変な子だが。成り行きでもらってやってくれ」
「う……あああ! 姉様を突き刺して破瓜の血を浴びた朱槍が! 温かい感触もそのままにわたしの中へぇ!」
「和彦の熱とわたしの蜜を同時に感じるが良い、トゥーシー……」
「痛い! 痛い! 痛い! ところで和彦! 姉様とわたし、どちらが気持ちいい!? わたし!? わたしの方!?」
「――ふふ、分かるだろうが……答え次第で命がなくなるものと思えよ?」
「痛っ! 痛っ! 本当に痛っ! あと、答えは言葉にしなくてもよろしいわ! 『わたし』なら! そのまま射精して!」
「なっ!? 和彦、もう限界が来てるのか!? ちょっ、ちょっと早すぎないかそれは!?」
「ハハ! きっと! わたしの体がフィットしすぎて! 姉様よりも全然早く達しそうなのよ! ハハ!」
「う、うるさいっ! もういいから抜くんだ! 順番から言ってわたしの方に射精するのが先だろう!」
「ハハハハハハ! させない! このまま! 咥え込んで! わたしが! 和彦の欲望を搾り取るわっ!」

 マジで大変だった……揃って初体験だというのに、メチャクチャ騒がしい姉妹で……。
 翌日、隣家から苦情が来た。
「まったく! もっと静かにヤりたまえよ! 『風雲黙示録』のオープニングか君らは!」
 もちろん俺は平謝りする他になかった。
397うじひめっ! Vol.12B(後編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/29(火) 19:52:35 ID:0rd7GpL7
 そんなこんなで、俺は半人半蛆の姉妹と淫猥な肉欲の日々に溺れた。
「ん……むちゅ……れろ……ふ……うん……」
 姉のアイヴァンホーは銀色のボブカットが涼しげな十九歳。遥香の保有するキス魔菌に感染したのか唇にご執心。
 鼻ブレスができないせいもあって息継ぎをしながらのベーゼだが、ノーズレスの特徴を活かし、本来なら鼻が邪魔に
なってできないような唇技や舌技を繰り出すことができるようになった。キス道は奥が深い。
 ターコイズブルーの淡い碧と見詰め合いながら唇をちゅぱちゅぱさせ、空いた片手で乳をぐねぐね揉んだ。
 彼女の胸は予想を凌駕する大きさで、しかも非常に柔らかく不定形。プリンを超越せし軟体乳だった。
 指が沈み込む感触が心地良く、ときにムスコを挟んで擦ってもらうこともあったが、今はやらない。
 なぜなら。
「ん……ちゅ、ちゅぱ……ふ……ん……ちゅるる……じゅぶっ! ぷはっ……はぁ……れろ……ん……
ちゅ、ちゅ……ちゅぷんっ! ぷちゃ……ぴちゃ……ぢゅるるるる……もご……れろ……っあはぁ……!」
 トゥーシーが俺の股間に顔を埋めてメッチャ凄い勢いでち○こしゃぶってるところだから。
 ――妹のトゥーシー(又左衛門尉利家)は紅に染まった縦ロールが目にも鮮やかな十四歳。
 初日にやり損ねたフェラチオを日を改めて実践してみたところ筋が良く、頭を撫で撫でしながら誉めてみたら
俄然やる気を出してハマってしまった。彼女も鼻がないから息を継ぎつつの口淫である。
 さっきからずっと屹立した陰茎が真紅の唇に出たり入ったり忙しなくしております。竿そのもののみならず、
袋や陰毛のあたりまで唾液でびしょびしょ。要領を覚えた彼女はしきりに変化を加えて吸ったり舐めたり咥えたり
ストロークかけたり巧妙に制御して口蓋全体で嬲ったり口から離してアウトサイドでちょんちょんと舌先つつきを
仕掛けたり裏筋を辿ったりカリ首を擦ったり袋に達して夏の暑さで弛んだそれを叱咤すべく再び吸ったり舐めたり
口に含んで転がし袋越しにちょっと睾丸を引っ張ってみたりとやりたい放題ですよ奥さん。うっ。
 油断するとイキそうになる。随分長い時間こうしているせいもあるが、確実に技術力が上がっている。
「うああ……気持ちいいなあ……」
 呻いた俺の心情を察してか、縦ロール赤毛の総本山である頭部がまたえらく発奮して激しく上下。水音が淫々と響き、
長く続いたエロスのショウタイムにフィナーレをもたらすべくラストスパートをかける。
 中学生の分際で覚えやがった、実にけしからんフェラチオ――ペニスが喉へ深く深く呑み込まれていく。
 さすが“ドリル”と畏怖されるほどのリセエンヌ、抉るようなディープスロートをかましてくれるぜ。
 お前はもう「エースストライカー」より「チ○コストライカー」に改名した方がいいと思う。
 にしても真っ赤な唇がイヤらしいなぁ。それこそ血を吸った蛭のよう。伏せ目の色っぽい視線を舌と一緒に亀頭へ
這わせ、俺の赤黒い亀頭を唇・舌・瞳の三点からなる深紅に染め上げる。伸ばした舌先で鈴口のあたりをほじくられる
刺激は何とも言い難く、魂をけらくへ誘っていく。
 こりゃあほんにたまらんねぇ。ええばい、ええばい。とオヤジ臭い感慨に耽ることしきり。
 陽根にまぶされた唾液が長い睫毛へ付け返されて雫をつくるのも構わず、緋の少女はなおも没頭。
「おおおおおう……あうあー……」
 来る日も来る日もヤリまくったせいか、ここのところ、とみに思考力が鈍ってきた気がする。
 開頭手術したら腐って蛆の湧いた脳みそが見つかるんじゃないだろうか。まさにブレインデッド。
 でもま、いっか、という気持ちが大。「パンツ履く暇もない」を地で行く生活は脳みそを捨てる価値ありだ。
 年上と年下、美人姉妹の両方が揃ってる――特に妹の締まりがイイ――状況でいったい何を恐れる必要があるものか。
「ハッハー、今の俺に怖いもんなんかねー、矢でも鉄砲でも芝刈り機でも持ってこいってんだオラー」
 気を大きくして挑発した、ちょうどそのとき。
 ギィィィ――って不吉な軋みを上げて開いた扉の向こうから。

「こ、こんの……泥棒蛆どもがあああ……!」

 首をギプス固定した遥香が、出刃包丁を腰溜めにして突っ込んできた!
398うじひめっ! Vol.12B(後編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/29(火) 19:55:33 ID:0rd7GpL7
 いったん頚椎を外したうえでハメ直された彼女は奇跡的に一命を取り止めたが、全治三ヶ月。
 執念もあって三日で退院してきたが、「幼馴染みを蛆虫たちに寝取られた」ことがそんなにショックだったのか、
目をギラつかけてアイヴァンホーたちの命を狙うヤバキモいストーカーと化していた。
 現に今も、腰を落とした伝統的なヒットマンスタイルで鉄砲玉チックに迫ってくる。
「んー……ちゅぱっ! まったく! しつこいわね!」
 あとちょっとでイカせるところまで進めていたトゥーシーは不承不承ち○こから口を離し、危機に対処すべく構えた。
 自ら体当たりを仕掛けるように間合いに入り込み、遥香の手首を捩じりつつ「せや!」と背中を支点にして投げ飛ばす。
「ホアアァッ」
 怪鳥音を発した遥香は包丁を落としながら受身を取り、ブレイクダンスでも踊るみたいにキュキュキュッと激回転して
離れ、充分な間合いを確保。撃退されるのに慣れたせいか、格闘センスがだんだん少年マンガ並みになってきている。
「そうそう何度も不覚を取るものかようっ! 今日こさぁ覚悟しろ……蛆虫の姉妹丼がっ!」
「ほんっと懲りない方!」
 肩を竦める。全裸で。呆れた素振りをしながらも、遥香が俺を襲ってこれない位置取りを心がけてさりげなく動いた。
 姉妹の命を狙うのみならず、「かずくん殺してあたしも死ぬうー!」と喚き散らす彼女は俺にとっても脅威である。
 身辺に侍ったトゥーシーとアイヴァンホーは俺を凶刃から守る、SPみたいな役割も果たしてくれていたのだった。
「代わろう」
 とアイヴァンホーがベッドから立つ。淡緑の瞳で、冷ややかにハの字眉少女を見下ろして。
「――いい加減に分をわきまえるよう、本日は徹底的に教育せねばならん」
「あ゛あ゛!? “いい気”になってんじゃねーゾ“蛆虫”がァッ!?」
 びきびきぃとこめかみに青筋を立てた遥香がドアの向こうに置き捨てていたスポーツバッグをごそごそ漁った。
 すると。
「さっきね、うちに親切なお姉さんが来て教えてくれたの……」
 口調がなぜか穏やかになっている。元からこいつの情緒は不安定だったが、最近ますます磨きが掛かった気がする。
「『この世のすべては幻影(マーヤー)です。ゆえに、あなたにとって都合の悪い幻影は……遠慮なんか要らねえ!
こいつで! みんな! 魂魄の塵一つも残さず! 粉々に打ち砕くべし! さすれば明日からギガハッピーに!』って!」
 叫んで取り出だしたるは――壺。
 どっからどうみても、壺。
 美術的な価値なんて欠片もなさそうな、壺。
「って、いまどき壺なんか買わされてんじゃねえええ! お前がストーカーになったよりもそっちがショックだっ!」
「ただの壺じゃないわよ! お姉さん曰く絶対に壊れない壺! 強度はタングステン鋼の一千倍は超えるそうよ!」
「どうやって計測したんだよ胡散臭え! んな数字出されて信じる前にお姉さんの頭で直接割って確かめろよ!」
「実は既に確認済み! お姉さんの頭は割れたけど、壺にはヒビ一つ入らなかったから間違いなくトゥルース!」
「うおっこの女アブソリュートに厄い! アイヴァンホー、さっさと追い返して出頭させてやってくれ!」
「御意」
 さて――
 この後数百行に渡って遥香の壺やアイたんの格闘術に関する薀蓄を交えたネオ伝奇アクションがあるけど割愛。
「姉様と傘眉毛の一騎打ち! 特等席で拝ませてもらおっと!」
 フェラチオの余韻でびしょびしょに濡れ、今はちょっと半勃起モードに移行したペニスを掴むトゥーシー。
 手淫で刺激を与えてシャッキリさせてから、背面座位で挿入した。
「ほーら眉毛女! わたしの花弁が! あなたの大好きな和彦をずぶずぶ呑み込んでいくわよー!」
「あっ、テメっ、コラっ、人が生きるか死ぬかの瀬戸際で真剣バトってるときに暢気にセックスしてんじゃねー!?」
「ハハ! 悔しい? ねえ悔しい? ハハ! いいザマよ!」
 笑いながら尻を動かし、リズミカルにこね回す。白く引き締まった尻が跳ねる。十四歳の実年齢に相応しい瑞々しさが、
見た目と感触の両方にあった。もともと達する寸前だったこともあり、堪え切れない。
「うーぷす」
399うじひめっ! Vol.12B(後編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/29(火) 19:57:12 ID:0rd7GpL7
 呻きとともに、吐精していた。体をさわさわと撫で回す赤髪の艶に陶然とした。
「ハァ――! ハハ! 出てる! 和彦の熱い精液が! わたしの中にいっぱい!」
「へ、下手すると最愛の従妹が死にかねない状況でばっちり興奮して中出しだぁ!? マジかよかずくんどこまで外道!?」
「アッハハッ! どんなに叫んでもね! 和彦はわたしのモノ! あなたには髪の毛一本、唾一粒だって譲らないわ!」
「こ、こんの糞蛆小娘め……!」
「さあ! 姉様頑張ってー!」
「……あのね、トゥーシー」
「はい?」
「お姉ちゃんが結構真面目に戦ってるときにひとりだけ楽して和彦とまぐわって中に注がれて、尿道に残った精液を
のんびりと搾り取るような腰使いしながら声援を送られても、その、なに。嬉しくなって言うか……キレるわよ?」
「えっ!? ちょっと!? なんでこっちに来るの姉様!?」
 いつの間にか争うことをやめていたアイヴァンホーと遥香は、ずかずか横並びになって近づいてくる。
「なんならこの壺を貸してあげてもエエよ」
「うむ、ありがたい」
 とさっきまで相手に使っていた凶器を気軽に受け渡した遥香が。
「きゃあ!?」
 咄嗟に逃げようとして腰を上げかけたトゥーシーの肩を掴んでぐっと押し下げる。
 もちろん、その下にいる俺は身動きが取れない。ただ少女の膣内を、ビクビクしながらも味わうのみ。
「ほらほらー、遠慮しなくていいってば。好きなだけ和彦のち○こ堪能なさいな、ん?」
「や! は、離してよ!」
「――ここのところね、お姉ちゃん思ってたの。トゥーシー、あなた調子に乗ってない?」
「姉様、何をおっしゃってるの!? 早く助けてよ!」
「確かにあなたは若いから肌の張りもいいし、アソコの締まりもお姉ちゃんよりイイみたいだけど。だからって、
『自分が和彦の本妻、姉は妾』みたいな態度を露骨に示すのはどうかなー、って思わないかしら? 思うよね?」
「そ、そんなこと思ってな――!」
「嘘つけッ! さっき『和彦はわたしのモノ』とほざいたでしょうがッ! 『わたしたち』ではなくッ!」
 仮面の向こうで淡碧瞳が獰猛に凍りついた。槍と化した視線の矛先をトゥーシーの背後、俺へ伸ばす。
「和彦も和彦だッ! 元はと言えばッ! あなたがプロポーズするからここへ嫁いだというのに……ッ!
ついでに付いてきた妹の方ばっかりにかまけてッ、わたしはオマケ扱いじゃないかッ! こんなひどい話はないッ!」
 ひいっ。いつもは凛と冴え渡った表情のアイヴァンホーもこのときばかりは般若の形相を示した。
 少しチビる。
「ちょっと和彦! わたしの中で失禁しないでよ!」
「フッフー、映りの悪いテレビと一緒さー。不出来な妹もたまには叩いて躾け直さないとねー」
 負けず劣らずの般若面を顔に召喚した遥香がせせら笑う。
「同意だ。よし、遥香殿ご自慢のこの壺――どれほど硬いか、ひとつ愚妹のドタマで確かめてくれよう」
「やめて! やめてよ姉様! 姉様!」
「ふふっ――やめません☆」
「うあ……ううう……ねぇさまぁ……! ち、チヨにそ、そんなことしないでぇぇ……!」
「あーらら。舌っ足らずに泣き出しちゃった。幼児退行でも起こしたのかしらー?」
「一人称が『チヨ』とは、だいたい七歳ぐらいだな。あの頃は可愛かったものだ」
「今は違うの?」
「いやいや、今でも可愛い子ではあるよ。だからこそ、愛を篭めてお仕置きをせねばな……」
400うじひめっ! Vol.12B(後編) ◆kZWZvdLsog :2006/08/29(火) 19:58:47 ID:0rd7GpL7
 ゆら〜り、と頭の上に壺を持ち上げていくアイヴァンホー。
「あ……あ……!」
 トゥーシーの膣は怯えて小刻みに締め付ける。
 しかし――七歳まで幼児退行してる子とハメてるのって、精神的にイケナイ感じがしてドキドキするな。
 なんてことを絶体絶命の状況で考えている俺は、もういろいろとダメっぽかった。
「噂に聞いたけど、気絶するときの締め付けってすごいらしいねー。和彦も楽しみにしてみたら?」
「ああ、そうだ。せっかくだからトゥーシーが気絶した後は遥香殿も和彦をファックしてみてはいかがか?」
「えっ、いいのん!?」
「ああ……トゥーシー、あなたはしばらく反省なさい? その間、わたしと遥香殿でたっぷり和彦を持て成しておくから」
 妖しい陰影が頬のあたりをサッとよぎった直後。
 遂に、彼女は両手に持った壺を振り下ろした。

 ガツンッ

「あっははは! 今、白目ぐるんって! ぐるんて! ぷっ、ははは! みっともないったらありゃしねー」
「うむ。我が妹ながらケッサクだ」
「ぶひゃひゃひゃ! ひーひー。ふう、何はともあれ、これでやっとあたしもかずくんと結ばれ……え?」

 ガツンッ

「――なーんてね☆ そんなわけがあるまいよ、痴れ者が! フッ、何を期待して喜んでおるのだ――この売女め」
「ぐっ……! 友好的な空気をつくって期待させてから裏切るとは……この女、ムカつく……予想を超えて遥かに!」
 ドサッ
「これで親の総取り、っと。ふふふ。さあ和彦、あなたも少し眠るがいい。目が覚めたころは――」
 壺を抱え上げたアイヴァンホー。蛍光灯の明かりが逆光となる。彼女がどんな目をしているのか、よく分からない。
「――本当の新婚生活の、始まりだぞ」

 ガツンッ
401うじひめっ! Vol.12B(オマケ) ◆kZWZvdLsog :2006/08/29(火) 20:00:25 ID:0rd7GpL7
平成十×年八月×日 ××県××市××町

木更津宅の長男 和彦(十×歳) ――失踪。

気絶から覚めた木更津遥香は、即座に警察へ通報した。

「う、蛆虫の姉妹が! ……いえ、えっと、間違えました。外国人姉妹があたしの従弟を攫いました!」

警察は届出の内容から民事的な諍いと見て刑事的な事件性は薄いと判断。
むしろ通報者である彼女が自宅の玄関先で起こした傷害事件の方を重要視する。

しかし、被害者である販売員の女性は頭部を殴打され、包帯姿であったにも関らず、

「――いいですか? まずはじめに壺ありき。壺は神とともにあり、壺こそは神だったのです。いわゆるゴッド。
ハハ! 神意に以って焼成されし物に頭を割られたところで何の罪がありましょうぞや! 脇腹が痛いですよ!」

と目をぐるぐるに回し唾を飛ばして熱弁。
事情聴取した警官は眉をひそめ「それって普通、片腹じゃ……」と指摘するも聞き入れなかった。

果てには両手でバシンバシン机を叩き、
「ああ! 壺なるかな壺なるかな壺なるかな!」
と万歳三唱。

結局、帰り際に警察職員三名に壺を売りつけたのみで被害届を提出せず。
打撲による錯乱も疑われたが、彼女の知人曰く、「もともとああいう人ですから」とのこと。

事件は不起訴となった。

かくして無罪放免となった木更津遥香と、和彦の友人である梨本良治。
両名は警察の対応を不服として、協力し合いながら独自に事件の捜査を開始した。
手掛かりは掴めず、遅々として進まない捜査ではあったが。

一年後、ふたたびの夏――

両名は「蛆虫」にまつわる謎めいた言葉を残して失踪する人々が頻出する地域を発見。
素人活動の域を出なかった捜査は、一気に核心へと踏み込んでいった。
402うじひめっ! Vol.12B(オマケ) ◆kZWZvdLsog :2006/08/29(火) 20:03:06 ID:0rd7GpL7
山奥に存在する鄙びた村・矢柄平(やがらへい)。
その地にて、ふたりは様々なキーワードを採取する。

 蛆隠し
 シロウジさまの祟り
 壺流し祭り
   etc...

立ちはだかる謎の群れを次々と解き明かし、幾多ものベールを剥いで果敢に真相へ迫った。
降りかかる危機は絶え間がなかった……

「きゃあ!」
刺客として放たれたトゥーシーはあっさり撃退できたが。
「そ、そんな! 眉毛がこんなに強いわけが……!」
「ばっきゃろう、あたしが壺アーツを体得した時点でパワーバランスは引っくり返ってんだよ!」

ツボ=カタを極めたことにより、なんか統計的に見て攻撃効果とかが上がってて無敵らしい。

「『らしい』って何!? アーキタイプでさえ説明になってない技を余計意味不明に改変しないでよ!」
「つべこべ言うんじゃねえ!」
ゴスッ
「痛っ!」
「意味不明でも地の文が『無敵』と解説した以上は無敵になるのがインフレのお約束だろビチグソがァーッ!」
ゴスゴスゴスゴスゴスゴスッ
「痛っ痛っ痛っ痛痛痛痛痛ぁーっ!」
「いいのかあ!? ガード下げちゃってよう! ヘッドがガラ空きだぜい!」
ゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスッ
「 ゲ バ ァ ッ !!」
「ち、ちょっ! 殴りすぎ! いま目と耳と鼻と口からいっぺんに血が飛沫いたぜ!? マジでこれ死ん……」

「壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺
壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺
 壺 ! 壺 ! 壺 ! 壺 ! 壺 ! 壺 ! 壺 ! 壺 ! 壺 ! 壺 ! 壺 ! 壺 ! 壺 !
壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺壺ォォォッッ!!!」

制止する良治の声を掻き消して余りある打撃連射音とともに。
見開きページが四回ほど続いた。
「咲きやがれェェ! そして散れッ!」
ドグシャアッ
車田パースで吹っ飛ばされた少女が真っ直ぐ夜空に吸い込まれていく。
天翔る五体はしかし綺羅星になれず、上昇力が尽きる頂点で一瞬の浮遊感を味わってから、重力の軛に沿い落下。

 毘沙ァ……ッ

アース・クラッシュ。
十五歳の夏、少女は大地へ還る赤い果実となって弾けた。

 又左衛門尉利家(通称トゥーシー) ――散華(リタイヤ)

苦しまなかったはずである。
「あんたがいたからこそ、あたしはここまで強くなれた……」
遠い目をして、そっと月を見上げる遥香。
「百遍殺してもまだまだ飽き足らねー糞蛆ヘド娘だけど……あんたのことはなるべく忘れないよ!」
地面にへばりついている、ちょっと原型を留めていないモザイク必須の物体から巧妙に目を逸らしつつ。
流れ星をバックに爽やかな笑顔をキメる半透明のトゥーシーへ、直立して敬礼を送った。

三秒後に忘却したことは付記するまでもない。
403うじひめっ! Vol.12B(オマケ) ◆kZWZvdLsog :2006/08/29(火) 20:05:27 ID:0rd7GpL7
こんな調子で。
なおも迫る数え切れないほどの妨害を主に撲殺で乗り越え、繰り返された調査。
その成果として、ようやく木更津和彦を発見するが――

何もかも手遅れになっていた。

生きてはいた。
が、辛うじて生きている――それだけだった。

「ああああああああ……ああああああああ……」
もはやいかなる知性も窺えぬ痴愚の呻き。
虚ろな瞳と開け放たれたままに涎をこぼす口。
助けに訪れた友人や従妹の存在さえ、理解できたかどうか。

変色した肉体は生きながらにして腐り――


  ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず

   ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず

 ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず ぶず


噴出する腐敗ガスと、皮膚の下で這い蠢くモノの響きが、ふたりの鼓膜を苛んだ。

「和彦はもう……わたしだけの……苗床」
と、傍らでどこか壊れたような微笑みを浮かべる無鼻の婦人。
嗅覚の欠如ゆえか。周囲に漂う――吐き気を催すおぞましい臭いすら、一向に気に留める素振りを見せない。
「ああああああああ……ああああああああ……」
両の腕にしっかりと抱かれて、黒く澱んだ血を垂れ流す和彦。
彼は、壊疽した全身を絶えず内側からうねうねと波打たせている。

犯され、貪られ、蝕まれ、縛られ続ける半死半生の囚われ人。
もはやそれは一個の愛玩物にして食糧でもある――肉塊だ。
人格の余韻など、どこにあろう。

遥香と良治はただ鼻と口を覆い、呆然と立ち尽くすしか他に術がなかった。

「お願いだから! 姉様と和彦のことはそっとしてあげてちょうだい!」
死亡確認されリタイアしたはずのトゥーシーがちゃっかり紛れ込み、悲痛の叫びを上げる。
無言のまま、とりあえず遥香は再生怪人をブチのめす要領で壺を振るい、シバキ倒しておいた。

後年。
彼女たちは駆けつけたときに見た和彦の姿を決して忘れまいとして。
すべての経緯をまとめ、共著で一冊の本を出版する。

タイトルは――





         『 う じ む し の わ く 頃 に 』





耳を澄ませば、あの音が今も……
404 ◆kZWZvdLsog :2006/08/29(火) 20:06:49 ID:0rd7GpL7
最後のオチが書きたかっただけなんてことは、
チャンピオンで連載中のひとみ先生に誓ってありません。
405『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/29(火) 20:09:20 ID:q1qLA2z2
キーンコーン…
「ふぅ……おわった……」
五時間目の数学が終わり、帰りの準備をする。体育後の授業ってなんでこう眠いんだろ。ましてや窓際なんて最高の位置だ。
鞄を持ち、部活に行こうとすると………
「かーいとっぉ!」
教室のど真ん中から沙恵ちゃんに大声で呼ばれる。
(クスクス…相変わらず仲良いわね、あの二人。)
(ああ、クラス一のバカップルぶりだな。)
ああ、もう。僕と沙恵ちゃんはそういうんじゃないのに。あんなふうに呼ぶから誤解されちゃうじゃないか。
「な、なに?どうしたの?」
慌てて沙恵ちゃんの元に行き、用事を聞く。はぁ、近付く度にそんなに嬉しそうな顔されたら怒れなくなっちゃうじゃないか。
「うん、今日ボク、部活が休みだから一緒に帰らない?最近一緒に帰らないからさ。」
「あぁっと……こ、ごめん、今日は僕が部活あるんだ…」
「あ…そ、そうなんだ……ふぅん…」
そう聞いた途端、急に悲しそうな顔をする。罪悪感が積もるが、さすがに部活をさぼる事はできない。確かに最近一緒には帰ってはいないから気持ちはわかるけど………
406名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 20:10:00 ID:muyogaaZ
エロから急転直下のハードグロとは…

>苦しまなかったはずである。
(´;ω;`)ウッ
407『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/29(火) 20:10:10 ID:q1qLA2z2
「うん…だから、ごめんね?」
「いいよ……美術部って……あの美人の先輩もいるの?」
「え?そうだけと……別にあの人だけっていうわけじゃないし…」
「ふーん……いるんだ…やっぱり。」
「沙恵ちゃん?」
「ううん!なんでもないのっ!ほらほらー、ボクの事は気にしないで、部活に行った行った!ボクのせいで遅刻しただなんて勘弁だからね!」
「あ、うん。じゃあまた明日ね。」
別れを告げて、今度こそ部室に向かう。
〜〜♪
また着信……とはいえ、全部が全部『あの』メールとは限らないので、一応見とかなくちゃいけない。今回は……
『frm麻理
今日の帰りにお醤油買ってきてよ、バカ兄貴。』
あいつは一言余計なんだよ。でもまあ、こういう頼みごとをしてくれる分、まだかわいいほうかな。まったく無視されるよりはマシだな。
『to麻理
了解。』
簡単な一言だけ送信…
〜〜♪
と、また着信が……
『誰とメールしてるの?女の子と?そんなはずないよね?男友達とだよね?
(-_-#)』
「っ!?」
辺りを見回す。この学園は人口が多いので、どこにいても多くの人がいるため、特定は出来ない。僕は怖くなって部室へと駆け出した……
408名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 20:10:36 ID:4JIwuzcz
ワロタ
409『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/29(火) 20:11:04 ID:q1qLA2z2
「はぁ、はぁ……あ、こんにちは、部長。」
「あ、海斗君。こんにちは。」
ぺこりと僕なんかに礼儀よく頭を下げる先輩……さっき沙恵ちゃんが言っていた、美人……秋乃葉 華恋(あきのは かれん)先輩だ。
いわゆる学園のアイドル。成績優秀、頭脳明晰。お洒落だけどケバいような派手さではなく、まさに清楚といったタイプ。
運動は苦手なようだけど、そこがまた人気のポイントにもなっているようだ。こんな絵に描いたような人がいるなんて、会ってみるまで思いもしなかった。
「どうかしたんですか?息を切らして?」
「あぁ、いえ。ちょっと走ってきたんで。」
「ふふ、せっかちさんですね。まあ、私も早く来過ぎちゃって、今一人で描いてたんですけど……」
「ええ…あはは…」
昔から沙恵ちゃんみたいな元気な女の子を相手してきたから、華恋先輩みたいなタイプはどうも苦手だ。
「そうだ、今日の部活は自画像を描きますから、海斗君……私とペアになってくれますか?」
「え?僕なんかと?」
「海斗君は謙遜しすぎです。美術部の中じゃ、抜き出た実力を持ってますよ?」
「はあ、部長に言われるとうれしいですけど……でも、部長とは差が有り過ぎますよ。さすがに美術推薦で進学する実力の持ち主にはかないません。」
そう言われると、部長は嬉しいような困ったような顔をした。きっと褒められる事に慣れていないのだろう。これから先、部長は褒められる方が多いと思うのに……大変だな。
部長の隣りに座り、鏡を見ながら自分の顔を描く。この部活は大抵二人一組となり、たがいの絵を評価する……そんな方針だ。
(……おい、海斗の奴、秋乃葉さんとペアになってるぞ。)
(うわー、いいなあ。俺だってまだペアになったこと無いのに。)
(つーか秋乃葉さん、男子とペアになるの初めてじゃないか?)
気付けばぞろぞろと部員が集まり、いつものように自然と部活が始まっていた。絵を描くのに集中すると、周りが見えなくなるため、いつも人が来るのに気付かない。
「海斗君。終わりましたか?」
「ええ。一応、簡単には。」
互いに絵を見せ合う。
「うふふ、ちゃんと描かれてますね、海斗君のかわいい顔。」
「へ?あ、ありがとうございます。」
「そうですね、この顎のラインが……」
410『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/29(火) 20:12:14 ID:q1qLA2z2
部長から指導を受けた後、僕が部長の絵を見る番。その絵は……
「…綺麗だ。」
「え?」
ごく自然に、この言葉が口から出た。それぐらいに、部長を丸写ししたかのように美しかった。当の部長は…顔を真っ赤にして俯いていた。
「あ!い、いや、そういう意味じゃなくて…あのー、絵が綺麗という……あぁ、その、部長も綺麗ですよ?……って僕、何いってるんだろ?ははは……」
「う、ううん。その……うれしい、です。」
なんだか恥ずかしくなってしまったので、再度絵を描くのに集中する……はずだったが、なぜか……何が不安だったんだろう。僕は。
「あの…部長?」
「はい?」
「部長って、携帯もってます?」
「ええ、ありますよ。」
そういって、ポケットから可愛らしいストラップの付いた携帯を取り出す。
「えっと……よければ、アドレス教えてくれませんか?」
(((!!!!)))
周りが驚きに満ちるのがわかった。馬鹿だな、僕は。部長がストーカーな訳が無いし、アドレスを教えてくれるわけないじゃないか。
でも部長は、少し考えた後に………
「いいですよ。」
と、うなずいた。
411名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 20:12:18 ID:gh4LLjWk
( ゚д゚)……

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ

( ゚д゚ )グッジョブ!
412『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/29(火) 20:13:08 ID:q1qLA2z2
((((ナ、ナンダッテー!!?なんで海斗の奴が!?))))
「い、いいんですか?」
「ふふ、海斗君から聞いてきたんでしょ?」
そう笑いながら、アドレスを書いたメモを渡される。正直、まったく逆の結果に内心大慌てだった。
「あ、ありがとうございます…あとで、送りますんで。」
「ええ、楽しみにしてます。」
ああ、なんだか今になってまた恥ずかしくなってきた。うん、今度こそ集中して描こう。
……ちなみにそのアドレスは、ストーカーの物とは違った……当たり前か。







「うわっ。もうこんな時間!?」
気付けば七時丁度だった。美術部は時間が決まっておらず、好きなように帰っていい上、部室が学園とは別棟にあるために先生が声を掛けることもない。
だから集中のし過ぎで誰もいない……なんてことはたまに有る。
「あら、まだやってたの?海斗君。」
「あ、部長もまだ残ってたんですか?」
「ええ、今度出展する作品の準備を、ね。」
僕が片付けをしている間、部長はなにやら部屋をウロウロしている。……まさか、待っててくれてるのかな?
「あの…部長?」
「え、え?」
「家まで送っていきましょうか?」
413『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/29(火) 20:14:07 ID:q1qLA2z2
嗚呼、僕はまたなんてことを……でも夜道を一人で帰すのは気が引けるし……
「うん。お願いしちゃおうかな?」
「わかりました。家は、どの辺りですか?」
「自然公園のすぐそば。」
「ああ、じゃあ僕の家に行くまでの途中にありますぬ。僕の家、その先の商店街を抜けたところなんですよ。」
「ふぅん…よかった、途中まで一緒で。」
「ええ。今の時代、変な奴が多いですからね。夜は特に、気をつけないと。」
自分で被害に合ってるんだから、世話ないな。……もし部長に被害が及ぶようなら、なんとかしと守らないと……
「よし。じゃあ帰りましょう。」
「はい。」
笑顔の部長と一緒に部室を出て、僕達は校門へと向かった。






相変わらずこの学園は、もとい、この街の街灯は少ない。百メートルに一つ、有るかどうかも怪しい。校門にだって一つしかない。これじゃあ本当に襲われたらたまらない。
「それにしても、この街って暗いですよね。特に夜は。」
「ええ、そうでよすね。本当に……あら?」
部長が何か気付いたらしく、凝視する。僕も部長の目線の先に目をやると、校門の灯の下に一つの人影が。
そこに座り込んでいたのは……
「あ……海斗…」
「さ、沙恵ちゃん?……どうしたの?」
先に帰ったはずの、沙恵ちゃんだった。
414名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 20:22:04 ID:IYM+kFWc
>404キター!!!
もうね、色々凄すぎて言葉が出てこねぇよwwww

>406 >406 >411
感想書く読者さんはウィンドウをもう一つ開いて
そっちを更新させて確認してから投下しましょう
415名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 20:24:15 ID:IYM+kFWc
ミスした
408と書こうとしたら406を二つ書いちまったorz
416名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 20:27:16 ID:muyogaaZ
うっかりしてました。スマンです。
417名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 20:28:53 ID:gh4LLjWk
初登場の部長と沙恵が早くも激突クル━(゚∀゚)━???
それと割り込んでしまって正直、スマンかったOTL
418名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 20:36:24 ID:Rd81kL54
>>413
あっちこっちに気づかないうちにフラグを蒔き続ける主人公GJ
てか、ストーカーっ娘に(*´д`*)だったが
暗い中待ち続ける沙恵もなかなかにいい子だわ
続き、楽しみにしております!m( __ __ )m
419名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 21:01:53 ID:e25Dck9R
鬼ごっこはたぬきなべと似たような臭いがしますね
あっちは残念ながら止まってますが・・・・・・
420名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 21:12:51 ID:+meWQJiF
>>404
毎回毎回オチが怖いよwwwww
トゥーシー万歳

>>413
>ああ、じゃあ僕の家に行くまでの途中にありますぬ
 ありますぬ?ありますぬ!?
海斗くんのハーレムな青春に嫉妬

421 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/29(火) 21:24:45 ID:q1qLA2z2
>>420
指摘サンクス
『ありますね。』ですね。
422名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 21:36:45 ID:s9mK5MyF
うじひめが大変なことにw

鬼ごっこほのかな甘みと修羅場を醸し出してますね(*゚∀゚)
423アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/29(火) 21:56:04 ID:S912nh7J
投下します、今回のは少しハードですのでご注意を
 案外近場にあったあの女共の隠れ家
 夜にはもうその根城にたどり着いた
 私は今から、悪女共を討伐し、涼さんを取り戻す!
 川の穏やかなせせらぎにしばし耳を傾け熱い想いを少し鎮める
「ふぅ〜」
 私が深呼吸した時だった、月の光に照らされたシルエットが一つ私の方に向かって来た
 私は咄嗟に木の陰に隠れ様子を伺った・・・・その人は涼さんだ!
 喜びのあまり飛び出し抱きつこうとした時、今度は二つのシルエットが現れ涼さんのと重なった
 許せなかった、あの女共が・・・・
 涼さんをたぶらかし洗脳し私から遠ざけあげくの果てには奪い去った
 限界だった、私の思考回路も理念も自我も・・・・
 そろそろ決着をつけましょうか?
 最後に勝つのも笑うのも私です、涼さんをモノにする為なら私は修羅となり邪魔するモノすべてをなぎ払ってやる!
 神も私に味方してくれている、涼さんはあの女共を残してどこかに立ち去った
 勝機を見出した
 恐怖で一杯だった心が夏姉ちゃんと冬香のおかげでその気持ちを洗い流すことが出来た
 二人には感謝だ、二人とも僕が、夏姉ちゃん、冬香の両方と関係を持ったことを知っても尚僕を思ってくれている
 なら、僕は全力でその想いに応えるしかない
 だから―――――次にまた秋乃さんと対峙したときは僕の本当の気持ちを伝えよう
 そして、さよならしよう・・・・南条秋乃が好きだった僕に
「りょ〜お〜さ〜ん♪」
 え―――――

 心が壊れそうになる、なぜなら後ろからの声に振り返った僕の視界に入ってきたのが秋乃さんだったからだ
 愛らしい容姿を存分に際立たせる服装で天使のように笑む
 けれども僕にとってその微笑は恐怖の対象でしかない、冷たい汗が背中を伝った
 細く白い指が僕に迫ってくる
 ――――逃げなきゃ、頭で理解していても身体がいうことを聞いてくれない
 恐怖が完全に僕の頭の神経を掌握し、縛り付ける
「大丈夫ですか?怖かったですね?でも、もう安心ですよ?悪女共の手から助けだしてあげます」
 指が頬を這い、唇をなぞる――――
「もらった!!!!!」
 瞬間、影から人が飛び出し秋乃さんを抑えた
「やったよ!お姉ちゃん!!!!」
 く、油断した・・・・物陰から飛び出した冬香によって私は両手を拘束されてしまった
 そして冬香の呼びかけに夏美が不敵に笑みながら私に近づいてきた
「涼ちゃんにしたこと、存分に後悔させてやるんだから・・・・」
 私が涼さんに付けた腕輪を手にも持ちカチカチと音を鳴らしながら夏美は近づいてきた
 そっか、涼さんを助ける前に、まず魔王共を倒さなくちゃいけなかったんだ
 つい、舞い上がってしまって、私のバカ!
「・・・・っ!」
 私は夏美が腕輪をつけようとした瞬間、僅かな隙を突き飛び起きると脚に忍ばせておいたナイフを手に取った
「あぁぁぁ―――――!」
 まず、冬香に標的に据え飛び掛る
 馬乗りになり私は冬香の右肩に思い切りナイフを突き刺した
「あ・・・・が!」
 瞳孔が開き苦悶する冬香が無事な左の手で私の腕を凄まじい力で掴んできた
「・・・・・・」
 ナイフを右肩から引き抜く、血が飛び私の顔を鮮血に染める
 私は自らの顔が血に汚されるのも気にせずに今度は左肩を突き刺した
「きゃは♪見てみて〜、血が吹き出たよ〜涼さ〜ん♪」
 私は子供が親に自分の作った工作を見せるかのように血に染まった手に平を見せた
 驚愕し、顔をゆがめる涼さん、待っててね、すぐにこの女共をぶっ殺してやるから
 私はもだえる冬香のわき腹を思い切り蹴り飛ばすと今度は標的を夏美に変えた
 それを察知し咄嗟に逃げようとするけど、下げた脚を元の位置に戻した
「ふふ、逃げないんだ?いいのかな〜♪死んじゃうよ?」
「逃げるわけない、涼ちゃんは私と冬香で守ってみせる」
 良い度胸してるじゃない、さすが私から涼さんを奪い去っただけのことはある
 けどね、勝者は私、その未来だけは誰も覆せない
 一旦距離と取り、先ほどと同じように飛び掛る
 それを見て夏美は姿勢を低くして私にタックルしてきた
「く!」
 倒れた拍子にナイフが手元から落ちた、すぐに夏美はそれを蹴り遠くへ飛ばすとすぐに私の両手を抑え馬乗りになった
 すぐに私の首に手が掛けられる
「く・・・・ふふふ」
 この場に及んでなぜ余裕を見せられるの?
 そんな表情で夏美が私を見た
「ナイフが、一本だけって――――どうして思ったの」
 私はもう片方の脚に忍ばせておいたナイフを取ると首を絞める腕の肘のちょっと上を逆手に構えたナイフで突き刺した
「あぁぁ!!!!」
 痛みで我を失い私から離れてその場に膝を付き私に背を向ける
 私は後ろから夏美の肩を掴んでこちらに振り向かせ右手を思い切り踏みつけてやった
「あく・・・・ぅ」
 踏みつけるのをやめ、痺れで動けないその手にナイフを刺した
「あぁぁぁぁああああああぁぁ!!!!!」
 想像を絶する痛みに夏美は苦痛から逃げようとして必死でもがいた
 さぁ、そろそろとどめと行きますか?
427アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/29(火) 21:59:38 ID:S912nh7J
ここまで読んでくださった方お疲れ様です

今更ながら、修羅場、嫉妬、女性視点は難しい
ちゃんと書けているかどうかいつも不安です
428リボンの剣士 29話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/29(火) 22:15:33 ID:4c2Rlr63
投下します。
429リボンの剣士 29話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/29(火) 22:16:32 ID:4c2Rlr63
あくびを噛み殺して、今日も私は伊星くんを待つ。
伊星くんは、いつも部活の朝錬並に早い時間に登校するから、私もそれに合わせると、やっぱり眠くなっちゃう

でも、あくびは出さないよ。眠たそうな表情にもならないよう気をつけて、笑顔で迎えるようにしないとね。
本当は、一番早く顔を見せたいんだけど、伊星くんにとって、朝一番に会うのは新城さん、ってほとんど決まっ
ていて、私はまだそこまで割り込めない。
……ねぇ伊星くん。私、結構本気で頑張ってるの。
だから、そろそろ私のほうも見て欲しいな。
「ふぅ」
信頼一つ、手に入れるのも楽じゃない。

少し経って、新城さんが走って門から入ってくるのが見えた。でも、側に伊星くんはいない。
一人、だけ?
新城さんは、息を切らせながら、中庭の方に近づく。私は見つからないよう、植え込みの陰に隠れた。
なんか、いつもと様子が違う。
しばらく中庭で突っ立っていたかと思うと、また走って校舎に入っていった。
離れて見ていたけど、新城さんは、ずっと暗い顔をしていた、かな。
伊星くんと一緒じゃない。加えて、覇気のない表情。
……ケンカでも、したのかな?
だとすれば、私にチャンスが巡って来たことになる。二人の仲が気まずくなった状況なんて、全開のドアより入
り易いよ。
時計を見ると七時十六分。いつもなら、二人揃って二十分ちょうどに学校に来るから、もう少し待てば、伊星く
んが一人で来るはず。
もういいよ。そのままケンカ別れしちゃえ。

時計の長針が四のところにカタッと動いたとき、校門から伊星くんが入ってきた。
左右を見渡しながら、中庭のほうへ。
私は、笑顔を向けて迎える。
「おっはよ〜っ!!」
「あ、木場。明日香を見なかったか?」
……。
あいさつを返さず、いきなりそれ?
そう、伊星くんの頭の中、新城さんの事で、いっぱい、なんだ。
入ったスイッチを、急いでオフにする。
大丈夫大丈夫。これくらいは想定の範囲内だよ。
伊星くんが、常日頃から新城さんに気を遣っているのは、とっくにわかってるから。
「見て、ないよ」
「……学校にはまだ来てないのか」
「何かあったのかなぁ」
わざとずれた振りをする。本当は、何か無い限りそんなことは起こらないよね。
430リボンの剣士 29話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/29(火) 22:18:29 ID:4c2Rlr63
伊星くんの顔に、痣ができていた。
「ねぇ伊星くん。その痣はどうしたの?」
よく見ると、鞄を持っている右手の手首にもある。
「ああ、これは、この前のバーゲンで押し合いになって、誰かから肘鉄をもらったんだ」
「ふ〜ん……」
嘘だ。昨日、伊星くんの顔に、そんな痣はなかった。
昨日の放課後、伊星くんは新城さんに連れられて教室を出た。あれからバーゲンに行ったとは思えない。
家でちょっとぶつけた、にしても変。顔と手首、一日で二箇所も痣ができる?
伊星くんは、そんなドジじゃなかったはず。
今日、二人は一緒じゃないから、ケンカでもして……。
ケンカ。そう、ケンカだよ。
伊星くんの痣は、きっと新城さんとケンカして、できたものなんだ。
痣ができるほど、顔を強く攻撃した……。

熱い。熱いよ。
伊星くんが暴力を振るわれたら、酷く傷つくことは、私にだってわかる。
それを、あの女は、新城明日香はやったんだ。

ああ、熱い。燃えてる。何が? わからない。
風邪を引いた伊星くんのお見舞いに行ったあの日もそう。
ちょっと頭にきたら、すぐ手を上げる。自分に都合が悪くなったら、得物を振るう。

何が幼馴染だ。何が信頼だ。
自分の思い通りに、人を動かそうとする。

そういうの、洗脳――――って言うんだよ。
ああ、凄く熱い。
あの女の腕をもぎ取って、私のこの炎で丸焼きにしてやりたい。

「まぁとにかく、座ろ?」
でもこれはまたとないチャンス。今なら、伊星くんの新城さんへの評価も下がってる。
私が先にベンチに座って呼びかけ、伊星くんも続く。けど――。
空いてる。
昨日より、隣に座る伊星くんとの距離が遠い。物理的に。
気のせいじゃない。

私が色々話し掛けても、伊星くんは、あまり明るく答えてくれなかった。
生返事というか、どうでもいい、って言いたいような雰囲気が伝わってくる。
初めの頃のような、素っ気ない態度。
少しずつ、近づいてきたと思ったのに、また、離れていく。
その理由が、すぐ思い付くのが悲しい。
屋聞くんによれば、私が男を奪ってすぐ捨てた、っていう噂が、伊星くんの耳にも入っているらしい。
確かに私は、彼女がいると知りながら、男の人に近寄ったことがある。
だって、羨ましかったの。

たまたま公園で目にした、日野山さん……だったかな? その人が作ったと思う、あまり出来の良くないお弁当
を、彼は喜んで食べ、仲睦まじくやっていたから。
無闇に飾りにこだわってない、ほのぼのとしたデートだった。
私も、ああいう事をやってみたい。それこそ漫画でも見られないようなことだけど。
それで私は、彼に近付いた。もちろん、彼女の日野山さんは、いい顔をしなかった。
でも、一度付き合い始めたら、もうずっと安泰ってわけじゃないと思うから、それほど気にしなかった。
あなたも彼女なら、彼を守り抜いてみなよ――程度に考えていた。
その後、彼は私のほうを向いてくれた。日野山さんには悪いけど、私もこれで、求めてやまなかったものが手に
入るって、ただ、喜んだ。
だけど――――。
431リボンの剣士 29話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/29(火) 22:19:25 ID:4c2Rlr63
彼を私の家に招いて、手料理をご馳走しようとしたら、
『料理より、お前を食べたい』って……。
彼は結局、身体の方を重視していた。色仕掛けなんて、一度もしてなかったのに、日野山さんから私に乗り換え
た理由は、身体――。
それで一気に冷めた私は、すぐ彼と別れた。付き合ってから一ヶ月と経っていなかった。

伊星くんは、噂を聞いたから、こうして距離を置いている……。
でも私は、伊星くんがその噂を本気で信じてはいないと思う。たとえ半信半疑だとしても、私自身が、伊星くん
と心を込めて接していれば、きっと解ってくれる。
大丈夫、新城さんだって距離が広がったんだから、まだまだひっくり返せる。
私が先に動けば、その確率も上がるんじゃないかな。

昼間は、罠じゃないかって思うくらい、隙だらけだった。
休み時間、昼休み、伊星くんと新城さんは離れていた。
邪魔も入らなかったから、伊星くんとほとんど一緒にいられた。
お昼ごはんも一緒、お喋りするのも一緒……。
新城さんが取っていたポジションが、私のものに。
ただ、伊星くんはつれないままだったけどね……。

放課後だけ、事情が変わった。
一緒に帰ろうと誘いをかける前に、伊星くんはいなくなった。
先回りして、下駄箱前で待ち伏せしたけど、姿を見せない。
屋聞くんに連絡を取ったら、『捕まえようとしたら逃げられました』って言ってた。
二人で手分けして探し回ったけど、結局捕まらず、下駄箱前に戻ってみれば、中の外履きが上履きに変わってい
た。
「伊星先輩に、してやられましたね」
屋聞くんは、悔しそうに呟いていた。

次の日。今度はもっとうまく立ち回ろうと、朝から気を引き締めて待っていたら、伊星くんと新城さんは、二人
で一緒に登校して来た。
チャンスは、長い時間続かなかった。話しながら歩く二人を見ると、胸が痛い。
昨日のうちに、もう仲直りしたの?
長い時間培ってきた絆があるから、簡単に修復できるの?
狡い。
私も、そんな信頼関係を、伊星くんと結びたい。
その絆、私によこせ。あなたがそれを持つ資格は無い。

幸い私には、近いうちに、伊星くんと接近できる絶好の機会がある。
この時期に生まれたことに感謝するよ。
新城さんが部活に行った後、一人で中庭のベンチにボーっと座っている伊星くん。今がチャンス。
「ねぇ伊星くん」
「ん?」
「えへへ」
少しだけ間を取って、伊星くんの意識を引き寄せる。
「来週の今日、私の誕生日なの。家でパーティーやるから、来てくれない?」
パーティー、というのは厳密に言えば違う。私は伊星くんしか呼ぶ気はないから。
「んー……」
腕を組み、伊星くんは考えている。
来てくれるよね。私だって、伊星くんのお見舞いに行ったんだもん。

「へぇ〜。木場さん、来週誕生日なんだ」

その声は、伊星くんのものじゃなかった。
後ろから現れた、竹刀とリボンを揺らしている、新城明日香のものだった。


(30話に続く)
432名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 22:36:10 ID:HpfiiFV+
投下作品が多くてGJが間に合わない。
でも全部有難く読ませていただいておりますよ。

とりあえず1つだけ、うじひめBパートの完結お疲れ様です
433名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 22:59:54 ID:fdZt+1ch
感想まにあわねーー。
434名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 23:02:53 ID:crmYJk4Y
全部GJ!

・・・べ、別にめんどくさいわけじゃないぞ!
435名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 23:21:16 ID:3ipsKeq1
なによ!私だけ見てればいいのよ!!
436名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 23:27:51 ID:pRlQWHxw
誰だよ
437名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 23:40:02 ID:gh4LLjWk
>>435
名無し君はもう私だけの物よ、負け犬さんは近所の野良犬とでも慰め合いなさい……フフッ
438Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/29(火) 23:41:33 ID:A3eb0jOE

Sequel to Story(3)


「別に聞いてなくていいよ、アシュリーは」
 ジュディスさんから貰った布巾で汚れたカウンターを拭きながら、わざと機嫌悪そうに睨んだ。

「ん〜?そんなこと言っていいのかなぁ〜?
あなたがご所望の、高額報酬の仕事持ってきたんだけど?」

「…ッ!?」

 うぐっ…。自分の意志に反して耳がぴくりと動いてしまった。

「ふっふっふっ。やっぱり相当困ってるみたいね、ウィル君」
 俺の反応を見て手応えアリと判断したのか、邪悪な笑みの形に唇を歪める。
アシュリー・ガウェイン・ロットがいつにも増して悪巧みを考えている証拠だ。


オークニーを治める領主であり、この辺り一帯の交易を管理する南方通商組合の会長でもある、ロット伯。
彼女はそのロット伯の娘さんで、ロット四姉妹の長女だ。
 剛健質実なロット伯から、どうしてこんなおちゃらけた娘が生まれるのか甚だ疑問ではあるが、残念ながら正真正銘、実の娘である。
いや、たくましいという点では確かにロット伯と共通するところか。
だけどその持て余したパワフルさを、俺たちをからかうことだけに費やすのはいかがなものと思う。
 今回のように突然現れては団長や姫様を嗾けて騒動を起こし、それが半ばオークニーの名物になってしまっているのだ。
ある日、旅行ガイドブックに俺たちのことが紹介されていたのを知ったときは死にたくなった。

 とにかく彼女の話に乗ると必ずエライ目に合う。だから普段は彼女が現れそうなところは意識的に避けていたのだが。
この酒場は彼女がよく出没する場所のひとつだということを今の今まで失念していた。
でも、まぁ捕まってしまったものは仕方ない。今は俺一人だし、もしかしたら大丈夫かもしれない。
439Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/29(火) 23:42:29 ID:A3eb0jOE

警戒心を最大限に高めつつ、尋ねる。

「なんだよ、高額報酬って」
 ああ。ノッてしまった。きっと無事では済まないと解っているのに、訊かずにはいられない自分が腹立たしい。

「ふっ。聞きたい?」
 もったいぶって腕を組むアシュリー。
そのくせ、もぞもぞと肩を揺らして早く言いたそうだった。

「聞きたくないけど、聞きたい」

「何それ。………まぁいいわ。
ウィル君は毎年この時期に、とある祭りが催されるのを知ってる?」

 えらく長そうな前フリだなぁ。
突っ込みたかったが、敢えてその言葉は飲み込んだ。

「……祭り?」

「あら。今年もやるのね、アレ」
 俺が首を傾げる横で、ジュディスさんが空になったカップに再び珈琲を注ぎながら言った。
ジュディスさんは『祭り』が何のことなのか知ってるみたいだが俺にはてんで話が見えてこない。
「俺は去年此処にはいなかったから知らないんですが……何ですか、祭りって」

「ん〜、簡単に言えばミスコンね」

「みすこん?」
 なんだろう。聞き慣れない言葉だな。


「そう!ミスコンよ!ミス・オークニー・コンテストッ!!」
 アシュリー嬢が突然発作でも起こしたように声高に叫ぶ。

「南方通商組合が主催する、この街で一番熱くて壮大な祭典ッ!
オークニー含む周辺都市から女神と謳われる美女たちが一同に会し、誰が最も美しく可憐か、鎬を削る神聖且つ熾烈な儀式!!
それがミスッ!!オォォォクニィィィィ………クォンテストォォォォッッッッ!!!」

 まるで決め技の如く絶叫しているアシュリーを余所に、何となく冷めた気持ちで珈琲を飲んだ。

「…で、それが高額報酬と何の関係があるんだ?まさか優勝賞金が、とか言わないよね?」
440Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/29(火) 23:43:16 ID:A3eb0jOE

「違うわよ。言ったでしょ、南方通商組合主催って。私がそのコンテストの司会進行を努めることになってるの。
同時に人員の派遣もね。審査員枠が足りなくて困ってたんだけど、ちょうどいい人材がいるのを思い出して此処に来たわけ。
だからウィル君にはミス・オークニーを決める審査員の一人としてそのお祭りに参加して欲しいのよ。勿論報酬は弾むわ」

 拍子抜けした。
審査員がどんなことをするのか良く解らないけど……アシュリーが持ち込んだ依頼にしては至極真っ当だ。
隣町まで護衛、とかに比べれば内容も楽そうだし。
 だけどそれだけに不気味だ。彼女が只の善意で仕事を持ってきてくれるわけがない。
以前彼女から受けた依頼で『下着ドロ退治』なんてのがあった。
渋々よく盗まれると聞いた住所に実際行ってみたら、そこはオークニーでも指折りの高級娼婦館だった。
それ以上の詳細は思い出したくもないが……あのときは本当に酷い目に合った。
きっと今回も何か企てているのだろう。
…これには何か裏がある。俺は直感でそう感じた。

「そんなんでいいの…?」

「えぇ、それだけよ。
………ただし。条件があるの」


――――――来た。
 やっぱりまだ何かあるのか。どうりで話が美味すぎると思った。
これでもし本当に何もなかったらアシュリーが頭の病気にでもかかったんじゃないかと心配していたところだ。

「…条件って?」

「――――――――――――そうね、ここからは"みんな"にも話した方が都合が良さそうかな」
 顎に手を当てて一瞬思案した後、扉の方に目を向けながら一人呟く。

 ……嫌な、予感がする。
ここで断ってしまった方がいいと、本能が全力で告げていた。

「あの、やっぱ俺さ……」
「皆さーん、もういいですよー!入ってきてくださいっ!」
 俺の声を遮るほどの大きな呼び掛けで、酒場の外に向かって話しかけ始めた。
……悪寒が止まらない。アシュリーは誰に向かって話してるんだ…?
441Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/29(火) 23:44:08 ID:A3eb0jOE

 固唾を呑んで扉を注視していると。
 ギィ、とアシュリーが登場したときとは対照的に遠慮がちな扉の開き方で。

「あ、あはは…」
「きっ、奇遇じゃな」
「………」

 三人が揃いも揃って入ってきた。その三人が誰かは言うまでもあるまい。

「な、なんで……」
 同じ場所に、揃ってはならない面子が揃ってしまった。
嫌な予感は次第に現実へと加速してゆく。

「わたしが呼んだの。ウィル君がジュディス女史にひん剥かれてるって言ったら皆すっとんで来てくれたわ」
 ……おもっきり嘘じゃん。みんなもいい加減アシュリーの虚言に惑わされるのはやめてほしい。
まぁ確かにちょっと危なかったような気がしないでもないけどさ。

 少し呆れて三人を見つめていると、みんなと目が合った。
直後、居心地が悪そうにそれぞれそっぽを向いたのは、俺が責めているとでも思ったのだろうか。

「い…いえ私はただお目当ての仕事はあったのかな、と思いまして…」
「わらわは散歩の道すがら此処に寄っただけじゃ」
「……なんとなくです」
 どれも嘘なのは明白だ。……というか約一名、言い訳にすらなってない人がいるが。
まぁこの際みんなが此処に来たことは後回しだ。今はそれよりも。

「なんでみんなにも話した方がいいんだ?」

「鈍いわね。此処にいる三人にはミスコンに参加してもらいたいのよ」

「………は?」
 何か、今。アシュリーがとんでもない発言をしたような気がした。

「ちょっと待ってくれ。条件っていうのは……もしかしてソレ?」
「もしかしなくてもソレよ」
 当然ッ、とふんぞり返るアシュリーは置いといて。

えーと。
 『三人』ってのは、団長と姫様と、シャロンちゃんのことだよな。
で、彼女たちがその"みすこん"とやらに参加するわけだ。それが今回の仕事の条件。
442Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/29(火) 23:44:57 ID:A3eb0jOE

……あれ?おかしい。酷い条件かと思ったのに。よく考えれば大したことじゃなかった。
 アシュリーの提案にも関わらず、無茶なところとか俺が酷い目に合う要素とか何ひとつ見つからない。
これだけ役者を揃えといてアシュリーが何も仕掛けて来ないのは不自然だ。
彼女が俺たちという格好の獲物を目の前にして何もしないわけがない。絶対。断じて。疑う余地もなく。
 あ、いや。別に俺が捻くれてるワケじゃなくて。
この半年間、彼女が引き金を引いた騒動の数々を思い返せば、誰だって不審がるだろう。
それくらい彼女は毎度のごとくちょっかいを出して来ているのだ。

――――――まだ。
きっとまだ驚天動地の罠が隠されているに違いない。

「ひとつ訊きたいんだけど、"みすこん"って何するんだ?」
 訊かない方が良かった気もするが、これから起こる事象を鑑みるとそうも言ってられない。
俺はさっきから思っていた疑問を口にした。

 この国ではどうやら"みすこん"という単語は認知されているらしいが、
アリマテアでは――――――少なくとも俺は、それがいったい何なのか全く知らない。

 仕事を引き受ける前に"みすこん"の詳細を訊いておく必要があるだろう。


「今回のお祭りに限って言えば、煌びやかに着飾った格好で観客の前に出て一芸を披露するの。
それを審査員…つまりウィル君ね。ウィル君がそれを審査して誰が一番かを決める。
そして見事、ミス・オークニーの座を獲得した栄誉ある女性は南方通商組合のイメージキャラクターとして
通商組合の利益向上に努めて貰うことになってるわ。
というか、コンテストはイメージキャラクターを決めるためのオーディションとしての側面の方が大きいわね。
あんだぁすたん?」
 アシュリーが饒舌にコンテストの内容を説明する。
なるほど。アリマテアで年に一度行われていた剣舞大会に似てるな。あっちは出場するのは女性じゃなくて騎士だったが。

聞いた限りではコンテストそのものには問題なさそうだ。

「ちょっと待ってください!人前に出て芸をするんですか!?」
 首を縦に振ろうか迷っていると、アシュリーの後ろに控えていた団長が突然異を唱えた。

「…何か問題でも?」
 俺ではなく団長が異見するのは予想外だったのか、機嫌が良さそうだった顔をしかめて振り返る。
「わッ、私、そんなの恥ずかしくて出来ません!人前で醜態を晒すなんて、そんな……」
 自分がコンテストに出てるシーンでも想像したらしく真っ赤になって言葉尻を萎ませた。
以後はもじもじしながら小声で何やらブツブツ言っている。
443Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/29(火) 23:45:53 ID:A3eb0jOE

 そういえばそうだった。
この人、人望は偉く厚い割に人前に出ると無茶苦茶緊張するタイプなんだった。
騎士団長就任の演説で壇上に上がる際、前のめりにぶっ倒れたっていうおバカなエピソードがあったのを今になって思い出した。
あれは衝撃的だったなぁ……なんて俺はしみじみ思うわけですが。
当の本人は何を言うべきだったか頭から抜け落ちるくらいパニックだったらしい。
確かその後の演説も噛み噛みで、終いには半べそになる始末。
それを眺めていた騎士たちは唖然とする者、エールを送る者、身悶えてその場に転がる者と様々だったが。
とにかくその失敗がトラウマになったようで、以降の演説では一言二言喋るとすぐ引っ込んでしまうようになった。
詰まるところ、団長は極度の上がり症なのだ。

 だけど、団長?
オークニーの人たちにはもう充分なくらい醜態晒してますよ?俺たちは。

「…ふふっ。大丈夫よ。あなたたちにはそんな迷いが吹き飛ぶくらいの報酬を用意してるわ」
 渋る団長にじゅるり、と舌なめずりしながら近づくアシュリー。う〜む……邪悪だ。
さらにこそこそと団長に耳打ちしている。
あ、団長が黙った。報酬に釣られたか?なんて餌付けし易い人なんだ。
もし彼女に尻尾があったなら、きっと千切れんばかりの勢いで左右に振っていることだろう。

「…詳しくは後でね」

 餌付けが終わったのか、団長の様子に満足して俺に振り返り。

「お三方より先にウィル君に了解を取り付けておきたいの。
どう?引き受けてくれるかしら?
もしもそっちの中から誰かがミス・オークニーに選ばれれば、この先暫くは食い扶持に困らなくなるわ。
審査員の報酬も入るし至せり尽くせり。断る理由なんかないはずよ?」

「……そうだな」

 正直言って引き受けたくはない。彼女と関わるとロクな目に合わないのは骨身に染みてるからだ。
かと言って。
 このままでは以後の生活に支障を来たすのは確実。それだけに目の前でチラついている報酬は喉から手が出るほど欲しい。
皆の生活と俺の一時の災難。天秤にかけるまでもない。

「わかった。皆が構わないのならその仕事、引き受けよう」


「おっけぃ♪それでこそウィル君ね!」
 指を鳴らして小躍りするアシュリーの様子を見て、ちょっとだけ後悔した。
444Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/29(火) 23:46:45 ID:A3eb0jOE



「……待て。わらわはまだそのコンテストに出場するとは言っておらぬぞ」
 今度は姫様が不服そうに腕を組み、異を唱えた。

「…出ないの?」
 アシュリーが不敵に微笑みながら姫様に尋ねた。

「そうは言っておらぬ。さっきの口ぶりではウィルへの報酬だけでなくわらわたちの分を別に用意しておるのじゃろう?
その内容如何では引き受けても構わぬ、ということじゃ」
 ふっ、とこちらも邪悪な笑み。

……わぁ。二人とも悪徳官僚みたい。

「私も先に報酬の詳細を聞いておきたいです」
 耳打ちされたときは詳しく聞かされてなかったのか団長も姫様の意見に同調した。

「……いいわ。ウィル君の了解も得られたことだし、あなたたちへの報酬が何なのか発表しましょう」

 期待に満ちた団長と姫様の表情を眺めて満足そうに頷く。

「こちらで用意した報酬は残念ながら一人分。つまりこの中で一人しかその恩恵に与れません。
ですから、報酬を与えるのはコンテストで審査員から一番ウケの良かった人に贈呈しようと思います。
けど報酬を一人に限定させてもらった分、内容は満足できると思うわ」

 そこで言葉を溜めるように息を吸い込み。


「そして……ウィル君の心をガッチリ掴んだ人への報酬はッ!
豪華帆船を一日貸し切り、大好きなあの人と船上で二人きりのディナー!!勿論、南方通商組合が全面バックアップ!」


 大げさな発表におお〜っ、と歓声が上がった。
心なしかシャロンちゃんの目も輝いていた。


「食事時、船は沖に出るから他の二人に邪魔されることは絶対ナシッ!二人だけの甘いひとときを思う存分堪能してください!!」
 調子に乗って益々饒舌になるアシュリーを、三人が食い入るように見ている。

……まずい。
マズイマズイマズイマズイ。
これだ。これだったんだ、アシュリーの悪巧みは。
コンテストという隠れ蓑を使って、三人が俺を巡って血肉の争いをするのが真の狙いだ。
こんな見返りを用意されたらどんな理由があろうと団長たちは断らない。相手を蹴落としてでも優勝しようとするだろう。
しかも今度はお祭り。傍観者の数も今までの比ではないはずだ。
もし、そんな大衆の前で騒ぎを起こせば……今度は周辺都市まで俺たちの悪行が囁かれることになりかねない。
 やはり。この依頼を引き受けたのは早計だった。なんとかアシュリーの暴言を止めないと。
このままでは祭りがメチャメチャになる。

「ちょっと、待――――――」
 だが、俺の制止の声を振り切り、アシュリーが決定的な一言を告げた。
445Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/29(火) 23:47:30 ID:A3eb0jOE


「しかもッ!!
沖に出たまま船の上で一夜を明かしてもらいます!そしてご用意した部屋には豪華絢爛なダブルベッド!!
つまり――――――誰にも邪魔されずあんなことやこんなこともし放題!!やったネ!!」



 ピシリと。



 瞬時に、酒場が。……否、世界が凍りついた。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………………


(な、なんだよ………これは。まるで奇妙な冒険をしたくなるような、この空気はいったい何なんだよッ!?)

 さっきまで、どちらかと言えば和気藹々としていた雰囲気が一転、今は異様なほど殺気立っている。
朝のさわやかな空気が淀み始め、酒場がいきなり暗くなったような錯覚を覚えた。
無論、その原因は団長たちにある。

「……ッ!……ッ!……ッ!」
 団長が落ち着きなく視線を彷徨わせ、姫様とシャロンちゃんから距離を置く。
その瞳は今にも二人に斬りかからんばかりの獣染みた眼だ。

「フーッ!フーッ!フーッ!フーッ!!」
 姫様はもっと酷い。
こっちは眼どころか呼吸まで猛獣さながらに、団長とシャロンちゃんの二人を睨みつけていた。
ところでその構えはジュディスさんに習った格闘術の型ですか…?明らかに相手を殺すための構えなんですけど。

……恐い。無茶苦茶恐い。
 戦姫の様相に立ち返っている団長が恐い。
唯一身体能力が常人だった姫様が拳法を習って、どれだけ強くなっているのか解らないのが恐い。
アシュリーが悪の親玉よろしく、「ふはははははは」と高笑いしているのが恐い。


だ、誰か……助けて。みんなを止めて。
 救いを求めてきょろきょろと周りに視線をやると、空気が変わる前とさほど変化していないシャロンちゃんが目に入った。
446Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/29(火) 23:48:15 ID:A3eb0jOE


「………」
 狂気に満ち溢れているメンバーの中で唯一人、シャロンちゃんだけは冷静だった。
…良かった。俺は、まだ独りじゃない。独りじゃないなら、俺はまだ戦えるんだ。良かった……良かったよぅ。

「シャロンちゃん……」
 すがるような瞳で彼女に近づく。そしたら。



「コーホー……コーホー……」



…………あんたもかい。

 あの、シャロンちゃん?
ポーカーフェイスで冷静さを装ってるつもりなんだろうけど、おもっきり暗黒面が出てるよ?


「それじゃ、ウィル君。
お祭りは次の祝祭日だから。審査員の詳細やその他もろもろは追って連絡するわ」
 ふふ〜んと鼻息を唄いながら意気揚々と酒場から退場するアシュリー。

「え?あっ、ちょ……」
 無情にも俺に背を向けて出て行こうとする彼女の背中に手を伸ばす。

 この状況を放置したまま帰るつもりかよ!どうしてくれるんだよ、これ!
祭りの日までみんながギクシャクしたままになっちゃうだろ!?

 だけど怒りよりも絶望の方が勝っていたのか。どうしてだか声が出ない。
結局、俺に出来たのは思いを何ひとつ罵声にして飛ばせないまま、アシュリーが出て行くのを見送るだけだった。
447Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/29(火) 23:49:11 ID:A3eb0jOE

「あ………あぁ……」
 絶望。恐怖。人間不信。
あらゆる負の感情が鬩ぎ合い、俺はその場に座り込んだ。

 終わった。俺には止められない。どんなコンテストになるか全く想像できない。
ただ、解るのはきっと只事では済まないだろうと確信にも似た予感だけだった。

「……ッ!……ッ!……ッ!」
「フーッ!フーッ!フーッ!」
「コーホー……コーホー……」

 相変わらず三人は凶暴化したまま、眼でお互いを牽制し合っている。
予感は的中しそうだ。

「あらあら。今度のお祭りは楽しくなりそうね」
 無言のいがみ合いを続ける三人を眺め、のほほんとグラスを拭くジュディスさん。
嗚呼、俺にも彼女のような何事にも動じない強心臓が欲しい。


「頑張ってね、ウィルちゃん」


 ジュディスさんの間延びした声を聞きながら、今度の祭りはきっと血祭だな、とふと思った。
448Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/29(火) 23:50:38 ID:A3eb0jOE
団長(フリ)→姫様(フリ)→シャロン(オチ)
449名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 23:56:43 ID:s9mK5MyF
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!


展開にwktkwktk
450名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 00:04:58 ID:rWoaS5Pw
コーホーをベイダー卿ではなく
ウォーズマンかと思ったのは俺だけだろうか?
451名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 00:07:31 ID:o1thYbJD
GJ!さすがウィルだ!ミスコン審査員なんて修羅場フラグを引き受けるとは・・・
そしてシャロンの必殺ベアークローは炸裂するのか!?
452名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 00:12:23 ID:22bizj2p
安心しろ、俺もだ
きっと1200万パゥワァ(100万×2×2×3)で何かをしてくれるに違いない


少しスレチの話になるが、昔の彼女がキレたときに
俺にパロスペシャルもどきをかけたのを思い出した
あれはマジで脱臼しそうになる
453名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 01:16:18 ID:4lA/VLiN
ガンバレシャロン。負けるなシャロン。
454名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 02:20:07 ID:B0CjerEI
俺のシャロンちゃんハァハァ…(*´Д`)
455名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 03:59:16 ID:TPIrvf4d
何故かオーフェン(原作ね)を思い出した。
456名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 07:21:29 ID:CbnDyNAT
レッドドラゴンな彼女か。
泥棒猫に殺されても殺されても「偽態でした」といって出てくるわけだな?
457 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 13:21:17 ID:YNPp0W6w


零章

記憶の彼方に埋もれてしまった遠い約束。
いつか湖のほとりで誓ったひとつの約束。

お前は覚えているだろうか。
時の流れは速すぎて、いつしか二人は離れ離れになってしまった。
成人と共に祖国へ帰ったお前は、いまやストラドリアを立ち直らせた賢君として君臨している。
わたしが手紙を書けば必ず返事を返すが、お前から手紙が送られてきたことはあるだろうか。
わたしの記憶している限り、ない。


最後に交わした言葉は何だっただろうか。
お前は別れの日も何時もの表情を崩さなかったな。
その達観した瞳。
ようやく齢がお前に追いついたころだろうか。
普段は、お前がわたしの後ろをついてきたのに・・・
あの日だけは、女々しくお前の背を見つめて一人咽び泣くことしかできなかったわたし。

確かに、この胸にお前は生きている。
だから、信じられないのだ。

この報せが、真実であるなんて・・・!!


「なんだと!!??」

ぴんと張り詰めた空気の謁見の間に大声が響き渡った。
声の発生源は玉座の脇。
いまや引退したエレハイム王ラメセスの後を継いで、昨年即位した女王ソフィアのものであった。


報告した使者、文官武官、彼女の父であるラメセスでさえ滅多に見せることのないソフィアの剣幕に驚愕を隠せない。
458 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 13:22:27 ID:YNPp0W6w

一流の仕立て、豪華な刺繍と王家の紋が金で施された流麗なドレス。
それを身に纏い、堂々と鎮座しているはずのソフィアは普段の無表情を大きな瞳があふれそうなほど見開いて破壊した。
そして同時に破壊したの場の空気。
もともと荘厳な雰囲気の謁見の間には、氷のような殺気が一瞬にして張り詰めた。
その場に存在するすべての生命が肌に感じる危険。
それを発しているのは、間違いなく女王であるソフィアであった。
今でこそ正装しているが、彼女は大陸全土に名が轟くほどの名君として、そして戦をすれば常勝無敗の名軍師であった。
時折自分で剣を握れば、誰も彼女が通り過ぎた後に立つことは敵わず、ただ敗者として地面に伏す。


そんな彼女が驚愕によって発した殺気は、周囲の人間を萎縮させて当然であった。
だが、彼女を取り巻く人間の中にも、深くソフィアの心中を察するものがいた。
仕方ない。だが、認められない。
そう思う女王の態度は、至極当然のことであった。

「あいつが・・・あいつが・・・死んだだと・・・?戯言を申すな!!」

今にも目前でひれ伏す使者に掴みかからんとする勢いで女王が怒鳴る。
ここで帯剣していたならば迷わず抜き放ち、使者の頸を切断していてもおかしくはなかった。
女王は固く拳を握り締め、神の芸術品といっていいほど整った面立ちを深い感情のざわめきに揺らしていた。
数年前、新たな人質と交換に祖国へ帰還したストラドリアの王子アシュレイ=アシュルード。
エレハイムで少年時代をすごし、聡明で勇猛な男に育ったはずのアシュレイ。

「し、真実でございます。突如ストラドリアの国境付近に侵攻を開始した帝国との戦闘に自ら参加なされた閣下は、善戦虚しく圧倒的な戦力差の下に敗北。
自軍を敗走させるために殿軍を務められ、背に矢を三本受けた状態で崖下に転落。死体は確認されておりませんがおそらくは・・・」

煮えるような怒りを宿していた女王から、熱が引いていく。
あまりに現実味にあふれる回答から、さすがの激昂もすぐさま蒼白に入れ替わった。
急に色を失った女王の表情に、使者も最後まで言葉を告げずただひたすらに唇をかみ締めていた。


ぴんと張り詰めた空気は、気づけば絶望の濃淡に塗りつぶされ、そこにいる誰もがストラドリアの若き賢君の生存を諦めていた。
旧く彼を知る者たちは自らの行いを振り返り、なんともいえない顔つきをする。
当時は弱小国の王子が大国の姫に気に入られ、二人の仲に嫉妬していた者たちも女王の凄絶な表情に言葉を失っている。

「女王様・・・こちらへどうぞ」

呆然と何もない空間を見詰める女王に、控えていた侍女が静かに歩み寄る。
先王ラメセスに一礼して、心とアシュレイの支えを失った女王を抱きしめるように奥へ下がっていった。
心が死んでしまったように、されるがままの女王に周囲のものたちは表情を変えることもためらい、ただ直立不動のまま時を食いつぶす。

誰もが浮かべる沈痛な表情だけが、印象的であった。

459 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 13:24:40 ID:YNPp0W6w


【ソフィア】

現実すべてが憎い。
このわたしを取り残して去ってしまう、時間の流れが憎い。

一目だけ、夢の中だけでいいからわたしにその姿を抱かせて。

侍女に連れられてから、わたしは時の概念を忘れたように泣き続けた。
いつもなら気丈に構えていられる天蓋つきの大きなベッドも、広い。
夜の帳に包まれて人の息がないこの部屋も、心細い。
いつか宮廷絵師に描かせたアシュレイとわたしの姿。
燃える暖炉の光で仄かに輝くその一枚だけが、わたしの心から孤独という影を払ってくれる。



絶望という蟲に食われた、この小さな胸を満たしてくれる。


向日葵のように笑う幼い自分の隣に、どこかはにかんだ微笑のアシュレイ。
手を繋いで薔薇の咲き誇る庭園で笑う二人。

時の岸辺に残された光景。
目を焼く。
じんと、奥が熱くなる。
暖炉がもたらしてくれる熱はこんなに温いのに、心が冷えてわたしを震わせていく。

そのまま自分の体を抱いて、崩れるようにして嗚咽に身を任せた。
感情が壊れてとめどなく零れてくる涙。

止まらない。
止めたくない。

この悲しみが去った後、自分がどういう感情を持つか想像するだけで胸が痛くなる。
悲しみは辛い。
でも忘れ去ってしまうのはもっと辛い。
だからずっとこの悲しみに浸っていよう。

アシュレイが、わたしを励ましてくれるまで。

アシュレイ…、いや、アッシュ…
わたしの言いつけは護っていたか?
誓いは忘れていないか?
誰にもアッシュと呼ばせていないか?
浮かんでは消えていくアッシュとの思い出。
陽光に煌くお前の髪を見て思いついた呼び名。

訓練場で、書斎で、図書館で、庭園で、あの湖畔で…

アッシュの愛した季節の色だけが、当時の輝きのまま胸を照らした。

460 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 13:25:53 ID:YNPp0W6w

真に強いのはお前だった。
剣が強くとも、戦略に長けようとも、治世が上手かろうと、こうやって悲しみの淵に立ったとき一人でたつことのできないわたしは弱い。
だが、お前は強かった。

常に孤独にたたされていた。
弱小の同盟国から差し出された幼い人質として、孤独ながらも胸を張っていた。
わたしの背中に追いつこうと、苦手な剣術も勉強した。
そんなアッシュの姿に、間違いなくわたしは恋していた。

だから湖畔であんな誓いを立てたのだろう。
アッシュ。
今のお前は笑うだろうか?
立場の違いを利用して無理矢理押し付けた約束を。
わたしを嘲笑っているか?
自分を叱咤していた生意気な小娘が、まさか強さの意味を履き違えていたなんて。

「うっ…くっ…」

脳裏でアッシュが困ったように微笑むたびに、胸が締め付けられる。
もう打ち止めと思っていた涙も、まだ枯れてはいなかった。

別れの日を覚えているか?
何人もの大使に見守られ、国境の門を何度も振り返っていたアッシュ。
厄介払いができたと安堵する文官たちと、悲しみと怒りを勘違いして腹を立てていたわたし。
それでもずっと考えていたのは、お前に伝えようとしていた一言。

あの時、あの瞬間、機会はいくらでもあったろう。
湖畔で誓いを立てたときも然り、臆病な自分にいまさらながら剣を突き立てたくなる。

十年間も一緒だった。
なのになんで素直にこの気持ちを告げられなかった?
お前は見透かしていたのだろう?
照れ隠しに必死で強がるわたしを。
気づいていたのだろう?
剣という鎧に身を纏ったわたしの、脆くて華奢な心の芯を。

461 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 13:28:01 ID:YNPp0W6w

お前がいなくなってから、わたしは政治と軍事に没頭して行った。
幼いころにつけた知識と、父の為政を見て培った経験。
すべてでこのエレハイムを練り上げた。
女王になった後も婿を取って身を落ち着けよ、という父の薦めもすべて跳ね除けた。
宮中のものたちは色に興味を持たず、ひたすら職務に身を置いた自分を見てさぞ嘆いたことだろう。
だが、お前ならきっとわたしを受け入れてくれると信じていた。



それに、約束したではないか。

あの湖畔で、お前は自分から口付けてくれたではないか。
その瑞々しい感触。
夕焼けに溶けていく遠い約束の味。


胸の柔らかい部分を熱くさせる、埋もれていた気持ち。


それを思い出そうと、唇に指先を走らせていると萎えた心に火が灯るのを感じた。

気づけば涙は引いていた。
胸を満たすのはいつか感じた根拠のない勇気。

約束が力をくれた。
わたしの中でお前はまだ生きているではないか。
ならその生に、全力で報いよう。
外の世界では死んでしまっているお前に、我がすべての命を以って鎮魂歌を奏でよう。


462 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 13:28:47 ID:YNPp0W6w

「…おるか」

「…はっ、ここに」

立ち上がって冷静な低い声で告げると、暖炉のつけた陰影が起き上がるように人の形になる。
闇から生まれた一つの影は、暗闇から響いているとは思えないほど若さに満ちた女の声。

「彼奴の国を襲ったのは帝国の手で間違いはないな?」

「左様でございます。国境付近に走らせた影数人から帝国のものと思われる馬蹄の痕跡を確認しております」

「…帝国の情報を集めろ。アシュレイを手にかけたというものを探せ。
 四将軍を議場に集めろ。そして死霊騎士団長ガボールには直接わたしの所へ来るように伝えよ」

怒りと悲しみが混ざり合った口調。

その相反し、もっとも近い感情が時を掛けて溶けゆくと、一つに境地にたどり着く。

それは、地獄をも灰燼に帰す焼夷の炎。

“復讐心”

「帝国に宣戦布告せよ。鏖だ。鼠の一匹たりとも逃すな。
 女は犯せ、男は殺せ、家と燃やし畜は奪え、豚は喰らえ、馬は焼き鏝を尻に突っ込んで放て。水は汚せ、空は赤く染めろ」

「御意」

アッシュよ。わたしはあの約束を忘れてはいないぞ。
これから手土産をたくさん持ってお前のところへ向かおう。
死神と、髑髏の馬列と共に。
だからたっぷりとわたしを愛しておくれ。
あの時告げられなかった気持ちはちゃんと言うから。

お前がいない無価値なこの世界を、黒で塗りつぶした後に。

463 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 13:32:23 ID:YNPp0W6w

>>6xSmO/z5xE様

承認してくださってありがとうございます。
そしてごめんなさい。
自分の能力ではこのようなものしか出来ませんでした。
ちなみに序章は3パートに分かれております。
この容量が、あと二つです。
物凄く長いので時間を空けて次を投下させていただきます。
皆様本当にお目汚し申し訳ない。
464名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 14:38:36 ID:22bizj2p
一言、言わせてくれ



 最 高 だ
描写や内心がえらくツボった
姫様やたらカッコカワイイ!!
465『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/30(水) 16:04:46 ID:i9IeyVik
「沙恵ちゃん……」
「部活…遅かったね。こんな時間まで先輩となにしてたの?」
ゆっくりと立ちながら聞いてくる。
「なにって……部活だけど?遅くなったから送ってくって言ったんだ。」
「そう……優しいんだね、海斗は…」
うーん、そうかな?誰だって同じ事すると思うけど……
「それより、沙恵ちゃんの方こそどうしたの?部活がないのに、こんな時間まで…」
「え?あー…いやぁ……えへへ。実は急に部活が有るって事になっちゃってさ、いままでやってて……今から帰りなんだ。」
それは…嘘だとわかった。部室からグラウンドが丸見えだからだ。今日は誰もグラウンドで走っているのは見なかった。でも、僕は……
「そう。」
それだけしか言えなかった。僕を待っててくれたの?なんて言ってもひっぱたかれるのがオチだからね。
「あ、えっと…こっちは秋乃葉華恋先輩。…って、沙恵ちゃんは知ってたっけ?」
「うん…名前と顔だけなら。」
「先輩。この娘は、高坂沙恵ちゃん。僕の幼馴染み。」
「はじめまして……秋乃葉先輩……噂には聞いてますよ。学園のアイドルだって。」
466『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/30(水) 16:05:32 ID:i9IeyVik
「え、ええっと…はじめまして…高坂…沙恵ちゃん、でしたっけ?うふふ、よく部活の時に海斗君から話を聞いてますよ。」
「えっ?」
「いや…よくって言っても一回じゃないですか……それより、沙恵ちゃんも今から帰り?」
「う、うん…そうだよ。」
「じゃあ一緒に帰ろうよ。構いませんよね、部長?」
「………」
部長は聞こえていなかったのか、返事もせず、ただ沙恵ちゃんのことをじっと見ていた。いや、睨み付ける、といったほうが近いか。それはいつもの部長とは違う、なにか怖い雰囲気だった。
「…部長?どうかしたんですか?」
「…へ?あ、いい、いえ、いえ。大丈夫ですよ。一緒に帰りましょう。」
なんだか様子がおかしかったけど…大丈夫かな?
「ほーらっ!そうとなったら、こんな所にいないで早く帰ろうよ。ボク、お腹空いちゃったよ。」
「うわっ。ちょっと沙恵ちゃん、引っ張らないでよ!」
「ふふ…じゃあ、帰りましょうか。」
その後、部長の家が有るという自然公園に行くまでは、二人とも仲良く話していた。さっきの変な雰囲気は気のせいだったのかな?
467『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/30(水) 16:06:17 ID:i9IeyVik
「それじゃあ、私はここで……」
「え?もういいんですか?家まで送っていきますよ?」
「いえ、大丈夫ですよ。すぐそこですし、商店街とは逆方面になってしまいますから。………それに……」
「それに?」
「…いえ、なんでもありません。おやすみなさい!」
そう言い残すと、暗闇の中に走って消えてしまった。なんだったんだろうなぁ。またさっき沙恵ちゃんのこと見てたけど……
「ねー。早く帰ろうよ。かいとーぉ。」
「あ、うん。そうだね。…ちょっと買い物してきたいんだけど、いい?」
「むぅ、しょうがないなぁ。ジュース一本!どう?」
「はいはい。わかったよ。」
それから麻理に言われたように醤油を買う。そういえばシャンプーとリンスが切れてたんだ。買い足して……
「げ。」
いつも使っている物が売り切れだった。仕方ない、他のやつを買おう。……髪に合うといいんだけどね。麻理とかそういうのにうるさいし。
買い物を終え、帰り道。……今日は足音がついてきてないきがする。沙恵ちゃんの足音もあるが、それ以外は特に聞こえない。さすがに二人の時はついてこないか。
もし、ストーカーが沙恵ちゃんに手を出すようなら……なんとしても守らないと。こうやって二人で帰るのを見ていたら、黙っているはずがない。
沙恵ちゃんにもなにかしらの被害が及ぶはずだ。
「ね、ねぇ。海斗?」
「ん、ん。なに?」
沙恵ちゃんの事を考えた時に、本人に声を掛けられて少し戸惑う。
「今日みたいに…秋乃葉先輩を送ってくってこと、多いの?」
「まさか。そんなの今日が初めてだよ。たまたま沙恵ちゃんが一緒になっただけさ。」
「たまたま、か…」
なにかつぶやいて、少し歩くと、沙恵ちゃんは急に走って前に出て、こっちを振り向く。その顔には、いつも笑顔があった。
「いい、海斗!最近は日も短くなってすぐに暗くなっちゃうじゃない?」
「うん。」
「だからっ、このボクが変質者に襲われないよう、毎日放課後は一緒に帰ること。いいね?」
「………」
「海斗?」
「うん。なにがあっても。絶対に沙恵ちゃんだけは守ってみせるよ。」
「っ〜〜。や、やだなぁ、そんな真面目に……か、海斗はいつもみたいに照れ笑いしてればいいの!恥ずかしいじゃんか。」
468『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/30(水) 16:07:46 ID:i9IeyVik
「そ、そう?あはは……でも、本当に守るからね。」
「あーっもうっ。じゃあ約束だからね。忘れちゃだめだよ。ばいばい!」
そういって、沙恵ちゃんは走って家の中に入っていった。
「ただいま〜…ぁ…」
玄関を開けると、そこには鬼のような……麻理が仁王立ちしていた。まずい。絶対に怒ってるよ…
「随分と遅いお帰りですね。お兄様?」
ほら、怒ってる。
「あはは…部活に夢中になっちゃって…ごめん…」
「それならそうと連絡してよねっ!夕飯作るのにお醤油欲しかったんだから!!」
「うわっ、ほ、本当にごめんってば。ほら、お醤油…」
それをひったくるように取ると、麻理は台所に入ってしまった。
「今からご飯作るから、先にお風呂にでもはいってて!」
「うん、わかった。」
言われたとおりに風呂場へ。こういう時の麻理には逆らえないもんなぁ……







「ふぁーぁ……」
やっぱりお風呂は気持ちいい。なんでも洗い流してくれるっていうのは本当だね。あの新しいシャンプー、意外と髪に合うな。今度からあれ使おうかな……麻理がなんていうかわからないけど。
「お風呂、あがったよ。」
「こっちもご飯できたわ。私は……お風呂は後でいいかな。どうせ洗い物とかあるし。」
「うん、じゃあ食べようか。」
二人で向かい合い、少し遅めの夕飯。今日は和食だ。それにしても麻理のご飯のレパートリーは日に日に増えていくな。今度感謝の印にどこか連れてってあげよう。
「麻理。」
「え?」
「今度の日曜……」
〜〜♪
「…携帯、なってるわよ。」
「ごめん。」
折角話し掛けたのに、出鼻を挫かれた感じだ。誰からだろう………
ピッ
『今日いつものシャンプーと違うの買ったんだね。だから私も海斗君と同じやつ買って、早速使ってみたよ。海斗君はもう使った?
うふふ、海斗君と同じ匂いのする髪の毛だっていうだけで、クラクラしちゃう♪』
……髪の毛を触り、掌の匂いを嗅いでみた…
「……どうしたの?おにいちゃん?」
「ああ…いや、なんでも……」
確かに『クラクラ』した。
「ま、麻理?」
「え?なに?さっきの続き?」
「うん……今度の日曜日、暇だったらどこか遊びに行こうか?」
ついでにいつものシャンプーも買ってこよう……
469名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 16:33:33 ID:x7dvT7eS
>>468
GJ!沙恵カワイイよ沙恵
ちょっと持って帰りますね
470名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 16:51:17 ID:rWoaS5Pw
>>466
GJ!睨む先輩イイ!
471名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 17:06:32 ID:22bizj2p
投下しますよ
472『とらとらシスター』20虎:2006/08/30(水) 17:08:08 ID:22bizj2p
 三日月や星の見守る部屋の中に、粘着質な水音が響く。
「今日、は、いつ、もより、激しい、ね」
 微笑んでこちらを眺める姉さんが妙にいやらしく見えて、僕は腰の動きを加速させた。
更に激しく獰猛に、粘膜と粘膜、性器と性器とを擦り合わせる。初めて姉さんとセックス
をしてから毎日続けているせいか驚く程それは馴染み、とろけて絡み付いてくる姉さんの
性器は、恐ろしいくらいの一体感を僕に与えてくる。このまま溶けて混ざりあい、一つに
なるような、そんな感触が僕の性器を包む。
「姉さん、中に、出すよ」
 答えの代わりに強く抱きついてきて、僕の腰に脚を絡めてくるのはいつものこと。それ
が出してほしいという意思表示なのは分かっているので、一際深いところまで打ち込んだ。
 直後。
 姉さんの膣が痙攣して強く締め付けてくるのと同時に、子宮口を強くこじるようにして
突いていた僕の先端から精液が出た。いつもより若干長い気がする放出時間の後、僕は姉
さんの膣内から引き抜きながら、胸の上に倒れ込んだ。柔らかな双丘が顔に当たる。顔の
形に合わせるように形を崩しながらも、適度な弾力で押し返してくる感触が何とも気持ち
が良い。
 数秒。
 それだけの時間を置いて荒くなっている呼吸を調え、姉さんは小さく笑った。
「どうしたの?」
「ん、お姉ちゃん嬉しくって。何か今日、いつもより激しかったし。それに」
473『とらとらシスター』20虎:2006/08/30(水) 17:09:02 ID:22bizj2p
 割れ目から溢れてきている互いの液がブレンドされたものを、僕の指を使って掬い、
「いつもより量も多いし、濃いみたい」
 しゃぶるように舐める。
「不味いね、濃いから更にキツいかも」
 言われ、心が痛んだ。いつもよりも濃いという理由は単純、今日はサクラとしていない
からだ。僕は元々弾数が多い方ではないので、それが顕著に表れたのだろう。
 そんなつまらないことを頭の端で考えながらも、それ以外の大部分で思うのはサクラの
こと。愛し合う直前でそれが砕け、拒絶された痛みは本人にしか分からない。けれども、
別れ際の痛々しい表情は誰の目にも分かる程それを訴えかけてきていて、それを思い浮か
べると胸が強く締め付けられる。
「虎徹ちゃん、どうしたの?」
「何でもないよ、それより」
 内心を悟られないように笑みを浮かべ、無理矢理話題を代えるように、
「前から気になってたんだけど、どんな味がすんの? 不味いとか苦いとかはよく聞くけ
ど、具体的にどんな感じ?」
「舐めてみる?」
 僕が首を振ると姉さんは楽しそうに笑い、
「何か生臭くてね。最初は少ししょっぱい感じなんだけど、飲み込むときに何かエグいの
が来る感じ。しかも、喉の奥の方にその嫌な感じのがこびり付いて……」
「ごめん、もう良い」
474『とらとらシスター』20虎:2006/08/30(水) 17:11:44 ID:22bizj2p
 具体的に、と言うよりも生々しい感じの描写に具合いが少し悪くなってきた。それが僕
の性器の中から出てきたものだということを差し引いても、絶対に飲みたくはないと思う。
姉さんやサクラは嬉しそうに美味そうに飲んでいたから青汁のようなものだと思っていた
けれども、方向性はかなり違うらしい。
 僕は軽く頭を下げ、
「ごめんなさい」
 それを聞いて姉さんは再び笑う。
「気にしないで、虎徹ちゃん。個人差ってものがあるらしいから、もしかしたら虎徹ちゃ
んのは他の人より飲みやすいのかもしれないし。他のは飲んだ事ないから分かんないけど」
 これは、フォローされているんだろうか。されているにしても、妙な話になったもんだ。
「それにね、あたし達は飲みたくて飲んでるんだからね」
 という訳で良質な蛋白質を頂きま〜す、と言いながら姉さんは僕のものに舌を這わせた。
性器のものとはまた違う感触に背筋に震えが走るが、今はそれよりも大事なことがあった。
「姉さん」
「ふぇ、ふぁひ?」
 僕のものを口に含みながら喋っているせいで発音が不鮮明だが、聞くことは聞いている
らしい。姉さんはたまに夢中になりすぎて、わざとなのかどうなのか、それとも天然なの
か、人の話をあまり聞かないことがある。数少ない姉さんの悪癖だ。食事時もそうだけれ
ど、口にものを含んだまま喋る悪癖もあり、治ってほしいと常日頃思っているのは僕だけ
の秘密だ。
 そんな現在進行系で悪癖を披露している姉さんに向かい、僕は吐息を一つ。
475『とらとらシスター』20虎:2006/08/30(水) 17:12:31 ID:22bizj2p
「口にものを入れたまま喋らないの、それより」
「うん」
 口からものを出したが、今度は豊かな膨らみで挟んできた。複数の種類の液が混ざった
液が潤滑油となり、挟んでいるものの弾力と相混じって独特の快感を作っている。
 思わず声が漏れそうになるが、それを堪えて姉さんを軽く睨んだ。もしかして、わざと
やっているのではないだろうか。
「乳から手を離しなさい」
「えぇ、じゃあお姉ちゃんどうすれば良いの!? まさか、あ、足!? 足なのね!? うん、
少しマニアックだけどお姉ちゃん引いてるのを隠して頑張る!!」
 隠してねぇ!!
「あんまり器用じゃないから下手かもしれないけど、許してね?」 僕は姉さんの頭にチョッピングをして黙らせ、
「姉さん、さっき言った『あたし達』の『達』って何?」
「? 複数系を表す言葉だよ?」
 そうじゃなくて!!
 睨むように姉さんの顔を覗き込むが、しかし返ってきたのは見当違いな程に優しい笑み
だった。どうやら僕が言いたいことは分かっていて、少しからかっていたらしい。姉さん
の場合、こんなボケをしても普段とあまり変わらないので分かり辛い。
 否、それよりも、
「知ってたの?」
「あはっ、うっかり口が滑っちゃった」
476『とらとらシスター』20虎:2006/08/30(水) 17:15:32 ID:22bizj2p
 やはり姉さんは、僕がサクラともしていたことは知っていたらしい。冷静に考えてみれ
ば、当然かもしれない。夜中に姉さんとしていることをサクラが知っていたのだ、それに
比べて格段にばれやすい夕食前という時間にサクラとしていたのだから、気付くのは当然
かもしれない。なるべく声や音は出さないようにしていたけれども、分かる人には簡単に
分かってしまうだろう。
「サクラともしたの、怒ってる?」
 答えは言葉ではなく動きで来た。昼間、泣いていた僕にサクラがしたように、顔を胸に
埋めるようにして掻き抱かれる。性格は違っていてもやはり姉妹、同じような行動をとっ
たり、根の部分で繋がっている。
「でも、今日はしてないんでしょ? いつもより濃いのもそれかな?」
 答えられずにいる僕に対して、言葉は続く。
「サクラちゃんと、何かあったの?」
 これで言葉は終わりだ、と言うように抱く力が強くなった。
 温かい。
 仄かに甘い香のする胸の中、言っても良いかもしれないと思った。心の中で留めておく
には重すぎるし、こうして今、僕を受け止めてくれている姉さんならどうにかしてくれる
かもしれない、という希望を持って。
 顔を上げると、相変わらず姉さんの笑みがある。
「サクラが」
 細く息を吸う。
「青海を」
 言ってしまえ。
「殺した」
 短いが確かに言いきり、大きく吐息をした。
「そう」
477『とらとらシスター』20虎:2006/08/30(水) 17:16:54 ID:22bizj2p
 対する姉さんの返事も短いもの、特に何を言う訳でもなくこちらを見つめている。人が
死んだというのに、しかも身内が殺したというのに動じた様子もない。ただ、次の言葉を
待つように僕を抱いたままだ。
 数分。
「姉さん、どうしたら良い?」
「どうしたいの?」
「分からない」
 そう、分からない。
 どちらを見ても道がない。
「許しちゃえば?」
 何を言っているんだ?
「怒りたくても怒れない、離したくても離せない、嫌いたくても嫌えないから虎徹ちゃん
は悩んでるんでしょ? なら許しちゃえば良いんじゃない?」
 そうなのか?
「現に、晩御飯のとき何も言わないサクラちゃんをかばったでしょ? それは、嫌いたく
ないってことだよ」
 そうかもしれない。
「ここからはあたしの気持ちだけどね、サクラちゃんを嫌わないでほしいな。青海ちゃん
には悪いと思うけど、サクラちゃんは虎徹ちゃんが好きだからやったことだし」
 姉さんの言葉は止まらない。
「あたしも、サクラちゃんには悪い人にはなってほしくないから。姉妹だし、家族だしね」
 家族、だから。
「ま、これはあたしのワガママだけどね。良かったらサクラちゃんのことや、あたしの今
の言葉を胸に留めておいてくれると嬉しいな」
 サクラを許せば、そのまま青海を切り捨てることになる。
 だから許せない。
 許したいのに、許せない。
「おやすみ、虎徹ちゃん」
 僕が考えている間に姉さんは手早く寝間着を着ていたらしく、そう言うと僕の頬と唇の
それぞれにキスをして部屋を出ていった。
 数秒。
 なんとなく窓の外を見た。
「どうすりゃ良いんだよ」
 見守ってくれているだけで、月も星も答えてくれない。
478ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/08/30(水) 17:18:08 ID:22bizj2p
今回はこれで終わりです

ラストまであと少し
479ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/08/30(水) 17:24:34 ID:22bizj2p
また凡ミス('A`)

「あたし〜許してね」の後に改行を入れ忘れました
まとめのときはそこをヨロシクです
480名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 17:28:16 ID:1r8f3tsy
>>457
次は侍女か
ワクワクテカテカ
481名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 17:44:31 ID:1r8f3tsy
>>479
ドンマイそしてGJ
482名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 17:53:57 ID:fk29VjFL
クイックのリニュ版と鬼ごっこキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
483名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 18:06:59 ID:B0CjerEI
俺もこんな青春を送りたい…(´・ω・`)
484名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 18:07:15 ID:HZPW4EsX
>>463
GJ!!!
新作が楽しみだけど、スウィッチの続きもすごい気になる。
485 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 21:01:21 ID:YNPp0W6w

【侍女】

私はただの侍女。
少なくとも大して重んじられていない宮中のものたちはそう考えているでしょう。
しかしそれは単なる愚者の誤解です。

私の真の姿は、王族付きの“影”。
すなわちありとあらゆる闇の仕事を一手に請け、光の当たらない場所を走り続ける国家の番犬です。
闇に産まれ、闇で育ち、そして闇の中に没していく。
正真正銘影の存在、それがエレハイム王軍特務部隊“髑髏蝶”。

私はその訓練を受ける候補生の一人として、幼少を過ごしました。
王族という方々は有事から政治的外交、他国の大使との会食まで幅広い職務をこなします。
そんな場所で常に鎧を纏った騎士が控えていれば、相手にも不快感を与えるし、なにより大陸でも最強の呼び声高いエレハイムの美徳に反することになります。

そうして産まれたのが我ら髑髏蝶。
一見か弱い侍女に見える。
しかしその皮を一枚めくれば、されこうべの死神が大口を開けて笑っている。
物心のつかないころからその候補として集められた少女達は、過酷な戦闘訓練と公の場所に出ても気後れしない豪胆とマナー、感情を完全に殺して立ち回る鋼の心を持たされるのです。

私は今でこそ女王付きの髑髏蝶を束ねる侍女でありますが、もともとは単なるおちこぼれ。
王家直属の部隊長である私でも知らないエレハイムの“影”は数多存在します。
それこそ街の娼館で身売りをして情報を集めるもの、物乞いの姿で反乱分子を見極めるもの。
室として外国に送られる部隊もあると聞いています。

そんな中でわたしが至極真っ当である髑髏蝶に所属できたのは、一人のお方のお陰といって間違いはございません。
孤児として産まれた私が逃げ場もなく居場所を求めていたころ、迷い込んだ小さな湖で手を差し伸べてくれた、私にとって唯一の救世主であるお方。
神も奇跡も、自分が護らなくてはならぬ女王さえも信じていない私が、唯一すべてを投げ打って信仰しているお方。

隣国ストラドリアの王子であられたアシュレイ=アシュルード=ストラドリア様、あのお方の温情のかけら。
私のすべてはそこに集約されています。

訓練中に仲間とはぐれ、背の高い草木が覆う湿原に迷い込んだ私は綺麗な湖にたどりつきました。
きっと幼い私でも一番深いところで背のつくとても小さな湖でした。
私は上官からお叱りを受けるのだろうと恐くて泣いていました。
立つ瀬のない孤独に身を置いていると、些細なことで涙があふれてきました。

綺麗な湖も、どこか私を嘲笑っているようで居心地が悪い。
そう悲嘆に呉れている時でした。

あのどんな宝玉よりもまばゆく、如何なる芸術品よりも精巧な面立ちのあの方に出会ったのは。

486 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 21:02:27 ID:YNPp0W6w

『ねぇ、キミ?ないているのかい?』

背中にかかった春風のように優しい声に、思わず弾かれたように振り返っていました。
そして精一杯目を広げました。
そこには、光の御子が立っていたのです。
少なくとも、わたしにはそう映りました。

陽光に表情を変えるアッシュブロンドの御髪。
一見すれば可憐な少女に見紛うほど完成された秀麗なお顔。
蜂蜜のように甘い微笑を浮かべられて、私は悲しみが音を立てて崩れていくのを感じました。

悲しみなんかより、もっと大事な感情を初見にして抱いてしまったからです。
そのまま見とれていた私は、なんとも歯切れの悪い返事しかできませんでした。
今から時をさかのぼれるなら、一発平手を食らわしてやりたいほどに。

『え、あ…私は…』

吸い込まれるような深いレイクブルーの瞳。
年齢は私と変わらないはず。でも洗練された気品と大人びた微笑は歳不相応なものでした。
あのお方は私が涙を流していることに気づかれると、懐から取り出した豪奢なハンカチーフで目元をぬぐってくださいました。
柔らかい布の感触と、僅かに触れた温かい指先。
人の優しさに初めて触れた私は、今生この光景を忘れまいと胸に刻み付けました。

『手首を怪我しているね。このままだと傷によくないから、これを巻いておいで』

更にアシュレイ様は涙をぬぐったハンカチーフを湖水に浸して冷やすと、青く変色した手首に巻いてくださいました。
綺麗な結び目から感じるのはあのお方の大きく雄大な御心でした。
アシュレイ様は笑顔を浮かべられると、黙って私の隣に腰を下ろされました。
その時仄かに香るコロンと、王宮でいつも焚かれているという薔薇の香。

静かに湖面を見つめていられるアシュレイ様。
きっと私が口を開くのをお待ちになられていたのでしょう。
しかし、私は膝を抱えて俯いたまま何も言うことが出来ませんでした。
すると、すぐさま後ろの茂みから一人の少女が姿を現しました。


アシュレイ様とは対照的な透き通る青空のようなブルー。
光をそのまま吸い込んだようなプラチナブロンド。
完璧なほど整った面立ちを快活さで光らせたその人は、間違いなくエレハイムの王女、ソフィア様でした。
元気に飛び出されたソフィア様は、どこか怖い顔をしておられました。
まるで好物のプリンを、横取りされて拗ねる子供のように。

そんな王女に気がつくと、アシュレイ様はそっと私に耳打ちをされました。

『キミ、僕はいつもここにいるから…つらいことがあったらまたおいで。だから今日は済まないが…』

魅力的な提案でした。こんな私に王子様は再び会ってくださる。
それに彼に近づいていた存在が“影”の訓練生とあらば、部隊そのものが処刑される恐れもあります。
決して好きな場所じゃないけれど、仲間達が殺されるのはさすがに堪えた私はそのまま踵を返して立ち去りました。
ずっとこちらを据えた視線で睨みつける王女を、視界の端に収めながら。
氷のように冷えた王女から逃げるように立ち去った私の胸には、燃える炎がありました。
必ず大成してあのお方を護って見せようと、この命に代えても彼の優しさを奪わせないと。

487 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 21:03:38 ID:YNPp0W6w

後日期待に胸を膨らませて湖を訪れると、あのお方はちゃんとそこにいらっしゃいました。
またレイクブルーの瞳を、優しく緩ませて。

そして彼と言葉を交わすたびに、ちくちくと胸を刺す感情が生まれました。
訓練の一環として叩き込まれた政治的な知識。

それが私に教えてくれたのは、アシュレイ様とソフィア様の関係。
人質と大国の王女という立場に縛られたお方。
二人が仲良くしていれば、貴族達から妬みも顰蹙も買うでしょう。


そんな彼を気の毒と、可哀想と思うたびに王女へ言いようのない怒りが生まれました。
将来は仕える存在でありながら、私の胸の奥でくすぶっている黒いもの。
それを抱えたままに私は国に対する奉仕者として生をまっとうできるのでしょうか。

『キミなら大丈夫さ。何を目指しているのか僕にはわからないけれど、きっと平気だよ。
 挫けそうになったらここにおいでよ。僕は…』

そうやって何度も寂しそうに浮かべられた笑顔。
私なんかよりもっと複雑な境遇におられるお方。
それでもいつも笑顔でいてくださる。

幼い心に誓いという焔が踊るのを感じました。
これでした。
私が求めたものは…

それから私は狂ったように努力しました。
寝る間を忘れて勉学に身を置き、体が壊れるのも厭わずに修行に打ち込みました。
王族つきの“影”になれば、あのお方をお傍でお守りできる。
ただそれだけ、それだけでした。




“影”という名の私の半生は。
488 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 21:04:45 ID:YNPp0W6w

王女様。
あなたがいらっしゃらなければ、アシュレイ様とお会いすることも無かったでしょう。
感謝しております。海より深く。
王女様。
あなたがいらっしゃらなければ、アシュレイ様が苦しむことはございませんでした。
憎んでおります。空より高く。

人質の任を解かれて祖国にお戻りなったあのお方、帝国の侵略をその身を張って受け止めたあのお方。
貴女様が感じておられるように、きっとあのお方は生きておいでです。
しかし、どんなに孤独で、どんなに寂しい思いをしていらっしゃるか。

私しかおりません。
今のアシュレイ様をお守りできるのは。
私しかおりません。
あの湖畔での温情に報いることが出来るのは。

いただいたハンカチーフ。経年劣化で糸は解れ、白絹は変色してしまっている。
それでも、私にとっては大切な、大切な“人”としての宝物。
手首に黒装束の上からそれを巻いてみました。
するとあの方にそっと手を添えられているような、温かい気持ちが湧き上がってきます。
私は左の拳を握り締め、瞳を閉じました。


私の総てはアシュレイ様のために。





ソフィア様。

貴女が下さった立場を利用しましょう。
最大限に。

国が生んだ“影”を使って、闇を這い回りましょう。
…羽化のときを待つ醜悪な芋虫のように。

そして羽ばたきましょう。
…闇夜に舞う黒蝶として。

包んで差し上げますわ。
…この髑髏が刻まれた漆黒の翅で。




――――――私は、“黒鳳”(クロアゲハ)なのだから。

489 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/30(水) 21:06:57 ID:YNPp0W6w

次で最後です。
スウィッチの続きも明日中には投下したと思っています。
作者様のご指摘通り立場にこだわった愛の形を描こうとしていますが、難しいですね…
490名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 21:14:06 ID:nZzKG/dD
>>489

GJ!

私も精進精進。
491名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 21:21:44 ID:fk29VjFL
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
492名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 23:45:22 ID:o1thYbJD
良い!スゴクイイッ!
この執着と黒い胸の内がある侍女最高!
493名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 00:27:55 ID:IRXKC+jR
新ジャンル;侍女萌え

ハァハァハァハァハァハァ・・・ウッ・・・アァアアァァアッ・・・・
494名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 00:36:41 ID:7S+RkYJe
これは・・・前に投下されたネタか
(・∀・)イイ!!
495名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 00:48:43 ID:6/ynpYux
イイ!スゴクイイ!

王子は蜜のような存在なのでしょう
496名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 01:19:24 ID:OGHGDwKl
>>493
シャロンちゃんが既に居るわ。うつけめ。
497名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 01:22:02 ID:GtZX7kDP
>>496
なぜか姫様が乗り移ってる((;゚Д゚)ガクガクブルブル
何はともあれ作者様方GJっす
498名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 01:31:46 ID:k5lVutrg
>>493
新ジャンル:主人公萌え
499名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 01:50:01 ID:q0Jmk6BG
>>498
ユウキにエロ小説音読させるアマツが浮かんだ俺は

白にバラバラにされてエロ姉に捌かれ粉砕された後、アトリに喰われるのが相応かもしれない。
500名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 02:06:54 ID:fEwCCBgB
>>499
ユウキがエロ小説音読してる最中は、みんな揃って体操座りしながら静かに聞いているんだろうな
501名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 02:13:37 ID:GyBrMiMh
王子様はほいほいと修羅場の種を蒔いてるな…
502名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 02:48:11 ID:sFF0Bd7D
いま、ちょっとだけ思った。
『鬼ごっこ』のメールの送り主ってまさか……。
503名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 02:50:16 ID:ya+DswYX
自作自演でした。
504名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 03:14:56 ID:JA1m/Gal
な、なんだってー!!AA(ry
505名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 06:17:52 ID:qLAbSWSd
リアル鬼ごっこっていうのもこういう感じの話なんですか?
506名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 13:42:19 ID:xPy2c3Px
>>500
赤面しつつエロ小説を読み上げるユウキが、濡れ場で時々つっかえるたびに、
聴衆の眼の輝きはいや増すのであった
507名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 13:44:23 ID:2LECsNU1
>>500
何そのシチュ!!超萌える
508名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 13:48:00 ID:RuyE1fht
何人かは自慰をしていそうだけどw
509 ◆gPbPvQ478E :2006/08/31(木) 16:01:14 ID:4dBkmtPR
>>500
ユウキが濡れ場でおっきくなっちゃったら、
全員の視線がそこに集まるのか。


すごい羞恥プレイ
510名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 17:47:02 ID:IHnPyPHF
ユウキ大人気だなww
俺も好きだが
511名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 18:05:35 ID:mwYNU4dy
みんなユウキ好きみたいなので白は貰っていきますね^^
512名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 18:26:38 ID:dSTWqHPN
>>511
残念、それはビビスのおいなりさんだ

じゃあ俺はアトリを貰って行きますね
513『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/31(木) 19:10:05 ID:b3lPpA3F
「えっ?に、日曜日って……あさって?」
「あ、そうか。今日はもう金曜日だったっけ……急すぎたかな?なにか予定入っちゃってる?」
「ううん!ぜんぜん!なにも!」
ブンブンと何度も頭を横に振る。そんなに振ったら目が回っちゃうよ。
「うん、じゃあ日曜日。出かけようか。」
「あのっ、その……どこへ行くとかの予定は……」
「うん、そうだなぁ…麻理が行きたいところでいいよ。麻理のために出掛けるんだし。」
「じゃ、あ……映画!見たい映画があるの!だからおにいちゃんと見たい!」
「うん、じゃあそうしよう。」
よかった。いつもはなんだかんだで怒ってばかりだけど、こうやって笑顔も見せてくれるんだよな。………こんなこと、沙恵ちゃんに言ったらまたシスコン扱いされるかな?
でも仲が悪いよりはマシだよね。
結局麻理はそれから鼻歌交じりで過ごし、どんな話をしてもご機嫌だった。
ご飯を食べ終え、テレビを見ながら話していたら、もう遅い時間だった。
「もう寝ようかな…おやすみ、麻理。」
「うん、おやすみなさい、おにいちゃん。」
514『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/31(木) 19:10:46 ID:b3lPpA3F
ベットに横になる。まだ残暑が厳しく、夜になってもまだ蒸し暑い。窓際にベットがあるため、風が通って気持ちいいけど。
「あっ、部長にメールしなくちゃ…」
折角アドレスを教えてもらったんだ。連絡しなくちゃ失礼だよな。
『To秋乃葉先輩
sub海斗です。
今日は遅くまでありがとうございました。こんな時間にメール送ってすみません。』
どうもメールって苦手だな。どうやって送ればいいかよくわからないや。ましてや秋乃葉先輩だし……まぁ、こんな感じでいいかな。
送ってから少しして。
〜〜♪
『frm秋乃葉先輩
こちらこそ家まで送ってくれてありがとう♪また今度機会があったら一緒に帰っていいかな?』
『To秋乃葉先輩
喜んで。部長がよければいつでも送りますよ。暗くても、明るくても。』
『frm秋乃葉先輩
うーん…二人っきりの時やメールやってるときは部長って呼ぶのはやめて欲しいかなぁ。華恋、て呼んでほしいな。あと…一緒に帰るなら、二人っきりで、ね♪』
『To秋乃葉先輩
わかりました、「華恋」センパイ。』
それから何通かメールをして、おやすみを言った。
515『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/31(木) 19:11:43 ID:b3lPpA3F
〜〜♪
「ん?誰だろ……華恋先輩はさっき終わったし……沙恵ちゃんかな?」
よく沙恵ちゃんともメールをやるから……いや………この時間なら…
『誰とメールしてたの?隣りの家のあの女?それとも私の知らないお友達?…随分と楽しそうな顔してたね(怒)
隣りの女だったら……殺してこようか?そうすればその分私からのメールを見てくれるもんね♪♪』
果たして冗談か本気か。いや、『彼女』のことなら本当に殺しかねない。……っていうか、なんでメールしてたのを知ってるんだ?
「っ!?もしや…!」
網戸を開けて窓から体を乗り出し、辺りを見回す……ダメだ、暗くてこっちからじゃあ何も見えない。恐らく外からなら電気のついてる僕の部屋は丸見えだろう。
「くそぉっ!」
慌てて窓とカーテンをしめる。外から見られてるとなると、のんびりと涼んでもいられない。それにしても……どこから見てるんだ?
〜〜♪
また着信。
『アはハはハ♪恥ずかしがらなくってもいいのに。もういまさら隠しても意味ないよ?海斗君のことはなんでも知っちゃったんだから。』
516『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/31(木) 19:13:19 ID:b3lPpA3F
……これで確定した。絶対に外から見られてる。
そうだ、沙恵ちゃんは大丈夫だろうか。この様子だとまだ何も起こっていなさそうだけど……
「一応…確かめてみようかな……」
安全確認のため電話をする。こんな時間なら寝ちゃったか?とおもったら、二回コールがなっただけで電話に出た。
「も、もしもし?か、海斗?」
「あ、沙恵ちゃん?…だよね?」
「や、やだなぁ、あったりまえじゃんか。ボクの携帯に電話かけたんでしょ?」
よかった。本物の沙恵ちゃんだ。カーテンをしているとはいえ、一応部屋の隅に移動し、外からの死角に座る。
「いったいどうしたの?こんな時間に。」
「あ、ごめん。寝てたかな?」
「ううん。お風呂からあがって、ごろごろしてたところ。……それで、何の用?」
しまった…まさか誰かに襲われてないか心配だったか電話したなんて言ったら怪しすぎる。ましてや用もないなんてのは失礼だし。
「えと…うん……」
「あっ!はっはーん。わかったぞ。さては寂しくってボクの声が聞きたくなったんだなぁ。うんうん、憂いやつめ〜。いくらでも聞かせちゃおう。」
517『鬼ごっこ』 ◆jSNxKO6uRM :2006/08/31(木) 19:14:30 ID:b3lPpA3F
「へ?…あ、あはは。そ、そう。そうだよ。なんとなく、沙恵ちゃんの声が聞きたくなっちゃって……電話しちゃった……」
しどろもどろで言われた通りの返事をする。
「えっ?ええっ!?」
物凄い勢いで大慌てする沙恵ちゃん。その慌て様はおかしいぐらいだ。自分から言ったのに……
「えっ……か、いと……うく……う…」
「?…さ、沙恵ちゃん?…」しばらく受話器からはなにも聞こえない。
「も、もしもし?沙恵ちゃん?」
「うぐ……うぅ…ひく…か、ひっく…かい…ぃ…とぉ…うぅ…うええん…」
「さ、沙恵ちゃん!?どうしたの!?泣いてるじゃんか!なにかあったの!?」
受話器の奥からいきなり沙恵ちゃんの涙声が聞こえ、一気に不安になる。まさか、なにか痛い目にあったとか?
「ま、待ってて!いまからそっちに行くから!」
「うく…あ、あは…ううん、だ、らひじょうぶ…らから…ちょ、ちょっと、テレビで感動しちゃって…ぐず…えへ、ボクとしたことが、らしくないなぁ。」
「は、はぁ…よかった…」
「ごめんね、心配させちゃって。ホントに大丈夫だから。じゃ、ボクはもう寝るね。」電話を切り、またベットに寝る。よかった。なんだかほっとしたら眠くなってきちゃったな……
〜〜♪
〜〜〜♪
電話がなってるみたいだけど……だめだ…眠くてとる気も無いや…寝ちゃおう……
〜〜♪









〜〜♪♪





〜〜〜♪♪
『もうっ、海斗君たら優しいんだから。そんな所が好きなんだけどね。だから今回は特別に許してあげる♪
でも……誰か他の女に手を出すようなら……そのときは本当にそいつを殺すよ?我慢できないからね。
(^з^)-☆Chu!!』
518名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 20:02:51 ID:XjySLp5F
鬼ごっこ設定がいいなぁ
目の付け所がいいというか
519名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 20:03:39 ID:UuTaLzUa
ストーキング行為≒純愛な好意と聞いた事があります




そのとおりですね!!
520名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 20:19:27 ID:q0Jmk6BG
ストーカーと呼ばないで♪あなた〜が好きなだけ〜

>>500
白スキーな俺としては
天から降って来た謎の本が読めず「この本(エロ小説)読んで」とせがむ白

闘技場王者の付人として断れないユウキ

これ最強。
521名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 21:28:20 ID:Q/OT0FkU
ストーカーさんからのメールの顔文字がおっかなすぎます。
522名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 21:49:59 ID:pgyhY8r4
523名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 22:13:27 ID:/NrljlxK
>>404
うそつきいいいいいぃぃぃ・・・

最高でした
524名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 22:22:57 ID:sjbYX5ij
恐怖体験アンビリバボーって感じ?
525名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 22:29:19 ID:PzTCN7id
>>522
誰かこの画像の詳細を教えてくれ・・
マジで気になるww
526 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/31(木) 22:33:10 ID:LYJvBll0

【マリア】

私の生まれは大国エレハイムと、大陸一番の軍事強国として知られる神聖帝国ジェラールにはさまれた弱小国の寂れた農村。
有能な指導者に恵まれなかった私の祖国、ストラドリアは周辺の強国や古くからの同盟国であるエレハイムのご機嫌取りに必死だった。
年に数回送られる貢物。時には村の若い娘が連れて行かれるときもあった。
そんな恵まれないこの村で、私みたいな娘がここまで育つことが出来たのは僥倖といえるだろう。
何しろこの国は、同盟国とはいっても事実上はエレハイムの傘下なのだから。
しかし数年前、長い間そのエレハイムで人質生活を送っていた王子様が帰郷した。

風の噂では光の御子と噂されるほど美しく、聡明で偉大なるお方であるらしいのだけれど…
小さな国でも首都から程遠い村娘の私には縁遠いものだった。

王子様は帰郷してすぐ、先代の王からその地位を譲られた。
無能な先王は、エレハイムで幼少を過ごした若く有望な王子にすべてを託した。
新王アシュレイ=アシュルード=ストラドリア様はすぐさまその手腕を発揮した。

丼勘定の財政を一気に引き絞り、為政と切り離されていた軍部との統合も果たした。
アシュレイ王は政治的実権と軍事行使権の両方を一手に担ったことになる。
詳しいことはわからないけれど、このやり方はエレハイムの最新式であるらしかった。

伝統ばかりを重んじて、古い盟約に縛られていたストラドリアにも時代の風が吹いた。
予算収縮で余った備蓄を、なんとアシュレイ王は国民に還元した。
長い間辛い生活をさせた。
そう自筆の謝罪文を、こんな田舎の家庭にまでも一つ一つ添えて。
そんな素晴らしい王様でも、税を一気に引き落とすことはできなかった。
それでも私に色目を使う官吏たちがやってこなくなって、密かに王様に感謝していた。

先王と新王アシュレイ様のやり方の違いは、軍備に対する比重らしい。
これも長い間中央の学府で先生をしていたという老人から聞いた話なのだけれど、
エレハイムとジュラール帝国についで大陸の覇権争いに興味が無かった小国までも天下布武を唱えるこの時代。
僅かでもアシュレイ様は自衛の策として軍事拡張をおこなっているらしかった。


良かれとやったこと。
しかしそれが裏目に出るなんて、神様だって思わなかったはずだ。

まさか、こんな小さな国に、お隣の帝国が侵攻してくるなんて。
帝国領寄りのこの農村。
宣戦布告も無いままに白馬を従えて侵略してきた帝国に、村の男達は義勇軍としてストラドリア王軍に参加した。
それでも戦力差は圧倒的だった。
最新式の大砲に、練度の高い騎兵達。帝国だけが採用した竜騎兵ドラグーン部隊。
即席の軍隊が叶うはずが無かった。
私の村が戦場になることはわかったけれど、すぐ先の峠が帝国の進行を食い止める最終防衛ラインだったみたい。
アシュレイ王はすぐさま人質時代をすごし、古き同盟国であるエレハイムに援軍を頼んだけれど、間に合わずに結果総崩れ。

唯一の肉親であった父も斧を持って参加したラカーン峠の戦いは、王軍総崩れにもかかわらず義勇軍として参加した村人達はほぼ無傷で帰還した。

―――――私の、父を除いて。

527 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/31(木) 22:34:05 ID:LYJvBll0

戦いに参加した男達は一様に言った。
すべては殿軍を務めて最後まで帝国の牙を受け止めてくれたアシュレイ王のお陰だと。

でも父を失った私は、王を憎んだ。
どうして偉大で聡明な王が、父一人助けられないの?…

周囲の人たちは私を哀れんで引き取ろうとしてくれたが、すべて断った。
幼いころに亡くなった母と、今はもういない父。
ぬくもりが残ったこの家を棄てるなんて私には出来なかったからだ。

一人家で枕を濡らしていると、ストラドリアの早馬が村にやってきた。
知らせた内容は、王の戦死。

悲しみと怒り、両方が混ざったような感情を抱いた。
憎い王、それでも最後は何とかしてくれる気がした。
でも、希望は潰えた。
この情報を帝国がかぎつければ、すぐさま戦場に一番近いこの村を占領して、王の死体を捜しに行くだろう。
愚かな殺し合いの中の、瑣末な武功を求めて。

私は、もうどうでもよくなった。
いっそその崖下の激流に身を任せて死のうと思った。

でも、死ねなかった。
水面に両親の笑顔が映ったから。
こっちに来てはだめ。
そう優しく告げているような気がして…

空虚な気持ちで激流を眺めながら川辺を歩いていた私は、森の奥に少し入ったせせらぎで一つの影を見つけた。
直感的な気持ちに囚われて走り寄ってみると、そこにはボロボロの鎧を纏った男の人が倒れていた。
下半身を柔らかいせせらぎの流れに任せ、産草の生える地面にうつぶせになるようにして。

角が折れた兜を剥がし、顔を覆っていた灰色の髪を除けてみる。

とても、とても綺麗な男の人だった。
農作業で日に焼けた村の男とは違う。
染み一つ無い透き通る肌。
彫刻品を思わせるほど整った面立ち。
思わず食い入るように見つめている自分に気がついて、頬が熱くなった。

騎士…だろうか。
それにしては動きにくそうな鎧を着ている。
あちこちに金の糸で刺繍のなされたマント、そして胸の辺りにはストラドリアの紋章が刻まれた白銀のプレート。
今まで気づかなかったが、背中には三本の矢が刺さっていた。

そこで急に冷静さを取り戻した。
川を長く流されてきたのだろうか。
この人は、息をしていない。
パニックに陥りかけたとき、一つの手段が浮かんだ。
土木作業中に危険な目にあったときの応急措置の一つ、人口呼吸だ。
528 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/31(木) 22:36:06 ID:LYJvBll0

瞬間、熱を持った頬が一気に沸騰する。
まともな思考が働かない。
思わず頬を押さえてぶんぶんと顔を振ってみる。

ひ、人助けとはいえ、み、見知らぬ人と…
くくくくく、唇を合わせるなんて!!

でも、周りを見渡しても人の気配は無い。
ここは洗濯をする下流とも、釣りをする中流とも離れている。
誰かが来る望みは薄い。
なら…

がんばるのよ、マリア。

何故か天国の母の声が聞えた。

自分でやるしかない…!!
恥ずかしさで理性を失った脳に、これは人助け、人助け、と何度も唱える。
馴れないながらも、何度も、何度も口付けた。
あぁなんて柔らかい唇。このまま溶けて行きそう…と脱線しかける思考をこれは人命救助、人命救助なのよ!!と言い聞かせるように押さえつけて。

しばらく続けると、その人は咳き込んで水を吐き出した。
やった…!!
もうおかしくなりそうなほどの恥ずかしさのなか、私は小さくガッツポーズをした。
そしてこの人を村に運ぶため、いったん戻ろうとして…

何故かそうするのがいいような気がして、その人の鎧を脱がして茂みに隠した。
あちこち壊れていた鎧は、素人でも簡単に脱がすことが出来た。
薄い帷子一つしかつけていないその人の体は、酷く官能的だったけれど、男の人に手伝ってもらって村に運び込んだ。
彼は自然と私の家に運び込まれた。
小さな村で空いているベッドがあるのは、家だけ。
父のベッドに寝かされ、程なく熱を出したその人は、時折瞼を震わせてうなされている。
長い睫毛のその奥。
どんな色の瞳が待っているのか、私はそんな不謹慎なことを思いながら看病をした。
ずっと傍に控えて、体をタオルで拭いたり、包帯を替えた。
そのたびに見た裸体だが、絹のような肌に程よく引き締まった筋肉。
そこへ十字に走った生々しい傷跡は、痛ましいけどどこか色っぽい。
熱くなる頬に看病看病と呟きながら作業する私に、見守る人たちは不思議な顔をしていた。

529 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/31(木) 22:37:51 ID:LYJvBll0

数日後、熱もすっかり引いたその人はようやく目を覚ました。
体は快調な様子。
パッチリと開かれた瞳は、鮮やかなレイクブルーだった。
見たこともないほど綺麗な色。
私の空色の瞳と較べると天地ほどの差がある。
思わず吸い込まれそうになった。

でも、驚いたみたいに周囲を見渡す彼に、記憶という光は無かった。
どこからやってきたのか、自分がなぜあそこに倒れていたのか、果ては自分の名前さえも覚えていなかった。
強いショックと高熱による記憶喪失であろう、と薬師様はおっしゃった。
そして綺麗な瞳を悲しみに揺らしている彼を見て、私は引き取りたいと名乗り出た。
若い女が見知らぬ男を引き取る。
周囲の人は心配したが、家族のない私の心中を察してか、最後にはみんな納得してくれた。

強い私の決心に、その人は済まなそうに礼を言った。
見ての通り、誠実で優しそうな顔。
私はその人に呼びかけようとして…名前が無いことに気がついた。
しばらく視線を彼にさまよわせていると、光に煌いて表情を変える灰色の髪が目に留まる。
直感的に思いついた。
この人にはこの名前が似合う。いや、この名前しかない。


『アッシュ…アッシュなんてどうかな?髪の毛の色と一緒だよ!!
 でも私より年上だから、アッシュお兄ちゃん…そう呼んでいいかな?』

髪の色を見て思いついた名前、そんな些細なことにはしゃぐ私を見て、彼は優しく微笑んだ。
どくん…と胸の奥が熱くなる。

『アッシュか…どこか懐かしい響きがする…よろしくな…マリア』

こうして二人の生活は始まった。
本当の家族みたいな生活だ。
私は彼をアッシュお兄ちゃんと呼び、彼はマリアと答えてくれる。
嬉しい。
父と暮らす毎日とは違う幸せが、ここにある。
食卓を囲み、今日の出来事で他愛も無く笑いあう。
お兄ちゃんはなれない農作業に戸惑っていたけれど、持ち前の器用さで乗り切っていた。
そんな生活が、いとおしい。

でも、時折私は不安になった。
夜半、お兄ちゃんはうなされたように寝言で誰かの名前を呟くから。

『ソ、フィ…』

女の人の名前だ。直感的にそう感じた。
今まで胸の奥で身を震わせていた幸福が、嫉妬の炎で焦げ付くのを感じる
胸が苦しい。黒い濁流が押し寄せてくるように苦しい。

だからお兄ちゃんがうなされるたびに、私は髪を撫でてやりながら、こう呟く。

530 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/31(木) 22:38:56 ID:LYJvBll0



「何も思いださなくていいの。辛いことは、忘れてしまえばいいの。
 どんな苦しみも、悲しみも。私の傍にいれば消えてしまうから。
 ずっと、ずっと私の傍で、私だけを…」

初めてお兄ちゃんがうなされた日、私はあの時茂みに隠した鎧をばらばらにして川に流した。
お兄ちゃんを悩ませる苦しみが、こうやって流れてしまえばいいのにと思いながら。


流れていく鎧を見ていると、胸が透くような感じがした。
これでお兄ちゃんはずっと私の傍にいてくれる…
私は幸せに胸を振るわせた。


戦争も、ストラドリアも、王様も関係ない。
お兄ちゃんが傍にいてくれればそれでいい。
蜂蜜みたいな笑顔に、溺れて生きたい。
どんな濁流に流されても、その甘さだけは忘れない。
体が溶け落ちそうな幸せを、やっと手に入れたのだから。


だからこの幸福はずっと続いていくと思っていた。


…数ヵ月後に流した鎧を発見したエレハイムの特務部隊と、周囲を偵察中の帝国騎士が村を訪れるまでは。







531 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/31(木) 22:43:12 ID:LYJvBll0

以上で序章終わりです。
付き合ってくださった方、ありがとうございます。
感想レスをくれた方、本当に感謝しています。
批判叱咤も喜んでお受けいたしますので気になった方はぜひお願いします。
ただ、誹謗中傷は勘弁してください…

次からは暫くスウィッチの続きを投稿予定です。

532名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 22:45:01 ID:L2igR+Fx
GJ
533名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 22:48:16 ID:KcAxyaQ+
GJです!!

真実を知ったら一体この子はどうするのか……



>>525
BONBEE(確か)から出てるゲーム。タイトル忘れた。
534名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 22:49:13 ID:BGtlVYiT
作者様GJ!
今後の展開が楽しみです(*´Д`)ハァハァ
535うじひめっ! Vol.12C ◆kZWZvdLsog :2006/08/31(木) 22:56:32 ID:bLN0tqb9
「ごめん、やっぱり人外ロリ最高」
「やっぱりかあああっ!」
 身を翻してフォイレの方へ駆け出そうとする遥香。
「させんってばよ!」
 その腕を取り、背中へ回す形ですかさず捻った。
「ぐうっ!?」
 肘関節を極め、ポリス仕込みの逮捕術で押さえ込む。
「これはもしや……!」
「そう、警官やってた親戚のじっちゃんから叩き込まれたホールド・スキルさ!」
 血縁ではないが、一応遠縁に当たる人だ。昔この困り眉も一緒に遊んでもらったから覚えていたんだろう。
「あたしがじっちゃんの孫と戯れている間にこんな体術をマスターしてやがったか……!」
「ああ、そーいやあの子、今頃どうしてるんだろうな。確か俺らと同い年だったよな」
「小四くらいで引っ越したって聞いたけど、とんと音沙汰が……って、んなこたーどうでもいい! 離せ!」
 関係ない昔話で気を逸らした遥香を壁に押し付け。
「さあ、フォイレ! 今のうちに!」
 その間に蛆形態から人形態に戻るよう促す。
(わ、分かりましたの! えいっ!)
 数秒後、ドローンと煙が発生してフォイレが変身した。
「ふう、やれやれですの」
 こうして万事滞りなく、困り眉による突発的な凶行は未然に防がれた。

「ち、ちくしょう……チクショオオオオオオオッ!!」

 崩れ落ちる遥香の、慟哭。
 すべては茹だる暑さがもたらした、夏の狂気だったのかもしれない――
 安手のドキュメンタリィ風に顔を引き締め、重々しく頷いた。

 玄関から出ると。
 降り注ぐ日差しに、肩から提げたスポーツバッグが、黒々とした影を地面に落とした。
「じゃあ、頭を冷やしに滝打たれに行ってくるわ……」
 本気なのかネタなのか判断に迷うセリフを残し、背を向けて――彼女は去って行った。
「遥香……」
 結局何をしに俺のところへやってきたのか、よく分からないまま。
 ――従妹と過ごす夏は終わりを告げた。

 で、蛆虫と過ごす夏は依然継続中だった。
「アイヴァンホーも説得し終えたことですし、これでつつがなく和彦さんとの新婚生活が送れますの」
 蛆姫様はホクホク顔でご満悦だったが、正直俺は納得いかない気分だった。

 目を覚ましたアイヴァンホーは半狂乱になって再度掴みかかってきたが、フォイレに制止され、しかもいきなり
ドアを蹴破って現れた「アイヴァンホーの妹」とかいう赤毛少女が「姉様! 気を確かに!」と大声で呼びかけた
ことが効を奏してか、手を離してくれた。
 事情を知ると今度は妹の方が「欣求浄土なさいっ!」と息巻いて襲ってきたものの、「やめなさい、トゥーシー!」と、
直前とはあべこべにアイヴァンホーが叱りつけたおかげで事なきを得た。

 えらくドタバタした末、姉妹は連れ立って蛆界とやらに帰っていき、フォイレ一人が残った。
 残ったんだが――
「犯った記憶もないのに新妻気取られてもなぁ……」
 ってのが偽らざる気持ちである。
「もう、そんなことおっしゃって! 確かにしましたの!」
 ぷうっ、と頬を膨らませる。
「子種を撒かれたときは和彦さんも起きてらしたではないですか!」
 それはそうだが……
 フィニッシュのときだけ取り出して過程を無視なんてキング・クリムゾンなこと言われても納得いかんよ。
「では、もう一回しますの?」
536うじひめっ! Vol.12C ◆kZWZvdLsog :2006/08/31(木) 23:00:57 ID:bLN0tqb9
「是非! 一回と言わず十回でも!」
 俺は欲望に忠実だった。
 だって、一回出しただけじゃ中途半端で生殺しにされた気分だぜ。
「じゅ、十回はさすがに身が持ちませんの……」
 思春期の少年に色香の餌を撒くとどうなるのか――そのことをようやく実感したらしきフォイレは。
 ちょっぴり怯えを滲ませていた。

「お、お手柔らかにお願いしますね……?」
 とまれかくまれ気を取り直し、フォイレを持ち上げていざ――挿入。
 意識がある状態としては初めてであり、実質的な筆下ろしに当たる。
 相手は蛆虫なんだが。美しい銀髪ロリの姿をしていても正体は蛆虫なんだが。

 でも!
 お姫様だよ!?
 普通に生きてたらまず会うこともない身分の子だよ!?
 身分とか言ってる時点で時代錯誤だけど、こう、ファンタジーでエロに目覚めた世代には憧れじゃないか!

 誰に向かって熱弁しているのか自分でもよく分からぬまま、くちり……と濡れそぼった秘穴に亀頭を照準。
 くっ、狭い……一回挿入が済んでるせいもあって押し込めばなんとか入っていくが、あまり無理をすると
フォイレが痛々しく眉をしかめて声を押し殺すので、なんとも罪悪感を煽られてしまう。
 ならやめろよ、って話だが。
 武士がひとたび刀を抜いたら易々とは鞘に戻せない。
 同じく、常に股間が張り詰めているエロスボーイも、ひとたびパンツからち○こを抜いたらあっさり元鞘とは行かぬ。
 むしろ、異性の鞘に収めてやらねばならん! と野生の血が騒ぐ寸法。
 ゆえに突き入れる。
 あっと――滑りが良くなってて、亀頭が入ったら後はするする進んでいく。
 お……おお……これは……! 蛆虫云々なんてことがどうでもよくなるくらい、気持ちいい……!

「へっへっへっ……さすがお姫様はアソコの具合も特別だなぁ!」

「や、やあっ! 急にそんなはしたないことをおっしゃらないでください、和彦さん……!」
 いかんいかん。ついつい憧れていた「おひぃさまを野盗がレイプ」シチュを再現してしまった。
 ちなみに何人もが代わる代わる乗っかって延々と犯し続ける内容が大好物なので、部屋の隅に「は、早く俺らにも姫様を
回してくださいよぉ、お頭ぁ」と自分の逸物をこすりながら待機している子分たちの姿をリアルシャドー。
 二発目以降は順次彼らに変わってロールプレイする予定だ。ああ夢とち○こが膨らむなぁ。
 フォイレの膣は狭く、また浅いので半分よりちょっとを過ぎるともう奥に達してしまった。
「ふう、育ちが良すぎて俺のフランクフルトはちぃと食べきれないかぁ」
 ごめん、フランクフルトは自分でも誇張が過ぎると思うが、「巨根のボス」を演じているつもりなんで。
「へっへっ、お上品な口してるぜぇ、だらしなく涎をこぼしてる割にはよぉ」
 びっしゃびっしゃと、水音が激しく鳴るように腰を動かし攪拌する。よぉし、だんだんコツが掴めてきたぞ。
「うあ……! さっきから変です……! ど、どうしたんですの、和彦さん!?」
「くうう……っ! イイ締め付けだぁ、箱入りの処女だけあってペニスが食い千切られそうだぜぇ」
 厳密にはもう処女じゃないけどな。それを奪ったのが自分で、しかも記憶がないってのは複雑な気分だ。
 そしてアホなことを言っているうちに射精感が込み上げてきた。
「だ、出すぜ! 王女様の高貴な子宮へ、下賎に粘つく汁をたっぷりブチ撒けてやらぁ!」
 頭の悪い絶叫とともに絶頂。フォイレも「ふあああっ!」と鳴いた。
 二度目の膣出し――姫様の襞は小刻みに蠕動し、一滴たりとも逃さず搾り取っていった。
537うじひめっ! Vol.12C ◆kZWZvdLsog :2006/08/31(木) 23:03:40 ID:bLN0tqb9
 かくして「巨根のボス」というペルソナは脳の深奥に引っ込んだ。
 代わりに「子分A」「子分B」「子分C」……と次々に新たな人格が召喚されていった。
 まあ、細部は違うが、基本的にどいつもこいつもエロしか頭にない品性下劣の激安野郎ばかりであった。
「おおお……お城のバルコニーで笑顔を振り撒いていたあの姫様がドレス着たまま俺の下でよがってるなんて夢みたいだぁ」
「ハッ、宝冠戴いた姫様たって、こんな格好で辱められちまえばそこらの雌豚と変わんねぇよなぁ」
「どっかの国で王サマの子を孕むはずだった胎に、俺サマのガキを種付けするってのがたまんねぇわー」
「おれ、この王女様が赤ん坊だった頃から知ってるぜ……へっへっ、ぷっくりしてて可愛かったよぉ」
「ひっひっひっ、安心しな、あとちょっとしたらこいつにそっくりの可愛い赤ん坊が生まれてくるだろうぜぇ」
「もうこんだけ犯っちまったら混ざりまくって誰のガキだか分かんねぇけどよ、誰に一番似てるかで賭けねぇか?」
「もしガキが女だったら育てて飼おうや! 王家とオレらの血が混ざった家畜に毎日精液飲ませるなんて自慢じゃん!」
 これ以上聞いてると耳が腐りそうなセリフ尽くしなのでいい加減割愛。
 いくら童貞捨てたばかりで頭が沸いた状態だったとはいえ、こんな俺の相手をしたフォイレはつくづく災難だった。

「そこは違います! そこは違いますぅっ!?」
 特に、「もう膣が限界」とギブアップした彼女に「ならこっちを使えということだな」と勝手な解釈を行った俺が
菊門をぶっ貫いたとき、その災難は極まったと言える。
「ひゃああああっ!? き、気色悪いぃぃっ!」
「ぬう……尻の穴もまた違った締まり具合でたまらん気持ちよさに候……!」
 そろそろペルソナキャラのバリエーションも尽きてきて変な口調になっていた。
 がっつんがっつん直腸を犯す。
 しかしさすがにセックスにも疲れてきたんでこれを打ち止めにしよう、と心に決めていたら。
「……ます」
「あ?」
 フォイレがぱくぱくと口を開いて何か言った。
「出ます」
「何が?」
「た、たまご! 卵出ますうううっ!」
「なんだと!?」
 う、蛆虫ってそんなに早く産卵するのか!?
 つか蠅の幼虫が子ども産む時点で何かおかしくねぇ!?
 そんな抗議をしてる暇もなかった。
「もうダメです! 産みます! たまご! たまご! ここで……ここで卵産んぢゃいましゅのおおおおっ!」
 アナルにペニスを突っ込まれたままのフォイレが、膣奥から大量の卵を噴出!
 うおう、まるで潮吹きだ!
「っていうか卵結構デカっ!? そして多っ!? どんだけ産めば気が済むんだよ!」
「か、和彦さんが中で出しまくるからでしょう! ぶっちゃけやりすぎですの! 普通はもっと少ないですの!」
「げぇっ、自業自得!?」

 卵の総数、百八個。
 プラスチックのケースに腐った食物と一緒に収めた。
 蒸し蒸しする押入れで飼うこと三日。
 ――孵り、始めた。
 百八匹が。
 うじゃうじゃと。
 ぐるらぐねらと。
 白い群体が、そこにはあった。
「うぷ。思わず生理的嫌悪感が湧くが……これ、みんな俺の子どもなのか?」
「間違いありませんの。人化させたら、きっと和彦さんにそっくりですわ」
 へ、へえ。そうなのかぁ。ははは。はは。は……。
 乾いた笑みさえも、やがて枯れ果てた。

 ――すみません。お父さん、お母さん。
 あなたの息子は、蛆虫と番になって子どもをつくってしまいました――
538うじひめっ! Vol.12C ◆kZWZvdLsog :2006/08/31(木) 23:06:15 ID:bLN0tqb9
「見たところ、全員メスですの」
「分かるものなのか、蛆の性別って……」
「ええ――でも、これで良かったですわ」
 ケースへ耳をつけ、いとおしそうに娘たちの蠢きを聞いて顔を綻ばせる。
 え? 良かったって、何が?
「何がって、決まってますわ。女の子だったら、キチンと和彦さんが責任を持って育ててくれるのでしょう?」
「へっ!?」
「おっしゃいましたでしょう、『女だったら育てて飼おう』って。餌として精液をあげるのは感心しませんが……
まあ、和彦さんが立てた教育方針に逆らうつもりはありませんわ。私には蛆界での務めがありますし」
 ひょっとして。
 フォイレは、俺がイメージプレイとして口にした言葉を本気で受け取っちゃった……?
「本当にホッとしましたの。やっぱり和彦さんは人間だから、蛆虫はおイヤかなぁ、なんて思ってまして」
「ちょっ、ちょっと待ってく――」
「でも、自分の子を種付けするのがたまらないとか、私によく似た赤ちゃんが生まれるだろうとか、私の気持ちを
しっかりと受け止めて愛の言葉を囁いてくれまして……嬉しかったですわ」
 とろーん、と目尻を下げてうっとりした表情を見せた。
「おまっ、は、話を聞け! 話せば分か――」
「私を王女としてではなく、一人の女として見てくださったことにも感激しましたの!」
 それって、「そこらの雌豚と変わんねぇ」を拡大解釈したのか? おい? 都合のいい耳してるな!
「姫様、そろそろお帰りの時間です」
 と――
 青い仮面の侍従が音もなく背後に忍び寄っていた。
 ギョッとして振り返ると、まだ殺意の抜け切らない目を俺に据えながら呼びかける。
「ああ、迎えも来ましたし、もう帰国しなくてはなりませんわ。名残惜しいばかりですけど……でも!」
 何の屈託もない――
 俺の麻痺した脳みそなんて一顧だにしていない――
 そう、それはまるで――
 向日葵みたいに力強い、「少女」と「慈母」が渾然一体となった笑顔の大輪を。
 ぱぁ――っと咲き誇らせて。
「この娘たちを、私の代わりだと思って……精一杯に可愛がってくださいね!」
 ――絶句するしかなかった。
 更に、隣で睨むアイヴァンホーが釘を刺す。
「貴様。姫様の子を一人でも不幸にしてみろ。そんなことをすればわたしと妹のトゥーシーは仕置きに参るからな」

 まったく慰めにならない言葉と。
 明らかな恫喝を残し。
 ――蛆虫たちは、元の世界に戻っていった。
 百を超える同胞を俺のところに残したまま。

 こうして、俺の残りの人生は百八匹、いや、百八人にも上る水滸伝級の娘たちを養育し。
 分け隔てなく愛を注ぎ。非行に走らぬよう正しい道を教え導き。どこに出しても恥ずかしくない子にする。
 そんな、ほとんどミッション・インポッシブルな目標を達成するためだけに費やされる仕儀に相成った
 ――と申しても過言ではあるまい。

 現在、俺は二十六。娘たちは九つを越したばかりの可愛い盛りだ。
 鼻がないことを除けば母親に似て美人揃いで、そりゃあもうハーレムだぜ?
 ほら――
539うじひめっ! Vol.12C ◆kZWZvdLsog :2006/08/31(木) 23:08:58 ID:bLN0tqb9





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 今日も仕事を終えて帰ってきて玄関の扉を開けたら、

「いつもお疲れ様です! えへへ」「ねえねえ、お父様、チュウしてチュウ!」「一美ばっかりずるい! 私も! 私も!」
「今日は私とお風呂入ろうね!」「三十五美は先週も入ったじゃない! 今日は私の番! わたーしーのばーんー!」「えー」
「お父様しゃがんで! 二十七美がお洋服脱がせてあげる!」「私もするー!」「私背広!」「私シャツ!」「私ズボン!」
「私パンツ!」「私皮!」「そこまで脱がさなくてもいいよー」「まだ、ね」「あー暑かったー」「あ、五十四美おかえり!」
「百美と三美と九十一美も遥香お姉ちゃんとプール行ってたんだね!」「疲れたあ」「クタクタだよう、お姉ちゃんが暴れて」
「喉渇いたー。お父様のカルピス飲んでもいい?」「これから水で薄めるから待ってー」「やだー待てないー、んー、ぱくっ」
「ちょっと咥えないでよ! 直飲みは禁止って決めたじゃないの!」「ぷちゅっ、ん、やっぱ生で濃い方がいいもん、れろっ」
「抜け駆けなんて許せなーい! 私も直飲みするー!」「私もー」「私もー」「私もー」「私もー」「私はたまの方でいい」
「ちゅっ」「すずくちがこんにちはしてるー」「私こっちのお口にチュウするの好きー」「ちっちゃな割れ目がかわいーよね」
「もう、みんなお父様のおち○ちんに群がったりして」「夜にはまだ早いよ」「だってコレが一番おいしいし」「ぴちゃぴちゃ」
「あ、おち○ちんビクビクいってる」「もうすぐカルピス出るねー」「いえー早い者勝ちー、んぶっ!」「ちょ、それ反則!」
「深すぎだよう、そんなに奥まで咥えたら他の人が飲めないよう」「ずるいー」「汚いー」「極悪ー」「弩エロー」「淫乱ー」
「あ、お父様がイッた」「八十八美の喉がごくごく鳴ってるー」「おいしそー」「わーん、今日は飲めると思ってたのにいー」
「ぷはっ! のんだー」「わけて! わけて!」「ぺろっ」「お父様の味〜」「ねばねばー」「んー、ちょっと薄い気が……」
「最近搾りすぎなんじゃないの?」「お父様も歳だから」「毎日十数回はやっぱりキツいのかな」「あとほらこの前の日曜日」
「遊園地で待ち時間のあいだ中ずっと吸ってたもんね」「人ごみだと案外バレないよね」「六十美はトイレでも舐めてたし」
「百一美なんか帰りの電車で膝枕されながら寝ふぇらしてたー」「あーん、なかなか勃ってくれないよう」「七美しごくの下手ー」
「待って、今『ぜんりつせん』をマッサージするから」「すっごー、どっからそんなテクを」「あっ、勃った」「カルピスー!」

 と、いとけない淫魔どもにわらわらと群がられて枯れ果てるまで吸精された。
 こいつらはたとえ野外だろうと一切容赦しないから、マジ大変。
 嗚呼――これだけの数が一斉に等量の愛情を求めて押し寄せてくる環境は、ハーレムというより。

 無間地獄だ!
540 ◆kZWZvdLsog :2006/08/31(木) 23:10:44 ID:bLN0tqb9
というわけで「うじひめっ!〜maggot princess〜」、これにておしまい。
こんなアホ話に最後まで付き合ってくださった方、まじサンクス。
541名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 23:14:55 ID:MRGg3JPT
いえいえ、こちらこそ滅多に味わえぬ特上級の珍味をご馳走様でした
本当に心の底からGJ!
そしておつかれさまでした
またネタが出来たら投下してください
エラスモサウルスより首を長くしてお待ちしておりますから
542名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 00:03:28 ID:EdYr2Kyf
>>525
BONBEEのALMAじゃないかな。
543名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 00:12:00 ID:z5TJcQnO
544名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 00:38:07 ID:wGf4jy+X
>>540
あんたサイコーだよ!
やる気さえあればハーレムルートなんてものを書いてくれると狂喜乱舞したり!?
545名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 01:10:43 ID:4oNKodZ+
>>◆pmLYRh7rmU氏
狂おしいほどにGJです。ファンタジーものマンセー

読んでて思ったんだが
「うじひめ」の主人公君にとってHAPPYENDなのが遥香でBADENDなのがアイたんなのな

ま、そんなことはどうでもいいか。白可愛いよ白
546名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 01:19:53 ID:m2iq5CTr
>>531
マリア可愛いよマリア
やっぱ寝言に嫉妬ってのはいいね。

>>540
何だこの超萌ゆる展開は!!
108人の娘とかうらやましいような、そうでないような

作者さんGJでした
547名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 01:38:50 ID:ehXuFMWF
うじひめっ!超GJ!!
ほんとうにおつかれさまでした

作者の無駄に高い文章力に嫉妬
548名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 04:18:05 ID:VkRlar2g
鬼ごっこ、ホイール、うじひめキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!


最後の娘同士の嫉妬にほのぼの(*・∀・)
549名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 04:37:15 ID:7JL6Sfe+
>>540
うじひめっ!GJでした!

ホントこのスレはいつも楽しませてくれる……
ここは楽園だぜ……
550名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 09:54:39 ID:uhKy4ERM
>>531
これはっ!いい子が来た予感(*´д`*)
|ω・`) 序章が終わったということでいよいよ、本編が!
楽しみにしてます
551名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 11:51:28 ID:Iu/Ky2Pj
そろそろ次スレのタイトル募集しますか
552名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 12:13:04 ID:4Bz1bhvH
言葉でなんかある?
十七条憲法ぐらいしか思いつかん
553名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 13:58:20 ID:VmomMZnL
十七回忌とか
554名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 14:04:24 ID:+8Q/PgZR
気が付いたら、もう次スレかよwwwww

555名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 14:45:42 ID:uhKy4ERM
ストーカー17年目とか・・・鬼ごっこを見て思った・・・

疾走が・・・読みたいです・・・
556名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 15:37:53 ID:RA8/saVU
越前裁き十七分割
557『とらとらシスター』Side姉虎:2006/09/01(金) 15:44:02 ID:OHlH2m/W
 いつもより遅く目が覚めた。時計で時間を確認するまでもなく、高く上がっている太陽
でもう昼に近いことが分かる。原因は多分、昨日の夜がいつもより激しかったからだろう。
僅かに残る倦怠感を引きずりながら居間へと向かった。
 設計上長めの廊下を歩きながら思うのは、昨日虎徹ちゃんに言ったこと。計画を有利に
進めるために言った、サクラちゃんへの恩赦のことだ。そのときはあたしの安全のことを
考えてあんなことを言ったけれど、あたしの本心の部分はどうだったかと聞かれてみれば
少し答えにくいものになる。
 まずあたしの心の方について、殆んど考えていなかった。けれども思い返してみれば、
意外に当たっているかもしれないのだ。そもそも計画は虎徹ちゃんを安全に手に入れる為
にたてたものだった。それは裏を返してみれば、虎徹ちゃん以外の部分は何も変わらない
ように、というものがある。
 例えば、青海ちゃん。彼女が殺されたのは悪い事故だと思ったのは事実だし、厄介だと
思った。面白いと思いながらもやりすぎだとも思ったし、そもそも殺さないようにサクラ
ちゃんを扇る量を調節していたのは殺さないようにする為だった。つまりは死ななくても
良い、寧ろ死んでほしくないと思っていたということだ。
558『とらとらシスター』Side姉虎:2006/09/01(金) 15:45:05 ID:OHlH2m/W
 例えば、パパとママ。虎徹ちゃんとの行為が表に出ないようにする方法なんていうのは
幾らでもあるし、何かあっても誤魔化すことなんて簡単だ。虎徹ちゃんと関係を持つ前は
それこそ毎日布団に潜り込んでいたのだから、一緒に寝ていたという一言で済む。しかし
そんなことをせずに、夜中にこそこそと誰にも分からないように虎徹ちゃんとセックスを
して、それが終わったら自分の部屋へと逃げ帰るのはどこか滑稽な感じがする。そう自覚
をしながらもこの方法を取り続けたのは、両親に対しての躊躇いや日常への気持ちが心の
片隅に有ったからではないのだろうか。
 そして、サクラちゃん。サクラちゃんが虎徹ちゃんに対して持っている気持ちを知りな
がらそれを利用したのは、それがサクラちゃんにとってとても大切なものだと理解をして
いたからではないのか。酷い話だとは自分でも思うけれども、それでも最後には日常へと
戻そうと思っていたこと。つまりは切り捨てずに、いつものサクラちゃんに戻そうとして
いたのは、サクラちゃんも大切に思っていたからなのではないのか。やりすぎにならない
ように仕向けていたのは、その最たるものだ。
 そこまで思い至って、不意に笑いが漏れてきた。もう計画も終盤、終わりまであと少し
だというのにやっと気持ちが追い付いてきた。しかも自分の発言や行動を省みて、やっと
気が付いたようなものだ。その上、それは自分の行動を少しでも良く思わせたいような、
言い訳とも偽善ともとれるようなもの。
559『とらとらシスター』Side姉虎:2006/09/01(金) 15:50:08 ID:OHlH2m/W
 逃げられない。
 何せ、昨晩から比べると気持ちは大きく違うし、やったことはどうしようもない程酷い
のだから。逃げることなんて不可能だ。
 これが罰というようなものなのかもしれないね、と思いながら居間の襖を開いた。今の
時間なら誰か居そうなものなのに、そこには人の影は見当たらない。パパは昨日の夕食の
ときにまた出張だとぼやいていたから分かるけれども、他の三人はどうしたのだろうか。
 いつもより広く感じる不思議な雰囲気で人が居ないということを思いながら、座布団に
座った。寂しさよりも静かさをまぎらわすようにテレビを点け、お茶でも飲もうと急須に
手を伸ばしたところで気が付いた。
 書き置き。
 お茶の葉を入れ、ポッドからお湯を注ぎながら読んでみると、青海ちゃんの家に呼ばれ
たので虎徹ちゃんと行ってくるという旨が書いてある。彼氏だった虎徹ちゃんは当然行く
として、サクラちゃんはどうしたのかと思ったけれど、すぐに止めた。もしサクラちゃん
も呼ばれたのならあたしにも声が掛る筈だし、逆に自発的に、というのは多分ありえない。
虎徹ちゃんも今は悩んでいるだろうから、指名もきっとない。
 このまま、何事もなければ良いのに。
 つい先程確認した気持ちで考える。
560『とらとらシスター』Side姉虎:2006/09/01(金) 15:51:04 ID:OHlH2m/W
 もう少し読み進めてみると、台所におむすびを置いてあると書かれていた。立ち上がり、
数歩程歩いてみるとテーブルの上に大きめのお皿が置いてあり、握られた白飯が少し多め
に置いてある。綺麗にピラミッド型に置かれたそれは誰も手を付けていない証拠だ。
 サクラちゃんも、食べていないのかな。
 幾つかをお皿に取り分けながら考えて、居間に戻る。最初はサクラちゃんは作っている
途中に食べたのかと思ったけれども、それはおむすびを見て違うと分かった。ママが作る
ものとサクラちゃんが作るものは大きさが違い、今詰まれているものはママが作ったとき
の大きさだ。背が高く、それに比例するように長い指で作られたそれはパパの好みに合っ
たもので、逆に身長と同じく小さな手で作るサクラちゃんのおむすびは虎徹ちゃんの好み
に合わせたもの。単純なものだからこそ、それぞれの差が出てくる。
 面白い。
 気持ちを自覚したあとの目線で見てみると、色々違ったものが見えてくる。思い返して
みれば、気が付くことも結構多いものだ。自分ではよく取り柄がないと言っていたけれど
も、料理はその辺りの店よりずっと美味しい。純粋な技術だけじゃなく、家族に合わせて
作っていたからだ。ただ虎徹ちゃんの好みに合わせるだけじゃない、最近だと熱くなって
きたから味付けを濃くしたりと、皆に気を遣っていた。それだけじゃない、あたしも髪や
肌に気を遣っているけれどもサクラちゃん程に綺麗じゃない。
561『とらとらシスター』Side姉虎:2006/09/01(金) 15:53:40 ID:OHlH2m/W
 良いところを一つずつ思い浮かべながら、おむすびを口に運ぶ。 ママには悪いけれども、サクラちゃんの方が美味しい気がした。
 もう一口食べようと思ったところで、不意に襖が開く音がした。考え事に夢中になって
いて気が付かなかったけれども、人が居たらしい。今、家に居る人は消去法で簡単に答え
が出てくる。どうやらどこかに出掛けたと思っていたけれども、単なる寝坊だったらしい。
 そのことを少しおかしく思いつつ、これからの為にどうしようか考えながら振り向いた。
すっかり愛しくなった妹を見て、
「サクラちゃ……」
 ん、という言葉は言えずに止まった。視界に入ってきているサクラちゃんの姿を見て、
言葉が続けられなかった。いつも綺麗に下ろされていたストレートの髪はぼさぼさになっ
ていて、一晩泣いたのか瞼は腫れ、眼球は赤く染まっている。瞳に宿る色は悲しみや諦め
など色々浮かべているのに、怒りなどというものは一切浮かべていない。細い体は細かく
震えいて、今にも崩れそうになっていた。着ている寝間着に皺やよれがないせいで、それ
はどこかちぐはぐに見えた。
 しかし、大事なのはそれだけじゃない。
 何よりあたしの視線を釘付けにしたのは薄い胸の中央、細かく振動している手に握られ
た小刀だ。元々色素が薄く、白い手指から色が完全に失せる程強く握られたそれの上部、
鈍く太陽光を反射する刃が独特の存在感を放っている。
 あたしが何かを言おうとする前に、サクラちゃんは歩き出した。最初の一歩はゆっくり
と、続いて速度を上げながら二歩目、三歩目を踏み出してくる。四歩目で、それは歩くと
言うよりも走るというものになり、あたしの体に高速で向かってきた。
 ごめんね。
 青海ちゃんも、
 パパも、
 ママも、
 サクラちゃんも、
 虎徹ちゃんも。
 最後くらいは良い娘になれると思ったのに、
 良い娘になったと思ってたのに、
 最後まであたしは悪い娘でした。
 小さく心の中で呟いて目を閉じた。
 でも、悪い娘だけど、少しでもサクラちゃんが救われるのなら、サクラちゃんに殺され
るのなら良いかもしれない。サクラちゃんに逃げ道が見付かるのならあたしの命くらいは
安いものだ。
 本当に、ごめんね。
 もう一度心で呟いたところで、衝撃が来た。
562ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/09/01(金) 15:55:10 ID:OHlH2m/W
今回はこれで終わりです

伏線も大分回収しましたね?
563名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 16:13:35 ID:h2FVrfpB
姉ちゃーーーーん!!(|||゚Д゚)
564名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 16:18:49 ID:9h+O55M5
これは監禁エンドか?
565名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 17:09:34 ID:uhKy4ERM
お姉ちゃん、ただのエロイ娘だと思ったら凄く色々なこと考えてて
しかも凄く良い子だった・・・おねえちゃん(;つД`)
566名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 17:14:01 ID:Iu/Ky2Pj
残り15kbしかない
ちょっと神々も投下は次スレ立つまで待ったほうがいいかもしれない。
いいスレタイあればまたスレ立て挑戦してくるけど
567名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 18:06:20 ID:8aNYghbS
ちょっとコミカルに嫉妬マスク17号とか?スレタイ
568名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 18:15:09 ID:rYw4Z2oQ
初犯17歳
569名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 18:19:13 ID:5KysLleD
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 17秒の決着


もしくは延長十七回裏の死闘
570名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 18:22:39 ID:4Bz1bhvH
>>556に一票
571名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 18:25:55 ID:EmTmEHYM
あなたが17(いな)い
572名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 18:32:22 ID:wYtIw5Rp
血文字の恋文17通目
573名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 19:07:06 ID:OaC9Sfi/
>>556
ちょwwwwwwそれなんて真祖wwwwwwwwwww

>>569
延長十八回にして次々スレでおながいしたいw
574名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 19:30:42 ID:OcaICwE7
>>571に一票
575名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 19:52:26 ID:5KysLleD
嫉妬台風十七号
576名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 20:21:10 ID:uhKy4ERM
>>571
ちょっと惹かれる、分かりそうだったらいいかも
>>572
同じ人相手に「恋文17通目」だとちょっとヤンデレっぽくて好き
577名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 20:38:18 ID:jxkLo+a4
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十七の嘘
578名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 21:05:13 ID:7vdRXGQ6
深夜のメール 毎分十七通
579名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 21:25:19 ID:Iu/Ky2Pj
ではスレ立て一号、言葉様いってきまーす
スレタイは>>571でいきます
580名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 21:36:30 ID:Iu/Ky2Pj
次スレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1157113763/

言葉様4人目も惨殺成功。
それでは神よ、よろしくお願いします

  □ 十月二十一日、晴れ。

 今日は私が担当する訓練部隊の合宿初日で御座いました。
戦時中で人員補強の必要があったからでしょうか。例年より平民出身の方が多いそうです。
その平民出の方々の中から、彼を見つけました。

 ウィリアム・ケノビラック。
先の大きな戦いでの功績が認められ、騎士団長様の目に留まった傭兵。
あの老獪の騎士団長様に認められるくらいなのですから、相当な実力の持ち主なのでしょう。
というのも、本来であれば正騎士になるまで約一年間、従者として騎士団に従事しなければなりません。
しかし彼はその工程を全て省いて即入団することになったのです。
いくら戦時中で戦力が欲しいとはいえ、これは異例中の異例。
 そのおかげで、中には彼を快く思わない騎士たちもいました。
合宿地への移動時も異例のスピード入団のことで他の新米騎士たちから反感を買い、孤立なされているようでした。

 あまりに可哀想だったので、夕食時彼に話しかけてみました。
話してみて初めて解ったのですが、とても騎士に向いているとは思えない優しい方でした。
訓練中の目つきの印象でもっと好戦的な方だと思っていたのですが、どうやら違うようです。
……ただ、彼の本当の性格を知ってしまうと、明日からの訓練に不安を禁じ得ません。
イジメられたりしなければ良いのですが。


  □ 十月二十二日、快晴。

 今日から本格的な訓練が始まりました。
ウィリアム様はどうやら剣を二本使って戦うスタイルがお好みのようです。
一般に支給された武器を使わないことで一人の騎士に絡まれていました。
部隊長の仲裁のおかげで大事には至りませんでしたが、ウィリアム様を見るまわりの目が益々冷たくなったように感じました。

 ですが、訓練が始まると冷たい視線は驚きに変わりました。
彼の圧倒的な強さのせいです。
フォルン平野の戦いで大層ご活躍なされたと伺っておりましたが、それも納得。
訓練を一通り見た限りでは他の方たちの追随を許さないほどの腕前でした。
とても入団したての騎士様とは思えません。
 下馬評では今年一番の逸材と言われていたマリカ・トリスタン様をも打ち負かしてしまわれました。
飛び入りで入団したことに嫉妬していた騎士たちも、その様子を見て彼に対する態度を改めたようです。

  流石ウィリアム!そこに痺れる憧れるぅ!(←何故か他の文字と明らかに筆跡が違う)


  □ 十月二十六日、曇り。

 訓練合宿から帰ってきて早々、ウィリアム様はマリカ様から喧嘩を吹っかけられたようです。
部隊長に騎士が私闘していると告げ口…ご報告したのですが、訓練の一環だろうから許してやってくれ、とのことです。
なんて日和見な方なのでしょう。……この役立たず。



     (中略)



  □ 十一月六日、晴れのち曇り。

 今日もマリカ様がウィリアム様に勝負を持ちかけていました。これで何度目でしょう。
ウィリアム様はとても優しい方。マリカ様の強引な申し出を断れるはずもありません。
 あんまり腹が立ったので、決闘する直前、ナイフを投げつけてお二人を止めました。
マリカ様が「殺す気か!」などと吠えておりましたが、知ったこっちゃありません。
 姑のように怒鳴り散らすマリカ様を置いて、ウィリアム様とそのまま愛の逃避行に出かけました。城の見張り台まででしたが。
そこでウィリアム様と夕暮れまで話をしました。
私のナイフ投げにウィリアム様は大変驚いていたようです。
あまり昔のことを知られるべきではないのですが、本当は少しでも私を知ってもらえて嬉しかったのは秘密です。

………今日は眠れない夜になりそう。


  □ 十一月九日、快晴。

 性懲りも無くまたマリカ様が勝負を申し込んでいました。

ほんっっっとに何考えてんのかしら!あの女は!(←またしても此処だけ筆跡が違う)

 ウィリアム様もウィリアム様です。何も正直に決闘の場所に行かなくても。
そこで私は彼を足止めすることにしました。
先ず、兼ねてからウィリアム様に召し上がってもらう予定だったシーフード・ポトフの作り方を、わざと間違えて作ります。
さらに約束の時間が過ぎるまでレシピとは違う調理の仕方で作り続け、ウィリアム様と一緒にどう作るべきか悩むフリをする作戦です。
好物ということもあってウィリアム様は見事に私の網に引っかかりました。
夕方まで厨房に縫い付けている間に、彼自身も決闘の約束を忘れたようです。作戦成功。
 マリカ様が待ちぼうけを食っている様子を思い浮かべて、笑いを堪えるのが大変でした。ザマミロ。
おまけにウィリアム様と楽しい時間を過ごすことができました。

……今日はすごく気分がいいです。(すぐ横に満面の笑顔を浮かべる女性の顔が描かれている)




     (中略)



  □ 十一月二十日、雨。

 間もなく訓練部隊も解散です。今日は皆様の配属先の発表がありました。
ウィリアム様の配属先は、なんと第零遊撃部隊。あの救国の戦姫、マリィ=トレイクネルが率いる精鋭部隊です。
私もすごく鼻が高いです。その一方で、これから彼が死地に向かうことになると思うと胸が締め付けられる思いもありますが。
訓練部隊の解散に伴い、私も姫様付の侍女に異動することが決まりました。
ですがこのことはウィリアム様には内緒にするつもりです。
 本来私は彼の近くにいるべきではありません。これを機にウィリアム様とは距離を置こうと思います。

(ここから数行にわたり、筆跡が変わっている)

 私は影から彼を見守っているだけでいい。それ以上は彼を不幸にするだけ。
解っているのに、この気持ちは止められそうにない。
 ウィリアム。……どうか。どうか私のことは忘れて。
でないと。私は……(あまりに文字が乱れているため、これ以上は解読不能)
こっちの方はかなり久しぶりの投下です。
いつもとちょっと違うスタイルで書いてみました。
586名無しさん@ピンキー:2006/09/02(土) 05:56:25 ID:SikONPG+
ok!
587名無しさん@ピンキー:2006/09/02(土) 06:21:11 ID:PNU//D2O
シャロンちゃんかわいいよシャロンちゃん
(*´Д`)ハァハァ
588名無しさん@ピンキー:2006/09/02(土) 06:36:40 ID:EAQbgmIy
神様GJ
(*´Д')イイ・・・シャロンスゴクイイ
589名無しさん@ピンキー:2006/09/02(土) 08:06:26 ID:/4h1U4qt
いいよぉ…シャロンちゃんいいよぉ…
ハァハァハァハァ…(*´Д`)いい…
590名無しさん@ピンキー:2006/09/02(土) 09:34:15 ID:zBKW8NcL
シャロン可愛いよシャロン
さりげない黒さがたまらん(*´д`*)ハァハァ 
591名無しさん@ピンキー:2006/09/02(土) 21:37:02 ID:TCyEgDBr
592名無しさん@ピンキー:2006/09/02(土) 21:40:24 ID:PNU//D2O
>>591
詳細!詳細を!
593名無しさん@ピンキー:2006/09/02(土) 23:49:03 ID:RfxVvh90
上が断華ナオキの漫画なのは分かるけど、下の二つは分からないな
上についても題名が分からん、この人は修羅場も書くようになったのか
基本的に近親相姦系が多かったような気がする、ってことは姉と弟か? この二人
594名無しさん@ピンキー:2006/09/02(土) 23:49:37 ID:RfxVvh90
下げ忘れごめんちゃい
595名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 00:30:09 ID:Y1Ze7Ohi
>>591の上のやつの題名は断華ナオキの妖女だと思われる
596名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 02:51:48 ID:ipb0/mgW
中と下はメンズヤング連載の
もとかの by東鉄神
597名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 05:38:12 ID:ipGsYClu
保守
598梅ネタ ◆tVzTTTyvm. :2006/09/03(日) 10:52:49 ID:ct2wp/JI
 人間と言うヤツは幸せが身近すぎると其の事を忘れてしまったりするもの。
 その例は正に私――稲峰 柚納(いなみね ゆな)の直ぐ側にもあった。 

 あの女――小山 素豆子(こやま すずこ)は自分がどれだけ幸せかって事に気付いているのだろうか。
 私が大好きな市沢 熱矢(いちさわ あつや)先輩を独り占めにしてるくせに。
 幼馴染なのを、惚れた弱みに付け込んでのイイことに好き放題

 熱矢先輩にとって私は只の趣味が同じなだけの後輩。悲しいけど其の事を私は十分に認識している。
 それでも私には十分だった。
 私は模型を――プラモデルを弄るのが何より好きだった。
 女としてはかなり珍しい趣味で、お陰で同性で趣味の合う友達は一人も居ない。
 それなら男の子は、と言うと確かに昔は何人か居た。
 でも皆大体其のシリーズのアニメが終わると興味を失うようなそんなコばかり。
 そして興味を失うと未だ好きで居続けてる私の方が逆におかしいかのような目で見る。

 でも先輩だけは違った。本当にプラモデルの事が好きで、当然同じ趣味の私を決して笑ったりはせず、
それどころか私の真剣さを褒めてくれた。
 そして私の先輩に対する思いは同士としての親近感や尊敬を越えやがて恋心へと変わっていった。
 でも其の事を先輩は知らない。 私が打ち明けてないし打ち明けるつもりも無いから。
 打ち明けてこの関係が壊れるのが怖かったから。

 ある日の事私は先輩に話し掛けた
「遂に明日発売ですね」と
 そう、明日は新作プラモの、それも熱矢先輩が物凄く発売を心待ちしてたキットの発売日。
 だけど、次の瞬間先輩の顔に寂しそうな笑顔が浮かぶ。
「うん、そうなんだけど金欠で買えなくなっちまった……」
「え? だ、だって先輩」
 そう。この日のために貯金してたはず。金銭感覚も計画性もシッカリしてる先輩にはありえない事。
 私の疑問を察したように熱矢先輩は口を開く。
「この間のデートで結構散財しちまってさ……。 映画代二人分は結構痛かったから」
 デート……。 あの女とのか。
「そうですか。 楽しかったですか?」
 そう訊くと熱矢せんぱいはチョット困ったような気まずそうな表情で口を開く。
「正直ホラー苦手だから」
 怒りが込み上げて来た。 私は知っている。 悔しいけれど先輩がどれだけあの女を想っているか。
 そしてあの女がほれた弱みに付け込み好き放題してるのを。

「あ、でもデートそのものは楽しかったんだ」
 私の顔に険が浮かんだのを感じ取ったのか先輩は慌てて口を開く。
「それにサ、今回買えなくって次があるしさ」
 そう言って先輩は微笑んだ。
「あ、いえ……あの、その」
 しまったと思った。 只でさえ先輩はあの女のことで気を遣ってるのに私に対してまで。
「じゃ、じゃぁ先輩。 私の一緒に作りませんか?」
「え? 良いの?」
「ハイ。 二人で作ったほうが早く完成しますし。 それに先輩も一度キットに触れておいたほうが
自分の購入するまでに改造のイメージとか組み立てられるでしょ?」
599 ◆tVzTTTyvm. :2006/09/03(日) 10:55:42 ID:ct2wp/JI
続きを書く予定は今のところ有りません
っていうか連載中だけで手一杯……

若し続き書きたいリメイクしたいという方がいらっしゃったら遠慮無くどうぞ
600名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 21:10:34 ID:2iwxs8hn
>>585
姫様とマリィさんの日記も出来たら見てみたいっす。
601名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 23:58:02 ID:ltG1hN2S
ああ、シャロンの正体って彼女か
全然気付きませんでしたわ
602名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 01:01:50 ID:kIxWpln1
阿修羅さん更新お疲れ様です
大量の作品をまとめてくださった阿修羅殿の努力に感動(;つД`)
603名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 02:43:30 ID:6BiZcZF/
ハーレムスレから嫉妬スレに来てみたんですが、過程は似てるのに結果が全然違うw
604名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 11:20:32 ID:/B0s+Hdx
「そんな馬鹿な。あの女のスピリット指数、1000を超えてやがる……」
605名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 23:57:59 ID:MWwqQ1dr
とどめ
606名無しさん@ピンキー:2006/09/05(火) 03:02:51 ID:jT71Gh2X
どとめ
607名無しさん@ピンキー:2006/09/05(火) 03:07:19 ID:3RD72PUA
         ____
       /      \
      / ''''''    '''''' \
    /  (●)  (●)  \
    |      (__人__)     |
    \     ` ⌒´    /

   _____________
   |__/⌒i__________/|
   | '`-イ   ./⌒ 三⌒\     | おやすみユッキー・・・・
   | ヽ ノ  /( ●)三(●)\    |
   |  ,| /::::::⌒(__人__)⌒::::: \  |
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

       ____    
     /ノ   ヽ、_\ 
   /( ○)}liil{(○)\
  /    (__人__)   \
  |   ヽ |!!il|!|!l| /   |
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608名無しさん@ピンキー:2006/09/05(火) 04:21:35 ID:VvSbMCk3
おしマイケル!
609名無しさん@ピンキー:2006/09/05(火) 05:58:11 ID:OBtDCjZX
どうした?<K.I.T.T.>?
610名無しさん@ピンキー:2006/09/05(火) 07:50:03 ID:qgLGzsUH
あっさり本スレを遥か後方に追いやった件
611名無しさん@ピンキー
本スレの方はいまいちネタがないからなぁ