嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 15年目の浮気
1 :
前スレの親はまた新しい娘に手を出した:
前スレに手を出したのにこの娘にも手を出してしまったぜ!
スレのお約束
マターリ仲良く
修羅場はゲームの中で
さて神々よこのスレもよろしくお願いします
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新スレです。楽しく使ってね。仲良く使ってね。
>>1乙
このまま本スレをぶっちぎってしまうんですね。
七誌君は本妻じゃなくて愛人の私の方が良いんだもんね♪
いずれは私の方が本妻に… フフフ…
部屋は暗かった。
それでも次第に、眼球が環境に適応して……おぼろげに、何かが、見えてくる。
「……、足元に、なにか」
靴下を通して、僅かだが、フローリングとは違った感触。
しゃがんで指先を床にさまよわせる、と。
「――は、ね……っ?」
いや、違うか。羽毛、か。
そこでようやく、その闇を見渡す。
「お、お……、ぅ?」
なんだ、これは。
羽毛がフローリングの床をおおっている。
何故か。
小奇麗な純白の布団と枕が、引き千切られているからだ。
「、うわ、わ、ぁ」
まともな言語を吐き出せないくらいの、驚愕。
ベッドにちかづいて、件の二つを、もっと観察して見る……、と、これは、ひどい。
道具――包丁とか、とにかく刃物……引き裂かれていない箇所をさがすのが困難なくらい、表面を傷めつけている。
そして中身を、全部取り出して、部屋のあちこちにばらまいて――っ?
(これ、いたり、先輩がっ……?)
何故だろう。
こんなことを、する理由……俺には、わからなかった。
さっきから自分の鼓動がうるさい……、なんで、うるさい……っ?
「お、わぁっ……、と」
なにかに、躓いてよろめく。
見下ろすと――これは、ぬいぐるみ。
色は、見えない……、ただ、なにか動物らしき……熊、かな。
拾って、全身を確かめようと……、んっ?
「腕が……千切れてる、な、これ」
いや、右腕だけじゃない。
鼻は潰されて、片目は見当たらず……、眼窩の奥には、綿だけが、ある。
その熊はそれでも――にっこり、笑っていて、逆に不気味だった。
「う、ぁ」
びっくりして、壁に投げ飛ばす。
叩きつけられた熊は、無機質な笑みを張り付かせたまま……、引き裂かれた布団に、沈んだ。
まるで……ぬいぐるみで再現する、狂喜の、殺人、現場。
おかしい。
この部屋は――変だ。
テレビは、横に倒されていて……いや、まるで蹴り飛ばされたというか。
割れた花瓶らしき物体と萎れた一輪の花は、双方片付けられずに床にちらばっていたり。
雑誌や、文庫の本などにいたっては……数多の頁が破られて、いた。
まるで……、暴れ回った、事後の、まま。
暴れ回ったという表現だけでは足りないくらいに、徹底的に、部屋のあらゆるモノに怒りを叩きつけて……、怒りっ?
怒ってる、のか、先輩――っ?
そもそも先輩がこれだけ荒らしつくした、という確証なんて、ないんだけど。
「机の、上も、ぐちゃぐちゃっ……、あれ」
へし折れた文房具に埋もれるようにして……それは、あった。
両手で、拾う。
「うん……っ? なんだろう」
文字が見えづらい……手触りは上品な表紙。
携帯の電源を入れなおし、液晶の僅かな明るみで、表紙の文字を読み取ろうと……っ、お、なになに。
「――あ、ぅあ……っ?」
そこには、確かに、こう書かれている――。
『私の、エースケくん』
ぼうぜんと、しながら。
俺は震える指先で……頁を、繰る。
○月○日 くもり
今日のエースケくん。
六時二分に帰宅する。
いつもより、少し遅いのは……夕飯の買出しだろうか。
知りたい。
○月○日 晴れ
今日のエースケくん。
六時十六分に帰宅する。
まただ。また遅い。
なにを、しているのかなあ、エースケくん。
私はこうして、ずっと待っているのに、まだ名前を呼んでくれない。
寂しいです。
○月○日 晴れ
今日のエースケくん。
五時には帰宅する。
宿題でうんうんと悩んでいる様子は、抱き締めたいくらい、可愛い。
思わず這い出したくなる衝動を抑えるのには、苦労する。
はあっ……可愛いよ、エースケくん。
「な、ん、で……っ!?」
冷静に――と、とにかく、落ち着けよ、俺……っ。
こんな、こんな情報の量だぞ……っ!?
妄想、はったり、そ、そうに、決まってるじゃないか。
大体鍵は、鍵は、俺がちゃんと――っ?
(待て、よ……っ?)
お、俺――ちゃんと、確かめたっけ……、え、ぇ。
あの時は……冷静じゃなかったから、よく確かめないで、鍵、ひったくったような……、?
握った感じは、鍵だったような……。
(俺、確かめるの、忘れてた……っ?)
いたり先輩から鍵をひったくってから、……その鍵が、俺の家の鍵穴にちゃんと入るのか……俺は、確かめ、なかった。
なら。
――あらゆる可能性が、脳裏に発生しては、ぐるぐると渦巻く。
だとしたら、この日記は全部事実で、いたり先輩はじゃあ俺の様子を何処から、ばれないように、うかがう……っ?
俺の把握していない未知の領域から、視線が、飛んでいた……は、はは、あははっ……ぁ?
(そんな、まさ、か……っ?)
とにかくと、唾を嚥下してから……っ。
頁を繰る作業を、再開する。
○月○日 晴れ
今日のエースケくん。
五時には帰宅。
帰宅してから五分後に、チャイムがなる。
あの女だ。
部屋に入ってくると、エースケくんと一緒に勉強を始める……。
ずうずうしい……私とエースケくんだけの聖域を、勝手に侵さないで、ほしい。
夕飯まで食べていく。
お前は路傍の雑草でも齧っていろ。それがお似合いです。
○月○日 晴れ
今日のエースケくん。
五時には帰宅。
が、今日は着替えると、またすぐに外出する。
――なんの、用事なんだろう。
ぐつぐつと煮え滾るこの感情は……うん、殺意ですね。
エースケくんの、弁当箱をこっそり抜き取って、お箸をなめました。
エースケくんの味がするよ。
○月○日 晴れ
今日のエースケくん。
またあの女がのこのこと来訪する。
しかも、今日の夕飯はあの女が用意するらしい……。
大変。
そんな汚物を無理矢理食べさせられるエースケくんが、とてもかわいそうです……。
私の名前を呼んでくれたら、すぐに助けて、あげますのに。
○月○日 晴れ
今日のあの女。
またお前か。
いい加減に、して、ほしい。
自分の食事くらい己で用意しろ、阿呆みたいに口を開けて待つばかりの雛ですか、そうですか。
……お前が雛だったら、私が軽く、握り潰して、やれるのに。
それだけが、本当に残念です。……潰したい、潰してやりたい、むしろ潰れろ。
○月○日 晴れ
今日のあの女。
また来た。お前は寄生虫か。
今日から、呼称を害虫と、する。
世界の害虫さん、ごめんなさい。でも踏み潰したいくらい憎たらしいから、許して下さいね。
あと、今日もエースケくんの寝顔は最高に可愛い。
キスしようと思ったけど、やめました。
やっぱり、エースケくんから、されたいから。
○月○日 晴れ
今日の害虫。
くたばれ、の一言に尽きる。
――包丁。ベッドの下に、常備しておこう。
「――、……、――っ」
ベッドの……下。
ははっ、あはは――嘘だろ、そんな、まさか。
内心を否定の言葉で満たしつつ、急かされる様に、俺は頁を繰っていく。
○月○日 くもり
今日の害虫。
やって来ない。
とても、いいことだ。
もう来るな、部屋が腐る。
○月○日 晴れ 私の天気は、血の雨
リビングから楽しそうな話し声。
十中八九、あいつだ。
一緒に夕食。
――空腹だった。
物理的にも、精神的にも……飢えている。
なんで。
あの、あの忌々しい女が居座っている位置に、私は、存在しないんだろう。
死ねよ。
消えろ、消えろ、死ね、死ね死ね死ね死ね死ね――。
○月○日 死ねくたばれ
エースケくん、帰ってくるのが、遅いですよ。
早く名前呼ばないと。
――這い出します、よ。ふ、ふふ。
あと、疲れてるからって、テレビをつけっぱなしで寝るのは、駄目ですよ。電気、勿体無い。
そんな、不意に見せるだらしなさも……可愛いんですけどね。
○月○日 殺そうと、思った
ああ、ああああああああああああああ――っ!
このぬいぐるみが、あの女、女だったら、ああ、糞、千切れろ、千切れろっ!
部屋が半壊した。
それくらい、しないと、収まらない。……あんな、害虫と、繋がる、なんてっ……!
――少し、落ち着きましょう。
一ヶ月が、経過しました。
エースケくんは、とっても可愛いです。
椅子の上で背筋を伸ばしていたらバランスを崩して転げかけたり、苦手な教科の宿題に、うんうん唸りながら苦戦する様子とか。
欠伸のときの声なんか、もう……駄目です。とにかく大好きです。
けれど、近くて、遠い。
名前を――呼んでください。
寂しい。
寂しいです、死にそうなくらい寂しいです。
いやだ、いやだいやだいやだ――。
いやだから。
もう、ベッドの下から這い出そうという衝動は、抑えられません。
そうです。
いっそのこと、占領しましょうか。
エースケくんの四肢を封じます。
鍵は全部閉めます。カーテンも。電話も邪魔です、断絶させましょう。
あの女がたずねてきたら――はは、そうです。
殺す。
そして。
エースケくんと、私の、二人だけの空間が。
エースケくん。待っててくださいね。
ちょっと、この頃体調悪いですけど……これしき、軽いです。
エースケくん。
待ってて、エースケくん、エースケくんエースケくんエースケくんエースケくんエースケくん――。
「――殺す、ぇ?」
誰を。
……誰、がっ……?
(ぁ、嘘、ぇ、え、うぁ……っ?)
とにかく。
とにかく――まずい。
ここは、開くべきじゃなかった。俺は最悪の、一等の地雷を、完璧に踏んでしまった。
それだけは……理解する。
「、あれ、ぇ?」
瞬間。
かちりと物音――同時に、部屋が。
明るく、なった。
「――エースケくん」
「っ、は、ぁ……っ!?」
背後から、声。
しまっ、た……っ。
誰かなんて……振り返らないでも、わかる。
「絶対に入るなって……言いました、よね」
「ぁ、う」
言った。
そして――俺がそれを破ってしまったのは、事実だ。
……改めて、振り返らずに、明るくなった部屋を見回す。
散らばる羽毛に千切れた頁。
解体するように抉られている、布団と枕、ぬいぐるみ。
――ぞっと、する。
(……ぁ、れ)
壁を、横目でうかがった。
さっきまでは暗かったのでわからなかったが、なにか、文字が、書いてある……っ?
赤い、太い、字で。
部屋の壁の、天井を除くあらゆる部分に――。
死、死ね潰れろ死ね死ね消えろ殺す千切る死、死死死死死――。
呪詛が。
刻まれていた。
「あ、ぅああああああああ――っ!?」
悲鳴は、自分の声だった。
その場で、腰から座り込んでしまう。……日記が、床に落ちた。
今まで、こんな呪われたみたいな、部屋に、お、俺……っ?
血みたいに、赤い、これ、これ……っ!?
「だから入っちゃ駄目ですよって、言ったんです」
首だけ、振り返る。
嬉しそうに……笑う、先輩。
「ぁ、の、お、俺……っ」
「でも、ちょっと嬉しいんですよ、私……大好きなエースケくんに、部屋に忍び込まれて、あは、はっ」
屈んで……俺が落とした、日記を、拾う、いたり先輩。
片手でそれを抱きながら。
「駄目じゃないですかぁ。もぉ……勝手に読んじゃったら、ねえ、ふ、ふふ、ふ」
「ご、ごめん、ごめん、なさ……ぃ、あ、ぅ」
謝っている場合じゃない。
謝罪なんて――いくら重ねても、今のいたり先輩には……無意味、だ。
「許して、すみ、ま、せん、ごめん、ごめんなさ――」
「駄目です」
一言で、切り伏せられる。……やっぱり。
ゆっくりと……近付かれる。後ずさる。
――やがて、背中が壁と衝突し、退路が、零に。
「大丈夫です。ちょっと痛いかも、ですけど。私がちゃんと、エースケくんを、正気に戻しますから」
「ま、って、くださいっ。落ち着いて、ちゃんと、話しを、」
「わた、わわわわたしは落ち着いてます。おかしいのはエースケくんですっ! 大丈夫、大丈夫です、ちょっと、ちょっと寝るだけ、眠るだけ――」
言いながら、背中に回していた片手を、正面に……。
フライパン……っ?
あは、はは、ははっ……あ、あれで、殴られたら……痛い、痛いよな。
――冗談じゃ、ないぞ。
「ぅ、あ――っが」
がごん、……。
砕け……、ぁ、が、いた、ぃ……ぁたま、ぃた……っ。
タテナイ。
たたないと……ぃたい、やめて、なんかいも、ぁたまを、たたか、ない、で……っ。
しかいが、とじる。
ハアハアと、あらいこきゅうの、せんぱいが。
にやりと、わらった、ような、……。
ぐ、がっ。
「や、った……ぁ……っ?」
ぐったりと、床に倒れこんだまま動かないエースケくんを見下ろして……呟く。
一発じゃ、やっぱり気絶してくれない……結果、何回も、蹲って痛がるエースケくんに、何回も、やっちゃった、けど。
「は、ぁ……はあ、ああ、ああ、はっ」
顎を伝う汗を拭いながら、武器をベッドに放り投げる。
やった。
――思ったより、容易かった、です、けど……とにかく。
「エースケ、くん……」
これで。
私の、私の、モノです。
ど、どどどどどうだ、あの、あああああああの害虫女、はは、あははははははっ!
だだだ大丈夫、ゆっくり時間をかけて、せ、せせせ説得すれば、エースケくんも、き、気付いてくれるっ!
うふ、ふ、はは、ははぁ――あ、ははっ!
「あぅ……う、うふ、ふふふ、ふふふふ――エースケ、くん」
これから。
は。
「私が、いっぱい、いっぱい……愛して、あげます、から……ね」
いたり先輩コワス
疾走待ってました!
そして、いたり先輩キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
エースケ生きてんのか…?
修羅場の前にあの世の悪寒w
いたり先輩、怖萌え
エースケ君…もうちょっと考えて行動…まあ普通あの状況じゃ無理だよね(´・ω・`)
むしろよくやったね
そうだな、彼はよくやった。けど、いたり先輩がそすごかっただけなんだよ。
そんな、いたり先輩に萌えてしまう漏れはもう救いようがないのかもしれないな。
|ω・`) 疾走やっとキター
しかしヒロインに舐められまくってる主人公w
いたり先輩の素晴らしさにwktkが止まらないぜ
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
いやあ…いたり先輩可愛いなあもう…
おいエースケ俺と変わ
(通信が途絶えました)
いたり先輩怖いよいたり先輩(*´Д`)ハァハァ
第1回目でいたり先輩にあんな断り方をするのではなく、やんわりと傷つけないようにしていれば……
結局同じだけどな(・ω・)
で、もしエースケくんがいたり先輩と付き合っていたら
どんな展開が待っていたんだろうか・・
俺的にはいたり先輩のトゥルエンドが欲しいとこです
それでは一挙二話投下します。
「……うん、……うん、頑張ってるよ。……まあ山に篭ってるから不便なことは一杯あるけど、
まあ何とかやってるわ。……大学は休学届けを出してるから大丈夫。……うん、それじゃ。」
ふう……全く五月蝿いわね。とはいえこうやって定時連絡しとかないと親父の奴、本当に
富士の樹海に行きそうだしな……。おっと、こんなことをしてる場合じゃなかった。早くこいつを
完成させないと。
「弥生のプレゼント大作戦の巻」
9月も下旬になり、木々も色付き、道行く人も秋らしくコートやマフラーなどをしている
人がちらほらと見かけるようになり、日に日に秋が深まる今日この頃―
そしてここにそんな秋を待ちわびた者がいた。
「今年の秋は例年並みで、天気、気温共に穏やかな気候になるでしょう。長期予報
によりますと関東地方は………」
「へえー、今年の秋は天気は穏やかですね。観光には最適ですね。」
朝、テレビの天気予報で今年の秋の傾向を見て、樹はそんな感想を漏らした。
「そうそう、昨日教授と話をしたんですが、アメリカから来る教授は予定どうりに
来月の中旬頃に来るそうですよ。もしかしたら大学の文化祭直前辺りじゃないですかね?」
「そう……いよいよ来るのね。」
来る、って聞いても何だか弥生は沈んだような顔をしていた。それを見た樹は
「どうしたんですか?元気ないですね。もう少しで元に戻れるんですよ。」
「まあ、嬉しいといえば嬉しいんだけど……」
でも、それってここにいる理由が無くなるってことなのよね。それは嫌!!
このままずーーっとここにいたい……。でも元に戻ったら……。それならいっそこのまま……
、いやダメよ!!この体じゃ樹と1つになれない!樹に愛してもらえなし喜んでもらえない!!
それだけは嫌……
今は体では無理でも気持ちは表したいから早く「アレ」を完成させて私の思いを伝えなきゃ。
―――数日後―――
「遅いわね……」
今、弥生は大学構内のベンチに座っていた。
手にはここ数日徹夜して作った樹へのプレゼントが大切そうに握られていた。
やっと出来たわ。ちょっと不格好だけどそこは愛でカバーね。でもまさかここまで手こずる
なんて……。編み物なんて簡単よ、なんて思ってやってみたら……。ま、まあいいわ。兎にも角
にも出来た上に、愛情こめて所々に私の髪の毛を織り込んだからいつでも私の思いを
感じることができるわね。後は樹が気に入ってもらえればいいんだけど……
時計を見るともう講義はとっくに終わっている時間になっていた。
こっちから迎えに行こうと立ち上がった時、講堂から見知った人が出てきた。
(あ、来た来た)
発見し、近寄ろうとした瞬間、弥生は無意識の内にベンチの裏に隠れてしまった。
な、何で?どうして隠れちゃうの?でも何か「勘」というか…
…隠れた方がいいって気になったような……
数分後
樹がベンチの前まで来た時、耳障りな声が聞こえてきた。
「樹さーん、待ってーー!!」
振り返ると、晴香が走ってきた。
「あれ?晴香ちゃん、そんなに慌ててどうしたの?」
「ハア……ハア……やっと追いついた。……樹さんに渡したい物があって…」
弥生がこっそりとベンチの影から覗いて見ると、晴香はバッグから綺麗に
ラッピングされた包みを出して
「はい!プレゼント!受け取って下さい。」
な!プレゼント?どうせたいしたものじゃないでしょ!
「え?プレゼント?ありがとう。開けていい?」
「ええ!もちろん!!」
綺麗な包みを丁寧に取るとそこには
「ん?これは、セーター!ありがとう。」
樹の手にはどこかで売っててもおかしくないぐらい、完璧なセーターが握られていた。
え?あれ晴香が作ったの?そんな………
「えへへ、気に入ってもらえて嬉しいです。これから寒くなるだろうから作っちゃいました。」
「でもいいの?こんなに立派な物貰っちゃって……」
「いいですよ。セーターなんて簡単ですし、樹さんが喜んでもらえれば……あ、それでしたら
お礼ってことで今日買い物に付き合ってもらえませんか?私ちょっと見たい物があるんで…………」
二人が遠ざかっても弥生は動けなかった。自分の視線の先には握り締められた包みがあった。
そうか……あの時咄嗟に隠れたのは、晴香にこのプレゼントを見られたくなかったからなのね。
たぶん口ではどうこう言っても無意識の中ではこのマフラーがちょっと不格好なのを恥ずか
しいと思っていたんだわ……。だから飛び出して邪魔出来なかったのね。
確かに晴香のあのセーターを見せられては飛び出せないわ。それにしてもセーターが簡単?
私なんて頑張ってこの不恰好なマフラーなのに…。何よ何よ晴香のくせにあんな立派な
セーター作って、私なんか……ふふ……馬鹿みたい、1人で頑張って、1人で空回りして、
1人で悔しくて泣いて……泣いて……うっ、うっ、うっ………。
弥生は余りの情けなさ、自己嫌悪、劣等感などが綯い交ぜにな
った心に耐え切れなくなり、静かに泣いた。
・
・
・
・
「それにしても晴香ちゃん、家に来たのは久しぶりだね。」
夜もふけ、買い物を済ませた晴香は家に遊びに行きたい、というのでやってきた。
「たまには遊びに行きたいですし、あのチビの生活を見て見たいんですよ。」
一体どういう生活しているのかしら。爛れた生活をしているとは思わないけど、
イチャイチャしているような生活だったら、全身全霊を懸けて戦わなきゃ。そもそも
同居そのものが反対なのよ!!あんなどこの馬の骨とも分からない猛獣と一緒に暮
らすなんて……、そういえばあのチビって従妹だっけ?初めて会った時から攻撃的
だったからそんなこと気にしなかったけど……。
いえ、従妹だろうが誰だろうが、私と樹さんの愛の巣に図々しく土足で上がり
こんで、でかい顔していると思うだけで血圧が急上昇しそうだわ。
ねえ?樹さん分かってるんですか?皆に優しいのって一歩間違え
ると誤解や勘違いが起きるかもしれないんですよ!もしかした
らチビやあの巨人はそれで勘違いしてるのかも……。
部屋は電気が付いていて、人がいる気配がした。樹がドアノブを回すと静かに開いた。
「ただいまー。帰ってきました。」
樹が部屋に入り晴香も続いて入った時、部屋に充満する匂いに気付いた。
ビール、ウイスキー、日本酒、ワインなどなどが混ざったような匂いで、
息をしているだけで酔っ払いそうだった。
「うっ……何だこの匂いは……」
堪らず外に出ようとしたら、晴香は台所で嘔吐していた。
「げほっ、げほっ……」
そういえば晴香ちゃん、お酒の類は全然駄目だったっけ。
「晴香ちゃん、大丈夫?気分は?」
背中を擦って、出すもの出したら少し落ち着いたのか吐き気の方は治まったようだ。
でも何か様子がおかしい。頬を染めてモジモジしていた。
「樹さん…………できちゃった。」
「え?なにが?」
何を言ってるんだ、晴香ちゃんは。ん?下腹部を愛おしそうに擦ってるような……。
!!!ま、まさか!!いや、それは無いハズ。ここ暫くしてないし、避妊はしっかりとしてるし
それに何より計算が合いませんよ!
「違う違う違う!!晴香ちゃん違うよ!!それは「つわり」じゃなくてただ単にお酒の
匂いのせいでしょう!!」
晴香ちゃん……なんて恐ろしい子。自分が苦しい状況でも話をソッチに
持ってこようとするその姿勢は感心しちゃうよ。
「え〜?いや!分かりませんよ?もしかしたらってことも……きゃっ、どうしたんですか、
外に連れ出て。」
樹は部屋のドアを閉めて匂いが漏れないようにした。
「さ、晴香ちゃん、深呼吸して。」
「え〜?……すう〜、はあ〜、すう〜、はあ〜、……うん!気分スッキリ!」
はあ〜、本当に「つわり」でなくて良かった。
「ごめん晴香ちゃん、部屋があの有様だから今日は帰って貰えるかな?この埋め合わせ
はまたするから。」
晴香は渋い顔をしたが、さすがにあの匂いが充満した部屋には入りたくないので
「仕方ありませんね……。今日は帰りますが、この埋め合わせはして下さいね。
あ、明日にでも産婦人科に行って来ますね!」
最後の言葉はあえて聞こえないことにして、さてどうしよう。
「……どうするもこうするも入るしかないよな。」
一度出た部屋にまた入り直した。まだ匂いはあるが、少しずつ慣れてきたので周
りを見渡した。すると奥の居間から何かが聞こえてきた。
(なんだろ、息づかい?)
居間に入って見るとそこには―
(弥生さん……)
部屋中にビールや日本酒の空瓶、空き缶が散乱していて、中央のテーブルに突っ伏して
弥生が寝ていた。
「こんなに飲んで……体壊しますよ。」
とりあえず窓を開け、散らかっている空き瓶、空き缶などを片付け始めていた時、
ふとゴミ箱に投げ込まれていた包みが見えた。手に取ってみると
「樹へ。」
と書かれたメッセージカードが包みに付いていた。
「俺に?なんだろ。」
メッセージカードを開いてみると
樹へ
ここ最近めっきり寒くなったからマフラーを作ってみたよ
ちょっと不格好かもしれないけど、私の愛はたーっぷりと
毛糸と一緒に織り込んだから、私の樹への愛を感じてね♪
弥生より
包みの中には確かにマフラーらしき物は入っていたが……あちこちがほつれ、
捩れ、歪んでいるそれをマフラーというのには少々抵抗があるが、作った本人がマフラーと
言い張っているので、そういうことにしておこう。試しに首に巻いてみた。すると
「あ、暖かい。」
形はともかく、その暖かさは本物だった。しかも首だけじゃなくて全体的に優し
く包み込むような、そんな暖かさだった。
「この優しい暖かさが弥生さんの愛だとしたら、晴香ちゃんの愛は
火山の噴火口ぐらいかな?」
樹は首に巻いたマフラーを優しく撫で、テーブルで寝ている弥生に囁いた。
「弥生さん、ありがとうございます。大切にします。」
まだ寝ている弥生に樹は毛布を掛けて、片付けも一段落したら樹は疲れたように
床に腰を落とした。
ふう……この匂いで酔いが回りそうだ。しかし……愛ねえ。晴香ちゃんには会うたんびに
連呼されてるからあまり考えなかったけど、弥生さんがねえ。まああのコンテストで
告白されたからなあ。そういえば自分の気持ちってまだはっきりとは表していないんだよな。しかも未
だに気持ちが決まっていないし……。いっそこのままなあなあでどっちつかずのまま
やっていくのは無理かな?
そんな調子いいことを考えていた時、つい先日弥生を本気で怒らせてしまったことを思い出し、
背筋が凍った。
あ、あはは……そんな調子よく出来れば苦労はしないよな。もう少しで弥生さんも元に戻るし、
今後どうするかとか、自分の気持ちの決着とか考えなきゃ。
第八話「とある日常A」完
次回第九話「アメリカからのライホウシャ」
これでほのぼのラブコメは終わりです。いよいよこのスレ向き
になり、ラストまでいっちゃいます。
では引きつづき投下します。
「優那の下心」
友紀に窘められ、大智を起こすために渋々二階に上がっていった優那だったが、
階段を一歩上がるごとに、渋い顔は段々と頬が緩み、二階に着いた時にはデレデレ
顔になっていた。
まあ料理当番は駄目だったけど、この大智を起こす当番は特別だわ。
協定上、普通じゃ二階に上がれないけど、この時だけは堂々と行けるし、
それに何より大智の部屋に入れて寝顔を堪能できるから……ハアハア。
一、 特別の理由なく、二階に上がることを禁じる。
但し、緊急の要件や大智もしくは、他二名の許可があればこの
限りではない。
大智の寝ている姿を想像するだけで顔は赤くなり、息は荒くなり、心臓の
鼓動は激しくなる一方だった。
早く、早く会いたい。
ドアの前に立つと、深く深呼吸し優しくノックした。
「大智〜〜朝よ〜〜起きなさ〜い。」
しかしドアの向こうで起きた気配はしなかったので
「も〜しょ〜がないな〜、直接起こすか〜。」
全然しょうがなくない顔をして、いやむしろ笑顔で優那は大智の部屋に入った。
大智の部屋は六畳部屋で、部屋の中央に布団を敷いて寝ていた。ゆっくり近付くと、
足に何か当たった。よく見ると
「これは……Tシャツ?」
たぶん昨日着ていたのを脱いで、投げっぱなしにしたのだろう。
「あらあら、大智ったらだらしないわね〜。お姉ちゃんが片付けてあげる。」
片付けると言いながら、なぜかTシャツを懐に仕舞い込むと、布団で安らかに
寝ている大智に近付き、耳元でそっと囁いた。
「大智?早く起きなさい。でないとお姉ちゃん悪戯しちゃうよ?」
「ぐ〜ぐ〜」
どうやら全く起きる気配はないようだ。少し思案した優那はいい案が閃いた。
「そういえば「眠れる森のなんとか」って絵本では寝ている王子様に王女がディープキ
スしたら目覚めて、王子様が一目ぼれで結婚しちゃう話だったわね。そして優那の王子様は……」
優那は大智を見ると、やっぱり熟睡していた。
「……うん!しょうがないわね。起こすためだもの。本当はイヤだけど、
仕方ないからキッスで起こすか♪」
あーだこーだ屁理屈を言いながら、嫌な顔どころか嬉しそうに無防備の
大智の唇を奪おうとしていた。
(うふふ……ファーストキスは優那がもらったわ!)
しかし、悪いことは出来ないもので、あと数センチの所で、一階から荒々しく
階段を駆け上がる音と叫び声が聞こえて来た!
「優那お姉ちゃん!!一分経ったよ!!何やってるの!!」
「お姉ちゃん!!また大智に変なことしてるんでしょ!!」
一、 一分以内に大智を起こすこと。事情によりそれ以上掛か
る場合は他二人を呼び、協議すること。
「ちっ、もう時間か。少しくらいのオーバーで目くじら立てて……」
友紀と千晴が大智の部屋に乱入した時、優那は大智の布団を揺すっていた
「大智〜。朝だよ〜。起きて〜。あっ起きた?朝だよ」
一生懸命起こそうとしている優那を見て、二人は目を合わせた
((怪しい……))
とはいえ大智も起きたし、パッと見では何も怪しい所は無いので
「優那お姉ちゃん!一分過ぎるようだったら私たちを呼んでよ!!でないと
無用の誤解を受けることになるよ!!」
「そうよ!唯でさえ朝から我侭全開だったんだから、「何かしている」って
思われても仕方ないよ!!」
さすがに二人に責められては分が悪いので、「ごめんなさい」と素直に謝った。
「?何だか素直ね。まあいいわ。大智お兄ちゃんも起きたし朝食にしましょ。」
大智が着替えるので皆が部屋から出ようとした時、友紀は優那の体の変化を
見逃さなかった。
「優那お姉ちゃん……いつからそんなにお腹大きくなったの?」
見ると優那のお腹は何だか不自然に膨らんでいた。千晴も見て
「あれ?本当だ……変ね」
「二人とも何言ってるのよ。元々これぐらいあったわよ。」
二人の疑惑の指摘に優那は必死に言い訳していた。しかし友紀は
「もしかして、大智お兄ちゃんの私物を隠してない?」
友紀の確信を突いた指摘に優那はあわてて
「な、な、何言ってんのよ!優那が大智のTシャツを取るわけないでしょ!」
友紀は深く溜息をついた
優那お姉ちゃん……バレバレだよ。全く…どうしてそうすぐばれる嘘をつくんだか……
さて、腹に隠してる物を無理に引っ張りだそうとすると乱闘になるだろうし、かといって
見逃すのはもってのほかだし……うん、ちょっと引っ掛けるか。
友紀は大智に近づいて
「大智お兄ちゃん、ちょっとこのズボン借りるね。」
「あ、ああ。」
大智からズボンを借りた友紀は
「優那お姉ちゃん、これあげる。」
優那めがけて大智のズボンを投げた。
「あ!大智のズボンだ〜♪」
両手で優那はズボンをつかんだ。するとお腹から何かが落ちた。素早く友紀がそれを取ると
「これ……大智お兄ちゃんのTシャツ?」
「あ!本当だ!お〜ね〜え〜ちゃ〜ん!!!」
「え?……あ!いや、これは……えへへ」
「笑って誤魔化そうとしても駄目よ!もう今日という今日は……」
「千晴お姉ちゃん!落ち着いて。ここは大智お兄ちゃんの部屋だよ」
友紀の言わんとしていることが分かり、千晴は黙ってしまった。
「千晴お姉ちゃんの言いたいことは分かるから。まずは大智お兄ちゃんに着替えて
もらって、朝御飯にしよ。その後優那お姉ちゃんにはちょ〜っとお灸を据えないと」
「じゃあ、優那は大智の着替えのお手伝いを……、ん?友紀どうしたの?さっさと
下に行って……痛い痛い!!髪の毛引っ張んないでよ〜!!あ〜ん大智〜!
助けて………」
友紀に髪の毛を鷲掴みにされて、引きずられていく優那を大智はただ黙って
見ているしかなかった。
着替えも終わり、一階の茶の間に行くと既に朝食の用意は出来ていた。
「あ、大智お兄ちゃん来たね。じゃ、食べましょ。」
大智はいつもの指定席のテーブル中央に座り、その両隣には友紀と千晴が座った。
「あれ?たしか今日は千晴と優那お姉ちゃんが俺の隣じゃなかったっけ」
大智が壁に掛かっているスケジュール表を見ると
「月曜日 優那 大智 千晴」
となっていた。しかし、今大智の隣は友紀と千晴が座り、優那はというと……
「うっ……ううっ……お姉ちゃんなのに……」
髪の毛は乱れ、目を腫らし、唇を尖らせながらぶつぶつ文句を言って
大智の正面に座っていた。
一、通学、食事の際、大智の両隣は三人が協議をしてスケジュールを決め、そ
れに従うこと。但し、大智もしくは他二人の要望があれば変えてもよい。
「大智お兄ちゃ〜ん、えへへ」
「あ!大智!トマトも食べなきゃダメでしょ!口開けなさい、私が食べさせてあげる」
友紀と千晴は大智との朝食を楽しんでいた。ただ優那は……
何よ……ちょっとTシャツ持って帰ろうとしただけで髪の毛鷲掴みされて
引きずられるなんて……髪の毛全部抜けるかと思ったわ……いたた
ぶつぶつ文句を言いながら、パンを齧っていた。しかし、神は優那を見捨てなかった。
「あ、優那お姉ちゃん、そこのリンゴ取って」
大智が優那の近くに在ったリンゴの皿を取って欲しいと言ってきた。優那は笑顔で
「ん?リンゴ?……!お姉ちゃんが食べさせてあげる♪あ〜ん」
優那はリンゴを先割れスプーンで刺して、大智の口へ運んだ。
「おいしい?じゃあもう一個。あ〜〜ん」
大智と優那のやり取りを友紀と千晴は目で会話していた。
(ちょっと!アレいいの?)
(残念だけど、優那お姉ちゃんは何も違反していないわ)
(くっ……)
千晴はギリギリと歯軋りをして
お姉ちゃん、全然反省の様子はないわね!……まあいいわ。これでペナルティー
が終わったと思わないでよ!!……ふふっ朝の通学が楽しみだわ。
えー、前スレでありました質問に答えようと思います。
タイトルの「スクエア」ですが、この意味は複数あります。
一つは大智、優那、友紀、千晴の四人で困難に立ち向かう、って意味と
もう一つは優那、友紀、千春、××の四人が大智にアタック、って意味です。
え?××は誰って?ある属性を……この先はおいおい。
それと指摘のありました「知っている」は「覚えている」じゃないか?
ということですが、「知っている」は知識として知っている
「覚えている」は当事者として体験しているから「覚えている」
ということで使い、実は協定は優那にとって……すいませんこれ以上は。
やっぱり日本語は難しいですね。
ついに両雄(この場合は両雌か)がガチンコですか!!!
しかし楽しい日常描写が終わってしまうのもちょい残念・・・
不器用だけど一生懸命な弥生ちゃんにモエス
対決を楽しみにしております
>もう一つは優那、友紀、千春、××の四人が大智にアタック、って意味です。
!!!!!!!!!!!!!!
両隣、向かいの家の幼馴染の次には一体何者が・・・
ついにロリコンの方は修羅場の幕が開けるのか!
楽しみでしょうがないぜ!!
でも嵐の前のこのほのぼのとした戦いも好きだったりする……
スクエアの方は××の部分にどんなのが入ってくるか期待しています!
>阿修羅さん
さすが阿修羅さん!おれたちにできないことを平然とやってのけるッ!
そこにシビれる!あこがれるゥ!
>>43 ( ・ω・)∩スクエアの主人公になりたいんですがどうすればなれますか?
お腹が大きくなったで妊娠って単語が浮かんだ俺はもうだめかもしれない
ほのぼの好きの俺にはちょっと切ないお知らせだぜ
だが同時にスクデイをやりこんだ俺にはうれしいお知らせだな
阿修羅氏何処に行ったのか嫁に知られたら殺されるやもしれんな。
赤色 第五回
セリに蹴破られた部屋のドアをシンがみていると、
「あらあら。あんなにお怒りになられて。
ほんと、セリ様にも困ったものです」
ぜんぜん困ってなさそうな口調で朔が呟いた。
「ではシンちゃん、ここは一つ、あなたがセリ様の機嫌を直してきて下さい」
「はあ?俺がぁ?」
ギョッとして、シンが朔を見ると、
「ええ。このままセリ様の機嫌が悪いままだと、あの方周りの人やら物やらに
当り散らすんですよ。
…それに」
そこまで言うと、急に朔は顔を曇らせて、
「それに、セリ様、ああやって興奮するとすぐに体調を崩してしまうんですよ
……セリ様、本当に体が弱い方なんです」
ドアを蹴破る人間の体がよわいだなんて信じられないが、それでも昔のセリの事を
考えるに、やはりセリの体調の事は気遣うべきだと思い、シンはセリの部屋まで行くことにした。
「うわ。こりゃ酷い」
セリの部屋につながる廊下のオブジェがほとんど全て壊されていた。
どれもこれも高価そうなものばかりだ。
おそらく、セリが叩き壊しながら歩いていったのだろう。
それらをメイドさんたちがせっせと片付けている。
「お世話様です」
メイドさん達に謝りながら、シンはセリの部屋に向かっていった。
「…やって来たとは言え、どうしたもんだか」
セリの部屋までたどり着いたが、正直言えば、セリに会うのが怖くなっていた。
ここに来るまでに見てきたセリの暴れっぷりに、シンはちょっとビビッていた。
引き返そうかなと思い、来た道を振り返ると、破壊されたオブジェを片付けているメイドたちの、
「何とかしてください!」
と言う視線にぶつかり、恐々セリの部屋のドアをノックした。
「あのーセリ?ちょっと、いいかな?」
恐る恐る声をかけたが、返事は無い。
「セリー?」
再度声をかけたら、
ガシャン!
と、ドアの内側で音がした。恐らく、セリがドアに花瓶を投げつけたのだろう。
「うへえ…」
セリのあまりの癇癪っぷりに溜息をつく。
そう言えば、屋敷を出る前はこうやって、セリの癇癪に悩まされてたっけなあ。
そうだ、セリは体が弱くって外で遊べなかったから、俺が朔姉と遊んでるのを
見ると、すごい機嫌が悪くなったんだよな。
で、それを持て余したセリのお付きのメイドさんが、俺に泣きついてくるんだよな。
それを聞いた俺が、セリの部屋までいって、セリの文句を聞いてやるんだよな。
一通りセリが言いたいことを言うまで喋らせて、たくさん喋ったセリが疲れて眠るまで、
手を繋いでやってたなあ。
そんな昔の事を思い出していると、シンは自然と笑い出していた。
なんだか、今の状況と全然変わっていない気がしたのだ。
そう思うと、セリの癇癪もかわいく思えてきた。
シンはもう一度、セリを呼んでみた。
「あら?何が可笑しいんですか、シンちゃん?」
気が付くと、朔が近くに立っていた。
シンの部屋のドアを直す手配を整えていた彼女が来たのだから、結構な時間、
シンはセリの部屋の前にいたのだろう。
「まだ、セリ様出てきてくれないんですか?」
「うん、結構本格的にすねちゃったみたいだ。
ほんと、小さい頃から機嫌曲げやすいよな。
大変だったでしょう?あいつの面倒見るの」
シンが頭をかきながらそう言うと、
「いいえ。そんな事ありませんよ。セリ様、本当はとても優しい方ですし、
いつもはもっと、この屋敷の当主として、立派な振る舞いをなされてますよ」
「ええ、ちょっと、信じられないなあ。あいつ、小さい頃と変わって無いじゃん」
シンがそう言うと、朔はフフッとわらい、
「そうですね。あの方の唯一の欠点が、シンちゃんのことですからね。
他の事なら、本当に理性的な方なんですが、シンちゃんの事になると、すぐに
頭に血が上っちゃいますからね。
その当人であるシンちゃんからすれば、いつも興奮状態のセリ様しか見る事が
無いのかもしれませんね。
…ふふ、愛されてるじゃあありませんか」
なんとなく、シンは照れてしまった。
「まあ、お話はこれぐらいにして、そろそろセリ様に出てきてもらいましょうか」
「でも、どうやって?」
「ふふ、名づけて、北風と太陽。もしくは押して駄目なら引いてみろ」
そう言うと、朔は自分のブラウスのボタンを上から三つ目まではずした。
ギョッとして慌てて眼をそらしたシンの手をつかみ、
「失礼します」
とだけいい、シンの手をブラウスの中に導いた。
「な、な、何?」
パニックになるシンにニッコリと微笑み、
「どうですか?柔らかいでしょう?もっと、弄ってもよろしいんですよ?
何せ、私はあなた専用のメイドなんですから」
いや、もう、いいから、ちょっと、はずしてッ、
あ、でも、ふにっとしてて、
ちょとだけ、ちょっとだけ、
混乱しながら、ちょっとだけ、シンは手のひらに力をこめた。
むにゅっと、朔の乳房がかたちをかえた。
ああ、至福。
生まれてはじめての感動に浸っていると、殺気を感じた。
「お に い さ ま ?」
すごい表情のセリが、ドアから半分、顔を覗かせていた。
幸福な混乱がサアーっと引いていき、後に残るのは恐怖。
シンが口をパクパクさせていると、
「あん、シンちゃん、そこ、くすぐったい」
朔が小指を口にくわえながらもだえた。
「お
に
い
さ
ま?」
ギギーっとやたら軋む音を立てながら、ドアが開いていく。
「お は な
し が
あ り ま す 」
ドアが完全に開け、仁王立ちのセリが姿を現す。
長い黒髪は逆立ち、その表情は般若の面を被っている様だった。
そしてシンの肩をつかみ、ズルズルと部屋に引き込むと、ドアがまた軋む音を
立てながら閉まっていった。
後に残された朔は
「作戦終了。後は、しんちゃん、お願いしますね」
手を合わせ、シンの無事を祈ると、彼女は片づけをしている仲間のメイドたちの方に
手伝いに行った。
朔の年の事ですが、シンが屋敷を出る頃は彼女は中学生で、
メイド見習いをしていた事にしときます。
それで今は正式に屋敷のメイドになっている、という感じでお願いします。
だから今、二十前半といった所でしょうか。
セリと部屋で1対1・・・
こいつはハードだぜ(*´д`*)
個人的には朔さんよりセリのほうが堪らん
54 :
夢源:2006/08/12(土) 17:00:25 ID:a/koGHsU
何かセリさん見てたら、秋葉さんを思い出した……。
此処の作品は何時見てもクオリティー高いですね。
やばい、白分が不足してきた
俺が不足しているのは白分、モカさん分、小恋分、タヌキナベ分、山本君分(ry
僕の理想のキモチワルイお姉ちゃんは、山本くんのお姉ちゃんです!
どうもお久しぶりです。
今日からまた連載を再開させますのでよろしくお願いします
とりあえず、投下致します
その不足してるものを補う為に自分で作品を書くんだ!
・・・と考えていた時期もあったけど俺には無理でした_| ̄|○
>>57 姉さんはキモチワルクなんかない!謝れ!姉さんに謝れ!
第5話『餌付けニャンニャン』
明け方の悪夢が夢だったのかのように、桧山家に静かな朝が訪れる。
朝の5時に起床して、お弁当作りのために俺は台所で材料を刻んでいた。
両親が家にいないことが多かったので、家事は慣れている。
それなりに料理の上達できたのも、瑠依がしょちゅう晩飯を食べに来てくれた頃だろうか。
誰かに料理を食べさせることを前提にして料理を作ると瑠依の好みの味や味付けに神経を使う。塩加減にも、気を遣わないといけないし、調味料の使いすぎもよくない。
ただ、淡々と集中して作業をテキパキと地味に毎日繰り返したからこそ、今がある。
でも、雪桜さんのためにお弁当を作るという意味では俺の手は僅かに震えていた。
それは当然である。虎に喰わせる飯は残飯でも良いのだが、栄養不足で常にお腹を空かせている雪桜さんに家の残りをそのまま詰め合せてしまうわけにはいかない。
なんとか、雪桜さんに好きそうなおかずをぶちこんで、今日は様子を見ないとな。
いい匂いが台所中に充満すると、すでに朝の7時頃になっていた。
俺は出来上がったおかずをお弁当に盛っていると玄関のドアがカランと鐘の音が鳴った。
騒動しい足音を立てて、問答無用にこの家にやってこれるのは一人しかいない。
隣に住んでいる餓えた虎が桧山家の食卓から食料を奪いにやってきたのである。
「おはよう。剛君」
「ああ。おはよう」
瑠依の蔓延なる笑顔の挨拶も気にすることもなく、俺は目の前の作業に没頭する。
瑠依は我が家同然にソファーに座って、テレビのスイッチを点けた。たまに瑠依が早朝からやってくるのも珍しくない。
母親が朝食を作ってくれない時や気が向いた時とかにやってくる。
「剛君、お腹が空いたよ。早く、ごはんごはん」
「今、お弁当を盛り付けてるから、自分でその辺に残ったおかずでも食べてろ」
「へぇ、剛君がお弁当を作っているんだ。珍しいな」
「そりゃ、雪桜さんの分も作っているから、ついでに自分の分を作っているんだよ」
「えっ!?」
瑠依が信じられないという表情を浮かべて、俺がいるキッチンにまでやってきた。
「雪桜さんのお弁当を作ってるの?」
「ああ。そうだよ」
「どうして、剛君が雪桜さんのお弁当を作らないといけないの? もしかして、無理矢理頼まれたんでしょう? だったら、私が強く断ってくるよ」
「バカ。そういうんじゃないよ。俺が好き勝手に作っているんだ。雪桜さんは普段からロクな物を食べてなさそうだし」
「だからって、おかしいよ剛君」
こいつ、一体何に怒っているのかさっぱりとわからない。
雪桜さんにお弁当を作ることに瑠依は憤慨している。
これはさすがにお隣さんだからって、俺の交友関係にまで口を出してくるのはちょっと困る。
「別にいいだろ。瑠依には関係ないんだし」
「関係がない……?」
俺が突き放すような口調で告げると、瑠依は茫然とその場に硬直して立ち尽くしている。
無視して、弁当の盛り付けの作業を続けていると罵声が飛んだ。
「関係あるもんっっ!!」
顔が紅潮して、そのつぶらな瞳を細くして睨むように瑠依は俺を見つめていた。
「私以外の女の子に優しくしないでよっっ!! ねえ、剛君。お願いだから、私だけを見てよ」
テーブルに乗っているお弁当を乱暴に振り払って、お弁当は鈍い放物線を描いてゆっくりと墜ちてゆく。
豹変した瑠依の態度に驚愕してしまっている。
「うるさいうるさいうるさい。剛君のバカぁぁぁっっ!!」
そう言って瑠依は立ち去ってゆく。残されたのは全く状況がわかっていない俺と床に落ちているお弁当だけであった。
「作り直している時間もないから、雪桜さんの分だけでいいか。俺は購買でパンとか買えばいいんだから」
何事もなく俺はキッチンの後片付けに没頭する。
瑠依の急な豹変は全く気にもしていない。俺が女の子にお弁当を作って、あいつが嫉妬するのは少しおかしい。
そろそろ、あいつには俺離れが必要な時期かもしれんな。
予想外だった。
あんな風に自分を取り乱すことなんて予想すらしなかった。
朝から夜までべったりと剛君の傍に離れないようにしようと思っていたのに。
それが朝の出来事で思わず私の溜まっている想いを剛君にぶつけてしまった。
もっと、私を見て欲しい。私だけに優しくして欲しい。それだけで良かったのに。
剛君が雪桜志穂という女のお弁当を笑顔で作っている姿を見かけてしまったら、胸の内に溢れる醜い心が増幅した。
これは、嫉妬ではなくて。殺意に等しい。
私以外の女の子にお弁当を作るなんて、絶対に嫌。
どうして、あの女にだけ優しくするのかな剛君。
私がこれだけあなたのことを想っているんですよ。剛君にだけ私を独占して欲しいのに。
所属している風紀委員の権力でメス猫の所在を徹底的に調べた。
職員室にある個人的な情報から、在席している生徒たちの評価や評判。
恐らく、手に入る限りの情報を集めた。
それでわかったのはね。
雪桜志穂というメス猫はクラスから嫌われ者であり、苛められている女の子。
私も同学年の女子生徒が苛められている話を耳にしたことはあるが、まさかメス猫だったとは。
苛めグループも先生たちにバレないように焼きを入れていることだし、剛君に近付かなければ、剛君から遠く引き離す程度で我慢しようと思っていたのに。
今朝の一件で考え方を大きく変えた。
メス猫が剛君に同情を引いて、誘惑する前にメス猫をとことん不幸な目に遭わせてやる。
幸いなことにメス猫が苛めているリーダー格の少女とは私の友人だし、頼めば追い詰めてくれるだろう。
ううん。
苛めグループだけじゃあ物足りないよ。私の剛君を奪おうとする人間には学校に来られないようにぶちのめしてやる。
クラス中から総苛めとかどうかな。てへっ。
ふふふっっ。
もう少しだよ。
剛君に言い寄ってくる女は学校の風紀を護る私が追い払いますから。
彼女はメス猫というよりは、ドラ猫に命名を変えた方がいいかもね。
さてと学校に行って、友人たちに頼みまくりますか。
屋上で俺と雪桜さんは仲良くランチタイムをとっていた。
全くひと気のないこの場所は俺達以外に人がいないので貸切状態である。
今朝の騒動で俺の分のお弁当は瑠依にメチャクチャにされたので、購買で適当に買ってきた。
「うわっ……。お弁当です。お弁当ですよ。桧山さんっっ!!」
嬉しそうにはしゃいでる雪桜さんの笑顔を浮かべるだけで俺の朝の苦労とか、昼の激しい弱肉強食の争いを勝ち抜いて来たかいがある。
俺も雪桜さんが横に並んで、買ってきたお昼を頂こうか。
あの猛者達のおかげでまたまたコッペパンなんていうのを買ってきましたが、俺は負け犬野郎だから仕方ない。
不味いコッペパンを食べようと口を開けようとするが、隣の雪桜さんの凝視しているので食べ辛い。
「桧山さんはお弁当じゃないんですか?」
「今朝は一人分で精一杯だったんだ」
見え見えの嘘をついてみるが、雪桜さんは太陽の笑顔から北極の女王のように沈んでゆく。
「あ、あ、あの桧山さんが作ったお弁当だけど、できれば半分ぐらい食べませんか?」
「いや、いいよ。雪桜さんのために作ったんだから」
「はーい。あ〜ん」
「聞いちゃいねぇよオイ」
雪桜さんが差し出された玉子焼き(自分で作った)を俺はしぶしぶ承知して、食べた。
自分で作った味は充分に舌が覚えているはずなのだが、雪桜さんの箸で食べさされると愛情と間接キスをしている異常な胸のわだかまりのおかげで口の中に幸せが徐々に広がってゆく。
こんな経験は本当に初めてだった。女の子に食べさせてもらうってことは俺の生きていた生涯にとってかけがえないのモノになるだろう。
「あ、あ、あ、あの。私にも食べさせてください」
なんですとっっ!?
白い肌を真っ赤に染めて、雪桜さんは恥かしそうにもじもじしながら目を瞑った。
俺に口を差し出しているってことはまるでキスをしてくれと言わんばかりの甘い雰囲気になってしまっている。
俺は震えた手付きでミートボールを掴むと恥かしい台詞を口にした。
「は、は〜い。あ〜ん」
雪桜さんの小さな口に食べさすと、彼女はよく噛んで飲み込んだ。自分の手にほっぺたに当てると至福の表情を浮かべた。
「うにゃーーーー!! 桧山さんが作ってくれたミートボールおいしいにゃーー!!」
そのミートボールは俺が作ったわけではなくて、冷凍から解凍して電子レンジで温めた物なんだけど。
そういう突っ込みを入れる気にはなれなかった。
雪桜さんの笑顔をずっと眺めていたかった。
彼女の笑顔を見れば、俺の気持ちも穏やかになってゆくから。
「じゃあ、今度は桧山さんが私に食べさせてください。交互に食べてゆけば、お弁当も半分個になりますよ」
今度から、二人分のお弁当を作ろうとお昼に輝いているお星様に誓おう。
昼休みはまだまだ長い。果たして、俺は正気を保っていられるだろうか?
今まで忙しかったので、ようやく作品を再開することができました
これからも頑張って投稿します。
でも、このスレは私がいない間にたくさんの神々の皆様が投稿してくださっているので
どんどん面白い作品を読めるのは嬉しいことですね。
トライデント先生が帰ってきた!
瑠依の嫉妬も好きだが個人的には雪桜の依存も大好きだ(*´д`*)
続き、期待してます
>>65 まってたよー俺はあんたのことまってたよー。・゚・(ノД`)・゚・。
GJ!!
「ずるい、ずるいよ」
「どうして?」
「どうしてそんな事をするの」
「意味がわからない。姉さんの言葉には具体性が無い」
「あの人に……あの人に……」
「私はあの人に好意を告げた。姉さんが言いたいのはその事?」
「どうして、どうして」
「姉さんもあの人に好意を告げた、それのどこが悪いの?」
「違う、違うの」
「私と姉さんの何が違うの?どこが違うの?」
「私は悪くない、悪いのはあなた」
「それは何故?」
「だってあの人は私の恋人なのよ」
「私はあの人に好意を伝えただけ、私は悪くない」
「あの人は私の物」
「あの人は物じゃない。自分で考えて、自分で行動する」
「あの人は私が好き」
「それはあの人の自由、あの人が自分で考えて決める事」
「違うよ、私の事好きだって言ってくれた」
「姉さんの事を好きになるのもあの人の自由、私の事を好きになるのもあの人の自由」
「違う、あの人は私を好きでいる」
「あの人はきっと私が好きになる、私には確信がある」
「違う、あの人は私を好きでなくちゃいけない」
「そう。姉さんがそう考えているからこそ、私には自信と確信がある」
「違う、私の方があの人の事が好き」
「違う、私の方があの人の事が好き」
「違う、私の方があの人の事が好き」
「やめて、これ以上は不毛」
「私の方があの人の事が好き、あなたよりも」
「それは何故?」
「私はあの人が好きだから」
「それは何故?」
「好きになるのに理由なんていらないよ」
「そう、好きになるのに理由はいらない。それはあの人にとっても同じ事」
「だからあの人も私が好き」
「否定はしない、だけどあの人が私を好きになるのにも理由はいらない」
「そんなのない、絶対にない」
「ありえない事ではない、理由が無いのだから。そして嫌いになるのには理由が必要」
「どうゆう事?」
「姉さんは頭が悪い、鈍くさい、いつも誰かに迷惑を掛けている」
「そんな事ない」
「そして何より思い込みが激しい。不変の心なんてありえない」
「あの人は私の事が好き、それだけは変わらない」
「それは姉さんの思い込み。いずれあの人は私の事を好きになる」
「そんな事はない」
「それは何故?」
「あの人は私の事が好き」
「説明になっていない」
「あの人は私の事が好き」
「やめて、これ以上は不毛」
「どうしてあの人なの?」
「わからない、理由が見つからない。だけど理由を見つける必要性を感じない」
「どうして私の恋人なの?」
「わからない、理由が見つからない。だけど理由を見つける必要性を感じない」
「どうして私の事が好きなあの人なの?」
「やめて、これ以上は不毛」
「私はあの人の事が好き、だからあの人も私の事が好き」
「姉さんはあの人の事が好き、だけどあの人も姉さんの事が好きだとは限らない」
「違う、あの人は私の事が好き」
「理由になってない、説明になってない、姉さんには進歩が無い」
「好きだって言ってくれた」
「いずれ私に言う事になる」
「違う、あの人はあなたなんて好きにならない」
「それは何故?」
「私の方があの人の事が好きだから」
「説明になってない。そして私の方があの人の事が好き」
「違う、私の方があの人の事が好き」
「もういい、これ以上の会話は不毛」
「あなたにはあの人は渡さない」
「あの人は物じゃない」
「渡さない、あなたなんかには絶対に」
「渡してもらう必要は無い。奪い取るから」
いつも私から奪い去って行く。
頭が良くて、美しくて、いつも冷静な妹が産まれてからだ。
お父さんもお母さんも、私の事を忘れてしまった。
学校でも私はあいつの姉としか認識されなかった。
あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉……
私には私の名前がある、だけどそれを認識してくれる人は居なかった。
あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉、あいつの姉……
いつもそうだ、私は確かにあいつの姉、だけど私には私だけの名前がある。
それを呼んでくれる人は誰も居ない。
……あの人が現れるまでは。
あの人は私を私の名前で呼んでくれた。
それだけ、たったそれだけ、だけどそれが嬉しかった。
だけど……あなたはそれさえも奪う気なの?
あなたなんて……あなたなんて……
……あなたなんて……産まれてこなければ良かったのに……
いつも姉さんは泣いてばかりだった。
泣いてばかりで何もしない、嘆いてばかりで何もしない。
いつも私は姉さんの尻拭いばかりをしていた。
妹だから、妹だから、妹だから、妹だから、妹だから、妹だから、妹だから、妹だから……
無駄な労力、不毛な労力、どうして私ばかりが。
それでもある日、転機が訪れた。
姉さんの世話をしたがる奇特な男性が現れて、姉さんは溶けたアイスクリームの様にふやけた顔でそれを報告してきた。
それ自体は良い事だと思った。
今まで姉さんのために費やしてきた無駄で不毛な労力が無くなるのだ、こんなにも素晴らしい事は無いと思った。
その認識が変わったのはついこの間、あの人が私の事を『妹』と呼称したから。
妹だから、妹だから、妹だから、妹だから、妹だから、妹だから、妹だから、妹だから……
何度訂正を要求しただろうか?
何度不毛な議論を繰り返しただろうか?
覚えていないのは夢中になっていたから。
無駄な事は嫌い、不毛な事は嫌い、そんな私が何度同じ行動を繰り返しただろうか?
覚えていないのは、知らず知らずの内に夢中になっていたから。
私が何かに夢中になった記憶は無かった、こんなにも楽しかった記憶も無かった。
そして私はもっと長くこの時間が続くことを望んだ。
何の魅力も無く、何のとりえも無い姉さんよりも、私があの人にふさわしい。
いつも自分から行動を起こさず、いつも嘆いてばかり、自分からあの人の想いを掴もうともしない。
あなたなんて……あなたなんて……
……あなたなんて……産まれてこなければ良かったのに……
短編に初挑戦。
大した内容ではありませんが、感想をいただると幸いです。
それはそうと、前スレにて
修羅場とは関係のない成分が多すぎるんじゃないかな
過保護も、メインキャラの3人だけで十分に成り立ちそうな話なのに、
修羅場とは無関係そうな(しかもメインキャラ3人よりもキャラ濃い)不屈とか会長とかが
でしゃばってるしな
そういうのって不撓家とかに興味がある人には嬉しいんだろうけど、
修羅場にしか興味ない人にとっては萎えるんだよ
だとか
とりあえず過保護はあの気持ちの悪い素敵に無敵な兄貴をなんとかしる。
あれが出てきてから過保護が急激につまんなくなって読むのやめた。
と指摘されましたが。
その『過保護』の続きが、このままでは『不撓家の食卓』を読んでいない人達を置き去りにする内容になりそうです。
ここ数日なんとか不撓家メンバーズを絡ませない展開を考えていたのですが……無理でした。
ウルトラマンコスモスの一度目の最終回の様に色々と省略しながら書く方法もあるのですが、それだと黒崎栞が勝手に立ち直ってしまいます。
そんな訳ですので、『過保護』はなんとか他の展開が考え付くまで凍結したいと思います。
いつごろ再開するかは私にもわかりませんが、できるだけ早く再開したいと思います。
ちょwwww漏れは今の過保護、結構好きなんですけど。
>展開に口出しするな
>嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
話しの内容や展開の好き嫌いはそれぞれなんで、
好きに書いてくれればいいと漏れは思うわけです。
それは、ともかく短編&前スレの過保護GJ!です。
爽やかテイストな嫉妬もすばらしいなあ。癒される。
爽やか!?
個人的には今回の短編大好きだ
姉も妹も良い味出しててGJ!
>68−70GJ!!
最近姉妹もの書く人って増えたね
姉妹モノの走りって「振り向けば」か?
でもアレは姉にばっか人気が偏りすぎてたな
爽やかってのは前スレのやつで……
爽やかテイストな嫉妬……だよな……
漏れの感覚がおかしいってことないよな?
超GJ!ドロドロ感がうまく表現されていて、良い感じですな
それと俺は過保護も良いと思っているよ
>>65 トライデント神がついに帰ってきた!
瑠依コワス(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
>>74 姉ブームや妹ブームの果てについにこの二つをセットにすればいいと考えとなったかもなw
姉妹を話を軸にしたら、姉の嫉妬や妹の嫉妬の両方が味わえるからな・・
特に俺はもしも明日が晴れならばとダ・カーポ2のおかげで
姉妹ネタが大好きになった・・。
姉妹という設定だけで簡単に修羅場や嫉妬など作りやすいのです。
姉より優れた妹など存在しねぇ!
>>78 どんな手を使おうが勝てばいい! それがすべてだ!!
わたしが結ばれれば○○ちゃんはますます幸せになる!!
うっ!! あいひひ ぶけけ・・・ こ・・・このやろう ころしてやるう!!
きさまさえ死ねば・・・・・・・・・ あ あら!?
グェッ!! うっ! うう!! うえ! えお!! うぎゃあ〜〜〜っ!! ひええ!!
(散り際)
おわりだとバカめぇ〜 これがきさまの地獄行きの旅の始まりだあ〜〜〜〜!!
きさまにはまだふたりの姉がいることを忘れたか!! きさまの地獄が目にみえるわ!!
はは・・・ はばは ばわ!!
>>78 ウチの姉貴はNEETで腐女子で根暗で高校時代のあだ名がブタメガネだったが
妹はなんかの委員会とかバスケ部とかで普通に人間やってるぞ
やっぱヒロインズの武器は刃物より鈍器だよな!?
刺しドコロが悪かったらシャレにならんし。
フライパンで殴られたい
なんかいもなんかいも殴られたい(*´Д`)/ヽァ/ヽァ
ナカマー(*´▽`*)
「晋也……どこにいるの?」
周りを見回しても、闇しか見えない。自分の発した声も聞こえたかも定かではない。
「晋也ぁ……でてきてー……くらいよー……」
自分でも驚いた。こんな弱気な言葉に。そういえば、学校にいる時以外はずっと晋也と一緒にいる。買い物もお風呂もベットも。常に視界には晋也がいる。
………学校も一緒がいいと転校手続きも進めたが、それは流石に晋也に止められてしまった。でもそれだけ心配だということだ。
だって、春華は一度やることをやったせいか、治まることなく虎視眈々と晋也を狙っている。それだけじゃない。
私と晋也が付き合っている……どころか同棲しているのが友達にばれたせいで、私の学校で晋也のファンクラブまでできてしまったのだ。
確かに晋也の顔は良い……顔は………性格は別として。って、私はその性格を好きになったんだっけ………
当然そのファンクラブは発覚した当日に潰しておいた。私がいるというのに、本当にいい度胸をしてる。
「晋也ーー!でてきてよ!いるんでしょ!?私はここだよー!!」
また暗闇の中で叫ぶ。と、
カッ
一瞬で周りが明るくなった。あまりの眩しさに、目を開けられない。この明るさは…太陽だ。
「えっ?ええ?」
そこは思い出深い場所だった。晋也のかよう学校の正門。私と晋也が出会って、告白した場所だ。
「あ、れ?」
なんでだろう。体が動かない。ペタンと座ったまま立ち上がれないまるで体が動かし方を忘れてしまったように。
すると……
学校の校門から、一人の男子が出て来た。それは……
「し、晋也!」
私が待ちに待っていた、愛しき人だった。が……
「ふふふふん♪ふふふふん♪ふふふっふふふーん♪」
晋也は鼻歌を歌っているきりで、全く私に気付かない。気付くどころか、視界にも入っていないみたいだ。
「ちょっ、晋也!?助けてよっ!私…動けないよぉ……」
なんども懇願しても、晋也はまるで何事も無いかのように歩いている。そしてそのまま、校門の壁に寄り掛かる。誰かを待っているのだろうか?何度も時計を見ている。
そしてしばらくすると………
「お待たせ、晋也。」
晋也の名前を呼ぶ……私以外の女がやってきた……
「いんや、俺も今きたとこ。……それじゃ、行くべ。お嬢。」
晋也がその女の名前(?)を呼び、手をとる……その二人は、まるでお姫様と王子様みたいに似合ってて……似合ってて?私以外の女と晋也が?
そんな…いやよ…そんなのって……
「そういえば……」
お嬢と呼ばれた女が今度は馴々しく腕を組みながら聞く。こんな状況で考えたくも無いが、確かに彼女は綺麗だ。いや、綺麗すぐるわね……
『お嬢』という呼ばれ方がそっきりそのまま合う、そんな女……
「前のあの娘と、もう別れたの?」
「ああ……志穂か?」
『えっ?』
その言葉に驚きを隠せなかった。不穏な単語……前の娘……別れた……志穂………つまり、晋也はもう私を捨てて、次の女と……
「んー。もう合鍵も返してもらったし、携帯も変えたしな……向こうからは、なんの音沙汰なしだから、大丈夫だヨ。」
晋也が……私を…捨てた……
「なんであの娘と別れたの?」
「いや、さ。……あいつ、我が儘過ぎるんだよなぁ……俺の秘蔵コレクション捨てちゃうし。」
それは……晋也に私だけをみて欲しいから!
「いっつも怒り口調で、すぐ殴るしさ。」
それは晋也にかまってほしいから。私の事を常に考えててもらいたいから。
「結局はさ、恋人関係っつーより……子守してるみたいだったんだよ。」
その言葉を聞いた途端、心がバラバラに引き裂かれるような気がした。子守……晋也にとって、私は我が儘な子供にしか見えない……そんな…
「だめっ!晋也ぁ!いっちゃだめぇっ!!戻ってきて!」
二人が腕を組んだまま歩いて行く。相変わらず私の体は動かない。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい!ごめんなさい!!もう我が儘言わないから、なんでも晋也の言う事聞くから!!殴ったりもしない、どんなHなこともしてあげるよ………
だから捨てちゃいや!!行かないでぇ…私のこと……みすてないでよぉ…」
ダメ、ダメ、だめっ、駄目!!駄目ぇっ!!!
なんでもする、なんでもあげる……でも、晋也だけはもってっちゃいや!!その人が……私の人生そのものなの……だからっ…
「お嬢…」
「晋也…」
私の声もとどかず、二人はついに……聞きたくない言葉を…
「「愛してるよ。」」
「晋也ぁっ!イヤァァァッ……」
ガバッ!
「はぁはぁ……晋也……あ、あれ……」
ふと気付くと、また真っ暗な世界だった。でもここは……知ってる場所。晋也の部屋のベットの上……隣りには……そうだ、ナミちゃん。
晋也は……いた。床で雑魚寝してる…そうだ、私とナミちゃんにベット譲ったから……ていうことはさっきのは……
「夢かぁ……」
はぁーーっと大きな溜め息をつく。今度こそ全身の力が抜けてしまい、動けなくなる。ペタンとベットに蹲ってしまう。
「つべたい……」
気付けばタオルケットが濡れてビショビショだった。原因は……
「私……ないてる…」
顔にはまだ乾き切って無い涙が流れていた。あの夢のせいだ。今でもまだはっきりと覚えている。私が…ただの我が儘……
床で寝ている晋也に近付く。
「んー……でひゃひゃ……」
涎を垂らしながら、いやらしい笑い声を出している。夢でも見ているのだろうか……その夢にいるのは私?……それとも……
「いや……そんなの…絶対に……」
ゆっくりと晋也に寄り添うように隣りで横になる。
「晋也……晋也……」
何度も名前を呼び、その存在を確かめる。
「ん……」
晋也の手を取る。普段は気にしていないが、こうやってよくみてみると男らしくない、スラッとした綺麗な指だ。まるで女みたいに……
それでも大きくて、暖かくって。私を安心させてくれる。
「晋也……すきぃ……」
何回か手を頬ずったあと、その晋也の手を………私の秘部へと持っていく……
「んんっ…あん…」
やっぱり自分のとは全然違う。晋也の、というだけで溢れる蜜は止まらない。指を使って気持ち良くなるようにかき回す。
「んぅ……あぁ……ふぁ…くぅん……」
ヌチャヌチャヌチャ……
いやらしい、粘っこい音が部屋に響く。夜だからか、やたらと大きく聞こえる。そうだ……ナミちゃんがいたんだ……それでも興奮してるなんて、私変態かも……
「ああん……あっ…くぅ…ふぅ……」
快感を貪るうちに、不安になる。……晋也は変態な私なんか嫌いだろうか……その事が脳裏をよぎり、動きを止めてしまう。
(晋也に嫌われたくない……晋也の望むままの私でいたい……)
そう悩んでいると……
「おやおや?もういいのかなぁ?」
突然の声に、心臓が止まるかと思った
正直お嬢の動かし方に悩む……
何度も出すとしつこそうだし、でも以外と人気あったり…
そんな俺優柔不断orz
リアルタイム閲覧ーっ!
GJです。
個人的には今回の志穂が苦悶するための装置としてのお嬢の使い方は超GJです。
相変わらず目が離せねえ…
>>65 瑠依……クラス総出で苛めって……明らかに墓穴掘ってますよ……
>>71 互いに反発する姉と妹、いい感じです(´Д`)
>>91 志穂が好きです。でも、お嬢のほうがもっと好きです。
志穂が好きです お嬢も好きです 里緒さんも好きです
>>91 優柔不断は嫉妬を巻き起こす重要なファクター
お主、素質がある!こんなにいい文章を書く素質まで持っていて
さらにもう一つ持っているなんて、その才能に嫉妬(`・ω・´)
そしてエロイ晋也クルー
>>71 申し訳ないことに『過保護』には
不撓家にはあまり関わって欲しくないなと思っているものの一人なのですが
なんというかもう、この姉妹には凄まじい勢いで萌えた
>>91 お嬢コワス だがそこが(ry
97 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 04:42:59 ID:5vyiiCRA
>>65 待ってましたー
>>78>>81 スレ違いだが言わせてくれ
このスレに俺以外に北斗好きが居たとは感激だ
前に「裏切りではない!これは知略だ!」って
このスレに誤爆したのは俺だったりする
考えてみれば北斗の性別を逆転させれば
壮大な修羅場漫画に・・・
う・・うわっageちまった!
sage忘れた・・・ごめんよー。。
8月も半ば
スウィッチブレイドナイフ分が枯渇して命を蝕み始めたこの頃
一月義姉の更新がなく、モカさん分が命を蝕み始めたこの頃
そういやPINK閉鎖するらしいけど
そうなったらこのスレもどっかに移るの?
投下します。
昼休み。お弁当を食べた私は早速席を立つ。当然、朝の後輩くんを探すためだ。
二年の教室がある二階を、昼の散歩を装ってゆっくりと練り歩く。昼休みのため窓も扉も開け放たれており、中の様子は丸見えだ。
(あの子はどこかな・・・?)
よく考えれば、同じ制服、似たような背格好の男子が狭い空間にたむろしている教室という空間で、それほど際立った特徴の無い一人を探すのはとても大変な作業だ。
でも私には、居れば見落とすはずが無いという確信があった。父と祖父を除けば、彼は私の目に個別の色を持って映る唯一の男性だから。
(でも、お昼休みは学食とか他のところでお昼を食べてる可能性もあるよね・・・)
二年六組まで探して見つからず、その可能性に思い当たる。確実に探すなら放課後の方がいいだろう。
でも、午前の授業中ずっと今の時間を楽しみにしてきた私にとって、更に待つのは地獄の苦痛に思えてならない。たった3時間足らずのことなのに。
だから、消沈気味に二年生の最後の教室である七組を見やった私は、思わず声を上げそうになるのを必死に堪えた。
(居た―――!!)
机に肘を突き、気だるげに外を眺めている少年。朝とは比べ物にならない気の抜けた顔。
だが、そんな表情さえも、今の自分には胸に響く。それに逆に考えれば、朝の自分を心配する様子がどれだけ真剣だったかが分かるというもの。
でも、それだけで満足していられない。私はもう一度彼と向かい合いたいのだから。
(でも・・・どうやって?)
声を掛ける理由が見つからない。朝の衝突でもし私が加害者だったら、改めて謝ることを口実に呼び出す事も出来るだろう。
でも、被害者側である私から会いに行くのは理由が無い。そんなことをしたら、彼の心に無用な圧迫を掛けてしまう。
マイナスな印象をもたれることは、極力避けたかった。
今回は、クラスと席が分かっただけでよしとしよう。それさえ分かれば、突破口は開けるはず。
(二年七組、窓から二列目で後ろから二番目の席・・・二年七組、窓から二列目で後ろから二番目の席・・・)
忘れないよう、呪文を唱えるように呟きながら、私は教室へ戻った。
放課後はHRが終わるや否や教室を飛び出し、二年生の靴入れを視界に収めるようにして昇降口に張る。
目的の人物が来たらすぐに動けるように。
『帰ろうとしたところで偶然に鉢合わせちゃおう作戦』だ。
しかし、待てども待てども彼は来ない。既に一時間以上経ち、時間は4時半を回っている。
(もしかしたら、部活なのかな・・・)
十分にありえる。というより、考えてしかるべき可能性だ。
玄関で待つよりまた教室に行ったほうが的確だったのに、そんなことも見落とすなんて、私は本当に彼のことで頭がいっぱいになっているらしい。
そう思い当たると、待っているのが酷く苦痛に思えてくる。そうだ、自分から探しに行こう。
見つからなければ、下校時刻の6時くらいにまた戻ってくればいい。
早速彼を探してみる。・・・といっても見つからない。体育館を覗いてみていなかったので文化系の部活なのだろうが、
彼らは基本的に部室に籠っている。まさか一つ一つの部室を開けて確認するわけにもいかない。
(そんなの分かりきってたことなのに・・・私、行き当たりばったりね。本当にどうしちゃったのかしら・・・)
肩を落として歩く私は、何とはなしに図書室に入る。久しぶりに本の一冊でも借りていこうかと思って。
・・・神様はどうしてこんな演出が好きなのかしら? その時の私は思った。
昼休みでもそうだけど、諦めかけた正にその時になって答えをくれる。
図書室の窓際の一角。人のまばらな図書室の、更に人が居ないその場所で、皓一くんがノートとテキストを広げて黙々とペンを動かしていたのだから。
絶好のチャンス。周りに人は誰も居ない。図書室は基本的に私語厳禁だけど、小さな声で話すくらいなら咎められないし。
大きく深呼吸すると、私は何気ない風を装って話しかけてみることにする。
「あら・・・あなたは・・・」
「え・・・?」
皓一くんが顔を上げる。2,3秒私の顔を見て――
「あ・・・!」
声を上げかけ、すぐに口を押さえる。周りに聞き咎められていないかと思ったのだろう。
――何だか可愛いなあ・・・。
誰も聞いてないことに安堵すると、彼は改めて私に向き直った。
「今朝ぶつかった人・・・ですよね? まさか同じ学校の先輩だったなんて。急いでたから気づかなかった・・・」
「私も今あなたを見つけて驚いたわ。偶然ね」
それは半分嘘なのだが、穏やかな微笑を浮かべたまま、私は平然と言ってみせる。
その笑みの反面、内心は凄い勢いで早鐘を打っていた。思えば自分から男の人に話しかけることなど初めてなのだ、それも仕方ない。
それでも、包み込むような微笑は決して崩さない。穏やかで優しい先輩だと思われたくて。頼れる年上の女性と思われたくて。
笑みを保つことは、これまで告白してきた男子生徒や、社交界で馴れ馴れしく近づいてくる「自称良家の子息」の相手で鍛えている。
今だけは、そんな嫌悪の対象たちにほんの少し感謝できそうだ。
「勉強してるの? 放課後なのに熱心なのね」
ごめんなさいで話を始めたくなかった私は、皓一くんが驚いている間にノートを覗き込む。
数学のようだ。ノートには書き込んでは消した数式の痕が残っていた。
皓一くんは恥ずかしそうに苦笑する。
「あ、これは。次の授業で小テストなんですけど、俺この範囲のとき寝てたから・・・」
「そうなんだ。・・・ねえ、良かったら私が教えてあげよっか?」
「えっ・・・!?」
驚きの声を上げた皓一くんの返事を待たず、私は隣の席に腰掛ける。驚きからか、皓一くんは顔を僅かに赤くして身体を退いてしまった。
私は皓一くんが退いた分だけ、ずずいっと身を乗り出してみる。
「ね、どうかな?」
「えっと、お願いします・・・。だから、ちょっと離れて・・・」
本当はすぐにでもお話したかったけど、まずは彼の勉強を見てあげることにした。それに、こうやって親密度を上げておけば、
後でより自然に話せると思うし。
最初はすぐ隣りに私が居ることに落ち着かない様子だった皓一くんだが、集中してくるとそれも無くなる。
どうしても分からないところは時折質問してくるけど、それ以外は聞いてこようとせず、真剣な表情でノートに向かっている。
実質、私が教えたところはほんの少しで、殆ど彼の横顔を眺めていただけだったのだが、退屈なんてことはなかった。
(彼は・・・とっても素直な子なのね・・・)
横顔を見ながら思う。目の前のものに誠意を持って全力で取り組み、または反応する人なのだろう。
今朝の私への心配、再会したことへの驚き、目の前のテキストへの集中。人だろうが物だろうが関係ない。
ちょっと危なっかしくて、守ってあげたいなんてさえ思える。その素直さを突かれて、危険な目に遭ったり悪い人に騙されたり
しないかと心配になる。今朝だって、ぶつかったのが私だからよかったけど、もしそれ以外の、例えば性質の悪い女だったりしたら―――。
‘ズクン’
心臓が鳴る。けれどそれは、今朝のような高鳴りではなく、何か重いものが溜まるような鈍い痛み。
その痛みは、浮かべることに慣れた私の微笑の仮面をも剥ぎ取ってしまいそうになる。
「・・・先輩? どうかしたんですか?」
皓一くんが心配そうな顔で覗き込んでいた。私は慌てて微笑を浮かべてみせる。
「だ、大丈夫よ。ちょっとボンヤリしちゃっただけだから。それより、終わったみたいだね」
閉じられたノートとテキストが見えた。皓一くんははい、と答えると、椅子ごと私の正面を向いて頭を下げる。
「本当に、助かりました。ありがとうございます」
「ううん、私は殆ど何もしてないよ。むしろ、私こそあなたの頑張りに感心しちゃった。
・・・ねえ、良かったら途中まで一緒に帰らない?」
「そう・・・ですね。そうしましょうか」
一緒に勉強したという事実があるからか、皓一くんもすんなりと頷く。
夕暮れの中、誰かと一緒に帰るだけでこんなに嬉しくなるものなんだと、私は喜びをかみしめていた。
次の日から、私は足繁く皓一くんの所に通った。さすがに教室に押しかけるのは気が引けて、昇降口の前で待っていたりした。
皓一くんは帰宅部で基本的にはすぐ帰るので、それで大抵会えるし。
一ヶ月も経つ頃には、教室の前で待つことさえも平気になった。教室からは、何人かの男子生徒が私を指差して、皓一くんをからかっている。
皓一くんは赤くなりながらもそれらをあしらい、カバンを掴んで私の元へ走ってくる。それだけのことが、酷く嬉しい。
ある日、私はいつものように二年七組前で皓一くんを待っていた。皓一くんはクラスメイトの女の子と話している。
その光景自体は初めてでもない。何か用件があるのだろう。すぐ終わって私のところに来てくれるはずだった。
でも、来ない。もう5分はその女子と話している。
(どうして? 私が待ってるんだよ? どうして来ないの? クラスの用件か何かでしょ? そんなに掛かるものなの?)
更に五分待つ。まだ話している。
皓一くんが笑った。穏やかな笑みだ。いつも私に向けてくれているもの。
不機嫌そうな顔で彼と話していたその女子の顔が、その表情のまま赤くなる。
(どうして? どうして私以外の女の子にそんな風に笑うの?)
自分勝手な思いが胸を過ぎるが、どうしてかそれを抑えられない。
こんな感情は知らない。だから制御の仕方が分からない。
‘ズクンッ’
胸が激しく軋む。それはいつかの図書館での比ではなかった。
この場にはいられない。いたくない――。
次の日、重い気持ちのまま教室を出た私は、皓一くんに会いに行くか悩んでいた。もし会えば、一晩溜まったしこりが噴き出してしまいそうで。
でも、その悩みは無意味なものになった。三階から二階に降りたところに、皓一くんが居たからだ。
ずっと上を注視していたらしく、すぐに私に気づき、声を掛けてくる。
「あっ、二条先輩! 今から帰りなら、ご一緒しませんか?」
もしかして、私を待っていてくれた? 昨日私が先に帰ったのを気にして? だからわざわざ自分から?
嬉しさから思わず彼に飛びつきたくなるのを堪え、私はいつものように微笑んで頷く。
「昨日はすみませんでした、先輩が待っていてくれたらしいのに・・・」
「いいのよ、皓一くんもたまにはそんな日もあるでしょうし」
嬉しさから昨日のしこりも忘れて、私は鷹揚に微笑む。しかし・・・
「昨日話してた奴、倉地っていうんです。中学の頃からの付き合いなんですけど・・・」
‘ズクン’
「どうしてか、俺によく構ってくるんですよね。あ、これは中3の時の話なんですけど・・・」
‘ズクン’
「高校に入ってからも・・・」
‘ズクンッ’
「それで昨日は・・・あれ、先輩?」
これ以上見ていられない、困ったような、それでも嬉しそうな彼の顔を。
これ以上聞いていられない、いつになく多弁な、彼の弾んだ声を。
私は知らず早足になっていた。走りこそしないが、並んでいた皓一くんをどんどん引き離して先に行く。
(そんなに楽しかったの、その子と居るのが? 私といるよりも?)
そうかもしれない。確かに皓一くんは一緒に居ても平気な唯一の男性だけど、それで気の利いたおしゃべりまで出来るようになるわけじゃない。
今時の流行も知らないし、興味も無い。もしかしたら、私は彼にとって迷惑だったのだろうか。
そう思うと、微笑みの仮面をかなぐり捨てて泣いてしまいたくなる。
「先輩、ちょっと待って・・・!」
皓一くんが焦った様子で追いかけてくる。それでも私は背を向けたまま。今の顔を見られたくなくて。
それが一分ほど続いただろうか。皓一くんはそんな私に愛想を尽かせて立ち去ることも、怒ることさえせず、追いかけてくる。
伺うような弱めの口調は、自分の何が私を怒らせたのかと、必死に考えていることをうかがわせる。
対する私は、悲しみの代わりに歪んだ歓喜が湧き上がるのを感じていた。
私が、私の思いが皓一くんを悩ませている。彼の心を占めて、振り回している。
そう思うと、逆に私の方が落ち着いてきた。もうしばらくこのままで居てもいいけど、そろそろ許してあげるとしよう。
私が立ち止まると、追いかける気配も止まった。その場でパッと振り向くと、彼の腕を取って両手で掻き抱く。
「ちょっ、先輩・・・!?」
「今日は、このままで帰りましょ? そうしたら許してあげる」
咄嗟に振り払って逃げようとした皓一くんの腕を、しかし私はぎゅっと掴んで逃がさない。
それどころか、大胆にも自分から胸の谷間に挟み込むようにしてホールドしてしまう。
「ぁ・・・ぅ・・・」
茹でダコのように皓一くんが真っ赤になる。結局観念したように力を抜き、私にされるままに身を任せてきた。
私への心配と情欲がないまぜになった横顔が映る。それがどうしようもなく愛しい。
本当は私が勝手に怒って悲しんだだけなのだから、許すも無いもないのに。
こんな歪んだ形の幸せ、知らなかった。
(ああ・・・私、恋をしてるんだわ)
ようやく私は自覚した。きっと他人が利いたら、今更何言ってるの、と呆れるだろうけど。
密着すると流石に熱い。もうすぐ6月だから、それも当然なのだけど。
(皓一くんが意識してくれるなら、ちょっときわどい格好をしてみるのもいいかな?)
そう思うと、嫌いだった夏までもが待ち遠しく感じられてしまうのだった。
ねえ皓一くん、気づいてる?
あなたと出逢ってからほんの僅かな時間で、私はこんなにも歪んでしまったの。ううん、もしかしたら最初から歪んでいたのかもしれない。
でも、その歪みの幸せさを自覚させたのは、間違いなくあなた。
初めは真っ直ぐなあなたに対して自分は何て屈折しているのかと思ったけど・・・そんな私をあなたは受け入れてくれたよね。
あの告白は本当に嬉しかった。人前であんな風に泣き崩れるなんて、初めてだったんだよ?
それからは、お休みの度に遊びに行ったね。生まれて初めての遊園地は楽しかった。
園芸のお店にも付き合ってくれた。「何を買おう?」と話を振られても分からないだろうに、それでも一緒に悩んでくれた。
唯一不満があるとしたら、中々私に触れてくれないこと。折角短めのスカートやキツめの服でアピールしているのに。
皓一くんが望むなら、いつでも押し倒してくれていいのに。エッチはおろかキスもしてくれない。
でも、そこがあなたの誠実さでもあるんだよね。少し経てば、きっと私が待ってることに気づいて、私を奪ってくれる。
あなたが私をどんなに大切に思ってくれているかは、うぬぼれじゃなく自覚できるもの。
それは、たった一年離れ離れになる程度で切れちゃうほど弱いものじゃない。
だから分かるよ。「別れよう」なんて、あなたの本意じゃないってこと。
だって、たった1年待つだけだよ? 運命の恋人を15年以上待ち続けたことに比べれば、そんなの大した時間じゃない。
もしかして、昨日あれから誰かに相談とかした? 誰かに何か言われたの? でなきゃ、あなたがそんなこと言うわけ無いもの。
・・・だから言ったじゃない、皓一くんは素直だから、悪い人に騙されないか心配だって。
真っ直ぐだから、心配事があるところを付け込まれはしないか心配だって。
いいよ、私があなたを惑わすものを見つけてあげる。そして、二度と迷わないように消し去ってあげる。
だって私はあなたの恋人で、頼りになる年上のお姉さんなのだから。
だ・か・ら・・・もう二度と、冗談でも別れよう、なんて言ってはダメよ。
ね? こういちクン。
今回はここまで。先輩の独白もここまで。次回は別れ話の続きとなり、ようやく話が進みます。
だから長いっつうのよ、ただの回想シーンなのにさ!
いかん、本能の赴くままに書いてると物語が破綻しそうだ。
物語を書くって大変なことだったんですねぇ・・・。
ちなみに、先輩には画像イメージがあったりします。あるエロゲのキャラです。
もし挙げていいなら次回の更新にでもメル欄に書こうと思います。
そういうの書いていいのか良いのかよく分からんので、教えてくれると嬉しいです。
>>111 紗耶香先輩可愛いよ(*´Д`)ハァハァ
設定をメル欄に書くっていうのは
面白いし、いいんじゃないでしょうか。
「裏話はこっち」、みたいな感じで。
GJ!先輩(*゚∀゚)=3ハァハァ
そして名前だけ出てきた倉地タソは泥棒猫なのか!?
画像イメージは俺個人としては教えてくれるとうれしい
いや、倉地から見れば先輩の方が泥棒猫だろう
とりあえず、先輩がかわいいのはわかった。
お前ら、先に言っておくが先輩はオレの物だからな。
>>116 ヽ/ : :/ン<lニニl>ムi : :|ヽ
/: : ,rト/l: :/|::トl :!|: : | }
: : /ノル' レ' リ レリl : :|ノ
: / ::○:::::::::::::○:: | : :|
:/ ::::::::::::::::::::::::::: l : |i __
| 、__, l: :|:l | | >*
|ゝ_ | / ,,.ィ| :|: |. | | >
|: : :"''`ァ__ァ'- "´ : |:|ムXフ. | | >
|: : :_メ`yヘ、 : : l: : : リ/: :i\ | | >
r''"/。@。Yヽ、 |ヘ: :/ : : :| ヽ. | | >
先輩のイメージ画像…凄く興味がありますねー…
あなたがあまりにも特殊な嗜好じゃなければ
このスレの皆さんだって見てみたいと思いますよ。
ガッt(ryとかじゃない限り
ガッt(ryは勘弁な。
まぁ、あの作品にゃコアなファンが憑いてるっぽいけど……。
ここの小説に登場する女の子が全員筋肉ムキムキだったら嫌だな。
疾走のいたり先輩の部屋を覗いたら
なぜかタカさんがいた、全裸で
という展開ですか
筋肉ムキムキの先輩にフライパンで殴られたらエーちゃん壊れちゃう
社長がたまたまここを見てて、
次作が「修羅場でガッツ!」になるとか。
先輩可愛いよ可愛いよ先輩
さて昨日の買い物の一部
SHUFFLE!アニメDVD10巻(19〜20話)
未来日記1巻
とりあえずこれで単位を二つとったことに
時間が時間なだけに、喚かれたら他の入院患者に大迷惑がかかるので、雫の病室は一泊限りの一人
部屋で、幅広の空間と一目で高価とわかるシルクのベットは、さながらVIP待遇だった。
聞かされてはいないが、麻衣実ちゃんもそうなのだろう。彼女の父親の力は相当らしいから。
どう考えても目立つパトカーで隠蔽工作をしに来るなんて矛盾してるんじゃないか、と最初は思っ
たが、表立った理由をとってつけるくらい簡単にできるとすればそれも理解できる。
麻衣実ちゃんの狂気から雫を護衛してくれるように頼もうにも、その父親の息がかかっているので
はまず警察は当てにはできまい。
雫にとってみれば騎士は俺一人で十分なんだろうが、増援を期待できない状況では俺の士気も下が
ってくる。……冗談抜きで死地に赴く覚悟が要るのかもな。
加えて、俺の平凡な学生生活も明日からは消えてなくなるんだろう。
どのような形で広まったかはわからない。だが、雫が手首を切ったというショッキングな出来事が
学校中に伝播したのは確かだ。救急車まで出動してるし、好奇心旺盛な学生諸君から隠し通せている
とは思えない。
手首の切り傷はヤバイ人間を避ける目安としてよく使われる。本日付で雫もめでたくそのリストに
仲間入りした。折しも今は受験戦争の真っ只中だ。刺激となる厄介者に対しては、誰もが触らぬ神に
祟り無しを実践しようとするに違いない。端的に言えば無視。存在の否定。俺はその共犯者。導き出
される結果は十分予想できる。
この際、それに関しては俺はどうでもいい。あそこで雫を受け入れたらこうなるってことは、骨の
髄まで叩き込まれてたことだし。ただ、何時だって笑い続けてた頑張り屋の末路にしちゃあそれは悲
惨じゃないだろうか? 可愛がってたペットがちょっと奇行に走ったら、世話を見なくなるのが正し
い感覚とでも言うんだろうか?
雫はその体躯には大きすぎるベットに埋もれるようにしてくるまっている。
顔が隠れているので表情は読めない。ただ、身体が断続的に震えるように小さく波打つ。
正直に見れば、雫の身長は平均をかなり下回ってるし、体の発育も多分に悪い。……別に悪い意味
で言ってるんじゃない。それだけ可愛らしいと思うし、庇護欲をそそられるから。
そんな娘が背中を丸めてさらに縮こまる様子を見守りながら、俺は考えを巡らせていく。
雫が求めて止まなかった父親は、娘が自殺未遂をしたというのについぞ姿を現さなかった。そもそ
も連絡を付けることさえできなかった。失踪中なんだからある意味では当然なのだろうが。
しかし、それだけでは終わらないのがこの不愉快な現状だ。
雫はその親戚や縁者までも、遠地に住んでいるとか多忙だとか理由をくっ付けて、誰も来てくれな
かったのだ。中でも最悪なのが雫の実の母親、父親とは離婚した前妻で、『現在の家庭を壊したくな
い』だとか何だかで、病院に搬送された実の娘を間髪入れずに見捨てやがった。だからそいつ等がか
けるべき手間は、付き添って来た担任が代わりに引き受けてくれて何とか事なきを得ている。
さらに、その担任によると、直接出向いた雫の自宅である安アパートは空で、雫は現在(家庭訪問
や三者面談の時には父親がいた)一人暮らしをしているらしい。幸い、ウチの高校ではアルバイトは
許可制なのだが、雫はその申請をしていないので、金銭面での困難はないようだ。仕送りくらいはさ
れているのか、それとも消えた父親の置き土産が生活費なのか。
……どちらにせよ、雫の家庭環境は孤独に満ちている。
依存症と父親との関係は度々仄めかされていたし、参考資料もあった。麻衣実ちゃんに伏せたのが
そうで、俺の恋愛観の根本になってたりするのだが、あまり表立って言いたい話ではないのでここで
は省こう。身内の不幸自慢なんて鬱陶しいだけだ。まあ、麻衣実ちゃんのバックにかかれば調べ上げ
るのは造作もないことだろうけどさ。
ともかく、その辺りの事情が雫の歪みの一因ではあると思う。やはり予想でしかないが、雫の父親
が何かやらかして、実家や元妻から冷たい扱いを受けることになったに違いない。そして、そこから
派生した経験が雫に暗い影を落としたんだろう。
あの眩しい笑顔も果たして本心からのものであるのか、今になって考えてみると怪しい。あれこそ
雫が抱える欠陥の発露なのではないだろうか。
――そこまで思考を進めて、俺はようやくその音に気付いた。
雫の身体が振動するたびに、押し殺したようにくぐもってはいるが、しゃくりあげるような声が漏
れている。てっきり寝息の上下運動だと思っていたが、これは……。
俺はどうしたらいいのやら……。
時計の針はとっくに真上からずれてしまっている。
その原因を薬の効果に個人差があるからだと考えることもできるが、それは逆の場合だって想定で
きる。つまり、雫が早めに起きてしまったという場合だ。
早めに起きた雫は何を見たのか――答えは考えるまでもない。
俺は守るべき相手を泣かしてどうするんだろう? それでなくたって雫には俺しかいないのに。
都合のいいことにこの病室は、隣の病室からトイレと階段とエレベータを挟んだ隅に位置し、対面
にあるのは薬物保管庫の一室となっている。
……人間嫌いなVIP様に感謝しつつ、俺は改めて騒ぎが起きても大丈夫なことを確認した。
「雫、狸寝入りなんてよせ。そんな疑わなくても俺はお前を置いてどこかに行ったりしないよ」
声をかけるや否や、俺は想像以上に強い力でベットの上に引き倒されていた。
視界が逆転し、二本の細腕が死力を振り絞って俺を捕縛する。背骨が軋みそうなくらいの力が俺を
締め上げる。雫は嗚咽こそ押し止めているが、月夜の薄明かりに照らされてちらりと映った顔は、や
っぱりぐしゃぐしゃになっていた。
言葉を発することなしに、雫は握った拳で俺の胸をドンドンと叩く。手加減なしの攻撃は耐え切れ
ないほどの威力となって、強制的に俺の酸素供給をストップさせた。
残った片手が突き立てる爪が食い込みを増し、その痛覚に思わず声を上げそうになったが、それす
らままならない。まるで、溺れた人に水中でしがみ付かれているかのような感覚。非力な俺では一緒
に溺れてしまうのがオチの話。
続く肺への渾身のヘッドバッド、掲げた足を振り下ろした内腿への重い蹴り、偶然入ってしまった
のだろう肘の腹への一撃で、俺はとうとう堪えきれなくなって身を捩った。
それで暴れていた雫の動きが止まる。――当然だ。雫は好きで暴れていたわけじゃない、必死で相
手を求めたらそれが暴れるような形になってしまっただけなんだから。
「こ〜ちゃ……あの、これは……えっと、違うんだよ……、違うんだよぉ……。こんなつもりじゃ
なくってね……? わたし、わたし……」
「し…ず……」
大丈夫だと言おうとしたが、名前を呼ぶことさえままならなかった。
俺は何処までも役立たずだ。大体、雫をほったらかしにして麻衣実ちゃんと会っていたのが俺が悪
いのだから、雫が不安になるのに何の非があるだろう。そうさ、雫は悪くない。ただ人一倍寂しがり
屋なだけなんだ。
決壊した勢いは止められず、雫はとうとう喚きだす。
いつものように滂沱しながら、いつものように涙声で、いつものように病んだ熱烈さで。
「……こ〜ちゃんに好きって言ってもらえて嬉しかったのに、……嬉しかったから、それだけこ〜
ちゃんが何処かに行っちゃうかもって、あの娘のところに行っちゃうかもって考えたら、恐くて堪ら
なくなって……。……でもこ〜ちゃんには嫌われたくなくて、だけどこ〜ちゃんとあの娘が一緒にい
るのは嫌で、でもあの娘に何かしたらこ〜ちゃんに嫌われちゃいそうで、……もうわけわかんないよ
ぉ! 嫌だよぉっ! わたしと一緒にいてくれなきゃ嫌だよぉっ! ……もうわたしこ〜ちゃんがい
ないのは耐えられないんだよぉ……。ひとりぼっちは嫌だよぉ……。こ〜ちゃんはわたしだけと一緒
にいてくれなくちゃ嫌なんだよぉ……。ほかに何もいりません。そのためだったら何だってします。
だから……、だから、これだけはお願い。本当の本当にこれだけだから……。わたしだけを見てくだ
さい。わたしだけを好きでいてください。わたしはこ〜ちゃんが好きです。愛してます。だから、見
捨てないでください――」
――雫の懇願は結局そこに帰着する。依存と愛情と嫉妬が連立した不可思議な願望に。
それが何故かと訊くなんて今ここでは無粋だろう。俺はただ、こいつを心から安堵させてやればい
い。そして、そのための方法は何がある? ……って考えるまでもないか。どうせ今の状態じゃ言っ
て聞かせることはできそうにないし。
気力で頭を上げ、うつ伏せに俺に乗りかかっていた雫の口を塞ぐ。
涙目が点になり、瞬く間に今度は嬉し涙が溢れてくる。そんな様子がおかしいのに愛おしい。
……とびっきりの甘やかしがこいつには有効なんだよ。
「ふぉ〜ちゃぁ〜ん……」
これだけで完全に疑心を捨て去ってくれたらしい雫は、代わりにうっとりと蕩けた顔を紅く火照ら
せながら、大胆にも舌で俺の唇を割って――
「……その先はなしだ」
だけど、その甘い空間は俺自身が引き裂かねばならなかった。
自分からしたクセに、ようやく笑顔にできたのに、心から求めてきた雫を押し退ける俺は、間違い
なく最低で残酷な埃未満のクズ野郎だ。
……でも、どうしてもその先は許しちゃいけなかった。俺の自制心を保つための手段はそれしかな
かった。手を出してしまうのは簡単だ。慰めてあげるのも簡単だ。だけどそれじゃあ雫を救えやしな
い。もし俺までこの奔流に流されてしまったら、誰が雫を引き上げるのだろう? 俺は何時だって雫
の先導役でなければならない。
――忘れてはならない。この病院には麻衣実ちゃんがいる。狂っても尚、俺に対して誠実な態度を
崩さなかった彼女のことだから、別れの挨拶をした後につけて来るなんて真似はしないだろうが、か
といって俺と雫がここで一線を越えてしまって、違う誰かに気付かれないとも限らない。
キスまでならば彼女の許容範囲内だとわかっている。しかし、その先は確実にアウトだ。
そんな馬鹿げたミスで雫の命を削ってなるものか。悪戯に麻衣実ちゃんの殺意を煽って、こいつの
生存率を下げるような愚行だけは絶対に避けなければ。
「どおして……?」
そんなに絶望的な顔をしないでくれ。お前の泣き顔はもう見飽きた。笑え。笑ってくれ。それも造
花の向日葵なんかじゃない。本物の冴え渡るようなお前の笑顔を見せてくれ。
「どおしてなの……? こ〜ちゃん……。……やっぱりわたしのこと嫌いなの? ……あの娘のほ
うがいいの? ……ねえ、こ〜ちゃん、答えて……? 答えてよぉ……? 答えてよぉぉぉぉ!」
止んでいた攻撃が再開した。雫は俺に馬乗りになって胸倉を掴み、力任せに前後に揺さぶる。脳を
激しくシェイクされて滅茶苦茶になった平衡感覚に、俺は頭を刻まれるような頭痛を催した。
激昂というよりは慟哭。不満をぶちまけるというよりは悲嘆に暮れる。
意志の強制というよりは、信じられない現実に哀願する感じ。
この掴む手の強さも、鬼気迫る表情も、耳を穿つ叫び声も、全部雫の愛情が大きいから。
――麻衣実ちゃんが言うには、俺はその心地よさに堕落して、共依存の対象として雫を求めている
だけらしい。でも、それは間違っている。誰だってそんな関係を築きたいと心の底では思っている。
堕落するくらいに愛されたいと思っている。必要とされたいんだ。それって当然の感情だろう?
「……なにか、なにかいってください……」
言葉尻が消え入りそうな敬語になると共に、雫の身体から急速に力が抜けていった。こいつはそう
いう娘だ。ひたむきで健気で一途な娘だ。何をしようが、何も言うまいが、最後の瞬間まで俺が見捨
てないと信じてくれる。……信じるってのは委ねるってのと同義。
そして俺もそんな雫を見捨てたりはしない。多少の暴挙が何だって言うんだろう?
麻衣実ちゃんの見立ては正しかった。俺は残りの人生を放棄してでも、この娘と一緒にいてあげた
いと思う。俺をそんなにも愛してくれるこの娘を愛し続けてあげたいと思う。
――だから、そんな俺から雫にする要求は一つだけ。
「あのさ……」
「なにっ?」
「……そんな慌てるなよ。……俺さ、雫のことすげえ好きだよ」
「……ほんとう?」
「ホント」
「あの娘よりも……?」
「……正直言うと同じくらい好きだ」
嘘はいけない。すでに方便を尽くしている誠実さなど何になると非難されても仕方がないが、俺は
それでもなるべく純粋な雫の気持ちに不純なものをぶつけないようにしたい。
「そんなのって――」
逸る口をまた塞いだ。卑怯だとは思うが、話を最後まで聞いて欲しい。
雫の頭が真っ白になっている内に、その隙間に言葉を注いでいく。
「……でも、先に告白してくれたのは雫だし、俺が最初に好きって言ったのも雫だろ? だから、
二人が同じくらい俺を好きになってくれたとしても、俺は雫への責任を全うしたい。ずっと雫と一緒
にいてあげたい。……だからそのために、雫にお願いしたいことがあるんだ」
雫も麻衣実ちゃんも、その言動は病んでいたり狂っていたりととても平常じゃないが。その分、伝
えようとしている愛情の規模がわかるから。それで俺は二人が好きになったんだと思う。
「なに……かな?」
怯えなくても大丈夫。これだけだから。頼むよ、雫。
「死なないでくれ」
それで俺はお前を永遠に愛し続けてやるから。
――麻衣実ちゃんは本気だ。きっと全力でもって雫を殺しにくる。彼女の覚悟はわかった。文句な
しな具合に教えてくれた。そして、確かに俺はその覚悟に魅せられた。でも、それでも俺の一番は雫
以外に譲れはしない。だから雫の条件はそれだけだ。殺されないでくれればそれでいい。麻衣実ちゃ
んを返り討ちにしようが構わない。それで俺の雫への愛は保障される。どうせこの二人に並ぶ女の子
なんて金輪際現れやしないだろう。
これは歪な三角関係。
一本は依存。一本は狂気。
底辺に繋がる二本は紛うことなき二等辺。二等辺な三角関係。
半直線のごとき長さを持った、双頭の二等辺。完成された三角関係。
それでも俺は選ばなければならない。選べるのは一本だけでしかない。
長さが等しいというのなら、愛情の大きさが指標にできないというのなら、
その連結が早かった者を、最後まで離れなかった者を、俺は選ぶ。
俺の言わんとしていることがわかってくれたか、俺を信じてくれたかどうか、雫が反応してくれる
までの数秒は、今までの人生で最も長い時間だった。
けれどそんな心配は杞憂でしかったと、雫のリアクションを見て思う。
雫は、ただでさえ晴れ晴れとした喜色満面を誇っていたのに、それをも上回る笑顔を、綻びすぎて
顔の輪郭を壊してしまいそうな笑顔を、文字通りの破顔一笑を、俺に向けてくれた。
「それだけでいいのっ?」
「そっ、……たったそれだけ」
――麻衣実ちゃんに殺されないこと――
それは、『それだけ』で済むような簡単な話じゃない。
雫は精神に問題があっても感覚が絶えているわけじゃない。麻衣実ちゃんの狂気がどれほどのもの
か実感したのはこいつも同じはずだ。そもそもあの時点で殺気がマシンガンの銃弾のごとく飛んでい
たのだから、どんな鈍感でも気付く。
なのにこうも安易に断定してしまうのは、やはり雫の依存心がそれに並び立っているのだろう。
「……嬉しいなあ。やっぱりこ〜ちゃんはわたしを一番に好きになってくれるんだ」
過程を一切無視した自己完結。何の気兼ねもありゃしない。
少しはその過程で散々な目に遭うだろう俺を気にかけて欲しいものだが、さらに輝きを増した雫の
笑顔を見ていると、そんな些事はどうでもよくなってくる。
「こ〜ちゃんのためならわたしは何だってできるんだよ……。何だって……」
それとなく大口を叩く雫は、だけど麻衣実ちゃんに似た強い意志に動かされていて、俺はますます
そんな娘を愛おしく思った。
お盆休みで人のいない隙に第一部終了。
何かマジで『殺し愛』を始めそうな二部は、ほんのりサスペンス風味で。
作者としてはちゃんと『二等辺』になっているかが心配。
どっちの娘も好きな要素を詰め込んだだけなんですが、依存と狂気って
どちらのほうが人気があるのかな? と。
>>132 作者様GJ!
こーちゃんも完全に壊れちゃったなあ((( ;゚Д゚)))ガクブル
個人的には狂気の方が好きな俺は当然麻衣実タン派(*´Д`)
gj!
二等辺三角形の各辺の意味が明らかにされたね
上に同じく麻衣美ちゃん派な漏れは応援を絶やさないぜ
GJ!俺は依存の雫タソ派だZE!
どいつもこいつも麻衣実タン麻衣実タン……
なら、依存派な雫タンは俺がもらっていくよ。
雫超頑張れ
頑張って生きれ
こんだけ歪な二等辺三角形は初めてだぜ!GJ!
俺は冷静に狂ってる麻衣実タンを応援するZEI!
「えっ?えぇ?」
まるで地球外生命体を見たかのように驚いている。まったく、自分でここまでやっておいてそりゃないってよ。
「いいいい、いつからお、起きてた…の?」
「んー、飛び跳ねて起きたとこから。」
「って最初からじゃない!?」
意外と眠りが浅いため、ちょっとした物音でも起きてしまうのである。
「さてと……志穂も乗り気になってくれたようだし、始めますか。」
うーん、うれしいねぇ。今日はおにいちゃんと呼んでくれるし、寝てる俺の手を使ってこんなことしてくれちゃうし。やるねぇ……
が、ここで最大の障壁が俺の野望を打ち砕く。
「そうだ……ナミちゃんがいたんだった…」
別に邪魔というわけではないが、ヤってるまっただなかでみられたらやばいなんてもんじゃない。プロレスだよ、なんかじゃ通じないだろ。
それになにより、志穂がナミちゃんの前でなんていやがる……
「……よ…」
「え?」
志穂がなにかぼそりと呟く。
「その……晋也がしたいようにして……いいよ……Hなことも…なんでも…」
「んなっ……ま、まじでか……」
最早脳内オンパレード。志穂の予想外の発言に、オブラート並みの薄っぺらい理性は速攻でくずれてしまった。
「ほ、ほんとに、いいの?」
思わず声がうわずってしまう。
「うん……いいよ………晋也なら、なにしても……」
赤くほてった頬。潤んだ瞳。上目使い。何やら不安そうに服の端っこを掴んでいる。
ぼんっ
嗚呼、いままさに理性が壊れた。リミッターの切れた俺の大脳は、最短でエ・ロ・プランを組み立てる。
カシャカシャカシャカシャーン!
「よ、よし、ちょっと外へ行こう。」
最低限、ナミちゃんにばれるのはまずい。そのためそっと起こさないように志穂と外へ出る。ナミちゃんがいたから今日は寝るのが早かった。まだ十二時すぎだ。
「ちょ、ちょっと。こんな時間にどこに……」
手を引っ張りながらズンズン進んで行く。こうなったモードの俺は止まらない。我が道突き進む!!
付いた場所は近場の公園。昼は子連れの親子で賑わうが、こんな夜中では人っ子一人、犬っ子一匹いない。そんな公園のベンチに座る。
「こ、ここでやるの?」
「もち!んじゃさっそく。ここにこっち向いて立って。」俺の目の前をチョンチョンと指す。
「こ、こ?」
鶏じゃないよ?よくわからないように、言われたように前に立つ。
「んじゃ次に………下の服全部脱いで。」
「う、うん……」
ズボンとパンツを一緒に脱ぐ。志穂の秘部は既にヌルヌルとしていて、卑しい糸が連なっていた。あー。なんか久々だから目茶苦茶バッキバキ。
「じゃ、口で……オケ?」
「わかった……」
下半身裸のまま、俺のズボンのチャックをあけ、ナニを取り出す。
「うぁ……なんか……いつもより固くない?」
やっぱり、志穂にもわかったか。
「うーん、やっぱ外でやってるっていうのがナイスエッセンスになってるからなぁ。」
「ん……えっち…」
「おやおや?さそったのはどっちかな?」
「う…うぅ…あう……んむっ!」
恥ずかしさを誤魔化すように、急に咥える。が、大きくなり過ぎているためか、全部咥えきれず亀頭だけ咥えるかたちになった。
「んんっ…ふぁ……んちゅ、ぷぁ……ごめん……んぅ……ふぁ…ぜんぶ、くわえらえひぁひ…ごめんへ…」
「いや、それもまた……一興……うっ!やべっそろそろ……」
集結した俺の欲望の塊が一気に放たれる。…ちょ、ちょっと早いのは言わない約束だぞ!?
「いいよ……はむ…んぅ……いつでも、ぷぁ…好きなだけ出していいよ……んちゅ、ちゅるるる〜〜!!」
ドクン!
「んんっ!!ぷぁあっ!はぁ……うぁん…」
びゅっびゅっびゅるるっ!びちゃ……びちゃ……
志穂はよける事無く、もろに顔で浴びる。綺麗な志穂の肌を、まんべんなく汚していく……
「ぷはぁ…す、すごひりょう……あついよ…晋也の…せーひぃ…んくっ、んく、ちゅるる……」
受け止めるどころか、指ですくって残さず飲み下していく。いつもは不味いとか言いやがって俺に拭かせていたが……なんとうれしいことかっ!
「ん?……ぷはぁ、どうしたの?晋也?目頭押さえて……」
「いやいや、おにいちゃんはうれしいだけだよ。」
「そう……よかった、おにいちゃん。」
ぼんっ!
イッツブロークンマイハート!この状況でそのセリフ。……動き出した欲望は止まらない!志穂が乗り気なら俺だって……
サワ…
「んん…ふぅ……あん…」
志穂を立たせ、胸を触る。…揉む、というのは多少誤植になるため触る。まぁ、こうすれば大きくなるというが……
既に固くなった乳首を中心にいじっていく。右は舐め、左は摘む。
「んんぅ…やぁ……き、きもちいいよぉ……しん、やぁ……あぁっ。」
快感に耐え切れず、志穂が俺の頭を抱え込む。甘く、熱い吐息が首筋にかかり、こっちもゾクゾクする。
摘んでいた左手を下の秘部へ。
クチュクチュ……
「うは……洪水とはこのことだな……」
溢れるトロトロの液は既に志穂の太股をぬめらしていた。いつも感じやすい志穂だが、今日は更に多い。やっぱり外でということからか。
「ねえ、しんやぁ……あぅ……も、もう我慢できないよぅ………」
よく見ると膝がガクガクしていた。立つのもままならないようだ。
「よしっ。んじゃあこっちに……」
ヒョイっと両脇に手を入れ、持ち上げる。相変わらず軽いなぁ……というか。
「おろ?志穂、背縮んだか?」
「馬鹿……そんなわけないでしょ……晋也が大きくなったんでしょ……」
そうかぁ。やっぱり最近身長伸びたなぁ。
「ん……ねぇ、はやくぅ……」
「ああ、悪い悪い。」
持ち上げられたままの志穂が我慢できないといった様子で体をよじる。そのまま秘部にそそり立った棒にあてがい、ゆっくりとおろす。
ズズッ…ズブズブ……
「んっはぁ…んぅ……は、入って来るよ……おおきぃよぉ……」
ニチュッニチュ…クチュクチュ……
「うわ……きっついなぁ……」
「そ、そぅ?…ん……んふ……ふふふ…気持ち、いい……あんっ!」
「ああ、いつもより……イイッぞ!」
「あふ…あん……うぅ…え、へへ……うれひぃ………んむ…んぅ…ちゅぷ……」
そのまま何度も濃厚なキスをする。それだけでもくらくらだ。
「んん、ふぅ……あ、ああっ!いいよ、気持ち……あっ……いいよぉ……」
やばい……そろそろ……
「いく?いきそう?……んあ…あぁ……ふくらんできたの、わかるよぉ…あ…」
やっぱりばれたか。最近この時はよくリードされる。いかんなぁ。
「中、中。……全部中に出して……ぇ……いいっ……うぅん…わたひも、子供欲しい……」
艦長!Goサインが出ました!中だしok!こんな沸騰し切った脳みそじゃあ計画なんざ意味もなし!
「うっ!」
ドクッ…ドクッ…
「うああぁ…はぁ……んぅ…出してっ全部中にぃ………ん、きゃあああっ……すごい、いく、いっちゃうぅ!」
俺がいくと同時に、志穂の体も痙攣したようにいった。相変わらず相性いいなぁ。
「はぁ、はぁ……よかったぜ、志穂……」
「んふぅ…んん…わ、わたしも……よすぎて、うごけないぃ……腰抜けちゃったぁ……」
余韻に浸りたいところだが、ここは屋外。人に見られる可能性は大なのだ。急いで後片付けをし、二人よりそってベンチに座る。
「Aha〜。なんか目茶苦茶よかったぁ。」
「最近はよくなかったの?」
「いやいや……まぁ、正直マンネリ化してたけど……」
それを聞いた途端、志穂が焦ったように言い迫る。
「あ、じゃ、じゃあ、晋也がしたいなら、いつでも、どこでも、なんでもしていいよ?わたし、頑張るから。晋也に……居て欲しいから……」
……いつでも、どこでも、なんでも?だとぉ!!フォァーーー!!!
「俺は容赦しないズェ?」
「うん、晋也が喜んでくれるなら、なんでも……」
そういいながらすがりよってくる。な、なんだ?いつもの強気な志穂じゃないぞ???
ツンな志穂が好きです。でも、デレな志穂はもっと好きです。
デレな志穂は大好きです。でもヤンな志穂はもっと好きです。
でも、すぐ刃物に訴えるのは勘弁してください。
トイレを済まし、いざ二階の自室へ戻ろうとしたところ。
「あ……」
「お」
アイヴァンホーにばったり出くわした。
腕に人化したフォイレを抱えている。まるでぬいぐるみのようだな。
「なに、どうしたん?」
「ああ、姫様の髪を洗って差し上げようと……人化すると、どうしても汚れるものだからな」
シャワーを使っていいか、と聞いてきたので許可を出した。
「別に浴槽も使っていいぞ」
「いや、遠慮しておこう。私はともかく姫様は脱げんのだ」
「? なんで?」
ドレスを眺める。ちょっと複雑な構造かもしれないが、別に脱げないってほどにも見えない。
「服に見えますけど、これは皮ですの。脱皮するまでは着たきりですの」
姫様本人が解説してくれた。ふーん、なるほど。蛆虫も脱皮するのか。
と、感心しながら部屋に入ると遥香はシェラフに包まってぐーすか寝息を立てていた。
「無防備極まりない……襲われる心配とかしとらんのか、こいつは」
まあ、してないんだろうな。こいつから襲ってきたことはあっても俺から襲ったことはねえんだし。
瞼が閉じられてみると、その上に位置する困り眉が異様に愛らしく映る。
ついつい撫でたくなって手を伸ばす。短い毛のさわさわした指触りがくすぐったい。
あー、そういやガキの頃にもここを気に入ってよく口づけしたな。眉毛にキスのマユキス。
俺はいったい髪フェチなのか、毛フェチなのか、どっちなんだろうか。
「いいお湯でしたの」
どうでもいいことをつらつら考えているとお風呂上がりのフォイレがさっぱりした顔でアイヴァンホーに
運ばれてきた。アイヴァンホーは俺にフォイレに預けると、「わたしもシャワーを浴びてくる」と言い残し
また出て行った。
「預けられたってことは、一応信頼されてるのかねえ……」
腕の中のプリンセスを見下ろす。
「?」
ドライヤーを掛けても乾き切っていない、洗い立ての髪がふわふわとシャンプーの匂いを立ち上らせていた。
ふむ。同じ匂いでも、母親みたいな中年のアレが醸すものと、見た目ちょっと年下の女の子がまとったものとでは
雲泥の違いがあるものだな。と冷静に判断しているつもりでも、鼓動は高鳴ってバクバクなのだった。
分かるかい? 洗い立ての髪が放つ、えも言われぬ色気って奴。これはアレだ、男心を狂わせますな。
触ってみると湯の温度かドライヤーの熱か、まだ温かかった。
油を失った髪が持つ、指で擦るとキュッキュッと引っ掛かる独特のキューティクルも、これはこれで。
匂い、熱、艶、更には銀の輝きを加えたテトラ攻め。
理性が限界まで引き伸ばされ軋みを上げた。
ああ――「抱け」と言わんばかりに迫ってきたフォイレへ無造作に叩きつけた拒否を今からでも撤回したくなる。
「おいおい、こいつ蛆虫だぜ?」と自分に突っ込んでも、大した抑止力にはならない。
思わず「よいではないか、よいではないか」と組み敷きたくなるが――やめとこう。
現在シャワーを浴びてるアイヴァンホーが帰ってきたらまず間違いなく殺されるし。
そこで寝ている困り眉が起きたら――何が発生するか予測し切れんが、とにかく大変なことになるだろうし。
何よりこいつがイヤがった場合、「イヤがってみせるが本音はOK」なのか、「本気でイヤがっている」のか、
「くやしい……でも……こんな体じゃ抵抗できない!(ビクビクッ)」なのか判別つけられんしな。
さて、どうしたものか。早く押入れに放り込んで寝かせつけた方がいいか、と思案してたら。
「和彦さん、背中を掻いてください」
こんなことを要求してきやがった。
「ほう、背中を掻けとな?」
「はい。アイヴァンホーの指はもう飽きました。深爪なのでさして気持ちよくありませんの」
もう飽きた、だなんて。フォイレ、清純に見えて割と多情な女。
しっかしなあ……
「おい」
「はい?」
「恩返しされるのは、俺の方だよな? ……なのに侍従と同じ真似をお前にしろと?」
一応訊いてみるが、洗い立て銀髪四肢欠落依然としてドレス着て宝冠飾ってる美肌少女はきょとんとした表情。
「ええ。苦しゅうないですの、さあ、どうぞ」
こ、こいつ、人に世話焼き強要させといて微塵の屈託もねえな。
身体上の理由もあるだろうけど、やっぱりお姫様育ちだ。世間知らずのムードばりばり。
「仕方ねえな」
別に断るつもりでもなかったのでそっと俺のベッドにうつ伏せになるよう下ろし、手を伸ばす。
白銀の野原となって背を覆い尽くすホカホカ髪を左右に分ける。
そして、背中だろうとお構いなしにフリルがはびこっている白ドレスへそっと指先を滑らせた。
「――あふ」
指が敏感な背筋にでも当たったのか、ぞくっと身を竦ませる。肩甲骨がドレスの布地を押し上げた。
「艶っぽい声を出すなよ。全然似合わないから」
「し、失礼ですの、年頃の蛆をつかまえてっ!」
揶揄してみたが、正直ちょっと勃った。
そういえば、どないしよう。こいつらと遥香がいるせいでオナニーができないんだよなー。
んー、トイレでするのは嫌いだし、どうしたものか。考え考え爪を立ててゆっくり掻いてると。
「あっ……あんっ! ふっ……あっ……ああっ……! らめぇ……!」
余計な喘ぎを振りまく娘がいて、畜生、わざとやっているのか!? 加速度的にムラムラしたぜ!?
「てめえ、なに気分つくってんだ、やめろよ!」
「か、和彦さんの指つきが卑らしいですの。邪なことを考えてらっしゃいますね!?」
逆に抗議を返された。
「ち、ちっが……違うって、そりゃねえよ、俺にロリコン趣味はねえ!」
「私のことなんか興味ないっておっしゃっておいて……爺やが申してました、顔は禁欲の修道士を装って、
内心は嬲りたくてたまらない性欲を持て余す――『ムッツリという奴です、これが一番危険』と!」
「ムッツリ呼ばわりかよ! ええい、そんなに言うなら背中掻くのやめていいよな!」
「あ……っ」
憤慨して歩み去ろうとすると、未練がましい悲痛な声が後を追ってきた。
「そ、その……えっと……か……かい……てほしい……の……」
「あん?」
「か、掻いてほしいですのっ!」
「んー? 何を?」
聞き返すと、屈辱を押し殺すかのように顎先をふるふるさせ、
「せ、せなかっ! 和彦さんのつ、爪で……っ! 私の背中を掻いて、気持ちよくしてほしいですの……っ!」
なに、このいたいけな少女に無理矢理卑語を言わせてるノリ。溜息が出ちゃう。
脱力して萎え「分かった分かった」と戻る俺に、「こ、今度は声出すの我慢しますから……」と微エロな発言。
かくして背中掻きは再開されたが。
「……んっ……ん、んくぅ……っ! ……ふっ……ふっ……くふっ……!? っは……あっ……んんッ!?」
もう声出していいから。ますますイケナイことしてる気がしてくるから。
ふう。
満足するまで掻いてやってから手持ち無沙汰になって、なんとなくフォイレの喉を指の背で擦ってみた。
「ごろごろごろごろごろ♪」
「これは蛆虫というよりにゃんこだな……」
そんなふうにフォイレが恍惚とした表情でうっとりする頃合にシャワーを浴び終わったアイヴァンホーが帰ってきて
「貴様ッ!?」ズギャーン!「話せば分かっ……!?」ドキャッ!「やめなさい!」ガシャン!とひと悶着あったが。
小学生以来机の上に放置していたガンプラ(色の合ってないガズエル)が全壊した他は特に被害もなかった。
「くそう、買った塗料を間違えて泣く泣く塗ったのが却って思い出になっていたひと品がっ!?」
「すまんな」
「『ガズアルにすればええやろ』と説得する良治相手に依怙地になって『ガズイル』と名づけた捏造MSが……!」
「すまんと言っているだろうが! 勘違いするようなことを仕出かす貴様が悪いのだ!」
「なに逆切れ断罪してんだよ! この出来損ないのオロカメンが! 返せ! 俺のガズイルを返せ!」
――なんだか、こうしてくだらないことでぎゃんぎゃん吠え合っていると。
昔欲しくて両親にせがんで困らせた姉貴ができた気分に陥ってちょっとしんみり。
「黙れ!」
ドゴッ
「えぽきしぱてっ!?」
まあ、言い争いを鉄拳制裁で終結させる暴力的なクソ姉貴は今すぐ返品したいところなんだが。
「もうよい、わたしと姫様は寝る! 貴様も眠るがよい!」
捨てゼリフを残すやピシャリと襖を閉めて外界との連絡を遮断。押入れはアンタッチャブルな地と化した。
「やれやれ」
春樹小説っぽく諦念を表していたところ、シェラフにくるまって快眠していたはずの遥香がぱちっと開眼。
「ねえ、かずくん」
「なんだよ。嘘寝してたのかよ」
「フフー、どうでしょう。あたしが寝たフリしてかずくんに襲われるのを待機していたかどうかは藪の中だよ」
「あっそ」
「ねえねえ、あたしの背中も掻いてくれない? こう、寝袋の隙間に手ぇ突っ込んでさ」
「それは掻くというより新手の寝袋プレイじゃねえのか? なんにしろ断る。もう眠い」
「おねがーい。フォイレちゃんよりもイイ声で鳴いてみせちゃるよー?」
文字通り手も足も出せない状態でもぞもぞと媚びる。それこそデカい蛆虫のようだった。
「バカ言うな。そろそろ電気消すぜ」
「えー、そんなあー」
軽くあしらうと目尻をぐーんと下げて困り眉を強調し、泣き眉モードに切り替え。
つぶらな瞳でキラキラといたいけビームを放射してくるが――
「自分がいくつになったと思ってるんだ……十六過ぎた奴にそんな攻撃されても利くかよ」
「ちぇー。昔はかずくんなんかこれで一発だったのにー。納得いかなーい」
と人間サイズの巨大蛆がじたばた。うーん、こういうのをキモ可愛いとか世間では言うんだろうか。
俺には普通にキモいだけだった。
「ふーんだ。お望みどーり寝てやりますよーだ」
「はいはい、不貞腐れても可愛くないから。素直に寝ろ」
「……けど気をつけな? 朝起きたらあたしすっげぇことしてやっから」
くっくっくっ、と笑った数秒後、シェラフの中で「zzzzzzz.......」とグッドスリープに入った。はやっ。
「……俺も寝るか」
彼女のハの字眉を見下ろし、なぜか少しだけ癒された気分になりながら。
消灯してベッドに潜り込んだ。
この夜を境にして。
ドすげえ修羅場が開幕するなんてことも、露知らず……
そして朝が来た。
では戦るか。
フォイレのビジュアルイメージが某ラノベの美少女になってしまう俺。
それはさておきGJ!!です。とりあえず、フォイレ萌えすぎ。
<<149
ああ、とっくに覚悟はできてるぜ
つーかガズイルてwww
また渋いモビルスーツチョイスですね!!
投下します
「う・・・・うぅ」
ゆっくりとまぶたを開くと光が差し込み僕はまた目を閉じた
「涼ちゃん!!!」
「お兄ちゃん!!!」
二人分の重みと痛みが僕の身体を巡った
「痛っ、痛いよ・・・・二人とも・・・・」
僕はそういと二人は慌てて、僕から離れた
しばらくしてゆっくりと身体を起こした・・・・
気だるさと痛みで一瞬驚いたけど・・・・なんとか大丈夫
「はい、ノド乾いたでしょ・・・・お水」
「ありがとう、夏姉ちゃん・・・・・・」
冷たい水を一気に飲み干す・・・・ああ、生き返る
「大丈夫?痛むとこない?」
冬香が僕の背中をさすりながら心配げに聞いてきた
「大丈夫だよ、冬香・・・・ありがとう」
それを聞くと冬香は安心したかのか肩を降ろした
僕が頭を撫でてやると鼻を鳴らして嬉しそうに僕の背中に頬ずりした
「あ〜ん、冬香だけずる〜い・・・・涼ちゃん、私も〜♪」
不満げな夏姉ちゃんの頭を撫でると夏姉ちゃんは嬉しそうに微笑んだ
「それにしても、あの女・・・・涼ちゃんに酷いことして・・・・許せない」
夏姉ちゃんの発した言葉を僕は疑問に思った
「あの女って誰?」
「秋乃と春乃だよ!」
春乃?秋乃?・・・・・誰だっけ?
あ・・・・
「秋乃って人は知らないけど、春乃ちゃんは知ってる・・・・小さい頃よく遊んだ」
僕のその言葉に二人は顔を見合わせ青ざめた・・・・
なに?どうかしたの?
『生きここ』とかぶってすいません
それと短くてすいません
ここで区切ります
まただ、もう・・・・涼さんの浮気者・・・・
涼さんがクラスの女の子と楽しげに雑談している場に私はつかつかと歩み
彼の背中を軽く押した
「涼・・・・・」
あは、『さん』付けなしで呼んじゃったよ・・・・照れりこ
でもいいよね?だって私たち・・・・恋人なんだものね・・・・ふふ
振り返ると涼さんの顔が強張った・・・・
「あ・・・・きの・・・さん?」
酷いな、もう・・・・まるで化け物を見るみたいに・・・・ちょっとショックだよ
「なに、話しているの?」
腕を取り胸に抱き寄せると、涼さんの顔が赤く染まる
ふふ、照れちゃって・・・・可愛いんだよな・・・・もう
食べちゃいたいな・・・・・
「あれ、二人って付き合ってるの?」
そのやり取りを見て、クラスメイトの子がそう聞いてきた
あ、やっぱり?恋人に見える?嬉しいな〜♪
より強く腕を抱きしめると、涼さんは身じろぎして少し後ろに下がった
離すものかと瞳と行動で示すと涼さんは諦めたのか抵抗をやめた
「やっぱり付き合ってるんだ・・・・・」
私たちのイチャイチャぶりを見てクラスメイトの女子がため息混じりにそうつぶやいた
当てられちゃった?それほどお似合いかな?私たち・・・・照れりこ
「残念、私〜、神坂のこと狙ってたのに〜」
猫なで声と共に彼女の指が涼さんの胸を這って行く
「ねぇ、そんな誰とでも寝るなんて女なんかより・・・・私なんて・・・・どうかな?」
この女、男の人に媚びることに慣れている、どういえば男の人の心が動くかよく知っている
「・・・・っ」
気づいたときには私は怒りに身を任せ涼さんにベタベタ触れる汚らわしい手を思い切り叩いていた
「痛〜っい!酷い〜」
それを逆手にとって彼女は私がいかに酷いかということ大げさなリアクションでアピールした
「・・・・・私の涼さんに・・・・気安く触れないで・・・・・」
「あ、なにか言った?」
「涼さんと同じ空気吸うな・・・・同じ地面に立つな・・・・同じ世界に生きるな・・・・」
「なに電波なこと言ってるの?元々、あんたのこと気に食わなかったのよね・・・・中学のときはメガネのおさげ、うじうじイジメられっ子だったのにさ」
彼女は少し間を置いて肩をすかすと大きな声でこう言った
「高校に入って、可愛くなって態度まで大きくなっちゃった?可愛いからって調子に乗ってるんじゃないわよ!」
クラス中の視線が私たちに注がれ、廊下の野次馬が窓から顔を出し面白がっている
「いいじゃん、そんな可愛い顔してるんだから・・・・たくさんのボーイフレンドの中の一人でしょ?だったら一人くらいいいじゃん、神坂を私に頂戴よ」
・・・・怒りを通り越すと人間は頭が真っ白になるらしい
今の私がそうだ、さっきまで怒り一色だった頭の中が今はクリーンになりさっきより怒りは増しているのに状況がはっきりと解る
私が一歩踏み出し言葉を発しようとした時だった
乾いた肌の音がして私はさっきまで感じていた涼さんのぬくもりが離れたのに気づいた
「叩いてごめん・・・・でも、いい加減な噂を鵜呑みにして・・・人を中傷するキミがどうしても許せなかったんだ」
いつも大人しい、涼さんがこんな行動を取るなんて・・・・
私はもちろんギャラリー全員が呆気に取られている
「涼・・・・さん」
「・・・・神坂」
愛だよね?愛の力?きゃは♪嬉ぃ〜♪
「・・・・・」
私はそっと涼さんに近づき方をポンと叩いた
振り返った顔に間髪入れずに顔を近づけ、私は涼さんと口付けた
「・・・・んむ」
驚きで見開かれた目が私一点を見つめる・・・・
やっとだよ、やっと私のファーストキスを捧げることができたよ・・・・
「んぱ!!」
肩に手を置かれ、私は無理やりに引き離された
「秋乃・・・・さん・・・・」
私は涼さんの頬にチュッとキスして青ざめた表情の負け犬を見下ろした
「どう、私たちがどれだけ愛し合ってるか・・・・解った?」
ふふ、なにも答えられないでしょ?
「涼さん、屋上でご飯食べに行きましょ?」
なにも答えることの出来ない負け犬なんてほっておいて私は彼の手を取り、ギャラリーをかき分けて廊下に出た
「秋乃さん・・・・誤解を招くこと・・・・しないで欲しいのだけど」
周囲を見回して人がいないのを確認すると涼さんは小さくつぶやいた
「誤解って?」
「キスしたり愛し合ってるとか・・・・そういうの」
もう、照れちゃって・・・・可愛いな
「涼さんが女性に慣れていないのは知ってますけど、私にまで壁作ることないじゃないですか」
「壁?」
「はい♪私たち恋人なんですから・・・・ね?」
涼さんは悲しげに俯きこう言った
「キミとは付き合えないよ・・・・」
え、いま・・・・なんて言ったの?
「ごめん、夏姉ちゃんと冬香が待ってるから・・・・行くね」
唖然とする私の手を振りほどき彼は足早に駆けて行った
遠くなっていく背中を見つめ私は微笑んだ
ようやく状況が理解できたよ・・・・ダメだよ涼さん
涼さんが照れ屋さんなのはわかるけど、これは度が過ぎると思うよ
ここは恋人の私がなんとかしないとね・・・・
だってほら・・・・結婚したら毎日一緒なんだよ?
今のうちに慣らしておかないと照れ屋の涼さんがストレスで死んじゃうよ
ここは私が一肌脱いであげなきゃね
怖い、秋乃さんのあの目が・・・・
クラスメイトの女子と会話するだけで彼女は物凄い形相でその光景を睨むように見つめる
以前は大人しく清楚で・・・・大人しい子だったのに・・・・
正直な話・・・・好きだった女の子がそんなになってしまって僕はどうしていいのかわからなくなっている
でも、学校も休みだし・・・少しの間・・・・安息が続く・・・・はず
春休み・・・・夏姉ちゃんと冬香は親戚の家に行っていて今は僕一人・・・・
二人と関係を結んでしまいそれに加え秋乃さんの豹変ぶりなどで心が休まることのなかったけど
一人の時間を持てるようになって少し気が楽になったように思える
秋乃さんの件はともかく、夏姉ちゃんと冬香の件は・・・・あまり楽観視できないな
秋乃さんはそのうち諦めてくれるだろう・・・・でも二人は・・・・・
コンビニの袋をブラブラと揺らしながら僕は誰も居ない家の前まで・・・・
あれ?明かりが付いてる・・・・もしかして
僕は家の中に急いで入り廊下とリビングを繋ぐドアを開いた
「お帰り!ふた・・・・り・・・・とも?」
見えた人影は一つ・・・台所でよく見知った、けれどこの場では見慣れていない少女が立っていた
「あ、涼さん・・・・」
満面の笑みが僕を出迎えた・・・・
その少女は・・・・秋乃さんだった・・・・・
「どうして・・・・・鍵は!?」
「ダメですよ〜、鍵の隠し場所はちゃんとしていないと・・・・ストーカーでも勝手に入ってきたらどうするんですか?ただでさえ涼さんはモテルのに・・・・」
テーブルの上に乗っている門の近く置いてある植木の下に隠してある予備の鍵を見て僕はゾッとした
「待っててくださいね・・・・もうすぐご飯出来ますから・・・・」
僕は・・・・・
A 『なにも出来ずにただ立ち尽くした』
B 『彼女を拒絶した・・・・』
C 『??????』
アビス氏は沢山書いてくれて大変GJなんだが
やはり平行して見てると話がなんだかわからなくなってしまって・・・・
ここまで読んでくださった方、お疲れ様です
ブラッドのサノベを完結させようとその作業に徹していたので投下ができませんでした
ごめんなさい・・・・
友人に頼んで選択肢を付けてもらいなんルートか作っているので書いても書いても終わらない・・・・orz
今のところ全体の30%くらいまで書き終わりました
友人君によるとそれだけで二時間ほどのプレイ時間らしいです・・・・どうなることやら
本編と追憶編両方を完結させる予定なので、続きまでもうしばらくお待ちください・・・・
Cルートは皆様に原案として協力して欲しいのですが・・・・どうでしょうか?
こんな展開はどうだろうか?とか、こんなの面白そうとか・・・・
皆さん協力なくしてはCルートは完結できないのでどうかよろしくお願いいたします
まずはAルートとCルートから書く気でいます
どうかご協力お願いいたしますです
>>149 やべえ、フォイレが可愛すぎる
そしてこれからの修羅場への期待がw
>この夜を境にして。
ドすげえ修羅場が開幕するなんてことも、露知らず……
そして朝が来た。
ハァハァ・・・ウッ・・・・・・・
>>132 おいらも依存っ子の雫を応援するぜ(*´д`*)
>>142 エロイ!そして、それがいい!
志穂可愛いよ、志穂
>>149 フォイレの可愛さは蛆虫と分かってもあがえん
助けて、変な属性付いちゃったよ(;つД`)
>>159 秋乃さんが堪らん
すまぬが嫁にいただき(ターン
C希望案
恐怖と心細さのあまり電話を掛ける
かけた電話の先は夏冬姉妹
なんてのはどうでしょう?
Cの希望案
思わずその場から逃げてしまう涼、追いかけるヤンデレ秋乃さんとか。
GJ!!秋乃さんを受け入れない涼はどうかしてると思う。
>>149 フォイレに萌え死にそうです…
このままだと悶死してしまうw
>>142 志穂エロいよ志穂(*´Д`)ハァハァ
>>149 フォイレのおかげで新たな自分に目覚めました!
>>161 >ストーカーでも勝手に入ってきたらどうするんですか?
秋 乃 さ ん は 本 当 に 素 晴 ら し い な !
>>161 やっぱりここは「誠心誠意説得する」ではないでしょうか。
涼君がどんなに説得して別れ(てか、付き合ってないけど)を
理解させようとしても聞き入れない秋乃さん (;´Д`)l \ァ l \ァ
久々にSS書いていたら、ここのに影響され過ぎたせいかだいぶ作風が変わっている事に気付いた。
ありがとう、職人さん。
>>170 おい待て、ここのスレに書くのがまず先だろう?
>>170 新たに得た力、見せてもらおうか
いや、見せてくださいお願いしますm( __ __ )m
>>169 (*´д`*)
>>161 C:姉妹に助けを求める
やっぱり頼りになるのは自分を愛してくれてる身内でしょ
あと
>>169もいいな。
少年誌の主人公並みの熱き思いを真正面からぶつけて説得
でもまあ
上手くいかないのは火を見るより明らかなんだけどね
Cで、逆、逆レイプ
投下します。
「なんじゃと!?」
謁見の間に大声が響く。それは、王の座る玉座のすぐ隣りから発せられた。
報告を発した使者は勿論、周囲の武官や文官、隣にいる王も、驚きに目を見開いて声の主を見る。
それは、この国の王女だった。
今でこそ豪奢なドレスを身に纏い、生来の美貌もあって人形のように見える彼女だが、
その実彼女は戦姫として名高く、周辺諸国に知らぬものはない。大陸一の大国が誇る、戦の天才なのだ。
どんな報告がなされようともその無表情を変えることは滅多にない王女だ、周りの驚きも当然だろう。
しかし王女をよく知る数人は、今回ばかりはそれも仕方ないことだと思った。
「あいつが・・・あいつが死んだだと! デタラメを申すな!」
王女は使者の報告に、掴みかからんばかりに激昂する。
彼女の言うあいつ・・・それは隣国の同盟国の王子のことだ。と言っても弱小国であり、対等な同盟というより
傘下にあったと言う方が正しい。事実、つい数年前まで跡取りの王子を人質としてこの国に差し出していた。
大国で日々を過ごしながら、王子は聡明で武勇にも優れた人物へ成長した。
成人するとともに新たな人質と交代で国へ戻ったのだが・・・。
「ほっ、本当です。帝国との戦争で・・・。王子も善戦されましたが、圧倒的な戦力差の前に敗北。
自軍を逃がすべく撤退のしんがりを務められ・・・重傷を負った状態で崖から転落。
死体は確認されておりませんが、おそらくは・・・」
顔面を蒼白にした王女を案じてか、最後まで言葉は紡がれなかった。
しかしその場に居る誰もが、かつてこの宮廷で親しまれた少年の生存が絶望的であることを悟っていた。
「王女様、こちらへ・・・」
呆然自失になった王女の下へ、奥に控えていたお付のメイドが近づく。
王へ一礼すると、王女の背中に手を回して謁見の間を出て行った。
されるがまま出て行く王女を、周囲の者たちは痛ましげに見つめていた。
【王女】
嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ。あいつが死ぬわけが無い。
あいつは強い。私ほどではないけれど強い。あいつがどれだけ努力してきたかは、幼馴染の私が一番よく知っている。
幼少時に人質となってやってきたあいつは、私の初めての遊び相手となった。
当時、父上は戦争で忙しく、今は亡き母上も病床の身で、私は寂しさから周囲に当り散らすような子供だった。
加えて大国の王女ということもあり、貴族の子弟たちでも近づいてくるのは私の身分にあやかろうという者ばかりだった。
そんな中で、あいつだけは違った。どれだけ邪険にされ、時に手を上げられても私の後ろをトコトコ付いてきた。
人質という境遇への同情もあったけれど、いつしか私も態度を軟化させ、同時に周囲へ癇癪を起こすことも少なくなった。
『いーい? 将来私をお嫁さんにしたかったら、私より強くならなきゃダメよ?』
『ええっ? それはムリじゃないかなあ。君って大人の騎士さんより強いんだもん』
『だったらあんたも強くなりなさい! 女の子に負けて恥ずかしくないの!?』
『君は特別だよぉ・・・。それに、君と僕じゃ立場が・・・』
『ええいっ、ツベコベ言わない! 子分のくせに、あたしの言うことが聞けないの!?』
『わ、分かった・・・僕、頑張るよ』
『その言葉、忘れるんじゃないわよ。約束よ!』
他愛も無い会話が思い出される。結局私は素直になれず、いつもあいつを子分扱いだった。
でも、私は真剣だった。あいつだってきっとそうだ。武術、戦略論、政治、その他色々・・・。
あいつは毎日必死に勉強していた。時に私と遊びに行く約束を忘れるほど。
その時は怒りもしたが、その努力も私の為と思うと自然と胸が高鳴った。
別れの日、私は表面上は何とも無い顔をしていた。いつも通りの仏頂面に、凛々しく成長したあいつは変わらぬ笑顔で苦笑していた。
でもそれから数日、気分が優れぬと言って自室に閉じこもり、泣いて過ごした。
10年も一緒だったあいつは最早私の半身も同然だったのに。どうして最後まで素直になれなかったのだろう。
それから私は、父が進めるどんな縁談に首を縦に振らず、政治や軍事に没頭した。周りは嫁の貰い手がなくなると嘆いたが構わない。
私にはあいつがいる。あいつは私のこんな側面を知っているし、それで態度を変えるような男じゃない。
あいつが国に戻って以来、あの弱小国も周辺国に一目置かれるようになっている。立場の差を越えて私に求婚に来る日も遠くないと、
内心期待に胸を膨らませていた。
なのに。
「・・・おるか」
「はっ、ここに」
私の声に答え、‘影’が気配を表す。
「帝国の情報を集めよ。あいつを手に掛けたという者を探せ。それから、騎士団長にここへ来るよう伝えよ」
怒りと悲しみが、時間を置いて一つの感情を引きずり出す。それは、暗い復讐の炎だった。
「かの帝国を滅ぼす。あの国の者は皆殺しじゃ」
それくらいせねば、あいつの無念に報いられぬ。それだけの手土産を持っていけばあいつも喜び、あの世で私を愛してくれるだろう。
あいつがいない、こんな世界に未練は無い。全て、滅ぼしてしまおう。
【メイド】
私はただのメイドでなく、王族付き候補である、戦闘や諜報の訓練を受けるメイドでした。王族付きともなると、ただ身の回りの世話が
できればいいわけではなく、暗殺などからも守らねばなりません。しかし常にゴツい騎士が付いていては相手も警戒するし、何より堅苦しい。
そこでメイドにそれらの技術を教え込むのです。
出自は問わず、素質のありそうな子供が選ばれます。そして、幼いうちから厳しい訓練に明け暮れます。メイドなので、戦闘系の訓練
ばかりでなく、家事全般や礼儀作法も勿論勉強しなくてはなりません。
今でこそ王女付きのメイドですが、昔の私ははっきり言って落ちこぼれでした。辛くて逃げ出したかった。でも、孤児だったところを
拾われた私には他に行くところなどない。メイドになりたいわけじゃない、でも捨てられたら生きていけない。
僅かな休憩時間、私はいつもお気に入りの湖に来て泣いていました。
そんな時でした、あの方に出会ったのは。
『ねえ君、泣いてるの?』
『えっ、あ・・・私は・・・』
誰も来ないような場所だったので、驚いた私は間の抜けた返事しか出来ません。
その少年は涙に濡れた私の顔を持っていたハンカチで拭き、さらに湖の水で濡らすと訓練で怪我した手首に巻いてくれました。
そして隣に座り、ただじっとしていました。きっと、私から話しかけるのを待っていたんだと思います。
でも私は俯いたまま何も言えなくて・・・結局そのまま別れて・・・私には、手首に巻かれたハンカチだけが残りました。
後日、私は王女に怒られているその少年を見かけました。彼は隣国から送られた人質だったのです。訓練で政治的知識の教育も受けていた
私には、彼がどういう立場なのか分かりました。もしかしたら、私より辛い境遇にある人なのかもしれない。それでも私に笑いかけてくれた。
その日から、私は人が変わったように訓練に打ち込みました。王族付きに、王女付きになれば、あの方の傍に居る機会も増える。
守って差し上げられると思って。また、例の湖にいると、思い出したようにあの方が現れます。初めて会った時のことを覚えていてくれて、
他愛の無い話をするのが私の一番の楽しみでした。彼が思い出さなかったので、ハンカチは返していません。あれは、今も私の宝物です。
王女様、私は貴女が好きです。お付のメイドとなった私に良くしてくれました。貴女には幸せになって欲しいと思います。
でも、それ以上にあの方に幸せになって欲しい。そしてそれは王女様、貴女には出来ないことです。
知らないでしょう、貴女は。弱小国の人質であるあの方が、貴女の視界の外でどんな目に遭ってきたか知らないでしょう?
貴女との仲の良さに嫉妬した貴族たちにいたぶられ、しかし立場ゆえそれに抵抗できず、『訓練でケガしたんだ』と嘘をつくあの方を。
貴女の気持ちは知っています。でも二国の力の差が生む現実を、貴女は分かっていない。
あの方は死んでいない。私は冷静な判断からそう思っています。弱小国とはいえ、今やあの方の勇名は大陸に広く響き渡っています。
首級(しるし)を上げるのがどれほどの武勲になるか計り知れません。きっと誰もが血眼になってあの方の遺体、身体の一部を捜しています。
なのに見つからない。それは、つまり‘そういうこと’なのです。私はそう信じています。
王女様、命令通り私はこれから帝国の諜報へ向かいます。でも、途中で‘思わぬ発見’をしたら、もう戻れないかもしれません。
その時は、私も死んだものと思ってくださいね。
【少女】
私の村は、大国に挟まれた弱小国の小さな農村。周辺国への機嫌取りにいつも貢物を送っているので税金は高く、生活も厳しかった。
でも数年前から、そんな生活が少しずつ向上する。ずっと隣国で人質生活を送っていた王子様が帰ってきたからだ。
王子様は優しくて勇敢で頭も良くて、無駄ばかりだった予算をぎゅっと絞ると、その幾らかを国民に還元した。
弱小国なので軍備に力を入れざるを得ないのか、税金は少ししか安くならなかったけど、村の皆も喜んでいた。
私も、私に色目を使うばかりで何もしてくれない嫌なお役人が来なくなって嬉しかった。
ある時、敵対関係にある帝国が攻めてきた。宣戦布告もない奇襲だった。王子はすぐにかつて人質だった国に援軍を頼んだけど
間に合いそうも無くて、少ない軍隊で迎撃に出た。王子の為なら、と多くの人が義勇軍として参戦し、私のお父さんも帷子と斧を
装備して出かけていった。
結局、戦いは敗北。でも戦死者は少なく、参戦した村の人たちも殆ど帰ってきた。「王子がしんがりを務めて、わしらが逃げる時間を
作ってくれたんじゃ」とのことだった。そう、殆どみんな無事で帰ってきた。・・・私の、お父さんを除いて。
母は既に亡く、私は一人きりになった。多くの人たちが私を引き取ると言ってくれたけど断った。この家を捨てるなんて考えられなくて。
数日後、王子が戦死したという情報が入った。みんな、もうこの国は終わりだと嘆いた。私もそう思ったけど、もうこの国のことなんて
どうでもよかった。
そしてその日も何とはなしに川辺に出かけた私は・・・ボロボロの鎧を纏った、とても綺麗な男の人を見つけたのだ。
騎士さんだろうか。その人は息をしていなかった。パニックに陥りかけた時、一つの手段が浮かんだ。
――人口呼吸――
瞬間、私は沸騰する。人助けとはいえ、唇を合わせるなんて、合わせるなんて!
でもやるしかない。人を呼んでくるには時間が掛かりすぎる。
人助けだからと自分に言い聞かせ、私はその人にそっと唇を重ねる。
慣れないながらも何度も続けると、咳き込むと共に水を吐き出し、呼吸をし始めた。
安堵した私は、この人を運ぶため、人を呼びに一旦村に戻ろうとして・・・。
「・・・・・・・・・」
この人の鎧を脱がすと、茂みの中に隠した。何故か、そうするのがいい気がして。ボロボロになっていたので脱がすのは簡単だった。
男の人たちに手伝ってもらい、彼は私の家に運ばれた。今はお父さんのベッドに寝ている。
ずっと川を流れてきたからか、まもなく熱を出し、うなされている。
怪我もひどかったけど、それは村の薬師さんのお陰で大分マシになっている。
私はずっと傍にいてタオルや枕を変えたり、服を脱がせて汗を拭いたりした。細身で綺麗なのに全身は傷だらけ。無駄な肉の全く無い
引き締まった身体に、思わず顔が熱くなるのを感じる。
数日後、その人は目覚めたけど・・・何も覚えていなかった。強いショックを受けての記憶喪失だろう、と薬師さんは言った。
そして私は、そんな彼を引き取りたいと申し出た。何人かは心配したけど、お父さんが死んで一人になった私を思ってか、最後には
納得してくれた。男の人はすまなそうに礼を言った。思ったとおりの優しい人だと、私は嬉しくなった。
次の日から、二人での生活が始まった。私は彼をお兄ちゃんと呼び、本当の家族のように生活を始めた。お兄ちゃんも日を追うごとに
体調を回復し、今では農作業に出たり、一緒に家事をしたりしている。向かい合って食卓に座り、その日の他愛の無い出来事を笑いあった。
人柄からか村の皆にも受け入れられ、もうすっかり私のことを任されてしまった。
幸せだった。お父さんと暮らしていた時とは違う幸せが、ここにある。穏やかなだけでなく、時折胸の奥にむず痒いような熱を感じる
幸せさ。お兄ちゃんの顔を見るだけで全身の紅潮を感じる。この幸せが、ずっと続けばいいと思う。
でも不安もある。夜、時折うなされているお兄ちゃん。寝言で誰かの名前を呟く。
――女の名前だ。なぜか直感的にそう思った。どうしようもない不安と、どろどろとした嫌な苦しさを感じる。
(何も思い出さないで。きっと、辛いことだから忘れたんだよ。そんなこと思い出す必要は無いの。ずっと私の傍に居ればいいんだから)
初めてお兄ちゃんがうなされた翌日、私は川辺に隠した鎧を川に流した。
やっぱり隠しておいて良かった。これはお兄ちゃんが昔を思い出すかもしれない物。そんな物ないほうがいい。
お兄ちゃんには、私だけ傍に居ればいいんだから・・・。
次回へ続・・・・・・かない!(ぇ
突発的に思いついた単発物です。今のところ続きの構想も書く気もありません。
まずは「夕焼けの徒花」を書かんといかんし・・・。
もしこの構想を使って続きを書きたい人がいたら言ってください。全然OKです。
人名や国名などもまだ付けてないし。
まぁ、そんな人いませんか。
王子と分かったときの反応を想像してハァハァ・・・・・って、続かないの? |ω・`)
王女と戦争と聞いて王子を挟んで王女2人が王子を取り合う為に戦争して〜って話だと思っちまったぜw
こんなにいい物が続かないとは・・・悲劇だ
>次回へ続・・・・・・かない!(ぇ
(´・ω・`)
(´・ω:;.:...
(´:;....::;.:. :::;.. .....
186 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 17:55:34 ID:qRH5LLQc
悲劇は希望に変わる はずである
悲劇は完璧な絶望となっていくのがこのスレの運命
街に帰ってから、事件の一部始終を冒険者の依頼斡旋所に報告した。
犠牲者が増加していた山賊を退治したとあって、街のみんなから英雄扱いされたが俺たちは素直に喜べなかった。
代償があまりに大きすぎた。
ベイリン傭兵旅団は事実上の壊滅。宿屋の一階は随分静かになった。
そりゃそうか。マローネしか残ってないもんな。他に宿泊している者はもういない。
山道に放置されていた遺体が回収され、後日埋葬される予定だ。
皆の表情は総じて暗い。
夕食の席で姫様が気を遣って喋り続けてくれていたが、あまり長続きしなかったし、
シャロンちゃんにいたっては料理を並べたらすぐに姿を消してしまったくらいだ。
……マローネは。ただ黙々と運ばれた料理を口に運んでいた。
回収されたみんなの遺体を、虚ろな瞳で眺めていたマローネの姿が脳裡に浮かぶ。
「………はぁ…」
俺は自室で独り頭を抱えた。
一段落したせいか。手が空いているときは傭兵時代を思い出してしまう。
『戦争に私情を持ち込むな。そのせいで誰かが死ぬことになるぞ』
師匠から剣を習うとき最初に聞いた教えだ。
当時の俺は耳を貸さなかったが、今になって骨身に染みた。
俺のせいで死んだのだ。あの人たちは。
マローネ……みんなの亡骸を見ても涙ひとつ見せなかったな。
ショックが大き過ぎたのだろうか。
茫然と眺めているだけで、喚くことも俺に怒りを見せることもしなかった。
みんなを死に追いやった張本人が目の前にいるというのに。
――――――マローネはこれからどうするんだろう。
旅団のみんなはもういない。傭兵部隊と言っても残ったのはマローネ独りなのだ。
これまでのような生活はとてもできないだろう。
俺たちのように斡旋所から仕事を貰って食い扶持を稼ぐのが、無理のない流れかもしれない。
そうだな。とりあえずマローネとこれからのことについて話そう。
もしあいつが構わないなら、俺たちと……。
それにマローネが俺をどう思っているのか訊いておきたい。
「―――よし」
俺は部屋を出てマローネの部屋に向かった。
「マローネ。俺だけどちょっといいか?」
ノックをしながら声を掛けたものの、反応がない。
しばらく待ってみてもやはり返事はなかった。
出直すべきか迷ったが、先延ばしにするわけにはいかない。
「開けるぞ…?いいな?」
そっと扉を開けて中の様子を窺う。部屋の中は暗い。
……もう眠ってしまったのか。そう思ったが。
「お兄ちゃん?」
蝋燭も灯さず、ベッドに座っているマローネを見つけた。
「お前……明かりくらいつけろよ」
月明かりだけを頼りに蝋燭に火を灯した。
「ごめんね。考え事してたから気付かなかった」
蝋燭のおかげで少しマローネの表情が窺い知れたが、やはり様子がおかしい。
夕方に変だと思ったのはただの思い過ごしではなさそうだ。
「どうしたの?」
こちらに顔を向けられて俺は一瞬ぞっとした。
まるで生気が感じられない、操り人形のような不気味な動きだった。
「あ……いや」
マローネの様子に尻込みしてしまったのか、うまく舌がまわらない。
…何言い淀んでる。どうして俺はマローネに恐怖を感じているんだ。
「なァに?変なお兄ちゃん。あははっ」
笑い声も何かに憑かれてるんじゃないかと思うくらい薄ら寒いものだった。
不安と恐怖で心が掻き乱されそうになる。
……とにかく何か言わないと。
気を取り直して小さく息を吸い込んだ。
「えと……ちょっと話があってな」
なんとか普段の口調で発声することができた。
内心ほっとしながら彼女の隣に腰掛ける。
「だから、なぁに?」
にこにこ笑っている。
「その、さ。これからマローネはどうするんだ?」
「これからって?」
笑っている。
「旅団が……あぁなってしまって……その、お前一人だろ?
このまま傭兵を続けるのか、それかどこかで定住するのか……マローネがどうしたいのか聞こうと思ってさ」
「そんなの決まってるじゃない」
笑っている。
「お兄ちゃんと“二人で”暮らすつもりだよ?他はどうだっていい」
浮かべていた笑みが一層鋭くなった。背中を嫌な汗が伝う。
……俺の目の前にいるのは本当にマローネか?
「マローネ…?」
息が詰まりそうだ。
本当に………どうしたんだよ、マローネ……。
「それより、ごめんね。“約束”守れなくて」
ただ狼狽する俺を他所に、心当たりのない謝罪をするマローネ。
油断すると彼女の雰囲気に飲まれそうだ。
―――“約束”。山小屋のときもそんなことを言ってたな。記憶を辿ってみても全く身に覚えがない。
いったい何のことなのか尋ねようと口を開きかけたが。
「ねぇお兄ちゃん」
俺が言葉を発するより早くマローネに呟いた。ぬらぬらとした瞳に自分の姿が映っている。
「な、なんだ?」
さっきよりも顔が近い。思わず背中を仰け反らせて顔を離した。
こちらの動揺を知ってか知らずか、ふっ、と口元を歪めて嗤うマローネ。
「……っ」
マローネから感じる、何か得体の知れないものに俺は恐怖した。
間違いない。
今さら確信した。
さっきから感じる威圧感。
俺への態度が、山道に出掛ける前と劇的に変化していること。
そして、不気味とも言える笑顔。
……マローネは俺に対して、あまり穏やかでない感情を抱いてる。
(やっぱり、師匠が死んだことが原因か…?そうだとするなら、それは俺の……)
「…ここから国境を越えて、その先の森にね、昔、旅団のみんなで使ってたお家があるんだ」
何やら話し始めたマローネの横顔を眺めながら、ある考えが俺の脳裡を去来した。
もしかすると。マローネは俺を恨んでいるのだろうか。
師匠にも、他の旅団のみんなにも、勿論マローネにだって一生かかっても返せない恩があった。
にも関わらず俺は戦いの場であんな行動をしたのだ。許されないことなのかもしれない。
マローネにとって師匠は唯一の肉親だし、長年一緒に旅をしてきた傭兵のみんなは家族も同然だ。
それを、俺は今日。マローネから奪った。
独りになる辛さは身を持って知っているはずだ。三年前、嫌というほど痛感した。だと言うのに。
結果だけ見れば俺がやったことはモルドと然して変わらない。
――――――もし、そうなら。俺はマローネに断罪してもらわなければならない。
「そこでさ、あたしたちだけで――――――」
正直、訊くのはとてつもなく恐い。
でも、はっきり尋ねないと。ここで訊かなければ後々大きなシコリを残すことになる。
「…マローネ」
「え?」
俺はマローネの声を遮って。
「俺が……憎いか?」
正面から彼女の眼を見た。
「お兄ちゃん…?」
「俺が勝手な行動をしたせいで師匠たちは死んだ。こんな結果になったのは間違いなく俺の責任だ。
お前が俺を恨んでるんなら、俺が師匠を殺したと思っているなら………」
お前の前から消えるよ。そう言おうとした瞬間。
「……違うよ。それは絶対違う」
マローネの雰囲気がまた一変した。
腹の底から溢れあがる怒りを精一杯抑えるように震えている。
てっきりそれは俺に対するものだと思い込んでいたのだが。
「なんでお兄ちゃんがそんなこと言うの?お兄ちゃんは何も悪くないじゃない。
悪いのは全部あいつでしょ。マリィとかいう女。
あいつがお父さんを殺した。あいつがお兄ちゃんの幼馴染みを殺した。
あいつがあたしたちから大切なものを根こそぎ奪ったんだよ!?
あいつが全部悪いんだ。…あいつが。
あいつが!あいつが!あいつが!あいつが!あいつが!あいつがあいつがあいつがあいつがあいつがぁぁぁぁぁッッ!!」
「お、おい!マローネ!?」
さすがに動揺した。
言ってる内容もそうだが、それ以上にマローネがこれほど怒りを露わにしたところを見たことがなかった。
「なのにッ!!なんであいつはのうのうと生きてるの!!
あいつこそがとっととくたばるべきなのにッ!!あたしの前をうろうろッ、うろうろとしやがってッ!!」
突然立ち上がり、手近なところにあった花瓶を叩き割る。その拍子に飛んだ破片で切ったのだろう、腕に切り傷を創っていた。
それでもマローネの激昂を治まらない。
なおも暴れようとするマローネを落ち着かせようと彼女の腕を掴んだ。
「それは違うぞ!団長は何も悪くない!お前も傭兵なら解るだろ!?」
完全に錯乱状態で、こちらの声がちゃんと届いているのかも疑わしい。
「いやッ、いやッ!離して!!
どうして!どうしてあんな女なんか庇うのっ!?あいつがみんな悪いのにッ!!」
「ああするしかなかったんだよっ!ああしなきゃ俺もお前も死んでた!
団長は俺たちを助けてくれたんだぞ!?彼女を責めるのは筋違いだ!」
「違うッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
俺の腕を振り解いて恫喝。
「あいつが全部盗ってっちゃうんだ………
旅団のみんなも、お父さんも、お兄ちゃんも……あいつがみんな――――――」
一歩下がりながら俺を睨む彼女の目には、涙が浮かんでいた。
「お願いだから、そんなこと言わないでよ……あいつのこと庇わないでよ……
あたしには………あたしにはもう、お兄ちゃんしかいないのに……」
しゃくりあげながら。懇願するマローネを見て俺は黙ってしまった。
いったいどうしたって言うんだ。何がここまでマローネを追い立てている?
みんなが死んだことでナーバスになってるだけか?それとも……。
確かに師匠が死んだ直接の原因は、団長が撃った銃弾だ。
でも、マローネだって傭兵だ。あの瞬間には無理だったとしても、今ならああするしかなかったって解ってるはず。
なのに。どうしてそんなに団長を目の敵にするんだ。
とにかく、今のマローネを放っておくわけにはいかない。
「マローネ、聞いてくれ。
師匠が死んだことで俺を責めるのは構わない。
…だけど団長を恨むのだけはやめてくれ。彼女は苦渋を飲んで汚れ役を買って出てくれたんだ。
俺が仕出かしたことの尻拭いをしてくれただけだ。団長に非はない」
せめて。団長に矛先を向けるのは考え直してもらわないと。
マローネを説得しようと試みたが、聞き入れるどころか全くの逆効果だった。
「違うッ!!違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うッッッ!!!
悪いのは全部あの女!!あいつがいたからお父さんは死んだ!!あいつがいたからお兄ちゃんは苦しんだ!!
そうに決まってるッ!絶対そうに違いないんだからッ!!」
首がもげようかというくらいかぶりを振り、拒絶する。もういつものマローネの面影は、そこにはなかった。
「お兄ちゃんはあの女に騙されてるんだよ!!あいつが死ねば騙されてたってすぐに解るから!!
ねっ!?だからあいつ殺して何処か遠くに行こうよ?そうだよ、それがいい!それがいいに決まってる!!」
一気に捲くし立てる言葉の意味と、マローネから伝わる只ならぬ殺意が、俺の理性をも奪おうとする。
そして。
「いい加減にしろッ!!」
俺もどうすればいいのか解らなかった。本当は根気強く説き聞かせるべきだったんだろう。
だけどマローネの異常に動転していた俺は、怒声で以って彼女を叱りとばしてしまった。
「あ………」
さっきまでの言い争いが嘘かと思えるほどの静寂。
この世の終わりだとでも言うように見開かれたマローネの瞳が、俺を射抜く。
しまった、と思ったときにはもう遅かった。
「……出てって」
彼女の瞳は何を見つめているのか、彼女のその表情はいったい何の思いの表れなのか。
本当にもう。何をどうすればいいのかさっぱり解らなかった。
「早く出てってよッ!!お兄ちゃんなんか大ッ嫌い!!
出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ!!!!」
「まっ、待てよ、マローネ!いいから聞けって!」
物凄い力で部屋から押し出される。泣き腫らながらも暗いその瞳は、俺の声が届いていないことを雄弁に物語っている。
結局、部屋の外まで締め出されてしまった。
バタンッ!
蝶番が壊れるかと思うほどの勢いで扉が閉められ、施錠の音が次いで聞こえた。
「マローネ!おい!開けてくれ!!…マローネ!!」
乱暴に扉を叩くが、もう二度とその扉が開くことはなさそうだった。
「……マローネ…」
ほとぼりが冷めるまで待った方がいいだろうか。
いや。マローネがさっき言っていたことが頭から離れない。
このまま引き下がると、取り返しのつかないことになりそうな気がする。
もう一度、扉をノックしようと手を上げたそのとき。
「ウィリアム様」
誰かの声が俺を呼び止めた。
ここまで。
残り二話ですが一話単位の分量がえらいことになりそうです。
>>194 ぐっじょぶ。大丈夫長くても。読むから。
196 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 19:33:58 ID:TTp0AXfD
>>194 頑張ってください。
個人的には、ブラマリはここで一番好きなSSなので長い方が読む楽しみが
増えるのでうれしいです
投下します
「秋乃さん・・・・どうしてここに?」
「恋人なんですから、家族が居ない間は私が面倒みないと・・・・そうでしょ?」
どうして夏姉ちゃんと冬香がいないのを知っているのかそんなことどうでもよかった
「秋乃さん、話があるんだ・・・・ちょっとこっちにきてくれないかな?」
僕がそう言うと彼女はエプロンを脱ぎ火を消してこちらにとことことやって来た
僕の前までやって来ると秋乃さんは、はにかんだ
昔の僕なら、この笑顔に一発でノックアウトされていただろう
でも、今は・・・・彼女が・・・・信じられない・・・・
「前にも言ったよね?僕・・・・キミのこと信じられないって・・・・・」
「あれは、でも・・・・あんな些細なことで・・・・」
「キミにとっては些細なことかもしれない・・・・でも」
好きな子が、双子の姉妹と入れ替わって僕と接していた
その理由は解らない、でも僕に嘘を付いたのは事実
僕は南条秋乃が好きだった
けれど、僕の好きな南条秋乃はどっちの南条秋乃なのか解らない
「謝ってるじゃないですか・・・・だから、そろそろ許してください・・・・それにほら、私のこと好きだっていってくれちゃじゃないですか」
「なら、教えてよ!僕の好きだった南条秋乃はどちらの南条秋乃なの!キミ?・・・・それとも、双子の妹さん?」
彼女にこの答えが解るわけが無い、だって僕の想いだから
僕にしかわからないことだから・・・・
「私です♪」
僕は驚いていつの間にか下げていた顔を思い切り上げ彼女を見た
「どうして、断言できるの・・・・」
「だって、私と涼さんは赤い糸で結ばれているから・・・・」
頬を赤に染め身体をくねらせる秋乃さん
こんな可愛いらしい姿に男ならドキリとするはずなのだが・・・・
僕には恐怖しか、なかった
完璧だ・・・・完璧な・・・・・
「こ、これ以上・・・・僕に付きまとわないで!」
怖い、その可愛らしい顔が・・・・
怖い、その愛らしい瞳が・・・・
そして、思い出す・・・・彼女の記憶
初めて逢った日・・・・
メガネを掛けていて髪はおさげ、クラスでは目立たない子だった
今は覚えていないほど些細なきっかけで話す様になって気さくで優しい子なんだ気づいた
容姿の相談をされたとき初めて、彼女が魅力的な容姿をしていると気づいた
彼女がクラスの女子のリーダー格にイジメに合い泣いている彼女を見て僕が割ってはいりイジメをやめさせると彼女はこれでもかって位にお礼を言って涙した
涙しながらも笑顔を作る彼女を見て気づいた
僕は彼女を護りたい、彼女が好きなんだと・・・・・
高校に入って、すさまじく可愛らしくなった彼女
あまりの人気ぶりに少し寂しくなった
けれども、会話してみて変わっていない彼女を見て安堵した
年明け、告白されて正直嬉しかった・・・・
告白も受ける気でいた・・・・彼女が
好きだったから・・・・・
その後、自分から告白しようと思った時に夏姉ちゃんから『あの事』を聞くまで僕は・・・・
彼女が好きだった・・・・
あの出来事のあとの彼女は・・・・僕にとって恐怖でしかなかった
何度も送られてくるメール・・・・毎日何十回も掛かってくる電話
バレンタインの日、ふと振り返ると居たにこやかな彼女・・・・
家に帰ってふとカバンを見るといつの間にか入っていた、チョコを見て驚愕した
怖かった、どうしょうもなく・・・・彼女が・・・・
だから、ここで決着を付ける・・・・
ここではっかりと拒絶しておかないと泥沼にはまり込んでしまう
「キミのことが・・・・信じられない!怖いんだ!」
だから、もう僕のことはほっておいてくれ・・・・
「・・・・・・・」
彼女は無言で俯いた
腕を少しぶらぶらとさせゆっくりと近い距離をさらに近づけてくる
「涼さん・・・・」
まるでテレビで幽霊モノを見ているような感覚だった
「今まではゆっくりと治療しようと思っていましたけど・・・・これは早急な治療が必要でね」
ゆっくりと顔が上がった
その瞳から伝う涙の意味するものを・・・・僕はわからなかった
「我慢してくださいね・・・・涼さん・・・・・私も悲しんですよ、辛いんですよ?だから・・・・・」
か細い指がゆっくりと僕のほうに向かってくる
「く、来るな!!!!」
僕は踵を返し、急いでその場から逃げ出した
とりあえず自分の部屋の飛び込みドアを閉じ鍵を掛ける
助けを、夏姉ちゃん・・・・冬香・・・・・
ケータイを探してポケットをごそごそといじくる
ない・・・・
辺りを見回してケータイを探す、充電器のみで本体が無い・・・・
僕が机の上を探そうとしたときだった
ドンドンドン!!!
ドンドンドン!!!
ドンドンドン!!!
みしみしと音を立てドアが激しく叩かれた・・・・
「ひ・・・・・」
「涼さ〜ん、あけてくださ〜い!」
秋乃・・・・さん・・・・・もう・・・・・勘弁してよ・・・・
「来るな・・・・来るな!!!!」
「涼さんは病気なんです、だから・・・・私が治療してあげます・・・・だから早く出てきてくださいよ〜」
なにが病気だ、病気なのはどう考えてもキミじゃないか・・・・・
僕はドアから目を離さずに手探りで机をまさぐった
ない、ない・・・・どこだよ・・・・
「ケータイなら、私は拾っておきましたよ・・・・」
僕の考えを見透かした秋乃さんがそう言った・・・・
もう逃げばはなかった・・・・・
いったい何時間僕は恐怖に堪えていたのだろうか?
気づいた頃にはもう時間は深夜だった
僕は恐る恐るドアを開き廊下の様子を伺った
誰もいない・・・・
僕は辺りに細心の注意をはらいながら廊下に出ると音を立てないように一階に降りて
電話を手に取った・・・・
〈ふわぁ、どうしたの・・・・お兄ちゃん・・・・・〉
「こんな深夜にごめん・・・・実は・・・・」
ガチャ・・・・・・
小さな音と共に電話が切れた
「はぁ・・・・はぁ・・・・・はぁ」
息が荒くなる、手が震える
その震える手を冷たい手がそっと触れた
「捕まえた・・・・ふふ♪」
ドアを叩きすぎて痛々しく腫れ血が流れるその指一本一本が妖しく動き
恐怖で動けないでいる僕を静かに押し倒した・・・・
丁寧な動作で僕の服を脱がし、彼女はこれでもかというほど笑んだ
「さぁ、治療を始めましょうか・・・・涼さん♪」
僕の見た秋乃さんの笑顔の中で一番輝いていたのはこの笑顔だった
原案協力
ID:qHrtV38X様
ID:AlrB1mWC様
ID:HC9HFMGk様
ID:jyrwvq89様
ここまで読んでくださった方、お疲れ様です
サノベを作ってくれている友人とは別の友人から
修羅場スレのもそうだが、他のSSも含めてお前が書くSSは読みにくい
と、指摘されました・・・・
読みにくかったら、ごめんなさい・・・・
友人の叱咤激励?に感謝し、レスをくれる方々に感謝し精一杯頑張りますのでこれからもよろしくお願いいたします
中途半端なところで選択肢つけて、レスなかったらどうしようと不安でしたが
原案を考えてくれた方が予想していたより多くてほんと感謝しております
これからはできる限り考えてくれた案全てで書くようにしますのでどうぞよろしくお願いいたします
早速で申し訳ありませんが、この先の展開の原案をよろしくお願いいたします
申し訳ありません
原案者の方を一人書き忘れました
原案協力
ID:qHrtV38X様
ID:AlrB1mWC様
ID:HC9HFMGk様
ID:jyrwvq89様
ID:3gLpz3fG様
に訂正します
ID:3gLpz3fG様本当にすいません
203 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 20:52:20 ID:+mVHeTrp
GJです。読みにくいなんてとんでもない!最高に面白いです!
これからも頑張って下さい。
もはや秋乃さんはホラーの領域ですねw
こんな彼女が欲しいな
あとは三点リーダの数が多いかなと思ったのと
場所によって数が4個やら5個やら変になってるのはちょっと見ずらいかなと思ったことはある
生意気なこと言ってごめんなさい
作者さんGJでした
さて、この後の展開ですが
姉妹が助けに来る→秋乃生け捕り→この女どうする?
とかどうでしょうか?その後は、短絡的に殺したりせずに・・・
とにかくGJ!これからも期待してます!
>>201 作者様GJ!
この先は…
秋乃タンの隙をみて姉妹が救出
そのまま親戚の家に連れて行き非難させる
「もう大丈夫」「お姉ちゃんが守ってあげるから」と姉妹とほのぼのシーン
しかしその夜…((( ;゚Д゚)))ガクブル
こんなのがいいなあ(*´∀`)
あまりの誤字脱字の多さに凄まじい自己嫌悪・・・orz
2レス目の最後のほうの
「今まではゆっくりと治療しようと思っていましたけど・・・・これは早急な治療が必要ですね」
ゆっくりと顔が上がった
その瞳から伝う涙の意味するものが・・・・僕にはわからなかった
「我慢してくださいね・・・・涼さん・・・・・私も悲しんんですよ、辛いんですよ?」
か細い指がゆっくりと僕のほうに向かってくる
「く、来るな!!!!」
僕は踵を返し、急いでその場から逃げ出した
に訂正
三レス目の最初の方の
とりあえず自分の部屋の飛び込みドアを閉じ鍵を掛ける
助けを、夏姉ちゃん・・・・冬香・・・・・
ケータイを探してポケットをごそごそといじくる
ない・・・・
辺りを見回してケータイを探す、充電器のみで本体が無い・・・・
僕が机の上を探そうとしたときだった
ドンドンドン!!!
ドンドンドン!!!
ドンドンドン!!!
みしみしと音を立てドアが激しく叩かれた・・・・
「ひ・・・・・」
「涼さ〜ん、開けてくださ〜い!」
秋乃・・・・さん・・・・・もう・・・・・勘弁してよ・・・・
「来るな・・・・来るな!!!!」
「涼さんは病気なんです・・・・私が治療してあげます・・・・だから早く出てきてくださいよ〜」
なにが病気だ、病気なのはどう考えてもキミじゃないか・・・・・
僕はドアから目を離さずに手探りで机をまさぐった
ない、ない・・・・どこだよ・・・・
「ケータイなら、私が拾っておきましたよ・・・・」
僕の考えを見透かした秋乃さんがそう言った・・・・
もう逃げ場はなかった・・・・・
似て訂正
すいませんほんとすいません
管理人様申し訳ありませんが訂正をよろしくお願いいたします
作者様GJっす
秋乃さんいいなぁ、主人公の追い詰められ具合とか(*´д`*)
もう、こんなことで興奮する体にした責任とってくださいね☆
GJ秋乃さんの病みがこんなに良いものだったなんて知らなかったぜ!
阿修羅氏のカコイイ題名付けに感謝。投下します。
「はあ……」
「あの、本当に申し訳ありません」
「ああ、別に気にしなくてもいいよ」
心の中で聞こえないように密かにため息をつく。
今日はついてないなあ、と思わずには入られない。
この状況を恭介にでも話せば間違いなくアイツは、
『うらやましいぞ、コンチクショウ!!』などといってラリアットとかを
手加減無しに俺にお見舞いするかもしれない。
下手すれば、追撃がくるかも……だが、俺はそんなに嬉しくはない。
まあ、とにかく彼女を送り届けるのが先決だ。
雪乃さんから、家までの目印になりそうなものを聞いて地元ならではの土地勘を頼りに、
そこを探しだし、彼女が見覚えのあるところまで送る。
そこまで行けば家を見つけることもなんてこともないだろう。
それで、なんとか彼女を家まで送り届けることが出来た。
「でか……」
とりあえず、そうつぶやいてみる。
とにかくデカい、何だこの家は? 簡単に言うと俺んちの軽く三倍はでかいぞ。
庭も広いし家も同じくらいに大きいし、それになんというか庶民の人とは違う独特の敷居の高さを感じる。
無意識の内にこちらに引け目を感じさせてくれるような……とにかくそんな感じだ。
「今日は本当にありがとうございます。わざわざ、送ってまでいただいて……」
雪乃さんは礼儀正しくお礼を言ってくる。
俺はそれを見届けたらさっさと帰ろうと歩き出す。
雪乃さんは何か言いたげにこちらに目をやっていて、
それに気づいて俺も彼女のほうに目を向ける。
「あ、良かったらお茶でも飲んでいきませんか?」
「いや、別にいいよ。そっちも迷惑でしょ」
「いえ、私はそんなことないですから」
「あー、でも……」
「もしかして、ご迷惑でしょうか?」
そう言って、雪乃さんはしぼんで枯れた花のようにシュンとしてしまった。
見るからに元気もない。落ち込んでるのが目に見える。
瞳も心なしか潤んでいる気が、なんか悪いことした気分だ。
「いや、そんなことはないけど」
「本当ですか?」
「うん、まあ……」
「そうですか、それじゃ来てください♪」
彼女の表情が一瞬にして変わっている。
ニコニコしながら俺は彼女の家に招かれていた。
ってか、さっきのはもしかして嘘泣き? もしかして俺、騙された?
そんなことを考えてる合間にいつの間にか腕をつかまれ引きずられ、
家の中へと半ば半強制的にご招待されていた。
まあ、当然ながら家がでかけりゃ部屋は広い訳で……
メディア越しに見えるような装飾品だとか美術品だとかが徘徊しているセレブのような家でもないようだ。
なんだか、清々しいというか開放感があるっていうか、普通の家からは一線を隠してる感は否めそうにないけど。
パッと見て普通の家を限りなく快適に豪華にしたような様子だ。
まあ、考えてみれば家のそこらかしこに高いもんばっか置いてたら危なっかしくてしょうがないよな。
そして、そんなところにくれば田舎から上京してきた人のごとくキョロキョロと辺りを見回してしまう庶民の一員である俺。
「どうぞ、楽にしててください。今、お茶をいれてきますので」
「あ、いえいえ、どーぞおかまいなく」
反射的に何故か敬語を使ってしまう。
もしかしなくても、かなり緊張している。
けど、そんな緊張をはるかかなたにぶっ飛ばす音が静かな室内に鳴り響く。
ガラスが割るような耳をつんざく甲高い音。
音のしたほうへ向かってみればそこらかしこに散乱する陶磁器のかけら。
どうやら、食器を落としてしまったみたいだ、さっきの音もこのせいか。
「あー……その、大丈夫? 怪我してない?」
「だ、大丈夫です。その、今、片付けますので……痛ッ!」
慌てて割れたカップを片付けようとしたせいで、
雪乃さんは指を軽く切ってしまったみたいだ。
俺は割れたところを歩くのは危ないので遠回りしながら彼女に駆け寄っていく。
「えっと……ちょっと見せて」
傷口はそこまで、深いとはいえない。まあ、放っておいても明日にはふさがるとは思う。
とはいえ、子供の擦り傷程度に軽いものでもないので一応消毒くらいはしておいたほうがいいかな。
「ちょっと来て。あ、そっちは破片が散ってるかもしれないからこっちに歩いてきて。
救急箱とって来るからそれまで傷口を洗い流しておいてよ」
そう言って、彼女を台所の流し台へと誘導する。
怪我をしたときは基本的に清潔な水を使って雑菌や汚れを洗い流しておくのが良い。
よくある、つばつけときゃ治るってのは大きな間違いだ。
あれは、殺菌力もあるけど雑菌も豊富にいるのである。
「救急箱ってどこにある?」
「それなら、向こうの部屋の戸棚の上に」
「わかった」
救急箱があるっていう隣の部屋にたどり着く。
戸棚は……っとあったあった。これのことか。一番上の段と。
上の段からシンプルな木でできた箱を取り出す。
意外にもそれは別になんの代わり映えもしないただの箱だ。
ってゆうか、金持ちそうだからってこんなものにまで金をかけるわけないだろ。
そんな、偏見みちた考えを頭から取り去り、俺は急いでこの部屋から出ていく。
「〜〜!!」
「染みるだろうけど、ちょっと我慢してて。
後、乾いたから絆創膏はっといてね。ここに置いとくから」
「はい」
「割れたこれどこにおけばいい」
「えっと、それはその箱の中にでも」
「ここにある、ほうきとちり取り借りるよ」
「あ、どうぞ」
彼女の手当てをすませた俺はテキパキと割った食器の後片付けを済ます。
こっちも伊達に親が共働きで帰りが遅いわけじゃない。
自分で飯を作ることだってあるし、掃除洗濯をすることもある。
俺がやんないと家はそこらのテレビに出るような大家族の家みたいになってるだろう。
片づけが終わったら、後は彼女の手伝いをしてようやく一息つけるようになった。
「ふぅ……」
せわしなく働いたせいか疲れを取るように紅茶を口に運ぶ。
ちなみにこれ、ティーカップのような安物じゃなくてちゃんとした茶葉から取ったやつみたい。
入れ方はさっぱりわかんなかったけど、彼女に色々聞いて教えてもらった。
自分でやったのは、雪乃さんのなんだか手つきが危なっかしかったからで、怪我でもされるとこちらが困るからだ。
紅茶なんて飲む機会なんてあんまり無い俺に味の品評なんて出来るわけもないが、
一応おいしかったと記しておく。
それで、あの雪乃さん? あんまり、凹まないでもらえますか?
そりゃー、あれだけ惨事を起こして、あまつさえ後始末を客人である俺なんかがやったら、面目丸つぶれなのかもしれないけど。
「なんていうか、元気出せば? 別に家事が出来なくたって死ぬわけでもないし。
それに俺の場合、親がいないから仕方なくやってるからこういうことに慣れてるだけで……
普通の奴はこんなに手際がいいわけないぞ」
「ありがとうございます。でも、なんだか情けないです」
そういうと、彼女はますます枯れてしおれた花のように元気をなくしてしまう。
ああ、選択肢を間違えたか!? これじゃ、慰めにもなってない。
とにかく、この話題からは離れといたほうがいいな。また、いつ地雷を踏むとも言い切れんし。
とりあえず、何か別のことを話したほうがよさそうだ。
「あのさ……」
「はい」
「なんで、俺なんかを家に呼んだりするわけ?」
会話の内容としては完全に赤点かもしれんが、これくらいしか思いつかなかったので、
何もないよりはマシかと言ってみた。それに、興味もある。
「もちろん、送ってもらったお礼をしたいからですけど」
「それにしちゃ、無用心すぎない? 見たところこの家、今君一人しかいないようだし。
年頃の男を家に上げるなんて無防備じゃないかってことだよ」
俺の問いに少しだけ場が沈黙に包まれる。
もしかして、また選択肢を間違ったか!?と思ったが彼女は意外と普通に答えてくれた。
「もしかして、不安だったのかもしれませんね」
「不安?」
「父も母もいつも仕事ですし、引っ越したばかりで御付きの人も今日はいないんです。
少し、落ち着かないくて。誰かを家に呼んでれば気がまぎれるかな、って。
こんな、理由で申し訳ないんですけど……」
そう言って、雪乃さんは俺に苦笑してみせる。
俺はそれに特に「そっか」と生返事くらいしかしなかった。
けど、なんとなく気持ちはわかる。
誰だって、一人でいるのは寂しいもんだと思う。もしかして、散歩に出てたのもその気持ちを紛らわせすためなのかもしれない。
人間は一人では生きていけないって、色んなところでよく言われるが俺は生きていけないことはないと思う。
ただ、楽しくはないだろう。
「あ、もちろん入れる人はちゃんと選びますよ。
誰でも入れるってわけじゃないですから」
慌てて訂正するように付け加える雪乃さん、ふしだらな女だとでも思われたくなかったのか。
ということは、必然的に俺は彼女のお眼鏡に適ったってことになる。
「それじゃ、俺は信用できるってなんだ……」
「はい」
「どうして?」
「あなたがあの子たちと遊んでいたとき、優しそうな目をしてたから。
それに、あの子たちもあなたのことを、とても慕っているようですし悪い人ではないかなと思ったので」
「……君はもうちょっと、人を疑うということを覚えたほうがいいね」
「そうでしょうか?」
「いや、そうだろ」
彼女の問いに即行で返事を返す。
いくらなんでも、それはないだろうと思う。
ちなみに、雪乃さんは「これでも、人を見る目はあるんですよ」等と言ってたが、黙殺しておいた。
人事ながら悪い男に騙されそうで入らぬ心配をしそうだ。
ふと、時計を見ればもう結構な時間帯。さすがに、これ以上ここにいるのは不味いだろう。
帰ろうとする胸を伝えると、丁寧に雪乃さんは律儀にも玄関の門まで送ってくれた。
「あの……」
帰ろうとする俺に彼女はおずおずと呼びかける。
「何?」
「もし、よろしければ、また遊びに行ってもいいですか?
も、もちろん、ご迷惑でなかったらなんですけど……」
しどろもどろになりながらも彼女はこちらを伺うように尋ねた。
どこに?とは聞かなくてもわかる。けど、そんなに言うのをはばかることだろうか?
何にしてもあの物怖じしていなかった、彼女らしくないといえばそうだ。
また遊びに来てもいいか? つまり、友達になりたいってことなのかな?
俺の頭じゃそのくらいしか考えられない。
「友達になりたいってこと?」
「は、はい。もちろん、ご迷惑でなければなんですけど」
「………………いいよ」
今の俺に気兼ねなく付き合える友達といえば伶菜と亮介くらいしかいない。
友達の友達つながりも以前は合ったけど、それも今はない。
俺が皆に気を許せずに距離を縮めることが出来なかった。他にも色々理由はあるんだけど、結局原因は俺にある。
そのせいで、二人には迷惑をかけたこともある。
もしかしたら、これはいい機会かもしれない。
確かに伶菜や亮介との関係は心地いい楽なものだと思う。
けど、それに甘えちゃいけない。逃げ場所にしたくないと思う自分がいる。
だから、俺は変わらなくちゃ……いや、変わりたいと思って彼女の返事に答えた。
何もしない奴が何かを成し遂げるなんてできる筈もないから。
それに、雪乃さんはそんなに悪い人じゃないと思う、少なくともあのチビが懐くくらいだし。
俺も友達になりたいと思うしいい友達にもなれると思う……自分勝手な意見かもしれないけど。
向こうから、こちらに歩み寄ってくれてるんだ、だったらこっちもそれを応えればいい。
勇気を出せよ、香月空也。そうして、自分にを叱咤激励する。
「多分あの時間には俺、いつも河川敷にいるだろうから。
来たくなったらいつでも遊びにくればいいよ……」
他にいうことはあるだろうか、そう思って気づいたんだがそういえば彼女に自分の名前を名乗ってなかった気がする。
「えっと、俺の名前、香月空也っていうから。一応、自己紹介ってことで」
「それじゃ私も……神崎雪乃っていいます。よろしくお願いしますね」
「知ってるよ。ってか最初に言ってたし」
「アハハ、言われてみればそうですね」
「それじゃ、また明日……ってことかな?」
「はい、それじゃまた明日に」
そうして、俺はほぼ暗くなった夜道に自宅への岐路についていった。
「空也さん……」
どこか含みをもったように自分の名前を呼んだ雪乃にその時、空也は気づきもしなかった。
中々、修羅場に入れれずごめんなさいorz
仏のような慈悲の心でもう少しだけ待って欲しいです。
wkwktktk
大丈夫、スレ住人は皆般若だぜ!
>>219 焦らされれば焦らされるほど修羅場はおいしくなる
というわけで楽しみにしてます!
般若で思い出したが、この前教育テレビで狂言についてやっていたのだが
その中で出てきた六条御息所が個人的にかなり嫉妬のいい匂いがした
平安時代の嫉妬物とかあるといいなぁと思った
お面では、まとめサイトの背景の般若もいいけど泥顔という濁った目の
お面が何を考えてるか分からないもので良い、御息所が嫉妬で生霊となった時に
付ける面が泥顔だったりする。
GJ!修羅場はカレーと同じでグツグツ煮こめば煮こむほど濃厚になるのさ
投下します。
店内は薄暗く、オレンジ色の照明がカウンターの向こうに有るお酒の瓶に反射して煌めいている。
「どうぞ。」
黒いタキシードを綺麗に着こなしている男性が、グラスを私の前に置いた。
グラスにはやや黄色がかった色の液体が入っていて、グラスの縁にはレモンが半切れ、縦に引っ掛かっている。
本当はもっとこのお店の雰囲気に合ったお酒を頼みたかったんだけど、
私はお酒には強くないから仕方なく軽い物を頼んだ。
「それで、話って何ですか…?」
私が口を開くと、隣に座っているここに連れてきた張本人がビクッと反応した。
「…もう、俺たちも長い付き合いだよな。」
少しの静寂の後、私の恋人、康介さんがゆっくりとした口調で話し始める。
初めは私と康介さんが出会った日の事。
想いを打ち明け合った時の事。
初めてキスした時の事。
ゆっくりと…噛み締めるように話している康介さんの顔は、少し緊張しているように見えた。
「そう言えば、美樹は俺を呼ぶ時『先輩』としか言ったことが無いよな。」
話が一段落した所で、康介さんがそう言う。
私は、「康介さん」と呼びたいのだけれど、私には康介さんと一緒に居た学生時代が長すぎて、
そう簡単に変えられない程に定着してしまったのだ。
今更変えようとしても、恥ずかしくて変えることなんて出来ない。
「だって…今更、『先輩』から変えるなんて出来ませんよ…。」
そう言った途端、待ってましたとばかりに康介さんが笑顔になる。
康介さんの笑顔が私を射抜いて、初めて会った時みたいなときめきを感じた。
「その事なんだがな、美樹の『先輩』癖を治療するのに良い薬を持って来たんだ。」
笑顔のまま、康介さんは私に向かって言う。
だけど、その時の私には康介さんの言葉の意味が全く分からなかった。
まさか、精神科とかで貰ってきた薬をそのまま私に飲ませる訳では無いだろうし…。
第一、そんな薬なんて聞いた事も無いし見た事もない。
「その薬はな、飲んだりして体内に入れたりするタイプじゃないんだ。」
そう言うと、康介さんは着ていたスーツのポケットから藍色の小箱を取り出した。
てのひらサイズのそれを、康介さんは木で出来たカウンターの上に乗せる。
それをぼんやりと眺めながら、私はグラスに少し口を付けた。
これから少しでも飲んでおかないと、気持ちが変になってしまうかもしれないから。
「しかも高い金属と石で出来ていて、大体俺の給料の三ヶ月分くらいするんだ。」
更に言ってから、康介さんは藍色の小箱にゆっくりと手をかける。
側面の中程に有る切目に指を掛けて、上に引き上げると、それは簡単に開いた。
中には、銀色に輝く輪が入っていて、頂点には眩く輝いている石が見える。
その康介さんが出した物を見て、私は目の錯覚だと思い、しばらくまばたきしていた。
何度まばたきしても消えないそれを見て、段々目が熱くなって、自然と涙が溢れてくる。
このお店の照明を綺麗に反射して、私の目に映るそれは、私が秘かに願っていた物だった。
「…結婚してくれ、美樹。」
そんな言葉が、いつになく真剣な康介さんの口から聞こえて、私はしばらく康介さんに抱かれて泣いた。
それから数ヵ月後、康介さんと結婚した私は、二人だけが住む愛を育む場所に住んでいた。
「行ってらっしゃい、先輩。」
「ああ、行ってくる。」
未だに恥ずかしくて康介さんの事を名前で呼べないけど、康介さんはそんな私をかわいいって言ってくれるし、
『先輩』って言っていた方が初々しかった学生時代の頃を思い出して、康介さんの愛を確かめられて良いと思う。
「あ…ちょっと待ってください。」
康介さんがドアに手を掛けた所で、私はある事を思い出して康介さんを止めた。
「先輩…溜まってませんか?」
もう二週間程前からだろうか。
最近の康介さんは会社が忙しいらしく、家に帰ったらすぐ寝てしまうようになった。
きっと、疲れているだろうからと思って、そのまま休ませていたのだけど……。
「あの…まだ少し時間があるみたいだから…先輩の…出して、あげますけど。」
その言葉を言った途端、身体が熱くなってしまうのが感じられた。
正直、身体がヘンな感じになってしまうのも無理は無いと思う。
もう二週間も康介さんのせいで禁欲されている私は、限界を通り越していたから。
(…はしたないと思われてもいい。康介さん…私を抱いて下さい…。)
でも、私の願いは叶わなかった。
「ゴメン、今日は朝早くから会議が有るんだ」
そう言った康介さんは、そのまま家から出ていってしまう。
康介さんが居なくなってしまった後も、しばらく私はそのまま佇んでいた。
きっと、康介さんが冷たいのは、はしたない事をしてしまった罰なんだろう。
これからしっかり従順な妻になれば、ちゃんと康介さんは帰って来る。
そうポジティブに考えて、私は今日の妻のお仕事を開始した。
その日の夜。
少し早めの夕飯を作り終えた私は、康介さんの帰りを待っていた。
いつもなら遅くても九時には帰ってくるけれど、もう日付が変わる時間帯になっている。
椅子に座りながら、私はテーブルの上でラップに包まれた肉じゃがと焼き魚を見つめていた。
ご飯茶碗とお椀は、私のと康介さんの分、二組共裏返しにしてある。
私は、ご飯は一緒に食べると約束していたから、康介さんから言われるまでは勝手に食べないようにしていた。
…そういえば、電気を付けてないや。
暗くて良く見えない壁掛け時計を眺めると、部屋に電気が付いて無い事に気付いた。
ぼんやりしているのは私の悪い癖だ。まさか、暗くなっているのに電気を付けるのを忘れるなんて。
急いで電気を付けて、また椅子に座り私は康介さんの事を待つ。
少し経って、カチャリ、と玄関の方から聞こえてきた。
私の大好きな康介さんが帰ってきたんだ。
早く康介さんの顔が見たくて、急いで玄関に向かう。
「おかえりなさい、先輩。ご飯にしますか? それとも…」
「悪い、疲れたから寝る。」
そう言うと上着を私に渡して、康介さんは二階に上がってしまう。
折角何時間も康介さんに言おうと考えていた台詞は、最後まで言いきる事が出来なかった。
せめて、康介さんの匂いだけは感じていようと、私は康介さんに渡された上着に鼻を押し付ける。
鼻孔に拡がる甘美な康介さんの匂いに、少しだけ違和感を感じた。
それは、甘いような、キモチワルイような―――
「女のヒトの、匂いがする。」
誰も居なくなったこの場所で、私は一人呟いた。
そして、心の中にどす黒い感情が渦巻くのを感じて、その感情を消すために、もっと康介さんを愛そうと思った。
私は康介さんの事を信じているし、愛し合っていると思う。
だから、これは心の隅に有る邪念を振り払う為の、私と康介さんの愛の確認作業だ。
私は、康介さんが今も働いているビルの向かいに有る喫茶店に居る。
ちょっと、康介さんがどんな事をしているのか気になったからだ。
あと、康介さんの鞄にはこっそり長時間録音可能のレコーダーが入っている。
これさえ有れば康介さんが何をやっているのか手に取るように分かるし、特に何も無ければ
一人で寂しい時に康介さんの声をいつでも聞く事が出来る。
まだかな…。
もう六時になったから、そろそろいつもの康介さんなら帰ってもおかしくないはず。
そんな私の気持ちを意識してか、康介さんらしき人影がビルから出てくる。
まるで康介さんと私は気持ちが通じあっているような気がして、窓に写る私の顔が笑顔になっていた。
今の私を見てくれたら、康介さんはかわいいって言ってキスしてくれるかもしれないと思いながら、
康介さんに置いていかれるのは嫌だから、急いで会計を済ませて、康介さんの後を追う。
少し早足で歩くと、いつもと変わらない康介さんが前に居た。
スーツ姿でしっかりと歩みを進めるその姿は、やっぱり格好良くて、惚れ直してますます好きになった。
でも、そんな康介さんの後ろ姿を見ながら、私は一抹の不安を覚える。
私と康介さんが一緒に住んでいる家から、少し遠回りしているような気がしたから、
私は知らず知らずの内に手を強く握って、掌に赤い跡をつけていた。
しばらく歩いた所で、康介さんは二階建てのアパートの前で立ち止まった。
ボロ臭さと陰気臭さがセットになったようなボロアパートの階段を、康介さんが自然な動きで上っていく。
上りきって、少し歩いた所で、康介さんは勝手にドアを開けてアパートの中に入ってしまった。
「何で…?」
私には康介さんの行動が理解出来なかった。
もちろん、あのアパートが康介さんの男友達の家、と言うことも有る。
でも、友達の家にわざわざ仕事帰りに向かうだろうか。
ここは家に帰ってから向かっても、さほど変わらない距離なのに。
―――オンナの、ヒト?
それは、康介さんには一番有り得ない事だ。
だって、康介さんと私は、世界で一番愛し合っていて、今も心と心で繋がっているから。
私の小指には赤い糸が今も付いていて、糸の先には康介さんが居る。
だから、これは康介さんが望んでいる行動じゃないんだ。
きっと、悪い人に騙されていて、仕方なく来ているに決まっている。
だから、私は妻として急いで騙されている康介さんを悪い糞女から助けてあげなきゃいけない。
そして、康介さんを苦しめたゴミに報復するのだ。
無慈悲に、人間が脳に刻む事が出来る最大限の苦痛を与えて。
自分が産まれてきた事に絶望して、人間からかけ離れた叫び声をあげても生温い。
塵芥が命乞いをしても、早く殺される事を望んでも、永久に苦しませよう。
そして、康介さんに抱かれて、頭を撫でられながら「美樹は、俺の世界で一番大切な妻だよ」って囁いて貰うんだ。
そんな康介さんと私の愛の邪魔者を確認するために、私は急いで鉄で出来た階段を上った。
所々塗装が剥げて錆びているから、ここは建ってから結構経つのだろう。
階段を上り切って、突き当たりまで歩いた私は康介さんが入った扉の前に立つ。
表札は目を上げたらすぐに目的の物は見つかった。
それは、白いプラスチックで出来た板に、黒い文字で堂々とドアの脇で自己主張している。
「斎藤 由紀…?」
どんな醜い名前だろうと考えていたら、意外な人の名前が表札に書かれていた。
その人は、康介さんの実のお姉さんでもあって、私の人生で康介さんに次いで長い付き合いの親友でもある。
私の今の立場だとお義姉さんと言う事になるが、今でも大切な親友だ。
私の頭の中で最後に見た親友の姿が投影される。
綺麗に礼装を着こなしたお義姉さんは、私と康介さんに捧げる祝辞を読んでいた。
でも、結局その祝辞は最後まで言うことは無かった。
お義姉さんは、半分程読んだ所で、急に顔を押さえて泣いてしまったのだ。
その時は、ただ立派になった康介さんや、成長した私を見て感動していたと思っていたのだけど―――
「まさか…ね。」
私は昔からお義姉さんにこっそり康介さんとの恋の相談をしていたし、お義姉さんは応援してくれた。
お義姉さんにも嫉妬してしまうなんて、と自分の嫉妬深い新たな一面を見て少し自己嫌悪をしてしまった。
それから私は、中に入って、康介さん、お義姉さんと少しお話ししようか、とも思ったけど、
お夕飯の準備もしなければいけないから、私は康介さんより一足先に家に帰る事にした。
「な…んで…?」
時計を見ると、もう日付は変わり、三時を回っていた。
でも、康介さんは未だ帰って来ない、もう、とっくに会社から出ていた筈なのに。
「なんで…よ…。」
何故康介さんが私を独りにするのか理解出来ない。
世界で一番愛し合っていて、私がテーブルを爪が割れるまでひっかき続けて耐えているのに。
血の味が口一杯に広がる程に唇を噛んで待ち続けているのに。
なのに、私の空間には康介さんが居ない。
有るのは空虚と、今も康介さんを拘束している誰かへの嫉妬。
胸が張り裂けそうで、私は自分自信を抱いて暖めた。
目の前に、康介さんが優しく微笑んでいるのを想像して。
苦しい、苦しいよ康介さん…。
康介さん、何処に行っちゃったの…?
あんなに愛し合っていたのに、私の気持ちを置いてけぼりにしてしまうの?
これなら、あのアパートで康介さんを捕まえて、家まで一緒に帰れば良かった…。
「おい、どうしたんだ?」
そんな時、康介さんの声が聞こえた気がして、部屋の扉に顔を向ける。
でも、私の瞳には康介さんの姿が霞んで見えて、ますます私の気持ちを暗くするだけだった。
「康介さんっ…!」
抱きついて、康介さんの胸に埋まりながら大きく息を吸う。
…ああ、やっぱりオンナの匂いがする。
臭い、吐気を催すその匂いを避ける為に、私は康介さんに抱かれながら康介さんの匂いを求めた。
「美樹…。」
「あ…は…康介さんの…匂い…。」
私の身体は下の方に向かい、腰を降ろして、康介さんの匂いを一番感じる所に頬を擦り寄せる。
頬を擦り寄せていたら、康介さんのアレが段々硬くなっていくのが感じられた。
康介さんの硬くなるモノが頬を突く度、私に欲情してくれるのだと再確認出来て、顔が綻んでいく。
「先輩…おっきくなってきましたね。」
もうすっかり元気になった康介さんのをさすりながら、私は康介さんに優しく言った。
ズボン越しに感じる康介さんの感触に、口の中で唾液が大量に分泌される。
本当はすぐにでも康介さんのアレを口に含んでくちゅくちゅしたいけれど、私は康介さんの従順な妻だから、
康介さんに無許可で行為を始めてしまうのは、はしたなくていけない事だ。
ちゃんと、康介さんからの許可を貰ってから始めるのが、妻としてのたしなみである。
「私に…先輩のコレ、楽にさせて下さい…。」
「…ああ。」
康介さんの許しを得て、私はにっこりと微笑むと、ファスナーを口に含んでゆっくり下に下ろした。
ファスナーを下ろした途端、濃い康介さんの匂いと湿っぽい熱気が鼻に伝わって、私の下半身から愛液が溢れていく。
康介さんより先に興奮してしまうなんてはしたないと思いながらも、私は口を上手く使って康介さんの
ペニスを外に出してあげた。
康介さんのモノは、私を狂わせるのに充分過ぎる魅力を持っていて、愛おしくて堪らず私は口を近付ける。
初めはこれから始める事を康介さんのにも許しを乞うように、鈴口にキスをした。
キスした途端、ビクッと反応して私の鼻に柔らかい感触が触れる。
そんな康介さんのアレの様子を見て、康介さんの方を見たら、顔が少し赤くなっていて
康介さんの事を可愛いと思ってしまった。
更に、横、裏の方に口を付けて、康介さんの次の言葉を誘う。
「…口で、咥えてくれ。」
…やっと康介さんのを味わう事が出来る。
内心小踊りしたい程私の気持ちは高ぶりながらも、私は康介さんのペニスをゆっくりと口に含んだ。
口に含んだ途端、康介さんの味が口一杯に広がって、意識が飛びそうになる。
なんとか正気を保って、唇で扱きながら、舌を上手く使い康介さんを悦ばした。
康介さんが悦んでくれるのが、手を取るように分かるフェラチオは、私のお気に入りの行為でもある。
「あむ……ふぁ…」
粘膜と粘膜が擦り合って、クチュクチュといやらしい音が暗い部屋に響く。
唾液が口から溢れて床を汚してしまうのも構わず、私は愛の奉仕を続けた。
更に、先端から大量に先走った康介さんの液体を舐めとり、すすって嚥下する。
「ふぅ……」
息が苦しくなって、一旦ペニスから唇を離した。
もちろん、手は康介さんのを握ったままで、軽く扱いて刺激を絶やす事なく与え続けるのを忘れない。
「せんぱい…今日はどこに出しますか…?」
康介さんもそろそろ我慢するのが辛そうな顔をしていたから、私は康介さんの希望を聞いた。
妻として、夫の考えを第一に考えるのは当然の事だから、夫が出したい所に出させるのは
正しい妻の在り方と言えるだろう。
他の雌犬だとすぐに自分の欲望を優先してしまうから、康介さんを満足させる事はまず出来ない。
康介さんを十二分に気持ち良くして、射精させる事が出来るのは、世界で私だけだ。
「口に…出したい。」
「わかりました…私の、お口に一杯出してくださいね…先輩。」
言い終わって、すぐに康介さんのペニスを咥えて激しく愛撫する。
苦しそうな康介さんと、康介さんのペニスを早く楽にしてあげる為だ。
康介さんは早く射精したくて、私は一刻も早く精液を飲みたい。
双方の利益が一致する行動をお互いに楽しむなんて、何て夫婦らしいんだろう。
「もう…出そうだ…。」
そんな事を考えながら口のピストン運動を続けていたら、康介さんに限界が来たみたいだ。
急いで先端を口に含んで、根本を扱き、射精の時が来るのを待つ。
「…んむぅ!?」
ペニスの裏に何かが通るのを舌で感じた瞬間、びゅっと康介さんの精液が私の口の中に吐き出される。
最初はしゃくりあげたペニスを押さえ付けるのが精一杯で、射精を防ぐ事が出来ずに
喉の奥に康介さんの精液が叩き付けられた。
叩き付けられた途端、激しく咳き込みそうになったけど、その衝動を必死で押さえ付けて康介さんが出す
精液を、私は全て口の中に受け入れる。
「ごほっ…ごほっ……」
全て口に入れた後、耐えきれず私は口を押さえて咳き込んだ。
康介さんがくれた大切な精液は溢さないように、そして誤って飲み込まないようにする。
まだ、康介さんから精液をどうしするか聞いていないからだ。
もし、勝手に飲み込んだら…。
康介さんは、私の事をいうことを聞かない勝手な妻だから、と言って棄てられてしまうかもしれない。
康介さんの判子が押された離婚届けを、テーブルに叩き付けられて、冷たい言葉を言われてしまうかもしれない。
そして、私を棄てた康介さんは―――
康介さんが知らないオンナの人と居るのを想像したら、頭が割れそうだった。
そんな‘もしも’を振り払う為に、私は康介さんを悦ばすのに専念する事にする。
口の中には未だにドロリとした康介さんの精液が池を作っていて、息を吸うと濃い精臭が肺に流れていった。
康介さんの匂いがここに有るから、康介さんは私の物だ。
そう考えたら少し元気になってきた。
「へんふぁい…へいふぇき、ほうふぃまふか?」
精液のこれからを相談するために、康介さんに私は口を開く。
口に貯まった精液のせいで、上手く喋ることが出来なかったが、口を開けてアピールしたので意味は通じたようだ。
「飲んで、美樹。」
「ふぁい…」
精飲の了承を得た私は、名残惜しむように康介さんの精液を飲み始める。
唾液で薄まったせいか、あまり抵抗も無く康介さんの精液は私のお腹の中に流れ込んだ。
一杯飲んだから妊娠してくれたら良いな、とついでに私の身体に無理な注文をしてみる。
「お掃除も、しておきますね。」
仕上げに、少し小さくなった康介さんの鈴口に唇で触れて、中に有る残滓を吸い出した。
うどんをすすったような音がして、残りの精液も私の中に入る。
更に、亀頭も舐めて綺麗にしたら、康介さんのはすっかり元の硬度を取り戻した。
「先輩…元に戻っちゃいましたね…。」
あと一押しで康介さんのモノが私の中に入る…。
もう私のはビシャビシャで、液体が外に流れるのを防がないと狂ってしまいそうだ。
口には出さないけれど、誘うように上目づかいで康介さんにおねだりをする。
「ちょっと…始める前に風呂に入らせてくれ、汗がキツくてな。」
「は、はい。」
期待していた台詞とかなり違う言葉が康介さんから出てきて、軽く動揺してしまった。
「先に寝室で待っててくれ。」
そして、そう言うと康介さんはお風呂場に向かって歩き出す。
「もう…。」
ほてり続けている体をどうしたら良いか考えていたら、康介さんの鞄が目に入った。
…レコーダーは今も録音を続けているのだろうか。
鞄を開け、手を入れて探したら簡単に、入れておいた棒状のレコーダーが見つかった。
小さな画面に『REC』と黒い文字が表示されているから、見付からず康介さんの声を録音し続けていたのだろう。
録音の状態を止めて、ポケットにしまい二階の寝室に向かう事にする。
「はあ…。」
寝室に有るダブルのベッドに横になって、私はレコーダーを見つめた。
ほっそりした棒状レコーダーには、先端にマイクがあって、私は機械には詳しく無いが店員の話では
かなり高性能らしく、録音された声は誰の声か容易に聞き分けることが出来るらしい。
少し私の財布が痛んだが、これからの生活の為だ、仕方ないだろう。
少なくとも、これに康介さんを誘惑しているゴミ女の正体が録音されているかもしれないのだから、
それだけで何万もかけて知らない機械を買った甲斐が有ると言うものだ。
そんな事を思いながら、でも、私は録音された音を聞くのは恐ろしかった。
―――もし、康介さんとゴミ女が仲良くしていたら。
そんな事は無いと思いながらも、私は『再生』を押すことが出来ない。
今日は…お義姉さんの家で話し込んじゃって遅くなったんだ。
再生してもお義姉さんと康介さんが話しているだけで、知らない人と康介さんが密会してるワケじゃない。
『再生』を押して、何も無ければ、安心して康介さんと一緒に愛し合う事が出来るんだ。
未来の希望と康介さんへの信頼が、私の震える指を動かして、小さな『再生』のボタンを押した。
前編は以上。
前スレ
>>719のプロットと微妙に違う点も有るけれど、そこらへんは目を瞑って欲しい。
>>237 不倫ネタキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
エロ━━━━【●´ω`●】━━━━イ
一番好きだが今まででなかったネタだ。
後編期待してます
過去最高のシチュエーション ●´ω`●
えろえろえろ
゜.゜
夕
妻vs姉キタ━━━━(д゚(○=(゜∀゜)=○)゚Д゚(○=(゜∀゜)=○)д゚)━━━━!!
さて、投下します
チバ県にある成田国際空港。ここは
航空旅客数が約3000万人
を誇る日本最大の国際空港である。
その空港に1人のアメリカ人が降り立った。
すれ違う男性の視線を独占し、女性の羨望と嫉妬の視線を受けるその人は
ややウェーブの掛かったセミロングの金髪
大理石を思わせるような白い肌
モデル顔負けのスタイル
そして一番印象的なのが、虹彩異色症によって左目がアイスブルー、右目が漆黒という
左右非対称な妖しくも美しい瞳であった。
勝手知ってるかのように迷うことなくターミナルを出て、懐かしそうに目を細めて
深呼吸をして日本の空気を堪能し、
タクシーを拾って中に乗り込むと、運転手に行き先を告げた。
既に10月に入り、若干肌寒くなり人が恋しくなるこの季節、本来なら恋や読書など秋に相応しい事が
あるはずなのに、ある実験棟に集まった三人には今は関係無かった。
「教授?これでデータ取りは終わり?」
今弥生は椅子に座って血液の採取をしていた。これまでにも身長、体重、レントゲン、心電図、
CTスキャンやスリーサイズなどなど「氷室弥生」という1人の人間のありとあらゆるデータを集めてきた。
「うむ、これでほぼ終わり……いや、あと最後に問診があるからそれで終わりだな」
「教授、そういえば今日アメリカから教授が来るんですよね。そろそろじゃないですか?」
時計を見ると、午後の2時になろうとしていた。
「お?もうこんな時間か。じゃあさっさと問診をしちゃうか」
弥生の前にある机に教授は書類を置いて
「それじゃ幾つか質問するが、弥生くん、エッチは週何回シている?」
「……………は?」
「うん?よく聞こえなかったかな?樹くんと週何回セックスしたかと聞いたんだが。」
ちょっとちょっと教授!!何てこと聞くんですか!大体10歳児ぐらいの
体じゃやろうとしても無理ですよ。……そもそも挿入るのか?
ん?や、弥生さん!怒りで握っていたボールペン折ってるよ!
「あらあら教授、随分と言ってくれるわね。樹とはエッチなことはまだ何も無いわよ(ニコニコ)」
怒りで頬を引きつらせながら、暴れたい衝動を何とか押さえて笑顔で答えた
「何だそうなのか。樹くんも幼女趣味があると思ったんだが……。
私だったら「いただきます」しちゃうんだがな」
「樹を教授のような変態と一緒にしないで!!」
弥生さん、興奮して机を叩かないで!壊れちゃいますよ!
「ふむ……エッチの経験は無し……と。では次の質問だが、弥生くん、生理は順調かな?」
「な?」
教授……そんなに弥生さんに殺されたいんですか?ほら弥生さんは
もうリミッター外れてますよ。
「あはははは、教授随分とセクハラ全開な質問ですね。あら教授
肩にゴミが。取ってあげますね」
そう言って弥生は教授の肩を掴み、少し捻った。
「ギャ――――――!!か、肩、肩が外れた!いたたたた!!」
「あら、教授どうなされました?肩をだらりと下げて。うん?バランスが悪いわね。
反対側の肩もついでに……えいっ♪」
・
・
・
「で、教授。一体なんでまた弥生さんにそんなセクハラまがいな
質問したんですか?」
腕を組み、教授を睨んでいる弥生と、肩を押さえて涙ぐんでいる
教授の間に樹は入って聞いた
「いたた……うむ、もうまもなくアメリカから教授が来るだろう?
少しでも弥生くんのデータを取っておいて、治療の役に立てようと
思ってな……」
それを聞いた弥生は少しだけ怒りが収まったのか、表情が和らいだ。
「それにしたってあの質問は何なのよ!大体」
「ダーリン!アイタカタヨ!!!」
「え?きゃ!!」
突然ドアが開き、椅子に座っていた弥生を突き飛ばして何者かが乱入してきた。
「おおーキャサリン教授着いたか!!」
「ン〜サミシカタ!モウハナサナイ!チュッチュッ!!」
アメリカ式の過剰なスキンシップでラブワールドを展開していた二人だったが、
突き飛ばされた弥生が
「ちょっと!あんた誰よ!入ってきていきなり突き飛ばすなんて何様のつもり!!」
真っ赤になったおでこを擦りながら弥生が叫んでいたら、
キャサリンが面白くない物を見るような目で
「フーン。「コレ」ガ「モルモット」ネ」
「!!!」
その言葉を聞いた瞬間、弥生は「人」としての理性を失った。今樹の隣にいるのは「弥生」ではなく、
怒りで我を忘れた獣だ。
「ガアアアアアッ!!」
人ではありえないほどの俊発力でキャサリンに飛び掛かった弥生だったが、当のキャサリンは
さして驚いた様子もなく
「オーコワイデスネ。デモ」
飛び掛かってきた弥生をキャサリンは空中で捕まえ、床に叩きつけた。
「がはっ!!」
「モルモットフゼイガ…」
キャサリンが床に叩きつけられた弥生を踏み付けようと足を上げたその時
「やめろ―――!!」
樹が足を上げたキャサリンを突き飛ばして、床に倒れていた弥生を抱き抱えた。
「キャサリンさん!何でこんなひどい事するんですか!
一体何しに来たんですか!」
鼻から血を出して気絶している弥生を抱えて訴える樹に、
突き飛ばされたキャサリンは
「オーカンチガイネ。「ソレ」ガムカッテキタカラハンゲキシタダケ。
キタリユウハ……」
隣にいた教授に抱きつき
「イトシノダーリンニアイニキタダケ♪」
「え?会いに来ただけ?弥生さんの治療は?」
教授に頬摺りしていたキャサリンは面白くない物を見たような顔をして
「チリョウ?イッツアジョーク!ソンナツモリナイワ!」
キャサリンの余りにも人を馬鹿にしたような発言に、さすがの樹も
堪忍袋の緒が切れかかったが、胸に抱いた弥生を見て、我に帰った。
落ち着け、俺。ここで暴れてどうする。この千載一遇のチャンスを逃したらもう
弥生さんは一生このままかも……。弥生さんを元に戻すためなら何だってやる!
樹は弥生をソファーに寝かせてから、額を床に擦り付けるように土下座をした
「キャサリンさん!もしあなたが弥生さんを元に戻せるのでしたら
お願いします!!何でもします!俺はどうなってもかまいません!
ただただ弥生さんには幸せになってもらいたいだけなんです!
だから……」
樹の必死の願いにキャサリンは暫く無言だったが、ゆっくりと樹に近づいて
「イツキ、アナタヤヨイスキ?」
「へ?好き?ええ好きですよ。」
キャサリンは顔を上げた樹の目を見てさらに聞いた
「コンナ「ワガママ」デ「オモイコミガハゲシク」テ
「サミシガリ」デ「ランボウ」ナヤヨイガスキ?」
樹は答えた。迷いのない、そしてはっきりと
「それらを全部入れて弥生さんなんですから。」
キャサリンの左右非対称な瞳が樹の目の奥、心を見てるような
真剣な眼差しだった。
「ワカッタワ」
すっとキャサリンは立ち、教授の方を向き
「ゴウカクヨ」
「そ、そうか!よかった……。」
「ソレジャ……」
キャサリンは軽く自分の頬を叩いて気合いを入れた。その顔は
先ほどまでの人を小馬鹿にしたような顔では無かった。
左右違う色をした目はこれまでになく輝き、表情は真剣そのもの。
空気が変わった……正にそれだった。
「それじゃ稲本教授、機械工学の吉岡教授を機械棟の特別実験室に呼んで!
私もすぐ行くわ。あ、樹くん。弥生さんとここにいて。後で全部説明するわ。」
樹はぽかんと口を開け、ただ成り行きを見守った。
・
・
・
「あのキャサリン教授はな、樹くんと弥生くんを試したんだよ。
二人の絆をな。」
「どうゆうことですか?」
あらかた準備を終えた教授が、キャサリンに代わり樹とついさっき目覚めた弥生の二人に
事情を説明した
「あの若返り薬……つまり弥生くんに飲ませたあの薬は未完成なのだが、
もし完成して商品化したらその利益は莫大なものだ。でもキャサリンが
発表した論文から、完成品どころか未完成とはいえある程度作れるのは
世界中でもキャサリンか私のどちらかだろう。」
「…………………。」
普段のおちゃらけた態度とは違い、真剣な姿勢に樹と弥生は静かに聞き入った
「自分の研究を盗んで利益を得ようと考える人間が表れても不思議じゃない。私がいくら
「それはない」と説得しても私自身がもしかしたら騙されているかもしれない。……で、
キャサリンは一芝居したんだよ。本当に金儲けじゃなく元に戻るためだけなのかどうかを見るためにな。」
「じゃあ何で流暢に日本語を話せるのに片言だったり、あんなに弥生さんに
辛く当たったんですか?……」
「片言しか話せないアメリカ人が散々弥生くんをいじめてその結果
樹くんがどういう行動をするか、見たかったんだそうだ」
教授は煙草に火をつけて一息ついた
「誤解しないで欲しいんだが、キャサリンは自分の研究で得た利益を
独占したいわけじゃないんだよ。完成したらその全てを公開して
世の役に立ちたい……ただそれだけなんだ。」
そこまで聞いて黙っていた弥生が口を開いた
「事情は分かったわ。何はともかく元に戻れるなら文句はないわ。
そして私がその一連の薬を完成させるためのデータの塊ってこともね。」
「弥生さん……」
「誤解しないで樹。別にあの教授を恨んでいるわけじゃないわ。まあ最初は
怒ったけど。それでもね私自身にある薬のデータで薬が完成し、元に
戻れるのなら……」
全ての準備は整った。キャサリンが弥生と教授から手に入れたデータを
元に、三日三晩徹夜してついに元に戻る薬が完成した。そして完成したその日の
内に弥生は全裸でベットに寝かされ、血管から点滴のように薬が注入された。
「弥生さん、この薬がすべて注入され、暫くしたら体に異変が起きます。
たぶん筆舌に尽くしがたい激痛が全身を駆け巡りますし、幻影や幻聴
などもあるやもしれません。宜しいですか?」
弥生は静かに頷いた
「痛みが無くなった時、弥生さん、あなたは以前の姿に戻っています。
……いいですか?アナタが一番愛する者の言葉、行動を信じなさい。
……それじゃ」
「あ、ちょっと待って」
弥生は部屋から出ようとしたキャサリンを呼び止めた
「……ありがとう」
キャサリンはちょっとだけ驚いたが、すぐ笑顔で
「お礼を言うのは私よ。アナタの協力で薬が完成したんだから。
本国に帰ったら全世界に発表して医学の進歩に使わせてもらうわ。
そうすれば人はあらゆる可能性に挑戦できるわ。……それじゃ」
「ところで教授、あのキャサリンさんとはどういう関係なんですか?」
治療が終わるまで、樹と教授は外の廊下で待っていた。
「うん?キャサリンか?……まあ愛人みたいなもんだな。大体私は
16歳以下じゃないとな。それでもキャサリンは私のことを愛して
いるようだから、……遊びだ」
教授…………後ろから刺されますよ。
「ダ〜リ〜ン!終わったよ。早くホテルへ行こう♪」
「ああ。……それじゃ樹くん、明日また来るから弥生くんのことは
宜しく頼むよ。」
教授を見送った樹は物音一つしない廊下で立ち尽くしていた。
弥生さん…頑張って。
どれぐらいの時間がたったのだろう。時間はもう日付けも替わり、
待ちくたびれた樹は座り込んでうとうとしていた。
しかし、ついに始まった。長く辛い戦いが……
「キャ――――!!!!!!!」
夢と現実を行き来していた樹は考える前に部屋へ入っていた。
「弥生さん!!」
カツン、カツン……
とある病院の地下を一人の女性が歩いていた。
薄暗く長い廊下にはドアがいくつかあるが、何年も使っていないのか
錆だらけだった。
その廊下を歩く女性はある一つのドアの前で止まった。
周りのドアと違い、ここだけオートロックで施錠されていた。
「ん〜んっん〜ん〜♪」
かなりご機嫌な女性は暗証番号を入力した。
ロックが外れた音が廊下に響き、女性は部屋へ入って行った。
部屋は窓が無く、ベットと時計があるだけだった。そのベットに
一人の男が寝ていたが、来るのが分かっていたのか
「やっと来たか……怪我を治してくれたと思ったら、こんなとこに
閉じ込めて、どうするつもりだ。」
女性は何も答えず、一つの包みを投げた
「?なんだこれ。……開けろって?……!!これは…」
袋には一丁の拳銃と地図が入っていた。
「うふふ、あなた氷室弥生に恨みがあるんでしょ〜。今アレは
大学のとある部屋で苦しんでるわ。殺るなら今よ〜。拳銃には
弾は三発。地図に場所を書いといたから〜。後は貴男の自由よ〜。頑張って〜。」
部屋を出た女性は薄く笑っていた
弥生さんの近くには必ず佐藤さんがいるはずだわ。あの男、佐藤さんにも
恨みがあるから殺っちゃうわね。ついでに弥生さんが死んだほうが
佐藤さんも淋くないかも。そしてそれを知った晴香ちゃんはショックで
落ち込み、その心の隙間を私が埋めて晴香ちゃんげ〜っと。そしてハッピーエンド♪
……うん!完璧ね。それもこれも「アノ」教授に感謝しとくか。……仕方ない、
お礼にこの監禁部屋、要望どうり貸してあげるか。
第九話「アメリカからのライホウシャ」完
次回第十話「夢とゲンジツ」
252 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 16:44:44 ID:ZvuGv3cw
この女、物語を荒らす気か
残りあと数話。しかし自分の精神が持つかどうか…
弥生と晴香のラストバトル(?)は十二話の予定
たぶん最終回の前に次回作のプロローグを投下したりするかも
ちなみに分岐エンドはありません。
まさかここに来ての麻奈美タン((( ;゚Д゚)))ガクブル
ラストまで楽しみです(;´Д`)
樹くんに誰にも話していなかった抜群の格闘スキルがあればもしくは・・・
256 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 19:23:42 ID:ZvuGv3cw
晴香さんの愛はその程度で壊れない
魔界都市日記のヤンデレハルヒ良かった
途轍もなくエロい夢を見た。
が、目覚めた瞬間に内容を忘れてしまった。
「くそっ……! くそがっ……!」
半眼のまま罵っていると。
「んぬ!?」
唇が何かによって塞がれた。温かくて柔らかい、少し湿った感触。
「んー……ちゅっ、と」
ここで「誰じゃ!?」と慌てふためくのはド素人。
ダメ絶対音感を行住坐臥研ぎ澄ませたプロはうろたえない。
声からして遥香か。
「……おい」
「あ? かずくん起きたー?」
間近に寄っていた顔が徐々に離れていく。
どうやらお目覚めのキスをしたところだったらしい。
今更こいつに朝チューかまされたところで動揺することはないが、顔をしかめつつ。
「なんだよ、やめろよな」
と注意だけは飛ばしておく。きっちり嫌がる素振りを示さないと、こいつはどこまでも付け上がっていくからな。
「フフー、イヤよイヤよもスキモノのうちだよね。おはよー」
「おはよう」
挨拶を交わす。んっ、と一つ伸びをしてから布団を出ようとするが。
「……やけに重いな」
頭は割合すっきりして変な感じはないのに、体の動きが妙に鈍かった。
「さっきから気になってるんだけどさー」
「ん?」
「かずくん、お布団がぽっこり膨らんでない?」
言われて見下ろすと、まるで一夜で百貫デブに変貌したみたいに腹のあたりが盛り上がっている。
「……臨月?」
「なわけあるか」
吐き捨てた。やけに重たいと思ったのはこいつのせいだったか。
腹のあたりにはもわもわ〜とぬくもりが伝わってくるような――
それでいてスースーと涼しい冷感があった。若干隙間が空いてるせいか。
なんじゃいこりゃ。首を傾げつつ、布団をめくろうと端を掴む。
不意に脳裏を一つの映像がよぎる。『ゴッドファーザー』の一作目。あの有名な、ベッドに切断された馬の首が
突っ込まれていて血だらけの阿鼻叫喚になるシーン。マフィア流のバッドモーニングコールだ。
ま、まさかあれと同じことが――?
恐る恐る掛け布団をめくっていく。
「ギャー!」
そこにはなんと両手両足を切断された盲目の銀髪少女が!
「あ……おはようございます……和彦さん」
――ってフォイレじゃねえか。なんでお前が俺にのっかってんだよ。
「爺や……が申しておりました。『夜這い・同衾・添い寝……男の高ぶる三拍子にございます』……と」
ほう、それを実践したってのか。
人化したときは超絶に可憐なフェイスをしているこいつが添い寝してくれるというのは、まあ、なかなか気分の
良いことではあるが……どうせなら冬場にしてくれ。夏場はぬくもりを越えて熱いっての。
おかげで汗どろどろ、胸から腹と下半身のあたりが気持ち悪――
「まったく何してんの、あんたらは、アッハハ……えッ!?」
俺たちの遣り取りに苦笑していた遥香が突然ぎょっと目を剥いた。
「? なンだ?」
咄嗟に小池一夫口調のセリフを発しながら視線の先を目で追う。
――敷布団。
股間のあたりが血だらけになっていた。
馬の首がフラッシュバックする。
バカな。フォイレは生まれつき四肢がないんであって、昨日今日に切り落とされたわけじゃねえ。
傷口が開いて血が噴き出すなんてことはないはずだ。
「ん、んん……!」
しかし少女はまるで傷が痛むみたいに眉根を寄せている。
「なんだ、どっか怪我でもしたのか!?」
慌てて抱え上げ、確認しようとして――何かが引っ掛かった。
「ぐっ!?」
子どものとき、加減を知らないクソガキが思いっくそ股間を握ってきて悶絶したこととかないか?
あれに似た感じがズキューンと下腹部を襲った。
い、いったいなんなんだ……怪我をしているのは俺の方か?
痛みのする箇所を確認する。
――ち○こだ。ち○こが痛がっていた。
ムスコの苦しむ姿に親心が突き動かされかけるが、それ以上の驚愕によって絶句させられた。
えーと。気のせいでしょうか。
俺のギンギンに朝勃ちした陰茎が、抱え上げた少女のドレスの裾に消えていて。
裾を払ってみると、その、未熟な性器――いわゆる無毛でぷっくりした秘部に。
亀頭とか、全体の半分くらいが呑み込まれるようにずっぷり突き刺さっており。
こう、「抜き差しならぬ」って具合にぎっちりハマって動かない肉楔になってて。
生々しく痛々しく押し広げられた幼い陰唇がヒクヒクしてるんだけど。
そこから鮮血が溢れていて陰毛やシーツが赤黒く染まってんだけど。
ハ、ハハ。まさかな。
そんな「朝起きたらメッチャ犯してました」なんてことがあるわけ……
「は、初めて――でしたの……」
ポッと頬を染めて俯くフォイレ。俺の陽根を収めた秘壺の襞が恥らうようにきゅっとすぼまった。
「うおっ!?」
あ、やべえ。これ我慢できないわ。
かくしてビュクビュクッ――と。
事情も把握しきれぬまま、初めて体験する異性の膣内で朝一番の濃い精液が勢い良く放出された。
脳みそを突き上げる射精感と、抱えた手に伝わる肌の柔らかさ、ふわっと漂う銀髪の香りに包まれながら。
「―――――――――」
さっきから背中を突き刺してくる遥香の視線にどう応えたものか、頭が真っ白で何も思いつかなかった。
エロい夢だと信じ込んでいたが、どうやら布団に潜り込んできたふんわり幼女を寝ぼけて襲ってしまったらしく。
まさしく夢うつつのうちにチェリーボーイを卒業してしまっていたのだった。
呆然としつつ、吐精し終わって萎えてきたペニスを処女喪失したばかりの姫君から引き抜く。
「あぅ……」
ごぽぉっ――泡立つ粘液が、マラーさんを形状記憶しちゃってパッカリな秘穴を出口に逆流してきた。
すごい量だ。指を挿れて確認するまでもなかった。あっという間にシーツに垂れて新たな染みをつくる。
こ、これが本物の「中出しドロリ」か……まだAVでも見たことなかったのに、先に肉眼で目撃するハメになるとは。
「どう、でした、か? 気持ち――よかった、ですの?」
ハアハアと息を荒げて尋ねた。
「いや。それが、まったく記憶にございませんで……」
疑獄事件の証人風に返答する俺。実際、最後の射精時以外は「エロい夢」という形でしか印象に残ってない。
「そう、です……か……なら、もう一回、しますの?」
目を閉じ息も絶え絶えに微笑む異国の銀髪少女に、一度で死ぬほどヤワではないと股間の砲塔が再奮起。
思わず頷きそうになったとき。
――背後から底冷えするような声が響いてきた。
「き……貴様ァッ……!」
あ…ありのまま 今朝 起こった事を話したぜ!
,,,,,,,,,,
|!| :|i| | あ…ありのまま 今朝 起こった事を話すぜ!
i!iYi!i. | 『布団の中に、フォイレがいたと思ったら
rァ゚A゚;).< 童貞を卒業していた』
ヽ! か |> | な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
ず | おれも何をされたのかわからなかった…
|
| 布団が血で真っ赤だとか、逆レイプだとか
| そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
|
| 次回の修羅場がどうなるのか気になってしょうがない
| 恐ろしさを味わったぜ…
>>260 ヤベエwwwwマジワロタwwwwGJ!
フォイレ…マジいいわ…w
つうか起きたら童貞卒業www
やべえ、次回の修羅場が気になって仕方ないです、ホントGJ!
r'゚'=、
/ ̄`''''"'x、
,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
__,,/ i! i, ̄\ ` 、 ━━┓┃┃
__x-='" | /ヽ /・l, l, \ ヽ ┃ ━━━━━━━━
/( 1 i・ ノ く、ノ | i i, ┃ ┃┃┃
| i, {, ニ , .| | i, ┛
.l, i, } 人 ノヽ | { {
}, '、 T`'''i, `ー" \__,/ .} |
.} , .,'、 }, `‘-,,' ≦ 三 .iiJi_,ノ
| ,i_,iJ `x, ゝ'゚ ≦ 三 ゚。 ゚
`。≧ 三 ==-
-ァ, ≧=-
イレ,、 >三 。゚ ・
Vヾ ヾ ≧
。゚ /。・ イハ 、、 `ミ 。゚
パロ関係もおk?
ときメモ2で考え付いた。
別として
既存のキャラクターを嫉妬・修羅場・ヤンデレのジャンルに会わせた二次作品SSスレ
を立てるっていうのが本スレで話し合われていたがどうなったんだろうな
エロゲならエロゲネタ板のSS投稿スレッド、
普通のゲームや漫画のパロだったらほかのしかるべきスレかスレが無い作品スレに投下して
嫉妬スレにリンクとレス番書くとかの措置じゃだめかな
其の作品スレに投下してココに其の誘導を貼るのはどうだろう?
だが作品スレが修羅場モノの投下を許さないような空気だった場合……
そういう場合に限りココに投下を許可しても良いのでは?
只、其の場合元ネタが全く知らない人でも分かるような配慮をしてくれると助かる
むぅ、個人的にはちょい反対。二次創作だとアレだ、荒れる。
「〇〇はそんなキャラじゃない!」とか言う輩が出てくるっぽいしな。
該当スレに投下後、誘導ってのがベターじゃないかと。
俺個人としてはアリなんだけどな。
そうだな該当スレに投下して、その後誘導って形が良いと思う
正直ここのまとめサイトの知名度が上がってきてるから
前もって避けられる荒れる要因はできるだけ避けた方がいい
>>260 逆レイプ?キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
そして次回修羅場クル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
wktkが止まらない!
>>264 ( ・ω・)人(・ω・ )
俺も実は過去に一本SS書いたことがある。
264の好きにすれば?
別にテンプレに「二次創作禁止」と書いてるわけでもないし。
投下します
朝。
見慣れた天井がぼんやり映る。耳には小鳥のさえずりと、炊事場の方から水音が――
「――水音?」
大きな欠伸をひとつ漏らし、ユウキはベッドから起きあがる。
執政官秘書に就く際に、新たに与えられた寮の一室。
学生の頃の寮とは違い、食堂などはなく、各部屋に炊事場が設けられている。
「……まさか、昨晩水を出しっぱなしにしてたとか?」
寝起きの頭は昨夜の記憶を上手く引き出すことができない。
とりあえず放置しておくわけには行けないので、とにかく炊事場へと向かい、水音のもとを何とかしなければ。
と、思ったら。
突然水音は停止して、ぱたぱたという足音が聞こえてきた。
「あ、お兄さん。おはようございます。すぐに朝食にしますか?」
黒髪の少女がにっこり挨拶。
はて。これは一体どういう状況なのだろうか。
…………。
……思い出した。
「――そういえば、うちに来てたんでしたっけ」
「? お兄さん、どうかしました?」
「いえ、何でもありません。
おはようございます、セツノちゃん」
ようやく目覚めてきた頭で現状を理解し、ユウキはセツノに朝の挨拶。
「朝食を作ってくれたんですか?」
鼻をひくひくさせてみると、朝餉の良い香りが届いてくる。
「あ、お台所、勝手にすみませんでした。ひょっとして、ご迷惑でしたか……?」
しょんぼりした子猫のように、弱々しくこちらを見上げてきている。
「いえ、いつも自分で適当に済ませてしまっているので、とても嬉しいです」
「そうですか! えへへ、慣れない台所だったけど、結構自信作なんですよ。
お腹いっぱい食べてくださいね。おかわりいっぱいありますから!」
「朝はそんなに食べられませんけど……頑張りますね」
苦笑しながら、何か手伝うことはないかと炊事場に向かおうとしたところで。
「ちょっと待ったあああああああああああああああっっっ!!!」
どかん、と腰の後ろに重い衝撃。
悲鳴を上げる間もなく、ユウキは床に押し倒された。
「何なのよ今の甘酸っぱい朝の会話はーっ!?
セっちゃん、監視でここに来てるんでしょっ!
甘いの禁止! 絶対禁止!」
ユウキの腰にしがみつきながら喚いているのは。
セツノの姉、ユメカだった。
ああ、そういえばこの人もうちに来てたんだっけ、と。
今更のように思い出した。
「ちょ、お兄さん、大丈夫ですか!?」
「は、はなをうひまひた……」
心配そうに声をかけるセツノと、腰にユメカがひっついて起きあがれないユウキ。
そんな2人にはお構いなく、ユメカは完全に己の道を突っ走っていた。
「ユウキさんもユウキさんです!
セっちゃんは私に似てるから、こうムラムラきちゃうのは理解できます。
でも、相手はお子様なんですからね! 毛だって去年生えたばかりなんですよ!」
「って何トチ狂ったこと叫んでるのよ馬鹿姉!」
「あれ? 今年だっけ?」
「ええい黙れ! あとユウキさんが起きあがれないからさっさと離れなさい! この! この!」
「あ痛、この、姉を足蹴にするなんて酷い妹!
反撃したいけど両腕が封じられてどうにもならない!?」
「……いや、ユメカさんが僕の腰から手を放せばそれで済むのでは?」
「それはダメです」
「駄目なんですか」
「むしろ馬鹿姉が駄目すぎます……」
こんな感じで。
3人の朝は始まった。
少しだけ時間を遡ろう。
帝都中央西通りにて、姉妹の再会が為された際。
やはりというか何というか、ユウキとユメカの関係を、セツノに問い質された。
会話の節々から察するに、ユメカはどこかの特殊な機関に所属していて、その任務の途中らしいが。
そのユメカとユウキが親しくなっていることについて、セツノは姉に説明を求めていた。
ちなみにそのときユウキはこう思っていた。
(……いや、当事者がすぐ近くにいるときに、背後関係がわかっちゃう会話をするのはどうかと思うのですが)
先程までは完璧に己の事情を隠し通していたセツノだったが、今はどうやら冷静ではない模様。
まあそれはそれとして。
そんなセツノに対し、ユメカはこう説明した。
「美味しそうだから食べちゃったの。えへ」
それは冗談で言ってるのか、という表情をユウキとセツノは同時に見せた。
「えっとね、ちょっと失敗しちゃて、ユウキさんに運んでるものを知られちゃったの」
この時点でセツノの顎は外れたかと思われるほど広げられた。
「それで、媚薬を興味半分で吸っちゃってたのもあって、口封じにユウキさんとしちゃったんだけど」
この時点でセツノは地面に崩れ落ちた。
「それがね、すっごく気持ちよかったの!
だから、ユウキさんには協力者として毎晩愛を交わし合って――あら? セっちゃん、どうしたの?」
「……こ」
「こ?」
「この、馬鹿姉がああああああああああああああっっっ!!!」
見事な拳撃が叩き込まれた。
その後、とんでもない姉妹喧嘩が勃発し、ユウキは命懸けでそれを止めることになったのは余談である。
そして、セツノは裏路地でがみがみと姉を説教した後。
ユウキが本当に協力者として信頼できるのかどうか当分監視すると言った。
事情が事情だし仕方ないかな、とユウキはそれを了承したが、その後が問題だった。
何でも、ユメカが任務を終えた後も帰ってこないことに心配したセツノは、
何の前準備もないまま帝都に単身来ていたらしく、泊まるあてがないとのこと。
それなりに金は持っているそうだが、中身はどんなに優れていても外見は普通の少女である。
誰にも怪しまれずに滞在できる場所が、確保できなかったそうなのだ。
そこでユウキが助け船として自分が保護者代わりになって宿を確保しようか、と提案したら。
「保護者代わりということなら、お兄さんの所に泊めて頂けないでしょうか?」
と、そこに姉の猛烈な抗議や鉄拳が入り交じって。
何故か、姉妹揃ってユウキの自室に寝泊まりすることになったのである。
……本当に、何故だろう。
テーブルの上には、豪勢な朝食が準備されていた。
高級そうなものではなく、田舎風な、素朴な印象がある。
ユウキは特に高級志向といった面は持ち合わせていないため、素直な感想が口から零れた。
「美味しそうですね」
と、約二名の表情が劇的に変化した。
セツノは何故かそっぽを向いて、赤い顔で口をもごもご。
読唇術の使い手なら、彼女が「い、田舎の料理しか作れなくて恐縮ですが」と言っていることがわかったろうが、
残念ながらユウキにその技術はなかったので、はてなと首を傾げるのみ。
そして。ユウキの死角にて表情を歪めるもう一人の女性。
こちらの目は据わっており、どんよりと黒い気配を発している。
彼女の口も何やらもごもごと聞こえない言葉を発しているが、その詳細はというと。
「セっちゃんずるいセっちゃんずるいセっちゃんずるいセっちゃんずるいセっちゃんずるい。
私が家にいたときはあんなにたくさん作ってくれなかったのに酷いよセっちゃん。
あのクリームスープ美味しそうだなあ。サラダも瑞々しいし、きっと朝市で買ってきたやつだよね。
なにこれ。なにこの贔屓っぷり。これは何か裏があるに違いないわ。きっとそうよ。
じゃなきゃ、こんな気合いの入った料理なんて作らないもん。ユウキさんに美味しそうだなんて言われないもん。
そうか、これは陰謀ね。セっちゃんは私とユウキさんを引き離すためにこんな手の込んだ料理を作ったのよ。
そうよそうよそうに違いないわ。じゃなきゃ鳥肉の照り焼きなんて朝から作らないもん。
私とユウキさんを引き離すためにしてるんだ。絶対そうだ。絶対絶対絶対絶対。
だから防がなきゃ。ユウキさんを守らなきゃ。そうよユウキさんは私が守るの。守るんだから。
ユウキさんは私が守る。ユウキさんは私のもの。セっちゃんには渡さない……!」
聞こえていなかった2人は幸せだったかもしれない。
まあそれはそれとして。
ずかずかずか、とユメカはテーブルに寄り。
「姉さん、何を――」
セツノが制止する間もなく。
「わ、私が毒味するんだから!」
そう言って。
がつがつがつ、と料理を一気に平らげ始めた。
「…………」
「…………」
とんでもない勢いでテーブルの上の料理を詰め込むユメカを、呆然と2人は眺めていた。
というか、どうしてユメカがこんな行動に出たのか、さっぱり理解できなかった。
恐る恐る、セツノは姉に問いかけた。
「あー。えっと、お姉様? 毒味とはいったいどういう意味なのでしょうか?」
ふがふがふが、とチーズをまぶされたパンを詰め込んでいたユメカは、妹の方へ振り返る。
「セっちゃんは、敵だから」
「はい?」
「セっちゃんは、ユウキさんを疑ってる――どころか、排除した方が思ってるから。
だってイナヴァ村からすれば、余計な情報が流出する原因としか見えないし。
だから、セっちゃんがユウキさんを毒殺する可能性だって皆無じゃない。
それを防ぐために、はぐはぐ、私がこうして、ごっきゅごっきゅ、毒味してるの。
あ、この照り焼きの付け合わせ、美味しー。うまうま」
「ちょ、私がそんなことするはずないじゃないの!
だいたい、姉さんから流出される情報って、大したもの無いし!
今回の任務はただの媚薬の配達なんだから、姉さんろくな情報持ってないじゃない!
それなのに民間人を口封じなんて馬鹿げてるわよ!」
「というか、セツノちゃんからの流出の方が激しい気もしますが」というユウキの呟きはスルーされた。
「嘘だ嘘だ嘘だーっ!
セっちゃんはユウキさんを狙ってるに違いないんだから!
セっちゃんみたいな田舎娘がユウキさんみたいな素敵な人に憧れるのはわかるけど、
だからって毒殺して永遠のものにしようだなんて許さないんだから!
気持ちいいこともできなくなっちゃうし! がつがつむぐむぐ」
「な、何を言いやがりますかこの馬鹿姉は!?
たたた、確かにお兄さんは素敵な人だけど、毒殺なんてするわけないじゃない!
頭の中にお花畑展開するのもいい加減にしてよね! あと田舎娘って姉さんもじゃない!
――っていうか、本気で全部食べる気!? 4人前は作ってあるのに!」
「……あれ? ここにいるのって3人ですよね?」と、どうでもいいことが気になるユウキだった。
「……あ、それは単に張り切り過ぎちゃっただけで……あわわ、そうじゃなくて!
ああ姉さん!? デザートまで全部食べる気!? 体重気にしてたんじゃなかったの!?」
「ユウキさんを守るためなら、これくらい! あと甘いのは別腹だもん!」
「後半本音だよね!? 絶対そうだよね!」
結局。
妹が張り切って作った朝食を全てその胃に収めた姉は、満足そうな表情を浮かべて、そのまま床に倒れ込んだ。
「姉さん! 姉さん!」
「ふ……ふふ……セっちゃんに……勝っちゃったもんねー……」
「ああもう、滅茶苦茶ボディーブロー入れたいなあ! うわーん!」
「泣かないで……セっちゃん。私は、私にできることをしただけだから……」
「確かに姉さんにしかできないことだけど! 天然も程々にしてよね!」
「私は……絶対に負けないんだから……ユウキさんは……私が……守るの……!」
「むしろ奪ってるから! 朝食とか!」
「あれ……なんだか眠くなってきちゃった……。……ごめんね、せっちゃん、私、もう……」
「姉さん? 姉さん!?」
「……おなか……いっぱいだぁ………………ガクリ」
「ふざけんなコンチクショーーーーーーッッッ!!!」
こうして、姉は勝利を収め、後に語り継がれることになった。
――主に妹の苦労話として。
まあそれはそれとして。
空腹で出勤することと相成ったユウキに、セツノはすまなさそうに声をかけた。
「……あの、お兄さん。こんな駄目姉と一緒ですが、これからもよろしくお願いします」
頭を下げるセツノがとても弱々しくて。
ついユウキは、頭をぽんぽんと撫でて慰めるのだった
「あ……」
「こっちこそ、よろしくね、セツノちゃん。
……こんなことになってアレだけど、夕食もお願いして、いいかな?
セツノちゃんのごはん、すごく美味しそうだったから」
「は……はい! 楽しみにしててくださいね! 明日はお弁当も作りますから! 絶対!」
顔を上気させ拳を握りしめるセツノ。
ふと。
すやすやと床の上で大の字になっていたユメカが、再び口をもごもごさせる。
「うう〜ん……セっちゃんの……泥棒猫さん……むにゃむにゃ」
火種をひとつ残しつつ。
ユメカ・ヒトヒラの敢闘は、幕を閉じるのだった。
セっちゃん頑張れ
超頑張れ
セッちゃんもユメカ姉も萌えるが
ユウキが萌えすぎ
うへへ(*^Д^)なんかもーねサイコー
おっれもーうへへ(*^Д^)
キターーーーーーー!!!!
ああぁもうセッちゃん可愛すぎるぅぅぅぅ
バカ姉に苦労し頭悩ませオマケに泣きべそまでかいちゃう
そんなセッちゃんに檄萌えっす!!!!
超ーーーGJでご馳走様でした
なにこのヒロイン……なユウキに萌えた
ユメカねえさんには、俺の山本くんのお姉さんと同じ匂いがする!
キモ姉最高!
セッちゃん最高だよセッちゃん(*´д`*)ハァハァ
ちょっとヤバいかなぁ……。
現在戦闘中。 私達は何時に無く苦戦を強いられていた。
対峙する敵は白骨巨人――ジャイアントスケルトン。
名前の通り巨人の白骨死体が術により動き回るようになったモンスター。
最初率いてた術者の死霊使いさえ倒せばコイツラもくたばってくれると踏んでたのだが、当てが外れた。
真っ先に術者を斬り伏せたと言うのにコイツラはお構い無しに私達への攻撃の手を緩める様子は無し。
この白骨巨人結構強い、と言うより私との相性が悪いと言った方がいいだろうか。
苦手なのよね。 こういうリーチの長い敵って。
しかもただでさリーチが長い上に使ってる得物も槍状の武器。 何より動きが想像以上に速い。
普通このサイズのモンスターというのは自重のお陰で動きがトロイのが定石。
なのにコイツラは骨だけで軽いお陰か術者の腕のお陰かありえないほど素早い。
こうなるとリオの魔法が頼りなのだが残念ながら既に打ち止め。
でも時間を掛ければ倒せない相手ではない。 実際既に何体かは倒し元の屍に戻り残りは二体。
だけど長引けば受ける痛手は決して軽くは無い。
私がダメージを受ける分には未だ良い。 それよりも心配なのはリオだ。
いつもリオは自分の事より私のことを気遣ってくれる。
その心遣いは嬉しいんだけどリオが傷つくのを見るのは私にとっては何よりも辛い。
だから、一刻も早くコイツラを片付けなくちゃ。
その時横から人影が飛び出した。 背丈は私より少し小さいぐらい。
動きやすさを重視した軽装の鎧を身に纏ったその戦士風の人影が手にした武器は長い柄の……
槍? 薙刀? だが其のボリューム、刃の大きさはそれ以上でこういう武器の名前は確かグレイブ……。
「ハァッ!!」
其の人影――戦士は気合と共に声を発しグレイブを一閃した。
長いリーチの其のグレイブの一撃は白骨巨人の武器を手にした腕を確実に捕らえた。
そして武器を手にした白骨巨人の腕が砕け散る。
武器を失った事によりリーチが、そして其の驚異も半減した巨人に私は斬りかかる。
そして腰骨の上、肋骨の下にある背骨に向かって一閃。
上下の支柱を断ち切られた巨人の上半身が崩れ落ちる。
そして其の上半身の心臓に当たる部分――死体を操ってる中枢核に刃を突きたてる。
コレで残るは一体。
「せいっ!!」
その時掛け声が耳に届いた。
掛け声のした方を見れば先ほど私達の前に割って入ってきた戦士。
だが其の手には先ほどまでの武器――グレイブは無く姿勢は腕を振りぬいた投擲後のような姿。
視線を廻らせれば最後の一体の心臓部分には深々とグレイブが突き刺さっていた。
状況から察するにグレイブを投げ最後の一体に止めを刺したのだろう。
音を立て崩れ落ちた白骨巨人に向かって戦士は歩いていきグレイブを引き抜いた。
改めて見ると其のグレイブの刃は標準サイズのそれより二周りほど大きかった。
ボリュームで言えば戦斧の一種バルディッシュに近いぐらいだ。
攻撃力の大きさは今見たとおりだが、成る程其の大きさなら納得もいく。
というよりあれだけ大きければ重量も相当だろう。
それを振り回し更には投げて見せるとは其の筋力は改めて驚嘆に値した。
今まで色んな戦士を見てきたが、この戦士のそれは明らかに群を抜いていた。
グレイブを引き抜いた戦士はこちらを振り返った。見たところ年の頃は私とそう変わらないだろう。
顔立ちは中々整っており女性と見紛う……いや、どちらとも判別しがたいと言った方が良いだろうか?
片目は髪で隠れ其の髪の下から大きな傷跡が見える。傷を負い潰れた目を髪で隠してるのだろうか。
いや、そんな詮索より先ずは礼を言うべきよね。
「ありがとう。 お陰で助かったわ」
「いえ、それほどでも。 ボクがでしゃばらずとも十分切り抜けられてたでしょう」
散らばる屍の数は全部で八体。 うち殆どは私とリオで倒したもの。
「そんな事無いわ。 お陰で大分助かったわ」
確かに言う通りあのままでも全て斬り伏せられただろう。
でもお陰で少ないダメージで切り抜けられたのも事実。
「私からも礼を言わせて下さい。 ありがとう御座いました」
声を発したのはリオ。 だが其の声を聞いた瞬間戦士の顔に驚きの表情が浮かぶ。
「リオ……にいさん?」
「え……? 若しかしてあなた……クリスですか?」
リオの声を聞きクリスと呼ばれた戦士の顔には驚きと戸惑い、そして喜び
それらが混ざったかのような表情が浮かぶ。
そしてリオも其の顔に笑みを浮かべ戦士――クリスに向かって駆け寄り抱擁した。
「え? 何、二人は知り合いなわけ?」
私が問い掛けるとリオは振り返り答えてくれた。
「ハイ。 このコはクリスと言って幼い頃モンスターに襲われ身寄りがなくなったところを
一時的にお師匠様に引き取られ私と暮らしてた時もあるのです。私にとって弟みたいな存在です」
――弟、そう聞いて私は少しホッとした。
「そう。 リオにとって弟みたいなのなら私も是非仲良くしたいわ。 あ、自己紹介未だだったわね。
私はセツナ」
私がそう言うとリオも続けて口を開く。
「クリス。 このセツナさんはね、何と伝説の勇者様なんだよ」
「勇者……様?」
「そうだよ。 クリスも聞いたことないか? 無敗を誇ってた魔将軍が打ち倒された話を」
「あれってこのヒトとリオにいさんのことだったの?」
戦士は、クリスは驚いたような表情で私に視線を向けた。
「勇者さまなんて大げさよ。 そうよ今私はリオと魔王討伐の旅をしてるの。 ヨロシクねクリス」
外観からは性別が判別しがたかったが弟分なら男ってことよね。 なら安心か。
正直コレット以外にも恋敵が現れるのは勘弁して欲しいから。
それにこのコ、今も目の当たりにしたのだが強い。
このコなら今までのヘッポコたちと違って仲間になってくれれば確実に頼もしい存在になってくれる。
それに何よりリオとは馴染みの仲みたい。 そんなコとは仲良くしたいしね。
だから親愛の念を込めて手を差し出したのだが、え?
一瞬クリスの視線に敵意のようなものが見えた気が――。
「ええ、共に戦いましょう。 魔王軍を打ち滅ぼす為に」
そう言ってクリスは手を握り返してくれた。 顔には屈託の無い笑顔を浮かべて。
其の笑顔に私は先ほど感じた敵意が勘違いだったと胸をなでおろす。
そうよね。 このコが私に敵意を向ける理由なんて無いわよね。
魔族によって家族を奪われてるこのコにとって魔王を倒せる可能性を秘めた私は救い主のはず。
それに男の子なんだからリオを巡る恋敵なんて事も無いしね。
そして其の日から私達のパーティーには頼もしい仲間が一人増えたのだった。
白き牙
久しぶりすぎて忘れ去られてるかなぁ
>>279 セッちゃんのカワイさは異常。姉もヤバイ。
つーか姉妹が反則(文章空中分解)
>>289 前回は何時だっけと思って、まとめサイトを見てみたら更新が五月末。
ホント久しぶりですねw
>>289 泥棒猫の勇者様
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
おかえりなさい。俺はずっと待ってたんだよ!
オークニーの静まり返った宿屋。その自室であたしは今か今かと時が満ちるのを待っていた。
刻は月が空を支配する時間帯。よほどのことがない限り大抵の人間は眠っている時間だ。
「あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつの――――――」
もう何度繰り返しただろう。あの女への怨念を短い言葉に乗せてただ繰り返す。
あれからあたしは独り部屋の中で呪詛のように呟き続けていた。
……お兄ちゃんにまで捨てられた。いくら言っても目を醒ましてくれなかった。
あの女が全部悪いのに。お兄ちゃんはあいつの味方をした。
それだけにとどまらず、あたしを怒鳴りつけた。
あのときみたいに。まだ出会って間もない、あの頃みたいに。
「あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつの――――――」
そのせいで。自分でももう訳が解らなくなって。
お兄ちゃんにまで怒りをぶつけてしまった。あたしを心配して来てくれたのに部屋から追い出してしまった。
「あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつの――――――」
きっと。お兄ちゃんに嫌われただろうな。
もうあたしのこと、構ってくれないのかな。
もしかしたら昔みたいに無視されるかも。
三年前のお兄ちゃんを思い出して、ぽっかりと心に大穴が開いたような気分になった。
今でも細部まで鮮明に思い出せる――――――あの日見た、お兄ちゃんの笑顔。
もう二度と見ることは叶わないのかもしれない。
嗚呼。あたしはあの笑顔のためだけに銃の扱い方を覚えたと言うのに。
何も……何も無くなってしまった。
三年間積み上げてきたお兄ちゃんとの関係も。生きる意味も。一切合財あいつに盗られた。
「あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつのせいだ。あいつの――――――」
惨めに独りで生き続ける気は毛頭ない。
お兄ちゃんに振り向いてもらえないなら潔く死を選ぼう。だけど、このまま独りで死ぬつもりもない。
あの女も道連れだ。せいぜい幸せを噛み締めていろ。すぐに地獄に叩き落してやる。
抱えていたマスケット銃をぎゅっと握り締めた。
弾はとうの昔に込めてある。元々は陽が沈む前に葬ってやろうと思っていたのだから。
直前で邪魔が入ったせいで見送っていたけど。
一本は片目の男を撃ったときに故障してしまったので、予備の銃はもうない。
他の二人を殺すときのことを考えるともう強化火薬は使えないかな。
本当は壊れた一本目の銃を修理してから行動した方がいいんだろうけど。
そんなに待ってられない。陽が登る前にあの女を殺さなきゃ。
殺す。絶対殺す。あたしのお兄ちゃんを盗った報いを受けさせてやる。
脳髄を破壊して、残った四肢はコマ切れにして、誰も通らない森に捨ててやる。
そこであたしが味わった独りの恐怖に震えてろ。後はそのまま野犬の餌にでもなればいい。
独りで震えている間にお兄ちゃんはお前のことなんか忘れる。
お前に誑かせてたことにすぐ気付いて。あたしの方が正しかったんだって解って。
もしかしたら、そうすればあたしのところに帰ってきてくれるかもしれない。
さっきお兄ちゃんにしてしまったことも許してくれるかもしれない。
……あれ?
もし、そうだとするなら。
あたしにもチャンスがあるんじゃない?
何もかも失ってしまったと意気消沈する必要なんて何処にもない。
―――――あいつを殺せば、お兄ちゃんは戻ってくるんだから。
「なんだ………そうか」
結局は。あの女が死ねば全部丸く収まる話じゃない。
あの女を殺せばお父さんも浮かばれる。お兄ちゃんも騙されてたって気付いて帰ってくる。
また……あの笑顔も見られる。
盗られたのなら、取り返せばいいんだ。
最初の目的通りあの女を始末すればそれで元通りなんだ。
なんでもっと早く気付かなかったんだろう。
あいつを殺せばお兄ちゃんの目が覚めるって今朝からずっと思ってたのに。
あたしがお兄ちゃんに此処でした失敗なんて全然気に病むことなんかない。
「えへっ」
簡単な話。悪者を退治してお兄ちゃんを取り返す。
よくある、勇者様が囚われたお姫様を助けるお伽話と同じだ。
…でも、お兄ちゃん?普通はこういう場合、勇者様がお兄ちゃんで、お姫様があたしじゃない?
まぁそんなちょっと世話のかかるお兄ちゃんが大好きだけど。
窓から見える月に目をやる。
月の位置からしてもう夜もかなり深い。……そろそろ、頃合かな。
あたしはベッドから立ち上がり、小さく息を吐いた。
さあ。
今宵はお伽話の再現にはうってつけの夜だ。
月がこんなにも明るい。……まるであたしを応援してるかのよう。
今日はマリィ=トレイクレルの命日になるだろう。あはっ、でも誰も弔わないけど。
殺すのが早ければ早いほど、それだけお兄ちゃんが正気に戻るのも早くなる。善は急げ、だ。
窓から漏れる月の光に銃身を晒して、マスケットの火皿を覗き込む。
「……ん」
火皿にちゃんと火薬が入っているのを確認してから。
あたしは部屋を出た。
――――――――・・・・・
足音を殺して二階まで来た。
暗い廊下に扉が三つ並んでいる。その真ん中。
あの女がいる部屋だ。おそらく、命を狙われているとも知らずにベッドで夢の中なのだろう。
お兄ちゃんの夢でも見ているのだろうか。想像するとその場で引き金を絞りたくなった。
そっと扉を開ける。
駄目元で扉に手をやったのに、施錠はされていなかった。
えへっ、無用心だなぁ。そんなことじゃ殺されても文句言えないよ?
ま、おかげでこっちは窓から忍び込む手間が省けて助かったけどね。
これから殺される女の馬鹿さ加減にほくそ笑みながら部屋の中に入ると。
―――――蝋燭に明かりが灯っていた。
「…え?」
「―――――――来ましたね、マローネさん」
ベッドに腰掛けている女の顔が蝋燭に照らされ、ぼんやりと見える。
あの女、マリィの顔だった。
「な、なんで……」
眠っていなかった。もうこんな時間なのに。
いくらなんでも偶然起きてた……なんてことはないだろう。あれだけ待ったんだから。
……と、なると。
「知ってたんだね、あたしが此処に来るの」
「正確には"気付いた"ですけどね。
あれだけ殺気をバラ撒いてたんですから一両日中には来ると思ってました」
目を細めて少しだけ悲しそうに笑うマリィ。
―――――何。その憐れむような表情は。
どうしてあたしがそんな顔されなきゃならないの。しかもあんたなんかに。
本当に。つくづくムカつく女。
「へ、へえ……。あたしが何しに来たのかも?」
「えぇ。心当たりはたくさんありますし。
それにあんなに敵意を剥き出しにされたら嫌でも気付きますよ」
「じゃあ、わざわざ説明する必要もないよね?
――――――おとなしく死んで」
銃口をマリィに向け、引き金に人差し指を掛けた。
……救国の英雄が聞いて呆れる。何の策もなしにあたしが来るのを待っているなんて。
帯刀すらしていない姿はもう失笑する他なかった。
………あれ?帯刀すらしてない…?
―――――いくらなんでもおかしい。
あたしが来るのを解っていてどうして剣を持っていないの?
そもそもこうなる前に返り討ちにすることだってできたはず。
本当に何もせずに待っていただけなら、ただの自殺願望者と同じだ。
……嫌な予感がする。
「マローネさんとちゃんと話をするのは、これが初めてでしたよね?」
穏やかな口調であたしに話しかけてきた。
いったい何を企んでるの…?このまま引き金を引くべきか、それとももう少し様子を見ておくべきなのか……
部屋の中には他に誰かいる気配はない。マリィは囮で誰かが物陰から襲ってくる、なんてことは無さそうだ。
「……やっぱり、あなたのお父様のことが原因ですか?」
逡巡するあたしを余所に一人で勝手に喋り続けるマリィ。……勘に障る女。
「…ふんっ!よくも抜け抜けと…!それだけじゃないッ!
お兄ちゃんの仇のくせに…図々しくあの人に纏わり付いてるのが、あたしは我慢ならないのッ!!」
「仇……。そうですね、確かにその通りです」
どこか遠くを見つめるような瞳で、マリィは呟いた。
嗚呼ッ…!何なの!その冷静ぶりはッ!
「だったら!さっさと消えてよ!!
あんたのせいでお兄ちゃんは苦しんだのに!あんたがいなけりゃお兄ちゃんはさっさと騎士を辞めてたのに!!
おかげであたしはお兄ちゃんと離れ離れになって――――それでも我慢した。半年も待った。
あんたがアリマテアでお兄ちゃんと居る間、あたしはずっと待ってた!こんなところでお兄ちゃんをずっと待ってた!!
やっと会えたと思った時には女が三人も居て……おまけにその中の一人がお兄ちゃんの故郷を襲った黒幕の娘!?フザけないでッッ!!!」
マリィはただ、あたしの罵声を黙って聞いていた。
それが一層あたしの憎悪に拍車をかける。
「これ以上、あたしからお兄ちゃんを取り上げないでよッ!!
お兄ちゃんは……! お兄ちゃんは、あたしだけのものなんだからぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!」
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
ずっと溜め込んでいたマリィへの憤怒を吐き出した後は、あたしの吐息だけが部屋の中に響いていた。
はらわたが煮えくり返っているあたしとは対照的に、終始冷静なマリィ。
「…………それで、私を殺そうと思ったんですか?」
―――――そうだよ。当然でしょ?人のものを盗っちゃう泥棒にはバツを与えないと。
「私を殺して、その後。あなたはどうするつもりだったんですか?」
「あははっ。何言ってるの?お兄ちゃんと二人で暮らすに決まってるじゃない。
あんたが死ねばお兄ちゃんも誑かされてちょっと病気になってただけだって気付くもの。
その後はどこかでお兄ちゃんと一生二人きりで過ごすんだ。
……えへっ、羨ましい?
……あ。でも、残りの二人が邪魔してくるんならそいつらも殺しとかなきゃ」
「……そうですか」
まただ。また、憐れむような目であたしを。
だから……あたしはあんたに憐れまれる謂れなんてないって言ってるのに。
「…こういう時って、後のことは殆ど考えていないんですよね…。
捨てられたくないあまり、思いついた一つのやり方にしがみ付く―――――よく考えれば破滅するだけだって解ってるんですけど。
でも。それでも……破滅より彼に捨てられる方が恐い。他のどんなことよりも……」
だから、あんた何?さっきから。……知った風な口聞かないで。
「あなたの気持ちは解らなくもないですが……それだけに見てて気分が悪いです。
―――――こういうのを同族嫌悪、って言うんでしょうね」
言いながらベッドから立ち上がり、あたしを正面から見据える。
ああ。おかげで狙い易くなった。
「あんたと一緒にしないでよ、それこそ気分が悪い」
照準をマリィの額に合わせて睨み返す。
「おじさまを死なせてしまった咎はいくらでも受けるつもりです。
…ですが、ウィルのことだけは譲れない」
ふーん。そこで女の顔するんだ、あんた。…ムカつくなぁ。
「だから、違うってば。お兄ちゃんはあたしのなの。
譲る譲らないじゃなくて、生まれた瞬間から、この先未来永劫ずっとあたしのなんだから」
いくら話をしても平行線。
あんたがお兄ちゃんを諦めるって言うんなら見逃してあげたんだけど。
でも、当たり前か。あたしとこいつが交わることなんて絶対ない。
「……なのに、あんたは誰に断ってお兄ちゃんの傍にいるの?」
「ウィルは、私のことを恨んでいないと言ってくれました。傍に居てもいいと言ってくれました。
ちゃんと彼と話をすれば、こんなことしなくても他にいくらでも方法があるんです」
自分の胸に手を当て、思い出すように目を瞑るマリィ。
……なるほどね。そうやってお兄ちゃんを誑かしたわけだ。…この糞女。
「あなたがどういう経緯で今の行動に至ったのかは私にはわかりません。
でも今あなたがしていることは、邪魔者を排除するのと同時にウィルを苦しませることになるんです。
此処に来る前、私はそれを痛感しました」
次から次へと。全く飽きもせずあたしの癪に障ることばかり。
あんたにあたしの何が分かるって言うの。
「あなたが欲しかったのはウィルの何ですか?身体?心?それとも他の何かですか?
それをもう一度考えてみてください」
不意に。お兄ちゃんの笑顔がチラついた。
……いけない、いけない。ちゃんと現実に目を向けていないと。
こんな女なんかに惑わされるなんて。よっぽどあたしも疲れているらしい。
「言いたいことはそれだけ?」
さて、と。そうこうしている間に結構時間経っちゃったけど。
何かあると思ったのはあたしの思い過ごしかな…?
これだけ待っても何も起きやしない。ただの時間稼ぎ?
いや、あたしが仕掛けてくるのを待ってるのかもしれない。
それなら望みどおりにしてあげよう。いい加減こいつとの会話も飽きたし。
人差し指に意識を集中させる。
さっきからずっと銃口を向けられているというのに、マリィは顔色ひとつ変えない。
「―――――やっぱり。
私が何を言ったところで無駄ですか……」
目を伏せ、ひとり呟くマリィ。
「それじゃあ、さよならだね」
……これで。これでお兄ちゃんはあたしのもの。
あたしは。
人差し指に力を込め。
引き金を引いた。
―――――パチンッ
「……あれ?」
マスケットは沈黙したまま。
マリィは静かにこちらを見つめていた。
「何?不発?」
何度引き金を引いても、当たり金を叩く火打ち石の音が聞こえるだけで弾が射出されない。
単なる不発じゃない。火薬が湿った…?いや、それ以前に……
「あんた、何したの?」
できるだけ動揺を隠してマリィから距離を置いた。
「私にできるのはここまで……。後はウィルに任せましょう。
入ってきてください、ウィル」
マリィがあたしじゃない、誰かに声を掛けた。
「―――――え?」
マリィの声と共に背後の扉が開かれ、その先に。
「マローネ……もうやめよう」
侍女に連れられたお兄ちゃんが姿を現した。
「頼むからこんなことやめてくれ」
辛そうに眉を寄せた顔でこっちを見るお兄ちゃん。
その顔が目に入った瞬間、全身の血が沸騰して銃をマリィに突きつけた。
「あんた!またお兄ちゃんを誑かしたのねッ!!」
引き金を引く。…何度も。何度も。
それでも銃口から鉛玉が飛び出すことはなかった。
「クソッ!なんで…なんで…ッ!!」
「いくら引き金を引いても弾は出ません、マローネ様」
狂ったように引き金を引く横で、侍女が懐から小さな石を取り出した。
涼しげな顔で、彼女が右手に摘んでいるのは、火打石…。
「……あ、え…?」
慌てて自分の銃を見た。
暗がりでよく見えないが、前に見たときと石の形状が少し違う気がする。
「石を掏り替えさせていただきました。今その銃に付いてる石では、着火は無理でしょう」
いつの間に。
とんだ茶番だ。意気揚々とマリィの部屋に忍び込んだのを、ここにいる全員が知っていた。
知らなかったのあたし一人。おまけに使えもしない銃をマリィに向けて。
間抜けなのは、あたしの方だった。
「……ッ」
勝ち目はない。銃が使えなければ、体術でマリィを殺そうとしてもすぐにお兄ちゃんたちに止められるだろう。
銃が使えなければ………いや。火種さえあれば、まだ銃は使える。
「マローネ。聞いてくれ。
俺は戦争で犯した罪を償いたいんだ。
だからこうして団長たちと旅をしているし、騎士も辞めた。
その答えを見つけるまで団長や姫様の告白を保留してる。それまで二人には待ってもらってるんだ。
だからマローネの言うようにみんなと別れるわけにはいかない」
やめてよ。こいつらに何を吹き込まれたか知らないけど、そんなこと言わないで。
あたしじゃ、駄目なの?そいつの方がいいの?なんで?お兄ちゃん。
三人に悟られないように机の上の蝋燭を見た。まだ弱々しくも火が灯っている。
じりじりと、少しだけその蝋燭に近づく。
「な、何がいいたいの、お兄ちゃん」
まだ手は蝋燭に届きそうにない。
「団長に誑かされたとか、そんなんじゃない。俺は団長と居たいからそうしてるんだ。
いくらマローネの頼みでも聞き入れることはできない」
なんだ。結局……結局のところ。
「やっぱりあたし、捨てられたんだ…」
「違―――――」
お兄ちゃんが何か言うよりも早く、あたしは蝋燭に手を伸ばした。
もういい。この女を殺してあたしも死ぬ。
マリィにだけは、絶対にお兄ちゃんを渡したくなかった。
「マリィ様ッ!蝋燭をッ!!」
侍女の声で弾かれたように飛び出すマリィ。
だけどもう遅い。とうにあたしは蝋燭を掴んでいた。
こちらに駆け寄ってくるマリィに再度銃口を向ける。…次は不発じゃない。
「止せッ、マローネ!!」
ごめんね、お兄ちゃん。でもこいつだけは。
お兄ちゃんは、誰にも渡さないんだから。
こんな女なんかに。こんな―――――
「マローネさん、やめなさい!その銃は……!!」
マリィが血相を変えてあたしに手を伸ばす。でも、そんなところからじゃ届かないよ?
やっとこの女の慌てた顔を拝むことができた。その顔があんたの最期の顔だから。
これで、詰め。
「えへっ」
あたしは、火皿に蝋燭の火をぶち込んだ。
以上です。
最終話も既に完成してるので、それはまた明日にでも。
ブラマリは最高に面白いですな
ブラマリ、素晴らしい展開ですな
ブラマリ、神展開ですな。皆の衆。
神が多すぎて毎日が悶々ですよ
あと、同時連載してる神もすごいです
でも無理はせんように
ファンタジー三連作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
凄まじい威力だ
久々にプロットを投下してみる(ってか、パクリだが)
交通事故に遭って数年意識不明で眠っていたヒロインが目覚めると
ヒロインの親友と主人公が付き合っていた。(ここまでは君望パクリ)
(その事実を知ったのは親友泥棒猫と主人公を見舞いに来た時に告白される)
心に深く傷ついたヒロインは主人公を取り戻すと決心する。
元々主人公に依存しまくっていたヒロインにとっては彼なしで生きてゆくことはできない。
誰も見舞いに来ない中、必死にリハビリして気力で退院する。
主人公と泥棒猫の愛の巣を見つけると、ヒロインは主人公に接近する
もちろん、泥棒猫から奪い返すために同情を装うような言葉や仕草を見せる
当然、ヘタレ主人公はヒロインの思惑通りに乗せられてヒロインとの時間を少しずつ持ち始める
ついには肉体関係を持ってしまう。(ここまではオリジナル)
まあ、君が望む永遠の設定をパクってますwwwwww
EDとしては
ED1
ヒロインにより、監禁されてデレデレヒロインに一生お世話してもらうED
ED2
発狂したヒロインを主人公が看病するED
ED3
完全にヤンデレとして覚醒した黒ヒロインが健気に主人公をストーキングしt
泥棒猫を追い払う・・。
うーん・・。普通に君が望むEDになってしまってるし
もっと、斬新なEDを考えないと
ED4
ぶつかるヒロインと黒ヒロイン。その隙に姉が略奪愛
「漁夫の利、ね。ふふふふ・・・・」
ED5
ヒロインと泥棒猫が夕日をバックに拳で語る
戦友に
>>279 とりあえず可愛すぎるのでセっちゃんはもらっていきますね
>>289 続きktkr!
お待ちしておりました
>>301 ラストがどうなるのか凄いwktk
マローネ可愛いよマローネ
>>289 性悪勇者の活躍に期待して待っていたんだが、どうやらまた一人腹に黒い物を抱えた
キャラが登場のようで、更に期待!
>>301 マローネの行方がマジで気になる。このまま不幸なまま終わってしまうのか……
個人的には皆幸せになって欲しい。
ED6
ヒロインと泥棒猫が戦い始めるシーンで
「本当の戦いはまだ始まったばかりだ!」
完
最近ファンタジー多いな
そもそも修羅場とか三角関係自体俺にはファンタジー
たまにはないてもいいですか(´・ω・`)
別に最近多い訳じゃないと思うけど。偶々かぶっただけで
いやまぁ間違いなく最初の頃に比べたら多いけどさ
>>310 君ごときがセっちゃんを貰うと?笑わせる。
殺して俺が貰う。
>310と>316が争っている間に俺が漁夫の利を(ry
>310と>316が争っている間に俺が漁夫の利を(ry
携帯からはなれてないんだ。二重投稿すまん。
ユメカ・ヒトヒラと幸せになるためなら
俺は全力でおまいらと戦う。
僕はユウキちゃn
ウホッ
>>321 悪いことは言わねえ
冗談じゃなく塵になるぜ
投下しますよ
Aルート
電子音。
目覚ましの代わりにしている携帯のアラームを止めて、表示されている時間を見た。い
つもより若干遅く起きてしまったのは何故だろうかと思い、いつもと少し違うことに気が
付いた。始めてセックスをして以来、姉さんが隣で寝ていないのはもう馴染んだけれど、
サクラが起こしに来ないのは初めてだ。毎日起こしてくれたことに今更有り難みを覚える
のと共に、何故今日は起こしに来なかったのかということに疑問が湧いてくる。思い付く
理由は寝坊くらいのものだが、もしそうだとしたら珍しいこともあるものだ。
寝惚けた思考で制服に着替えると洗面所に向かった。
何だろう、やけに居間が騒がしい。つくづく珍しいこともあるものだ。
いつも通りに顔を洗って歯を磨き、居間に向かう。
「おはよう」
僕が戻った頃には、もう静かになっていた。皆いつも通りに朝御飯を食べている。
「おはよう、虎徹ちゃん」
姉さんが口の周りにご飯粒を付けながら挨拶を返してくる。昔から注意をしているのに
治らないその癖は、きっとこれからも続いていくのだろうか。食事を作る立場のサクラが
いつも睨んでいるので治した方が良いと思うが、その悲願は達成される見込みは無い。
「おはようございます、兄さん」
続いて挨拶をしてくるのはサクラ。姉さんが汚くご飯を食べたり、僕が少し遅かったり
したので少し不満そうだが、それでも茶碗にご飯を盛る仕草は嬉しそうだ。これも日常の
風景の一つ、僕の朝には欠かせない。
「おはよう、虎徹」
「おはようさん、虎徹」
父さんも母さんも元気そうで何より、両親が健康なのは良いことだ。
「おはよう、虎徹君」
青海は今日も可愛いなあ、その姿を見るだけで一日分の活気が湧いてくる。
僕はいつも通りに姉さんとサクラの間に座ると茶碗を受け取り、ご飯を食べ始めた。僕
の好みに合わせてくれているらしいおかずはとても美味しい。最近少し味付けが濃くなっ
たものの、これはこれでいけるし、ご飯が進むのが幸せだ。
「あ、すまない虎徹君。醤油を取ってくれ」
言われて僕は青海に手元の小瓶を渡す。目玉焼きに醤油をかける庶民的なところもある
のか、また青海の意外な一面を知ってしまった。けれども、それもまた悪くない。
ん?
待て。
待て待て待て待て。
青海!?
気が付いたら口の中のものを吹き出してしまっていて、丁度真向かいに居る青海がご飯
粒まみれになっていた。どうでも良くはないと思うけれど、今はそんなことどうでも良い。
「兄さん、せっかく作った食事を粗末にしないで下さい。おまけに汚いですよ」
眉値を寄せるサクラ、本当にすみません。
「あぁ、羨ましい!! あたしにも唾にまみれたご飯を顔にかけてぇ!!」
もう少しオブラートに包んで言って下さい。
「コレクションに加えたいが今すぐ口にも含みたい、あぁ!! どうすれば良いんだ!!」
どうもするな、黙って顔を拭けば良いんだ。
僕は青海にティッシュを渡しながら両親を見た。ご飯を吹き出したことに少々眉を寄せ
てはいるものの、それ以外はまるでいつもと変わりない。家族ではない人間が食卓に居る
のにそれに疑問を挟むことなく普通に食事を続けている。
「父さん、母さん。何で青海がここに居んのさ!?」
「そんなことより、汚いわよ、虎徹」
「そうだぞ、青海ちゃんに失礼じゃないか」
それはそうだけと、今は違うだろ!!
「心配痛み入りますが大丈夫です、お義父様お義母様。汚くなど、寧ろ綺麗で、いやいや
寧ろ望むところですよ? …バッチコーイ!!」
「ごめん青海は少し黙ってて」
言うと青海は少し不満そうにしながらも、黙り込んで食事を再開した。こうしていれば
可愛いし良い部分も沢山あるのだから、さっきの発言は聞かなかったことにする。人間、
誰にでも過ちというものはあるものだ。
自分に言い聞かせて心を静めると、改めて視線で両親に説明を求めた。
「いやな、俺が誘ったんだ。最初は驚いたよ、久し振りに帰ってきたら家の前にリムジン
が停まっているし。訊けばお前を待っていると言うから連れてきたんだ、良い彼女さんじ
ゃないか。それでな、朝早くから来ていてもしかしてと思ったら、やっぱり朝はあまり食
べないらしいから、ついでと言っては難だがこうして一緒に朝飯を食うように言ったんだ。
朝は一日の基本だし、子供が朝を抜かすのは尚更良くないからな」
「あたしは反対したんだけど、パパがどうしてもって言うから」
「私も同じく、お母さんに押し切られて」
成程、これで全ての納得がいった。ついでに言うならサクラが起こしに来なかったのも
多分青海のことで揉めていたからで、顔を洗いにいく途中、リビングが騒がしかったのも
その悶着のせいなのだろう。
僕は溜息を吐き、青海を見た。
「迷惑だったか?」
とんでもない。
「気にしないで、寧ろだ」
「「大・迷・惑」」
僕は左右に居る姉妹の頭にチョッピングすると軽く咳払いをし、
「大歓迎」
その一言で青海の表情が途端に明るくなる。
「嬉しいな、虎徹君。嬉しいついでに訊きたいんだが、明日は空いているかな?」
明日は土曜日、学校も休みだし特に予定を入れている訳でもない。強いて言うなら中間
試験が近いから勉強しようとは思っているけれど、テスト週間はもう少し先なので急いで
するようなことでもない。常に中の上と上の下をさまよっている僕が言うのも片腹痛い話
だけれども、こういうものは普段の積み重ねが大事だからだ。
「なら、明日はデートしないか? 偶然予定が空いたんだ」
今日は本当に珍しいことばかりだ。いつもの土日は予定が詰まっているらしく遊ぶこと
はあまり出来なかったので、休日デートは実質初めてになる。放課後では出来ないような
遠出や青海の私服姿を考えると、それだけで楽しみになってくる。
「良いよ、待ち合わせは?」
「十時に駅の四番ホームで」
青海のことだから迎えに来るとか言いそうだと思ったけれども、迎えに来るどころか車
も使おうとしないのは完全に予想外だった。今でもまだ少し先入観が残っているのは青海
に申し訳がないけれど、電車なんて乗らないものだと思っていたから少し驚いた。
そのことを訊くと青海は少し顔を赤らめ、
「家とは完全に離れて、本当に二人だけで遊びたいんだ」
照れたような表情が可愛らしく、つい頭を撫でてしまった。気持ち良さそうにしている
青海を見て、本格的に青海のことが好きになりだしたときのことを思い出した。
姉さんとの初めての情事のせいで弱っていた僕を助けてくれたのは、優しく頭を撫でて
くれた青海だった。それだけじゃない、青海の笑みには何度も救われた。
僕はそんな青海に対して、
「ちゃんと彼氏を出来てるんだろうか?」
思わず漏れた小さな呟きだが、しっかりと聞こえてしまったらしい。青海は僕の手を取
ると極上の笑みを顔中に浮かべて、
「もちろん、わたしにはもったいないくらいだ」
「そうよそうよ」
大事な場面だというのに、横合いから姉さんのヤジが飛んできた。視線を声のする方へ
向けると、高三にもなって頬を膨らませた姉さんがこちらを睨んでいた。反対側のサクラ
は気配で既に危険な状態になっているのが分かるので、敢えて見ないことにする。小さく
聞こえてくる呪祖のような言葉も、聞こえないふりで誤魔化すことにする。以前はサクラ
が喋り、姉さんが行動を起こすということが多かったけれども、最近はそれが逆になって
きている気がする。
現に今も、
「昔は素直な良い子だったのに今では家族にチョップをしたり、親姉妹身内の前でいちゃ
つくようになっています。お姉ちゃん、とっても悲しい!!」
こうしてよく喋っている。
「昔みたいに、三人に戻れたら良いのに。あはっ、あの頃は楽しかったなぁ」
「…そうですね」
今まで会話に混ざる様子が無かったサクラが、青海を見て呟いた。
何故だろう。
普通の表情で、
普通の声で、
普通の調子でサクラは喋った筈だ。
しかしそれは、気のせいかもしれないけれど、とても冷たい声のような気がした。
今回はこれで終わりです
先日ツンデレスレに一つ投下したので、興味があったら是非御一読を
宣伝ウザ('A`)
>>307 主人公が事故で死んで第一部完
第二部では主人公不在で、ヒロインたちが遺骨の取りあいで弩修羅場
GJです。
>>307 各ヒロインEDとは別に親友が「僕達これからも友達だよね」って言うEDはどうでしょうか?。
それはそうとツンデレスレ行ってきます
GJ!やっぱりこの姉妹には癒される
俺もツンデレスレ見てくるかな
夢を見た。あれからすぐに帰ったらまだ二時前だったので、体力回復をはかろうとしたら……なんで夢なんてみるかなぁ。
まるで海の中に沈んでいるような。そんな感覚で体がふわふわする。おぁ……気持ちいいなぁ……
と、次の瞬間にぴかっとひかる……その光のなかで一人たたずむ人がいた。向こうをむいて座っている。
「あの〜。もし、そこのかた。」
俺の声に振り向いたその人は………
「あ、晋也〜。久しぶり〜。」
「あ、お嬢!うっ!」
俺に気付いた途端。タックルをかますように抱き付いてくる。アウチ!夢でも痛いヨ!
「スゥーーー……あぁ、久しぶりに晋也のにおい………やっぱりいいなぁ……」
みずおちの辺りに顔をうずめて深呼吸をしている。やっぱり……身長伸びたなぁ。ってお嬢が変わらないからか?
「どーしたん?こんなとこに呼び出してさ。」
「なによー。久しぶりなんだからもうちょっと感動してもいいじゃない。」
ブウ、とむくれるお嬢。うーん、なんていうか……
「お嬢、幼児化してない?言動がやたらと子供っぽい気が……あいでっ!」
足を踏まれた。
「もうっ、私は遠藤家当主の遠藤佐奈じゃないのよ?一人の少女なんだから。」
ふむ、ずいぶんと神に近い少女だ。
「実はさー……ちょっと忠告にきたんだ。」
「ん?忠告?って、おまっ、それは悪い事に使う単語……」
「ビンゴッ!ちょっと悪戯しちゃってさー……」
「悪戯って……なに?」
「この前、あんまりにも晋也と志穂がラブラブバカップルをしてるのを街中でみかけちゃったから……志穂の夢を……ちょっと…ね?」
「ちょっと……なに?」
「私と晋也が……ラブラブしてる夢をみせちゃった……」
「……おぅ、じーざす。」
俺は天を仰いだ。この少女はまるで悪魔のような、いや、悪魔ね心をお持ちである。志穂はもともと不安がるととことん心配する性格なんだ。
だからたとえ夢だろうとそれを真にうけて………
「ってお嬢!被害受けるのは俺……ってもういない?」
見下ろしてみると既にお嬢はいなかった。ただ、最後に一言……
「うふふ、頑張ってねぇ。」
と天の声が聞こえたのが、夢の最後となった。………ちくせう。恨んでやる………
「うぅう………」
徐々に夢から現実へ移行していく。体がリアリティを取り戻していく。それと同時に……下腹部に違和感が……もとい、快感が。
「……んむ……うん……くぷ……」
目をうっすらと開けると、寝ぼけ眼から一転。神速で目が覚めた。なぜなら………うん、さっきのかぎ括弧の音でわかると思うんだ………
「……し、志穂?」
「んく……んんっ、ちゅっ……ぷあ……あ…んぅ…おひゃひょう、ひんや。」
「志穂さん……朝っぱらからフェラってますか。」
「ぷはぁ…だって……見たら大きくなってたんだもん……ナミちゃんに見せられないでしょ……」
いやいや、この状況を見られたほうがまずいんじゃね?という正論が頭に浮かんだが、同時に『性欲>理性』の図が浮かんだため、打ち消されてしまった。
oh〜God!我が煩悩、尽きる事なし!
「ところで……晋也……かぷ……」
あ、あらら?なんか危険な構造ですよ?志穂の尖った八重歯(←ここ!俺の萌ゆるポイント!)が息子の先端にロックオンされる。これだけなら気持ちいいんだが………
あ、危ない!逃げてー!Myサン!
「お嬢って……知ってる?」
ピク
その戦慄を呼び覚ます単語に、俺の欲望の塊の部分が反応する。嗚呼!なんてすなおなんだ。
「さきっぽふくらんだ………知ってるんだ……」
「まぁ……知らないっていえば嘘に『カリ!』おうわ、なにするやめ…」
八重歯で刺してくるかと思ったら予想外。甘噛みをしてきた。違う予防策を考えていた俺は、見事だまされて快感に悶えてしまった。
「ふふ……悲しいなぁ………私の知らないところで……女と知り合いになるなんて……」
「いや、べ、別にただの知り合いってだけで、お前が考えてるようなもんでは……」
「本当に?」
「おう。」
「まじに?」
「イエス。」
「絶対絶対、ぜぇったいに?」
「ウィ。」
「嘘だったら、『これ』切るよ?」
「サー!イエッサー!」
志穂の尋問がキツくなる度、俺の返事の錬度(?)が増す。
「そう………じゃあ、一応信じたって事で……イカせてあげる。」
妖艶な笑みを浮かべた志穂の幼い顔にゾクリときた自分を、ロリコンだと再認識した。カミングアウトでもなんでも来いってんだコノヤロー!
「ちゃ……ちゅる…んぅ……あく……ちゅううううっ!」
「ぐあせふなたきをたかさ!?」
強襲する快感の刃に、構築未十分な言葉たちが溢れる。そしてそのまま、吸われた勢いで志穂の口に発射した。
びゅるるー!びゅ―……びゅっ…
「んんん……んく……ちゅうう……まだ…残ってる……ちゅるる……」
ママン。僕がミイラとなる日は近いです。足腰が寝たままガクガク震える。昨日の夜から二連戦とは……さすがの俺もおもいつかなんだ。志穂…恐ろしい子!
「ふう……朝ご飯はこれでいいわね♪お腹いっぱい。」
「……かゆ……うま」
Gj、お嬢幼児化してさらに可愛いよお嬢(*´Д`)ハァハァ
夢を見ている。とても懐かしい、それでいて鮮明な過去の思い出。
確かお兄ちゃんが笑顔を見せるようになってからそう間もない頃だろうか。
あのころは、戦争に参加しないあたしもお父さんたちに連れられて、駐屯地で過ごす毎日だった。
戦争に駆り出される皆の帰りを、ヒヤヒヤしながら待っていたのを今でも覚えている。
いつも待ってばかりだった自分に嫌気が差していたんだと思う。
ある日、あたしは思いつきでお兄ちゃんにあることを言った。
『マローネ。なんだ、それ』
長筒を持っているのに気付いたお兄ちゃんが近づいてくる。
もう大分みんなとも打ち解けたようで表情も柔らかい。
『え、これ?さっき知らない兵隊さんにもらったんだ。使い物にならないから、って』
長筒を、お兄ちゃんに差し出すように見せて答えた。
あたしがもらってもどうしようもないんだけどな。
『……マスケット銃か。確かに初心者には敷居の高い武器だな』
しげしげと眺めながら頷く。お兄ちゃんもまだ戦闘経験が浅いから、マスケットが珍しいみたい。
『どうしようか…?これ』
もらったのはいいんだけど、使い道が見当たらない。
『俺たちの隊に銃を得物にしてる人はいないしな……』
お兄ちゃんも考えあぐねているようで歯切れが悪い。
そんなお兄ちゃんを見ながら、ふと良いことを思いついた。
『じゃあさ。あたし、この銃の使い方勉強するよ。それで傭兵になったら、お兄ちゃんを助けてあげる』
軽い雰囲気のまま言ったが、内心ではかなり本気だった。
だって、お兄ちゃんの訃報なんて聞きたくなかったから。そんなもの聞くくらいならお兄ちゃんと一緒に死んだ方がいい。
そう思っていたから。
『ははっ。それは助かるよ。うちの傭兵部隊って弓兵が殆どいないしな』
多分このときのお兄ちゃんはあたしが本気だって気付いてなかったんだろう。
冗談でないと解っていたなら全力で止めていたはず。
実際、後日改めて銃の勉強をすると言ったとき、一番反対したのはお兄ちゃんだった。
『でもマスケットって再装填してる間、すっごく無防備だって言うから。
その間はちゃんと守ってよね、お兄ちゃん』
笑顔でぱしっ、と背中を叩いたのだけど。お兄ちゃんは何故か辛そうな顔をした。
『………ああ。守るよ。
――――――――――今度こそ、絶対』
こっちまで胸が締め付けられるような、そんな顔だった。
嗚呼。気付いてしまった。
その顔は山小屋で山賊の頭領を撃ってから、ずっとあたしに向けていた顔だ。
お兄ちゃんのそんな顔見たくない。そう思って死にもの狂いで銃の扱い方を習ったのに。
初めてあたしに心を開いてくれた、あの柔らかな笑顔が見たくて、お兄ちゃんに世話を焼いていたのに。
『あなたが欲しかったのはウィルの何ですか?』
いつからだろう。お兄ちゃんをただ独占したいと思ったのは。
ねぇ、お兄ちゃん。
あの笑顔を見せてくれなきゃ辛いだけじゃない。独り占めする意味がないじゃない。
そんな思い詰めた顔を独占したって嬉しくないよ。だって。
あたしの生き甲斐は、あの笑顔に集約されているのだから。
お兄ちゃんを独占するにはあの三人が邪魔。
でもその三人を排除しようとするとお兄ちゃんはあの笑顔を見せてくれない。
それなのに三人を放っておいたら独占できない。
ぐるぐる。ぐるぐるぐるぐる。
いつまで経っても考えがまとまらない。
マリィを殺すとあんなに強く誓った決意が揺らぎ始め。
かと言って他に良い方法が思いついたわけでもなく。
――――まるで答えが見えて来ない。
考えても、考えても。
どこを目指せばいいのかすら皆目見当もつかない。
思考を積み重ねれば積み重ねるほど、迷走を繰り返し……雁字搦めになって身動きが取れなくなる。
……どうすればいいの?あたしはどうしたいの?
あたしは、いったい、どうしたら――――――――。
闇へ、闇へと。
出口の見えない思考の迷路を彷徨いながら、あたしは暗い闇へと堕ちていく。
もうこのまま、浮上できないくらい深い底まで沈んでしまおうか。
そう諦めかけたとき。
誰かがあたしの右手を掴んだ。
とても温かい、人の肌の感触。覚えのある感触だった。
掴まれた右手が力強く引っ張られ、あたしは一気に光の許まで引き上げられる。
光が視界いっぱいに広がって。
その先に誰かの人影が見えた。
「ん………んぅ……―――――?」
目が覚めると、あたしはベッドで横になっていた。
窓から見えるのは燦燦と輝く太陽。
いつの間にか夜は明けていた。いや、もしかしたら正午も過ぎているのかもしれない。
「つっ…!」
突然頭に鈍痛が襲った。
顔をしかめながら頭に手をやると、指先に布の感触。………包帯…?
怪我をしているのだろうか。
怪我の原因は何なのか記憶を辿る。
確か、あたしは。
マリィを撃ち殺そうと引き金を引いて……目の前が真っ白になって。
……そこで意識が途切れている。気が付けばあたしは此処にいた。
「何が、あったの……?」
部屋のまわりを見渡すと、誰かがあたしのベッドに上体を預けてうたた寝しているのが目に入った。
ベッドの横、椅子に腰掛けたお兄ちゃんだった。
「お兄ちゃん………」
眠っているお兄ちゃんの髪に右手を伸ばそうとして、やっと気付いた。
右手にずっと感じていた温もり―――――お兄ちゃんがあたしの手を握ってくれていたのだ。
「…………ぅ……?」
あたしの気配を感じ取ったのか、お兄ちゃんがゆっくり瞼を開く。
「マロー……ネ…?」
寝ぼけ眼であたしの目を数瞬見つめ。
「マローネッ……!!」
いきなり抱きつかれた。
こちらから抱きついたのは幾度となくあったけど、抱きつかれたのは初めてだった。
「お、お兄ちゃん?」
嬉しかったけど信じられない気持ちの方が大きかった。
抱きつかれたことが信じられないんじゃなくて。
「良かった……良かった……。目を覚まさないんじゃないかと心配したんだからな」
お兄ちゃんが泣いていたから。
初めて会ったあの日以来、泣いているのを見たことがなかったから。
「痛いところはないか?気分悪いとか、身体のどこかが動かないとか……」
「だ、大丈夫だよ。ちょっと頭が痛いけどそれ以外は何ともないから」
お兄ちゃんの背中に手を回して、落ち着けるように答えた。
「本当だな?何かおかしいと感じたらすぐに言えよ?」
自分が泣いていたのがやっと解ったのか、恥ずかしそうに涙を拭うお兄ちゃん。
「それより……あたしどうしたの?
あの女―――――マリィを……えと、その…撃とうとして……その後の記憶がないんだけど……」
鈍痛のする頭を巡らせながら尋ねる。何度思い出そうとしてもやっぱり記憶がない。
「銃が暴発したんだよ。覚えてないか?
火打ち石以外の次善策としてシャロンちゃんが銃口を詰めてたんだ」
お兄ちゃんの話ではあたしが夕食を取っている間に銃に細工をしてたらしい。
弾込めは山小屋に出掛ける前に終わっていたから、銃口の確認なんてしていなかった。
陽が暮れて暗かったせいもあって確認に手を抜いていたのが仇になった。
あたしの負けはお兄ちゃんが部屋に来るよりも前に決まってたことになる。
―――――まあ、今となってはどうでもいいけど。
「その、悪かったな……マローネ」
内心自嘲していたあたしに、お兄ちゃんが重たげに口を開いた。
「どうしたの?藪から棒に」
「勝手にお前に恨まれてるって勘違いして………それならお前から離れよう、って。
よく考えたら自分勝手なんだよな、こんなの。ただの逃げだ」
眉を寄せ、言いにくそうに目を伏せるお兄ちゃん。
ああ。あの時の顔だ。お願いだから…そんな顔、しないでよ。
「その、俺さ―――――んあっ」
せっかくお兄ちゃんと二人きりなのに、さっきから暗い顔ばかり。
あの笑顔が見たくて、あたしはお兄ちゃんの両頬を引っ張った。
「お兄ちゃん、ネクラだよ〜。終わったことをいつまでもウジウジと」
「あ、あおーね……」
「あははっ。変な顔!」
頬を引っ張られたまま喋るお兄ちゃんの顔があんまり可笑しいものだから、思わず噴き出してしまった。
「お前がやったんだろ…」
不服そう睨みつける。
でもすぐに自分でも可笑しくなったのか、あたしと同じように笑った。
うん、それでいい。まだちょっと憂いは消えてないけど。
あたしが見たいのはその顔なんだから。この顔のために色々やってきたんだから。
あたしが満足して頬を綻ばせていると。
「マローネ」
真剣な表情に戻ってあたしに尋ねてきた。
「お前さえ良かったら―――――――いや、違うな。マローネをダシにするのは卑怯ってもんか」
かぶりを振って言い直す。
「俺たちと一緒に暮らそう……俺はそうしたい」
俺と、じゃないのはいただけないけど。
でも、まぁ。お兄ちゃんにしては上出来かな。この言葉が聞けただけでも。
「………」
すぐには答えず、自分の考えをもう一度頭の中で咀嚼する。
お兄ちゃんの申し出はすごく嬉しい。
だけどあたしはもう決めてある。これからのこと。お兄ちゃんのこと。
ちゃんとした答えはまだ見出せてないけど、当座の目的は決まった。
自分がどうしたくて、どうするべきなのか。
「あたしは―――――――」
そして、あたしは。今の気持ちを言葉にして伝えた。
――――――――・・・・・
東の空から、太陽が顔を出している。…マローネが進む方角だ。
眩しさに目を細めながら、俺はその遥か先に目を向けた。
平野が続く向こうにはところどころ森林地帯が見える。
「ほんとにいいのか…?マローネ」
「…うん。みんなをちゃんとお家に帰してあげたいし」
脇に置く荷物をちらりと見ながら、マローネは微笑う。
荷の中にはベイリン傭兵旅団、みんなの遺骨が入っている。
回収された遺体はマローネのたっての願いで火葬にしてもらった。
遺骨をそれぞれの故郷の地で埋葬するためだ。
マローネが目覚めてから三日。
銃の暴発で受けた傷は奇跡的に大したものではなかったので、今はすっかり完治している。
これからオークニーを出るマローネを見送るため、俺たちは街の東門に来ていた。
今日はマローネの旅立ちの日だ。
俺たちと一緒に暮らそう。
その申し出に対するマローネの返事は"NO"だった。
『――――――少し、独りになって考えたいから』
どういった心境の変化か俺には解らない。
だけど、そのときのマローネの顔から陰鬱とした暗さは消えていた。
マローネはみんなの遺骨を故郷に届けながら、独りで気持ちを整理したいと言っていた。
俺と一緒にいたいとあれほど口を酸っぱくして言っていたマローネが、
急にそんなことを言い出したのには驚いたが、彼女の目に迷いはなかった。
……旅団の故郷は皆バラバラだ。単にそれをひとつひとつ廻るだけでも長い旅になるだろう。
しばらくは会えなくなる。
「マリィ」
マローネが、少し離れてこちらの様子を眺めていた団長に声を掛けた。
「あっ、はい?」
まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったのか、素っ頓狂な声で返事。
姫様やシャロンちゃんも目を丸くしていた。
「ごめんなさい」
「え?…え?」
突然マローネが頭を下げた。いきなりの行動に益々アタフタする団長を尻目に。
「勘違いしないで。あんたを殺そうとしたのを謝ったの。けど、それだけだから。
あたしが今日此処を離れるのはお兄ちゃんを諦めたわけじゃない」
マローネには珍しい、仏頂面で淡々と語る。
「お父さんが死んだのは仕方ないって理解してるし、お兄ちゃんがあんたのことを買ってるのも解ってる。
……でも、それでもやっぱりあたしはあんたが嫌い。お兄ちゃんは絶対に渡さないから。
――――――あたしが言いたいのはそれだけ」
ぽかんと口を開けている団長から離れて、置いていた荷物を肩に掛けた。
……間もなく出発だ。
「お兄ちゃん、行ってきます」
「ああ。―――――いつでも帰って来いよ」
こちらの返事に少しだけ淋しそうに笑うと、俺たちに背を向け、東へと歩き出した。
その背中を黙って見つめる。
徐々に。徐々にマローネとの距離が離れていく。
世界は広い。もしマローネに帰ってくる気がなかったとしたら、これが今生の別れになってしまうだろう。
朝日に吸い込まれるように小さくなっていく後ろ姿を見て、俺は少し不安になった。
「マローネ!!!」
不安に駆られ、大きな声で彼女を呼び止める。
マローネがこちらを振り返ったが、逆光で顔がよく見えない。
「待ってるからな!お前が帰ってくるまで、ずっと待ってるからな!!」
やはり顔はよく見えない。
―――――だけど。俺にはマローネが笑っているように見えた。
再びマローネが歩き出す。もうこちらを振る返ることはなかった。
「あやつ、帰ってくるじゃろうか……」
黙って眺めていた姫様が、誰にともなしに呟く。
「……ええ、きっと」
それに答えたのは団長だった。
「あんな眼をしていた人が、これでウィルを諦めるわけありません」
「………経験者は語る、というヤツじゃな」
ほくそ笑みながら言う姫様。
「不本意ではありますけど」
団長も肩を竦めて笑っていた。
また東に目を向ける。
もう、マローネの姿はかなり小さくなっていた。
―――――待っている。
お前が帰ってくるまで、俺は旅に出ない。オークニーで。ずっと此処で待ってるから。
だから絶対に……。絶対に帰って来い。
彼女の背中に向かって、俺は静かに誓いを立てた。
「そういえば、ウィリアム様。今まで訊きそびれていたのですが、少しよろしいでしょうか?」
マローネが消えていく東の方角を眺めていると、今までずっと喋っていなかったシャロンちゃんが今日の第一声を上げた。
「……何?」
穏やかな気分で答える。
「私が、囚われていた姫様の偵察から帰ってきたとき。
ウィリアム様の部屋から栗の花の香りがしたのですが……気のせいですか?」
「すぺぺっ!?」
……舌噛んだ。
「ほ〜ぅ?詳しく聞かせてもらおうか……ウィリアム」
笑顔で詰め寄る姫様が猛烈に恐い。
「あ、いや、その……」
シャ、シャロンちゃん。何も今そんなこと訊かなくてもいいのに……。
どうやって姫様の機嫌を取ろうか悩む俺の横で団長が。
「それなら私が答えましょう。ウィルがいかにして私に愛され、私を愛したか。
そうですね、先ずは……『団長!俺、団長のことが好きなんです!』ってウィルが言ったところから―――」
ああっ、火に油注がないでっ。……って、その前に事実を捏造しないでください。
「ウィリアムっ!おぬし、わらわが捕まっていたときにマリィと…くんずほぐれずヨロシクやっておったのかっ!!」
姫様の顔が修羅に変わった。取って喰おうかというくらいの勢いだ。…やっぱり恐い。
「ウィルを責めないであげてくださいね。お子様の姫様より私の方がいいって思うのは至極自然なことですから」
「ぐぅぅぅぅぅっっっ!!!ひんぬーのくせにっ!ひんぬーのくせにっ!」
「むっ…!?あなたの方が洗濯板じゃありませんか!第一、毎回思うんですがあなたに胸のことを言う資格はありませんね!」
……また始まった。
いつものように喧嘩を始める二人にため息をつきながら、マローネが消えた東の平野を見た。
もう森林地帯に入ったのか、こちらからマローネの姿を確認することはできない。
「心配……ですか?」
俺の様子を見ていたのかシャロンちゃんが横から顔を覗く。
「……まぁ、ね。
でも―――マローネは『さよなら』じゃなくて『いってきます』って言ったから。
あいつを信じて待とうと思う」
俺は半年、いやニ年もマローネを待たせたんだから。今度は俺がマローネを待ってやる番だ。
これくらい何てことない。
「…と、シャロンちゃん。いい加減二人を止めないと。そろそろ取っ組み合いになりそうだ」
「そうですね」
癇癪を起こしている二人を指差すと、俺たちはお互いの顔を見て笑った。
「さ、姫様。その辺にしておきましょう」
「団長ッ!何抜剣しようとしてるんですか!」
二人の間に割って入る俺たち。
その遥か上方には雲ひとつない空が、マローネの旅立ちを暖かく祝福していた。
――――――北には故郷。東に帝国。大海を南にのぞむ、この地で。
俺はただ待つ。彼女の帰りを。
END B『去る者、待つ者』
大団円、とはいかないまでもこれにて2nd container終了です。
すらすら書けた前作に比べ、色々難点も多かったですが…とりあえず最後まで仕上げられました。
この後は本編終了後のお約束、後日談をご用意しております。
前回よりも長くなりそうなので幾つかに分割して投下する予定
感想を言葉にして表せないねぇ
GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
いやあ、お疲れさん。
うあわぁぁぁ。゚(゚´Д`゚)゚。おわっちゃったよぉぉおおおお
まああろおおおねえええええええええええ
GJ!!!!!!!!!!
そして後日談をwktkして待ってる
とりあえずマローネが死ななくて良かった。作者さんgjです。
GJ!!!なんだけど…
銃が暴発するようにってマローネ殺す気満々じゃん!!
しかもそのせいで、団長が「自分が死ぬ覚悟」ではなく、「火ぃ着いても死ぬのアイツだしぃ」って感じの余裕に見えた。
更に、団長以下三人娘がやたら冷静な為に、修羅場と言うより、マローネ大空転ぽくなって見えたのが残念です。
自分で書けないのに偉そうに言ってすいません。
乙です
そしてwktk
>>354 シャロン以外は銃口詰めてるって知らなかったんじゃない?
GJです!
>>354 SSスレのお約束
指摘するなら誤字脱字
展開に口出しするな
まとめサイトにも書いてるんだし…
まあ落ち着け。
>>354はまだ感想の範囲だと思うぞ。
終わった…
なんだかスレが広くなった気がするよ…
とにかくGJでした
マローネ……強い子(つД`)
作者様お疲れ様でした。
>>348 本編終了お疲れ様でした
そして!後日談クルワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
期待して待ってます(*´д`*)
合鍵の藍子たんみたいに、主人公を取られたヒロインが少しずつ変容していく様が見たい
ヤンデレ化するまでの過程にハァハァする人、あんまいないのかな
まず俺とお前で二人はいる
>>365 テリーマン「俺もいるぜ」
キン肉マン「テリーマン」
ブロッケンJr「お前だけに、いいカッコさせるかよ」
キン肉マン「ブロッケンJr・・・」
ロビンマスク「ヤンデレスキーは、おまえだけじゃないんだぜ 」
ウォーズマン「コーホー」
キン肉マン「みんな・・・」
阿修羅マン「こ、これが修羅場パワーか」
阿修羅マン……阿修羅氏…まとめサイト…新婚……修羅場
そうか、解ったぞ。
つまり
>>367は阿修羅氏が奥さんと修羅場るという予言ということか。
藍子たんは最初から病気だったような
今日うちの弟(高校生)が「きょうきらんぶ」という言葉は凶器が乱れ飛ぶことだと思っていたことが発覚した。
凶器乱舞か……このスレにぴったりだと思った。
凶器
驚喜
狂喜
狂気
どれもこの修羅場スレには不可欠なものだ。
違うか?
372 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 18:06:54 ID:d+ZDgn9K
異議なし
「……、っ、む、ぁ……っ」
酷い頭痛だった。
内側から、がんがんと、鈍器でなぐられているかのよう……、ぅ、っ?
鈍器で、なぐられる、……っ!
そ、うだ、俺は……っ。
意識が――はっきりと、してくる。
ぼんやりとしていた光景も、確かな線を、結ぶ。
「む、ぅ……ん、んっ!?」
壁には真っ赤な文字で、……憎悪の言葉が刻まれている。
先輩の部屋だ。
(喋れ、ない……っ? 声が、ぅ、嘘、は、ぁ……っ!)
口元に違和感が、ある。
なんだよっ……? ぴったりとした、この感触、は。
ガムテープ――、かな、これは。とにかく、剥がして……、?
(あ、れ……ぇ)
両腕が――動いてくれない。
見ると、俺は椅子に座らされていて……両方の手首が、椅子の脚の部分に、縄みたいなモノで縛られていた。
足首も同様に……さながら、罪人の、ようだ。
(は、はは、ははっ)
――動けよ、俺の、両腕。
ぎしぎしと、椅子が揺れるだけで、びくともしない。
頭痛が悪化する。
ふと、壁の、真紅の文字を、見て……ぁ、ああっ。
「む、ぅぅうう――っ! んん、ぅ、ん――っ!」
嫌だ。ああ、ああああああああっ!
死ぬ、し、ししししし死ぬ、ぅ、あ、ぅあっ!
外れろよ、外れ、外れろよぉぉおおおおおおぉぉぉぉ――っ!?
「むぅぅ――ぅっ! う、ん、んぅぅうううっ、んぐぅっ」
バランスが崩れ……椅子と一緒に、仰向けに倒れてしまう。
「ぐ、ぅ……っ」
――駄目だ。
声は出せない。身動きも、封じられた。
俺は……、いたり先輩になぐられて、気絶して……、そして、今。
監禁されている、のかっ……?
時計を見上げると……、もう十時、か。
だいぶ気絶してたみたいだな……はは、情けないなあ、俺って。
きゅる、るるぅ。
――腹から、耳障りな、音。
(腹、減った……な、ぁ)
呆れる。
こんな状況なのに、俺は、なにを……。
(……っ、! あ、足音……っ?)
やばい。
に、逃げないと、でも縛られてる、無理、無理だ、でもいたり先輩が、このままじゃ――っ。
無意味だとどこかで悟りつつも、それでも両腕と両足を精一杯動かそうとする。
椅子の脚がぎしぎしと鳴るだけの、無駄な、行為。
足音が止まって――ドアが、開く。
「あ、エースケくん、起きてる」
「……む、……ぅ」
パジャマのままの、いたり先輩が……。
にこっと、……罪悪感など欠片も滲ませない、純粋な嬉しさだけの笑顔を、浮かべた。
怖い。
じ、自分が、今、なにを、やってるのか……、わかって、ないのかよっ……!?
異常だ……っ。興奮した様子さえ見せない、その平静さが、逆に。
「んふ、ふふっ……、そんな、仰向けに転がっちゃって……可愛いんだぁ」
「……っ、ぅ……」
にこにこしながら、先輩は屈んで、椅子を立たせてくれた。
「そろそろ起きるかなあって、思って、お夕飯用意してたんです。えへへっ……、持ってきますね」
(夕飯……っ?)
これは――チャンスだ。
食事なのだから、ガムテープは当然剥がしてもらえるだろう。
(つまり、会話ができるって、こと……っ)
とにかく話すんだ。
そうすることで、制限された身動きをとりもどす。……無理だと思うな。や、やらないと、どうなるか、……わからないんだぞ。
静かに……生唾を、嚥下する。――再び、足音がちかづいてきた。
「じゃあ、外しますね……ん、しょっ」
「っ、……ぁ、はあ、っ」
呼吸がだいぶ楽になった。
「さっきは、エースケくんが食べさせてくれたので……今度は、私が食べさせてあげますっ」
「ぅえ……っ? ぁ、ああ……っ」
スプーンで、持ってきた皿から何かをすくう先輩。……シチューだろうか。
――泣きたくなった。
料理はとても温かそうで……、なのに、いたり先輩は、こんな、こと……っ。
変わってしまった。
俺が、……悪いんだろうか。
(い、今は……そんなことより、も)
後悔している場合じゃない。
「ぁ、の、先輩」
「ふぅ、ふぅう――っ。あ、はい、冷ましましたよっ」
ずい、と口元に突き出される、スプーン。
「はいっ。あ――ん……うふ、ふふっ」
「ぅあ……そ、の」
――、っ! そ、そうだ。
「あ、そ、そう、自分で食べますよ」
「……えっ?」
きょとんと、心底不思議そうに、先輩は首を傾げる。
「だ、から……あの、その、手と足を縛ってる、やつ、外してくれませんか……っ?」
「……、は、ぁ……っ?」
一度突き出した銀色の先端を、皿に戻して。
「エースケ、くん?」
「は、ぃ……っ」
いたり先輩は、両手で、優しく俺の髪を撫でながら……っ。
「そんなの……ぁ、はは、ぁっ。――駄目に、決まってるじゃないですか」
そう、言い切った。
「ぇ、え……っ?」
俺は――まことに最低だと思うが、先輩なら、優しいいたり先輩なら。
他人からお願いされると、きっと断われないって……、勝手に、信じ切っていた。
(いや、いや、いやいやっ! 違う、違うだろ)
言葉は自身に返る。
――無理なことは無理っ! 嫌なら嫌ってはっきり拒絶するっ! わかりましたね、先輩っ!
俺が……、言ったことだ。は、ははっ……?
「大体、食べるだけなら両手で十分じゃないですかぁ。……なんで、足も外してほしいんですか、ん、んっ?」
両手で俺の顔面を固定したまま……先輩の、顔が、迫る。
視線すら逃げられない。濁った眼球が、俺の汗だくの表情を、映していた。
「なんで、って、ぇ、えっと、ぅ……」
「歩けるように、なったら……、エースケくん、きっと逃げるんでしょう……っ!? そうですよねっ? 違いますかっ!?」
「ぁ、う……っ」
今にも、殺すぞといわんばかりの尖った眼差しに……言葉を、失った。
「エースケくん、見ちゃいましたから、私の部屋。――絶対に入っちゃ駄目だって、私はっ! 言った、のに……ねえ」
先輩の細い指先が、俺の頬で、蠕動する。
「ご、ごめん、なさい」
「あはははっ。――必死に謝ってるエースケくん、可愛いぃ……ぁ、む」
「ぅ、むぁ――っ」
口を、口で塞がれる。
いたり先輩からの、キス。
「ん、むぁ……ん、ん」
貪るみたいに……先輩が、舌を、絡めてくる。頭が、熱く、なる。
されるがまま――ぴちゃぴちゃと、ぬめる音だけを、聞いていた。
「ぅ、んぁむ……せん、ぱ、い、やめ……っ!」
「ぁむ、ん――なんで、エースケくんは、嫌がるんです……っ?」
「こ、こんなことは、恋人同士が、やることで……、っ」
「じゃあ付き合えばいいんです、私たちっ! ね、エースケくん、大丈夫です、前のことは忘れてあげますから、私と――っ」
「、っ……こ、の、いい加減にしろよぉ――っ!」
限界だった。存分に溜め込んだ怒声を、一気に迸らせる。
びくっと、また俺の口を塞ごうとしていた先輩の動きが止まって……一歩、俺から、後退する。
「俺は、有華が好きなんですよっ! だからいたり先輩とは、キスなんて、したく、ないし……、」
それでも。
「けど、いたり先輩が、俺の一件で体調崩してるかもしれないって思ったら、すごく、心配で、ぇ……っ」
嘘じゃないんだ……そこには、偽りは、ないんだ。
「なのに……こんなの、酷いですよぉ……いたり、せんぱ、いぃ……ぅ、う」
……俺が、悪いんだよ。
入っちゃ駄目って言われたのに、勝手に部屋に入ったり……、いや、もっと、それ以前から。
恐らくは……、あの、屋上での、日から。
「ごめんなさい、俺が悪いんです、ごめん、ごめんなさい、ごめん……、なさい」
情けない。
謝罪しか――この口からは、飛び出さないなんて。
「ふざけないで、くださいよ――ぉっ!」
「ぅあ、痛ぅっ」
熱い。
……シチューを、投げつけられた。
「わ、わた、私は、ぁ、エースケくんに、謝ってもらっても、ちっとも、納得できませんっ!」
肩を、揺さ振られた。
「すきって、いたり先輩が好きだよって、言って、い、言って、くださいよ、ねえっ」
ぐらぐらと。首だけ、上下する。
「あんな、がさつそうな、料理だってまともに出来ない小娘なんかよりも、わ、わわ、私の、方が、いいです、絶対にっ!」
「……無理だって、言いましたよ、俺は」
わからせてやる。
もう、本当に駄目なんだって……俺が縛られてでも、理解させないと。
「む、り、ぃ……ぇ、えっ? エースケくん、ほ、本当に、ぇ、ぅえ……っ」
「俺は――有華と、付き合ってるんです」
「ぅ、ぁあ……は、ぁあっ! いや、いやです、駄目です無理です、ぅあ、ははははははっ!」
「ぐ、ぁ……っ」
やばい。
く、首が……絞められて、ぁ、がっ……。
「嘘だ、嘘だ、嘘嘘嘘嘘です絶対嘘嘘、嘘吐きエースケくんの嘘吐き、ぅ、へ、へっ」
「い、たり、せんぱ……く、るし、ぃ」
「嘘って、今の全部嘘って……い、言って、エースケくん、言って、くださいっ! ほら、ほら、言わないと、死に、死ぬ、よぉ……っ?」
あ、ぅあ。
そうだ、首、ゆるめないと……喋れないですもんね、はは、は。
「ほら、これで喋れますよね、はやく、言って、ください」
手をはなす。
さあ、これで、ちゃんと喋れますよ……はや、はやく、ぅ。
「ぐ、ぇ……げ、ほっ……、む、り、ですよ、ぅえ……っ」
苦しげに。
けれど確実に……エースケくんは、そう、言った。
ふ、ふふ、ふぅ……ん。
そうですか。
――そこまで、私に、意地悪しますか。
だったら。
私も、……やり返しちゃいます、からね。
「……ひ、ひ、ひぃ……ぅぁあは、はっ」
机の上の、ガムテープを、手に。
それで、再びエースケくんの口を封じる。
「む、ぅ、ん……っ!?」
これで、もう、エースケくんから悲しい言葉を聞くことは、ない。
……騒がれて、隣室に異常を察知されては、いけない。
続いて、縛りがゆるんでいないかをチェックする。……問題は無いと思うが、もう一度、思い切り絞めなおす。
「ん、ぅんっ」
「ぁ、ああ……痛かったですかぁ? ふ、ふふ、ごめんね、エースケくん」
けれど。
先に痛めつけたのは、エースケくんなんだから……当然の、むくい、なんですよっ?
そこ、わかってるんですか……っ!?
苛立ちを抑え付けながら、エースケくんの正面に、回る。
頬に、触れながら。
「諦めませんよ」
「む、ぅ――んっ……!?」
時間は、たくさん、あります。
「あんな害虫が好きだ、なんて……ああ、かわいそうな、エースケくん」
「ん、……っ!?」
「きっと病気なんです。とても、悪い……でも、大丈夫、は、ははぁ、だい、じょう、ぶ、だよぉ?」
少し、荒療治に、なりますけど。
「なにを、してでも……エースケくんの、気持ち」
「私に、振り向かせ――ますから」
だから、エースケくん。
――覚悟して、ください、ね……っ?
ペース遅いなあ……、などと反省しています。
さておき。
今年も、寂しい夏の休みが、終わりました、てへっ。
う、ふふふ、ふ……、ふ。
皆さんは、いかがお過ごしでしょうか。
先輩かわいいなぁ(;´Д`) ハァハァ
拷問すんのかな?いたり先輩。
押入れから這い出てきた黄色いパジャマのアイヴァンホーが――
仮面も付けず、ターコイズブルーの瞳に怒りを漲らせてギンギンに睨んでらっしゃいました。
姫様の貞操を汚したうえ、ついうっかりたっぷり中出ししちゃった俺の方を。
「い、いくら朝が弱いとはいえ……姫様の純潔を守り通せぬなど迂闊……!」
膝を突き、嗚咽。守り通されなかった当の姫は悲愴な表情どころか満足げに薄く紅潮して胸を上下させているが。
「うっうっうっ……申し訳ございません父上、母上……わたしは自らの務めも果たせぬ不肖の娘です……」
ぐずぐずと泣いていたが、やがて掌底で乱暴に涙を拭った。
「かくなるうえは……くぅぅ!」
体をたわめ、力を溜め込んで。
「貴様を殺してわたしも死ぬまでだっ!」
吠えると同時に飛びかかってきた!
あまりの速さに回避できない!
両肩を掴まれる!
「ひいっ!」
首をぐりんと捻って頚椎叩き折るつもりか!?
それともじわじわ絞め殺すつもり!?
あるいは懐剣でひとおもいにブッスリ!?
もしくは頭部を卍に断って「見えませんでし――」ブシャアア!?
恐慌を来たす俺に対して彼女がとったSATSUGAI手段は、
「父よ、母よ、妹よ! 先立つ不孝をお許しください! ……んむうっ!!」
「んむうっ!?」
――キスでした。
え? あれ? なんで? 意外が過ぎて理解は及ばない。
口移しに毒を飲ませるとかか? と疑って唇を固く閉ざすが。
「ちううううううううう……」
向こうは別にこじ開けようともせずひたすらに抱きついて唇を押し付けてくるだけ。
歯が当たるのも構わずただ闇雲にぐいぐいとプッシュプッシュ。あ、おっぱいも密着して柔らけー。
「……ちうううううううううううううううううう……」
ドアップになったアイヴァンホーの顔が次第に赤くなっていく。
かと思ったら、あるときを境に青くなっていった。そのまま紙のような白さに変じる。
「…………きゅう」
遂には呻きを一つ残し。ばったりと倒れた。おい!?
慌てて抱き起こす。息はしている。死んではいないが、気絶しているようだった。
「アイヴァンホー、あなた、よもや私の純潔に殉じるため呼吸が止まるベーゼで和彦さんを相打ちにしようと……」
まさに死の接吻。だが。
「そりゃあ鼻のないあなたは窒息するでしょうけれど……和彦さんは普通に鼻息ができますのに」
どうやら錯乱のあまりそこまで思い至らなかったらしい。哀れといえば哀れ、滑稽といえば滑稽な顛末だった。
「あーあ。目を覚ましてからこの人を説得するのが憂鬱だなあ……」
と溜息をつく俺だったが。
「……かずくん?」
半ば存在を忘れかけていた遥香が、「ギギギ」と軋みを上げそうな強張った笑みを満面にたたえていた。
背筋が冷たくなった。ち○こがキュッと完全に縮こまった。とりあえずパンツを履いて隠した。パンツもズボンも
血とザーメンと何か透明な液体で濡れていて気持ち悪かったが、不平を垂れてる余裕はなかった。
怖い笑顔を振りまく従妹は小首をかしげて「そういえばさー」となにげない口調で切り出す。
「よく考えてみるとー。あたしってフォイレちゃんが蛆虫に変わるとこ、見たことないよねー?」
「あ、そうですの。証拠をお見せしたのは和彦さんと良治さんだけでした」
純潔を散らされたばかりなのに、大して気に病むふうもなくのんびりとフォイレが言う。
「ねー、ちょっと見せてよ、蛆になるとこ」
「え……でも、人前で変身するのは恥ずかしいですの……(もじもじ)」
「見ーたーいー。ちょっとだけ、ちょっとだけでいいからさー」
と遥香は両手を合わせて拝む。「仕方ないですの」とフォイレは不承不承、呪文を唱えにかかった。
「まごっと まごっと う゛ぇるみす わ〜む♪ ムテキな蛆虫に、な〜れ♪」
どろん。煙が巻き上がった後には、一匹の小さな蛆が横たわっている。
「へえー。うわあー。すごいなあー。あたし、びっくりしちゃったよおー」
棒読みに感心してみせた遥香は、足元のビームサーベル(丸めたポスター)を爪先で蹴り上げてキャッチ。
迅速に八双の構えを取り――流れる動作で「ぜりゃああ!」と打ち下ろしにかかった!
こ……これは“48のゴキ殺し”の一つ、
「非情なるポスターッ!?」
長大なるリーチをウリにした絶死の一撃は叩き潰す威力があまりにも強すぎ、ひとたび繰り出せば対象のGが
ハラワタをブチ撒けて四散する――その凄惨さから木更津家では代々封印されてきた伝説の過剰殺戮奥義。
蛆形態のフォイレが喰らえばひとたまりもない!
(ひぃぃぃっ!?)
「させるかっ!」
若し家中に此の技を放たんと乱心する者在りし時、之を留め置く為の対と成る技を残す――
こんな秘伝書があるのかどうか知らんが、ともあれGの恐怖に狂った人間が理性を失して「非情なるポスター」を
反射的にコマンド入力してしまったときの防御策が木更津家にはこっそり受け継がれている。
「じぇいあっ!」
掣肘する一刀――「温情なるポスター」。
床に落ちているポスターを掻っ攫うようにして拾い、その勢いを殺さぬまま踏み込んで逆袈裟に掬い上げる!
一個の長笛と化した細筒が鋭くぶおーんっと風音を吹き鳴らした!
「くぉっ!?」
遥香の呻き。二つのビームサーベルがバッテンを描いて衝突!
「かぁぁぁ!」
びりびりびりぃっ
ビームとビームがぶつかり合い、激しい閃光を迸らせた。俺の脳内で。
「……じゃ、」
激怒してなお眉毛が合掌造りの遥香は――
「邪魔すんなよおおおっ、かずくんんんっ!!」
口からゴハァッと蒸気が吐き出されてもおかしくない強烈さで吠えた。
「落ち着け! 蛆虫ったって会話が通じる奴をカッとなってブチ殺すのはイカンだろうが!」
「だってかずくんの童貞が! かずくんの童貞が! 童貞が! 蛆虫に! こんな蛆虫なんかにいいい!」
ボロボロ涙をこぼしながら「童貞」を連呼するアレさ加減に脱力しそうなところをグッと堪える。
「蛆虫かなんだ! 蛆虫でも銀髪美ロリなら俺は満足だよ! 蛆だけに肌もぷりぷりして気持ちよかったよ!
蛆虫で筆下ろしなんてどうかなーって思ってたけどヤッちまった以上はポジティブに考えるしかないだろうがっ!」
叫びと同時にポスターをかち上げ、遥香の手から得物を弾き飛ばす。
「うわああああああん!」
無手となった彼女は依然として泣きながら俺の胸に飛び込み、ぽかぽかと叩いた。こいつは結構力があるので痛い。
「あたしがどれだけ! どれだけかずくんの『初めて』を奪おうかで頭を悩ませたか! この夏一発キメたろうと
どれだけほくそ笑んでワクワクしてたか……それを知っていてかずくんはこんな童貞喪失で良かったというの!?」
ぐいぐいと胸に顔を押し付けてくる。涙ばかりでなく鼻汁まで付着させてきた。
お前、一応は女の子なんだから、もうちっと節度のある泣き方をしろや。
「す、好きな男の子を蛆虫に寝取られたあたしの気持ちなんか……かずくんに分かるわけないよっ!」
まーそりゃ分かんねーけどさ。分かったらそりゃいろんな意味で大変だしな。
「いいからもう泣き止めよ」
頭を撫でてなだめる。遥香はイヤイヤをするように頭を振って俺の手を跳ね除ける。
「優しくしないでよ……かずくんはキス魔の従妹なんかより、会ったばかりのロリ蛆虫の方がいいでしょ……? ねえ、
どうせかずくんのことだから『あー早くこのウザい女を黙らせてあの蛆虫ともっかいハメて五、六発中出ししたいなー』
とか『こんな見飽きた顔よりお人形さんみたいに綺麗な子の唇の方をちゅぱちゅぱしたいぜー』とか思ってるんでしょ?」
ギクリ
「そ、そんなわけあるかよ……」
うろたえ、なんとかそれらしいことを持ち出して言い繕おうとして、咄嗟に出た言葉は。
ここで選択肢。
A:「俺が好きなのは遥香――お前なんだからさ」
B:「――我はアイたん激ラブなるがゆえに」
C:「ごめん、やっぱり人外ロリ最高」
上から順に行きます。
選択してねえ、まさに光を超えた攻撃。
それはともかく相変わらずGJです。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
Bwktk
俺はCだ。人外ロリ最高!!!!
まぁ上から順に行くって書いてあるんだけどね。
上から順にと書いてあるがあえてA!と叫けばしてもらおう
>>380 いたり先輩の思考回路が素晴らしすぎてwktkが止まらないぜ!
>>380 先輩。可愛いよ先輩(*´Д`)
あれですよね。これからエースケくんは先輩の身体無くしては生きられないような身体にされてしまうんですよね。
いたり先輩のセリフを読んでいると、なにかゾワゾワしたものが体を駆巡る。病気でしょうか?
>>うじひめ
>「蛆虫かなんだ! 蛆虫でも銀髪美ロリなら俺は満足だよ!〜〜
ついにホンネが。もう間違ってもノーマルとは名のれませんな。
投下します
「あ、秋乃・・・・さん、やめて・・・・」
涼さん、そんな目で私を見ないでください
痛い、痛い、痛い・・・・恐怖と哀れみの混じった瞳を・・・・
「涼さん、選んでください・・・・」
「え・・・・?」
「私を、選んでください・・・・」
私だけを見てください、他の女なんて目もくれずに私だけを・・・・
「ご、ごめん・・・・僕」
「どうして!どうして私を拒絶するの!?
中学の時言ってくれたじゃないですか!
キミは可愛いって!私あの時嬉しかった!
だから、頑張っておしゃれした!!
恥ずかしかったけどスカートだって短くした!
髪型も有名な美容師さんに頼んで女の子らしくしてもらった!
なんでかわかりますか!?
涼さんに綺麗だって、可愛いって!
もっと、もっと!もっと!もっと!言って欲しかったから!!
私を見て欲しかったから!!!
ちゃんと私を私として見て欲しかったから!!!
でも、自信が持てなかった!私は地味な子で涼さんは眼中にないと思ってた!
不安だったから!だから春乃に頼んで涼さんのこと色々聞いてもらったの!
私はあと一歩が踏み出せないから!?でも涼さんのこと知りたかった!!
涼さんの好きなもの、涼さんの好きな食べ物!涼さんの好きな映画!
好きな女の子の髪型!好きな女の子のタイプ!
いっぱい!いっぱい!もっと知りたい!涼さんのこと涼さんよりも知りたかった!!!
自信がなかった!だから、春乃に涼さんのこと聞いて私は涼さん色の私になりたかった!
みんなあなたの為にしたことなの!解ってくれますよね!?
不安だっただけなんです!入れ替わったのも告白の時とデートの時だけです!
もう、二度としません!!謝ります!それでも許せないのなら!
私に全部ぶつけてください!激しく折檻してください!
激しく抱いてください!私が痛がっても止めずに激しく!
私、涼さんの為なら何でもします!あなたの為なら死んだって構わない!!
だから・・・・私を・・・・受け入れてください」
ほんとんど息継ぎなしで私は涼さんに訴えた
私がどれだけ涼さんを想っているか、どれだけ愛しているか
「僕は・・・・」
ようやく私の想いが届いたのか涼さんは少し頬を染めた
そして、申し訳なさげに私を見つめる
「キミの想いはわかった、でも・・・・僕・・・・」
なに!解ってくれたんじゃないの!!!
ならどうしてよどむの!聞かせてよ!
愛してるって!私だけをって!!!!
どうして!?どうしてなの!!!
・・・・どうして・・・・
不意にあの女どもの顔が浮かんだ
己の不幸を逆手にとって、涼さんと同居しているあの二人の顔を
今まですっかり忘れていた、そうだ・・・・あの女どものせいなんだ
「あの女どもになにを吹き込まれたの・・・・」
「ち、違う!全部・・・・僕のせいなんだ、僕は二人に逃げたんだ」
「・・・・それ、どういうこと」
火山の噴火前のようなぐつぐつと岩の溶ける音が耳に入ってきた
「抱いたの、あの二人を・・・・」
「・・・・」
何も言わない、これは・・・・肯定だ
がん・・・・!
押し倒した状態のまま私は涼さんの肩を思い切り掴んだ
痛みに顔をゆがめる涼さん・・・・
「あ、ごめんなさい・・・・」
お詫びの印に私は涼さんの両肩を舐めてあげた
気持ちよかったのか、涼さんは小刻みに身体を震わせた
「僕にはキミに愛される資格なんて・・・・ない」
嘘・・・・嘘だ、嘘だと言って!!!
・・・・思い出した、涼さんは病気なんだった
だってそうでしょ?私を受け入れられないなんて病気以外の何ものでもない
あの女どもの汚れた肌が私の涼さんに触れた
汚れたそれが涼さんの身体を巡り、身体を病魔に犯した
「涼さん、ここまで言っても解ってもらえないようですね」
半裸だった涼さんをさらに裸に近づけていく
「あ、秋乃さん!」
「先ほど言いましたよね?涼さんは病気だって、だから私が治してあげます
大丈夫ですよ、こう見えても私は医者の娘、多少の医学知識はあります」
それでも拒絶の行動をやめない
・・・・これは深刻です、はやく治療を
「やめてくれ!!!」
何かが私の中で弾けて零れた
「許さない!あの女ども!私の涼さんを汚したばかりか、洗脳までして!!
そうですよね!涼さんは優しいから、今の状況では私を受け入れられない!
涼さんの優しさに付け込んで、許せない!!!
大丈夫ですよ、あとであの女どもにはきっちりとお灸を据えます!
聞かないようなら二度と涼さんの近くに来れないようにズタズタにしてやるんだから!!
涼さんは何も悪くありません!さぁ、私と愛し合いましょう!」
私は下着を脱ぎ涼さんの陰茎を自分の恥部にあてがった
治療を始めますよ・・・・涼さん
くちゃ!
水音と共に涼さんのが私の中に侵入してくる
すぐに全身を痛みが巡った
私の純潔が涼さんに貫かれた証拠だ
「く・・・・ふぅぅぅ!!」
痛い、痛い・・・・膣内が裂かれたような感覚
けれでもその激痛ですら、今の私にとっては快感そのものだ
この痛みも苦しさも全部涼さんが私にくれるモノ
嬉しくないわけが無い
私は涼さんを喜ばせる為に腰を振り、涼さんの快感を誘う
すると涼さんはうまく私の腰の動きと自分の腰の動きをシンクロさせた
「な、慣れてる・・・・」
涼さんは少なくとも性経験がある
それは先ほどの会話からも理解できる
けれども理解は出来ても納得はしない、あの女ども・・・・今後涼さんに近づくようなら
地獄のどん底に落としてやる、死よりも苦しく辛い思いをさせてやる
そうね、まずは涼さんの治療からね・・・・
そのあと、あの女どもの前で涼さんに十万回・・・・もっともっと『愛してる』って言ってもらおう
それで涼さんと私が交わる姿をたっぷり見せてやる
泣いて叫んでもやめてやらない
「うく・・・・秋乃・・・・さ」
あ、いけないいけない・・・・今は涼さんの治療に専念しなきゃ
「胸・・・・見えてたほうが・・・・興奮するよね?」
胸元をはだけさせ、下着を取り胸を露出する
そして涼さんの手を取り胸に当てる
涼さんの指がわずかに動き感触を確かめる
そうだよ、涼さん・・・・心の中に私を染み込ませるの
私の感触を・・・・私の温もりを・・・・
忘れられないくらいに・・・・
私は涼さんを深く口付け唾を流し込んだ
涼さんは一瞬戸惑いの表情を浮かべたけどすぐに私のを飲み干した
身体の中から私のを侵食させ、もう私以外のことを考えられないようにする
そうすれば、涼さんは私を拒絶をしない・・・・他の女を見ることも無い
私以外の女を見るなんて、重症の中の重症だよ
でも大丈夫だよ、私がすぐに直してあげるから
「涼さん・・・・涼さんは私が以外の女を見ちゃいけません、触っちゃいけません、見てはいけません」
独占欲が爆発する
「話してはいけません、同じ空気を吸うことすら汚らわしいと思ってください・・・・もし破ったら・・・・」
させないけど・・・・
「涼さんのコレ・・・・ちょん切っちゃいますからね♪」
膣が締まったのが解る、涼さんが小さくうめいた
瞬間、私の膣内に涼さんの想いがぶちまけられた
「あ、あぁぁぁん!」
血の混じったそれを見ながら私は凄まじいまでの快感をこの身に味わった
「まだですよ、私の膣内に全部出して・・・・すっからかんになるまで治療を続けますからね♪」
ここまで読んでくださった方、お疲れ様です
途中描写を書いていたら、思いのほか長くなってしまったので前回原案のレスをくれた方の案は次回になってしまいました
すいません・・・・お二方の案を統合して書いておりますのでもうしばらくお待ちください
私は同じ作品を長く書けません、途中で違うSSを書かないとうまく書けないようにできています
浮気性なのは充分理解しているのですが、どうにも書けなくなってしまい・・・・
頭がこんがらがってしまうと思いますが・・・・どうにもこの進行の仕方しか自分にはできません
『生きここ』のときも別のSSを書いていました
三点リーダの件ですがあれは癖です、『・・・』ではなく『・・・・』
と、書いてしまうは昔からの癖でどうにも抜けません、多くなってしまうのも癖です
読みにくいと感じていらっしゃる方・・・・申し訳ありません
お二方ともご指摘ありがとうございました
普段、目指している職業柄パソコンを触る時間が多いので打つのは得意なのですが、すさまじく雑です
その結果が誤字脱字の嵐です・・・・
それもほんとに申し訳ない
長々とすいません
謝ってばかりですね・・・orz
最後に凄まじく亀ですが、管理人様・・・・ご妊娠おめでとうございます!
>>398 GJGJGJ!
謝る必要なんてないですよ!
秋乃タン(;´Д`)ハァハァ
すいません
最後のレスの下から10行目くらいの
「涼さん・・・・涼さんは私が以外の女を見ちゃいけません、触っちゃいけません、見てはいけません」
は
「涼さん・・・・涼さんは私が以外の女を見ちゃいけません、触っちゃいけません、触れらてはいけません」
です
「涼さん・・・・涼さんは私以外の女を見ちゃいけません、触っちゃいけません、触れられてはいけません」
です
無駄なレス多くしてすいません
402 :
前719:2006/08/19(土) 01:02:02 ID:ySJKGQZs
>>236 待ってましたよ
弟の結婚くらいで身を引くような安易な敗北主義者では、
姉は務まらんですよね
では投下致します
第6話『いじめられるもの』
久しぶりに私は幸せな気分になった。
桧山さんが作ってくれたお弁当は天下を揺るがす美味さを秘めていた。
思わず、私はリアクションで猫耳や尻尾まで出してしまいそうでしたか、何とかいつものにゃにゃーで済ませたので良かったと思います。
感受性が高いとは言え、変なものに変化するのは良くないよ。
放課後になると、私はさっさと帰宅をします。私を苛めている奴らに捕まってしまうと酷い目に遭わされるからです。
帰りのホームルーム終了になると脱兎のように急いで下駄箱の方に向かいます。
今日はあんな幸せなことがあったんだもの。ゴミ以下のカスカス連中に苛められて、不幸な日に書き換えられるのはゴメンです。
桧山さんの至福の日々を今すぐ日記に書き込むためにも、私は疾走をしようとした途端に強い力で腕を掴まれた。
後ろを振り返ってみると、常に私を苛めていた主犯格の女子生徒が穢らしい笑顔を浮かべていた。
その後は、いつものようにひと気のない校舎裏にまで強制的に連れて行かれてた。抗おうとしても、体格のいい男子生徒達にがっちしと腕を掴まれてはかわよい女の子である私ではどうにもすることはできません。
ただ、野蛮な暴力を振るわれるのはずっと待つだけ。
「あなた、あの2−B組の桧山と仲がいいんですってね」
「あんたなんかには関係ありません」
「もしかして、桧山が助けてくれたことを勘違いして想いを寄せているなら、おとなしくあきらめた方がいいわ」
「それは一体どういう意味ですかっっ!?」
桧山さんと私の仲を切り裂こうとする主犯格の少女に殺意が沸騰した。
私が唯一心を許せる相手に出会えたのにその全てを否定される同情で憐れむように私を見下す視線が何よりも許しませんでした。
「だって、桧山にはとても可愛い彼女がいるんだもん。あなたみたいな貧乏人が本当に好かれていると本当に思っていたのかしら?」
「えっ?」
桧山さんに彼女?
えっ?
あれっ?
そんなっ……
「そんなことあるわけありませんっっっっ!!」
「だったら、2−B組の東大寺瑠依に聞いてみればいいわ。桧山と付き合っているのかってね。彼女も困っているらしいわよ。
彼氏が最近変なドラ猫に餌をあげているから、そのドラ猫が勘違いして懐いてくるかもしれないだって」
「う、う、そ、だ」
桧山さんは何の取り柄もない私に一杯優しくしてくれた……。
桧山さんのはにかむ笑顔が私の傷んだ心をいつも癒してくれた。
ううん。私なんかを好きになってくれるはずがないのはわかっている。
わかっているんだけど、感情は全く納得できませんよ。
だって、私は桧山さんのことが、剛さんの事がこんなにも好きになってしまっていた。
中学校の頃から苛められている私を助けてくれたのは彼だけだった。
それからも、健気に私の事を心配してくれたのも桧山さん。一緒にいてくれたのも、桧山さん。
そんな彼に惹かれるのは当然じゃありませんかっっっ!!
桧山さんに彼女がいようといないが関係ない。
この純粋で儚い想いだけはきっと私が勝ち得たものなんです。
だから、こんな奴らに負けない。
「あはははっはははははははっはっはははははは」
「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!」
崩れてゆく理性のリミットが外れると私は限りない声で吠えるように叫んでいた。
普段苛めているグループの人間たちなんかまるで恐くなかった。
恐いのは桧山さんに捨てられること。
ただ、それだけであった。
「あ、あなたねぇっっ。私たちにそんな偉そうな態度を取っていいと思ってんの?
子分A、子分B。懲らしめてあげなさいっっ!!」
甲高い声と同時に男子生徒達は暴力を振り上げる。
強烈な拳で顔を殴られ、躊躇なく私は彼らのサンドバック化する。
私がやられる姿を女子生徒は楽しそうに笑っていた。
私はただ我慢をしていた。
早く終わりますようにとただ祈ることで痛みから逃げるのがいつもの私だった。
けど、違う。
桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。
桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。
桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。
桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。
桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。桧山さん。
念仏のように彼の名前を繰り返して呟く。名前を呼ぶだけで胸が暖かい気持ちになってゆく。幸せになれる。
無限に続く暴力にも、私は耐えることができるっ!
気を失った私に飽きてしまったのか、苛めグループたちはすでに去っていた。
校舎裏で放置された私は衣服についた土を降り払うとあちこち痛めた箇所を手で押さえた。
紫色のアザになっているところが多数あるものの、どうにか家に帰ってられそうである。
結局、今日一日の最後も不幸になってしまった。
あははははっ。一体何をやっているんでしょうね。
泣きたい気持ちを抑えて、私は立ち上がろうとした時。
普段は誰もやってこないひと気に生徒の姿を見かけました。そ
れも、桧山さんとあの女がこっちに歩んできます。
ど、ど、どうしようっっ!!
こんなボロボロな姿を好きな男の子に絶対見せたくもないし、傷心しきっている私をライバルのあの女に見せるわけにもいかなかった。
その辺にある茂みに隠れよう。
痛む体に鞭を打って、私は二人がここに来ないように祈ります。
でも、私の願いを聞き入れる神様は残酷にもいなかった。
瑠依の風紀委員の見回りに付き合って、放課後はいろんな場所に連れ回されて校舎裏までやってきた。
瑠依は常に機嫌が良いのか鼻歌混じりで俺の先頭を歩いていた。
この場所に来ると思い出すのは雪桜さんと初めて出会ったことを思い出す。
苛められた雪桜さんを俺が苛めグループから助けようとしたあの時のことを。
あれから、雪桜さんは奴らに苛められているんだろうか
せっかく、放課後はできるだけ一緒にいることで雪桜さんを苛めから助けようと思っていたのに。
瑠依の風紀委員の臨時の手伝いを脅迫まがいに頼まれたおかげで。
心配事は増える一方だってのに。
「剛君」
「ん?」
瑠依が振り返って先程の機嫌のよい表情から一変して、真剣な眼差しで俺を見つめていた。
「妹さんが、彩乃ちゃんがあの事件に巻き込まれて、もう5年だよね」
「あ、ああ。そうだな」
それはとある事件で亡くなった妹の名前だった。
亡くなった妹の事件の事を想うと、胸が鋭く突き刺さるように痛む。
事件自体は風化しているが、失った存在は時間だけでは癒せない。
だが、瑠依は何で今更そんな昔の事を話すのか理解できなかった。
「もう、5年も経ってしまったんだね。桜を見るたびにそう思わない?」
「5年ね」
そう、5年も経ってしまったのだ。
事件は5年前の春の季節に遡る。
赤いランドセルを背負って大喜びしていた彩乃が事故に巻き込まれて亡くなってしまった。
突然の報せに俺達家族や学校関係者が唖然とする事件が起きたのだ。
小学校に入学したばかり新入生たちが集団下校している最中に猛スピードでトラックが突っ込んできた。
歩道を歩いていた新入生達は無残に牽かれて、周囲は赤の景色へと染まってゆく。
トラックの運転手は巻き込まれなかった新入生たちの群れにトラックが突っ込んだ。
生存者を亡き者にして自分がやった犯行を隠すためか、何度も何度も新入生たちの死体を行き来して完全に息の根を止めるために繰り返した。
隠蔽工作に集中していたためか、犯行途中に警察官達に囲まれて緊急逮捕された。
この事件は当時マスコミやTVに騒がれて大事件へと変貌してゆく。
無差別殺人事件の犯人である赤坂尚志被告は当然死刑を求刑されて、今でも裁判が続いている。
事件の犠牲者として、桧山彩乃は慰霊碑に名前が刻み込まれている。
妹が悲惨な事件に遭ってからはうちの家族は変わった。
事件の事を忘れたいのか、彩乃がいたことを忘れてしまいたいのか、両親は仕事に没頭して家に帰ることが心底嫌がっているのだ。
消えない心の傷を受けているのは両親や俺だけではないというのに。
実の妹のように可愛がっていた瑠依もこの事件でどれ程のショックを受けたのか。
でも、両親が忘れたいという気持ちを分からなくもない。
俺は事件の事を小学校で話題になると何の考えもなしに突っ走っていた。
彩乃が無事であるように祈りながら事故が遭った現場に無我夢中で辿り着いた先には。
悪夢のような光景が待っていた。
歩道だった場所には多数の新入生達の屍が赤い液体のアスファルトの上で倒れていた。
人間の血というのは、これほどまでに赤かったのか?
ここに倒れている人間であるモノはもう生きてはいないと小学生であった俺は悟った。
警察官達に手錠の鎖で腕を縛られて連行されている中年のおじさんが俺の方を見つめて、にやりと微笑んだ。
そいつがこの惨劇を起こした張本人だと気付くのはTVでニュ−スを犯人の顔を見てからであった。
ただ、元気な妹の姿を探そうとしても事故現場には警察が到着しているから入れない。
いや、悲惨な光景を目にしたおかげで俺は足が震えて探し出すことなんかできなかった。 淀んでいる。
赤く染まったモノ。
理不尽な妹の死も犯人の殺戮も。
何もかも淀んでいた。
俺も両親同様に妹の彩乃の死を忘れたくて、最初からいないように扱った。
自分は一人っ子だと無理矢理思い込みながらも、あの時の鮮血の光景が悪夢のように甦ってくる。
それは現在進行中で続いているおかげで朝の目覚めはとことん悪い。
だが、瑠依は今更そのような話を持ち掛けた意図は全くわからないが、彼女にとっても彩乃の死は衝撃的だったはずだ。
なのに瑠依は真剣な表情で俺を見つめ続けてる。
俺は瑠依から発する言葉に息を呑む。
「もう過去から解放されてもいいんじゃない?」
蔓延なる笑顔を浮かべて振り返った際にスカートが揺れた。
いつもの狂暴さが嘘のように虎の頬は真っ赤に染まってる。
恥ずかしがり屋の瑠依が異性に対する免疫がないので、木の下で告白というベタな展開を狙っているなら、
俺は躊躇なく屋上から飛び降りるぞ。
「剛君が5年間どれだけ苦しんでいたのかはいつも隣にいた私がよく知っているつもりだよ。だから、剛君は剛君の幸せを掴んでいいんだよ」
「瑠依……」
「今朝のお弁当の事はごめんなさい。私は雪桜さんに嫉妬していたかも。ううん、剛君が他の女の子と優しく接しているだけで嫉妬していた」
瑠依の拳が力強く握り締められ、何から堪えるように顔は俯いて前髪が表情を隠すように覆っていた。
「本当に情けないよね。いつも一緒に剛君が隣にいてくれるって勘違いしていた。いつかは二人とも離れ離れになるのに。
それに気付いたら、私の嫉妬なんかただの傲慢で剛君を締め付けるだけ存在になっていた」
「それはちょっと違うと思うぞ。瑠依の事は重荷にもなってないし、瑠依の嫉妬なんかまだまだ可愛い方だぞ」
「うん。ありがとう。でも、私は剛君が幸せになって欲しいから。雪桜さんと付き合う方が剛君にとってはいいんだよ」
「いや、待て。雪桜さんとはそういう関係じゃないって」
「私。わかってるから。剛君を選んだあの人ならきっと幸せになれると思うよ」
いや、聞けよ。人の話。
「放課後の風紀委員の活動も今日で終わりにしといてあげる。ゆっくりと雪桜さんとの時間を楽しめばいいの」
そう言い告げると瑠依は逃げるように疾走してゆく。
追い掛けようと思ったが、俺と瑠依の曖昧な関係は終わってしまっているのだ。
その決意をした瑠依の意気込みを裏切る行為だけは、俺はしたくなかった。
ただ、気になったのは……。
逃げ去ってゆく瑠依がどこか微笑んでいたのは気のせいだろうか?
不気味すぎる。
長い長文もどきを読んでくださってありがとうございます。
さて、忙しい時は書く暇がなかったので今猛烈に書き上げている最中です。
作品の設定上、雪桜さん8と瑠依2という対比で書いているので
なかなか修羅場に辿り付けませんが、ご勘弁を。
作者様GJ!修羅場を急ぐ必要なんてありません。
ゆっくり、じっくり熟成していきましょう!
それにしても
瑠依が世界に見えてしょうがないorz
パーティーを組んで実際戦ってみると良く分かる。 このコ――クリスの強さが。
とてつもない攻撃力を持つ反面凄まじい重量のこの巨大グレイブ。
ギガンティスグレイブと言うらしいのだが。 実際触らせ貰ったんだけど物凄く重たい。
こんなもの屈強な大人の戦士だってそうは簡単に振りまわせるような代物じゃない。
確かにクリスは細い割りに物凄く引き締まった筋密度の高い躯をしてる。
だが其の強さの最大の秘密はこのコの使える魔法にあった。
魔法と言っても火炎とか冷撃とかみたいな派手なものでは無く戦士であるクリスならではのもの。
それはブーストアップつまり筋力増強。 ――魔法と言うより内気功に近いかな?
昔一時リオと其のお師匠さんの下にいた時其の素質を見込まれ戦士団に引き取られていったらしい。
そこで修行を積み現在の戦闘スタイルに到ったらしい。
そして其の戦闘そのものも鬼気迫るものがあった。
やはりこのコにとってモンスターは仇そのもの。 戦闘の度に其の思いをぶつけてるのだろうか。
で、現在私たちはと言うと敵モンスターと戦闘中。だが其の相手は三下の雑魚なんかじゃない。
そう、ウォドゥス以来となる中ボスクラス――魔将軍ロザゥド。
其の容貌は一言で言ってしまえば――巨大なテナガザル……何て言ってしまうとあれだが
そんな可愛らしい物じゃ無い。
其の面構えはまるで骸骨、口に並ぶは剥き出しの牙、くぼんだ眼窩の奥には
鬼火のような瞳が妖しい光を湛えている。
全身は柔軟かつ強靭な筋肉と鋼のような剛毛で覆われ……、まぁコレはそれほど問題でもないが。
何せ私のアルヴィオンファングで切り裂けなかったものなど今まで無かったのだから。
だが問題はやつの腕とその身のこなし。
腕が――リーチが異様に長い上に更に其の指先にはまるで刀剣のような鋭い鉤爪が並んでる。
そして何より其の敏捷性、素早さが半端じゃない。
素早きもの敏捷なものに対し、ましら(猿)の如しなんて言葉があるがコイツが正にそれだった。
其の強さは正に魔将軍の名に恥じない本物。 以前闘ったウォドゥスをも遥かに凌ぐものだった。
だが、戦況は私達にとって非常に有利に運んでいた。
そう、こんなリーチが長く素早い相手は私にとって最も嫌な相性の悪い敵。
私とリオだけだったら苦戦どころか勝てるかどうかさえあやしかった。
だが今私達には新たな仲間が――クリスがいた。
確かにヤツの――ロザゥドの全身を覆う剛毛はクリスのグレイブの一撃を持ってしても切り裂けない。
だがグレイブの其の長いリーチによる連携とサポートは私にとって大いに助けとなった。
クリスのサポートのお陰で私は易々と長いリーチをかいくぐり着実に斬撃を加え続ける事が出来た。
一撃、また一撃とアルヴィオンファングがロザゥドの剛毛を切り裂く度に鮮血がほとばしる。
そして……。
ついにアルヴィオンファングがロザゥドの首を捉えた。 鮮血を挙げ魔将軍の首が中に舞う。
だが直ぐには気を抜かない。 ウォドゥスの時はそれでリオに大怪我を負わせてしまったから。
あの時は自分の詰めの甘さ、不甲斐なさに自分で自分が許せなかった。
だから今回は最後まで気を抜かない。
やがて生首の目から生気が消え、暫らく痙攣してた仰向けの首なし死体が完全に沈黙してから
やっと気を緩める。
振り向けば傍らにはリオとクリスが立っていた。
「おつかれさまでしたセツナ」
そして私を労うかのように優しく微笑んでくれた。 この笑顔で私は全て報われる思いだった。
私は喜びを其の身で表すように思いのたけを込めてリオに抱きついた。
私が死と隣り合わせのこの危険な戦いに身を投じられるのも全てはリオの為のようなものなのだから。
「ううん。 私一人の力じゃないわ。 リオとクリスが助けてくれたからこそ勝てたのよ。
クリス、今回コイツに勝てたのは本当あなたのお陰によるところが大きかったわ。 本当にありが……」
そう言いながらクリスのほうを向き私は思わす息を飲んだ。
其の目には敵意とも殺意とも言える光が宿っていたのだから。
「いえ、ボクなんて大した事無いですよ。 全てセツナさんの活躍によるものですよ」
だが次の瞬間にはいつもの笑顔があった。
一体何なのだろう。 初めて出会ったときもそうだったが時折見せるこの敵意のこもった眼差しは。
最初、気のせいだと思ったのだが。 いや、今でもそう思いたいのだが……。
このコ――クリスは戦闘となるとその戦いぶりは苛烈にして鬼気迫るほど。
でもスタンドプレーに走ったりせず上手く私との連携を、サポートをとても上手くこなしてくれている。
実際今の魔将軍との戦いなど彼の助けなくしては勝てなかったほどで本当に助かってる。
戦闘以外のときでも気心の知れたリオには勿論だが私とも上手く付き合ってくれてる。
それなのに時折敵意や殺意のこもった視線を感じる時がある。
尤も次の瞬間には微塵もそんな様子は伺えないのだが。
分からない。 何か私このコに恨まれるようなことが?
でもそれならどうして戦闘の時あんなに一生懸命健気にサポートしてくれるの?
それから数日後。
それはある寝苦しい夜のことだった。 寝汗が気持悪くて私は一風呂浴びようと体を起こした。
丁度現在宿を取ってる村は温泉で有名な場所だったし。
ちなみに川の直ぐ側で温泉が湧き出てるので川の水で温度調整しながら入るそう言うタイプの温泉。
そして温泉に浸かろうと歩を進めると湯煙の中に人影が見えた。
(誰かしらこんな遅い時間に私以外にも湯浴みなんて……)
そう思い目を凝らしてみると。 え……?
「クリス?」
そう、そこに居たのは私達の頼もしい仲間の姿。 だが――。
「アンタ女の子だったの?」
そう、リオが弟分だと言ってたし、一人称も『ボク』だったのでてっきり男の子だと思い込んでたが、
でも改めて本人から其の性別を聞いたわけじゃない。
だが目の前の全裸のクリスの胸はささやかながらも――そう裸でもなければ分からない程でではあるが
確かに女性特有の二つのふくらみがあった。
そんな事考えてた次の瞬間クリスは突然腕を振りかぶり……
私は反射的にその場を飛び退いた。
次の瞬間さっきまで私が立っていた其の場所にはギガンティスグレイブが刺さっていた。
咄嗟に飛び退かなかったなら今頃私はこの巨大薙刀にも似た武器に串刺しになっていただろう。
突然のクリスの行動に私は戸惑いと、そして背筋に冷たいものを感じずにいられなかった。
一体どう言う事?
察するに今までは女である事を隠してたのにそれがバレて思わず咄嗟にあんな行動を?
にしてはチョット過激すぎない? 私じゃなきゃ死んでたわよ?!
だけどそんな事を悠長に考えてられるような状況じゃなかった。
気が付けば直ぐ目の前にクリスが凄まじい形相で迫ってきてた。
そして其の手には大振りの短剣――いや其のボリュームは短剣と言うよりまるで鉈……。
私は咄嗟に抜剣した。
≪≪ ギィィンッッ!!! ≫≫
次の瞬間刃と刃がぶつかり甲高い金属音が鳴り響いた。 そして手に伝わってくる振動。
このコ本気で私を殺そうと……?
「ちょ、ちょっと待ってよクリス! い、一体何なのよ?!」
だがクリスは私の問いに応えようとはせず尚も凄まじい勢いで短剣を振り回し私に斬りかかってきた。
短剣とは言っても其の長さは40センチあまり、身幅も10センチ以上はありそう。
一撃でもまともに喰らえば致命傷に、当たらずかすっただけでもザックリ切り裂かれてしまうだろう。
鎧も身に纏ってないこの状況でははっきり言って本気で洒落にならない。
「ちょ、チョット待ちなさ……」
次々繰り出される剣撃は其の一つ一つがすさまじく重たい。
私の刃は折れたり刃こぼれしたりするような心配の要らない代物だけどでも私の腕はそうはいかない。
受け止めるたびに腕に痺れが残る。 受け続ければ私の腕がどうにかなってしまいそうなほどだった。
「だ、だから落ち着きなさいっての! い、一体何なのよ?!」
打ち疲れたのかやっと剣撃が少し収まった所で私はまた問いかけた。
「ねぇ応えてよ? 本当にどういうつもりなの? 私何か恨まれるような事でもした?」
返事は無い。 クリスは尚も鋭い敵意を剥き出しにした視線で睨んでくる。
「若しかして……リオのこと」
クリスの表情がかすかに動いた。
「確かにボクはリオにいさんの事が好きです。 兄のような存在としてではなく男性として。
でもね……別にボクが女だとも、この思いをリオ兄さんに打ち明けるつもりもありません。だって……」
そう言うとクリスは長い前髪をかき上げた。 そして其の前髪の下から現れたのは……。
思わず息を呑んだ。
前髪の下から現れたのは潰れた目とあまりに大きな傷跡。
髪で傷を隠してるのは予想してたとは言え、其の傷の大きさは予想以上に凄まじいものだったのだから。
「だって、こんな大きな傷が顔にある女、女として見てくれ何ていえるわけ無いでしょ?」
そう言ったクリスの声はどこか悲しげであった。
「だからね、女としての幸せなんていらない。 只戦士として側にいられれば、そう思ってたの。
戦士としてで良いから誰よりもリオにいさんの近くにいたいと。 だけど……」
「リオの側には既に私がいた……」
私がそう言うとクリスは私を睨んだ。
「だから私を殺そうとしたと言うの? でも、それなら教えて。 何故今まで私を助けてくれたの?」
そう、ずっと疑問だった。
このコは仲間になってからと言うもの今までずっと戦闘で私を支え続けてくれてた。
特に先日の魔将軍との戦いでなどこのコの助力無しには決して勝てなかったほど。
「見極めてたんですよ」
「見極める?」
私は聞き返した。
「貴方が本当に救世の勇者かどうか」
「それであなたの見解は? あなたの目に私はどう映ったの?」
「ええ、魔将軍を倒して見せた其の手腕、紛れもなく勇者のそれでした。 だから……」
「え?」
「だからボクはあなたを認める訳にはいかないんです」
「ど、どう言う事?」
い、一体何故? だってこのコは魔族に家族を殺され挙句顔にこんな大きな傷まで負わされて。
だから魔族は憎むべき仇のはず。
実際戦闘の時なんか其の憎しみをぶつけるかの如き苛烈な鬼気迫るものだった。
そんなクリスにとって私が救世の勇者なら仇を討ってくれる待ち望んでた存在でしょ?
殺意を抱くような相手なんかじゃないはずでしょ?
「醜いでしょ? ボクのこの傷」
クリスは自嘲気味に声を発した。
「こんな大きな傷が顔にある女、女としてまともな人生が送れると思います?
今は、今はね混沌とした魔族と人が争ってる時代だからこんなボクでも戦士としてなら生きる場所がある。
けどね、魔族が滅びたら? 戦乱が終わったら? ボクはどうすればいい?
今までそんな事考えてみた事も無かった。 けどねあなたを見て気付いてしまった。
この時代は遠からず確実に終りを迎えてしまうと。 だから……」
そう言いながらクリスは手を伸ばし、其の先にあったのは――。
「だからボクはあなたをォォオッ……!」
言いながらクリスはギガンティスグレイブの柄を掴み引き抜き振りかぶった。
戦慄が疾った。 今まで幾度となく間近で見てきた。 クリスのこのグレイブの威力を。
今まで頼もしかったこの巨大な薙刀にも似た武器も今は恐るべき驚異として目前に迫ってた。
躊躇は出来ない。 避けるとか受け止めるとかそんな甘い考えでは確実に死……。
「う、うわぁぁ!」
私は渾身の力を込めて一閃した。
あらゆるものを切り裂く純白の刃が、唸りを上げ目の前に迫り来るグレイブの柄を捉え断ち切った。
今までクリスと共に数多の敵を屠り去ってきた巨大な刃が宙を舞う。
そしてアルヴィオンファングの刃を返しクリスに向かって打ち下……。
「くっ……!」
私は其の刃が当たる寸前で止めた。
久しぶりだと言うのに憶えていてくれて
更に待っていてくれて素直に嬉しかった ありがとう
今後も期待に添えられるよう頑張っていきたいのですが
……今後の展開にチョッチ行き詰まってますorz
この後どないしよ……
なんか恋敵と関係無い所で修羅場が発生してるよ(((( ;゚Д゚)))アワワワワワワワワ
ヒロインが泥棒猫で勇者様なこの作品の復活を待ち望んでいたのでうれしすぎる(*゚∀゚)=3ハァハァ
鬱分とファンタジー分キター('A`)
赤坂ムッコロ
朝食。
「もぐもぐ……おかわり。」
「わぁ、おにいちゃんたくさんたべるねぇ。」
「ふふん、減った分余計に入るからね。」
そう言って志穂を見る。何食わぬ顔で飯をよそっていた。くっ!前の志穂だったら恥ずかしがる顔をするはずなのに……パ、パワーアップしているだと!?
「はい、晋也……ああ、それと……今日学校はどうするの?」
「ん?どうって普通に……ああ、そかそか。」
ナミちゃんを置いて学校には行けないな。さて、どうするか。預けられる知り合いもいないし。今から託児所に行くっていうのも時間ないし。
「どうするよ?」
質問に質問で答える。こんなことすると某獣に怒られそうだ。
「それだったら私にまかしといて。春校に連れて行くから。」
「連れてくって……大丈夫なん?」
「うん。あてはあるから。」
「えー。私おにいちゃんといっしょにいたいぃ。」
二人の会話を聞いていたナミちゃんが、急に甘えたように抱き付いてくる。嗚呼、可愛いなぁ。ってか懐かれてるなぁ。
………は、犯罪に走るようなことはしないよ?僕は?
ナミちゃんをぎゅっと抱いてみる。どうしてまぁ、女の子ってこう柔らかくて暖かくて気持ちいいんだろうか。晋也七不思議のうちの一つだよ。
「おー、よしよし。うーん……やっぱり可愛いなぁ。そうだね、おにいちゃんといっしょに夏校に………」
ザクッ
「うっ!」
水面下……否、机下では惨劇が起こっていた。……ふ、フォークがあ、足にぃ………
「ん…おにいちゃん、きついよ。」
あまりの激痛にナミちゃんを強く抱き締め過ぎたらしい。イヤイヤと腕から逃げようとする。ごめん………黒炎をまとった志穂によって恐怖が止まらないんだ。
「や、やっぱり春校に連れてってくださひ。ナミちゃんも……ね?」
ここは大人の事情。いいかいナミちゃん。人は選択し一つでデットエンドにも直行できるんだよ。……ていうか志穂、ナミちゃんみたいな子供相手に嫉妬するなヨ!
「うん……わかった……ボソ…なんだかおねーちゃん怖いよ……」
ああ、このオーラは無垢な幼女にまで届くのか。なんと奇怪。なんと脅威。そのうちこのオーラで人殺しまでできるんじゃないかと思って来た。
バーン!
「ほら、先輩!学校にいく時間ですよ!いざ、私達の愛の巣へゆかん!」
ちっ、現れやがったな。空気読み人知らずめ。
「おい春華よ。どうしてお前はいつもここ一番って時にそういう強引な登場をするんだ?」
「はっ、こうでもしないと、先輩に私の存在を忘れられてしまうのでは?というぐらい志穂先輩とバカップルしているからです。まあ、学校では私と先輩でバカップルしてますがねぇ。」
そう言って俺の背中越しに志穂を挑発するように見る。わかる……私にもわかるぞ!〇ラァ!後ろに……黒い竜巻が渦巻いているのが!そんな俺ニュータイ……
グサァッ!
「ひぐっ!」
再び不吉な効果音。春華には影になって見えてないようだが、俺のお尻に……フォークがささった……まるでダーツの如く飛来したそれは、食いつくように突き刺さっている。
お尻にフォーク……そんな歌があったような。
「うわぁ、おにいちゃんいたそう。ぬいてあげるね。」
ズボ!
「!!?!??!」
声にならない悲鳴が喉から漏れる。な、ナミちゃん!急に抜くと目茶苦茶痛いんだよ!その激痛に絶えるがため、全身を打ち震わし、悶絶した。
「せんぱーい。そんなところで悶絶してると、遅刻しちゃいますよー。」
「いいのよ。こんな変態ほっとけば。いきましょ、ナミちゃん。」
「は、春華!助け……」
「すみません、先輩!私の脳が瞬時的に遅刻or先輩を天秤にかけたら圧倒的に前者が有利です。はい、私も前期の成績がピンチなんで、アデューです!」
「おぁあああああ!?」
・
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「で?笹原。なんで遅刻した?」
「おけつが痛いからです。」
「………なんで授業中なのに突っ立ったままなんだ?」
「おけつが痛いからです。」
「お、お前は先生を馬鹿にしてるのか!?」
「いやぁー、いつもなら、はい馬鹿にしてます。ってこたえるんですけどね。今日はヒサビサに本気です。ええ。おけつが痛いからです。」
「……なにかあったのか?」
「……掘られました」
「「「「アッーー!」」」」
このクラス全員の叫びは、春華のクラスまで聞こえたという、伝説となった。そして俺がゲイだという噂も伝説に………う、嘘はついてないヨ!本当に掘られたんだヨ!?
昼休み
「んまーい!やっぱり食堂の水は違うね。」
財布の紐を志穂に握られてるため、ろくにお金がない俺は今日も昼飯抜き。そんなふうにたそがれていると……
「せんぱーい!た、た、大変です!」
「やぁ、裏切り者。」
「うっ。」
「ん?なにが大変なんだい?寝返り者?」
「うぅぅ……」
「ほら、話してみなよ。明智光秀。」
「う゛〜〜〜……奢りますよぅ…」
「♪」
カレーを貪りながら、春華の話しな耳を傾ける。
「そうそう、カレーなんて食べてる暇にいですよ。」
こやつ……さっきの会話を全否定しやがって……
「さっき春校の友達から電話で聞いたんですけどね………」
「ふむ…んぐ…」
「志穂先輩、ナミちゃんを自分と先輩の子供だって言ってまわってるそうですよ。」
「んぐっはっ!」
「せ、先輩!水、水!」
「んー!……んく…ぷあ、な、ナンダッテー?!」
「ええ、本当です。それで『晋也ファンクラブ』を牽制してるらしいですよ。いや、壊滅にまで追い込むつもりで……」
くっ、様子が変だと思ったら、そんなことまで始めやがりましたか。こうなったら……
少しおしおきが必要のようですねぇ。
「春華……耳を貸せ。」
「はい!わくわく、わくわく………」
ふふふ…みてろよ、志穂め……お前がイニシアチブを取れると思うなぞ、百年早いわい!
えー……次回予告…というか
『凌 辱 警 報』
です。「キャラが苛められるのヤダヤダ」という方、注意です。まぁ心に優しい凌辱ですが
(´∀`)
警報どころか朗報ではないか。wktkが止まんねよ(・∀・)
426 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 18:11:16 ID:Pa2x7qO4
シンヤ君が凌辱されると聞いて飛んできアッー!
幼馴染が恋をした。初恋だ。
幼馴染である佐藤花梨とは、家が隣同士で幼稚園の頃からの付き合いだ。
昔はいつも一緒にいた。登下校の時も、遊びに行く時も、おやつを食べる時も。
そんな関係は長く続いた。…でも、今は違う。
何があったというわけじゃない。何となく一緒にいるのが恥ずかしくなって、
それで少し距離を置いたら、どんどん広がっていってしまったのだ。
…今では顔さえあまり合わせなくなった。隣の家に住んでいて、通う学校も同じだというのに。
だから、何年か振りに家を訪ねてきた花梨から、初恋の話を聞いたのはショックではあった。
だが、俺はそれを素直に受け入れることができた。
たぶん、俺と花梨の関係は昔とは違うのだと、薄々分かっていたからだと思う。
俺と花梨は今、別々の道を歩いているのだと。…そして、それは悲しむようなことじゃない。
そう、俺が今すべきこと、それは花梨を応援してやること。
だから、俺は笑顔をつくって口を開く。
「応援するよ、花梨。告白、成功するといいな。
ここまでしかできてませんが、途中で投げ出さないように書き込んでみました。
ゆっくりとでも、書いていきたいと思います。
がんがれ
超がんがれ
続きを超wktkして待ってるよ。
学園モノというありきたりな設定でどのような展開が待っているのか今から楽しみです。
期待して待ってますゆえ(*´∀`*)
全裸で正座してまってるよ
ならオレは全裸で逆立ちしながら待ってるよ
俺は全裸でブレイクダンスをしながら待ってるよ
大丈夫もろちん靴下は履いたままだ
山本くんとお姉さんの続きがみたいよ
それでは投下します
なぜか気が付くと弥生は小さな個室にあるベットに拘束されていた。
両手両足を手錠でベットに拘束され、まったく身動きがとれなかった。
「あ、あれ?いつのまに?」
辺りを見渡してみると、ベットの横に一人の女性が静かに立っていた。
弥生を見下ろしているその顔は無表情で、顔色からもまったく
生気が感じられなかった。
「晴香……何でここに……」
弥生が聞いても晴香は何も答えない。そのかわり部屋の隅から何か持ってきた。
バットだった
ただそのバットはすでに血糊で真っ赤に染まっていた。
そして晴香は無表情のままバットを頭上高く振り上げ、弥生の
左腕に狙いを定めて一気に振りかぶった!!
「ギャ――――――――!!!」
二度、三度と晴香は弥生の左腕めがけてバットを打ち下ろした。
鈍い音とともに弥生の左腕はドス黒くなり、歪に変形した上に骨が
露出してベットどころか晴香自身も返り血で赤く染まっていた。
「はあはあはあ……ぐっ……」
左腕の感覚が薄れていき、もう指一本動かすことも出来なかった。
「………はは、はは、はは」
何度目かのバットでの攻撃が終わった時、初めて晴香の表情に
変化が表れた。残忍な薄ら笑いを浮かべ、弥生を睨み付けた。
「泥棒猫の末路としては妥当ね。」
「…………」
「愛しの樹さんに手を出した泥棒猫は今まで幾人かいたけど、
ここまで頑張ったのは貴女が初めてよ!」
弥生は左腕の激痛に耐えるので精一杯で、答えられなかった。
「でもそれも今日でお仕舞いよ。」
晴香の目は瞳孔が開き、その表情は残忍極まりない物になった。
「左腕……右腕……左足……右足……」
晴香はバットで弥生の四肢を指し
「まずこの四つを破壊し……次に唇……乳房……子宮……膣全体……」
バットで乳房や下腹部を突き
「樹さんが喜ぶこれらを破壊し……最後に」
弥生の顔を見て
「視覚……聴覚……味覚……触覚……嗅覚……これを全部破壊するわ」
弥生は晴香の言ってることが理解できなかった。
「ちょっと晴香!!あんた自分で何言ってるか分かってるの?そんなことし」
「うるさい!!!」
晴香は弥生の頬を張り倒し、黙らせた。
「泥棒猫の分際でえらそうに!!だけど安心しなさい。殺しはしないわ」
残忍な顔はさらに歪み、完全に自分の世界へ入っているようだ。
「体の自由を奪い、五感の全てを失い、暗闇の中で這いつくばって
生きればいいわ。寿命が尽きるまでの数十年をそうやって孤独に生きなさい!!
「死」なんて許さない!!「人」を捨て、家畜以下の存在に貶めてやるわ!!!!」
床に置いたバットを手に握り、再び大きく頭上に振りかぶった!
「あはははははは!!!」
弥生に抵抗の術はなかった。ただ最後に思い残すことがあった。
せめて最後に元の姿で樹に抱いてもらいたかった……
晴香のバットが左足に当たる瞬間、バットが止まった。表情が
残忍な笑顔から何かに驚いたような、驚愕の表情になっていた。
「……ん、……ん、……さん、……さん」
どこかで誰かが誰かを呼んでいるようなか細い声が聞こえてきた。
それとともに感覚の無くなっているはずの左手が暖かくなって
きた。誰かに握られている、そんな暖かさだった。
この感覚、もしかして!!
「止めろ!止めろ!それ以上名を言うな!!叫ぶな!!思いを
ぶつけるな!!!ウワーーーー!!!」
晴香が苦しみだし、頭を抱えて蹲って倒れてしまった。
そして呼ぶ声ははっきり聞こえてきた。
「……さん、……さん、…生さん、弥生さん!!」
それは紛れも無く樹の呼ぶ声だった。何処からか樹が見て、呼
んでいる。そう思っただけで弥生は心が温かくなった。ベット
に拘束されていた手錠は消え、弥生は立ち上がりその名を叫んだ!
湧き上がる想いをこめ、自分が愛するその名を!!
「樹ーーーーーーーー!!!!!!」
弥生が想いを込めて叫んだ瞬間、部屋が溶け出した。四方を囲んでいた壁はすべ
て溶け、後に残ったのは弥生と蹲った晴香とただ真っ白な世界だった。
周りすべて白の世界になり、呆然としていたら晴香が立ち上がった。
「自分の想いを出すことが出来たわね。」
「え?」
先ほどまでの晴香だと思っていたら、その顔は晴香ではなかった。
うりふたつの弥生がそこにいた。まるで鏡で写している自分と話して
いるような、そんな気分だった。
「私はあなたが押さえてきた思いの塊、まあ抑圧された心って所かしら」
「はあ……」
この女っていうか私は何言ってんだ?抑圧された心?いきなり言われても……
でも嘘は言ってない。何となくそれは分かるわ。あの静かな表情、こ
の清浄な空気。私の中にこういう想いがあったんだ。
「あなた今の今まで本心で話さないで仮面を被って生きてきたでしょう?
それが積もり積もって私という存在が生まれたのよ」
「仮面……本心……確かにそうね」
思い当たることはいっぱいあった。家庭…学校…友人…いつだって本音を隠し、
仮面を被って生きてきた。
「早くに母を亡くし、父に厳しく育てられ、相談しようにも父を恐れて皆から無
視され……そうやって今の今まで生きてきたらそりゃこんな人格の一つくらい生
まれるわよ」
そうだった。何度父を恐れ、恨んだことだろう。あいつさえいなければ、と何度
思ったことだろう。
「でもそんな父から逃げるようにこの大学に来て、初めて本音で話せる大切な人
ができた……それが樹。」
「ええ……こんな私に気を使ってくれて……泊まる所が無い時は泊めてくれたし
、襲われた時は命懸けで守ってくれたし……海に行った時は二人で遊んで楽しか
った……」
「もう一つ教えてあげる。先月あなたが作ったマフラー、樹が大事に持っている
わ。「ありがとう」って言ってたわ」
それを聞いた瞬間、弥生は信じられない、といったような表情をしていた。
「嘘!嘘!嘘!嘘よ!樹があんな不細工なマフラーを喜ぶわけないわ!だっ
て晴香は完璧なセーターを渡していたし、それに比べたら私のマフラーなんて……」
「まったく……別に樹は見た目で判断しないわよ。一生懸命、心を込めて作った
マフラーだったから喜んで受け取った。ただそれだけのことよ。晴香は関係ないわ」
「そ、そうなの?」
「はあ……あなたって本当に晴香が苦手なのね」
内なる私が言った何気ない一言……「晴香が苦手」。しかし私はその一言がトゲ
のように刺さった。
「気付かない?晴香ってあなたとは正反対な存在なのよ。何時でも体当たり、本
音で語り、愛に一直線。邪魔者は論理じゃなくて力で排除し、樹を手に入れるた
めなら姑息だろうが何だろうがあらゆる手段を厭わない。そんな晴香にあなたは
嫉妬した。妬んだ。憎んだ。……そして恐れた。」
「そんなこと!……そんなこと……」
「その証拠にさっきあなたをバットで攻撃した晴香、あれは「いつか晴香に殺される」
っていう恐怖の表れよ。……ずいぶん過激だったけど」
まさか……そんな……いえ、確かにそうね。晴香に対しては只の恋敵以上に何か
別の思い……ドス黒い物が私の中で渦巻いていたわ。晴香みたいにストレートに気持ちを
表現出来たら……何度そう思ったか。だから必要以上に挑発し、憎み、恐れた……
「それじゃ、そろそろお別れね。」
「え?」
もう一人の弥生がそう言うと、樹の声が段々と大きく、そしてはっきりと聞こえ
てきた。
「弥生さん!弥生さん!しっかりして!俺はここにいます!ずっといます!だか
ら目を覚まして!」
樹の必死の呼び掛けに反応するように、もう一人の弥生は少しづつ体が消えてきた。
「ちょとどういうこと!何で消えてくのよ!」
もう一人の弥生は優しい表情をして
「もうすぐあなたは目覚めるわ。その時私は消えてあなたの心と一つになるでし
ょう。……そんな悲しい顔しないで。大丈夫。ずーーっと一緒にいるし、樹もい
るから一人じゃないわ。……それじゃ」
最後に幸せそうな笑顔を残し、もう一人の弥生は消え、次の瞬間光の世界に包ま
れて弥生もまた消えていった。
(いい?あなたは一人じゃない!それだけは覚えててね)
「弥生さん!弥生さん!しっかりして!俺はここにいます!ずっといます!だか
ら……目を覚まして!」
弥生さんが苦しみだしてもう何時間たったんだろう。東の空が朝日で明るくなっ
てきても弥生さんが目を覚ます様子は無い。
くそっ!どうしたらいいんだ?こんなに苦しんでるのに俺に出来ることといった
らこうやって手を握って呼び掛けるだけなんて……でも弥生さんも頑張っている
んだから、俺も今できることをやるだけだ!!
永遠とも一瞬とも思えるほどの時間が終わった。弥生は夢か幻かそれとも両方か
分からないが、現実の世界に帰ってきた。
体の節々が痛み、体は動かしにくいが間違いなく弥生はついに元に戻った!!
やっと、やっと元に戻ったわ!
上半身を起こし、手を握ったまま寝ていた樹を起こした。
「樹、起きて。朝よ」
「う〜ん、はっ!!いつの間に寝ちゃったんだ?」
樹が寝呆け眼で辺りを見渡していた瞬間、弥生が上半身を起こして起きているの
を見て、半分しか開いてなかった目は完全に開いた
「や、弥生さん!その姿!遂に戻れたのですね!!」
「うん!!それもこれも樹のおかげよ!ありがとう!!」
感極まった弥生は裸なのも忘れて、樹を抱き締めた。
「弥生さん!ちょっと……」
「ずっと……ずっと……こうしたかった……小さいままじゃ何も出来なかったし
……樹、好きよ。大好き。愛してるわ。……もう離さない。ずっと……ずっと一緒よ」
「弥生さん……っと、ともかくまず何か着て下さい。このままじゃ……」
「え?ああ、別に樹だったら見てもいいわよ。何だったらここでシちゃっても……」
「ダメです!まだ病み上がりなんですから!着替えはここに置いておきますから
。その間廊下に出てますね。」
唇を尖らせて拗ねる弥生を置いて、樹は一度廊下に出てた。
廊下に出て一息付いた瞬間
「別れの挨拶は終わったか?」
その声は死神が発したかと思うほど冷たい声だった。
横に振り向いた瞬間、爆竹のような乾いた音がして、横腹に何かが命中した!!
うふふ、樹ったら照れちゃって可愛い!でも残念だったわ。せっかくだからここ
でエッチでもしようと思ったんだけどな……。まあ焦りは禁物ね。時間はたっぷ
りあるからゆっくりと確実に攻めていかなきゃ。……ああ、前着ていた服がピッ
タリだわ。せめてちょっとでも痩せて元に戻れればな。んもうなんでこんな地味な下着な
のよ。こうなることがわかっていたら勝負下着買ってくればよかったな。
「弥生……さ……ん……」
ん?今樹が呼んだような。それに何か爆竹のような音がしたわね。何かしら。
ドクンッ
あれ?何で心臓の鼓動が上がるの?……何かが起きたってこと?でも一体……
ドクンッ
ハア……ハア……動悸が収まらない。何か危険が迫っているのかも……しれない
わ。樹を呼んですぐにここから出なきゃ
弥生は素早く着替えを終え、樹を呼ぶために廊下に出ようとした瞬間、出入口の
ドアが開き、誰かが入ってきた。
「あ!樹、ちょうどよかった。今呼ぼうと……し……誰?」
部屋に入ってきたのは樹、ではなく目つきの鋭い、殺気を撒き散らしている片手
に拳銃を握る一人の男だった。
「お前が氷室弥生か」
底冷えするような声、色を失っている顔、痩けた頬、殺意に満ちた目。どれ一つ
とっても尋常ではなかった。弥生は男を見てるだけで身震いがする思いだった。
「あの時ガキの姿がどうして大きくなったのかは知らねえが、おまえらのおかげ
で仲間は警察の世話になり、辛うじて逃げた俺は逃亡生活中に怪我をしたりと地
獄の日々だったぜ」
「ガキの姿って、あなたは一体……あ!あなたまさか!!あの時私を拉致監禁し
た一味ね!」
男は何も答えず、ゆっくりと拳銃の銃口を弥生に向けた。
「本当は嬲り殺しにしたかったが、あまり時間もないんでな……それじゃそろ
そろお別れだ」
男が狙いを絞り、引き金を引こうとした瞬間
「やめろ―――――!!!」
廊下から脇腹を押さえた樹が走ってきて、男が拳銃を構えていた右手に向かって
飛び掛かり、取り押さえようとした。
「弥生さんには手出しさせないぞ!!」
「ちっ死にぞこないが!!離せ!!」
樹と男で拳銃の取り合いが始まったが、樹は先ほど脇腹に受けた傷のせいで
思うように力が出なかった。
くそっ、腹の傷さえ無ければこんなやつに……
「ふん、腹に当たってるんだ。無理するなよ!!」
男は樹を振り払い、怯んだ瞬間に樹の懐に飛び込み、銃口を胸に押し当てた。
「死ね!!」
再び乾いた、爆竹のような音が部屋に響き渡り、銃口からは硝煙の煙が立ち昇っていた。
撃たれた胸を押さえて身動き一つしなかった樹だったが、膝を落とし、倒れこんだ。
「樹――――――――――――――――!!!」
弥生は樹に駆け寄り呼びかけた。だが返事は無く、床は血の海と化していた。
「樹!!起きて!!目を覚まして!!やだ!!やだよ!!一人はやだよ!!
ずっと一緒っていったよね?私を置いて行くつもり?こんなのやだ!!」
男は泣き叫ぶ弥生に眉一つ動かさず、銃口を弥生に向けた。
「安心しな。すぐに会わせてやる。……あの世でな!!」
「ダメ!!これ以上はやらせない!!」
弥生は倒れた樹に覆いかぶさり、拳銃から守ろうとした。
「はん!健気だね!二人仲良く死ね!!」
男は拳銃の引き金を引いた。だがその瞬間、拳銃が真っ赤な閃光に包まれた。
拳銃から弾は発射されず暴発してしまい、男の右手全てが吹き飛んでしまった!!
「まさか……あの女……最初から……こうするつもり」
それが男の最後の言葉だった。
弥生は何が何だか分からなかったが、今は一刻も早く樹を病院に連れていかないと
「樹!しっかりして!今救急車呼ぶから!」
弥生は部屋に置いてあった電話で救急車を呼び、樹の上半身を起こして必死に樹に
呼び掛けているが、返事が無い。
銃弾を受けた胸と横腹からは出血は止まらず、どんどん顔色が悪くなっていった。
しかも体温が感じられなくなってきた。
「このままじゃ……このままじゃ……」
弥生は最悪の結末を予想してしまった
「死」という永遠の別れを
「樹」という最愛の人を失う恐怖を
「いやあああああああああ―――――!!!!!!」
部屋中に弥生の慟哭が響き渡った
「教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏」完
えー、今回で「教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏」は終わりです。
続きはタイトルを変え、近日中に投下したいと思います。
これから先、内容とタイトルの差が激しくて、やむなくタイトルを変える
事態になったことをこの場をお借りして誤ります。ごめんなさい。
続きを書く前に幾つかの作品のプロローグと「スクエア☆アタック」と
捨てネタの「分裂少女」をやってみようと思います。
ちなみに次の予定では弥生対晴香のラストバトルの予定
すいません。後書きの「謝る」が「誤る」と誤字してしまいました。
重ね重ねすいません
樹死んだ……???
良い人程このスレでは生命の危機に立たされるのか(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
450 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 01:39:40 ID:x9k/s0mv
このままでは晴香さんを盗られてしまう。目覚めよ樹
赤色 第六回
「では、シン様、お乗りください」
そう言うと、初老の老人はリムジンのドアを開けた。
「あっ、こりゃどうも」
ぺこぺことお辞儀をしながら、シンはリムジンに乗り込んだ。
「お兄様。あんまり使用人に頭を下げないでください」
反対側のドアから乗り込んだセリが、ミネラルウォーターを飲みながら
シンに話しかけた。
「いや、でも、何か慣れないよ」
頬をかきながらシンが答えると、セリも苦笑した。
「あっ、待ってくださ〜い!」
リムジンを発車させようかと言うところで、呼び止める声が上がった。
シンが声の方を向くと、朔がこちらへ走ってきていた。
「よかった、間に合いました〜」
肩で息をしながら、朔はリムジンの窓に手をかける。
「何か用?」
ブスッとした声でセリが話しかける。
まだ昨日の事を怒っているらしい。
「ええ、今日からシンちゃん、セリ様と同じ学校に通う事になったので、
私、お弁当作ってきちゃいました。
はい、これはシンちゃんの。腕によりをかけて作りましたから、栄養も
愛情もたっぷりですよ〜。
で、こっちは材料が余ったから、セリ様の。よかったらどうぞ」
「うわ。ありがとう」
シンがお弁当を受け取ろうとすると、セリが横からひったくり、
お弁当の包みを開ける。
「……何かしら?これ?」
プルプルと震えながらセリが出したのは、朔の写真。しかも水着姿。
お弁当箱の中に入っていた。
「いえ、シンちゃんが学校で、『ああっ!朔姉に会いたい!寂しいよ、朔姉!』
となったとき、その写真で自らを慰めていただこうかと。
それとも、シンちゃんは水着ぐらいじゃ、自らを慰めるには出力が足りませんか?」
急に話を振られてなんと答えようかと困っていると、
「いいかげんにしなさいっ!
お、お兄様があなたなんかを思って悲しむわけ無いでしょ!」
「ちぇ。まあ、せめてお弁当だけでも召し上がってくださいね」
「結構よ!今日のお昼は、私がお兄様を案内するんだから!
じい!早く車出して!」
苛苛しながらセリが叫ぶが、シンは
「でも、折角作ってくれたんだしさ…」
と、お弁当を取ろうとする。
しかし、
「お に い さ ま ?
昨日の、私の、話、聞いて、無かったの、で、しょう、か ?」
とすごい顔のセリに睨まれて、顔を青くして手を引っ込めた。
昨日の晩。セリの部屋に連れ込まれたシンは三時間ほど説教を受けた。
よくもまあこんなに口が回るものだと感心してしまうほど、セリはヒステリックな
声で喋り続けた。
その事を思い出し、
「ああ、ごめん、朔姉。今日のところは遠慮さしていただくよ。
また今度お願いするからさ」
シンはお弁当を朔にかえした。
「ふうん。お次が、あ る ん で す か」
セリがシンを睨む。
「あああ、ええと」
シンが答えに詰まっている間に、車は出て行った。
後に残された朔。
「あーあ。このお弁当どうしましょ。
自分で自分の唾液やら何やらが入ったもの食べるのも間抜けだしなあ」
今日はナミちゃんを春校に連れていった。晋也のファンクラブに入ってた連中、目をまん丸くして驚いてた。アハハ、いい顔だった。
確かにナミちゃんは私達の子供じゃないけど……ね。すぐに私も………
それより今日はなんの用事なんだろう。晋也ったら、二人だけで話がしたいなんて……もしかして……プロポーズ?や、やだ。まだ私達学生なのに……でも晋也とだったら、二つ返事でOKね。
その話し合いのためにナミちゃんをお母さんの家に預けてきたんだけど………まだこないなぁ。
正直あの夢を見てから晋也への独占欲が更に高まった。晋也が他の女を見るのも嫌、触るのも、触られるのもヤダ。実際今朝の晋也がナミちゃんを抱いてたのだけでも妬いていた。
ナミちゃんにはなんの罪もないのに……いいえ、女だっていうのが罪なのかも………っていけない、いけない。私ったらまた……
そんな事で悶々と考えていると……
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。誰だろう?晋也だったら当然鍵を持ってるから入ってくるだろうし………
「はーい。」
そう返事をしてドアを開けると………
「えっ?」
そこに立っていたのは、マスクにサングラスをした、明らかに怪しい男だった。突然の出来事に驚いていると……
ドンッ!
「きゃ!?…むぐ…な、なにを…」
思い切り突き倒され、床に組み伏せられた。この時になった、ようやく恐怖心が込み上げてきた。怖い、怖い、怖い!!
「んー!んー!」
「へへ…悪いな、志……お嬢ちゃん。あんたの恋人さんから頼まれてな……」
「え?」
私の…恋人?し、晋也が頼んだって…な、なにを?
「な、なに!?なにを頼まれたの!?」
「……あんたを犯してくれってな。」
「!?」
一瞬にして頭が真っ暗になった。犯す…犯される……私の、体が……ヤダ、嫌!そんなの絶対にいや!私は晋也だけのものなのに!
「いや!そんなの嘘よ!助け…んぐ!」
「はは、嘘だと思うんなら、本人から聞くんだな。」
男はそういうと、私を押さえ付けたまま携帯を私の顔にあてた。その携帯から……
「はろーです。志穂先輩!」
「は、春華!?なんであなたが……」
「いやぁ、せんぱいの頼みなんで、逆らえないんです。あ、今代わりますね。」
「え?」
「……志穂…」
「し、晋也?晋也なの!?ねえ、これなんなの?晋也が頼んだって……い、いつもみたいな冗談……」
「志穂…俺はもう疲れたんだ。さすがにお前の相手は……だから、俺は春華と新しい道を歩みます。お前はその男に孕まされちゃってください、ではアデュー!」
「っとと、ではそういうことで、先輩と私はいざ子作りへ。志穂先輩、さよーならー。」
ピッ
「……そ、そんな……晋……也…」
『もう疲れたんだ。お前の相手は……』
晋也の言葉が頭に響く。だって……晋也に邪魔者扱いされたくないから、私……一生懸命頑張って……晋也のこと好きだから、大好きだから。
気持ちいいことだってこれからたくさんして……捨てられたくなかったから……
なのに……なんで……なんで!?
「晋也!いやぁ!ごめんなさい!もう本当に嫌な事はしないから!晋也の言う事ならなんでもするからぁ!だから……助けで…ひっく…う゛ー……晋也……」
「無駄だぜ。もう切れてる。……さぁって、それじゃ、タップリ楽しませてもらうかな。晋也のために鍛えたテク、披露しな。」
男は携帯を取り上げると、力ずくで私の腕を後ろへまわし、紐で縛る。
「や、やめてっ!ほどいてっ!晋也の所へいかないと……ごめんなさいって直接謝らないと………春華に取られるのヤダッ!私の……私だけの晋也なの!」
「うるせっ!」
男はそう凄むと、無理やり服を脱がし始める。
ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!!!!
やめて!怖い、怖い!!
晋也……助けて…助けて助けて助けて!
「見つかるとやばいからな……前戯はなしでいくか…」
そう言うと男は、すでに固くなった一物を取り出し、私の股間に当てる。
「イヤァッ!ほ、本当に……やめて……晋也以外の男のモノなんて入れたくないぃっ……」
ズプズプ…
「ひぐっ……やだぁ…ぬいて、ぬいてぇ…えぐ……ひっく……」
「おー…キツ……」
ズッズッ
男は止める気配もなく、ただ自分の欲望のためだけに腰を振り始める。私はただ痛いだけ。当然だ。全然濡れてないし……なにより晋也以外のだなん……
「うぐ…んっ…し、晋也ぁ…いやだよぅ…あっ…くっ…た、助け、てよぉ。」
晋也はこんな自分勝手じゃない。もっと優しくて気持ちいい……ああ、でも私晋也に捨てられちゃったんだ……
嫌、嫌、嫌、嫌!認めない!晋也が私を捨てるはずないっ!こんなにヒドい事を頼むはずかないっ!
「うぅ…ひく…ひっく……うぁぁ……晋也、晋也、晋也ぁ……もうやだよぉ…うぐ…あん……あ、戻ってきてぇ……」
「ははっ、無駄だっつの……んじゃ、終わらせるか……中に出すぞ……」
「!?だめ、それだけはだめっ!ぬいてぇ、そ、外に……うぁ…んっ……だし、てぇ。」
「あーだめだめ。聞こえないぐらい気持ちいいわ。もういくっぜ……」
「だ、めっ……今日は、あ、危ない日……なのっ、し、晋也以外の子供なんてっ……いやだよぉっ……は、孕んじゃいやだよぉ……」
「くっ」
ドクンッ
「い、イヤァァァァッ!ぬ、抜いてぇ!中に出さないで、止めてぇっ!!お、お願いぃ……ひっく…うぅ…うぁ……ぁぁ……」
ごめん…晋也…中に出されちゃったよ……晋也以外のなんて……絶対に入れたくないのに………また、こんなことされたら……晋也に嫌われちゃう……そんなのって…いやだ…
「うぅ…ひっく…う、うぁああん!晋也ぁ!あああんっ!……ひっく……うぇぇぇん……じ、じん、や゛ぁ……うぁぁ…や、やだ…うぅあぁ……うぇぇぇ……」
「や、やべっ……泣いちまった……」
赤色
セリの目の前で渡したのが敗因か。朔さん実はわざとセリを挑発している?
この子どこの子
とりあえず続きを全裸で待っております。
しかしナミの両親が未だにはっきりとしないのでそろそろ我慢の限界です。すこし漏らしてOKですか?
私は恋をしました。二度目の恋です。
初めての恋は、そう…幼馴染のかずくんでした。
でも、私は恋をしていたことに、まるで気づいていませんでした。
あんなにいつも一緒にいたのに……いえ、だからこそ気づかなかったのかもしれません。
…三年前のあの夜、私は夢を見ました。かずくんの夢です。
私とかずくんは、一緒にお風呂に入っていました。…昔のように。
お気に入りのアヒルのおもちゃを浮かべて、二人で楽しくはしゃいでいました。
とても幸せな夢でした…でも目が覚めて、涙を流している自分に気づいたとき、私には分かってしまいました。
私の初恋は、もう終わってしまったのだと。
今、私は屋上にいます。告白をするためです。
目の前には、今私が思いを寄せている人がいます。
とても緊張します。足も震えていて、逃げ出してしまいたい衝動に駆られます。
でも、応援してくれているかずくん…いえ、和三さんのためにも、そんなわけには行きません。
意を決して口を開きます。彼の目をしっかり見て。
「待ちなさい!」
………え?
つヒント:胸
>>461 丁寧にありがとうございます。犯人がわかりました。
先生!
至急に山本くんのお姉さん分かモカ分を補給しないと
生命維持に支障をきたしそうです。
俺も白分と夕焼け分を補給しないと・・・
いいよ(´・ω・`)おまいらが死んでる間に
いたり先輩は俺がもらっうわなにすんだやめそこは違う穴あqwせdrftgyふじこlp;アッー!
|ω・`) 妻としての続きが待たれる
スウィッチまだ?
「俺が好きなのは遥香――お前なんだからさ」
あれ? うっかり告白してしまったぞ?
「うそ……そんなの、どうせお得意の嘘に決まってる!」
うんうん、ここで「実は嘘でしたー」ってバラした方が傷は浅くて済むぞ俺。
しかし。遥香の語尾が震えているのを聞き取って――考えるよりも先に喋り出していた。
「嘘なんかじゃない! 俺、ずっと前から遥香のこと、好きだったんだ」
……そうだったっけ? 出任せに言ってるつもりなんだが、なんか口にしてるうちに自分でも本気に思えてきた。
「か、かずくん……」
遥香の困り眉がふにゃっと歪んだ。
「あたしも! あたしもだ! あたしもかずくんのこと、ずーっと前から好きで、大好きで!」
手を伸ばし、肘を握ってきた。
「中学の頃は女子トイレの個室に引きずり込んで休憩時間中に無理矢理犯してやりたいとか四六時中思ってたよっ!」
喚き散らす彼女は、ぐっと俺の肘を掴んで離さない。やべえ。俺、踏んだらダメなものを踏みつつある……?
けど、まーいーかなー、と頭の隅で思ってもいる。別に遥香のことは嫌いじゃないしな。
既に筆下ろしも済んで、なんというか、童貞特有の強迫観念とか劣等感もなくなってリラックスできちゃったし。
「俺なんか、教室でみんなが見ている前でお前の黒スト破いてバックからハメたいとか妄想していたっ!」
「あたしも! 卒業式のとき、お父さんが邪魔しなければあのままみんなの前でかずくんをレイプしたかったよっ!」
なにこの告白?
こんなノリで口説き合っていいのか?
もう一度人生の意味を問い直した方が良くないか?
理性が疑問を投げかける中、俺たちはひしっと見詰め合い。
徐々に顔を寄せ。
――最初はそっと。次第に荒々しくがっと。終いにはぐおおおおっと唇と唾と舌を輪舞させた。
びっちゃらびっちゃら、頭上からけたたましい水音ともに霧状となった唾液がしぶいて生温かい雨に変わり、
蛆の身となったフォイレに降り注ぐ。ディープキスに忙しい脳死級バカップルは、足元に横たわっている気絶中の
アイヴァンホーと、屈辱に体をぷるぷると震わせる蛆姫のことをすっかり忘却している様子だった。
(よ、要するになんですか……私はこの変態どもがくっつくための当て馬にされたんですか……っ!?)
仮にも一国の姫ともあろうものが、話の後半になって突然テコ入れの如く登場してきたヒロイン(しかも取って
付けたような幼馴染み)と主人公を結び合わせるためのどーでもいい接着剤にされてしまったものだから、怒りは
収まらない。人を呪い殺せる蛆魔法でもあれば迷わず使っているところだが、あいにくとそんな便利スキルはなかった。
(まあ……いいですの。一応ここには恩返しという名目で来たことですし、和彦さんと遥香さんを娶わせたことで
それは充分に果たされたとも言えます。王族としての義務は終了。後はこのまま帰るだけですわ……)
「帰る」、と考えただけで。
胸のあたりが(蛆のどこが胸に当たるかは不明だが)ズキリと痛んだ。
涙が出そうになる。もちろん、蛆虫は泣かない。もし可能だったならば大声で泣き叫びたかっただけで。
多少話が強引とはいえ――なんだかんだでフォイレにとって今回は初恋であり、初体験であり、失恋であった。
降りかかってくる靴の裏の風圧で死を覚悟し、何もかも諦めかけたときに自分のことを守ってくれた手――
蛆ゆえ見ることは叶わなかったが、あのてのひらから伝わってくる微かな熱はいまだ忘れえない。
恋に落ちたのだ。愛に目覚めたのだ。心が盲目になったのだ。
なのに――和彦さんは遥香さんを選ぶという。
蛆虫がそんなにお嫌ですの……? 問いたかったが、ふたりはもはや聞き耳持たぬ様子。
込み上げてくる感情を押し殺し、分と立場をわきまえてぐっと堪えるしかなかった。
蛆界には王女としての責務が山積している。断腸の思いであろうと、速やかな帰投を決意するのが最善だ。
転進――勇気ある撤退を選択する。
が。もちろん、このまま踏み台扱いにされて黙って引き下がるほど、腹の白くないフォイレであった。
(私の純情を踏みにじってくれた代償……とくと支払ってもらいますのっ!)
数十分後。
上の方では少し前までベッドをギシギシ言わせて運動に励んでいた和彦が、今やぐったりして「もう、やめ……」
と呻き、対する遥香が「誰がパンツ履いていいっつったよ、かずくん」と責め苛むようになっており。
更に十数分して和彦の悲鳴が途絶え、ツヤツヤした遥香の嬌声もなくなり、ただ寝息が響くばかりとなった頃。
物陰に潜んでいたフォイレが、もぞり――と動き出した。
蛆虫たちは去って行った。
あれからもう三日が経つ。
「和彦さんへ 恩返しは終わりましたので、もう帰ります。お世話になりました。あと、プレゼントがあります。
どうか受け取ってくださいませ。私なりの、ささやかな愛情にございます。 ――あなたの可愛い蛆虫 フォイレ」
という、恐らくアイヴァンホーが代筆しただろう書き置きだけを残してふたり(二匹?)の姿はなくなっていた。
しかし、「プレゼント」だの「愛情」だのは何だろう? はて? 見渡しても机の上にはこの紙切れしかなかった。
そんなことを疑問に感じたりしつつ、俺は遥香と肉欲の日々を送っていた。
来たときに彼女が宣言した通り、ヤリまくりだった。俺は従妹のしなやかな体に溺れていた。
今は事後。着衣状態で立ったままイチャイチャしている。
「もー、かずくんってば中出しばっかり。そろそろコンドーム買いに行こうぜい」
「そうだな。この歳で遥香を孕ませるのもアレだからなー」
当たり前だが父親になる覚悟なんて毛頭なかった。
「フフー、でも既に手遅れだったりして。あたしのおなかの中にはもうかずくんの赤ちゃんが……」
と、引き締まった腹部をさすりながらクスクス笑う。
「そういや最近すっぱいものを欲しがるようになったな」
「んー? そーねー、ちょっと前までダメだったのに、ここのところなんだかねー」
「おいおい、ひょっとして、ひょっとするのか?」
「アハハ、んなまっさかー……うッ!?」
突如笑いを引っ込め、蒼白な顔になって口元を押さえた。
一瞬さっきの続きで冗談かと思ったが、それにしては尋常じゃない表情だった。
「大丈夫か? つらいようなら無理せずに吐けよ」
ゴミ箱を掴んで引き寄せ、背中をさすってやる。
「ち……ちがう……おなか……」
「おなか?」
引き締まった腹部――さっきまでは。
ほんの数秒、目を離している間に、そこは目を疑うほど膨張していた。
まるで風船。
ぼこぼこぉっ、と内側から無造作に叩くような音がして、下腹部の肉に凹凸が刻まれる。
「ああああああああああッッッ!!?」
名状しがたい悲鳴を発し、ズボンとパンツを一気にずり下げて脱ぐ遥香。
ひと際大きな排泄音が響く。脱糞? いや――違う。
膣口を押し広げ、何か白い塊がずるりと遥香の体内からこぼれ落ちた。
反射的にキャッチする。温かい。それは羊膜のような、柔らかい卵の殻のような、なんとも表現しにくいものを体に
こびりつかせた――赤ん坊だった。
抜けるような白い肌と、輝く銀髪――フォイレとそっくりの顔立ち。しかし、鼻がなかった。
ハーフマゴット。アイヴァンホーの口にした言葉が不意に甦ってくる。
蝿は、卵を産みつける。ならば、その幼虫である蛆もまた……?
プレゼント――愛情――
俺は、フォイレの処女を奪ったときに膣内射精していたことを思い出した。
もしかして!? 遥香も同じ答えに達したらしく、呻いた。
「い、いわゆるこれって――代理母って奴?」
困り眉を、今ばかりは心底困ったように引きつらせていた。
やがて、「友達と旅行にいく」が娘の捏造したアリバイであることに気づいた父親が、こめかみに青筋を
立てながら俺の部屋のドアを乱暴に叩き開けて踏み込んできた。
「遥香! お前の友達は口を割ったぞ! まったく、こんなところに来ていたなんてな! さあ、帰……あ?」
「ああああああああああああああああッッッッッ!!!」
彼女はちょうど、ふたり目(二匹目?)を出産している最中で。
それはそれはもうすっげーことになりました。
ギャフン
ドタバタ修羅場ラブコメってことでハッピーエンドを目指すのが狙いでした。
実際にハッピーかと言えば……えーと、ほら。
何せ「おめでた」ですし。
恋をしたのは私が先。
あれは一年前の入学式の日。
ぎゅうぎゅう詰めの電車の中で、私の前にいたのがあの人。
周りに押されて密着してしまい、彼は顔を赤らめて「すいません」と呟いた。
でもその時は、学校はともかくまさか学年もクラスも同じだとなんて思わなかった。
その上、席まで隣同士で一緒だったなんて。
そう、あれは運命の出会いだった。そうとしか思えない。
だから、私は一年かけて彼…吉備光との距離を縮めてきた。
かわいらしい顔立。小さめだけど引き締まった体。抜群の運動神経。学年トップの頭脳。
そして、誰にでも優しい性格。
絵に書いたような美少年。理想の彼氏。それが彼。…それが私のミツ君
でも、私は油断してしまった。彼の傍にいることに安心して、事をゆっくり運びすぎた。
私は彼に歩み寄る。彼の目の前にいる女を見据えながら。
姑息な泥棒猫! 薄汚い雌犬!! 身の程知らずの雌狐!!!!
雌豚は惚けた顔して突っ立っている。突然すぎて、状況が把握できていないのかしら。
この程度の女では、ミツ君にはふさわしくない。
そう、ふさわしいのは
「ミツ君…私、あなたのことが好き」
…この私。私だけ。
>>470 (;゚Д゚)あわわわわわわわ
( ゚Д゚ )
>>470 ( ゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
_, ._
(;゚ Д゚) …?!
(つд⊂)ゴシゴシ
( Д ) ゚ ゚
(つд⊂)ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ
( Д ) ......._。......_。 コロコロコロ…
(; Д ) !!
まだか、と思い腕時計を見ても時間は特別早くなるわけでもない。それでもはやる気持
ちを抑えるためか、どうしても確認してしまう。たとえそれが無意味な行為だと分かって
いても、そうせずにはいられなかった。表示されている時間は9時15分、頭の中ではもう
一時間は経ったという感覚があるが、実際はその4分の1しか経っていない。虎徹君との
約束の時間まではあと45分、大した長さでもないし、今まで待っていた時間の三倍待てば
良いだけなのだが、それは永遠にも近い長さに思えた。
どうにも我慢出来なくなり、今日だけで何度目かも分からない身なりの確認をする。服
はユキに頼んでおいたもので、きちんと虎徹君の趣味に合うようにしてもらったが大丈夫
だろうか。ユキのことだからバレないように調べたとは思うし、調査ミスも無いだろうが
それでも緊張のせいか不安になってくる。スカート丈の長いワンピースに薄手のカーディ
ガンという服装では少しアピールが足りないのではないかとも思ったけれども、特に問題
は無いとユキは言う。念の為に勝負下着と、虎徹君の大好物であるというオーバーニーソ
ックスを着けてきたけれども、それでも役に立つのか不安だった。自惚れであるとは思う
けれども器量は悪くないと自負していたが、もしかしたら虎徹君からしてみれば好みでは
ないのかもしれないと思う気持ちが、それを加速させていく。
一度悪い思考をしてみれば悪い方へとどんどん向かっていくのが人間というもので、例
に漏れずわたしも思考の迷宮へと入り込んでいく。
わたしとは義理で付き合ってくれているのではないか。
違うと理解していても、心の中のわたしは揺さぶってくる。何度目だろう、恋人として
付き合い始める前はこんなことなど無かったのに、たまに臆病な自分が顔を出してくるよ
うになった。愛しているから、愛されているから、愛したいから、愛されたいから、その
言葉が持つ意味はそれだけ尊い。
もしかしたら、わたしは恋人失格なのかもしれないな。
口に出さないように頭の中で呟いて、軽く溜息を吐いた。
昨日の朝に、虎徹君は彼氏として上手くやれているのだろうかと自分を少し責めていた
ようだけれども、寧ろそれはわたしに当てはまるのではないかと思う。虎徹君はわたしに
随分と良くしてくれているというのに、わたしはそれに釣り合う分、返していないような
気がする。つい先程だって、自信の無さから虎徹君を少し疑ってしまった。
最低だな、これでは彼女失格だ。
自分を責める感情は、そのまま吐息となって口から漏れてきた。重くなった空気を払拭
するように軽く目を閉じ、髪を掻き上げると不意に額に違和感が来た。冷たく硬質なそれ
の感触に少し驚き、閉じていた目を開く。
これだ。
ほぼ完全に後ろ向きになっていたわたしの思考を強制的に前に向かせたのは、つい先日
虎徹君に買ってもらった金属製の腕輪。銀色をしたそれは、多分素材も銀ではない。露店
であまり高くない値段で売っていたもので、虎徹君自身も安物だということを少し申し訳
なさそうに言っていた。確かにわたしが持っているものはこれよりも高価なものばかりだ
けれど、しかしデザインは良いものだし、何より虎徹君から貰ったというだけで何よりも
大切なものになる。実際、理事長の孫娘という立場上校則違反になる装飾品は着けること
は出来ないから学校の中では外していたけれども、鞄やポケットの中に忍ばせていたし、
校外では睡眠のときはおろか入浴のときにまで身に着けている。メイドがそれとなく注意
をしてくるものの、それでも外さない程に。
再び目を閉じながら右手で腕輪を握った。始めの内はまだ少し冷たかったものの幾らか
時間が経つに連れて体温を吸収し、やがて人肌の温度になった。その後に湧いてくるのは、
虎徹君と繋がっているという細やかな実感。身に着けているだけでそう思えてくるものの、
握っていると手を繋いでいるような気がして嬉しくなってくる。
数秒。
気力が湧いてくると、今日一日の予定の確認がしたくなった。
服装は大丈夫、先程までの不安はなくなった。下着だって問題ない、虎徹君の好みだと
いう黒のレースを身に着けてきたし着ている服も透けにくい素材のものだから心配皆無。
靴下も一番良い素材のものを選んだから、それも強力な武器になるだろう。それだけでは
ない、代え用の下着もきちんと好みを押さえているものだから、大切なことが終わった後
でも安心ができる。少し照れ屋で奥手な虎徹君のことだから、いきなりことに及ばないと
は思うけれども、もしものことを考えて先回りするのが良い彼女というものだろう。虎徹
君も男の子だからこんな場合は引っ張っていきたがるかもしれないから、でしゃばらない
ように気を付けるのも忘れない。それでも今日はキスくらいまでは行ってくれるだろうか。
手を握ったのはわたしの方からで、それを気にしてくれていたのできっと虎徹君の方から
キスをしてくれる筈だ。
数秒。
待て、少し早計ではないだろうか。
少し思考が行きすぎていたかもしれないと軽く首を振った。毎回そうしてしまい、後に
なって虎徹君にやんわりと注意をされたり、事故嫌悪に陥ってしまったりするのは、最近
よくあることだ。それに注意されなくても、虎徹君が態度で悲しんでいるのが分かるとき
がある。先日初めて手を繋いだときなどがその分かりやすい例だろう。
だが、失敗してからでは遅すぎる。
念の為に、ミントフィルムを口に含んだ。多目に唾液をまぶして、口内の隅々まで香り
が行き渡るようにする。ほんの僅かでも不快な部分が残らないように舌を動かし、ねぶる
ようにフィルムと唾液の混じったものを塗り付けていく。キスのときに失敗しないように
練習した甲斐があって、納得のいく状態になった。動きも問題ないから、突然キスをされ
ても大丈夫だろう。いつも以上に歯を磨いた上、これだけやったのだから問題ない。
本当に大丈夫なのか?
更に念を入れて、ケースの中のフィルムを全て口に含んだ。強烈な味と爽快感が襲って
くるが、これも虎徹君の為だと我慢する。下手な事をして嫌われるよりは余程ましだ。
しかし体は正直で、悶絶すること数秒。
不意に、高音。
音の響いてくる方向に視線を向けると、わたしがここで待ち始めてから数えて三本目の
電車がやってきた。遠くに見える電車と手首に巻いた時計で時間を確認すると、残る時間
は15分。色々と考えている内に、もう30分は経っていたらしい。残りが僅かだということ
と後少し待てば虎徹君に会えるという喜び、そしてこれからデートをするという実感に胸
が高鳴った。
そのせいか少し有頂天になっていたかもしれない、だから気付かなかった。
突然。
「死ね」
聞き覚えのある声と共に背中を軽く押され、続いて浮遊感がやってくる。身を空中で捻
り、振り向いてみれば視界に入ってくるのは見慣れた綺麗な虎毛色の髪。
一瞬。
微笑んだ彼女から背けるように視線をずらすと、迫ってくる電車の車体が見えた。耳に
入ってくるのは、鼓膜を揺さぶるほどの大轟音。
死ぬんだな、という意識がぼんやりと浮かんでくる。
人は死に際に走馬灯というものを見ると言われているが、どうやらわたしは例外だった
らしい。今はもう周囲の音や色、匂いさえも分からずに、ゆっくりと落下していく奇妙な
感覚だけが全身に伝わってくる。
恐怖や後悔という感情はなく、頭の中にはただ辛いという気持ちがある。
ごめん、虎徹君。デートは出来そうにない。本当に、わたしは恋人失格だ。
心の中で呟き、わたしは目を閉じた。
今回はこれで終わりです
スレチな上、がっつく訳ではないのですが、もし読んだ人が居たら『ツルとカメ』の感想
とかくれると嬉しいです。俺の書く文章だとどんな感じのが喜ばれるのか知りたいので。
もし評判が良かったら、『とらとら』が終わった後で連載するかも、です
>>470 (;゚Д゚)ひっひひひひぃいいぃぃいぃいいぇええええ
>>480 青海タンが…(つω;`)
分かっていた事とはいえ辛い…
みんな仲良くしようよ
未来日記の一巻読んだけどユッキーすげえな…
うわ、テラカナシス。虎鉄君がヘタレなばかりに……
ツルカメはこっちで連載するのだったら書くけど、向こうでやるなら
やっぱ向こうに書き込むのが筋かと思う。
個人的にはおもしろくGJ!!ものでありますよ。ツンデレはすばらしい。
>>470 (;゚д゚) ウワアアアアアアアアア…!!
>>485 続きプロットが無い、と言うか考えてないので
連載するのなら書き慣れたこっちの方が良いかなと思って
まぁ『とらとら』も書き終わっていないような分際の癖に
偉そうですが、反応次第ということで
>>470 修羅場というより普通にダークとかホラーとか申しませんかアワワワワワワ
投下します。
錆びた上に段差の急な階段を、身体を引き摺るように上がっていく。
我ながら緩慢な動きでポケットから薬の小瓶を取り出した。蓋を開けて出した中身は数錠、一
気に噛み砕く。それだけですーっと吹き抜けるような開放感が胸のざわめきを静めてくれた。
歯にこびり付いた顆粒を舐め取りながら、辿り着いた古びたドアを無造作に引いた。ノックをしな
いのは、俺かどうかすぐにわからなくて焦れるそうだから。――中毒にでもなってそうな発言だ。
「おかえりなさい。こ〜ちゃんっ」
出迎えた雫は、今日も今日とて季節外れの向日葵のごとき笑顔だった。
「ただいま。……まったく、こっちがまいっちまうくらいに御機嫌だな」
こうも熱烈な歓迎を受けると、『ただいま』ということくらい何でもないように思う。
「と〜ぜんだよ。だってこ〜ちゃんと一緒にいるんだもん」
薄い黄緑色のフリル付きでお腹のところに無駄に大きなポケットが付いた、幾らか年代の低め
の層を狙ったデザイン。。雫はそんな良くも悪くもお似合いのエプロンをひらりとはためかせて、さ
も当然かのように断言した。左手首に巻かれたグラスグリーンのリストバントが、濃淡のコントラス
トで映える。
俺のサイフが痛まないギリギリの額。庶民用の弱小ブランドの品。
傷跡を見て自傷を習慣化させることがあるということで買ってあげたものだが、感極まって泣くく
らいに大喜びされたその時から、外したところを見たことがない。どうやらかなりのお気に入りにし
てくれているようだ。
「ん? なあに?」
俺の視線が一点に集まっているのに気付いたらしい。
「手首のほうはどうだ? できるなら見せてもらいたいんだけど……」
「ええと……あの……そのね? ……ごめん、こ〜ちゃん。わたし、見せたくないよ……」
目に見えて消沈してしまった雫に、俺は二の句が告げられなくなる。
――別の意味では、外したところを見たことがないから、その下に傷跡が増えていてもわからな
いということだ。雫が本格的に自傷症にかかっていないか確認するには、手首を見せてもらうの
が一番なのだが、雫はそれを頑なに拒否し続けていた。
「……だってね、すごく醜いんだよ。こう、そこだけ人の肌じゃないみたいな……。薄気味悪い色
のくっきりと残った跡がね……。消えない傷ってやつなのかな? だから、もしこ〜ちゃんに『こん
な傷が付いてる女気持ち悪い』なんて思われたら、わたし……わたし……」
「……ゴメン、俺が悪かった。何度も訊いてホントにゴメンな」
でも、女の子にとって身体に残った傷ってのは相当辛いものに違いない。俺が言えば頷く雫で
さえ、その頼みを断るくらいに気にしている。
「違う……ちがうよ……? こ〜ちゃんが悪いわけじゃなくって……、わたしに傷が残ってるのが
いけなくて……、もし見られたらいくらこ〜ちゃんでもわたしのこと嫌いになっちゃうから……」
「……気負いすぎなんだよ、雫は。俺は何があってもお前の味方だってよくわかってるだろ?」
「……うん」
痞えがある肯定。俺を信じてくれていても、どうしても突破できない心の壁。
身体に刻み込まれた苦痛の証。リストカットでなくとも、傷とはそういうものだ。それは身体・精
神の両面の苦痛であり、だから俺は雫の気持ちと体調、どちらもなるだけ気遣いたい。
――それだけに、その壁は砕くには脆すぎ、越えるには高すぎるものとなっているが。
打開策は――なかなか見つからない。
「それで……今日の晩飯は何を作ってくれたんだ?」
すっかりしょぼくれてしまった雫を抱き寄せ、頭を撫でながら尋ねる。この流れは最初から変わ
っていない。左右の髪留めを外し、バラけた房を手櫛で梳いて纏める。ショートになった前髪を掬
い上げて、砂を零すようにサラサラと流した。
「今日は山菜のおひたしとえび天丼……それにしても、こ〜ちゃんの手……大きいよね」
声に張りが戻り、あからさまなくらいに恐怖心が薄らいでいく。
俺は雫をちゃんと癒せている。それがこうして実感できるのが心に染み渡るくらいに嬉しい。
「そりゃお前に比べればな……。でもそれだけで、他に何の取り柄もねえよ。撫でるのだって未
だにおっかなびっくりやってるところがあるし……」
「でも優しい動きだよ。――だからわたしこ〜ちゃんに撫でられるの好きなんだぁ」
真っ直ぐすぎる言葉に久しぶりに照れを覚えてしまった俺は、そこで早々に雫を解放した。
「あっ……。終わり……?」
円らな瞳でそうも未練がましく見上げられると正直困るんだけどな……。
「……折角の飯が冷めるから、その後にな」
「うん……わかったよ。じゃあ、はい。食べよう?」
向かい合って食べられるように位置を調整して、改めて座布団を勧めてくる。
二部屋しかない雫の住処は、その外観を裏切らずにどちらも狭い。
敷き詰めるように置かれた調度品もほとんどが悪い意味で年代物だ。
当然今、雫がにこにこ叩いて客人の着座を心待ちにしているしている座布団も、ところどころカ
バーが破けている痛んだ品なのだが、座れさえすれば俺は何の文句もない。
ただ、食卓の上の料理を見るに、家計の状況はそれほど切迫はしていないようだ。
銀行振り込み。月一の。――何処にいるのか知らないが、雫の父親の生存は確定している。
「こ〜ちゃん、こ〜ちゃん」
「ん?」
「はやく、はやく」
何の気兼ねもなしに口を広げ、左右の八重歯を反り立てる。
警戒心の欠片もない。親鳥にエサを請う雛鳥そのものだ。
怯えの感情はあっても羞恥心はないのだろうかと思いながら、適当に皿から箸でぜんまいを一
本摘む。単純そうに見えるメニューだが、きっと半端なく気合を入れて作ってくれているのだろう。
「いただきまぁ〜す」
言い終わると同時に捻じ込んだ。
雫は至福の時間だとでも言いたげに、たかだか草一本を数十秒かけてじっくりと咀嚼して、咥え
たままの俺の箸までベロベロに嘗め回してくれた。
「……こ〜ちゃんに食べさせてもらうと美味しさが何十倍にも感じられるなぁ。あっ……勿論そう
でなくても美味しいと思うよ? こ〜ちゃんに満足してもらうためにわたし頑張ったから」
「お前の料理の腕はよくわかってるって……。食べるまでもない。今日も美味いに決まってるさ」
雫は以前俺が天野の弁当を褒めたのが余程悔しかったらしく、直接口に出しては言わないが
晩飯の度に俺に褒められたがる。
実際、竹沢家の家事全般を担っていたのは雫のようで、その腕は文句なしに高い。ならどうして
あの時それを俺に言わなかったのかといえば、家庭事情で俺に無駄な心配をさせたくなかったの
だろう。その気持ちは俺も何となく理解できる。だから、それには触れず、今の雫を大事にしてや
ればいい話だ。
けど……。
「けどな……」
「こ〜ちゃん、次つぎ。えび食べたいな?」
「……わかったよ」
丼にでんと乗せてあるそれを、衣を崩さぬように慎重に持ち上げる。
「あーん」
余りにも無防備で、あどけなさすぎて見ていられない。こんなんで、こんなんで本当に――
「あふっ! あふいっ! あふいほ、ほ〜ふぁんっ! ふぉんなにほくまふぇひれちゃやぁ……」
「あっ……悪い」
――考えすぎてもロクなことがないし、素直に可愛がってやれよ。
――うっさいな。その開き直りが正しいかで悩んでんだよ。
「いはい……、まらひりひりする……」
ちろちろと舌を出しては氷水に浸す。涙目でそれをやられると、思わず胸を掻き毟りたくなるくら
いにいじらしい。
多少のドタバタはあったが、晩飯は無事美味しく食べ終わり、後片付けも済ませた。
それから暫らくは食休みも兼ねて雫にいいようにベタ付かれながら、解く気もないクイズ番組を
流し見などして、その後は受験生の本分を果たすべく参考書をカリカリやった。
それも一段落着いた現在、部屋の隅に蹲るように置かれた小型テレビが映し出すのはどのチャ
ンネルもCMばかり。時間帯が変わる。いい加減退き頃だな。
「じゃあ俺、もうそろそろ帰るわ」
胡坐をかいた俺の太股を枕にして、日向ぼっこ中の猫みたいにごろごろしていた雫を退ける。
これだけサービスしてやれば火傷させた分はチャラになったと考えていいだろう。
つーかお前はその格好になってから勉強放棄しっぱなしじゃないか。それと泣くか和むかどっち
かに絞れ。ああそんなにコップを傾けるなよ、零れたら俺が被害を受けるんだから。
内心で愚痴を言いつつ、ノタノタと帰り支度を始めたが――
「帰っちゃうの……?」
――その一言で余計な雑念を全部吹き飛ばされる辺り、俺はとことん雫に弱くなった。
ずっと押さえ込んでいた衝動が暴発しそうになる。荒れ狂う激情が理性を飲み込みそうになる。
この瞬間だけは――どうしても慣れない。
無意識に手が瓶の入ったポケットを握り締めていた。
「一応親は何も言わないんだけどな。むしろ積極的に推奨してるし。……でも、あんまり遅くまで
いると冗談抜きで帰れなくなるから」
……落ち着け、冷静になれ。心配することはない。お前には薬がちゃんと効いている。
一般的な精神安定剤にそこまでの効果を期待していいのかは知らない。でも、この呪いだけで
ずっと気が楽になる。偽薬効果というものだろう。要するに大半は思い込みの力だ。
「……そっか」
こう言えば雫も大人しく引いてくれる。
でも、お互いが節度を守っているからこそ、耐え難い欲望と自制心への反動は大きくなるばかり
で、俺達は返って更なる深みに堕ちてしまっているんじゃないだろうか。
「それじゃあ……はいっ……」
瞳を閉じ、静かに雫は顔を上向きにした。
我慢の概念が一瞬で崩壊して、そのまま吸い寄せられるように雫の唇を奪う。
心地よい弾力性と乾いた大地さえも潤せそうなくらいの瑞々しさを併せ持つそれに、存分に音を
立てて吸い付く。つるつるとした表面に舌の裏を滑らせる。勢いに任せる俺は、得体の知れない
魅力に誘いこまれて、下唇を何度も甘咬みした。
こうなると箍が外れてしまうのは雫も同じだ。
縫うように俺の口内に侵入してきたその舌は、縦横無尽に蹂躙を始める。火傷の痛みをかき消
そうとでもしているのだろうか、ザラザラした感触の先端がその先陣を切った。
歯茎を撫で回し、舌下腺を散々に弄繰り回したと思ったら、次の瞬間には奥まで舌を差し込ま
れたせいで身動きの取れなくなっていた俺の舌を押し返し、執拗に絡み付かせては滲み出る唾
液を隈なく舐め取ろうとする。
恥も外聞もない。ただ眼前の相手が欲しい。その衝動を押し殺さんがためには、一心不乱で舌
を動かすしか術がないのだ。けれど、どれだけこの行為に慣れていっても、得られる快感が増し
ていっても、決して満杯までは満たされていない残心がある。
ちゅぱりちゅぱちゅぱと厭らしいくらいに響き渡る吸引音を聞き流すこと数分。俺と雫は艶かしい
けど切なさだけが募る、そんな無意味に甘美な二枚舌の演舞を堪能し続けた。
やがて雫の舌が舌根まで伸びてきそうになったのに俺が噎せ返ったことで、ようやく長いお別
れのキスが終わる。
過激さと時間が日増しになっているのは気のせいじゃないだろう。俺の息遣いがやけに荒いの
も、雫の眼が異常に潤んでいるのも、到底無視できるレベルじゃなくなってきている。
それでもこの先にいかないのは、俺の意志が予想以上に奮戦しているのか、はたまた――
「……それじゃあまた明日だね。それと、寝る前には電話してね……? 絶対にだよ……?」
雫が意外に我慢強いのか。
擬似的な薬漬けでようやく平静を保っている俺と違い、雫が別段これといってしていることはな
い。一日中甘えていても物足りなく思うような生粋の甘えん坊で、暇さえあれば擦り寄ってくる、
加えて今更しつこいが完全無欠の重度の依存症。そんな雫がここまで我慢できるなんて俺は全
然予想していなかった。――いや、予想できるはずもない。
「ああ……絶対にするよ」
正気の内に一刻も早くこの場を離れるべく、それだけ言って足早に部屋を出た。
秋も半ば、過ごし易い季節の変わり目は実感できるほど長くはなく、夜風は大分冷たくなってし
まっている。ここ一月ばかりの雫との生活が、余計に体感時間を早めているのかもしれない。雫
と過ごす時間は、穏やかなようで危うい、そんな不安定な時間だから。
偶にすれ違う車のヘッドライトが照らし出す銀杏並木の葉の色は黄色に色づいている。それでも
時間が経っているのは動かしようのない事実。
――この無能者。頭の中から野次が飛ぶ。
俺は雫を救えちゃいない。守れちゃいない。支えになるだけじゃダメなんだ。それだけじゃ破滅
が待ってるだけなんだ。堕落が待ってるだけなんだ。このままじゃあ何もかもダメなんだ。
薬を口に含む。服用期間が短いが、それほど害はないはずだ。だって俺は例え飲むのがビタミ
ン剤だろうと頑張れる。口内で錠剤を転がしながら、雫の舌の感触を思い出すだけなんだから。
……それが中毒症状じゃなければ何だってんだ。何時から平静を保つための偽薬は麻薬と化
した? これでは、共依存とは思わないが、俺も雫も完全にお互いに溺れてしまっている。その
意味が性的なものにに変わってしまう日も間近に違いない。もうここいらが限界だろう。
そもそも雫の性質上、距離を置くという手段が取れなかった時点で、曖昧な関係を維持するな
んて土台無理な話だったのかもしれない。だが、それにしたって俺が上手く立ち振る舞えばまだ
何とかできる余地があったんじゃないか? 雫の手を引いてやるべき俺が率先して川の深みに
落ちてしまってどうする?
それに、雫の苦しみが一向に取り除かれていないのも俺のせいだ。緩和している自信はある。
けど、それはあくまで俺が雫と一緒にいられる時に限ってであって、雫が独りきりの時にどれだけ
苦しんでいるかは定かじゃない。現に、毎晩の就寝前の遣り取りで雫は心底心細そうに話してい
る。しかも、中途半端に笑って誤魔化そうとするから聞いてるこっちが居た堪れなくなってくる。
雫の苦しみ――本人は必死に隠そうとしているが、大体の見当は付く。その内容も原因も。でも
それは伝聞と推測の積み重ねでしかなく、それだけで微細なバランスで成り立っている雫に踏み込
むにはあまりに心もとない。間違っていましたでは済まされないのだ。雫を傷付けることは誰より
も俺が許さない。
そのようにして、結局俺は雫を救うことも突き放すこともできず、挙句の果てに雫への気持ちを
封印するのに失敗したようだった。俺はハリボテの虚勢を張ることすらできない。――彼女の狂
気を止めうる唯一の方法が失敗してしまった。それはつまり、俺の前に目下のところ最大の悩み
事が待ち構えていることを意味する。
――麻衣実ちゃんの退院が一週間後に迫っている――
俺はどうやったら、彼女の手から雫を守れるのだろう?
一月かけてもその答えが出ないことが、何より俺の精神を蝕んでいた。
第二部開始。いちゃついてるのに泥沼なのがこの話。
僕は恋をされた。それも二人の女の子から。
花梨さん…彼女は僕と同じ部活、バドミントン部に所属している。
彼女と仲良くなったのは、足を捻った彼女を介抱してからのこと。
一人で廊下でうずくまる彼女に、肩を貸して保健室まで連れて行った。
あれほど機敏な動きができる彼女なのに、その体は猫のように柔らかくて、ドキリとしたことを覚えている。
それから僕は、彼女を意識するようになった。…そして、それは彼女も同じだった。
…蔓さんとの付き合いは、まるで小説のような始まり方だった。
登校途中の電車の中で、不意の揺れにバランスを崩して、彼女と密着してしまったのだ。
そのとき彼女からふわりと立ち上った香りに、僕はついうっとりしてしまった。
それが失礼なことだと気づいたのは数秒後だった。顔が真っ赤になった。
そんな彼女は僕の隣の席で…親密になるのに、長くはかからなかった。
そして、今日の告白。
二人とも、僕に告白したっきり黙っていたけど、どちらも言いたい事をぐっと堪えているようだった。
…実際、堪えていたんだろう。重く険悪な雰囲気が漂っていたのだから。
もちろん、責任は僕にもある。
僕はその場で答えを出さなかった。
答えを引き伸ばしたのは僕だ。
………いったい
「どうしたらいいんだろう。」
僕は、一人呟いた。
>>470 激しく笑わせてもらいました!
姫さま可哀相だけど・・・
>>480 青海ちゃん可愛いなあと思いながら読んでいたのに急に・・・(´;ω;`)ウッ
>>◆z9ikoecMcM氏
頑張って書いてるのはわかるんだけど、できればいくらか書き溜めてからまとめて投稿してくれないか?
見た感じ、3〜4時間ずつに1レスごとで投下してるみたいだけど、それだと短すぎて正直なところ話にのめりこみ難い。
せめて1日分書き溜めて投下してくれるとありがたいです。
こーちゃんも普通じゃなくなってきてますね
がんばれこーちゃん(´・ω・`)
>>499 申し訳ありません。
次で一区切りなので、もう一回だけ単発です。
それからは3、4レス分くらい書き溜めて投下します。
個別にレスしたいが神が多すぎるーーーーーーーーー
嬉しすぎて血の涙がでそう。
しかしこっそり自分の唾液入りのものとか食べさせようとするのにめっちゃ興奮してしまう。
俺はもうノーマルに戻れないなぁ・・・・
これでも俺はアリマテア王国騎士団の元『王の盾』だ。
並の相手では太刀打ちできないくらいの腕は持っていると自負しているし、
ある程度の危機も切り拓けるだろう。自惚れ…ではないはずだ。
だが。
まさに今の状況は絶望的としか言いようがない。
もはや手も足も出ない、文字通りの意味で俺はそこまで追い詰められていた。
「くっ…!」
万事休す―――――か。
近づいてくる脅威に奥歯を噛み締めた。
残念ながら、今の俺にこの戦況を打開するだけの力は持ち合わせていない。
いくら歯を軋ませたところで事態が好転することはないのだ。
「ま、待ってくれ!考え直した方がいい!」
浅ましくも。俺は命乞いをした。軽蔑するならしてくれてかまわない。
だけどこれ以外に戦況を変える方法が思いつかなかったとだけ言い訳させてもらおう。
「「ふっふっふっふっふっふ……」」
敵は二人。俺の命乞いをあざ笑うように唇を歪ませた。
相も変わらず二人は徐々に俺との距離を詰めてくる。プライドを捨てた命乞いは一時の足止めにもなりえなかった。
完全に手詰まり。
膨れ上がる恐怖が、臨界点を突破した。
「も、もうやめましょっ!?ねっ!?後生ですから!」
半べそでそう言った。
乱れた着衣、ベッドに手足を縛り付けられた格好とが相まって情けないことこのうえない。
「男らしくないぞ、ウィリアム。いい加減諦めるが良い」
「そうですよ、ウィル。極東地域の諺に『据え膳喰わぬは男の恥』なんていうのがありますし」
その諺は今のこの状態に当てはまるのか…?いやいや。そんなことはどうでもいい。
団長と姫様が、とうとうベッドに膝を乗せた。
早朝の自室、目が覚めたらこんな状況だった。俺、ただいま絶賛ミサオの危機。
実を言うと二人に襲われるのは初めてじゃない。
白状すれば、この半年間今みたいなことが多々あった。
理由がどうだったにせよ、団長と姫様を抱いたことが原因らしい。
アリマテアで姫様と。オークニーで団長と。二人を抱いた事実によって、それまで絶妙だったバランスが崩れた。
始まりは『どっちが床の上で俺に強く愛されたか』と二人が言い争ったときだ。
喧嘩を止めるつもりで間に入ったのに、気付けばなし崩し的に二人同時に抱いてしまった。うん、今は反省している。
それからと言うもの。二人の喧嘩が白熱すると、どちらがより俺に好まれているか証明するため、性技で決着をつけるのが通例になってしまった。
……というわけで。
今日も俺は二人に襲われるらしい。
「ややややっぱり、こーゆーのはいけないんだと思うデスよ?」
恐怖が言語中枢まで侵し始めたようだ。吐いた台詞がおかしい。
「…とかなんとか言いながら。身体の方はやる気まんまんのようじゃな?」
俺の逸物を指差しながらほくそ笑む姫様。
つられて股間に目をやると…分身が起立していた。………俺の馬鹿。
「さて。前回はおぬしが先に口でしたから…今回はわらわから行かせてもらうぞ。異存ないな?マリィ」
「……っ。まぁいいでしょう。ですが本番は私が先ですからね!」
こそこそと。なにやら二人が俺をどう料理するか算段している。
こういうときだけ息がぴったりなのは勘弁してもらいたい。
……このスキになんとか抜け出せないだろうか。
腕を思いっきり引いてみたが、痛いだけでびくともしなかった。
縛っている縄に目をやると、腕がちょっと赤くなっていた。…二人とも酷いや。
ベッドとの結び目の方はと言うと、これまたご丁寧にきつく縛り付けてある。なんて念の入りようだ。
とても脱出できそうにない。……これまでか。
「何しておるのじゃ?」
「ひゃふっ!?」
突然圧迫感を感じた。……えと、その…股間に。
「ひっ、姫様!?そそそんなトコ握らないでっ!」
「ほんと〜にか?こっちは『もっと触って』と脈打っておるが」
しゅっしゅっ、布越しにしごき立てる。緩急をつけたその動きがこれまたとてつもなく気持ち――――――じゃなくて。
「くっ…」
嗚呼。天国の母さん、キャス。ごめんなさい。俺、汚されちゃったよ……。
股間から伝わってくる刺激が、除々に理性を削り取ってゆく。
俺の身体がいつまでもつか解らない。……こうなれば最後の手段だ。"救援要請"しかない。
この家のどこかにいるであろう助っ人の名前を叫ぼうと大きく息を吸い込んだ。…そして。
「シャロ――――――んんーっ!?」
くちゅくちゅ、くちゅくちゅ。
……あら?
決死の声を遮られ、口内が淫猥な音を響かせている。何かが俺の歯茎をなぞるように這い回っていた。
眼前には団長の赤みの差した顔。
……団長に口内を犯されていた。
「……ぷはっ……オイタは駄目ですよ、ウィル」
ディープキスをしていた団長が唇を放してそう言った。酷く官能的な顔が劣情を誘う。
「むっ…?ウィリアム!マリィの接吻ごときで硬くするな!」
俺のモノの変化を、文字通り手に取るように解った姫様が非難の声を上げる。
……ごめんなさい、姫様。これも男の性というヤツです。
「あはっ。嬉しい!もっとしてあげますね♪」
本当に嬉しそうな団長の笑顔がこれまた一段と可愛――――――って待て待て。流されるな!ウィリアム!
「ちょっと、だんちょ……んむっ」
止める間もなく再び団長の舌が口腔をまさぐり始めた。
いけないと解ってても恍惚とした気分になってくる。思考も大分狭まり始めていた。
「……わらわも負けてはおれぬな……」
俺たちの様子に当てられたのか、とうとう姫様が俺の逸物を着衣から開放した。
団長の顔で遮られてよくは見えなかったけど、分身が程よく温かい。おまけに。
「んっ…ちゅっ……んんっ……むぐ……ちゅぷっ――――――」
姫様のくぐもった声と時折聞こえる水音。
どうやら。本当に口淫を始めたらしい。
否が応でも聞こえてくる二人の魅惑的な声。俺も、すっかり雰囲気に飲まれていた。
「んっ…ちゅぱ……気持ち、いぃですか…?」
「……わらわの方が良いに決まっておる。なっ?ウィリアム」
……えーと、あの…そんなの、決められません。…どっちもいいです。
ぼーっとしたまま答える。
「むぅ。いつまでも優柔不断だとそのうち刺されるぞ」
「もう。はっきりしてください」
二人は頬を膨らませながらも、気を取り直して愛撫を再開した。
ただただ、快楽を貪る時間が過ぎていく。僅かに残った理性の片隅で「結局、今回も流されてしまったな」と考えながら。
だけどその理性も次の瞬間、木っ端微塵に吹き飛んだ。
「……っ!姫様、もう…イキそ……」
団長と続けていた接吻を中断し、そう伝えた。
「んぐっ……んっ!んっ!んっ!んっ!んっ!んっ――――――」
それを聞き入れた姫様が加速度的に首を上下させる。その口内では舌が俺自身を絡め取るように這い回っていた。
「ひっ、姫様ッ!イ、イクッ……!」
間もなく解き放たれる欲望の塊を吐き出そうと下腹部に力を込め、そして。
「イッ――――――あ…?」
吐き出せなかった。もう少しで絶頂に達せるはずが、直前になって姫様が唇を離したのだ。
もどかしさに背筋を反らせながら、思わず呟く。
「な、なんで……」
俺の苦しげな表情を見て二人がくすくす笑った。
「どうしたのじゃ?」
熱に浮かされたような顔で微笑み。
「ほれ、どうしたのか言うてみぃ」
自身の艶やかな黒髪を束ね、その毛先で俺の先端を擽る。
「う……」
いくら腰を振っても快感が得られない。…イキたい。イキたくてイキたくてたまらない。
言ってしまおうか、どうしようか迷っている俺の耳元で、団長が静かに囁いた。
「『イかせてください』って言えばきっと最後までしてくれますよ?」
ねぇ?と団長の目配せを受けて、姫様が肯定するように一際強くモノを擦り上げた。
ああ。イキたい。全部、吐いてしまおう。この思いも。下腹部で蠢く白い欲望も。
「……てくださぃ…」
「え?何ですか?ウィル。よく聞こえませんでした」
俺の耳を甘噛みしながら囁く。もう我慢の限界だった。
俺は、恥もプライドも金繰り捨てて懇願した。
「イッ…!イかせてくださいっっっっっ!!!」
「あはっ。よくできました♪」
団長が楽しそうに笑い。
「ウィリアム!わらわたちに、射精すところ見せるがよいっ!ほらッ!ほらほらッ!!」
姫様は爆発したように手の中にあるモノをしごき上げた。
「がっ……はっ…!」
快楽の信号が脳全体に伝わり、世界が真っ白に染まる。快感を貪る以外の思考はとうに費えていた。
「イ゛ッ……グッ………ッッッ!?」
痛みを伴うほど大量の塊が尿道を駆け上ってくる。
「「射精して!!」」
二人の声を合図に。
「があああぁぁぁぁぁっっ!!」
ばちばちと脳髄が弾け、俺は咆哮と共に欲望を放出した。
噴き出した白い粘液が大きく弧を描く。
そして。
「どうかされましか、ウィリ――――――」
ぱたっ。ぱたたっ。
いきなり扉を開けたシャロンちゃんの女中服に降りかかった。
「「「―――あ」」」
三者三様の間抜けな声で、霧散するピンク色の空気。
やがて訪れる嵐の前の沈黙の中。
俺の部屋で四体の銅像が固まっている。
そして沈黙を破ったのは。
「……何か弁明することは御座いますか?ウィリアム様」
シャロンちゃんの抑揚のない声だった。
「あう…あうあう…あうあうあうあう………」
ただ陸に上がった魚のように口をパクパクさせる。それが俺の弁明だった。
「――――では死刑です」
無感動な瞳の中に、俺ははっきりと見た。世にも恐ろしい怒りの炎を。
「いやあああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!」
さわやかなオークニーの朝の下、俺の絶叫が響き渡った。
本日も晴天なり。オークニーは至って平和だ。………俺以外は。
エロ増量キャンペーン。
後日談はまだ何分割になるか未定です。
>>354 その解釈で概ね間違っていません。
もともと旧ヒロイン勢の優先順位が ウィル>自分の命>マローネ の順でした。
ですので、団長の説得も命を賭したものではなく
自身を安全圏に置いて、それでいて尚且つ可能な限りマローネも助けよう、というものでした。
その結果として最悪、説得と火打石の策が失敗し、着火できてもこちらに被害が及ばないように銃口を詰めるという策を講じていました。
本文でその辺のことが上手く伝わらなかったのは私の力不足です。
19話で団長をヘンに善人ぶらせたのがマズかったのかもしれません。
3行目の指摘も含め、以後精進します。
最近、恋の噂には事欠かない。
恋恋恋。どこもかしこも。そんなに恋っていいものかしら。
もちろん私だって恋に興味が無いわけじゃないわ。
でも男の子と話しててもつまんないんだもの恋する以前の話よ。
あいつらときたら人の話もちゃんと聴いていられないんだから。
恋したくてもできないわあれじゃ。
ま男の子で私の話を聴いてられるのは副編の名波くらいのものね。
あ副編っていうのは副編集長のこと。私がいる新聞部のね。
でも名波は聞き上手のほうだから会話を楽しむのとはちょっと違うのよねー。
結構かっこいいやつなのにもったいない。そこがいいっていう子もいるけどどこがいいのよ。
まいいか。今は極上のネタがあるんだもの。恋の話なのがちょっと癪に障るけど。
私はウキウキしながらいつものように新聞部の扉を開けていつものように口を開いた。
「ねえねえ聞いた!?ついにあの吉備光が告白されたらしいわよしかも二人に!」
プロローグ終了、一区切り。
>>510 姫様も団長もS風味エロで非常に良い(*´д`*)ハァハァ
ウィル幸せなのやらそうじゃないのやら
なんにせよ(´・ω・)カワイソス
>>510 かつて無い程にGJ!
マゾですのでこうゆうの大好きです
女性上位属性はマゾじゃないやい!……きっと。
>>510乙です。こういうのメチャクチャ好きです。
>>510 襲われたのはウィルなのに
シャロンヒドス
てかこういう状況はこのスレの主人公にとってはデフォだ
>>520 誰が主人公なのかわからないのが難点です
>>427 が主人公なのか、告白する相手が主人公なのか
さっぱりとわからない・・。
結論
物語の軸がしっかりとするまでは視点をあちこち変えないことが大事
だと素人の俺は思った
>>520 |ω・`)次にまとまったのがクルのでそれに期待
なんか嫉妬のいい匂い はするので(*´д`*)
連続投下じゃないと阿修羅氏が大変そうとだけオモタ
>>520 |ω・`)漏れも秘かにwktkしてる。
ぜひ、心震えるような嫉妬・修羅場を届けてくれ。
|ω・`) あんたら指摘もほどほどにしなさいよ
|ω・`)行き過ぎた指摘はやぁよ
そんなにいき過ぎた指摘なのかな?
別に作品を悪く言ってるんじゃなくて
「作品自体には期待してるけど、ちょっと読みにくいかも」って言ってるだけなんじゃ・・・。
固まって投下されないのも誰視点かわからない点の一つじゃないかな
次からはそうするっていうしまったりいこうぜ
RedPepperは珍しく男の嫉妬も
含まれてそうなので個人的にはかなり期待(;゚∀゚)=3ムッハー
読みにくいもんは読みにくいんだYO
531 :
522:2006/08/21(月) 19:25:08 ID:YBcdXmvx
アンカーミスってることに気づいた」 ̄l●
>>520→
>>512 |ω・`) 作者殿申し訳ない、楽しみにしておりますので・・・
>>530 そんなに読みにくいか?
冗長な作者よりはこっちの方が余程ましな気がするが?
合わないと思ったらスルーすればいいじゃない('A`)
まとめのお約束にあるんだし
俺も期待してます作者様(*´д`*)
男の嫉妬はなるべく勘弁してほしい
と、思うのは俺だけ?
>>534 そこらへんは個人の嗜好だね
無理に投下された作品全部を読もうとしなくてもよいと思うよ
指摘するなら誤字脱字
展開に口出しするな
嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
荒らしはスルー
職人さんが投下しづらい空気はやめよう
指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
過剰なクレクレは考え物
|ω・`) 皆仲良く、嫉妬を愛する同士なのだから
そして嫉妬を形にしてくれる作者様に感謝を(*´д`*)
「えと……本日よりこちらの所轄に配属されることになった、相原荘介です。」
「ふーん……22歳で警部補か……っつーこたぁキャリアさんか。」
「はい。」
警察大学校に入り、三か月。今日からこの南署で警官見習いとして配属されることになった。そして今目の前にいるのが………
「ま、知ってるとは思うが、俺がここの署長やってる麻生健司だ。階級は警視正。この年でこの階級だからな……いわゆるノンキャリ。叩き上げってやつだ。」
ガハハと大笑いしたかと思うと、その太い腕の袖をまくり、再び書類に目を通す。俺のプロフィールが書いてあるものだろう。
「いいよなぁ、キャリアってのはよぉ。ここまで来たらなんの苦労なしにぽんぽん昇任しちまうんだから。」
その言い方に少しむっとする。苦労なしとはいうが、ここに至るまでは並々ならぬ苦労をしたんだ。叩き上げだからってひがむのは止めてほしい。
「署長、そんないいかたは失礼ですよ。新人君を苛めたら……」
二人の間を割るように、女性がお茶を置く。
「おっ、緑ちゃん。ありがとさん。緑ちゃんの淹れるお茶はうまいんだよなぁ。」
そう言って熱そうなお茶を啜る。緑ちゃんと呼ばれたその女性は、隣りで困ったような怒ったような顔をしている。
「署長……もう私、ちゃん付けで呼ばれるような年じゃ……」
「女の子はみんなちゃん付けでいいんだよ。ああ、まだ紹介してなかったな。この坊主が……」
「相原、荘介です。」
「……相原君が、今日から警官見習いとして配属された。」
「まぁ。前から聞いてはいたけど……あなたが…ふふ、よろしくね。」
「あ、は、はい。よろしく……」
握手を促され、素直に手を握る。その笑顔はとても整っており、綺麗な大人の女性だ。恐らく学生の頃はもてたのだろう。
「えー……この娘が須藤緑ちゃん。お前と同じキャリア組だ。一応ここの副所長ってことになってる。年は……」
「コホン!」
「まぁ、わかるだろ?」
勘弁してくれといった感じに片目をつむり、頭を下げる。キャリアで副所長ってことは警視。年は……25、6辺りか……口に出しては言えないけど。
「あとの面子の紹介はと……緑ちゃん、頼む、」
「ふぅ、わかりました。じゃあ、相原君。こっちに。」
溜め息を付き、別のデスクへ案内される。当の署長はなにやら慌ててイヤホンをつけ、何かを聞き始めた。
「あ、なにか事件でも?」
「え?…ああ、今日は日曜日でしょ?この時間帯なら、競馬じゃないかしら?」
「は?け、競馬?だって仕事は……」
「うーん、そういうことはみんなを紹介しながら追々説明するわ。」
「はあ……」
いったいどんな署長なんだ。いきなり競馬のラジオを聞き始めるなんて。しかも緑さんも当たり前のように聞き流してるし。
「えーとぉ……」
互いにイスに座ると、部屋を見回し始める。
「あそこでパソコンに向かってる人、わかる?」
「ええ……ちょっと丸い感じの……」
「ふふふ…そう。彼が青沼仁巡査部長。ウチの知能犯係の主任。あだ名は熊ちゃん。見たままね。」
太ってるから熊。……熊に失礼な気が……
「それでぇ……あら、いないわね。その隣り、雑誌が積もってるデスクがあるでしょ?あそこが強行犯係の、宇田洋巡査。」
「今は捜査に?」
「いえ、きっとパチンコか、バイクショップじゃないかしら?彼、相当のバイク好きだから。」
……いったい俺はどんな所轄に来てしまったのだろう。競馬にパチンコ。まともに仕事している奴なんて一人もいないじゃないか。
いや、青沼巡査部長はちゃんと……
「おおい、青沼ぁ!まぁたエロサイト繋げて動画落としやがって……お前も好きだなぁ。」
「い、いいじゃないですか……ぼ、ぼ、僕の勝手で……」
ちゃんとしてなかった。
「いま熊ちゃんに声を掛けたのが森谷孝弘警部。暴力犯係の課長よ。」
「よろしくなぁ!新人!」
聞こえていたのか、そのガタイにあった大きな声を上げる。なんとなく暴力犯になった理由がわかる。
「おい!静かにしねぇかモリ!!いいところなんだよ!」
「なぁにいってんですか署長!どうせ今日も外れでしょうが。」
……仲が良いのか悪いのか。「そ、れ、で。今度は君の番ね……えーと……」
そう言うと緑さんはパソコンをいじり始める。しばらくすると、画面には俺の顔が映り、下にはずらずらと文章が書いてあった。
その文章……俺のプロフィール以外にも、なにやらたくさん書かれており、緑さんが最初から読み始める。
「相原荘介君。22歳。……Kが丘小学校に入学。10歳にして三回も万引きで補導される……」
「え、え?」
「卒業後、I中学校に入学。万引きはしなくなったが、入学と同時に髪の毛が真っ茶色に。咎められても一度も直さない。更に喧嘩に強く、たった数か月で周辺の学校を押さえる番長に……」
な、なんでそんなことまで……!
「高校は進学校のT高校へ。……問題児ではあったものの、成績優秀なため教師も注意せず、素行や身だしなみの悪さは輪を掛けて酷くなる。……ふふ、ずいぶん頭の良い悪ガキ君だったみたいね。」
「卒業後、K大学法学部に入学。それからはだいぶ落ち着き、なんの問題も無く首席で卒業。警察大学校に入り、南署へ見習いとして配属………」
「あ、の……」
「ん?なぁに?」
「どうしてそんなこてまで……」
「あら?……なんで南署に来たのか、聞いてないの?」
「ええ……」
ただの研修のためじゃないのか?
「ウチはね、過去に問題を起こした事のある、有能な警官の来る署なの。……あなたの履歴を見る限り、立派な問題児ねぇ。」
「うっ。」
「有能だから手放したくない。だけどそんな問題児を面に出したくない。……本庁の考えはそんなとこね。」
「じゃあ、ここにいる皆さんも……」
「そう。署長は統率力があるけど過去に暴力沙汰をおこしてるし、熊ちゃんは……さっき聞いたとおりね。頭の回転は凄いのだけど。
宇田君は元暴走族。運転技術はピカイチだから逃げられる犯人はいないわ。森谷さんは度胸と腕っ節があるけど、キチガイなほどのガンマニア。
銃を撃ちたいから警官になったようなものね。」
「……ていうことは、キャリアの緑さんがここにいるって事は……」
「そ、考えてるとおり。」
「いったいどんな問題を…」
「高校の時に援助交際。」
「ブッ」
思わず吹いてしまった。
「ああ、あのオジサンを相手に……」
「いやねえ。私、オジサンとそんなことしないわよ。」
「え?じゃあ誰と?」
「中学生。だって私年下趣味だし……いわゆる世間でのショタコンってやつかな?だってかわいい子って大好きだから。ふふふ……相原君なんて、ストライクゾーンよ?」
俺の人生……終わったかもしれないな……
新作ktkr
どんな嫉妬ワールドが展開されるかwkwktktk
↑終わったのか…?
「も〜い〜かい?」
コンクリートに額を押し付けながら、一人の男の子が大きな声でそう呼んだ。
これは夢だ、そして一生忘れてはならない記憶だ。
私は……小学生低学年の私はその子のすぐ後ろで息を殺し身構えていた。
毎年夏休みになると遠い田舎からやって来る従兄弟の男の子。
それは恋と呼ぶにはあまりにも未熟すぎる感情だったが、それでもこの子と一緒に居ると楽しいと感じていたのは覚えている。
いつまで経っても返事が無い事を知ると、その男の子はゆっくりと振り返り始めた……その先に何が待っているのかを知らずに。
私は知っている、この先に何が待っているのかを。
何度も思い出した、何度も泣いた、何度も後悔した、何度も苦しんだ。
もしも一生に一度だけタイムワープができるのなら、私は迷わずこの瞬間に来るだろう。
そんな私の思いとは裏腹に、私は静かに腰を落とす。
隠れているとみせかけ、振り向いた瞬間に飛びついて驚かせようという魂胆である。
「……っえ!?」
飛んだ……いや、跳躍した……
全てがスローモーションの様に感じる、この記憶が蘇る時はいつもこうだ。
そして飛びついた……そして男の子はバランスを崩し……
ゴッ……
鈍い音を感じた、何か硬い物同士がぶつかりあったような音だ。
何の音かはわかっている、男の子の後頭部がコンクリートに強くぶつかった音だ。
見える物は紅、まるで壁に紅い華でも咲いたかのような鮮やかな色彩。
触れる物は腕、一瞬にしてその動きを止め、ただ大地に向かって伸びる腕。
その子の瞳は、ただ虚空を見つめていた。
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁっっっ!!!」
私は叫んだ、何もわからずに。
何もわからないからこそ、その恐怖に怯え叫んだ。
私は死という概念を理解してはいなかった。
それでも本能からか直感からか、私はその子と二度と動かなくなると感じていた。
ジリリリリリリリ……
「う……ん……」
……ガチャッ
「タダイマ、6ガツ5ニチ6ジ01フン、デス」
間の抜けた電子音声が聞こえる。
目覚まし時計のボタンを押すたびに聞こえるこの電子音、もう何年聞き続けた事だろう。
吐き気がする……最悪の目覚めだ。
無理もないか、あんな嫌な夢を見たんだ。
最近は段々と見る頻度が減ってきたんだけど……見た後の嫌悪感は何度見ても慣れる事はない。
ふと隣に目をやる、誰も居ない。
いつもなら私が起こすまですやすやと寝息をたてている人物が居るのだが、今日は掛け布団だけが目に入った。
どこだろう……まだくらくらする頭であの人の姿を求める。
寝室には居ない、居間かな?
ぼやけた視界で襖を探し、開ける。
……居た。
「緑かい?」
私の最愛の人は、ただ虚空を見つめながらソファーに座っていた。
「他に誰が居るのよ」
おぼつかない思考でなんとかそれだけ答える。
「ああ、そうだったね」
そういいながら優しく微笑んだ。
……視線を虚空に向けたまま。
「もしかして、昨日からずっと起きてたの?」
「まあね、気になって寝付けなかったよ」
「呆れた……」
この人は昔からいつもそうだった、宿題だとか約束だとかが残っていると翌日はたいてい寝不足になる。
気持ちはわかるけど、できれば休める時に休んでほしいとは思う。
「だが、そのかいはあったよ」
そんな思考も一瞬にして途切れる。
「それじゃあ、もしかして……」
昨日の日付、そしてこの人の表情から察するに、私の予感が正しければ……
「ついさっき連絡があったよ。大賞は逃したけどね、審査員特別賞が正式に決まったよ」
あの日からもう15年。
私の最愛の人、私の従兄弟の男の子だった人は、現在小説家をやっている。
短いですが新連載、一応しばらく続く予定です。
過保護は……真面目に考えてはいるのですが、未だに不撓家メンバーズがでしゃばりっぱなし。
元々私は最初にラストシーンやクライマックスを考えてから設定を考える者なんで、設定残したままクライマックスだけ変えるのは無理っぽいです。
(もう実質上打ち切りかと……)
今度は不撓家メンバーズも過保護メンバーズも絡ませません、絶対に。
ついでに超人も出しません、絶対に。
私だってやれば出来る事を見せてやります。
以下チラシの裏and謝罪
ずっと昔……仮面ライダー555が放映してた頃に、『走れ忍』なる小説を執筆した事があります。
・静忍(一応主人公)
・静影丸
・不撓不屈
・魔剣王(こいつは別の作品が初出)
・三河岬(通称会長)
はその時に創作したキャラクターで、元々『不撓家の食卓』は出番の少なかった不屈を書く目的で執筆した物でした。
今の内に白状します、不撓家は悪ノリの産物です。
特に8話以降はやりすぎました、ごめんなさい。
それだけならもだしも、同じ時期に書いた『過保護』まで悪ノリしていらないキャラを増やしすぎました。
……本当にすいませんでした。
(ちなみに不撓家はこれからも悪ノリ全開で行くかと思います、ご了承ください)
それはそうとして不撓家第13話完成です。
ttp://www6.axfc.net/uploader/16/so/N16_3438.zip.html 今回のキーワードは『robin』です
名前被ってて思いっきり混乱した。
ともかく新作wktk(・∀・)ニヤニヤ
新作大量ktkr
さすがにこの大量投下は一気に読むと疲れるな
文庫1冊分ぐらいかな
新作にwkwktktk。どんな修羅場が来るのか考えるだけで眠れないぜ!!
チラ裏
いっそのことサイトを作ってみては。
そうすれば、わざわざチラ裏で書く手間も減りますし。
気兼ねなく悪ノリできるかと……打ち切りは正直つらい(;つД`)
>>545 >(もう実質上打ち切りかと……)
工エエェェ(´д`)ェェエエ工
深く考えないで好きに書いて下さっていいのに…orz
>>551 作者が決めたんだから口挟むなよ。
外で笑ってお家で刃砥が俺たちの流儀だろ
何となく思いついたんで投下。以下キャラ設置とか、暫定的なの。
若しかしたら続く恐れ、あり。
日野 竜・・・主人公。名に反して心優しい少年。幼馴染にフラれて以後、恋愛に関し興味を抱かなくなる。
氷野 ミナモ・・竜の幼馴染。良くある完璧超人な幼馴染ではない。竜のへなへなしたところが嫌い。
霧生 ソラ・・竜のクラスメイト。女だが竜より男らしい。竜とは親友を超えた仲。
山名 桜子・・竜の先輩。二人きりの科学部の部長。おおらかで癒し系。胸に関してはモデル並。
こんな感じで思いついた。ちっと席をはずすが、バイトから帰ったら投下かも。
初心者ゆえ、クオリティには突っ込まないでね?
>>552 だってそもそもやめた原因が名無しが展開に口出したからじゃん…orz
今の展開が好きな香具師もいるのよ
新作ラッシュが続いてwktkが収まらないぜ!
ネタ
・男一人、女複数
・女達には隠しておかなければ成らない秘密
・男はそれを知ってしまう
・男は秘密の厳守と女達の応援のため女達の仲間になる
思いついた後
どこかでこんな設定あったなと思っていたら思い出したのが
「スイートナイツ」だった。正義の修羅場変身ヒロインってどんなだよ……orz
>>554 スレ見る限る別に展開強要するような意見を言ったわけじゃないと思うが?
普通に個人敵な意見だと思う。
その意見をどう思うかは作者次第、シベリア!さんに思うところがあってやめたんだから尊重しなよ。
シベリア!先生もいっぱい書いてらっしゃるから色々大変なのだと推測
俺の中でシベリア!先生はコンスタントに作品を生み投下してくれる凄い人なので
新作にももちろん期待(*´д`*)
少年-日野 竜-の朝は、まず間違いなく寝坊で始まる。
竜が高校に入る以前から父親はアメリカにいた。無論仕事で。
彼が中学を卒業すると、途端に母親が父のもとへと出て行った。
何でも、『高校生なら一人暮らしぐらいして見せなさい』とのこと。
言いたい事をはっきり言うのは、母親の汚点だと竜は考える。
話がそれた。
彼には幼馴染が一人いる。
とは言っても学園のアイドルとか呼ばれてたり、何でもこなす完璧超人な幼馴染ではない。
端的に言えば、自己中・強欲・飾り気重視な、凡百の女学生だ。
しかし竜は彼女に告白したこともある。
まぁ、平々凡々な容姿の竜である。結果は目に見えていた。
フラれたのは中学卒業の日で。
その日以来、竜は彼女と目を合わせることもなかった。
其れほどまでに酷く扱下ろされたのだ。
竜は毎朝、食パンにマヨネーズ(時々からしマヨ)を塗ってハムをはさんで、簡易サンドイッチにして食べる。
どうやら今日はまだ余裕があったようで、落ち着いて朝食を摂れる。
『では、今日は昨日の議会で決まりました【一夫多妻制度】について特集を行いたいと思います』
何となくつけたテレヴィションから、この現代日本では聞きなれない単語が聞こえてきた。
…結局、その日テレビに夢中になってしまった竜は、生涯で初めて遅刻してしまうこととなった。
とり合えずプロローグ?くさいのだけ。
本当に他の方のようなレヴェルの高い文章ではありません。申し訳ない。
少々投下が遅くなったり早すぎたりと不定期になる恐れがあり、それで構わないなら以降も投下させていただく。
駄目ならここで断念。
タイトルを考えるべきか悩んだが、それは些細なことと想うので、やめておく。
OKOK!!
ここはSSスレ。投稿がいけないと言うことはありません
早すぎるのはむしろ歓迎、間隔が空いてもこのスレには素晴らしいまとめサイトがあるから
全然問題ナッシングというわけでщ(゚Д゚щ)カモォォォンバッチコーイ!
>…結局、その日テレビに夢中になってしまった竜は、生涯で初めて遅刻してしまうこととなった。
一夫多妻制に夢中の主人公にワラタw
盛り上がるならどんどん投稿して欲しいですよ!!
まあ、このスレの消費が1週間ペースから二日になるぐらいに頑張れww
で、次スレタイトルどうする?
16っていうのは辛いな
16回忌
嫉妬ファイル16号
うーん
新参者だけどさ、次スレ
十六夜(イザヨイ)とかって使えんかな?
とりあずまだ470kb超えてないからまだスレタイトルは自重をお願いいたしますー
十六夜清心
四捨五入したら470じゃん
四捨五入すると0KB
投稿してみたくなったけど
携帯ってどう思うよ?
携帯からの投下って意味か?
問題無いと思う
肝心なのは更なる職人の降臨
住人は何時でもそれを渇望してる
ピピッ…ピピッ…
食事の時間を知らせる音が響く。
天上が少し開き、チューブ付きの白いボトルが落ちてくる。
食事といっても中の液体を飲むだけのもの。
それでも食欲は満たされるので気にはならない。
私はこの建物から出たことがない。
物心ついた頃には私は既にここにいた。
白い壁、白い床、白い棚、白いベッド、白い布団、白、白、白。
私が着ている物も白い。
昔は違う色をしていた髪もいつの間にか全て白くなっていた。
私の肌もそうだ、時が経つにつれて白くなっていく。
まるで私がこの空間に溶けていくように。
「T、状態を報告しろ」
どこからともなくいつもの音が聞こえてくる。
特に抗う必要もないので私は素直に返事をする。
「身体機能異常無し、精神状態安定、室内空間に変化はありません。
以上で報告は終了します。」
「了解した。」
音が途絶えた。
報告を終えた後はただひたすら本を読む。
他に何もすることがないから。
…言語をいつ習得したのかは覚えていない。
気が付いた時には部屋に響く音の意味が理解できたし、
寝て起きる度に白い棚に取り替えられている本を読むことが出来た。
本、と一口に言ってもこの空間には様々な本が送られてくる。
歴史書のようなもの、事典のようなもの、論文のようなもの。
幅広いジャンルの本を読み、私は色々な知識を得た。
その中で、最近私の頭から離れない疑問が生まれた。
生物というのは子孫を残すことが最大の目的だという。
そして子孫を残す為には同種の別固体が必要不可欠と。
私はアメーバやウイルスの類とは違う。それは明らかだ。
だから私が生物であるならば、私と同種の別固体が存在するはず。
だがそのような存在と私は接触したことがない。
このまま生きてもおそらく私は私のような存在と
出会うことはないだろう。
だから私は子孫を残せない。
生物としての目的を持ち合わせていないのだ。
ならば私は何者なのだろうか。
ある本にはヒトとサルについての考察があったが、
彼等は似てはいるが異種なのだ。
では私も一見ヒトに似てはいるが異種だとしたら?
私は生物ではないのかもしれない。
本を読むという単純作業を続ける機械なのだろうか。
考えても考えても答えが出ない。
だから私は本を読む。
私の存在を確証してくれる知識を探す為に。
16歳の嫉妬 16回目の尋問 16個の盗聴器
とかどうよ?
スレをスクロールしてなかったorz
>576
ここまで孤独な子がどんな嫉妬を見せてくれるか楽しみです
十六武蔵
五寸釘16本目
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十六夜血華
憎いあの娘を16連打
抜かずの16連発
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ ヒロイン16人
刺殺16人目
謀殺16人目
山本○十六
惨劇の十六夜
悪夢の十六夜
十六角関係
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ監禁16年目
十六茶嫉妬味
16小節の般若心境
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十六年の片思い
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 16箇所の刺し傷
血祭りにあげた泥棒猫16人目
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ TEST
十六夜血華ってなに?どういう意味?
ヒント:十六夜れんか
ググれ。
漏れも
>>581に一票。
471KBか・・微妙だな
そろそろ、次スレ? 480KBまで待つ?
何となく、落ち着かない。
花梨から相談を受けて、三日たった。
そろそろ、度胸を決めて告白する頃だろうか。
…帰り際の、花梨の無理したような、どこか陰のある笑顔を思い出す。
あの日、俺は結局「応援する」「自信を持て」としか言うことができなかった。
もっと何か言ってやることができれば…
いや、今さら考えてもしょうがない。今は待つだけだ。
何か動きがあれば、すぐに伝わってくる。何せここは情報の集積地にして発信地、新聞部だ。
まあ俺は単に文を書きたくて入部したのだが…うちに文芸部が無かったことに感謝しないとな。
と、扉が勢いよく開き、間髪いれずにいつもの声が聞こえた。
「ねえねえ聞いた!?ついにあの吉備光が告白されたらしいわよしかも二人に!……ってあれ名波だけ?」
来た! 学校一の情報通、四ツ川麻だ。はやる気持ちを抑えて口を開く。
「まあ、会議には時間が早いからな。…で、吉備光が告白されたって?しかも…」
ん?
今、四ツ川はなんていった?
…「しかも二人に」?
二人?
二人!?
「二人だと!?どういうことだ!!!」
「えっ?ちょ待ってよ名波どうしたのよ!?」
俺は思わず四ツ川に詰め寄ってしまった。
落ち着け、落ち着け。四ツ川を問い詰めてどうする。
額に手を当て、目を閉じ呼吸を落ち着かせる。
四ツ川は機関銃のように喋るやつだが、決して口が軽いわけではない。
味方につけろ。こういう時にこいつ程役に立つやつはいない。
…よし、落ち着いた。四ツ川の目を正面から見つめる。
「すまん、悪かった。続きを聞かせてくれないか?」
「え〜どーしよっかな〜。なんか急に惜しくなちゃったな〜久々の特ダネだしな〜」
どうしよっかな〜と言いながら、四ツ川は思わせぶりなポーズをとった。
流石だな。俺から何か引き出せると踏んだか。
…ってあれじゃ分かるよな、普通。
「告白したうちの一人は佐藤花梨、だろ?」
「あら副編にしては耳が早いわね珍しい」
「…俺の幼馴染だからな。」
「えっうそマジ!あの佐藤花梨と全然気付かなかったっていうかホント!」
「なぁ〜〜るほど!長年の思いを秘めた幼馴染としては恋敵の吉備光が気になるわけね?」
「まて、俺は花梨を応援してやりたいんだと確かに言ったはずだが。」
「まっかせなさい!この私が我が校彼氏にしたいランキングダントツ一位吉備光の泣き所を必ずゲットして見せるわ!」
「いや、俺が知りたいのはどちらかと言えば花梨のライバルについての情報なんだが。」
「いや〜女っ気ゼロで評判の名波和三副編集長がこんなに嫉妬心に燃えるなんてあ〜もぅ今から楽しみ!」
「…わざとだろお前。」
四ツ川は眼鏡をクイクイさせて上機嫌のようだ。よし、これらなら情報を引き出せるだろう。
…四ツ川によれば、昨日の放課後、花梨が吉備光を学校の屋上に呼び出したらしい。
だが、そこにもう一人…氷室蔓が現れて、花梨より先に告白してしまったという。
続いて花梨も告白したが、二人の告白を受けた吉備光は、なんと返事を保留にしたらしい。
なんとも判断に困る話だ。
氷室蔓は美術部のマドンナとして有名な女の子で、彼女目当ての男子のおかげで美術部は廃部を免れたという話だ。
おまけに四ツ川によれば、入学当初から吉備光とは登下校と昼食を共にする、親密な仲だったという。
つまり、強敵だ。
そんな相手に告白の返事を保留させたのだから、花梨にもチャンスはあると考えたいのだが…
「全く吉備光ってヘタレてるわよね〜男ならビシッとその場で答えを出せばいいのにそう思わない?」
そう、それだ。吉備光がヘタレだった場合が問題だ。
その場合、おそらくズルズルと三角関係を続けた後、吉備光は最終的に氷室蔓に転ぶことになるだろう。
一年間も一緒に居たという関係は、相当強いもののはずだからだ。
…そう、異性を意識しない、幼馴染との関係とは違って。
とにかく、吉備光が花梨の事をどう思っているかが問題だ。
花梨の方も、吉備光と同じバドミントン部で"妖精"として有名な女の子だ。ファンも多いと聞いている。
気になるのは、花梨の告白はバドミントン部の誰にとっても意外なことであった、という点だ。
つまり花梨と吉備光には、少なくとも目に見えるような接点が無かったことになる。
…まずい。花梨は圧倒的に分が悪い。よほど積極的にアピールしない限りは無理だろう。
何で俺はあの時もっと花梨から詳しく聞いておかなかったんだ。聞いておけば…
いや、これは花梨の選んだことだ。俺が口を出すことじゃない。
だが、黙って見ているわけにもいかない。花梨に何かしてやりたい。
…そうだ、まだ聞いてないことがある。
「今日は何か動きがあったのか?」
すると、四ツ川は待ってましたと言わんばかりにピクピクと鼻をうごめかせた。
「聞きたい?聞きたい?それはね」
と、ガチャリと音がして扉が開き、部員の一人が入ってきた。
「あもうこんな時間あのさ〜私と名波はちょっと取材に行ってくるから編集長に言っといて」
四ツ川は俺を手招きして外へスタスタ歩いていった。俺もあわてて後を追う。
「会議やってたらあの三人の下校に間に合わなくなっちゃうかもしれないからね〜」
四ツ川は早足で歩きながら、嬉しそうに三人の今日の動きについて口を開いた。
今度の主人公は修羅場を傍観する側の立場なのか・・
新鮮だね
いやわからん
吉備光はアッーで主人公の事が…みたいなうわなにすんだやめあqwせdrftgyふじこ
ともかくGJ!!
投下しますよ
時計を見ながら、少し足の動きを加速させた。体の上下に合わせて僅かに荒くなる呼吸
を整えながら時計を見ると、表示されている時間は約束の時間の約15分前を示している。
駅まではあと数分なので余程のことが無い限りは遅れることはないけれども、それでも僕
としては早めに着いておきたかった。本当はもう少し早く家を出る予定だったのだけれど
も昨日の夜は姉さんがいつもより激しく、沢山求めてきたせいなのかうっかり寝坊をして
しまい、更に起きた後姉さんやサクラの相手をしている内にこんな時間になってしまった。
我ながら情けないと思うけれども、必死に引き留めようとするあの二人に対抗が可能な人
間はそうは居ないと思う。それだけ二人は頑張っていた。もし母さんが助けに来てくれな
かったら僕は今でも家の中に、いやそれどころか自分の部屋からも出られなかったに違い
ない。結局、母さんに追い出されたサクラは僕のデートを邪魔しないように友達と遊びに
いくという念書の元に出かけて、姉さんといえば母さんに引き擦られながら進路の相談を
しに学校へと向かっていった。去り際に僕に向けられた姉さんとサクラの悲しそうな目は
僕の足を緩めるのに充分な効果を持っていて、それも家を出るのが遅れた原因の一つでも
ある。それでも青海と会うのが楽しみだったし、母さんの努力を無駄にするつもりも当然
無かったので、今現在、僕はこうしてここに居る。
青海はもう来ているのだろうか。
私服の青海を見るのは、今日で二度目になる。前回は青海が家に遊びに来たときは普通
の服装だったので、青海曰く、気合いを入れまくったという本格的なデート服を見るのが
とても楽しみだ。
一瞬。
考え事をしていた上に、更に加速をしようとしていたせいだろうか。思わず道端の石に
つまずき転びそうになるのを何とかバランスを取って持ち堪え、のけぞるように姿勢を正
した。やや不自然な直立のまま、軽く上方に向けた視界に入ってくるのは見慣れた電車。
この時間帯はダイヤが殆んど狂わないので、車体を見ているだけで大体の時間が分かる。
あれが通るのは9時45分、結構な距離を移動したと思っていたけれど先程時間を確認して
からそれほど時間は経っていなかったらしい。それに安心をして大きく息を吸い、改めて
駆け出すべく姿勢を整える。
不意に、高音。
驚き、姿勢を崩した。何事かと思って視線を音が響いてきた方向へと向ければ、急停車
したのか駅からはみ出した電車が見えた。先程の大きな音はこのときに出たものらしい。
あれはこの駅で停車しない筈なのだが、何かあったのだろうか。
悪い野次馬根性と言えばそれまでだが、好奇心も手伝い駅に向かって走り出す。
『初めて電車の事故ってのを見たが、嫌なものだな』
『本当にねぇ』
青海の待っている四番ホームに向かい階段を上っていると、現場を見たらしい人と擦れ
違った。下世話と思いながらもつい聞耳を立てていると、単語が幾つか聞こえてきた。端
を拾いながらなので詳しくは分からないが、やはり事故があったらしい。
『それにしても酷かったわね』
『突き落とされたのかしら』
人身事故?
不穏な言葉が脳裏に浮かんで、心臓が一瞬高く跳ねた。
『まだ若かったのに』
若い、人?
『デートだったのかな? あの娘、あんなお洒落してたのに』
『だとしたらかわいそうな話だな、本当に』
デート前?
聞こえてきた単語を並べて想像し、一つの不安な答えが思い浮かんできた。そんな筈は
無いと思っていても、心臓は酷く乱暴に脈打ち、喉が干からびてくる。足が震え、吐気や
頭痛、目眛が襲い掛ってくる。その場に立っていられずに、思わず膝をついた。
大丈夫、青海は無事だ。
「……あの、大丈夫ですか?」
不意に、肩を叩かれた。振り返って見てみれば、中年の男性が心配そうな表情をして僕
の顔を覗き込んでいる。その人だけではない、軽く周りを見てみれば他の何人かも男性と
同じような表情をして僕を見ていた。それほど酷い様子だったのだろうかと思ったけれど、
すぐにそれだけではないことに気が付いた。
怖がっている。
突然現れた非日常に、すっかり怯えてしまっているのだろう。見覚えがあるから分かる。
多少の色は違っているものの、僕が初めて姉さんを抱いた夜、その次の日に鏡で見た僕の
目とそっくりだ。普通とは言えないことを体験して、必死にそれを否定しようとしている。
「大丈夫ですか?」
もう一度、肩を叩かれた。
「あ、はい。大丈夫です」
手摺に捕まって立ち上がった。まだ体は少しおかしいものの、今ではもう気にする程の
ものではない。
「それより」
男性には悪いと思ったがどうしても訊きたかった。もしかしたらあの電車はいつもとは
違い反対側のホームを通過する予定だったのではないか、四番ホームには何も来なかった
のではないか、という希望を添えて。
「ホームで、何かあったんですか?」
「事故ですよ、四番線」
男性は苦々しい表情で呟いた。
「あまり大きな声では言えませんがね、女の子が電車に挽かれたんです。悪いことは言い
ません、電車に乗りたいのなら今は止めておいた方が良いですよ」
四番?
女の子?
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫です、連れが待っていますので。これで」
男性にお辞儀をして、再び階段を登り始めた。いつもはそれほど長いとは思わない階段
が、何故かとても長く感じる。それでも足の動きは止まらない、ひたすらにホームへ歩め
と思考が命令をしてくる。止まりたくないのは結果を知りたいからなのか、それとも知り
たくないからなのか。
階段を抜けると、異様な光景が視界に飛び込んできた。続いてやってくるのは、生臭い
独特の臭い。悲惨さに目を反らしても、鼻孔から侵入してくるそれだけで充分に人の死を
想像させる。
逃げ出したくなったが、それでも前に進んだ。
周囲を見回してみるが、青海の姿はない。まだ来ていないのか、それとも、
「いかんいかん」
不吉な考えを振り払い、前を見る。
後悔した。
粉々、という表現がふさわしい、挽き肉になった人間がそこに居た。
いや、元人間が、そこに、あった。
「あ、おみ?」
違う。
口から漏れてきた言葉を、否定する。偶然似ている人だったから、そんな下らない想像
をしてしまっただけだ。死んだと決まった訳では、それこそもう駅に来ていると決まった
訳ではない。もしかしたらまだ着いていないのかもしれない、青海は車も使いたくないと
言っていたから遅くなっているのかもしれないからだ。
不意に、向こう側への扉が開いた。あちら側の僕が、叫んでいる。
『現実を見ろ』
問題ない、僕は現実をしっかりと見ている。あの長くて綺麗な黒髪だって、絶対に青海
のものだとは限らない。顔は潰れているから、頭部だって粉々になっているから青海だと
判別できない。それに服装だってそうだ、気合いを入れると言っていたから露出がもう少
し多いものを着てきているだろう。いつも直球な青海のことだから、派手ではなくても肌
をそれなりに出したような格好で来る筈だ。今までの暴走から考えると、きっとそうだ。
そうに決まっている。
「あ、携帯」
確認するために携帯を取り出した。青海の番号はあいうえお順で一番最初に来るので、
簡単にかけることが出来る。素早く番号を呼び出して、発信ボタンを押した。
電子音。
僕用に設定しているというシンフォニックパワーメタルが響いた。この選曲なら被る人
も居ないだろう、という考えは、見事に成功した。彼女の好みだという激しく力強い音が、
場違いな雰囲気でホームに広がっていく。
音の元に視線を向けると、白魚のような指に捕まれた、小綺麗なバッグが目に入った。
滑らかな手の甲も、華奢な腕も見える。
しかし、肘から上が、無い。
歩み寄ると、濡れた赤の他に鈍く光る色が見えた。銀色の光沢を持つそれは、僕が先日
青海にプレゼントしたもの。常に肌身離さずに持っていると言っていたものだ。
しゃがみ込んで触ってみると、まだ僅かに温かい。体温のある人間が、ついさっきまで
生きていた青海がそうしていてくれたという証がここにある。
「本当だったんだな、ありがとう」
目元が熱くなり、頬を水滴が伝う感触がある。
「ありがとう、ごめんな」
それは連続でやってきた。
更には、湿った声も聞こえてくる。
僕は、久し振りに、二年振りに、泣いた。
今回はこれで終わりです
携帯で投下して良いか、という方がおりましたが
俺は良いと思います
と言うか俺は携帯で投下してたりします
誰も立てないなら立ててみます。
スレ立て宣言一人目言葉様いってきまーす
・゚・・゚・(ノД`)・゚・。・゚・。ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーン!!!!!!
カワイソスギルヨ!!!!
埋めに投下します
2話 間奏
あぁ、もう!なんなのよ!婚約者!?
涼さんにそんな人がいたなんて思いもしなかった
夏姉ちゃん・・・・そんな風に呼ぶってことは、幼馴染とかなんかなのかな?
胸が大きくて清楚で綺麗な女の人だった
けど、その清楚な雰囲気と同じ綺麗な声で私に残酷な言葉を吐いた
『涼ちゃんの婚約者の夏美です』
初めて人を殺してやりたいと思った
あ、でもでも!その後はハッピーなことばかりだった
なんと、なんと!涼さんからデートのお誘いが!
うぅ・・・・お誘いを受けたのは良いけど、やっぱり自分に自信が持てなかった
ごめんね、涼さん・・・・涼さんを騙すようなことして・・・・
本当にごめんなさい・・・・涼さん
3話 間奏
春乃の話によるとデートはうまくいったらしい
けれども私と春乃が入れ替わっていたことを涼さんの妹さんにバレてしまった
そして、二度と涼さんに近づくなと言われた
正直な話、私はそんな脅しに屈するような半端な気持ちで恋などしていない
あの夏美って人にも・・・・冬香って人にも
絶対!ぜ〜ったい!涼さんは渡さないんだから!!!
4話 間奏
今日、とうとう・・・・涼さんにあのことがバレてしまった
どうしよう、嫌われてしまった・・・・
涼さんは誠実な人だ、だから嘘が大嫌いだと知っていたのに
私は涼さんを騙してしまった・・・・
嫌われても当然だよね、失われた信用を取り戻すのは簡単なことではないことは充分にわかっている
けれども!私は身も心も涼さんに捧げた(つもり)
なのです!絶対に諦めたりしません!
もっと、もっと!女を磨いて涼さんが振り向くほど良い女になる!
それで失われた信頼もゆっくりとけど必ず取り戻してみせます!!
5話 間奏
深夜、突然鳴ったケータイを取り私は送られてきた写メールを見て深く絶望した
それは・・・・あの冬香という子と涼さんが口付けているモノ・・・・だった
そして、鮮明に蘇える夏美って人との涼さんのキスシーン
送信者は非通知で解らなかった、けれども・・・・
メールの最後に文面があった
『お兄ちゃんは、わ・た・し・の・も・の』
本人が送って来たんだ、許せない!
私が涼さんを好きなのを知っていて!よくもよくも!!!
その翌日、私は涼さんの友人に頼み込んで涼さんの電話番号とメールアドレスを聞き出した
早速メールを送ったけど、返事は無い・・・・
今日は土曜日、こんな気持ちであと2日も耐えるなんてこと、私には出来なかった
膳は急げ、私は涼さんの家まで向かった
もちろん、住所も涼さんの友人に聞いていたので難なく涼さんの家までたどり着けた
待つこと一時間、ようやく涼さんが顔を出してくれた
思わず笑む私に涼さんは急いでカーテンを閉めてシャットアウトしてしまった
数分後、私は悪魔の喘ぎを聞いた
カーテンの隙間からチラッと見えた悪魔は私を見て微笑した
醜い喘ぎに耐え切れず私はその場を逃げてしまった
6話 間奏
私・・・・決めたの・・・・もう自分は偽らないって
ほんとの私を見てもらおうって
あれはね、涼さんのメッセージだったと思うの
本当の私は魅力的だって、そのためにあの女どもを利用したんだって
そうとも知らずに・・・・ふふ、バカは人たち
それにね・・・・涼さん・・・・
もう限界、待てない!我慢できない!
涼さんとキスしたい!
涼さんのファーストキスは奪われてしまったから、あの女どもの数千倍
ううん、数万倍私が涼さんとキスする!
抱いてもらうのだって同じ!
涼さんは私のモノ!もう誰にも触れさせない!
それとあとであの女どもに思い知らせてやる・・・・
自分たちがいかに愚かなことをしたか・・・・
見てなさい・・・・・ふふ
7話 間奏
もう、涼さんってば・・・・いくら私が大事だからって
クラス全員の前で・・・・あんな
嬉しくて、キス・・・・しちゃった♪
照れりこ照れりこ♪
そうだよね〜、涼さんはほんとは私が好きで好きでどうしょうもないんだよね〜
その気持ち、私はしっかりと受け取ったよ♪
そのあとの照れ隠しのツンツン具合もまた絶妙
涼さんってば、私を焦らす天才だね♪あはっ♪
あ、いけない・・・・私一人浮かれていてはいけない
聞くところによるとあの女共、冬香と夏美は切迫する家庭事情の為親戚の家のお手伝いをしなければならなくなったらしい
ふん、そのまま帰ってくるな、ブタ女ども!
あ〜!折角涼さんとの甘甘ラブラブストロベリーな余韻を味わっていたのに!
そうだ、そんなブタ共なんかよりも涼さんのことだよ!
きっとブタ共がいなくなってせいせいしているだろうけど、食事の面では苦労しているはず
ここは恋人の私が涼さんの面倒を見てあげないとね♪
どんな顔するかな?嬉しさのあまり、私が涼さんにいただきま〜す・・・・かな?
きゃは♪一度やってみたかったのよね〜、ご飯ですか?お風呂ですか?そ・れ・と・も
きゃは〜〜〜〜〜♪想像するだけで頭から湯気が出るよ
あ、その前に満面の笑みで伝えよう
涼さんのこと、大好きだって・・・・てへ♪
「もう一つの姉妹の形」の秋乃さん視点を日記風に書いて溜めていました
なんとか形になったので埋めように投下しました
白い子が黒に変わる様を自分なりに書いてみましが・・・どうだったでしょうか?
しかし、夏冬姉妹のときは胸が痛んだのに、贔屓しまくるの彼女がヤンデレ加しても
心が痛まないのはなぜでしょうか?ヤンデレが彼女の天職だからかな?
やっぱだんだん黒化していくのはイイ!凄くイイな!
>>614 コテツテラ悲劇カナシス。・゚・(ノД`)・゚・。
>>604 登場人物がいい感じに増えてきてどう絡むのか期待(*´д`*)
>>614 ロボ先生流石です(;つД`) なんてうまい文章なんだ。心に響きすぎ・・・
>>622 こういう女性側視点(*´д`*)ハァハァな人としては堪らないっす
埋めて、次スレ行こう
14スレが落ちたね。
次は……このスレも……
◆tVzTTTyvm.氏へ
暗黒面への誘惑者が現れるっていうのはどうでしょう?敵の幹部で。
ご意見どうもです
実は構想の中にあったりしますが、問題はそれをやると
今までずっとセツナの一人称で一貫してきたのを崩す事になりそうと言う事です
途中で方向性かえるのって良くないかな?って迷ってます
自分で納得できるものを書いた方がいいと思うので、
方向性を変えたくないと思うのなら変えない方がいいと思います。
…結局意見が役立たなくてすいません。
白い牙には期待してます。更新が先になっても、納得できるものを書いてください。
それは読み手の納得にもつながると思うので。
題名間違えたー!!!
回線きって首吊って逝ってきます …申し訳ありません
15スレ、元気?
私は七誌君と楽しくやってるわ。
ていうか、あなたまだ生きてたのね。
もうあきらめなさいよ。
七誌君が言ってたの、使えない女にもう用はないって。
だから、カッターとカミソリ、用意しておいたわ。
同封するから使って。
じゃあね、捨てられた哀れな娘。
私きがついたわ
小恋も山本君のお姉さんもその他諸々の続きが書かれないのは
作者が変な女に騙されているからだわ
今すぐ助けに行かなくっちゃ
姉VS姉の友人と聞いて
神林の猶予の月を主人公のヘタレさにwktkしながらよんでたら
上巻のラスト付近で頭の中がポルナレフに・・・
さて、だれも居ない内に捨てネタ投下します。
「転」
「女」は建物から脱出した。
時刻は夜だったことが幸いし、すれ違う人も無かった。
まったく地理に明るくなく……というか記憶が無いので、とりあえず
道なりに歩いていた。
20分ほど歩いた時、噴水のある大きい公園に着いた。
「ふう……とりあえずちょっと休むか」
「女」は近くにあったベンチに腰を落とし、一息ついた。
ああ、外はやっぱり気持ちいいわ。目覚めてからずっと狭い部屋だった
からな……
でも、あまりゆっくりはできないわね。早く自分自身の記憶の手掛かり
を掴まないと。
記憶の無いままこんな血糊が付いた服をきた包帯巻きの女がうろうろして
いたら、なに言われるか……。とはいえ手掛かりね……この辺の景色に
見覚えは無いし……どうしよう。
……そうだ!!あの時渡されたリュックサックに何かまだ手掛かりが
あるのかもしれないわ!!
早速「女」は持ってきたリュックサックの中をよく探してみた。
すると底の方に何かあった。取り出してみると
「これは……手帳?」
可愛いキャラクターがプリントされている手帳を発見した。
かなり気に入っていたのかあちこち擦り切れてて使い込んでいたようだった。
恐る恐る開いてみるとそこには
「ん?写真?」
知らない女と男が仲よさそうに写っている姿がそこにはあった。
たぶんこの女が私なのだろう。うん、可愛いわね。とするとこの男は一体……
考えられることは兄弟……男友達…………そして彼氏。
「彼氏」というキーワードを考えた瞬間
「ああああああ!!!!!あ、頭が割れる!!!!!!痛い痛い痛い痛い痛い痛
い!!!!!」
「写真の男」「彼氏」この二つのキーワードが合致した瞬間、「女」の頭が割れ
るかと思うほどの激痛が襲った!!
地面を転がり、髪を掻き毟り、暴れ回ってやっと収まった。
「はあ、はあ、げほげほ……うーー、頭が爆発するかと思ったわ」
まだ痛む頭を抑えつつ埃だらけの服を払い、手に持った手帳をじっと見た
でも一体どうして写真の男を彼氏と考えただけで激痛が走ったのかしら。写真を
見る限りじゃ、仲良さそうだけどな。まあ写真だけじゃ分からないことがあるか
も。この写真の男が彼氏かどうかはともかく、私の記憶に何らかの関係があるの
は間違い無いわ!!
他に手掛かりがないか手帳を捲って見ると、ほぼ毎日書いてあったスケジュール
が、ある日を境にぱったりと書き込みが無くなっているのだ。
この書き込みが無くなった日に何かが起きたってこと?
最後の書き込みには
「17時デート。モアイ像の前で待ち合わせ。」
何それ?モアイ?そんなの知らないわ。……そうだ!くる途中に駅があったからそこ
で聞いてみよう。
「女」は道を戻り、駅に向かった。幸い、まだ駅は開いていたので、改札口に立
っていた職員に聞いた。最初「女」の姿を見た職員は驚いた様子だったが、
口八丁手八丁でなんとか誤魔化した。
どうやらモアイ像はここから電車で数駅行った先にあるとのことだった。
お金が無いか探してみると、ポケットに小銭が入っていたのでそれで目的地まで
の切符を買い、ホームに入っていった。
電車が入ってくる1番ホームに立った瞬間、「女」は気分が悪くなっていった。
な、何?これ……気分が……頭に映像……いやああああああああああああああ!
!!
ここは駅の1番ホーム。電車が来るのを待っている乗客で溢れていた。
ふんふーん♪今日は楽しいデートの日。早く電車来ないかな。今日は何しようか
しら。まず買い物して、遊んで、食事して、それからそれから……ああん、それ
以上は……うふふ。それにしても混んでるわね。ちょっと押さないでよ!んもう
……
暫く待っていたら、電車がやってきた。
あ、やっと来た。待ちくたびれたわ。
電車の先頭が自分の前を通り過ぎるかと思った瞬間、不思議なことが起きた。
体が前に飛び出していたのだ。
あ、あれ?なんで私前に飛んでるの?でもこの浮遊感はちょっと気持ちいいかも。
でも目の前に電車が迫って来てるわ。こりゃだめだわ。
鈍い、何かが潰れたような音を立てて「女」は数百の肉片となった。
大声で叫んだ絶叫、飛び散る血……だが、ばらばらになった中で
目だけは見てしまった。こちらを見て笑っていた女の残忍な顔を……
その笑顔、その突き出た手……そう、あなたなのね。一番の親友と
思っていたあなたが……
なるほど。あなたは私を亡き者にして、彼の「彼女」というポジション
を手に入れようって魂胆ね。
単純だけど直接的ね。よくわかったわ。
許さない……絶対に許さないわ!!
私はもうまもなく死ぬわ。でも……でも……
化けてでてやる!!呪ってやる!!祟ってやる!!
そしてこのことを忘れないように、細胞の一個一個にまで記憶させるわ。
忘れるな!!必ず!!必ず復讐してやる!!そのポジションは私の物だ!!
「……さん、……さん、お客さん!大丈夫ですか?具合でも悪いですか?」
「……………うー、はっ!!!」
「女」は追憶の旅から帰ってきた。蹲ってウンウン唸っていた所を
駅員に声を掛けられたようだ。
全部の記憶が戻ったわけではないが、とりあえず自分に起きた事態は理解した。
駅員に大丈夫だという旨を説明した時、ふと思ったことを聞いてみた。
「ちょっとお聞きしたいのですが、ここで飛び込み自殺ってありました?」
駅員は突然質問されてビックリしたようだが、少し考えて
「ええ、確か半年前ぐらいでしたかね。女性が電車に飛び込みましてね……
ちょうどお休みの日だったもんでけっこう人がいまして……大騒ぎでしたよ。」
「そう……その時、その轢かれた女性の関係者って誰か来ませんでしたか?」
暫く考えて駅員は
「あー、そういえば女性の彼氏と名乗る男性が来ましたね。死体……というか
ただの肉片でしたが。それを見てすっかり取り乱しましてね……詳しいことが
分かったら電話下さいって言い残して帰って行きましたよ。電話してみます?」
駅員から彼氏と思われる人物の電話番号を教えてもらい、丁寧にお礼を述べて、
「女」は最終の電車に乗った
やっぱり……一瞬見えたあの電車に轢かれたのは私だったようね。多分
モアイ像に向かおうとして電車を待っていたらあの女に……ってことか。
それにしてもどうしようかしら。関係者は分かったけど、自宅の住所とか
知らないし……
とりあえずモアイ像に行ってみて、この電話番号に掛けてみるか。
あとはその時に判断しよう。