【涼宮ハルヒ】谷川流 the 20章【学校を出よう!】

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1名無しさん@ピンキー
谷川流スレッド設立に伴う所信表明

我がスレッドでは、谷川流作品のSSを広く募集しています。
過去にエロいSSを書いたことがある人
今現在、とても萌え萌えなSSを書いている人
遠からず、すばらしいSSを書く予定がある人
そういう人が居たら、このスレッドに書き込むと良いです。
たちどころにレスがつくでしょう。
ただし、他の作品のSSでは駄目です。
谷川流作品じゃないといけません。注意してください。

@前スレ
【涼宮ハルヒ】谷川流 the 19章【学校を出よう!】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1152445245/
@過去ログ
http://www9.atwiki.jp/eroparo/pages/210.html

@これまでに投下されたSSの保管場所
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/

涼宮ハルヒのSS保管庫 予備
http://haluhi9000.h.fc2.com/
2名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 15:48:27 ID:rH3j2Eia
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由だが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。

Q煽られたんだけど?
Aそこは閉鎖空間です。 普通の人なら気にしません。

Q見たいキャラのSSが無いんだけど。
A無ければ自分で作ればいいのよ!

Q俺、文才無いんだけど…
A文才なんて関係ない。必要なのは妄想の力だけ… あとは思うままに書いて…

Q読んでたら苦手なジャンルだったんだけど…
Aあうう… 読み飛ばしてください。 作者さんも怪しいジャンルの場合は前もって宣言お願いしまぁす。

Q保管庫のどれがオススメ?
Aそれは自分できめるっさ! 良いも悪いも読まないと分からないにょろよ。

Q自分で作れないから手っ取り早く書いてくれ。
Aうん、それ無理。 職人さんにも色々あるのよ。

Q 投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A 拒否しない場合は基本的に収納される。 これは僕にとっても規定事項だ。
3名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 15:55:38 ID:Rp40nkna
ごめん重複して立てちゃった。もう各スレに誘導したしあっち本家でいいよね
4名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 15:59:32 ID:Rp40nkna
5誘導:2006/07/14(金) 16:34:05 ID:2FD/fykT
6名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 16:40:10 ID:JDLw8uM/
7名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 16:47:26 ID:JDLw8uM/
ここのテンプレで飛ぶのは実質的にここの前々スレ
ちなみにここは21番スレッド
8名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 22:47:11 ID:ZkoI0lUM
大体2chでスレ立てに失敗してスレタイが変わったり重複スレが同時進行したりするのは過疎化の第一歩なんだよな
このスレも終わりかな
9名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 10:03:35 ID:KVqnopDM
故意にやってるのにみんなが反応騒ぎまくってるんだよな
依頼もしにくい
10名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 01:43:04 ID:lhvVRxUS
>>8
昔に戻るだけ
11名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 10:02:00 ID:aPWDM8s4
それはないw
12前スレ55:2006/07/18(火) 17:57:39 ID:RbgCqult
前スレ55,57,59-64,731-742,744-745の続きを投下。8レス。
13名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 17:59:10 ID:RbgCqult
マンションの前に着いた。彼が、もう大丈夫だよな、そう言って帰ろうとする。

「待って」

彼が振り向いた。

「話したいことがある」

そう言って、わたしは、自分の部屋に向かった。彼は来るだろう。知りたいはずだ。
彼は、少し難しい顔をして、わたしの後に続いた。
不思議と、眼鏡がないのに、不自由を感じなかった。

もう、彼も気が付いているのかもしれない。
そう、今日、部室で、訊いていないのに彼がわたしのことを話した。
あれは、彼なりに確認したかったからなのかもしれない。

彼を部屋に招きいれ、お茶の用意をする。朝倉さんは来るだろうか。
いや、来ても構わない。彼女にも聞いて欲しいような気もする。

コタツテーブルに座り、お茶を出す。彼は、湯のみに口を付けた後、落ち着かない様子で、

「やっぱり、まだ、不安なのか? それとも、他にも何かされたのか?」

と訊いてきた。生徒会室の話だと思ったらしい。
心配してくれている。そう思うと、申し訳ない気持ちになる。

「それは大丈夫」

そう言って、言葉を続けた。

「世界改変の話」

彼の動きが止まった。彼の真剣な眼差し。わたしは落ち着いた気分だった。
これから話すことを思い、落ち着いていられるのが不思議だった。
彼は、どう思うだろう。もう、わたしとは会いたくないと思うかもしれない。
そうなっても仕方がない。わたしは、罰を受けなくてはならないのだ。

「この世界を改変したのは、わたしだと思う」

彼の驚いたような表情。胸が痛い。
少し間を置いて、わたしは、これから話すことは全て推測だと断った上で、話し始めた。

あなたの話では、本来、涼宮ハルヒが能力を持っていなければ、わたしや朝比奈みくるは、
この世界に存在しないはず。だから、涼宮ハルヒが平凡な日常を望んだとしたなら、
わたしや朝比奈みくるは存在していないはず。

それに、あなたも言ったように、涼宮ハルヒが自身を不機嫌にさせるような改変を行うとは
考えられない。無意識ならなおさら。

また、涼宮ハルヒが自身の能力に気が付いていないのであれば、世界改変によって、
彼女の能力が消失するとは考えにくい。そもそも、その能力に気が付いていないのだから。
持っていないものを、なくすように願うことはない。

よって、涼宮ハルヒが世界改変を行ったとは考えられない。
14名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 18:00:03 ID:RbgCqult
彼の知っている、魔法を使う宇宙人製アンドロイドのわたし。そのわたしに世界改変の
能力があったのか否かは解らない。しかし、状況は、それを示している。

わたしは、あなたに特別な感情を持ったのだと思う。それは、情愛か恋愛かは解らない。
でも、あなただけは、特別だと思った。そのような感情は、独占欲を増大させる。

しかし、あなたには、涼宮ハルヒがいる。
あなたの話を聞く限り、あなたは、涼宮ハルヒに特別な感情を持っていると思う。
それは、わたしも知っていたはずだ。

そして、閉鎖空間から戻れた鍵となるものが、あなたの言う通りならば、涼宮ハルヒも、
あなたに対して特別な感情を持っていたと思われる。

そのような状況で時間が経過するに従って、わたしは感情を抑えられなくなったのだと思う。
未熟な感情による押さえきれない独占欲。それによって、わたしは、世界改変を行った。

改変は、あなたが非日常的な事件に巻き込まれなかった場合を想定していたと思う。
ただ、涼宮ハルヒの能力は存在せず、でも、わたしと朝比奈みくるは残した。

北高に涼宮ハルヒは入学せず、よって、あなたは涼宮ハルヒに出会うことなく、
SOS団も結成されない。そうなれば、あなたは平凡な学生生活を送ったはずだ。

そして、朝比奈みくるは、書道部員のままで、朝倉さんとわたしが戦うこともない。
よって、朝倉さんは転校せず、わたしが眼鏡を外すこともなかった。
朝倉さんは、あなたの言った通り、わたしと同類なのだと思う。
涼宮ハルヒの能力がない限り、朝倉さんは、ただ、わたしの保護と支援を行う存在。
それは、度々わたしを助けてくれる朝倉さんの行動からも窺える。
わたしは、朝倉さんを、そう捉えていたのだろう。

ただ、そうであるなら、おかしなことが一つだけある。それは、図書館の思い出。

わたしは、SOS団が結成されなければ、わたしとあなたが図書館に行くことにはならなかった
のではないかと思っている。だから、わたしとあなたの図書館の思い出が一致していないのだと。
ならば、なぜ、わたしに図書館の記憶があるのか。

そして、その図書館の思い出だけが、今のわたしとあなたを繋いでいる。
今のわたしがあなたを知っているのは、わたしの記憶に図書館の思い出があるから。
図書館の思い出がなければ、今のわたしは、あなたを知らなかったはずだ。
もし、あなたを知らなければ、あなたが文芸部室に入ってきたとき、逃げ出していたはず。

最後に、緊急脱出プログラム。あの栞の文字。あれは間違いなく、わたしの字だった。
わたしは、あなたの選択に任せたのだろう。そして、あなたは選択した。
しかし、あなたは戻れなかった。

「…………」
15名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 18:00:57 ID:RbgCqult
彼は目を見開いたままだ。わたしは俯き加減のまま、テーブルの上の湯のみを見ていた。

「でも、そうなら、何で、お前は人間に……」

わたしは、顔を上げて彼を直視する。急に、感情が揺れた。何かがこみ上げてくる。

「人と人でないものは、恋愛関係を構築できないから」

彼の姿がぼやけた。何かが頬を伝う。ただ、悲しかった。
これは全て推論だ。しかし、これで辻褄があうと思った。
彼と抱き合った夢。夢の中で感じた彼の匂いと温もり。彼に抱きしめられた感触。
それは、今日、部室で彼に抱きしめられたときに感じたものと同じだった。

「あなたが好きだから」

そのまま、わたしは、俯いた。とても、彼の姿を見ることはできない。

この世界改変は、宇宙人製アンドロイドであるわたしの告白だった。
彼は、緊急脱出プログラムを実行した。それが、彼の答えなのだ。
しかし、それは機能しなかった。それが、わたしの意図だとしたら。
それは彼に対してあまりに不誠実ではないか。

わたしは、改変前のわたしに怒りを感じていた。

彼は、それでも、わたしを受け入れてくれるだろうか。
わたしは人間にはなれなかった。今日、生徒会室で感じた、あの妙な感覚。
それに、彼と涼宮ハルヒの話から、改変は、三年以上前には影響を与えていないと思える。
そうであれば、今のわたしが、人としてこの世界に生まれたことは否定される。

わたしには三年以上前の記憶がある。しかし、三年前より昔のわたしを知っている人は
いないのだろう。結局、世界改変しても、わたしは人間にはなれなかったのだ。
そして、今のわたしには自覚できる何の力もない。少なくとも魔法を使うことはできない。
きっと、わたしがそう望んだから。
だから、もう彼が望む世界に戻すことはできない。何と間の抜けた話だろう。

結局、わたしは力を失っただけだ。人間にもなれなかった。
そして彼の答えを知っている。彼は、彼の世界を選択し、わたしを拒絶した。
なのに、彼は帰れなかった。わたしは彼を帰さなかった。

どうしても彼を見ることができない。わたしは彼の前から消えてしまいたかった。
彼はどう思っているのだろう。

しばらくして、

「そうかもな」

と言う彼の落ち着いた声が聞こえた。やはり、彼も気が付いていたのだ。

「長門、顔を上げてくれ」

顔を上げる。わたしは罰を受けなければならない。彼に何を言われても受け入れなければ
ならない。しかし、彼の反応は予想と違っていた。信じられない。彼が微笑んでいる。

「何となく、そう思ってたんだ。ハルヒが世界改変をしたとすれば、妙なことが多すぎる。
そして、俺の知る限り、ハルヒ以外に世界改変が出来るとすれば、長門だけだったからな」
16名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 18:01:44 ID:RbgCqult
そう言って、彼は一口お茶を飲むと、わたしを見つめたまま、口を開いた。寂しそうな笑みで。

「ただ、何で長門がそんなことをしたのかが解らなかった。
ハルヒに振り回されるのに嫌気が差したのかと思ってたんだが、
でも、お前の話が本当なら……。いや、本当だと思うんだが……」

そこで彼は、沈黙した。笑みは消え、真剣な表情。彼は、改変前のわたしを信頼していた。
だからきっと、裏切られたと思っているだろう。

「俺は、長門の気持ちを考えたことがなかった。あいつは追い詰められてたんだな」

意外な言葉だった。
彼は、視線を天井に向け、少し考えるような表情で、話を続けた。

「でも、恋愛感情ってのは、どうだろうな。あいつは、人と接触したことがほとんどなかった
はずだ。たぶん、俺が最初だったんじゃないか? だから、そう思い込んだだけかもしれない」

そうだろうか。わたしは、彼に恋している。この気持ちに間違いはない。

「わたしは、あなたが好き。これは、改変前のわたしの気持ちと同じだと思う」

彼が固まった。
彼は状況を正確に理解している。だから、わざと曖昧な言い方をしている。そう思った。
わたしを思い遣ってくれているのかもしれない。しかし、わたしは、曖昧にできなかった。

「わたしは、今日、あなたに抱きしめられて嬉しかった。
生徒会室のことがあった直後で、普通は、男子に近付きたくないと思うはずなのに。
わたしがあなたを好きだから。だから、抱きしめて欲しかった」
「…………」
「あなたはこの世界からの脱出を選択した。しかし、あなたは戻れなかった。
それは、きっと、わたしが……」
「やめろ! それ以上言うな!」

彼が拳を握り締めて俯く。でも、彼には全てを知って欲しい。わたしは言葉を続けた。

「わたしは、緊急脱出プログラムを正しく設定しなかった」
「…………」
「わたしは、あなたをこの世界に閉じ込めた」
「…………」
「わたしは、あなたを独占したかった」
「…………」
「そう考えると、辻褄が合う。そうとしか考えられない」
「…………」
「わたしは、罰せられなければならない」
「やめろ! やめてくれ、長門。それは、お前のせいじゃない、お前のせいじゃないんだ」

彼が両拳で、コタツテーブルを叩く。

わたしは、ただ彼を見つめていた。頬が濡れていることを自覚する。
わたしは懺悔しているつもりなのかもしれない。でもそれは、自分勝手な考え。
彼に詰め寄られたほうが幾らかましだ。
17名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 18:03:00 ID:RbgCqult
「長門、前にも言ったが、俺は長門を信頼している。
だから、例の脱出プログラムは、それが準備されていた時点で、正しく設定されてたはずだ。
あいつは、意味のないことはしない。だから、脱出プログラムがフェイクだったなんてことは、
ありえない。そんなどっきりカメラみたいなことがあってたまるか。
何か意味がある、あるはずなんだ」

彼の改変前のわたしに対する信頼は驚くべきものだ。なぜ、そこまで信頼できるのだろう。
普通は、恋人同士でさえ、それほどの信頼は置けないのではないだろうか。
わたしは改変前のわたしの気持ちを思った。わたしが彼に好意を寄せた理由を。
彼に選択を託した理由を。

「お前ならどうする? お前は、そうするか?」
「……しない。意味がない」
「そうだろ? 俺の長門は、そんな悪趣味なことはしない」

そうなら、一体、なぜ彼は脱出できなかったのだろう。
彼は大きく息を吐いて、わたしに視線を固定した。

「緊急脱出プログラムは本当はちゃんと動作したんじゃないだろうか。
どうも気になるんだ。どう思う?」

思わず息を呑んだ。それは最初に考えたこと。でも単なる妄想としか思えなかったこと。

「この世界が分岐した可能性」

わたしは、彼に、その妄想を話すことにした。
何れにしても、わたしの責任がなくなるわけではない。わたしの考えの全てを話したほうがいい。

緊急脱出プログラムを実行した時点で、この世界が彼の世界から分岐したのではないか。
彼の世界では、緊急脱出プログラムにより彼が脱出した時空が、分岐したこの世界では、
彼がこの世界に残る時空が発生した。

彼の世界は、いや、この世界は唯一の世界だと思っていた。未来人がいるから。
しかし、そうではないのかもしれない。
たとえば、エヴェレット解釈では、世界は観察者の数だけ存在するはず。

「なんだかよく解らんが、つまり、パラレルワールドってことか?」
「正確ではない。でも、そんな感じ」
「なんてこった……」

もし、多時間宇宙において、時間の流れが異なる世界があれば、それらの世界間の移動は、
タイムマシンによる移動と同じように見えるかもしれない。
その場合は、タイムパラドックスは発生しない。それぞれの世界は、別の時系列に沿っている
のだから。その世界では、未来人と異世界人は、同一の存在であると言える。

彼が、唖然とした顔で呟いた。

「時間平面……。そうだ、朝比奈さんは、違う時間平面から来たって言ってたっけ……」

はっとしたように、そして、何かに気が付いたように、彼がわたしに向かって言った。

「観察者の数だけ世界があるっていってたな?」
「そう」
「観察者……、長門? いや、ハルヒ……、違う、情報統合思念体か!」
18名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 18:03:58 ID:RbgCqult
彼は、ぽかんとした顔をわたしに向け、しばらく固まった後、両手で顔を覆った。
そして、いきなり笑い出した。腹を抱えて笑っている。どうしたのだろう。
何がおかしいのかわからない。わたしは呆然とした表情をしていたに違いない。

「すまん。でも、お前の考えの通りかもしれん。いや、たぶん、その通りだ。
長門はやっぱり長門だな。でも、お前の話のほうが解りやすいぞ」
「…………」
「……何かすっきりしたよ、長門はちゃんとやってくれてたんだ。
きっと、俺は、俺の世界で、長門を慰めてるんじゃないか。長門は、今のお前と同じくらい
しょげてるだろうからな。俺の長門が、お前ほど正直に全てを話してくれてたらいいんだが」

そして、目尻を押さえながら、

「そうさ、それが本当かどうかは解らないが、そう考えれば、すっきりする。
諦めもつくってもんだ。できないことを求め続けるのは、不健康だしな。
いや、ハルヒのことじゃないぞ。それに、もしかしたら、この世界と俺がいた世界が
交わることもあるかもしれない。いつか……」

そう言って、薄らと涙を浮かべながら笑顔を見せた。彼は泣いているのではないだろうか。
ふと、そんな疑問が浮かぶ。

よく解らないが、彼は、彼の中でこの世界と折り合いをつけたように見える。
でも、わたしが、全ての原因であることには変わりない。

「違うぞ、長門。お前はちゃんと俺を戻してくれたのさ。二重の意味でな。
この世界ができたのは、きっと情報統合思念体のせいだ。そう思っておけばいい」

そして、

「……俺がいた世界は、きっと三年前に、それまでの世界から分岐したんだ」

そう呟くように言った。

「お前が責任を感じる必要はないんだよ。それは、あれだ、そう規定事項ってやつだ。
お前は、もう俺の知っているアンドロイドじゃない、人間だ。だから責任を感じる必要はない」

人間。いや、わたしは人間にはなれなかった。

「お前は人間だよ。あの超絶マジックを使わなければ、そして、あの情報統合思念体とやらが
いなければ、お前は人間なのさ。改変前でも改変後でもな。そう宇宙人製だったとしてもだ」

それに、と彼が続ける。

「俺の知ってる長門は、微笑んだり泣いたりしないんだ。
微笑んだり泣いたりして欲しかったんだがな。でも、お前は、微笑んだり泣いたりするだろ?
人は、みんな、泣いたり笑ったりするんだよ。だから、お前は人間だ」

そう言って、彼は立ち上がり、ポケットからハンカチを出すと、わたしに差し出した。

「顔を拭いてくれ。頼むから、もう泣くのはやめてくれ」

驚いた。思わず、彼を凝視してしまう。目の前に差し出されたハンカチ。
彼のやさしい顔。それは、図書館の彼を思い出させた。
わたしは、無意識に彼のハンカチを手に取っていた。

「俺たちは生まれ変わったのさ。それぞれ違う世界の記憶を持ったままな」

遠くを見つめるような顔で、彼は、そう言った。
19名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 18:04:58 ID:RbgCqult
「俺が緊急脱出プログラムを実行したのは、この世界が嫌だったからじゃない。
前の世界のほうが面白いと思ったからなんだ。非常識な事件が起こる世界がな。
俺は、ガキのころから、宇宙人や未来人や超能力者のいる世界に憧れていたんだ」

一拍置いて、彼が続ける。

「でも、非常識な事件のない世界が嫌なわけじゃない。
ハルヒに出会う前までは、平凡な日常ってやつがそのまま続くと思ってたんだからな。
そもそも、俺たち人間は、生まれる世界を選べないんだ。
全ては神か仏の思うままにってやつさ。だから、これでいいんだ。
お前だってそうだ。改変前のお前は、敢えて言うなら、お前の前世ってやつだと思えばいい。
誰も前世の行いの責任なんて取らないだろ。ま、俺は前世なんてやつは信じちゃいないがな」

彼のフォローになっているようで、フォローになってない言葉。
彼自身に言い聞かせているような言葉。

「お前が俺を好きだって言ってくれたのは嬉しい。俺の知っている長門がそう思ってかも
しれないってこともな。そして、お前が言ったように、俺がハルヒに特別な感情を持って
いるってことも認める。それは恋愛感情じゃないと思うがな。
だが、それは、改変前の話だ。前世の話なんだ。
今の俺やお前の気持ちは、過去の記憶なんだ。それに縛られる必要は何もない」

そう言われるとそうかもしれない。でも。

「俺たちは、ある意味、知り合ったばかりだ。お互いに違うの記憶、過去の記憶しか持って
ないからな。だから、もう少し付き合ってから、改めて考えてみないか」

少しだけ落ち込んだ気分になる。彼の悪戯っ子のような表情。

「そうだな。まずは、文芸部に入部させてくれ。そして、一緒に図書館に行こう。
それから、SOS団のみんなでクリパだ、朝倉も呼んでさ。忙しくなるぞ」

息が止まった。嬉しかった。嬉しいのに、涙が溢れて止まらなかった。
慌てたような彼の表情。わたしは、うまく微笑むことができただろうか。
20名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 18:07:07 ID:RbgCqult
彼が帰った後、わたしは、一人で考えていた。

彼はわたしを人間だと言ってくれた。しかし、生徒会室で感じたあの妙な感覚。
それに、眼鏡をかけていないのに不自由していない現実。

わたしは、本当に彼の言っていた能力を失ったのだろうか。
一度、朝倉さんに相談してみても良いのかも知れない。
長門有希のバックアップだった朝倉涼子。もしかしたら、彼女は何かを知っているかも。
でも、不用意に相談すると妄想だと笑われそうだ。もう少し様子を見たほうがいいかもしれない。

これからどうなるのだろう。
彼は、やはり涼宮ハルヒに惹かれるのではないだろうか。でも、先のことは解らない。

ただ、わたしと彼の間にも共通の秘密がある。彼とは恋人同士になることはないかもしれない。
わたしには、彼とそのような関係になる資格はないのかもしれない。
でも、そうだとしても、彼とは友人として、今後も付き合っていけるはず。
それで、十分なのかもしれない。少しの悲しさと寂しさを感じながら、そう思う。

でも、彼は、文芸部に入部すると言ってくれた。
未来のことは解らない。少なくともわたしは、もう一人ではない。

そう、わたしは生まれ変わったのだ。


―おわり―
21名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 18:08:20 ID:RbgCqult
以上です。エロなしすまん。だらだら長くてすまん。
22名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 18:09:30 ID:osx+CVdS
>>21
GJ!
23名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 18:35:03 ID:mce44Tli
>>21
GJ
おわりってことは、もう続きはないのかなぁ…
24名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:07:02 ID:IA2chBLi
ここが次スレならageとくか
25名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:19:07 ID:GNcHBsGI
>>21

GJ

このラストは下手に朝倉に相談したら、死亡フラグが発動するって事?

26名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:26:08 ID:wBJh2uVg
エロスレなのに抜けるSSが全く投下されない件について……(´・ω・`)

その内、他のスレの人から攻撃されそうな気がする……。
アニメ板の本スレとか見ていると。
27名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:28:05 ID:iukc11p8
>>26
心配無用。
もう腐るほどされてるしその話題もループ率No1だからw
28名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:30:19 ID:agGBjwgP
私は人間にはなれなかった、にマジ泣きした、俺キモス。
gj
29名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:31:15 ID:u8/EU5Uh
>>26
そう言うならキミが書いてくれ。
何回目だろう、この話題も…
30名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:32:23 ID:jvZxiTRJ
>>26
それはない


アニメ板の本スレは見るからに、その40%程が未成年だ。

エロパロスレだからといって、抜けるSSを期待してる方が間違ってる。
エロパロスレ全体で見てみると、ココのスレは比率こそ少ないが、
トップクラスのエロSS量を誇ってる。
31名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:34:18 ID:xFVHoBOY
またしばらくしたら「未成年」云々の人がくるよ(苦笑

攻撃されるとしたらあっちゃこっちゃにハルヒ関係の
コピペをしてる連中が原因だろうさ。実際うざいし。
32名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:35:24 ID:1+XEgoWJ
この話は前に降下されてた消失長門の話の続編かな?
33名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:42:27 ID:9FXr2oDU
何度ループしたとしても、数あるエロパロスレの中で
このスレだけは比較的荒れにくいのはたいしたもんだ。
34名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:49:05 ID:oc8hEqMy
ハルヒ×キョン書こうかな
35名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 19:56:54 ID:fXIJ3nkG
エロイやつ書けないことは無いし、実際書くんだけどね、わりと通常のSSも投下したくなる。
なぜなら、ここには良いギャラリーがたくさん居るから。
自分の文章力ってやつを試したくなるんだ。

だから、またなんか出来上がったら投下させて貰います。出来ればエロ風味も入れて。
36名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 20:02:53 ID:9RCH17/Q
>21
祝完結
味のある長門の一人語りと、余韻のある終わり方が良かった。
「俺の長門」を連発するキョンにニャニャ
37名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 20:26:31 ID:wBJh2uVg
やっぱりこれだけ普通のSSがあげられていると、エロSSが上げにくくなるのは事実なんだよね。
雰囲気的にね。

これだけ普通のSSが投下されてるのは、キャラを大切にしている人が多いんだと思う。
エロSSを書く時っていうのは、どんなに和姦でシーンに気を配ってもある程度キャラを陵辱する
部分を作ってしまう。
だから、投下するのにも気を使うのよ。
まぁ、このスレには普通のSSでもかなり腕のいい職人さんが常駐しているようだし、暫くはこの
路線でもいいのかもしれないですね。

エロSS職人としてはこの雰囲気は嫌いではないし、このスレがもうちょっと落ち着くまでは投下は
避けようと思います。
やっぱり場違いな感じがしますので。
38名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 20:34:49 ID:nR1DeYbK
>>21
お疲れ様でした
凄く面白かったですよーw
消失から、更に分岐した世界、って感じが何とも・・・w
でもキョンの居た、元の世界ではどうなってるのかも気になりましたねw
39名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 20:38:27 ID:lLuf1H92
>>37
エロいのがあるなら投下してちょうだい。
少なくとも俺は大歓迎だから。
40名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 20:56:39 ID:MP8FaQen
エロ無しばかりでも最近はそれほど気にならなくなったが、
ノーマルSSであまり完成度の高いのをたくさん読んじゃうと、
記憶の中で本編とゴッチャになっちゃって ここに投下されたSSを
元ネタにパロを書いてしまいそうで怖い俺が居る・・・。
41名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 20:57:29 ID:9RCH17/Q
>35>37
シリアス・ガチエロ・ほのぼの・ギャグ・埋めネタ、全部ひっくるめて大好きだ!!
楽しみに待ってますよ。
42347:2006/07/18(火) 21:00:23 ID:r98GhF4q
>>40
おお、俺だけかと思ってたけど、似たようなこと思う人はいるんだな。
俺の場合はSSを書くのとは違うんだけど。
人と話をするときに、原作の話とSSの話を混同して「はぁ?」と訝しげな顔をされることがたまにある。
43名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 21:04:58 ID:kYD18b2w
>>42
あるあるw
特に長門なんて、俺の中では完全にこのスレのキャラに染まってるぞ
44名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 21:08:12 ID:7Z6Szglk
>>42>>43
たしかにそうかも。混同する。
おれのSSはひどいけどね。
45名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 21:08:58 ID:5hv9kpYq
>>41
SM系はやっぱりあっちですかね。
あっちに投下すると保管庫に入らないんだよね…?
46名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 21:11:03 ID:KDEt/0q6
しかし、これだけ質の高いSSがいっぱいあると、今後谷川が苦労するんじゃないかと
いらぬ心配・・・。
47名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 21:14:07 ID:9FXr2oDU
>>37
いつ手持ちのカードを切るかを考えるより、
いま手持ちのカードを切ることを決断する方がカッコイイと思う。

というわけで"ぜひ"投下してください。
48名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 21:27:37 ID:qHZjCYqd
ところで今本スレで何本のSS(ネタ含む)が上がってるのか
把握してる人っている? 正直な話、知りたいです
49名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 21:28:36 ID:0UbL2NYc
>>38
緊急脱出プログラムで消失世界から >21 に分岐したってことなので、
キョンの居た元の世界は、原作通りなのではないかいw
50名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 21:33:07 ID:DOxJw3LX
>>48
まとめにあるもの自分で数えろ
51名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 21:35:05 ID:4LjesfS6
先生はこんなとこ見てないんじゃない?
52名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 21:54:59 ID:pZhz3yg+
関係者がチェックしてる可能性はあるかも。
ネタがあまりかぶらないように。
53名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:02:36 ID:KDEt/0q6
ガチエロだったら被る可能性皆無だな。
54名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:05:21 ID:irwbthal
>>1
いらぬ心配かも知らんが
次スレからは出来ればSMスレや801スレのリンクも貼っておいたらいいかも
意外に需要ありそうだし
55名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:08:05 ID:MwyfZOgC
>>37
エロなしSS書いてると、エロ投下してもらえると本当に助かる。
エロが投下されてる方がエロなしも投下しやすいんで。
ということで投下してもらえると助かります!
56名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:17:49 ID:ZIuDC+oR
>>54今更だが

「涼宮ハルヒ」で801 第4話
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1152779566/l50
 涼宮ハルヒのSM
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1151325162/l50
5748:2006/07/18(火) 22:24:24 ID:qHZjCYqd
とりあえずシリーズ分けしてたらキリないけど600近くあった
(3月初頭からだと1日4本計算)
58名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:30:32 ID:QheYlLAc
男キャラメインのだけはここに落とさないでホシイッス。801行って
59ジョン・スミス:2006/07/18(火) 22:30:42 ID:nXipZufO
なんでだろう?自分に黒い何かを感じる。
やべぇ。
今とてつもなく会長を殴りたくなってきた。
60名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:42:44 ID:OR0dphxk
結局またヒエロ、エロでループかよ37は釣りだろ。反応すんなって
61名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:44:13 ID:6iBUkXMd
>>58
男メイン=801ではない。
62ジョン・スミス:2006/07/18(火) 22:46:12 ID:nXipZufO
女キャラ視点の801ってあるの?
63名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:49:19 ID:n9QcDHPy
>>21
GJ!すげぇ続き読みたいわ…
64名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:49:32 ID:fST/+NHw
ソフトなレズ物もいいかもな。
ハルヒとみくる
65名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:54:50 ID:D9FwO37S
だから58もきっと釣りだろ・・・釣堀だなここは
66名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:01:07 ID:9RCH17/Q
>45
ハードなSMはSMスレ。
ほんのりSM風味ならこっちでもかまわないと思う
67名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:10:53 ID:jaguwMxK
そんなことしたら向こうが干物になっちゃうから。
むこうにほんわか落ちてるから
68名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:11:27 ID:u8/EU5Uh
レズ物か…
みくる←鶴屋さん… ありきたりだな
みくる←ハルヒ… 同じくありきたりだな
長門→ハルヒ… 斬新だけどきっかけがな…
みくる→長門… きっか(ry
鶴屋さん→喜緑さん… きっ(ry
ま、無難に長門+ハルヒ+みくる→鶴屋さん でも考え… れるかぁ〜!

色々考えて暴走してしまった。 正直スマンカッタ
69名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:11:37 ID:pwgc8sjt
スレの終わりの埋めSSが好きです……でも、>>21さんのSSはもっと好きです。
70名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:18:42 ID:jaguwMxK
消失での朝倉長門が最もありきたりなのにぬけてる。
71名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:21:24 ID:9RCH17/Q
>67
ほんとだ
「長門有希の目覚め」
ほんわか
72名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:24:30 ID:qDLkwYGk
レズ物言えば学校の方がいけそうな…

前に学校ネタの、真琴・類でちまちま書いてたな。
需要なさそうだったし、書き終わる前にどっかいったけど。
73名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:26:30 ID:jaguwMxK
この分だと学校は次の次あたりでスレタイから消えるんじゃね?
74名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:26:51 ID:r98GhF4q
ジョン・スミス氏は、雑談の時はコテを外してもらえないだろうか。
作品投下以外でコテが付いてるのを見てると、段々イライラして来るんだ。
勝手な言い分で申し訳ないけど、頼むよ。ここは元々匿名掲示板なんだからさ。
75名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:30:36 ID:4LjesfS6
レズ物なら妹ちゃん×ミヨキチをキボンしたい
76名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:30:44 ID:yShvbCI0
>>68
朝倉→長門 ありきたりか?
朝倉→ハルヒ いけそうじゃない?
77名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:31:38 ID:htRWNh+H
SSまとめサイトとか見ていると、どっちがモノホンか分からなくなるな。
このスレに文豪が多いのか、俺が思っているほど谷川は大したことないのか・・・
消失長門世界とても面白かった。ご苦労さん。
78名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:34:53 ID:yffaRCeo
ハルヒ→長門ってのも、個人的にアリかなと思っていたりする。
あ、でも宇宙人3人娘でレズりあうのも捨てがたい……
79名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:35:11 ID:jaguwMxK
>>76 昔朝倉長門でスカトロがあったな。
80名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:35:30 ID:9JN+Yd3e
>>77
パロSSと、ゼロから作り上げるのとでは全く違うと思うよ。
81名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:39:09 ID:LF+IqXaV
>>79 レズものじゃねえだろ、恋愛感情ねえじゃんアレ
82名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:42:55 ID:19J3xjOU
>>81 恋愛感情無いレズはお嫌い?
83名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:45:16 ID:htRWNh+H
>>80
それはそうだろうけど、俺が言いたいのはよくここまで
世界観を真似ることが出来るなあというひたすら感心の念だ。
文章の選択、キャラクターの心情風景、ストーリーの展開などなど。
谷川が作る世界観というのは、こんなにもまねしやすいものなのかな
と思った。真似してるほうの才能が凄いからかもしれんが。
84名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:45:53 ID:LF+IqXaV
マジでそういうのもレズ物てゆうの?じゃあsみくるのやつとかもレズ物なの?
85名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:48:11 ID:19J3xjOU
>>83原作の世界観がしっかりしているからこそ、真似しやすいんじゃね?と思うんだが
86名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:50:26 ID:mtag1PLD
>>84
まあ、恋感無いとSMの世界になっちまうのかもしれないね。
87名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:04:51 ID:3yP5DaAM
>>83
把握しやすい世界観を描き出すのも才能の一つだと思う。
谷川はそういう所強いんだよなあ。
88名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:07:41 ID:WJGbUheU
>>83 ちょっとすごいものは何でも崇拝する信者気質w
   
89名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:26:23 ID:XeUXj1SH
>>72
学校ネタをずっと待っていたので
気が向いたらでよいので投下してくだい
90名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:34:09 ID:568F5ouM
マジで四日でエロパロ1スレ使い切るとは……。予想はしてたが改めてすげぇな、このスレ(ーー;)

>>21ありきたりと言われようとGJ
91名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:39:07 ID:0cLonMq2
亀だが >>21 GJ
前スレ54で未完って書いてあったんで飛ばしてたんだが読んでみた。
これ『長門有希の暴走-消失』の続きだよね。

4から四元数→ハミルトン数(H)ってとこは、そこからハルヒにつなげるか、雪山のような展開の伏線かと思ったんだけど、単発ネタだったのが残念。
最後は、また時連続性喪失って来るんじゃないかって心配したけど、よかった。続編に期待。
92名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:52:43 ID:RG2vAOPE
>>21は神レベルだな。
萌えますた。続きがあったら読みたいよ。

つか、なんでこんなに谷川っぽく書けるのか知りたい。
俺は真似ようとしても全然似ないんだよな…

とにかく労作お疲れ様ですた。
93名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:53:07 ID:wtub+Xlt
5レスくらい投下します。
94名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:53:43 ID:QhDW6nkF
>>83
分かりやすい一人称+アニメによるイメージの共有
これが味噌だと思う。
ぶっちゃけ谷川の文体そっくりかっていうとそうでもない。
95名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:53:54 ID:wtub+Xlt
↑ スマン誤爆
96名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:54:42 ID:wtub+Xlt
>>93は誤爆でした 申し訳ない
97名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:59:39 ID:PbQuzqjr
>>96
これほど残念な誤爆もそうは無いなwww
98名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 01:22:15 ID:r8YmVNAA
夏だ。摂氏38度、らくだも裸足で逃げ出すような暑さだ。たぶんな。
そんな中、なぜか俺は朝比奈さんと密室にいた。
心なしか、顔が上気し汗がうっすらと浮かんでいる。

「ん…っ。キョンくん、あの、これどうすれば・・・?」
大きくて入らないかもしれませんが、そのまま口に、こう…ぱくっと。
「あ、はい。んんっ、ほんなかんりれふかあ」
朝比奈さんの口がてらてらと光りながら、艶かしく動く。
たまにちらりと覗く舌も、たまらなく扇情的ですよ。
「ふえっ、そんなこと、あっ、こっちはどうです?」
そういって、おそるおそるモノを掴む朝比奈さん。
ああ、ダメですよ。そんなに強く掴んだら・・・

トロリ

「ひぃやあっ…え、うう。これは、どうすれば…」
えっと、残ったのはそのまま飲んでください。落ちたのはティッシュで拭くとか…。
「ええっと、はい。分かりましたあ」


ゆっくり汁を啜る朝比奈さん。
「ん、んくっ。ふぁ…うう、キョンくん、これは私には、ちょっと」
生臭くて…と、下を向いてしまう朝比奈さん。
いえいえ、キツかったら全部飲まなくてもいいんですよ。
やっぱりいきなり…は辛いですよね。好みの問題もありますし。
「ふえぇ、すみません」
本当に申し訳なさそうな顔をする朝比奈さん。

じゃあそろそろ出ましょうか、遅れると変な詮索されますし。
「そうですね、すみません。私、はじめてで、…」
ラーメンを食べたことがない、というので連れてきたが、いきなり背油&とんこつコンボは相当きつかったらしい。
次の機会があるなら普通のしょうゆラーメンにしよう。これでラーメンを嫌いになってなければいいが。
99名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 01:25:19 ID:r8YmVNAA
>>98
チャーシュー→味玉→スープ…な感じで読んでください。
ネタはあるのに、うまく文章にならない…
職人さんいつもGJです。
100名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 01:40:13 ID:PdjW/fRl
>>99
最初の3行にやられた。GJ!
101名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 01:42:16 ID:kk8AGi+U
コネタうざす。
102名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 01:46:40 ID:ZacTllk9
ここ21歳未満禁止だってのに中高生のアホが大勢来てそうだから
まぎらわしいネタも新鮮なのかもね。
GJとかいって。
103名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 02:01:26 ID:ZqMNbNmz
9899100「15分立っても誰も反応しない。おかしいな。俺うまくやったよな・・・
     いいやひとつレスつけば俺の波がくる。自演自演っと。俺は神になれるぞむふふ」

104名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 02:58:20 ID:QBow+iyW
レズも匂わす程度ならいいが本番ありのガチレズはレズ板でやってほしい
1059-27:2006/07/19(水) 03:09:36 ID:UrhvxVWF

 確か、有希が上に乗ってひたすら腰を振ってたな。ブラジルのダンサーじゃあるまいし、あの動きは反則だ。一分と持たなかったような気がする。
 そして今度は俺が後ろから突きまくった。一番奥をガンガン突きながら、有希の乳を揉んだっけ。
 最後は正面から抱き合って、朦朧とした意識にぐらぐらと揺らされながら終えた。


 そんなことを思い出していると、下半身も朝から元気なご様子。若いって素晴らしい。
 ただ、さすがにちょっと痛い……。 

「って、何してるんだ有希……」
 有希は俺の股間に顔を埋めて、ぴちゃぴちゃと舐めているじゃないか。
 朝っぱらから何をするかな。 

 舌で全体を舐めまわしながら、時折唇を先端に口付けていた。
 射精を促しているというよりは、美味いものをねぶっているかのようだ。その仕草も、男の視線を惹きつける淫靡なものでしかない。
 部室で大人しく本を読んでいた少女は、いつのまに淫乱美少女にクラスチェンジしたのだろうか。
 
 朝勃ちがすぐに治まるわけもなく、さらに舐められてるんだから、そりゃ硬くそそり立っている。
 慰めるように舐めてくる有希は、次第に唇と手を使って強い刺激を加えはじめた。ちょっと待て、さすがにそんなに何回も出してたら、俺の体力が持たない。

「ゆ、有希。気持ちは嬉しいんだが、起きようぜ。また後で、な?」
 俺の言葉は聞こえているはずなのに、無視された。

 そういえば、昨晩も俺は早々と根をあげてしまった覚えがある。だが、有希の「ダメ」「もっと」の二言で、俺の脳みそはホモサピエンスからアウストラロピテクスあたりに退化してしまった。
 後は猿のように……。それは仕方ないことだろ?


 有希のフェラチオ行為によって、次第に出そうになってくる。昨日は倒れるように眠ってしまったのでよく覚えていなかったが、俺の体のあちこちに唾液か何かが乾いたような跡がいくつもあった。
 汗もかいていたしで、べとべとしている。さっさとシャワーでも浴びたいところだ。

「有希、もう出そうだ」
 ん、声帯を一度だけ鳴らして返事をした有希が、さらに動きを早める。とてもじゃないが、俺には真似できない動きだ。どうしてそんなに首が綺麗に動くのか不思議で仕方ない。
 有希の口に奪われた俺のモノは、熱にうかされて唾液にまみれて膨張しきっていた。皮も伸ばされ、剥き出しになった亀頭をぐるりと有希の舌が絡みつく。

「くっ……」
 肌をぴりぴりと電流が駆け登った。同時に、有希の口の中に放つ。
 
1069-27:2006/07/19(水) 03:10:08 ID:UrhvxVWF

 二人でシャワーを浴びる。俺はここで有希の体を、自分の好きなように触りまくってしまったが、今やったらもしかして喜ばれるんじゃないだろうかという気さえした。やらないけどさ。
 湯煙が白く立ち込める浴室で、汗だかなんだかよくわからないものを流していく。有希も自分の体を湯で流していた。
 洗面所で自分の姿を見てみると、首筋にいつの間にか赤いアザのようなものがった。ふと有希のほうを見ると、あからさまに視線を逸らされる。
 まさか寝てる間につけられたのか……。俺が寝てる間に、首筋にキスをする有希を想像すると、身悶えてしまいそうだ。


 時計を見ると、昼の11時過ぎだった。随分と長い間寝ていたようだが、頭の回転は冬場のエンジン並にとろくさく動いていた。
 窓の外に降る光が輝かしい。わずかな寒さを湛えた空気が煌いている。空気は澄んでいて、遠くの山の枯れ木たちでさえ色鮮やかに見えた。
 いっそ窓を開け放ってしまおうかと思う。シャワーを浴びて、ほどほどに火照った体には気持ちいいかもしれない。
 だが、有希の体まで冷えてしまっては困る。有希なら俺よりも暑さ寒さに強いだろうけど、こういうのは気分だ。
 それにしても、家の中で制服を着る必要がどこにあるのか問いたい。似合ってるし別にいいんだけどさ。

「ごはん」
「おう」
 カリカリのベーコンが乗った食パン。サニーレタスとトマトが鮮やかなサラダ。まん丸に焼けた目玉焼き。
 朝食って感じが漂いすぎだろう。もう昼なのにさ。

 二人で並んで昼食を食べる。
 俺が何か適当に話しかけ、それに有希が相槌を打ってくれる。短い言葉しか発しなかったが、それでも俺は満足していた。
 有希は淡々とパンを齧って、喉の奥に流し込んでいった。先客として、俺の精液がいてるだろうから、パンもさぞ迷惑だろうな。

 小さな唇を開き、ベーコンを口内に運んでよく噛んでいる。さっきまで、その唇で俺のモノをしゃぶってたんだよなぁ。
 いかんいかん。そんなことを考えていたら、また勃ってしまう。有希のことだから、一瞬で見抜いてしまいそうだ。そうなったら、また布団に逆戻りしかねない。
 
 段々、俺が犯されてきてるような気がするのはなんでだろうな……。



 日曜日の昼、せっかくの午後だし、何処かに出かけてみたいものだ。
 一応プランは練ってある。一昨日の夜に延々と考え続けたからな。
 だが、有希が首を縦に振るかどうかはわからない。
「なぁ有希。どっか行きたいところとかあるか?」
 一応尋ねてみる。
「……」
 じーっと目を見詰められる。おそらく行きたいところが思いつかないんだろう。
 また図書館に行くというのも面白くないし、そもそも有希は借りてきた本をまだ読んでない。

「せっかくのいい天気だし、どっか出かけたほうがいいと思うんだが」
「……」
「無言で返すなよ……」
 恋愛物の映画でも見に行こうと思っていたのだが、果たして有希はそれを面白いと思ってくれるのかどうか。
 延々無表情でスクリーンを眺めていそうな気がする。
 絶対泣けるとか世紀の感動作とかいう安っぽいコピーも、有希の前じゃぼろぼろ崩れるだけだろうな。
 と、いうかむしろ俺自身が楽しめるかどうかも自信が無い。

 むしろ、格闘物のほうが見ててわかりやすいかもしれないが、少なくとも女の子と見に行く映画にそれはないだろう。
 かといってフルCGのアニメというのも幼すぎる気もするし。
 そもそも映画という選択がダメなんじゃないのか。

 SF物があればいいんだろうが、確か今の時期はやってなかったような気がする。
 ちょっと前まで火星人だかが地球に攻めてくるという映画が、よくテレビで宣伝されていたが、おそらくあれは失敗作だろう。

「……ここであなたと一緒に」
「引きこもりかよ」
 SFばかりじゃなくて、寺山修司でも読んだらどうなんだ。
 窓の外の快晴ぶりがなんとも他人行儀で、道行くハイソなお嬢さんみたいに遠かった。まぁいいさ、だったらこの部屋でいちゃつけばいいのさ。
1079-27:2006/07/19(水) 03:10:54 ID:UrhvxVWF

 壁にもたれて座りながら、俺に背を預けている有希の腹部に手を回した。有希は昨日借りてきた本を黙って読んでいる。
 静かな部屋に、有希がページをめくる音が時計の秒針とアンバランスなリズムを刻んでいた。有希の肩に顎を乗せて、本を覗き込んでみるが、有希の読む速さにはまったく追いつけず何がなんだかわかりゃしない。
 有希は俺が寝てる間にも読み進めていたのか、栞も挟んでいない本をぱっと開いて途中からすらすらと読み始めていたのだった。
 俺にもたれて読むのは一体どうしてなのかよくわからない。

 今度、座椅子かなんか持ってこようかね。さすがに壁にもたれるってのも疲れるし。
 思わず溜め息だかあくびだかよくわからないものが漏れる。目を数回瞬かせて、深く壁に体を預けた。

 暇だ。

 有希は満足なのか知らないが、俺は暇なんだ。
 仕方なく、有希にちょっかいを出すことにした。首筋に軽く口付けてみる。有希の体が放つ体温が鼻先をつついてくすぐったい。
 髪の柔らかさが頬を撫でる。微かに肌を覆う、透明な産毛を舌でなぞって、そのまま耳へと舌を這い上がらせた。有希は何事も無いかのように本を読み続けている。

 耳たぶを唇で食んでみる。歯で軽く咥えながら、舌でコリコリとした耳たぶを転がす。外耳の輪郭を舌でなぞって、耳の穴に舌をわずかに挿し込む。
 
「んっ」

 有希が小さく声を漏らした。うわ、かわいいなこいつ。
 調子に乗って、俺は手を有希の太ももに這わせた。柔らかく、触れるか触れないかくらいの距離で、何度か撫でる。
 スカートの裾を、ゆっくりとめくりあげていった。まだパンツは見えないが、かなりの内腿まで覗くことができた。
 さわさわと太ももを執拗に、軽いタッチで撫でながら、俺は有希の鼓膜に直接言葉を囁いた。
「どうした? 本は読まないのか?」
 さっきから、有希の持っている本は同じページを晒したままだった。

 なおも黙っている有希。俺は太ももを撫でていた手を、股間の中に差し入れようとした。
 有希はそれを阻止しようと腿を閉じる。
「開けよ、触れないだろ」
 優しい手つきと口調でエロいことをやっている自分がおかしかった。
 なおも硬く腿を閉じている有希。
「命令だ。さっさと開け」
「……」
 有希が貝のように閉じていた両足を開く。まさか本当に開くとは……。半分くらい冗談のつもりだったんだが。
 俺が命令すれば、なんでも聞くとでもいうのか。嫌なら嫌と言う、だなんて言ってたから、これは別に嫌ではないのだろう。

 有希の体が少しだけ硬く感じられる。凝縮された有希の体温が、俺の頭をぐつぐつと沸かしている。そろそろピーピー鳴る頃合だろう。
 開かれた有希の股に手を差し入れた。中指で軽く割れ目のあたりをひっかいてみる。
 思い出したように有希はページをめくった。まだ本を読むつもりでいるらしい。まぁ別にいいさ。
1089-27:2006/07/19(水) 03:12:09 ID:UrhvxVWF

 強めに、ぐにぐにと指をパンツごと奥へ押し込んでみる。柔らかな感触が心地良い。それから、スクラッチをキメるDJのように、有希のパンツを指先で擦った。
 左手で有希の胸を制服越しに揉む。あまり大きな胸でもないからか、制服の上からだと揉んでいる気がしない。
 
 是非直接揉みたいところだが、服を脱がすのはなかなかに厄介そうなので我慢しておく。
 服越しに、乳首の位置を探った。ブラもつけているしでよくわからないが、わずかに膨らんだ乳房の先あたりを撫でさする。
 まるで痴漢がバレるかバレないかくらいで触るような手つきで、制服のブラウスを擦った。

 右手の指先に、微かな湿り気が宿ったのを感じた。熱い場所、有希の股間に包まれた手がじっとりと汗ばむ。
 それだけでなく、有希の秘部から液体が溢れているのがわかった。渇いていたパンツが、濡れている。
 指先でパンツを絞るように抓ってみた。

「なんとか線液とかいうんだっけかコレ?」
 右手を有希の眼前に持ってきて、濡れた指先を見せつける。
「……」
 有希は無言で、指先に視線が合うようわずかに顔を上げた。
 指を有希の唇にあてがう。指先の液体を、有希の唇に塗りつけた。自分の愛液を唇に塗られる気分はどうなんだろうね。
 唇を指先で触れていると、不意に有希は俺の指を口に含んだ。一度、舌で指先がなぞられる。
 
 そして、有希は本をぱたんと閉じた。
「あなたが……悪い」
「ん?」

 有希は閉じた本を、横にそっと置くとふわりと空気みたいに俺の体から離れた。温かさが逃げていくのがよくわかった。
 すると有希はスカートの中に手を突っ込んだ。両端がわずかにめくりあがったスカート。
 両手で、パンツをずりおろした。真っ白なパンツが腿を伝い落ちて膝を超え、両足を抜いてしまう。脱いだパンツを俺の脇に放ると、有希は俺のベルトに手をかける。

「ちょ、ちょっと待て有希。何するつもりだ」
「性行為」
 いやだから恥じらいとかいうものをだね。とか思っているうちに、ベルトが一瞬のうちにして外されているのがわかった。
 ズボンのジッパーを下ろされ、さらに女の子とは思えない怪力で俺の腰を持ち上げると、ズボンごとずり下ろす。

「待て、やめろ」
「ダメ」
 有希の体をまさぐっているうちに屹立した俺のモノに、有希が視線を落とす。壁にもたれて座り込んだ俺の腰の上に、有希は自分の腰を下ろしていった。
 俺の首筋に手をまわし、対面のまま有希は割れ目に俺のモノを押し込んでいく。
 ちょっと待て、と言おうとしたが、俺の顔面は有希の薄い胸の間に包まれていて言葉は出なかった。

 入ったと思った途端に、有希は蛇が体をくねらせるように腰を振り始めていた。俺のモノは有希の中に包み込まれ、数千もの舌で舐められているかのように締め付けられる。
 俺の頭を抱く有希の微かな吐息が、俺の髪を軽く叩いていた。もう自分の股間がどうなっているのかもわからない。
 スカートの中で何が行われているというのか。ただ、有希が猛然と腰を振っているのだけはわかった。
 一番奥に何度も何度も当たっているのが解る。狭く熱い場所が、魂を掴み取ろうとしてる死神のように俺を強く握り締めて放さない。

 この24時間で何度もしたんだ。そりゃ、敏感にもなってる。有希の愛液で濡れた亀頭が、有希の膣で何度も擦られる。
「待てってば、おい」
「……ダメ」
 有希は腰を振るペースを弱めると、今度は大きくグラインドさせた。恥骨を俺のヘソに擦りつけようとしてるんじゃないのか。
 抜けそうで抜けないギリギリまで出し入れされる。

 両手を俺の後頭部に回した有希が、強く俺の頭を抱き締める。有希の匂いしかしない。息をするたびに有希の体温が肺を満たした。
 汗が吹き出る。壁にもたれて、前方を有希の体でふさがれていた。さらに有希は腰を振る速度を増す。
 股間が俺の体から離れて、快感だけを電波か何かで届けてるんじゃないかと思えた。俺は有希の尻に手を回す。
 スカートの中に手を差し入れて、腰を撫でた。
1099-27:2006/07/19(水) 03:13:05 ID:UrhvxVWF
 
 腰に力が入らなかった。有希の熱が神経を溶かしてしまったかのようだった。有希がわずかに体を離し、俺の顔を見下ろしていた。
 有希が目を閉じて唇を合わせてくる。くちゅくちゅと音を立てながら、キスをした。有希の舌が俺の唇を割って入り、俺の舌を求めるように前歯をなぞっている。
 求めに応じて、俺も舌を差し出す。硬く尖らせた有希の舌先が、わずかにすぼませた唇が俺の舌を食べようとしていた。
 唾液が有希の舌を伝って落ちてくる。俺はそれを喉の奥へ流し込んだ。有希の髪の間に両手を滑らせて、指先であわ立てるかのように撫で回す。
 
 有希が一度唇を離して、吐息を俺の顔に漏らした。
「もう出そうなんだが」
「出して」
 そんな見も蓋もない言い方はないだろう。情緒というものを学んでもいいんじゃないのか。
 こんなことばかりしてたら、馬鹿になるんじゃないだろうな。もう遅いかもしれないが、心配できるうちに心配しておこう。
 どっちにしたって夏休みの宿題みたいなもんで、ヤバイところに来てようやく我に帰るんだろうが。

 同じ射精だというのに、一人でやるのとは随分違うのはなんでだろうな。
 そんな意味の無いことを考えながら、俺はやがて来る絶頂に備えた。なんとなく怖いと思うのは何故だろう。
 張り詰めた俺のモノを、有希は執拗に膣で擦り上げている。睾丸のあたりが、こむら返りでも起こしたかのようにピクピクとひくついた。

 びくっ、と跳ねた。勢いよく精液は尿道を発射台にして有希の一番奥へと打ち込まれた。鼓動にあわせるように三度の発射を終えると、自然と重たい息が漏れた。


 終わったとばかりに一息ついたというのに、有希は再び腰をゆっくりと動かしはじめた。

「お、おい?! ちょっと待てって有希」
「……」
 どうして? みたいな目で俺を見るな。イったばかりの敏感な先っちょが、有希の中で擦られる。
「こら、動くな」
「ダメ」
「いや、ダメとかじゃなくて」
 呻いてしまった俺を気にすることなく、艶かしく全身をたゆらせている。
 体育で長距離走った後に、また走れと言われるような気分だ。

 俺は有希の腰に手を回し、力を振り絞って一気に有希の体を持ち上げた。ズボンが中途半端にずり下がっているので、実に情けない格好だろうが、気にはしてられない。
「ほら、また後でな。もうちょっと休ませてくれ」
 有希の尻に両手を回して持ち上げているから、有希はこのままじゃ動くこともできないだろう。そう思った途端、俺は前のめりに転びそうになった。
 突然有希の締め付けがキツくなったのだ。緊箍児で頭を締め付けられる孫悟空のように、俺はそのまま崩れ落ちそうになる。
 
 このまま有希を床に落としちゃまずいとだけは思って、俺は膝をついた。有希が背中を打たないよう、できるだけゆっくりと床に降ろす。
 がっちりと両足で俺の腰を掴んでいる有希。繋がったまま、正面から有希の体を抱くような格好になった。
 
  
 なおも、有希の膣が俺を握りつぶそうとしていた。こんなに力を加えられる器官なのか、有希だから出来ることなのか、どっちなのかはよくわからなかった。
 締め付けが何度か緩くなったり強くなったりと繰り返す。動いてもいないのに、蠕動運動のように俺のモノを奥へと導いていた。
1109-27:2006/07/19(水) 03:14:03 ID:UrhvxVWF

「……もっと」
「む、無理」
 短い髪を床に散らしながら、俺の首に両手を回す有希。無表情のまま、俺の顔を抱き寄せようとしていた。
 有希の両腕を払いのけて、立ち上がろうとする。腰に回された両足をほどくようにと、俺は有希の腿を数回軽く叩いた。
 スカートはめくりあがり、俺たちが繋がっているところを見下ろすことができる。べとべとに濡れて、血管を浮き上がらせた俺のモノが有希の中央を貫いていた。

 有希は大人しく力を抜いて、俺の腰を放してくれた。
 その様子が残念そうに見えたのは気のせいだろうか。無表情なのに変わりはないが、落胆したように見えた。
「あ、あのなー有希。もちろん、エッチなことをするのは好きだが物事には限度とかいうものがあってだな」
「あなたが先に……」
「う、いやその通りなんだが。もうちょっと待ってくれ。正直、この勢いじゃ俺が倒れちまう。そうなったら有希も嫌だろ」
 だらんと両手両足を投げ出して天井を見上げている有希。その首がわずかに振られた。

「どうでもいいが、スカートを直しなさい。丸見えだぞ」
 俺は有希のスカートを引っ張って、割れ目が見えないようにした。スカートが汚れてしまうかもしれなかったが、もう遅いかもしれない。
 あれだけ派手に動いたんだ。

 ズボンを履きなおし、ベルトをやや強めに締める。ちょっとばかし気持ちは悪かったが、仕方ない。
 それよりも……。

「その、気持ちは嬉しかったぞ」
 俺は有希の傍に膝をついて、その顔を覗き込んだ。払いのけられた前髪と、黒く澄んだ無垢な瞳。見ようによっては随分幼いのは知っていたが、今こうやって見下ろしていると、本当に子どものように見えて仕方なかった。
「けどもうちょっと待ってくれ。俺もそんな何回もやってられないからな」
「昨日はした」
「だから辛いんだって。そりゃ、お前は疲れなんか無縁なんだろうけど、俺は普通の人間だから、疲れるんだ」
「…………そう」
 天井よりもっと高い場所に視線をおきながら、有希は呟いた。


 俺は有希の顔を間近から覗き込み、そして軽く口付けた。
「勘違いするなよ。俺は嬉しいんだからな。ただ、ちょっと体の問題でできないだけでだな、それでもキスくらいならいくらでもできるし俺は嬉しかったわけだから……」
 何言ってんだ俺。頭に乗っけたメガネを探すかのように、すぐ近くにあるはずの言葉をひたすら探す。間抜け以外の何者でもない。
 頭がこんがらがって、今は支離滅裂な文章しか口から湧き出そうになかった。

「その、あれだ、俺は有希のことを嫌いになったわけじゃないし、大好きだぞ。それだけは確かだからな」
 おそらく、今の本心はこれだけだった。売るために作られた曲に出てきそうな安っぽい言葉が、まさか俺の口をついて出るとはね。
 有希は再びそう、と呟いてから、俺に視線を向けた。

「なら……キスをしてほしい」
 柔らかなアルトでそう言って、有希は目を閉じた。
1119-27:2006/07/19(水) 03:17:30 ID:UrhvxVWF
とりあえずここまでで。
何気に最初の1ブロックで、挿入すべき10行程度を投下してなかったので、初っ端がわけがわかんなくなってる……。
今度からちゃんと確認してから投下します。
112名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 03:22:38 ID:qZ7bodw6
>>9-27
萌えたぜ!!gj!!
113名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 03:46:14 ID:6N1UMEYp
>>9-27
てめえこの野郎!勃っちまったじゃねえか!
114名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 08:16:55 ID:WWhC8BIi
>>103
GJ!www
115名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 08:49:41 ID:FvW1oHA8
>>105
GJ! 今まで読んだSSの中で一番淫乱な長門だったキガスww いや、淫乱というよりやたらとキョンを求める長門、というべきか。とにかくGJ。
116名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 09:20:49 ID:p/sf4947
>9-27
寝起きに読んだのでキョンとシンクロ。
遅刻したw
117名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 09:48:13 ID:B7j9PNaq
>9-27
どういうきっかけでこんな展開になってるのか、すごく気になるんだが…
118名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 10:13:43 ID:L/AvheVI
>>105-111
GJ!!

・・・と、書き込んだところで俺は気づいてしまった。
そう・・・このSOS談、「盛大にオナニーをするための涼宮ハルヒのエロパロ談」のその大半のSSが
別に18禁板に投稿されなくてもいいのではなかろうか、ということだ。
そう、本来ならばフロイト先生もびっくりなほどの淫靡で猥褻な文字であふれていなければおかしい
のだが、どうやら俺はそこまでエロい男子学生とは認知されていないらしい。
というわけでこれ以上ないほどの爽やかな俺の魅力を、これからも伝えてほしい。
なんてったってハルヒとの蜜月な思い出は、そっと俺の胸に封印したからな。
って、いらぬ思考を働かせていたら無性にアイツに会いたくなってきたぞ。
いや、本当に会いたがっているのは俺のジュニアなのかもしれない・・・
119名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 10:17:50 ID:8SiVQ4Un
ここは21禁なんだよ。虚ン
120名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 10:38:48 ID:9Pxm0iLt
フロイト先生ねぇ...
121名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 11:08:33 ID:9opreKD3
前々から思ったんだが、ハルヒのSSって何でエロパロしかないの?
他のやつなら、エロと非エロの2つのスレがあるけど。
122名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 11:10:05 ID:EM+684MG
じゃあYou立てちゃいなよ!
人が来るとも思えんがな
123名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 11:20:05 ID:TKERpIc8
>>121
エロパロスレだけにあらず。
801スレもSMスレもハルヒSSだよ。
百合スレもSSオッケーなのかな?
124名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 11:20:20 ID:1cbq7wuL
>>104 同意 レズも801もSMも本番ありならそれぞれの板でやってほしい
125名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 11:47:51 ID:TRuFyMDn
SMスレまであるのってハルヒくらいか?
すごいな・・・。
126:2006/07/19(水) 12:03:02 ID:gLEv2iAO
※非エロです。


《私はいま*ここ*にいる。》
《聴こえる?》
――ああ。聴こえるよ…。


 『ブラッド・ミュージック』


「話がある。」
SOS団恒例の不思議探しパトロールを終えて、俺が家路につこうとした時、そう長門が言った。
「何だ、また涼宮絡みで問題でも起きたのか?」
宇宙人はごく微かに首を振って、否定のジェスチャーをした。
「私のこと、そして」
そして?
「あなたのこと」

二人で長門のマンションに行き、話を聞くことにした。飲むはじから注がれるお茶を飲んでいると、初めて長門の正体を聞いた時のことを思い出すな。話って何だ?
「現在、私の中でエラーデータが蓄積している。かつて私は世界改変を行った。現在のエラーもそれと同質のもの。
データの凍結を行っているが、エラーの増大が著しい。このままでは数日のうちに私が再び世界改変を行う危険性がある。
今度世界改変を起こせば、私が緊急脱出プログラムを設定する保証はない。」
えっと、俺がこっちの世界に戻れなくなるってことか?
「あなたの記憶を改変して、元の世界に戻るという意思を奪うことも有り得る。だが」
長門は俺の目をじっと見つめて続ける。
「私はその様な改変を行うのは、嫌。」
「……どうするつもりだ。」
それを消去するとかはなしだぜ、長門。おまえはエラーと呼ぶが、そいつはお前の感情なんだろ…。
「消去はしない。エラーデータを転送するインターフェイスを作成する。いわばもう一人の私。私のエラーデータはその私に送られる。」
ちょっと待ってくれ、この世界にもう一人のお前を作るってことになるのか?
「そう。だが、こちらの世界の涼宮ハルヒたちと接触することは避けなくてはならない。彼らとの接触がないような場所に私を作る必要がある。」
ただし、と長門は続ける。
「あなたとの接触は可能でなくてはならない。」
なぜだ?
「あなたが、エラーの原因だから。エラーデータの私にはあなたの存在が不可欠。」
長門は言葉を切った。心なしかうつ向き加減になる。顔が微かに赤いように見える。
…それで、どこにおまえのコピーを作るんだ?
「あなたの中。」
127:2006/07/19(水) 12:03:49 ID:gLEv2iAO
さすがに驚いた。俺の中だって?
俺の脳内にでも長門のコピーを住まわせるのか?俺の脳にはそこまでの容量はあるまい。哀しいが断言できる。
「あなたの白血球の遺伝子情報を、データ転送のメモリに使う。
細胞には、ゲノム配列を読み取る機構がある。それを改変し、書き込みの機能を加え、それを基板としてエラーデータを人格システムに構成する。私のエラーデータを全て転送しても、あなたの白血球のうち、ごく一部を使うに過ぎない。
あなたの身体に異常はない。あなたの中の私は、あなたの神経細胞に接続して、あなたとコミュニケートするだろう。」
「……」
「世界改変を防ぎ、かつエラーデータを破棄しないなら、これが精一杯の措置。」
「……」
「許可を。」
やれやれ。
世界を改変されるのは困るし、長門のエラー、いや、感情を消すのも嫌だ。それに比べたら、自分の白血球が改造されたからって、どうということないさ。長門が害はないと言うなら、害はないのだろう。
結局のところ、俺は長門を信頼している。それが全てだ。
「わかった。長門がそう言うなら、多分そうするのが一番いいんだろ。やってくれ。」
「……そう。」
長門は俺の腕をとると、静かに腕に噛みついた。前の時と同じで、全く痛みはない。
「エラーデータを転送。白血球の構造の一部を改変。…あとのことは、あなたの中にいる私に聞いてくれればいい。」
決して気のせいじゃない。そう言う長門は、ほんの少しだが、寂しそうだった。


長門と別れて、家に帰る。「それ」が聴こえたのは、俺が自分のベッドにもぐりこんだ時だった。
128:2006/07/19(水) 12:04:21 ID:gLEv2iAO
《聴こえる?》
――ああ。長門だな。
長門の声が、頭に直接響いてくる。

《私は*ここ*にいる。あなたと会って話がしたい。》
――どうすりゃいい?
《あなたの意識を一時的に*記号化*する。目を閉じて。》
俺が目を閉じると、自分がほどけていくような奇妙な感覚がした。そして、気が付くと俺は何もない空間にいて、そして――

目の前に長門がいた。

《やっと、逢えたね。》

長門は、俺の知っている無口な宇宙人とも、世界が改変されたときの内気な文学少女とも違っていた。服はいつもの制服だし、外見は変わらない。
だが、目の前の長門は、俺に会ったことが本当に嬉しそうで、にっこりと笑っていた。あの長門がだぜ?

《私は、感情そのものだもの。私を構成するデータは、あなたへの感情でできているの。喜びや、一人でいるときのさびしさや、あなたへの好意で。
あなたがいた世界の私は、それをエラーと呼んでいたでしょう?でも、今の私にはわかるわ。これは、エラーなんかじゃない。》
――俺もそう思うさ。えー、質問していいか?
《もちろん。》
――ここはどこなんだ?
《あなたの中よ。あなたの意識を*記号化*して私に接続したわ。あなたが見ているのは、私が構成した*思考空間*、うーん、そう、幻覚や夢のようなものかもね。
もちろん、私は実在しているし、あなたもここにいる。でも、それは情報としてなの。お望みなら…》

長門がそう言ったとたん、まわりの空間は、長門のマンションに形を変えた。教室を再構成したときみたいだ。俺と長門はテーブルをはさんで向かい合っている。長門はにっこり笑った。

《やっぱりここが落ち着くかな。ひとりだと寂しいだけなんだけど。でもあなたがいるから、ね。それとも、部室の方がいい?》
――いや、ここでいいさ。……こっちのおまえは、これからどうなるんだ?
《どうする、のほうが正確かな。ここでなら、私は、情報を操作して自分の望むことをなんでもできるから。そうね、とりあえず、あなたと***がしたいかな?》
――おいおい。
《なんてね。》
長門はくすくすと笑った。長門が冗談を言うと調子が狂うが、長門が笑っている姿は本当に可愛かった。思わず長門の髪をクシャッとなでると、長門はくすぐったそうに舌を出す。だが……
あちらの世界の長門はどうなるのだろう。最後に見た長門の寂しそうな顔が浮かんだ。あいつは、もう感情を持てないのか?少しずつだが、自分の感情を、表情に出すようになってきたところだった長門。あいつは、なにも感じなくなってしまうのか?

《いいえ。感情がなくなることはないの。これからだって、あっちの私は感情を持つ。あなたに好意を感じてもいる。だけど、それは穏やかなものなの。突然世界を改変してしまうような激しさはない。
でも、それは不幸なことではないわ。そのような持続性のある好意の感情を、愛情と呼ぶんじゃないかしら?それに、涼宮ハルヒの観察任務が終わったら、私はあちらの私と同期するつもり。そうでなければ、私を消去しても同じでしょう?》
――そうだな。
《ねえ、いまから学校に行かない?SOS団のみんなにも逢いたいの。私はSOS団のみんなも大好きだもの。》
――ここには学校があるのか?
《いまから構成するわ。外を見て。》

言われたとおりに外を見てみると、朝になっていた。太陽の光が差し込んでいる。窓の外の光景は、現実の世界と区別がつきそうもない。

《お弁当つくるね。こればかりは、構成しても味気ないから、自分で作ることにするわ。ふふ、キョン君の分も作ってあげるから、一緒に学校行こうよ。》
――俺は元の世界に戻れるのか?
《大丈夫、あなたの外の世界では、まだ一秒もたっていないわ。この*思考空間*では、時間はほとんど意味を持たないから。
あなたは、好きなときにここに来ることができるわ。私は、いつでもここであなたを待っているから。ねえ、また、図書館に連れて行って。》

長門はてばやく二人分の弁当を作った。エプロン姿の長門は、朝の光を受けながら幸福そうだった。いや、あるいは、この長門は、「幸福」という感情そのものなのかもしれないな。

《行こ。》
――ああ。
微笑む長門に手を引かれて、俺は学校へと歩き出した。

なにひとつ失われはしない。なにひとつ忘れられはしない。
それは、俺の血の中に、肉の中にある。
そしていま、それは永遠になったんだ。

終わり
129名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 12:49:20 ID:G+WA3AJc
ああ、なんと言うか、長門は長門である限り思考パターンは同じなんじゃないかなぁ。
消失の長門みたいに。何というか違和感ありすぎ。どっちかってと朝倉っぽい。
って、それが狙いか?
130名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 12:56:50 ID:WDOOdFff
「長門の感情だけを抜き出した存在」がそんなに陽気な存在とは、到底思えんのだが。
たとえば、キョンへの感情を素直に出せない苦しみ・悲しみが、長門の感情の中に見えないのが解せない。
少なくとも、俺の中の長門とは明らかに別人だ。
131名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 12:58:30 ID:o7x2if3z
長門の名を語った詐欺が増えています。ご注意ください。ホーム省
132名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 12:59:47 ID:6cAGPM5C
懐かしいね、チャプターハウス
133名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 13:00:29 ID:NfViZGti
>>129
俺はハイテンションユッキー再来か!?と思てた

こんないつでもどこでも長門とイチャイチャできる状態になったら
キョン駄目になっちゃうんじゃないか?とふと思った。
134名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 13:03:37 ID:auUwuHTA
朝倉の魔の手じゃね?
135名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 13:06:49 ID:3yP5DaAM
外形的には夢や妄想と変わらないものなあ…。
136名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 13:31:22 ID:JrqNj3dB
どうしてもこのまま永遠に夢の中ってバッドエンドが思い浮かんでしまう
137名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 13:55:37 ID:AKrJx7zL
むしろ落ちを見てホラーと思ってしまった
幻想ホラー?
138名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 14:45:45 ID:p/sf4947
(注意)を入れて欲しかった。
血肉を介して一つになる。カニバリズム風味。猟奇と紙一重は狙ったとしか。
してやられた。
俺には無理。行き場の無い不快感が残った
139名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 15:01:35 ID:QBow+iyW
>>124 だよな
俺にはレズは無理だ
140名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 15:02:18 ID:nqQo3kba
これは幸福とは言えないよな…
なんか後味悪ィ
141名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 15:26:38 ID:KRKksM/s
オレも長門への愛を込めて長門エロを昨日から執筆してみてるんだが、
導入部がめがっさ長くなり、そして肝心のエロシーンが書けないオレ…
そしてオチの方だけが書き終わる。
そしてなぜかギャグ風味。

入れた、出した、気持ちよかった、後は記憶がない、多分激しくしすぎたで逃げる。
ってのはもちろんダメだよな…
142名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 16:07:27 ID:Jsu1hMP/
>141 自分のプレイスタイルをそのまま克明に描写すべし
143名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 16:30:38 ID:it4ImvYA
最近nacちゃんみないね
144名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 16:36:46 ID:auUwuHTA
コテはずしちゃったんじゃないかな?
叩かれたから
145名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 18:13:39 ID:c7fA1iri
>129
長門から感情だけを取り去ったら
そこには
『感情を失なって残念がっている長門』
が残る。残らねばならない。

それはすなわち
長門から感情を分離する事は不可能である
という事の証明に他ならない。
146名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 19:42:32 ID:kvc5ovn7
>>121
俺はエロ専板立てたらそっち移住するよ。
147名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 19:59:12 ID:fTvgOP0k
少なくともエロパロ内にエロ専スレ立てたら重複で削除。
どうしても立てるならしたらばかピンク難民あたりか?
148名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 20:15:35 ID:5SUAsvgT
そういう意味の無いことはせんでいい。
149名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 20:22:07 ID:3yP5DaAM
スレ分けするならSS板ができた後で。
150名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 20:23:24 ID:EM+684MG
そんな板出来るの?
151名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 20:26:20 ID:HIXNwNO/
何で普通のSS創作板ってないの?
エロパロ21禁スレに普通のSSがこれだけ投下されるのは惜しい気もするし、場違いな気もする。
何しろ、十代はいないのが前提。w
まぁ、平気でここに入ってきて見ているんだろうけど。
152名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 20:31:05 ID:G6Uv7m58
>>151
創作文芸板・・・はちょっと違うか。
そもそもあそこは独自スレ立てるふいんきじゃないし・・・。
153名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 20:34:43 ID:kvc5ovn7
ままならねーですね
154名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 20:36:05 ID:Mrhoxets
運営あたりにお願いして作ってもらうか
155名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 20:47:51 ID:rrbiqk/g
運営が一つのスレの為に新しい板を作ってくれるとは思わないがな
それよりも自分たちで掲示板立てた方が良いと思うよ
156名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:03:42 ID:Q7xOO/FS
外部板つくればいいだろ。シャナスレみたいに
過疎りまくるだろうがな
157名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:09:59 ID:auUwuHTA
現状維持が機関の方針です
158名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:14:40 ID:ous6Z1ip
もうこのままでいいんじゃない?
下手に分断すると両方過疎りそうだし。
159名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:16:45 ID:nDTTkj+h
またエロだのなんだの言ってるのか
何度やれば気が済むんだ
160名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:30:46 ID:eZzcX+9Y
エロくてもエロくなくても
要するに面白ければおk
面白くなくても優しく見守ってやるくらいの度量の広さが欲しいものだ
161名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:48:16 ID:cNuy8mfe
必ずスレごとにこのネタが出てくるな・・・
162名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:49:58 ID:OR9y6b0B
ジャンルなんてどうでもいい
なんでもいいから読ませろよおおおおおお
163名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:53:36 ID:pAolIZhm
だからこれは情報統合思念体の罠だって
いちいち釣られるなよ
164名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:59:40 ID:ous6Z1ip
流れを変えようと前に投下した続きを考えてるものの、書き出しがまとまらない…
誰かそこにある銃で(ry
165名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 22:10:00 ID:kKO4HqOr
朝倉さん(*´Д`)ハァハァ
166名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 22:28:51 ID:FfPQwOuq
時間遡行の途中、うっかりキョンを落としてしまう朝比奈さん

時間平面と時間平面の狭間に落ちたキョンは気が付くと、甲○園球場にいた
3年前以上を遡ったキョンはそこで幼いハルヒと出会う

そのころ、現在では長門もキョンをロスト(3年前以上に彼女はいない)
古泉は勿論役立たず
朝比奈さんは激しく落ち込む

そしてついに朝比奈さんが単身狭間に飛び込む決意を…


―当該有機生命体の思考能力の限界を確認
167名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 23:15:29 ID:E40f2Ujj
長物を投下させていただきます。
14レスほどお借りします。
エロくないのは、お許しください。
168脱環/檻オンザデイ 1:2006/07/19(水) 23:16:42 ID:E40f2Ujj

  /檻

 冬が終わり、暗い時間が短くなる頃。
 心が踊るような出来事なんて殆ど無かった私の高校生活も、もうすぐ終わろうとしていた。
 思い出す事すら不毛で耐え難い三年間。ため息をついていた記憶だけが心にこびりついている。
 さらに言えば、他人よりも大分早く推薦で進学先を決めていた私にとって、ここ一月の授業はあらゆる意味で時間の無駄だった。
 途中でそこら中の窓を叩き割ってやろうかと思ったほどだ。代わりに自分のシャーペン三本で我慢したのだが。
 かと言って、そんな風だった高校生活が終わるに伴う開放感があるのかと言えば、そんな事は全く無い。
 私はもういい加減気付いていたのだ。
 これからの人生も、今までと同じように平凡で退屈で耐え難い時間が続いていく事に。
 誰かが数億回通った道を、私も同じように辿るのだ。
 窓に映る私の顔は、少しだけ大人になり過ぎてしまったように見えた。


 環/


「聞きなさいキョン! 今日の放課後は何と……」
「新春朝比奈さんファッションショーだろ?」
 登校してきたばかりの俺に機先を制されたハルヒは、口を半開きのままで固まっている。
 このアホっぽい表情を見るのもこれで八回目だと思うと、色々と感慨深いものがあるな。
「……あんたって、エスパーだったっけ?」
「違う。ついでに言うとフォークも曲げられないからな。トランプの絵柄も当てられんし、腹をノコギリで切られたら腸が出てくるに決ま

ってんだろ」
 ハルヒは何故かマニュアルに無い対応をされたファミレス店員のような表情をしたあと、そのまま黙って座り込んだ。
 その仕草が何となく引っかかったが、些細な事を気にしていてはやってられない状況なので、俺も黙って自分の席に腰を下ろす。
 鞄から見慣れた教科書を取り出し、教師に当てられる設問に丸暗記した答えを書き込んでいく。
 ちなみに一時限目は数学だ。昨日もその前も一限目は数学だった。しかも全部同じ内容だ。指導要網作った奴、表に出ろ。

 その後、昨日と同じおかずの弁当を食べ、一昨日と同じような会話を交わしながら、一昨昨日と同じような六限目が終了した。
 平たく言うと全部同じだ。ついでに言うとカレンダーの日付も毎日同じだった。
 日直の名誉のために言うが、めくる奴がサボっているわけでは決して無いぞ。
 俺が同じ毎日を勝手に八回も繰り返しているだけなんだからな。
169脱環/檻オンザデイ 2:2006/07/19(水) 23:18:34 ID:E40f2Ujj

 今を遡る事、俺の体内時計でおよそ六日前の事だ。
 自分が体育の集団行動よろしく今日という一日の上でその場足踏みを繰り返している事に気付いた俺が真っ先にした行動と言えば、
「長門!」
 勿論何でも知ってるアンドロイドに尋ねる事だった。もはや癖みたいなもんだ。
「……おそらく、涼宮ハルヒの能力が発現している」
 長門は本から目も上げずに、俺にそう告げた。何となく冷たくないか?
「私の観測時間は正常であることから、あなただけが何らかの特殊な力場に捉われている可能性が高い」
「俺だけ? 夏休みの時とは違うのか?」
「違う。あなたの意識だけが観測不能の特殊な時間軸に存在しており、今日の終わりと始まりが重なっていると推測される」
 じゃあ何か、俺一人だけが同じ一日をハムスターよろしくぐるぐる回ってるってのか。
「どうして俺が?」
「わからない」
 そっけなく言う長門は、やはり顔を上げない。何となく不自然な気もしていたが、この時は現状の把握で精一杯でそれどころではなかった。
 俺は何とか状況を自分の中で整理し、と言っても幼稚園のレゴブロック並にエッジの効いた整理の仕方だったが、改めて長門に尋ねた。
「ハルヒは俺に何をさせたいんだ?」
「わからない」
 ……何となく長門が怒っているような気がするのは、気のせいか?
「な、なぁ、長門。何かあったのか? その、調子が悪そうに見えなくも無いんだが……」
「別に」
 長門はようやく顔を上げた。黒い目の中には、確かに何の感情も窺うことが出来なかった。
「気のせい」

 まあそんな調子で途方に暮れながらも、放課後は二回目の朝比奈ファッションショーを楽しみ、起きたら明日になってますように、と先

祖に手を合わせながらご就寝した俺だったのだが、結局その願いは叶えられずに今に至る。

  /檻

「聞いた? 涼宮さん、また彼氏振ったらしいわよ」
「あぁ、あの可愛い一年の子ね。あの子、ずっと片思いしてたんでしょ。そんな子を一回持ち上げて叩き落すなんて、趣味悪ぅー」
「惚れた相手が悪かったわね。よりによってあんな女に……」
 はいはい。そうね。可哀想だったわね。でもしょうがないわ。面白くなかったんだもの。
 大体卒業間際になって付き合えって言われても、そんなに長く続くわけ無いでしょうが。
 いい加減、わざとらしい声量で聞こえてくる女子のお喋りに苛ついていた私は、体操着を持って立ち上がる。
 教室を出る間際、そいつらを睨みつけて黙らせるのも忘れはしなかった。
170脱環/檻オンザデイ 3:2006/07/19(水) 23:21:13 ID:E40f2Ujj

 環/

「ひぃーん! これはあんまりですよぉー!」
「大丈夫だってみくるちゃん! このぐらい全然平気よ! というか、さっきよりは大分マシでしょ?」
 部室の中からは朝比奈さんのエンジェリックボイスとハルヒの雑誌モデルだから、とか言ってヌードを撮る詐欺師のように下品な声が木霊してくる。
「おや、あんまり楽しそうではありませんね?」
 俺と同じような姿勢のまま廊下で茶を啜る古泉が、そんな言葉を掛けてきた。俺の中では通算四回目の台詞だ。
「別にそんなこたねぇよ」
「そうですか? あなたなら、もっと分かり易く喜んで涼宮さんを不機嫌にさせるような予感がしていたんですけどね」
 杞憂でしたか、と言って茶を啜る。最初は正にその通りだったので、ここは反論しないことにした。
 古泉はいつものファーストフードスマイルのまま、無言の俺を横目で見ながら肩を竦めていた。
「まあ、そうなった時のためにまた新しい企画を考えていますから、いざという時は是非ご協力をお願いします」
 そんな台詞も、三回目だった。

 ここ数日、と言っても実際は一日なのだが、俺はこいつに言われるまでも無く、色々とハルヒのご機嫌を伺ってきた。
 三回目は夜遅くまで市内探索に付き合ったし、六回目には歯を食いしばって映画にも誘った。しかも恋愛映画だ。
 もちろん朝比奈さんや古泉にも話を打ち明け、色々と協力してもらったりした。
 六回目の映画は古泉の仕業だ。念のためと言って差し出してきたホテルのペアチケットは、職員室のシュレッダーにぶち込んだ。
 しかし困った事に、俺以外の皆は当然と言うか何と言うか、次の今日になったら全て忘れているのだ。
 一から説明して納得させるのも面倒になった俺は、今回は誰にも相談していなかった。
 さらに何より困った事が、ハルヒが別段不満そうな様子を見せていないって事だ。
 市内探索の時も割と上機嫌だったし、映画も散々文句をつけてはいたが割と楽しそうにしていた。
 ……ちょっと挙動不審だったのは、まあ、体調でも悪かったんだろうさ。
 とにかく俺がどうやったら次の朝を迎えられるか、と言う手がかりは今の所ゼロであり、もう自棄になりそうな心境だったのだ。
 いっそ競馬で万馬券でも当ててみるか? そんで泡のようにパーっと使ってみたりしてな。
 両脇にはバニーガールを従えて、って、それじゃいつもとあんま変わんない……
「……古泉?」
 ぼんやりと視線を漂わせながら考え事をしていた俺は、隣の古泉を目に留めて、思わず声をあげた。
 古泉が口を半開きにしたまま、固まっている。普段あまり隙を見せないこいつにしては、尋常な様子ではない。
 ビデオを見ている途中に、知らずに肘で一時停止を押してしまったような違和感があった。
「おい、古泉」
「……何でしょう?」
 あれ?
「いや、お前今、何か変じゃなかったか?」
「おや、心外ですね。こう見えても一応身なりには気を使っているんですが」
 いつものように嫌味なほど様になる仕草で、自分の身体を確かめている。
「……? どこか、おかしいですかね?」
「いや、大丈夫ならいいんだが……」
 俺が疲れていただけかもしれん。何か変な想像してたしな。
 それからもちらちらと古泉の様子を確かめてはみたものの、別段おかしな様子は無いように思えた。 
171脱環/檻オンザデイ 4:2006/07/19(水) 23:22:43 ID:E40f2Ujj

「ふう。いい汗かいたわー」
 夕暮れの部室には、満足そうなハルヒの声と、朝比奈さんのすすり泣くような声が響いていた。
「うぅ……ひっく……もうお嫁に行けまひぇん、ぐしっ」
 散々言葉にするのは憚られるような衣装を着せられた朝比奈さんも、今では制服姿に華麗にチェンジしている。
 俺も何だかんだで途中から楽しんでしまったな。八回目なのに。さすが朝比奈さんだぜ!
 俺が心の中の親指を立てていると、長門の本を閉じる音が聞こえてきた。お開きの合図だ。
「そろそろ帰ろうかしら。ほら、みくるちゃん。いつまでも泣いてないで。大丈夫、明日は明日の風が吹くわよ」
 お前が言うなよ。
「……そうですよね、ぐしゅ、いつまでも泣いては、ひっ、いられません……」
 朝比奈さんは健気にも立ち上がる。ドキュメント番組としてNHKに提供したいほど感動的なシーンだ。
 しかし、立ち上がりかけた朝比奈さんは、中途半端な姿勢で動きを止めた。
 ……なんだ?
「朝比奈さん?」
「……何? キョン君」
「いや、今一瞬……」
 
 古泉と同じだ。やっぱりさっきのは気のせいじゃない。
 俺はここ一年散々ハルヒに引っ張りまわされたお陰で、全く生活に役立たない第六感的なものはそれなりに鍛えられたと思っている。
 部室を見渡すと、疑問符を浮かべながらこっちを見ているハルヒと、可愛らしく首を傾げる朝比奈さん。
 いつものにやけ面の古泉に、本を棚に戻す長門。いつも通りの皆が、いつも通りの事をしている。
 ……八日、連続で?
 何かがおかしい。いや、最初から何もかもおかしいのはわかっている。一日が繰り返すなんて、おかしさで言えば最上級だ。
 少し開いた窓から、本と本の間から、椅子の狭間から、床の木目から、違和感がはみ出し、垂れ流され、飲み込まれる。
 俺は思わず後ずさった。愛着も湧き、居心地の良かった筈の部室は、俺の知っている部室ではない。
「ちょっと、キョン? どうかしたの?」
 ハルヒが眉根を寄せながら俺に声をかけてくる。
 どうかしただと? こっちが聞きたい。何だって急にこんな事考えてるんだ俺は。
 皆いつも通りじゃないか。おかしいのは俺だ。同じ日を八回も繰り返す俺。俺に同じ日を八回も繰り返させるハルヒ。
 何の不満もなさそうなハルヒ。映画に誘った時の、無表情で黙り込むハルヒ。今朝俺がいつもと違う事を言うと、おかしな表情を見せたハルヒ。
 その後ろで、長門はじっと俺の目を見ている。ロボットのように感情の無いその瞳。
 心配そうにしている朝比奈さん。その隣に少し真剣な表情の古泉。今日になって少し変な仕草を見せ始めた二人。 
 違う。勘違いだ。八日間も勘違いをしている。
「お前ら、誰だ?」
 思わず口から漏れた声に呼応するかのように、俺と四人の間の空間に亀裂が走った。

 白い指が、そこから覗いている。
172脱環/檻オンザデイ 5:2006/07/19(水) 23:24:11 ID:E40f2Ujj

  /檻

 グラウンドを眺めながら、私はまたいつかの七夕のことを思い出していた。
 彼がいたであろう高校で三年間過ごしてみても、結局会うことはできなかった。
 卒業名簿を調べたり先生に聞いて回ったりもしたが、手がかりすらゼロ。
 あれは夢だったのではないだろうか、という考えが少し前からよく頭に浮かぶようになった。
 私はその度に首を振り、あの日を思い出そうとする。
 だけど、最近その思い出にも靄が色濃くかかり始め、私は大抵途中で思い出す事を放棄するのだ。
 そうして、毎週行なっていた不思議探索からも次第に足が遠のき、気付けば家の窓から町並を眺める日が多くなった。
 そんな退屈な毎日も、今の私にとっては毒にすらならない。

 環/

 何も無い空間に現れた指は、円を描くように動いた。指の軌道に沿って、空間がかさぶたの様に剥がれ落ちる。
「……長門?」
 そこから現れたのは、どこからどう見ても長門有希だった。
 いや、だって長門はそこに……双子?
「説明は後」
 俺に背を向けたままそれだけ言うと、いきなり現れた方の長門は目の前にいたハルヒの顔を鷲掴みにした。
「お、おい、何を……」
 ハルヒの身体が、スタンガンでも浴びたような勢いで痙攣し、そのまま崩れ落ちた。
 俺が絶句している間に、長門は残像が残るほどのスピードで古泉と朝比奈さんを両手で掴み、ハルヒと同じように昏倒させる。
 残っているのは、長門と長門と俺だけだった。
 始めから部室にいた長門は、突然現れた長門に追い詰められている。
「助けて」
 追い詰められている長門は、俺に向けて手を伸ばした。
 くそ、そんな声で言われたら、どうにかしなくてはならない気分になってくるじゃないか。
「おい、やめろ長門!」
 どっちも長門だが、そこまで考えの及ばない俺は、夢中で叫んだ。
 長門は俺の叫びには構わずに、俺の方に手を伸ばす長門の頭を掴んだ後、初めてこちらを振り返った。
「大丈夫。これは長門有希ではない」
 二人の長門の目が、俺のそれと重なっていた。
「信じて」
 その瞳の中には、確かな感情がある。それを見た俺は、もう頷くことしかできなかった。
 もう一方の長門は、最後まで俺を無感情な目で見つめたまま、その場に倒れ伏した。

「あなたで最後。朝比奈みくると古泉一樹はもう既に確保してある」
 長門がもう一度指を動かし空間を縁取ると、その先にぼやけたもう一つの部室が見えた。
 朝比奈さんらしき人影が、こちらに向かって手を振っている。
 だが、今はそれどころじゃない。
「長門。一体これはどういうことだ」
 部室の中には、四人の仲間たちが倒れ込んでいる。あんまり気分のいい光景じゃないな。
「あちらに行ってから説明する」
 長門は、倒れている四人の方を見ようとはしない。
「ここには、あまり居たくない」
 いつものように目立たない声が、かすかにぶれているような気がした。
「……そうだな」
 ここは、気分が悪いもんな。
173名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 23:26:48 ID:fJqf7/xp
支援……した方がいいのか?
174脱環/檻オンザデイ 6:2006/07/19(水) 23:28:23 ID:E40f2Ujj

「お久しぶりです……といっても、お互い今まで顔を合わせてましたけどね」
 長門に連れられて妙な空間を潜った俺を迎えたのは、さっきまでいた部室と全く同じに見える部室と、苦味三十パーセント増しの笑顔を向ける古泉と、わけがわからないと言った様子で辺りを見回す朝比奈さんだった。
「一体今度は何の騒ぎなんだ」
 俺の問いかけに古泉が首を横に振るのを見ながら、いつもの席に座り込む。
 それに続いて、長門が俺たちの視線を小さな身体一杯に浴びながら窓際に腰を下ろした。
「十三分前。私たちにとっては八日前の午前零時二十三分。オリオン座近辺に未確認の情報生命体の発生を確認した」
 毎度の事ながらさっぱり意味がわからんぞ、長門。前のカマドウマみたいなもんか?
「おそらく何者かの手によって発生した亜種だと思われるが、私は把握していない」
 要するにまたわけのわからん連中がハルヒにちょっかいをかけにきたんだろう。
「情報生命体は超新星残骸のエネルギーを利用し、十一分前の地球に転移。こちらがコンタクトを図る前に、涼宮ハルヒと接触。同時に、涼宮ハルヒとの接触を阻害するであろう我々四人に対して恣意的に作成された歪曲時空間平面への強制転移を実行した」
「と言う事は、我々が今まで過ごして来た八日間、いえ、八回の今日は、その歪曲時空間平面とやらの中の出来事なんですね?」
 長門は軽く頷いて見せた。古泉の話を鑑みるに、どうやら他の三人も俺と同じように一日を八回繰り返していたらしい。
「一日という決まったパターンを繰り返させるたのは、自身に掛かる負荷を軽減させるためだと思われる」
「成る程……しかも僕たちは、何かあっても涼宮さんの仕業だと思い込んでしまう癖ができてしまっていますからね。異変に気付きにくい」
「相互に思考パターンを補完し合う意味も有ったと考えられる。実際私が古泉一樹を確保した際、別軸の古泉一樹にもノイズが発生している」
「……ええっと、そのせいで古泉君が変な格好のまま動かなくなってたんですか?」
 俺の所でもアホみたいな面晒してたしな。珍しいものを見れてある意味幸運だね。情報何たらに感謝しないとな。
 古泉がなにやら複雑そうな笑顔でこちらを窺いながら続ける。
「長門さんも、我々と同じように閉じ込められていたんですか?」
 長門は再び頷く。
「統合思念体から情報が送られてきたので、現状を察知し、防壁を展開して極力干渉を防いでいた。しかし、空間プロテクトに思いの外手間を取られた」
 それで八日もかかったのか。いつもながら、長門がいなかったらと思うとぞっとするね。
「涼宮ハルヒを救助しに行く前に比較的プロテクトの弱いあなた達から先に確保した」
「……そうだ、ハルヒは?」
 何か足りないと思ったら、あの騒がしいのがいないじゃないか。
「この部屋の時間は実際の時間と同期している。あと三分程度でプロテクトを破ることが可能」
「……あいつ、大丈夫なのか?」
 要するに攫われたんだよな? あいつは強盗ぐらいなら逆に金を脅し取りそうなもんだが、さすがによく分からん生命体なんてのに攫われたっていうんじゃ、正直少し心配だ。
「大丈夫。存在反応は確認している。我々を切り離そうとした事から考えて、時間を掛けて涼宮ハルヒの情報を得ようとしている可能性が高い」
「それほど大物でもない、というわけですか」
「何だかよく分からないけど、涼宮さんは大丈夫なんですね」
 良かった、と豊かな胸の辺りを撫で下ろす朝比奈さん。この優しさ。やはり女神だ。
 俺が感動していると、長門が椅子から立ち上がった。
「……プロテクト解除確認。転移する」
175脱環/檻オンザデイ 7:2006/07/19(水) 23:29:36 ID:E40f2Ujj

 長門の小さな声と共に部室が崩れ、俺たちは明るい暗闇に投げ出されていた。朝比奈さんが腰にしがみついてくる。最高だ。
 周りを見渡すと、暗闇の中に無数の光が煌いていた。何だこりゃ? 宇宙? 一応地面は有るみたいだが……。
 足元を見下ろすと、本で見たような星座が幾つも描き出されていた。朝比奈さんが「綺麗……」と呟いているのが聞こえる。同感です。
「じゃあ、長門、古泉。俺と朝比奈さんは専門外みたいだから、頑張ってくれよ」
 俺はそれを眺めながら、ひらひらと手を振った。
 カマドウマもどきなら、俺たちの出る幕は無い。朝比奈さんと二人で宇宙旅行と洒落込むとしよう。
「いやあ……」
 しかし、返って来たのは、珍しく弱気な古泉の声だった。
「ご期待には、添えないかもしれませんね……」
「前言を撤回する」
 続けて聞こえてきた長門の硬い声と同時に、俺と朝比奈さんは振り返り、揃って絶句した。
「涼宮ハルヒの情報を得ようとしているわけではない」
 煌く星を背景にして俺たちの数百メートルほど前に浮かんでいたのは、カマドウマでも無ければバッタでも無い。テニスボールだった。
「涼宮ハルヒを、取り込もうとしている」

 東京ドーム四個分ほどの大きさのテニスボールが有れば、の話だけどな。

「……おい、なんだあれは」
 いつかのカマドウマが雑魚キャラだったとしたら、あいつはどう見てもラスボス、というか裏ボスだ。
「スイカじゃない事は確かなようですね」
 古泉が珍しく軽口を叩いた。やめろ。不吉だ。
「統合思念体との接続を強制解除された。プロテクトも再構築されている」
 長門までもがなにやら不吉な事を言い出した。
「かなり強力な情報生命体。力を見誤った」
 強いのは見れば分かる。少し転がるだけで俺たちはぺしゃんこだしな。朝比奈さんは半泣きになって震えていた。
「ど、どうするんだ?」
「撤退は不可能だと思われる。破壊するしかない」
 あれを壊すのか? 核ミサイルいるだろ。いやマジで。
 球状のそいつは、水で出来ているかのように透明で神秘的だったが、巨大な質量感は、俺たちを威圧して余りある。
 ……なんて、ビビってる場合じゃなかった。
「ハルヒは!? あいつは大丈夫なのか?」
 長門が球体を指差した。よく見ると、中心付近にうっすらとした影が見える。あれが、ハルヒか?
「涼宮ハルヒを弱らせ、情報創造能力ごと自らの内に取り込もうとしている」
「取り込むって……」
「涼宮ハルヒの存在は消え、代わりにあの生命体が進化の可能性を得る」
 ハルヒの代わりに、あんなボール野郎だと? ふざけんな。割に合わな過ぎんだよ。金塊百トンと球一粒じゃ、比べるのも馬鹿らしい。
「長門、古泉。何とかしてあの丸っこい奴に空の彼方までお帰り願うぞ」
「……そうですね。どっちにしろそれしか道は残されてないようですから」
 古泉の手には、バレーボール大の赤い球体が握られている。
「このような事態は思念体の意志としても、私個人としても非常に不本意」
 長門はいつも通りの無表情だ。それが却って心強かった。
「朝比奈さんは、安全な所で待っててください」
「え? で、でも…………うぅ、わかりました……」
 朝比奈さんは俺たちの視線を受けて、そのまま後ろに下がっていく。ぶっちゃけ俺も逃げたい。そもそも俺、何の役にも立たないし。
 まあ、でも、ここにハルヒがいても、同じ事言うだろうしな。
「よっしゃ! 全軍突撃ーーー!!」
 そう叫びながら俺たちが走りだそうとした途端、球体の表面がざわめき始めた。
176脱環/檻オンザデイ 8:2006/07/19(水) 23:30:40 ID:E40f2Ujj
  /檻

 まだ日が高い時間。
 高校最後の体育の時間ということで、各自自由に遊んでよし、とだけ言って、教師は準備室に戻って行った。
 男子達はパラパラと散らばって思い思いに身体を動かしている。
 女子の殆どは、そんな男子たちを見ながら何事か囁きあったり、大声で応援したりしていた。
 手に汗握るほどの事も無いスポーツごっこに僅かの興味も抱けなかった私は、いつものように退屈を持て余しながらベンチに座り込んでいた。
 冬は過ぎたといっても外はまだそれなりに寒く、冷えた風がジャージの襟を抜け、首筋を撫でるのは少し不快だった。
 風の後を追うように、後ろで一括りにした長ったるい髪が振り子のように揺れる。
 髪、切ろうかしら。
 そんな事を考えながら何となく視線を彷徨わせていると、校舎に通じる階段の上で、一人の男子が私の事を見つめているのに気付いた。
 まあこの容姿だ。自分が男から妙な視線で見られやすい事ぐらい自明の理として理解していた。 
 ……が、そういった視線が総じて不愉快極まりないのもまた自明の理である。
 二度と女と口をきけないぐらいのトラウマを残すような文句を考えながらベンチから立ち上がり、階段に向けて歩き出す。
 しかし、男子の顔の輪郭がはっきりわかる距離になると、私の歩みは急に止まった。

 あいつ、どこかで見たことがあるような気がする。

177脱環/檻オンザデイ 9:2006/07/19(水) 23:31:22 ID:E40f2Ujj

  /

「いぃ……?」
 球体の前半分の表面が立ち上り、盛り上がっていく。途中で分離したそれらは、無数の巨大な腕のようなものに形を変えた。
 無数の腕は、狙いを定めるように蠢き始める。気持ちわる過ぎるぞ。モザイク必須だ。
 やがてそれらは、探していた物を見つけたように、ピタリと動きを止める。
「……えっと、まさか、俺か?」
 球体に目のようなものは一つも見当たらないが、俺は確かに強烈な視線を感じていた。
「薄々感づいてはいましたが、あなたは本当に変わった人に好かれる体質みたいですね」
 古泉は本気で感心したような顔で俺をまじまじと見つめてくる。さすがの俺も、ボールに愛されたのは始めての経験だね。
「来る」
 長門が呟く。一拍時間が空いて、巨大な腕が爆発したような速度で迫る。
 全部、俺に向かって。
「って、ちょっと待て!」
 球体に耳は無く、俺の言葉はいっそ気持ちのいいぐらいシカトされ、巨大な腕は空間を錐で削るような鋭い音をたてながら視界を覆った。
 覚悟を決め、辞世の句を頭に八つほど並べていた俺の目の前に、小柄な身体が立ちはだかる。
「長門!?」
「大丈夫」
 いつもより大きな長門の声と同時に、俺たちの前の空間が捻じ曲がる。巨大な腕が、次々と轟音を立てながら捻れた空間に衝突した。
 気持ち悪! と思う間もなく俺の身体が衝撃にあおられティッシュのように飛び去りそうだった所を、長門が背中を踏んで留めてくれる。少し痛いんだが。
 衝突は止まない。身体を浮かせるほどの衝撃と砲弾のような衝突音で、俺の耳はいかれそうだ。
 顔をしかめながら顔を上げると、次々と襲い掛かる腕によって捻れた空間にヒビの様な模様が描かれ始めている。
 崩れた腕は、来た時と同じぐらいのスピードで球体に戻り、代わりに新しい腕がそこかしこから生え始め、次々と俺を狙って殺到していた。
 ヒビはいよいよ広がっている。俺の背中を踏みつける長門の足にも力が篭り始めていた。先に俺の背骨がやられそうだぞ長門。
 そして、背骨が割れる寸前の竹のような音を立て始めた時、不意に腕の襲撃が止んだ。
 見れば、俺たちと球体の真ん中辺りで赤いバレーボールが跳ね回っている。腕は途中から切断され、そこら中に飛び散っていた。
 古泉だ。
「流石に、あれを全部、というわけには、いきませんね」
 俺たちの右後方から、レーザーのような勢いで赤い弾が打ち出されている。今なら素直に言える。カッコいいぞ古泉!
「っ! 来ます! 長門さん!」
 球体からは、大きさそのものが五十倍ぐらいに膨れ上がった腕が二本ばかし俺たちに向かって伸びてくる。
 古泉の弾が幾筋もの穴を腕に開けるが、切断するには至らなかった。
「な、長門! あれはやばいんじゃないか?」
「そうでもない」
 長門は襲ってくる二本の腕に合わせるように、白くて細いユリのような腕を肩の高さまで掲げる。手を前に開いたままで。
 今度は空間に何も発生しない……まさか、と思う間もなく、球体の腕と長門の手にひらが凄まじい轟音を響かせて衝突した。
 どうしてあるのかも分からない空気が激しく振動し、凄まじい勢いで俺の髪を舐め上げる。
 思わず目をあげた俺は、流石に愕然とした。
 果たして、長門の白百合の腕は、ビルの側面のような腕を押さえながらも、ピクリともしていなかった。
 寧ろ、球体の腕の方がさっきの朝比奈さんのような勢いで震えだし、かと思えば溶け始めた氷のように幾条もの線が走る。
 長門が思いっきり腕を振り上げると、冗談みたいな勢いでビルのような腕は途中からへし折れた。
 凄すぎる、という感想を抱きながら何気なく前を見ると、巨大な腕の影から、捻れるような軌道を描いてもう一本細い腕が俺に向かって
くるのが見えた。
「危ない!」
 古泉が叫ぶ。長門が僅かに目を見開いて掴んだ腕を放そうとするが、溶接でもされたように巨大な腕は離れない。
 腕は目の前に迫る。非力な俺には、何も出来ない。すまん皆。せめてハルヒだけでも……。
 しかしその腕は俺に辿りつこうとした直前、球体から伸びたイカの足のような触手に捻じ伏せられた。
 
178脱環/檻オンザデイ 10:2006/07/19(水) 23:32:24 ID:E40f2Ujj

「どうなってるんだ?」 
 球体の背面から生えた腕か何かよく分からない突起のようなものが、俺に向かおうとする腕を次々と押し留め始めた。
 球体は、伸びすぎた針が絡まったウニのような状態だ。やはり気持ち悪い。
 何だよ、仲間割れでもしてんのか?
「……失策」
 長門が腕を切り離しながら、床に這いつくばった俺を見下ろしてきた。
「あなたをあの腕に渡すべきだった」
 いや、確かに俺は役に立たないが、流石にそこまでハッキリ言われると泣きたくなってくるぞ。
「そうではない」
 長門はいつもより機敏に首を横に振った。
「あなただけを狙っていた事から考えて、おそらく先ほどの襲撃は涼宮ハルヒの意志によるものと思われる」
 あいつはよっぽど俺のことが嫌いなのか。
「今発生した器官は、生命体自身のもの。あなたが腕に捕まる事を阻止しようとしている」
「……つまり、どういう事だ?」
「あなたが腕に捕まる事により、自身に何らかの影響を及ぼすのではないかと危惧している」
 それだけ言うと長門は自由になった右手で、シャミセンを持ち上げるように手軽く俺の襟首を引っつかんだ。上半身が浮き上がる。
「な、長門、何を……」
「このままでは私達の方が先に疲弊する可能性が高い」
 視界の隅では、古泉が膝をついて息を荒げている様子が見える。
「あなたに賭ける」
 それだけ言うと、長門は俺を引きずったまま八倍早送りみたいな速度で走り始めた。
 球体に向かって一直線に。

  /檻

 再び駆け出そうとする私の目の前には、いつの間にかさっきの女子共が立ちはだかっていた。
 目には剣呑な光が宿っている。
「どこ行くのよ。今授業中なんだけど」
 先頭の女が、何やらわけのわからないことを言い始めた。邪魔だ。
「あんたの変な行動、妙にムカつくのよね。何? ちょっとモテるからって、いい気になってるわけ?」
 私は取り敢えず先頭の奴の鼻っ柱をぶん殴った。
 そこら中から悲鳴が上がる。そんなに騒ぐぐらいなら、最初から喧嘩なんか売ってこなければいいのに。
 私はそいつらを睥睨しながら、「邪魔」と正直に答えた。
 女子連中は顔を上げると、一斉に私を押さえ込もうと手を伸ばしてくる。
 幾本もの手の向こう側で、さっきの人影がこちらに向かって駆け出しているのが見えた。
179脱環/檻オンザデイ 11:2006/07/19(水) 23:33:14 ID:E40f2Ujj
  /

 しかし長門の足は、十メートルも進まないうちに止まらざるをえなくなった。
「長門、上だ上! 右も!」
 こちらの動きを察知したように、球体の影から数十本もの触手が伸びる。
 上から下から左から右から、とにかくあらゆる方向から俺たちを襲ってきた。
 長門は慣性を無視したアクロバティックな動きで迫る触手を避け、弾き、掴んでちぎる。しかし、きりが無い。
「……っ」
「長門!」
 死角から現れた触手に、長門が弾き飛ばされる。俺の襟首を掴んでいた力が消え、何も無い地面に顎を打ちつけた。
 俺の方に伸びていた触手の殆どは、追い討ちをかけるような勢いで長門の方に急カーブを描く。
 こいつら、俺じゃなくて長門を狙ってやがるな!
 俺は慌てて立ち上がると、長門に駆け寄ろうとした。しかし、
「キョンくぅーん! 危なーい!」
 そんな子犬のように可愛らしい声が聞こえたかと思うと、背中に柔らかい重力を感じてその場に引き倒される。
「あ、朝比奈さん!? 何でいきなり……」
 俺たちの上を、気味の悪い触手がホームラン狙いのスイングで掠めていくのが見える。鈍く空気を揺らす音が一瞬遅れて聞こえてきた。
 ……立ってたらやばかったな。
「助かりました……って、朝比奈さん! こんな所にいたらそっちが危ないですって!」
 朝比奈さんは小刻みに震えながら、俺の腰にしがみついている。
「うぅ、ぐし、も、もうどこでも、うぅ、危ないのは一緒ですぅ……」
 後ろを見ると、着々とその数を増やし続ける触手が、そこら中の空間を出鱈目に走り回っている。まるで見境無しだ。
 古泉がふらふらになりながら、その内のいくつかを撃ち落していくのが見えた。
 俺が安心させるように朝比奈さんの背中をさすっていると、触手を振り切った長門が目の前に跳んでくる。
 制服は所々やぶけ、生々しい傷口がそこかしこに出来ていた。
「長門、お前怪我を……」
 長門はそれには答えず、さっき俺にしたように朝比奈さんを引っつかむと、その身体ごと古泉に向かって緩やかに放り投げた。
「ひぇぇ〜!?」
 ドップラー効果で小さくなっていく叫び声。古泉は見事に朝比奈さんをキャッチすると、そのまま背中に庇う。
 長門はそれを確認すると、再び俺の襟首を掴みあげる。俺の首が僅かに絞まった。
「走る」
 宣言通り走り出す長門。横では凄まじい勢いで星々が流れ、そして正面には巨大な触手が迫る。
 長門は一つも躊躇せずに星座を蹴り上げた。俺たちを吹き飛ばそうとした触手を飛び越し、後ろの触手に飛び乗る。
 その上を滑るように加速する。か細い腕が一本、俺たちを助けるかのように伸びてきたが、途中で触手に巻き込まれ、砕かれた。
 後ろから轟音が響いた。振り返ると、それまで無軌道に暴れまわっていた触手が、一斉に俺たちめがけて襲ってくる。
 しかし、それが俺たちに届く事は無い。
 大きな赤い光が指揮者の振るタクトのように視界一杯鮮やかな軌道を描くと、次の瞬間、触手は全て細切れにされていた。
 光はやがて人型になると、その場に座り込む。それでも古泉は顔を上げると、いつもの笑顔でこちらに向かって手を振った。
「行ってきて」
 いつの間にか俺は、細い二本の腕に抱えあげられていた。長門は俺たちを守るように背中を向ける。
「もともとこの生命体に涼宮ハルヒを取り込む程のキャパシティーは無い。だからこそ涼宮ハルヒは仮眠状態で弱体化させられている」
 捻じ曲がった空間の前に、幾千もの触手が蠢いている。
「彼女を、起こしてあげて」
 長門は一度だけ振り返ると、俺の唇を冷たい指でなぞった。
 そして顔を前に戻し、いつもよりもあからさまに険しい声を発する。
「この生命体は、非常に不愉快」
 空間が唸りを上げ、数百の触手がはじけた。その向こうには、飛び跳ねる赤い弾と、走り回る朝比奈さんが見える。
「……ああ」
 俺の身体は腕に連れられて球体の中にめり込んでいく。
「任せとけ」
 あいつを起こすのは、割と得意なんだ。かなり不本意だけどな。

180脱環/檻オンザデイ 12:2006/07/19(水) 23:34:12 ID:E40f2Ujj

  /檻

 男子は真っ直ぐに私の方に向かって駆け出してきた。
 私を押さえつけていた女子達は、いつの間にかいなくなっている。
 しかしそんな事は、今の私には全く気にならなかった。
 男子は顔を上げた。私の胸はざわついている。
 私は、彼に尋ねる事にした。
「あなた……」  

  /

「……あなた、ジョン・スミス?」
 北高のグラウンド。目の前のハルヒは、俺の知っているハルヒとは少しだけ違う。
 背は高く、顔つきも大人っぽい。長い髪は、いつかのように後ろで一本に束ねられている。
「そうだ」
 俺は少し見蕩れて、答えた。

  /檻

「そうだ」
 目の前の男子は、私の問いかけにそう答えた。
 どう見ても私より年下だ。顔つきはまだ少し幼く、未熟さを残していた。だけど、その顔はやはり見たことのあるような気がした。
 私の周りの世界が、一瞬色づく。不思議な事は、確かにあったのだ。
 しかし次の瞬間には、色褪せていつもの色に染まっていた。
「何で、今頃……」
「……」
「何で今頃になって現れんのよ! もう高校生活も終わりなのよ! ようやく最近あきらめがついてきたってのに!」
 楽しい事をあきらめ、人並みに生きようとし始めていた私は、中途半端なままで足を止めていた。
 それは、今も。

  /

 ハルヒの顔は歪んでいた。いつもの無駄にワット数を上げっぱなしの瞳は、落ち着いた色に変わってしまっている。
「高校生活、何も無かったのか?」
「何にもありゃしないわよ! 不思議な事も、心躍るような事も、あんただっていなかった……」
 学校には、グラウンドの喧騒と教師の声が静かに響いていた。冷たい風が、かすかに音をたてながら踊っている。
「文芸部室には、行かなかったのか?」
「そんなもんうちの学校には無いわよ」
「可愛らしい上級生を見つけなかったのか?」
「私の目に留まる様な子はいなかったわね」
「変な時期に転校してきた奴は?」
「私の学年に転校生なんていないわ」
 ハルヒの長い髪は、戸惑うように揺れていた。
「お前の席の前に、アホ面下げた男子生徒はいなかったか?」

  /檻
  
「は? 何よそれ。男も女も、大抵みんなアホ面だったわ!」
 私がそう答えると、ジョン・スミスは一瞬苦い顔をした。
 何よこれ、心理テストか何か? そんなもん、雑誌の記事だけで間に合ってるわよ!
 私が憤っていると、ジョンはいきなり私の手を掴んで、駆け出した。
「ちょ、ちょっと、どこ行くのよ!?」
「決まってるだろ」
 彼は振り向かない。だけどどこか、楽しそうに見えた。
181脱環/檻オンザデイ 13:2006/07/19(水) 23:34:58 ID:E40f2Ujj

  /

 コンピ研の隣にあったのは、『備品倉庫』と名づけられた空き部屋だった。
 しかし、そんなことは関係ない。
 俺は鍵の掛かったぼろい扉を蹴り壊し、埃だらけの部屋の中に足を踏み入れた。
「……あんた、器物破損で訴えられるわよ」
 やかましい。お前はそんなマトモな事を言うな。
 俺は窓を開けると、部屋の空気を入れ替える。
 古い教科書や、何組かの椅子と机が壁際に押し込められ、部屋の中央には古びたロッカーが幾つも積み上げられている。
 まったくもって嘆かわしい有様だね。こんなんじゃ、朝比奈さんのお茶を美味しく頂くスペースもありゃしない。
 ああ、まったくもって、
「嘆かわしいぞ、ハルヒ」

  /檻

 ジョンは窓を背にして、私の方に向き直った。
「お前、忘れちまったのか?」
 ジョンはやれやれと言った様子で、肩をすくませる。何だか無性に苛つく仕草だった。
「忘れちゃいないわよ! 宇宙人も未来人も超能力者も異世界人もいるって話でしょ!?」
 忘れなかったからこそ、結局今でも諦めきれずにいるのだ。
「そっちじゃない」
 いつの間にか、ジョンは私の目の前に立っている。鼓動が早まるのを感じた。
 私の肩に手において、彼は続ける。
「いいか、もう一度だけ言ってやる。耳の穴かっぽじってよーく聞いとけよ」
 彼は一瞬視線を彷徨わせていたが、やがて大きく息を吸い込むと、学校中に響き渡るような大声を張り上げた。

「世界を大いに盛り上げるためのーー!!」

 窓ガラスがびりびりと音を立てる。埃がそこら中から飛び上がって、まるで雪の様にも見えた。

「涼宮ハルヒの団を! よろしくーー!!」

 唖然としている私の唇が、柔らかいもので塞がれた。
182脱環/檻オンザデイ 14:2006/07/19(水) 23:35:38 ID:E40f2Ujj

  /

 俺はもう取り敢えず夢中だった。正気に戻ったらそのまま窓から飛び降りてしまいそうだったからだ。
 さり気なく手を回してハルヒの髪を撫でているのも、まあ一時の気の迷いということで勘弁してやらんでもない。 
 しかし、当のハルヒは勘弁してはくれなかったようで、俺のがら空きのボディーに、えぐるようなジャブが突き刺さった。
「うっ!」
 俺は思わず唇を離し、床にへたり込む。
「……あんたねぇ」
 ハルヒは凄い目で俺を見下ろしている。瞳には、いつも以上の輝きが見て取れた。
「こぉのエロキョンが! いきなり何してくれてんのよ!」
「いてっ! ちょ、ちょっと待てハルヒ、色々と事情がだな!」
「事情も発情も無いわよこのバカ!」
 亀をいじめる子供も真っ青のいきおいで俺を蹴り倒すハルヒ。
 いつの間にやら、背は縮み、髪も短くなっている。俺のよく知っている涼宮ハルヒだった。
 ……少し惜しい事をしたな。写真でも撮っきゃ良かった。
「……あら? そう言えば、ここってどこなわけ?」
 部室……では無い。周りの風景は消え、代わりに薄く青い空間がどこまで広がっている。
「おかしいわね。今さっきベッドに入って寝てたと思うんだけど……また、変な夢なわけ?」
 そうだ! こんな所で暢気に座り込んでいる場合じゃない!
「ハルヒ!」
「な、何よ」
 俺は立ち上がり、もう一度ハルヒの肩を掴む。ハルヒの顔が微妙に赤いが、今はそれどころでは無いので気にしない。
「SOS団の皆がピンチなんだ」
「……何ですって?」
 ハルヒがぴくりと形のいい眉を動かした。
「大ピンチだ。変な奴に襲われている。長門は身体中に傷をつけられたし、古泉は思いっきりぶん殴られてる」
 ハルヒの顔が見る見るうちに険しくなっていく。
「朝比奈さんはさめざめと泣いているし、俺にいたっては殺されかけた」
 皆、大丈夫だろうか。
「……行くわよ、キョン」
 ハルヒは俺の手を掴むと、走り出した。いつの間にか、まばゆい光が前方に出現している。
「どうするつもりだ、ハルヒ!」
 光の中に飛び込みながら、俺はハルヒに大声で尋ねる。
「決まってんじゃない!」
 ハルヒは唇を凶悪な形に捻じ曲げて、笑っていた。多分俺が小学生だったら号泣していただろう。
「そいつをぶっ飛ばすのよ! オリオン座辺りまでね!」
183脱環/檻オンザデイ 15〈終〉:2006/07/19(水) 23:36:28 ID:E40f2Ujj

 光の中に飛び込んだ俺は、例によって布団から床に打ち付けられた事により目を覚まし、暫く人生について考えをめぐらせた後、取り敢えず長門に電話をかける事にした。
 長門によると、どうやらハルヒは内側からあの丸っこいのを吹き飛ばし、俺たちはめでたく正常空間に帰ってこれたそうだ。
 流石にあんなボール野郎では、ハルヒは荷が重すぎたらしい。今頃星空の彼方でおいおいと泣いているに違いない。同情はしないけどな。
 俺は礼を言ってから電話を切ると、続けて朝比奈さんと、ついでに古泉にも電話をかける。
 あの二人にも散々助けられたからな。
 俺がひたすらに礼を言うと、朝比奈さんは少し恐縮したようにしながらも、「無事で良かったです」とホットミルクのような声を聞かせてくれた。
 古泉は寝起きとは思えないほどさわやかに「礼には及びませんよ、これも仕事のうちですから」とからかうように言ってくる。
 その後、俺は携帯を充電器に差し込むと、二度寝するために布団に潜り込んだ。
 今度はいい夢を見られますように。

 またしても一睡もできなかったけどな。
 寝ようとすると、ハルヒに殴られた腹がずきずきと痛んで俺の瞼を無理矢理こじ開けてくるのだ。寝ても醒めても迷惑な女だ。
 というわけで俺は、いつの日かエスカレーターを設置してやるという野望を抱きつつ、猫背になって坂道を登り続けていた。

 教室に入ると、ハルヒはいつもの格好で、いつもより少し難しい顔をしながら窓の外を見つめていた。
「よう。昨日はよく眠れたか?」
 俺は鞄を机にかけ、横向きのまま椅子に腰を下ろした。
「まあまあね。何か変な夢を沢山見た気がするけど」
「……どんな夢だった?」 
「それが……」
 ハルヒは、開きかけた口を慌てて閉じた。
「何であんたに一々そんなこと言わなきゃいけないのよ!」
 ハルヒは俺に向かって舌をだしてくる。ガキっぽい奴だ。昨日の大人っぽいハルヒはどこに行っちまったんだ。
 世の無常についてブッダとタメを張るぐらいの悟りを開こうとしていた俺に、ハルヒがいきなり笑顔になって顔を近づけてくる。 
 引き上げられた唇を見て、昨日のハルヒが頭をよぎったが、俺は首を振ってそれを掻き消した。
 それでも、唇に残る柔らかさは、昨日の夜から消えやしなかったのだが。
「ねぇ、キョン! 今度天体観測でもしましょうよ! 誰にも見つかってない星を見つけて、ハルヒ星っていう名前をつけるの!」
 最悪なネーミングだな。
「よし! そうと決まれば、早速望遠鏡をゲットしに行くわよ! またみくるちゃんに一肌脱いでもらおうかしらね!」
 大声で喚くハルヒの瞳は、それこそどっかの恒星のように燃え上がっている。
 俺はため息をつきながら、まあこいつはこっちの方がいいのかもな、なんて事を考えていた。


 ちなみに、後日ハルヒは本当に新しい星を見つけ、俺たちはまたしてもバカ騒ぎに巻き込まれるのだが、それはまた別の話だ。
184名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 23:38:51 ID:E40f2Ujj
すいません。15レスになってしまいました。
お付き合いいただいた方、どうもありがとうございました。
では、また名無しに戻ります。
185名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 23:40:23 ID:CwVPNbL5
GJ!
>>182ラストのハルヒのセリフが最高w
それにしても面白い謎解きだわな。いい感じにストレスなく読めた。
186名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 23:40:53 ID:nDTTkj+h
谷川仕事しろ!

定型はともかくすごい完成度高かった
読んでて楽しー
187名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 23:41:22 ID:fJqf7/xp
タイトルがシャレてるねw
あと、途中の擬似宇宙空間の描写が凄かった。様子がリアルに想像できそうな、
詳細な書き込み。GJ!
何やら最後に次回作へのフラグも立っている様だし、楽しみにしているよ。
188名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 23:48:07 ID:OO12zIIp
凄く面白かった!www
なんか想像出来て怖いって言うか・・・アニメみたいに動いてるって言うかw
戦闘シーンや、普通の会話もそれぞれを上手く捕らえていて読ませるな、と思ったw
GJ!w
189名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 23:51:16 ID:2rroyP67
凄え完成度で釘付けになった!
掛け値なしのGJ!!
190名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 23:56:09 ID:ous6Z1ip
SSが投下されないから、少し前の小ネタの続きを書いてる間にかなりいいものが投下されてた。
今出したら恥をさらすだけなので引っ込んでくる。
>>184
頭の中でハルヒやキョンがぐりぐり動く。 キョンの言い回しとかもいい感じで意見の言いようが無い。
とりあえず先生、いいものを読ませていただきました。
191名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 23:56:22 ID:EM+684MG
長編を投下させてもらいます。
数スレもらいますのでご了承ください。
今回は、まだエロ無しなので気に入らない人は読み飛ばしてもらっても結構です。
192涼宮ハルヒの逃避:2006/07/19(水) 23:57:09 ID:EM+684MG
私の名前は、涼宮ハルヒ。私は、宇宙人、未来人、超能力者、またこの世の不思議や謎を探求してきた。
それは、このツマラナイ世界に飽き飽きしていたからだ。
いや違うわ。本当は私は、普通過ぎる自分が歯痒くてつまらなくて、未知の存在に逃避しているだけだったんだ。
幼い子どもが、飛行機のパイロットに憧れるように…。

その日、私は、進路指導と称して岡部に呼び出されていた。そのおかげでSOS団の活動に遅れてしまった。
まったく、へたな進学校を謳ってるこの学校の校風のせいで、ずいぶん話が長引いてしまったわ。
二束三文にもならない話を延々と続かせやがって、おかげで今日計画していたみくるちゃんの新コスチューム
披露会が遅れちゃったじゃないの。みんな、ちゃんといるかしらね?
まあ、大丈夫か。団長が遅れたからって、帰る不良団員はあいつぐらいしかいないし。
その、あいつも最近は団員としての心構えが出来てきたようだしね。

ん?部室から何か話し声が聞こえるわね。この団長様が不在だというのに一体何をしているのかしら。
まったく、ついさっき褒めたばかりだというのに…やっぱり、まだまだなってないわね。
しかし、正直普段あたしがいない時にどんな話をしているのか興味がある。折角だし、聞いてみましょう。
そうして、私はドアに耳をすませ、部室の会話に耳を傾けた。

今思えば、私はここで何の気なしにいつも通り部室に入るべきだったのだ。
この時はまだ、私自身が特別な存在だとは考えも、思いもしていなかったのだから。


        『涼宮ハルヒの逃避』


ふー、静かだな。あいつがいないだけでこんなに静かになるものなのか。
たまには、こんな静かな時間も必要だろう。
どうせ、もうすぐしたらあのドアを蹴破るような勢いで我等が団長様がお見えになるだろう。
そうなれば、静かな空間など望むべくもない。
ならば、今俺に出来ることはこの限られた平和を噛み締めていることだけだぜ。

「あ、キョン君もうお茶ありませんね。今、お替りいれますね」

そして、ここにおられますわ、俺のマイスィートエンジェル朝比奈さんだ。
奇跡的に愛らしい童顔にメイド服をブレンドさせ、今日も甲斐甲斐しく動き回っている。
朝比奈さん、俺はそんなあなたを見ているだけでも、毎日この部室に来る意味があるってものです。

「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」

うむ、美味い。まあ、朝比奈さんがいれたものならたとえ水道水でも美味いに決まってるがな。
この一杯のために今まで生きてきたといっても過言じゃないだろう。
193涼宮ハルヒの逃避:2006/07/19(水) 23:57:43 ID:EM+684MG
「それにしても、涼宮さん今日はずいぶん遅いですね」
おいコラ古泉。人が折角、幸せに浸っているというに水を差すんじゃない。

「あいつなら、進路指導だ」
「そうですか。それなら、もうしばらくは来ないでしょうね」

古泉の言う通りだ。今頃は、指導室で岡部と白熱した言い合いをしていることだろう。
まったく教師連中にも同情するね。あいつはあれで成績はいいからな、教師連中も有名大学に進んでもらいたいと考えてるのだろう。
まあ、そんなことあいつに言い聞かせられるとは、とても思えんがね。
あいつなら、卒業後「アトランティスを探しに行くわ!!」とか言って、日本を飛び出しかねない。

……(ブルブル)やばい、あいつなら本気で言いかねない。しかも、その場合、真っ先に被害を被るのは俺だろう。
冗談じゃない、俺は日本語が通用しない地域で生活する気なんてないね。

「大丈夫ですよ、日本を離れてみるのもいい経験ですよ」
「人の心を読むな。変な気遣いをするな」

まったく、こいつは…。実は、人の心も読めるんじゃないのか。油断も隙もないぜ。
試しに、悪口でも言ってみるか?やーい、ばーかばーか、このホモ野郎。

「失礼ですね。あなたは、すぐ顔に出ますから」

………まあいい。今日のところは引き下がってやるぜ。そこ、情けないとか言うな。これは、戦術的撤退だ。
一般人である俺に何を期待しているんだ。


「それはそうと古泉、最近本職の方はどうなんだ?」
「おや、本職とは?」
「はぐらかすな。機関とかいうところのことだよ」
「これは失礼を。しかし、どう話していいものやら。
 いえ、そうですね…あなたにはお話しておくべきかもしれませんね。」

なんだ、やけにもったいぶるな。まさか、また何か起こったのか?

「いえいえ、むしろその逆ですよ。最近の涼宮さんの心はとても落ち着いています。
 つまり、涼宮さんの世界への改変力も随分弱まってきたということです。
 閉鎖空間へ狩り出されることもほとんどなくなりましたよ」
「それは、いいことなんじゃないのか?」

ハルヒのあのとんでもパワーがなくなっていっているのだ。こいつら機関に取っては、諸手を振って喜ぶことだろう。

「ええ、僕たちにとってはそうですね」
「…なんだその言い方は、言いたい事があるならはっきりと言え」
194名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 23:57:45 ID:l6f19+Iu
>>191
数スレ・・・・スレ!?!?!?!?
そんな超大作を・・・・
195涼宮ハルヒの逃避:2006/07/19(水) 23:58:48 ID:EM+684MG
>>194
間違えた、5レス程ですorz
196涼宮ハルヒの逃避:2006/07/19(水) 23:59:24 ID:EM+684MG
ったく、こいつはなんでこういう回りくどい言い方しか出来ないんだ。
話しているこっちが疲れるぜ。

「では、言わせてもらいましょう。その前に、涼宮さんが僕の所属する機関やその他の勢力に
 監視されているのは何故でしょうか」

なんだ?そんな当たり前のことをいまさら聞いてきてどうするってんだ。

「それは、ハルヒの力のせいだろう。あいつの思ったとおりに世界を変えるとかいう…」
「そう、あなたの言うとおりです。その力が涼宮さんが監視されている理由です」
「古泉、俺ははっきり言えと言ったはずだ」

古泉はお得意の両手を肩に上げてやれやれといったようなお馴染みのポーズを取った。…なんかむかつくな。

「わかりました。では、言わせてもらいましょう。機関の総意としてはこれからは涼宮ハルヒの力は徐々に弱くなっていき、
 やがては消えるだろうという考えが大勢を占めるようになってきています。
 もちろん、僕の所属する派閥もその考えに移ってきています」
「…………」
「わかりますか?つまり、機関は涼宮さんを既に多少の力を持った。唯の女子高生と見ているということです」

古泉の言いたいことはわかる。ハルヒが機関や情報統合思念体、未来人から目を付けられているのは、
ハルヒのとんでもパワ−のせいであろう。それが、なくなってしまえば機関にとっては、
ハルヒはそこらにいる、ただの少女と変わりはしないということだろう。

「お前の言いたいことはわかる。でも、それがどうしたってんだ?
 本来の落ち着くところに、落ち着いただけだろう」

俺が、そう言うと古泉は盛大に溜息をついてくれやがった。
何だ、何か俺は間違ったことを言ったか。

「やっぱり、あなたはよくわかっていないようですね」
悪かったな…あいにく頭の出来はそれほど良くないんだよ。

「単刀直入に言います。機関は、このまま涼宮さんの力が消失するという事態になれば見切りをつけるということです。
 わかりますか?それはつまり、僕がこの場所にいるという理由がなくなるということと同義だということです」

古泉の言っていることが理解できない。いや出来ているんだ、ハルヒの力がなければ監視する必要はない。
それは、つまり監視に当たっている者の存在も必要なくなるということだ。

「…だが、まだハルヒの力はなくなったわけじゃないんだろ」
「その通りです。しかし、それも時間の問題だろうというのが我々の考えです。
 現に涼宮さんの心はどんどん落ち着いてきて、それに伴い力も弱まってきています」

何だそれは、何でそんなことをお前はそんなに冷静に淡々と告げられるんだ?

「もし、もしもだ。その話が事実だとしてもお前がいなくなることはないんじゃないのか?」
「おや、僕がいなくなることを残念がってくれるのですか?」
バンッ!
「ふざけるなっ!」
「キャッ」

朝比奈さんの悲鳴が聞こえようたが、それどころじゃない。
俺は、目の前のこのニヤケ面した野郎に言わなくてはならない。
197涼宮ハルヒの逃避:2006/07/19(水) 23:59:54 ID:EM+684MG
「ふざけるな!お前はSOS団の副団長だろ。ハルヒの力が消えれば消えるだと?
 それは、お前の上の奴らの考えだろ。それを、なんでお前はそんなに落ち着いて答えられるんだ」
「少し落ち着いてください」
「あのキョン君、少し落ち着いてください」

落ち着いてだと!?そんなことできるか。こいつは、SOS団を抜けるって言ってるんだぞ!

「ですから、落ち着いてください。何もすぐにいなくなるという訳ではありません。
 それに、前に話したように僕はこの関係に非常に愛着を持っています。これはアフレコですが、機関以上にね」
「なら、なら何でそんなことを言うんだ!」
「それが必要なことだと考えたからです。僕は超能力者であるとはいえ、あなたの知る通りそれは日常生活では
 まったく役に立たない能力です。そして、その能力さえ涼宮さんの力がなくなれば、消えてしまうでしょう」
「それがどうしたってんだ」
「つまり、僕はただの無力な高校生になるということです。そんな僕に機関という巨大な組織の力に逆らうことは出来ません。
 しかし、何も告げずに僕がいなくなってしまえば、きっとあなたたちは混乱してしまうでしょう?」
「…それは、」

俺は、古泉の言葉で気付いた。そうだ、こいつは不可思議な力を持っているが、それ以外は俺と同じ一般人なんだ。
そのこいつが、機関なんて言う得体の知れない組織にたった一人で歯向かうことなんて出来ないだろう。

「…すまん古泉。お前の気持ちも分からず熱くなっちまって」
「構いませんよ。それに僕はそんなあなたのことが嫌いではないですからね」

古泉は笑顔でそんなことを言ってきた。発言は相変わらずキモイが意外にもそれはストンと俺の心に落ちてくれた。

「しかし、古泉どうにかならんのか?」
「ならないでしょうね。僕としてもこの空間にいたいものですが。
 機関が方針を変えない限りは望みはないでしょう」
「ならっ、俺たちに頼ればいいじゃないか。そりゃ、俺にはなんの力もないけど。
 こっちには、未来人も無敵な宇宙人だっているんだぜ」
「そうですね、ならば聞いてみましょうか?朝比奈さん、長門さん。
 あなたたちはこの現状に手を出すことが出来ますか?」

俺はその言葉で朝比奈さんと、今まで一度も発言しなかった長門の方を向いた。

「どうなんですか、朝比奈さん」
俺は、はやる気持ちを抑え朝比奈さんに聞いてみた。

「それは…すいません、私にはどうすることもできません。古泉君の言っていることは事実で涼宮さんの力が
 弱まっているということは、こちらでも確認しています。でも、私にはそれをどうにかする権限はないんです。
 それどころか、もしかしたら私も消えるかもしれない……本当にごめんなさい」

朝比奈さんの返答に、俺はまたしても愕然とした。朝比奈さんが力になれないということはなんとなく分かっていたが、
朝比奈さんまで消えるかもしれないなんて…朝比奈さん(大)なら何とかしてくれるかもしれないが、
こちらからコンタクトする手段がないのでは同じ事だ。
198涼宮ハルヒの逃避:2006/07/20(木) 00:00:46 ID:EM+684MG
「本当にごめんなさい…」
朝比奈さんがつらそうに顔を伏せる。すいません、俺が質問したばかりに悲しい顔をさせてしまって。

「長門、お前はどうなんだ?」
俺は長門に聞いてみた。俺はまた、迷惑をかけることをわかっていたがこれは俺たちの手に余る。
でも、長門ならこのSOS団の万能型宇宙人インターフェイスならなんとかしてくれるだろう。

「私には不可能」

俺の思考が止まった。不可能?どういうことだ。長門にもどうしようもないってのか?

「…どうしてだ」
「涼宮ハルヒの力が弱まっているのは、こちらでも確認できている。その事実に情報統合思念体は失望している。
 情報統合思念体は変化を望んでいる。その変化が、良しにしろ悪きにしろ私にはその変化に干渉することは許可されていない」
「そんな、どうしようもないのか?SOS団の危機なんだぞ、もしかしたら団そのものだってなくなっちまうかもしれない」
「…わたしは以前、エラーを起こした。そのため、今の私には申請なくそのような行動ができないよう制限されている」
「………」
「…ごめんなさい」

謝らないでくれ。そうだ、こいつはあのクリスマスの頃に世界を改変してしまうほど苦しい思いをしたんだ。
そんなこいつに、監視が付いていないはずがない。なのに、俺はまた心のどこかでこいつに頼ろうとしていた。
本当に情けないったら、ありゃしないぜ。

「すまん、長門」
「どうしてあなたが謝るの?悪いのはわたし」
「違うっ、お前は悪くない」
ただ、お前にばっか頼ろうとした俺が情けなかっただけだ。

「どうやら、無理のようですね」
古泉…こいつは多分二人がこう言うのを分かってたんだろうな。
でも、ここで諦める訳にはいかない。

「でも、でも、そうだハルヒなら!あいつならどうにか!」
「出来ません。その涼宮さんの力が失われようとしているからこそ、この様な事態になっているのです」
「それは…なら今から教えるってのはどうだ。今ならまだ、あいつの力もあるしお前らがいなくなるってなら
 あいつだってきっと力を貸してくれるさ」
「本気で言っているのですか?それは最もしてはならない行為です。
 もし、実行すれば僕もあなたもただではすまないでしょう。それは、あなただって分かってるはずです」
「し、しかし…」
「しかしでは、ありません。すみません分かってください。現状では、涼宮さんは小康状態ですがこれから
 変化があるかもしれません。ですから、くれぐれもそのような事はしないでください」
古泉が普段はしないような、とても真剣な顔で言ってきた。

「…わかった」
俺には、ただそう呟くことしか出来なかった。


バタンッ

激しくドアが開く音がする。ハルヒ?なんだ、下を向いて少し震えている。ま、まさか、聞かれたのか!?
199涼宮ハルヒの逃避:2006/07/20(木) 00:02:10 ID:EM+684MG
「…答えなさい」
「ハ、ハルヒ?」
「答えなさいっ!今言っていたことは本当なの!どうなのキョン!!」

まずい!?なんて事だ、たった今古泉に釘を刺されたばかりだってのに、こいつに聞かれちまうとはここは何としてもごまかさないと。
朝比奈さんは固まっている。古泉も珍しく口をあけたまま呆けたままだ。長門は…変わりないがここは俺がやるしかないか。

「な、なんのことだハルヒ」
「とぼけないで!あんたたちが、宇宙人や超能力者だっていうことは」
「ハハハh…なんだ、隠れ聞きしてたのかよ。ありゃ冗談だよ。
 お前に聞かせて脅かしてやろうと思っただけだって、なあ古泉」

コラ古泉いつまで呆けてやがる!お前も手伝いやがれ!

「え、ええ!そうなんですよ。まいったなぁ、こんなすぐにばれてしまうだなんて」
「そう、わかったわ…」
ほっ、わかってくれたか。こいつが単純で助かったz…
「あんたたちが嘘ついてることをね。」
(…………)

「そうやっぱり嘘だったのね。今のあんたの顔を見て、確信ができたわ」
「ハ、ハルヒ…」
「うるさいっ!今まであたしのこと騙してたのね!許せない…絶対許さないわ!」
「違う、ハルヒそれはちが」
「何が違うってのよ!私は今まで楽しかった…。SOS団なんてものを作って馬鹿騒ぎして、いっぱい笑った。
 でも、それもすべて嘘だったのよね。私が何も知らないからって腫れ物を扱うように慎重に接してきたんでしょう?」
「ハルヒ聞いてくれ」
「黙れ!!今まであたしのいうことを聞いてきたのも、私のその力とやらを心配してのことでしょう?
 ごめんね、今まで気付かなくて…こんな頭のイタい子の言うこと聞くのは大変だったよね?」
200涼宮ハルヒの逃避:2006/07/20(木) 00:03:04 ID:OBRBuQ2y
俺たちはみんなハルヒの独白になにも言い返せなかった。
確かに、ハルヒには隠し事をしていたし、ハルヒの言うことを聞いていたのは事実だ。
しかし、黙っていてはいけなかったのだ。

「なによ…黙ってないで何か言いなさいよ。ああ、そうか。ハハハッ、あたしが黙れって言ったんだよね」
もうつらいこんなハルヒを見ていたくない。

「…もういいわ。今まで付き合わせてごめんなさい。もう、明日からは来なくてもいいわよ」
ハルヒはそう言って、部室から飛び出ていった。ダメだ、行かせてはダメだ!
しかし、俺の口からはどれだけ待っても何も気がきいたセリフは出てこなかった。

「なんて事でしょう。まさかこんなことになるとは…」
古泉がつらそうに顔を伏せる。
「すまん」
「あなただけのせいでは、ありませんよ。僕の方こそ部室でこんな話をしてしまうとは、
 まったく軽率でした」
「ひぅ。あ、あのこの後どうなってしまうんでしょうかぁ…」

朝比奈さんが涙を浮かべ聞いてくる。そんなこと、こっちが聞きたいぐらいですよ。

「長門、お前は気付いてたのか?」
「…気付いていた。涼宮ハルヒは10分14秒前から部室の外で移動していなかった。
 室内の話を盗み聞きしていたと思われる」
「ならなんで教えなかったんだ…」
「さっきも言ったように情報統合思念体は変化を望んでいる。この場合、室内の話を聞かせる事を
 優先させる事が可決された」
「…それは、お前の意思なのか?」
「…………」

長門は黙ったままだ。でも、俺にはわかる。こいつはそんなことなんか望んじゃいない。
きっと、どうしようもなかったんだ。こいつを責めることは間違っている。

何を間違えてしまったのだろう。ハルヒが出て行ってからしばらく俺たちは無言のままだった。
201名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:03:56 ID:8jxqcF/U
GJ!
202涼宮ハルヒの逃避:2006/07/20(木) 00:04:54 ID:OBRBuQ2y
今回はここまでです。途中で連投規制かかってしまったけどおしまいです。
お読み下さった方々ありがとうございました。
203名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:09:38 ID:8jxqcF/U
残念!
続き楽しみにしてます。
204名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:17:44 ID:gubx9kQj
信じなかったのはおまいだ!どブチ切れそうになった俺はカルシウム不足
205名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:25:18 ID:H/6iMj64
アフレコじゃなくてオフレコじゃね?
206名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:29:22 ID:93L/doxE
鬼引きだなぁ…。今夜は眠れん、たぶん。
207名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:32:22 ID:JZR42jBD
>126-128
に捧ぐ

* * *
「手を」

「は?」
いつもの放課後、文芸部室のくたびれたパイプ椅子を引いて立ち上がった瞬間、
今しがた閉じた本を小脇に抱えたままの長門が宣言した。

長門の本を閉じた音がした後はいつものように三々五々と解散していくSOS団は、
今日に限って俺と長門が一番最後だったりしたわけだが、

「手を」
すい、と右手を出した長戸が俺の手を取る。
左手がすうと追随して俺の左手を固定する。
いつの間にやら本は傍らの机に置かれていた。

「おい長門」
かぷ

手相やら占いやらなら朝比奈さんに……といいかけた俺の口は思いっきり固まった。

長門が俺の左手を咥えている。
208名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:32:55 ID:JZR42jBD
ちゅ  ちゅ  ちゅぅ  ちゅっ


「……ぷぁ」
無限にも等しかろうという沈黙が通り過ぎた後、長門は俺の薬指を解放した。


「ななななななな長門っ?!?!」
谷川流だけが表現できるであろう俺の大混乱振りを無視して長門が状況を解説する。
長門の唾液でぬるりと風を受ける薬指がもっと舐めてくれとまてコラ俺。

「同期した」
は?
「貴方の内部にいる私と同期した。蓄積エラーを消去し解析するためには必要なシークエンス」

「貴方の精神構造に影響を与えないため、貴方の内部の私は貴方との接触を全て夢として無意識下に格納している」
「しかし無意識に私との交歓を蓄積することは貴方の精神に某かの影響を与える可能性が大」
「よって今の同期によって貴方から無意識の圧迫を除去した」

……おう、長門。なんかよくわからんがまた俺はお前に迷惑をかけているのか?
「問題ない」
「もともと私がお願いしたこと」
「貴方は夢の時間を私に分けてくれている」
209名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:33:55 ID:JZR42jBD
長門が比喩表現を使うなんて初めてじゃあるまいか?俺は長門の成長をもろ手を挙げて歓迎すりゃいいのか?
それとも俺はなにか大事なことを見逃しているのか?

「んっ」
長門がぶるっと全身を震わせて、自分の身体をきつく抱きしめた。
膝が砕け、そばのパイプ椅子にかしゃりと腰を下ろす。

「だ、大丈夫か長門?」
「……同期が完了した。彼女と私は経験を共有した。
 私と彼女は同根存在であり彼女の経験は全て私の経験と同値」

よ、よくわからんが……

長門の頬が上気している。いやいや、夕日にあてられて赤く染まっている。
ながと?ながと?なにがオキテイルノデスカ?

「貴方が夢の中で彼女=私に何をしたかを了解した。
 私は経験の多様さに驚き呆れている。情報統合思念体にも理解しきれるとは思えない密度」
膝をもじもじと擦り合わせながら長門が続ける。

ながとさん?いったいなにをオッシャッテイルノデスカ?

「貴方の無意識が彼女にしたことであり貴方が気に病む必要はない。
 これは私=彼女が欲した情報」
210名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:36:09 ID:JZR42jBD
長門さん?俺は今本棚の後ろのエロ本を見つけられたときより動揺しているのですが分かりますか?
なんかものすごく大事なことを俺の了解無しに暴かれてる気がするのですが?

「問題ない。忘れて」
そういう長門の頬の赤みは夕闇が支配する文芸部室内でも容易に見て取れた。
……長門らしくもない、何をそんなに照れて

長門の視線が俺を射抜く。きゅっと吊りあがった眉はヘの字に、眉間には怒りではないしわをよせて

「あなたの性的妄想は驚嘆すべき破廉恥さ」

宇宙人製対有機生命体コンタクト用 ヒューマノイド・インターフェースは。
なにか俺の知らないところで俺の妄想をゲットしたかのように全身真っ赤になって
違う、多分
俺が夢の中で彼女=長門にしたことを自分=長門の経験として追体験しているのだ。

まさに、今。俺の目の前で。

「んんんっ」
ぶるっ、と長門が全身を振るわせた。
普段の表情からは想像もつかない、惚けたような蕩けたような瞳の色が
俺を捕らえて離さない。

な がと……だい じょうぶ……か……?
伸ばした俺の右手を長門が握り締める。そのまま長門は頬をすり寄せて、小さくつぶやいた。

「……キョンくんのえっち……」
211名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:38:41 ID:OBRBuQ2y
>>205
マジだ、推敲したと思ってたのに甘かった…。
指摘、ありがとう
212名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:41:42 ID:JZR42jBD
終わりだよ。
長門が世界のどこに偏在しようとも、同期すれば全部長門の経験だよ。
Webでもまとめサイトでも2chでも全部長門の経験値だよ。
つまり長門は耳年増だよ。

わしの言いたきことはそれぞ。
213名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:45:40 ID:XczvU91a
>212

本日の長門分補給完了。長門無しには生きられ無い体にされたよ!
214名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:48:53 ID:XSGmf5i2
なんともレベルの高いSSが多い一日だった。
215名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:54:52 ID:XczvU91a
>184
これは凄い。
二つの視点を破綻無く操り、重ねた瞬間にはカタルシスすら感じた。
読み手に想像させる展開も素晴らしい。ハルヒ星も色々考えた。
惜しみない賞賛を送る!
216名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 01:01:24 ID:mpOloJEl
プロ
217名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 01:28:58 ID:xDS01rwo
>212
拙い初心者の作に続編をつけていただき、大感謝です。ありがとうございました。
次は、ハルヒ×キョンでいくつもりです。今度は、嫌な読後感にならないように努力します。
218名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 01:29:38 ID:xDS01rwo
>212
拙い初心者の作に続編をつけていただき、大感謝です。ありがとうございました。
次は、ハルヒ×キョンでいくつもりです。今度は、嫌な読後感にならないように努力します。
219名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 01:36:21 ID:E0sRrPIS
>>184
 書き込みが凄いですね。GJです。

 でも、ここまで書けるのなら、あえて私は苦言を言っておきますか。
誉めるのは他の人がやってくれるでしょうから。
SSを書くときに状況説明を削る努力もしてみましょう。
少し、多すぎると思います。
そして、常に読み手の視線を考えて書いて見ましょう。
段落が読み辛い部分が見受けられます。

 そうすれば、もっともっとすばらしい作品になると思いますよ。
勿論、アマチュアレベルでも上のほうにいるのは間違いないです。

 小説は読みやすさ、バランス、そしテンポに気をつけて。
そうすれば物書きとしてプロになれるレベルになれると思います。
では、新作を楽しみにしています。
220名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 02:13:02 ID:JSaDac0J
>>202
なんかVIPで見た様な……
221名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 02:16:31 ID:OBRBuQ2y
>>220
あそこは流れが速すぎるから、多少修正したものをこっちに貼りなおした。
続編もこっちにだけ書くつもりだ。気になったのならすまん。
222名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 02:31:41 ID:JSaDac0J
>>221
なんだそうだったのね。
気にしないし、続き待ってるよ!!
223名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 02:38:18 ID:g5NuTEVk
>>219
>物書きとしてプロになれるレベルになれると思います
やっぱりプロか関係者が覗いてんのか? このスレ
関係者じゃなきゃ言えない台詞だよなこれ
224名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 02:38:40 ID:BEe+ojVg
んなこたーない。
225名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 02:47:29 ID:7feq60Rj
どこかの出版社で編集やってる人が見てても不思議はないような気が。
技系板と比べるのは拙いかもしれないが、ROM中に広義の業界人程度は居るんじゃないかと。
226名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 02:53:02 ID:2C6SK8aK
>>223
編集関係の人間なら『小説は読みやすさ、バランス、そしテンポに気をつけて。
そうすれば物書きとしてプロになれるレベルになれると思います。』なんてこと死んでも言いません。
ラノベ関連の人間なら特に。
物書きとしてプロになれる、なれないに、文章力なんかあまり役に立たないことを嫌と言うほど知っているから。
227名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 02:55:33 ID:7feq60Rj
そういうもんなのか。
228名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 02:55:50 ID:dc4jjI4A
>>184
あえて愚痴を言わせてもらうと
戦闘描写が冗長、説明のしすぎが逆にドキドキ感をなくす。途中から流し読みした。
それと先の展開が読める、ハルヒやキョンが次にする行動が分かってしまう。
229名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 02:59:56 ID:2C6SK8aK
それは原作にも言えるところ大だなあ。

描写が冗長と感じる人もいれば、リアルで素晴らしかったと思った人もいる。
結局は好みの問題だからそんなにツンケンと言いなさんなw
230名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 03:02:35 ID:dc4jjI4A
"あえて"ってつってんだろ、誰もおまえに聞いてねーよ、さっきからうぜえ奴。
231名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 03:03:13 ID:W/dVsCld
良いんじゃないか、マンセーが多いから苦言は必要でしょう。
232名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 03:11:34 ID:TVsaJYbD
マンセーが多いからって理由で苦言かよ
なんか妬んでるみたいだぞw
233名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 03:22:15 ID:t3WsgEcV
>>232
実際は、気になった点の指摘もしたほうが作者のためになるとか、
そういう理由なんだろうけど、「マンセーが多いから苦言」
なんて書かれると妬みの印象も正直あるよな。
234名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 03:22:53 ID:OBRBuQ2y
私事だからどうでもいいかもしれないが。苦言でも評価を受ける事はありがたい。
自分で書いてても間違いや、表現の仕方に最後まで気付かない事もあるしな。
マンセーはやっぱり嬉しいが、苦言を言う人も作品を読んでくれて批評してくれてるの
だろうから、書き手としてはありがたいことだと思う。
長々とスマソ
235名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 03:32:10 ID:W/dVsCld
>>232-233
スマンはしょりすぎた、>>234みたいなことが言いたかったわけで。
ここでちゃんと苦言言う人は、偉そうだと思うが〜、とか付けて言う人多いしさ。
236名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 03:32:19 ID:n93SoqB7
>>232
言葉通り受け取るなよw
「マンセーが多いから苦言」っつー表現自体は凄い幼稚だけどさw
237名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 03:36:48 ID:OR2yqjL7
そろそろハイテンションユッキーが読みたくなってきた
238名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 04:37:23 ID:NLTBXOH3
なんか逆ギレ系の批評家気取りの馬鹿増えたねえ。

ちょっと前の批評さんはメタクソに叩きながらでも会話は普通に成り立っていたものだが。まだ愛があったと言うか。
今の人らは自分の気に入らなかったことを羅列してるだけっつーか。なんか言われるとすぐキレるし。
もう随分と人が入れ替わっちゃってるのかな…。
239名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 04:50:34 ID:dO97FNsV
まあ、この辺にしとこうじゃないか。挑発的な言葉を使うのは、あんまりいいことないよー?
240名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 06:05:34 ID:g5Ak52zN
だから批評は幼馴染が照れ隠(ry
241名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 08:14:19 ID:Otb68AYn
昨夜はお楽しみでしたね。
相変わらずおばかさんが多いようで。
242名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 08:29:37 ID:tGHlBhYn
>>240
これを実際にやってくれる人を待ってるんだが
俺は無理だ。なぜかって批評するよりべた褒めする方が好きだからだ
243名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 09:24:33 ID:JSaDac0J
こんなに議論しあってても作品が投下されると一瞬で空気変わるんだよねーすごいよねー
244名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 09:31:14 ID:y/TOgNsl
皆さんおはようございます。以前にキョンの思い出を投稿した者です。
新しいのを書いたので投下致します。エロは書けそうにないので、エロ無しですがご勘弁を。
では、6レス程使わせてもらいますね。
245どうみてもデートです。本当に(ry 1:2006/07/20(木) 09:33:09 ID:y/TOgNsl
「何だこれは?」
 目の前でにやにやした表情を浮かべる古泉に向かって聞いた。
「見ればわかると思いますが……」
 そう返答した古泉は俺にあるものを手渡した。俺が手にしているのは、どう見ても映画のチケットだ。
「機関に映画館のオーナーをしている方がいましてね。コネで、という訳ではありませんが……そのチケットを頂きまして」
「何でこんなものを俺に渡すんだ?」
「チケットを貰ったのは良かったんですが……予定があって行けそうに無いんですよ。それで誰か貰ってくれないかと」
「……で、俺にか」
「ええ。映画はお嫌いですか?」
 別に嫌いではない。こう見えても中学の頃は頻繁に映画を見に行ったもんだ。
「どんな映画かは知っていますよね?最近良く話題になっていますし」
 その映画というのは、人気小説を映画化した作品だ。最近はテレビや新聞でも特集が組まれていたりしたっけ。
「先行上映のチケットです。これでもなかなか手に入れにくいものでして。前売り開始と同時に即完売と」
 そう言えばそんなニュースをやってたような気がするが……だが、一つ気がかりな事がある。
「一つ聞こう古泉。何故チケットが2枚もあるんだ?」
「2枚貰ったのですから、どうにも」
「誰かに譲るなら別に2枚いっぺんに俺に渡す必要はないだろ」
「席は指定席……しかも隣同士です。顔見知り同士で見た方が楽しいでしょう?」
 確かに正論だ。だが何でさっきからずっとにやにやしてるんだお前は。
「どうです?誰かご一緒に、と誘ってみては?」
 そういえば映画を誰かと見に行くなんて……入学前にミヨキチと一緒に行ったきりだったな。などと考えていた俺に古泉が付け加える。
「涼宮さんを誘ってみては如何でしょう?喜んで付いて来てくれると思いますが」
 そういう魂胆か。だが、今は聞かれてまずい奴もいない。
 今この部室には俺と古泉、さっきから本を黙って読んでいる長門の3人しか居なかったからな。
「ハルヒはどっちかと言うと映画を見るより作る方が好きなはずだ。前にそう言ってただろ」
「……そうでしたっけ?」
 惚けるなよ古泉。明らかに誤魔化してるだろ。一応、心の中で突っ込みを入れておいた。
「確かにそうかもしれませんねぇ」
「というか何故に貰ったチケットを無理にでも使わせようとするんだ」
「これでも無償で頂いていますし……その厚意を無碍には出来ないでしょう?」
 だったら、無理にでも予定をキャンセルしても自分で見に行けよ。……と思った直後に長門がこっちを見ているのに気が付いた。
 長門はどちらかと言えば、映画を見るより本の方を読みたいだろう。むしろ映画に興味なんてあるのだろうか?連れて行っても映画上映中にも関わらず暗い館内でずっと本を読んでるかもしれん。
「………」
 長門は本を読む手を止めたまま、俺の方を見ていた。一応聞いておくか。
「長門、どうだ。一緒に映画見に行くか?」
「……いい。……他の人と行ってきて」
 どうするか考えていたのだろうか。再び膝の上の本に視線を移しながら、呟いた。古泉はお得意のポーズを取ったのが視界に入る。
 ふとチケットに目をやり気が付いた。先行上映の日って今週の日曜じゃないか。確かに暇だが……どうしたものか。
 そう思った矢先、けたたましい轟音と共に部室の扉を開いて我らがSOS団団長様がやって来た。
246どうみてもデートです。本当に(ry 2:2006/07/20(木) 09:35:12 ID:y/TOgNsl
 どうやら途中で鉢合わせたようで、ハルヒと一緒に掃除を終えた朝比奈さんも部室に入ってきた。
 いつもの朝比奈さんの着替えのため、俺といそいそと古泉は部室を出る。……いつまでにやにやしてやがるんだ。こっち見るなよ。
「さて、どうしますか?」
 何が、『さて、どうしますか?』だ。俺が古泉に返答する間もなく、着替えが完了したのか朝比奈さんが扉から顔を出した。

 再び部室に入ってパイプ椅子に腰掛けた。ハルヒはさっきからパソコンでネットサーフィンをしているようだ。
 時折、ディスプレイを眺めながら、にやにやと不敵な笑みを浮かべている。古泉の真似でも始めたのか?
 古泉は今日はどのボードゲームで遊ぼうかと選別中、長門は相変わらず読書を続けていた。
「ハルヒ、さっきからパソコンで何見てるんだ?」
 朝比奈さんがお茶を用意してくれるまで暇だからな。たまにはハルヒの相手もしてやらねばと思い聞いてみた。
「別に……何見てたっていいじゃないの。あたしが何見ようと勝手でしょ」
 俺がいきなり話掛けたのに驚いたのだろうか、ハルヒは慌てた様子で俺の方を見た。
「なぁにキョン?そんなに気になるのかしらねぇ?」
 何なんだ、その如何にも好物の餌を今し方発見した猫のような表情は。
「ま……別にいいんだけどね。あ、みくるちゃんお茶頂戴」
「はいはーい」
 結局ハルヒは何を見ていたのかは答えなかった。多少は気になったが、この話は置いとこう。朝比奈さんがお茶を淹れてくれた。

「あっ。みんな今週の日曜用事ある?また不思議探索ツアーやりたいんだけど」
 ハルヒがお茶を飲みながらそう切り出した。今週の日曜?
「すいません。日曜は少しばかり用事がありましてね」
「そっか。みくるちゃんは?」
「私も昼間はちょっと……」
「有希は……」
 古泉、朝比奈さんと続き、長門を見ながらハルヒが順々に日曜の予定を聞いている。長門は顔を上げて首を横に振った。
「有希も駄目か」
 何だかハルヒが残念そうな表情を浮かべていた。
「キョンはどうなの?」
 珍しいな、ハルヒが俺に暇かどうか聞いてくるなんて。
「あ、別にいいわ。皆で行った方が面白いしね。日曜のツアーは中止と相成りましたー」
 そう高らかと宣言して、ハルヒは再びパソコンのディスプレイを食い入るように見始めた。おい、聞かないのかよ。

 今日は特にいつもと変わった事もなくSOS団放課後の活動は解散となった。
 長門の解散を告げる本を閉じる音と共にハルヒは、足早に部室から去っていった。
 
 古泉と長門の2人と別れた帰り道、途中まで帰宅への家路が一緒な朝比奈さんに俺は日曜の映画の件を伝えた。
「え?映画のチケットですか?」
「古泉に貰いまして。2枚あるんですけど一緒にどうですか?」
 俺は朝比奈さんに、古泉から貰ったチケットを見せた。
「何でもすぐに売り切れるぐらいの人気らしいですよ」
「あぁー。この映画って今話題の映画ですよねー?」
 朝比奈さんはチケットを見るや目を輝かせてくれた。
「行きます行きます〜。え?これって先行上映のチケットですか?」
「ええ。時間が時間ですが……大丈夫ですか?」
 先行上映という事もあって上映時間は夜の8時から、という事になっている。大丈夫だろうか?
「あっ……その日は昼間用事があって……映画館で待ち合わせで良ければ大丈夫ですよー」
「じゃあ現地集合って事で。7時半ぐらいでいいですか?」
「わかりましたー」
 俺は2枚のうちのチケットの1枚のチケットを朝比奈さんに手渡した。
 上映までの間の2人っきりのデートは出来そうにないのが残念ではあるが、まぁ良かった良かった。

 何事もなく家に帰ってきた俺は、日曜の朝比奈さんとの映画デートを楽しみにしつつ、ベッドに飛び込んだ。
 途中で妹が晩飯出来たよ、と叩き起こしに来たのは言うまでもなかったがな。
247どうみてもデートです。本当に(ry 3:2006/07/20(木) 09:36:59 ID:y/TOgNsl
 映画デート当日、昼前までベッドで爆睡していた俺は、またしても妹に叩き起こされる破目に陥った。
 緊張のために明け方近くまで起きていたのが災いした。目覚ましの音にすら気付かなかったとは。
 予定の時刻までは充分な時間があったが念入りに準備をした俺は1時過ぎには家を出た。
「さて、何して時間を潰そうか」
 愛用の自転車に乗りながら独り呟いた。予め時間配分は考えておくべきだったか。
 駅の近くに自転車を停めた俺は、電車に乗って映画館最寄の駅まで移動する事にした。
 近くにも中規模な映画館はあったが、先行上映のためか結構大きめの映画館でしかやらないからな。
 先行上映の手間賃とでも考えればいいか、などと考えつつ電車を下車した俺は、駅前の本屋で立ち読みでもして時間を潰す事にした。

 雑誌を立ち読みし始めてしばらくが経過しただろうか。立ち読みに集中していた俺に突然の来訪者が襲い掛かった。
「キョン、こんなとこで何やってんのよ?」
 聞き覚えのある声が俺の後ろから聞こえた。俺は声の主の正体に勘付きつつも恐る恐る後ろを振り返る。
「あんたがこの辺で立ち読みなんて珍しいわね」
 俺を突如呼んだ声の主、我らがSOS団団長である涼宮ハルヒがそこにいた。……何でハルヒがここにいるんだ?
 目の前にいるハルヒの服装は、如何にも余所行きと言わんばかりの華やかな格好をしていた。
「な、何だハルヒか……いきなり話しかけるなよ。お前こそ、こんなとこで何してるんだよ?」
「別になんだっていいじゃないのよ。あ、何その本?」
 ファッション誌を読んでいた俺にハルヒが問う。俺は本の表紙をハルヒに見せた。
「ふぅん。あんたそういうの読むんだ。意外ね」
 意外で悪かったな。普段、俺がどんな雑誌を読んでると思ってるんだ。
 ハルヒはそう言うと、目当ての本でも探しに行ったのだろうか?俺の前から姿を消した。

 立ち読みを再開してから数分、ハルヒが俺の横に戻ってきた。
「キョン、これ」
 ……何なんだ一体?ハルヒが俺の顔を覗き込みながら1冊の雑誌を差し出した?裏を向けてあるので何の雑誌かはわからない。
「この本がどうした?」
「今日あんまりお金持って来てないの。変わりに買って頂戴」
 ……何?お金持ってきてないから俺に買えって?おいおい。
「何よその顔。お金なら後でちゃんと返すわよ」
 俺とここで会わなかったらどうするつもりだったんだ?雑誌を持ったまま店外に出るとはさすがに……と思ったが……
「だから買って頂戴」
「ちゃんと返すんだろうな?俺もあんまり手持ちの金がないんだがな」
 今日はタダで映画が見れるという事もあって余りお金は持ってきていないが……仕方ない。店内で駄々を捏ねられるのは御免だからな。
 俺は黙ってハルヒから雑誌を受け取る。表紙を見ても何の雑誌かよくわからない。紐で括ってあったから内容もわからず仕舞いだ。
 立ち読みしていた雑誌を元の位置に戻し、ハルヒから受け取った雑誌を持ってレジに向かった俺の後ろをハルヒが付いて来る。
 それほど高価ではなかったのが幸いしたのか、我が財布の財政に大ダメージが直撃という事態は免れた。
「さて、次行きしょうか」
 お金を払い終えて袋に入った雑誌を受け取った俺にハルヒが言う。次だ?
「おい、ハルヒ。本はどうするんだよ?」
「あんたが持っててよ。そんなに重くないでしょ、それ」
 俺は荷物持ちか?というか次って何なんだよ、次って。俺は共に本屋を出たハルヒの後ろを黙って歩いていた。
 何かボソボソと独り言を呟いてたようだったが、何の事やら。

 歩いて数分、前を歩くハルヒが振り向きながら、
「お腹空いたわね。どっか食べにいきましょ」
「何……?」
 俺の手を掴んだハルヒは、さっきより早足で歩みを進めた。
「ちょっと待てよハルヒ。飯食いに行くって何だよ?」
「言葉通りよ。あたしお昼食べてなかったからお腹空いてるのよ。さ、お願いね」
 ファーストフード店の前で立ち止まってハルヒの我侭がまたしても始まった。
「そんなにお金持って来てないってさっき言っただろ」
「あんたさっき本買うとき5千円払ってお釣りちゃんと貰ったでしょ?じゃあいいじゃないの」
 俺とした事がぬかった。見られていたとは。見られた以上止むを得ない。俺も昼飯食べて来なかったしな。
248どうみてもデートです。本当に(ry 4:2006/07/20(木) 09:38:29 ID:y/TOgNsl
「さっきの分も含めて全部返せよ?今月はこれで精一杯なんだからな」
「わかってるわよ。何だったらお昼の分は、今度お弁当でも作って返してあげるわ」
 ちゃんと現金で返せと言いたかったが、気になった事があったので口には出さなかった。ハルヒの手作り弁当ってどんなのだろう。
 さすがに今度は財布にクリーンヒットだった。俺なんかハンバーガー2つだぞ?ハルヒはどう見ても1人前以上の量を注文して、それを満足気に頬張っていた。

 時刻は4時半を回っていた。
 満腹まで食ったのか飛び切りのにこやか顔なハルヒと俺。今月どう切り抜けようかね……
「こんな時間に食べたのは中途半端だけど、まぁいいわ。次行くわよ、キョン」
「まだ何処か行くつもりかよ」
「あんた暇なんでしょ?こんなとこで立ち読みしてたくらいなんだし」
 確かにその通り暇だ。映画上映までの時間潰しだがな。
「やれやれ」
 ついつい声に出してしまう。この癖なんとかならないのか俺は。
「何が『やれやれ』よ。さ、行くわよ」
 そう言ってハルヒは再び俺の手を掴んで、早足で何処ぞへと歩き出した。

 その後行った衣服店に電気店、アイスクリームショップまでさっきとほぼ同じやり取りを繰り返していたのは言うまでもない。
 財布からの出費はアイスクリームショップだけで抑え込めたので何とか首は繋がった。
 駅前のベンチで腰を掛けた俺とハルヒであったが、さっさと自分の分のソフトクリームを平らげたハルヒは、ゆっくり食べていた俺の分のソフトクリームまで食べるという暴挙に出た。
 しかし散々連れ回された影響か、俺はそれに抵抗する気力を失っていた。仕方ないから黙って残りのソフトクリームをハルヒにやった。
「はぁ〜お腹一杯ね」
「あれだけ食えば当然だ。太っても知らんぞ」
「美味しいものは別腹だって言うじゃないの」
「甘いものの間違いだろ」
「どうでもいいじゃないの、そんな事」
 いつもやってるようなやり取りの繰り返しだ。どこにそんな元気があるんだ、ハルヒよ。
 コーンまで食い尽くしたハルヒの表情は、”まだまだ元気です”と言わんばかりの表情だった。やれやれ。

 腕時計に目をやった。既に7時を過ぎている。……マズいな。
 いつの間に日が落ちたのか、周りは昼間とはまた違った雰囲気を醸し出していた。
「さてと、今日の不思議探索ツアーは終了ね」
「不思議探索ツアーって……中止にしたって言ってなかったか?」
「ちゃんと再開するって言ったじゃないの。聞いてなかったの?」
 全然聞いてなかったが。というか何処の不思議を探索してたんだ。アイスクリーム屋に不思議なんてないだろ。
「あたしはこれから一人で寄るとこあるから」
「寄るとこって何だ?」
「何処でもいいじゃないの。じゃあ気を付けて帰りなさいよ。また明日学校でね」
 そう言ってハルヒはベンチから立ち上がったハルヒは、今度は駆け足で夜の闇へと消えていった。
 改めて俺は腕時計を見る。待ち合わせまでもうちょっとか。

 少しベンチで休憩していた俺だったが、直に腰を上げた。
 そろそろ行くか。朝比奈さんも待ってる頃合いだろうからな。俺は映画館へと足を運んだ。
 駅前からは映画館まではそれほど距離は無く、ハルヒに連れられて色々と行く間も、何度か何かしらの映画を見終えた人たちとすれ違ったっけ。
 
 映画館の前まで着いたのは7時半直前だった。
 先行上映を見に来たであろう人たちが大勢いるのがわかる。古泉曰く、『すぐ売り切れた』も納得か。だがこれは多すぎじゃないのか。
 人気の映画という事もあり、先行上映を見に来た人と、それ以外の映画を見に来ていた人たちで溢れ替える映画館前。
 この人ごみの中から朝比奈さんを探し出さねばならんとは。携帯で連絡を取ろうと試みたが、何故だか圏外で繋がらない。繋がってもこれだけ人が多いんじゃ電話の声も聞こえ辛いだろうな。
 結局俺は朝比奈さんを探す暇も無く入場の順番待ちの行列に押し込まれた。仕方がない、中に入るまで我慢だ。
249どうみてもデートです。本当に(ry 5:2006/07/20(木) 09:39:52 ID:y/TOgNsl
「あれ?キョン、こんなとこで何やってんの?」
 何だ?聞き覚えのある声……ハルヒが行列の外で俺の方を見ている。こっちの台詞だよ、おい。
「見てわからんのか。並んで……おわっ!」
 一気に後ろから押される。痛いっての、というか焦り過ぎだ。余りの重圧に顔が歪んだ。……っておい?
 ハルヒが行列に割り込んできて俺の横にやってきた。思いっきり後ろに怖そうな兄ちゃんに睨まれた。
 一応、後ろの兄ちゃんに詫びの礼をしておく。何で俺が謝らねばならんのだ。
「何で……お前が列に入って来るんだよ」
「これ」
 ハルヒが上着のポケットから1枚の紙を取り出した。
「チケットもってるからね」
 ハルヒの左手にはこの映画の先行上映のチケットが握られている。
「あら、あんたも持ってるの?奇遇ねぇ」
 俺のポケットからはみ出すチケットを見てハルヒが言う。もしやとは思うが聞いてみた。
「そのチケット……どうやって手に入れたんだ?」
「どうって?みくるちゃんから貰ったのよ、あげますーって。勿体ないから見にきたのよ」
 
 な……なんだって……?

「朝比奈さんから……?」
「そ」
「おっかしいなぁ……俺、朝比奈さんに映画のチケット渡したんだがなぁ……」
 しまった。動転してしまって言わんでもいい事を口走っちまった。
「ほえ?」
 ハルヒがすっとぼけた声を上げる……が人が多いのでよく聞き取れなかったが。
「今人気なんだってね。先行上映の前売り券すぐ売り切れたって聞いて残念だったのよ」
 どうやら、さっきのは聞かれてないようだ。人が多くて助かった。
「キョンはどうしてよ?キョンがこの映画見るとは思えなかったんだけど」
「古泉に貰ったんだよ……用事あって行けなくなったからやるって……あははは」
「そうなんだ。昨日みくるちゃんからね、急用入ったから行けなくてー。って電話あって」
 間違いない、今ハルヒの持ってるチケットは俺が朝比奈さんに渡したチケットに間違いない。
 そうこう言っている内に、館内への入場と相成った。入ってみればあれだけの人も気にならなかった。

「へぇ。席が隣?奇遇な事もあるものねぇ」
 全然奇遇じゃないだろ。そもそも元々隣同士のチケットなんだから当然に決まってる。
 上映開始まで数分、席に付いた俺とハルヒ。無論、席は隣同士だが。
 朝比奈さんが来れなくなったのは仕方がない。映画デートが出来なくて残念だが。だが連絡が無いのはどういう事だ?いや、朝比奈さんの事だ。ハルヒにチケットを渡しておいて、俺への連絡を忘れてた事も……などと考えている間に、ハルヒが口を開く。
「この映画楽しみにしててね。原作の小説も全部揃えたのよ」
「へぇ」
 結構意外だった。ハルヒが小説を?長門じゃあるまいし。珍しい事もあるものだ。
「何にせよ万々歳よ。少しでも早く見たかったからね」
 ハルヒがめちゃくちゃ嬉しそうな顔で俺を見る。そんなに楽しみにしてたのか。
 そうこう言っているうちに館内の照明が少しずつ暗くなっていく。それと同時に上映開始を知らせるブザー音が鳴り響いた。

 映画の内容は割りとありがちな男女の悲哀に満ちたラブストーリーが主題の映画だった。
 あらずじはニュースや新聞で齧った程度だったので詳しくは知らなかったが、原作を知っている人間でも高評価なのだろう、上映中も涙をわんわん流している客も結構いたようだ。
 どたらかと言えば俺はこの手の感動物にはちょっと弱い、のめり込んだら号泣してたかもしれん。
 幸い、昼間ハルヒに連れ回されたお陰で疲れていたためか、半ばうつらうつらとした状態で見ていたのが良かったのかもな。
 ハルヒは最初から最後まで食い入るように見ていたようだった。感動していたのだろうか?暗がりでは表情はよく見えなかったが。

 あっという間の2時間が過ぎて俺とハルヒは帰りの行列に押し出されるように映画館を飛び出した。
「キョン、あんた真面目に見てなかったでしょ。いい映画だったのに。勿体無いわ」
 誰のせいで疲れたと思ってるんだよ。一応、内容は覚えてるけどな。
「堪らないわね。後2回は見なくっちゃね」
 まさか、また連れてかれるんじゃないだろうな?
「あんたも行きたいんなら一緒に行ってあげてもいいわよ?」
 また連れ回されるのは御免だ。是非未見の奴を連れてやるといい。
「他にも寄りたいとこあったけど……もう遅いしね。帰りましょ」
 
 ハルヒが途中で下車するまでの電車内、やはり疲れていたのかハルヒはすっと寝入ってしまった。起こすのに苦労したのは言うまでもない。
250どうみてもデートです。本当に(ry 6:2006/07/20(木) 09:41:09 ID:y/TOgNsl
 翌日、ハルヒは昨日にも増して笑顔100%な表情で俺の後ろの席にいた。よほど映画を見れたのが嬉しかったのだろう。
 昼休みになっても笑顔は1%も低下していなかった事からしても相当な感動具合に見える。
 上機嫌なハルヒに俺は聞きたかった事を聞いた。
「美味そうな弁当だな」
「そう?自分で作ったのよ」
「美味そうだな」
「あんたには上げないわよ?」
「昨日、弁当作ってきてやるって言っただろ?」
「言ったっけ?」
「惚けるな。今日、弁当も金持ってきてないんだが」
「……仕方ないわね。半分ぐらいなら分けてあげるわ。ありがたく思いなさいよ?」
 助かった。今日は朝から何も食ってなかったからな。それにハルヒの手作り弁当も食えるしな。
 
 おい、何だよ谷口。さっきから恨めしそうな顔しやがって。こっち見んな。



 完
251名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 09:44:35 ID:y/TOgNsl
以上です。誤字脱字に気付いてもスルーお願いしますねー。
この前作品とは何の関連性もありませんが、ハルヒ×キョンの作品です。
最後の6つ目のオチが物足りないような気がしますが、ご了承を。
252名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 10:47:59 ID:kUmSONUh
まあ、しばらくは閉鎖空間は発生しないだろうな
253名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 11:19:18 ID:RGiFwINT
>>251
どう見ても朝比奈さんは確信犯にしか見えません。本当にありがとうございました。
254名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 11:51:30 ID:s8rho0+s
>>253
つまり、2人をデートでくっつけてしまう行為は未来人として政治的に正当なものであり、
世界の逸脱を防ぐ意味でも妥当なものであるから、キョン個人への失礼は取るに足らないと。

こういう事ですか?分かりません。
255名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 13:37:30 ID:XczvU91a
>251
選択肢をことごとく潰されるキョンw
抵抗を諦め、疲れ果てた敗残兵の如きその姿は……まんざらでもなさそうだ
256名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 13:42:39 ID:8ZH2DO5i
みくるが鬼すぎて吹いた
257名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 14:15:03 ID:RCRN3c7I
>>254
確かにその本当の確信犯かもな
258名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 14:15:25 ID:RJ+YQ4dm
古泉がチケット持ってキョンに掛け合った時点で3人とも示し合わせてたと思われ。

有希はしょっぱなから断り、みくるは罠に嵌める。
そんな簡単な構図です。
259名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 14:38:39 ID:bSi9uUI2
実はキョンってSOS団で虐められてるんじゃね?w
260名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 15:01:10 ID:BlpuY0SO
一番虐められてるのはハブられっぱなしのハルヒだと思うがw

……みくるですか? 空気をわざわざ虐める人なんて(ry
261名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 15:56:05 ID:DtpEsIHh
>>257
未来には「涼宮ハルヒ」を神と崇める宗教があるのだ
朝比奈みくるはその信者にして、教団から「涼宮ハルヒ」を
神たらしめるために送り込まれたエージェントなのだ
262名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 16:38:14 ID:AzMWd957
『ブラッド・ミュージック』を投稿した者です。
4〜5レスほどお借りします。
263『エンドレス・デイト』1:2006/07/20(木) 16:42:02 ID:AzMWd957
何かおかしい。
そう気付きはじめたのは、午前を過ぎてデートもこれから真っ盛り、という時のことだ。
俺はハルヒと一緒にファミレスで昼食を食べているところだった。SOS団の団長殿は、俺の目の前でスパゲティーを盛大に啜り上げている。
「ちょっと、キョン!どうしたの、ボケッとして。いらないならあんたのカレーライス、あたしが食べちゃうわよ!」
よせ、やめろ、テーブル越しからフォークを突き出してくるな。俺はあわてて自分のカレーを死守して口にかき込んだ。そのとき―
「うん?」
不可解な風が俺の心を吹き抜ける。ハルヒがこれから驚天動地のことを言い出すような、既視感のような感覚。次に何が起こるのか、俺はどっかで経験した。そうだ、ハルヒはこんなことを言い出すのだ―。
「キョン、ここはあたしが払うわ!いっつもあんたに奢らせてばっかだしね。」
もちろん、この感覚には覚えがある。あの終わらない八月に、嫌と言うほど味わったからな。


『エンドレス・デイト』


もとはと言えば、今日はいつもの市内パトロールの筈だった。だが、古泉がバイト、朝比奈さんは鶴屋さんに呼ばれてお茶の会に行くという。さすがに、長門まで「…用事。」と言ったときには、耳を疑ったね。
SOS団のメンバーのうち三人が欠席なんて、あのとき以来の珍事件だ。偶然にしては出来すぎている。となれば―
団員の三人が欠席するという事態にも関わらず、集合場所に一人佇む俺を見つけて、まんざらでもない表情を浮かべているSOS団の団長。
ハルヒ、おまえの仕業か?

「しっかし、有希まで用事とはねえ。まったくもって意外だわ。何かの前兆かしら?関東を襲う超巨大地震とか!」
いや、そんな時こそ、長門がいてくれたら心強いこと限りないのだが。長門なら、超巨大地震はおろか、超巨大隕石の直撃弾だって何とかしてくれそうだ。
空から考えることをやめた超生物が降って来たって長門がいれば安心だ。
ところで、今日は二人だけだが、どうするんだ、ハルヒ?
「もちろん、活動するわよ!SOS団の活動は永久不滅の運動だもの。まあ、二人きりだけど、不思議なことは気にしないでしょ。大人数で探せばいいってもんじゃないわ。案外、こういう時を狙って不思議な事件は起こるものなのよ!」
いつからSOS団は永久運動になったんだ。それにしても、二人きりだと、なんだかデートみたいだな…
と言いかけた俺は、ハルヒの目から放たれる凶暴な光線にたじろいだ。しまった、やっちまった、今日は初っ端からいきなり失言か!?
古泉、お前のバイトを増やしちまいそうだ、正直、すまん。
「…ふーん、なんだ。キョン、デートしたいならそう言いなさいよ。」
えーと、なんですって、ハルヒさん?なんで既に幼馴染が照れ隠しで怒っているような口調なんでしょうか。
「しかたないわね、今日はあんたに付き合ってあげるわ。光栄だと思いなさいよ、バカキョン!」
ハルヒは満面に笑みを浮かべ、核融合ばりに目を輝かせて言い放った。こうして、俺とハルヒの一日デートが行われることに決定した、という訳だ。
ようやくだが、話を冒頭に戻すことにしよう。

264『エンドレス・デイト』2:2006/07/20(木) 16:43:12 ID:AzMWd957
強烈な既視感を味わった俺がやったことは、ハルヒにことわってトイレに駆け込み、そこから二人のSOS団員に電話をかけることだった。まず古泉。
『やあ、デートのほうはいかがですか。こちらは順調ですよ。閉鎖空間は拡大を完全に停止しました。あなたのおかげ、と考えてよいでしょう。涼宮さんの精神状態は非常に安定しています。少し高揚気味なの気になりますが。
ところで、どうしました?なにか涼宮さんを怒らせるようなことでも言いましたか?』
俺は手短に説明した。終わらない八月に感じたのと同じ、あの感覚を。今回はどういうことだ?
『八月の時と同じであれば、今日が何度も繰り返されていることになりますが…。それについては長門さんにお問い合わせください。推測ですが、今回のデートの内容に、涼宮さんは満足しないのではないでしょうか。
涼宮さんは、一日の終わりに自分のベッドの中で今日のデートを振り返り、やり損ねたことに気付く…そして、また同じ一日をスタートさせてしまうわけです。』
やれやれだ。
『あなたにできることは、一つしかありません。涼宮さんが満足できるように、デートに全身全霊を傾けてください。何一つ、やり残すことがないようにね。
いやあ、あなたと涼宮さんの熱いデートが見学できなくて残念です。デートという性格上、僕や長門さんが出て行くことはよろしくないでしょうから。なにかあったら連絡をいただけたら。では。』
切れた。次は長門だ。長門、今日が来るのは何回目だ?
『これで15498回目。』
またか。ひょっとして、俺が気付いたのは8769回目か?
『そう。』
俺は垂直にしたら月まで届きそうな溜息をついた。そんだけデートを繰り返して、俺は一度たりともハルヒを満足させることができなかったのか。かすかな自信と誇りを失うね。
『デートの内容は、遊園地、映画館、買い物に分岐する。最も多いパターンは遊園地で、10453回が遊園地。あなたがこの繰り返しに気が付いてからは全て遊園地に行っている。今回も遊園地になる可能性が高い。』
今回も、おまえはずっと観察していたってわけか。
『そう。二人きりのデートという性格上、私が同行することは望ましくない。私は、あなたたちに気付かれることなく尾行し、現在も観察を続けている。これからのあなたの行動パターンはほぼ一定であり、これからそれを指示する。
情報統合思念体は変化を望んでいる。これまでの8768回はほぼパターンが同一であり、観察対象として単調。データの採取は既に十分。あなたの働きによって涼宮ハルヒが満足しパターンを破ることが望ましい。』
どうすりゃいい?
『今から指示を出す。遊園地に入ってからでは連絡は困難。覚えて。』
長門から繰り出される指示を聞きながら、俺はさらに溜息をついた。とにかく長門の指示を忠実に実行するしかない。朝比奈さん風に言えば、「規定事項です」ってやつだ。
朝比奈さんに電話をしなかったのかって?
正直、朝比奈さんに話してもあのお方を混乱させるだけだろう。和服を着た朝比奈さんが、未来と連絡が取れなくなって、おろおろと泣き出すのがオチだろう。そんな事態だけはなんとしても阻止しなくてはならんからな。
俺はトイレを出てハルヒの元に向かった。長門に教えられたスケジュールを頭の中で反芻する。しかし、長門よ、これを今日一日で全部するのか?
「遅いじゃない、キョン!行くわよ。」
一応聞いてみる。なあハルヒ、どこに行くんだ?
「遊園地!!」

265『エンドレス・デイト』3:2006/07/20(木) 16:44:26 ID:AzMWd957
『遊園地の入り口で、あなたはまず宣言する。』
やれやれ。
「ハルヒ、今日はすべての乗り物を制覇するぞ!」
ハルヒは珍しい生き物でも見るような目で俺を見ていたが、パッと顔を輝かせて言った。
「もちろんよ!あんたも分かって来たみたいじゃない。完全制覇よ、うん、俄然やる気が沸いてきたわっ!!」

『ジェットコースターでは、涼宮ハルヒと手をつなぐ。これはすべてのパターンで確認されている。』
「ちょっ、ちょっとキョン!なんで急に手を…。バカ、別に離さなくていいわよ!」

『コーヒーカップは全力で回すこと。ただし、あなたが吐いてしまった二回のシークエンスでは、その直後に改変がおき、時間がリセットされた。』
「キョン、うわっ、そんなに回して大丈夫なの!?あ、あんた、なんか顔色悪いわよっ。」

『観覧車では涼宮ハルヒと同じ側に乗る。肩に手をまわし、抱き寄せること。観覧車が最高点に達したとき、涼宮ハルヒに口吻部で接触を行う。』
まじか!?本当に大丈夫なのか、長門?
「んっ、キョン…。んん。」
…まんざらでもなさそうだ。

遊園地を出る頃には、俺の体力は限界に達していた。まさしく疲労困憊だ。ハルヒはと言えば、力が有り余った様子で、上機嫌ではしゃいでいる。別れ際には「楽しかったわっ!」なんて可愛いことを言ってくれるじゃあないか、まったく。

「やれやれ。」
ハルヒの姿が見えなくなるのを確認してから、今日何度目になるか分からんが、俺は小声でそう呟くと家に向かう。しかし、家では仰天の事実が待っていた。テーブルの上に一枚置かれた置手紙。それにはこう書いてあった―

『キョン君、今日は、みんなでおばあちゃんちに行くことになったのっ。キョン君はお留守番ね。明日の夜に帰るから☆』
妹からのメッセージとともに、母親から細かい注意事項が書いてある。

おい、これはフラグか?
『間違いなく、そうでしょう。』
電話に出た古泉は断言しやがった。受話器の向こうのニヤケ面が目に浮かぶ。
『急に家族があなたを残して旅行とは、あまりに不自然です。であるからこそ、それは涼宮さんの願望であると推測できるわけでして…。まず、涼宮さんは断らないですよ。
いやあ、僕の知らないところで、あなたが大人への階段を上っていってしまうのは、少し寂しいものが…』
俺は電話を切った。長門、頼む、嘘だと言ってくれ。
『セカンド・ミッション開始。』
ああ…。規定事項ってやつか。

266『エンドレス・デイト』4:2006/07/20(木) 16:45:24 ID:AzMWd957
俺はハルヒに電話をかけた。ハルヒの奴、ワンコールで出やがった。
『なにか用でもあるの、キョン?』
実は、いきなり家族が俺だけを残して旅行に出かけてさ。
『……。』
その、一人だけで夕飯を食べるのも味気ないからさ。
『……。』
つまりだ、良かったら、うちに来て一緒に食べないか。いや、もちろん、もう食べてたらいいんだ、無理にとは
『い、行くわっ!待ってなさい!』
電話が切れた。俺は携帯を持って固まっていた…。

玄関を開けると、息があがったハルヒが立っていた。あれ、なんだ、その荷物は?それに、顔が赤いぞ、ハルヒ。
「…っ。なんでもないわ!どうせ、私が夕食を作るんでしょ、台所かりるわよ。食材は適当に冷蔵庫からいただくからっ。」
…ということは、その荷物は食材じゃないのか、などという台詞を言うまでもなく、中身は分かっていた。長門が教えてくれていたからな。
『涼宮ハルヒの荷物は』
なにが入ってるんだ?
『歯ブラシ、パジャマ、下着、明日登校するための制服。パジャマのかわりにネグリジェだったパターンが一回だけある。』
やれやれ。

ハルヒの作った夕食は、これまた非常に旨かった。こいつの万能ぶりを再確認させられるね。向かい合わせで食べながら、ハルヒは妙に熱っぽい目で、ちらちらとこちらに視線を送ってくる。旨いぞ、ハルヒ。
「あ、あったりまえじゃない!SOS団団長の手料理が食べられるあんたは宇宙一の幸せもんよっ!幸福を噛み締めなさい!!」
そろそろ切り出さねば。
「ハルヒ。」
「なに?」
「その、明日の朝食も作ってくれないか。おまえの料理はめちゃめちゃ旨くてな。ぜひ、明日も食べたいもんだ。だから…。」
ハルヒは絶句してやがる。顔は真っ赤で破裂寸前の恒星みたいだ。
「いいわよ、ぐ、偶然パジャマを持ってきたから!お弁当だって作ってあげるわ。…あんたさえよければ。」
いったいぜんたい、どんな偶然だ、そいつはよっ!

『あなたと涼宮ハルヒは12時近くまでに性行為を終える。彼女が満足しない場合、必ず12時に改変がおき、世界はまた今日の朝に戻される。これまでのパターンでは全て世界はリセットされた。
…あなたは、ベッドでは涼宮ハルヒひとり満足させることはできない。情報統合思念体はあなたの生物学的な雄の機能に、重大な欠陥が存在する可能性を検討している。』
えーと、長門さん?何でそんなに辛辣なんでしょうか。ひょっとして、怒ってる?
『…………。』
受話器の向こうは絶対零度のような冷たさだ。
『………あなたのこれまでの最高記録は7発。涼宮ハルヒを満足させるには、記録の更新が望ましい。頑張ってほしいと情報統合思念体は望んでいる。だが、私という個体は、別の感想を抱いている。』
なんだ?ああ、また非常に辛い感覚がフラッシュ・バックする。長門は、おそらくこう言うだろう―
『あなたは、けだもの』
電話が切れた。

267『エンドレス・デイト』5:2006/07/20(木) 16:46:26 ID:AzMWd957
ああ、けだものになったさ。ハルヒの台詞だけ、ダイジェストでおおくりする。
「ああ、キョン、キョン、ああああああっっ!!……すごい、キョンの、もうこんなに、ううううっ!……今度は、あ、あたしが上になるからっ!どう、キョン、キョン、キョンっ!
……な、なに、四回目よ?すごいわね、まったく……ああ、おかしくなりそう、キョン、すごいっ!!……キョン、らめえ、むりよ、そんな、あっ!
……ま、まだ?この変態っ、キョンのバカ、あんっ!!……キョン、大好き、大好き、んんんんんっ!!!……ハァ…ハァ…ハァ…」
精も根も尽き果てた。もう立てないのは息子ともどもだ。きっちり記録は更新したぞ、これで八回だ…。ハルヒも、俺のとなりでぐったりとしている。
俺は時計を見た。針は11時50分を指している。もうすぐ、俺の努力が報われるか報われないかが決まるわけか…。
「おい、ハルヒ、今日はどうだった?」
ハルヒは寝返りをうってこっちに顔を向けた。上気した顔には笑みが浮かんでいる。
「すっごく良かったわ…最高の一日だった。……ありがと、キョン。」
そういってハルヒは俺に口付ける。ああ、俺も最高の一日だった、まったくの話―
その時だ、まったくの突然、唐突、突如にして忽然と―
アレが来た。
強烈な既視感。なんども繰り返したんだ。ハルヒが嬉しそうに俺に口付ける。礼を言う。全部やったことだ。くそ、これじゃ全部同じままだ。なにかが、必要なんだ―
何だ?どうやったらハルヒは、この繰り返しをやめる気になる?どうすれば?時間がない、あと五分だ、どうする、なんでもいい、言うしかない、やっちまえ、行け!!
「ハルヒ!!」
突然起き上がった俺に、ハルヒがびくっとする。
「な、なによ大きな声を出して。どうしたの?」
俺は息を吸い込んだ。たった今思いついた台詞を言うんだ、今すぐに。

「次のデートは、どこにいこうか?」


さて、ここからは後日談となる。
ハルヒはしばらく思案顔で考えていた。その間に時計の針は、12時を指し―
12時0分1秒になった。
アタリを引いたようだ。俺はばったりとベッドに倒れこんで、気を失うように眠りに落ちた。遠くで、「こら、寝るな、バカキョン!」とハルヒの声がしたが、俺を眠りの国から連れ戻すには至らなかった。
翌朝、起きてみるとハルヒがいなくて焦ったが、台所で朝食を作っているところだった。
エプロン姿が似合っている。二人でハルヒ特製の朝食を食べ、これまたハルヒ特製の弁当を持って学校に登校する。こら、ハルヒ、照れるから腕を組むな。手をつなぐぐらいなら構わんが。

部室に行く途中で古泉に会う。サワヤカハンサムスマイルは肩をすくめるいつものポーズをして見せた。
「どうやら、今回の場合、どうしてもあの八月と同じ原因があると思い込んでしまったことが、ことを長引かせましたね。
涼宮さんは満足しなかったのではない。むしろ、この上なく満足してしまったために、今日という一日が終わらなければいい、と望んだのでしょう。あなたが遊園地で頑張るほど、ベッドで頑張るほどに、泥沼にはまっていったのです。
もちろん、彼女がデートに満足できなければ、繰り返しが起きることも確実です。涼宮さんが満足してもしなくても、結局繰り返しが起きてしまう。まさに、無限ループです。
ところが、あなたの一言によって、彼女は次のデートに関心を集中させていた…。そうだ、次のデートのためには、今日という一日が終わるのはしかたない、そんなとこでしょう。
いやあ、実に興味深い。あなたには、次のデートの時にループにならないよう努力する義務が発生しますね。涼宮さんを完全に満足させた上で、次のデートを約束するんです。」
あ、これはこれで無限ループですね、と古泉が言い、俺は溜息をついた。やれやれだ。部室のドアを開けると、いつものように長門と、朝比奈さんが―
あれ、朝比奈さん?なんで顔を真っ赤にして、肩を震わせていらっしゃるのですか?その睨む様な視線は、ひょっとして怒っていらっしゃるとか…
「朝比奈みくるにあなたの破廉恥な行為を全て報告した。」
おいっ!長門!!
「ひ、一晩で、は、は、八回なんて…キョンくんなんて大嫌いですっ!け、け、け…」
あ、朝比奈さんっ―

「けだものですっっっ!!!!」


おしまい
268名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 17:19:38 ID:nfxxl/Yk
>>267
GJ!
エロくて笑えて面白いwwww
269名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 17:19:38 ID:sxDzKlOT
>>267
絶倫キョンにGJ
270名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 17:27:55 ID:kUmSONUh
8回もやったら、煙も出んだろうなw
271名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 17:29:39 ID:NPNUzssY
タイトルだけで99%成功を約束されたようなもんだなw
バレバレなんだけど、だからこそおもしろかった。

「けだもの」がしつこくてちょっと萎えたのだけが残念だ。
これだけはなにが良いのかさっぱり。
272名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 17:34:48 ID:Hk8b33zi
じゃあ勝手に黙って萎えてろよ
273名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 17:44:44 ID:vQa/MMno
GJ!長門が鬼畜キャラにwwwwww
274名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 17:45:05 ID:uF7nQ2iW
笑い要素もありエロ要素もあり・・・面白かったですw
自分は長門とみくるの、けだもの、が面白かったです、GJ!w
275名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 18:20:00 ID:HBAuWQBZ
もしかして長門わざとか?>8発
何かもう色々ブッ飛んでて面白かった。一日での進展具合がすさまじいなw
276名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 18:22:45 ID:x+cWID1T
ベクトルこそ違えど才能溢れる投下が多いなw
277名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 18:28:07 ID:4Ejx0pGZ
>>267
3から一気に引き込まれた。長門よっぽど悔しかったんだな。
次作も待ってるよ。
278名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 18:28:57 ID:XczvU91a
>267
ハードすぎる指示と、やけくそ気味のsexに突入するキョンに吹いたw
テンポよく読ませる手腕と、しっかりした話も秀逸。楽しんだ!
279名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 18:38:48 ID:GNtca3r+


272 :名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 17:34:48 ID:Hk8b33zi
じゃあ勝手に黙って萎えてろよ
280名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 18:46:29 ID:iaHqWgf5
>267
力作に燃えた。Nice

ところで長門の「けだもの」発言て
原作にあったっけ?
281名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 19:29:03 ID:W+/7w9e2
俺は原作もアニメもみたことないけど>>267の設定、構成、オチのレベル
が高いのは分かるさー
282名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 19:32:43 ID:tGHlBhYn
ちょ、なんでここにいるんだw
283名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 19:47:08 ID:pZKKMNLJ
>>280
いや、このスレ発祥だ
284名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 19:57:33 ID:pUKU1QDw
エロじゃないパロはどこ行けば読めますか><
285名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 20:03:34 ID:qowzhB02
>>284
ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記み、見た!?」
http://ex16.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1153321543/

VIPとか?
286名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 20:12:04 ID:pUKU1QDw
>>285
まとめ見たけど良作が少ないなあ

ていうかこれだけ板があるのにエロじゃないパロの板がないのが不思議だ
287名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 20:20:32 ID:Cdi8dUNP
何で一般向けパロ板がないのとかは別にハルヒに限っていわれてるわけじゃないが、
だいぶ昔からいわれているのに立つ気配がないと言うことは
少なくとも2ch内部に立てる必要がないという意味だな。
288名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 20:33:53 ID:9dSrQbIM
ひろゆきの気まぐれだからな、板の設置なんて
289名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 20:36:51 ID:TIpUX0E+
>>267
クソッ、ニヤニヤしすぎて頬が痛ぇぞ!どうしてくれる!
あーーーーんもーーーーー!!!
290名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 20:58:23 ID:WvhwrNaP
よし、今のうちに出すに出せなかった小ネタを出そう。
18スレくらいに前の書いたっけな…
291名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 20:59:21 ID:WvhwrNaP
みくる編
ハルヒに走らされ、長門に連れられ、俺の喉はギリギリまで巻き込まれた太平洋プレートよりも限界に近づいていた。
これもハルヒの仕業か分からんが、古泉に問いただしたところで「涼宮さんが望んだ事ですよ」で片付けられてしまうに違いない。
とにかく水分だ。 今の俺にとっては核で動く空飛ぶタイムマシン付き車よりも貴重だ。
『第三走者…』
あぁ、もう聞いてる余裕は無い。 って水筒はどこだ、俺はここに置いといたはずだぞ。 谷口、隠すと後で後悔するぞ。
「そんな幼稚な事、誰がするか」
「そうかい、じゃあお前の飲んでるお茶を分けてくれ」
「悪りぃな、ちょうど飲み干したところだ」
蓋を開けて中身が無いことを見せ付ける谷口。 なんて間の悪さだ。 暗い路地の夜道の一人歩きには注意しろよ。
「あ、あのぅ…」
透き通るようなエンジェルボイスに振り向けば、朝比奈さんがいた。 というかあなたもですか?
「ふえぇ、ごめんなさい… すきな人って書かれてたから…」
すみません、もう一度言ってもらえますか? 俺の聞き間違いでなければ「好きな人と」
「いえ、すきな人って事は、誰でもいいのかなって…」
喜びと驚きの数値が底の割れた体温計のように降下していく。 そういう意味で捉えたのか… 
「と、とにかく急ぎましょう。 このままじゃ最下位ですよ」
俺は朝比奈さんの手をとり何とかコースまで来た。 持ってくれ、俺の体力。
「ま、待って下さいよぉ… きゃぁ!」
悲鳴にあわてて振り向くと朝比奈さんが豪快にヘッドスライディングしていた。 しかも何もない場所で。
「大丈夫ですか朝比奈さん」
「ふえぇ大丈夫ですぅ…」
ぜんぜん大丈夫そうに見えなかった。 ってか膝を擦りむいてるじゃないですか。
「え… きゃっ!」
擦り傷を見た朝比奈さんはそのまま気絶してしまった。 なにを思ったか俺はあわてて背中と膝に手を回し持ち上げた。 いわゆる『お姫様抱っこ』という奴だ。
何で俺もこんなことをしてしまったかはよく憶えていない。 とりあえず喉の渇きと朝比奈さんの気絶で必死だったんだろう。
そのままゴールラインまで走りきったときには冷やかしの声と呪いの言葉が1対6の割合で飛んできたことだけは言っておこう。 あと案の定最下位だった。

朝比奈さんが目を覚ましたのはちょうど朝比奈さんをおろし、保険の先生が傷口を消毒し始めた時だった。
「キョン君、ごめんなさい… 迷惑かけちゃって」
いえいえ、朝比奈さんならたとえ反対の家で「引越し!引越し!」と騒がれても迷惑とは思いませんよ。
「あ、もう大丈夫ですから戻ってくださいね」
朝比奈さんの見てるだけで美容効果がありそうな笑顔をOKサインとして受け取った俺は、競歩世界新よりも速くテントに戻った。 もう本当に喉が限界だった。

「やあ、お待ちしておりました」
どけ、古泉。 まだ次の走者までは時間が有るはずだろ。
「それも込みでお話があるんです。 実は先ほど大規模な閉鎖空間が発生しました」
さっきまであれだけ元気だったのにもう不機嫌になったのか。
「本当に鈍いですね、原因はあなたですよ」
「俺が?」
「まぁ、無駄話もどうかと思うので単刀直入に言います。 僕の代わりに借り物競争に出てもらえますか? 緊急出動がかかってるんで僕は出れないんですよ」
つまりこれに出てハルヒの機嫌が直るような事をしろという事か…
「その通りです」
「分かった。 だがまずお茶を飲ませてくれ…」
「何を言ってるんです? もう次ですよ」
古泉が肩をすくめて鼻で笑った。 正直お前一人居なくてもどうにかなるんじゃないのか?
『第五走者の人は、白線内に集まってください』
無常にも俺の番を知らせるアナウンスが流れ、俺はバッテリー切れ寸前のASIMOのように中央に歩いていった。
これもハルヒが望んだ。 何て言わないでくれよな…
292名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 21:01:36 ID:WvhwrNaP
お蔵入りにしたくなくて投下した。 けっこう公開はしている。
293名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 21:05:57 ID:Cu2l/gul
確かに公開してるな
294名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 21:39:01 ID:L8x/QEAg
>>292
GJ
しかし朝比奈さんは本当にスペック低いなw
295名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 22:02:41 ID:Akm/Ufe4
やっぱ、みくるは鬼だな。
296名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 22:24:02 ID:XczvU91a
>292
投下しないで後悔するより、投下して公開
297名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 22:33:02 ID:BW9TnJQf
ガワに栄養行き過ぎたのか…
298名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 22:55:59 ID:JSaDac0J
VIPで萌えてきました
299名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 23:02:02 ID:eBizf/Pi
>283
「けだもの」を最初に使ったSSってどれかな?
知ってたら教えてクレイ
300名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 23:25:10 ID:omiXwP+I
つーかさ、
「けだもの」の元ネタってスクイズのせっちゃんなのか?

確かに多少は長門っぺぇキャラではあるが…
301名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 23:25:33 ID:+YAcabmW
302名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 23:25:34 ID:VdrQJl1u
多分9章の592が初出
303名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 23:27:01 ID:oFi3QWLz
「けだもの」なんてどこでも聞くじゃん
最近はあまり見なくなった気はするけど
304名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 23:35:02 ID:cPPLqpxS
>>302
こっちのほうが早くね?
1スレの85

ttp://red.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/h/haruhi05.html
305名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 23:58:15 ID:rPYxdZFd
一部の作者が無理矢理流行らせようとしてるだけで、正直どうでもいい。
306名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 00:01:52 ID:jXF4JS+2
『エンドレス・デイト』の作者です。
3〜4レスほどお借りします。
今回はやや幻想ホラー、ギャグなし、非エロなので嫌いな方は飛ばしてください。
次あたりはギャグ・エロにしたいのですが…。
ちなみに、グロはないです。
307名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 00:03:23 ID:LXcFnFew
自分語りはいいからちゃっちゃと落としなさい。
308『長門の火星年代記 200X年8月』その1:2006/07/21(金) 00:04:36 ID:jXF4JS+2
「なあ、長門。火星人っているのか?」
とある日の昼休み、部室で弁当を食べながら、俺は珍しく薄い文庫のSFを読んでいる長門に聞いてみた。
長門はページを繰る手を、ふと止めた。
「いる。」
なんとまあ…。
「やっぱりタコみたいな形をしてるのか?」
「していない。外見的特長は、むしろ人間に近い。ただし身長はやや低い。肌は浅黒く目は金色。音楽的な声を持っている。」
「おい、火星探査船も行っているんだぜ。いくらなんでも、そんな火星人がいたら気が付くんじゃないか?」
長門は黒い瞳をこっちに向ける。
「地球人は永久に気付かないと推測される。それが火星に住む有機生命体の力。そもそも、火星にその有機生命体が発生したのはごく最近のこと。」
おい、長門……ひょっとしてそれもハルヒのせいか?
「火星人はおそらく三年前に生まれた。…………聞きたい?」
「ああ。」
聞かせてもらいたいね。


『長門の火星年代記 200X年8月』


情報統合思念体は、地球以外に有機的知性体の存在を確認していなかった。3年前の情報爆発以来、私は涼宮ハルヒの観察任務についてきた。
火星は観察の対象ではなく、そのまま時が過ぎれば、私が火星人と接触をすることもなかっただろう。
「しかし、200X年の8月、情報統合思念体は火星から知的生命体から発せられると思われる情報を察知した。」
8月。終わらない夏休み。そういえば、あのときSOS団は天体観測をやった。そのとき、ハルヒが言ってたことが俺の頭をよぎる。

『いないのかしら…火星人。』

「あの言葉がトリガーとなった。おそらく三年前の情報爆発の時点で火星人を形成できるだけの存在情報は火星上にあった。それらは涼宮ハルヒのあの言葉を契機に、自己を火星人として形成した。
それは、次第に成長し、情報統合思念体が感知できるまでに発達した文明社会を作った。」
「文明の進化がそんなに急速に進むのか?」
思わず俺は長門に聞いた。
「確かに速度は異常に速かったが、あの二週間では実際には500年ほどが経過している。
火星人の伝達情報も情報統合思念体と同様、時空に干渉されない形式で伝達され蓄積される。
だから2週間でリセットされる時間でも、進化を遂げることができた。」
時空に干渉されない形式って何だ?
「存在情報。宇宙自体を記述する方程式。無限の容量を持っているうえに、物理的存在には干渉されない。それが物理的法則を形成するものそのものだから。
情報統合思念体は関心を示した。火星人とその進化の可能性に。」

私は火星に観察に赴くことになった。勿論、涼宮ハルヒの観察が最優先事項であり、その任務は私が行わなくてはならない。私は自分の構成情報の一部で簡易インターフェイスを形成した。いわば私の分身。
簡易インターフェイスを火星に派遣し、その知覚情報を送らせる。
存在情報は時空に干渉されない。一瞬の後に、私は火星に居た。
「私はそのとき当惑した。」
長門でも驚くようなことがあったのか。そっちのほうが俺には驚きだが…。

309『長門の火星年代記 200X年8月』その2:2006/07/21(金) 00:05:27 ID:jXF4JS+2
私がいたのはこの学校の芝生だった。緑の芝生の上に私は降り立った。あたりを見回し、視覚情報を得る。
やはり、視覚情報は学校と一致した。
私はやや混乱した。本体である私が行けば、感覚情報に頼ることなく情報を得ることが出来るだろう。
しかし、涼宮ハルヒの観察が最優先される。そのため、代理インターフェイスに多くの構成情報をつぎ込むことはできなかった。
私は感覚情報のみの採取を続行することにした。校舎の中を歩き回る。観察を続けるほどに、そこは地球にある、この学校そのものという確信は強まるばかりだった。
だが、代理インターフェイスの座標情報は、間違いなく火星を示している。
ここは火星なのだ。それは疑いようがない。
私は部室へと向かっていった。一人の生徒ともすれ違わないのは、夏休みだからだろうか。
部室のドアを開ける。
そこには、一人の男子生徒が座って本を読んでいた。こちらに背を向けていて、顔は見えない。
「だが、私にはそれが誰なのか分かっていた。」
「誰だったんだ?」
長門は少し口をつぐんで俺を見ていた。
「あなた。」

あなたがそこにいた。
あなたは私に気付くと、よお、と挨拶をした。私は注意深く観察し、主に視覚情報からあなたを同定しようとした。99.8パーセントの適合率。あなたと同一人物だった。
少なくとも、感覚情報としては。しかし、それがあなたではないことも私は分かっていた。
なぜなら、あなたは地球で私と一緒に花火を見ていたから。
火星にいるあなたは、文庫本を閉じて立ち上がった。その本には見た記憶がある。古いSF小説。ひどく情緒的で、私にはよく理解できなかった…。
『どうしたんだ、長門?』
なぜ、あなたがここにいるのだろう。ここは火星なのに。
私はあなたにそう聞いてみた。
『さあな。』
あなたは、古泉樹がやるように肩をすくめた。
『俺にわかっているのは、自分がここにいるってことだけさ。火星だろうと地球だろうと知ったことじゃないね。ほら、』
あなたは、私に向かって手を差し出した。
『触ってみろよ。』
私はおずおずと手を出す。確かに温かい、あなたの感覚情報がある。
『温かいだろ。』
私はかすかに頷く。だったら、とあなたは続けた。勝ち誇るように。
『何が問題だっていうんだ?』

蝉の鳴き声が聞こえてくる部室で、私とあなたは二人で読書していた。気温は夏らしく35度に近いだろう。私は汗をかかないが、あなたも不快そうには見えない。
静かに読書を進める。
私はこの時間が不快ではなかった。だから、観察をやめてそこに留まっていた。
あなたのそばに。

310『長門の火星年代記 200X年8月』その3:2006/07/21(金) 00:06:26 ID:jXF4JS+2
だが。
私は思考を開始した。
間違いなく、ここは火星であり、私は火星人を観察するためにここに派遣された。
情報統合思念体は、自身と同質の力が火星に発生したことを確認している。
火星、火星人、情報操作能力、学校、部室、あなた。
火星人は私を観察したいと考えるだろう。私は何もせず、ここに座っている。ここで観察もせず、探索もせずに。
私は今、観察されているのか?
情報操作。存在情報。
おそらく、彼らは、私の代理インターフェイスの存在情報から、私の記憶情報を探し当てたのだ。
そして、構成する。学校を、部室を。
あなたを。

私の体温が一度低下した。落下の感覚。
私は騙されている。ここを出なくては。このインターフェイスの存在情報は限られている。情報戦では敵わないだろう。私は椅子から立ち上がった。

『どこへ行く?』
冷ややかな声。あなたの声。だが、あなたの声ではない。
不快感。動作不良。これを恐怖と呼ぶのだろうか?
「喉が…渇いた。お茶を淹れる。」
『でも、渇いてないだろう』
「渇いている。」
あなたが立ち上がる気配。
『いいや、渇いてないさ。』
とっさに私はドアに向かって駆け出した。後ろを振り向き、小さく悲鳴を漏らした。
あなたは、溶けて、あなたでないものになり、何か別のものになって―
浅黒い肌、金色の目。
その瞬間、私は代理インターフェイスの全構成情報の連結を解除し、地球にいる私に転送した。

「私は得た情報を統合思念体に送った。統合思念体は、自分と同種の思念体が火星に育ったことを確認するために、別のインターフェイスを火星に派遣した。
しかし、それ以上のことは私には分からない。私は、火星人について、情報統合思念体から送られてくる情報を意図的にブロックしているから。」
俺は言葉が継げなかった。あの夏、長門がそんな恐ろしい体験をしていたなんて…。
「そいつらは、地球に来るのか。」
「現在の彼らの情報技術水準があれからどれだけ進歩しているか分からない。だが、それは十分に有り得る事態。」
でも、と長門は続ける。
「構成情報を完全に持っている私であれば、大概の情報操作は破ることが可能。あなたは心配しなくて良い。……私が守る。」
そうか、と呟いたところでチャイムが鳴った。授業だ。
そうだ、最後に一つだけ教えてくれ。火星人は、いったい何の本を読んでたんだ?
長門は、読んでいたSFの文庫本を差し出した。―――レイ・ブラッドベリ。
なるほどな。やれやれ。



311名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 00:32:58 ID:6zXFJF07
nac乙。
312名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 00:38:55 ID:DgQOR64y
なるほど、火星年代記か。
メジャーなものを持ってきたな。

…ようするにSFにハマった長門作のフィクションってことね。
313名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 00:39:07 ID:7+N77vg0
脱環/檻オンザデイ

面白かったけどえぐるようなジャブってどういう表現だw
314名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 00:49:03 ID:NG3zQhGa
アニメ放送時代の加速に耐えられなくて離れていたんだが、
もうこんなにすすんでたのな。正直びびった。
まぁもっと速度が落ち着いて冷え鎮まったころにたまったSSでも読んでいくことにしよう。
315名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 00:59:25 ID:VldWN0Vn
>…火星人について、情報統合思念体から送られてくる情報を意図的に
ブロックしているから」 ここが印象的だった。恐怖を知っているのか。
316名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 02:10:04 ID:iWNdqNir
恐がる長門…かなり(・∀・)イイ!!
317名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 02:38:40 ID:Ip1t7Aas
ハルヒ実写化してくんないかなぁ。絶対HITすると思うんだけど…
知名度高いし、最終兵器彼女よりは面白くなりそう
318名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 02:39:22 ID:b2aYY8Dk
>>317
それだけは避けてホシイ
319名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 02:40:51 ID:KCNf4CNt
確かにハルヒ役は平野綾でできそうだし(笑)
320名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 02:51:34 ID:VldWN0Vn
あのCM見たことがあると仮定したら、どの口がそんなことを言うんだ…。マジ勘弁
321名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 02:56:08 ID:ihBE0h4H
>317
全速力で避けるんだ
デビルマンよりアレで
いいひとより苦しく
ホーリーランドより死ねる
そんな月曜ドラマランドになるに決まってる

全速力で避けるんだ
322名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 03:00:46 ID:nNxUfU85
原作でヒットしてアニメで爆発して実写化でこける。
見飽きたパターンだ。 是非ともやめて欲しい。
323名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 03:14:25 ID:VwmwsZX0
>313
ジャブはえぐるように打つべし!
「明日のジョー」の台詞
324名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 03:18:01 ID:Ex5gJSDr
それよりも消失のアニメ版が見たい
325名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 03:21:41 ID:b2aYY8Dk
>>324
だな。あと長門有希の逆襲の原作も欲しい。
326名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 05:31:32 ID:+E71NuKH
長門の生活費はどこから来るんだろう
327名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 05:42:19 ID:bjfAoO5d
実写化する予算があるくらいなら、そんなものよりも
消失でアニメ映画化をキボンヌしたい
328名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 06:58:39 ID:XeNUN1JI
>>326
パパが月イチでおこづかいくれる
329名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 07:14:14 ID:HmLdaHHL
まあ数年のうちに第二期はやるだろうなと思っているのだけど
甘いのかな

とりあえず実写はぜったい許さん
330名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 07:14:52 ID:bRfGe3IF
>>328
ついうっかりパパが振込忘れた場合は
メシをたかりにキョンの家へ行って


そのまま風呂ももらって泊まってくるんだな

で、ハルヒがヤキモチ
331名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 07:41:35 ID:HmLdaHHL
>>330
そのシチュで一本書いてくれw
332名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 08:15:24 ID:0GE8vlgB
http://newsplus.jugem.jp/?cid=3
アニメヲタクを盗撮して自分のサイトで公開し、
「気持ち悪すぎ、家族諸共惨殺されるべきじゃない?」と、言い放った男。
暴行やレイプ未遂を自慢した過去の日記が発見され、一気に話題に。

東京都杉並区荻窪〜西荻窪出身。
現在は東京の府中市在住。

庵谷鷹志(BLOGで暴行強姦自慢)に投票お願いします。

ネットアイドルランキング (現在5位)
http://www17.big.or.jp/~bbb/p/tvote.cgi?event=netidol
アイドル・芸能
http://www16.big.or.jp/~psy/vote/tvote.cgi?event=geinou
333名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 09:15:39 ID:n8ma6gne
http://www57.tok2.com/home/no1guy/cgi-bin/choice/choice.cgi?mode=2
人気歌手ランキング
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334名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 09:29:33 ID:ZzI+zNCj
∩___∩
   | ノ      ヽ/⌒) あばばばばばば
  /⌒) (゚)   (゚) | .|
 / /   ( _●_)  ミ/    ∩―−、
.(  ヽ  |∪|  /    / (゚) 、_ `ヽ
 \    ヽノ /      /  ( ●  (゚) |つ
  /      /      | /(入__ノ   ミ   あばばっあびゃばびゃばば
 |       /       、 (_/    ノ
 |  /\ \       \___ ノ゙ ─ー
 | /    )  )       \       _
 ∪    (  \        \     \
       \_)


335名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 09:36:06 ID:ZzI+zNCj
(;´Д`)
336名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 09:38:18 ID:+QSIBAS8
337名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 09:52:15 ID:bbYN69xz
>>284
アニメキャラ(個別)板の下のスレでもエロ無しSS書かれているみたい。

【涼宮ハルヒの憂鬱】涼宮ハルヒを語れ その11
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1153412837/

ハルヒスレSS簡易まとめ
ttp://www.geocities.jp/haruhi365/index.htm
338名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 09:56:41 ID:+QSIBAS8
冷えろはマジ帰れ!板の名前も読めないのかって感じ!
339名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 09:58:00 ID:+QSIBAS8
どうして俺が帰ってくるころに荒れてるんだ
340名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 10:36:52 ID:U55kghUC
こんな時間に帰ってくる君はどんな仕事をしてるんだ>>339
341名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 10:43:37 ID:u3Z5+OBN
>>339
逆に考えろ。お前が帰ってくるから荒れるんだ。仕事池w
342名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 11:17:38 ID:RJ8rrOMl
泊まり勤務を終えて、朝に帰ってくる職業なんぞいくらでもあるぞ。
警察官、鉄道員…
343名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 11:45:42 ID:LT9+Cfoc
SSなら5千字でも1万字でも書けるのに、なんでレポートの2千字が書けないんだろうな
344名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 11:54:40 ID:pqYGaaAF
SSをレポートとして提出しなさい。
345名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 12:23:31 ID:0MwRKuwb
むしろレポートをSSとして投下しなさい
346名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 14:14:37 ID:O08iM0vb
エロ無し、 創作文芸かな、、あそこは厳しいな…
http://book3.2ch.net/bun/

こんなんがあった

涼宮ハルヒの躁鬱
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1153266603/
347名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 15:06:52 ID:ve27dUsB
つーかいちいちマジで相手してんじゃないよ。
お前ら歳幾つだっつーの。
348名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 15:14:06 ID:80VTr/N9
924 名前:名無しさん@ピンキー メェル:sage 投稿日:2006/07/19(水) 18:31:51 ID:7bW+vbra
おい>>921
ハルヒスレで投下するんじゃなかったのか??

925 名前:かなり ◆WT4p4fROmI メェル:sage 投稿日:2006/07/19(水) 21:39:46 ID:+pZL3JCP
>>924
何を?

926 名前:名無しさん@ピンキー メェル:sage 投稿日:2006/07/20(木) 14:26:56 ID:vQa/MMno
>>925
SS投下しますって言ってただろ。

927 名前:かなり ◆WT4p4fROmI メェル:sage 投稿日:2006/07/20(木) 22:43:15 ID:hmdIFbm2
>>926
昔のことだ
349名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 15:34:57 ID:8bbswcCA
糞コテは脳内消去でおながいします
350涼宮ハルヒの×××:2006/07/21(金) 15:43:12 ID:6RRZNb8p
新学期だ、また今年もいろいろあるんだろうなと言う期待に胸を膨らませる訳などほぼありえず、
迷惑と驚愕に胸を膨らませることはまず間違いないであろう。
それは百パーセントの確率であり、あの女の変態パワーに振り回されることは明白だ。
あの女、涼宮ハルヒはそう言う奴なのだ。
だがこの時世界が変わっていたのを俺は知らなかった、むしろ知りたく無かったがね


「よう、相変わらずムサい顔してるな」
おい谷口、お前にだけは言われたくないぞ。
「おはよう、キョンはまだクラス割り見て無いよね、今年も同じクラスだよ」
さすが持つべき物は友だね。
「そうか、すまんな国木田、助かるよ」
まぁどうせ俺の後ろの席に団長様がふんぞり返っているのは間違いない。
古泉曰く、それは彼女が望んだからです、ってな。
雑談しつつ新クラスに向かう。
しかし三階に行くのと二階に行くの、
あまり使う労力は違わないのに嬉しいのはなぜなんだろうね。
天に召されたニュートン先生に多少の呪いの言葉と賞賛を送りつつ、
三十段程登らなくて良くなった階段は素敵だ。
などなど至極くだらん思考をしていたら新しい教室に着いた。
やはりあの席か、窓際の席で黄色のカチューシャを見つけた。
「ようハルヒ」
俺は自分の席になるであろう場所に座りながら言う。
「お、おはようキョン君」
「は?」
君?俺は未だかつてお前に君づけされたことは無いぞ。
新学年だからってまた変なイベントかよ。
「どうした、また変な事でも思い付いたか?」
「えっ、あっあたしは普通だよ」
たしかにそうだな、よからぬ事を考えるハルヒはもっと輝いているはずだ。
それにこんな挙動不信な団長様は有り得ない、
頬を少し赤らめ俺を見つめた姿、
これではただの乙女じゃあないか。
351涼宮ハルヒの×××:2006/07/21(金) 15:47:29 ID:6RRZNb8p
「キョン君?」
「なんだ?」
「こ、今年も同じクラスになったね」
「ああ」

ハルヒは少し恥ずかしそうにこう言った。
「よろしくね」
…目眩がした
世界改変か、世界改変か、なぜ二度言う必要が有るかどうか分からん位動揺していた、
だってそうだろ?ハルヒであってハルヒじゃないんだ。
あの長門に改変された世界でもハルヒはハルヒだった、
こいつの二回り程常人離れした性格が無くなるはずはないだろ。
それから全く耳に入らんホームルームや授業が終わり昼休みに入る。
「キョン君、あの、もし良かったら一緒にお昼にしない?」
か カワイイじゃねーか、しかし断る。
「すまんな部室に用があるんだ」
今は状況を把握する為に部室に行く事が先決だ。
「あたしが勝手に思っただけ…だから気にしないで」
少し惜しいが。
実に惜しいが。
俺は急ぎ教室を後にした。
ちなみに谷口や国木田はハルヒに関しての情報以外あまり変化していない。
休み時間にハルヒについて聞いたら
「いつもどうりだろ」
「別に変わらないと思うけどなぁ」
だとさ。
ハルヒの事だけが変化したのか、俺以外が全て変化したのか、それでも長門なら…
部室を前に緊張する、いてくれよ長門。

ノックしてすぐに
「…入って」
良かった、この感じはいつもの長門だ。
長門まで変わっちまったらどうしようも無いところだった。
部室に入り急いで長門にまくしたてる。
「ハルヒが変なんだ」黒曜石の瞳から視線が注がれる。
「確認している、しかし変化したのは涼宮ハルヒだけではない」
まぁたしかに谷口達の認識も違っているからな、
だけど目の前にいる長門はいつもの長門だ、それだけは頼もしかった。
352涼宮ハルヒの×××:2006/07/21(金) 15:54:30 ID:6RRZNb8p
「それは違う、私も変化している」
どういう事だ?
長門はいつもの長門にしか見えん。
「お前は大丈夫に見えるんだが」
「今は」
しかしその時長門の目に写った感情は“焦り”だった。
「しまった、イベントが…
「イベントって何だ?それに大丈夫か?」
その時長門の瞳はブラックから鏡面処理したかのような輝きを見せていた。
「な、長門?」
「ヤッホー、どうしたのキョン君、昼休みに部室に来るなんて珍しいね。まさか私に会いに来たの?なーんてね、恥ずかしい事言わせないでよこれでも女の子なんだぞ」
長門の姿をした女の子は一息で言葉の渦を振り撒いた。
「な、長門さん?」
「あれあれもしかして本当に私に会いに来てくれた?嬉しいよー、まさか本当にそうだなんて天にも昇る気分だよー、最高にハイってやつだー」


言葉の濁流の中
俺は意識を
消失した…


ぺちゃぺちゃと水の跳ねるような音が鼓膜を刺激した。
そうか俺はショックで気絶してたのか。
人間の心なんて案外簡単にショートするもんだ。
…しかしこの状況は一体。
覚醒した時長門は、いや長門さんは俺の愚息を頬張っていた。
「ふぁれ、ひょんふんおひぃふぁの?」
「長門、何してるんだ?」
なるべく平静にならないと、愚息は平静ではないがな。
下手な事をしたら世界終了、イデは発動した…なんてことになりかねない。
少々惜しいが長門の口から愚息を引き抜く。「あー取れたよー」
353涼宮ハルヒの×××:2006/07/21(金) 15:57:27 ID:6RRZNb8p
小悪魔的笑顔で返す長門を見て思う、畜生かわいいじゃねーか。
「まぁ待て、少し待て」
説得力は皆無であろう。
「えーなんd…時間が無い、急いで説明する、聞いて」
長門が変わった。
気のせいかもしれんが少し照れているような気がする。
「これから私を抱いて欲しい」
お前は何を言っているんだ?
「私が私を押さえて居られる時間はあまり無い、だから抱いて欲しい」
長門は意味の無い事を言わない、それが解決法なんだろう。
「お前はいいのか?」
長門の瞳に決意が浮かぶ。
「いい、…むしろ“今の私”も貴方と性行為をしたいと思っている」
「それとも…いや?」
無表情の中に悲しみを混ぜるのはやめてくれ。
「全然嫌じゃない、間違いないぞ」
こんな狂ってる世界でもこいつは俺を気遣ってくれるのは嬉しい。
まぁこいつはかわいいし。
「感謝する、しかしもうすぐ私が出て来る」
「しかしお前とするなら別の状況が良かったな」
「では今度は図書館で」
っておい長門。
「私をおねg…なんでー」
長門、すまんな今はお前の言葉に甘えるぞ。
ならば
「よしヤルぞ、長門」
「おまかせー」
彼女は握り拳を胸の前に掲げた。
354名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 16:05:11 ID:6RRZNb8p
とりあえずここでおしまい
法事中に暇だから書いた、携帯と駄文で失礼
355名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 16:11:26 ID:a4jh7W6q
>>354
法事中に書くなよw
356名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 16:14:01 ID:tI6jtyKy
誰の法要だ
枕元に立たれても知らんぞ
357名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 16:14:55 ID:vc/0p1Nb
>330

「長門、お前が俺んちまでくるなんて珍しいな……ってか、はじめてじゃないか?」
 インターフォンに出てみれば、見慣れた玄関にちょこんと立って俺を見上げていたのはSOS団誇る万能
宇宙人端末こと長門有希そのひとであった。
 ……嫌な予感がする。ものすごくする。また何かあったんじゃないだろうな。
 そもそも、涼宮ハルヒと出会ってしまってからこっち、珍しいイベントがすなわち俺にとっての凶事で
なかった試しなどないのだ。
「問題が発生した。協力をお願いしたい」
 やっぱりか。
 で、問題ってまたハルヒがらみなのか?
「違う。今回の問題は涼宮ハルヒは一切関係していない。こちら側の不手際。あなたに頼むようなことで
はないと解ってはいる。でも、出来ればあなたに協力してほしい」
 それはかまわないが、俺で良いのか?
 俺で長門の力になってやれることなんてそうはないはずだが。逆ならそれはもう山ほどあるだろうがな。
「今月分の生活資金の入金が滞っている」
 そういやお前らの生活資金ってどこから出てるんだ?
「情報統合思念体の管轄下にある財団から毎月一定額が支給される。資金捻出の仔細な方法については他
の端末の領分。わたしは知らされていない」
 情報操作でぱぱっと金を捻り出したりできるんじゃないのか?
「金融情報の大幅な改変は世界的に経済に後遺症を残す。避けるべき」
 で、その振り込みが滞ってるって?
「そう」
 それで、なんでまた俺んちなんだ?
「食費が底をついた。今日の夕食をお願いしたい」


----
こうですか!わかりません!?
358名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 16:21:13 ID:6RRZNb8p
ゴメンね仏様
359名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 16:22:23 ID:2Ba9t0eS
>>358
面白かったからよしです。
続き期待。
360名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 16:27:05 ID:VwmwsZX0
>354
ディモールト!
ハイテンションユッキーの破壊力は健在だと改めて認識したw
続き待ってますよ
361名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 16:54:45 ID:Pz3lrI54
かなりだけにかなり昔のことだね!
362名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 16:56:39 ID:MRbEiB0d
>「こ、今年も同じクラスになったね」
これに「そうだっけ」と答えてフラグを潰した過去のある俺が来ましたよ
傷跡をなぞられるような感覚 しかしGJ!
363名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 16:56:58 ID:JWes8b2P
長門のマンションが火事になって、キョンの家で一週間泊まり込むSSがあったな。
「長門週間」だっけ?
あれはハルヒにはばれなかったが。
364名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 17:01:18 ID:bRfGe3IF
長門も良いけど、ガチで朝倉さんに性的な意味で襲われて、
精液搾り取られてしまう話がみたいです
365名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 17:24:01 ID:VL14zQT/
ホントどうして俺が学校から帰ってくると荒れてんだ?
366『夏の夜』1:2006/07/21(金) 17:26:25 ID:jXF4JS+2
―当該対象の発生を確認。情報戦開始。空間を閉鎖する。
―おっと、この空間ならば僕の力も限定的にですが使用できるようですね。これで十分、と判断されたのでしょうか。もっとも、威力は閉鎖空間の十分の一程度ですが…。
―ふえぇ、キョン君たちは大丈夫なんですかぁ?心配です…。
―問題ない。ここは私の情報制御空間。
―接近しています。朝比奈さんは隠れていてください。…来ました!


これは、あの終わらない夏のある一つのシークエンスで起きた出来事。
なお、この記憶は上書きされたため、当該情報を知るのは私、長門有希だけである…。


『夏の夜』


ハルヒは震えていた。
全くもってこいつらしくないこと甚だしいのだが、SOS団の団長殿は俺の腕にすがりついている訳で、ハルヒの震えが俺の腕を通して伝わってくる。気分がでるかって?とてもそんなもんじゃない。
あるいは、震えているのは俺のほうかもしれん。恐怖で頭の芯が痺れていやがる。
「キョン……怖いの……?」
俺はハルヒの肩を抱いた。ハルヒは鼻先を俺の胸に押し付ける。
「キョン……寒い。」
確かに、さっきから酷く寒い。真夏だっていうのにだ。
あんなものを見ちまったからかな。
どうなっちまったんだ?長門、古泉、なぜ電話にでない?
ここは…あの閉鎖空間なのか?
話を少し前に遡らせる。ことの発端は、やっぱりハルヒだ。

俺たちは現在、同じ夏休みの二週間を繰り返している。長門によれば、もう12000回は超えたとかだ。ハルヒによってSOS団のスケジュールは多忙を極め、今夜も俺はSOS団の活動にかり出された。
今日は、肝だめしだ。長門に確認したが、なにが起きるわけでもないそうだ。怖がる朝比奈さんの御姿を目に焼き付けるぐらいしかやることはなさそうだ。
だが、集合場所の墓地に来ていたのはハルヒだけだった。おい、長門、古泉、朝比奈さんはどうした?
「それが来てないのよ!携帯にかけたって三人とも出やしないんだから。全く、SOS団の活動を何だと思ってるのかしら。これは重罪よっ!」
ハルヒは怒り心頭といった様子だ。おいおいハルヒ、重罪どころか、そいつは異常事態だぜ。嫌な予感が頭をよぎる。冷静になれよ、俺…。
どうするんだ、ハルヒ?
ハルヒは暫く思案顔だったが、何かを思いついたように、ぱっと顔を輝かせた。うおっ、まぶしっ。
「こうなったら仕方がないわ!二人で行きましょう。あたしとあんただけでっ。みんなが来たら罰ゲームよ!」
こうして、俺の悪夢のような夜が始まった、というわけだ。

367名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 17:27:51 ID:K2DNQer6
何だかんだ言って、ハルヒが一番散財しているように感じるけど、
ハルヒの資金源はどうなってるの?

>>364
朝倉×キョンだったら、倉庫内にけっこうあったと思うけど。
368『夏の夜』2:2006/07/21(金) 17:28:29 ID:jXF4JS+2
夜の墓場は、墨を流したみたいに真っ暗だった。夏だってのに寒気がするのは気のせいだろう、たぶん。
いや、断じてびびっているわけじゃないさ。俺は幽霊なんて、これっぽっちも信じちゃいないからな。問題は、俺のとなりで元気はつらつで歩いている奴が、ひょんな気を起こさないか、ってことさ。
例えば…幽霊に会いたいとかな。
俺の心配をよそにハルヒは楽しそうだ。おいハルヒ、あんまり先に行くなよ―
俺が言いかけたそのときだ。
凍りついた、言葉が出ねえ。体温が一気に三度は低下する。
視界の隅に、ちらりと映った影。長い髪、その下でゆれる冷たい笑い顔。一瞬でその影は消えた。だが…
心臓の動悸が激しくなる。
朝倉、涼子。
なぜ、ここにいる?

青ざめて立ち止まる俺を、ハルヒは不思議そうな顔で見てやがる。
「どうしたの…あー、キョン、ひょっとして、怖いんでしょ!!」
畜生、極上の笑みを浮かべるんじゃない。なんだ、しかも、その照れたような笑い顔は。
「しかたないわね、ほら、手つないでやるわよ。」
ハルヒは俺の手をとると、素直じゃないんだから、とかわけの分からんことを呟いている。
おい、ハルヒ、今の見なかったのか?
「へ、なにが?」
…いや、なんでもないんだ。きっと俺の見間違いに違いないさ。そうに決まってる。
「なーにぶつぶつ言ってんのよ!行くわよっ、キョン!!」

朝倉の亡霊は、その後も俺の視界に現れては消えた。なぜかハルヒにはまったく見えていないみたいだが。
四回目に朝倉の笑みが闇に浮かんで消えたとき、俺は思わず叫び声を上げそうになった。
ああ、びびってたさ。心からな。
長門とも、古泉とも連絡がつかないんだ。今朝倉が襲ってきたら、俺はまな板の上の夏野菜だ。満遍なく刻まれてカレーに使われちまう。
唯一の頼りはハルヒだ。俺が襲われたらトンデモパワーを炸裂させて朝倉を撃退してくれるやも知れん。
ってなわけで、俺はハルヒの手をしっかり握り締めていたさ。
いつのまにか、ハルヒと俺の距離は縮まって、今じゃぴったりくっ付いている。ハルヒはといえば…俺の肩に肩を寄せて、なんだか赤い顔で俯いている。って、そりゃあ朝倉の亡霊が見えないわけだ、おまえ、下しか見てないだろ!
再び闇に浮かぶ朝倉の姿。そして―
消えた。
俺はハルヒの手を握り締めて走り出した。頭がおかしくなりそうだ、早くここから出たい。
「ちょ、ちょっとキョン!!どこいくのよ!」
「どこでもいい!」
墓地の向こうに、壊れた寺が見えてきた。古寺で、今は使われていない。くそ、この際だ。
俺はハルヒを連れて寺に飛び込んだ。はずれかれた扉を閉め、閂を内側からかける。
「はあ…はあ…。」
369『夏の夜』3:2006/07/21(金) 17:29:20 ID:jXF4JS+2
大丈夫か、ハルヒ―
と言いかけて、俺はぎょっとした。ハルヒさん、そんなに熱っぽい目をしてどうしたんです?
「そっか…、ここなら人は来ないわよね…。い、いいわよ、キョン…。」
えーと、なにか勘違いしてないか?
「うん、勘違いしてた。有希や、古泉君や、みくるちゃんが来なかったのは、あらかじめ相談していたからでしょう?あたしったら…ホント、鈍かったわ。」
違う、そうじゃなくてだな―
「いいの!なにも言わなくていいわ。あ、あ、あたしだってキョンのことが―す、好きだものっ!!」
ハルヒが飛びついてきて俺は床に倒れこむ。おいおい、マジか?どうする、俺!
「んっ、んん…。」
ハルヒのキスが口を塞ぐ。積極的だな、ハルヒ。本来なら頭がぐらぐらと沸騰するだろうが、今の俺の頭は恐怖で凍り付いているんだよ。
「ぷはっ…。」
ハルヒは俺に腕を絡めた。腕から振動が伝わってくる。どうやら震えているようだ―いや、これは俺の震えか?
「は、はじめてだからさ、き、き、緊張してるのよ!少し、怖いのかも…。」
ハルヒの顔は上気してピンク色だ。興奮を隠し切れない様子。
「キョン……キョンも怖いの?」
ああ、怖いさ。大人になるのが、じゃないぞ?
俺はハルヒの肩を抱く。ハルヒは鼻先を俺の胸に押し付けてきた。
「……寒い。キョン…。」
俺もなんだか寒気がする、夏だってのにな。
「お願い、暖めて……。」
―って、寒いならなんで服を脱ぎだすんだ!
「キョンも脱いで…。」
激しい動悸。心臓が破裂しそうだ。長門、古泉、なぜ連絡がつかない?
「キョン、大好き…。」
まったく、俺もだよ、ハルヒ…。
俺は考えるのをやめて、ハルヒと抱き合った。ハルヒの体は柔らかいな、と思ったことを覚えている。

370『夏の夜』4:2006/07/21(金) 17:30:29 ID:jXF4JS+2
「ううっ……朝か。」
不思議と生きている。俺は脱ぎ捨てていた服を着ると、ハルヒを起こした。
「ハルヒ、朝だ。服着ろ。」
「んん…、だめ、キョン…もう入らないよ…。」
どんな寝ぼけ方をしてやがる!俺はハルヒを揺さぶって目を覚まさせ、服を着せた。
なんとなく互いに気まずくて、目をあわせられない…だが、ハルヒは俺の手を握って放さなかった。

「大丈夫ですか?」
寺の古ぼけた扉が開く。
そこには、古泉、長門、朝比奈さんが並んで立っていた。
「いかがでしたか、涼宮さん、肝だめしは。」
古泉がにこやかに笑っている。ハルヒは顔を赤らめた。
「そ、そうね。素敵な一晩だったわ。そうね、それに免じて、肝だめしに来なかったことは許してあげるっ!…全く、いつから計画してたの?」
古泉は肩をすくめる。
「そちらの方に、昼間のうちに頼まれましてね。いやぁ、実に大胆な手口ですよね。二人きりになるためにとは。」
嘘つけっ!断じて俺はそんな相談はしていないぞ。
「キョンくん、涼宮さんとお幸せに…。」
朝比奈さん、やめて下さい!
「……。」
…長門、後で聞くことがあるからな。
長門はかすかに頷く。
ハルヒは上機嫌な顔で立ち上がった。
「さー、今日はこれで解散っ!あたしは家でグッスリ眠りたいわ。じゃね、キョン!」
やれやれ。

371『夏の夜』5:2006/07/21(金) 17:31:12 ID:jXF4JS+2
ハルヒが帰ってから、俺は三人のSOS団員に話を聞くことにした。おい、今回の騒ぎはなんだったんだ?
「あなたの予想通り。涼宮ハルヒの能力によってあなたに危機が迫っていた。」
朝倉涼子か?
「そう。」
なるほど、やはり俺が見ていた朝倉の姿は、幻覚ではなかったのか。
「最初に長門さんが指摘したんです…。肝だめしをすると、本当に幽霊が現れるって。」
ハルヒが望むからですよね、朝比奈さん。
「そうです。でも、涼宮さんの望みは幽霊が出ることじゃなかった…あなたが怖がって、涼宮さんと手を繋いだり、体をくっつけることだったんです。」
男女の役割が逆じゃないですか?
「涼宮さんに怖いものは有りませんからね。そのため、あなたが怖がればいい、と望んだのでしょう。そして、あなたが一番恐れているものが現れてしまった…。朝倉涼子です。
そこまで長門さんは予測していました。」
古泉が続ける。
「僕らは、あらかじめ肝だめしの場所である墓地に待機していました。長門さんはそこを情報制御空間にし、閉鎖空間に近いものを作ったのです。出現するであろう、朝倉涼子と対決するために。」
しかし、おまえらがどこに居たのか、俺にはさっぱりわからなかったぞ。
「…あなたと涼宮ハルヒのまわりに情報シールドを展開した。私や朝倉涼子の姿が見えないように。
朝倉涼子があなたには一瞬みえたのは、あなたを媒介として朝倉涼子が出現した瞬間。私の空間に取り込んだから、直後には消えたはず。」
ああ、その通りだ。
「朝倉涼子は、計五回ほど出現しました。ほとんど片付けてくれたのは長門さんです。獅子奮迅の働きでした。僕の限定された能力では、僅かに手助けが出来た程度です。
五回で済んだのは、涼宮さんに、あなたを怖がらせる理由がなくなったからです。あなたの肝が、本当の意味で試されていましたから。」
古泉、下ネタはやめろ。朝比奈さんが赤くなって俯いてるだろ。
やれやれ。
…いずれにせよ、助かった。ありがとな、長門。
「…いい。」
古泉も。
「いえいえ、どういたしまして。」
朝比奈さん。
「そんな、いいですぅ…あたしは役に立ってませんから。」
…たしかに。
こうして、俺の夏の悪夢は終わりを告げた、というわけだ。


その夜、墓場で―
髪の長い、若い女がひっそりと立っていた。
「あーあ、もう少しだったのにな。」
女はそう言って薄く笑うと、足の方から夜の闇にとけていって…
消えた。


終わり
372名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 17:39:08 ID:3jQOg+wi
俺きょうから夏休みー
俺きょうから夏休みー
373名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 17:57:41 ID:+Rqo/ZbY
21歳以上のくせに中高生か
頑張れよ
374名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 18:06:28 ID:r2+H3Imm
>>354ハルヒが遥になってるじゃねーかww
375名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 18:20:43 ID:uKDKBG8D
>>373
俺の親戚にガチンコで22歳高校生がいる
376名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 18:29:39 ID:2ZDqbMzM
>>375
あなたのご両親の息子さんのことですか?
377名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 18:52:49 ID:VwmwsZX0
>371
キョンのトラウマを利用した、吊り橋効果が見事。
夏らしい短編を、ありがとう。
みくる役立たずw
378名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 18:54:20 ID:b6HU+dZb
>>375
夜間高校や通信制ならあたりまえのように居るよね。
379名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 19:00:18 ID:LT9+Cfoc
長編の続きを投下します。>>200の『涼宮ハルヒの逃避』の続きです。
それでは、ここから数レス頂きます。
380涼宮ハルヒの逃避:2006/07/21(金) 19:01:26 ID:LT9+Cfoc
あたしは走った。途中で誰かにぶつかり、物にぶつかり、何度も無様に転びながら、それでも走った。
行き先など決めちゃいない。心臓はとっくの昔から警音を鳴らし続けている。それでも、足は止まらない。
いっそのこと心臓なんて破裂してしまえ!そうすれば、止まるでしょう!
そんな考えが浮かんだ頃、あたしの足はとうとうあたしの意思に反してもう限界だとばかりにその動きを止めた。

「ハアハアッ…ゼッゼッ…」
あたしは無我夢中で走った。どれだけ走ったかわからないが、その行き着いた先は、私が生まれ育った自宅であった。
夢中で走った私が、逃げ場として選んだ場所が家。なんなんだ、この普通すぎる行動は?
これでは、まるで普通の人間と同じではないか。あたしが最も忌み嫌っているツマラナイ人間と。

「ああ、そっか…」
あたしは長年解けなかったファルマーの定理を解いた数学者のように、
今まで答えがあったのに決して解けなかった答えを悟った。
「あたしもツマラナイ人間だったのね」
その後のことは、よく覚えてない。気づいた時には家に上がり、服を着替え、部屋で布団にくるまっていた。
さっき、あんなことがあったばかりなのにあたしは、いつも通りのことができるのね。
そんなことを考えてたら情けなくなった。

「私の思い通りになる世界か…」
あたしは、さっきの部室であったキョンたちの会話を思い出していた。
正直、聞き耳を立てていた当初はまったくちんぷんかんぷんだった。
だけど、途中からは、不思議と「ああこの話は本当なんだな」って気付いた。
そう考えれば、自然と納得できる事が多すぎたからだ。

「あ…、ということはSOS団の2回目のミーティングであいつが言っていたこと本当だったんだ」
あたしはあの時、この馬鹿はなにを笑えない与太話を語ってるんだとぐらいに思ってたが、
そもそも本当のことだったんだから笑えないのは当然か。
「ああ、じゃあ騙したなとか酷いこと言っちゃたかなぁ………でも、今まで隠してたんだから結局同じよね」

あたしは誰もいない部屋でぶつぶつと独り言を呟いていた。
いけないな。やっぱり、まだ混乱しているようね。
でも、仕方無いよね。今まで、信じてたものが偽りだったんだ。少しぐらい落ち込むのは勘弁してほしい。
381涼宮ハルヒの逃避:2006/07/21(金) 19:02:40 ID:LT9+Cfoc

(『ただの人間には興味ありません。この中に、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、
  あたしのところに来なさい。以上』)
(『SOS団の活動、それは、宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことよ!』)

あたしは、今までのあたしのセリフを思い出していた。それは、あたしが切に願っていた事だった。
私がいればいいなと望んだからか。そっか、もうとっくに私の願い事なんて叶ってたのね。
それなのに、あたしはいつまでも宇宙人、未来人、超能力者を探し続けていたのか。
…まったく滑稽ね。すぐ、後ろに答えがぶらぶら付いてきてたってのに気付かなかったなんてね。
まるで、ピエロね。

「SOS団か…」

みくるちゃんも今まで、コスプレを嫌々と言いながら着ても次の日にはまた部室に来た。
でも、それは私を監視しないといけないから。
有希は、考えてみればあたしが持ち込んだトラブルの数々を文句も言わずに、
処理してくれてたけど、きっとそれもしょうがないからやってたんだよね。
古泉くんは、あたしの言うことに異議を唱えるということをほとんどしなかった。
でも、それはあたしの機嫌を損ねないようにしてたんだろう。
キョン…キョンはどうなんだろう?話を聞いた限り、キョンは普通の人間らしい。
だとしたら、もしかしたらキョンは私の味方かもしれない。SOS団を存続させたいようだったしね。
…いや、キョンも違う。もし、キョンが普通の人間ならあたしのことなんか無視すればよかったんだ。
無視できない理由があったのかもしれないけど、そんな理由があるならますます、この関係には不信感を持っていたはずだ。
それなのに、SOS団にいたのはやっぱりあたしを騙すためだったんだろう。

あたしは、自分でも理解できるほどの疑心暗鬼に陥っていた。
何も信じられない、何でこんな思いをあたしがしなきゃならないのか。
…そうよ、この世界があたしの思いどうりになるってのなら変わりなさいよ。
何で、こんなにあたしがつらい想いしなくちゃならないのよ。

あたしは、あいつらのことなんて知らない。SOS団なんて最初からなければいい。
そうすれば、あいつらだってあたしの顔色なんて伺わなくていいし、もっと楽しい時間も遅れただろう。
あたしはもう知ってしまった。そんな、あたしがこれからもあいつらと今まで通り接することはできない。
そう……こんな記憶も訳の分からない力も知らなくていい。そして、あいつらも…そう……、


   『なにも知らない世界へ…』

382涼宮ハルヒの逃避:2006/07/21(金) 19:03:32 ID:LT9+Cfoc

(…キョ 君……お てよ…)
( …ョン  たら  …)

「…むー」
「…キョンく〜ん!もう朝だよ起きて〜!!」
「…うぐっ!?」
「キョン君、早く起きてったらー!」
ベシベシ!
む〜、妹がその小さい手で俺の頭を容赦なくはたいてきやがる。

「んー…わかった。起きる、起きるから早く俺の布団から降りなさい」
「ほんとぅ、起きたー?」
「あー、はいはい。起きましたよ」
「はーい。じゃあ、早く下に降りてきてね?朝ご飯の用意終わってるってさ」
「わかったよ」
「あ、そうだキョン君。えっとね、ん?えーと、あれ、あれれれ、何だっけ?」
「なんだ、どうした?」
「んーとね、何かキョン君に借りようと思ってたんだけど忘れちゃった」
「何だ、その年でもうボケたのか?ボケるのはまだ早いぞ。前みたいに、またハサミじゃないのか」
「ぶうっ〜違うもん。キョン君のいじわる!」

そういって、妹はズダダーッと階段を降りていった。
まったく朝から元気なものだ。それにしても兄を起こすのにフライングニーを使用するとは、
何を考えとるんだあいつは?
まあ、目覚ましをかけても起きれない俺が一番悪いのだろうが、そう少しは優しくゆすって起こしてくれても
いいんのではなかろうか?「お兄ちゃん、起きて」とかな。
やばい…妹相手にキモイ想像をしてしまった。起こされるなら、朝比奈さんのように優しい
天使のようなパーフェクトメイドさんに起こしてほしいものだ
って違う!違うだろ俺!俺って、病んでるのかもな……。

………!って、そんな下らないこと考えてる場合じゃないだろ俺!?
昨日ハルヒがあんなことになったんだ。もしかしたら、この世界はあいつが作り変えちまった後の
世界かもしれないんだ。それを何暢気に妄想なんてしてんだ。

取りあえず、俺は自分の記憶、昨日までの出来事やSOS団のみんなのことを思い出した。
よし、昨日の昼飯のおかずまではっきり覚えてるぜ。
いや、まだだ。まだ、安心するな。いつぞやのように、俺だけ改変された世界に取り残されたという線も否定できん。
俺はベッドから起き上がり、枕もとの携帯で昨日の日付から一日しか経ってないことを確認し、
素早く制服に着替え部屋から飛び出て行った。

「あれ、キョン君そんなに慌ててどうしたの?ごはん食べないの?」
「悪いな、今日は抜かせてもらうぜ。いってくる」
妹の出送りの言葉も聞き終わらないうちに、俺は家を飛び出し自転車を渾身の力で漕ぎ学校へと向かった。
「また、俺だけ仲間はずれの世界なんてごめんだぜ?なあ、ハルヒ」

その後、俺が登校するのには早すぎるということに気付いたのは、駐輪場に自転車を置き、
朝の定番となった強制ハイキングコースのコースレコードを塗り替え、わがクラスの扉を開けたときだった。
「…朝食食ってくるんだったな」
俺が教室へと見事一番乗りを果たした時刻は、時計の針がいつもよりまだ四分の三程早い
時刻を指している時だった。

「ま、突っ立てても仕方ない」
そう自分に言い聞かせて、俺は昨日まで俺の席だったところに座った。
うむ、多少心配だったが俺の机だ。机の中に、漬物石の替わりにでもなりそうな量の教科書が詰ってるから間違いない。

「しかし、大丈夫なのかねえ…」
俺はまだ俺一人しかいない教室で、昨日ハルヒが去った後のことを思い出していた。
383名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 19:04:54 ID:b6HU+dZb
>>367
メガネ君に家庭教師して
バイト代稼いでいるんでしょうかね?
384涼宮ハルヒの逃避:2006/07/21(金) 19:05:02 ID:LT9+Cfoc

―――――――――――

俺たちはハルヒの去った後、部室でずっと黙りこくったままだった。

「…困ったことになりましたね」
俺たちの中で最初に、解凍したのは古泉だった。今はこいつの憎たらしい声も、この閉鎖空間を破るためなら大歓迎だぜ。
「ああ、そうだな。でも、ハルヒが事実を知るってのはそんなにまずいことなのか?」
俺はハルヒが出て行った後も、今のところ、この冷え切った空気以外には違和感を感じるところはない。
「大変まずいでしょう。現在、涼宮さんは大変な興奮状態にあると思われますが、
 それがいつ力の引き金になるか分からない状況です」
「引き金って、それが引かれたらどうなるんだ?」
「はっきりしたことは、わかりません。しかし、今いつこの世界が消えてもおかしくはない状況だとは言えます」
そんな、マジかよ…。さっきまで普通にお茶飲んでたんだぜ、それが世界滅亡?
くそっ、頭がどうにかなりそうだぜっ。

「長門さん、どうですか?涼宮さんはなにか行動を起こしましたか?」
古泉が長門にハルヒのことを聞いている。俺も気になるぞ長門、頼む教えてくれ。
「涼宮ハルヒは現在、時速12〜14キロの速度で移動している。スピードに統一性がないことから
 おそらく走っていると思われる。目的地は、おそらく彼女の家」
ほっ、取りあえずまだ馬鹿げたことはしていないようだな。

「それだけか、長門?他にはなにか起こってないのか?
 例えば、閉鎖空間が発生したりとか…」
「それはないでしょう。もし、閉鎖空間が発生すれば僕にはすぐわかります。
 現在は、発生していませんしその兆候もまたありません」
古泉が質問に答えてきた。そうか、こいつはあのトンデモ空間が発生すれば勝手にわかるんだったな。

「古泉一樹の言うとおり閉鎖空間は発生していない。ただ…」
「ただ?ただ、なんだ長門?不安になるから黙らんでくれ」
「…涼宮ハルヒが自分の力を認識し、この部屋から出た瞬間、膨大な量の情報フレアが観測された。
 これは、3年前の観測の時と比べても引けをとらない」
「それは、どういうことなんだ?」
「つまり、弱体化していた涼宮ハルヒの力が完全に復元したものと思われる。そして、一つ以前とは違う点がある。
 今の涼宮ハルヒは、高確率で力を自覚し、自在に使いこなせるようになっているはず」

ハルヒが力を使いこなせる?ということはだ。
「あいつが、この世界を消そうと思えば、いつでも消せるってことか」
「そう。今の涼宮ハルヒは鎖が解かれた状態。思い描いたことを自在に生み出し、消すことが出来る」
「そんな。どうにかならないのか?例えば、あいつにこれが夢だと思わせるとか」
「現時点では不可能。もう、今の涼宮ハルヒには誰も干渉できない。
 力を自覚した涼宮ハルヒは、情報統合思念体よりも上位の存在となった」
「でも、前に俺があいつにばらした時は、こんなことにはならなかったぞ?」
「その時は、彼女はあなたからの情報を重要視していなかったから変化はなかった。
 しかし、今回は違う。彼女は自分の力、状況、立場をすべて理解した状態。前回と今回では、仮定が違う」
長門の冷静な返答が、俺にことの重大さを十二分にわからせてくれた。
385涼宮ハルヒの逃避:2006/07/21(金) 19:05:35 ID:LT9+Cfoc

「とにかく、これ以上ここに居ても仕方ないでしょう。僕も機関から呼び出しがかかってきましたからね。
 ここは、いったん解散としませんか?」
「…はい」
「わかった」
古泉の解散の言葉を受け、朝比奈さんと長門は短く返事を返し、部室から出て行った。
上手く考えがまとまらない。俺も帰らせてもらうとするか。
そう思い鞄を背負った俺に一人だけ残っていた古泉が話しかけてきた。

「お待ちください」
「…なんだ?」
「僕たちは、今夜恐らく徹夜覚悟で涼宮さんの作った閉鎖空間の処理に回ることだと思います」
「…………」
「しかし、もしかしたらあなたに力を貸して頂く事態に陥るかもしれません。
 ですから、今夜は決して携帯を手元から離さず持っていてください」
「……わかった」
俺は、やっとこさそう返事を出した。古泉も俺の返答を聞きいつもの0円スマイルから
元気を4割減させたような笑顔を残して、帰っていった。

「…俺も帰るか」
俺は部室の鍵を閉め、家路に着いた。


―――――――――――


「結局、古泉からの連絡は無かったか…」
ということは、閉鎖空間以上の出来事はなかったのか、何も起こらなかったのか、
もしくは、連絡する暇もないような出来事が起こってしまったのかのどれかだろうな。
「…最後のだけは勘弁してほしいものだな。」

と、俺はかなり長い間、考えに耽っていたらしい気付けばもう何人かのクラスメートが教室に来ていた。
ハルヒは…まだ来てないか。くそ、早く来い。気になるじゃなーか。
もしかしたら、また光陽園学院に行っちまったんじゃないだろうな?
と、その時…

「……ハルヒ」
来た…もしかしたらと少し心配もしたが、制服も昨日と同じ、髪も長くない、いつもの不機嫌顔を貼り付けた団長様だ。
そうして、ハルヒはズカズカと教室に入ってきて自分のつまり、俺の後ろの定位置に座った。
386涼宮ハルヒの逃避:2006/07/21(金) 19:06:23 ID:LT9+Cfoc

「なによ?」
「?」
何だ突然?疑問文を投げつけてきても俺には何がなんだかわからんぞ。
「さっきから何よ、ずっとあたしのこと見つめてきて。何、なんか言いたい事でもあんの?」
どうやら俺は、だいぶ長い間こいつのことを見つめてたらしい。
「いや、何でもないんだ。すまん」
そう言うとハルヒはフンッと鼻を鳴らし窓の外に目をやり続けていた。

しばらくの間、俺はどうハルヒに話しかけるか迷っていたがこのまま考えていても仕方ない。
俺は決心を着け、ハルヒに話しかけた。
「ハルヒ」
ハルヒがこちらに不機嫌そうな顔を向けるが俺は構わず続けた。
「昨日の話の事なんだがな、あれは、そのだな…。どう言えばいいやら…」
俺が昨日の事をどう説明したもんかと考えあぐねていると、
「あんたなに、あたしのこと呼び捨てにしてるわけ?あたしわね、あんたなんかに呼び捨てで呼ばれる覚えはないわ」
俺は今なんと言われたのか理解できなかった。こいつは今何て言った?
「ハ、ハルヒ…」
「呼び捨てにするなって言ってんでしょ、馴れ馴れしいわね。それに、昨日の話って何よ?
 あたしにはね、昨日あんたなんかと話した記憶なんてないわよ。わかったらもう話しかけないで」
ハルヒはそう早口で告げ、また窓の外に顔を向けてしまった。
俺はハルヒの言葉を受けてしばらく呆然としていたが、しばらくして教師が入ってきて
結局そのまま1時間目の授業へと突入してしまった。

俺は授業中ずっとさっきハルヒの台詞を思い返していた。
俺に呼び捨てにされる覚えはないわか…。つまり、ハルヒが昨日の事に怒り演技をしてるとかでなければ、
ここは昨日までとはまったく違う世界になっちまったわけか?
ハルヒが昨日の事に拗ねてるだけであんなことを言ったんだとしたらまだいい。
土下座でもなんでもして許してもらえば、それで済む。
しかし、世界を作り変えちまったてのならそれは大問題だ。なんせ、あの長門をしてハルヒには手を出せない
って言わしめたんだからな、俺だけの手に負えることじゃない。
だが、さっきのあのハルヒの顔は、とても演技とは思えなかった。不機嫌顔はいつものことだが、
さっきのあれはまるで、高校入学初期の頃の雰囲気そのものだった。
とにかくもう一度確認しないとな、俺がそう考えた時、都合よく1限終了の鐘が鳴った。
387涼宮ハルヒの逃避:2006/07/21(金) 19:07:05 ID:LT9+Cfoc
よし、もう一度話してみよう。
「…ハ、」
って、いねえ!ってもうあんなとこにいやがる!授業が終わったと同時にあいつは教室から出て行こうとしてした。
くそっ、させるか!と俺が思い、追いかけようとしたところでアホ面を標準装備している谷口が話しかけてきた。
「おい、キョン。さっきは涼宮に話しかけてただろ?何話してたんだ?」
ああ…この馬鹿が話しかけてきたせいでハルヒはとっくにいなくなっちゃたじゃないか…。
「…別にどうでもいいだろ」
「ま、そうだがな。でも、あいつに話しかけるのは止めとけって前に言っただろ?悪いことは言わないからあいつだ…
俺は谷口の言葉が終わる前に、谷口のネクタイを掴み強引に引き寄せてこう言った。
「あいつのことを教えろ!」
谷口もそのすぐ後ろにいた国木田もクラスメートも俺の剣幕に驚いているようだったが関係ない!
「早く教えろっ!」
その後、『こいつ大丈夫か?』と言いたげな目をした二人から聞いた内容は、なかば予想していたとはいえ、
俺を愕然とさせるには十分すぎるものだった。
その内容とは、ハルヒは入学初期とまったく変わらない行動を今でもしていること。
友人と呼べるものはいなく、もちろん俺とも入学以来ずっと親しくない。
多くの部に仮入部しているが、SOS団という名称の活動内容不明の部活には入部していない。
そもそも、SOS団なんてものは北高には存在していないということだ。
そして、これは意外なことだが一つ予測不能な事態が起こった。それは、
「俺はSOS団の団員じゃないのか…」
「何言ってんだ?お前は文芸部だろ。キョン、ほんとに大丈夫か?」
と、いうことだ。

休み時間が終わり、谷口たちは席に戻り、ハルヒもいつのまにか定位置へと戻っていた。
そして、俺は授業開始前に相変わらず不機嫌そうにしているハルヒに最終確認をした。
「なあ涼宮。SOS団という言葉に聞き覚えはないか?」
「何よ話しかけんなって言ったでしょ。それに、あたしはそんな変な言葉知らないわ」
「…そうか」
…決まりだ。もしかしたらと思い、一縷の望みに期待してみたが、
ちくしょうめ…どうやら俺は腹を括らなくてはならないらしい。
確定だ、ここは昨日まで俺がいた世界とは違う。それも、前回の時と変わり今回はハルヒが作り変えた世界ってことだ。

しかも、この世界では、俺とハルヒの関係はまったくなかったことにされてるらしい。
ハルヒも当然、SOS団を作る前の行動とまったく同じ行動を入学から今でも繰り返してるらしいしな。
理不尽な経験はSOS団に入って何度も体験したが、今度のも一筋縄じゃいかないだろうな…。
ふー、やれやれ。まったく、最後のだけは勘弁してほしいっていっただろ古泉?
388涼宮ハルヒの逃避:2006/07/21(金) 19:08:43 ID:LT9+Cfoc
俺は授業が過ぎ去るのを今か、今かと待っていた。俺が待っているものそれは、昼休みだ。
谷口は俺が文芸部だと言った。ならば、部室には少なくともあの文芸部の付属品…いや、
SOS団が誇る最強の無口キャラ型インターフェイスであるあの長門有希がいるはずだ。
俺はそう考え、じっと机に張り付き、終了の鐘が鳴るのを待っていた。

キンコーンカンコーン…
午前中最後の授業の終了を告げる鐘が鳴り終わると俺は、教師の終了の合図も途中に教室から出て行った。
向かうは文化系部の部室棟つまりは旧館、我等がSOS団の拠点でもある元文芸部の部室だ。いや、今は現か。
おっと、そんなことはどうでもいいな!今は一秒でも早く長門に会わなければ!

俺は教室から部室までのタイムラップを大幅に更新させ、我がSOS団の部室に辿り着いた。
だが、俺の手はドアを握る寸前で止まった。
そうだ、ここは、ハルヒの作り変えた世界だ。長門がいるとは限らない。
いや、仮にいたとしてもそれは俺の知っている長門ではないかもしれない。
ハルヒが何を思っていたのかはわからないが、俺には昨日までの改変されてない記憶が残っている。
しかし、他の団員も俺と同じ状態だといった確信を俺は持てない。

俺は、あの消失した世界で出会った長門有希という女の子を思い出した。
相変わらず無口なのは変わらないが、とても恥ずかしがり屋で気が弱く、だが、確かに普通の人間の女の子だった長門を。
ここに入ってあの時のように問い詰めればまた、脅えさせてしまうかもしれないな…。
「…でも、それでも俺は会いたいんだSOS団のみんなに」
俺は掴もうとしていたドアノブから手を離し、ドアをゆっくりとノックした。
「頼む、いてくれよ…!」

俺が数回ノックをした後すぐ、中から返答があった。
「入って」
ただそれだけの簡潔極まりない言葉、しかしこれは俺が待ち望んでいた長門の声だった。
「いてくれたか…」
ほっと胸を撫で下ろし、呟いた俺は部室へと入っていった。

「お待ちしていましたよ」
そして、俺を出迎えてくれたのは長門、朝比奈さん、古泉という俺とハルヒを除いたSOS団の仲間たちだった。
389涼宮ハルヒの逃避:2006/07/21(金) 19:10:58 ID:LT9+Cfoc
今回はここまでです。読んでくださった方ありがとうございます。
続編ですが、話自体は考えているのですが、現在試験中なのですぐに投下することは難しいです。
でも、なるだけ早く完結させたいと思います。それでは

390名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 19:23:33 ID:HmLdaHHL
どのSSもそうなんだけど、だんだんキョンのモノローグの文体がいっぺんとおりになってきてるよね
原作の表現のクセを意識しすぎててなんかわざとらしくなりがち。

まあいいけど。
391名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 19:34:08 ID:l+Lu5DUT
「〜だぜっ」等を多用されるとちょっと嘲笑したくはなるな、確かに。
392名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 19:38:29 ID:/2xNdMOB
私はその人の文体と原作風どっちでもいいと思うけど
どっちが好きかと言われると原作風かな。

わざとらしくっていうのは中々に難しいよねぇ、原作風にする境目が。

あと意見するなら「まあいいけど」とか最後に書かないほうがいいと思う。
単なる誹謗じゃないんだし、職人さん達も意見として受け取ってくれるだろうし。
393名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 19:55:42 ID:JWes8b2P
前にも同じパターンのがあったけど、どっちも秘密を知った後のハルヒが卑屈すぎるのが気になる。
394名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 20:09:11 ID:ciz4VMwM
>>373
大学生という線があるだろう
395涼宮ハルヒの逃避:2006/07/21(金) 20:19:33 ID:LT9+Cfoc
むー辛辣な意見が多いけど、為になります多謝。
>>393
自分でも少し卑屈とは思いましたけど、ハッピーエンドにする予定なんでご容赦ください。
396名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 20:26:46 ID:TWvuosgN
>>389
首を長くして待ってます
397名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 20:45:04 ID:4uvc5BP/
続き物で間隔空けられるのは辛いのだが…
398名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 20:49:37 ID:RYXd9Irh
>>397
続き物かいてるのに1スレごとの投下になってる俺が来ましたよっと



書くのが遅くてごめんなさい
399名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 20:54:33 ID:LT9+Cfoc
>>397
すいません、書くの遅いので許してください。
よろしければ保管庫の方にあるのでそちらでまとめ読みしてくれると嬉しいです。
400名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 20:55:38 ID:6RRZNb8p
あぁすまん
401名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 21:07:10 ID:VwmwsZX0
投げ出されるのが、読み手と作品にとって一番不幸。
どんなに間隔あけても待ってます。
402名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 21:39:26 ID:Qtr1TzSH
コピーもいいけど個性ある文も読みたいね
40313-150:2006/07/21(金) 21:44:47 ID:nJZqJxRt
箸休め4レスくらい投下
既出ネタとか確認しきれないので、気に入らなかったらスルーで
404涼宮ハルヒの○天国:2006/07/21(金) 21:47:03 ID:nJZqJxRt

 きっかけは、SOS団活動中にうっかり放った大失言
 それに気付いたのは安息の地である我が家にたどり着いた時


「あ、キョンくんおかえり〜」
 ただいま妹よ
 周りにいる小さい女の子達は新しいお友達かな?
 初めまして、妹の兄です
「お? キョン兄おっかえりーっ♪」
 ただいま、すごく髪の長い子。初対面でそのアダ名はやめて欲しいかな
「キョンお兄ちゃんおかえりなさ…ひぁっ」
 おっと大丈夫かい、可憐な美少女さん。平らな廊下で転ぶとは器用だね
「おかえりなさいキョン兄さん、うふふ…」
 う…なんか凄い殺気を纏ったお嬢さんだね。可愛い笑顔が剃刀のようだ
「やっと帰ってきたわねバカキョン! さっさと宿題教えなさいよ!」
 ははは、やれやれ。ハルヒも小さい頃はこんなだったのかな

 ……………

 WARNING! WARNING! WARNING!
 脳内で緊急警報をMAXボリュームで鳴らしつつ台所に駆け込む
 廊下でオーブンレンジのように『構って熱光線』をジリジリ浴びせる少女達を
 全速ダッシュで振り切って、だ

 バタン!
「な、な、な、長門っ!! 何だこの状況は!?」
「…お帰りなさい、『あなた』」


 そ、そうきたかーっ!?
405涼宮ハルヒの○天国2:2006/07/21(金) 21:48:09 ID:nJZqJxRt

 つまりこの世界は、俺の親しい女性が妹になってる世界だと言いたいんだな?
「世界改変が起こったのは14分前。 原因は涼宮ハルヒ。 きっかけは…」
 ああ、それは判ってる
 俺が学校で迂闊に口にした言葉だろう?

 ――「正直な話、妹が増えたように感じてます」――

 なんでこんなセリフを吐いたのかの理由は良く覚えてないんだが
 確か、珍しく鶴屋さんが部室に遊びに来ていて
 朝比奈さんの入れたお茶を楽しみつつ、皆で談笑してる時に
 「団員の女の子たちをどう思ってるにょろ?」とかなんとか聞かれたような…

「あなたはあの場で最も当り障りの無い受け答えをした筈だった、だが
 涼宮ハルヒにとってあの単語は魅力的かつ刺激的なトリガーだった」
 つまりハルヒは常々俺の妹に何らかのジェラシー的感情を持っていた、と
「……概ねそう」
 なるほど、しかしハルヒが自分だけじゃなく他人も巻き込んだのは何故だ?
「恐らく涼宮ハルヒは、関係者の中であなたに最も近しい存在が誰なのかを
 全員同じ立場において見極めたかったのだと予想する」
 ふむ、大体納得したんだが… 長門よ…
 俺にはお前だけ妹というカテゴリーから外れているように見えるんだが
「……」
 元々身体が小さいのを考慮したとしても、お前だけは他のメンバーと違って
 外見的には高校生のままだ。
 しかも制服の上にヒラヒラフリルの純白エプロンで、俺のことを呼ぶ時の
『あなた』も、いつもと微妙にニュアンスの違う『あなた』だった気がするぞ
 詳しく説明するとカタカナの「アナタ♪」みたいな


 おい、こっち向いてくれ長門
406涼宮ハルヒの○天国3:2006/07/21(金) 21:49:26 ID:nJZqJxRt

「……全員が改変された世界の住民になってしまった場合、
 あなたが元の世界に戻りたいと願った時、協力できない可能性を考慮して
 涼宮ハルヒの世界改変に強制的に改竄データを割り込ませた」
「有希ちゃん! カレーおかわり!」
 ああハルヒ、口の横にカレーが…米粒も飛んでる…
「…はい、熱いからこぼさないで。 今回の改変はあまりにも急速に進行した。
 だから私自身には簡単な情報設定を施す事しか出来なかった」
 そんなに早かったのか
「ふぇ…熱いよぉ〜」
「ほらほらみくる、ふーふーしてあげるっさ。ふーっふーっ、はいあ〜ん」
 小さくても仲良いですね2人とも、とっても微笑ましいです
「にゃぁ? キョンくんとユキちゃん何のお話してるの?」
「うふふ…、さあ、何のお話かしらね? 子供の私にはわからないな」
 物を食べながらしゃべるんじゃありません、本家妹
 あと朝倉、お前実は改竄されて無いだろ
「え〜? 難しい事を子供の私に聞かれてもわからないなぁ〜」
 くそ…。

 で長門よ、何となく予想はついてるんだが、お前の正確なポジションは何だ?
「……」
 こっち向きなさい長門、怒らないから言ってみなさい


「……あなたとは生まれたときからの幼馴染で、隣に住んでいる同級生。
 中学までずっと同じクラスで、お互いに兄妹同然の存在と認識していた。
 だが高校に進学し、初めてクラスが分かれたことから、互いを異性と意識し
 始め、同時に兄、妹以外の感情も芽生え始めた。
 そして夏休みの『とある事件』をきっかけに、私はあなたの家に頻繁に
 上がりこむようになり、家事や妹達の世話等をこなし、あなたとの距離が
 徐々に縮まり始めた。 ← ……今ここ」


 めちゃめちゃ細かいじゃないですか! 『とある事件』てなんですか!
 まあでも『精神的に妹』という設定ではあるのか…、マニアックだな長門
「…カテゴリー妹というジャンルは基本パターンも多く、状況、環境、関係等で
 様々に分岐し、多種多様なニーズに応える事が出来る万能ステータス」
 めちゃめちゃ詳しいじゃないですか! ガチ予習済みじゃないですか!
 こっち向いてくださいよ長門さん!
407涼宮ハルヒの○天国4:2006/07/21(金) 21:53:22 ID:nJZqJxRt

「……とにかく涼宮ハルヒを満足させる事が最も早く、かつ安全な解決法」
 満足させるって…どうやってだ…?
 自慢じゃないが俺は妹を満足させた事なんて一度も無いと思うぞ
 というか、世の妹を持つ兄達に聞いても殆ど同じ答えが返ってくるだろうよ
 そんな事を出来るのはよほどのスーパーマンか、極度のシスコンだ
 妹というのはそれほどの存在なんだぜ?

「朝比奈みくるの場合と違い、涼宮ハルヒの初動対処法としては
 あなたが受身である事が今までの数々のパターンから見ても望ましい。
 何か事が起こってからの対処を重視すべき」

 まあ確かにSOS団絡みの事件では「そこから解決法が始まる」事が多いな
 とりあえずハルヒがアクションを起こすまで待つしかないって事か
 どうせなにが起こるか予想なんて出来ないしな、ハルヒ相手じゃ…
「なによバカキョン、私の顔に何かついてる?」
 ええもう本来食べるべき物か顔中にべったり
 ほら、足もバタバタしない

「……ただし、他のメンバーもあなたに対しアクションを起こす可能性大」
 なに? そりゃまたどうして?
「……皆、同じスタートラインという公平さが涼宮ハルヒの中で設定されている
 つまり、フラグイベントも公平」
 なるほどな
 え? ちょっとまて、鶴屋さんや朝倉や本家妹も含まれてるのか!?
「……もちろん」
 な、なんだってー!?(AA略)
40813-150:2006/07/21(金) 21:55:07 ID:nJZqJxRt
とりあえずここまで
エロをねちっこく書いてると、他のネタ思い浮かんで先に進まないな
409名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 22:01:14 ID:l+Lu5DUT
完結させてから投下しなよ……。
マジでうんざりしちゃうんだけど。
410名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 22:08:13 ID:KtGr/0mu
勝手にしてればいい
411名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 22:09:12 ID:Kah9F81+
>>408
乙。
本家妹と朝倉のポジションが楽しみだ。
412名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 22:15:40 ID:tcNB4in/
少しでも早い続き待ってます。
413名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 22:19:41 ID:2ZDqbMzM
できておる喃
長門は……
414名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 22:21:04 ID:JWes8b2P
というか、この設定でエロなのか(W
415名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 22:21:54 ID:ZsCm6hLu
う〜んどうして俺が学校から帰ってくると荒れるのかと・・・
416名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 22:26:15 ID:nJZqJxRt
うい、完結しないでうんざりしてるのは
書いてるほうもそうなので頑張って今書くよ
417名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 22:41:15 ID:w+ofRN2P
まあ、wktkして待とうぜ
418名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 22:50:01 ID:VwmwsZX0
>408
楽しんで書いてる感がgood!
狙いすぎな長門w
419名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:04:47 ID:LeSOSOcO
キネンパピポ
420名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:08:21 ID:64WKh6OW
かなり俺の好みです。職人さんの偉大さを感じました。続きをワクワク待ってます!
>>408GJ!
421名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:11:51 ID:LT9+Cfoc
>>419
何が記念なんだ……ってIDがSOS!テラウラヤマシス!
422名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:18:58 ID:Gj9alFS5
>>408
どさくさに紛れて一番楽しんでいる長門がいい。わっふるわっふる
423名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:20:10 ID:U55kghUC
408氏、とっても面白いし楽しいんだが……句点をつけないのは何故なんだ?
レス書くときはともかく、SSを投下するときはつけたほうがいいと思うんだけど、どうだろう。
424名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:28:14 ID:LSeBz/2H
>>408
長門の説明に「それなんてエロゲ?」とつっこんでしまった・・・
425名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:47:17 ID:HmLdaHHL
>>408
地の文が凝りすぎずに軽いので、読みやすい。ユニーク。
地の文を変にひねってないところがいい。個人的にこの軽さはベスト。
GJ。
426名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:50:32 ID:Xga5Ie/T
>>425
なんで長門調なんだよ!w
しかし>>408がいい作品ってのには同意だ!
427名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:53:56 ID:nyMs/JGC
朝倉、消滅してるんじゃないんか…。初出では区別できんくて、
古泉が女性化→幼女化と回りくどいコンボ繰り出したのかと思ってたw
428名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:54:53 ID:r8V9nbx5
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
429名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:56:29 ID:e1JDhoO/
古泉出番なさそうだなw
430名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 23:59:17 ID:oA5QQW2j
長門の設定いいなw
431名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:03:40 ID:171BeUlM
>>408
とりあえず妹はハルヒ、朝比奈さん(極小)、鶴屋さん、朝倉、妹(本物)+生まれた時からの(ry長門か
こうやって見ると、長門がものすごく抜きん出てる件
432名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:13:53 ID:Q4yM+fKU
vipで若干にてるのがあった。しかしクオリティはダンチ!
まあVIPはクソSSでも奉る信者集団wなんだが
433名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:18:05 ID:NJgPSi4e
予想通り、夏休みなんだなあ。
434名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:25:57 ID:IRrp8s0d
言っちゃ悪いが、ここも相当vip臭いぞ
435名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:28:15 ID:0U2UqTTI
今日は投下が少ないね
436名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:36:53 ID:yp6Xq4Rg
夏休み突入しての初の花金だからな、みんな飲んでるんじゃね
437名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:39:01 ID:/j/isWUg
飲みながら投下を待ってる俺も来ましたよと
438名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:43:09 ID:9wAFexiG
花金って何だっけ
439名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:44:20 ID:GQDdp6I/
>投下
埋め用にと思ってた6KBほどのネタでよければ。
キョンと古泉でのコントなんて需要あるかわからないけど(非801
440名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:44:26 ID:GY36KE9E
花の金曜日

明日が土曜日(休み)だから、
金曜の夜はパーっと遊べるというような意味だったと思う
441名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:45:30 ID:sYP/3ztN
はなきんデータランド
・・・古すぎる。

>439こいこい
442名無しさん@ピンキー :2006/07/22(土) 00:46:39 ID:tEh6MSwC
>>441
こいこいなら知ってる花札
443名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:47:48 ID:GQDdp6I/
では、3レスくらいで。

『K&K』

 やや深夜に近い時間帯。こんな時間に徘徊する輩は通報されて然るべきである。
 というわけで心ならずも早足になってしまう俺がいる。言っておくが、国家権力の厄介になるようなことは断じてやってない。
 しかしまあ、こう深夜に外出しているというだけで妙な背徳感を覚えるというか。
 急に自分の業の深さについて反省したい気分になったりしたりするものなのさ。何の業かは知らんが。
 そしてそれは、思いがけず知り合いに出遭ってしまうことで最高潮に達する。
 あまりにも突然の邂逅に俺が間抜けな声を漏らすと、野郎も似たような反応をよこした。

「やあ、奇遇ですね」

 しかし一瞬でテンプレ通りの微笑に戻る。一向に変化が無いのは、俺に不快感を与えることも仕事内容に含まれるからなのか。
 超能力少年、古泉一樹。
 どうだかね。いつかみたく待ち伏せしてたんじゃねえのか。
「今回ばかりは本当に偶然ですよ。次からはどうかわかりませんが」
 軽く鼻を鳴らしながら、俺も待ち伏せの線はないなと思っていた。そうでなければあんな罰の悪そうな顔をするはずないさ。
「こんな時間に何やってる?」
「散歩、とでもいっておきましょうか」
 何だ、その嘘ついてる感丸出しの投げやりな言い訳は。真相を言え。
「知らない方がいいことかもしれませんよ」
「胡散臭い言い方だな。むしろ疑えと言っているように聞こえるぞ」
 古泉の微笑みは、今にも俺のお得意の台詞を呟きそうな苦笑に変わる。
 失礼な奴だな。そう言うように俺を誘導したのはお前だろうが。
「ええ、全くです……ですが、あなたにはもう少し疑心暗鬼になってもらった方がいいとも思うのですよ」
「どういう意味だ」
「知っての通り、僕の所属する機関はこの時代の俗人が寄り集まっている集団です」
 質問に答えろよ。
「長門さんのように高次な存在でもなく、朝比奈さんのように現在よりは豊かであろう人々でもなく……最も人間臭い連中ですよ」
 だからどうしたっていうんだ。
「率直に言いましょう。涼宮さんに注目する陣営の中で、自他ともに信用ならず、かつ最も血腥いのはうちです」
「……」
 俺が今まで出会った機関の人々、森さんに新川さん、多丸さん兄弟。
 彼らが影でゴルゴ13のような殺し屋稼業を請け負っていると考えても、特に違和感がないのが怖い。
 何よりも恐怖を感じたのは、殺し屋の単語から最初にイメージされたのがメイド服でライフルを構える森さんの姿だったということだ。
 いよいよ、次に会ったとき視線を合わせて会話できる自信が無い。
「加えて、僕たちの最終目的は“涼宮ハルヒの沈静化”――派閥によって語弊はありますが」
 長門の親玉は進化の可能性が云々ぬかしている。噛み砕くと、どうやら、古泉ら機関とは明らかに目的を異としているらしい。
「SOS団を離脱する者が出るとすれば、それは僕ですよ」
444名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:48:44 ID:GQDdp6I/
「例えば、僕は今まで密談をしていたのかもしれません」
 SOS団にとって不都合な内容のね、と古泉は続けた。
「もしくは、僕は機関の内乱に巻き込まれている最中で、ついさっき何人か始末した後なのかもしれない」
 右手を胸の前にかざす。もちろん何もない。サスペンスなドラマ的演出なら血が滴っているところだろうが。
 黙っている俺を真に受けているものだとでも解釈したのか、古泉は肩を竦めて軽く笑う。
「例えばの話ですよ」
 ここにきてようやくのフィクション発言か。結局、何が言いたかったんだお前は。
 さあ、何でしょうね。古泉の表情は実に曖昧だ。
「しかし――僕はいつ裏切ってもおかしくない立場にいる。そのことさえ覚えておいていただければ一安心ですよ」
 では、とだけ言い残し、古泉は俺の横を抜けていく。言いっ放しか。俺の意見を聞くつもりはないようだな。
 だが断る。
 俺も大概負けん気が増長しているらしい。ハルヒが伝染ったか。

「待て」

 散々偽悪的な言動をしておいて、お前はハルヒ的なスパイキャラにでもなるつもりか。
 ふざけるなよ。だったら俺は王道的なヒーローになってやろうじゃないか。
「お前が敵に回ろうが、もしくは追われる身になろうが……覚えとけ、ハルヒは必ずお前の味方をする」
 あいつは団員を簡単に見捨てたりしない。わかってないとは言わせないぜ、副団長殿。
「俺はそんなハルヒについていくだけだ」
 一度動き出したハルヒに、拒否権など無用の長物だね。SOS団における規定事項のはずだ。
「そして長門も、朝比奈さんもだ」
 忘れるな、古泉。
「お前にちょっかいをかけたがる連中は、割とたくさんいるってな」
 さて、いつも細めてばかりの目を見開いているが……こいつは何を思ってるんだろうね。
 古泉は見慣れた微笑に戻る。「ありがとうございます」とだけ言うと、何か含んだ顔つきになり、
「お礼に……と言うのもおこがましいですが、少し良いことを教えましょう」
 ほう、期待しないで聞いてやろう。
「かつて、一度だけ機関を裏切って味方すると言いましたね」
 いつかの雪山のか。
「どうやら嘘になりそうです」
「何だと」
「いえ、味方をしないというのではありません」
 人をひっかけておいてずいぶん満足そうに笑いやがる。お前の家系は詐欺師を生業にしているのか。
「この先、裏切るのが一度だけでは足りなくなったら……僕は何度でも裏切りますよ」
 SOS団のためにね――そう言う古泉の笑顔から不快感を感じることはなかった。
 ああ、そうさ。何だかんだと言ってはいるが、古泉が良い奴であることはとっくに感づいてる。俺は性善説信者だしな。
 しかし裏切ってばっかりだな、お前は。今だけで何回、裏切るって単語使ったよ。
「それともう一つ」
445名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:50:16 ID:GQDdp6I/
「あまり僕の言うことは信用しない方がいいかと」
 おい、このやろ、まだ言うか。
 俺は古泉を軽く小突くつもりで肘を突き出した。そして古泉は「おっと」と大袈裟なリアクションでそれを避ける。
 ただ、それだけのはずだった。
「あ」
 古泉の手から紙袋の取っ手が滑り落ちたのは、全くの偶然だ。
 落ち行く紙袋、瞠目する古泉、呆ける俺。
 紙袋の中身がぶちまけられる。


 そして俺と古泉の時間が止まった。

 ああ、そうか、お前。
 もっともらしいこと言ってるフリして、とりあえず俺を煙に巻いてさっさと帰りたかったんだな。
 紙袋から零れ落ちた“それら”を見ながら、俺は古泉に新たな親近感を覚え始めていた。進んで獲得しようとは思わない代物だったが。

 そこには――まあ、その、アレだ。
 高校生が買ったらいけないような雑誌が散乱していた。


「ええと、その、何だ」
「はい」
「見なかったことにする」
「助かります」



 とはいえ、一度見てしまったものを忘れるなんて、それこそ世界改変でもしない限り不可能なことで。
 その後、俺と古泉はハルヒ他SOS女子団員に内緒で男の勲章と呼べる物品を交換し合うようになった。、
 それだけは、今までもこれからも、本当に内緒の話だ。



「ところで、あなたこそ何用ですか」
「散歩、とでもいっておこう」


 おわり。良作ラッシュが続いてたから、期待ハズレでゴメン。
446名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:59:04 ID:ayme25cY
面白かった!

っつーか俺もこいつらと同じ時間帯に同じモノを買ってたぞwwwww青春カムバックwwwww
447名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:00:06 ID:+Et9YsHS
>>445
いやいや、良かったよ。読みやすかった。
乙でした。
448名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:11:13 ID:uITm7GcD
危険行為手当出まくりなバイトしてるんだから、通販大人買いしろよ…w
449名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:11:29 ID:4bvWm9er
ホモじゃない古泉を久しぶりに見たよ!
エロ本のジャンルが気になる処だw
450名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:11:47 ID:GQDdp6I/
こちらこそ読んでくれてサンクス
ちなみに初めの方の背徳感が何たらってのはコンプH's買いに行ったときの実体験が元ネタ。
妙に緊張したw
451名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:21:00 ID:1xG65JcY
>>449
言われてみればw
古泉は大きな話をしていて内心はどうやって煙に巻こうかと必死だったんだな。
452名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:27:47 ID:MPYC0Sbm
メイド物とOL物と予想
453名無しさん@ピンキー :2006/07/22(土) 01:28:59 ID:tEh6MSwC
貧乳OLが朝、ブラの中にパットを入れようとして中々入んなくて遅刻しちゃいそうになって
ちょっとあせってる姿萌えの普通な古泉なんてそんなの( ;´Д`)いやぁぁぁぁぁー!
454名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:29:58 ID:bHDlASzr
>>354
つづきです
455涼宮ハルヒの×××:2006/07/22(土) 01:31:33 ID:bHDlASzr
「じゃあ舐めてあげよー」
自慢じゃないが俺は童貞だ、
いきなりそんな甘美な言葉を投げ掛けてくれるなんて、
その、なんだ、困る。「嫌なの?」
あーわかった、かわいいのはわかったから、
涙を浮かべ上目遣いで見ないでくれ。
「い、いやお願いします」
「まかされー」
涙が完全に消えた小悪魔がそこに居た。
「わざとだ、絶対にわざとだ」
俺が素直な感想を漏らすと。
「エへへー」
と舌を出して笑った。
その様が堪らなくかわいい。
やはり元に戻ったらあいつには笑って貰おう、規定事項だ。
「でもね、やっぱり先にキスして欲しいなー、なーんてね」
長門は耳まで真っ赤にして俺に呟いた。
「すまんな変な事言わせちまって、恥ずかしかっただろ?」
長門の頭をなでた。
「少しだけね、でもキョン君の事ならどんとこいだよ」
俺は長門の口を塞いだ。
俺の舌と長門の舌が絡み合う、完全に溶け行く。
キスがこんな気持ちいい物だとは思わなかった、
以前の夢を入れなければファーストキスだ、
は、恥ずかしい何を考えてるんだ俺は。
長門は口を離し恥ずかしそうに言葉を繋げる。
「エへ、二回目だよー」
「なんと?」

こいつは俺以外の男とそんな事をするのか?
「違うよー、さっき気絶してる時にしたんだよー」
なんと、そいつはすまなんだ。
「酷いよ、私がキョン君以外の人とそんな事すると思ってるなんて」
今度は本当に泣きそうな感じだ。
「思ってないぞ、少しびっくりしただけだ。…じゃあ、俺も二回目だ」
本日最高の笑顔で笑う長門はお世話抜きにかわいかった。
「やっぱりキョン君大好き」
確信犯か、だが後十年は戦える。
ありがとうマクベ。
ありがとうハルヒ。

「なぁ長門、服脱がせてもいいか?」
やはり運動をするのに服は必要ない。
456涼宮ハルヒの×××:2006/07/22(土) 01:34:19 ID:bHDlASzr
故人曰く汗をかくなら服を脱げばいいじゃなーい、だ。
「キョン君のえっち」
「すまんそれを言われるとなにも言えん」
「でも、いいよ私はキョン君の為なら何でもできるのだ」
小さく“本当だよ”と付け加えた。
目の前の小さな少女は俺の胸に顔を埋めながら。
「では脱がせて貰おう」
そんな事を言う長門の耳は真っ赤だった。
長門の顔をあげ三回目のキスをしつつセーラー服をたくし上げ下着を露にする。
白い肌を眺めながら。
一枚一枚丁寧に脱がせて行く。
「綺麗だぞ長門」
全てが均整の取れた身体は綺麗だった。
「やっぱり少し恥ずかしいなぁ、ほら私あまり胸とか無いし」
何を言うかと思いきや。
「胸なんて関係ないぞ、俺が綺麗だと思ったからそう言ったんだ」
もう脳のツッコミ気管も働かない。
「そんな事言ってくれるなんて嬉しい…よ」
「長門、触っていいか?」
「うん…いいよ、あとねキョン君、有希って言って欲しいな、なーんてね」
「あぁ悪いな、有希」
「…嬉しいよ」
俺の手は脳からの指令を介さず既に長門、
いや有希の胸に伸びていた。
手は両の乳房を入念に責め上げ、手の動きに伴い形を変えてゆく。
指が乳首に触れた瞬間に。
「んっ」
声が聞こえた、感じてくれているんだ。
初心者の不安を安堵が減らしてくれる。
「…んっ、うぁ」
乳首に集中した責めはどうやら正解のようだ。
「キョン君、胸ばかり触ったら私、変になっちゃうよー」
いやいやしながら有希は俺に抱き付いて来た。
「じゃあ次はどうすればいいんだ?」
フフフ、次は下に行けば間違いないと見た。
「キョン君ずるいよー今度は私の番だよ」
なんと嬉しい誤算だ。
「マジか?」
「まじだよー」
457名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:41:59 ID:GbrfzVKn
何と言うか……
458名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:42:21 ID:bHDlASzr
とりあえずここまで
最後まで書けなくてマジゴメン、携帯だからあんまし文貯めると消えちゃうんだ。
459名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:43:50 ID:GbrfzVKn
>>458
何と言うか……
460名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:51:05 ID:C6lu57nO
長門のキャラが違いすぎるような・・・
461名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:51:58 ID:v0bI3raK
別に最後まで書かんでいいと言うか…
462名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:54:03 ID:bHDlASzr
まぁまぁ、文が目茶苦茶なのは確か、スルーしてくださいな
463名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:54:28 ID:gLZcPIZn
そのキャラの違いについて、これからなんかオチがあるんでは?
とりあえず最後まで読んでからにしようや。
464名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:57:58 ID:RfT0e9Mi
つーかハルヒは・・・?

orz
465名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:58:22 ID:eIIA7jBt
ポッキーの続きが見てぇ
466名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:14:27 ID:RFhu7dIw
>>463
オチどころか元に戻った長門から説明も多分あるだろ。
つーか今の話の流れでキャラが違うって批判はおかしい。
467名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:16:24 ID:LYHSXYus
>>460
明らかに人格が変わってるだろ
違うに決まってる
そのツッコミはハイテンションユッキーネタにキャラが違うとツッコムようなもの
468名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:16:37 ID:YbGPW/IS
続き物は10レス以上からがいいな
忘れちゃう
469名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:20:43 ID:RfT0e9Mi
まぁまぁ落ち着け落ち着け。
よく分からんが、職人さんは大事だ世の宝だ。
まぁ批判するなとは言わないが、批判するならもう少し的を得た批判をしろ。

で、ハルヒはまだー?
470名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:27:26 ID:6vZkCCSt
これはひどい長門ですね。
471名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:30:20 ID:dZJQgmTV
的は射ろよ
472名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:32:39 ID:MdaFB6VM
エロなし小ネタ。2レス。


部室のドアを開けると、いつものように長門が分厚いハードカバーを読んでいた。
よく飽きないもんだ、そう思いながらイスに腰掛け、何となく置物と化している文学少女に
視線を向ける。

一定の間隔でページを捲る、白皙の元文芸部員を見ているうちに、
今日の授業で出された課題を思い出した。心に残った文章だっけ。

今まで読んだものの中から、心に残った文章を、その理由と共にレポート用紙に書いて
提出しろってやつだったな、そういえば。

しかしだ。自慢じゃないが、俺はあまり本を読まない。
だから、心に残る文章なんて言われても、まったく思い浮かばん。
心に残ったマンガのセリフだったら何とかなりそうだが、さすがにそれは却下だろうな。

ということで長門だ。
こいつは、読書三昧だからな。きっと色々な名文を知っているに違いない。
そう考えた俺は、長門に訊いてみることにした。

「長門、心に残る、何かこう、感動的な文章ってやつを知りたいんだ。何かないか?」
「心に残る?」

何となく不思議そうなと思える視線を向けてくる長門。

そうだった。こいつは、宇宙人製のヒューマノイド・インタフェイスだった。
心に残る、なんて言われても解らないんじゃないだろうか。
いや、長門にだって感情はあるんだ。きっと、何か気の利いた言葉を教えてくれるさ。

「質問の内容が不明確」

むむ。ダメだったか。訊きかたを変えてみるか。

「そうだな。たとえば、それを読むことで、感情や思考が深く揺さぶられる、そんな文章かな」
「わたしの思考を深く揺さぶった文章……」

そう言って、長門は詩を朗読するように、たぶんその一節だろうと思われる文言を呟いた。

『a problem has been detected and System has been shut down to prevent damage
to your computer...』
473名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:33:13 ID:MdaFB6VM
「……よく解らなかったんだが、タイトルは何て言うんだ?」
「bsod」
「すまん、解らん。俺が馬鹿なだけなんだろうけどな。日本語で何かないか?」

長門は、しばらくの間、平坦な視線を俺に向けていたが、何かを思いついたように口を開いた。

「先の文章の次に、思考が揺さぶられた文章」

そう言った長門が発した言葉は、次の通りだった。

『問題が発生したため、nagato.exe を終了します。ご不便をおかけして申し訳ありません。
作業途中であった場合、その情報は失われた可能性があります』

…………情報伝達に齟齬が発生しているぞ、長門よ。

「事実、その文章を読んだ人は、自身の感情を深く揺さぶられ、時に絶叫し、時に悲しみ、
時に自分を見失うほどの怒りを露にすることがある」
「それってコンピ研の連中だけじゃないのか?」

そう言った俺に、長門は少し哀れむような視線を投げかけたあと、一言だけ呟いて、
読書に戻った。

「そのうち解る」


――――
SS書いてて、保存しようとしたら、いきなりエディタが落ちやがったので発作的に書いた。
少しだけ反省しつつ、もう寝る。
474名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:38:14 ID:D4X144xN
>>456
の続きを
正座して待つ。


全裸で。






靴下だけ履いて。







長門が。
475名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:49:20 ID:5IXCpTrz
人格変わってんのは読んでてわかるだろ
ぼけが!死ね!
476名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:56:21 ID:GpirukE6
>>473
「がんばれ!!ゲイツ君」ぽいネタですな。
クスリとしましたですにょろ。

ttp://www.asahi-net.or.jp/~FV6N-TNSK/gates/
477名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 02:56:42 ID:vcNgfluK
中高生のみなさんに朗報
この夏のコミケにキョンのコスプレして行ったらハルヒのコスプレしてる女たちにモテまくるぞ
うまくいけばあとでセックスできるかもしれないぞ!
478名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 03:02:28 ID:utgrREEh
>>445
いやぁよかった。
キョンはハルヒ待たせて家族計画買いに行ってたと予想。
479名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 03:29:14 ID:EYyVO6jj
>>477
古泉には気をつけろよ
480名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 03:31:30 ID:uITm7GcD
>>473
そのうち(今の記憶の)長門っちがいなくなる、なんて深読みして
しんみりしたが、どうやら誤読の模様。
481名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 03:32:39 ID:RfT0e9Mi
>>473
とりあえず乙と言っておこう。二重の意味でな。
482名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 04:09:04 ID:ibjPMySV
>>391
嘲笑て。


えらく崇高なレスですね^^
483名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 04:42:35 ID:TBKqBOzt
キャラが違うというかエロゲーを模した世界になってしまい
フラグがたった長門がイベントシーンを強制的に演じさせられてるんだろう。
そのぐらいは推測できる。
484名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 04:57:26 ID:5u0Yq/zD
おまいらww涼宮ハルヒの憂鬱のEDオリコン一位にしようぜwww
http://ex16.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1153505933/l50
485名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 07:15:08 ID:Tg41y0HF
>>482
ちょ、遠投だなおまいさん

>>484
時空を超えたスレッドかよ!


突っ込まずにはいられなかった。今は反省している。
486ひ えろ こねた:2006/07/22(土) 07:20:21 ID:r1P6jsYx
 通算10回目となる市内不思議探索ツアーがいつもどおり収穫ゼロに終わり、
不満げに大股で去っていくハルヒの後ろ姿をみながら、俺は盛大にため息をついた。
 見つかるわけがない不思議を求めてただひたすら歩くだけのこのツアー、
10回目ともなればため息がでないわけがない。
 俺も帰るか、と歩きだそうとした瞬間、いきなりうしろからわき腹を

 つん

 ぬあっ?!

 みっともない声を上げ、骨髄反射で腰をエビ反らせながら振り返ると、
そこには人差し指を突き立てた形のまま固定している宇宙人製アンドロイドがいた。

「おい長門っ!」
 わき腹はやめてくれ!弱いんだから!
「……そう」
 ……ひょっとして狙ったのか?
「……たまたま」
 そうか……まあいい、それでどうした、何の用だ?
「……ユニーク」

 とつぶやいたと思ったら視界から長門が消えていた。と思ったら今度は逆のわき腹を

 つん

 ぬあっ?!

「おい長門っ!」
 今は狙っただろ!瞬間移動まで使いやがって!
「……ユニーク」
 こらっ……!やめっ……
 つん

 ちょっ……!
「ユニーク」
 つん

 あひゃっ……
「ユニーク」
 つん

 ひぁっ……
「ユニーク」
 つん
 そんなっ…(つん)うれしっ……(つん)……そうなっ…(つん)顔してっ…
…(つん)…このっ……(つん)…ちょっ……(つん)いつまでっ…(つん)…
やるっ(つん)…のっ(つん)……あひっ……(つん)…ねっ…(つん)ちょっ…
(つん)…おまっ…(つん)…こらっ…(つん)…ふぁっ……(つん)…ながとっ(つん)…
ねっ…(つん)……やめっ…(つん)なっ(つん)…さいっ…(つん)…だからっ…(つん)…ねっ(つん)…


 そのまま五分ほど、長門はユニークユニークとつぶやきながら宇宙的能力を無駄に駆使して、
ひたすら俺のわき腹を遊びに真剣になった子供のような表情でつつき続けた。

 可愛かったぜまじで。
487名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 07:59:58 ID:4bvWm9er
秘孔を突きまくる長門。動きが想像できて吹いたw 悪遊っ子め
488名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 08:14:28 ID:4bvWm9er
×悪遊→○悪戯
誤字レスすまん
489名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 09:15:11 ID:mpzvp/Fm
誰か『気の毒! 少年Nの悲劇』を書いてください。
490名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 09:22:01 ID:6nQXQAjj
>>489
そのハルヒキャラが全く出ないであろう小説は果たしてハルヒSSになるのか
491名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 09:59:28 ID:8jchAErC
>>489
そういうのもありじゃね?
ってお前が書くんじゃないのかよ
492ジョン・スミス:2006/07/22(土) 12:00:21 ID:JIprJwG8
                                -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
  ┏┓┏┓  ┏┓  ┏┳┳┓    ┏┓      / /" `ヽ ヽ  \.       ┏┓┏┓
  ┃┃┃┃┏┛┗━┫┣┻┛┏━┛┗┓   //, '/     ヽハ  、 ヽ       ┃┃┃┃
┏┛    ┻╋┓┏┓┃┃    ┗━┓┏╋━━/. {_{\    /リ| l │ i| ━━┓┃┃┃┃
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┗━━┛┗┛┗┛┗┛  ┗━┻━━┛   \ /::::| l>,、 __, イァ/  /│     ┗┛┗┛
                                 /:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |


493名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 12:13:07 ID:N79JdL9d
>>490
鶴屋さんが執筆しながら話が進んでいく形式とか。
もしくは終わったあとのキョンの反応を最後に付け加えれば無問題。



俺には無理だけど…
494名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 12:18:33 ID:rwAieluJ
>>493
NじゃなくKだったらそれをキョンにして書けそうなんだけどね
495名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 12:24:58 ID:oa5tBJ3O
読む者全てを笑い転げさせる小説…
そんな物をちょろ〜んと書ける猛者は居ないのかな…

>>494もしかしてキョンの本名はNだったりして・・・
496名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 12:29:34 ID:LnjLkyu5
本名……ハッ!そうか!

少年Nとはキョンと長門の間に生まれる子供の事だったんだよ!!!
497名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 12:34:29 ID:yp6Xq4Rg
ツマラナイこと言うかもしれないが、キョンの本名はおそらくカかサ行じゃないか?
入学当初の席って普通五十音順だろ?そんで、すぐ後ろにハルヒがいたんだから、
多分キョンの本名はサ行あたりじゃないかと予想。
498名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 12:35:47 ID:udou+hJb
男と女の名前順はそれぞれ別らしい
国木田以上谷口以下なんだから、け・こ・さ・し・す・せ・その中のどれかだ
499名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 12:36:52 ID:LnjLkyu5
>>497
実は出席簿にも「キョン」と書いてある と予想
500名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 12:40:51 ID:yp6Xq4Rg
>>498
だいぶ絞れてきたぜ
501名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 12:45:17 ID:KkUddjBB
名字は分からんが
「永清」とか言う名前だったら可能
502名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 12:50:40 ID:KkUddjBB
名字×→苗字○
503名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 13:30:25 ID:muHtkRnE
きっと田中恭平。タナカキョウヘイ。
504飲んで:2006/07/22(土) 13:33:39 ID:0U2UqTTI
借りた本に挟まれていた栞に書いていた待ち合わせの一文。
無視するわけにもいかなかったが、呼び出された先でこんな事態になるとは思ってもみなかった。

長門の家にあがり、今オレたちはコタツ机で対面している。
さきほどからもう何分経っただろうか?
家族はいない。一人暮らしというところまでは聞いたが、その後はずっと長門は無反応だ。
オレから話し掛けるまでずっとこの調子なのかと思い始めたころ、ふいに長門が立ち上がった。
お茶の準備でもするのかと思いきや、長門はオレのそばまで歩いて来て、
おもむろにセーラーに手を突っ込み、ブラジャーを取り払った。
………え?
ブラジャーをコタツ机に置く。
ついで何気なくセーラーを脱ぎ出した。
裸の上半身からは小ぶりなマシュマロやさくらんぼが二つ丸見えだ。
オレが絶句して固まっていると
「飲んで」
と長門は言った。

えっと、なんで?なにを飲む?
っていうかなんで服脱いでるんだ、長門。
慌てて視線を窓に移す…って窓にも反射してるからコタツ机へ…って今度はブラジャーが!
しょうがないからアホみたいに上を見上げることにする。

「あなたはミルクが好きだと聞いた」
牛乳は別に嫌いじゃないが、そこまで好きなものでもないぞ。
というか誰に聞いた。
「自宅に招いてもてなしをする時は、もてなす対象の好物を出すのが好ましいと聞いた」
いや、普通はお茶だろう。牛乳なんて聞いたことない。
って、そんなことより年頃の娘がなんて格好だ。
頼むから服を着てくれ。目のやり場に困る。
「ミルクは一般的に牛乳のことだと調べた。しかし牛乳は牛のミルク。人間であるならば人間のミルクを飲むべき」
人の話を聞け。
ついでに、それが必要なのは赤ん坊だけだ。
「牛乳は人間の肉体に最適なミルクではない。幸い私は女性型。人間のミルク、すなわち母乳を出すのに問題はない」
いや、普通は妊娠しなきゃ出ないもんなんだが。
まさか妊娠してるのか!?
「妊娠はしていない。が、貴方が好む牛乳の味に似せて乳首から母乳が出るよう肉体情報を再構成した」
してないか…なら出ないな。それなら安心だ。ってそういうことでなく、早く服を着てくれないかな…
それに肉体情報の再構成ってなんだ。こいつもハルヒみたいな電波娘だったのか…?

長門は胸を隠すわけでもなく、そのままの姿勢で動かない。
オレは天井の照明を眺め続ける。
またしばらく静寂が訪れる。
体勢的に苦しいが、視線は下げられん。
視線を下げると小ぶりな胸や二つの桃色など色々見えてしまいそうでオレの理性が危ないからだ。

そろそろ首が痛くなってきた頃
「飲んで」
長門が呟き、近寄ってきた。
まさか、そのままむしゃぶりつけと!?
「それが正しい飲み方。人体に好影響を及ぼすように栄養情報も改変しているので健康にもいい」
長門は胸をオレの口に近づけてくる。
無表情の顔がオレの上に覆い被さってくる。
その距離はどんどん縮まって……




「おいしい?」
505名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 13:34:35 ID:Zbdz8Mu6
>498
たに「ぐ」ちの前なら、たに「が」w うおっまぶしっ
506名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 13:35:11 ID:0U2UqTTI
以上。

16-116です。保管庫の方いつも乙。
豆乳飲んでて思いついた。

エロくなくて申し訳ない。
では。
507名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 13:38:21 ID:Zbdz8Mu6
>506
すまん割り込んじまったな。

…初訪問の客に、いきなり母乳ですか長門!ww
508名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 15:25:11 ID:jcPr3dkh
>>505
「全てが終わった後、キョンが実体験を元にこの小説を書いている」
というラストなら、それが適用されることもあり得るかもw
>>506氏乙。
タイトル読んでなんとなく想像は出来ていたが、それにしてもキョンウラヤマシs――


――イメージ映像の脳内放送を原因とする興奮による当該対象のオーバーヒートを確認
509名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 15:42:37 ID:4bvWm9er
>506
長野県小県郡長門町に長門牧場の存在を確認。
もちろん例のブツもありますぜ?w
510名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 16:00:55 ID:4zil3QS9
今日名古屋のアニメイトで漫画版買ってきたんだがこれはひどいなorz
やはりハルヒを漫画化するならのいじじゃないとだめだな 
511名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 16:07:43 ID:88DpESgJ
のいぢが漫画化しても絵はかわいいだろうがつまらんと思う
512名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 16:09:30 ID:q9mb2TjQ
シャナの笹倉ならいいと思われ
513名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 16:24:14 ID:ab+cXorM
最近ハルヒ×キョン物を見ないなぁ
長門ばっかり
514名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 16:39:07 ID:SbRf1zaO
原作付きだから知欠や大暮でも大丈夫のような気もする。
515連レススマソ:2006/07/22(土) 16:40:19 ID:SbRf1zaO
>>513
そうか?ハルキョンはよく見ると思うが。
むしろみくる……
516名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 16:42:34 ID:hUoI1mCh
知欠もとい矢吹先生にやらせると長門が朝倉に触手プレイされる事になりますが
517名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 16:49:49 ID:/vXdspo/
そういえばそうだな一番いけないのは重要な所をはしょりすぎなんだよなorz
絵だけだったら矢吹もいいかもな美少女(とくに幼女)書くの上手いし
518名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 16:55:20 ID:Si4MAXqH
>>516
それもまたよし。

ついでに触手のコントロールを奪って朝倉に逆襲するも、逆に暴走して
「……駄目、押さえられない」
といいつつキョンに向かってしまうのを是非。


属性無いときっついかなあ、やっぱり。
519名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 19:13:05 ID:n85rRArM
>>518 そういうのはSM板でやっちくれ
520名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 21:10:10 ID:6nQXQAjj
谷川スレにしては珍しく過疎ってるな
521名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 21:22:38 ID:B6+XO+t/
荒れてたから
522名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 21:33:26 ID:eIIA7jBt
最近ネタが思い付かないからSSが書けない
523名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 21:36:33 ID:171BeUlM
ネタは有るけど文章に起こせないくらいおぼろげ
しかも続き物を今書いてるから他のに手が出せない
バルサンも焚いてないのに煙が出る
524名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 21:36:40 ID:ZuJG750m
ていうかよくネタがなくならないなとは思ったけどね
525506:2006/07/22(土) 21:44:48 ID:0U2UqTTI
うわ、何この過疎っぷり。
オレの後に誰も投下してないのかよw

>>507-509
レスさんくす。
過疎ってるから勢いで書いたけど、大した起爆剤にはならんかったようだ。
文章力が足らない証拠だけど…orz

ついでに、長門スレで例の牧場の牛乳画像発見したw
飲みてえ!
526名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 21:59:50 ID:nju9kxGE
しかしハルヒは設定上、どんなことが起こっても問題ないからなぁ。
キャラクターを壊さない範囲でなら、何をやっても許されるんじゃないか。

こういったネット上で公開されるSSの先駆けとも言えるエヴァなんて、それこそ10万単位でSS有るだろうしな。
527名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 22:04:12 ID:YbGPW/IS
保管庫見る限り減少してるね
夏コミ過ぎればこのスレ大人しくなるだろう
528名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 22:16:44 ID:171BeUlM
古泉のリアクションがスマイル増減と肩をすくめるしか思いつかない俺は負け組でしょうか…
529名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 22:29:18 ID:+d8m9d/c
18スレの400です。
またちまちまと投下します。
読み飛ばしたければどうぞ読み飛ばしてください。
530もう一人の入団者:2006/07/22(土) 22:31:24 ID:+d8m9d/c
 古泉、わかったぞ。お前は言い訳を俺に押し付けるために俺を呼んだのだな?
それとも、本当に何かあったのか。どちらにしろ、後で何かしらお返しが必要だな。
しかし古泉もさっさと帰ってしまい、部室の中は朝比奈さんと長門だけだ。

今朝比奈さんは着替え中。俺はドアの前で突っ立っている。
俺は、自分でも驚くくらいのスピードで思考を回転させていた。

 俺はまだ納得がいっていない。結局古泉は俺に分かるように説明しなかった。
というか、俺と会話を成立させようともしていない。非常にむしゃくしゃする。
 正直、徹が異世界人であろうと俺に害は何も無いはずだ。
だとしたら知らなくてもいいが、最小限は知っておきたいよな。あいつについて。
あいつが何者かを知っていそうなのは、古泉を抜かせば長門と朝比奈さんだ。
 そうすると、どちらに聞いても長いややこしい話になるのは確実だ。
しかしどちらかというと朝比奈さんのほうが話短めでいいかなと思うし、
俺自身、できれば朝比奈さんと二人きりになってみたい。
それがたとえ小難しい話であったとしても、朝比奈さんと一緒ならパラダイスだ。
「よし」
 決まりだ。朝比奈さんに聞こう。
まあ禁則事項に触れない程度にな。
531もう一人の入団者:2006/07/22(土) 22:32:31 ID:+d8m9d/c
 そう考え終わると同時に、朝比奈さんが出てきた。よし、今だ俺。
「あの、朝比奈さん」
「え、あ、キョン君?」
 いきなり俺に話しかけられ、戸惑う朝比奈さん。これもかわいい。
さすがマイエンジェル。
「ちょっと話があるんですけど、いいですか?」
「は、はい、何?」
「徹のことです」
 俺があいつの名前を言った途端、また朝比奈さんは固まってしまった。
「・・・どうしたんです、朝比奈さん。昨日から変ですよ」
「ご、ごめんなさい・・・」
 いえいえ、謝る必要なんてないのです。
「いったいやつは何者なんですか?いったい、どういう・・・・」
 俺はそこで少し話すのをやめた。朝比奈さんがあまりにも動揺していたからだ。
もしや彼女にとって不都合なところがあるのだろうか。
それに、聞いてもまた『禁則事項』なのかもしれない。
「言い出しといてなんですが、無理して話さなくても大丈夫ですよ。
 話しづらいなら・・・・」
 何より辛そうな朝比奈さんを見たくない。どうも変だ。
しかし朝比奈さんは少し間を空けて言った。
「大丈夫、キョン君。これは私にとっても、あなたにとっても大切なこと。
 言うのが怖いけど、言わなくてはならないの」
「大切なこと?」
 俺は聞き返した。先ほどまでの朝比奈さんと違い、真剣な表情だ。
あの時と同じ表情だ。始めて朝比奈さんが正体を明かしたときと。
「そう。よく分からないだろうけど、聞いてね」
 やはりか。ただ事じゃないのだろう。
俺もいつになく緊張して来た。あーやべ、心臓バクバク来てる。
「あのね、キョン君。この世界なんだけど・・・」
「・・・・・・はい」
「彼が来たことで、未来が変わってしまったの。
 本来この世界で起こるはずだったことがどんどん変わってきているんです」
「未来が・・・変わる?」
 その言葉は、どうにも俺はしっくり来なかった。
532もう一人の入団者:2006/07/22(土) 22:34:34 ID:+d8m9d/c
 ちょっと待ってください朝比奈さん。
いきなりですが俺の脳のメモリーが限界に近いですよ。俺の頭も情けない。
でも、未来って言うのは決まっているものなのですか?
「確かに、未来は変わるという考えもあるわ。でも、じゃあなぜ私はここにいると思う?」
「それは・・・・」
「もしかしたらこの世界は、恐ろしい方向に変わっていってしまうかもしれない。
 私もいつの間にかこの世界からいなくなってしまうかもしれないの・・・」
 それはいやだ。悲しすぎる。
「ありがとう、キョン君。でももし私が消えたら、それはもともとこの世界に私という存在が無かったことになる。
 そうしたら・・・キョン君も私のことなんて知らなかったことになるの」
 それを話す朝比奈さんは、またさっきの辛そうな表情へと戻っていた。
自分が消えるかもしれない。そんな恐怖と戦っているのだろう。
俺は想像できない。想像したくもない。
「そしてそれのトリガーとなったのが、徹君。
 彼が来るかもしれないというのは予測していたことでした。
 でも、可能性なんてそれこそほんの少し。誰も来るなんて思っていませんでした。
 だから名前を聞いたとき驚いたの。そのあとだったわ。
 未来が変わっているのに気がついたのは。
 そして同時に未来とコンタクトもできなくなったんです」
「やっぱり、未来が変わるのはまずいんですよね?」
「もしかしたら、大丈夫かもしれません。でも本部と連絡が取れない以上、
 分かりません・・・・たぶん大丈夫だと思うけど・・・・」

 やはりよく分からない。なぜ徹はいけないのだろうか。
「それはね、彼は涼宮さんよりすごい力を持っているから。彼も自覚しています」
 俺はそのとき、ハルヒと閉じ込められた灰色世界を思い出した。
「徹も同じ力を持っているのですか?朝比奈さん」
「同じじゃないけど、たぶんそうです。閉鎖空間の作り方とかわかっちゃったら、後はいとも簡単に作っちゃうと思います。でも、作り方なんてあるのかしら・・・?」
 朝比奈さんは考え込んでいる。そこは今考えるべきなのですか?
「とても信じられませんよ」
 そう答えるしかなかった。ハルヒにそんな力があるなんてのも信じがたいことなのに、あいつまであるとは思えない。
「でも、彼の力はそんなものじゃないはずです。本当の力を出してしまえば、この世界は吹き飛ぶ。
 涼宮さんの意思とは関係なく。もしかしたら・・・宇宙そのものが消えるかも・・・」
「な・・・・?」
533もう一人の入団者:2006/07/22(土) 22:36:06 ID:+d8m9d/c
 言葉を失った。失うしかないね。
何もかもが飛び抜けすぎている。俺の期待していた1999年の恐怖の大魔王が数年遅れてやってきたのか?それとも、新たな神の降臨か?どちらにしろおかしい。
「あ、でも彼、そんなことはしないです。それは大丈夫です。ね、キョン君?」
 まあ、そうかもしれませんが、分かりませんよ。
「それに今の彼、どこかおかしいです。そう思いませんか?」
 さあ、分かりません。顔色を見るのは得意ですが、いつも同じような顔なんで。
「・・・こんなところです。ありがとうキョン君、ちゃんと聞いてくれて」
 話し終わった朝比奈さんはどこかすっきりとした顔をしていた。
どうも少し思いつめていたところがあったらしい。
さっきの『存在が消える』というところだろう。
俺なんかでも朝比奈さんの気を落ち着かせることができたのだろうか。
だとしたら、嬉しい。いつも俺の目と心を癒してくれる彼女を俺が話しを聞いて癒した、
というのは大げさか?でもそういう気分だ。

 朝比奈さんはその後足早に帰っていった。俺も帰ろう。
徹には何かある。それは分かった。
「・・・・ん?」
ちょっと待て。分かったのそれだけか俺よ。いや、まだあるはずだ。
あいつがいると世界の歴史が変わる、でも害は無いと思う。
ミラクルパワーを持っていて閉鎖空間なんていともたやすく創れる。
それどころか、この宇宙が壊れるらしい。
「・・・おいおいおい・・・」
 いまさらながらやばいことに気がつく俺。
つまりあれだ。あいつはいつでも世界を滅ぼせるんだな?
俺は今までそんな大層なやつに話しかけていたのか?
まあ大丈夫だろう。朝比奈さんの言葉を信じるしかない。
 しかし今回は禁則事項とやらに引っかからなかったのだろうか。
毎回それで聞けなかったことが多かったので、逆に気になる。
うーむ・・・・・
「・・・やめよう」
 考え込んでも仕方ない。なんとかなるさ。
長門に聞いたほうが良かったかな?まあ、またいつか聞いてみよう。
534nasjn:2006/07/22(土) 22:36:37 ID:t5NUnKRW
楽しみにしてるんだから早く…

なにか投下してくれ。
535名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 22:37:04 ID:+d8m9d/c
ここまでです、すいません。
またいずれ書きます。
536ケータイから失礼:2006/07/22(土) 22:48:18 ID:ePPhVJ3+
ケータイから書いていないのにケータイから失礼ってのも変なのでシンプルに18-731と名乗ります(まぁどうでも良いんですけど)
sageとかageの意味が分からないんですが
書き込みますよ的な発言がsageでいいんでしょうか?
そんなこんなで?涼宮ハルヒの冒険の続きを貼ります
537涼宮ハルヒの冒険:2006/07/22(土) 22:51:05 ID:ePPhVJ3+
俺はハルヒの部屋へ向かっている。
途中で怪しげな花瓶を見つけたが
長門に「花瓶に気をつけて。」と言われていたのでほっておいた。
下手にいじってよけいややこしくなるのはごめんだからな。
今の俺はよけいなこと何かしていられない。
立ち止まってはいけない。
ハルヒの部屋についた。
宿屋が込んでいて部屋をバラバラに借りたから少し迷ったがここで間違いない。
『勇者様』とでかでかとドアに張り紙がしてある。
「コンコン」と控えめにノックする。
ハルヒが寝てたら無理に起こすのも悪いよな。
なんて弱気なことしか思い浮かばない。
いやー少し前の俺が別人みたいだね。
面目ないが大丈夫だ、ゲームの都合上ハルヒは起きている。
ノックをした時点でゲームは動き出している。
同じく朝比奈さんも長門もついでに古泉も起きているんだろうがそれは今はどうでも良い。
「はい?」
ハルヒの声を聞いて俺はもう死にそうだ。
心臓が凄まじいテンポを刻んでいるし。
顔が引きつった笑顔で固定されているし。
足はがくがくいっているし。
汗だらだらだし。
ハルヒ?俺だ、入って良いか?
声は裏返っている。
かなりヤバイ。
『重剣士』さんもこんだけ苦労したんだんだろうか?なんて考える。
いや苦労なら俺の圧勝だ。
「いいわよ」
ハルヒの声だ。
聞けば聞くほど俺の心臓はテンポをあげる。
ハルヒの顔を見たら破裂するんじゃないかと思う。
やっぱ少し外に出ないか?
星が綺麗なんだ。と付け足す。
もちろん星が出てるかどころか外の天気も分からない。
雨が降ってたらどうしようかなんて考えてたが心配はない。
ハルヒが望めば雨だって笑顔で晴れるだろうからさ。
おっと日本語がおかしいなんて言うなよ?
なんて一人つっこみでもしないとやってられないぐらい俺はいっぱいいっぱいなのに、、、
「雨降ってるじゃない?綺麗な星は?」
じとっとハルヒがこっちを睨んでいる。
かなりまずい。
つか何でよりにもよって雨なんだ?
あれか?ハルヒに告白するからにはもっと面白そうなシチュエーションを用意しろって事だろうか?
神様仏様いるんだったら恨むぜ。
つーかこの世界作ったのはハルヒだからハルヒが神様って事か?
「こらキョン!何ぼーっとしてんのよ!」
ハルヒに殴られて少し頭が冷えた。
心臓も少しだけ落ち着いてきた。
人間死ぬ気になれば何でも出来る。
ーー頑張ってくれよ?俺ーー
雨の中俺は歩き出す。
傘なんかいらない。
ーーあいつがついてきてくれるなら何もいらないさ、、、だろ?ーー
「覚えてるか?俺達が始めて出会った日を。」
「忘れるわけ無いでしょ。一人だったあたしにあんたは手を差し伸べてくれた。それであの時、、、」
「『無いなら作ればいい。一人じゃ無理だってんなら俺が手伝うから。』だっけ?思えばこれが始まりなんだな。」
何言ってんだ俺?
そんなこといった覚えねーぞ。
「そう。あんたがいてくれたから頑張れた。」
538名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 22:51:28 ID:wN6xYsgJ
>>536
ちょ、待て、sageをメール欄にいれるんだ。
539涼宮ハルヒの冒険:2006/07/22(土) 22:53:38 ID:ePPhVJ3+
ちょっと待てなんだこの展開は?
そこまで思って気がついた。
これはイベントだ。どっから始まったのかはわからんが『ゲームのプログラム』が動いているに違いない。
そろそろ覚悟を決めよう。
これだけは俺の意志で言わせていただきたい。
イベントなんか関係ないね。
初めてあったときから俺はお前が好きだった。
言えた、ほかならぬ俺の意志で、後は待つだけさ。
「あたしもね、ずっとキョンのことが好きだった。」
これはイベントなのか違うのかまるでわからんのだが、そんなことどうでも良いね。
忘れていたが俺達が宿をとっているこの町は『ウィンターグラウンド』なんて町で
これもイベントなのか、はたまたハルヒが改変したのか
ーー雨が雪に変わる頃俺達は何を思い過ごすのだろう、、、なんてねーー
そう雨が雪に変わった。
ベタって意味では案外普通なんじゃないか?
「綺麗。」
「そうだな」
二人寄り添いキスをした。
唇が触れるだけのキス。
まぁ年相応なんじゃないか?
ーー俺の隣で笑う君、君は君じゃないけど、俺も俺じゃないけど、でも俺は幸せだからーー
俺は世界一幸せだ。
いや宇宙一か?
世界と宇宙だとどっちが広いんだろ。
まあどうでもいいさ。
広い方を採用すれば良いんだし。
もちろん目をつぶっているからハルヒがどんな顔をしているのかはわかんねーけど、見たら失神しそうだから我慢するさ。
ーーだから終わりにしようーー
「大好きだ。」
ーーエンディングまでもう後すぐだけどーー
「あたしも。」
ーーエンディングまではまだ早いーー
俺の前には顔を真っ赤に染めたハルヒがいる。
俺も人のこといえねーけど。
ーーなんてねーー
「キョンあのね、、、
目眩がした。
ハルヒにではなく物理的に、世界が回っている感じがした。
凄まじい目眩の中
、、、おーい聞こえるか?
人の声がする。
ハルヒじゃないし朝比奈さんでもないし長門でもないし古泉でもない。
そう俺の声がする。
「じゃあな。あとは任せろ。ハッピーエンドを迎えるのは俺達の仕事だからさ。」
未来の俺がまた出てくるのか?
ってことはまた俺はここに来なくちゃならんわけか?
何にせよとりあえず一段落したって事はとりあえずハルヒは満足したんだろうか?
ゲームは終わってないのにね。
ハルヒのあのねの続きがひたすら気になった。
540名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 22:54:28 ID:yp6Xq4Rg
>>536
sageってのはな、メル欄にsageと入れて、スレを掲示板の上位に上げないことをいうんだよ。
ageは、sageないで普通に書き込みする事だ。
ちなみに、ここではageる行為は忌避されてるから止めた方がいいぞ。
541涼宮ハルヒの冒険:2006/07/22(土) 22:55:40 ID:ePPhVJ3+
「キョン君おっはよー。」
目が覚めた。
妹のラリアットで。
うー今日は休みだろ?
「シャミーおっはよー。」
どうやら俺はついでらしい。
休日のグダ寝を対価に得た物が妹の笑顔ってのは等価交換なんだろうか?
人によっては望むところなのかもしれんが俺としては願い下げだ。
眠い、、、
そう言や夢ってやつは脳みそのデータ整理によって見る物であって『みたい夢』のことを本気で考え続けていると案外見れちまう物なんだと。
まあ忘れちまうのが大半だからあんま意味は無いんだが。
強く願えば見えるかもってのはなかなか良いと思わないか?
ふとハルヒの力みたいだなんて考えてゾッとした。
なんてどうでも良いことを考えつつ眠りにつこうと思っていたのにまた叩き起こされた。
今度は携帯に。
充電器の上で鳴るバイブは結構五月蠅い。
電話をとるといきなり
「私たちは4時間32分53秒この世界から離れていた。」
一応一言くらい欲しいもんだ。
話し方や声からして間違いなく長門なんだが。
私たちってのは誰々だ?
「涼宮ハルヒ、古泉一樹、朝比奈みくる、そして私とあなた。」
また何かあったのか?
「分からない。でも事態は解決している。」
じゃあ問題ないんだな?
「ない。」
すまんが眠いからこれで良いか?
「いい。」
それじゃあな。
「おやすみなさい。」
それだけ言って電話は切れた。
長門も眠そうな俺を気遣ってくれたのかね。
どうだかはわからんがありがたく寝せてもらうよ。
ヴーン、、、ヴーン、、、ヴーン、、、
また携帯が鳴る。
今度の相手は古泉だ。
シカトしても良い所だが俺は電話に出てさっさと終わらせて早く寝たかった。
「休日にすいません。一つ気になることがありまして。」
電話なんだから手短に頼むぞ。
長くとも五分後には俺は電話を切って寝る。
「単刀直入に言うと僕たちが閉鎖空間に進入した4時間半の間のことをご存じないかと思いまして。」
ご存じないな。長門もよく分からないんだとよ。
「何か思い出しましたら教えてください。」
分かったよ。本気で眠いからもう良いか?
「ではまた明日。」
流石に気になる事があったので朝比奈さんに電話をした。
「はぁい。」
朝比奈さんのスィートヴォイスを聞くと『普通』な会話がしたくなってきたが今回はそうもいかない。
まぁいつも『そうはいかない』な状況に巻き込まれる訳だが。
とはいえ少し無駄話をしてしまたのでそろそろ本題に入る。
542涼宮ハルヒの冒険:2006/07/22(土) 22:56:37 ID:ePPhVJ3+
ハルヒの閉鎖空間について何か心当たりはありませんか?
「えー禁則時効ですよ?何かあったんですか?」
何も知らないらしいのでとりあえず俺の中の情報をまとめる感じで説明していく。
・俺達は約4時間30分閉鎖空間にいた。
・事態は解決している。長門によれば問題はない。
・そこで何があったかは少なくともハルヒ以外誰も知らない。
こんな所だろうか?
「そんな?知らなかったです。」
何か思い出したら教えてください。
「お役に立てなくてすみません。」
いえいえから続く言葉をつなぐ元気も俺には無かった。
いえいえそれでは。
朝比奈さんも知らないとは、、、
新聞を見てみるとどうやら日にちが狂ったりはしていないみたいだ。
他にもおかしいところも特にない。
閉鎖空間だって?あそこはハルヒの巨人の遊び場だろ?
おぞましき記憶にぶち当たったので閉鎖空間についての回想はやめにしよう。
古泉はともかく俺も入ったことがあるし長門も朝比奈さんも良いとしても
なぜハルヒが閉鎖空間なんぞに来たんだ?
また世界を改変する様な大事をしでかしたんだろうか?
なぜそこにSOS団を呼んだんだ?
そしてなぜ誰も覚えてないんだ?
疑問が募るばかりだ。
まぁそんなことより眠い、、、
頭脳労働は頭の良い古泉やらに任せるとしてとりあえず寝よう。
起きてりゃよかったなんて思うのはこの後の話だ。
54318-731:2006/07/22(土) 23:03:20 ID:ePPhVJ3+
538様・540様>ありがとうございます
いまいち分からないんですがこれでsage出来ているでしょうか?
間違っていたらすいません
544名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:04:23 ID:q9mb2TjQ
>>543
だけはおkだ
545名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:07:58 ID:eIKvuXkP
>>543
改行を有効に使おう。
546名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:28:03 ID:/+QgYeTs
ハイフンは伸ばし棒「ー」ではなく記号の「―」これだな
547名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:32:29 ID:yp6Xq4Rg
―を入れること、三点リーダーを使うこと、改行すること。これをすればもっと読みやすく綺麗な文になる。
548名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:40:48 ID:Ly5Pn6gC
>>543
ところでおいくつですか?
549名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:42:49 ID:q9mb2TjQ
初対面の人に歳を聞くものではないよ・・・
550名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:45:07 ID:KhoGxrkP
私は10万29歳です
551名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:53:02 ID:4bvWm9er
それ、なんてデーモン小暮?
552名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:54:49 ID:cfAFBnHZ
いやー失礼ながら同意せざるを得ない
sageを知らない21歳以上ねぇ・・・
とりあえず半年ROMることからはじめたほうがいいんじゃねーの?
553名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:57:42 ID:KhoGxrkP
>>551
このネタ通じるとわw
554名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 00:01:38 ID:b7QGcU5H
>>525
詳しく!!詳しく!!詳し……
555名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 00:08:30 ID:+5qGkJ2+
長野県小県郡長門町に長門牧場が存在。放牧70%の環境。低温殺菌。
こんなところだな。
搾乳体験で絞りたてを飲みてぇ!
556ジョン・スミス:2006/07/23(日) 00:08:35 ID:4opDvWwn

                                -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
  ┏┓┏┓  ┏┓  ┏┳┳┓    ┏┓      / /" `ヽ ヽ  \.       ┏┓┏┓
  ┃┃┃┃┏┛┗━┫┣┻┛┏━┛┗┓   //, '/     ヽハ  、 ヽ       ┃┃┃┃
┏┛    ┻╋┓┏┓┃┃    ┗━┓┏╋━━/. {_{\    /リ| l │ i| ━━┓┃┃┃┃
┃┃┃┏┓┃┃┃┃┣╋━━┓  ┃┃┃   レ!小l●    ● 从 |、i|    ┃┃┃┃┃
┃┃┃┃┃┃┃┃┃┃┗━┓┣┓┗┛┗━━ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ│━━┛┗┛┗┛
┃┃  ┃┃┃┃┃┃┃  ┏┛┃┗━┓  /⌒ヽ__|ヘ   ゝ._)   j /⌒i !     ┏┓┏┓
┗━━┛┗┛┗┛┗┛  ┗━┻━━┛   \ /::::| l>,、 __, イァ/  /│     ┗┛┗┛
                                 /:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |


557名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 00:12:10 ID:xxBDstyR
>>543
まだSSを書けるレベルにすら達してないな
558ジョン・スミス:2006/07/23(日) 00:13:56 ID:4opDvWwn
でも、ここまで書けたら
すごいと思うよ。
559名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 00:24:28 ID:oCZpn1EV
ひでえやみんな
560名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 00:26:50 ID:NLazHSUa
>>543
こっちに来るのはVIPで鍛えてからにするんだな
561名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 00:29:09 ID:38n6mgWx
>>542
禁則が時効なら話してやっても良いんじゃないのか?
562名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 01:25:23 ID:jjKGcTmj
コメントの時はコテ外してくれよジョン・スミス。
ただでさえ、本編で出た名前をそのまま使ってるあんたにはイライラしてるんだ。
563名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 01:27:55 ID:PGqST03k
シラネェうちに伊藤きたああああああああああああああああああああああ!
彼は涼宮さんよりすごい力を持っているから。彼も自覚しています
閉鎖空間の作り方とかわかっちゃったら、後はいとも簡単に作っちゃうと思います
すごすぎぃいいいいいいいいいいいいwwwwwwwwwwwww
つづき知りたい!wwwwwwwwwwwwwwwwww
564名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 01:30:34 ID:TLNLFqg6
一気にスしの雰囲気が悪くなったな。
一時間も書きこみがないなんてさ……
565名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 01:32:34 ID:NLazHSUa
この雰囲気だと職人も投下しづらいんだろうな。
定期的なことだから、すぐ戻るだろうけど
566名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 01:35:37 ID:6eCTquSw
伊藤スゴス!伊藤スゴス!伊藤徹カワイス!主役より強いwwwwwwwww
567名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 01:46:34 ID:oCZpn1EV
ああ、最強のあれか…
568名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 01:46:37 ID:cbCS0E48
VIPからきますた
569名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 01:53:12 ID:UJgryBse
俺もSS作ってみようかなぁ…。
570名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 01:55:44 ID:NLazHSUa
SSを作ってくれるのは大歓迎だが、しっかり推敲してから頼むぜ。
571名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 01:56:47 ID:BPjCbJcY
今更ながら>>267の構想力にひれ伏してみる。すげぇよあんた。
572名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:19:21 ID:PHnNlc23
>>526
10万単位はさすがに有り過ぎだろ馬鹿。
573名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:19:51 ID:AwNjHAEH
どこがだよ。
作者の自演に見えてしまったではないかw
574名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:22:43 ID:P10cKkUv
伊藤とかもう自サイトでやれよ…オナニーショー見に来る観客と閉鎖空間でよろしくやってりゃいいだろ…
575名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:24:29 ID:OoBhcAyR
>>526
かなり下火になってるのかと

EVAのキャストでSOS団とか、一昔ならとっくに誰かが書いてるネタだろうに
誰も書いてなかったし。
ハルヒ→アスカ キョン→シンジ みくる→マヤ 長門→綾波 古泉→カヲル とかさ
576名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:25:25 ID:6/ttm3A5
伊藤けなすな伊藤けなすな
伊藤に世界改変されるぞ
お前のいない世界になるぞ
伊藤おもしれええええwwwwwwwwwwwwwwww
577名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:25:30 ID:sU1iNUl2
>>575
それ、誰か面白いと思うやついんの?
578名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:26:22 ID:6/ttm3A5
かいてたたかれた過去ログよめえええええええ
579名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:28:08 ID:6/ttm3A5
575にいったんだよ
とっくにやって失敗してるばかいるんでヨロシク
580名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:31:30 ID:zzcYeFbF
ここらでハルヒ×キョンの純愛物を見たいです(´・ω・`)
581名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:34:51 ID:TmiytmCT
>>573
禿同
巧く思えるのは当たり前。
これはエンドレスエイトの構成をパロったもの(パロディー
作品)だから。
物書きの立場から言えば、これは新たに構想してまとめるより
ずっと楽です。

実際にSSを書いて見れば分かりますけど、何もないところから
小説を書くのが一番難しくて、次にある作品の登場人物を
借りたオリジナルストーリーSS、そしてある話のパロディー
SSを書くのが一番簡単です。
582名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:48:09 ID:oCZpn1EV
581の作品が読みたくなってきた
583名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:48:29 ID:GTltE6Xz
まあ、そのとおりなんだけどさ。ミもフタもないことをこのSSスレで言いに来て何を期待する
584名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:55:48 ID:5E5mBYvy
最悪に空気悪くなったな。
こりゃ、各キャラの萌えスレでも避難した方がいいか。
585名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:55:52 ID:v6q3rpqt
読んでる側は面白ければ、
パロディーだろうがオリジナルストーリーだろうが
全然構わないんだよね。

創作上の苦労を汲み取れってのはちょっと無理じゃないか
586名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:00:31 ID:O6/yXyyq
>575
SSじゃないし、SOS団のキャストでエヴァだけど。
ttp://danbooru.donmai.us/data/danbooru-p-115354623171894.jpg
587名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:00:41 ID:NLazHSUa
SSが投下されないだけで、これだけ空気悪くなるんだなここ…
588名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:01:03 ID:qaWG7lrG
えーと、前スレの629です

また、書いたのでおいておきます。
589QAK:2006/07/23(日) 03:01:37 ID:qaWG7lrG
今日も今日とて俺の放課後はSOS団の活動に縛られる。
……と思いきや、今日は意外な展開が待っていた。

「……何?この集まりの悪さ……」

「…知らねーよ、んなこと…みんなだって用事くらいあるだろ…」

何故か俺とハルヒの二人きり。
時間が経つにつれて、我らが団長様のフラストレイションは溜まっていくばかり。
これはマズい。
世界的にもマズい。
仕方ない、ここは強行手段だ。
「あー…もう今日はお開きにしようぜ…俺、帰るわ」
そう言って自分のカバンを取り上げるとそそくさと席を立つ。
「むぅー…」
ハルヒはまだ何か納得いかない様子で座ったまま。
しかし、さすがにこのまま待ってるのも時間の無駄だろう。
かと言って、二人だけで活動するのもなぁ…
「…ふぅ…わかったわ…これ貼っといて」
諦めたような溜息一つつくと、ハルヒは手元にあった紙にサインペンでサラサラと書き留めた。

『SOS団 本日休日 ハルヒ』

「わかった…じゃぁ、これ貼ってそのまま帰るからな」
「どうぞご勝手に」
俺はハルヒの書いた紙を取り上げると何も言わずに扉へと向かう。
そして、扉の外側に書付を貼り付けると、逃げるように部室を後にした。
くわばらくわばら(これって死語か?)
機嫌の悪いハルヒからは逃げるに限る。


ところが、俺はとんでもない過ちを犯していた。
慌てて出てきたため、自分の携帯を部室に忘れてきたのだ。
いや、待てよ、過ちってほどじゃないか。
何故なら、さすがにハルヒも帰ったであろうことが予測される。
何だ、だったら無人の部室に行くだけじゃないか。
いや、もしかしたら、後から来た朝比奈さんが居て、思いがけないく二人きりになれたりして。
なーんてな。

ともかくも俺は部室へと引き返した。

590QAK:2006/07/23(日) 03:02:13 ID:qaWG7lrG

部室が近づくにつれ、俺の心に安心感が芽生えてきた。
部室の灯りが消えている。
とりあえず、機嫌の悪いハルヒと再邂逅することは回避されたか…
今日、結局朝比奈さんに会えなかったのは残念だけど。
まぁ、そううまくいくわけないさ。
さっさと携帯取って帰ろう。


しかし、無人と決め付けて部室の扉を開けた俺の目に、とても意外な光景が飛び込んできた。


ハルヒが捲りあげた自分のスカートの端を口に咥えながら、股間を手で弄っていました。ビックリです。
モニターには、何やら写真のようなものが写っていましたが、ハルヒの(やや湿った)手によって閉じられました。
へんなとこだけ冷静ですね。でも、そのマウスは毎日俺が使っているものですね。
ハルヒと目が合いました。まずパンツを穿いてください。見つかりませんか。
脚に引っ掛けたままなのを忘れるほど動揺しているんですね。
手から滑り落ちて床に投げ出されたマウスが、行き場をなくした赤いレーザーを放ち続けています。
笑ってごまかしたってダメです。
とりあえず、このティッシュを使いなさい。

俺は手近にあったボックスティッシュを手に取ると、ハルヒの側に投げてやった。
そして、何事も無かったように自分がさっき座っていた位置に置いたままになっていた自分の携帯を取り上げると、
そのまま何事も無かったように部室を出て行った。

やれやれだぜ…まぁ、ハルヒも健康な若い女であって、身体をもてあましたりもするか…


「ちょっと待ったぁああぁあああああぁああ!!!」


そのまま立ち去ろうとする俺の後ろ襟を、ハルヒの手が掴む(こいつちゃんと拭いたのか?)。
そして、そのまま力任せに俺を部室へと引き戻すのであった。

まぁ、ある程度予測はできたけどね。

「…………」

「…………」

いつになく気まずい空気だ……

「……キョン…」

「…何だ?」

「…さっき見たことは忘れなさい…」
「無理!……って言ったら?」
「無理でも忘れて!!」
おいおい…いつもながら無茶苦茶だな…
「…別に誰にも言わねーよ…」
…とでも言っときゃいいか?
「……ダメよ…そんなの…」
591QAK:2006/07/23(日) 03:02:46 ID:qaWG7lrG
何でだ?
「…だって!あんたが忘れないと!…あたしはずっとあんたの慰み物にされちゃうじゃない…毎晩」
は?
「それに、この先あたしと顔を会わせるたびにさっき見たことを思い出して…それで、いやらしい気分になるのよ」
何だそりゃ?
「…そしたら、今後の活動に支障が出るじゃない…」
おいおい…
そりゃまぁ、その、さっきの光景は…アレだったけどさ…
何ていうか、
何でこいつの考え方はこうも普通と違うかね?

「それが人に物を頼む態度か…」

言ってやった!
ついに言ってやったぞ!!
いやー、正に千載一遇のチャンスだった。
今回ばかりはさすがの涼宮ハルヒも言い返せまい。
全くと言っていいほど主導権は俺にある!
お!
何だ?
ハルヒの顔がだんだん赤くなっていくぞ…
怒るのか?ブチキレちゃうのか?
俺は一向に構いませんが。

「……せてよ…」

は?何?聞こえんなぁ〜…

「あんたのオナニーも見せなさいって言ってんのよバカァアアッ!!」

………………なんで?
「それでオアイコってことにしてあげる!!」

………何か、オラだんだん腹が立ってきたぞ…
目に一杯涙溜めてるくせに(すげー珍しい光景)何言ってんだこいつ?
よーし…いいだろう
「いいぜ、見せてやるよ…」
「そ、そう!?」
ふん、さすがにこういう答えは予想してなかったろう。
「ただし、オナニーするにはやっぱりオカズがいるよなぁ…」
うわ、俺すごいこと言ってる。
「……どうすればいいの?」
お、まさか通じたのか…
「ハルヒ…とりあえずスカート取れよ…」
俺が言った瞬間、ハルヒから恐ろしいまでの睨み付ける視線が帰ってきた。
しかし、今日の俺はまったく怯まない。
初めてじゃないか?こんな有利な状況。

ハルヒは顔を真っ赤にしながら、なにやら考えを巡らせていた。
しかし、しばらくして意を決したように椅子から立ち上がると。
スカートのホックに手を掛けた。
592QAK:2006/07/23(日) 03:03:25 ID:qaWG7lrG

ストン!

軽い音とともにハルヒのスカートが足元に落ちる。
…って、こいつまだパンツ穿いてなかったのか!
健康的な肌色でグラマラスなハルヒの肢体が俺の目の前に露わになる。
意地張っちゃって、ハルヒは前を隠そうともしない。
おかげで、わりと薄い恥毛も、柔らかな縦スジも俺の眼前に曝される結果となっている。
うーん、最初に見たときから思ってたけど、ハルヒってホントいい身体してるよ。
それに、上はセーラー服で下は丸裸っていうのは、何と言うかマニアックでとてもいやらしい。
「で?どうするのよ?」
ハルヒもだんだん肝が座ってきたか。
まぁ、こいつの態度はいつどんなときでもこんな感じか…
「そこの机に座って、足開け。俺からよく見えないとオカズにならないからな」
ハルヒは憮然とした態度ながらも、俺の言うとおりに机に腰掛ける。
しまった、そこは朝比奈さんがいつも居る机だ。
もう遅いか…
それから、ハルヒは奇跡的としか言いようが無い素直さで(単なる開き直りか?)、
俺に向かって足を開いて見せるのだった。

ゴク…

ヤバい。思わず生唾飲んでしまった。
ハルヒが足を開いたその先に見えるもの。
紛れも無いハルヒの女性器。
保健で習ったところによると、とりあえず今見えてるのは大陰唇か。
柔らかそうにやや膨らんで見える恥肉。
さっきまで弄っていたせいか、やや赤みを帯びている。

「はやくして……」
え?なにを?
「はやくオナニーして見せてよ…バカ…」
あぁ、そうか。そういう趣旨だったな。
思わず忘れてしまっていた。
だって、俺だって女の子のこんな部分生で見たこと無いんだ。
仕方ないだろう。

いや、待てよ。
このまま俺も見せてしまっていいのだろうか?
いやいや、せっかくかつて無いほど有利な状況にいるんだ。もっと楽しまないと。
うわぁ、俺ってサディスト。
「う〜ん、自分で言っておいてなんだけど、これじゃ良く見えないな…」
何か口調までSっぽくなってるか?
「な、何よ…どうでもいいから早くしてよ、あんたもチンチン出しなさいよ!」
プッ、『チンチン』だって、それで精一杯かよ。
『チンチン』なんて久しぶりに聞いたな。小学校以来?
「いやいや、出せないね…そんな程度じゃ勃つものも勃たないってんだよ…」
ごめんなさい。ホントはちょっと反応してます。
でも、敢えて言わない。
593QAK:2006/07/23(日) 03:04:14 ID:qaWG7lrG
お、ハルヒの身体が震えてる。
悔しいのか?悔しかろう。
「……どうしろって言うのよ…」
ハルヒの絞り出すような声。相当悔しいらしい。
そうだな、普段のお前の性格からしてこんなの耐えられないよな。
でも、俺ももうちょっと頑張る。
「…そうだな…ちょっと机に手を掛けて後ろ向いてみようか?」
「なっ…」
「そうすれば、俺からよく見えるだろ?」
「くっ!……うぅぅぅうぅぅ…」
唇を噛み締めるハルヒ。
うーむ、何て言うか、もう後には戻れない気がしてきたぞ。
「覚えてなさいよ!」
ハルヒはそれだけ言うと、今座っていた机からヒョイと飛び降り、
そのままクルリと180度回転し、こちら側にケツを向ける。
そうして、ガシッ!と音が聞こえんばかりの勢いで机に手を突いた。
もうすっかり開き直ってやがる。
おぉ、ハルヒの丸く形の良い尻が丸出しに。
しかも、ご丁寧に足まで開いてくれてるもんだから、尻の穴まで丸見えだ。
うーん、すごいな、こいつ。
何て言うか、健康的なエロさ?
とにかく肢体の形が良いんだよ。程好い丸み。それでいて腰はキュッとしまってるからね。
さすがに勃った。

ん?

ここに来て、俺は気づいた。
気になったので近づいてみる。
「ちょっと…何近寄ってきてんのよ…バカ…それ以上近づいたらブッ飛ばすわよ!!」
ハルヒが何か言っている。
でも、そんな格好で凄まれても全然怖くねぇ。
それよりも、何か、ハルヒの内腿に光るもの。
スッと指で拭ってみる。
「ひゃうっ!ちょっ…触んないでよぉ…」
ハルヒの内腿から、俺の指に付着したもの。
無色透明だが、ヌルヌルとした感触で微妙に糸を引く液体。
これってひょっとしなくてもひょっとするな…
だって、出処を辿っていくと、ハルヒの内腿の付け根だし。

「お前、まさか俺に見られながら濡れてるのか?」

言われたハルヒの背中がビクッと震える。
図星か。こういうところは、わかり易いヤツだ。

「ち、違うわよ!!」
ほう?どう違うんだ?
594名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:04:48 ID:qaWG7lrG
「こ…これは、その……おしっこ…」


「…………」


「…………」


「……すると何か?お前は学校の部室でションベン漏らしたと言うんだな?」
「うぐ……」
「だいたい、女のションベンって、こんなところから出るんだったか?」
言いながら俺は自分の中指をハルヒの性器に侵入させる。
「やっ!…ウソ!ちょっとキョン!何挿れてんのよ!」
うわ、何だこいつの中、ヌルヌルじゃないか。
それに、何だか指に吸い付いてくるみたいだ。
「や…いやぁ…ちょっとやめてよぉ…」
上の口ではなんと言おうとも下の口は正直(ry
なーんつって。
でも、マジで正直者な身体だな、性格とは裏腹に。
だって、指一本挿れただけでもう尻がプルプル震えてるんだぜ。
あ、そうか、こいつさっきまで一人でシテたから…
っていうか、さっき俺が部屋に入って来たときが実はイク寸前だったとか?
「ハルヒ……もしかしてイキそうなのか?」

「………違うわよ…」

ちくしょう!何てわかり易いヤツだ。
お前の性格からしてそれじゃぁ「そうです」と言ってるようなもんだろーが。

面白くなってきた。
595QAK:2006/07/23(日) 03:05:22 ID:qaWG7lrG
俺はハルヒの中に挿れる指を2本に増やし、何度も何度も内と外を往復させた。
「ひゃっ!…うっ!はぁっ!…ちょっと待っ…うぅぅ…」
ハルヒは、俺が抽送を始めた当初は声を上げたが、
「…んうっ…くっ…んっ…うぅぅ…ん…」
だんだんと押し殺したような呻きっぽくなっていく。
こいつひょっとして我慢してるのか。
「…んっ!…ふぅぅ…」
うーん、俺が指を挿れる度にこいつの尻の穴がキュゥーッと絞まっていくのは、
下半身に力入れて我慢してるからなんじゃねーの?
などと、考えながらハルヒの身体を観察しつつ手を前後に動かし続けていると、
「フッ…バカね。そんな指を出し入れしてるだけじゃ、女はイキはしないのよ…」
とか言い出した。
こんなに溢れてきてるのにか?
まったく下の口は正直(ry
っていうか、お前のフトモモがビチョビチョになってきてるぞ。
というか、お前の中ってあったかいな…
「うっ…うるさいっ!」
おーおー、耳まで赤くしちゃって。
うーん、でも、確かに何か足りないのか、なかなかイかないなこいつ…
トドメが必要なのか?
もしかしたら、さっきから俺の目の前でさかんに収縮を繰り返してるココか?
「うひゃぁっ!!バカ!変態!変態ぃぃ!!」
うーむ、中指と人差し指は前の穴に挿れてるので、空いてる親指をハルヒの尻の穴に突っ込んでみたが…
違ったか?
「そっちは…もぉ…バカ…バカぁぁ…」
いやでも、これはこれで違った反応が…何かハルヒの膝が震えてきてるし。
グリグリ動かしてみるか?
「うっ!…くっ…はぁぁ…」
まだ我慢してるな…
どこか別の場所か?
胸とか…いや、違うか…

あぁそうか、思い出した、クリトリスってやつだ。

俺だってそれくらい知ってたさ。
前に谷口に借りたエロ本にも載ってた。
たしか、前の方にあるんだったよな…
あ、そうか、そういえばさっき部屋に入ってきたとき、ハルヒは前の方弄ってたな。
そうとわかれば、俺は空いている左手をハルヒの脚の間から侵入させ、前の方を探ってみる。
あ、何かコリコリした『しこり』みたいなものが指先に当たっ…

「ひゃわああああ!!」

当たりか…わかり易いな。
「うあぁあ!ダメ…待って…お願い…ダメぇ…」
『お願い』ときたか…らしくないじゃないか。
じゃあ、ココでいいんだな…
俺はそのハルヒの小さな『しこり』を左手で擦りながら、再度右手の指をできるだけ奥の方まで進入させる。
「はぁっ!…ダメなの…あぁあああぁぁ…」
すごい、もうグチャグチャだ、暖かい…
こんなところに俺のチンコ突っ込んだらどんな感じなんだろう…
596名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:05:59 ID:fQrc57Vs
>581
確かにパロは書きやすい。
今オリジナルストーリーSS書いてるんで勘弁してくれ。
エンドレスデイトは楽しんで書いた。後悔はしていない。
597QAK:2006/07/23(日) 03:06:03 ID:qaWG7lrG
などと考えていたらハルヒの中がすごいことになってきた
うわっ…すっごく狭くなって…締まってきてる?

「…くぅぅぅぅ…もぅ…ダメぇ……」

その瞬間。
ハルヒの身体はビクビクッ!と大きく震えたかと思うと、背中を反らせるようにしながら、小さく痙攣を始めた。
それと共に俺の右手が温かなものでグッチョリと濡れていく。
ハルヒの膝はもう身体を支えることができないようで、
ガクッと崩れ落ちるように、その場にへたり込んだ。
かろうじて、ハルヒの両手が机に端にしがみついている。

「はぁ…はぁ……うぅ…」

俺の前にしゃがみこんで動けないでいるハルヒ。

ダメだ!もう我慢できない!!
俺は自分のベルトを外し、チャックを下ろすと、もう完全に反応しまくって臨界状態になっている自分の肉棒を取り出した。
そして、へたりこんでいるハルヒの腰を掴んで、無理矢理立たせてやる。
「やっ!…なに?なにか…硬いものが当たって…」
バカ!当ててんだよ。
そしてな、こうするんだ。

「うぁぁ…中に…入ってくるぅぅ…」

やってやった。
俺はもう我慢できなかった。
ハルヒの中に、いきり勃った自分の肉棒を思いっきり挿入してやった。
ちょっと見てヨ! おもいっきり生挿入 だよ。
意味わからん。
「やだぁ…もぉ…バカ…バカキョン…バカぁぁ…」
うん、ゴメン、バカなんだ。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、見た感じお前も随分気持ちよさそうだったし、きっと言葉では言い表せない
「エクスタシー」みたいなものを感じてくれたと思う。

じゃあ、俺も気持ちよくしてもらおうか。

…っていうか、既に気持ちよ過ぎるんですが…
これが女の中か…
ヌルヌルで、グチョグチョで、吸い付いてきて。
俺の肉棒全体が柔らかく包まれて、それでいて、全体がゴムで巻かれてるみたいに程好い弾力で締められている。
うわぁ…ハルヒの中…すごくあったかい…
「ダメぇ…イッちゃった…あとは…敏感になっ…」
そうか、それはいいことを聞いた。
どうでもいいけど、さっきからこいつは自分から弱点を言ってるな。

じゃ、動くぞ。
598QAK:2006/07/23(日) 03:06:39 ID:qaWG7lrG

「うぅんっ!…はっ!…あぁぁ…」
ちくしょう!何てかわいい声出すんだ!
「…もぉ…ダメって言ってるのに…」
あぁ、ダメだな…俺の肉棒にとってダメ過ぎる。
全体が扱かれるようで、気持ちよ過ぎる…
俺は調子に乗って、自分の思うがままに腰を動かした。
「はっ!…やっ!…あっ…うぅぅ…」
結局よくわからないから、前後に動かしてるだけの感じがする。
でも、これが一番感じるんだ。
挿れるときは、ハルヒの中全体が心地良く全体を締め上げてくれるし、
出したときは、ハルヒの入口が裏スジに擦れて気持ちいい。
特にカリ首の辺りが入口に引っかかるといちばんわかり易い感覚だ。
「はぁぁ…うっ!…はぁ…くぅっ!…」
俺が出し入れするのに合わせるように、リズミカルにハルヒの声が漏れる。
今まできたことの無い、高くて色っぽい声だ。
だんだんわかってきた。
やっぱり、中の方がいい気持ちがする。
このヌルヌル感が堪らない。
俺はハルヒのできるだけ奥深くまで自分の肉棒を突っ込んで、グリグリと押し付けてみる。
これだけでも、随分と、その、込み上げてくるものがある。
「やぁぁ…何でぇ?…中で大きくなってる…」
うん、ヤバい。
マジで本格的に込み上げてきた。
何がって?
精子が。
だって、ハルヒの中って良過ぎるんだ…言いたかないけど相性バッチリって感じ。
「うぅ…ヤバい…出そうだ…」
俺も思わず声に出ちまった。
ハルヒの身体がまたビクッと震える。

「ダメ!…中は…ダメぇ…」

わかってるよ。
俺だって、この年齢で責任取れなんて嫌だからな。
599QAK:2006/07/23(日) 03:07:55 ID:qaWG7lrG

うお、ヤバい。
何でこいつは『ダメ』と言いながら、更に締めてくるんだ…
やっぱり下の口は正じ(ry
とにかくマズい。
一気に込み上げてきた。
背スジがゾクッとしたもん、今。
そろそろ抜かせてもらいま…

ガチャッ!

「ごめんなさい!遅くなってしまいま…」

…しょうか?

「…した?…」



あ、朝比奈さんだ…


「…………」(俺)


「…………」(ハルヒ)


「…………」(朝比奈さん)


えーと、何て言うか…朝比奈さんから見て俺たち横向きだから……丸見え?

「ごっ……ごめんなさい…声がしたから…活動あるんだって思って…それで…」
ポリポリとほっぺたを掻く朝比奈さん。
だんだん顔が赤くなっていく。
「ご…ごめんなさい…」
いえ、多分あなたは悪くない…
「どうぞ…お続けになってください…」

キィ…バタン…

寂しそうに去る朝比奈さん。

終わった…いろいろと終わった…

「……てる…」

ん?ハルヒが何か言ってる…
ヤバいな…こいつもショックだったろうから…泣いちゃうかな?

「…中で出してるよ…キョン…」
600QAK:2006/07/23(日) 03:08:27 ID:qaWG7lrG



………
…………ハッ!

ハルヒに言われて、俺はようやく気づいた。自分の下半身の状態に。

       なんだかみょうにスッキリしている!

俺は慌ててハルヒの中から自分の肉棒を引き抜いた。
すると、俺の肉棒はだらしなく垂れ下がる。

俺はまだ信じられなくて…というより、信じたくなくて、
ハルヒの性器を指で拡げて確認した。

ダメだ!白くて粘っこいのがいっぱい詰まってるよ!入口で見えてるよ!

何故だ?そうだ!急に朝比奈さんが来たので…
…って

「…うわあぁあぁああああぁああぁああん!!!キョンに…キョンに穢されたぁぁあああ!!」

ちょ…おまっ…穢されたはねーだろー。
いあやまぁでも…ホントにどーしよ…

「責任とれ!責任とれ!!責任とれえぇっ!!!」

うわー、もう、マジ泣きだよ…
初めて見た……じゃなくて…
笑ってごまかしたってダメだよな。
とりあえず、このティッシュを使いなさい。拭きなさい。
俺の精液だけど…

「うわぁあぁああん…」
601QAK:2006/07/23(日) 03:09:00 ID:qaWG7lrG



━━━━翌日から
ハルヒと俺。
二人は登校時からその場に居るヤツ全員の注目を浴びていた。
何故ならハルヒが俺の腕にしがみ付かんばかりに抱きついたままの状態で登校してきたからだ。
「みんな!おっはよーう!!」
しかも、会うヤツ会うヤツに満面の笑顔で挨拶。

それとな…挨拶しながら挙げてるハルヒの左手な、
その薬指んとこに嵌まってるんだよ、その…

指輪がな…


……高かった…


602QAK:2006/07/23(日) 03:09:32 ID:qaWG7lrG


━━━━後日談
俺は立ち聞きしてしまった。
部室の外で。

「いやー、みくるちゃんのおかげよ。まったくナイスタイミングだったわ」
「そ、そんな…お邪魔してごめんなさい…」
「いいのよ。あのままだったら、ヘタレなあいつは多分外出ししてたから」
「す、涼宮さん、そんなこと大声で…」
「いやー、でも良かった、ちゃんと生理来たから…」
「…そうですね、これからはちゃんと避妊してくださいね」
「そうねー…やっぱり、もうちょっとアイツと二人で楽しみたいし…」
「…そんなに好きなら…そう言えば良かったんじゃないですか?」
「ダメよ!」
「はい?」
「それだと、あたしがキョンのものになっちゃうじゃない!
  あくまで、キョンがあたしのものにならないとダメなの!!」


……なんだそりゃ…


(おしまい)

603名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:10:48 ID:qaWG7lrG
以上です。

ごめんなさい、途中>>594が名無しになっていました。

また書けたら、お願いします。
604名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:11:46 ID:/Diz9+yz
エロはエロでいいな、終わり方も良かった。
褒めることしかできなくて、すまないorz
605名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:18:23 ID:dR2wZe3l
何て言うか、エロかった。
ハルヒのマジ泣き責任取れテラモエス
脳内で光景が想像デキちゃった。
606名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:21:20 ID:GTltE6Xz
いや、楽しませてもらったよ。
607名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:25:06 ID:+5qGkJ2+
冷酷なまでの冷静さで命令するキョンが新鮮w
ハルヒの地雷女っぷりが凄ぇ
608名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:28:53 ID:PHnNlc23
ハルヒの墓穴っぷりも、キョンの冷酷っぷりもいい。
まぁハルヒのマジ泣きが一番萌えたところだな。
GJ!
609名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:47:32 ID:9k8v16rV
たのしませて貰いました
610名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:48:28 ID:0GRAr0rC
>>575
そりゃ十年前のアニメだぞ。
下火どころか消化寸前じゃねえか。
放映当時からやってるとこなんてもう存在しないし。

>>577
生憎居るんだよ、そういうどこが楽しいのかさっぱり分らんものを好む輩が。
しかも1K行かないような小ネタじゃなくてそれだけで1M行くような大長編書く人も居た。
611名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:53:19 ID:I0tmD9zC
長門牧場って俺の実家から車で20分じゃねえかwww
そこでバイトもしてたしwww
612名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 03:58:00 ID:vv3uPIz0
穢されたはねえだろうって、実際お前穢してるじゃねえか<キョン

ああ、いいもん読ませてもらった。GJ
613名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 04:01:47 ID:6qX9c20m
>>603
こーゆーネタ大好き。
ハルヒはこういう能天気な黒さが似合うな。GJ!
614名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 04:03:42 ID:+5qGkJ2+
>611に嫉妬
615名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 04:05:16 ID:6qX9c20m
長門有希に萌えるスレ 24冊目
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1153552418/n670-735
あたりにいいSSがあったので長門スキーの諸君は見に行ったほうがよいとおもうよ。

つーかキャラ萌えスレ、流れ速すぎw
616名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 04:23:42 ID:Ag1zGSlw
途中のバーボンの改変部分で飲んでるもの吹いてしまった
こういうモノがかけるようになりたい・・・
617名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 04:27:29 ID:qxGAalSr
ガイドラインにされるようなネタがいくつか盛り込まれててワロタ
618名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 04:57:06 ID:Mjnh+EQV
最近ハルヒが俺の夢で暴れるんだ。
助けてくれ。
619名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 05:01:25 ID:JYUvb9MJ
>>503
遠投だがリアルにその名前の友人いるんだが。
620名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 05:04:37 ID:+5qGkJ2+
>615
死んだ。
こんにちは、生まれ変わった俺は長門スキー
621名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 05:13:06 ID:v6q3rpqt
>>620
テンプレにあるまとめサイトにも、少しSSがあるよ。
622名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:19:09 ID:bipa/Ki4
>>615
これは萌える。
と言うか、あさおきたら〜のくだりでいきなり吹いた。
623名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:19:36 ID:jy7pNVwF
>>603
太線━━━━が気になったけど内容は面白かった。
最後の2行は名台詞!!
624名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:29:52 ID:xcZZ8G3B
アホみたいに長くなったから、投下する人がいなさそうな時間帯に投下。
35レス分、エロなし
625名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:31:02 ID:xcZZ8G3B
『涼宮ハルヒの影響』 注:アニメ版『涼宮ハルヒの憂鬱』準拠

「あなたには、感謝すべきなんでしょうね」
古泉の声が俺の耳に入ってくる。その声がいつもより湿っぽさを含んでいるのは
さて、梅雨入りもそう遠くないからだろうかね。
「僕のアルバイトも、しばらく終わりそうにありません」
お前に感謝される謂れなどない。俺は俺のやりたいことをやっただけだ。
その話はもう蒸し返さないでくれ。特に古泉、お前の口からはな。
顔を合わせずあさっての方向を見ながら、俺はだんまりを決め込んだ。
そんな俺をどう思ったか、
「とにかく、あなたと涼宮さんにまた会えて光栄です」
投げかけられてた声が、急に上から降ってきた。
視線を送ると、いつの間にか古泉は立ち上がっていた。
「また放課後に」
古泉は、顔だけこちらを向いて会釈を送ると、去っていく。
その背中に、俺はこっそりと、絶対古泉には聞こえない声量でつぶやいた。
「……また後でな」


「どう?」
ギターを弾き終えた女子生徒が、隣に腰掛け頭を揺らせていた女子に向き直った。
演奏終了とともに頭を揺らすのを止めた女子の髪が、ふんわりと落ち着く。
肩の線で髪を揃えている女子は、問いに目を輝かせて、首を上下に振った。
「うん、すっごくいいと思う。わたし歌いたくなっちゃった」
甘い声を弾ませて、感想を述べる。興奮しているのか、顔が上気していた。
しかし、ふとその顔が少し不思議そうな表情に変わる。
「でも貴子先輩、どうしたの? いつもと曲調が違うよね」
貴子先輩と呼ばれた女子は、抱えるギターに視線を落とし、
「この曲さ、あたしが昨日、夢の中で弾いてた曲なんだ」
「夢の中?」
首を傾げる女子に、貴子先輩はうなずきを返して続ける。
「そ。普通はね、夢で弾いてても覚えてないんだけど、この曲は違ったの」
手でコードを抑え、
「朝、起きてからギターに触ってみたら、体がひとりでに動いて」
再現するかのように、軽くギターを流し始める。
「気付いたら一曲全部弾いてた」
言葉とは裏腹に、途中で弦を押さえて演奏を止めた。
そのまま貴子先輩は、真剣なまなざしで、横の女子を見つめる。
「ねえ榎本さん、いいえ、美夕紀ちゃん。バンド組んでみない?」
626名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:32:26 ID:xcZZ8G3B

放課後。榎本さんは軽音楽部の部室の扉をくぐっていた。
音量を下げてはいるが、それでも様々な音が耳に飛び込んでくる。
中にはすでに何人かの部員がいて、それぞれの楽器を思い思いに弾いたり叩いたりしていた。
「おはよ、瑞樹、まいまい」
榎本さんは、そのうちの二人に近寄って、声をかけながらかばんを下ろした。
手近に置いてあったギターケースに手を掛け、中からギターを取り出して腰掛ける。
「おっはー」
パッドで音を抑えたドラムを叩いていた活発に見える女子、瑞樹が応えると、
「みゆみゆ、おはよ」
ベースを抱えて楽譜とにらめっこしていた女子の舞も顔をあげて返事をした。

「一曲やっとく?」
榎本さんが腕ならしに軽くギターを弾いたあと。
スティックをくるくると回しながら、瑞樹が軽く提案してきた。
舞はノリ気のようで、いそいそとアンプの電源に手を伸ばす。
「あ、その前に少し話したいことがあるの」
「ん? なに? ミユきち」
瑞樹の問いかけに、
「あのね、貴子先輩がバンド組まないかって」
榎本さんは、先程言われたことを、二人に聞かせた。
「中西先輩が?」
電源に手を掛けたまま意外そうな声を出す舞に、
「へー、貴子がねえ。どういう風の吹き回しなんだろ」
面白そうにスティックをお手玉する瑞樹。
そんな二人に、榎本さんはおっとりと自分の意見を述べた。
「わたしはやりたいな、って思ってるんだけど、二人はどう?」
「んー、あたしは貴子の話を聞いてから決める。まいまいは?」
いたずらっぽい笑みを浮かべながら、瑞樹は舞に話を振った。
「えっと、みゆみゆがやりたいのなら」
あまり自己主張しないタイプなのか、舞はおずおずと申し出る。
「ありがと。それじゃ先輩が来るまでやろっか?」
返事を聞いた榎本さんは、咳払いをひとつふたつして、立ち上がった。
舞を待って瑞樹がスティックを打ち鳴らし、演奏が始まった。
627名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:33:49 ID:xcZZ8G3B

瑞樹のドラムと舞のベースに合わせて、榎本さんがギターを弾きながら歌声を披露する。
鼻から抜け切らない声が、二人で歌っているような余韻を残す。
おちゃらけた印象の瑞樹は、目を笑わせながらも正確にリズムを刻んでいき
舞のベースは、真面目そうな雰囲気そのままに、曲を支えていた。
そんな三人の演奏に、いつの間にか、ほかの軽音楽部員は音を出すのをやめて聴き入っていた。

「ふう」
既存の曲だったが一曲を終え、榎本さんが一息をつく。
「みゆみゆ、今日は調子いいみたいね」
舞がショートカットの前髪を指ではじいてから、ほんのり微笑んで感想を言う。
瑞樹もスティックを置いて、親指を立てる。
聴衆と化していた部員は、口笛を吹いたり、楽器の音で感想を伝えてきた。
「さんきゅ」
榎本さんが感謝の言葉を述べたとほぼ同時に、部室の扉が開いた。
そこに立っていたのは、ギターケースを担いだ貴子先輩だった。

部内の雰囲気が少しよそよそしくなる。
それを気にした様子もなく、貴子先輩は、演奏を終えたばかりの三人に足を向けた。
外にはねた髪を揺らして近づき、ギターケースを床に下ろす。
榎本さんに向けた顔には、笑顔が浮かんでいた。
「あたし外で聴いてた。美夕紀ちゃん、やっぱりいい声ね」
「貴子先輩……」
普段、部内では見せない笑顔を見せてくれた貴子先輩に、榎本さんはうれしくなる。
「ふうん、貴子、ずいぶん変わったね」
それに横槍を入れたのは、瑞樹だった。目を細めて、
「話はミユきちから聞いたよ。バンド組みたいんだって?」
「そうよ、瑞樹」
笑顔を消して、売り言葉に買い言葉とばかりに、視線を送り返す。
瑞樹も視線を受け止めて、不敵に唇の端をゆがめる。
「理由を聞かせてもらえる?」
瑞樹の詰問に、ふいっと視線をそらせて、
「美夕紀ちゃん、そのギター使ってもいい? あたしのはアコギだから」
「あ、はい」
榎本さんからギターを受け取ると、ストラップを調節して、肩から提げる。
アンプを調整して、エフェクターも確認してから、軽く音を鳴らす。
ピックを手にとってひとつ深呼吸をすると、指をギターの上に滑らせた。
628名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:35:22 ID:xcZZ8G3B

しなやかな指がギターの上を這う。
まるで音が指の動きより先に出てきていると錯覚するほど、高速のピッキングが繰り広げられる。
イントロらしき部分が終わると、リズムギターに切り替えて、貴子先輩は歌いだした。
ハスキーな声が響き渡る。その歌声は榎本さんと比べるととても上手とは言えなかったが
情熱だけは、負けないものがあった。にじんで、飛び散る汗とともに、歌い続ける。

一番が終わって、間奏に入ったときだった。
突然ベースの音が曲に加わった。貴子先輩が視線を送ると、舞がギターに合わせて
コード弾きをしていた。目線をベースに落として、曲についていく。
次いでハイハットを刻む音がした。瑞樹がにまにま笑う。そのまま二番に突入した。
初めて曲を聴いたとは思えないほど、舞と瑞樹は曲に合わせ楽器を演奏し
ベースとドラムが加わわることで、曲に厚みが出た。
榎本さんもいつの間にかコーラスで参加していて、四人は息の合ったプレイを見せる。
一体感が部室を覆った。

ギターの音が止まるとともに、誰からともなく拍手を始めた。
全員に広まって、しばらく四人に対する賛辞が贈られる。
当事者の四人は、お互い上気した顔を見合って、曲をやり遂げた達成感に浸った。

落ち着いてから、貴子先輩は瑞樹に向かって口を開きかけた。
「あたしは――」
「ストップ」
スティックで貴子先輩の口元を指し、沈黙させる。瑞樹は立ち上がって歩み寄り
スティックを束ねて左手に持ち、右手を差し伸べた。
「貴子、よろしく!」
「瑞樹……」
瑞樹の手を握り返したその上から、榎本さんと舞の手が置かれる。
「貴子先輩、がんばろ!」
「中西先輩、よろしくお願いします」
二人の言葉に、中西先輩は空いた手で目尻を拭いながら、うなずいた。
「二人とも、わたしのことは貴子でいいよ。同じメンバーでしょ?」
629名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:36:30 ID:xcZZ8G3B

六月末――

「あなたが長門有希ちゃん? みくるからよーく聞いてるよっ」
髪の長い、朝比奈さんのクラスメイトの鶴屋さんが横の長門になにやら話しかけている。
長門は我関せずといった面持ちで、サンドイッチを頬張っているけどな。
ちなみにここはファミレスである。ハルヒの思い付きにより参加した
野球大会も無事一回戦で棄権、今は昼飯を古泉を除くみんなで取っているところだ。
そこの妹、もうちょっとゆっくり噛んで食べなさい。ハンバーグが喉に詰まるぞ。
朝比奈さん。微笑んでないで、少しは妹に注意してやってください。
ジャージ姿の北高の天使にアイコンタクトを試みていると、
「みんな、じゃんじゃん食べてよね。ここはキョンのおごりだから!」
おいハルヒ、勝手に決めんな。俺は承諾した覚えはないぞ。
谷口や国木田を含め、八人分の昼飯なんざ普通なら払ってられん。
そう、普通ならな。
俺は懐を確かめ、抗議を口に出さずまあいいや、と思った。
懐にはなぜか、それなりの臨時収入が舞い込んでいたからである。
上ヶ原パイレーツの健闘を祈ろう。


「わ、なんかお隣さんにぎやか」
舞が後ろから聞こえてくる声に反応して、ちらちらと後ろを向く。
「どれどれ?」
それにつられて、瑞樹が横から身を乗り出す。
「あ、クラスメイトのみくるちゃんじゃん。ってことは、例のSOS団とやらかな」
体を横倒しにしたまま手を振ると、みくるちゃんも気付いたのか、手をにぎにぎしてきた。
「もう、それよりわたしたちの話をしないと」
スプーンを置いた美夕紀が釘を刺した。
グラスに入ったコーラを飲み干して、貴子が口を開く。
「バンド名は、みんなの頭文字を取ってENOZでいい?」
「榎本のE、中西のN、岡島のO、財前のZでENOZね。でもどうせならZO――」
「それは却下」
座り直して発言しかけた瑞樹に、向かいの貴子が冷たく告げる。
「わたしもそれはちょっと」
「冗談だって、じょーだん」
舞の追随に、瑞樹は軽く舞にデコピンを食らわした。
「いいよね、この名前で」
美夕紀がまとめるように言うと、全員うなずいた。
630名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:37:35 ID:xcZZ8G3B

「当面の目標は、やっぱ文化祭?」
コーヒーに砂糖を継ぎ足しながら、瑞樹が質問する。
「あたしはそのつもり」
「全曲オリジナル?」
答える貴子に、バナナパフェを口に運びながら美夕紀が言えば、
「そういえば、あの曲の名前聞いてなかったかも」
舞もプリンに添えてあったさくらんぼを手にとって、つぶやく。
「その二つは、話し合いで決めましょうよ」
「話し合いで決めるなんて、貴子丸くなったね」
「……瑞樹、殴るよ」
間髪入れずツッコミを入れた瑞樹に、貴子は握りこぶしを固める。
『あははっ。長門っちいい食べっぷりだっ!』
「おや、鶴にゃん」
向こう側の声に気を取られたふりをして、瑞樹はそらっとぼけた。

「あの曲がオリジナルだから、全部オリジナルがいいな」
間を継いだ美夕紀の希望に、
「あたし作詞も作曲もできないよ。ドラムのアドバイスならできるけど」
「わたしもベースだけ」
瑞樹と舞が、声を揃える。
「美夕紀はできる?」
気を取り直した貴子の言葉に、美夕紀はスプーンを口に含んだままうなずいた。
「じゃ、あたしと美夕紀で作ろっか。ベースとドラムは任せるよ?」
「うん」
「任された」
請け負う二人を見て、話題を次に移す。
「それじゃあとは、あの曲の名前ね」
「貴ちゃん、候補ないの?」
スプーンを振って美夕紀が訊いてくる。
「God blessかGod knows。サビの部分の歌詞」
「神が祝福を与えたもうと神のみぞ知る、か。貴子意外と詩人じゃん」
コーヒーカップを傾けて、笑いながらからかう瑞樹。貴子は淡々と切り返す。
「あたしが思いついた歌詞じゃないの。曲を弾いてたら自然と浮かんできて」
「そんなことあるんだ」
舞が感心したような声を出し、プリンを一口すくった。飲み込むと、
「わたしは、God knowsのほうがいいかな。祝福はちょっと大げさだと思う」
「まいまいの言うとおりかも」
美夕紀が舞を支持し、瑞樹もそれで決まりとばかりにコーヒーカップを置いた。
「ほかに意見ないの?」
貴子が訊くと、三人とも首を振った。瑞樹が代表して気持ちを代弁する。
「だってこの曲、貴子がいちばん知ってるんでしょ?」
『こらキョン! あたしに黙って勝手に追加注文するんじゃないの!』
631名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:39:05 ID:xcZZ8G3B

七夕の翌日の放課後である。
「笹っ葉、片づけといて。もう用無しだから」
そう俺に告げると、ハルヒはさっさと帰ってしまった。
どうも調子が狂うな。しおらしい姿のハルヒを見てるとよ。
ま、あいつのことだから、しばらくすればまた元に戻るだろう。
俺にできることは、笹の葉を片付けることぐらいなもんである。
真実をあいつに告げるわけには、どうもいかないらしいからな。
それに片付けも、後回しだ。朝比奈さんもいないし、訊きたいことがある。
俺はチェスの駒を手の中で遊ばせながら、顔を盤面から横向けた。
視界に淡々と読書をしているショートカットの頭をみとめ、口を開いた。
「なあ、長門――」


「あれ、みくるちゃん。どうかしたの?」
かばんを提げて部室に向かう途中、瑞樹はみくるちゃんに遭遇した。
窓から運動場をぼんやり見て、悩ましげに溜息をついている。
「ふえっ? あっ、岡島さん」
呼びかけられ、慌てて振り向いたみくるちゃんに、
「気になる先輩でもいるのかな?」
瑞樹はにやにや笑いながら手で望遠鏡を作って運動場を見る。
かと思えば、わざとらしく手を打って、
「あっ、違ったか。みくるちゃんが気になるのは、一年のキョンく――」
「わわわっ、違います違います」
両手を顔の前で振って否定するみくるちゃん。
「顔赤くして言っても、説得力ないなあ」
瑞樹の言葉に両手を頬に当てる。その仕草が肯定していることに気付き、
「……誰からキョンくんの名前を聞いたんですか?」
「ん、鶴にゃん」
あっけらかんと暴露する瑞樹。
「鶴屋さん、言わないでって言ってたのに……」
顔をうつむかせて、体をふるふる震わせる。
「まあまあ、鶴にゃんも悪気があったわけじゃないから。じゃねー」
みくるちゃんの肩をぽんと叩いて、瑞樹はすたすたと歩き去った。
632名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:40:43 ID:xcZZ8G3B

「まいまい、おはよーさん」
「あ、みっきー」
瑞樹が部室に入ると、舞がベースの手入れをしていた。
「ミユきちと貴子はまだかい?」
きょろきょろと部内を見渡す。その仕草に舞は笑いつつ、
「まだみたい」
「ふうん。ま、いいや。軽く腕慣らしといきますか」
かばんをそのへんに放り投げて、瑞樹はスティックを手に取った。

しばらくして、美夕紀と貴子が二人揃ってやってきた。
「ごめんごめん、遅れちゃって」
美夕紀が手を合わせて舌を出す。
「遅い! あたしが来てからもう三十分経ってるよ」
バスドラをどかどか叩いて瑞樹が抗議をする一方で、
「なにかやってたの?」
下級生に手ほどきをしていた舞が戻ってきた。
「新曲の調整」
と貴子が舞に答え、MP3プレイヤーを差し出した。
「聴いてみて。ベースとドラムは参考程度にリズム取りで入れてるだけだから」
受け取った舞は、こくりと首肯してから試聴しだす。
一回目は目をつぶって、一音たりとも聞き漏らすまいと集中していた。
やがて曲が終わったのか目を開けると、今度はベースを手にとって、二回目は曲に軽く合わせる。
満足したのか、曲が終わると、
「はい」
瑞樹にプレイヤーを手渡した。瑞樹も同様に二回、曲を通して聴く。

「うん」
うなずいてヘッドホンを外し、スティックを置いた瑞樹は、貴子にプレイヤーを返す。
感想を知りたそうな美夕紀と貴子をよそに、舞とアイコンタクトを取った。
笑いかける舞に、瑞樹は近寄って舞の肩を抱き寄せる。
息もぴったりに瑞樹は堂々と、舞ははにかんで、二人にサインを送った。
上向きに立てた親指を。
633名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:42:12 ID:xcZZ8G3B

胸をなでおろした美夕紀に、舞が質問してきた。
「この曲、みゆみゆが作詞した?」
「うん、でもどうして?」
「だって……」
美夕紀の返事に舞はちらっと貴子を見やる。
「なに?」
貴子の不思議そうな顔を、いつもの人が見逃すはずがなかった。
「そりゃ貴子がこんな甘いあまーい恋の歌を書くわけないし」
「わっ、みっきーそこまで言わなくても」
瑞樹の口をふさごうとする舞。
その二人の様子を見て、貴子は額を押さえてうめく。
「あんたたちね……」

「もう。わたしは貴ちゃんの作曲のイメージに沿って作詞したのに」
呆れ気味の美夕紀に、瑞樹のいつもより滑らかな口がすべった。
「自分の経験も投影させたんじゃないの?」
「え」
意表を突かれた風の美夕紀に対して、舞も何か思い当たることがあったか、人差し指を立てた。
「そういえばみゆみゆ、好きだった先輩が転校しちゃったんだよね」
何の気なしにぽつりと漏らす。
「みゆみゆ、先輩と映画行ったり抱きしめあったり、そこまで進んでたんだ」
「ま、まいまい!」
顔にぱっと朱色が散った美夕紀の肩に、瑞樹が手を乗せた。
「詳しい話を聞かせてもらいましょうか」
「え、え?」
美夕紀は慌てふためいて、救いを求めるかのように貴子に視線を送った。
貴子はそんな美夕紀に苦笑を見せ、
「そうね。曲に感情移入するためにも、知っておくべきね」
「た、貴ちゃん……」
最後の綱がふっつりと切られた。喜色満面の瑞樹が顔を近づける。
「ミユきち、覚悟っ!」
「ひええええっ」
634名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:43:29 ID:xcZZ8G3B

俺の日常はというと、SOS団の活動がほとんどを占めているわけであり
SOS団をイイワケにするのもなんだが、それでもあれだけ散々不可思議な体験をしたあとで
いざ勉強に取り組もうとすると、あまりやる気が湧かないのも無理はないと思う。
いや、これは嘘だ。どちらにせよ、俺が勉強に正面切って取り組んでいたとは思えん。
つまり何が言いたいのかというと、期末試験が終わった。あらゆる意味で。
明日からは試験休みだが、休み明けに返ってくる答案に記された二桁の数字のことを思うと
これは休みではなくて、自己内省のための時間なのではないかと思えてくるから不思議だ。
ああ、このささくれ立った気持ちは癒してもらうしかない。それも早急に、だ。
そう思い俺は今日も部室の扉をノックした、のではあるが、
「どうぞ!」
扉の向こうから返ってきた声は、俺の期待していた朝比奈さんではなかった。
「なんだ、ハルヒお前だけか」
「有希もいるわよ」
扉を開け、落胆を隠さなかった俺に、ハルヒはパソコンを操作しながら投げやりに答えた。
たしかに、長門も定位置で読書をしていた。ここは言い直しておくべきだろう。
「なんだ、ハルヒと長門だけか」
そう言いながら、俺は部室の扉をくぐった。朝比奈さんが来るのを心待ちにしつつ。


「体調悪いの? 喜緑さん」
三時間目のテストが終わって、沈んだ表情で席に座っている女子に、舞は声をかけた。
難関の数学を終えて、気持ちに余裕ができた途端、周囲に目が行き届き始めたのだ。
喜緑さんは、いつも大人しい、目立たない子だったが、舞とはそれなりに会話する仲だった。
喜緑さんは首をふるふる振って、目線を机に向ける。
「喜緑さんのことだから、テストが悪かったわけないし、悩み事?」
今度は首を振りもせず、かといってうなずきもせず、じっと机を見ていた。
なにやら複雑な事情があるらしい、と判断した舞は、深入りしないことにしたらしい。
「あの、わたしでよければいつでも相談してね」
微笑みとともにそう言って、次のテスト勉強でもしようと背を向けた。
すると、その背中に小さいけれどもはっきりした声が届いた。
「財前さん、ありがとう」
自分の席に向かう舞の足取りは、軽かった。
635名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:44:47 ID:xcZZ8G3B

「合宿?」
「そ」
問い返した舞に、貴子が弦を調節しながら端的に答える。
期末試験も終わり、今日から軽音楽部は部活動を再開していた。
「軽音で毎年行ってるのとは別ってこと?」
「あたしは行ったことないから知らないけど、そう」
そんな二人の会話に、美夕紀が加わってきた。
「そういえば、貴ちゃんは去年不参加だったっけ」
「興味なかったからね」
どうでも良さそうにあいづちを打つ。
「今はともかく、当時は協調性なんかどうでもいいと思ってたから」
「貴子中学ぐらいからずっと荒れてたもんね」
訳知り顔で瑞樹が首を突っ込んできた。貴子は耳元のピアスに軽く触れ、
「まあ、ね」
物憂げなつぶやきを漏らした。

憂鬱なムードは十秒たりとも続かず、あっさり貴子は気持ちを切り替えた。
「ともかく、夏休みに入ったら合宿ね」
「どこで?」
舞がきっちりと確認してくる。
「あたしん家でどうかな? ミニスタジオあるから」
さりげなく言った貴子に、美夕紀が目を丸くする。
「貴ちゃん、すごい」
「そんなことないって。親が音楽関係なだけ」
貴子は手をぱたぱた振るが、舞も初耳だったのか、しきりに目を瞬かせていた。
知っていたのは、瑞樹だけだったようで、
「んじゃ、今度またあたしのドラム運んどくね」
世間話をするような口調で言う。
「瑞樹は知ってたの?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
美夕紀の疑問に、瑞樹は貴子の肩を抱き寄せ、ピースサインを送った。
「あたしと貴子は、お隣さんで幼なじみだよー」
ノリについていけないのか、貴子は微妙に顔をひきつらせていた。
636名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:45:16 ID:JQQrA5e7
支援
637名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:46:16 ID:xcZZ8G3B

コイツはなぜここにいるのだろう。
「ねえねえ、キョンくんね、わたしのこと置いてこうとしたんだよ」
俺は置いてこうなんて思ってなかったさ。最初から連れて行く気すらなかったんだからよ。
コイツとは妹のことであって、妹とは俺の妹のことであって、ここはフェリーの中だ。
夏休みに入って早々、我らSOS団は合宿を敢行することになったのである。
行き先は海の孤島だ。なんでも古泉の親戚に島ごと買い取って別荘を建てた豪気な人がいるらしい。
真偽はともかく、ハルヒがそんなオイシイ状況を逃すわけはなく、そうしてこうなったのだった。
ちなみに妹はバッグの中に潜り込んで侵入を試みていた。俺が寸前で発見したまでは良かったが
中身をどこにやったか黙秘権を発動する妹の口を割らせるのに時間がかかり、荷物を取り戻したら
取り戻したで、今度は妹が俺の袖を離しやがらなかった。時間だけが刻々と過ぎていく中、
これ以上遅刻しては迷惑がかかると思った俺は、妹の随行を許可せざるを得なかったのだ。
妹の哀願に折れたのでないことは、明記しておきたい。
「大歓迎でしたのにねー」
「ねー」
朝比奈さん、そう言ってもらえると助かります。妹をかわいがってやってください。
俺は妹を構うよりも、目を輝かせているハルヒのことを構っておかなきゃいけない気がするのでね。


『はい』
インターホン越しに声がする。
「中西先輩の友人の榎本と財前と申します」
美夕紀が答えた。すぐ横にいる舞ともども、ギターケースを背負い、バッグを提げている。
『待っててね、すぐ行くから』
そう言い残し、ふっつりと途切れる。
「おっきな家だね」
舞が家を見上げながら感嘆する。
三階建ての一戸建てで、裏庭までついているようだった。
「瑞樹の家もあっちの広そうな家だもんね」
美夕紀の視線の先には、貴子の家に負けず劣らずの敷地を誇る家があった。
「わたしたち、ひょっとして場違い?」
少々不安になりながら舞が言ったときだった。
「ようこそ!」
玄関の扉が開いて、中からTシャツにハーフパンツの動きやすい格好をした瑞樹が顔を覗かせた。
「さあさ、突っ立ってないで入った入った」
いつもの瑞樹節にほっとした二人は、言われるままに貴子の家に入った。
638名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:49:05 ID:xcZZ8G3B

「ま、自分の家だと思ってくつろいでよ」
「瑞樹、あんたが言うな」
タンクトップ姿の貴子もすぐ後ろに控えていた。
「おじゃまします」
美夕紀はかぶっていたつば広帽子を取って、サンダルを脱いで上がった。
舞もキャップを脱いで、靴に手を掛ける。脱ぎながら、顔を上げた。
「お家の人は?」
「旅行中。一週間ぐらい帰ってこないかな」
と貴子は言い、
「スタジオはこっち。階段が急だから気をつけて」
二人が靴を脱いだことを確認して背を向け、先にたって案内した。

機材の豊富さと防音が完備されてある地下スタジオに感嘆の溜息を漏らしつつ
美夕紀と舞は、ギターケースからそれぞれの楽器を取り出し始めた。
「この合宿でGod knowsとLost my musicは完璧にするとして」
貴子が立てかけてあったギターを手に取りながら発言する。
「美夕紀の作った三曲目も、通しでできるようにしないと」
「ミユきち、どんな曲を作ってきたの?」
シンバルの位置を調節しながら、瑞樹が美夕紀に声を投げかける。
「えっと、少しスローテンポなバラードっぽいの」
バッグを漁ってMP3プレイヤーを見つけ出し、美夕紀が差し出した。
「あ、貴子に渡して再生してもらって、みんなで聴いたほうがいいよ」
ガラス越しの機材を、瑞樹は指差した。言われた通り、貴子に手渡す。
「待ってて」
ギターを置いた貴子が、扉の向こうに引っ込む。
しばらくすると、スピーカーから音楽が流れてきた。
「自分の歌声をこうして聴くのって、少し恥ずかしいかも」
照れて言う美夕紀に、
「わたしはみゆみゆの歌声大好きだよ。もっと自信持って、ね?」
舞が微笑んで、勇気付けた。
639名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:50:50 ID:xcZZ8G3B

「あと二曲作って、文化祭では五曲演奏できるといいんだけど」
椅子に座って、コーラの瓶を一気飲みしてから、貴子がうそぶく。
湯上りの濡れた髪を手で撫で付ける。時刻は夕方を過ぎていた。
「んー」
タオルを首にかけて、冷蔵庫をごそごそ漁りながら瑞樹が声を拾った。
「貴子とミユきちで一曲ずつ作ればいいんじゃない?」
「もちろん、そうするつもり。でもどんな曲にしようかなって」
目的のものを探し当てた瑞樹は冷蔵庫を閉めてからプルタブに手をかけ、
「一つのテーマについて、それぞれ曲を書いてみたら? 例えば夏とか」
小気味いい音とともに、開け放つ。
「それもいいわね……って瑞樹! それビールでしょ!」
「ん? それがどうかした?」
と言いつつ、瑞樹は口をつけた。こくこくと喉を鳴らして、缶を空にしていく。
「どうかしたって、あのね」
貴子は呆れ顔を見せる。それをよそに、あっという間に瑞樹はビールを飲み干した。
「っぷは! 貴子って変に固いとこあるよねー」
空き缶を置いて、にまにまと笑う。
「ま、そこがいいんだけどさ」
瑞樹の言葉に、貴子はそっぽを向いた。

ほどなくして美夕紀と舞がお風呂から上がり、リビングに全員が集合していた。
「同じテーマで別々の曲を書くの?」
グラスに入ったビールを両手で包み込むように持った美夕紀が問い返す。
美夕紀の隣には舞が座って、ビールをちょこちょこ飲んでいる。
「そう、瑞樹は夏とかどうって言ってたけど」
一人だけ断固と拒否してコーラを飲んでいる貴子が、横目で瑞樹をちらっと見た。
「夏、夏ね。うん、それでいいと思う」
顔を少し赤らめてはいるが、はっきりした口調で美夕紀は応答する。
「じゃあ、決まりね。美夕紀よろしく」
「よろしくー」
何本目かわからないビールを空けつつ、瑞樹が陽気な声を出す。
「瑞樹、もうビールはやめときなさい」
クギを刺す貴子に、
「貴ちゃん、お母さんみたい」
ビールを飲んでいた舞がぽつりと言った。
640名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:52:48 ID:xcZZ8G3B

長門は明日の天気予報でもするような口調で言った。
「今回が、一万五千四百九十八回目に相当する」


「だいたいね、みゆみゆ――――すぅ」
話の途中で、舞はこてんと美夕紀の腕の中へ倒れこんで寝息を立て始めた。
憔悴した顔の美夕紀と貴子が互いに顔を見合わせて溜息をつく。
「あははははっ」
一人けらけら笑っていたのは瑞樹だ。
「瑞樹、なんで舞にまたビール飲ませたのよ!」
吠える貴子に、瑞樹はぴっと人差し指を立てた。
「そのほうが面白いと思ったから」
「全然面白くないよ……同じ話を何度も何度も」
舞を椅子に座らせてから、テーブルに突っ伏して美夕紀がうめく。
「せっかく曲ができたから貴ちゃんの家に集まったのに、もうへとへと」
「ミユきちごめんごめん」
「謝る気ないでしょ、瑞樹」
貴子の瑞樹を睨みつける視線も、いつもより弱々しかった。すぐに視線を落とす。
「今日はもうダメ。寝ましょ」
「賛成」
顔はうつぶせたまま、手を上げて美夕紀が意思表示をする。
さすがに悪いと思ったのか、瑞樹が言葉を重ねてきた。
「まいまいはあたしが責任持ってベッドまで運ぶから」
「よろしく。美夕紀、あたしの部屋に来る?」
「うん……」
目をこすりながら、重たい体を起こして立ち上がる。
貴子は美夕紀に肩を貸して、二階にある自分の部屋に向かっていった。

それを見届けた瑞樹は、
「さて、まいまいを運ばなきゃ」
腕まくりをして、舞の脇下と膝裏に手を通して、お姫様抱っこを試みる。
「わっ、重たい」
舞が聞いたら叩かれても文句を言えないようなことを言いながら持ち上げると
よろよろと寝室へ運び、ベッドの上に乗せた。瑞樹は一仕事終えて、あくびをかみ殺す。
「あたしも寝よ」
641名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:54:14 ID:xcZZ8G3B

「う……ん」
目を覚ました舞は、半身を起こしてぼーっと中空を見たあと、
「いたたた」
顔をしかめ、手でこめかみを押さえた。
「また二日酔い……?」
目を閉じて痛みに耐え、落ち着いたところで目をゆっくり開く。
最初に飛び込んできたのは、『8:15:49 8/21』というデジタル時計の文字列だった。
「お水……」
つぶやいて首を横向けた舞の視界に、
「え」
ショーツ一枚で舞の隣に寝ている瑞樹の姿が入った。
「え?」
視線を下ろすと、舞自身もショーツ一枚で、しかも際どいところまでずらされている。
「まいまい、もっと……」
瑞樹が寝返りを打ちながら寝言を漏らしたのが、決定打となった。
「ええええええええっ!?」
舞は思いっきり叫び、叫んだ自分の声に頭痛を覚え頭を抱えた。

「どうしたの、まいま……い……」
叫び声を耳にして、リビングからやってきた美夕紀の声がしぼむ。
眼前に広がる光景に言葉を失ったようだ。
「みーずーきー!」
すぐ後ろに立っていた貴子が事情を察知して、部屋の中へ踏み入る。
「起きろ!」
「貴ちゃん、あまり大きな声出さないで……」
舞の頭を抱えながらの嘆願に、瑞樹を揺さぶっていた貴子は声を抑えた。
「ご、ごめんなさい」
「んー、なに?」
それと同時に首謀者が髪をかき乱しつつ、むっくりと起き上がる。
怒り顔で自分の肩をつかんでいる貴子を、呆れている美夕紀を、そして頭を抱えている半裸の舞を見たあと、
「貴子」
「なによ」
「襲うならもっと優しくして」
瑞樹は頭をはたかれた。
642名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:55:29 ID:xcZZ8G3B

「ったく」
朝食を終え地下スタジオに移動しても、まだ貴子は愚痴っていた。
「そういやさ」
瑞樹がスティックを選びながら真面目な口調で言った。
「貴子、あんたギターの腕めっちゃ上がってない?」
「あ、わたしもそれ思った」
美夕紀の追随に、貴子は戸惑いを見せて、
「あたしは普段通りの練習しかしてないけど?」
「でもこないだ会ったときより、断然上手かったかも」
舞も二人を支持する。
「実感ないけどみんながそう言うなら……」
貴子は首を傾げつつ、ギターを抱えなおした。

「それじゃ、わたしの曲から流すね」
美夕紀の曲がスタジオ中に流れる。
夏らしい、アップテンポで爽快なイメージが漂う曲調に
海、金魚、太陽、スイカ、花火、水着、浴衣、お祭り、恋、と夏を楽しむ歌詞がちりばめてあった。
一人の女子高校生が、等身大の自分を表現している印象を強く与えて、曲が終わった。
「うん、かわいい感じが夏っぽくていいかな」
「休みが終わる前に海と花火大会にいこっか、みゆみゆ」
瑞樹と舞がそれぞれの感想を述べる。
その二人に笑いかけてから、美夕紀は上目遣いに貴子を見る。
「貴ちゃん、どうかな? 重なってなかったらいいんだけど」
貴子は心配ないよとでも言うように、笑みを返す。
「美夕紀らしい曲ね。大丈夫、あたしはちょっとコンセプトが違うから」
「ミユきちが心配しなくても、貴子はミユきちみたいに素直じゃないって」
茶々を入れる瑞樹を貴子は睨みつけてから、ふっと力を抜いた。
「そうね、瑞樹の言うことは間違ってないわ。あたしの曲を聴いてみたらわかると思う」
そう言うと、ギターを立てかけて、譜面らしきものを取り出す。
「美夕紀、曲に合わせて歌ってくれる?」
「うん。でも少し読む時間をとらせて」
譜面を受け取った美夕紀は、譜面の上に目を走らせた。そのまま黙読が続く。

「貴ちゃん、覚えたけど……」
しばらくして顔を上げた美夕紀は、少し困惑気味の表情をしていた。
「ま、とりあえず歌ってみて」
貴子の催促に、美夕紀は立ち上がってストラップをたすきがけする。
マイクの位置を調節してからサインを出し、舞と瑞樹が見守る中、曲が再生された。
643名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:56:54 ID:xcZZ8G3B

曲に合わせてギターをコード弾きすることで美夕紀はリズムを取る。
イントロでリズムを取りきり、美夕紀は歌いだした。
ロックらしい、勢いのある曲で、一気に歌い続ける。
歌詞は夏の思い出を回想しながら、楽しかったことを挙げていくものだった。
しかしサビの終わりで一変する。
「楽しい夏 終わりたくない Endless summer」
そう言葉に乗せると、間奏に入った。
と同時に舞と瑞樹が怪訝な顔する。そのメロディはイントロのリバースになっていた。
イントロを半分まで逆弾きしてから、再生ボタンを押したように元の流れに戻る。
そして二番が始まった。微妙に内容が違うものの、楽しい夏の思い出を振り返っていく。
サビの終わりに美夕紀はそっと言葉を吐いた。
「わたしまだ やり残してる Endless summer」
空虚感を残して、ギターソロに移行する。リズムギターの美夕紀は
リードギターの貴子のパートを支えるように演奏する。何度も何度も繰り返される夏を
印象付けるようなメロディが続く。

三番に入っても、また夏の思い出を振り返る内容の歌詞が続いていた。
楽しい出来事しか綴られていないその歌詞は、もどかしさに満ちている。
やがてサビに入って、また終わりがきた。
「いつまでも あなたと続く 永遠の夏、」
そこで曲が止まる。美夕紀は目を閉じて顔をうつむかせ、息を吸い込むと、
「でも」
顔を上げて目を見開いて、力強く続きを声に出した。
「ごめんねわたし間違ってた あなたが教えてくれた」
「どんな楽しい日々でさえ きっと未来には勝てない」
各パートが再開される。
「だからわたしついていくよ 輝く思い重なるように」
「闇の果て超えて 弱い魂どこまでも抱きしめていて」
「わたし覚悟してる たとえ運命が夢だったとしても」
「嘘はやめて これからのことを話すって決めたから」
「終わりは新たな始まり Ends summer.」
644名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:58:18 ID:xcZZ8G3B

終わらない夏が終わったのは、もう二ヶ月以上前のことである。
もっとも、夏が終わりを知らず流れていたことを認識しているのは、俺を含め少数だ。
さらにそれを実際に体験した者となれば、俺の知っている限りにおいては、
「待つがよい」
全身に漆黒をまとい、窓の縁に足をかけている長門ぐらいなものだろう。
ちなみに今は、自主制作映画『朝比奈ミクルの冒険 Episode00』の撮影中だ。
朝比奈さんのクラスメイトで友人である、鶴屋さんの家を借りて撮影を行っている。
今週末には文化祭が始まるってのに、本当に間に合うのかね。
ファインダー越しに長門を捉えつつ、俺は『超監督』の腕章をつけているハルヒをちらっと窺った。
上機嫌この上ない。やれやれ、こいつの頭の中はどうなってるんだろうな、ホント。


「今日はレコーディングしない?」
文化祭で演奏する五曲を通しで演奏したあとに、貴子が提案をする。
文化祭に向けての自主練習期間として、軽音楽部としての活動は任意参加になっていた。
そこでENOZメンバーは貴子の家に集合して、最終練習をしていた。
「そういえば、わたしと貴ちゃんが作った音源しかなかったね」
美夕紀が初めて気付いたとばかりに、声を上げる。
「あたしとまいまいのアレンジ込みで、だいぶ変わってくると思うよ。ね?」
「うん、しよ」
瑞樹が舞に振ると、舞も賛成の意を示した。それを見て貴子は、
「それじゃGod knows, Ends summer, パラソルDays, 星のパズル、Lost my musicの順で」
「こっちはいつでも」
舞がベースを抱えてやる気を見せる。
「舞、気が逸りすぎ。録音の準備をするから五分ぐらい遊んでて」
ギターを立てかけ髪をかきあげると、貴子はスタジオを出て行った。
勢いが空回りした舞は、すとんと椅子に座って、ベースを見つめる。
「ミユきち、そのペットボトル貸して」
「どうぞ」
スティックを置いた瑞樹が差し伸べた手に、飲みかけの水を渡す。
喉が渇いていたのか勢いよく飲み干す瑞樹を横目に、美夕紀は軽く背筋を伸ばして貴子の帰りを待った。
645名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 07:59:43 ID:xcZZ8G3B

「ちょっとがんばり過ぎちゃったかなあ」
夕日も山の向こうへ消えかけ、辺りが薄暗くなる頃。
美夕紀と舞は、貴子の家を辞し、帰宅途中にあった。
「みゆみゆ、喉大丈夫? けっこうリテイクしてたけど」
歩きつつ心配そうに、舞が美夕紀の顔を覗きこむ。
「これくらいなら全然平気。明日一日歌わなければ大丈夫」
のど飴を舐めながら美夕紀が答える。
その声は、普段よく声を耳にしてる人間ならわかる程度のかすれ具合だった。
「文化祭までまだ三日もあるし、余裕余裕」
そう言って立ち止まる。舞の顔を見てにっこりと微笑んだ。
「ならいいんだけど……あまり無理しないでね」
舞の気遣いに、美夕紀はウインクを返す。
「ありがと。それじゃまた明日学校で」
お互いに手を振り合って、二人は自宅へ向かう道にそれぞれ歩を進めた。

人気の少ない道を黙々と美夕紀は歩く。
そして角を曲がったところで、美夕紀は眉をひそめた。
前方の電柱に人影がもたれかかっているのを見たからだ。
なにやらぶつぶつとつぶやいている。
「酔っ払いさんかな……」
小声で美夕紀は言うと、絡まれないように反対側の端っこを歩く。
それでも、近づくにつれて、耳が勝手に声を拾った。
「僕が動かざるを得ないのを知っていて傍観するとは、全く底意地の悪い未来人だ」
比較的若い人間のようだった。声もしっかりしていて酔っている様子もない。
「互いの規定事項なら朝比奈みくるにでも下してやらせればいいんだ、忌々しい」
言葉に聞き知った名前を捉えて、美夕紀は思わず視線を送った。
自分と同世代ぐらいの男が、美夕紀の視線を受け止め、返してきていた。
背を預けていた電柱から離れると、その男は美夕紀に近寄ってくる。
「榎本美夕紀」
逃げようか声を上げようかどうしようか迷っていた美夕紀は、名前を呼ばれて困惑する。
「なぜわたしの名前を……? それにさっきは朝比奈さんの名前も」
疑問に、その男は含み笑いを浮かべた。電柱の影からもう一人姿を現す。
「悪いね。それは禁則だ。それに中西貴子の分もある。手短にやらせてもらおう」

「……あれ?」
周囲を見回しても、人の姿はなかった。ギターを背負って立ち尽くす美夕紀がいるだけだ。
「気のせいかな」
瞬きを数回してから、目を覚ますように首を細かく振ると、美夕紀は再び自宅へ歩き始めた。
646名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:01:27 ID:xcZZ8G3B

文化祭当日。
天恵が下り、奇跡的にそこそこのレベルで完成の目を見た自主制作映画は
今ごろ視聴覚室で絶賛放映中である。タイムテーブルを見たから間違いない。
俺は頼まれても観ようとは思わんがな。
普通に文化祭を楽しむことにした俺は、襲いくる眠気を蚊柱にチャリで突っ込んだときの
リアクションのように振り払いつつ、廊下を練り歩いた。お、長門のクラスか。
衣装の本来の使い方をしている長門を見物しようと、俺は長門の教室を覗いてみた。
「あなたは、四十三秒後に友人二人と会い、その一分後に衣装の感想を述べる」
長門が水晶に手をかざしながら、占っていた。魔法使いのような格好でだ。
「三分十四秒後に友人の誘いを断り、五分九秒後に空き瓶をびん入れに捨てるだろう」
やけに具体的な占いだな。それは占いというより、予言なんじゃないだろうな、長門。
ほどほどにしといてやれよ。


「貴ちゃん……」
瑞樹に付き添われ、右手に包帯を巻いてやってきた貴子を見て、舞が泣きそうな声を出す。
貴子は心配するなと元気付けるように、微笑みながら右手を掲げる。
「舞、あたし大丈夫だから。大げさに包帯巻かれちゃったけどこんなの全然平気」
「でも、まいまいも平気って言ってて扁桃炎で入院したんだよ! 病院に行って検査しようよ!」
舞の返事に貴子は顔を一瞬曇らす。気丈にもすぐ立ち直り、
「とにかく、大したことないから。それより実行委員を呼び止めておいてくれてありがと」
すぐそばに立っていた男女二人の実行委員を見据える。
「あたし、出れます」
「中西さん、その怪我じゃ演奏なんて」
顔見知りなのか、実行委員の女子生徒が名前を呼んで諌める。
「それにボーカルの人も病気で出れないんでしょう?」
「あたしが美夕紀の分まで歌います」
譲らない貴子に、女子生徒は首を振る。
「実行委員として、許可することはできません」
「なんでよ!」
食って掛かる貴子の勢いに押されながらも、
「せ、生徒の健康に関わることだからです」
「自分の体のことは自分がよく知ってます!」
貴子は包帯を巻いた右手も使って手振りをすると、
「ギター弾けるとこを見せればいいんでしょ!? ギター取ってくる!」
身を翻して、駆け出した。
「やめるんだ!」
「貴ちゃん!」
男子実行委員と舞が追いすがって、押しとどめる。
「離してよ!」
「ダメだよ、貴ちゃん! わたしたちならいいから!」
貴子の体にしがみついて、必死に止めようとする舞。
そのとき、ずっと押し黙ったままだった瑞樹が口を開いた。
「貴子」
647名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:03:05 ID:xcZZ8G3B

瑞樹の声に、貴子は動きを止めた。
「無理してこれからを台無しにしたらどうすんの」
いつになく優しい声で瑞樹が諭す。
「あんた、音大志望なんでしょ?」
うなだれる貴子。瑞樹が言葉を続ける。
「文化祭が終わっても、ENOZが終わるわけじゃないから」
「でも……」
口ごもって優柔不断な面を見せる貴子に、瑞樹は、
「いいからさっさと」
近寄って貴子の右手を軽くひねりあげる。
「病院に行け!」
「痛い! 痛いからやめて!」
顔を歪めて本音を出した貴子を見て、
「実行委員さん、あとはよろしく」
瑞樹は手を離して男子実行委員の肩を叩いた。
我に返った実行委員は、右手をさする貴子をうながす。
二人の実行委員に支えられて、おとなしく貴子は保健室へ歩き出した。

貴子を見送ると、舞がぽつりと言った。
「せっかく作ったオリジナルの曲だし、貴ちゃんやりたかったんだろうね」
「貴子は変に真面目だから、ミユきちのために、とでも思ったんじゃないの」
半ば呆れ口調で瑞樹はぼやいた。
「そんなことをしてもミユきちが喜ぶわけないのに」
「わたしたちにも気を使ってたみたいだしね……」
空気が沈む。
重くなった空気を取り払おうと、舞が声を弾ませた。
「みっきー、これからどうする?」
「んー、クラスの出し物の焼きそば喫茶でも応援にいこっかな」
「わたしのとこは、見世物屋だったかなあ」
わざとらしいぐらいに元気な声を出す舞の背後から、
「なんだったら、代わりに出よっか?」
急に声がかかった。
二人が振り向くと、そこにはバニーガールがいた。
648名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:04:20 ID:xcZZ8G3B

「あなたは、たしか……」
「涼宮さん」
瑞樹がすぐに名前を挙げる。
「オリジナルの歌なんでしょ? もったいないじゃない!」
バニーがうさ耳を揺らして熱演してきた。
「ギターも弾いたことあるし、歌も歌えるわ」
仮入部時に手ほどきをして実力を知っている舞は、
「あなたならできるでしょうけど、でも――」
肯定しつつも反論を言いかける。その舞に被せるように、
「うん、あなたならできるかも。お願いできる?」
瑞樹が返事をした。
「みっきー?」
疑問符を掲げる舞をよそに、話をどんどん先に進める。
「涼宮さん、あなたは先に軽音楽部の部室に行っててちょうだい。場所はわかるよね?」
うなずくバニーにうなずき返すと、
「よし、あたしたちは準備で寄るところがあるから。それじゃ、部室で!」
舞を引っ張って一目散に駆けだした。

「ちょっとみっきー! どういうこと?」
「いいからいいから、早く保健室に行くよ!」
物を言いたげな舞を適当にあしらって、瑞樹は廊下を走る。
途中で何度か『廊下走るな』の貼り紙を通過しながら、ものの数十秒で保健室にたどり着いた。
ノックもせずに戸を引く。
「瑞樹? それに舞……」
中には先ほど連れて行かれた貴子が椅子に座っていた。
ずかずかと中に入って、瑞樹は宣言する。
「涼宮さんに歌ってもらうことにしたから」
「は?」
問い返す貴子に、瑞樹は一字一句繰り返す。
それでも把握しかねた貴子は、さらに聞き返した。
「涼宮さんって、あの涼宮さん?」
「そ、あたしたちと同じ東中出身の涼宮さん」
「そう……」
少しの間考え込んでいた貴子は、傍らに置いてあったギターケースを瑞樹に手渡した。
「うん、涼宮さんなら。あたしからもお願い」
649名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:05:30 ID:xcZZ8G3B

「どういうこと?」
保健室を後にして軽音楽部の部室に向かう道すがら。
舞は納得のいかない顔で再度、すぐ後ろを走っている瑞樹に答えを求めていた。
「舞は涼宮さんについて、何を知ってる?」
「何って……なんでもできるけど、ちょっと変わった人ってぐらいしか」
答えに問いを出されて、困りつつも素直に答える。
その返事に、瑞樹はギターケースを背負いなおす。
「あたしは一学年上だったけど、中学時代の涼宮さんを知ってるから分かるんだ」
前を見据えて、走りながら言葉を継ぐ。
「涼宮さんと貴子はある意味似たもの同士なんだ、って」
「似たもの同士?」
「そ、現状に常に不満を持っていたところとかさ。ま、涼宮さんのほうがすごかったけど」
振り返った舞に軽く笑いかけると真顔に戻り、
「それでね、後輩として北高に入ってきてからも、相変わらずだなあと思ってたんだけど」
前方に男子生徒の行列を見とめ、少し右によった。
「ある日を境に、やりたいことを見つけたみたい。ちょうど貴子がENOZを見つけたみたいに」
『焼きそば喫茶 どんぐり』の看板を横切る。
「だからあたしは涼宮さんと貴子を重ねて見てる。貴子も少なからずそうだと思う」
突き当りを右に曲がって、奥へ進んでいく。
「だからさ、まいまいも涼宮さんを認めてあげてよ、ね?」
最後は息切れか、やや苦しそうに言い切った。
そんな瑞樹に、舞は笑顔で応えた。
「うん」

部室に入ると、バニーが足を組んで椅子に座っていた。
MP3プレイヤーからの音を本物の耳で聴きつつ、楽譜を眺めている。
二人が入ってきたことに気付いたか、顔を上げてイヤフォンを外した。
「あ、遅かったじゃない。これがあなたたちの曲よね? いい曲ね」
走りっぱなしだった瑞樹は、息を整えると、
「そうだけど、人のかばんを勝手に漁――」
「時間ないんでしょ? 小さいことを気にしてちゃダメよ」
瑞樹の言葉を途中でさえぎり立ち上がる。
「それで、本番までどれくらいだっけ?」
「一時間ちょっとで体育館に移動かな」
舞の答えに、折れ曲がったうさ耳を手でいじって考え込む。
「うーん、それはいくらあたしでも全曲は無理ね。それにこれ、全部ツインギターよね?」
「うん、本当はもうひとり、ボーカル兼リズムギターの榎本さんって人がいるの」
「わかった。ちょっと待ってて、もうひとり連れてくるから」
と言って、バニーは台風のように走り去っていった。
残された二人は、ただあっけにとられていた。瑞樹がつぶやく。
「……やっぱ失敗だったかも」
「あはは」
舞が苦笑を漏らした。
650名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:07:20 ID:xcZZ8G3B

しばらくして戻ってきたバニーは、魔法少女を連れていた。
「長門有希」
そう名乗ったきり、口を閉ざして突っ立ったままだ。
「有希、ギターよろしく!」
有希がこくっと首を縦に振った。

次いでバニーは瑞樹と舞の二人を見た。
「あたしね、二曲ぐらいが限度だと思うのよ。どの曲にする?」
「一曲は、バンドを結成するきっかけになったGod knowsを」
迷わず言った瑞樹に、舞もうなずく。
「もう一曲は、どうしよ?」
「二曲だけだと、バラードの星のパズルはちょっと向いてないかな」
舞が楽譜を広げて悩む傍らで、その中の一つの楽譜に有希は視線を置いていた。
「有希、Ends summerが気になるの? でもそれ難しいのよね」
「そう」
有希の視線を追ったバニーが言うと、ゆるゆると視線を譜面から外す。
結局、瑞樹が結論付けた。
「夏の歌は両方入れなきゃ意味がないから、Lost my musicかな」
「それがいいね」
舞も賛成票を投じる。
その結果とともに、バニーが声を上げた。
「じゃ、あとは練習あるのみよ!」

「歌うのとギターを弾くのを同時にするのって、けっこう難しいのね」
「涼宮さんのパートはリズムギターだし、難しいならコード弾きでいいよ」
「ごめんなさい、そうさせてもらうわ」

「長門さん、なんでそんな完璧にできるの? どこかでギター習ってた?」
「……」

「うーん、満足のいくものにできなかったわね」
一時間後、バニーの耳は普段より心持ち垂れ下がっていた。
「気にすることないよ。通しでミスなしでできるようになっただけでもすごいって」
瑞樹がスティックを置いて心の底からの賛辞を送ると、
「一時間でこれだけできて残念がられると、こっちが形無し」
舞も素直に心境を語る。
「さ、もう行かないと。みんな楽器持っていくのを忘れちゃダメだよ」
スティックをしまいこんだ瑞樹が立ち上がる。
そして、笑顔とともに言った。
「いい演奏にしよう!」
651名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:08:49 ID:xcZZ8G3B

バニーガール姿のハルヒと黒ずくめの長門がステージの上に立って熱演を繰り広げた文化祭は
もう二ヶ月以上前のことになる。あのときは、まず予想だにしなかった出来事に度肝を抜かれ
次いで楽曲の良さに半ば圧倒された。短い時間ではあったが、いつの間にか俺の横にいた
舞台衣装の古泉とともに、演奏を楽しんでいたのは確かである。ハルヒの歌声も
まあ、人並み以上に上手かったしな。少なくとも俺より上手いのは間違いない。

ところでなぜ、唐突に二ヶ月前の、さらに言わせてもらえば去年の出来事である
文化祭のことを思い起こしているのかというと、答えは俺が今、チャリをこいで向かっている先にあった。
お、見えてきたぞ。いつもの集合場所がな。

「遅い! まったくなんであんたはいつも最後に来んの?」
チャリを置いて駆けつけた俺を頭ごなしに怒鳴ってきたのは、ハルヒだった。
「時間には十分間に合ってるだろ。早く行き過ぎても、待ち時間が退屈なだけだ」
そうハルヒに答えた俺は、残りの面々を眺める。
そして何よりも挨拶をすべき人にしかるべきことをした。
「朝比奈さん、こんにちは」
俺の挨拶に、朝比奈さんは寒い空気も一気にぬくもるような笑みを返してくれる。
「こんにちは、キョンくん」
これだけでも今日ここに来た甲斐があったというものだ。
ちなみに残りの面々は、長門と古泉、それと、
「やあ、キョンくんっ! 今日はいっしょに参加させてもらうよっ」
いつも元気な鶴屋さんだった。鶴屋さんは朝比奈さんの肩を抱いて、
「あたしとみくるは前回クラスの出し物で忙しかったからね。今日は楽しみなのさっ」
俺の脳裏に、ウェイトレス姿の鶴屋さんと朝比奈さんの絵が浮かぶ。あれはいいものだった。
もっとも過去のイメージより、現実に目の前にいるお二人のほうがいいのは疑いようもない。
朝比奈さんの今日のお召し物は、自沈しそうなほどもこもこなもこもこだった。
ライブハウス内はかなり暑くなると思われるので、すぐにお脱がれになられることだろう。

そう、ライブハウスだ。
決して今日は不思議探検なんぞをしにきたのではなく、別の用事で集合したのである。
誰のライブかというと、
「さあ、みんな集まったしENOZのライブを見に行くわよ!」
ハルヒが宣言してくれた。
652名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:10:29 ID:xcZZ8G3B

集合地点から電車に乗って太陽の沈む方向へ揺られること十数分。
去る年末には光で着飾ったであろう、大きな街に俺たちは降り立った。
「転校以来、こちらのほうには来たことがありませんでしたね」
古泉が今さら転校生属性を思い出したかのように、周囲を見回す。
「古泉くんは、もっぱら東なの?」
「ええ、それか北口ですね。大抵のものは揃いますし」
ハルヒと古泉がそんな会話をするのは、なんか違和感があるな。
「あたしとみくるは、服とか買いにけっこう来てるよねっ」
鶴屋さんの言葉に、朝比奈さんが控えめにうなずく。
俺は腐るほど来たことがあるに決まっているので、質問される必要性もないのだが
もう一人を取り残したままにするのはやりきれない感じがしたので、俺は長門に声をかけた。
「長門、お前はここに来たことあるか?」
ないという答えを半ば信じていたのだが、
「ある」
「何をしに?」
意外な答えに、俺は思わず問い返していた。
長門は俺をじっと見つめて、ぽつりと言った。
「食べ歩き」

ライブハウスは駅から徒歩数分の場所にあった。
入り口を降りていくと、肌寒そうなラフな格好をしたもぎりの人が立っていた。どこかで見たような顔だ。
「おっ、涼宮さんと長門さん。待ってたよー」
鶴屋さんほどではないが、元気たっぷりのその人に見覚えがあるのも当然で、
「瑞樹! 今日のライブ楽しみにしてるよっ」
「まかせてっ、鶴にゃん」
ハイタッチを鶴屋さんを交し合ったのは、ENOZのメンバーの人だった。
瑞樹と鶴屋さんが呼んでいたことから類推すると、ドラムの岡島瑞樹さんか。
文化祭時にハルヒが紹介していたのは下の名前だけで、その後挨拶に来たときも
名前は告げなかったが、今日のチケットにフルネームが書いてあったから覚えていた。
「みくるちゃんと涼宮さんのオトモダチの人もようこそ! えっと、そこの人はたしか古泉君だよね」
「初めまして、岡島さん」
古泉が当たり障りのない笑みを返す。
なぜ面識のある俺がハルヒの友達扱いで、初対面の古泉は名前を覚えてもらっているんだ?
理不尽を嘆いていると、
「さあさ、中に入った入った。一応チケットもぎらせてね」
岡島さんがライブハウスの中に手を差し伸べた。
653名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:12:09 ID:xcZZ8G3B

「わあ、人がいっぱい」
中は高校の軽音部員がライブをするにしては十分すぎるキャパシティを備えているようだったが
すでに人だかりで敷き詰められていた。百人じゃきかんな、これは。
「前のほうに行きましょ」
ライブハウス内を一瞥してそう言うと、ハルヒは雪山で雪を掻き分けたときと同じように
猛然と群集に割って入った。どう考えても迷惑行為だぞ、それ。
だが客のほとんどは北高生であるらしく、ハルヒの姿を捉えると、避けるように道を譲ってくれる。
果たしてこれでいいのだろうかと思いつつ、俺たちもハルヒの後を追って、いちばん前を確保した。
正確には女性陣が最前列で、俺と古泉はその後ろ、という布陣だ。
「みくるー。服脱いだほうがいいよっ。もっと暑くなるからね」
「うん」
軽装の鶴屋さんに言われて、朝比奈さんは冬毛を脱いだ。
飾り気のない、動きやすそうな服だったが、朝比奈さんの魅力を持ってすれば
服などはまさに飾りだ。たとえジャージ姿でも映えるに違いないね。

薄着になった朝比奈さんに癒されていると、
「お持ちしましょう」
さりげなく古泉が朝比奈さんに手を差し伸べていた。申し訳なさそうにしつつ、服を手渡す朝比奈さん。
しまった、俺も目を奪われてないで言えばよかった。古泉の株が上がったのもなんとなく気に食わん。
内心地団太を踏んでいると、視線が俺に刺さった。なんだ?
視線を追っていくと、ダッフルコートを脱いで制服姿になった長門が俺を見つめていた。
ええと、その視線はどういう意味なんでしょうか、長門さん。
意図はよくわからなかったが、とりあえず俺は問いかけた。
「持とうか?」
首を縦に振って渡してきたコートを受け取る。手に提げるや否や、
「これも持ちなさい」
ハルヒも上着を押し付けてきやがった。
おいおい、いくら屋内だからって半袖は冷えるんじゃないのか?
「いいのよ、その分ライブであったまるから」
ステージを見ながら、ハルヒは答える。
ライブはまもなく開幕のようだった。
654名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:13:37 ID:xcZZ8G3B

ライブハウス内が薄暗くなる。
最前列の俺たちには、ステージに上がる四人の姿が見えていた。
ほどなくしてステージがライトアップされる。

「みんな、今日は来てくれてありがとう!」
ステージ上で、ギターを肩から提げた女子生徒が声を張り上げていた。
暖色系の色を基調にした大人びた格好が、よく似合っている。
以前会ったときは包帯を巻いていた右手で、マイクに手を掛けておられた。
どうやらそれぞれの立ち位置は、以前の文化祭のときと同じらしい。
リードギターでリーダーの中西さんは、マイク越しに呼びかける。
「ENOZでの一年間を、今日のライブに全部詰め込んだから、聴いてね!」
歓声が上がった。俺たちからは主にハルヒと鶴屋さんがそれに加わっている。
朝比奈さんも「岡島さんがんばってー」と精一杯声を出していた。

中西さんは歓声が一段落すると、他のメンバーに視線を送った。
スティックを握っている岡島さんは、余裕の表情で応えていた。いたずら笑いがいいね。
フードつきの服を着てベースを抱えている財前さんは、少し緊張しているのか、ぎこちない笑いを返す。
最後にボーカルの榎本さんとうなずき合う。榎本さんは色こそ白を基本にしていたが
ノースリーブにハーフパンツのかなり活動的な格好だった。
おとなしめの人だと思っていたから、これにはびっくりだ。

うなずきとともに、榎本さんにマイクが渡ったようだ。
視線をうつむけて、ギターを見つめるような感じで、深呼吸をひとつする。
勢いよく上げた顔には、満面の笑顔が浮かんでいた。
「それじゃ、一曲目! God knows!」
榎本さんの合図とともに、再び歓声が上がり、岡島さんがスティックを振るった。
聞き覚えのあるイントロだったが、いきなり俺は圧倒された。
長門のギターも常識はずれなほどに上手いものだったが、中西さんのギターも
それに劣らないどころか、全身の動きがあるだけ長門より上手く感じたのだ。
まるで文化祭で演奏できなかった分も楽しんでいるような、軽快なギターさばきだった。
観衆も凄さに押し黙って、演奏にただ聞き入っていた。
そしてイントロが終わり、榎本さんが歌声を乗せた。
655名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:14:58 ID:xcZZ8G3B

俺は以前聞いたことのある甘い地声から、ロックには不向きなんじゃないかと
勝手に思っていたのであるが、榎本さんの歌声はそんな俺の想像を塗り替えてくれた。
楽器の勢いにも負けずに、ギターを弾きながらよく通った声を響き渡らせる。
要所要所で入る中西さんの低音でのコーラスとも息が合って、バンドとしての
一体感を強く感じた。ベースの財前さんも曲が始まってリラックスしたようで
ドラムの岡島さんを始め、メンバー全員にアイコンタクトを送って、リズムを生み出している。
岡島さんは前回より派手めに体を動かしつつ、実に楽しそうにドラムを叩いていた。

それはまさにENOZが一つになった瞬間だった。

静まり返っていた観客もどんどんボルテージが上がって、盛り上がりっぱなしだった。
さすがに長門は微動だにしていなかったが、古泉は足でリズムを取って体を揺らしていたし
朝比奈さんもハルヒや鶴屋さん、場の雰囲気に飲み込まれて手を振っていた。
俺も手に抱えているハルヒと長門の服がなかったら、手を振りかざしていたかもしれん。
それだけ、ENOZの演奏は、共感を場に振りまいていた。
最近裏読み傾向が強くなっていた俺の心に、ストレートに感動が届いたのは久しぶりだった。

のではあるが、やはり俺の心はどこか冷めていたのだろう。
小さな違和感を覚えたのは、四曲目のEnds summerが演奏されているときだった。
その歌詞の内容に、俺はどこかで経験したことのあるような、むず痒さを感じたのだ。
それだけなら気のせいで済ますこともできたのだが、長門と古泉がこちらに意味ありげな
視線を送っているのを見ては、気のせいと言い張るのは無理だろ。

「何かあったのか?」
Ends summer後のMC中に、俺は小声で横の古泉に話しかけた。
古泉は長門に目配せを送って、
「次の曲の後に十分間の休憩があるようです。話はそのときに」
俺の耳元にささやきかけてきた。息を当てるな、気持ち悪い。
「今は純粋に曲を楽しみましょう」
要するに、今すぐに危険が迫ったりする類のものではないらしい。
願ったり叶ったりだ。俺はいったん頭から違和感を追い払って、ライブに再び専念した。
656名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:16:17 ID:xcZZ8G3B

「ハルヒ、少し席を外してくる」
五曲目のパラソルDaysが終わって休憩時間に入るとすぐ
俺は預っていた上着を差し出しながら、ハルヒに声をかけた。
興奮覚めやらない様子のハルヒは、素直に上着を受け取りつつ、
「あ、それじゃドリンクもらってきて。この半券で一つもらえるみたいだから。あたしコーラ」
抜け目なく紙切れを代わりに渡してきた。ま、いいか。
「鶴屋さん、朝比奈さん、よかったら飲み物取ってきますよ」
お二方にも声をかけ、注文とともに半券を受け取った。
本当は朝比奈さんにも来てもらうべきなのだが、鶴屋さんにがっちり抑えられてる上に
席を外してもらう上手い口実が考え付かなかった。
俺は背を向け、カウンターらしき場所を目指して観客の間をすり抜けていった。

「それで?」
ペットボトルを小脇に抱えて、俺は後からやってきた古泉と長門に話を振った。
「あなたもお気づきになったと思いますが」
古泉も手にペットボトルを提げ、口を開いた。周囲の喧騒に合わせてか、いつもより声が大きい。
「彼女たちの曲の一部に我々が以前、経験した内容を想起させる部分があります」
「ああ、Ends summerは、一万五千……何回か忘れたが繰り返されたあの二週間のことだな」
「一万五千四百九十八回」
長門が的確にフォローを入れてくれ、古泉はうなずきを返した。
「ええ、そしてGod knowsはどうやら、あなたと涼宮さんが二人きりだった閉鎖空間での出来事のようですね」
「そうなのか?」
言われてみればそんな気もせんこともないが、俺にはわからなかったぞ。
「涼宮さんの精神的専門家の僕にはわかります。あれは涼宮さんの心理の発露です」
「正確には、涼宮ハルヒの心理を汲み取って、中西貴子が自身の経験と比較、融合させてできたもの」
長門の補足に、古泉は合点が言ったのか、大げさに手を打つ。
「なるほど、あの歌詞を書いたのは、中西さんでしたか」
「そう、そして涼宮ハルヒと関連の薄い曲は、榎本美夕紀の手によるもの」
そういえば、長門は以前、文化祭でENOZの曲を演奏したんだったな。
それなら、知っていてもおかしくないか。
「二曲目のLost my musicはどうなんですか?」
古泉と長門はなおも情報交換を続けていた。
「中西貴子が作曲して、榎本美夕紀が曲のイメージ通りに作詞したと思われる」
「トレースのトレースですか。だからGod knowsやEnds summerと少し毛色が違うんですね」
「そのLost my musicってのは、いつのハルヒなんだ?」
なんとなく質問をしてみたが、古泉は苦笑をした。
「それは知らないほうがいいと思います」
657名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:20:32 ID:jy7pNVwF
支援?
658名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:20:52 ID:xcZZ8G3B

なぜ知らないほうがいいのか、困惑する俺に、
「そう気にしないでください。トレースのトレースですし、僕も確信があって述べたわけではないので」
古泉は、いつものように含みを持たせてきた。
その癖はあまりよくない癖だぞ、古泉。
「矯正するよう努力します。とにかく、結論としては、特に問題ないかと」
あっさりと言ってきたが、それだけじゃ納得できん。
「ハルヒの心理を歌詞や曲にできるんだろ? 中西さんに危害が加わったりしないのか?」
俺の問いかけに、古泉は首を振った。
「涼宮さんの心理自体は、以前申し上げたように常識人の範囲を逸脱しません」
少し口調を強めて、続きを言う。
「言い方が悪いかもしれませんが、能力を持っていない涼宮さんは誰の興味をも引かないのです」
「そうか」
俺は当たり障りのない返事をするしかなかった。
なんだか中西さんに失礼な感じがしたからな。

会話が止まった合間を見計らったように、長門が声を発した。
「中西貴子に危害が加わることのない点に関しては、情報統合思念体も合意している」
淡々と告げる。
「ただし、中西貴子の曲は涼宮ハルヒに一種のフィードバックを与えていると考えられる」
「フィードバック?」
「涼宮ハルヒから発信された情報を受け手である中西貴子が楽曲として構築、涼宮ハルヒに返す流れのこと」
噛み砕いて説明してくれた長門は、
「そして、それによって涼宮ハルヒに好影響をもたらした点は看過できない」
「要するに、長門の親玉はどうしたいんだ?」
休憩時間もそう長くない。ぼちぼち戻らないとハルヒがうるさいぞ。
急かした俺に配慮したのか、
「観測対象に組み入れる」
長門は端的に結論付けた。
「そうか」
今度もそう言うしかないだろ。ただし俺はこう付け加えた。
「じゃあ、戻って残りのライブを楽しむとするか」
659名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:22:43 ID:xcZZ8G3B

戻った俺にハルヒは遅いとどやしつけ、ペットボトルを奪い取ると再び上着を持たせてきた。
休憩時間ギリギリだったらしく、鶴屋さんと朝比奈さんに飲み物を渡したところで
照明が下げられ、ステージ上がライトアップされた。

「ここからは最後まで一気に行くから、みんなついてきてね!」
榎本さんの呼びかけに、歓声が応える。
「まずは秋の三曲、見つめてHappy Life、REJECT?、Energy injection行きます!」
岡島さんがスティックを打ち鳴らして、曲が始まった。
休憩の合間に脱いだのか、榎本さんと同じくノースリーブ姿になった財前さんが
派手なパフォーマンスをすることもなく、マイペースを保ち続ける。
躍動感溢れるプレイをしているのは、もっぱら中西さんと岡島さんの二人だ。
しかしバラバラというわけでもなく、静と動の関係が一つに融和してグルーヴ感を演出していた。
もちろん、んなことを冷静に考えながら演奏を聴いていたわけもなく、ただ圧倒されていたのだが。

先程の長門と古泉の話の通り、曲によっては、あの出来事に関する内容か、と思い当たるふしが
あるものもあった。例外なくアップテンポな曲で、荒削りだが魅力にあふれた曲だった。
古泉はトレースと言い、長門も中西さんの経験を踏まえて曲を作っていると言っていたから
中西さんなりのアレンジが加わっているのだろうが、それにしても激しい曲ばかりだ。
全曲この調子だと途中でへばってしまう可能性が高く、そこは榎本さんが作った曲が
うまく緩衝材となってくれていた。かわいさを感じる曲で、普段そんなに音楽を聴かない俺でも
すんなりと入り込めそうなポップロックだった。

ちなみにハルヒの心理状態どうこうに関しては、俺は深く考えないでおいた。
覗き見をするのはルール違反だろ、やっぱ。俺だって隠したいことの一つや二つはある。
そんなことよりも、一生懸命演奏しているENOZのライブを楽しむほうがよっぽど健全だ。
みんなと盛り上がりながらライブで聴く機会は、そう何度もあるもんじゃない。
ぴょんぴょん跳ねている朝比奈さんを見ながら、俺はそう思ったのさ。
ハルヒと鶴屋さんも、どこにそんなパワーがあるのかと問いたくなるぐらいはっちゃけているな。
長門、お前もたまには声をからして叫ぶぐらいしてみたらどうだ。無理か。
660名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:25:33 ID:xcZZ8G3B

最後の曲、One's melancholyを演奏しきったENOZの面々は、余韻に浸っているようだった。
観客である俺たちも、感情を共有して、押し黙る。
口を開いたのは、中西さんだった。
「ありがとうみんな、最後まで付き合ってくれて」
完走した者だけが経験できる喜びがその顔に浮かんでいた。
「三年生になったばかりの頃には、ライブができるなんて思ってなかった、ううん」
かぶりを振って、
「こんなあたしがバンドを組むなんてことすら思ってなかった」
柔らかい微笑みとともに、他のメンバーを順々に眺める。
「このENOZは、あたしにとっての居場所。大切な、かけがえのないもの」
観客に視線を戻し、
「あたしはもうすぐ高校を卒業するけど、この一年は、そして今日のこの日は一生忘れない」
目を潤ませながらにっこりと笑った。
「みんな、ありがとう!」
今日一番の大歓声がライブハウス内を包んだ。
朝比奈さんなんかは、もらい泣きして鶴屋さんの肩をハンカチ代わりにしていた。
そして、どこからともかくアンコールの声が聞こえてくる。
あっという間に全員に伝播して、場内はアンコール一色になった。
顔を見合わせるENOZのメンバーだったが、岡島さんが口を動かして、何かを伝える。
残りの三人が、うなずいた。

中西さんに代わって、涙をぬぐって榎本さんが口を開いた。
「アンコールさんきゅ。二曲、演奏したいと思います」
歓声が再び上がる。
「でもその前に、スペシャルゲストを紹介します」
後ろで岡島さんが、なにやらいたずら笑いを浮かべておられる。
「みなさんの多くは文化祭でわたしたちの演奏を耳にしたと思います」
財前さんがこっちを見ているような気がする。
「そのとき、病気や怪我で欠場したわたしと貴ちゃんの代わりに出てくれた二人がいました」
中西さんの視線は、確実に俺の前に立っている誰かと誰かを捉えていた。
「今日のライブがあるのも、その二人のおかげです」
そして榎本さんが、名前を挙げる。
「涼宮ハルヒさんと長門有希さんのお二人です!」
661名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:27:08 ID:xcZZ8G3B

「え?」
拍手と歓声が上がる中、寝耳に水だったハルヒは間抜けな声を出した。
長門はまったく動じず、ただ佇んでいる。
そしてステージ上の四人は、今度はなぜか俺に頼み込むような視線を注いでいた。
どういう意味ですか、その視線は。俺はハルヒのマネージャーじゃないですよ。
そう思ったのだが、俺は戸惑っているハルヒの肩に手を置いた。
振り向くハルヒに、俺はこう告げたのさ。
「行ってやれ」

ステージの上の人となったハルヒと長門は、榎本さんから紹介を受け場を沸かせていた。
ハルヒと長門の分、空いたスペースに俺と古泉が入り、最前列での見物となった。
ハルヒにも緊張というものが存在していたのか、ぎこちない応対だ。
もうちょっと気のきいたことを言ったらどうだと思うのだが、それは俺が観客だからであって
実際ステージの上に立つとまた違うんだろうな、きっと。
何も言わない長門に比べれば、マシなのではあるが。
榎本さんのMCの傍らで、残りの三人は機材を動かして準備しているようだった。

「お待たせしました」
準備オーケーの合図が出て、榎本さんはそう言った。
と言っても、ものの二、三分ってところだ。
中西さんのマイクスタンドが榎本さんの横に並べられ、榎本さんのギターがなぜか
長門の肩から提げられていた。
「アンコールの二曲は、God knowsとLost my musicを文化祭バージョンでやります!」
ハルヒと長門から了承を得て、コラボとなったわけだ。
歓声が巻き起こる中、ハルヒは榎本さんと、長門は財前さんと並んで立った。
榎本さんの微笑みに促され、後ろを向いてハルヒが岡島さんに合図をする。
岡島さんがスティックを振りかぶり、ハイハットが打ち鳴らされ――

俺もこの日のライブを一生忘れないだろうね。

(おわり)
662名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:29:04 ID:URh2ApAP
面白かった
こういう本編の隙間を埋めるSSは大好きだ
663名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:30:54 ID:v6q3rpqt
>>661
すげぇ乙!
面白かった。今からもう一回読み直すよ!
664名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:31:46 ID:jy7pNVwF
大長編マジかよ…ってビビッたけど、ライトでとても読みやすかった。
途中からけっこうゾクゾクと鳥肌立ってきてラストは感動した。
素晴らしい!!
665名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:35:32 ID:nSTkSs/A
面白い。すごいや!
666名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:39:08 ID:Zfu/AmVQ
急にアニメのライブアライブ観たくなってきた
God knows と Lost my music 聴きながらSS読み直します
667名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 08:49:48 ID:giP4/Wht
原作中に“振り”が有ったってことは、いずれ谷川もライブの話を
書く気があったんじゃないかと思われ…
実際に谷川が書いたらどういう展開になるのだろう……。
SSを読んだが故に原作が書かれるのが楽しみになった。
構成力に脱帽です。
668名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 09:16:58 ID:jyUMJ8v3
>>661
これぞSS。原作よりアニメがいい出来と感じてたからなおさら。
2曲聴きながらじっくり読み返します。谷川仕事しろ!!
669名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 09:39:55 ID:Gcc6DX+a
原作やアニメの設定から矛盾を感じさせることなく、
しかも主要キャラ以外の補完小説を書くなんて、かなり難易度高いはずなんだけど、
見事にやってのけましたね。すばらしい。
670名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 10:21:02 ID:3SyZOuO/
これは…なんていうか…

GJとしか言えねぇよチクショー!!!!!!
671名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 10:24:11 ID:+5qGkJ2+
力作の完成おめでとう!
ENOZメンバーの生き生きとした描写が素晴らしい。
貴子先輩に惚れたので、未来人に呪詛を送る事にした。みくるは許す
672名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 10:39:35 ID:Fvod7E+u
  .    /                ヽ    \  \
    ,'     /  /            l    \  ヽ
   !     /  /     /  ,'    |  l   ハ  ヘ、ヽ、_,         ⌒⌒
  .  | !   l   l     /  /   ,イ !   i   ! l ヽ ',` ̄
  .  l |   l   l  ,/  〃 ,/   /│ l  j   l│  ! l      ^^
   ノ | ! │   | /_// //  / ,' ∧ / |  / j   l│
    ノ l ァ|   |尢/‐=乞t/ / /∠ニ「厂! / ,/  / リ
    イ 八{´l  !レ<f{矛:下 'ヽ _〃イ孑代勹 イ } /
 ̄ ̄ ̄ ̄Vハ  |{  r';;_zj  f} ⌒{! r';;zリ /}, '// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      ヽ ',  | ` ー―‐‐ '  、 `ー-- チ' /      ザザー
         ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          :::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::
            :::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::      ∧_∧
             ::::::::::::::::::::::::::::      Σ ( ::;;;;;;;;:) チョ・・チョット!
               ::::::::::::         /⌒`'''''''''''^ヽ
                       /⌒ヾ/ / .,;;;;;;:/.:;|
        -―'――ー'''‐'ー'''―‐'―''''\,./ / .::;;;;;;:/‐'| :;|'''ー'-''――'`'
         ,, ''''  `、 `´'、、,   '''_ソ / `:;;::::ノ,,, | :;| '''  、、,
            ,,,   ''  ,,   ''''' ξ_ノ丶ー'ー< ,ゝ__> '''''  ,,,,
         ,,     ,,,,     ''' ,   ::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::  ,,
                    ,,,,,,,     :::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;:::::::::



673名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 10:54:03 ID:uNJs1nCU
すげえ。ENOZスレに常駐してたからなおさら感動。
で、ついにこれが言える。

谷川、仕事しろ!
674名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 11:23:31 ID:rMwj8JS5
すごいなー。

単なる助っ人で入っただけの筈のENOZの楽曲が、妙にハルヒの心理と
リンクしたものになってるのが、ちょっと不思議だったんだ。
あの「sleeping besutyの夜」を傍受していた人という設定か、巧いなー。
しかもエンドレス夏休みの歌まであったなんて、もう脱帽ですよ。
675名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 11:32:10 ID:9CcAiKIx
>>661
とにかくGJ!!
ENOZメンバーの日常ってどんなのか気になっていたが
ホントに違和感なく書かれている。
こんなSSが読みたかった!
676名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 11:32:17 ID:5Tabgdm9
>>408氏はまだ居ますかー?
続きを楽しみに待ってますよー。
677名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 11:40:10 ID:4iRFvkm7
>>661
俺もこういう裏読みみたいなネタは大好きだ。
上手いなぁ。乙。
678名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 11:53:40 ID:d1ff0cV/
>>661
GJ!!
同じくENOZモノを書いてるんだけど衝撃的だった。
投下しづらいことこの上ない!
679名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 14:10:20 ID:y3qWvY36
うめぇなぁ
しかもただ投下して、そして何も言わずに去る
これこそ投下人の鑑

どっかの自分語り作者や、「物書きの立場から」とか言っちゃう人も見習ってほしいもんだ
680名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 14:32:42 ID:qxGAalSr
お前は読者の風上にも置けませんね
681名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 14:51:07 ID:fhScWFKV
↓以下いつもの殺伐とした流れ
682名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:07:11 ID:Vv1gLpL0
を変える歴史的レス↓
683名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:09:22 ID:AGfjjka1
>>661
SGJ! 濡れたわ!!
……しかし古泉がキョンにLost my musicのイメージを伏せたのは何でだろう?
あの曲はハルヒのジョン・スミスに対する思いと重なるイメージがある歌だけど、そこらが関係あるのかな?

>>679
>>680
だからアンタら、そういう書き込みは「幼馴染が照れ隠しで怒るような感じで」しなさいって何回言ったら分かるのよ!

……いや、難しいな。

>>681
アンタも煽るなw
684名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:31:33 ID:c26ajX/H
流れぶつ切りで投下する
685名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:33:32 ID:c26ajX/H
そして光が生まれた。
全く雲のない。
太陽しか見えない空。
緩やかな風が木々を揺らす音だけが聞こえている。
「そうだなぁ…。なんとなく、だけれどね……」
ふいに人間の話す声が聞こえた。
少年のような、そして少し高い声だ。
「なんとなく、だけど?」
別の声が発言を促すように聞いた。
軽薄そうな感じのする、男の声だった。
最初の声が静かに語り出した。
まるで自分に語りかけるような口調で。
「ボクはね、たまに自分がどうしようもない、愚かで矮小なショタではないか?
ものすごく汚いショタではないか?
なぜかはよくわからないけどそう感じる時があるんだ。
そうとしか思えない時があるんだ……
でもね…そんな時は必ず、それ以外のもの、
たとえば学校とか、
みんなの生き方が、全てが美しく、素敵な物のように感じるんだ。
とても愛しく思えるんだよ……。
ボクは、それをもっともっと知りたくて、
そのためにショタキャラになっているような気がするんだ」
「なぁ」
少しだけ間をおいて、こう続けた。
「辛い事や悲しい事は、ボクがショタを続ける以上必ず、行く先々にたくs
もう一人が言葉を遮った。
「なぁ国木田?」
国木田と呼ばれた少年は、少しむっとしたように答えた。
「なんだよ、谷口」
「セリフがなげぇよ」
そして学校が始まる。
686名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:35:47 ID:c26ajX/H
三人の団員



そこは部室錬だった。
築三十年は余裕でたっているであろう古い部屋が、
露店のように等間隔で建ち並んでいた。
「ボクには用事はないのになぜ来たのか、わかるかい?谷口」
壁のそばに立つ、十五、六歳ほどの髪の短い少年がいった。
すぐそばには、一人の谷口
(注・2足歩行。成功しないナンパを繰り返す物だけを指す)
が立っていた。
「分かってるって、飯だろ、国木田」
谷口と呼ばれた少年が返事をした。
部室錬の二階に上った途端、谷口が。
「誰かいるな」
短くそう言った。
国木田も直線の先に大荷物を抱えた人影を見つけた。
ゆっくり近付いて行くと、少女が一人荷物を運んでいた。
彼女は一瞬だけ顔を上げ、そして伏せた。
彼女の後ろには、一人で運ぶには多いように見えた。
国木田は少女の手前で足を止め、声を掛けた。
「こんにちは、長門さん」
国木田が挨拶をして、少女は目線だけをあげた。
「…………」
彼女は何も言わなかった。
沈黙に絶え切れずに谷口が開いた。
「荷物大変そうだな、どうかしたのか?」
国木田もそれに続けた。
「もしよかったら手伝うよ」
彼女は短くこう言った。
「…助かる」
「へーそうなんだ、それは大変だね」
道中聞いた話を推理すると。
涼宮さんが勝手に取って来た軽音楽部の楽器を返すらしい。
沢山の荷物をみんなで分担して運んだ。
「やっとついたぜ」
谷口は息を切らしながら、恨みごとを呟いた。
「いいだろ、僕たちの用事なんて、昼休みにでも出来るだろ…それに、一人でこんなに運べないよ」
国木田は谷口をいさめた。
「まぁいいけどよ」
谷口もどうやら同情してるらしい。
すると少女は呟いた。…ありがとう、それと、
“あなた達はこれから何処に行くの?”
687名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:38:01 ID:c26ajX/H
「国木田、また部室錬にいくぞ」
昼休みに入り、谷口は国木田に言った。
「わかったよ、谷口」国木田はやれやれと心の中で呟いた。
部室錬に行く最中、朝に長門さんがいた所で、また人影がいた。
「ありゃ」
谷口は素頓狂な声をだしその様を見つめた。国木田は荷物の中心にいる少女に声を掛けた。
「こんにちは涼宮さん」
僕たちを見つけた途端、涼宮さんは溢れそうな笑顔でこういった。「あなた達荷物運び手伝いなさい」

道中聞いた話によると、昨日持って来た機材が部室から消えていたそうだ。
沢山の荷物を二人で分担して運んだ。
谷口は、はっきりと恨み言を呟いた。
「………」
国木田は無言、肩で息をしていた。
涼宮さんは嬉しそうにこう言った。
「あんた達、役に立ったわ、ありがとう。それと、
“あんた達はこれから何処に行くの?”

688名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:38:51 ID:c26ajX/H
「国木田、今度こそ俺の用事をすますぞ」
放課後の話だ。
「ねぇ谷口、今日は辞めにしないかい」
国木田は谷口に言う。「なんでだ?」
「だってそうだろ、もし朝比奈さんが困ってたらどうするんだよ?」
「それが狙いだ」
国木田は心底呆れながら呟いた。
「明日の飯も頼むよ」

部室錬の奥にはやはり荷物の塊があった。
「朝比奈さんキター」
走り出す谷口の背中を見つめ、国木田は溜め息をついた。
だが荷物の主をみた谷口の背中は絶望に彩られていた。
「こんにちはキョン」
「よう国木田、あとどうした谷口?」
「ちょっと行く所があってね、そうだろ谷口?」
「あ、あぁ」
キョンは残念そうに呟いた。
「そうか、用事があるならしょうがないな」「まぁ悪いんだけど荷物運び頑張ってよ」
谷口は無言で歩き出した。
“お前達は、これから何処に行くんだ?”
キョンはにやっと笑いながら、そう尋ねた。
689名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:44:30 ID:c26ajX/H
おしまい
690名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:45:42 ID:+vYNaSTE
部室棟じゃないのか?
691名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:47:39 ID:+vYNaSTE
行き先がって意味じゃなくて、漢字変じゃね?ってことね
692名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:48:09 ID:c26ajX/H
アッー
693名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:56:22 ID:R9EIJ2u2
レールの上の3人の男を
おもいだした。
694名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:56:56 ID:Q8W+WF5o
『なんか意味深な終わり方しとけば誰かが深読みしてくれるだろ』な終わり方はいただけないなあ
695名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:05:10 ID:4Lfgkbt/
棟(とう)と錬(れん)の問違いは確信犯だろ




多分な
696名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:06:47 ID:qxGAalSr
というかパロ元のキノの旅もそんな感じだから
697名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:09:58 ID:c26ajX/H
言えない…素で間違えたなんて言えないよ
698名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:16:27 ID:ZxrXB2lu
言ってるじゃねえかw
つうか誤変換じゃないのにどうやって打ち込んだんだ
699名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:17:56 ID:MwWmGSOY
一応、キノは意味深っぽさが分かりやすくかかれてるしオチもある。
レールの〜だってある意味ブラックジョークだし。
せめて会った三人に関連性が欲しいなァ。
700名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:21:57 ID:+5qGkJ2+
ちょ、コレだけじゃ謎々なのか、普遍的な命題なのか考え込むのだが。
投げっぱなし?オチるまでがSSですよ
701名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:40:20 ID:c26ajX/H
ゴメン、もう少し細かく描写すれば良かった
まぁただの比喩です
長門は先読み
ハルヒは自分
キョンはアフターサービスってことで
702名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:51:50 ID:+5qGkJ2+
一応の答えを得て、胸のつかえはとれたッ!
703名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:53:38 ID:+46boHkn
あ、なるほどね
704名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:59:26 ID:zfTfqIoQ
naruhodo____                 ____                ____
      /⌒  ⌒\           ./⌒  ⌒\          ./⌒  ⌒\
    /( ●)  (●)\         /( ●)  (●)\       /( ●)  (●)\
   /::::::⌒(__人__)⌒:::: \   ./::::::⌒(__人__)⌒:::: \    /::::::⌒(__人__)⌒:::::\
, -‐ (_)    |r┬-|     | , -‐ (_)     |r┬-|     | , -‐ (_).   |r┬-|      |
l_j_j_j と)    `ー'´     / l_j_j_j と)    `ー'´     / .l_j_j_j と)    `ー'´     /


705名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 17:02:05 ID:+vYNaSTE
ごめん、説明されても分からない
706名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 17:03:10 ID:R+KZhvdk
ENOZモノやべぇ
光景が完璧に脳内再生された
GJすぎる
707名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 17:09:03 ID:Vpcp589A
ENOZモノと聞いてdできmすげえええええええええええええええええええええええええええええ
708名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 17:38:55 ID:fxVF6uac
なんというか、文章で描いてるよな
709名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 18:54:09 ID:OsvE5vYx
ちょっと変化球っぽい話。エロなし、たぶん10レス。


今日は不思議探索の日。午前の探索は不調に終わり、あたしは、いつものように古泉くんと、
いつもの喫茶店でお昼を食べていた。ま、不思議探しが好調だったことなんてないんだけど。

「まったく、なかなか不思議なものって見つからないわね」

空になったカレー皿を前に、お冷を一気飲みする。

「まあまあ。そう簡単に見つからないから、不思議って言うんですよ」

相変わらず醒めた話し方ね。その軽薄そうな笑顔も何かイラつくわ。
そんなことを考えてたからか、あたしを見ていた古泉くんが妙な顔をする。

「口が三角になってますよ」

うっさい。

「早く食べちゃいなさい。今日は、夕方からおじいちゃんとこに顔を出さなきゃ
ならないんだから、あまり時間がないのよ。あんたも来るんでしょ?」
「ええ。祖父が一緒に来いと」

まったく、その話し方なんとかならないのかしら。同い年なんだから、もっと砕けた調子で
話せばいいのよ。でも、そういや、何時からこんな話し方になったんだっけ、こいつ。
そんなことを思いながら、窓の外を見ると、見覚えのある姿が歩いていた。

「おじいちゃん……」
「え?」

あたしは急いで伝票を掴むと、席を立った。

「早く! 行くわよ」

喫茶店を出て、おじいちゃんが歩いて行った方向を見る。

「急にどうしたんですか、まだ食べ終わってなかったんですよ」
「黙れ」

そう言って、おじいちゃんの小さくなっていく背中を見つめた。
おじいちゃんが一人でこんなとこまで外出するなんて。
710名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 18:54:49 ID:OsvE5vYx
今日は、母親の実家に集まる日。毎年、決まった日に、あたしの家族と古泉くんの家族が
母親の実家に集まって宴会を開く。
あたしの母方のおじいちゃんとおばあちゃん、そして、古泉くんの父方のおじいちゃんは、
昔からの知り合いで、今でもとても仲がよく、昔からちょくちょく三人で集まっている。

あたしは、その母方のおじいちゃんが大好きで、子供の頃から、いつも母の実家で
おじいちゃんに遊んで貰っていた。
そこに、よく顔を出していたのが、古泉くんのおじいちゃんで、古泉くんもおじいちゃんに
連れられて、よく一緒に来ていた。
そのお陰で、あたしと古泉くんは幼稚園の頃からの腐れ縁。幼馴染ってやつ。

その集まる日――つまり今日――は、おばあちゃんにとっての特別な日らしく、
元々は、おじいちゃんとおばあちゃん、古泉くんとこのおじいちゃんの三人で集まって
宴会してたらしいんだけど、それぞれに子供が出来てからは、家族みんなも一緒に集まる
ようになった、と言うことらしい。

子供ができる前は、五人で集まってたって、いつだったかおじいちゃんが言ってたけど、
子供が生まれてからは、ずっと三人だったみたい。

それにしても、あの三人の雰囲気は、ただの友人じゃないと思わせるに十分なものだ。
高校時代から延々と何十年も繋がり続けている絆って、一体どんなものなのか想像もつかない。
ただの友情で、あの三人のような雰囲気になるとは思えないから。
戦友ってあんな感じなのかなと思わないこともないけど、本物の戦友を知らないので
何とも言えない。

みんなが集まると、食事をしながら、おばあちゃんを囲んで昔話に花を咲かせる。
そんな場に参加するのは正直面倒だと思うこともあるけど、あたしは、よほどの用事が
ない限り、ちゃんと参加するようにしている。
だって、おばあちゃんやおじいちゃんの話はとっても面白いんだもの。

だから、毎年、その集まりの日に、いつも遅れて参加するおじいちゃんを不思議に思っていた。
おじいちゃんとおばあちゃんは、傍から見ていて恥ずかしくなるくらいに仲が良く、
いつも二人一緒にいる。どこかに出かけるときも、二人一緒だ。
それなのに、その日、おばあちゃんの特別な日だけは、一人でどこかに出かけているようだった。
そして、おばあちゃんと古泉くんのおじいちゃんが昔話で盛り上がっているころに、
ひょっこり帰ってくる。
おばあちゃんも別に怒ったり残念がったりしないから、本当に何か用事があるんだと
思ってたけど、考えてみればおかしい。
なぜ、よりによってみんなが集まる日に出かけるんだろう。

その謎が解るかもしれない。
そう思ったあたしは、おじいちゃんを尾行することにした。

「ほら、ちゃっちゃと付いてきなさい」

古泉くんに声を掛けて、おじいちゃんの後を追う。これは謎を解くチャンスなんだから。
711名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 18:55:33 ID:OsvE5vYx
直線道路では、おじいちゃんの背中を見失わないように、十メートルくらい離れて歩く。
おじいちゃんが角を曲がったら、角まで走って行って、見つからないように様子を窺う。

「どこに行くんでしょう」
「解らないから、尾行しているんじゃないの」

おじいちゃんは、とことこと、一定のスピートで歩いていた。
周りを見回すことも交差点で迷うような素振りも見せない。まっすぐ前を向いて歩いている。

「あれは、行き先が決まっている人の歩き方ですね」
「そうね」

誰かと待ち合わせかも。そんなことを考えながら、あたしは、探偵にでもなったような
気分だった。こんな気分になるのも久しぶり。

しばらく歩いていると、見覚えのある道に入った。小学生の頃、よくおじいちゃんに連れられて
歩いた道だ。

「図書館ですかね」

古泉くんの囁くような声。そうだ、この少し先に市立図書館がある。
小学校低学年の頃、よく、おじいちゃんに連れられて通ったんだ。
そういえば、その頃、おじいちゃん言ってたっけ、図書館には不思議な扉があるんだって。

――図書館には誰にも見えない扉があるんだ

そんなことを考えてたら図書館の近くまで来ていた。図書館入り口から少し離れたところで
立ち止まり、おじいちゃんの姿を目で追う。

おじいちゃんは躊躇することなくそのまま図書館へ入って行った。

いくらなんでも図書館で人と待ち合わせるなんて面倒なことはしないわよね。
何か図書館に用事があっただけか、本でも借りに来ただけだったのか。
そう考えて、少しだけ気落ちする。ただの用事だったんだ。でも、一応、中を覗いてみよう。
偶然を装って声を掛けたら、驚くかもしれない。

「本を借りに来ただけだったようね。何かあると思ったのになあ」

そう古泉くんに話しながら、ロビーから閲覧室を眺めて、息を呑んだ。
思わず古泉くんの腕を引っ張って、閲覧室入り口の壁に身を隠す。
周りの人から変に思われるかも知れないけど、気にしている場合じゃない。

おじいちゃんが、制服の女の子と一緒にイスに並んで座っていた。

「……これはこれは」

古泉くんも驚いているようだ。いや、たまたまかもしれない。そう、たまたま相席に――

「でも、空いてますよ」

うるさいわね。
でも、そうだった。閲覧室は空いていた。空いているのに、二人で並んで座るなんて、
知り合いだとしか思えない。どういうことなんだろう。
まさか、たまたま一人でいた女の子にちょっかいを掛けているなんてことはないわよね。
712名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 18:56:17 ID:OsvE5vYx
制服の女の子は、電話帳のような分厚い本を広げていて、おじいちゃんは、どこか楽しそうに、
そして、懐かしそうにその娘を見ている。

「あの娘の制服、この辺じゃ見かけませんね」

そうだ、あの制服、見かけない制服だ。この辺の学校じゃないわね。
何処となく古めかしい感じの夏服。でも、どこかで見たことあるような。何処で見たんだっけ?
あたしと同じくらいの年頃にみえるから、高校生だと思うんだけど。
この辺の高校といえば、あたしたちが通っている北高も、光陽園も、あの制服とは違う。

ふと、その娘が顔を上げ、おじいちゃんを見た。

ショートカットの理知的な顔。表情の薄い、でも整った顔立ち。
おじいちゃんを見たとき、その顔が、少しだけ微笑んだように見えた。

「美人ですね。無表情なのが残念なくらい」

くやしいけど同意するわ。何でくやしいのか解んないけど。

おじいちゃんが、その娘に耳を近付け、何か聞いている。
そして、その娘に何か言って、その娘が頷いている。頷き方も何ていうか微妙な動きだ。

「人形みたいな娘ね。何を話しているのかしら」
「興味がありますね」

何を話しているのか気になるけど近付けない。閲覧室に入ると、それだけで気付かれそうだ。
別に、あたしが何かしているわけじゃないんだから、見つかってもいいはずなんだけど、
何となく、見つかったら困ったことになるような気がする。

「でも、何というか、絵になる光景ですねえ」

そうポツリと古泉くんが呟いた。

午後の日差しの中で静かに本を読んでいる少女と、その少女を慈しむように見ている
おじいちゃん。

あの二人はどんな関係なんだろう。ちょっと想像がつかない。

少しして、その娘が立ち上がった。何というか、無駄のない動きって言うか、
音も立てずに歩く、そんな感じで、読んでいた本を持って書架に向かった。
そして、手ぶらで戻ってきて、おじいちゃんの側に立った。

よっこらしょって言葉が聞こえそうな素振りで、おじいちゃんが席を立ち、二人で並んで
こちらに向かってくる。

「こっちにくるわ。隠れるわよ」

ロビーの隅にあった大きな鉢植えの木の陰に隠れて、おじいちゃんたちが出てくるのを待つ。
少しして、おじいちゃんと制服少女が二人並んで図書館を出て行った。気付かれた様子はない。
ほっと息を吐く。

でも、おじいちゃんの顔。あんな表情は見たことない。
懐かしそうで嬉しそうなんだけど、少しだけ哀しそうな、そんな顔。

「あの二人、手を繋いでましたよ」

まったく、どういうことなのかしら。

「追うわよ」
713名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 18:57:04 ID:OsvE5vYx
おじいちゃんと制服少女が歩いていく。傍目には、おじいちゃんと孫にしか見えない。

「あの二人、どんな関係なんでしょうね」
「解らない。けど、ただの関係ではなさそうね」
「まさか、隠し子とか」
「あんた、何言ってんのよ。そんなこと、あるわけがないじゃない」

そう、おじいちゃんは、おばあちゃん一筋なんだから。

「でも、何か只ならぬ関係に見えるんですが」
「たしかにね。でも、隠し子なんて……」

そんなことがあれば、あのやたら察しのいいおばあちゃんが気付かないはずがない。
そして、気が付いていれば、おじいちゃんが無事で済むとは、とても思えない。

うーん、そう唸って、古泉くんが何か思いついたように言った。

「あ、もしかして援助交際――」
「それ以上くだらないことを言ったら、その軽薄な顔、叩き潰すわよ」

しばらくすると、駅前の公園に着いた。おじいちゃんが公園近くの自動販売機で缶コーヒーを
買い、二人で公園に入っていく。

「わたしたちも行くわよ」

二人はすぐに見つかった。公園のベンチに二人で座っている。何か話しているようだ。

わたしたちはおじいちゃんに見つからないように、回り込むようにして、ベンチが見える
藪の中に身を潜めた。

「しかし、あの娘、本当に表情がないですね」
「そうね」

本当に人形のよう。おじいちゃんが何か話しかけると受け答えするみたいなんだけど、
表情がまったく変わらない。そして、おじいちゃんがそれを当然のように見ている。

おじいちゃんと制服少女は、缶コーヒーを飲みながら、少し言葉を交わすと、
無言のまま二人で空を見上げ、またしばらくして、一言二言、言葉を交わすって感じで、
どうも、自然に見えない。

知り合いなら、もう少し会話が弾むもんじゃない?
まさか、本当に、今、知り合ったばかりなんて言うんじゃないでしょうね。

いや、あの二人がここに来るまで、何の迷いもなく、会話もなく、まっすぐここに来た。
ということは、あの二人は最初からここに来る予定だったとしか思えない。

それに、あの娘のお爺ちゃんを見る目が気になる。まるで、恋人でも見ているような感じ。
おばあちゃんがおじいちゃんを見る目に似てる。

「そうですか? 僕には、ただ無表情にしか見えませんけど」

違うわ。あれは恋する乙女の目よ。
そうだとしても、おじいちゃんが相手にするとは思えないけど。
714名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 18:57:47 ID:OsvE5vYx
そうしているうちに、その娘が、俯いたまま、お爺ちゃんに寄り添うように身体を寄せた。
おじいちゃんは驚くこともなく、自然に、その娘の肩を抱いている。

な、なにしてんの、おじいちゃん!
ここに警官が通りかかったら、青少年保護条例違反で、捕まっちゃうでしょうが。

「こうしてみると、まるで恋人同士みたいですね」

ほらね、そう思うでしょ? って、恋人同士? おじいちゃんが女子高生と?
何言ってんのよ、あたしのおじいちゃんは、ロリコンじゃないわよ。
相手が好きになるのは勝手だけど、おじいちゃんが女子高生とか相手にするわけないでしょ。

「でも、何か良い雰囲気ですよ」

そんなはずないわ。大体、おじいちゃん何歳だと思ってんのよ。

「いや、男は死ぬまで大丈夫ですから」
「何がよ! やらしいわね!」

しまった。思わず大声を上げてしまった。

見ると、おじいちゃんがこちらに視線を向けている。
やば、見つかったかも。そう思いながら、古泉くんを引っ張って慌てて公園から出る。
驚いた、胸がどきどきする。

「あんたねえ、あんたが変なこと言うから……」
「あ、移動するみたいですよ」
「え?」

公園の中に視線をやると、おじいちゃんと制服少女が二人で歩き始めていた。

「まさか、あの二人、このままホテルに――」
「それ以上くだらないことを言うと、その口を永遠に塞ぐわよ」
「あ、公園を出るみたいです」

急いで、二人の後を追う。
公園を出た二人は、近くの結構前に改装された古いマンションを見上げた後、
そのまま、駅前まで行き、駅近くのホテルに入っていった。
少し前にできたばかりの高級ホテルだ。間違っても若い男女が好んで利用するようなホテル
ではない。ないんだけど、ホテルであることには、間違いはない。

「…………」

どういうこと?
おじいちゃんが図書館で女子高生と待ち合わせて、公園に来て、二人でホテルに入った?
715名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 18:58:28 ID:OsvE5vYx
あたしは、思わず、古泉くんの胸倉を掴んでいた。

「一体、どういうことなのよ!」
「ぐ、苦しい、お、落ち着いてください。僕は何も……」

あたしはそのまま古泉くんを引き摺るようにして、ホテルの前まで行った。
入り口からロビーを窺う。ロビーにはいないようだ。

「なんてことかしら」
「どうします?」
「決まってるじゃない。フロントに行って、部屋を取っているか訊くのよ!」
「ホテルのレストランに行ってるかもしれませんよ」
「だから、それを確認するんじゃない。しゃきっとして。キョロキョロしちゃだめだからね」

そう言うと、あたしは、あたふたしている古泉くんの腕を取ってそのホテルの玄関に入ると、
そのまま、フロントカウンターに向かった。こういうときは、堂々としてればいいのよっ。

ロビーを横切ってフロントに向かい、

「すみません。あの、こちらに――」

と、おじいちゃんの名前を出して、宿泊していないか訊いた。

「ご宿泊でございます。お呼び致しますか?」

あたしは呆然としていたのかも知れない。古泉くんに腕を引っ張られて、はじめて訝しげな
視線に晒されていることに気が付いた。ま、まずいっ。

「す、すみません。何でもないんです。ありがとうございました」

そう一礼して、慌てて出口に向かう。頭の中が混乱していた。

――おじいちゃんが女子高生とホテルにご宿泊ですって?

そのままホテル近くの喫茶店に入り、空いてる席に座る。息が上がって喋れない。
古泉くんがアイスコーヒーを二人分注文した。その間に息を整える。

「どどど、どういうことよ?」
「まあ、水でも飲んで落ち着いてください」

目の前のお冷を一気飲みする。

「これが落ち着いていられるかってーの。お呼びしますかって言われたのよ?
ってことは、今、部屋にいるってことじゃないのよ」

おじいちゃんと女子高生が、ホテルの部屋で、一体何してるってゆーのよ?
716名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 18:59:10 ID:OsvE5vYx
「いやあ、でもすごいですね。老いてなお盛んとは――」
「それ以上何か言ったら、その口にタバスコ放り込むわよ」

それに、おじいちゃんがそんなことをするとはとても思えない。お母さんからは、
若いときから浮気一つせず、おばあちゃん一筋だって聞いてるんだから。

「でもですね」
「でも、何よ?」
「男なら一度くらい……、その……、いえ、何でもありません」

まさか、本当に援助交際とかしてんじゃないでしょうね。
いや、おじいちゃんにそんな甲斐性があるわけない。甲斐性の問題じゃないけど。
それに、おばあちゃんに見つからずにことを運ぶなんて不可能だわ。

でも、援助? そうか。

「あれじゃない? たとえば、あの娘は、おじいちゃんの昔の知り合いの子供か孫で、
何か事情があって、おじいちゃんがあの娘の後見人になってるとか」
「そうですかねえ。そうなら、なぜ一人でこっそり会ったりするんでしょう。
それに、もしそうなら、同じ年頃の僕たちにも紹介してくれるんじゃないですか、普通」
「……でも、きっと何か隠さないといけない事情があるんだわ」
「たとえば?」
「たとえば……、何か良く解んないけど、きっと何か事情があるのよ。そうに決まってるわ!」

当たり前よ。事情があるに決まってる。
援助交際なんて、いくらなんでも、あのおじいちゃんがそんなことするはずがない。
それに歳を考えなさいよ、歳を。自分の娘どころか、孫よ孫。考えられないわ。
ロリコンにも程があるってもんよ。

「…………」

ダメだ、考えていても埒が明かない。うっかりすると、おじいちゃんとあの娘がベッドで
絡み合ってるとこを想像しちゃうじゃないのっ!

あたしは、アイスコーヒーを一気飲みして、席を立った。

「今日のことは、内緒よ、内緒。絶対内緒。
あんたもあんたのおじいちゃんに、うっかり喋ったりするんじゃないわよ?」
717名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 18:59:58 ID:OsvE5vYx
家に帰ったら、お母さんに文句を言われた。

「遅いじゃない。何してたの? 今日は、おばあちゃんの家に行く日なんだから。
おばあちゃんが時間に厳しいのは、あんたも知ってるでしょ。早く準備しなさい」

適当に返事して、自分の部屋に向かう。

「また不思議探しとかしてたんでしょ、古泉くんと。本当に変なとこばっかり、
おばあちゃんに似たんだから。普通にデートすればいいのに」

ふん、いいじゃない別に。それに今日はそれ所じゃなかったんだから。


約束の時間を少しだけ過ぎて、おばあちゃんの家に着いた。
おばあちゃんはリビングにいたけど、やっぱり、おじいちゃんはいなかった。
どうしても気になるので、昔のアルバムを開いていたおばあちゃんに訊いてみる。

「おばあちゃん、おじいちゃんは?」
「何か大事な用事があるからって出かけたわ。夜には帰ってくるでしょ」

大事な用事か。そうね、おじいちゃん、制服姿の女子高生と会っていたんだもの。
ホテルの部屋まで取って。そのこと、おばあちゃんは知っているのかしら。
ううん、知ってたらきっと大騒ぎになってるはずだわ。

そう思いながら、おばあちゃんの横に座る。やっぱり、おばあちゃんには黙ってたほうが
いいわね。後で、おじいちゃんにこっそり訊いてみよう。

そう考えて、何気なく開いていたアルバムに視線を移して、その直後、驚きで息が止まり
そうになった。

おじいちゃんと会っていた制服少女! 同じ制服。同じ髪型。同じ顔。

その写真には、高校生時代のおばあちゃんやおじいちゃんと一緒に、あの制服少女が写っていた。
そうだ、あの制服。どこかで見た覚えがあると思ってたら、おばあちゃんが通っていた頃の
北高の制服だったんだ。
718名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:00:46 ID:OsvE5vYx
息を止め、写真を凝視しているあたしに気が付いたのか、おばあちゃんが、アルバムのページを
捲りながら、順番に写真の説明をしてくれた。でも、あたしは何も聞いていなかった。
ショートカットの無表情な娘の姿ばかりを目で追ってしまう。
この娘、おじいちゃんとどんな関係だったのだろう。それが気になって仕方がなかった。

あたしの視線に気が付いたのか、おばあちゃんが、その娘を指差しながら説明してくれた。

「この娘はね、あたしのお友達で、おじいちゃんの親友なの。きっと古泉くん以上の」

そう言って、おばあちゃんは、少しだけ目を伏せた。

「古泉くんのおじいちゃん以上の親友って……。で、今はどうしているの?」
「さあねぇ、どうしているのかしら。おじいちゃんは知っているかもしれないけどね、
あたしはもう随分会ってないから」
「…………」

あたしは、今日見たことを訊いたほうが良いんじゃないかと思い始めていた。

お爺ちゃんに寄り添ってた制服少女は、この写真の人に間違いない。
でも、この写真は何十年も前の写真。あの娘は、この写真の人の孫なのかしら。
いや、それにしては、この写真の人と似すぎている。まるで生き写しだ。
いくら血が繋がっていると言ってもここまで似るとは思えない。それにあの制服。
まるで、この写真の時代から何一つ変わってないような……。
まさか幽霊? そんな馬鹿な。でも、そうとしか思えない。やだ、鳥肌が立ってきた。

あたしがぐるぐるループ気味にあの娘のことを考えていると、おばあちゃんが、

「でも、きっと元気でやってるわ。今頃はデートでもしてるんじゃないかしら」

そう言って、写真を撫でながら慈しむような表情で、

「今日は年に一度の七夕の日……、あの娘の記念日でもあるんだもの」

穏やかに微笑むおばあちゃんを見て、唖然としてしまった。

おばあちゃんは、おじいちゃんとあの娘のことを、今日、おじいちゃんとあの娘が
会っていることを知っているのかもしれない。そして、それを許しているようだ。

あれは、おじいちゃんとあの娘の、年に一度だけ許された逢瀬なんだろうか。
そうかも知れない。でもそうだとして、じゃあ、あの娘は一体何者なんだろう。

そう考えたとき、唐突に、本当に突然に、いつかおじいちゃんが言ってたことを思い出した。

『この図書館には誰にも見えない扉があるんだ。そして、年に一度だけ、その扉を通って、
一人の宇宙人がやってくるのさ。昔のままの姿で、別れた古い友達に会うためにな』


―おわり―
719名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:06:21 ID:Q8W+WF5o
『あたし』より『わたし』のがいい。
720名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:07:12 ID:1kIi0rJx
>>709
リアルタイムキタ━(゚∀゚)━!!
途中でハッとしてからずっとニヤニヤしっぱなしだったw
上手いwGJ!!
721名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:09:17 ID:pxgFXaKg
ニレス目でネタが読めてしまった俺は負け組…。
722名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:13:40 ID:4iRFvkm7
キョンの生涯現役っぷりに恐れおののいた
723名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:16:08 ID:+46boHkn
俺も2レス目でネタバレしてたけど、最後まで楽しく読めた。
なんかほのぼのしてて良いな。
724名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:30:14 ID:+5qGkJ2+
ハルヒの遺伝子が強すぎだな、完全にキョンを駆逐してるw
ノスタルジーとほんのり切ない読後感がラムネみたいでした。良かった!
725名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:33:03 ID:URh2ApAP
いいんだ、時間を超えて会いに来たのとかは


爺 と ホ テ ル で な に し て た ん だ
726名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:36:29 ID:ifIYzgXa
ハブられてるみくるカワイソス…
727名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:36:46 ID:78fB2Kx6
よし、みくると会ってた事にしよう
728名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:40:31 ID:hUTvLXFS
古泉の婆さんは一体誰だのかも気になる
729名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:41:39 ID:NqbQbgO1
>725

>爺 と ホ テ ル で な に し て た ん だ

カレーを喰っていた。
と信じたい。
730名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:43:22 ID:r0wa2/I4
>>728
森さんかちゅるやさん
731名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:44:04 ID:BfpUlaoN
そう言えば、これもホモ泉じゃない話なんだな。
732名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:45:18 ID:4iRFvkm7
鶴屋さんなら一緒に宴会にくるだろうから森さんということで一つ
733名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 19:49:37 ID:hUTvLXFS
そうななると、古泉×森さんのラブラブ話も読みたくなるな
734名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 20:04:06 ID:+5qGkJ2+
夜伽のイロハを叩き込む話なら保管庫にあるぞw
735名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 20:14:44 ID:BxNtlsCu
>>729
に脱糞した。
736名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 20:24:28 ID:d1ff0cV/
三代目古泉はそれこそエロゲの主人公みたいだな
73713-73:2006/07/23(日) 20:51:02 ID:+M8fs7+d
ちょっと投下しますよ。
生粋のハルヒ萌えの俺が長門メインで書いてみました。

んー?なんだろ今回もある意味オリキャラのような?まあ、パロディだと思ってくれww




あ、あと前回は申し訳ありませんでした。
気を害された方には切にお詫びさせて頂きます。

それでは、投下開始
738宇宙の果からはるばると:2006/07/23(日) 20:52:03 ID:+M8fs7+d
期待を込めて自分の勉強机の引出しを開けた経験をもっている人間ってのは、少なくないんじゃないだろうか?

別に、“三日前の自分と、六日前の自分の姿が目の前から消える経験”なんてものがなくても、ほんの少しだけ期待をこめて引き出しを引いた人間というのは、俺以外にもいるんじゃないのかと思いたい。

勿論引出しを開けたからと言って、そこにはタイムマシンなど置かれているはずもなく、俺は今日も極々一般的な高校生活というものを営む破目に陥っている。
しかし、全く信じることが出来なかった赤服のじーさんの存在よりも、子供の頃の俺にとって青狸の存在の方が、幾分か現実的に思えていたことは揺るぎ無い事実だった。





気持ちの良い木漏れ日が、我等が北高部室棟に降り注ぐ。

この学校で唯一の文芸部員である俺は、日当たりの良い文芸部室で欠伸をともないながら、ゆっくりと伸びをする。
文芸部なんてものに所属している俺ではあるが、入部以来、文芸的な活動をした記憶と言うものは頭の中に全くといって良い程存在しておらず、先程まで寝床となっていた机の上にある分厚い本もただの枕代わりである。
何故、俺が文芸部などという弱小文化部の部室なんかに居るかと言うと、そこにあるのは単純で面白くもない理由のみである。

何故だか知らないが、この学校では帰宅部というものが許されておらず、形だけでも何かの部活に所属しなければならない。
迷った末に、俺が選んだのが新入部員0で廃部寸前だったこの文芸部である。
まあ、たまに暇をつぶしたりするには丁度良い空間だ。



「今日は良い日になってほしいもんだな」
そんな既に人生を悟ってしまったサラリーマンのような台詞をぽつりと呟く。
最も「良い日になって欲しい」なんてことを言ったが、既に時間は放課後であり、実質的な帰宅部員達は家路につく時間である。
では、半ば帰宅部員の俺が何故こんなところにいるのか?
そこには明確な理由がある。
それは……そのまま家路についたとすると十中八九──もっと確立が高いかも知れん──校門で悪いことが起きそうだったからである。
いつものようにチャイムと同時に帰宅を敢行していたら、確実にあいつに捕まっていただろう。
──黙ってたら美人なのにな。
俺は教室で常に俺の背後を陣取っている生徒に思いを巡らせ、深く溜息をついた。
739宇宙の果からはるばると:2006/07/23(日) 20:52:42 ID:+M8fs7+d






「……あなたは、今日一日ろくな目にあうことはない」
突然。
その声が聞こえてきたのは本当に突然だった。

な、なんだ?とうとう俺の頭がおかしくなったか?幻聴か!??


「あなたは30分後、後頭部を殴打される」
無機質なその声が続けて部室に響きわたる。
「40分後には窒息寸前にまで追いこまれる」

──what's?この展開はなんだ、ドッキリか?この声はいったい誰のものだ?
俺の頭上を馬鹿みたいな数のクエスチョンマークが駆け巡っている。


「誰だ!変なことをいいやがるのは。出て来い」

掃除用具入れがガタリと、音を立てた。


「…………私」
「………………」
「気に障った?」







それが、俺と彼女の出会いだった。
740宇宙の果からはるばると:2006/07/23(日) 20:53:32 ID:+M8fs7+d




制服の淡いブルーが印象深い。春だと言うのに彼女はカーディガンを羽織っていて、その色がいっそう青を引き立てていた。
見なれた青いスカートと、胸元で結ばれた赤いリボンが白地の部分に映えていた。
──なんで青についてこんなに描写してるんだ、俺は?普通の北高制服じゃないか

「だ、誰だ?」
「どこから来た?」
「何しに?」
「どうしてそんなところから?」
全ての質問を挙げていたら日が暮れてしまうだろう。疑問の数は限りがなかった。


「私は…………狸ではない」
いや、それは見りゃ分かる。どっからどう見たとしても狸には見えん。
「そんなことは……どうでもいいこと」
いや良くない、良くない。なるべくで良いから、分かりやすく俺に説明をしてくれ。
「私はあなたを恐ろしい運命から救いに来た」
「さっき言ってた30分後にどうたらってやつか?」

注視しないと分からない程、微細に目の前の少女が首を振る。
「あなたは歳をとって死ぬまで、ろくな目にあわない」
今までの人生、大して良いことがあったとは言えないが……これからの人生まで勝手に決め付けない欲しいもんだな。
「どうしてそんなことが分かる?」


目の前の少女は俺の疑問に答えてくれる気はないのか、その視線を一点に集約していた。
昼休みに購買にて購入した和菓子、件の青狸の好物のあの和菓子。銅鑼焼きだ。
「食いたいのか?」

再び彼女の首がこ微細に動く、気のせいだろうか先程より意思がこもっている様に思える。
俺が、袋ごと手渡すと、まるで初めて見たもののように彼女の口がおそるおそる動いた。
「美味いか?」
「ユニーク」
「どういうとこが」
「ぜんぶ」
「……そうか」



…………



どれだけの時間がたっただろうか?銅鑼焼きを完食した目の前の少女が沈黙を破る。

「私は、この銀河を統括する情報統合思念体によって作られた対有機生命体コンタクト用“ネコミミつき”ヒューマノイド・インターフェース」
……先程から非常に気になっていた事なのだが、彼女の短い髪のその頭には何故か黒い動物の耳を象ったような物体が付着していた。
なんでわざわざネコミミがついてるんだ?俺にはネコミミ属性はないぞ。


「だいじょうぶ」
目の前の少女がこちらを見つめる。眼差しは今まで比べようがないほど真摯だ。
「取り外しが可能」


……さいですか。
741宇宙の果からはるばると:2006/07/23(日) 20:55:42 ID:+M8fs7+d

さて、疑問は殆どと言って良い程解決していない。それどころか、むしろ増えているかも知れない。
でもまず初めに聞かなければいけないことがあった。
「あんたの名前は?」

「長門有希」

──ナガえもん か。
未来からやってきた猫型ロボットならぬ、宇宙からやってきたネコミミつきヒューマノイドインターフェース。
我ながらネーミングセンスというものがない。

「そう呼んでもらっても構わない。固体名称は些末な問題」
おっと、知らないうちに声に出して呟いていたらしい、長門が微細な反応を返してきた。



「さっき俺の人生が分かるようなことを言っていたな。それはなんでだ?」
「同期の結果」
──同期?

「あなたは今から8年後に生涯の伴侶を得る」
「誰が相手だ?朝比奈さんか?」

俺は若干の期待を込めて憧れの先輩の名前を出す。
朝比奈さんこと、朝比奈みくるは北高のアイドルだ。
入学式に見かけた可憐なその姿に一発で惚れこんだ俺だが、彼女にはなんとファンクラブまで存在しているようで──よく現代にそんなものがあるよな……──そんな人を将来の伴侶候補としてあげてしまうのは自惚れも良い所かもしれない。

「違う」
長門の無機質な声が続き、聞きたくはなかった言葉をその口から紡ぎ出した。
「涼宮ハルヒ」
742宇宙の果からはるばると:2006/07/23(日) 20:56:24 ID:+M8fs7+d

涼宮ハルヒ……いつもいつも不機嫌顔で、何かしらの問題ごとを俺にもたらしてくれる女だ。
以前“あんたのものはあたしのもの、あたしはあんたの……何でもないわよ!!”なんて本家も真っ青な利己的な理論を展開していたことからもどんな人間か推測できるというものだ。──後半は何やらゴニョゴニョ言って聞き取れなかったけどな──

俺が現在部室に留まっている理由もあいつのせいだ。
腰巾着の古泉一樹とともに野球大会をやるとか何とか喚いていたので、部室に寄らないで帰宅の途についていたら、校門のところで首根っこつかまれて無理やり参加させられていただろう。

「俺はあいつのことが好きじゃない」
「これがあなたの結婚写真」

嘘だ。何かの間違いだ……
「帰ってくれ!そんなもん信じられるか」
気がつけば俺は怒鳴り声をあげていた。



「…………そう」
長門は無表情に掃除用具入れの戸を開くと、小柄な身体をしまいこんで扉を閉めた。
その表情が少しだけ寂しそうに見えたのは、多分俺の気のせいだろう。





「くそっ!!!!」
自分への叱責と、知りたくもない未来を知ってしまった怒りをぶちまける。
拳をテーブルに叩きつけたら、驚くほどの音がした。
743宇宙の果からはるばると:2006/07/23(日) 20:57:15 ID:+M8fs7+d

──コンコンっ
控えめなノックの音。掃除用具入れからのものではない、普通のドアからだ。
「はい?」
投げやりな態度で返事をする。
「失礼します」
舌っ足らずな雰囲気のその声に、俺は姿勢を正した。
グラマラスなボディーに、見るもの全てを虜にしてしまいそうな笑顔。朝比奈さんが扉の前に佇んでいた。
「すっごく大きな音がしましたけど、大丈夫ですかー?」

何と答えるべきだろうか

「えーっとですね……そこの扉からいきなり宇宙人が飛び出してきて……俺の人生絶望みたいなことを言われまして……ははは、夢だと思うんですけどね」
うん、殆ど曲解することなく事実が伝えれたな。
問題は、多分さっきの出来事は高確率で、夢ではないと言うことだけどな。


「ふふ。怖い夢を見たんですね」
朝比奈さんが興味深げに掃除用具入れを開ける。当たり前のように、そこにはモップや箒の姿しか見当たらない。
「大丈夫、キョン君は幸せになれますよ」
貴方が俺の花嫁になってくれれば、どんな苦難がこの身に降り注ごうと俺は幸せでいられる自身がありますよ。
「でも、凄い空想力ですね。小説家になったら大成するんじゃないですか」

朝比奈さんが微笑んでくれた。
それだけで、「今日一日ろくな目にあわない」と言うことの反証には充分だった。






──まあ結果から言うと、その日はろくな目にあわなかったけどな
744宇宙の果からはるばると:2006/07/23(日) 20:57:55 ID:+M8fs7+d

「30分後、後頭部を殴打とか言っていたな……」
朝比奈さんが去り、一人になった部室で頭をフル回転させる。
この部屋に凶器になりそうな鈍器というものは多分ない。
たまに枕になってくれる分厚い本達が、本棚には陳列されているが、ガラスの窓はそれらの落下を防いでくれるだろう。

ということは、暴漢でも押し入ってくるのだろうか?
馬鹿馬鹿しいと思いつつ、ドアに鍵をかける。念には念をいれることが重要だろう。

時計の針はもう少しで、先刻から30分を迎えようとしていた。

「やっぱり俺の夢だったのか……?」
椅子に座りこむと、グラウンドの方からランニングする陸上部の掛け声や、野球部のものだろうかバットの快音が聞こえてきた。


時計の秒針がじれったい速度で進んでいく。
30分まで、あと、10……

3…
2…



「ぐはっ」
ガラスが砕け散る大きな音が耳に届いたことまでは記憶している。
多分、俺が意識を失ったのと、ほぼ同時だったんだろう。
薄れいく意識の中。俺は長門の言っていた事が事実だと悟った。
745宇宙の果からはるばると:2006/07/23(日) 20:59:17 ID:+M8fs7+d

っつ……
俺は後頭部に出来あがったこぶを撫でながら立ち上がる。

窓からボールがつっこんでくるなんて反則だろ……


「……当たっちまった」
俺は長門の予言どおり30分後に頭部を殴打された。

床に凶器の硬球野球ボールが転がっている。そして、その側には長門の置いていったアルバムがあった。



これには俺の未来が映っているはずだ……
俺はおそるおそるそのページを開いた。

18歳──涼宮ハルヒの家庭教師のお陰で無事に国立大学に入学──
22歳の時──涼宮ハルヒと供に会社を起こす──
27歳の時──ハルヒの考案した商品がヒット、会社急成長──
29歳の時──株価が大暴騰を起こし、会社更に成長──

……くそっ本当にろくな目にあってな………い、か?
目を瞬いてみるが、アルバムに貼られた写真に変化はない。
写真をよく見てやる。
そこに映る俺は、どの表情もやれやれと言った顔をしていたが、なんだかとても幸せそうに見えてしまった。



「…………困る」
「うぉっ!?」
いつの間にやら掃除用具入れの扉が開いていて、目の前には長門が立っていた。
「涼宮ハルヒには自律進化の可能性があり、あなたと結ばれることによってその可能性が消滅する。その為、情報統合思念体はあなたの未来を改変し、可能性の消滅を防ぐことを望んでいる。それが私がここにいる理由」
なんというか、ご都合主義というか。なんかここまでの話とその話に違和感があって、言い訳がましくないか?
「…………気のせい」
嘘をつくな、嘘を。ほら、目を反らすんじゃない。
746宇宙の果からはるばると:2006/07/23(日) 21:00:54 ID:+M8fs7+d




いや、確かに今の俺はハルヒを好きではないんだが……
「それに、私という個体もあなたが一人身でいて欲しいと望んでいる」
長門が真っ直ぐこっちを見ていた。吸い込まれてしまいそうに澄んだ瞳だ。










「すいませーん!!ボール取りに来ましたー」
聞き覚えのある声とともに、ドアがノックされる。

その声に俺は鳥肌がたってしまった。朝比奈さんの時とは大違いだ。
「あら?開かないわね。蹴破っちゃおうかしら」
その常識を欠いた発現で、扉の前の人物推測が確信へと変化する。

扉を開けたいとは全くもって思わなかった。
ひょっとすると俺にホームランボールをぶつけてきたのもこいつなのかもしれない。

しかし、扉が破損したら後々面倒なことになるだろう。
ああ、畜生。
俺は悪態をつきながら、扉を開けた。




開いた扉の向こうにいたのは誰かって?言うまでもないだろ?涼宮ハルヒだ。
747宇宙の果からはるばると:2006/07/23(日) 21:01:38 ID:+M8fs7+d


「ってなんで、あんたがここにいるのよ」
俺の姿を見た途端、ハルヒはかぶっていた猫を脱ぎ捨てた。
「ここが文芸部だからだ」
「その娘は?」
ハルヒは目ざとくも長門の姿を見つけたらしい。
「…………」
「あー、えーっと……」
なんと説明したらいいんだろうか?馬鹿正直に言ってもからかいの種にされるだけだろう。
「……転校生」
ボソリと長門が呟いた。ナイスフォロー、長門。
「ふーん。それで、あんた今暇?」
納得したのか、していないのか、よく分からない不機嫌顔でハルヒがこちらを見つめてくる。
「暇じゃない」
別段用事なんてないのだが、危険を察知して俺は嘘をついた。
「まあ、どっちでもいいわ」
いや、よくないだろ。人の話を聞け。
「我がハルにゃんズのピンチなのよ」
ハルにゃんズ──こいつの作った野球チームだったか?
「メンバーが足りないから特別にあんたを参加させてあげるわ」

「断る」
「何よ!キョンのくせに生意気よ」
“俺のくせに”とはどういう意味だ。人格の全否定か?
「ともかくあんたには参加してもらうわ」
「そもそも俺は野球なんかまともに出来んぞ」
「そんなことどうでもいいのよ」

ハルヒは俺のネクタイをつかむと、信じられないような力で引っ張り出した。
「さ!行くわよ!」
うおっ、止めろ!首が締まる!!死ぬ!!死ぬ!!


40分後に窒息寸前……

ヤバイ、マジヤバイ。離せハルヒ!かなり息苦しくなってきた。


いじめっ子に追い詰められた主人公はどうするのか?
解答は明白だ。青狸に助けを求めるのだ。
「ハルにゃんがいじめるよ……助けて……ナガえもーん」
かすれた声で呟いてみる。
我ながら情けない、俺はいじめられた弱気な少年か……

本棚に並べられた分厚い本を興味深げに眺めていた長門がこちらに向かって、歩みを進める。
748宇宙の果からはるばると:2006/07/23(日) 21:02:31 ID:+M8fs7+d

「大丈夫」
長門の声にハルヒが振り向き、首にかかっていた圧力が消える。
「バッドの情報を改変した。あなたでもホームランを打つことが可能」


いや、そこは問題じゃないだろ!














幾分弱まった首の負荷に感謝しつつも、去っていった長門の方に目をやる。
まるで宝物でも扱うかのように、大事そうに本棚に手をかけている小さな姿が目に入った。

──あいつは本当に頼りになるのか?


これから俺はやりたくもない野球に参加させられ、予言どおりろくでもない一日を過ごすことになるようだ。


やれやれ……
俺は大きく溜息をつくと、晴れ渡った青空を仰いだ。



〜the end〜
749名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 21:03:51 ID:qxGAalSr
キョン勝ち組じゃないかw
75013-73:2006/07/23(日) 21:04:58 ID:+M8fs7+d
以上。
お粗末さまでした。

ハルヒがたまに、この国民的アニメに例えられたりするからパロってみた。

…あれ?長門ものだよね?ハルヒものじゃないよな?

751名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 21:05:43 ID:HU3A1GsA
こういうの好きだ
752名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 21:06:45 ID:4iRFvkm7
ほのぼのでいいな。
ただ、人間関係がよく解らんが…
753名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 21:10:09 ID:xK73SZEd
ハルヒ世界に神田君出てくるのかとちょっと期待したけど
パラレルハルヒ世界か、まあ悪くないね
754名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 21:12:25 ID:4iRUhyi5
長門はハルヒからキョンを奪って自分のものにするためにやってきた・・・でFAかな?
まあ違っててもそういうことにしておこう。
75513-150:2006/07/23(日) 21:40:43 ID:URh2ApAP
ENOZ大作に感動しつつ箸休め4レス投下
気に入らなかったらスルー、気に入ったらモニタの前でニヤニヤプリーズ
756涼宮ハルヒの○天国5:2006/07/23(日) 21:43:40 ID:URh2ApAP

 あー…なんだろう…、身体も思考もグッタリだ…。
 こういうのを鬱と言うんだろうな。
 おかしいなあ。
 今はこの家に、ご町内トップクラスの美少女が集結してるというのに。
 しかも全員何かしらのイベントフラグを俺に立ててるのに。

 設定が『妹』ってのがな…。俺はシスコンじゃないしな…。
 どんなに美少女でも妹は妹以上には見られん。
 長門オンリーの特殊設定『精神的妹』も、実を言えばあまり有効とは思えん。
 実際に今までSOS団関係者を「そう見ていた」わけだしな。

 飯を食い終えてからそそくさと部屋に戻り、
 ベッドの上でうだうだしながら愚痴り三昧。
 二ケタ台に突入して久しい溜息カウントをもうひとつ+。

 …コンコン
 「キョン兄〜。入っていーかいっ?」
 「…はぅ〜ん」
 そうこうしているうちに、どうやら1stイベントに遭遇したらしい。


『 五女 朝比奈みくるさん(7才)& 長女 鶴屋さん(11才)の場合 』


 お風呂上りらしいしっとりした髪をキラキラさせながら、
 お揃いのウサ耳フード付きパジャマで手を繋ぎつつ
 部屋内にフレームインするお二人。 Oh so Cute!

 なるほど一番上の妹と一番下の妹か。仲良し設定ではありがちだな。
 とりあえずこの2人なら、道徳的に問題があるようなイベントを俺の元に
 持ち込んだりしないだろう。ササっとCGを回収して終るとしよう。

「だれに向かって話してるのかな?」
 独り言。で、お兄ちゃんに何か用かな? とか、
 ちょっと大人ぶってイスにふんぞり返ってみたりする余裕すらあるぜ。
「んーと、実はキョン兄にお願いがあるのさっ」
「や、やめようよ〜」
 ん? どうしたのかな? なんかまずいのかな?
「だーめだってばさ、みくる〜。こういうことはちゃんとしないと〜」
「で、でもぉ〜」
 朝比奈さんはどんな年齢のときもウルウル目がトレードマークですね。
 あ(大)はちょっと違うか。それでお願いって何かな?

「実はキョン兄に、みくるのファーストキスを貰ってほしいのさっ!」


 …What?
757涼宮ハルヒの○天国6:2006/07/23(日) 21:45:48 ID:URh2ApAP

「だ・か・ら。みくるのこの可愛いくちびるにブチューっと!」
「ふぇ〜ん、ひゃめてへぇ〜」
「めがっさあっついキッスを!」

 いまどき『キッス』て…
 いやあのですね… 確かに小さくて可愛い唇なんですが、
 何故そんな甘酸っぱい思春期大作戦を、『現設定が実の兄』である俺に?
 そういうのはクラスの好きな男の子とするのがモアベターでは?

 まあ、麗しのマイエンジェルがどこの馬の骨ともわからない男子生徒と
 そんなことしようものなら、バケツどころかホースで水をぶっ掛け続けて
 街中を追いまわす鬼兄貴に大変身しますがね。
 …あれ? これシスコン発言?

「実はみくる、クラスの男子にいじめられてたんだよ〜」
 え〜っとバット、バットはどこだったかな…。
 別に怒ってないですよ〜、怒ってないからそいつん家はどこだ!
「ああ大丈夫大丈夫。私がちゃ〜んとそいつの手首外しておいたから、
 きっとイジメ自体はもう起らないよっ」
 よし。偉いぞ、お兄ちゃん鼻が高い。頭ワシワシしてやろうな。
 …って怖えええええええええ!!
 その年齢でどうやって関節を外したかは聞かないで置こう。
 で、そんなコック大活躍的報復劇からどう展開したら
 実妹のファーストキスを奪う青色珊瑚礁的物語に?

「男子の女子へのいじめの殆どの理由は、その子のこと気になるからっさ」
 まあそうだろうな。
「そんなことされて、好きになるわきゃないってーのにね〜」
 まあそうだろうな。
「で、今回はなんとかしたけど、いつでもみくるを守れる保証はないよねっ?」
 まあそうだろうな。
「だから誰かにイタズラされる前に、キョン兄が合意の下で先にイタズラ
 しちゃえばOKってことさっ♪」

 超展開!
 しかもキスとかそんなLVじゃ無い! 
758涼宮ハルヒの○天国7:2006/07/23(日) 21:49:34 ID:URh2ApAP

 いいかな? 鶴屋さん…いや、あえて妹鶴屋と呼ぼう。

 なんと言うか、それは根本的にイジメ対策方法ではないだろう?
 と言うかそれもう小学6年生の発想じゃないぞ。
「そ、そうだよぉ〜、なんかへんだよお姉ちゃ〜ん…」
「何言ってるのさ! みくるだって好きでもない男子に体を好き放題されたら
 嫌だろう?」
「そ、それはイヤだけどぉ〜」
 妹鶴屋よ。むしろこの兄も、通常その『嫌』の範囲内だと思うんだが。
「キョンお兄ちゃんはイヤじゃないよ!  …あっ… 」

 …うわあ、もの凄い顔真っ赤ですね、朝比奈さん。
 かなりキュンときました。

「あの…、でも、そういうのはほんとうにすきなひととするものだって…
 だから、その…キョンお兄ちゃんには…す、すきなひとがいるかもって…」
 その小さいおててでモジモジされると、お兄ちゃん顔がふやけます。
 かいぐりかいぐりしたくなる可愛らしさです。

 …話を戻すと。とりあえず好きな女の子ってのは現在いないわけなんだが、
 兄妹でそういことってのは、世間的に問題があるのだよ妹鶴屋。OK?
「でもキョン兄、いま好きな人いないって言わなかった?」
 ん、まあそういう対象はいない。が、だからといって誰彼かまわず
 してもいいっていう行為でもないんだぞ?
 みくるなら判ってくれるよな?

 …あ、あれ? えーと、現在俺の妹になっている筈の、朝比奈みくるさん?
 なんでこっちに熱視線を送ってらっしゃるのかな…?

「わ、わたしがすきなひとなら… しても、いい…の?」
 いや、なんか、ちょっとまってくれ。話が全然関係無い方向にずれてる。
 今はイジメ予防策と青っぽい珊瑚礁の違いの話をですね。
 
「キョンおにいちゃんは… みくるのこと…きらいですかぁ…?」

 うわ、ズッギューンときた。これ反則だ。
 直面して考えるとエロゲって凄い世界なんだな。
 心臓鷲づかみされたかと思った。
「ほれほれキョン兄〜♪ みくるはOKだって言ってるよっ? GOGO♪」
 …まだだ、頑張れ俺の兄としてのちっぽけなプライド! 相手は妹だぞ!?
 うわ! 朝比奈さんすっごい目が潤んでるっ! なんか唇うっすら濡れてる!
「強情だなぁ… 今なら私のファーストキッスもおまけでついてくるよっ?」
 こ、こら妹鶴屋さんまで! 自分を安売りするんじゃありませんっ!

 な、並んで目を閉じるんじゃありません!!
 くちびるを突き出すんじゃありませんってば!!
759涼宮ハルヒの○天国8:2006/07/23(日) 21:52:37 ID:URh2ApAP


 ― 父さん、母さんへ ―

  俺は何かダメなスイッチを入れてしまいました。
  妹みくるのくちびるは、小さく震えておりました。
  妹鶴屋のくちびるは、楽しげに弾んでおりました。
  妹みくると妹鶴屋も、流れで接吻しておりました。  
  ニ人から漂う、ほのかな石鹸のかほりが
  禁忌であるはずの兄妹接吻を、優しく優しく包んでおりました。
  嗚呼、
  明日も晴れると良いのですが。

                          息子より



「おやすみキョン兄♪ いい夢見なよっ?」
「…お、おやすみなさい…お兄ちゃん…」
 顔を赤らめつつ、手を繋ぎながら2人の妹が退室…
「おっと、そうそう。お風呂あいてるからねっ! おっやすみ〜♪」
 …退室しました。
 パタン。



 1stイベントからこの調子で、果たして俺はどこまで畜生道に落ちるのか。
 そして運良くこの世界から脱出できたとして、
 世間様から俺がどういう目で見られるのか… 請うご期待だ…。
760名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 21:54:24 ID:URh2ApAP
以上。箸休め終了。
引き続き万巻全席をお楽しみください。
761名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 21:55:30 ID:78fB2Kx6
こいつは…KOOLだぜ…
762名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:05:19 ID:Vpcp589A
これはエロゲだなw
763名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:05:23 ID:+vYNaSTE
おまえ最高だぜ…
764名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:06:24 ID:jgfy6zSF
駄目だ、GJと言わなきゃいけない気がしてきたw

エロい描写無いのにエロく感じるのは何故だ
765名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:08:31 ID:1THx4eWV
言ってはいけないんだろうがあえて言わせて貰う









これって何てエロゲ?
トリアエズ続き待ってます
766名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:09:07 ID:+llLflNZ
ヤるだけがエロじゃないってことかw
続きはまだか!
767名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:10:26 ID:VmdqYaQE
…これを同人ゲーで作る猛者は居ないか。
居ないだろうな。
768名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:11:55 ID:NSKGH6aP
(・∀・)=ヤ=ヤ
769名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:25:20 ID:+Zdgw4EV
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相変わらず圧倒的な勢いだなw
770名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:27:58 ID:UZ++RdW9
フフ、使い古されたセリフだが…
GJ代わりに言おう。

これなんてエロゲ?
771名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:29:12 ID:c26ajX/H
素晴らしい、股ぐらがいきり立ちますね。
772名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:32:03 ID:5evqGZNy
色々と(いい意味で)ダメな展開になってる バットを探す時点で、もうダメw
773名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:32:13 ID:Phn3W3AZ
GJ。
ぶっちゃけ初めてみくるに萌えたw
774名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:33:37 ID:Vv1gLpL0
これなんてしsぷr、うわなにをsくぁwせdrftgyふじこlp;
775名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:37:00 ID:RjPP319Z
vipが落ちててプリンスレ見れねえ
776名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:37:20 ID:+5qGkJ2+
次はお風呂playですかッ!?どの組み合わせで来るか想像するだけでハァハァ
777名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:38:45 ID:eD9T2H6w
明日テストな俺をここまで苦しめるとは
778名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:46:31 ID:sFvbNoKb
2レス程のコネタを投下させていただきます。
というか習作なので、ストーリー性がまるでありません。妹達も出ません。長門は出ます。
779名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:48:07 ID:81toXG7d
>>777
明日テストのお前はここに来ちゃあかんやろ
780名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:49:16 ID:sFvbNoKb

 誰かが「寒い」と言い始めた頃。
 私は、自分の挙動が制御できなくなってきた事に気付き始めていた。
 

 私と彼の二人しかいない部室には、静かな雨の音で満たされている。この部屋で起こる事象としては、非常に珍しいケースだ。
 落ち着いた雨音の波形は、一定感覚で混じる彼の寝息に揺らされていたが、私にとってそれは不快ではなかった。
 手に取った本から視覚を通して情報を取得する際に僅かなノイズが発生しているのも、不快ではない。
 そして、それを疑問に思う事も、私はとっくに放棄してしまっていた。
 読んでいた本を閉じて、少しだけ目を瞑ってみる。
 雨の音は優しい、と誰かが書いた。私が優しいという感情を正しく理解しているのかどうかは未だ不確定だったが、彼の声と近似値を持つ波形を見つけた私は、たしかに優しいのかもしれない、と思った。


 彼らと同じものになりたい、と最初に思ったのは、果たしていつのことだっただろう。
 こうしてログを探れば確実に存在している記録に思いを馳せるのも、彼らの真似事だ。
 時として、彼らが自覚的に自らの記憶や感情を操作するのを、私はよく知っていた。
 しかし、何故彼らと同じものになりたいのか、という疑問の答えだけは、記録を探る必要も無いぐらい、常に私の中にあった。
 私の知っている事を何も知らないにも関わらず、私の知らない全てを知っている彼らに、私は憧れている。
 胸に溜まるエラーと、思考を揺らすノイズの正体を、彼らならきっと知っているから。


 最近頻繁に思考域をよぎる考えに自らの不安定さを再確認した私は、すぐに目を開き、現在も睡眠状態にある彼の方に目を向けた。
 顔の筋肉が緩まり、身体も弛緩状態にある彼の様子を見るのは、視覚情報としても少しだけ新鮮で、私の思考を安定させた。
 しかし私は、いつの間にか立ち上がり、彼の椅子に歩み寄っていた。小さな足音が雨音を乱す。
 ……まただ。
 論理的思考の隙を縫うように、身体を勝手に動かそうとする意識もまた、最近頻繁に発生していた。このままでは、私が世界改変を起こす事象は不可避なものとなるだろう。
 しかし、
 ――それでも、いい。
 そんな事を思考してしまうのは、果たしてエラーのせいなのか、それとも私自身の意思であるのか、もう解らなくなっていた。
781名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:50:15 ID:sFvbNoKb

 私が横で観察していると、彼は落ち着かなさそうに身体を揺すり始めた。
 彼に咎められた様な気がして窓際に戻ろうとした私は、再び落ち着き始めた息遣いを捉え、ゆっくりと振り返る。 
 どうやら腕が痺れただけのようで、彼は少しだけ顔の角度を変え、満足そうな顔をして眠り込んでいた。
 私は息を潜めて彼の横に戻り、その顔を再び見つめる。
 いつもどこか気だるそうにしている瞳は閉じられ、薄い唇が少しずつ形を変えながら、緩やかな呼吸を続けていた。
 胸の中に、処理不能のタスクが増えていく。彼の吐息が、私の作り物の心を揺らしているようだった。
 彼とは違う形の心を。
 不意に、身体から意識がゆっくりと引き剥がされるような錯覚を覚えた。
 雨の音は、遥か遠く。二人しかいない部室には、もう何の音もしない。
 自分の指が彼の髪の毛に触れるのを、どこか他人を見るような目で、私は見ている。
 もう片方の指は、そっと彼の唇を撫でていた。
 私は、何をしようというのだろうか。疑問は思考に上る前に、意識の底に潜んだ何者かに飲まれて消えた。
 視界に強烈なノイズが走る。私は思わず目を閉じた。

 
 彼が鼻を啜る音で、私は目を開けた。雨音が戻ってくる。
 そしてようやく、自分が床に置かれたストーブを遮っている事に気付いた。
 ソックスはすっかり熱くなってしまっており、皮膚にも僅かながら痛みを感じる。火傷による損傷だ。
 私は足の構成情報を修正した後、彼の方に近づかせすぎない程度に、ストーブを移動させた。
 窓の外は、うっすらとした暗がりに飲まれようとしている。そろそろ3人が帰ってくる時間だ。
 私は彼から離れて、少し湿った自分の鞄を掴み上げる。何故か今日に限って、三人を待とうとは思わなかった。
 そのまま扉を開けようとした私は、最後に彼の方に目を向けた。
 雨が跳ねる音と、少しだけ暖まった空気に満たされている私達の部室に、眠っている彼がたった一人。
 私は鞄を下ろして彼の方に近づくと、自分のカーディガンを彼の背中にそっと乗せた。
 そして、彼が気を使うといけないと思い、好ましい形の耳元で、私はそっと囁いた。
「私は、寒くないから」
 だからどうか、あなたが風邪を引きませんように。
 

 いつもより薄着のままで辿る帰り道は、少しだけ寒かったが、決して冷たくはなかった。
 十二月が、近づいている。


782名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:50:38 ID:jyUMJ8v3
>>760
これで1st、しかも次はさっそく風呂イベントかよ…これn(ry
783名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:57:02 ID:URh2ApAP
>だからどうか、あなたが風邪を引きませんように。
切なくなった
長門はこういう演出似合うよなあ…
幸せになって欲しい…
784名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 23:01:05 ID:+5qGkJ2+
情緒溢れる文章が良い。感傷的な長門もかわいいよ長門。
この後のハルヒの所行を考えると更に切ないな
785名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 23:01:08 ID:XItWXVZB
>>760
ニヤケがとまらないのだが
786の喪失 (鬱物:2006/07/23(日) 23:10:38 ID:QY6iTbD0
 つまんない・・・。   この世の中の全てが。私が。 
なんてちっぽけなんだろう。
私に存在意義なんてあるのかしら。 必要としてくれる人なんているの?

 「暇しているなら遊ばない?」
三宮付近をぶらぶらしていると大学生風の男から声をかけられた。
・・・別にいいわよ。
「カラオケにでも行こうか?」

私はその大学生風の男に連れられて、駅から少し離れた場所へとやってくる。
カラオケ店は小奇麗であったが、あまり人影がないようだった。
入り口のドアからは店内が見渡せないような作り。

男は店員になにか耳打ちしていた。
「いらっしゃいませ。 広い部屋へご案内いたします。」

「アイツ知り合いでさ、ちょっと頼んで特別にいい部屋用意してもらったんだ。」
「ほら、あそこの突き当たりを右なんだけど、広いパーティールームなんだぜ。」
787の喪失 (鬱物:2006/07/23(日) 23:11:24 ID:QY6iTbD0
 馬鹿じゃないの? 目的は見え見えじゃない。
部屋に入る。 やはり空気が違うように感じた。

「さ、カラオケでも歌おうか。」
・・・恐らく最初の方は普通に歌うのだろう。 この後は怪しいドリンクが来るはず。
「お飲み物でございます。」
先ほどの店員がお盆の上に二つ、赤い色をした怪しいドリンクを持ってくる。

本当にわかりやすい奴。 とんでもないわね。
ねえ、アンタ。 アンタの目的はわかってんのよ。それって楽しいの?
「もちろんさ」

別にしてもいいけど、ここは嫌。
それと、アンタの携帯はフロントに預けてくるのね。 流石に数人も相手するのは嫌だも

の。

そう言うと男と部屋を出た。 
部屋の中ではどこかで聞いたような単調なフレーズが鳴り続けていた
788の喪失 (鬱物:2006/07/23(日) 23:12:15 ID:QY6iTbD0
 私は男に背を向ける。
ひとつため息をつくと、変なスイッチの沢山ついたベッドに座り込んだ。
つけなさいよ。 振り返りそう言うと男に向かって投げつける。

・・・つまんない、本当につまんない。

それは単調でつまらないものであった。
義務的に手を這わせたところで何も感じない。

「いいかげんこれじゃはいらねえな・・・。」
男はローションを自身に擦り付けると、肩を掴み顔を寄せてくる。
ガツッ
肘で相手の顔を打ちつける。
アンタにはキスなんてさせない。 わかった?

難なくそれは入ってきた。 ローションのおかげでもあるだろう。
痛みと出血はあった。 だけどそんなことはもうどうでも良かった。
男は自分を満足させるためだけのため、単調に腰を打ち付ける。
ただ痛いだけの時間。
789の喪失 (鬱物:2006/07/23(日) 23:13:12 ID:QY6iTbD0
つまんない、最低。腰が抜け、起き上がれない。
ただ苛立ちの感情しか思い浮かばない。
男はすっかり伸びてしまったゴムを取ると、自身に何かを塗りつけている。
「まさか始めてだったとはね。 君にも楽しんでもらおうと思ってさ。」

そう言うと男は再び侵入してきた。
ちょっと、つけてないじゃないn・・・!!?
そう言いかける口をふさがれる。 最低。 奴はただ舌を吸い、口の中を蹂躙する。

何かおかしい。 体が熱い。
コイツの自分勝手な前後運動にさえ体が反応する。 嫌。
んぁ、んんっ ! 
いつしか相手の腰の動きに同調していた。
巷にあふれている安っぽいビートのような、単調な音が鳴り響く。
やがて意識が一瞬遠のく・・・。

シャワーを浴びるときには当然携帯は持っていった。
そこまで馬鹿じゃない。

・・・後に私はジョン・スミスと出会った。
彼の言葉を聞くとわだかまりが溶けていくような気がした。
790名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 23:17:47 ID:TbkJLeMx
エロSS書くならもうちょっと原作をちゃんと見ようよ
791名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 23:19:24 ID:Lb0Gpsgh
みなさんGJです。
本当にありがとうございました
792名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 23:24:06 ID:HU3A1GsA
投下。
数レス借ります。
793『キョンの長い一日』1:2006/07/23(日) 23:26:38 ID:HU3A1GsA
五限の授業にハルヒは来ていなかった。
今にして思えば、それは俺の奇妙で長い一日の、最初の兆候だったと言えるかも知れない。
そして、すでにその時、それは密かに始まっていたんだ。


『キョンの長い長い一日』


もちろん、ハルヒが授業をサボるなんてことは、ある意味、日常茶飯事であり、俺はそんなことは全然気にしちゃいなかった。
どーせいつものようになんか疲れることを思い付いたんだろう。
まてよ、ひょっとしたら、朝比奈さんのコスプレの新しいやつが見られるのかもしれん。
そうと決まれば、スタコラサッサだ。俺は授業が終わると教室を出て、部室に向かった。
部室に向かう途中で古泉を見つける。なんだか神妙な面持ちだ。おい、部室に行かないのか?
「おや、あなたは今……なるほど、いや、何でもありません。部室ですか…今日は止めておきましょう。」
いつもの爽やかスマイルがないな。例のバイトか?
「そんなところです。」
ハルヒがいないのはそのせいか…。嫌なことでもあって部室でふててるんだろう。じゃあ、俺は行くぞ。
「待って下さい。」
やけに真剣な声だった。なんだ?
「こんなことをあなたに言っても仕方ないのは分かっています。しかし…
…時々やりきれなくなるんです。自分の無力さにね。」
エスパーの台詞とは思えんな。
「こんな力……何の役にも立ちませんよ。結局のところ、何もかも最後はあなた頼みなんです。
もっとも、これは長門さんや朝比奈さんも同じなのかも知れませんが…。」
そんなことない。おまえはSOS団に不可欠な副団長だ……と、ハルヒなら言うだろうさ。
ようやく古泉は笑って肩をすくめた。
「頼みますよ、涼宮さんと…世界を。」
やれやれ。分かってるさ。せいぜいハルヒの機嫌をとっておくよ。

古泉と別れて部室棟に行く途中、長門に出くわした。よう、長門。
「……。」
いつもの長門だ――と思いきや、いきなり長門は俺を壁に押し付け、ブレザーのボタンを外し始める。お、おい、こら、長門!
長門は俺の胸を露出させるといきなり心臓辺りににキスをした。なんだ、この展開は?
「敵性情報を遮断……崩壊因子を仕込む。」
さっぱりわからん。
「…少し屈んで。」
えーと、こうか?なんか、長門と同じ顔の高さって照れるな…んぐっ!?
長門はいきなり俺にキスをした。
「ぷはっ……長門!一体これは――」
「改変情報の修正因子。……これで完了。」
長門はしばらくぼんやりと俺を見ていたが、おもむろに口を開いた。
「…あなたには感謝している。
あなたの助けがなければ、私は私ではいられなかっただろう。」
…それはこないだの世界改変の時の話か?
長門はわずかに首を振る。否定の仕草。
「あなたのしてくれたこと、全て。
……白雪姫は知ってる?」
ハルヒのことが頭をよぎる。ひょっとして、また―――
「今度は、私が、白雪姫。」
え?
俺が聞き返そうとした時には長門はこちらに背を向けて歩き去っていた。
俺は、長門の小さな背中が角を曲がって消えるまで見続けていた。
794名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 23:26:41 ID:fCv7QqG1
>>781
短くても、とても切ない気分になった。
……泣いてもいい?
795『キョンの長い一日』2:2006/07/23(日) 23:27:48 ID:HU3A1GsA
「おーい、キョン君っ!!」
「おわっ、鶴屋さん!」
いつのまにやら神出鬼没の上級生が俺の後ろに立っていた。いつもの倍は楽しそうだ。
「いやいや、三倍は楽しいにょろよ?いやー、参ったよ。まーさか三つ子とはねっ!皆合わせて可愛さは三百倍だっ!!」
へ、なにがです?
「んー?ははーん、なるほど…そのうちわかるさっ。じゃねっ。」
……なにが何だかわからん。さっきから、皆よくわからないことばかり言う。
まあいい。ハルヒのところに行けば、全部分かるんだろうさ。
俺は部室のドアをノックする。
返事がないな…。朝比奈さんは来てないのか?
俺はドアを開けた。
そこにはハルヒがいた。椅子に座って、すやすやと寝息をたてている。やれやれ。
「おい、起きろハルヒ。」


わからん。

ハルヒは起きた途端に泣き出した。キョン、そこにいるの、本当に?なんて言うから、頭を撫でて言ってやった。ちゃんとここにいるさ、夢でも見てたのか?
ハルヒはしゃっくり上げながら言う。うん、嫌な夢を見てた。嫌な嫌な夢を…。すごく怖かった…。
子供みたいな奴だな。俺はハルヒが泣きやむまでハルヒの震える体をを抱いていた。
閉鎖空間の原因はハルヒの夢か。だったら、なんで古泉はあんなに落ち込んでたんだ?
長門の行動も意味不明だし、鶴屋さんの発言も訳がわからん。
ハルヒに会えばつじつまが合うんだと思っていたのだがな。

その夜のことだ。天使が伏線の回収に降臨した。
796『キョンの長い一日』4:2006/07/23(日) 23:28:37 ID:HU3A1GsA
『キョン君、いますぐ部室に来てくれませんか。』
へ、朝比奈さん?こんな時間に電話なんてどうしたんです。今から学校に忍び込むんですか?もう九時ですが…。
『お願い、世界が改変されてしまうかも知れないんです。』
世界の改変?
俺は家を飛び出した。
少なくとも、ひとつのピースがはまろうとしている。
おそらく、そのピースには、『長門』と書いてある筈だ。

部室に到着した俺を、ひどく真剣な顔をした朝比奈さんが出迎えた。
「長門が…また世界改変をするんですね。」
朝比奈さんはコクリと頷いた。
「長門さんは…今度は緊急脱出プログラムを組んでくれませんでした。」
なぜですか?
「彼女が…最初にやったのが、自分の能力を消すことだったからです。」
それじゃあ…長門だけが変わったんですか?だったら世界は改変できないんじゃ…
「長門さんも、そのつもりだったと思います。だから、これは彼女の誤算でした…。
長門さんが無力化したとき、緊急バックアップ・プログラムが働いたんです。
このことは、長門さんも知らなかったはずです。」
バックアップ・プログラム。
「朝倉、涼子です…。」

俺は朝比奈さんと一緒に今日の昼休みに時間遡行した。
朝比奈さん、俺が長門のところに行く間、何処にいるつもりですか?
「鶴屋さんに…書道部の部室でかくまってもらいます。」
なるほど。

「鶴屋さん、こちらは朝比奈みちるさんです。」
「あーっ、いつぞやのみくるの双子ちゃんだなっ!久しぶりっ、元気にしてたにょろか?」
「ふぇ、は、はぁい。」
俺が、朝比奈さんには秘密にして、みちるをあずかっていて欲しいと伝えると、鶴屋さんはあっさり頷いた。
「だれしも事情ってやつはあるさっ。」
感謝しますよ、鶴屋さん。

俺は書道部を出て、我がSOS団の部室に急ぐ。
長門に会うために。
今度こそ、長門に辛い思いはさせたくないからな。
797『キョンの長い一日』4:2006/07/23(日) 23:30:58 ID:HU3A1GsA
俺は文芸部室に飛び込んだ。本を読んでいた長門が驚いて椅子から立ち上がる。
だが、その白い顔には―
眼鏡がかかっていた。
宇宙人でもアンドロイドでもない、無口で恥ずかしがりの文芸部員。
ハルヒが消えたあの世界の、長門有希がそこにいた。

「…長門。」
俺の言葉に、はっきり分かるほどに長門は肩を震わせた。
怯えているのだろうか。
「おまえを責めようなんて、これっぽっちも思っていないんだ。」
だけどな。
「おまえが普通になりたいって思った気持ちも、よくわかる。」
ほんとだ。
「だが――」
そう俺が言いかけた時だ。二つのことが同時に起きた。
ドアを開ける音。
俺の胸に突き当たる、冷たい金属の感触。
膝から力が抜けた。俺は部室の床に倒れ込む。その一瞬、ちらりとドアが見えた。スカートの下に伸びる足。
――誰だ?
胸にナイフを突き立てられ倒れる俺を見て、長門が声にならない悲鳴を上げた。
そして――
薄く笑いを浮かべた朝倉涼子が、俺を見下ろしていた。

「凄いわ…、彼を殺せば情報爆発が起きるものだとばかり思ってた。
限定された空間で情報密度が飛躍的に増大するなんて…いま、正に世界を創り直しているのね。ふふ。」
朝倉涼子は、その冷たい笑顔を、言葉を失った長門に向ける。
「大丈夫よ。あなたの大事なキョン君は、ちゃんと再構成してあなたに忠実なペットにしてあげるから。
そのまえに、二、三回ほど殺させて、ね?
あなたの記憶も消しておくから安心して…。ふふ、それとも、一度殺して再構成してあげようかしら。」
そこまでが、俺の我慢の限界だった。
俺は起き上がると、胸に刺さったナイフを引き抜く。傷は一瞬で塞がり、ナイフは光る砂に変わった。
朝倉涼子は驚愕の表情で俺を見ている。
「なんで…確かに心臓を…」
説明する義理はないな。だが、これだけは言っておくぞ。
「バックアップ・プログラムなのに、長門を殺すだって?」
朝倉の足元が砂になって崩れ始める。
「うそ…崩壊因子を仕込んでいたの!?いつ、どうやって…。」
構わずに続けた。
「とんだ欠陥プログラムだよ、お前は。」
朝倉は目を閉じ、怒りに肩を震わせたが、その肩も消え―
朝倉涼子は光る砂になって崩れ、消滅した。
798『キョンの長い一日』5:2006/07/23(日) 23:31:46 ID:HU3A1GsA
俺は長門に向き直る。長門は青ざめ、唇からは血の気が引いている。
小柄で眼鏡をかけた内気な少女はただ震えていた。目の前で起きたことが全く理解出来ないのだろう。
俺は長門を抱き寄せる。長門は抵抗しない。俺の胸の中でしゃくりあげ始めた。
ずっと、抱きしめていたいと思った。
だが――
俺は、長門の言葉を思い出していた。
白雪姫。
「長門。」
長門が顔をあげる。うるんだ瞳から、涙がこぼれている。
俺は長門にキスした。

顔を離すと、長門の眼鏡は消えていた。
おまえなんだな、長門?
「…そう。修正プログラムが発動した。」
これで…良かったのか?
長門は微かに頷いた。
「朝比奈みくるの異時間同位体があなたを待っている。…行ってあげて。」
ああ、行かなきゃな。
「ごめんなさい。」
俺は首を振った。
「おまえが謝ることなんて、何もないさ。」
そうだろ?

俺は書道部に向かい、ドアの前で待っていた朝比奈さんと合流した。


彼が出て行ってから、しばし長門有希は部室に一人立っていた。
――口唇部および体温の温度上昇を確認。冷却を…
やめた。長門有希は暫く熱くなった唇をそのままにしておいた。
部室を出て、少し歩くと彼が近づいてくる。「よお、長門。」
彼に口付ける。私の口唇部の熱は彼に伝わるだろうか、と考えると、心臓の拍動頻度が増した。
「…白雪姫は知ってる?」
「おい、それって――」
「今度は、私が、白雪姫。」
私は、あなたの口付けで、目を覚ますから。

799『キョンの長い一日』6:2006/07/23(日) 23:32:20 ID:HU3A1GsA
俺と朝比奈さんは、夜の部室に戻って来た。さて、そろそろ全部話して下さい。
「これで終わりじゃないでしょう?俺には、まだ分からないことが残っている。古泉と、ハルヒです。
始めは、ハルヒが嫌な夢を見て、そのイライラで閉鎖空間を作ったんだと思ってました。違うんですね?」
「…ええ。涼宮さんは、あなたが朝倉涼子に刺されるところを偶然に見てしまったんです。」
ドアを開ける音、スカートの下に伸びる足。朝倉涼子の言葉。
やはり、あれがハルヒだったのか。
「あなたが死んでしまったと思った涼宮さんは、この世界から消えたんです。…いつかの時のように。」
俺とハルヒが初めてキスをした時。確か、古泉はあの中にはうまく入れなかった…。
俺の中でピースがつながっていく。
「行きましょう、朝比奈さん!」
ハルヒは一人きりで待っているんだ。
おそらく、俺のことを。

朝比奈さんを書道部に届ける。朝比奈さんの生き別れた三つ子の妹で、朝比奈みはるさんだと紹介すると、鶴屋さんは目を丸くしてから爆笑した。
「まっさか三つ子とはねっ!まいったよ!!」
まったくです。
俺は文芸部室に向かった。
SOS団と書かれたプレートが見えたとき、ハルヒの後ろ姿が見えた。
「ハルヒ――」
そう俺が叫ぶ一瞬前にハルヒはドアを開け、目を見開き、
消えた。
俺は絶句する。今、部室の中には、長門とナイフを突きたてられた俺がいる。
そして、朝倉涼子も。
再び怒りがわいた俺は、部室に入りかけたが立ち止まった。
今俺がすべきことは、部室に行くことじゃない。
俺がすべきことは――
超能力者の力を借りることだ。
そうだな、古泉?
一年九組、古泉のクラスへ行かなきゃならない。
800『キョンの長い一日』7:2006/07/23(日) 23:33:00 ID:HU3A1GsA
「どうしたんです?息を切らせて。はて、僕に何か御用事でしょうか。」
閉鎖空間の発生が分かるか?
古泉は驚いた顔になって、眉をひそめる。
「…確かに、閉鎖空間が発生しています。なぜ、あなたに言われるまで気が付かなかったのか…。
ここではなく、人気のないところに行きましょう。」
俺と古泉は屋上に向かった。

「…侵入できません。ただの閉鎖空間ではありませんね。これは――」
古泉が真剣な顔で俺を見つめる。
「中には涼宮さんがいるのですね?」
そうだ。
「とすれば、今、僕たちがいるこの世界は、崩壊直前ですね…。こんな時に、閉鎖空間に入れないとは。」
僕の力も役立たずですね、と自嘲するように古泉は呟く。
そんなことはないさ。
俺は古泉の肩をつかんだ。
「古泉、俺を閉鎖空間の中に送ってくれ。俺がハルヒをこの世界に連れ戻してくる。」
古泉はしばし呆気にとられていたが、意を決したように頷いた。

「お願いします。」


屋上の古泉樹は、ぼんやりと下の景色を眺めていた。
機関から連絡がひっきりなしに入るが、さっきから無視している。
いずれにせよ、もう自分に出来ることはない。
彼は閉鎖空間に行った。だが――
自分が閉鎖空間に入れないのは、涼宮ハルヒの意志の現れだろう。
涼宮ハルヒは拒絶しているのだ。彼以外のもの全てを。
時々、やりきれない気持ちになる。
そんなとき、彼の口癖をそっと真似してみる。
「…やれやれ。」
世界と涼宮さんを頼みますよ。

801『キョンの長い一日』8:2006/07/23(日) 23:34:12 ID:HU3A1GsA
灰色の空。遠くで破壊の限りを尽くす青く光る巨人たち。
俺は閉鎖空間にいる。
ハルヒはどこだ?屋上であたりを見回す。
――と、息を飲んだ。

手すりの前に、そいつは膝を抱えて座っていた。

「ハルヒ。」
ハルヒはゆっくりとこちらを振り返る。
「キョン…。」
こっちを見るうつろな目。ぜんぜん似合わない。こいつの目は、もっと強烈な光を放っているべきなのに。
「待ってた。ここなら、あんたが来ると思ってた。」

俺はハルヒの隣に腰を下ろした。
なあ、ハルヒ…元の世界に帰らないか?
「嫌よ。」
ハルヒは膝に顔を埋める。
「あっちのあんたは死んじゃったもの…。そんなとこに居たくないわ。ここなら、あんたに会える。
……見てよ。」
ハルヒは神人のほうにあごをしゃくった。
「あの変なの、前も二人で見たよね。夢でだけど…。今、ここにいるのも夢ね、きっと。」
ハルヒは俺の肩に頭をもたせた。
「でもいいの。」
ハルヒが続ける。
「ここに居たい。夢なら覚めたくない。…萌えキャラも無口キャラも謎の転校生も要らない。あんたがいればそれでいい。あんたと、あの変なやつを眺めていればいい。」

「ハルヒ、前から言おうと思ってたけど、おまえの事が好きだ。」
「あたしも。キョンの事が大好き。」
愛してる、とハルヒは付け加えた。
「だから、ずっとここに居たい。ここであんたと二人で。他は何にも要らないから。」
だめ?とハルヒは聞いた。
俺は溜息をついた。ハルヒ、おまえはそんな風に何かを諦めたり、満足しちまうような人間じゃないんだよ。俺は知っているさ。

「ハルヒ、夢はいつか覚めるもんだ。
それにな、俺は死んでない。ちゃんと生きてる。
あっちの世界でおまえを待っている。求めている。愛している。
俺だけじゃない。古泉も、朝比奈さんも、長門も、みんなそうだ。」
帰ろう、ハルヒ。
俺はハルヒを抱きしめる。
「ハルヒ、俺は生きてる。信じてくれ。
だから、帰ろう。」
ハルヒは小さな声で言った。
「もう一度――愛してるって言って…。そしたら、信じてあげてもいいわよ。」
俺はその言葉を囁いた。
「信じるわ。キョン。」
俺はハルヒに口付けをした。
瞬間、世界がハルヒに飲み込まれていくような気がした。周りの風景がハルヒの体に流れ込んでくる。
俺は固く目を閉じ、ハルヒの体を抱きしめた。
そして―
俺達はいつもの部室に居た。
長門は…もういないみたいだ。
俺はハルヒの顔を覗きこむ。
やれやれ。
ハルヒはすやすやと寝ていた。
802『キョンの長い一日』9:2006/07/23(日) 23:34:53 ID:HU3A1GsA
寝ているハルヒを椅子に座らせる。こいつ、全然起きないな。
後のことは、過去の俺に任すさ。長門にキスされたり、鶴屋さんに話しかけられたりしながらこっちに向かっているはずだ。
そろそろ行かなきゃな。俺はドアを開け、振り返ってハルヒを見た。
無防備なハルヒの寝顔に向かって呟く。
「ハルヒ…、また明日な。」
俺はドアを閉めた。


俺はドアを開けた。
なんだ、ハルヒのやつ、五限をサボったと思ったら部室で寝ていやがった。
やれやれ。
俺はハルヒの頬を軽く叩く。
「おい、起きろハルヒ。」
「んんん…。」
ハルヒが目を覚ます。

「キョン、キョンなの!?」
そうだ、悪いか?――と言いかけて、俺はギョッとした。ハルヒが涙をぽろぽろこぼしている。冗談じゃない、こいつが泣くとこなんて見たことないぜ。
「キョン、そこに居るの?生きてるの、ホントに?」
ああ、生きてるさ。当たり前だろ、大丈夫か?
俺はハルヒの頭をくしゃくしゃと撫でてやった。ハルヒがしゃっくりあげる。
と、いきなり俺の胸に飛び込んできた。とたんにハルヒはわんわん泣き出す。
慌てて俺はハルヒを抱きしめた。
怖い夢でも見たのか?
「えぐっ、うん、嫌な夢を、ひくっ、見た。い、嫌な、嫌な夢。
ひくっ、あんたが、死んじゃう夢だった…。」
怖かった、といってハルヒは震えている。
俺はハルヒを抱く腕に力を込める。なんか言わなきゃいけない、ハルヒを元気付けたい。
「ハルヒ、俺は生きてるさ。ここにいるから、ずっとずっとここにいるから。」
ハルヒが泣き止むまで、俺はそんな言葉を繰り返し繰り返し言い続けた。

そう、俺はここにいる。
涼宮ハルヒのそばに。

終わり
803の喪失 (鬱物:2006/07/23(日) 23:35:48 ID:QY6iTbD0
 時がたち、行動をするうち、私にも好きな人が出来た。
最初、運命を変えたあの人に似ていたのはビックリした。
やがて、別人とわかったけれども。 彼の言葉もまた、心地よかった。

ある日彼が、三宮に行くと言い出した。
私は嫌がったが、どうしても買いたいものがあったそうだ。
まあ、合う確立なんて万に一つもないわ。


「アレ、・・・ちゃん?」
後ろから不意に声をかけられ、慌てて振り向く。
804の喪失 (鬱物:2006/07/23(日) 23:36:35 ID:QY6iTbD0
そこには、あのときの男が居た。
「へえ、君の彼氏?」

私は彼の手を取ると、足早に去ろうとした。
だけど手を後ろに強く引かれ、尻餅をついてしまった。

「冷たいねえ、せっかく兄弟に挨拶しようと思ったのに」
男は下卑た笑いを浮かべながら彼の方を向く。
「・・・おい、この人は兄弟なのか?」
ちがうっ!
「冷たいことを言うなよ、ほら、ここにホクロあるでしょ?」
そう言うと私のスカートをたくし上げる。

「・・・今日は帰る。」
そう言うと彼は踵を返した。
まって!

ガツッ
私が手を伸ばすと彼は反射的に手を払った。 ぶつかった指先が痛い。

「彼にはかわいそうなことをしましたかねえ。  じゃあ今日は俺と遊びますか。」
肩に乗せた手を取ると電柱に投げ飛ばす。 どうやら気絶したようだった。

・・・もう駄目だよね。
私の爪の先にはまだ、痛みが残っていた。

おわり
805名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 23:36:40 ID:HU3A1GsA
以上。
あと、796は『キョンの長い一日』「3」です。間違えた。
806ハルヒとキョンの同棲:2006/07/23(日) 23:44:41 ID:1P5UdURS
※バカップル、ウナギプレイ、若干SM


 「ちょっとバカキョーン!!こっち来なさーい!!」

どこからかハルヒの怒鳴り声が聞こえる。

・・・しかしながらあいつを好きになってしまうとその怒鳴り声すら子守唄のように聞こえるのだから恐ろしい。
でもここはアパートだ。大声出すな近所に迷惑だ。

俺はハルヒのいるであろう風呂場に行ってみる。

 「何だハルヒー」
 「ちょっとキョン! ・・・・・・何なのよこれは!」

・・・ああなるほどこの事で怒ってたのか。

 「見りゃ判るだろ、ウナギだ」
 「だーかーら!!何でウナギがお風呂で気持ち良さそうに泳いでるの!ここ浜名湖じゃないのよ!」

いやこいつは浜名湖産などというそんなシロモノではない。国内産は国内産だが。

 「そういう事言ってるんじゃないのバカキョン!! なんでお風呂でウナギが泳いでるかって訊いてるの!!
  ここはねえ、あたしとキョンが裸で愛を深め合う神聖な場所なのよ分かってる!?」
807名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 23:45:25 ID:1P5UdURS

それは十二分に承知していますマイスウィートエンジェル。
でも折角俺は生きたウナギを買ってきたんだ。
その時までは生かしておいてやりたいという善良たる消費者の少しばかりの心遣いを解ってくれ。

 「だからもう!!なんでそんなにウナギに固執するのよ!! まさかウナギに浮気したっての!?サイテー!!」

 「・・・今日は土用の丑の日だぞ」

お解り頂けたであろう。
今日はウナギを食べて英気を養う一年に一度の大切な日なのだ。
決して俺はハルヒ以外の奴を好きになる事は無いから安心してくれ頼む。

 「・・・何よもう、カッカして損したわ、そういやそうだったわね」
 「スーパーで売ってたんだ、で生きてたからせめて捌く時まで生かしておいたほうが良いだろうかと思ってな」
 「そうだったの・・・ で、誰が捌くの」

俺はハルヒを見つめる。

 「・・・え? あたし?

  ―――イヤよ!!何であたしがこんなヌメヌメしたもの触らなきゃいけないのよ!!
  料理はあたしがやってあげて良いけど捌くのはキョン、アンタがやりなさい!!」
 「でもウナギはお前に捌いて欲しいみたいだぞ」
 「な、なんですって・・・?」

ウナギのつぶら・・・なのかどうかは判らないがその瞳はハルヒの方をじっと見つめている。

 「ハルヒに捌いてもらった方がこのウナギも幸せだと思うぞ」
 「・・・・・・分かったわよ!やれば良いんでしょ!やれば!もう!!」
808名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 23:46:13 ID:1P5UdURS
━━━━━━

 「さーて・・・ どうやって捌けば良いのかしら」
 「まあとりあえず掴む事が出来なければ話にならんな」

まな板という手術台の上でウナギはその時を待っている。
・・・それにしても元気なウナギだ。おいウナギ、お前ハルヒに捌いて貰えるんだぞ、もう少し静かにしてろ。 

 「あ、ウナギが」

ハルヒが急いでまな板から落ちそうになっているウナギを掴んだ。
だがその瞬間。ツルリと手からすり抜けた。 

 「あっ、ちょっと待ちなさい!!」
 「おい、床に落ちたぞ」
 「分かってるわよ、あっ捕まえた、って!!また抜けた!!」
 「おいこら待て!あっ!」
 「キョンそっち行った!!」
 「捕まえたぞ!!ってああ!!」
 「もう何やってるのバカキョン!! あっこっち来た、あ、おっと・・・ ・・・やーっと捕まえたわ」
 
しかしそれも束の間。
ウナギはハルヒの手をまたもすり抜けジャンプした。

そして飛び込んだのは。

 「きゃあ!! キョン!!キョ・・・ ハハ!!ギャアハハハ!!! 助け・・・ 助けなさいよハハハハ!!」

なんとハルヒの胸の谷間だった。
付け加えておくがハルヒは最近家にいる時にはパンツにスケスケのエプロンといういわゆる裸エプロンの状態で過ごしている。
勿論ブラジャーなんて着けてなどいない。

 「キョン・・・ 助け・・・ て・・ハハハ!!やめ!動かないで・・・!!ギャハハハ!!! やめなさい動くな・・・!!
  はや・・・・・・ 早く!!キョン何とかしなさいよ・・・!!! ハハハハ!!!!!」

俺の頭の中では『ウナギよくやったぞ』という賞賛の気持ちと
『俺だけのハルヒに・・・!』という嫉妬と憎悪の気持ちが交錯していた。

早くハルヒからこの憎きウナギを引き剥がしたいと思う反面、
正直の所ウナギに犯されて喘ぐハルヒの姿を見ていたいという気持ちもある。

ウナギは尚も酒に酔ったエロ親父の舌の如くハルヒの美しい体の上を這いずり回っている。
そして次第にエプロンははだけ、純白のパンツも下にずり落ちていった。
809名無しさん@ピンキー
そしていよいよハルヒは素っ裸になった。俺は覚悟を決めた。

 「ハルヒ、今日はウナギプレイだ」
 「・・・ちょっとキョン何言ってるのよ!?」
 「折角の土用の丑だ、この生きたウナギを活用しない手はないと思ってだな」

ハルヒの白い腹の上でうごめいていたウナギをハルヒの股の間に払い落とす。

 「ちょっと・・・気持ち悪いわよ!!股の間で!!」
 「今からこれをお前の胎内に入れてみようと思ったのだが」
 「はぁ!?何言ってるのキョン・・・って!ちょっと!!やめて、やめなさい!!!」

ハルヒの下の口を指でこじ開ける。毎晩俺のモノで慣らされているので簡単に開く。
すると待っていたかのようにウナギはハルヒの膣へと侵入していった。

 「・・・っんぅ・・・ ぁああ、気持ち悪い・・・よぅ・・・」 
 「でもお前のここプックリ膨れてるぞ」
 「ああ・・・ それは・・・ イヤ・・・・・・」

そうこうしている内にウナギは完全にハルヒの胎内に納まってしまった。
今のハルヒは何も知らない奴が見たら立派な妊婦だ。

 「っ・・・ 暴れてる・・・わよ・・・ あたしのお腹の中で・・・ ウナギが・・・ あん・・・ 暴れてる・・・」
 「将来俺との子どもが出来た時の訓練にはなると思うぞ」
 「ならないわよ・・・!ウナギと人間じゃ勝手が違うわよ!! っあッ・・・ あん・・・ ッ・・・ ふぅ
  ・・・キョン・・・ 早く中から追い出してよぅ・・・」
 「駄目だ」

俺はハルヒの体をうつ伏せになるようにひっくり返す。

 「ちょっとキョン!! んぅ・・・今度は何する気・・・ ぃゃっ・・・ っはぁ・・・」
 「最近やってなかっただろアナルセックス」
 「まさか前と後ろを同時にやるっての?! ・・・っああっ・・・ いきなり挿れないでよ・・・!!!」

後ろの方も散々慣らされているとはいえやはり締まりがきつい。

 「駄目・・・ 駄目ぇ・・・!! キョン・・・ 駄目・・・!!」
 「ハルヒいつも言ってただろ・・・ たまには変わったプレイがしてみたいって」
 「でも・・・・ っあん・・・ ウナギを見てこんなプレイを思いつくなんてこのド変態・・・!! ぁあっ・・・ うぁっ・・・」
 「いつも・・・ 裸同然の格好を見せ付けてくるお前に言われたくないな・・・ っ・・・」
 「だったら・・・ キョンも裸に・・・ っ・・・ なりなさいよぉ・・・」
 「いつだったか・・・ 俺が上半身裸で昼寝していた時に・・・ うっ・・・ 俺の乳首に噛み付いてきたのは誰だった・・・」
 「じゃあアンタもあたしのオッパイなっとクリトリスなっと噛み付いてきなさいよ・・・ このヘタレ・・・!! 
  っ・・・? ・・・っあああ、ああああいやああん!!!」
 「どうした・・・ ハルヒ・・・?」
 「ウナギが・・・ あたしの・・・ っああ・・・ん」

俺はモノを一旦抜いてハルヒの股を覗いてみた。

・・・・・・何とハルヒのクリトリスにモグラの如く顔だけ出したウナギが喰らいついていた。

 「ダメぇ!! ああん・・・!! キョン!!ぃやあああ!!! ああああ!!!」

そしてハルヒは達した。

 
だがしかし俺は達する事ができなかった。
なのでその後改めて俺とハルヒの2人で続きを楽しんだ。勿論台所で。