【涼宮ハルヒ】谷川流 the 17章【学校を出よう!】
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由だが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
Q煽られたんだけど?
Aそこは閉鎖空間です。 普通の人なら気にしません。
Q見たいキャラのSSが無いんだけど。
A無ければ自分で作ればいいのよ!
Q俺、文才無いんだけど…
A文才なんて関係ない。必要なのは妄想の力だけ… あとは思うままに書いて…
Q読んでたら苦手なジャンルだったんだけど…
Aあうう… 読み飛ばしてください。 作者さんも怪しいジャンルの場合は前もって宣言お願いしまぁす。
Q保管庫のどれがオススメ?
Aそれは自分できめるっさ! 良いも悪いも読まないと分からないにょろよ。
Q自分で作れないから手っ取り早く書いてくれ。
Aうん、それ無理。 職人さんにも色々あるのよ。
乙
でもこっちは前スレ埋めてからな
早すぎるでしょ。
先走りすぎだ。
最近忙しくて3スレ分(14から)ログだけ取って読めてない orz
キョンのように二人っきりになっても決してデレない(滅多にデレない)キャラに
新たな属性「キョンデレ」を与えたいと思います。
皆の前だとツンツン、二人きりになるとつれない、で「ツンツレ」というのなら前にどっかであったが。
それって結局「デレ」は無いのか?
>>9 デレは無いが、何故かお互い別れようとかいう話にはならない、とかいう感じ。
てかスレ違いだが。
>>6 俺なんか少なくとも5スレはログ取っただけで読んでない
巡回スレ減らさないと駄目かも
前スレ終了間際のオリキャラ物、
思っていたよりまともな話で戸惑っている俺ガイルw
オリキャラ物は痛い話になりやすいからな。
痛いのねらってんじゃねえ?名前間違えたり
魔法という言葉が出たとたんに寒気がして読むのを止めた
俺は異世界人には特殊な能力はないような気がするんだが
朝比奈さんと同じようにただ異世界きたってだけだろ
変な能力があったら超能力者になってしまう
>>17 魔法の有る世界から来たというのも考えられる
19 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 20:15:13 ID:zUBUOApH
英字
20 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 20:15:33 ID:sCqb4hGs
魔法とか言うからハルヒがネギまの麻帆良学園の生徒だったらって想像してしまった……
まぁネギは来た瞬間ソッコーで拉致られるだろうが
首吊りてー……orz
21 :
嬰児:2006/07/01(土) 20:16:35 ID:zUBUOApH
sage忘れスマソ
異世界人で魔法使いってちょっと前にやったエロゲのヒロインでいたな。
なんかPS2化+アニメ化するらしいけど・・・
さて、雑談はこの辺にして後は神の降臨を待とうぜ
25 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 20:44:52 ID:owLzjDnf
俺、童貞なんだけど、
このスレの童貞率が知りたいな。
みんな童貞?非童貞?どっち?
>>25 非
というか、スレ違い+スレ消耗する から他所でやってくれ
27 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 21:14:48 ID:owLzjDnf
このスレの童貞率が知りたいな。
読めないの?このスレのが知りたいの。
つーことで10人答えてくれるまで粘着するぞ!!
おいらも非童貞だ。
1年ちょい付き合ってる彼女がいるよ。
29 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 21:23:26 ID:owLzjDnf
おお、すげぇな。でも年いくつなの?
高校生とか?
ID:owLzjDnfはいつものage厨
スルーしろ
31 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 21:29:57 ID:owLzjDnf
ageるかどうかは書き手が決めること。
強制しようとしているID:OBNyKs2pの方が問題だww
あたまイタイやつだなww
嫁ハルヒの話を待ち続ける
33 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 21:33:13 ID:owLzjDnf
童貞・非童貞の話を待ち続ける
じゅーんぶらいどまだ?
35 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 21:41:22 ID:owLzjDnf
童貞・非童貞の話をまだ?
通報してくるノシ
荒川さんは高齢童貞。
39 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 22:06:35 ID:owLzjDnf
荒川さん?だれ?
谷川はどうなんだろうね
せっかくのハルヒの立役者なんだ
平野綾は一発やらせてあげればいいのに
谷川は優しそうなオッサンだっけ。
特徴は頭髪の剥離が心配されるところか。
岡部も俺も高齢童貞。
42 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 22:09:44 ID:owLzjDnf
谷川さんってそんな年なの?
もっと若いと思ってた。
年いくつなん?
48
44 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 22:15:21 ID:owLzjDnf
え〜、そんな年なのか。
すごいなぁ。それであんな話をかけるなんて尊敬だね。
やっぱり童貞だからできるのかなぁ?
岡部って誰?
谷川は三十六
ちなみにageると鯖に負担が掛かる。運営にも「上げ荒らし」って言葉が存在するぐらいだしね。
書き手の自由を主張するのは勝手だが、自由と身勝手の分別はつけような
そして同一人物の発言が削除されるのは2度目。そろそろ運営に睨まれる頃だ。
ID:owLzjDnf←これって『かなり』とかいうコテつけてたアレか?
48 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 22:18:30 ID:owLzjDnf
え、同一人物?
何言ってるの?根拠がわからん。
俺はそもそも負け組み板から今日はじめてきたんだぜ^^
お前らいい加減にしとけ
とりあえず放置&NGワード登録推奨。
おまえらそれくらいにしとけよ
52 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 22:20:32 ID:owLzjDnf
谷川は36歳か。
で頭薄いのか。それはカワイソウだね。
age荒らしや削除二回目だったとしてそれでにらまれてたら
vipとかどうなるのよ。ん?
>>48 じゃあ名前欄にfusianasanって入力してくれ。俺前回荒らした奴のIP知ってるから。
それで別人なら人違いって認めてもいい。どの道削除される事に変わりはないけどね。
まさかまた指図だの何だの言ってごねないよね?それが出来なきゃ証明もまた出来ないんだから。
54 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 22:22:20 ID:owLzjDnf
え?
お前が先にその「俺前回荒らした奴のIP」とやらを晒せよ。
ほんとに知ってるかわからんじゃん。
>>54 ゴメン、自分から書き込ませれば無罪なんだけど、
人のIP晒すとルール違反なんだわ。お前が先に提示してくれ。
こうして書き手は逃げていくのであった
※運営に幾度も報告されたホストは優先的にアクセス禁止の対象になります。
※エロパロ板でもIP取るよ。
※精神に異常をきたしている方はご遠慮願います。
おいおい、NGですっきりしてるのに相手をするなよ
それに反応したら削除対象にならないんじゃなかったっけ?
なんか土日は荒れるんだよな
21歳以上なのか、ホントに
ねえ、今削除レス指定してるんだけど、どこまで指定する?
取り合えずID:owLzjDnfの全発言にしておく?
ここはvipじゃないから
当然対応も違ってくるんだぞ、今ならまだ間に合うから止めれば?
ネットにつなげれなくなるよ?と独り言。
後、
>負け組み板から今日はじめてきたんだぜ←書いてない
と
>ageるかどうかは書き手が決めること。 ←自分は書き手と間接的に主張
が矛盾してくる事についてどう思う?
62 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 22:29:18 ID:owLzjDnf
>>55 それは信用できないでしょ。
君が運営マーク付ならわかるけどさ。
ま、ただ職人が逃げていくのは寂しいからそろそろ消えますね^^
荒らしに反応する人も荒らしですよ。
スルー&NGワード登録推奨。
書き手が来るまでのんびり待ちましょう。
なにおまいら相手してるんだよ
もう房来んなとは言わないから、何も書き込まんでくれ。
ここは厨耐性の低いインターネットですね
おまいらって書いたけど、最初のほう相手してたのほとんどID:28bOv6arだな
っていうかこの話はもうやめ
反応してるの単発IDは荒らしの自演だろ。
PCで煽って携帯で荒れるようにの自演するのは荒らしの基本。
もういいよ。誰か投下しる
71 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 22:49:54 ID:owLzjDnf
>>71 止まっていようがいないが、
アクセス禁止の対象として考慮材料になることは変わらないので、
削除依頼を出したい人は出し続けるのがよいかと思います。
「長門。能力を使うなとあれほど言ったのに…。カッコつけやがって」
「……」
「あれほど言ったのに……。!!」
こ…この砂から感じる感覚は!
ああ…なんてこった…くそっ!
「ぬけがら」 「長門のぬけがら」 「冷たい消滅」 「命の消滅」
ちくしょう…
なんてこった…
俺は
こいつのことが好きだってことが今わかった
おれっていつもそうだ いなくなってはじめてわかるんだ
無口な宇宙人と思ってたけれど どんな人間にも無表情なおまえが好きだった…
いっぺんも愛想をふりまかないその性格は
本当は誰かと話したりしたいさみしがりやだったってことが今になってわかった
ドドドドド
「やはりな。朝倉涼子。てめー」
「ぐあああああ!!」
「どうりで妙だと思ったぜ。この宇宙人。長門になにかされたってわけか」
「うぐああああああーーーー!!な、なんだこれはぁ〜〜!?」
「てめー自分の体の変化に気付いてなかったのか?」
「キサマなあああんぞにいいッ…!!」
「地獄でやってろ」
ばぁぁぁぁっ…
あれは…長門っ!
幻覚だったのか…それとも…
今の俺には悲しみで泣いている時間なんかないぜ
長門有希死亡 TO BE CONTINUED
ま、ネタだから細かい事は気にしないでくれ
シルバーチャリオッツ吹いた
前スレのキョン吉信者って響きなんか好きだ。
いつ頃のスレか忘れたけど、キョンが逆サトラレになる話があって、
その話の中でハルヒの本音だけ書かれていなかったので、その
ハルヒの本音を書いてみようと思っているんだけど、いいかな?
逆サトラレってのはサトリってことなのか
あーなんかネタを思いついた
時間軸は憂鬱後。手紙で呼び出される谷口、行ってみても誰も居ない
仕方が無いので帰ろうとしたら朝倉涼子の声が聞こえる
何事かと思いきや眼前に朝倉涼子の幽霊が居た
谷口の脳を触媒に情報を最低限まで絞って現存しているらしい
つまり擬似幽霊。分かり易く言えば局地的カマドウマ。そして長門に気付かれる
幽霊状態では情報思念体も何もないのでゴーストライフ満喫な朝倉涼子
それをカマ倉涼子と小馬鹿にしつつもだんだんと非日常に適応していく谷口
そして気が付いたらすっかりSOS団員として活動するハメに…
ってのはどうだろう。
>>76 電車内での攻防戦を描いたやつかwww
あれは面白かったな
期待しませう
>>77 サトリは妖怪だからあえて逆サトラレにしたんじゃないか?
サトリ…心を読んで人を欺く妖怪。
コネタ
女王様会談
ハルヒ「有希は誰が一番奴隷に向いてると思う?」
長門「古泉一樹」
ハルヒ「!?なんで古泉君?フツーキョンかみくるちゃんでしょ?私はキョンかな、反抗するのを無理やりってのがいいのよね。
みくるちゃんはもう慣れちゃったみたいで」
長門「・・・・彼は被虐的性向を持ちながらプレイは自分で主導したい典型的エゴマゾ。」
ハルヒ「・・・!よくそこまで分かるわね、(私のキョンをなんでそんなことまで知ってるのよ!)
じゃあみくるちゃんは?」
長門「肉体的な嗜虐を好むのであなたと相性がいい」
ハルヒ「(キョンとじゃねえのかよ・・・)じゃあ古泉くんは?」
長門「・・・彼の性癖はうまく言語化できない。」
ハルヒ「へえ見かけによらずド変態ってこと?!(この際イケメンに乗りかえるのもいいか!)」
長門「・・・そう(てゆうかハルヒのせいで命が危うくなることを私に知られていることで興奮している複雑すぎる構造。)」
ハルヒ「・・・(むうこいつかなり男を見る目が有る・・・)」
>>78 それを谷口でなく、キョンでやってくれると助かる。
主に俺が。
83 :
前前スレ175:2006/07/01(土) 23:11:42 ID:96TE7ABb
前スレ
>>146の朝倉SSの人
今更ながらGJ
俺にもっと文才があればなあ。
>>78 いいネタだ。少し借りたいところだけど俺じゃ書けない・・・orz
誰かやってくれないかな
>>82 ごめん、俺はハルヒ×キョンだからw
ってか谷口はその他日常キャラにするには惜しすぎる
>>84 暇があったら俺が書くよ。他にやりたい事もあるから如何ともしがたいけど。
サトリの話は泣いた。
うしお・・・・・
>>78 それなんて出席番号1番?
朝倉だから出席番号が1でも不思議ではないか………
89 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 23:39:42 ID:AghOHUi3
>>前スレ604
何気に前半十数行に小説のタイトルがちりばめれれてるのがすごいなw
(憂鬱,溜息etc・・)
さて、今のうちに真面目にシリアスSS書いてくるか…
だが時系列が良作とモロ被ってるのが痛い。
だけどキョンなら。 キョンならきtt(ry
というわけでネギまとのコラボ書ける人書いてくれ
俺? 俺はDMCでSOS団全員凌辱書こうとして死んだからダメだ
ひそかに学校を出よう!のSSを期待しているのは
俺以外に18人はいると信じている
94 :
ジョン・スミス:2006/07/02(日) 00:07:46 ID:QOLylVqD
>>91 オレッチも
いろいろ書こうと
がんばるんだけど、
企画段階か、文章化の失敗で
9割以上ボツになっちゃいマシタ。
>>92 期待してるけど、この流れだと1年経っても無理じゃないかと思ってしまうオレガイル
コラボやめようや
そこそこの腕前がないと寒くなるだけよ
以前そうやったやん
>>92 まず「学校を出よう!」を読んだことが無いオレサガット
大事なのは過程じゃなく結果だろ
学校はコピー大量発生事件がネタ的に扱いやすそう。
あとは全部むずい。エロのみなら、ヴァンパイアも可。
チ
ろ
る
学校SSも考えてはいるんだがなあ……
あれもいい作品だ
茉衣子×宮野
需要はあるのか?
まあどっちにしても書くつもりなんだが
うん、なんていうか・・・
学校のキャラじゃ
萌えない
ヤロウ・・・
タブー中のタブーに触れやがったw
嫁ハルヒへの禁断症状が・・・
鬱・・・
>>79 それそれ。期待してくれるなら、投下してみようかな。
ただ、構成は出来ているが、文章がなかなかうまくいかないので、
少し待ってくれ。
2期やるかどうかでたびたび論戦になるけどさぁ
俺が心配してるのは2期やるかどうかよりも
もし2期がやると決まったとき、京アニが忙しくてうっかり別のとこに頼んだりしないかってことなんだ
>>107 俺も心配だ。もし変わっちゃったらハルヒ実写化と同じくらいショックかもしれん
DVD買って盛り上げるさ・・・
毎コマ毎コマ顔の形が違ったり
長門の立つ位置が毎コマ違ったり
ハルヒの行動とセリフが食い違ったり
古泉が色鉛筆でかかれたラフ画になったり
みくるちゃんが役に立つスーパーガールになったりするのか
おそろしや
>>112 いや
ハルヒの走りが3コマの使いまわしになり
SEとアニメのタイミングが合わなかったり
ミクルビームが変なところからでてきたり
長門の高速詠唱が世界最短の2コマになったり
神人に壊された建物が発泡スチロールみたいに壊れたり
よくみると残骸が浮いてたりするんだろ?
想像しただけで泣けるな
一期が神がかっていただけに尚更
みくるビームを喰らえっ!
うおっまぶしっ
>>112,113
すまんそれなんか前例あるの?
ヤシガニのこと?
うおっ、まぶし!
某ウニメを見た俺から言わせてもらうと、一番キツいのは
キ ョ ン 火 葬
だろ?
その時ウニの中から長門の声が
>>117 特にこれって前例ではないけど
作画崩壊とかのひどい例をあげてみた
まあ、ぶっちゃけるとヤシガニ
けど、アクエリオン19話ネタでSS書いてみるのも面白いかもしれん
変わってしまった自分の姿に戸惑うSOS団
その中で一人気にしていないハルヒ
元に戻すためにはハルヒにこれはおかしいと思わせないといけない……とか
スレ違いになってきてるぞ。
投下が無くて話題無いのは解るけどアニサロ板行こうぜ。
出来てても投下し難くなる。
125 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 02:13:32 ID:qmcoYK3N
とりあえず流れを変えるために今書いてるSSの序盤だけ投下します。
一応中盤辺りまで書けてますが、文章の見直しがまだなのでとりあえずこれだけ
ある程度の突っ込みどころは突っ込んでもらえると幸いです。
ってか序盤の最後でも突っ込み所がいっぱいありそうな・・・
涼宮ハルヒの抹消
プロローグ
2月にあれだけ盛大なイベントや事件があったにもかかわらず、3月には敵対組織が襲ってくるなどというスリリングなことはなかった訳だ。
球技大会など細々したイベントはあったわけだし、他にも阪中から相談を持ち掛けられたりしたわけだが、他にも思い出したくもないイベントはあったわけだ。
ひな祭りには宣言どおり雛あられを撒いた訳だ。 まさか全員が(長門もだぜ)お雛様の姿でするとは予想外だったがな。
おまけに
「5人ばやしがいないわよ!」
というハルヒの号令により俺と古泉はあわてて着替え直し谷口、国木田を召集し、それでも数が足りないため鶴屋さんを代役に呼び出した。
「おい、キョン。 これどうやって着るんだ?」
知らん、俺に聞くな。
「これはこうやって帯をまわしてさっ、ここでこうやって縛るんだよっ」
鶴屋さんが着せ替え人形の着せ替えをするかのように谷口の着付けをしていく。 この人にもお雛様をやって貰いたかったな。 髪が長いからピッタリだと思う。
このままだと牛車まで出てきそうなので、ハルヒを何とか落ち着かせて8人で雛あられを撒いたわけだ。
後で全員で指導室に連行されたのは言うまでもないがな。 ハルヒだけが何故? って顔をしてたのをはっきり憶えている。
そして誰が決めたんだか、ホワイトデーだ。 これを決めた奴は恐らく全国の男性の恨みを買っているだろう。
バレンタイン後に俺が口を滑らせてしまったせいで古泉と2人で考えたわけだが、あれこれ考えた末に学校内に隠すことにした。
とりあえず放課後各々に手紙を渡し、それで学校内を探してもらう。 という構想だ。 苦肉の策としか思えないがな。
ハルヒは手紙を見て少し考えた後、頭上に電球が出てきそうな古典的なリアクションを取り、すこし視点を谷口に向けた瞬間にいなくなっていた。 早すぎだろ。
その後部室に行き、朝比奈さんと長門にも手紙を渡す。
長門は手紙を受け取った後、中身を見ずに移動し始めた。 もう場所分かってんのか?
朝比奈さんはというと、しばらく「うーん」とか「えーっと」とかうなりながらしばらく考えた後、「あそこかな?」と言って部屋を出て行った。
朝比奈さん、メイド服で探しに行くんですか?
ちなみにプレゼントの内容を言うと、ハルヒには本屋で偶然見つけた『空想科学何とかという本』長門には『非日常学園物ライトノベル』朝比奈さんには『ワンピース』(マンガじゃないぞ)という無難な組み合わせである。
真っ先に長門が戻ってきた。 やっぱ最初から場所分かってたな。
「…」
と三点リーダーと一緒に取り出したのは、空想… ってそれハルヒ宛てじゃなかったか?
まるで俺の考えを把握してるかのように、紙包みを取り出す。 うん、長門宛てになってるな。 という事は…
その直後、ハルヒがBボタン押しっぱなしのスピードで突入してきた。
「ちょっとキョン! これってどういう事?」
ハルヒが持っていたのはこれまた可愛いワンピースだ。 完全にアベコベになってる…
「まぁ、プレゼントなら着てあげない事もないわね」
目線を逸らして言われてもなぁ…
いまさら「間違えでした」などと言えるわけもなく、なし崩し的にプレゼントをした俺。 古泉と目線が合うと、古泉が肩をすくめていた。
ハルヒがワンピースを自分の椅子にかけて、辺りを見渡した。
「で、みくるちゃんは?」
たしかにまだ戻ってきてないな。 たしか一番近くて分かりやすい所にしておいたはずだが…
それから朝比奈さんが戻ってきたのは、夕日が傾いてきた午後5時の事だった。 朝比奈さんは憂鬱な顔をしていた。
そんなふうに3月は去り、俺たちは4月に移行するわけだ。 当然終了式や春休みにも色々あったが、割愛させてもらおう。 言い出すとキリがない。
1
そして、待ちかねてたわけでもないのに始業式が来てしまった。 かといって出ないわけにはいかないんだが。
俺たちは2年になった。 そしてクラス替えも行った。 にも関わらずハルヒが後ろにいるのはどういう訳だ? しかも長門もセットでだ。
ちなみに俺は一年の時と変わらず窓側後方2番目という位置である。 あと長門は右後ろ、つまりハルヒの右だ。
「有希、一緒のクラスになったのね。 これで体育祭はいただいたも同然ね」
大方ハルヒが望んだ結果だろうが、担任は変わらず岡部だし、谷口や国木田や阪中もいる。 ハルヒ、そこまで望まなくてもいいんじゃないか?
だがさすがに朝比奈さんや古泉は同じクラスにならないか。 なったらなったで、色々問題なんだがな。
さて、ホームルームが終わりいつもの部室に移動するわけだが、
「キョン、ちょっと先に行ってて。 ちょっと有希が話があるらしいの」
「部室じゃ話せないことなのか?」
「そうみたいね。 有希がここでって言ったのよ。 一体何なのかしら」
「そうか。 じゃあ先に行って待ってるぞ」
そう言って俺は教室を後にする。 俺もいればよかったと思うのはかなり後になってからであった。 いや、俺がいても止められなかったかもしれん。
俺は部室で朝比奈さんの淹れた最高のお茶を啜っていた。 古泉がまだ来てないな…
なにやらすさまじい足音が聞こえるな。 まぁ、ハルヒだろう。
いきなりドアが勢いよく開き、反動でまた閉まろうとしたところでハルヒが入ってきた。
入って俺を見るなり、いきなり掴みかかってきた。 痛ぇなこの野郎。
「キョン、アンタどこまで知ってたの!」
「何のことだ?」
「とぼけないで! 私とSOS団の事よ! 全部有希から聞いたわ」
俺は目の前が真っ白になったね。 今まで隠してきた苦労はなんだったんだ…
「1週間おくれのエイプリルフールだろ? そんな物真に受けるなよ」
いつの間にか言い訳を紡いでいた。 流石だ、無意識の俺。
「有希からしっかりと証拠も見せてもらってきたわよ。 まさかあの時にアンタが言ったままだとは思わなかったわ」
俺と朝比奈さんが同時に青ざめる。 長門、なんて事してくれたんだ。
長門がドアから音もなく入ってくる。 俺は長門に詰め寄ろうとしたが、ハルヒに襟首を掴まれてるため動けない。
「な、長門、お前は主流派じゃなかったのか?」
長門は視線をこちらに向け、
「主流派も現状維持のままでは新たな情報爆発がない物と判断した。 これには他の派閥も同意している」
そんな馬鹿な。 最近敵の動きがないと思ったらそういう事か。 動く必要が無くなったと。
「みくるちゃんゴメンね、時間の流れは戻したわ。 安心して戻って頂戴」
「そ、そんあ、いきなり言われても… え、最優先強制コードで帰還指令が?」
どうやら朝比奈さんの反応を見ると、本当に時間が元に戻ったようだ。
「え、でも、そんな…」
朝比奈さんがオロオロしていると、またハルヒが、
「いいから早く戻って、さぁ!」
振り返った時にはもう朝比奈さんはいなくなっていた。
「これであなただけ」
長門が淡々と口を開く。 何かに操られてるのか?
「操られていない」
「なぁ長門、俺を一体どうする気だ?」
恐る恐る聞いてみた。
「あなたの涼宮ハルヒ、およびSOS団に関する記憶をすべて抹消する。 同時に他の人間についても同じ情報操作を行う」
それはまずい。 いや、ダメなんだ。
「涼宮ハルヒについては、あなたの記憶を抹消した後しばらく様子を見る」
「え? 嘘…」
「嘘ではない。 彼のことを覚えていると、後の行動に弊害が出る」
「だ、だめよ。 そんな、キョンの事…」
そこまで口に出してハルヒは糸の切れた人形のように地面に倒れた。
「眠らせた」
俺が長門を止めるしかないようだな。 このまま引き下がれるか。
そんな俺の考えもむなしく長門が言い放った。
「情報操作開始」
くっ、頭が重い… 眠らせる気か。 俺はこの非日常を受け入れたんだ。 今さら…
「ごめんなさい」
その長門の言葉を最後に、俺の意識は暗転していった。
とりあえずここまで
グデグデにならないようにがんばります
いきなり死亡フラグ…長門、冗談だろ?
超展開でおもしろいだけにどう締めるかに激しく期待してます!
今となってはヤシガニを知ってる人も少ないんだろうな。
8年ぐらいたってんのか?
133 :
13-73:2006/07/02(日) 02:51:48 ID:N5yepgEH
やっとこの自己満SSも終わりです。
6月の話しなのに、7月ももう2日だよwww
やはり一昨日、学校を出よう!1巻とNHKにようこそ!(原作小説)、NHKにようこそ(漫画5巻)を買ったのがまずかったのか?w
学校も面白いですね。気が向いたら書いてみたいと思います。(キャラの言いまわしが独特で難しそうですが)
134 :
13-73:2006/07/02(日) 02:52:19 ID:N5yepgEH
晩餐の食卓に並んだのは、実は和製英語だとはあまり知られていない料理、ビーフシチューだ。
程よい触感を残しつつとろける牛肉、赤ワインの風味の残るドミグラスソース。
その味は、俺が今まで食ったものの中でも最良の部類だった。
わざわざレストランにでかけて行く意味なんてどこにあるんだろうね?
俺は罰金を思い溜息をつく。『俺』の金だが、普段から罰金を受けている俺の身にもその苦労は分かるのだ。
「何言ってるのよ。場所は問題じゃないわ」
憤慨冷め遣らぬと言った表情で切り返すハルヒ。
じゃあ、何が問題なんだよ。
「キョンと出かけることに、意味があるんじゃない」
普段の俺なら「そうかい。そんなら、ファミレスだっていいじゃねえか」なんて無粋な言葉を呟くことも出来たかも知れない。
でも、顔を赤く染めて見慣れたアヒル口を見せるハルヒを前に、俺は何も言うことが出来なかった。
くそ、俺らしくないな。こいつが可愛すぎるせいだ。
135 :
13-73:2006/07/02(日) 02:52:54 ID:N5yepgEH
部屋に戻ってゆっくり考えたいことが俺にはあった。
それは大事な事で、ひょっとしたら俺の未来に関わってくることなのかも知れん。
朝、ハルヒにひっぱられて歩いた道を部屋に戻ろうと逆走する途中、俺は知りたくもないのに、ある一点に気付かされた。
財布の中に寂しそうに野口達が並んでいた安月給の俺がこの一戸立建てを購入できた理由。
朝は混乱でそんなもの目に入らなかった俺に、その理由を理解させるに十分なモノ。
何だ。あの人型のシミ……
うっすらと廊下に浮かぶ不気味なシミ、それははっきりと分かるくらい人の形をしていた。
おそらく不動産屋も処理に困っていたんだろうな。おまけにあいつは交渉も得意だ。
つまるところ、変わってないんだな。ハルヒは。
『自室』のベッド──贅沢なことにダブルベッドだ。昨晩眠りについたベッドよりずっと広かった──に寝転がって粘菌のようにゆっくりと考えをめぐらせる。
──俺はハルヒが好きなのか…?
俺は、この世界の『ハルヒ』を可愛いと思った。美しいと思った。
そして愛しいと思った。
136 :
13-73:2006/07/02(日) 02:53:26 ID:N5yepgEH
………
それは凄く単純なことだった。
ハルヒは『ハルヒ』であり、『ハルヒ』はハルヒでしかなかった。
気付いちまえば簡単なことだ。eureka!我発見せり。
今まさに、王冠の金の純度を測る方法を発見したアルキメデスのような気分だ。
俺はただつまらん維持を張って、その気持ちを見つめようとしなかっただけなんだ。
「俺は、涼宮ハルヒを愛してる」
言葉に出して再確認する。
多分、今の俺は3倍どころか9倍くらいの速度が出せるくらい真っ赤になっているんだろう。
でも、今声に出した言葉が俺の全ての思いで、そこには一言の嘘も含まれていなかった。
俺はハルヒが好きなんだ。
さて、自分が何か発見をしてしまった時、それを誰かに伝えたいと願うのが人間の心理だ。
例えるなら今の俺は、もし授業中だろうと前のやつの首をひっつかんでそれを教えてやりたい気分だ。
『古泉』は言った。「俺は一日で戻ってくる」と。
俺はこの世界の『ハルヒ』にも自分の思いを伝えたかった。
『俺』の選んだ、『俺』の愛したハルヒ。
そして俺のハルヒへの想いに気付かせてくれたハルヒ。
「ハルヒ」
廊下を挟んで反対側。自室の前のドアを開く。おそらくここがあいつの部屋だろう。
大き目の本棚──シュロディンガーがどうたら書かれた背表紙の本や、世界一有名な薬中名探偵の原書なんかが並んでいた──、小洒落た様箪笥に、白雪姫にでも出てきそうな鏡台、ハンガー掛けとそこに万国旗のように並ぶ衣装。
壁には、質素な時計と赤い文字が4つしか見えないカレンダー。
ソフトやら本が散らばった机と、その上でマウスを熱心に動かしてパソコンを覗きこむハルヒの後姿。
「どうしたの、急に?」
突然の俺の訪問にハルヒはキョトンとした表情を浮かべて振り返る。
「俺はお前を愛してる!!」
思うまま全て、ただひたすら言葉に込めて俺は放った。
ストライクゾーンのど真ん中への渾身のストレート。全力投球。決め球だ。
「あたしも愛してる」
俺の投げた渾身のボールはバックスクリーンへと吸い込まれた。見事なホームランだ。
自分が愛しいと思う人間に「愛してる」って言われることがこんなに嬉しいとはね。
想像よりも何倍も素敵だ。
「でも、急に何よ?」
何でって。そのだな、こう俺の想いの再確認みたいな……
あー、上手く言語化できない。
「急に言いたくなった、それだけだ」
その答えに満足したのだろうか。120%の笑みでニコっと笑ってくれた。
俺はその笑みと、自分の言葉に気恥ずかしくなって、軽く目をそらした。
そらした目に、ハンガー掛けに掛かった衣装のカラフルな色が飛び込んでくる。
学年の始めに宣伝に用いたバニーの衣装、野球大会前に朝比奈さんが着ていたナース服、全身黒のゴシック衣装──どっかの対魔班の班員の服みたいだ──、浴衣に、サンタ服、それに北高の制服。
犬だかネズミだかよく分からない茶色の生き物の着ぐるみ──どっかの軍の作った強化服じゃないよな、これ──
他にも、巫女装束だの、うちの高校の体操服──下がブルマなのは制服と同じく多分、校長の趣味だ──だの、ネコミミ──どこかのネコと、魚の取り合いでもしたようなひっかき傷があった──等。
多種多用、色とりどりのコスチュームがそこには掛かっていた。
おそらくそれは朝比奈さんや、ハルヒ、ひょっとしたら長門が身につけてきた衣装なんだろう。全部とても丁寧に保管されていた。
その中でも一つの衣装は一際大事そうに保管されていた。
俺はそれを手にとってみる。
「見て見て!キョン」
ハルヒが椅子をくるり回転させて、こちらに振り向く。
パソコンの画面はネット通販のコスチューム販売画面を開いたインターネットブラウザ──まだ増やす気か──。
その周りには聞いたことのないメーカーのゲームソフト──弓を射るケイローンのパッケージをしていた──や、まるで岡部みたいな──生徒のことを親身に考えてるが、少しウザい──セキュリティソフトのパッケージが積み上げられていた
「ドレス?」
不思議そうな表情でこちらを見るハルヒ
星空のように煌く純白の生地を、襟元についたコサージュが飾っている。
銀のティアラと、ドレスと同じ生地で出来たヴェール。
朝比奈さんは言っていた。女の子の憧れと。
そこには掛かっていたのは、ハルヒが着たらさぞ似合うだろうウェディングドレスだった。
「そっか。もう一年になるもんね」
ハルヒは壁に掛かったカレンダーを見る。紫陽花とカタツムリの絵と、数字の6。
今までの俺にとっては祝日も記念日もないろくでもない月だった。
──6月に結婚した花嫁は幸せになれる。
そんな、西洋の格言だかことわざだか言い伝えだか分からないものは、この宗教も食文化も何もかもごちゃまぜにしてしまうこの国にも伝わっていた。
多分ハルヒはそんなことを信じたんだろうな。
宇宙人や未来人、超能力者の存在を信じる奴だ。ひょっとしたらサンタクロースも信じてるのかもしれない。
でも、今はそんなハルヒが可愛かった。
いや、多分最初に出会ったときもそう思ったんだ。ただ俺が気付こうとしなかっただけで。
俺は6月の花嫁に一つの質問を投げかけた
「ハルヒ」
「ん?」
「今。幸せか?」
「言うまでもないでしょ」
ハルヒは笑った。何か唐突に、荒唐無稽な計画を俺達に付きつけて朝比奈さんや俺を困らせてくれるあの表情で
「幸せに決まってるじゃない」
軽くウインク、未来人の必殺技だ。クラクラするね。
「久しぶりに着てみようかしら」
ウェディングドレスを見続けていた俺の顔を覗きこんだハルヒは、急にそんなことを言い出した。
華奢な手が丁寧に包装を解いていき、その手にドレスをつかむ。
「うん。いいわね。今日はこれでしましょう」
っておいおい。何脱いでる。
ハルヒはTシャツに手をかけながら、こともなげに言う。
「何言ってるの。見慣れてるじゃない」
いやいや、俺は見慣れてないし。
そもそもだな、女の子はもっと……
「女の子はもっと慎み深くでしょ?」
慌てている俺を見て、ニヤっと笑うハルヒ。
やれやれ『俺』と俺の意見は合致するらしい。
可愛い、美しい、綺麗、beautiful、schöne、belle。その他何でも良い世界中の誉め言葉を並べてやりたい。
なんなら長門に聞いてどっか他星の言語でも誉めてやりたいくらいだ。
純白の衣装に身を包み、ヴェールの下に俺の一番好きな髪型を含んだ今のハルヒにはそれだけの価値があった。
文句がある奴は出て来い。俺が相手だ。
「それじゃ、キョン。しよっか」
頬を薄紅色に染めて、軽い上目遣いでこちらを見るハルヒ。どうにかなってしまいそうだ。
そもそも、さっきから「する」「する」って何をだ。
「そういうのは女の口から言わせないものよ。キョン」
……えーっと。待て。おい。俺は健全なる男子校生で、まだ未経験で……
いや、待てハルヒ。
何?硬くなってる?
当たり前のことを抜かすな。
じゃなくてだな。
いや、俺の貞淑が。
って、待て待て待て待てって。おーーーーい
どれくらいの時間がたったんだろうか、周りに人の気配を感じて俺は目を覚ました。
「おや、お目覚めですか?」
実は良いヤツかも知れないニヤケ顔。古泉の声だった。
髪は……当たり前だが短い。チョンマゲも結えないだろう。
「おかえりなさい。キョン君」
微笑みながらこちらを見てるのは朝比奈さんだ。
まるで遠距離恋愛中の恋人に久方ぶりに会うような笑顔を見せてくれた。
「………」
聞きなれた3点リーダは長門だ。
こいつは喋らないで社会生活に適応できてるのかね?
「ハルヒはどこだ?」
自然と俺はそれを聞いていた。
可能な限り早く。いや、今すぐにでも想いを伝えたかった。
「自宅ではないでしょうか?」
古泉が演技じみた笑みを見せる。大変だな、お前も。
「今すぐに伝えたいことがある。そこに携帯があるから取ってくれ」
「今すぐですか?流石にあなたからの電話といっても、この時間では涼宮さんも閉鎖空間を発生させるおそれがあるので、ご遠慮願いたいのですが」
古泉は、俺の部屋に置かれた時計を指差す。その短針は3と、4の間を指していた。
確かに、こんな時間に電話でもしたら迷惑だな。まあいい、機会はいくらでもあるさ。
「長門」
部屋の隅でひっそり佇んでいるヒューマノイドインターフェースに声をかける。
「今回、俺はどんなことに巻きこまれたんだ?」
「異時間同位体との意識の転換。あなたは涼宮ハルヒの強い思いによってこの時間平面より後に当たる時間平面におけるあなたと意識を交換した」
ようするに、この世界には俺の代わりに『俺』がいたんだよな?
「そう」
長門は極々微細に顔を動かし、肯定の意を示した。
「ええ、我々3人は『あなた』に頼まれてここに集まっているのですよ」
「俺は何か言ってたか?」
「ええ。一日で戻ってくるから心配ないと」
古泉が答える。普段はそんな必要を感じないが、今回はこいつに感謝させてもらおう。
お前のお陰で安心ができたからな。
「恐縮です」
古泉は肩をすくめて笑った。
「長門」
もう一つ疑問があった。
俺の呼びかけに、本好きの宇宙人は少しだけこちらを振り向く。
「あれは俺の未来なのか?」
「……………可能性の一つではある」
「この時代に代わりに来ていた『俺』ってのは俺の未来の姿なんだよな?それでも可能性の一つなのか?」
「未来は、えーっと……禁則事項なので上手く言えないんですが……いくつかの可能性を含んでるんです」
さっきから部屋の隅であわあわと挙動不審な態度を取っていた朝比奈さんが答える
可能性の一つね……
違うな。あれは俺の未来だ。
そうだ。いかなる障害が立ちふさがってても、俺はあの未来を手に入れてやるさ。
明日、朝一番で想いを告げよう。
そう言えば思い出した。我等が憂鬱なる団長殿に告白する時は電話じゃ駄目らしいしな。
朝一で、教室にあいつが入ってきた時に面と面を向かい合わせて言ってやろう。
周りの目?気にするな。どうせ谷口達に後でひやかされる位だ。
ああでも、あいつにも感謝してやらないとな。何せ俺がハルヒと結婚できたのはあいつのお陰らしい。
「……キョン君」
朝比奈さんが憂いを含んだ瞳でこちらを見ている。
まるで想いを告白する前みたいだ。
すいません。朝比奈さん、あなたの思いに答えることは……俺にはハルヒが
「ごめんなさい」
体を襲う強烈な脱力感。
すぐ側の朝比奈さんの声が物凄く遠い場所の出来事のように聞こえる。
「キョン君は……事故とは言え、未来の出来事を知ってしまいました」
ポニーテールのハルヒ。気恥ずかしくらい愛情こもった弁当を作ってくれたハルヒ……
「未来が変わってしまう危険性があるので、キョン君の記憶を消さないといけません」
朝比奈さんの声は震えていた。
消える……冗談だろ?やっと気付いたんだぞ。
やっとその思いに。
古泉は言っていた。「あなたはある一点においての感性を除くと、とても鋭いですね」と。
ああ。そうだ。俺は鈍いよ
こんなどうしようもなく強い恋心に気付かないんだからな。
下手したら俺は、この先何年もこの想いに気付けないかも知れない。
だんだんと目蓋が重くなってきた。こいつが完全に閉じちまったら、俺の記憶は消えるんだろう。
嫌だ。
ハルヒが着ていたウェディングドレス…
ドレスなんかよりずっと綺麗で、これ以上のものなんてこの世にないと俺に思わせてくれたハルヒ
ドレス姿のハルヒは笑っていた。
その笑顔は何故だろうね、俺の見慣れた黄色いカチューシャの団長の姿をしていた。
何だろうな。何かとても良い夢を見ていたような気がするけど、残念ながら忘れちまった。
「キョン君。朝だよー」
いつものように妹のボディープレス──相変わらず軽かった。ちゃんと食べないと駄目だぞ、妹よ──で目覚めた俺はさっきまで見ていた夢に想いをめぐらせていた。
だが残念ながらそれは徒労に終わった。唯一思い出せたのは、それが馬鹿みたいに幸せな夢だったことくらいだ。
昨日のことが良く思い出せなかった。
まあ、おそらく一昨日が衝撃的過ぎたのだろう。
俺は朝比奈さんと長門の花嫁姿に思いを馳せると、気付かずにニヤけていたらしく妹が訝しげに俺を見ていた。
まあどうせ大した事なんて何もなかったのさ、あったのは平凡な日常だけだ。
そういえば、ハルヒは二日三日ならあの衣装が借りられるような事を言っていたな。
どうせならまたあの姿を拝みたいなんてことを俺は考えていた。
そして、今日も今日とて北高への途中。
色々な人間が多種多様な苦行に例えてきたと思われるこの坂を登っていると、後ろから声をかけられた。
「よっ」
ここで俺に声をかけるヤツというのは、たいてい相場が決まっている。
国木田や、SOS団の面々は遅刻ギリギリに来たりはしないからな。消去法から言って谷口だ。
ああ、そう言えばこいつに感謝の気持ちを伝えないとな。
「お前のお陰で、朝比奈さんと長門の花嫁姿を見ることが出来たよ。感謝する」
俺はことの顛末を谷口に説明してやる。
こいつは、普段どんな授業でも見せないような真剣な顔で俺の話しに聞き入っていた。
「写真ないのか?写真!」
残念ながらないね、あるのは部室のパソコンのMIKURUフォルダの中だけさ。
また何か感謝することでもあったら見せてやろう。最もこんなに谷口に感謝することは多分もう死んでもないだろうけどな。
教室に入ると、俺の後ろの席は既に人影が座っていた。
人影は物憂げに窓の外を見ていて、黄色いリボンが風にひらひら揺れていた。
ふっと、俺はまだ入学したての火曜日を思い出した。
非の打ち所のないポニーテールを結っていたハルヒ。
そういえば少しだけハルヒの髪は伸びていた、またそのうち薦めてやろう。
さて、自分の席についた後、俺の口は何を思ったんだろうね。
後ろを振り向くと、頭では全く考えてなかったことを言いやがった。
「ハルヒ。一昨日の衣装はまた借りれるんだよな?」
「何よ?そんなにみくるちゃんのドレス姿が気に入ったわけ。何ならあの長い髪をポニーテールに結ってあげるわよ」
「俺はお前のウェディングドレス姿が見たい」
放課後の部室。
今週中は掃除当番の俺が、今日訪れた最後の部員のようだった。
「今晩はバイトがなくて、楽が出来そうです」
と、スマイルを見せる古泉。その姿は本当に如才なくて、もう一発殴ってやりたくなった。
「……えーっと…その分からないと思いますが、昨日はすみませんでした。」
俺何かしましたっけ?朝比奈さん。何でそんな挙動不審なんでしょうか?
「………」
長門はいつもどおり本を読んでいた。
「ああ、もう全く!この格好暑いわね」
団長席にふんぞり返ってるのは言うまでも無い。ハルヒだ。
黄色のカチューシャが、白い衣装と相俟ってより目立っていた。
その姿があんまり綺麗だったかもんだから、柄にもなく俺はこの時が永遠に続けばいいのになんてことを思ったのさ。
〜the end〜
151 :
150:2006/07/02(日) 03:13:00 ID:N5yepgEH
以上、エロなしに長々とお付き合いありがとうございました。
読んで頂ければ幸いです。
しかしおかしいな。ハルヒ萌えのはずが、気付けばキョン萌えに……
コンセプトはツンVSデレみたいな感じだったのに、最後はもうデレデレに……
世の中上手くいかないもんですね
>>151 デレデレでも面白かったですよ。
またなにか書けたら投下して下さいね。
深夜にご苦労様でした。
違和感なく読めて、純粋に面白かったです。
ハルヒも萌えですが、その数倍キョンに萌えました。
やっぱりキョン萌えですね。萌え。
ハルヒ虐待系を扱ってるのはどこ板?
完結お疲れ様。
ツンとかデレとかはよくわからないけど、ハルヒがかわいいのはわかった。
キャラの魅力がよく出てて、読んでて本当に楽しかったよ。
>>151 いれかわってた未来のキョン視点の話も見てみたいな。
>>151 GJ.エロ無しでも十分だった。
逆にエロがついたら不自然だったかもしれない。
キョンにもハルヒにも萌えた。
『詰合』の『God knows...』と『Lost my music』を聴いて思った。
それぞれ『キョン×ハルヒ』と『消失長門×キョン』に思えてくるんだが。
ちょっと遡ってレス
>>125 絶望した!絵が改蔵っぽいことに絶望した!
>>158 125の画像は改造の作者が書いてる”絶望先生”って漫画のパロだよ
そう言うのは角煮でやってよ。
ここは文章系創作板だよ。
ここは「エロパロ板」な。
エロなしパロと五十歩百歩だったりする。
つまり細かいこと気にすんな。
>>151 いや、いいもの読ませてもらった。
堪らんなあw
>>159 絶望した!絶望先生のパロなのに絵が初期改蔵っぽくって絶望した!
と、言う意味よ。
絶望先生よりも改蔵の方が好きな俺、
絶望した!
166 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 06:21:40 ID:WYgTEs2V
南国アイスホッケー部の方が好きな俺は異端?
スマン、sage忘れた。
>>150 谷口に死ぬほど感謝してるって未来キョンが言ってたじゃん?
最後の場面、写真をせがんで取っ組み合いになって、よろけたキョンが電柱に頭をぶつけて記憶を取り戻す展開がオレの中に溢れている
174 :
古泉 一樹の日常:2006/07/02(日) 11:13:30 ID:kFuO6PbQ
鞄(盗聴器)を肩にかけ、鞄の中からイヤホンを取り出す。
片手に持ったクレープが少し邪魔だな。
ちなみにさっきもらったこのクレープは「バナナチョコミントアイスクレープ」だ。
バナナとミントミスマッチが癖になりそうだ・・・
一度お試しあれ。
それはそうとキョン吉と朝比奈はベンチに座ってクレープ片手に雑談をしている。
オレは近くの茂みにて待機・・・後ろ姿しか見えない・・・
イヤホンから聞こえる会話に耳を傾ける。
『それおいしそうですね』
『ええ、けっこういけますよ、食べてみます?』
『はい』
朝比奈がキョン吉に近づく、ん〜後ろ姿しか見えんがクレープを食ったのかな?
『おいしいですね〜今度はこれにしようかな』
『朝比奈さんのもおいしそうですね』
『食べてみますか?』
『是非』
朝比奈がキョン吉に向けて右手を差し出す、キョン吉はその右手に顔を近づけて、ああぁまだるっこしい。
ん? 今朝比奈の右手が変な動きをしなかったか?
『おいしいですね、これなんです?』
『バナナチョコミントアイスクレープです』
これかよ!?
『あれ、キョン君。ほっぺにクリームが付いてますよ』
『え、どこです』
キョン吉が手で顔をぺたぺた触りだす、クリームは・・・たしかについてるな。
『キョン君、ここですよ』
と言って朝比奈がキョン吉のほっぺを・・・舐めたぁー!?
『うふ、取れましたよ』
『あ、朝比奈さ・・・今・・・」
『え、あ! 私ったら、えっと、その・・・」
なぁ〜るほど、今右手が変な風に動いたのはこのためか。恐ろしい女よ。
イヤホンからは沈黙のみが聞こえてくる、朝比奈計算したんだから特に気にはしてないんだろうが表面上は恥ずかしがっている。なんだこの沈黙は。
『あ、あーそういえばさっきは困りましねぇ』
キョン吉が沈黙に耐えかねたのか話題を出した。
『えっと・・・さっき?』
『さっきの、クレープ屋の人ですよ。いきなりかわいい彼女だなんて・・・』
!? キョン吉、それは駄目だ! オレは反射的に携帯を取り出した。
『・・・キョン君は、私が彼女に見えるのは嫌ですか?』
あんのバカキョン吉が! その話題は誰がどう見てもチャンスだろうが! 登録してある番号を呼び出して
『キョン君は、私とカップルに見えたら嫌ですか?』
朝比奈がキョン吉を向いて真剣見つめている。コール、相手が出ることは無い、が。
『え、えっと・・・朝比奈さん?』
なんか空気が黄色だ、アレが初々しいって言うのか!?
キョン吉が朝比奈の言葉の意味を考えているようだ、ああもう。鈍い。
こんなことを思うのもおかしいかもしれないがオレは三人娘が時々すごい可哀そうに見えるぞ。
そんなことを考えていると遠くから笛の音が響く。来たか。
先頭はピエロの格好をした男、その男が笛を吹いている。
後には熊の気ぐるみやら太鼓を持った女達、とここまで説明すればわかるだろう。
子供向けのパレード、ちんどん屋ともいうな。
キョン吉も朝比奈もそっちを見て呆然としている。さっきまでの黄色い空気はもう無い。
『えっと、朝比奈さん。そろそろ映画に行きましょうか。もういい時間です』
『え、あ、そうですね。いきましょう』
二人はクレープの包み紙をゴミ箱に捨てて公園をででる。オレも後を追うぞ。
と、そこで手に違和感を感じる。
クレープが溶けていた。
キョン吉って誰さ?
古泉っぽくなくて違和感があるな
179 :
古泉 一樹の日常:2006/07/02(日) 11:41:59 ID:kFuO6PbQ
結局クレープを食べることもかなわず腹は減ったまま二人をつける。
まっすぐ映画館に向かう二人を遠くから見てる俺、いまさら自分が周りからどう見られるかなんて考えやしない。悲しくなるだけだ。
イヤホンからは学校の教師についてやSOS団のこと、なぜか鶴屋のことまででてきて異様な盛り上がりを見せていた。
『鶴屋さんは本当に元気な人ですね』
『ええ、でも鶴屋さんのおかげで私はこの時代で任務以外のことを楽しむことができて・・・本当に鶴屋さんには感謝しているんですよ』
今はキョン吉目当てだろうがな。でも鶴屋のおかげで・・・という話を聞いていると本当に二人は仲良しなんだよな、と思う。
そのことはキョン吉という朝比奈にとって心許せる大切な人だから言えることなんだろう。
それをこうやって聞いていると心が痛い、どんな形でもいいからこの任務が早く終わればいい。
『でも・・・』
『・・・?』
『鶴屋さんとも、キョン君たちとも。いつかはお別れをしなきゃいけないんですよね』
『朝比奈さん・・・』
『私はこの時代の人間じゃないから、キョン君たちとは・・・違うから』
そうだ、朝比奈みくるという人間はこの時代の人間ではない。
オレも涼宮もキョン吉も任務が終わったあともここに残るだろう。もしかしたら長門も残るか知れないし鶴屋もこの時代の人間。いなくなるのは、朝比奈みくるだけ・・・
彼女だけがここからいなくなり、彼女だけがその存在をいつかは忘れられるのかもしれない。
『ねえ、キョン君』
『なんですか』
『キョン君は、もし・・・私がいなくなったら・・・』
『悲しいです、悲しくて泣いてしますね。多分鶴屋さんも。ハルヒも長門も古泉もあなたがいなくなったら悲しむでしょう』
『・・・私も、悲しいです』
『ええ、ですから。今は思い出を作りましょう。その悲しみを受け止めて、受け止めた上で前に進めるように、前に進んでもあなたの存在を俺達が決して忘れないように』
『・・・』
『たくさん、思い出を作って、未来人に自慢してやってください。私はこんなすばらしい仲間達と出会えたんだって、そうすれば頭の固いやつらも思わず朝比奈さんがまた過去に行くことを許してくれますよ』
たぶん最後の冗談なんだろうな、それとも朝比奈(大)のことを言っているのか。
だとしても思い出をたくさん作るというのは賛成だ、SOS団の日々は思ったより楽しいしな。
『キョン君』
『なんです』
朝比奈はキョン吉を向いて笑顔になり。
『たくさん。思い出を作りましょうね』
満面の笑みですばらしい提案をしてくれた。
『もちろんです、損はさせませんよ』
二人にとって、今回のデートがいい思い出になるといい。オレは、そう思う。
『キョン君、私に思いでをくださいね』
『姫様のお願いならば、この命に代えても』
キョン吉はキザッぽく前髪を掻き揚げながら言った。
二人は笑顔で見詰め合っている、その空気はピンク色・・・あれ?
今、朝比奈が鞄からなんかとりだしたな・・・なんだあれ。
出しやすいようにポケットに入れなおしたな。
・・・映画のチケット? でもチケットはキョン吉が持っているしな。
『機関』に報告、それを調べてもらうとしよう。
と、前の方から機関の人間が歩いてくると、
朝比奈とすれ違いざまポケットの中のものをとる、そんなことできるやつもいたのか。
オレとすれ違いながら手に入れた紙をオレに差し出す。
それを受け取り目を落とすと内容は・・・
[ラブラブド ホテル]
料金特別3割引券
「私に忘れられない思い出を頂戴」
ずっこけた。
ちょっw
ずっこけた。
内容は面白いけど、sageてくれ
あとどこかにまとめて書いてから投下すると良いぞ
投下します。特にエロなし。ヤマもオチもなしですが
183 :
試験勉強:2006/07/02(日) 12:45:14 ID:E1TKgybk
「長門、この問題はどうやって解くんだ?」
「……フックの法則と運動量保存の法則を連立させて解くのが一般。それか微分方程式を立てる」
「フックの法則な」
「そう」
微分方程式ってのがなんなのかわからなかったので、前半を採用することにした。
昼休みの文芸部室は、昼休み独特の喧騒も遠くに聞こえ、静かなものである。
定期試験を2週間後に控え、俺は休み時間も勉強に励んでいるのだが……
『ホントあんたってバカ。なんでこんなのもわかんないの? バカバカバカバカ』
回想シーンはいらないな。例によって俺は試験対策としてハルヒに勉強を教えてもらっていたのだが、
あまりにひどい暴言と俺の頭を叩く手ににいささか辟易した俺は、ハルヒの目の届かない場所、
すなわち昼休みの文芸部室に陣取って長門に勉強を教えてもらっている。
長門に聞けばそっくりそのまま試験問題を教えてもらえそうだが、
そこはフェアプレー精神を大事にする俺としては遠慮するところである。
いつかハルヒも言ってたしな。そんなんじゃ意味ないって。
俺もそれなりに大学受験を視野に入れてるわけで、一夜漬けやカンニングなど正攻法以外で試験をパスしても
実力がつかないことは過去に経験済みで、一歩間違えると爆弾に早変わりしかねない長門との勉強も、
「これはどうするんだ?」「これはこうする」の質疑応答に留めればとてつもなくわかりやすいのである。
よって、何かと俺の集中力を乱しに掛かっては「この程度で集中力を乱すなっ」などと無茶を言うハルヒより、
長門のそばのほうが勉強がはかどるってもんだ。
物理や数学ははっきり言って暗号かパズルのようであるが、解法を覚えて自力で解けるようになると、
嘘のように楽しくなるから不思議だ。
物理も数学もどの公式を使って解けば解が導けるかを問われてるのと同じで、計算そのものは意外と大したことはない。
パターン化された問題を解くのは楽しい。頭がよくなった気分に浸れるからだ。
最近気づいたのだが、結局勉強ってのは暗記だな。文系科目も理系科目も。
「そう。天才的な閃きも、それを産み出す温床を作るところから始まる」
長門の言葉は重いな。どんな天才であっても加減乗除を知らずに方程式を解けるわけが無い。
知識が蓄えられてなければ、知恵を発揮する機会が減るってことだな。
つまり、今の俺は知識を蓄えている段階な訳で……要するに単純作業なのである。
不慣れな単純作業というのは、変化の多い作業に比べて疲労が溜まりやすい。
慣れたら単純作業のほうが楽なんだろうけどな……そうか、だから勉強を日常的にやってる奴は勉強が辛くないのか。
腰と背中と肩がピリピリと痛む。ここ数日慣れない姿勢を維持し続け、慣れない作業を続けたせいで、
精神的よりも先に肉体的にガタがきている。情けねぇ。
「あー」
シャーペンを一旦置き、背筋を伸ばしたり横に曲げたり腰を捻ったりすると、ばきばきと音が鳴った。
肩をグルグル回す。肩コリが一番辛いんだよな。
そういえば長門も、肉体を酷使したら肩コリや筋肉痛になるんだろうかなどと考えつつ長門の指定席を見やると、
あれ? いない。と、突然何者かが椅子越しに背中に覆いかぶさってきた。
「うおっ」
「動かないで」
鈴の音のような声。確認するまでもなく、長門であった。
あのー……何をしてらっしゃるのでしょうか。
「治療」
なんの。
「肩こり」
……あぁ、なるほど。確かに長門の身体からじわじわと熱が伝わってくるような感覚と共に、
筋肉の緊張がほぐれ、血行が良くなっているのが体感として分かる。
「ありがとよ。長門」
「別にいい」
…………。
…………。
…………。
…………。
もう大分前に肩のや腰の痛みは感じなくなったのだが、長門はまだ抱きついたままだ。
「……なぁ、長門?」
「なに」
「その……まだでしょうか。」
なぜか敬語になる俺。
「まだ」
そうか。長門がそういうのならそうなのだろう。
…………。
…………。
…………。
…………。
「……まだか?」
「もうちょっとだけ」
中途半端だけどコレで終わり
背中に伝わる感触とか、キョンの感想をもっと入れるとさらによかったかも。
うむ、ほのかに萌えたぞ。
>>186 最初書いたけれども、くどくなったので削除しました
文章そのものは淡白な方が妄想しやすいかと思って
でも今思えば残しておいたほうが良かったかも。後悔はしていないけど
GJ
だけど…あれ?物理って2年から習った記憶があるのだが…
いいよーいいよー
このあと部室に来たハルヒに見つかって一悶着ある展開希望
>>190 カリキュラムによって違うんだろうな。
>>151 GJ!
「俺はお前のウェディングドレス姿が見たい」
こういう経緯じゃなかったらプロポーズだな(W
>>151 素晴らしい。ハルヒスキーとしては言うことなしだ
…と今気付いたがここんところいつもハルヒ物投下してくれる氏が
来てないな('A`)
>>193 ハルヒスレにもなかなかいいハルヒものが来てるぞ。
448から。
196 :
7-695:2006/07/02(日) 15:45:12 ID:lIkVBSkt
涼宮ハルヒ独占欲 〜b あらすじ
いつもどうりに学校で過ごしていたキョン。ハルヒの覇気はなく、古泉に言われハルヒとデートの約束をすることに。
帰り道長門にこの世界はキョンが生活していた世界ではなく別の世界と教えられる。
涼宮ハルヒにより既に改変された他世界でありキョンは知らず三日も過ごしていた。
ハルヒは乙女チックな部分を垣間見せ、古泉はキョンの体を狙っているというのに。この世界の人間はどこか違った。
長門自身も違うが、キョンを混乱させないためキョンの元世界の自分から情報をダウンロードし合わせている。
長門が伝えなかったのは情報統合思念体がすぐにキョンを戻すべきかどうか討議を続けていたためだった。
元の世界にキョンを帰す事は出来たがデートの約束が決定された時点で介入不可の事態に陥ってしまった。
他世界のキョンが呼び出され上書き状態、そして改変された理由、それは涼宮ハルヒが付き合う二人長門とキョンへの嫉妬が
引き起こしたと教えられる。この世界は元々長門とキョンは体の関係も有る相思相愛の状態であったが改変され0の状態にされた、と。
一方、キョンは元の世界から呼び出されたので元の世界には存在しておらず、こちらでは行方不明扱い。
ハルヒはそれに気づいておりストレスを溜めこちらの元世界もこのままでは情報爆発を起こし改変されてしまう。
二つの世界を正常に戻すには、今日のうちに、涼宮ハルヒを抱き満足させればいいと長門に教えられる。
突然の状況にあたふたするキョンは長門も一緒に来いと誘いハルヒの家に行く。
だが恨みのある長門はハルヒを宇宙的ぱわーで抑え付け、見せ付けるようにキョンを弄り回した。
このままでは二つの世界を救う事など出来ないと悩むキョンだったが、しばらくすると何かに気づいたように長門は正気に戻った。
長門を帰らせるキョン。事前に長門から媚薬作用のあるお菓子を食べさせられていた二人は平静でない状態で、ハルヒを抱くしかなかった。
ややこしい。抱いた後投下です。200k以上あったのでまた分けます。
200kて
198 :
7-695:2006/07/02(日) 15:48:20 ID:lIkVBSkt
涼宮ハルヒの独占欲 b
3、
「…?」
何か物音が聞こえた。ま、まさか、親が帰ってきたのか?
断続的に下の部屋からは誰かがいるであろう事を考えられる音が二階の部屋まで響いていた。
非常にまずい。部屋で遊んでる姿を見られるならまだしも、
娘が見知らぬ男とベッドで寝ている姿なんて見られたらどうなることやら解らない。
親父さんなら、俺をぶん殴るんじゃないか。
「ハルヒ、すまん」
胸の上のハルヒを退かせベッドに寝かしつける。さて、俺はどうやってここから出ればいいのだ。
目についたのは、ハルヒが顔を覗かせていたあの窓。やはり見つからず家を出るにはこれしかない、か。
「………じゃあな」
これが最後の別れになるんだろうな。しばし、その顔を見つめ窓から外へ出た。
丁度いいところに木がある。飛び移って降りればいいのだが、はたして上手くいくのやら。
「よ、っと!」
何とか成功このまま下まで降りればいいのだ。後はかんた…!?
足を乗せている枝が早くも折れそうになっている。覚悟を決め、飛び降りるしかなかった。
「キョン、行きまーす!」
…着地成功。足が折れるかと思ったぜ。結構な音が出てしまった。家の中まで聞こえてしまったかもしれん。
未だに痺れを訴える足に鞭をうち急ぎ公園に向かう。長門がいるはずだ。
――子供達の喧騒はなく虫の音だけが響く深夜の公園。電光塔の仄暗い光の中、長門はいた。
「長門」
色々と聞きたいことがある。まずは。
「これで、この世界は元に戻るんだな?」
「………」
返事がない。
「元に戻るんだよな?」
「あなたは涼宮ハルヒと結ばれた。でも何も変化は観測出来てはいない」
どうゆうこった。失敗なんて思いもしてなかったぞ。
「あいつは、満足していないって事か? 俺はあいつを抱いたぞ」
「確かにあなたは涼宮ハルヒと結ばれた。
でも何も変化は訪れていないのが事実。体を重ねるだけではだめだった」
「俺が何かやり忘れたとでも? 言われた通り俺はあいつと…」
何がいけなかったのだ。他にやる事があったとでも言うのだろうか。
あいつは満足などしていないって。何か満たされない理由でも…待て、俺ははっきりとあいつに好きだと
伝えていたか? 伝えてなどいない。流される形でそのままあいつを抱いたんだ。
心も満足させる必要もあったんじゃないのか。あるいはもっと別の方法もあったのかもしれない。
「このままだと俺の世界はどうなるか解らないってことか…」
携帯を手に取る。あいつは出るだろうか。どうにかここまで来て貰って気持ちを伝えればいいのかもしれない。
短縮番号を押す。出てくれ。しばらく俺の耳にはcall音だけが鳴り響いていた。…出ない。くそっ。
何度も鳴らすが全く出てくれない。音に気づかないほど疲れ果てているのか、もしくはマナーにでもなってるんだろう。
「どうすりゃいいんだっ」
「私の家に来るといい」
「お前の家に行って何になる? もう時間はないんだろ?」
「すぐにどうにかなるわけではない。焦って問題を更に深刻にするかもしれない。
私にはいい解決案はない。姉に聞けばいい回答が得られるかもしれない」
耳慣れない言葉を聴いた。
「…姉ってなんだ?」
「良き理解者。家に来れば解る」
いい方法なんて思いつかない。このまま二人で考えたって元の世界の危機をただ待つだけになるかもしれない。
「わかった。おまえの家に行く。誰だか知らないが助けてくれると言うならその人と話したい」
藁にもすがるとはこのことだ――
199 :
7-695:2006/07/02(日) 15:51:04 ID:lIkVBSkt
――マンションに着き長門の家のドアの前。なにやら中には人の気配。
長門は横にいるし、これは長門の言う良き理解者とやらがいるのだろう。
「どうした? 早く開けてくれ」
「きっとあなたは驚く」
「そんなヘンな奴なのか? 俺はもう多少の事じゃ驚かないぜ」
長門は俺の顔を見、ドアに手を掛けていった。長門に驚くと言わせた人物、相当に変わった奴かもしれない。
「開ける」
…………ドアが開かれた。目の前の人間に俺は言葉が出なかった。
「いらっしゃい」
過去に俺を殺そうとした人間、そして長門が消した人間、朝倉涼子がそこにいた。
「な、なんでお前がここにいるんだ!?」
声を発すると共にマンションの手すり迄後退る。もう後ろはない。
「あさ…朝倉…? え…」
「そ、意外でしょ」
その言葉に既視感。髪の長い清楚な雰囲気を醸し出すその佇まい、その少し太い眉間違いなく本人だ。
「そんなに驚かないで欲しいな、キョン君」
「いや、驚いて当たり前だ!」
こっちを見ながら笑ってやがる。
「そうね、そっちでは私はあなたを殺そうとしたのよね。当然か。
あなたの世界の‘私’はあなたを殺そうとしたみたいだけどこの私はそんな酷い事はしない。
安心して。ここでは私と有希ちゃんは姉妹という関係なのよ」
頭では追いつくが体はついていけない。俺の体はようするに震えていた。
実際に襲われた俺はあの時の光景を瞬時に思い出していたから。
どうやらこちらの朝倉は穏健派らしい。それに、有希ちゃんってこりゃまた。
「そ、うか。確かに有り得るな。おまえと、長門が姉妹か。う、うむ」
「うんうん」
「でも学校では一度も見かけなかったぞ」
「この制服、ほら。見覚えあるでしょ?」
制服のスカートの裾を持ち見せてきた。
「その制服、光陽園…か。朝倉は向こうに在学してるのか。
どうりで見かけなかったわけだ」
「そうそう。それと私の名前は違うわよ。長・門・涼子だから」
「その名前、物凄く不自然だ。…お前達が姉妹なんて」
向こうじゃ殺しあう二人がこっちではこんな関係だなんて思いもつかなかった。
「とにかく家に上がって、話すことがあるんでしょう」
スリッパを揃え置いた朝倉は奥へ行った。
「長門、こいつは驚くって」
「……ん」
――
テーブルを挟んだ俺の前面にはお茶を汲む朝倉、その右には長門。妙な組み合わせだ。
だが頼れそうなのは確か。今一番問題になっているのは間違いなく俺の世界の事だ。
こっちのハルヒの事は後で考えればいい。
「俺の世界の方、どうにかならないか。俺にはいい考えなんて…」
「「………………」」
おい、なんで反応を返してくれないんだ? なんだ?
「あなたの世界は既に改変が始まっている」
「なっ!? 嘘だろ!」
「嘘じゃないの」
「い、いつからだ!」
「あなたが涼宮ハルヒを抱いて寝ていた時から」
「なんで黙ってたんだ…」
「あなたが冷静ではなくなると解っていたから。三人で話すまでは秘密にすると姉と決めていた」
公園にいた時から内緒にされていたのか。
「俺のやっていた事は無駄だった…そういうことかよ」
「…私の責任も有る。あなたと涼宮ハルヒの関係を邪魔しようとした」
それもあるだろう。急ぐように事を済ませる事になったのは事実だ。
だが、今思えば解る。あの時俺が長門を連れて行こうとした事がそもそもの間違いだったんだ。
200 :
7-695:2006/07/02(日) 15:53:09 ID:lIkVBSkt
「そうね。あの時の有希ちゃんは普通じゃなかった。止めるのに時間掛かったわ」
あの時止めてくれたのは朝倉だったのか。
「いや俺がすべて悪い。長門は悪くないんだ」
こいつが暴走したっておかしくはない。自分の彼氏を他の女と寝かせようとするって事。
俺の中身は違うとしても見た目が全部一緒ならばそれはとても辛いだろう。
長門の気持ちを考えず、頼り過ぎたのがすべて悪いのだ。
「だから気にするな。改変は始まっているとさっき言ったな。
まだ終わってはいないってことだろ。止める事は出来ないのか」
長門は向こうのハルヒは俺がいないから癇癪を起こしていると言った。
ならば、向こうに存命している事でも伝えられればいいかもしれない。
この二人なら出来るんじゃないか? この宇宙的でアニメ的な攻防を繰り広げた二人ならば。
「一個思いついた。‘元世界のハルヒ’に俺が存命している事を今すぐ伝えるんだ。
朝倉、長門おまえ達なら出来るんじゃないか?」
「向こうへ干渉することは出来ない。それに安定していない時空への干渉は」
「有希ちゃんいいから。たぶんそれしかない。やってみる価値はある」
「てことは出来るんだな!? 本当か!?」
「やってみないと解らない。ちょっと待ってね」
「………………」
朝倉は目を開けたまま何かとやり取りをしているようだった。頼むぜ。
「…干渉はなんとか出来るみたい。涼宮ハルヒは多少満足していたみたいよ。
大きく手を加えることは出来ないからあなたは戻る事はまだ出来ない」
「伝えられるならそれでいい。それで止まるなら俺はまだ戻れなくても構わない。きっと戻ってみせる」
「………」
「頼む」
手の汗が気持ち悪い。
「メールで…いいよね」
「あっ、ああ、俺は生きている、必ず戻る。と俺の名前で」
メールときたか。やはりこの二人にとって他世界に干渉する事は造作もないようだ。
「送ったわ」
「いけたか。反応はどうだ?」
「すぐには解らないわ。時間的齟齬があるから」
「…届くのは遅くなるかもしれないってことか?」
俺の神経はもうどうにかなりそうだ。
「簡単に言うとそうね」
そう言いながら朝倉はお茶を俺の前に出してきた。
「茶を飲む気分じゃない」
「ちょっと落ち着いた方がいいと思うの。私の腕を甘く見ないで」
「こんな状況で落ち着ける奴なんてそうはいないだろうよ」
「あっ」
なんだ?
「上手くいった。涼宮ハルヒは見たのね。あなたの世界は安定し始めている」
「………助かった。有難う、朝倉」
「…朝倉じゃないんだけどな」
これで俺の世界はしばらく大丈夫なはずだ。こんなに簡単に出来るんじゃないか。朝倉凄いぜ。頼りになる奴だ。
俺は息を吐き体を大の字に後ろに倒す。
「あら」
腹がなった。一段落ついた所で緊張の糸が途切れたのか体は食欲に気づいたらしい。
ちょっと恥ずかしい。
「ふふ、お腹空いてるのね。何か作ろっか」
「いや、こっちのハルヒの事を考えたい。どうすりゃいいんだか」
「お腹が空いてたらいい考えも浮かばないと思うの。有希ちゃんも空いてるだろうし」
「………」
めっちゃ食ってたからな。言い出せないんじゃないか?
「…食べる」
まだ食うらしい。凄いな長門のお腹はどうなってるんだ。
「三人分はないわね。いつも二人だからさ」
見ると朝倉は冷蔵庫の前で悩んでいた。
「そうね、気分変えて三人でそこのスーパーへ行くのもいいわね。
男手があるんだもの。一杯買っておいて楽しちゃうのもいいかも」
「それで構わない」
200K以上って…もしかして今までの中で最長じゃないか?
いや、別に批判してるわけじゃない。
202 :
7-695:2006/07/02(日) 15:55:14 ID:lIkVBSkt
恩を返す、とてもじゃないがそれに見合ってはいないだろうが手伝える事なら手伝いたい。
「………」
4、
――三人で近所のスーパーまで到着。最近のスーパーは凄いね、こんな時間までやってるとこあるんだからな。
日本人は働きすぎとはよく言ったもんだ。俺の手には買い物籠、横には長門と朝倉がぴったり寄り添う形だった。
道中俺は散々驚いた。長門はいつもどうり静かで、そんな長門を朝倉は仲睦ましい姉妹のように
背を押しここまで来たって訳だ。いやほんとに姉妹なんだろうけど。凄い絵図だ。
「いつもこんな感じなのか?」
「うん、いつもこんな感じ。そんなにおかしかった?」
俺は相当怪訝な顔をしてたんだろう。
「いやまあ、向こうと全然違うから。ギャップが凄いんだよ。仲良すぎだろ」
「そっかぁ。本当の有希ちゃん見たらもっと驚いちゃうかもね」
聞き捨てならない事をおっしゃった。
「ど、どんな感じなんだ? 普段の長門は」
「………」
「そのうち解るんじゃないかな。カレーでいいかしら?」
非常に気になるんだが。長門の顔を見ると言いたくなさそうなわけで、やめとくか。
未知の恐怖ってのもある。それを直視した俺はどうにかなってしまうかもしれない。とりあえず保留しておこう。
「食えるならなんでも構わない」
「Hom○のブイヨン入ってるのでいいかな。辛口の好きだったよね有希ちゃん」
「………」
「有希ちゃん?」
どうした?
「キョン君、向こうからドロップ持ってきて欲しいな」
「え? ドロップって?」
なんだ突然カゴを奪ったりして。
「お菓子コーナーで売ってるの。有希ちゃんから貰ったのがあるよ。いけば解ると思う」
どこか懐かしい風味と食感で俺を悩ませた、アレか!
「待ってろっ」
気になった俺はお菓子コーナーへと急ぐ。ハルヒも食った事があると言ったあれ。今こそ答えが解るのだ。
「ど、どこだ?」
整然と並ぶ色とりどり包装されたお菓子達、この中のどれかに答えがあるのだ。ウォーリーを探せ。
あのキャラは毎回忙しいんだろうな。だって世界を飛び回ってるんだぜ。
ブルジョアって奴だ。あんな素朴な眼鏡なのに。いやいや、ウォーリーはどうでもいい! どれだ。
「あった…」
飴の並ぶコーナーにそれはあった。面は黄色で子供の笑顔が描かれた昭和チックなその絵。
掌で両手で四角を作るとほぼ同サイズ。卵を縦に伸ばしたようなその青い蓋。
ああ懐かしきかな、カワ○肝油ドロップス! いやでもドロップはドロップだが場違いだ。
「こんなの普通、スーパーじゃ売ってないんだが」
なんだこのスーパーは。
「ドロップですか? いやいや懐かしいものを選びましたね。僕も昔食べた事があります」
……久しぶりに声を聞いた気がする。
「古泉、何してるんだ」
会いたくない奴がそこにいた。俺の体を狙っているというあの。
「ここはスーパーです。買い物ですよ」
買い物籠を持っているというのに無理に肩を竦めやがった。
「おまえもここの常連なのか」
「そうです。たまにこうやって深夜一人で来たりします。
…あなたは長門さん達と来てるようですね」
「なんで知ってるんだ!?」
「仲良く入り口から入ってくるのをを見てましたから」
「そ、そうか。俺はもう行く」
「影ながら応援してますよ」
その声が耳を通る前に俺は駆け出した。
――
「長門! 古泉がいたっ!」
はぁはぁと息をつき俺は短距離なのにもうランナーズハイを迎えるかと思う疲れを得ていた。
203 :
7-695:2006/07/02(日) 15:59:35 ID:lIkVBSkt
「……あの人もここの常連客」
「ああ、それは聞いた。なんだか恐ろしかったんだ」
「悪い人じゃないのよ。あなたの事を心配しているのかもね。
お肉は何がいいかな? 牛肉、豚肉、鶏肉どれがいい?」
「軽めに鶏肉で。あ、あとこれ」
例のドロップをカゴに入れる。見るとほとんどの材料は揃っているようだった。
カゴに入れるで思い出した。以前身内だと思ってカゴの中に物を放り込んだら全然知らない他の客だった事を。
おばちゃん、びっくりしてたね。気をつけようぜ。
「鶏肉ね。それじゃ、会計済ませて帰りましょ」
「ああ」
――
古泉に再度遭遇する事もなく無事帰宅を果たした訳だが、荷物は片手で済むほどで俺の必要は余りないように思えた。
まぁ気分を変えるためみたいな事も言ってたし、余り買うつもりはなかったんだろう。
「お風呂沸いてるから先に入っちゃっていいわ」
「お風呂? 家に帰ってからでも構わない」
「今日はここで泊まってね」
今、なんて言った?…泊まれと?
「お、俺は男だぞ。そんなに簡単に泊めていいのか」
「念のため」
ああ…忘れてたよ。朝倉とおまえを見てるだけで気分は変わってたさ。
状況は相変わらず悪い。今はそれ程うかうかしてはいられないって事だろう。
「寝る時は別の部屋だから気にしないで」
ここは従うべきだろう。
「わかった」
家に電話をしたほうがいい。俺は携帯を手に取り、一番上の短縮を押す。
「はいー。もしもし」
しばらくして妹が出た。丁度いい、簡単に説明が済むだろう。
「俺だ。今日は友達の家に泊まる」
「キョン君? 誰の家に泊まるの〜?」
聞かないでくれ。
「友達だ。素行も悪くなく、むしろいい奴だ」
「誰の家に泊まるの〜? 誰の家なんだろうね、しゃみ〜」
なんかしつこいっ。
「友達だ! いい奴だ! 問題はない! あと子供は寝る時間だ」
俺は携帯を切り息をつく。
「愛されてるわね」
タオルを持ちながら朝倉は近づいてくる。奥のキッチンでは既に野菜が切り揃えられていた。
「え、一番風呂?」
「お客様だし」
その笑顔に何も言えない。タオルを受け取り風呂場へ。服を脱ぎそのまま風呂へと到着。
トイレと風呂は別々のタイプだな。光を反射する程綺麗なステンレスの表面。立ち昇る湯気。
これをあの二人は毎日使ってるわけだ…。何を考えているのだ俺は。
シャワーを出し体を洗い湯に浸かる。久しぶりの休息だ。考えてみよう――
世界の異変にも全く気づかずのうのうと毎日の繰り返しのように過ごしていた所、
今日の学校の帰り道、長門はこの世界はあなたの世界ではないと教えてくれた。
この世界の涼宮ハルヒにより別世界の俺が呼び出され、元の‘俺’を上書きしている状態だと言った。
三日も前からだったらしい。俺は全く気づかぬまま過ごしていた事になる。
…多世界とかはよく解らん。パラレルワールド、並行世界、エヴェレットがどうたらとそのくらいしか解らない。
まぁ長門に聞けば解説してくれるんだろうけど、俺には理解できるやら。
実際に他の世界はあったわけだ。長門の改変した世界あれとは違うんだろう。
呼び出された理由それは、ハルヒのわがままだった。この世界では本当は長門は‘俺’と付き合っていたようだ。
それを許せなかったハルヒが世界を改変してその関係をゼロにした。
ハルヒはもちろんそれを引き起こしたのは自分だとは知らない。だが長門は知っていた。
この辺りは親玉からでも連絡があったんだろう。俺が元の世界に戻る事は長門の手により三日前から可能だったが、
すぐ戻すべきか討議されたらしいが情報なんたらのゴタゴタで結局今日のハルヒと俺とのデートの決定によって
手を出す事が出来なくなったわけだ。
204 :
7-695:2006/07/02(日) 16:02:11 ID:lIkVBSkt
学校でのデートの決定はおかしかった。いつのまにか俺はハルヒとデートする羽目になっていた。
まるで物語のように進んでいったんだ。あいつのシナリオとでもいうのだろうか。
一方、‘元の世界のハルヒ’は俺がいない事に気づいていてイライラを溜め情報爆発を起こす事になると長門は言った。
三日も俺は元の世界には存在していない事になる。だが、戻る事など出来ない。
明日のデートを終わらせるまで介入不可ということだった。
そしてあいつは爆発を起こす前にこの世界の涼宮ハルヒを満足させれば、この世界を正常に戻す事も、
元世界に帰ることも出来ると言ったのだ。
急ぎハルヒの家に行く事になった俺は結局失敗。満足させる事など出来なかった。
俺が長門の事を考えもせず頼り切ったのが原因。その後マンションに来て朝倉と会う。
朝倉に存命している事を向こうのハルヒにメッセージで伝えて貰い、既に情報爆発を起こしかけていた
元世界のとりあえずの危機は回避出来た。すべて後手。
その後買い物に行き、戻り、今風呂に入っているってわけだ。流されるまま、ここまで来た。
後の問題は明日のハルヒとのデートを終わらせる事だ。でもデートを終わらせる事で本当に元にも……?
視線を感じた。
「キョン君、お風呂長いのね」
え!?
「ちょ、ちょっと! 朝倉!! 何見てるんだ!」
普通、戸を開けないだろうよ。せめて外側から頼むよ。
「難しい顔をしてたわね。そろそろ上がったらどうかな? ご飯出来てるから」
いつから見てたんだっ。
「上がるから、戸閉めてっ」
にやにやしながら顔を引っ込めた。
乙女の恥じらいというのはないのだろうか。これでは俺が乙女ではないか。
湯船から出、体を拭き鏡の横にはハンガーに掛かった衣服があるに気づく。男もんの服だ。
――
「なあこれ、もしかしてこっちの‘俺’の服か?」
自身の着ている衣服をつまみ聞いてみる。こっちの俺の野郎もしかしたら…。
「そう」
長門そんな簡単に言ってくれるな。俺の心の中は今やばい事になってるんだ。
「なぁ、こっちの俺ってよく…ここ泊まったりするのか?」
「たまに」
物を食いながら長門はそう言った。
く、くそ! 自分で自分に腹が立つって言えてるじゃないか。
「なぁ、さっきからそれ何食ってるんだ? 手で鷲掴みにしてるそれだ」
「ドロップ」
床に置かれていた例の缶がテーブルの上に置かれた。その瞬間俺は過去の思い出を語らねばならないと思ったね。
205 :
7-695:2006/07/02(日) 16:04:29 ID:lIkVBSkt
――あれは俺がまだガキの頃の話。その日俺と妹は、朝早く出かけた親の帰りを待っていた。
昼も過ぎ、三時も過ぎた辺りになっても親は帰ってはこなかった。俺と妹は当然腹が減ってしまいひもじい思いをしていた。
食べるものはないかと妹と探し回って、そんな時に目に入ったのがあの缶、肝油ドロップだ。中を見ると結構な量。
正に天の救いかと、これで助かったなと妹に見せると目を輝かせ涎を垂らしたんだ。
…そんなに腹が減っているなら兄は我慢するべきか。と俺はお兄ちゃんぶり全部妹に渡した。
妹は貪るように食べたね。問題はその後、妹は下痢になり親に俺は散々怒られた。
大量に食ってはいけないモノだったんだ。台所の高い位置の棚に入っていた意味が解ったさ――
「長門、コレを見ろ」
缶を手に取り長門の目前に持ち裏の説明を見せる。
「………」
「『一日に二粒以上食べないでください。』って書いてあるだろ」
「………」
「間違いなく二粒以上食ってる。まずいぞこれは…」
これから恐ろしい事態になるかもしれない。乙女の危機だろう。
「大丈夫よ。いつも有希ちゃんはそれ一度に全部食べちゃうの」
カレーを盛った皿を持ち朝倉登場。
「ま、まじか」
「…食べる?」
どんな腹をしてるんだ…。
「俺はカレーを食う」
「食べて」
「俺はカレーを食う」
「…食べて」
「ぐっ。俺はカレーを…。やっぱ一個だけくれ」
缶に手を突っ込んだ長門は一粒俺の手へ。
「これは後で…って!? 朝倉」
朝倉は俺の手から奪い食った。
「そんなに食いたかったのか…」
そんな嬉しそうな顔しちゃって。
「………」
「とりあえずカレーを食おう」
「はいこれ」
眼前にカレーの皿。キノコ?と人参と鶏肉と玉ねぎとじゃが芋の至って普通のカレー。
旨いよなカレーは。嫌いな人そうはいないんじゃないか。
「頂きます」
まずは匂いを嗅ぐ。朝倉の腕前はどれ程のものだ?
「ニンニク使ったね。これ、はエリンギか?」
「そうそう。よく解ったわね。食べて」
スプーンに一口分掬い口へ。
「旨いです」
「そ、それだけなの?」
「じゃあ…カレーライスが日本に上陸したのは、今をさかのぼること約130年前で、
明治維新後の横浜に当時はカリーライスとの名称で登場。この味は当時の味を再現♪
今のは嘘です、今のは只の知識のひけらかしであくまでこれは今風の味に仕上がっているように思います。
さて玉ねぎやニンニクを使用したカレーはスパイシーで旨みが豊かです。
特にエリンギのチョイスはいいですね。5mm位の大きさに切ると食感もよく楽しめます。
さらに大きい鶏肉が6個ほど入っていて贅沢気分満開♪」
「……ようするにおいしい」
「そのとうりだ、長門。口の周り凄いぞ。そして食うの早すぎだ、もう空かよ」
「ヘンな説明ね。…ん、上手くいってる。おかわり待ってて」
「朝倉は料理上手いんだな。いつも食事は朝倉が作ってるのか?」
「有希ちゃんと一緒に作ってるわね。簡単なのは私が一人でやるの。…はい有希ちゃん」
長門は更に料理が上手いって事か。食ってみたいもんだ。
「‘俺’はよく食ってるんだろうな。今度は長門のも食い…いや」
言って気づく、俺はこの世界にはいるべき人間ではないのだ。
過ごせるなら元の世界で過ごすべき人間。こんな我侭言えない。
「どうしたの?」
「明日は私が作る」
二杯目の皿にスプーンを置きはっきりと長門は言った。たぶん気づかれたんだと思う。ありがとよ。
206 :
7-695:2006/07/02(日) 16:06:54 ID:lIkVBSkt
「ああ、…頼むよ」
優しいな、おまえは。
「明日の事で思い出したわ。デートなんだけど、自分の好きにするといいと思うの」
「俺も言おうと思っていた。でも自分の好きにって、そんなことで本当に終われるのか?」
「あなたは世界の事を考えないで、涼宮ハルヒとのデートを普通に終わらせることが大事じゃないかな」
確かに、ハルヒが望むデートに別の事を考えながら行くのは失礼なのは解る。だが不安だ。後手に廻るのはうんざりだ。
何故朝倉はそんなにも自信ありそうな顔をして言うのだ。その自信は一体どこから。
「本当にそれでいいのか? 長門もそう思うか?」
「私にはわからない。…でもお姉ちゃんの言う事なら」
信頼されてるな。お姉ちゃん。
「きっと大丈夫よ」
そこまで言うなら。
「わかった。朝倉を信じるよ」
「…朝倉じゃないんだけどなぁ。まぁいっか」
5、
――翌日、俺は女の子二人同じ屋根の下何も間違いなど起こらず夜を越し目覚めた。
普通は緊張して眠れないという事態に陥るもんだろうが、体は疲弊していたようで床についてすぐ眠れたのだ。
昨日は色々と疲れる事ばかりだった、そりゃそうだろう。
それにしてもこの部屋は本棚やら机があり、人が住んでいるとはっきりと解る部屋で
向こうの‘長門’の部屋とは全く違う。簡素ではない。何かいい匂いが部屋に漂っているし。
「この部屋私と有希ちゃんの部屋なの、いつもは二人で寝てるのよ」
部屋を見回している俺にいつのまにか襖の前にいた朝倉が答えた。匂いの理由はそれか。
「そろそろ時間」
朝倉の後ろには寄り添うように長門がいた。もうそんな時間か。ハルヒとは確か十時に
喫茶店で落ち合う事になっていた筈だ。現在九時三十分前。おいおい、これは急がなくてはまずいだろう。
布団を退け急ぎ準備を。布団の横に新しい衣服が用意されていた。服を脱ぎそれに着替えていく。
「何見てんだっ」
朝倉と長門が見てた。
「キョン君が急に脱ぎだすんじゃない。それよりも、デートの事だけどきっと大丈夫だからね」
「千里眼を持つ人間か、あんたは」
言って、ああ、結構その通りだと思ってしまった。天気なんか読めちゃうんだろうな。
でもデートを普通に終わらすことだけでいいって、…ぁあもう何も予定なんて考えてないじゃないかっ俺。
とりあえず用意を終わらせよう。道すがら考えればいいだろう。
用意を済ませ、マンションの出入り口二人に見送られる。
「…んじゃ、行って来る」
「待って。これだけは言っておくわ。何か起こってもあなたは見ているだけでいい」
「……どういうこった。とてつもなく不安になったぞ」
「大丈夫だから。涼宮さんを楽しませてあげればいいの。ほら、もう時間来ちゃう」
時計を見ると15分前、こりゃ遅刻確定だ。まずい。
「長門っ、どういうことだ?」
「後で解る。それよりも時間がない」
「ごめんね。気持ち良さそうに寝てたから起こすの遅くなっちゃったの」
「わかったよ。帰ったらちゃんと説明しろよっ」
背を向け走り出す。走りながらでも考える事は出来る。
いくら朝倉が大丈夫と言っても不安なのは当然だ。朝倉を信じるとは言ったけどもさすがにこれは。
何か起こってもほっとけって言い方は、起こる事についてあいつは既に知っているって事だろ。
これ以上何が起こるんだよ。まず会って言われそうな事。ハルヒは昨夜の件で色々言ってくるんじゃなかろうか。
特に長門の行動に驚いたはずだ。そしてあの力にも気づいたかもしれない。それについて言われたら夢だと言った方が
いいだろうか。俺が抱いた事も夢として扱われても問題はないのか?わからん。ほっとけってのはこの事だろうか?
閑静な住宅街を走る俺の頭は混乱の極みに陥っていた――
――デートのプランなんて考えている暇などなくいつもの喫茶店前にてあいつを見つけた。
何か起こるのか?それは今なのか?
「キョンっ、こっちこっち!」
そんなに手を振らなくても解ってるさ。道路を跨いだ先のあいつは笑顔満面で手を振っていた。笑顔満面?
「早く来なさいよ」
「とりあえず落ち着け。今は赤だ」
207 :
7-695:2006/07/02(日) 16:09:14 ID:lIkVBSkt
俺も落ち着いた方がいいだろうけども。それは無理ってもんだ。
顔は冷静、心は緊張。見た目は子供、頭脳は大人。もうだめかもしれない。頭を振りながら横断歩道を渡り終える。
「朝ご飯食べた?」
「食べてない」
第一声の質問はそれか? そんな暇などなかった。
「じゃ、中で食べましょ」
「…ああ」
「ん? 何か元気ないわね」
「そ、そうか?」
「うん。ま、朝ご飯食べてないからじゃない? 朝はしっかり食べないとだめよ」
「おまえは食ったのか?」
「まだだけど」
おまえもじゃないか。
「まぁ、入った入った」
背を押され喫茶店の中へ。来店を告げる鐘の音が響く中俺は不安なまま空いてる席を探す。
朝のモーニングタイム、店員がせわしなく作業を続け食器の音を響かせていた。
混雑はしていないがそれなりに人がいる。空いてる席が目に入る。さっさと席につこう。これからの問答が重要だ。
「この席でいい」
小さな一つのテーブル。席は空いている。
「こっちがいい」
ハルヒが指を差したのは4人で座れる大きなテーブルだった。
「なんでこっちなんだ?」
「こっちがいいから」
答えになってない。話を進ませるために座るか。
「わかった」
座り対面にハルヒが座るのを待っても一向に座る気配がない。
「あんたもっと奥っ」
肩を押され奥に行く羽目に。…こいつもしかしたら。
「っと。ね、何食べる?」
やっぱりか。俺の横へ座り今起こったことはなんでもない風に言った。
「か、軽めのを食べたいな。このモーニングセットでいいか」
くっつきすぎだ。
「サンドイッチ? あんた好きね」
その言葉に俺は固まるしかなかった。やはり昨日の事は覚えているんじゃないだろうか。
「なぁ、き」
「こっちのドリアのセットにしなさいよ。半分私が食べるから」
「ああ、それでいい」
昨日の事を覚えているかいないかは非常に重要だ。最初のうちにはっきりさせておきたい。
「こっちお願いしまーす」
しばらくすると店員がオーダーを取りに来、厨房へ消えていった。こういう時は敬語なんだよな。
「なぁハルヒ、聞きたいことがあるんだが」
「何? あんたさっきからヘンよ」
躊躇してしまう。今から聞くことを。
「…ん?」
グラスに注がれた水を飲みながらこちらの様子を窺がっている。切り出す。
「昨日の事、おまえは覚えているか?」
「遊びに来たこと? 覚えてるわ」
覚えている。と言った。だが平然と答えられるのは何故だ。
「何を…したんだ?」
「あんたもいたじゃない」
「俺もいたけど、ハルヒの口から聞いてみたいんだ」
「なっなんでそんなこと言わなくちゃいけないのよ」
やはり覚えているのか?上手くまとまらない。
「頼むよ」
「…昨日、有希とあんたが家に遊びに来た。二人にサンドイッチを食べてもらった。
キョンすっごい喜んでたわね」
ふふんと自分の腕を認めて貰えたのが嬉しいのかどうだ驚いたかでも腕を組み答えた。まだあるだろうよ。
「…それだけなのか?」
これ以上の返答はないのか?
208 :
7-695:2006/07/02(日) 16:11:44 ID:lIkVBSkt
「他に何があるっていうのよ。あ、そういえばあんた達いつ帰ったの?
起きたら私は、は…裸だったし。何かしたの、キョン」
「…………」
お菓子のせいなんだろうか。長門と俺の事は忘れているのか。都合がいいのやら悪いのやら。
どう返してやればいい?なるべく下手な事は言わない方がいい。
「俺と長門は、ハルヒが途中で寝ちまったので帰った」
なかった事にするしかないだろ。
「そうなんだ。疲れてたのかも。余り良く覚えてないのよね」
嘘をついた、すまんハルヒ。昨日確かに俺はおまえを抱いた。
「う〜〜〜ん」
眉を寄せ唸りだした。
「どうした?」
まさか何か思い出したのか?
「私なんで裸だったのかしら」
うっ。
「寝ているうちに脱いだのかもしれん」
「前のボタン緩めて寝るくらいなら解るけど、有り得ないわ」
俺もそう思う。
「お腹もなんか痛いのよね。生理はまだなのに」
うぐっ。
「仮にも俺は男だ。そーゆうこと言わないでくれ」
「う〜〜〜ん」
「俺らの来たみたいだぞ」
丁度いいタイミングに店員がトレイを持ちドリアを運んできた。
未だ唸り顔のハルヒについてきた、きつね色のトーストを見せる。朝食には定番だ。
「んっ、貰うわ。半分ね、半分」
マーガリンを塗りハルヒの手元へ。
「私は子供じゃないわよ」
そうは言っても何か嬉しそうじゃないか。
「食え」
手渡し食べるのを見てると、少しずつ食べだした。こっちのドリアも旨そうだ。
スプーンで掬い食べ始める。中々のお味。まぁレストラン・○・カフェには負けるのは当たり前か。
「おまえドリアの由来知ってるか? って」
「ん?」
トーストが全部消えた。腹減ってたんだな。
「ドリアねー。確かイタリアのジェノバのドリア家から来てたんじゃないかしら。
ドリア風って言い方する料理もあるけど日本で一般的に知られているご飯料理じゃなくて、
トリュフを使った料理やイタリア国旗を思わせる配色の料理、胡瓜を使った料理が代表的ってとこかしら」
「なんでそんなに詳しいんだ。ドリア家しか知らなかったぜ」
「料理は好きだからね」
そういえばそうだったな。
「おまえのサンドイッチ伯爵は旨かったな」
「また作ってあげるわよ。ふふん」
また食えたらいいがな…。
『やあ! やあ! 我こそは鶴屋と申す者なり!
ちょっとそこのお二人さん? 名を名乗れ!』
どこぞの武士が現れた。その声は喫茶店の客全員の視線を集める程で。
「あわわわっ! やめましょうよー。鶴屋さんっ」
朝比奈さんもいる。ていうかいつのまにか隣の席にいたようだっ。
野次馬ならもっと遠い席を選ぶのが普通だろうよ。
「な、何? あんたらっ動物園行ってるんじゃないの?」
その反応はもっともだ。何が始まるのだ。これが見守れという事態か?
『名を名乗れっ』
聞いちゃいない。なんなんだっ。
「…涼宮ハルヒ、こっちはキョン」
このまま戦になるのかもしれない。
「ほうほう、涼宮ハルヒ、キョン。そなた達二人は肩を寄せ合いbreakfastと申すのか」
英語を使う西洋かぶれの武士だった。
「そ、それが何よ?」
「や、やめましょうよぉぉ〜〜〜」
209 :
7-695:2006/07/02(日) 16:14:13 ID:lIkVBSkt
「前の席は空いていると言うのに、これいかに。いやいやほんとは解っちゃってるんだっ。
二人ともラヴィ状態だね? さっきから隣で見てたのに気づかないときたもんだ」
「ぐっ…」
ようするに冷やかしか。…全部聞かれてたぽいな。
「なんでここにいるのよ」
俺も思った。
「いやぁみくるがさぁ、急に動物園行こうって言い出しておかしいな〜と思ったんだよね。
しつこく聞いてみたら白状したってわけなのさ。こっちのがめがっさ面白いさ」
「うぅぅ、ごめんなさぁい…」
朝比奈さん…。
「よく解らないんだけど、冷やかしに…来たのね」
「ネタは上がってるんだ。あんたらこれ食ってさっさと白状するにょろ」
俺のドリアをカツ丼のつもりなのかハルヒの前にすっと差し出した。西洋かぶれの武士と思わせつつ刑事なのか。
「…これは…ね。あー、もうっ!」
「俺が言うよ」
あんまりハルヒを怒らせないでくれ。
「はっきりと言ってくれたまえ」
「実はこれ、デートなんだ。これ食ったら色々廻る予定だ。もうこれで十分だろ」
朝倉と長門に言われたからじゃない。純粋に俺はこのハルヒを楽しませてやりたいと思っている。
「うひゃぁっ、これは本気だっ。ハルにゃん良かったね!」
全然驚いた節もなく鶴屋さんはハルヒの肩を叩いた。解ってたんだろうか。
「な…何言ってるのキョン! 買出しでしょ! SOS団の備品買出し!」
「ああ、あれは嘘なんだ。買出しは合ってるが連れ出すための口実だ」
「………最初からそのつもりだったの?」
あの時は理不尽に決められた事の様に思えるが、実際俺はこいつと遊んでみたいともどこかで思ってたのかもしれない。
今は全く嫌とは思っていない。
「たぶん…そうだ」
「…たぶんて何よ、でも………っか」
俯き顔は髪で隠れ表情は見えない。その手はぎゅっと膝の上で握り締められていた。何か言っているが聞き取れない。
「ハルにゃん嬉し泣きかなっ?」
あんたはよくそこで突っ込めるなっ。
「馬鹿言ってんじゃないわよっ!」
「「「うわっ」」」
テーブルに足をぶつけながら突然立ち上がった。
「キョン、今日は楽しむわよ!!」
なんだその目の輝きは、そして俺の腕を握りどこへ連れて行こうというのだ。
「待て! ドリア食わせろ。白状したから食っていい筈だ」
「食ってよーし!」
俺は犬か? 鶴屋さんテンション高すぎだろ。
「ハルにゃんはちょっとこっちの席に来るにょろ」
ん?
「女の子同士話すことがありんす」
「そ、そうか。ちょっとキャラを固定した方がいいと思うぜ」
一人寂しく食う羽目になってしまった。隣の席の会話が非常に気になるわけで。
そちらには興味ありませんよと忙しく食いながらも耳を側立てる。
「ハル…んはさ、…日…裸………よね」
は、はだか? 断片的な事しか解らん。デフラグが必要かもしれん。くそっ周りの食器の音が五月蝿いっ。
「そう……う…長………の」
「…………ちゃったね、こりゃ!」
「えっ!? ほ……。…ない」
「ふわあああああ! きょキョン君は! そんなことしません!」
わ、わからん。朝比奈さんだけがやけに取り乱してる。
その声は延々と続きこれ以上聞いてる意味はなかった。
――食事を済ませた俺達は鶴屋さんに応援されながらも店を出た。その際驚いたこともあった。
ハルヒの奴がワリカンにしようと言い出したのだ。いつもなら俺が払ってあいつはご満悦で終わりなんだが。
俺は遅刻をしたというのに、どうやら風向きが変わったらしい。そして現在、時刻は十一時、どこへ行くべきだろうか。
「ハルヒ、どっか行きたい所あるか?」
「CDなんたらが欲しいんじゃないの? あの電気店にあるんじゃないかしら」
210 :
7-695:2006/07/02(日) 16:16:51 ID:lIkVBSkt
ハルヒがあのと言うのならあそこだろう。文化祭の映画撮影用にビデオカメラ一式を貸してくれたあの店。
財布には三万程入っている。朝、家を出る際に長門から受け取ったものだ。帰りには返すために銀行に寄らないといかんだろう。
これだとほんとに買出しになるわけだがいいのだろうか。
「いいのか?」
「いいわよ」
予定を考えてもいない俺に罵声を浴びせる事もなくあっけらかんとしている。
「いいから」
「あ、ああ。んじゃ行くか」
――例の朝比奈さんが必死に宣伝活動を行った店に到着。久しぶりだ。
店の中は閑散としていて中の喧騒は有線だけで…不安になる。ここにあるのだろうか。
「おお、よく来たねえ。また映画でも作るのかい?」
商品の配置を変えているのか電化製品のダンボール箱を抱えオッサン登場。
その顔はこれから何を言われるのか楽しみにしていると言ったところである。
余程暇なんだろう。やはり局地的で行われた宣伝効果は皆無であったか。
「お久しぶりです」
「おじさん、こんにちは。以前はお世話になりました。今日は映画の事ではないんです」
「お嬢ちゃんが主役をするのもいいかもしれないねえ。こう、もっと元気の出るようなのが出来るんじゃないかな。
前の子も良かったがね。そうだ、二人で主役というのもいいかもしれないぞ」
すげえのが出来るぜ、別の意味で。栄二郎さんには気に入ってもらえてたみたいだ。その神経を疑うね。
「それいいかもしれないわ! 再度有希は人がいる限り悪は決して滅びないとか言いながら
古泉君を縄で縛り矢文でみくるちゃんへ、古泉一樹は大変な事になっている早く屋上へ来い、と連絡をし
ピンチなみくるちゃんは私に助けを求めるのよ」
オッサン機嫌取り上手いなっ。古泉はどう大変な事になってるんだ。普通は大変な事になる前に脅し呼び寄せるもんだろう。
「そして屋上へと続く階段の手前で私とみくるちゃんは操られた鶴屋さん、他が私達の前に立ち塞がる。
でも所詮は小物。なんとか三人を撃退したボロボロな私達だけど最大の難関は屋上についたときに理解するの。
なんたって古泉君自身が私達に襲い掛かって来てしまうのだから。肩にはシャミセンがいて、
迷う事はないであろう、勝利には犠牲がつきものだ、と私達に古泉君を撃退するよう語り掛けてくる。
どうする事も出来ない。ああ…どうなるの」
終わりそうもない。サブマシンガンのように頭から弾き出されるんだろう。
谷口と国木田を忘れないでやってくれ。とりあえず俺はシャミセンに同意しとこう。
「ちょい待てハルヒ、今日は映画の事じゃない。CD-R買いに来たんだ」
「あっ、そうだった。…今日は他の物が必要になったの」
そう言いながらもハルヒは頭の中で映画の続きを上映しているようだった。
これは文化祭云々関係なく作るとか言い出しそうだ。
「ああ。CD-Rね。DVD-Rじゃなくていいのかい?」
意外にもあるようだ。容量的にはCDでいいだろ。
「CD-Rでいいです」
「そうかい。こっちの棚だよ」
案内されCD-Rが並ぶ棚へ。記憶媒体系のメーカーは重要だ。
一部の海外のメーカーの品はすぐにデータが飛んでしまうのである。
発売日に追われ未完成のまま表に出されるゲームのような物だ。
「これで」
セットのを持ちキャッシャーへ。未だにハルヒはブツブツと呟いている。すっかり乗せられたな。
会計を済ましハルヒの肩を叩く。
「わっ? な、なに?」
「終わった。次はどうするか」
時刻は十二時手前。微妙な時間帯だ。昼食にもまだ早いという時間。
「他にいるものなかった? お茶っ葉はみくるちゃんがいつも用意してくれるし」
ワックス、カーテンと思い出したが明らかにこれはデートと思えないので言うのはやめておこう。
といっても次はどうするべきか。映画見るのはやめた方がいいだろうな。ハルヒはまた色々興奮状態になるだろうし、
初めてのデートで映画ってのは定番と言われているがこれは穴だ。二人で見ているだけだから、会話がない。
共感を得るってのもいいと思うけどなぁ。ああいうのは暫く付き合った男女の行くもんじゃないかね。
「決まらないの?」
思い悩みハルヒの姿をじっと見てしまう。英語でプリントされた薄めの白のTシャツにブラウンのショートパンツ。
活発な格好。
「おまえ、服欲しくないか?」
つい言ってしまった。
「いいのあったら欲しいけど。服ね。うん」
朝比奈さんの衣装代でお金は消えたと言っていた。ならばこいつは自分の服を最近買ったりしてないんじゃないか。
211 :
7-695:2006/07/02(日) 16:19:17 ID:lIkVBSkt
「贔屓にしてる店に連れてってくれ」
「でも、お金ないわよ」
「大丈夫だ、たぶん」
財布には結構入っている。服一着くらい買えるだろ。
――ハルヒの言う贔屓にしている店はとても入り辛い店だった。
小さな店で下着の豊富な店だから萎縮するのも当然だ。周りを見渡すと女性客しか店内にはいない。
だが俺は耐えそこに押し入った。ある目的のために。
「これなんか好みだわ。どうかな、キョン。ちゃんと見なさいよ」
「おまえショートパンツ一杯持ってるんじゃないか? 今も履いてるし」
「まあ、そうだけど」
店内を見渡す、女の子らしい服といえばなんだ。スカートははずせないよな。
周りの視線なんかどうでもいい。探す。
「あれだ」
「何?」
一着の衣服が別物として目立つ場所に掛けられていた。
「あれ、試着してみろ」
指を差し物を教える。
「え? あ、あんなの似合わないわよ!」
上着とスカートとが一続きになった女性用の服、通称ワンピース。白で綺麗な控えめな模様の描かれた物だ。
「いいから着てみろ。持ってくるぞ」
今の俺なら下着の埋まる店内の中進むことが可能である。返事を待たず物を取りに行く。
「これだ、着てみろ」
「わ、わかったわよ」
雰囲気に気圧されたのかハルヒはそれを奪うように持ち試着室へ入っていった。
衣擦れの音を耳へ届ける試着室を背に立つ俺は、ランジェリーなお店に佇む一人の男だった。
驚きの表情を浮かべる女子高生グループに指を差されるが耐える。俺は変態じゃないぜ。
「まだか?」
とうに音は聞こえなくなっていた。中のハルヒは自分の姿にでも驚いているのか?
「わ、笑わないでよね」
仕切るカーテンに添えられた手が見える。そんなに恥ずかしいもんなのか。
「笑わない」
ゆっくりと開かれていく。少しずつその面影が見えて…。
「…………」
言葉を失った。
「やっぱ、ヘンなんでしょ! もう! こんなの着せるから!!」
「…おまえはどこかの令嬢か?」
「へ?」
いつものハルヒとは全く違った。その怒る仕草もとてつもなく可愛く見えたのだ。
スタイルがよくないと着こなせないらしいがこいつにはピッタリだった。心臓が早鐘を打つ。
その胸の控えめな銀の刺繍がどこかの貴族を思わせる。だけど不満も有る。
「リボンの色が合ってない、青じゃなくて濃い茶辺りがいい。靴はまぁ平気だろ皮靴だし。それ以外は完璧だ」
「ほ、ほんとっ? 嘘だったら怒るから!」
「可愛いから安心しろ」
「………かわいい? これ好み?」
つい本音を言ってしまった。頬を紅潮させ上目で見られる。こんな顔もするんだな。
益々ペースに乗せられそうだが、今更恥ずかしがってもしょうがない。
「に、似合ってる。好きなほうだ。…そのまま着てどっか行こうぜ」
「ええ、僕もとても似合ってると思います」
なっ!?
「こ、古泉!」
「古泉君、ほんと? そう思う?」
振り向くと奴がいた。神出鬼没過ぎるぞ。そしてハルヒまずは驚こうぜ。
「ええ、とても可愛らしい。ゴシック&ロリータ・ファッションとはちょっと違いますね。
ああ、言われる前に先に答えましょう。このお店に入るところから見てたのですが、何やらあなたのチョイスで
涼宮さんをドレスアップすると言うではないですか。気になって入って来てしまいました。
いやあ凄いですね。ここはそうは入れませんよ?」
おまえなんかもっと凄いだろ。女も横に連れてないのにここに入ってきたんだ。恐ろしいよ、俺は。
212 :
7-695:2006/07/02(日) 16:21:43 ID:lIkVBSkt
「リボンは確かに変えたほうがいいですね。それだと子供っぽく見えます。
あなたがさっき言っていた様に濃い茶色のリボンがいいでしょう。引き締まって見えますからね。
黒は逆にしつこさが出てしまう。中々解ってらっしゃる」
顎に手を置きいつものスマイル。何かのプロか?
「色々言いたいことはあるが、おまえもそう思うか。ハルヒ、リボン探すぞ」
「いえ、ここに」
古泉の手の中には濃い茶色のリボンが既に握られていた。
「これは僕からプレゼントしましょう。会計は済ませてあります」
言いながらハルヒの手を掴みそれを渡した。古泉がハルヒにプレゼント?
「いいのっ? 古泉君。ほんとに?」
「いいですよ。気になさらないでください。それにその服の値札」
ハルヒの胸に指を差し言葉を切った。裏になっていて値段は見えない。嫌な予感がする。
「ハルヒ、ちょっと裏返せ」
ゆっくりと胸の上の値札をつまみ引っくり返していき、それを見た俺とハルヒは何も言えなくなってしまった。
二万四千円? 相場が解らない。これは高いのか? 安いのか?
「いいのはもっとしますね」
「ハルヒ会計だ。そのまま出てきていいぞ」
「そう言うと思っていましたよ」
「こんな高いのいいわよっ」
「いつか買われてなくなるかもしれないぞ」
「で、でも」
実際こいつも名残惜しいんじゃないだろうか。自分でも似合ってるのに気づいているんじゃないか?
「買わなきゃ古泉のリボンが無駄になるぜ」
ここは通したいところだ。こう言えば通るだろう。
「………わか…った」
「リボン変えないとな」
「う、うん」
さっと素早く付け替え終えた。さすが毎日髪型を変えていただけの事はある。
靴を揃え履かせ手を掴みそのまま会計へ。眼鏡をかけた若い女性店員へ声をかける。
「すいません、これ」
「いらっしゃいませ。こちらそのままでいいですか?」
「ええ、そのままで」
「二万四千七百円になります。…有難うございましたー」
会計を済ませるまで終始ハルヒは俯いたままだった。高い買い物は逆に相手に気遣いのみを与える場合が有る。
俺はやっちまったのか?
「そんなに気にするなよ。気引けたか?」
店を出た俺はハルヒの機嫌を窺がった。
「ちょっと、びっくりしただけ。キョンからプレゼント貰えるなんて」
よ、良かった。嬉しいのか。その顔は赤かった。
「古泉君もありがとう。大切にするわ」
「どうも。そうしてあげてください」
あのまま、リボンも一緒に買っていたらお金は底をついたかもしれない。
「古泉、おまえ本当はいい奴なのか」
「応援すると言ったでしょう?」
「さりげなく肩に触れるな」
言った途端これだ。気をつけようぜ。
さてこれからどうするか。俺の手持ちは三千と少し、もう遠出は出来ないのは確かだ。
昼食を取ったら細かな物しか買えないだろう。こっちの‘俺’よ、すまん。
戻ったらお金送ってやりたい気分だ。まぁハルヒの嬉しそうな顔に免じて許してくれ。
「ところでおまえはいつまでここにいるんだ」
古泉は相変わらず俺の横にいた。
「デートにいい場所があります。行く所に困ってるんでしょう?」
「バレバレか」
「その顔を見れば解ります。案内だけして僕は去りましょう。
もうすぐ昼食の時間ですがそこで軽く取れますので気にしないでいいですよ」
頼もしいこった。こいつはデート慣れでもしてるんだろうか。
ハルヒは古泉の言うデートに過敏に反応を示し、俯きこちらの歩についてくるだけだ。
「みんな見てますね」
「何をだ?」
突然何だ。
支援
214 :
7-695:2006/07/02(日) 16:24:09 ID:lIkVBSkt
「涼宮さんの事ですよ。ほぼ男性は振り向いてまで見てますよ。ほら」
「ど、どれ」
そんなに目立っているのか? 前を見る。遠くから俺と同い年くらいの男が歩いて来ていた。
その視線は、間違いなくハルヒであった。近くまで来るがそのままその顔を横に向け頬は緩んでいるのを確認。
「マジだ。すごいなハルヒ」
「うっうるさい! あんたのせいだからね!」
「怒る顔もかわいいもんだ」
「うっ………」
「さすがに僕も今のには引いてしまいました。とても熱い。お似合いですね」
「古泉君もうるさい!!」
「嫌がる顔ってぐっと来ます」
「うぉっ。何、真面目な顔してんだ! 俺の顔を見て言うな! ちょっと抑えろ」
妙な方向に進ませてはいかん。
「こ…いずみくんって、も、もしかして…な、何でもないっ」
「たぶん当たりです」
「え゙っ!」
「もうやめろっ!」
ほら見ろ。ハルヒが妙な想像を膨らましているじゃないか。俺と古泉をあらぬ疑いの目で見てる。
「当たりですよ。僕は屈しませ…いひゃいです」
「しつこい男は嫌われるぞ」
頬を強めに抓ってやった。抓られながらも古泉は指をどこかへ向けた。
「ここです。着きました」
その先には鬱蒼と茂った樹木が折り重なり草花の造園見事な公園だった。
そよ風は鼻に緑を感じさせ、目には暖かな潤いを与えて、耳には鳥の囀る声。
ベンチには老若男女居座っている。違和感。おかしい、こんなに綺麗な場所ならば俺が知らない訳はない。
見覚えがあるはずなのに俺の記憶には全く合致しない。…ようするに俺の世界にはない場所なのか?
明確な違い。これは世界そのものが違うと誰かが俺に言っている様だった。
「こっちには、こんなに綺麗な場所があるのか」
「ええ、知らないとは驚きです。ああ、ということはあなたの方にはなかったようですね」
「…おまえは」
こいつは、やはり俺の事を知っていたみたいだ。
「ここ有名よ? キョン知らないなんてね」
古泉は俺の事情を理解している。だから俺を助ける真似をしたのか?
「おまえは、知っていたのか」
「知ってますよ。話したいところですが今は話すときではないでしょう」
「何の話してるのよ。わかんないわ」
まずい。
「ああっ、俺はこの場所知らなかったんだ」
「よくテレビにも出てる場所なのに」
「…そんなこともあるさ」
子供たちがはしゃぎ廻る公園を見て思う。皆が知っているのに俺は知らないということ。
それは仲間はずれということで。いや、でも仲間はずれなのは当たり前なのだ。
俺はここの人間ではないのだから。それは理解出来ている。
ではこの寂しさはなんだ。…俺はこの世界に居心地の良さを感じ始めているのか?
「もう十二時半です。あちらの道を右へ曲がるときっとワゴンで来ている
クレープ屋の方がいる筈です。そこで食べるといいでしょう」
「古泉君も来るといいわ。クレープだけでも奢るわよ」
「いえ僕は、いいですよ」
「悪いわ、それじゃ気がすまない」
「でしたら今度学校でジュースでもお願いします」
周りの会話が筒抜けていく。
「しょうがないわね、それでいいわ。キョン行くわよっ。…キョン?」
こいつらと会えない日が必ずやってくる。その日は今日の可能性が高い。
俺がこのデートを終わらせたらもう終わりなんじゃないのか?
「どうしたの? キョン」
朝倉と長門にももう二度と会えないかもしれない。
「怖い…顔」
「えっ!?」
頬にハルヒの手が添えられていた。やはり俺はこの世界に依存しているようだ。
215 :
7-695:2006/07/02(日) 16:26:54 ID:lIkVBSkt
デートを望む奴のためにも余計な事は考えるなと言ったのは誰だ? でもこれって余計なのか?
今は只考えない方がいい。…そうだ。これは俺だけの問題じゃない。
「なんでもない。クレープ食べに行こうぜ。…古泉ありがとな」
「はい、それでは僕はこれで」
じゃあな。
「どっちの道だ?」
「右よ。さっき言ったばかりじゃない」
「そうだったか」
「そうよ。子供の時に来たくらいだけど、クレープ屋さんも来るようになったのね。変わったものだわ」
歩きながら話す。
「おまえはよくこの公園に遊びに来てたのか?」
「小学四年辺りまでよく来てたわ。だから久々ね」
手を組み上に上げ伸びをしながらハルヒは言った。
「子供の頃どんな遊びをしてたんだ?」
「ん〜普通に泥遊びとか? 後は鬼ごっことか?」
案外普通なんだな。
「おまえが鬼ならすぐゲームセットだろうな」
「な、なんで解るのよっ」
そりゃそうだ。弾丸のような速さだろうよ。逃げる子供は必死だったろう。
「なんとなくな。…お、あれか」
林の茂る道を抜けた先には開けた場所が広がっていた。その真ん中には例のワゴン販売のお店があり
周りには家族連れで来ている人で溢れている。丁度お昼時、こんなもんだろう。
「どうする? 結構並んでるぞ。おまえはここで待ってるか?」
「メニュー見たいし一緒に行く」
十人以上は並んでいる。お店は相当儲かっているだろう。正に店を開くのにはうってつけの場所なわけだ。
最後尾に並び、立て掛けてあるメニューを見る。
「メニューいいとこにあるじゃないか。どれか言ってくれればこのまま並んで買うぜ」
「一緒に並ぶ」
そうかい。ああ、解ったぞ。一人でいると視線が気になるんだな。子供達でさえハルヒを見ていた。
その中の一人の少女が近づいてくる。む。
「おねえちゃん、おじょうさま?」
ぶっ! さすが子供。遠慮を知らない。
「違うわっ!」
ははは。
「じゃあ…おひめさま?」
「それも違う!」
お姫様にも見えなくはないな。
「それじゃ、なーに?」
「なーにって……ちょっとキョン何か言ってあげてよ!」
俺に振ったな?
「この人を見てどう思った?」
「すごくきれいだと思った!」
すぐに答えが返ってきた。周りの大人はこの突然の出し物に笑顔を向けながら見守っている。
「ハルヒ顔真っ赤だぞ」
「うるさい!」
この場から歩き出そうとするハルヒの手を掴み女の子の前に押し出す。
「残念だがどっちでもない」
「そうなの?」
「ただこいつは可愛いのだ」
「このっ馬鹿キョン!!」
「いだっ」
おお、暴力。ちょっとやり過ぎたようだ。
「仲良ししないとだめだよ!」
「うっ……」
子供に叱られる高校生。無垢な目にさすがに耐えられなかったか。
「仲はほんとはいい。だから安心しろ。他の子たちが向こうで待ってるぞ、ほら」
「それならいいよー。じゃーねー!」
手を大げさに振り少女は去っていった。いつのまにか列は進んでいて俺達の注文の番だ。
「もうっやめてよね。こういうの!」
「ああ、すまなかった。こんな機会は滅多にないぜ。それより注文」
紫煙
217 :
7-695:2006/07/02(日) 16:29:51 ID:lIkVBSkt
腕を組み怒りを露にしたハルヒに促す。これはあまり怒ってない顔だ。
「ご注文は?」
「俺は、ピザチーズのを一つ。ハルヒは?」
「私も同じのでいい。考えてる暇なんかこれっぽっちもなかったわっ」
「ピザチーズ二つですね。少々お待ちください」
店員は笑いながら作業に移った。あんたも見てたか。
しばし生地を延ばす作業に魅入る。つい見ちゃうんだよなこれ。綺麗に鉄板の銀の色をささっと
きつね色の生地が伸ばされ銀を覆っていく。横を見るとハルヒも魅入っていた。
「今度はクレープでも作ってみるか?」
「意外と難しいんじゃない?」
「ははっ。これは簡単ですよ。正直言ってぼろ儲けです」
今結構客並んでるんだが…。ぶっちゃけすぎだろ。
「具の分量に慣れる方が難しいですね。色々な形のがありますから。っとピザチーズ二つ900円になります」
「どうも。んじゃこれで」
受け取り夏目漱石一名支払う。
「も一個作りますので待っててくださいね」
奥の女性店員から声が掛かった。
「え? ピザ2つなんでこれで十分ですよ」
「いいからいいから」
茶髪の若いお姉さまはどういうおつもりで。
「なに?」
「さあ」
奥では何か作業している姿が見えた。クレープか?
「はいこれ。そっちの彼女に」
渡されたのはやはりクレープだった。中身はなんだろうか。
「君あんまりいじめちゃダメだよっ。まあ見てる分には楽しかったけどね」
そういうことか。
「解りました。つい…ね。ハルヒ、これ貰ったぞ。お礼言っとけ」
「……ありがとうございます。…ついってなんなのよ」
「また来てくださいね」
「んじゃ、おいしく頂きます」
軽く手を振りその場から去る。後ろの客は、いいなあという面持ちをしていた。得したもんだ。
「これは俺の功績である」
「あげないわよっ」
「ああ、全部食うがいい。なぁどこで食おうか」
「座る場所なんてないわね…」
ベンチはどこも埋まっていた。これは地べたか?
「静かな場所がいい」
「んじゃ任せる」
ハルヒなら詳しいだろう。ついていけばこいつが満足する場所につくだろうよ。
何か水の流れる音が聞こえ出した。川でもあるのだろうか。
「ここに決めたっ!」
小脇の芝生に突然座り込んだ。丁度大木の日陰になっていていい感じの場所ではある。
俺は上着を脱ぎハルヒに放った。
「それ下に敷け。泥ついたら白だし目立つ。そしてこっちからおまえのパンツは丸見えだ」
「うっ。そ、そうだったわ」
パンツはいいのか? 純白である。
「早く食べないとだめ。もう冷めてきてる」
横に座り、既に食い始めているハルヒを見ると両手に握り締めた獲物にご満悦の様子。
「あんた食べないの?」
「いや、食うけどな。…この濡れた食感がいい。やはり旨い。
クレープってのは久々に食べると特にうまく感じる」
「私コレ初めて食べたけど気に入ったわ」
「ピザのほうか。もう一個の方はなんだった?」
「中には…チョコだけは見えたけど」
もう一つのクレープの中を覗きこむが判別はつかなかったようだ。
まあそのうち解るわけで川のせせらぎを聞き、この美しき自然を見渡しながらのんびり食うのもおつなもんだ。
「イチゴチョコだった! これ! …あげないわよ」
「おまえ食うの早!」
片方の手にはピザチーズが残っていた。いけない食い合わせだ…。
218 :
7-695:2006/07/02(日) 16:32:19 ID:lIkVBSkt
「その食い合わせはまずい」
「えっ、なんでっ?」
「鰻と梅干並だぞ。もっと作ってくれた人に感謝して食うべきだって事を言いたい」
「鰻と梅干って只の迷信でしょ。私調べたもの」
「迷信だ。さすがだな」
「あんたも結構詳しいわね」
「普通だろ」
食い終えた俺は体を後ろに倒し寝転がる。芝生の感触がどこか懐かしい。
食べるもの食べたら眠くなってしまった。
「眠いの?」
「少しな」
「寝てもいいわよ」
このまま寝てもいいのだろうか。その一言に負けそうだ。
結構睡眠をとった筈だが体の疲れは取れてはいないようだ。いや体じゃないか。
「ここは綺麗だ」
「たまに来て見るといいものね」
絶えず聞こえてくる風に揺れる木々の音、川の流れる涼しげな音、ここには子供達の騒ぐ声も届かない。
天は樹木より茂った草葉により隠れ日の光は余り見えない。昼寝してくれと言わんばかり。
「ぼーっとしてるのに飽きたら起こしてくれ」
「あたしも寝ちゃうかもしんないわよ」
「いいぞ」
隙間から見える光を見ながらまどろんでいく。気持ち良すぎだここは――――
………………………………脚に違和感。これはなんだ。何か温かい。
動かしてみる。
「んぁっ…」
なんだ? 脚の違和感はなくなりはしたが声が聞こえた。手をつき起き上がる。
「おまえ、何やってるんだ」
脚の横でハルヒが寝ていた。
「ふ…ぁ。…何って…膝枕でしょうが」
「普通、男がして貰うほうだろ。ほら頭、草ついちまった」
頭についた草を払う。まあこいつらしいか。ハルヒが俺を膝枕するなんて考えられない。
いや、案外言ってみたらやってくれるかもしれん。
「ははん。あんたして貰いたいんでしょ。別にいいわよ」
「いや、悪戯されそうだからいい」
「しないわよ」
しないだろうな。
「今何時だ?」
携帯を取り出し確認。
「四時廻ってるし。三時間以上寝てたのか」
「中々の枕だったわ」
「そりゃよかったな」
辺りは薄暗く虫の音も強くなり吹く風は少し肌寒さを感じさせる。そろそろ他へ行くべきだろう。
「寒くなってきたし、どっかいくか」
といっても行く所なんて検討もついてない。腹が減っている程度だ。ここはまた何か飲食か。
「腹も減った。やっぱあれだけじゃ足らん。おまえはどうだ?」
二つ食ってたしさすがに一杯だろうか。
「…もうちょっとここにいたいわ」
「もう寒い…ぞ」
様子がおかしい。顔を俯かせ手は胸の上で握り締めている。
その表情は風に流される髪で隠されよく見えない。
「ねえ」
立ち尽くす俺の手に何かが触れた。思わず狼狽えてしまう。
それはハルヒの手で、上から抑える様に段々と強く握られたから。これは…告白だろうか。
「あたしの目を見て」
両手を引かれ顔と顔が近づく。表情が浮き彫りになり覚悟した。
いつにない真面目な顔、これはきっとそうなんだろう。俺の答えは決まっている。
「………………」
ハルヒの目は俺の目を捉えて離さない。それにしても長い。何を見ようというのだ。
219 :
7-695:2006/07/02(日) 16:34:50 ID:lIkVBSkt
「…ジョン・スミス」
「……なっ!?」
言われた言葉を理解した瞬間頭は真っ白。全く予想外のその有り触れた名前。今、この時に、何故。
「やっぱりそうなのね」
どこか安心し、少し微笑んでいる。待て納得するな。
満足しているようだが俺は否定しなければならない。落ち着いて説明しないと更に疑われるだろう。
「訳が解らん。やっぱりそうってどういうことだ。初めて聞いたぞ、誰だそいつは」
「中学の頃に手伝ってもらった。あんたもよくわかってるでしょうに。
SOS団のSOの意味を大きな声で言ってみなさい。ねえジョン」
言えるか。
「ヘンな名前で呼ぶな。俺はな、おまえが告白でもするんじゃないかと思ってたんだ。だから驚いた」
話を反らす。告白という単語にこいつは過敏に反応するだろう。
「…何に驚いたのよ?」
普段なら乗ってくる筈なのだが。ああ、今のおまえはいつもとは違ってたか。あくまで認めさせたいみたいだな。
「あんな雰囲気の時に突然外国人の名前出されてみろ。そりゃ誰だって驚くさ」
これでどうだ。正論だぞ。
「そう?」
「そう、って…普通はそうだろうよ」
「…二度目なのに?」
「は?」
二度目…?俺は今言われたのが初めてだ。記憶にない。
「もう一度言われたら普通驚かないでしょ。それでもアンタはまた驚いた。
それは余程アンタが隠したい事で図星をつかれてまた驚いてしまったわけね。
どう考えてもおかしいものね。まだ高校一年生なんて。留年でもないしさ」
記憶にないのなら俺でないこの世界の‘俺’が言われたとしか思えない。非常にまずい。明らかにコイツは断定している。
そのニヤニヤ笑いをどうにか止められないものか。
「何を勘違いしてるのかは解らんが、俺はただ忘れてるだけだった。
だから二度目だとしても驚いたんだ。言われて今思い出したぞ」
「もう白状しなさいよ」
止められないのか。どこでこいつは気づいたんだ。白状…してしまうと言ってもどう説明する?
いやしないほうがいいに決まってるだろ。穴を探してみるか。
「白状って、俺は話す事などないんだが気が済むまで付き合ってやる。
仮に俺がそのジョン・スミスだとする。おまえはどうしてそいつが俺だと思ったんだ?」
「その投げやりな話し方、凄く特徴的。後は背丈、雰囲気。前も言ったじゃない」
間髪入れずに返答が来た。
「俺みたいなのは一杯いるだろ。その程度で外国人にされたくないな。俺は日本人だ」
「…そのセリフ二度目だ」
チャンス到来。このままいけば流せそうだ。心の中で‘俺’を褒めておく。
「そうなのか? ほらだから忘れてるんだって」
「…あんた本当に忘れてたのね。うーん、違うか。でも絶対そうだと思うのよね〜」
「有り得ないだろ。おまえの中学の頃なんて知らないし、俺は高一だ。留年もしてないぜ」
「留年はしてないのは知ってる。調べたから。そうねえ…じゃあ」
学校にでも忍び込んだか? 突っ走ると止まらんからな。
「未来からアンタはあの時私に会いに来たんだ」
「な…わけないだろ」
こいつの勘が恐ろしい。
「その展開はおまえが喜びそうだな」
「そう…ね。でも違ってもいいわ」
「違ってもいいって?」
「あたしはキョンが好きだから」
溜めもなくいきなり言いやがった。不意打ち過ぎる。
「あんたはあたしの事好きなんだよね? だってデートに誘ってくれたんだもの。
好きじゃなきゃ誘わないわよね」
爛々とした目がまぶしい。ここまで直球だとは。
「何黙ってるのよ。いいわ、受け入れたら答えになるんだから」
意味など考えてる暇はなかった。ハルヒは目を閉じ顔を近づけてきた。
俺は受け入れるべく、その時を待つ。結構大胆な奴…だ…? 視界に誰かを捉えた。
「…なが…と」
風に揺れるスカートをはためかせながら、いつもの無表情であいつがいた。いつからだろう。
「……有…希?」
220 :
7-695:2006/07/02(日) 16:37:33 ID:lIkVBSkt
ハルヒも気づいた。そそくさと俺から離れていく。微妙な空気。
あいつは何をしに来たのだろうか。長門の足がてくてくとこちらへ近づいてくる。何が始まる。
この三人という状況、いやな予感がする。
「話がある」
何の話だ。気になるし、不安だ。
「話ってなんだ?」
「あなたではない。涼宮ハルヒと話したい」
有無を言わせないその言い方。ハルヒと何を話すというのだ。
「有希…どうしたの?」
こいつも雰囲気を察している。
「あなたがこの人を好きなのは知っている」
「い、いきなりどうしたのよ」
「はっきりさせたい。あなたはこの人が好き?」
「はっきりって…。そうよ、あたしはキョンが好き。でもそれがどうしたの?」
今更何だろうか。
「私もこの人が好き」
「ちょっと待てっ」
またあの時の繰り返しか? またか? もう嫌だ。
「あなたは黙っていて」
「黙っていられるか」
「お姉ちゃんに朝なんて言われた?」
「え……、あ」
朝、朝倉が言っていたのはこれだったのか。
見ているだけでいいと言われたが、はたして大丈夫なのか…。もう少し見守る事にする。
「…あんたが好きなのは知ってたわ。いつもキョンだけに対して見る目が違ったもの。態度もね」
意外にもハルヒには解っていたようだ。いや解って当然なのかもしれない。
二人同じ‘俺’を好きになったのだから。
「なら話は早い。この人はあなたには渡さない」
「渡さないって何よ…。キョンはあんたのものじゃないんだから」
「訂正する。この人は私のものだった。それをあなたが奪った」
「何言ってるのよ? いつあなたのものになって、いつあたしが奪ったというの」
わからなくて当然だ。もうそのくらいにしてくれないだろうか。
「キョンはね、あたしをデートに誘ったのよ。わかる?
あなたではなくこの私を選んだってこと」
こういうの苦手だ。
「そう思うならそれで構わない。あなたがいくら願ってもこの人は振り向く事はない」
「こ、このっ!」
何か叩く音が響いた。余りの突然の出来事に止める事も出来なかった。
ハルヒが長門をぶつなんて。
「やめろハルヒ!」
間に分け入り長門を背に庇う。
「なによっ! あんたは有希の味方するっていうのッ!?」
胸倉を容赦なく掴まれる。
「そういう問題じゃない! 叩く事ないだろ。少し落ち着け」
「落ち着いていられるかっ!!」
普通じゃない。がくがくと揺さぶられる。ああもう。
「あなたは黙っていて」
ハルヒの怒鳴り声の中静かなその声は俺の耳に通る。黙っていろだって?
「どきなさいよっ!」
「信じて欲しい」
その懇願するような声に力が抜けていく。再度相対する二人を呆然と見る。
「殴りたいなら殴ればいい」
「なっ何よ。…その目。もうぶたないわよ」
「そう」
「そうね、いいこと思いついたわ。はっきりさせたいってあなた言ったわよね」
「言った」
「キョンに聞けばいいのよ。ねえキョン、あんたは…」
何を言われるか解る。
「あたしと有希どっちが好きなのよ」
………俺はさっき黙っていろと言われた。言われたから黙るんじゃない。
221 :
7-695:2006/07/02(日) 16:40:15 ID:lIkVBSkt
「ねえっキョン! なんで…黙ってるのよ」
こうして二人を前にするとどっちを選ぶなんて出来やしなかった。
静寂が重い。周りの音なんて聞こえやしない。はは、情けない。
「あんた…迷ってるとか言うんじゃないでしょうね」
ばれたか。まあばれるわな。
「ああもう! むしゃくしゃする! 有希これだけは言っておくわ。
あたしは絶対これっぽっちも負けるとは思ってないから! 今日はもう帰るッ」
「逃げるの?」
煽らないでくれよ…。
「逃げる? 逃げるんじゃないわよ。あたしは結果が見えてるから帰るだけ。
キョンも突然でよく解ってないんじゃないの? ちゃんとした返事が聞きたいのよ。あたしはっ」
残る俺達を背にあいつは帰っていった。何ともいえないこの嫌な空気。間違いなく俺のせいだ。
芝生にへたりこむ。
「長門さ、俺が悪い。あのとき…」
「これでいい」
「なんだって? どこがだよ。これのどこがいいんだ」
「携帯を貸して」
意図がわからない。まあ携帯が見たいってんなら出すか。
「ほら、これだ」
投げやりにその手へ。
「この画面を見て。解るから」
開き液晶の部分を見せてくる。いつもの携帯画面だがどこをみ…?
画面にノイズが走り出した。
「なんだこれ」
壊れた…わけじゃないよな。
「しっかりと見て」
画面を走る不定形な線はやがてはっきりと像を結び出した。
「誰だ、これ」
「見えないなら聞くだけでいい」
画面は小さく、白黒の二色、解り辛い。部屋にはかろうじて二人いるのが薄い月明かりで解った。
『有希ちゃんさ』
ッ!? 朝倉だ。となるともう一人は長門か。
『私には今回の原因は解るのよね。何故涼宮ハルヒは改変をしたのか』
それなら俺にも解るぞ。ハルヒが嫉妬したからだ。以前の世界を認めないほどに。
『あの人は私に嫉妬したから』
そうだ。
『平たく言うとそうだけどね、でも度合いって物があるじゃない?』
度合い?
『何故世界を改変するほどに涼宮さんは嫉妬をしたのか。
これが重要だと思うの。本当は解ってるんじゃないのかなぁ有希ちゃん』
長門の表情は読めない。画面小さすぎだっ。
『言っちゃうね。それはあなた達二人、キョン君と有希ちゃんが
付き合うのを涼宮さんに隠していたから。気持ちは解らないでもないけどこれがダメ』
以前俺もふと思ったことがある。口には出さなかったが、やはりそうだったか。
『涼宮さんが怖かったのね? どうゆう事態を招くのか解らないもの』
『……そう。二人で内緒にすると決めていた』
『でも涼宮さんは二人が付き合っている事にすぐ気づいたんでしょう。
当然ね、恋する女の子はずっと好きな人を見ているものだから』
『………』
『涼宮さんはあなた達二人を仲間だと思っていた。信じられる仲間だと。
だからこそ、その反動が大きく出ちゃったと思うの。推測だけどね』
以前元の世界の古泉にも言われた事がある。俺とハルヒには見えざる信頼感があると。
『涼宮さんは信じていた二人に裏切られた、と思った。今まで一緒に部活を楽しんでいた分
許せない気持ちが強く出てしまったんでしょうね。世界を変えてしまう程に』
『お姉ちゃんの言う通りかもしれない』
『きっとそうよ。有機生命体の言語の中で恋は盲目っていうのがあるわね、その通りだと思うわ。
だから有希……どうすればいいか後は解るよね。あなたは自分の気持ちを隠さなくてもいい。正直になるべきだわ』
『……わかった』
その理解の言葉と共に携帯はいつもの画面へと戻っていた。
SIEN
223 :
7-695:2006/07/02(日) 16:42:43 ID:lIkVBSkt
横の長門を見る。顔は地面を向いていた。申し訳ないとでもいうのだろうか。
「長門、だからさっきハルヒにああ言ったのか。おまえは…一から始めようとしているのか」
‘俺’との関係を。
「そう」
「おまえを責めるつもりはない。よく決心したと思う。だから顔を上げろよ…」
朝倉の言う事が正しければこれでもう…。顔を上げようとしない。やはり気にしてしまうか。
「……まだ、ある」
「…まだある…って? 何が」
携帯? 右手で持つ未だ開いたままの携帯を指差した。
「映像が、まだあるってことか?」
その顔はなんだ。何がおまえの顔をそうさせる?
なんでそんなっ泣きそうな顔をしているんだっ。物凄く嫌な予感がする。
「見なきゃ…だめだよな」
「見て、欲しい。見やすくする」
握っていた携帯を取られる。何を見せるつもりなんだ。
例のノイズ混じりの波形が浮き上がっていく。徐々に浮かび上がっていくその造形。色がある。
画面には一人の女性、昨日から俺が世話になっていた朝倉、そのひとがいた。
「朝倉が…いるぞ。ほらっ。…なんで、おまえは見ないんだ?」
長門は下を向き画面など見ていなかった。
『ふふ』
声が聞こえた。顔を画面に戻し見ると朝倉は微笑んでいた。
『恋については私のほうが上ね有希ちゃん。やっぱり私がキョン君と付き合うほうがいいんじゃないかな』
さっきの話の続きだ。俺と付き合う? こいつも‘俺’の事が?
『まあもう、私は輪の中に入れないけどね』
へ?
『独断での他世界への干渉行為は…重大な違反。確実に…存在の消失を招く事に…』
なんのはなしをして…他世界? 干渉。朝倉が他世界干渉……俺の……世界。…消失?
『…お堅い上の人なんて知らないわ。所詮私はバックアップなんだし、あなたさえ無事ならいいの』
『おねえちゃんは…ずるい』
『あはは、でも本音を言うとキョン君と会えなくなるのは悲しいな。この気持ち…有希なら解るわよね』
おまえは…いなくなるとでも言うのか?
『何故、違反を』
『それこそ有希ちゃんなら解るでしょ。好きな人が困ってるならなんとかしたいじゃない。
私が言わなきゃ有希ちゃんがやっていたでしょう? 私はただあなたより先に言っただけ、だから気にしないで』
『でも、こんな』
『有希ちゃんはいいのよ。あなたがいなくなるのはもっと世界を壊す事になる。だから……』
なんだこれは。
『いいのよ』
彼女は終始微笑んでいた。…終わりか、短かったな。そうかいそうかい。むむ、どうしたんだ、俺の手よ!
震えが止まらない。ちょっと長門に…聞いてみるべき、だ、ろうなあこいつは。
「こ、これ………なんだが…」
すぐに言葉なんて思いつかない。
「なが…と……これ。携帯見てみろよ。あっああ、今は映ってないか。さっきまで凄いのやってたんだぜ」
「………」
「なあ、これ何の冗談だ? 笑えないぞこれ」
とびっきりのおまえのジョークなんだろ。なあそうだよなこれは。
「冗談ではない」
「なんだよっ! それ!」
冗談とは言ってくれない。認めるしかないじゃないか。
あの時、他世界への干渉行為は簡単なもんだと思っていた。物を取ろうと手を伸ばすようにだ。
だがそれは大間違いだった。映像の中で長門は確実に存在を消されるような違反と言っていた。
朝倉は俺の世界のために危ない橋を渡っていたんじゃないか。無知とは罪、まんまではないか。
「なあっ朝倉はこれからどうなる!」
「処分は…免れない」
「それは死ぬって事と一緒じゃないかッ! 俺のせいだ! なあ、親玉と直接話をさせてくれ!」
「依然涼宮ハルヒによるこの世界の改変についての討議は続けられている。だから処分については後になる」
「少し連絡を入れただけじゃないか! 何も悪い事などしていない。おまえの親玉はどうか…どうかしてる!」
224 :
7-695:2006/07/02(日) 16:45:12 ID:lIkVBSkt
「あなたには大した事ではないかもしれない。でもこれは重大な違反。他世界を弄るという行為」
「おまえら姉妹なんだろ! なんでそんな冷静にいられるんだよッ!」
「あなたみたいに喚けばいいと? 私だってとても辛い。お姉ちゃんがいなくなるなんて絶対いやだ!!」
「っ!……ぅ……あ……すまな…かった」
感情を剥き出しにする長門に俺は唖然とする。口を大きく開けその瞳には…涙が。
何度俺は馬鹿をすれば気が済むんだ。こいつだって本当は辛かったんだ。そりゃそうだ。
肉親だから! あれを見せて俺が騒ぐだろう事は解っていたんだ。
「気を廻せてやれなかった…」
「……あの時、いい考えなんて思い浮かばなかった。すぐに情報爆発が起こる事は予測できていた。
お姉ちゃんをこんな目に合わせたのも私が馬鹿なせい」
「その決断をさせたのは俺なんだ」
「買い物に出かけた時もお姉ちゃんは仕切りに私にキョン君にこの事は教えてはダメ。冷静でいなさい、
いつもどうりでいなさい。と何度も情報を送っていた」
何かに憑かれたように長門は無表情に涙をぽろぽろと流しながら語り出した。
「…………………なんだよ、それ」
「何度あなたに打ち明けようと思ったか解らない。
でも、言ってしまったら決意したお姉ちゃんを裏切る事になる。………私はあなたを欺いていた」
「…長門。おまえは俺に打ち明けてくれたじゃないか!
いいんだ、それが正しい。そのまま何も言わないで朝倉が消えていたなんて事になっていたら
きっと…きっと俺はその顔ををひっぱたいていた。おまえはやっぱり姉妹なんだよ。
おまえは正解を選んだんだ。だからもう…そんな顔するなよ」
どこを見ているのか解らないその表情のまま涙を流し続ける長門をそっと抱き締める。
…そうか、そういうことだったんだ。
ぐすぐすと嗚咽を漏らす長門の肩を抱きながら朝倉の事を考える。
朝倉…おまえは自分がバックアップだからと言い、身を挺して
こっちの都合のためにその身を捧げたみたいなことを言った。でもそれが本心なのだと俺は思わない。
個の人間だったとしてもおまえは身を捧げたんじゃないか?
俺が子供のように駄々をこねる様を見かねて…そう、おまえは俺が好きだといっていたじゃないか。
あの時の事を思い出す、長門の言うように手詰まりなのは確かだった。
そして少し不自然だと思う事があった。
朝倉は長門が何か言いかけた事を遮るようになんとかすると言ったんだ。
俺に余計な心配でもかけさせないようにそうしたんだろう。
それを目先の事を優先して焦って放置した俺の、俺のせいじゃないか! …俺は取り返しのつかないミスをしたんだ。
…本当にすまない、朝倉。…だがこのまま引き下がるつもりはないぞ。まかり通ってなるものか。
「親玉に伝えてくれ。朝倉を消すような真似をしたら俺は元の世界には戻らない、と」
「………………わかっ…た」
帰るのが遅くなっても構わない。ハルヒには連絡がいっている。多少は大丈夫な筈だ。
誰かが幸せになって、誰かが報われない。そんなのはありふれた事だと解っているさ。
でもこんなのは間違っているだろ。…人を助けた人間は報われるべきだ。
朝倉と‘俺’両方を取り戻してみせる。
「今日はもう…家に帰るのがいい」
異論はない。
「またおまえの家に行けばいいか?」
朝倉のいるその家へ。
「その方がいい」
225 :
7-695:2006/07/02(日) 16:47:33 ID:lIkVBSkt
ここまでにしておきます。やっと書きたかったエロへいけるっ。皆さん支援有難う。
長門が感情出したとき、
不覚にもひぐらしを思い浮かべた俺ガイル。
朝倉(´・ω・`)
続きが気になるwwGJでした!
今のSSじゃないが
最近キョンの情事などに置いて、若干キョンらしさを抜いて
「キョン」と言う人格と人称を使って、作者の願望がぶつけられすぎな作品が見受けられる。
まあ、パロだから当たり前か。
>>228 そういうのも1つのスタイルなんだろうけどね
俺はあまりにも違和感感じたらうまく読み飛ばすようにしてるよ
作者自身も言いたいことはあるんろうけど、それよりキョンなら
どう思うかってのをモノローグ等でうまく書いてる作品の方が
おもしろく感じるね
うーん、文章は良くできているんだけど、必要のない状況が多かったかな。
鶴屋さんや古泉は別に出てくる必要はなかったと思う。
展開が遅いから中弛みしてた感じ。
というか別世界で性格まで違っちゃって、ほとんどオリキャラ状態なんだから
くどくどされてもうざいだけ
ここまでキャラが違ってきちゃうと、作者の中にしかキャラ像が掴めてない
それを掴ませるための描写なのかもしれないけど、余計に悪化させてるだけで逆効果
状況描写の反復も、月刊誌じゃないんだから必要ない。スレ容量の無駄
必要な描写だけに絞れれば良作だった
もう1つ言えばaのほうは簡潔によくまとまってたと思うよ
aと今回のが同じ人のとは思えない
少しだけ残念。今後に期待してます
意見ありがとう。自分もaの方がマシだと思ってる。まあちゃんと終わらせます。
今更ながら「イレカワリLOVER」の続きがかなり気になるなあ…
>>235 あの終わり方は、ファウンデーションのパロなのかも、そう思った俺は……
>>225 途中までハルヒ×キョンの純愛物と思って読んでもーた。
今泣きそう
>>233 禿同、続きがかなり気になる
あれの作者はこのスレをまだ見てるんだろうか
短編ですが……
240 :
****にて:2006/07/02(日) 21:53:49 ID:1dAISBhb
「ちょっとキョン、あんた手伝いなさい」
振り返ると、ハルヒが陽光にも負けないほどの満面の笑みを俺に向かって照らしている。
「何をだ」
「ちょっとね〜」
満面の笑みから変わり、明らかに何か企んでそうな怪しげな笑みに変化していく……
決定。今日もまた変な事に巻き込まれそうだ。
俺は部室に向かおうと学生かばんを担いで教室から出ようとしたところを、ハルヒに背中を掴まれ捕獲されている。
「ちょっとって何だ?」
「そうね、強いて言うのなら頼みごと」
頼みごと? 俺にか?
「頼みごとよ、た・の・み・ご・と!」
「それはどんなんだ?」
俺はさっきから教室を出ようと必死に前に進もうとしているのだが、体が全くといっていいが動かない。
ハルヒの片手で俺の体が動かなくなるとか……
そんなことより俺がさっさと教室から退散したいのは、この状況だと他のクラスメイトからの視線が痛いのだ。
ハルヒは奇人だからなんとも思わないだろう。
だが、俺は古泉と長門の保障つきの至って平凡で何処からどー見ても一般人なんだよ。
クラスメイトからの視線の痛さがわかるかい? ハルヒ。
「肝試しの準備」
あぁ、何故か俺の中のパズルのピースがはまって、気持ちいいようなガッカリの様な感じが頭の中で瞬間的に渦巻いた。
241 :
****にて:2006/07/02(日) 21:55:27 ID:1dAISBhb
初夏、空がとっても高くなるころ、あぶらゼミのやかましい声が空に浸透していく……
いやいや、なんでパンアップしていくんだ。というよりこのネタ古いぞっ!
と、まぁ自分でも良くわからない事を思いながらも口を開いた。
「なんで俺なんだ? というより肝試しの準備って何だ?」
「肝試しの準備は肝試しの準備に決まってるじゃない!」
「その肝試しとやらはいつ、どこで、だれとやるんだ? 俺はそんなの聞いたこと無いぞ」
「明日、****墓地、SOS団でやるに決まってるじゃない!」
予想していた通りだ、ハッハッハッ、呆れてものが言えない。たぶん何時もの通り思い付きの行動だろう。
そして、NOと返事をしてもこの強靭な手に掴まっていたら逃げれないだろうし、
NOと言ったらこのまま食べられてしまうかも知れない。死ぬのは簡便だからな。
しかし……。****墓地といったら無縁仏のお墓とかあるところだ。
超能力者や未来人、宇宙人を探すための団のはず、幽霊を見つける事なんか書いてなかったぞ……
「……で、何を手伝えばいいんだ?」
「さすがキョンね、物分りが早い」
べつにお前に褒められても嬉しくない。
ハルヒ以外のクラスメイトに視線を移してみると、明らかに全ての視線が俺の方向へと向けられていた。
特に国木田と谷口は、いや特に谷口は、次の標的を見つけたいやらしいストーカーの様なちょっとじゃないほどのエロい目つきをしている。
「****墓地の奥にある寺みたいなところの裏にお札を置いて来るのよ」
「俺一人でか?」
「もちろん、あたしと!」
最初は俺一人で行くのは心細かったがこいつと居ると、幽霊やらゾンビやら妖怪やらと良からぬことに遭遇しそうな気がしてきた。
242 :
****にて:2006/07/02(日) 21:57:30 ID:1dAISBhb
さて、場所は変わり、****墓地前。
俺はハルヒに半分以上強制的に****墓地前に引っ張られてきていた。
俺は宇宙人とかゾンビなど西洋風のホラーは大丈夫なんだが、和製のホラー、すなわち、悪霊やら自縛霊やらそういう類のものは、絶対的に無理というのは、こいつに伝えるべきか伝えないべきか迷っていた。
信じてるわけでもないが信じてるわけでもなく、怖いものは何故か怖いのだからどうしようもない。
そして、伝えると悪い方向に向かっていきそうだし、使えなかったら色々と厄介ごとを押し付けられて途方にくれそうだしな。
そして、伝えるチャンスを何回と逃しながらここに至る。
「部室には行かなかったけどいいのか?」
「明日の肝試しは機密事項だから」
「はぁ……」
「はぁって何? その気の抜けた返事、何で機密事項なのかわからないの?」
さっぱり
「解らないようだから教えてあげるわ。こういう物はねぇ、心の準備期間を与えたら駄目なのよ」
「……」
「やっぱりあんたはバカキョンね、こんなこともわからないの?
つまりねぇ、心に準備期間ができると小さな風にもビクッとこないわけ。
あんたもみくるちゃんが驚く姿みたいでしょ?」
心の準備期間がどうやらってのは意味が解ったが。
最後のが意味が解らないな。
朝比奈さんなら心の準備期間とやらがあっても無くてもショック死してしまうに違いない。
「まぁそんなことはいいわ。空が赤くなってきたし、さっさと裏に置いて来ましょ」
その意見には異議は無いな。
暗くなると寺の近くにある無縁仏のお墓から幽霊が出てきそうだ。
ここの墓地は心霊スポットとしてよくテレビや心霊特集などの雑誌に取り上げられているのは知っている。
しかも、その心霊スポットが家から自転車で30分ほどの場所にあるのも知っていた。
夏の夜になると怖いもの見たさの、アベックがよく来るらしい。
さて、どうしよう。
243 :
****にて:2006/07/02(日) 21:58:56 ID:1dAISBhb
そんなことを考えている間は気がつかなかったが、なにやら白い粉みたいな物がパラパラと降り注いできていた。
「雪?」
雪というよりもっと硬く……しょっぱい。
「いや、塩か」
瞬間的に、振り向くとハルヒが塩を辺りにまいたり、体に降りかけていた。
えっと、あれか……お払い? 清め?
「ちょっと質問したい。何やっているんだ?」
「見て解らない?」
解るけど。解るんだけれど、何でそれをしているのかが知りたい。
「お払いよ、清めたりしているの」
その理由を聞いているんだよ。
「もしかして、お化けが怖いとか?」
「ぅ……そ、そんなわけ無いわよ、墓地で肝試しや何かするにはお払いが基本でしょ?」
ハルヒは、一瞬、小さく言葉を詰まらせた。
こいつ、お化けが怖いんだな。
俺も怖いんだが……。
俺はハルヒが既に用意をしてあった懐中電灯を片手に持ちながら墓地をお寺に向かって真っ直ぐに突き進んでいく。
ハルヒは勿論、俺があの時みたいに手を握って引っ張っている。
そうでもないと、背中を掴まれて正直歩きにくい。
こんなところさっさと出て行きたいんだが、そうも行かず。
そして、今ハルヒの居るポジションに明日朝比奈さんが居る可能性があるのなら、今は目をつぶることにした。
きっと、可愛らしい声で「きゃっ」とか言いながら抱きついてくれるのかもしれない、もしくは俺が抱きつくに行くかな。
「鼻の下が長いわよ」
ハルヒがいつの間にか真横に居て冷たい視線をぶつけてきていた。
勘の鋭いやつだ。
夕焼け時だと、"少し影の当たらないところに何かありそうな雰囲気"で特に何も変わりは無い墓地だが、
夜(夜中?)になると、辺りがかなり真っ暗になるだろう。しかも、この墓地には何故か電柱がなく、本当に真っ暗になるのだ。
なぜ知っているかって? それは勿論、小学校のときに友達と来たことがあるからだ、あの時は風音で皆、逃げ帰ったけどな。
244 :
****にて:2006/07/02(日) 22:00:03 ID:1dAISBhb
周囲にひっそり佇む墓石は夕暮れ時の日が傾くときであってか、赤く染まる部分と影に包まれ、徐々にその影を伸ばしていっている。
風は時折吹くが、木々が大きな音を立てながら揺れるというほど強いというわけではなく、ザザーッとゆれるぐらいであった。
さて話は戻ろう。
俺たちが寺の裏側に着いたときには夏なのに何故か釣る瓶落としのごとく日は素早く沈んでいき、
太陽の余韻が西の空に響き渡っているぐらいで、懐中電灯の光を点けなくてはほとんど足元が見えないぐらいまでになっていた。
道なりに進んで行き、墓地の一番奥にあるお寺にたどり着くと、お寺の裏側に回りこんだ。
お寺の裏側には、竹林というのか普通の林というのかそういうものが広がっていて、
小さな風が吹くごとに葉と葉が擦れあって、いやでも俺の中の恐怖心というものを煽り立てている。
「おフダ」
と、短くハルヒは言うとこちらに向かって手を広げた状態で伸ばしてきたので、ポケットからお札(紙)を取り出すと、
その開かれている手の上に乗っけてやった。
ハルヒは黙ったままその札を、何故か持っていたクリアファイルケースに入れ、
お寺の外側廊下みたいなところに置くと、立ち上がる。
「そのクリアファイルケース、このお寺の人に回収されたりとかはされないのか?」
少し考えたように顔を傾げると、
「きっと大丈夫よ」
と言い切った。こいつが言ったんだから、きっとじゃなくて『必ず』な筈だ。
「用事も終わったし帰ろう。もう真っ暗だ」
墓地の一番奥に小さなお寺があるのかというと、お寺の裏手、
すなわち今俺たちが居るところの少し離れた林の中に無縁仏と呼ばれる者のお墓があるからだ。
無縁仏というのは、弔ったり供養したりする縁者がいない死者。またその霊魂。
その代で家系が途切れたり、一人身で死んでしまって、誰が家族や家系の者かわからない状態の死者、
もう誰も弔いにこない者の死者が眠っているお墓だ。
こういうのはよく幽霊のお話とかに使われるから、ご簡便ねがいたい……。
「まぁここに長く居てもしょうがないし、さっさと帰りましょ」
245 :
****にて:2006/07/02(日) 22:00:38 ID:1dAISBhb
さてここで俺は二つの選択肢がある訳で。
[>怖いので夜が明けるのをどうにかして待つ:a
[>全力で駆け抜ける:b
どっちも怖いのには代わりが無いな
[>a
俺はどうすればいいのか良くわからず墓石と同じように佇んでいた。
勿論、もったいないが懐中電灯の明かりは点けっぱなしだ。
「この暗さは反則だ……」
「……」
あの元気のよさは何処に行ったのかハルヒは先ほどから黙りっぱなしだ。
頼むから返事とかしてくれ、この墓地の中で一人っきり見たいで怖いだろうが。
そうだ、思い込めばいいのか。
お化けは居ない、お化けは居ない、お化けは居ない、お化けは居ない、お化けはいない? お化けはい……
逆に居そうな気がしてきた。
そのまま次の一歩を踏み出す勇気が無いまま、俺とハルヒは二人、墓地の奥で取り残されていた。
ちなみに墓地の入り口までは大体1.5kmぐらいって所だろうか。やけに広いんだよなこの墓地は。
「帰るなら全力ダッシュで帰ろう、すまないが俺は幽霊とかそういう類は絶対的に苦手なんだ」
そして何故か雨が降り出してきた。
雨+真っ暗な墓地+二人っきり
=もう無理
雨のシトシトと降る感じが更に俺の恐怖具合を盛り上げていく。
さっきまで全く雨が降る気配など無かったのにいきなり振り出したことに
「雨だね、少しの間でいいからあのお寺に入らない?」
確かに、この雨の振る中を真っ暗な墓地を走りぬく根性は無い。
その前にお寺の鍵が開いているかどうかが問題なのにそこら辺はハルヒの事だから構わない事にした、心配するだけ無駄さ。
そして、予想していた通り、お寺の入り口には鍵があるのに鍵がついてない状態で、易々と中に入ることができた。
中に入って思ったのだが、造りは外見に似合わず洋風で少し違和感を覚えたがそこら辺は考えないことにしておいた、
この場合、逆に和風とかだと涙が出るかもしれない。
そういや、こういうのをクローズドサークルって言うんだって古泉から聞いたな。
もっとも事件が起きる事など無いだろうが。
246 :
****にて:2006/07/02(日) 22:01:13 ID:1dAISBhb
カチッというスイッチを押す音とともに蛍光灯の白い光で部屋が照らされた。
「電気通ってるのか」
ここに来るまでに街柱を見なかった気がするのだが。
「そう見たいね、ま、真っ暗よりましでしょ?」
それには異論は無いな。
俺は肩に学校を出た時からぶら下っていた通学かばんを下ろすと、ため息をついた。
「参った」
「確かに、そうね」
原因はお前だろ、他人事みたいに言うな、と突っ込みを入れたいところなのだが、入れると後が怖いのでやめておこうと思う。
「何する?」
何するも何も、外の雨がやむまでここにいるしかないだろ?
「雨がやむのを待つ」
「そうじゃないのよ」
「そうじゃないって?」
ハルヒは鞄を下ろすと俺が座っていた居間みたいなところに座り込んだ。
「そうね、こんなのはどう?」
「っ!?」
行き成りハルヒは俺に圧し掛かってきて、口を口で塞がれた。
床に押し倒され、仰向けの状態になったところにハルヒが上に乗っかる、
騎乗乗体勢というのだろうか、その状態からキスをしてきていた。
くそっ、いきなり何だよっ。
「意味解った?」
少し頬を赤らめながらハルヒはこちらを確実に見ていた。
「解ったような解りたくないような、つまりピーーーだな」
何故か満足したような笑みをハルヒは浮かべていた。
そらみろ、俺の予感はハズレで無かったみたいだ。
まさか墓地で……
ハルヒはセーラー服を脱ぎ始めていた。
247 :
****にて:2006/07/02(日) 22:03:05 ID:1dAISBhb
長門さんのなの字も古泉のこのじも鶴屋さんのつの文字も出てこないことに
すいません、反省してます。
お眼汚ししつれいしましたっ
bも書こうかと思ったが……
悪い事は言わん、書け!
むしろ書いて下さい。
aの続きも書いて下さい。
>>232 小ネタ好みだからそこまで気にならなかったよ
bの方が好きな俺もいるんで、本人がどっちがマシとか言わないでくれ
終わってるならはよ投下しれ
>>237 フラグ立ちまくりだし、ハーレムだろうな。微妙にNTRを感じるw
>>247 お目汚しじゃないぞ。中々上手い
>>248 ここで終わらせたら、俺はあんたを恨むw
忙しかったら、べつにいいんだが・・・orz
248じゃない247だ
鬱・・・
>>247 選択肢ものはぐだぐだになりやすいから、個人的にはダメ
結末を描かずに書いている典型で、大抵失敗で終わる
語りがキョンらしくない
アクションが突然すぎてついていけない。にもかかわらずそこで終わる
だがそれらは俺は別にいいと思う。所詮パロディだからね。原作そっくりじゃないとダメってのは全然ない
むしろくどくなくてその点は良い感じ
疑問が残る終わり方ではあるものの、流れはさっぱりしててパロディらしい
もし次書くことがあったら、結末を先にイメージしてから書き始めると
貴方はかなり面白い話をかけると思う。期待してます
最近投下減ってきたな
>>253 スレが荒れてれば投下を避けようと思う職人さんも多いんじゃないか?
>>248 面白いよ。
ただ、その分細かいアラが気になってしまうのが惜しい。
最後まで書き上げてないあたりからして、慣れていないんだろうけど。
どんどん書いて、そしてそれ以上に何度も読み返すといいよ。
続きも頑張って。
>>253 とりあえず考えられるのは
1 書きだめてる→投下スクナス
2 実際書いてない→投下しようにもSSナス
3 気のせい→今あるSSにでも感想書くかな…
>>247 サブキャラクターが出てこないってのはそれはそれでストレートで良いと思われ。
Hシーン続投キボン。
キョンと2人で観覧車に乗って、降りたくないから情報操作で
モーター壊してキョンに怒られる長門。
でSS書こうとしたが前後の流れが全然思いつかないorz
暇な書き手様が居たらこれで書いてください。お願いします
そういう時は前後を省いて徹底的に短く纏めるんだ。
AA略
「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
『頭に電波を受信したと思ったらいつの間にか405行まで書いていた』。
な…何を言っているのかわからねーと思うが、
俺も何をしたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとか、
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」
文章ってどう短くするんですか(´・ω・`)
ハルヒが市内ではなく遊園地で不思議探ししようと言い出す→キョン・長門がペアに
でいいんジャマイカ
とりあえず音読してみよう。
じゃあ、どうぞってことで『前』
「今回は遊園地で不思議を探すわよ!」
という団長様の思い付きによって、俺たちは親子連れで賑わう遊園地にやって来た。
入園した直後にハルヒはくじ引きでペアを決めると何故か口をアヒルの形にしながら
古泉と必死に泣いて抵抗する朝比奈さんを引き連れて木製のジェットコースターへと
走り去っていき、後には俺と長門だけが取り残された。
結局お前は遊びたかっただけか。そうなんだな?
まあいい、お前がそうなら俺たちもそうさせてもらうとしよう。と横の方を見たが、
そこにいたはずの長門はいつの間にか近くのベンチに座って本を読んでいた。
こんな所でもそれか。まあ、いかにもらしいが。
「長門、せっかくなんだから俺たちも何か乗ろうぜ。どれがいい?」
と、本と顔の間に入園時に貰った案内を割り込ませる。
こうして多少強引にやらないと、いつまで経っても主張してくれないからな。
とりあえず、ジェットコースターを選ばない事を祈るぜ。ああいうのは苦手なんだ。
しばらく長門は案内を見つめていたが、ふと顔を俺のほうに上げ、
「これ」
長門が指差した先にあったのは、観覧車だった。
+ +
∧_∧ +
(0゜・∀・) ワクワクテカテカ
(0゜∪ ∪ +
と__)__) +
>>262 60行以内ずつ投稿で問題ないと思ふ。
折角書いたものを、質を高めるためならともかく、ただ長さだけの為に
短くする必要なんてないでしょ。
いつもの部室
いつものノック
今は返事の無い部室
誰も彼も居ない部屋
私は一人席に着き終わりのない思案
他人を偽り
仲間を偽り
さらには自分さえも偽る
心を口にする事さえ出来ない
永遠に続く螺旋の様な葛藤
完全なバランスで平定する様な世界
だけどすぐにでも砕け散る様な世界
相反する矛盾
薄いまどろみの中
一人の私は一人の僕に問い掛ける
君は彼になにを求めるんだい?
友情を
君は彼女に何を求めるんだい?
安定を
君は彼女に何を求めるんだい?
友愛を
君は彼女に何を求めるんだい?
愛情を
君はそれでいいの?
構いません
今のままでいいのですか?
君に任せるよ…
少しだけ疲れていた
私を僕が偽る事に
僕が私を偽る事に
楽しい事も
悲しい事も
嬉しい事も
憎らしくある事も
全てそこに在る事も解っていたのにね
今は夢を見ているかもしれないね
ではせめて楽しい夢を願いますよ
せめて良い夢を
人が少ないうちに、夏っぽい話を投下させていただきます。
エロくない上、かなり長くなってしまいました。
15レスほど、お借りしてしまいます。
ふざけんな!という方は、どうかスルーしてください。
月の無い夜。俺は、蒸し暑い校舎の中を、ハルヒを両手で抱えながら走り回っていた。
前髪が汗で張り付いて視界を狭め、汗を吸ったTシャツが普段の三倍ほどの重量になって身体にまとわり付いてくる。
身体は疲れ果てており、俺の脚は、もはや惰性と恐怖と僅かな意地だけで動いていると言っても過言ではないだろう。
「ねえ、キョン……」
下を向くと、手に持った懐中電灯で前方を照らしながら、いつに無く不安げな様子で俺を見上げているハルヒと目が合った。
少し、休もう。
俺は脚を止め、ハルヒをそっと床に下ろすと、それ以上立っていられず、廊下に崩れ落ちた。
「ちょ、ちょっと、キョン!?大丈夫?」
まるで大丈夫じゃないぞ。心臓はアジタートの書かれた楽譜を16ビートで演奏していたし、口から出る音は、人の呼吸音というより、もはや獣のそれだ。
ハルヒは、そんな俺の様子を見かねたのか、背中をさすってくれている。なんだよ、いつに無く優しいじゃないか。
そんなハルヒを見ると、俺はもう少しだけ、意地を張ってもよさそうな気分になった。
「……もう、大丈夫だ」
俺が答えると、ハルヒはほんの少しだけ笑みを見せた後、すぐに真剣な顔に戻って俺を見つめてくる。そんな顔したって、なにもやらんぞ。
「ねえ、キョン。あれって何なの?」
それは非常に簡単な問題だな。
「さあな。本人の言うとおり、怖い幽霊か何かじゃないのか」
「え、でも、あいつって……」
そこまで言うと、ハルヒは何かに気付いたように、今まで走りぬけてきた廊下の暗がりに目を向けた。
俺もそんなハルヒの様子を見て、息を潜め、耳を澄ます。
聞こえてくるのは、自分の心臓の音、ハルヒのかすかな息遣い、そして、暗がりの奥から、響く足音。
……んな馬鹿な!もう追いついてきやがったのか!
「ハルヒ。俺の背中に負ぶされ」
さっきまでハルヒを抱えていた俺の腕は、鉛を仕込まれたように重くなってしまっている。
さすがにこれ以上こいつを抱えたまま走るのは無理だろうな。
「だ、大丈夫よ。もう一人で歩けるわ……っつ!」
「おい!無理するな!」
立ち上がろうとしてよろめいたハルヒを、咄嗟に両手で支えてやる。
ハルヒの足首に巻かれたハンカチに目をやると、元の白が見る影も無いほどの赤色に染まっていた。
渋るハルヒを無理矢理背負い込むと、目の前の扉を開けて、その中に飛び込んだ。
扉の先には、無限に続く廊下と、海の底より黒い暗闇。
「くそ!またかよ!」
俺は半ば自棄になりながら、ハルヒの持った懐中電灯が照らす僅かな明かりを頼りに、暗がりの中を駆け出した。
夜明けまでは、まだ遠い。
下手したら永遠に終わらないところだった八月を何とか終わらせ、俺たち学生の世の中は、二学期と呼ばれる時期に突入していた。
といっても、夏休み特有の休みボケと、一向に治まる気配の無い熱気が奏でる二重奏に、俺たちの未完成なメンタリティが敵うはずも無く、どろどろのアイスのような生活を送る事を余儀なくされていた頃の事だ。
昼前、教師の急用か何かで、ぽっかりと自習という名の空白が空いたことで、俺たちのテンションは僅かばかりだが高まっていた。
そんな時、谷口のアホが、ああ、今回の事は本当にこいつが発端なのだ、アホだ、アホキングだ。
とにかく、そのアホが、急に「怪談でもしようぜ!」なんて言い出して、暑さでボケていた俺と国木田も、テンションに任せて思わずOKしてしまった。
まあ、その時は、どこかで聞いた事のあるような、全く怖く無い怪談で盛り上がり、そこそこ楽しい時間を過ごす事が出来ていたのだ。
俺たちの後ろの席で、ハルヒがどんな顔をしていたかも知らずに。
「肝試しをするわ!時間は今日の夜8時!場所は学校!質問はナシ!」
言うまでも無く放課後の部室。いつもより遅れてやってきたハルヒは、開口一番、そんな事をのたまった。
朝比奈さんは「ひぇぇー!?」と悩ましい声を上げ、長門は本のページを一つめくり、古泉はいつもどおりニヤけた顔で全てを肯定するように頷いている。
俺はと言えば、こいつがこんな事を言い出したのは、俺たちの怪談話のせいだと気付き、何だかよくわからない罪悪感に悩まされていた。
「お前、何言っ「質問はナシ!」
とりあえず異議を唱えようとした俺の目の前に、指を突きつけてくるハルヒ。ちょっとむかつくぞ。
俺はその指を右手でつかみ、あさっての方向に逸らしてから、改めて異議を申し立てる。
「あのな、何で俺たちがそんな微妙に季節外れな事をしなくてはならんのだ。第一、夜の学校なんて入れるわけ無いだろう」
ハルヒは一般常識を述べる俺に、九九の6の段が言えない中学生を見るような目を向けてくる。かなりむかつくぞ。
「私を誰だと思ってるの、キョン。その辺、抜かりは無いに決まってるでしょう?古泉君!」
ハルヒが、フランスの貴族のような仕草で指を鳴らすと、古泉が立ち上がり、大仰な仕草で礼をする。セバスチャンかお前は。
「今日の夜、屋上で天体観測がしたい、と先生に申し込んだところ、快く受け入れていただきました」
古泉が無駄に優雅な仕草で、ポケットから鍵の束を取り出して見せた。
というか、その話絶対嘘だろ。このエセスマイルの事だ。また裏でよからぬ事をコソコソやったに決まってる。
「という訳で、万事抜かりないわ。今夜八時、正門前に集合する事。特にみくるちゃん!」
今度は朝比奈さんを鋭く指差すハルヒ。行儀が悪いからやめなさい。
「怖いからって休んだりしたら、夜の山に一人置き去りの刑に処すわ!いいわね、絶対来なさい!」
朝比奈さんは、罠にかかった上、矢を向けられたうさぎのような様子で震えていたが、やがてあきらめたように、半泣きの顔を床に向けた。
長門は、本棚から新しい本を取り出そうとしていた。
俺が一旦家に帰って、妹と先を争うように夕食を食い、再び学校に戻ってきた時には、もう既に他の4人は揃っていた。
朝比奈さんは、早くも顔色がお悪い様子で、怯えたようにハルヒの後ろで縮こまっている。思わず守ってあげたくなるような仕草だ。
ハルヒはそんな俺を何か文句ありげな顔で睨んでいたが、結局そのまま何も言わず、ポケットから割り箸で作られたクジを取り出した。
どうやら、いつものようにクジでペアを決め、一組づつ順番に校舎の中に入る、という事らしい。
俺の、朝比奈さんとペアになれますように、という1デシリットルの下心も無い清らかな願いは、そう都合よく叶うはずも無く、俺とハルヒ、古泉と朝比奈さん、そして長門が一人という組み合わせが決定した。
朝比奈さんの方を見ると、少し安心したような様子で、古泉と言葉を交わしている。まるでその空間だけ、洒落た恋愛映画の一幕のようだ。
そのまま、長門の方にも目を向ける。長門はいつも通りの無表情で、自分の持つ『はずれ』と書かれた割り箸を見つめていた。
こいつなら一人でも安心だろうな。
しかし、肝試しなんて、一人でやって面白いのかと聞かれれば、それは誰だって否と答えるだろう。
まあ、長門なら「問題無い」とか言うのかもしれないが、こいつだけ一人ってのも、何だか不公平な話だしな。
俺は、何故かやたらとハイなテンションでクジを回収するハルヒに気付かれないように、ひっそりと長門に声をかける。
「なあ、長門。お前の番になったら、俺も一緒に行くからな」
長門は、割り箸から俺に目線を移し、しばらく無機質な色の瞳で見つめてきた後、わずかに首を縦に振った。
その後、厳正なるじゃんけんの結果、古泉と朝比奈さん、俺とハルヒ、最後に長門の順番で、校舎に入ることになった。
「ルールは簡単です。新館の屋上入り口と、旧館にある我らがSOS団の部室に置かれた紙に、自分たちの名前を書いてくるだけ。順番はどちらからでも構いません」
古泉は、それだけ言うと、鞄から懐中電灯を取り出し、泣きそうな、というか既にちょっと泣いている朝比奈さんをつれて、校舎の中の暗がりに消えていった。
それから約10分間、校舎の中からは、朝比奈さんの「いやー!」とか「無理ですー!」とか「ごめんなさいー!」とか、延べ47種類にも及ぶ叫び声がこだまし続けていた。
やがて、半ば失神した様子の朝比奈さんを背負って俺たちの前に戻ってきた古泉の笑顔は、さすがにいつもの精彩を欠いていた。
よく見ると、古泉が着ていた卸したてのように皺一つ無かったシャツは、羊の大移動に巻き込まれたかのような有様になっている。
そんな様子を見ていると、今回ばかりは古泉に少しだけ同情してやってもいい気分になった。ドンマイ、古泉。
そしていよいよ、俺とハルヒの番である。
「さあ、キョン!行くわよ!」
古泉から受け取った懐中電灯を激しく振り回しながら、ハルヒはさっさと玄関をくぐり、下駄箱の中に足を踏み入れている。
「いいわね、キョン。ちゃんと幽霊さん出てきてください、って念じながら歩くのよ!」
既に肝試しの趣旨を完全に履き違えているハルヒの背中を、早足で追いかけながら、俺は小さくため息をついた。
正直に言おう。俺もこの時は、少しだけ、ほんの少しだけだが、SOS団の皆との騒がしい肝試しも、悪くないと感じていたんだ。
俺がハルヒと二人っきりになった時、トラブルが起こらなかった事なんて、片手の指で足りる程しか無かったという、確固たる事実も忘れて。
校舎の中は、俺が思っていた以上に不気味なものだった。
今夜は月も薄い雲に隠れており、懐中電灯で照らされた足元と、電気設備の豆電球以外は、灰色がかった闇が視界を覆っている。
「おい、ハルヒ。少しペースが速すぎるぞ。もうちょっとゆっくり歩け」
鼻歌でも歌いだしそうな足取りで、俺の遥か前を行くハルヒに声をかける。お前があんまり先に行くと、俺の足元が見えないんだよ。
「あんたが遅すぎるんでしょ。そんなにおっかなびっくり歩かなくても、地雷なんて踏まないわよ」
そう言いながら、俺の顔に明かりを向けてくる。やめんか、眩しいだろうが!照らすのは足元だっつーの。
それにしても、ハルヒと二人で夜の学校を歩いていると、なんだかあの夢の事を思い出してしまいそうになるな。
あの時もたしかこんな風に、校舎に、というか世界に二人っきりだった筈だ。
しかし、あの時の校舎って、こんなに不気味だったっけな。それどころじゃ無かったから、気にならなかったのか?
いや、いかんいかん。あんな夢を思い出してみろ。またしても俺は自分の命を絶ちたくなるようなダウナーな気分になる事間違い無しだ。
おれの精神の均衡を保つためにも、あの夢には蓋をした後、五寸釘で四隅を固めるぐらいしなくてはならないのだ。
「……キョン!ちょっと、キョン!」
気付けば、階段の上からハルヒが俺を照らし出している。いつの間にやら階段の前まで到着していたらしい。
「あんたねぇ、何ボーっとしてんのよ!いくらなんでも、さっきから怖がりすぎよ!」
前に見た性質の悪い夢のことを考えていた、とは口が裂けても言えないし、死んでも言わない。
「ちょっと考え事してただけだ!」
そう大声で言いながら、急いでハルヒの元まで階段を駆け上がる。
ハルヒは俺に一瞥をくれた後、心なしか、さっきよりもゆっくりと階段を上り始めた。今度は俺もその横に並んだ。
「ねえ、キョン。あんたさ、怖いものってある?」
並んで階段を上っていると、不意にハルヒがそんな事を言ってきた。
「私は、殆ど無いわ。幽霊なんて、全然怖くないし、むしろ友達になりたいぐらいよ。あ、悪い奴だったら、もちろんその場で成仏させるわ」
いつもどおりの強気な笑顔を、俺に向けてくる。暗がりの中でも、不思議とはっきり見える笑顔だった。
「だから、大丈夫よ。私に任せときなさい」
……どうやら、よっぽど俺が怖がっていると思っているみたいだな。まあ、実際ちょっと怖いのだが。
かなり恥ずかしい気もするが、こいつがこんな他人を気遣う発言をするのは珍しい事なので、俺は特に何も言わなかった。
しかし、怖いもの、ね。
俺には、結構たくさん有るな。
テストも怖いし、成績表を見せた後の母親も怖いし、ハルヒが運んでくるわけのわからないトラブルなんて最悪に怖い。
もちろん、幽霊なんてのも、進んで会いたいと思うほど親しみを感じちゃいないしな。
だけど、一番怖いのは……
鈍い灰色が瞼の裏で煌いた。
視界の隅で、長い髪の女が、俺たちをじっと見つめている。
俺は、階段に挟まれた廊下の暗がりの中で、思わず足を止めていた。
「……キョン?なにやってんの?」
少し上の段から、ハルヒが俺に声をかけてくる。
「……今、そこに、誰か、いなかったか?」
「はあ?」
ハルヒは俺の横まで下りてくると、懐中電灯で辺りを照らす。
誰もいない。当然だ。
「何よ、誰もいないじゃないの……ちょっと、キョン!しっかりしてよ!」
「あ、ああ、悪い。そうだな。気のせいだ」
いかんな。どうも俺は、自分が思っている以上に、この状況を怖がっているのかもしれん。谷口と国木田の怪談を聞いたせいか?
すぐ隣で、少し心配そうに俺を見ているハルヒ。
どっちにしろ、こいつにこれ以上格好悪いところみせるのは憚られるな。流されてばかりの俺にも一応、意地というものがあるんでね。
「さあ、もうちょっとで屋上だろ?さっさと済ませるぞ、ハルヒ」
その後、すぐに屋上の入り口に着いた俺たちは、壁に貼り付けられた紙に名前を記入した。
ちなみに、その紙には既に、清廉な筆跡で『古泉』、丸っこい字に滲んだような跡を残す『朝比奈』、という文字が書き込まれていた。
「さ、次は部室ね。旧館に行くわよ」
旧館に行くためには、少し階段を下りた後、渡り廊下まで向かわなくてはならない。
俺とハルヒは、今までゆっくり上ってきた階段を、何となく、少し早足で下りはじめた。
そして、幾つか階段を下りた後、渡り廊下前に向かった筈の俺たちを迎えたのは、いつもの中庭を見渡せるガラス張りの廊下ではなく、真っ白な物言わぬ壁だけだった。
「あら?キョン、渡り廊下って、もう一階下だったっけ?」
「いや、たしか、この階だったと思うんだが……」
しかし、無いものはしょうがない。
俺たちは首をかしげながら、もう一度階段を下りて、渡り廊下に向かったのだが、そこでも俺たちの前には、白い壁が立ちはだかっていた。
階段を、下りても、下りても、下りても、下りても下りても下りても下りても。
俺たちが、渡り廊下に辿り着く事は無かった。
「……なあ、ハルヒ」
うなだれるようにして階段に腰を下ろしたまま、横で同じような格好をしているハルヒに聞いてみる。
「……何よ?」
「ここ、何階だったっけ?」
「私が正しければ、地下11階ね」
説明しよう。我が北高の地表に出ている部分は、実は氷山の一角に過ぎず、その本体は、モグラさんもびっくりの地下巨大施設なのだ!というわけでは勿論無い。
俺たちが屋上に行っている間、果たしてこの校舎にいかなる心境の変化があったのか、有機物の塊である俺には想像することすら出来ない。
しかし、一つだけ言えることは、その構造が、人の心より遥かに複雑で、底知れず、そして捻くれてしまっているという事だ。
まず、幾つか階段を下りると、件の白い壁すらもはや無くなり、同じ様な廊下が果てしなく続いていることに俺たちは気付いた。
もちろん、教室も階段も、一定間隔で配置されている。
地下、えーとたしか、23階ぐらいで、試しに引き返してみたものの、地上12階まで上がったところで、屋上すら無い事に気付いた。
教室の中に入ったりもしたが、扉の向こうは完全にランダムで、廊下が直角に続いているか、どこかの普通の教室に繋がっているかのどちらかだ。
ちなみに、教室のもう一方の扉を開けたら、平行だったはずの廊下が、直角に続いていたりと、どこかの騙し絵も真っ青な構造である。
最初、「きっと異空間に迷い込んだのよ!」と目を輝かせていたハルヒも、この頭のおかしな芸術家の作品のような校舎の構造を知るにつれ、着々とその意気を下げていき、今では俺と同じぐらいのローテンションだ。
「ねえ、キョン。見てよ」
顔を上げると、いつの間にかハルヒが、廊下の窓から身を乗り出して、懐中電灯で外を照らし出している。
その姿勢、電車ではしゃぐ子供みたいだぞ、と思いながら、俺もその後ろから外を覗き込んだ。
上を見上げると、星も雲も月も無い。というか、1メートル先も見えない。
下を見ても、勿論地面は無く、暗闇が底を覆っている。前を見ても以下同文だ。
まるで、深海に沈没していく途中の巨大な船に乗っている気分だった。俺たちの心情的にも、大体そんな感じだしな。
「やっぱり、いくら下っても、地面には着かないみたいね」
ハルヒは身軽に廊下に着地すると、腕を組んで何事か考えはじめる。
「ああ。そうみたいだな」
俺は、何事か悩んでいるハルヒを見て、そう一人ごちた。
この空間。俺は、おそらくハルヒが作り出したものだと考えていた。
だってそうだろう?終わらない八月があるんなら、終わらない廊下があったって別に不思議でもなんでも無い。
ただ、どうしてこんな事をするのか。それがまるで見当もつかない。いや、こいつの考える事がいつだって見当外れだって事はもう十分過ぎるぐらい知ってるさ。
だが、こいつがこういう事をしでかす時は、大抵何らかの不満を抱いている筈なんだが、最近そういった様子も無かったように思う。
それに、もう一つ気になることがあった。それは、ハルヒが段々と不安そうな顔をするようになってきた事だ。
以前のこいつは、逆だった。最初不安そうにしていたが、あの巨人が出現する辺りで、顔を輝かせ始め、玩具を与えられた子供のように楽しそうにしていた筈だ。
……ハルヒじゃ、ないのか?
不意に、さっき見た、あの髪の長い女の幻を思い出した。まさか、あいつが?
「先に言っておくけど、私じゃないわよ」
数メートル先の暗闇が、いつの間にか人の形を作り出している。
「……朝倉、涼子?」
呆然とする俺の代わりに、ハルヒが間の抜けた声をあげた。
「久しぶりね。涼宮さんとは、仲良くやれてるみたいじゃない。涼宮さんも、お久しぶり」
柔らかい笑顔と、上品な仕草。朝倉は、あの日、俺の目の前で転校した時のままの姿で、そこに存在していた。
「あ、あんた、何でこんな所にいるの?」
気付けば、ハルヒが朝倉との距離を詰めようと足を動かしている。
「ハルヒ!」
俺は二人の間に無理矢理身体を割り込ませる。ハルヒが不満そうな声をあげるが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
「うわー。羨ましいな、涼宮さん。愛しの彼に、身体を張って守ってもらえるなんて」
「黙れ。どうして、お前が、こんな所にいるんだ」
あの時、たしかに朝倉は、長門によって消滅させられた筈だ。やはり、長門の親玉が、何かしでかそうとしているのか?
「もう。そんな怖い顔しないでよ。さっきも言ったでしょう?あなた達を閉じ込めたのは、私、というか、私たちの意志ではないわ」
朝倉は、不満そうに眉根を寄せている。その顔は、遅刻してきた生徒を叱る、委員長のそれだった。
しかしすぐに一転して、今度は花の咲いたような笑顔で笑いかけてくる。
「でも、同時に、私の遺志を果たす絶好の機会でもあるの」
「あんた達、さっきから何の話してるのよ!?」
「……どういう意味だ?」
俺は背中から聞こえてくるハルヒの声を無視して、朝倉に問いかける。
「そうね。これから次の幕が始まるから、あなたには知っておいたもらった方がいいわよね」
朝倉は一人で頷くと、俺に向かって、物覚えの悪い生徒に根気よく教える教師のような仕草をしながら、喋りだした。
「まず、この空間を作り出したのは、間違いなく涼宮さんよ。空間を環状に繋げて作られたこの校舎は、出口も入り口も無いの。勿論、行き止まりも無いわ」
「どうして、ハルヒがそんな物を作ったりするんだ」
「もう、話はちゃんと最後まで聞いて。いい、この空間は、言わば逃げるためのフィールド。だから、終わりも無いし、始まりも無い」
逃げるため、だと?
「そう。あなた達、肝試ししているんでしょ?ほら、よくあるじゃない。怖ーい洋館に閉じ込められた男女が、そこにいる怖い怪物に、追いかけられるの」
朝倉は、口に手を当てて、おかしそうに笑っている。
「そして、そこから脱出する途中、二人には愛が芽生えるの。ふふ、今時流行らないかしらね?」
「……さっぱり意味が分からんぞ。要するに、何が言いたいんだ」
「もう、鈍いわね」
朝倉は、心底あきれたような顔で俺を見つめてくる。大きなお世話だ。
「いい。これは涼宮さんが監督の、そうね、ホラー映画よ。夜の学校に迷い込んだ主人公とヒロインが、怖ーい幽霊に追いかけられるの」
いつの間にか、息のかかる距離に、朝倉の顔がある。動くきっかけを、完全に見失ってしまった。
「主人公はあなた、ヒロインは涼宮さん、そして、とっても怖い幽霊は」
わたし。
気付いた時には、朝倉は俺の目の前から消えていた。
「……っ!」
「ハルヒ!?」
くぐもった様な悲鳴を聞いて後ろを向くと、ハルヒが左足を押さえてうずくまっている。
その先の廊下には、いつの間にか朝倉が立っている。右の手に、いつか見た銀色のナイフを持って。
「お前!」
ナイフの切っ先が赤く濡れているのに気付いた俺は、思わず朝倉に飛び掛っていた。
しかし朝倉は、落ち着き払った仕草で、ナイフを俺の顔の前に突きつけてくる。
それを目にした俺の身体は、反射的に一歩後ろに下がってしまっていた。
「落ち着いて。ほら、これで涼宮さんの傷口を押さえてあげて。大丈夫よ、何か細工がしてあるなんてことは、誓ってないから」
朝倉は、ポケットから真っ白なハンカチを出して、床にそっと投げ落とすと、そのまま5歩後ろに下がった。
俺はそれを見て、完全に混乱していた。何なんだよ、この状況は!こいつ、何を考えているんだ?
「早くしないと。涼宮さん、とっても苦しそうよ」
後ろを向くと、ハルヒは呆然とした様子で、血まみれの足を見詰めている。
くそ、考えている場合じゃない!俺は床に落ちたハンカチを拾い上げると、慌ててハルヒに駆け寄った。
「ハルヒ、少し触るぞ」
俺は妹に持たされたポケットティッシュを取り出して、ハルヒの足の血を拭ってやる。ハルヒは声をあげずに、顔を歪めていた。少し、我慢してくれよ。
「ごめんなさい。でも、知っておいて欲しかったの。確かにこの劇は涼宮さんが監督だけど、同時に登場人物でもあるのよ」
左足首から腿にかけて、細長い傷口がぱっくりと開いている。俺は急いでそこにハンカチを巻きつけた。
「本当なら、普通の幽霊か怪物か何かが、あなた達を脅かすだけの脚本だったの」
白いハンカチは、すぐにうっすらと血の跡を浮かび上がらせる。これじゃ、歩くのはしばらく無理だ。
「でも、あなたは涼宮さんに怖いものを聞かれて、私を想像してしまった」
さっきから耳障りな声をあげ続ける朝倉を、俺は睨みつけた。
「だから、私が発生したの。悪い幽霊の役でね。驚いたわ。だって、統合思念体と繋がっていないとは言え、完全に私なんだもの」
「うるさいぞ!少し黙ったらどうだ!」
「でも、安心して。力の殆どは、この空間を維持するために消費してしまっているから、今は普通の女子高生と、大して変わらないわ」
俺を無視して、朝倉は続ける。特に親しいクラスメートにでも向けるような笑顔で。
「だって、折角のチャンスなのに、この空間を消されちゃったら、私も一緒に消えちゃうからね。そんなのって、ちょっと悔しいじゃない?」
ハルヒは、右手で懐中電灯を握り締め、左手で足首を押さえたまま、意味が分からないといった顔で、朝倉を見つめる。
「でも、私も涼宮さんの作ったルールには逆らえない。彷徨う二人の演目の次は、追われる二人の演目でなくてはならないの」
今ここで済ます事もできるのにな、と残念そうな顔をする朝倉。
「涼宮さんが設定した、ここから出る方法は二つ。私から夜明けまで逃げ切るか、それとも、私をやっつけるか」
朝倉は両手を広げる。まるで、カーテンコールに応える女優のような仕草だ。
「さあ、今から百数えるから、その間にあなたは、涼宮さんを連れて逃げなさい。ハッピーエンドになるといいわね」
朝倉は笑顔のまま、間延びした声で、一から数を数え始めた。
「……あんた、一体なんのつもり?」
ようやく目が覚めたような顔で、ハルヒが声をあげる。しかし、朝倉はそれには答えず、代わりに9という数字を返してきた。
俺は、そんな朝倉を睨みつけたまま、ハルヒの両膝と背中に手を回し、手早く抱き上げる。結構重いな。
「ちょ、ちょっと、キョン!何すんのよ!下ろしなさいって!」
朝倉の話を信じるか信じないかは別としても、とにかくこいつの前にハルヒを置いておくのはまずいのは確かだ。
ならば、朝倉の言うとおり
「逃げるぞ、ハルヒ」
俺は何事か喚くハルヒを無視して、手近にあった教室の扉を足で開ける。もう見慣れてしまった廊下が、果てしなく続いていた。
その中を、少しも躊躇することなく、真っ直ぐに駆け抜ける。
朝倉の声は、もう聞こえなくなっていた。
そうして、今は、ハルヒを背中に背負い直し、暗闇の支配する廊下を歩いている。
俺の首に回されたハルヒの手首に目をやると、腕時計の針は、午前1時を指していた。
これだけ逃げ回って、まだ1時かよ。夜明けまであと4時間近くあるぞ。
俺の足は、もう走る事も出来ず、前に進むのがやっとといった有様だ。こんな事なら、運動部にでも入ってれば良かったかもな。
「ねえ、キョン、あんたかなり顔色やばいわよ。いい加減休んだ方がいいわ」
ハルヒの心配そうな声が耳元で聞こえてくる。これでこの台詞は6回目だな。
でもたしかに、そろそろ休まないと、完全に潰れてしまいそうなのも事実だ。
俺はハルヒが背中から下りたのを確認すると、そのまま床に突っ伏した。
ああ、冷えた床が最高に気持ちいい。できることなら、もう二度と起き上がりたくない気分だね。
「……キョン」
俺は床を転がり仰向けになって、扉に寄りかかって座り込んでいるハルヒを視界に捉える。
「あんた、一人で逃げた方がいいわよ」
ハルヒは、真剣そのものといった目で俺を見つめてくる。だから、そんな目で見たって、何もやらんって言ってるだろ。
「朝倉に捕まったら、やばいんでしょう?このままじゃ、時間の問題よ」
たしかにやばいな。長門なんて、もう口に出せないぐらい酷い事になってたしな。
「私なら一人でなんとかできるから、あんたは一人でさっさと逃げなさい」
何だよ、自分が犠牲になって、俺を助けるってのか?そんなんだから、自意識過剰なヒロインは痛い子に見えるんだぜ。
「別に、そんなんじゃないわ。団長が、団員の足手まといになるなんて、我慢ならないだけよ」
俺は、さらに何か言おうとしたハルヒの頬を、左手で掴んで思いっきり引っ張った。
「ひたたた!ひったいはね!はなひなはいよ!」
「お前がわけのわからんことを言うからだ」
できることなら、俺だって一人で逃げ出したいところだが、あいにく俺は、他人を見捨てて自分だけ逃げるような主人公の出てくる映画が、果物の汁がおかずに染みた弁当の次に嫌いなんだ。
しかし、実際のところ、このままではすぐに朝倉に追いつかれそうだな。
さて、どうする?やり合ってみるか?案外俺がやられれば、こんな三流映画はあっけなく幕を閉じるかもしれんしな。
……いや、何のために、朝倉がハルヒを傷つけたと思ってるんだ。
俺がやられたら、その後ハルヒもかなり悲惨な目に遭わされる可能性があるって事を、見せ付けるために決まってる。そこまで甘くない、て事か。
長門に助けてもらおうにも、携帯は通じないし、そもそも閉鎖空間だしな。
古泉はどうだろう。今の時点で助けに来ないってことは、あいつでもこの空間に入れないのかもしれん。
朝比奈さんは……いつもかわいいな。それで十分だ。
「キョン、ちょっと来て」
俺が考え込んでいると、ハルヒが今まで寄りかかっていた扉を開けて、その中に首を突っ込んでいた。
「何だよ。イルカがショーでもやってるのか?」
俺もハルヒの上から扉の中を覗き込む。何の変哲もない、ただの教室だ。もちろんイルカもいない。
……いや、ここは、ひょっとして
「俺たちの、教室だな」
そう、そこは、今となっては懐かしい感じさえする、ほんの数時間前まで平和に過ごしていた、俺たちのクラスだった。
ハルヒは、窓際の一番後ろにある自分の席と、その後ろにある掃除用具入れを見つめているようだ。
「ねえ、キョン」
ハルヒは、唇の端を歪めて、俺の方を見上げてくる。なんだか、嫌な予感がする。
最近気付いたんだが、俺の嫌な予感は、的中率がかなり高い。履歴書の特技の欄に書けるぐらいだぜ。
「私、いいアイディア思いついちゃったわ」
まさに、俺の嫌な予感は的中したと言っていいだろう。周りは真っ暗で、迂闊に身体を動かす事すら出来ない。
というか、こんな無茶な作戦、成功するのか?
「来たわよ、キョン」
ハルヒが小声で俺に伝えてくる。どうやら、朝倉が教室の前まで辿り着いたらしい。ああ、もう引くに引けなくなってしまった。
それにしても朝倉め、何が普通の女子高生だ。あんだけ出鱈目に走ったのに、正確に追いかけてくるなんて、どう考えても裏技を使っているとしか思えん。
俺が心の中で毒づいていると、小さく朝倉の声が聞こえてきた。
「あら、涼宮さん、お一人なの?彼は?」
「あいつなら、一人で逃がしたわ。足手まといだから」
ハルヒは、自分の席に座っている……はずだ。というか、いらん事言いすぎだぞ、ハルヒ。
「……そう。かわいそうな涼宮さん。愛しの彼に逃げられるなんてね」
さもおかしそうに朝倉は言う。声がさっきよりもはっきりと聞こえてきた。どうやら窓際に近づいてきたようだ。
「うるさいわね。大体、あんたには聞きたい事が山ほどあるのよ。何で急に転校したの?何でここにいるわけ?でもって、何で私の足を切りつけてきたのよ!滅茶苦茶痛かったわ!」
「うーん、そうね。理由を言ってもいいけど、どうせ言ってもあなたは理解しようとしないだろうから、やっぱり言わない事にするわ」
からかう様な調子で、朝倉は答える。さっきより近いぞ。大丈夫なんだろうな!ハルヒ!
「それより」
朝倉は続ける。いよいよ声は近い。
「彼があなたを置いて逃げていった、ていうの、嘘よね?」
来た。
「……何でそう思うのよ?」
「そうじゃないと、私が困るの。あなたの目の前で彼を殺して、情報爆発を観測するのが、幽霊である私の遺志なんだから。それに」
まったく、俺にとっては、とんでもなく迷惑な悪霊だ。
「何だかさっきから、この掃除用具入れ、気にしてるみたいね?」
鼓動が早まる、心臓が口から飛び出そうだ。頼むぞ、ハルヒ!
「かわいい悪あがきね。涼宮さんが私を引きつけて、掃除用具入れに潜んだ彼が、私に襲い掛かる、ってとこ?」
「……くっ!」
図星を突かれたハルヒは、窓を開けると、一か八か暗闇の中に飛び込もうとする。薄情な奴だなおい。
「やめた方がいいわよ。そこから落ちたら、下手したら永遠に落ち続けることになるから」
それを聞いたハルヒは、思い止まったように窓枠から手を離し、窓を開け放ったままで、床に座り込む。
「偉いわね。じゃあ、とりあえず、彼を掃除用具入れの中から出してあげましょうか」
ああ、是非そうしてくれ。こんな所にいるのは、もう真っ平ごめんなんだ。
ところで、うちの掃除用具入れは、向かって左側に取っ手があり、右側に開くようになっている。
そうなると、朝倉はナイフを左手に持ち替え、取っ手を右手で開けようとするはず、とハルヒは言っていた。
右側に開くって事は、掃除用具入れを開けた時、当然右側の視界は遮られるはずでしょ、ともハルヒは言っていた。
まあ、それだけなんだけどな。
俺は、ゆっくりと手を上に上げて、窓枠を掴む。
「……え?」
まるで掃除用具入れに誰も入っていなかったような朝倉の間の抜けた声を合図に、俺は開かれたままの窓枠をしっかりと掴み、今まで乗っていた、窓の下に出っ張ったひさしを蹴り上げると、懸垂の要領で一気に教室の中へ身体を押し上げた。
そして、一度窓枠に両足で着地すると、そのままの勢いで、掃除用具入れを開けた姿勢で呆然としている朝倉に飛び掛る。
「くっ!」
朝倉は俺に気付き、左手のナイフを振るおうとするが、開けっ放しの掃除用具入れに阻まれて、その刃が俺に届く事は無い。
果たして、俺の身体は間の抜けた格好で朝倉にぶち当たり、高1男子の体重を乗せたまま、朝倉は背中をしたたかに床に打ち付けた。
朝倉の顔が一瞬苦しそうに歪む。その拍子に、ナイフは左手から離れていた。
俺は咄嗟にそれを引っつかむと、そのまま窓の向こうに放り投げる。銀色は、すぐに闇に溶けた。
「……びっくりした。いつからアクション映画に路線変更したのかしら」
朝倉は、本当にびっくりしたような顔で、馬乗りになった俺を見上げてくる。
「知らん。ハルヒに聞いてくれ」
あいつの無茶なアイディアのせいで、俺は窓の外で、いつ落ちるかも分からんような頼りない足場だけを頼りに、身を屈めることになったんだからな。
「よくやったわ、キョン!さあ、朝倉涼子!さっきの質問に、きりきり答えてもらうわよ!」
ハルヒはまさに鬼の首を獲ったかのような表情で、片足立ちで自分の机に寄りかかったまま、朝倉に指を突きつける。だから、行儀が悪いっての。
「ダメよ。まだ私、やられたわけじゃないもの」
朝倉は、俺の身体の下で楽しそうに笑っている。
「おい。この状況を見ろ。どう考えても、お前の負けだ。さっさとここから俺たちを出せ」
「ダーメ。だって、まだ私は生きてるし、夜明けにもなってないわ。さっきのナイフで、私を刺せばよかったのにね」
あんなもん、持つのも使うのもごめんだね。
「それとも、このままの姿勢で、夜明けまで私の上に乗っているの?それでもいいけど、何だか涼宮さんに嫉妬されそうで怖いわ」
思わず朝倉の顔を見つめた。襟元が乱れた制服に、少し荒い息。長い髪が口元にかかっていて、いつに無くセクシーに見える。
一方俺の態勢といえば、そんな朝倉に顔を近づけ、両手で腕を掴んだまま、朝倉の腰の上に、自分の腰を下ろしている。
これはたしかに、第三者に見られたら、即警察に通報されるよな。うん。納得だ。
「……ちょっと、あんた何この状況でデレデレしてんのよ」
ハルヒの冷たい声が降ってくる。デレデレなんてしてないぞ。ただ、現状を客観的に分析していただけだ。
そんな言い訳を考えながらハルヒの方に首を動かそうとすると、不意に頬の辺りに生ぬるい感触が走る。
「なっ……」
ハルヒは、絶句したように俺と朝倉を見つめている。顔を戻すと、朝倉は、悪戯が成功した少女のような顔で舌を出していた。
……頬を、舐められたのか?
俺は思わず、朝倉の腕から右手を離して、自分の頬に触れる。右の頬が、かすかに湿っていた。
「あ、あんた、なにしてんのよ!」
「だって、この態勢だし、何だか落ち着かないんだもの。それにもう、そういう事をするには、いい時間でしょ?」
呆然とする俺の代わりに大声をあげたハルヒに対して、朝倉は濡れたような瞳を俺に向けたままで答える。
「ねえ、怖ーい涼宮さんは、足を怪我して動けないわ。あなたも偶には、浮気ぐらいしてもいいんじゃない?」
「ちょ、ちょっと!ねえ!聞いてんの!」
朝倉は僅かに腰を揺らす。俺の頭の中は、脳髄に蜂蜜が流し込まれたように、鈍く混乱していた。
朝倉はそのまま目を閉じて、俺の顔に唇を寄せてくる。長い睫毛に、整った白い顔。唇は、紅を差したように艶やかだ。
俺はいつの間にか、瞼を閉じていた。
ああ、夜の校舎で、唇を合わせるなんて、これで、何回目だったっけ?
「キョン!」
って、アホか俺は!目の前に迫った朝倉の顔から、上半身ごと顔を離す。
この状況で、何てこと考えてんだ、俺は。よっぽど欲求不満なのか?いかれてるとしか思えん。
顔を振って、鈍く残る甘ったるい匂いを脳から追い出していると、朝倉は艶のある顔から、つまらなそうな顔になって、
「あーあ、残念」
とだけ言うと、右手に現れたナイフを握り込み、俺の脇腹に突き立てた。
「え?」
そんな間の抜けた声をあげたのは、果たして俺だったのかハルヒだったのか。
気付けば俺の身体からはナイフの柄が生えており、一瞬体中の神経が失せたように脱力すると、そのまま朝倉の上から崩れ落ちていた。
脇腹に入り込んだ冷たさが、ずるりと抜ける。変わりに耐え難い熱さが、そこら中の神経を刺激してきた。
痛い。何だこれ。ふざけんな。耐え難い。血が出てるじゃないか。死んじまう。痛い。痛い。痛すぎる。
目の奥がチカチカする。辺りの暗闇が、やけに眩しい。
「キョン!」
誰かの声が聞こえたが、俺の脳はあいにく痛みの信号で一杯で、声が意味を成す前に、霞んで消えた。
「もう。折角涼宮さんの目の前であなたと楽しもうと思ったのに、全然つれないんだもの。がっかりしちゃう」
「……っ!キョン、大丈夫!?」
誰かが俺の傍に駆け寄ってくる。お前は足を怪我してるんだろ?あんまり無理するなよな。
「それに、いくら私が殆ど力を使えないからって、これぐらいの事はできるんだからね」
だんだん頭の中がはっきりしてきたが、その分腹部に感じる痛みも激しくなってくる。
「キョン、キョン、しっかりして!」
俺の真っ赤な腹に手を当ててくるハルヒ。汚いから止めといた方がいいぞ。
その後ろで、銀色のナイフを両手でいじりながら、朝倉が笑っていた。
俺は這いつくばって身体を動かし、朝倉の視線を遮るようにハルヒの横にまわる。
「あら、さすが主人公ね。そんなになってまで、涼宮さんを庇うんだ」
うるさい。こっち側の方が、態勢的に楽なだけだ。
ハルヒは俺が動いたことに気付いた様子も無く、泣きそうな顔で、開いた俺の腹に手を当てている。
「でも、そんな風に無防備な背中を向けられちゃったら、私も刺さないわけにはいかないじゃない」
困った人ね、と、本当に困った風な口調で朝倉は呟いた。
ああ、くそ。痛いし怖いし、なんだかちょっと寒いし。全く散々な肝試しだ。夢なら一刻も早く覚めて欲しいもんだな。
さあ、俺。この後どうするんだ?決まってる。どうしょうもないさ。後は神様にお祈りでもするぐらいだ。
この辺で長門が助けにきてくれれば、最高なんだがな。古泉が来てくれたら、俺はあいつのファンになってやってもいい。
朝比奈さんが来てくれたら、俺はその場でプロポーズするだろう。
「じゃあ、いくわね。さあ、あなたが死んだら、涼宮さんはどんな物を見せてくれるのかしら」
朝倉の楽しそうな声がする。殺されるのか?俺が?嘘だろ?本当さ。
畜生。怖い。泣き出してしまいそうだ。身体が震える。ああ、でも、この痛みから解放されるなら、悪くないのかもしれない。
そんな諸々の感情も、血と一緒にゆっくりと俺の身体から流れ出ていくようだった。後に残るのは、濁った眠気だけだ。
俺の腹を必死で押さえるハルヒの手に目を向けた。健康的に白かった手が、もう手首の辺りまで、赤黒く染まってしまっている。
俺は何となく、ハルヒの手に自分の手を重ねてみる。少しだけ、恐怖が和らいだ気がした。
「さようなら」
朝倉は言う。ナイフが迫る。ハルヒが何かを叫んだ気がしたが、俺には聞き取る事が出来なかった。
何故ならば、世界が終わるような轟音を立てて、教室の窓を吹き飛ばしながら生えてきた巨大な腕が、朝倉の身体を掴んでいたからだ。
「え?」
今度の声は、俺たち三人の口から出たものだった。
教室は殆ど全壊していた。天井も床も壁も、俺たちのいる壁際以外は根こそぎ吹き飛んでおり、跡にはぽっかりとした暗闇が口を開けている。
痛む腹も忘れて、思わず振り向いた俺の目に飛び込んできたのは、そんな光景と、そして、その真ん中で巨大な手に掴まれる朝倉の呆然とした顔だけだった。
「……夢に出てきた、巨人?」
ハルヒが呟く。外の暗闇がそのまま物質化したような闇色の巨大な腕は、確かに見覚えのあるものだ。
「神人……」
「神人?これが?」
俺の声を聞いた朝倉が、自分を掴む暗闇に目を向けた。
「……そっか、そうよね。涼宮さんは、この世界では神様だもの。劇が気に入らないのなら、舞台ごと壊す事もできるわけね」
朝倉は、困ったような顔のまま、しょうがないか、といった様子でため息をつき、俺たちに笑顔を向けてきた。
「おめでとう。めでたくハッピーエンドね。かなり力技だけど、こんなんじゃ、さすがにこれ以上は続けられないわ」
朝倉の身体は、巨大な腕ごと、ゆっくりと暗闇に同化しようとしていた。
それと共に、僅かに残っていた教室の残骸も、端の方から砂が崩れるように消えていく。
「朝倉、あんた、か……」
何か声をあげようとしたハルヒの声が、テレビのボリュームを絞るように、ゆっくりと小さくなっていく。
俺が慌てて首を戻すと、今まで目の前にいた筈のハルヒが、影も形もなくなっていた。
「ハルヒ!?」
「慌てなくても大丈夫。元の世界に戻っただけよ」
思わず立ち上がろうとして、腹の痛みに顔をしかめた俺に、朝倉が優しくいたわるような声をかけてくる。
「ああ、傷のことなら大丈夫よ。ここであった事は、始めから無かった事。言ったでしょう?ここは環状閉鎖空間。始まりも終わりもないんだから、最初から何も無いのと同じ」
朝倉の姿は、いよいよ暗闇に沈んでいく。教室も、俺が座り込んでいるところ意外は、殆ど消えてなくなっていた。
「あーあ、今度こそ上手くいくと思ったんだけどな」
顔の半分を暗闇に埋めたまま、朝倉は心底残念そうな声をあげる。
「まあ、いいわ。何だかとっても楽しかったから。次にこんな機会が有れば、是非また呼んで頂戴ね」
俺の身体も、意識を道連れに、暗闇の中に沈んでいく。もう痛みも無い。
「これからも、涼宮さんと、お幸せに」
からかうような朝倉の声は、遠い。
くそ、ふざけんな。二度も人様をこれだけの目に遭わせておいて、そんわけのわからん言葉だけでお別れとは、誠意のかけらも感じられん。
俺は、閉じそうになる瞼を僅かに残った気力で押し上げ、輪郭だけしか残っていない朝倉を睨みつけた。
「おい、委員長」
最後にこれだけは、言っておかなくてはならない。
「クラスのみんな、お前が急に転校したのを聞いて、寂しがってたぞ」
男子連中は特にな。
俺は、それだけ言うと、いい加減このアホらしい夢から目を覚ますために、瞼を閉じることにした。
「……ョン、ちょっと、キョン!いい加減起きなさい!」
俺は、耳元で響く怒鳴り声に辟易しながら、瞼を開けた。
背中には、冷たい床の感触。視界には、俺を覗き込んでいるハルヒだけでなく、長門と朝比奈さん、それに古泉の顔が見える。
……あれ?何で俺、こんなところで寝てるんだ?
「まったく、ビックリしましたよ。どうもお二人の帰りが遅いと思って探しに来てみたら、あなたも涼宮さんも、こんな所で眠り込んでいるなんて」
古泉のからかうような声を聞き流しながら、身体を起こした。どうやら、新館側の渡り廊下前のようだ。
「おかしいのよね。屋上の紙に名前を書いた所までは覚えてるんだけど、何でこんな所で……」
ハルヒの言うとおりだ。なんで俺たちがこんな所で寝てるんだ?そんなに眠かったっけ?ちょっと早めの更年期障害か何かか?
ふと腕時計に目をやると、俺たちが校舎に入ってから、20分と経っていなかった。
あれ?おかしいな、もっと長い間、夢を見ていたような気がするんだが。
「あ、あの、お二人も見つかった事ですし、もう外に出ませんかぁ?」
俺とハルヒが首を捻っていると、朝比奈さんが泣きそうな声をあげた。どうやら、もう一秒も夜の校舎になんかいたくないらしい。
怯えた様子で目を閉じている朝比奈さんの健気なお願いを無碍に断るわけにもいかず、俺たちは一旦校舎の外に出ることにした。
玄関に向かう途中、いつの間にか俺の横に長門がやってきて、こう言った。
「あなたと涼宮ハルヒの反応は、この世界から零コンマ零零六秒消失していた」
「ぜろ……何だって?」
早口言葉か?という俺の疑問に、長門は前を向いて歩きながら答える。
「零コンマ零零六秒。その間、特殊な閉鎖空間が発生していたことを、古泉一樹が確認している」
は?なんだそりゃ?
「詳細は不明。一瞬で正常に戻っていたので、確認することは不可能だった」
俺は、腕を組んだまま早足で前を歩くハルヒに目を向けた。
まさか、また知らん間に、ハルヒが何かしでかしたんじゃないだろうな?
「何らかの異常を危惧した我々は、急いであなた達の元に向かい、あなたと涼宮ハルヒが睡眠状態に陥っているのを発見した」
俺を見ないまま、長門は続ける。
「あなた達には、多少記憶の混乱が見られる。何か、思い当たる事は」
……さっぱりわからん。いつのまにか、俺とハルヒは廊下で寝ていた、らしい。ハルヒも言っていたように、屋上の紙に名前を書いた所までは覚えている。
それから、旧館に向かおうとして、階段を下りて……いや、下りなかったのか?どうもその辺から記憶が曖昧だ。
考えれば考えるほど、頭の中に霧が大量発生してくる気分だ。このまま運転すれば間違いなく事故るだろう、という危機感から、俺は思い出す事を放棄した。
「……そういえば、何か夢を見ていた気がするな」
「夢……」
長門は夢を見るのだろうか、というピントのずれた疑問を抱きつつ、俺は言った。
「どんな夢かは覚えてないけど、まあ、アホらしい夢だったことは覚えてる」
そう。思い出すのも馬鹿らしいぐらい、くだらない夢だ。
はあ、それにしても、何だかやたらと疲れたな。そこまで運動したわけでもないのに、体中に汗がまとわりついているような気さえする。
さっさと家に帰って、ゆっくり風呂にでも入って寝るとしよう。
こんなフォークも刺さらないような固い床じゃなくて、柔らかい自分のベッドで眠れば、もっといい夢が、例えば朝比奈さんが出てくるような素敵な夢が見られるはずさ。
「ダメ」
「は?」
横を見ると、長門が、暗闇とは別の意味で引き込まれそうな暗い色の瞳を、俺の顔に向けている。
「次は、私と、あなたの番」
どうやら、俺たちの肝試しは、もう少しだけ続くようだ。
誰かに呼び止められたような気がして、後ろを振り返った。
今まで皆で歩いてきた廊下の奥は、とうに暗闇に飲まれ、数メートル先もよく見えない。
「ちょっと、キョン!なにやってんの!さっさと来なさい!」
いつの間に引き返してきたのか、俺の目の前にはハルヒが立っていた。
他の三人は、少し先で俺たちの事をじっと待っている。
「何?どうかしたの?」
ハルヒはどこか心配そうに、俺の顔を見つめてくる。
「いや」
蒸し暑い校舎の中。月の明かりも届かない。
「ただの、気のせいさ」
視界の隅で、長い髪の女が、俺たちをじっと見つめていた。
こんなじかんにGJ! ところで
>朝比奈さんは……いつもかわいいな。それで十分だ。
これはつまりキョン的にみくるは役にtくぁwせdrftgyふじこlp;
おつかれさま。
文章の上手さも原作文体への似せ具合もアイデアも、非の打ち所がないくらい面白かった。
朝倉をこういう形で使うとは、マシュマロマンかよ(W
ただ、15はわかりにくいんで、14で上手く締めてもよかったかも。
谷川仕事しろw
いやーGJ!!
すっっっごい面白かったよ〜。
朝倉にキスされそうになった時はすわエロシーンかとドキドキしたが、まあこんなのもアリだw
これから再読するよーw
面白かったです!全然長く感じなかったよ
293 :
nac:2006/07/03(月) 06:23:37 ID:GVnUyFLg
久しく投下
偽名
さて、諸君にお聞きしたい、貴方は今まで「偽名」を使ったことはありますか?と。
まあ、よくファミレスなんかで、悪戯気分で、総理大臣の名前をお待ちの方の欄に書き込んでしまった、
などという経験は少なからずあるかもしれない。あれ、意外に楽しいんだぞ。
暇な奴はやってみるといい。責任は取らんが。
さて余談はこのくらいで、俺の事を話そう。俺は……ある。
「ジョン・スミス」という名、三年前の涼宮ハルヒに名乗った名だ。
あとは消失した世界でも使わせて貰った、俺とハルヒを結ぶ、なんて書くと恥ずかしいが、正直役に立った。
が、こんな事もあったんだ。
季節は秋、秋という季節は「〜〜の秋」と言われるように、日本人に好かれている季節だ。
といっても、他の季節が嫌われているわけじゃない。
芸術やスポーツは年中出来るし、読書も長門じゃないがいつでも出来る。
ま、恐らくだが「色んなことが出来る時期ですよ」という意味合いが強いんだろうな。
さてここはハルヒのいない教室、俺と谷口、国木田といういつも通りの三人で無意味に話していた時のことだった。
「そういえばさ、このまえ長門さんを見たよ」
「なに!?どこでだ!」
国木田がそう言って谷口がすかさず反応した。
「図書館」
なるほどね、あいつが人目につく所で行きそうなの、そこくらいだしな。
「お前はなんで図書館なんかに?」
谷口の質問が続く。
「実は最近推理小説にはまっていて、僕も借りに行ったんだ」
「何か話したのか?」
「ううん、北高の制服姿が見えたから、振り返ったら長門さんだっただけ、話してないよ」
「そうか、長門さんは図書館で逢えるのか」
「やめとけ、あいつは読書中に邪魔されると、酷いぞ」
「う、キョンの言葉には物凄く説得力があるからな、それに、図書館なんて俺の柄じゃないし」
よかった、悪い虫は去った。長門よ、これからも安心して図書館に行ってくれ。
「キョンは?読書はするほう?」
国木田に訊かれる。一応同意しておこう。
「まあな、長門ほどじゃないが、俺も最近は漫画以外の本も読むぞ」
専ら、長門に「これ」と勧められて読むのだがな。
この前の、なんだっけ、かなり読み応えのあるSF小説は面白かったぞ。
「そうそう。古い本でも面白いの一杯あるし、えっと5年位前の本で……」
国木田は、俺の同意に気をよくして、オススメ本を思い出そうとしていた。
「……っていう本。きっとキョンは気に入ると思うな」
「そうなのか?ちなみに作者は誰なんだ?」
このときの俺の質問に誰がけちをつけられよう。至極当然で会話の流れにも合っている。
しかしここでの国木田の出した回答に対しては、流石に驚いた。
「確か、作者は、ジョン・スミスって人だったと思うよ」
……
まじかよ。いくらなんでも、同姓同名だと!?
いや、待て。慌てるな、俺。「ジョン・スミス」なんてありふれた名前じゃないか。
ジョン氏だってスミス氏だって、欧米ではありふれている、はずだ。
しかし、俺がとっさに使わせてもらった奴の書いた本か、気になるな。
長門と図書館での暇つぶしのお供にでもなればいいかなと、そのときは思った。
放課後、当然のように部室でまったりとした時を過ごす、SOS団の4人。
あぁ、平和だ。しかしこの束の間のへいw
「おっんまたせぇぇ!!!」
はぁ、これがここでのいつも通りか、
「今度は何だ」
「ん〜〜〜ん、探検しましょ!」
唐突だな、じゃあ週末の定時パトロールは無しか。
「いえ!今から行くの!」
「今からだと!」
「そ!で場所なんだけど」
ハルヒはびしっと椅子に座っている読書少女を指して。
「有希」
読みかけの本を閉じ、顔を上げる長門
「なに」
「貴方、いつも本読んでるわよね、なんで?」
これはまたえらい質問だ。長門がなぜ本を読むのか。俺も知りたい。
この万能宇宙人端末な長門がなぜ本を読むのか。事情を知っている俺が気にならないはずは無い。
「……」
しばらく考えた後、長門は2センチほど首をかしげた。自分でも解っていないらしい。
「そうよね、本には不思議な魅力があるもんね。ありがとう有希」
「そう」
「ってことで、今日は図書館に行きます!!」
あの、この思考経路。どうにかしてくれません?無理、そうですか……などと一人脳内漫才を終えて。
「やれやれ」
「いいじゃないですか、読書の秋ですしね」
「あのぉ、お料理の本とか借りれますかぁ?」
「……」
満場一致だな、今日はハルヒの提案に従うしかないな、こりゃ。
いかん訂正。今日「も」だ。
「いい、何か面白い物を見つけたら、すぐに皆に連絡」
図書館で面白いものねぇ、本だらけの空間に本以外で面白いことがあるのか?
「キョン、うるさいわよ。じゃあ一時散開」
気持ち小さめだが、それでもこのひっそりとした空間では大音響がこだました。読書中の方すいません。
「さてと」
長門はいつもの如く、つつぅぅっと夢遊病者な足取りでお目当ての本棚に行き、地に根を生やして読書。
朝比奈さんは「家庭」とジャンルされる、料理裁縫作法などの書籍のコーナーにいて、色々吟味している。
未来には図書館は無いんですか?
「えっと、その、禁則事項すれすれですぅ、キョン君ごめんなさい」
「いえいえ、気にしないでください」
さて説明したくないが古泉は、国木田と同じ推理小説のコーナーに居た。
「涼宮さんに提供する、ネタになればと思いまして」
「それで推理物か」
「ええ、冬の時はあっさり解かれてしまいましたから、リベンジ、ですかね」
何気に真剣な表情を見せる古泉、実はショックだったのか。
「僕ら提供側としても、「しまった!そうだったのか!」という展開も期待しながら楽しみます」
そうか、ま、せいぜい頑張ってくれ。
「すいません、本を探しているんですが……」
ここで俺からアドバイスだ。図書館や本屋で目当ての本を探したい時は、司書を使いなさい。
彼らは本の専門家だし、パソコンで検索すればあっという間だ。文明の力に感謝したい。
「Eの6、Eの6っと、ここだな」
大まかな本の位置を教えて貰った俺は、ほとんど迷うことなくそこについた。
「う〜〜〜ん」
そこには、背伸びしてなんとか最上段の本を掴もうと必死になっている、
涼宮ハルヒが居た。弱気なあいつも可愛いが、これもまた、なんというか。
俺は小さく溜息をはいた後、ハルヒがぎりぎり中指の掛かっている本をひょいと取って。
「ほらよ」
「えっ?」
「読みたかったんだろ。これ」
本を渡すと顔を赤らめて視線を外すハルヒ、まるで着替えを見られた朝比奈さんの反応みたいだ。
「むむぅっぅ」
と唸っている。俺なんか悪い事したのか?
「!!別に!その、あ、……ありがと」
物凄く小さくお礼を言われた。正直悪い気はしない。なんてったってハルヒだからな。
「ねぇ、野球場の話覚えてる?」
「以前、した話か、なんとなく覚えている」
「じゃあ、中学のときの校庭の落書きの事は、知ってる?」
どきっとした、がこいつは「覚えている?」ではなく「知ってる?」と訊いてきた。これは助かる。
つまりこの質問は「私が以前校庭に落書きをした事を聞いたことがあるか?」という風になるな。
だから、俺はこう答えた。
「谷口から、聞いた。夜中の学校に忍び込んで校庭にけったいな絵文字を書いた、ってな」
「そう、そのときにね。出合ったの、あいつと……」
あいつってのは、俺と朝比奈さんだな、間違いなく
「そいつにね、名前は?ってきいたらジョン・スミスって答えたの」
キョンとか本名を言うわけにはいかなかったしな、とっさの偽名って奴さ。
「そいつ、ジョンはあたしが宇宙人はいるかって尋ねたらいるって答えた」
長門を知っていたしな。
「未来人は?って訊いてもいるって、超能力者なんてごろごろいるって言ってくれた
あたしの質問に、嘘を付く様子も馬鹿にする様子も見せずに言い切ったの、ジョンは。
あたしは嬉しかった。自分の考えを認めてくれる存在に、いままで出会った二人の内の一人、それがジョン」
このままだと、なんかまずい展開になりそうなので、話を斜めに切り返してみることにした。
「すると、もう一人は?」
「!!!っっ、教えるわけないでしょ!」
「そうか、残念だな、でだ、どうしてそんな話を俺に?」
「これね、あいつが名乗ったジョン・スミスって人が書いた本なの。あの時の名前は間違いなく偽名。
でもね、あのジョンがこの本に何か影響を受けてその名前を使ったのかもって思うと……」
哀愁の漂う瞳で本を見つめるハルヒ。失礼だが凄く可愛い。
夢みる少女そのものじゃないか。乙女チックなハルヒもなかなかにいいものだ、なんて無粋なことを考えていた。
ずいっ
本を俺に向けてくるハルヒ。
「なんだ?読めってか」
「そうよ、というか読んで欲しいの、あんたに」
「そうかい」
「ちゃんと、感想聞かせなさいよ」
「解ったよ」
「それと汚したら、死刑だから」
「へいへい」
「そろそろ時間ね、さ、キョン、みんなの所に集まりましょ」
てなわけで、なんとかキョン=ジョンという構図はハルヒの中では不成立に出来たわけだ。
しかし適当に使った偽名でこんな事になるとは、もっと慎重になるべきだったか、俺。
そして肝心の本だが、面白かった。やはりプロの作家は違うなと感心させられたもんだ。
え?内容?そうだなじゃあ、ヒントを少しだけ。
一人の少女に振り回される男の子の話だ。
気が向いたら読んでみてくれ。
完
以上。また書いたら投下します
では
>>272 上手いね。
古泉に乙。
>>288 ああ、朝倉幽霊ネタこう使ってくるか。
けっこう面白かった。
>>290 15が無くっちゃ意味がなかろう。
いったいどこを読んでいたのか。作者に謝れ。
>>299 早朝からお疲れさまでした。
背伸びを見られて膨れるハルヒがグーでした
「ジョン・スミス」が「偽名」って意味で映画なんかで使われてるってことを、
原作のキョンは知ってて使ったと思うけど・・
>>301 つっこみどころ多すぎていちいち突っ込んでくと面倒な事になりそうだからスルーしてあげなさい。
見所は読書の理由を問われ首を傾げる長門と、本を取ってもらったハルヒだけだ。それでいいじゃないか。
やっぱ明日過去になった今日の今って奇跡だよな
チープな歌詞だけどね
おまいを信じてるぜ↓
306 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 08:33:20 ID:wuqINVq1
それは私のおいなり(ry
>304
作詞の中の人の狂気を思いながら聞くとぞくぞくしまつよ
>>225 削らないでいいですから。私も書き手で、この題材は凄く好みです。
最後まで読んで評価したい。前も思ったのですけど、どのキャラが好きなんですかね。
>>299 毎回楽しみにしてます。わからないことが一つ。
>一人の少女に振り回される男の子の話だ。
これタイトルなんでしょうか?無知ですいません(´・ω・`)
( ゚д゚)
それはジョン・スミスが登場する本だった。
え? 内容? そうだな。じゃあ、ヒントを少しだけ。
一人の少女が、ジョン・スミスに助けられながら、成長していく話さ。
その少女は、最後にジョン・スミスの正体を知り、そしてジョンに向けて初めてのラブレターを書く。
その結果は……。
気が向いたら読んでみてくれ。
可哀想だからフォロー入れちゃうが、ジョン・スミスと言う名の作家は俺が知ってるだけでも二人は実在している。
航海日誌物だったり戦記物だったりするがね。
要するに、
>>298の話がちょっと穴だらけなもんだからこういう誤解が頻出するのもしょうがないだろうなーというボヤキ。
キョンがジョン・スミスの名前が偽名でよく使われてる
なんて事を知ってたって描写あったっけ?
無かったと思うんだが。
>>313 笹の葉ラプソディを15498回読んでこい。話はそれからだ
エロ無しウザイ
厨学生しかいないのか、ここ
>>313 君の「思う」はアテにならないようだな。
>>315 どんなエロが見たいのかリクエストしてくれ。
ただし、キョンの人格を変えない程度のシチュでよろしく
>>299 いつか誰かが書くとは思ってたけど、まさかそっちで来るとは……。
そもそもジョン・スミスの名を使った=知ってるってことだろw
>>315 エロって書くの死ぬほど難しいよ。
俺的には三点リーダー所とか基本的なところを押さえてほしい
エロ書いたが、真昼間から投稿するのもなんだかなぁと思ってしまう。
エロ書きすぎて飽きたとか思ってしまう俺オッサン。
エロはエロゲ風で行くか官能風で行くか迷うね
どっちもコツみたいなのが必要
>>315 素直に「抜きたいんだよ」って言えばいいのに
>323
蘭光生の文体でよろしく。
>>299 他の人も指摘してるけど
ちょっと読み解きが足りないかもね
ジョン・スミスを匿名の意味としてよく使われると、知ってて使ってるのは明白
あとキョンが素直ってか、ストレートすぎてキョンじゃなくなってる
可愛いだの、悪い気はしないだの使いすぎ
これじゃキョンのいいところがなくなってる
>>299はジョン・スミスが匿名ということをわかった上で
将来のキョンが過去に戻ってSOS団の生活を書き記した本というネタじゃなかったの?
>>303とかもそういう意味で言ってるのだと思ってたのだが
>>296でこの作品のキョンもジョン・スミスがありふれた名前であることは自覚してるし
しかし、現代の生活は過去にとっては未来なのだから
時代によっては出版されたらたくさん売れるだろうな
>>288エンディミオン思い出した
ハルヒ=アエネイア、キョン=エンディミオン
朝倉=名前忘れたけど女戦士、神人=シュライク
キョン、階段から落ちて入院。
鶴屋「古泉!お前というものがいながら、Kの監視も出来なかったのか!」
古泉「申し訳ありません。」
鶴屋「もういい。明日朝一番始末書を提出しなさい。引き続き、Sの監視を。」
古泉「わかりました。」
鶴屋「私はあの未来人のところに行って来る。非常事態だ・・・何するか、わからんしな・・・」
古泉「あの女は泣いてばかりでしたが・・・」
鶴屋「女は泣いているときが一番怖いものなのだよ。それとあの宇宙人には気をつけろ!今回の件で一番怪しいぞ」
古泉「かしこまりました」
鶴屋「みっくる〜!聞っいたよ!」
みくる「うあ〜〜ん!」
鶴屋「だいじょうぶっさ!きっとめがっさめるよ!」
みくる「そうですよね・・・きっとそうですよね!」
鶴屋「そっさ!大丈夫っさ!」
鶴屋「古泉か。あの未来人は何の行動も起こしていない。念のために引き続き監視する。」
>>330 ガクガク((((゚д゚;))))ブルブル
>鶴屋「だいじょうぶっさ!きっとめがっさめるよ!」
ワロタ
>きっとめがっさめるよ!
こんなひどいダジャレ見たことないww
そうか、ダジャレだったのか!最初わけわからんかったww
>>330 お前「めがっさめるよ」と書きたかっただけだろ(W
こうしてこの世にまた一つ、新たな鶴屋語が誕生した
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
/ /" `ヽ ヽ \
//, '/ ヽハ 、 ヽ
〃 {_{`ヽ ノ リ| l │ i| めがっさめるよ!!
レ!小l● ● 从 |、i|
ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ│
/⌒ヽ__|ヘ ゝ._) j /⌒i !
\ /:::::| l>,、 __, イァ/ /│
. /:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |
`ヽ< | | ヾ∨:::/ヾ:::彡' |
暇をつぶして自分なりの涼宮ハルヒ系の最終回パロを書いていたらSSじゃなくて
400字詰め原稿用紙40枚分になったんだが、どうすればいいと思う?
それって別に多くないですよよよよ。
非エロでキョン似てないかもしれないが、そこんところよろしく
これ書き終わったから今度有エロうpするお
ここに投下された完結しているSSで、一番長いのってどのくらいなんだろな。
作者が長いって言ってても、30kを超えるのは、あまりない気がする。
345 :
還元:2006/07/03(月) 17:46:42 ID:9SvCcRyf
数学Uという暇な(全然分からなくて)授業を右耳で受け止め、左耳から受け流しながら窓の外に広がるグランドを見ていた。
後三日でこの俺が俺で無くなり、記憶も体も時間も全てが五年前のアノ日に戻る。
長門が言っていたのだから間違いは無いだろう。
長門が言うにはこの時間軸の未来は後三日で無くなる(本当は直にでも終わるのだが、長門の力で伸ばしてもらっている)らしい。
もっと正確には後三日で無くなるのではなく五年前の七月七日、そう俺とハルヒが初めて会った時間に全てが戻ると聞いた。
その戻った時間軸では、情報爆発も時間の歪みが発生しない世界らしく、
当然のことだがハルヒはただの怪奇電波を飛ばしまくる美少女でしかなくなるみたいだ。
俺とハルヒの接点は無くなり、恐らくその時間軸の未来にはSOS団ができることは無いし、
古泉が転校してくることも長門が奇妙な魔法を使うことも無いだろう。
無論、長門も朝比奈さんの存在自体が無いかもしれない。
もしあの七夕の日の俺の発言でハルヒが北高に来ると決めたならば、この学校にはハルヒは来ないだろう。
一年の冬休みの時、長門が改築した世界みたいになるのだろうか。
「キョン……ちょっとキョン、聞いてるの?」
「すまん、少し考え事をしていた」
こいつは二年生になってから急に大人しくなったな。
少しばかりだが他のクラスメイトより異質な雰囲気をいまだに発してはいるが、
クラスにとっては無くてはならない存在となりつつある。
この高校に入ってから初めての席替えの時とクラスは違うが同じポジションに座っている俺は、
視線を窓の下に広がるグランドへと移した。
別のクラスとなった谷口が体育の授業中にへまをやらかしたみたいで、
叱られているのが微かだが見える。
初夏、ミンミンゼミの求愛コールが町中に響き渡り、入道雲が地平線を包み込んでいた。
「キョン、あんた最近ボケーッとしすぎじゃない? 熱でもあるんじゃないの?」
こいつが心配をしてくれるなんて入学当初は考えもしてなかったな。
そう思いながら誰にも見られないように微かに微笑んだ。
「……なにブツブツ言っているのよ、頭大丈夫?」
前言撤回。やっぱ変わってない
「まぁどうでもいいわ、今日の放課後は部室に集合だからねっ」
いつの間にか始まっていた昼休みをつぶすためにか、ハルヒはいつもの通りに何処かへと猛スピードで消えていった。
こういうところも相変わらずってやつだな。
「ふぁ〜……飯でも食うか」
大きく欠伸をしながら通学鞄から弁当を取り出すと、窓の外の景色を眺めながら弁当を口に運び出した。
「キョンが一人で弁当を食べるとは、珍しいね」
近くに寄ってきたのは中学生時代からの友人の国木田だった。
「俺でもこういう気分はあるさ」
「へぇ〜そうなんだー」と言いながら国木田は徐に弁当を取り出し、広げだしていた。
「涼宮さんと、何かあったのかい?」
なかなか鋭い所を突いてくるが残念ながら今回はハズレさ。
俺が的外れな答えを言おうとしたら、教室の扉が勢いよく開いた。
「キョン!! 国木田ぁぁああ。俺を一人にして置いて二人で弁当とは、酷い奴等だ!」
奇声を上げながら教室に乱入してきたのは谷口だった。やけにハイテンションだな。
「うるさいなぁ、自分のクラスで食べてきなよ」
国木田はそういいながらも笑いながら、弁当箱の中に入っていたサンドウィッチを口に運んでいる。
器用なやつだ、俺だと口に入れたご飯をすぐさま噴出するだろう。
いや、ちょっと待て、そのサンドウィッチ俺のじゃないか!?
「今回は報告ついでに来てやったんだ」
ほう、報告ねぇどうせまともな物では無いと予想できるがな。
しかも、来てやったとか何か威張り臭い。
谷口もまた徐に弁当を広げ始めていた。
自分のクラスで食べて来いよ。
っつかハルヒの椅子を拝借しているようだがバレた後にどうなっても知らないぞ。
「へぇーどんな報告だい?」
聞かなくても良いのに国木田は興味を持った振りをしながら尋ねていた。
「なんと!! 俺にまた彼女ができましたー!! ハッハッハッ、国木田ぁどんなもんだ!!」
どうやったらここまでハイテンションを維持できるのか、
いつもナンパばかりしているお前にとっては別に珍しいことでも凄い事でも無いだろう。
「しかもだな、その子がまためっちゃくちゃに可愛いんだよ」
「へー、それは凄いなぁ」
国木田は心の篭ってない返事をしていた。
「だけど残念だね、僕は一年生の中盤から宮下さんと付き合ってるよ」
それは驚きだ。宮下さんとは谷口曰くAランク+の生徒というのを聞いたことがあった。
この二人いつの間にか彼女とやらを持っていたのか……
俺は白飯を口につぎ込みながら国木田と谷口のコントの様な会話を笑いながら聞いている。
きっとこれが普通な毎日なのだろう。
347 :
還元 3:2006/07/03(月) 17:50:26 ID:9SvCcRyf
「キョンは」
谷口が手を止めて俺のほうをゆっくりと向いてくる。
「涼宮とドコまでイッたんだ?」
「ブッ」
俺はせっかく口にふくみかけていたお茶を少し噴出してしまった。
あれか? 他人の目から見ると俺とハルヒは付き合っているように見えるのか?
「ハルヒとは付き合ってないのだが」
谷口と国木田は心底意外そうに、へー、と語尾を延ばし続けていた。
「俺は、もうってっきりイク所までいっているのかと思っていたぞ」
「悔しいけど僕も左に同じかな、どこからどう見ても涼宮さんとキョンは付き合っているようにしか見えないんだよね。
だって涼宮さんさキョン意外とほとんどと言っていいほど口を開かないからさ」
言われてみればそうかもしれない。
別時間に飛ばされた時、ハルヒに心底会いたいと願っていたのは確かで、
それ以降にも色々とあったがハルヒの事を真剣にどう思っているのか?
って考えるとモヤモヤと曇っている。
ふと視線を別の方向から感じ、そちらへと顔を向けてみると、長門が教室の扉で立っていた。
俺は横に首を傾げると、長門は首をカクンッと前に倒した。
「すまんな、何か用事があるようだ」
と俺は二人に向かって言うと、弁当を残したまま席を立つ。
「もしかして、キョンって長門さんと付き合っていたり?」
と、背中から国木田が呟いているのが聞こえた。
そんなことは無い、と言い切れる、かも?
谷口は素早く俺の開きっぱなしの弁当を睨むと
「俺は弁当をもらっておくぞ」
と言った。
好きにしろ……
348 :
還元 4:2006/07/03(月) 17:51:29 ID:9SvCcRyf
長門に誘導されるままに歩いていくと部室の扉の前に出た。
部室の中からは、何人かの人の気配をはっきりと感じる。
色々な場面と遭遇してきたからこういう気配とかは感じるようになったんだよな、嫌な位に。
「入って」
長門は俺に静かに言った。
扉を開けるとそこには制服姿の朝比奈さんと古泉が座っていた。
古泉は相変わらずの変スマイルで、朝比奈さんは今にも泣き出しそうに瞳を潤ませ、
手を必死に握りながらちょこんと椅子に座っていた。
「遅かったですね」
そのうっとうしくなる笑顔をこちらに向けるな。
「そう言われると困ってしまいますね、一応このキャラで通してきているので」
その前に顔が近すぎるっ!
「きょ、キョン君、こんにちは……」
あ……朝比奈さん、泣かないでください。
貴方の天使の微笑を私に向けてくれるだけで救われるのですから。
「そういえば、一年前もこんな感じの事起きたっけ、
朝比奈さんが未来に帰れなくなって駅前に集合し、色々と相談しあった事あったよな、
今回もあれと同じ状態で何か鍵を見つければ次へ進めるのではないだろうか」
「残念ながらそれは無い、
朝比奈みくるの本来の時代の人々は特殊な装置を使って断続的な時間の流れの中に入ってきているが、
今回はそれとはまったく別。これが私たちの生きる時間の流れ」
どういう意味だ、まったく意味が分からないのだが。
「言葉で表現するのは難しい、しかし人間の言葉であえて言い表そうとすると『運命』
という表現が正しいかもしれない」
古泉は少し唸った後に、人差し指を立てながら口を開く。
「なるほど、意味が分かった気がします、ようは一本道って事ですね」
「そう」
だめだ、まったく分からない、
こういう所に詳しいかもしれない朝比奈さんはついに泣き出しちゃっているし、
どういう意味だか分かる奴は俺の目の前に来て、今すぐ解りやすくやすく説明してくれ。
「簡単に言うと今現在から見ると過去へ戻る、
という逆走をするようなイメージがありますが、
過去に戻った後にもし、記憶があるとすれば、
未来に居たのも過去となるんですよ。」
なんとなく意味が分かるような分からないような、
「だとしても、本当は未来がいくつも在るんだろ?
ならこの未来を回避する方法は無いのか?」
「無い」
長門は即座に言い切った。
349 :
還元 5:2006/07/03(月) 17:52:02 ID:9SvCcRyf
「地球は長い間、地球には在ってはならない不確定要素の存在、
つまり私や朝比奈みくるの様な存在が居たことや、
特殊な力を持った人たちがいたり、
何度も過去へもどったりしていた事実をなくそうとしている」
またよく訳の分からないことを。
「古泉一樹の所属している機関の涼宮ハルヒへのイメージをそのまま地球にしたようなもの」
またもや古泉は、うーん、と唸った後に再度人差し指を立て、
ぐるぐると回しながら謎を解き明かしたシャーロックホームズ見たいな口調をで発言を始めた。
「本当の神は地球であって、地球が世界規模で再構築しようとしている、と?」
「間違っていない」
俺は再構築と聞いて、あの閉鎖空間を思い出した。灰色の世界と青白い巨人、
いつ思い出してもゾクッとする。
「よく意味が分からないのだが、
地球は神様でその地球が何らかの事情でこの世界消してもう一度やり直そうとしている、で良いのか?」
「そう」
長門は頭を前にカクッと傾けた、その一方で朝比奈さんは顔を真っ赤にして泣いている。
「で、朝比奈さんの居た未来は無くなってしまったと」
なんと表現すればいいのか分からないが、あまりに話が飛びすぎていて、モヤッとしか分からない。
「違う、朝比奈みくるの居た未来は存在している、ただ、ここに居る朝日みくるがその未来へと戻る道を失っただけ」
よく、そう難しいことをサラッと言えるな、そしてそれを分かったかのように頷く古泉もあれだな。
「でもそうなると朝比奈さんの成長した姿はどうやってきたんだ?」
「今、ここに居る朝比奈みくるではなく、別の時間を選んだ朝比奈みくるの大人の可能性がある」
350 :
還元 6:2006/07/03(月) 17:52:38 ID:9SvCcRyf
空は青い、木の葉も緑だし土は茶色い。
セミの声はちゃんと俺の耳に届くし、木の肌を触るとザラザラしているし、頬をつねると痛い。
過去に世界はどうやって戻るんだろうか、ビデオを巻き戻ししているようになるのか。
それとも、いつしか見た朝倉と長門の戦いが終わった後に教室が元に戻ったようになるのか。
芝生に寝転がりながら10分前に始業のチャイムを聞いていた。
きっと他のクラスメイトはよく分からない英語に頭を悩ませているのだろう。
どうせ、全て戻るんだ何をしたって変わらないしな。
「何がどうせだって?」
「あghんしえhf!?」
反射的に身をよじり、起き上がる。
黄色いカチューシャを付け、
肩まで伸びた黒い髪にこの上なく整った目と鼻、大きくて黒い目に異常に長いまつ毛、
言うまでも無い、ハルヒがそこに居た。
「教室に居なかったから保健室に行ってみたけど誰も居ないし……」
「素直に探していた、と言えばいいだろ」
「べ、別にそんな訳じゃ……」
照りつける太陽のせいかハルヒの頬が微かに赤くなっていたように見えた。
こういう所は可愛いんだけどね。と、いうか何時もこうだと絶対いいと思うぞ、ハルヒ。
「どっちにしろお互いに授業はさぼりってこった」
もう一度、木の下の芝生に寝転がると空を眺めた。
「何を考えてるの?」
と、言いながらハルヒは俺の横に寝そべった。
「ちょっとね」
「ちょっとって何よ、言いなさい! これは団長命令よ!」
何が団長命令だ、言っても何も信じないと思うし、いう必要が無い。
その前に言いたくてもどういう風に表現すればいいのか分からない。
そうだな、言うならば……
「なぁハルヒ、もし俺達が出会わなくてSOS団が無かったら、どうだったと思う?」
「どうって?」
「ようはだなぁ、SOS団が無くて、長門とも古泉とも朝比奈さんや俺と出会わなかったら、ハルヒはどうしたかって事」
「そんなの知らないわよ、今現に存在しているんだし、IFを考える必要なんて無いじゃない」
やっぱり根っから完全なポジティブ思考な奴に言っても通じないか。
でも、そういう風な答えが欲しいんじゃないんだよ。
「俺は、寂しかったと思う。きっと今とほとんど変わらない生活をしていたかもしれない、
でも何処か発散されない気持ちがあって苦しかったと思うな」
「へー」
心の篭ってない返答だな。
「あんたが望むような答えが欲しいのだとしたら、あたしは別の団を作っていたかも」
「どうやって作るって事を発想させるんだ? あれは俺の言葉をヒントにしたんだろう?」
「そんなの自分で考えれるわよ!」
はぁ、そうですか。何だろうね、この晴れない心は。
俺はハルヒの顔をもう一度見た後に再度空を見上げる。
あの空もきっと……。
それにしても気持ち良いな。
校舎と校舎とに挟まれていて風の通り道となっているのか、
いい具合に風が吹いていて暑すぎずポカポカな春のような感じで眠気を誘われる。
「すーすー」
「ん?」
横を見るとハルヒの寝顔がこちらを向き、可愛らしい寝息を立てていた。
いつ以来だったっけなこいつの寝顔を見るのは、寝顔は柔らかかくて良いね。
襲いたくなりそうだ、後が怖いけど。
351 :
還元 7:2006/07/03(月) 17:53:15 ID:9SvCcRyf
扉を開けると、そこには何時もの様に律儀にメイド服を着こなした朝比奈さんがかなり暗めな表情をして座っていた。
未来へ帰れなくなったことが相当深手のダメージとなっているらしい。
それでも着替える根性があるのだから色々な意味で朝比奈さんはすごいのかもしれない。
「大丈夫、ですか?」
「ふぇ? えぇ、何とか……」
苦笑にしか見えない笑顔を俺に向けてくれた。
困っている顔も可愛いね。そんなことを考える俺は鬼か。
「それにしても、大変ですね、過去へ溯ると朝比奈さんや長門はどうなるのだろう」
「きっと消……いえ、なんでもないです」
しまったと毒づいたものの既に後の祭り、朝比奈さんは再度泣き出してしまった。
「ふえぇぇ」
俺の膝を泣き所としてくれるのは嬉しいのだが、このシチュエーションはどう考えても俺が泣かしたようにしか見えない。
ここをハルヒに見られると恐ろしい結末が待っている予感……。
そんな予感に体を震わせているところに、ガチャッという音を立てながら部室に入って来たのは長門だった。
無表情な顔に少し深刻そうな感情が映りだされているように気がするのは気のせいだろうか。
「時間の再構成まであと二時間を切った」
二時間!? どういう事だ、あと三日間在るはずだろ!?
「このインターフェイスと情報統合思念体を繋ぐ物が切れ、力を失った。
よって再構成までの時間が残り一時間五十七分三十四秒となった。
残り一時間五十七分三十秒後に地球上の全ての物質が原子以下に崩壊し、その後にその原子を元に再構成される。
再構成され再現される時間は五年前の七月七日。
涼宮ハルヒが貴方という存在を始めて認識した時間、
しかし再構成された世界では涼宮ハルヒと貴方は会うことは無い」
頼むからそう一気に喋らないでくれ、唯でさえ意味がほとんど理解できてないのに、
そこに新しい情報を新型機関銃の連射力並に入れられると頭が混乱しそうになる。
「えっと、つまり長門は力を失って後三日間まで延長できる筈がコントロールできなくて残り二時間を切っているって事だな?」
「……」
この三転リーダーは肯定を表しているのだろう。
「長門、怖くないのか? 地球がお前のことを不確定要素と認めたって事は
再構成された時間に自分の存在が無いのかもしれないんだぞ」
「怖くはない、このインターフェイスが無くなるだけで私の存在はなくならない。
しかし、言葉で表現できないエラーが存在している」
それはだな、寂しい、という感情だと思うぞ。
きっとお前は原子以下に崩壊しても意識はあるだろう、
自分は相手のことを知っているのに、相手は忘れているだろうし、
気づいてくれないってのは地獄以上の苦しみと悲しみで満ちているかもしれない。
352 :
還元 7:2006/07/03(月) 17:54:25 ID:9SvCcRyf
「皆、揃ってる?」
そんなシリアスな状況と知りも知らずに、ハイテンションで勢いよく入って来たのはハルヒだった。
古泉以外は揃ってるさ。
「あら、古泉君はいないのかー、まぁいいわ」
いいのかよ
と内心で呟きながらもハルヒの言葉に耳を傾ける。
「じゃーん!!」
と、言いながらハルヒが出したのは市内でやる夏祭りへの出店申請書かそれらの類の物だった。
それをどうするんだ? ハルヒ
「どうするんだ? って決まってるじゃない、SOS団で夜店を開くのよ!」
「何をするんだ?」
「そうねぇ……」
と、言いながらハルヒは閃いたかの様に、空気の重みで今にも沈んでしまいそうな朝比奈さんを、
獲物を見つけたライオンの様な鋭く、どことなく嫌らしい雰囲気を持った目で捉えていた。
「みくるちゃんの撮影会なんかどう? 一枚500円できっと儲かるわよ。ね、みくるちゃん♪」
一方の朝比奈さんは、そんなことも馬耳東風状態でものすごーく重いオーラを纏った状態だった。
そんな事を仕出かしたら朝比奈さんは映画のとき以上に精神が参ってしまうんじゃないだろうか?
もっとも、明日が来たらの計画だがな。
「その話は横に置いておく、その夏祭りはいつなんだ?」
「七月三十日よ!」
後三週間か……、果たして世界はあるのだろうか。
「あと一時間」
長門がボソッと呟いたので、振り向くと相変わらずの定位置でハードブックのカバーを読んでいた。
あと少しで全てが変わるのに暢気というのか何と言うのか……。
「さぁキョン! そんな湿気た顔をしてないで、何をするのか考えるの!」
あと一時間か、ここに居ると憎たらしいほどに時間の流れが速いね。
俺が苦笑じみた顔をしていると扉が大きな音を立てながら開いた。
「遅れてすみません、バイト仲間と連絡を取り合っていたので」
入ってきたのは古泉だった。
遅れた時間は約三十分というところか、こいつにしては珍しい。
「続けてください」
と、言いながら古泉はいつもの席へと腰を落ち着かせた。
荷物を置きながらもその目はチラチラと落ち着きはなく、ハルヒを監視しているかのような感じが離れなかった。
「あたしが考える夜店は、無難にいくならカキ氷ね、もちろん最高級の氷とシロップを使うの! それで500円ぐらい」
おいおいそれってちょっと無理がないか?
こんな会話が
何時までも続くと良いって思っている。
知らなければ良い事がこの世界には必ずあるのだと思う。
知らなければ何も感じない出来事がこの世界ではひっそりと息づいているのだろう。
だが俺は知ってしまった。
353 :
還元 9 :2006/07/03(月) 17:55:21 ID:9SvCcRyf
ズンッ
地面に長い突起物を突き刺すような音が響き渡った。
「始まった」
長門が試合開始を告げるのように、小さく呟く。
「い、今のは何!?」
座っていた団長席から飛び立っていた。珍しくハルヒの言葉や動作に慌てを感じられる。
地震かそれの類と間違えたのだろうか。
「始まったんですよ」
古泉は仮面の様な笑顔ではなく、不気味なほどに真面目顔になっている。
「涼宮さん、この世界には超能力者、宇宙人、未来人は数多く居ます」
「い、いきなり何よ」
古泉は席を立ち上がるとゆっくりと歩き出した。
「長門さんは涼宮さんを監視するためにやって来た宇宙人。朝比奈さんも、涼宮さんを監視するためにやって来た未来人」
ゆっくりと古泉は団長席、すなわちハルヒの方に歩いていく。
何をする気なんだ? 何をあいつは考えているんだ。
長門は押し黙り、朝比奈さんは泣きすぎたためにか眠っていた。
「そして、私は超能力者です」
表情は笑顔だが感情の無い笑顔をハルヒに向けていた。
ハルヒは押し黙っている。少し考えたように間を空けると俺に人差し指を向けながら
「キョンは?」
と団長席から言いはなった。
「彼は凡人ですよ」
何故か古泉は笑っている。
「ん〜何と言うのか、薄々気がついていたわね、長門ちゃんやみくるちゃんの事ね。古泉君の事はわからなかったけど……」
ハルヒは相変わらず俺に視線を合わしていた、俺に何も属性がなかった事が悲しいのか?
「ならば話がはやい。この世界は今崩壊へと向かっています。
崩壊というより、いったんこの世界統べてが分子以下に分裂し五年前の七月七日の午後十時で、
長門さんや朝比奈さんが居ない世界が再構成されます」
「何のために?」
「この地球が本来存在してはならない異分子を消そうとしているのですよ」
古泉、それを言ってどうするんだ。
俺は古泉を止めようと席を立ち、歩きだそうとするが、体が何者かに捕らえられたように動かなくなる。
何だ!? この馬鹿力は。
「少し大人しくしていただけませぬか」
振り返ると、執事役だった荒川さんがサラリーマンが着るような制服を着て立っていた。
そして、俺の体をその強靭そうな腕で押さえてる。
「何言っているんだ、ハルヒが力を自覚したら!!」
あの閉鎖空間が自分の作った物と時間をしたら、あの巨人も……
「貴方様もこの方々たちとの関係が無くなるのは嫌でしょう?」
もしかして閉鎖空間に意図的に入ろうとしているのか?
「涼宮さん、貴女には神の力と呼ぶに均しい力が備わっている」
古泉はハルヒと部室の窓ガラスをバックにして二人して立っていた。
悲しいのか悔しいのか解らないが、それは"似合い"のカップルのようだ。
「望んだことを実現する力。その力によって、現実に超能力者、宇宙人、未来人がこの場に集められた」
「ですが、その力でも地球の再構成の力には勝てません。
だから、涼宮さんにあの灰色の世界を作ってもらい、そこに逃げ込みたいのです、
出来ますよね? 長門さん」
灰色の世界、閉鎖空間のことだな。
予想はしていたが、実際に古泉の口から聞くと覚悟を感じる。
古泉は長門の方へと顔を動かす、長門は今にも崩壊してしまう世界でマイペースにも本を読んでいた。
「出来ないことは無い、ただし閉鎖空間に入ったらもう二度と出てこれない」
朝比奈さんの方はというと、相変わらず寝ていた、なんてマイペースな二人なんだ、
この世界が消えるのは他人事なのだろうか。
「じゃ、じゃぁあの灰色の世界も、巨人もあたしが創ったの……?」
「そうです」
ハルヒはそう呟くと何かを思い出したのか、人差し指と中指をそっと唇に触れる。
顔が赤くなるのを感じた、思い出したくなかったね。
354 :
還元 10:2006/07/03(月) 17:55:53 ID:9SvCcRyf
「……キョンはあの世界に行きたい?」
何で俺に振ってくるのやら。
「分からない」
古泉は俺の方をじっと向いていた。まるで神官に祈る人のようだ。
「俺は……」
判断が出来ない、まるで俺が全ての運命を握っているみたいじゃないか。
こいつらといつまでも居たいけど、閉鎖空間に逃げ込んだら全ての可能性が潰えてしまう。
「涼宮さん、あの世界を再度想像して実際にあると願ってください。時間がないんです!!」
古泉はなぜかハルヒに手を差し延べていた。
クソッ
「荒川さん腕を放してくれ!! 俺は、俺はあいつを殴らなきゃ気が済まないっ」
俺は長門の方を助けを求めよう、と……?
「長門!!」
なぜか体から青白い粒子みたいなものがあふれ出し、服や皮膚など全てが透けている。
反射的に荒川さんに後ろ蹴りをかますと、俺のとっさの行動に荒川さんは防ぎ切れずに腹を押さえながらしゃがみ込んだ。
火事場の馬鹿力というやつか。
俺は床に音もなく倒れていた長戸の体を抱え込んだ。
「長門、体が……」
気がつかない内に長門の体は半分以上の色を失っていた。
「大丈夫、今この部屋に作用している崩壊の力は統べて私に作用させている」
全ての長門に作用させているだと?
こいつ、こういう場になっても他の人のことが第一なんだな。
「ふざけんな! いつお前消えていいって決まったんだ!」
粒子に崩壊するスピードは速く、すでに肌の色と床の色は区別ができないほどまでも透けてきている。
俺は言葉を失っていた。
「この部屋に作用する力の一部を吸収した。少しの間だけれどこの部屋にいる限り他よりは大丈夫」
そういう問題じゃない……
と言おうとしたが、俺は長門の表情を見て言葉を再度失っていた。
あふれんばかりの決意の視線。
「言葉を紡いで」
言葉を紡ぐ? どういう意味だ。
言葉をつむぐ前に自分のことを考えろ!
「貴方という有機生命体に会えて良かった……。キョン……」
今にも消えそうな声で笑いながら言っていた。
その笑顔は朝比奈さんの微笑にも匹敵する可愛さだ。
長門笑ったらめちゃくちゃに可愛いじゃないか。
「バカ野郎……」
長門の体は青白い粒子となり、開いている窓から外に舞い出て、飛んでいく。
俺は今まで俺の膝上に横たわっていた、長門の体を思い出し、手を握り締めた。
ここまで自分が情けないと思ったことはない。ここまで自分に何の属性がないことを悔しがった事はない。
355 :
還元 11:2006/07/03(月) 17:56:33 ID:9SvCcRyf
「涼宮さん見たでしょう? ああやって消えていくんです」
あの野郎!
長門の消失をダシにしやがって。
「うわぁぁぁぁあ!」
血走った拳で殴り掛かる。
思いっきり手を降った位置には避けようともせず、俺の強襲に気が付いていない古泉の奇妙なスマイルがあった。
そして、拳に柔らかいのか分からない感覚を感じた。
回転するようにしながら古泉は吹き飛ぶ。
「古泉! お前、いいかげんにしろ!」
床に勢いよく吹き飛び、倒れこんだ古泉の顔には赤く少しだが腫れかけている俺の拳の痕があった。
「私は、いや俺は、俺の考えで動く。何と言おうが関係ないだろう?」
それがお前の本心かよ、だがお前の意見、それは自己中っていうんだぞ。
「それでも言っていいことと言ってはならない事があるだろ! お前はその一線を越えたんだ!」
ハルヒは黙りこくって何時の間にか俺の後ろに隠れるようにして立っていた。
「それがお前たち達の答えか……、いいだろう荒川、朝比奈みくるを捕らえろ」
な、朝比奈さん!!
よくみると朝比奈さんは俺たちに視線をぶつけていた。
それは生きる覚悟を決めたウサギのように、まだまだか弱そうだが、長門と同じような覚悟を感じた。
「すいません朝比奈さん、これは長の命令なもので」
済まなさそうに荒川さんは捕らえ、朝比奈さんの腕を後ろでクロスさせてそこを掴んでいた。
長……?
「長って……お前が例の機関のリーダーだったのか?」
この部室内の奇妙な状況を第三者が見たら奇妙に思うだろう。
教室の中央にある長テーブルを境目として、俺とハルヒと、古泉と荒川さん朝比奈さん(捕らえられた)が対立している。
の、前にさハルヒ、その背中を掴んでいる手を離してくれないかな、
「動きにくくてしょうがないのだが」
「ば、バカな事言わないで! あんたが、すぐ何処かに行っちゃい……そう……で」
語尾はいつものハルヒらしくなく弱弱しくなっていた。
「信用しろハルヒ、俺はどこにも行きやしないさ、か弱い朝比奈さんを助けてくるだけさ」
「で、でも……」
そういう風に言いながらもこいつは躊躇いがちに手を離す。背中の方が握られたせいでクシャクシャになっていた。
「キョン君!」
朝比奈さんの決意に満ちたようなシャウトが部室に響く。
「あたしは、キョン君の……です。この時間軸の未来は失われていません! この時間軸の未来は必ず……」
俺の、何だって?
大切な部分が聞こえなくて少し、自分の集中力の無さが恨めしく思える。
「たとえ過去に再構成されたとしても、未来は一点のみです。」
いきなりどうしんですか、朝比奈さん。
何かエンジェル朝比奈さんらしくないような……
「未来と今がつながったんです。今帰らないともう帰れないかもしれない」
「今の世界の終焉はわかりません、ただこの時間軸と未来が繋がったということは分かります」
えっと、ようはこの世界の未来が開けたと?
「必ず、涼宮さんと……」
「また未来で、この結末をお話してもらえるのを楽しみしてに待っています」
そう言うと朝比奈さんの体は瞬くまに消滅した。
最後、何が言いたかったんだ。
何を言いたかったのかを頭の中妄想していると終止無言だったハルヒがまた背中を掴もうと、
ゆっくりと手を伸ばしているのが横目で見えた。
この状況で背中をそこまで掴みたいのか? 馬鹿馬鹿しい。
356 :
還元 11:2006/07/03(月) 17:57:28 ID:9SvCcRyf
「長、時間が」
荒川さんは部室のほとんど見られていない壁掛け時計を指差すと何かしぐさをしていた。
「ここまで、か」
古泉は意味ありげなため息を一つついた。
「荒川、お前はもうクビだ」
古泉はすべてを投げ出すかのように床に座り込んだ。
「好きな人のところや風景の場所に行ってしまえ」
小泉は手で仰ぐようにして荒川さんを追い払う。
行ってくれ、と懇願しているように聞こえるのは気のせいではないだろう。
「……長はどうするんですか?」
「いいからさっさと行け!!」
荒川さんは諦めた様に立ち上がる。教室を出るときに一礼をすると素早く廊下を駆けていった。
古泉の方へ視線を移すとまたいつものフェイクスマイルへと戻っていた。
「何で人質をとろうとしてまで閉鎖空間に行こうとしたんだ」
負けた悪役が最後に全てを語りだすように、苦笑を洩らしながら古泉は口を開けた。
「この関係を失いたくなかったんです。このSOS団、という関係をね」
なるほどな、素直じゃない選択だったけどなんとなくその気持ちがわかる気がしないでもない。
いまさらだが、先ほどの選択を選んでよかったのかと俺は自分に疑問を持っている。
「だけど、もう時間は無くなった。しょうがないですね、お別れです、お二人さん。仲良くお願いしますよ」
そういうとゆっくりと立ち上がり、教室からふら付きながら出て行った。
「また会えたら……そのときはお願いします」
古泉は手を軽く振るとふら付く足取りで扉から消えていった。
その体は透けていた。
少したった後に青白い粒子が教室の扉から大量に入ってきて、窓の外へと消えていった。
357 :
還元 13:2006/07/03(月) 17:58:53 ID:9SvCcRyf
SOS団の部室には俺とハルヒだけが残されることとなった。
部屋は俺とハルヒで二人っきり。
寂しい空気が部屋内を包み込んでいる。
「二人だけになっちまったな」
「そうね……」
どうすればいい、どうすればいいんだ? 誰か教えてくれ。
長門の言っていた言葉をつむぐってどういう意味だ?
「いつから、朝比奈さんや長門が普通じゃないって気がついたんだ?」
「そうね……長門ちゃんはあの野球の時かな、あんたがあんな変な球を投げれる筈ないもの」
何だ、ばれてたのか。どうりであの時ハルヒがあっさりとリーグを進むのを諦めたわけだ。
「みくるちゃんは一種の勘ってやつかな」
「勘か、お前の勘が鋭いのはお墨付きだからな、別に疑いやしないけど」
鋭いというより勘=現実になりやすいからな……
「あたしたち、どうすればいいと思う?」
「さぁね」
「長門ちゃんとかの見てて、あぁこれは現実なんだなって思ったけど、キョンは遣り残したこととかないの?」
そう言ったハルヒは団長席に座ると定位置に腰を下ろしている俺のほうを見つめた。
「遣り残したことがあり過ぎて覚えてないね」
俺は苦笑交じりに答えた。
「あたしは……一つだけあるかな」
異世界人に会ってないとか? そんなものだろう
「それは……」
連鎖的な爆発音が部屋を揺るがした、それは最初こそは遠くのほうから聞こえていたが、やがて近づいてきていた。
「いったい何だ?」
ハルヒはいうことをいい損ねて、苦虫をかんだような複雑な顔をしていた。
いや、そんな事今はどうでもいい。
「っ!?」
「な、何これ!? 耳が……」
爆発が徐々に近づいてきたかと思ったら、部屋にある窓の外で爆発がおき、青白い粒子となり空に舞い上がっていく。
爆発の重低音から甲高い全音まで混ざったような音が耳を劈き、鼓膜を激しくゆるがせる。
俺とハルヒはほぼ同時に耳を両手塞ぎ、身を屈め目を閉じた。
どうなったんだよ、この世界はっ!?
……
358 :
還元 14:2006/07/03(月) 17:59:57 ID:9SvCcRyf
音はどれぐらい鳴り響いたのだろうか、ふと耳を塞ぐのをやめ、目を開けると、青白い砂漠が広がっていた。
「ここは何処だ」
空を見上げると真っ青で雲ひとつ無い快晴と呼ぶにふさわしいだろう。
青白い砂丘が何処までも続いていくのが見える。
セミの声は何処からも聞こえない、車の音も人のしゃべり声も聞こえずただ風が何処からともなく体に吹き付けてきていた。
俺は朦朧とする頭で世界は本当に動いているのだろうか、とうっすらと考えた。
そして、これこそが『無』というのにふさわしい。
「何も無い……」
大気の流れの変化を僅かに頬で感じ、振り返るとそこには俺と同様に状況が飲み込めていないハルヒが立っていた。
「ここ何処?」
「さぁな」
「またあの時みたいに変な空間に迷い込んだわけ?」
迷い込んだというよりもお前が作ったんだろうが。
俺はハルヒの姿をもう一度見つめた。
黄色いカチューシャを付け、肩まで伸びた黒い髪にこの上なく整った目と鼻、大きくて黒い目に異常に長いまつ毛。
だけどその姿は透けかけていた。
「ハルヒ、長門の力も限界みたいだな」
「そうね……」
長門の言葉もわからないし、朝比奈さんの言葉の真意も解らない、いや理解しようとしないまま俺は突っ立っていた。
ハルヒはまだ考えているかのように空を見ている。
やれやれ、言葉を紡ぐ? どうやってだ、何をだ?
「あたしさ、何かあんたの事が気にかかってたのよね」
「気にかかっていたとは?」
「その、なんというんだろう。えっと……」
頬を桃みたいに染めていた。
そういう事か……
俺は自分の手を見ると、既に半分以上も消えていることが解った。
頼むから、もう少しもってくれ。
二人の体から青白く雪みたいなものが出てきて、空へと吸い込まれていっている。
「やっと全てがわかったわ」
先に口を開いたのはハルヒの方だった。
「いつの日のジョン・スミスは過去に戻ってもあたしたちを北高へと導いてくれるかな?」
「そうか……」
ハルヒは去年の初夏頃のマンションの帰り道に見た訴えるような瞳を静かにこちらに向けてきていた。
この返事でよかったのか? 俺は何の変化もしてないじゃないか。
ハルヒも長門も小泉も朝比奈さんも皆、あの結成時から確実に変わっている。
俺はこれでいいのか? 俺の答えはこれなのか? 答えるんだ!
まだ続きそうなので支援するが、長門ちゃんはどうかと思うぞ?
360 :
還元 15:2006/07/03(月) 18:01:01 ID:9SvCcRyf
「……」
「なぁハルヒ、俺さ……ずっと自分の気持ちに嘘をついていたんだ」
「そう」
ハルヒの素っ気無い返事。かまうものか、俺は言ってやる。
俺は薄れつつある体で青白い砂丘をゆっくりとハルヒの方へと歩いてく。
そうだ……この世界への未練……
できればもう一度、あいつらと笑って、悩んで、迷走して。
できればもう一度、ハルヒと歩いて、喋って……。
体から少しずつ上っていく粒子がいつの間にか無くなっていた。
「俺、お前のことずっと好きだった、これからもずっと好きだ」
目の前にいるハルヒは泣いていた。顔を赤らめ、瞳から絶え間なく流れる涙。
もっと早く言えばよかった。
もっと早く素直になればよかった。
つまらないプライド何か捨てて。
「あたしもよ、キョン」
「キョン、あたし忘れたくない、皆のこと、キョンの事、SOS団のこと……なんでこうなったんだろう」
「俺も同じ意見さ」
小さく呟くと、俺はハルヒを引き寄せてキスをした。
今回はハルヒは驚いた顔もせず、俺を受け入れている。
ああ、この世界に神がいるのならば、俺とハルヒをもう一度導いてくれ。
「ぷはっ……」
ハルヒは更に顔を赤らめていた。
「また会えるさ」
「本当? 嘘だったら死刑だから!」
肝に銘じておくよ、死刑は嫌だからな。
どうか、また明日もハルヒやSOS団のメンバーに会えますように……
目が覚めると時計の針がちょうど8時30分をさしていた。
「長い夢を見ていたな……でもどんな夢だったか覚えていないってのは不快感だな」
思い出そうとしても思い出せない。こういうのって変な感じがするよな。
えっとまぁなんだったっけ。
そうだそうだ、9時に東中だったような。
「ってもう9時かよ」
俺はなんでいつの間にか寝ていたのか、そんな事は気にせず、机の上に置いてあった自転車の鍵を手に取ると家を飛び出した。
背後から妹の呼ぶ声が聞こえたような聞こえなかったような。
父親に新しく買ってもらった自転車を飛ばし、
全力でこぎ続けること数十分、俺は何で東中に来なくてはいけないのか解らないまま東中の校門へとたどり着いた。
校門に何故か人影が見え、近づいていくとそこには今にも鉄門をよじ登り学校内に侵入しようとしていた。
「何やってるんだよ」
俺は自転車を道端に止めるとその影に向かって近づいていった。
「なによっ」
その影は俺に向かって振り返るとものすごーく鋭い目で睨んできていた。
これじゃぁどちらが注意しているのか解らなくなりそう。
「何やってるんだって聞いてるんだよ」
「見て解らない?」
いや、何処からどう見ても侵入だろ? その続きを聞いてるんだよ。
背は俺と同じぐらいで、黒い中途半端なストレートヘアーに黄色いカチューシャみたいのを付けている。
正直に言うと美人さんだ。
そういう人がTシャツに短パンというラフな格好でいるから俺は少しばかりだが戸惑った。
「不法侵入というところまでしかわからないな」
「ちょうどいいわ。だれだか知らないけどあんたも手伝いなさい」
「いや、ちょっとまてよ……」
誰だかしないけど手伝いなさいって明らかにおかしいだろ。
「俺は*******だ。きちんと名前はある」
「じゃぁ*******、手伝いなさい」
そういうとこの美人だけれど性格が飛んでそうな人は鉄扉の内側に飛び降りて、閂を固定していた南京錠を開けた。
「ちょっとまてよ、こっちが名乗ったんだからそっちも名乗るのが相場ってもんだろ?」
「いちいち五月蝿いわね。あたしは涼宮ハルヒよ! 満足?」
そういう問題でもないのだが……。
>>359 すいません、ご指摘ありがとうございます。気がついてませんでした。
有希ですね、脳内変換お願いします
だめですね俺、なんかこう真似するのってムズイ。
恥ずかしいのでちょっと外をふら付いてきます。
エロパロは近日中ってことで。ノシ
ああ、書き忘れ!
エピローグの最後に↓付け足して置いてください.....orz
その晩、夏だというのに青白い雪が全国に降り注いだ。
>>362 弁当や夜店の件があったから、静かに世界が消えつつある感じが良く出てたと思う。
古泉が最後まで悪あがきするってのもそれらしいと思った。
統合思念体、ハルヒ、地球の力関係や、地球(神)の意志とかには違和感があったけど、
読みごたえがあった。エロパロも楽しみにしてるよ〜
こういう終末的な話は好きだな。
具体的な回避行動を否定して流されるままに消滅するのが実に人間らしくていいと思った。
>>364 お前優しいな
>>362 まず原作を15498回読んでくれ
ただのパロディを最終回と言ってしまったり
ネタの節々から工房臭さが漂いすぎ
正直突っ込みどころが多すぎてきりがない
端折ってまとめるなら、設定がぶっ飛びすぎて全然ついて行けない
ハルヒ視点でキョンが消失しちゃうのが読みたいな。
普通に登校→キョンいない→人に聞く→最初からいない→驚く
保管庫逝けばいいと思うんだ
なんか厳しい意見ばっかりで投下するのが辛い流れ
15498回読んだ(´・ω・`)
>>367 消失のハルヒ視点のやつなら保管庫にある。
確か、涼宮ハルヒの自覚、だったかな。
>>369 なぁに、かえって免疫がつく
>>370 それじゃあひたすら平身低頭で書き手におねだりするか、自分で書くかだな・・・
ヘイヘイヘイは見るべき見ざるべきか
一応、ヘイヘイヘイを見てくる・・・
後20分か・・・
>>374 おれは一応見る。
投下されて叩かれたくなければコテハン付ければいいのでは?
私はそうしてますが(叩かれたくないときのみ)。
http://info.2ch.net/guide/adv.html#saku_guide 3. 固定ハンドル(2ch内)に関して
叩きについて
バシバシ叩かれたらこの理由で削除して貰える場合がある。
まぁ、コテハン付きでもコテハンが痛すぎるとか非がある場合は削除人さんによるけど…。
最近は気にしない方に慣れたよ。こっちが楽だし。
嫌なら読まなきゃ良いんだから。
逆に特殊なのは読まなくて良いように注意書き入れるのは忘れないようにするけど。
>>375 報告頼むといいたいが、ここは不適切か
どこに行くべきだろう
>>376 作品に対して厳しい意見を述べるのと、叩くことが同義とされているようで
泣いた
というか厳しいか?
いい感じの流れだと思ったけど
言ってる事は正しいし的を得ている。
でも少し配慮というか優しさが足りないかもな。
口調が厳しいとやっぱり脅威なんじゃないか?
>>380 一時期に比べれば格段にいい感じだよね。
ただまぁここは批評サイトじゃないし書き手全員が力量の向上を目指してる訳でもないから
意見や注意程度でも叩きや批判扱いされちゃってるとこあるね。
GJ連発よりいい流れだとは思うけどな
このスレなんてまだぬるい方じゃね
今のエロパロ板がどんな流れなのかちょっと分からないけど、
一年くらい前はもっと過激なスレがいくらでもあったと思う
短いけど投下。ポッギー長門編。
>>330は保管庫行くのか?
さて、ポッギーを咥えて仁王立ちする何やら間抜けな俺に正対するのは、かの長門有希その人である。
ジャンケンをして、勝った方がポッギーを咥えるかポッギーに噛み付くかの選択権を得られるのだが、
こういう確率勝負で俺が長門に敵うはずもなく1発目で負けた。そして、長門が噛み付く権利を得る。
しかし、小さい。改めて思うが長門は小さい。頭ひとつ分かそれ以上に身長の差がある。
長門もまた同じ事を考えていたようで、暫く俺の目とポッギーを交互に見比べた後、ハルヒに向かって
「椅子の使用を許可して欲しい」と頼んだ。まぁ使うのは俺であり、ようするに座れ、って事だ。
パイプ椅子に腰掛ける。ちなみにポッギーはチョコ味だ。
俺はチョコの方を咥えているので既に溶け始めている。甘いのは嫌いじゃないのでそう不愉快でもない。
問題はそれよりも長門の出方ではないだろうか。身長差はたった今解決した。では、長門はどうする?
えっちらおっちらと俺に歩み寄って来る。やる事もないので長門の表情を伺ってみた。
ぎこちない顔をしていた。緊張しているというか戸惑っているというか、およそ長門らしくない。
「いいの?」と聞かれたような気がしたので、笑い返してやる。それだけで伝わったようだった。
「……」
これもまた、長門にしては珍しい表情だった。小さく口を開けてパクパクとしている。
長門を知らない人なら独り言、長門を知っている人なら呪文だと思っただろう。
が、俺にはそのどれもが当てはまらない。長門は今、小さく深呼吸をしたのだ。
っていうか、そんなに緊張されると俺も困る。いやそれ以前になんで緊張しているんだ長門。てっきり、
いつも通り氷河期も裸足で逃げ出すような目をしながら淡々とこなすものだとばかり思っていた。
長門の唇がゆっくり近づいて来る。向こうで朝比奈さんが息を呑む声が聞こえた。顔赤いんだろうなぁ。
古泉、もしもの時はハルヒを頼むぞ。正直この後あいつに何を言われるか分かったもんじゃない。
「ぱく」とも「かぷ」ともつかない可愛らしい音を立てながら、長門が噛み付いて来た。
交互にポッギーを食べていくルールなので、今度は俺からポッギーを短くしてやる。
すると即座に長門も噛み付き返して来た。じーっと俺の目を見つめて来るから中々に居心地が悪い。
2、3度そんなことを繰り返す。俺と長門の距離は約3cm。朝比奈さんの「きゃーっきゃーっ」
という黄色い悲鳴が耳を突く。むしろそれ以外聞こえない辺り一番怖い。ハルヒ、何か言えよ。
「……何よ、楽しめば良いじゃない。私が考えたゲームなんだから」
視線をハルヒに向けると、そろそろ目つきの角度は45度を指そうとしていた。
どうやらハルヒは引っ込みが付かなくなっているらしい。今の状況は面白くないが、
自分が言い出しっぺなので中止する事も出来ないのだ。これ、大丈夫なんだろうな? 閉鎖空間は?
同じように古泉に視線を向けると、奴は苦笑いして肩をすくめていた。引きつった頬が痛々しい。
それにしてもこの体勢はきつい。身長差を考慮して座ったのだが、今度は俺の首が辛くなってきた。
唇が近づく毎に角度は急になっていく。俺は猫のように喉を上げて何とか対応している。
長門も長門で腰を折っているのだが、そのままでは前のめりに倒れてしまうような気がしてきた。
そうでなくてもこのままではポッギーが勝手に折れてしまいそうだ。何とかしなきゃならん。
さて、長門のアイコンタクトを察してやる事はできるが、果たして俺から長門には通じるだろうか?
とにもかくにも目で「平気か?」と尋ねてみる。ちっとも自信がない。何気に凄い事やってたんだな俺。
長門は動かない。そういや俺の順番か。いや、その前に気付いてくれ、頼むから気付いてくれ長門。
「……」
長門は腰を折ったまま、両手を俺の肩に載せて来た。良かった、通じたみたいだ。
これで俺はともかく長門だけでも楽になる。肩にかかった僅かな重みが心地良い。
丁度シャミセンが俺に乗っかって昼寝してる時と同じだ。
長門はさっきと同じく「いいの?」と目で訴えて来る。だから俺もさっきと同じく笑い返してやった。
「……これは勝ち負けに関わらずキョンに罰ゲームね……」
「あーっ…きゃーっ…ひゃーっ…」
「参りましたね。こうも見せ付けられてしまっては」
外野が五月蝿い。寒いやら熱いやら温いやら色んな感情がダイレクトに叩き付けられて非常に気まずい。
あらゆる感情を内外問わずシャットダウンして、俺は再びポッギーに噛み付いた。残り約1cm。
この距離では否が応にも長門の息を感じてしまう。という事は、当然俺の息が長門にかかっている訳で。
今更ながら無償に恥ずかしくなり、首を少しだけ横に傾けた。これで少なくとも息は頬に流れる。
「――」
ビクンと、揺れる。その反動でポッギーが折れてしまった。ってちょっと待て。何が起きた。
俺じゃないぞ。俺が首を傾けたせいで折れたなら、その瞬間に折れたはずだ。が、今のは傾けた直後。
つまり、俺ではなく長門が何かやって折れたということなのだが…
「想定外の動きだった。私のミス」
長門は短く答えた。表情に動揺は見られない。見られないのが、取り繕っているようで逆に気になった。
辺りを見渡す。ジト目で睨んで来るハルヒ。顔を手で覆っているけど、耳まで真っ赤な朝比奈さん。
そして何やらわざとらしく、天を仰いで両手を掲げる古泉。いつも通りの爽やかスマイルが腹ただしい。
こいつに聞いても要領を得ない答えが返って来そうなので、危険度の低い朝比奈さんに聞いてみよう。
「あのー…朝比奈さん?」
「ふぇあひゃいっ!?なな、なんでしゅか!?」
これは未来人語なのだろうか。まぁそれはいいとして、取り合えず何か変な事があったか聞いてみる。
「想定外の動きって何ですかね?」
「あー、あー…それはその…えーと……」
わたわたと手を振り顔を振り、そしてモジモジしながらボソボソと語り出す。
「キョンくんが首を傾けた時…その……キスするみたいで…」
「――」
これには参った。つまり何か? 長門は俺が首を傾けた事に動揺した訳だ。
それで思わず動いてしまってポッギーは折れたと。そういう事か。ああ、そういう事か。
「いや、見てるこちらまで焦ってしまいましたよ。ポッギーさえなければ立派なキスシーンでした」
古泉が口を挟んで来る。だからポッギーがあったのにどうして焦ってるんだよお前は。
にしてもな、長門。お前までどうして動揺するんだ。お前まで俺がキスすると思ったのか。
「あなたがキスするとは思っていない」
じゃあ何でさ。
「息がかかってくすぐったかった」
いや、だから首を動かしたんだって。
「……」
長門さん?
長門は何も言わず、席に戻って本の続きを読み始めてしまった。
ここまで。
正直に言うと、早く古泉編を書きたくて仕方がない
w
古泉編楽しみにしてるw
ヘイヘイヘイは時間の無駄だった。orz
ここでSS読んでた方が時間を有意義に過ごせる。
未だSSが書きあがらない俺は負け組ですか?
読み返すとどんどん(投下した分も)文が増えていく…
投下した文まで増やしてどうすんの(´・ω・`)
ついでにヘイ(ry見た人3行ほどで報告お願い
>>394 5位映像の瞬間に香具師らしかめっ面
みくる以上の声色
松本から帰れコール
>>394 明らかに変な地声
綾痛い子
終わるのが早い
一行でまとめると
こ れ は ひ ど い wwwwwwwwwwwww
声優にはあまり思い入れはないが
ちょっと、扱いがヒドイとはおもった。
嫌な予感がして速攻チャンネル変え、赤ん坊のキーガン君見てた俺は多分勝ち組。
結論・フジテレビもダウンタウンもよく頑張ったwww
ポルノグラフィティは庶民的
叶姉妹は今までに聞いたような話を繰り返してた
でも人間チェスってのは見てみたい
さてビデオ巻き戻して上からHERO撮るか…
っ【黒歴史】
>>391 「椅子の使用を許可して欲しい」でキタw
ちっこい長門かわいいよ長門・・
>>395-
>>403 把握
どうでもいい質問に答えてくれてサンクス
またSS書き足してくる…
>>391 少々長門の感情の動きがわかり安すぎる気がするけど、全然許容範囲内
キョンの長門への表現を、もうちょっと曖昧な感じにすると、らしさが出たかもね
俺も古泉編を超楽しみにしてる
>>381 優しさが足りないか、よく言われる。お前はストレートすぎるって
評価レスなんていらねーって話なのかもしれんけど
GJGJ連発は見てるだけでも辛いから、やっぱ居るときはレスしちゃう
誰か俺をバファリンにしてくれ
>>406 それを本当のやさしさというのでh(ry
と、いってみたかったが、俺の中のツンデレが・・・
「なぁ長門。 このSSへの評価が厳しすぎないか?」
「レスが無いよりはまし」
「言いたいことはよく分かるんだ。 ただもう少し褒めたりしないのか?」
「無意味に褒めちぎるよりかははるかにまし」
「まぁ、そりゃそうなんだが何て言うかもっとお嬢様が哀れみをかけるように出来ないか?」
「できなくは無いが、推奨はできない。」
「何でだ?」
「したくないから。」
「そうか…」
長門はパソコンにまた書き込みをしている。 長門がパソコンに慣れたのはよかったのだが、小説やSSのことになるとやけにムキになるな…
まぁ、いいか。
スレを読んでいって勢いで書いた。 かなり反省はしている。
>391
GJ!
古泉編楽しみにしてる!!!!
>>406 面白ければGJ。つまんなければ無視。それが普通だろうから、指摘するのは優しいのだと思う。
ベッドの上では、相手をひっぱたくのが優しいってことだったりするんだからな。
学校を出よう!の続編を待っている俺がいる。
学校を出よう!のSSを待ってる俺がいる。
自然消滅怖いね……
適切な指摘をするのは、そこさえ直せば最高なのに!惜しいなという気持ちがあるからな
ただ、毎度毎度違う角度から物語を構成する職人さんたちはすごいもんだよ
>>晩夏の夜の夢
朝倉ー!いや、良かった。出てきたて、ちょっと丸くなってキョンと談笑するかなと
期待したが、やっぱりこれこそが朝倉だな。
最後「さようなら」でなく「じゃね」だったらさらにツボった。GJ!
本スレで見た画像でハルヒでエバンゲリオンがみたくなった!
「パターン青! 使徒です!」
オペレーターの報告に司令部が騒然とする。
「……映して」
「は、はい! えーと。こ、これでいいんですよね?」
長門司令の単語の命令に従い朝比奈オペレーターがおっかなびっくり画面に映す。
「おお!!」
「こ、これは使徒なのか!?」
映し出された使徒……巨大な女子高生の姿に皆が驚きの声をあげる中、トップの二人は冷静だった。
古泉副司令が長門司令の横に立ち微笑みながら口を開く。
「司令、死海文章の通りですね。あれこそが」
「最後の使徒……涼宮ハルヒ」
長門司令は椅子から立ち、静かだが司令部全体に通る声で命令を出した。
「憂鬱天使キョンゲリオン、直ちに出撃せよ!」
>>413を見て衝動的に書いた
だが、
>>413の求めるものとはぜんぜん違うと確信している
すまんかった
>>413で量産型長門に襲われるキョンと、それを見たハルヒの暴走を思い浮かべたが、
>>414で吹いた
自分のクソ作品を叩かれた自業自得な作者が
腹いせに他の作品をクソミソに叩いて気晴らししてますよ警報発令中
「お前、○○○だろ?」と突っ込まれて恥かく前にやめることをお勧めしておく
エロ無しの次はエヴァ厨か…
エロパロの意味がないな
なんかレイが長門で朝比奈さんがアスカだった!
あれって同人かなんか?
朝比奈さんの「ふえ〜んエヴァンゲリオン二号機発進してくださ〜い」に萌死
まじでだれかたのんます
俺はエロあげたから何も言われる義理ないね。
今の流れ半分以上の書き手は気に入らないと思うんだ。どうだ?書き手の人。
後一週間くらいでよく解るかもしれん。
>>418 自分も乗っててあれだが
>>2の3、4つ目を読んでくれ
話はそれからだ
とエロを書いたことが無い俺ガイル
作品が無いより、エロ無しエロありかまわずたくさんあったほうがいいと思うんだけど。
エロ以外書くなっていうとたぶん誰も書かなくなるよ
つーか、「来る者は拒まず、去る者は追う」くらいでいいんじゃないかと。
キョンの妹とセックスしたい
なんでお前らは俺が帰ってくる頃になると荒れてるのかと
ここの連中ってすごい過剰反応するのな。
18才以上がいるのかと疑いたくなる程に。
第壱話 ハルヒ、襲来
第弐話 知らない、部室
第参話 みくる、コスプレのむこうに
第四話 四人目の適格者
第伍話 情報統合思念体の造りしもの
第六話 決戦、一年五組
第七話 閉鎖空間、侵入
第八話 神人、来日
第九話 機関、誕生
第拾話 ミクルフォルダ
第拾壱話 静止した閉鎖空間の中で
第拾弐話 変わる世界
第拾参話 瞬間、唇、重ねて
第拾四話 映画撮影、逃げ出した後
第拾伍話 未来人の価値は
第拾六話 超能力者の戦い
第拾七話 見知らぬ、クラスメイト
第拾八話 図書館、魂の座
第拾九話 嘘か沈黙
第弐拾話 心のかたち 人のかたち
第弐拾壱話 消失に至る病、そして
第弐拾弐話 せめて、人間らしく
第弐拾参話 涙
第弐拾四話 世界の選択を
第弐拾伍話 未来からの使者
最終話 世界の中心でアイを叫んだけだもの……
つまんね
口調で俺は一人思い浮かんだよ。
前にいたよね、試しに投下して反応を見たのだっていう人。
18でもまだ入場資格は取れないはずだけどな・・・
21禁だしな
まぁみんなスルースルー
荒しも気に入らないレスも、徹底スルー精神で行こう
流れが止まってる状態が一番投下しやすいと思う俺もいることだし
ぼけっと作品が来るのを待とうぜ
「ただの人間には興味ありません。巨大なロボットに乗ってみたい人、人類の危機に立ち向かってみたい人、
でっかい敵と戦ってみたい人がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
ハルヒのあの衝撃の自己紹介の翌日、やつに話しかけたのが運の尽きだった。
だってとんでもない美少女が席の真後ろにいたら、誰だって声かけるだろ?
「なあしょっぱなの自己紹介、どこまでマジだった?」
「あんた、興味あるみたいね!」
「は?いや何の話だ?」
「やっぱ男の方がこういう話のるって思ってたのよ!
今日の放課後文芸部の部室に来なさい!命令は絶対よ!」
ということで、特に帰ってやることもない俺はまあ美人と特撮談義するのも悪くないかなと思い
文芸部の扉をたたいた。
「入っていいわよ」
部室には驚いたことにすでにハルヒと二人の女子がいた。
なんだこいつらこの女の取り巻きか?にしてもなんだその二人の衣装は!?
赤いラバースーツーをまとっているかわいらしい感じの子が震えながらハルヒに言った。
「こんなもの着てどうするんですかぁ?私いったい何されるんですかぁ?」
「もううるさいわね、ああそうだアンタはこの二人初対面よね。この赤スーツの巨乳ちゃんが
二年の朝比奈みくるちゃんで、そこで本読んでる白スーツの子が長門有希よ、ほらアンタも自己紹介して」
俺は状況を把握しきれぬまま自己紹介をさせられた、しかも
「ということでアンタはキョンでいいわよね」
って何で会って二日でその呼び名を仕入れたんだ・・・
「じゃあキョンもこのスーツを着なさい。そしたらみんなで基地に向かうのよ」
基地って?ここで活動するんじゃないのか? 朝比奈さんだっけが怯えた目でハルヒを見た。
「基地!?いったいなにするんですかぁ?」
「いいみくるちゃん、あなたたちは選ばれし者なのよ!光栄に思いなさい!」
いやだから何の話かさっぱりわからんぞ?
「うーん、そうね、端的な説明は有希が得意だから有希お願い!」
「私達は涼宮ハルヒの精神が不安定になる際現れる神人と呼ばれる存在を倒し
世界が神人の存在する空間である閉鎖空間にのみ込まれぬよう、エヴァンゲリオン
という操縦機を用いて応戦する。」
パチパチとハルヒが一人で拍手する。?はつきんが、まずなんでこいつが精神不安定になるとなんか出るんだ?
「それは涼宮ハルヒが情報の奔流を引き起こす能力を持つ存在だから」
ええとますますついていけんのだが
「そうそう!つまりあんた達は私と世界の平和のためにロボットで戦えるのよ!
やりがいあるでしょ!」
台無しだ
読みとばしゃいい話だからまあいいか
エヴァはロボというよりもナマモノだから…
>>391 よしいいぞ長門。もう少しだ……ってなに!お前、今唇が……
「……事故」
うっ、この刺すような視線はなんだ。
ってのを期待していただけにどうしても関心が古泉に向けられてしまう。
続き待ってますよ
>>431 ・・・・・・大好き
>>433 朝比奈さんってミサトの役か、勘違いしてた。
予備保管庫の人大変だな。作業三時間て
>>344 今書いてる『長門有希の酔狂』『長門有希の狼狽』『長門有希の姦計』
を一つとみなすならもうちょいで70kになる。先は正直決まってないが
展開としてはここらで折り返しって所だから後70kとして……140kか。終われるのかこれ?
感想スレッドせっかくあるのになんで誰も使わないの?
無性にキョンデレモノローグを書きたくなったので、
非エロで何のひねりもないが、投下してみる。2レス分。
445 :
444:2006/07/04(火) 01:07:12 ID:2w3cjJ8r
さて,今日は朝からハルヒと俺の2人で出向く不思議探索……のはずだったが,気が付けば
夕方で,しかも観覧車の中にいる。皆さんご存知であろう,都会に咲く大輪の花である。
ここに至るまでの経緯を簡単におさらいしておこう。
いつものようにハルヒの一声により不思議探索に行くことが決まったのだが,なぜだか
知らないが長門,古泉,朝比奈さんが揃いも揃って急用があるとかで,俺はハルヒのため
だけに朝早く起床しなければならないこととなったのであった。最近やけに2人きりになる
機会が増えている気がするが,まあ偶然だろう。
それはさておき,午前中いっぱい市内を探索したものの,これまたいつものように何も
見つからず,またまたいつものように俺の奢りで昼飯を食べたのだった。何せハルヒの
求める不思議は今日は欠席だ。いつも右手に超能力者,左手に宇宙人を従えてお前は一体
何を探しているんだい,ハルヒさんよ。
話を戻そう。
昼飯を食べているときに,そういえばセールの季節が到来していたことに気づいた俺は,
せっかくだから午後はバーゲンセール探索をしようじゃないかと提案してみた。
ハルヒは,
「あんたにブランドものなんて似合わないわ。駅前のデパートのワゴンセールがいいとこね」
などと言っていたのだが,かといって特に嫌がる素振りも見せず,俺たちは電車を乗り継いで
戦場に身を投じたのであった。
それから先のことは割愛させていただこう。思い出したくもない。ハルヒよ,頼むから
フィッティングルームから大声で俺を呼ぶのだけはやめてくれ。俺は店内を物色する女性たちの
邪魔にならぬよう注意深く立ち回っていたんだ。突き刺さる視線には耐えられなかったね。
その上俺の意見は無視だ。こんなのが神様なら,俺は誰に祈ればいいんだい?
そろそろ帰る時間だろうかと思いながら出口に向かっていると,突然ハルヒが上を指差した。
ちなみにハルヒは手ぶらで,俺が両手に袋を提げているのは言うまでもない。仕方がないので
首だけを上に向けると,そこには観覧車があった。視線を戻すと,黙ったままのハルヒの顔。
446 :
名無し:2006/07/04(火) 01:07:15 ID:UDoRdaw5
ロボットネタと聞いてデモベ版を想像したオレガイル
447 :
444:2006/07/04(火) 01:08:16 ID:2w3cjJ8r
「……やれやれ」
「ちょっとキョン。まだ何も言ってないわよ」
何とかは口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。
「こ,こらっ。私は乗りたいだなんて別にっ……」
わかったわかった。ちょうど俺も乗ってみたいと思っていたんだよ。な,これでいいだろ。
「まったく……キョンがどうしても乗りたいって言うから仕方なく乗ってあげるんだからね」
さて,ようやく現在に戻って観覧車の中である。
何故だろう,本当にありがとうございました,と言いたくなったのは。
ずっと歩き回っていたのでこれ幸いと腰を下ろし,やっとの思いで荷物から解放された俺に
背を向けて,ハルヒの奴は外の景色に見入っているようだった。1周およそ15分の旅行だ。
俺はハルヒの後ろ姿を眺めていたのだが,今ハルヒがどんな表情をしているかは想像に難くない。
無邪気を絵に描いて,天真爛漫を写真に撮ったらこんな風になるだろうね,っていうあの顔だ。
その顔をしているときが,やっぱり一番お前らしいよ。塞ぎ込んだりさ,苛立ったりしてる
顔よりも輝いてる。何だかんだ言ってお前はいつも最後にはいい顔をしてくれるよな。
あいつらがお前の周りにいるのも,決して仕事だからという理由だけじゃないと,俺は思う。
でもな,ハルヒ。さっきもそうだったけど,もう少し素直になってもいいんじゃないか。
行動で示すだけなら,わかってくれない奴も出てくるだろう。乗りたい時は,そう言えば
いいんだよ。500円で15分間,お前の笑顔が買えるんだ。嫌がる奴は,そうはいないぞ。
なあ,ハルヒ。お前も今日,楽しかったんだろ?俺と2人だったとはいえ,さ。
「何よキョン。遠足は家に帰るまでよ。自分だけ終わった気になっちゃって。相変わらず
詰めが甘いわね……ま,でも今日は楽しかったわ。じゃない,今も楽しいのよ。あんたは
楽しくないの」
何を言ってるんだハルヒ。そんな当たり前のことを聞くな。ああ,そういえばこの前古泉の奴が,
「あなたは本当に自分のことがわかっていらっしゃらないんですね」
とか何とか言ってたな。珍しく真面目な顔をするかと思ったら,全く失礼な奴だ。
そうこうしているうちに終点が近づき,これにて本日のバーゲンセール探索は無事終了と
いうわけだ。思っていたより15分は短かったようにも感じたが,それはまあ,気のせいだろうね。
448 :
444:2006/07/04(火) 01:10:45 ID:2w3cjJ8r
以上、脳内で声をあてて読む感じを想定してみた。
「,」を「、」に直すのを忘れてた。失敬。
にしても、えらいレス番引き当てたものだな……。
>>443 ちょ、今気づいた!凄いなこれは……予備保管庫の人お疲れ様です。
450 :
名無し:2006/07/04(火) 01:12:14 ID:UDoRdaw5
444さん、割り込んですいませんm(。。)m
本当に申し訳無い。
450しかもあげ? 449みんなで過去作の話しよう!
ちょっと掲示板と解りにくいから、感想がないのかもしれない
ナンバリング識別のためには、なるべくならば題名のほかに作者の通し名なり鳥なりを
入れてもらった方が感想返しにはいいんだろうかとも思うが、それはフライドポテトに
ケチャップやマヨネーズを付ける付けないにも似た、瑣末な事なんだろう。
>>444 うむ、悪くないッ。これからも期待している。
>>453 作者別に今は用意されてるようだけど、荒らしとか考えると
一個の掲示板で済ませたほうが管理も楽だろうね
457 :
予備の人:2006/07/04(火) 01:40:04 ID:Pi2j8U4D
>感想掲示板
やっぱ気付きにくかったのか…スルーされてたものかと思ってた。
>>456 当初は作品ごとに、ということだったんだけど、それだとつらいので作者に分けた次第。
正直、アニメ終わったし嵐もそんなにこないと楽観してます。
後々荒れるようだったらそのときは統合もしくはスレごとにするかもです。
>457
乙デス。
ところで
15thの
705氏 ◇ 『長門有希の命名』
だけ収録されて無いのはなんか問題がありましたか?
いや漏れがその705な訳ですがw
>>458 もうしわけありません。だたいま掲載致しました。
460 :
予備の人:2006/07/04(火) 02:08:59 ID:Pi2j8U4D
この機会に、序でと言っては何ですが
・作者様へ
特に意図して名乗らないわけでなければ、最初の投下時に、レス番もしくは
以前に投稿した作品名を挙げるなどして名乗って頂けると助かります。
例に出して申し訳ないですが
>>385様なども、前スレと同じの方かどうか判別しかねますので
よろしくお願いします。
予備の人
いつもお疲れ様です
>>460 お疲れさまです。
作者が明に名乗らないのであったとしても、それはそれで良いんじゃないですかね。
その結果、保管庫に収納される作品が分断されても、それは作者側の問題なんだし。
コテを付けてる書き手がどんな扱いを受けてるかって考えれば、無理して付けろなんて言えんな。
レスアンカーで〜の続きとか、保管庫の〜.htmlの続きとかあれば前後関係は十分だし。
464 :
名無し:2006/07/04(火) 02:25:55 ID:UDoRdaw5
名乗った方が読む方も探しやすくなるのでは?
予備の人
乙です
>>462 同意
作者別に並べないといけないヤツは前もって言っといた方が管理も楽だろうな。
>>460予備の人様
乙です。
本当にいつもご苦労さまです。
≫459
いつもいつも乙です。
エロパロ保管スレの管理人の人も。
>>464 とりあえず君は名前欄に何も書かず、メ欄にsageと書け。
>デモベ版 「ハルヒを利用しようとするナイア」とか想像した
>>464 久しぶりに名前欄に「名無し」と書いているやつを見たな、
これからも2chを見るなら専用ブラウザ導入をお勧めする。
>>328 なにそのクソ痛い俺様設定w
将来のキョンとやらがSOS団の生活を書くのも痛ければ、過去に戻って書くこと自体がありえない。
作者様のイタタフォローか?
他人だったらもっと痛い。
アニメ厨、マジで消えてくれないかな
未成年が我が物顔でのさばっている現状に、我慢できない
21歳超えてよーが超えてなかろうが、駄目なヤツは駄目なもんだぞ。
>>473 べつにアニ厨を擁護するわけじゃないが
アニ厨=未成年と決め付けるのはどうかと思うんだが。
アニメ派にも原作派にも未成年や精神年齢低いのはいるだろう
どっちが多いかなんて話は無駄なんでしない
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由だが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
随分前からこれが飾りになり過ぎてるんだよな。
読み終わった後下にスクロールさせると萎える場合が多くて純粋に作品を楽しめなくなる。
単発が多いからNGにもできんよ。もうちょっと抑えてくれませんか。
つ【保管庫】
真面目な話、書き手の立場で言わせてもらうなら保管庫への保存の為に〜が優先されるのは本末転倒で嫌だ。
思いつきでなんとなく書いた話を気軽に名無しで落としたり、めっちゃ気合入れた話はコテで落としたり。
作風に合わせてコテも変えて気分転換したり。
まあ保管庫の管理人さんには感謝してるし敬意も払いたいが、
お願いされる筋合いではない、というのが本音であります。ごめんね。
コテなり通し番号なり入れても構わないという人は積極的に入れてあげた方が良いとは思うけどね。
半強制的な空気は勘弁してもらいたい。マジ『お願い』
なんかギスギスだね★
>>479 まあ、読みやすければいいから、自由に書いて。
スレの最初の方に本スレのアドレスを貼ったりして雑談してるやつを誘導したりとかって無理なの?
>>474 核心を突いた。
>>479 同意
まとめて欲しかったらコテつければ良いんだけだし。
書き手の自由でしょ、その辺は。
ただ、あんまり自己主張が強いのは良くないよな。
批評が厳しくなるとかじゃなくて、叩かれる原因になる。
まぁまぁ、みんなモチツケ。
管理人は好意でやっているのだから、「お願い」くらいイイジャナイか。
「命令」だったら腹立つけどね。
>>485 ああ、すまん。
管理人にケチつけるつもりじゃなかったんだ。
管理人に予備の人、いつも乙です。
つーか、なんで管理人はそんな余計なことしてるんだ。
転載がいやな人もいるだろ。
アホじゃないのか?
>>487 まあそうかっかするな、
転載が嫌ならその旨を書き込む前とかに宣言すればいいし、
まあ書き手の勝手じゃないかい?
>>487 何で自分のが収録されてないのって意見はあったが、
何で自分のが収録されているのって意見はなかったと
記憶している。書き手から文句がついていればともかくね。
管理人さんによって、過去のSSも読める。
そして2chにコメントした人間なら、書き込みの際の注意くらい読んで当然。
>>487 アホとか、余計なことってのは、言い過ぎじゃないかな?
結構な人が利用してるみたいだし、俺も利用させてもらってる。
正直ありがたいと思ってる。
転載が嫌なら、その旨を書くとか?
というか、ここに書いてる時点で転載不可とか思うかな、普通?
不特定多数の人間に見せておいて、いまさら転載不可って・・・?
ま、、考え方は人それぞれだけどね。
と、あえて釣られてみるw
書き手が転載はいやっていうなら、それは正当な主張。
読み手が転載はいやなんじゃないかっていうのは、おこがましい。
他のスレッドの人がこんなのあったぜって他スレのSSコピペするのは×?
>>494 それは著作権に反するからだめじゃない?
誘導ならOK
……多分
>>494 URL貼ればいいだけだろう。
コピペする必要はなし。
転載もダメなんだろ
引用はいいけど。
まとめサイトは誘導だけしてりゃいいじゃん
というか、この
>>460「お願い」には傲りと強制を感じる。
纏めてやってるんだからてめえら協力しやがれ、みたいな傲慢な「お願い」
こういう保管庫の管理人ってのは「勝手に拾わせて頂いてます」って態度でいかないと大抵荒れる。
コレSS系のスレじゃ常識。
こんなんじゃ投下来ないのも当たり前
保管庫に今度からお願いするのだけ転載したら。
アニメの関係でたまたま来て落下している人もいるだろう。
そういう人がまさか転載されるなんて思っていないだろう。
それを知らなかったから転載しましたなんて酷いだろう。
転載希望制にすればこの
>>460「お願い」は成立すると思う。
転載されたくない人が断りを入れればいいだけじゃん。
>500 しつこいよ。
つーか、なんで
>>500はそんな余計な主張してるんだ。
転載がいやな人は事前に断りを入れればいいだろ。
アホじゃないのか?
うお、大学から帰宅して何か投下されてるかなって覗いたら荒れてんじゃんwwwwww
みんな落ち着こうぜ(´・ω・`)つ旦
投下しようと思ったけど今の雰囲気だと間違いなく叩かれるな。
非エロだし。
日を改めよう。
505 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 19:49:18 ID:CXelfYEG
とりあえず荒れてるから投下せずにこれだけ言わせてもらう
お前らは本当に大人か?
大人ならもう少し落ち着いてくれ。
と言うわけで、ここからいつもの谷川流スレでお願いします。
ぐはっageてしまった
回線切ってくる…
>>504 このスレはエロ無しOKですから気にしなくていいですよ。
>>504 雨にも負けず
荒らしにも負けず
不評にもレスの厳しさにも負けぬ
強固な精神をもち
欲はなく
決して怒らず
いつも静かに投下する
そういうものに お前はなれ
俺の主張が読めてないのか?
アニメの関係でたまたま来て落下している人もいるだろう。
そういう人がまさか転載されるなんて思っていないだろう。
それを知らなかったから転載しましたなんて酷いだろう。
日本語が読めてないのか?21歳未満は帰れよ
>>1-2読んでればわかるだろ
空気読めないのか荒らそうとしてるのかわからないが
>>510落ち着け
主張すれば聞いてもらえると思うのは子供だぞ?
たまたままさかだろうだろうじゃ説得力ねーよ
ぶっちゃけると、匿名板に匿名で投下して転載するなもないだろうよってとこだな。
保管庫付きのスレなら断らない限りはほぼ無条件で保管されるものだと思っている。
それを言い出すと肉チャンネルの過去ログとか残しておくなといってるようなもんだしな。
んじゃ次スレからテンプレに
Q 基本的に保管庫に転載されるの?
A NOがない場合は基本的に収納されます。
ってつけておいてよ。
もう何と言うか…
著作権云々は他のスレでやってくれ
あと他も煽るな
というわかでもう一回
>>2をはる。
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由だが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
Q煽られたんだけど?
Aそこは閉鎖空間です。 普通の人なら気にしません。
自分で書いといてアレだが次からもう一文追加しようか?
>>514 それはこのスレと言うよりエロパロ板全体での暗黙の了解だと思うんだけど。
転載について云々はあなた一人が言ってるだけなので、テンプレは要らないだろう。
エロパロ板全体での暗黙の了解なんてそっちのほうがおかしいだろ
テンプレに2文いれとけば解決するんだからそっちのほうがいいだろ。
他がやってるから俺もだなんて小学生かよww
経緯はともかく、分かりやすいし
>>514でいいんじゃないか?
では投下してみる。
キョンがおかしい。
SOS団の活動を最近休みがちなのよね。
学校がある日は普通なんだけど、日曜日に今月二回も休んだ。
キョンは家族で出かけてたと言ったけど、妹ちゃんに聞いたら違うって。
しかもそのうち一回は女の子(北高生らしい)と出かけてたですって?
団の活動をさぼって女の子と遊んでるなんて。
べ、別に女の子と出かけてたのが気になるとかじゃなくて、団の活動を疎かにしてるのが許せないだけよ!
次の日曜日もキョンは出れないと言ってきたわ。
今回は日曜日は中止と言ったら露骨に安心してたわ。
そう、今度の日曜日はキョンの追跡よ!
なんか微妙に文がおかしい…
次回はもう少し推敲しようと思います。
ちなみにあらすじはもう出来てるんだが、その間を膨らませるのが結構難しいorz
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由だが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
Q煽られたんだけど?
Aそこは閉鎖空間です。 普通の人なら気にしません。
Q見たいキャラのSSが無いんだけど。
A無ければ自分で作ればいいのよ!
Q俺、文才無いんだけど…
A文才なんて関係ない。必要なのは妄想の力だけ… あとは思うままに書いて…
Q読んでたら苦手なジャンルだったんだけど…
Aあうう… 読み飛ばしてください。 作者さんも怪しいジャンルの場合は前もって宣言お願いしまぁす。
Q保管庫のどれがオススメ?
Aそれは自分できめるっさ! 良いも悪いも読まないと分からないにょろよ。
Q自分で作れないから手っ取り早く書いてくれ。
Aうん、それ無理。 職人さんにも色々あるのよ。
Q 投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A 拒否しない場合は基本的に収納される。 これは僕にとっても規定事項だ。
これでいいかな?
本当はこの下に文句が5行くらいあったが、大人気ないので消した。
成層圏より広く、マリアナ海溝より深く反省している。
再度ここから谷川流スレ再開 お目汚しスミマセン
挿入する。
実行。
終了。
>>522 この流れでよく投下した
だが、もう少し書き溜めてから投下したほうがいいと思う
短いと批評もしづらいしね
ああ、
>>520は涼宮ハルヒの疑惑で。
過去に同じタイトルでてないよな…
>A 拒否しない場合は基本的に収納される。 これは僕にとっても規定事項だ。
嫌な奴を…
「おい古泉、ここは何だってこんなに荒れているんだ?」
「わかりません。ですが、このように考えることはできます」
「まさかこれもハルヒが絡んでいるとか言い出すんじゃないだろうな」
「そのまさかです。涼宮さんのイライラが一定量に達すると、掲示板に荒らしが現れて
スレの雰囲気を破壊していきます」
「お前の力で何とか出来ないのか?」
「残念ですが、この程度ではどうにもなりません。もっと大々的に荒らすようになれば
削除することもできるのですが」
「このまま放っておいたらどうなる」
「そのうち要求がエスカレートしていきます。今はまだ、テンプレの改変くらいで済んで
いるのですが、最終的にはスレ自体が乗っ取られてしまうでしょう」
「俺たちはどうなる?」
「わかりません。新しくなったスレに書き手がいるのかどうか、そうなってみないと
何とも言えないですね」
「じゃあどうすればいいんだ」
「簡単なことです。みんなでSSを投下すればいいんですよ。涼宮さんがそれを読んで
満足すれば、荒らしも自然にいなくなります。2人とも、そこにいるのでしょう」
「ふえぇぇ、わ、私もですかぁぁ」
「……涼宮ハルヒが満足するレベルのものは、私には無理」
「困りましたね。やはり、今回も貴方にお願いするしかなさそうです」
「俺か?長門にも出来ないことを俺がどうこうできるとでも思っているのか?」
「難しいことではありません。貴方が感じたことを、そのままに書けばいいのです」
「さて、パソコンの前にいる皆さん。もうおわかりでしょう。貴方のご活躍をお待ちしています」
「が、頑張ってくださいね」
「……期待」
>>528 陰謀読んでてちょうどそこだった。
他に特徴のある口調の奴が思いつかなかったetc
他にいい奴いなかったっけな…
新川さんや森さんは… だめだなぁ、際立たないし。
>>523 それでいいと思いますよ。
>>529 テンプレの不備を言うことと荒らしを同一視されるのは困るが
あんまり言ってもスレが荒れるだけなのでロムに移行するよ
どう見てもID:ioku4zNgの発言が21才以上に見えん
>>531 いや、ロムに移行するんじゃなくて、SSを書いて投下してほしい
と思っていたのだが。何でもいいからさ。
無視するのが一番ですよ
>>518 エロパロ板ってか、2chの常識だろ。
ブログで2chの過去ログ掲載してる人もいるんだから。
そもそも著作権云々って言うんならコテ名乗るなりすればいいんだからさ。
知らなかったってのは2chだけじゃなく社会全般で通用しない。
21歳以上ならわかるだろ?大人なんだから。
それに管理人も厚意でやってんだから、アホじゃないのか、ってのは止めよう。
21歳以上ならわかるだろ?大人なんだから。
でも、テンプレ入れるのには賛成。
特に不都合なんて無いしね。
てかもう入れてるし。
>>523、乙
>>532 ID:ioku4zNgの発言が21才以上に見えんて言うけど、それはどうだろう。
21歳以上でも、カッとなってって事もあるしさ。
ちょっと配慮が足りないと思うけど。
長文すまん
まあ、元々テンプレ作った本人だから修正案がきたら直さないといけないわけで。
調子に乗ってあと2パターン作ってしまった。 封印しとく。
つうか、テンプレに保管庫のリンク入ってるし、保管庫のどれがお勧め?なんて文もある。
気が付かない方が変だろ。
>>520の続き
「涼宮ハルヒの疑惑」
古泉君にその話をしたら、尾行のプロを連れて来た。
なんと新川さんだった。
なんでも、新川さんは元は凄腕の傭兵だったらしい。
私はキョンへの罰ゲームを考えつつ、新川さんから尾行のコツを聞いた。
しかし新川さんがこんなに饒舌な人だとは思わなかったわ。
何しろ段ボールの話を一時間も話すんだもの。
ためになったのは最初だけだったけど、面白かったからいいわ。
さて、いよいよ明日。
キョン、覚悟しなさい!
次はまじめに書きます。
ネタが思い付かなかったもんで。
ごめんなさいorz
>>539 傭兵ってのは、新川さんの中の人が関係してるのかw
ダンボールてw
それなんてソリッドス(ry
確かに4のスネークは新川さんにちょっと似てるな。
>CXelfYEG
お前がいちいち過剰反応してるのが余計に荒れを助長してるということにまだ気付いてないのか?
前に荒れた時も「お前がテンプレ書いた人間だから…」と自意識過剰に暴れ回ったおかげで妙な流れが長引いてた。
自分に対する反対意見があると汚い言葉で罵り倒す癖に、言い返さなくなると「もう一度テンプレを見て落ち着け」
馬鹿か。ここはID非表示板じゃないんだからな。言動にもっと気を使え。
大荒れの模様です。
そんな餌には釣られないにょろ〜
548 :
ジョン・スミス:2006/07/04(火) 21:43:12 ID:M0XNJGLY
>>544 まあまあ、そう言わずに
投下させてあげましょうよ。
しきりなおし
>>545 頼むから自分の書き込みを見直してください。
諌めるならもう少し丁寧な言葉遣いを心がけるべきでは?
>言動にもっと気を使え。というならどうして馬鹿とかつかっちゃうんだろう?
なーんかもうハルヒ関連スレは餓鬼ばっかりだな。
自重しろ。
もうパラドックスはあきますた
>>550 諫めるというより、本気でどっかに消えて欲しい。
スレ番一桁の頃からウザくてしょうがなかったよこいつ。
キョンが中学生のとき、親しかった女生徒って
どういう感じで話に関わってくるんだろうね。
原作でそのことについて語ってないから
SSは無理だな・・・妄想はできるが・・・
>>553 だから21歳以上ならTPOをわきまえて書き込んで欲しいわけで……
そう思ってたとしてもその書き込みがスレの空気を悪くするわけで……まじでおねがいします。
557 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 22:04:39 ID:EPV1rnmH
今までENOZの面々が主役のやつってあったっけ
すまんageちまった('A`)
>>556 いい加減スルーを覚えないか?
とても21才以上の人間の対応とは思えなくなってきたのだが…
「スルーできない人が荒らし」
これが2CHでは絶対の不文律なんだからさ…
>>539の続き
「涼宮ハルヒの疑惑」
日曜日。とうとうこの日がやってきた。
妹ちゃんから聞いた話だと、キョンは女の子と商店街に行くみたい。
家から尾行しようと思ったけど、気付かれたら元も子もないもんね。
商店街の路地裏で隠れましょう。
とと、もう来たわ。キョンと女の子が てくてく歩いてる。
後ろからだから、相手の顔はよく見えないわね。
なんか御嬢様みたいな服装だという事しか判断出来ない。
うわっと。いきなり振り向かないでよ。
段ボールがなかったらばれてたわね。危なかったー。
さらに尾行を続けて10分、キョンは 雑貨屋の前に立ち止まった。
周りを見回した後、女の子と店に入ったんだけど、一瞬その子の顔が見えた。
あれは、さ、阪中さん?
そういえば、最近私が学食から戻って来るとよく喋ってたわ。
…なんだろう、この変な気持ち。
私は、尾行をやめて家に帰った。
ID:CXelfYEG=ID:yCVo0U5Gなんだろうけどさ、
キミがレスしなけりゃもう終わってると思うんだ、この話題。
やっぱりなんか微妙におかしい文になってる。
多分眠いからだな。
すみませんが、続きは明日にします。
>>561 ナイスタイミング、キョン×阪中は新しいな・・・
続き楽しみにしてる。あと、もう少しできてから投下たのむ・・・
565 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 22:14:42 ID:EPV1rnmH
>>561 ちょっと待て、つまりそれはハルヒが街中をダンボールで歩いていたということだな?
( ゚д゚ )またやっちまった
最近、精神病院に入院しているキョンの夢オチっていう妄想にとらわれてる
>>520 GJだけど、書き蓄めてから投下しなさい!
これは団長命令よ!
今は反省している。
投下できねぇ……。
公園で昼飯を食べ終えると、何をしていいのかよくわからなくなった。
俺たち恋人同士なんだよなぁ、と有希のほうをちらりと伺ってみるが、あまり実感は沸かない。
弁当を用意していたのに、飲み物が無かったため、俺は自販機で缶コーヒーを2本買い、1本を有希に渡した。
コーヒーが冷め切ってしまうまでの間、ずっと有希に話しかけてみたものの、反応はあまり芳しくはない。こんな外でキスしてくれるくらいに俺のことが好きだっていうのなら、もうちょと反応してくれたっていだろうに。
放課後の部室で有希とエッチしてから、どんどん有希のことを好きになって、何度かエッチもして、そしてようやくの初デートだ。
だというのに、あまりデートっぽくない。普通のデートというのがどんなものなのかというのにもよるだろうが、少なくとも俺が描いていたプランとは大きく外れていた。
まぁ有希の作った弁当が食べられたのはラッキーだったし、これからどうするかだ。
「どうする? どっか行きたいところとかあるか?」
「……わたしの家」
「なんだ、帰るのか?」
「そう」
なんだか、デートという感覚がまったくないな。つい溜め息をこぼしてしまう。
結局、普通の恋人のように付き合っていくことはできないのだろうか。いや、今はそうかもしれないけど、これからはきっと違うだろう。
いや、有希も普通の人間と同じように、興味を持つものだってある。それが何なのか、今はあまりわからないが、いずれ俺にも分かるかもしれない。
その時、隣にいてやればいい。
「よし、行くか」
そう言って、中身が空になった缶を、そばにあったゴミ箱に放り込んだ。
「でも、まずは買い物に行って、夕飯の材料を買う」
「晩飯も作ってくれるのか?」
こくりと有希が頷く。自信ありげに見えたのは、錯覚じゃないだろう。
「そうか、楽しみだな。荷物持ちくらいなら手伝うぞ」
本をどうやって持つかが問題だが、買い物先で大きめの袋の一枚や二枚多めに貰えばなんとかなるだろう。
二人で近所のスーパーを訪れ、あれやこれやとカゴの中に放り込んでいく。
有希は早々とカゴから溢れるほどの品物を片手で軽々と持ちながら、レジで清算を済ませていた。
あれを俺が持つことができるのかどうかが問題だ。
572 :
9-27:2006/07/04(火) 22:18:46 ID:XBZxhYHk
もう何度も訪れた有希の家で、俺は壁にもたれて大きな欠伸を繰り返した。
テレビも無いものだから、暇潰しになるものが何もない。有希が借りてきた本でも読もうと思ったが、数ページ読んだだけで投げ出した。
物語の序盤からいきなり設定の説明みたいな描写が続くのはどうなんだ? もっとキャッチーな始まりかたにしてくれよ。
おそらくSF好きな人間にとっては、この設定如何によって内容がどの程度SF的現実味を帯びているのかを探ることもできるんだろうが、生憎俺はSF好きじゃない。
とりあえず、有希が面白いと思った本だけ今度読んでみよう。
さて、有希はというと、キッチンで料理をしていた。どうやら和食らしく、醤油と味醂の甘ったるい匂いが届いてきた。
器用に包丁を使って、大根を桂むきしている。一体どんな料理が出てくるのか、楽しみではある。が、退屈だった。猫はいいね、退屈に強くて。
有希は制服の上から薄い青のエプロンを羽織っている。エプロン姿を眺めるというのも、なかなかオツなものだ。
退屈が度を過ぎたせいもあって、俺は立ち上がって有希の後ろまで歩いていった。有希の髪の匂いがほのかに鼻腔をくすぐる。
匂い立つ有希の体温が、肺を満たした。
「なぁ、有希。何作ってんだ?」
包丁を持ってるから、このまま抱きつくのは危険だろうな。残念だ。
「鯛の刺身にカブト煮。それとお味噌汁にほうれん草のおひたしと冷奴」
「和食全開だな……。いや、好きだけど」
コンロの上にある圧力鍋らしきものの中には、鯛が潜んでいるのか。何気に高級食材を使うところが憎らしい。
大根は、鯛と一緒に煮込むためのものだったらしい。面取りをして、軽く切り目を入れていた。
「待ってて」
「ああ」
つっても、まだ夕飯には早い時間だ。太陽さえ沈んじゃいない。
こうやって料理をしている有希は、俺の目が確かなら楽しそうに見えた。俺の質問にも答えてくれたし、俺を気遣う言葉も聞けた。
あとは待つだけか。その待つという行為が大変なんだが……。
573 :
9-27:2006/07/04(火) 22:19:32 ID:XBZxhYHk
軽い眠気が頭を鈍くする。何もすることはなかったが、料理をしている有希を見ているだけで幸せな気分になれた。
無愛想も度を過ぎているが、それも有希らしくて良い。いやぁ、本当にかわいいなぁもう。
いっそ世界中に向かって俺は有希を愛してるぞー、と叫びたい気分だが、ハルヒに聞きつけられると俺が困るからな。どっか小さな穴にでも暴露してみるか。
具体的には有希の小さな穴に。
「有希、好きだぞ。愛してる」
「わたしも、あなたのことを愛してる」
なんて嬉しいことを言ってくれるのだろう。有希がこうやって、気持ちを言ってくれるのがどれだけ凄いことなのか、きっと俺にしかわからないだろう。
我慢できずに、そっと有希の腹部に両手を回した。顎を有希の肩の上に乗せる。
何度も有希、と名前を呼んでみる。そのたびに、有希はくすぐったそうに身をよじらせた。
「味が染みるまで、もう少し時間がかかるから」
そう言った有希は、俺の手元をするりと抜けて、炊飯ジャーの炊飯スイッチを押した。わざわざ米を浸漬させておくあたりが細かい。
コンロの火を落とし、まな板をシンクの中に置く。布巾で周りを拭き終えた有希は、最後に手を洗った。
「お前なら、いい嫁さんになれるな」
「……」
「有希が毎日俺のために料理作ってくれたら嬉しいのにな」
「いい」
「それは、どっちの意味でだ?」
「わたしは、あなたのために料理を毎日作ってもいい」
「……マジか?」
半分冗談のプロポーズじみた言葉に、有希は本気で返事をしてきた。
嘘ではないのだろう。有希は俺の目を見つめていた。
「だったら、ずっと一緒だな」
「ずっと一緒にいてくれる?」
「ああ、もちろんだ」
「……うれしい」
有希が、うっすらと、笑った。
そう結論づけるのに、愚劣なる脳みそがどれだけの時間をかけたことか。それは、朝顔が一日で伸びる高さほどのわずかな変化だったかもしれない。
笑ったというには、あまりにも変化は少なかった。ほんの少しだけ、唇を横に引いて、目を細めただけの、笑顔。
574 :
9-27:2006/07/04(火) 22:20:07 ID:XBZxhYHk
「え? マジで言ってんのか?」
こくんと力強く頷く有希。まったく迷いは無さそうだ。
酸素が足りない。溺れた者が水面を求めるように、俺は有希の体を抱き締めていた。
頭の中で火花がパチパチ音を立てている。有希は、なんて言った? 俺と一緒にいられることが嬉しい?
笑ったんだぞ、有希が。
「有希」
唇が触れ合う。荒々しい口付けに、有希が応えてくれる。
もう、何もかもが足りない。どれだけ有希を強く抱き締めたら、今俺が抱えている渇きが癒せるんだろう。
胸が痛い。心臓がスピードメタルのドラムじみたリズムを刻んでいる。有希の唇、舌も何もかもがいとおしい。
このまま有希を食べてしまいたいくらいだ。
気がついた時には、俺が有希を床に押し倒していた。服を脱がせている俺が、桃にかじりつくように有希の唇を覆っている。
何をやってるんだ? もう段々わからなくなってきた。セーラーのリボンを解いて投げ捨て、有希は俺の行為を受け入れるように服を脱ぎはじめている。
唇だけで繋がっている俺と有希。誰かを好きになるのは、こんなに苦しいことだったのか?
俺は有希の舌を吸い、有希の股間に手を伸ばしてショーツの上から秘部を揉んでいた。硬い恥丘の向こう側は、有希が分泌した液体でぬめっていた。
瞬く間にショーツは水気で一杯になる。スカートが邪魔だ。ホックの外し方がわからず戸惑う俺を見かねてか、有希が自分で脱いでくれる。
軽く腰をあげて、足から引き抜く。上も全部脱がせた。俺も自分の服を破ろうとするような勢いで脱いだ。
上半身裸になった有希の胸に口付け舌で淡く色づいた乳首を転がす。自分の股間が猛烈に勃ちあがっていることに今ごろ気づいた。
靴下以外脱ぎ捨てて裸になると有希の体温が直に伝わってくる。狂おしいほどの熱さが俺の神経を焦がした。
有希のショーツをだらしなく脱がせるとすぐさま俺のモノを有希の中へと押し込む。有希のことを気遣う余裕が脳みそから蒸発していった。
575 :
9-27:2006/07/04(火) 22:20:38 ID:XBZxhYHk
「有希っ、愛してるぞ」
鈍い快感が腰を溶かす。暖かい。このまま有希の体へ溶けてしまえたらどれだけ気持ちいいだろう。俺は猛然と腰を打ち付けながら有希の名前を呼び続けた。
有希は俺の行為を積極的に受け入れようと両手を俺の腰へ回している。苦しげに吐き出される吐息を吸い込みさらに口付ける。
キスと呼ぶにはあまりに荒々しい。お互いの唾液がどちらのものともわからないまま有希の喉を流れていく。
後悔したばかりなのにまた俺は有希の体を夢中で貪っていた。
何度も有希の中を行き来して鈍い水音と肉のぶつかる音の数を増やしていく。
ずっと一緒にいてると訊いた有希の言葉が俺の頭の中で繰り返された。ああずっと一緒にいよう。
「有希、俺はお前とずっと一緒にいたい。お前がそう望むのなら、俺がくたばるまで一緒にいてくれ」
顔を覗き込んで俺はまた驚愕。赤く染まった頬と潤んだ瞳。そして有希の喘ぎ声じみた吐息の数々。
有希は喜んでくれているのだ。俺の言葉と何度も重ねたキスで。
もう限界だ。下半身から突き上げてくる快感もそろそろ登りつめている。
このまま出してやれ。有希の一番奥に。
信じられないほどの痙攣を起こしたかのように体が跳ねる。何も言わないまま俺は有希の体の中に精液を放っていた。
足が痺れてるのに無理やり立とうとしてる時のように呻き声が喉から溢れる。
その体を抱き締めると、有希も両手を俺の首筋に回してくれた。一時的に癒される渇き。
片息を吐いてみても体が収まる気配はなかった。
ずっとこうしていたいと思った。
有希はぎゅっと俺の首に手をまわして抱き締めてくれている。一人分の席に二人で座ろうとするような窮屈さが心地よかった。
まだ硬度を保っている俺のモノは、有希の中で何度かぴくりと跳ねていた。息をする度に心が満たされていった。
触れ合っているだけで気持ちよかった。多分、俺は世界で一番幸せなんじゃないだろうか。
「有希……」
たまらなくなって名前を呼ぶ。何故か涙が溢れそうだった。
有希が傍にいてくれる。ずっと一緒にいてくれると言った。
そっと頭を撫でてくれた。夏の青空を見たかのような懐かしさが体に染みて、くすぐったくなる。
目を閉じて、俺は有希の体の上に崩れ落ちた。
576 :
9-27:2006/07/04(火) 22:21:40 ID:XBZxhYHk
ナイフのように尖った視界の中に、有希の顔が滲んで見えた。
「……寝てたのか」
視界をこじ開けるように、うっすらと目を見開くと、ぼんやりしていた焦点が合う。
どうやら仰向けに寝ていたらしい。そして、すぐ眼前には有希の無表情があった。どうやら、有希とエッチに励んだ後、眠ってしまったらしい。
有希は裸のままだった。下から覗き込むような格好なので、柔らかく膨らんだ下乳がよく見える。絶景だ、思わず開け始めていた目を細めてしまう。
って、膝枕かよ?! ようやく感覚が戻ってきて最初に思うのがそれだった。さらに俺も裸だ。チンコ丸出しで何やってんだ俺?!
「わ、悪いっ。寝てた」
慌てて起き上がる。有希も俺も、靴下だけの素っ裸。冷たい床は、なんの液体だかわかんないものが染みを作っていた。
すでに太陽も店じまいしたらしい。窓の外は黒く染まっていた。
有希は少しだけ残念そうに瞳を伏せてから、のそのそと俺が脱がせた服を着込み始めた。
さすがに濡れたショーツだけはそのまま履く気になれなかったのか、ショーツを摘み上げるとじろじろと眺めていた。
そのまま洗面所に向かう。
俺も服を着るとしよう。
しばらく待っていると、制服姿の有希が出てきた。
無言でキッチンに向かっている。俺は何も言うことが出来ずに、有希の後姿を眺めることしかできなかった。
なんとなく気まずい。
時計の秒針の音がいくつも積まれて、崩壊しようとしていた。
こういう時は俺が何か言ったほうがいいのか? 有希に何か発言を期待するのは無理があるかもしれない。
ヤるだけヤって、寝てしまうとか最低じゃないか。しかもまた無理やりっぽかったし。
「そ、その有希。なんか、あれだ……。悪かった」
ガスコンロの火を点け、味噌汁と鯛の入った鍋を暖め始めている。
「謝らなくていい。わたしは、うれしかったから」
「そ、そうか……」
有希は食器棚から、来客用の茶碗などを取り出してお盆に置くと、コタツ机の上に持ってきた。
さらに電子ジャーのコンセントを引き抜き、机の近くに寄せる。
「なんか手伝おうか?」
「いい、待っていて」
「ああ……」
>>561 段ボール持ち歩いてんのかwwwww
でも楽しく読ませて貰ってます。
578 :
9-27:2006/07/04(火) 22:22:10 ID:XBZxhYHk
有希の手料理は美味かったんだが、気持ちがなかなか上向きにならず、何をどう食べていたのかもよくわからなかった。
のそのそと食べる俺の様子を、有希がじっと見詰めてくるものだから落ち着けもしない。それとなく料理を褒めてはいたが、それもきちんと届いているのかはわからなかった。
満腹中枢だけがいたずらに刺激された食事。せっかく有希が作ってくれたのに、俺は何沈んでるっていうんだ。
同じことを繰り返して、また後悔している自分がたまらなく嫌だった。
俺はこんなヤツだったか? もっと醒めてて冷静なところもあったじゃないか。
食べ終えると、有希は食器を洗い始めていた。母さんなんかは、シンクに漬けてしばらく放っておくというのに、几帳面なヤツだ。
二人分だからさほど時間がかかるわけでもなく、すすぎ終えた食器をカゴに寝かせている。
有希は洗い物を終えると、音もなく歩いて座布団の上に座る。
なんとなく気まずい。有希が無言でいるからというだけの理由ではなかっただろう。俺にも問題はあったから。
ふと有希の顔を見れば、俺のことをじっと見詰めている。その無表情が俺を責めているような気がした。
目を逸らすことも出来ずに、俺もまた有希の黒い瞳を見つめる。もう一度くらい笑ってくれたっていいのにな。
どうしたもんかと思っていると、有希がすすすと俺の元へ寄ってくる。思わず後ずさりしてしまう。
「な、なんだ?」
「……」
ちょっとだけ開いた距離を、また有希が埋めに来る。
「どうした?」
「……」
何か言いたげに寄って来ておいて、無言でいるのはどうなのか。漆塗りされた碗のように黒く光る瞳に、俺の狼狽した顔が映っていた。
「だから、一体どうしたっていうんだ?」
「……もう一度」
「何を?」
「……」
「だから、黙るなよ」
「性行為」
今度は俺が黙る番だった。
無表情でいきなり何を言い出すのかなこの娘は。
今の無言は、有希流の恥じらいというものだったのだろうか。だとしたら、見も蓋もない言い方をさせてしまった俺が悪いのか。
579 :
9-27:2006/07/04(火) 22:22:55 ID:XBZxhYHk
こんなところではなんだからと、奥の寝室へと移動した。
いつ来ても敷いてある布団の上に、二人して座ってみるが、こう向かい合った状態からエッチに突入しようというのはなかなかに難しいものだった。
部屋の明かりも落としてあるので、有希の薄ぼんやりした輪郭くらいしか見て取れない。
互いに無言になる。
しかしどうしたものか。もう少しムードみたいなものがあってもいいと思うんだが、この段階で期待するのは難しいだろう。
そもそも、有希から望んでくるというのが意外だった。こいつにも、ちゃんと性欲みたいなものがあるんだろうか。
「脱いで」
……考え事をしているところに、淡白な有希の声が飛ぶ。しかも脱いでってあなた。
溜め息が今にも足を滑らせて落ちそうになった頃、有希は俺の服に手をかけてきた。有希の手をわずらわせるわけにもいかず、俺は着ていたシャツを脱ぎ捨てる。
「全部」
つまり裸になれと……。もうすでに体を重ねまくってるんだから、今更とはいえ、気恥ずかしいものがある。
俺が逡巡しているところに、また有希が手を伸ばしてくる。
「わかったわかった……」
ズボンを脱いで、部屋の端に放っておく。長く履いていた靴下も脱ぎさった。
次は有希が脱ぐ番だろう。
そう思っていると、有希は突然俺の股間に手を伸ばしてきた。
「うおっ」
半勃ち状態だった俺のモノを手で掴むと、柔らかく揉んでくるではないか。
むくむくと血が注ぎ込まれる海綿体が、限界まで空気を入れられた風船のように膨らんだ。
膝立ちになった有希は、そのまま俺の体を後ろへと押し倒す。
「お、おいっ?!」
首だけで有希のほうを見ると、まさに有希はその唇を俺のモノに近づけようとしていた。
「有希?」
「……大丈夫」
まさか、あれか? エロ本の中でよく見るようなアレをしようとしてるのか?
一体何故だ? 有希はどうしてそんなことをしようとしてるんだ?
疑問符だけが夏の蚊のように俺の周りと飛び回る。ええい、うざったい。
580 :
9-27:2006/07/04(火) 22:23:57 ID:XBZxhYHk
有希は俺のモノを手で掴むと、片手で短い髪を軽くおさえていた。
冷たい手の感触が、熱く滾った股間を一層燃え上がらせる。有希がそっと亀頭に口をつけた。
わざわざ、ちゅっと音を立てて先端を何度か唇で啄ばむ。俺の脚の間で、威嚇行為をする猫のように高く尻を掲げて、俺の股間に顔を埋める有希。
舌を唇からだらりとさげると、舌先に滴らせた唾液を俺のモノに垂らした。
「うっ」
唇で俺のモノを咥える有希。目を閉じながら、深く喉の奥へと促していく。
口腔の熱が腰を溶かす。有希の口の中で蠢く舌が、さらに俺のモノを刺激していた。
そのまま顔を上下させ、唇を使いだす。
暖かい。
それは有希の膣に挿入している時とはまた違った感覚だった。いつも無口で、無表情な有希が、その小さな口で俺のものを咥えている。
手を使って扱き、溢れる唾液を垂らして、舌を使って舐めあげていた。
ふと目を開けて、俺の表情を覗き込む有希。舌で先っちょをぺろぺろと舐めている。
唾液でぬるぬるになったところで、有希は一度顔を上げた。右手で俺のモノを何度か扱いて、動きを止める。
「どうした?」
「命令して」
「はぁ?」
命令って、なんだよ一体。
「……あなたがわたしにしてほしいことを」
「ちょっと待て。命令とか言われてもだな、有希は俺のものじゃないし、そんな命令できる立場でもないだろ」
「嫌なら、嫌と言う」
本気なのか。有希はじっと俺を見詰めている。
仄かに暗い部屋の中で、有希の瞳が月のように輝いていた。俺に話しかけながらも、有希は手で柔らかく俺のモノを刺激している。
「命令、ね……」
「あなたが好きなように」
「なんでだよ」
「あなたが好きだから」
俺のことが好きだという有希の表情は真剣で、少なくとも冗談の類でないのは見てとれた。
さぁ、どうする俺。俺のことを好きだと言ってくれる美少女に命令できるんだってさ。羨ましい話じゃないか。
けれどまぁ、俺にはとんでもない要求をするような度胸もないし、何より有希が嫌がるのは見たくない。
でも、有希がしてくれてるこの行為を、もうちょっと味わったっていいと思う。こうやってすぐ性欲に負けるからダメなんじゃないのか、などと冷静な俺が苦言を申してくれたが、生憎俺はそいつに耳を貸すほどの君子ではなかった。
俺が王様に生まれてたら、あっさり国は滅びてただろうな。
「じゃあ、さっきの続きをしてくれ……」
「わかった」
言うやいなや、有希は再び俺のモノを咥え込んだ。激しい上下運動に加えて、手で扱いている。
こいつ、何処でこんなこと覚えたんだ。しかも、俺の弱いところを知っているかのようだった。裏筋を舌でなぞられ、カリをくるりと舌で回される。
鳥肌がぷつぷつと立ち上がるのが、自分でもよくわかった。
口の中がどうなっているのかはわからないが、舌が複雑に絡んでくる。有希が先端を吸い上げると、思わず呻き声が漏れた。
次第に高まっていく自分を感じていた。自分でコントロールできるわけでもない、強制された刺激が絶え間無く襲い掛かってくる。
小さな唇で俺を咥え、まるで愛しいものかのように舌を這わせる。そんなに美味いものでもないだろうに。
そうするのが自然なように、有希はもじもじと体をくねらせている。
俺は激しく動いている有希の頭に手を置いた。さらりとした髪に、指を通す。
部室で大人しく本を読んでいる有希と、俺のモノを美味そうにしゃぶっている有希の姿が重ならない。
どっちが本当の有希というわけでもないのだろう。
「有希、そろそろ出るっぽい」
俺の言葉を聞いているのかいないのか、有希はさらに動きを早くした。根元に手を添えて扱き、まるで早く出せと言わんばかりに激しく動く。
あまりにも激しいものだから、皮が伸びてしまいそうだ。これ以上伸びたらかなり困る。ただでさえ、ちょっと被り気味なんだからさ。
根元に何度も痛みが走ったが、それすらも脊椎を通るうちに快感へと変えられた。
「お、おいっ」
このまま口の中で出していいのか? そんなもん、エロ本の中でやることだろ。恋人同士が、しかも高校生同士がやることなのか?
もう出る、そう思った時には、止めようのないところまで来ていた。
腰を後ろからハンマーで殴られたかのような衝撃と共に、精液が放たれた。数回跳ねたかと思うと、強烈な放出感に襲われる。
こりゃ、口の中じゃなかったらかなり飛んでたに違いない。ゆっくりと時間をかけて一人でやってる時と同じような感覚だった。
思わずぼけっとしてしまう。
重たい息が肺から溢れた。有希は、名残惜しそうに俺のモノをゆっくりとしゃぶりながら、最後に強く吸い上げた。
顔をあげ、口元を手で軽く拭うと、ごくりと喉を鳴らす。
「飲んだのかよ……」
口内発射にごっくん。そんなもん、俺のベッド下で眠ってる本だけで十分だ。
有希はこっそり官能小説でも読んでるんじゃないのか。そうじゃなきゃ、いきなりこんなことしないだろう。
いや、読んでたとしても、いきなりここまでやられるとは。
「美味いか?」
呆れながら尋ねてみる。
「まずい」
「だろうな」
有希の頭を撫でてみる。有希らしからぬ行為に驚きはしたが、気持ちよかったことは確かだし、有希が俺のことを大切に思ってくれてるからこそしたことなんだろう。
しかし、気になるのは……。
「なぁ有希。こんなの、何処で覚えたんだ?」
「……内緒」
それとなく、何度か聞いてみたが、結局答えてはくれなかった。
しまいには怒っているようだったので、追求もできず、謎だけが深まってしまった。
ヒトメボレLOVERの古泉はいよいよホモっぽいよな
583 :
小ネタ:2006/07/04(火) 22:30:56 ID:QKawBD1+
「やっぱり謎の転校生くらいは押さえておきたいじゃない」
とハルヒが言った次の日のことである。
こともあろうかうちのクラスに転校生が来てしまった。
朝のHRに岡部が連れてきた
ザンバラ髪のむっつり顔に
への字口の転校生。
「では、自己紹介をしてくれ」
岡部の言葉に何を思ったのか、そいつは敬礼をしながらこう言った
「はっ!!相良宗介軍曹であります!!」
スニーカーの賀東との対談を読んで書いてみた
今は反省している・・・
>>581 毎回毎回内容濃いなぁ…。
俺もこれで濃いの出した。ありがとう。
あなた最高。
GJ〜
みんなティッシュ探しにいってるのかパタリとレス止まって落ち着いたなw
最近1日1箱だからけっこう辛い
償却費だと思って諦めてるけど
俺も。
その代わり一回の濃度が高くなってるけどww
>>583 不覚にもワラタ。いっぺん読んでみたいネタではあるな。
……まァ書いたら書いたで駄目になりそうだから一発ネタで十分か。
久しぶりにエロがきたな。よかよか。
やはり職人が投下してくれないと腐った流れになるな。
毎度毎度のサイクルwww
作品投下ない→嵐が発狂→住民がスレ汚しに敏感に反応→作品投下ない(中止)
↑
特にこれなんとかしろよ。カスに流れ作られるのが嫌なのはわかるがスルーしようぜ。
しばらくしたら落ち着くだろうよ
キョンの話を聞いた、長門が改変した世界の『何の力も持たないハルヒの残思』が問う
何故、違う世界の『私』は不思議な出来事で溢れてるのに
この世界の『私』はつまらない日常に囲まれているのか
何故、『私』じゃないのか
かたや嫉みが呪いとなり、かたや興味が鍵となり繋がり合う二人のハルヒ
そして二人は記憶だけ保持したまま入れ替わる
『元の世界』で力を振るうハルヒ
『もう一つの世界』からキョンとともに脱出をはかるハルヒ
そのどちらも『救おう』と戦うSOS団メンバー
疲れてるのか
わけのわからん電波だ
気が向いたら使ってくれ
>>583 相良軍曹とハルヒ団長が結託してスゴイことやらかしてくれそうだなw
小ネタで誰か書いてくれんかな〜。
俺も頑張ってみるが!
>>595 最終的にクローンキョンが、そういう結末しか思い浮かばん、鬱・・・
想像力が乏しいんだ・・・俺は・・・orz
もとの世界のハルヒが願えば一撃で元に戻っちゃうのでは
>>581 待っていた!俺はあんたの書く長門を待っていた!
ハルヒ「次回、涼宮ハルヒの憂鬱第十二話!」
キョン「違う。次回、涼宮ハルヒの憂鬱第十二話ライブアライブ!って合ってるし!すまん!」
???「予告なんてくだらねえぜ!俺の歌をきけえええええ!!!」
キョン・ハルヒ「誰!?」
602 :
グロ注意です:2006/07/05(水) 00:15:21 ID:xyNThRV1
そして僕はベッドの上に横たわる朝比奈さんにキスをした。
口いっぱいに広がる朝比奈さんの腐臭。
肌はたゆみ、肉と皮膚の間には発酵した腐肉が出すガスが、
気泡となって溜まっている。
全身ブヨブヨになった身体はコケ色に変色していた。
体内の水分が腐り、カビが生えているのだ。
ぐじゅりゅ、ぐぢゅぐぢゅぐぢゅぢゅぢゅうぅぅーーーー・・・・、
ぬちゅ、ぷちゅ、ぴちゅ、ぶちゅちゅうぅぅっ、ずりゅううぅぅううっ、
ずるずるずるうううっ
僕は朝比奈さんの喉の奥に溜まった膿のような粘液を音を立てて飲んだ。
それは僕がここ数日で何度も放出した精液と、
朝比奈さんの脳味噌から滲みでた汁が混ざったモノだった。
未来人の少女の脳は今や形すら失い、
耳や鼻の穴から黄土色の泥汁となって流れ出る汚物でしかなかった。
「・・・・・・はあっ!あぁ・・・・あああぁ・・・・・美味しいよ、
朝比奈さん。やっぱり朝比奈さんってキスが上手なんだね。
キスしただけで、ほら、もう僕こんなになってるんだ。見てよ、朝比奈さん」
僕は無造作にペニスをズボンから出すと朝比奈さんの目の前に突き出した。
しかし朝比奈さんの、本来の瞳があるべきところにはぽっかりと穴が空き、
その奥には生白い蛆虫がぷちぷちぷちぷち音を立ててひしめき合っている。
眼球は1週間も前に完全に腐り果てていた。
「朝あんなに朝比奈さんに飲んでもらったのにこんなになってるよ。
わかる?朝比奈さんが素敵だからだよ。綺麗だからなんだよ・・・。」
603 :
グロ注意です:2006/07/05(水) 00:17:48 ID:xyNThRV1
ぐりゅっ、ぞぶぶぅうっ、ごぼっ
僕は朝比奈さんの顎を掴んで口を開けさせる。
そしていきり勃ったペニスを喉の奥まで突き入れた。
そしてゆっくりと腰を動かし始める。
ぷじゅ、ぐじゅる、ぷち、ぶち、じゅるる、ぶちゅうぅぅっ、
ずるずるずりずりずるずりずるずるずる・・・・・・っ、
ぶち、ぴち、ぷち、ぷち・・・・
僕のペニスが口腔内を犯す。
段々と激しくなってくる動きに、
朝比奈さんの腐液をたっぷりとしたため膨れ上がった唇が破れた。
じんわりと黄濁液が滲み出る。
僕はその液をペニスに塗りつけるとさらに激しく腰を打ち込んだ。
上顎の皮膚がぺろりと剥げ、わずかに残っていた歯が歯茎から抜け落ちていく。
唇は根元から千切れ、ベッドに糸を引いて落ちていった。
「朝比奈さん・・・朝比奈さんそんなにしたら・・・・僕・・・また出ちゃうよ
・・・朝比奈さん・・・・朝比奈さあああん!!あっ!あぁああっ!!出るっ!!
はあぁあっ!!おおぉ・・・朝比奈さおおおおぉぉっぉぉあああっ!!!」
僕のペニスは朝比奈さんの喉の奥底にひしめき合うように湧いている蛆虫を、
次々と押し潰しその柔らかな屍の感触に震えていた。
亀頭にはベットリと蛆の臓物がへばりつき、鈴口を覆っている。
腰を引くとウネウネと身を捩りながら大きな蛆がペニスにくっついて外界へと現れた。
「朝比奈さん!ねえ、出すよっ!飲んでっ!全部、全部ううぅぅっ!!」
僕はいつものように絶頂間近なるとベッドの横においてある鉈を手にした。
そしてペニスが限界になる直前にそれを振り上げると、
朝比奈さんの白骨化しかけている胸の上に叩きおろした。
キーワードは『大人』
オレはみんなの礎になる
絶対に選択を誤らないでほしい
死んでも死姦には手を出すまい
吐きそう・・・
orz<オォウェップ・・・
注意って書いてあるんだから読まなきゃいいのに・・・
611 :
名無し:2006/07/05(水) 00:33:45 ID:EkmdRAPd
つ水
飲め609。
別のスレで笑い話として死姦ネタが出ていたが・・・
ハードなのはキツス。でもお陰で目が覚めた。4時まで起きていられそうだ
>>611 アレなもん載ってるんだから上げるなよ・・・
改変だよな?これ
615 :
名無し:2006/07/05(水) 00:41:33 ID:EkmdRAPd
613、趣味なんだ。
>>581は確かにいいんだがそれでも俺は
先の状態で最初に投下し、流れを変えようと努力した
>>539の頑張りを褒めたい
乙。流れを変えるために書きながら上げたんだろうが
続きはまとめて投下を期待してる
文の上手さや面白さもいいけど
流れを変えるといった努力も大事だと思うぜ。頑張ってくれ
どっちも乙
氏賀Y太しか思い浮かばないよママン
グロ注意って書いてあるのに読んでしまったのですね。
残念です。
>>614 アレなもん載改変ですよ。
>>618 いろいろと思い出しちゃうからその名前は言うなよ
怖いもの見たさって奴だな・・
>>595で一発書こうと試みたが、超長編になりそうな気がして挫折
これ薄い本作れるだろ
>>622 とりあえず2レス分ぐらい書いてみたらいいんじゃない?
>>604 本文の前に警告入れた方がいい希ガス。
タイトルだけだと回避しづらいからさ。
626 :
鬼畜注意です:2006/07/05(水) 01:01:20 ID:xyNThRV1
「誘拐されたハルヒ」
Amp系のヤフーグループに投稿された小説に啓発された。
1.ハルヒ
思うに、俺にはおせっかいな女だった。
頭いいし、容姿もすばらしい。
ハルヒは性格異常だけどカッコいいし可愛いい。
外出中にハルヒと並んで歩くのが、正直恥ずかしい。
それでいて、性格は最高にテンション高い。
なんといっても、宇宙人とか探してる。
並大抵の基地外ではない。
みくるさんに出会ったとき、ハルヒは「本当に乳がでかい子なのよ」といって、揉んでいた。
高嶺の花を手に入れた。
SOS団結束当時は、そう思っていた。
だが、部活生活が続いても、高嶺の花は高嶺の花だった。
部活動してもなお、ハルヒや朝比奈さんとの距離を感じざるをえなかった。
627 :
鬼畜注意です:2006/07/05(水) 01:07:29 ID:xyNThRV1
谷川やみんな、私のことをうらやましがった。
だが、同時に友人たちは、何か珍獣を見るような目で、私のことをみる。
だから、朝比奈さんの友人が来るとき、俺は少し肩身が狭い。
すると、いつの間にか朝比奈さんは人を部室に呼ばなくなった。
というか勝手に来る(鶴屋さん)
「めがっさ、昨日オナニーしたにょろ〜」
「・・・・・・」
朝比奈さんは何もしゃべらない。あうぅとかしか最近はいってない
脳みそがとけているようだ。
みんなの関係はうまくいってない。
古泉は機関との兼ね合いで忙しく。
俺は、ハルヒを、ネチネチと嬲りたかった。
そこで獣欲まるだしにレイプしてみたいという願望があった。
ハルヒは答えてくれるのだろうか?。
顔を真っ赤にしながらも、私のいうがまま。
隠語にコスプレ、SMや露出までしてみたい。
コートに股縄ひとつで、白昼の雑踏を歩かせたい。
唇をかんで、好奇の視線にさらされるハルヒのガタガタと震えて姿を想像する。
その場でオナニーをさせると、泣き出す始末にちがいない。
俺は、すばらしい気分だった。
しばらくして、朝比奈さんは転校した。
長門はここ最近来ない。古泉も休んでばかりだ。
「いいじゃない、ふたっりきりだし」とハルヒは言う。
そういうこともあるだろう。
私は、そんな風に気にも留めなかった。
628 :
鬼畜注意です:2006/07/05(水) 01:13:58 ID:xyNThRV1
それから少しして、SOS団にハルヒの画像が掲載されていた。
露出プレイを想像した俺の頭にしかない画像だった。
何でこんなものがあるのだろうか。
鮮明な画像だから、顔見知りなら一目でハルヒと分かるだろう。
駄目押しなのが、キャプションにある「変態女のプロフィール」。
そこには、ハルヒの実名にくわえて、学歴が明記してあった。
どうやら俺は、ハルヒを実際にレイプしていたのだろうか。
わからない。わからない。
人間として自分がいたくおかしくなった気がした。
俺はおかしくなった。
いらい、ハルヒを見ると少し息が荒くなる。
美しいハルヒの裸体を想像し、それを嬲り、犯し、貪ることを想像する。
俺は、男としておかしくなった。
それでもハルヒは、不満ひとつこぼさなかった。
「何?キョン。もしかして私に欲情したの?」というハルヒの言葉が、胸に突き刺さった。
たぶんハルヒは承知していたのだと思う。
想像で俺が、変態みたくレイプしていたのを。
それとも本当に、すでに、ハルヒを蹂躙しているだろうか。
つくづく、どうしようもない男なのだ、俺という人間は。
これ改変だよね?
dana
新手の荒らしかとも思えるが
一人称がころころ変わって状況がよく読めん
633 :
鬼畜注意です:2006/07/05(水) 01:19:05 ID:xyNThRV1
2.誘拐
ハルヒを誘拐した。
ハルヒを嬲り、犯し、蹂躙する。その機会がきた。
ハルヒを俺の部屋に連れて来て監禁したのだ。
家族は1ッ週間いない。旅行だ。
まさか、そこまでやるのか?
俺は自分を疑った。
しかし俺の股間は腫上り、目の前には目隠しをされていて
びくびくと震えているハルヒがいた。
時折、涙のようなものが頬を滑る。
俺の手がハルヒに伸びるとさらにびくんと震えている。
「キョン、嘘だよね。こんなことするなんて」
一人称が変わるのには意図があるのでは?
まあ性癖は様々だからいいんじゃないか
見ないようにするか専ブラでID弾きをすればいい
637 :
鬼畜注意です:2006/07/05(水) 01:23:52 ID:xyNThRV1
「俺はお前を抱きたかったんだよ」
そういった瞬間だった。いきなりハルヒの目隠しが破られ、
ハルヒが飛び跳ねた。
「やっぱりキョンは私のことが好きだったんだね」
ハルヒはにやりと笑った。
「実験、あなたの中の性欲と妄想を刺激して、涼宮ハルヒに
どのような感情を抱いているのかを知りたいから」
いきなり出てきたのは長門だった。
「そう、そのために僕達はいなくなり、涼宮さんとふたっきりの
環境を作ったのです」
古泉だった。光とともに現れた。
「なっ」
「もう、キョン君はエッチですね」
そして後ろには朝比奈さんがいた。
「な、なにを?」
「キョンー!!私をレイプするとはいい度胸じゃない!?」
「なんで、つーか、まさか!!」
「そうです。僕達の正体を涼宮さんに説明しました」
「だから涼宮さんの目的の第1である宇宙人、未来人、超能力人と
遊ぶ目的が叶えられました」
「涼宮ハルヒの次の願いはキョンを恋人にすること」
三人の異人が順々に喋り始めた。
「そうよ、キョーン。だからあんたの気持ちを知るために長門や古泉くんに
協力してもらったのよ」
「え〜、私も手伝ったじゃないですかぁ?」
「みくるちゃんは何もしてないでしょ」
「そんなぁ〜、ふみゅう〜」
「ということでキョン、私のことが好きだったんだね」
「いや、それは、それにレイプとか考えていたのは」
「それはあんたの脳を刺激する情報を送った長門が最近は陵辱小説ばかり
読んだからじゃない?」
「長門ーーーーー!!」
「なに?」
「そんなもの読んだらいけませーん!!」
「ということで僕は消えますね、後はごゆっくり」
そういうと古泉は光を発して消えてしまった。
「むふふふ、よし、ユキ、みくるちゃん。キョンを三人で
レイプしちゃうわよ〜!!」
「了解」
「ごめんなさい〜」
俺はその日、脱童貞からいきなり立たなくなるまで抜かされていた。
エロい妄想ばかりしていた俺、よく考えるべきだった。
俺は童貞だもん。レイプ以前にセックスうまくできるわけないだろ!!
あっ、そうか。
童貞だからエロいことばっかり考えるんだな。
所詮童貞にレイプとか無理ですから。
完
>>602 読んだせいで
>>641 読むときびビクビクしちゃったじゃないかw
急にホノボノ?路線にw
なんで谷川先生が出演してんの?
そこは笑った
所詮、僕に本格的な鬼畜とか無理ですからww
例のアレは収納しないように。
頼むな管理の人。
サドなみくるの話を加筆してSM板の方にのっけたんでよかったら過疎ってる向こうをお救いください。
誘導はこのスレの
>>172
つーか、そんなスレあるんですね^^
あるんです!SM板は過疎なんです!応援してください。まじで鬼畜かいてください
古泉がハルヒ犯してその犯されたハルヒをキョンが抱くって話書いてるんだが投下していいか?
文才は無いから一人称おかしいが
過疎ってますね
俺の知らないところで密かに「それ」は始ろうとしていた。
いや、正確には「始まっていた」んだ。
その日はよく晴れていた。快晴と言っていいほどの晴天だ。
なのに俺は……いや、俺含めこの部屋に集まっている5人は
何をするわけでもなく過ごしていた。
日課のような物だとはいえ毎日毎日この部屋で目的も特に無く集まっては
この作り物の笑顔と顔を付き合わせながらボードゲームに勤しむのもいい加減飽きてきたぞ。
長門は長門でいつもの指定席でいつもの如く
分厚いハードカバーのSF小説らしき物を読み耽っているし
ハルヒはハルヒで団長机で何やらマウスをカチカチやってるし
朝比奈さんは朝比奈さんで編み物なんぞをやってらっしゃる。
形から見てマフラーの様だが一体どこのどいつへの贈り物なのだろう。
今すぐ出て来い、代わってやるから。
そんな事を思案しつつ俺が古泉のポーンをクイーンで取ったと同時に
長門の手の中の本がパタン、と音を立てて閉じる。
いつからか解らんがSOS団活動の終了の合図となっているそれと共に
俺たちは帰り支度を始める。
俺が自分の鞄を手にとりいざ帰ろうとしたところで、
「すみませんがこの後少々お時間をいただけないでしょうか?」
何だニやけスマイル。言っとくが厄介ごとはうんざりだぜ。
「えぇ、今回はあなたにはご同席していただくだけで結構ですので」
同席?何だまた得体の知れん物とご対面しろとかいうんじゃないだろうな。
「それはこれからのお楽しみということで」
意味ありげなニやけスマイルでこっちを見るな気色悪い。
で、今回は俺とお前だけでいいのか?
「いえ、涼宮さんをお誘いするつもりです」
ハルヒを?て事はハルヒ関連じゃないのか?
「そうであるとも言えますしそうでないとも言えます」
何だそりゃ?お得意の持論か?
「さぁどうでしょう?」
だからそのニやけスマイルをやめろ。
「これは失敬。それはそうといかがです?お付き合い願えますか?」
いくらか腑に落ちない点はあるが付き合うだけ付き合ってやるよ。
「恐縮です」
古泉はそういってピエロの様にお辞儀をしてきた。道化か、ぴったりじゃないか。
ブギーポップ・ナガトドライヴ
「やぁ、キョン君」
放課後の屋上、夕日を背に受けて、学園祭の占い師、つまり宇宙から来た悪い魔法使いの
格好をした長門が俺を見つめる。
心なしか、その瞳はいつもの長門と少し違うような。
「長門・・・なのか?お前は?」
「・・・どうやら君には分かるようだね。さすが、といっておこう。
長門有希がエラーを起こしたのも分かる話だ」
いや普段の長門を知る人間なら誰にでも明らかに分かるぞ。
口調もそうだし、何より雰囲気が違う。
例えていうならば、テコ入れ前のヒビキと、監督更迭、テコ入れ後のアームドヒビキくらいに
違和感がある。今風に言えば、景山ザビーよりもやはり正装着者は矢車さんじゃなきゃ
ダメだってくらいの違和感だ。っていうかコイツ何言ってるんだ?
「まず、謝らなければいけない。今の僕は君の知る長門有希ではない。彼女の体を借りているのさ」
つまり・・・長門の体を乗っ取ったってことか?ありえない。そんな事ができるなんて。
っていうかお前誰だ。長門の親玉の親戚とか?
そう言うと、長門は少し顔をしかめながら、それでいてニヤけているような微妙な
表情を浮かべた。普段の長門は絶対にしない、感情の篭った表情だった。
「残念ながら・・・僕自身にも自分が何者かよく分からないんだ。僕は世界の危機が訪れたとき、
自動的に浮き上がってくる泡――そうだね、こことは違う高校の噂話では
”ブギーポップ”呼ばれている同胞もいるようだが。
僕達は”世界の敵”が現れるたび、こうして浮き上がってくる存在なんだ」
世界の敵・・・ハルヒが聞いたら大喜びしそうな大層な名前だ。しかし、なんでまた
そんな電波な正義の味方がこの高校に?確かに宇宙人、未来人、超能力者は居たりするが、
基本的には人畜無害な奴等だぞ。誓ってもいい。朝比奈さんが誰かに危害を加えるなんて
想像できるわけないだろう?
「分からないのかい?・・・世界の敵、それは君も知っている。そう、涼宮ハルヒの事さ」
「ハルヒ・・・が?」
あいつが・・・世界の敵だって・・・?いや、しかし古泉の機関とやらの見解では、
世界を思いのままに改変する事ができる、つまりそれは神の力そのもの、世界が
気に喰わなけりゃ壊す事もできる。・・・あの時のように。
「ちょっと待てよ!確かにあいつは、そのなんだ。ちょっと普通よりも違うけどな!
決して世界の敵なんかじゃない!お前、ハルヒをどうしようっていうんだ!」
「涼宮ハルヒが世界の敵になってしまったから、僕は浮かび上がってきた。
世界の敵は排除しなければいけない・・・なんせ僕は自動的だからね。
・・・おっと、そろそろ長門有希に戻らないといけない。
情報統合思念体とやらが介入してきている。
それじゃあ、また会おう。キョン君。君とは色々話がしてみたいからね」
そういうと、ふっ、と長門は力無くその場に崩れるようにして倒れた。
「おい、長門!しっかりしろ!大丈夫か!?」
長門が目を開いた。いつもの長門のようだ。
「・・・」
沈黙。というか、少しばかり驚いた顔をしている・・・ようにも見える。
俺はもう、何がなんだかですごくマヌケな顔をしているんだろうな。
「ここはどこ?」
屋上だ。
「なぜ後ろに月が?」
長門は俺の後ろに浮かんだ月を指差している。どうやらいつのまにか
空は薄暗くなり、月がぼんやりと浮かんでいた。
驚いた事に、長門は夕方から数時間の間の蓄積情報の経過と変異、つまり、記憶が一切無い、というのだ。
夕方、部室で本を読んでいたが、気が付いたら夜の屋上で俺に抱かれていた、と。
情報統合思念体は大騒ぎだろうな。
っていうかハルヒ、ついにお前世界の敵だぞ。悪の幹部をすっとばして
大首領になっちまったな。
つづく
「涼宮さん、これから少しお時間をいただけませんか?」
古泉がPCを終了させ鞄を取ろうとしていたハルヒに声をかける。
「何?古泉くん。ひょっとして異世界人でも見つかったの?!」
目を輝かせながらハルヒが身を乗り出してくる。
「いえ、残念ながらそうではありません。少しお話したいことがありまして」
そんな残念そうな顔をするな。
「ふぅん。いいわっ団員の相談を聞くのも団長の役目だからっ!!」
それから俺と古泉は朝比奈さんの着替えが終わるのを部室の前で待ち終わるやいなや
着替えを手伝っていたハルヒが有無をいわさず二人を部室から追い出した。
それほど焦ることはないだろうに。
「さぁ古泉くん、なんでも話してみなさい!!このあたしがどんな問題でもすぐに解決してあげるからっ!!」
むしろお前が関わったほうが状況が悪化すると俺は思う。
>「なぜ後ろに月が?」
MUSASHIネタに自動的に反応して笑ってしまう自分が憎い
「いえ、相談したいことがあるのは僕の友人でして。何でもかなり内密な話だそうでして人払いを頼まれたわけです」
なるほど。わざわざ放課後ハルヒと俺を誘った訳はわかった。しかしなぜ俺を呼ぶ必要があるんだ?
ハルヒだけでいいんじゃないのか?
「いえ、その友人の相談したい相手があなたと涼宮さんということでしたので」
どういうことだと聞こうとしたときドアをノックする音が聞こえた。
「おや。来たみたいですね。どうぞ、開いていますよ」
古泉が扉の向こうにいるであろう人物に声をかけると
カチャリという音と共に3、4人の男子生徒が文芸部室に入ってきた。
「紹介しますよ。僕のクラスの友人たちです。」
ハルヒ相手には名前など言ったところで無駄と知っているのか
古泉のクラスの友人たちとやらは名乗ろうともせず静かに古泉の後ろに立っている。
ハルヒは長戸にワイヤーで細切れにされるわけですね。
「それで我がSOS団に相談って何?」
いきなりぶっきらぼうに返すなよハルヒ。
「まぁそう焦らず。すこし面白い話をしましょう。」
いつも通りのむかつく微笑を浮かべながら唐突な事を言い出すな。
「涼宮さん、あなたはこの世を作ったのが誰か知っていますか?
古来よりこの世は神が作ったとされています。
神はすべての生物に等しく生を与えすべての生物に等しく死を与えました。
では神はすべて自分の思い通りに世界を作れるのか?
これはYESと言えます。すべての生死をつかさどるような存在なら
世界を自分の思い通りの世界へと改変することなど造作もないでしょう」
唐突にそんな話をし始める古泉の顔を俺は驚きの表情で見る。
おい、その話はハルヒにはしないんじゃなかったのかよ。
「すみません。少しおとなしくしてていだたきます」
古泉の台詞が終わりきる前に俺は古泉の友人とやら達の手によって押さえつけられる。
いてぇなこの野郎。
「キョン!ちょっとあんた達キョンを離しなさい!!」
ハルヒは俺に駆け寄ってこようとしたが俺と同じく
古泉のクラスの友人を名乗る奴らの手によって捕らえられた。
「古泉、これはどうゆう冗談だ」
俺の眼光を受けても微笑を崩すことなく話を続ける。
「そのような力が自らの手にはいったら……そうは思いませんか?
自らがその力を自由自在に操れるとしたら……」
「その話と今のこの状況と何の関係が有る?」
「上の方針が変わりまして。
自分達でその力を手に入れようということなったのですよ」
カチャリ。その音と共にこの部屋は密室となった。
方針が変わった?古泉が重視する方針を打ち出しなおかつ古泉が上と呼ぶ物を結ぶ単語を俺は一つしか知らない。
ということは俺とハルヒを押さえつけているこいつらも機関の連中って訳か。どうりで振りほどけんはずだ。
「俺達をどうするつもりだ?」
「最初に言ったでしょう?あなたは同席してくれるだけでいいと」
そういうと古泉はおもむろに組み敷かれているハルヒの元へと歩み寄る。
「さて涼宮さん、あなたは僕らのために力を使ってくださいますか?」
「古泉くん……さっきから一体何の話をしてるの?神って?改変って何のことなの?」
ハルヒは訳がわからんといった様子で古泉を見つめている。そりゃそうだろう、
いきなり意味のわからん話を聞かされ何の説明も無しに力を使ってくれと言われても普通理解できんだろう。
「わからなくていいんですよ。むしろ理解していただくと能力が失われる可能性があるので」
じゃあどうやって自分達の思う様に力を使うというんだ?
まさかお前らの仲間の中に長門みたいなことができる奴でもいるってのか。
「いえ、残念ながらそのような能力の持ち主はいません。
ですからこういう方法を使う事にしたんです。」
言い終わると古泉はハルヒの制服へと手を伸ばす。……まさか!?
「ちょっ!?古泉くん?!」
「やめろ古泉!!!」
しかし、俺とハルヒの静止の声も虚しく古泉の手がハルヒの制服を掴む。
「そう……服従という手を」
言葉を終えると同時に古泉の手が容赦なくハルヒの制服を引き裂いた。
あれだけ晴れていた空はいつの間にか黒い雲で多い尽くされていた。
とりあえずここまで。
次からエロ行くと思う。
文才が無いから文章おかしいか知らんが許せ。
続きは書けたらさらす予定。
665 :
携帯型ながと:2006/07/05(水) 02:41:56 ID:hKgVUDc+
その日、キョンは部室から帰る直前に長門に呼び止められた。
有無言わさず唐突に渡されたもの、それは小さな携帯ゲーム機。
「作ったの。貰って」
コンピ研であれこれしている最中に手慰みに作ったと言う。
断る理由も無く、キョンはそのゲーム機を受け取った。
その晩。
珍しく妹の襲来の無い寝室。
少し離れた場所から聞こえる猫の嘆くような泣き声をBGMにキョンはゲーム機を弄くっていた。
長門曰く「電池も電源も不要」との事。彼女の事だから永久機関ぐらい搭載したのかも。
そんな夢想をしながらキョンは電源ボタンをONにした。
【ながとっち】
背景もないにも無い、無味乾燥なゴシック文字とメニューだけが表示されているタイトル画面。
「START」のボタンを押して見ると、画面は1つの部屋を映しだした。
「あれ……長門の部屋だよな?」
そこは紛れもなく彼女の家であるマンションであった。
どうやら彼女の部屋を斜め上から見下ろしている感じである。
そして、そこで生活しているのはやはり長門。
緩い線と塗りの甘い配色、三頭身ではあるが長門である。
表情はやっぱり無表情だ。この辺は現実と全く変わらない。
彼女はリビングでじっとしていたり、本をひたすら読んだり。
窓の外をじっと見つめたり、何故か画面の方を伺うような仕草をした。
「……やけにリアルだよな、これ」
そんな事を呟いて観察を続けていると、長門がバスルームの方へと入っていく。
普通の育成ゲーム等ならそこで画面外で見えなくなるところだが……
666 :
携帯型ながと:2006/07/05(水) 02:54:28 ID:IhYnBStO
突然、画面が切り替わる。ゲーム画面からビデオ画面へと。
「ぶふぅ!」
そして映し出される長門の入浴シーン。
股間とささやかな乳房に手を這わせ、浴槽の中で自慰なんかしている。
勿論、ぼかしやモザイクなんて無粋なモノはない。ご丁寧にも画面に向かって正対でご開帳。
しかも顔を僅かに赤らませて「んっ、キョン……」等と呟いていた。
30分後、長門はようやく風呂から上がった。
画面も元のゲームモードに戻っている。
鼻血と目眩に悩まされながらも、キョンは観測を続けていた。
しかし顔色は随分と悪い。童貞学生には少々きつかったらしい。
何せ、自慰をしている長門に自分の名前を呼ばれたのだ。
頭と心臓はハルヒが除夜の鐘を打ちまくっているかのよう。
せがれはいまやキリン首のママのようにそそり立っている。
今、長門が視界内に居たら、有無言わさずオカカワリしてしまいそうな勢いで。
そうか長門は俺に気があるのかいやそうじゃなくてこういう時は古泉に電話をしてて言うかなんであんな奴に。
良い具合にパニクっていると、バスタオル一枚の長門が画面に現れた。
暫しの間、迷うように彼女は部屋の中をウロウロする。
時たま、画面の方をちらっと横目で見ながら。
何だろう、いやに強い視線だ。
そう、キョンが感じた直後。
決心したのか、長門はバスタオル姿のまま玄関まで行きドアを開けた。
がちゃり。
「え……?」
自室のドアが開く音が聞こえる。
キョンが後ろを振り向くと、そこに立っていたのは。
「……して」
シトシトと水滴が落ちた床に、バスタオルが滑り落ちた。
暗い、湿った空気の部屋の中。
静かになったキョンの部屋で、ゲーム機の電源が自動的に機動した。
画面には一言、力強い筆文字で
【合体完了】
とだけ表示されていた。
完
↑GJ
俺もその携帯ゲーム欲しい!!
何故か釣りバカ思い出した。GJ!
合体という文字を見るとまず釣りバカ日誌が浮かぶ。
ところで、勝手に書いてからずっと待ってるんですが>260はまだですか?
『長門有希の酩酊』
「なによぅっ! キョゥン! あんたっ、あたしの酒が呑めないってわけ!?」
息を吹きかけるな。そんな近くから睨むな。
「キョンくぅん、このジュース美味しいですぅ」
それはジュースじゃないんですよ、朝比奈さん。
「みなさん随分酔っておいでですね」
古泉、お前はほんのり頬を染めるな。気持ち悪い。
「……」
……長門はまったく変わらないな。
ここは長門のマンションの部屋。辺りに散らかっているのは酒瓶とかビールの空き缶とか
つまみの乗ってた皿とか裂きイカパックの残骸とかである。
終業式も終わり、「無事三学期が終了したこととSOS団団員が全員進級できた事を
祝う宴」とやらがハルヒの主導で始まってから二時間。買出しに行くまで
健全な高校生らしくジュースとケーキで祝おうと思っていた俺の思惑を打ち砕いたのは
ハルヒの鶴の一声。
「祝宴なのにアルコールが出ないのは間違ってるわ!」
いや、未成年の飲酒のほうが遵法精神あふれる一般市民的には間違ってると思うぞ。
そんな俺の突っ込みなんぞはまるっきり無視して準備されたのが鍋とビールと焼酎と…
とにかく多種多様なアルコール類。
飲み始めてすぐに真っ赤になってクスクス笑いながら「いやだっ、キョン君たらっ!」
みたいな恋に落ちてしまいそうな声と肩をパシパシ叩いてきたのは朝比奈さん。あと
お願いですから「暑いですぅ……」とか言って胸元をはだけるのはやめてください。
我慢できなくなりそうです。
「僕はあまりアルコールには強くないんですよ」
とか言いながら、カパカパグラスを開けている古泉。お前それ手慣れてるぞ。組織ではそんな
訓練までしてんのか。
ハルヒはといえば、……目が据わってる。
睨み殺されそうな視線はなんとかしてくれ。
「……ギョン」
濁ってる。目もセリフも。
「さっきかぁアンタみくるちゃんのことばっかり見て」
微妙に呂律の廻っていない口で恨みがましいセリフを吐いてくる。
いやそりゃ確かに見てましたが。でもそれは不可抗力ってもんだろ。あんな悩ましい
谷間の曲線が目の前にあったら誰だって見るってもんだっての。
「目つきがイヤラしいのよぉっ! なによっ、このおっぱい星人!」
なんじゃそりゃ。
真っ赤になってにらんでくるハルヒ。
茹でタコみたいな顔のままで何か思いついたのかニヤリと笑う。
…お、お前っ!?なにをする気だ?やめろっ!?
「そんなに見たいなら見ればいいじゃ――「馬鹿っ」」
ブラウスの胸元を開けようとするハルヒの手を慌てて掴んで止める。
俺の手を引き剥がそうとするハルヒ。
そうはさせまいとする俺。
「ばかっ、キョンっ! そんな…」
半ばハルヒの身体にのしかかるような体勢になってしまう。
ちょっとまずい。いやかなり。
朝比奈さんは酔った顔をさらに赤くして手を覆った指の間からコッチを見てる。
古泉はあのわざとらしい笑みを張り付かせてニヤニヤしてやがる。
ハルヒは真っ赤になったまま俺の手を…じゃなくて俺に手をつかまれながら
まるでショートしたように俺を見ている。
まずい。
まずい。
こぽこぽこぽこぽこ。
沈黙を破るのはそんな音。
「……」
「有希?」
空になったハルヒのグラスにビールを注ぎ込んでいるのは長門。
クリーミィな泡がグラスの上三割を占めるという黄金比の注ぎ方だ。
長門はそのグラスをハルヒに差し出して
「飲んで」
とだけ言う。
長門、ちょっと強引だけどとりあえずナイスフォローだぜ。
視線だけで誉めると長門はわかった、というようにこれまた視線だけで肯いてくる。
ハルヒはそのグラスを受け取るとくいっと一気に開ける。
こいつ飲みっぷりだけはいいんだよな。普段から飲んでるのか?
気がそがれたのか、グラスを開けたハルヒは今度は長門に絡むことに決めたようだ。
「いい? 有希はこういうヘンタイなんかに関わりあっちゃダメよ」
こうしてみると平均的な体格のハルヒと小柄な長門は姉妹みたいに見えなくもないな。
「有希は可愛いから、キョンみたいな悪い虫がつかないようにあたしが見張っててあげるわ」
……まあその実は「暴走して周囲に迷惑をかけまくりの愚姉」と
「無表情でその尻拭いに奔走する賢妹」みたいなもんなのだが。
「悪い虫ではない」
いつになく強い口調の長門。
「彼は悪い虫などではない」
小さいが芯の強そうな声で長門はそう言っている。
「……まあ、そんなに悪いってほど悪くは無いかもね。有希がこう言ってるんだし、
普通の虫にしといてあげるわキョン! 感謝しなさい」
俺に指をびしっと突きつけながらハルヒ。
虫呼ばわりされときながら感謝せねばならんのか、俺は。
長門はそれで満足したのか、いつもの無表情でビールのグラスを口に運ぶ。
薄い唇が柔らかくガラスの縁に押し当てられる。ああ、俺はいっそグラスになりたいね。
「あら? 有希も結構いける口? よーし、じゃあ今日はじゃんじゃん飲むわよー!」
「おい、長門にあんまり飲ませるなよ」
「……大丈夫」
まあ長門が大丈夫ってんなら大丈夫なんだろうけどさ。
そしてそれから何度目かの乾杯があったあとで。
俺と長門はキッチンで片づけをしていた。
「長門。ゴメンな」
「何が」
「あいつら飲むだけ飲んで騒ぐだけ騒いで、結局お前にだけ片付けとかさせちまって」
結局ハルヒも朝比奈さんも古泉も轟沈。ハルヒと朝比奈さんはそのままにするわけには
いかないので和室に布団を敷いて長門と二人で運んで寝かせた。古泉はどうでもいい。
「……構わない」
「……構わない」
「そうか」
「…………そう」
セーラー服のままキッチンの流しに向かい、グラスをスポンジで洗っている長門。
白くてすらりとしたきれいな足がスカートから生えている。
なんか、こーゆーのは若奥さんみたいで可愛い。
……いや、俺にはそういう属性は無いはずなんだが、これは長門が可愛いから
こう思えているんだろうか。そんなことを考えながら長門に皿を渡す。
皿を渡そうとして長門と指先が重なった。
びっくりするほど小さくてか弱い女の子の指に俺が驚くのと同時に、長門は「びくっ」
と全身を震わせた。
皿が二人の手の間を滑り落ちる。
そしてぱりん、という乾いた音がキッチンの床から響く。
「……悪い」
と、咄嗟に謝ると長門は意外な言葉を言ってきた。
「……あなたが悪い」
いつもの長門なら大丈夫だとか問題ないとか言ってくるのだが。
そう考えてしまった俺はなんか長門に甘えすぎていたかな、と反省する。
長門はいつでも許してくれると思っているのならそれは俺の間違いだ。
「悪いのはあなた」
そう繰り返す長門の声に胸の中を刺されるような痛みを感じる。
「いや、ホントスマン。この詫びはなんでも――」
「……もう限界」
何かを押し殺すような苦しげな言葉とともに、熱い吐息と小柄な身体が俺にぶつかってきた。
「――なっ!?」
長門は俺の胸に抱きつくようにして腕の中に飛び込んできた。
俺はよろけて冷蔵庫に背中を打ち付けてしまう。
「エラーが発生した」
そう言う長門の声はいつもよりどこか安定感を欠いていた。
「あなたの体温と肉体の感触を皮膚で感知したいという欲求が先ほどから止まらない」
「な、なん、だって?」
身体に感じる、長門の身体。腕も細い。身体もちっこい。
……ていうかなんだよどうした長門?!
「副交感神経抑制を最大限に行ってきたが、もう限界。あなたに対する感覚欲求は
先ほどの接触で抑制の限界に達してしまった」
ほんの少しだけ苦しそうな色を帯びた瞳がそこにはあった。
「どうしたんだよ長門? いつものお前らしくない、じゃないか……」
「おそらくアルコールが私の肉体的ハードウェアに影響を与えているのだと考えられる」
いつもの口調よりも、ごくわずかだけ震えるような成分が声には含まれてるような気がする。
いや落ち着いて分析してる場合じゃなくて。
「長門……」
「もうだめ」
「ダメって何が?!」
「増大するエラーを抑止できない。今現在わたしはあなたの体温と皮膚感覚に酩酊している」
首筋にかかる熱い長門の吐息。なんだかゾクゾクしてくる。
「心拍数は増加し顔面の血流量も増大している」
「な、長門……」
「あなたに接している皮膚の感覚神経から生じる触感がとても心地よい」
そう言う長門の顔は微量の陶酔感のような緩みが無いこともなく。
「あなたの体温が伝わってくる感覚に喜びを感じている」
長門、正気に戻ってくれよ。
「正気でなくていい」
わずかに潤んだ真っ黒い瞳が俺を射抜くように見つめてきている。
「そんな……」
「あなたがいればいい」
「…………」
長門ばりに三点リーダを多用する俺。なんて言えばいいんだ?
長門にこんなこと言ってもらえて、なんだか嬉しいような痒いような照れくさいような。
「あなたがいてくれればそれだけでいい」
俺の心臓が打ち抜かれる。
コイツを滅茶苦茶にしてしまいたい、という欲求が一瞬だけ俺の意識の奥底で泡となって
音を立てる。
「長門、お前酔ってるのか?」
「酔ってはいる。しかしそれは理性の欠如ではなく、むしろ抑制の解放」
……なに言ってるのかわかってんのか?
「あなたが好き」
「あなたが好き」
「あなたが好き」「あなたが好き」
「あなたが好き」「あなたが好き」「あなたが好き」
俺の脳内でエコーとなって響き渡るその声。
感情が無い、と思われがちな長門だが、実はそうじゃない。
嬉しいときには嬉しい声を出すし、哀しいときにはどこか哀しい響きの色が出ている。
それがものすごくわかりにくいだけで、コイツには感情がちゃんとあるんだ、ってことが
今までずっと長門の顔を見て、声を聞いてきた俺にはわかるようになってきた。
そして今の長門の声は、今まで聞いた中で一番幸福そうな感情がこもっていた。
無表情に見える顔にもうっすらと笑みすら感じさせる色があふれている。
抱き合った胸に振動を感じる。
コイツの。長門有希の。この小柄なヒューマノイドインターフェースの身体の中で
小さな心臓がとくん、とくん、と鼓動を打っているのが伝わってくる。
ありがとう。
なぜだかそう思った。
長門の心臓が、ちゃんと動いて長門を生きて動かしてくれてありがとう。
ほんの少しだけ長門の頬は血色がよくなっているみたいだ。
それは酔っているせいなのかそれとも酔っている俺の気のせいなのか。
長門の唇がものすごく柔らかそうに見える。
微妙に赤らんだ色白の頬の肌の中にある桜色の唇。なんだか薄い花びらみたいだ。
長門が何かを口にするときにはぽそぽそと動くその唇の柔らかさを知りたい。
健康的な男子である俺がそう考えてしまっても罪ではあるまいよ。
「な……がと……キス……してもいいか?」
俺は緊張しているのかあがっているのか声がかすれてしまう。
「……」
長門は無言のままこくりと肯く。
おれはその長門の頬に掌で触れる。
小さいな。顎も、頬もすごく小さい。
掌に感じるつやつやした肌。
俺はゆっくりと顔を近づけていく。
……近づけていく。
…近づけて。
「……あー、長門。キスするときは目を閉じるんだ」
「あなたを近くで見ていたい。駄目?」
とか言いながら首を傾げるな。可愛すぎだぞ。
「俺は目を閉じるから、お前は好きにしろ」
そう言ってもっともっと近づけて……
長門の唇は長門みたいに、小さくて、すべすべで、可愛かった。
しっとりと濡れた皮膚と、その内側の柔らかい粘膜。
口づけて触れ合った唇から鼓動のとくん、とくんという振動が伝わってきそうだ。
ふごー、と鳴りそうになる鼻息を必死にこらえるが、長門はそんなこと気にもせず
鼻から漏れる甘い吐息を俺に聞かせてくれる。ヤバイ。
「…んくっ」
とでも表現したらいいのか、とにかくそんなような喘ぎ声が俺の耳を、俺の肌を震わせる。
繋がった唇から骨が痒くなるような甘い響きが広がってくる。
顔の皮膚に長門の鼻息が吹き付けられる。
俺は朝倉涼子に襲われたときの教室でのことを思い出した。
長門を抱きとめたときにかすかに感じた匂い。薫り。長門の身体の匂いだ。
呼気の中に含まれているそれはほんの一呼吸嗅いだだけで俺の胸を熱く痛くさせる。
そして長門の体温。冷たい印象を与えるその肌が実はすごく熱かった、ということを
俺は知った。
長門の唇がゆっくりと離れていく。
顔面に感じていた長門の体温と匂いが消えていく。
俺はそれに喪失感を覚えてしまう。
自分の身体の一部だったものがなくなってしまうような感覚。
キスしてたのはほんの十秒ほどの時間だったのに。
目を開けると、俺はそこに意外なものを見た。
長門は頬を赤く染めている。
どことなくうっとりとした表情で。
驚いた。
「長門……お前」
「……」
大きく見開かれた瞳のままで、長門は再び唇を寄せてくる。
唇が触れる。
離れる。
また触れる。
まるで小鳥が餌をついばむように、唇でノックするみたいに長門は何度も
浅いキスを繰り返してくる。
ちゅ。ちゅじゅっ。
吸いながら、俺の唇を自分の唇で挟むようにしながら。
浅く舌を出して俺の唇を舐めながら。
何度も何度も、長門はキスをしてくる。
長門の荒い息が俺の鼻に吹きかかる。
ぬめぬめした舌が俺の上唇を舐めてくる。
ふっくらとした唇で下唇が挟まれる。
一回触れるごとに、一回唇が押し付けられる度に俺の胸の芯がズキズキと疼きはじめる。
鼻の頭にキスされ、頬を舐められ、顎を唇で吸われる。
俺の顔中を唾液でベトベトにしながら、長門は俺を唇で味わっている。
俺は長門の両頬を掴むと、そのまま額に唇を押し当てる。
鼻にいい匂いが伝わってくる。髪のシャンプーの匂いだ。
続いて長門の耳たぶを優しく唇で噛む。咥え、吸い、愛撫する。
「…………」
無言の長門だが、舌を耳の裏に這わせる頃になるとちいさい甘い鼻声を
止める事ができなくなっている。「……んぅー」と言うような、聞くものの精神を
一瞬で燃え上がらせるような可愛い鼻声は俺が再び長門の唇をふさぐまで続いた。
俺がキスするたびに、長門のキスに応えるたびに、腕の中の長門の身体がぴくっ、と震える。
まるで俺が長門の身体を思うままにしているかのような錯覚を覚える。
いや、もしかしたら錯覚じゃないのか?
にゅるっ。
押し付けあった唇の間に感じるのはぬるぬるした熱い、長門の味がする肌。
その舌は俺の唇を割ると口の中に入り込んでくる。
薄い舌が俺の唇の裏側を撫でる。ぬらりという感触に脳髄がびくりと驚く。
ななななな……
驚きに目を開くと、数センチの距離に長門の大きな黒い瞳。
深くて黒い瞳孔が俺の視界のほとんどを占めている。
長門の舌が俺の歯茎を舐め、舌の上を滑り、舌の裏を撫でてくる。
自分以外で触られた事の無い粘膜が長門の舌先で押され、触られ、ぬるぬると
弄ばれる。それは勝手に鼻息が荒くなってしまうくらい気持ちいい。
舌先が俺の舌と触れ、押し合うたびに眼前では長門の目が細められ、
目の縁にかすかに盛り上がった涙が俺の頬で拭われる。
俺は唇を越境して長門の口内に舌先を押し入れた。
長門がしてくれたように上あごの裏側や唇の内側や舌のわき腹を愛撫する。
俺の舌の動きで長門が身じろぎをし、甘い鼻声を漏らし、俺の背中に廻したちいさな掌が
ふるふると震えだす。
全身が舌になってしまったような感覚。
舌を押し付け合い、舌を絡ませあい、唾液を流し込み、吸い取る。
口の中が性感帯になってしまったかのような感覚。
長門の唾液と自分の唾液が混ざり合った味。
数分か、数十分か、俺にはわからなかった。
とにかく、二人が息が切れるまで俺と長門はキスを続けた。
ほんのりと赤みが差した表情で、目じりにはうっすらと涙すら浮かべてさえいる。
長門は薄く汗で覆われた額に前髪を何本か張り付けたままで言った。
「あなたとの粘膜接触と体液交換は私が今までに経験した事が無いほどの快感を伴った」
「他の部位で体液を交換した場合、どれほどの快感を覚えるのか私は知りたい」
そ、それって…そういう…意味か?
「……駄目?」
「い、いや、その、ハ……ハルヒや朝比奈さんが起きてくるかも知れないから、
その、今ここでってのはまずい」
今にもズボンを突き破りそうなほど硬くなったマイ・サンのことはとりあえず置いておく。
確かに、長門とコレで体液交換なんかしたら気が遠くなるほど気持ちいいだろうが。
「その点については問題ない。涼宮ハルヒと朝比奈みくるは明朝10時過ぎまで体内の
アルコール分解過程は終了しない。すくなくとも明朝までノンレム睡眠を続けるのは確実」
「古泉一樹についてもそれは同様。明朝六時までは彼の血中アルコール濃度は
通常レベルには戻らない」
ちーーーーー
何の音だ?
俺のズボンのチャックが下ろされる音だ。
下ろしてるのは、長門。
----------------たぶんつづかない----------------------------
長門とキョンのディープキスが書きたくてつい書いた
チュウさせられればそれでよかった
今は反省している
続けようぜ。キスだけでそんなに書けるんだっ。
いけるいける。
続けようぜ。キスだけでそんなに書けるんだっ。
いけるいける。
もっと鶴屋さんみたいに言ってください。
続けにょろ〜。キスだけでめがっさ書けるんだっ。
いけるいけるにょろ〜。
鶴屋さんのAAの可愛さは異常
鶴屋さんのAAの可愛さは異常
>>677 いいキスだった。
濃厚だった。萌えた。
感想ども。ハルヒSS投弾初めてにしては好評で良かった。
ところで、今回の長門スキー氏のSSはメインが唇だったけど長門のおでこにキスってのもいいね。
自分的な領分では唇はエロでおでこは萌えだが。
長門とは別に鶴屋さんとはどうキスしたら良いかと言われると非常に困惑する。
あの人だと情緒もへったくれもないぶちゅ〜って吸い殺すようなディープなチューをしてきそうだw
コテハンはよく叩かれるけど
例えば、そのコテハンが「鶴屋さん」とか名乗ったら
みんな叩けるんだろうか?
合体完了ワロタよw
その携帯ゲーム機1億円でも買うwwwww
>>677 GJだが、惜しい。
原作でハルヒは禁酒宣言をしてるんだから、なんで酒盛りになってしまったのかの辻褄合わせが必要。
先人たちはその辺を上手く処理していた。
けど、キス描写はかなり上手い。
>>665 設定は面白いし文章も上手いと思ったが、「何で三人称?」と引っかかってしまった。
この話なら、キョン視点で書いた方が雰囲気出たと思う。
このスレを見て判ったんだが、どうやら俺はナガトスキーらしい。
投下します。10レスくらい消費予定
長門もの。エロ有りなんで「俺の長門になにすry」な人は華麗にスルーしてください
俺がそれを思い立ったのは、ちょっとばかり暇を持て余していた春先の日曜日のことだ
った。
ハルヒ立案のお騒がせでハタ迷惑なイベントや、殆どの場合においてただの市内散策で
終わる不思議探索パトロールなんかが一段落して、冬眠から覚めそうで覚めない熊みたい
な静けさをあいつがみせていた時分さ。
ベッドに転がってシャミセンと一緒に自堕落という言葉を体現している最中、ふと、本
当に何の前触れもなく考えついていた。
長門を図書館にでも誘ってみようか、と。
率直に言って、自分自身どうしてそんなことをしようとしたのか理解できなかった。
そもそもからして何もないところから長門のことを思い浮かべた理由が、我ながら分か
らん。心に潤いを満たすのなら朝比奈さんの豊満かつ可憐かつ愛らしい御姿を想像するの
が当然のはずで、長門の小ぢんまりとした無表情など……いや、まあ、あれはあれで悪く
ないのは確かだが。しかし、長門の姿は俺の心に潤いよりもむしろ平静や平穏をもたらす
のが常だ。こんな穏やか極まりない時にあいつのことを考えても仕様が無いという感じが
する。
だのに、長門を図書館に誘うということが、今の俺には途轍も無い魅力的な計画に思え
てならなかった。というより、そうしなければいけないような気さえした。
何しろ長門と出会ってからこの一年、事件が起きるたびにあいつの世話になっていた。
考えなしに頼りにしていた結果、ぶち切れて世界を改変してしまったこともあった。まあ
今となっては笑え――はしないが、とにかくそれも過ぎた話だし、その際に俺は長門に対
してある種の責任のようなものを負ったのだと勝手に考えている。
つまり、極力あいつに負担をかけないようにしてやること。なるべく普通の人間的な生
活をさせてやることだ。
そうか、と俺はようやく合点がいった。
これはそうしたことの一環みたいなものなのだ。あいつだって殆ど何もない家で漫然と
引きこもっているよりは、図書館で本を読んでいる方が楽しいだろう。
そうして俺は思考を自己完結させ、携帯電話で長門の家の番号を呼び出した。
きっちり三コール目で繋がる。
『…………』
山奥の湧き水みたいな、お馴染みの長門的沈黙。
「俺だ」
などと名乗らなくても、もしかしたら長門には分かっているのかもしれないが。いや、
あいつのことだ。分かっているんだろうな。きっと。
「別に急な話ってわけじゃないんだが、お前いま暇――」
そこまで言って、ふと、唐突に。今更なことを考えてしまい、俺は言葉を切っていた。
これってデートのお誘いに他ならないんじゃないか。一般論としてデートの行き先が図
書館ってのがアリかナシかは置いといて、余暇を異性と一緒に過ごすって行為は世間一般
じゃデートとしか呼ばんよな。
そして自慢にも何にもならないが、俺は異性をデートに誘ったことなど生まれてからこ
の方一度たりともない。誘われたことなら数える程度には(まあ数えるには躊躇われる内
容だった気もするが)あったが。
結局何が言いたいのかというと、一旦そういう風に意識すると妙に気恥ずかしくなって
しまうってことだ。笑うなよ、そこ。誰にだってそういうことはあるもんだろうが。
『…………』
相変わらず長門は一言も発しないが、それでもその沈黙の質が怪訝そうなものになった。
相手に急に黙られればそれは長門でなくても不審に思うだろう。
「あー、いや……」
俺は少しの間もごもごと口ごもってから、
「お前、今日は暇か?」
『…………』
「実はな、ちょっとした調べ物があって、これから図書館に行こうと思っているんだ。で、
まあ……一人でってのも味気ないから、お前もどうかと思ったんだが」
我ながら苦しい方便に思える。今時中学生でももっとマシな言い回しをするかもしれん。
『…………』
というか長門、うんとかすんとか言ってくれよ。顔が見えるなら表情を読み取る自信が
あるが、俺はまだお前の沈黙から機微を知るスキルは体得していないんだからな。
そんな心の訴えを聞き入れてくれたのかどうかは分からないが、長門はたっぷりと数十
秒ほど置いてからぽつりと言った。
『そう』
「ってことは、いいんだな」
『了解した』
「それじゃあいつもの場所で会おう。時間は、そうだな……一時間後くらいでどうだ」
『それでいい』
「ん。じゃあ、また後で会おう」
俺は電話を切ると、何故だか落ち着かない気分で身支度をして、家を後にした。
かくして駅前に着くと、やはりと言うべきか制服姿の長門が陸に打ち上げられた氷山の
ように佇んでいた。うーむ、色んな意味で目立つやつだ。
長門は俺の姿を捉えると、ほんの僅かに目を伏せ、それからまた俺を見た。どうやら挨
拶の積もりらしい、と勝手に解釈して俺も軽く片手を上げてやった。
「よ、待ったか」
「少し」
「そうか。悪かったな、誘っておいて」
「いい」
長門は最小音節で済ませようと考えて喋っているみたいに簡潔に答えた。
しかし今でさえ約束した時間の十分前なんだがな。こいつの言う「少し」ってのはどれ
くらいのもんなんだろうね。訊けば秒単位で正確に教えてくれること請け合いだが、それ
は止めておこう。一層申し訳ない気持ちになりそうだ。
「…………」
長門が真っ暗な海の深淵を覗き込むような瞳を向けてくる。
俺は何でもないと小さく肩を竦めてみせた。
「行こうぜ」
長門が可視ぎりぎりの動作で顎を引いたのを確認して、俺は歩き出した。
長門は俺の後を一、二歩ほど遅れてひっそりとついてきた。足音さえ立てない隠密ぶり
だが、猫並みの気配は感じられる。しかしあれだな。改めて思い起こすと、こいつと並ん
で歩いたことって一度もないんだよな。俺がついて行くか、長門がついて来るかのどっち
かだけだ。朝比奈さんとは最初から並んで歩けたってのに。
何となく俺は歩調を緩めてみた。長門もそれに合わせて俺との距離を等間隔に保つ。見
て確かめたわけじゃないがそういう気配がした。
おもむろに立ち止まり、振り返ってみる。
定期試験で奇問だらけの問題用紙を前にしたかのような無表情と出会った。
「なに」
「……いや」
何やってるんだろうね、俺。
そりゃ長門と仲睦まじく歩ければ嬉しい。こいつだって見てくれは可愛いしな。だけど、
長門がそんなことをする姿なんて想像もできないし、するはずがないのも分かっている。
それでも、なあ。何かこう切ないぞ、正直。
俺は再び前方に向き直り、図書館へと歩き出した。やはり長門は俺の後ろを一歩か二歩
遅れてついてくる。勿論その間会話は一切ない。いつものようにその沈黙を気詰まりに感
じることはなく、むしろいつものように安心感があったのだけれど、一方でどこか物寂し
さを覚えたのは……やっぱり変なことを考えてしまったせいなのか。ちょっとおかしいか
もな、今日の俺は。
そんな風に感傷気味になっていたのがいけなかった。図書館に入ったところで、俺はよ
うやく重大なことに気がついた。
――こんな所に来たって何の用事もないっての。
しかし調べ物があるなどと言っている手前、空いた席を探してだらけてしまうわけにも
いかない。
案内板の前で茫然としていると、不意に長門が呟いた。
「調べ物……」
首を捻って長門を見やる。
長門は白い顔を二ミリくらい傾けてまっすぐに俺に視線を向けていた。
「なに」
なにって、何がだ?
「あなたは調べ物があると言っていた。それはなに」
それをたったいま考えていたんだ、とは言えない。だから俺は胸中でだけそう答えて、
必死に自分の知らない事物を思い浮かべた。いっぱいあった。むしろいっぱいあり過ぎて
困った。この世界は俺の知らないことで満ち溢れているんだな。というか俺が無知なだけ
か。まあいい。ソクラテスだかプラトンだかも無知だと自覚することが大事だって言って
たみたいだしな。
「ええっと、そうだな。数学……そう、数学だ」
俺はとりあえず無知の山をあさり、もっともらしい疑問を引っ張り出した。
「ほら、冬の合宿で変な館に閉じ込められただろ。あの時お前が脱出のために用意してく
れた問題。オイラーの多面体定理、だったか。解いたのは古泉だったんだが俺には何やら
さっぱりでな。今後ああいうことがそうそうあるなんて考えたくないが、それでも無学の
ままでいるのはよくないと思ったんだ」
咄嗟に捻り出したにしては不自然のない言い分だ。俺って追い込まれると存外に冴える
タイプなのかもな。
「そう」
長門はごく小さく頷いて、黙然と歩き出した。俺の前を通り過ぎたところで一旦足を止
めて横顔を見せると、
「こっち」
とだけ言って書架の間を縫っていく。
案内してくれる積もりなのか。ありがたいけど、ありがたくない。
長門はある一角まで俺を導いて、そこで立ち止まった。傍らの棚にぎっしりと収められ
ている分厚い本の背表紙を見てみれば、なるほどそれっぽい書名のものが並んでいる。ま
あ、『実践的複素関数論』とか『バナッハ空間とヒルベルト空間の研究』なんて題目から
じゃ、その中身がどんな内容なのかまるで見当がつけられないけどな。
そんなわけで、恥を忍んで訊いてみる。
「なあ長門。初心者というか、専門知識がないやつでも読めるような易しい本はないか?」
「…………」
長門は少しだけ考えるような沈黙を置き、それから本棚と向かい合った。ずらりと並ん
だ背表紙に目を走らせていたが、やがて上段の方で視線を止めた。爪先立って手を伸ばし、
他のものと比べて心なし薄い本を引き抜いた。
「これ」
と、『初等関数概論』という表題の入ったその本を差し出してくる。
すまん、長門。お前にとっては足し算引き算の解説書みたいなものなんだろうが、俺は
サイン・コサイン・タンジェントと聞いただけでも頭が痛くなる性質の人間なんだ。
それでも俺は礼を言って本を受け取った。お前はどうするんだ、と尋ねるまでもなく長
門は棚から人を撲殺できそうなほど分厚い本を無造作に引っ張り出し、立ったまま黙々と
読み始めた。
相も変らぬ長門っぷりだ。
その様子に何となく安堵し、そして落胆もしながら、俺は長門から手渡された本を片手
に閲覧席へと向かった。椅子は四割ほどが埋まっていた。適当に席に着いて本を机の上に
置き、その無愛想な装丁に目を落とす。はっきり言って俺は関数なんかに興味はない。関
数よりは明日の天気の方が遥かに興味をそそられる。
しかし、まあ。せっかく長門が薦めてくれたのだ。表紙さえ捲らずに放り出してしまう
のは罪悪感がある。あまつさえ俺は嘘をついているしな。
というわけで、無作為的に本を開いてみる。
ああ、ダメだ。何が書いてあるのかさっぱり分からん。殆ど未知の記号にしか――いや、
待て。
俺はそこはかとなく嫌な感じがして、それが杞憂であることを切に祈りながら、一つだ
けページを捲った。思わず深い溜息が漏れた。そこには前のページ同様、未知の記号の羅
列があるばかりだった。そう、比喩ではない。幾何学的としか喩えようのない、文字とも
記号とも模様ともつかない、曲がりくねった線がびっしりと書き連ねられていたのだ。
いったい何なんだ、この宇宙語は。宇宙的グローバリゼーションにはまだまだ早いと俺
は思うぞ。宇宙人の存在は極々狭い範囲でしか知られていないんだからな。
そんなことを考えてから、ふと気がついた。
視界が薄暗くなっている。顔を上げてみても、首を左右に捻ってみても、そこには誰も
いない。ついさっきまで読書に耽っていた人たちの姿は影も形も無くなり、天井の蛍光灯
は光を失い、窓の外はペンキで塗りたくったような灰色で満ちてかすかな光明を放ってい
る。
考えるまでもない。異常事態だ。おそらくいつかの閉鎖空間やカマドウマ空間みたいな
ものなのだろうが、どうして突然こんなことになったのか。
俺はやや混乱してはいたものの、しかし動転はしていなかった。
何故かといえば、それは勿論、あの万能ヒューマノイドインターフェースこと長門有希
が一緒に居たからである。長門がこのことに気づかないはずはない。そして、あいつが姿
を見せてくれれば問題は解決したも同然なのだ。
とはいえ、それをただ座して待つほど俺は厚顔ではない。長門にばかり苦労をかけさせ
るのは、殆ど毎度のこととはいえ気が引けるからな。もっとも、古泉みたいに妙ちくりん
な超能力もなければ、頭の程度も人並みな俺にできそうなことなんて高が知れてるが。
俺は本を閉じて立ち上がった。空気が妙に重苦しく思えるのは気のせいだろうか。超常
現象に対する耐性はそれなりにある積もりだったが、考えてみれば今まではハルヒなり古
泉なりSOS団の仲間が傍にいた。一人きりでこういう場所に放り込まれたことはなかっ
た。ただ一度だけ、暴走した長門が作り直した平々凡々な世界に取り残されたとき以外は。
「……俺は普通の人間なんだぞ」
もし何かあったら非常に困る。
「頼むぜ、長門」
せめて取り返しがつかなくなるようなことが起こる前には、な。
俺はひとまず外に出られるかどうか確かめてみようと出入り口に向かった。すぐに無駄
だと分かった。何しろ扉の代わりに白い壁があるだけだったのだから。勿論、窓も開かな
い。
やはり長門がどうにかしてくれるのを待つしかないのだろうか。せめてこっちからあい
つが気づいてくれるような合図を送る術があればいいんだが。
……何も考え付かん。
仕方なく俺は長門が本を立ち読みしていた場所へ向かった。案の定と言うべきか、そこ
にあのひっそりとした小さい姿はなかった。
万策尽きたってことかね。元々たいした策なんぞなかったが。
溜息をつき、踵を返そうとしたその瞬間――
本(ちなみに『バナッハ空間とヒルベルト空間の研究』だった。どうでもいいが)が、
やにわに棚から抜け出して宙空に浮かんだ。
「……」
声を呑んだね、流石に。
空飛ぶ本だなんてどこのファンタジーだよ? そういや昔ちょっとやってみたRPGに
こんなモンスターが登場していたな。だけど俺の手に怪物を倒すための武器はない。もし
くれるならすぐにでもくれ。何でもいいから。早急に。
何たって、おもむろに開いた本の内側には、ゲームの怪物もかくやと思われる鋭い牙が
みっしりと生え揃っていたのだ。おまけにその凶悪な口はこっちに向けられている。
まるでバナッハ空間やヒルベルト空間にトラウマのあるやつが見る夢のような状況だ。
俺にはそんなものないってのに。そもそもバナッハ空間もヒルベルト空間も知らん。
俺は山菜採りの最中に熊と遭遇してしまった爺さんのような心地でじりじりと後退った。
おそらく無駄だろうなと思いつつも、できるだけ刺激しないように……
本が動いた。俺に向かって一直線に。
目に留まらぬ、というほどではないが、躱すことなどかないそうもない速度。実際、俺
は瞼を下ろすことさえできないまま、飛びかかってくる牙の群れを見つめていた。
――がり。
そんな感じの音がしたと思う。
音が聞こえたということは俺は生きているわけで、俺が無事に生きているということは
俺の代わりに何かが喰われたということになる。
今更言うまでも無いかもしれない。だが、俺は反射的にそいつの名前を口にしていた。
「長門……」
元からそこに居たかのように俺の前に立つ長門は、その細い腕を突き出していた。肘の
辺りにまで本が喰いついている。今この瞬間にも閉じた本の内側から何かを削るようなが
りがりという音して、おびただしい量の血が滴っていた。
俺が口を開くよりも早く長門の唇が動く。早口に何かを呟くような声がした直後、長門
の腕に噛み付いていた本が瞬く間にきらめく粒子と化し、跡形も無く消え去った。
長門がゆっくりと振り返った。
「情報異常の感知が遅れた」
そう言って、俺を見上げていた視線をかすかに下げる。
「ごめんなさい」
何を謝っているんだ?
「空間情報の探知においてわたしに油断があった」
「……よく分からんが、助けてもらった俺が謝られてもな。つーか、俺の方がごめんなさ
いだ」
長門が相変わらずの無表情で首を傾げる。
「腕、大丈夫なのか」
「へいき」
見れば既に血が消えているばかりか、制服にも傷一つ残っていなかった。
「ここはいったい何なんだ」
「わたしたちの居た時空間に隣接する限定的位相空間。あなたは元の時空間とこの空間と
に生じた断層を滑り落ちてしまった」
「滑り落ちた、ねえ。冬合宿のときみたく変な連中の仕業じゃないってことか?」
「違う。ごく稀に起こり得る現象。特定の時間と位置における行動によって引き起こされ
る時空間の情報的欠損を補正する際に、こうした異空間と接続してしまうことがある。作
為的な情報改変ではないから感知することが困難」
分かるような、分からんような。
じゃあ、あの人喰い本はどうなんだ?
「この空間を構成する情報はとても稚拙で不安定。発生したバグがあのような形で顕現し
ただけ。偶発的なもの」
「バグって……大丈夫なのか、ここ」
にわかにこの無数の本が牙を剥いて襲いかかってきそうな気がして、俺は落ち着かない
思いで辺りを見回した。
「問題ない。すでに修正した。今は元の時空間とほぼ同等の環境になっている」
そうか。長門が言うならそうなんだろう。
俺は溜め込んでいた息を細長く吐き出した。書架に背中を預け、そのままずるずると床
に腰を落とした。今回の不思議事件は起こってから終わるまでが短かったが、分かりやす
い危険に瀕したからか、存外に気が張っていたのかもしれない。
まあそれはもういい。過ぎたことだ。
ただ、こいつに無駄な苦労をかけさせてしまったこと。それがひどく申し訳なかった。
俺の考えたことが裏目になってしまっただけに、余計に沈鬱な気分だった。
「すまん、長門」
お前にしてみれば、俺は、俺にとってのハルヒみたいなものなんだろうな。
「あなたにとっての涼宮ハルヒ……」
静かな声音で、それでもどこか物問いたげに長門が呟く。
「ハタ迷惑なトラブルメーカーってことだよ。俺が図書館に来なければ、こんなことには
ならなかった」
「この件に関してはわたしにも問題があった。あの書籍を薦めたことも、おそらくは引き
金になっていた」
「だけど根本的なところで下手を打ったのは俺だろ」
俺は長門を図書館に誘ったいきさつ(と言えるほどたいしたいきさつなどないが)を話
そうかと迷って、止めておくことにした。お前のことが気になって誘ってみたんだ、なん
て言うのはこんな状況でも恥ずかしすぎる。
「せめて俺一人で来るべきだったよ」
「あなた一人では対応し得なかった」
不意に長門の口調が変わった……気がする。いまいち信じがたいのだが、苛立たしげな
響きが混じったように感じられたのだ。
「長門……?」
「仮にあなたが誰にも察知されないままここに転移していた場合、或いは最悪の事態にも
なり得る可能性があった。そのようになることを決してわたしは望んでいない」
ここまで強い口調で饒舌になる長門は珍しい。俺は殆ど呆気に取られていつもより硬い
無表情を見つめた。
「わたしの関知し得ない場所であなたに何かがあれば、わたしは――」
そこまで言って、長門は唇を薄く開いたまま言葉を切った。朝比奈さんがそうするよう
に何かを言いかけて躊躇した末に止めるといった風ではなく、何かを表現するのに適当な
言葉を見つけられなかったという様子だ。
「わたしは……」
と長門は繰り返す。だがやはりそこから先は語彙を失ってしまったかのように言葉が出
てこなかった。やがて、無表情のままに、諦めてしまったみたいに口を閉ざした。いつも
より鋭く見える静謐な瞳だけが変わらずに俺を射ている。
長門が何を伝えようとしたのか。何となくだが、分かる気がする。同時に、それは俺の
自惚れじゃないかとも思う。
ただ、確信していることもある。それは、もうだいぶ以前からお互いに分かっていた結
びつきなのだが。あえて名状するなら、つまり、それは親愛感だった。そしてたったいま
俺が想像したのは、それ以上のものだ。
もしかして本当にそうなのだろうか? 長門の無表情からは、今は何も読み取れない。
俺はそっと手を伸ばし、長門の腕を触れるようにして掴んだ。
「長門」
揺るぎの無い瞳が緩やかに降りてくる。俺に促されるままに長門は膝を折っていた。
「俺が何をしようとしているか、分かるか?」
「…………」
長門は、少なくとも表面上は無感動な面持ちで、かすかに頷いた。
「嫌なら好きに抵抗してくれ。蹴り飛ばすなり殴りつけるなりな。そうしてくれれば俺も
ちょっとは目が覚めると思う」
「目が覚めて夢が終わるのなら、このままで構わない」
長門らしからぬ言葉だ。ロマンチシズム的すぎるぜ。感情がこもっていればなお響きが
良さそうだ。
そういやこいつが恋愛小説も読んでいることを知ったのはつい最近のことだ。小難しい
学術書みたいなのや、設定だけでお腹いっぱいになりそうな本格SFが専門分野なのだと
勝手に信じこんでいたから、意外に思った覚えがある。その影響なのか? だとしたら可
愛いもんだ。
「……なに」
長門が二足立ちするカバを眺めるような目で俺を見ていた。
いかん。知らず知らず薄笑いを浮かべていたみたいだ。咄嗟に真面目な顔を作って首を
振ってみせる。やれやれ、雰囲気なかったな。
俺はそれ以上余計なことを考えるのは止めにして、長門のうなじに手を回した。力加減
を間違えると容易く折れてしまいそうな感触だ。だからというわけではないが、長門を引
き寄せながらえらく緊張してしまった。
鼻先が触れ合うくらいの距離にまで近づいたところで、思い出したように長門が瞳を閉
じた。どうやらそれが長門の流儀らしい。でも俺はそれに合わせることはしない。何故な
らその時の長門がどんな顔をするのか見てみたいという下心があるからだ。実に素直な男
性的欲求さ。
俺は穏やかに長門と唇を重ねた。
冷たくも温かくも無い。ただ柔らかくくすぐったい、心地の良い刺激がした。
もうずっとこうしているだけでもいいか、とさえ思えるね。長門もそうなら嬉しいんだ
がな。眠っているみたいな無表情ではいまいち分からん。まあ、嫌そうな様子じゃないこ
とだけは確かだ。抵抗も無いし。
ひとしきりそんな静かなキスをしてから、ゆっくりと口唇を離す。
「…………」
長門は何も言わずに――溜息さえもつかずに――瞼を上げた。頬なんかが紅潮するとい
うこともなく、凍てついた瞳が蕩けるというようなこともない。ただ、その表情がいつも
と比べて不思索的に見えるのは、俺がそう期待しているからなのだろうか。
もう一度、その小さく整った顔を引き寄せ、今度は深く繋がりを求める。特に拒む素振
りもなく長門は俺の舌を受け入れた。
「ん……」
華奢な喉の奥からか細い喘ぎ声が上がる。その響きは意図したものとしか思えないほど
に扇情的だった。もっとも、実際のところはそうじゃないだろう。何たってこの期に及ん
でも長門は顔色一つ変えていないのだから。だが、まあ、強いて言うなら穏やか夢見をし
ている寝顔のような無表情ではあった。
キスに関しては、長門はやはり受動的だったが、意外にも協力的だった。小さな舌を愛
撫すれば控え目ながらもそれに応えてくれる。
そうしてほのかに甘い口内を隅から隅まで味わい、ようやく顔を離したときにも長門は
あくまで表情を崩してくれなかったが、いささか目の焦点がぼんやりとしていた。分かり
やすく言うなら、ぽうっとしたような雰囲気を醸し出している……ように見えた。確信は
できないが。
何たって長門(に限ったことじゃないが)のこんな顔を見るのは初めてなのだ。雪山の
謎の館でこれに近い様子の長門は見たが、やはりあれとも違う。もっとこう、色っぽいと
表現すればいいんだろうか。唇がてらてらと濡れているのもかなり卑猥な感じだし。
それに――
「長門……っ」
今のこいつを見ていると、ある種の暴力的な衝動が芽生えてしまう。そいつを抑え込む
ためなのか、或いは抗えなかったからなのか、俺は花の茎のように細い長門の身体を強く
掻き抱いた。
長門はおずおずと俺の背に手を回す。何かを確かめるように慎重に手探りをして、それ
から軽く抱き返す。
「あなたの、のぞむままに」
平淡な声が俺の耳元で囁く。
「いいんだな、長門」
「いい」
いつものように至極簡潔に答え、長門は己の全てを委ねるかのように、俺の腕の中で一
切の力を抜いた。
床に俺の上着を敷いて、そこに一糸纏わぬ姿となった長門を横たえる。
その段になって、俺は不思議な思いを抱いていた。
それは今更なことではあるのだが――俺と長門が出会ってからこの方、俺が長門に惹か
れるような出来事があっただろうか。長門が俺に惹かれるような出来事があっただろうか。
俺は長門のことを殆ど何も知らない。こいつが人間ではなくて、情報統合思念体とやらが
作り出したヒューマノイドインターフェースとやらであることと、読書好きであること以
外は何も知らない。こいつがどれだけ俺のことを分かっているのかも知らない。なのに俺
と長門はお互いに親愛感を持っていたし、そして今、それ以上の感情を持って交わろうと
している。考えてみれば、不思議なことだ。
「なに」
長門が曝け出された胸も下腹部も隠すことなく、いつも通りの無表情で問いかけてくる。
どうやら複雑な思いがそのまま顔に出ていたらしい。
俺は小さく首を振った。まあ今は、あまりどうでもよくない気もするが、どうでもいい
ことにしておこう。仮にこうなることが早すぎたり間違っているのだとしても、もう引き
返せる地点はとっくの昔に通り過ぎてしまった。
長門に唇を合わせ、舌を絡ませながら、その白く流麗な肢体に手を伸ばす。
こいつはどうしてこんなに小さくて細いのだろう。伸びやかな手足にせよほっそりとし
た腰回りにせよ、強く触れるのが憚られるほど儚い感じがする。俺は指先で辿るようにし
ながら、半ば怖々と長門の薄い胸を撫でた。
「あ……」
かすかに長門の唇から息が漏れる。
まさか痛かったなんてことはないよな?
「ちがう」
長門は頭をもたげて何か不可解なものでも見るように自分の胸の辺りを眺め、それから
また目線を天井へと向けた。
えーっと、続けていいのか?
「…………」
無言の首肯が返ってきた。
気を取り直して、俺は再び指を動かす。思ったよりも硬さのない乳房の膨らみをなぞり、
その先端にある小さな桜色の突起を爪先で弾く。その度に長門は鼻にかかったような声を
短く漏らした。
「ん……ぁ……」
白い喉頸に唇を寄せて軽く吸い上げる。そのまま唇で滑らかな肌を辿り、子供のそれの
ような乳首を口に含む。と、その瞬間、
「ん……っ」
華奢な肩がぴくりと震えた。快感のためというよりは、むしろ驚いたような反応だった。
俺は顔を上げて長門の表情を窺った。
「嫌だったか」
「……わからない」
わからない、ね。言葉は曖昧だが、口調には抵抗感のようなものがあった。
それは、実を言えば俺にも理解できた。決して長門の肌が汚いと思っているわけではな
いのに、唇を付けたり舐めたりするのにはやや抵抗があったのだから。やっぱり初心者は
初心者らしく余計なことはしない方がいいのかもな。
俺は一つだけ頷いてみせた。こういうのは今は止めてこう。
「それじゃあ長門。えっと、こっちの方、触るけど……」
腿にそっと手を添えて、確認を取る。
長門は黙したまま平然と肯定の意を示すだけだ。こいつは恥じらうということを知らな
いのか。それとも心の内ではまともに喋れないほどガチガチになっているのか。まあ、こ
うして落ち着き払ったいつもの態度でいてくれるから、俺も冷静でいられるんだけどな。
俺は小さく息をついて、殆ど無毛の陰唇を指先で撫でた。柔らかくて、温かくて、そし
てほのかに湿り気を帯びていた。綺麗なスリットに沿って何度か指を往復させると、少し
ずつ長門の呼吸が浅く短くなっていく。
「あ……はぁ……」
悩ましげな響きを伴った吐息につられて長門を見やると、薄く開いた目の縁がわずかに
赤らんでいるのが分かった。些細な表情の変化だが、俺にはそれがひどく蠱惑的に感じら
れた。
開きかけた陰唇の間に、ゆっくりと指を差し入れていく。
長門の中は、とても複雑な、何とも形容しがたい感触だった。濡れてはいるのだが、全
体的にやや硬い。そして何よりとても狭くてきつい。指一本でさえこれほどとは。
「ちゃんと入るかな」
思わずそう呟いた俺に、長門はぼんやりとした目を天井に向けたまま律儀に答えてくれ
る。
「問題ない。この固体は普通の人間と同様の生殖機能を有している」
「そういうことじゃなくてだな……いや、まあいい。とにかく、もっと色々いじるぞ。普
通の人間と同様ってんなら尚更不安だ」
俺は丁寧にそこをほぐすように指を動かした。奥の方からとろとろと流れてくる愛液を
絡め、柔らかく精緻な粘膜を擦る。その最中に秘穴に指先をひっかけたりしてしまい、人
知れず焦っていたのは秘密だ。
そんな感じで愛撫を続けていると、小さく自己主張しているクリトリスがふと目に留ま
った。性的好奇心の赴くまま、その突起を指で押してみる。
「あぅ……っ」
甘やかな吐息と共に、ぴくんと長門の身体が跳ねた。
これまで行為の中で最も顕著且つ良好な反応だ。弱いのかもしれないな、ここ。俺は時
折クリトリスへの刺激も加えつつ、長門の中を解きほぐしていった。
「もう――」
と、不意に長門が言う。
「十分だと思う」
「ん、そうか?」
確かにそこは既にかなり濡れていた。陰唇も愛液でぬるぬると滑ってしまうほどだ。で
も俺としてはやっぱり不安なんだよなあ。
「なあ、長門。あんまり痛いようなら言ってくれよ。無表情でだんまりは止めてくれ」
「分かった」
「約束してくれるな?」
「約束する」
長門がいつもよりはっきりと頷いたのを見て、俺も覚悟を決めることにした。
時間をかけてベルトを外し、パンツと下着を脱ぐ。当然ペニスは完全に勃起している。
それと長門の身体とを見比べ、早速俺はまた不安に駆られた(決して自分のナニの大きさ
を自慢してるわけじゃない。比較観測してみての純然たる現実的憂慮だ)。だが長門はき
ちんと意思表示をすると約束してくれているし、何より中断してしまうのは俺が辛い。若
干の負い目を感じながらも、俺は亀頭を長門の陰唇に押し当てた。
「入れるぞ」
首を揺するようにして長門が頷く。俺はゆっくりと、しかし確実に体を前へと押し進め
た。考えていたほどの抵抗はなかった。純潔の証たる狭さは感じ取れたが、それもあっと
いう間に押しのけていた。妙な言い方になるが、あまりの順調さにいささか拍子抜けした
ほどですらあった。
だが、長門の膣の感触は、そんな苦労ともいえない苦労の対価としては不当なほど素晴
らしいものだった。まるでそこにある襞の一枚一枚が意思を持って絡み付いて射精へと誘
おうとしているかのような、そんな背筋が震えるほどの快感があった。
ともすれば猿のように本能的な行動を取ろうとする体を抑え留めて、俺は長門の目を覗
き込む。
「痛くないか」
「…………」
長門は唇を結んだまま僅かに顎を引いた。
おいおい、だんまりは無しにすると言ってくれただろ。しっかりとそれなりに血が出て
いることくらい、俺にだってちゃんと分かってるんだ。
「……少し」
そう言って、長門は息をついた。
いいさ。自然なことだ。それならしばらくこうしていよう。こうしているだけでもある
程度は満足できそうだ。
実際、いま動いたらものの数往復で限界を迎えかねない。早いとか言うな。俺だって初
めてなんだし、何より長門の中は反則級なんだ。この時にもまるであつらえたみたいにぴ
ったりとペニスを包んで緩やかに蠕動している。その感触がとても心地良く、そしてもど
かしくもあった。
「もう平気」
そんな俺の心情を汲み取ったかのようなタイミングで、長門がぽつりと言う。口調によ
どみは無い。
「動いて」
「本当にもう大丈夫なのか?」
俺と目線を合わせながら長門は頷いた。
きっと嘘はついていない。そう判断して、俺は緩やかに体を動かした。浅い位置での前
後運動を繰り返し、時折、深い所まで突き入れる。亀頭が子宮口を小突く度に長門は小さ
な身体を震わせて艶やかな息をこぼした。
「は……ん、あぁ……」
かすかに眉根を寄せ遠くを見るように目を細めている長門は、俺の勘違いでなければ少
なからず快感を享受している様子だった。ただやはり苦痛もあるのだろう。吐息に呻くよ
うな響きが混じることがある。
一方で俺は、温かく柔らかい長門の感触を貪っているだけだ。痛くも苦しくもない。で
きることならもっと早く荒々しく腰を動かしたいとさえ思う。でもそうはしない。あくま
でも緩やかに長門と同じ律動を刻むだけだ。
何故なら、こいつに負担をかけたくないからだ。それはつまり――
「長門――」
とその言葉を言いかけて、俺は口を噤んだ。何となく語彙として形を持たせてしまうと、
かえって虚ろなものになってしまいそうな気がした。
だから、その先は曖昧な原形のままに飲み込んで、俺は長門と唇を重ねることにした。
やがて緩やかに絶頂を迎えたその時まで、俺たちは何も言わずに唇を合わせていた。
長門と一緒に居て沈黙を決まり悪く感じたのは、もしかしたらこれが初めてではないだ
ろうか。
図書館からの帰り道、俺の一歩か二歩くらい後ろを遅れてついてくる長門の気配を確か
めながら、そんなことを思った。結局あの後は取るに足らないような会話を二つ三つ交わ
しただけで、長門の力であっさりとこっちの世界に戻ってからはひたすら俺たちは無言だ
った。
だって今更なにを話せばいいんだ。こうやって落ち着いてからは、クサい台詞はその一
切を脳髄が考えることを拒否している状態だ。
長門の方から何か言ってくれる……ようなことは期待できないよなあ。
そうして俺が胸中に悶々としたものを孕みながら歩いていると、ふと長門の気配が遠ざ
かった気がした。立ち止まり、振り返ってみる。
長門は黙然と立ち尽くしていた。
ああ、そうか。お前はここで曲がった方が早いんだったな。
「…………」
俺を見据えたまま長門は頷いた。
「ん……じゃあ、また明日、な」
今にも何か言いやしないかと注意深く揺るぎない無表情を見つめてみたが、俺が前に向
き直ってもその唇が開くことは無かった。
こうもいつも通りだと、ついさっきのアレは何かの間違いだったんじゃないかという嫌
な想像さえ過ぎってしまう。やはり俺が何かを言うべきなのだろうか。しかし何をどう言
えばいいんだ?
俺は深く溜息をつき、いつまでも立ち止まっているわけにはいかないだろうからと、仕
方なく長門から離れる一歩を踏み出した。その瞬間――
「……あの――」
どうでもいい雑音にまぎれてしまいそうな、か細い声が耳に届いた。
再び足を止め、振り返る。
いつもと変わらない表情。いつもと変わらない双眸。しかしその視線を俺の胸の辺りに
落として、長門は小さな声で口早に言った。
「明日の昼休みに、部室で」
俺が口を開くよりも早く、長門は顔を逸らして振り向くことなく歩いていってしまった。
――ああ、そうか。
その小さな後姿を消えてしまうまで見送って、俺は漠然と悟った。きっと俺はこいつの
こういうところを好きになったんだろうな、と。
踵を返し、帰路を歩きながら、自然と笑みが浮かんでいた。
俺が何を考えているかって? そんなことは決まってるじゃないか。
明日の昼休みに部室を訪ねて、あいつに訊いてみるんだ。お前はいったい俺のどこに惚
れてくれたんだ、ってな。
―――――
以上です。最後規制の関係で中途半端orz
それでは
意味不明で御都合主義的で強引な展開だけど、まぁそれは置いといて、エロかった。
何より、露骨でもなく、少なくも無い長門の描写の仕方で、長門の心理がわずかに読ませるのが上手い。
長門を書く時、このあたりが難しいんだけど、これはかなり上手いと思ったよ。
>>703 GJでした。長門の抑えた感じが良かった。
「目が覚めて夢が終わるのなら、このままで構わない」
ここ、長門らしいとか、らしくないとか以前にぐっときたよ。
>>703 精緻で微妙な描写のエロさに嫉妬w
マジで上手いわー
GJですた
漏れも頑張らねば
>>693 語りが基本だから書いてる本人としては汚してる感が強く出やすいんだよね。
俺だけじゃないはず…。
>>705と同じ意見です。
703はパク常習の字書き。バレバレw
ちん○おっきしたよ
憂鬱ラスト
もう時間がないかもしれない
あの巨人がすぐそこまで迫ってる
「な、なによ?」
目の前で少し不思議そうにハルヒが俺の顔を見つめている
俺はついに決心して言葉を発した
「なぁハルヒ、俺実は義姉義妹義母義娘双子未亡人先輩後輩同級生女教師幼なじみお嬢様
金髪黒髪茶髪銀髪ロングヘアセミロングショートヘアボブ縦ロールストレートツインテール特にポニーテール、
お下げ三つ編み二つ縛りウェーブくせっ毛アホ毛セーラーブレザー体操服柔道着弓道着保母さん看護婦さん
メイドさん婦警さん巫女さんシスターさん軍人さん秘書さんロリショタツンデレチアガールスチュワーデス
ウェイトレス白ゴス黒ゴスチャイナドレス病弱アルビノ電波系妄想癖二重人格女王様お姫様ニーソックス
ガーターベルト男装の麗人目隠し眼帯包帯スクール水着ワンピース水着ビキニ水着スリングショット
水着バカ水着人外幽霊獣耳娘萌えなんだ」
「えっと…もう1回最初から言って」
小ネタです
もう誰かがやってたらすみません
>>711 こんだけ属性書きつつちゃんと
眼鏡を抜かしてるところにこだわりを感じた
ポニーテールだけ強調してるw
北朝鮮がミサイルうってるときもエロパロですか
日本は平和ですね
>>710 もう女だったら何でもいいんじゃないかw
胸や体形については何も言及してないのがナイス
弓道着→袴
ごめん、気になったんだw
一度全部口に出してみたがどうしても噛んでしまうw
>>710翌日学校に行くとすごいことになってそうだな。
きっと無理があるポニテをしたハルヒが凹んで泣いてる。
>>719 いや、十二単なんて目じゃ無い重ね着して動けないだろ。
デ、一枚一枚剥いで行くトレジャーハンターキョン
38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/07/04(火) 17:54:11 ID:cslKxRg/
俺はハルヒの手を振りほどいて、セーラー服をつかんで振り向かせた。
「なによ……」
「俺、実は長門萌えなんだ」
「なに?」
「もうこのさい世界とかどうでもいいから俺だけ元の世界に戻してくれ。
長門と図書館に行きたいんだ」
「バカじゃないの?」
----------------そして世界は滅亡した-----------------------
444で投下した者です。続きを書いてみたので投下します。
>>669(260)さんの期待に応えられたとは思えないのですが、
444のアフターストーリーという形で、これまた非エロです。
7レス分ほど。
ではスタート
―――――
先週俺とハルヒが観覧車に乗ったことを覚えているだろうか。俺はなぜか、再びあの
観覧車に乗っているのである。しかも、今回は長門と2人きりで。
725 :
724:2006/07/05(水) 14:58:51 ID:zTeWIArp
前回観覧車に乗った日の翌日、放課後の部室において、ハルヒは少し得意げに長門と
朝比奈さんに対して観覧車からの眺めの素晴らしさを延々と語っていた。
ところで朝比奈さん、そんなに聞き入らなくてもいいんですよ。どこにでもある普通の
観覧車です。貴女だって1回くらい乗ったことあるでしょう?
「わたし、観覧車って乗ったことないんですよぉ」
ははぁ、そうなんですか。それじゃあ仕方ないですね、って未来には無いんですか?
「禁則事項ですっ」
相変わらず朝比奈さんのウインクは優雅だった。話を中断された形のハルヒが視線で俺を
刺してくる。痛い。痛いよハルヒ。
助けを求めるかのように長門を見たが、微かに首をかしげてこっちを見つめるだけであった。
そういえば、こいつは乗ったことあるのだろうか、観覧車。
「長t
「ない」
まだ何も言ってないぞ、長門よ。
「何?みくるちゃんも有希も観覧車に乗ったことがないの?ふーん……じゃあ、今度の
週末にまた行きましょう。いいわね?」
ちょっとまて、俺の意見は無視か。
「何よキョン。キョンのくせに何か文句あるの?」
「考えてみろ、あの観覧車は4人乗りだろう。SOS団は5人じゃないか。俺と、お前。
朝比奈さんに長門。それに……」
「僕のことも団員だと認めていただいているのですね」
急にしゃべるな気色悪いんだよ。しかし、忌々しいが認めざるをえないだろう。
「そうね……4人乗りのゴンドラに5人か……わかったわ」
そうかわかってくれたかハルヒ。お兄さんはそういう物分りのいい子が好きだなあ。
「キョン。あなた立ってなさい」
前言撤回っ。
「安心してください。今週末はちょっと用事があるので僕はご一緒できません。
どうぞ、お気になさらずみなさんで観覧車に乗ってきてください」
古泉よ。お前はなかなか話の分かる奴じゃないか。そうすると俺は朝比奈さんと長門、
そしてハルヒという3人と同じゴンドラで15分をすごすことになるんだな。学校の奴らに
見つかったら命がいくつあっても足りないだろうね。
「古泉、今回は恩に着る」
「そうですか。そう言っていただけると幸いです。代わりといっては何ですが、今度僕と2
「却下だ」
俺も長門のことは言えたもんじゃないな。
726 :
724:2006/07/05(水) 14:59:25 ID:zTeWIArp
さて、話は進んで今日である。先週と同じように午前中は不思議探索パトロールで、
同じように俺の奢りで昼食を摂り、同じように電車を乗り継いで目的地へと向かった。
違いといえば、今回は買い物をしなかったのと、そのおかげでまだ昼間だということだ。
観覧車に乗るために順番待ちをしている間、ハルヒは用意していた爪楊枝を取り出し、
座席を決めようと言い出した。あのー、午前中のときよりも皆さん気合が入っているような
気がするんですけど。
結局、俺と朝比奈さんがペアになり、ハルヒと長門が対面に座ることとなった。俺の横に
朝比奈さん。正面にハルヒ。その隣に長門である。前半は、俺と朝比奈さんが外側だ。
「わぁぁ、とても高いですねぇ」
早速朝比奈さんは外の景色を楽しんでいる。その声に釣られて横を見ると、俺は自分が
朝比奈さんの胸の谷間を見下ろすことのできるベストポジションを占めていることに気が
ついた。ああ、貴女はそんなところにゴンドラを2つも隠し持っていたのですね。
正直に告白しよう。俺は眼のやり場に困ってはいなかった。脳内みくるフォルダを開き、
急いで保存。危うく脳内で拡大したり編集したりするところであったが、都合4つの視線が
俺にそれを許さなかったのである。
「キョン……いい度胸ね。ここから落としてほしいのかしら」
まて、話せばわかる。
「……」
そうやって無言で見つめられるほうが苦しいんだぞ、長門。
「凄いですねぇ、歩いている人がとても小さいですぅ」
貴女の無邪気さはときに凶器になるんですね。
そうこうしているうちに頂点に近づき、ハルヒは不機嫌そうな顔のまま、後ろの景色を
眺めていた。俺はそういうハルヒの顔は見たくないんだけどな。自業自得か。
長門はというと、何事もなかったかのように横の景色を見ていたのだが、俺にはわかっていた。
気づいているか? 図書館にいるときと、今お前は同じ眼をしているんだぞ。
観覧車を降りると、ハルヒはしばらく自由時間だと言った。そして、朝比奈さんを捕まえ、
「みくるちゃん。新しい衣装を買うからついて来なさい」
と微妙に引きつった顔をしてどこかへ消えていった。朝比奈さん。貴女は悪い人ではないの
ですが、貴女のお乳上がいけなかったのです。本当にごめんなさい。
そして、俺はといえば、しばらくとはいつまでなんだと考えつつ、これからどうしようか
途方にくれようとしているのだった。しかし、とりあえず、と一歩を踏み出そうとしたとき
俺は袖に微妙な力が加えられていたことを知った。
727 :
724:2006/07/05(水) 15:00:02 ID:zTeWIArp
「……」
「どうした長門」
「……」
「ここには図書館はないぞ。本屋にでも行くか?」
「……もう一度」
「ここには図書館はないぞ。本屋にでも行くか?」
「そうじゃない」
「じゃあなんだ」
「観覧車」
「観覧車? あれにもう一度乗りたいのか」
「……」
やや間をおいて、俺にしかわからないような角度で長門が頷いた。
「わかったよ。もう一度乗ろう」
そう言ったときの長門は、嬉しそうな顔をしていた。少なくとも、俺にはそう見えた。
なんだ。結構かわいいところもあるんじゃないか。谷口、俺は長門をAランクプラスに
格上げすることを要求するぞ。
というわけで、本日2回目の観覧車である。さっき乗ったのと同じだったりするのだろうか。
「それはない。前回乗ったゴンドラは前方13台目を進行中」
さようなら俺の儚いロマンチシズム。
さて、俺は観覧車の中の2人は向かい合うものだと当然に思っていたようで、2人用の座席の
真ん中あたりに腰を下ろしたのだった。しかし、そんな俺の常識は俺個人のものでしか
なかったらしく、長門は俺の横にわずかに空いたスペースに体を移動させたのである。
長門の体はその狭いスペースにきっちり収まったのだが、俺は予想外の出来事に驚いたのと、
その刹那的な時間の中でかろうじて申し訳なさを感じたため、自分の体を少し横に動かした。
だがしかし、再びできたそのスペースを、なんと長門が埋めてきたのである。いつの間に
そんなスペースを埋める動きを覚えたんだ、長門。
思わず長門を凝視してしまった。
「……何?」
「急に長門が来たので……いやすまん、何でもない」
728 :
724:2006/07/05(水) 15:00:39 ID:zTeWIArp
「……」
「……」
気まずい。非常に気まずい。周りの風景が刻々と移り変わっていくのと対象的に、この限定的に
発生した閉鎖空間の中では時が止まっていた。横を向くことすらできない。
俺はこの状況を打破すべく、何とか話題を見つけられないかと四苦八苦した挙句、ようやく
口を開いた。
「なあ長門……」
ところがである。俺が口を開くのと時を同じくして、長門が俺にもたれかかってきた。
再び長門を凝視してしまった。
「……嫌?」
「嫌じゃない。ただ心の準備が出来ていなかっただけだ」
「そう」
俺の腕にかかる重さが少し増えた。それに気づいた俺も、ようやく肩の力を抜くことができた。
「それにしても長門、意外だったぞ」
「不思議」
それは答えになっているのか? と思ったら続きがあるようだった。
「私は貴方といると、地球上の言葉で言うところの安心感を覚える」
「私は別に不安を感じているわけではない。それなのに、貴方といると、安心する。不思議」
「この観覧車という乗り物は、外界と遮断された狭い空間の中で、2人きりになることが可能」
「とても良い」
えらく饒舌な長門がそこにいた。なるほど、それでもう一度観覧車に乗りたかったのか。
「長門、少し頭を浮かせてもらえるか」
俺の腕にかかっていた重さが消える。俺は、腕を長門の肩に回し、その小さい体を引き寄せた。
一瞬だけ長門の体が固まったのを俺は見逃さなかったが、すぐにより深く俺に体を預けてくる。
心地よい重さが広がる。俺は何とも言えない優しい気持ちに包まれていた。
長門よ。俺はお前の顔を見ることはできない。しかし、もしもお前がいま眼を閉じてくれている
ならば、こんなに嬉しいことはないだろうと俺は思う。
心なしか、外の景色の動きがゆっくりになったのは、やはり気のせいなのだろうか。
729 :
724:2006/07/05(水) 15:01:13 ID:zTeWIArp
ゆったりとした時の流れの中、観覧車は4分の3ほどの行程を終えていた。
「なあ長門。あと5分ほどで着くが、その後はどうする?」
何の気なしの一言であった。
「……」
答えない長門。まあいいだろう。
しかし、
ガタンッ
軽い揺れとともに、観覧車の方が止まってしまった。思わず下を見ると、係員らしき人たちが
慌てているようだった。この高さだと、動き出すまではここにいるしかないようだ。
「故障かな」
「……」
「しかし閉じ込められたままというのも困る。長門、どうにかならんか」
「……」
「長門?」
「……」
怪しい。俺は一つの疑念を口にした。
「長門……もしかして、お前がやったのか?」
「……」
「こっちを向きなさい」
前を向いていた視線が俺から遠ざかるように斜め下に落ちる。どうやら当たりのようだ。
「長門、どうしてこんなことをしたんだ」
「……」
「俺たち以外にも乗客はいるんだぞ」
「……」
「聞いているのか長門」
「……もう少し」
「何だ?」
「もう少しだけ、貴方とこうしていたかった」
「このようなやり方を貴方が嫌うことは知っている」
「それでも、私は貴方とこうしていたいと願ってしまった」
「だから……」
俺を見上げる長門。その瞳は、少し潤んでいるように見えた。頼むからそんな顔をしないでくれ。
730 :
724:2006/07/05(水) 15:01:44 ID:zTeWIArp
怒るに怒れなくなってしまった俺は、さっきよりも強く、長門を抱き寄せた。
「わかった。もう何も言わん。だがなるべく早く元に戻せ」
長門は頷き、今度ははっきりと眼を閉じた。長門の言葉が途切れずに残った余韻。
その三点リーダが2人を包み込んでいったというのは、言いすぎだろうか。
10分程度たっただろうか、観覧車は再び動き方を思い出したように、ゆっくりと移動を始めた。
長門が俺から離れるときの動きは、観覧車よりもゆっくりだったよ。
下に着くと、係員らしき人から観覧車の無料乗車券を8枚ほど貰った。お詫びのようだ。
貴方たちは悪い人ではないのですよ、悪いのは……と言ってあげようかとも思ったが、
どうせ信じてもらえないだろう。ありがたく頂戴することにした。
すべての乗客を降ろし終えた後、30分ほど無人のまま観覧車を動かし、どうやら大丈夫の
ようだと判断したのか、営業が再開された。先ほど貰った無料乗車券のうち、早くも2枚が
なくなってしまったことは秘密だ。
3度目の観覧車から降りてしばらくすると、朝比奈さんとハルヒがやってきた。
朝比奈さん、貴女は何に怯えているのですか。周囲を窺いすぎです。
「へっへーん、明日が楽しみねみくるちゃん」
ハルヒよ。お前は俺の守備範囲の広さを知らないようだな。
「……」
「長門、また乗りたくなったら言うんだぞ」
ハルヒには聞こえないように、そっと長門に告げる。しかし、お前も素直じゃない奴だ。
一緒にいたいなら、もう1回乗ればよかったじゃないか。ハルヒがうつったみたいだぞ。
次の日、放課後部室で俺を待っていたのは、バスガイドに扮する朝比奈さんであった。
盲点だった。無線機のようなマイクや、「SOS団」と書かれた三角形の小旗に俺の知らない
萌え要素があったとは!
731 :
724:2006/07/05(水) 15:04:48 ID:zTeWIArp
以上です。
>>669さん的には怒り足りなかったでしょうか。
あと、最後で
>>710さんからちょっとネタを拝借いたしました。
了解も得ずに勝手にやって申し訳ありません。
なお、古泉カワイソス と思ったのだが古泉編はさすがにどうかと
思案中なのは秘密。
732 :
724:2006/07/05(水) 15:08:03 ID:zTeWIArp
734 :
名無し:2006/07/05(水) 16:28:26 ID:EkmdRAPd
710あの本持ってるだろ。
>無線機のようなマイクや、「SOS団」と書かれた三角形の小旗
俺もまったく気づいてなかったが、確かに萌えるかもしれん
>>732 地元の人間だが、乗ったことない。
アレって意外に地元の人間は乗ったことないんだよなぁ。
>>734 名前欄に何も書くな、メール欄には「sage」と書け、
レスアンカーは「
>>710」のように半角>を2こ付けた後に数字。
基本的なことだからお願いする。
>>737 親切だね!
「半年ROMってろ!」で十分だと思うけど・・・
そんなんで厨はROMってくれないんだぜ。
>>739 抜けないからってカッカするな。
ちんこしまえ。
>>739 抜けないからってカッカするな。
ちんこしまえ。
RhGxKqvcからこないだ叩かれてた人と似た香りを感じる。
>>735 書いていて微妙かもと思っていたのだが、よかった。萌えられるか。
>>736 自分はオープン当初に1度乗っただけ。あのときは700円だったのに。
高いところからの眺め、というのは地元民には必要ないというか何というか。
>>739 エロうまく書けない。書ける人が羨ましいね。
でも折角だから叱咤を激励と受け取り、頑張って何か書いてみるわ。
投下できるものになればいいなあ。
青髪ピアスの改変だから仕方ない
>>739 微エロじゃないか?というか、青少年時代の肩に掛かる髪とか、寄りかかってくる体重とか
エロでしたよ。なんていうか、これをやられると男の方は色々な妄想が渦巻くのです。
直接的な描写(キスやSEXとか)は無いけど、これはコレで抜け(ry
>>561の続きを投下します。
ハルヒの心理描写を考えていたら仕事で失敗をやらかしたorz
>>561の続き
「涼宮ハルヒの疑惑」
尾行から帰った後、私は布団の中でさっきの事を考えていた。
あのキョンと阪中さんが付き合っている。
団の中の恋愛ではないし、阪中さんは悪い人じゃない。
それは私が太鼓判を押してあげる。
私のSOS団以外じゃ高校初めての友達だしね。
意外とお似合いなのかもしれない。
…でも、あの二人を見た時、心臓が痛くなったの。
この気持ちはなんなの?
私は自分自身に聞いてみた。
私はキョンの事をどう思ってるの?
みくるちゃんにデレデレしてて、私にいつも文句を言う。
顔や学校の成績も普通。
映画の時は本気で怒ってたっけ。
おまけに階段から落ちて病院に運ばれて、みんなに迷惑もかけている。
役に立たない雑用ね。
…本当にそうなの?さっきよりも心臓が痛くなった。
違うでしょ。本当にそう思ってるならキョンは団にいない。
今この時、自分自身に素直にならなかったらずっと後悔する事になるわよ。
キョンはあなたにとって特別な人なんでしょ?
野球や映画の時、素直に言う事を聞いたのは何故?
合宿の時、犯人を言わなかったのは何故?
バレンタインの時、みくるちゃんに義理と書かせたのは何故?
そして…
キョンが入院した時、学校を休み、家にも帰らずキョンの所に三日も付きっきりだったのは何故?
もう一度聞くわ。はっきりと答えなさい。
あなたは、キョンの事が好きなんでしょ?
「そう、私はキョンの事が好き。」
私は、自分自身にはっきりと答えた。
>>739,745
このスレはエロ無しOK。
いくらでも書いていいですよ。
とりあえず、ハルヒの心理描写があと一回、翌日の事が3〜5回ぐらいになると思います。
今日の内に出来るかはわかりません。
何しろ明日2:28から絶対に見なきゃならないものがあるんで。
出来なかったらすみませんorz
やった!長らく希望のキョン消失きた!
核スレ間違えたorz
>>753 明日2:28とは、今日26:28ということなのだろうか。
つかぬことを聞くが、それはフジテレビ?
757 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 18:55:21 ID:NlPUdD8O
さあ、どこか言ってもらおうか
ハルヒを語るスレ
でも書いた人用事で生殺し状態
>>753 ハルヒのモノローグ内では阪中さんは「阪中」と呼び捨てになってると思うんだ。
その他はまあいいんじゃないの。
書き上がってからまとめて投下すれば?
ハルヒへのプレゼントとかを阪中さんに相談してたなんてベタなオチがきたら叩いちゃうぞっ♪
>>760 その後険悪なムードに→プレゼント→「実は相談してt(ry
>>760 それはそれでいいかもw
ベタはベタでいいしなw
>>757 普通に東海地方は今日その時間がハルヒ最終回なんだよ
>>760 相談していたとハルヒに言う。
そして、その後キョンのモノローグに入り
「ふぅ〜、本当は阪中と付き合ってたなんて言えやしねぇな」が入るんだよな?
>>763 本当だ。ご教示ありがとう。フジテレビに2:28から
見ようかどうしようか迷っている番組があったので
ちょっと驚いた。
鶴屋さんかも〜NN
>>753の続き投下
「涼宮ハルヒの疑惑」
キョンの事が好き。でも阪中さんとの中は壊したくない。
何より、キョンに拒絶されるのが怖い。
それが私が自分自身に素直になれなかった理由。
キョンが聞いたら呆れるんだろうな。
私はこの今の状態が崩れるのを恐れている。
学校に来る楽しみが、ううん、生きる意味が無くなってしまうような気がするの。
そんな事になるくらいなら、いっそのことキョンと阪中さんとの中を応援しよう。
そこまで考えた所で私は眠ってしまった。
翌日、珍しく古泉君と朝から話をした。
なんでも、今月の第一日曜日に、キョンが古泉君の知り合いの所でアルバイトしていたらしい。
なんで私に話すのかはわからないと言ったら、そのうちわかりますだって。
ハルヒ「おはよ、キョン」
キョン「ん、おお」
キョンはどことなく不自然だった。
キョン「日曜日休みまくってすまなかった」
ハルヒ「まあ、用事があったんだから仕方ないわ。ところで、今週は出れるの?」
キョン「ああ、もう大丈夫だ」
ハルヒ「そ、わかったわ」
この会話の後、いつものように時間は過ぎて、下校時間になった。
何か、やたらとプレッシャーをかけられている気がする。
どうしよう。
とりあえず、完結はさせます。投下はもう少し待って下さい。
支援
>>727 > 「急に長門が来たので……いやすまん、何でもない」
QNKワロタ
_,. -─- 、__
_,.-'´ `ヽ
‐ァ'´ ヽ
/,ィ , ,. 、 ヽ l 、\ 北朝鮮が撃ってくるミサイルを撃墜するだけ
'゙ | j ' j. ハ. 、 ヽ ',| | l |`¨ 許可を
,.、 | | HV、ヽ',ヽ、.ト、j |l」,、|
/ /\ __ ヽト N{沙 ` 傍フ| レリ
/ / \ (‐ェ'`) _ ,..r─ヽ }、 ' _ `¨_,! ハ
. / / \  ̄ f,. | ヽ| ` ァニ -' /イ ',
/ / ゙;.───‐└乞 -'ー──-//l、 /´ |
/ / / l.l | l.|゙シ'´ |
ヽ′ / l.l | j/ ,. -_ニ_-、|
\. / l.l |-─l二ヘ,r',r' ´ ヽ|
\ / l.l | | {/ |
\/ l.l. |-ー { __,/ , |
ヽ二二二二ニコl、__,. -ー '' ´ / |
{- | / |
>>771 もうちょっとまとめてから投下するといいよー
作品の最後に「終わり エロ」って書いておけばエロ有りに(ry
779 :
グロ注意:2006/07/05(水) 21:04:20 ID:xyNThRV1
トイレに座るハルヒ。
便座は抗菌タイプのものでしっかりとばい菌マンなどいない。
いまは、むかしと違ってアンパンマンなどいなくても大丈夫な時代なのだ。
白い光輝く便座にハルヒの年端もいかない男に触られたこともないお尻が、
そう尻がぺたりと座った。
尻はペロンとむき出した状態でそれはかなりのいい桃尻だった。
桃尻などと見てかぶりつきたいと思った諸君。親父だな。
できればチョイ悪親父を目指してくれ。
ハルヒは尻を出して少し時間がたっていた。
どうもお通じがよくないのだ。
「う〜ん」
軽くうなるハルヒ。第三者の視点から見たらばかばかしいが本人の視点で
立つと切実なのだ。腹痛とかもそんなもんだ。
本人にとっては辛いのだ。
780 :
グロ注意:2006/07/05(水) 21:08:21 ID:xyNThRV1
さて、女性は便秘になりやすい傾向がある。ちょっとした雑学だが
聞いてくれ。
なぜなら子宮があるからだ。子宮と考えてちんちんおっきした諸君。
同人の読みすぎだよ。
子宮がある分、どうしても男性より腹筋が弱くなるらしい。結果うんちを
出す力が弱くなるのだ。それが女性が便秘になりやすい理由である。
便秘には何が一番いいかというと白湯である。暖めたお湯だ。安上がりだが
これが一番確実らしい。何故かというと体を温めて体の機能をいろいろと
促進するからだ。
人間は暖かくないと能力が低下するのだ。
ハルヒは当然それを知っていて、白湯を飲んでからここに着たのだ。
781 :
グロ注意:2006/07/05(水) 21:11:42 ID:xyNThRV1
「う〜ん」
ハルヒは踏ん張りながら考えごとをする。
キョンと付き合いたなぁ、と。突き合いたいなぁではない。
そう思ってしまった人は欲求不満ですからオナニーをお勧めします。
ハルヒは思った。キョンが彼氏だったら。
最近のカップルは変態漫画やエロ漫画、同人の影響でアナルセックスを
大抵は経験している。だからきっとキョンもきっとアナルに興味があるんだろう。
そう思うとハルヒは少し恥ずかしくなってきた。
キョンにお尻の穴を見られる。あ、ヤバ。ぬれてきてる、私。
でも想像を続ける。
782 :
グロ注意:2006/07/05(水) 21:14:38 ID:xyNThRV1
「ハルヒ、お尻の穴、指入れてもいいのか?」
「何よ、キョン。いつから変態になったのよ」
「いや、ほら。お前も普通なのじゃ飽きるかなって思って」
「ふ〜ん、とかなんとか言っていつも変なプレイを要求し
ていると思うんだけどなぁ」
「いや〜」
「まぁ、いいわ。でも優しくしてね」
「あぁ、その前に指舐めてくれよ」
「え?」
「濡らしとかないとね」
「わかったわよ、あむ、ん、ちゅぱ、ン」
「よし、じゃあ入れるよ」
「アッ!!」
783 :
グロ注意:2006/07/05(水) 21:17:12 ID:xyNThRV1
想像を終えた。なにこれ。私が完璧な受けじゃない。
あ、そんなことよりはやくうんこしないと。
下半身を冷やすとよくないって言うし。
また踏ん張るハルヒ。踏ん張ると少しだけ出てきそうな感じがした。
「あっ、生まれそう」
ぷりっ。
ぷりっ。
ぷりっ。
小物が三つ、こんにちわ。便器の中からこんにちわ。
便座の中で今、新たな存在の力が生まれたのだ。
「う、まだ出そう」
784 :
グロ注意:2006/07/05(水) 21:19:19 ID:xyNThRV1
いかん、今度は大きいかもしれない。
ぶりりりっりりっ!!!
ぼちゃん。
かなり大きかった。そのため、ハルヒはお釣りをもらってしまったのだ。
お釣りとはうんこをしたときに水面に落ち、跳ね返ってきた水のことを指す。
当然、さっきのうんちを流していないので汚染されている水だ。
「くそう」
ハルヒは悪態をついた。
785 :
グロ注意:2006/07/05(水) 21:25:13 ID:xyNThRV1
「チッ」
ハルヒは舌打ちをするとシャワースイッチを押した。
あなたのお尻を綺麗に洗ってくれるアレである。
ハルヒはそのまま水がくるのを待つ。
しゃわーーーーーーーーーー
ハルヒの尻の穴めがけて飛び立つ水たちである。
尻の穴を洗い、しわのなかにこびりついた糞どもを一掃する。
できれば極東3バカ国家の指導者も一緒に一掃してもらいたい。
「あん、やっぱり気持ちいい。
私ってやっぱりアナルの素質あるのかしら」
シャワーが終わるとハルヒはトイレットペーパーでお尻を拭く。
もちろん前の方も。しかしよく考えると流していなかった。
お尻を優しく綺麗に拭き終わると立ちあがる。
そしてまずはパンツをはく。黒の勝負パンツである。いつキョンに
押し倒されていてもいいようにである。女は大変である。こういう女の
心遣いはなかなか男はしない。
そしてスカートをはく。
後ろを振り向くとうんこがあった。
786 :
グロ注意:2006/07/05(水) 21:28:25 ID:xyNThRV1
うんこは全部でよっつ。
小さいうんこと
小さいうんこと
小さいうんこと
大きいうんこだ。
なんか歌になりそうだ。そのうんこたちを見ながらハルヒは口を開いた。
「糞に用はないんだよ」
そういうとハルヒは非常にも大の方にレバーを流す。
うんこが流されていく!!
「やめてーーー!!助けて!!
まだ僕達は生まれたばかりなんだよ!」
「僕達が何したっていうのさ!!」
「うんこを差別するな。うんこ侵害だ!!」
「うんこだって平等なんだ!!」
うんこの叫び声が聞こえてきた気がした。
787 :
グロ注意:2006/07/05(水) 21:31:24 ID:xyNThRV1
ハルヒは流されていくうんこを見守ると
「ふぅ」
とため息をつき、ふぁぶりーすをして学校にいく。
キョン。
私、あんたのことが好き。
私、さ、綺麗な女じゃないけど。
いつでも待ってるよ。キョン。
綺麗な女じゃないから大抵のことは、
して、あげられると………思う。
キョンはいつ私を襲ってくれるんだろう。
788 :
グロ注意:2006/07/05(水) 21:32:15 ID:xyNThRV1
ハルヒは待ち続けるだけだった。
(いや、待ちの姿勢もMなんですけどね)
完
お前馬鹿だろう(褒め言葉
>>788 ワロタ、お前はうんこと言いたいだけなんちゃうんかと
ところで地の文がキョンっぽいんだけど覗いてたりする設定なのか?
最初の3行がツボにはまった
オモシロス。続いてたらぶん殴るところだったgj?
気弱な誘拐犯にハルヒがさらわれる話を思いついた。
なんかドラマで見た気がしないでもないが……
「すいません……あのっ誘拐しちゃったんですけどロープきつくないですか。緩めましょうか?」
こんなノリの誘拐犯に
「私を誘拐するなんていい度胸ね。いいわ協力するっ!
日本の税金ドロボウどもに一泡吹かせてやるのよっ!」
こんなノリで誘拐犯に協力するハルヒ。
ここまで妄想してハルヒが気弱な誘拐犯に誘拐されるわけないよな。
という結論に至った。
未来人、宇宙人、超能力者の護衛付きだし……
が、書こうと思えば古泉がらみでかけない事もないか。
乙一の失踪ホリディを思い出すなあ。アレとはまァ全然違うが。
それはそれで面白そうだ。
やっと完成した…疲れたー。
では投下します。
>>770の続き
「涼宮ハルヒの疑惑」
帰る途中に、キョンが呼び止めてきた。
もしかして、阪中さんとの事かな?
だったら盛大に祝ってあげるわ。
キョンが鞄から何か取り出した。
ん、これは何?
キョン「いいから開けて見ろ」
これは…私が欲しかったイヤリング。なんでこれを私に?
キョン「お前、もしかして気がついてないのか?」
なにをよ。
キョン「お前の生まれた日だろうが。ま、俺も人の事は言えんが」
え、あんた阪中さんと付き合っているんじゃ?
キョン「あれのことか。お前まさかストーカーまがいの事してたのか?」
ち、違うわよ!たまたま見かけただけよ。
キョン「阪中さんから一ヶ月前くらいに話を聞いてな。
どれがそのイヤリングなのかを聞いて一緒に探してもらったんだ」
キョン「たまたま無くしたへそくりが出て来てな。
妹にばれるくらいならと思って泣く泣く私財を使ったんだ。
古泉には色々言われるし、朝比奈さんと長門には睨まれるし、ひどい目にあった」
ハルヒ「キョン…そ、その…あ、ありがとう。すごくうれしい」
キョンはまるであってはならないものを見たような顔をしてる。
キョン「お、お前がそんな反応をするとはな。今日はハレー彗星が地球に衝突するかもしれん。
そうだ、お前も一応阪中さんにお礼を言っておけよ」
ハルヒ「わかってるわよ。 さて、キョン。
団長を驚かすとはいい度胸ね。罰ゲームを受けてもらうわ!」
なんか台本読んでるみたいだな。
キャラ名は無いほうがいいと思う
キョン「ちょっと待て。お前さっき自分で言った事を覚えてないのか」
それはそれ。これはこれ。てなわけで罰ゲームを受けなさい!
キョン「どんなわけだよ…やれやれ」
すぐ終わるから大丈夫よ。
キョン「お前にとっての大丈夫が俺にとって大丈夫だった事などないぞ」
いいから!目を閉じて少し屈みなさい!
キョンは諦めた様子で指示に従う。
私はキョンの顔を両手で掴んで―
キスをした。
キョン「―!!お、おい!ハルヒ!お前今なにを」
ハルヒ「プレゼントのお礼よ!それ以上でもそれ以下でもないわ!
勘違いしないでよね―!」
あはは、キョン顔真っ赤。心なしかうれしそうね。
脈は全くないってわけでもなさそう。
いつか―自分に、そして、キョンに素直になれる日がきますように。
800 :
投弾者:2006/07/05(水) 21:57:53 ID:nCANpsB+
感想ども。あれからも感想コメント頂けたようで感謝。
うーん、確かにハルヒSSって大概一人称だしな。原作もキョンの視点固定だし。
でも、正直一人称は苦手なんだけどね。まぁ、努力してみよう。
これで終わりです。
えーその、ベタでごめんなさい。
あ、あれ?朝倉さん、なんでここに?
あなたを殺してスレ内の様子を見る?
や、やめ(ry
もしも二期を消失メインでやるんだったら
次の超監督は長門だったりして。
一時的に全国のコンビニでおでんが売り切れる怪現象が・・・
804 :
ジョン・スミス:2006/07/05(水) 22:16:33 ID:dhkkmpzR
もうすぐ次スレか
早いなこのスレ
じゃ俺が立ててくるよっ
>690
わーすーれーてーたー
orz
まあチュウがエロく伝わってたなら漏れ的には優勢勝ち
次書くときは齟齬が無いようにしまつ・・・
811 :
ジョン・スミス:2006/07/05(水) 22:44:46 ID:dhkkmpzR
おおっ!
もう立っちゃったんスカ!?
早いっスネ。
で、ジョンさんはいつになったらsageてくれるんすか
うんこを書いたものです。
みんなが喜んでくれて嬉しいです
また近々書こうと思います。
…なんか、最近レベル著しく下がってるな。
グロ注意と書けば許されると思ってる奴とか
名前「 セリフ 」でしか書けず改行も出来ない奴とか。
まあそれ以前に、読んでて全然面白くない。
うんこものを
>>813 そしてこう言うのを荒らしと呼ぶ。
なんか末期的症状が出てるな。
アニメも終わったことだし、一度壊すべきか?このスレ。
次回
長門ユキのうんこ
次回
xyNThRV1のうんこ
さて、NGにするか。
そだな。
次スレが立ったようなので、埋めを兼ねた小ネタ。
―――――
「少しばかり、お時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「ちょうどいい機会が到来したものですから、お付き合い願おうと思いましてね」
「貴方のせいですよ」
「ここまでお連れして言うのも何ですが」
「しばし、眼を閉じていただけませんか」
「もう結構です」
「我々の世界とは隔絶された、閉鎖空間です」
「ここはその内部です」
「今この時でも、外部では何ら変わらない日常が広がっていますよ」
「しかし、貴方も大したものだ。この状況を見てほとんど驚いていませんね」
既に色々あったからな。
ところで古泉よ。俺はどうしてお前と観覧車に乗っているんだい?
何がやりたいんだ古泉w
原作自体の道具立てがミニマルなもんだから、資源枯渇も相応の早さに訪れる事も
不思議ではないのは確か。二次など、元ネタを分解した要素の順列/組合せなんだし。
こんなのもわかんないの?バッカバカバカ
今書いてるエロなしSSが23kもいって今さら出しづらい…
うんこSSもそのうち投下しますよ
今まとめて描いてますから
829 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 23:36:29 ID:IxPBvo03
>>
826
>>826 俺は、まったくエロなしで55k投下したことがあるぜ。
反応が怖くて、その後しばらくスレを見れなかったがな。
>>826 こっちは俺たちが埋める!お前はあっちを頼んだ!
・・・とやろうとしたがみすった。
自サイトに逃げた人も沢山いるんだろね。
荒れ放題だし。
>>826 エロ専用板じゃないので、投下ねがいたい。
まだ結構あるな。
>>827 じつは120辺りにもう書いてたりして
しかもそれすらも加筆修正で変容してる
しかもまだ完成してないというイライラ
鶴屋さん告白とかネタはあるんだけどなぁ・・・
>鶴屋さん告白
是非みたい
>鶴屋さん告白
是非みたい
>鶴屋さん告白
是非みたい
>鶴屋さん告白
是非みたい
>鶴屋さん告白
是非みたい
そう
>鶴屋さん告白
是非みたい
>鶴屋さん告白
是非是非見たい
>鶴屋さん告白
悶えるほどに見たい
何か埋めモードに入っているようなので、小ネタ投下。エロなし萌えなしで2レス。
梅雨の蒸し暑さの中、俺は、その不快さから、部室の長テーブルに突っ伏していた。
湿った空気が纏わり付いてきて、首筋を汗が流れる。
ふと、顔を横に向けると、いつものように涼しい顔でハードカバーのページを捲っている
長門の姿が視界に入った。
長門は暑いとか寒いとか感じることはないのだろうか。
いや、長門のことだ、例の情報操作とやらで、この鬱陶しさに対処しているのかも知れない。
汗一つかかずにページを捲る宇宙人製アンドロイドを見ているうちに、
喜緑さんの涼しげな微笑みを思い出し、次いで、生徒会室を連想した。
そういえば、生徒会室っていつも快適だよな、エアコンもないのに。
春先の機関誌騒動以降、何度か足を運ぶはめになった生徒会室を思い出す。
暑くもなく、寒くもなく、いつも快適な温度と湿度を保っているような気がする。
それに比べてこの文芸部室、いや、SOS団の溜まり場は、夏は暑く、冬は寒い。
今の季節は、蒸し風呂のようだ。
まあ、夏や冬の生徒会室がどんな状況かは知らんのだが、この鬱陶しい梅雨の季節に
あれだけの快適さを保っているんだ。だから十分に想像できる。きっと快適に違いない。
でも、なぜだ? 何だか不公平ではないか。
ぼんやりとした俺の視界の中で、長門が顔をあげ、こちらに視線を向ける。
「生徒会室は、基本的にエントロピーが減少する傾向にある」
「……何だって?」
「たぶん、喜緑江美里のせい。あれは悪魔の仕業」
喜緑さんの? 悪魔とはまた物騒だな。
まさか古泉の言ってた広域宇宙人とやらが絡んでるんじゃないだろうな。気になるじゃないか。
俺は上体を起こして長門に向き直った。
「どういうことだ?」
「喜緑江美里は、悪魔を使い、生徒会室内において、空気中の早い分子を排除し、
遅い分子を受け入れている。別に害はない」
害はない、と言う言葉にほっとする。
でも、喜緑さんは、お前と同類だろうなとは思ってたが、そんな魔法使いみたいなことを
してたとはな。
つか、悪魔って何だ? それってお前が使う情報操作なんちゃらのことじゃないのか?
というか、そもそも、分子を選択するなんてことが出来るのか?
いや、長門や長門の同類なら、出来ないことなんてないんだろうけどさ。
「で、それで一体どんな効果があるんだ?」
「生徒会室の室内温度は周囲より低く保たれる。冬は、そのプロセスを逆にすればよい」
「よく解らんが、それで快適な環境が保たれるってわけか」
宇宙人パワーをエアコン代わりに使うってのは、どうなんだ? それって何か間違ってないか?
そう思いつつも、しかし、それで快適になるのなら、ハルヒのいないとき位は、お願いできない
ものだろうか、などと思ってしまうのは、一介の高校生としては当たり前のことだと思う。
そうさ、俺は、聖人でも何でもないんだからな。ただ、いきなり、喜緑さんと同じことをしてくれと
頼むのは、人としていかがなものかと思わんでもない。しかし……。
まあ、訊いてみるだけなら罰が当たることもないだろう。
そう自分に言い聞かせて、何気なく長門に訊いてみる。
「お前は、喜緑さんと同じことは出来ないのか?」
出来るなら、きっと感謝されるぞ。俺だけでなく朝比奈さんや古泉からもな。
「できる。しかし、推奨できない」
なぜだ? 喜緑さんはやってるんだろ?
「喜緑江美里は、生徒会の書記だから」
すまん、意味が解らない。
「書記。英語で言うと、クラーク」
すまん、ますますわけが解らない。
そのときの俺は、かなり間の抜けた顔をしてたんだろうな。
少し伏し目がちになった長門は、何と言うか微妙に脱力した雰囲気を周りに漂わせつつ、
小さな声で呟いた。
「ジェームズ・クラーク・マクスウェル」
「自慢じゃないが、さっぱり解らん」
しばらく俺を無表情で見つめていた長門は、ゆるゆると、手元のハードカバーに視線を戻し、
少しだけ肩を落とした寂しげな様子で呟いた。
「……そう」
その瞬間、室温が一気に10度は下がったんじゃないだろうか。
すまん、俺が悪かった。だから機嫌を直してくれないか?
ついでに、今の話のポイントを解説してくれると嬉しいんだが。
ああ、長門。そんな目で俺を睨まないでくれ、頼む。
おk、とりあえず期待を裏切らないように加筆修正してくる。
ど〜ん
>845
ワロス
野暮を承知で解説すると
速度の早い分子だけを追い出して遅い分子を受け入れる、っていう働きをする架空の小妖精を
「マクスウェルの悪魔」
といってこいつは熱力学第二法則に反する存在なわけで
そいつを考案した科学者マクスウェルのミドルネームがクラークなのと引っ掛けたジョーク
ていうか長門さんあなたの読んでる本が想像できますよ
メガネで頬ヒゲをたくわえたふとっちょのユダヤ系生化学者の本でそ?
長門ユキはうんこをするのか?
長門はうんこをすることはない。
なぜなら長門は人間ではないからだ。
しかしどうもうんこをしなければいけないようだ。
なぜなら彼がどうもうんこが好きらしいからだ。
涼宮ハルヒは言っていた。
「キョンってどうも変態らしいのよ」
「変態って何?」
「何でもスカトロが好きらしいのよ」
「スカトロって何?」
「あ〜、簡単に言うとうんこ」
「………」
どうやらうんこをしなければいけないようだ。
私は彼に好かれたいのだろうか?
いや、そんなことはないと思う。
私は涼宮ハルヒの監視としてここにいる。
それ以外の事象などどうてもいい。
彼はその涼宮ハルヒが呼び寄せた大事な人間だからだ。
それ以外の感情などないハズ……。
長門ユキは便器に腰を下ろす。
そうだった。うんこをする時はスカートとパンツを脱がないといけない。
スカートを脱ぐ。そうすると白い熊さんパンツがあった。
こんなパンツだと色気がないだろうか。
キョンはどういうパンツが好きなのだろうか。
後で調べないといけないと思った。
熊さんパンツを脱ぐ。
下半身は生まれたまんまの状態だ。
うんことは何なのか。Wikipediaにアクセスする。
糞(くそ、ふん)とは、動物の排泄物のうち消化管から排泄されるもの。
糞便、大便、(俗に)うんこ、うんちやばばとも呼ばれる。
そうか。うんことは食べたものが変化した後の状態を指すのだな。
しかしここで長門は決定的な失敗をしてしまった。
Wikipediaにあったうんこの写真は人間のうんこではないのだ!!
そう、ウサギのうんちっちである!!
しかし長門はそれ以外のうんこが違う形をしているだなんて夢にも思わなかった。
よって長門はウサギのうんちが「うんこ」であると考えたのだ。
これには理由がある。ウサギは未来人である朝比奈みくるがよくする「コスプレ」
であるからだ。そしてその姿をキョンが好意的に見ていたのも事実だ。
よって彼女の中でうんこは成立するのだ。ウサギのウンチは素晴らしいのだ。
長門は体内で情報連結を開始する。自分の体内でうんこを生成するのだ。
分子情報を複数作り出し、物理的に存在させ、結合していく。うんこを。
長門は呪文を唱えていた。うんこを作るために。
「私は彼に………好かれたい」
その一途な気持ちがうんこを創造していたのだった。
彼女の中で複数のうんこが生成される。ウサギのうんこが。
ぎゅんぎゅんぎゅん、
効果音がつくとこんな感じだろうか。
「できた」
「してみる」
長門はうんこをしてみることにした。うんこをするときは踏ん張るという行為があることを
しらなかった。長門はうんこをそのまま力を入れずに行った。長門なら問題ないが力も入れずに
うんこが出たら病気である。病院に行く必要がある。だが長門なら問題ない。うんこ問題ない。
ぷりっ。
ぽちゃん
ぷりっ。
ぽちゃん
ぷりりっ。
ぽちゃん
うんこが出た。みっつでた。ウサギのうんこが三つでた。
丸っこいうんこ。お月様のように丸いうんこ。大きさは実際のウサギのうんこより大きいのは
サイズは写真ではわからなかったからだ。
彼は何故、これがいい?」
「直接聞いたほうがいい」
そういうと長門はパンツとスカートをはいた。そう尻を拭いていない。なぜなら初めてうんこを
したからだ。尻を拭くという一般常識がないのだった。
長門はそのままキョンのところに会いにいく。ちなみに手も洗っていない。
私は彼のことが………。
でも私にはお役目が……。
このあと長門はキョンに「くさっ」といわれてひどく傷つくのだった。
涼宮ハルヒに騙された。
こうして長門はハルヒに始めて不信感を抱くのだった。
完(続くと思う)
なぜに、うんこネタがはやるww
ウンコー(・∀・)ノ==●
このスレも、もうダメかもわかんね
>>855 流行ってない。一人の荒らしがやってるだけ
>724、良かった。自分が書いたのは余計だったね。
ということで穴埋め用の超小ネタ。
部室に、学校には本を読みに来ているとしか思えない長門しかいなかったので
俺は前々から疑問に思っていた事を聞いてみることにした。
「長門があまり口を開かないのは、俺たちの言語に変換するのが苦手だからか?」
「そう」
やっぱりな。変換前の情報を俺たちが上手く受け取る方法は無いのか?
「無理。仮に我々の持つ情報を余さずに伝達できたとしても、
脳が情報の奔流に耐え切れずパンクするのは確実」
「そうか。俺たちにも言いたい事がたくさんあるのに言葉が出てこない状況ってのが
よくあるから長門も辛いんじゃないかと思ってな、何か力になりたかったんだが。
すまん、今のは忘れてくれ」
「・・・・・・」
長門は無言で本へと目を戻したが、しばらくしてふいに、
「方法自体は無くも無い。脳への影響も伝達する情報を極めて限定すれば平気」
「そうなのか。で、その方法とは?」
「・・・・・・・・・・・・」
ここで突然俺は仰向けに倒れた。というか目にも留まらぬ早業で足を狩られ、
次の瞬間には長門がマウントポジションで覆い被さってきた。
おい、待ってくれ。何で裸なんだ。今の今まで着ていた制服はどうした。
「情報制御を行った。話は早いほうがいい」
俺はやっぱり自分で脱がす方が楽しみが増えていのだが・・・・・・
「了解した。再構成を行う」
そう言って長門の身体を再び制服が覆った。
意外と起伏のある肢体をもう少し見ていたかったな。ってそうじゃないだろ。
何で いきなり 俺を 押し倒して 裸に?
「男女の交合。即ちセ」
「ストップストップストーップ! 頼む、そういうことを口にするのは勘弁してくれ。
大体なんで俺と長門が突然セ・・・・・・を?」
「直接繋がれば伝達ができる」
瞬き一回分ほど俺の思考が停止した。どれくらいかって? 個人差によるさ。
いや、確かに『繋がる』だろうがいくらなんでも無茶苦茶すぎやしませんか。
「情報伝達の手段はこれが最適。それに、あなたはわたしの力になってくれると言った。
でも、最終的な判断はあなたの自由意志に任せたいと思う。
あなたが本当に嫌だというのなら無理に行うつもりは無い」
嫌なわけがあるか。
でもこういう事はもっとムードというものが大事であってだな云々。
それに長門は・・・・・・俺もだが、こんな流されるような形でしてしまってもいいのか?
「大丈夫。痛いのはわたしだけ」
>>859 まあ、今流行ってるアニメのSSスレだから
こういうのも来るよな…
>>854 なんで医学サイト見に行かないんだ、とツッコミたくなりましたが、
面白かったですw
>>860 >自分が書いたのは余計だったね。
マテ。断じてそんなことはない。是非そんなことは言わず投下してくれぃ。
864 :
863:2006/07/06(木) 00:31:53 ID:2+tsFGtQ
あ、日付変わってIDも変わっちゃったけど、自分
>>724です。
つい焦ってしまった。
埋め小ネタだけど容量たりっかな
『涼宮ハルヒの過度』
あっという間に春休みも過ぎ、今日から新学年、新学期である。
俺もついに二年生になっちまったらしい。春休み中ずっとSOS団の活動があったから、実感はない。
まあ、なんにせよ、二年生になってもハルヒに振り回され続ける日々になるにちがいない。
はっきりと変わる可能性があるのは、これから確かめるクラス分けぐらいだろうな。
新しいクラス名簿が張られている紙の前には、人だかりが出来ていた。
後ろからじゃ全然見えん。もう少し大きな紙を用意しようと思わなかったのか。
人の山がはけるのを待つか、それとも割り込んでさっさと確認するか考えていると、
「おっ、キョン」
押し合い圧し合いしながら、中から谷口が出てきた。ちょうどいい。
「よう谷口。俺がどのクラスか見たか?」
「僕たちと同じクラスだったよ」
谷口のすぐ後ろから出てきた国木田が代わりに答えてくれた。
今年もこの二人といっしょか。そりゃすごい偶然だな。不安がちらりとよぎったが、ここは素直に喜んでおこう。
「そりゃよかった。何組だ?」
「五組だ、二年五組」
谷口の答えに、俺はかばんを肩に提げ二人に声をかけた。
「じゃ、行くか」
五組に向かう途中、俺はあえて他のクラスメイトのことは質問しなかった。
谷口や国木田のことだ、真っ先にハルヒについて触れるに決まってる。
俺はそれだけは先に知りたくなかった。この目で確かめたかったのさ。
それに、春休み中こいつらとは会ってなかったんだ。すぐに分かることより積もる話もあるだろうよ。
谷口のアホな失敗談を笑ったりしているうちに、教室の前に着いていた。
内心少し緊張しながらも、まったくの自然体を装って、俺は教室の扉を開けた。
「あら、久しぶり」
だが、いきなり飛び込んできた声に、俺は完全に硬直した。
「あれ、外国から戻ってきたんだ?」
「うん、お父さんの仕事が済んで。国木田くんに、谷口くんだよね」
扉側先頭の席に座り、国木田の質問ににっこり笑って答えた女子生徒は、
「どうしたの? 幽霊でも見たような顔をして。それとも、わたしの顔になにかついてる?」
朝倉涼子だった。一年五組の元委員長で、俺を二度も襲ったインターフェースだ。
新学年気分も吹き飛び、あのときの恐怖を思い出した俺は、硬直が解けるや否や、下がりながら詰問していた。
「なぜお前がここにいるんだ?」
「さあ?」
楽しそうにくすくす笑い声を上げる朝倉。
「涼宮さんに不可能の文字はないってことかしら」
「ハルヒ?」
どういう意味なんだ、それは。
「自分の目で確かめるんでしょ? どうぞ」
俺の質問をはぐらかしつつ、含み笑いとともに、朝倉は手の平を上向け、教室の中へ差し伸べた。
拒否権を発動したかったが、谷口や国木田が先に入ってしまったため、俺も飛び込む。
そして、唖然となった。
『あっ、キョンくん』
甘い声とともに、俺に近寄ってきたのは、
『今年はいっしょのクラスですね。よろしくお願いします』
朝比奈さんだった。それにしても、二人いるように見えるんですが、俺の目の錯覚でしょうか。
「うふ。わたしは、朝比奈みくるです」
「朝比奈みちるです。バレンタインのときはお世話になりました」
え? みちるさんは朝比奈さんと同一人物のはずで、しかも今年は三年生のはずでは。
『それは禁則事項です』
二人で声を合わせて、そうおっしゃった。
さらに二人の朝比奈さんの間から、ひょっこり女子生徒が顔を出してくる。
「あははっ、なんだかよくわかんないけど、キョンくん、よろしくっさ!」
鶴屋さん、あなたもですか。
何がなんだかわからず混乱しまくる俺だったが、まだ甘かった。
朝比奈さんたちと入れ替わるように顔を見せたのは、
「おはよう。これで正式に挨拶できそうね」
「なっ!?」
誘拐女だった。どういうことなのか、誰か俺に説明しろ!
「僕は別に目的があって潜入しただけだ。これ以上は、ふん、禁則だ」
邪悪そうな未来人までいやがる。もう何がなんだか。
俺の理解の範疇からはるかにすっ飛んだ事態に、考えるのもバカバカしくなる。
「キョンくん、どうしたの?」
「って、なんでお前がここにいるんだ!」
だぶだぶの制服を着ているのは、四月から最高学年になった俺の妹だった。
「しらなあい。シャミもいるんだにゃあ。ね、ミヨちゃん?」
「うん。キョンお兄さん、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げたのは、妹の友達のミヨキチこと吉村美代子ちゃんだった。こっちは制服が似合っている。
ってそうじゃねえ。小六が高二ってのは、無理があり過ぎだろ。
シャミセンもなんで妹の机の上で寝そべってんだ。
「わたしもダメなんですか?」
いえ、よくお似合いですよ、森園生さん。
車を運転できる高校生二年生というのは、日本の普通科ではあまり見かけませんが。
「いやあ、懐かしいねえ」
多丸裕さんが自分の着ている制服をしげしげと眺めていた。
「このクラスを掌握するのは、手間がかかりそうだな。喜緑くん、手伝ってくれたまえ」
「はい、会長」
生徒会長氏と喜緑さんまでいた。ふんわりと微笑んでくれる喜緑さん。
よく見ると、コンピ研部長やENOZの四人、榎本美夕紀さん、中西貴子さん、岡島瑞樹さん、財前舞さんもいた。
げっ、中河までいるぞ。
無茶苦茶だ。ああ無茶苦茶だ。
「どうも」
「古泉! どういうことなのか説明しやがれ今すぐにだ!」
如才ない笑みを浮かべたそいつに、俺は思わずつかみかかる勢いで声を発する。
「そう言われましても、僕にもさっぱりです」
肩をすくめる古泉。
「新川や森、多丸兄弟もいつの間にかこうなっていた、と言ってました」
聞けば新川さんは教室付き執事、多丸圭一さん教室付き用務員だと言う。
どんな職業なんだよ、それ。
「長門さんに訊いてみてはいかがでしょう」
あきらめきったにやけ面を浮かべながら、古泉は教室の端のほうを指した。
望むところだ。長門がいるなら、長門に訊こう。
「ただし、長門さんも二人いますが」
「は?」
思いっきりアホな声を出してしまった。
古泉が指し示す先には、たしかに長門が二人座って読書をしている。
片方には、メガネがかかっていて、もう片方はかかっていない。
ってことはつまり……
「長門」
近寄った俺が声をかけると、二人とも顔を上げた。さっきの朝比奈さんといい、シンクロか。
「いや、そっちの長門には声をかけたつもりじゃないんだが」
メガネをかけたほうに言う。すると、悲しげにひっそりと顔を伏せた。
うっ、失言だったか。
「すまん、邪険にしたつもりはないんだ。ただ、その……」
なぜかメガネをかけてないほうの長門の視線が痛い。
「だあ! 二人とも聞いてくれればいい。長門、こりゃ一体どうなってんだ?」
「不明」
あっさり言いのけて、それで済んだとばかりに、長門は読書に戻った。
もう一人の長門は、視線をせわしなく動かしてから、ぽつりと言った。
「ごめんなさい」
もうダメだ。俺は何もかもなかったことにして、自分の席に着いた。
両腕を机に乗せて、顔を伏せる。
「それにしても、すごいわね阪中さん。みんな同じクラスになるなんて」
後ろから脳天気な声が聞こえてきた。
「うん、わたしもまた涼宮さんとならいいなって思ってたのね」
「ホントそうよ。こんな人ならいいな、って思ってたのがそのままなったみたい」
俺が甘かった。甘かったよハルヒ。
まさか、こんなことをやってのけるとはな。
もしかしたら別のクラスになるんじゃないか、なんて思ってた俺の気持ちはどうなるんだ。
なあ、ハルヒ。
やがて、担任の岡部がやってきた。
今年もよろしくな、岡部。
岡部は新しいクラスの面々にやや面食らったあと、副担任がいることを告げてきた。
扉の向こうで待機していたらしい副担任さんとやらは、岡部の声に扉を開けた。
ああ、そうだよな。この人もいておかしくないよな。
ハイヒールをカツンカツンと鳴らしながら、その女性は教室に入ってきた。
チョークを手にとって、名前を書く。
全部書き終わると、満開の笑みとともに、挨拶をした。
「よろしくお願いします。このクラスの副担任をすることになった、朝比奈みくるです」
大人バージョンの朝比奈さんは、きれいだった。
(おわり)
割り込みすまん。ぶっ飛んでてよかったw
もうこのスレも終わりですね。
そう終わりなんですね。
次回も書きますよ。
次回「朝比奈みくるのうんこ」
かな。とりあえず続きものですよ^^
「高さを合わせる必要がある」
と言われ、目を合わせて何かやるんだろうと思って中腰になったら
「もっと近く」
顔を近付けると
「もっと近く」
「もっと」
でいきなりキスされて呆然、口が離れた後に
「なっ、長門!?」
「言語では伝達しきれないことをあなたに伝えた」
と少し頬を赤くして目を逸らす長門さん。
というパターンも考えた。
ずっと前に小ネタでやった、性格と外見が丸ごと入れ替わるやつもちゃんと書きたいな