「キョンの暴走」
布団の上で何度も寝返りをする。眠れない。
眠ろうと目を瞑ると、昼間に起こった出来事が、目蓋の裏で再生される。
自分のしたことに何度も後悔する。なぜ俺は・・・、考えても無駄だろう。
あの時の俺も、同じ事を考えていたのだから。
少し視線をずらすと、シャミセンが呑気にいびきをかいて寝ている。
俺は大きく溜息を吐いた。そして、もう一度、昼間の出来事を思い出した。
いつものように部室に足を運ぶ。もはや完全に日課となっている。
部室の扉を開けると、中に居たのは、ハルヒだけだった。
団長席であぐらをかき、何か怪しげな大きな紙袋とにらめっこしている。
俺が入ると、一瞥だけしてすぐに袋に視線を戻していた。
何を考えているのか。袋の大きさ的にたぶん、中身は服だろう。
また朝比奈さんに着せるために、用意してきたのだろうか。
毎度思うが、その資金はいったいどこから出ているんだろうな。
椅子に座り、一息つく。古泉もいないし、どうしようか。
しばらく考え込んでいると、いきなり目の前が真っ暗になった。
いつの間にか俺の後ろに回りこんでいたハルヒが、布か何かで目隠しをしてきたのだ。
「なにすんだ」と俺の問いにハルヒは、「取ったら死刑よ」と低い声で耳元で囁いてきた。
どうでもいいが背中に何か柔らかいものが当たっている。それの正体は考えるまでもない。
「変なこと考えてるんじゃないわよ」まるで俺の心を読んだかの様に、そういうと俺から離れた。
視覚が使えないため、嫌でも聴覚に集中がいく。
聞こえてくるのは衣擦れの音。おいおい、何をしようとしているんだあいつは。
「おいハルヒ、なにしてんだおまえ」俺が若干焦り気味にそう聞く。
「あんたが考えているようなことはしないわよ」
顔は見えないが、明らかに侮蔑している様な視線を感じる。
続いて聞こえてきたのは、袋を漁る音。さっきの袋から何かを取り出しているらしい。